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1983-03-07 第98回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月七日(月曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主 査 上村千一郎君       大村 襄治君    白川 勝彦君       井上 普方君    小林  進君       草野  威君    玉城 栄一君       鳥居 一雄君    薮仲 義彦君       瀬崎 博義君    藤原ひろ子君    兼務 上原 康助君 兼務 川俣健二郎君    兼務 川本 敏美君 兼務 岡田 正勝君    兼務 塚本 三郎君 兼務 中井  洽君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 林  義郎君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         国税庁長官   福田 幸弘君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生大臣官房会         計課長     坂本 龍彦君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 吉原 健二君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         厚生省援護局長 山本 純男君         社会保険庁年金         保険部長    朝本 信明君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    萩原  昇君         沖縄開発庁総務         局参事官    山田 正美君         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         文部省大学局高         等教育計画課長 十文字孝夫君         文部省大学局教         職員養成課長  菴谷 利夫君         文部省大学局医         学教育課長   前畑 安宏君         文部省体育局学         校保健課長   森脇 英一君         労働省職業安定         局企画官    藤原 正志君     ───────────── 分科員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   小林  進君     井上 普方君   草野  威君     薮仲 義彦君   瀬崎 博義君     榊  利夫君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     小林  進君   薮仲 義彦君     玉城 栄一君   榊  利夫君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     鳥居 一雄君   藤原ひろ子君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   鳥居 一雄君     草野  威君   山原健二郎君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     榊  利夫君 同日  辞任         補欠選任   榊  利夫君     瀬崎 博義君 同日  第一分科員塚本三郎君、中井洽君、第二分科員  川本敏美君、岡田正勝君、第五分科員上原康助  君及び第八分科員川俣健二郎君が本分料兼務と  なった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  (厚生省所管)      ────◇─────
  2. 上村千一郎

    上村主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算厚生省所管について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  3. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、ひとつきょうは概括的なお話を申し上げたいと思います。  大臣有吉佐和子が昔書いた「恍惚の人」という小説をお読みになりましたか。お読みになった。そこで、十年も前でございますのでお忘れになっておることだと思いますが、あの「恍惚の人」というのは、私、読みまして、陰うつな、非常にいやな感じがいたしたのであります。しかし、あの中には非常に問題点がたくさんあったと思うのです。あの「恍惚の人」という小説をお読みになって、いま厚生大臣として、あの「恍惚の人」が厚生省関係する諸問題を打ち出しておると思う。それをどういうふうにおとりになっているのか、ひとつお伺いしたいのです。
  4. 林義郎

    林国務大臣 井上先生からの御質問にお答え申し上げますが、あの「恍惚の人」というのは、ずいぶん前ですから、私も先生と同じように、これは大変な問題だな、いやな問題だけれども、私らでもそういうことになるのかね、そうしたときには、これは困ったことになるがなという印象を非常に受けたことを覚えております。  むしろ私は、高齢化社会がだんだん進んでいきますと、やはり健康で生涯を送らなければならない。そのときに、家庭の中におきましてお年寄りが健やかに最後まで生きていただくということが非常に望ましいことでありますが、やっぱり人間の体でありますから、どういう障害が出てくる、どういう疾病が出てくるということは、予測をし得ない話でもありますし、そういった対策というものを考えていかなければならない。  まず考えられますのは、そういった方々医療の問題でありますし、また、医療を受けるときに、単に病院ということで考えるのがいいのか、病院ということにいたしましても、いろんな治療方法それから介護の方法というのはあるだろう、私はこう思います。  それからもう一つ言うと、これは精神的な問題でもありますから、精神的なものへ持っていくということになれば、また非常に問題も出てくる。それは、御本人の問題もそうでありましょうし、また、家族にとりましてもどうかという問題も出てくるわけだろうと思いますから、そういったものを少し考えてやっていかなければならないものではないか。いわゆる老人対策としてやっていく福祉的な政策のものと、それから医療との中間にあるような問題ではないかというふうに考えておりますし、その辺をこれからどうやっていくかというのは、一つの大きな問題でもあります。一般老人ホームの中に入れてもいけないであろうし、また病院の方に持っていっても非常に困るという問題もあるし、特別の病院に持っていくということもまた問題であろう。じゃ、それの方々だけを特別にやるかというと、またそれも非常に大きな問題が出てくると思うので、私の方でも関係各部局ございますから、そういったところと皆共同して話をしていかなければならない問題ではないかというふうな受けとめ方をしているところであります。
  5. 井上普方

    井上(普)分科員 突然こういうような質問をいたしましたので、戸惑われたとは思いますけれども、私は「恍惚の人」を読みまして、将来、老人医療あり方について一体在宅がいいのか病院がいいのか、この問題については大きな問題を投げかけておると思うのです。そこで有吉佐和子さんも、この問題の解決策、どちらがいいんだというようなことを、疑問を呈しながらやっておるのが実情じゃないかと思います。  そこで、ではありますけれども、近ごろ自民党政府は、家族の中でやるべきだという考え方が非常に強くなってきている。そういうような政策をあなた方はおとりになりつつあるように思われてなりません。しかし、それが果たして、家族自体も痛んでしまうのじゃないか、ここに私は大きい問題があると思う。この間もテレビを見ていますと、京都のお医者さんで、老人性痴呆症にかかった患者一体どうするか、在宅治療を中心にしてのテレビで非常に大きな問題を投げかけたように思うのです。  大臣は先ほど、お年寄りになれば医療の問題が起こってくるのだ、病気にならぬようにしろと言いましても、やはり年寄りますと病気は出てくるのでございます。特に悲惨なのは、老人性痴呆症あるいはまた精神病的何というのですか、そういうような問題が起こってきたときに大変な問題が起こってくるし、家庭を破壊してしまう。そういうようなことから考えますと、そのあり方それ自体について、病院治療というものが必要と言いますよりも、必須の要件ではないだろうか。有吉さんと私はちょっと考え方が違ってきておるのですが、この点どのようにお考えになりますか。
  6. 林義郎

    林国務大臣 いまお話しのありますように、老人性痴呆症というのは一体どういうことで考えたらいいか、こういうお話でございますが、確かに、在宅でやれば、いろんなほかの家庭方々にも大変な負担をかける、また、非常な負担になってくるということも考えられるところでありまして、そこをどうやっていくかというのは、一つの大きな問題だと思うのであります。  それじゃ病院に入れていくか、いまのお話にありましたように、精神病院系統のところへ持っていった方がいいのか、あるいは別のところへ持っていった方がいいのか、その問題をこれから取り上げていかなければならないわけでありますが、一つには、医学の中の分類の問題というか、内科、精神科、いろんな分類がございますから、そういったような形のもの、それから現在の精神病院一般病院その他の病院というような形での分類の問題もございますので、そういった中でどういうふうな形のものを考えていったら、本当にいい痴呆性老人対策ができるのかというのは、まさにいま検討しなければならない話ではないかというふうに、私どもは考えておるところでございます。  何でしたら、詳しくは事務当局の方から、そういった状況につきまして御説明をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
  7. 大谷藤郎

    大谷政府委員 老人痴呆の問題は、厚生省各局にまたがっている問題でございますが、私個人の考え方も若干ありますが、基本的には、老人痴呆といえどもいろいろ程度がございますから、軽いものは在宅になじめば本来は在宅の方がよろしいのではないか。しかしながら、一番重い、たとえば放浪するとか放火、被害妄想、興奮というふうな状況のものにつきましては、厚生省としては、一応これは精神病院の中の老人病棟というものに収容しよう。この数は約一万名から二万名ぐらいではないかというふうに考えております。  それから、そういうふうな行動の制限とか、そういった精神医学的なアプローチが必要ではないが、しかし家族が非常に困られる痴呆状態、いろいろな健忘症的な状態でありますとか、あるいは身の回りの介助の手数を非常に要しますとか、そういった痴呆状態につきましては、いわゆる社会局開係特別養護老人ホームというところで対処をしよう、こういうふうな考え方でございます。  それよりもっと軽い、実際一番多いのが軽い痴呆状態でございますけれども、これにつきましては、保健所で、いわゆる精神衛生相談員というふうなもの、あるいは保健婦さんあるいは嘱託の精神料医等保健所の方からあるいは精神病院の方から、できるだけ在宅ケアというものを促進していきたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、トータル三十万人から四十万人くらいというふうに一般的に言われておりますけれども、相当な数に上る問題でございまして、先生指摘のように非常に大きい問題である。しかし、これを一律的に老人痴呆として処遇を考えるよりは、いろいろなケースバイケースに即して、施設ケアそれから在宅ケア、いろいろな場面を考えていくべきだというふうに考えているわけでございます。
  8. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると、これは大臣、大変なことですね。それについていま医務局長の方から個人的な御見解として述べられましたけれども、これはやはり真剣に取り上げなければならない問題ではないか、これは組織的に考える必要があるのではないだろうか、私はこのように思うのです。これを一概にどちらがいいのだということは言えません。  しかしながら、在宅治療がいいのかあるいは病院に入れるのがいいのか、老人ホームに入れるのがいいのか、こういうことは専門家に任せなければならない問題ではありますけれどもケースバイケースによって考えるのだということでは、私はいけないと思うのです。こういう三つの方法がある。どれをおとりになるかというようなことは、やはり家族とも御相談するようななにをつくらなければいかぬと思うんですね。厚生省としては、これだけ多いのであれば、まさにそういう組織的な、厚生省を挙げての問題として取り組む必要があるのではないだろうか、私はこのように思うのです。これは、やはり対策がおくれておるように思われてなりませんので、大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思うのです。
  9. 林義郎

    林国務大臣 井上議員の御質問にお答え申し上げます。  実は、私の省の政務次官もこの前地元へ帰りまして、いまの痴呆性老人の問題をいろいろ考えなければならないという話をしてきたわけであります。そのほかからもいろいろありまして、話を聞いております。いま医務局長から御答弁申し上げましたが、これは単に医務局だけの仕事ではない、社会局仕事がありますし、さらには老人保健部というのもありますから、そういったところで、これは総合的に考えていかなければならない。私は、厚生省として取り組まなければならない一つの大きな仕事だと思いますから、各局を集めまして、ひとつ対策をどうしていくかやってみたい。厚生省としての考え方をまとめていかなければならないと思っております。  先ほど先生からも御指摘がありましたし、また医務局長からも御答弁申し上げましたように、いろいろな段階があるわけでありますから、その段階ごとに、ここはこうしていきましょう、ここはああしていきましょうという話を大体決めて、それで、患者にはなかなか相談するわけにいかないかもしれませんから、患者の御家族の方とかの御意向も聞きながらやっていくという体制を早急につくっていくべきものだろうというふうに考えております。
  10. 井上普方

    井上(普)分科員 ひとつ総合的にといいますか組織的にと申しますか、特にこれは早急にお取り組み願いたい、このように思うのであります。  ここに老人対策本部というのが去年できているのですね。そして国連高齢者問題世界会議のためのナショナルレポートというのが出ているのです。これを見ましても、どうも概括的なことばかり書きまして、具体的なことが書かれていないのです。ここらあたりは、やはり日本の老人医療が非常におくれているということを示すものではないか、このように私は思うのです。もう一つ聞かなければいかぬことができてまいりまして時間がございませんので、これはこの程度にして、老人医療の問題につきましては真剣に考えていただきたいということをお願いいたしたいと思います。  もう一つの問題としましては障害福祉年金、これはおられますか。これは、きょうにわかに問題を提起しましたので御存じないだろうと思いますが、障害福祉年金をもらっている人、この人に対しまして、このごろ市町村国民年金に加入しろということを盛んに要求している。厚生省御存じですか。障害福祉年金が三百六十万円でしたか七十万円の所得制限があるからこれはいかぬぞということで、国民年金をお掛けなさいということを障害福祉年金をもらっている人にいま市町村が要求しているのです。裁判が起こっておるでしょう。併用ができない。ところが、障害福祉年金をもらっている人が国民年金をもらう年齢になっても、二十五年以上掛けても国民年金の方はもらえない、併用は。にもかかわらず、市町村国民年金をお掛けなさいということをいま勧めているのですよ。御存じですか。
  11. 林義郎

    林国務大臣 井上議員の御指摘、ちょっと私も焦点がよくわからないのですが、国民年金障害年金云々という形ではなくて、いま勧誘をして、お入りなさい、こういうふうな話はやっているだろう、こう私は思います。ただし、障害福祉年金をもらっている人だけを対象にしてということではないと私は思います。一般国民年金には、老後のこともありますから、どうぞお入りなさいということはやっているのだろう、私はこう思います。  それから、もう一つ申し上げますならば、併給の話ですね。裁判がこの前ありましたが、その話は私も聞いて知っているところでございます。
  12. 井上普方

    井上(普)分科員 障害福祉年金というのは、これは満二十歳になりましたら大体もらえますね。
  13. 吉原健二

    吉原政府委員 いま担当の局ではございませんが、かつて年金をやっておりましたので、かわりましてお答えをさせていただきますが、障害福祉年金を受けておられる方も制度上、法律上は国民年金加入者強制加入対象になっているわけでございます。そういうことで、恐らく市町村国民年金にお入りなさいということを言っておられるのだろうと思いますが、ただ、障害福祉年金を受けておられる方は、実は法定免除保険料免除になるという仕組みになっておりまして、保険料免除になりますけれども国庫負担の分は年金額の中に反映をされるわけでございます。したがいまして、六十五歳になりますと拠出制年金受給資格が出る。その拠出制年金障害福祉年金併給はされませんが、拠出年金の方が高い場合もある。したがって障害者の方に有利な場合があるということで、恐らく障害福祉年金をいま受けておられる方も、拠出期間が長い場合には将来自分自身所得制限のない拠出制年金が受けられる可能性があるから、お入りになったらどうですかということを勧めておられるのじゃないかと思います。
  14. 井上普方

    井上(普)分科員 かと思います、そうでしょう。国民年金であれば、これは強制加入でございますけれども、実際問題としましたら、障害年金併給はほとんどできないんですね。にもかかわらず、国民年金に加入しろということを非常に強くいま市町村がやっておるわけであります。その併給裁判が起こっておるのは、国民年金受給年齢に達した、しかし片方においては障害年金をもらっておるから併給はできない、だからおかしいじゃないかということで、いま裁判が起こっておるわけです。にもかかわらず依然として、障害年金をもらっておる人が年間三百六十万円以上の所得、私はちょっとあり得るわけじゃないと思うのです。にもかかわらず市町村においては、国民年金ですから強制的に加入しろということをいま盛んにやっておるわけです。私らのところにも、きょう、部屋に帰りましたら投書が参っておりましたので、あえてこの問題は、ああおかしいなと思いましたのでお伺いしているわけなんです。このことは考えてみなければいかぬ問題じゃないですか。
  15. 林義郎

    林国務大臣 井上議員のところにいろいろと陳情もあるというお話でございますが、障害福祉年金はやはり障害を受けている方々に対する年金という形で出すわけでありまして、いま一般国民年金の方は、むしろいまから掛けたということにしていけば、将来いわゆる障害福祉年金よりも高い年金の額が受け取れることになりますからというのが役所側の話であります。そうしますと、併給をするかどうかという話が一つあるだろうと思うのです。だけれども、これは裁判所でああいうふうな形の結論が一応出ておりますから、もちろんいまからまだやるのでしょう。だから、そういったようなものとどうするかということですが、私たちの方がいま言っていますのは、国民年金国民ひとしく入るのですから、ひとつこれにお入りになったらという形で指導しているのだろうと思います。私も、突然のお話でもありましたし、事務的にどういうことをやっているのかつまびらかでありませんから、御趣旨はよくわかりましたから、先生の御趣旨で少しこれは調べてみたい、こういうふうに思います。
  16. 井上普方

    井上(普)分科員 にわかに申しましたので、それは恐らくおわかりにならぬところがあるだろうと思います。一体国民年金障害福祉年金との関係をどういうように考えておられるか、将来どうするか、これについて、後で文書ででもいただければ結構でございます。  もう一つ、私はお伺いしたいのですが、中国残留孤児の問題であるとかいろいろ申し上げたいのでありますが、もう一つ申さなければいかぬのは、時間の関係もございますので、医師国家試験の問題なんです。  これは非常に大きな問題になっておる。特にこのごろ医学部を卒業する方が多く、これに対して国家試験が行われている。しかし、あの試験の問題を見ても、一体これで国家試験と言えるんだろうか。資格試験だろうかという感が私はするんです。といいますのは、余りにもともかくおかしいということ、迷わす問題が多過ぎますな。どうですか医務局長。迷わす問題、間違いを引き起こすためにつくられた問題じゃないかという感じがするんですな、あれを見まして。私もともかく専門連中に、私ら卒業して長いのでございますが、現役の連中に、あなた方はこの問題でどれくらい取れると言ったら、いや、これであれば正解を書けるのは、六〇%しか書けませんな、と言うんです。専門の方ですよ。落とすためにある国家試験じゃないか。したがって、これの防衛策として受験生諸君が横の連絡をとってともかくやっているんじゃないだろうか。余りにも木を見て森を見ずというような考え方、そういうような問題が多過ぎるんじゃないだろうかというのが、これは私だけじゃない、私の友人どもも全部言うことなんであります。医務局長、どう思いますか。
  17. 大谷藤郎

    大谷政府委員 もう先生がむずかしいと言われるのは私もよけいにわからないようなものでございますが、一応厚生省といたしましては、医師として具有すべき基本的な知識及び技能についての資格に関するということでやっておりますが、この試験批判はいろいろございます。実は、国家試験改善委員会というのを昨年から設けまして、順天堂の懸田前学長でございますが委員長になっていただきまして、いま根本的にいろいろ改革をしたいということでやっておりますので、できるだけそういった批判がないようないいものにいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  18. 井上普方

    井上(普)分科員 いいものをつくりたいって、あれは落とすためにあるような問題集じゃないですか。私も去年の国家試験を見ました。これはむずかしいな、線をこう引くんですな、A、B、Cとか。これはちょっと本筋の医学教育を受けたものでは書けないんじゃないか。これは受験対策のための勉強しなければいかぬのじゃないかという感がいたすのであります。でございますから、先ほども申し上げましたように、専門的な知識を持っている分野の連中でさえ六十点かな、七十点かなと言わざるを得ぬような問題を出している。これが一体資格試験だろうか。競争試験だったら私は申しません。資格試験一体こういうあり方はどうなんだろうか。これは私だけじゃないんですよ。全国の医師諸君がそういう考え方をいま持ちつつある。それは、いま改善委員会をつくられておることも存じてます。恐らく医務局長もお医者さんだからあの問題を見て合格点はとても取れるものじゃないと私は思います。恐らく開業医の皆さん方でも、これは取れる方はほとんどないんじゃないだろうかというような問題を出されている。その防衛のために受験生が全国的な横断的な組織をつくって、試験委員の傾向であるとか、あの試験委員はどれぐらい意地悪だろうか——意地悪ですよ、意地悪だろうかということで、あの組織をつくっていると思われてならない。  それと、改善委員会、懸田さんがどれだけのことができるか私は疑問に思いますけれども、少なくとも資格試験なんだという考え方で、もちろん生命を預かる重要な職業でありますから、そこは厳正にやっていただかなければならない。しかしながら、だれか見ても普遍的な、常識的なと申しますか、そういう問題に国家試験を変える必要があるのではないか。余りにもひねくっておるといいますか、ねじ曲げて間違いを誘発させるような試験問題がともかくたくさんある。これは、私だけじゃなく全国の医者が皆全部言っていることなんでございます。この点を御留意になっていただきたい。と同時に、国会におきましてもこういう論議があったということを懸田さんに十分おっしゃっていただきたいことをお願い申し上げまして、時間が参りましたので、この程度にさせていただきます。
  19. 上村千一郎

    上村主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、薮仲義彦君。
  20. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私は、医療行政の基本といいますか、当然どの行政も大事ですけれども、厚生行政というものが人間の生命に直接かかわるという問題を扱っている重要な省庁でございますので、きょうはそういう意味から、生命の安全という問題で大臣に歯科の問題を中心に何点かお伺いしますけれども、非常に限られた時間に多くの問題を指摘したいと思いますので、御答弁は明快、簡潔にお願いしたい、これは篤とお願いしておきます。  まず、私が経過からお話しさせていただきますと、昨年の末大分県で、当時保険材料になっていなかったニッケルクロム合金を保険で請求した、これがまず間違いの一つでしょう。第二点は、さらにその請求を金銀パラジウムを使用したという形で請求した、これが第二点の大きな不正でありましょう。この件については、厚生省が厳正適確な結論を出されることを私は見守っていきたい。  ただ、その際、ここで問題になったニッケルクロム合金が昨年末の中医協において審議をされ保険に導入されたという経緯がある。大臣、昨年の暮れの中医協が何をやっていたか、私もよく知っておりますけれども老人医療についてやっておったのです。何らニッケルクロム合金ということで審議になってはいなかった。それが突然議題になって採用したという経緯、これは、私は非常におかしいと思う。  この点は、きょうは時間の関係でこの次に譲りますけれども、ただ、この中医協の審議の結果保険に導入したことについて、日歯の器材担当の先生も疑義をはさんだ。私は、毎年一回この歯科の問題をやっているのですが、全国の歯科の先生から、私の方にいろいろな御意見が寄せられた。このニッケルクロム合金の導入について非常に疑義があるという、臨床のまじめな先生方の御意見が全国から寄せられた。さらには、歯科技工をやっている方もこの材料に不安を覚えていらっしゃる、保険に導入されてこれからわれわれが使うについては非常に困る、こういう御意見だ。また、これは大臣も知っていると思うのですが、日歯が各都道府県の県歯に対して通達を出していらっしゃる。その通達の内容もこれから指摘しますけれども、その通達自体が非常に問題が多過ぎると思うのです。混乱しておる。これをどのような形で臨床の先生が受けとめるかによって非常にこわいと思う。  この点は具体的にやっていきますが、まず大臣に基本的なことから確認していきたい。薬事法を大臣の前で読み上げるまでもございませんけれども、薬事法の第一条には、医薬品、医薬部外品それから医療用具に関して有効性及び安全性が大事ですよということをまず冒頭にうたって始まっているんです。これは、大臣たるもの、一番心にとどめておいていただかなければならない。承認のとき、輸入のときは安全性が最も医療行政では大事なところでありますが、再確認していただきたいと思うのですが、大臣いかがですか。
  21. 林義郎

    林国務大臣 薮仲議員の御質問にお答え申し上げます。  薬事法にそういうふうに書いてありますし、有効性、安全性は薬事法の基本をなすものであろう、こういうふうに考えております。
  22. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それでは、重ねてお伺いしますけれども、最近いろいろ製薬会社の問題が出てまいります。昨年は日本ケミファのノルベダン、あるいはまたきのうの毎日新聞には明治製菓の問題が出ております。本来、こういう学術的なものは厳正であり、本当に厳格に学術研究等がなされて発表されて薬がつくられていかなければならない。ところが、われわれが見ていると、データが簡単に不正な形で捏造される。論文も勝手に、だれがやったかわからない形で出てきている。それが厚生省では、厳正な審査を経たとして、その論文あるいは研究データをもとにして新薬を承認する。しばらくたってこの論文、データはでたらめだった、何人かの人がこうだった、あるいは実験した犬が死んでいた、こうなってくると、国民の間に、いま私たちが飲んでいる薬あるいは薬屋さんで売っている薬が大丈夫かな、こういう不安がどうしてもつきまとってくるので、この際、こういう問題に対して国民の不安を解消するために、こういういいかげんなデータによって新薬が承認されない保証をどうなさるか、大臣、それをお伺いしたい。
  23. 林義郎

    林国務大臣 薮仲議員の御質問にお答え申し上げます。  先ほど申し上げましたような薬事法のたてまえに基づきまして、私どもは、中央薬事審議会にいろいろなことを全く科学的な判断に基づいてやっていただくということでお願いをしておるところであります。いろいろ出ておりますが、薬事法に基づくいろいろな承認の実態につきましては、後ほど薬務局長から御説明をさせますが、科学的な判断ということになれば、やはりお医者様なり大学なり、それぞれのところでいろいろと実験をされたものがある、そうしたものが学会雑誌などで出てまいりましたら、それは学者なりそれぞれの方々の良心に基づいて公正にされたものという一応の推定はしないと、それまで疑い出すとまた大変な話になってくるわけでありましょうから、いまそういった形で審査をやっているということは御理解を賜りたい、こういうふうに考えているものでございます。
  24. 薮仲義彦

    薮仲分科員 重ねて二つ聞いておきたいと思う。  はっきり申し上げて、いまの大臣の答弁、私は納得できないのです。このような形でデータが捏造されたりあるいは権威のない論文が出てくることが国民に知れ渡るということは、現在の厚生行政全般に対して、厚生省国民の生命を本当に守っているのか、薬は大丈夫なのか。私は、かつていろいろな薬害の問題をやってきました。いろいろな問題を聞いておって、私は薬のこわさをよく知っています。きょうだけ指摘したのじゃないのです。私は、いろいろな薬害全部やってきました。きょうは時間がないからやりません。こういう薬害やあるいは薬に対して、厚生省国民の前に、安全ですということをもっとしっかり系統立ててりっぱな審査をやりますということを確認しないと、国民は絶対納得しないと私は思うのです。この問題を真剣に取り上げていただきたい。今後こういうことが起きないためにどう対処するか、どういう検討をなさるか、さらにはまた、現在市販されている薬が絶対安全かどうか、その責任は、大臣持てますか。
  25. 林義郎

    林国務大臣 薬の問題につきましては、いまお言葉の中にちょっと出てまいりました日本ケミファのような問題もありました。私は、この点につきましては率直に反省をしなければならない点があるだろうと思います。それは、いろいろな薬の審査をいたすに当たりましての組織、体系、そうしたものの中にやはりもう一遍メスを入れて考え直していかなければならない、そうした上で、薬というのは何といっても厚生省なり政府が認めている薬であるから有効であり、かつ安全であるということの評価を得るために、より一層厳重な審査をやっていくという体制をつくらなければならないと私は思いますし、実は、日本ケミファ事件を契機といたしまして、いま、どういった体制をつくるかということを中で早急にまとめているところであります。そういったことによりまして、薬に対する国民の信頼をより一層高めてまいりたい、こういうふうな考え方でやっております。
  26. 薮仲義彦

    薮仲分科員 重ねて二つ伺います。  いま市販されている薬、厚生大臣、責任を持ってくれますね、これが一つ。二つ目。これは大臣が答えてください。局長じゃだめ。いま大臣は、中央薬事審議会の審査を経て承認するとおっしゃった。この二つ、間違いございませんね。
  27. 林義郎

    林国務大臣 現在ある薬というのは、それぞれ中央薬事審議会で審議されたものでありますから、それを承認するに当たりましては、当然厚生省が責任を持ってやっている薬でございます。いろいろと薬の中身、新薬であるとかいわゆるゾロと申しますような薬の問題、それぞれありますから、その辺につきましては担当局長から答弁をさせていただきます。
  28. 薮仲義彦

    薮仲分科員 局長の答弁は結構です。いまの大臣の答弁は非常に重要です。いま、厚生省が承認したものは厚生省に責任があるとおっしゃった。このことは、厚生省のお役人は生涯胸に刻んでおいていただきたい。そういう無責任なことを二度と再び言わないようにしていただきたい。私は、もっと具体的な問題で指摘したいことがあるので、この問題はこのぐらいにしておきます。  大臣、いま中央薬事審議会とおっしゃったけれども、それはそれで結構でしょう。では、私が具体的に聞きましょう。  これは大臣、まだ御就任以前ですけれども、レクチュアが終わって勉強なさっておありだと思いますので、確認の意味でお伺いしますけれども昭和五十五年五月三十日と六月三十日に薬務局長の通達が出ているわけです。「医薬部外品等の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について」これは昭和五十五年五月三十日に薬務局長が出したのです。六月三十日には、今度は「医療用具の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について」というのをお出しになっていらっしゃる。この中で、ある意味では非常に厳格に安全性、安定性について言っているのです。  この添付すべき資料の中に、こういうのがあるのですよ。外国における使用状況に関する資料をつけなさい、御存じですね。それから安全性については、急性毒性試験、亜急性毒性試験、慢性毒性試験、皮膚刺激試験、これは歯科にとっては大事ですよ。発がん性試験、これも大事ですよ。催奇形性試験、発熱性物質試験、移植試験、溶血性試験等生物学的安全性に関する資料をつけなさい。安定性については長期保存試験に関する資料もつけなさい等々、安全性と安定性に厳しくたがをはめているのです。これが薬務局長通達。これは大臣、篤と御存じで、間違いない思うのですが、いま私が指摘した点は、これから私が言うことで非常に大事なことでございますから、この通達、よろしゅうございますね。  そこで、その前に吉村局長に確認しておきたい。一月十九日の決算委員会で、あなたはこういうことを答えていらっしゃる。ニッケルクロム合金についての同僚委員の質問に対して、こういう答弁をなさっていらっしゃる。読んでみたい。ニッケルクロムについては、材質のかたさだとかあるいは鋳造技術のむずかしさ等いろいろ問題がございましたので、改良が行われるのを待っておったとおっしゃっている。いいですね。第一点。それから、改良というものが可能になったのは二、三年前ぐらいだ、こうおっしゃっている。それから、したがってそういうものが可能になったとすれば、一応学会の意見も聞いて保険の中に取り入れるかどうかやった。それから、一番問題は、学会の方からもよかろうという一応の御意見をいただいた、こうなっている。中医協の審議だとか学会の答申をいただく、そういうことで若干おくれたけれども、今度導入しましたという答弁を行っている。この答弁、間違いございませんね。間違いないかどうか、簡単に。
  29. 吉村仁

    ○吉村政府委員 間違いございません。
  30. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それでは、私も、局長、補綴学会や理工学会、歯周学会の先生方は大ぜい知っているのです。それで、いろいろな御意見を聞いているのです。この中で、あなたは改良が二、三年前とおっしゃった。また、学会の御意見というお話が出てくる。  じゃ、理工学会の何という先生の意見を求められたか、歯周学会の何という先生の御意見を求められたか、補綴学会の何という先生がいいとおっしゃったか、明確にきょう言ってください。どうぞ。
  31. 吉村仁

    ○吉村政府委員 歯科理工学会は、代表者が九州大学教授の山根正次先生でございます。それから、歯科補綴学会の意見は、三谷春保大阪歯科大学教授に聞いております。それから、技工士会にも意見を聴しまして、反対しないという意見をいただいております。
  32. 薮仲義彦

    薮仲分科員 理工学会はどなたですか。それから、歯周学会は聞かないのですか。  その前に、何年何月、ちゃんとはっきり言ってください。何年何月、いまおっしゃった先生がどういう形で、文書でしたのか口頭だったのか、はっきりしなさい。
  33. 吉村仁

    ○吉村政府委員 日本歯科医師会を通じて意見を聞いております。
  34. 薮仲義彦

    薮仲分科員 いつ。
  35. 吉村仁

    ○吉村政府委員 昨年の十一月ぐらいだったと思います。
  36. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大事な人体にかかわる保険材料をやるのに、だったと思いますとか、そんなあいまいなことで通るから、いま言ったような薬がどんどん出てくる。いま私がニッケルクロム合金の危険性をどんどん指摘するけれども、あなたのようなそういうあいまいな態度でやっては絶対だめなのだ。何月何日、どういう文献で、どういう審査によって理工学会がオーケーを出したか。  私は、専門の理工学の先生に取材に行ってきた。先生は、何ら厚生省に明確な答弁はしておらぬとおっしゃっている。補綴学会の先生も、これはとんでもないことですとおっしゃっている。あなた、それでもよく聞いたなんて——これは委員長に要求しておきますけれども、いまおっしゃった各学会からどういう文書をもらってオーケーしたか、これを文書で資料として私にいただきたいと思うのです。委員長から局長に言ってください。
  37. 吉村仁

    ○吉村政府委員 いま申されましたことについて、私どもは、歯科医師会を通じてそういう学会の意見を聞くというルールをいままでとってきておるわけでございます。したがって、歯科医師会に一度確かめて、そういう資料があれば先生の方に提出するようにいたします。
  38. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣、よく聞いておいてください、これだけあいまいなのですから。  じゃ、今度ニッケルクロム合金の保険導入について、安全性、安定性について何を基準に判断なさいましたか。簡単に、明確に言いなさい。
  39. 吉村仁

    ○吉村政府委員 歯科用ニッケルクロム合金が保険に採用されたのは、鉤とか冠についてはすでに前から採用されておったわけでありますが、今度鋳造用のニッケルクロム合金を保険給付の対象にしたわけでありますが、従来鋳造用のニッケルクロム合金が対象になっていなかった理由は、材質のかたさあるいは鋳造技術の困難さ等に主な理由があったわけでありまして、鉤、冠につきましてはすでに採用しておった、こういうことでございますので、特に安全性については問題はないと私どもは考えておるわけでございます。
  40. 薮仲義彦

    薮仲分科員 あなたが安全性について大丈夫と言うのは、何か学術的なちゃんとしたデータはあるのですか。資料に基づいてですか。いわゆるこの板とか線はたしか昭和三十一年のJIS規格にのっとっていますというだけですよ。この鋳造冠については、四十五年に歯科材料として鋳造冠として認めた。どこで安全性についてやっていますか。JISの規格だけじゃないのではないですか。
  41. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、薬務局の方で安全だということで承認しておるものだと承知しております。したがって、薬事法に基づいて承認された材料につきまして、保険の中に取り入れるかどうかということだけが問題でございまして、先ほど申しました問題点が解消されたので保険に採用した、こういうことでございます。
  42. 薮仲義彦

    薮仲分科員 では大臣、あなたにお伺いしますが、ニッケルクロム合金の安全性、安定性について大臣は責任を持つのですね。大臣、お答えください。
  43. 林義郎

    林国務大臣 薮仲議員の御質問にお答え申し上げますが、すでに薬事法に基づいて承認されたものでありますから、その段階におきまして有効性、安全性というものは確認をした上でやったものだというふうに了解をしております。
  44. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣、よくおっしゃいましたね。厚生省がニッケルクロム合金線、ニッケルクロム合金板を保険材料として承認しているのです。ここの中で何を言っているかというと、JISというのは単なる金属材料の引張試験方法だけなんです。引っ張ってどうだというだけ。ここで言っているのは、化学成分は銅が七%以下、クロム七%以上、ニッケル七〇%以上でなければならないと物性をうたっているだけで、安全性なんかどこにも出てこない。このクロム合金板、これも銅が七%以下、クロム五%以上、ニッケル八〇%以上でなければならないとうたっているだけで、安全性なんかどこにも出てこない。  いいですか。当時の安全基準というのは全然なくて、JISに準用するということだけで四十五年にオーケーしたんじゃないですか。厚生省からいただいた資料にこう書いてある。歯科鋳造用ニッケルクロム合金の承認の経緯。たったこれしか書いてないのですよ。あなたの局から来ているのです。大臣、後で見てごらんなさい。昭和三十一年歯科用ニッケルクロム合金板及び同合金線のJIS規格が制定された。昭和四十五年歯科鋳造用ニッケルクロム合金が承認された。これ以上のことは何もないというのですよ。JISに準用するだけというのですよ。どこで安全性を認めるのですか、大臣
  45. 持永和見

    ○持永政府委員 まず、先生の御指摘のJIS規格の安全性の問題でございますけれども、JIS規格の中に、歯科用ニッケルクロム合金線については、性質といたしまして、使用上有害な欠点がないという記載がございます。
  46. 薮仲義彦

    薮仲分科員 何もやってないのですよ。大臣、教えますから。  これは北欧五カ国、特に北欧ではニッケルは使用禁止、アメリカでもやめようとしている。いま時間がないから指摘してあげますよ。大臣、勉強してください。私がこんなことを言う前に、大臣が薬務局長をもっと厳しく指導しなければいかぬです。これはスウェーデンのストックホルムに本部があるカロリンスカ研究所、この研究所は、ノーベル賞の中でも生理学、化学、医学の決定をおやりになる。権威があるのです。私は、東京のいろいろな歯科の先生に、この研究所のドクター・ソアマークという先生はどういう方ですかと聞いた。この方は補綴学、理工学、いわゆる金属を人体に埋没することについては非常に詳しい先生だという。その先生がこう指摘している。スウェーデンでは一%以上ニッケルを含有する歯科用合金の使用は一九七四年以来禁止しております。さっき薬務局長通達で外国の資料とあったけれども、これを添付したら使えないはずです。しかも北欧においては、これはノルウェーでもフィンランドでもやめようと思っている。なぜやめようかということについて、危険なことがここに書いてある。ベリリウムが混入しておる。  これは大臣も御承知のように、ベリリウムというのはニッケルの中から抜けないのです。かつてイタイイタイ病のときに、カドミウム、重金属が抜けないで困った。ニッケルからベリリウムを抜いてゼロにすることはほとんど不可能に近い。ニッケルの重量の〇・五から二%はべリリウムがどうしても含まれる、こう考えなければならない。このニッケルクロム合金というのは融点が千三百度なんです。そのときにベリリウムというのは、いわゆる合金されている場合は安定かもしれません。しかし単体になると非常に危険だ、こう言われているのです。しかも、これの鋳造のときに技工士の方の気管に入らないかどうか。あるいはまた研磨中に粉じんが人体に入らないかどうか。これはここに出ているのです。ニッケル産業の工場労働者のがんの発生率は一番高いというのです。これほど危険なことがこうやってやられている。スカンジナビア歯科材料研究所というのがあるのです。これは北欧五カ国でやっているのです。日本の国にないのです、大臣。  いま私、この文献をちょっと説明しますけれども、非常にこわいのですよ。大臣、よく薬務局長はこれで許可したと思うのです。ここに「産業中毒便覧」というのがあるのです。これは医療薬出版という出版社から出ているのです。これに「ベリリウム」という項目がある。ここで、ベリリウムは発がん性があり、ラットにやったらこう、人体にやったらこうとちゃんと出ているのです。ラットの場合は、粉じんまたはエアロゾルを六カ月間繰り返し吸入させると肺にがんが発症しますとここに出ているのです。一八六ページ。後で見てください。人間における中毒症状は、ベリリウムを粉じんで吸入すると急性の呼吸器障害等々、最後には、時間がないから言いますけれども、中断しても症状が治癒することはほとんどないと出ているのです。こわいのですよ、ベリリウムというのは。  それで、大臣、これもあなたのところでもっとしっかりしてもらいたいんだよ、私は。日歯がこういう通達を出している。これは私は大臣に認識してもらいたいのです。いいですか。日歯が全国の歯科医師に対してこういう通達を出している。「歯科鋳造用ニッケルクロム合金として薬務局に認可を受け、市販されている商品全部が対象となっている」、対象なんてうまいことを言っているんだ。全部が対象になっているんですよ。しかも厚生省から来た資料を見てごらんなさい。ひどいんだから。ニッケルの含有量が三〇%から八〇%まで。めちゃくちゃなんだ。何の規格も決まってないんですよ。何を使ったっていい。だから、「全部が対象となっているが、規格が全く定められていない」と日歯が言っているじゃないですか。「現状では口腔内、生体内での安定性(ニッケルの溶出防止、耐蝕性)を得るようなクロム量を含有しているものを使用すべきである。」何%クロムを含有していれば安定性があるのですか。そんなことが日歯から通達が出ているのですよ。しかも、「どの商品を選ぶかは、会員の判断するところである」。値段は倍くらい違うのですよ、品質によって。大臣、もっと勉強してもらいたい。「会員の判断するところであるが、操作性に問題があるので製作工程の各ステップをより正確に、能書の指示通りに行うよう心掛けねばならない。完成した製作物は、この合金のもつ物性のため、歯牙の高径、接触点の回復が非常に困難であるので、装着時の調整にあたり、十分な配慮が必要である。」  どういうことかというと、物すごくかたいのです。われわれだってグラインダーでかあっとやられれば粉じんが飛ぶのです。いまベリリウムが呼吸器に入れば危険ですよと言ったばかりです。口腔内でやられたらどうなる。技工士が、融点が高ければ気体として吸ったり、粉じんが飛んだらどうなる。責任を持ちますか、大臣。  さらば、歯牙の高径というのは高さです。咬合調整をやるのです。咬合調整も非常に困難だ。さっきの博士も言っています。口腔内に二つの異種の金属を入れるとこの中で電気が発生します。これもどう影響するかわからない。しかも、ニッケルというのは非常に刺激性があって、口腔内に口内炎が発生する。取り外せば治る。日本の人はなぜ口内炎になったのかわからないからぼんやりしているけれども、非常に危険ですとこの博士は指摘している。  さらにまだあるのですよ、「鋳造、研磨、調整にあたり、粉塵による人体への影響があるので、十分注意すべきである。」と日歯が言っているのですよ。こんな危険なものをどさくさに紛れて保険に入れるなんてもってのほかだ。しかもさっき大臣は、冒頭私が確認した、中央薬事審議会の審査を経て承認するとおっしゃった。うそだよ。このニッケルクロム合金なんか中央薬事審議会にかかってないじゃないですか。どうですか大臣、お答えください。
  47. 持永和見

    ○持永政府委員 歯科鋳造用のニッケルクロム合金でございますけれども、先ほど先生が御指摘のようにJIS規格による合金板あるいは合金線というのがございまして、(薮仲分科員「私の質問に答えれば結構」と呼ぶ)それと類似の品目ということで中央薬事審議会までは上げた審査はしておりません。
  48. 林義郎

    林国務大臣 私からお答えを申し上げます。  薮仲先生大変によく御勉強しておられまして、いまお話を聞いておりまして、やはりベリリウムというのは確かにずいぶん問題になったな、かつて公害委員会で私も先生の同僚の岡本さんからそんな話がずいぶん出たことをいま思い出したような次第でございます。  いずれにいたしましても、私の方ではそういったいろいろな問題を踏まえた上でやったというふうに話を聞いておりますが、せっかくの先生の御指摘でありますから、私も少し勉強させてもらいたい、こういうふうに考えております。
  49. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣、薬事法の六十九条には、緊急的に危ないものはやめなさいと載っているのです。十四条もよく勉強していただいたとおりで、危ないものを出してはいけません。これは大臣の権限できちんと整理していただきたい。  最後に大臣、お願いだけしておきますけれども老人医療の中で歯周学会の方から厚生省指摘が出ているのです。特に老人の歯科診療の中から特掲診療として慢性疾患指導管理料を取ったことについて非常に問題がありますので、これは大臣、きょうは時間の関係指摘だけしておきますから、よく専門先生の御意見を聞いて改めていただきたいし、もう一つは、国立の材料研究所を至急つくられるよう要請して、質問を終わります。
  50. 上村千一郎

    上村主査 これにて薮仲義彦君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。     〔主査退席、白川主査代理着席〕
  51. 上原康助

    上原分科員 本論に入る前に少しばかりお伺いをしておきたいのですが、いまも御指摘がありましたが、政府の医療行政といいますか薬事行政に対して大変疑問が持たれている。きのうからいろいろ報道されておりますように、昭和大学薬学部における動物実験結果のデータの捏造問題、国民に大変な不信感を与えたと思うんですね。昨年は確か日本ケミファ事件で大変大きな問題になって、結局営業停止問題まで発展をした。この昭和大における動物実験も昭和五十年八月ごろから行われておったようですが、このように明治製菓とのことで明らかになった以上は、やはり徹底的に調査をしてしかるべき措置をとらねばいかない問題だと思うんですね。これについてどういう御見解を持っておられるのか。  また一方、けさの東京新聞を見てみますと、総合病院なりいろいろな面でやられる不正検査、目に余る手抜き問題がある、こうでかでかと出ていますね。「病院に年間一千万円のリベート」というような、衛生検査業界との癒着問題、「体質が生んだ”構造汚染”」だというふうに指摘をされている。こうなりますと、もう国民は厚生行政、医療行政に対する不信感、いろいろな面で疑惑と疑問を持たざるを得ない。せっかく検査をしていただいても、一体それが本当に精密になされているのか疑問を持たざるを得ないということがますます深まっていく、広がっていく可能性があると思うのですが、このことについてどのような御見解を持ち、どう対処していかれるのか、御見解を承りたいと思います。
  52. 林義郎

    林国務大臣 上原議員の御質問にお答えを申し上げます。  昨日の新聞に、いまお話のありました問題が出ておりました。昭和大学ですか、その中でいろいろな話があったということでございますし、たまたま日曜日でもありましたから、早速にきょう厚生省に来ていただきましてお話を聞く、こういうことにいたしております。たびたびこういうふうな事件が出て、昨年のケミファ事件などというものが出ておる、こういうことで私も非常に遺憾なことである、残念なことである、やはり体制をしっかり立て直して、本当に国民の信頼にこたえられるような薬事行政をやっていかなければならない、これも私の考えているところでありまして、審査の方法であるとか体制であるとかそういったものにつきまして、見直しを事務当局に命じておるところでございます。  東京新聞のという話は、私は実はとっていなかったものですからまだ見ておりませんが、後で見まして、それも恐らく先生指摘でしょうから、その辺につきましても検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  53. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、もしこのデータの捏造が事実だったということになりますと、厚生省としてはしかるべき処置を講じますね。
  54. 林義郎

    林国務大臣 どういうあれであったのか、その新聞記事だけでございますから、私もここでどうするという確言はいたす立場にはありません。しかし、事情を聞きましていろいろな問題があれば、それぞれ薬事法の基準、またいままでの取り扱いの慣例等に従いまして処置をしなければならないものだというふうに考えております。
  55. 上原康助

    上原分科員 いずれにしましても、こういう事件が相次いで起きるということは、先ほども申し上げましたように、国民医療に対する不信といいますか、それが非常に強くなる。したがって、もう少しそういった面の信頼を回復するような徹底した行政指導をやっていただくことを強く要望をしておきたいと思います。  そこで私は、次に、これは以前にも取り上げたことがあるのですが、沖縄県における遺骨収集の件についてもう一度お尋ねをしてみたいと思うんですね。  今回も、二月十日から厚生省の沖縄戦没者遺骨収集団が主として伊江島を中心に三月、今月五日まで行ったようであります。もちろん西原町あたりでもやったようですが、復帰してからでもすでに十年が経過をいたしました。私は以前から、この問題についてももっと迅速にやるべきじゃないのかということを取り上げたことがあるわけですが、まだまだ相当量の遺骨が未収集のままある。しかも埋没したごうに残されておって、なかなか、陥没といいますか埋没したごうそのものの確認さえも、古老の皆さんがだんだんいらっしゃらなくなる、あるいはその周辺の状況等について知っている人々が少なくなっていく、そういう面で地域や関係者はある面で焦りを感じている向きもあるわけですね。どうも非常にスローモーな感じも受けますし、いま少し迅速にこの種の戦後処理というものはやっていいのじゃないかと思うのですが、今回も去る五日で一応五十七年度は打ち切りだというふうになっているようですが、これまでの実態と実情、経過と、あるいは今後どういうふうな作業を進めていこうとしておられるのか、五十八年度は予算などもどういうふうにお考えになっておられるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 林義郎

    林国務大臣 さきの大戦で戦場となりましたのは沖縄だけでありまして、沖縄御選出の上原先生も前々からこの問題につきまして特別に御配慮をいただいておることはよく承知をしておるところであります。私も最初に沖縄に参りましたときに、慰霊塔のあるところをお伺いいたしました。はるか南の海の中にまだたくさんあるのだという話を聞きまして、本当に胸の痛むような思いがしましたし、個人的にもやはり戦没者の遺骨というものはできるだけ早く収骨しなければならない、こういうふうにみんな考えているところではないかと思いますし、特に地元の皆さん方先生指摘のような感じを持っておられることも十分わかるわけでございます。今後とも引き続き積極的に取り組んで、早期完了に努めたいと考えているところでございます。  いま御指摘がございました、どういうふうな形でやるかとかというような話は、事務当局から答弁させますことをお許しいただぎたいと思います。
  57. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 沖縄におきます遺骨収集のこれまでの事業の中で、経過を申し上げたいと思います。  沖縄における戦没者の数は十八万六千五百名というふうに承知しております。そのうち、これまで遺骨収集できましたものが十八万百八十柱、そのうち政府によって実施いたしましたものが四万五千百四十、それ以外は沖縄県民の御協力によって収骨できたものでございます。したがいまして、現在いまだに収集できておりませんものが六千三百二十柱、またこれまで発見されておりますごうの中でまだ処理ができておりませんものが沖縄本島南部の十三カ所、伊江島の十一カ所、こういう状況でございます。  本年度は、先ほど御質問にございましたとおり、三十日間にわたって実施をいたしまして、その中でいま現在の私どもが聞いておりますところでは、伊江島地区で埋没ごう五カ所におきまして百七十四柱、南部地区におきましては埋没ごう三カ所につきまして九十三柱、計二百六十七柱の収骨ができたという報告を受けております。  五十八年度におきましては三千五百二十五万六千円、大体前年同様の予算額をもって、また鋭意実施をいたしたいというふうに考えております。
  58. 上原康助

    上原分科員 細かい数字に若干疑問点はありますが、御説明として承っておきたいと思います。  そこで、これは厚生省がお出しになった資料からも未収骨数が現在まで六千三百二十、これはいまさきの二百六十七柱は差し引くのかどうかわかりませんが、いずれにしても六千三百前後ある。これだけまだ残っているわけですね。こういう中でいろいろまた想像し話も聞くと、大臣、よけいいやになっちゃうのですが、ですからこれは打ち切るわけじゃないですね。政府の責任において、いろいろ困難はあっても今後継続して最終段階までこの収集作業というのは進めていくおつもりですね。
  59. 林義郎

    林国務大臣 お説のとおりでございます。
  60. 上原康助

    上原分科員 いろいろ予算の都合とかあるいは作業班なりの編成問題、その他また地元の受け入れ問題等もあって、大体年度末になるのかどうかよくわかりませんが、もう少し時期的問題等もお考えになって、ぜひ遺族の皆さんや関係者の要望にこたえるように、さらに促進方を要望しておきたいと思います。  次にお尋ねしておきたいのは、戦時中の仲縄—本土間、あるいは鹿児島なり神戸なりから沖縄那覇向けに出航した、要するに旧日本軍に管理といいますか運航されておった船舶の沈没問題があるわけですね。これまで長いこと総理府なりあるいは厚生省で御苦労いただいた対馬丸事件は、一応の遺族に対する補償問題解決というか、補償等でいろいろ問題を残している向きもあるようですが、なされておる。しかしその他については、ほとんど実態さえつかみ得ないまま今日に至っているのですね。私もこのことについては、公の場ではきょう初めて取り上げるわけですが、一つは、昭和十八年ごろから沖縄南西諸島海域で米潜水艦による船舶攻撃がいろいろなされた。今日まで判明したものは、対馬丸を初め湖南丸、嘉義丸等三十三隻が撃沈をされている。しかしそのほとんどは、被害者がどうであるのか、まだ実態さえもつかめていないのですね。こういうものについては、記録なりいろんなものが残っているのかどうか、実情を把握しておられるのか。特に湖南丸というのは、昭和十八年十二月二十一日に撃沈をされているようであります。那覇港から満蒙開拓団を乗せて、軍需工場徴用者を含めて五日六十八名を乗せて出港後、撃沈されている。生存者が七名しか確認できなかった。一方の嘉義丸は、昭和十八年五月二十六日に撃沈をされている。これは神戸、鹿児島より県人四百二十一人を乗せて那覇港に向かう途中だったというふうに言われておりますね。この二つの船舶について、政府はどういう記録なりあるいは実情把握をしておられるのか。これも何のあれもなくて、ようやく四十年ぶりにこの間嘉義丸なんか海上慰霊ですか、湖南丸なんかもやって、私はテレビであの状況なりラジオで聞きまして、改めて戦争の被害というのを、犠牲というものを思い起こしましたし、また遺族の皆さんももう年老いて、いまだに何の御苦労の一言もない、補償はもちろんない、こういうことでいいのかということを改めて私自身も感じたわけですね。このことについて政府の実態把握の問題と、いま私が指摘をしましたことについての御見解を承っておきたいと思います。
  61. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 御質問のございました船舶の遭難状況については、御指摘のとおりその事実把握が非常にむずかしく、私どもも十分に把握いたしていないのが実情でございます。三十数隻というお話がございましたわけですが、そのうち私どもでわかっておりますのは、陸軍徴用船が二隻、海軍徴用船が七隻、海軍指定船七隻というようなことがわかっております以外にはほとんど実態をつかんでおりません。その中で、具体的に御質問のございました二つの船につきましては、ある程度状況がわかっておりますので申し上げます。  湖南丸につきましては、昭和十八年十二月十九日那覇港を出帆いたしたわけですが、これは大阪商船株式会社所有の海軍指定船でございます。計三隻で船団を組んで名瀬に寄港後、鹿児島港に向け航行途中、十二月二十一日鹿児島県口永良部島の西方で潜水艦の雷撃を受けて沈没したということを承知しております。この湖南丸の乗員の四百名余りは柏丸という船に救助されたわけでございますが、この柏丸も雷撃で沈没をいたしまして、遭難者のほとんど全員が死亡したものと見られております。この中には一般船客五百八十三名が乗船しておられたわけでございますが、生存者は五名、死亡行方不明五百七十八名というふうに記録されているようでございます。  また、そのほかでは同じく大阪商船附属の海軍指定船である定期船嘉義丸が、昭和十八年五月二十六日に名瀬寄港の途中、奄美大島北方で同じく潜水艦の雷撃により沈没いたしました。その中で、乗組員、乗客合わせて五百九十五名のうち二百七十五名が死亡されたということが記録されております。  これらの船で遭難あるいは戦没されました方の中で、国との身分関係が明らかな軍人であるとかあるいは軍属の方につきましては法に基づきまして処遇が行われておるわけでございますが、一般国民の方の場合には援護法その他の適用がございませんので、御事情には大変お気の毒なものがあるのでございますけれども、私どもとしてはこれにお報いする、あるいはお慰めする方法を持ち合わせないというのが実情でございます。
  62. 上原康助

    上原分科員 確かに戦災をこうむった国民というのは、沖縄はもちろん、地上戦その他でよりひどかったわけですが、本土の皆さんを含めて十・十空襲なりその他でいろいろあったことはよくわかります。しかし、対馬丸の問題、これはたしか学童疎開でしたね。あるいはあと時間があれば若干取り上げたいのですが、私が前々から指摘をしてまいりました六歳末満の補償問題、援護法適用問題等含めて、この種のことは政府の御見解なりあるいは立場というものは、いま局長御答弁のとおりなんですね、型どおりというか形式的にいいますと。それはその都度、そうなっておった、気持ちはわかるけれどもいまの援護法にはなじまないとか、制度的にむずかしいとか、補償措置は講ぜられない、一般戦争被災者は沖縄だけではなくして本土もそうなんだという立場しかとってこなかった。しかし、これはあくまでもいま答弁がありましたように海軍指定船なんですよ。明らかに戦争行為に準じた仕事をこの船はやっておったわけですね。それを利用させられたのかということになっていると思うのですが、これを軍人や軍属については援護法適用で補償はするけれども一般の乗組員は別だということは、余りにもこれは納得しかねる考えと言わざるを得ないわけですね。  したがって、きょうは、私がいま指摘をしましたことについては遺族の皆さんも大変不満を持っておりますし、実態をよりもっと明らかにしてもらいたいということと、この種のことについてもやはり戦争の犠牲であることには変わりはないから、もう少し国の立場として、温かいと言うと変な言い方かもしれませんが、やるべきことはやってもらいたいという強い要望があるわけですね。確かにいま行革問題なり財政問題、いろいろな面で問題があるということは私も重々わかりながらも、しかしこの種の問題がうやむやにされた形では、やはり戦後は終わらないですよ。そういう面でもう少し実態を把握をしていただいて、いま局長の答弁は答弁として承っておきますが、これはやはり政治的な判断も含めて何らかの前向きの措置というものが講じられないのかどうか、御検討をいただきたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
  63. 林義郎

    林国務大臣 上原議員の御質問趣旨もよくわかるのです。戦後の問題というのはいろいろやはり考えていかなければならないということもありますが、先ほど局長から御答弁いたしましたように、私も空襲で被害を受けた方でございますし、いろいろな態様がありますから、軍人軍属等特別な関係を持つ者については、やはり国が国との特別関係というような形での国家補償という精神でやっているというのがいまのたてまえであります。それは一般の——私、いまお話を聞きまして、嘉義丸が海軍指定船だというような話もありますね。そういったことが入るのかな、どうなのかなというのは、いわゆる法律でいうグレンツファルの詣である、どこでどうやるかという話だろう、こう思うのです。  それから一般的に戦後処理を一体どうするかというのは、総理府に戦後処理問題懇談会というのを五十七年の六月に設置しておりまして、そういったところで基本的な考え方を出していただかないと、全体の問題でありますから、どうするかということはなかなか言えないのだろう、私はこう思います。そういった中で私は処理をすべきものではないかというふうに考えているところであります。こういったところがいまお話がありましたように三十七隻もある、なかなかわからないというのは、本当に私も非常に残念なことであるし、遺族の方々には本当に申しわけないという気持ちもありますが、戦後のあのどさくさのときの話でもありますし、なかなかこれはむずかしい話も出てくるのではないのだろうかなという感じを私は持っておるところでございます。
  64. 上原康助

    上原分科員 私もむずかしいというのは十分わかっているつもりであります。また、内閣委員長を長いことやっていますので、そういう小委員会などが設置されているというのもわかりますし、若干関係もしていますので、そこにも問題提起はしたいと思うのですが、しかし同時に、厚生省としてこういう事実関係があるということを最高責任者の大臣が御理解いただかないと、これは前に進まぬ問題でもありますので、それで申し上げているわけです。  そこで、先ほど挙げました、いろいろ、七隻とか、何名が乗っておって、軍人軍属がどうだった、その資料は後でお出しになっていただきたいと思いますが、よろしいですね。  そこで、時間ありませんから、簡単に触れておきたいのですが、最後に例の六歳末満の援護措置といいますか救済措置について、これは長い懸案事項でありましたが、厚生省あるいは関係者の御努力によってようやく一定のめどづけがなされたことに対して心から敬意を表しておきたいと思います。すでに受付その他補償なども始まっているようですが、一つは前にも指摘いたしましたけれども、手続面が非常に繁雑な面があってなかなか立証しがたいということが言われているようですが、ぜひこのことについても期限とかそういうものは定めずに沖縄県当局と十分御協議をいただいて、万全の措置を講じていただきたい。この救済問題で、救済されない方々がいないように特段の措置をお願いしておきたいと思うのですが、現在の状況と今後の見通しについて簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  65. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 まず、現状から申し上げますと、これまでに私どもで受け付けました、沖縄県の方から上がってまいりました件数が、障害年金六件、遺族給与金二百三十二件、弔慰金二百六十六件、本年二月末現在でございまして、うち障害年金三件処理いたしまして、未処理三件、遺族給与金は百四件処理済みまして、未処理百二十八件、弔慰金百十六件処理済みでございまして、未処理百五十件ということでございます。御指摘のとおり、事実関係の調査その他なかなかむずかしい問題を多々はらんでおりますので、業務がなかなか思わしく進行していないわけでございますけれども、沖縄県の担当の方の御協力を得まして現在鋭意作業を進めているところでございまして、本件につきましては前向きに処理してまいる腹づもりでおりますので、ひとつ御心配のようなことが起こらないように全力で努力をいたします。
  66. 上原康助

    上原分科員 終わります。
  67. 白川勝彦

    ○白川主査代理 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  68. 塚本三郎

    塚本分科員 厚生大臣にお尋ねいたします。  たしか昭和五十六年、本分科会におきまして、当時の厚生大臣園田さんにお約束をいただいたことがございます。それは、最近国民皆保険によって医療行政、そしてまた保健がどんどんと進んでまいり、その結果国民の平均寿命が世界のトップクラスまで延びてきたことは大変喜ばしいことだと存じますが、この十年間に医系あるいは歯科系のお医者さんを養成する学校の定員がどんとふえてきたので、お医者さんが急激にふえてきました。この比率でいきますと大変な数で、やがて近い将来には医師失業時代が到来する、こういう見通しが立っております。何もお医者さんが失業をしたって、そんなこと政府が構わなくてもいいという意見もなくはありませんけれども、しかし考えてみますと、これはやはり無理をして、結果としては保険の金をどんどん食っていき、赤字をふやすことにもなりかねませんし、国民皆保険の波に乗って国民が保険を使うようになり、手軽にお医者さんに通うことができるようになったことによる医師不足から私立の医学大学がどんどんふえてまいったことによってこういった現象が起きたと思います。一人のお医者さんを養成するには、国公立は年間数百万円という国費をかけております。それで、定員六十名ないし八十名のところを無理をして百名ずつ養成しておるのです。だからもうこの際は、私立は生徒数との採算のバランスを考えて設立されておりますので、一挙にこれを減らすわけにはまいらぬけれども、時あたかも行政改革で国の費用等も少ないときですから、私立の方はそのままにしておいて、とりあえず国立、公立等の定員を八十名ないし六十名のもとの定員に削りなさいということを園田大臣のときに提言をいたしました。医務局長はいろいろなこと、十年先のことを言っておりましたけれども、私の質問に対して、やはりいまから手をつけなければなりません、十分前向きに検討いたしますと、この委員会で五十六年、二年前にお約束をいただきました。それは速記録をごらんいただくとわかりますが、その後どのようになさっておられるか、まずお尋ねいたします。
  69. 大谷藤郎

    大谷政府委員 確かに園田厚生大臣が前向きの御答弁になっておりまして、私どもといたしましてもそれを受けて文部省との間で協議を進めてきたところでございます。また、この問題につきましては将来慎重に十分な検討をしていかなければならないということで、研究班も設けましてそちらの方でも御審議をいただいておるところでございます。
  70. 塚本三郎

    塚本分科員 それがお役所仕事というのだ。これだから行政改革はゼロだということなんですよ。そんなばかなことがありますか、二年たちます。  大臣、私はこの新しく提出された予算の編成期にわざわざ電話かけたのです。医務局長も聞いているはずです、このことについては。それから、文部省の大学局長にも電話をしました。大蔵省の主計局長にも電話いたしました、国家にとってこんないい話ないじゃありませんか、数百万円かかるのを、とにかく全国的にずっと百名募集しておるのを、最初の定員どおり八十名か六十名にしなさいということならばお金も少なくて済むし、予算編成に当たってしなさいということを。私は、どうせお役人なんて慎重慎重で十年たってしまうのだろうと思う。これが行政改革の実態なんだ。これはだれも困る人ないのですから。ですから、せめて国公立だけはもう国費を使いなさるな。しかも研修するのに、大学病院だけではできませんので、わざわざ研修費を私立の病院や各学校に出してまでしているのでしょう。ですから、余ってきているのだから削りなさい、こう言って、主計局長、大蔵省には、君らはこんなことをそのままにしておいたら、ゼロシーリングだなんて言っていることは全然だめじゃないか、結局ところてん式の押されたものは、ふやすものは抑えますけれども、減らすことはそのままにしておいて何もせずに進んでいくのが主計局長仕事だとみえる。ですから、私はわざわざ医務局長と文部省の大学局長さらに大蔵省の主計局長にまで削りなさいよと一々電話かけたのですよ、予算編成のときに。ところが、空返事で慎重にと言う。局長、あなたは何も慎重になんておっしゃらなかった。よくわかっていますと言って返事だけしておいてそういうふうなんです。大臣、責任を感じていただかなければいけないと思いますが、いかがでしょう。     〔白川主査代理退席、主査着席〕
  71. 林義郎

    林国務大臣 私も塚本さんのお話、予算のときにどんなお話がありましたかはおきまして、医者が全国的にも当初考えた目標に大体達成されていることも認識しておりますし、部会地では少し過剰ぎみだろう、足りないところといえば僻地の方とかというようなところではないかなという認識を持っておりますし、医学部がだんだんふえていくということは将来一体どういうことになるのかという認識を持っておりますし、やはり何かしなければいかぬな、こういうふうな気持ちでおったわけです。私はこれからもそういった方向で問題は解決をしていかなければならないものだろう、こういうふうに思っております。今回の予算で、私も、文部省の方の関係もございますから、そちらの方とも御相談して処置をしていくべきではないだろうかな、こういうふうに考えております。
  72. 塚本三郎

    塚本分科員 新興住宅地へ行きますと、看板が一番よけい出ているのは何々医院開業予定地、何何歯科開業予定地。見てみなさいよ。もう開業するところがないのです。だから、医師会が地域適正配置やりますと、今度は独禁法違反だということでトラブルを起こしておるのです。どうしてそんなことをしなければなりませんかというのです。  まだそういううちはいいのです。ひどいのになりますと、ある集団のごときは、ボウリング場のつぶれたところをみんな医療金融公庫から金借りて病院に改造してしまうのです。ようございますか。そうしておいて、出てきた若い医者を全部わっと雇うのです。そうしておいて、今度はバスでもってお年寄りの無料診療をやって歩く。無料だから患者を勧誘する行為にはならないというのです。ところが、やはりお年寄りはもう年齢ですから、二つや三つは病気持ってみえるのです。そういう人に対して、あなたはこういう病気があるからいついつに来なさい、こうなんですね。言われれば気持ちが悪いから、行きますよ。こういう形になれば、これはもう幾ら保険費用あっても足りませんよ。ついでに、そういうところでもって選挙になるとだれだれさんお願いします、そういって、お体いかがですかとくる。電話問診でもこれは保険でお金をいただける、診療になるのだそうですね。ある集団のごときは選挙運動やりながら金もうけできている。ここまでいっているのですよ、大臣。これは悪いことをするわけじゃない、健康ですから。ですけれども、物事には限度というものがありますし、いま一番大きく問題にされておるのは保険財政の問題でしょう。そういうことを考えたときには、そういうふうなことはもう少し——ですから、きちっとやってみえる方とそうでない方の中にトラブルが起こるということも出てきてしまうのです。  それで、戦後このような健康保険が皆保険になって発展したことはいいことです。それで、あわてて日本じゅうに私立を初めあるいはまた地方におけるところの公立の大学の医学部を新設いたしました。これが余りにも急激であった。いまこれで卒業する人たちが全部出てきたときには、就職する病院もなければ開業する予定地もないのです。だから、このときに窓口を狭めなさいということを園田さんに二年前に提言しておいたのですよ。いま申し上げたように、くどいようですけれども、その点は慎重に——医務局長も文部省の大学局長も大蔵省の主計局長にも、そういう意味で私はお役所はなかなかこういうことはできない体質を持っていることを承知の上で予算編成のときにそれを電話まで入れておいた。ところが、いま医務局長はまだこれから慎重になんというようなことになってしまって大騒動するということですから、どうぞひとつこの点、厚生大臣、来年にはきちっと、あなたが予算編成までおいでになれば結構、おいでにならなければ大臣としてきちっと申し渡していただいてやっておかないと、保険財政締めようがなくなりますよ。御承知のとおり、もう日本一むずかしいのですよ、どこの国公立も医系というのは。おとといで終わりました、見てみなさい。ともかく、東京大学といえども共通一次は平均点で大体八百五、六十点ですけれども、医系だけは九百点以上なければ入れない状態になっている。そんなに無理をして最高の人材を集めることも結構です。しかし、そうするためにはいまの日本の教育制度では、親もずいぶん元手をかけて、そして塾から家族じゅうが総動員態勢でそういうふうにしむけて、そしてこの学生たちが社会に出てくるときには開業するところもなかった、社会的にこういう状態が来ますよ。ですから、医系そして歯科、この双方に対する定員はきちっとしぼって、お医者さんの仕事もそうもうかる、ぼろもうけの商売じゃありませんよということも、いまの開業医は身にしみて最近はわかってまいりましたけれども、まだ十年前のそういうときの人たちの声というものを聞いていわゆるそういう形になってきておりますから、その点しかと決意のほどをお伺いしたいと思います。
  73. 林義郎

    林国務大臣 塚本分科員の御質問にお答え申し上げます。  塚本先生おっしゃる話、私も全く同感でありまして、将来のことを考えると、いまのようなことを早急に考えていかなければならない、私も全くその点は同感をするところであります。園田さんからの御答弁がありましたということでありますし、私も全く同じようなことで、これからぜひやっていかなければならない、そういうふうに考えておるところであります。
  74. 塚本三郎

    塚本分科員 次に、医療法人に対する相続の問題につきましてお伺いをしてまいりたいと思います。  戦後医療法人が地域医療に対して開業医とともに貢献をしてまいったことは御承知のとおりです。その設備の拡充は、地域医療機関よりも医療法人の方がうんと大きな規模でやってまいったことは御承知のとおりです。ところが、もうすでに三十数年たちまして、最初開いたところの理事長さんたちが七十から八十に手が届くようになりましたので、交代期です。ところが、その病院の地価がもう急激に上がってまいりました。千円か二千円のものが何十万円から、三大都市においては百万円を超える坪の単価になりました。したがって、これの評価がまあ十億、十五億、二十億という病院がざらなんです。これでは相続税を払おうと思っても、物理的に不可能だというふうに見られておるわけです。私は数年来この問題を取り上げてまいりましたが、いまだに解決いたしておりません。申し上げるまでもなく、医療法人は利益が上がっておったといたしましても、これはさらに新しい投資の方に向かっておって、配当は禁止されております。さすれば、いわゆる相続税を払う金があり得ようはずがない。もう極論が許されるならば、息子さんなりだれかに相続する金が払い得るとするなら、よほど悪いことをしなければ払う金があるはずがないでしょう、十億、十五億という相続財産を。配当がないのですから、給料百万円ずつ取っておって、あるいは年収一億のいわゆる給料を取っておったとしたって手取り二千万円です、あと税金で持っていかれるのですから。それで十億、二十億という相続税を払えるはずがないでしょう。物理的に不可能なことをしておると売り出されてしまって、そうして事業に困ったところの事業家がみんな買ってしまうという形になったら大変なことになる。ですから私はここ数年来、大蔵省及び厚生省にはそのことを繰り返し繰り返し提言しておりますけれども、この医療法人に対する、少なくとも社会的機関なんだから、これが継続可能ならしめる方途を考えてほしいというふうに思っていろいろ提言してみたのですが、いまだに実現されておりませんので、この点について厚生大臣国税庁長官に御見解を伺いたい。
  75. 林義郎

    林国務大臣 塚本分料員の御質問にお答え申し上げます。  先生指摘のとおり、医療法人は昭和二十年代の初頭からできておりまして、ちょうどそのころに開業された方が皆もうお年で引退されるとかやめられるというような話になってきておることは事実であります。中小企業の関係も戦後の焼け跡の中でみんな立ち上がってやっとやってきた。そうした中で資産をなしやってきたけれども、また土地の値段がべらぼうに上がっちゃってどうだこうだという問題がずいぶんありました。その辺の事情は、中小企業と医療法人につきましてもその歴史的な経緯というものは同じではないかという認識を私は持っておるのです。ただ、だから今度医療法を改正いたしましていろいろやらなくちゃならない、そのときに、医療法人には三人お医者が必要だと書いてありますが、それでいいのかな、こういうふうな話もありますし、そういったような問題を検討をいましておりまして、実はこの国会にもできるだけ早いうちにお願いをしよう、こう考えておるわけであります。実はいま医療の継続性、こういうふうなお話ございましたが、やはりいま私が申し上げた中小企業と同じような感じのものがここには問題としてあるわけですから、いまの医療の法の体系の中で議論をするという話になるのか、先ほど御指摘のありました配当禁止云々というような話ですね、あるいは別の考え方を少し入れて考えていかなければならないのか、私ももう少し考えてみたいと思っています。先生の御指摘は私も非常によくわかるところでございますから、私も素直に受けとめて検討してまいりたい、こういうふうに思っておるところであります。
  76. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 執行を預かっておるものですから、立法論については権限外でございますけれども、私、この問題は税制三課長以来ですから十年来関係して、問題の複雑さというかむずかしさというものをよく知っておるわけです。四十六年ごろから厚生省との間ではこの勉強をして、いろいろな案を考えてきた経緯はあるのです。医療法改正が遅々として進まない。いろんな問題があったと思うのですけれども、その関連があってこの問題の糸口がつかめなかったのですけれども塚本議員非常に御熱心にこの問題で突っ込んだことを御質問、ないしわれわれに対して接触いただいたことを私も非常に敬意を表しておるのですが、相続税の問題というのは社会的批判に耐える答えがございませんと、これはやはりむずかしい問題をはらむわけです。相続は一回こっきりのところで課税を終わらせるわけですから、そういう意味で社会的批判に耐えるものにするにはそれなりの十分な検討をする必要がある、こう思うのです。  問題は、土地の値段が上がったのが純資産評価のところで高い評価になっておるという問題が中小企業との関連で出てくると思うのですけれども、これは医療法の問題が基本にございまして、医療法人というのは配当禁止になっておるということは、この蓄積をそういうふうに地域医療を含めながら公共的な感じで運用するというような医療法の趣旨があるわけですね。医療法の中の法人ですから、商法による営利目的の法人とは違うところが基本的に別の扱いになっておるわけですね。ですから配当禁止といいましても、営利追求の法人と違う法人であるという医療法の精神、その枠内で医療法人がどういうふうに今後取り扱われるかという問題です。  話がちょっと長くなりますが、この従来からの扱いはいろいろな条件をつけまして、その出資額の範囲で出資額を限度に評価したらどうだという議論、これは出資額限度ですから非常に有利なのですね。ただ、それにはいろんな規制が医療法上かかるということで、ずっと先生が検討されてきたこの問題は、今度医療法の改正の過程で今回は具体化しそうな感じを私たちも受けておるので、これは主税局なんですが、われわれとしては執行の方で何かこういうふうな問題が——私は長官ですけれども、私が通達で何かそこをお答えするということには私は非常に抵抗を感ずるのです。租税法律主義ですから、そういう問題は、通達というのは法律の執行ですから。  今回の改正は、いままでの商法の営利追求法人の中で小さいところは純資産だけだったから、その配当を反映させる類似業種比準というのを拡大したというか、説明がつく範囲でやったわけですね。しかし今回の場合は、医療法の制約下にあるものをどう解決するかは通達ができないのですね。そういうことですから、ちょうど三年前ですけれども、五十五年三月七日の最高裁の判決もあるのです。この純資産評価によるやり方について合法な判断を下しているわけです。  ですから、この問題はお医者さんだけと言われますが、しかし、医者所得は多いんですね。税金が払えないとは一概に言えない。それは、内部留保といっても、計画的な準備をすれば、流動資産で持っておれば払えるわけですから、ほかの業種の問題と比較して、その辺が内部留保のために固定化されているとは言い切れない。その辺は、医療が今後どういうふうな地域の医療として、共同の形でむだな投資が行われないようにするとかいろんなこと、これは医療行政だから私言えないのですが、全体の中で、いまの教育問題も含めてその中でどうするかという問題なしに、医者だけの、医療法人だけの評価を何か通達で処理するというのは正道ではないと私は思いますので、通達の形での回答はできないということを申し上げたい、こう思うのです。
  77. 塚本三郎

    塚本分科員 諸悪の根源は地価の暴騰なんです。何にも資産が上がってないにもかかわらず土地のあれだけ——これは売ったときに初めて価値になるのですよ。にもかかわらず、その価値として評価するところに長官、問題があるのですよ。百万円で買ったものがいま十億になろうとも、売らなければやっぱり百万円だということで、そういう意味で、農家の相続税、これは売ったときに初めてさかのぼって払うけれども、そうでなければ買ったときの値段で相続税を払う。そして二十年間それを売らなければ、それでもはやそれは納税を猶予するというのが農家における農地の問題なんですよ。  そのことは農業だけじゃないのです。農業はもちろん農地法という法律がありますから、自由に販売できないのですけれども、そんなことは病院だって中小企業だって同じなんですよ。農地は半分になったって、農業経営は成り立たぬでも、農業そのものはできるのですけれども、中小企業が工場を半分にしたり、病院を半分に割ったら、これは病院そのものが不可能なんだから、農業以上に土地の問題は不可分の問題です。  いま長官、資産はないことはないとおっしゃったけれども、そういう悪知恵が働くのですよ。金を持って大きな土地だけ買っておいて、駐車場という名前にしておいて、今度それを売って、やるとかいうような点はできるかもしれませんけれども、これではいわゆる本当の法人、私は医療法人のことを言っているのですから、医療法人自身が医療法に基づく正しい医療事業を行っている場合は、それは不可能なんですよ。  だから、解決方法として、かつて自民党の社労部会が解決案を一つ持っておりまして、いま長官おっしゃったような、出資持ち株数だけ相続する、あとは放棄するということに定款をすれば、放棄したのだから、解散のときは地方公共団体にこれを寄附するというふうなことにして、三千万なら三千万だけ相続を払うということならば、それでいい、しかし、相続してから、また定款をもとへ戻すとだめだということで、戻すことができないように医療法で一札歯どめをかけるということで、いまの主税局長梅澤さんがかつて審議官のときから、ここ数年来私は詰めてきたのです。  ですけれども、最近になって医療法人の諸君も、たとえば十五億だとすると、三千万円だけ相続にしておいて、十四億七千万円だけは放棄するなんということは、やはりいかにも耐えられない、だから、そのやり方はもうやめてほしいと言い出してきたのです。そんなことは考えてみたら社会の実態に合わぬですからね。  ですから、幸いことし、通産省と大蔵省との話し合いで、中小法人に対する、新しい表現を使いまして、類似業種比準価額方式を五〇%取り入れる、こういう形で今度法改正をなさろうとしているのだったら、ついでにその中に、合名会社、合資会社または有限会社の出資の価額を株式の評価比準で計算してやっておるときに、この際は同じように医療法人もそういうふうにしてくれたらどうだということの陳情があったわけなんです。  ところが、医療法人というのは類似が株価の中にないのですよ。だから、類似は何だと言ったら、ないから、その他の百番目だ、こういうので、ちょっとそれもこじつけなんですけれども、でもそれもひとつ考えてやってほしい。とにかくもう、そのうちそのうちと、私が取り組んでから、これは何も民社党の提案じゃないんです。自民党の社労部会の結論だったんです。それを、私が取り上げてからもうすでに六、七年たつじゃありませんか。こんな状態でしょう。もうだんだん亡くなってくるんですよ、理事長さんたちが。待ち切れなくなってきているんです、まだこの状態でやられたら。だから一つは、長官おっしゃったような自民党がかつて出されたような方式でもって、解散したときには地方公共団体に寄附する。だから持ち株だけを相続をするという方式で、あとは放棄することを前提にしていわゆる相続税を限定するというのを採択するのを一つ。だけれども、それを嫌な人は、中小法人のいわゆる路線価格の純資産と、そして類似がなければ何かそういうような医療サービスということで、サービス業かあるいはその他の百番目を適用するかして、そのどちらかを選択にさせるということも、いまここではむずかしいでしょうが、私はやはり、配当も禁止されておる、監督も厳しい、そういう中で大きな地域医療に対して貢献をしてきたところのそういう医療法人に対する相続税は、真剣に詰めてほしいというふうに思うんです。それでないと、だんだん創業者はみんな亡くなっていって、仕方がないから、その辺のパチンコ屋さんたちがお金に任せて後を買い取るなんというような事態がやがて出てくると思うんです。そんなばかなことを、ばかなことと言うとパチンコ屋さんにしかられるかもしれませんけれども、そういうことを見逃してはいけないと私は思う。医療法人といえども、理事長さんもお医者様なんだというのが医療に対する健全な方策じゃないでしょうかね。そういうことを考えると、そうかといって持ち株がなくなって公益団体になると、今度は無責任になっちゃって、お医者様や看護婦さんがやりたいことやっちゃって、みんな赤字になっちゃうんです。やはりどこの企業でもそうですね。支配者がきちっと持ち株によって支配力、管理監督力を発揮させないと利益は上がらないし、いわゆる経営が健全にならないから、この体系のままで実は相続が可能になるような道を、ひとつ十分、二つの方法を並行して検討していただきたいというふうに提言して、私の質問を終わります。御感想が伺えるならちょっと伺います。
  78. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 税の問題なものですから御説明しておきたいと思うのですが、農地の方は、御承知のように農地法がございますからね。経営と所有の一体の問題から特に認められているので、今回の改正は評価の合理化という点だけの問題です。  おっしゃっているその継続性の問題は、出資という形で継続していくわけですから、ただ出資のところの限定が医療法上の公共性からつけられるのが嫌だというのはおかしいと思うのですね。その限定のもとにおいて継続していく、それならば出資額で評価する、これが筋で、それからはみ出るものを何か別な便法でやるということはできない。  それから類似業種と言われますけれども、何に類似するか。そのとき問題は配当禁止なんですね。配当禁止という宿命を持っているわけですから、配当のある普通の商売と同じようには比較のしようができないのがこの通達の基本にある考えですから、普通の商売みたいに配当があって——ですからそれはできないということですから、これは医療法の方でお願いしたい、こう思うのです。
  79. 林義郎

    林国務大臣 塚本議員の御質問にお答え申し上げますが、先ほど私も申し上げましたように、最初に医療法人をつくられた方がそろそろ御引退になり、世代交代という時期にもう来ているわけだというのが実態だと思うのです。そのときにどうするかということでありますし、いま国税庁長官から御答弁いたしましたように、まさに医療法の中でどう考えていくかという問題はあるのだろうと思います。それは、医療法の中で考えるというよりは、むしろ医療法人というものの性格論だろう、こう思うのです。  たとえばちょっと話がありましたけれども、駐車場へ持っていって利益を上げていてというような話は、果たして医療法人のやるべき仕事かどうか。たとえばもう一つ申し上げると、かつて非常にけしからぬということで言いました、東京の病院医療法人が北海道で土地を持ってそれで利益を上げたなどということがあります。そういったことは本来は医療法人としてのやるべき範囲を超えているものではないかと私は思うわけです。  ただ、医療法人という性格が確かに配当を禁止されているきわめて公益性の高いものであるということであるけれども、その公益性が高いからじゃあ税がそういうふうになっているかということになると、必ずしもそうでないようなところがございます。医療法人というものが税法上の立場でどういうふうな位置づけをされなければならないかということも含めまして、ただいま先生の御指摘のありましたようないろいろな点があります。いろいろな点がありまして、私も事務当局にいろいろ聞いてみました。みましたが、やはり百番目の何とかというのは余りにも擬制が過ぎるではないかという感じは率直に言っていたします。だから、医療法人の性格というものは一体何だろうかということからして、税法の中でほかとバランスのとれたような、また説得されるような理屈づけをしてこの問題は解決しなければならないと私も考えておりますし、御指摘のようにもうそろそろ早く結論を出さなければいかぬ話である。  確かに四十六年ぐらいからですな。私も党の税制調査会におりまして、毎年毎年これは先送りだ、これは法律事項だということで言ってきたわけでありますから、これは、担当大臣になりましたから私もこの問題についてはぜひ精力的に取り組んでみたい。できましたならばこの法律のときに、いまお話のありました点も含めまして私は解決をしていきたい。言うならば、法人の性格も少し変えてみるということも踏み込んで私は考えてもいい問題ではないだろうか、こういうふうに思っておるところであります。
  80. 塚本三郎

    塚本分科員 終わります。
  81. 上村千一郎

    上村主査 これにて塚本三郎君の質疑は終了いたしました。  次に、川本敏美君。
  82. 川本敏美

    川本分科員 私は、まず厚生大臣に、いま問題になっております優生保護法の改正の問題についてお聞きしたいのですが、今度の国会に優生保護法の改正案、厚生省は出すつもりですか。
  83. 林義郎

    林国務大臣 川本議員にお答え申し上げます。  今国会の政府の提出予定法案というのがございまして、それは、その提出予定法案の中には狭議で、狭い意味では入っておりません。ただし、なお検討を要するものということで、優生保護法及び母子保健法と二つ並べて国会にお示しをしてございますというのが現状でございます。
  84. 川本敏美

    川本分科員 私は、優生保護法改正に反対の立場から少しお話し申し上げたいと思うのですが、昨年の三月十五日に参議院の予算委員会において、村上参議院議員が、優生保護法第十四条第一項四号のいわゆる経済的理由というのを削除すべしだという立場から、質問をされました。そのときに当時の森下厚生大臣が、経済的理由による中絶の根拠は薄らいできておる、できるだけ早くコンセンサスを得られる形で今後検討してまいりたい、前向きで検討したい、こういう答弁をされて、さらに玉置参議院議員の質問に対して、厚生省としてよく検討いたしまして、早急にこの改正案を国会に出したい、こういう答弁をされたものだから、検討中の問題ということに位置づけられたんだと私は思うわけであります。しかし、これは大変な大きな問題でありまして、私たちとしては断じて見過ごすことのできぬ問題だと思うわけです。  優生保護法というのは、御承知のように一九四〇年につくられた国民優生法をもとにしてできた法律ですけれども、その後何回か改正をされてきました。一九四九年には、経済的理由による中絶可能のように改正されたわけです。五五年には、受胎調節で避妊薬の販売を認めるという薬事法の改正もあってきたわけです。その後、七二年、七三年と厚生省は優生保護法の改正案を提案したわけですけれども、いずれも審議未了または廃案となって今日に至っておる歴史的経過を私たちは無視することはできない、このことが一つであります。  さらに、現在の優生保護法というのは、いわゆる優生上の見地から不良な子供の出生を防止するというナチスの法律をまねて最初につくられたものですから、それ自体その中に劣生といいますか、優生に対する劣生を排除するという思想があることは間違いないと私は思う。私はそういうような優生保護法自体の持つ現在の問題点もあると思うのですけれども、経済的理由を削除した場合にいろいろな問題が起こってきます。それはもちろん、優生思想を強化して障害者の存在を否定したり、あるいは差別の助長につながるというおそれも一方では重大な問題として提起されると私は思うわけです。もう一つは、刑法の堕胎罪というものがもう一度大きく浮かび上がってくるわけでして、現在までも原則的に中絶を犯罪とすることになっておるわけですけれども、堕胎したお医者さんに対しては堕胎罪が適用される、こういうことになるわけです。ところがヨーロッパの諸国、世界的な趨勢というものを見てみますと、大体妊娠三カ月以前の中絶は自由というような形になりつつあるのじゃないかと思うわけです。  ところが、村上さんの質問のときに当時の鈴木総理が答弁をしておるのですが、その答弁の中でこういうことを言っておるわけですね。人間の生命は受胎の瞬間に始まり、その生命を尊重することは憲法上の要請であり、個人の尊厳を規定する憲法十三条前段にある「國民」の中には胎児も含まれる、こういうことを言っておられるわけです。  これに対して、最近出ました論文ですけれども、柴田篤弘という元山口医大、広島大学教授で、現在オーストラリア連邦科学産業研究機構で分子生物学等をやっておられる先生が反論をしておられるわけです。それを読みますと私もうなずけると思うわけです。  たとえて言えば、先生指摘しておられるのですが、母親が生きておる間胎児も成長する、母親が死亡したときには胎児も一緒になくなってしまうのだ、胎児の生命だけ救うことはできない、それを救えるようになるのは大体妊娠八カ月ぐらいから後だ、それまでは母親が死ねば胎児も死ぬんだ、胎児を母体から外へ出してそれを独立の生命として育てることのできる一つの限界がある、だから受精卵そのものがすぐ胎児だとかいうことにはならぬのじゃないかということを生物学的に言っておられるわけです。  その点についてまず法制局に伺いますが、総理の、胎児はすべて憲法十三条で言う「國民」だという、この胎児という意味はどういう意味なんですか。
  85. 味村治

    ○味村政府委員 総理は玉置議員の質問に対しまして「そのとおり」というお答えをなすったわけでございまして、その際に玉置議員の方の質問が「胎児」というふうにおっしゃられていると思います。したがいまして、玉置議員が胎児についてどういうふうな御解釈の上でこういう御質問をなすったかということは推測の域を出ないわけでございますが、胎児と申しますとやはり受胎から出生までの間、これを胎児というふうに言うのであろうと思っております。
  86. 林義郎

    林国務大臣 川本議員のいろいろな御指摘を私も非常に興味深く拝聴いたしました。これは法制局の話かもしれませんが、憲法十三条で書いているところの「國民」というものはやはり生まれ出た人間だろうと私は思うのですね。お互いがそうだと思うのです。胎児がそれに入るや否やというのは、これは法律論としての学説もいろいろあるし、まさにいま先生の御指摘になりましたような生物学的ななにもあります。特に、医学的な観点から申し上げますと試験管べビーというのが出てくる、こういう話でございまして、体外受精というものを一体どうするのかとか、いろいろな問題の議論が医学の中では出てきているわけでありまして、そこをどうするかというのはどうも行政庁で決める話ではないのではないだろうか、むしろ学界なり国民的なコンセンサスのあるようなところで決めていくべき話ではないだろうか、こういうふうに私は考えているわけでございます。
  87. 川本敏美

    川本分科員 そうすると、厚生大臣としては前の厚生大臣と若干——前の厚生大臣もコンセンサスを得られるようということは言っていますけれども国民的なあるいは学問的な面においていろいろなコンセンサスが得られない限り、今度の国会に強行して提出することはしないというふうに私はいま理解したのですが、そのように理解してよろしいですか。
  88. 林義郎

    林国務大臣 いま申し上げましたのはちょっと舌足らずだったかもしれませんが、日本国憲法には人権尊重という精神があるわけですね。だからそういった精神にかんがみるならば、いまのような話も考えてみたらどうかということは一つ考え方として出てくる話だろうと私は思うのです。ただ、そうしたようないろいろな問題、どこからが胎児になるのかどうかというような話を含めて議論をしておかないと広い意味での国民的なコンセンサスは得られないのではないだろうか、こういうふうに私は考えておりまして、簡単に人間だから、あるいは胎児だからどうだというような話でない、その辺まで詰めた議論をしておかないとこの問題はなかなか前へ進んでくれないのではないか、こう考えているものでございます。
  89. 川本敏美

    川本分科員 柴田先生は、受精卵に命がある、胎児に命があるというのだったらその以前の精子にも卵子にも命はあるのだろう、それが現在では体外でも試験管べビーで受精することができる。しかしそれが子宮内に着床して胎児として成長していく過程では、これは母親の命とは切って切り離すことのできないものだ、母親の体外に出して独自の生命として動ける時期まではこれは母親の命と一体のものとして認めていいのではないか。その場合中絶をするとか、産むとか産まないという権利は、お母さんの命と同じものだからお母さんの命を優先さすべきだ、こういうような考え方だと思うのですけれども、私もその意見には全く同感なんです。  そこで、この問題については十分なコンセンサスが得られるまで慎重に対処されることを要求したいと思うのですが、大臣どうですか。
  90. 林義郎

    林国務大臣 いまの川本先生お話はよくわかるのですよ。ただ、いまのお話は生物学的な観点の話ですね。だから、法律論なり倫理論からすればまた別の議論もあるだろうと私は思います。いまお話しの、精子と卵子とあってそれぞれ生きたものではないか、それはまさにそのとおりなんですね。たまたまそれが結合したものである、しかもそれが母体の中でなくてはならない、こういう議論はどららかというと私は医学の方の議論だと思いますし、医学の議論ではそれは非常に正しい議論だと私は思うわけであります。ただ、医学だけの問題ではない法律学の問題もありますし、もう一つは倫理とか宗教とかいったような議論もあるわけでありますから、そういったものを総合して考えていかなければならない。むしろ、たとえば法律にそれを書くならば、いまのような考え方は十分に取り入れたようなものを考えながら、もしも条文をつくるならばつくっていかなければならないことだろうと私は思うのです。  果たしてそれが条文的にできるのかどうかというのはこれはまた別の問題ですが、いまのような考え方がありますから、私も個人的にはその考え方はよくわかるし、医学の話ですから医者専門家にもその辺を聞いてみなくちゃなりませんが、そういったような考え方をどう取り入れてやるかというのは、法律というのは男を女に変える以外は何でもできる、こういう話ですから、書こうと思ったら書けない話ではないと思うのです。だから、そういうものを含めましていま検討しているということを申し上げておきたいと思います。
  91. 川本敏美

    川本分科員 優生保護法については慎重な態度で臨むような厚生大臣の御答弁ですから、その辺で了承をしておきたいと思うのです。  次に、老人保健法に関連して私は若干お聞きしたいと思うのだが、一つははり、きゅうの問題です。  老人保健法が成立しましたときに、衆議院、参議院両方で、老人の特性にかんがみて、はり、きゅう、マッサージ等について十分な配慮をするようにという附帯決議がなされておるのは御承知のとおりであります。ところが、はり、きゅうについては、今度も一般医療との併用はまだ認められていないわけです。ところが一方では、はり、きゅうというのが現在の医療の効能効果を高めるという上において大変効果があるということも言われており、現実には多くの国民は、はり、きゅうに頼って、はり、きゅうを週に一回か二回施術をしてもらって、消炎、鎮痛をやって、そしてその間働いておるという現状もたくさんあることは御承知のとおりです。ところが、現在の健康保険の制度のもとにおいて、あるいは老人保健の制度のもとにおいては、はり、きゅうというのは締め出されていると言っても過言でないような状態です。  そこで二、三お聞きしたいのですが、現在、はり、きゅうについてはまず医師の同意書がなければいけないのですが、お医者さんへ行くと、東京都等においては、東京都の保険局と医師会との約束によって、西洋医学で三カ月以上治療して効果のないものしか、はり、きゅうの同意書は書かないというようなやみ協定があるやに私たちは聞いておる。現実に西洋医学で治らない人を三カ月間治療するということ自体医療費をふやしておるだけの話で、そんなのは診断をして、もうこれはとてもいまの薬ではだめだと思ったときには、はり、きゅうにかかるという同意書が即時書けるような形に指導を変えていくのが当然だと思うし、あるいは効能効果を高めるものについては、私はいわゆる一般医療と同時に併用もするのがあたりまえだと思うのですが、まず当面、一般医療を受けた経緯が全然ない人でも、お医者さんの同意書さえあれば療養費を請求することができる、このように私は改めるべきじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  92. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  現在、はり、きゅうにつきましては保険に療養費払いの形で取り入れておるわけでございますが、この一つの制度というのは、現在の保険医療というのが大体西洋医学というものを中心に物事を考えておる、したがって、東洋医学の系列に属しますはり、きゅうというのは、そういう保険給付としての原則といいますか、主体にしておらないわけでございます。したがってお医者さんの同意があった場合に、と申しますのは、結局お医者さんが、自分の西洋医学治療によってなかなか効果が上がらぬではないか、こう考えられたときに一定の同意をして、はり、きゅうを認める。そして、それに対して療養費払いで保険給付をする、こういうたてまえになっておるわけでございます。そのたてまえというのは、現在の法律制度を維持する以上は、私はなかなか崩せないように思うわけでございます。  ところで、いま先生指摘の、東京都で一律に、三カ月の治療をして三カ月たたないと同意をしない、こういう取り扱いが行われておるのではないかという御指摘がございましたが、私の方といたしましては、三カ月というのは、何もそういうことをする必要はない、いま申し上げましたように、医師による適当な治療手段がないというような場合にはり、きゅうを認める、こういうことでございますから、一定期間の治療をして治療効果が上がるかどうかということを見きわめた上で、はり、きゅうを行うということについて同意するという問題ですから、私は、個別的に個々の患者状態に応じて行われるべき問題であると思います。したがって、一律に三カ月の治療をやらなければはり、きゅうの同意をしないということは、もしあるとすれば私どもとしては東京都について指導をしてまいりたい、こう思います。
  93. 川本敏美

    川本分科員 特に、特定の疾患といいますか、神経痛とかリュウマチとか腰痛症とか五十肩とか頸肩腕症候群とかそういうものについては、お医者さんの、神経痛である、リュウマチである、腰痛であるという診断書さえあれば、もうそれだけでこのはり、きゅうにかかれるという形にできないのだろうか。現在では、まずお医者さんへ行く、お医者さんへ行って何カ月か治療する、治療して、治らないとお医者さんが判断するまでは、はり、きゅうの治療は同意がないからできない、こういうことになっておるのではないかと思うのですが、その点どうですか。
  94. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そのとおりでございまして、一応お医者さんに診てもらって、そして治療を受ける。そして、どうも治療効果が上がらない、かつ、はり、きゅうをやってみれば効果が上がるのではないかというようなときに同意をしていただきたい、こういうようになっておるわけでありますが、一つはやはり、現在のはり、きゅうの治療効果のメカニズムがどうも関係学界の中で定着していないというところに原因があるのではないか。確かに、はり、きゅうの治療効果についていろいろな御見解があることは事実でありますが、学界として、治療効果のメカニズムあるいは治療効果についての確定的な意見というようなものがまだ統一されていないのが現状でございます。したがって私どもも、西洋医学と東洋医学を同時に併施、一緒にやるということに踏み切るのに非常にちゅうちょしておるわけでございます。
  95. 川本敏美

    川本分科員 ただいまお答えいただきましたけれども、私は、やはり西洋医学中心の現在の医療から、薬漬け、検査漬けという言葉に象徴される医療が始まったと思うわけです。ところが、はりとかきゅうとかいうのは、これは薬漬けにもならぬ、そして日本古来の療法ですから、衆議院や参議院で老人保健法のときに附帯決議をした趣旨とも、いまの局長の答弁では私は異なると思うのです。やはり衆議院や参議院で附帯決議をした趣旨を踏まえて、いまの法体系がいかぬのなら法体系を変えていく、あるいは運用を変えていく、こういうことがあってしかるべきだと思うのですが、その点ひとつ、強くそういう指導をしていただくように私は要望しておきたいと思うのです。  それから、もう時間がありませんので、マッサージの問題についてお聞きしたいと思うのですが、マッサージは、これは一般医療との併用は認められているわけですが、この前、一昨年六月の診療報酬改定の際に、理学療法の中の「消炎・鎮痛を目的とする理学療法」として大きく丸められてしまいまして、マッサージ等の手枝療法というのが一度は活字から消えたわけです。ところが、今度の老人保健法実施に伴う診療報酬表の改定の際に、老人保健法にも一般医療の方にも再び「消炎・鎮痛を目的とする理学療法」として、マッサージ等の手技療法が言葉としてもあらわれてまいりました。さらに、六カ月間の治療期間中、三カ月目のお医者さんの同意書というものは老人に限ってはいわゆる記録にとどめればいい、請求書に添付しなくてもいい、こういうような形に改正された、この点は評価できるわけですけれども、しさいに見てみますと、この消炎、鎮痛のためのいわゆる手技による療法と、いわゆる器具を利用した療法とあわせて運動療法をやった場合に、器具によるものと両方やった場合に三十五点ということになっておる。そうすると、マッサージを取り入れたことによってふえた点数はたったの五点、一点十円で十五分間ということらしいのですけれども、十五分間でマッサージ師は五十円、一日に四十五人以下、こうなっておるわけですから、四十五人治療したとしても二千二百五十円にしかならぬわけです。マッサージ師の方々は視覚障害の方も非常に多いわけですけれども、一日二千二百五十円ではマッサージ師の方も生活できると私は思わないわけです。  最初、私は、マッサージをした場合も十五分間やれば三十点、器具によるものも三十点、これを運動療法と一緒にやった場合は八十五点とかに認められるんじゃないかと思っておったら、違うわけですね。運動療法と一緒にやってもこれは認められない。だから、その辺のところについては、マッサージというものをたった五点という評価しかしていないことには納得できないわけです。これでは老人にも実際利用価値がない。だから次期診療報酬改定の際にはもう一度再検討していただきたいと思うのですが、大臣どう思われますか。
  96. 吉原健二

    吉原政府委員 今回、いま御質問、御指摘ございましたように、手技による療法と器具による療法あわせて行った場合に、三十点を三十五点まで引き上げたわけでございますが、ただマッサージが五点分だけだということでは決してございませんで、従来は五十六年の診療報酬の改定以前は実は一局所ごとに十二点、もう先生御承知だと思いますが、十二点という計算ができることになっておりましたのを、包括をいたしまして、消炎、鎮痛を目的とする理学療法全体の中にマッサージも込めて三十点としたわけでございます。ですから、その中にもうすでにマッサージに対する一つの評価があるわけでございます。今回は、そうしたことによっていろいろ国会でも御指摘がございましたので、マッサージというものを端的に言いましてもう表に出して評価をするという考え方で、手技による療法と機械器具を使った場合には五点を追加するということにしたわけでございまして、決してマッサージの分だけで五点ということではございませんので、ひとつその点は御理解をいただきたいと思いますし、この五点でいいかどうかはさらに今後の一つの宿題といいますか、課題として検討させていただきたいと思います。
  97. 川本敏美

    川本分科員 私は、大臣にもう少し前向きの——吉原部長は、もともと三十点の中に入っておったのだ、今度は、いままで消えておったものをもう一度書いただけでも評価をするという意味で、ひとつ感謝してもらいたいようなお話ですが、それは評価しておるんですよ。それは私は評価するけれども、その評価によって生まれてきた実質的な点数はたった五点ではおかしいということを私は言っておるわけですので、大臣、この点についてはひとつもう一度次期診療報酬改定のときには検討するということをお返事いただかないと困ると思うのです。  それから、先ほど私は、優生保護法の問題で、優生、劣生という言葉を若干言いましたけれども、これは優生保護法の持つ精神が「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ということを目的としてつくられた法律だということを言ったわけでありますので、その辺はまた誤解があればいけませんので、訂正だけあわせていたしておきたいと思うのです。  大臣の答弁をひとつ……。
  98. 林義郎

    林国務大臣 いま吉原部長からお答えを申し上げたとおりでありますが、マッサージというのは東洋医学になるのかどうか、ヨーロッパでもありますからね、どういうふうに考えたらいいのかということはあると思います。それから、診療報酬体系の中でどうしていくかというのは、必要に応じまして専門家等の意見も聞いて、これから検討していくべき問題ではないかというふうに考えておるところでございます。
  99. 川本敏美

    川本分科員 終わります。
  100. 上村千一郎

    上村主査 これにて川本敏美君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時七分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  101. 上村千一郎

    上村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。川俣健二郎君。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 きょうははり、きゅう問題をテーマにお願いしておるわけですが、ちょっとその前に、わが国の医療行政の姿勢を正して、国内外に医療行政に対する信頼をさらに深めていただきたいというような気持ちで質問したいのは、カンボジア難民医療に対するわが国のせっかくの医療サービスが、大変な報道によって私も驚いておるわけです。  まず文部省に伺いますが、カンボジア難民医療のため国際協力事業団を通じまして派遣された医療チームの医師の中に、現地において不要な手術を行いカンボジア難民を死亡させたという報道があったわけです。これはとてもじゃないが、われわれは専門的な知識はございませんが、その指摘されている医師は東京大学医学部附属病院医師である。  報道によれば、それらの医師の現地における非常識な行為が、その医療団に看護婦として従事した同病院の看護婦から内部告発されたことから端を発したものである。これは週刊誌にも出ましたな。その告発によれば、そのような非常識な行為は東大医学部の患者不在の体質によるもの、こういうように言われておるが、これは大学が大学であるだけに、しかもカンボジア難民医療という大変な国を挙げてのわが国の行為が、こういうことで処理されておったとなれば、これはとてもじゃないが分科会質問にはなじまないぐらいの大きな問題でしょうが、その辺文部省、どんなもんでしょうか。
  103. 前畑安宏

    ○前畑説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の問題でございますが、カンボジア難民医療のために、国際協力事業団の要請もございまして、東大側から医師四人、看護婦四人が五十五年六月から同年九月まで三カ月にわたりまして派遣されたわけでございます。御指摘のことは「足、ください。」という本をその看護婦の方がお書きになっておりまして、その中で当時の見聞としていろんなことを書いておるわけでございます。  カンボジア難民のこの医療協力というのは昭和五十四年の十二月から取りかかったものでございまして、この東大医療団はそのたしか三回目でございますか、まだ初期の段階であったわけでございます。したがって、現地での体制を初めいろんな点に混乱があったかと思われますが、いずれにいたしましても、その医療団もそのような厳しい条件のもとで医療協力の実を上げたというふうに承知をいたしておりまして、当時、関係の方面に対して迷惑をかけたようなことがあったという報告は受けておりません。  また、先生も御指摘でございましたが、個々具体の医療行為につきましてこれを論じるということはなかなかむずかしい問題がございますので、差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、いずれにいたしましても、先生最初に御指摘ございましたように、この医療の問題ということにつきましてはどれほど省みても足りない問題でございます。いろいろむずかしい大学の自治等の問題もございますが、御指摘のところを体しまして東大当局に対し十分その趣旨を申し伝えまして、省みて正すところがあれば正すように配慮をさせていただきたい、このように考える次第でございます。
  104. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 解明していきたいということですか。  それからもう一つ、差し控えたいというのは、ちょっと聞き漏らしたけれども、どこを差し控えたいのですか。
  105. 前畑安宏

    ○前畑説明員 大変恐縮ではございますが、二年以上も前のことでございますので、事実を解明するというのは大変むずかしいこともございますので、お許しをいただきたいと思うわけでございます。  それから、差し控えさせていただきたいと申し上げましたのは、個々にたとえば血管移植であるとかあるいは食道静脈瘤の手術であるとか、そういった具体の手術の行為を挙げてこの著書ではいろいろ御批判を賜っているわけでございます。しかし個々具体の医療行為につきましては、それぞれの医師が具体の状況に応じて判断をし、行ったものでございますので、それについてとやかく論評することは差し控えさせていただきたい、このように申し上げた次第でございます。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 後段の場合は文部省は要らないんだ、厚生大臣でしょう。前段の場合は事実関係が二年も前のことだと言うけれども、事実関係はそんなに調べられないほどの古い問題でもないし、いま現に続いておる医療行為なんで、これはやはり二年前のことだからということでは済まされないんじゃないかな。大臣もいないんだけれども、あなたの感じではどうですか。
  107. 前畑安宏

    ○前畑説明員 失礼いたしました。  私が申し上げましたのは、東大の医療団がどういうことをやったかということについてはなかなかむずかしい問題があろうと思いますが、先生指摘のとおり、カンボジア難民に対する医療協力というのは現にやっておりますことでございますので、私どもは、その東大も含めてでございますが、従来から十分国際協力の実を上げるように御配慮いただきたいと申し上げてきておるところでございます。  今後とも、このJICAのお話を初めいろんな場で国際医療協力ということがございまして、私どももそれぞれ私どもの立場で協力をさせていただくわけでございますが、その際には、ただいま先生の御指摘も十分体して各大学に配慮を求めていきたい、このように考えております。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 今後の問題もさることながら、二年前の事実関係をできるだけ調べてみるということでいいですか。無理だということですか。
  109. 前畑安宏

    ○前畑説明員 はなはだ恐縮ではございますが、この本にはいろんな事実が三百ページにわたりまして指摘をされております。それを個々具体にいまから関係者を呼んで事情聴取をするということは、一つには、私ども文部省の立場といたしまして、東大と文部省との関係ということからして、いわば具体の医療行為についてその事実を一々確かめる、こういう行為にもなりかねない問題を含みますのでお許しをいただきたい、このように思うわけでございます。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 ちょっと、余りにもかたくななあれじゃないかな。どこかの海外の大学と文部省というならまだ話はわかるけれども、東大と文部省はそんな間柄かね。二年前のことを、裁判官のように何やったの、かにやったのというような調べ方はしないにしても、やはり一応事実関係はあったのか、これだけ騒がせたことだから、そのぐらいは上の方に相談してみるというぐらいの答弁が出ませんか。
  111. 前畑安宏

    ○前畑説明員 お答えをいたします。  私ども、新聞あるいは週刊誌を拝見させていただきまして、東京大学の当局に対しましては、このことについて事情をただしたわけでございますが、東京大学当局といたしましても、なかなか具体にそういった行為を、報道された事実と照らし合わせて、個々具体の教員から事情を聞くというのはむずかしい事情があるようでございまして、いわばお書きになった看護婦の方と医師と対決をするような形にもなりかねない。果たしてそういうことは適切であるかどうかという御配慮もあって、なかなか事実調査はむずかしい、こういうことでございます。
  112. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 これは話をしていくとだんだん話が違ってくるのだが、やはり調べたんだね。むずかしいと言うけれども、そうじゃないんだ。調べてみたがいろいろ看護婦と医者との関係等々がありましてというようなにおいの発言になってきたが、そんなことを言っていたらとても、時間をかなりもらわなければできないので、もしできますればあした総括締めくくりの最後なんで、その件は後で上の方と相談をして、医療問題については、厚生大臣、これからちょっと一言だけ聞きたいんだが、やはりこれだけの世の中を騒がした報道を、否定もしない肯定もしない、これじゃ医療行政に及んでくるのですね。信頼関係医療行政にくるのです。これは文部省に余りいかないと思う。厚生省にくる。だから、その辺のことも考えて、私のところへちょっと後で事務的に連絡してくれませんか。厚生大臣どう思いますか、いまの受け答えを聞いていて。
  113. 林義郎

    林国務大臣 東京大学の第二外科でカンボジア難民に医療援助をした、こういうことでいろいろな問題があったという話をあの新聞で、無着さんという看護婦さんが手記を出しておられるわけでありますが、実は私はまだその本を読んでないわけで、まだ出てないんじゃないかと思いますが、出てからどんなことを書いているか、いま先生から御指摘もありましたから、私も余り勉強する方じゃありませんが、これはぜひひとつ勉強してみたいな、こう思っているところであります。  権限的にというのは、私が言うのもおかしいのですが、海外活動というのはまた外務省の方の関係もありましょう。だから、そういったことはありますが、医者がどのくらいのことをやってよろしいかというのは、基本的には医者の倫理の問題だ、こういうふうに私は思うのですね。法律でどうだこうだという話——医者というのは手術をしましたりいろんなことをして人間の生命を助けるというのが医者の基本的な考え方であろう、こう私は思いますから、そこでどういうことをやったのか内容を見てみないとどうもよくわからない点がたくさんあります。ありますが、何か人体実験に使ったとかむやみにやたらなことをしたといえば、非常におかしなことにもなりかねない話でありますし、少しその辺を見てからやらないといかぬ話じゃないか。ただ、お医者というものはそういったふうに非常に人の生命に対していろんなことができるという、また医療という形でいろんなことをするわけですから、一般の方よりもはるかに高い倫理性というものを要求されているものではないかというふうに私は考えているところであります。
  114. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣がまだ読んでもいないしということであれば、これは専門委員会なり別の場でさらに深めていく必要があると思うが、断っておくけれども医療ミス、たとえミスをやったとしてもそれをとがめる能力も私はありませんし、そういう意図は全然ありません。ただ、あれをずっと読んでみますと、一冊の本だけではなくて、東京新聞、朝日新聞というふうにずっと一連のあれを読んでみると、かなり背景みたいなのがあるので、単に医者と看護婦の「白い巨塔」みたいなものでもないし、告発した人はあの有名な、うちの隣の県の山形の無着成恭の奥さん、その人が看護婦だった。自分の匿名でなしに堂々と無着何とかと書いておりますので、ぜひひとつ、今後の医療行政をさらに信頼を深める意味においても、きょうは時間があれば例の明治製菓と昭和大学の問題を取り上げようと思ったが、やはり一つ一つ積み重ねていかないと、せっかく高度な技術を提供してくれる医者国民との関係にある医療行政をつかさどる厚生省としまして、ぜひこれを読んで深めていただきたいと思います。  それから、さっき申し上げましたはり、きゅうの問題ですが、お互いにはり、きゅうにお世話になる年代になりました。  そこで問題は、東洋医学と西洋医学の論争の場というのは非常にあるわけだが、このごろ中国と国交回復後密接な連絡でお互いに見てきたと思うが、はり麻酔などはみごとなものを感ずる、こういったところを見ると。しかし、日本のいまの医学の歴史的な背景がストンと東洋医学と融合するかという問題もこれありだが、しかしながら、私らのようにお互い年代になると、需要が男性であろうが女性であろうが非常に多い。そうなるとどうしても診察を受けた費用が絡んでくるので、そこで社会労働委員会で長年検討した結果保険を使おう、使わせよう、ただし医者の診断書が添付されて初めて行われるのだ、こういうことに相なっておるが、これは経過も含めて事務当局、その辺のことをちょっと聞かしてください。
  115. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えをいたします。  現在の保険におけるはり、きゅうの取り扱いにつきましては、西洋医学による医療を原則といたしまして、例外的に東洋医学に属するはり、きゅうの施術を認める、こういうことを給付の対象にする、こういうことになっております。その場合に、はり、きゅうを行うことにつきまして医師の同意が要る、こういうことになっておるわけでございます。  なぜ同意を要求しておるかと申しますと、一つは、医師による適当な治療手段がなくて、はり、きゅうの施術効果が期待できる、こういう場合に認める、こういうことになっておるわけでありますが、それは先ほど申しましたように、現在の保険の給付というのが、西洋医学を学んだといいますか西洋医学を基礎にした医師の行う医療行為というものをまず原則といたしまして、その同意があった場合にはり、きゅうを例外的に認める、こういう体制にしておるわけでございます。
  116. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 何か歯切れがよくないな、局長にしては。もう少しあなたはしゃべり方がうまい人なんだが。  一々医者の証明をもらってちょっと議員宿舎に来てくれぬかということになればこれは保険証は使えるけれども、しかし実際問題、かかってみていいと思っている。だから需要が多いわけだから、その辺が何かぎくしゃくしておるんで、これ以上方法がないのか。
  117. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かにはり、きゅうの効果を認められている方は非常に多いわけであります。うちの大臣もときどき行っておられるようですし、(笑声)川俣先生もきわめて愛好者だと聞いておるわけでございますが、私はそれが、結局治療のために行われておるのか、あるいは健康保持のようなどちらかといえば保健、ヘルスの面において行われているのか、そこのところはつまびらかでありませんが、少なくとも治療ということのためにはり、きゅうが行われるということになりますと、やはり医師の判断というのはどうしても要求されるのではなかろうか、こういうように思うわけであります。
  118. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 その論理構成なら正しいけれども、そうじゃなくて、一般の需要は治療だろうね。一つの例で、福岡方式というのはどういう方法ですか。
  119. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもが聞いておりますところでは、療養の給付として行っておるのではなしに、保健施設活動としてはり、きゅうを認めておる、こういうように聞いております。したがって、普通の保険給付としては医療の給付があるわけですが、医療給付のほかに保健施設活動と申しまして、いろいろな疾病の予防のための活動だとか、あるいは健康の管理、あるいは健康づくりのための活動だとか、そういうものを医療給付とは別に認めておるし、やっておるわけでございます。その保健福祉活動の一環として、はり、きゅうをやっておるというように聞いております。したがって、私どもそれは保険給付ではない、こういうように考えておるわけであります。
  120. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 というように聞いておるというところに非常にひっかかるんだが、厚生省に、はり、きゅうの担当官というのはいるんですか。情を移している役人がいるかね。はり、きゅう師に対して、よく来たなという人はいますかね。
  121. 吉村仁

    ○吉村政府委員 よう来たな、こう言う担当官はおりません。
  122. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 やはりそこに問題があるようだな。そのくせに、はり、きゅうという文字がたくさん出てくるんだね、厚生省の書類の中に。どうですか。
  123. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先生のおっしゃっているような意味のはり、きゅうの専門官というのはおりませんが、あん摩、はり、きゅう師法関係の担当者はおります。
  124. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 これは大臣も聞いてもらいたいんだが、分散しているわけですね。認可、試験その他、いろいろといるんですよ。厚生省の中にこのはり、きゅうという文字を見る担当官が十人くらいいる。はり、きゅうという文字を見て、上に上げるなり下に指示するというところは十人くらいいる。私の聞いているところでは、そのわりに、よく来たなと言う人はいない。ところがお医者さん方には、よく来たどころか、うへえだ。  文部省、来ていますね。はり、きゅうという師の国家試験を受けて、これだけ需要があるんだから、社会に堂々と出してやった方がいいのではないかという考え方が社会労働委員会でずっと論議されてきました。そうしたら、いよいよ四年制の大学を設置するということになり、その設置の申請書が来た。それに対して医師会が反対をした。これはどういうことだったのでしょうかね。なぜ反対したのだろうか。
  125. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 この大学の設置に関しまして日本医師会の方から、この大学の設置によって医療の混乱を招くということで、反対の声明が私どもの方にも来たところでございます。私ども熟読玩味いたしましたけれども、その言っているところ必ずしもよくわかりませんが、この声明書の中で言っておりますことを引用いたしますと、現在、はり、きゅうが各種学校の教育体系の中で行われている、そういう現段階において一挙に独立した大学教育まで飛躍させようとするのは早計であり、したがって医療の混乱を招くことは明らかである、そういう内容でございます。
  126. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 一問一答をやろう。  その申請に基づいて、熟読玩味したということですか。反対の意見を聞くということで一応呼んでみましたか。
  127. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 直接医師会を呼んでお話を聞いたことはございません。
  128. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 やはりその辺にまた問題があると思うのだ。文部省というのは大変なところなんだな。一枚の紙切れに反対だぞと言われたものを、熟読玩味するだけじゃなくて、問題点はどこなんだ。それは混乱するのはあたりまえなのだ。なぜかというと、日本の行政になじんでないからこんなに混乱する。厚生省局長が言うように、よく来たなという体制にまだなってないから、それをいきなり大学をばっとつくられたら、医師会の方としては医療問題で大変混乱するんじゃないかと言う。あなたも、一遍も呼び出してみなかったというのは、医師会というのは何かおっかないのですか。どうなんですか。
  129. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 先生指摘のようなことはございませんけれども、非公式な形では、医師会の関係者と私どもとが具体的にこの問題をめぐって話し合いをするということはございました。医師会を呼んでということはございませんでした。
  130. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 非公式で呼ぼうが何で呼ぼうが、とにかく話し合ったんでしょう。文部省、それはだめだよ、そんな態度じゃ。どうなんですか。  それで、最終的にはどうなんですか。問答無用ということで認可したのか。
  131. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 今回の四年制大学の申請につきましては、昭和五十三年にすでに設置されておりました鍼灸短期大学を四年制大学に昇格させるという申請でございました。その目的は、現代医学の基礎の上に深く鍼灸治療に関する知識と技術を教授、研究し、特に指導的な鍼灸師の養成を目的とするということでございました。これにつきましては、先ほどお話しの医師会の反対声明もございましたけれども、私どもといたしましては、申請者の計画を十分検討いたしまして、大学設置審議会、私立大学審議会の慎重な御審議もほぼ二年間かかりましていただいたわけでございまして、そういう結果を踏まえて、社会的に見て設置の必要性が高く、認可すべきものであるという判断を得ましたので、認可を行ったものでございます。この二月四日付で認可をいたしました。
  132. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣、最後ですが、いよいよ四年制ができ上がります。こうなると、いままでのような社会通念で、はり、きゅう、マッサージというのははかれないような、やはり厚生行政、医療行政の中に大きな位置づけを必要とするんじゃないかなというような感じがするので、さらに一層その辺を申し上げて、大臣の積極的な発言を期待して求めたいのです。
  133. 林義郎

    林国務大臣 川俣議員の御質問にお答え申し上げます。  お互いに、はり、きゅうを必要とする年になってきたなとさっきお話がありました。先生は大正年代であるし、私は昭和年代である。ただ年は一つしか違わないわけですから、お互いにそういうことになってきたと思いますし、個人的には私は先生お話、非常によくわかるのです。  ただ、医学の体系としまして、明治以来西洋医学を日本は取り入れてやってきた。徳川時代にはずいぶんあったんだろうと思います。そういった中で、日本の医学がこういうふうな形で形成してきた中で、いろいろ新しい東洋医学関係を取り入れていくというのは、いろいろな点でまだまだ越えなければならないハードルはあるんだろう、こう私は思います。その問題が医学界全体の中ですぐに解決される話でもないんではないだろうか、こう私は思いますし、先ほどの鍼灸大学、二年制から今度は四年制になったという話でありますが、この話も、大学はやはり研究を主としてやるものである、学術的な研究、本当の研究ということをやっていく、こういうことで進んでいくわけでありますから、そういった研究が進むことによって、いろいろと社会的な理解も深まってくる。むしろそういった中でいろいろな、いまお話がありましたことも考えていくべきものではないだろうかな、そういったふうにこれはとらえていくべきものではないだろうかなという感じを実は私は持っているわけであります。社会的に非常に要望が強いということは、先生指摘のとおりでありますから、その辺も踏まえて、これから考えていかなければならない問題だというふうに思っておるところでございます。
  134. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 どうもありがとうございました。
  135. 上村千一郎

    上村主査 これにて川俣健二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、藤原ひろ子君。
  136. 藤原ひろ子

    藤原分科員 去る一月二十八日、私ども衆参婦人議員、つまり自民党、社会党、公明党、一の会の先生方、そして私たち共産党を含めまして、すべての婦人議員二十五名が連名をいたしまして、優生保護法改正に反対することを決め、林厚生大臣に申し入れを行いました。  厚生省は、この改正の問題につきまして、優生保護部会に改正するに当たっての問題点をまとめるようにお願いをしていらっしゃるそうですが、部会の方は問題点をまとめ終わっているんでしょうか。また大臣は、部会の方だけではなくて、宗教者あるいは倫理学者、婦人有識者そして教育学者から、それぞれ複数の方から意見を聞くということにしていらっしゃるようですけれども、もうすべて意見は聞き終わったのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  137. 林義郎

    林国務大臣 藤原議員の御質問にお答え申し上げます。  先生を初めとして、多数の婦人議員の方々が与野党協力のもとに超党派で私のところにお越しになったことは覚えておりますし、そのときにもお話しを申し上げましたが、公衆衛生審議会の優生保護部会でやっているけれども、さらに幅広い観点から、宗教学の観点あるいは倫理の観点、婦人問題の観点という形で、鋭意、実は特別に局長も入れまして、いまお話を聞いてもらっているところでございまして、わりと精力的にやっていただいているというのが実情でございます。
  138. 藤原ひろ子

    藤原分科員 優生保護法の十四条一項の四号を改正して「経済的理由」を削除せよという意見を主張していらっしゃる方々は、盛んに妊娠中絶を悪だ、悪いというふうに決めつけていらっしゃるように思うのですが、私自身、子供を産み育てました母親として、また婦人として、人工中絶が母体に与える影響というものから見ましても、それは決して望ましいものではないというふうに思っているわけです。望ましいというようなことは決して思っていないわけです。むしろ、世の多くの婦人たちは中絶などだれもしたくないと思っていらっしゃるに違いないわけですね。それなのに、なぜ中絶が行われるのか。それは、自分が望まないのに妊娠してしまったからだ。私は、人工中絶をなくします根本的な対策は、まず、この望まないという妊娠に対して、そういう状況をなくすことだと思うのです。  そこで、具体的な問題についてお尋ねをするわけですが、人工中絶の最近の特徴は、若年層の中絶が非常にふえているという点ですね。私は、若年層の問題を解決するということができるならば、それは全体の問題をもあわせて解決するということにつながるであろうというふうに考えているわです。厚生省にお尋ねするわけですが、この若年層の中絶が非常に多いという原因、それはどこにあるのでしょうか。
  139. 三浦大助

    ○三浦政府委員 中絶件数が年間五十九万件でございますが、この中で、若年層といいますのは十代というふうに理解してよろしゅうございましょうか、約二万二千件ぐらいでございます。これが多くなってきているというのは、私はやはり、昨今の性道徳の乱れと申しますか、そういうものが非常に影響しているのではないだろうかというふうに思っております。
  140. 藤原ひろ子

    藤原分科員 私は先ほども、中絶を避けるためにはまず望まない妊娠はしないこと、これが大前提であると申しましたが、それでは、この望まない妊娠をしないためにはどうするのか。政府は何ができるのか、また何をしなければならないのか、このことが大切だと思うわけです。私は、その第一は、正しい性教育をすることだというふうに認識しております。町へ出ますならば少年少女を刺激するような状況は蔓延をし、ますますエスカレートしているという状況ですね。こういう中では、なおさら正しい性教育が必要だと思うのです。  そこで文部省にお尋ねをいたしますが、小中高校におきまして性教育というのはどのように行われているのでしょうか。
  141. 森脇英一

    ○森脇説明員 学校におきます性教育は、全人的な教育という観点から、学校におきますすべての教育活動、すなわち教科や道徳それから特別活動のそれぞれの特性に即して行うこととしておるわけでございます。すなわち、教科の保健体育中の保健におきましては、小学校では、身体の発達に伴う第二次性徴の発現について、中学校では、第二次性徴のメカニズムと申しますか、機序及び欲求に対する適切な対応など、そして高等学校におきましては、性器官の機能と受精、妊娠及び出産、さらに健康な家庭生活の観点から、家族計画の意義や受胎調節などを指導することとしております。
  142. 藤原ひろ子

    藤原分科員 私自身も小学校の教員の経験がございますが、いま反省をしてみますと、正しい性教育を子供たちにはしておりませんでした。修学旅行の直前になって、養護教諭の援助も受けまして、スライドや掛け図を持ってきまして授業したのを思い出しているわけですけれども、あれは性教育じゃなくて初潮教育であり、正しい完全な性教育を日常の教科指導であるとかあるいは生活指導の中で行っていたかというと、そうではありませんでした。  それじゃ、今日の現場では完全な性教育が徹底しているかどうかというふうに考えましたとき、依然として同じ状態ではないかというふうに思うんですね。TBSの「テレポート6時」を見ていたわけです。インタビューに答えまして高校生たちは、学校でも家でも教えてくれなかった、その話を聞いたのは先輩から聞いたんだ、週刊誌で知ったんだというふうに答えておりました。もちろん、現場の先生の中には、かなり性教育について勉強していらっしゃる方もあります。しかし、それは大学を卒業されて教師になってから、自学自習で習得をされたというのが実態なんですね。  それで、文部省にお尋ねいたしますが、大学では性教育を講座として持っているという大学があるでしょうか。あれば、その内容を教えていただきたいと思います。
  143. 菴谷利夫

    ○菴谷説明員 大学で、性教育という講座あるいは科目、これをいわゆる講義として持っているというのは、逐一調べたわけではございませんが、私ども承知している限りにおいてはちょっとございません。
  144. 藤原ひろ子

    藤原分科員 私もいろいろ調べたわけですが、大学では免許取得に必要な者に対して講座が組まれているわけですね。性教育の講座はないに等しいという状況です。千葉大学で、週二時間、一年を通して性教育の講義が開講されておりますが、日本じゅうで、このほかに性教育講座は一つもないというふうな状態なんですね。  私は、なぜこの点を強調するのかといいますと、わが国には性教育の体制がない。こういう状況のもとで条件整備、これを経済的理由の削除だけでなくて、条件整備をやりますと、こう厚生省はおっしゃっているわけですが、そういうお言葉だけで具体的な対策というものはないままに、この十四条の一項を改正するとすれば、それは若年層の中絶が減るというふうには考えられないからなんですね。むしろ、もっと悲劇的な状態になるだろうというふうに私は思います。事の原因は、性というものに対する正しい知識がないから妊娠をし、そして中絶をするというふうな悲劇が起こっているわけですね。  私は、ここに昭和五十七年の一月二日発行いたしました「ジュリスト増刊総合特集人間の性行動・文化・社会」というのを持ってきておりますが、この中で、「若年女性の妊娠と性」というテーマで日赤医療センターカウンセラーの池田みどりさんが書いていらっしゃるわけですが、これは、この方が中心になって行いました調査をもとにしまして書かれたものなんですね。  ちょっと読ましていただきますと   若年妊娠に至る性意識と性行動をみると、青春期女子が相手と知り合ってほぼ半年以内に「愛していればよい」「なんとなく」という雰囲気で性交に至っている過程が明白である。朝山・田島・伊藤の調査では、男子の方が接触欲や性交欲が女子に比べてはるかに高くなっている。「無理やりに」「性交の意味がわからずに」「暴力」という動機をみると、青春期女子の軽率な行動という面ばかりでなく、男性の性行動、妊娠・避妊の知識を含めた性知識の不足、ひいてはその性知識を与える側の問題も指摘されて良いと思われる。 このようにあるわけなんです。これは単に女生徒だけでなくて、男性も含めて教育することが必要だということを指摘しておられるわけです。  また、これは、ある大学の教授が関東地区三つの大学の三、四年生を対象といたしまして、中学、高校時代にその学校で発生をした妊娠実例がその後どうなっているのかということを、知っている範囲で記載をさせて集計した資料がございます。これによりますと、全部で八百二十五人の事例が集計されているわけですが、相手の男性と数カ月内に離別した、別れてしまったというのは二百五十一人で三〇・四%です。一年以内に離別したという人が九十五人で一一・五%、数年のうちに別れてしまったというのが二十人で二・四%、一度は結婚したけれども現在は離婚しているというのが三十六人で四・四%です。そして、自殺をしたという人が五人もいるわけです。どうなっているかわからないという人が百五十九人ありますので、わかっている人六百六十六人の中で、結局は別れてしまったという人は六一%にもなっているんですね。また、京都の産婦人科医会長の先生も、自殺をした例を知っているというふうに私に教えてくださいました。  これは、一体何を意味しているんでしょうか。思春期の妊娠というのは、このようにみずからの人生にとっては決してよい結果をもたらさないということなんですね。このことは、さきに紹介をいたしました池田さんの論文の中にもさらに書かれているわけです。こういうふうに述べておられます。   妊娠と中絶において青春期女子が肯定的であれ、否定的であれさまざまな情緒的体験をしていることは明らかである。こうした体験に対して青春期女子が不安や葛藤等の感情の整理をしておかないと、心的外傷となって後に性的障害の原因になったり、精神障害を引き起すことにもなる。 というふうに書いておられるわけですね。  私は、私たち大人がまずこのような事実を知ること、そして、若い人たちの中にあります誤った知識を正すための努力、これをすることが大変大切だというふうに思いますし、私ども政治家は、そのような教育がなされるように制度として保障することこそまずやるべきことであって、中絶禁止を法律で決めれば解決をするということではないというふうに思うわけです。  文部省も、現状のままでは、いま言われたような、まあ悪いですが、通り一遍のような性教育に対する御答弁ではなくて、そういうことでは、いまいろいろな少年非行、校内暴力、こういうふうな非常に胸が痛むというふうな状況にまで発展しているという事態はよくよく御承知だろうと思うわけですね。  それではどうするのかということですが、完全な性教育を行うための具体的計画、いままではやってこなかったという、ほとんどやられていなかったということが明らかだ。そうすると、あしたからどうするのかという具体的計画を早急に検討していただく、早急につくって示していただくということが大切だというふうに思うのですね。この点どうなのか、文部省にお尋ねをしたい。  また大臣に、これは文部省任せではだめだという大変な問題だと思うのですね。国務大臣のお一人として、こういう現状になっている点をどうされるのでしょうか、お尋ねをしたいと思います。
  145. 森脇英一

    ○森脇説明員 教育の充実というお話でございますが、学校におきます教育については、学習指導要領におきまして教育課程の基準、教育課程編成の基準の大綱を示しておるわけでございます。また解説書等について、さらにその細目について指導をしておるわけでございますが、学校におきます性教育についても、その指導を効果的に進めるためには、他の教科におきます場合と同様、都道府県の教育委員会の指導主事や指導的立場にあります教員を対象といたしまして講習会等を開催して、その指導の徹底を図っているところでありますが、今後とも一層指導の徹底を図るという考えでございます。
  146. 林義郎

    林国務大臣 藤原議員の御質問にお答えを申し上げます。  いまいろいろとお話がございました。私も、非常に注意深くお話を聞いておりましたが、藤原先生と私は同年代の者だと思います。お互いが育ってきた小学校、中学校等の教育の時代から考えますと、むしろ男女七歳にして席を同じゅうせずなどというような道徳律がお互いの小さなときにはまかり通っておったんだろう、こう思うわけであります。  戦後におきまして、日本国憲法のもとで男女平等の精神をうたい、いろんなものを自由に議論をするようなことになってきました中で、私は、この性の問題というものが、やはり真剣にいまやもう一遍顧みて議論をしなければならないような事態になってきておるのではないかということを、私も先生と同じように認めるわけでありまして、私は、そういったものも含めて、いまの優生保護法十四条何項というものは考えていくべきものだろう、こう思っておるのです。  先生お話の中にいろいろありました。たとえば男性の方が非常に積極的である。私は、性というものは、本来的にこれはもう人間だけじゃない、本来的に性というものは人類なりまたその他の生物の種族保存のために、やはりそういった傾向があるということは否定できない事実であろうとも思いますし、その民族なりあるいは人類の生存という問題の中でどう考えていくかということも考えていかなければならない。単に教育の問題だけではなくて、私は、社会一般の問題さらには倫理の問題、先生にもこの前申し上げましたように、宗教学の中で取り上げていきたいというのは、やはりこれは人間の本質、一番根源的なものでありますから、そういったものまで深く考えた上で、いろいろな話をしていかなければならないだろう、こう思っておるところであります。  文部省の方の教科書の問題、実は私も、文部省の担当の方に来てもらって、いろいろと話を聞かしていただきました。私が考えてどうかなというところもありますが、これはやはり一つの教育の流れの中で出てきておる話でございますから、それはそれとして、いろいろ考えていかなければならない。これはお互いやはり政治家として、社会風潮をどうしていくかということを考えていくべき問題ではないだろうかということを考えておるところでございます。
  147. 藤原ひろ子

    藤原分科員 文部省は今後とも徹底を図るということでございますので、ぜひ文部大臣の方に林厚生大臣の方からも御相談をいただき、全体として取り組んでいただきたいということを強く要望したいと思うのです。  それから、私は、この教育の問題というのは、子供たちの問題だけでなくて、親自身の問題でもあるというふうに考えるわけです。親が家庭で子供に対して正しい性教育ができないというのが、圧倒的な家庭の姿ではないかというふうに思うのですね。日本性教育協会という財団法人がありますけれども、ここの調査によりますと、妊娠、出産についての知識を親から得たという子供たちは五・四%しかないということですね。これは、なぜそういうことになっているのかといいますと、親自身が正しい知識を持っていないから、子供に話をするのが恥ずかしいとかみにくいとか、そういうふうにしか考えていないわけですね。現在の大人たちのほとんどは、性教育などは受けていないわけですから、これは、親が悪いのじゃなくて、当然の姿だという状態でもあるわけなんですね。ですから、この問題も解決しなければならないと思うのです。では、これはだれがどのようにしてやるのか、私は、これは優生保護相談所の任務だろうというふうに思うのです。  そこで、厚生省にお聞きしますが、この相談所の活動について、国はどのように指導をしていらっしゃるのでしょうか。また、国としての予算はどれくらいになっているのでしょうか。  時間がありませんので、次の質問と一緒にお答えをいただきたいと思いますが、なかなか十分じゃないという感じを私は持っているのですね。もっと家族計画の指導と充実強化、それから第十五条で決めております実地指導者の教育、この養成が十分行えるよう国としての対策強化なしに法改正を急ぐのは、私は、誤りであろうというふうに強く主張するわけです。  同時に、妊娠を避けるための第二の問題があるのですね。それは、より有効な避妊薬や器具の開発です。これがわが国でどうなっているのか。現在、わが国の場合に実際に使用が認められているものは、よく使用されているものにコンドームがあるわけですが、この有効率は、東京厚生年金病院の松山先生の調査によりますれば、八六%ということになっているのですね。これではだめだというふうに思うのですが、より有効な避妊薬というようなものの研究開発、これについてはどのような対策をとられているのか、厚生省に対する質問を一括してお答えいただきたいと思います。
  148. 正木馨

    ○正木政府委員 優生保護相談所の業務に関連しましての第一の御質問でございますが、御案内のように、優生保護相談所は全国で八百六十三カ所ございますが、ここで優生保護の見地から遺伝についての相談あるいは結婚相談、受胎調節に関する指導等を行っております。昭和五十六年度で申しますと、指導件数が約十六万八千件、それから、集団指導を約一万三千回やりまして、参加人員三十万人といったような実績でございます。経費につきましては、保健所運営費の中で対応をしておるということでございます。  それから家族計画、避妊対策等の指導、これの重要性も先生おっしゃるとおりでございまして、これも御案内と思いますが、保健所市町村を通じまして、たとえば婚前学級を開くとかあるいは新婚学級、母親学級等を開きまして、もろもろの指導を行っておる。家族計画の相談事業で申しますと、保健所が中心になってやっておりますが、五十八年度、いま御審議願っております予算では二億三千五百万円ばかりを計上いたしまして、母子保健訪問指導の充実を期したいということで考えております。
  149. 藤原ひろ子

    藤原分科員 いまお聞きのとおり、予算の面につきましても非常に少ない。それから、実施されてそれを受けている婦人の数も、全体からすればほんのわずかだというふうな点で、私は、人工妊娠中絶をなくすためには何が必要かというようなことをずっと申し上げてきましたわけですが、文部省に聞いた性教育、それから厚生省が手を打っていらっしゃること、決して十分ではないということを指摘をしたいわけなんですね。ですから、経済的理由を削除するという前に、大臣、政府はまずそういったことをやるべきなんですね。  それで、経済的理由削除だけではなくて、条件整備をやります、それも一緒にやるんです、鶏と卵じゃなくて並行してやるんですとおっしゃるけれども、並行するどころか、非常におくれた現状がいまある。条件整備というようなことは言葉だけではごまかしだ。私は、あなた方がやっていらっしゃる経済的理由削除ということを前面に進めようとしていらっしゃることは、本末転倒だということを申し上げたいわけです。これでは国民のコンセンサスを得ることはできない。それだけではないわけですが、コンセンサスどころか、いまのままでもし法改正がなされたら、悲惨な状態があちこちに起こると思うのですね。  私は、こんなような問題は、少なくとも日本のすべてと言ってよいと思いますが、婦人団体が反対だと言っているような大問題ですね。こういうものを審議会にも諮問しないで法制化しようとしている状態ですね。そういう点に強い疑問を持っているわけです。幾ら部会の意見を聞いていますとおっしゃっても、それは諮問しておられるわけではないわけですね。  なぜ、そういうふうに諮問をするようなことをしないのか。ぜひ、婦人がこれだけこの問題で怒っている、真剣に大変だと警鐘を乱打しているわけですから。もしも法改正されて中絶ができなくなった、しかしどうしても子供を生むことができないんだ、その結果、隠れて中絶した。そんなことが起これば堕胎罪に問われるわけです。この罪に問われるのは一体だれでしょうか。お医者さんと女性だけですね。男性は罪にならないわけです。大臣、女性だけで子供ができるということはないわけですね。それにもかかわらず、この罪は女性だけが負うというのは一体どういうことでしょうか。このような重大な問題を諮問もしないで、その上、女性の意見を聞いたといっても少数の人の意見ではないでしょうか。こういう状態のままで提案しては大変だというふうに思います。  それから、最後にもう一つですが、いまあなた方は、改正と深いかかわりのある問題について、優生保護部会の三人の先生方に研究レポートを依頼されておられますね。それは、人工妊娠中絶の実態について、二つ目には十代の妊娠の問題について、もう一つは優生学上の問題について、厚生科学研究ということでお願いをしていらっしゃるはずです。これは、今回の法改正と深いかかわりがあるものだと思うのですね。このレポートの検討もしないで法案を先に提出するという、もしそういうことが起これば、何のために研究を委託したのかわからない。三十万円というお金を渡しておられるわけですから。せっかくそういう中で自分のポケットマネーも出しながらいろいろ研究し、がんばっていらっしゃる先生方の専門家の意見、これはまだきちんと出ていないはずですから、出たら検討という時間が必要であるわけです。そういうこともしないで、みずからお願いして頼んだ人たちの言うことも聞かないで、検討もしないで法案を提出するというようなでたらめなことを絶対にしないでいただきたい。これは大臣にお約束をしていただきたいと思います。  時間が参りましたので、そのお約束を聞いて終わりたいと思います。
  150. 林義郎

    林国務大臣 藤原議員の御質問にお答え申し上げますが、私は、就任以来この問題に取り組んでまいりました。  私は、一言も十四条の何項を改正するだけの法案を出そうと言ったことはございません。広く国民的なコンセンサスを得るような形でこの問題を解決しなければならないということをたびたび申し上げているわけでありまして、もしも、そういった一条の改正でもって問題が解決するなどということを考えておれば非常におかしな話だろうと私は思うのであります。  私は、先ほど来申し上げておりますように、宗教学なり倫理学なりの話もし、また教育の方の話もしなければならないというのは、この問題は人間の本性にかかわる問題である、本源的な問題にかかわるものであるから、私は、その点も十分踏まえた上で、いろんな角度から検討に検討を重ねていかなければならないということをたびたび申し上げているわけでありまして、私たちの方が十四条一項などということをもしもやるというふうなお話でございましたならば、それは幽霊の正体見たり枯れ尾花という話でしかないんではないかと思うのです。私たちの方は、いまのお話のありましたようなことも十分考えながら審議会にもお願いをしているわけでありますから、当然に審議会に諮問をいたしましたり、いろんな手続は踏んでやらなければならない。私たちは、まだ審議会にお願いするまでの考え方をいろんな方面から聞いている段階だ、こういうふうに御理解を賜ればありがたいと思っております。
  151. 藤原ひろ子

    藤原分科員 それでは、そういう検討がなされてからしか動かないということで、三月十一日とも十五日とも言われていることは、それはうわさばかりであって、そうではなくて、検討後お出しになるかならないかを検討されるということと認識をして終わりたいと思います。
  152. 上村千一郎

    上村主査 これにて藤原ひろ子君の質疑は終了いたしました。  次に、中井洽君。
  153. 中井洽

    中井分科員 当委員会でもあるいは予算委員会でも何回も議論になったとは思いますが、私も、中国残留孤児の問題について何点かお尋ねを申し上げたい、このように思います。  関係者の御努力で、現在も、四十五名の方が中国から来られ、肉親を捜されているわけでありますが、去年からことしにかけて、中国と日本との間でいろいろな行き違いがあって少しおくれた、あるいはまた考えておったより少ない人数でしか来れなかった、こういうことでありますが、どういう事情によるものか、あるいはまた、それがどういう形で解決をされて、現在残留孤児の方たちが日本へ肉親捜しに来られるようになったか、こういったことを御説明願います。
  154. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 中国残留孤児の肉親を捜して身元を明らかにする、そうして御希望の方は日本へ永住帰国し、あるいは里帰りを円滑にする道を開くということを日中国交回復以来やってまいったわけでございます。     〔主査退席、白川主査代理着席〕 ことに、この二年間には何人かの孤児の方をまとめて、日本へおいでいただきまして、日本に暫時滞在していただいて調査をするという方法をとってきたわけでございます。諸方面の御協力で進めてまいったわけでございますが、率直に申しまして、これまでの進め方が、私どもが問題の重要性と緊急性ということからやや取り急いだことが原因かと思っておりますけれども、若干日本サイドの考え方に偏っておった面があったことは否定できないところでございまして、その結果、中国側から指摘を受けましたのは、肉親を捜し出し身元を明らかにするということは、人道上からいいましてもまた日中友好という見地からいいましても非常に重要である、これは認識は共通しているけれども、一方で、そういう肉親の間の悲劇が一部償われるということに伴いまして、中国のサイドにおいては、また新たな悲劇が幾つか生じているということが指摘されてまいりました。  これは、具体的に申しますと、四十年近くの長きにわたって孤児を養育してこられた養父母の方方、その他中国での親族の方々が非常に悲しんでおられる。それは、まあ日本へ孤児が帰ってしまえばどなたも悲しい感じをお持ちでありましょうし、さらに、そこには養父母の方々が高齢化されまして生活に困る方もおられるというようなところから、その問題をあわせて解決してほしいということでございまして、昨年の春にそのような指摘がありまして以来、五月、十月、本年の一月、三回にわたりまして事務レベルでの協議を重ねてまいったわけでございます。  その結果、できることならば、養親でありましても親族はぜひ一緒に暮らすことが望ましい、したがって、でき得れば養父母の方もともども日本へ永住帰国する場合には日本に一緒に来て暮らすことがベストである。その次には、逆に、里帰りはしても永住帰国はしないで中国本土で養父母その他の方と一緒に暮らすことが次善である。三番目としては、事情があってそのいずれもができ得ない場合には、せめて養父母の生活に困らないように扶養義務者としての義務をはっきりと果たすことが第三の道であろう、そういうお話でございました。まことにごもっともなことでございますので、私ども、そのことに全面的に賛成をいたしました。  その具体的方法につきましては、現在の段階では扶養費というものを孤児が養親その他必要な方にお支払いをする、その必要な資金につきましては、日本政府がその半分に当たるものを給付の形で負担をする、残る半分につきましても、孤児の方の精神的、経済的な負担が重くないように民間の御好意による寄附その他でそれを賄い、孤児御本人には負担がかからないようにしたいということで、基本的な合意ができました。その細部の実施方法その他につきまして、現在外交ルートを通して依然協議を続けておりまして、なるべく早い時期に最終的な話し合いを成立させたいと考えております。
  155. 中井洽

    中井分科員 お話しがありましたように、人道上の問題でもあります。政府が初めお考えになっておったようなけちな方法じゃなしに、また、できる限り孤児の方に負担がかからない形で御解決をいただくように、一層御努力をいただきますよう要請を申し上げておきます。  現在、八百四十五人の方が中国で日本人であると認定をされて肉親捜しを希望されておる。この間から何人かお越しになっているわけでありますが、人数的には大体この人数で間違いないとお考えでありますか。それとも、孤児だけじゃなしに中国に残られた日本人を含めて、いつでも、どんな時期でも希望というものを受け付けて柔軟に対応していくお考えですか。どちらでございますか。
  156. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 孤児の人数につきましては、私どもに調査の依頼のありました千四百人の中から、これまでに身元の判明いたしました数を差し引きますと、この一月現在で八百四十三人であったわけでございまして、そのうち、これまでに大体十五人ほど判明いたしましたので、残りは現在八百二十数名ということになっているわけでございます。  この数が正しいかどうかは、もともと推定の数でございますから、また調査漏れがないかということになりますと、それは私どもとしてはありませんと断言するつもりはございませんけれども、この数字につきましては、中国政府に対しまして、これ以外にもまだ孤児という立場の方がおられる可能性があるという関係者の方の御意見なども伝えてあるわけでございますが、現在の段階では、中国政府としては、かなり綿密な調査をした上でこの人数が大体孤児である、これ以外には孤児という立場の方はおられないというふうに断定じておりますので、私どもも、その中国側の考え方を現在受け入れている状況でございます。  また、これ以外に、たとえば戦前あるいは戦争中にすでにある程度年齢に達しておられまして、中国籍の方と結婚をした方あるいはその子弟の方という方がまだ中国におられることは事実でございまして、こういう方々につきましても、日本に帰国したいという御希望がありましたら、それは私どもとしてできるだけの御援助をしたいというふうに考えております。
  157. 中井洽

    中井分科員 おいおいといろいろな調査をなさりながら、日本へもお越しをいただいて対面をしということでおやりをいただいているわけでありますが、このいわゆる日本人孤児であると言われている人たち、このままの調子でいけば大体何年くらいの間に一応の調査あるいは現地へ来ていただいての対面、そういったものが終わるとお考えでございますか。
  158. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 五十八年度に、私どもは、百八十人を三回に分けまして日本にお呼びして調査をしたいということで、予算を計上させていただいております。これ以外に、民間のボランティアの方のお世話で身元が判明する方、その他個人的に直接文通その他で身元が判明する方も若干はございますので、およそ四年ぐらいの間には、いま現在やっております百八十人という規模の訪日調査が予定どおり実施されますと、全員身元判明とはまいりませんが、一応すべての方についての調査が一ラウンド終わるということを期待しておりますが、御承知のとおり、前二回でもかなりの数の方が身元がわからないまま中国に帰られるということがございましたし、今回も、あるいは半分か過半の方は身元不明のまま帰国されるということもあろうかと思いますので、その時点、一ラウンド終わったところで、どれくらい身元のわからない孤児の方が残られるかといいますのは、いまからちょっと推測しにくいのでございますが、まあ何十%かはどうしてもその段階でもまだ残るかと思いますが、これにつきましては、訪日調査だけが方法ではございませんので、今後とも民間の御協力その他中国政府の御高配を賜りまして、ひとつあらゆる方法で、現在わかりません八百数十名の方全部の身元がわかるように努力をしていきたいと考えております。
  159. 中井洽

    中井分科員 できるだけ急いでいただいて、せっかく肉親がわかってもあのような形でお墓にお参りをする、本当に涙を誘うような事態であり、したがいまして、中国政府の事情等もいろいろおありでしょうし、向こうの方の事情もいろいろおありでしょうけれども、急いでいただくように強く要望申し上げておきます。  同時に、このいわゆる孤児と言われる人たちの中で、肉親がもうほとんどわからない、手がかりもない、こういう人の中で、日本に住みたい、日本で日本人としてやっていきたい、そういう希望の方がおられるというのはわかっておられますか。また、そういう方がおられたら、国としては受け入れる体制というものはあるのでしょうか。
  160. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 すでに昭和五十七年度の予算で、十六世帯の方が永住帰国を希望された場合には、身元が判明しない場合でありましても受け入れるということで予算を計上いたしたわけでございますが、御承知のとおりの外交交渉の経過がございまして、実際にはこの予算を使って永住帰国を実現するという段取りに至らなかったものでございます。  五十八年度は、この約倍の三十三世帯、百人分の予算を計上してございまして、今後五十八年度においてそういう御希望の方がございましたら、ひとつその予算を活用いたしまして、民間の団体なり個人の篤志家なりが身元引受人になる、どうしてもそれがない場合には、政府の方で身元を引き受けてでも御希望の方の永住帰国が実現するようにするということで努力をしてまいりたいと思っております。
  161. 中井洽

    中井分科員 それは国の方が身元引受人という形ででもぜひともお願いしたい、また、中国側にも十分そういった誠意が伝わるように御努力を賜りたいと思います。  永住を希望されて日本へ帰られて生活をされている方たちの現状をどのように把握されているのか、これが一つ。もう一つは、日本の生活になれ、日本人としてきちっと生活ができるまで、国としてどんな援助をなさっておるのか、あるいはこれからされようとしておるのか。それについてお聞かせをいただきます。
  162. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 これまでのところ、私どもの御援助は意があって手がなかなか届きかねるというところが確かにございまして、永住帰国ということで成田等へお着きになりますと、その場でいろいろとしたアドバイスを申し上げることはいたします。たとえば、いろいろな生活上の問題に当面した場合に相談相手になる官庁の窓口その他はこういうところであるというようなことを御指導申し上げることをやっております。それ以外には、帰還手当その他の支給以外では、都道府県に補助をいたしまして、一年間生活指導員をその世帯に派遣していただくという事業をやっております。  しかしながら、これだけではなかなか十分ではございませんので、たとえば別の面でございますが、生活保護を受ける方はかなりなパーセントになりますけれども、一度生活保護で暮らしを始めた方の場合には、なかなか就職して自立をするというのに時間がかかるようでございまして、一年では十数%か二〇%ぐらいしか自立する方がない。やはり二年から三年ぐらいかかるという状況が一方にはございまして、私どもの力がなかなか及ばないところを痛感しておりますが、一方では、自治体の中ではかなり積極的に、国の補助金が切れた後についても県単独の予算でもって引き続き指導をやっていただいている県もあるわけでございます。  そういう状況でございますが、五十八年度からは帰国者定着センターという形で施設を設置いたしまして、法人委託でございますが、これを運営することによって、また定着促進の一助に役立てたいと考えております。ここでは四カ月間、日本語教育を主体とした定着化のための必要なトレーニングを実施いたします。予算の上ではそれが主体でございますけれども、その運営をいたします法人には、できればもう少し入念な仕事をやってもらいたい。その中では、たとえば四カ月では日本語その他を十分マスターできない方はかなり残るわけでございますので、そういう方のためにいろいろ協力をしていただく民間団体なんかへも何がしお手伝いすることができればという希望を持っておりますし、また、自治体の生活相談その他の期限が切れた後でも、悩み事はいろいろ多いはずでございますから、そういう点について、いろいろ御相談に乗るような仕事もぜひやってもらいたいというふうに希望しております。
  163. 中井洽

    中井分科員 大臣に最後に一括して考えを申し上げ、要望をいたしますので、お答えを賜りたいと思います。  厚生省もいろいろ御努力をいただいておるわけであります。しかし、三十数年前のことであります。往時茫々でお互いが記憶がなく、なかなか見つからないということであります。また、せっかく肉親同士がめぐり会えて日本へ来られても、三十数年間中国人としての生活であったわけであります。なかなか日本の生活になじまない。どちらの面においても、国が法律というものを超えて人道的な立場で思い切った手を出していただく、このことが肝要であると私は思うわけであります。  いま聞きますと、中間からお帰りになって、指導員等補助を出しておられるようでありますけれども、いままでは実際言えばほったらかしみたいな状態、自分で努力して日本の生活になれなさい。私どもは、たまたま不幸な事柄も聞くわけでございます。今回ようやくセンターというのができて、民間のボランティア等も含めて四カ月ぐらい訓練をしていただく、こういうことを聞き、これはこれで結構なことだと思いますが、大臣、たとえば毎年、東ドイツから西ドイツへ逃げていく、あるいはまた引き受けて逃亡する人が一万数千人いらっしゃる、こう言われているわけであります。これらの人たちは一年間やはり訓練を受けるのですね。ドイツですから言葉は同じなんですよ。それでいながら、たとえば自由とは何か、民主主義とは何か、西ドイツ社会の仕組みはこうなっているのだということをきちっと教えてもらって、職業訓練を与えていただいて、そして職もほぼ見つけてもらって、そのセンターを出ていくわけであります。それに比べると、日本の政府のおとりになっている態度というのは少し情か浅いのじゃないか、私はこういう気がいたすわけでございます。  私は、ああいう番組を見ますと、実は涙して見られない。私自身も、昭和十七年、中国いまの長春というところ、前の満州の新京に生まれました。四つで二十一年九月に引き揚げてまいりました。私ども家族と中国の奥地の人が一人逃げてきて半年間一緒に住みまして、引き揚げて日本に帰ってから親とめぐり会えたわけでありますが、いまだに親戚以上のつき合いをいたしておる。私自身のことを振り返って考えてみますと、その当時に親と別れておって本当に思い出すだろうか。何も覚えておらぬ。私の父自身はもう全身不随で物もしゃべれない。だから、いまの中国孤児の人たちが見えますと、大体年齢が私と一緒、私のきょうだいとみんな一緒であります。本当に頼りとするものはないわけであります。  私どもが聞くところによりますと、その当時、日本人はずいぶんたくさん子供を残して、泣きの涙で日本へ帰ってきておる。私の知り合いなども、ずいぶん子供が死んだものとして実はお葬式を出しているわけであります。こういうことがあっても名のり出ない、そういう方もたくさんいらっしゃるわけでございます。また、大変失礼でありますけれども、いま孤児としてこちらへ御帰国なさる人たち、ずいぶん奥地へ行っておられるわけであります。当時満州の奥地へ行かれた方というのは、やはり日本でも貧しかったのです。したがって、親御さんがこちらへ帰ってきても戦後ずっと苦労なさっている。孤児が見つかって、自分の子供が見つかって、あるいはきょうだいが見つかって、引き取ったところで十分なお世話というものはなかなかしにくい、率直に言うてそういう状況であろう、私はこのように思うわけであります。  したがいまして、わずかのことである、また、わかっている人数もわずかな人数であります。養父母とも全部日本へお引き受けして、そして日本人として生活できるまで全部めんどうを見ていただいても決しておかしくない、私はこのように思います。  私ども民間人から言いますと、まことに残念なことですが、この孤児の中に一人も軍人の子供というのはおりません。なぜか。十九年にはもうみんな引き揚げていらっしゃるのです。したがって、苦労したのは、こういう奥地へ行かれた本当に悲惨な生活をされた人たちなんです。そういったことも含めて日本の国はここまで経済大国になっているわけでありますから、私はとる道は幾らでもあると思うのであります。早く、そういう親御さんあるいは肉親の記憶が薄れない間に、そうして日中友好の強い今日の間に日本人として恥ずかしくない施策をおとりいただきたい、このように思います。御努力をいただいていることは十分わかりますが、ひとつそういった点を踏まえて御尽力いただくことをお約束いただけませんでしょうか。
  164. 林義郎

    林国務大臣 中井議員の御質問にお答え申し上げます。  中井議員も日中問題については大変御造詣も深いし、いろいろな点で御活躍をされていることは、この機会をかりまして私も心から敬意を表しておきたいと思います。  いま御質問がございましたように、中国の日本人孤児の引き揚げの問題は、やはり人道的な立場に立っていろいろなことをやらなければならない。いろいろな点で、孤児センターをもう少し充実するとか、まだ身元のわからない方でも日本に帰ってきてもらうようにしたらとか、いろいろな御提言がございましたが、私はやはりこれを進めるに当たりましては本当にヒューマンな気持ちでやっていかなければならないと思います。  中井先生は御自分でかつての中国からの引き揚げをされた方でもございますし、身につまされた思いでのお話でもございますから、そういったお気持ちは非常によくわかりますし、私も全く同じ気持ちでこの問題に取り組んでいかなければならないと考えております。  実は、私も先週の月曜日に中国孤児の代々木のセンターのところへ行きましてごあいさつを申し上げました。私がごあいさつをしていると、皆さん涙を流して聞いておられる。私もお話を聞いていて本当に胸が詰まってくるような思いをしたわけでございまして、これからも一生懸命努力を傾けてまいりたい、こういう決心であることを申し上げまして、答弁とさせていただきます。
  165. 中井洽

    中井分科員 終わります。
  166. 白川勝彦

    ○白川主査代理 これにて中井洽君の質疑は終了いたしました。  次に、玉城栄一君。
  167. 玉城栄一

    玉城分科員 私は、戦時中の被災者並びに関係者への補償の問題について伺いたいわけであります。  実は五十四年のこの分科会で、当時橋本厚生大臣のときでございますが、大臣御存じのとおり沖縄の場合、戦時中わが国唯一の地上戦闘が行われたわけです。軍民まさに戦場の渦となったわけです。老若男女と申しますか、そういうことで、いまもってその後遺症というものはあるわけでございます。そこで、実はその際にも私、橋本大臣に申し上げたのは、当時七歳以上の方はいわゆる準軍属扱いで援護法の適用を受け、いろいろのケースによって救済をしていただける、なぜ七歳で、六歳以下はだめなのかというお話もしまして、それはそうだ、六歳であろうが五歳であろうが、やはりそのケースによっては適用、救済できるものはしていかなければならないという非常に前向きのお話がありまして、そういう措置をずっと厚生省の方も努力をしていただいておるわけでありますが、実は昨年もこの問題では同じこの分科会で御質疑をさしていただきましたが、どなたか、援護局の方になりますか、その後どんなふうな状況になっておるのか、概略御説明いただきたいと思います。
  168. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 これまで沖縄県から私どもの方に書類が上がってまいりまして受け付けました件数は、障害年金六件、遺族給与金二百三十二件、弔慰金二百六十六件でございます。このうち、障害年金は三件処理いたしまして未処理三件、遺族給与金は百四件処理いたしまして未処理百二十八件、弔慰金は百十六件処理いたしまして未処理百五十件という状況になっております。
  169. 玉城栄一

    玉城分科員 そこで、受け付けられた中で処理された、いま御報告いただいたわけでありますが、どういうところに問題点があるのか、これはなかなかうまいぐあいにいかないというその問題点をちょっと御説明いただきたいのです。
  170. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 一つには、何分にも大変な激戦の場所でございましたし、大ぜいの方が亡くなられたということから事実関係が大変むずかしゅうございます。また、時日も三十余年たっておるというところから事実調査に非常に時間がかかっているということで理解をいたしておりますが、県当局の方々の御協力を得ましてなるべく早く処理が進むように努力をしたいと思っておるところでございます。
  171. 玉城栄一

    玉城分科員 いろいろとむずかしい問題もあろうかと思いますが、ぜひ御努力をいただいて一人でも多くその救済がされることを御要望申し上げておく次第でございます。大臣、一言。
  172. 林義郎

    林国務大臣 玉城議員の御質問にお答え申し上げます。  玉城先生御出身の沖縄は日本で唯一の戦場となったところでありまして、お話がありましたように、老若男女ひとしく戦闘に入ってきたという悲惨な運命をたどったところだと思いますし、そういった方々のところにやはり対策をしていかなければならない、むしろ遅きに失したような感さえするものだと私は思います。いろいろと先生の御努力で六歳末満の方につきましても措置をするという話が、いまやっておりますし、いま局長から答弁したとおりでございますが、私もできるだけ早くこの問題が解決するように督励をしてまいる決心でございます。
  173. 玉城栄一

    玉城分科員 ぜひ御努力をお願い申し上げます。  それから次に伺いたいのは、やはり戦時中の問題の一つなんですが、昭和十九年八月二十二日に対馬丸が沈没をしておりますが、この対馬丸事件の事実関係と、政府がいまどういう対応をしておられるのか、概略御説明いただきたいと思います。
  174. 山田正美

    ○山田説明員 お答えいたします。  対馬丸遭難に関する御質問だと思いますけれども、対馬丸の被害は昭和十九年八月二十二日に発生しておりまして、当時、沖縄本島が戦場化するおそれということもありまして学童疎開を推進していたという状況下における被災事故でございます。対馬丸につきましては、そのような軍事上の配慮ということから学童疎開を推進したわけですけれども、そういう国の方針に従いまして軍と密接な関係のもとに実施された学童疎開、そういう途上において発生をした災害であるということを勘案いたしまして、これに対して現在、対馬丸遭難学童遺族特別支出金というものを支給しております。この遭難学童の問題につきましては援護法による措置というのはちょっととれないというようなことでございますけれども、その特殊事情を勘案いたしまして、学童の遺族、これは父母あるいは祖父母ということになりますけれども、これに対しまして特別支出金を支給しているところでございます。これは毎年支給をしておりまして、その支給額が現在、昭和五十七年度で年額一人六十八万円程度ということになっております。
  175. 玉城栄一

    玉城分科員 この対馬丸をなぜいま沖縄開発庁が所管していらっしゃるのか、その理由を簡単にお伺いいたします。
  176. 山田正美

    ○山田説明員 この問題はやはり学童疎開を大々的に実施をしたということ、あるいはその過程において発生をした唯一の災害であるということで、きわめて沖縄特有の問題というような判断から、現在沖縄開発庁がこれを所管しておるというふうに理解をしております。
  177. 玉城栄一

    玉城分科員 理由はそういうことでしょうが、沖縄開発庁がこの対馬丸の問題は所管しなさいというのはどこで決まったのですか。
  178. 山田正美

    ○山田説明員 これは各省の間の調整と申しましょうか、そういう中で決まったというふうに理解をしております。
  179. 玉城栄一

    玉城分科員 この対馬丸遭難学童遺族特別支出金というのは援護法とは直接関係ない、いわゆる予算措置でということをさっきちょっとおっしゃいましたね。
  180. 山田正美

    ○山田説明員 はい、これは予算措置でやっております。
  181. 玉城栄一

    玉城分科員 そこでちょっとお伺いしたいのですが、昭和十八年の五月二十六日に嘉義丸が神戸、奄美、那覇に向かう途中、米軍の魚雷によって沈没しておりますね。並びに赤城丸がこれまた昭和十九年の二月十七日、南洋トラック島沖で米軍機の攻撃を受けて沈没してたくさんの犠牲者が出ておるわけですね。これは一瞬にしてまさに海の藻くずと消えていったという本当に大変悲惨なことでありますが、この事実関係をちょっと御報告いただきたいのです。
  182. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 ただいまの件について申し上げますと、嘉義丸は大阪商船所属の定期運航船でありまして、当時海軍指定船と申しまして、海上交通の安全を期するために海軍が指定をするという制度がございまして、そういう指定船であったわけでございますが、昭和十八年五月二十六日鹿児島港を出帆いたしました後、名瀬寄港のため船団より分かれて航行中、奄美大島北方で潜水艦の雷撃により沈没したということでございます。そのとき、乗員乗客五百九十五人中二百七十五人の方が死亡されたというふうに承知しております。次に赤城丸でございますが、これは日本郵船の徴用船の改造船ということでございまして、当時で言いますと特設巡洋艦ということだそうでございます。この船は昭和十九年二月十七日トラック島方面の引き揚げ者が便乗いたしまして内地に向け航行中、トラック島北水道付近で機動部隊から爆撃を受けて沈没したということでございます。その結果、乗員乗客八百六十一人中七百八十八人の方が死亡されたというふうに承知しております。
  183. 玉城栄一

    玉城分科員 いま申されました嘉義丸、赤城丸の犠牲者関係について政府としてはどういう対応をしておられるのか、お伺いをいたします。
  184. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 この両船共通いたしまして、そこに公務で乗船しておられました軍人軍属の方につきましては、援護法等の法律のもとで適切な対応をいたしているところでございます。これ以外の一般乗客の方につきましてはこれらの法律の適用がございませんので、御事情は大変お気の毒に存ずるわけでございますけれども、当局といたしましては特段の措置を講じていない現状でございます。
  185. 玉城栄一

    玉城分科員 いまの嘉義丸と赤城丸は厚生省が所管してやっていらっしゃるわけですね。
  186. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 所管と申しますのはなかなかむずかしいことでございますが、私どもが陸海軍に関します軍歴を引き継ぎ、保管しております。それに関連いたしまして、そういう援護法あるいは恩給法上その他必要な資料の一環といたしまして、このような船舶についての資料も、十分ではございませんが、一部私どもが保管しております。
  187. 玉城栄一

    玉城分科員 先ほどお話にありましたとおり、両船に乗っていた軍人軍属、いわゆる援護法に関係する方々については当然法に基づいて救済をやるのですが、それ以外の一般のこういう犠牲者については所管でないということになりますと、その方々のいろいろな要望はどこに持っていけばいいのか、どこが所管してどこが窓口になっているのか、その辺をお間かせいただきたいと思います。
  188. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 私どもこういう方々から、たとえば当時の状況についての御照会その他ございますれば私どもとしてできるだけの御協力はいたすわけでございますが、その死亡されましたことに伴います補償なり何なり、そういう問題につきましては、私どもとしては対応することができないわけでございます。政府の中のいずれが所管であるかということになりますとこれは大変むずかしい問題でございまして、こういう方々への補償なり救済の措置というものはそういう法的なものがございませんので、したがって、政府としてもいずれのところが窓口になるかということは大変むずかしい問題かと思います。
  189. 玉城栄一

    玉城分科員 先ほど申し上げましたたとえば対馬丸の件につきましては、これも直接的には援護法ではないですね。しかしそういう特殊な状況ということで、何か先ほどのお話では関係省庁の協議で決めて、沖縄開発庁が担当しなさいということで毎年予算措置をしてやっていらっしゃるわけでしょう。援護法に関係する方々については当然ですが、これはほかにもいろいろあると思うので、そういう方々の問題を何らかの形で検討する——先ほどの対馬丸の例もありますので、これをそのまま宙に浮かしておくというわけにはいかないと思うのですが、これはどうなるのですか。
  190. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 従来の経緯は私も十分ではございませんで勉強いたしたわけでございますが、御指摘のように、援護法の適用の可能性があれば私どもとして受けとめて検討いたすところでございまして、その点についても検討はいたしたようでございますけれども、援護法の適用対象にすることができないということになりますと私のところから離れてしまう。あとは私どもとしてできる限り情報を整理し、あるいはそれを調べるということについては応分の御協力をするということしかできない状況です。
  191. 玉城栄一

    玉城分科員 昨年の分科会でも沖特でも申し上げたのですが、戦後台湾から引き揚げてきた栄丸、この問題の所管はどこになっていますか。昨年皆さんは協議してどうのこうのとおっしゃっておられましたから、もう一年たっていますので御報告いただきたいと思います。
  192. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 政府全体の共通の話題でございますので、強いてどこかで所管をということになりますと、とりあえずはやはり内閣なり総理府なりでここというふうに言っていただきませんと、ちょっと私の方からどこの所管と申し上げることは困難でございますので、お許しいただきたいと思います。
  193. 玉城栄一

    玉城分科員 昨年もそういうことだったのですが、それでは総理府の方、こういう問題は総理府でやるのですか。
  194. 萩原昇

    ○萩原説明員 総理府といたしまして戦後処理問題、そういう一般的な問題につきまして現在関係いたしておりますのは戦後処理問題懇談会というのがございまして、個別の何丸、何丸というものについてそれぞれどこが所管をするということになりますと、やはり個別の事業を行っていらっしゃる省庁が基本的には第一義的に御担当いただくのではないか。この問題につきましては、いわば先ほどの対馬丸等の例で理由がそれぞれあったように、栄丸とか赤城丸、嘉義丸の場合には、むしろそういう軍人軍属等という特別な身分関係にないという場合の問題であろうかと思います。この問題にどういうふうに対処するかにつきましては、現在までの政府全体としての考え方は、国民がさきの大戦においてはひとしく災禍をこうむったところであって、それを国民全体として受けとめなければいかぬ、こういう立場でございます。したがって、いまのような問題について軍人軍属という特別な身分関係にないというような場合には、先ほど援護局長からもお話のありましたように、そういう関係に基づく処遇はできないし、また一般的な戦災という関係からの処遇も現在できないという考え方でございます。
  195. 玉城栄一

    玉城分科員 大臣、ボールがあっちへ行ったり、こっちかと思うと勝手に向こうへ行くし、全然受け取るところがないわけですね。ちょっと皆さん方に申し上げますが、これはまじめに対応していただきたいのですよ。少なくとも国会で議論されたことについて、一年もほって、ああだこうだと言って、これは本当にけしからぬ話ですよ。  それで、大臣は内閣の重要な立場にいらっしゃるわけですが、先ほども申し上げました嘉義丸、赤城丸、それから栄丸、いろいろなこういう事件があるわけですね。一方、対馬丸については政府の御努力で実質的に年金という形で、沖縄開発庁が所管をして担当をしてずっと関係者に支給しているわけですね。ここはやるが、ここは受け取るところもない、こういうことでは非常にまずいわけですね。総理府の方は全般的にやると言うのですけれども、持って行き場がないという、これは重大な問題だと思うのです。それで、こういう問題は検討する所管なり、あるいはどういうふうな対応ができるのか、所管くらいきちっと決めていただきたいですが。
  196. 林義郎

    林国務大臣 玉城議員の御質問にお答え申し上げます。  私もいま話を聞いておりまして、まあこれは役所というのは大変なところだなという感を新たにしたわけであります。  観念的に申しますと、戦後処理問題懇談会というのがあるわけでありますから、やはりこの一環として考えていかなければならない問題があると思うのです。その中でどういうふうにやっていくかということを決めていただけるならば、そこで、どこで所掌するということが決まっていくのだろうと私は見ておりますし、総理府の方ともまた御相談をして、どうしてやったらいいか、やってみたいと思う。ただ全体の問題が決まらないと、どこが所管だといったところで話は進まぬわけでありますから、一般論として戦後処理問題をどうするかというのをここでやっていただくというのがまず第一歩の手始めではないか、こういうふうに思っております。
  197. 玉城栄一

    玉城分科員 いまの件でありますが、ぜひ、まず最初に所管はどこにするということを決めていただきたいわけですね。もうすでに関係者の方々は戦後三十八年、三十九年で、慰霊祭も持って、これを何とか当時の状況からして、あるいは——いろいろな要求の仕方があると思います、それを受け付ける場所が政府側にないというのは、これは重大な問題だと思うのですね。ですから、この両船につきましては、沖縄関係だけでもないのですね、そういう犠牲になられた方々、ほかにもいらっしゃると思うのですから、いま大臣がおっしゃられましたように、総理府なら総理府で一応検討をする、どういう対応ができるのかというものもやっていただく、もう大事な段階にあると思うのですね。来年また同じようなことにならないように、ひとつ大臣よろしくお願いします。いかがでしょうか。
  198. 林義郎

    林国務大臣 役所の権限の話でございますから、私からどうだという話をするのもいかがかと思いますが、問題の趣旨はわかりますし、先ほどお答え申し上げましたように、戦後処理問題懇談会という形で取り上げるという話でありまして、そういう抽象的、一般的な話は総理府の方でやる、こういうことになるわけでありますし、また、沖縄開発庁の方は沖縄開発庁の方でそれぞれの所掌事務を持っておられるわけですから、その辺でよく相談してやるのが、私はやはり現実的だろうと思うのです。法律がぱっと決まって、これをしますということになると、さあ、それじゃこっちだ、あっちだという話になるわけでありますが、それがまだ決まらぬから、役所の方は先ほどのような話をしているのだろう、こう思っているわけであります。だから、役所の方々は非常に律儀に物事を考えておられますから、ふわっとした話であるということで、いま戦後処理問題懇談会で話をいろいろと承るということではないだろうかな、またその範囲を超える話は、総理府の方としてもできないのではないだろうかなというのが、私が持っている一般常識でございますが、あと、また政府部内でもよくその話は詰めまして、先生の御趣旨はよくわかりますから、その辺は詰めてみたい、こういうふうに考えております。
  199. 玉城栄一

    玉城分科員 その入り口をきちっとやっていただきたいということと、政府がその気になれば、たとえば対馬丸の例でも、援護法とは直接的な因果関係はないけれども、いろいろな見舞い金あるいは一時金、交付金、それから予算措置という制度もあるわけですね。従軍看護婦の方々についてもそういう制度もちゃんとできているわけですから、いまおっしゃいましたように、総理府の戦後処理問題懇談会で受け付けるのは受け付けて、そしてどうするという、これをまた各省庁に所管を決めるなら決めるとか、あるいは内閣で決めるとか、それはぜひやっていただきたい。このことを強く要望しておきたいと思います。  それから最後に、沖縄県の場合、離島県でございますので、離島にはお医者さんがいらっしゃらないわけです。その前に、県立の病院にしても、あるいは国立関係にしても、お医者さんの充足率が、データもいただいておりますが、七〇%とか五〇%とか、そういう状況なんです。ひどいのになりますと、たとえば八重山の場合、これは県立病院ですが産婦人科医がいらっしゃらないのですね。ですから、わざわざ石垣島から沖縄本土まで妊産婦を飛行機でというような、きわめて憂慮すべき状況にあることは、医療行政上非常に問題だと思うのですね。その辺の御努力をどのように考えていらっしゃるのか。
  200. 大谷藤郎

    大谷政府委員 沖縄県におきます国立病院あるいは県立病院医師不足の問題でございますが、現在確かに充足率が悪いということはございますが、私どもとしてもできる限りの手段を尽くして応援をしてまいりたいと思います。また、従来からも本土からの派遣あるいはその他琉球大学の設置等、いろいろな総合的な施策を講じまして、そういった観点からやっていきたいということでございます。国立病院につきましても、従来のことを思いますと大分充足はされてきているということでございますが、今後一層努力をいたしたいと思います。
  201. 玉城栄一

    玉城分科員 そういう一般的なことは何回も——私は毎年この分科会では必ずこの問題を申し上げている。離島といいますと、お医者さんがいないとどうしても飛行機で、やれどうのこうのという大変なことになるわけですね。ですから、そのためにも厚生省とされても非常に重大な関心を持っていただいて、こういうところはこういう手当てをするということをきちっとやっていただきたい。大臣、最後に。
  202. 林義郎

    林国務大臣 玉城議員の御質問にお答え申し上げます。  沖縄は大変離島が多いところでありますし、離島との交通の問題があります。飛行機で行くというような話もありまして、私もかつていろいろと努力をしたこともございます。それは今度は、そこに住む方々医療、健康の問題、緊急態勢のときにどうするかとかいう問題がありますから、私はやはり総合的に考えていかなければならない話だろうと思いますし、沖縄県当局とも十分に連絡をとりながらやってまいりたい、こういうふうに考えておるところであります。
  203. 玉城栄一

    玉城分科員 以上で終わります。
  204. 白川勝彦

    ○白川主査代理 これにて玉城栄一君の質疑は終了いたしました。  次に、鳥居一雄君。
  205. 鳥居一雄

    鳥居分科員 私は、まず地域医療計画につきまして伺ってまいりたいと思います。  地域医療計画は、すでに昭和四十八年以来各都道府県に対しまして非常に厳しい策定の要求を重ねてまいりまして今日に至っております。この地域医療計画の策定というのは、これはもう至極当然のことだと思いますし、そろばん勘定だけで医療というのをやっていた時代から、医療の偏在があってはならない、あるいは医療圏を設定いたしまして、診療所あるいは病院の間の連携を密にとっていくという、小規模な単位から、あるいはがん対策のように都道府県が一体となってこれに対策を講じていく、そういういわば今日的な医療の課題を解決していくべき基本的な青写真という意味で非常に大事な地域医療計画だと思います。これはもう厚生省がそのとおり位置づけていらっしゃるわけです。  ところで、昭和四十八年以来ことしでざっと十年目を迎えたわけでありますが、厚生省の考えのとおり策定をし、その目標に対して医療の充実を図っていく、これが実は四十七都道府県のうちのたったの六カ所、こういう非常にお寒い現状であるわけです。ざっと、北海道、岩手、秋田、福島、島根、広島。人口急増地、いわゆる三大都市圏を初めとする都市部におきまして、医療の不足が大変大きな問題になって久しいわけでありますが、なぜ一体地域医療計画の策定がこんなにまでおくれているのか。これは異常じゃありませんか。たびたびの答弁の中で、なかなか進捗がむずかしい、こういうことが言われてきておりますけれども、これは余りにもひど過ぎるのじゃないか、こう思えてならないのですが、現状についてどういうふうに認識されているのか、まず伺いたいと思います。
  206. 大谷藤郎

    大谷政府委員 地域医療計画につきましては、厚生省といたしましても、先生お話しになりましたように、医療行政の重要な柱として推進してきたところでございます。しかしながら、医療圏をセットする、あるいは話し合いをする、あるいは医療従事者の養成についてその枠内で考えるというふうないろいろな問題は、これは実態といたしまして、やはり関係者間の合意でありますとかいろいろな要素がうまくかみ合いませんとなかなか推進をいたさない。厚生省といたしましては、衛生部長会議初めあらゆる機会を通じましてこれを推進してきたのでありますけれども先生がおっしゃいますように、完全な形といいましょうか、総合的な形でやられているのは六県であるということでございます。しかしながら、救急の問題、僻地の問題あるいはがんの問題、そういった面につきましては、部分的な形でのいわゆる医療圏構想というのはだんだんと固まってきているわけでございまして、私どもとしては、ちょうど氷が張り詰めていくように、そういった形で、それが総合的なものになっていくということがぜひ必要だということでございます。  しかしながら、現状は確かにおくれているということは先生指摘のとおりでございますので、私どもとしても今後の医療資源の効率的な使用でありますとか、あるいは医療の十分な普及というふうな観点から、この地域医療計画を進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  207. 鳥居一雄

    鳥居分科員 要するに、十年たって六道県しか見込みどおり提出が得られていないという現状、これは見込み違いなのか、あるいはまあまあの手順で進んでいると見ているのか、その辺の評価はどうなんですか。
  208. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、確かに総合的な医療圏の設定はおくれているのでございますけれども、いわゆる救急の一次、二次、三次の医療圏の設営、あるいはそれに伴います情報システムの確立といった方面では、これは非常な進み方をしているわけでありまして、もちろんこの救急だけを地域医療のすべてというふうには私ども考えておりませんが、やはりそういった面では非常に進んでいるという点は、これは事実でございます。  また、僻地の問題につきましても、先生も十分御承知かと思いますが、昭和三十年代から第一次の僻地医療計画というのも進めてきたわけでございますが、当時はいわゆる点として、無医地区の診療所をセットする、あるいは巡回船、あるいは巡回診療車というふうなことで進めてきたのでありますけれども、四次の僻地医療計画からはいわゆる医療圏の構想を取り入れまして、これを面として無医地区をカバーしていくというふうな考え方できておりますが、私どもはこれもやはり地域医療計画の一環であるというふうに考えているわけでございます。  また、がんでありますとか、腎臓でありますとか、あるいは小児医療でありますとか、そういったものは、疾患の特殊性ということに着目いたしまして、中央のがんセンターでありますとか、あるいは腎センターでありますとか、そういったものから、ブロック、都道府県というぐあいにこれのシステムをつくっていこう、そういったものも将来全体として地域医療計画、総合的な医療圏のセットに向かっているというふうに思うわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても先生指摘のように総合的な医療圏の設営とその中における話し合いというふうなものにつきましては、これは早急に進めるべき必要があるというふうに考えております。  そういった点で私どもは、国会でも大臣がしばしば言明になっておられますが、医療法改正の中でそういったものも進めていくような考え方でそれの検討も進めているわけでございます。
  209. 鳥居一雄

    鳥居分科員 医務局長の言ういわゆる救急医療、これはもう一部ですよ。あるいは辺地における医療、あるいは腎不全に対する対策、あるいは病床不足地域の解消、つまり医療の需要の予測をし、それに対応できるような医療計画を作成する、これは四十八年当時鳴り物入りで始まった、どうしても必要なものであるということの前提においてこの呼びかけが始まり、やろうとしているわけですね。十年経過して六県ですから、単純計算でいったって八十年たたなければ当初の四十七府県というのはできない。八十年です。ですから、医療法においてこの地域医療計画を明確に位置づける、それから都道府県に対してこれを義務づけをしなければならない、こういう法律の位置づけというのが一刻も急がれることだと思うのです。この国会で間に合うのですか。
  210. 大谷藤郎

    大谷政府委員 ただいま先生が御指摘のような方向で私どもとしては検討いたしておりますが、何分これにつきましては医療機関、医療団体、そういったものともやはり十分な理解というものがありませんと、単に枠組みをセットするだけではこれは進まないというようなわけでございまして、しかし、実態として従来は進めてきたわけでございますが、それがなかなか進まないというふうなこともございます。医療法改正でこれが一つのてことなってそれが進んでいくというふうに私どもは期待をいたしまして、現在検討を続けているようなわけでございます。
  211. 鳥居一雄

    鳥居分科員 今度の医療法の改正では、医療法人の監督、それからいまの地域医療計画の明確な位置づけ、こういうふうに受けとめておりますけれども、間違いありませんか。
  212. 大谷藤郎

    大谷政府委員 従来からも大臣から御答弁になっておりますように、そういった方向で私どもとしてはいま最大の努力を払っているところでございます。
  213. 鳥居一雄

    鳥居分科員 いずれにしてもちょっと論外ですね。十年たちながらいまだに話し合いが詰まらない。もうそろそろこの看板をおろした方がいいのじゃないかと思えるような、そういう地域医療計画、策定計画であるわけです。これは一体どういうことなんですかぬ。それでは法律で明確に義務づけて当初の見込みどおりの成果が上がるというふうに考えられるのでしょうか。これまでの経緯、これからの展望、この辺はひとつ大臣に伺いたいと思います。
  214. 林義郎

    林国務大臣 鳥居議員の御質問にお答え申し上げます。  医療計画というのは、いま医務局長からお話を申し上げましたようなことでありまして、なかなか進んでおらない、こういう御指摘でありますが、私はそれぞれの地域においていろいろな特殊性があるということで、余り一律、画一的な話をしたらこれはなかなか進まないと思うのです。先生の地元の千葉と私の地元の山口県とはやはり大分違うのだろう、こう思いますし、それぞれの地元地元の特殊性を生かしながらやっていくということが必要であろうかとも私は思いますし、いま計画中のものまで入れると二十六府県ぐらいあるでしょう。(鳥居分科員「四十七のうち六。計画は十七でしょう」と呼ぶ)十七ぐらいありますから、これをやるということをはっきり意義づければやはり相当に進んでいく話ではないか。ただ、やるときにむやみやたらに上からぎしっとやって、やれという話でもないのだろうと思います。本当は先ほど申しましたように地域の特殊性その他も考えて、またお互い持っておるところの体制というのは自由診療体制でありますから、余り国家が命令してというような話をやるのもいかがかと思いますから、そういった形でやっていけば漸次展開されるものだろうと思いますし、医療法を出すことによってそれにはずみがついてくるものではないだろうか、私はこういうふうに考えているところであります。
  215. 鳥居一雄

    鳥居分科員 じゃ大臣、三月十一日の閣議は大体最終的だ、こう言われておりますね。この医療法の改正というのはこれに間に合いますか。
  216. 林義郎

    林国務大臣 鳥居議員の御質問にお答え申し上げます。  三月十一日はまだでございますから、いまも鋭意詰めているとしかお答えが申し上げられないのが私どもの立場でございますが、いま御指摘のありましたような地域医療計画それから医療法人の監督の問題等ございます。私は、率直に申しまして、いろいろと医療法人の話を聞いておりますと、単に監督の規定をいじるということだけで果たして足りるのかなという感じもいたしております。実は、土曜日に午後一時から七時ぐらいまで私も一緒になりまして大分議論をしておりまして、大車輪でできるだけ間に合わせたい、こういうことでいまがんばっているところでございます。あとはひとつお察しのほどをお願い申し上げます。
  217. 鳥居一雄

    鳥居分科員 いずれにしても八十年河清を待つに等しいわけです。法律の改正、医療法における明確な地域医療計画の位置づけに期待するしかない現状だろうと思います。  それで具体的に、私はきょう厚生省の特定疾患調査研究の対象になっております腎不全、腎疾患について何点か伺ってまいりたいと思うのです。  現在五十六年末で四万二千人透析患者数があると言われておりますが、潜在的な患者の数を見てみますと、大体全国に五十万人いると言われている、しかも毎年五千人ずつふえる、完治がない、そういう大変厄介な病気であります。ですから対症療法、根治療法両面からこの腎不全対策というのは進められなければならない、そういう性格の病気であります。透析の場合に、一人一年間大体七、八百万というのが医療費で、いわゆる高額医療と言われるものの中に入るわけでありますが、原因の究明という点が非常におくれていること、医療の点数の切り下げによりましてそういう制度の変更によるしわ寄せが現にあらわれている点、それから患者の雇用の非常に厚い壁が目の前に立ちふさがっている点、そういう点で非常に多くの人々に不安があるわけであります。不安な条件が非常に重なり過ぎているというのが現実であります。  まず、病気にかからないための早期発見、検尿の受診ということでありますけれども、受診率を何とか大幅に引き上げることができないか。早期発見によって九五%は救済することができると言われているわけであります。特に四十歳以上の受診率は現在二三%程度、五年をかけて五〇%を目標ということでありますけれども、これは目標が低いのじゃないでしょうか。どういう見通しをお持ちですか。
  218. 三浦大助

    ○三浦政府委員 腎疾患というのは、先生指摘のとおり、早く見つけて早く治療に結びつけるというのが一番基本原則でございますが、いま先生おっしゃいましたのは、今度老人保健法が二月一日から施行になりまして、その実施計画として五年後に受診率を五〇%にまで引き上げる、こういう目標で私どもおるわけでございますが、そのほかにも私どもとしては、乳幼児の健廉診査という機会もございますし、それから婦人の健康づくり対策という中で検尿もやっておりますし、もちろん今度の二月一日からの老人保健法の施行でもいたします。そのほかにも文部省で行っております学校健診あるいは労働省で行っております職場健診、大体全国民に網がかぶさるような組織にはなっております。御指摘のように、これからいかにして受診率を上げていくか、ここに問題があるわけでございまして、受診率を一挙に上げるというのは、いままでの結核検診その他を見ましてもむずかしい問題でございますが、なるべく上げるようにという最善の努力はこれからもいたしてまいりたいと考えております。
  219. 鳥居一雄

    鳥居分科員 根治療法、死体腎あるいは生体腎の移植をすることによりまして完治をするという、具体的にそうした事例も上がっておりますし、これ以外に腎不全を治すということは考えられないわけでありますけれども、現在登録済みの腎の提供者が三万四千人。三万四千人という数字は希望者に対して対応ができる数字としてはきわめて低い、きわめて小さな数字であると言わざるを得ないと思うのですね。これはこの事業の性格として、厚生省が本気にならなければ広報宣伝といいますか、その実は上がらないと私は見ているのですけれども、一例アメリカみたいな場合、自動車のライセンスをとりますと、車のハンドルに命を預けるという意味で慎重に運転しようということとうらはらの問題で、万々が一死亡事故になった場合には腎を提供しましょうという登録証というのですか、これがそのライセンスの裏側に張られるというようなしきたりまで進んでいるわけですね。わが国においての普及というのは非常にむずかしい。どこかの協会がやればいいという問題ではなくて、厚生省は本気になってやらなければこの点の壁を破ることはできないと私は思うのですけれども、現状をどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  220. 大谷藤郎

    大谷政府委員 確かに、登録者の数はまだ少のうございますが、年々ふえてはおります。私どもといたしましては、社団法人腎臓移植普及会に委託をいたしましてPRをやってもらっておりますほかに、政府みずから広報あるいはテレビ等を通じまして努力をいたしております。また、最近では各新聞社等でもこういった問題でいろいろキャンペーンを張っていただいたりしておりまして、だんだん進んできておりますが、確かに先生おっしゃいますように、この問題は本当に腎提供者というのがすそ野が広がりませんと進みませんので、私どもとしてはあらゆる手段を通じましてこの問題に取り組んでいきたいと思っております。
  221. 鳥居一雄

    鳥居分科員 それで、人工透析の問題でありますが、二度の医療費の点数の切り下げをやりましたね。それで二月の切り下げというのが非常にこたえているのです。従来の点数が人工透析に与えられない。切り下げをやった。一七%程度の切り下げだ、こう言いますが、現に夜間の透析を希望する皆さんに対しまして従事者の削減をする、あるいは透析代、手術代を患者負担という形に強いる、あるいは新たな設備投資はしない、こういう形になってしわ寄せが現場に出ているのです。厚生省、そういうきめの細かい対応というのは恐らく承知もしていないだろうと思うけれども、これは患者側にとりましては大変な迷惑な話でありまして、この切り下げ、特に人工透析の場合の切り下げはどんな理由によって切り下げられたのですか。
  222. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えを申し上げます。  五十六年六月とそれから五十八年二月、二遍改正をしたわけでございますが、五十六年の改正は、従来技術とダイアライザーの値段とを一括して決めておりましたものを技術料とダイアライザー等の材料費とを分離したわけでございます。そして材料費については市場価格に従って変動をさせる、こういう方式を新たにとったわけでございます。そこで、五十六年の段階では五十六年の段階におけるダイアライザーの値段を調べましてその価格を設定した。それからだんだん普及をしてまいりまして、五十八年の二月におきましても、またダイアライザーの値段が下がったということで、全体としての医療費、人工透析に関する診療報酬というものはダウンしております。  しかし一方、五十三年と五十六年の末を比較してみますと、人工透析の装置を持っている施設数は千三百四十から千八百二十七にふえておりますし、また人工透析の台数にいたしましても一万四千から二万一千くらいにふえておりますし、患者数にいたしましても二万七千から四万二千くらいに相当な増加をしておるわけでございまして、私どもは、点数を下げたことによって人工透析の普及がとまったとか、あるいはそのスピードを落としたとか、そういうようには考えておりません。  それからまた五十六年の改正に当たりましては、従来患者サイドからの要求がございました夜間透析、それから夜間透析の際の食事の加算等につきましても大体患者さんの御要望の線に従って点数を設定したわけでありまして、現実の問題としてダイアライザーの価格が下がったから全体としては下がっておりますが、人工透析に関する診療報酬というのは患者さんのためになっていないというような評価は私はいたしておりません。
  223. 鳥居一雄

    鳥居分科員 ですから、全体として医療費を抑えなければならないという時代の要請、あるいは当面の目標として、あると思いますよ。しかし、材料費を切り下げなければならなかったり、あるいは手術代は従来病院負担して行われていたものが、患者負担に切りかえをしなければならないような事態に追い込んでいくとすれば、これは問題じゃないですか。実態を一度調べてもらいたいです。  それから、もう一つ大事な問題があるものですから、限られた時間の中なのでちょっと言わせてください。  雇用の機会を何とか、働く意思があり働く能力のある皆さんに対して与えなければならない。そのためにどうしたらいいか。これは、まず夜間透析の道を大幅に開くということが一つ方法です。それからもう一つは、高額医療のために人事部の窓口で拒否されているという現状。事例を挙げれば切りがありませんが、職安の皆さんと一緒に四十カ所も回って、断られる理由というのは全部高額医療だから、こういう理由で組合健保の負担を重くするような採用はできない、これが結論なんです。ですから、健保連において行っておる共同事業、これをもうちょっと拡大して、いま七十五万を超えることの共同事業になっておりますけれども、これをもういっぱい工夫して雇用の道を開くことができないだろうか。この点についてひとつお答えいただきたい。
  224. 吉村仁

    ○吉村政府委員 第一の人工透析の点数のダウンのお話でございますが、これはやはりダイアライザーが市場価格を反映して下がっていけば、私ども下げていかなければしようがないというように思っております。  それから、第二の手術代を取るとか、あるいはその他患者から費用を徴収するというお話でございますが、これにつきましては、もし御指摘があれば私どもは調査をいたします。  それから第三点の、健保組合の共同事業で、金額を下げて人工透析患者医療費が共同事業の対象になるようにすべきではないか、この点については、御指摘十分踏まえまして健保連ともよく相談をいたしまして、できるだけそういう方向で検討をさせていただきたいと思います。
  225. 鳥居一雄

    鳥居分科員 最後に労働省と大臣にひとつ締めくくってもらって、これで終わります。
  226. 藤原正志

    藤原説明員 御説明を申し上げます。  先生お話ございましたとおり、できるだけ働く意思と能力のある方につきましては、結局就職によって独立自活するというのが基本でございますので、おっしゃったようなことで、できるだけ事業主の理解を得て就職のあっせんに努めてまいりたいと思います。
  227. 林義郎

    林国務大臣 鳥居議員の御質問にお答え申し上げます。  鳥居先生よく御承知のとおり、かつては腎になったらもうだめだという話だったのですね。これがいろんな形で、人工透析というような技術が出てきましたし、率直に言って、人工腎臓さらには腎移植というようなかっこうで出てきたのは、私は大変な医学の進歩であるし、人の健康に対しては大変にいい影響を持ってきているものだと思いますし、これからいろいろな方面にわたりましてこのいい成果を発展させていくことが必要なことだと思います。  御指摘のありましたようにいろいろな問題ございますが、私はダイアライザーを実際に見まして、正直実感といたしますと、もう少し何か技術開発はできるのではないだろうか。腎臓というのはソラマメみたいなもので、こんな大きなものを使わなくてももう少し何か技術開発をやったらうまいものができるのじゃないかな、こう思っております。  それから、保険の中で値段を下げたらどうだという話でありますが、見ると相当たくさんのメーカーがやっておるようでありまして、それは競争して値段が下がってくるのは当然のことであるし、値段が下がってきたら、それをもとのままでやっていくというのは体制としておかしいのではないか、こう思うのです。そういった形でありますし、それから患者の雇用の問題も、健康保険組合云々という話がありましたが、私は、そういうことのないようないろいろな仕組みはこれからも考えていかなければならないと思います。  最後に腎の移植の話でございまして、先生、アメリカでこうやっていると御指摘になりました。確かにそれも一つ考え方だと私は思いますが、日本とアメリカとちょっと違うのは、人の死に対する考え方が違うわけでありまして、ここはやはりなかなかむずかしい問題である。本当に日本人みんなが割り切ってやるということになるかどうか。そういったいろいろなことを考えていかなければならない問題があると思います。といって、私はその方向を否定するものでありませんし、そういったことに行かなければならないと思いますが、一般の社会通念、社会常識というものも十分踏まえながらやっていかなければならないものだろう、こういうふうに考えていることを率直に申し上げまして御答弁にさせていただきます。
  228. 鳥居一雄

    鳥居分科員 終わります。
  229. 白川勝彦

    ○白川主査代理 これにて鳥居一雄君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  230. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 まず大臣に伺っておきたいと思うのですが、国際障害者年に当たって、政府としてこれだけのことはやっていると胸を張って言える施策は一体何なのか。特に五十八年度、国際障害者年にふさわしい施策として何を打ち出しているのか。これは特に大臣にお答えいただきたいのです。
  231. 林義郎

    林国務大臣 瀬崎議員にお答え申し上げます。  私たちの方はいろいろな施策を身体障害者についてはやっております。五十七年三月二十三日に推進本部で長期計画というのを立てたところでございますが、私たちが特に考えていかなければならないのはやはり在宅対策だろうというふうに考えているわけでございます。もちろん在宅以外のところを無視してよろしいなどということではありませんが、特にこれから考えていかなければならないのは、家庭におる方の問題をどう考えていくかというのがいまのわれわれの立場でございます。
  232. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 障害者の皆さんは非常に大きな期待を持ってこの国際障害者年を迎えられたんですが、それに対して大臣にお答えを求めたところ、わずかに在宅対策に力を入れようと思っている、長期計画が出された、この程度なんですね。これは現在の自民党政府がいかに障害者対策に対して関心が薄いか。特に中曽根内閣に至っては、防衛問題には異常な熱心さと執着を示すけれども、国際障害者年のことなんか念頭にないような感すら受けるわけですね。  そこで、きょうはそういう大きな論争をしようとは私は思っていないんですが、いま大臣が口にされた在宅障害者対策で、せっかく現在ある制度が十分生かされるような努力がなされているかどうか、この点にしぼって質問を進めたいと思うのです。  厚生省は、五十五年の七月に「心身障害児(者)施設地域療育事業の実施について」という局長通達を出して、従来の心身障害児者施設を入所児者だけではなく、広く地域に居住している在宅障害児者にも活用できるようにと、いわゆる施設のオープン化事業の実施に踏み切ったわけですね。その中の一つの事業であります在宅重度心身障害児(者)緊急保護事業について、その現況、特にこの三年間の利用状況の推移、それからこの制度の対象となる保護児者の総数等について伺いたいと思います。
  233. 正木馨

    ○正木政府委員 心身障害児(者)施設地域療育事業でございますが、先生おっしゃいましたように、昭和五十五年からメニュー事業ということで、いわゆる施設のオープン化事業を図ってまいりました。特に、御指摘のございました緊急保護事業は五十一年度から実施をしておりますが、五十五年度から地域療育事業ということの四事業の一つに総合いたしたわけでございます。  どういう状況かというお話でございますが、実績の件数で申しますと、昭和五十一年度は三百四十六件でございました。それが五十五年度には、総合しました時点で千五百八十七件、昭和五十六年度は千五百九十九件、昭和五十七年度は現在まだ完全に集計が終わっておりませんが二千四百九十七件、見込みでございます。
  234. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いま、もう一つお尋ねしましたね。この制度の対象となる障害児者は大体どのくらいの数になるんでしょうか。
  235. 正木馨

    ○正木政府委員 失礼いたしました。  これは在宅の重度心身障害児の方々対象にするわけでございますが、対象となる精神薄弱者あるいは身体障害者の数につきましては、若干古いんでございますが、昭和四十六年の数字で申しますと、重度精薄児者の数は約八万二千人と言われております。それから重度身体障害児は約三万一千人、それから重度身体障害者、大人の方でございますが、この方々は六十四万八千人程度という数字でございます。
  236. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 重ねて伺いますが、いまおっしゃった総数はざっと八十万近くなるのですか、これがいわゆる対象障害児者数、そう考えていいわけですか。
  237. 正木馨

    ○正木政府委員 重度の精神薄弱者、身体障害者ということになりますと、大体そういった数字じゃないかというふうに思っております。
  238. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 滋賀県が対象障害者数大体八千人、こう言っておりますから、いま局長の答えられた数字が大体全国的な対象数ではないかと私も思います。  だから大臣、そういうものと比べますと、現在年間で約千六百件から二千件、そういう状況なんですね。これは余りにもこの制度の活用が少な過ぎるとはお思いになりませんか。これは大臣に伺ってみたいと思います。
  239. 正木馨

    ○正木政府委員 先生御案内のことだと思いますが、この緊急保護事業といいますのは、先ほど申しました施設オープン化事業の一つであるわけでございますが、重度の障害者を抱えておる御家族の方が、あるいは病気であるとか出産であるとかで、なかなかめんどうを見切れない事情に遭った緊急の場合に、施設の方で短期的に受け入れるという事業を内容としておるものでございます。
  240. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 もちろんそういう制度の内容は十分承知をいたしておりますが、今日重度の障害児者を抱えていらしゃる親御さんたちあるいは家族にしてみれば、施設に預かってもらっている場合にしろ在宅の場合にしろ、もし自分たちが病気になったときどうなるだろうか、あるいは年がいって働けなくなったときに一体どうなるのだろうか、あるいはのっぴきならぬ用事に見舞われたときにどうなるのだろうか、こういう御心配を持っていらっしゃるわけです。最近では、大臣が当初言われましたように、いわゆる在宅の保護という傾向に力を入れられておるのも事実ですから、そういう場合はなおさらのこと、めんどうを見ている保護者の方が急病にでもなったときの心配というものは、本当に並み並みならぬものがあるわけです。私もこういう心身障害児者を抱えていらっしゃる父母の方々家族方々と非常に接触が深い関係から、その悩みあるいは要望を毎年必ずこの分科会質問をしているわけなのです。  問題は、そもそもこの事業を活用するための前提であります事前登録ですね、これは滋賀県でも大変少ないわけなのです。せっかく地域へのオープン化とは言いながら、現状を見て決してオープン化されたとは言えないような低い利用状況なのですが、そもそも事前登録が余りなされない、非常に少ない、こういう原因がどこから来ているとお考えなのでしょうか。
  241. 正木馨

    ○正木政府委員 この事業が始まりましてまだ日が浅いという点が一つあろうかと思います。私どもできるだけ周知徹底に努めておるわけでございますが、まだ必ずしも、先生おっしゃいますように、十分周知徹底が図られているかといいますと、反省しなければならぬ点があると思います。  この登録につきましては、県内の施設の位置、一体どこにどういった施設があるのか、そして施設の収容状況はどうであるのかというものを県の方が把握いたしまして、緊急の事態に円滑な利用が図られるようにということであらかじめ登録を願っておるわけでございます。もちろん登録をいたしてなければ緊急の事態に遭った場合に施設を利用できないというものではございませんが、円滑な運用ができるようにということで登録制度を設けておるわけでございまして、今後とも、せっかく制度をつくっても魂入れずということではいけないので、この周知徹底には万全を期していきたいというふうに思っております。
  242. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 これは、本来ならこういう制度によって救済されたであろう人の実例なのですが、滋賀県大津市の坂本本町にいらっしゃる山岸みゆきさんという方、五十六歳なのですが、重い肢体不自由で全面介護が必要な人であります。自力では食事、洗濯、掃除、トイレ等に行けない方なんですね。夫が建築の手伝いをされて、夫のいらっしゃる間は御主人がずっとめんどうを見られておる。昼間は山岸みゆきさんは共同作業所へ福祉バスで送り迎えを受けて出ていらしゃる。そういう状況だったのですが、昨年末近く、十月だったのですが、御主人が屋根から落ちて重傷を負われたために、御主人そのものも入院しなくてはならなくなったわけですね。そのために、みゆきさんを、ヘルパーの方とかそれから共同作業所の仲間あるいは親戚が交代で、食事、洗濯、お掃除のお世話をするというような状況で切り抜けられた。年末ぎりぎりになって御主人は退院をされてこられたのですが、松葉づえで立つのがやっと、自分の生活行動が精いっぱいというような状況でした。特に困られたのは、年末になりますとヘルパーの方もお休みになる。それから親戚も忙しいということで手が回らない。結局、同じような重度の障害者を持つ親が交代で世話をしてどうにか切り抜けた、こういうようなことになったわけですね。  せっかく在宅重度心身障害者緊急保護事業がありながら、これが知らされていなかったために、いわゆる事前登録がされていなかったわけですね、これは。こういう点は非常に残念なケースなんですね。  それから、受け入れるいわゆる実施施設が非常に限られる。重度心身障害者施設ということになると、滋賀県の場合は第一びわこと第二びわこ学園の二つしかないのですね。あと、精神薄弱児者施設とか肢体不自由児施設等を加えますと全部で十施設が指定または登録施設になっているのですが、こういう点でなかなか地域的に利用しにくいという面も生まれてくる。  それから、年未年始にぶつかってきますと、施設の方もいろいろ職員の休暇の関係その他で閉鎖あるいは閉鎖に近い状態になる。もちろん年末年始あるいはお盆等には親元に障害者をお帰しするのも一つのいいことなんですが、それのできない障害者は、職員が自宅へ連れて帰ってめんどうを見るというふうなことにもなっているわけですね。  やはりこういう実情をまず厚生省が知っているのかどうか。その実情を知らないでは、仏つくって魂を入れようにも魂の入れようがなくなると思うのです。こういうような実情について厚生省、よく調査していらっしゃるのでしょうか。
  243. 正木馨

    ○正木政府委員 在宅重度心身障害児者の緊急保護事業の実績いかんということで先ほどお答え申し上げましたが、全国で申しますと、五十七年度見込みで二千四百九十七件と申しましたが、滋賀県の例をとらしていただきますと、滋賀県の場合には四十二件でございます。人口十万に対比しまして、全国で二・一二人、滋賀県で三・八三人、一件当たりの利用日数にしまして、全国は八・〇三日、滋賀県の場合は六・九八日という数字が出ております。  確かに先生おっしゃいますように、個々のケースで、十分周知の徹底を欠いておったためにせっかくの制度が利用できなかったということを私ども時折耳にしまして、残念でありますし、せっかくつくりましたこういう在宅障害者の制度でございますので、先日の課長会議等でも、できるだけこの制度の利用促進ということを指示をいたしたわけでございます。  いずれにしましても、この制度の運用に当たりましては、管内の施設が一体どういう状況にあるのか、そうしてどういった障害者を受け入れられる施設なのか、それから登録対象者の状況はどうであるのかというものを的確につかみまして、円滑な運用ができるようにということはこれからも大いに心を入れていかなければならないというふうに思っております。
  244. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いま言われたことはいずれも重要なことですから、ぜひこれから積極的にやってもらいたいと思うのです。  なお、もう一つ非常に教訓的なことがあるのです。滋賀県で言いますと特にびわこ学園で非常に実績が高いわけなんですね。第一びわこ学園の場合どうなっているかといいますと、滋賀県と特別な契約が結ばれておりまして、常時一ベッドは緊急保護用にとってあるわけなんです。したがって、その経費の半額は年間を通じて県が支給をしているわけなんですね。緊急保護が実際にあった場合には、その日数だけ残り半額を支給するというふうにしているわけです。そういうわけですから、結局常に緊急保護用のベッドと、いざというときには直ちに対応できるような介護の体制もある程度用意がしておける、こういうことがあるわけですね。そういうわけですから、他の施設においても、まずは可能なところで緊急保護用の一ベッドは常時確保しておく、こういうことから始めるべきではないかというふうに私は思うわけなんです。  大体、こうした心身障害児者の施設、特に重度の場合の施設は、最近では成人施設化してきておりますから、滋賀県は多いのですがほとんどいっぱいですし、その上高齢化しているので介護率も高まってくるわけです。ですから、普通の状態で置いておきますと、緊急保護事業の余裕を常に持つということがなかなかできにくいわけですね。そういう意味で、滋賀県と第一びわこ学園との間で行われているようなこういう制度は、十分厚生省においても吟味してみる必要のあることではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  245. 正木馨

    ○正木政府委員 先生お話のございました滋賀県で申しますと、やはり第一びわこ学園、第二びわこ学園というのが緊急保護事業についても利用度が高いようでございます。それはやはり、この事業の性格からして重度の方々、特に重度の中でも重度の程度の高い方々の利用が多いということも一つあると思います。  ただ、いまのあらかじめベッドの確保という点につきましては、びわこ学園は重度の心身障害児施設であるわけでございますが、重度の心身障害児の施設の設置状況というのを見てまいりますと、現在重度心身障害児施設が四十九施設ございます。それから国立療養所の重心委託病床が八十カ所、施設にしまして約百二十九、ベッドにいたしまして合計いたしますと約一万四千ぐらいということで、十年前に比較いたしますと三倍近い伸びを示しております。しかし、重度心身障害児者の対象者から言いまして必ずしもまだ十全とは言えない状況にある。やはり本来的な方々に、本来的といいますか入所を必要とする方々の施設整備というものを一方で図っていく、と同時に、短期の要望にこたえましては、先ほど来申しますように、実施機関があらかじめ——施設にはもちろん回転があるわけでございますから、回転の状況がどうなっておるのか、余裕はどうなっておるのか、あるいは対象者のニードは一体どうなのかというものを、適時適切に把握することによりまして措置をとることによって、措置が図られるのではないかというふうに考えております。     〔白川主査代理退席、主査着席〕
  246. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 確かにそういう施設の状況、つまり利用状況をよく把握されることも大事だと思いますけれども、しかし、先ほど来言われているように、滋賀県の場合ですと、重症心身障害児施設というのは第一びわこと第二びわこしかないわけですから、いろいろやりくりしようといったってしようがないというのが現状ですね。ですからそういう面では、いま言いました最低受け入れ可能な施設において一ベッドを緊急保護用に確保しておいてもらう。これは私はそう大きな経費を食わないでなかなか有効なことではないかと思うのですね。よく一遍滋賀県のやっている実情等を調べていただきたいと思うのですよ。  それと、緊急保護事業を活用する上では、特に滋賀県ですと、滋賀県社会福祉計画というものを、これは各県でもつくっているわけでしょうが、その中で県内を七つの福祉圏域に分けて、その地域福祉を充実するということにしているのですが、この七つのブロックごとに重度心身障害児者施設を一つ以上置けるようにする、ここに一ベッドを配置する、こういうことができれば、PRの面でも身近なところにあるというので自然行き届くし、またいざというときには比較的気軽に頼める、こういうことにもなるんじゃないかと思うのですね。そういう点で、ある程度こういう福祉圏域というようなものを設けて、そこにこの制度を生かせる施設を常に持っておく、そこにベッドを常に確保しておく、こういうようなことも検討課題ではないか、こういうふうに思うのですね。  それから、びわこ学園の場合はそもそも事前登録されている障害児者数が非常に多いわけです。第一の場合で百四十人、第二では四十人の登録があるわけなんです。これは結局、外来診療をびわこ学園はやっている関係上、そこでいろいろと制度も知らせる、またいろいろと障害者の実情も学園側がよく把握して、事前に登録さして、いざというときにはいつでも来てもらえるようにという体制をとるというわけなんですが、こういうこともこの制度活用の上においては大いに参考にすべき問題ではないかと思うのですね。  こういうような点について、厚生省として今後どう考えていかれるのか、伺っておきたいと思います。
  247. 正木馨

    ○正木政府委員 びわこ学園につきましては、昨年もたしか先生予算委員会での御質問にあったと思いますが、びわこ学園の岡崎園長が将来構想というものを立てられまして、一々は申し上げませんが、四つの柱を述べておられます。できるだけ施設と地域とのつながりを深めていく、あるいは施設の処遇によって、できるだけ社会復帰というものを念頭に置きながら、措置変更であるとか家庭復帰というものを促進していくとか、いろいろな考え方を出されております。そういった中で、この緊急保護事業というものも、こういった将来構想は、国の考えておる施策とも合致をした非常に意義あるものだというふうに思っております。  また、滋賀県におきましてもいろいろな福祉計画というものを立てられておりますが、いずれにしましても、こういう地域療育事業というものが始まって新しいわけでございますが、これから一工夫も二工夫もしながら検討を進めていかなければならないというふうに私どもは考えております。
  248. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 最後に大臣に伺っておきますが、この在宅重度心身障害児者緊急保護事業というのはいい制度なんですね。しかも、保護者の側からしてみれば期待の強い制度でもあるわけなんです。しかしそのわりに利用度が低い、こういうアンバランスな状況にあるわけですね。矛盾した状況にあるわけなんです。ですから、せめて国際障害者年に当たって、現在ある制度が十分活用されるように、この努力は最小限厚生大臣としても進めてもらいたいわけです。そのためには、いろいろと制度の活用のために工夫努力している先進的な自治体であるとか施設、こういうところを実際によく調査もしていただき、あるいは直接仕事に携わっている人々の生の意見を聞いてもらう、こういうところから今後の充実、改善策を打ち出していただく、これが原点ではないかと思うのです。特に大任のお考えを伺って、終わりたいと思います。
  249. 林義郎

    林国務大臣 瀬崎議員の御質問にお答えを申し上げます。  国際障害者年の成果を踏まえまして、政府としても障害者対策に関する長期計画を策定してやってきていましたし、これも先ほどお話をしたとおりでありますし、在宅をと、こういうふうなことを私が申し上げましたのは、いまお話のありましたようなことを念頭に置きましていろいろとやっていかなければならないであろう。もう一つ申し上げますならば、制度が始まってまだ余り日がたっていないということもございますし、そのことによってまだよく周知徹底が図られてないというようなこともあるんだろうと率直に私は思います。  特に先生からお話のありましたびわこ学園の問題は、言うならばこの施設の関係の中では先駆的な役割りを果たしておられるということも承知をいたしておりますし、そういったことを踏まえまして、これから諸施策も進めていかなければならないと思っております。  私はよくいろんなところへ行ってお話を申し上げておるのでありますが、特に福祉の問題、これは身体障害児者対策だけではない、ほかの一般のいろんな対策につきまして、本当に必要なのは、現場の中でどういうふうなことをやったらよろしいかという要望が出てくることが一番必要であるし、その中で、こういうふうなことをしたならば非常にうまくいくんではないかというアイデアはいろいろあるんだろうと思うのです。だから、そういったアイデアを十分出していただいて、やはり中央の方でそれを具体化していく、またそれをこういうふうな形で発展さしていくというようなことを常にやっていかなければならない。社会の状況がいろいろ変わつてくるわけでありますから、それに即応した福祉体制というものをつくっていただきたい。アイデア募集と申したらちょっと語弊があるかもしれませんけれども、そういった実務に即した対策というものをぜひこれからも進めていかなければならない。私はいまのお話を聞いておりまして、大変結構な話であると思いますし、いろんな点でこれから話をさらに展開させていかなければならないように考えております。
  250. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いまの大臣の御答弁が前向きだから申し上げるのですが、大臣も言われている先進的なびわこ学園にぜひ行かれまして、みずから直接視察もされ、また携わっていらっしゃる方々から意見を聞かれるのが福祉行政の前進のために必要だと思うのですが、いかがでしょう。
  251. 林義郎

    林国務大臣 いますぐにというわけにもまいりませんが、機会がありましたらぜひ私も一遍お伺いさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  252. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 終わります。
  253. 上村千一郎

    上村主査 これにて瀬崎博義君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  254. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 このたびの予算で厚生年金国民年金、福祉年金年金受給者の人たちが、人勧と横並びという趣旨でありましょうか、前年度並みに抑えられておるということがありまして、私は非常にショッキングに思っているのです。  そこで、年金受給者がどのくらいおられるものか、そして抑えたことによってそれぞれの年金で金がどれだけ浮いたものか、それを教えていただきたいと思います。
  255. 朝本信明

    ○朝本政府委員 年金受給者でございますが、最も新しい昨年九月末の数字でお答えを申し上げますと、すべての年金を合わせて、厚生年金保険が五百四十二万五千人でございます。それから、国民年金拠出年金が七百四万一千人でございます。それから、福祉年金が三百三十五万五千人でございます。以上合計いたしまして千五百八十二万一千人でございます。
  256. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 人数はわかりましたが、昨年と同じように抑えたことによりまして、それぞれどのくらいずつ金を浮かしたわけでしょうか。その浮かした額と合計です。
  257. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 五十八年度物価スライドを見送りますことによる増額を必要としない金額でございます。浮かしたということではございません。五十七年度と同じ時期に実施をするということで、厚生年金七月、国民年金八月、福祉年金九月ということで計算をいたしてみますと、国庫負担ベースで約三百二十億ございます。(岡田(正)分科員「全部で」と呼ぶ)はい。厚生省関係の関連諸手当を含めまして合計約三百二十億でございまして、それを平年度化いたしますと、トータルで約七百五十億でございます。  これは国庫負担ベースでございまして、給付費のベースで計算をしてみますと、前年の実施時期と同じにいたしまして、トータルで約千百七十億でございます。これを平年度ベースにいたしますと二千二百六十億でございます。
  258. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 各年金ごとのを教えてください。
  259. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 五十七年度実施と同様の月でよろしゅうございますか。
  260. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 はい。
  261. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 厚生年金国庫負担ベース八十四億でございます。給付費ですと約七百億になります。それから船員保険、これは独特の年金を持っておりますので、これの国庫負担ベースが約四億、給付費で二十億程度でございます。  それから拠出制国民年金でございますが、国庫負担約百三十三億ということでございます。給付費で約三百五十億でございます。それから福祉年金でございますが、国庫負担約六十六億、これは全額国庫負担でございます。それから関連諸手当がございます。原爆の手当でありますとか児童扶養手当等でございますが、これが国庫負担所要額約三十一億ということでございます。
  262. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 いまの、人数と物価スライドを見送ったことによって幾ら節約されたかという金額はわかりましたが、この五十八年度も、政府は、見通しといたしまして消費者物価が三・四%くらい上がるだろう、こういうことをおっしゃっておりますね。そういうことから考えますと、これが上がらぬということは、物価上昇分だけ生活費をそれだけダウンしなさいということを政府が言っているのと同じじゃないかというふうに私は思うのです。  特に年金は種類がたくさんありますから、ごっちゃになっちゃいけませんので、わかりやすい厚生年金を例にとってみますと、厚生年金関係は三十年間積みなさいよ、そのかわりそれを積んだら、あなたは六十歳から後厚生年金を差し上げますから飢えて死ぬというようなことはありません、一応人間並みの生活はできますよという、いわゆる最低生活を保障できる仕組みにしてあるのが厚生年金の制度であると思うのです。そこでみんなそれに価値を認めて、営々として三十年間積み上げてきておるんですね。それでいただくときには、二割の国庫負担があることは承知の上でありますけれども、しかし厚生年金の例をとってみますと、三十年かかってためたものが今度は六十歳からもらう、公務員の人は五十五歳からですけれども、官民の格差は別問題といたしまして、六十歳からもらうということになって果たしてそれでは全額もらえるのかということになると、三十年の夫婦のモデル年金でも東京都の生活保護より低いでしょう、いわゆる夫婦の六十歳。いかがですか、資料はありますか。この五十八年度の変更する予算ベースで言ってもらわなければいかぬよ。
  263. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 生活保護の基準で申し上げますと、五十八年度四月から予定されておりますのは、お年寄りの場合で、これは何歳でとるかちょっと問題がございますが、仮に夫婦七十歳以上というところでとりますと、老齢加算まで含めまして十一万七千二百三十円でございます。それから六十歳代ですと、六十九歳まででございますが、これですと八万八千三十円でございます。それで、厚生年金のモデル年金、五十五年改正で平均加入期間約三十年でございます夫婦でもらえる年金額が約十三万六千円でございまして、昨年五十七年度までのスライドを考慮いたしますと、約十五万円になろうかと思います。  そういう意味で、厚生年金のモデル年金は、生活保護との対比におきましては現在では全くおっしゃるような意味の問題はない、かように考えております。
  264. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 よくわかりました。  そこで、おっしゃるような問題は全くないと言われるけれども、実際には月額でも、いま発表されたのを見ましても、厚生年金をいただく人で一〇〇%受給できるのは七十歳に至るわけですね。それまでの間は嫁ぎがありまして、ほかから稼いできていますと、公務員の皆さんとは事違いまして、一般国民の方は稼いだ分だけ差っ引かれてしまうという制度になっているわけですよ。だから、まるまる計算どおりいただくというのは七十歳なんです。やれやれ計算どおりもらえるようになったと思ったら、四年たったらぽっくりと死ぬ、こういうことになっておるのですね。官民格差のことを言っちゃ皆さん方に嫌みになるからこれ以上言いませんけれども、しかし一般国民からすれば、何とまあひどい格差をつけたもんだなという感じがするのですよ。  それで、いまいただく分の三十年間入って夫婦で十三万六千円という分から考えてみましても、七十歳という一〇〇%もらえる年代から言えば十一万七千円でしょう。そうなりますと、その差というものは二万円しかないわけでしょう。生活保護というのはまるまる国費ですね。八〇%が国、一〇%が県、一〇%が市町村、こういう仕組みになっておりますが、いずれにしても公費でございますね。本人の掛金があるわけじゃございませんね。そういう点から考えても、何とも割り切れぬ低い金額だなということをみんな実は腹の中で思っているんですよ。いまでも高過ぎるなとはだれも思っていない。しかも六十になりまして会社をおやめになりまして、それから子供がまだ大学院に行っているのだ、末娘がこれから結婚しなければならぬのだという事情のある方は、あるいは健康のことを考えたら多少でも働かなければいかぬということになる、働いたら働いただけ差っ引かれてしまう、こういう矛盾がありまして、むなしいな、結局何もせずにもらった方がいいなということになってしまうのですね。だから中にはよく誤解をされて、福祉というのは惰民を生むのだということを短絡して言う方がいらっしゃいますけれども、私は決してそう思っておりませんが、現実にそういう矛盾を生んでおるのですよ。  それで労働省で調べてみますと、それじゃ六十になってから働く場所があるのかといいますと、働く場所は大臣、実際にはないですよ。それで労働省で聞きましても、高年齢者の就職率を六%まで上げようという目標を立てて一生懸命やっておる。いま一生懸命やっているのですけれども、とてもとても六%どころじゃない、半分にもいきません、そういう状態です。それで労働省も本当に投げているという感じですよ。そうすると、働けと言ったって、自立自助だ、こういうことをよく言われるが、自立自助だと言っても、働く場所もないのに、それならどうやって生活するのだ、厚生年金が頼りですよ。そうすると、六十を超して厚生年金をもらおうかという人がいまから家を建てるでしょうかね。いまからピアノを買うでしょうか。いまから自動車を買うでしょうかね。恐らくそれは一%もないと思いますね。ほとんどの人がそういうことはあきらめている。静かに余生を送ろうということだけで、もう本当に食べるだけのいわゆる生活じゃないかと思っております。そうなりますと、食べるのにいまの十三万六千円ですかを使っているわけでしょう。そうすると、それが据え置きになりまして、物価上昇率だけそれだけ生活をダウンさせなければいかぬ。露骨な言葉で言ったら、食う物を減らさなければいかぬということを今年度の予算はあげてあるのですよ。それで、三十年も掛けたのに一体何ということだという気持ち、厚生年金を掛けていらっしゃいます約五百五十万ですかの人たちには、もう物すごい不平と不満があることは間違いありません。  それで、掛金を掛けておる厚生年金の受給者に対してこんなひどいことをどうしてしなければいかぬのか、こんなことを厚生大臣は唯々諾々と、さようですか、財政が苦しいのならやむを得ぬですわと言って、二の返事でこれを承諾なさったのか。恐らく林先生、そんなことはなされるはずはないと思うのですが、どうでしたか、そのときの様子は。
  265. 林義郎

    林国務大臣 岡田議員の御質問にお答え申し上げますが、今回の措置は私の方も大変に心配をしておったところでありまして、最後の大臣折衝までこの問題は持ち上げて議論をしたわけであります。大変厳しい財政事情であるけれども、いまお話しのように年金生活者というのは総体的には苦しい立場に置かれていますから、そこは何とか配慮しなければならないのではないかという気持ちも、特に担当者の私としては強く主張してきたところでありますし、そういった形でやりたんですが、人事院勧告を凍結するなどということはこれまだ異例中の異例の話である。本当ならば人事院勧告というのは尊重してやるのがたてまえであるにもかかわらず、異例中の話のことをやるのであるという話でありますし、それから恩給、共済年金の改善も見送ろう、こういうふうな話になりますと、それは確かに恩給よりはこららの方が低いという話もありますが、やはりそこはことしはがまんをしていただくということを考えなくちゃいかぬ。それからもう一つ申しますと、最近の物価の動向というのは比較的安定傾向にありますから、これはどうもしようがないなということで決着を見たところでございます。  先ほど先生からちょっとお話がございましたのですが、生活保護世帯との御比較がございました。生活保護世帯というのは、実はそれだけ財産を持っている人は財産をみんな出さなくちゃいかぬ。こちらの方は収入でありますから、一方はストックの概念であり、こちらはフローの概念でありますから、ちょっとこれは、すぐに比較してどうだこうだと言われると私の方も非常に困るわけでありますから、その点は先生もう百も御承知の話でありまして、蛇足かもしれませんが私から申し上げておきたいと思います。  もう一つ申し上げますならば、消費者物価上昇率が五%以上になったならばやはり物価スライドをしていかなければならない、こういうふうなことが法律の中にはっきりうたってあるわけでありますから、ことしはその以下でありますから法律の違反にはならないだろう、法律違反になるようなことをしたら、これは法律を執行する行政府の立場としては当然に責められるべき話になるだろう、こう思いますので、その辺を考えながらことしだけは見送り、こういうことにしたことを御理解いただきたいと思います。
  266. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 そこで、いま当局の方から発表になりました厚生年金三十年加入者の夫婦モデル年金、これが十三方六千円という数字、それから国民年金はいま言わなかったんですね。生活保護の十一万七千二百三十円というのを言われましたが、新聞で国民に、新聞は政府が発表したのでありませんから責任問題を云々するんじゃないんですが、だけれども、新聞にでかでかとどの新聞にもぴしゃっと載っておる同じ数字というものは、厚生年金加入三十年夫婦で、五十八年度は五十七年度の据え置きとなりまして月十五万八百十七円と発表してありますね。いまあなたのおっしゃるのとは大分差がありますな。それから国民年金はいま発表せぬかったもんだからいいんですけれども、加入二十五年夫婦でそれも据え置きで十万四千二百五十円、こういうふうになっておる。これは新聞はうそを書いておるわけですか。
  267. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 先ほど申し上げましたように、五十五年価額が十三万六千円でございます。そのときに、五十七年までのスライドされた金額が約十五万円であると先ほど申し上げておりますので、新聞に出ております十五万八百十七円とい  のは私の申しました約十五万円ということを書いているわけでございまして、現在の価額は先ほどお答え申しておりますので……
  268. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 それを正確に言ってください。五十七年七月か八月に改定になっておるんでしょう。もう時は過ぎているよ。
  269. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 五十七年度の物価スライドによりまして、五十七年の八月分からはモデル年金が十五万八百十七円ということになっております。
  270. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 わかりました。  そこで大臣、これは質疑でどうこうという意味じゃありませんで、当局の人とも打ち合わせましてあれした数字ですから大臣御存じだと思いますが、いまお手元に出しましたのは広島県のある一郵便局が出した半ぺらのものなんですよ。どういうことが書いてあるかというと、実にショッキングでありまして、あなたも毎日百円の貯金で一億円ためられる、こう書いてあるのです。もうよだれの出るような話ですね。(発言する者あり)本当ですよ、先生。これは郵便局が出しておるものです。電話番号まで書いてあるのですよ。「一日百円ずつ毎月三千円の貯金を欠かさずに続けなさい。それを年七パーセントの複利に預けると七十六年十一カ月目に一億円を突破します。」この一億円は一体元金と利子はどういう割合になるか。これがまたショッキングですね。一億円の中の九千八百万円が利子でございます。九八%が利子。元金は二百七十七万円にすぎません。だから、少ない投資でがっぽりいこう、こういうなかなか当を心得た宣伝なんですよ。郵便局にしては気のきいたことをやるなと思って私も感心しているのですが、これを見まして私は、政府関係者の方に、一遍めんどうだろうが計算してみてくれぬかと言って、計算してもらったのが横広のものでして、左の方に書いてありますように、国民年金が五千八百何ぼでしょうか、そういう現在掛けておる掛金で年利七%で複利で運用したらどのくらいになるかなというのでやってみますと、国民年金が月約六千円払っていらっしゃる、それを物価が全然上がらぬといたしまして平行線をたどったとして、二十五年間こつこつと積み立てていきましたならば二十五年後には四百七十二万円になるんですね。そして、その下の筋をごらんいただきたいと思いますが、国民年金は大体月に五万円いただける、それで平均寿命から言いましていただける年数は十年間と考えますと、給付総額は全部で十年間で六百万円払うことになる。そのうち国費の負担がありますから、その国費の負担を除くと実際には保険料で賄っておるのは四百万円、こういうことになりますから、元利合計で四百七十二万円積み立てたもののうち四百万円を受け取る、こうなるわけです。これは物価が上がらぬ場合の話ですよ。それで厚生年金の場合、大体ほぼ一割労使で折半いたしまして掛けておりますので、平均二十万円の給料の人と考えまして、これはずっと低い方でございますけれども、二万円で計算をいたしますと、月々二万円ずつ三十年こつこつと保険料を払っていきまして、三十年たってみてふたをあけたら二千三百五十三万円たまっておるのです。それで、その下の欄をごらんいただきますとおわかりのように、先ほどのいわゆるモデル年金十五万円ということで十五年間平均寿命がある、六十歳から受けまして七十五歳まで生きておられるというので給付総額が二千七百万。国庫負担をのけたいわゆる保険料で払う金が二千百六十万。二千三百五十三万円払って、いただく金は二千百六十万。何かひどく損したような感じになるんでありますが、実際は物価が上がっていきますからそういう計算にはいきません。そういう計算にはいきませんけれども、しかし、庶民の気持ちからすると、こんなに保険料を払っておって四十兆からの金があるのに、四十兆からの年金積立金がうんうん言ってうなっておるのに、それを大蔵省に預けっぱなしにしておいて、そして有利な運用なんということを考えずに、厚生省が手放しで、いや、間もなく保険料は上がります、もうやりきれぬから受給額は抑えますなんということをしきりに警鐘乱打される。厚生年金の掛金を納めている者は本当にやりきれない。もう気分が悪い。だから別個に、厚生年金を掛けておる者が別個の集団をつくって厚生年金を運営していったらどんなものだろうか、こんなような乱暴な声さえ出るのであります。  私は、もう時間がなくなったそうでありますから厚生大臣に最後にお尋ねをしたいのでありますが、とにかく四十兆円のいまの年金積立金、これを大蔵省の資金運用部資金で自由にさせておるということは、これはもう私どもは腹が立ってならぬ。だから大蔵省が大きな顔をするんです、銭っこを持っておるから。もうさじかげんで、資金運用部資金でだっだ、だっだとあっちこっちにばらまくわけですからね。それで、いただく利子が一体何ぼになるか。これは厚生省でもぎ取って、厚生省で自主運用してもらうことの方が被保険者にとっても有利な方法ではないのかと私は思っておるのでありますが、この間ちょっと新聞に見解を発表されておりましたが、大臣の力強い決意を表明してもらいたいのです。
  271. 林義郎

    林国務大臣 いま先生お話がありました中で、ためてて、掛けてて、もうからぬじゃないか、こういうお話でありますが、これはいろいろな点で、御指摘もありましたインフレの問題であるとかいうような問題がありますと相当減価してくるということであるとか、あるいは受給期間をどういうふうにとるか、あるいは最後の年金をもらうときは平均余命なのか、六十歳くらいになった人がこれから何ぼ生きるかというのは平均余命で終わるわけじゃないので、六十歳くらいの人があとどのくらい平均余命があるかという別に計算をしていかなければならない点等々ございますから、私は必ずしもこのとおりにいかない、こういうふうに思います。  実は私は、個人的に昭和二十三、四年くらいに生命保険を掛けたことがあるのです。その二十三年ごろに、十何年たつと百万円もらえるぞ、こういう話でよかったのですが、昭和四十何年になるとえらいこともらえるぞと言われたけれども、そのときには百万円もらったところで全然ありがたみのないような金になったということもありますし、むしろそういったインフレにならないような体制をつくっていくということは、これからの年金をやるときに、年金に限られた話じゃなく、国全体として考えていかなければならない非常に大きな問題だろうと思います。  同時に、いま答弁をせよというお話がありました有利運用の話、こちらの方でやったらどうかという話は、いろいろと長い歴史のある話のようでもありますし、それから大蔵省の持っている財政投融資計画というのもあります。だけれども、財政投融資計画そのものもいま相当変貌を来してきている話でもあります。年金の立場からすれば、今度厚生年金国民年金の改定を五十九年度にはお願いする。そのときはいろいろな改定をしていかなければならない。払う方はむしろ少なくなって掛金の方が高くなるというような恐らく話になるでしょうから、そんなときに、運用はどうなっておるんだ、運用はあなた任せという話ではとてもじゃない、どうにもならないと私は思いますし、ここはやはり有利運用、一分でも運用をよくしていかなければならないと私は思うのです。  御指摘がありましたように四十兆円の一分といったところで四千億になるわけですからね。大変な金額だと私は思うわけでありまして、その点は、いずれ厚生年金国民年金の案を出すときまでに厚生省考え方をまとめてお示しをいたしたい。先生の大変心強い御声援を心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
  272. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 最後に申し上げますが、大臣のわれわれにとっては非常にうれしい決意を表明してもらいまして、本当に感謝しておるところであります。ひとつ勇気を出して、大蔵省と正面衝突するくらいの気でがんばっていただきたいと思います。このことをなしたら、林先生の名前が上がり銅像が立つのではないかと私は思いますよ。そのくらいの大行事です。  そこで、いま物価値上げをさせない、物価を上げないことが大事だとおっしゃった。そのとおり。私がいま申し上げたこの資料から言っても、物価が上がらなかったら保険金だけでばっちりいけるのですから、将来とも政府としては物価を上げないことがまず第一だと思います。  そこで、最後に申し上げておきますが、国民年金を抑えられたことで、厚生省も冷たいなと非常に誤解をしております。それで、きょう私は先輩に、厚生省という名前はいい名前だ、いつできたのかと聞きましたら、こう教えてくれました。これは大体、戦争中に陸軍が、国民の健康管理をする、そして国民の更生をするというので、衛生省という名前にしたらどうだということを言い出した。それを企画院が、衛生省というのはどうもおかしい、全体のことを考えて保健社会省と名前をつけたらどうだ、こういうことを言った。それに対して、当時近衞さんだったと思うのですけれども、満州国の辞典に詳しい官吏の方からお話を聞きまして、厚生省という名前をつけた方がいいというので話が決まったのが昭和十二年だそうです。それで厚生省が設立されたのが昭和十三年一月十一日だというのです。  私ども国民は、厚生省国民を助けてくれるところという感じを持っているのですよ。ところが、今回年金を圧殺したということで国民はどう言っておるか。大臣、気分を悪くしなさんな。口じゃわからぬからここに大きく書いてきたのです。見てください。いまこう言っておるのですよ。変なことを言うな、この「圧生省」というのはどこから出たのかと思うかもしれませんが、しかし、これは実際にあった話なんです。昭和十二年に厚生省という看板をかけて、何か会議があったのでしょう、厚生省の人がほかの省へ行った。廊下に座って並んでおったら、そのころの時代は給仕がおって「次、厚生(あっせい)省の人、どうぞ」と言ったそうです。どうですか「圧生省」。こういう国民の生活を圧迫する省となりませんように、どうぞひとつ大臣の奮起一番をお願いをいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  273. 上村千一郎

    上村主査 これにて岡田正勝君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、厚生省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分料会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分料会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会