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沢田分科員 そこで、荒川だけにしぼりますが、いま言ったように八・六三という、
台風十八号、三百ミリちょっと超える雨が秩父に降れば、二瀬
ダムはあるのでありますが、現在ではそういう状況が生じます。これを直すのにはいま言った中のどれをとるかということなんで、いま横堤二十七本ある。これは吉宗時代に、江戸を守るために武蔵の国にはんらんを起こして、そして江戸を助けるという目的で横堤がつくられた。横堤というのは、水の速度を緩めるために、鉄砲水を防ぐために川の中に横に張り出してわざわざ水速を遅くしているというのが横堤ですね。これは釈迦に説法でしょうが、念のため申し上げるのですが、私はその横堤を取れという論議もしたのですが、今度逆に、もし
ダムができなければ横堤をふやす。そうすると、いまのままでいくと上流がはんらんを起こす可能性がある。
ただ問題は、これは政策の選択になるわけですね。
ダムをつくるとすると、埼玉の場合で言えば長瀞が水浸しになってしまう。
ダムの中に入ってしまう。そうなると景勝を失するということにもなりかねない。しかし何かせぬことには、あのときの教訓から言えば救う道はない。いまあなたがおっしゃっている内水面
対策や放水路
対策は、勾配がない。何といっても勾配がない。どんなでかいポンプ、何百トンのポンプをつくっても水が到着しない。到着しないのですから、これはポンプでは用が足りないのですね。上流の水がポンプ場まで到着する時間が、勾配がないのですから、これはどうしても遅くなるわけです。ですから、勾配があればそれはすぐにポンプが機能します。大きくすれば大きくしただけの効果があります。ところが勾配がないのですから、水の速度が——一メートルちょっとぐらいしかない。三千分の一から四千五百分の一ぐらいの勾配ですね。ですから、そういう勾配で水が到着するのには相当な時間がかかる。いままだ荒川の方の到着時間の方が遅いことは遅いのですね、いわゆる秋ケ瀬なら秋ケ瀬を一つ例にとれば。ですから、そうならもう少しおくらせてもらって、かえって下流の
地区の湛水している水を早く先に放流してしまう、こういう時間差をやはり考える必要があるのじゃないのか。ただ堤防を強化するだけじゃなくて、何とかこの時間差を——関東平野はそれを考える以外にはとりあえず方法がない。やはり自然放流が一番最大効果を上げるわけですから、自然放流を一番するためにはどういう時間差をそれぞれの河川に位置づけるか、早いうちになくして樋門を閉める、あとはポンプアップ以外にないのですね。それでも床下浸水にとどめる、こういうことを考えないといけないんじゃないか。いまのままでいきますと、二瀬がいっぱいになって危なくなれば放流する。二瀬が放流すると荒川は水位が六十センチも上がってしまうのですね。ですから、この二瀬の放流の時期もこの下流とのつながりにおいてきわめて重要なんです。
ですから、そういう認識をお持ちになっていただければ、いまの荒川に
ダムをつくるか、あるいは横堤をさらに大きくするか、つくるか、速度を緩めるか、そして都市化してしまった県南を、やや十六号以南、そういう
地区ですが、その以南を救うためには、早くその水を先に出してしまう。そしてその後から荒川が追っかける。これは時間がありませんが、荒川にうんと雨が降った場合、県南にうんと降った場合、それからこの両方に降った場合と、この三ケースあるわけなんですね。そのA、B、Cの三ケースごとに調べてみましても、その原理は変わらないのですね。ですから、荒川の流れる分量の時間差をどういうふうに調節したらいいかというのが
提言として課題だと私は思っているのですよ。それを考えなかったならば、もう二の舞い、三の舞いを踏まざるを得ない、そういう状況にあります。鴨川の改修をどんなにやってみても、あるいは芝川の改修をどんなにやってみても、新河岸をどんなにやってみても、いま言った問題が
解決しなければ、樋門逆流はするし、いやおうなしに樋門を閉めれば内水で皆
被害を受ける、この原理は変わらないのですね。ぜひ荒川のこの基本的な物の性格、吉宗時代、知恵者だったのだと思うのです、今日までそれが生きているのですから。そういう
意味において、それを何とか生かしてその時間差をつくって——県南が東京並みに発展しちゃったわけですから、これ以上の
被害をつくるわけにはいかない、こういうふうに思うのです。
これは私、素人の私見なんでありますけれ
ども、そういう
方向で御
検討をいただけないかどうか、お伺いをいたします。