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稲葉分科員 昭和五十七年十二日に、
国税庁の総務課が
昭和五十六年分の「税務統計から見た法人
企業の実態」というのを出しておられるわけですね。これを
大臣が読まれたのかどうか、ちょっと知りませんが、読まれたとして、一体これを見てどういうふうに感ぜられて、どういうところに問題点があるか、こういうふうに聞くのが本当ならば
一つの筋かと思うのですけれ
ども、ちょっとそれは後で。
私の方から先にこれを見て感じたところを申し上げますと、私の感じたところでは、ポイントはたとえば
法人税のあり方、これはこの中に直接出てまいりませんけれ
ども、
法人税よりもむしろ社内留保の方が多いわけですね。私もこれを見まして、そこまでいってないと思っておったところが、社内留保の方が多いわけですね。社内留保としてこの統計に出ておるのは、四つ出ておるわけですが、それぞれがいわゆる規模別に見て、大
企業の方に多いのではないか。たとえば退職給与引当金なんか、私はもっとあると思っていたら、全体から見て七・七%しかないように出ておるわけですが、このグラフを見た場合でも、その方が大
企業の方に非常に大きくなっておるということは考えられる。
そこから考えられることは、前々からよく私、
議論しておるところですが、いま法人の税率が一億円以上が四二%になりましたね。その四二%ということについて、それが一体妥当か妥当でないかという
議論があるわけですが、そのときに考えられることは、実質的ないわゆる実効税率というものは
法人税のほかに法人
事業税なり法人住民税なりを加えると実効税率が出てくる。そうするとある程度の率が出てくるでしょうけれ
ども、この引当金その他というものを換算してみると、階層別に見た実質の税の負担率というものが非常にアンバラになってきて、大
企業の方が実質的には非常に低くなっておるのではないか、こういうのが私の大きな疑問になってくるわけですね。
さらに、基本的に四つの引当金が挙げられておりますが、引当金というものが一体必要なのか必要でないのかというふうなことの
議論もさかのぼってする必要があるじゃないか。
なぜそういうふうなことを言うかというと、日本の場合は、いわゆる
法律学の中で税法学というのはほとんどと言っていいぐらい学問的に確立していない学問ですね。日本でも一番足りないところですね、税法学。これは一部の人がおられますけれ
ども、そういう点が足りないところがありますのでいろいろな問題点がある、そういう点をお聞きいたしたい、こういうふうに思います。
それから、きょう直接聞くというわけではございませんので研究しておいていただきたいのですが、これは商法の
改正のときにも問題になりまして、いわゆる特定引当金の
制度ですね。これが商法の第二百八十七条ノ二に「引当金」というのがありまして、「特定ノ
支出又ハ損失ニ備フル為ノ引当金ハ其ノ営業年度ノ費用又ハ損失ト為スコトヲ相当トスル額ニ限リ之ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルコトヲ得」、こういうふうになっているわけですが、この書き方はちょっと問題があるわけですよ。何々することを得という書き方はちょっと問題があるのですが、要するに利益留保性の引当金というものは認めないで、負債性引当金だけが認められるということになる。
そうすると、利益留保性の引当金というのは一体何なのだろうか。それが法務省側の
見解と
大蔵省側というか
企業会計審議会との間の
議論の中でどうもうまくかみ合わない。非常にわかりにくい。学者がみんな意見が違うということもありますけれ
ども、わかりにくい。
さしあたっての問題は、これが問題になってくるわけでしょう。たとえば何周年の記念という行事については、これは利益留保性で認められないというのだけれ
ども、いま問題となってくるのは筑波の科学博ですね。筑波の科学博をやることについての準備というか
経費についての引当金というものを認めるか認めないかというところが今後大きな
課題になってくるわけでしょう。
それから、
法律で認めているとすれば渇水準備金ですね。電気
事業法で認めておるけれ
ども、これは一体特定引当金
制度とどういう
関係になるかというような問題があるのですけれ
ども、これは研究しておいていただくことにして、きょうの
課題ではございません。
私がこれを見て非常に疑問というか、いま言ったところの問題の
一つは引当金、四つ挙げていますね。貸し倒れ引当金、価格変動準備金、賞与引当金、退職給与引当金、結局その利用度が、貸し倒れ引当金が三三・五%、価格変動準備金が一七・四%、賞与引当金が一五・五%、退職給与引当金が七・七%、それぞれになっておるわけなのです。
そこでお聞きをいたしたいのは、たとえば退職給与引当金というものに限って質問いたしますと、これは七兆幾らありますね。問題は、さかのぼりますと、シャウプ
勧告のときにいわゆる近代
会計理論という形でこの引当金
制度が認められた。こうなってまいりますと、それ以前の旧
会計法理論というか、それでは認められなかったのではないかというような学者の
議論などがあるのですが、なぜこの退職給与引当金というものが認められたかということが第一点。
それから、この利用が、グラフが
大蔵省からもらったものには出てはいるのですけれ
ども、グラフではわかりませんので、その資本金別に退職給与引当金がどういうふうに利用されておるか、これをこの前ちょっと聞いたこともありますけれ
ども、そこら辺をまず御
説明をお願いいたしたい、こういうふうに考える次第です。