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竹本分科員 ただいまの
大臣のお考えは一〇〇%私も賛成です。ぜひそういう基本姿勢で貫いていただきたい。
永野さんずいぶんお年を召していますけれども、日ソの間に領土問題があることや、あるいはポーランド、アフガニスタンの問題があることを忘れておられるほどぼけてはいないと思うんですね。そういう
意味で少し親切が行き届き過ぎたかもしれないと思うけれども、過去の問題ですから、基本姿勢としてはいま
大臣の
お話にありましたようにひとつ御努力を願いたいと思います。
そういう点について、私は対ソ
関係ではキッシンジャーさんが言った言葉が最近非常に気に入っている。波は何と言ったか。ソ連に対しては断固として、しかし創造的にやっていかなければいかぬ。ソ連は手癖が悪いとかなんとかいう議論もありますし、共産主義の問題もありますから、警戒をするということは十分必要であるし、私も賛成である。そういう
意味においては断固とした姿勢が必要である。しかし同時に、断固一本やりや頑固一本やりではなくて、かつ創造的な努力が必要だというそのキッシンジャーさんの考え方はきわめて
外交の経験の深い方らしい結論だと思いますので、そういうふうに対ソ
関係は断固として、しかしながら創造的な東西
関係の
協力をひとつ構築するという姿勢で安倍
外交は貫いてもらいたいと思うのです。
石橋湛山先生が書かれたものの中に、最近流行と言っては悪いかもしらぬが、ソ連脅威論等に対して、ソ連といえども鬼でもなければ蛇でもないということを言われた言葉もある。また最近の
アメリカの指導者階級の中には、
アメリカのレーガンさんの行き過ぎた強い姿勢に対して――私はざっくばらんに申しまして、
大臣、ソ連の膨張主義というものも困るが、レーガンさんの一種の冒険主義と申しますか、力の
外交も、やはりわれわれは慎重に考えてついていかないとどこへ連れていかれるかわからなくなる。そういう
意味で、中曽根さんの不沈空母その他の発言が国民に大きなショックを与えたのも当然だと思うんですね。だから、国民の常識というものはある
意味において健全である。永野さんではないが、緊密な米ソ
協力関係を踏まえながらソ連にも十分に門戸を開いて接していくということがこれからの
外交の基本姿勢ではないか。脅威脅威といいましても、確かに脅威というものは感ずれば幾らでもあるのだけれども、それを露骨に脅威論を振り回せば今度は
向こうさんの方がかえって脅威を感じて悪循環になりますから、その辺は
外交としてはきわめて慎重にやってもらいたい。
同時に、ソ連に対してということをいま申しましたけれども、
アメリカに対しても、これは佐藤内閣時代の話ですけれども、ブレジンスキーさんが書いた「ひよわな花・
日本」という本がある。あの中で
日本の
外交路線をいろいろ論じていますね。その中で何を言っているかというと、ブレジンスキーさんは、
日本がこれほど
経済大国になった以上は、
日本が
国際政治の中でビッガー・ロール、より大きな
役割りを果たそうと考えることはきわめて当然であると書いておる。しかし困ったことに、とは書いてなかったが、しかしながら
日本の
外交路線はアンビギュイティー、あいまいもことしておる、どっちを向いてどういうふうに行くのか、その基本路線がよくわからぬということを書いてある。そしてその次に、しかし強いて言うならばという
意味でしょう、
日本は
アメリカとともにスタンズ・ウイズと書いてある、一緒に進むであろう。それだけならまだいいのだけれども、その後にハイフンで、棒を引っ張りまして、
アメリカの後ろについていくであろう、ビハインド・ザ・ユナイテッド・ステーツ、こう書いてある。その
アメリカの後ろという言葉が私は当時非常に気に食わなかった。敗戦ぼけももういいかげんに清算しなければならぬので、
日本は
アメリカと
協力することは必要であるが、あくまでもイコールパートナーシップでやってもらいたい。
アメリカのビハインドでは困る。そういう
意味で、ソ連に対しても慎重な態度で臨んでもらいたいが、
アメリカに対してもわれわれはイコールパートナーとしての誇りと責任において、ひとつ外務
大臣には大いに活躍していただきたいと思うのです。
たとえばこの間、イギリスのピム外相が
アメリカに行かれましたときに演説をされたその演説等を見ても、
アメリカに対してある程度思い切ってというほどでもないかもしらぬが、はっきりと言っておられる。ゼロオプションにばかりこだわってもらっては困る、オール・オア・ナッシングは
外交ではないということを言って、最後に、テーブルについたソ連を話がまとまらないうちに席を立たせるようなことがあってはならぬと書いてある。僕はこれは外務
大臣としてきわめて慎重で当然な発言だと思うのです。われわれがいま
アメリカに向かって言いたいことはその点なんです。強気
外交一本やりでいって、そしてソ連もそれに反発して、それでけんかになって、ますます問題がエスカレートすることのないように慎重な対処を臨みたい。したがって、
アメリカに対してもこれからはイコールパートナーとしての誇りと責任において臨んでもらいたい。いかがでございますか。