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1983-03-04 第98回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本分料会昭和五十八年三月三日(木曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月三日  本分料員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       上村千一郎君    大村 襄治君       白川 勝彦君    小林  進君       草野  威君    瀬崎 博義君 三月三日  上村千一郎君が委員長指名で、主査選任さ  れた。 ────────────────────── 昭和五十八年三月四日(金曜日)     午前九時三十二分開議  出席分科員    主 査 上村千一郎君       大村 襄治君    白川 勝彦君       小林  進君    草野  威君       田中 昭二君    藤田 スミ君    兼務 上田  哲君 兼務 沢田  広君    兼務 清水  勇君 兼務 鈴木  強君    兼務 土井たか子君 兼務 中村 重光君    兼務 山本 政弘君 兼務 武田 一夫君    兼務 青山  丘君 兼務 部谷 孝之君    兼務 横手 文雄君 兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 林  義郎君  出席政府委員         厚生大臣官房会         計課長     坂本 龍彦君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 吉原 健二君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         厚生省援護局長 山本 純男君         社会保険庁年金         保険部長    朝本 信明君  分科員外出席者         外務大臣官房審         議官      恩田  宗君         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         労働大臣官房参         事官      増田  実君         労働省職業安定         局企画官    藤原 正志君     ───────────── 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   小林  進君     五十嵐広三君   草野  威君     田中 昭二君   瀬崎 博義君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   五十嵐広三君     佐藤  誼君   田中 昭二君     玉城 栄一君   岩佐 恵美君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   佐藤  誼君     小林  進君   玉城 栄一君     草野  威君   栗田  翠君     渡辺  貢君 同日  辞任         補欠選任   草野  威君     玉城 栄一君   渡辺  貢君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     有島 重武君   藤田 スミ君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   有島 重武君     草野  威君   野間 友一君     渡辺  貢君 同日  辞任         補欠選任   渡辺  貢君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   岩佐 恵美君     瀬崎 博義君 同日  第一分科員鈴木強君、部谷孝之君、第二分科員  土井たか子君、中村重光君、第三分科員武田一  夫君、山原健二郎君、第六分科員青山丘君、横  手文雄君、第七分科員沢田広君、第八分科員上  田哲君、清水勇君及び山本政弘君が本分料兼務  となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  (厚生省所管)      ────◇─────
  2. 上村千一郎

    上村主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願いをいたします。  本分科会は、厚生省及び労働省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算厚生省所管について、政府から説明を聴取いたします。林厚生大臣
  3. 林義郎

    林国務大臣 昭和五十八年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算概要について御説明申し上げます。  昭和五十八年度厚生省所管一般会計予算総額は九兆六百十四億円余でありまして、これを昭和五十七年度当初予算額九兆百六十八億円余と比較いたしますと、四百四十六億円余の増額、〇・五%の増加率となっており、国の一般会計予算総額に対し一八%の割合を占めております。  御承知のとおり、最近におけるわが国の経済情勢及び財政事情はまことに厳しいものがあり、明年度予算も引き続き財政再建を強力に推進し、その対応力を回復することにより経済の着実な発展と国民生活の安定、向上を図る基盤を確立することを目標に編成されたところであります。  厚生省予算につきましても、歳出内容の見直し、合理化を徹底的に行い、限られた財源を最大限活用するため、給付重点化、公平の確保に努め、将来にわたり社会保障制度を安定的かつ効率的に運営していくことを編成基本方針としたものであります。  このような厳しい制約のもとにおきましても、幸い厚生省予算は各方面の絶大な御理解と御協力によりまして社会福祉保健衛生社会保険等各般施策推進に必要な措置を講ずることができ、福祉水準は全体として維持されたものと考えております。  この機会に、各位の御支援に対し衷心より感謝申し上げますとともに、責任の重大さに思いを新たにして国民の健康と福祉を守る厚生行政の進展に一層の努力を傾注する決意を表明する次第であります。  さて、昭和五十八年度の予算編成に当たって特に留意した点を申し上げたいと存じます。  第一に、地域社会の中で老人心身障害者、低所得者等社会的、経済的に弱い立場にある人々を支えるため、生活保護基準引き上げ身体障害者社会参加促進事業充実家庭奉仕員増員等を初めとする各種在宅福祉施策拡充強化を図るとともに、社会福祉施設についても運営改善等を行うことといたしております。  第二に、本格的な高齢化社会の到来を控え、国民の健康を増進し、治療中心医療からの脱却を図るため、本年二月から施行されている老人保健制度及びこれを円滑に推進するための関連保健衛生施策拡充整備並び医療費適正化に特に配慮いたしております。  第三に、国民保健医療確保するため、僻地医療体制の計画的な整備救急医療医療従事者養成確保母子保健対策精神衛生対策充実を図ることとしているほか、難病対策特定疾病対策等拡充を図ることといたしております。  以上のほか、生活環境施設整備原爆被爆者戦争犠牲者のための対策医薬品食品安全対策血液麻薬覚せい剤対策環境衛生関係営業振興等につきましても引き続きその推進を図ることといたしております。  なお、所得保障中核であります年金制度におきましては、昭和五十七年度の消費者物価上昇率が三%をも下回る見込みであることや、公務員給与改定見送り恩給共済年金等据え置き等諸般情勢にかんがみ、年金額を据え置くことといたしましたが、所得制限につきましては、現に相当の水準にある母子・準母子福祉年金を除き、本人所得制限限度額引き上げることといたしております。  以下、主要な事項につきましてその概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、本予算成立につきまして、格段の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 上村千一郎

    上村主査 この際、お諮りいたします。  厚生省所管関係予算重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 上村千一郎

    上村主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔林国務大臣説明を省略した部分〕  以下、主要な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活扶助基準につきましては、昭和五十八年度における国民生活動向等を考慮し、前年度に比し三・七%引き上げることとしたほか、高齢者傷病障害者等が大部分を占める少人数世帯処遇改善男女消費実態に対応した男女差の縮小、教育、出産扶助等についての所要改善を行う一方、暴力団関係者等による不正受給の一掃、医療扶助適正化厳正制度運営推進することとし、一兆八百五十八億円余を計上いたしておりますが、これは前年度予算に比し四百一億円余の増額となっております。  第二は、社会福祉費であります。  心身障害児・者の福祉につきましては、家庭地域で生活するための条件整備するため、障害者社会参加促進事業デーサービス事業障害者福祉都市推進事業精神薄弱者通所援護事業心身障害児通園事業等充実を図るとともに身体障害者及び精神薄弱者相談員活動拡充を行うことといたしております。  老人福祉につきましては、在宅寝たきり老人等に対する福祉サービス拡充強化するため、家庭奉仕員増員を行うとともに、デーサービス事業生きがい対策等についても引き続き充実を図ることといたしております。  さらに、母子福祉につきましては、母子寡婦福祉貸付金の原資の増額等を行うとともに、母子保健訪問指導事業先天性代謝異常等検査小児慢性特定疾患治療研究事業等充実することといたしております。  社会福祉施設につきましては、特別養護老人ホーム心身障害児者施設等需要の多い施設整備老朽民間社会福祉施設改築等を重点的に推進するとともに、僻地保育所積雪寒冷地域養護老人ホーム個室化等に対して特例措置を講ずることといたしております。また、運営改善につきましては、職員の勤務時間の短縮に必要な業務省力化等勤務条件改善費を計上するとともに、入所者処遇改善につきましては、一般生活費引き上げ精神障害者のための精神料医雇い上げ費重度障害者施設の非常勤指導員雇い上げ経費を新規に計上したほか、乳児保育対象拡大嘱託歯科医手当増額点字図書館運営費増額等を行うことといたしております。  以上のほか、児童館母親クラブ等児童健全育成対策拡充民間社会福祉活動推進地域改善対策等につきましても所要措置を講ずることといたしております。  以上申し上げました社会福祉費総額は一兆九千百八十四億円余でありまして、前年度に比し一千九百八十四億円余の増額となっております。  第三は、社会保険費であります。  まず、社会保険国庫負担金でありますが、政府管掌健康保険につきましては老人保健制度実施に伴う拠出金関連分を含め国庫負担金五千八百八十九億円余を、船員保険疾病部門につきましては二十七億円の国庫補助金を計上いたしており、日雇い労働者健康保険に対する国庫負担三百五十六億円余等を含め六千九百三十一億円余を計上いたしております。  次に、厚生年金及び船員保険年金国庫負担金につきましては、五十七年度の消費者物価上昇率が二・七%と見込まれていることや公務員給与改定見送り恩給共済年金据え置き等を勘案し、物価スライドによる給付改善を見送ることとし、また、行革関連特例法に基づき、五十八年度においても保険給付費国庫負担金の一部を一時減額することといたしました結果、これらの経費として六千二百八十一億円余を計上いたしております。  次に、国民年金国庫負担金でありますが、国民年金特別会計への国庫負担金繰り入れ額の当面の推移等を考慮し、一般会計から国民年金特別会計への繰り入れ平準化を図るための特例措置を講ずることといたしました結果、繰り入れに必要な経費として一兆五千四百五十八億円余を計上いたしております。  このうち、給付費につきましては、物価動向が落ち着いていること、公務員給与改定見送り恩給共済年金据え置き等を勘案し、拠出制国民年金福祉年金につきまして年金額を据え置くことといたしております。  なお、老齢、障害福祉年金本人所得制限限度額につきましてはこれを引き上げることとし、所要経費を計上いたしております。  国民健康保険助成費につきましては、総額二兆三千百二十六億円余を計上いたしております。国民健康保険助成費のうちには、療養給付費等補助金財政調整交付金臨時財政調整交付金国民健康保険組合臨時調整補助金などの経費が含まれておりますが、老人保健制度実施に伴い所要調整を行うことといたしております。  以上申し上げました社会保険費総額は五兆二千五百九十一億円余でありまして、前年度に比し一千八百三十七億円余の減額となっております。  第四は、保健衛生対策費であります。  生涯を通じる健康づくりのための施策を引き続き推進することといたしておりますが、その一環として特に本格的な高齢化社会に対応し、国民の老後における健康の保持を図るため、老人保健法に基づき、疾病予防治療機能訓練等保健事業を総合的に実施し、壮年期からの健康づくり対策を積極的に推進することといたしております。同時にこの事業を円滑に実施するために必要な保健所機能強化市町村保健センター整備市町村保健婦増員市町村栄養改善事業、婦人の健康づくり活動等推進を図ることといたしております。  また、地域医療対策につきましては、救急医療体制整備僻地中核病院中心とする僻地医療体制計画的整備推進することといたしております。  特定疾病対策につきましては、循環器病、がん、脳卒中等に関する専門医療機関整備充実を図るとともに、腎移植オンラインシステム計画的整備を行うことといたしております。  さらに、看護婦等医療従事者養成確保につきましては、看護婦養成所整備看護研修研究センター充実夜間看護体制強化等処遇改善を行うことといたしております。  また、原爆被爆者対策につきましては、原爆被爆者に対する各種手当所得制限限度額引き上げ療養費審査支払い事務等促進被爆者相談事業充実等を図ることとし所要経費を計上いたしております。  難病対策につきましては、調査研究推進特定疾患治療研究費及び小児慢性特定疾患治療研究費対象疾患拡大等措置を講ずることといたしております。  以上のほか、精神衛生対策につきましては、通院患者リハビリテーション事業拡充精神障害者社会復帰促進等のため保健所精神衛生センターデーケア施設拡充強化を図ることとし、公的病院助成保健医療施設等整備費などを含めて、保健衛生対策費は、総額四千二百四十二億円余でありまして、前年度に比し十億円余の増額となっております。  第五は、戦傷病者戦没者遺族等に対する援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等に対する年金につきましては、恩給の改正に準じ新たに平病死の遺族に対する遺族年金改善を行うとともに、中国に残留する日本人孤児対策充実強化を図るため、訪日孤児増員等のほか新たに中国帰国孤児定着促進センターを設置することといたしております。  また、国債最終償還を終えた戦没者の妻及び父母等に対し交付国債による特別給付金継続支給を行うことといたしました。このほか引き続き遺骨収集慰霊巡拝等実施することとし、遺族及び留守家族等援護費として総額一千四百十六億円余を計上いたしておりますが、これは前年度に比し百二十八億円余の減額となっております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  まず、水道施設整備費につきましては、簡易水道水道水源開発施設水道広域化施設整備等を引き続き推進することとして九百二十四億円余を計上いたしております。  廃棄物処理施設整備費につきましては、第五次廃棄物処理施設整備計画に基づき整備促進するとともに、引き続き広域廃棄物埋め立て処分場整備を行うこととし、六百四十九億円余を計上いたしております。  以上のほか、医薬品食品等安全対策強化環境衛生営業指導体制整備促進血液麻薬覚せい剤対策推進国際医療福祉協力拡充研究開発推進等につきましても所要経費を計上いたしております。  以上、昭和五十八年度厚生省所管一般会計予算概要を申し上げました。  次に、昭和五十八年度厚生省所管特別会計予算について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、厚生年金国庫負担金につきまして、行革関連特例法規定に基づき、引き続き現行法規定により繰り入れるべき額の一部について一時減額を行い、一般会計から一兆三千四百五十三億円余を繰り入れることとし、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。  第二に、船員保険特別会計につきましては、厚生年金と同様に行革関連特例法規定に基づき、現行法規定により繰り入れるべき額の一部について一時減額を行い、一般会計から三百九十九億円余を繰り入れることとし、歳入歳出予算を計上いたしております。  第三に、国立病院特別会計につきましては、一般会計から九百八十六億円余の繰り入れを行い、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。  第四に、あへん特別会計につきましては、歳入歳出予算とも二十六億円余を計上いたしておりますが、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に基づき、積立金から十三億円を一般会計繰り入れることとし歳入歳出予算を計上いたしております。  第五に、国民年金特別会計につきましては、国民年金特別会計への国庫負担金繰り入れ額の当面の推移等を勘案し、一般会計から国民年金特別会計への繰り入れ平準化を図るための特例措置を講じることとし、一般会計から一兆五千四百五十八億円余の繰り入れを行い、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。  以上、昭和五十八年度厚生省所管特別会計予算につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。     ─────────────
  6. 上村千一郎

    上村主査 以上をもちまして厚生省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  7. 上村千一郎

    上村主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りまするよう御願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いをいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  8. 小林進

    小林(進)分科員 限られた時間ですからスピードをかけて申し上げますが、この前の予算一般質問のときに、私は、これだけ世論が支持をしている丸山ワクチンを採用すべきであるということを言ったときに、厚生大臣は繰り返しこういうことを言われた。ともかく医薬の許可認可というものは人間生命身体に関する重大問題だから慎重に慎重に構えなければいけない、こういうことをおっしゃいましたね。  そこで、私はこの言葉に非常にこだわりを感じている。それほど新薬の認可というものが慎重に、かつ大切な重大な問題であるとするならば、何で一体ケミファなどというああいう問題が起きたのですか。あなたのおっしゃるように慎重に構えたらああいう日本国民全部を震駭せしむるような事件が起こるわけはない。なぜ起こったのか。慎重に構えてなおかつ起きたのか、不可抗力だとおっしゃるのかどうか、まずそこからお伺いしたいと思います。
  9. 林義郎

    林国務大臣 簡単に御答弁申し上げます。  薬というものは学者の科学的な判断に基づきましてその有効性安全性が確認されなければならない、そういった意味で中央薬事審議会等におきまして厳正、公正な審議を行った上で決定するという基本的な立場をとらなければ薬の信頼性確保は得られないであろうということを私は繰り返し申し上げたところでございまして、ケミファのような問題は不可抗力——不可抗力というのは一体どういうことなのかわかりませんけれども、全く通常のベースでは考えられないようなことをやって、まあ言うならば中央薬事審議会先生方もまた担当の方もだまされたのではないかということでございます。  そういったことにつきまして一層、現在の組織、機構というものをだまされないようにするということを、やはり整備をしていくことも当然なことだろうと思いますが、そういったことで、私はこれから一層薬の審査体制というのは厳正かつ公平な審議ができますように努力をしなければならないものだと考えておるところでございます。
  10. 小林進

    小林(進)分科員 だまされたということは事実です。その点は御答弁のとおりだろうけれども、いやしくもそのために資格を持ち、任命をされ、なおかつ監督する官庁、主管庁もあるという中に、だまされましたからそれは仕方がありませんという、そういうことは私は答弁としていただきかねる。まあ厚生大臣は、私は素人とおっしゃるならいい。あなたは通産官僚上がりであるいは厚生行政は余り専門じゃないかもしれませんから、素人でございますと言うならいいけれども、そのためにあなたの下に専門家行政官もちゃんと抱えているし、その専門委員の特に一番専門家と言われる審議委員の諸君も任命せられている。そこで、しかもあなたが言われるように、一番重大だからといって審査を繰り返しやられたという。しかもその審査がいかに厳格にやられたかということを、後でも言いましょうけれども、ガン剤に関する限りは、みんな慎重に審議をして提出したものは継続審査中の問題は別として一〇〇%認可だ。一つ許可にならないものがある。それは丸山ワクチン一つです。そのときの言い分は、慎重に審査をしています。慎重に審査しているから、何十万人、何百万人、何千万人の国民がこれを支持し、しかも被害がない、有効だと言っていてもなおかつ慎重審査というたてまえのうちに許可をしないでいるのです。それほど慎重に構えている。その厚生省所管の中にこういうケミファ、しかも種類一つじゃありませんよ。ケミファの会社だけでも三種類も四種類も、みんな完全に審査に該当するとして許可認可をしているじゃないですか。それでここへ来てだまされたなどということで、一体国家の行政が、立法府も通過していくことになったら世の中やみです。  私は、あなたに言いたいのは、そういう答弁答弁になりません。こういうような、慎重にして、人間身体に関するようなものは、このような形でペーパーだけで形を整えていたというだけ、ほんの形式論だけでそれは認可許可をされておいて、それで天下をまかり通っている。そうしてそれが発見をされた、それは内部告発ですよ。決して審議会だとか厚生官僚みずからが慎重に構えてこれを発見したわけじゃないのです、内部告発です。その内部告発が出なかったら、一体責任とった者があるのか。厚生官僚で、これほど大きな不始末をして、天下を沸かせるような重大問題を起こして、責任とった者がありますか。もし審議会審査が手落ちであったなら、この審議会委員の責任を追及するのがあたりまえだ。本当の責任を負うべき審議委員においても責任をとるやつもなければ責任を痛感する者もない。こういうことをやるために厳重に監視し、指導するためにまあまあ食っている、国家の給料をはんでいる、その官僚の中でも一人も責任をとる者がない。そうしてわれわれのところへ来て、これは不可抗力でございます、だまされましたなどというような、そんな答弁がまかり通るとは私は了承できない。  大臣、どうですか。あなたは責任とりますか。厚生大臣が腹を切って辞職をされるというのならば私は了承しましょう。
  11. 林義郎

    林国務大臣 日本ケミファの事件は、申し上げますならば、日本ケミファから薬の申請がございました。この申請を受け付けますに当たりましてはいろいろな実験の成果、その他のデータが必要でございますが、従来の取り扱いでは薬のデータにつきましては学会雑誌等に出ているところの論文をもとにしましてやる、こういうような形になっているわけであります。通常に考えまして、学会雑誌等に出ている論文というものは誠実にその方々がお書きになったものである、公に出ているわけでございますから、それは当然にそういったものは誠実なものである、こういうふうなことで考えるのが私は学界その他の常識だろう、こう思うわけであります。その常識であるところのものを破ってというか常識以上のことをやったのが今回の事件でございますから、私はそういったことをしたことに対しては、会社に対しては非常なその責任を追及しなければならないと考えまして、営業停止処分を八十日という、従来の例からすれば異常な処分をして、これに対して会社側に猛省を促したところでございます。  そういった全く通常の常識では考えられないようなことでやったということについての責任というのはやはり会社側にあるわけでありまして、またそれが見抜けなかった、その辺のデータ、論文等をどうするかというような問題につきましては、その審査機構というものをこれから変えていかなければならない、こういった形でやっていこうというのが現在のところの姿勢でございます。
  12. 小林進

    小林(進)分科員 大臣の答弁は全く答弁になっていません。常識では考えられないことをやったからだから発見できないと言うんです。審議会も、厚生官僚も責任がないという、そんな理屈は成り立ちませんよ、あなた。それでは常識以外の犯罪をやった者は、これは全部犯罪成立しませんか。責任はありませんか。そんな言いわけはだめだ。それほど悪らつなものがあるなら、あるためになおさら慎重に構えるべきではないか。しかもこれは無害じゃありませんよ。ここに資料がありますけれども、このケミファ、飲んだために三人死んでおりますよ。それは知っておりますか。余りむちゃなこと言うんじゃない。言いわけしたってだめだ。書いてあるじゃないですか。死んだのが年寄りであろうと若い者であろうと人種差別は別だ。人間の命があるものが命を失っているのだ、この薬で。そういうような大きな被害が出てきているものを、こんなことは常識で考えられない、予想外のことだから責任を追及しないとあなたはおっしゃるのでしょう。そんな理屈がまかり通ったら世の中は何も秩序も行政も要りません。いま一回言ってください。死んだ人の命を取り返してくれますか。
  13. 林義郎

    林国務大臣 その薬を飲んで三人亡くなったというお話がいまございましたが、その薬、私は実はその話はまだ報告を受けてないのでございます。薬を飲んで死んだかどうか、そこはその薬による影響というものはどの程度あったか、因果関係等は調べてみる必要もあるでございましょうから、早速お話があれば具体的な話で事務当局の方に検討させることといたしたいと思います。  先生のお言葉でございますけれども、私は、ケミファというのは、私が就任したちょうどそのころに起きたわけでございまして、大変重大な問題であるし、薬に対する国民の信頼を裏切るような話でありますし、話を聞けば話を聞くほど大変なことをしてくれた会社だなということで、異例とも言われるぐらいの八十日ということで処分をしたわけでございます。
  14. 小林進

    小林(進)分科員 いまも言うように、四十六年三月に承認されたシンナミンで、四十八年の五月、高投与を受けた患者三人が死亡しているという、またそれを裏づけるような記事も当時五十七年十一月二十二日の朝日の夕刊にも「日本ケミファ 四十八年に三人死亡」という、そういうことがあるならばなぜ一体そのときに明らかにしない。ただわれわれが黙っていれば黙ってほおかぶりしておいて、こういうところで追及されると、また調べてみなければわからぬと言う。調べてみてくれ。それではいつまでにこの資料を提出しますか。調べて、ぜひ明確にしていつまでに出すか。あなた方は資料を要求したっていままで出したこともない。みんなごまかしてしまう。委員会だけは巧みに通過をせしめればあとはもうごまかしてほおかむりをする。君は答弁しようというのか。大体君は薬務局長としてこれほどの重大問題を次から次に出して、まだそこに座っているのが私は不思議でたまらないのだ。君なんかとうの昔に責任を感じてやめているかと思っていた。やめるのが行政の常識だと私は思っている。ずうずうしくもまだそこに座って、しかも答弁を求めないにもかかわらずさっきからばちゃばちゃ手を挙げている。そんな小汚ない手をおれは見たくないのだ。そんな答弁は要らないですよ。もしできないなら、大臣それでよろしいです。
  15. 林義郎

    林国務大臣 いま私、失念しておりましたが、副作用につきまして新聞報道等がありました。私もその点は確かに記憶いたしております。これで死んだから、こういうふうな話でございましたので、私、ちょっと失念しておりましたことは申しわけないと思っておりますが、いまお話しになりました件は、死亡例を含む三例の胃潰瘍について東京都養育院による学会報告がありまして、副作用調査会による検討が四十八年五月に行われまして、使用上の注意の改定並びに動物実験及び臨床調査の実施昭和四十八年六月にいたしたところでございます。四十九年の七月と五十年の六月及び五十一年六月の三回にわたり、上記指示に対する回答があり、これを検討の結果、使用上の注意の一部改定のほかは特段の措置を講ずる必要のないものと判断をされたところであるというふうな報告を承っております。
  16. 小林進

    小林(進)分科員 この問題も詳しく追及していくと時間がありませんから私は言うのだけれども、八十日間の製造禁止などでも大臣は異例の厳罰だとおっしゃるけれども、われわれから言わせればちっとも厳罰じゃない。同時に、私は業界の諸君にも知っている範囲でいろいろ聞いたが、このためにわれわれの製薬業者の信頼を失墜したそれは無限の損失があります、売り上げにも全部影響しております、私どもは業者の信用を回復する意味においてむしろこんなのは永久に製造停止をしてもらった方がありがたいのですと言っておる。また、私も厚生行政がそうあるべきことを願ったのにたった八十日間、もう二月の二十五日になったらさっさと操業開始、操業開始のお祝いでございますなんて花火を上げたかどうかは知らぬけれども、ともかくにぎにぎしくやっている。厚生省の役人はその操業式に呼ばれて行ったかどうか私はまだ聞いておりませんけれども、まるで世人や国民を逆なでするような八十日間です。  まだ私は申し上げるけれども、このケミファの臨床データで偽造したものはノルベダンでしょう。そのノルベダンについてはあなた方は一体どういう指示をしたか、十一月の二十日、厚生省内部告発があったので、事情を聞いて販売停止と市場からの回収を命じた。それでは次のシンナミンについてはどうしたかというと、疑いが生じたので、これまで申請した七成分十八品目について資料点検を行うため十一月二十四日に立入検査を行った。その結果ノルベダンについては上述の臨床データ以外にも一部の偽造データがあり、十一月二十六日ノルベダンの承認取り消しを行うとともに、十一月二十九日薬価基準からともかく削除を行った。それからシンナミンについては、副作用に関する動物実験データの一部が提出されていないので、十一月二十六日当面製造販売の停止と製品の回収を指示した、こういうことなんだよ。これはみんなやり方が違っているんだ。トスカーナについては偽造データが発見されたはずだ。十二月の三日に製造販売を中止し、回収を指示した、こう言っているが、一体何ゆえ承認の取り消しと薬価基準からの削除をしなかったのかわからない。こういうようなことだけやっておる。  ところが、そこへケミファの会社から他の新薬についても承認を取り下げる旨の届け出があったので、会社の届け出を受けてようやく十二月の六日にトスカーナを含め六成分十五品目の承認を取り消し、基準から削除したという。やり方がみんな逆なんだ。これは会社がみんな主導的で、会社がもう製造をやめますと言ってきたから、ああそうかい、それではということなんだ。それまでは何もやっていない。こんなでたらめな仕事ばかりやっている。だからだめだというのですよ、何を言っても。これが厚生官僚の実態なんです。そしてここへ来れば厳罰に処しましたと言う。厳罰なんていうものじゃありません。厳罰というのは永久に製造、営業を停止することだ。本当に日本の薬の信用を国際的にも確保するならそれくらいの決意がなくてはいけない。どうですか、大臣。まだこれを厳罰だとおっしゃいますか。
  17. 林義郎

    林国務大臣 この日本ケミファ事件につきましては、薬事法の規定もございますので、薬事法の規定に照らして処分をするということになりますと薬事法の法律の限界もございますから、いま先生からいろいろとお話がございましたが、そういったことでやるのが最大限とは申しませんが、私は相当厳しい処分をしたものだと考えておるわけでございまして、当初はもっと軽いのではないかとかいうふうなことが言われておりましたにもかかわらず、相当やったのだというような御評価を当時はいただいたわけでございます。  ただ、先生の御指摘のように、処分が重いか軽いかということはいろいろな判断もおありのことだと思いますので、先生の御指摘は謙虚にこれを受けとめたいと考えております。
  18. 小林進

    小林(進)分科員 私は個人的にはあなたともおつき合いがあるし、あれなのだけれども、あなたはもっと頭がいい人だから申し上げるけれども、大臣というものは常日ごろの所信を行うために大臣になるのだ。何も官僚の使い走りをするのが大臣じゃない。大臣は大臣としての意見もあり、所信もあり、哲学もある。それを大臣という地位で実現していくところに大臣の大臣たる値打ちがある。どうも最近はみんな官僚に乗せられて、官僚の言いなり次第に走り使いをしているのが大臣だというような実に識見も何もないのがあらわれて、ぼくは慨嘆にたえないと思っているんだ。しかし、その形が一番強いのが厚生省なんですよ。だからあなたが厚生大臣になって、これはいいぞ、この人は一つの所信と哲学を持っているから、ああいうばかな諸君に振り回されないでみずからの道をりっぱにやる人だと私は期待したのだ。しかし、いまの答弁を見るとみんな官僚の作文ですよ。残念にたえないよ、あなた。そんなへっぽこ役人の答弁をやるんならあなたの前途はだめですよ。あなたはこれからぐんぐん伸びていく人なのだから、そんなことはやめなさい。  同時に、私はいま注文をつけておきますけれども、この問題はこのままでおさまりません。ケミファならケミファに重い軽いは別として八十日間の営業停止をやったならば、そういうインチキなデータで許可をした審議会、そのまた監督指導官庁である役人の責任もあわせてきちっとしておかなくてはいけません。そうでなければ私ども立法府においてもこれは承知しません。ただ悪い悪いと言って薬屋だけいじめておいて、どうも常識では考えられないことでありますからあと責任はありませんなんという答弁はだめです。ひとつきちっと責任をとらしてください。そんなことを許可した審議委員ならばメンバーをかえればいいじゃないですか、こういうことをやってみずから恬然として恥じないような官僚は首切ればいいじゃないですか。首なんか幾つもあるでしょう。特にいま行政の人事は詰まっているというのだ。下からあの局長早くやめればいい、早くやめればいいといってみんな騒いでいるというのが今日の実情だから、やめさせて恨む者はありません。きちっとやってください。どうですか、これはやらなければだめですよ。
  19. 林義郎

    林国務大臣 小林先生のお話もわかりますが、私は厚生省という役所を責任を持って動かす立場にございますし、いろいろなことを総合的に考えてやらなければならないと思っております。そういった意味で総合的に考えるに当たりまして、いろいろな問題を考えましたし、先生が御指摘のありましたような問題もいろいろと考えてはみたわけでございますが、この問題について御指摘のような話をやるというのはいかがであろうか、その辺につきましてはもう少し慎重な態度をとってやるべきではないかという判断に基づきまして、先ほど申し上げましたような処分を会社に対してしたところでございます。
  20. 小林進

    小林(進)分科員 あなたの答弁は、ちょうだいするわけにはいきません。私はいま一回申し上げますが、ケミファに対しては、八十日で生産開始するのは了承できない。追加して、いま一つ八十日ぐらいの罰則を加えることが一つ条件。それから、こういうようなインチキなデータを——しかも、われわれの前で何回言った。審議会は公正です、審議委員はりっぱです、断じてそういう手抜きや何かはしませんと。丸山ワクチンの問題に対して、一体何十回われわれを説得した。それほど公正妥当なものである、顧みて神に誓うような、間違いのない、全くパーフェクトだ、完全なそういう審議をやっている、彼らは完全無欠だと言った、その完全無欠と称するところに、三人も人を殺すようなこんな大きなミスができていることに対して、そういうふうに一つも責任をとらせないなどという、それは、あなたは政治家としても値打ちがない。立法府に議席を持つ議員としても、そういう考え方はだめです。  だから、私はいま一回言う。審議委員の諸君のだれがこんなことをやったか、このことを明確にして、その諸君の責任をひとつ明らかにしてもらいたい。その辺は、いまその上にいる行政官僚、薬務局長、こんなのはもう責任をとらせてやめさせる、こういうことで、物のけじめをきちっとつけてもらいたい。これは私の要望です。こんなことばかり言っておっては時間がかかりますから、要望しておいて次の問題に移ります。  これも一般質問で言ったが、これに関連いたしまして、一体丸山ワクチンで一人死んだのがいますか、一人傷ついたのがいますか。この薬であるいは反対臨床例が生じたデータがありますか。ひとつお聞かせ願いたい。
  21. 持永和見

    ○持永政府委員 丸山ワクチンは、有効性については現段階で確認することはできないという審議会の判断でございますが、副作用については、私ども聞いてはおりません。副作用はきわめてないということを聞いております。
  22. 小林進

    小林(進)分科員 君とは議論したくないのだけれども、有効性がないと、だれが言った。これほど有効性があるというデータがここにあるじゃないか。一万人の医者が、治験薬と称する丸山ワクチン、これを受けることを了承して、その手続をしながら患者に注射をしているじゃないか。一体、これは有効性がないものをやっているのか、水と同じものを注射しているというのか。一万人の医者は、これは間違っているのか。なおかつ、ここには、進行性末期のがんで苦しんでいる諸君が十七万六千人だ。これは丸山ワクチンの注射を受けてそれぞれの成果を上げているというデータがちゃんとそろっている。大臣、このデータはごらんになりましたか。  なお一つ、加えて言いますけれども、いまでも毎日新しい患者が百人から百五十人、雨の中も風の中も日本医科大学のところへ丸山ワクチンを手に入れるためにずっと整列している。この状況をごらんになりましたか。これくらい、人間をもってテストしながら、専門の医者が一万名もかかって有効性ありというものを、何で一体、有効性がないのですか。審議委員の諸君が言うのか。
  23. 持永和見

    ○持永政府委員 先生も御承知と思いますが、昭和五十六年の八月十四日に中央薬事審議会から丸山ワクチンについての意見が出ておりまして、その中で、「申請に係る効能効果については、提出された資料をもってしてはその有効性を確認することができない」という答申が出ておるわけでございます。
  24. 小林進

    小林(進)分科員 それは村山君が厚生大臣のときに出された資料であることを知っていますよ。国民の要望や専門医者の一万名の要望もすべてを否定して、君らの根拠としておる審議会の答申のみがパーフェクトのものであるならば、何で一体、ケミファの事件が起きたのだと先ほどから言っている。そういう人の命に差支えるようなこういう大きなミスを、その審議会の諸君がケミファ許可している。神様のようにそれほど答申が正しい、完全なものであるならば、こんな不完全なものが出てくるわけがないじゃないか。その矛盾をどう解釈するのだ。  さっきの大臣の答弁じゃないけれども、普通では考えられないようなことをやったからそういうミスも出るのだと君は言いたいのかい。そんなことは答弁にならない。なおさら、その審議会というものは信用するに足らないということなんです。だから私は、そんな審議会のメンバーも入れかえて、機構も改革せよと私は言っている。その審議会の答申それ一つが、全国から燃え上がっている、このワクチンの注射を受けて死ぬんなら死んでいきたいという国民の要望を阻止するほどの強力な力があるのか。君ら、それを神のお告げだと思っている。神のお告げじゃない、そんなものは。インチキである。
  25. 持永和見

    ○持永政府委員 医薬品の承認というのは、先生御承知のとおり、薬事法に基づいて行うわけでございますが、薬事法の中で、中央薬事審議会の意見を聞いてその薬品の承認を行うというたてまえになっております。中央薬事審議会の答申によってこういうような意見が出た場合には、それを受けて厚生大臣としては承認するかどうかを決めるわけでございまして、したがって、そういう薬事法の現行の規定の上から、現在の段階では丸山ワクチンについてはまだ承認をするという段階までは至っておらないということでございます。
  26. 小林進

    小林(進)分科員 そういう君たちの三百代言的な主張を聞くのはもう飽きたのだ、おれは。だから、君なんか答弁するなと言っている。その薬事法がこういうような国民の要望そのものを阻止するなら、改正すればいい。それが君たちの仕事だ。そうして、その薬事審議会審議ができないならば、その審議委員のメンバーもかえればいいじゃないか。大体、そのメンバーをかえたろう、去年、おととし。林さん、知っていますか、桜井何がしから審議委員のメンバーが、いかに企業と癒着しているか。速記録をみんな調べてくださいよ、私は何もデマを飛ばすのじゃない。いかに癒着をしているか、いかに系列に並んでいるか。そういうことをこの国会の中でずいぶん議論して、そのために、審議委員とか小委員とかいうものがやめていった。一部の審議委員のメンバーがかえられたこともあるのです。ややそういう改革が行われたけれども、まだ完全じゃない。もっと率直に言えば、製薬会社、企業とそれから関係の医師との癒着なんというものはどろどろして、まことに見るにたえないのだ。そこへ厚生省の官僚が一足入っているからどうにもならない。もし、あなたは厚生大臣として天下に名をなすならば、ここへメスを入れて少しきれいにしなさい。もし、私の言うことがデマだと言うのなら、いつでも資料をもってお見せしてもよろしい。どろどろしているんですよ、どろどろ。  そういう意味で、ともかく村山君に出したその審議会の答申も、何ですか、資料が足りないという。その資料が足りないという資料は何だ。マウスだという。白ネズミに対する動物実験が少し足りないというのです。いまなお、約五万人に近い人たちが毎日毎日これの注射を受けているのです。五万人、日本全国にいるんですよ。受けて、だれ一人、被害が出たの、悪くなりましたという声はないのです。おかげさまでという声だけなんです。うそだと思ったらあなた方、実際のテストをやっている資料もあるところを見てきてくださいよと私は言っている。それを言っているにもかかわらず、五万人がいま現実にこの注射を受けている、過去において十八万人の人たちが全部この治療を受けているという、そのデータは全部そろっている、一部残らずそろっている、こうして人間がいわゆる実験台に入って、これほど効果があるというものを、しかも一万人の医者が全部、効力がありますからこれを打ってもらいなさい、私は打ちますと言っているものを、マウスと言うんだよ、そこにはネズミのデータが足りないからこれが許可できないと言う。ネズミ様々ですか、厚生省は、審議会というのは、ネズミが神様で人間は、これはネズミ以下だということだ。  しかし実際に苦しんでいるものはネズミじゃなくて人間なんだ。しかもいま、命旦夕に迫って、あすかあさってかというような人たちまでがこの丸山ワクチンに飛びついているわけです。しかも患者だけじゃありませんよ。ここにも言いましたように、こういうりっぱな木本哲夫、川崎医科大学。「”丸山ワクチン有効性なし”と判定された。」、これは審議会です。「しかし、皮肉なことに、川崎医大・木本教授の手で丸山ワクチンに、新事実が発見された。丸山ワクチンによって間質がガン細胞を包囲し封じ込めている姿が、映像にはっきりととらえられたのだ。」、こういうふうに映像の形まで全部写真入りで説明しております。しかもこれは国際的な学会にまで皆発表せられて、そしていま世界的にこの丸山ワクチンを要望する声が出ているじゃないですか。それをなぜ一体許可できないのかというのが私はわからない。  しかし、新たな村山君に対する答申も「動物実験の不備な点を充足し、また、ヒトへの至適用量を設定する」、こういうようなあいまいもこたる答申をしているんだ。「医薬品としての恒常性を確保する規格及び試験方法を確立すること」、この方法を、たとえて言えば、ケミファのように紙だけ整えておけば、これはよろしゅうございますか、紙だけ、ペーパーだけスタイルを整えておけば厚生省許可するとおっしゃるのか。実質的な内容は問うところにあらず、届け出の書類だけ出ていっていればそれでいいとおっしゃる。そういう口調じゃないですか。  この審議会委員長の津田何がしという者に対しても、こんな人の個人的な問題まで私はここで言わぬけれども、そこほどまで厚生省が頑迷にこれをとらえるならば、私は何でも言いますよ。私は丸山ワクチンに対してこれだけ論じたって一銭も利害関係ないですよ、何もない、ただ国民の要望にこたえよう、われわれ立法府としては。民の声は天の声です。この国民ががんに苦しみ抜いている、これを最後のよりどころにしているものを、そういう一片の審議会の資料など、薬事法がどうでございますという、そういうへっぽこ的な論述で国民を無視し、天を無視し、世論を無視し、また専門家の医師一万二千名の要望も全部土足でける。なおかつ、これは木本教授だけではありません。東海大学あるいは名古屋大学、それから東北大学、それぞれの大学でも全部資料を集めて有効性ありという答申をしているのです。これはもう去年もおととしもこの委員会で論じ尽くしたからいまは繰り返しませんけれども、そのときに審議会は何と言ったか。やれ名古屋大学の資料にはやや資料の収集に欠点がある、あるいは東北大学の資料に対し少し瑕疵がある、そういうけちをつけて、両方の資料とも全部採用しようとしないんです。  これは各医科大学、みんな権威があるんです。厚生大臣、暇があったらそれも見てください。なお開業医に至っては、上は北海道から下は鹿児島に至るまで、みんなこの丸山ワクチンを実際に経験し、開業医は開業医なりにデータを取り、資料を集め、そして効果を見ながら、実際に効果ありと主張している。そういう声がいま天に満ち満ちている。それをなぜ許可できないのですか。それは何でもない、その薬事審議会の、その資料がまだ少し整わないから資料を整えなさいという答申があるから、国民が何と言おうと、専門医が何と言おうと、開業医が何と言おうとこれを通すわけにはいかぬと言ってがんばっているだけです。それが一体正しい方法ですか。みんな死んでいくんですよ。毎日毎日この丸山ワクチンにあこがれを持ちながら、人の命があすを待たないで死んでいくんですよ。だからこれをやってくれと言うのだ。あなた、この前おっしゃったじゃないですか。もう時間もないから言うけれども、あなた篠原先生と同窓生だか同級生だか何だか知らぬけれども、親しいとおっしゃった。あの先生なんかいま夢中になってやっていられますよ。いかに厚生官僚というものが頑迷であるか。  なおかつ、裏において云々、云々ということですよ、云々ということを声を大にして言っておられますよ。しかも、それはこの前も申し上げましたように、自分だけじゃない、やはり自分の仲間や友人にも与えてやる人が、東大の教授、職員の中にも丸山ワクチンを使用している人がたくさんいる。国会の中にもたくさんいるんですよ。それを一つ勘案をしていただいて——いまの厚生官僚から言わしむるならば、大学の教授であろうと法学部であろうと、丸山ワクチンを採用している者はみんな、審議会が鼻にもかけないような、鼻くそみたいなものをやっているやつだから、これは無能の連中だと。私も用いておりますけれどもそういうものを用いている者は無能の士だ、いわば低能児だ、世間の常識もないようなそういうやからと、彼らは口には言わぬけれども、実証しているわけです。厚生官僚から言わせれば、丸山ワクチンをいま使用している者はこれはみんな低能児です、薬学のイロハも知らぬ低能児だ、そういう結論を彼らは結果的に言っているじゃないですか。言っていることになるのです。ですから、そんなことを大きな声を出さなくたって、しかもこれがいささかでも被害があるとか、反対的な害毒があるというなら別ですよ、無害なんですからやらしていただきたい。いかがですか。大臣の決断を仰ぐのみです。
  27. 林義郎

    林国務大臣 小林議員の御質問にお答え申し上げますが、役所の機構、審議会委員の問題等についていろいろと御指摘がございました。先生も政治家でありますし、政治家の世界というのは一番どろどろした人間関係のむずかしいところの世界であろうと思うのです。私は、人間である以上は、やはりそういったどろどろしたものが全然ないというようなことはないと思いますし、多かれ少なかれいろいろな社会の中にそういったものがあるということは考えております。むしろそういったことを前提にしながら組織をうまく育てていくということが必要でありますし、特に遠きをおもんぱかって賢者を用いるということは、政治を行う上において非常に大切なことだと私は思いますし、審議会委員にはそれぞれりっぱな先生方お願いをしておる、こう考えておるのです。ただ、いま申しましたようなどろどろしたようなものがありましたりというような御批判はあるかもしれません。特に医学界におきましてはそういったようなものもあるということはしばしば巷間言われるところでございますから、癒着云々というようなことがありますならば、審議会委員が余り長くその場におられるということは、李下に冠を正さずというか、そういったことはやはり考えていかなければならない点だろう、こう思っておるところでございます。そういった意味で、そういった点も謙虚にひとつ考えてみなければならないと私も思っております。  いまいろいろと御指摘がございましたので、アメリカでもそうではないかというお話でございますが、私が聞いておりますところでは、木本教授がアメリカのニューヨーク市立大学マウントサイナイ医学部発行の「がん発見と予防」の一九八二年六月号に投稿掲載された内容のことだと思いますが、その内容は、先生余りお好きでないかもしれませんが、マウスに移殖した人の胃がん細胞と肺がん細胞に対する丸山ワクチンの作用を検討した論文だと聞いております。いろいろなことがございますし、そういったようなことがありましたならば単にマウスだけの話ではない。この中央薬事審議会に附帯意見としてつけておりますのは、「医薬品としての恒常性を確保する規格及び試験方法を確立すること」、二番目に「動物実験の不備な点を充足し、また、ヒトへの至適用量を設定すること」「新たな臨床試験成績を収集、整備すること等について、引き続き試験研究を行う必要がある、」としておるわけでございますから、いまお話のありました木本先生の論文なども一つの有力な資料になり得るものだろう、こう私は思うわけでございまして、そうしたものをそろえて出していただければ、先ほどの附帯意見の中に申しましたものにつきまして資料をそろえていただければ、改めて中央薬事審議会において審議が行われることになるのは当然のことだろうと私は考えておるところでございます。  先ほどお話がございまして、予算委員会一般質問のときにも私も先生に対してお答え申し上げました。篠原君が一生懸命やっておるという話でもありますし、私の法学部の恩師の田中二郎先生も亡くなったわけであります。これもやはりがんで亡くなられた方でありますし、私の近辺でも実はそういったことでやっておられる方はあるわけであります。ありますが、やはり医学の薬品というものは科学的評価というものを確立する必要がある、これが一番大切なことだと思いますし、科学的な評価ということになれば、その有効性安全性というものを大切にしていくということが、それが科学的な良心においてやられるということが一番大切なことではないだろうかというふうに考えておるものでございます。
  28. 小林進

    小林(進)分科員 もう時間が迫ってきましたので余り議論をしておるわけにもいきませんけれども、丸山ワクチンに関連する、あなたのおっしゃる有効性安全性のうちの安全性は問題がない。これはもう厚生官僚もだれもみんな反対しても、みんなこれを認めている。安全性は問題がない。ただ、問題は有効性だけの問題だ。有効性だけの問題は、使用した者が十七万も十八万も、またこれを注射をしておるお医者さんが一万人も二万人もこれは有効性ありと言っておる。ただやらない審議員の諸君がそう言っているのだから、私は譲歩できないから、どうしてもこれは大臣の決断を願わなければいけないが、その大臣もあなただけ言っているのじゃなくて、歴代の厚生大臣の中でも、この辺は申し上げたわけです、園田氏は、彼自身もやはり周辺には丸山ワクチンで助かった人がいるものですから、彼は心から信奉しているのです。私の目の黒い間は断じてこれをやります、どうも官僚が抵抗しているから、それをひとつ包囲しながら私はやります、彼は言明された。一生懸命言明したけれども、何しろ齋藤邦吉の後でちょっと暫定的になった厚生大臣でありますから、やろうと思っているうちにやめちゃった。彼は本当にいまでも残念がっている。それから森下君、どうだ。われわれと一緒に——超党派の丸山ワクチンを守る会が国会にあるの、あなた、御存じでしょう。会長は八田君だ。八田君を頂点にしてこれをやっているのだけれども、みんなが熱烈にこれを支持しているわけですよ。そのときの最高幹部じゃないか、森下。それで厚生大臣になったから、おまえ、今度やるか、これは命にかけてもやりますよと彼は勇んだ。勇ましく厚生省に乗り込んでいった。乗り込んでいったきり、寂として声がない。だんだん声がない。いわゆる官僚に十重二十重に囲まれてしまったわけだ。囲まれてしまったから、いまはどうですか、森下君の評価は。二枚舌前大臣、森下は二枚舌でだめだ、三等大臣だ。あれぐらい善良にして、あれほど有望なる青年を、三等大臣のレッテルを張られたり二枚舌のせいというのはお気の毒でたまらぬけれども、官僚というのはそういうことを平気でやるのです。あなたにもひとつ忠告しておきますけれども、そういうレッテルを張られないように注意してください。あなたの前任者はみんなそれをやられているのですから、友人の一人として心からあなたに忠告いたします。  それから最後に私は言っておきたいことは、ともかく出てくるがんの薬は全部国が認可しているのです。保険薬として認知している。しないものは一つです。しかし認可されたそのがんの製薬が一体どれぐらい効果があるかということは一つもあらわれてない。あらわれていません。ないというのは悪いから。いま改めてひとつ大臣を通じて要望しますが、いままで許可したがん剤の一年間の使用量はどれくらいだ、売上金は幾らだ、それに対して有効性はどれだけあるか、ひとつ緻密な資料を出しておいてもらいたい。  いま一つ、それに加えて申し上げますが、製薬会社が売り上げで一番もうけておるのが、この前一般質問にも申し上げました、クレスチン、ピシバニールという薬です。ピシバニール、あれはいま年間どうですか。いずれも数百億円ずつの売り上げをやっているわけですが、何も効かないというのが専門医の意見です。保険薬だから薬として使わないわけにはいかぬけれども、使っているけれども、そんなものはまるで効力がない。しかし審議会許可したのだから、厚生官僚に言わせれば、これほど有効なものはない。しかし、世論の、専門家の使っている人たちも、とてもごうごうと非難しているから、それはたまらなくなった。たまらなくなったから、ピシバニールやクレスチンや、そういうがん剤を製造している、その関係者の薬屋だけがお互いに金を出し合って、いま許可を受けて何百億ずつ売っているその薬の効果を再調査するというか、再確認するというか、本当にどれだけ効果があるのかという、そういう機関を設けているのです。それで八田君あたりがわれわれの議員を代表して、そういうがん剤の効果を検査する機関ならば、丸山ワクチンも応分の負担金を出すから、一緒に効果を研究する仲間に入れさせてくれと言ったら、それは自分たちが厚生省から認可を受け許可を受けてつくっている、そのがん剤だけを研究する機関である、われわれの閉鎖的な機関であるから、そんなものは仲間に入れられぬ。それで仲間に入れないで、ただ自分たちが厚生省のおかげで毎年何百億円も売ってもうけ過ぎている薬が余りにも評判が悪いから、それを再調査するというごまかし機関をつくって、それを一生懸命、厚生官僚は奨励をしているのです。しかし、それはもうできているはずだろうから、その結果もあらわれたらひとつその資料をちょうだいしたいと思います。  とにかく探っていけばもう探っていくほど、大臣、本当にあなたもともするとひどい目に遭いますよ、これは。本当に警戒されたらよろしいと思うのですが、その機関はその後どうなっているのですか。
  29. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生御指摘の機関は恐らくがん集学的治療研究財団のことであろうかと存じます。がん集学的治療研究財団は薬物療法あるいは放射線療法、いろいろながんの療法を集学的に研究しようという目的で設立された財団でございまして、個別の薬というよりは、むしろそういった既存のテクニックを組み合わせることによりましてがんの治療を図ろう、こういう目的で設立されたものでございますが……(小林(進)分科員「出資者」と呼ぶ)出資者につきましては、これは財団でございまして、大鵬製薬、三共、呉羽化学、協和醗酵、中外製薬の各社でございます。
  30. 小林進

    小林(進)分科員 がんで膨大なもうけをして笑いのとまらぬ諸君が、そういうような名目で、自分たちのつくっている薬が余り評判が悪いから、そんなものの効果を何とかPRしようということでお互いに出資をしてつくった。インチキですよ。表面上はおやりになることは、皆あなたが言うとおりに、総合的に、やれ注射薬もそうだ、やれがんの何剤もどうだ、抗がん剤も何だ、そういう化学療法はどうだという、そんなもったいつけた言い方をしているけれども、何でもない、薬事資本だけが自分たちの効かない薬を防衛しようと思ってつくっているのだ。そういう状態ですから、これは絶対だめです。時間も来ましたから、大臣、英断をもって処置をしてもらいたいと思います。薬の問題はこれで終わります。  あといま一つ、いまの臨時行政調査会の問題の中で出てまいりました老人医療の問題も、これは大臣、何といっても私は了承できません。目的は、いわゆる老人医療の費用を節約しようというのが目的なのだ。いままで七十歳以上の老人医療を無料提供したり入院せしめたことによって金がかかり過ぎた。同時に、これを受けて立つ老人病院にも悪質なのがいて、打たない注射を打ったようなまねしたり、しない検査をしたような形にして不当な医療の請求をしたということ、それを防止しようということも第二の目的だが、よって結論は、いままで老人医療にかかった医療費の総額を六分の一に節約をしようというのがねらいなのだ。かかった費用を六分の一に削られたら、それを受ける方で不便を来すことはあたりまえですよ。だから、あなた方はその言い分として、入院などというものは老人を孤独化し、かつ、乾いた生活を送らせることになるから、家庭の中に入れて、在宅で温かい老人の老後を見守る、そのために在宅看護だとかあるいはホームヘルパーだとかいうものでそれを補っていくとおっしゃるのだが、一体老人在宅という宅がありますか。また、家族が家を持ったところで、お年寄りを家の中で専門に看護したり、めんどう見たり、三度の食事を食わせるような、そういう余裕のある家庭が一体日本にどれだけありますか。いまは皆共稼ぎですよ。そんな家の中で老人が寝ていて、それをめんどうできるなどというばかげた話はありません。  しかも、この前から申し上げたように孤独の老人だ。孤独の老人は日本においてもう九十万人を超えて百万人になろうとしている。この人たちが病院を追い出されたらどこへ行くのですか。しかも半年以上入院をいたしております老人も三十万人以上です。これからはともかく注射も打つな、検査もするな、何しろ見殺しにしようという医療行政なのだ。早く追い出せ早く追い出せ、追い出せと言われなくたって病院は、こんなのがいたって金にならないから、何だかんだと因縁をつけて追い出しますが、追い出されたお年寄りは一体どこへ行くのです。在宅とおっしゃるその在宅はどこにあるのですか。大臣、これをひとつお聞かせいただきたい。一体どこにその家があるのです。
  31. 林義郎

    林国務大臣 小林先生の御質問にお答えいたしますが、家がない、こうおっしゃいますが、やはりお年寄りも、子供がおられたりお孫さんがおられたりすることが多いのだろうと思います。もちろん寄る辺のない方もおられますから、それは特別養護老人ホームその他のいろいろな社会施設がございますから、そういった受け皿というものはちゃんとこれから整備を図っていかなければならない、こういうことだと私は思います。  ただ、私は、お言葉を返すことになるかもしれませんが、老人医療というものを考えるときに、一番老人にとって必要なことは健康な体を持つことである。それはそうなんです。それから、自分の子供たちと一緒に、孫たちと一緒にいて安定した生活を送ることが必要だと私は思いますので、そこで在宅というのがその次に出てくるであろう。そこでできないところに、特別養護老人ホームその他のホームというものがあります。さらに、どうしても病気だからこれは病院に入ってもらわなければしようがない、病院で看護を受けなければしようがないという方は病院に入ってもらうというのが物事の筋だと私は思うのでありまして、実はそういった筋道から少し離れたところにいままであったのではないか。それが今回、老人保健法を一生懸命やっていこう、こういうことでございます。したがって、健康は当然のことだとおっしゃるかもしれませんけれども、やはり健康というものを考えるときには、若いときからの健診をして予防をしていくということが一番必要なことであろう。そういった体系をつくってこれをやっていこう、こういうことで考えているわけでございますので、これはどこへ持っていくのか、家があるかと言われましても、いまお年寄りについて、子供さんがおられるところはそういったところに行ってもらうことがいいことではないだろうか。それは若い方によっては、リア王ではありませんけれども、みんな嫌だ嫌だと言う方もおられるかもしれません。むしろそういった社会的な風潮というものはやはりこの際考え直していただくようなことを一つずつやっていかなければならない。これは単に医療をどうするかという話ではないと思うのであります。社会全体の風潮というものを直していくということも一つの大きな政治のあり方ではないだろうか。日本型の福祉とか申しますけれども、やはり家族が一緒になって、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に夕げの食事をともにする、孫たちがきゃあきゃあ騒いでやっているというのが望ましい日本の家庭の姿ではないだろうか、こう考えていることを申し上げまして、御答弁とさせていただきます。
  32. 小林進

    小林(進)分科員 健康問題は賛成ですが、私は健康な老人のことを聞いているのじゃないのであって、病気になって入院をしている老人のことを聞いている。  社会局長、いますか。——大事なときに来ていない。一体こういう老人が出て、この家のない老人を何とかするのは、それは社会局の関係だろう。その設備が全国で一体どれだけありますか。社会局長、いないか。——君は老人保健部長か。時間が来ているからちょっと私は急ぎますが、どれくらいいるか。いまの孤独の九十万といま入院している三十万、そうして、がんかその他で一カ月三百円だの、あるいは注射で千五百円だのというような形で、みんな病院から追い出された者をどれだけ収容する能力がある。これは何もないはずです。ないなら一体どうやって充実するのか。設備のないところへ人を追い出して、殺すことばかりを考えている。老人保健法というのは老人殺人法ですよ。うば捨て山なんというものじゃない。これは年寄りをみんな殺していこうという法律です。私の言うことが間違っているか。これが一つ。  それから大臣、もう時間がありませんから、これはまた話が飛び飛びになりますけれども、一般質問で言った覚せい剤、麻薬ですよ。これくらい悪質で悪いやつはない。一〇〇%悪いことを承知で彼らは密輸したり販売したり、やくざの資金源になっている。そうして、それが高じて人殺しなんかしているのですから。  そこで私が言いたいのは、厚生省と、これは関税の問題ですから大蔵省と警察と、三者の連合で強力な撲滅機関をつくっていただいて、三年のうちにこれを撲滅するという一つの目標を定めて真剣に取り組んでいただきたい、これを私はお願いしておきます。  それではひとつ答弁を……
  33. 吉原健二

    ○吉原政府委員 老人ホームの数でございますが、一般の養護老人ホームが現在九百四十五カ所ございまして、収容定員が約七万人でございます。それから寝たきり老人その他、心身の機能の不自由な方のための特別養護老人ホームというのがございますが、これが約千百六十五カ所、約九万人の収容定員でございまして、現在、やはりこの特別養護老人ホーム整備を急速に進めている、一番力を入れて進めている、大体年百カ所ずつくらいの特別養護老人ホーム整備を進めているわけでございます。病院との関係におきましては、こういった特別養護老人ホーム整備をこれからもっと力を入れて進めていくということが一番大事なのではないかと私は思っております。  在宅の方々に対する孤独な老人あるいは寝たきり老人の方に対する福祉サービスとしましては、老人家庭奉仕員でありますとか、あるいは老人福祉センターにおけるデーサービス事業というものを広げてやっておりますので、そういった対策もこれから大いに力を入れてやっていきたいというふうに思っております。
  34. 林義郎

    林国務大臣 小林先生の御質問にお答えいたしますが、先生から友人としての御忠告を先ほどいただきました。謹んでお受けしまして、私も拳々服膺させていただきたいと思っております。  それから、最後に覚せい剤対策の話が出ましたが、実は五十六年六月に江東区で通り魔事件というのがありまして、早速そのときに、五十六年七月に、覚せい剤問題を中心として緊急に実施すべき対策というのを、総理府の薬物乱用対策推進本部というのがありますので、そこでやっておるわけです。もちろん大蔵省、警察、わが省と一緒になってやることは私は大賛成でありますから、こういった対策本部もあることですから、そういったところで御提言の趣旨は十分に徹底させたい、こういうふうに考えております。
  35. 小林進

    小林(進)分科員 これで質問を終わります。
  36. 上村千一郎

    上村主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  次に、田中昭二君。
  37. 田中昭二

    田中(昭)分科員 現在の病気の中で、がんとか脳卒中及び心疾患等は常時死因の順位の上位を占めておりますが、そういうことで国民の関心も非常に高くなっております。ところが、その中で肝炎に関しては、肝炎という病気のこわさが一部において近ごろ大変認識されておるにもかかわりませず、その社会的関心はいま一つと言えるような状況でございます。私は、この場をかりましてこの肝臓病に関する諸問題を取り上げ、これにより国民の肝炎に関する知識の高揚に資することができるかと思っております。  そこで、最近わが国では肝臓病による死亡者がふえておりますが、肝臓病は二十一世紀の国民病と言われるようでございますが、肝臓病はどのようなものであるのか、まず簡単に説明お願いしたいと思います。
  38. 三浦大助

    ○三浦政府委員 代表的な肝臓病といたしましては肝炎と肝硬変があるわけでございますが、肝炎の原因はウイルス性のもの、アルコールによるもの、薬物によるものということですが、わが国の肝炎の大半はウイルス性の肝炎でございます。肝硬変というのは、肝炎が進行いたしまして、肝臓の細胞が破壊されて機能が弱ってくる、こういう病気でございます。  わが国の慢性肝炎あるいは肝硬変によります死亡数というものは年間一万六千人くらいおりまして、死因の第八位を占めております。
  39. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いまお聞きしましたように、肝硬変に関しましては昔からよく聞いておりますが、肝炎に関してはただ漠然とした、いままでそういう認識しかございません。したがって肝炎についてお伺いしますが、肝炎に関する実態はどのようになっておりますか。
  40. 三浦大助

    ○三浦政府委員 肝炎も二つございまして、急性肝炎というのがございますが、これは、年間大体十八万人くらいがこの肝炎にかかっていると言われておりまして、その九割は大体治りますけれども、あとの一割が慢性肝炎に移行するということでございます。  慢性肝炎の方は、研究班の調査によりますと、いま約三十万人くらいの患者がおると推定されておるわけでございますが、その中の約一割が肝硬変に進行していく、こういう実態でございます。
  41. 田中昭二

    田中(昭)分科員 なるほど肝炎と一口に言っても、その経過の中ではいろいろな病状の変化があるわけでございますね。  そこで、急性肝炎と慢性肝炎の違いはどういうものか。その中で特に心配になるのは、急激に発病して死に至るという致命的な肝臓病もあると聞いておりますが、いかがでしょうか。
  42. 三浦大助

    ○三浦政府委員 急性肝炎というのは、最初かぜを引いたような感じで発病いたしまして、その後から吐き気が出たり、吐いたり、あるいはおなかが痛くなったりという胃腸症状がだんだん出てくるわけですが、大体一週間くらいたつと黄疸になっていく、これが治療によってやがて治っていきます。  一方で、慢性肝炎と申しますのは、肝臓の機能障害が半年以上続いておる状態を言うわけでございまして、症状は急性肝炎に比べて軽うございます。ただ、慢性肝炎の中には、初めから慢性肝炎の形態をとるものもあるわけです。  最後に先生おっしゃいました、急に発病して致命的な経過をたどる劇症肝炎というのがございます。これにつきましては、急激に広い範囲で肝臓の細胞が破壊されます。最後は精神症状まで起こしてきて、昏睡ないし亡くなるということでございますけれども、この劇症肝炎につきましては私ども難病に指定いたしまして、約二百人くらいが治療研究の対象になっておりますが、これでいま治療研究を実施しているわけでございます。
  43. 田中昭二

    田中(昭)分科員 実は私の身内がいまお話のありました劇症肝炎で最近亡くなったのです。その病状は大変悲惨といいますか、病状そのものもですけれども、それを取り囲む環境、これが大変な状況でございます。疾患というとらえ方ではなくて、その原因という点から肝臓病を考えてみなければならない。酒を飲むと肝臓を悪くするということが世間一般に言われておりますが、こういうのは昔から肝硬変としてあったわけです。  そこで、肝臓病の中にはいま言います劇症肝炎のもとになります、厚生省でも難病として取り扱っている伝染性のものもあると聞いておりますが、どのような種類がありますか、お聞かせ願いたいと思います。
  44. 三浦大助

    ○三浦政府委員 いま先生から御指摘いただきました伝染性の肝臓病というのはウイルス肝炎のことでございまして、このウイルス肝炎はいま盛んに研究班が研究している段階ではございますけれども、A型の肝炎ウイルスによりますA型肝炎、それからB型の肝炎ウイルスによりますB型肝炎、そのほかにAでもBでもないというのが非A非B肝炎、こうむずかしい名前がついておりますけれども、この中で、A型肝炎というのはふん便から伝染いたします。それから、B型肝炎というのは血液の方から伝染する。それから、非A非B肝炎と申しますのはまだウイルス自体がどういう型のものかどうか、はっきりわかっておりません。
  45. 田中昭二

    田中(昭)分科員 同じウイルスの肝炎でありながら、原因のウイルスの種類によって区別されるというふうにいまお話がございました。その病状も大変異なっておる。未解明のところもあるようですが、ウイルス肝炎のそれぞれの特徴はどうなっているのですか。
  46. 三浦大助

    ○三浦政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、ウイルス肝炎にはA型、B型、それから非A非Bという三つの型がございますが、A型肝炎と申しますのはふん便を介して経口感染するものが大部分でございまして、したがって集団発生という形で出てまいります。これはわりあい潜伏期間も短うございますが、それに対してB型肝炎の方は、これは血液を介した接触感染ということで、非常に経過が長引く肝炎でございます。非A非B型肝炎と申しますのは、これはB型肝炎に非常に症状もよく似ております。  これらの三種類の肝炎に共通した臨床症状といたしましては、いわゆる胃腸症状あるいは黄疸症状、こういうものが主に見られるわけでございます。
  47. 田中昭二

    田中(昭)分科員 一つ飛ばしまして、ウイルス肝炎ですが、その中のB型肝炎は血清肝炎と言われてきたものであるようですが、血液を介して伝染するということですが、昔は、売血制度時代には輸血後に肝炎にかかる例が多かった。そういうことで社会的に問題になったということでございますが、現在ではこの売血制度にかわって献血運動が盛んで、年に献血者が延べ六百万から七百万というふうに聞いております。したがって、私は、この献血の血液に関してもどのような取り扱いがなされているのか、興味があるわけでありますからお尋ねするわけでありますが、B型肝炎は血液を介して伝播することがありますし、B型肝炎の患者から輸血を受けることにより肝炎を発病する可能性もあると思いますが、特に献血時にどのようなチェックを行っておりますか。
  48. 持永和見

    ○持永政府委員 先生御指摘のとおり、B型肝炎が血液を介して伝染することがあるのは事実でございます。したがいまして、私ども現在献血を非常に推進してやっておるわけでございますが、献血におきますB型肝炎対策といたしましては、献血時におきまして健康診断をいたしまして、症状のある人たちを除外することをまずやっております。それから、採血後に抗体反応の検査をいたしましたり、肝炎抗原の検出とかあるいは肝機能検査などを厳重に行いまして、検査値が陽性であるというふうに出た血液につきましては医療機関に供給することがないようにいたしまして、輸血によって肝炎が発生するということの予防に努めておるところでございます。
  49. 田中昭二

    田中(昭)分科員 その検査で、問題は、B型肝炎のウイルス菌の保有者だということが発見された場合、これが問題でございますが、その結果を本人に知らせるかどうか。ということは、本人の個人的なプライバシーの問題も種々問題がございまして、いろいろな意見があると聞いております。また、たとえ知らせたとしても、その後の追跡指導及び処置に関しては学問的にはいまだ確立されていない。現場では大変混乱といいますか、言おうとしても言えない、しようとしてもされないというような問題。ですから、献血のときに発見されたB型ウイルス保有者への対応に関しては余りにも問題が大きく、時間も限られておりますので、この短い時間では質疑が困難でございますから、次の機会に譲ります。  血液を介して伝染すると言われておるB型肝炎及び非A非B型肝炎は、何も輸血ばかりに限られたものではない。日常生活においても常に直接間接の感染の危険を伴っていると思われるのです。その原因となるウイルスがいまだ確認されていない非A非B型肝炎については、研究の進展を待つ以外に仕方がない、そういう面もあるかと思われますが、ここではその実態がある程度解明されているB型肝炎についてだけ取り上げてみたいと思います。  B型肝炎ウイルスに長期感染した状況にある人がいると聞いておりますが、どのような状態でございますか。
  50. 三浦大助

    ○三浦政府委員 B型肝炎ウイルスに長期間感染した状況にある者という人は、これはHBs抗原というのがございまして、これが持続的に陽性を示す人のことでございます。これは症状には出てきませんで、B型の肝炎ウイルスキャリア、無症候性キャリアと呼んでおるわけでございますが、このほとんどの人は肝炎の症状を示さないで、肝臓機能障害も認められておりません。これは、生まれたときとかあるいは乳幼児のときに、感染に対する抵抗力が不十分な時期にB型肝炎ウイルスの感染を受けるとキャリアとなる、こういうことでございます。
  51. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、このキャリアの人が、先ほど私が言ったような劇症肝炎か何かになってわずかな時間で死んでしまう。その死ぬことについての処置が完全にできないということもございます。しかし、これもちょっと問題がございますから次に送ります。  この肝炎に関して、日本におけるいま説明のありました肝炎のキャリアの比率が、先進国の中でも日本が最も高い、こういうふうに言われているのです。これも全般的な一つの問題であろうと思うのです。私は、日本がウイルス肝炎に対して立ちおくれた状況にあったのではないかという心配が起こるわけですが、このキャリアには特別な地理的な分布もあるとも聞いております。このキャリアの国内の、また国外の分布状況はどういうふうになっておりますか、お知らせ願いたいと思います。
  52. 三浦大助

    ○三浦政府委員 研究班の報告によりますと、現在、世界じゅうに一億七千三百万人のキャリアがいるという推定を下しているわけですが、その中の七六%がアジア・大洋州、こういうところにおる、あと一四%がアフリカにおる、したがってヨーロッパには非常に少ない、こういうことになるわけですが、国内のキャリアの推定人口ですが、大体二、三%といいますから、大体二百万人から三百万人はいるんじゃないだろうかというのが肝臓関係の専門家の御意見でございます。  このキャリアの総人口に占める割合でございますが、おっしゃるように非常に日本も高うございまして、アジア・大洋州で大体五・八%ぐらい、それからアフリカで六%、アメリカで〇・五%、ヨーロッパで一%ということでございます。日本では最近非常に東南アジアの影響を受けてまいりまして、二、三%ということで最近高くなってきておるということが言われておるのです。
  53. 田中昭二

    田中(昭)分科員 先進国の中でも日本が大変キャリアの比率が高いということがわかったわけですが、また、その原因が東南アジア等というような話もございます。これはまた後ですることにしまして、このキャリアはB型肝炎の伝播にどのような影響を及ぼしておるのかをお知らせ願いたいと思います。
  54. 三浦大助

    ○三浦政府委員 B型肝炎ウイルスのキャリアのほとんどの人は、感染しても発病はしないままで一生を送ることが多いわけでございますが、ただ一部の方で慢性の肝臓疾患に移っていくというのがございます。  キャリアに関しまして大変問題になりますのは、御質問のようにキャリア自体が感染源になり得るということで、いま問題になっておるわけでございますが、これにつきましては、医療機関の中での血液の付着によりまして医療従事者とか患者への感染ということが考えられておるわけでございます。そのほかに、日常生活でかみそりとか歯ブラシの共用とか鼻血の後の不始末による感染、こういうものが感染源という意味からして、大変重要なことではないだろうかと思います。特に生まれたときに、あるいは乳幼児期におきましての母親から子供への感染というのがいま問題になっておるわけでございますが、こういったお母さんと子供の間の感染を起こすのは、お母さんがこういうキャリアの場合子供もキャリアになる、そして子供さんがまたそのキャリアの伝染源としての可能性があるということで、いま医学的にも非常に重要視されている問題でございます。
  55. 田中昭二

    田中(昭)分科員 この重要視されております母子間の感染ということですが、ウイルス肝炎をある程度予防する薬剤もすでに開発されておるというふうに聞いております。また、それがあればウイルス肝炎を根絶し、ひいては慢性の肝疾患を減少せしめるもととなるわけでございまして、その感染を防止するということが大事だろうと思います。また、これにより新たな感染源をつくらないということにもなりますし、この意味においても、感染を受ける危険が大きい人々やキャリアから生まれる子供たちに利用されるワクチンの開発が最も重要であると考えます。  そこで、B型肝炎に対するワクチンの開発状況はどうなっておりますか。
  56. 持永和見

    ○持永政府委員 B型肝炎のワクチンの開発状況を御説明申し上げますが、B型肝炎のワクチンの開発につきましては昭和五十年度から国の研究費によって着手をいたしまして、昭和五十四年度までにチンパンジーを使いましての有効性安全性を確認する前臨床試験、いわゆる動物実験が終了いたしております。昭和五十五年度からは医療従事者を対象とした臨床試験を行っておりまして、昭和五十七年度以降は成人での臨床試験あるいは子供に対する臨床試験、そういったものを行っておりまして、現在ワクチンの開発に鋭意努めているところでございます。  こういった相当大がかりな治験、臨床試験をいま行っておりまして、近く臨床試験も終わる予定でございますから、この結果を踏まえて認可申請が出されることになるというふうに考えております。
  57. 田中昭二

    田中(昭)分科員 その認可申請を通して、将来見通しをもう少しはっきりできませんか。
  58. 持永和見

    ○持永政府委員 現在私ども、研究班を通じましていろいろとこういった研究が行われておりまして、かなりいい成果が出ているやに聞いております。したがいまして、その認可申請に当たりましては、そういったいい成果を踏まえて十分審議をされることになるというふうに考えております。
  59. 田中昭二

    田中(昭)分科員 この病原菌は東南アジア関係が発生だというふうなことがありまして、別名オーストラリア抗原ということも聞いておるわけであります。そこで、とにかく日本にこういう病気が入ってくることをとどめる意味におきましても大事なことでございますが、近ごろは海外旅行者が大変多い。特に東南アジアあたりは多うございまして、全体的にも三百万を超えておりますし、先ほど世界の分布図の中でも言われましたように、東南アジア等でも肝炎の発生が大変多いのですね。これらの地域への渡航者に対する対策をいままでどう打ったのか、また今後どう打とうとしておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  60. 三浦大助

    ○三浦政府委員 B型肝炎につきましては、東南アジアで非常に多いわけでございますけれども、このB型肝炎というのは普通は輸血等の院内感染によって起こる率が非常に高いわけでございまして、一般の旅行者がB型肝炎に感染する危険性というのは院内感染ほどそう高くはございません。  ただ、A型肝炎となりますと、今度は食物とか水というようなものによって感染をいたしますので、東南アジアの旅行者に対しましては、旅行の際の予防接種その他に来られます方々に対しましても、旅行の際のパンフレット等にこの肝炎に対する注意事項というものを書き込んでございまして、そういう意味でのPRを私どもすでに開始しておるわけでございます。
  61. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いや、東南アジアから持ってくる病気は肝炎だけではないとも聞いておりますよ。ですから、国内でそれだけの力を入れてこの肝炎について取り組んでおるものに対して、いまのお話ではただパンフレットに書くようなPRをしておりますけれども、これまた現実にどこまでなされているか問題がある。だから私はお聞きしたわけですが、これは厚生省だけではなくて、外務省、運輸省あたりもそれぞれの機関があるはずですから、その辺も含めてきちっとしてもらわなければ困ると思うのですが、どうでしょうか。
  62. 三浦大助

    ○三浦政府委員 まだ予防法が確立されておらないところに私ども非常につらいところがあるわけでございますが、これからの国民病とも言われる肝炎でございますので、そういう方面の開発は、もちろんいま私ども研究班で努力をいたしておるわけですが、いまのところは旅行者に対する呼びかけということで対処せざるを得ないわけでございまして、何とかこれを早く行政の線に乗せるような努力をしてまいりたいと思っております。
  63. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、どうですかね、行政がやれる範囲というものもありましょうけれども、仮に東南アジアに行く人たちに、肝炎というものは大変危険なものですよ、こういうことを注意しなさいというぐらいのことは、やはり厚生省国民の健康を守るという立場に立てば当然やるべきではないか。先ほどPRをしたと言われるけれども、その実態はあやふやなんです。それならば国民の健康に責任を持つ厚生省として、もう少し手を伸ばすべきではないかと私は思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  64. 林義郎

    林国務大臣 田中議員の御質問にお答えを申し上げます。  ただいま政府委員とのやりとりを聞いておりまして、肝臓の問題というのはなかなか大変な問題だなということを改めて深く認識したような次第でございます。二十一世紀の病気だと言われているような病気でありますし、これからいろいろなことをやっていかなければなりませんが、決定的にどうしたらいいかという対策がまだ見つかってないというところですから、見つからないときに、注意しなさいよ、注意しなさいよ、こう言うだけでは、それではなったときにどうしたらいいのだということになると、また一つも二つも問題があるように思うところでもあります。  確かに大変こわい病気である。田中先生のお身内の方で亡くなられた方もあるということで、先生は実感として感じておられるようでございますから、やはりこの辺を何とか考えて何か有効的な方法があるのかどうか、私の方も少し考えてみたい、こういうふうに思っております。
  65. 田中昭二

    田中(昭)分科員 肝炎そのもののいま置かれております立場まで踏み込みますと、いろいろな問題があって、短な時間で解決できない問題がありますから、それは先ほどから前もって申し上げたわけです。厚生省としてもいままでこれをほうっておったわけじゃなかろうと思いますし、いろいろな施策を講じてこられたと思いますからそれをお聞かせ願って、そして、いま大臣からのお話もございましたが、これはいままでの経過から見てもほうっておけない問題であるというふうに思いますから、今後の対策推進等についてそれぞれの方から御決意を伺いたいと思います。
  66. 三浦大助

    ○三浦政府委員 現在肝炎対策と申しますのは、いま肝炎の総合的な研究をやっておりまして、これは難病の研究班でも班を組んで研究をしておるわけでございます。  それからもう一つは、肝炎対策の進め方をどうしたらいいか。先生おっしゃるようにもうそろそろ、結核に次ぐ国民病としての問題でございますので、その進め方をどうしたらいいかという検討、この二本の柱をもっていま検討をしておるわけでございます。  厚生省の方で行っております肝炎の研究と申しますのはすでに二十年前から始められておるわけでございますが、本格的には五十四年から肝炎全体のプロジェクトを結成いたしまして、研究体制の整備を図ってきて、肝炎の予防とか、治療法の確立、これを目標にいま総合研究を実施しておるわけでございます。  一方で、肝炎対策の進め方の検討につきましては、いままでの調査研究の成果、それからウイルス性肝炎の感染経路あるいは予防の方法、これがだんだんわかってきましたので、これを踏まえまして、昭和五十六年度に肝炎対策推進協議会を発足させてございます。この中でいま、肝炎に対する情報の収集と分析、それから先ほど来問題になっております無症候性キャリアの発見、それから治療、予防に関することと、こういう三つのことをいま肝炎対策協議会の方で検討を急いでいる最中でございます。
  67. 林義郎

    林国務大臣 先ほど来お話がありましたし、いま担当の局長から申し上げましたが、肝炎対策の重要性というのは私も十分認識しておるつもりでもございますし、実は私の身内でも肝炎で大変困ったのがある。よくわからないというのですね、はっきり申し上げて。けれども、そういうことではおぼつかないわけでもございますし、今後ともその推進は十分にやっていかなければならない、こういうふうに考えております。
  68. 田中昭二

    田中(昭)分科員 時間もないようでございますから、最後に一問だけお聞きしておきますが、これは一般質問等で問題になりました中国在留孤児の問題でございます。  五十八年度の予算で定住なりまた里帰りをする孤児に対する日本語の再教育といいますか、そういうものを含めてセンターか何かをおつくりになるというのだが、その内容を簡単にお聞かせ願いたい。  と同時にもう一つ、いろいろこれまで議論されましたから省きますが、この孤児の問題については、孤児が心情的にはやはり自分の出生した祖国に一遍帰りたいということと同時に、それぞれの違った体制の中で生活をしてきて——私はいまテレビ等で孤児の訴え等を聞いておりまして思うことは、生まれて二、三年のことをいろいろ聞かれてもわかりっこない。約千人かそれ以上の人が現在まだ残っているとするならば、ことしはそのうちの百何十人かについてまたそういうことをされるようでございまして、そういうことでだんだんこの問題が進められておることについては評価もいたしますけれども、孤児の心情、それから向こうの養父母の問題、特に養父母の問題については、こちらの肉親がどうなっているかわからぬというような上でも、昔から生みの親より育ての親とも言いますから、そういうことを考えますと、そういう点の処置をきちっとして、仮に中国にいま千人残っておるとするならば、その孤児たちがこちらに訪ねてくるときには、体制の違いとかそういうものを一切きちっとして、そうして一日も早く多くの人が日本に来て肉親捜しができるようにしたらどうかと思います。その一つの方法として、何か帰国船でも仕立てて一挙に何百人というようなことをしてみてはどうだろうかと、そういう方法もあっておるようでございますが、これはひとつ、大臣のこれに取り組む決意だけをお聞きして、終わりたいと思います。
  69. 山本純男

    山本(純)政府委員 最初に御質問のございました帰国者定着促進センターの件でございますが、五十八年度予算の中で、建設費三億五千万を計上いたしまして、十月から開所できるように建設を進めたいと考えております。  規模は二千平米の建物を予定しておりまして、そこで実施いたしますのは、帰国された孤児を世帯ぐるみで年間百世帯、四カ月ずつ三十三世帯ずつ計百世帯お預かりいたしまして、四カ月間、日本語の習得、日本と中国といろいろ異なります生活上のもろもろの慣習その他の習熟、さらにでき得るならば職業につくためのもろもろのお手伝い、こういうものを実施してまいりたいというふうに考えております。その間の生活費その他は、すべて国で負担をいたします。そういうための経費といたしまして、五十八年度八千三百万円、平年度分にいたしますと一億三千万程度になろうかと思いますが、予算を計上させていただいている次第でございます。  また、養父母の問題につきましては、昨年以来一年近くにわたりまして、日中両国政府の担当部局の間で入念な協議を続けてまいったところでございまして、この一月に大筋で原則合意に到達いたし、いま現在、外交ルートを通じまして細部の詰めを進めているところでございますが、早い時期にこれの完結を期待いたしておる状況でございます。  また、孤児の帰還をさらに促進するという問題につきましては、私どももその必要性は十分に感じておりますし、また中国政府も原則的には促進に賛成をいたしてくれておるわけでございますが、何分にも中国にはいろいろと事情もあることでございまして、私どもと中国政府との間では、今後ともその問題については十分前向きに協議を続けてまいりたいと考えております。  また、今回やっております孤児の訪日肉親面接調査、私も数回センターに参りまして状況を拝見させてもらっておるわけでございますが、御指摘のとおり、なかなか孤児御本人に対しても不本意な点が多々あることを痛感いたしておりますが、何分にも十六日間という短い期間に、しかも、手がかりとしては、御指摘のとおり三十八年前のきわめて幼い時期の頼りない御記憶というものが頼りだという方がほとんど大部分でございますので、大変難航しております。  今後とも、調査の進め方につきましては、孤児の方々の御心情もお察しいたしながら、十分工夫をして、できることはなるべく改善を図っていきたいというふうに考えております。
  70. 林義郎

    林国務大臣 田中議員の御質問にお答え申し上げますが、私も今回四十五人の中国孤児の方々に御挨拶に行きましたときに、私が御挨拶を申し上げましたら、みんな涙を流して聞いておられるわけです。私も御挨拶をしながら、この辺まで込み上げているものを本当に感じました。  三十八年という長い年月でありますし、恐らくそのときにはまだいたいけな子供であったような方々が、いま四十歳過ぎぐらいまでになっておられるわけでありますから、そういったお気持ちは本当に察するに余りあると思いますし、まだ残っておられるのが八百人もおられる、こういうふうな話でありますから、その方々の御要望というものはできるだけ早く達成させてあげたい、これはもうだれしも考えることではないだろうかと思いますし、それを早くやるというのは、われわれに与えられたところの一つの役割りだろう、仕事だろう、こう思っておるところであります。  ただ、いままでいろいろと中国側とも話をいたしまして、中国側にもいろいろ事情がありますし、特に養父母の扶養の問題というのはやはり大切なことである。先生、いまいいことをおっしゃいましたが、生みの親より育ての親、こうおっしゃったが、また日本では一方で、血は水よりも濃し、こういう話もあります。  私、思いますのに、どうも日本よりは中国の方が養い親というものを大切にする。あの三国志じゃありませんが、義理で一回結ばれた義兄弟というのは自分の実の親よりも大切だ、こういうことがある。やはり中国人にはそういった倫理があるのだろうと思うのですね。日本にそんなことがあるのかどうかということは私は考えてみなくちゃなりませんが、やはり向こうでの物の考え方というものも十分に考えて話を進めていかなければならないだろう、こう思うのです。そういったことを考えながら、中国政府といま大分話が煮詰まってきましたし、先ほど局長からお話し申し上げました家族の扶養費の話も、原則は決まったわけでありますから、これからどうするかという話もあります。いろいろな御提言がありますから、そういった御提言を率直に中国側と話をしていろいろとやってみたらどうだろうか、こういうふうに考えているところでございます。
  71. 田中昭二

    田中(昭)分科員 わかりました。これで終わります。
  72. 上村千一郎

    上村主査 これにて田中昭二君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。
  73. 土井たか子

    ○土井分科員 きょうは、大きく分けまして三問、三十分の間に質問を申し上げたいと思うのです。  一問目は、本国会では提出が予定されておりませんが、検討中のものとして考えられてまいっております優生保護法の一部を改正する法律案についてのお取り計らいの問題でございます。これは、もうすでに大臣は頭を抱えていらっしゃいますが、御案内のとおり、先日、衆参の女性議員が与野党全員こぞって大臣のところにお邪魔をいたしまして、この法案提案はぜひ思いとどまっていただきたいということの御要請を申し上げました。大臣はその席で、やはりこういうのには慎重に論議を重ねていくということがさらに必要であるというお気持ちも披瀝をされたということでもございますし、法律であながち規制をすることに効果を期すことができるかどうかということも非常に疑問点があるという向きも含めて、悩みに悩んでおられることが私たちにはよくわかったわけでございますが、最近は、何かコンセンサスを得れば提出するというふうな御答弁が国会の席でもあったやに私たちも存じておりますけれども、どうもコンセンサスがまだ得られていない段階だと私たちも考えておりますし、むしろこれは、必要とあらば種々これに対しても申し上げざるを得ないと思いますけれども、この今回の考え方につきましては、四十七年と四十八年の国会に上程されて、世論の強い反対に遭って審議未了、廃案になったという中身が、そのまままた今回も考えられているということでもあるやに私たちは察知いたしております。つまり、優生保護法第十四条一項四号の中から「経済的理由」というのを削除するということ、中身がそれでございますよ。もうここまで申し上げれば、それ以上申し上げなくても、いろいろな声が大臣のところには届けられていると思います。国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会全国加盟組織四十八団体、それからさらに保健医協会、さらに日本家族計画連盟等々も、強くこれに対しては、今回法案を提案されることに反対だという向きをもう公にしていらっしゃいます。厚生大臣には、まずこれに対しての御見解をひとつ承らせていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  74. 林義郎

    林国務大臣 土井議員にお答えを申し上げます。  優生保護法の問題は、たびたびお話を申し上げているところでございますからくどくど申し上げませんが、前大臣森下さんが、予算委員会におきまして、次期通常国会に提出をいたしたい、こういうふうに言明しておりますし、私もその後を受けて、行政の一貫性はたっとばなければならないという原則のもとに、現在どういうふうな形で出すかについて鋭意検討を重ねているところでございます。  御指摘のように四十七年、四十八年両国会に出まして廃案になりましたこともありますし、同じ廃案になったものをまた出して、また廃案になるような憂き目は私としてはするべきでない、またしたくもない、こう考えておりますし、いろいろとお話を聞いておりますと、これは単にフィジカルな話、母体の保健であるとか中絶をどうするかという話ではない、広く人間の倫理にかかわる話でありますし、さらには宗教の問題にもかかわってくる話である。キリスト教の考え方と仏教の考え方はやはり違うんですね。私はこれはやれば長くなりますからきょうはやめますが、また先生には個人的にでもお話をしてもいいのですけれども、そういうふうに違うのです。ですから、そういったものもありますし、それから、先ほどお話がありましたが、国際婦人年のときに婦人の産む権利というような話もございますし、そういったものをいろいろ考えながらやはりやっていかなければならない。  問題が出てきた発端というのは、やはり生命を尊重する、生まれ出るところの子供はやはり殺してはならないのではないか、こういうふうな基本的な考え方があるわけでありまして、だれも好きこのんでそういったものを殺そうという不健全な家庭はないと思うのでありまして、それぞれいろいろな事由もあるわけでございましょうし、社会的な観念、いろいろなものも違っているわけでありますから、それをどうしていくかということ、その辺を考えることも必要だろうと思います。  と同時に、世論一般の風潮の話でございますから、教育の問題、それは学校教育もありますし、一般社会教育もありますし、社会風潮全体の問題でもある。家庭のしつけの問題もあるでありましょうから、やはりそういったものをどうしていくかということから考えていかなければ、法の一条を改正したことによってよくなるとは私は考えておらない。やはりそういったことを全般的に考えていくのがお互い政治家としての責務ではないだろうかというふうに考えているところでございます。そういったことでいま鋭意検討中ということで、御答弁とさせていただきます。
  75. 土井たか子

    ○土井分科員 いまのお気持ちはよくわかるわけでございますが、結論を簡単に言えば、ただ法律による規制を強めるという方策は百害あって一利ないということが少なくとも考えられていい問題だろうと私も思います。したがいまして、そういう点からすると、鋭意検討中とおっしゃるその検討をずうっと続けていただいて、どうかその法案を提案することを目的とした目的的検討でございませんように、ひとつその点を再度要求を申し上げたいと思いますが、大臣、この点はよろしゅうございますね。
  76. 林義郎

    林国務大臣 中曽根内閣といたしましては、提出予定法案の中に目下検討する云々というような形で入っているわけでございますから、優生保護法と母子保健法と二法並べて、どちらでどうするかということで、なお検討をするものという中に入れてございますから、そういったことで国会にお示しをしてあるところでございます。だから、やはり検討して法案の形にするということが一応検討の題目でございまして、出さないので検討するというわけには、私の方の立場としてはちょっと言えないのが実情でございますから、その立場は御了解を賜りたい、こう思います。
  77. 土井たか子

    ○土井分科員 いまの感触からすると、くどいようでございますが、近日中に法案ができ上がって国会に提案するというのは、やはりそう考えていくことはどうも無理があるというふうにも推量されますが、そのとおりに考えておいてよろしゅうございますね。
  78. 林義郎

    林国務大臣 政府の中の話を申し上げて恐縮でございますが、提出法案は三月十一日までにそろえて出すように、こういうふうなお達しが内閣官房の方から参っておるわけでございますから、できれば、いまの段階では、それに間に合わせなければならないというのが形式なたてまえでございますが、先ほど来御説明しておりますように、いろいろな問題があるのでございますから、その辺の御事情は御賢察をいただければありがたいと思っております。
  79. 土井たか子

    ○土井分科員 そういたしますと、望みは、十一日ということを考えてみれば出そうにないと、一応私としては、賢察をしていただきたいということでございますから、察知をさせていただくことにいたします。大臣笑っていらっしゃいますが、それはそのとおりだと私は思います。  さて、二問目の問題に入りたいと思うのですが、国際障害者年についてただいま長期行動計画が組まれているわけでございますが、この中で、いろいろ障害者の方々に対する、また障害児の方々に対する教育は計画に組まれているわけでございます。ところが、健常者に対する、障害者に対しての理解と、ともに生活をしていくための教育というのは余り考えられていないのです。いろいろ障害者の方々の声を聞いてまいりますと、この問題に対する要望と申しますかお気持ちが非常に強いのです。生活環境の改善についてはそれなりの努力というのがだんだん払われつつございます。雇用率の問題を見ましても、数字の上では一応年々わずかではございますけれども努力の跡が見えるのですが、ただここで時間の関係がありますから、労働者の職業安定局が集計をされましたその数字の中身を見てまいりまして一つ思われることは、民間の方の企業の未達成企業の割合というのが非常に高いのです。四六・二%というわけですね。それをさらに見てまいりますと、規模が大きくなればなるほど、未達成企業の割合が大きくなるのですね。これは大変考えさせられる中身でございまして、こういうことも一つは健常者に対する教育ということが問われている問題ではなかろうかとも思うのです。  障害者の方といろいろ話をいたしておりますと、食事ぐらいは健常者の方がつき合うことは当然だというので、なさいますが、いざ結婚等々の問題になってまいりますと、そっぽを向かれるという傾向がまだまだある。日常茶飯事の問題を考えれば考えるほど小学校から、できたら幼稚園から正課の中に障害者に対する理解と、それからともに生活していくということのための教育が考えられなければならないのではないかということなのでございます。もっと適切な、考えてみる例というのがほかにもあろうかと思いますが、スウェーデンの場合なんかでは、高校から大学への進学に当たりまして、障害者の家庭で一定期間をともに暮らして障害者に対する理解ができているという、その障害者の保護者の保証をもらわないと入学資格を持つことができないということも決められたりしております。  それで、何とか障害者と溶け合った社会というものを形成していくことのための非常に大切な問題である、基本的に問われる問題であろうかとも思われますので、これは、厚生省だけの一存でできる問題ではございませんでしょう。恐らく文部省といろいろと御協議をくださるという中身になってまいろうと思いますが、こういうことに対しての厚生大臣の御所信、それから、今後こういうことに持っていくことが必要ではないかというお気持ちなどもひとつ聞かせていただければと思いますが、どうでございますか、大臣。
  80. 林義郎

    林国務大臣 土井議員の御質問にお答え申し上げます。  国際障害者年もありましたし、政府といたしましても、障害者対策推進のためには、まず国民的な理解というものが高まってくることが必要であろう。政府としても、障害者対策に関する長期計画というものを置いて、幅広い広報活動をやろう、こういうことであります。厚生省でも社会参加促進事業身体障害者福祉週間推進事業というのを新たに加えまして、広報啓発活動に鋭意努めたところでございますが、今後とも各方面、各省のところといろいろな連絡をとりながらやっていかなければならないと考えております。ちなみに、この広報活動は、総理府に障害者対策推進本部担当室がありますから、そこが中心になってやるものだろうと思います。  一般的に申しまして、障害者と一緒になっていく、こういう形、特に障害者のことを知らせる啓発広報活動のほかに、やはり保健医療の問題もありますし、教育、育成の問題もありますし、さらには雇用、就業の問題もありますし、また福祉、社会、生活環境という幅広い分野で、私は、やはりこれをやっていかなければならないと思います。  いまスウェーデンのお話がございましたが、スウェーデンまでやるというのは、私はなかなか現実の日本ではできないと思いますが、そういった身障者の方々が一般社会の中に溶け込んでやっていくような体制をつくること、そして本当に、単にそれはもう障害者だからほうっておいて治療しておればいいというような話でなくて、まだまだいろいろな能力があるわけでありますから、一般社会の中に溶け込んでいけるような体制をつくっていくことは大変必要なことではないかと思っております。  実は、この前別府に参りまして、あそこに「太陽の家」というのがあるのです。あの辺は身体障害者の村みたいになっておりまして、たくさんおられるわけですね。それでソニーとか本田とか、それからもう一つ工場がありましたが、あそこでもう障害者だけで一工場を全部やっておられる。私は、これは大変なものだと思いましたね。これは先生、ごらんになってなければ、ぜひ一遍見てもらったらいいと思いますが、本当に、アセンブリー工場ですからベルトコンベヤーを並べて全部車いすで並んでおられるのですね。しかも、障害者ですが、一つのものについては大変技術を持っておられるわけですね、そこだけは。もう手先が非常に器用であるとかいうようなことがある。  たとえば、目の見えない方がおられまして、その方は何をするかといえば、音響の試験をやらせる。そうすると、やはりこれは非常に進んでいるわけですから、そういった形のいろいろな能力を生かすようなことをやっておられるわけで、私は非常に感心をしたわけでありますが、ああいったようなことを本当にやっていけば、働いておられる方々も本当に生き生きとして働いておられる。障害を持っておられるが、やはり生き生きとした生活というのはやれる方法はあるのだろう、私はこう思いますし、いまお話のありました、どうも大企業が雇用促進をしてないということも、もう少し二つも三つも考えてやれば、やれる方法はあるのではないか。単に雇ってくれ、それはしようがないから、どっかその辺で遊んでおれよ、などというのではだめでありまして、本当に雇うなら雇って、その人を本当に使うような施策をしていくということが大切なことではないだろうかと私は考えております。
  81. 土井たか子

    ○土井分科員 私が質問を申し上げました肝心のところは、健常者に対する教育なんです、問題は。その点はいかがです。
  82. 林義郎

    林国務大臣 私は、健常者に対する教育というのは、まさに啓発活動、広報活動から発していかなければならないし、学校教育の中にこれを入れるというのもどうしてやるかというような話もあるでしょう。この辺はまた文部省の方とも相談をしてみたい、こう思っております。  だけれども、やはりお互い同じ人間である。たまたま障害を持っておるけれども、お互い一緒になって働くんだという気持ちを健常者に持ってもらう、同じだという気持ちをやはり持ってもらうようなことを、広報活動、啓発活動、そういったものを通じて一生懸命やるということは、私は、これからもぜひ続けていかなければならない問題だろうと考えております。
  83. 土井たか子

    ○土井分科員 そうしますと、それは一度、文部省との間での協議とか、それから総理府の中にございます長期計画推進本部との中でのいろいろな協議という問題もございましょうが、それは厚生大臣、ひとつ精力的に取り組んでいただけますね。
  84. 林義郎

    林国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかっておりますから、私も早速に話をしてみたい、こういうふうに考えております。
  85. 土井たか子

    ○土井分科員 さて、三つ目の問題なんですが、もう先日来厚生大臣の方に消費者団体の方から質問状が参っておりますから、厚生大臣、これは御承知おきいただいているであろうと思います。  それはどういうことかと申しますと、一つは、食品添加物に対する厚生省としての取り扱いなんです。厚生省としての姿勢の問題なんですね。それから一つは、その食品添加物を追放するためのいろいろな運動がございますが、この運動に対して、どういう認識をお持ちになっていらっしゃるかという問題なんです。  実は、そういう質問状が厚生大臣のお手元に届くまでには経過がございまして、そもそもこの質問がつくられるに至りました発端は、プラスチックの業界団体であるポリオレフィン等衛生協議会が発行いたしております「ぴーえる」という雑誌がございますが、この雑誌の八二年十月号に「消費者運動と食品衛生行政」という座談会が記事として載っております。そこに藤井正美厚生省食品化学課課長が出席をされておりまして、いろいろ話されましたことが、実はこの質問の発端になっているのです。ここでは、詳しくその発言内容について私は申し上げる時間的余裕がございませんが、大体藤井課長の御発言の中には「特定の知識を入れてしまうと絶対に人の話は受けつけない。まして集団となると、どなる、嘲笑する。何しに来たのか、それは何かウップンを晴らしに来ただけ、だから、応待は誰だって構わないわけだけど、課長をだせ。無教養以前のグループが、また、これらの世界では情報の元となっている」というふうな発言であるとか、どうも「消費者運動の大体の考え方ね、プラスチックにしろ、食品添加物にしろ、化学物質、化学、石油、タール、合成なんて用語のものは、もう始めから危険なんだときめ込んでいるでしょ。ひいては社会不安感を持たらしめていることも否定できない。」というふうな発言なんかがあったり、それから「中にはね、食中毒未然防止のため有用性の高い添加物を開発しろなんて団体あってもいいと思うわけ。」なんという発言があったりしたわけなのです。これは非常に読んでいらっしゃる方々が多いとみえまして、私も、ずいぶんあちこちで話題になっていることを知ったわけでございますが、その後厚生大臣に対して質問状が出ていることを実は知りました。  そこで、厚生大臣のお考えを聞かしていただきたいと思うのですが、いままで厚生省とされましては、国会の答弁の中で、繰り返し繰り返し食品添加物というのは極力減らしていく方針であるということを言明されてきております。そういうことからいたしますと、ここに述べられているようなことは、一消費者が単純素朴に読みますと、添加物に対しては、これは有用性があるからどんどん開発をしていくという方針に変わったのかなとも極論すれば読み取れるような向きもございますので、この従来から政府が繰り返し国会で答弁されてまいりました食品添加物に対しての取り扱いの姿勢について、まず大臣に御所信を承りたいと思うのですが、どうなのでございますか。
  86. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 最初に私から、若干技術的な問題をお答えをさせていただきたいと思いますが、いま先生お話がございましたけれども、食品衛生行政は、消費者の食生活を守ることを目的とするわけでございますので、消費者の方々の御意見を十分お聞きをして進めてまいりたいと考えておるわけでございます。  食品添加物でございますが、四十七年に国会で御決議もいただいておりまして、食品添加物の使用については極力制限する方向で措置することという決議をいただいておりまして、私どもも、その方向で行政を進めてまいっておるわけでございます。  ただ最近、御承知のようにいろいろ食生活の内容も変わってきておりますし、あるいは食品流通の状況も非常に急速に変化いたしておりますので、いまのような考え方の枠の中で食品添加物の有用性と安全性を十分検討いたしまして、もしもどうしても指定した方がいいというものがございました場合には、食品衛生調査会に諮ってその結論を待って進めていくというようなことで対処をいたしておるわけでございます。
  87. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、いま承った御趣旨からいたしましても、この座談会の中身でおっしゃっていることは、藤井課長個人の発言ということになるわけでございますね。そうなってくると、これは非常に不適切な発言だということにもならざるを得ないのですが、大臣に対しての質問状がすでにあったようでございますから、大臣、その辺の御所信をひとつ承らせていただきたいと思うのですが、どうでございますか。
  88. 林義郎

    林国務大臣 土井議員の御質問にお答え申し上げますが、私のところへ実はいろいろと申し入れがありましたり、ちょっとはっきりしないものですから、どちらのあれかなということがちょっとよくわからないものですから、できましたならば、まことに恐縮でございますが、どの質問状か申し入れ状か、ちょっとお示しをいただければ大変ありがたいと思いますが。
  89. 土井たか子

    ○土井分科員 いま私は質問状なるものを持ってきておりません。だから、それはいま示すわけにはまいりませんが、二月の十日までに御回答くださるようにということで厚生大臣あてに出された質問状があるはずでございます。
  90. 林義郎

    林国務大臣 いま私の手元にございますのは、一つは二月三日付でBHAのやつがありますし、それからもう一つは二月十九日付で、日本消費者連盟で、来る二月末日までに御回答くださるようお申し入れいたします、こういうのがありますが、そのほかに、いまの二月十日までとかいう話ですと、また別なやつがあるのでありましょうか。ちょっとその辺がよくわからないものですから、私も、どう御答弁していいかわからないものですから、そういったことをいま申し上げているような次第でございます。
  91. 土井たか子

    ○土井分科員 それじゃ、いま私が御質問申し上げていることに対してお答えいただいて結構でございます。
  92. 林義郎

    林国務大臣 いまいろいろお話がございました食品衛生研究という雑誌ですか、それに出ておったという……。
  93. 土井たか子

    ○土井分科員 「ぴーえる」です。
  94. 林義郎

    林国務大臣 「ぴーえる」ですか。「ぴーえる」というのもちょっといま持っておりませんので、どんな内容になっているのか、いろいろと放談会とかいうような形で率直にいろいろなお話があるということを申し上げたのだろうと思うのです。そういったことが、言葉の端々をとらえられればいろいろな点で誤解を招く点があるかもしれませんし、その点は私からもおわびは申し上げておきますが、やはり私は、こうした問題につきましては、あくまでも冷静に科学的な判断に基づいていろいろとやっていかなければならないものではないか、こう思っているところでございまして、土井先生も私も、長い間公害でいろいろと議論をさせていただきました。立場は違いましたけれども、常に冷静に科学的にいろいろな問題は検討を進めていく必要があるだろう。そうでなければ、わっと行ってやるということでは困る話であるから、その辺はやはり冷静に科学的な判断をしていく必要があるだろう。  また、科学の問題というのはとどまっている話でありませんし、科学的な知見というものは非常に進歩していく。科学技術が進歩していくわけでありますから、一方で、いままではよかったけれども悪くなるものもあるし、また、悪いけれども今度よくなるというような形のものも、科学的な判断というものはあるわけでありますから、そういったものを常に踏まえながらやっていかなければならないと私は思っているところであります。  消費者運動につきましては、私も、たびたび消費者の方々にもお会いをしておりますし、先ほどの優生保護法の話でもお越しをいただいたり、直接の消費者運動ということではないけれども、いろいろ婦人団体の関係の方々、よくお越しになりますから、その辺のお考えは十分にお話を聞いて行政をやるべきものだというふうに考えております。
  95. 土井たか子

    ○土井分科員 いまの大臣の御発言を承っておりまして、食品添加物を追放するための運動を有害なものとはお考えになっていらっしゃらないということも察知できますが、それは、もちろんそのようにお考えですね。食品添加物を追放していこうという運動が全国にございますが、これは有害なものというふうにはお考えになっていらっしゃらないでしょう。
  96. 林義郎

    林国務大臣 土井議員の御質問にお答えいたしますが、その運動があるということは正しい方向でもありますし、それから、運動自体を否定するなどということは、われわれとしては全然考えていないところでございます。
  97. 土井たか子

    ○土井分科員 ところで、新聞紙上もこれは非常に大きく取り上げられましたが、ブチルヒドロキシアニソール、BHAの禁止措置というのが突如延期されたというこのいきさつについて、るるこれをお尋ねするという時間がございませんが、昨年八月二日の告示で禁止することが公表されて、ことしの二月一日で施行ということになっていたはずであります。  禁止措置の発効直前で一月三十一日に突如延期されたといういきさつについて、一つは、大変な混乱が現場ではあるということも事実でございますし、食品衛生調査会の答申に基づいて規制告示がされたということから考えますと、今回は、林厚生大臣と総理の独断で延期をされたということも伝えられております。こういう取り扱いというのは、まあ取り扱いの上からいうと、これは異例中の異例であり、やはり適正を欠いているんじゃないかというふうなことも考えられますが、この点についての大臣の御見解はいかがです、これは大臣の問題ですから。
  98. 林義郎

    林国務大臣 私の独断でやった、こういうふうな御指摘もございますが、私の独断でもないわけです。先ほど来申し上げていますように、やはり科学的に冷静に判断をしていくことが必要ではないかというふうに考えておるわけであります。  BHAというものは、昨年食品衛生調査会で御議論があったところでありますし、名古屋市立大学の伊東さんという先生がマウスを中心として研究をされました。その論文をもって話が出てきたわけであります。日本でも、いろいろそういったことを検討いただきましたが、このBHAというのは、日本の国内だけで使われているわけではない。アメリカなりヨーロッパでも使われているものでございますから、しかも発がん性という問題につきましては、現在、国際的にも非常にいろんな議論が出ているところの問題なんですね。  発がん性というのは何かという話は、一番発がん性が高いということになれば、たばこなんというのは非常に発がん性が高い。申しわけないが、私が吸って私がなるならいいけれども、周りにおる人も問題があるというような話もあります。それから、タールというふうなものもある。そんなところから始まりまして、いろいろとがんの学説がいま非常に変わってきているところなんです。そういったところで話を聞きますと、アメリカの学者、カナダの学者、イギリスの学者とも話をした、それからもう一つ話を聞きますと、ヨーロッパの方の学者さんもいろいろと集まって話をしておる、こういうふうな話でありまして、日本の学者さんの中でもいろいろな御意見があって、食品衛生調査会の答申が昨年の八月に出まして、来年の二月までと、こう——普通ならば、もしもそれは有害だということが非常に明らかであれば、直ちにやるというのが私は筋だろうと思うのですね。それをそれだけ長い期間をやったというのは、それ相応の考え方があったんだろうと思いますし、そういった国際的に問題がある、学問的にいろいろ御意見があるところをいますぐにやらなくても、もう少し国際的に御議論を尽くしてやってもらった方がいいのではないか。  がんの研究にいたしましても、国際的な協力というものは必要だと私は思うのです。日本だけでがんの研究ができるわけでもない。また、ヨーロッパの諸国との協力もしていかなければならない。また、アメリカは非常に発展しておりますから、協力をしていくという体制で、この問題を考えるときには行政庁の方も謙虚になって、いろんな学者の科学的な判断というものは尊重していかなければならないのではないか、こう思ったのです。  そういった形で、事務当局とも相談いたしまして、先生御指摘のように、悪影響があるか、混乱が起こるかどうかという話でございますが、実は国内的には、昨年伊東さんの論文が出ましてから、そういったことになるということですでに自主的にとめておられる、こういうような話でもありますし、もう少し国際的に議論を尽くして、どういった議論が出るかわかりません、わかりませんが、議論を尽くしてやっていただいた方がよりいいのではないか、よりすっきりするのではないか。それも、わざわざ二月一日などという中途半端な日にちでやらなくても、たまたま八月に決めておったからそういうことになっておったのですけれども、それを延ばしても一つも差し支えないのではないか。むしろ国際的な考え方、学問の世界は国境がないと私は思います。だから、そういったものを十分尽くした上でやっていただく方が、より合理的な話になるんじゃないか、こういった考え方で役所の連中ともいろいろ相談をしまして、そういった措置をとったところでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井分科員 もう時間が超過いたしておりますから、これにて終わりますが、あと一分だけ。これは予定外であります。  先ほども御質問がございましたが、このところ連日テレビでやっておりますが、中国残留孤児の方々がお父さん、お母さんに会えなくて涙を流される場面というものは身につまされるんです。  昨年も、この場所で私が取り上げた問題が実はございます。それは、残留孤児の方々が日本に来られるときに、男性である場合は、その奥さんの旅費から経費から一切めんどうを見られるのです。ところが、残留孤児が女性の場合は、御主人である中国人の方の旅費から経費から一切めんどう見ない、子供の経費も見ないということをここで取り上げて、前厚生大臣がそれに対して是正してくだすったんです。  今度は私は、養父母の方々が日本に来られるときの経費の問題がどうしても次に問題になるだろうと思うのです。これをぜひひとつお考えいただきたいと思うのです。  先日も、せっかくお父さんと会えたが、しかしお父さんの家庭の事情で日本におれないということで泣く泣く生き別れで、中国に帰られる方が泣きながら、お父さんを恨まない、戦争が憎いと言って帰られたというのは、私は本当の実感だと思うのです。戦争を起こした立場にあるということから考えると、この問題に対しては償っても償っても償い切れない問題だと私は思っていますから、そういうこともお考えをいただいて、厚生省としては、それは所管の問題でございますから、ひとつお取り計らいをお願いします。
  100. 林義郎

    林国務大臣 いまのお話、私もあそこに行きまして皆さん方とお会いして、本当に身につまされるような、涙の込み上げるような感じを非常に覚えたわけでございますから、養父母の方を今度お呼びするというふうな話も当然出てくることにはなるだろうと私は思います。ただ、いままだ八百人も残っておられるわけですから、まずそこから解決をしていかなければならないと考えております。いずれはそういった問題が出てくるだろうと思いますし、それは日中友好のかけ橋という形で幅広いことを考えていかなければならない話だろうと思います。  養父母の扶養費は、二分の一は政府が持つ、それからあとは民間資金でということで、民間資金の集めをいま一生懸命やっておるところであります。そういった資金の集まり方等によりまして、そういった養父母の方々を呼ぶということをいつの段階でどういうふうに考えていくかということは、これからの問題であると思いますが、先生の御提言はそのまま素直に受け取って検討してまいりたい、こういうふうに私は考えておるところでございます。
  101. 上村千一郎

    上村主査 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。  次に、中村重光君。
  102. 中村重光

    中村(重)分科員 被爆者対策厚生大臣にお尋ねをするのですが、この前、世界の放射線に関する権威者が集まられて、放射線問題の検討がなされたようですが、あれの結論は大体いつごろ出ることになるんですか。     〔主査退席、白川主査代理着席〕
  103. 三浦大助

    ○三浦政府委員 この間長崎で行われました放射線量の見直し問題でございますが、あれはかなり原爆の研究が進み、資料が公開されまして、線量見直しという問題が起こったわけでございますが、広島の中性子型の爆弾、それから長崎のガンマ線型の爆弾、この二つのいろいろな資料の研究結果がかなり報告されまして、その結果、どうも線量を見直した方がいいんじゃないだろうか、こういう問題が出てまいりました。これにつきましては、いま直ちにわが国の原爆被爆者救済対策にいろいろ影響があるという問題ではなくて、これから先の放射線防御のためのいろんな検討資料に影響があるのではないだろうか、そういう問題ではないかと思っておりますが、いずれにしても、この結果はまだもう少し先を見ませんと、いまのところ、その結果どうこうという判断はとてもむずかしくて、できる段階ではございません。
  104. 中村重光

    中村(重)分科員 私も、そういうように理解はしているのだけれども、この見直しによって、例の二キロのという問題に当然及んでくるだろうというように思っているのです。しかし、これは時間が限られておりますから、改めてお尋ねをいたします。  そこで、この二法の改正法案が国会に提案されなかったのは今回が初めてなんです。結局、手当等の引き上げがなされなかったという点にあるのだろうと思う。所得制限は政令で決めるということのようですが、撤廃というようなことまでいくのでしょうか、いかがでしょう。
  105. 三浦大助

    ○三浦政府委員 原爆諸手当の所得制限につきましては、現在の受給者の方々が引き続き受給できるように、その額の引き上げを図っておるわけでございまして、五十八年度も受給率が九六%、これを維持するために所得制限額の引き上げを図りたいと考えております。予定は、いま九月ということを予定しておるわけでございます。
  106. 中村重光

    中村(重)分科員 厚生省は、予算折衝の段階で、所得制限撤廃で大蔵省との折衝も長年続けてきていたわけです。だから、その考え方はいまも変わっていないのでしょう。政令で定めるという場合、当然大蔵省との折衝というものは出てくるのだろうと思うのですけれども、そこらはどうなんですか。
  107. 三浦大助

    ○三浦政府委員 いまのところ、各種手当所得制限のあり方につきましては、これからも原爆放射線の影響との関連において検討していきたいと思っておりますが、検討を進める過程におきましては、五十六年度に実施いたしました被爆者状況調査、あるいは被爆者状況調査の結論も踏まえながら原爆医療審議会あるいは学識経験者、こういうものの意見も聞いて検討を進めてまいりたいと思っております。
  108. 中村重光

    中村(重)分科員 厚生大臣、あなたに今度お答えいただきたいのだけれども、小沢元厚生大臣に、援護法の制定と、それから二世対策さらには弔慰金の問題で、私の方の被爆者対策特別委員会で実は詰めたことがあります。厚生大臣は、非常に前向きでこれに対応するという姿勢を明らかにした。それから、内容的にも若干前進をしたことは事実なんです。ただ、与党との話し合いの中で弔慰金の問題がちょっと壁にぶつかるというようなことで、援護法ということではなかったが、申し上げたように、内容的には若干前進する、それから二世の問題も、因果関係ということで、そのままずばり二世を被爆者として吸うというところまではいかなかったが、任意にということになるのだけれども、調査をする。もういまは被爆者対策として援護法の制定と、当然援護法の制定の中から出てくるのだけれども、弔慰金の支給というものにも踏み込んでいかなければいけないだろうと私は思っているのだけれども、いかがでしょうか。
  109. 林義郎

    林国務大臣 原爆被爆者援護法というのが、正式には原子爆弾被爆者等援護法案というので御提案になっておられたことは、私もよく承知しておるところでありますし、小沢元厚生大臣がいろいろと御努力いただいておるということもよく承知しておりますし、この問題は長崎、広島の関係の議員さん方も大変御熱心であるということも、私もよく承知をしているところであります。私の地元にも長崎の関係とか広島の関係とか大分おりまして、いろいろ御陳情いただいておりますが、いまのような援護法というようなかっこうのものは、どうもいまはこれはなかなか法律とするのにはなじまないのではないかというのが、大体のいままでの話ではないか、わが党の方の考え方ではないかと思っているところでございます。  それから、そこで先生もいろいろその辺の御事情はよくおわかりでございましょうから申しますが、弔慰金とか遺族年金等の支給につきまして、長崎と広島だけについてやるというのが、果たして国民的な一般的な合意が得られるかどうか、実は私は、その辺はもう少し考えてみなければならぬのじゃないかなという感じでございますが、長崎、広島の方は大変御熱心でございますから、さらにこの辺は話を詰めてみる必要がある問題であろう、こういうふうに思っておるところでございます。
  110. 中村重光

    中村(重)分科員 この被爆二法というのは、純粋の社会保障でもない。国家補償に一歩医療法等踏み込んでいる。しかし、まだ完全な国家補償ではないということなんです。  しかし、所得制限というのは、本来これは国家補償の中から出てくる問題だ。社会保障ということからは、所得制限というのは出てこない。それを厚生省予算折衝の段階で、大蔵省に所得制限撤廃ということでその予算要求を進めてきたということは、私は、やはりこの被爆者対策というものは、国家補償という精神でその対策は講じらるべきものである、そういう考え方があるのだろう、こう思っている。そこに、小沢元厚生大臣とわれわれとの話し合いの中に合意点が見出された、こう思っているのです。  そこで、援護法あるいはその中身であるところの弔慰金等がなじまないという考え方、それはどういう点にあるのですか。それは政治問題だ。
  111. 三浦大助

    ○三浦政府委員 原爆被爆者対策と申しますのは、社会保障と国家補償のちょうど中間的な対策をとっておるわけでございまして、広い意味における国家補償の見地に立ってと、こういうことを言っておるわけでございます。いままでも、しばしば援護法制定の御提案がございまして、弔慰金の問題は出ておりますが、いまの段階で、一般戦災者との均衡上これはなかなかむずかしいのじゃないだろうか、こういうことで、私どもも、現在むずかしいのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  112. 中村重光

    中村(重)分科員 それは局長、僕はこの問題何回もやっているんだけれども、逃げなんだよ、いまのあなたの答弁は。一般戦災者との均衡上と言うのだね。一般戦災者対策を何かやっておれば、また何か理解できないでもない。何もやってない。何もやっていないで、その均衡上というようなことは、これは答弁としておかしい。それは被爆者対策強化しないための逃げとして、何もやってない一般戦災者の問題を引き合いに出してくる。そんなことは通らない。  これは、基本懇にはそう書いているから、あなたもそれでそう言っているのだろうと思うけれども、林厚生大臣、ひとつあなたは、私は長い間のつき合いだし、性格をよく知っているのだけれども、歴代の厚生大臣が踏みとどまっておったところを切り開いていくというような、それは行革等手かせ足かせというようなことでやりにくい点があることはわかるけれども、やはりいま土井議員も戦争責任というような問題に触れておったけれども、そうした考え方からいっても、しかも被爆者対策をより強化をしていく、援護法の制定というものとこの平和問題というものはやはり切り離せない問題があるわけなんだね。だから、それらのこと等も十分踏まえて、いままでの殻を打ち破っていくということでなければいけないと私は思うんだけれども、いかがですか。
  113. 林義郎

    林国務大臣 中村先生には大変に前から御指導いただいておりますから、先生のお話もよくわかるわけでございますが、申し上げますならば、放射線による健康被害という特別の犠牲があった、これは戦災の一般の被害の中で特別の犠牲である、そういったことに着目して、特別のなにであるから、非常に広い意味での国家補償という見地に立って対策を講ずるというのがいままでの考え方なんですね。  だから、その考え方を突破するということになると、いろいろな問題がまた出てくる可能性もありますし、私は、その辺は少し考えて、役所の方は、おっしゃるとおり弔慰金、遺族年金の支給については一般の関係等のバランスもあるし、むずかしいんではないかという話、それは確かにそのとおりだろうと私は思います。均衡とかなんとか、それは一般にやってないから。たまたま長崎におったからあるいは広島におったからというような話にするというのは、私はなかなかむずかしい理屈があるだろうと思います。だけれども、これはむずかしい理屈をやはり何か考えられるかどうかという話だろうと思います。いまの法律体系の中では非常にむずかしい、アリの穴を何かするかのごとき話かもしれませんが、やはり気持ちはありますから、お気持ちは十分酌んで、ひとつ何とかの形ができるかどうか考えてみたい、こう思っております。     〔白川主査代理退席、主査着席〕
  114. 中村重光

    中村(重)分科員 時間がありませんから、この問題のやりとりは改めていたしますけれども、おっしゃるように、いまの法律の中では無理なんです、やはり援護法の制定というところまでいかないと。ともかく国は加害者であるというこの考え方、これはアメリカもそうなんです。だが、被爆者は被害者であるということ。これは、基本懇の答申の中では、そこらあたりは国民はすべて同じような宿命だというように読み取れるような書き方になっているんだけれども、その基本懇の考え方そのものが間違いだったと私は思っております。いずれにしても前向きの回答を期待します。  そこで、手帳の交付なんだけれども、三十八年たってまだ手帳の交付が行われていない、結婚あるいは就職に影響するというようなことも配慮したという点もあるだろうし、いろいろあるようです。ところが、年をとってきて病気にかかりやすくなる、そこで手帳の交付を求めるというのがやはり依然として続いている。  ところが、最近の市町村の窓口の手帳交付に対するシビアな態度といったら話にならないですね。五つの項目があるんだけれども、二名の保証人に限ったような形でやるのですね。その保証人が出ると保証人を呼び出して、まるで犯罪人扱いですね。それで保証人に、おまえさんの手帳は取り上げる、あるいはこれがうその場合には刑事事件になるんだとか、電話だとか呼び出し、まるで脅迫なんだ。ひどい話だと思う。  それから、調査なんかをするときでも、三十八年前のことだから記憶はみんな薄れるわね。申し立て人の言うことと、それからいろいろ調査をしてみて、たとえば島から船に乗ってきた、申し立て人は被爆地を通った、ところが、同じ船に乗ってきた者が上陸をしないでいた、そのときに何日に来たかということについての記憶を、申請人の言うことと同じ船で来た人の記憶と違った場合、申請人の方がうそだ、ほかに一緒に船なら船で来た人の記憶の方が正しいのだと決めつけちゃう、こんなむちゃな話はないと僕は思うのですね。どちらが正しいのかということは、やはり調査をしてみないとわからない。健康管理手当等の財政的な関係からもできるだけ抑制していこうとするその考え方の中から、非常に厳しくなっていると私は思う。  それから私は、この委員会で、あの当時はもう人のことなんか構っていられなかった、これは親兄弟でないと本当はわからないですよ、ところが三親等はだめなんだということで、親兄弟なんかの保証ということを認めないという態度であったから、そういう考え方はだめだ、あのときの原爆の悲惨な実情というものは、われわれ現場にいた者でないとわからない、だから三親等でも認めていくということでないといけない、それから二名の保証人というようなことにこだわってもいけないということで、弾力的な対応を要求した。厚生省は、そういうことで都道府県に対して通達を出されたと私は思っているのですが、若干弾力的な扱いをしているところもあるし、非常に厳しい態度で臨んでいるところもある。だから、実情を調査してもっと弾力的に対応していくということにしないと、本当にお気の毒だと思います。そのことは強く希望しておきます。  それから異議申し立て。都道府県に手帳を交付されなかったら異議を申し立てるんだね。厚生省には恐らく山のようにあるのだろう、企画課の方には。それが五年も七年もかかっているのじゃないか、いや、かかっているのだよ。私がなにしたのも、四年ぐらい前のがまだそのままになっている。どうしてこんなに時間がかかるのか。それは、サボってはいないのだろうが、人手が足りないのだ。もっと滑らかにいくように配置転換等をやり、必要なところには人員を配置してやるようにせぬと気の毒だと私は思うのですよ。その点についてお答えください。
  115. 三浦大助

    ○三浦政府委員 手帳の交付につきましての審査請求の件でございますが、私どもにおいて、いま六十六件未処理になっております。これは、昭和五十二年に百三十件出てまいりまして、これの審査に非常に手間取りまして、それの影響がまだ響いているということでございますが、いま大車輪で作業はやっておりますので、ひとつお許しをいただきたいと存じます。  それから、先ほど私、所得税額の支給率の九六%を維持するための改正、九月と申し上げましたが、六月ということでございますので、訂正させていただきます。
  116. 中村重光

    中村(重)分科員 案外正直に答えているんだね。五十二年に百三十件出てきた、これだけでも大変だ、こう言っている。だから、前のものがまだそのまま残っているということも言える。だから、私が言ったのはオーバーな言い方をしてはいないのだ。企画課に行って私がいろいろ言うと、本当にまじめに真剣に取り組んでいることを認める。認めるのだけれども、何しろ人手が足りないのだ。厚生大臣、この点はよく調査をしてほしい。いまの答弁でもおわかりだろうと思う。そんなことはいけないということは、あなたもおわかりだろうと思うから。  それから、老人保健法の問題についてお尋ねします。この広島、長崎の被爆者は現物給付ということになったわけですが、これは暫定措置ではなくて恒久措置であると理解をしてよろしいですね。
  117. 三浦大助

    ○三浦政府委員 そう御理解いただいて結構でございます。
  118. 中村重光

    中村(重)分科員 それ以外のところから、現物給付でないから大分不満があるようだけれども、そこもよく調査をして、これまた弾力的に対応するように期待をしておきます。  そこで、長崎、広島両県、それから長崎、広島両市、これに対して、いままで負担をしていなかった七十歳以上の老人に対する両県、両市の負担というものが、来年度の予算でたしか十三億ぐらいある。これに対して、いままで出していなかった金を負担を求めることになるのだからというので、衆参両院とも社労委員会において附帯決議がつけてあるのです。現状に十分対応してやりなさいという附帯決議になっているわけだ。けれども、十三億ぐらい負担をさせるという予算案がいま審議をされているということなんです。今後どうなるのです、五十九年度以降は。
  119. 三浦大助

    ○三浦政府委員 これにつきましては、今度の老人保健法の施行に伴いまして、県、市町村それぞれ五%の負担をしていただくことになったわけでございますが、いままで広島、長崎両県市につきましては、老人医療で三%分ぐらい負担をしなくて済んでいたわけでございます。したがいまして、その三%ぐらいは国の方で見てあげようということで、老人保健の臨調補助金を出しておるわけでございますが、これにつきましては地元からかなり強い御要望がございました。大変努力もいたしましたが、大変財政も厳しい折でございます。一応三%は負担をしようということで十三億四千万を計上したわけでございますが、今後とも努力はしてまいりたいと思っております。
  120. 林義郎

    林国務大臣 事務的にはいま局長からお話し申し上げたとおりでありますが、私は来て、この問題をちょっと勉強してみたのですよ。老人保健法を見ると、むしろ予算をつけてはいかぬのじゃないかという法律解釈さえできる話だ。法律の条文をずっと整理してみると、そうしか読めないのです。それもやはりひどい話だからということで、一生懸命大蔵省とかけ合っていまのような話をしたということであります。私は、やはり原爆の問題は先ほど答弁しましたようなかっこうでこれからもいろいろなことを考えていくべきものだろう、こういうふうに考えておるところであります。
  121. 中村重光

    中村(重)分科員 老人保健法をそのまま読むと、いまあなたが言われたような形になってくる。しかし、それではいけないから、たとえ被爆者で六十九歳までは被爆手帳を持っていったらただで、七十歳になったら金を出せ、そんなべらぼうな話はないということで、こうした現物給付という措置が講じられた。個人に対してそういう措置を講じなければならないということを認識をして、老人保健法という厳しい法律の中でもそういう措置を講じたのだから、だから私は、両県に対し、また両市に対して、個人にやった措置と同じような精神で扱っていくということでないといけないのじゃないかと思うのだけれども、こういう言葉も使ったようなんだけれども、いままで出していなかったから、だから、これから出すのはあたりまえではないかという言い方までしたのだろう、それで非常に両県がこれに憤激をしておったということも聞いたのですが、これは原爆という非常な被害、犠牲、これを念頭に置かないでやることは適当ではないということをはっきり申し上げておきます。だから、あなたにして後退になるような考え方を持つのでは、どうにもならない。
  122. 林義郎

    林国務大臣 別に私は後退する意思は何もないのですが、法律を素直に、何も知らないで読んだら、わざわざあんなふうに附則の中で書いているわけですから、やるなとしか読めないよと私は書生議論をしたのですよ。しかし、それでは物事は解決しないであろうし、いままでもこういってやっているのだから、いままでのことも考えて、ひとつ予算措置を何かすることが必要ではないかということで大蔵省と話をしたということを、中村先生には前から御指導いただいていますから、私も率直に申し上げたところでございます。
  123. 中村重光

    中村(重)分科員 ともあれ、衆参両院の社労委で附帯決議をつけたということは、われわれも法律を読んで、しかし、原爆の被爆というこうした犠牲に対しては、やはり老人保健法という法律の中でも行政的な現実的な対応というものがあってしかるべきだ、なければならない、そういう考え方で附帯決議をつけたということを十分念頭に置いてもらわないと、国会の意思は尊重していくということが私は当然だろうと思っていますから、そういうことで対処してもらいたい。  それから、身体障害者とか母子家庭に対する医療費の都道府県の措置、これに対しては、国としては尊重するという態度で臨むのでしょうね。医療費が、無料という言葉は僕は使いたくなかったから使わなかったのだけれども、身体障害者二級までほとんど無料にした。母子家庭を無料にしているところもある。六十九歳までは従来のとおりいくでしょう。七十歳になってくると負担だなんということになってはいけないわけだから。  ところが、これは、原爆の場合は国なんだけれども、身体障害者母子家庭も含めて都道府県の行政措置、財政措置ということになっているのだから、これは都道府県がそれに対して従来のような考え方の上に立って福祉対策として措置をしていくだろう、これに対しては尊重するという態度をとるのでしょうねということです。
  124. 吉原健二

    ○吉原政府委員 老人保健法の考え方は、七十歳以上の方は全部ひとしく法による一部負担をお願いしていただくということになったわけでございます。  したがいまして、その七十歳以上の老人の方が仮に身体障害者の方でいらっしゃってもあるいは母子家庭の方でいらっしゃっても、母子家庭ということは実際問題としてないと思いますけれども、四百円、三百円を負担していただくというふうに法律でなりまして、そういったことで各県ともこの法律上の一部負担だけはそのとおりやっていただきたいということを国としてはお願いをしているわけでございます。これまで県独自で身体障害者あるいは母子家庭に対していろいろ対策を単独事業としておやりになっていたということはわかりますけれども、今回、この七十歳以上についてこういう法律ができたわけですから、七十歳以上の人についてはひとしく御負担を願いたいということで、県にお願いをしているということでございます。
  125. 中村重光

    中村(重)分科員 七十歳以上に対しては負担をしてもらいたいということは、原爆被爆者に対する医療給付の問題について、広島、長崎両県それから広島、長崎両市に対して、できるだけの配慮はしているけれども、やはり負担をさせていますね、そういうことを意味するのですか、あなたが言っているのは。
  126. 吉原健二

    ○吉原政府委員 原爆の被爆者につきましては、老人保健法上は同じ扱いにしているわけでございますが、ただ原爆の被爆者の方については、従来から原爆被爆者対策ということで国で医療費を持っていたという経緯を踏まえて、今回そういった方については、特別に事実上一部負担というものを国の方で持つということにしたわけでございますから、一般の身体障害者の方については必ずしも同じような考え方はどうだろうかということで、その点は、私は、やはり区別をすべき問題だと思っております。
  127. 中村重光

    中村(重)分科員 時間が来たから、これで終わりますけれども、やはり母子家庭に対して、大体身体障害者が主なんですが、いままでの都道府県の措置を講じていくわけです。六十九歳までは従来どおり身体障害者二級まで医療給付、端的に言えば無料。ところが、七十歳になったら老人保健法の対象になるのだから、この分に対してだけは負担しなさい、そんなことではだれも納得する者はいない。だから、都道府県の行政措置に対しては、これを尊重するという態度でないと、私はいけないと思う。それはだめだという言い方は適当ではないということなんです。これはいいでしょう。
  128. 吉原健二

    ○吉原政府委員 その辺が、国の立場とあるいは都道府県の立場と違う面があろうかと私は思います。そういったことで、私どもは、そういういま申し上げたような考え方で都道府県にお願いしておりますけれども、多くの都道府県では、いま中村先生のおっしゃいましたような考え方で、従来から六十九歳以下の人については身障者対策として無料の単独事業をやってきた。これを六十九で切るわけにいかぬので、七十以上まで含めて県としては単独事業をやりたい、こうおっしゃっておるわけでございます。  私どもとしては、繰り返しになりますけれども、七十歳以上の方とのバランスからいいましてどうだろうかというお願いをしておりますが、県は県としてそういったことでやりたいということであれば、やはり地方の考え方といいますか、地方自治の考え方もございますから、やむを得ないかなという感じは率直に言って持っております。
  129. 中村重光

    中村(重)分科員 それで結構です。  では、これで終わります。
  130. 上村千一郎

    上村主査 これにて中村重光君の質疑は終了いたしました。     午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  131. 上村千一郎

    上村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。青山丘君。
  132. 青山丘

    青山分科員 私は、老人保健法の欠損補綴について若干質問させていただきます。  今年二月一日より老人保健法が施行されましたけれども、ますます進む高齢化社会において老人の健康管理に包括的医療を施すという意味で大変画期的なことだと思います。私は昨年歯科医療問題について質問をさせていただきましたが、その中で老人の歯科については、老人の特殊性という観点から欠損補綴について配慮してほしいという要望をいたしました。さきの老人保健法成立の際に、衆議院の社会労働委員会において、この点については「歯科における加齢による咬合障害を伴う欠損補綴の取扱いに対しては、特に改善を図る」という附帯決議がつけられまして、老人の歯科医療における躍進の第一歩であると私は評価しております。  しかしながら、歯科医療国民の九八%が疾患にかかっているという高い有病率を示しているにもかかわらず、老人医療費における歯科のシェアはわずか二%前後にすぎません。これは入院等の事情があるのはわかりますが、その余りの低さ、余りに貧弱な給付は、人間が生活をしていく上での歯の果たす役割りをまるで忘れているかのようであります。また、七十歳以上という制限を見る限り、加齢による欠損補綴の費用に対する抑制策にすぎません。今回も老人保健法に先ほどのような附帯決議がつけられましたけれども、まだまだ不十分、まだ歯科への配慮が不足していると思われます。  そこで、お尋ねいたしたいのは、この加齢による咬合障害を伴う欠損補綴の取り扱いに関する附帯決議により、具体的には一体どういう点をどのように改善したのでしょうか。さらに、改善の余地はまだ十分にあると思われますが、いかがでしょうか。
  133. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今回の老人の診療報酬におきましては、いま御質問の中にもございましたように、国会での歯科に関する附帯決議というものを十分踏まえまして中医協で御審議をいただき、その中医協での御答申に基づいて決定をさせていただいたわけでございます。  内容的には二つございまして、一つが有床義歯を作成する過程における印象採得とか咬合採得とかいうことがございますが、その場合の技術料を評価し直したということが第一点でございますし、もう一つが、これは医科、歯科を通ずる考え方でございますけれども、老人の場合には特に指導が大事である、処置とか治療よりも指導が大事である。特に、有床義歯をつくった場合のその有床義歯の使い方といいますか、そういった指導が大事であるという考え方に立ちまして、有床義歯の指導料とそれから歯科口腔疾患の指導料という二つの指導料というものを新設をいたしたわけでございます。
  134. 青山丘

    青山分科員 老人保健部長にお答えいただきましたが、ただ、いま新たに加算をされた点で欠損歯の歯数が八歯以下ですと来院回数によっては以前よりも減ということになる場合があるようです。この点一度また御研究いただいておきたいと思います。  それから、歯科医師の技術料評価についてお尋ねをいたしたいと思います。  その一つは、一昨年六月の医療費改定は医師の無形の技術の評価に重点が置かれ、技術料を重視する診療報酬体系への転換を図るものであったと聞いております。     〔主査退席、白川主査代理着席〕 年間十四兆円にも上る国民医療費は今後ふえる一方で、まさにゆゆしき問題でありますが、投薬、検査等で利益をふやそうという傾向にある医療界において、医師の技術を重視しようということはしごく当然なことであります。  そこで、歯科の場合ですが、御存じのように歯科疾患に自然治癒はありません。これはある程度自然治癒に頼っている医科と決定的に異なる点であります。もちろんどんな疾病であってもそれが治癒するためには医師のみならず、歯科の場合ならば技工士、薬剤師、自助努力、どれが欠けてもならないわけですが、一度欠損してしまった歯は歯科医師による補綴を施されて初めてその機能を回復するわけであって、そういう意味において歯科医師の技術をもっと高く評価すべきであると思います。一般的に、わが国は歯科医師の技術に対する評価が諸外国に比べて低過ぎると言われております。診療報酬体系の違いがあるので一概に比較はできませんけれども、わが国の数倍の報酬が諸外国では通例のようであります。  ここである資料を見ておりますが、日本と国情、社会構造、経済が似ている西ドイツと比較しても、日本の総義歯の料金は四分の一であります。日本の歯科医師の技術は世界のトップレベルにありながら、低報酬に甘んじている歯科の現実をどのように見ておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  135. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、診療報酬の体系というのは国によって異なるわけでありまして、単純に比較はむずかしいと私どもは思っております。日本の診療報酬を作成する場合には私ども、各診療行為のバランス、あるいは全体としての医療機関の健全な経営が確保されることとか、そういうようなもろもろのことを考えながら設定をしておるわけでございます。  いま先生おっしゃいましたように、技術料だけを単純に比較いたしますとかなりの差があるわけでございますが、私ども今回の改正におきましても、昨年先生が御主張されました難症例の有床義歯について、印象採得とか咬合採得について評価を見直す、こういうようなことで逐次技術料の改善を図っておるつもりでございます。
  136. 青山丘

    青山分科員 委員長許可してください。——これは大臣、大臣にプレゼントしたいと言いたいところですけれども、ちょっとこれを見てください。これが外れるのです、これにかぶせるのです、虫歯の治療というのは。  それは歯科医師会の指導的な方に実は私のためにつくっていただいて、サンプルとして、青山君これを見てくれということでいただいたものです。その中に金属が入っているのです。これは虫歯の治療のときの一つのサンプルです。いま実物をお見せしましたが、虫歯の穴をあらかじめ金属で補強して土台をつくって、その土台の上に金属をかぶせるという治療方法です。このような治療をすることによって、単にかぶせたわけではないので、外れることもなく長い間使えるわけです。この土台をつくるという治療は継ぎ歯と同じぐらい複雑な技術が要求されます。にもかかわらず中の金属は全くただです。金属代ももらえない。そういう土台をつくって、さらにそれにかぶせていくという虫歯の治療方法なんですけれども、人間の心理として、やはり金属代ももらえない、土台をつくっていく治療に対して点数が低いというようなところから、どこか不満があります。そこで、制度上の問題から不正請求が発生するおそれはないのかどうかという点の御見解をいただきたいと私は思いますが、その点、私は大変心配しております。いかがでしょうか。
  137. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに歯科の点数表につきましていろいろ御指摘のような点があることは事実であります。ただ、それぞれ、私どもいままで国民経済力も勘案し、先ほど申し上げましたような他の診療行為とのバランスそれから賃金、物価の変動等をいろいろ勘案をして診療報酬を決めてまいったわけでございます。したがって、私どもとしては、その時点その時点において適正な診療報酬というものを設定してきたつもりでございますし、また関係団体あるいは中医協の場を通じまして合意の形成に努めてまいって、その結果が現在の点数表になっておるのであろうと思います。したがいまして、全体的に全く完璧かと言われますとなかなかそうはまいりません。御指摘のような点が多々あることは当然であると私ども思っております。ただ、その問題と不正請求の問題とは私は余り結びつけて考えたくない、こういうように考えている者の一人でありますが、やはり不正請求というのは、主として倫理の話、あるいはそういう分野の話ではないかというように思いますし、それとは別としまして、技術料の評価というものは技術料の評価として、やはり評価していくべきではないか、こういうように考えておる次第でございます。
  138. 青山丘

    青山分科員 昨年の暮れに百人を超す歯科医師が保険診療報酬を不正請求するという事件が起きました。しかしこれは、医療費の適正化が叫ばれておる今日、かなりの問題を含んだ出来事であったと私は思います。歯科材料に対する保険の適用、不適用もさることながら、歯科医師みずからのモラルそのものから反省しなければならない問題であります。一部の不正によって医療界全体の低下を取りざたされるのはまことに遺憾である。今回のような事件は、不正は不正として大いに反省すべきであります。ただしかし、問題は若干現行保険診療の点数制度にあると私は思うのです。いまお見せしたように、全く評価されていないところもありまして、歯科に対する点数の見直し、これがいま真剣に考えられるべきだと私は思います。  また、昨年十二月十日に出されました厚生白書には、医療費全体にかかる無差別的な抑制は望ましくなく、制度に随伴する不正、不当な行為、非効率に基づくむだを厳しく排除し、同時に、必要な医療には十分な費用を投下していくという文言があります。たとえば歯科の補綴、これは必要な医療ではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。また、技術料の点数から十分な費用を投下されているのでしょうか、お伺いいたしたい。
  139. 吉村仁

    ○吉村政府委員 おっしゃるまでもなく、補綴は必要な医療でございます。したがって、補綴の評価、技術料の評価につきましては私どもも最大限の力を尽しておるつもりでありまして、一昨年の改正また今回の改正におきましても補綴を中心に改正をしてまいりましたし、先ほど先生がおっしゃいましたように、歯科に自然治癒はない、やはり補綴でカバーしていかざるを得ない領域でございますので、今後とも補綴の分野は技術料改正の中心になってくる分野であろう、こういうように考えておる次第でございます。
  140. 青山丘

    青山分科員 歯科は一度補綴をしてしまったらすべて完治したように思われがちでありますが、やはり義歯の場合などはその後の管理を含めた生活指導も必要でありまして、これは定期的に検診したり相談に乗ったりというアフターケアが義歯をより長く、より使いやすくしていくポイントであります。この点、現行の診療報酬体系はこういった細部への配慮が十分ではないと私は思うのです。アフターケアを重視していかなければならないというこれからの時代の趨勢にかんがみて、現行制度を改正するお考えはお持ちでしょうか。
  141. 吉村仁

    ○吉村政府委員 歯科の補綴の装着後におけるアフターケアの問題でございますが、これは私ども非常に重要なポイントであろう、こういうように考えておる次第でございまして、今回の老人保健の診療報酬におきましても、有床義歯指導料というものを設けまして、装着時または装着後の有床義歯の取り扱いについてのいろいろな指導をやった場合の技術評価を取り入れたわけでございます。私は、これは一つの先駆的な意味を持つ改正であろうと思っておるわけでありますが、今後とも中医協等におきましてひとつそういう問題を持ち出して御審議を煩わしたい、こういうように思っておる次第でございます。
  142. 青山丘

    青山分科員 ここで一つ要望を申し上げたいのですが、今秋医療費の改定が予定されているとのことですけれども、ぜひ欠損補綴を中心とした歯科医師の技術に重きを置いた御配慮を望みたいと思います。  引き続き、保健局長にお尋ねをいたしたいと思います。  歯槽膿漏症の治療方針について、私はこの改正を求めたいと思います。なぜならば、従来のものは昭和四十二年に出されたもので、以来ずっとそれに従って来ているわけですが、歯槽膿漏症というものはその原因、病状が非常に複雑で、当然のことながら診断、診療方法も単純ではないのが通例であります。とりわけ歯槽膿漏症は、歯そのものを支える歯周組織の慢性疾患ですから、老人の場合それが著しいわけであります。今回、壮年期からの疾病の予防と健康づくりをメーンとした老人保健法が施行されたのですから、予防が何よりも大切な歯槽膿漏症についても、いつまでも古い現則にとらわれずに新しい指針のもとに治療をすべきではないかと思います。当時とは摂取する食品、栄養も異なり、病状も変わってきておりますし、正しいブラッシング指導など必要不可欠の課題であります。古い指針は廃止するなり改めるなり、考えるべき時期ではないでしょうか。厚生省のお考えを伺っておきたいと思います。
  143. 吉村仁

    ○吉村政府委員 御指摘のように、歯槽膿漏症の治療指針というのは四十二年にできまして、いろいろ歯周病学会等からも御批判を仰いでおるところでございますし、また昨年末の中医協におきましても、大体歯槽膿漏という言葉自体がもう古いのだ、こういうような御意見も出たぐらいでございまして、私どももこれは改正をすべきものであると思っております。ただ、学会の御意見はそうなんでありますが、医科の面におきましても種々の治療指針が設けられております。それからまた、治療指針そのものが今日において必要なのかどうか、こういうようなことについての御議論が中医協の中にもございます。したがいまして、それらを総合的に勘案をいたしまして、私は中医協で議論をしていただきたい、こういうように考えております。現在の歯槽膿漏症の治療指針に限って言いますならば、先生御指摘のように、改正すべき点が多々あることは事実でございます。
  144. 青山丘

    青山分科員 歯科医師の増加問題についてお尋ねいたします。  昨年、私は、人口と歯科医師とのバランスについて質問をいたしました。人口十万人対歯科医師数五十人という昭和六十年を目標にした計画は、五十六年末にすでに五十二人となってしまっております。私は、やがて人口と歯科医師数の需給のアンバランスが医療秩序を乱すおそれが出てくる、速やかな対応策をとるべきだと申し上げたわけでありますが、厚生省御自身もこの現状を理解しておられ、できる限り早くこの問題に対処したいという御答弁だったわけであります。歯科医師のみならず医科も同様で、現在大学の入学者数を減らそうというような話もあると聞いておりますが、国公立中心の医大と違い、私学中心の歯科大においてはおいそれと入学者を減らすわけにもいかないのが現状ではないかと思います。もはや新設学校を食いとめるだけでは間に合わないのではないか。その辺を十分踏まえた上で文部省との話し合いをされておられるのでしょうか。  今年度の厚生白書は大変よくできていると評判であります。しかし、この中で、医師、歯科医師数についてはまことに抽象的な表現でわずか述べておられるだけであります。「地域別、領域別等の偏在の是正、将来の医療需要の多様化等の問題をも考慮しつつ、適正な水準となるよう、中長期的展望に立って医師・歯科医師の養成のあり方を検討していく必要があろう。」、これは作文としては非常にできておりますが、具体的な指針が全く示されていない。これらの点について、現状はどうなっておるのでしょうか。また、歯科医師の需給バランスについて厚生省はどのように考えておられるのかお伺いいたしたいと思います。
  145. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生ただいま御指摘のように、歯科医師数につきましては従来、歯科大学の増設あるいは定員増というふうなことを図ってまいりまして、確かにトータルとしては五十二というふうになってきたわけでございます。しかし、先ほども先生からお話がございましたように、地域別あるいは領域別あるいはそういうふうな観点からいけば都市集中といったふうなことがございまして、全体としては相当いい線に来ているわけでございますけれども、部分的に見ますといろいろな問題点がございます。そういった点で、厚生白書は抽象的であるという御批判でございますけれども、私どもとしてはいろいろ総合的な施策を講じまして、この地域的あるいは領域的な偏在のないように努力をいたしておるわけでございます。  そこでトータルとして、このままでいけば一体どういうふうになるかという点でございますけれども、この問題も、そういうふうな具体的な問題になると、偏在、不足というふうな問題もあって非常にむずかしい問題でございまして、部内においてもまた文部省においてもこの問題については相当検討をいたしてきているところでございますが、実はまだ結論には達しておらないということで、いましばらく検討をお許し願いたいと思います。
  146. 青山丘

    青山分科員 医務局長さん、やがて重要な時期、重大な時期が来るのではないか。去年私は、歯医者さんがタクシー運転手に云々というような話をここでいたしまして、やがて過剰な時代が来るのではないかと心配をして指摘をいたしました。ぜひひとつ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  受益者負担問題について、これは大臣にお答えいただけますか。  歯科の場合、差額徴収制度がしばしば問題になったことがありますが、厚生省は数年来、逐次保険診療の導入を図り保険給付対象の拡大をしてきておられます。できるだけ自由診療から保険診療への転換を図るためにというその方針は大いに評価されるべきものでありますが、わが国の社会保障が欧米並みに近づきつつあると言われる今日、むしろ遅過ぎる、もっとこの施策の強力な遂行を私はお願いしたいのであります。そして、よりよい治療を保険給付内で安心して受けられるよう給付対象の一層の拡大と受益者負担を少しでも軽減した医療を心より望むものであります。  しかしながら、昨年七月の臨調の第三次答申によりますと、「乱診乱療等による医療費の非効率利用がみられる」と問題点が指摘されて、社会保障制度が引き続き国の政策として安定的に機能し得るよう受益者負担も考えていくことが重要であると示されております。諸外国に例を見ない速さで進むわが国の高齢化社会において、社会保障制度のしわ寄せが受益者負担という形で一般国民に及ぶことになれば、これはゆゆしき問題であります。いま臨調でも最終答申に向けて慎重な論議が進められていることと思いますが、厚生省としてはこの受益者負担問題をどう考えておられるのか、お伺いをいたしたい。
  147. 林義郎

    林国務大臣 青山議員の御質問にお答え申し上げます。  歯科診療の部門では、いま先生御指摘のとおり、自由診療というのがありまして、それを逐次改正をしてきたところでございます。すなわち、保険給付の適用範囲の拡大を図ってきたところでございますが、考え方といたしまして、通常必要な診療はやはり保険で給付をする、しかし、特に高価な材料を用いるとか装飾的なものをやるというようなものは、ここまで保険でやるのはいかがかな、これはやはりそれぞれ受益者負担というか、保険外給付と申しますか、そういったことでやっていただくというのが筋道ではないだろうか、こう考えているところであります。  いろいろと申しました。いまお話が、政府側と議論がございましたが、やはりそういったものは今後の診療報酬全体のあり方にも関連する問題でもございますし、御趣旨なども十分取り入れまして中医協でも審議をしていただく、こういう予定にしておりますから、その審議の状況を踏まえてこれからさらに検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  148. 青山丘

    青山分科員 時間が来ましたので、終わります。
  149. 白川勝彦

    白川主査代理 これにて青山丘君の質疑は終了いたしました。  次に、山本政弘君。
  150. 山本政弘

    山本(政)分科員 ここへ来る途中、ちょうどテレビを見ておりました。きのうまでに九人、中国から帰った人が肉親が見つかって、ちょうどいま一人見つかって、十人目が見つかったそうであります。  それで、私はこれでここ数年間、中国の帰国者のお手伝いをしてきましたけれども、まあ見ていますと大変喜んでおりました。しかしその反面に、悲しんでおる人もおる。だれか、中国の人は戦後が終わってないという話もありましたけれども、その話を聞きながら、さてなという気持ちもしたのです。というのは、帰ってから大変だと思うのですね、率直に申し上げて。日本に定住するということになっていろいろな問題があるだろうと思うのです。それは一つは言葉の問題があるだろう、風俗習慣の問題があるだろう、あるいは職業訓練の問題もあるだろうし、そして住まいの問題もあるだろう。  そうやって、そういうふうにしてやれやれということで落ちついた人たちがおるわけでありますけれども、そういう人たちと話をしてみますと、さて問題になってくるのが、一つ年金の問題があります。これから先、一体年金というのは私どもどうなるのでしょうかというのは、ついせんだってその方々と話したときに出てきた言葉なんです。  そこで、まず冒頭に大臣にお伺いしたい。  年金問題について、中国からお帰りになった人たちに一体これから先どのように対応しようとなすっておるか。ということは、要するに、どうも厚生省の様子を見ていると、そういうことに対する指導とか何かについて欠けておるのではないだろうか。当然受給権がありますよ、だからこういうことをやってごらんなさいというようなことについての指導がないのじゃないかという感じもするのです。それをやれば受けられる人があり得るはずではないだろうか、そんな感じがいたしてなりません。したがって、そういうことについてぜひお答えをいただきたい。
  151. 林義郎

    林国務大臣 中国残留孤児問題につきましては、山本先生にも大変御厄介になりましたことをお礼を申し上げておきたいと思います。  いまお話がありまして、中国孤児が日本に帰ってからどうするか、永住する、定住するということになったときに問題がいろいろあるだろうし、その中の問題の一つであるということで、年金の問題、確かにおっしゃるとおりでありまして、この問題は当然に考えていかなければならない話だと思います。ただ、わが国の年金制度は社会保険の仕組みをとっておりまして、老齢年金受給のためには一定期間の拠出を要件としておりますから、やはりいまお話のありましたように、いまから払っていかれたならばこうした形で年金を受けられますよという話は私はしていかなければならないと思います。ただ、もう四十歳以上になっておられるわけでありますから、掛けたところで少なくなるというようないろいろな問題があるのだろうと思いますし、そういった問題につきましては、五十九年に改正をする際、われわれの方としては現在国民年金厚生年金との統合を考えておるわけでございますから、そういった改正の際にこの問題は検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。お話がありましたように、いろんなことを教えてあげないと、向こうでは全然制度が違うわけですから、そういった親切心というのはわれわれも持たなければならないことだろう、こう考えておるところであります。
  152. 山本政弘

    山本(政)分科員 大臣のお言葉で実はもう答弁が出たようで、これ以上質問する必要はないかもわからぬですね。要するに、改正のときに十分に前向きに考えますというお答えが出たから、これ以上質問する必要がないかもわからぬわけですけれども、たとえば、すでにパートに出ている人もおるのですよ。臨時雇いに入っている人もおる。それからアルバイトをやっている人もおるのですね。そういう人たちは厚生年金に加入できるわけなんです。ところが、そういうことについて彼らが知らないという現実の問題があるわけです。そうすると、なぜそういう人たちに、要するにそういう指導をしないかという問題があるわけですよ。これは一刻も早くそういうことをしてほしい、またそういう指導をしてほしいと思うのです。それをぜひひとつお願いをしたいわけです。  そこで、改正ということになれば、そういうことで若干の御質問を申し上げたいわけでありますけれども、年金を受ける場合に、やはり原則的には三つの条件があるだろう。それは定住の意思があるということ、そして定住の事実があるということ、それからもう一つは、先ほど大臣がおっしゃったように、拠出をしているということだろう、こう思うのです。そうすると、先ほどお話がありましたが、ほとんどの人たちが四十歳を超えているわけですね。国民年金なんかの場合には、まあ二十五年、六十五歳という条件がありますが、そうすると、この人たちはほとんどの人たちが四十歳を超えている人たちですから、いま直ちに納付をしても、そういう条件を満たすことができないわけです。間違っていたら教えてください。そういう人たちについて何か救済措置があるのか、あるいは考える余地はありませんかということなんですが、年金局長、その辺についてお考えがございませんでしょうか。もしあったらお聞かせいただけませんでしょうか。
  153. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 いま先生から御指摘のあった点はそのとおりでございまして、現在の国民年金法が制定されます当時におきましては余り予測されない事態がいま起こっているわけでございます。現在の法律ができますときの整理といたしましてはそれなりに一つの整理があったわけでございまして、法律の十条にございますけれども、加入をしても資格を取ることができない、そういうような場合には都道府県知事に承認を受けて任意に脱退ができる、そういう整理をしているわけでございます。それで当時、中高年の方につきましては資格期間を十年まで短縮するというような措置をとりましてそれなりの対応をしているわけでございますが、制度が始まってから途中で加入をする、しかもそれが中高年である、そういうような場合、これは現在問題になっております中国から帰られる方だけではありませんで、一般的に外国から帰るというような場合には予想されていたわけでございますが、そういう人につきましては任意脱退の道を設けるということで整理をしていたわけでございます。  これはこれとして、当時の情勢としては一つの考え方だったと思いますが、現実に今回の問題だけではありませんで、経済の発展とともに国際交流も非常に盛んになってまいったわけでございます。中には若いころ入っておりましても途中で外国に行かれまして、また相当年数がたってから帰国されるというような方もあり得るわけでございます。そういうような国際化の時代に対応して年金制度の方もそれなりの対応を考えていく必要があるのではないかというのが現在の私どもの認識でございます。  そういう意味で、先ほど大臣からお答え申し上げました趣旨に沿いまして、明年の改正に際しまして何か工夫をしてみたいということでございます。
  154. 山本政弘

    山本(政)分科員 高齢者は短い加入で国民年金をもらえますね、期間短縮の特例というものがある。それは、昭和五年四月一日までに生まれた人は期間短縮がある。あるいは大正五年四月一日までに生まれた人は四年から七年の短縮がある。それから十年年金、五年年金なんていうのもありますね。したがって、私は、やはり中国からお帰りになった人たちは、これは要するに特別な条件があるということを考慮に入れたならば、そういう期間短縮の特例というものを法的に考慮する余地があるのではないだろうかということなのです。ぜひその点についてひとつお考えいただけませんでしょうか。それは考えていただけるかどうかということのお答えをお願いいたします。
  155. 林義郎

    林国務大臣 先ほど御答弁申し上げたことで尽きるかと思いますが、いまお話がありましたように全く本人の責めに帰すべからざる事由でおったわけでありますから、そういったものは素直にいろんなことを考えていかなければならない。それが五十九年改正のときに考えるべき問題だろうと思います。五十九年改正は相当大幅な大改正になりますのでいろんな問題があると思いますし、いま御提言のありました期間云々というような話でなくて、やり方はその中でいろんなことを考えて工夫してみなければならないと思いますが、この孤児の問題について何とかしなければならないということは十分念頭に置きまして検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  156. 山本政弘

    山本(政)分科員 大変ありがとうございました。  それじゃ、もう一つは、今度は厚生年金でありますけれども、厚生年金の場合はやはり、これは私が申し上げる必要ないと思いますけれども、国民年金よりも多額で支給開始年齢も早いという事実がある。だからそれにこしたことはないわけでして、先ほど申し上げたようにパートの人たちも一般の従業員の勤務時間の四分の三以上ですか、たとえば一日六時間以上働いておるならば月二十日の就業で加入ができるという事実があるというようなこともありますし、それから事業所によっては未適用事業所というのがありますけれども、これは任意加入ということがありますね。ですからそういう単独加入の方法というのもありますが、そういうことについてもひとつ特例措置というものをお考えいただけるでしょうか、局長どうでしょう。
  157. 山口新一郎

    ○山口(新)政府委員 厚生年金の場合には実際に事業主の方でどう対応するかという問題がございますが、制度といたしましてはいまお話がありましたように健康保険と一緒に一般的には適用を受けておられるということになろうかと思います。現在、これはちょっと問題にはなっておりますが、男の方ですと四十歳以後十五年、女子の場合には三十五歳以後十五年という資格期間の特例がございますので、その意味では幸いにして該当される可能性が非常に多いと思います。この特例自体が実はいま年金制度の上では問題ではございますけれども、中国から帰られた方の場合にはこの資格の方で何とか年金に結びつく可能性はあるのではないかというふうに考えております。
  158. 山本政弘

    山本(政)分科員 僕はこう思うのですよね。確かに厚生省の方で何回か、年金の未加入者について、受給権があるのにまだ加入をしていない人たちについてチャンスを与えてきた、しかしそれは何回か与えてきたけれども一定の限度があるだろうということで、そろそろそういうことについての締めくくりというものをやった方がいいというお考えはあるかもわかりません。ですからいまお話があったように、たとえばその男子の四十歳、女性の三十五歳の十五年ですか、この特例措置というものについても五十九年の改正ということ、存続について問題があるということについて、これは恐らくそういう特例措置については見直しをして廃止をする方向だというふうに僕自身は受け取っているわけです。ただしかし、いま申し上げたように中国にいた日本人で帰った人たちは、先ほど申し上げたようないきさつがあるということで、これはこれとしての一つ特例措置というものを考えていいのではないだろうかと私は思うのでお伺いしたわけですが、いまお話を聞きますと、そのことについても十分にお考えをいただけるということでありますから、大変感謝をいたしております。答弁が大変前向きなので、これ以上私はお伺いする必要がありません。  終わります。ありがとうございました。
  159. 白川勝彦

    白川主査代理 これにて山本政弘君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミ君。
  160. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 私は、精神薄弱者の収容施設の徴収金についてお伺いをしたいと思います。  この徴収金は、精神薄弱者が施設に入所をした場合に、その全額または一部を扶養義務者に負担をさせているわけなんですが、その徴収金の金額というのはどのようにして決められているのか、お伺いいたします。
  161. 正木馨

    ○正木政府委員 御質問のございました精神薄弱者施設に入りました場合の費用徴収でございますが、精神薄弱者福祉法第二十七条に費用徴収の規定がございまして、それに基づきまして徴収基準が決められております。費用徴収基準を決めるに当たりましては、その施設における処遇、これが保護単価になってあらわれるわけでございますが、その改善を勘案しつつ、かつまた保護者の所得に応じて基準額を定めるということになっております。これが大人でございまして、精神薄弱児の施設につきましては児童福祉法の五十六条第一項に徴収の規定がございまして、おおむね同じような形で徴収金が定められております。
  162. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 つまり徴収金は、保護単価、措置費とも呼ばれているものですが、その措置費と負担能力によって決められているというふうに理解してよろしゅうございますね。その負担能力というのは何を基準にして決められるのか、それから、措置費の方は五十一年から二年ごとに改定されているというふうに聞いておりますが、それでいいのかどうか、まずお伺いします。
  163. 正木馨

    ○正木政府委員 費用徴収基準につきましては、A、B、C、Dという階層を設けまして、生活保護世帯、市町村民税非課税世帯については徴収金はいただいておりません。なお、C、D階層につきましては、課税額に応じてD階層は十五階層まで分けて決めております。  それから、措置費、保護単価につきましては、保護単価と申しますのは人件費等の事務費と、それから一般生活費等を含めました事業費でございますが、これは毎年改善を行うということで実施をしております。
  164. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 課税最低限が五十二年度末から据え置かれておりますことで、収入がふえれば税負担の方が重くなるというのは当然のことだと思いますが、税額がふえると、それに伴って課税水準による徴収基準の区分、これが先ほど御説明のありましたようにA、B、C、D、D1、D2、D3、というふうに分けられているのですが、そのランクも自動的に上がっていく。そうですね。したがって、基準額はそれに伴って増加していく、負担させられる金額も増加していく、こういうことでよろしゅうございますか。
  165. 正木馨

    ○正木政府委員 先ほど申し上げましたように、徴収金の基準額は所得階層、これは市町村民税なり所得税の課税水準によって区分をしておるわけでございます。したがって、その対象者の方の所得が上がりますと、それにつれて所得税の額が上がるということになりますと上のランクに行くという仕組みでございます。
  166. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 課税額、課税水準が上がるとランクが上がる。しかし、所得税減税が据え置かれている中ではいやおうなくこの課税水準だけは、物価にスライドして賃金が上がると課税水準は上がっていくわけですから、そういうことをお伺いしたのですが、うなずかれておりますので……。  私、あらかじめ表をつくってお渡ししておきましたが、お持ちですか。——大臣、いま精神薄弱者の収容施設の徴収金というものはどういうふうにして決められるのかということは、私がお伺いをしておりましたので御理解をいただいたと思いますが、課税水準、つまりそれは負担能力によって、それから収容施設に要する費用、保護単価によって決められていくのだ、こういうことでございました。ところが、五十二年から課税水準の最低額が据え置かれているという状態の中で、精神薄弱者収容施設に家族を収容させている家庭にとって非常に重い負担になってきております。  これをごらんいただいたらよくわかるわけですが、たとえば年収三百万円の世帯のところ、これは五十二年の場合は二百二十万円でございました。所得税は一万三百円です。手取りが二百五万一千五十円。この場合国の徴収基準ランクはD3、徴収金は年五万五千八百円、五十七年に三百万円になりました。所得税は五万五千八百円で手取りは二百六十七万五千七百三十円、国の徴収基準ランクはD7に上がりまして、徴収金は十七万一千六百円でございます。同様に四百万世帯を見ていただきましても、こういうことで年収は五十二年一に対して五十七年は一・三五倍、所得税は一に対して二・五三倍、手取りは一に対して一・二九倍、そして国の基準はD7からD9に上がりました。これは自動的に上がっていくのです。そして徴収金は十一万七千六百円。これを一とみなしますと、その二・一倍、二十四万七千二百円というふうな負担増になっております。この家族は毎日新聞の計算をしたものをとっております。それで括弧をつけておりますのは倍率でございます。手取り額は所得税、住民税、社会保険料を差し引いております。障害者控除というのは一応あるわけですが、これは少しややこしくなりますので計算をしておりませんが、物価高は一・二三倍ということで考えますと、負担能力に応じてと言われるわけですが、物価が一・二三倍上がっているのに対して手取りの方はそんなに違っていないのに、徴収金の方は二・九倍と大変ふえているわけです。これは負担能力をはるかに上回る負担になりはしないかということを私は思うわけですが、どうでしょうか。
  167. 正木馨

    ○正木政府委員 確かに先生が御用意いただいた資料はそのとおりでございますが、年収三百万のところで申しますと五十二年が徴収金が五万五千八百円、それが五十七年になると十七万一千六百円になるということでございますが、先生のお書きになっておる手取り、いわば可処分所得と言ってもいいかと思いますが、五十二年と五十七年を比較いたしますと大体六十二万くらい所得では上がっておる、そして徴収金の額では十一万上がっておるということになりますが、その間、施設における措置の内容というものが向上しておるということも御理解を願いたいというふうに思うわけでございます。
  168. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 施設における措置の内容については後ほど触れますが、私は、手取りのふえ方じゃなしに徴収金が五十二年を一として二・九、こういうふえ方になっているじゃないか、しかも所得の方は年収で見ましても一・三七ですから、これは、この家庭にとっては、負担能力を五十二年当時よりも上回る能力を負担させられてきているというふうに言えるのではないかということを申し上げているわけです。  もう一つ例を挙げましょう。表2を見てください。今度はこの家庭は、五十二年から年収三百万円で変わらなく、五十七年まで三百万円ということになったというふうにしました。そうすると、たとえばこの家庭は五十二年末は五万五千八百円所得税がかかったわけです。したがってD7のランクに所属します。ところが徴収金の方は二年ごとに改定されていっているわけですから、この当時十四万一千六百円であったのが五十七年は十七万一千六百円へと、年収に変わりはない、しかも物価が上がっていて、これは総理府の統計局の調査ですが、先ほど言いましたように二三%上がっていますから、実質暮らしの方は明らかに低下しているわけです。にもかかわらず徴収金は、ランクはそのままですが、徴収金そのものが上がるために二一%もふえてしまっている。こういうことも私は負担が非常に重くなっているということのあらわれだと思いますが、大臣、いかがですか。
  169. 正木馨

    ○正木政府委員 確かに先生のいまお示しの年収三百万円で固定した場合の徴収金が年々上がってきておる、これも御指摘のとおりでございます。これも先ほど申しましたように、その間の処遇の内容の向上、保護単価のアップというものが一方において影響してきているということも御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから、現在その徴収金の徴収をしておるのがどの程度の率になっておるかと申しますと、大体五%程度でございます。つまり九五%は国なり公費でカバーをしておる。そしてその徴収金につきまして、所得階層に応じて実際に受ける処遇に照らしてどう負担していただくのが公平につながるかという観点に立って、いまの徴収基準がつくられている点も御理解をいただきたいと思います。
  170. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 私が聞いているのは、負担能力を超えるそういう負担になっているではないかということで、あとの保護単価の問題はいいわけです。しかも私は、保護単価、措置費のことについても厚生省の方から資料をいただいて計算をしてみました。そうしたら一体どんなことになっていますか。厚生省の出していただいた資料を見ますと、これは月額一人当たりの経費、甲地域九十人定員の施設から割り出していただいたわけですが、五十二年を一としましたら、確かに一・三八に五十七年はふえております。それは確かにふえているのです。しかし問題は、措置費がふえたために、保護単価が上がったために徴収金額もこれにつれて改定するというのは、これはこの数字からいったら理屈が合わないというふうに考えるわけです。  それは、私がお渡ししました資料の3を見ていただいたらわかりますけれども、五十二年を一人当たりの経費月額一として考えた場合、五十七年は確かに措置費の方は一・三八になっております。しかし国の徴収基準額の方をごらんください。国の徴収基準額は、措置費の上がった一・三八に比べて、CIで一・六四、C2で一・七五、D1で一・五三、D2で一・五二、D3で一・五三というふうに、はるかに措置費の方より徴収基準額の方が上がっているではありませんか。措置費の保護単価に伴って徴収基準額が決められるんだというふうにおっしゃいますけれども、はるかに上がっているじゃありませんか。
  171. 正木馨

    ○正木政府委員 この資料につきましては五十二年から五十七年まで比較をされておるわけでございますが、先生御案内かと思いますが、保護費、保護単価は毎年上げて改善をしておりますが、徴収金につきましては隔年でやっております。五十七年、五十五年、五十三年、五十一年、こうやっておりますので、五十二年と比較していただきますとあれなんで、これは五十一年と比較していただかないと、五十三年の徴収金の改定をいたす場合には、五十二年、五十一年の二年間を見まして、後追いといいますかの改定をするわけでございます。  ちなみに申し上げますと、五十一年の保護単価は、五十二年の九万九千三百六十円に対応いたしますのが八万六千九百五十円でございます。そうしますと、五十一年の八万六千九百五十円を五十三年の十万八千百八十円と比較いたしますと、一・二四四ということになるわけでございます。ぴたりは合っておらないわけでございますが、基本的には保護単価の改善に合わせて徴収金も改定していくという考え方で整理をしておるつもりでございます。
  172. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 そうはおっしゃりますけれども、私は、これを比較したいからと言って要求したらこういう資料を下すったのですから、これに基づいて計算をしているわけです。  後追いと言うけれども、実際に父母が負担させられているその数字と比較する場合には、こういうことになってくるわけなんです。それは事務上の問題でしょう。  私がここで聞きたいのは、さっき徴収金は措置費の上がり方とそれから負担能力等と、こういうふうに御説明があったけれども、しかし負担能力の方は、所得税の課税最低限度額が据え置かれているのと、そういうことの中でどんどんランクは上がっていっているわけですね。しかも、そのランクが上がると同時に、今度は保護単価で決められる基準、この基準額の方もどんどん上がっていくわけですから、両方でその家庭にとってはこれは深刻な問題になってきている。だから、最初に御説明のあったそういうことには現状はなっていないではないかということを申し上げているのです。大臣、いかがでしょうか。
  173. 林義郎

    林国務大臣 藤田議員の御質問にお答えを申し上げます。  いま私も、いきなり数字を藤田議員から御提示がありまして、ずっとお話を聞いておりました。確かに数字を見ておりますといろいろと問題もあるんだなあと、やはりどうも長い間所得税減税、課税最低限を上げなかったところが一つの大きな問題であると、そういった形によって、今度費用がかかるから徴収金はそこで取るというふうな形でやっちゃったところが、あるいは一般に所得がずっと上がってきていますからそのときに費用もかかるしということでこういうことになってしまっているのかなといま思って、お話を聞いておったところなんです。  費用徴収につきましては、従来から家族の負担能力を勘案して基準の設定を図ってきたということでございますが、今後ともこれはやはり無理のない形にしていかなければならない、これが私は一番大切なことだと思うんです。  さっき三百万、五百万とこうありましたね。所得が相当上がってきたならば、それは少しは負担をしてもらってもいいんではないかなという気持ちはするわけです。しかし、同じ額でだんだんこう上がってくるということが一体、やはり同じ所得で税金の額も同じ、それはどうかなという感じも実はするわけですが、何しろ相当細かい計算でありますから、私も、いきなりきょう先生から大変御勉強された数字を出していただいてあれですから、何か少しこれは考える必要があるのかなという感じはしているわけであります。  精薄の方々の御家庭というのは、施設に入っているということも大変なことだと私は思いますし、その費用の負担をするということもまた大変なことであるし、そういったことを考えながらいろいろと措置をしてまいらなければならないんじゃないか、こういうふうに考えております。
  174. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 収容施設の徴収金は、そういうふうに五十二年からずっとどんどん自動的に引き上げていかれていっている中で、仕方がないので、それじゃお母さんが働こうかということになりましたら、これがまた家族の合算になるのです。それで、ほかの子供たちをせめて大学にでも行かせたいとは思ってはいても、そういうふうな事情の中で自分も働くと言い出して、子供が働くとこれもまた合算になるのです。だから、大臣、ずいぶん追いかけられ追いかけられて、徴収金の負担は重っ苦しくつきまとっているわけです。  私は、大臣もいま考える必要を感じるというふうにお答えをいただきましたけれども、しかし、これはぜひ考えていただきたい。措置費の上昇分をこうして徴収金と比べてみても、負担能力ということを見てみても、こういうことでは結局国の負担を減らすために受益者負担をふやして、そうして扶養義務者に過度の負担をかけていくということになってしまっている。だから、最初の御説明のとおりには現状はなっていない。私は本来、そういうふうに応能の負担というんですか、そういうことに対しても大いに納得をすることのできない立場にあるわけですすれども、しかし、厚生省が言われるようにその能力に応じてと、応能ということを言われるんだったら、この点はぜひ真剣に検討していただきたい。厚生省が別に課税最低限を据え置いているわけではなくても、実際にその政治のもとでこういうふうに自動的に負担がかけられていっているという現状を、私はもうこれ以上無視できないというふうに考えますので、大臣、ひとつもう一度この徴収金の問題については負担を軽減するという立場で御検討いただけませんか。
  175. 林義郎

    林国務大臣 藤田議員の御質問にお答え申し上げますが、確かにいまのこの情勢の中でいろいろな負担がふえてきている、こういうふうな話でございますが、お話しの趣旨はよくわかるのです。わかるのですが、精神薄弱者の措置予算ということになりますと、費用総額の約九五%というものは国庫負担の基本額ということになっておりまして、徴収金は五%、こういうことになっておるわけですね。そこの問題もやはり考えながら、確かにお話しのようなアンバランスというか社会の変動に伴ってのいろいろな問題がありますから、そういったものも考えながらやっていかなければならない。私は、余り無理なことをしちゃいかぬのだろうと思う。(藤田(ス)分科員「そうですよ。無理なことになっているんですよ」と呼ぶ)だから、無理なことがどこの辺までが無理かと、こういうふうな話の問題ですから、そういったことも考え得るし、それから、精神薄弱者の方でございますから、やはり温かい心を持って待遇をしてあげなければならない。そういったことで、今後少し考えてみたい、こういうふうに思っております。
  176. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 それじゃ検討していただけるわけですね。考えるって、別に大臣が一人考えていただいたのではしようがないわけで、これはぜひもう一度、どういうふうに家族に負担がかかっているかということを真剣に、国がこれだけ持っているじゃないかということじゃなしに、それぞれの家庭がどういうふうに負担が重くなっているかということをもう一度その立場に立って考えて、今度改定をするときには十分そのことを考えて軽減を図っていただきたいわけです。
  177. 正木馨

    ○正木政府委員 この措置費の場合に費用徴収をどうするかというのは、先生もおっしゃるように非常に大事な問題でございます。大臣もお答えになりましたように、施設処遇に対しまして費用徴収というのは五%程度であるわけですが、それを一体いかに公平に負担をしていくのがいいのかということは、私どももかねがね頭を痛めているわけでございます。  今後とも、処遇内容の向上というものを基本に考えつつ、費用負担のあり方について十分意を尽くしてまいりたいと思っております。
  178. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 私は、本当はこの九五%の国庫負担ということについてもここではっきりさせたいわけです。それは、この九五%の数字の中に、私にはおっしゃるとおりに納得できない内容のものがあります。この問題についてはもうきょうはこれ以上触れませんけれども、しかしこれからそういうことを十分考えていっていただくということですので、その検討を期待しておきます。  そもそも、精神薄弱者の収容施設の徴収金というのは昭和四十七年から課せられたものでしょう。それまでは身体障害者と同じように食費の相当分であったものが、この費用徴収制度に切りかえられたことによってこういうふうになってきたわけですね。その理由を明確にしてもらいたいわけです。
  179. 正木馨

    ○正木政府委員 確かにおっしゃいますように、かつては精神薄弱者、大人と子供で所管が違っておったわけでございますが、精神薄弱者の特性を考えますと、単に生活年齢によって援護を区分することは適切でないということで、一貫した保護指導を行おうということで、児童福祉法と精神薄弱者福祉法の一部改正を行いまして、児童家庭局において所管をするということになったわけでございます。  それで、費用徴収について申しますと、現在身体障害者の収容施設については食費相当でございますが、身体障害者については法律上費用徴収の規定がないわけでございますが、児童福祉法あるいは精神薄弱者福祉法につきましては、先ほど申しましたように児童福祉法五十六条、精神薄弱者福祉法二十七条で費用徴収の規定を設けておりまして、これによってかかった費用を負担能力に応じて徴収をするということになっておるわけでございます。  大人と子供を一元化するに当たりまして、たとえば精神薄弱者施設の職員定数がそれまで六対一でございましたのを五対一にするとか、あるいは医療費とか就職支度費等児童の施設処遇に合わせました処遇面での向上というものもあわせて図りまして、処遇面での向上とそれから費用負担の統一的な扱いということを四十七年から実施して今日に至っておるわけでございます。
  180. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 最後にします。  そういう御説明は全然納得できないのです。規定があると言うんだったら、昭和三十五年から福祉法で規定があったのです。何で四十七年まで身障者と同じ扱いであったのがそういうふうに、急に処遇の一貫ということで部局を変えて、それで急に負担まで一貫せんならぬのか。そこのところは全く御説明に合いません。  それから規定と言いますが、「することができる。」と書いてあるのであって、徴収をするというふうには規定しておりませんから、それも全く納得のできないことなんです。  いずれにいたしましても、国連の精神薄弱者の権利宣言というのは、本人及び家族は経済的保障や扶助を受ける権利を有する、こういうふうにうたい上げてもう十二年目を迎えます。それで、今日なおこういうふうに精神薄弱者の対策はおくれているわけです。そういうことだから、私は、きょう徴収金の問題を例に取り上げて御質問をいたしました。  最後に、私は、この問題について大臣にもう一度、国連の精神薄弱者の権利宣言に立ち返って、もっと精神薄弱者の対策強化並びに扶養義務者の負担の軽減について御決意のほどをお伺いしたいのと、それから、最近特に受益者負担ということがやかましく言われる中で、身体障害者に対してまでもそういうことが言われているというように聞いておりますけれども、絶対にそういうことはやらないということをお約束いただく、そういうことで質問を終わりたいと思います。
  181. 林義郎

    林国務大臣 一九七一年十二月二十日、国連総会、精神薄弱者の権利宣言というのは、私も承知をしております。そこでは「精神薄弱者は経済的保障および相当な生活水準を享有する権利を有する。」ということと、それから次は「精神薄弱者が同居する家族は扶助を受けるべきである。」こういうふうなことがうたってあるということは承知しておりますし、精神薄弱者福祉の基本理念がここに基本的にあるのだろう、こう思います。  それで、こうしたものに基づきまして精神薄弱者の福祉政策をこれからも進めていかなければならないと思いますが、私はやはり、いまのお話で、これから福祉をやっていくときに、さっき先生からいただきました表がありましたが、こうしたことを見ると、何かふっと思いましたのは、高い所得の方もおられるわけですね。それは生活程度が低いから精神薄弱者が出るとか身障者が出るという話ではない。やはりこの辺も、負担に基づいてやるというのは、高い所得を持っている家族があって、その中で非常に困った方がおられる、そこは施設に入れなければならないというような場合には、応益の負担というものはある程度まではしていただくということは、私は社会的に納得を得られる話ではないだろうかとむしろ考えているわけでございますが、先生の御提言もございますから、その辺は私ももう少し研究させてもらいたいと思います。  福祉におけるところの応益負担の問題というのは、私はいろんな議論のあるところだろうと思います。私も単純に自分の考えを押しつけるつもりはありませんし、またいろんな方々の御意見も拝聴しまして、本当にどういうふうな形で物を考えたらいいかということはじっくり考えてみたい、こういうふうに思っているところでございます。
  182. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 終わります。
  183. 白川勝彦

    白川主査代理 これにて藤田スミ君の質疑は終了いたしました。  次に、清水勇君。
  184. 清水勇

    清水分科員 大臣、先ほどから拝見しておりますが、お元気のようでまことに結構です。  実はきょうは、同和対策における福祉行政という問題にしぼってお尋ねをしたいと思います。  実は九十四国会の際、衆参両院のこの分科会で、時の園田厚生大臣が、福祉行政に関してかなり積極的な姿勢を示されております。短い言葉ですからその要旨をちょっと私の方から紹介をしてみたいと思うのですが、衆議院の分科会ではこういうことを言っておられる。  「障害者の発生率が一般の地区と同和地区とでは約二倍に近い差がある。」生活保護受給率でも約四倍となっているが、これは「政府の同和対策というものがまだまだすき間があって、でこぼこが完全に是正されてないという一つの証拠である」こういうふうに言われている。それから、参議院の予算分科会では、福祉行政が一番大事であるから、同和地区の福祉事業について具体的に検討してやらなければ、これをこのままほうっておくと、差別をなくすと言いながら、いつの間にか政府が新しい差別をつくりかねないことになる。「政府」と言っているわけでない、「われわれ」と言っているわけですけれども。それからまた、こういうことも言っておられる。これまで同和地区の公共事業など目につくものは非常に努力してきたが、一人一人の生活の向上、一人一人の問題を解決するという方向に金も行政も今後は力点を置かなければならない。そしてさらに、同和地区の人々は社会福祉についても一般国民としての同等の権利を持っている。ただ、差別をなくすということは、一般の平均よりも、一般に対する施策よりもという意味だと思います。同和地区の差別をなくす分を上積みしなければならない、そうしないと差別はなくならない。こういうふうな、要旨で申し上げましたが、趣旨の答弁をされているわけであります。  そこで、まず最初に林厚生大臣に、そうした認識なり判断なりについてこれは当然継承なさって対処されるものと思いますけれども、確認の意味で率直な所信をお示しをいただきたい、こう思います。
  185. 林義郎

    林国務大臣 お答え申し上げます。  園田元厚生大臣答弁内容、いまいろいろとお話がございますが、要すれば、昭和四十年の同和対策審議会答申の「地区における社会福祉の問題は、単なる一般的な意味での社会福祉ではなく、差別と貧困がかたく結びついた同和問題として」とらえるべきであるという精神に基づいて、各般の施策に取り組んでいかなければならない、こういう趣旨というふうに考えておりますが、私ども、その対策審議会の答申の精神を踏まえながら、地区住民の生活の安定及び福祉の向上を図るように進めてまいる決心でございます。
  186. 清水勇

    清水分科員 そういたしますと、四十年の同対審答申の精神に立脚をしながら、その一部として園田元大臣が言われたのだと思いますが、林厚生大臣としてもその趣旨を体して積極的に推進をしていきたい、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  187. 林義郎

    林国務大臣 そのとおりでございます。
  188. 清水勇

    清水分科員 それでは、これは局長に聞いた方がいいのかもしれませんが、約二年前ということになるわけですが、いま私が紹介をした園田大臣の答弁後今日まで、たとえば具体的に同和地区における福祉行政充実あるいは強化、こういう観点からの施策というものがどのように推進されてきているのか、現況を含めてお聞かせをいただきたいと思います。
  189. 金田一郎

    ○金田政府委員 先生ただいま二年とおっしゃったわけでございますが、私の手元にちょっと五十八年度の新しい事業等についての資料がございますので、これによりまして御説明申し上げたいと思います。  二つに分けまして、まず生活環境改善施設整備等、いわゆる物的事業でございますが、これにつきましては、五十八年度におきましては五百三十八億九千八百万円を計上いたしております。これによりまして、地域改善対策特別措置法に言っております期間内に、五年の以内に予定いたしております事業量の消化を図るように最大限の努力をいたしたいと思います。私どもの現に考えておりますところでは、この経費をもって十分賄えるものと思っております。  それから次に、施設整備以外のいわゆる非物的事業でございますが、これにつきましても、五十八年度におきましてはまず隣保館運営費の増額及び職員の増を図りました。第二に、保育所における非常勤保母の常勤化も図ることといたしました。これなど、従来からの施策の内容の改善を図ったところでございます。さらに五十八年度からは、隣保館におきまして新たに身体障害者及び老人に対する日常生活訓練等の福祉事業を始めることといたしました。  こういったことでございますので、今後とも、これら福祉施策面の充実に特に配慮してまいりたいと思っているわけでございます。
  190. 清水勇

    清水分科員 九十四国会以後この二年間にどういう措置が講じられていたかという私の質問に対して、五十八年度の事業計画等についていま触れられたわけでありますが、五十八年度のことも後で私、聞くつもりでおったわけです。  しかし、せっかく先に言われたからお尋ねをしておきたいのですけれども、実は私の手元にある資料を見ますと、前年度予算に比較をして五十八年度の場合には、厚生省関係の同和予算というものは率で言って一七%前後の落ち込みになっているのではないのか、こういうふうに思います。そして特に、いまも五百三十八億円余という数字が出ましたけれども、これは毎年の例ですけれども、物的事業関係予算がその大部分を占める。つまり九五%前後を占める。非物的事業費というようなものは余り配慮がされておらない。こういう状況の中で、たとえば、さきに林厚生大臣も、同対審答申なるものを生かしていくために、同和地区における福祉施策充実強化をしたいと言われるのだけれども、どうなんでしょうか、率直に言っていままでよりもレベルダウンをするというようなことはありませんか。
  191. 金田一郎

    ○金田政府委員 御不審はごもっともかと思いますので、もう少し詳しく御説明申し上げてみたいと思うわけでございます。
  192. 清水勇

    清水分科員 余り詳しくされると時間がなくなってしまうから、しかるべくやってください。
  193. 金田一郎

    ○金田政府委員 それではできるだけ要点を申し上げます。  たとえば、ちょっと数字を申し上げてみますと、まず物的事業の方でございますが、確かに昭和五十七年度当初予算におきましては六百六十五億の整備費を組んだわけでございます。これが、ただいま先生おっしゃいましたように五百三十八億ということで落ち込んだのではないか。これは前年比約八一%でございます。しかしながら、先生も御承知の、五十七年度途中の補正におきまして実は四百三十億に補正したわけでございます。これは、私どもできるだけ地区における需要は見ようと思いまして、各県に詳細に照会等もいたしたわけでございますが、残念ながら五十七年度におきましては四百三十億しか出てこなかったわけでございます。したがいまして、この四百三十億の前年実績、これはごく新しい数字でございますのでこれとお比べいただきますと、五百三十八億は一二五%ということに実は相なっておるわけでございます。  それから次に、地域改善対策事業といいますか、いわばソフト部分でございますが、こちらにつきましては、隣保館の運営費とかあるいは各種の人件費その他でございますが、こういったものにつきましては、実は当初予算で三十九億一千二百万を組んだわけでございますが、これも残念なことに、年度途中の補正で三十七億七千六百万に五十七年度はせざるを得なかったわけでございます。この一番新しい実績と比較いたしますと、今回三十九億六千三百万を計上いたしておりますので、対前年比は一〇五%ということで、これも伸びております。  私どもは、決して予算を減らすばかりが能ではございませんので、できるだけ需要には応じたいと思っておるわけでございますが、今後とも、できるだけ各県の事情を聞きまして補助をいたしていきたいと思っております。
  194. 清水勇

    清水分科員 話はちょっと前後して恐縮なんですけれども、実は厚生省として、同和地区におけるつまり国なり自治体なりが福祉対策施策を必要とする、たとえば老人であるとか障害者であるとかあるいは生活保護世帯、こういうものの実態を把握しなければ具体的な施策というものに結びついていかないんだろうと思いますが、どうなんでしょうか、いま申し上げたような実態の把握はどの程度行われておりますか。
  195. 金田一郎

    ○金田政府委員 ただいま先生おっしゃいました点につきましては、昭和五十六年に実態調査をいたした結果がございますが、これによりますと、身体障害者につきましては、まず全国では人口比で二・四%でございますが、同和地区におきましては四・五%ということで、全国の一・九倍ということでございます。高齢者につきましては、全国が九・〇でございますが、同和地区は八・五ということで若干少ないわけでございます。ただ、一人暮らし老人につきましては、全国八・六に対しまして一三・八と、全国の一・六倍という数字が出ております。
  196. 清水勇

    清水分科員 そこで、いま同和地区における障害者の実態に触れて一つの数字が述べられているわけです。はしょった数字で言われておりますが、大筋そういうことでありましょうからそれはそれでいいんだと思いますが、厚生省の行った五十六年の調査結果を見ても、たとえば障害者の割合は一・九倍、約二倍というような高い率を示している。  そこで、問題は原因がどうかということだと思うのです。原因がどこにあってそれだけの高い数字が出るのか。  たとえば視覚障害者という方々がたくさんいる。これは衛生環境が非常に劣悪だというような中でトラホームにかかる割合が非常に高いし、これが十分に治療を受けられないというような状況の中で、視覚障害という形で後遺症が残る。あるいは経済的に貧困のために乳幼児の時期に病気にかかる、十分お医者さんの診断を受けられない、そのために完全な治癒がない、そういうことがこれまた障害の一つの原因になる。一口に言えば、同和地区における経済的な劣悪な事情とかあるいは貧困、そのよって来るところは部落差別にあるということを、これはだれも否定できないと思うのですね。  ですから、私は、そういう障害者が非常に多いということはやはりこれは部落差別が基本的な原因なのではないのか、こういうふうな感じを持っているわけですけれども、どういう御認識でしょうか。
  197. 金田一郎

    ○金田政府委員 先ほど先生も言われました、かつて園田厚生大臣が言われましたような、そういった原因等いろいろあろうかと思いますが、私どもの方からは、ただいま先生が言われました視覚障害者の問題、あるいは妊産婦等の問題につきまして、私どもとしては、たとえばトラホームの予防事業につきましては、通例の場合に比べまして、年一回同和地区につきましてはトラホームの検診及び治療を行っておりますし、また、妊産婦の健康診査事業につきましては、対象地区の妊婦を対象といたしまして医療機関に委託して行う事業を、一般では一回行っておりますが、これを同和地区の場合におきましてはさらに一回よけい積み重ねてやっている、こういった事業を行うことによりまして、ただいま先生御指摘のような環境ができるだけ除去されるように私ども努力しているわけでございます。
  198. 清水勇

    清水分科員 そういう努力はこれは大いに払ってもらわなければならないのだが、私が申し上げたのは、その前段として、障害者のパーセンテージが非常に高いというのは、たとえば経済的貧困であるとかあるいは同和地区の持っている衛生環境面の劣悪さといったようなものが結局障害の一つの原因をなしてはいないのか。そこで、障害の発生というものと部落差別の存在というものとは深いかかわり合いがあるのではないか、こう思うのだが、あなたの認識はどうか、こういうふうに聞いたわけです。
  199. 金田一郎

    ○金田政府委員 この同和問題は長い歴史があり、これは先生に申し上げるのは釈迦に税法でございますが、また最近のいろいろな問題といたしましても、たとえば障害者のことを一つ例にとりましても、早期発見、早期治療が行われたかどうかといったことも、最近は障害の発生に非常に影響がございます。そういったいろいろなことの積み重ねではないかと私は思っております。
  200. 清水勇

    清水分科員 申し上げたいことがまだあるけれども、時間の制約があるものですから余り議論しているわけにいかないのです。  そこで、いずれにしても障害者の割合が非常に高い。そうした部落障害者といいましょうか、同和地区における障害者の仕事といいましょうか就職といいましょうか、そういう状況は私自身も調査をしたことがあるのですけれども、どうも就職率などを見ると、一般健常者と比べてたとえば二七・何%というような非常に低い数字が示されておる。これは一般の障害者のパーセンテージと比較してもかなり落ち込んだ数字になっている。ですから、同和地区における障害者の場合には、一面では部落差別を受けているという状況と、一面では部落の障害者なるがゆえに安定した企業等への就労ができない、こういう状況があるわけですが、こうした場合には、まさに先ほどの園田答弁ではございませんが、一般に対する以上の就労対策における特別な配慮というものがなければならないのじゃないか。これは厚生省というよりも労働省の方かもしれませんが、どんな手だてを講じておりますか。
  201. 増田実

    ○増田説明員 労働省におきましては、御承知のように昨年の新法に基づきまして、特に同和関係の対策としまして、地域の住民の就職差別の解消、雇用促進等職業安定を図るということで、措置としましては、受け入れ側の雇用主に対して特に啓発指導を重視しております。  また、求職者の方にはきめ細かな職業指導の実施でありますとかいろいろな就職援護の措置を講じておりまして、職業に必要な技能の付与、こういう面で特に雇用対策に力を入れて推進しておるわけでございますが、同じように心身障害者の方に対しましても、これも雇用対策の上で重点課題としておりますし、また対象者としても重点に置いて雇用の促進、職業の安定を図っております。  心身障害者の方に対しては、特に身体障害者の場合は企業、雇用主に対しまして雇用率の達成を図っていただくような指導をしておりますし、また障害者を雇い入れる事業主に対しましては各種の助成金を支給する。それからまた、障害者の方々には就職の援助としまして、いろいろございますが、たとえば職場適応の訓練を実施するとか就職資金の貸し付け、こういう特別の施策を講じておるわけでございますが、同和地区住民の障害者ということになりますと、先生の御指摘のとおりいわば二重のハンディを背負っておられる状況であるということを十分に踏まえまして、これはやはり障害者一人一人にケースワーク方式できめ細かな職業相談が必要だ、必要によっては職業能力に関します評価とかあるいは技能評価、そういうことをした上で障害者に適した職業を選んでいただく、また就職に結びつける、こういうことを基本にしておりますので、そういう面で今後ともこの業務を一層推進するように努めておるところでございます。
  202. 清水勇

    清水分科員 一昨年は国際障害者年、特に厚生省は、障害者が社会に平等に参加ができるような立場に立ってさまざまな事業推進をされた、私もよく承知しております。いま労働省からもお話がありましたが、たとえば障害者の雇用率を高めるための一定の雇用率というものを企業に負荷して、企業の社会的な責任といいましょうか、協力をかねてから求めておられることはよく承知をしております。  ただ一言余分なことを申し上げさせてもらうと、さまざまな助成金をというお話がいまありましたね。たとえば重度身障者等を雇用する場合にある程度の賃金相当分等を助成するというような制度がある。ところがその原資は、雇用率未達成の企業がペナルティーという形で払う一種の課徴金を原資にしている。ですから世の中の企業の中には、特に大企業等を中心に、身障者を雇用しないでペナルティを納付することで免責を受けようというような傾向がなしとはしないという状況があるのですね。そういうときに、いわんや部落出身の障害者というようなものは完全にはじき出されてしまうということが懸念されるわけです。  ですから、これは単に労働省という立場よりも、特に林厚生大臣はかねがね人間尊重といいましょうか、ヒューマニスティックな立場に立って御努力をされておるわけですけれども、つまり金さえ払えば免責される、そういう一つの風潮を根絶をしていくということにならないと、やはり一般の障害者もいいところへ安定的な就労ができない、いわんや同和地区の身障者においておや、こういうふうに私は思うのですが、その点どんなふうなお感じでしょう。
  203. 林義郎

    林国務大臣 清水議員の御質問にお答え申し上げます。  「地区は差別のなかの貧困の状態におかれている。」「日本社会の構造的欠陥の集約的なあらわれにほかならないが、その低劣な生活実体を媒介として差別の観念が再生産され、助長されるという悪循環がくりかえされる。それゆえ、地区には一般平均をはるかにこえる生活保護受給率がみられるばかりでなく、疾病、犯罪、青少年非行など社会病理現象の集中化が顕著である。」というのは、昭和四十年に出た同和対策政府への答申なんですね。(清水分科員「同対審答申ですな」と呼ぶ)ええ、同対審答申です。それで私は、こういったことはやっぱり、単にいろんな施設をつくるとか、いろんなことをやるという話だけではなくて、いま先生の御指摘のように、やはり全体の問題としてとらえていかなければいけない話だろうと思いますし、そういった意味で総理府に同和対策室を置きまして総合調整をやる、こういうふうな話になっています。もちろん厚生省といたしましては、相当大きな部分を抱えているわけでありますから、そういった点とも相協力しながら施策充実に努めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  204. 清水勇

    清水分科員 いまの同対審答申を読み上げられた中に「貧困」という文言もあるわけなんですけれども、非常にその実態を物語る数字として、たとえば生活保護費の受給率、これは全国平均一・二%という数字があるように私は記憶しているのですけれども、これに対して同和地区の障害者の場合には実に三六%という高い受給率になっているのではないのか。一般の障害世帯の場合でも五%前後という数字だと思います。それと比べても六倍、七倍という高さ、そのよって来る原因は、安定的な就職もできない、あるいは障害がある、あれこれのハンディが余りにも多い。ですから私は、この際、厚生省としては、かさ上げ福祉というものに対して、たとえば一般に対する以上の上積みをもって特段の措置をとるという施策に対して、逆差別だといったような議論も世の中にはないではありませんけれども、やはり私はそれをやらなければならないことを示しているのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  205. 金田一郎

    ○金田政府委員 先生も御承知のように、同和対策につきましては、整備費その他補助率のかさ上げをしていることは御承知のとおりと思います。  生活保護を例にとられたわけでございますが、生活保護につきましては全国の保護率がたしか一・二%でございますが、これに対しまして同和地区は五・七%という新しい数字もございます。全国の約四・六倍でございます。(清水分科員「同和地区全体ではね」と呼ぶ)そうです。そういうことでございますので、私どもとしては、生活保護につきましてもできるだけ生活保護の適用が漏れることのないように、これは無差別平等にすべての国民に対して適用される制度でございますので、他の場合も同様でございますけれども、特にこういった地区につきましては漏れることのないように今後とも指導してまいりたいと思っております。
  206. 清水勇

    清水分科員 ぼつぼつ時間が来ますから最後にいたしますが、実はさっき五十八年度の予算に触れて局長から見解があって、決して前年対比で落ち込んでいないのだ、こういうことが言われたわけですけれども、しかし、たとえば隣保館等の運用をどうするか、さまざまな施設がありますが、その運用の妙を得るためにどうするかということになると、どうしてもソフトの面での新規な予算というものが相応に確保されなければならぬと思いますね。ところが、こういう財政事情を反映してなかなか大蔵当局はそうした新規事業についての要求にこたえようとしない。むしろこれをカットするというような傾向がある。幸い力ある大臣が座っておられるわけですから、今後の過程でやっぱり必要だと認めるそういう施策の実行に伴う予算については、大蔵当局ががたがた言っても、いわゆる同対事業の本旨というものをきちっと踏まえて、場合によれば説得までしてもらって、万遺憾なきを期してもらいたい、こういうふうに思うわけでありますが、その辺のことについて、最後に大臣の所信を承りたいと思います。
  207. 林義郎

    林国務大臣 清水議員の御質問にお答えを申し上げます。  この地域の問題につきましては、いまお話しのように、いろいろなことを考えていかなければなりませんし、また、逆差別ではないかという一般的な話があるわけですが、私は、そうは思わないのです。やはり先生と同じように、いろいろなことをやっていかなければ、本当にこの問題の解決はないのだろうと思いますし、私も一生懸命努力をして、予算その他の問題については、これからも努力を傾ける決心を申し上げておきます。
  208. 清水勇

    清水分科員 終わります。
  209. 白川勝彦

    白川主査代理 これにて清水勇君の質疑は終了いたしました。  次に、草野威君。
  210. 草野威

    草野分科員 私は、現在大きな社会問題になっております中国残留孤児の問題にしぼって、何点かお伺いしたいと思います。  大臣も、この問題につきましては毎日大変なお骨折りをいただいているわけでございますが、われわれとしても、毎日の新聞やテレビの報道を見ながら、本当にもう、あるときは涙を流しながら見ているわけでございます。しかし、この問題をよく考えてみますと、われわれはいつも日本側からこの問題を見ている、こういう感じがするわけでございますが、しかし、これはやはり相手の中国側に立ってこの問題を見る、考える、そういうことも大変重要なことではなかろうか、こんなようなことも考えるわけでございます。  そういうところに立ちまして、大臣のお考えなり御認識を伺いたいと思うのですけれども、たとえば、この孤児問題の発生というのは、日本が中国に侵略をした、この侵略戦争の結果こういう孤児問題が発生したんだ、その責任は日本側に一方的にあるんだ、そこら辺のところの認識に少しわが国は欠けているのではないか、こういうような声も聞かれるときもあります。まして、孤児も四十年近く中国で生活しておりまして、中国の社会の一員として溶け込んでいるわけでございますので、日本の社会問題と同時に、中国においても一つの大きな社会問題になっている、こういうようなことではなかろうかと思います。  そんなこんな、いろいろあると思いますけれども、まず冒頭に、こういうことに関しまして、大臣はどのような御認識をお持ちになっているか、お尋ねしたいと思います。
  211. 林義郎

    林国務大臣 御質問にお答えを申し上げます。  いま、中国残留孤児の問題で先生初め皆さん方に大変御心配をいただいておりますことを、担当しております厚生省の責任者として心からお礼を申し上げるわけでございます。  この問題は、もう私から言うまでもない、三十七、八年前の話がいま出てきたわけでございますし、私は、そういった歴史の重みを踏まえて、この問題を解決していかなければならないという点が一つあると同時に、やはりおたくの党の竹入さん初め、大変に御努力いただいた日中国交正常化という、そのときの精神に立ち戻ってやっていかなければならないと思うわけであります。  一九七二年の九月二十九日、北京で田中角榮内閣総理大臣と中華人民共和国国務院総理周恩来との間で、あと二人ほどございますが、結ばれました共同声明の中には、「日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する。」ということが書いてありまして、隣国として大変長い歴史を持っているところであり、と同時に、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」こういう文句が入っております。  私は、この文句は、単に政府間の共同声明ということでなくて、日本国民すべてが考えていかなければならない貴重な精神だろう、こう思いますし、いまの、日本人であるとこころの中国残留孤児の取り扱いにつきましても、中国側に対して、いま申し上げましたところの、日本側としては深く反省をするという精神を忘れては、この問題の進展はないではないか。そういった意味で、中国側の気持ちを十分に酌み取りながら、これからの交渉をやっていかなければならないではないか。また、それが日中の長いときにわたる、私は、二千年の友好、こういうことを申し上げたいのでありますが、そういった精神につながるものだろうと考えているところであります。
  212. 草野威

    草野分科員 大変重要な問題でございますので、引き続き御努力お願いしたいと思います。大臣は何か御用がおありになるそうですから、どうぞ。  引き続きお尋ねいたしますが、今回の一時帰国の方々は黒竜江省の人たちということで、東北地区におきましても非常に奥地の方々だと思います。そういうことで、なかなか肉親とめぐり会うチャンスも少ないのじゃないか、こんなような感じがするわけでありますけれども、先ほどのニュースで、判明した人が十名ということになっておりますね。前回と比べますと非常に少ないような感じがするのですけれども、現在の肉親などからの問い合わせの状況、そういうものについて、いまどんなふうになっておりますか。
  213. 山本純男

    山本(純)政府委員 今回四十五名の方がお見えになりまして、御指摘のとおり、これまでのところ、肉親とめでたくめぐり会うことができまして親族関係が確認できた方は、昨日までで九名、本日午前中、確かに一名ございました。午後にまた若干組期待しておるというような状況でございます。前回と比べましてかなりパーセンテージが低いのはそのとおりでございます。  これがどうして低くなったかというのは幾つか事情があると思いますが、一つは、従来から当事者同士の間で文通その他民間ボランティア団体のお世話で消息を交換するという形で、肉親が見つかる可能性のかなり高い方々がわかっておりまして、そういう方から順次訪日調査を実施してきたというところから、今回少しパーセンテージが落ちるということが一つあろうと思います。  もう一点は、御承知の養父母の問題その他で日中間の交渉がかなり、数回繰り返して行われるという時間のかかる推移になりましたために、今回の訪日が決まりましたのが比較的最近のことでございましたために、準備期間を私どもが希望するとおりとることがむずかしゅうございまして、やや倉皇として急ぎ実施をしたというところから、少し手が尽くせなかった点があるというところがあろうかと思います。そういったところかと思いますが、なお今後数名の方が肉親が判明するということを期待しております。
  214. 草野威

    草野分科員 いろいろな方と意見を交換してみますと、こういう状況で進むと、今回は、もしかしたら四十五名の半分以下になるんじゃないだろうか。これは、実際に現地へ行って何回もいろいろなことで調査されている方ですけれども、そういうような話も聞かれるのですね。  もしそういうことになれば、非常に残念でならないわけでございますけれども、やはりきのうもある方が言っていました。今回の政府のPRの仕方が、ちょっと前回に比べるとトーンダウンしているんじゃないか、もう少しPRに力を入れたらどうか、こんなような御意見もありましたけれども、これはいかがですか。
  215. 山本純男

    山本(純)政府委員 なかなか微妙な問題がございまして、実は、本日面接を実施しております方々と申しますのは、肉親の当事者の方が厳重にその名前と立場を伏せてほしいという御希望でございまして、オリンピックセンターから場所を移しまして、別の場所で実はお会いいただいて話し合っていただいておるという状況もございまして、報道の方々の大変な御好意で、そのおかげで多数の情報が集まって、こうやって面会が実現しておるという一面もございますが、実はそのために、本来ならば名乗って出たい方がなかなか表に出てきにくいという事情も一方ではあるようでございます。  そういう意味では、私ども、大変むずかしい問題でございますので、報道関係の御協力をいただきまして、なお一層PRに努める局面と、また逆には、個人の事情がございますので、そういうプライベートな事柄につきましては、あくまでも個人の秘密を守りながら仕事を進める面と、二面を使い分ける工夫をこれからもう少しやっていかなければいけないというふうにも考えている状況でございます。
  216. 草野威

    草野分科員 それから、血液鑑定の問題ですけれども、後で別人とわかってまた一つの問題になっている例もあるようでございますが、この問題につきまして、厚生省としては今回からより慎重な調査を実施する、こういうことが新聞に出ております。  一方、専門のお医者さんによりますと、きちっとした血液鑑定をやりますと、九八・三%までの確率が高まっておる、こんなような報道も出ておる。いろいろな人権問題もかかわり、強制できないという面もあるようでございますけれども、しかしまた一方、肉親だということになって、それが何年かたってから別人だというふうになった場合は、これまた大変な悲劇になってくるわけですね。  この辺のところを一体これからどういうふうに進めるかという問題につきまして、お考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  217. 山本純男

    山本(純)政府委員 今回も、血液調査につきましては、従来から行われております比較的簡易な方法のものを、一応全員についていかがですかというふうに申しましたところが、孤児の方皆さんから御賛成がありましたので、日本赤十字に協力を依頼いたしまして、全員について実施をいたしました。  これに関しましては、民間の方の中から、より精密な血液型その他の調査をあわせて実施してはいかがかという御意見を伺いまして、確かに重要なことかと考えるのでございますが、これを全員について実施するかどうかということにつきましては、これは正直申しまして、かなり費用のかかる調査でもございますので、孤児の方だけについて厳密な調査をいたしましても、親族の方がその調査をなさいませんと、これは結論が出ないということもございまして、これはやはり両当事者が合意される場合に実施することではないだろうかと考えております。  その意味では、今回の中で、記憶だけでは非常に、全然人違いとは思わないけれども、肉親であるという確信が持てないという家族の方の中に、そういう話を申し上げたところが、それはぜひ精密な血液検査を受けたい、こういう御希望の方がおられまして、この方には、私ども、孤児の方の血液調査をあっせんいたしたという事情がございます。そういう微妙な点もございますので、ことにどちらかといいますと、結論は、肯定的な結論といいますのはパーセントで出てくる可能性が高いという結論でございまして、一方、否定的な結論は、ほとんど親族である関係がないという、ゼロという結論だというような性質の調査かと思いますので、これを余り画一的にやることにつきましては、現在まだそこまで踏み切っていないわけでございます。今後とも実は血液型の問題は、最近いろいろ学問的な進歩もあるようでございまして、私ども、十分勉強が足りない点もございますから、今後なお研究させていただきたいと思っております。
  218. 草野威

    草野分科員 外務省のアジア局の審議官の方、見えていらっしゃいますか。一月の十八日ですか、日中両国政府間で孤児問題についての基本的な合意に達した、こういうような報道を新聞で伺っております。この中で、いろいろな交渉の経過とかそういうことについて、ちょっと簡単にお尋ねしたいのです。  実は、養父母等の生活保障の問題等については、これは日本政府が白紙撤回した、そして国として援助、助成する、こういうような内容も報道されております。白紙にした理由だとか、それから、どうして全額国家補償という形でできないのか。新聞によりますと、あくまでも国家補償ではない、国として援助、助成する、こういうような立場でやっていくんだというようなことも報道されておりますけれども、いろんなことがやりとりあったと思いますが、ここら辺の経過についてちょっと伺いたいと思います。
  219. 恩田宗

    ○恩田説明員 先ほどの、一月に中国の外務省の領事部の次長ほか政府の代表団が参りまして、外務省、厚生省代表等と協議をいたしまして、先生の御指摘のとおり、基本的な問題については合意し、残る問題については今後協議を続けよう、しかし孤児の訪日、身元確認については始めようということで、今回の孤児の訪日があったわけでございますが、基本的な合意ができたものは、扶養費の二分の一を政府が援助し、残りは民間寄附金で賄うことにより解決するということでございます。  それからもう一つは、問題がございましたのは、養育費のほかに、身元が確認できない孤児を日本に呼ぶことができるかどうかという問題で、これは確認できない場合であっても日本に呼ぶことができるということになりまして、養育費等の詳細な問題につきましては、厚生省の方からお答え願いたいのでございますが、若干詳しい問題のいろいろやりとりがございまして、まだ完全に細かいところまで詰め切っていない、こういう状況でございます。
  220. 山本純男

    山本(純)政府委員 厚生省の側からも若干補足して申し上げたいと思います。  養父母の扶養費の問題についての交渉の経過を申し上げますと、昨年春以来、懇談会を設けまして御議論いただいた結果、この扶養費の負担は本来扶養義務者である孤児本人が負担すべき性格のものであるけれども、やはりこの問題がよって起こった原因というものを三十数年にさかのぼって考えるときには、これについて国の助成が必要であるというお考えから、公的な低利率の貸付資金、具体的には私どもの社会局で所管しております世帯更生資金でございますけれども、それを貸し付けることによって扶養費を支弁していただく、そしてその返還につきましては、日本に定着なさった後の生活状況、負担能力その他を十分に勘案いたしまして、軽減免除その他の措置を講じていくということで御意見をいただきました。  私ども、そういうことで予算を要求いたし、また中国ともそういう線で折衝を始めたわけでございますけれども、ところが中国政府側からは、中国と日本とは社会の制度その他に非常に大きな差がありまして、日本の国民の場合には、公的な低利の資金の貸し付けを受けるということは福祉施策を受けるという受けとめになるのかもしれないけれども、中国においてはそういう受け取りにはならない。多額の金を借りて、それを長年にわたって返済するということは非常に大きな経済的、精神的な負担になるので好ましくない、そういう御意見がございまして、それで再度この一月に折衝いたしますに際しまして、私ども政府部内でいろいろ協議をいたしました結果、やはり基本的には孤児の皆さん御本人が負担すべき性質のものであるということは、これは変えるわけにいかない線ではございますけれども、何とかこれを実質的に負担を軽減する、しかもその間において、このような悲しい出来事が起こりました原因が戦争というものにあるということも十分考えました上で、半額につきましては政府給付金という形で負担をする。残余につきましては、いま現在民間の方々から非常に同情的な御意見あるいは物的な御援助をいただいておる状況でございますので、そういうものの中から十分賄えるであろうという見通しの上で、民間の寄附その他をもって賄うという考えで折衝をいたしたわけでございます。  その結果、中国政府側もそういう考え方に原則として賛意を表しまして、なお今後外交ルートで詰めるべき細部の取り決めは、まだ詰めるべき問題として残っておりますけれども、原則として、いま申し上げた線は変わらないで協議がまとまるというふうに考えております。
  221. 草野威

    草野分科員 いまの御答弁を伺っておりましても、やはりこの問題については中国側に立って考えることも必要だ、こういうような思いを深くしたわけでございます。  もう時間がないから、余り伺うこともできないのですが、これからいろいろな詰めを行うと思いますけれども、一つは、扶養費の問題について政府が半分、それから民間で半分、そういうことで何か公益法人を設立されてやる、こういうふうなことも伺っておりますが、まず、その公益法人の性格だとかそれから運営の方法、これが一つ。  それからもう一つは、生活費が一人当たり大体中小都市で二十五元、このようなことで計算をされるようなことも出ておりますが、この場合、二十五元という金額が果たして妥当であるかどうかという問題ですね。これが単なる食費のみで終わるような金額ではないかというような気がするわけです。  それからもう一つは、支払いの方法ですが、最終的に養父母またその他の方々に行き渡るまで、どのような形で先方まで行くのか。  それから、対象者ですけれども、養父母またその妻、夫、子供、いろいろあると思います。また養父母に実子がある場合、実子がない場合、いろいろあると思いますけれども、そのさまざまなケースについて、この二十五元という一応の金額ですが、これがどういうような形で支給されていくのか。これは今後の問題だろうと思いますけれども、どういう方向でお考えになっているのか、承りたいと思います。
  222. 山本純男

    山本(純)政府委員 この御質問の法人につきましては、私ども、幾つかの事業を考えておりますが、一番主な事業は二つでございまして、一つは、いま御指摘の養父母等に対する扶養費の関係の仕事、もう一つが帰国者の定着促進センターの運営の委託という、二つをメーンの仕事というふうに考えております。  この仕事のうち、後段の定着促進センターの運営の問題につきましては、これは建設費、運営費ともに全額国が負担することになっておりますので、財団としては、委託を受けまして、その中で必要な経費を支弁して事業をすればよろしい事業でございます。これに対しまして民間の御好意を期待いたしまして、父母等の扶養費の助成に充てる部分は、これは国の方は、先ほど申し上げましたように、支払うべき金額の半額を給付金の形で負担するということでございますので、ある意味では、この財団に金を交付して支払わせるという形で、民間と半々の持ち合いという性質の事業になると考えております。  これ以外に、なお民間のボランティア団体の方からは、いろいろお力添えをいただいておるわけでございますが、やはり資金の面その他で及ばない点があって、何か助成を考えてほしいというようなお話をよく耳にいたしますので、もしこの財団に余力がございますれば、そういう点にも手を伸ばしていきたい。  あるいは、すでに帰国された中で、私どもとしては、このセンターで四カ月間、さらに地方自治体を通しまして生活指導員を一年間派遣すること、あるいは建設省、労働省その他いろいろ御協力をいただきまして、住宅、就職あっせん、その他やるわけでございますが、それによりましても、なおかつまだ生活上いろいろお困りの方がすでに帰国された方々の中におられますので、そういう方々に対しての先行きの生活相談なんかもぜひここで手がけたいというふうに考えておるわけでございます。  次に、生活費の金額の問題でございますが、これは別に二十五元と決めたわけではございませんが、一月に代表の方々が見えましたときに、いろいろお話を伺いましたところが、生活費が、都市、農村、大都市、中都市いろいろ違うけれども、全体としておよその見当を言えば二十五元程度であろうが、それは地域によっても差があるという話を伺っております。また、別の面で現在の賃金の水準その他を伺ってみますと、夫婦共稼ぎでありましても、この金額をそう超えないのが大体月の収入である方が多いような状況も聞いておりますので、今後詰めてまいります過程では、恐らくこの金額から遠からざるところで結論が得られるのではないかというふうに一応考えている状況でございます。  次に、支払いの方法でございますが、これはやはりわが国とはいろいろな制度が違いますので、中国側の希望もございまして、この財団に支払いを委託をするということで実施をいたしたい。中国側は、またこれに見合う公的な団体を向こうが指定していただけるように期待しておりますので、両機関の間で支払いの手続を取り進めるようにいたしたい。  それからまた対象者の範囲でございますが、これは中国にはやはり扶養関係を律する法律がございますし、また、法律以外に社会的な確立された慣行というものもあると聞いておりますので、そういう法律、扶養関係の慣行というものを尊重しながら必要な対象者を決める。これは当然私どもも判断をしなければいけない問題でございますが、何よりも中国政府、さらにはこれも中央政府のみでなく地方政府のレベルまで入ると思いますけれども、そういうところの御判断をいただいた上で、私どもも判断をいたしたいというふうに考えております。  そういう方への送金その他につきましては、私どもが遠くから手を伸ばすことは大変むずかしいようでございますので、やはり向こう側が指定する機関が恐らく当事者にお渡しいただくことも請け負っていただけるように期待しておるのでございますが、この辺は、まだこれからの交渉の詰めの内容の問題でございます。  以上でございます。
  223. 草野威

    草野分科員 もう時間がございませんので、簡単にひとつお願いしたいと思います。  四点、最後にお尋ねします。  一つは、先日の交渉のときに先方の方から、里帰りの方法をとってみたらどうか、こういうような提案があったそうでございますが、この場合の帰国の費用、この点についてはどうするのか、これが一点です。  二番目は、ただいまお話があった養父母の生活保障の問題でございますが、これについては、これは私の意見なんですけれども、全額国家補償、こういう形でやるべきではないか、このように思います。  それから第三点は、先ほども御質問ございました年金の問題です。大臣の方から、五十九年度の改正時に検討したい、こういうお話がありました。あと聞いていませんでしたけれども、ぜひ特例措置等を設けて年金の方も実現していただきたい、このように思いますが、これに対する御意見。  最後に、いま定着促進センターについてお話しございましたけれども、この中で生活指導の目標について、日本社会における一般的な生活習慣云々とか基礎的な日本語の勉強だとか、これに出ていますね。この基礎的な日本語という問題ですが、このセンターには四カ月いるようになっておりますが、大体帰ってくるその孤児が、年齢が四十歳過ぎますね、そうすると、なかなか言葉を覚えるのも時間がかかる。厚生省からいただいた資料を見せてもらいますと、大体三カ月以上六カ月未満かかって日常会話ができるようになるというのは、子供の場合は四五%もおります。しかし、孤児本人だと二一%、配偶者だとわずか九%しかない。こういうことで、四カ月程度の日本語の勉強といっても、それで社会へ出た場合、果たしてどこまで使えるのか、こういう問題もあろうかと思いますので、ここら辺も含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
  224. 山本純男

    山本(純)政府委員 第一点の里帰り費用でございますが、これは現在でも一時帰国というやり方をやっておりまして、人数としては、永住帰国あるいは肉親捜しのために訪日される方よりも数の多い方々が里帰りをしておられまして、これの帰国費用は私どもで負担しております。  しかしながら、ときに、こういう里帰りというものを何回も繰り返すことによって、逐次永住帰国に定着したいという御希望があると聞いておるわけでございますが、これは二回以上ということになりますと、一体何回で、際限なくというわけにはしょせんまいりませんし、なかなか二回以上というのは大変むずかしい問題なんでございまして、とりあえず、現在一度も日本の土を踏んだことがない方々が、今回の四十五人を済ましましてまだ八百名残られるわけでございますので、二回以上の里帰りということにつきましては、少なくともこの問題のめどがつくまではなかなか困難なことかと考えております。  また、全額国の負担とおっしゃるお気持ちは十分わかりまして、私どもも、そういう御意見に耳を傾けなければいかぬ面があると存ずるわけではございますが、しかしながら、このような戦争による被害を受けた方々と申しますのは、中国孤児の方々の場合にはとりわけ悲惨な立場にあられるということはよく存じておりますけれども、多数おられるわけでございますので、やはり私どもとしては、それなりに一つの筋を立てて、負担すべきものは負担をする、御本人に責任を負っていただくべきものはいただくということで筋を立ててやっていかざるを得ないかと思います。  そういう面では、養親の扶養費というものは、中国の法律によりましても、現地で現に実子の方あるいは養子の方が自分で働いて生活費を見ておられるわけでございますし、また、すでに日本に帰国された方の中に、一緒に養親を伴って帰国されまして、自分で働いてその生計を見ている孤児の方もおられるわけでございますので、その中で、これから養親と別れて帰られる孤児についてだけその全額を見るということは、若干公平の面にも問題があろうかというふうに考えております。そういうところから、半額負担ということにいたしたわけでございますので、ひとつその辺の事情を御了解いただきたいと思っております。  年金の適用につきましては、年金局長から話があったかと思いますので、差し控えさせていただきます。     〔白川主査代理退席、主査着席〕  センターの日本語教育につきましては、私どもも、調査結果を踏まえまして何がしの心配を持っておりますが、一つには、ベトナム難民センターの前例がございまして、そこでは一応四カ月ということで、不十分ながら一応の成果が上がっておるかに聞いておりますので、私どもも、現在のところ四カ月ということで予算お願いいたしておるわけでございますが、これにつきましては、最近では文化庁の方から大変りっぱな教科書を編さんしていただきまして、今回も訪日孤児の方に無償で提供していただいた事情もございますし、あるいは民間でも、報道関係その他で日本語教育にいろいろ御尽力いただいておる状況がございます。今後センター開設まで半年の期間に、その辺なお一層私どもも勉強いたしまして、将来の運営のあり方についてはなお検討を深めていきたいと考えております。
  225. 林義郎

    林国務大臣 草野委員の御質問の中で、年金関係の答弁年金局の者がおりませんから、便宜私から御答弁をさせていただきます。  孤児で帰られて定着をする場合に、もうよわい四十歳を過ぎる、こういうことに皆なっておられるわけでございますから、これらの方々の年金受給権の問題というのはあるわけでございます。あと十年なり十五年なりたつと年金をもらえる。しかしながら、いままでのところが入らないから受給権が発生しないではないか云々というような問題があると思いますが、これは私は、御本人の責任においてそういうふうになったわけでもない、やはりこうしたことに対しては温かい配慮をすべきだろうというふうに考えております。五十九年に国民年金厚生年金の統合に向けての改正を行うということを決めておりますから、そのときには、その中の一環として私は考えてまいりたい。先ほど先生からお話がございました特例措置云々ということでありますが、どういうふうな形になるかというのは、年金の仕組みでございますから、私は、いろいろやり方があるだろうと思いますが、御趣旨はよくわかっておりますから、それに入られるような形でこの問題については取り組んでまいりたい、こういうことをお答え申し上げておきます。
  226. 上村千一郎

    上村主査 これにて草野威君の質疑は終了いたしました。  次に、横手文雄君。
  227. 横手文雄

    ○横手分科員 私は、腎臓病患者対策について、大臣並びに各関係政府委員に対し御質問申し上げます。  賢不全、それはかつては死の宣言でありました。その後医学の発達は、人工透析療法を生み出し、これによって腎臓不良患者は死の深淵から救い出すことができたのであります。そしていま、治療を受けながら社会復帰がかなえられ、社会のあらゆる分野で活躍をしておられます。しかし、健康体の人たちと比べて多くのハンディを背負っておられるのは事実であります。すなわち、飲み物は極端に制限をされる。生野菜、果物のたぐいは口にすることができません。長期の旅行もできません。そして、定期的通院あるいは突然体の変調を来すのではないかという不安にも駆られているのであります。  したがって、国としても、これら患者の方々の要望にこたえて、その対策にも力を入れ、身障者手帳の交付、医療費の公費負担を初め、多くの施策を行っておられるのであります。しかし、いまなお多くの問題を抱えており、新たな不安や真に社会復帰のための社会環境の整備等々解決しなければならない、あるいは行わなければならない施策は山積しております。これらに対する大臣の御所見をまずお伺い申し上げます。
  228. 林義郎

    林国務大臣 横手議員の御質問にお答えを申し上げます。  腎臓というのは、私たち子供のころには、あいつは腎臓になったぞということになったら、もうだめだ、こういうふうな話だったわけであります。いまこの腎臓も、新しい技術によりまして治すことができる。少なくとも生命は長らえることができるというところまできたのは、私は、医学の進歩だろうと思いますし、また非常に喜ばしいことだ、こう考えておるところでございます。人工透析というふうな問題もございますし、それからいろいろと問題はあると思いますけれども、腎の移植というような問題も出てきておるわけでございまして、そうしたものに私たちも積極的に取り組んでいかなければならないのではないか、こう考えております。  賢不全対策につきましては、従来から、第一に、原因、治療方法の研究の推進を図る。第二に、早期発見のための健康診査の実施をする。第三に、人工透析医療費の公費負担の実施と人工透析従事職員の養成を図る。四番目に、腎移植施設等腎移植体制の整備等を総合的に進めてきたところでございます。今後ともこれらの施策の総合的推進に努めますが、特に、研究、早期発見、腎移植の推進を図ってまいりたい、これが基本的な考え方でございます。
  229. 横手文雄

    ○横手分科員 全国の腎臓病患者の方々は全国腎臓病患者連絡協議会、略称全腎協を組織し、会員の体験交流、相談活動、会報の発行等々の活動を続けておられることは御承知のとおりであります。この全腎協の会報、そして独自に会員を対象にして行われました実態調査報告書、「全腎協十年のあゆみ」あるいは国会への請願書等々からうかがい知ることができますことは、患者の方々が不安や要望を多く持っておられるということであります。  その一つは、今後の国の施策に対する先行きの不安であります。二つは、現在の医療施設あるいは治療の体制に対する要望であります。三つは、雇用に対する不安と要望であり、四つ目は、もうこれ以上私たちと同じ苦しみを持つ人たちをふやさないでくださいという予防への訴えであります。  そこで、この四つの問題について順次御質問を申し上げます。全国の四万五千人と言われる患者の方々並びに苦しみを同じくしておられる御家族、関係者の皆様に誠意ある御答弁を期待申し上げる次第であります。  まず、国の施策に対する不安についてであります。患者の方々は、自分の治療費が毎月高額であることをよく知っておられます。しかし、それは、どんなに自分で努力してみても、ふえこそすれ少なくなるようなものではないのであります。一方では、国の財政破綻が大きな問題となり、行政改革のうねりはやがて自分たちの医療費にも押し寄せてくるのではないかという不安であります。つまり、透析医療費が高額であることから人工透析の診療報酬を大幅に引き下げようという動きがある。第二臨調も、福祉も聖域ではないと言う。やがて自分たちの生存にかかわってくるのではないかという不安であります。あるいはまた、人工透析の年齢制限が行われるのではないか、あるいは費用の患者の一部負担が出てくるのではないか、あるいは診療費の切り下げによって医療機関から自分たちが締め出されてしまうのではないか、こういった不安を訴えておられるのであります。これに対する厚生省の御答弁お願い申し上げます。
  230. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  人工透析の診療報酬につきましては、五十六年六月に引き下げが行われたわけであります。そこで、いま先生おっしゃられましたような患者さんの不安が出てくる、こういうことであろうと思うのであります。  五十六年の改正におきます私どもが人工透析の診療報酬を改正したというのは二点ございまして、一つは材料費と技術料とを分けた。そして、ダイアライザーが材料費なんですが、ダイアライザーの値段が下がったことによりまして全体的に人工透析の診療報酬は下がった、それが一つ。それからもう一つは、これは患者さんの御要望に従いまして夜間透析ができるようにいたしますとか、あるいは夜間に透析をされるときの食費、そういうものの提供をする、こういうことで患者さんの御要望に従ってそういう加算を別に設ける、こういうようなことをやったわけでありまして、全体的に見ますと、モデルで計算をすると一七%ぐらいの下がり方をしたわけでございます。しかし、その下がり方をした主な原因は、いま申しましたダイアライザーの実際の流通価格が下がっておる、こういうことでやったわけでございます。  私ども、その診療報酬点数が下がったことによって、どういう効果といいますか影響が出ておるかをいろいろ調べておりますが、五十三年と五十六年の末とを比べてみますと、人工腎臓の装置を持っておる施設は約三六%ふえております。それから人工腎臓の装置の台数、これが約五〇%ふえております。したがって、この点数が結果的に下がりましたことによって、人工透析の機械を置く施設が減るとかあるいはその台数が縮減されるとか、そういう結果にはなってないということで一安心はしておるところでございますが、医療がだんだん普及していく、また新しい技術革新というものが起こってくる、これは十分私ども両面を注意しながら今後考えていきたい、こういうように思っております。
  231. 横手文雄

    ○横手分科員 具体的に申し上げました、人工透析の年齢制限が行われるのではないか、あるいは患者の一部負担、つまり極端なことを言えば更生医療の解除というようなことにもやがてつながりはしないかという御心配を持っておられますが、いかがですか。
  232. 吉村仁

    ○吉村政府委員 年齢制限の関係につきましては、イギリス等でそういうようなことが行われかかっておると聞いておりますが、日本におきましては、そういう考え方はいまございません。これは、やはり国情の違いではないかと私どもは思っております。  それから一部負担につきましては、これは、全体の問題で人工透析患者だけの問題ではないのでありますが、いろいろ医療費の適正化の問題とも絡みまして、一部負担の再検討ということは迫られておるわけであります。したがって、全体的に今後検討をするつもりでありますが、いずれにいたしましても、私どもは、患者負担がかかったことによって医療を受けたくても受けられないというようなことはないように、これはするつもりでございますし、また、人工透析の患者さんに対しましては、保険の一部負担が仮にかかりましても、その点は公費で負担をするというような制度もございますので、その辺を総合的に勘案をしまして検討していきたいと思っております。
  233. 横手文雄

    ○横手分科員 次に、現在の医療施設あるいは治療の体制に対する要望についてであります。  腎臓病は、医学的観点からも社会的観点からも、いわば現代難病の典型的な病気であると考えます。その観点に立ちまして、腎疾患対策の総合的体系的整備を図るために、中央に専門委員会を設置してもらいたい。その構成は、行政及び医学、社会保障その他の関係専門家、さらには患者代表をもって構成をし、その任務は、腎疾患患者の実態を的確に把握するとともに、予防、治療、研究、医療機関の整備専門医療従事者の養成、訓練、配置、医療費問題、教育問題、社会復帰訓練、雇用問題、地域対策、生活保障問題、法律問題などについて、当面する問題と長期的計画について検討をする、そういった任務を持たせる。さらに、中央と都道府県に総合腎センターを設置をし、中央総合腎センターは高度な医療を必要とする治療部門及び研究部門、情報収集部門などを置き、関係学会と連携して必要な業務を行う。都道府県総合腎センターは、透析、移植を含む腎疾患治療、検査、生活管理指導、専門医療従事者の養成、訓練、配置、実態把握、情報、資料の収集、研究、相談などの業務を行う。また、行政医療機関、専門施設などと緊密な連携をとり、都道府県内の総合的腎疾患対策推進をする、こういうことであります。  さらにまた、患者の皆さん方の日常的な要望についてでありますが、先ほども話が出ておりましたけれども、夜間透析をふやしていただきたいという要望が大変強うございます。次に申し上げます雇用問題とも大変かかわりが深いからであります。あるいは、いま御指摘ありましたように、ベット数等がふえておりますけれども、患者全体に対するその比率は、厚生省の試算によるとまあまあだということでございますけれども、あるいは地域的な濃淡があるのかわかりません、国公立病院ではほとんどふえてない、そして患者数がふえている事実から見て、民間の医療機関でふえている。ここにその患者が殺到する状態にある。  これらの、先ほど提案申し上げました専門委員会の設置あるいは腎センターあるいは日常的な患者の皆さんの御要望について、いかがでございますか。
  234. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 まず、専門委員会を中央に設置したらばどうかというお尋ねでございますが、先ほど先生もお話しのように、私どもといたしましても、予防、治療、研究といった面から総合的な対策推進するという考えで、全く先生と同じ考えで進んでおります。その場合に、その対策を進めるに当たりましては、現在、日本腎臓学会あるいは日本移植学会等の関係学会、腎研究会、人工透析研究会あるいは透析医会等の専門団体等に、随時私どもといたしましては十分御相談し、御意見を伺いまして推進いたしておるところでございます。昨年も、先ほどお話しの全腎協十周年の記念シンポジウムには私も参加いたしまして、一緒に討論するというふうなことで、こういった難病を抱えておられる皆さん方とともに、国としては一緒に進んでいこうという考えでやっているわけでございます。  しかしながら、新たに中央に常置の専門委員会を設置するということにつきましては、私どもとしては、そういった事柄が多岐にわたっております関係上、こういった場合に必要に応じまして専門家の方々に集まっていただいて、それに対処していったらどうかということで、昨年も実は移植の問題につきまして、腎移植学会の会長であります桑原先生初め先生方にお集まりいただきまして、その問題について御討議いただき、御意見を伺って、私どもの施策にいま反映しておるところでございます。先生の御趣旨を踏まえまして、できるだけそういった総合的な政策を推進するようにいたしたいと考えておるわけでございます。  次に、総合的な腎センターを設置せよということでございますけれども、いまも申し上げましたように、腎の問題につきましては、予防、治療、研究、いろいろな方面あるいは社会的側面等、いろいろな側面があるわけでございます。もちろん、これらを全体的に統括するような大腎総合センターをつくるという考え方も一つの考え方ではあろうかと思いますが、しかし、腎疾患というものと一般の病気というものとの全体的なことを考えますならば、やはりそれぞれの医療機関全体でやっております点と十分バランスをとって、連携をとってやっていくということも非常に大事なことではないかと考えているわけでございます。したがいまして、たとえば移植につきましては、国立佐倉病院を腎移植のナショナルセンターとして、全国のサブセンターとオンラインで結ぶということで、移植あるいは情報の一元化ということについては、佐倉病院を指定してやっております。あるいは研究部門につきましては、医療センターの臨床研究部というものを腎臓研究の中核として研究の推進を図ってもらっている。  こういうふうな考え方で進んでおりまして、先生の腎センターの構想と具体的には同じような考え方で進んでおります。ただ、それを一カ所に集めてしまうということにつきまして、私ども、医療の事柄の性格から考えまして、私どものやり方でその成果を十分発揮するのではないか、むしろそういった面を強化していくことが非常に大事ではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、お尋ねの夜間透析の問題でございますが、これも大変むずかしい問題でございます。確かに、先生に御指摘いただくまでもなく、現在、夜間透析はすでに全透析患者の四分の一というふうになっているわけでございます。今後、人員等非常にむずかしい問題もございますが、患者さんの方の御便宜や雇用等の問題もできるだけ考えまして、そういう方向に努力いたさなければならないと考えているわけでございます。
  235. 横手文雄

    ○横手分科員 次に、雇用に対する不安あるいは要望についてであります。  現在、各企業には一定の身障者雇用が義務づけられております、御案内のとおりであります。人工透析を受けておられる方は、一級認定者がほとんどであります。したがって、各企業が雇用するということになれば、点数から言うと二点ということになるはずであります。そして、これらの方々は、重労働ができないあるいは長期出張ができないということを除けば、健康人とほとんど同じ労働が可能であります。外見では何ら変わりません。しかし、現実に職安の窓口は、透析患者に対してきわめて冷たいのであります。患者の皆さんは、世間の冷たい風をより多く受けておられるのであります。それは恐らく厚生省にも行っておることだと思いますが、先ほど申し上げました全腎協が独自で行われた、患者さん、会員を対象にして行われた五十年あるいは五十七年の実態調査表が出てきております。  この中身をよく見ますと、患者年齢層の動きあるいは健康保険の種類の推移、つまり政府管掌から国民健康保険に移ったという人たちの推移、あるいは健康保険が本人から家族へ移ったという推移、あるいは職のない人たちの数のふえ方、あるいはその理由が自己都合の退職によるという数のふえ方、こういった点は、通常一般の動きの方よりもかなり顕著に動いておるという事実があるわけであります。そのことをもってしても、申し上げましたように、世間の中で大変苦労しておられるということがよくわかるのであります。  私は、決して職安の窓口が悪いと言うのではありません。大変努力をいただいておると思います。それは、雇い入れる企業が敬遠をするという理由があろうと思います。いろいろな理由があるのでしょうけれども、大きくはこの二つの問題が解決されると、就職の窓口も大変広がってくるのではないかという気がいたします。  一つは、透析医療のために確実に職場を離れなければならないということであります。きょうはもういいというわけにまいりません。あるいは二つ目は、医療費が高額なために健康保険組合が敬遠をしておられるということであります。私が承知しておるところでは、直接の原因であったかどうかわかりませんけれども、透析患者が一人から二人にふえられた、その時点で健康保険組合解散というような話も聞いているのであります。あるいは直接の引き金であったのかどうか、赤字に苦しんできた、しかし、そこへさらにふえたということで、まあこの際ということであったのかもわかりません。しかし、健康保険組合からそのクレームといいましょうか、意見が述べられるのは事実であります。こういった問題さえ解決できれば、透析患者の雇用の道は大きく開かれると思うのでございますけれども、この問題に対する対処の方針等がございましたらお聞かせをいただきたいと存じます。
  236. 藤原正志

    ○藤原説明員 御説明を申し上げます。  先生御指摘のとおりでございますけれども、腎臓機能障害者につきましては、週に二、三回程度人工透析のために職場を離れる、また、職場につきましても、いわゆる長期出張とかそれから重労働等がなかなかできにくいというような理由から、就職そのものに当たりましてある程度ハンディキャップを負うというような方も相当おられることは事実でございます。  そこで、私どもといたしましては、安定所の窓口におきまして、これらの方々に対しまして、個々の方に対しますケースワーク方式によりまして、特に職業の相談をいたしております。また、事業主の方々に対しても特にその理解が必要でございますので、職業紹介をするに当たりましては、十分就職される方の障害の内容等につきまして御説明を申し上げて就職のあっせんをしている、こういうことでございます。  なお、腎臓機能障害者であって身障法のいわゆる障害者に該当する方につきましては、先ほど先生もお話がございました雇用率制度の上で、いわゆるダブルカウント、一人を二人、大部分の方が重度の方でございますので、ダブルカウントをするというような措置を図りまして、その就職の促進を図っているところでございます。  また、重度の方でございますけれども、重度障害者雇用開発助成金という制度がございまして、一年六カ月にわたりまして賃金の二分の一を助成する、こんなようなことでその雇用を奨励するという制度もとっておりますし、また職場につきましてから、その方々の職域の問題等もございます。したがいまして、職域を開発するというような意味で、月三万円、三年間事業主に助成金を支払うというような制度もございまして、これらの方々の職域の拡大もしくは就職後の安定と申しますか、就業の安定と申しますか、そんなことをも含めまして私ども対策を講じているところでございます。  なお、今後とも現場、つまり安定所でございますけれども、十分指導を徹底しまして、御趣旨に沿うようなことをやってまいりたいというふうに考えております。
  237. 横手文雄

    ○横手分科員 厚生省の方でこれらの問題について何かお考えがございましたら……。
  238. 金田一郎

    ○金田政府委員 身体障害者の自立を促進するための施策といたしまして厚生省で行っておりますのは、世帯更生資金貸付制度の中に身体障害者更生資金というものがございます。年三%の低利で開業資金、これは最高二百二十万まででございますが、就職支度金が七万円まで、技能習得費につきましては最高五十万四千円までという制度がございます。  人工透析患者につきましても、身体障害者手帳の交付を受けている方であれば本制度の対象として貸し付けできる道を講じているわけでございますが、通例人工透析の患者の方はほとんど手帳の交付を受けているわけでございます。
  239. 横手文雄

    ○横手分科員 いま厚生省からお話がありましたように、この腎臓病患者の方々が自分で何かをやろうというときにそういった手当てがある、手伝いをしてあげる手当てがあるということでございます。私は、患者さんの中には、特に職場の中で大変迷惑をかけるという負い目を持っておられる、何かあったら自分で独立してみたい、こういうことでございます。厚生省にはそのようなことでございますが、労働省の方には何かございませんか。
  240. 藤原正志

    ○藤原説明員 御説明を申し上げます。  労働省でも、いま厚生省の方からお話がありましたと似たような制度がございまして、身体障害者雇用促進法で言うところの身体障害者の方が、いわゆる腎臓機能障害者の方でございますけれども、自営業を開始するために必要な施設の設置または整備を行うために金融機関等からお金を借りてこれを資金にするというような場合は、その債務について労働省が保証する制度がございます。  中身につきまして若干申し上げますと、保証金額は最高限度四百万円でございます。特例の場合は一割五分増しの六百万でございまして、どういう場合が特例かと申しますと、事業の性質上、多額の資金を要し、また自己資金が債務保証申請額以上であるというような場合はその五割増しの適用があるわけでございます。  また、保証期間は最高五年でございまして、特例として七年というようなことになっております。この場合の特例と申しますのは、事業の性質上、収益を上げるのに比較的時間を要するというようなものにつきましては七年という特例が設けられているわけでございます。  また、保証料でございますけれども、年〇・三六五%、一日当たり十万分の一ぐらいだと思いますけれども、こういう形になっております。
  241. 横手文雄

    ○横手分科員 時間が参りましたけれども、もう一つ残っておりますのでお許しをいただきたいと思います。  最後に、予防対策について強力な推進お願いをしたいということであります。早期発見、早期治療、これはすべての病に共通することでありますが、この腎臓病にとっては決定的な要因であります。すなわち、自覚症状が出たときにはすでに手おくれである、しかも現在の医学では治療する方向への手段は全くない、病の進行をいかにおくらせるかということが精いっぱいであるという実情だからであります。さらに全腎協の実態調査を見ても、腎臓病の発見のきっかけとなったのは、五十年と五十七年を対比いたしますと、健康診断によるものが一六・九%から一八・九%へと少しは伸びておりますけれども、しかし、患者数の五五%が自覚症状が出てからと答えておられるのであります。まさに徹底した予防と早期発見に対する警鐘と受けとめなければなりません。これらの予防対策について厚生省のお考えをお聞きをいたしまして、私の質問を終わります。
  242. 三浦大助

    ○三浦政府委員 腎臓疾患につきましては、先生御指摘のとおり、早期発見して早期治療に結びつける、これが一番大事なことであるわけでございまして、早期発見につきましては、現在乳幼児の健康診査あるいは婦人の健康づくり対策、あるいは今度二月一日から施行になりました老人保健法の健康診査、こういうもので検尿が実施されておるわけでございます。そのほかにも労働省の方でやっております職場健診、あるいは文部省でやっております学校健診、こういうものがございまして、ほとんどの国民がいま検尿を受けられるような制度にはなっておりますけれども、いかんせん受診率がまだ低いということもございますので、私ども何としても、この検尿を進んで皆さんが受けていただくようにということでPRをしてまいりたいと考えております。
  243. 横手文雄

    ○横手分科員 いま申し上げましたように、患者さんに直接聞いた実態調査の中で、自覚症状が五五%という数字はまさに警鐘と受けとめなければならないと考えております。より一層の厚生省の御努力を要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  244. 上村千一郎

    上村主査 これにて横手文雄君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  245. 山原健二郎

    ○山原分科員 老人医療問題について質問をしたいと思います。  二月一日から老人保健法が施行されまして、七十歳以上の老人に対する医療内容が大きな差別を受けるという事態が起こっております。さらに、四月から特例許可外病院を設けまして、これに対するまた大きな差別が出てくるということで、これはいままでずいぶん論議されておると思いますが、最近の新聞を見ましてもよろしいという評価をする投書その他はほとんどありません。残念ながら不満が続出をしておるという感じです。  たとえば最近の新聞で、二月十四日の朝日の「論壇」、これはある病院長さんだと思いますが「人権軽視ひどい老人保健法」という論文を出しております。また、二月二十五日の朝日の「論壇」では「現代の「楢山節考」」という論文が出ております。さらに昨日の日本経済新聞を見ますと「老人保健法一カ月で異変」ということで「退院めだつ老人病院」というのが出ておりますし、また三月二日の毎日新聞の主張ですが「ひどい「老保法」の厚生省告示」というのが出ております。また、NHKのテレビを通じましてもいわば悪評さくさくたるという状態で、これほどのこととは厚生省の方も実は思わなかったのではなかろうかと思うのですが、その点はどうなんですか。こういうことは予想されておりましたか。
  246. 林義郎

    林国務大臣 山原議員の御質問にお答え申し上げます。  私どもは、二月一日に実施をいたしましたときに全国大体聞いてみたのですが、実はそんな混乱は起こってないという報告を受けておるわけであります。朝日新聞に二回、いままたお話がありましたようにそのほかの新聞にも出ました。この問題は、相当画期的なことをやったわけでありますし、これからの医療制度の改革をやっていく上において非常に大切なことであるから、担当の者に御質問には丁寧にお答えして、ぜひ新聞で出しておいてもらいたい、せっかく御提言があった問題でありますし、いろいろと問題がある、楢山節考であるというようなことまで言われておるわけでありますから、そういったことははっきりとお答えを申し上げ、そして議論を十分に尽くした上でやっていただくことが必要ではないかというふうな形で、それぞれの新聞にも反論と申しますか、われわれの方の考えていることを申し上げておるところでございます。相当大きな改革でありますから、何も混乱がないという話はないと思います。混乱といいますか、そこにさざ波が立つくらいのことでありまして、大きなことをやるわけですからいろいろな問題が出てくると思います。しかし、それはお互いに冷静に受けとめて、余り大変だ大変だと騒ぎますと大きなことになる、やはりそこは冷静に受けとめて対処をすべきことではないだろうか、こういうふうに考えているものでございます。
  247. 山原健二郎

    ○山原分科員 大臣は、今度の中国残留孤児の問題でも、テレビを見ますと一人一人握手をして大変孤児の皆さんを激励をされておるということを見まして、大変活躍をされておるわけです。また、厚生大臣というお仕事ですから福祉の後退は許さないという意味では私ども一致する見解だと思います。ただ、この新聞に出てくる世論その他、私どもの聞いておる声というものを無視できないということですね。  たとえば、これは二月十四日の「論壇」にある院長さんが出されておる朝日新聞の記事ですけれども、その中にこういうふうに書いてあるのです。四月からは特例外老人病院の問題について「ある年齢を境にし、こうもはっきり差別をうたった法律が、今までに果たしてあったであろうか。」と書かれておりまして、その点はいま私どもの周辺にもお年寄りが、七十歳からの老人医療無料化の実現によりまして歯を治そうと思ったりあるいは体を治そう、今度は七十歳になれば入院しようと思ったりしておる人が実際に大ぜいおるのですね。ところが、そういう人に対して今度の法律改正というのがどんな影響を与えておるかということは、これはお互いに胸を痛めて考えていかなければならぬ問題だと思います。  それで二番目の問題として、七十歳以上のお年寄りが六〇%超えるかどうかということについての問題ですが、毎年一月から三月までの老人の収容率で決めるというふうになっておるわけですが、実はここにちょっと疑問を感じておりまして、この一月から三月という時期は老人にとって一番病気にかかる率の高いときではなかろうか、それから入院する時期ではなかろうか。たとえばかぜあるいは肺炎とか脳溢血など、素人で考えるのですけれども、冬場で一番多い時期になぜ一月から三月を対象としなければならないのか、これは一月二十日の通知によってそれが出ておるわけでございますけれども、老人にとって、また病院にとりましても一番過酷な時期を厚生省たるものが何でそこを選んでその収容率を基礎にして老人病院の特定をするか、そこのところがわからぬのですけれどもね。専門的にお考えになっておると思いますが、それはどういう意味でしょうか。
  248. 吉原健二

    ○吉原政府委員 老人の診療報酬、老人保健法の施行が二月一日でございましたので、原則的には実は二月一日から全体の診療報酬の点数が適用になるということでございますけれども、いま御質問のございました老人病院につきましては、一定期間の老人の収容比率というものを踏まえて老人病院の認定をするということにいたしましたために、法律が二月施行であるからといって直ちに施行ということはやはりいろいろ問題があるだろうという考え方に立ちまして、実は老人病院の適用は新年度四月からということにしたわけでございます。そして、ある程度の期間の収容比率というものを基準にする必要があるという考え方で一、二、三のこの三月間の平均的な収容比率をもとにしまして四月、新年度から老人病院の、該当する病院であるかどうかの認定をする、こういうことにいたしたわけでございます。これはことしの一月から三月だけじゃなしに、毎年一回その時期に収容比率をもとに四月から新しい認定を、認定の再改定といいますか、そういうこともやっていくという考え方で始めたわけでございます。  それからもう一つ、この老人病院に認定をされますと、恐らく大変きついというふうな御理解での御質問じゃないかと思いますけれども、私ども必ずしも老人病院の認定をされるということがきついというふうには思っておりません。むしろ老人を多く収容されている病院については、これからは許可を受けてそういう病院の経営、運営をやっていただきたい。いままでのようにただ一般の病院と同じということではなしに、老人を集めておられる病院については許可制といいますか、許可を受けて老人病院の老人医療をやっていただきたい、こういう趣旨での考え方でございまして、そういった許可を受けられた場合には、決して老人についての点数あるいは医療というものが厳しくなった、あるいは制限をされたということにはなっておりませんで、むしろそういったところに入っておられる老人の症状にふさわしいような治療がいままで以上にできるようにという考え方での点数を設定しているわけでございます。
  249. 山原健二郎

    ○山原分科員 これから実態がどうなるか、四月からのことでもありましょうけれども、それだけではちょっと納得できない。たとえば一カ月注射千円とかいうような問題が出てきますと、その数字を見れば、ちょっといまの御説明だけではこれはだれも納得しないと思います。それからまた、現実に病院長さんという専門家の人たちが批判をしておるということを考えますと、これは本当に、いま大臣が言ったように納得さすなら納得さすだけの資料を整える必要があると思います。  その中で、いわゆる七十歳以上の方の六〇%の問題ですが、これは私は高知県の例を挙げます。というのは、高知県は老人の比率が全国で第二番目なんです。たしか島根県に次いでいますがね。それで、たとえば七十歳以上の方の人口比が私のところが九・〇一%です。全国平均が六%ですね。それからもう一つ、山間僻地で見てみますと、これが一七%という数字が出てまいります。それで、きょう県の方へ電話して聞きましたところ、人口に占める老人の比率もさることながら、病院にかかっている人の問題がありますというので、十万人単位で病院にかかっている比率を見ますと、外来の一日平均の患者が、私の県が二千三百六十三・五人なんです。これは全国でトップです。沖縄が七百・八人、七百人ですね。お隣の千葉県が八百九十四・八人ですから八百九十人。私のところが二千三百六十三人ですね。それから入院患者、これも十万人単位にしますと高知県が二千二百十一・八人。お隣の徳島県が千五百七十九・三人。東京のお隣の埼玉県が五百五十三人なんです。これも私の県がトップなんですね。それから病床利用率につきましては、何と私の県は九五・五%、全国平均が八一・五%というふうになっておりまして、ちょっと自分でもびっくりしたのですが、この指数から見ますと何もかもトップで、それが老人が多い、そして生活が貧しい、病人が多いということになると思います。  それで、じゃ、今度四月から六〇%以上の場合にどういうふうになるのかと思って調べてみますと、これは二月八日に調査をしてもらったのですが、高知県に百四十九の病院がございまして、そのうち四十九病院を抽出して調査してみました。そうしますと、四十九の病院の中で七つが基準看護、それから二つが伝染病院、その二つはこれから除きますと、あとの四十の病院が残るわけです。その四十の病院のうちで、七十歳以上の方が六〇%以上入っておる病院が二十七あります。四十の病院の比率でいたしますと六七・五%という数字に当たるわけです。これを、これからどうするのかということでそれぞれの病院に当たってみますと、三月中に七十歳以上のお年寄りに病院から出ていただいて六〇%以下に抑えようとするところですね、それが可能なところが五病院です。それから、現在準備中といいますか、特例を認めてもらうように努力をしようとしておるところが六つです。その他十六の病院は特例以外にならざるを得ないような、対応の仕方がないというところが残るのですね。  これは、いま申しましたように四十九の病院を抽出しましたから、それを全県の百四十九に当てはめてみますと、実は一般病院がその中に百十二ありますから、六〇%以上老人を抱えておるところの七十六病院のうち、推定しますと、対応できる努力をしておるのが十四、それから準備中が十七、対応のしようがないというのが四十五。そうしますと、五十に近い病院が特例外の老人病院にならざるを得ないという状態になってくるわけです。  厚生省は、この点でいわゆる特例外に置かれる、七十歳以上のお年寄りを六〇%抱えておる病院で対応のしようのない、特例外になる病院が全国的にどの程度あるか、その辺推測されておりますか。
  250. 吉原健二

    ○吉原政府委員 なかなかそのはっきりした推計がむずかしいのでございますけれども、全国で約九千の病院がございまして、そのうち老人の収容比率、入院比率が六〇%以上の病院が大体五、六百から千くらいの間ではなかろうかというふうに推計をいたしておりまして、実はそういった病院の大部分が特例許可を受けられる、ほとんど九割ぐらいは受けられるのではないか。また、受けられないとおかしい。特例許可といいましても別に新しい人をふやさなくちゃいけないとかあるいは新しい設備が必要であるとか、そういう要件は全くございませんので、本来、普通の病院で普通に医療法どおり経営をやっておられれば当然に許可が受けられる、むしろ医師や看護婦の基準が緩やかになるのがこの許可制度でございまして、新しい条件を付加したものではございませんので、現実には大部分のそういった老人の収容比率の高い病院が許可を受けてさらに経営がしやすくなるというふうに思っておるわけでございます。  したがいまして、特例許可を受けられない病院がそんなに多いというふうには私どもとしては推計をしておりませんで、ただ実際問題として全体の一割ぐらいですから、五、六十から百くらいはそういった特例許可も受けられないような病院が出てくるかもしれない。そういった病院は病院としては非常に望ましくない病院ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  251. 山原健二郎

    ○山原分科員 厚生省の方の話を聞きますと、たしか六十とか百ぐらいだろうということを聞きましたので、そうすると、いまの計算でいきますと、それを高知県にまともに当てはめていくと、こんな数字が出ますから、仮に全国で六十だったらそのうちの五十が高知県が引き受けるのかなあという感じを持っておったわけですよ。いまのお話によるとそういうものではないということですが、そこらがわかっている人はわかっているのでしょうけれども、私もちょっとわかりませんでしたね。だからたとえば高知県のように一番ひどい私の県の例をいま申し上げて数字も挙げてみたわけですが、そうすると、私のところでは、知事が特別な特例許可をしなければ、このままでいけば六十ぐらい残るという計算をしたわけです。  でも、皆さんの一月二十日の通知の中にはこういうふうにございます。「当該地域の人口構成上七十歳以上の者の占める割合が著しく高い等のため、当該病院の老人収容比率が百分の六十以上とならざるを得ない病院をいうものであり、都道府県知事は、その認定に当たっては、当該病院の申請に関係市町村長の意見書を添付させ、特別の事由を的確に判定するものとすること。」、こうなっていますから、たとえば高知の場合なんかでございましたら、そんなにたくさんのところが知事が認められないことにはなるのではなくして、知事の判定によりましてその点は特例の病院として、特例外の病院に残されるということはないというふうに判断してよろしいでしょうか。また、その知事の判定に対して厚生省の方でいろいろの文句をつけたりすることはないというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  252. 吉原健二

    ○吉原政府委員 私がそんなに多くあるはずがないと思いますのは、いま申し上げましたように特例許可を受けるのにそうむずかしい新たな条件を課したわけではないのですから、一体なぜ高知県にそんなに特例許可も受けられない病院が出るのだろうか、私はまずその辺を十分調べさせていただきたいと思います。その上でもしその地域の事情でやむを得ないではないかということで、知事はこれは特例許可外に認定するということであれば、私はそういう道も開いておりますので、それは認めたいと思いますけれども、少し数が多過ぎるのではなかろうか。それは何かもっとほかに問題があるのではないか、診療報酬の問題ではなしに、その病院として何か問題があるのではないかというふうに思います。ですから、地域の実情に応じて知事が認めるという道を開いておりますので、十分そういったことも考えてまいりたいと思いますけれども、まずその特例を受けられない理由、そういったものを調べた上で対応させていただきたいと思います。  それから、もう一つ申し上げておきたいと思いますのは、実は高知県はいまもお話ございましたように、大変医療費が高い。全国で北海道と並んでトップクラスの医療費が高い県でございます。数字で申し上げますと、全国平均で五十五年の数字は老人一人当たりの医療費が大体三十四万でございますが、高知県の老人一人当たりの医療費は何と約四割増の四十八万になっているわけでございます。それは五十五年の数字でございますから、現在の時点では恐らく全国平均の老人一人当たりの医療費は四十二、三万、高知県は恐らく六十万ぐらいになっているのではないかと思います。これは単に老人の高齢化率が高いからということでは私は説明し切れない面があるのじゃないかというふうに思っているわけでございます。実は高知県以外の四国の各県はそれよりも十万ぐらい低い。私は、それほど老人化率あるいは高齢化率に差があるとは思いません。数字の上でもそんなに差はございませんけれども、なぜ高知県だけがそんなにずば抜けて医療費が高いのだろうか。そういった点につきましても私はもっと調べる必要があるというふうに思っておりますので、その辺も十分調査をした上で的確な運用なり認定を図りたいというふうに思っております。
  253. 山原健二郎

    ○山原分科員 それはあなた、ここで私に対してそういうことを言うのはけしからぬですよ、私はそういう病院の専門家でもない者に対して。私どもは国保の問題にしても、高知県の老人の率とか、それから医療費の問題とか、それは前から問題になっているわけです。しかし老人の比率が多いことはもう確かですね。それから生活実態もありますし、それから全国有数の広範な山間地帯を持っているところではありますからね。それをいまそんなことを言われて高知県の医療行政がけしからぬというような言い方をされると、それは取り消してもらわなければいかぬですね。それは私はまたそれなりの態勢を整えてこないと、ここで返事のしようがないのですよ。あなたはそんなことおっしゃるけれども、高知県の医療体制はけしからぬという言い方でしょう。それは取り消しておいてください、ここの限りは。それは後でやりましょう。どうですか。
  254. 吉原健二

    ○吉原政府委員 私の言い方があるいは不適切だったかもしれませんが、けしからぬという言い方はしておりません。一体なぜこんなに高知県だけがすば抜けて老人の受診率が高く、老人医療費が全国平均に比べて高いのだろうか、その辺はもう少し私どもとしても県と十分御相談の上、協力していただいた上で調べてみたいという気持ちを持っておるということを率直に申し上げたまででございます。
  255. 山原健二郎

    ○山原分科員 その理由は私もこれから調べてみましょう。いままでも県政の中でも一番問題になっておるところですからね。だから、それはそれで改善しようとするのか、いろいろな努力が払われているわけでして、それをここでこうやられると、私はその県の選出の議員としてちょっと受け取りにくいですよ。  それからまた、たとえばいま、お年寄りを病院からずっと追い出すと言えば、これは語弊がありますけれども、あるいは入院しておる方を出ていただくとか、一つの例なんですけれども、六十人おられたお年寄りがある病院でこの一月から三十人に減っておるのです。ところが、じゃ、そのお年寄りがこれから行くところがどこかということで考えてみますと、これは日本経済新聞にも出ておりますように、特別養護老人ホームとか養護老人ホーム、そういうところへ行く率がふえておるというので、じゃ、そこへ収容できるのかなと思って見てみますと、特別養護老人ホームは高知県に十九カ所ありますが、その定員が千五百二十六人ですね。ところが、その入所しておる方が千五百二十五人で、一つ空席があるといいましょうか、満杯なんですね。それから現在待機しておる人をまだ調べておりませんけれども、これもかなり多い。養護老人ホームは十カ所にございますが、その定員は、定数は八百五十八人で、現在入所しておる方が一月末で七百十九人おります。したがって、率直に言ったら行き場所がない。しかも出稼ぎが多いですからね、若い者は出稼ぎに出ておる。病院から出て家へ帰ってもひとりではおれないというような状態が出てきますと、これはここで漠然と私は言っているのですが、一人一人のお年寄りにとってみますとこれは大変な問題が出てくるわけで、そうなってくると、これは一人一人についてどういうふうにそのお年寄りの介護をするかという問題がこれから検討されていかなければならぬ問題となってまいります。厚生省がいまおっしゃるように、そんな心配はないのだ、知事が特別にその人をふやしたりせずとも特例外にはしないという、そういう裁量措置があるのだということならば、それはそれでちゃんと教えていただければ、いま直ちに出ていけ出ていけというようなことも起こらないでしょうし。それが現実に起こっているから問題なんです。  いまおっしゃったように、知事の裁量権についてはことに書かれておりますから、そういう点でやっていかれるということですからそれでよろしいのですが、そのほかに、医療費を地方自治体が負担してあげようという温かい老人に対する心構えでやろうとしておる自治体もあると聞いております。厚生省の方もその数も幾つかつかんでおられるのではないかと思いますが、ところがそれに対しては、それを呼んで、そんなことはやめろ、こういうふうに言っているわけですけれども、それは自治体の裁量権の問題ではないのか。それをとめるような権限は私は厚生省にはないと思いますので、そういう点はそういうことをやっていないのかやっているのか、その点を伺いたいのです。
  256. 吉原健二

    ○吉原政府委員 老人保健法が、やはり七十歳以上の方の老人医療費は国民みんなで公平に持っていこう、もちろんその大部分は若い人の負担になるわけですけれども、老人の方々にも無理のない応分の負担はしていただこう、こういういわば全国的な合意というものでこの法律ができたわけでございますので、私はやはりその考え方に沿って地方自治体におきましても法律の運用をしていただきたいと思いますし、独自の施策、それはもちろん地方自治体の判断でいろいろやっていただくのは結構ですけれども、あくまでもいま申し上げましたような法律の考え方あるいはそれとの整合性というものも十分考えてやっていただきたい、こういうお願いをしているわけでございます。したがいまして、七十歳以上の方についての地方自治体としての肩がわりというのは私は地方自治体の施策としては適当ではないのじゃないかということで、そういったことがないようにお願いをしているわけでございます。
  257. 山原健二郎

    ○山原分科員 最後に。もう時間がございませんから、これでおきますが、どうも気にかかるのですね。私は、今度の保健法の改正によりましてもろに大きなその影響を受ける県の一人として、県の実情を挙げて質問したわけですよ。だから、これは高知県の問題だけでなくて、高知県にそれほど年寄りが多いと言ったって、どこの県も大体似たようなものですからね。しかも、老人国に次第になろうとしておる日本において、その一つの事例として高知県の数字を出しましたところ、それは高知県の医療行政が悪いのじゃないかというような言われ方をしますと、ちょっと納得がいきませんので、その点ははっきりさせておいてもらいたいと思います。  それから、この間私はテレビで見ておりましたら、水戸黄門が出てきて、東野英治郎さんが出てきて、ある藩へ行ったときに、これは架空の話でしょうけれども、うば捨て山の話が出てくるんですよ。あれは六十歳になったら親を捨てにいくという話で、水戸黄門が怒ってそれをとめるのですけれどもね。私は、林厚生大臣、本当にりっぱな若い厚生大臣で、力もあればまた頭の回転も早い人ですけれども、よもや厚生悪代官と言われるようなことはすまいと思います。そういう後世に名を残すようなことは絶対ないと思いますが、そういう意味でこれから、本当に老人の問題についていろいろお考えになっておると思いますけれども、私の言ったこともこれは半面の真理を出しておると思いますから、その意味でこの老人医療問題についてがんばっていただきたいと思います。その点での決意をひとつお伺いしておきたいと思います。
  258. 林義郎

    林国務大臣 山原議員の御質問にお答えをいたします。  私、話を聞いておりまして、吉原君からいろいろ老人保健をこれからやっていかなければならない、非常に意気込みに燃えてやっておりまして、高知県の実情がいまお話がありましたように、また私もちょっとその話は聞いておるのですが、いろいろあるということは聞いております。ただ、そういったことだから高知県がどうだこうだという話じゃない、そういった実態が明らかになりまして、その上で本当にいい老人保健行政というものを遂行していかなければならない、はしなくも今回いまのような話で問題がはっきり出てきたのではないか、こう思っておるところでありまして、これから本当に老後の皆さん方の健康を中心とした社会づくり、さらには老人医療対策というものを的確に進めていかなければならないと考えているところでございます。  お話が出ましたから申し上げますが、うば捨て山であるとか、もう一つ言いますと、うば捨て山、嬰児殺しというのは徳川時代ではやはり慣習であった。われわれはそういった社会へ戻ろうとする気持ちは全然ないわけでありまして、むしろこれから本当に豊かに、国民のすべての人が生きがいを持って生活できるような社会をつくるために、これからも一層努力をしていく決心を改めて申し上げまして、私の答弁といたします。
  259. 山原健二郎

    ○山原分科員 どうもありがとうございました。終わります。
  260. 上村千一郎

    上村主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木強君。
  261. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 私は、一つ中国残留孤児の肉親捜しの問題、二つはがんの撲滅対策、三つ目に筋短縮症児の育成医療の問題、この三つについてお伺いをいたします。  第一の肉親捜しの問題につきましては、朝来多くの質疑があったようでございますから、重複を避けたいと思いまして要点だけをお伺いいたします。  このたびの三度目の黒竜江省から来日した中国残留孤児四十五人の肉親捜しにつきましては、今月の二日から始まっておりますが、厚生省が所管庁として大臣を先頭に必死の努力をなされておられますことに対しては、私は心から感謝を申し上げます。また、NHKを初め各放送局また各新聞社等が肉親捜しに最大限の御協力をなされておられますことについても深く感謝を申し上げる次第でございます。  そこで、初日に十八人の方がそれぞれ家族と面会をいたしまして、九人の人が肉親というふうにわかりましたと報道されております。きょう午後何人かの方が名乗り出ておる方と面会をするようになっておりますが、何人かわかりましたですか。
  262. 山本純男

    山本(純)政府委員 本日は一組でございます。
  263. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 ぜひ全力を尽くして全員の方が肉親にめぐり会うことができますように、今後一層の御活躍をお願いいたしたいと存じます。  それで、昨年私はやはりこの問題についてお伺いをいたしまして、当時の森下厚生大臣から、私と同じ気持ちで今後対処したいというお答えをいただいておるのでございます。そのときに、実際に中国に残留をしております孤児の数というものは一体何人いるのか。当時、一万とも二万とも言われておる、特にその中で一千人くらいの方はわかっておる、こういうふうなお話がございましたが、実際にこれからさらに肉親捜しに日本に来たい、こういう人の数は把握をされておりますか、そのときに十分把握をするように努力をしてもらいたいということを私はお願いをしておきました。それがわかりましたら知らしてください。
  264. 山本純男

    山本(純)政府委員 私どもに肉親の調査を依頼してみえた孤児の方が千四百五十一人ございました。そのうち、これまでに六百八名、そのうちの七十二名は過去二回にわたります訪日調査によるものでございますが、六百八名の方の身元が判明しております。残りが八百四十三名ということになりまして、この中から今回四十五人見えたということでございます。  また、この人数につきましては、これ以外にも孤児の方がおられるのではないかというお話は前から承っておりますので、昨年以来の日中両国政府間におきます扶養費を中心といたしました協議、数回にわたって重ねてまいりましたけれども、その中でも私どもからそういう点につきましては中国政府の見方を伺う努力をいたしました。しかしながら、中国政府からは、中国政府としては日本人である孤児の状況というものについてはかなり行き届いた調査がすでに行われている、したがって、私どもに調査の依頼のあった千四百五十一人以外にはほとんどいないというふうに判断しているという意見が表明されておりまして、私どもとしては現在中国政府のそういう考え方を尊重してまいりたいというふうに考えておる状況でございます。
  265. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 そうすると、まだ八百四十三人の方は肉親捜しに日本に来ていない方というふうにとっていいのですか。
  266. 山本純男

    山本(純)政府委員 今回四十五人見えましたので、まだ日本に来ておられない方がこのほとんどであると思いますが、中にはあるいは個人的な御緑で見えた方が若干あるのかもしれません。私ども承知しておりませんので、むしろ残る八百人のほとんどが日本の国土をまだ踏んだことのない方々であろうと考えております。
  267. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 そうしますと、この残された皆さん、判明しておる皆さんの肉親捜しについては、今後とも中国政府と十分に協議をなさって、一日も早く実現できるように手はずは整っておるわけですか。大体めどをどういうふうに置いておりますか。
  268. 山本純男

    山本(純)政府委員 昭和五十八年度につきましては、私どもで百八十人の訪日肉親調査を実施したいということで、今回予算お願いしているわけでございます。この実施につきましては、やはりこの一月に両国政府で協議をいたしました際に私どもの腹づもりを中国政府に伝えまして、六十人ずつ三回、計百八十人でございますが、これの実現について協力を依頼いたしました。それに対しまして中国政府側からは、関係者の高齢化が進んでいる状況も承知しているので前向きに協力をしたいという御返事はいただきましたが、しかし、実際に五十八年度百八十人実施することについては、三回になるかどうか、その都度また改めて具体的に協議をしてほしいということでございますので、この今回の調査が終わりました段階で次回の調査について、早速また事務レベルの協議を進めていきたいと考えております。
  269. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 それで、今回四十五人の方が見えられて、全員に対してアンケート調査をいたしましたその結果を新聞で拝見いたしました。これは、肉親が見つかった場合は七一%が永住帰国をしたい、それからわからなくとも永住帰国をしたいという方が六九%に上っておるわけでございますね。それから養父母問題につきましては、半数が回答を留保しておられる。中国と日本と二つの祖国を持つ残留孤児の皆さんの心境が非常によくここにわかるのであります。  そこで大臣、私は、今後厚生省におきましては、いまお話しのように、残された皆さんの身元をできるだけ確認をいたしまして、この方々が永住帰国を望むかどうか、こういったことも十分に御調査くださいまして、永住帰国をしたいという意思のある方々についてはぜひその万全な受け入れ体制をつくって、きめ細かい養父母問題等に対する対策も講じていただきたい、こう思うわけでございます。もちろん、これは相手国がございますから、中国政府との間に友好のお話し合いを重ねていただいて、ぜひそういう御期待にこたえるような体制もあわせて今後考えておいていただきたい、こう私は思うのですけれども、いかがなものでしょうか。
  270. 林義郎

    林国務大臣 鈴木議員の御質問にお答えを申し上げます。  鈴木先生には、日中関係の問題をいろいろとやっていただいておりまして、この機会をかりまして、その友好親善のために御努力されていただきましたことに心から敬意を表する次第でございます。  孤児の問題につきましても大変な御関心を持っておられますことをよく承知しておりますし、いまのお話は、日本へ永住希望が強いけれども、肉親が見つかる見つからないにかかわらず永住希望をという人はやっぱりやってくれ、こういうふうなお話だと思います。この問題は、日本側としては本当にやってあげなければならない、こう私は思うのです。私もこの前、この月曜日に行きまして、お話を申し上げたら本当にみんな涙を出しておられる。私も、お話を申し上げる途中で胸の中に熱いものが込み上げてくるのを抑えることができなかったような感じを持っておるわけであります。だから、そういった気持ちは皆だれでも持っているだろうと思いますが、この問題は単に日本人同士の話でなくて同時に中国の問題もありますから、中国側の十分な理解と協力をいただかなければなりません。幸いにいたしまして、本年一月の日中の事務レベルの協議では大体その辺の御了解を得られましたので、中国側の協力を得てこの措置について現地の孤児への周知を図り、孤児の希望に応じてできるだけ早期に受け入れを実施してまいりたい、こういうふうに考えております。  実施をするに当たりましても、なかなか問題があると思うのです。いきなりぱっと来られても言葉の問題もあるし、職場の問題もあるし、いろいろな問題がありますから、そういったものを万全の体制をとっていかなければ、来てもらったわ、それではどうにもならぬわということではこれまた困りますから、そういったことを十分考えながらこれから運営をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  271. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 大臣の非常に誠意のあるお答えをいただきまして非常に心強く思います。おっしゃるように、まず言葉の問題、風俗習慣の問題、いろいろございます。  ここでちょっと局長にお伺いしておきたいのは、里帰りをする方々、それから永住を希望して帰ってくる方もあるでしょう。日本に帰ってまいりまして、全国各地に相当な方々がいらっしゃると思うのです。その方々が一番困るのが言葉の問題でございまして、現在は各県が主体になりまして日本語の勉強室といいますかそういうのをつくりまして、ボランティア精神も発揮しながら大変御協力いただいている方がいらっしゃいます。  それで、臨調のあおりを食ったのかどうかは知りませんが、そういうふうな善意の立場に立ってやっておりますものがどうもできなくなるような話があるわけでして、その内容が、国から直接そういうための助成費というのが出ているのかあるいは指導員的な者に対して若干の手当が出ているのか、いずれにいたしましてもなかなか運営がむずかしい時代に来ている。こういうことで、いままでやっておった県も、できたらやめたいというような意見もなきにしもあらず、これは非常に重大なことでございます。  ですから厚生省では、聞くところによりますと、一カ所にそういったセンターをつくりまして、四カ月間ですかそこに収容して、その間いろんな、住居のことを含めましてできるだけの配慮をする中で勉強ができるようなものをつくるように聞いておりますけれども、それはそれとして非常に意義があると思います。しかし、全国に散らばっておる人たちのためには、いままでやっておりますものが継続していかないとまずいと思うわけですね。その実態を私はよくつかんでおりませんけれども、ひとつその点も十分御調査くださいまして、そしてそれぞれの県がやっている日本語の勉強というのが引き続いてやれますような御配慮を大臣ぜひお願いしたいと思うのです。
  272. 山本純男

    山本(純)政府委員 いま伺いましたとおりの実情でございまして、私どもいま現在日本の社会に定着していただくためにお手伝いしておることは非常に限られておりまして、一つは、日本へお着きになった早々にいろいろとアドバイスを差し上げる、たとえば行政機関としてはこういう窓口がありますとか、こういう制度がありますということをアドバイス申し上げるのは当然いたします。それからまたささやかでございますが、自治体に補助金を支出いたしまして、自治体の方で生活指導員というものを置いていただいて、しかしこれも予算に限りがございますので、一年間ということで生活相談におもむいていただいているという状況でございます。  これ以外の、たとえば特別の日本語教室を開いてくださるとかいうことはすべて御好意に頼ってやっているわけでございまして、あるいは自治体に費用を支弁していただいているところもございます。また、社会福祉協会に費用を負担していただいておるところもございます。また、純粋の民間のボランティア団体が無料サービスでやっていただいているところもあるということを存じております。  私どもは今度、東京近辺に期待しておりますが、センターをつくって四カ月間日本語教育を主として研修をしていただきたい、こう思っておるわけです。これでは決して十分でないということも承知しておるのですけれども、なかなか私どもだけで行き届いた教育訓練というものができるとは思えませんので、今後ともにこれまでいろいろ善意で御協力いただいた方面にはまたお願いをしていかなければいかぬと思っております。  その際に、国の方から助成の手をということも、自治体からも私どもかねて強く聞かされておりますし、また民間団体からもそういう希望が来ておりますが、現在の状況では、国として財政上の援助をこれ以上大幅にふやすということは大変むずかしゅうございますので、たまたま今度、扶養費の問題を主体にいたしまして民間の寄附をお願いして、孤児のためにいろいろサービスを進めていきたいと考えておりますので、その中で何とか余力を見つけまして、そういう善意の御協力に対して何かお手伝いする道を探っていきたいというふうに考えている状況でございます。
  273. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 それなりに御協力をいただいておりますが、大臣、これは戦争の大きな犠牲者であり落とし子なんですよ。ですから私は、いかに財政が困難であろうとも、これらの方々に対して国ができるだけの協力をするということは当然であるし、その金に対して文句を言う人はないと思うのです。ですから、わずか百万円か何ぼの助成金をぶった切るというふうな話も聞いているのですけれども、そんなことではだめですよ。ですから、いま局長のおっしゃるように善意によってやることもこれは結構、しかし、基本的には国が力を入れてやるということでセンターの着工にもなったと思いますから、いままで地方自治体を初め善意の方々がやっていらっしゃる日本語の勉強について、これが継続してやれるような御配意をぜひやっていただきたい。これは政治的な問題ですから、大臣から時間もありませんから簡単にひとつ答えてください。
  274. 林義郎

    林国務大臣 鈴木議員の御質問にお答え申し上げます。  全く基本的な精神は、日中国交回復のときの共同声明の中に「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」という一言があります。これがやはり日中の基本的な精神でなければならない。こういった精神に基づいていろいろなことを考えていかなければならない、予算の話その他も。いま事務的にやっておりますのはいま申し上げましたようなことですが、私もいろいろな方面で最大の努力を払いたい、こういうふうに考えております。
  275. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 ありがとうございました。時間がありませんからこれでこの問題は打ち切ります。  その次に、がん撲滅対策についてお伺いいたしたいと思います。  私はこの問題も毎年お伺いしているのでありますが、現在全国にがん患者というのは何人おるのでしょうか。そして、年間何人の方が死亡されておるのでしょうか。ちょっとデータを示していただきたい。
  276. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 死亡数は十六万六千人でございますが、がん患者の数につきましては正確なところはちょっとつかまえ方がむずかしいのであれでございますので、ほぼそれを上回る数字だと思います。
  277. 三浦大助

    ○三浦政府委員 ただいま医務局長からお答え申し上げましたように、死亡者は全死亡の七十万人のうちの十六万六千人でございます。これは死亡順位第一位でございまして、この中で胃がんが五万人、肺がんが二万三千人、肝臓がんが一万五千人。それから患者数でございますが、これは約二十万人と推定されておりまして、その中で、胃がん患者が六万九千人で三四%を占めておりまして、肺がんが二万二千人で一一%、子宮がんが一万七千人で八%、こういう順番になっております。
  278. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 残念ですけれども、いまがんに冒されますと不治の病、こういうふうに言われているわけです。昔は肺病になると不治の病と言われたのですが、いまは肺病なんというのは全然問題にならないですね。心配ない。そういうふうにがんについてもなりたいものだと常々私は願っているわけでございます。  今度、中曽根総理もこのがんの問題については大変力を入れるような御発言もあるようですし、担当する厚生大臣としても元気を出してこの問題に立ち向かっていただいておるわけでございますが、どうも大変失礼なことになるかもしれませんが、ただ熱意を持ってこの問題に対してさらに対処していただきたいという気持ちで私は申し上げるわけでございますが、現在、がんを治療するための医学的な研究というのは、国立がんセンターに研究所を持っておられるわけでございますが、その他各大学における研究等を含めまして、研究費というのは一体年間どのぐらい見積もっておるものでしょうか。
  279. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 厚生省で所管しておりますのが約十六億円、文部省で約二十億円、科学技術庁が約二億円、こういうふうになっております。
  280. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 そうすると、合計で約四十億ですか。これじゃだめですよ。こんなことだからちっともうまくいかぬのだと私は思うのですね。もちろん国際的な連帯も十分やらなければなりませんが、おひざ元の日本においてもう少しがんの研究所を拡大し、組織を拡大し、必要な要員を配置して、何とか世界に先駆けて、すぐれた医学を持っておるわが国ががん撲滅の処方せんを確立できるような方法をとっていただきたい、こう私は思うのですけれども、ちょっと貧弱じゃないですか、これでは。大臣、どうですか。
  281. 林義郎

    林国務大臣 私は厚生大臣になりましたときに、このがんの問題は国民的な関心事でもありますし、先ほど話がございましたように死亡率第一位、こういうことでありますから、これに真っ正面からひとつ取り組んでみたいと心ひそかに思っておったところであります。中曽根さんからも言われましたし、いまひとつ大いなことを考えてやらなければならないと鋭意検討中でございます。  研究費が四十億足らずでは少ないというのは御指摘のとおりだと思うのです。私もこの前、国立がんセンター、築地にありますが、あそこに行きまして見せていただきました。あそこのいろいろな研究者の方々にお話も聞きました。むしろそういった研究所の体制の問題とか——お話を聞きますと、研究の段階は金はないけれども頭で一生懸命がんばっていられるという話もありますし、それから、日本のいろいろな研究者の方でずいぶんアメリカへ行って、アメリカで一緒になって基本研究をしておるというお話も聞きました。アメリカにばかり行ってアメリカの金を使ってやるのじゃ申しわけない、日本も経済的には非常に大きな力を持ってきたわけですから、相応なことをする。世界的に問題なんです、日本だけではない、世界的にも問題でありますから、そういった考え方も入れまして、積極的に向こうの人に来てもらって一緒にやるぐらいのことは考えてもいいだろう、こんなことも私は思っておるわけでございまして、これはいま一生懸命やっておりますから、先生の御要望もよく聞きましてがんばってみたい、こういうふうに思っているところであります。
  282. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 それから、実は丸山ワクチンのことですけれども、薬事審議会でパスできなくておる。ただし効用があるということはかなり認められて、本人が了承すれば飲んでもいいということになっておるようでございますね。  実は私は山梨県なんですけれども、せんだってある農家へ行きましたら、そこに老夫婦がおりまして、御主人の方ががんになったんだそうです。それで丸山ワクチンを飲んだらすっかり元気になりまして、もうぴんぴんしているんです。私に言うのに、鈴木さん、政府丸山ワクチンに対して何だかんだ言っているけれども、あれは効くんだと言うんです。現に私が飲んで治ったじゃないか、これをよく見てくれ、あなたはひとつ国会へ行って林厚生大臣にぜひ頼んでくれ、こういうことなんですよ。  しかし、これは医学的な専門家がお集まりになって、薬というものは危険がなくて絶対に効くという御診断のもとに許可されるものだと思いますから、私どもが素人の考え方ですぐどうこうということは言えませんけれども、ただ、ぴんぴんした体を見ますと、やはりこれは効くものじゃないかというような気がしたわけです。ですから、これが早く使われるような方途を促進していただくようなことはできないものなのでしょうか。ちょっとどなたか、事務当局からでも……。
  283. 持永和見

    ○持永政府委員 丸山ワクチンにつきましては、現在先生がお話しのように有償の形でございますけれども、治験薬として患者さんが入手できるような形で供給をいたしておりますが、いまお話しのように、これはあくまで治験薬でございまして、正式の認可されたものではございません。  現在、丸山ワクチンにつきましては、お話のように中央薬事審議会から答申が出ておりまして、規格、試験方法あるいは臨床試験、そういったものを積み重ねなさいということの附帯意見がついております。それを受けまして、いま申請者でございますゼリア新薬工業でいろいろと検討、研究を重ねている段階でございます。私どもとしては、そういった検討、研究にできるだけの協力をさしていただいているつもりでございますけれども、そういった御指摘のような有効症例を含めて、改めて申請者がそういった治験あるいは研究成果をまとめられまして申請をされるのを待っているという状況でございまして、ゼリア新薬工業の研究に対しましては、できるだけ相談なり協力をいたしているというところでございます。
  284. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 そうすると、申請者が申請をするには、いま申し上げたような、持永さんが述べられたようないろいろな問題が実証されなければいかぬですね。そうすると、次の薬事審議会なりそういうものができるのは大体いつごろになるのですか。
  285. 持永和見

    ○持永政府委員 申し上げましたように、いまゼリア新薬工業で規格、品質の研究もあわせて行われておりまして、その成果がまとまり次第薬事審議会に出される、こういうことになりますけれども、まだ私のところへは、具体的にいつごろかというようなことまではゼリア新薬工業の方も申しておらない段階でございます。
  286. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 あと二、三分ですかになりましたから、残念ですけれどもこれで終わらせていただいて、最後に筋短縮症児の育成医療費についてお伺いしたいのです。  これは時間がありませんから、皆さんよくわかっておりますから簡単に言いますが、十八歳まではこれが適用されるけれども、十九歳になると適用除外になる。この前、園田厚生大臣のときに、私は患者の皆さんと一緒に陳情に行ったのですよ。そうしましたら、園田厚生大臣がおっしゃるのに、みんな集めまして、これは一体いまの制度でうまくできないのか、できないなら法律を変えろというようなことを皆さんの前でおっしゃいました。ですから、行った方々が非常に感激しまして、非常に温かい御配慮に感謝しておったのですが、その後厚生大臣もおかわりになっているのですけれども、どうなったかさっぱりナシのつぶてなのです。私のところにも連絡がない。しかし、こういう機会ですから、過去のことについて私はとやかく言いません。それぞれ誠意を持ってやっていただいていると思いますから言いませんけれども、やはり時の大臣が、少なくとも私が仲介をして患者に言明したことは、育成医療を受けられなくなった十九歳以上の人たちが筋短縮で苦しんでおる、何ら医療費が出ない、残念だ、何とかしてくれないかということに対して、大臣が非常に温かい心持ちで、いまの制度の中で何とかできないのか、できないならば法律を変えようじゃないか、そしてやってやるべきだ、こういう御意見をおっしゃったのですよ。大臣、それは引き継ぎは代がかわっていますからできなかったと思うのですけれども、そういういきさつがありますから、ぜひひとつ育成医療費の問題については何とかめんどうを見ていただけるような方法を十分に検討していただきたい、こういうふうに私は願っておるわけです。そうしませんと、今度は身体障害者一級から六級になればそれは更生医療費がもらえるのですけれども、そうでないわけですから、その適用されない人たちもおるわけですから、ぜひひとつ大臣、検討して何とかいい結論を出していただくようにお願いしたいのでございますが、それを大臣からお答えいただいて、私は終わります。
  287. 林義郎

    林国務大臣 もう先生、いろいろなことはよく御存じでありますし、御陳情にも園田さんのところに来られたという話ですから、いろいろと私も申し上げることは省略いたしますが、十八歳を境にして何か適用制度がこんなことになっているというのは、何でそんなことになっているのか、だれでも不審であります。  ただ、病気が幼児期に発生すると大体そのころになると治るのだ、こういうふうな話もあるようでありますが、やはり制度的なアンバランスが生じていることは事実でありますし、園田さんからもそういうふうなお話があったということでもありますから、そういった園田さんのような方向で私もこれから検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  288. 鈴木強

    鈴木(強)分科員 ありがとうございました。終わります。
  289. 上村千一郎

    上村主査 これにて鈴木強君の質疑は終了いたしました。  次に、武田一夫君。
  290. 武田一夫

    武田分科員 私は、腎疾患対策、この問題について質問をいたします。  これは昨年もこの分科会で一応問題にしたわけでありますが、ここ十年の間に腎疾患対策というのはいろいろな面で前進をしていることを私も認めます。特に近年の人工透析療法の普及と進歩、これによりまして、かつては死を待つしかなかったような腎不全患者が延命もできるようになったということでありますし、また治療をしつつ社会復帰も可能になったという方々もたくさんおりまして、非常によいことだと思います。また最近、特に腎臓移植の普及、これが進みまして、腎不全患者に大きな希望を与えていることも承知しておりまして、これは関係者の努力、当局厚生省等の努力を私は評価するわけでございます。しかしながら、それでもなおかつこれは問題の多い分野です。  御承知のとおりいろいろな問題がございますので、以下一つ一つその対応策をお尋ねしたい、こういうふうに思います。  まず最初に、早期発見、早期治療という問題です。全国で年間五千五百人程度がふえているということを聞くのですが、いわゆる腎不全患者の増加、私は宮城県でありますが、百人から百二十人くらいは増加しているということも聞いております。いま腎不全患者というのは全国で約四万人ほどいるということでありまして、私の宮城県内でも約九百人近くがいるということでございます。こういう方々、これは患者が増加をしているわけでありますが、やはりこれを何とかしなくてはならぬということで、早期発見体制というものをしっかりする必要があるのじゃないかなというふうに思うわけでありますが、この点につきまして厚生省はどのような対応をなさっているものか、まずその点ひとつお尋ねをいたしたい、こういうふうに思います。
  291. 三浦大助

    ○三浦政府委員 腎臓疾患につきましては、先生御指摘のとおり早期発見というのが一番大事なわけでございまして、早く見つけて早く治療に結びつけていく、これが最大の課題であるわけでございます。  この早期発見の体制につきましては、現在でも乳幼児の健康診査とか、あるいは婦人の健康づくり対策、またこの二月から施行になりました老人保健法の健康診査、こういうものがございまして、そのほかにまだ文部省関係で学校健診、それから労働省関係で職場健診がございます。したがいまして、大体全国民が健診が受けられるような体制にはなっておるわけでございますが、いかんせん受診率、検尿ですが、検尿率が非常に低いということがございますので、何よりも私ども、この受診率の向上、こういうことを目指して、早く見つける体制をとっていきたいと思っております。
  292. 武田一夫

    武田分科員 このデータによりますと、やはり主婦、家事手伝いあるいは自営業という方々、これは健康診断を受ける機会が非常に少ないというか、非常に極端ですね。こういうところがかなり後で影響しているということも事実のようです。ですから、これは一つには保健所の役割りというものをもっと強化するというか、ただ単なる健診ということじゃなくて、意識的にそういうことがあるんだぞということを啓蒙しながらやらぬと、ただ回っていればいいんだということではないと思いますね。ですから、こういう一つ保健所の役割りを一層強化しながら、特にこれは検尿ですかの点についてのもっとしっかりとした受けとめ方をさせていくような指導も必要ではないか、こういうふうに思いますので、この点ひとつ一層の努力をしてほしい。受けない方が悪いんだと言えばそれまでですけれども、そう言っても、こんなにたくさん出て、一たん病気になりますと、私も現場へ行ってみましたが、非常に悲惨です。ですから、その点の早期発見、早期治療という問題の取り組みを一層私は強力にお願いしたい、こう思うわけであります。  そこで、不幸にして腎不全患者として治療なさるというときに、いま腎移植の道しかないわけですな。これは何か、特にこういう方について、まあ透析はやりますよ、ですが、やっぱり腎移植の方にかなり希望があるわけでしょう。ところが輸入腎というのが非常に高い。聞くところによると七千ドルというのですから、百五十万から二百万くらいする。それと、国内の腎臓提供者が非常に少ないという悩みがある。こういうものに対する対応をもっとしっかりしてほしい、こう思うのですが、どういうふうな対応をしているわけでしょうか。
  293. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 人工腎臓は大変普及してまいりましたが、結局最後には腎移植というものが決めてになるわけでございます。しかし、その場合に、提供する腎臓の問題というのが大きい壁になって立ちはだかっております。これにつきましては、特に死体腎の提供ということが非常に大事な問題になるわけでございまして、厚生省といたしましては、じん臓移植普及会に費用も出しましてPRをお願いしているわけでございますが、政府自身も、政府広報あるいはテレビ等でこの必要性の普及啓蒙に努力しております。また、地方自治体におきましてもこの点については最近いろいろと努力が行われております。また、各新聞等におきましても腎提供の重大さということを御認識いただきまして、最近ではずいぶん新聞等でも取り上げていただいているわけでございまして、登録者数は、たとえば五十二年には三千三百四名にすぎなかったのが現在三万五千七百七十三名。しかし、もちろんこれはアメリカ等に比べますと非常に少ない数字でございまして、これにつきましては、もっともっと飛躍的に提供をふやさなければならないというふうに考えます。
  294. 武田一夫

    武田分科員 いまテレビもあるわけですし、もっと多角的な対応さえすれば、もっと多くの方々に注目されるんじゃないかというわけで、アイバンクの例なんかもありますし、もっと幅広い対応をしながら、そういう提供者がふえてくるような環境づくりを一層進めてほしい、こういうふうに思います。  そこで、次にちょっとお聞きしたいのですが、これは大臣に確認したいのですが、昨年の暮れころ、大臣のところに、人工腎臓で治療を受けている患者から、現金償還制が採用されると困るんだから、そんなのやめてくれ、そういうようなはがきなどがいっておりますか。そういう記憶はございますか。
  295. 林義郎

    林国務大臣 武田議員の御質問にお答え申し上げますが、私も大体厚生省の関係の陳情は細かく目を通しているつもりですが、ちょっとそういったのは私は気がついておりません。むずかしい話だったからあるいは気がつかなかったのかもしれませんが、むずかしいというのは、事柄自体がむずかしい話だったから気がつかなかったのかもしれませんが、私はもらっていないように記憶しております。
  296. 武田一夫

    武田分科員 実はことしのお正月ですか、患者さん方とお会いしたときに、大蔵省がどうも透析ごとに現金を払うようなそういう方向を考えている。要するに、そうしますと毎回透析ごとに三、四万かかるわけです。支払うとなると、現金を持っていないと、しかもこれは月に百万やそのくらいないととてもできない。償還ですから返ってくるにしても、三カ月くらいかかるとなるとこれはえらいことだ。そういう深刻な悩みを話し合ったものですから、そういうことが現実にあったものかということでちょっとお尋ねしたのですが、その点いかがですか。
  297. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療費の償還払い制度につきましては、臨調の答申の中に若干触れておることは事実であります。ただ、それを採用するかどうかということについて、まだ政府としての見解が固まったわけではございません。  償還払い制度につきましては、いま先生が指摘されましたような問題も数々あるわけでございまして、直ちにそれに踏み切るということにつきましては、相当な問題があることは事実であります。  ただ、私どもとしましては、医療費の適正化を図る見地から、現在厚生省の中に医療適正化総合対策推進本部というものを設けまして、あらゆる角度から医療費の問題を検討いたしております。その一環としまして、患者負担というものも一つの検討事項になっていることは事実でございまして、私どもとしては、やはり医療の実態を十分踏まえながら、本当に必要な医療というものはどうしてもこれは確保しなければいかぬわけでありますから、そういうことを総合的に考えながら今後検討していくつもりでございます。
  298. 武田一夫

    武田分科員 そういう心配をかけるようなことが出てくるというのはかなり問題ですな。それでなくてもこういう方々は非常に神経質ですから、非常に申しわけないですが。そういうときに出てくると、現場の方では大変だということになりますので、そういうことをしかと注意を払いながら、話が出てくるような方向というのが今後の過程の中でもしあった場合は、よろしくお願いしたいと思うのです。  ところで、こういう患者さんは非常に働き盛りの人が多いというのもまた特色です。三十代、四十代くらいの方が集まってきます。非常に多いですよ。ですから、そういう働き盛りの方が、この病気を治療するためには仕事をやめてしまわなければならないわけで、その治療にも時間がかかります。夜間透析なんかしている方はまだいいのですが、なかなか地域によってはそれもできない。それで三時間、四時間という時間がかかるとなると、会社の勤めも非常につらいわけであります。  こういうことを考えると、雇用の問題というのは、この方々にとっては生活とのかかわりの中で非常に大事な点だというふうに思うわけでありますが、この雇用の問題等を含めたこの方々への生活を守るための対応策、これはしっかり今後していかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思うのですが、この点についてはどのように対応しているのでしょうか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  299. 藤原正志

    ○藤原説明員 御説明を申し上げます。  先生御指摘のとおりでございまして、私ども腎臓機能障害者の生活の安定といいますのは、もちろんこれは独立自活をする、基本的には職業につくということにつながるわけでございまして、そういう意味では常日ごろそれなりの対策を講じているわけでございますけれども、具体的に申し上げますと、腎臓機能障害者であって身体障害者雇用促進法上のいわゆる身体障害者に該当する人たちにつきましては、これまでも他の身体障害者と同じように、身体障害者雇用促進法に基づく雇用率の達成指導の強化や、きめ細かな職業指導とか、職業紹介の実施をしてきたわけでございます。同時に、各種助成制度の活用等があるわけでございます。  一例を挙げますと、これらの腎患者の方の大部分はいわゆる一級でございまして、重度の方たちでございますけれども、これらの人を雇い入れる会社に対しましては、雇用を促進するという意味で、特定求職者雇用開発助成金という制度がございまして、最高一年六カ月、賃金の二分の一を助成をするというような制度がございますし、またこれらの方が企業に入った場合、先ほど先生御指摘のとおり、時間の問題等いろいろ問題がございます。それから作業の内容等わりあい制約をされる場合があるわけでございまして、その意味の職域開発の問題、どういう職域が適当かというような研究の問題がいろいろあるわけでございまして、これらに対しましても、これらの方を雇います企業に対しまして月三万円、三年間助成をするというような制度を設けているわけでございます。  なお、特に人工透析を受けます腎臓機能障害者につきましては通常身体障害者福祉法の等級上の一級とされておりますために、これらの人たちにつきましては、身障法上はいわゆる雇用率の上でダブルカウント、一人を二人にするというような手厚い措置を講じているところでございます。また、会社に雇用される心身障害者が、持てる能力を十分に発揮いたしまして職業生活を充実したものにしていくためのいろいろな措置を講じているわけでございますけれども、身体障害者雇用促進法におきましては、五人以上の心身障害者を雇用する事業主に対しまして身体障害者職業生活相談員の選任を義務づけておりまして、心身障害者の職業生活全般についての相談指導を行わせるようにいたしております。特に腎臓機能障害者につきましては、先生御指摘のように健康管理に十分配慮する必要がございますので、事業主の方がこのために医師を委嘱する場合には、その費用の一部を、身体障害者雇用納付金制度に基づきます助成制度によりまして助成しているところでございます。  なお、心身障害者は、雇用されましても、職場適応上の問題等から離職する事例等が起こりがちであるわけでございますけれども、公共職業安定所におきましては、重度の身体障害者等を対象といたしまして就職後の定着指導を積極的に行っておりまして、特に腎臓機能障害者につきましては、診療や治療に必要な時間について配慮をしてもらうよう、主治医とも十分連絡をとりながら事業主の指導を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  300. 武田一夫

    武田分科員 いろいろと配慮しているようですね。ただ、現場に行きますと、たとえば職業安定所に行きますと、治ったと思って行くと大体みんな簡単に断るというのですな。これはまずいと思うのです。やはりいろいろといまあるわけですから、もっとこういう方々が、自分は健康になった、透析をしながらでも働けるということで職を求めて行ったときには、安定所は、そんな冷たくしないで、もしもそういう病気をやったというだけで相談をぽんと無視するような傾向があったとすれば、私は重大な問題だと思うのです。だから、これはよく調査をしながら、そういうケースについては——私は地元の一つの例を通して申し上げているわけですけれども、そういうことで悩んでいるわけですね。行っても、こういう病気にかかるともうだめだ、使い手がない、これでおしまいらしいですな。ですから、これはほかの地域でも四万人もいるわけですから、そのうちの何%が働くかわからぬとしても、三割や五割ぐらいの職を求めて働きたいという方々、これは一生懸命探している方がいると思うのですが、もっと親切に、しかもきめ細かに相談に乗ってあげて、できれば企業なんかとの連携のパイプもちゃんととってあげるとか、このくらいのサービスもちゃんとしてあげるべきじゃないか、私はそう思うのです。ここ数年ずっと黙って見てきましたけれども、どうも安定所というのはそういう点で不親切である。忙しいのでしょうね。忙しいのでしょうけれども、私はそういう立場の方々が行ったときの対応というのが非常にまずい、こういうぐあいに思います。ですから、その点ひとつ、いまいろいろとかなり御苦労をなさってこういう方々の対応もしているわけですから、一人でも多くの方が職につけまして社会復帰ができて、安心して働けるような環境というものをもっとつくれる条件をひとつ進めてほしい、これはお願いしておきますよ。  最後に大臣にお尋ねしたいのですが、これはそのほかにもっとたくさんあるのです。夜間透析の問題もあります。遠隔地のため、自分たちの病院があるのだけれどもそこはそういうのをしないために、二時間も三時間もかかって来るとか、旅費はかかる、またバスで来れば百二、三十円で済むのが、バスがなくなったために車で二千円もかかるとか、いろいろなものがたくさんございまして、しかももう一つ問題なのは、どうも国立や県立、市立というのが余り好んで透析を引き受けないというか、そういう嫌いがあるのですね。現実に仙台でいま社会保険病院ですか一カ所、そこは六十人ぐらいが一回にやれるぐらいのかなりの規模で、お医者さんも六人の若い優秀な方が一生懸命やっているのです。そういう人に会って聞いても、もっと国や市や県が、市立病院や県立病院やあるいは国立病院があるわけですが、そういうところで受け取ってめんどうを見てほしい、こういう声が現実にはあるのです。  ですから、考えてみますと、要するに最初に申し上げた早期発見からずっと一貫して、治療研究の推進とかあるいは人工腎臓の開発とか移植の推進とか社会復帰等々の一連の総合対策といいますか、これをもっと真剣に取り組んでいくときではないか。これはこれからますますふえるのではないかという方もいますので、年間五千人が三千人になったとしてもこれから大変な数になりますね。そう考えますと、そういう方々が安心して生活ができるような、あるいは治療を受けられるような対応を、厚生省としてもしっかりと取り組んでほしいと思うし、また県や市町村等々のそういう機関に、もしそういうようなことで非常に手薄な対応をしているところがあれば、それなりに指導して対応をしっかりとするようなてこ入れをしてほしいということをひとつお願いしたいのですが、大臣から一言、今後の対応についての御決意などを聞かしてほしい、こういうふうに思います。
  301. 林義郎

    林国務大臣 武田議員のお話を聞いておりまして、腎の病気というのはかつては、あいつは腎だということになったら大体だめだ、こういうふうな話でありましたが、いまこういうふうに治るような形になりまして、透析なり人工腎臓なりまたは腎の移植というようなかっこうでやってきておりますし、非常に医学の進歩したところだろうと私は思うのです。そうした進歩した技術になりましたから相当高度なものも必要とする。そうすると全体としての医療体制というか、医療のシステムというものもつくっていく必要があるだろう。先生御指摘のような諸問題、私は正直言って大体あるのだろうと思います。ですから、そういった点につきましては積極的にそれぞれのところを指導していくということが望ましいのではないかと思いますが、ただ、もうすでにこれは一応人工透析その他で確立された方法もあるわけでありますから、それをどううまくやっていくかということでありますし、特にここでどうしろとかということではなくて、それぞれの地域の社会の中において、医師会なり病院なりその他のところでお互いに御協力をしていただいてやっていくのが本来の筋でもあろうか、こういうふうに考えているものでございまして、もしもいろいろな点があれば、私の方も適切なアドバイスはするつもりでございます。
  302. 武田一夫

    武田分科員 時間がちょっとあるので一言だけ。  病院が嫌うのはいろいろ理由があるわけです、ここでは言いませんが。そういうのを一つ一つ解決してやらぬと、お医者さんよりもお医者さん以外の問題の方がどうも多いようですので、ですからそういう条件づくりがあればもっと透析の効果が上がり、非常にいい状況がつくれるかな、こういうふうに私は感じておりますので、できるならば現場をごらんになって、いろいろな現場の声を聞きながらひとつ対応を十分してほしい、こういうふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。質問を終わります。
  303. 上村千一郎

    上村主査 これにて武田一夫君の質疑は終了いたしました。  次に、部谷孝之君。
  304. 部谷孝之

    部谷分科員 私は、医業類似行為の一環であります療術行為につきまして、若干の質問をしたいと思います。  まず療術の沿革についてでありますが、医師以外の行う治療行為、これを一般に民間療法と呼んでいるようでありますが、この民間療法の範疇の中で療術行為というのは何を指すのか、厚生省の見解をまずお尋ねしたいと思います。
  305. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 昭和二十二年に制定になりましたあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法は、医行為ではありませんが、人の健康に何らかの影響を与える施術を医業類似行為というふうにいたしておりまして、法第十二条におきまして、何人もあん摩、はり、きゅう、柔道整復以外の医業類似行為を業としてはならない、こういうふうに定めているわけでございます。しかしながら、その際に、従前から都道府県知事に届け出をされておりました医業類似行為を行っていた者につきましては、従来の既得権を尊重するということといたしまして、そのまま業を続けることが認められたわけでございます。また、昭和三十九年の法改正によりまして、二十二年当時にやむを得ない事情によって届け出をできなかった者につきまして、都道府県知事に対して届け出をなすことによりまして、業として医業類似行為をなすことを認めたものでございます。  療術と申しますのは、これらの方々の行っておられる医業類似行為を療術という、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  306. 部谷孝之

    部谷分科員 医業類似行為の中に、あんま、はり、きゅう等いわゆる昭和二十二年に法制定された範疇のものと療術行為というものを合わせたものを医業類似行為という、こういうふうな理解を私はしておるのですが、いかがですか。
  307. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生のおっしゃいますのは、あんま、はり、きゅうと療術を合わせたものが医業類似行為であるのかという御質問かと思いますが、医業類似行為というものにつきましての定義というのははっきりいたしておりませんので、そのほかに、いわゆる最高裁の判決によりますところの無害のものもそれに含まれるのかどうかという点につきましては、必ずしも定義がはっきりしているというふうには、わからないと申しましょうかはっきり定義がされておらないわけでございます。しかし、先生のおっしゃるようにそういうふうに定義すればできるわけでございます。また、あるいは無害のものも含めるというふうにも考えられるわけでございます。     〔主査退席、白川主査代理着席〕
  308. 部谷孝之

    部谷分科員 そこで、療術というのは物理療法でありまして、人体に有形力を与えることを原則としたもので、いやしくも加持祈祷に類するものは含まない、こういうふうに私は理解をしておりますけれども、その点はいかがですか。
  309. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、既得権を尊重してそのまま業を続けることを認めたというのでありますけれども、当然それは、そういう限りにおきましてそういった淫祠邪教のたぐいとは違うというふうに考えられるわけでございます。
  310. 部谷孝之

    部谷分科員 そこで、戦後の占領下におきまして、民間療法に係る規則はすべて廃止されたわけであります。そして、昭和二十二年にあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法が制定されまして、この法律によりまして療術は禁止される、こういうことになったわけでありますが、その禁止された理由というものは一体那辺にあるのか。  それから、先ほどのお話を繰り返すようでありますけれども、占領下において廃止されたすべての医業の類似行為というのは、明治四十四年に制定されました按摩術営業取締規則、その中へ大正九年に柔道整復が入ってくるわけでありますが、さらに鍼術、灸術営業取締規則、これが明治四十四年、そして療術行為取締規則が昭和五年に制定されるわけでありますが、私は、先ほど医業類似行為というのはこれらを包含したものという形で言ったわけであります。ですから、その療術を含めたそれらの医業類似行為のすべてが廃止された、こういうふうに解釈すべきであろうと思うわけでありまして、そういうところを基礎といたしまして私は質問が展開されていくわけでありますから、そのことをひとつもう一度確認をしながら、禁止の理由というものをひとつ明確に御答弁を願いたいと思います。
  311. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 私どもも禁止の理由について必ずしも歴史的に定かにしているわけではございませんが、そもそも戦後医師法ができまして、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ云々と、つまり人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為というものはこれは医行為である、したがって、これは医師法によって医師のみが行う行為である、この医行為に類似しておりまして、人体に対して何らかの形で影響を与える行為が医業類似行為ではないか、これらについては医師以外の者に認めることは危険性もあることから一般的には禁止すべきところであるというふうにされたのではなかったであろうか。その際、あんま、はり、きゅう、柔道整復につきましては、伝統的な療法として古くから行われたところのものであり、効果、安全性につきましても一定の評価が行われたということから、身分法を定めて資格を有する者ができることとされたというふうに理解するわけであります。その際、あんま、はり、きゅう、柔道整復以外のいわゆる医業類似行為については、一般的には禁止し、しかし、既得権者の救済についてのみ行われたというふうに理解しているわけでございます。
  312. 部谷孝之

    部谷分科員 規則等がすべて廃止されて、二十二年に新しい法律が制定され、三十年までそのような経過的な措置がとられ、さらに三回にわたって延長される、そういう経過の中で、いまおっしゃったような理由だけではなくて、大変複雑ないろいろな社会的な背景があってそうなったというふうに私たちは理解しておるわけであります。いまここでそれを繰り返して議論しても、まさにせんなきことでありますのでそれを繰り返すことはいたしませんけれども、おっしゃったようにその後、療術業者の既得権者、この禁止期限が三十三年、三十六年、三十九年と三度にわたって延長され、そして三十九年に至りまして禁止期限が撤廃されて、既得権者と言われる人たちは終生営業ができることになったわけでありまして、そのことはおっしゃったとおりだと思うわけです。  一方、療術の新規開業というものはそういう形で禁止されることになったわけでありますけれども、しかし現実には既得権者以外の業者がかなりいまふえておる、こういうふうに思うわけなんですが、一体これはどういうことなんでしょうか。
  313. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これも説明がなかなかむずかしいわけでございますが、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の趣旨にありますところのいわゆる療術につきましては、一般的に私どもは経過措置で認めているものがいままでも引き続いているというふうに考えておりますが、それ以外に、いま先生おっしゃるような例はそう多くは実施されていないのではないかというふうに理解しておるわけでございます。  しかしながら、現実には昭和三十五年に最高裁判所の判決がございまして、人の健康に害を及ぼすおそれのない医業類似行為につきましては、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律による禁止の対象としない、こういう解釈が示されたことから、無害な施術ということにつきましては先生のおっしゃる新規開業として行われているというふうに理解しているわけでございます。
  314. 部谷孝之

    部谷分科員 ここで問題の三十五年一月二十七日の最高裁の判決が出てくるわけでありますが、具体的にはHS式無熱高周波療法につきましての最高裁の判決が三十五年一月二十七日にありまして、その判決の中の焦点の一つといたしまして、有害のおそれがなければその療術行為は禁止、処罰の対象にならない、こういう判断をされておるわけであります。この判決に対して大臣はどのような御見解をお持ちか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  315. 林義郎

    林国務大臣 部谷先生は、この辺大変お詳しいのであります。この前もわざわざ大臣室の方に御陳情にお越しになりましたので、私がこれについて申し上げるのは専門家に生徒が答弁するような話でございまして、大変に恐縮に存ずるところでございますが、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十二条において、医業類似行為は禁止されているところであるが、昭和三十五年の最高裁判決により、憲法第二十二条に保障された職業選択の自由にかんがみ、単に医業類似行為をなしたということで処罰することなく、施術が保健衛生上の観点から人の健康に害を及ぼすおそれがある場合に限り規制できる、との判断が示されたものであります。  厚生省といたしましても、判決の線に沿って法の運用を行ってきたところであるが、個々の医業類似行為が有害か否かについての判断が求められることとされているので、実際の運用はむずかしさを伴いながら行われているというのが私は実態であろうと思います。  先生お話しのようにいわく因縁、団体とか、いろいろむずかしいことがあるようでございまして、私もどういうふうな形でやったらいいか、もう少しよく考えてみなければならない問題ではないか、こう考えているところであります。
  316. 部谷孝之

    部谷分科員 そこで、有害のおそれがなければ禁止あるいは処罰の対象にしない、こういうことでありますが、有害とか有害のおそれとかいうものは一体どういうことなのか、御説明を願いたいと思います。
  317. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 有害であるまたは有害のおそれがあるというのは、人体に対しまして何らかの形での行為がその人の健康の状態に一時的あるいは永続的に異常を来すことを言うものであると考えられますが、最高裁判所の判決では、人体に対する危害、保健衛生上の悪影響のいずれをも含めているように解釈されるわけであります。  ところで、特定の医業類似行為が人の健康に害を及ぼすおそれがあるかどうかということを、一般的な基準を示すとか判断をするとかいうことはなかなかむずかしいことでございまして、施術を受ける患者さん側の状況、あるいは施術する側からの方法や判断等によりまして個別に違ってくるというふうに考えるわけでございます。それらを総合的に見まして個別に判断する以外にはないのではないか、一般的にこれからここまでということは非常にむずかしいのではないか、人体の生理学等を考えましてもそういうふうに考えられるわけでございます。
  318. 部谷孝之

    部谷分科員 それらの治療効果につきまして、有害で有効であるということが一つ考えられますし、それから無害で有効であるということもありましょうし、また無害で無効あるいは有害で無効、そんなケースがいろいろあると思うのですが、いまそれらを一概に定義することはむずかしいというお話でありまして、やはりそれらの現象によって判断せざるを得ない、そういうお答えであります。  それでは有害もしくは有害のおそれがない場合、これは厚生省としては何らの行政的な措置あるいは指導、そういうものは行わないということになるわけですね。放任しておく、こういうことになると思うのですが、いかがですか。
  319. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 最高裁の判決は、医業類似行為に関しまして、保健衛生上の総合的な観点から人の健康に害を及ぼすおそれがないものについては規制することを差しとめたもの、こういうふうに考えられるわけでございまして、こういった考え方からいたしますれば、規制を行っていくことはむずかしいというふうに考えているわけでございます。
  320. 部谷孝之

    部谷分科員 有害もしくは有害のおそれのない場合には規制がむずかしい、こういうお話であります。  ところで、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の第三条には、いまから申します各号の一に該当するものについては免許を与えないことがある、こういうふうに言っております。その一番目には「精神病者又は麻薬、大麻若しくはあへんの中毒者」、二番目には「伝染性の疾病にかかっている者」、三番目に「第一条に規定する業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」第一条というのはあんま、はり、きゅう、マッサージ等々の免許業務ですね。四番目は「素行が著しく不良である者」こういう人々についてはあんま、はり、きゅう等については欠格事由が厳格に定めてあるわけですね。  同じように医業類似行為として取り扱われております療術行為、この方では、そのような欠格事項が定められていない、いわば野放しのような形になるわけでありますが、有害のおそれがなければ禁止、処罰の対象にならないということで放任しておくことは、そのことと矛盾しないだろうか、こういうきわめて素朴な疑問が生じてくるわけであります。療術の営業は野放しにしておるけれども、その療術の営業者、開業者の中に、あんま、はり、きゅう等法に言うところの欠格事由を捕えた人がいないと断定するわけにいかぬわけですね。その辺は、そういう保証がないわけでありますけれども、どのようにお考えですか。
  321. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 法律制定時に経過措置によって営業を続けることが認められたいわゆる療術の施術者につきましては、あんま、はり、きゅう師と同様に欠格事由が法律上法十二条の三で決められているわけでございます。  ただ、先ほどから問題になっております法の適用外の施術者と申しましょうか、そういう方々につきましては欠格事由を設けていないということは、先ほどからの最高裁判決でもありますように害がない、こういうふうな考え方に立っているからと理解しているわけでございます。
  322. 部谷孝之

    部谷分科員 そういうことになりますと、逆説的に言いますと、いまのあんま、はり、きゅうは害があるということになるのじゃないですか。それはおかしいと思うのですよ。ですから、あんま、はり、きゅう等でそういう欠格事由をきっちり決めておるのに、その法律適用外であるとはいえ、類似した療術行為に対しても、あんま、はり、きゅう等と同じようなものが決められなければ、私が先ほど言ったまさに素朴な疑問が出てくるわけです。これをあなたの答弁は解決してくれていないわけですよ。  もう一つ、常識的に考えましても、施術する場所を清潔に保たなければならないとか消毒をやってもらうとか、そういうこともあわせて必要になってくるわけなのですが、そういうことを規制していくものが何もないわけです。こういう状態を行政として放置していいのかどうか、その点いかがお考えですか。
  323. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 もともと昭和二十二年に法律が決められました当時には、そういった問題について網をかけたということであったと思うわけでございますけれども、現実の問題といたしましては、そういった最高裁判決に見られますような弊害のないものがある、こういうふうなことでございまして、これにつきまして格段の身分、資格を定める必要がない、こういうふうなことになっているわけでございまして、確かに先生のお説のようなこともあるかと思いますが、私どもとしては、そういう状況である限りにおきまして、そういった欠格事由というふうなものまで定めることは必要ないと考えているわけでございます。
  324. 部谷孝之

    部谷分科員 そういう形で放置することは、社会的にきわめて大きな影響を起こすと私は思います。そこで、療術行為というものは、先ほどるる申し上げておるような理由で立法化する必要があると考えます。野放しを許さない方がいいと思うわけであります。  これは大臣にお尋ねなのですけれども、その立法化をしていかれるお考えがあるのかどうか。昭和四十七年の当該法律の改正におきましては、厚生大臣は、昭和四十九年末までにあんま等中央審議会の答申をしんしゃくして療術行為を措置することと規定されたわけですが、昭和四十九年に至りましても答申が出ません。そこで、結局昭和五十年二月ごろに厚生省の中に療術行為についての研究班というものが設けられまして、そして鋭意調査研究が行われたと思うのでありますけれども、その結果はどうなっておるのか、立法化の見通しはどうなっておるのか、その点、お尋ねしたいと思うのです。
  325. 林義郎

    林国務大臣 部谷議員の御質問にお答え申し上げます。  立法化するかというお話でございますが、昭和二十二年にあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の制定時に療術について経過規定が認められて以来、現在まで四次にわたって経過規定の手直しが行われ、その都度、新たな部分の制定について立法化の議論が行われてきたにもかかわらず大方の合意が得られなかった、今日に至っているというお話でありまして、四十九年のいまの答申その他につきましては、後ほど事務当局からお話し申し上げさせていただきますが、こうした沿革にかんがみまして、現時点で実態がそう変わっているとも考えられない話でもありますし、暫定的な措置を何か講ずるということを考えても、基本方針がこうぐらぐらしていると、かえって混乱を招くのではないだろうかという感じもするわけでございます。この辺はいま局長から、先ほどお話のございました審議会の経過その他も御説明いたしまして、御理解を賜りたいと思います。
  326. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 昭和五十年に厚生省で調査班を設けたその経過はどうかということでございますが、お尋ねの研究班につきましては、いわゆる療術問題の検討に際しまして欠くべからざる各施術の医学上の評価、たとえば有効性、危険性等につきまして医学的に検討するために昭和五十年に設けられたものでございます。  研究班の作業は、調査方法の検討、実態調査、療術行為のパターン化、有効性、適応と禁忌、二次的被害等を総合的に進めておりますが、先ほども申し上げましたように、療術行為というものが非常に複雑多岐にわたっておりますことから、なお今後とも一定の検討期間が必要であると考えているような状況でございます。
  327. 部谷孝之

    部谷分科員 それでは、時間が参りましたので、最後に大臣にお尋ねしたいと思うのです。  療術行為というのは、先ほどから述べておりますように、医業類似行為の一環である。したがって、いやしくも人の生命、身体、すなわち健康にかかわる業務でありますので、有害のおそれがなければ放任しておくということは、行政的には適切を欠く、こういうふうに私は考えておるわけであります。  このために、全国療術師協会という業者団体がありますが、その協会では自主的に、会員である業者の資質を向上させ、基礎医学、療術行為の理論、実技、関係法規などを内容とする再教育あるいは講習、こういうものを行っておるようであります。厚生省も、これらの講習会に講師を派遣するなど、指導をしておられるわけでありますが、私は、これはやはり現実的な措置として評価さるべきであろう、こういうふうに思うわけであります。療術行為というものは、すでに国民生活に定着をいたしまして、そうして国民の健康福祉に密着をしたものでありますから、技術の向上、人格の陶冶、これを目指すことは歓迎さるべきことであります。  ところが、先ほどの最高裁の判決をよりどころといたしまして、実は一夜づくりの業者が続生してきておる。そうして混乱を起こしている。こういう状態がいま起こっておることも事実であります。こうした現実面を踏まえまして、今後の方針をどのようにお考えになっておるのか。  また先ほどから立法問題についていろいろ御答弁がありましたが、もし、この立法措置を早急に実現することが困難であるとするならば、暫定的に、法律上は禁止となっておるけれども、一方最高裁では自由開業が認められておるという、そういう現実の状態の中で、たとえば都道府県の条例の制定とかあるいは都道府県に対する行政指導、そういうものによって現実的な適正な措置、こういうものが行われなければならない、こういうふうに思うわけでございまして、ひとつその御検討をいただきたい、こういうふうに思うのですが、御見解はいかがでしょうか。
  328. 林義郎

    林国務大臣 部谷議員はいろいろなことをよく御承知の上でのお話だろうと思いますが、実は、私は個人的に申しまして、よくマッサージをしてもらったり、はりを打ったり、きゅうをしてもらったりしているのです。子供が肩をもんでやろうかとか、というようなこともあるわけでございます。私は一般的にこれが日本の中で相当に普及しているし、うまくやれるならば、決してそう健康に害があるものではないと思っております。多くの国会議員の先生方もかかっておられる方がおられると思うのです。  ただ、先ほど来お話がありましたように、立法化するのはなかなかむずかしいというのも、これは現実の問題でもございますし、私ら個人で判断するときには、よくなったぞと、こういうことになりますが、医療的な判断をすれば、果たして医学的にそれが確定されたものかどうかということになると、一つも二つも問題はあるだろうと思います。そういったこともありますから、率直に私は申し上げたわけでありますが、いまの部谷先生の御指摘もございますから、さらにこの問題は検討してまいりたい。私は、率直にフランクにこの問題は検討してみたらどうかな、こう思っておるところでございます。
  329. 部谷孝之

    部谷分科員 いささか議論のすれ違いもあるのですけれども、最終的に検討したいという大臣の御答弁でありますので、ひとつ慎重なる御措置を期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  330. 白川勝彦

    白川主査代理 これにて不谷孝之君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  331. 沢田広

    沢田分科員 大臣も大変遅くまで御苦労さまであります。私は、二つ、三つの問題でありますが、特に精神衛生の問題でお伺いをしていきたいと思っております。  なかなかこれも言葉では言われない分野もあるわけでありますが、今日の精神衛生の問題というものは、教育の分野ももちろん含まれているわけでありますが、私のずっと眺めてきた経緯から考えますと、近時、薬害なども含めまして、精神薄弱、肢体不自由あるいは脳性麻痺あるいは虚弱体質、言語障害、自閉症、そういうような症状を生ずる者がここずっと大分ふえてきているんじゃないかというふうに思われます。これは、必ずしもなかなかぴしっと押さえられない分野があるわけなんでありますが、厚生省でつかんでいるこの傾向をまずお聞かせいただきたいと思います。
  332. 正木馨

    ○正木政府委員 御質問のございました、まず精神薄弱でございますが、これは大変古いのでございますが、昭和四十六年に実態調査をいたしまして、総数で三十一万二千六百人、うち十八歳未満が十四万一千七百人というような数字が出ております。いろいろな事情がございまして、なかなか実数がつかみかねる面もございます。  それから、自閉症児につきましては、この数もなかなか的確に把握することができないわけでございますが、文献によりますと、児童一万人に対して二人から二・四人程度というようなことが言われております。これによりますと、約七千人ぐらいが自閉症児といわれる方ではないかというふうに推定をされております。
  333. 沢田広

    沢田分科員 いまのように、きわめてあいまいな捕捉の状態なんであります。  二つあるわけでありますが、まず、調査をするにもこれはきわめて困難であろうということが一つあります。それから、必ずしもその者が特殊学級に全部上がってくるとは限らぬということがある。しかし、このまま放置していくことが果たしていいのかというと、個人のプライバシーの侵害の限界との調和の中で、可能な範囲でこれを捕捉、捕捉というと言葉は悪いのでありますが、まず的確にとらえていく必要性があると思うわけでありまして、それも四十六年じゃ、ちょっと古過ぎる資料なんであります。  私の方も調べても、どうしても古いですね。これは全体で百二十四万という数字が出ているのですが、大体これは世界の統計では大体五%、こう言っているのですよね、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━とにかく五%いるというくらいに言われているわけであります。だから、そういう意味において、どこまでがこの精神障害者と言えるのかということが、きわめてむずかしい点は理解をするのです。ただ、いまとらえた数字では、ちょっと私も、一つづついってみましょうか。  たとえば精神薄弱者の場合にIQを大体どの程度から押さえて、いま厚生省としてはつかまえているのですか。
  334. 正木馨

    ○正木政府委員 精神薄弱の場合には、先生御案内のように、重度、中度、軽度と三段階に分かれるわけでございますが、IQで申しますと、七五程度から精神薄弱としてとらえておるわけでございます。
  335. 沢田広

    沢田分科員 そんな数字じゃないと思いますが、何か方式が違うのかもわかりません。一九とかそれ以下がもう完全であり、大体二〇から三〇くらいというのが薄弱の限界というふうに、最高の重度になっていくだろうと思うのであります。これは、このとらえ方の数字の違い方によるんだろうと思いますが、それはいいですが、これはどの程度と押さえているわけでありますか。
  336. 正木馨

    ○正木政府委員 先生おっしゃいました二〇程度というのは重度になるわけでございます。先ほどの数字で申し上げました在宅精神薄弱者総数、昭和四十六年の実態調査でございますが、総数三十一万二千六百人のうち、IQ七五以下、軽度が十三万二百人、それから中度が九万八千三百人、重度、最重度が八万二千三百人、程度不明が千八百人、こんな数字でございます。
  337. 沢田広

    沢田分科員 あとやっていると時間がなくなりますが、たとえば自閉症、虚弱児、虚弱児はいろいろわかるでしょうが、言語障害、こういうものの原因については、学説はいろいろありますが、またいろいろと言われている問題もあるわけでありますが、完全なる遺伝あるいは妊娠してからの薬物の被害あるいは出産時における障害等々あると思うのでありますが、どういうふうに原因別にとらえておられますか。パーセンテージで結構でありますが、原因別に一応厚生省等で判断しているものは、どういう理由とどういう理由が主にあるものか、おわかりならば言っていただきたい。
  338. 正木馨

    ○正木政府委員 精神薄弱の場合で申しますと、発生原因別に見ますと、大体六四・二%が先天的な原因、後天的な原因によりますのが三五・八%、たとえば日本脳炎であるとか脳腫瘍等々後天的な疾病あるいは外傷によるものが三五・八%、これは身体障害者の実態調査によって調べたものでございます。
  339. 沢田広

    沢田分科員 そうすると、六五%程度が先天的ということは、遺伝性、いま言った、さっきの要因も含めてなんだと思うのです。いわゆる出産に至るまでの間に起きる原因ということに判断していいのですかな。
  340. 正木馨

    ○正木政府委員 先天的な原因というのは、必ずしも遺伝的とは限らないわけでございますが、精神薄弱の場合には、先天的な原因によって生まれるケースがかなり多いというわけでございます。  それで、御質問にはないわけでございますが、そういう意味で、私どもといたしましては、先天性のものを早くつかむということで、たとえば先天性の代謝異常であるとかクレチン症の検査というものを徹底して、これの先天的な原因によるところの精神薄弱を少しでも少なくするようにということを考えておるわけでございます。
  341. 沢田広

    沢田分科員 これ以上やると相当長い時間を要するわけですから、かいつまんで言えば、起きてくる原因をなくすためにどういう方法をとったらいいだろうか、これがまず一つありますね。それから、生まれてきた子供それ自体について、自閉症でも言語障害でも、家庭環境ももちろんありますが、治す方法のためにどういう努力をしていったらいいか。それから三番目には、その人たちに働ける場所をどう提供していくようにできるか。その前に学習がありますが、勉強させられるか。それから勉強させられた後のいわゆる職場をどう与えられるか。この四つぐらいの課題が必然的に伴ってくるわけですね。  ですから、発生の原因をまずこれから少なくしていくために、私は相当ふえてきていると思うのですよ、私のいま携わっている経験からいきますと。自閉症にしても言語障害にしても、学校の先生をしている人の子供の中に生まれてくる場合も起こり得るというぐらいで、近時自閉症というのはとにかくふえてきている傾向にある。これは、テレビの普及だとか、対話がないとか、子供のころからテレビだけ眺めさせて、そのままほったらかしておくとか、とにかくそういうような養育期間に起こってくる障害もあるわけですね。ですから、二年くらいかかればちゃんと言葉もわかってくるし、ようやく話せるようになるということも出てきていますね。  それから、自閉症の子供もどうにもならない。勝手にふあっと出ていってしまうような者が、本当に親身になれば、二年くらいたてばどうやら人の意見も聞いてくれるぐらいの水準に達する。ですから、ここで四つの対策を、回答を求めましても、いま直ちに出ないと思いますが、要すれば、こういう子供が生まれないことが一番理想的なんでありますから、まずその原因のために対策を、PRをどうするか、こういうことを考える必要がある。このことについて今後ひとつ対応にやはり努力をしてもらいたい。  これは予防医学になりますが、いわゆる予防的にどういうふうに、母親でも父親になる人でも、ある程度の知識を持たせるような、学校教育にも関係してくるのですが、やはり知識を持ってもらう必要がある。  それからその次は、いま言ったように、子供に非常に手がかかる。ですから、普通学級に入れることを学校側としては好まない。先生がその子供に一人つきっきりになってしまう。ですから、四十人ぐらいのクラスの中で一人いるために、その子につきっ放しにならなければ、どこに行ってしまうかわからないし、危なくてしようがない。そういうために父兄も負担が大きい。父兄も、その子がいるためにどれだけ十字架を背負って歩くような人生になってしまうということになりますから、できればそういうことをなくすことが必要である。  それから、何とか学校教育との、厚生省も力を入れて、現在でも訴訟になっている例もありますし、学校に入れる入れないで議論しているところもあるわけですが、何とか教育との連絡をとって、その学級に入れてやる。親としてみると、特殊学級に入れられることをひどくこだわるんですね。やはり刺激がなければ成長がないという論理がありますから、同じ同士の仲間に入ったのではちっとも前進がない。結果的には普通の子供の中に、ばかにされようと何されようと、その中に入っていくことが成長につながる、こう判断しています。  あとは仕事の場所なんでありますが、仕事の場所は、これも非常に多岐にわたるし、その人の性格にもよるわけですが、以上四つの問題について今後検討して、次に一般質問をやれるのはいつの日かわかりませんけれども、そのときまでに十分これらについての対応をまとめていくような努力をしてもらいたいというふうに思うのですが、これは大臣からひとつ、力を入れてみてもらいたい課題なんだという意味で申し上げたいのであります。
  342. 林義郎

    林国務大臣 沢田議員の御質問にお答えを申し上げます。  精神薄弱者、自閉症児等につきましては、従来から一生懸命やらなくてはならない、こういうことでやってきておるところでありますが、昨年三月に政府が策定しました障害者対策に関する長期計画に基づき。今後とも総合的な施策を考えていかなければならないと思います。  先生御指摘のように、まずそういった子供が生まれないように事前に予防していく、障害の発生の予防、それから、生まれた場合に早期発見、早期治療ということをやっていかなければなりませんし、第二の問題としては、家庭地域社会の一員として安心して生活できるような在宅対策推進していくことも必要だろうと思います。自閉症を含む精神薄弱者の需要に応ずる施設整備及び運営充実を図っていくことがその次には考えられますし、さらには、施設オープン化対策在宅対策施設対策の有機的連携を推進していくというのが厚生省の一応やっていることでございますが、先生御指摘のように、学校へ行って特殊学級へ行けと言ったところで、お父さん、お母さんは特殊学級かというような話にもなるわけです。これはそういった作文とかなんとかといったところで、なかなかむずかしい問題は本当にあるのだろうと思います。だけれども、そういったことをこれから相当しんぼう強くやっていくことが、現実問題としては必要なことではないかと考えておるところであります。
  343. 沢田広

    沢田分科員 その言葉どおりなのがいまなんですよね。母親なり、こういう子供を持っている家族から言えば、そこが問題なんです。何か施設をつくってそこへ追い込んでしまえば、隔離してしまえばそれでいいんだという政府なり政治なりに不満があるわけなんです。だから言うならば、何とか普通の人の中で働かせたいと言うし、学校でも学ばせたいと言うし、何とか人と同じように遊ばせたいと言うわけです。ですから、いわゆる無形のサービスでありますが、いまのようなことではこの問題は解決はつかないし、また父兄の精神的な安定も得られない。何とかもう一歩進めて、人件費がかかってしまうのかどうかわかりませんけれども、もう少し何か温かさというもの、あるいは周りの人の温かさというものが必要になってきているのではないのか。それはそれなりに重度は必要ですよ、しかしできるだけ抱え込んでいってやろうという周りの環境をつくることが厚生省に与えられた一つの要件だと思うのです。だれも味方になってそれを言ってくれる人がいないわけですよ。これは母親も肩身の狭い思いをしながら世の中を生きていかなくてはならぬ。  ですから、やはり厚生省がその立場に立って学校を説得し、あるいは職場を説得し、社会を説得する、そういう役割りを担っていかないと、この子供たちは幾らかでもいい、何らかの意識を持った生活ができない。こういうところにいま問題があるわけです。だから、いまやっておられることを全然否定しようとは思いませんが、もう一歩踏み込んでもらえる体制をぜひつくってもらいたい。これは学者の先生やその他の意見を聞いて結構でありますが、いまのままでは、なおさらふえるばかりであると言わざるを得ない状況にあると私は思うのです。  それから、女性に対する教育、男性に対する教育、また、もしそういう子供が生まれた場合に、今度は大丈夫だろうというので生んでいく、今度は大丈夫だろうということで生んでいく、このことに対する教育がやはり必要になってきていると思うのですね。これは遺伝する可能性は八割以上あるわけですよ。これは統計学的なものですから、必ずしも一〇〇%ではないのですが、たとえばIQで劣と劣の夫婦でできる子供の劣の割合は八割以上が劣ですね。そういう統計的なものから見ると、そういう知識を何とはなしに一般にわかってもらえる条件をつくる。それを無理に押しつければ人権に響いてしまう。ですから、その辺はこういうことなんだということをやはりいろいろな、ここに持ってきていますが、経済企画庁から「わかりやすい日本人の暮らしと意識」こういうものが出ているのです。こういう程度のものでいいですから、そういう子供ができないような配慮というものをお互いがしていくための一つのしおりをつくってやるとかなんとか、一つの例ですが、そういうことを通じながら、それからまず学校の先生その他も、なるべくなら子供たちの中に入れてやる、そういう配慮を厚生省としても努力してもらいたいと思うのです。
  344. 正木馨

    ○正木政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、精神薄弱の問題にしても自閉症児の問題にしても、いろいろな総合的な対策が必要だと思います。  ただ、厚生省でやっております一例でございますが、先ほど申し上げました先天性代謝異常の検査あるいはクレチン症の検査は九十数%という非常な高率で、これはPRが非常に行き届いて、その結果発見率もだんだん上がってきております。それから心身障害の研究につきましても五億三千万でございますけれども、いろいろな分野にわたって非常に地道な研究をやってもらっております。それから、生まれ出た子供たちに対しましては、一歳六カ月の健診とか三歳児の健康診査、これもなかなか徹底が図られてきております。また、施設についても逐次整備されておりますが、そういった総合的な対策を進め、先生のおっしゃるようにあるいは雇用の問題、教育の問題とあわせて、これからも進めていかなければならないと思っております。
  345. 沢田広

    沢田分科員 後の先生がお忙しいようでありますからもうこれ以上……。  あと一つは、薬の問題は薬剤師がいなければ売れないという、厚生省が認めた——昔の酒屋さんがそうなんです。昔の酒屋さんというのは、原酒に水を適当にやってやるから十年の経験がなければいけない、七年の経験がなければいけないという規則をつくった。いまは瓶詰めで動かしようがないですよ。それは、香港へでも行ってダイヤモンドで裏を抜いて入れかえれば別ですけれども、それがないのです。ところが、薬屋でも酒屋でも伝統的な鎖国的な分野がある。お医者さんもそのとおり。この辺はぜひ厚生大臣からこの鎖国性をなくす。薬店については公取が出てもう自由になりました。そのかわり薬剤師はくっつかなければならぬことになっている。しかし、これも意味がないのですね。でき上がってきた錠剤をそのまま売っているのですから、言われたものを売っているわけですから、これもついてるからどうこうということはないのですね。酒屋さんも瓶詰めで売っているのですから、どうということはないのです。ですから、そういう意味において、お医者さんも少し自分の隣にできると嫌だと言っている、こういう鎖国性は何とかある程度なくしていくように御配慮をいただきたいと思います。  医療費は二十兆円に達しようという状況に、いまはまだそこまではいっておりませんが、このまま放置すれば二十兆円にもなろうという状況ですから、本当に腹をくくってそのわがままを許さないという姿勢がないと、これは本当に野放しにしておくわけにはいかない。  年金の問題へいこうと思ったのですが、その前段の医療でとまりますが、年金医療も掛金に関係するわけですから、ぜひひとつこれは節度ある対応を心からお願いをして、質問を終わりたいと思います。
  346. 白川勝彦

    白川主査代理 沢田君の質問はこれにて終了いたしました。  次に、上田哲君。     〔白川主査代理退席、主査着席〕
  347. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 小児医療、とりわけ予防面における厚生大臣の積極的な御見解をただしたいと思います。  昭和一けた早死に説というのがありまして、あのころの成長期に十分な栄養を受けてない世代が早く死ぬのじゃないか。最近これが誤りの説であるという有力な反論が出てまいりまして、胸をなでおろすわけでありますが、たまたま林厚生大臣も山下、稲垣両次官もひとしく昭和一けた第一学年で、私も実は同じ学年であります。この学年から初めて厚生大臣が大臣として登場されたわけでありますから、いわばそういう意味も含めて、二十一世紀の世代にそれこそ丈夫な健康な環境をプレゼントしなければならない、こういうふうにとりわけ思うわけであります。  私は、そういう偶然を心から慶賀しながら、大臣の前向きな小児医療特に予防面に重点を置いた積極的な御見解をまずただしておきたいと思います。
  348. 林義郎

    林国務大臣 上田議員の御質問にお答えを申し上げます。  議員と私は同じ年でございまして、いま御指摘になりました。昭和一けた世代ということでおまとめになった本もありますし、私も参加をさせていただきました。お互い食べるものもない、余り栄養のないときに育ったわけでありますが、やはりこれからの子供は健康で育ってもらわなければならない。これだけ経済的にも繁栄してきた時代でありますから、いま考えなければならないのは、世界に対して日本が何をするかということと、同時に、いまお互いの次の世代に対してわれわれが何を残していくかということだろう、こう思います。そうした意味で、いまの子供たちが健全に、心身ともに健やかに育っていただくことを本当に念願してお互いの仕事をしていかなければならない、行政といたしましても、そういったことについては前向きでこれからがんばっていく決心でございます。
  349. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 大変結構であります。ぜひひとつ、それを決意とし哲学として諸施策推進していただきたいと思うのであります。  そこで、これまで長い期間をかけて努力されてまいりました小児医療のメッカであります国立の小児センター、東京世田谷にございます国立小児病院を全国センター化しようという構想についてであります。  これには長い経過がありまして、昭和三十年代後半から、そうした予防医療特に小児医療についての関心が高まる、運動も高まる。三十九年には、その直前ポリオの根絶を目指し世界で初の、生ワクチンを全国の十歳以下の小児千三百万人に一斉投与して大流行を一気に制圧したという成果を踏まえた国際小児学会が東京で開かれる。四十年にはこの国立小児病院が設立をされる。以後、ちょうど大人のがんセンターにおけるような小児の全国センターをぜひここにつくらなければならぬということから、さまざまな努力が傾注されてまいりました。  これまでのところ、四十五年齋藤昇厚生大臣、四十七年塩見厚生大臣、四十九年齋藤邦吉厚生大臣、それぞれ非常に前向きな答弁がございまして、そうした中から五十一年十一月にこの着工がなされました。そして病院部門は四十五億三千万円、研究部門が二十七億七千万円、それぞれを投じていまやほぼ完成の域に近づいていると承っております。研修部門は残りますけれども、五十九年六月にはこれらの施設がそれぞれ完成をする。いよいよこれは待ちに待ったというべき小児医療の、特に予防面を強調し得る全国センターが発足をするという段階に来た。私も、いわばそれにかかわってきた一人として、胸躍らせる成果だろうと思っておるわけであります。このようなスケジュールでいよいよセンター発足と理解していいわけでございましょうか。
  350. 林義郎

    林国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のように、昭和五十四年度から研究部門の建物整備に着工しており、これは五十九年六月ごろ竣工する予定ということになっております。すでに病院部門は五十四年七月に完成しているが、現在厳しい財政、定員事情にあり、これらの状況を勘案しつつ、研究所の完成後できるだけ早い時期に小児医療センターとして発足できるように実現に努力してまいりたい。まだ、いまのお話の研修部門をどうするかとかいうこともございますから、私は、これは一歩一歩やっていかなければならぬ。やはり小児医療センターというものは一つのメッカとして考えていかなければならないものだと思いますので、私も一生懸命努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  351. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 大変結構なことであります。戦時中九十幾つを数えました戦後の軍病院を国立病院に変えた中から、一方でがんセンター、もう一方で小児センター。大人、子供という分け方は少しラフですけれども、そういう立場で、いわば新しい次元に踏み込んだ全国センター化ということになる。研修部門は急がれますけれども、いまおっしゃったような形で、非常に大きな進んだプログラムが可能になってくると思うのですね。  これは、中央にできるのはメッカでありますけれども、まだ手足のないメッカ、各地でそれぞれ地方自治体を中心にする小児病院設立の努力が続いておりますけれども、これらを一つ一つネットする本当のメッカにして全国的な小児医療充実する。カルテ一枚にしても十分に研究成果を交流し合う。出産時などの子供たちの緊急な事態にも対処できる。そして特に将来にわたっての医療予防が確立されるという日が、このことを契機にして大いに前進するのだ、こういうふうに思うわけでありまして、ぜひその点に一層のお力を入れていただきたい。もう一遍ひとつ御確認をいただきたい。
  352. 林義郎

    林国務大臣 上田議員の御質問、全くそのとおりでございまして、私も、そういったような全国的な体制が整っていかなければならないと考えております。厳しい財政事情ではございますし、私は、ことしだけではない、当分の間財政事情はなかなか厳しいんだろうと思います。そうした中でも、やはりそういったいまの先生のおっしゃった、将来に向かっての展望を持ったことをやっていかなければならない、これがわれわれ政治家に与えられたところの一つの使命でもあろうかと思いますし、最大の努力を傾ける決心であります。
  353. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 まことに結構でありまして、私は、この確認を実は十年待っていたのであります。非常に明快に方向づけられましたので、これは、これから生まれてくる子供たちにとってのまことに画期的な福音であるというふうに考えます。  一つ確認しておきますが、前々からの経過がございますけれども、これは国立小児医療センターという正式名称になるわけですか。その辺のところはどうなっておりましょう。
  354. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これにつきましては、法改正を伴うものでございまして、いまの段階で何とも申し上げられませんが、私どもとしては、そういった方向に努力をいたしたいというふうに考えておるわけで、先ほど大臣が申されましたとおりでございます。
  355. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 よくわかりました。  もう一つ、そういう立場で国際児童年の記念事業としても厚生省が取り組まれておりました東京青山の「こどもの城」、これも五十六年十一月に着工されて百八十九億円、六十年三月の完成と承っておりまして、これも一つ大きな前進を画するものである、りっぱな成果であるというふうに思っておりますが、そういうプログラムで進行しておりますか。
  356. 正木馨

    ○正木政府委員 お尋ねのございました国立総合児童センター、仮称で「こどもの城」と言っておりますが、先生おっしゃいましたように、都電の青山車庫の跡地に予定をしております。六十年三月の竣工を目途といたしまして、すでに建設三年次に入っております。すでにその掘削が終わりまして、第三期のコンクリートの鉄筋工事に入っております。予定どおり六十年竣工の予定で進めておるわけでございます。
  357. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 いずれも大変結構なことでありまして、軍拡路線なり福祉後退なりと言われる中で、こうした問題に力が向けられるということは非常に好ましいことであり、これはひとつ党派を超えて存分の努力をしなければならぬところだ、同学年の大臣、われわれの共通目標ではないかというふうに思うわけです。  もう一つ、そういう努力をもっても小児医療の将来展望にはなお足りないわけですが、そこで、いま大きな夢がかけられておりますのが、羽田空港の沖合い移転の跡地の活用です。いまの世田谷の小児センターも青山の「こどもの城」も単に疾病の子供、障害の子供のめんどうを見るためだけではありません。また将来についても、山紫水明の地でリハビリをやるというようなことではなくて、予防面や緊急の治療面ということを考えると、人口の稠密な大都市にそういう機能の完備した施設を持っていなければならぬということです。不幸な子供といえば、いろいろ重症な症例が挙げられておりますけれども、たとえば生まれてすぐの嬰児が急いで十分な外科機能の施設へ運ばれなければならぬというようなことからも、新施設にはヘリコプターを常に用意して機動的に運用させなければならぬということになるわけで、その面では、一千百万から二百万人ですか、史上最高の人口になろうという東京都市圏にそういう施設が考えられなければならないというのは一つの常識であります。  そういう中で、羽田空港の沖合い跡地にはたまたまダイヤモンドを敷き詰めたような広い土地ができるわけでして、ここにはニューヨークのマンハッタンのような商業ビルディングをいっぱい建ててはならぬのじゃないか。二百ヘクタールという広大な土地になるわけですから、ここにひとつ、いままで小児センターとか「こどもの城」とか、いろいろな努力をされてきた考え方の延長線上の大結節点とでもいいましょうか、総合的な小児医療センター、もちろん予防、治療全部を含めたそういう殿堂をつくってほしいという声が非常に強いわけであります。これは、東京都でありますとかあるいは建設省都市局とか等々の所管の問題もございましょうけれども、ぜひそういう目標に向かっては、先ほど来の方針の延長線上に御努力をいただきたい、こう思うのであります。
  358. 林義郎

    林国務大臣 上田議員の御質問にお答えいたします。  羽田空港沖合いに展開しまして、あの空港の跡地ができる、一部利用の問題につきましては、現在運輸省、建設省、東京都などでいろいろと連絡調整会議を開いて検討しておるということは聞いております。あの跡地をいまのような話で使うというのは、私は、非常に結構な話ではないかと思いますし、先生も地元ですから、地元では超党派、皆さん御協力してやられるというのも一つの方向ではないか、私も、非常に結構な話ではないかというふうに思ったところでございます。
  359. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 大変いい御見解です。まさに大都市にこそ救わるべき子供がたくさんいるわけでありますし、羽田空港近くにそうした施設ができあがれば、羽田空港は大人よりも全国の子供が希望を持っておりる空港になるというふうな姿を目に浮かべます。政治の光はこういうところに当てなければならぬというふうに考えるわけで、夢を食う話でありますけれども、金額からすれば大したことではないのでありますから、いまの大臣の御答弁を私は大変多といたしますので、ぜひひとつ政府部内でも財政当局を含めて積極的に御努力いただくようにお願いをしたいと思います。
  360. 林義郎

    林国務大臣 こういったものをやるということになりますと、私は、やはり地元のいろいろな御意見を十分に尊重するというのが一つのたてまえだろう、こう思うのです。  私も、いまのあれはありますから、関係大臣にはお話はしておきますが、あそこをどうする、こうする、いろいろな問題もあるようでありますから、私も、及ばずながら努力をさせていただきます。
  361. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 それで、一つ小児医療についての具体的な問題を伺っておきたいのでありますが、最近注目されなければならないのが小児糖尿病なんですね。老人ではなくて、小児に糖尿病が出てくる。糖尿病というのが、その特性から言って、発症のときに痛みがあるというようなものでないために、特に幼児であるということから、相当な潜在発症者も見込まれ、将来にわたってかなり問題を残すということでありますから、先ほど来のお話しのように、二十一世紀の世代に健康なプレゼントをしなければならぬということになると、いまから十分手を尽くす必要があるテーマだろうと思います。  そこで、厚生省は、四十九年から小児慢性特定疾患としての指定をされまして、十八歳未満の小児糖尿病については、国庫でこれを賄うということにされた。これは、そこまでは結構なことなのでありますが、十年たつので、やはりもう一歩、二歩この方向を発展させるべきではないかと思うのです。現状とそうした問題点はいかがでしょうか。
  362. 正木馨

    ○正木政府委員 小児慢性特定疾患の治療研究時業を行っておるわけでございますが、現在九つの疾患群が対象になっております。  先生の御指摘の糖尿病も四十九年度から対象になっておりまして、入院、通院を対象といたしまして、対象年齢は十八歳未満の者を対象にいたしておるわけでございます。
  363. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 ですから、四十九年だから、それは十年前の話ですね。このことはいいことなんです。けれども、たとえば小児糖尿病の一つの特徴というのは、みんなインシュリン注射によらなければなりませんね。これが大人と違ってそれ以外の処方がないということになるわけですから、そういう点は、食餌療法だけではなく、言葉は悪いけれども手間がかかるわけですね。そういう点での施策を講ぜられたらと思うのです。十八歳という区切り方、小児科というのは十四歳で切るべきものなのだから、それを十八まで延ばしていくというのはいいことだと思うけれども、なぜ十八で切ったかという根拠がどうもよくわからないわけです。足して二分の一かもしれないけれども、それはそれで意味があるかもしれないが、たとえば、そういう子供たちが学校を卒業するまでとか就職するまでとかということなら社会生活にブリッジが渡りますね。そういうことからすると、社会政策との関連では、十八というのはやはり中途半端だろうと思うのですね。その辺の問題点はないかということです。
  364. 正木馨

    ○正木政府委員 私どもが所管しております児童福祉法では、十八歳未満を原則的に対象にしておるわけでございますが、小児慢性特定疾患治療研究事業も原則として対象年齢十八歳未満ということで行っております。確かに、糖尿病につきまして、先生おっしゃるようにインシュリン療法というものが唯一の方法ということで、経費面等でいろいろ問題がある点は確かでございます。  なお、原則十八歳未満と申しましたけれども、その後五十一年度から五十四年度にかけまして、たとえば慢性腎疾患とかぜんそくとかといったようなものについて二十歳まで延長している例はあるわけでございますが、この問題につきましては、他の疾患群とのバランス等々いろいろ問題がございますので、現在のところは、入院、通院を通じまして十八歳未満の子供たちを対象としておるというのが現状でございます。
  365. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 そこまではよくわかっておるのです。そして、ほかの病気とのバランスとかいろいろなこともあるでしょう。ことさら財政事情もあるでしょうから、無理やりにその一点だけを引きずり出して、特別なことをやれということを言っておるのではありません。しかし、こういうものはやってやり過ぎることはないのだから、この点だけとらえれば、十年もたつのだから、もう一歩進む方向性があっていいのではないかということを繰り返し聞いているわけです。それでは、もうちょっと具体的に聞きますけれども、患者数と国費の負担はどのくらいになっておりますか。
  366. 正木馨

    ○正木政府委員 糖尿病の患者数は、五十六年度で入院の場合が千三百七十三人、通院が二千五人ということでございます。費用は約一億でございます。
  367. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 だから、入院、通院を含めて全部で三千三百七十八人ということになりますね。それが五十七年度で一億六百十五万、五十八年度で一億九百四十三万、これは決して多額ではないですね。ですから、大ざっぱに考えて、仮に二十まで延ばすとすれば、あと一千万円ですよ。一千万円出せばこの分の福音が——病状に対するいろいろなバランスとかということはありましょうけれども、この問題についてだけ言えば、私は、へんぱに主張しているのではないが、どこかへできるだけのことをやりたいというのです。ここの二年間に光を当てるならば、学校を出るまでとか就職するまでとかの手当てをして、さあ、しっかりやれというふうな立場は政治の温かさではないか。あと一千万でそれができる。大臣、これは努力目標でしょうね。
  368. 林義郎

    林国務大臣 お説、わかるわけです。十四歳でやって十八歳でとまる、二十歳までなぜやらぬ、それは根拠のあるというような話でもないのでしょう。ただ、いまお話がありましたのですが、慢性腎疾患とかぜんそくとか二十歳まで延長してやっているが、十八歳未満でとどまっているものも糖尿病を含めて四疾患群残っているというようなこともありまして、金額的には大したことないと言えば、それはそうかもしれません。しかし、それではまたほかのものをどうするんだというふうな話もあるでしょうし、財政状態もありますから、そういったものは私の方で総合的に検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  369. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 大臣の答弁は前向きとして受け取ります。大臣、政治判断として、一千万ですから、これは大臣が予算編成なり復活折衝のときに頭の中に入れておいてもらうかもらわないかで、ずいぶん違ってくるわけです。ですから、できるできないは短兵急には言いません。バランスも確かにあるのです。ですから、これは、できることならばやるべきだという前向きの御見解だけもう一回承っておきたい。
  370. 林義郎

    林国務大臣 ここでひとつ、と言いましても、ほかのところからまたどうだという話もありますから、御趣旨はよくわかりますから、私も、これは先ほど申しましたように、総合的検討ということで先生の御意向は十分に考えてやりたい、こういうふうに思っております。
  371. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 わかりました。ひとつ事務当局で積極的に問題を詰めさせてください。結構です。  もう一つだけ。ちょっと広げますけれども、この糖尿病の医療レベル、方法論がだんだん進んでまいりました。いまコンピューターを使って必要量を的確にやっていくという研究をしている大阪大学の七里元亮博士が、私がかつて高等学校の英語の教師をしておるときの教え子でして、ですから、その辺は私はわりに細かいのですよ。そういういろいろな研究が進んできて、検査能力といいますか病状の測定機能というのは非常に重要視されてくるわけです、日常的な病気ですから。だから、そういう面では自宅検査ということも非常に意味を持ってくるわけです。それが開発されているのは結構なんですが、これは金がかかるのですね。こういうものをぜひ考えてほしい。薬会社はもうけ過ぎているから、薬会社の後押しをしてぜひ保険適用にしてくれというのは一義的には問題があるでしょうけれども、だから一方では、そういうもうけ過ぎは抑えなければならぬけれども、ぜひ患者に対して自宅測定を多額な金をかけなくてもいいように工夫をしていただくことが、やはり今後の課題であろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  372. 林義郎

    林国務大臣 上田議員の御質問にお答え申し上げます。  私は、医学がだんだん進歩してきたら、やはり測定の問題というのは医療の中で非常に大きなウエートを占めてくるということは疑いがないことだろうと思うのです。そうしたときに、自分で注射をするというところまでは認められている、こういうふうな話ですが、では検査ということになると、またそれはどうするかというのは、やはり学会とかなんとかでも大分御議論のあるように私も承っておりますし、その辺をどうしていくかというのは基本的に少し考えてみなければならない問題が幾つかあるのだろう、こう思います。そういった御意見を伺いながら、先生の教え子がえらいりっぱな先生だというお話もありますし、この問題については幅広い見地から検討すべきことではないか、こういうふうに考えております。
  373. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 御答弁は、つまり患者の負担軽減のためには何らかの方法を一生懸命努力してみようということでいいですか。
  374. 林義郎

    林国務大臣 いま申し上げましたように、お医者さんなんかの考え方も医学界でもいろいろと御意見があるようでありますから、そういったものを踏まえてやらなければならない。負担は患者さんがするわけですから、その負担の軽減ということは当然皆さん方考えられる話でもあろうか、こう思っておるわけでありまして、ただ、私たちがこれをやれとか、これをやめろとかというような命令をするよりは、やはりそういった点は医学者の科学的な判断、そういったものにまつべきものではないだろうかなと私は思っておるわけであります。
  375. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 そこで、薬を出す、投薬の量なんですけれども、在宅での治療方法が発達してくることになると、前はインシュリン注射を全部病院へ行って子供たちが打ってもらわなければならなかったのが、自分のうちで打てるようになった。これが保険の適用になったということは大変結構なんです。これは大変結構なんです。これは五十六年六月からですね。つい最近ですけれども、これは私は率直に評価します。ところが持って帰れる注射が二週間分なんですね。一月分というのは、いまのところ規則によって、結核、てんかん、甲状腺障害、パーキンソン病の四つに限られている。これは検討すべきじゃないか。一月分出したからといって薬の効能がどうなるわけじゃないので、そこのところは検討課題じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  376. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  確かに、糖尿病の問題に限らず、この間東北大学の問題にいたしましても、長期投与を認めるべきだというような議論も出ておりまして、この糖尿病のインシュリンの問題につきましても、先生のおっしゃる検討課題であることは間違いないのでありますが、ただいまのところ私どもは、投薬でなしに注射であることが一点、それから、注射である以上やはり二週間に一遍くらいはお医者さんの顔を見て、お医者さんの観察なり指導なりというものを仰ぎつつ注射をしていくのが現在の医学の常識ではないかということで、一応二週間に一遍、こういうことにしております。私ども、いま先生のおっしゃいましたような観点から学会とも十分この問題は相談をしてみたい、こういうふうに思っております。
  377. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 それはそのとおりなんですよ。ただ、二週間に一遍行くといったら二週間分じゃ足りないのですよ。そこのところがしゃくし定規になってしまっては困るわけだから、これはひとつ患者が学校に行く子供であるということも考えてほしい。もともとアローアンスがなければ困るんだから、その辺のところは方向としてはそっちへ持っていこう、抑えることよりも延ばすことだということだけ、ちょっと確認しておいてください。
  378. 吉村仁

    ○吉村政府委員 抑えるということはございません。もちろん、ほかの問題もありますので、総合的に考えていきたいと思います。
  379. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 最後に、もう一遍話を戻しますけれども、私がたまたま小児糖尿病のお話をしたのは、糖尿病だけが問題じゃないのであります。私自身の二十年ほど取り扱ってきた小児予防医療への問題意識から言っても、もちろん小児だけではないけれども、いわば予防医学の窓を開く窓口としての小児医療体制、そこが問題だろう。その中に、小児糖尿病の問題もいまや出てきているということを一例にとったわけでありまして、これらはやってやり過ぎることはないわけですね。  これがおくればせであるかないか、どこまで経済大国の名にふさわしいかどうかは別だけれども、厚生省はそれなりに努力したことを私は今後へ向けて評価していきたい。幾つかの芽は出ている。さっきの話で、バランスがあるだろうと言われた。そのとおりだ。私の経験でも、ポリオのときそれを全力で全国でやったから日本脳炎がふえたり、いろいろなことがあったわけです。医療体制は、一方に遍在していいことはないのです。この病気は国で保障されるべきで、この病気はおくれてもいいということはない。これはあたりまえだ。けれども、しかし、だからといって、低いバランス論が一つ施策が先へ進まない理由にされてはならないだろう。いまそこが求められている政治だろうと思うのですね。そういう意味で、例はこれにとりましたけれども、ほかも多くのおくれた課題があるのだから、低いバランスの横並びでこれ以上進まないんだということではなしに、ぜひ大臣の前向きな、二十一世紀へのゼネレーションプレゼントの問題としての決意が欲しい。昭和一けた第一世代の大臣として、事務当局にぜひ前向きの指示を与えていただきたいということが一つ。  それからもう一つ、長いこと、十年、十五年努力を重ねてきた小児予防医療システムへの成果がようやくいま実ろうとする段階を迎えているわけですね。全国小児医療センターがいよいよスタートするというようなことは、ある意味では、小児医療予防論の問題もさることながら、日本医学界全体のある種のセクショナリズムを打ち破るという意味もあるわけでありまして、非常に大きな意義を持つだろう。勇断を持ってもう一歩まで来たこの実現に御努力をいただきたい。古い話になりますが、塩見厚生大臣とか田中厚生大臣とか、就任直後必ず小児病院とがんセンターと歩いていただいたんですね。これがいよいよ竣工に至るわけでありますから、恐らくいま小児病院では、この日を待って黙々と努力を続けてきた医師たち、スタッフ、そういう人々が世論の励ましの光を待っていると思うのですね。お忙しいとは思うのですけれども、第一線のそういうところも、大臣、若々しい世代の代表としてぜひ御視察もいただきたい、いつでも一緒に参りますから。  この二点、最後にひとつお伺いします。
  380. 林義郎

    林国務大臣 お答え申し上げます。  やはり政治家としてこれからの日本を考えていく上で、子供の健康ということは非常に重視して考えなければならない問題であることは上田議員御指摘のとおりでありますから、私も、お互いの世代ということも踏まえまして、一生懸命がんばってまいるつもりであります。  それから、第二番目の小児病院ですが、私も、ぜひ一遍お伺いしてみたいと前々から思っていました。実は、大阪の循環器センターとがんセンターは拝見さしていただきましたから、この次はあそこだと私も考えておりました。ぜひ御一緒にお願いいたしたいと思います。
  381. 上田哲

    ○上田(哲)分科員 終わります。
  382. 上村千一郎

    上村主査 これにて上田哲君の質疑は終了いたしました。  先ほどの沢田広君の発言の一部につき、本人から取り消しをいたしたいとの申し出がありましたから、主査において速記録を取り調べの上、適当な措置をとることといたします。  次回は、明五日土曜日午前九時三十分かち開会し、労働省所管について審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時十七分散会