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1983-03-04 第98回国会 衆議院 予算委員会第六分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本分料会昭和五十八年三月三日(木曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月三日  本分料員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       今井  勇君    浦野 烋興君       小渕 恵三君    倉成  正君       岡田 利春君    草川 昭三君       木下敬之助君 三月三日  今井勇君が委員長指名で、主査選任された  。 ────────────────────── 昭和五十八年三月四日(金曜日)     午前九時三十一分開議  出席分科員    主 査 今井  勇君       浦野 烋興君    小渕 恵三君       倉成  正君    井上 普方君       竹内 勝彦君    木下敬之助君       横手 文雄君    兼務 五十嵐広三君 兼務 稲葉 誠一君    兼務 小林  進君 兼務 沢田  広君    兼務 永井 孝信君 兼務 野坂 浩賢君    兼務 渡部 一郎君 兼務 竹本 孫一君    兼務 中島 武敏君 兼務 藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房長     西垣  昭君         経済企画庁長官         官房会計課長  遠山 仁人君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁国民         生活局長    大竹 宏繁君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         通商産業大臣官         房長      柴田 益男君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業大臣官         房会計課長   鎌田 吉郎君         通商産業省立地         公害局長    福原 元一君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         中小企業庁長官 神谷 和男君         中小企業庁計画         部長      本郷 英一君         中小企業庁小規         模企業部長   赤川 邦雄君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    樋口 嘉重君         防衛庁装備局武         器需品課長   鈴木 輝雄君         科学技術庁原子         力局政策課長  松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全課防災環境         対策室長    岡崎 俊雄君         環境庁水質保全         局企画課長   三本木健治君         大蔵省主計局主         計官      藤原 和人君         大蔵省主計局主         計官      中平 幸典君         文部省体育局学         校保健課長   森脇 英一君         農林水産省食品         流通局商業課長 伊藤 礼史君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      山浦 紘一君         日本開発銀行総         裁       吉瀬 維哉君     ───────────── 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     井上 普方君   草川 昭三君     竹内 勝彦君   木下敬之助君     西村 章三君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     岡田 利春君  竹内 勝彦君     平石磨作太郎君   西村 章三君     青山  丘君 同日  辞任         補欠選任  平石磨作太郎君     斎藤  実君   青山  丘君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   斎藤  実君     鈴切 康雄君   横手 文雄君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   鈴切 康雄君     草川 昭三君 同日  第一分科員渡部一郎君、竹本孫一君、第二分科  員稲葉誠一君、永井孝信君、第三分科員中島武  敏君、第四分科員五十嵐広三君、小林進君、第  五分科員野坂浩賢君、第七分科員沢田広君及び  藤原ひろ子君が本分料兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  〔総理府経済企画庁)及び通商産業省所管〕      ────◇─────
  2. 今井勇

    今井主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、御協力のほどよろしくお願いを申し上げたいと思います。  本分科会は、総理府所管経済企画庁並び通商産業省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管事項説明は、各省庁審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算総理府所管について審査を進めます。  経済企画庁について政府から説明を聴取いたします。塩崎経済企画庁長官
  3. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 昭和五十八年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は、百十五億三千四百万円となっており、これは前年度補正後予算額に比べて六千八百万円の増額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力基金に係る分として、二千九百四億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、新経済計画積極的推進等に必要な経費として、十二億五千二百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、新しい経済計画の策定とその推進を図るための経費として、五億九千五百万円、経済政策を機動的に運営するための経費として五千百万円、総合研究開発機構の行う総合的な研究開発推進するための経費として六億六百万円を計上しております。  第二に、内外経済動向調査分析充実に必要な経費として、十億二千七百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、内外経済動向調査分析するための経費として、三億二百万円、世界経済モデル整備とその活用のほか、新国民経済計算体系整備等のための経費として、七億二千五百万円を計上しております。  第三に、物価対策国民生活安定政策推進に必要な経費として、五十六億一千百万円を計上しております。  この内訳の主なものは、物価の安定を図るための調整費等であり、生活関連物資の需給、価格動向調査監視物価に関する適確な情報の提供、その他各省庁の所管する物価対策を機動的に実施するための経費として、二十九億八千八百万円を計上しております。  また、国民生活政策体系検討等を進めるための経費として、三億二千七百万円、国民生活センターの機能の充実等消費者行政推進するための経費として、二十二億九千六百万円を計上しております。  第四に、経済協力等対外経済政策積極的展開を図るための調査検討等に必要な経費として、二億一千四百万円を計上しております。  これは主として、効果的な経済協力推進を図るための経費のほか、新たに計上した市場開放問題苦情処理に必要な経費であります。  最後に、海外経済協力基金でありますが、中期目標に沿って政府開発援助の拡充を図ることとし、そのため同基金事業規模として、五千九百十億円を予定しております。  この原資は、一般会計からの出資金が一千六百億円、資金運用部資金からの借入金が二千七百七十四億円、政府保証債が百三十億円、自己資金等が一千四百六億円となっております。このうち一般会計からの出資金大蔵省に計上しております。  以上、五十八年度における経済企画庁関係予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。
  4. 今井勇

    今井主査 以上をもちまして総理府所管経済企画庁についての説明は終わりました。     ─────────────
  5. 今井勇

    今井主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位にお願い申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願い申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上晋方君。
  6. 井上普方

    井上(普)分科員 経済企画庁長官にひとつお伺いするのでございますが、臨調が示し、また、鈴木内閣当時から決めておりました五十九年度赤字公債脱却ということは、これはもう不可能になった。その上にもってまいりまして、「増税なき財政再建」というのも、これまたむずかしいとお感じになるのが常識でございましょう。とするならば、財政再建のため重点的に何をなすべきか、経済企画庁長官にひとつお伺いいたしたいのであります。どういう経済方策を持っていくのであるか、お伺いしたいのです。
  7. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま井上委員がおっしゃいましたように、財政再建計画を達成することがなかなかむずかしいことは言うまでもございませんが、そのためになすべきこととして、私は、先般来大蔵省から出されましたあの中期試算と申しますか、六十一年度までの試算を見ていて感じますことは、経済回復自然増収が六・六%程度では財政再建は大変困難だ。自然増収というものは循環的な要因に基づくものだと思いますので、この循環的な要因に基づく減収をより回復に持っていって、大きくするような経済政策、つまり景気の回復、私が申し上げました名目で六%ぐらいの経済成長ではなかなかむずかしいと思います。それを高めることが最も大事な政策だと思います。
  8. 井上普方

    井上(普)分科員 あなた、はしなくもいま名目六%の成長では無理だ、六%程度ではちょっとむずかしいとおっしゃる。そこで、世界経済全体を見ますと、安定経済方向に進まざるを得ない。その中において、日本自体名目成長にしましても六%以上の経済成長というのは、ちょっと不可能ではないかというのが私の考え方なんですが、その点はいかがですか。何が基礎になってそういうことが言えると思いますか。
  9. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私の申し上げましたのは、名目六%、実質で三%から四%程度成長では、国債費利子率ですら名目成長より高い七・五%というようなことでございますから、赤字公債からの脱却はなかなかむずかしい。大蔵省から出ておりました財政中期試算前提となっている名目六%の成長でなく、一〇%ぐらいなら望ましいのでしょうが、そうした高い成長率がむずかしければ、利子率がもう少し下がってくる、名目成長率よりも利子率が低いような政策をとる、そのいずれかであろうと思いますし、アメリカですら昨今は四%の実質成長率と言っておりますから、名目一〇%の成長率をねらっての、いましばらくはむずかしいかもわかりません、ときがまた来なければやはり増税ということになるおそれが多分にある、これがまた経済を悪化するような気がしてなりませんから、いまのように六%よりも高い成長率が望ましいということを言っておるわけでございます。
  10. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると塩崎さんは、この大蔵省の出しました中期試算というものに対しては非常に危惧の念をお持ちであると考えてよろしゅうございますね。――いいです、時間のむだでございますので。  そこで、あなたは大蔵省御出身ではあるけれども、大蔵省のやり方については常に批判的な立場に立たれておるように私には見受けられる。それはともかくといたしまして、この赤字公債脱却あるいはまた「増税なき財政再建」ということを守るとするならば、私は一番恐れるのは調整インフレ論であろうと思うのです。  この調整インフレ論ということは、実は政治家タブーになっている。インフレをやるんだぞということはタブーになっている。タブーにはなっておるけれども、腹の底にはそれがあるのじゃないだろうかと私には感じられてならないのであります。いまもおっしゃいましたが、名目成長率を一〇%以上にする、利子率をともかくうんと下げる。金融政策におきましては、これはインフレ政策にならざるを得ないだろうと私は思うのです。しかも中曽根風見鶏総理大臣は、かつて四十六、七年当時、調整インフレ論者であった。あなたもそのときは議員であられたから知っておると思うが、あの当時、調整インフレをやるべきだと言って声高らかにラッパを吹かれたのが中曽根総理大臣であった。私はそこに非常に危惧の念を持たざるを得ないのであります。安易な道です。政治にとっては調整インフレというのは安易な道だ。しかし、一度このインフレの道に足を突っ込んだならば、とめどがなく、ブレーキがかからなくなるのではないだろうか。そして一番被害をこうむるのは国民生活であり、特に社会の弱者にしわ寄せが来る、このように私は思うのです。  でございますので、インフレをいかにして抑えるか。このインフレを抑えるということをあくまでも守り抜く、物価の安定ということを守り抜くことがこれからも必須の命題であると私は思う。しかし、いまのお話のように成長率を一〇%以上にし、あるいはまた実質成長率を五%、六%にする、それはいかなる方法でできるだろうか、私にはわからないので、ひとつお教え願いたいのです。
  11. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私は、中期試算と申しますか、あの数字を見て感じたところを申し上げておるわけでございますが、いまのところの展望としてはあの数字しかあるまいと思っておるのです。しかし、本当に財政再建をやっていくとすれば、要調整額は六、七兆円とかきわめて大きい、その差額が増税になったりあるいは歳出の節減になったりするようなことを考えますと、大変問題がある。高い成長率経済回復させるような方向で、より成長率を高くする。もう一つは、利子率を下げるということは申し上げましたが、その方向で行くことが望ましいし、そのことは、アメリカですら最近実質四%くらいの成長率になることを考えますれば、外国よりもより高い成長率潜在成長率とかいう言葉がありまするけれども、そういうことを念頭に置きますと、経済回復するならば、実質三%くらいの成長率で行くはずはない。もう少し高いときが、これはもう年度によって違うかもしれませんが、出てくるような気がする。それが私は一つ財政再建のチャンスではないか、こういうふうに考えておるのであります。
  12. 井上普方

    井上(普)分科員 しからば、日本経済のどの部門において実質成長率が三%、四%以上になるのだろうか。いま考えてごらんなさい、どの分野において成長が達成できるだろうか。それは、オイル価格は下がるでありましょう。オイル価格は下がるでありましょうけれども、どの分野において上がるであろうか。  経済企画庁のあの分析を見てみますとおもしろいんですな。国民消費を一体どれだけ見るか、あるいはまた民間設備投資をどれだけ見るか、こういうことからずっと分けていってみましたな。分けていったところが、五十二年になりまして、あのときは宮澤さんでしたが、にわかにぽこっと住宅建設の占める率が出てきた。おかしいなと私はそのとき質問したこともございますけれども、あの当時、経済分析するのにともかく住宅建設までほうり込んできた。しかし、これも十分にいかない。しかもまた、いまあの土地の価格からいたしまして、サラリーマン諸君あるいはお並び高位高官皆さん方も、恐らく退職金なんかで自分の家をつくることもこれまた無理。とするならば、国民消費をいかに拡大さすかということを中心に物事を考えるべきではないだろうか、このように思うのですが、どうでございますか。
  13. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私は潜在成長力論を信ずるわけではございませんけれども、とにかく日本経済の社会的な基盤は、まだどの国よりもすぐれた面があるとよく言われます。教育水準の高い労働力、それからまた非常に高い貯蓄率、また技術革新の進展、たとえば先端技術などはやはり世界先端を行っていると思うのでございます。さらにまた、労使関係世界に比べますれば比較的安定している、それからまた治安状態も大変よろしい、こんなようなことが、私は日本経済成長を他の国よりも高めている基盤だと思うのでございます。これはまだまだ続くと思うのです。したがって、アメリカが四%ぐらい成長するならば、これより高い成長を求めることは、私はまだまだ可能であろうと思います。  もちろん、消費支出を増加することも大変重要なことでございまするけれども、その前提として経済が活発になっていく、そして生産性が上がっていく、所得が上がっていく、その結果として消費が上がっていくというような一つのこれまでの経済の循環、これはもう当然期待していけるものだ、こういうふうに考えております。
  14. 井上普方

    井上(普)分科員 おっしゃるように優秀な労働力であり、貯蓄率の高さあるいはまた技術革新先端技術の優秀さということにつきましては、私は多少疑問を持ちますが、それはともかくといたしまして、労使関係の安定、治安の安定、これは私も納得いたします。しかしながら、資源のない日本、しかも中進国がこれだけ追い上げておる現在において、果たして過去の高度成長政策当時のような成長率が望めるだろうかというと、私はやはり疑問を持たざるを得ないのです。  そこで、増税財政再建ということになりますと、冗費の節約といいますか行政改革、これを私は活発にやらなければならないと思います。  それが、日本行政改革というのは、明治以来十年ごとに戦争をやってきた。そのたびに古くなった、時代に合わない行政改革が行われてきた。ところが、日本は戦後そういうことは行われていない。まあドッジ政策をやったときくらいでございましょう。のんべんだらりとやってきた自民党政権のもとで、ともかくこれだけ膨大な行政経費が出てくるようになってきた。もちろん、戦前と比べまして内地人口が大体倍になる。その上へもってまいりまして、福祉とかそういうような大きい行政のニーズが出てきたのであるから、人件費がふくれ上がるのはこれまた当然だと私は思います。しかしながら、古い制度それ自体について、不要になった制度、そういうものに対するフォローアップと申しますか、それが行われていないのではないか。  戦後ともかくたくさんの制度がつくられました。もう古くなった制度がたくさんある。法律にいたしましても三百幾つあるそうです。これの切り捨てが行われていない結果、行政の膨大なるものができてきた。官僚の諸君にすれば、パーキンソンの法則ではありませんけれども、ともかくそのために膨大な仕事をする、仕事をつくるために役人があるというようなかっこうになっているととは御存じのとおり。そこで蛮勇をもってこれを縮小していく必要がある、私はこう思うのです。  そこで、経企庁自体につきましても、これは企画院当時からあるのでございますから古い役所でございましょう。戦後においては目覚ましい活躍をされた企画庁だろうと思います。しかし、果たしていま企画庁はどれだけの仕事ができておるだろうかということになりますと、私は疑問を呈せざるを得ないのであります。それはともかくといたしまして、そういう観点から、経済企画庁長官としても、「増税なき財政再建」あるいは赤字脱却ということをお考えいただきたいのであります。もちろん、いまの臨時行政調査会、あれは素人ばかりが集まっておる。しかも、ともかく枢密院のごとき存在になっている。あれであれば政党なんというものは要りはせぬのです。またそれを守るというようなばかな内閣もあるのです。あれでは内閣や議会というものはなきに等しいのです。  それはともかくといたしまして、いまこういう財政再建をしなければいかぬという一つの大きい命題を抱えておる。その中において私が一番恐れるのは、政治家の潜在的に持っております調整インフレ論であろうと思うのです。かつて中曽根さんはそれを言ったのですから。ここに私は思いをいたすときに、経済企画庁が果たさなければならない役割りは重大なものがある、こう思うのであります。御所見をお伺いしたいのです。
  15. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私も、まず第一に、権力的に徴収いたします税で賄っておりますところの政府機構、それの時代への適応は大事なことでございますし、行政改革については本当に力を入れて推進すべきだと思います。そしてまた、それによって一つ財政上のゆとりを生み出すこと、これが財政再建につながることは、私も大変高く評価して推進していくべきであると考えておるところでございます。  それから第二に、たびたび言われました調整インフレ論でございます。私は、調整インフレ論なんという考え方は全くとりませんし、やはり物価の安定こそ経済政策一つの天井、制約要件だ、こういうふうに考えております。そしてまた、円レートの安定ということは物価に大変重大な関係があるものでございますから、やはり物価の安定のもとにできる限り成長力を高めていく。三%というのは昭和五十六年から入ってきて、もう三%の成長については、大抵の日本人の方々は不満を持っておられるように見える。そういった意味で、私は、実質三%、名目六%くらいの成長では、恐らく日本経済に生きていられる方々にとっては満足する成長率ではない、こういうふうに思うものでございますから、いまのようなことを申し上げた。それが調整インフレにつながるということは私は毛頭考えていないところでございます。
  16. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、経済企画庁のお考え方をただしたいのですが、第一次オイルショックのときに超インフレが起こりました。あのインフレ原因は一体どこにあったんだということを、実は私、四、五年前に物価対策委員長をやっておりまして、そのときに経済企画庁諸君の論議を聞いたのであります。あのインフレ原因は何だったのですか。昭和四十七年、八年、九年について経済企画庁はどういうような分析をしているのですか。大臣はまだなられてしばらくでございますので、経済企画庁の定説をひとつお伺いしたい。
  17. 赤羽隆夫

    赤羽(隆)政府委員 お答え申し上げます。  あの当時のインフレの最大の原因はやはり過剰流動性、こういうことだったと思います。これは御承知のように、国際収支の黒字、これにその当時の円の切り上げに対するアンタイド、こういったようなことがございまして、金融政策が適切になされなくて、そのために国内に過剰流動性があった、これが一番大きい原因だったと考えます。それにつれまして一般インフレ心理というものが燃え盛った。そのために、いまのうちに、安いときに買っておけば値段が上がってもうかるだろう、こういうことで、たとえば一億総不動産屋などと言われましたような現象が起こった、こういうことだと思います。
  18. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、当時の政府自民党は何と言ったかというと、油が上がったのでインフレなんだ、こう言っておったのです。私も、確かにおっしょるように過剰流動性原因があった、これが最大の原因だった。ニクソン・ショックから始まるところの過剰流動性の増大によって金融政策が誤った。しかし、そのときに何と言ったのです。油の価格が上がったのだから、全部それに合わそうじゃないかといって調整インフレが行われたのであります。それじゃこの際、油が下がったんだから下げようじゃないかという声が出てくるかと思いましたら、それは出てきてない。なぜ出てきてないんだというとやはり金融政策、そのためであります。私は、油の値段が下がったから電力料金を直ちに下げろなんというけちなことは申さない。申さないけれども、常にインフレに対しての脅威を私は感じざるを得ないのです。  このごろの経済指標を見てみますと、M2が昨年と比べますと一二%から三%も上がっている。非常に危ない時期に来ていると私は思うのです。しかし、一般国民消費は落ち込んでおる。これもまた心理的な問題かもしれません。しかし、ここらあたりをお考えになった経済運営をやらなければいけない。政治家の中には、ともかくはでなことをやりたがるやつが多いので、しかも外交政策で失敗したものだから、今度国民の目を国内政策に向けようなんといって、はでなことを言い始めるんじゃないだろうかと私は心配するのです。しかも中曽根さんは、昭和四十七年、八年当時は、先ほども申しましたように、オイルの価格にすべてを合わそうじゃないかという調整インフレ論者の最先端を行った人です。しかも性格は風見鶏、危なくてしようがない。経済企画庁の使命というものは非常に重大だと思うのであります。  そこで、もう一つお伺いしておきたいのは、世界経済がこのように不景気になった一つ原因としましては、やはりアメリカの軍拡、ソ連の軍拡に原因があるのじゃないか。レーガン政権になりまして、一時は軍拡によって景気は上昇するような気配が見えました。しかし、軍備拡張、これは余り経済循環に役立たないものですから、やがてこれも収束に陥っていく。ソ連も、御承知のようにGNPの一五%もともかく軍備につぎ込んでおると言われる。言われるのです、わかりませんけれども。とするならば、国民生活に及ぼす影響は非常に大きいものがある。ここにソ連、東欧圏の経済の停滞というものがあるのじゃなかろうか、このように私には考えられます。まことにきょうはアバウトな話をしているのですから、そのつもりでお聞き願いたいのでございますけれども、やがてアメリカもそうなってくる。でございますので、アメリカの議会におきましても、軍備拡張の費用を少なくしろというような意見が非常に高まっておるということも承っておるのです。  でございますが、それはともかくといたしまして、日本経済成長、そういうような国民の特性というものは持っているけれども、あなたのおっしゃるように、一体どうやって実質経済成長率を高めていくかということにつきましては、私は大きな危惧を持たざるを得ぬのでございます。それは、オイルが下がった。一つの大きな要因ではございましょう。大きな原因ではありますけれども、経済企画庁といいますと、昔の企画院当時から日本経済をともかく計画的にやってきた役所でございますので、あえて私はお伺いしているのです。この点をお伺いしたいのです。
  19. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま、日本経済の低迷と申しますか停滞は、世界同時不況と言われるあの現象の影響を受けた点が多いことは御案内のとおりでございます。私も、単純にかつての高度成長のようなあの成長率が直ちに実現できるなんということは毛頭考えておりません。しかし、いまの状況は、どうも三%台の成長日本全体満足していないようなところでございますから、いまのようなことを申し上げたわけございます。  その方法として、いろいろ厳しい事情はございますけれども、幸いに、いま申しました原油の価格の低下、そして石油の需給の緩和という大きな福音が出てきつつある。それからまた、金利の低下も期待できるような事情にある。それから円高の傾向も定着しつつあるような気がするわけでございます。かつては国際収支の問題、それから物価、この二つが経済政策の二つの天井でございました。それからもう一つ資源の問題、石油の問題でございました。この三つの問題について、私はいまゆとりが出てきたように思う。そこを十分に活用して政策を進めていく。厳しい中でございまするけれども、いま申しましたように、成長率を高めることによって、できる限り増税なんというようなことは避けるべきである。  さらにまた、自然増収が六・六%伸びているのに利子率が七・五%であったり、国債費の利払いが年に八%、九%伸びていくようなことでは、これはとうてい財政再建は困難なことはわかりますから、利子率の低下も進めていくようなことをやるべき時期に来ておる、そんなような方向で、財政再建のみならず、その基礎となりますところの経済成長を安定的に持続的に図っていくべきであろう、こういうふうに思っておるのでございます。
  20. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、一番経済成長に必要なことは、やはり国民消費の増大だろうと思うのです。この点については、心理的な要因もありましょう。私はこういうことを聞いたのです。  この間私のところに洋服屋がやってきて、既製品を売っている卸屋さんですが、実は家にコンピューターを入れたんですというようなことで、コンピューターってそんなにありがたいものかということでひやかしておったのですけれども、そのうちに聞き捨てならぬことを聞いた。実は一昨年の年末からの商売は、既製服の一番よく売れるのは五万五千円ぐらいだったそうです。ところが、去年の十二月の既製服の一番よく売れる価格は三万八千円だそうです。ともかくそういうのを勘案してすぐにコンピューターに入れて商売するんですと、こういう話を承りました。それはやはり、国民皆さん方には、これじゃともかく消費はできない、高いものは買えないぞという心理が底流にある。それは何かというと賃金抑制であり、あるいはまた将来の収入がどうなるかという不安があるからにほかならない。  だから私どもが、せっかく人事院が勧告した人勧問題、これをやれと言う理由の一つはそこにあるわけなんです。政府がぎゅっと締め上げて、賃金が上がらないという国民的な心理の中で、何で消費の拡大が行われましょう。そこに一番大きい原因があるのじゃございませんか。住宅産業といいましても、もうこれは頭打ちですよ、土地価格があれだけ上がってしまえばなかなか……。おもしろいですよ。住宅を建築する人を見てみますと、官舎におる人、社宅におる人、こういう人は、もう四十五、六年ぐらいまでに家をつくってしまっているんですよ。  それはともかくといたしまして、私の言わんとするところは、時間が参りましたのでこの程度にさしていただきますが、中曽根総理大臣調整インフレ論者である。あなたは首を傾けられますけれども、当時の新聞あるいは国会答弁、あるいはまたあの当時のあの人の言動を見てごらんなさい。しかも政治家の心理として、いかにはでな政治をするかということを常に心がけている人だ。そういう面からするならば、私の最も恐れるのはインフレの再燃であります。これだけの膨大なる、百兆に及ぶ公債を持っている。これを楽にするためには一体何をするかと言えば、安易な道であります。それをひとつ十分監視していただきたいことを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  21. 今井勇

    今井主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に沢田広君。
  22. 沢田広

    沢田分科員 現在、経済企画庁では、計画モデルの経済分析や産業予測、経済のソフトウェアのいわゆる相互利用等が行われていると思うのでありますが、その点そのとおりと理解していいですか。
  23. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 そのとおりでございます。
  24. 沢田広

    沢田分科員 いま聞こうとしていることは、情報化社会と、いわゆる国民のナショナルミニマム、あるいはシビルミニマムと言ってもいいのでありますが、そういうものとの関連性でお聞きをしていこうと、こういうことであります。ソフトウェア、国土庁では地形、自然、経済、社会、それから流域、こういうコンピューターが入っておりますが、これも御承知でしょうか。
  25. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 国土庁の方の計画につきましては十分承知をいたしておりませんが、企画庁といたしましては、いま先生御指摘のような、福祉に関しましての指標は、社会指標という形で集計をいたしておるわけでございます。
  26. 沢田広

    沢田分科員 一九七九年と七六年に、大蔵では経済と貿易データのコンピューターも入っておりますし、七四年には農林が、農業、畜産、それから木材予測のシステムが入っておる。七九年には建設が、都市情報システムとして都市計画、交通、土地利用、防災計画等のコンピューターが入っておる。これは御承知ですか。
  27. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 承知しておりますが、私ども経済企画庁も各般の統計についての収集をしておりますし、また、通産省等とも資料の交換をしているところでございます。
  28. 沢田広

    沢田分科員 そうすると、これらは各省の縦割り行政ではあるけれども、いま開発中のものが大体六つ、四つ各省にもあるようでありますね。そういうようなものも加えますと、それを総合管理をして、それぞれのデータをどう利用していくかというシステムをつくる必要が、あえて言えば経済企画庁にはあるのじゃないか。それぞれ勝手につくったものをするというのではなくて、それを総合的に集約をしていく、そういうシステムをとる必要があるのではないのか。私は、これはほかの省のやっていることですから知りませんというので、各省別々に予算を組んで、別々の資料をつくっているということで、それが何ら利用されないということでは、国家財政においても余り意味がない、こういうふうに思いますが、それらを総合調整していく気持ちはあるかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  29. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 先生御指摘のとおり、そういった必要性が大変高いと思われますけれども、そういった調整機能につきましては、たとえば総理府あるいは行政管理庁等もございますので、関係官庁とよく相談いたしまして、そういった方向で考えていきたいというふうに思っております。
  30. 沢田広

    沢田分科員 歯切れが悪いですけれども、長官としては、気持ちの上で、ここで約束しても約束を守れないと困るという気持ちも半分あるし、しかし、そうしなくてはいかぬなという妥当性を認める気持ちと、いま半々なんだろうと思うのであります。ですから、そういうほかの省のものは使えないんだという発想はともかく排除していくということが必要だと思うので、その点はここで確約とまで言わなくてもいいですから、長官として、そういう方向で努力をしてもらうということが必要じゃないかと思いますので、その点、お答えいただきたい。
  31. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 御指摘の点、ごもっともでございます。コンピューターの各省庁の統合はそもそも行管の仕事だというのでございますけれども、それはともかくとして、企画庁も重大な関係がございますので、いま御指摘のような努力は、企画庁長官としてしていきたいと思います。
  32. 沢田広

    沢田分科員 これは経済企画庁が出している「わかりやすい日本人の暮らしと意識」という本であります。長官はごらんになったかどうかわかりませんが、わかりやすく書いてあるという意味なんですね。この問題は、日本人が持っている暮らしに対する意識、それを計画なりこれからの政策の中にどう反映させるかということが大切な要件なんです。ただ何か諮問委員会みたいに経済企画庁はいろいろな資料を出すけれども、それを大蔵で使ったり通産で使ったり、勝手に各省でお使いくださいと、どうも実行力がない。ただ参考に意見を述べるだけですといったような嫌いがないでもないので、長官もいら立ちを持っているのだろうと思うのです。せっかく出している資料が生かされない。厚生省も使わない、建設省も使わない。全然見てないのだろうと思うので、これはほかの委員会に行ったときにPRしてあげようかと思っているのですが、そういうことが果たしてどこまで徹底していくのかという点について不安があるわけです。  限られた時間ですからあと簡単に言っておきますと、この前七カ年計画を五カ年計画にフォローしたときに、国民所得としては六十年度を三百三十四兆から三百兆、公共投資は二百四十兆から百九十兆、それから社会保障の移転は一四・五%、負担は一一%、租税は二六・五%ですか、それから消費性向は八三から八〇に変えてフォローした。計画経済ではないにしても、いわゆる日本人の持っている現在の暮らしの意識というものそれ自身をとらえて、五年後になるか七年後になるかは不明としても、この問題はこういうふうにしたい、この問題はこうするべきである、一定の目的意識なしの政策というのはないのだろうと思うのです。ですから、目的意識を持たせることが経済企画庁一つ仕事なんじゃないかと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  33. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま御指摘の、目的意識は大変大事なことでございます。私どもはそのような努力を払っていきたいと思います。
  34. 沢田広

    沢田分科員 幾つかの問題をまた提起するのですが、たとえば、下水道は日本は三〇%、これは資料の統計年度によって若干違いはあると思うのですが、西独が八八%、フランスが六五%、イギリスが九七%、これは建設省だと言われればそれまでなんですが、企画庁としては、どの程度の目標年次で、どの程度の下水道水準というものを確保したいと考えているわけでありますか。
  35. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 下水道につきましては、まだ欧米先進工業国と比べまして一番おくれている分野でもございますので、現在の計画を、今後具体的にいろいろな面で実行する段階で、最も重点的に推進していかなければならない分野だと思っておるわけでございます。  具体的な整備の水準につきましては、新しい展望あるいは経済運営の指針という段階で具体的に示してまいりたいと思っておりまして、現在鋭意作業をしておるところでございます。
  36. 沢田広

    沢田分科員 われわれが地元へ帰りましても一般に問われるのは、いつになったら便所のにおいから解放されるんだ、いつごろになったら下水道ができるんですか、こういうことを聞かれるのです。  都市計画で各種の下水道計画を持ちながら、やってはおりますけれども、ずっと前に言ったが、東京から三十キロ圏内あたりでも、吸い込み方式だなんという下水も、乱開発の結果起きているのです。雨が降ると三日もふろに入れなくなってしまう、後、水をかい出す場所がなくなってしまう、そういう状況すらあるわけです。ですから、GNP第二位だなんといって、一方では吸い込み方式でたれ流しでいるという状況では、これは何といっても恥をさらす以外の何物でもない。  ですから、下水道については、これは厚生省関連の問題ですが、いま浄化槽ができて、機械は大分よくなりましたけれども、これも管理がまだまだ問題なしとしない。国民の最低生活の中の衛生的な立場、あるいは精神的な安定度、あるいは生活へのエンジョイですか、そういうものを考えても、下水道は最低限度の今後の一つの目標ではないのか。長官はもちろんなったばかりですから、大蔵省にいたころは別として、そういう点に全然意欲がない。ここにいる人たちだって、官舎にいるからそういう生活になっているかもしれませんけれども、なれないと、案外吸い込みなんかでいるかのかもしれませんけれども、そういうことでいけば、もっと努力しなければいかぬのじゃないかということが一つ言える。  それから、もう一つわが国の一番おくれているのが公園なんでありますね。これは人口一人当たり、日本は東京だけでも一・八、ワシントンでも四五・七、ニューヨークは相当混雑しているが一九・二、ロンドンは三〇・四、ボンが二六・九、ローマが一一・四、パリは八・四、数字はいろいろと年度によってとらえ方があるでしょうけれども、とにかくこれも低い。これも企画庁から見るといろいろな問題があるでしょうけれども、七カ年計画がなくなって、五カ年計画に引っ込んで、今度は五カ年計画もなくなって、あしたはどこへ行くのよ、こういうのがいまの状況ですね。  国民に夢を与えるということはやはり政治の大変大切なことなんですね。中曽根さんは、余り約束すると自分で腹を切らなくちゃならないかなと思って心配してしまっていて、物を言わなくなってしまった。これじゃ国民は夢も希望もない、こういうことになってしまうのですね。だから、そういうところに経済企画庁たるゆえんのものがあるのじゃないのか。それに向けて、財政再建の中にどうそういうものを達成させていく努力をするのかという知恵を国民の中からつくり出す、それが民力の活用ということになるんだと思うのですね。国の方針が定まらないで民力の活用だなんて言ったって、どこへ投資していいか、民間はわかりはしませんよ。そういう意味において、その点は経済企画庁がどういう指導性を発揮されるか、ひとつ決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  37. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま下水と都市公園につきまして御指摘がございましたが、私も全く同感でございます。長らくの日本人の住宅生活と申しますか、住の生活、その慣行は近代的な欧米流の生活から見ますと大変違いがあるのみならず、いま申しましたような大きな欠陥もあることは言うまでもございません。そこで私どもは、何としても公共投資の社会資本の整備のおくれを挽回しなければならないという考え方でございます。ここ四年間、六兆六千五百五十四億円という、当初ではございまするけれども、公共事業関連費が一定金額で来ていること、このことがこの問題の処理を大変むずかしくしておる理由だと私は思います。将来とも、財源を発見してでも公共投資計画を充実し、社会資本のおくれを取り戻さなければならないかと思うのでございます。  昨今、ケインズ流の考え方が退潮が伝えられて、やれマネタリズムとか、やれサプライサイダーだとかいうような意見がありますけれども、私は、本来社会資本の整備自体が立ちおくれている、経済に対する刺激効果とかそういうことを離れても、社会資本の整備はより必要だ、こういうふうに思いますので、今度経済審議会でお願いしておる中でも、財政再建と十分な調整をし、財源を発見してでも充実に力を入れていただきたい分野だ、こういうふうに私は考えているところでございます。
  38. 沢田広

    沢田分科員 もう一つ、景気に関係して私の私見だけ述べておきたいと思うのですが、いまが、徳川時代じゃありませんけれども、日本の鎖国といいますか、貿易は余りよくないし、国内整備に一番いいチャンスである。これは家康の本じゃありませんけれども、いまこそ、国民の生活水準というものをどのようにして上げていくか、それが内需につながるようにする、金がいわゆる国内にお互いに回っていけるシステムを使う、この一番いい時期だ。貿易にうつつを抜かして、それに身がわりを身がわりをというふうに奔走することはかえって縮小再生産に陥ってしまう、こういうふうに私は考えるわけです。  ですから、いまの社会資本というところへ、たとえば緑の問題、これから私は言いますが、私などの埼玉県なんかでは、台風十八号でえらい目に遭いました。それ一つをとらえてみても、林業がある、植樹がどれだけ必要であるか、あるいは河川の改修がどれだけおくれているか、いま言った下水道の分流方式がいかに被害をもたらすか、いろいろな教訓を与えてくれているわけですね。  ですから、いまこそ国内の社会資本というものへ、いわゆるいい基盤といいますか、いい都市基盤をつくっていくというように財政投資をする。ただし、これには用地買収は余りしないということが必要な条件になってくる。用地買収をしたのでは預金だけになってしまって少しも生きてこない。ですから、下水道をやるのは道路の下にやるのですから全然用地買収は要らない。それから電力も、きのうも質問しましたが、もうかっているのですから、ケーブル化をどんどん進めさせる。そうすればもっと街路樹も植えられる、こういうこともあるわけですから、ここから国内の整備、国内のナショナルミニマムを、医療などもありますけれども、一応そういう社会資本の充実を志向して景気を回復するということが、これから求められている方向じゃないかと思いますが、これについて御意見を伺いたいと思います。
  39. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 全く同感でございます。財政が大変困難な折からでございまして、財源が制約されておりますけれども、これまでの経過から見まして、社会資本の整備が必要だと思うのでございます。好況のときには社会資本の整備はちょっと待てと言われて、ケインズ的な逆の手法で需要が抑制されてきて、不況になりますと、これまた財政が困難だからしんぼうしろというようなことでは、社会資本は永久に整備されないどころか、世界各国に比べて立ちおくれの差がますます激しくなるような気が私はするわけであります。私は、ひとつ財源を何としても探してでも、この次のあるいは八年計画とか十年計画と言われておりますけれども、その中に、いま沢田委員が言われました夢をぜひとも盛り込み、そしてまた、それを夢じゃなくて本当に実現するような方向であらゆる努力をする、そのことが企画庁の役目のような気がしているのでございます。
  40. 沢田広

    沢田分科員 もう一つ、二つ、時間を少し詰めたいと思いますが、われわれの近くに住んでいる人でも、四十年どころじゃない、六十年、七十年住んでいる人から見て、住んでいるところが一向に下水道ができない。きのうきょう来た人のところへは下水道の投資がされる、こういう矛盾、われわれのようなところの、新住民と旧住民の対立のあるようなところ――対立まではいきませんが、違和感を持っているようなところでは、新しく税金もまだ満足に納めてなかったような人のところが整備をされてしまって、何十年、徳川時代以来から住んでいた人のところはちっともできていかない、これは何としても理屈で納得しないものなんですね。これは農家だなんて言わないですよ。一般の市街地のことで言っているのですよ。そういう例も政治の不信感を招く一つの要素になっていることには間違いないのです。  これは何も下水道だけじゃないのですけれども、何かやはり試行するところにそういう錯誤があるのだろうと思うのですけれども、その点、経済企画庁は、そういう日本人が暮らしの意識の中に求めているもの、ここにも抜き書きはしましたが、時間の関係で、何を求めているのかということだけ簡単に、後でお読みになればわかることですが、言っておきますけれども、空気や緑などの自然の環境を求めているのが五六・二%、それから子供が自由に遊べる場所を求めているものが四四・四%、これは恐らく二つくらい選択させたから比率が高いのだろうと思うのですが、それから火事や水害に強い町、それから集会所や公園があるところ、それから交通に便利なところ、あるいは風俗や美しい伝統美のある町、あるいは住民のお互いの協力関係が強いところ、それからそれぞれリーダーシップを生かしていけるリーダーの育成、それから地域の行事、こういう順序で、地域に比較的何か一番大切かという世論調査で求めた国民の意識は、この本の中ではないのでありますが、そういうふうに出ているのですね。経済企画庁というものはそういうものをもっと生かしてつくっていく必要がある。それと景気との調整というもののバランスをとる。どうもお役人は少し業界の方にだけ目が向いちゃって、こういう国民的な素朴な感覚をとらえることに――だから自民党はもっと少なくなっていいはずなんですけれども、それが国民はどうごまかされてしまうのか、そういう現象が出てきてしまうのですが、この素朴な感覚の中に政治は、多い少ないは別問題として息づいていかなければ、政党政治そのものが消えていってしまうのではないか。これは社会党とか自民党とかいう問題じゃないですね。  ですから、基盤はあくまでも国民生活なんですから、国民生活基盤を置いた政策立案、経済企画、そういうものを立てていただきたい、こういうふうに提案を申し上げて、三、四分早いのでありますけれども、あと御回答をいただいて、時間のおくれを取り戻すために、主査の苦労もわかりますから、それで御協力を申し上げて終わりたいと思っております。
  41. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 国民生活の質的充実という目標は、今後、私どもが経済審議会にお願いしておりますところの新しい経済運営の指針と申しますか、新しい経済計画の中での大きな課題として挙げていただきたいところでございます。いま申しましたように、経済全般と申しますか、生産基盤の面だけに着目するのじゃなくして、国民生活の面を重視していくことは戦後の民主主義の大きな収穫だと思います。そういった意味で、いま申されましたきめの細かい、国民の気持ちに合った生活、それを質的な充実の形でとらえていくことを進めていくということをぜひともやっていきたいと思います。
  42. 沢田広

    沢田分科員 最後にもう一つだけちょっと。  いま言われたようなことをどの程度の時期に発表できる予定ですか、こういうものに対する指標なり考え方なりというものは。
  43. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 現在経済審議会で、新しい、より長期の展望あるいは運営の指針を検討していただいておりまして、その中で、特にいま御指摘の国民生活の面については、国民生活分科会というものをつくりまして御検討いただいておるところでございます。この結論をいつ出すかということについては、いまの段階では定かではございませんが、われわれとしてはその作業の進展の状況に応じてできるだけ早く結論を得るように努力してまいりたいと思っております。
  44. 沢田広

    沢田分科員 土光臨調はあれだけ急いでやっているんだ。なぜそういうものがおくれるのか。土光臨調は三月十幾日かには終わって、それで出しますと言っているんだ。そんなのは長官もしかりつけて、お互いに国民生活にかかわる問題なんだから、もっと熱を入れて出していただくように。これはあと答弁を求めたって、いまのような答弁では話にならない。やはり、いつまでに出しましょう、その決意でやっていきましょう、そういうことでなければ、口は悪いけれども、給料もらって審議会を一カ月に一遍か二遍ぐらいずつやっていたのでは話にならない。やはりここは集中的にやって、早期に出すなら出すように、そういうふうに進めていくように長官の積極的な姿勢を期待をいたしまして終わりたいと思います。
  45. 今井勇

    今井主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  46. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がございませんから簡潔に質問をいたします。長官は非常に元気でありますから、明瞭に御答弁をいただきたい、こう思っております。  「昭和五十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」これは一月二十二日に閣議の決定をしておられますね。この主要経済指標、参考資料等は、間違いなくこのとおりいく、こういうふうに自信と確信をお持ちですか。
  47. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 現在、私どもが国会に提出したものでございますから確信を持っております。
  48. 野坂浩賢

    野坂分科員 五十七年度は御案内のように十二月の臨時国会では六兆一千億円の税収不足が出る、経済見通しを誤ったということが言えますね。当時企画庁の長官でありました河本さんは、五十七年度の後半には薄日は差す、こうおっしゃっておりましたけれども、景気の薄日はついに差さないで終わりました。  そこで、確信を持ってお出しでございますが、この二年ほど前から、それぞれの目標にはパーセントの横に「程度」というのがついておりますね。これの許容限度は上下限どのくらいをお考えですか。確信をお持ちで出すわけですから……
  49. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 程度程度で、やはりそこは常識的に御判断していただく。これは数字的に画一的なことは私はなかなか言えないと思います。
  50. 野坂浩賢

    野坂分科員 塩崎さんにしては不明瞭ですが、自信と確信をお持ちでありながら程度になると非常にぼけておる。まずこの程度ということですか。  それでは、河本さんは程度というのは上下限〇・一だ、こういうふうにお話しになったと承知しておりますが、その程度ですか。
  51. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私は、河本前長官がどのように御答弁したかよく存じておりませんけれども、やはりそのような数字ではなかなかあらわせないものが程度だと思いますので、その程度にひとつ御理解を願いたいと思います。
  52. 野坂浩賢

    野坂分科員 禅問答やってもしようがないのですから……。  いままで不況の原因というのは、お答えをいただければいいのですが時間がございませんので、当時政府が言っておりましたのは世界の同時不況、アメリカインフレと高金利、国内の消費需要と停滞、こういう三つの原因を挙げておりましたが、いまでもそのとおりでしょうか。
  53. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 おおむねそのとおりだと思います。
  54. 野坂浩賢

    野坂分科員 この不況感を脱出する方途というのは何々ですか。
  55. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 この点につきましても、たびたび予算委員会でもお話し申し上げましたが、世界経済の不況を考えてみますと、やはりまず第一は内需拡大で私どもはやっていく。それは民間設備投資であり、民間住宅投資であり、さらにまた個人消費支出である、これを二・八%期待し、外需は〇・六%期待する、こういうことでございます。  第二は、いま申しましたように、現在の経済の低迷が一九八一年の暮れからの世界の思わざる不況からあるいは高金利から来たといたしますれば、昨今の世界経済回復は、だれしも慎重ではありますけれども大変楽観的な空気も出つつあるようなところであります。その世界経済回復の流れにうまく乗っていく。それは金利の問題であり、円レートの問題である。そしてまた、原油の需給の緩和と値下げという事実である。これらを利用して私は経済回復過程に進めていくということが最も重要なことだと思っております。
  56. 野坂浩賢

    野坂分科員 内需二・八%、外需〇・六%、それで三・四%の成長率はある、こういうことですね。  きのうの新聞にはアメリカの景気は急回復した、不況脱出宣言をレーガンさんが得々と述べておりますね。御案内のとおりだろうと思います。こういう条件が見通しとして出てきた。そういたしますと、経済成長率というものは三・四%よりも伸びる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  57. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私はそう簡単には考えておりません。三・四%もなかなかまだまだ厳しい面もあると考えておりますし、そのような世界経済回復しつつあるからそれに応じて三・四%を上積みして高くするというようなことは、いまのところは全く考えていないところでございます。
  58. 野坂浩賢

    野坂分科員 一月二十二日の閣議決定のときにはアメリカの景気回復はこの機にできる、また原油の値下げというものは経済企画庁の中ではあるいは閣議では十分想定をされたことですか。
  59. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私の経済演説にもございますし、世界インフレに対する闘いは終わって、これは功を奏しつつある、したがって、今後は回復過程に臨むであろうということはそのときから予見をしておりました。このような早さがあったとは私は決して申しませんが、一応の予想はしておりました。原油につきましても、私の経済演説の中に原油の価格も低落の方向にあるように見えるというような、はっきりした形ではございませんけれども、物価の動向の欄の中に原油価格について触れて、一応の予測はしていたつもりでございます。しかし、何%とかあるいはそれがどのような幅におさまるかというようなことは、当時はまだはっきりとつかんでおりませんけれども、私が経済演説の中に盛り込みましたことがだんだんと具体的な姿になりつつあるのが現状ではないかと思います。
  60. 野坂浩賢

    野坂分科員 やはり経済企画庁長官だけあってよく見通しをされておると思うのですけれども、こちらの方にも頭のいい人がたくさんおりますから、そういう見通しがあった。  きょう、ロンドンですか、OPECの石油相七カ国会議があって、大体価格は一バレル三十ドルになるのじゃないか。もしこれが破れればサウジ等は七ドル程度下げるというふうに報道されておるわけであります。問題はまとまるであろうが、日量の生産の上限を考えようということにしばられたやに思っておるわけですが、四ドル下がるということになりますと、日本経済、特にその価格はどの程度になるのですか。ちなみに、きのうの新聞には一バレル当たり一ドル下がれば年間約三千億円のコスト減になる、こういうふうに新聞が報道しておりますが、そのとおりでしょうか。
  61. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 数字でございますので、調整局長からお願いいたしたいと思います。
  62. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 バレル当たり一ドル下がりますと約十三億ドルでございますので、いま先生御指摘のとおり、四ドル下がりますと約五十二億ドルの輸入額の減少ということになります。
  63. 野坂浩賢

    野坂分科員 日本円に直すと一兆二千億程度ですね。そういうことになりますか。ちょっと言ってください。
  64. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 そういうことになります。
  65. 野坂浩賢

    野坂分科員 一兆二千億円下がってくる。そうすると、経済成長率にも関係が出てくるんじゃなかろうか、波及効果もありますから。また消費物価にも影響を出さなければならぬだろうと思うのですが、その点いかがですか。
  66. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先般来たびたび一九七八年の世界経済モデルでの影響を申し上げました。しかも、その前提といたしまして、第一次石油ショックのときに一〇%下がればという前提で申し上げたのでございますが、それによりますれば、GNPに対して初年度は〇・二三、二年目は〇・六二ということを申し上げましたが、だんだんと具体的な金額の幅が明らかになりつつありますので、昨今のモデルにありましたシミュレーションをやるべきじゃないかということで企画庁で進めております。まだまだ申し上げるような数字は私は聞いておりませんが、事務当局からまたお答えをしていただきたいと思います。
  67. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 ただいま大臣から申し上げたとおりでございまして、世界経済モデル、これは一九五八年までのデータでございますし、またモデルの性格上非常に急激な変化がありますと、そのとおりにはなかなかいかないという前提がございますが、仮に一〇%原油が下がりますと、GNPが初年度〇・二三、次年度〇・六二ふえるという計算でございます。
  68. 野坂浩賢

    野坂分科員 そうすると、経済成長は上がるのじゃないですか。三十四ドルが三十ドルになれば、一〇%以上ということになるわけですから、年度は〇・二三以上に経済成長は伸びてくる、こういうふうに判断してもいいじゃないですか。
  69. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、そういった二つの前提でございますし、さらに今後の経済を展望いたしますと、世界経済自身がどういった動きをするかという点が不確定な状況がございます。  御存じのとおり先進工業国ないし非産油LDCは輸入額が減少いたしますし交易条件が改善いたしますのでプラスになりますけれども、OPEC諸国にとってはマイナス。また債務累積問題がございますので、国際金融がどう動いていくかという不確定要因もございます。したがいまして、経済全体、外的条件がどう動くかということがわからない不透明な要因もございますので、経済成長率自身がいま申し上げましたような形で〇・二三上乗せになるかどうかという点はかなり不確定であるというふうに考えております。
  70. 野坂浩賢

    野坂分科員 このごろわが国は中小企業や農家の皆さん、給与所得者の皆さん、不況感に覆われておるのです。これを脱却せなければいかぬ。病気は気からだ、景気も気からだとよく言いますが、経済企画庁長官としてはある程度国民に展望を与え、消費拡大を図るためにその程度のことはやはり明言をした方がこれからの景気回復の方に一段と足取りが早くなるのじゃなかろうか、こう思うのですね。この原油価格の引き下げによりまして、素材産業なりそういうところの影響が出てくる。電力にもやはり下げてもらわなければならぬ。この間予算委員会であなたがお話しになったように、円が一円変われば四百六十億変わるのだ。だから、たとえば電気料金はこれによって相当、四ドルも下がれば相当なものがある。これからの見通しとしては二十五ドル程度まで下がるかもしらぬ、上がるようなことはないだろう、これが見通しとして明確に言えるだろうと思います。その辺に異論があれば、あなたの御意見もちょうだいしたいと思いますが、これによって卸売の指数あるいは消費物価の指数、これを下げていかなければならぬと思いますね。あなたの第二のところには、物価の安定が何よりも必要であるということを強調しておられるわけですから、消費物価、上がるよりも下がった方がいいわけですから、それについてどのような施策を今後とられますか、通産大臣等ともお話しになるだろうと思いますが、閣議決定をされて、物価安定、物価を下げるという方針が打ち出されておるわけですから、それらについてどういう対応をしたいと長官はお考えですか。
  71. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 野坂委員御指摘のように、原油の価格の低下は大変好ましい傾向だと私どもは思っているところでございます。したがいまして、低下の具体的な幅等については企画庁として十分注目していかなければならないと思います。おっしゃいましたように、明るい要素でございますから、できる限り早くその幅をつかんで、私もできる限り早く発表をしていきたい、こういうふうに思うわけでございます。しかし、いま新しいモデルのもとで計算中でございますので、まだまだそこまで至っておらないところでございます。しかし、経済全体の中の原油の引き下げでございますから、他の要素も十分勘案して、おっしゃるように――下方修正で私は大変苦しみましたから、企画庁諸君に言っておりますのは、今度一遍上方修正のときの企画庁長官にならしてくれということを陳情しておるような状況でございます。そのような機会の近いことを大変望んでおりますし、いまの物価の問題は、日本の競争社会、大変過当と言われるくらいの社会でございますから、石油の値下げは価格の低下を生み、世界モデルでも消費物価は下がるという数字物価の点についても出るようでございます。これらも十分見ながらやっていく。しかしいま申されましたように、二十五ドルになるかあるいは二十七ドルになるか、この額が決まらなければなかなかその予測もできないところでございます。そしてまた、電力料金についてもいろいろの考え方があり、過去の引き下げのやり方について大きな批判もあったことも考えますれば、これはよほど慎重に原油価格の動向を見ながら検討していかなければならないと思っております。
  72. 野坂浩賢

    野坂分科員 長官は謙虚なりっぱな方ですから、事務当局に陳情するというようなお話であります。あなたは長官ですから、事務当局に命じてそれらの作業をされるだろうと思いますが、二つの前提がございましても、長官自身としては経済通ですから、経済演説でも見通しをおれが言ったとおりになったのじゃないかというお考えですけれども、これからの原油の動き等を展望するならば、少なくとも今年度は三十ドル以上になることはない、むしろ下がる可能性が強い。素人でもこう判断しておるわけですね。あなたは玄人ですから、そういう意味で、物価に与える影響というものは、経済成長はわかったのですが、卸売物価消費物価に与える影響というものはどの程度か、権威ある経済企画庁長官の展望と見通しを明らかにしていただきたい。
  73. 赤羽隆夫

    赤羽(隆)政府委員 お答え申し上げます。  まず、原油が値下がりをする、これは当然物価に好影響がある、こういうふうに認識をしております。特に昨年の秋口まで円安で非常に輸入物価が上がりました。円建ての輸入物価が上がりました。そのために経済のコスト、特に輸入コストが上がっておる、こういう状況があったわけでございますけれども、これが幸いにして円高に向かい、さらにこれからは原油価格が下がる、こういうことで、高まりつつありました輸入コストの圧力がこれから先引いていく、こういうことが前提になりまして、物価に対して好影響がある、こういうふうに考えます。  具体的な数字ということでございますけれども、これはいろいろな計算方法がございますけれども、大局観として考えてみれば、こういうことになるのじゃないかと思います。先ほど御指摘がございましたように、原油一バレル一ドル下がりますと三千億円ということになります。仮に四ドル下がるということになりますと一兆二千億円。五十七年度のGNPというのは大体二百七十兆円弱、二百六十六兆円、これが政府の実績見込みでございますけれども、これに対する比率で申しますと〇・四%程度になります。すなわち、国民経済全体としてのコストが〇・四%下がる、こういうことでございます。  ところで、まず消費物価の方から申し上げますと、消費物価につきましては、統計の性質上、重複計算のようなものがごくわずかございます。たとえば自動車の費用がありますけれども、それと並びまして車検整備の費用というのが入っております。そういたしますと、この中に部品の価格が入ってくるわけです。すなわち、自動車の部品とそれから完成車、この二重計算になっております。あるいは完成した洋服、でき上がった洋服とそれから洋服服地、こういう形で二重計算がございます。そういうことで、国民経済全体としては〇・四%のコスト減でありますけれども、消費物価の段階にいきますとこれよりもやや高いコスト減、こういうことになろうと思います。したがいまして、これが〇・六とか〇・七とかそれぐらいの数字になるのじゃないか、こういうふうに目の子で大ざっぱに計算をしております。  さらに卸売物価でございますけれども、卸売物価になりますと重複計算の度合いというのが大変に多くなります。したがいまして、この四ドルの値下げの効果ということになりますと大体一%半近いものになるか、こういうふうに見ております。
  74. 野坂浩賢

    野坂分科員 よくわかりました。〇・六%ないし〇・八%消費物価に影響がある……
  75. 赤羽隆夫

    赤羽(隆)政府委員 〇・七くらい。
  76. 野坂浩賢

    野坂分科員 〇・七ですか、大体その程度だということであります。  経済企画庁は予想屋じゃないわけですから、閣議決定で締めておるわけですから、これはそういう予測はできますが、たとえば電気料金もあるいはその他の素材産業も原油が下がったことによって影響があるということは国民全体が承知しておるわけですから、積極的に通産大臣等と長官とがお話しになって、前の為替差損その他のこともあるのでというような話もございましたけれども、早期に消費者の皆さんに還元をするように政策としてやっていただくように当然企画庁長官として進められるというふうに考えておりますが、関係大臣とも十分談合といいますか話し合いをされて進めるということですか。
  77. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 物価担当大臣といたしまして、各省と十分密接な連絡をとってこの石油値下げの効果を国民経済の中でいい方向に持っていくように努力していきたいと思っております。
  78. 野坂浩賢

    野坂分科員 先ほど長官は内需が二・八%で外需が〇・六%で経済成長率が三・四、こういうふうなお話がありました。この中身をやってまいりますと、割合は個人消費の場合が二・一%で、住宅の関係が〇・一で、民間設備投資は〇・五%、概略こういうことになるのだ、こういうお話がきのうだったですか、ございました。この内需二・八%を一〇〇にして個人消費で割ってまいりますと内需の経済というものの七五%の比率を占める、こういうことになりますね。成長率全体三・四%でやってまいりますと六二%という数字になると思うのですよ、計算をしてみると。個人消費の占める率というのは日本経済を動かす中で圧倒的な重みを持っておる、こういうことになると私は思うのです。そういたしますと、あなたが演説をされておりますゆとりのある生活と活力ある社会、こういう表現が使われておりますが、個人消費の拡大をする裏づけは雇用者所得や全体の所得が向上しなければならない、こういう結果になるだろうと思います。しかもあなたの目標設定としては、経済はまず完全雇用の立場に立たなければならぬ、こういう御指摘があります。そのとおりだと思うのですね。  そこで、ことしの見込みですね。雇用者所得等はもっと引き上げていかなければならぬじゃなかろうか、こういうふうに思いますが、どういうふうにお考えですか。
  79. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 内需のうちの七五%が民間最終消費支出であることは御指摘のとおりであります。これは野坂委員お気づきのとおり、雇用者所得が名目で上がる、そしてまた消費物価が安定する、その結果このようにあらわれておるわけであります。そして、雇用者所得がどのように上がるかということは、やはり経済活動全般が活発になり、生産性が向上して上がっていくものだと思うのであります。そういった意味で、私は、その趨勢を見て、このように計算していって二・一%になるということだと思います。  しかも、七五%になることは、逆に申し上げますれば、民間住宅あるいは民間企業設備の成長寄与度が五十八年度は少ないということ。たとえば日本経済は、御案内のように、輸出とさらに民間企業設備で高度成長を遂げてきた国でございます。そのような面から見まして、他の企業活動も活発にすること、そのことが必要でございますし、その結果として個人所得、雇用者所得が上がってくるものだ、私はこういうふうに考えているところでございます。
  80. 野坂浩賢

    野坂分科員 余り時間がありませんから多くを申し上げませんが、税金にいたしまして、五十二年は給与所得者の大体七四%ぐらいが納税者ですね。ことし動かぬということになりますと、九〇%程度になるわけですね。これは、長官もお話しになりましたように、可処分所得というのは下降ないし横ばいというのが実情でありまして、消費支出に動員ができないということになるわけです。  いまの経済情勢なり労使の力関係はなかなかむずかしい情勢で、あなたの見通しによりますと、私が指摘をしましたように、二十四万で一カ月二万円です、数字はそうなりますということで話し別れになりましたね。そういう意味で、日本経済は内需では七五%も個人消費支出が支えておるという現状から見て、減税は思い切ってやらなければならぬということになるだろうと思います。給与所得者の七四%という程度から考えれば、二兆円やらなければ七四%にはならぬですね。民間だけでいきますと、すでに九一・五%ですからね。この人たちもみんなそうですよ。だから、やはりそれは大幅に考えていかなければならぬ、そのことが経済を押し上げる一つの要素だというふうに私は思うわけですけれども、経済企画庁長官はいかにお考えですか。
  81. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 所得税減税そのものをとらえますれば、おっしゃるように消費あるいは貯蓄にプラスの影響を与える、これは言うまでもございません。  ただ、二点ばかり申し上げたいのでございますが、この三・四%そしてまた二・一%の民間最終消費支出の見方のもとには、実は根拠として所得税減税は織り込んでおりませんので、油と同じような結果か、油よりもまだ見ていないようなことだと思います。  さらにまた、私は、第二の点といたしまして、いつも申し上げておるのでございますが、所得税減税自体は好ましいことである、しかしながら、その財源いかんによっては、また経済に対して消費抑制の効果を生むようなことがあれば、相殺してその効果は失われるから、この点は企画庁として十分見守らなければならないということを申し上げているところでございます。
  82. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がありませんから意見は申し上げませんけれども、減税は好ましいと思われますか、好ましくないと思われますか。
  83. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 そのことだけ御返事申し上げますれば、私は元主税局長でございまして、五年も所得税の減税が行われていないときには、恐らくサラリーマンの方々は、社会的なフラストレーション、いらいらを感じておられる、このことが自発的な納税協力を阻害するようなことがあっては大変だ、そのような意味で私は、景気問題を離れて減税は好ましいと考えております。
  84. 野坂浩賢

    野坂分科員 もう時間が参りましたので終わりますが、閣僚として、消費支出を拡大をしていくために、可処分所得を増大していくために、そして経済の伸展のために、与野党話し合いがついておりますから、大幅な減税になるように、閣議の中でも十分御発言をいただいて、黙っていないように、ちゃんと物を言っていただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
  85. 今井勇

    今井主査 これにて野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  次に、藤原ひろ子君。
  86. 藤原ひろ子

    藤原分科員 連続いたします少年非行、校内暴力事件、こういう問題はまことに胸が痛むものがございます。私はきょうは、こういう問題にもつながるであろうという問題を、子供という階層の消費者が、どのような環境のもとでどんなものを買わされているのか、子供を守るというためにいま何をしなければならないのか、どんなことができるのかという点についてお尋ねをしたいというふうに思うわけです。  最初に、経企庁長官にお見せしたいものがございますが、こんなものを見られたことはあるでしょうか、これは「天国と地獄」というようなものなんですが……。  これは、ゲームウォッチといいますエレクトロニクスを使いました子供のおもちゃなんですね。いまお持ちいただいておりますのは一個が四千円、五千円、高いものは八千円近くするというようなものもございます。こういうエレクトロニクスを使いました子供のおもちゃというのは、おもちゃメーカーの総売り上げの二〇%を占めているわけですね。こういう中で、ゲームウォッチにしぼって私はお尋ねをしていきたいと思います。  このゲームウォッチの販売量は、五十五年度と五十六年度を比較いたしますとどのようなことになっておるでしょうか、また、その種類は何種類ぐらいあるのか、通産省の方、お答えをいただきたいと思います。
  87. 山浦紘一

    ○山浦説明員 お答え申し上げます。  電子ゲームのタイプには、先ほど先生からお示しいただきました形のようなものと、それから、ハンドベルドという大型のものがございますけれども、それの種類というのは非常にたくさんございますし、かつ流行がたくさんありますので、何種類ということは申し上げられないのでございます。  業界の方でその生産個数というのを推定しておるわけでございますが、生産は、大体一千万個の生産をしておるというふうに推定をしております。一個四千円ということになりますと大体四百億円ということでございまして、おもちゃの定義もいろいろございますけれども、広く人形などを入れますと、五十六年が大体四千三百億の生産になりますので一割、人形等を除きますと、先生がおっしゃいましたように二割程度の比率になるというふうに承知しております。
  88. 藤原ひろ子

    藤原分科員 京都市のある小学校に調査をしていただいたわけですが、六年生のクラスを調査いたしましたところ、一クラス三十三名中そのゲームウォッチを持っております児童が二十八名で八四・八%、持っていない児童が五名で一五・二%です。この中には一人で六種類ものゲームウォッチを持っている子供が四人もおりました。二個以上持っているというのは全体の六〇%ということで非常に大はやりをしております。そういう中で、いまやゲームウォッチ貸しますということで、約百三十種類をずらりとお店にそろえてレンタル商法ということまで登場しているというのが今日の現状です。  なぜこんなに子供たちの中にこれが広がるのか。二月八日付の京都新聞によりますと、「ボタンとレバーを操作するだけで、あたかも人間の意思をもったように画像が動く。中学生など理屈やなしに、直感的におもしろいと感じるんじゃないかな」と京大の多田道太郎教授がおっしゃっていたというふうに報道しております。  しかし、これを別の角度から見ました場合、次のような指摘もございます。これは一月十三日付日経のコラム欄「春秋」に出ていたわけですが、「外で遊ばなくなった子供たちは、家の中でマンガとテレビ、電子ゲームみたいなものだけに熱中している。メカトロに強い子供たちが多くなるのは、日本の未来にとって好材料と言えないこともないが、ピーコ、ピーコとボタン操作に秀でるだけでは、真の創造人間に育つとは思えない。」というふうに述べているわけですね。  そこで、文部省にお尋ねをいたしますが、このような指摘を文部省としてはどういうふうにお考えになるのでしょうか。きょうは担当が違う方が来られていて大変御迷惑ですが、一言お父さんとしての御感想でも結構ですから。
  89. 森脇英一

    ○森脇説明員 ゲームウォッチなどの話がございましたが、私どもの関係でございますと児童生徒の健康の保持、増進ということの所管でございますが、目の健康あるいは人間の健康全体を含めまして、運動、栄養、休養、そういったものの調和がとれて初めて生涯にわたる健康、安全で幸福な生活の基盤が築かれるものであろうと思うわけでございます。  子供の生活につきましても、昔からよく学びよく遊べと申しますが、勉強や遊びや運動を含めまして、バランスのとれたリズムのある生活を送ることが必要であるというふうに考えておりまして、従来とも指導しておりますし、今後ともそのように指導していくように考えているところでございます。
  90. 藤原ひろ子

    藤原分科員 一月二十七日付の毎日新聞ですが、「おもちゃ時評」という欄にはこういうものがあります。「一心不乱のひとり遊びや子供同士の深いかかわりを欠く」という見出しなのですけれども、このエレクトロニクスの現実を取り上げているわけですね。  それから昨年の十二月十五日の読売新聞も、「私書箱325」という欄で、「子供の電子ゲーム、どう思う?」という見出しで取り上げております。とにかく各紙がいま皆これを取り上げて問題にしているということですね。こういう中では、「投稿を寄せてきたお母さんたちの心配は、「創造性が奪われる」「運動不足になる」「友達との心の交流のない遊び」など」といろいろ御意見が出ております。それから、教育現場におります茨城の浅野洋子先生は、「「高価だし、視力低下も心配だが、ボタン一つの遊びからは広い視野のたくましい子は育たないのでは」と懸念する。」と書いておられます。  ゲームのプログラムは、興味をそそっていくものがどんどんエスカレートしまして、どんなものが出ているか。これはカタログです。カタログ宣伝誌に書かれている、この中を読みますと、こう書いてあるのです。「途中で生徒が足をひっかけたり、スカートをめくろうとするので女教師がよけられないとミス。三回ミスでゲーム終了」こういうものまで出てきているのですね。これがディジタルゲームで三千九百八十円の商品であるわけですね。値段は高いし、内容は低いというふうな感じがするわけなんです。  ここでみんなが共通して心配しておりますのは、一つは子供たちの内面的な成長にとってマイナスになるのではないかという点ですね。  それと、二つ目には、身体的な発育という点から見てもマイナスではないかというふうに心配をしているわけです。内面的な面での問題について外国ではどういう対応になっているかといいますと、昨年の十一月二十九日付の朝日新聞ですが、「「日本製」またヤリ玉」という見出しで次のように書かれております。   燃えさかるビルから落ちて来る赤ん坊を助けられるかどうか、を競う日本製テレビゲームが英国で問題になっている。   このテレビゲームは落ちて来る赤ん坊を広げた救助布を操作し、救助した数を競うもので、助けられなかった赤ん坊は爆発、画面に天使が出てくる仕掛けになっている。   怒った母親たちや政治家は、これまでに二十万台以上が売られている同ゲーム機の回収を要求しており、ジェラード・ボーン消費者問題担当相も「極めて趣味の悪いゲーム」と決めつけ、ある通信販売業者を説得、販売を中止させた。一方、輸入業者代表は「ほかの多くのテレビゲームと比べて、特に悪いものではない。最も人気のある機種の一つ」と述べている。 というふうに出ております。このようにイギリスでは子供たちのおもちゃについても大変真剣に取り上げられているわけです。私は、このイギリスでの態度、こういうものが日本の大人たちにも必要じゃないかと思うのですけれども、経企庁長官は、このイギリスのジェラード・ボーン消費者問題担当大臣、この方の御意見についていかが思われるでしょうか。
  91. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 戦前に教育を受けた私の頭ではこのようなおもちゃはとうてい理解できないところでございます。しかし、これは個人的な考え方でございまして、消費行政を担当いたします経企庁長官として考えてみますと、いまのイギリスの消費者担当大臣の御発言はどのような根拠で言われましたのか、私はよくわかりません。ともかくもいろいろの価値判断ができるものでございます。しかもまた、自由と権利を大きく尊重しておりますところの最近の民主主義のもとで、行政庁がどのような措置をとるかということは、私は大変デリケートな問題を含むかと思います。法治国家といたしまして、国民の権利を制限したりあるいは自由を抑圧することは慎重でなければならないと思うわけでございます。恐らくイギリスでは、このような玩具類についての規制について消費者担当大臣に法的根拠が与えられているのかもしれません。そのような根拠に基づいて言われておるといたしますれば、これは当然のことだと思いますが、私どもは消費者保護基本法のもとで、各種の法律をもって消費者の保護に当たっているところでございます。これはそれなりに、各省において各省の所管する行政の目的からいろいろ規制ができるようになっているようでございますが、その規制の範囲内において考えるべき問題でございます。多分に価値判断を伴うものは、社会的な常識によって恐らく自然に何と申しますか、規制と申しますか、自然の形で受け入れられるかあるいは拒絶されるか、こんなことが大事なことでございましょうし、私は、父兄の判断もこのような問題に対して大変関心を持っていく、このことが大事なことではないかと思っております。
  92. 藤原ひろ子

    藤原分科員 次に、私が心配いたしますのは、身体的成長への影響の問題なんですね。  体育研究所の所長をしていらっしゃる正木健雄先生といいまして日本体育大学の教授がいらっしゃいますが、ここの体育研究会という中でこういう研究所が出された資料があるわけですけれども、この御報告によりますと、文部省の学校保健統計をもとにいたしまして昭和三十五年、四十五年、五十五年におきます子供たちの疾病・異常の被患率の推移が示されております。これを見ますと、齲歯と視力、虫歯と子供の目、視力の問題が突出しているわけです。年々ふえておりますが、そのほかは被患率はきわめて少なくなっているのです。ほかのところは大体身体的には丈夫で健康な子供たちが育っているけれども、目と歯が悪い。特に高度経済成長の中で歯がひどく悪くなり、低成長期に入りまして目が非常に悪くなってきている点、その点に注目されるところが多いというふうに指摘をしておられるわけですね。  そういう点で文部省にお尋ねいたしますが、この正木先生の資料は十年ごとに区切ったものですが、ここ五年ぐらいの傾向、これはやや最近よくなっているようですけれども、そういうこの五年ぐらいの様子ですね、文部省はどうとらえていらっしゃるか、よろしくお願いいたします。
  93. 森脇英一

    ○森脇説明員 学校保健統計調査の結果によりますと、最近五年間の裸眼視力一・〇未満の児童生徒の数は、小中高等学校に見ましても、従来続いておりました増加傾向が昭和五十五年をほぼピークにいたしまして、ここ一、二年減少の傾向が出てきたのではないかと見られるような数字となっております。
  94. 藤原ひろ子

    藤原分科員 ここ一、二年はよくなってきている。しかし、昔大臣が小学校だったころ、私も小学校だったころ、そういうころは両方一・二があたりまえで、〇・九とか〇・八とかがあればびっくりするという状態だったのが、そうではなくなっている。いまおっしゃったとおりですね。一・〇未満という子供がびっくりするような状態にあるわけです。  あるお母さんに聞いたわけですが、お母さんたちが、もう八時ですよ、早く寝なさい、もう九時になりますよ、あした学校がありますよ、こう言って子供を寝かす。子供はそのゲームウォッチを持って寝床に入るわけです。布団かぶって一生懸命それをやっているわけです。ですから目が悪くなるのはあたりまえだというふうな状態まで、非常に子供が興味を持っているというふうな状態なんですね。人間とか物体が動く、それを追っかける、どんどん点数が入ってくるとスピードがアップされる。目が疲れるのは当然だと思うのですね。  そこで通産省にお尋ねしたいんですが、こういうおもちゃに対してST表示というのがあるわけですね。これはどういうものでしょうか。
  95. 山浦紘一

    ○山浦説明員 ST表示は、民間の安全管理委員会というところが、消費者の方々それから学識経験者の方々を集めまして、子供にその玩具が安全であるようにという基準を設けまして、そして自主的に管理しておるものでございます。
  96. 藤原ひろ子

    藤原分科員 さらに通産省にお尋ねをしたいと思うのですが、子供のおもちゃの場合の安全性というのは、外傷を受けるとかあるいは毒性がある、こういう点が基準になっているようですけれども、やはり技術の進歩とともにおもちゃ自身もその性質がどんどん変わってきておりますし、今後も変わるというふうに思うのですね。すぐには表面に出てこないけれども、いま申しましたように、何年かたつと視力の低下も出てくる、そういう原因一つにもなってくるというふうに思うのですね。こういう問題につきまして、何とか対策をとらなければならない。さっき大臣がおっしゃったように、イギリスと日本と違うんですから、すぐに大臣がけしからぬと言うて規制するというわけにもいかないと思うのですね。しかしながら日本の将来を考えましたときに、大変影響を及ぼすのではないだろうか。内面的にも身体的にも、いま申し上げたような状態が出てきているわけですから、そういう点で何とかならないものだろうか。通産省いかがでしょう。――どちらでも結構です。
  97. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私はいまお話を承りまして、これは慎重に検討し、社会の評価がどのようなものか十分調査をする必要がある。そしてまた、いろいろと各省とも相談してこの取り扱いをどうするかということを研究すべきだ、こういうふうに考えます。
  98. 藤原ひろ子

    藤原分科員 私はいままで、このエレクトロニクスを応用いたしましたおもちゃのことについて取り上げてきたわけでございますが、この問題は、単におもちゃだけが切り離されてエレクトロニクス玩具というものができたわけではないわけなんですね。いわゆる先端技術の進歩の中でそういうものを応用して生まれたもの、その進歩とともにおもちゃも変化をしていく、こういうものだというふうに思うわけです。こういう変化の中でますます仲間意識が薄れていく、ひとりぼっちで機械と遊ぶというふうな子供たちがふえているんですね。こういうような偶然性を追いかけていることのみに興味を持って、物事に対して深く討論をしたりあるいは頭脳を錬るというふうな営みに欠けてくるような社会情勢があるということは、大変問題だというふうにも考えるわけですね。そういうものがひいては少年非行の要因一つにもなりかねない。非行問題は暴力事件が起こりましてからあわてて対処するというふうなことではだめだと思うのですね。もちろんそれに対する対処も必要です。しかし、やはりその抜本的なもの、どういうところで子供が育ち、どういう変化をしながら成長をしてきているのかというような点をやっぱり深く考えながら、全体としてとらえていくということが私は大変大事だというふうに思うのです。そして私は、子供に与えているおもちゃの影響というのは人間性をつくる上で大変大事なものだ。本来子供たちが人間性豊かに正しく発育していくということを助けるものとしておもちゃが存在する。そういう役割りを果たすのが、親たちの願うおもちゃではないかというふうに思うのですね。ところが、おもちゃをつくるメーカーが本当に子供たちの成長に役立つものと考えてつくっているのかどうか、はなはだ疑問なわけなんですが、この点につきまして、通産省はいままでどのような姿勢でこの玩具製造メーカーに対処されてきたのか、何かおやりになってきたようなことがあれば、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  99. 山浦紘一

    ○山浦説明員 先生御指摘のとおり、おもちゃは子供の創造性あるいは情緒等を円満に正していくというものでございますので、私たちといたしましても、先ほどの玩具については安全問題にいろいろな問題が生じないよう、業界の自主的な組織、これを十分活用いたしまして、ここに参画いたしまして、子供の健全な発達を図るという観点からいろいろと指導してきたものでございます。今後もそういう観点からいろいろな機構を利用いたしまして指導してまいりたいと思っております。
  100. 藤原ひろ子

    藤原分科員 私がなぜメーカーのことについて触れたのかといいますと、関係者の皆さんはよくよく御承知済みだと思うのですけれども、先日の十五日ですね、「ゲームウォッチやみ再販 大手三社を摘発」というふうなことで日経新聞が書いております。「電子ゲームがん具にメス トップ三社がヤミ再販」これは毎日新聞。「バンダイ、任天堂など24か所 公取が立ち入り調査 電子玩具 ヤミ再販の疑い」これは読売新聞なんですが、各紙が一斉に報道しましたように、玩具メーカー大手三社に対しまして公正取引委員会は、やみ再販の疑いで立ち入り調査をしているわけですね。子供たち相手の製品をつくっているという企業が、子供たちのことを考えて仕事をしているのではなくて、利益を上げるためには法律を犯すことだってやるんだというふうな、子供は動く広告塔なんだ、もうけの対象物なんだというふうなことを考えてもらっては大変だというふうに思うわけですね。  私はこの間、実際にデパートに行きまして、おもちゃの売り場を見て歩きました。ずいぶんとそれが並んでいるわけですね。子供が来るならそれは欲しいに決まっているという状態があふれているわけです。それで、子供たちから話も聞いてみました。また、お母さんとか先生とかにお会いもして意見を聞いたわけですけれども、そういう中で、技術革新といって大人たちが争って飛びついている、こういう問題の中に、実は子供たちがその悪い影響を受けているというようなことを感じまして、何とかいまのうちに対策を考える必要があるというふうに考えまして、きょう問題を取り上げたというわけでございます。  この問題は、先ほど長官もおっしゃいましたように、経企庁だけでできるとか、あるいは文部省がやりなさいとか、通産省が何とか規制をせいとか、そういうことで対処して解決できる問題ではないというふうに思うのですね。ぜひとも各省が協力をしていただいて、そして環境を守って、子供たちを正しく豊かに、すべての子供が賢くたくましく成長ができるというふうなことを、政府としても、また消費行政を担当する経企庁としても考えていただきたいというふうに思うわけなんですね。  もちろん、お上から、けしからぬと取り締まりが行われることのみを私は期待しているのではありません。業界みずからが自分たちの討論の中でお互いに自主規制をしていくというふうなことも大変大切であろうというふうに思うわけですが、そういう御指導もあわせて、いままで取り上げました問題を含めて、各省庁関連してやっていただきたいという点なども長官のお考えを述べていただいて、質問を終わらしていただきたいと思います。
  101. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 大変貴重な御意見として承りまして、各省とも密接な連絡をとりながら検討してまいりたいと思います。
  102. 藤原ひろ子

    藤原分科員 それでは、ありがとうございました。
  103. 今井勇

    今井主査 これにて藤原ひろ子君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  104. 小林進

    小林(進)分科員 三十分ですから、長い答弁をされると、それで三十分終わってしまう。  大臣にお伺いしますけれども、今年度の輸出の総額、見通しをひとつお聞かせ願いたい。
  105. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 本年度の輸出の見通しでございますけれども、ベースによりまして異なりますが、IMFベースで輸出は本年度三十六兆程度と私ども見ているわけでございます。三十六兆円でございます。
  106. 小林進

    小林(進)分科員 輸入は。
  107. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 輸入は三十兆九千万円でございます。
  108. 小林進

    小林(進)分科員 今年度の石油価格の見通しについて、大臣に承ります。
  109. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 御案内のように、ナイジェリアが四ドルばかり下げてまいりました。OPECは、あすぐらいにその動向が決まるだろうと言われております。これもまた四ドルばかり下げるのではないかと言われておりますけれども、まだ定かではありません。こんなような状況をひとつ慎重に見守りながら、原油の値下がりを政策の上で活用していきたいと考えております。
  110. 小林進

    小林(進)分科員 そんな慎重論を聞いているのじゃないですよ。大体の予想は、三十四ドルかあるいは三十ドルくらいに落ちつくのか、二十五ドルくらいに落ちつくのかあるいは二十ドルくらい来るのか、その価格の見通しを言っているのですよ。慎重論を聞いているのじゃないんだ。
  111. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 これはいま各方面から、二十五ドルにとどまるかあるいは二十ドルを割ったら大変だというような話が出ておりますように、私としてはまだ、企画庁としても最終の落ちつく姿は予測できないような状況でございます。
  112. 小林進

    小林(進)分科員 こんなことで議論していると時間がたってしまうけれども、あなた、経済企画庁というのはそういうことをやるのが仕事なんですよ。そのためにあなた方が基本線をつくり、それからそれに基づいて現場庁だとか、いわゆる各省が動くのであって、肝心のいわゆる土台をつくるあなたのところで見通しがわからないじゃ、これは話にならない。とてもそれはだめだ。  調整局長、どうだい、同じか。同じ答弁なら聞かなくてもいいんだ。
  113. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 石油の価格の見通しは、何分にも、先生よく御存じのとおりでございますけれども、必ずしも経済的な要因だけで決まっておりませんで、政治的な要因、ほかの諸要因が複合してございますので、最近OPECが三十四ドルという公式販売価格を四ドル下げるのではないかという見通しが大変高まっておりますけれども、なおきのう、きょうと行われております小グループの会合でも結論が出ていないようでございます。したがいまして、全く経済的な要因だけでは説明し得ないということがございまして、なかなか見通しがつけにくいということでございます。
  114. 小林進

    小林(進)分科員 現在のスポット価格は幾らですか。
  115. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 スポット価格は一時二十七ドルくらいまで下がりましたが、もう一度また戻っておりまして、昨今は二十九ドル前後ではないかというふうに思っております。
  116. 小林進

    小林(進)分科員 この石油価格の低落に基づいて、石油ダラーといいますか、これがどんなぐあいに動くかというのも大事ですが、この石油ダラーの動き、特に日本を中心にして見通しをお聞かせ願いたい。
  117. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先般、日本銀行総裁が、その問題を特定の国を挙げまして言及いたしましたら大変な反響がありまして、非常な混乱を起こしかかっておりますので、具体的な問題としては言うことは適当ではないということになっていることをお許しいただきたいと思います。
  118. 小林進

    小林(進)分科員 日本に一体石油ダラーはどれくらいありますか。
  119. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 何分にもオイルダラーというのは……(小林(進)分科員「色がついているわけではないから、それはわからないでしょうけれども」と呼ぶ)おっしゃるとおり、スイス経由等で中近東の諸国が明示して出しているわけではございませんので、確定的に幾らということははっきりしないわけでございます。
  120. 小林進

    小林(進)分科員 大方のことくらい言ってくれなければ議論にならないよ、それは。大ざっぱでいい。言えないですか、大ざっぱでいい。二百とか三百とかあるいは五百とか。どうです、言えないですか。百単位でいいです。
  121. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 はっきりした数字はちょっと私どもわかりませんけれども、昨日の予算委員会でも大蔵省が申しておりましたように、これは一つの別の資料でございますけれども、ユーロ市場の全体の規模が七千億ドルでございますが、その一三%がいわゆるOPEC等のオイルダラーではないかというふうに見られておりますが、その規模から類推いたしますと、日本はいま先生御指摘の点から申しますとかなり小さい規模ではないかというふうに見ております。
  122. 小林進

    小林(進)分科員 その一三%のうち、何%くらい日本に入ってきているわけですか。
  123. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 これは野村総合研究所の推定でございますが、八〇年末が二百五十五億ドルという推定はございます。
  124. 小林進

    小林(進)分科員 大体オイルダラーの三割弱か……。  いま一つお伺いいたしますが、ドルの行く末ですけれども、ドルと円との換算、今年度の見通しはどのくらいいきましょうか。これはしょっちゅう動いておりますけれども、将来の見通し。
  125. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 これも大蔵大臣並びに総理大臣が、レートをどのようにするかということは絶対に避けるべきであるということで、具体的な金額については言うことは遠慮させていただきたいと思います。
  126. 小林進

    小林(進)分科員 それでは、きのうあたりの日本並びにロンドン市況等を見ると、一ドル二百三十六円か七円。これはどうですか、経済企画庁としては。こういうところで落ちつくだろう、結構だと思っていますか。やはりいま少し円高になった方がいいというふうに考えられるのか。ひとつあなたの考え、日本経済運営上から眺めてどれくらいがいいか。
  127. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先ほども申し上げましたように、いろいろの弊害がありますけれども、各方面の予測ではまだまだ円高の傾向が出てくるのではないか。ことにまた、原油の値下がり等を考えますれば円高の傾向が出てくるのではないかというふうに言われておることを、私もそのように考えがちでございます。
  128. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、円高がかつて百八十円まで行ったことがありましたから、そういう夢は再び来ないとしても、二百二十円から二百二十五円くらいがいいというふうに推定するとして、これは油の値下がりだけでなくて、一体レーガンというのは実に危ない政権。東に中曽根、西にレーガンという危ないのが二人出てしまったのだが、アメリカの高金利政策の見通しは将来どうでしょうか。これはドルと絡んでくると思いますが、見通しはどうですか。
  129. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 昨今の消費物価がもう四%を割ったような状況でございますし、レーガンも一応インフレ対策は成功した、こう言っておりますから、そのための最高の手段でありました金利は下がる傾向にある。ただ、FRBのボルカー議長は、まだまだ慎重に見ておる。その根本的な原因は、財政赤字が大きい、そのために金利を下げることがなかなかむずかしいんだということを言っておりますし、財政赤字の処理いかんによってまた金利は下がる方向に行くんではないか、こういうふうに私は見ております。
  130. 小林進

    小林(進)分科員 アメリカの赤字は千五百億ドルくらいでしたかな。
  131. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 本年度は二千億ドルを超えますが、来年度は予算によりますと千八百八十八億ドルの予定でございます。
  132. 小林進

    小林(進)分科員 そこで、アメリカのドル安が日本の円高にも響いてきましょうが、このままドル安がどの程度いくか知りませんけれども、そうするとこれは発展途上国――世界的に経済がやや好ましき方向へ行くかもしれません、あるいは景気浮揚の力にならないかもしれないが。同時に、アメリカインフレはどうですか。ドルを世界にばらまくというような形に流れていってアメリカ財政の健全さを失うという、そういう懸念はありませんか。どうですか。
  133. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私もアメリカのことはそんなに詳しくありませんけれども、財政赤字の問題が深刻になってきつつありますから、財政赤字について、これは一九八六年からは見せかけの増税とかいうようなことを言われておりますけれども、そこまで決意をして財政赤字を減らそうということを考えておることを考えますれば、財政赤字がこれ以上拡大はしない、やはりいい方向に向かっていくことと私は考えております。
  134. 小林進

    小林(進)分科員 次にお伺いしますが、私も去年ちょっと中南米等に行って見てきましたけれども、いまメキシコ、ブラジル、アルゼンチンを回ると、とにかく発展途上国の借金は大変なものです。最近は八千億ドルぐらいいっているんではないか。米ソ二大国を中心とする一年間の軍事費六千億とか六千五百億ドル、大体発展途上国の借金と相均衡するぐらい人殺しの材料にドルが使われているわけなんですが、これが世界経済にも日本経済にも大変重大な影響を及ぼしていますから、この点もわれわれは見逃すわけにはいかない。  その中でお伺いしたいのは、いま申し上げました発展途上国に対する日本の民間の金融会社が、いわゆる投資といいますか貸し付けといいますか、債権者になって出している金額の総計は一体どれぐらいあるのですか、お答え願いたい。
  135. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 いま手元に数字がございませんので、すぐ調べまして後ほど申し上げます。
  136. 小林進

    小林(進)分科員 そこで、先ほどお伺いしました輸出入貿易の見通しは、三十六兆円なり三十兆九千万ぐらいと聞きましたが、これは五十七年度に比較いたしまして一体どういう格差があらわれているか、これをひとつ。
  137. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 円ベースでいきますと、五十七年度に比べまして三・七%輸出が伸びるというふうに予想しておりますし、輸入は三・三%の伸びというふうに想定しております。
  138. 小林進

    小林(進)分科員 そこで一般質問でも長官にお聞きしたのですけれども、何しろ時間もなかったし私も理解力が足りないものですから、これはまた繰り返してお尋ねするのですが、いま遭遇している日本の一番重大な問題は、何といっても景気浮揚の問題です。世界的な不況、日本の不況、景気が冷え切ってしまった。これをどう浮揚するか。私ども一歩外へ足を出すと、その説明だけをして歩かなきゃならぬ、余りでたらめも言われませんから。  そこでお尋ねするわけですが、やはり景気を浮揚するためには輸出と内需ということになるわけです。いまのお話で、輸出も旧年度より三・七%伸びるとおっしゃるのだが、何しろ世界の至るところで輸出摩擦を起こしている日本の状況の中で、これはどういうふうに伸びるのか。時間があればもっときめ細かく聞きたいと思ったのですが、そんなことをやっておると時間がないからやむを得ませんが、輸出と内需。内需というものも、これはきのうも大臣は何だかんだ言われましたけれども、何しろ時間がないものですから半分聞きっぱなしにして終わってしまった。きょう改めてお尋ねいたしますけれども、景気を浮揚する一つのウエートといいますかファクター、百分率で言ってもらいたい。大体百分率で、景気を浮揚する比率というものは個人消費が何十%、あるいは国家財政投資が何十%、あるいは民間の在庫投資が何十%、その他何々、その他何々、あるいはまた別に輸出がどれぐらいのウエートを持つ、こういうことを親切に回答をいただきたいと思います。
  139. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 数字ですから調整局長の方がいいかもわかりませんが、私がいまもらった資料で言いますと、三・四%を一〇〇といたしますと、民間最終消費支出が六〇、民間住宅が約三、民間企業設備が一五、それから民間在庫品投資の増が六、政府支出がマイナス三。そして内需の二・八というものは約八〇%になります。内需全体が二・八ですから、三・四を分母といたしますと八〇。そして外需〇・六%というところを三・四%で割りますと二〇%。四捨五入をしてありますが、内需が八〇%、外需が二〇%ということでございます。
  140. 小林進

    小林(進)分科員 大分これは詳しくお伺いをして、これなら素人の私にも大体わかります。わかりますが、そこで聞きますと、普通、景気の浮揚というのは、われわれ素人でも三本柱。それは個人消費、民需、購買力と、それから民間の在庫投資と、それに政府支出ということなんですが、これが企業が一五%。いろいろありますが、肝心な三本のうちの一本の政府支出がむしろマイナス三%ということは、景気浮揚のためには実に驚くべき、いままでの通説を覆した思考ですね。一番肝心な、不景気だからいわゆる政府財政投融資で公共事業をふやそうとか土建業をやらすとか失業救済、農村救済の土木工事をやろうということで景気浮揚をしてきたのが、いままでのしきたりです。そのしきたりをここで破ってしまって、肝心の政府投資をマイナス三%にしておいて、なおかつこれは三・四%の実質ですよ。あなたは景気浮揚策とおっしゃるのだが、これはどうしても私どもはのみ込めないのです。  そこで、私はこの問題をいま一つお尋ねするのだけれども、一番ウエートを占めている内需。内需も総合すれば八〇%ですか、その内需の八〇%を分解していったら、日本の内需の中で一番ウエートを占めるのは勤労者のいわゆる消費力じゃないですか。一体この内需の中で勤労者の個人消費というものは何十%を占めているか、ちょっと参考までにお聞かせ願いたいと思う。
  141. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 正確な数字はございませんけれども、国民所得の中で雇用者所得が約七割でございます。したがいまして、実は消費性向が所得の階層によって違いますのであれでございますが、ごく一般的に申しますと、もし消費性向が一定であると仮定いたしますと勤労者の消費は七割に当たるということになろうかと思います。
  142. 小林進

    小林(進)分科員 全く私の言わんとすることと相通じている。実際、農業の所得なんというのは実に貧弱なんで、僕はびっくりしているんだ。全国的にどうですか、七%ぐらい占めていますか。雇用所得七〇%、国民の総所得の中に占める雇用所得が七〇%とすると、農業所得はどうです。七%ぐらいじゃありませんか。雇用所得の一割ぐらいじゃありませんか、どうです。
  143. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 ちょっといま正確な数字を持っておりませんが、一割弱であることは確実であると思います。  それから、先ほどの民間の資金の動きをちょっと申し上げますが、五十六年の実績で見ますと、開発途上国に対します民間資金は合計二兆八千億円でございます。これを供与してございます。そして、そのうちいわゆる二国間の証券投資が六千五百四十億円ということになります。証券の取得でございますけれども、海外における株式等の証券を取得したものが六千五百四十億円ということでございます。
  144. 小林進

    小林(進)分科員 これも細かく追及していきますとだんだんおもしろい数字が出てくると思いますけれども、時間がないからやめますが、内需を浮揚して、いまあなたが言った三・四%の中で一番大きく占めているのは二・八%、いわゆる内需の力で持っていこうとする。その内需の中のいわゆる七〇%が雇用所得だ。しかもその雇用所得の中核に座っているのは公務員ですよ。その公務員の給与をぴたっと凍結して抑えてしまった。同時にまた勤労所得税も六年越し一銭もまけないから、実質的にどんどん上がってしまって、統計のとり万にもよるだろうけれども、われわれの統計では、この六年間で雇用所得といいますか勤労所得は大体四〇%ぐらい上がった。それに比較して、いわゆる勤労所得税は二・五倍から三倍ぐらいに引き上がっている。だから、実質的所得、可処分所得といいましょうか、これは年々歳々下がってきて、六年前よりは実力の点においてはむしろいまの方が悪いのじゃないかという数字が出ておる。私は、これが景気を冷やしておる根本の理由だと思うのです。あなた方はそこへ手を入れようとしないのだ。手を入れようとしないでどうして景気が浮揚できるのか、私は不思議でたまらないのですよ。いみじくも貿易の輸出だけ三・七%ふやすなんておっしゃいましたけれども、私はこれも、甘いとは言いませんけれども、決して安易な数字ではないと思いますので、この点を経済企画庁長官からいま少し自信のあるお話を聞きたいのです。  あなたは昭和十六年の大蔵省入省なんだ。主税局長を最後にしておやめになって、そして政界に出ていらっしゃった。私は、そのときからあなたのその頭脳に敬服しているのです、これは頭のいい人だなと思って。ちょいちょい私どもをごまかして税金の計算なんかやられているのも知っていますから、頭はいいと思ったけれども、あなたのライバルに鳩山威一郎君なんかいたものだから、どちらが事務次官になるかと思ったら、あなたは敗北して、今度は国会に出られた。そういう故事来歴を眺めているのだが、実はあなたの経済企画庁長官というのに僕は期待していたのだ。いま少し明快な自信のある答弁が出てくるかと思ったけれども、さっぱり出てこないのだが、これはあなたは本当に自信がありますか。  この前も私は言いましたけれども、どこかに行ったときにあなたは、景気浮揚のためにはやはり購買力を浮揚しなければだめだというような演説をされたが、購買力、消費力を高めるというのならば、消費力の中心をなすものはいわゆる雇用所得だ。この国民総所得の七割を占めている諸君に力を、購買力を与えなければ、景気なんか浮揚できるわけがないじゃないですか。これはおわかりになりますね。これはあなたはお認めになるでしょう。これを認めるかどうか。どうですか。
  145. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 雇用者所得が名目でふえますれば消費支出はふえていくことは、消費性向から見て当然と考えております。
  146. 小林進

    小林(進)分科員 そうでしょう。そこまで明確になるならば、やはりその諸君に払うべきものを払わなければだめじゃないか。  時間もありませんから、私は言うのです。私の選挙区あたりの、人口が八千だとか七千だとか一万だとかという小さな町村、いま演説とか座談会に行きますと、そこではやはり役場の職員がおって、地方公務員なものですから、この諸君も自分の給与ですから真剣に計算をしているのですね。自分たちの八千の村に勤労者の所得税が、いわゆる公務員の所得が凍結されることによってこの村へ落ちる金がどれだけ減少するか、そういう計算をしているのです。自分たちが上がらぬと、それに波及して年金が出てこないとか、あれが入ってこないとかこれが入ってこないとか、それから民間にも影響していく、あるいは何に影響する。だから、いわゆる公務員の賃金を凍結したことによって、この小さな七千か八千の村に落ちる金が二億とかあるいは三億だけ、かくのごとくきちっと、おりなくなってきます、だからこの村における小売の店も、以下商売人も、みんな不景気になって閑古鳥が鳴くのです、だから公務員の賃金の凍結は公務員だけの問題ではないということを、私が知らないくらい細かく計算しています。そういうことをやっておりますから、私は実に感心しているのです。  だから、何といっても景気を浮揚するということは、くどいようでありますけれども、払うべきものを払わなければ、それがすべてに影響していって、景気というものは冷え切っていく。これはいかにあなたが声を大にして三・四%と言ったところで、問題の処理にならないと私は思う。  だから、この前も言ったように、間違ったら腹を切りますか。あなたの前の経済企画庁長官のように、政治的発言で五・二%は自信がありますなんてうまいことを言って、年度の半ばも来ないうちに六兆円も赤字になったなんて言って、国家財政の根本までぐるぐると書きかえてしまわなければならぬような、そんなへまなことをやったのでは、経済企画庁なんか要りませんよ。そういう意味において、私もあなたの将来を思うから、この人は将来総理大臣になる人かもしれないのに、こんなところで塩崎君を失敗させては困ると思って、いまあなたを思って言っているのですが、自信がありますか、どうですか、三・四%は。
  147. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私は、最近の世界経済回復の仕方、あるいはまた昨今の在庫調整の仕方、これあたりから見て、三・四%ぐらいできなければまた国の財政も赤字が大きくなっていく、そういうふうに考えますので、何としても三・四%は達成できるものと考えたいと思います。
  148. 小林進

    小林(進)分科員 時間が来たそうでありますから、まだ質問がたくさんありますけれども、残念ながらこれで終わります。
  149. 今井勇

    今井主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本孫一君。     〔主査退席、浦野主査代理着席〕
  150. 竹本孫一

    竹本分科員 まず塩崎長官に、内外の情勢の一番苦しいときに、国民生活国民経済に最もかかわりの深い経企庁長官に御就任になりまして、おめでとうを言う前に御苦労さまを申し上げ、御健闘を祈りたいと思います。  いろいろお尋ねしたいこともありますが、時間の制約もありますので、二、三にしぼって申し上げます。  まず第一は、経済回復なくして財政の再建はない、私は減税小委員会においてもそのことを言ったのでございますが、大変失礼な言い方をすれば、経済についての十分な認識のないままに財政数字ばかり合わせるような議論が多かったのではないかと残念に思っております。  経済は、御承知のように今日の状況は、だれか学者が言ったと思うのだが、三D不況ですね。ディスパージョン、分散。世界じゅうに広がって、世界じゅうの失業者は御承知のように物すごい数になっておる。三千四百万と言う人もおるし、二百万と言う人もおりますし、ECもいまや千二百三十万人だという。けさの新聞では、ドイツの失業者も一〇・四で二百五十三万人と言っている。世界じゅうに不景気と失業があふれている。  第二はデプス、深さですね。この深さも非常に深刻で、ことに日本経済はもう非常に深刻ですから、日本経済で申し上げますと、いま小林さんもいろいろ言っておられたけれども、たとえば百貨店の売れ行きなんというものは、ベースアップ等も考えれば、私は、どう考えても一〇%以上前年同月比で伸びなければ問題にならぬと思うのですね。ところが実際の数字を見ると、五十六年は五・六でしょう。去年は二・三ぐらいですよ。スーパーは一・六ですよ。ことしの一月は一・二ですね。惨たんたるものですよ。  物価が二%に落ちついたといって政府は自慢しておるのだけれども、これは僕は間違いだと思うのですね。アメリカのある新聞に、物価が落ちつくというか低落するということは消費が減退するということのファーストメッセージであると言ったのを読んだことがあるが、消費が減って落ちたから物価も落ちつくというわけですね。  そういうことを言うと切りがありませんから、三D不況を改めて言いますが、たとえば十二月の、あなたの専門の税収を見ても、いかに不景気かすぐわかる。法人税は一二、三%の減でしょう。あとはみんな軒並みにだめなんですね。ふえているものを調べると、相続税が二六%ふえている。物品税が八・八%ふえている。有価証券取引税が二六・三%ふえている。しかし、相続税は死んでもらわなければ話にならぬでしょう。物品税がふえたのは、少し経済が働いたということでしょう。有価証券取引税がふえたのは、設備投資が行われなくて、その金が株式市場に流れた、そのためで、金融相場でしょう。いかに日本経済も底に落ちているかということがよくわかる。  第三のDはデュレーション、すなわち期間の問題ですね。最近見ると、アメリカでは三年ぶりにレイオフを呼び返したという話が出ておりますが、日本の不景気も昭和五十二年二月から計算すればちょうど三年目ですね。大体不景気というものは、経企庁よく御承知のように、普通だったら長くて一年でしょう。こんなに長いなべ底景気はない。だから要するに三D不況、長さからいっても、深さからいっても、広がりからいっても、まことに深刻な不景気なんですね。この三D不況をそのままにしておいて財政の再建なんか絶対できないと私は思います。  そこで、本来日本経済の実力というものは相当強いものがある、誇りにすべきものを持っておると思うのですね。それがこんなになっておる。そこで、これからの経済政策の対応はいかにして日本の持つ潜在的なポテンシャルな力を総動員するかということが基本的な課題だと思うのです。その場合に一番大事なことは計画性ということだと思うのですね。いかに合理的に、重複投資のないように、むだのないように資源もエネルギーも使っていくかということだと思うのです。したがって、私は、計画という言葉は非常に大事な言葉だと思うのですね。要するに計画性ということは人間の合理性の一番端的な要求ですし、ことに資本主義は、各個ばらばらなのが自由のしからしめるところであって、それこそマルクスに言わせれば初めから生産の無政府状態、アナーキズムだと言った。そのアナーキズムでは資源がむだになり、労働力がむだになり、エネルギーがむだになるので、より合理的にやろうということが計画だと僕は思うのです。  そういう意味からまず長官に申し上げたいこと、伺いたいことは、計画性ということほど大事なものはないのだ。いまのような不景気を立て直すためにこそ最も計画が要る。その際に中曽根総理は、計画というのは何となく社会主義的においがするからいかぬとかなんとかという意味でしょう、そんなものはやめろと言って、後でお伺いするが、五カ年計画、七カ年計画まで何だか妙なふうになっているようだけれども、この不景気を立て直すために一番必要なものは総合的な計画性である。もちろんわれわれが言う計画というのは、ソビエトの言うような中央計画ですべてを縛れとか、あるいは権力拘束経済ですべてをやっていけというような、プライベート・インセンティブを殺すような行き方をわれわれは考えておりません。われわれが混合経済と言っておるのは、そのプライベート・インセンティブを十分に生かしながら、それを総合的に、アナーキズムに陥らないように、むだのないようにいかに調整をしていくかということだと思うのですね。これが混合経済の根本です。  そういう意味から言えば、ついでに長官に説教じゃ申しわけないけれども、一口私が申し上げますと、自由経済の最も熱心な主唱者である石橋湛山さんの言葉の中に、こういう言葉がある。世の中は百年の間にうんと変わるのだ、資本主義国も計画の必要なことを理解するようになった、共産主義、社会主義国も自由というもののたっとさを考え直すようになった、したがって、コンバーゼンスではないが、だんだんに資本主義は計画性を持つようになる、社会主義は自由を尊重するようになる、相近寄っていく、コンバーゼンス、収斂といいますか、そういうことを石橋湛山さんがちゃんとはっきり言っている。  これと全く同じことがグロムイコとルーズベルトの問答の中にあるのですね。これは都留重人さんの書いたもので私は読んだことがあるが、第一次大戦の後だと思いますが、ルーズベルトがソ連と話し合いをしようというので呼びかけて、グロムイコとも話した。ところが、幾ら話しても話が合わないのですね。それでルーズベルトが、もうあなたなんかと話すのは意味がない、やめた、こう言ったのですね。そのときにグロムイコが言った言葉が非常に印象的なんですよ。まあ、そう短気を起こさぬでください、いまはソ連共産主義一〇〇%、アメリカ資本主義一〇〇%だ、しかし、十年たてばお互いに二〇%ぐらいは相手のいいところを取り入れるようになる、二十年たてば四〇%ぐらいわれわれは自由の大切なことを取り入れるし、あなたがたは計画性の大事なことを取り入れるでしょう、そういうふうになると経済体質が非常に近寄っていく、そうなればお互いの話し合いの場というものが非常に広がってきて、基礎も広がっていく、だからそう短気を起こさないで米ソも話し合いを続けていこうではありませんかとグロムイコが言った。  そこで、石橋湛山さんの話といい、いまのグロムイコ・ルーズベルトの対談といい、世界経済の流れというものは、この二つの言葉の中にあるようにだんだんわれわれは合理的な計画性を考えるようになり、一方はだんだんプライベート・インセンティブと自由の大事なことを理解するようにならざるを得ない。現にそうなりつつある。そういうときに日本の総理大臣が、計画なんというのは気に食わないというような話をしたり、あるいはそういうことはやめてしまえと言ったかどうか知りませんが、大体中曽根さんの言葉は軽率、不謹慎な言葉が非常に多い。経済についてだけじゃありません。きょうは外交問題はやめますよ。しかしながら、経済問題についても、経済企画庁企画庁なんだから、プランニングをするところなんだから、そういう意味で計画性という言葉の重要性をもう一度再認織してもらいたいと思うのですが、専門家の長官の御意見を承っておきたい。
  151. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先ほど委員の計画という概念規定と申しますか定義については、私はそのような弾力的な計画という意味なら全く賛成でございます。中曽根総理が言われますのは、そういった意味でこの計画という言葉を避けろといった意味じゃございません。ともかくも非常に固定的あるいは拘束的に考え、これをしゃにむに予算の上でもこの数字経済事情と離れて貫徹するような行き方、しかもまた、年次計画などがありますれば、それに違ったような場合には責任問題とか計画違反とかいうような、非常に硬直した考え方でとらえることは適当ではないから、この計画という概念をもう少し、これこそ弾力化したらどうかということだというふうに私も伺い、私もそういった意味でいろいろ考えてみますと、そのような拘束的にとられた事例もたくさんございます。そういった意味で私は、言葉は避けていった方がよかろうということで経済審議会に諮問したところでございます。過去の自由民主党内閣がつくりましたこれまでのいわゆる展望にしても、全部計画という言葉が使われておりますし、誘導経済の強い、アメリカよりもはるかに日本の方が誘導政策の巧み過ぎるぐらい巧みな日本でございますから、そのような誘導の目標を示す意味において、計画よりも誘導の方がいいのではないかと思ったりするぐらい誘導政策が多いわけでございますから、そのような目標を立てることは私は自由経済社会でも必要だと思っております。
  152. 竹本孫一

    竹本分科員 長官の理解、よくわかりまして、一応それで結構です。  われわれはあくまでも指令経済を言っているわけではないですね。いま誘導とおっしゃいましたけれども、指示というか指導というか、とにかくいずれにしても大きなガイドラインが必要だということを言っているので、それをなくするような言葉、考え方には私どもは強く反対せざるを得ない。逆に見ますと、これから先はむしろ計画を広げる、あるいは深める、内容を充実するということの方が必要なんですし、という意味から申しますと、サミットなんというものは初めからあれは意味がないと私は思っているのですよ。というのは、石油消費国だけが集まるんだ。生産者は向こうにおるのですよ。それで世界の石油の供給なり価格を論議してみても、半分大事なところが欠けているのですから、そういうことにどれだけの意味があるか。さらに将来は、グローバルに経済が動いている、為替のフロートを見てもそうです、全部世界的に動く、そういうときに、共産圏は一切除いて自由国家群だけが話してみても、それはまた果たしてどれだけの効果性が期待できるか問題がある。したがって、将来は本当の意味のグローバルなサミットが必要になるんですね。ということは、世界的な経済全体の運営が、ある節度と計画性を持たなければならぬというときに、日本の総理大臣が、言葉足らずであったかどうか知らぬけれども、少なくともわれわれに与える印象は、もう計画はやめたというような考え方では、世界の大きな流れと要請に逆行するものであると私は思いますので、賢明なる長官の善処をひとつ要望しておきます。  そこで具体論になりますが、七カ年計画を変えて五カ年計画というような問題が出てきておるわけですが、その新経済社会計画は一体どういう基本的な立場に立っていつごろまでにどういう形でまとめ上げるというお考えであるか、あるいはどういうふうになっておるか、それを伺いたい。
  153. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 新経済計画は、御案内のように七カ年計画は大平内閣のときにでき上がりました。五十四年の八月でございます。しかしながら、早速第二次石油ショックの影響を受けて、そこに書かれましたところの計画と申しますか数字はなかなか実現できなかったようなことでございました。そこで昨年の七月に、新しい経済情勢に応じた五カ年計画をつくっていただけないかということで経済審議会に諮問いたしたわけでございますが、昨年の十月に、その後もまた大きな経済変動がございまして、成長率を五・二%から三・四%に下方修正する、しかも税収は六兆一千億も不足を見積もるというような大きな変動があって、また新しい観点から経済を見直し、いわゆる計画をつくり直さなければならなかったと思います。  そこで、中曽根内閣ができまして、そのような情勢を背景といたしまして、いまの経済計画という言葉がこれまで意味したところも十分考えて、ひとつ今度はもう少し長目で見ていただく方が、特に財政再建の問題を考えるならば私はその点が一番理解できると思うのでございますが、もう少し長目で見ていただけないか、そしてまた、拘束的にあるいは固定的にとられる面をより弾力的にしていくというようなやり方でやっていただけないかということを諮問しているわけでございます。時期は、四月末が委員の任期でございますから、一応それを目標にしてつくっていただきたいと言っておりますけれども、しかしながら、いま新しい諮問が出たような状況でございますし、鋭意検討していただいておりますが、少しおくれるおそれがありはしないかということを心配しているような状況でございます。
  154. 竹本孫一

    竹本分科員 長い目で見ることは私も賛成です。いまのような国際経済の激動期にこうきちっと、特に期間を短くしてやるということは無理がありますから、長い目で見ることは結構ですけれども、しかしながら、方向性を持たないということは大変危険でございますので、この間も何かの新聞に東大の教授が、計画性ということは企業にもその他にも一つの見通しを与える、それから利害関係の調整をその作成過程においてやる、政府にも一定の責任と努力目標を与えるというような意味から賛成しておりましたけれども、私もほとんどすべての点で同感ですが、いずれにいたしましても、できるだけこれは早くきちんとやって、そして日本経済の基本的方向を指し示すものという、オリエンティールンクですね、方向づけをするという意味においてひとつがんばって努力をしていただきたい。  次に、もう一つ伺っておきたいが、日本経済の最近の稼働率というものはどの程度に落ちているというふうに経済企画庁はお考えであるか。それから、それとあわせて、日本経済の潜在成長力が五%あるかないかということがよく議論になりますが、経済企画庁としては何%と見ておられるか伺いたい。
  155. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 操業度はいま調整局長からでもお答えいただきたいと思いますが、素材産業は、たとえば鉄鋼は六割を割っているというような状況で、産業によって違いまするけれども、操業度は、経済の現在の低迷している状況で相当落ちていると思います。  そこで、その次は潜在成長力論でございます。この点につきましては、米沢委員から予算委員会でも、企画庁は何%に見ているかというお話がございました。私は、下村博士のゼロ成長論から、宮崎、金森とかいうエコノミストの五%論も十分知っているところでございます。企画庁も十分研究しているところでございますが、これは何%ということはなかなかむずかしいと思います。私は、これは黒ネコをくらやみでつかまえるよりもうひとつむずかしいということを申し上げたことがございますが、人によって確かにあるように見えるけれども、その大きさはやはり経済というバックで、あるいは世界経済というバックでいろいろ変化があり、定かにつかみにくいものだと思いますけれども、私は、一般的に経済を離れたところの社会的基盤日本では大変すぐれておる。たとえば教育水準の高い労働力、さらにまた高い貯蓄率、さらにまた安定した労使関係、さらに技術革新先端技術に見られるような進展、それから治安状態がどんな国に比べてもきわめて良好だというような社会的基盤は失われずにずっとある。  しかも第二に、一九六〇年代は世界各国が五%であったのにかかわらず日本は一〇%の成長をしてきた。一九七〇年代は世界が三%なのに日本は五%の成長をしてきた。八〇年になって落ちまして、外国がゼロとか一とか言っておるんですけれども、日本は三%の成長を予想しておるという経験、実績、これから考えまして、確かに世界の各国の成長率よりも高目の成長率があるというふうなことは私は言い得る、こういうふうに思っているところでございます。
  156. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 稼働率指数でございますが、これは五十年基準で十一月が一一〇、十二月が一〇七・九でございますので、これを実際の稼働率に直しますと八割を切っているという状況かと思います。
  157. 竹本孫一

    竹本分科員 私も計算してみると七八%ぐらいではないかと思っているんですね。ということは、いま潜在成長力が三%か五%かという問題を別にしても、少なくともいまある設備の稼働力はまだ二割以上余っておる。鉄鋼なんか三割余も余っているでしょう。そういうことを考えますと、やはり経済企画庁財政の再建をする、経済の再建をする、先ほど講買力をばらまく話も出ましたが、そういうことを考えるならば、やっぱりそれだけのある設備をフルに動かすということのためにはどうすればよろしいかということをもう少し真剣に考えていただく必要があるのではないかという点を私は痛切に感じているんです。それが一つ。  それからもう一つは、それとあわせて行革が、これはまた今度近く行われる予算の総括のときに僕はやりますけれども、行革というものは余りいまのようにやらぬから、去年も七百億円ぐらいだから、これで大したデフレ効果がないんですね。しかし、本当に行革をやれば僕はデフレ効果が相当出ると思いますよ。しかし、それを打ち消してなおかつ五%あるいは少なくとも三%の成長をさせるということのためには、こちらでマイナスアルファがあるんだから、それを越す、そしてなお差し引きで三%なり五%の成長ができるだけの、公共投資か減税かは別として、そういう積極的プラス面の努力が要ると思うのですね。その点において、いま日本経済財政政策は、デフレの方もデフレ効果が出るほどにはきちんと行革はやらない。さらに、積極的な方面も大してやらない。そして、実は私は、五・二%成長鈴木さんが言ったときに、ある会合で、あれは経済を知らぬ鈴木さんが二・五を読み間違えたんだろうと言ったんですよ。一年たってみたらそのとおりだ。三・四と言っても、この間の補正で〇・七%上げてやっと三・四になるかならぬか、これもまだ問題がある。二・五に近いかもしれない。  いずれにいたしましても、とにかく経済をXマイナスYはZということになれば、Zが三%なり五%になるようにするために、行革でどれだけのマイナスYをつくるか、それを打ち消していくためにXとしてはどれだけ大きな積極的な努力をするかという、きわめて簡単な方程式だと思うのですよ。そのXもぱっとしない、Yもぱっとしない、Zもぱっとしないというのがいまの現状ではないかと思うが、経済的に見ればデフレがある程度その面では起こるぐらいの思い切った行革をやり、さらにそれを乗り越していく、なおかつ十分の経済成長ができるだけの積極経済政策が必要であると思うが、長官のお考えを伺いたい。
  158. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 二点お尋ねがございました。  まず第一は、現在、稼働率の下がっておる現状で、生産力をフルに活用するような政策を進めなければならぬ、こういうお話でございます。恐らく、それが竹本委員潜在成長力論の理論的な根拠かもしれません。これにもいろいろの意見があることはもう御案内のとおりでございますけれども、私も、稼働率を上げる方向での経済運営、これは大変財政が困難でございまするけれども、考えていきたいというわけでございます。しかし財政当局などは、もう物離れの社会で、製造業から、第二次産業から第三次産業、特にサービス業へ人口が移動しておるような物離れの傾向を見ると、この点についても考え直さなければならぬじゃないかという意見もあるようであります。このあたりはまだまだ未知の分野でございますから、私はこういった点も考えなければならない点であろうかと思いますし、知識集約産業化の現状も大いに推進して、新しい生産性の高い産業をつくらなければならぬと思っておるわけでございます。  第二の行革デフレの問題、おっしゃるような御指摘の点は十分警戒しなければならない点でございます。行革によってデフレ効果が結果的に生ずるかもしれないけれども、それが完成した後には大きな、生産性の高い一つの何と申しますか政府機構ができ上がる。それが本当の行革のねらいであって、そして高い生産性の機構のもとにおいては財政上のゆとりが、マイナスを上回るだけのプラスが生ずる、それが本当の行革だと思っております。竹本委員のおっしゃるXの中には、単に行革のデメリットを超えるメリットも入っておられると思いますが、もう一つ別の公共投資とかその他の、何と申しますか生産を上げる効果のある政策を含んでおられると思いますが、それはそれとして、財源を見つけても、問題は、財政赤字の解消も大事な政策だと私は思うのでございます。これが大きな金利の上昇を招いて、民間企業設備の投資の邪魔をしておる。しかも税収の大部分を国債費に持っていかれるというようなことを考えますれば、財政赤字の解消も考えながら、しかし同時に、財源を発見し、そして金利の低下も願って、いまおっしゃったようなXの大きくなるような政策は、これは企画庁として何としてもやっていかなければならないと考えております。
  159. 竹本孫一

    竹本分科員 時間がなくなりましたから、結論ですけれども、私が戦争中に企画院におりましたときに読んだ本で、名前をちょっと忘れてしまったのですけれども、中身的に結論を言いますと、戦争はもちろん国力の戦いだ、その国力は何ぞやという説明をいろいろやっていました。経済的な議論をやっていましてね。ダイナミックピープルのストラテジックプランだ、こう書いてある。そこで考えるのに、日本人のダイナミズムというものは、いまのお話のとおりすばらしいものがある。それを積極的、計画的に動かしていく戦略プランというものが企画庁に期待するところなんですね。そういう意味で、これだけの潜在力を持ち、これだけの力を持っておる日本のポテンシャルを――ダイナミックピープルでなければ話が終わりですよ。これだけのダイナミズムを持っておる国民がおるのだから、これを本当に生かすような経済企画庁であってほしい。  その点で、結論として僕は、いま言われている縮み哲学というやつ、あるいはがまん哲学というのか縮み志向というのか、余り賛成でない。あのままでいったら、縮んでしまったら、私はいま経済はじり貧、財政はどか質と言っているのですよ。どかんと財政はもうまいってしまう。この間、六兆円も赤字が出たでしょう。ですから、縮み哲学でいっていると、ますます社会資本は足りなくなるし、不景気はますます深刻になる。税収はますます減ってしまう。これは悪の悪循環ですよ。これを断ち切って、それだけのダイナミックピープルを十分に活躍させるような動きが必要である。  下村君の話が出ましたけれども、実は私は、彼は経済戦犯第一号と予算委員会で言ったことがある。高度成長で、正の法則をそのままに、供給がどんどん事業を生むのだと言って、どこでつまずくか。つまずいたときは大変だということを全然考えないで、所得倍増計画そのものは大きな役割りがあったけれども、あの人の理論は正の法則ですよ。無鉄砲に進んでいった。そして重大なところへぶつけた。いま、縮み哲学は今度その逆でして、また彼もゼロ成長を言っているけれども、そうではなくて、いま申しました日本経済の潜在的な力を合理的に計画的に導入することを考えていただくように切に希望申し上げて、話を終わります。失礼しました。
  160. 浦野烋興

    浦野主査代理 これにて竹本孫一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管経済企画庁についての質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ─────・─────     午後一時開議
  161. 今井勇

    今井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について政府から説明を聴取いたします。山中通商産業大臣
  162. 山中貞則

    ○山中国務大臣 昭和五十八年度通商産業省関係予算案等の予算委員会分科会における御審議に先立って、一言ごあいさつを申し上げます。  わが国経済を取り巻く諸情勢はきわめて厳しいものがあり、また、不確定な要素を多々抱えております。私は、こうしたときにこそ冷静、的確に諸情勢を判断し、険しいながらも将来に明るい展望を示しつつ、官民一体となって諸課題に対応していかなければならないと考えております。  国内面では、当面の経済運営について万全を期すとともに、中長期的には活力とゆとりにあふれた福祉社会を建設していくため、経済の持続的、安定的な発展を確保することが必要であります。  他方、国際面でも、世界経済の長期的低迷を背景とした保護主義的な働きに対して自由貿易の原則を堅持するとともに、発展途上国への援助等を通じて、国際社会における責任ある一員としての役削りを積極的に果たしていく必要があります。  私は、以上のような内外情勢に対する基本的認識のもとに、わが国経済の発展を将来とも確保するためには、次のような課題を解決していく必要があると考えております。  その第一は、内需中心の安定成長の実現と中長期的展望を踏まえた産業の活性化、第二は、自由貿易主義の堅持と円滑な対外経済関係の構築、第三は、総合的な資源エネルギー政策の展開、第四は、技術立国を目指した技術開発の促進と産業構造の創造的知識集約化の推進、第五は、多様化する経済社会の要請に即応する中小企業政策の展開、第六は、魅力ある地域経済社会の形成と国民生活の質的向上であります。  昭和五十八年度通商産業省関係予算案及び財政投融資計画の作成に当たっても、このような基本的方向に沿って、諸施策の具体化を図ることとした次第であります。この結果、一般会計八千二百三億六千六百万円、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計五千八百十四億三千八百万円、電源開発促進対策特別会計千九百五十億二百万円、財政投融資計画五兆九千六百五億円等を計上しております。  通商産業省関係予算案等の重点事項については、御手元に資料がお配りしてありますが、委員各位のお許しを得て説明を省略させていただきたいと思います。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  163. 今井勇

    今井主査 この際、お諮りいたします。  ただいま山中通商産業大臣から申し出がありました通商産業省関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 今井勇

    今井主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔参照〕    昭和五十八年度通商産業省予算案等について  昭和五十八年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画について御説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度における通商産業省の一般会計予定経費要求額は、八千二百三億六千六百万円でありまして、前年度当初予算額七千九百十一億七千万円に対し、三・七%の増となっております。  また、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計予定経費要求額は、五千八百十四億三千八百万円で、前年度当初予算額五千四百三十五億五千百万円に対し、七・〇%の増、電源開発促進対策特別会計予定経費要求額は、千九百五十億二百万円で、前年度当初予算額千八百四十二億二千六百万円に対し、五・八%の増となっております。  財政投融資計画は、五兆九千六百五億円でありまして、前年度当初計画額五兆七千八百五十八億円に対し、三・〇%の増となっております。  次に、重点事項別に、予算案及び財政投融資計画概要につき御説明申し上げます。  第一は、中長期展望を踏まえた産業の活性化と技術開発の推進であります。  まず、基礎素材産業の活性化を図るため、産業活性化技術研究開発制度を創設することとし、四億六千百万円を計上するとともに、日本開発銀行において基礎素材産業の活性化設備投資に対する融資制度を創設し、貸付規模百五十億円を確保したほか、設備処理に伴い必要となる運転資金に対する融資制度を創設し、百億円を確保しております。  また、基盤的な技術開発を推進するため、次世代産業基盤技術の研究開発に五十八億五千万円を計上し、サンシャイン計画及びムーンライト計画の推進に、一般会計、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計及び電源開発促進対策特別会計の三会計合計で、それぞれ三百七十四億六千三百万円、九十五億四千万円を計上しております。  更に、大型プロジェクトの推進に、新規一プロジェクト(極限作業ロボット)を含め、一般会計及び石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の両会計に、合計百六十億四千三百万円を計上しております。  次に、技術先端産業の発展基盤整備を図るため、情報産業の振興策として、電子計算機基礎技術に関する研究開発(第五世代コンピューター)に二十七億二千三百万円を、次世代電子計算機用基本技術(OS)の開発に二十八億六千四百万円を計上するとともに、航空機産業の振興策として、民間輸送機(YXX)開発に二十二億五千五百万円を計上するとともに、民間航空機用ジェットエンジン開発に四十七億二百万円を計上しております。  また、ベンチャービジネスの振興を図るため、研究開発型新企業育成振興に一億五千万円を計上しております。  日本開発銀行につきましては、研究施設整備、新機種電子計算機製造設備に対する融資制度の創設を含め、技術振興枠千百三十億円を確保しております。  第二は、総合的な資源・エネルギー政策の展開であります。  まず、一般会計から石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計への繰入れに四千二百五十億円を計上しております。  次に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計につきましては、総額で他省分を含めまして五千八百十四億三千八百万円を計上しております。  本特別会計の石炭勘定につきましては、石炭鉱業合理化安定対策を引き続き推進するとともに、鉱害対策及び産炭地域振興対策の推進等を図るため、千三百四十二億九千四百万円を計上しております。  また、石油及び石油代替エネルギー勘定は、総額で四千四百七十一億四千四百万円を計上しております。  同勘定のうち、石油対策には、三千九百十五億三千七百万円を計上しており、石油探鉱投融資事業をはじめとする石油開発のための経費千四百五十七億四千五百万円、国家備蓄の建設、九十日民間備蓄の維持等の石油備蓄のための経費二千二百七十三億九千六百万円、重質油対策等の技術開発、流通対策等のための経費百四十八億六千六百万円を計上しております。  他方、石油代替エネルギー対策には、五百五十六億七百万円を計上しており、海外炭開発探鉱融資のための経費二十八億円、コールセンター建設等の代替エネルギー利用促進融資のための日本開発銀行への貸付金六十億円、石炭液化技術開発、共通基盤型石油代替エネルギー技術開発等の技術開発のための経費三百三十三億八千九百万円等を計上しております。  電源開発促進対策特別会計につきましては、他省庁分を含めまして、千九百五十億二百万円を計上しておりますが、施策の円滑推進を図るため、歳出面における徹底的な見直しを行った上で所要財源の確保を図るため、本特別会計の歳入源である電源開発促進税の税率を現行の「千キロワット時につき、三百円」から「千キロワット時につき四百四十五円」へと引き上げることとしております。  本特別会計の電源立地勘定につきましては、電源立地を引き続き推進するため、電源立地促進対策交付金三百六十三億九千万円、電源立地特別交付金百六億千万円等、総額で七百五億二千七百万円を計入しております。  電源多様化勘定につきましては、水力、地熱エネルギーの開発を図る供給確保対策のための経費百四十億七千二百万円、石炭火力建設費補助等のための経費百二十七億四千万円、石炭、太陽、地熱エネルギー等に係る技術開発のための経費百九十五億八千四百万円、新型転換炉実証炉建設費補助等の原子力開発利用対策のための経費百三十四億三千五百万円を計上しており、科学技術庁分を加えますと総額で千二百四十四億七千五百万円を計上しております。  日本開発銀行につきましては、低レベル放射性廃棄物処分融資制度の創設等を含め、資源エネルギー枠全体で四千七百四十五億円の貸付規模を確保しております。  石油公団につきましては、石油、LPGの備蓄事業を中心に事業規模九千九百九十九億円を確保しており、また、電源開発株式会社につきましては、新型転換炉(ATR)実証炉の建設に着手する等事業規模千三百二億円を計上しております。更に金属鉱業事業団につきましては、希少金属の国家備蓄に着手するため、総額百億円の政府保証借入枠をはじめとして事業規模六百八十五億円を確保しております。  その他一般会計においては、希少金属の備蓄を推進するために七億三千四百万円を計上しております。  また、中小鉱山の振興指導を図るため、新たに四億五千七百万円を計上しております。  第三は、世界経済再活性化のための積極的貢献と調和ある対外経済関係の形成でありまして、二百八十八億千二百万円の予算を計上しております。就中、政府開発援助(ODA)につきましては、百四十六億七千五百万円を計上しております。また、日本貿易振興会の事業運営には、百二十六億五千七百万円を計上し、産業協力・技術交流センターの設立等各般の施策を講ずることとしております。  日本輸出入銀行につきましては、プラント輸出金融、輸入・投資金融等に必要な貸付規模一兆三千四百五十億円を確保しております。  また、日本輸出入銀行、日本開発銀行の運用の弾力化を図ることにより、我が国企業の海外立地、外資系企業の本邦立地の円滑化を図ることとしております。  第四は、多様化する経済社会の要請に即応する中小企業政策の展開であります。  中小企業対策費につきましては、一般会計では政府全体で二千四百二十四億六千七百万円を計上し、うち千七百六十億四千七百万円を当省で計上しております。  また、財政投融資計画につきましては、政府系中小企業金融三機関の貸付規模を、対前年度比約三%増に拡大することとしております。  まず、地域と共に歩む中小企業の育成策といたしまして、構造不況が地域の中小企業に深刻な悪影響を与えている現状にかんがみ、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の改正、延長を検討しており、新たに振興対策を盛り込むこととし、二億八千四百万円を計上しております。  また、地域の中小企業に先端技術の導入を図る地域フロンティア技術開発制度を創設し、十一億四千八百万円を計上しております。  更に、産地中小企業振興対策として新たに全国産地・地場産品振興対策事業を実施する等五億四千百万円を計上するほか、地場産業振興センターの増設等地場産業振興対策として、十四億八千四百万円を計上しております。  中小企業の環境変化への積極的対応を促進する対策としましては、人材の養成、情報化の促進を図ることとし、中小企業大学校地方校の建設の推進、中小企業地域情報センターの増設、中小企業情報化促進事業の創設等を行うこととしております。  また、中小企業のエネルギー対策を推進するため、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計にも九億三千百万円を計上しております。  更に、特定業種関連地域中小企業対策の推進、小規模商業者の高度化事業の推進等高度化事業の充実を行うため、中小企業事業団融資等事業に対し、五百五十三億四千五百万円を出資しております。  中小企業の経営基盤充実対策については、商工組合中央金庫出資百億円、中小企業金融公庫補給金七十九億三千五百万円を計上するとともに、信用保証協会基金補助として二十億円を計上し、資金調達の円滑化を図ることとしております。また、下請企業振興対策として、八億七千六百万円を、組織化対策として四十億四百万円をそれぞれ計上しております。更に、中小企業倒産防止共済事業の基盤強化を図るため、中小企業事業団に八十五億円の出資を行い、また、倒産防止特別相談事業に二億五千百万円を計上しております。  小規模企業対策としましては、経営指導員の増員、若手後継者対策の強化等を行うこととし、三百八十億千二百万円を計上するとともに、小企業等経営改善資金融資制度について、設備資金の貸付期間の延長を行い、また、小規模企業共済事業を充実するため、中小企業事業団に四十六億六千万円の事業運営費を計上しております。  中小小売商業・サービス業対策としましては、商業サービス業の組織化を推進するとともに、商店街の活性化等のための施策を充実し、十一億四千四百万円を計上しております。  最後に、魅力ある地域経済社会の形成と国民生活の質的向上であります。  テクノポリス建設の推進を図るため、工業再配置促進対策、地域フロンティア技術開発事業、研究開発型新企業育成振興等の各種の予算措置を活用することとし、総額で十四億九千百万円程度の需要が見込まれております。  また、工業再配置促進対策に百一億八千六百万円を、工業用水道事業に百十九億四千三百万円を計上しております。  また、休廃止鉱山鉱害防止工事をはじめとする環境保全対策の充実と産業保安の確保に六十八億八千四百万円を計上するとともに、国民生活の質的向上を図るため、新住宅開発の推進一般会計及び石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の両会計に合計六億七千百万円を計上しております。  以上の一般会計、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計、電源開発促進対策特別会計のほか、アルコール専売事業特別会計につきましては、歳入四百五億七千六百万円、歳出三百五十五億六千四百万円、輸出保険特別会計につきましては、歳入歳出とも二千十四億六千七百万円、機械類信用保険特別会計につきましては、歳入歳出とも百二十二億二千五百万円を計上しております。  以上、通商産業省関係予算案及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明いたしました。    ─────────────
  165. 今井勇

    今井主査 以上をもちまして通商産業省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  166. 今井勇

    今井主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位にお願い申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願い申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  167. 永井孝信

    永井分科員 最近の日本の産業の近代化というのは非常に目をみはるものがございまして、それだけに化学産業の発達も非常に激しいわけでありますが、化学産業の発達に伴って出てくる産業廃棄物、これらが国民生活にも非常に大きな影響を及ぼしてきていることは、通産大臣も御承知のとおりであります。  そこで、ひとつ問題をしぼってお聞きをしてみたいと思うのでありますが、かつて昭和四十三年に福岡でカネミ油症事件というものが起きました。ついせんだってもこの問題については一定の判決が出されておりますけれども、そのカネミ油症事件の原因はPCBの混入によるものであったことは御承知のとおりであります。このPCBが実は昭和四十七年から社会問題化いたしまして、PCBの使用工場あるいは使用企業に対する使用の自粛ということが政府から求められてきた。そのことを通して、兵庫県に存在するのでありますが、この製造元である鐘化工業株式会社で全部それを回収をしているわけでありますね。そうして、その当時、付近の河川あるいは海にこのPCBの溶液が流れ込んで、市民生活に非常に大きな影響をもたらした。  たとえば漁業関係者にとれば、漁業が禁止をされる、規制をされる。魚屋さんは魚が売れない。あるいはその付近でとれた魚を食べておった市民は、水俣病と同じようになるのではないかというふうなことなどから、実は大変なパニック状態が昭和四十八年に起きたわけです。そういうことから、この問題の早期処理の要望が地元の自治体あるいは市民団体から政府に何回かなされてきていることは御承知だと思いますが、現在その問題がいまだに放置されたままであるということは、通商産業大臣としてお認めになりますか。
  168. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまおっしゃったとおりの経過で、いま現在使われているものは、たしか新幹線のバッテリーですか、そういうようなものに限定されて、製造も使用もほとんどされていないというようなことらしいのですが、問題の、いまおっしゃった場所の回収はしたもののその処理がどうなったかということについては、私自身その意味では新米でございまして、よく追跡をいたしておりませんので、事務当局にかわりに説明いたさせます。
  169. 福原元一

    ○福原政府委員 PCBにつきましては、ただいま先生御指摘のとおり、四十三年にカネミ油症事件を契機といたしまして、その後通産省といたしましては、四十五年から四十七年にかけまして製造、使用の中止、回収、保管の措置をとってまいったわけでございます。大臣が申し上げましたように、現在では新幹線車両用に使われておるだけでございまして、製造、使用等は一切行われておりません。現在、回収いたしました液状の廃PCB液は約六千七百トンでございますが、これは兵庫県高砂市の鐘淵化学高砂工業所そのほかに保管されておるわけでございます。当初これを陸上で焼却しようという話があったわけでございますが、地元の方々の反対がありまして、そのままにしておりました。その後、オランダの船でございますが、PCBを海上で焼却する船があることがわかりまして、私どもそれでもって海上焼却をしたらどうだろうかということを検討いたしまして、研究会をつくりました。その結果、海上で焼却した場合に海水にどういうぐあいで拡散するであろうか、あるいはアメリカですでにやっておるようでございますが、そのような結果はどういうふうになっているのであろうか等々の情報収集をいたしまして、これを関係企業あるいは関係省庁に資料として配付いたしまして、現在その方法を検討中というところでございます。
  170. 永井孝信

    永井分科員 大臣、いまお聞きのように、この回収したPCBの焼却処分についてはまだ関係省庁と検討中だ、こう言うのです。私も過去何回か、こういう経過の中で直接政府に対して、とりわけ通商産業省に対して、地元の自治体の市長あるいは市会の関係者、地元の代表者等と一緒になって、陳情といいますか交渉といいますかをやってきた経緯を持っているわけですね。  そこで、若干の経過を申し上げておきますと、通商産業省あるいは関係省庁としては、陸上で焼却処分するについてはまだまだ技術的に問題があるということなどから、海上において焼却処分すること一本にしぼって検討を進めているということを、ここに速記録もあるわけですが、昭和五十六年十一月五日に私の通商産業省における質問において、当時の担当者も言明しているわけですね。いまのところ洋上焼却以外は考えていない、そしてその洋上焼却については、いま言われたようにアメリカの技術の検討結果も待って早急に処理をしていきたい、簡単に言えばそういう答弁がその当時あったわけであります。  いままでを見ますと、この洋上焼却計画について昭和五十二年五月から検討に入りまして、昭和五十四年四月から六月にかけて焼却処分をしたい、これが諸般の事情から延期になって昭和五十五年四月―六月ごろに、これがまた延期になって昭和五十六年四月―六月ごろに、これがまた延期になって現在そのまま放置をされておる、こういう問題なんです。  いま六千七百トンと言われましたけれども、その中で一番問題になりますのは液状のPCBなんですね。これが厳密に言いますと五千五百四十一トン余りタンクに保管をされているわけです。たとえば重油のタンクが何かの状態で亀裂を起こして重油が流れ出して事故を起こした。瀬戸内海でもありました。日本は地震国でもありますし、どんなことで大変な災害が起きて、それが保管のタンクを破壊せぬとも限らぬわけでしょう。そうすると、五千五百トンを超える液状のPCBを保管している鐘化工業株式会社はもちろんのこと、その周辺は全部住宅街ですからね。十万の高砂市民にとっては大変な問題なんですよ。悪く言えば、全国からPCBを回収してPCBの危険性はなくなった、高砂市の市民以外はそれで安心して枕を高くして寝られるかもしれぬけれども、高砂市民はそれでしんぼうせいということになるのかという感情が地元では渦巻いているわけです。  そして、すでに地元では、時間がありませんから簡単に申し上げますが、当時、鐘化工業株式会社あるいは三菱製紙の会社の工場の近くの用水路などに汚泥がずいぶんたまっているものですから、これが問題になりまして、そしてこの汚泥の処理を緊急にやらなくてはいけないということで、昭和四十九年から五十年にかけて四十億円という巨費を投じてこの汚泥の除去作業をやった、しゅんせつ作業をやっております。あるいは五十三年から五十四年にかけては同じように一つの水路、大木曽水路の汚泥を取り除くために改めてまた三億六千万円の金を投じて、これの除去をやっている。そしてPCBの生産施設の解体も全部終わった。さらにPCBを回収するときに使ったドラム缶一万八千本、これの洗浄作業も全部終わった。そしてPCBを置いておった床の土とかいろいろなものも削って、これも全部、一応現在保管するようにしている。こういうことで、地元の打つ手は全部打ってしまったんですよ。あとは、その保管されておる液状の五千五百トンを超えるPCBの焼却処分を一体どうやってくれるのかという問題なんですね。  ところが、これが、いま言われたように十年以上たっておるのです。十年以上たって、政府はそれぞれ関係省庁において焼却のための努力をしているとは言うけれども、その答弁を何年も何年も繰り返して聞いておるばかりで、一向にらちが明かない。ここで通商産業政策といいますかあるいは環境政策に対して市民や自治体が不信感を持たない方が不思議でしょう。これは大臣どう考えられますか。大臣考え方を言ってもらえばいいのですよ。
  171. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まだ外国の実験といいますか処理実例もよくわからない、各省庁にまたがっていていろいろ意見がまとまらないという話ですが、そんなことを言っていては、これはもう果てのない話で、何らかの措置をしなければならぬということはもうはっきりしてますから、私の方でいま即答はいたしませんが、直ちに解決のための具体的な手段について新しく検討を開始いたします。
  172. 永井孝信

    永井分科員 いま大臣から早急に検討を開始するという御答弁をいただいたわけでありますが、この問題について、さらにちょっと掘り下げて問題点を提起しておきたいと思うのです。  たとえば、PCBが有害であるからこれの製造をするな、使用を自粛せいという指導をしたところは通産省が中心なんです。そうして、これを焼却処分するについては海洋汚染防止法などがありますから環境庁がこれにもかんでいる。海上のことでありますから、船のことにかかわってまいりますと、保安庁だから運輸省がかんでくる。そして漁業という関係から見ると農水省がかんでくる。どこに聞いてみても、まとまって見通しが立てられるような話を聞けるところが、私の経験でいくと一カ所もないのです。通産省ではわからないところがある。環境庁で言うと、環境庁は海洋汚染防止の関係については責任を持たなくてはいけませんから、その法律に基づいていろいろなことを検討してまいる。漁業の関係で言うと、農水省はそういうものは一切海上で焼却されない方がいいわけですから、農水省はそのエリアで物事を考えていく。こうなってまいりますと、一体行政は何のためにあるのか、これは私はいまの日本政治のあり方の一番問題点の一つではないか、典型的な例ではないかと思うわけです。  そして、御承知のように私のいままで経験してきたところでは、この海上焼却処分を行う船というのはバルカナス号という船が一隻しかないというのです。これはオランダの船だったけれども、いまアメリカへ船籍が移ってアメリカの所有になっている。そして、アメリカでその船を使っての焼却のいろいろな実験も繰り返してきている、こう言うのですが、それならその経過を受けて、じゃそのバルカナス号による焼却処分を行った場合、どういう影響を与えるかという技術的な問題の一定の結論が出ているのかどうなのか。環境庁お答えいただけますか。
  173. 三本木健治

    ○三本木説明員 お答え申し上げます。  アメリカの焼却の実績につきましては、ある程度の資料は検討いたしております。(永井分科員「もう一ぺんはっきり言ってくれ、聞こえない」と呼ぶ)アメリカの焼却の実績につきましては、ある程度の資料は入手をして検討をしております。
  174. 永井孝信

    永井分科員 これは冒頭に申し上げましたように、五十二年五月から海上における焼却処分を行うということで検討を加えてきた。もちろんその船は日本の船でありませんから、直接手の届かないところにあるかもしれぬ。しかし、そうだと言っても、昭和五十二年から検討を加えてきて、ある程度の技術的な結果については掌握をしたという程度にすぎないのですよ。きょうは通産大臣しかおりませんから恐縮ですけれども、大臣は閣僚として、そういう問題についてそれほど遅々とした扱いが果たしていいのかどうなのか、私は判断してもらいたいと思うのです。  さらに、いままでいろいろ言われてきたところによりますと、この船の性能はわかっておるのですから、この船の性能によって見てみますと、一時間当たり二十トンから二十五トンが焼却できることになっておる。五千五百トンですから、これを焼却するのに一挙に五千五百トン積んで持っていけませんから、何回か往復しなければいかぬ。そういう日にちを見ましても、三カ月あれば焼却処分が全部完了するであろう、こう言われておるわけです。船の焼却能力だけから見ると、五千五百トンのPCBを焼却するのに十二日間あったらできる、こうなっているのです。ところが、その船が一隻しかないということで、アメリカの技術検討あるいはそれを待って国の対応、こうなってまいりますと百年河清を待つがごとしでしょう。では、この船の性能がわれわれの求めているものに仮に到達しない部分があったり、安全性を考えた場合にまだ不十分さがある、完璧でないということなどがあったとすると、一体いつまで待てばこの五千五百トンの処理をしてもらえるのか、あるいはその船をただ待つのみで政府としてこれに対する他の具体的な方法は考えられないのか。この疑問について通産省と環境庁のそれぞれから答えていただけますか。
  175. 福原元一

    ○福原政府委員 先生御指摘のバルカナス号の海洋焼却の実験でございますが、これは現在アメリカにおきましてもまだテストの段階でございまして、これは五十六年の末にアメリカ自身が実験を開始いたしまして、五十七年の夏、昨年の夏、中間テストが終わったという段階でございます。先ほど環境庁が申しましたものですが、そのデータを私ども入手いたしまして関係省庁で検討していこう、そういう段階でございます。
  176. 永井孝信

    永井分科員 環境庁はどうですか。
  177. 三本木健治

    ○三本木説明員 お答え申し上げます。  環境庁といたしましても、先生御指摘の問題につきましては、早い時期に環境保全上適切な方法で処理されるべきであろうと考えておりますが、なお関係省庁とも十分連絡をとりまして対策方に努めてまいりたいと考えております。
  178. 永井孝信

    永井分科員 そこで大臣、御提示したいことがあるのですけれども、最前大臣は早期に検討を開始したいと言われました。日本の全国の自治体から見れば、正直申し上げてこれはいま兵庫県の高砂市だけの問題になっているわけですね。住民の立場からすれば、高砂市の住民以外は、いえば関心がない問題になってしまっているわけですよ。人のうわさも七十五日といいますからね。PCBのこわさなんというものは、現実に日常生活に使われていない、新幹線の特別な電線にだけは使っていますが、そのほかには使用されていないのですから、極論すれば生活に関係がないわけですね。関係のあるのは十万市民。ここが大事なんですよ。しかし、政治というのは、一地方の十万市民のことであっても、これだけの危険な問題、しかもこの問題の処理というのは産業の進歩に伴って出てきたいわば副産物ですから、これは高砂市の問題として軽く見てもらっては困る。国全体として取り組んでもらわなければならぬ問題である。しかし、この問題に救いようのあるのは、焼却処分が済んでしまえば一件落着になるということですよ、もうPCBをつくってないのですから。遠山の金さんじゃありませんけれども、一件落着という声を早く聞きたい。これが地元の率直な気持ちでしょう。高砂市議会では繰り返し決議され、その処理について過去七回も国にも陳情を行っているわけですね、十数年の間に。そうなりますと、大臣が言われたように具体的にその処理を図るための検討を進めていきたい、このことをたとえば各省庁が縦割りの行政で扱っていくのではなくて、できれば私の方から指定するようで恐縮でありますけれども、通商産業大臣なら通商産業大臣が中心になってこの問題の処理を図るための連絡会議みたいなものは持てないのか。担当者間で連絡をとり合うだけではなくて、政府自身として環境保全のために、人間の生命にかかわる問題でありますから、そのくらいのことをぜひ実行してもらいたい。これは処理ができればそれで終わりになる問題ですから、いつまでも尾を引く問題じゃないのですから、勇断をもって早急にやる。そして、アメリカのこの実験データもまだ完全なものではないというふうな意味の御答弁でありますけれども、それを指をくわえて見ておったのでは困る。もしアメリカが完全な状態の実験データを出すところまで到達したとして、それを日本の法律に当てはめてみて、これは危険がない、何とかうまくいけるようになったというときには、それが二十年、三十年先ということも想定されるわけです、いまのテンポでいくと。それまで持ち切れないわけだから。いま生きている人間を大切にするために早急にその対応策を、通商産業大臣が中心になって連絡会議的なものを設けて、そのバルカナス号だけではなくて、ほかの方法も含めて考えることはできないか。あるいはバルカナス号に焦点をしぼるのならアメリカとも積極的に対応してもらって、実験データを早く出してもらって早く結論を出して、その船を日本に回してもらえるように対応してもらう。これは外務省にも協力を求めなければいかぬかもわからぬ。そうなると政府を挙げてやってもらわなければいかぬ問題だと思うのでありますが、大臣、どうでございましょうか。
  179. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは大変複雑な経過があるようでして、いまちょっと聞いておりましたのですが、アメリカの方も、わざわざオランダからその船を買った。アメリカも処理しなければならぬPCBを抱えているらしいですね。そうすると、アメリカは自分の国のために買ったのだから、データくらいよこしてくれるでしょうが、それは当分の間アメリカが使うということなんでしょうね。船はもう大分老朽化しているらしい話もいま聞きました。  おっしゃるとおり毎年同じことを答弁していて、それでは浮かばれない地元の人たち。これは鐘淵化学の企業責任もありますね、ありますから、そこに回収せしめ保存せしめて、危険のないように責任をとらされているわけでしょうが、これから先の処理についても企業責任の一端をなしとしない。こういうことも配慮しますと、前進は全然しない議論をしていて、安心でない危険なものが政治上も行政上も何の手がかりもなく一カ所に放置されている事態は、私は座視できないと思うのです。ただ、私ども通産省が中心になって各省を集めるべきなのか。確かに製造、廃棄、回収、そういうものは通産省の責任としてやったと思いますが、これからの処理の問題は環境庁もどうしてもその主役になってもらわぬといけないと思いますので、通産大臣が先頭に立って引っ張っていく気持ちに変わりはありませんが、所管をどこにしてまとめていくかという構想、その構想はまず結構である。すなわちどこかの役所、まあ私が一応責任を持ってつくりますが、環境庁を中心にするかもしれませんが、速やかにPCBの最終処理対策検討機関を設けて、横の連絡をとるわけじゃなくて、おっしゃるようにそこに集まって、問題点の所在と今日の保存、それを地元の市民ばかりでなくてすべての国民に、もうなくなってしまうものとしての処理をどのようにするかについて検討する機関を設けます。一歩の前進もないという質疑応答をしていたのじゃ、あなたもむなしさを感ずるでしょう。私もなったばかりですけれども、そういうことであってはいかぬ。だから一応私が責任を持って預かって、そういう横の機構を一本化した機構で検討して、私も最終的に責任を逃げることなく処理を進めてみたいと思います。
  180. 永井孝信

    永井分科員 積極的な御答弁をいただいて非常にありがたいと思います。  そこで、いま言われたように、いまバルカナス号はアメリカの船であって、この船が老朽化している。もし仮にこれで処理をするにしてもアメリカは自分の国のPCBの処理を優先するでしょう。これだけ日本が近代国家と言われ先進国と言われ、科学的な技術も発達し、この場所の議論にはそぐわないかもしれませんが武器の技術まで援助しようかという時代ですからね、政府からすれば。そうでしょう。そんなときに日本独自でPCBだけではなくて、これからいろいろな産業廃棄物の特殊なものを処理しなければいかぬという場面がずいぶん出てくると思うのですよ。そうすると、政府の姿勢としてみずからがそういう焼却のための船をつくるとかその他の対応策を技術的に開発をするとかということがあってもいいのではないでしょうか。そのことも含めて、いま積極的な御答弁をいただいたわけでありますから、そういう問題についてもさらに検討を加えるなら加えるという決意をもしつけ加えていただければ、なおこの問題はすっきりすると思うのです。
  181. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのためにのみの船は確かにむずかしいと思います。しかし、いまおっしゃったように産業廃棄物の処理についてはいろいろな毒物、薬物等がありますから、その船は洋上焼却ということでありましょうが、それになじむものがほかにもあるとすれば、独自の船も、タンカーその他は全く聞いておりませんが、アメリカもそれを使う目的で持っているわけですから、日本にお先にどうぞとは言わないだろうと思うのですね。そういうことを考えて、むだにならない、必要ならば専用船と申しますかそういうものを建造することの検討も踏まえて、さっきの連絡会議をつくります。
  182. 永井孝信

    永井分科員 いままで繰り返し繰り返しこの問題についても国会で取り上げてきたと思うのでありますけれども、やはりこの問題が先送り先送りになっておった。いまそれを大臣から、もう先送りばかりの議論じゃだめだ、だから具体的に処理しよう、そのための連絡会議的なものを設けよう。主管大臣がどこになるか別としてという御答弁をいただきましたので、私はそれなりにそれを高く評価したいと思います。したがって、関係省庁、きょうはほかに環境庁しか来ておりませんけれども、環境庁も運輸省も農水省もすべて関係のあるところが逃げる姿勢ではなくて、どうやって協力し合えるかということでぜひとも一日も早くこの不安を除去するように、問題の処理を図っていただくように重ねてお願いして質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  183. 今井勇

    今井主査 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  184. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 時間が余りありませんので簡潔に聞きますので、簡単でよろしゅうございますので明確に御返事いただきたいと思います。  まず、北海道の下川町における高レベル放射性廃棄物の研究調査をしていたわけでありますが、従来の御答弁によりますと五十七年度で、つまり五十八年三月いっぱいでこの研究は一切終えて、そのための施設も五十七年度中で撤去する、こういう御返事を聞いておりましたのでそのとおりになっているか、研究施設は撤去されたか、さらに今後下川町で高レベル廃棄物の処分等をするというような考え方はないと承っているが、そういうことかということについてお答えいただきたいと思います。
  185. 松井隆

    ○松井説明員 お答えいたします。  まず、下川鉱山におきまして試験をやったわけでございますけれども、それにつきましては計画どおり五十七年度まで実施いたしました。それで、もうすでに試験は終了いたしました。それからさらに設備についても撤去いたしております。  それから御質問のもう一点で、将来とも下川鉱山で処分するということはないだろうかという御質問でございます。これにつきましてはすでに国会等でお答えしているとおり、そういう考えは持ってございません。
  186. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そこで低レベルについてお伺いしたいのでありますが、低レベルの廃棄物の問題は、なかなかいま大変な状況にあるようであります。おいおいお伺いしたいと思いますが、年々私なんかもいろいろお聞きをしてきた陸上貯蔵施設の問題で、五十八年に用地については確定し用地買収に入るというような段階まで至っているのかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
  187. 松田泰

    ○松田政府委員 従来、先生が御質疑なさいましたように、六十年代前半にこの施設をつくるようにということから、なるべく早くサイトを決めたいという努力を環境整備センターを中心に進めてまいっておりましたが、現時点におきましてもなお幾つかの複数の候補地点を対象に調査を進めている、まだそこを具体的に候補地点をしぼり切っていないという現状でございます。
  188. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 ことしは五十八年に入ったわけですな。事柄が事柄ですから、五十八年に決めるあるいは用地買収に入るというようなものであれば、やはりもうそろそろ言ってもらわなければうまくないですよ。まだ正式にどこの場所にということは現在時点で決まっているのではないでしょう、恐らくいまのお答えでは。しかし、いろいろなそれに必要な諸調査というものがしぼられてきて、五十八年つまり今年あるいは五十八年度に用地については確定というところまでしぼりたいというようなことになっているのかどうか、もう一遍御返事をいただきたいと思います。
  189. 松田泰

    ○松田政府委員 できますれば五十八年に決めたいという意向は持っております。おりますが、現時点におきましては従来からの複数の地点をしぼり切っておりませんし、また地元との交渉等もいろいろ相当程度進捗しているとは必ずしも言えない、そういう状況にあることは事実でございます。
  190. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 できれば今年しぼりたい、しかし地元との話なんかもまだあるわけだし、いま決まったなんということにはならぬ、そういう段階でもないということですね。  そこで、その地元の話はひとつ置いておいて、通産省としては幾つかあるうち今年一カ所にしぼって、そして地元との交渉等にも入ってみたい、そういうことですね。そうして、それは地元と話してみれば確定するかしないかということは後の話でありますから、しかし、一応通産省としての候補地は決めてそういう段階に入っていきたい、かつ、この地元との話が問題なければ用地買収等に今年あたり入れれば入りたいというような気持ちがあるのかあるいはそういう用意はあるのか、この辺はどうですか。
  191. 松田泰

    ○松田政府委員 これは先生御存じのように通産省がみずから決めることではなくて、環境整備センターといういまの民間の組織を中心に用地、サイトの決定を進め、具体的な用地買収等にいきますと、その後に民間が行います事業主体等をさらに決めていかなければならぬという問題に関係いたしますので、われわれといたしましてはそういった努力を見守っているという状況にございます。もちろん、できれば早く進めてほしいという希望は持っております。
  192. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 開発銀行にちょっとお伺いしたいと思いますが、五十八年度開発銀行の融資のための運営計画の中に放射性廃棄物貯蔵施設建設のための融資制度、これを新設なされようとしているというぐあいにお聞きしておりますが、そうですか。
  193. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 そのとおりでございます。
  194. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 これは仄聞するところによると五〇%ぐらい融資するということで事業主体等もいろいろ考え、もちろんこれは通産や関係のところと、あるいは業界なんかも入れて話しながら進めてきているわけでありましょうが、そういうような状況が整って方向が出てくれば五十八年用買等について融資をしていこう、こういうことですね。
  195. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 そういう状況が整いまして、また、先生御承知のとおり開発銀行は金融機関でございますので、償還の可能性とかそういう審査を行いまして、条件が整いましたら融資に移る用意があるわけでございます。
  196. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 いよいよ今年、できればひとつ地元との交渉に入りたい、そこで、もちろん地元との交渉の結果によるが、展望が開かれれば用地買収にも入りたい、開発銀行はそれの融資制度について五十八年これを新設する、こういう状況にいまなってきているということが大体わかったわけであります。  そこで一つは、これはいわゆる全く新しいプロジェクトで、全国でいま原発が十二カ所ですかある、これをずっと回って、専用船で荷物を集めて歩いて、そして建設地に持っていく、そこで貯蔵。そして、いままでお聞きしているところでは、貯蔵というが貯蔵即処分という意味も含めてやるんだということなのでありますが、たとえば専用船で運搬するとか、こういうことまで含めて技術的に心配のないという実証試験等が大体済んだということなのか、どうですか。
  197. 松田泰

    ○松田政府委員 従来まで幾つかの安全性の実証試験というのを行ってきております。これは主としてサイトにおける、たとえばサイトで火災が起こった場合でありますとか、輸送中にドラム缶を落としたとか、そういったたぐいの試験をやっております。それから、これからやろうとしておる実証試験は、主としてその設備の中における廃棄物を処理するための国産の操作技術等の効率化というようなところに重点を置いてそういうことをこれからやろうとしております。  いま先生から御質問ありました船舶による輸送については、われわれ現在、特にテストする必要性というものは感じておりませんけれども、これは低レベル廃棄物ということに関係するわけですが、そういう試験の計画は現在ございません。
  198. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 しかし、放射性物質等を運搬するときなんか、たとえば海上保安庁なんかがこれを監視したり、これはあそこの業務の計画の中に入ったりしているのですよ。簡単なものじゃないですよ。これら等も含めて十分な安全性をいままで実証しているのかどうか。いまの御返事では何もやってないようですね、そんなものは大したことないと思うと。どうなんですか。
  199. 松田泰

    ○松田政府委員 安全性という観点から見た場合、扱われますものが放射性廃棄物でありますから慎重に扱わなければいけないということは重々承知しておりますが、非常に低レベルなものでありますために安全性という観点からの実証試験ということを私の方では特に考えてないわけでございます。もちろん、海上保安庁とかそういった運送関係の規制、規則あるいは所管官庁との連絡は十分やらなくてはいけない、意見も聞かなくてはいけないと思っております。
  200. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 あなたはそう言うけれども、たとえば廃炉の解体物はどこへ持っていくのですか。廃炉の解体物もいまの貯蔵施設に持っていくのでしょう。それはいままでの質問でそういう答えを何回かいただいているのですが、それは低レベルもあるし中レベルもあるでしょう。どうですか。
  201. 松田泰

    ○松田政府委員 現在考えております施設貯蔵の対象は低レベルということを考えております。もちろん中レベルのものにつきましてもそれの処理、輸送等につきまして十分安全に処置できるということがわかった時点におきましては、これをその施設に貯蔵するということを十分考えたいと思っておりますけれども、当面は低レベルということに考えております。  御質問のありました廃炉の場合には、先生の御指摘のように中レベル、低レベル、いろいろのものが出てまいります。したがいまして、現時点では、廃炉が起こった場合というのは少し先でございますけれども、その時点までに中レベルのものについての処理についても安全な処理ができることについて納得といいますか、皆さんのコンセンサスが得られておりますれば十分それは対象になると思いますけれども、当面は低レベルということで進んでおります。
  202. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 何だかいいかげんだよ。事柄がこういう大きなプロジェクトをいまやるわけですから、そんな程度のことで始めてはうまくないですよ。実証試験等ももっときちっとやらなければいけないですね。去年から五カ年計画でやっているのもありますね。さまざまなことがあるのでしょう。だからそういうものは、事柄がこういうことというのは念にも念を入れてやっていかなければならないことは言うまでもないですね。その安全性というのはいま原子力行政でも第一のスローガンでなくてはいけないわけですから、こういう点は軽率にやるべきでないというふうに本当に思いますね。  地元の了解というのは、つまりどういうことですか。該当市町村の長及び議会というのは言うまでもありませんね。あるいは広く住民に説明をして意見を聞くということもあるでしょう。あるいは隣接している各市町村がありますね。こういうところの意見もさまざまですから、これももちろん聞かなければならぬということでしょうね。あるいは原子力発電所同様知事の同意ということはきわめて大切でしょう。こういうようなことをすべて十分に住民の意見を聞き、これを尊重し、同意を得てやっていこう、こういうことですね。どうなんですか。
  203. 松田泰

    ○松田政府委員 そういう立地を進めます場合のいろいろな手続につきまして、もちろん事業主体の方でやるものは一応除外いたしまして、国とのかかわり合いにおきますそういう立地手続につきましては、実は私どもの方でエネルギー調査会の中に核燃料サイクルの立地対策小委員会という組織をつくりまして現在検討中でございます。そこで何らかのそういった地元の了解を得る手続を確立したいというふうに考えておるわけでございます。
  204. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 だから、事柄がこういうことだから、大事なことはさっきの安全性の問題と、それからもう一つは何たって地元の了解を得る、これは絶対的なものだと思いますよ。これは大臣、一言言っていただきたいと思いますが、僕がいま言ったような該当の市町村あるいは隣同士の市町村あるいは道だとか知事、こういう意見というものを尊重する、そういう同意を得てやる、これは従前の原子力発電所なんかでもそうでありますが、当然だと思うが、いかがですか。
  205. 山中貞則

    ○山中国務大臣 日本の原子力行政全般を皮肉って、高級マンションをつくったものの便所を忘れていた、どうもそういうことを言われてそうじゃないと言い返すだけの現状にないのじゃないかと思うのですね。フランスやイギリスに頼むものもあれば、あるいは旧植民地であった南万、ミクロネシアの方に洋上投棄を打ち出して、パラオの市長さんが日本にそういうことをせぬでくれと言ってこられたり、今度は低レベルの国内各地域を対象とした処理の問題でどこでも余り歓迎をされない。海の方に出れば漁業者が反対をする。しかし、やはりこれは解決をしないでこのままの状態をそのまま続けていっても、収容能力あるいは貯蔵能力に限度があるというところはもう間近いと思うのですね。そうすると、どの役所がどうということよりも、国の総力を挙げて、どこかに国民の、またあすの日本の未来のエネルギーのためにごしんぼう願うところがあるとすれば、本当にそれはもう当該町議会、町民の世論はもちろんでありますが、周辺、ましてや知事さん、そういうものの合意を得て、やはりみんなで、じゃあそういたしましょうというようなことになるところを探す以外にない。こちらの方から探してどうじゃということはとうていあり得ない環境にあると思います。  十分にいままで質疑応答を承っておりまして、最も原子力行政の痛いところというのでしょうか、この問題が日本でまだはっきりしたところがない、一カ所もないということはきわめて政府行政としても立ちおくれた分野であって、諸外国に原子力発電のキロワット数とか基数とかを比べるにはちょっと恥ずかしい点でありますから、すぐにどうこうということは言えませんが、なるべくそういうおっしゃるような合意を得られる場所を早く探して諸外国に笑われない国にならなきゃいかぬ、そういうふうに考えております。
  206. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 大臣いまおっしゃるように、該当の市町村あるいは隣接の市町村の住民たちあるいは知事とか、こういうことの同意なしにやれる問題ではないということで、ひとつ十分に慎重に対処してほしい、こういうぐあいに思います。  そこで、時間があればこの間のロンドン会議の話もちょっとお聞きしたかったのだけれども、そしてわざわざロンドンまで行かれた方もおるわけですから、本当はいろいろお聞きしたいのですが、時間がないので、ごく簡潔に、ああいうことになった、ちょっと当分大変だということであろうと思いますが、海洋投棄についてはどう対応していくか。悪いけれども本当に短く、ちょっと教えていただけますか。
  207. 岡崎俊雄

    ○岡崎説明員 お答え申し上げます。  日本の計画しております低レベル放射線廃棄物の海洋処分計画は、一応原子力委員会の定めた基本方針にのっとりまして、特に安全性につきましては原子力安全委員会のチェックを受けるなど十分な科学的な評価に基づいて行うこととして、しかもまず試験的な処分をやって、その結果を踏まえて本格的に処分をするという非常に慎重な態度をとっておるわけでございますが、他方、今回御指摘のように、ロンドン条約の締約国会議のもとに国際的な科学的な検討の場が設けられたということでございますので、わが国もこれに積極的に協力し貢献していきたいと考えておりますし、こういった国際的な評価の場ができたということで、より客観的な安全性に対する信頼が得られるように期待しておりますし、そのための努力を日本政府は全力を出してやっていきたい、こう考えております。
  208. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 その調査研究が一緒になってやっていくということにおける結論が出るまでは海洋投棄は中止する、こういうことですか。
  209. 岡崎俊雄

    ○岡崎説明員 お答え申し上げます。  前回のロンドン条約締約国会議におきましては、まずキリバス、ナウルという国が全面禁止を求める条約の附属書の改正提案を出したとか、あるいは北欧五カ国が一九九〇年以降は禁止するという、こういう禁止提案を出したわけでございますが、いずれも最終的には審議の結果それらの提案を取り下げた、そのかわり科学的な検討の場を設けるということが合意された。  その後、スペインから、ではその科学的な検討を行っている間投棄は中止しようではないか、一時停止しようではないかという決議案が採決に付されまして、これが賛成多数で可決されたわけでございます。先生御承知のとおり、この決議案そのものはあくまでも法的な拘束力は持っていない。これはもう提案国であるスペイン自身もそう明らかにしてございますし、また他方、科学的な検討の場がどういった方向である、あるいはいつまでにやるということが、残念ながら時間的な制約もあって十分な合意に達しなかったわけでございます。したがいまして、日本としては、もちろん積極的にこの検討に参加し協力していくわけでございますが、そういった今後の検討の推移を見守りつつ適切に対処していきたい、こう考えております。(五十嵐分科員「質問したところに答えてください」と呼ぶ)  お答え申し上げます。  十分科学的な検討に協力しつつ、その状況を見守りつつ、適切に対処していきたい、こういう考えでございます。
  210. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 つまり、共同で研究してやっていく、それに積極的に参加する。それは結構ですね。  そうしてやって結論を得るまで海洋投棄はしないということではないということですか。
  211. 岡崎俊雄

    ○岡崎説明員 もちろんスペイン決議案そのものの意味というものも十分考慮していきますし、科学的検討には十分参加協力していくわけでございますけれども、そういった、今後どういった形でこの科学的な検討が行われていくか、あるいは機関がどういう形であるか、いつまでに検討を終えられるかということが、まだ十分これから詰めていく問題でございますので、その辺の推移を十分見守りつつ対処していきたい。繰り返すようでございますが、そういう態度でございます。
  212. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 時間がないから、また今度の委員会でひとつやりましょう。  そこで、あともういよいよ時間もわずかしかないのでありますが、このごろ、省エネもかなり進んで、これはいいことですね。また、景気があんまりよくないということ等もあって、どうもこのごろは電力業界等も、需要が下がってきて、それで発電設備の過剰がむしろ言われるようになってきている。したがって、最近はどうも業務用の料金についても検討し直す必要があるのではないかというようなことも、けさも新聞にちょっと出ていたわけでありまして、ずいぶん変わってきた。このままでは発電所の稼働率も、需要がこんなように低下している状況では、稼働率自身が悪くなるのじゃないか、そうするとその分を料金を上げていかないとだめなことになるというようなことさえ業界は言い始めてきているわけですね。一方で原油価格は下がっている。これは長期に見てどうかという問題はありますけれども、しかし大幅に下がってきている。廃棄物の今度のプロジェクトでも、いままでの計算でも千六百億ぐらいかかる。これから先また一体廃棄物にかかるコストが廃炉を含めてどれだけかかるのか。大変なことだ。そうすると、原子力発電のコストというのは一体どうなのかということも最近大きな疑問になっていることは言うまでもないわけですね。  こういう全体の中で、従前の計画では、いま二十四基ある原子炉を西暦二〇〇〇年までには百基ぐらいにしようというのでしょう。発電能力で五倍ないし六倍にしようというわけですね。これは一体いいのですか。さっき大臣の言うように、まさにトイレなきマンションですよ。そうしておいて、どんどんどんどんこうやってやっていく。やっていって、後でしゃにむにどうかしなければいかぬ。僕はおかしいと思いますよ。  しかも、最近のそういう新しい状況の中で、一体こういうことを含めたエネルギー全体の需給計画について見直す必要が出てきていると思いませんか。いかがですか、大臣
  213. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまのOPECのカルテルが一応崩壊した形、それによって起こっている現象が、加盟国、非加盟国の産油国を含めて一様に値下がり現象ですね。そうすると、日本の産業界各界、最終的には国民生活も含めてどのようにその値下がりの効果を均てんさせていくかという問題等、いま通産省の縦割りの中のそれぞれのセクションで積み上げさせて、最終的に私を囲む通産省の最高首脳会議というもので、これからの状態に、もうちょっと湾岸諸国あるいはいまイギリスのロンドンで開かれている会議等の行方を見なければ、あれにはインドネシアとかメキシコとか、OPEC加盟国でない国も参加していますので、どういうふうになるのか模様をもう少し見なければならないと思いますが、いずれにしても、いろいろの立場において検討しておりますが、まだ私の手元に全部上がってきてはおりませんが、産業用電力の電力料金の設定の仕方等について洗い直しをせよとまでは言っておりませんし、石炭等はもうほとんど電力の場合は代替され尽くした感じでありますから、石油と直接に関係のない部門が大きくなっているところ等も考えていかなければならない。私はいま大体二十五ドルになったときにということを前提にいろいろの考え方をさせておりますが、二十五ドルというのは何かといいますと、代替エネルギーの石炭にかえた場合のコストとそこでデッドクロスする線が出てくるのではないかという私の想定であります。そういうことを考えながらわが日本がどう対処するかということは、いまおっしゃったとおりすべての問題について検討しておりますが、ただ石油はあくまでも有限であり、このOPECカルテルも再構築不可能のものでないと思います。可能性がある。そうすると再びまたカルテルが効力を発揮したら、さらに三十四ドル五十セント以上になるかもしれない、あるいはそこまで戻るかもしれない。そういうようなこと等も考えますと、日本の場合は省エネ、代替エネ、新エネ等に対する努力は、原子力も含めて、いまおっしゃったような噴飯物と言われるところを持ちながらも、それでも人間の知恵を最大限発揮しながら、計画は、そういう流体エネルギーの、有限のエネルギーである石油の前途は明るい日がそう続くわけではないということを考えれば、一たん中止して、またショックが戻ってきたからさあまた開始だというふうに国策をぎくしゃくさせない方が、私たちは九九・八%輸入している国だということを考えると、それに対して対応できるようないわゆる代替、省エネ、新エネというものは、原子力も含めて怠ってはならない分野ではなかろうかと思っております。これはまだ最終的に通産省として決定しておるとか、あるいは最終的な方向を決めたというわけではございません。
  214. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 いま論議されたように、多くの問題を抱えながら、とにかく高度成長方向のままにいまの二十四基をあと十七、八年で百基までにすると言う。発電能力にして五倍も六倍もにしていくと言う。これはいまでさえ需給状況で問題が出ているときですよ。しかも、これからの成長なんというのは本当になだらかなものでしょう。それは何といったって検討し直す必要があるのですよ。石油の状況がうんと悪化してきたということならともかく、逆ですね。少なくともここ中期やそこくらいでは、この計画というのは見直す必要がある、ブレーキをかける必要がある、こう思うのですよ。そこのところだけでいいですが、どうですか。
  215. 山中貞則

    ○山中国務大臣 石油供給計画については、確かに見直しをしなければならない点があると思います、これは一年ごとの計画ですから。長期的な計画とはまた別の短期ごとのいわゆる石油供給計画という、ことし幾ら国内で生産したらいいかというその単年度の計画、これはちょっと見直しをかけなければいけないかなと思っています。しかし、いまおっしゃったような長期的な検討は依然としてやっていかなければならないが、その中には、現時点を踏まえれば確かに変えなければならない点が出てきていることは認めます。しかし、それを総合的に見て全体をどう変えるかという問題については、先ほど申しましたとおり、まだ現在の石油輸出機構からすれば、むこうの中がパニック状態ですから、その立場も考えながら慎重に、あわてないで対処していきたいと思います。しかし、御意見は貴重な御意見として承ります。
  216. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 時間がありませんので以上で終えたいと思いますが、さっきの貯蔵施設で、大臣もう御存じだと思いますが、いまのところ一番有力なのは北海道の幌延というところですね。それ以外には地名もまだ余り出ていないようであります。ですから、確定するとすればそこになるだろうというのは、お互いに言葉には出さぬが、そんな方向でないかというふうに思うのであります。しかし、あそこはまたいろいろな問題を抱えておるところですね。原環境庁長官も去年の委員会で答弁されましたが、実はあれは国立公園の拡張予定地になっているところなんですよ。開発庁と環境庁との間で覚書が交換されて、そこは国立公園を拡張するよということについて合意されているわけです。ですからそういう問題等もある場所だということ、あるいは湿地帯ですから地盤がきわめて悪い。いわゆる国立公園利尻礼文サロベツ原野の湿地帯の部分でありますから、こういう点も十分にひとつ配慮し、かつ先ほど申しましたように、何といったって大事なのは地元の了解ということであろうと思いますから、こういうことをよく踏まえてあくまでも慎重に、ことしやらなければいかぬなんということを考えるようなことでなくて、住民の意思というものを踏まえて十分に慎重に対応していただきたい。  以上申し上げまして質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  217. 今井勇

    今井主査 これにて五十嵐広三君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内勝彦君。
  218. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 最近の結婚式場のいろいろな問題の中で、貸し衣装の実態というか、結婚式ももうレンタルの時代に入って、衣装を借りたい、挙式者から持ち込み料を取り始めた、こういうような例も幾つもあって、その中で利用者にとってトラブルの原因になったりいろいろな問題がございますので、若干質問をさせていただきたいと思います。  まず、結婚式場の貸し衣装の実態についてはどのようになっておりますか。
  219. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 貸し衣装店の実態でございますけれども、私ども必ずしも十分には掌握いたしておりませんが、私どもが現在掌握しているところで申し上げますと、御存じのように、専門的な知識がなくて、また多額の金もなくて貸し衣装屋というのは開店がしやすいものでございますから、一ころかなり急増をいたしました。現在もかなりの数に上っておると承知しております。それからまた別に総合結婚式場がふえておりまして、そういうところでも貸し衣装部門をあわせて営んでいるというのが実態のようでございます。ただ企業数がどのくらいあるかということになりますと、私ども十分な統計を持っておりませんので、ちょっと御返事いたしかねる状況でございます。
  220. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 そこで、最近結婚式場経営者に対して何かアンケート調査なるものを実施したやに伺っておりますけれども、その辺の状況はどうなっていますか。
  221. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 中小企業庁の方で調査を実施いたしたわけでございますけれども、まだ集計の状況に入っておりませんので、内容については私ども現在はお答えいたしかねます。
  222. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 いつごろ行って、どんな中身で、いつごろそういう結果が出てくるのか、わかっている範囲で教えてください。
  223. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 後ほど中小企業庁からこちらに来るようになっておりますけれども、私ども産業政策局としては、詳細を承知しておりません。
  224. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは、後ほどまた来ましたら、ちょっと知らせてください。  そこで、結婚式場等の一部で、貸し衣装の持ち込み料について異常に多額の持ち込み料を取っておるというような利用者からの意見等が新聞に出たり、いろいろ問題があるというような情報を聞いておりますけれども、そういう状況はどんな状態でございますか。
  225. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 お尋ねのような実態につきまして、私どもも新聞で承知をいたしておりますが、新聞で報道されております内容は、御存じのように現在の貸し衣装の利用につきましての結婚式場の持ち込み料の問題でございまして、これは現在は公正取引委員会が昨年来調査をしているというふうに聞いております。私ども、その内容については承知いたしておりません。
  226. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは、公取の方に来ていただいておりますので、まず状況を御説明ください。
  227. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 お答えいたします。  結婚式場の業者が貸し衣装につきまして不当に高い持ち込み手数料を取っているとか、あるいは婚礼衣装の持ち込みを禁止しているとか、あるいは持ち込み日を指定しているというような苦情が、貸し衣装業者あるいは消費者などから多数寄せられております。そのために昨年の十二月に結婚式場業者、正確に申しますと七百四通、七百四業者に対しましてアンケート調査を実施しております。回収は三百九十八通ございまして、回収率が五六・五%というのがきょう現在の状況になっております。私どもといたしましては、このアンケート調査に基づきまして、ヒヤリング調査を現在実施中であるということでございます。
  228. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 いま調査の段階ですが、これはかなり前からこういうようないろいろな状況の中で新聞の報道もございましたし、また昨年におきましても、公取の方へそういう苦情の問題が出ております。そういう中で、今後の問題になりますけれども、現在の調査中での判断として、こういう異常に高い持ち込み料を果たして取っておってそれでいいのかどうなのか。ほかで貸し衣装の経営というものがありますし、また自分のものを持ち込んでいったら、それが借りたものなのかあるいは自分のものなのか判断されて、それによって今度はそこで手数料が取られる、持ち込み料が取られるというような、自分の人権というか、それまで疑われるような形になって果たしていいのかどうなのか。この実態をどう考えるか、まずそのお考えから聞かせてください。
  229. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、ただいま実態調査中でございますのではっきりしたことをお答えできる段階にはございませんけれども、この問題について感想とおっしゃいますので、若干申し上げます。  まず、結婚式場を経営している業者の業態が非常にまちまちであるということが一つ言えるのではないかと思います。ホテル業者が兼業している場合あるいは総合結婚式場と称して結婚式場を専業にしている業者あるいは公共施設に類似した、たとえば共済組合みたいなところが宿泊施設と兼ねて結婚式場、披露宴場というものを経営している場合等、非常に業態がまちまちであること。それから、そのような業者がみずから貸し衣装店を経営している場合もございますし、また、みずからは経営していなくとも特定の貸し衣装業者を指定いたしまして、その業者にだけ出入りを許す、こういうような場合もございますし、あるいは外の、自分の経営している中にそういう委託業者を入れているというようなケースもございますし、いまそのような実態を把握している最中でございます。  それで、実際に結婚式を挙げる場合、あるいは披露宴で使う衣装などについてどういうような制約が課されているかということは、これも調査中で十分把握しておりませんが、一つは、結婚式場に持ち込みを一切禁止する、こういう形態がございます。それは自分のつくった物、自分の持ち物であっても、貸し衣装業者から借りた物であっても、一切持ち込みを禁止するというもの、それから自分の衣装であれば持ち込みを許可するというもの、それから自分の持ち物であっても貸し衣装であっても、いずれでも持ち込み自由であるというもの、それから持ち込み自由ではあるけれども持ち込み料を取る、自分の物については持ち込み料を取らないが貸し衣装の物については持ち込み料を取るもの、自分の物も貸し衣装の物もとにかく持ち込まれる物はすべて持ち込み料を取るもの、それからさらに、式場に用意している貸し衣装一点でも利用すれば全部ただにするとかというような実態があるようでございます。  そのような業界の実態としては非常に複雑でございますので、その実態の把握に現在努めておりますが、その中で貸し衣装料が不当に高いというような声がないわけではございません。ただ、業者の方といたしましては、事前にそういう外から持ち込んだ貸し衣装については保管の責任があるとか、手入れが必要であるとか、いろいろな理由を述べておりますし、また、そういう結婚式場業者が貸し出す衣装につきましても回転率、まだ十分詳細に把握しておりませんが、何十万か何百万するような貸し衣装を五回とか十回で回転していくとかいうようなことを考えますと、貸し衣装の金額もかなりの額になる場合もあるのではないか。それに相応した持ち込み料を取りたいという業者も中にはいるようでございますし、その点の高いか安いかというような判断は非常にむずかしいところがあるのではないかというふうに私ども考えております。  ただ、いずれにいたしましても、そういうような持ち込み料を取るとか取らないとか、あるいは持ち込み料を取る場合の高いとか安いとか、要するに金額でございますが、そういうものは結婚式場を予約する段階で事業者が明示する、あるいは消費者もその点をよく気をつけて、幾らかかるのかというようなことを業者によく聞くということが、トラブルが発生する予防の措置になるのではないかというふうに考えております。そしてまた、高ければもう少し安いところを選ぶという消費者の知恵も必要なのではないかというふうに考えております。  以上であります。
  230. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはそこからだけ責めてみても、営業の自由というのがありますから、大変むずかしい問題だと思うのです。それで、私の方は割賦販売法に基づいて、冠婚葬祭の互助会というのが非常にはやっていますね、そこからの苦情がまたあるわけですね。その中にもやはり貸し衣装の件が、最初はそんなはずではなかったが、結局は高い金がかかったといううちの一つに入っているわけです。  私どもの行政でそこらがどこまで直せるのか、あるいはいま、新聞等でお気づきの方もあると思いますが、国税庁が、日本における所得の捕捉がいままでになされなかった分野、アングラマネーの経済といいますか、そういう分野にメスを入れていることが、ここ二、三カ月新聞でごらんになってわかると思います。そういう国税庁からの所得の捕捉、課税、それから独禁法はいわゆる不公正取引、あるいはまたそういう取り決めを横に結んでおればカルテルとか、そういうところで調べてもらって、そういう実態を踏まえながら、私の方では、冠婚葬祭の互助会と銘打っているあの組織がいま大変多いようですが、これの消費者、消費者と言えるのかどうか知りませんが、加盟している人たちがこんなはずではなかったがという悲鳴を上げていらっしゃる点の一つがそこにもある。この三方から、この問題はひとつ文字どおり多角経営で調べていきまして対応を、最終的には、税は税、独禁法は独禁法、私どもは行政上、そういう立場で正常な状態になるようにしたい、そういうふうに思います。
  231. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 大臣の意欲的な御発言をいただきまして、ぜひそのようにお願いしたいと思います。  そこで、公取にもう一度お伺いしておきますけれども、いま大臣からも発言がございましたが、これはどうも異常に多額な持ち込み料を取ることができるような、いわゆるカルテルですね、結婚式場でこれをつくっている可能性があると見られる、これはどう考えますか。もしそうならば、独占禁止法の中での第何条第何項、そういったもののどういったものが適用されていくのか、そういったものも含めて御説明ください。
  232. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 お答えいたします。  結婚式場に貸し衣装など衣装を持ち込むに際しましての持ち込み料の金額、料金といいましょうか、それについてカルテルがあるのではないかというような御指摘でございますが、私どもで承知しておりますのは、都内の結婚式場の八業者だったかと思いますが、その業者が話し合いをして、持ち込みを禁止するとかあるいは持ち込み料を取り決めるとかいうような話があったとか聞いておるわけでございます。  先生の御指摘のカルテルがどのようなものか、ちょっとわかりかねますけれども、仮に事業者同士が話し合いをしましてそういうような料金を取り決めるということによって、貸し衣装の持ち込みの取引分野において競争を実質的に制限するというような疑いがありますと、独占禁止法の第三条の後段の「不当な取引制限」の規定に違反する疑いがございます。また、このような行為を事業者団体が話し合いで実施しているということになりますと、これは独占禁止法の八条一項一号の規定に違反する疑いが出てくるわけでございます。  いずれにしましても、もしそういう事実がありましたら、実態を把握して、法の適用も検討したいと考えております。
  233. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 そこで、先ほど、利用者が持ち込みの料金とかそういうものは事前にわかるのだから、少なくともそれを選ぶ権利は利用者にあるのだから、そういった面も賢明に判断してやっていけばこういうものはないのじゃないかというような発言もございましたけれども、その例の中で若干申し上げておきますが、たとえば、結婚式を行おう、こういうように考えていったときに、まず最初は日取りを決めていくのですね。そして、当日のみんなの状況はどうかとか、これは新婦側と新郎側といろいろな状況があるから、まずそういうところから決めていくのですよ。そして大体のところで決めた上で、今度は、じゃどこにしましょうかというのも大分前に決めてしまうのです。そうでないと、式場をそんなに際になってとるといったっていまはなかなかとれぬ。また、大安がいつだとかいろいろなことがございますし、そんな意味からも相当前に決める。それは大体大まかに決めてしまうのです。中身はどうだとかということを考えないで決めてしまうのです。そしてだんだん日が迫っていって、何カ月ぐらい前かわかりませんが、たとえば三カ月なり二カ月なり前に、印刷もしなければならない、いろいろなところでその中身をいよいよ決めていこうという段階で初めてわかる。そのときに、持ち込み料、これは大変だと思っても、今度はもう変えることができないわけですよ。したがって、これはそんな簡単なものではないということをよく御認識いただきたい。  そこで、公取委員会への報告書、いろいろなものが来ておると思いますが、昨年来ておるのを、私も資料をいただいておりますけれども、その大体の中身、どんな苦情の報告が来ておるのか、それをどういうように今後措置していこうとしておるのかをここで述べてください。
  234. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 お答えいたします。  私どもに寄せられました苦情の内容というのを個別具体的にお答えするというのは、まことに恐縮でございますけれども、独占禁止法の規定上ちょっと遠慮させていただきたいと思いますが、抽象的に申し上げますと、一つは、せっかく洋服屋さんに頼んでつくったウェディングドレスが式場では持ち込み禁止のために着られないとか、そのために返品をされたドレスメーカーが困っているとかいうような話、それは消費者の方あるいはドレスメーカーの話でございますが、貸し衣装の方からしますと、ホテルとかあるいは結婚式場に出入りしている貸し衣装業者の衣装しかその結婚式場あるいはホテルの式場で利用できない、そのために貸し衣装店がそういう業界から排除される、商売が非常にむずかしくなってきているというような苦情も中にはございます。また消費者の方からは、結婚式場等の貸し衣装の点数がどうも十分ではないとか、あるいは、色合いとか何かそういうものでどうも気に食わない、そのために外から自分の好きなものを選ぼうと思っても非常に制約があるとか、あるいはもっとあるかもしれませんが、私の現在記憶しているところでは、そんなような苦情などが主なものではないかと思っております。
  235. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 そこで、もう一点お伺いしておきます。  具体的に、持ち込み料を支払いなさい、あるいは持ち込みは禁止でございます、そういうような現実にぶち当たったときに、今度は、持ち込み料は相当高いから、じゃその中から選びましょう、ましてや持ち込み禁止なんというと、当然その備えつけのところで選んでいかなければならない、これは果たしてこの自由社会の中で、いろいろ自分の好みもあるでしょう、備えつけの中、その少数の中で少ない範囲で物を選ばさせるれるという立場に利用者は置かれざるを得ない、こういった点はどう考えますか。
  236. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 先ほども申し上げてまことに恐縮でございますが、本当は、そういう条件が予約の段階で開示されておりまして、その中から消費者が選択できるというのが、私ども、一番望ましいのではないかというふうに考えております。実際に担当者が結婚式場のパンフレット等を集めてまいりましたところ、その辺が十分じゃないというところが確かにございましたので、この辺はまた今後法的にも検討してみたいと思っております。  それから、先ほど先生もおっしゃいましたように、とにかく六カ月からあるいはそれ以上前から式場だけは決めておいて、細目まで決める段階になって、いろいろ条件が明らかになってくるにつれて利用者の方が不利になっているという点についてどういうように考えるかということにつきましては、いまのところ実は実態を十分把握しておりませんので、これから法律上の問題点を詰めていきたいというような段階でございますので、まことに恐縮でございますけれども、これから先の点は答弁を御容赦いただければと思います
  237. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 先ほどちょっと保留をしておいた問題、大丈夫ですか。――じゃ、答えてください。
  238. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 ただいま中小企業庁の担当課長、こちらに向かっている途中でございますけれども、内容について確かめましたところ、本年度、五十七年度の委託調査事業でございますので、まだ報告書の提出期限に至っていないということでございまして、内容については当方としてはまだ掌握してない状況にございます。
  239. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 中身はこっちへ来るのですか。中身がわかるのですか。質問事項がどうだとか、あるいは何日間でどう回収して今後どうするのかというのはわかるのですか。答えられるのですか。
  240. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 ちょっとそれは承知いたしておりません。
  241. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 ここで答えられますか。
  242. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 委託の内容などにつきまして、後ほど先生の方に御説明に上がりたいと申しております。
  243. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それではそういうようにお願いします、時間の都合もございますので。  それでは、この実態をもう一度お伺いして、大臣ももう意欲的な御発言がございましたので、ぜひひとつこの問題に対して、今後もずっとこれはこのまま放置しておくと大変な問題になっていきますので、したがいまして、ぜひしっかりとお願いしたい。  そこで、もう一点だけお伺いしておきたいのは、大体の方面で結構でございます。具体的に名前を挙げるといろいろ支障があると思いますので、どっちの方面で、あるいはどういったところでは現在どれぐらいの持ち込み料というような、そんな状況を把握しておりましたら説明してください。
  244. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 いま、個別的なものも含めまして、全体の実態を調査中でございますが、たとえば打ちかけですと一回三万円とか、お色直しですと二万円とか、そんなところがわりあい多いと聞いておりますが、これは地域によりまして、またこれもはっきり掌握したわけではございませんが、聞くところによりますと、わりあい大都市で使われた貸し衣装が、いろいろクリーニングなどしまして順繰りに地方に流れていったりするというようなこともちょっと伺っておりますので、そうなりますと、地方では若干安くなるかもしれませんが、まあ有効利用と申しますか、いろいろ利用されているようでございます。そうなりますと、料金もまちまちではあろうかと思いますが、わりあい花嫁衣装の方は若干値段を取っても、最近花婿のお色直し等をする場合もあるようでございますが、そういうのは無料になるというケースもあると聞いております。
  245. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 いま三万円というようなあれが出ましたが、私のもとにある資料では、一番高いところは打ちかけが五万円、ドレスが二万円、色直しが一万円、花嫁衣装の挙式のそのものだけで計八万円かかります。そういった実態を知っていますか。
  246. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 いろいろなケースがあるということで、先ほどお答えいたしましたのはそのうちの一例でございます。
  247. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは時間でございますので、中小企業庁のアンケート調査、そういったものも後ほどまた私の方に資料を提出いただくのと同時に、それがまたまとまってくるでしょうし、それから、いろいろといま調査中である、検討中である、こういう意味も含めまして、今後の通産省としての取り組みの御決意をお述べいただいてこの質問を終わりたいと思います。
  248. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先ほど答弁いたしましたように、この種の分野については当事者がほぞをかむということが重なってきてしか表に出ませんので、私が先ほど申しました割賦販売法に基づく互助会的なものの中身、その苦情、そういうものの問題の解明、それから公正取引委員会の独禁法に違反しないかどうかの実態の究明、それから、ちょっとこれは手段としては私の口から言うのは越権かもしれませんが、現在私の知っている顕著な傾向は、そういういままで余り捕捉しなかった、この問題ばかりでなく、塾の料金とかいろいろな健康教室の料金とか、そんなところまでいま国税庁が動いているように外から見て、外形で推定できますから、そこらで三方から練り上げていくと、おおむねそういうところがわかると思います。適正な条件で、しかも自由営業という原則が阻害されないような姿、そしてあくまでも、消費者が知らなかった、後で泣きの目を見たというようなことにならないように、契約条項その他を解明してきちんとさせる、そして、それでそういうトラブルが起こらないように努力をいたします。
  249. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 ありがとうございました。
  250. 今井勇

    今井主査 これにて竹内勝彦君の質疑は終了いたしました。  次に、横手文雄君。
  251. 横手文雄

    横手分科員 私は、繊維産業関係に関する二つの問題について御質問申し上げます。  まず一つは、昭和四十九年に発足をし、さらに昭和五十四年に改正、再延長されました繊維工業構造改善臨時措置法、これは来年で時限が切れるわけであります。この法律に基づきまして、産地ぐるみ構造改善を柱とした共同廃棄事業その他高度化事業、世界の市場に打ちかつために、この法律によって業界の皆さん方はそれぞれの産地で発展をしてこられ、そしてまた、中小企業の皆さん方はこれをよりどころにしてこられたのであります。しかし、まだ多くの産地で構造改善は進捗の最中でございますし、あるいは、産地によっては世界の新しい衣料、ファッション産業のニーズにこたえてさらに高度なものを、こういったことも計画をされているようであります。しかし、そういう問題に取り組む際には、どうしてもこの法律がそのよりどころにならなければなりません。ところが、来年これが日切れになるということでございますので、一方では期待をしながら、一方ではこの再々延長に対して大きな希望が寄せられております。来年のことでございますので、いまから論ずるのはどうかと思いますけれども、しかし、この種の構造改善事業につきましては一年や二年で済むものではございませんし、準備もまたそれぐらいの時間がかかるわけでございます。この再々延長問題に対して、ぜひやっていただきたいという強い要望がございますが、通産省のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  252. 黒田真

    ○黒田政府委員 ただいま御指摘のように、繊維構造改善臨時措置法が明年の六月末までに廃止しなければならないという法律の規定がございます。御指摘のように、繊維産業、多くの産地がその法律に基づきまして構造改善事業を現在実施しておることもよく承知しております。過去二回、五年ずつ二回の法律があったわけでございまして、今後どういうふうにしたらいいだろうかということが当然問題になるわけでございまして、私ども実は昨年六月の時点で、来年六月以降の状況をどう考えたらいいかということについて考えるために、通商産業大臣から繊維工業審議会及び産業構造審議会の合同会議に対しまして、今後の繊維産業及びその施策のあり方いかんという諮問を実はすでにいたしております。現在いろいろ関係方々にお集まりいただいて、御議論をいただいている最中でございます。  現在のところ、昨年末までにいわば総論のたたき台とでも言うべきものを中間的に取りまとめをいたしまして、繊維産業というものがいままでとかく衰退的に見られていたけれども、決してそういうことはない。知識集約化と創造性を生かしながら、技術革新によって先進国型産業として発展する方向はあるという方向を打ち出していただいておりますので、その基本的なラインのもとで、しからば具体的にどういう方法で構造改善をしたらいいかということを、実は非常に具体的な話になりますものですから、六つほどのワーキンググループのようなものを設けて、現在関係業界の方々、学識経験者の方々、金融機関の方々等にお集まりをいただいて議論をしている最中でございます。  当然今後のあり方を論ずるためには、現在までの構造改善の評価ということも問題になるわけでございまして、その過程で産地の方からは、先生御指摘のございましたように、構造改善事業を進める必要があり、法的な枠組みを延長してくれという強い要望があるということは私ども十分承知しておりますが、そういう議論を踏まえまして、審議会で今後のあり方についての御答申を、できればことしの秋ぐらいまでにいただきまして、その中で今後の方向づけというものを考えていきたいというふうに考えております。
  253. 横手文雄

    横手分科員 まだいま審査の最中であり、きょうここで再々延長の約束をすることは非常に無理であるという御答弁でございますけれども、しかし、その口の裏にはといいましょうか、その心の中には、これが果たしてきた評価を大きくする、さらに発展をしていかなければならないし、これが大きな柱であったという事実の認識はいただいておるものだというぐあいに期待をしておるところであります。  そこで、私はこれを再々延長される、していただきたいという前提に立って御要望を一点申し上げておきたいわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、この法律による構造改善事業が産地の皆さん方から大変喜ばれておるわけでございます。ただ、その際に、再々延長の際にもう一つお願いがございますというのが出てまいっております。と申しますのは、これはソフトとハードの部分から成っておりますけれども、特に産地の皆さん方につきましては、リース制度を十分に活用するハード部分の強化を望んでおられるのであります。  現行法の制定の際に、この問題については附帯意見として、弾力的な運用をという附帯意見もつけられていたわけでございまして、十分通産省としてもその点については御承知のとおりでございます。つまり、このハードの部分をより積極的に強化していただきたいということが当時からあったということでございます。今回再々延長の際にも、そういった点について十分留意しながら再々延長の方向で検討していただきたいという強い要望が出てきております。この問題についてひとつ通産省のお考えをお聞かせをいただきたいと存じます。
  254. 黒田真

    ○黒田政府委員 先生御指摘のとおり、現在の構造改善臨時措置法に基づきます構造改善事業の中では知識集約化というようなことを旗印にいたしまして、先生のお言葉を使わせていただきますならばソフトの面を相当重視をして、商品開発センターというようなものがその中に据えられるような縦型のグループをつくりながら進めていくんだという一つ考え方を示しております。いろいろその後の経緯を見てみますと、実需直結型といいますか縦型の異業種間の結びつきがいろいろな形で起こっておりまして、それは必ずしもこの法律に載っておるものばかりでなく、一つの繊維産業の発展の構造改善の姿を示しておると思いますが、他方いま御指摘がございましたように、ソフトを重視するといっても、その前提になる設備面の近代化、合理化というものが、これがまた意外に早く進んでおるということも事実でございまして、そちらの面での近代化、合理化の要請、特に近隣諸国における技術革新が進んでいるというようなこともにらみ合わせますと、先生御指摘のようなハード面、設備面でのリース事業を含む近代化への要求というものが非常に強いということも、現在の検討の中で強く表明されておりまして、今後施策の方向を考えていく際には、ただいまの御指摘の点は十二分に考慮に入れながら検討さしていただきたいと思っております。
  255. 横手文雄

    横手分科員 ぜひそういう方向で、つまり産地の皆さん方がこれを生業としてさらに発展をさせていく、そういうことで真剣に取り組んでおられる。その人たちが最も食べやすいような形、そういったメニューというものをぜひそろえていただけるようにお願いを申し上げておきます。  次に私は、アメリカのわが国繊維製品、織物に対するダンピング提訴問題についてお尋ねをいたします。  本年一月四日、ATMIは、わが国ポリエステル長繊維薄物織物につき、米国商務省に対しダンピング提訴を行いました。その後商務省の正式受理、同時に提出されていたITCもダンピングの仮決定を行ったのであります。  わが国の業界あるいは通産省もこれらの提訴に対して強く抗議をし、被害なき訴えである、こういうことで米国に対し、通産省は商務省に対し、あるいは業界の皆さん方は一体になって弁護士の相互契約、こういうことを行いながらこの提訴に対して反論の態勢をつくられているのであります。  現在の状況についてお伺いをいたします。
  256. 黒田真

    ○黒田政府委員 ただいま御指摘ございましたように、日本から輸出されておりますポリエステルを主体といたします薄手の織物につきまして、アメリカの繊維製造業者協会、ATMIというところが本年の一月四日に商務省に対して、ダンピングの疑いがあるということで提訴をいたしました。アメリカの法律の場合には、その提訴が一応ある事実に裏づけられている、その申し立てを支持するに足る、その時点で合理的に入手し得る情報を添付して提出したときは、それを取り上げなければいけないという規定がアメリカの方のダンピング手続法の中にあるようでございまして、その後二十日間の期限を置いて、一月二十四日には、商務省が調査開始という決定をいたしております。  その後ITC、国際貿易委員会で、被害面についてとりあえずの非常に予備的な調査をして、どうもその疑いがあるようだということが四十五日間の検討の後出されているということで、現在いわばこれから本格的な検討が始まったところでございます。先生御承知のように、ダンピング制度といいますのは、一方がその疑いがあるぞと言って訴え出ますと、大変厄介なことでありますが、訴え出られた方はそのそれぞれについて理由がない、あるいは根拠がないということを事実に即して争う一種の争訟手続のような形になっておりますので、弁護士費用等まことにばかにならない点があるわけでございますけれども、現在アメリカの弁護士等に依頼をいたしまして、先方の申し立ての根拠というものを一つ一つつぶすといいますか、理由がないあるいは根拠がない、解釈が誤っている、判断におかしいところがあるというようなことを反論すべく準備が行われている。一方、アメリカの商務省なり国際貿易委員会がいろいろ細かい資料の要求をしておりまして、この資料を出しませんと、入手した資料だけで判断するぞというような規定にもなっておりますので、差し支えない範囲でできるだけ詳細なものを準備しているというのが現状でございます。  今後それぞれ日数の枠がございまして、間もなく何かの判断が、早ければ六月、遅ければ八月に出るということになっております。政府といたしましては、このような提訴は、特に日米繊維取り決めの中で私ども規制をしている品目でございますので、数量の規制を一方でしながらダンピングをしているはずはないじゃないか、また国際繊維取り決めの中では追加的な措置を差し控えるということになっておりますので、現在そういう考え方を先方に伝えて善処を求めておるという状況でございます。
  257. 横手文雄

    横手分科員 御説明がございましたように、今回米国が対象とした薄地織物、ジョーゼット、デシン、ポンジーの各品種は、米国ではほとんど生産をされていない品種である。特にジョーゼットについては皆無であると聞いておるわけであります。にもかかわらず、そのダンピング率が最高二一〇%というまさに狂気のさたと思われるような率を出しておるわけでございまして、これはためにする筋書きと言わざるを得ないのであります。  わが国のポリエステルは定番品ではアメリカに太刀打ちができない。したがって、技術力を駆使して差別化製品の開発に心血を注ぎ、定番品にかわった製品としていま北陸産地を中心にして主力製品として定着をしておるのであります。そしてアメリカを初め世界の市場へ供給をしております。国際競争力に勝つためには、血のにじむような努力の結果開発された安くてよい品物、こういったものがダンピング呼ばわりされるというのであれば、産地の苦労あるいは原糸メーカーの苦労は一体何だったのだろうかというぐあいに言わざるを得ないのであります。まことに残念なことであります。  しかも、米国は公正価格という物差しを出して、それでもってダンピングを立証しようとしておるのであります。産地の人たちにとっては何としてもこれは納得のいかない、まさに理不尽と呼んでもいいのではないかというような気持ちでおられるわけでございますが、通産省の御見解はいかがですか。
  258. 黒田真

    ○黒田政府委員 確かにポリエステルを主体といたします薄手の織物、ジョーゼットとかデシンというものの特に高級品は、日本が開発をして輸出市場で非常に珍重されておるというものでございますし、私どももアメリカではつくれないというふうに聞いております。ただ先方の申し立ては、これからつくろうと思っているところへ日本の非常に高級なものが非常に安い値段で売られているために、自分たちが産業をその分野で確立しようと思うのがうまくいかないという理屈をとっておるというふうにも聞いておりますし、先生御指摘のように、コストを調べるに当たって自分たちのコストにそれぞれ日本で予想されるレベルを当てはめて、どうも自分たちがつくると三倍くらいかかりそうだということで、御指摘のようなダンピングのマージン率を申し立てておるということでございます。いま現在争われておる点でございますが、率直に申しまして、私もはたから第三者として見たときに、御指摘のように相当無理をした議論のようには思われるわけでございますが、先ほど申しましたような一つの裁判手続に類似したような手続の中で現在争われているところでございまして、当然その中で先方のいろいろなおかしな主張については駁撃をしておるというふうに聞いておるところでございます。
  259. 横手文雄

    横手分科員 いま御指摘のように、このダンピング提訴を考えてみた場合に、ダンピング税の率、こういった観点から見て、アメリカは国内でこれから薄物生産に着手しようとしておる。しかしこのままでは先発国である日本製にとうてい太刀打ちができない。したがって、米国における生産が軌道に乗るまで日本製品を無理やりに締め出そうとしておる。そのために不当廉売である、ダンピングである、こういったところに結びつけているような気がしてならないのであります。こういった指摘に対して通産省の御見解はいかがですか。
  260. 黒田真

    ○黒田政府委員 先ほど御指摘ございましたように、この品物は日本が工夫して日本が開発した品物で、非常に珍重されている。現実にアメリカで売られているものよりはむしろ高く売られているというような状況もあるわけでございますので、彼らにとってみれば、何とか日本に追いつきたいという気持ちはあるのだろうと思いますが、それに対してとんでもない高率のダンピング税を課するように要求しているということは、私どもの目から見ますと大変無理な要求ではないかというふうに考えております。
  261. 横手文雄

    横手分科員 アメリカに対するわが国の繊維製品の輸出については、MFA、つまり二国間協定が結ばれておるのであります。アメリカの繊維市場に打撃を与えるおそれがある。したがって、わが国からアメリカへの輸出はこの協定によって数量規制が行われております。しかもアメリカからの輸入については、わが国は二国間協定を結んでおりません。ことほどさようにアメリカの市場を乱さないようにということで、わが国は拘束をされながら今日までがんばってきた。そしてその拘束の中で何とか生きていかなければならない、定番品では勝てないということでこの薄地高級品に乗りかえてきた。いま申し上げましたように、アメリカはそのことに対して自分たちが太刀打ちできないからダンピング呼ばわりして、これをシャットアウトしようとしておる。一体二国間協定というのは何なんだろうか、こういう気がしてならないのであります。通産省としても、政府間の協定でございますので、この点について強くアメリカに抗議をしてもらわなければならない。おっしゃるように、ダンピングであるかどうかの争訟については、業界が向こうから出してきたそれらのすべての資料に対して、資料を出してこれを喝破していくということでございましょうし、政府はまたそのようなことで二国間協定を結び、そしてしかもわが国には二国間協定はないというところまで気を使いながらやっているにもかかわらず、今回のダンピング――しかも、ここに生きる道を求めてきた産地の人たちは、もしこれが実現をするといままでの苦労とともに討ち死にをしていかなければならないという事実がある。まさに理不尽であり、ガットは決してそんなことを許してこの二国間協定を容認しているものではないというぐあいに信ずるわけであります。私は、アメリカとは仲よくしていかなければならない、わが国は米国と友好関係を続けていかなければならない間柄であることはよく知っております。しかし、仲よくするということは相手の言いなりになるということでは断じてありません。そういった関係について、最後に大臣の御所見を承りたいと存じます。
  262. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まさにおっしゃるとおり、日米間では日米政府のレベルのものも、議会でも物議を醸していることも含めて、あるいは民間の間のものも、いまの繊維などは二国間協定の数量規制の中でダンピングということはちょっと信じられない、価格の問題のことになるんでしょうが、そういう提訴をすること自体おかしい。鉄鋼なんかでも一遍提訴をして、ブロック代表の来日を前に取り下げておいて、私と会談して片づけて帰ったら、また今度は議会の方に働きかけるとか、最近常軌を逸した行動が多いです。したがって、貧すれば鈍するというのは大変悪いかもしれませんが、逆に言うとそれだけ日本が目のかたきにされる立場に置かれてしまった。このことは民間交渉原則といえども政府のレベルで物を言わなければ解決しないことがあることを今回ヨーロッパ、カナダ、アメリカ等の個別の折衝を通じましてしみじみと感じましたので、この問題も決して放置しないで、すでに再三申し入れを行いながら、私の方からは理不尽である、根拠がない、行き過ぎである、二国間協定違反であるということでやっておりますが、いまのところ具体的な話し合いは民間でということで、政府の方はちょっと後ろに控えておりますけれども、これはこのまま押してくれば、いずれ政府が出ていって片づけなければこの問題は片づかない問題になってしまうということで、時期を失しないように私としても決して労をいとわないつもりでございます。
  263. 横手文雄

    横手分科員 大臣の大変かたい決意をいただいたわけでございまして、おっしゃるように向こうの提訴に対してそうではないという反論は民間を通じてやらなければならないということでございましょうし、そのために一生懸命にやっておられます。そして、そのことのために政府はいろいろな後押しをする、バックアップをしていく。しかし、いま申し上げましたように二国間協定については政府間協定でございます。そして、御迷惑をかけるといけませんから数量で抑えます。しかも、アメリカとの合意の上にこれが行われておる。しかも、その枠はまだあるということでございますね。枠をはみ出して、あるいはよそのところへ忍び込んでこれを乱したということではない。まだその枠の中にはまっておる。この二国間協定が結ばれるときには日本の繊維業界からも通産省に対して大変苦情が殺到したことでありました。しかし、がまんしようじゃないか、こういうことでやったわけであります。この点について通産省はもう一歩踏み出す必要があるのではないかという気がいたします。この反論は民間の皆さんがおやりになればいい。しかし、そういうことにならないように政府間協定というものがある。これが前提になっているということについて通産省がその方面で一歩を踏み出す必要があるのではないか。  申し上げてまいりましたように、わが国はアメリカと敵対関係になってはならない、友好関係を結んでいかなければならないというのは国是であると私は思います。しかし、仲よくするということは言いなりになることではないというぐあいに信じておりますが、その点についていま一遍大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
  264. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私はその点はきわめてはっきりしておりまして、友好国であってもわがままは断じて許さないということで、事務当局は少し態度が厳し過ぎると私の交渉をはらはらするくらい激しくやっております。たとえば、ほかの例をとりますが、自動車のわれわれから見れば自主規制の三年目をやるかやらぬかという問題については、対前年台数は同じということでやることにしました。しかし、向こうが要求すると言われておりました四年目についてはきっぱりと断って帰したということなども示しておりますように、それで大丈夫でしょうかと心配する事務当局を振り切ってまで、ECについてもそうでありますが、大臣独走は心配だというくらいやっております。この問題はいまのところ先ほど申したように側面からの応援でありますけれども、どうしてもアメリカ側がごり押ししてくる場合はこちらの方もすね相撲をやるということで、辞するものではないというつもりでおりますから、その意味で元気づけてあげておいてください。
  265. 横手文雄

    横手分科員 先ほど申し上げましたようにこの商品を開発するために原糸メーカー、そしてこれを受け持って織物にする産地、まさに血のにじむような努力でございました。何とか安くいい物ができないかということでまさに労使挙げて、労働組合もこれに対して全面的な協力をしながら世界に冠たる製品をつくり上げてきた。これがダンピング呼ばわりされるということはまことに理不尽と言わざるを得ません。どうか産地の皆さん方の御期待にこたえて、日本の通産大臣として今後がんばっていただきますように御要請を申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  266. 今井勇

    今井主査 これにて横手文雄君の質疑は終了いたしました。  次に、中島武敏君。
  267. 中島武敏

    中島(武)分科員 私は、きょうは中小企業の問題についてお尋ねしたいと思っています。  中小企業の倒産は昨年十月以来連続して危機ラインと言われる千五百件台を突破しています。また、六年連続の所得税減税なしで実質上の大増税になっている。しかも人勧が凍結をされた。このことを口実として民間におきましてもことしの春闘はゼロ回答をするのだということを言っている。恩給や年金の物価スライドも凍結されている。こういう状態ですから、国民の購買力は大変低下をしてくる傾向になるわけであります。特に個人消費に依存度の強い中小企業は非常に大きな影響をもろに受けるという実態になっているわけであります。また一方、大企業が中小企業の分野にまでいろいろ進出をしてくるということも随所に見られることでありまして、このためにも中小企業の経営が圧迫されているという実態であります。  ところが、国の中小企業対策予算を見ますと、五十八年度の予算で言いますと、中小企業基本法が制定されてから初めて対前年度比マイナスという実態になってきているわけであります。私は、こういうとき、予算の支出増を伴わない官公需の中における中小企業発注の比率を大きく高めることが非常に大事であって、これが中小企業を助けるものでもありますし、また景気を回復していく道でもあると思うのです。そういう点で、まず最初に大臣の見解をこの点について伺いたいと思うのです。
  268. 山中貞則

    ○山中国務大臣 中小企業の予算の対前年比減ということは厳然たる事実で私も認めますが、政府の全体の要求枠そのものをマイナスシーリングにいたしましたために、これは私の就任前のことでありますが、各省とも同じでありましょうけれども、全部対前年より切り込んだ概算要求をするわけでありますから、その意味で、中小企業のその減少は何を具体的に意味するかという問題について言いますと、一様に減はしたものの中小企業の予算に計上された部分は、末端の経営指導員等のものもありますけれども主として行政経費でございます。ですから、それはまあ多いに越したことはありませんが、中小企業対策の決め手は、税と金融のいかなる組み合わせで運用して活力を生み出させるかということに原点はあると私は信じていますので、したがって、税の問題で創業者の世がわりの世代が来たためのここ数年大問題になっている事業承継の際の税制、それから財源が非常に苦しいときであってもなお財源対策を持っていないで政策だけ要求しました形の、少し無理を言ったのでありますが、中小企業投資促進税制、さらにまたもう一つ何だったかな……(神谷政府委員「承継と投資促進とみなし法人への課税の延長」と呼ぶ)聞こえていたでしょうから、そこらのところで意を用いまして、実際上に中小企業者が受け取った場合にずしりとしたものが感じられるようなものにしたいと考えてずいぶん工夫をこらしたつもりでございます。  それから、官公需の問題については中小企業庁で取りまとめをさせておりますけれども、何しろこれが命令的な権限を持っておりませんので、あくまでも各省庁への協力お願いという形でありますけれども、今回はことに全体の予算もマイナス、それに公共事業費的なもの、これも前年同額ということでありますと、前年の実績二七・二%かな、いや三七・二%、これを減らさない努力をするのが精いっぱいじゃないだろうかということで、しかしそれでもなお目標としてはそれを高めたいということで、先般も私の手元で会議をいたしまして、国家の建物等については建設省の営繕が一手にやっておりますし、そこらともいわゆる二省庁間の交渉といいましょうか、そういうものを踏まえながら、各省にぜひ中小企業の国家受注、官公需の受注というものを高める努力をしなさいということで具体的な指示をして、いま長官以下努力をしておるところでございます。
  269. 中島武敏

    中島(武)分科員 中小企業向けの官公需の発注率、大臣、二七・二と言い間違えられましたけれども、そういうところにちょっと象徴的に私はあらわれているのじゃないかと思うのですけれども……。
  270. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そんなことないです。金額を言います。三兆九千百八十億円。
  271. 中島武敏

    中島(武)分科員 あらわれているんじゃないかと思うのですけれども、五十六年度の実績で見ますと、官公需の中小企業向けが減っている省庁があるのです。どこの省庁ですか。
  272. 神谷和男

    ○神谷政府委員 公害調整委員会、総理府、科技庁、法務省というところが減っておると思います。
  273. 中島武敏

    中島(武)分科員 さらに労働省や厚生省なども減っていると聞いていますが、恐らく間違いないと思うのですね。それで、なぜこれは減るのか、減っているのか、この点について伺いたいのです。
  274. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御質問の各省庁、おのおのの事情がございますので、一律的に申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども、一般的に申し上げれば、一つはやはり全般的に予算の節約、マイナスシーリングといったようなことで、細々という言葉が適当かどうかは別といたしまして、中小企業が比較的受注しやすいような一般的な経費の節減というようなことが相当行われておる、こういうことが一つございますし、さらに省庁によりましては中小企業向け発注が困難な大規模な新営工事の発注案件が急増しておるというようなところで減っておる省庁もございます。ただ、一般的に言えますことは、御指摘のございましたような省庁は、どちらかといえば全体の中ではむしろ非常に中小企業向け発注が高い省庁でございまして、これまで非常に努力をしてきてもらっておるものとわれわれ了解をいたしております。そういたしますと、高いところでございますし、ぜい肉がございませんから影響もなかなか受けやすい、こういうことで、この辺の事情はあろうかと思っております。しかし、先ほど大臣も御答弁いたしましたように、こういう時期、できるだけ政府全体としては引き上げたいと思っておりますので、各省庁とさらに御相談をして、よくお話を伺って、協力を要請したいとは思っております。
  275. 中島武敏

    中島(武)分科員 特別に何か要請でやろうというような計画がありますか。そこは積極的にどんどんふやすという方向で努力を願いたいと思っているのです。
  276. 神谷和男

    ○神谷政府委員 官公需の取りまとめ、官公需法は御承知のように国の責務、各省庁大臣としても努力をしなければならないことになっておりますが、先ほど大臣が御答弁いたしましたように、私どもの方が取りまとめ官庁、こういうことになっておりますから、権限の問題は別といたしましても、あるいは中小企業の立場に立って中小企業の利益になるようなものを増進していかなければならない役所である、通産省はそういう役所であるという前提から、われわれとしてはこの取りまとめの段階で従来も各省庁にいろいろ努力を要請しておるわけでございます。しかし、ことしのような状況でございますので、大臣のところの会議では、私どもは例年以上に各省庁、いま申し上げました省庁だけではなくして、その他いろいろ影響の大きい省庁もございますので、おのおのの省庁とよくバイラテラルなお話をし、協議をし、必要な要請を強く行いながら全体としての目標額を、先ほど大臣が申し上げましたように、自然でいけば恐らく契約率というのはマイナスになるのじゃないかと思われるような要素も多々見られますけれども、そういう中でできるだけ一歩前進できるようなことにしたい。何をするかと申しますより、そういう努力の積み上げで進んでいきたいと思っております。
  277. 中島武敏

    中島(武)分科員 次に、官公需適格組合の発注問題、この問題について伺いたいと思うのです。  中小企業に少しでも官公需発注をふやそうということから昭和四十二年に官公需適格組合の制度ができたことは御存じのとおりであります。現在全国で四百三十一組合あるといわれております。  ところで、お尋ねしたいのですけれども、官公需適格組合の五十六年度の受注実績及びそのうち国等からの受注実績はどうなっているか、この点であります。
  278. 神谷和男

    ○神谷政府委員 五十六年度の官公需適格組合の受注額がトータルで五百三十五億円でございます。そのうち国からの発注分百二十一億円、こういう数字になっております。
  279. 中島武敏

    中島(武)分科員 国と地方と比較してみますと、大体一対四という中身だと思うのです。昨年出された行管庁の監察結果報告、これを見ますと、国の場合に、二十五省庁のうち八省庁が、九適格組合に対して八十六件発注しているというふうになっております。非常に少ないのですね。国等の中でも特に中央官庁が少ないということは言えると思うのですね。  それで、これはちょっと余りにも消極的なのじゃないかという気がするのです。せっかく中小企業庁の指導で、官公需適格組合を大いにつくらせた。ところが、どうも仏つくって魂入れずという感がなきにしもあらずなわけであります。これはもっと強めてもらいたいと思うのですけれども、なぜ国等が少ないのか、特に中央官庁が少ないのか、これはどういうふうに考えておられますか。
  280. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘の行管の報告書は確かに八十六件ということになってございますが、これに対応する金額が二億四千万ということになっております。先ほど申し上げましたように、国等が同年度に適格組合に発注したものが百二十一億でございますから、この二億四千万という数字は、俗に言えばいわゆる本省庁の分でございます。確かに御指摘のように、本省庁が二億四千万、残りの百十九億近いものが地方支分部局、さらに四百億強というものが地方公共団体、こういうことになっておりまして、やはり本省庁で一括購入をしなければならないようなものというのは、一般的に言って中小企業発注になじみにくいものである。それより地方支分部局の方がよりなじみやすいし、地方公共団体がさらにそれよりもなじみやすいという一つの傾向を示しているものだと思います。  ただ、それにしても中央官庁はもうちょっとがんばらなければいかぬじゃないかという御指摘もございます。われわれといたしましては、適格組合であるから必ず注文がとれる、そう安易に考えていただくと困るわけですけれども、しかし、せっかく適格組合ということで受注活動をやっており、組合としての実力をある程度われわれとして保証しておるわけでございますので、そういうものをできるだけいろいろな機会に発注の対象としてよく考えていただくよう、さらに各省庁に要請もしたいと思いますし、適格組合にもまた受注努力等の要請もしたい。これも、今回の五十八年度の計画等をわれわれがまとめていく際に、各省庁とよくお話もしたいし、その閣議決定が行われた後のフォローアップでもさらにその努力を積み重ねたい、このように考えておるわけでございます。
  281. 中島武敏

    中島(武)分科員 いま、大いに努力をしたいということでありましたので、ぜひそのようにしていただきたいと思うのです。  私も、率直に言って、この監察結果報告を読んで、非常に驚きました。といいますのは、「国等の発注機関における適格組合の活用の消極性がうかがえる状況となっている。」特に具体的なことが書いてありまして、契約担当課の窓口で事実上の門前払いをしている機関があるとか、あるいは、指名競争入札あるいは随意契約の見積もりなどに参加の機会を与えない機関がある。おまえのところには発注する気持ちはないのだから二度と来るなというようなことを言ったということも書いてあるのですね。これはなかなか周知徹底しておらぬのじゃないか。  もちろん適格組合の方でも営業努力をやるということは、私は当然のことだと思っているのです。しかし同時に、官の側からもっと積極的な努力をやる、こういうところに指摘されているような態度は改めるべきだ。やはり適格組合をせっかくつくっているのですから、適格組合の側からの努力も必要ですけれども、ひとつ適格組合には一〇〇%受注の機会、指名参加の機会あるいは見積もり合わせの機会というようなものを与えるべきじゃないかというように考えるのです。この点どうですか。
  282. 神谷和男

    ○神谷政府委員 私は、当初はむしろ適格組合制度は地方で余りよく認識されていないのではないか、こういうことで、参りましてからも、できるだけ地方の末端にこの組合の制度、内容並びに趣旨を周知徹底するように、こういうふうに担当課等にも要請しておったわけでございますが、先般の行管の報告では、先ほど申し上げましたような理由があってある程度やむを得ないとはしながら、中央省庁でも十分理解されていない面もある、こういうことでございますので、さらに努力をしていきたいと思っております。  ただ、具体的におのおのの省庁で入札に参加する際の資格要件等がございますので、これはやはり取っていただきませんと、それなしで参加したいということになると、門前払いという言葉は別としまして、これはむずかしいですよということになりますので、その辺の資格を取る際に適格組合等に関して優遇をしていただいている省庁もございますので、そういう省庁の例等も他の省庁にさらに広げていくように努力もしたいと思っておりますし、そういうものがさらに拡大できないかということも御相談していきたいと思っております。
  283. 中島武敏

    中島(武)分科員 資格を持っているところに対して言っているから問題なんですよ。そこは履き違えないように。  やはり通達を出すとかそういうふうにしてよく徹底を図るべきだと思うのです。何か特別な措置をとろうというふうにお考えですか。
  284. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いままではどういうことでやっていたのか知りませんが、私は、行管庁の注意といいますか、監察結果の報告も受けたことであるし、今回は私の考えというものを中小企業庁長官に伝えまして、そして、少なくとも、環境が悪くとも受注率の低下をさせてはならぬ、こういう環境であっても少しでも引き上げる努力をしなさいということで直接の指示をいたしておりますから、横の役所に通達というのはなかなかできませんので、官庁間のよき理解、協力というものを通じて、努力しようとしている姿勢だけは確かにとっておるつもりでございます。
  285. 中島武敏

    中島(武)分科員 では次に、特定品目、この問題についてお尋ねしたいのです。  最初にちょっと防衛庁に聞きたいのです。来ておられますか。  防衛庁は特定品目契約総額の四四・三%を占めている。非常に大きいのです。それで、その特定品目の防衛庁における中小向け発注比率は一体幾らになっているのかという点についてお尋ねします。
  286. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 二二・三%でございます。
  287. 中島武敏

    中島(武)分科員 それは何年でございますか。私の見ておりますのは五十六年ですが、これは監察結果報告によりますと二・五%となっていますよ。
  288. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 私の資料によりますと二二・三%でございますが……。
  289. 中島武敏

    中島(武)分科員 どうも資料が食い違っておりますね。どっちにしても、非常に中小発注が少ないということは言えるのですね。他の省庁の平均というのは非常に大きいですからね。政府全体の平均は七四%ぐらいでしょう。ところが防衛庁は少ない。これは一体何でこんなに少ないのですか。
  290. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 防衛庁が発注いたします特定品目のうち、織物、繊維製品、外衣、下着瀬につきましては、制服類の占めるウエートが大変多うございまして、これらのもの、制服類は、自衛隊の任務の特質上、独自の規格に基づく良質で統一されたものが要求されることになります。このため、この種の制服額をもし中小企業に発注した場合には、制服は部隊の威容を保つために、色とか形等の斉一化がぜひ必要でございますので、調達年度によって、また同一年度内でも異なったものが入手されるというようなことのふぐあいが生じがちでございますし、こういう斉一化が中小企業に発注した場合にできるかどうか、それから受注業者が表地を初め各種材料をタイムリーに確保できるかどうか、それから価格の面で安定して果たして取得できるかどうか、かつ経済的な調達が可能かどうか、それから製造期間が比較的短いものでございますので、納期の確保が保証されるかどうか等の問題がございまして、現在は大手の紡績メーカーに発注しております。そういう結果になってございます。
  291. 中島武敏

    中島(武)分科員 制服についてはなるほどそういうこともあるいは言えるかもしれませんが、下着、こういったものはもっと中小企業に発注してもいいんじゃないですか。また、こういう比率を高めるべきではないかと思うのですけれど
  292. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 下着につきましては、冬シャツ、冬ズボン下、夏シャツ等は適格組合に発注しております。
  293. 中島武敏

    中島(武)分科員 発注しているのは知っているのです。それをもっとふやすべきではないかという趣旨なんです。
  294. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 現在下着類の調達は、中小企業組合と随意契約をしておるわけでございますが、その他の物品も一般競争入札でやっておりまして、私ども、発注の情報を中小企業団体中央会を通じまして広く連絡する等の努力をいたしておるわけでございますが、比較的中小企業が受注しやすいような額のものも大手の商社が受注していくというようなケースがございます。これは価格面の問題かと思うのでございます。
  295. 中島武敏

    中島(武)分科員 中小企業でやれるものも、いま言われたように大手の商社が受注していっている、こういうお話ですね。私は、こういうのは中小企業に発注するというようにするべきじゃないかと思うのです。  これは長官、いまのお話を聞いておってわかると思うのですけれども、せっかく特定品目制度を設けているのですから、やはり特定品目は中小企業に一〇〇%発注するというような方向で努力をするべきじゃないでしょうか。これは防衛庁を初め他の省庁でももちろんのことですけれども、防衛庁はちょっと何か、話を伺っているとひどいな、もっと改善の余地があるのだけれども何かできないでいるような、そういうふうに聞こえますね。長官、どうですか。
  296. 神谷和男

    ○神谷政府委員 特定品目は一般に中小企業比率の高い品目でございますので、概して言えば、中小企業が入札に参加をして受注を得ることが比較的可能な品目を選んでおるわけでございます。ただ、先生が例に挙げられました衣類等に関しまして、私どもの見るところでも、やはり制服等、大量でかつ規格その他を統一する必要があるものを多く購入している役所というのは、どちらかと言えばその面で比率が少なくなってきておる、こういうような例もございますし、また、大量に発注する場合、いまの御指摘のようにやはり大手が取っていく例があることは行管等でも指摘をしておるところでございます。したがいまして、ただいま防衛庁の方からお答えがございましたように、その品物の性格上どうしても必要だというものを除きましてはできるだけ、閣議決定でも言っておりますように、分割発注というような形を極力とっていただきまして、いわゆる入札資格で、グレードがございますが、中小企業同士で競争しながら取っていけるようなものが予決令との関係予算の適正な執行に反しないという範囲内では努力をしてもらわなければいかぬだろう。したがって、分割発注というものが非常にむずかしいのか、銘柄指定が外せないのかといったような問題に関して例示的には私どももまた各省庁と個別に協議をし、われわれの御意見を申し上げ、いろいろお考えをいただいて一歩一歩前進させていきたいと思っております。
  297. 中島武敏

    中島(武)分科員 最後にこれは長官、特に大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、私の質問は中小企業の定義の問題なんです。中小の建設業の実態を見ますと、三百人以下――三百人といいますと、これは資本金では何十億もの大企業であります。これは一例にすぎないのですけれども、業種によっては現行の中小企業の定義が実態にそぐわない、そういう面があります。私は、この際中小企業の定義を見直すべきではないかと考えるのです。現在、先ほどから御答弁のありましたように、中小企業に対する官公需の発注は三七%というわけです。これは定義を見直して実態にそぐうものにして、なおかつ三七%を確保するということになれば、中小企業に対する発注が内容的に、実質的に、飛躍的に非常に多くなるのではないかと考えるのです。そういう現在苦しんでいる中小企業に対する問題を考えていく場合に、この定義の問題についても見直すべきではないかと考えるのですけれども、どうでしょうか。
  298. 山中貞則

    ○山中国務大臣 確かにいまの中小企業、逆に言うと大企業の仕分けは法人税の仕分けとほぼ同じ。ところが業界の実態から見れば、いま建設業を例におとりになりましたけれども、三百人の従業員のいる建設業は大きいですよね。しかし、その区別からすると中小企業になってしまう。そこらの実際の仕事の面と中小企業の定義のあり方についていままで余り議論したことがない分野ですから、御発言を機に少し勉強してみましょう。
  299. 中島武敏

    中島(武)分科員 終わります。
  300. 今井勇

    今井主査 これにて中島武敏君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。     〔主査退席、浦野主査代理着席〕
  301. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 まず、商品取引の問題について承りたいと思います。  見ておりまして、大変な合理化と前進が行われているときでございまして、前進している途中ではあると思いますが、現在、商品取引の多様化に伴いまして銀とかプラチナとかバナジウムとか、そうしたものの取り扱いも非常にふえてきた様子でもございますし、この際、東京金取引所の中に上場するか、あるいは別の形で上場するかは別にいたしまして、こうしたことについては当然検討もされているやに伺っているわけであります。今後どういう段取りでこうした問題を処理されていくか、また、その基本的方向について承りたいと思います。
  302. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘の銀、プラチナの件でございますが、商品取引所の上場品目にいたしますためには取引所審議会に諮る必要があるわけでございます。その取引所審議会に諮るためには、私どもとしましても、上場が適切であるかどうかということの判断を持った上でないと審議会に諮問をするわけにまいりませんので、現在は通産省産業政策局の中に、学識経験者から成ります商品等の取引問題研究会というのを設けまして、ここで国際商品の新規上場の可能性を含めまして、いま検討いたしておるところでございます。  この場合に、何を検討するかということにつきましては、いま御指摘のありました銀、プラチナを、まず一番可能性の高い適当な品目じゃないかということでお諮りをしているわけでございます。これにつきまして、現在行っております議論は、国内の関係業界から公正価格の形成なりあるいはリスクヘッジの必要性等について事情を聞いておるという段階でございます。  結論を出す時期は、いまのところはことしの春、できれば四月ぐらいには一応の結論を得たいというふうに考えております。この結論によりまして、仮に上場の必要性が認められますと、商品取引所審議会に諮問をいたしまして、関係業界の意見も幅広く聞きまして、その上で取引所審議会からお答えをいただく。そうしますと、この前の金取引の経験から申しますと、大体一年ぐらいかかるんじゃなかろうかという感じを持っております。まあ秋ぐらいに取引所審議会から結論を仮にいただくとしましても、実際に動き出すのは一年ぐらいかかるのじゃなかろうか。  仮にプラチナの上場が可能になりますと、もう一つ副次的な効果といたしまして、現在被害が多発しておりますブラックマーケットが禁止できるということになりますので、そういうことも考慮に入れて現在研究会で検討をいたしておるという状況でございます。
  303. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 いまのお話ですと、大体の見通しをかなりはっきりおっしゃっていただきましたので、今年の春には、適切であるとの判断が研究会で出てきて、審議会でそれがそのとおりの結論が出ていって、その上で政令の指定が行われてという形で、ことしの四月に一応の結論が審議会に出て、来年実際的な取引になる、こういうことなんでございましょうかね。  そうすると、私、ここのところで非常に事態がテンポが遠く物事が起こっているものですから、被害が非常に多い。そしていわゆる商取法八条の解釈変更の問題も、いまから言えば幾らでも言いようはありますけれども、大変たくさん海外商品先物取引で事故が発生している。通産省の方からいただいたデータでも、昨年一年間の相談が九百二十件、被害金額二十一億九千七百八十七万円、平均四百四十五万円と、全体の六〇%が百万から一千万の被害だというように、大変な被害である。  しかもこれについて、最近はこの海外商品先物取引法に基づいて指定をしたのが裏目に出て、香港の金を押さえたら今度はロンドンの金とかニューヨークの金に行く。中にはアメリカの石油とか、私がきのう聞きましたのはもっと痛快なものがたくさんございまして、何とも言えない奇妙なものが次から次へと――カナダの木材とか、何だかよくわからないものが幾つも幾つもございまして、そういうのに基づく抜け穴商法と申しますか、被害が多発をしている。ですから銀、プラチナ、せっかくおやりになる御様子でしたら、これは少しスピードアップしておやりいただくことが要るんではないかということが一。  それから二。すべての先物についてなるべく市場に引き取るか、引き取れないのだったらそれは海外商品先物取引法に基づいてやめなさいというふうにいくか、または、それができないなら海外商品取引業者そのものを許可制にするというふうにしてにらむか、何らかの方法が要るんではないかと思いますが、その点いかがお考えでございますか。
  304. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 スピードアップの件でございますけれども、私どももできるだけ早く結論を出していきたいというふうに考えております。ただ、取引所に一たん上場を決めまして、後でこの取引が十分円滑にまいりませんとまたかえって問題を大きくいたしますので、関係者の間での議論を十分尽くした上でやってまいりたい。方向としては、御指摘のようになるべく早く持っていきたいということでございます。  先ほど、あるいは私がちょっと御説明を間違えたかもしれませんが、四月に結論が出るのは審議会ではなくて研究会でございます。先ほど先生、研究会でなくて四月に審議会とおっしゃいましたが、研究会が大体四月ぐらいの感じ、その先に取引所審議会ということになろうかと思います。  それから第二点の、最近起こっております消費者のいろいろな苦情問題でございますけれども、いまのところ、すべての商品をこの商品取引所法の対象に持っていく情勢ではなかろうと思っております。やはり問題がかなり出てきて、そしてそれがまた他方で商品取引所の上場品目として適格性のあるものでないと取引所の対象品目にするわけにはまいりませんので、先ほどお示しの、すべての商品をこの取引所でやることについてどうかという点については、私どもはやや消極的に考えております。  しからば、いろいろあちこちに出ております消費者苦情についてどう取り組むかという件でございますけれども、これにつきましては、海外先物取引法がようやく先々月、一月十五日から施行に入ったところでございますから、これをできるだけ利用してまいりたい。現在問題を起こしておる業者もかなりつかんでおりますので、こういった業者について適切な措置をとってまいりたいというふうに考えております。したがいまして、法律ができて間もない時期でございますから、いまのところ私どもは業者の許可制というところまで飛躍するのではなくて、せっかく施行に入りました先物法をできるだけ利用して、また警察その他とも十分連絡をとりまして、消費者苦情のないように取り締まりなり行政指導なりを行ってまいりたいと考えております。
  305. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 先日シカゴを通過いたしましたときに、シカゴで大量の、大きなスポーツ体育館みたいなところで、三十近くのピットを設けまして、豚もあれば牛もある、穀物もあれば金もある、銀もある。中にはある種類の債券までそこで売られておる。おかしなことがたくさんあるのですけれども、豚のところで非常に値が立っているんで、わあっと買い手が殺到いたしますと、つられて隣の金のところまで一緒に上がったりする。なかなか痛快であるというお話も承ったわけですが、このショー、私は初め、ただ興味を持ったというのにすぎなかったのですが、非常によいことがある。それは単品の商品取引というものは、買い占めにかかるときに少しの、ある程度のお金を動員しますと、完全に買い占められたり完全に売ったりして値を崩したりする相場の不安定性というものが生じてくるにかかわらず、シカゴの場合には余りにも異種額のものが全部そこに入っているために、たとえば豚買い占めが余り先行していると金の業者まで横へ出ていって豚の方にちょいとちょっかいを出す。そうすると結構安定するわけですね。やっぱり商品というものは異種類の商品というものを商品取引の中で加えるということが一つの趨勢なんじゃないかと私は思うようになったわけです。もう一つは、インターナショナルなつながりを商品相互は持っているし、世界的に金融市場も持っているわけなんで、それを小さく区分けしていることがナンセンスだ。そうするとこの商品市場というのはなるべく長時間開いた上、こういう国際的なニーズにこたえる商品取引所にしなければいけないのではないだろうか。翻ってわが国の商品取引所を見ますと、機能麻痺したようなものもあるし、採算がとれなくなってしまったものもあるし、御省でもまた現在着々と統合を進めようという御方向のもとに御研究を続けられておることは風聞しているわけでございますけれども、この際商品取引所というものを統合していくべきではないのだろうか、それはひとつ精力的におやりいただいた方がむしろいいのではないかと思うわけでございます。その点をいかがお考えでございますか。また今後の段取りをどうお考えであるか、お聞かせいただきたいと存じます。
  306. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のとおり、アメリカでは商品取引が大変盛んでございまして、これはアメリカの中のムードがそういった商品取引、投機的な動きなどについても非常に肯定的なムードがあるということが指摘できるのではないかと思っております。日本の場合には、最近のように商品価格の変動がいろいろ激しくなってまいりますと、やはりヘッジの必要性とかあるいは公正な価格形成の必要性というところから、取引所に対する期待も一方では出つつあるわけでございますけれども、まだまだアメリカのように大規模な投資、投機的な参加というのが考えられません。  したがいまして、日本の商品取引の実情に即したかっこうで取引所体制を整備していくことが必要だろうと考えているわけでございますが、ただ御指摘がありましたように、現在の商品取引所のように単品だけでやっていくということは財務基盤をどうしても不安定にいたしますので、御指摘のようにできるだけ上場品目を複数化させて、それによって取引所の経営基盤を安定化していきたいというふうに考えているわけでございます。  これは取引所が法人としてできておりますので、私どもがどうこうしろと言う性格のものではございませんけれども、取引所の方々といろいろ話し合いをいたしておりまして、現在具体的には東京の繊維商品取引所、東京ゴム取引所、それから東京の金取引所の三取引所につきましては関係者の間で統合についてきわめて前向きな姿勢を示しておられますので、私どももこれを積極的に支援してまいりたいと考えておるわけでございます。
  307. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 これはぜひとも積極的におやりをいただきたいと存じております。そうしませんと、一つの取引所を財務基盤が悪いからつぶすなどという話になってまいりますと、それ自体政治問題化する。ローカルな問題としては重大でございますので、逆に反対に足を引っ張られるようなムードになってしまう。重々お願いをしたいと思います。  なおこの際に、大阪において三つの取引所が一つの場で市場を開いておりまして、通産省のいまの御姿勢は、通産省の関連される東京における三取引所の結集でございますが、大阪においては農林省ともお話し合いをなさって、省庁を超えた管轄のもとにおける連携、合併が行われたと承っておるわけでございます。  ここでまず農林省の方に伺うわけでございますが、国内の商品取引所では、農産物市場、砂糖市場等十二市場が農林省関係ではおありだということでございます。今後は商品取引の国際化というものがますます進んでいくことになるわけでございますから、国際商品に限って言うわけでございますが、国内の取引所の経営基盤の強化を図り、国際化に対応するためにも、通産省と御協議の上、大阪式の取引所のセンター化というようなものを進めていくという方向が必要ではないかと考えますけれども、いかがでございましょうか。
  308. 伊藤礼史

    ○伊藤説明員 取引所の経営基盤の強化を図ることは大変大切なことでございます。農林水産省といたしましても、この一環といたしまして、いま御指摘のありました取引所のセンター化等の考え方につきましても、問題点を十分検討しながら取り組んでまいりたいと考えております。
  309. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 農林省側はそういうふうにおっしゃっておるのでございますが、将来として通産省としてはいかがでございますか。
  310. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 農林省と同様に考えております。
  311. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そういたしますと、私は事実上の東京市場とか大阪市場とか、権威ある市場をこの際考えてスタートされた方がいいのではないかと思うのですね。いまつぶれかかったのを一つ持ってくる、もう一つつぶれているのを持ってくる、三つ目にやっと何とか立てているのを持ってくる、四つ目にもうちょっとよさそうなものを持ってくる、何とか練り合わせて一つで暮らせよという割れなべにとじぶた型のものではなくて、むしろ積極的に国際商品市場というものは一体何なのか、そのためには育成すべきものはどの方向なのだということを、現状における私企業のいろいろな考え方に加えて、得意な通産省主導型の御指導があってしかるべきではないか。世界に冠たる名前の通産省が、この問題だけは非常に遠慮ぎみであるというのは私は解せないのでございまして、その辺ひとつがんと一発将来的構想をお漏らしいただきたい、御決意をいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  312. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この国際化の問題は確かに踏まえておきませんと、イギリスが金の対日輸出が急激に減少しておる、これはけしからぬ、こういうことが品目の中に入っているわけです。こっちの方はグリーンカード絡みの問題なのに、それを説明してもわかりっこありませんから、これは特殊事情だと言っておきましたけれども、こういう国際化になってきますと、そういう国の要求とか国が関心を持つというような傾向が外国にはあります。  わが国は、私がいままで見ておりましたところでは、農林、通産の両省所管の取引所について積極的に一緒にやろうという空気よりも、むしろ商品取引所の問題に余り役所はかかわりたくないというような姿勢のように外からは見ておりました。しかし、いま私に言うところを聞けばその気があるようでございますから、ならば積極的に両省で、どちらが主導権ということなしに、本当に国際化へ対応するための近代的商品取引センターというものにいけるかどうかの話し合いを少しさせてみます。
  313. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 実力大臣と言われるだけございまして、大変りっぱな御回答をいただきましてありがたく思っておるわけでございますし、展望もいいのではないかと思うのですけれども、それにいたしましても商品取引に伴う事故が多いので閉口いたしているわけでございまして、私の国会の事務所にも最近その被害者がサラ金の方とまじってしばしば登場されるのを見て、見るに見かねているわけでございます。  その理由は二つございまして、一つは、法律の上で保護されている部分がどこであるかということがわかっていないで、めちゃめちゃなルールでおやりになるという方が非常にある。第二は、自己責任というものが全くない。今度は逆に投資される方の方に責任があるのですけれども、自己責任を全く理解しないで、ともかく政府が悪い、業者が悪いといってかかってこられる方がある。端的に言いますと、人で言いますと、業者の側のエラー、それから投資家の方のエラー、両方ある。そしてまた政策的な不備もあるというふうに考えられるわけでございます。  私は、この際こうした問題について、日本国民をいつまでも過保護の状態に置いておくわけにいかないので、投資するときの損も得も自己責任で行うという分野がどこまでか、もう少し国民を教育する必要があるのではないか。余りにもこれは教育されざる分野で発生した事故だなという感じが一方でしているわけでございます。  それと同時に、商取法の中にあるのは、ともかく委託者を保護するというたてまえで貫かれておりますが、その教育の部分については別に商収法の中では触れられておりません。むしろそれは当然業者が行うべき義務として考えられているのではないかと思います。そうしますと、この法律の運用の後ろ側に、この問題に対する態度、行政指導というものが濃く浮かび上がってくるかと存じます。この点十分お考えをいただき、御研究をいただきまして、これらの事故の発生に対して国民を教育していく、それと同時に発生した事故に対する対策を、どういうふうにして処理していくかということの対策をきちっと監督官庁として明示なさるという二重の必要があるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  314. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のとおりでございまして、一方では委託者の保護を図らなければならない、それから他方では取引員の営業活動についてできるだけ自由な活動、活力をそがないようなかっこうでの指導をしていかなければならない。この両面があろうかと思っております。ただ、現在の時点でいろいろ問題が起こっておりますのは、どちらかといいますと、委託者紛議等に起因した商品先物取引に対する不信感がございますので、その不信感を払拭する意味で、現時点におきましては商品取引業界に対する経済社会一般の理解と支持が得られるようなかっこうでの指導をやっていく必要があろうと思っております。したがいまして、過剰な政府の介入と申しますか規制にならないように、しかし他方で委託者の保護が貫かれるように、ある分野では法律上の施策といたしまして商品取引員の許可でございますとか、外務員の登録制でございますとか、そういうかっこうで法律にのっとる委託者保護の施策をやる。それから先の問題になってまいりますと、今度はむしろ業界の自主規制というかっこうで委託者の保護を現在指導している状況にございます。ですから、こちらの方は取引につきまして委託者の方でだんだん勉強ができてまいりますれば状況に応じて体制を改めていくことが可能になるんじゃないかと思っております。いまのところは何といいましても委託者の苦情と申しますか、委託者の保護が喫緊の課題になっておりますので、そちらに力点を置いておるというのが現状でございます。
  315. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、金取引所ができる前の質疑の際に、日本国民のこうした商品取引に対する成熟度から見て、先物市場を設ける場合に事故が非常に多発するおそれがあるので十分注意するように申し上げたことがございます。いまお話を承っていても思うのですけれども、その後の推移を見ておりますと、金で申しますと、現物取引をやった人と先物取引をやった人とどっちが損をしているかといいますと、これは必ずしも現物取引をやった人の方が得して先物取引をやった人が損をしているということではないようでございますね。私設市場のときは大変大きな事故が起こったのは事実ですけれども、国際的な乱高下がこの一年間続いていたことを見ても、先物市場でやった人は巨大な損失をこうむったグループはいない。むしろ金地金取引業者の中にすら、大きな変動のリスクをしょい切れないで大損害を受けて、こんなことなら先物市場をもう少し自分も積極的にやっておけばよかった、ヘッジをしておけばよかったと叫んでいる方があるのも私は聞いておるわけであります。  そういう点を考えますと、物の流れとしての取引所、流れていく物に対する先物取引という明らかな予約の面と、証券市場のようにその金融物を売買するという面に重点のかかっている機能と両方が先物市場にはあるわけでございますから、その先物市場の使い方をむしろ積極的にPRする。業者は自主規制しろ、自主規制しろといま言われているのは、先物市場の業者は全部悪党で、通産省へ出てこい、きょうもまた悪いことをしたか、こういう雰囲気が濃厚なお言葉のように聞こえるわけですね。それをうまく使えばいいんだよということをPRしろ、説明せよ、国民に周知せよというふうに指導なさることが大事なのではないか。依然としてブラックマーケット時代のお上がお縄を持って、十手を持ってお呼びになるみたいな雰囲気がお言葉からちらっと聞こえるような感じがいたします。私のひがみかもしれませんが、バランスを欠いているのじゃないだろうかということをかすかに感じるものですから念のためにちょっと申し上げるのですが、いかがでしょうか。
  316. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 金の取引について考えてみますと、先生方の御指摘を初め各界からの御注文もいろいろございましたのでかなり指導が徹底しておりまして、金についての苦情というものは私どもほとんど出てきていないというふうに考えております。ただ、現物取引は商品取引の問題外でございますので、これはまた別個の取り組みが必要だろうと思っております。商品取引の持つ経済的意味、社会的意義という点につきましては、御指摘のように世界各国ともこれを高く評価してこの活動を大いに奨励をするというと言い過ぎかもしれませんけれども、活動を積極的に行っている。御指摘のように特にアメリカあたりでは活発なわけでございます。日本におきましてもそういうような土壌ができますように私どもも努力をしてまいりたいと思っております。
  317. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 これは、私の尊敬する大臣が非常なお勉強家であられますので、最後に私の心配を申し上げておきたいと思います。  それは、徳川時代日本は銀取引で大損害を受けたといういきさつがございます。当時の産銀国として世界の半分を産出していた日本は、銀を大量に持っておりました。しかし、純粋な銀と安物の銀の選別をする方法が余りなかったため日本の銀は大量に流出し、そのかわりに安い品質の悪い銀が送り込まれた。日本から持ち出された銀のかわりに西欧からいろいろなものを買ったといういきさつがございます。この銀の大暴落が事実上徳川幕府の崩壊を招いた、財政危機を招いたと言われるほどの大事件であったわけでございます。当時先物取引の方式等が導入され、また銀取引そのものの市場があったら徳川幕府はつぶれなかったかもしれないと言われているところでございます。  ところが、いま現物の取引については非常に日本国民は強いのですけれども、こうした先物取引あるいは為替取引、お金とお金を売買するというようなものについて奇妙なほど関心が薄いところがございます。道徳的な背景、それから修身的な教養という背景があるのかもしれませんけれども、私もまたそれを濃厚に持っている日本人の一人だからわかるのですが、何かそういうことでもうけたのは後ろめたいなという感じがつきまとっているわけでございまして、そういう感じを日本国民が非常に持っているのを感じるわけでございます。ところが、世界の為替市場というものは遠慮なくくっついてきまして、もう為替に関しては世界オールラウンドでくっついております。しかし、それには大きな銀行、大きな商社、大きな会社だけが参入できるという形でバリケードがつくられておりますけれども、実質上それに参入する方法はでき上がった。証券もくっついてしまった。銀行はいまくっつこうとしている。そしてそれに商品取引がくっつこうとしておるわけでございます。その中で分断して、この分野だけは国際化を拒否するという言い方は通用しないのではないか。そうすると、わが国国民に対してむしろその点をPRし啓蒙し十分教えることが必要なのではないか、私はこう思いましてこの問題を扱っているという立場でございます。今後大臣にこの問題について御関心をお持ちいただき、ますますりっぱな御指導をいただきますようお願いするわけでございます。
  318. 山中貞則

    ○山中国務大臣 御趣旨はよくわかります。たとえば徳川時代に鎖国の中で辛うじて外国に出られたのが御朱印船。その御朱印船は外国に何を持っていったのか。日本の通貨じゃなくて銀であったということ等が歴史上あるわけでありますから、そういう意味では日本は一定の歴史は持っているわけですね。ただ、いま問題になるのは、いつも当てが外れて損をしちゃったという人たちが文句を言ってくるわけですね。ですから、欲と二人連れが外れた話というのが非常に多いので、ややもすると軽視しがちな取引市場のように見られますけれども、やはり国際性といういまおっしゃった点から考えれば、日本もその分だけ鎖国的な態度をとっていくことは外から許されない時代になってくるし、事実上、実態が世界市場に組み合わされてしまってくるというようなことになりますから、やはりそこらのところは政府自体としても視野の広い見方で対応していくことが正しいだろうと思います。ありがとうございました。
  319. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 どうもありがとうございました。
  320. 浦野烋興

    浦野主査代理 これにて渡部一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。
  321. 稲葉誠一

    稲葉分科員 通産大臣が就任されましてから、いろいろなところで聞きますと部下が、役人が非常にひりひりしている。ひりひりしているというのは、おっかながっているという意味だな、あなたに対して。やるから。役人というのは面従腹背が多いから、これはここら辺にはいないけれども、面従腹背が多いから用心したと言うと語弊があるけれども、適当にあれしながら手綱を締めてしっかりやってほしいというふうに思うわけですね。あなたならできると思うのですよ。  そこで、きょう通産大臣のあいさつというのをいただいて読んでいたところですが、その第一にあります「内需中心の安定成長の実現」というのは、これは三・四%のところ二・八%が内需ですから、具体的にはどういうふうにしようということなんでしょうか。具体的なことをお伺いをさせていただきたいと思います。
  322. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、見通しをつくりますときも、経企庁は実務省とは言えませんので、内需依存というものをどのようにやるか。去年も結果において失敗しておるわけですね。したがって、ことしの予算の実態を見ても内需を振興させるという要素がなかなか発見しにくくて、辛うじて中小企業等を中心とする税制等で活力を生ませる手段というものを考えてみたわけですが、政府サイドからの刺激というものは、ちょっと省庁を越えた発言になって恐縮ですが、公共事業を対前年同額としたといいますけれども、実はそれは前年度の下半期の後年度負担分でやってしまった分は、めり込んでしまっておる。そうすると、その分は対前年同額でなくて、金額も事業量も減ってしまっておる公共事業の予算と見なければならぬと思うのです。これは批判じゃなくて実態としてですね。そうすると、いよいよ内需振興というのはどのような手段に求めたらいいのだろうかというのはまさに私どもの頭痛の種でありまして、もちろん積算の資料はいろいろとございますが、環境がきわめて悪い、設備投資から何から見て、あるいは消費、購買の指数から見ても先行き暗い感じのところに内需を振興させなければならぬ。まず気分的には通産省は胸を張っていこうではないか、国民国民経済が明るくなるぞという自信を抱かせようという精神作興面から始まりまして、そして、いまちょうど天の恵みといいましょうか、OPEC諸国の立場は大変気の毒だと思うのです、ですが、私たちは国際カルテルのもとに、二度の石油値上げによって七転八倒しながら、一炊は何とかうまく切り抜けたと思っていたのですが、二次の切り抜けがなかなかできないで前途の光明を発見し得なかったときに、われわれにとっては天恵のような値下がりをいま迎えようとしております。これも、きょうロンドンで行われる会議を見なければわかりませんが、最終的に国際的な石油の価格が下がるということが明らかでありますので、このことだけは、当分は、原因原因なだけにそうなるだろう。そうしますと、ここを利用して日本の産業の新しい前進起点にしようということで、先週やりまして、またあしたもやろうと思うのですが、通産省で石油がいまのところ六ドル値下がりしたらという検討をしておりますが、私の念頭には代替エネルギーとしての石炭と競合するところまで、デッドクロスするおそれがあるのは二十五ドルだというような感じを持っておりまして、そこらのところで検討してみよう。そしてこれは通産省のエネルギー庁ばかりでなくて、すべての局長を集めまして、私のもとで通産省の全頭脳を結集して、現時点をどのようにとらえ、そしてそれに向かって自分たちはどのような経済の内需振興、活性化を図るか、最終的にはその果実はしかし国民が享受するものでなければならない、このような基本的な姿で作業いたしておるところでございますが、これはしかし神頼みもしていなかったものがもたらした前途の光明でございまして、これを契機に内需振興の力を実質的にどのように引っ張っていくかということについて結論を出したいと考えております。
  323. 稲葉誠一

    稲葉分科員 総理大臣になったつもりと言うとちょっと語弊があるが、あなたが言ったわけじゃないですよ、僕が言うのですよ。あなたが総理大臣になったつもりだと言うと中曽根さんがおもしろくないから、だからそうじゃなくて、なったつもりに近いところで、しっかりやってほしいと思うのです。  そこで、いまのところで大体一バレル二十五ドルというのが常識的な線ですね。ただ、それによって年間輸入量がどのくらい減るとかいろいろな計算が細かくあるわけだけれども、それが国民生活の中に、たとえばガソリンがどのくらい下がるとかいうこと、そこら辺のおおよその見通しはつきませんか、どうでしょうか。いまの段階ではまだ無理ですか。
  324. 山中貞則

    ○山中国務大臣 あしたその会議を開きますので、それにまだ売り手の方の下がりぐあいがどこぐらいで並ぶのか、それがわかりませんので、確たる返答はきょうのところはちょっとできないということであります。
  325. 稲葉誠一

    稲葉分科員 第五のところに「多様化する経済社会の要請に即応する中小企業政策の展開、」こういうのがあるわけですね。私どもも中小企業の問題についてはもちろん深い関心を持っていますし、それが日本経済を今日まで支えてきた大きな原因である、いわゆる二重構造といいますか、そのことはよく理解をし、その振興を図っていかなければいけないというように強く考えていますが、ここにある「中小企業政策の展開、」というのは、現在どういうふうに展開していて、将来どういうふうにしたいということなのですか。
  326. 山中貞則

    ○山中国務大臣 日本のこれからの産業の特色は、やはり先端産業技術というものを経済の上に投影し、拡散し、それを持って世界に切って出なければならぬ。がしかし、世界市場はそんなに甘くありませんで、日本先端産業が、ちょうど京セラがアメリカで、投資と役員派遣だけだったらしいですが、大変高度なある種の、国防省から見るとこれは軍事機密だというところまで研究が発展してしまって、ついに全資本を引き揚げて帰ってきたというような例に見られる、あるいはデジタル・オーディオディスクなんかは欧州市場にまだ一合も売っていないのに八・五%の関税を一九%に上げるとか、もちろん私は抗議しているわけですけれども、なかなか日本先端で進んでいくと、諸外国はいまや口では自由貿易を唱えるが、自分の地域なり自分の国に対しては、自分の国でもそのレベルに達するまでは、その相手は主として日本ですが入らぬようにしようという傾向は大変悲しいことで、私は国際的な交渉はそこらにおいておかしいじゃないかということを言っているわけですが、さてそれを国内では一定の、特定の産業の突出し得た分野だけの利益の享受に終わらせてはならぬ、やはり全産業分野に展開さるべきである。ですから、稲葉先生の聞いておられた予算委員会だったと思いますが、私の今予算委員会の最初の答弁に、新潟県三条市の石油ストーブの小さい工場の方がロボットを入れて、そしてセントラルヒーティングでなく小部屋を暖める形に注目し始めたアメリカ市場というものに注文に応じ切れないほど売れておるというようなことを例にとって言いましたが、中小企業のそのような受け入れ意欲あるいは消化の力というものは、非常に高い学歴を持つ日本国民の構成する中小企業分野で、政策の展開の仕方によっては中小企業の岩盤がぐっとせり上がる力があるのだ。  でありますから、たとえば今度のテクノポリスの展開の仕方も、たしか飛行場の周辺に先端産業が次々と立地していきましたが、それは国の政策誘導でも何でもない、推進もしないのに行った。ならば、それらを、ただ先端産業が立地したところから製品を工場から運んで成田から外国へとか、あるいは製品を飛行場から積んで東京でおろしてメーン工場へとか、そういうことではなくて、その地域の産業に益し、そして地域に合った特産品等にそれが技術として拡散していって、工場が地方に戸を開いてくれるということによって、地方に通産行政というものが中小企業を中心に展開していく姿勢を通産省が初めてとったと言えるのではないかと私は思う。そういう政策をいま、これは法律もお願いしょうと思っておりますが、そういうことを組み合わせながら中小企業を、しかも地方も含めて再活性化し、新しい産業として生まれ変わらせようというようなことを考えておるわけでございます。
  327. 稲葉誠一

    稲葉分科員 小企業等経営改善資金融資制度、こういうものができましたね。これは昭和四十七年の十二日ですから、ちょうど十日が選挙でして、私どもはこの前、十年目の記念行事というほどでもないのですが、やったのです。このときに発足した制度なんですが、この制度は私どもは決して反対ではないのですよ。内容的にちょっと問題があるのは、たとえば商工会議所や商工会を通じてやるとか、アウトサイダーをどうするかというような問題もあるでしょうし、それから、このやり方はいろいろありますから、その点については中小企業、ことに小企業に対するこういう資金関係の融資を広げなければならない、このことは全く賛成なわけで、私どもも長く唱えていたことです。今度の場合は、相続税制の問題がありますね。それから投資減税の問題、いろいろ問題があるわけです。それはいろいろあって、私どもも一生懸命、党派を超えてやらなければいけないというふうに考えておるところなんです。  この制度ができるに至った経緯というものが、物の本によりますと、たとえば大分県選出の自民党の代議士で廣瀬正雄という郵政大臣をやられた方……(山中国務大臣「秘書官のお父さんです」と呼ぶ)これは失礼。そうすると道貞さんはお兄さんですか。おとなしい、いい方で、りっぱな方でした。あれは、道貞さんというのは次男ですね。  その方が朝日新聞に入って、非常に長く勉強されて書かれた「補助金と政権党」という本があるのですね。この方はよく雑誌の「世界」に、ずっと利益配分システムの研究をしている方です。大阪へ行っておられたのですね、いままた東京に帰ってこられたようですが。  この副題みたいなものを見ますと、「自民党はなぜこんなに強いのか、」と書いてあるのです。「票はカネなり、」「自民党の強さは、公の補助金を党勢の拡張に結びつけていく手段の巧みさにある」というようなことで書いておられるわけです。これはだれが書いたか知りませんよ。これは広瀬さんが書いたのではなくて、俗に言う何とかというもので、推薦の言葉をだれか新聞社が勝手に書いたのだと思うのだけれども。  これは農林関係予算分析なんか非常におもしろいのですね。この方は栃木県に二年来ていた。それで、農林関係予算がどういうふうにして行くかということで、これは渡辺美智雄君、僕も同じ選挙区で一緒に県会議員をやったからあれですが、彼のところ、栃木県の一区へいろいろなものができていく、その数なんかも全部分析しているわけですけれども、その中で、これを見てみると、昭和四十七年十二月のときに、自民党は農村ではうんと勝った、ところが開票してみたら、都市の開票をするに従ってうんと負けてしまった、これは何とかしなければいかぬというわけで、都市の票、ことに商工業者の票を取りたいということで、いままでお蔵にしまってあったのを出して、そしてこれをやり出したというふうに分析としては出ているわけですね。  私も実は調べてみたのです。そうしたら、中曽根さんが七月に日本商工会議所の常議員会かなんかに行って、そこで「新内閣に望む」というのを受けておったのですね。そして、とにかく選挙が終わってから、終わったのは十二月十日ですから、その後にこの問題がまた出てきたことは間違いないわけですね。  ただ、その間の経過がよくわからない。大蔵省が無担保、無保証人なんというのはだめだと反対してしまってあったのを、これはいかぬといって――ここのところへ赤線が引っ張ってある、いつ引っ張ったのかちょっとはっきりしない。商工会議所に行ったとき引っ張ったのか、後から引っ張ったのか、ちょっとはっきりしませんけれども、とにかくそういうふうな関係で、そこでこれができたというわけですね。それで補助金などもやるようになった、こういうことでしょう。このこと自身、私も決して悪いことだと思っていないものですから、したがって、質問も歯切れが悪いわけです。これはやり方によってはまずくなるから、歯切れが悪いのですけれども……。  そこで、これができたのはどういう経過でできたのかということが一つです。この「新内閣に望む」、四十七年七月二十日のを見ると、赤線を引っ張ってあるところがある。だれが赤線を引っ張たのかな。中曽根さんが引っ張ったということなんでしょうけれども、4の(ロ)のところに、「とくにわが国の政治的、経済的、」何とかかんとかの「小規模事業者に対し、一兆円の経営改善基金を設定し、全国の商工会議所の組織を活用して小規模事業者の振興をはかること」こう書いてあるわけですね。何でここに大きく「政治的」というような言葉が出てくるのでしょうかね。  これはいかにも選挙目当てに政治的な目的からこれをやってほしいということが向こうから出てきて、それを受けてアンダーラインを引っ張って実現をしたようにとれるわけだ。あなたの兄さんと言うと悪いけれども、これを書いた方もそういうふうな意味にとっておられるわけですね。ここら辺のところが本筋かもわからないですよ。  それで補助金をやったでしょう、経営診断やなんか全部いろいろなものを出したから。そうすると、補助金をもらった者は、日本の法律で政治活動ができないわけだ。そこで去年、今度は政治連盟を結成しようということを始めた。それで、何とかして都市の小規模零細業者というふうなものの票を得たいということから始まったともとれるわけですね。  そういうことなんですが、これがどういうことから始まってどういうふうに運用状態がなっておるかということをお聞かせ願いたい、こう思います。
  328. 神谷和男

    ○神谷政府委員 経緯につきまして、いろいろ当時の新聞報道を、これは私も関心がありますので、その後もフォローいたしておりますし、また御質問を契機に読み返しておるのでございますが、実は、このいわゆるマル経費金と言われるものができます際に私は、個人的で恐縮ですが、中小企業庁の組織課長をやっておりまして、これに若干タッチをし、でき上がりましたときは私の後任者に譲っておったわけでございます。  これを当初考えましたときは、当時の商工会あるいは商工会議所に置かれておる経営指導員が、非常にまじめに中小企業の経営相談、経営指導をやっておる、しかし、いろいろ指導してこういうふうに改革したらいいじゃないかといいましてもなかなか金融がつかない。当時はいまより金融が逼迫しておりまして、そういう何の武器もなしに指導をしてもなかなか指導の効果があらわれない、指導する方としてもいま一つ意欲がわいてこない、何とか自分たちが指導したとおりに、金融面でバックアップをしながら指導の成果を上げさせるような方法はないかというような意見が現場から非常に多かったわけでございます。  そこで、私どもとしていろいろ考えまして、それでは、指導を受けてそのとおりに設備を変えるとかあるいは店舗を改造するといった場合には、担保のない零細企業ではあるけれども、一般の金融よりもう一つ踏み込んで、それらの指導員のお墨つきで金が流れるような方策を考えたらどうか、こういうことで、実は私どもは、このような新政策を考えますと、当然経営指導員等を持っております商工会議所とか商工会と実務的にも意見の交換を行いまして、なかなかいいことではないか、こういうことになりまして、私どもとしては四十七年の夏、個人的で恐縮ですが、私はすでにそのポストを離れましたが、一般的に通産省では夏に翌年度の新政策の勉強をいたしますが、そのころ当時のスタッフ、金融課等も含めながらいろいろ議論をして、しからばこういう新政策を盛り込もうということで、私の承知する限り四十七年の夏にはそういう新政策を通産省の方から打ち上げております。日本商工会議所あるいは商工会の連合会等は、これは非常にいい制度だからやってほしい。これもある意味では共同戦線的に各方面に要望しておる。その一環として永野会頭が非常に強く各方面に要請されたということは事実であろうと承知いたしております。その後、御承知のように予算折衝で大蔵省と折衝する。当然のことながら財政当局は、ああこんなものはむずかしい、こういうことで、いろいろな事務的な折衝が行われて、非常に大きな項目でございますから、それはやはり大臣以下わが省一丸となって進めなければできない問題でございますが、当時の通産大臣がこれを強くプロモートされたことは事実だろうと思います。その結果、選挙が行われ、詳しい日程的なことは私は存じませんが、予算が年を越したと思いますが、その時期で通産省の最重要項目の一つとして財政当局と折衝し、その間、当然、政党政治でございますので、政府・与党関係も恐らくそのような推進をされたと承知しておりますが、その結果、一定の要件でこのような制度ができた。しかも当初は基金ということでございましたが、国民金融公庫の中にそういう制度をつくる、こういう形で現在に至っておると承知いたしております。  さらに、その運用状況でございますが、御承知のようにその後規模は拡大いたしまして、現在では五千五百億円の貸付規模になっております。当初はぎりぎりいっぱいの申し込みがございまして、枠がなかなか足りないわけでございましたが、重点的に通産省では枠を拡大いたしておりますので、最近の不況等も反映して、いまのところ枠が足りないというよりも、むしろやや枠は余りぎみでございます。  貸し付けの状況は、経営指導員の診断を少なくも六カ月以上受けているものでなければならない。指導員が相談を受けて十分審査をした上で、それを商工会ないし商工会議所に設けられている審査会に上げまして、そこでパスしたものは国民金融公庫の方から金が流れる、こういう形で実施されており、御指摘の商工会議所の会員であるか、商工会の会員であるかということに関しましては、経営指導そのものが補助事業で会員外にもやれ、そのようにいたしておりますから、当然その資金も会員外に広く利用されております。特に商工会議所地区では会員の組織率が低いわけでございますので、非会員の利用率が非常に高くなっておる、こういう状況で、小規模対策の中の中心として現在では運営をされておる、このように承知をいたしております。
  329. 稲葉誠一

    稲葉分科員 お話は私もわかりますが、それなら、商工会議所の「新内閣に望む」の中に何も政治的に何とかかんとかということは書く必要はないんじゃないですか。いかにもこれをやってくださいよ、やってくだされば選挙のときに応援をしますよということの含みでちゃんとできているじゃないですか、この「新内閣に望む」は。一番最初に書いてあるでしょう。そこへ中曽根さんがアンダーラインを引っ張ったんだもの。それは政治家だから、政党としてそれをやることは決して悪いという意味じゃないですよ。そのことをかれこれ言うのじゃないけれども。それで、やはりわかるのだな。こういうのを見てみると、政権党というのは、いかにそういうような意味で補助金というものをうまく使ったり、いろんなシステムをうまく利用してやっておるかということですね。これはわかるのだけれども、いまここでそれを話したところでしようがないな。こっちはくやしがってばかりいてもしようがないんだ。だからここら辺のところにしておきますけれども。ただ、これは率直な話、商工会議所と商工会にはその後、補助金出しましたね。どこへどういう形で補助金を出したのか。指導員か何かが八千五百人いるのですか、これに対しても補助しているわけでしょう。そこまでしなければいけなかったのですか。そこまでの要請は最初からちゃんと入っているわけですか。
  330. 神谷和男

    ○神谷政府委員 商工会議所並びに商工会、特に商工会議所等はほとんどといってよろしいわけでございますが、私どもの方から出しております補助金は小規模事業の経営改善のためのいろいろな相談事業でございますので、このマル経資金のできる前からその相談事業を行っておったわけですが、経営指導員がいわゆる会員に対してのサービスだけではなくして、非会員も含めて、広く小規模事業のための相談あるいは経営改善の指導を行ってもらいたい、それを行わせるための機関として商工会議所、商工会が適当であろう、こういうことで、これらの機関に指導員を置き、そのための補助を国と県が行っておる、こういうことでございまして、これはそこまでの必要があるかどうかという点、いろいろ御意見はあるかもしれませんが、ある意味では日本の中小企業行政が毛細管を末端の市町村まで持っており、中小企業政策、国等が定めました施策が末端まで浸透していく、末端の声がまたそれらの経営指導員あるいはネットワークを通じて中央に返ってくるという意味で、世界に誇るシステムとして現在完成をいたしておるわけでございます。  御承知のように商工会あるいは田舎の商工会議所等、非常に財政的にも弱うございますから、自分の会員以外のところまでこういう指導事業を行うということは、やはり国の補助金を得て行っていかなければ現在このシステムは維持できない状態ではないか、こういうふうに考えておりますので、国の仕事をやってもらっておる、こんな感じでおります。
  331. 稲葉誠一

    稲葉分科員 これは京都が最初に始めたわけですね。京都の場合には府庁でこれをやったわけでしょう。そういう関係でやってもいいわけだと私は思うのですが、しかし、現実にこういうふうになっておるから、いまからかれこれ言うのではないですけれども、非常にうまい一つの集票システムというか、集票システムを問題としてつくったわけではないかもわかりませんよ、結果としてそういうふうになってきている。これは力関係だ。それはいろいろなあれだと思いますけれども。だけれども、これは利用状況がまず最初に問題になりますのは、四十八年度に三百億だったでしょう。その次に四十九年度に千二百億にぐっと上がっていますね。ここのところと、それからその後の利用状況が、五十二年度、五十三、五十四年度くらいは七割ぐらいしか使っていないのじゃないですか。そこら辺のところはどういう理由なんですか。
  332. 神谷和男

    ○神谷政府委員 当初大幅に増大いたしましたのは、この種の制度を始めますときには財政当局から十分な予算を確保することはなかなか困難でございますし、他方、小規模企業者からは非常にその有効性ということから利用申し込みが活発であった、こういうことで急速に枠を広げていかなければならないということで急激にふえていったと思います。その後、私どもといたしましては小規模施策が重点でございますので、できるだけたっぷり取っていきたいということで、余り足りないから融資が受けられなかったということのないようにという意味で、私どもの予算編成の中でここに重点を置いていったということがかなりの枠になったということだろうと思います。最近利用度が非常に低くなっておりますのは、やはり経済の低迷ということから、経営指導を受けてこうした方がいいとは思っても、いま一つ、これだけの金をつぎ込んで返せるかどうかという経営者の方の判断、逡巡というものがございますので、用意はいたしておりますが、まだ一〇〇%まで使われていないという状況がここのところ起きておる。余りわれわれの方が小規模事業に重点を置いて予算をたっぷり取ったから、ある程度余しておるのかなという感じもいたしております。
  333. 稲葉誠一

    稲葉分科員 私が言うのは、五十二年度あたりからそうなっているのですよね。五十二年度あたりからだから、景気が悪くなったからそういうふうに利用状況が少なくなったというのとちょっと違うような気がするのですが、それはそれとして、そんなにいい制度なら大臣、これは通産省には関係ないかもわからぬけれども、国務大臣として、あるいはあなたが将来、また、あるでしょう、上の方の……。何かあるのか知らぬけれども、考えてみたときに、それなら、それじゃ公務員だとか減税もないサラリーマンとか、そういう人たちに対してもこういう制度を設けたらいいんじゃないですか。ここだけこれを設けて、しかも政治的な云々ということがあって要望が出てくるから、どうも変だということになってくるんじゃないですか。それじゃ、ほかの一般サラリーマン、公務員なんかも無担保、無保証のものをどんどん設けたらいいんじゃないですか。大臣、これはどうなんですか、あなたの直接のあれじゃないけれども。
  334. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは稲葉流論理と申しますか、ちょっとそういうふうに私、比べてみたことがありません。確かに政治というのは、ある意味では票をとろう、議席をふやそう、政権をとろうという政党間の闘いでもありますから、自分たちが票をとれるような政策なり税制なりというものをやろうとする傾向はあると思うのですね。それは、現在与野党間でやっておられるのも、予算を通過させるための条件として減税と何とかという、いろいろやっておられるわけですけれども、そっちの方の専門であった私から見ると、どこからそのお金が出るのか、減税の財源ですね、それでも合意はなされておる。これは政治的に必要性があって与野党が一致するわけですから、その点は認めるとしても、どこまでどうして詰まっているかわかりませんが、やはり政治とはこんなものかなと私は見ているわけです。ですから余り露骨に、自民党のための、与党であるから勝手なことができるというシステムは、それは予算が、自民党が数が多ければもうきのうぐらい強行採決したらできるんじゃないかという――しかし、そういうことのできない仕組みですね。やはり一般の声、野党といえども国民を代表する人たちの声を聞いて、それを全く無視することのできない仕組みになっていることの証明であろう、そう思います。  ですから、いまのサラリーマンのためにということになりますと、そうですね、源泉徴収をやってもらっておって、政府としても、サラリーマンはがっぷり、もとから取られちゃうんですから恨めしいでしょうが、源泉徴収をしてくださっているところには政府としては感謝しなければならぬ立場にもあるのですけれども、ときには戻し税なんて何にも……(稲葉分科員「わずかなものだ」と呼ぶ)中身もですが、源泉徴収者が税を戻す機関になる必要は全くないし、義務もないのにやっていただいたりなどしておりまして、一律にいまのような問いかけで私に割り切れとおっしゃっても、ちょっと中曽根さんほど歯切れよく答えられないということであります。そこだけの落差があるわけです。
  335. 稲葉誠一

    稲葉分科員 これで終わりますが、落差というのは、いま言った議論での落差は、これは私も、私の考え方もいささかとっぴな考え方なんですよね。これは私自身認めているわけですけれども、それはそれとして、中小企業全体、ことに零細企業の場合、そこに働く労働者の立場を十分今後考えて通産行政というものを行っていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  336. 浦野烋興

    浦野主査代理 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前九時三十分より開会し、引き続き通商産業省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会