○瀬崎
委員 私は、
日本共産党を代表して、
政府提案の五十八年度
一般会計予算、
特別会計予算、
政府関係機関予算三案に反対し、
日本共産党提案の
予算組み替え動議に賛成の討論を行います。
いま真に国民に責任を負うべき
予算は、平和と軍縮、国民生活防衛と景気回復、そして民主的財政再建の
予算であります。しかるに、
政府が提出した五十八年度
予算案は、
日本列島不沈空母化と日米軍事同盟体制国家づくりを目指す大軍拡
予算であり、軍拡と大企業奉仕のために国民生活を徹底して犠牲にする臨調路線の全面実行
予算であり、財政危機と不況を一層激化させる財政再建なき大増税準備
予算であり、断じて認めることはできません。
以下、
政府提出
予算三案に反対する主な
理由を述べます。
反対
理由の第一は、この
予算案が軍事費を前年比六・五%も突出させているだけでなく、F15やP3Cなどの正面装備費の伸び率を二一・二%とするなど、文字どおりの大軍拡
予算になっていることであります。
しかも、この軍拡路線がアメリカのレーガン政権の核戦略に沿ったきわめて危険な方向に向いていることは、さきの中曽根首相の訪米で首相みずからが、
日本列島を不沈空母化するとか、海峡封鎖を行うとか、憲法や安保条約をも乗り越えた約束をしてきたことによって一層明白となりました。
とどまることを知らない軍事費増大によって、後年度負担は二兆円近くにも達し、さらに五六中業とも相まって、五十九年度には軍事費がGNPの一%を突破することは確実となっています。こうした軍備増強の行きつく先は、
日本の核戦場化と民族破滅の道でしかなく、
日本共産党はこの危険な道を阻止するため、
中曽根内閣と真正面から対決して闘い抜く決意を改めて表明するものです。
反対
理由の第二は、六年連続の所得税減税見送りによる実質的な大増税
予算であり、一層国民に負担増を押しつける国民生活破壊の
予算となっていることであります。
臨調路線に基づいて、社会
保障、教育などの長年の運動で築き上げられてきた諸
制度が根本的に改悪されつつあります。
政府は五十七年度
人勧凍結を撤回しないばかりか、五十八年度
人勧についても完全実施を明確にしていないことはきわめて重大であり、しかも、
人勧凍結に連動させて年金、恩給を初めとする福祉諸手当のスライドを全面的に停止しようとしていることは、高齢者、障害者、母子世帯など年金を支えとしている人々を窮地に追い込む非情なやり方と言わなければなりません。また、この二月に施行された老人医療の有料化は、来年度だけでも総額五百二十億円もの負担増を老人に押しつけるものであります。
教育の分野においても、父母、教師から強い要望の上がっていた四十人学級実現は、
予算が凍結されたままとなり、私学助成はついにマイナス二%まで減額されるなど、実質的に大幅な犠牲を国民にしわ寄せする内容となっているのであります。
このような軍拡、国民犠牲の
予算は、国民からも決定的な反撃を受けるであろうことを断言するものであります。
反対
理由の第三は、大企業奉仕と浪費を温存する
予算となっていることであります。
大企業に対する優遇策では、たとえば新技術開発などを名目とした三菱重工、石川島播磨、川崎重工、東芝、日立五社に対する補助金、委託費は来年度も二百十四億円にもなり、過去六年間の合計では千二十億円もの巨額に達するのであります。また、
利益が出たら返還させるという収益納付の
制度の改善にも全く手をつけず放置されているのであります。
税制面においても、大企業の内部留保は、一九七一年度の三兆円台から八一年度の十三兆円台へ急上昇しているにもかかわらず、退職給引当金の見直しなど、大企業優遇の不公平税制の是正には手がつけられていないのであります。
公共事業においても、全体の伸び率を四年連続ゼロに抑えておきながら、その間に高速国道二・三倍、本四架橋三倍と、大型プロジェクトの
予算は大きく伸ばしているのであります。
さらに、もはや開発の意義も持たないのに、なお巨額の国費が投入され続けている原子力船「むつ」、長期の運転停止に追い込まれた東海再処理工場、現実性も計画性もない新幹線建設、工業再配置政策の失敗がもたらした莫大な遊休工場用地などの巨額のむだ、浪費も、財政破綻の大きな要因となっているのであります。
ところが
政府は、こうした大企業本位の公共事業のあり方や、むだ、浪費を見直して改めるどころか、新潟三区に典型的に見られるような、公共事業が大企業の
利益と政治家の利権に奉仕するというゆがんだ状態を放置しているのであります。金権腐敗政治の温存を図る
中曽根内閣のもとでは、財政破綻はますます深刻にならざるを得ません。
反対
理由の第四は、この
予算が財政破局を拡大するだけでなく、大型間接税に道を開く大増税準備
予算だということであります。
この
予算による十三兆三千億円余の国債発行で、国債発行残高は百十兆円を超え、実に国民一人当たり百万円の巨額に達するのであります。
政府が国民に公約した五十九年度赤字国債発行ゼロという財政再建策は、わが党が指摘したとおり完全に破綻を来しているのであります。
大蔵省が本
委員会に提出した財政中期試算には、毎年の国債費が十兆円を超え、赤字国債発行と要調整額の合計も毎年十兆円に達することが示されているにもかかわらず、
政府は、破局的な財政立て直しについての具体的な将来計画を何も出さず、いたずらに危機感だけをあおる無責任な
態度を続けているのであります。
その上、
予算審議を通じて、
政府が直間比率の見直しなど大型間接税の早期導入の意図を固めていることは明白になってきています。形を変えた一般消費税の導入は国会決議にも反するものであり、断じて許せません。
私は、ここで議会制民主主義の根本にかかわる重大な問題を指摘しておきます。
そもそも減税、
人勧は、
予算に直接かかわることであり、また確実に実施するためには本来
予算修正をしなければならないし、それはまさに
予算委員会の任務なのであります。わが党は、
予算委員会理事会における減税、
人勧の協議を繰り返し主張し、二月二十二日には
日本共産党の
予算組み替え提案を
理事会に提出して、修正の協議を議題とするよう要求したのであります。
これに対し、他党は、減税、
人勧を
予算委
理事会での協議事項とせず、国会の機関とは別の政党間協議の場をつくって折衝を繰り返し、その合意に基づいて、あいまいな内容の議長
見解が出されるに至ったのであります。
わが党は議長
見解を了承せず、減税、
人勧を明確なものとするため、再三集中
審議を要求しましたが、それすら見送った各党の
態度は、国民に対し責任を負う
立場から見てきわめて遺憾だと言わなければなりません。
また、対
米武器技術供与の問題で、あくまで国会決議違反ではないと詭弁を弄する
中曽根内閣に対し、わが党は国民に論点を明確にし、国民の世論を背景に
政府決定の撤回を迫るため、集中
審議を要求したのであります。
予算審議は、
武器問題についての
政府見解をめぐってしばしば
審議中断に及んだのでありますが、この場合にも終始国会の機関を離れた特定の政党間の協議で
予算委員会の運営が左右され、しかも減税、
人勧に関する議長
見解が示されるや、今度は
武器問題を棚上げして
審議日程が組まれるという、国民には何ともわかりにくい結末となったのであります。
国権の最高機関はあくまで国会であり、特定の政党間の協議をその上に置くことは絶対に許されないことであります。
日本共産党が要求した証人喚問を、自民党が多数を頼んでその可否についての
委員会採決も見送り、今後の
理事会協議の日程も決めないまま棚上げを策したことに、本討論を通じて厳しく抗議します。私は、広く世論に訴えながら、証人喚問実現のための
理事会協議を強く要求し続けていく決意を明らかにするものです。
最後に、
日本共産党が提出した歳入歳出の両面にわたる全面的な組み替え提案こそが、
日本を核戦場とさせないための軍縮への第一歩であり、一兆円所得減税を初め、福祉、教育など国民生活を守ることによって消費拡大、不況打開の道を開き、さらに不公平税制の是正や、むだ、浪費を一掃して真の財政再建への出発点となるものであります。
なお、
日本社会党・護憲共同提出の組み替え案は、その内容が不十分であり、反対であります。
以上、わが党提案の組み替え動議に賛成、
政府提出
予算三案に重ねて強く反対して、討論を終わります。(拍手)