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1983-03-08 第98回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月八日(火曜日)     午前九時三十五分開議  出席委員    委員長  久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小里 貞利君       小渕 恵三君    越智 伊平君       大村 襄治君    奥田 幹生君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       渡海元三郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       稲葉 誠一君    岩垂寿喜男君       大出  俊君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    小林  進君       佐藤 観樹君    沢田  広君       嶋崎  譲君    野坂 浩賢君       草川 昭三君    草野  威君      平石磨作太郎君    木下敬之助君       竹本 孫一君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    蓑輪 幸代君       四ッ谷光子君    中馬 弘毅君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣審議官   林  淳司君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府総務副長         官       深谷 隆司君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府統計局長 永山 貞則君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         警察庁警備局長 山田 英雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 森山  武君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁計画         局長      下邨 昭三君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         国土庁長官官房         長       宮繁  護君         国土庁長官官房         審議官     荒井 紀雄君         国土庁長官官房         会計課長    金湖 恒隆君         国土庁大都市圏         整備局長    京須  実君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 松尾 直良君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         特許庁長官   若杉 和夫君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省自動車局         整備部長    丹羽 一夫君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   武藤 嘉文君     小里 貞利君   村山 達雄君     奥田 幹生君   佐藤 観樹君     嶋崎  譲君   草野  威君     大久保直彦君  武田 一夫君     平石磨作太郎君   寺前  巖君     蓑輪 幸代君   中路 雅弘君     不破 哲三君   楢崎弥之助君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     武藤 嘉文君   奥田 幹生君     村山 達雄君   嶋崎  譲君     佐藤 観樹君  平石磨作太郎君     矢野 絢也君   蓑輪 幸代君     四ッ谷光子君   中馬 弘毅君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   四ッ谷光子君     金子 満広君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、後藤田内閣官房長官より発言を求められておりますので、これを許します。後藤田内閣官房長官
  3. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 本日のこの予算委員会に、閣議が長引きまして遅参をいたしましたことは、まことに申しわけございません。ただいま予算委員長からの御注意のとおり、皆様方おわびを申し上げ、今後かようなことのないように十分注意いたしたいと思います。  いわゆる通峡阻止問題についての政府見解を申し述べたいと思います。  二月十九日の衆議院予算委員会におけるわが国に対する武力攻撃が発生していない事態のもとでの通峡阻止可能性の問題についての政府答弁に関する政府見解は次のとおりである。  一、午前の審議における岩垂委員質問に対する防衛庁長官答弁は、わが国に対する武力攻撃が発生していない場合においては、仮に米国からの要請があってもわが国の自衛隊が通峡阻止のための実力の行使を行うことは憲法上認められずあり得ないとの従来からの政府見解を述べたものである。  二、これに対し、午後の審議における東中委員質問に対する総理大臣答弁は、わが国に対する武力攻撃が発生していない状況において、米国がみずからの自衛権行使として通峡阻止米国自身が行うことにつきわが国同意を求めてきた場合のわが国対応について述べたものであり、その趣旨は次のとおりである。  (一)わが国に対する武力攻撃が発生していない場合において具体的にいかなる事態のもとで米国がそのような同意要請してくることがあり得るのかは明らかではないが、通常の場合にはそのような要請に応ずることがわが国自身の安全の確保のために必要と判断されることはないと考えられるので、わが国としては、そのような要請原則的には拒否することとなる。  (二)しかし、理論的な可能性の問題として、わが国に対する武力攻撃は発生していないが、わが国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等わが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合において、そのような米側要請に応ずることがわが国自身の安全の確保のためぜひとも必要と判断されるような可能性も完全には排除されないので、そのような例外的な場合にはそのような事情を考慮に入れるべきであることは当然である。  (三)米国要請に対するわが国対応は、わが国自身の安全の確保という国益の観点から自主的判断に基づいて行われるものであり、そのような判断は、基本的には政府の責任において行うことになるが、その際国民の意思を体して十分に慎重に対処すべきであることは当然である。  次に、武器輸出に関する政府統一見解を申し述べます。  対米武器技術供与に関する今回の政府の決定は、日米安全保障条約及び関連取り決めの枠組みのもとで、米国に対してのみ、かつ、武器技術(その供与を実効あらしめるため必要な物品であって、武器に該当するものを含みます。)に限り、供与する道を開いたものであり、武器そのものの対米輸出については従来どおり、武器輸出原則等により対処することとしたものである。  中曽根内閣としては、これまで再三にわたり武器共同生産を行う意図のないことを国会で答弁していることからも明らかなとおり、武器そのもの輸出についての従来からの方針に何ら修正を加える考えはありません。  以上でございます。     ─────────────
  4. 久野忠治

    久野委員長 これより締めくくり総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  5. 大出俊

    大出委員 たくさんの問題が議論の上で未解決でございまして、それをきょうは総理に最終的な決着をつけていただきたい、こう思っております。  そこで、まず最初に、人事院勧告をめぐります問題でございますが、ILO理事会勧告をまとめて明らかにいたしました。やがてブランシャール事務局長から政府あてに書簡も来ることになっているわけであります。これをめぐりまして、どうも当初、政府が、六百七十億の人勧に対する引き上げ予算一%を取り崩して補正が通過した、したがって、政府に云々しても効果がないという意味の中身が出てくるというので、大変はしゃいでおられましたが、深谷君にきょうは来ていただこうと思っておりますが、彼の特使としての使命が勲一等であるなんて言って——私は、これはそういう性格のものじゃないと思っているのですよ。生存権代償という意味における人事院勧告でございますから、より深刻なものでありまして、勝ったとか負けたとか、はしゃぐとかはしゃがぬとかという問題ではないと実は私は思っているのでありますが、そこのところ、政府関係の談話を見ましてもどうもすっきりいたしません。総理の御見解を承りたいと思っております。それが一つです。  あわせて、時間がありませんから申し上げておきますが、日本公務員組合ILOに提訴したのは私の出身の全逓最初でありまして、当時私が全逓中央本部書記長でございました。田中総理が私の首を切ったというところから始まったのであります。したがいまして、私も何遍もILO総会にもジュネーブにも参っておりますが、理事会に対する結社の自由委員会報告というのは、あくまでもこれは報告でございまして、この報告に基づいて、案件として取り上げられた、発生をした国に対して勧告を行うというシステムであります。したがいまして、勧告そのものが実は直接的にわが国に対する非常に大きな国際的な環境の中での指摘でございますから、そういう意味で、報告結論になにが残っているからというものではなくて、勧告そのものが問題であります。  十七というところで、「本委員会は、理事会が、本報告、特に以下の結論を承認するよう勧告する。」  (A)というところで、「本委員会は、団体交渉権スト権のような基本権不可欠業務または公務で禁止または制約される場合には、」この「不可欠業務」というのは、水道の水であるとか電気というふうなものはとめちゃいけないものでありますから、そういう意味で「不可欠業務」というのが入っておりますが、アンダーラインを引きまして、「本件がこれに該当する。」またラインを引きまして、「みずからの利益を守るための基本的な手段を奪われている労働者利益を完全に保護するための迅速かつ公正な調停仲裁制度が設けられ、当事者があらゆる段階で参加でき、また、一たん決定された裁定は完全かつ迅速に実施されなければならないという適切な保障確保されなければならないという原則を想起する。」  これは私の長いILOとのかかわりにおける経験からいって初めてであります。公労協関係では、調停仲裁制度が設けられ云々ということは前に何遍か出ましたが、人事院勧告をめぐって、調停仲裁制度が本来設けられなければいかぬのだ。人事院勧告というのは弱いのだ。調停仲裁制度が設けられなければいけないのだという意味のことが載せられたのは、これが初めてであります。そこまで厳しいのであります。  (A)でそういう言い方をしておいて、(B)項で、「本委員会は、人事院勧告を尊重するという基本方針を堅持し、また、今後、勧告を尊重するために最善の努力を払う意向であるという政府保証をノートする。」  今日まで「ノート」という言葉も余り使われたことがない。テークノートと、こう言っておりまして、留意すると、こうなんでありますが、この「政府保証をノートする。」というのは、聞きおく、聞いておく。つまり、皆さんの説明が背景にあるわけでありますが、あくまでも例外措置であるというふうに聞いたよ、聞いておく、本来やらなければいけないのだ、こう言っているわけであります。  それから(C)項で、ここが問題でありますが、「本委員会は、前記十四項に示した理由により、本件に関し、人事院勧告に関する政府態度を再考するよう要請しても、有益な目的を達し得ようとは考えられない。」と、こう入ってきております。  後から聞きますが、この点はついに全面削除であります。政労使で構成しておりますけれども、使用者側も全面的にこれを認めた。だから、最終的には、全部一致してこれを削除した。つまり、いまからでも人事院勧告は実施に向けて努力をすべきものであるという理解であります。  これを削除いたしまして、「本委員会は、一九八二年の人事院勧告が実施されないことを遺憾とし、」この「遺憾とし、」という表現もいまだかつてILO史上ない。ポーランドに関して一遍だけ「遺憾」という言葉が使われただけであります。大変にこれまた厳しいわけであります。そして「将来」、この勧告が出てから将来でありますから、今日もこの枠内に入ります、この質問も。「人事院勧告が完全、かつ、迅速に実施されること並びに団体交渉権及びスト権という労働組合権の制約に対する一つ代償措置当該公務員保障されることを強く希望していることを表明する。」  私も長い経験がありますけれども、ここまで厳しい勧告が出てきたのは、私は初めてだと思っております。これを総理は一体、先ほど冒頭に申し上げたのと合わせまして、どうお考えでございましょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど官房長官おわびを申し上げましたように、本日の委員会の開会がおくれましたことについては、慎んでおわびを申し上げます。  大出さんの御質問ILO問題でございますが、政府といたしましても、従来から人事院勧告を尊重するという基本的な態度は一貫して変わらないところでございます。労働者の、特に公務員権利を尊重したいという考え方にいまでも立っておる次第でございますが、五十七年度の人事院勧告の問題につきましては、財政窮迫の折から、まことにやむを得ざる例外的措置としてあのようなべースアップの問題に関する処理をいたしました。まことに遺憾な次第でございます。  しかし、ILOのただいまの勧告等を拝見いたしまして、ILOは、従来一貫して労働者権利擁護のためにお尽くしになってきており、今回もそういう基本的立場をおとりであるということはよく了承しておりますが、政府がとりました処置を覆すという意思表示をしていらっしゃるというふうに政府は解釈しておらないのでございます。そういう意味におきまして、まことにやむを得ざる処置につきましては、政府考えどおり実施させていただきたい、このように考えております。  詳細につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。
  7. 大出俊

    大出委員 時間がきわめて短いわけでございますから、具体的に以下承りたいのであります。  深谷さんをILOに派遣をされたのは、特使というふうに新聞は書いておりますが、どういうことでILO深谷さんを差し向けたわけでございますか、総理
  8. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいま大出先生からお尋ねのことにつきましてお答えさせていただきますが、深谷長官ILOにどうして派遣したか、その理由はということでございますが、先ほど総理からお話のございましたように、今回、五十七年度の人事院勧告を凍結する、こういう方針見解がさきの内閣のときに閣議決定され、中曽根内閣がそれを継承して見解がまとまり、予算もそのようにつけていただいたことでございますから、そのことについて、ILO政府のとりました立場事情をよくお話し申し上げておいた方がよい、こういうことで派遣したわけでございます。
  9. 大出俊

    大出委員 ここに「ILO首脳に直接日本政府考えを伝えるため、二十五日深谷総務長官を派遣した。」こうなっておりますね。つまり、政府特使というふうにもう一つ新聞は書いております。代表でございますね。  そこで、深谷さんに承りたいのでありますが、深谷さんはブランシャールILO事務局長にお会いになっている。  断っておきますが、今回のILOで問題になりましたいろいろなやりとりの基礎になっております政府労働側の申し立て、回答、私が総理と先般ここで長い議論をいたしましたが、あの私の議事録がほとんど組合側資料で出されております。ほとんど私と総理とのやりとりであります。したがいまして、いまここでやるやりとりは、恐らく六月総会に向けてまたILOに出ていく筋合いでございますので、そういう意味で、はっきりした御答弁をいただきたいと思っております。  田中理事ILOおいでになりますが、これは同盟の書記長さんでございますが、ブランシャールさんに会っていろいろと細かいやりとりをし、承っておいでになるわけでありますが、ここでブランシャール氏が言っていることはどういうことかといいますと、日本からいらっしゃった深谷氏と会った際に、深谷氏は何ページにもわたる資料を持ってこられた、それを全部読み上げられましたが、ブランシャールさんは、「私はそれをずっと聞いておりましたが、深谷氏のおっしゃることを留意します。」と言っただけでございました。つまり、留意するとしか申し上げなかったのです。そして、田中理事の方から、深谷氏が帰国後「私との会合について記者会見を行ったことを初めて知って、」これは実は、なぜ深谷さんが記者会見すると言わなかったかというと、「私と会ったことを記者会見をしても、日本労働側政府ILO、いずれにもためにならない。」というふうなことをここで言っておられまして、その一番ポイントは、「今日の日本政府態度、一九八二年の人勧不実施は例外的な措置であると深谷さんは断言できますか。」このことを確認をした。そして、例外的な措置だということを念を押した。「今回は例外として、今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さないと確約できるかどうか。」今回は例外として、今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さないと確約できるかどうかと何度も深谷さんに確認をした。深谷氏のお答えは、はっきりと、「はい。イエスでございます。」ということでございます。いいですか、今回は例外だと深谷さんがおっしゃる。そこで、「今後は従来どおり実施し、今回のような措置は繰り返さないと確約できるかどうか。」と何度も確認をしましたが、深谷氏のお答えははっきりと「イエス」ということでございました。  ここで私、承りたいのですが、今後は従来どおり——従来どおりというのは完全実施ということであります。従来どおりというのは完全に実施するということであります。今回は例外である、だが今後は従来どおり完全に実施する、この点を繰り返し確約を求めた。そうしたところが、深谷さんははっきりとイエスということでございました。ブランシャール氏が明確に述べています。ここに書いてありますのは、これは記者に読み上げて発表した中身です。  深谷さん、いかがでございますか。お認めになりますか。
  10. 深谷隆司

    深谷政府委員 私は、総務副長官深谷でございます。  現地に参りまして政府見解を説明するというお役目で、私は政府見解の域を出ない範囲で御説明を申し上げたつもりでおります。  以上です。
  11. 大出俊

    大出委員 私は具体的に聞いておるのですよ。うそを言うのですか、あなたは。ブランシャール氏自身が言っておることですよ、これは。あなた、どうなの。もう一遍言いましょう。  「今回は例外として、今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さないと確約できるかどうか。」何度も確認をいたしましたが、深谷氏のお答えは、はっきりと「はい。」つまり「イエスでございます。」あなた認めたのでしょう。はっきりしてくださいよ。ブランシャール氏は手紙を書いてきておるのですから、あなたのくだりを入れて。
  12. 深谷隆司

    深谷政府委員 私が申し上げましたのは、政府ILOの事務局に対して示した見解の枠を出ておりません。  具体的に申しますと、政府は、現実にも従来から人事院勧告を最大限の努力を払って実施してまいりましたが、今年度はついに財政が未曾有の危機的な状況となったため、きわめて異例の措置として、その実施見送りを決定しました。その際、政府は、関係労働団体に対し、この決定の前後を問わず誠意を持って対応してきたことは言うまでもありません。  もう一つは、来年度以降の人事院勧告の取り扱いについては、それが政府に提出された時点で、国政全般との関連において検討することとなるが、政府としては、今回のような措置が繰り返されることのないように最善の努力をいたします。そのようにお答えしております。
  13. 大出俊

    大出委員 明確に違いますね。これは議事録に残したいので、あなたにもう一遍聞きますが、ブランシャール氏が言っておるのだから、これは。ブランシャール氏の頭の中には、あなた方は、今回は例外だ例外だと言ったり、異例の措置だと言った、それじゃ、八二年人勧不実施なんだから、八三年からは完全実施にしますかという頭がある。あたりまえじゃないですか。だから、今後は従来どおり実施するかと何回も何回も言っておるのですよ。繰り返して言っておるのですよ。あなたに確認を求めた。政府特使で行ったあなたはイエスと答えた。何回も何回も繰り返し言っておるのですよ。  はっきりしてくださいよ。ここで言っておる、ブランシャール氏は。記者にも発表されておるのだから。あなた、はっきりしてくださいよ、うそを言ったのか言わないのかということになるのだから。
  14. 深谷隆司

    深谷政府委員 私は、ただいま申し上げましたように、政府として人勧実施について最善を尽くすということを申し上げましたが、ただいまのように私が責任を持って実施するというようなことを言える立場ではありませんので、私は副長官として、政府が最善を尽くすと申しておることを繰り返し述べたにすぎません。
  15. 大出俊

    大出委員 そうすると、ブランシャール氏に聞かれて応答しておるわけですよ。繰り返し繰り返し、何回も、今後は従来どおり実施しますか、今回のような措置はとりませんなと念を押した。はっきりと、イエスである。このくだりは明確に違いますね。  ここで、総理に承りたいのですが、ブランシャール氏は、日本政府は、今回は例外異例の措置だ、特使が来てそう言った。だから、今後は従来どおりやりますかと何回も何回も繰り返し念を押した。そうしたら「はい。イエス」と答えた。これが心証になっていて原案作成ということになっていっておるわけですね。  総理、これは一体、総理自身は、従来どおり、やがて出てまいります五十八年度人勧についてはおやりになる、こうお考えでございますか。それならば、彼が言った舌の足りない云々というのは氷解をしますが、いかがでございますか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、人事院勧告については政府はこれを尊重するという基本的責任を持っておると思います。原則的にそういう立場でいままでまたやってまいりました。五十八年度につきましても基本的立場は同じでございまして、これを尊重していく。特にまた、与野党間におきまして話し合いもすでになされておることでございまして、その点につきましては、政府としてはやはりそれを守っていかなければならないと思っております。
  17. 大出俊

    大出委員 重ねて承りますが、いまブランシャールILO事務局長深谷総務長官やりとり、「今後は従来どおり実施し、」いいですか、「今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さないと確約できるかどうか。」いまの総理答弁は、今後は従来どおり実施する、こういうふうに総理の腹の中にはある。つまり総理は、前の私とのやりとりでも言っておられますけれども、また鈴木さんが、前の総理がお決めになったときに、凍結を決めたときに、私は、決して高額とはいえない給与のもと、日夜公務に精励している国家公務員諸君の実情を十分承知している、こういうふうに述べている。これは総理の談話です。そして、心情的にはまことにつらいけれども、何とかひとつ今回の財政事情をお考えいただいて、異例の措置として今回は凍結をさせていただきたいので、何とか御理解願いたいと切々と談話の中で訴えておりますね。  そういうものを踏まえて異例の措置、これが何年も続くということはあり得ないのですから、「今後は従来どおり実施し、今回のような措置を繰り返さない」。ブランシャール氏が心配して一生懸命聞いているこのくだり、総理の気持ちの中で何とか、深谷さんも一生懸命政府特使でやったのでしょうけれども、だから、ブランシャール氏にイエスと言ったのだと私は思う。わからぬわけじゃない。  そういう意味で、総理の心情として何とかひとり来年は従来どおりやりたい、こうお思いでなければおかしいですけれども、いかがでございましょう。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府原則として、基本的にも、人事院制度及び勧告というものを尊重するという基本的立場を持っておるのでございます。その上に与野党間の話し合いもありまして、これを尊重するということを政府はまた重ねてお約束をしております。この与野党間の約束を守っていくということを、この際また改めて申し上げる次第でございます。
  19. 大出俊

    大出委員 もう一遍聞きますが、総理は従来どおり実施しよう、今回は例外だ、八三年勧告は従来どおり実施しよう、そういう努力をしよう、こういう御決意はないのですか。総理立場があるから明確な確約まではいただきませんが、しかし従来どおり実施しようということで最大限御努力を願わなければならぬと私は思うのですが、そういう努力をなさるおつもりはないですか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与野党間のお話し合いの中身も、人事院勧告につきましては最大限これを尊重する、そういう話し合いであると私は思っております。したがいまして、その線に沿いまして、五十八年度分につきましては政府としてはこれを守って処理していきたい、そう考えております。
  21. 大出俊

    大出委員 守ってと言うのですが、従来完全実施をしてきたのでしょう。今回は異例の措置と言っているのでしょう。しかも、いま申し上げたとおり、ブランシャール氏とのやりとりがある。あなたは、だから、何とかひとつ従来どおり完全実施をしようということで最大限の努力をしてみる、そのぐらいの気持ちは、たくさんの公務員の方がここにもおいでになるのだが、ないですか。それぐらいのことはお答え願えませんか。この際いかがでございますか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最大限努力をいたしてみたいと思います。
  23. 大出俊

    大出委員 いまこの場でそれ以上のお答えをいただくことは無理だろうと思いますから、最大限の、従来どおり完全実施ということで最大限の御努力を願えぬかと私は申し上げたのだが、最大限の努力をしてみる、こうおっしゃるから、この一問はこれで後は送ります。  次に、将来という言葉について先ほど私申し上げましたが、政府ILOにお出しになった資料の中には、向こうから求められたことに対する政府回答、ここにございますが、どこを眺めてみても、ただの一行も——さきの臨時国会で参議院でもお決めになりましたように、各政党間で誠意を持って、国会終了までに誠意を持ってこの五十七年人勧については協議する、政党間でぎりぎりまで協議することになっている、で、臨時国会が終わって、今度は「本会期中に」を取って三月の末というものを目途にまた各党間で誠意を持って協議する、こういう申し合わせができているのだが、そのことは一言も触れてない。六百七十億、一%取り崩して補正予算を組んだ。それが通っちゃったのだから、まさに実効がないと言わんばかりの資料になっている。これは間違いです。政党政治をお考えになるのなら、政党間で目下一生懸命臨時国会のときからやってきているという現実を無視はできないはずであります。そういう意味で、その一番のどん詰まりが、これから参議院もございますけれども、五十七年度の救済措置をどうするか、これが問題の焦点になっています。救済措置をどうするかという問題点。  で、この救済措置というのは、年金があり、退職金があり、三十二年の狂乱物価のときには一時金で払った先例もございます。物価とのことも考えて一時金で払った。政党間が了解をすれば、また政府が認めれば一時金で払えないわけじゃない。これが救済云々の問題でございます。  年金というのは、御存じの方も多いわけでありますけれども、最終俸給が年金計算の基礎であります。したがいまして、二十年で四〇%、それから一年ごとに一・五%ずつふえていきます。退職金、年金、両方ありますが、年金を申し上げましたから、年金からいきましょう。二十年で四〇%、一年ごとに一・五%ふえていくから、四十年で七〇%になります。そうすると、年金は、共済年金あるいは地方公務員にも響きますが、いまのところ最高七〇%、最終俸給の。四・五八%という人事院勧告は本俸だけで計算をすればおおむね一万円ちょっと欠けましょうか、一万円。そうすると、四十年勤続していまやめるという方は、一万円の七〇%ですから七千円、ここで上がれば七千円自分の年金はふえる。はっきりしている。七千円ふえる。ところが、俸給改定されておりませんから、最終俸給が基礎になりますので、ここではっきり一万円損する。一万円のうちの七割だから七千円損する。この七千円損してやめざるを得なくていまやめた人、七千円損してやめたら永久に回復できない。しかも、この方が亡くなったら奥さんが遺族扶助料を半額もらう。七千円の半分だから三千五百円、奥さんも死ぬまで毎月三千五百円損する。やめた本人は、いまやめてしまえば四・五八%上がらないのだから、一万円上がるのだから上がっていれば、その七〇%だから七千円恩給はふえる、年金はふえる。それがふえない。将来ともに回復の道はない。しかも、この方がお互い年老いた奥さんを抱えて生活していって、御本人が亡くなったら奥さんは扶助料二分の一だから、七千円の半分で、三千五百円死ぬまで損する。人間、公務員に勤めて、やめるのはただ一遍だけなんです。だれが考えたって、そんな不合理なことを放任できないじゃないですか。救済するのはあたりまえじゃないですか。しかも、二〇%以上の管理者手当をもらっている方が凍結されたときには俸給表を出したじゃないですか。給与三法を出したじゃないですか。出して、俸給表を改定したじゃないですか。ただ実施時期を来年の四月にしただけじゃないですか。だから、全部救済されているじゃないですか。何で一般職は救済しないのですか。あたりまえじゃないですか。  退職手当も同様です。二度やめるんじゃないのだから、救済の方法はない。それから、三月一カ月実施すれば二百億六千万円ぐらいですよ。それがどうしても四・五八という問題で給与単価が上がるからというのならば、それに見合う一時金という方法だってある。あたりまえじゃないですか。そこらの救済措置を政府も積極的にとなぜお考えいただけないのですか。一生ついて回る。七千円の損を、そして奥さんが三千五百円の月額の損を、当然の権利であるのにもらえない。これは人道的に許せぬでしょう、生存権にかわる代償機関なんだから。  いかがでございますか。総理いかがでございますか。
  24. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十七年度の退職者に対する問題でございます。公務員の方々の退職金につきましては、いわゆる従来から議論をされました官民較差というようなことからいたしまして、国民の批判もありまして、現在約一〇%削減、これを実施中でございます。だから、個々を例にとっての御質疑でございましたが、こういう措置自体に対する考え方からすれば、いわば逆行する措置ということも、われわれとして検討の結果、そのような判断に立ちますと、いまのような特別な措置をとるということは適当でないというふうに考えたわけでございます。  それから、年金問題につきましては、与野党間の話し合いの経緯で、五十七年度中の退職者の年金については将来にわたって他の年度の退職者と比較して不利益とならないよう今後調整措置を講ずる、こういうことにいたしておりますが、現時点でとった場合はその議論はできますが、受給者全体が、そして将来にわたる受給者も今年度の措置そのものは一応平等な形で影響するわけでございますので、今後の調整措置にこれをゆだねる、こういう考え方であります。
  25. 大出俊

    大出委員 第一点は、それは間違いでございまして、退職金の減額措置というものは平等に減額されるようになっている。あたりまえじゃないですか。賃金が上がるものは上がる、上がったら上がったものを基礎俸給にして退職金が計算される、これはあたりまえじゃないですか。ここで上げないでおいて、片っ方で減らすだけ減らしたんじゃ両減りじゃないですか、いまやめる人は。上げるものは上げて、平等に減額されるものは減額する、それがあたりまえじゃないですか。明確に論理の矛盾じゃないですか。あなた知らないんじゃないですか。結論をひとつ出してください、救済する気があるかないか。それが一般論として矛盾するのであれば、救済するのはあたりまえじゃないですか。  総理、いかがでございますか。救済の中身は相談しましょう。救済をする気がなければ公務員はたまったものじゃない、やめるのは一遍しかないのだから。救済する気があるのかないのか、そこだけはっきりしてください。
  26. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはやはり私どもといたしましては、公務員の方のベースアップそのものを今年見送りしたということ自体の実態の上に立てば、私どもはその実態の上に立って、なお従来実施しつつありますところの、国民に批判等もございまして現在一〇%の削減を実施中であるという考え方に立って、やはりそのままの実態のもとでこれを行うべきものであるというふうに理解をしております。
  27. 大出俊

    大出委員 答弁がわからぬのだが、竹下さん、答弁がわからぬのだが、矛盾をするとすれば救済するのがあたりまえでしょう。矛盾なんだ、これは明確に。ある期間を切って凍結をするから、その間の人たちだけが損をするというのは矛盾じゃないですか。そうでしょう。ある期間を切って凍結をする、そのことによって減ってしまうというのは矛盾じゃないですか、明確に。一生ついて回るのだから、やめるのは一遍しかないのだから。だから、だれか考えても矛盾であるものを直さないというのは、退職手当法という法律で動いているんだから、間違いなんだから、だから管理職の場合も全部逆転防止の措置までとったのだ、矛盾するから。私が言っているのは、矛盾だとだれもが認めるのであれば直さなければいかぬじゃないですか。だから、抽象的でいいが、だれが考えても専門家が見て矛盾するのであるとすれば、そこは直す努力をする。いいじゃないですか。あたりまえじゃないですか。いかがですか。そのくらいのことはわかりませんか。
  28. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、従来の管理職に限っての問題は、公務員全体の中で管理職の方だけが、その年度におやめになる方に対して不利益であったという矛盾が生じておったと思います。今度の場合は全体が見送りという実態の上に立っておりますので、やはりその実態を踏まえて正確に対処した、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  29. 大出俊

    大出委員 時間がもったいないが、総理、一言答えてください。だれが考えても矛盾であるというのは矛盾なんだ。だから、具体的なことはともかく、矛盾は正さなければならぬでしょう。給与をみんな長くやってきた人もいるんだから、私ども専門的にやっている人間が見て、こんな不整合な矛盾はないと考えているんだから。だれが考えても矛盾であるというところは直さなければいかぬのだから。そこのところは矛盾であるとすれば、考える、相談をする。総理、いかがでございますか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣がお述べ申し上げたとおりの考えでございます。
  31. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、押し問答になりますから言いっ放しておきますが、政党間で、しかも議長見解が出ましても引き続き協議と、こうなっている。協議の内容はいろいろありますけれども、救済というところに焦点が行っている。これは、いまの答弁ならば衆議院の段階で詰まらぬことになりましょうが、救済をしなければ大変な矛盾である。時間があれば細かく詰めますが、いまのところ詰まらぬようですから言いっ放しておきます。この矛盾はどうしても救済をしなければならぬ、こう私は考えております。  次に、今回のILOを全体的に眺めて一つ言いたいことは、新聞の社説等の中に内容をリークしたという言葉がございます。内容をリークした。つまり、どういうことかといいますと、二月の二十一、二十二日に結社の自由委員会が開かれてたたき台が出て、いろいろな議論が行われて、遺憾であるということを勧告の中に入れるということになって、実効を伴わないというような表現はそれで消えていくんだなということで終わった。そして、三月一日の午後三時に、理事会でたたき台について議論をして、成文化されたものが印刷に回って理事会に配られたのが三月一日の午後三時。この間は理事の諸君もだれも知らない。にもかかわらず、日本のNHK初め幾つかの新聞で中身が報道された。こっちから電話が行ったものだから、逆流してびっくりして騒ぎになった。  だから、だれかがリークした、漏らした、漏らさした。これは一体だれなんですか。いまだかつてILOの歴史の中にない。絶対に表に出てはいけないものが何で出てくるのです。それによって、深谷さんが特使で行って功績抜群だから勲一等だ。勲一等ではしゃぎ回る筋合いのものじゃないですよ、総務長官。これはさっき申し上げた公務員の生活にかかわるんだ。しかも、生存権代償としてのストライキ権、労働三権、これを制約をするということでできている人事院という機関でしょう。リークした。そして、いち早く知った皆さんは、勝ったというので深谷君の功績抜群で勲一等だ。そういう性格のものじゃないです。根本的に間違いであります。  しかも、国際的に日本は孤立しています、今回のそのILOの削除の一幕は。政労使の間で経営者側だって最終的に賛成している。労働時間は長い、狭いウサギ小屋などと言われる、そういう中で日本の商品が安くできてくるという、やはり国際的な大きな批判がある。日本政府は孤立していますよ。だから、削除ということになっている。そのことを将来に向かって皆さんが考えなければならぬ筋合い。  しかも、事もあろうに、これだけははっきりさしておいてください。ILOに払うお金、負担金。削除されるというのであなた方は何と言ったかというと、森代表なんというのはこの負担金を留保する、ILOに納める金を留保する。けしからぬ話だ。負担金は一体だれの金なんだ。国民の金じゃないですか、税金じゃないですか。その中には当該公務員の金だって入っているじゃないですか。そんなものを政府が勝手に留保するの、へったくれの言えた義理じゃないじゃないですか。そういうふざけたことをなぜやるのか。だれかどこでリークしたのか。何で皆さんが先に知っていたのか。なぜNHKやほかの一、二の新聞が書いたのか。しかも、金は留保する。この責任、一体政府はどうお考えですか。総理、いかがでございますか。
  32. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 先生のお尋ねでございますから、お答えさせていただきます。  NHKが放送したのか、他のマスコミ関係で言われたのか存じませんが、私どもから先に、特に給与担当大臣として、ILO審議の実情と申しますか、いわゆる結社の自由委員会等でどんな論議をされておるかということも、私も十分承知していなかったのでございまして、新聞社が向こうに行っておられますから、そちらの方からの情報で流れたかもしれませんが、特に総理府は、給与の担当として、それをとやかく言ったものではありません。  それからもう一つ、先ほど来先生が二度ほどおっしゃいましたように、この問題は勝った負けたの問題じゃないと思っております。そういう表現は私も使ったことはございません。  それから、ILOの負担金の問題等について、これは政府が言ったのかどうかということでございますが、仮にそういうことを言ったとするならば私が言うはずでございまして、私は、神に誓って、さようなことを申し上げておりませんから、申し上げておきます。
  33. 大出俊

    大出委員 全部新聞に書いてあるじゃないですか。私は、先ほどの救済措置を含めて、旧来の答弁があるから翻さないのだと思いますけれども、政党間協議が続いていくのですから、これは参議院につなぎます。  しかし、こういうやり方は、国際注視の中で、負担金を留保するとか、しかも現地の記者に聞いてみた人たちは、行った人にみんな会ったのだから、聞いてみたら、NHKの方だって一切流していないという。それが、あなた方のロビー活動は大分激しかったようでありますけれども、先に中身が印刷もされていないうちに知れてしまう。きわめて不愉快であります。これは国際的に信用の大変な失墜であります。しかも、さっきのブランシャール氏とのやりとりについてもお逃げになる。議事録に記録が残っておりますが、これは非常に国際的な信用失墜です。だから、やはりこれは速やかに救済するものは救済をする、そうでなければなりません。参議院につなぐ意味で、そこまで申し上げます。  次に、減税の問題でございますけれども、これも最近非常におかしくなってきている感じがする。  念を押しておきたいのでありますが、予算委員会理事会官房長官政府考えを表明されました。  総理に承りたいのですが、まず第一に、「景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施するための財源を確保し、」こうあるのです。官房長官予算委員会理事会で表明されて、「なお、この際、つけ加えさしていただきます。」というところから始まるのですが、そうなっている。総理、これは責任をお持ちいただけますな。いかがですか。
  34. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは官房長官が、「景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施するための財源を確保し、所得税及び住民税の減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出するとの確約があったことを承知しています。」ということを申し述べておられますので、このことはそのまま受けとめていただきたいと思います。
  35. 大出俊

    大出委員 それでは、「景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施する」、実施しますか、それが一つ。  そのための財源確保をする、これもいたしますな。分けて言いますが、これが二番目。  それから三番目、所得税、住民税の減税についての法案を五十八年中に国会に提出する、こう言っておりますが、いたしますな。
  36. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず最初は、まさに各党代表者の方が概念的に高度な政治的判断を踏まえながら、お言葉として「景気浮揚に役立つ」、こういうことを仰せられておるわけでございます。したがって、そういうお言葉をお使いなすったこと自体も、現時点において数字等を明示することは困難であろうということも十分御認識の上でこの言葉をお使いになった。これは私は、各党の最高の責任者の御判断でございますから、これまた素直に受けとめるべきであるというふうに考えております。  そして次は、財源を確保するか、こういうことでございます。財源の確保も含めてという言葉が使われておるとおりでございます。その場合、安易に特例公債をもってこれに充てるということになれば、これはまた金融市場等に対して影響をもたらし、景気浮揚の逆効果をもたらす面もございますので、安易に念頭に置くべきことではなかろうとも思います。したがって、財源問題につきましては、まさに税収動向を踏まえながら、そしてこれは、私にあえて言わせていただきますならば、従来の経緯、その中には、今国会における問答、そしてまた、かつて小委員会でもろもろの専門家の方が御議論をなすったその経緯も踏まえながら、今後とも精力的に努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところであります。  そして、時期を明示しろと。そのお約束をなさったということを承知しておる限りにおきまして、それに沿うべく努力をしなければならない課題であるというふうに考えております。
  37. 大出俊

    大出委員 待ってくださいよ、それは答弁にならぬ。所得税、住民税の減税についての法案を五十八年中に国会に出しますか。
  38. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そういう確約がなされたことを承知しておりますと申しております限りにおいては、そういうことをめどに努力をしなければならない、こういうふうに考えております。
  39. 大出俊

    大出委員 はっきりここで官房長官が言っているのだから、出しますか。
  40. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、そういう御趣旨に沿うべく努力をすべきであって、私はこの問題については、今日まで参画された方々、与野党を通じての専門家あるいは本国会で議論された方の一人一人の意見を聞きながら判断すべきことであると思いますので、いまおっしゃっておる趣旨に沿う努力をする、こういうことで御勘弁をお願いをいたします。
  41. 大出俊

    大出委員 「所得税及び住民税の減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出するとの確約があった」、官房長官がそう言っているじゃないですか。「確約があったことを承知しています。政府としても、これを尊重いたします。」  あなたのは後退じゃないですか。出しますか。
  42. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、出すための努力を精いっぱいいたします、こういうことを申し上げたいのであります。
  43. 大出俊

    大出委員 総理官房長官が答えているのだから、確約があったことを承知しているとはっきり言っているのじゃないですか、確約どおりやってくださいよ、政党政治なんだから。
  44. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私から重ねて申し上げます。  私は、もろもろの政治的背景は存じております。しかし、いま現状において御審議いただいておる予算が最善のものなりとして御審議をいただいておる。そういたしますと、その法律案を提出する際、あるいは補正予算を伴うとかいうような、現実問題としてそれが付随する行為となってまいります場合に、いまの段階でこれを断言するということは差し控えさせていただきたいと思います。
  45. 大出俊

    大出委員 大蔵大臣、予算審議しているからといって——これはここで「五十八年中に」と言っている。それなら言い方があるじゃないですか。予算審議中だから、出すつもりだけれども、いまここで明言するのはちょっと待ってくれというのなら、待ってくれと言ったらいいじゃないですか。出すつもりなんでしょう、いまの話なら。いかがですか。
  46. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま大出委員の指摘されたようなことをも踏まえて官房長官が、承知しておる、こうおっしゃったというふうに御理解をいただきたい。
  47. 大出俊

    大出委員 大体明らかですが……。  さてそこで、小委員会審議も踏まえてという言葉がありましたね。これは私の方は、竹下さん、あなたに、当時の幹事長代理竹下登という人にだまされたが、そこで政府税調に対する諮問という問題がありますな。私は大蔵省サイドを調べてみましたが、皆さんは決めているじゃないですか。大蔵省が二日に五十八年度の減税の検討を始めた。ところが、財源の見通しが立たない。そこで早急に税制調査会、これは首相の諮問機関ですね、小倉さんが会長。実施の時期や規模、方法、財源などの減税の中身について意見を求めることになった、調べてみたら。そこで審議日程を二カ月繰り上げるというんだ。予算がそれこそ通った後の四月に諮問するというんだ。そして、公平かつ適正な税体系の改革案、これを柱にした中間報告の作成とあわせて減税のあり方を論議してもらって、二カ月繰り上げて八月末までぐらいに結論を出してもらいたい。  そして、どういうことになるかというと、中身はいまのいみじくも大蔵大臣が口にした、一年間やってきた小委員会の中身、電話利用税、出国税、テレビ広告税などの中型の間接税を五十八年度中にも導入すべきだとする意見が多数を占めようとしている。あなた方、事務当局は大蔵でしょう。この三つの中型間接税、これが一つのうちじゃないですか、あなたのいま言っていることは。そんなことをしたら、国民の皆さんは電話をかけない人なんかいないんだ、自分の手足を食うことになるじゃないですか、そんなことじゃ。こんなばかなもの認められますか。税制調査会にあなたは諮問するんでしょう。私はこれは調べているんだ。いかがですか、はっきりしてください。こんなふざけた話がありますか。政党間の約束にもとる。
  48. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは政府といたしましては当然のこととして、税制一般に関して広い意味において、三年ごとのいわゆる税制調査会の任期が来ます最初に税制一般について諮問を申し上げておるわけでございますので、私どもが今度の問題について税制調査会の意見を聞くのは当然だと思っております。  ただ、いまそういう記事がございましたが、いまの場合、されば十一月に任期が切れるわけでございます。そういうことも念頭にございますが、いつ諮問申し上げるかということについてまだ検討をいたしておりません。  それから、小委員会の方の問題につきましては、私も本当にりっぱな方が小委員になっていただきまして、こんなにいいことはないと思っておりました。いまでもその小委員会のメンバーの方は私は大変尊敬申し上げておる方ばかりでございますので、これからもやはり、たとえ私的であろうとも、意見を聞いて歩くところの謙虚さを持つべきである、これは一方的な私の考えでございますけれども、そのことは大蔵委員会等においても絶えず主張しておるところでございます。
  49. 大出俊

    大出委員 じゃ、ずばり聞きましょう。  かつて問題になって消えていきました電話利用税それから出国税、テレビ広告税などの中型の間接税、これを財源として、ある分をお考えになっておるのですか、大蔵大臣自身は。もし、これが出てくるとすれば、あなたは幹事長代理のときに、税調が始まってしまうとどうもぐあいが悪いから、中長期という長期は五十八年で、それは税調の前にとあなたは言ったじゃないですか。いまのこの点は、この三つ、財源にするのですか、そう考えているのですか、あなた。否定なら否定ではっきりしてください。そうしないと、政党間の合意が崩れる、これは。やり直した、そうでなければ。いかがですか。
  50. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私の念頭に、いまそれらのものを財源にすべきだというような考えはございません。  ただ、この税制調査会で御審議をいただきますときには、いわばこれは審議の対象の外に置いてくださいとか、これを入れてくださいとかいうことを申し上げる立場にはないということはいつでも申し上げておりますが、私の念頭にいまそれを検討すべきだという考えはございません。
  51. 大出俊

    大出委員 この種の諮問機関というのは事務当局がそれぞれやる。大蔵省が事務当局でしょう。大蔵省がその意思がないものは出てこない。あなたの念頭にないのなら、念を押しておきますが、こういうものは出すべきではない。念頭にない、よろしゅうございますね。念頭にない、いいですな。
  52. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま検討をしようという、私の頭には、念頭にありません。
  53. 大出俊

    大出委員 時間の関係がありますから言いっ放しにしておきますが、こういう小細工をなさると、これは政党間の信頼を失いますよ、お互いに。政党間の信頼の問題だ。その点だけ申し上げます。どうせ参議院に引き継ぐわけでございますから、それだけ申し上げておきます。  次に、武器技術に関して承りたいのでありますが、二日の私の質問で、MDAの第一条を私取り上げまして、ここに三つ書いてある。MDA第一条、「装備、資材、役務その他の援助を、両署名政府の間で行うべき細目取極に従って、使用に供するものとする。」これは武器を含むのかと私が聞いた。含むとお答えになりましたですね。  で、私はあわせて、時間がないから一緒に言っておきますが、防衛庁の技術参事官の番匠さん、いまはやめておられますが、この人が、アメリカはとりあえず日本につくらせる、つまり日本で製造させる、それがアメリカの短期的な目標だ、こういうふうに述べております。  そうすると、これは、武器輸出をここに含むとすれば、MDAに基づけば武器輸出はできることになる。あわせて、この番匠君の言うことからすれば、それは共同生産につながる。克明に当時申し上げた。理論的にはどうもそれをあなた方はお認めになった。だから、そうなると言うから、それじゃ、だから私は撤回をしろと言うのだ、こういうふうに詰めたわけでありますが、もう一遍外務省に念のために承りたいのだが、MDAからすれば、一条からすれば、役務まで含めまして、武器技術武器輸出、いずれもできる、論理的には。そして、試作品から始まって、この番匠君の理論からすれば共同生産もやれる、そういう結果になるというふうに考えますが、もう一遍答えてください。
  54. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この前御答弁申し上げたことの繰り返しでございますが、条約のMDA協定の一条におきまして、一条一項に基づいて細目取り決めを結んで武器を、武器あるいは武器技術をアメリカに供与することができるかという御質問でございましたので、これは条約の協定のたてまえとしては、理論的にはそういうことはできるということを御答弁申し上げた次第でございます。  しかしながら、もちろん、そこに書いてありますように、「両署名政府の間で行うべき細目取極に従って、」と書いてございますから、細目取り決めに合意するかどうかということは、これは別途、政策の問題として別問題でございます。
  55. 大出俊

    大出委員 じゃ、念のために申し上げますが、アメリカから武器技術あるいは武器——武器技術はまあ供与することをあなた方は決めている。われわれは撤回しろと言っているが。すると、武器についての供与を求められたら、官房長官談話をちょっとこうひねればいい。武器技術供与は安保の効率的運用のために調整を禁止するものではないとまで言っているのですから。武器については武器輸出原則政府統一方針によらないものとするという、談話を書きかえれば武器輸出はできることになる。しかも、試作品、川崎重工のレーザー誘導対戦車ミサイル、これは防衛庁は武器だと言った。これを供与してくれと言った。できることになってきた。論理的にはそういうことですな。念のために申し上げておきます。論理的にはそういうことですな。
  56. 木下敬之助

    木下政府委員 仮定の問題でございますが、防衛庁で現在開発しております中対戦車ミサイルにつきまして技術を供与してほしいという話がありました場合に、これも仮定の問題でございますが、それを供与するということを日本政府が決定いたしまして供与することになってMDAの取り決めでやりました場合に、試作品を出す場合には、武器と該当するようなものでも試作品というものであればそれは供与する中身に入るということが今回の決定の内訳でございます。
  57. 大出俊

    大出委員 これは大変なことで、それならば武器武器技術というのは非常に見分けにくいことでもあり、武器輸出はいまでもできることになる。この許可権は通産省にあるのです。私は内閣法の詰めをこの間いたしましたが、内閣法に基づけば、所管の大臣山中さん、本来これはあなたが閣議案件として閣議開会を求めて閣議決定を求める権限を持っておる。通産大臣、死の商人になるべきでないと私はこの間も、二日の日に申し上げましたが、あなたはほかでいろいろ御発言でございますが、総理おいでになるのだから、明確に通産大臣としての御所見を承ります。
  58. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政府としての見解は、官房長官が読み上げたとおりでございます。したがって、私が申し上げましたことに関する限り中曽根内閣においてそれが守られる、すなわち武器輸出については応じないということでありますから、私は異存はありません。
  59. 大出俊

    大出委員 武器輸出については未来永劫認めない、政治生命をかけて認めない、そして日本は死の商人になるべきでない、経済的な問題を含めましてあなたはそうおっしゃっておいでになるのだが、あなたの見解は変わったのですか。いかがでございますか。
  60. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いま、あなたの見解はと聞かれましたのでお答えいたします。  私は政治家を志した動機をはっきりと二十五年勤続表彰を受けた際の謝辞において、第二次大戦に生き残った人間として亡くなった人々に対する申し開きのできる人生として政治の道を選んだということも申しておるとおり、私の戦後の残された人生と思っておりました道は、ひたすらその自分が生き残ったことの申し開きのできる道を歩いてきたつもりであります。その私の政治信念、哲学は……(発言する者あり)私は真剣に答弁しているのです。ちょっとまじめに聞いてください。したがって、私ということでありますよ、私は、一体戦いとは何ぞや、侵略と言う言わぬは別にして、戦争とは何ぞや。それは、武器と人間とが結合して出ていった場合に戦いになるのです。われわれは憲法のもと、人間が出ることはありません。しかし、私たちはいまここで自分たちの子や孫のことも考え、いまの日本が平和で豊かであると思っているならば、その豊かさ、平和さを残してやりたいというためには、人を殺傷するためにつくられた武器というものを人間を伴わなくても輸出するということ、そのことが私の——少なくとも平和な豊かな日本を子供たちに残してやりたい、そして、いまこの時代の政治家である私が何をなすべきか、何をなしてはならないか、何を残すべきかの選択をしなければならない重大な責任を持っていると思うのです。  ですから、私は武器輸出することは、それを相手の国が使って再輸出しようとしまいとそんなことは関係ありません。政府の過去の答弁も関係ありません。私の信念として、私たちの国を、民族をそういう道に行かないように、せめて武器輸出なんということは絶対しない国が世界に一つぐらいあっていいという決意を私は持っているのであります。それは私です。  しかし、中曽根内閣の通産大臣として、今回の対米武器技術供与についての先ほどの官房長官統一見解がありました、これは私もそれに従った。中曽根内閣の通産大臣でありますからそれに従ったということにおいては、結論は、私の信念は変えておりませんから中曽根内閣においてはという答弁で、私も了承したということであります。
  61. 大出俊

    大出委員 考え方としては私も同感で、私もそう思っております。  そこで、総理に承りたいんですが、一年半もいろいろと意見の食い違いがあった。どうしてこれは閣議決定をなさらないんですか。一片のと言ったら言い過ぎかもしらぬが、官房長官の談話という形で、この間、官房長官は閣議で決定したと言う。決定した文書を出せと言ったら、いきさつは出せませんが文書は出しますと言った。向こうからメモが飛んできた。あわててあなたは、いや実は閣議決定はない、こう言う。御指摘のとおり官房官長談話しかありません、こう言う。そういう不明確なことをこれだけの問題でなぜやるのですか。  内閣法で明確に書いてあるじゃないですか。私は内閣委員会十五年もやっていたんだからよくわかっている。角田さんと議論をすると時間ばかりかかるから避けますけれども、四条で「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」閣議だ。四条ではっきりしている。だから、閣議決定というのは、閣議で決めて行うのが総理の主たる権限なんです。もちろん総理も、ロッキード問題でさんざん司法の世界で議論をされましたが、直接的権限というものがある、あるいは法律に基づく権限がある。が、これだけの問題を、しかも第八条にあくまでもひっかかるが、これをやると議論になりますが、各省でいろいろな争いがあった。それを総理権限で一年半も、鈴木さん答えていますけれども、政治的な判断だといって待てと言った。八条だ、私に言わせれば。  そういう意味で、その場合の処理は閣議だ。閣議で武器輸出はしない、技術供与なんだというふうにあなた方はきちっと決めるおつもりはないのですか。統一見解というのはあなた方の政策、あなたがかわればいつでも変えられる。いかがでございますか。閣議で明確にする気はありませんか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 官房長官声明あるいは官房長官の談話というものは内閣としての政策的意思表示である、このようにお考え願って差し支えないと思います。  私が聞いたところでは、三木さんのときの統一見解あるいはその前の武器原則等は、いわゆる閣議決定とか閣議了解というものを正式にはやっておらないようでございます。しかし、国会におきましていろいろ総理大臣あるいは関係大臣答弁いたしまして、総合的に見て、それは内閣としての正式の意思表示である、そういう意味におきましては内閣の決定である、こういうふうに理解して差し支えないものになっている、このように思います。
  63. 大出俊

    大出委員 中曽根内閣が続く間は武器輸出はしない、この統一方針に基づいて、あなたははっきりそれは御答弁願えますね。まず、それから答えてください。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどの、官房長官がここでお読み申し上げたとおりでございます。
  65. 大出俊

    大出委員 参議院もございますが、武器武器技術の集合体であって、先ほど防衛庁から答弁がありましたように、レーザー誘導の対戦車ミサイルは武器だというふうにこの間の答弁で言いましたが、いつ出ていくかもわからない。したがいまして、私どもは撤回しろと申し上げているんで、この主張は変えません。あくまでもこれは貫きたいと存じます。  そこで、憲法の問題について触れたいんでありますが、瀬戸山さんの文教委員会における答弁を速記を全部起こして読んでみましたが、ずいぶん明確に言っておられますね。新聞の方から先に言いましょうか。だから、新聞はどの新聞もみんなこう書いているんだが、「”自衛隊”認知へ改憲を 衆院文教委 瀬戸山文相が強調」、自衛隊認知へ憲法改正を、こういうわけです。これは東京です。これは毎日ですか、「改憲の必要性示唆瀬戸山文相 自衛隊位置付けで」「自衛隊合憲明確に 文相が改憲論展開」、全部そうです。「九条含め改憲を 文相が積極姿勢」。  この文言を読みますと、「どのくらい軍備をするかということ、」これが常に議論になっている。「これは大いに議論すべきです。」こう言っておいて、「そこまで争われないような」、どこまで軍備をするかとかここまでしかいけないというようなことが「争われないような憲法をつくったらどうかというのが、正直なところ私の希望でございまして、」そういう憲法をつくれ。それから次に、「いま具体的にあります自衛隊を明確にすることができないというところに問題がある。」現に今日自衛隊がある、これを明確にすることができないというところに問題があると言って、次にそういう意味の「年がら年じゅう争いのないようにしたらどうかというのが私の希望でございます。」  つまり、軍備をどこまでするとかしないとかという争いがある、そういうことがないような憲法にしたいというのが私の希望だ。それから、現にある、いまある自衛隊、これが年から年じゅう争いが起こるというようなことのないような憲法にしたい、これが私の希望だ。  そこで質問者の湯山さんが、「改憲論……、まあ者と言えるかどうか、改憲を志向しているというふうにとってよろしゅうございますか。」、「そういう意味において」——いま二つの問題、「そういう意味においては、できれば改めた方がよろしい、こういう立場でございます。」はっきりしていますね、奥野さんが言ったよりもっとはっきりしておる。  そこで瀬戸山さんに、これ速記録でございますから長い御答弁は要りません、速記録を私いま抜き読みいたしましたが、お認め願えますな。
  66. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 速記録に書いてあることは認めます。  ただそこで、私も速記録持っておりますが、憲法九条について、装備をどういうものにするかということの議論をしてはならないというようには私は頭にないのでございますが、そう書いてはないんじゃないかという気がいたします。
  67. 大出俊

    大出委員 お認めになりましたからそれでいいんですが、さて中曽根さん、あなたとの質問やりとりで、私どもの亡き平林書記長質問でございますが、「あなたは憲法第九条の改正を考えているのではないのですか。」総理、中曽根さん、あなただ。「具体的条文に関する個々の考え方を申し上げることは国務大臣として差し控えた方がいい、こう思って一貫して申し上げておるのでございまして、差し控えさせていただきたいと思うのでございます。」あなたは個々の条文を一切言わない。  ところが瀬戸山さんは、装備をどれだけにするかというような議論が年じゅう起こる、そういう議論がないように改正をしたい、九条に触れておられます。それから、自衛隊がいまある、あるんだから、これについていろいろ議論がある、そういう議論のないようにしたい、そういう意味では憲法を改正した方がいい、こういうふうにお述べになっておる。個々の条文に触れておいでになりますね。  総理、どういうふうにこれをお考えになりますか。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は従来から個々の条文について触れることは適当でないと思いまして、そのように言動してきておる次第でございます。  瀬戸山さんの御発言は、いろいろ御質問がございまして、その御著書についていろいろ引用等もありまして聞かれた、そういうところから瀬戸山さんといたしまして御質問にある程度自分の所感をお答えしなければ申しわけないんではないか、そういうお考えに立って問題点を自分として発言をした、そういうお考えであると思いますし、また憲法につきましては一般的に大いに勉強し、論議することが好ましい、そういうお考えがそこに表現されてきているのではないかと私は考えております。  ただ、中曽根内閣におきましては改憲問題を政治日程にのせることはしない、こう言っておりますから、各閣僚におかれてそのような誤解を受けないような、発言を慎重にされるように希望しており、また閣僚もそのつもりで処理しておるものと考えております。
  69. 大出俊

    大出委員 中曽根さん、そういうわけにいかないのですよ。あなたの答弁は、これは岩垂委員に対する答弁ですが、岩垂委員が、「かつて奥野先生が現職の閣僚として改憲問題に触れた御発言をなさって国会で問題になりました。このときに鈴木前総理は、政治家の信念として相入れないことであれば、閣内を去っていただく以外にないという厳しい御発言をなさいました。私は、中曽根内閣の閣僚はそういうことをおっしゃる方々はいないと思いますけれども、しかし万が一そういう場合には、鈴木前総理がおとりになったような毅然とした態度を閣僚に対して示していただけるかどうか、これも蛇足でございますが、承っておきたいと思います。」  本を書いたという、その本の質問があったという、あなたはたくさん書いているじゃないですか。書いているものに対して山ほど質問が出たじゃないですか。それでもあなたは適当でないと、言わないじゃないですか。だから、岩垂委員がここまで聞いた。そうしたら、あなたの答弁はこういうことだ。  「現内閣の閣僚はみんな私と同じ考えを持ち、同じ発言をいたしておりますから、そういう御心配はないと思います。」あったらあなたは鈴木さんと同じような厳然たる措置をとるかと聞いたら、あなたは、「現内閣の閣僚はみんな私と同じ考えを持ち、同じ発言をいたしておりますから、そういう御心配はない」と言ったじゃないですか。これはどうしてくれますか。私どもの党は護憲の党と世の中に言われるとおり、憲法を守ろうとしてやってきた。あなたのこの答弁の責任はどうおとりになりますか、はっきりしてください。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 瀬戸山さんの御心境につきましては瀬戸山さんにお聞き願いたいと思いますが、私がそのように申し上げましたことは、内閣の閣僚の諸君には遵守していただけるものと考えております。
  71. 大出俊

    大出委員 あなた、瀬戸山さんのおっしゃっている二点、自衛隊の認知、九条改正、陸海空三軍にするということですよ。そうすれば、ある意味では装備をどこまでという争いもないでしょう。このお考え方に同調しておられるのですか。御賛成なんですか。いかがですか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は行政権の一番の最高の責任者にあるものでございまして、私の考えに各閣僚は同調して慎重に発言をしてもらえるものと考えております。  瀬戸山さんの場合は、いろいろ御著書を引用になり御質問がありまして、そういういろいろな御議論の末に一般論として、ただいま申し上げましたように、いろいろ議論をして国民の皆さんの間に理解を深める、そういう趣旨で申し上げたものと考えております。
  73. 大出俊

    大出委員 あなたは総理としてといまおっしゃいましたね。あなたの亡き平林書記長に対する御答弁は、いいですか、「具体的条文に関する個々の考え方を申し上げることは国務大臣として差し控えた方がいい、」こうあなたは答えた。総理と言っているのじゃない。「国務大臣」。そして「現内閣の閣僚はみんな私と同じ考えを持ち、同じ発言をいたしておりますから、そういう御心配はないと思います。」はっきりしているのです。いかに著書があらうと、あなただって著書もいろいろあるじゃないですか。いっぱい質問出たじゃないですか。鈴木さんが言ったように、あなたがここでここまで言い切っているのになお閣僚が発言をする、許しがたい、閣内を去るなら去っていただくなり、あなたが瀬戸山さんの意見に同調するんだとおっしゃるなりはっきりしてください。それまで私は質問できない。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げているように、中曽根内閣としての考え方は私の方針で一貫しております。瀬戸山さんの御発言について誤解を受けるようなことがもしあったとすれば遺憾に存ずる次第でございまして、以後よく慎重にやっていただくようにいたす所存であります。
  75. 大出俊

    大出委員 それだけじゃ事は済まない。「現内閣の閣僚はみんな私と同じ考えを持ち、同じ発言をいたしておりますから、そういう御心配はない」、あなたは言い切ったじゃないですか。あったじゃないですか。そういう口先だけじゃ困る。大変危険な憲法に対する考えをお持ちだとわれわれは思うから、今日までこんなにたくさんの人が聞いてきている。持ち時間の半分も使って聞いた人もいる。この点を明確にしてください。全面的に取り消すなり、あなたが同調だとおっしゃるならそのように、そうでないとおっしゃるなら、あなたの責任で鈴木さんと同じような御措置をお考えください。
  76. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 大出さん、どうでしょうか。私はこの間の文教委員会で、湯山さんからの御質問は、憲法と教育基本法との関係からいろいろ私の考え方を聞かれました。その際に、私が党の憲法調査会長をしておりますときに書きました一般論、憲法問題に対する理解をしていただきたいということで、いろいろな意見が御承知のように世間にありますから、そういうものを含めて、妙な言葉でありますけれども憲法を論じ語るというやさしい本を書こうということで書いた本を持ってみえまして、「改憲論語」ということでございますが、それにあるものをそこで引用しながら聞かれますから、書いてあることをそれはうそを書いてあると言うわけにはまいりません。  そこで、その前に、いまのお話でちょっと私がどうしても大出さんの御質問で理解できない点がありますので、そこのくだりをちょっと読んでみましょう。  前からずっとあるわけでございますが、湯山さんの問いに答えまして、「湯山さんとは立場が違って考えが違うかもしれませんけれども、憲法九条はすばらしい規定であります。日本は絶対戦争をしてはならない。しかし、何かされたときに黙っておるわけにいかないというのが、生物の本能といいましょうか、どこの国でもそういうふうにしてありますが、その備えができるかできないかという議論をしておる。こういう国は世界じゅうにない。どのくらい軍備をするかということ、これは大いに議論すべきです。」さっき、そういうのは議論してはいかぬと言ったというように言われた。ちょっとおかしいのですが、「軍備を膨大にしてよくなる国は私はないと思います。」こういうくだりがあるのでございます。  先ほど申し上げましたように、中曽根内閣の姿勢とどうだというお話でございますが、実はこれは文部大臣としてこういうことを私は考えておりますという趣旨で申し上げたわけではございません。弁解するわけじゃありません。先ほど申し上げましたように、憲法と教育基本法、現在の教育が乱れておりますから、それに関係して湯山さんの御質問に答えて、憲法はすばらしい憲法である、また、それを教育基本法によって教育しなければならないということもすばらしい考え方であると思います、こういう問答の末に、先ほど申し上げましたように「改憲論語」を引用していろいろお話しになりますから、こういうくだりになったのであります。  それから、つけ加えておきますが、私が実は中曽根内閣に入って協力しろと言われたときに、その後間もなく——私は憲法調査会長として憲法を党内で議論いたしておる。それで、いまお話しのように本も出しております。これは世間の国民の皆さんのいろいろな議論がありますから、憲法というものは国の基本であるし、国民生活の根本的な基準でありますから、それが根底から常に議論されておるということはいかにも残念である。でありますから、できれば国民の総意によって余りそう争いのない憲法というものができないものかというのが私の念願でありまして、そういう趣旨のことを本にも書いてあるわけでありますが、そういうことがありますから、内閣に入りましてから間もなく中曽根総理大臣に会いまして、中曽根総理大臣の現行憲法に対する所感と考え方をお尋ねしておきました。といいますのは、現にただいま起こっておりますように、国会において憲法論議が、総理大臣と閣僚との関係でそごいたしますと大変皆様に迷惑をかけますし、国民の皆さんに誤解を生ずるおそれがありますから、そういう考え方で中曽根総理大臣に、私は憲法調査会長をしてかくかくであるが、総理大臣のお考えを聞いておきたい、こういうことで確かめた。  その際おっしゃった。私と全く同じだったのですけれども、現在の憲法の平和主義、日本は絶対平和の国でいかなければならないという意味の平和主義、これは憲法が貫いております。まず平和主義を守ること、それから自由主義、それから民主主義、これは主権在民と言われておる、この原則。それから、第三章に細かく規定がしてありますように、いわゆる国民の基本的人権の尊重、こういうすばらしい大原則を、われわれはこの憲法を考えるについて守っていかなければならない、そういう趣旨で、それを基本にして、憲法にいろいろ議論があるからこういう問題を考えていくということは差し支えないと思う、私はそういう基本でいきたい。しかし、中曽根内閣では、現在の憲法を改正するという提案をする考えは全然ない、こういうお話でございまして、また、そういう簡単なものじゃありません。私も全く同感でありますから、私もそういう立場で今後いきたいと思う。これは内閣に入りまして間もなく、ここに総理大臣おられますけれども、総理大臣考えを聞いておかなければ誤解を受けちゃいかないということでそこまで念を押しておりますので、決して現在の中曽根内閣が改憲に乗り出そう、こういう考えであるということでないということをよく承知しておりますということだけを御理解いただきたいと思うのです。
  77. 大出俊

    大出委員 いま瀬戸山さんが総理にお目にかかって話した、私と同じであったと言うのですが、中曽根さんも、いま瀬戸山さんがおっしゃったこの議事録にありますようにお考えでございますか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま文部大臣が申されたことはそのとおりでございます。閣僚に任命されまして間もなく、いまのような問答がございました。  趣旨は、いまの憲法にはすばらしいところがあるんだ、いま申し上げた主権在民とか、民主主義、自由主義、あるいは基本的人権の尊重、あるいは国際協調主義、こういうすばらしい原則は守っていかなければならぬし、また、中曽根内閣において改憲問題を政治日程にのせることはしない。ただ、憲法問題について国民の皆さんが大いに議論をし、勉強をし、あるいはこれを見直す、そういうところまでわれわれは抑えるわけにはいかない。国民皆さんがそれを勉強し、見直し、あるいは論議されるということはこれは差し支えないことである、そういうことを申し上げた次第でございます。
  79. 大出俊

    大出委員 私が聞いたのは、瀬戸山さんのいまの話の中に瀬戸山さんの持論である——ここにも書いてありますが、私がさっき言ったのといまの説明、瀬戸山さん何も変わっていない。その備えができるかできないかというような議論、これを年じゅうやっている、軍備をするとかしないとか、それは大いに議論すべきだが、そういう争い、そういう議論が行われている、だから、そういう議論のないような憲法にしたいというのが私の希望だと言うのだから。そうでしょう、あなたお認めになっているじゃないですか。憲法を改正しようというのじゃないですか。しかも、具体的にある自衛隊を明確にすることができないというところに問題がある、だから、これも明確にしたい、こう言うのじゃないですか。そういう意味では改憲論者かと聞いたら、そういう意味では憲法を改めた方がよろしい、こう思っているとあなた答えているじゃないですか。何も変わっていない。  だから、私が明確にしたいのは、総理がここまで明確に答えたのだから、あなたの閣僚に個々の条文に触れて物を言う人はない、憲法改正、そっちを志向しているということを言う人はない、あなた責任を持った。だから、そこが心配だから質問者は聞いているんだから、あなたはないと言ったがあったのだから、その責任を総理はどうとるか。瀬戸山さんが全面的に取り消すのか、それとも総理は瀬戸山さんの意見に同調してここで同じことを言うのか、そうでなければ鈴木前総理が言ったような措置をお考えになるのか、はっきりしてくれと申し上げている。決着かつかぬじゃないですか。  総理に承りたい。——あなたの話は聞いた、長い話を。だめだ。これは総理答弁を聞いているのだからだめ。あなたの長い話は聞いた。何分あなたはしゃべっているのだ。それはだめだ。(発言する者あり)
  80. 久野忠治

    久野委員長 瀬戸山文部大臣の答弁を求めます。
  81. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 委員長から御指名がありましたから、ひとつお許しをいただきたい。委員長から御指名がありましたから。  先ほども申し上げましたように、湯山さんから本を引用していろいろそう書いてあります、そういうことですということでありまして、そういうことも議論ができないのでしょうか。向こうから聞かれたら、いや、そんなことは書いておりませんと言うわけにはまいらないということです。でありますから、その意味においては改憲論ですかと言うから、そういう意味においては改正というか、そうなればそれを希望しております、こう答えておるのは、そういう意味でございます。
  82. 大出俊

    大出委員 中曽根さん、あなたもいままでたくさんの資料が皆さんから持ち出されて、中曽根さんが総理になる前にいろいろ書いたり言ったりしておられるでしょう、それをあなたは聞かれて、一貫してお答えにならない。個々の条文については国務大臣として言うべきでないと考えていると。だから、ほかの閣僚が言ったらどうするかと聞いたのです。そうしたら、中曽根内閣の閣僚はみんな私と何じ考えを持ち、同じ発言をいたしておりますから、そういう御心配はない、そう答えたじゃないですか。それはいろいろな人が本を書いてますよ。あなただってそうじゃないですか。それをあなたははみ出したことをおっしゃる。あなたの内閣方針は個々の条文に触れて物は言わない、そういう方針でしょう。言ったじゃないですか。そこをどうするかというのだ、私は。はっきりしてください、そこを。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文部大臣がいま釈明申し上げましたように、その本についていろいろお引かれいたしましたので、その本についての見解を申し述べた。それは文部大臣という立場からという問題よりも、むしろその本の流れの中の話としてそれは出てきておるのでございまして、その点は御理解をいただきたいと思うのです。  なお、先ほど来申し上げますように、誤解を与えるようなことがあってはいけませんから、今後は慎重にしてもらうつもりでおります。
  84. 大出俊

    大出委員 それじゃ、いまのこの瀬戸山さんの発言は本についてということだ、したがって、「現内閣の閣僚はみんな私と同じ考えを持ち、同じ発言をいたしておりますから、そういう御心配はない」、自今そういうことはあなたの内閣の閣僚から出てくることはない、責任をお持ちになりますか。明確にお願いできますか、今度は。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのようによく注意をして、慎重を期してまいりたいと思います。(発言する者あり)
  86. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。
  87. 大出俊

    大出委員 国会というのは言論の府でございますから質問は自由に、これは皆さんの方だってずいぶん差しさわりのあることをおっしゃるのだから、そういう意味で不適当だと思いますが、やじでございますから聞き流すことにいたします。  次に、残り時間わずかになりましたが、通峡阻止問題に関して承りたいのであります。  この統一見解を読みますと、原則ノーだということであるとしても、中東で米ソ戦争が起こった、ウラジオストクからソビエトの艦船が潜水艦を含めて宗谷海峡を通る。さて、有事が迫っているという判断を時のこの国の政府がした。そういう場合に、アメリカが海峡封鎖をしたい、こう言った。その場合に認めることがある、こういうことになりますな。  総理、いかがでございますか。これは総理答弁だから。
  88. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御答弁申し上げます。  中東とか、わが国の安全と直接関係がない事態との関連で通峡阻止をアメリカがやろうとした場合に、これはノーであるということは総理が御答弁になられたというふうに記憶しております。したがいまして、この見解に書いてありますことは、あくまでもわが国の安全というものに非常に直接密接に関連がある場合についての最終的な判断は留保しておく必要があるであろう、それを念頭に置いたものであるというのが二の(二)に書いてあることでございます。
  89. 大出俊

    大出委員 つまり、二の(二)というのは、何の前提も置いてはいない。つまり、武力攻撃が発生していないが、周辺にいろいろなことが起こっているという場合を想定しているわけですから。  そうすると、その中には、アメリカの対ソ戦略の中心である中東でということが、アメリカのいままでの対ソ戦略の中心であり、同時多発的報復戦略という考え方ですから、そういうことだってあり得るわけでありまして、否定はできない。つまり、アメリカが単独で海峡封鎖をやる、その場合にイエスと言うことがあり得る、こういうことになります。  さて、宗谷海峡でございますが、この間私ちょっと申し上げましたが、米軍が、これはアメリカの太平洋軍司令部などが言っていることといって書いてあるのを読みますと、時間がありませんから詳しく申し上げませんが、アメリカの海空共同で宗谷海峡を封鎖するとすればする。その場合に、国後、択捉島には天寧、東沸という基地があります。ソビエトの航空基地であります。それからいろいろなソビエトの基地を挙げておりますけれども、一例を挙げますと、ドリンスクソコルB、ノボアレハンドロフスクC、ユジノサハリンスクC、コルサコフC、ユジノサハリンスク南C、こういうサハリンにあるソビエトの航空機の基地、これをたたかなければ海峡封鎖ができないというのは常道でございまして、かつての制服の統幕議長をおやりになった皆さん等々がたくさん書いております。  つまり、アメリカが単独で宗谷海峡を封鎖するとなると、どういう現象がそこに起こるか。ソビエトのいま挙げたような基地をたたく、そうしなければ封鎖はできない。その点を防衛庁、一体どう考えますか、谷川さん。
  90. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 海峡封鎖を行う場合に、一般的に申し上げて制空権と申しますか、航空優勢が重要であるということは御指摘のとおりだと思います。アメリカが個々の場合にどういうような態様に応じた行動をとり、その一環として通峡阻止ということを行うのかということ、そのときそのときの事態によって千差万別でございましょうし、一概にどういうふうな行動をアメリカがとるであろうということを申し上げるのはなかなかむずかしいのではないかというふうに思っております。
  91. 大出俊

    大出委員 それはだめですよ。アメリカに単独封鎖を認めるという余地を残した統一見解なんだから、その場合に、アメリカが宗谷海峡を封鎖するといったときにどういう現象が起こるかということを想定しないで余地を残すのですか。そんな無責任な話がありますか。あなたの方のこの間まで統幕議長をやっておられた竹田さん、宗谷海峡で航空優勢の確保ができるかという、これに対して、宗谷海峡では確保はできないと思いますとはっきり言っている。航空優勢確保なきところに、いまおっしゃったとおりだ、海峡封鎖はできない。なぜ航空優勢が確保できないか。天寧、東沸から始まって、サハリンに七つも八つものソビエトの大きな航空基地があるからでしょう。四十五キロしかないのだから、向こう十二海里、こっち十二海里、そうなると真ん中がわずか公海ですよ。ソビエトの領海まで、しかも公海まで封鎖するのだから。当然相手の国の領海を封鎖するのだから、船は向こう側、サハリンの側を通るのだから、当然たたかなければこれは封鎖できないじゃないですか。そのことは一体どうなるかということを想定なしにこの統一見解を書いたのですか。  総理、はっきり答えてください。そんな無責任なことありますか。
  92. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 統一見解の二の(二)に書いてございますように、この見解はあくまでも理論的な可能性の問題としてのものでございまして、具体的な特定の海峡との関連でいろいろ御議論いただくことは必ずしも適当でないのではないかというふうに考えます。  いずれにいたしましても、ここに明確に書いてございますように、「わが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合において、そのような米側要請に応ずることがわが国自身の安全の確保のためぜひとも必要と判断されるような可能性」ということでございますので、これは、あくまでもわが国自身の安全を確保するために、そういう最終的にアメリカの通峡阻止同意する余地を極限の状態としては残しておくというのがこの見解の趣旨でございまして、先ほどの大出委員のような御質問の場合に、これは日本がイエスと言うということを言っているのだというふうに御理解いただくのは、必ずしも適当ではないのではないかというふうに存じます。
  93. 大出俊

    大出委員 日本の安全にとってこれは大変に重大なことである、だから、日本の安全を考えてアメリカの単独封鎖を認めるということになるのではないですか。その余地を残したということになるのではないですか。だから、日本の安全のためでいいですよ。アメリカに単独封鎖を認めた、どういうことが起こるか、その想定なしにこれは書いたのですか。それならこれを撤回してくださいよ。  どういうことが起こるのですか。いまあなたがおっしゃるとおり、ここに書いてあるとおり、日本の安全のためにといってアメリカに単独封鎖を認めた、具体的に言うと宗谷海峡、どうなりますか。相手の基地をたたかざるを得ないじゃないですか。航空優勢は確保できないと前統幕議長は明確にしているじゃないですか。たたいたらどうなりますか。明確に戦争じゃないですか。しかも、日本の領海があり、ソビエトの領海があり、真ん中がわずかに公海である、これを封鎖する。日本同意しなければできないじゃないですか。答えてください。明確に戦争でしょう。
  94. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカからそういう要請があったときに、わが方が応ずることについての事態というのはきわめて千差万別であろうと思います。いずれにしても、わが国の安全にとってそういうことが必要であるというふうな場合が全く否定できないという意味で、理論的な可能性として申し上げたので、そういうふうに理解してもらいたいと思います。
  95. 大出俊

    大出委員 理論的な可能性として逃げておくということでしょう。これは統一見解にならぬじゃないですか。理論的な可能性なら、さっきの武器輸出だって理論的可能性じゃないですか。そういう逃げ方はよくありませんよ。これは統一見解の価値がない。  それだけ申し上げて、きょうは総括質問でございますから、これで終わります。
  96. 久野忠治

    久野委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次に、坂井弘一君。
  97. 坂井弘一

    ○坂井委員 アメリカに対します武器技術供与の問題をめぐりまして幾つかの論議があったわけでございますが、それらの論議を踏まえまして、整理をしながらお尋ねをいたしたいと思います。どうか的確な、また簡明な御答弁をお願いをいたしたい。  最初に、総理にお伺いしたいのでありますが、先ほど、山中通産大臣御自身の信念としてということで、わが国は将来にわたって武器輸出国になるべきではない、御自身の信念を述べられたわけでございます。  そこで、振り返ってこの問題を考えますと、いわゆる武器輸出原則、これを遵守してきたという歴代内閣のこの政策あるいは方針というものは、やはり私は、憲法の平和国家の理念、つまり国際紛争を武力でもって解決はしないという憲法上の平和国家の理念の一つのあらわれとして、武器輸出原則あるいは政府統一見解というものによって、事実上日本武器及び武器技術輸出はしないという政策、方針を貫いてきた、こう思います。  そういう中で、先ほどの武器そのものについては山中大臣の信念として将来にわたって輸出すべきではない、こう述べられたわけでございますが、今度は中曽根総理の御自身の信念としてお伺いをしておきたいと思います。つまり、私は武器につきましては、アメリカを含め世界のいかなる国に対してもわが国輸出すべきではない、このことは将来にわたってそうあるべきである、そう思いますが、総理はどうお考えになるでしょうか。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来官房長官政府考えを申し述べましたとおりでございまして、国会決議を尊重し、また、アメリカとの場合におきましては、日米安保条約の効果的運用等の関係から特別の取り決めのもとにおいて技術について認める、そういう措置を認めたということでございますが、武器輸出に関しましては、これは共同生産も否定しておるのでございまして、山中通産大臣の所見は山中通産大臣の人生体験に基づく貴重な信念であると思います。この個人的信念はそれなりに価値のあるものと思いますが、行政府全体、内閣全体の考え方ということになりますと、やはりこれは先ほど申し上げましたような見解に沿って内閣としての姿勢を持っていきたい、そう考えておる次第でございます。  武器輸出に関しましては、中曽根内閣に関する限りは従来の方針を修正する必要はない、そういうふうに申し上げたとおりであります。
  99. 坂井弘一

    ○坂井委員 私は、武器輸出三原別に基づく、つまりその精神、わが国武器輸出国にならないとする趣旨、これを踏まえてみますと、これは単なる一つの政策というようなものではなくて、つまり時の政権によってあるいは時の情勢によっていかようにも政策の変更ができる、そのようなものではなくて、まさに非核三原則、後ほど触れたいと思いますが、それにも匹敵するような、つまり国是ともいうべき、それくらいの重みのある政策だろうと私は思う。したがって、あえてここで総理御自身の同じように信念としてお伺いしておきたい。  中曽根内閣においてはと、こうおっしゃるのだが、しかし、総理のお気持ちは、将来にわたって日本武器輸出国にはなるべきではないという信念をお持ちかどうか、それをお伺いしているわけであります。もし、そうでないとするならば、次の政権において武器輸出ということに踏み切る、そういう政策判断をする場合も、それはあり得てもいたし方がない、そういうお考えなのか、それともそうではなくて、やはり将来にわたって武器輸出国に日本はなるべきでないというのが山中大臣と同じく私の信念である、こう言われるのか、そこを聞いているわけであります。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、平和憲法の持っておるこの平和的精神あるいは国連憲章あるいは日米安保条約にも盛られておりまする平和擁護の精神、そういうものはあくまで堅持してまいりたいと思っております。これが基本的な考え方でございますが、日本の防衛上の問題につきましては、日米安保条約という特別の協定を結んで日本の防衛を確保しておる。そういう観点から、ただいま申し上げましたような措置を行政府方針としてとってきた。いままで武器輸出原則あるいは統一見解というものも、これは政府方針でございます。先ほども申し上げましたように、いわゆる閣議決定とか閣議了解というやり方はありませんが、政府として方針を決めまして、国会で正式に言明しておる政府方針でございます。  ただいまの武器輸出の問題につきましては、これはやはり中曽根内閣としての方針として申し述べました。平和精神を堅持しつつ、そういう方針を運用していくという考えに立っておるわけであります。
  101. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理御自身の信念としてはなかなかお述べになれないようでございます。  それでは伺いますけれども、将来にわたって日本武器輸出国になるべきではない、仮にそのような政策判断中曽根内閣が持つとするならば、それはまあ次の政権といいますかに対して、その政権の行政権の範囲内といいましょうか、つまり政策を変更する一部修正権、変更権まで拘束してしまうおそれがあるから、将来にわたってというところまでは私は言えないのだ、しかし、気持ちとしてはやはり武器輸出はすべきではないのだ、こういうことなんでしょうか。そこら辺をもう少しわかりやすく御説明をいただきたい。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げましたように、現在の平和憲法の持つ基本的精神、平和主義の原則、そういうようなものはあくまで堅持してまいるつもりでございますし、また、戦争経験を経ました私たちの世代におきましては、もう戦争ぐらい愚劣なものはない、こういう悲惨なものは二度と繰り返してはならぬというのは肝に銘じておるところでございます。そういう点においては山中通産大臣、私も同じような経験をしてまいりまして、そういう考え方においては一致しております。再び日本を戦場にしてはならぬし、ああいう戦争のような愚劣な中へ日本を巻き込んではならぬ、これは私たちの個人的な、政治家としての信条でございます。  ただ、それをどういうふうに具体的に確保していくかという問題になりますと、やはり日米安全保障条約というものを片っ方に控えて日本の安全を守ろうという立場を自民党政府あるいは自民党は持ってきて、それでいままで平和は維持されてきている実績もあるわけでございます。そういうような考えに立って、日米安全保障条約によるアメリカとの提携というものは、われわれの内閣の基本線の一つでございまして、この基本線はやはり守っていかなければならない。  しかし、武器輸出につきましては、中曽根内閣に関する限りは、ただいま申し上げましたような考え方を貫いてまいりたい。しかし、次の内閣あるいは次の時代の自民党まで一内閣が拘束する力は持っておるべきではないし、情勢がどう変化するかということもわかりません。しかし、中曽根内閣に関する限りはそういう考え方で進んでいく、そういう考えに立って、自民党の将来やあるいは次の内閣あるいはいろんな状況変化が起きた場合のときまで、いままで想定できないような問題も起こるかもしれませんから、そういうときまで一内閣が縛っておくということは越権である、そういうふうに考えて、ただいまのように申したわけであります。
  103. 坂井弘一

    ○坂井委員 安倍外務大臣、あなたの信念もひとつお聞かせください。私は先ほどからるる申しましたように、やはり山中大臣と同じ考えに立つものでございます。将来にわたって武器輸出国に日本はなるべきではない、こう思いますが、安倍外務大臣としてはどういうお考えをお持ちでしょうか。
  104. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も総理や通産大臣と同じように戦争体験を持っておるわけでございますから、そういう意味においては、二度と戦争をしてはならないという信念は持っております。しかし、今日のこの日本の現状、今後の日本の平和、安全確保という面からすれば、先ほど総理答弁をいたしましたように、日米安保条約というものが現実に日本の安全と平和を確保しておる、そういうふうに考えるわけでございます。これを効果的に運用することがまた現実的に政治の責任である、そういうふうに存じております。  私は、外務大臣といたしましては、先ほど官房長官が申し上げましたような政府統一見解に従ってこれを進めていくべきである、こういう考えであります。
  105. 坂井弘一

    ○坂井委員 一つ伺っておきますけれども、アメリカから艦船、軍艦あるいは軍艦に準ずる艦船としましょうか、そうした艦船の建造を日本要請があって、それをアメリカに貸与もしくは供与してもらいたい、こういう要請があったときは断りますか。
  106. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 政府見解にございますように、武器そのもの輸出についての従来からの方針に何ら修正を加える考えはないというのが政府見解でございますから、その見解に従えば、武器輸出に該当するようなものは認められない、こういうことだろうと思います。
  107. 坂井弘一

    ○坂井委員 中曽根内閣においてはそれは断る、こういうことでしょうか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま条約局長答弁しましたような案件に該当する場合には、もちろんそのようにいたすものでございます。
  109. 坂井弘一

    ○坂井委員 では、具体的にお尋ねをしてまいりたいと思いますが、今回アメリカに供与をするのは武器技術ということでございますから、汎用技術についてはMDAによって米国供与するというようなことはあり得ませんね。念のために確認をしておきたい。
  110. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 官房長官談話は、御承知のとおりに、武器技術について供与の道を開く、その関連におきまして三原則によらないということを決めたものでございます。  そこで、武器技術についてはMDA協定の枠組みの中でこれを実施するということでございまして、この前提にありますことは、御案内のように、汎用技術につきましてはそもそも三原則あるいは政府方針の対象外でありまして、したがって、当事者間で合意ができれば、その汎用技術の第三国と申しますか外国に対する供与は、これは自由である、こういうことが現行制度上の前提になっておりまして、武器技術については三原則が適用になるのでそれを例外的に外す、外したものについてはMDAに乗せて供与をする、こういうのが基本的な考え方でございます。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 汎用技術はMDAでは出せませんね、こう言っている。
  112. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 法律的に出せないということはないだろうと思います。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうすると、MDAでアメリカに供与する技術は、武器技術だけではなくて汎用技術も出すのですね。
  114. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 基本的には武器技術に限定されるだろうと思います。それは先ほど私が申し上げましたように、汎用技術についてはそもそも三原則の適用外のことでございますから、これはもっぱら当事者間の取引、商取引に任せられる、そういう意味でMDAの枠組みの中には本来乗ってこないだろうと思います。  しかしながら、私が先ほど若干の留保を申し上げましたのは、物によっては、これは非常に観念的なこととして申し上げておるわけでございますが、武器専用すなわち武器技術というものと汎用技術というものとが非常に組み合わさった何かシステムのようなものがありましたときに、そのシステムを全部分解いたしまして武器技術の部分だけについてMDAの枠に乗せるのか、あるいはそういうシステム全体のものとしてMDA協定の枠組みの中に乗せるのかということは、これは現実にそういう案件が起こってきたときにいずれが、どうするのが適当かという判断の問題だろうと思います。協定上、それは絶対に汎用技術をMDA協定で乗せてはいけないということはない、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは大変注目すべき重要なことをいま御答弁いただいたと思います。基本的には武器技術だけれども、やはりそこには汎用技術の部分も武器技術に付随して米国供与されるということが実際的、実態的には行われるということだろうと思います。まさに、これは後で触れたいと思いますが、武器技術であるのか汎用技術であるのか、技術を二分して右が武器技術でございます、左は汎用技術でございます、こういう立て分け方は至難であろう。これは前回の当予算委員会においても申し上げたとおりでございまして、私はいろいろな専門家の皆さんの御意見をずいぶん伺ってまいりました。そういうことを踏まえながらお尋ねを順次してまいりたいと思います。  いまの御答弁を踏まえまして、しからばお尋ねをいたしますが、MDAによりまして米国供与した技術というものは、必然的に武器技術と、それは汎用性のある技術も含めて武器技術ということに認定されると私は思います。つまりそのことは、米国に一たん供与した枝術は武器技術であって、それはもはや米国以外にはわが国輸出はできないということになると思いますが、お答えをいただきたい。
  116. 木下敬之助

    木下政府委員 ただいま条約局長から御説明申し上げましたのは、一つのシステムとして供与する場合に、その中にたまたま汎用技術的なものが入っている可能性があり得る、そういう場合にはそこを考慮するかもしれないということでございますが、その汎用技術だけを取り上げてみまして、それを日本の企業が他の国に普通の民間技術として出すというようなことがありました場合には、それは全く別の問題で、可能になるというのが普通ではないかと思います。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、アメリカに供与した武器技術の中で、汎用性のある技術についてはそれを取り出して、そしてアメリカ以外の国に輸出するということは可能だ、こういうことですね、確認のために。
  118. 木下敬之助

    木下政府委員 具体的な事例を見なくてはわかりませんが、一応可能かと私も考えます。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 ちょっと教えていただきたいのですが、防衛庁がいまお持ちになっておる、つまり特特権を有しておる三百三十二件の技術がございますね。前回もお尋ねしたわけでございますが、この防衛庁が持っております三百三十二件の技術の中に、これは武器技術だという技術はありますか。あったら例示的にこれとこれとこれとこうだ、あるいは特許登録番号でも結構です。
  120. 冨田泉

    ○冨田政府委員 前回もこの委員会でお尋ねになりまして、そのときには、三百三十二件の内容を武器技術とそうでないものとに分けてみるというお話でございまして、それは大変むずかしいことだとお答えを申し上げましたが、確かに武器技術であるかどうかということは、最終的にはその事態が起こったときに通産省の御判断に従うということになろうかと思いますけれども、特許の中では、その特許請求の範囲というところでその技術の内容が規定されておりまして、内容的には方式のものであるとかあるいは具体的に品名を固定したものであるとか、そういったことで大変判断がしにくい、分けにくいということがございます。武器技術は、そもそも輸出貿易管理令の中で武器というものが指定されておりまして、それの設計、製造、使用にかかわる技術ということでございますから、それに直に該当するかどうかということは、特許の請求の範囲というものと照らし合わせて判断しなければならないということがございます。  お尋ねのように、例示をしてみろというようなことでございます。中には一見確かに武器そのものであると思われるようなものもございます。ございますが、その特許請求の範囲が確かに武器技術になるかどうかということは、その特許請求の範囲がその設計とか製造とか使用とかについて規定してあるかどうかということになりますので、これもまた大変むずかしいところでございます。  ごく一例といたしまして、御理解をいただくために、たとえばということでこういうものがございますが、戦車砲の照準方法及びその装置という特許がございます。これはただいまの七四式戦車に使っているものでございますけれども、戦車砲を自動的に照準いたしまして正確に命中させるというための方法と装置ということでございますので、これなどは武器あるいはその方法についての武器技術であろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、内容についての通産省における御判断ということが必要になる案件だと思っております。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 通産省、またこんな判断を求められたら大変困るのですね。ほとんど汎用技術だろう、こう私は思っておるのですが、防衛庁が持っておる三百三十二件の技術を武器技術とそうでないものに分けてくださいと言ってもお答えがなかなか分けられない、非常に困難ですね。ほとんど汎用性のものが多いわけです。これが武器技術かというのはいま一つ出ましたが、たとえば前回も申し上げました東京電気化学に防衛庁が委託開発しました例のフェライト、電波吸収塗料、これは汎用技術だ、こう前回言われたわけですね。そうすると、同じく川崎重工、これも防衛庁の委託で研究開発しましたレーザー式の対戦車ミサイルの技術、これは何だろうかと聞きますと、全体としてはまず武器技術だろう、こうおっしゃった。だから、この二つはどうやら一方は汎用技術であり、一方は武器技術だ、こんなことだろう。では、残りの三百三十件の技術をひとつこの二つに分けてくださいよと申しますと、これはなかなか困難だよ、こうおっしゃる。  では、アメリカに供与しますと今回約束した武器技術とは一体何なのか。供与する武器技術を持っているのはわが方なんです。わが日本政府が主体的に判断をして、これは武器技術である、これは武器技術でない。もし、アメリカから提供要請があれば、これは武器技術なのだから検討の対象になる、しかし、これは汎用技術だからだめだよ、こういうことがわが方で主体的に振り分けができなければ、一体だれか決める。アメリカさんに決めてもらうのかということになるのでありまして、通産省これを判断しろと言ったって、ずいぶん困ったことだなと実は私は思います。これはなかなかお答えが出ないでしょうから、こんなことで押し合っておりますと、とても前に進みそうにありません。  ちなみに、防衛庁が民間企業に対しましていろんな委託をしておりますね。試作費あるいは技術研究調査委託費、かなりな額が出ております。つまり、そういう国費をもって民間に開発さした技術、こういう技術の提供要請が恐らくやアメリカからあるであろうと想定されますが、その場合に、これは国が金を出しておるから民間が嫌だと言ってもそうはいかぬぞ、かなり権力的と言っては語弊があるか知りませんが、せっかくアメリカから強い要請なんだから、そうは言わずに、国が金を出して開発させたんだから持っていらっしゃい、まして、その特許権は防衛庁なら防衛庁にあるんだからというようなおそれはありませんか。通産大臣、どうですか。
  122. 山中貞則

    ○山中国務大臣 武器技術の範囲はたびたび申し上げておりますから繰り返しませんが、いまその技術の認定という問題でお話しになっているようであります。防衛庁の答弁で、あとは通産省の御判断にまつところであるというような答弁がありましたが、これはやや見解を異にいたします。  防衛庁は、国家の省庁としての、機関としての特許権を国にかわって持っているわけでありますから、今回の技術については、武器でない範囲においてアメリカに提供することは無条件で提供することが前提になるわけであります。  問題は、いまお話のあった後段の、民間の全く無関係のものは全く民間の意思、当然のことでありますが、商売がそれでうまくいくと思えば出すでしょうし、うまくいかなければ断る。現にこの間お話ししましたように、US1、これは防衛庁の話ですが、入りまじってしまいますけれども、売ってもいいということになったけれども、買い手がない、値段が折り合わぬということが現実にあるわけです。  したがって今度は、では開発研究費というものを出している場合にどうするか。そのことは私としては、国の方が開発研究あるいは委託費等を出している場合に、当然ながらそれが国に特許権として帰属すべきものはしていると思うのですね。もとは防衛庁もそうじゃなかったのですが、私のときに、全部それは国に帰属せしめようということで、特許権がいまのような数になっているわけです。通産省の方は、本来自由な民間の企業の力というものを助けていく、そして日本の産業が立ちおくれないように国も援助していくという立場でありますから、そのような場合に、回が委託費を出していることにかこつけて、アメリカの要請があるから、その委託費によって製造されたものについて、それを武器技術で出しなさいということは、通産省のいままでの姿勢からしても、これから先も強要することは絶対にありません。やはり民間の意見を尊重していきます。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 アメリカに供与した武器技術が生のまま第三国に移転するということは可能でしょうか。またこの場合、すべてことごとくMDAの事前協議の対象になりましょうか。お答えは的確にいただきたい。
  124. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の政府としての方針に基づきまして、米国に対する武器技術供与を行う場合には、日米相互防衛援助協定、MDAの第一条第一項に基づきまして細目取り決めを締結して、その枠内で行うというのが基本的な考え方でございます。こうした細目取り決めに基づく協力には、当然このMDAに基づく権利義務関係が及ぶわけでございます。  同協定第一条四項の規定に基づき、米国政府は、細目取り決めに基づいて供与される技術を、わが国政府の事前の同意を得ないで他の政府に移転しない義務を負うことになりますので、米国が勝手に第三国政府に移転するような懸念は全くないわけでございます。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 全部MDAの一条四項、事前協議の対象になりますね。その中でイエスと言うものも中にはある、こういうことですね。
  126. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 武器技術については、アメリカに供与した場合において、アメリカから第三国に移るということについては日本わが国政府同意がなければできない、こういうことであります。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 ですから、その場合にイエスと言う場合もあり得る。  その次は、アメリカに供与しましたわが国武器技術、これを米国が用いまして、そこにアメリカの技術が加わりまして、複合した技術といいますか、変形した技術といいますか、進化した技術といいますか、そういう技術も当然のことながら第三国に移転することはあり得る。もちろんその場合は、MDA細目取り決めによりまして日本側の同意がなければいかぬ。これは全部日本側の、わが国同意の対象になるというものではありませんね。わが国同意なくして第三国に移転する場合も中にはありますね。どうですか。皆無とは言えないでしょうね。
  128. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたような、わが国から供与された武器技術に対してアメリカの技術が加えられ、そして新しい技術としてそれが第三国に移転される場合どうかという御指摘でございますけれども、その新しい改良された技術というものであっても、それが基本的にわが国供与いたしました武器技術と認められるような場合は、これはもちろん、当初わが国から武器技術を出しました際に、その第三国移転については常にわが国の事前の同意を必要とするというこの趣旨から見て、当然わが国の事前同意を必要とすることでございます。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう一度念のために伺いますが、ことごとく全部事前同意の対象はなりますか。わが国から提供した武器技術そのものがウエートとして小さい場合、つまりアメリカの技術の方が大きい場合、こういう表現がいいかどうかは別としまして、その場合は事前同意の対象にならない場合もあるのではないでしょうか、こうお尋ねしたわけです。
  130. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員が御指摘になりました、たとえば日本から供与した技術がきわめて小さくて、ほとんど新しく改良された技術の中に認められないような場合というような場合を御想定かと思いますけれども、技術の問題については非常に千差万別でございまして、その個々の場合について考慮しなければならないと思いますけれども、そういうように、さっき私が申し上げましたように、わが国の事前同意に係らしめておる趣旨というものから見て、そういう趣旨に、どうしても係らしめることが困難であるという場合もあらうかと思いますけれども、いずれにしましてもこれは日米間で協議をいたしますし、また同時に、そういう場合にいろいろ国際的な商慣習というものもあろうかと思います。そういうことで、一概には申せませんけれども、私は個々の場合で検討していくべきものと思います。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 では、米国供与しました武器技術によりまして米国米国内で生産しました武器、兵器の第三国移転につきましても、いまの技術と同様でしょうか。同様なら同様、違うなら適う。
  132. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 日本から供与いたしました技術を用いて、それが武器としてアメリカで生産され、それが第三国に移転されるというような場合におきましても、これはあくまでも日本の技術を提供いたします際に、その第三国移転については常にわが国の事前同意に係らしめておる趣旨から申しまして、その武器の第三国移転についても同様の事前の同意を必要とすると考えております。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは、米国供与しました武器技術米国が用いまして、米国内で米国以外の第三国と共同研究開発は可能でしょうか。
  134. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 米国が第三国との武器の共同研究開発を実施するに当たりまして、わが国供与いたしました武器技術を使用するといった全く仮定の事態を想定しての御議論でございますけれども、そういう仮定の議論をいたしますのは必ずしも適当ではないかと思います。しかし、いずれにいたしましても、わが国がMDA協定の枠組みのもとでアメリカに供与いたしました武器技術というものが、わが国の事前同意なくして第三国に移転されるということは、これは考えられないわけでございます。  なお、今般の政府の決定によりまして、わが国から米国に対する武器技術供与を伴う日米間の武器の共同開発というものを行う考えは持っていないわけでございます。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 だから、もう少し的確にお願いしますよ。アメリカに供与したわが国武器技術をもってアメリカがアメリカ国内でアメリカ以外の国、つまり第三国、これは日本以外ですよ、たとえばNATOの西ドイツ等と共同研究開発することは可能でしょうね。全部だめだというわけではないでしょうね。つまり、その前のいろいろな条件、制約要件たくさんありますよ。それはわかっておるのです。わかった上で、ことごとくノーと言うわけにはいかぬでしょうね、こうお尋ねをしているわけです。いかがですか。
  136. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 わが国供与いたしました武器技術を用いて、アメリカ内において第三国と共同研究開発というものが進められるということは、これはアメリカの中の問題でございますから、わが国がそれに対して規制をかけるということは、これはできないところでございますけれども、しかし、その結果、その開発されたものが第三国に移転されるというようなときには、先ほどからも私どもが申し上げておりますように、これはやはり日本の事前の同意というものを必要とするように、これはもうアメリカとの間で協議をしていく問題であろうと思います。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 アメリカがアメリカ国内で共同生産は可能でしょうね。
  138. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 これもいろいろ仮定の問題でございますけれども、日本から供与された技術を用いて、アメリカがアメリカの国内において共同研究開発ないしは共同生産というものをアメリカの中で行うということにつきましては、これは先ほど申し上げたとおり、アメリカとしてできるところでございます。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 アメリカ国内で共同生産されました武器をアメリカが第三国に移転する場合に、ことごとくMDAの事前協議の対象になりますか。ならないこともありますか。
  140. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 これは先ほども武器技術の問題について申し上げましたように、アメリカにおいて共同で開発されたものが第三国に移転されるという場合につきましても、それがわが国から出した技術というものに本来的に結びついておるようなものであり、そういういろんな——これは技術についてはいろいろ千差万別でございまして一概には申せませんけれども、しかし、そういうような場合には、これはやはり技術を出しましたときの趣旨、すなわちわが国の事前同意というものを必要とするというこの趣旨が徹底されるように米側といろいろ協議をして、そういうことを話し合っていくつもりでございます。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 念を押しておきたいと思いますけれども、すべて事前同意の対象とされますか。そんなわけにはいかぬ場合もあるんじゃありませんか。日本共同生産に加わっていたのではないのです。アメリカに供与された日本武器技術をもって米国日本以外の第三国との間で共同研究開発がなされ、その得た成果をもってさらに共同の武器生産に入った、共同生産を行った。これは本格的な共同生産も当然あり得るでしょうね。アメリカとアメリカ以外の国、たとえばNATOのある国とアメリカがお互いに技術者を出し、技術をプールし、あるいは資金を出し合い、本格的な共同生産をやった。その本格的な共同生産をやった武器の第三国に対する移転に対して、日本政府がそれは困るとかやめろとかというようなことを言えますか。
  142. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 先ほどからも御答弁申し上げておりますように、この技術あるいはその技術を用いて生産される武器についての問題はきわめて千差万別で、なかなか一概に一般的に論じることはむずかしい問題であると思います。すなわち、個々の問題についていろいろ判断をしていかなければならないわけでございますけれども、しかし基本的には当該技術、日本が出しました技術自体の第三国への移転というものをわが国の事前同意に係らしめておるその意味が失われないように、私どもといたしましては細目取り決め、いろいろそういう協議の際にアメリカと話し合いまして、そういうようなことにならないような仕組みを確保するべきであると考えております。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 私は、アメリカに供与をした武器技術がやがて武器になり、その武器が世界をほとんどフリーパスで動き出すであろうということ、そういう可能性、危険性というものがきわめて高いぞということで、いまのようなアメリカとアメリカ以外の第三国との間の共同研究開発、共同生産、そういうことがあり得るでしょう、その場合にはわが国がその生産された武器の第三国移転に対してはとやかく言う権利はほとんどなくなってしまうのではないかということを、何も仮定の問題として申し上げているのではない、単なる理論的な問題として取り上げているわけでもない、およそ想定でき得る可能性のきわめて高い現実性のある問題として問題提起をしているわけであります。  このことにつきまして、ほぼいまの御答弁でわかってまいりましたことは、私なりに解説をいたしますれば、アメリカに供与いたしました武器技術はいま申しましたような武器となりまして、ほとんど武器輸出原則は空洞化、形骸化してしまうであろう、そういうことにならざるを得ないということを指摘するわけでございます。  なお、山中通産大臣に一点確認をしておきたいと思いますが、前回の私の質問の際にも、武器にわたらない試作品、その限界は何ぞやという趣旨でお尋ねをいたしました。その際、山中大臣から、この問題に対しましては、つまり技術の終結点である、それが試作品であろう、しかし量産される武器ではないからいわゆる試作品なんであって、それが一つか二つかというような表現等も用いられながら武器と試作品とは違う、まさにそういう意味ではそういう判定、限界を決められないわけのものでもなかろうと私は思う。しかし、やはりどう考えても、その試作品たるや実体的には武器そのものということもあり得るわけですね。  たとえば、私はことに七四式主力戦車の試作車の写真を持ってまいりました。これは第一次、第二次試作車であります。これはもう七四式戦車そのものです。これをどういうふうな経緯で今日量産するに至ったかということにつきましては、すでに防衛庁から資料等もちょうだいいたしましたが、この試作車につきましては六号車までつくりましたね。たとえば外国の戦車等を見ましても、いろいろ一号から二十号までつくったとか、それはやはり試作品までの話でしょう、でしょうが、ここで念を押しておきたいのは、たとえば七四式戦車、これに係ります武器技術、これの提供要請があった、わが方は検討の結果アメリカに供与いたしましょう、こうなった、その場合、その技術資料の裏づけとしての——今回の決定にもあるわけですが、武器の形態をなした試作品、これも供与いたします、こうなっておるわけですから、事実上そういう要請があった場合には七四式主力戦車本体このものが技術資料の裏づけとして、試作品としてアメリカに提供される、こういうことになりますか。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず、私たちがいま議論していますことの前提が、アメリカが何をもらいたいとか意思の表示も何もないのですね。ただ、アメリカは、日本政府に長い間、技術から完成品まで含めて提供し続けてきて、武器の技術について日本のレベルはあるレベルで非常に高い、したがって、そろそろ互換性を持たせてくれという要請に対して、今回内閣として中曽根総理の決断があって、対米についてのみ武器技術供与をするということを決めている段階なんですね。  そうすると、皆さんがお認めになるならないは別にして、じゃ一体こういうものを要求してきたらどうするかという、何もないわけですね。しかし、試みにいま七四式戦車を取り上げられました。御承知でしょうが、その戦車の戦車砲はイギリス製でございます。これはそのものを供与してもらったわけですね。もし、アメリカが、向こうから見ればソ連の戦車というものは巨大な装甲力その他の性能を持っておりますから、日本の七四式戦車にアメリカが興味を仮に示すとすれば、私は一見単純に見える被覆板、これは大変高度の技術の結果生まれた丸いようで丸くなくて、でこぼこしているようで、要するに何だというと、直撃弾というものをいかなる角度から受けても跳弾にしてしまうという、非常に高い技術の結集なんですね。そういうものをくれぬかということが——これは防衛庁の所管ですけれどもそこに出されたものですからね、そうすると、そういう装甲板の一部ですね、そういう一部の断片、切ったものを技術とともに提供してくれぬかということはあるいはあるかもしれません。  あるいは七四式戦車の特徴である発射、いまはもう電子計算機による瞬間発見発射ということですから、両方同時に相手を確認して同時に発射されるという場合に、日本の七四式戦車は車体を低くすることができる、ここらのところはアメリカもあるいは欲しがってくるかもしれぬ。あるいはですよ、わからないですから。そうすると、そこのところの技術とか、あるいは戦車砲を発射したときの後ろへどんとくる反動が七四式戦車の場合は下へ抜けるような、日本の優秀な力学が科学の上で完成しておる、こういうところあたりが——全く仮定の議論をして悪いのですが、写真を出されたものですから仕方がないのですけれども、したがって、われわれが予想して、アメリカが完成車の七四式戦車をくれということは——技術の終結点として言うには、火砲はイギリス製を積んでおるという事実一つから見ても、いわゆる日本の場合に実は性能としては優秀ですが、ちゃちなんです。貨車に乗せてトンネルの中を通り抜けられる幅、通り抜けられる高さ、そんなことに制限を受けている国はないわけですから、したがって非常にコンパクトなもので、そのものをくれということはあり得ないと私は思うのです、想像で物を言っているわけですが。  かと言って、じゃ技術の完結点は、物によって、技術者がアメリカに頭脳で行っても技術でしょう、設計書が行っても技術ですね。だから、外為法と輸出取引と両方に、物の方だと輸出貿易管理令の方にいきますが、そこのときに、七四式戦車全体をくれというようなことが、お互いに想像で物を言ってはいけないのですが、あり得るかと言えば絶対にあり得ない話である、アメリカがそんなちゃちなものを日本に求めているとはとうてい思われぬ、私はそう思います。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは確かに仮定の話みたいなことかもしれませんが、一つの例として、つまり私がわからぬのは試作品というのと武器というのはわからない。だから、それはたとえて言えば、一つの完成品、武器の形態をなした完成品たる試作品というのは、言うなればこんなものかいなと、こう一つの形というようなこともあり得るのかな。いま山中大臣おっしゃるように、確かにこれはアーマープレートなんか大変優秀なんですよ。だから、そういう部分的な提供要請というものがあるとすれば、それはきわめて現実的な要請だろうと私は思うのです。これは全部というようなことはまずあり得ないかもしれませんね。しかし、そういうことが仮にこれまた一〇〇%ないとも言い切れない。なぜかならば、そういう部品の一つの集合体としての形態をなした武器そのものが、これはそれなりの性能、威力を発揮するということもあり得るわけでありますから、部分的なものを抽出して、それだけが武器として総合的な力、性能ということになり得るかというと、必ずしもそうではない。そういう意味において、可能性としては全くゼロかと言えば、そうでもない。  したがって、ここで一つ提案申し上げたいが、武器にわたらない試作品の限界といいますか、これはどういう言い方をしたらいいのか私も余りよくわかりませんが、政府としてはもうちょっと突っ込んで検討されたらどうですか。いかがでしょう。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 七四式戦車は、そのほかにも、日本で、これは大量とも言えませんが、国内の装備用として生産されているものです。したがって、そのものを出すことは、共同生産はしないという総理の基本的な考え方のところにもう一つひっかかると私は思うのです。すでに大量生産されているものを向こうに出すということは共同生産と同じことになる。したがって、そういうものを完成品で、七四式戦車に限って言えばないだろうと私は思うのです。確かに先ほど私も言いましたように、頭脳が出ていく、そして、その頭脳が向こうでコンピューターと一緒に組んで、アメリカのあれに協力をすることになるという場合等は、その頭脳はどこまで限界を持っている頭脳かという制限は大変むずかしいと同じように、少なくとも共同生産はしない前提ですから、試作品がこれは武器じゃないかと言われても、それは数量におのずと——技術の終結点、品物の完成したものを見なければ、設計書や口頭や頭脳同士では、頭脳は口頭でしょうね、そういうことではわからないからということで、日本でつくって、技術の完結点として持っていく。日本ではそれを生産するわけじゃないのですね。そこらのところで歯どめをかけることになると思います。  いずれにしても、向こうはわが日本政府武器技術については互換性、相互通行性を認めてくれよと言っているのですから、それに踏み切った。しかし、それに対して武器の技術の範囲はどこまでかというのは大変むずかしいですが、いま言ったような、この間申し上げたような答弁でわかるように、わが国共同生産をしない、その前提としてわが国でいわゆる試作品としての、おのずからそれは数にも限界があるでしょう、本質的に言えば一個でいいと思うのですね。技術の終結点の武器なら一個でいいと思うのです、本質的に言うと。しかし、一個で足りない場合があるから、私はごく限られたものと言っているのですが、そこらの仕分けは大変むずかしいものがあろうと思います。  現在、堀田ハガネ事件に端を発して国会に、政府方針を厳重に守るように制度等の改善をせいと言われて、対米向けにはそれを今度対象から抜くわけですが、しかし、その他の輸出は厳重に、税関への申請から始まって、外為法、輸出貿易管理令できちんとできておりますから、外に抜けるものはアメリカ以外にはない、その点は踏まえておりますので、アメリカに渡すことがこれは問題だという判断政府がする場合もありましょうが、しかし、それよりも通産省の判断となれば、防衛庁の持っている国家特許は別として、民間のものについては強制しないというのですから、これから何を言ってくるやらわからないことの議論をしているわけですけれども、日本が受ける立場としての心構えはそういうふうに処理したいと考えております。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が迫りました。  公海上の米艦船の護衛の問題につきまして、日本有事の際に来援する米艦船をわが自衛隊がそれを護衛するんだという目的を持って護衛するというようなことはできない、いわゆる結果として守ること、これは皆無かといえば、そうではない、皆無ではない、こういうきわめて消極的な政府の一貫した見解であったわけでありますが、どうもわが党の矢野書記長、それから市川さんの質問等を踏まえてみまして、なおこの問題につきましては、やはり政府は積極性というか、ある目的を持って護衛してもいいんだ、せっかく近海まで来ているんだから、それが敵方の攻撃を受けておる、それを黙って見ておる法はないだろう、助けて何が悪いんだと言わんばかりの言い方があったと思いますね。ああいう言い方は訂正されますか。やはり従来の政府方針どおり、いわゆる結果護衛論、皆無ではない、守るということも結果としてはあり得る、こういう見解政府は、従来の見解どおり、そういう見解に戻られると言った方がいいのかどうなのか、簡明にお答えください。
  148. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 従来、公海上における米艦艇の防御につきましては、わが国の自衛のためということを強調するため、わが国の自衛のための行動の結果として米艦艇を守ることになると述べたこともございますが、これは、わが国が自衛の目的以外の場合については米艦艇を守れないという趣旨を述べたものでございまして、総理が御答弁なさいましたことは、わが国に対する武力攻撃があった場合に、自衛隊がわが国を防衛するため必要限度内、すなわち個別的自衛権の範囲内において米軍と共同対処行動をとることができるとの従来からの基本的見解を踏まえつつ、日本が侵略された場合に、わが国防衛のために行動している米艦艇が相手国から攻撃を受けたときに、自衛隊がわが国を防衛するための共同対処行動の一環としてその攻撃を排除することは、わが国に対する武力攻撃からわが国を防衛するための必要な限度内と認められる以上、これはわが国の自衛の範囲内に入るであろう、こうお述べになったわけでございます。  いま、少しくだくだ御説明申し上げましたが、この問題につきましては政府委員から、過去の答弁もございますので、なお整理をいたしまして御答弁をいたさせます。
  149. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間がありませんので、もう少しきちんと検討して、これははっきりした回答をいただけませんか。検討の結果、いまの防衛庁長官の御答弁でそれでいいというならば、それでも——まあいずれにしましても、私はこれは統一見解まで求めたいと思ったんだが、なおわが方の見解と、それから防衛庁の言ういまの言い方との間には、ニュアンスが、なんとかかんとかという話もあったようだけれども、根本的な隔たりがありますよ。そういう意図、目的を持って米艦を護衛するということと、そうではなくて、結果としてたまたまそういうことに相なった、皆無ではないということとはきわめて大きな差異があります。したがって、その辺をもう少し整理をして、そして検討の上、報告いただきたいと思いますが、いかがですか。
  150. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま防衛庁長官答弁しましたことは、私の考えを敷衍して申し述べましたことで、私の答弁といたします。これが政府考え方であります。
  151. 坂井弘一

    ○坂井委員 わが国の近海とかわが国周辺とか、これは一体どこまでを言うのですか。どこまでならいいんですか。近海ならよくて、遠海ならだめなんですか。夏目防衛局長は先般のこの種の質問に対しまして、わが国の周辺とは必ずしもはっきり言えない、そう断りながら、通常日米が共同で対処するときは日本周辺数百海里、航路帯を設ける場合は一千海里、こうしておる。一千海里まではいいのですか。それ以外はだめだ、こう言うのですか。周辺なら数百海里、こういうことですか。あなた、そういう答弁だったのでしょう。  法制局長官、これでいいのですか。時間がありませんので、簡明にお願いします。
  152. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先般の御質問は、米艦を護衛する場合の一つの例として近海ということが挙げられたわけでございます。その近海の範囲はいかがか、こういう御質問でございましたので、その近海というのは数字をもって一概に示すわけにいかない、そのときそのときの事情によって異なるであろうということを申し上げました。  一方、それとは別個のことでございますけれども、わが図が防衛力整備をするに当たって周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には一千海里程度をめどとしてわが方は防衛力整備を進めているということから見て、その近海というものの範囲というものはおのずからおわかりいただけるものと思いますと、こういう趣旨で御答弁を申し上げたつもりでございます。
  153. 坂井弘一

    ○坂井委員 だから、一千海里まではいいのですか。それは近海であって、それから以遠はだめだ、こういうことですか。
  154. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 具体的に数字をもってその近海の範囲がどこかということは、なかなか申し上げにくい問題であろうというふうに思います。
  155. 坂井弘一

    ○坂井委員 だから、その近海とか遠海とか、それはわからないですね。  最後に、もう一問だけお願いいたします。  シーレーン防衛、アメリカから再三要請があるようでございますが、一体この要請わが国はこたえる考えがあるのか。米側は、千海里シーレーン防衛のための対潜対空能力の改善に努力をしてもらいたいというのがその要請の主たるものであろうと思いますが、それに対しまして、わが国は具体的にどういう役割りを果たそうとしているのか。そういう構想があればお聞かせをいただきたい。  なお、このことにつきましては、すでにワインバーガー国防長官が、米空軍のF16三沢基地配備計画は対ソ戦略の顕著な改善になる、こういう発言があったようでございます。したがって、F16の三沢基地配備もシーレーン防衛の一環という位置づけになるのかどうか、これが一つ。  それからいま一つ、同じく沖縄のホワイト・ビーチ内に沖縄海洋環境測定所(仮称)、これが建設をされるということのようでございますが、この観測所の施設は、これもやはりシーレーン防衛構想の一環でしょうか。なお、ホワイト・ビーチに建設されるこの施設は対潜用のデータ収集をやる、対潜基地という位置づけになるのでしょうか。  以上の点につきまして御答弁をいただきまして、終わります。
  156. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ただいまお尋ねの第一点は、シーレーン防衛についてアメリカからどのような要請があり、それにどうこたえようとするのかということだと思いますが、わが国の海上防衛、シーレーンの防衛につきましては、周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイルをめどとして防衛力整備を進めているということについてアメリカ側も十分認識した上で、第二点は、わが国は個別的自衛権の範囲内で行動をするものであるということを認識した上で、そうした能力を高めてほしい。周辺海域の海上防衛については日米共同対処でやることにはしておるが、その以遠の問題については米側が責任を持ってやるから、その日本の防衛に必要な範囲のことは日本努力してほしいということを累次にわたって期待を表明しているということが第一点でございます。私どもとしては、米側の指摘を待つまでもなく、海上防衛力の整備というものはきわめて重要であるという認識のもとに自主的な判断でそうした努力を続けている。これが第一点でございます。  第二点は、三沢のF16の配備はこのシーレーン防衛にどういうかかわりがあるか、こういうことでございますが、このF16は、昭和六十年から配備が予定されているということでございまして、具体的な運用構想というのは必ずしもまだ具体的にはっきりはしておりませんが、一般的に申し上げるならば、航空自衛隊の要撃戦闘機もその能力あるいは行動範囲の枠内でシーレーン防衛に当然寄与すべきものでありまして、そういった行動において日米共同で対処するというたてまえから見て、このF16も何らかの形でシーレーン防衛に寄与し得ることを否定することはできないだろうというふうに思います。  それから第三点の、沖縄における海洋観測所の問題につきましては、御承知のとおり現在の対潜戦というのは音を探すこと、すなわち敵の潜水艦の発する航走音その他を探知することがきわめて重要でございます。そういった見地に立ちまして海中における潮流あるいは温度、水中雑音その他を調べて、その海中における音波の伝播状況がどうなるかということを知る必要がある、そうしたデータを長年にわたって蓄積することがきわめて必要であります。そういった見地から今回沖縄にそういう観測所を設けてそういった基礎的なデータをとろう、そして、この基礎的なデータというのは、長年蓄積し、分析をすることによって将来のわが方の対潜戦に役立つであろう、そういう意味合いではシーレーン防衛にも無関係とは申せないというふうに思っております。
  157. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。終わります。
  158. 久野忠治

    久野委員長 これにて坂井君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  159. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 きょうは予算の総括締めくくりでございますので、私は各大臣に政治家としての信念に立っての御答弁要請したい。私の方もメモなんかで細かい質問はいたしません。フリーハンドで政治家としての信念を伺いたい。  まず第一は、私は世界の政治家の中でドイツの前の首相のシュミットさんを非常に尊敬しております。このシュミットさんが最近ドイツの首相をやめられて、いろいろまた世界平和のためにがんばっておられますけれども、世界の新聞を通じて国際世論に訴えをなさっておる。その中に、アメリカの大統領、レーガンさんという固有名詞はなかったと思いますけれども、アメリカの民主主義の頂点に立っておるアメリカの大統領、民主的な選挙を通じて議会で選ばれたアメリカの大統領、われわれフリーキャンプの人はこれを尊重しなければならない、信頼しなければならないと書いてある。当然のことであります。同時に、アメリカの大統領はこの信頼を無責任な演説や、軽挙とは言いませんが、とにかく軽率な活動によってわれわれの信頼に冷水三斗、水をぶっかけるようなことがあっては困る、また共産主義陣営に対して、アメリカの方はその首を締め上げるんだといったような誤った印象を与えるようなことがあっては困るということを言っております。大変慎重なシュミットさんらしい発言だと思いますが、無責任な発言や軽率な活動というものによって世界の平和をかき乱すようなことがあってはならないということは、すべての政治家の信念でなければならぬと私は思います。  そういう意味から、中曽根総理内閣をつくられまして早速アメリカに行かれた、その御努力は高く評価いたします。しかし、同時に総理の、われわれから申しますと、いわゆる戦前の連中から考えますと普通の言い方かもしれませんけれども、その表現の古さというものとタイミングのよろしさを得なかったという点で必要以上の誤解、心配、不安を与えたと思う。これが、御承知のように、内閣に対する不支持率の増加というものにもつながっておると思いますが、こうした内外の動きを総理はいかに受けとめ、いかに反省されておるかということをまず第一に伺いたいと思います。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の発言で無用な摩擦を起こしたとしますれば遺憾でございますが、ここでも申し上げましたが、私の真意はやはり自分で自分の国を守るということがまず第一義である、そうして、その上に立ってアメリカと緊密な提携をして安保条約を有効に機能せしめる、日本が外国並みのような膨大な軍備で外国に対抗するという考えは持たない、安保条約というものを活用することによって戦争を回避し抑制し防止する、その安保条約をいかに活用できるかというところに政治家の腕前がある、そういう趣旨のことで発言もし、また申し上げたということをここでも御報告をいたした次第でございます。  日本の政治家の根本義は、平和を守り日本を再び戦場にしないということに肝胆を砕くことであると思っております。その考えは私も一貫して変わりません。私も戦争へ参りまして、戦争の悲惨なことや愚劣なことは最もよく知っておる一人であると思っておりますし、私も遺族の一人でございます。そういう考えから、いかにして日本を戦場にしないか、日本を戦争に巻き込まないかということが現代のわれわれ政治家の一番大きな、大事な仕事である、これが巻き込まれたり戦場になれば全部吹っ飛んでしまう、そういう考えを基本的に持っております。  ただ、ほかの各党と考えが多少違いますのは、われわれは安保条約というものを活用することによってその防止あるいは抑制を行おう、抑止を行おう、こういう考えに立っている点が違うと思いますが、それは方法の違いでありまして、戦争を起こしてはならぬ、日本を戦場にしてはならぬという点においては一致している、このように思っております。  シュミットさんのお話がございましたが、私もこの間シュミットさんと一時間余にわたって話をいたしました。それで、シュミットさんと話しました中で顕著なことが一つ実はあったと思うのです。それはどういうことかといいますと、御存じのように、アメリカのINFのパーシングIIをヨーロッパに導入することについて、シュミットさんは、ヨーロッパが不安であるし、SS20が展開されているという状況のもとにはアメリカの戦域核が必要である、そういうことでパーシングII導入の方向に口火を切った一人であります。そういうある程度現実的な、均衡による抑止という理論をお持ちで、世界の平和を考えておる一人でございまして、その点においては私も同じ点を持っております。  しかし、ヨーロッパの場合はNATOとワルシャワ条約という体系が、ある程度物理学的に計算して均衡がとれておる。ところが、アジアの場合は、そのようなヨーロッパ型の物理学的な均衡というところにまだ至ってもいないし、果たしてそれがアジアの性格から見て適当であるかどうかという点については、おのずから性格を異にする。アジアの場合には、政治、社会的要素が非常に大きい。また、ヨーロッパの場合はヨーロッパ文明で均一の社会で、ECの場合はほとんど一つのユニティーをつくっておりますが、アジアの場合は国々がみんな哲学やら信条やら政治体制を異にしておる。そういう面からしてヨーロッパ型のようなきっちりと物理学、幾何学的に均衡が維持されるという型よりも、むしろ政治的に、あるいは社会的に、あるいは歴史的に、いろいろな弾力性を持ってバランスを維持しつつ戦争を抑止している、こういう考えがアジアのタイプであるということを言いましたら、彼はその点については、それは非常に珍しい、自分は初めて聞いた考えだと言っておりました。  そういう点において、やはり日本日本、ヨーロッパはヨーロッパ、おのおのの防衛戦略があり得ると思っております。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあシュミットさんの評価はいろいろ問題があると思いますけれども、いずれにいたしましても、政治家としての一つの理想を持つことと、政治家でございますから現実の中に足を踏まえていなければならぬということ、その両方を兼ね備えておる、その具体的な適用についてはきょうは時間もありませんから申し上げませんけれども、大体そういうことが政治家に必要だということを私は申し上げたのであります。  次に参りまして、キッシンジャーさんが最近言っている言葉に、ソ連に対しては断固として、しかし同時に創造的な努力をしなければならぬということを言っておる。ソ連の膨張主義と申しますか、そういうものに対して、われわれは断固とした、毅然とした態度をとらなければならぬことは当然であります。しかし同時に、われわれはいまお話にありましたように、アジアの平和、世界の平和を念願する立場から常に創造的な、また協力的な東西関係をいかにして構築するかということに政治の根本を置かなければならぬと思います。そういう意味で、中曽根首相もアメリカに行かれたので、本当のことを言えば、ついでにすぐソ連に行かれたらどうだろうかと実は私は思ったこともありますが、あるいは総理が行かれないにしても、この間は永野訪ソ団が多数の人を引き連れて参りました。それに対しまして外務省では一時いろいろ文句を言ったとか言わなかったとかいうことで、永野さんの発言がまた新聞にも出ておりましたけれども、しかし、永野さんも言っておられるように、緊密な米ソ関係を踏まえてその上に立ってソ連との間にいろいろと交渉をする、努力を積み重ねていくということは当然必要なことではないかと言っておられます。きわめて常識的な発言でございますが、この永野さんの訪ソ経済貿易使節団というものの果たした役割りを総理はどのように評価しておられるか、伺ってみたいと思います。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 対ソ政策につきましては、私はこの委員会を通じても申し上げましたが、領土問題を解決して平和条約を締結することを目途に粘り強く、そしてこれを打開していく、そういうことを申し上げた次第でございます。しかも、日ソ間においては領土問題という基本的な重大問題があるが、そのほかにおいても、経済協力の問題あるいは科学技術や文化交流の問題、そのほかさまざまな問題も現在は存在をしておる、そういうこともまた認識しておる、しかし、領土問題というものは基本的重大問題である、そういうことを申し上げております。  永野さんが今回経済問題を抱えましてソ連へ行かれて、そして先方の意見も聞き、また永野さんの考えも申し述べてきたという点は、こういう時期が時期だけに、民間外交の一つの型として、私はその労を多とし、かつ、今度行かれたことは意義があった、そのように考えておる一人でございます。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 日本新聞等におきましては、ややもすればソ連脅威論というものを非常に振り回す方もいらっしゃる。それも一つ立場でございますけれども、私は、いまキッシンジャーの話を引用いたしましたけれども、やはり常に警戒をし、断固とした立場をとらなければならぬが、同時にあわせて、アジアの平和、世界の平和のために常に創造的な努力というものが必要であるというふうに考えます。  のみならず、ソビエトの実情というものをこれは私なりに考えてみますと、たとえばマクナマラさんが最近言っておることに、十五年前のソ連と今日のソ連とは経済的な実力関係等においてまことに雲泥の差があるということを言っておるのですね。なるほどことしの一月、アンドロポフさんの政権ができましてから初めてなんですね、工業生産が六・三%伸びた、労働生産性が五・五伸びた。これはいままでの倍以上です。したがって、GNPなんかも三%をねらったって半分もできないというような状況である。ソ連の経済力を見れば、GNPやあるいは生産性の問題だけではなくて、労働力も御承知のように五十万は足らぬと言われておるのですね。肝心な軍人さんでも、二億七千万の国民の一%ぐらいがその国の常備兵力だというのだけれども、それが二百七十万ではなくて四百二十六万もおる。もう支えていくこと自身が無理なのです。そういう意味で、経済的にも財政的にも大変なことである。特に財政的には、ソ連は、アメリカとの対抗の関係で、私も詳しいことはわかりませんが、二千億ドル前後の国防費を使っていると思うのですね。人によっては、GNPの一四%ぐらいまで使っておると言われておる。財政破綻も目の前に見えておるし、アメリカのトーマス・リードという人は、もし、このまま四%ずつソ連が軍備をふやしていったならば一九九〇年にはソ連は財政破綻をするということを言っておる。私はこれは半分以上至言だと思って見ておるのです。  そういう意味で、ソ連は警戒しなければならぬけれども、しかし恐れるだけが能ではない。また、マクナマラさんは非常にいい表現をもって言っておりますが、ソ連はイデオロギッシュでありアグレッシブではあるけれども気違いではない、狂人ではないと言っておるわけです。わが国対応についても、そういう意味で創造的な努力の余地は幾らもある。われわれの自由主義の大先輩であります石橋湛山さんがずいぶん前に、ソ連は鬼でもなけりゃ蛇でもないと言っておるのです。われわれは、そうした認識に立ち、また現実的な、しかも科学的な情勢判断の上に立って、ソ連との間に努力すべき問題、門戸をあけるべきところはあけていくという努力が必要であり、ただいま総理の評価もありましたけれども、永野さんの使節団にもそうした意味において私は期待を持ち、また評価をしておるということでございます。  さらに、これに対してもう一つ申しますと、これは私の個人的な意見でございますが、米ソがこのままにやっていったならば、よく一部の雑誌には一九九〇年は戦争になるのだということを言う人がおりますけれども、核戦争をどこのばかでもそう簡単にやれるものではない。のみならず、このままでいけば一九九〇年には、いまのトーマス・リードはソ連が財政破綻すると言うのだけれども、私に言わせればアメリカも財政破綻すると思うのです。アメリカも財政破綻しますよ。  アメリカの状態は、皆さん十分御存じのことでございますけれども、私なりに分析してみますと、たとえばアメリカは、来年度の国防は、予算が八千四百八十億ドルに対して二千三百八十六億ドル、そのうち八十億ドルぐらいは削ろうとかいうことだそうですけれども、これだけの予算を組む。メリル・リンチという会社がありますが、そこの調査報告におもしろいのが出ている。八三年におけるアメリカのネット・プライベート・セービングス、純粋の貯蓄というものと、それからアメリカの赤字財政、それによって公債発行、それとのバランスを見て、八三年度は一二六%なんですね。貯蓄する蓄積よりも使う金の方が多いのです。したがって、設備投資をやる金もなくなる、金利はどんどん高くなるという状態になる。八四年度については九四%ぐらいまで落ちますが、いずれにしても金融の蓄積と同じ額あるいはそれ以上のものを赤字国債を出し、軍事費を賄っておる。こういうことを続けていけばアメリカの財政は破綻しますよ。  現に破綻するということに気がついて、アメリカにおいては、御承知のように、まず第一に、リーガンさんとストックマンとフェルドナンド・スタイン、この三人の財政経済の責任者が、もう一カ月ぐらいになりますか、このまま予算を膨張さしていってもらってはどうにもならなくなるということを進言したでしょう。さらに、その次には、四百八十人かの人が、六人の有力なる財政あるいは経済の専門家を中心に、このままでいったならばアメリカは二流国、三流国になってしまう、何とかしてもらわなければ困るということを強硬に言っておる。ごく最近になりますと、今度は、ガルブレイスさんも、それから海軍大将をしたケーラーさんといいますかゲーラーさんと、それからケナンさんとケンドールさんが予算を大幅に圧縮してもらわなければ困ると言っておる。いよいよ最近の、ことに数日前には、バンスさんやいまのマクナマラさんやバンディーさん、ズムワルトさんが一緒になって少なくとも予算を九%削減してもらいたいということを言ったようですね。これに呼応するかのごとくに、アメリカの知事会が、共和党の知事さんも含めて防衛費の伸びを半分にしてもらいたいということを言ったようです。いずれにしても、財政経済の専門家が集まって、このままではアメリカの財政は破綻する、アメリカの経済は二流国、三流国に落ち込んでしまいはしないかというほどの深刻なる心配をしておる。  要するにこれは、私の言う一九九〇年になれば、このままばかの一つ覚えで戦争に突っ込むか、あるいは、このまま軍備を拡張して——アメリカでも大体いま申しましたようにGNPの七%ぐらいは防衛費に充てているでしょう。このままでいったらアメリカはまいってしまいますよ。米ソそれぞれ両方一緒に財政破綻するかあるいは戦争に突っ込むかということになる心配が多い。そうならなければ幸いでありますが、そういう意味で、日本の外交というものはあくまでも断固とした立場をとることと同時に創造的な立場をとることが必要であると私は信じております。  そういう意味から申しますと、亡くなった大平さんが、亡くなる前にその信頼する側近に言われたという話を聞いておるのだけれども、彼は、日本の外交の一番大事な点は何だという話になりましたときに、日本外交の最大の課題は米ソをして戦わしめないことであると言ったというのですね。これは大変至言だと私は思いますよ。いま中曽根総理からいろいろ御発言をいただきましたが、総理にもそうした願いがあると私は思いますけれども、あくまでも日本外交の根本というものは米ソをして戦わしめないことである。一方を立てることでもない、一方を刺激することでもない、米ソをして戦わしめないということが日本外交の基本でなければならぬ。そうした意味において、すべての発言、すべての動きというものは慎重の上にも慎重を期していただきたいと思いますが、総理、いかがでございますか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 平和を維持するということがわれわれの外交の根本義でございます。特に、超大国である米ソ戦というものは回避するということに全力を注ぎ、そのためにまた協力するということはわれわれの非常に重要な仕事の一つであると心得ております。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、私、一つ提言をしたいのですが、その前に、きょう国会で示されました武器技術輸出の問題あるいは通峡阻止の問題等がありまして、政府の一応の見解が示されました。これらの問題は知恵をしぼって書かれた文章ですから、作文としては大変よくできておると私は思うのです。問題は運用の問題でございますから、願わくはいまお話しのありましたように、われわれはあくまでも平和国家の理念に徹し、米ソをして戦わしめないということを願って進むのだという立場に立って、この運用については慎重に厳正にやっていただきたい、これは要望いたしておきます。  そこで、私の提言は、中曽根内閣の大きなセールスポイントにもなるだろうと思うのですが、日本は、米ソをして戦わしめないという念願に立って、しかも世界を脅威する核戦争の脅威というものを抑える意味において、ひとつ広島で反核サミットを開くということを中曽根内閣として提唱していただけないかということであります。  パルメ首相が広島に行きまして非常に感動を受けまして、およそ政治家たる者は広島を一度訪れてから議論をすべきだというようなことを言われたこともあって、感銘を受けておりますが、やはり日本の新しい平和理念というものは広島が原点である、そういうことも含めまして、ひとつ世界の首相、大統領というものをお招きして広島において本格的に、ヨーロッパでいまINFとかあるいはSTARTですね、戦略核兵器の制限交渉、いろいろ行われておりますけれども、これはうまくまとまってくれれば非常にいいのですけれども、なかなかむずかしいと思いますが、そうなればなおさら中曽根内閣としてはぜひひとつ反核広島サミットを提唱していただきたいというふうに私は思うのですけれども、そういう考え方は総理、いかがでございますか。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器を地上から絶滅するということは私もかねがね念願をしておることであります。特に、日本のような悲しい経験を経た国家におきましては、それは全国民の念願であるだろうとも思っております。  御提言につきましては、現実問題としてなかなかむずかしい問題もあるだろうと思っております。それは、現在の核兵器という業の兵器をなぜ持っておるか。広島に一発が投ぜられて以来リンゴの実を食ったようなもので、知恵がついてしまったら、片っ方が持てば片っ方も持つ、そういうわけで業の兵器が広がって、そして均衡が維持され、本人たちの好むと好まざるとにかかわらず、いやだけれども持たざるを得ぬというような形でいまのような状態まで来てしまっておるわけです。これを直していくためには、やはりこれが広がってきた原因を直していかなければ、これは直すわけにいかぬ。そういう根源を断つにどうしたらいいかということがやはり現実問題としては大事なことであると思います。そのためにも、いろいろ核実験の禁止であるとか不拡散条約であるとか、あるいは戦略核兵器制限交渉であるとか、そういうようなレベルダウンの話も進めつつあるわけでありまして、そういう現実的な、ある意味においてはみんなが信用できる措置を伴った形で一歩一歩着実に進むことがやはり現実的なあり方ではないかと思いますが、片っ方においてそういう理念の問題もまた大事であると思います。そういう意味におきまして、御提言はひとつ勉強さしていただきたいと思います。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまお話しのように、原因を、根本をただすことが必要だ。しかし、私は、米ソの問題について言えば、おのおの両方に責任があると思うのです。ソ連だけが絶対悪いというわけでもない。アメリカだけが絶対悪いというわけでもない。お互いにお互いを刺激し合って、そして、こういうエスカレーションをやっておる。でありますから、政治的にストップをかける以外には方法がない。したがって、そこは政治の英知でございますから、いま総理のおっしゃるように、なかなか簡単にいかない問題だと思いますけれども、一つの政策理念として広島において反核サミットをやりたいということを日本総理が真剣に叫ばれれば、僕は相当大きな反響があると思うのです。その反響を受けて、これは私の思いつきですけれども、各前首相にもそのために協力してもらったらどうか。  たとえば——たとえばの話です。福田さんにはアメリカに行ってもらって、OBサミットも結構ですけれども、アメリカの現実の政権に、このままでいったらアメリカの財政破綻必至だというお得意の経済論をひっ提げて説得をしてもらう。それから次には田中さんだ。いつ辞職されるのか私わかりませんが、辞職されたらひとつソ連に行ってもらって、先ほどお話しの北方領土返還ができるまでがんばってもらうということを考えたらどうか。というのは、私は実は田中さんがブレジネフと北方領土の返還をめぐってやり合った議論を、どういう関係ですか、一つの記録みたいなものを読んだことがあります。しかし、それを読んで感心したのですけれども、いまソ連に行って、当時のブレジネフというものを相手にしてあれだけの論戦ができる人はそうたくさんいないですね。だから、田中さんにも、やめるべきものはやめてもらって、ソ連に行って、国民の期待を背負って、北方領土返還と核兵器反対の広島会議に対する協力を訴えてもらう。鈴木さんには、北京に行ったかと思うとやめてしまったのだから相手に対しても失礼です。これは中国に行って話をしてもらう。三木さんにはEC諸国を回ってもらうといったような形で、前首相にもみんな協力してもらって、日本は総力を挙げて広島反核サミットのためにがんばるというような火の手を上げてもらいたいと思うのですが、もう一度総理のお考えを承って、次へ参りましょう。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党総力を挙げて核兵器廃絶のために努力せよという御提言と思いまして、大変うれしい、ありがたい話を承りました。そういう機会があれば結構であると思いますが、ひとつよく研究さしていただきたいと思いますが、民社党の佐々木委員長やあるいは飛鳥田委員長やあるいは竹入委員長におかれましても一緒になって御協力いただければ皆さんお喜びになるのじゃないかと思いますが、そういう点もひとつ検討してみたいと思います。
  170. 竹本孫一

    ○竹本委員 特に反核運動は政治の最大の課題なんですから、各党各派も全面的に協力をしてやらなければならぬということはもちろんだと思います。  次へ参ります。経済問題です。  経済問題につきましては、私は、中曽根内閣になりましてから、いわゆる新経済社会五カ年計画というものが非常にネグレクトされているような印象を受けているのです。しかもその理由は、計画なんというものはできるものではないとか、あるいは計画なんというものは社会主義的な手法であってそう簡単にまねるべきではないとか、いろいろ言われるのだろうと思うのですけれども、それは間違っておると私は思うのです。それは、計画というものは人間の合理性の必然的な要求でありまして、先ほど申しました石橋湛山さんがやはりいいことを言っているのですね。ソ連は鬼でも蛇でもないと言った。その次に、資本主義国といえども、いいですか、石橋さんは自由経済の一番熱心な主唱者でしょう、その石橋さんが、資本主義国といえども、最近百年前後の間に社会主義の持つ長所というものについて大いに勉強させられた、同様に共産主義国、社会主義国もプライベートインセンティブがいかに大事であるか、自由がいかに大事であるかということについては非常に勉強してきた、だから、だんだんコンバージェンスで近づいていくのだから、お互いに親のかたきみたいなことばかり考えるのは間違いだということを言っておる。すなわち、彼も、計画性というものは資本主義には必要なんだということを、あの自由経済論者の石橋さんも認めておる。  さらに、最近では、今度の中央公論ですか、三月号に、あのキッシンジャーさん、中曽根総理はキッシンジャーさんとは特別な御関係だと承っておりますけれども、そのキッシンジャーさんが今度の論文では、この世界経済の不況をどうするか、そして、これを解決するためには先進資本主義国は、いいですか、統一経済計画を呼びかけて、そして、お互いがすべて計画的に経済を回復させていくという呼びかけをしようじゃないか、また、そのことによって発展途上国に対して経済を立て直す道をサゼスチョンしてあげる、そして彼らの政治的成長を促していく、そういうように先進資本主義国、発展途上国は当面の経済再建に熱心に取り組むという姿勢を示すことが、ソ連とは書いてないが、相手方に対してわれわれの立場を一番強くする方法ではないかと言っておる。  キッシンジャーのこの言葉といい、あるいは石橋湛山さんの言葉といい、やはり計画というものは非常に大事なんだ。もちろん私ども民社党は混合経済でございますから、中央計画を厳しく立てて、すべてが権力統制で息をつく暇もないほど拘束した経済をやれなんということを言っておるわけじゃありませんが、全体としてのガイドライン、全体としての統合的な調整、計画性というものがなければならぬ。プランメーシヒというか、ツベックメーシヒというか、合目的的にすべての資源とエネルギーを動かすということが政治の根本なんです。そういう意味で、私は、計画という字を毛嫌いするような動きというものは全く理解できない。  あわせて、新経済五カ年計画というものは一体いつできるのかということを伺いたいと思います。
  171. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が考えて申しましたのは、日本のような場合には、ほかの国と比べましていわゆる計画性というものになじまない要素がかなり強いんだ。いままでのいわゆる経済企画庁の社会経済発展計画その他を見ますと、第一に、資金の裏づけがない。やはり昔の物動をやった諸君が多い、その伝統もあるのじゃないのでしょうか。戦争経済から来た物の流れというものに非常に重点が置かれて、資金の裏づけというものが非常に弱い。戦争中は臨時軍事費で、お金を印刷すればできたものですから、そういう意味で物ばかり重視してお金の流れを軽視したという点がその伝統の中に多少あるのじゃないだろうかという気がしました、経済安定本部からの流れをずっと見ておりまして。  それから第二番目に、日本のように貿易に依存する国家の場合、特に資源がありません。したがって、フランスとか中国とかソ連のような資源かない、物的充足性がない、こういう国にオータルキーはできない。オータルキーができない国において計画性というのは非常に立ちにくい。特に貿易依存度が日本のような場合は、為替相場が一つ動くだけで経済諸元がみんながらがらと動いてくる情勢でもございます。油の値段が変化するたびに非常にまた経済諸元が動くという国でございます。そういう面からして、ほかの国に比べて計画性になじまないという面もあるのだ。  そういうようないろいろな面から見て、ガイドラインとして、一つのワイダーバンドを持った、弾力性、総合性、調整能力を認めた指針あるいはガイドラインというようなものの方が好ましいのだ、そして必要に応じてこれは直していく、そういう形にしたらどうかということを私は申し上げてきておるので、そういう意味であるというふうに御理解をいただきたいと思うのです。
  172. 竹本孫一

    ○竹本委員 新五カ年計画はどうなりますか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新五カ年計画につきましては、この間、経済審議会を開きまして、期間を延長する、いままで五年というものをさらに数年延長する、それから内容につきましても、ただいま申し上げましたような弾力的な、機動的な、ガイドライン的な性格を持ったものにこれを変えていく、そういう二つの点で新しく、新規に作業が始まった、策定作業が始まった、そういうふうに御理解願いたいと思うのです。
  174. 竹本孫一

    ○竹本委員 新経済計画が大体いつごろになればまとまるかという御答弁をいただきたいと思います。  それからもう一つは、いま計画になじまないということをいろいろ言われましたけれども、一つは、物の動き、物動計画だけが発展、前進しておったのではないかというのは、それはある意味で半分本当ですね。しかし、通産省あたりが産業構造審議会等でよく言う場合は、資金のコントロールからいこうと言うのですよ。だから、計画経済の場合とか、あるいは総合計画を立てる場合とかいう場合に、一番必要なものは金を押さえることなんです。だから、いま総理の言われるように、資金の面をルーズにした計画なんというものは初めからナンセンス、私どもはそんなことは考えていないということが一つと、もう一つは、なじまないと言われる、あるいは貿易に依存しておるとか資源がないとか、いろいろお話しになりましたが、いいですか、キッシンジャーさんが言われるのは、統一経済計画を立てて、彼は経済拡張と言っておりますが、経済拡張、経済発展をやらせょう、それがなければだめなんだということを言っている。その相手は、何も資本主義国の進んだ国だけを相手にしているんじゃないし、途上国や資源のない国も含めて世界、むしろグローバルに世界全体の計画性がなければこの不況は乗り切れないということを言っておるのでございますから、その辺は誤解のないようにお願いしたいが、いつできるか、それをまず聞きましょう。
  175. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  まず第一の、諮問をいたしました新しい経済展望あるいはその経済運営の指針がいつでき上がるかという問題でございますが、経済審議会の委員の任期が四月末でございます。私ども、任期までにはぜひともつくっていただきたい、こう言っておりますけれども、いま作業が進行中でございます。鋭意努力していただいている最中だ、こう考えております。  第二に、いま資金の問題が取り上げられまして、もちろん資金も当然考えるべきだというお話、これもごもっともでございます。戦後保守党内閣におきましても十本ぐらいの経済計画がつくられました。大きな指針でございましたが、いずれも三年間ぐらいしか寿命がなかった。それは、やはり一番大きな原因は現実の経済とつくられました計画との乖離であった、そこで資金にそごも来した、こんなところが私は大きな原因になっておると思うのでございます。  そして私、キッシンジャーの論文も詳細に読んでみましたが、キッシンジャーも大変見識を持った提案をしているところでございます。しかし、その統一経済計画というものは、そう固定的な、拘束的な計画というよりも、やはりお互いの国が自主的な判断に基づきますところの大きな経済の展望あるいは目標といったものではないか、こんなふうに読んでおるところでございます。
  176. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま日本の経済の計画が現実と大きくそごをしたということの一つの原因には、フロートという問題もあるのですね。きょうは時間がないからこの問題はやめますけれども、フロート、固定相場でなくて変動相場にしなければならぬ理由もよくわかりますよ。しかし、フロート制度というものが、この間、日銀の総裁も言っているように、制度という名に値するかどうかは大問題なんです。ここでフロートにしておけば、大きな波がそのまま大きな波をこちらへ打ってくるわけですから、計画がうまくいかないのは当たりまえのことだ。そういう問題も含めて、いま目標という御答弁がございましたが、キッシンジャーさんも統一経済計画があしたできると考えるほどのんきなことは言っていない、統一経済計画を目指してと書いてある。目指して進むということが大事なんだ。計画を排除するような方向を目指していくのではなくて、世界大の統一経済計画、あるいは日本なら日本の、五年になるか七年になるかは別としまして、計画を目指して進むということが経済の合理的運営に必要であるということを私は強調いたしたいと思います。  時間がありませんので、次へ参ります。  今度は減税問題。私は、減税小委員会に、山中さんの御指導もいただきながら参加、協力をしてきたつもりでございます。しかしながら、なかなか結論が出なかったが、小委員会結論が出なかったのは、今度の三月一日の与野党合意に言う最大限度の努力をしなかったから結論が出なかったのか、最大限度の努力をしたけれども結論が出なかったのか。政府はどちらとお考えになっておるか、お伺いいたしたい。
  177. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、少なくとも昨年度の通常国会以来の小委員会議論等を聞く限りにおいて、最大限の努力をされてきたものであるというふうに評価しております。
  178. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから私の方から申し上げますが、最大限度の努力をしたけれども小委員会結論を得なかった。したがって、その流儀でいきますと、三月一日の与野党合意の問題も、景気浮揚に役立つ減税ということになっているけれども、これも最大限度の努力をしてもできない場合もあり得るかということはどうですか。
  179. 竹下登

    ○竹下国務大臣 あり得ないように努力をすべきである、こう考えます。
  180. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは竹下さんお得意の政治答弁として受け取っておきましょう。  そこで、私はあの小委員会でも一番最初に、これは十五兆円ぐらい財政の赤字が出ますよ、さらに景気を浮揚するということになれば三兆円ぐらいの公共投資も必要になりますよ、二兆円ぐらいの減税も必要になりますよ、合わせて約二十兆円の金が当面要りますよ、それを先ほどお話しのように、大きな政治判断で大体三つぐらいに割って、三者それぞれ協力をしてひとつ財政危機を乗り切ることを考えたらどうでしょう、これは私の夢ですということで、小委員会の冒頭に申しました。いまだにその考えは変わらない。  そこで、まず減税の問題から申しますが、われわれが二兆円と言う根拠をちょっと申し上げますと、五十二年と五十八年を比べて、CPI、消費者物価は大体二九・三%ぐらい伸びている。これから先は計算のやり方で、政府のように二兆円あるいは一兆八千億円という計算も出ます。あるいは四兆八千四百億円という意見もある。しかし、これは計算のやり方で、一応別にしまして、大体二九・三%、約三割上がったということで、基礎控除二十九万円を三割上げるというようなことで考えてみると、三十八、九万円になる。それらを中心として課税最低限二百一万五千円をどこまで持っていくか計算してみると、二百六十二万一千円になるのです。しかし、そのままでは大変だというので、これを二百五十万円ぐらいにして、そして余ったところでは、税率構造が少し困る問題が多いから税率構造も直すということにして、二百五十万円ということにして、それで一兆四千億円。それから、中小企業のためにも一千億円、それから地方が五千億円、合わせて二兆円ぐらい。  こういうことを私が言ったのは、もう一つ別の問題があるのです。これは減税というよりも本当は憲法に実質的には違反すると思うのですけれども、八十四条を読んでごらんなさい。租税をかける場合、税率構造を変えるような場合には、法律によって国会の審議によらなければならないと書いてあるのだけれども、自然増収というのは憲法の趣旨に反する自然増税ですよ。それを返すというだけで、あるいは五兆円あるいは二兆円、いろいろありますけれども、大きな減税ではなくて、取り過ぎたものをお返しするという範囲で考えても一兆四千億円、課税最低限二百五十万円ぐらいが相当ではないかと思う。のみならず、景気浮揚の立場から申しますと、所得税を二兆円減税することによって私の計算では約〇・五%はGNPが伸びる。さらに、公共投資が三兆円ならば一・五%伸びる。そうすると、いまの経済の実態は大体三%成長です。その三%成長に三兆円の一・五、二兆円の〇・五を足して、合わせて五%成長をやるようにすれば日本の経済が相当な程度に立ち直るし、また財政収入もふえるだろう。  時間がないので私が全部申しますけれども、とにかく経済の回復なくして財政の再建はあり得ませんよ。現実を見てごらんなさい。たとえば十二月の税収の一覧表を見るとよくわかる。法人税のごときはマイナス一二・三%です。景気をこんなに悪くして、法人税、所得税を壊滅させておいてどうして財政再建ができますか。伸びているものは何だ。相続税です。二六%。物品税八・八%。あとは有価証券取引税が二三・一%。これは、金の使いどころがないから株式市場へ流れた金融相場の金ですよ。経済の実態が税収の面にもよくあらわれておる。だから、三%程度しか成長しない今日の経済を、日本の潜在成長力は大体五%、その五%に持っていくために三兆円の公共投資、二兆円の減税、そういうことも含めて二十兆円の必要な金をどう工面するかということが問題ではないかという問題提起を僕はしたのです。  その線に沿ってもう一遍伺いますが、政府考えられる景気浮揚とは、一体何%になれば景気は浮揚したと考えられますか。
  181. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  景気浮揚という意味につきまして、特に与野党の覚書に関しまして御質問がいろいろございました。景気浮揚という概念は数量的にはなかなか表現できないものでございます。現在三・四%ぐらいの成長率が果たして景気の浮揚と考えられるかどうか、このあたりもいろいろ批判があるようでございます。いずれにいたしましても、景気浮揚という概念、経済的な観念でございますので、具体的にどれぐらい、何%浮揚すれば浮揚だというふうには言い得ない。むしろ、たとえば収益が増加した、あるいは設備投資が増加した、そのような傾向が感じられるような経済数値が認められるような場合、こんなようなときに景気浮揚、こういうふうに定義をすべきではないか、私はこんなふうに考えております。
  182. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはひとつ総理に重大な政治問題で伺いますよ。  いまの景気浮揚というのは心理学的な意味もあるのだというお話も毎々承っておりますけれども、確かにそれもそうですね。しかし、私は現実論を聞いているんだ。いま日本の経済は、これもむずかしいと思うが、三・四%だ。これを五%成長ぐらいに持っていかなければ景気浮揚とはなりませんよということを言っているのですね。いいですか。  ところが、いまたとえば設備投資の話が出たけれども、去年の設備投資は伸びが一・七%です。日本経済新聞社が五十八年度の設備投資についての見通しを聞けば、製造業は一二%マイナスです。開銀調査でもマイナス五・三%ですよ。設備投資は全部だめになる。生産は去年は一・一%ですよ。一月は〇・八%です。生産はふるわない。  消費はどうだ。消費は、今度、去年初めて物価が下がったおかげで二・七%伸びたというので、三年ぶりの消費の充実だというので喜んでおるわけです。しかし、たかが知れた二・七%程度の問題だ。百貨店の売れ行きなんかは、御承知のように、五十六年は五・六で去年は二・三で、最近は一%前後です。こんなに物は売れない、物はつくらない、設備投資はマイナス、それがいまの三・四%と言われておる現実なんです。それをもう少し活気が出てくるようにして、心理的にもああよかった、景気は中曽根内閣のおかげで浮揚できたというふうになるためには、少なくとも五%成長をさせなければならぬと思いますが、政治判断として、いまの現状で景気浮揚と言えた義理かどうか。五%ぐらいに持っていかなければ景気浮揚という名に値しないと思いますが、総理の政治判断はいかがでございますか。簡単で結構です。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは非常にむずかしい問題で、いろいろ説があるだろうと思います。専門家の経企庁長官に御答弁願うようにいたします。
  184. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 五%ということは、竹本先生昔から、潜在成長力の中で五%ぐらいの成長力は日本にはあるんだ、それを引っ張って出すこと、これが一番大事な政策であるというお考え方から、五%ぐらいになれば日本人全体が景気浮揚という考えになるというようなお考えかもしれません。  しかし、いま申し上げましたように、幾つかの総合指標がございますが、そのたくさんの指標を考えて、そうしてこれが景気浮揚というような、何と申しますか、質的な概念で判断すべきであろうと思います。私は、恐らく一〇%成長の時代に五%では景気浮揚とは言わないというふうに言われますように、五%でもいまのところではなかなかむずかしいような要素もございまして、いかなる程度が景気浮揚かということを一概には申すことができないと思います。
  185. 竹本孫一

    ○竹本委員 結局、答弁を聞いていると何のことかよくわからないのですが、私の聞きたいことは、総理、景気浮揚に役立つ程度の減税をするという、その景気浮揚とはどの辺のことを考えておりますかというその目標は、指標がたくさんあってよくわかりませんでは、ちょっと話にならぬと思うが、どうですか。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり総合的にいろいろ考えまして、企業の稼働率であるとか税収の状況であるとか、あるいは失業の率であるとか、そのほか物価の問題、そういういろんな指標を考えまして、そして、ある意味において底割れから脱却してさらに上昇に向かうという気配がまず感ぜられて、そして、それがある程度税収等にも反映してくる、あるいは消費等にも反映してくる、あるいは企業家において新規投資をやろうという気構えが芽生え始めてくる、こういう場合にいよいよ景気が浮揚し始めたという感じを持つのではないかと思うのです。それを計数的に幾らかということは、そのときそのときの状況がありますから、一概に決めることはむずかしいんだろうと思います。そういう何となしの感じが大事じゃないかと思うのです。
  187. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあそのときの情勢によりますけれども、五%程度の成長ができなければ、税収も伸びなければ設備投資も行われない、百貨店の売れ行きも上がらない、もうはっきりしているのです。だから、ひとつ閣議で、改めてでも結構ですが、どの辺まで持っていくかという目標、ガイドラインというかターゲットというか、それを決めなければ、ただ何となくやっております、指標にはさまざまありますといったようなことを言っていたのじゃ話になりませんよ。やはり努力目標をはっきりして、ここまで持っていく、そうすれば税収もふえるだろう、景気も回復するだろうということを、頭のいい人がたくさんいるのだから、衆知を集めて結論を出していただきたい、お願いをいたしておきます。  そこで、減税問題については、時間もありませんから、私はいま申しました二兆円減税を言いましたけれども、政府が一兆円と言うか一兆五千億と言うか、これは禅問答をやっていると切りがありませんからきょうはやめます。  そこで、大蔵大臣に聞きたいのは、最近の新聞を見ると、戻し税方式によってやるかというような意見がちらちらと見える。赤字公債発行によってやろうかという意見もちらちらと見える。それから、五十八年度所得に対する減税ではなくて、五十九年度にして、大型消費税と抱き合わせでいこうかというような考え方があるやにも見える。また、大蔵大臣の答弁そのものの中にも大型消費税と抱き合わせの減税というような声も聞こえる。  以上申し上げました四点について、結論だけでいいです、余り演説をされますと時間がなくなりますから。とにかく結論だけ。戻し税でやるのかやらないのか。小委員会はやらないということになっている。赤字公債でやるのかどうなのか。五十八年度所得に対する減税か、いつの減税か。さらに、抱き合わせでやるのかやらぬのか。四つについて、イエス、ノーの結論だけ聞きたいのです。
  188. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、手短にお答え申し上げます。  戻し税方式を採用する可能性、こういうことになりますと、従来、結果として、話し合いで、与野党、戻し税方式を使ったことがある。だから、完全に否定するというわけにはまいらないかと思いますが、好ましいことではないといまのところ思っております。  それから、赤字国債を財源にする意図はあるか。これについては、赤字国債を発行をしてでもやれ、こういう議論も大蔵委員会等においては今日なされております。しかし、赤字国債そのものの発行からくる金融市場への影響等がむしろ景気の足を引っ張る場合もあり得るとすれば、直ちに念頭に置くべきものではない、こういうふうに考えております。  それから、実施時期は五十八年度か五十九年度か、こういう問題であります。だから、あの二階堂幹事長が確約を申し上げたことを政府が承認しておるという線において、やはり五十八年中に法律案を出すということは、五十八年度というものを念頭にとにもかくにも置いておるということであります。  それから、大型間接税と抱き合わせにする意図はあるか。この問題こそ、いま小委員会の問題、否定なさいましたが、小委員会へお集まりいただいた先生などと、これから、たとえ私的であろうとも、問答をしたり意見を聞いたりしながら総合的に勘案すべきもので、いま大型間接税というものを念頭に置いて考えておるものではありません。
  189. 竹本孫一

    ○竹本委員 実はこれからがむしろ本論なんですけれども、時間がもうなくなりましたから、私の考えをひとつ、最後の結論を一口言っておきますが、大体、総理、要調整額と赤字を足してみると、まあとりあえず十兆になりますね。昭和六十一年ぐらいを見ると十一兆何ぼとなっておりますけれども、あのときは定率繰り入れの問題が隠されておる。それまで計算に入れますと十三兆。大体当面十一兆から十三兆円ぐらいの赤字なんです。さらに言えば、たとえば去年は八千億円後へ回す。五十八年度予算では二兆三千億円を、どこか、まあごまかすと言うと言葉が悪いが、操作をやっておる。そういうものを入れると、財政がどれだけ赤字になっておるのかというのは本当は実態がつかめないようになっている。それを一応別にしまして、とりあえず頭の出たところだけで考えても十一兆から十二、三兆円までなるんです。  問題はそれをどう埋めていくかということが財政再建の根本課題。結局は、一つは行政改革だ、一つは増税だ、こういうふうに僕は思うのです。  行政改革も、きょうはちょっと本格的に議論するつもりでしたけれども、時間がないが、たとえば五十七年度の補正予算、六兆円赤字が出たでしょう。あのときの対応を見ると、いかに政府の財政再建に対する考え方がなってないかということが非常によくわかる。  いいですか、六兆円赤字が出た、税収減が出た。災害復旧五千二百二十二億円、その他合わせて約六兆円ないし七兆円必要なんです。その七兆円をどうして埋めたかというあり方を見れば、政府の財政再建に対する取り組みがなってないことが実によくわかる。  いいですか。四兆円、正確に言えば三兆九千億円、公債発行でしょう。それから、法定繰り入れ一兆二千億です。地方交付税の減額一兆七千億円です。七兆円必要なときに、四兆円は借金でいく、三兆円は出すものを出さないで切っちゃう。本当に既定経費の節約をやったのはたった三千二百五十四億円ですよ。七兆円に対して三千二百五十四億円。  しかも、三千二百五十四億円の中身を見てごらんなさい。老人保健法が延びたので八百二十億円、人勧を削ったので六百七十億円、本当の既定経費節約はたった七百二億円ですよ。七兆円足らぬときに七百億円、正確に言えば七百二億円削ってこれに対応している。あとは借金だ、繰り延べだということばかり。  これが財政再建をやる補正予算のあり方であるか、僕はいささか痛憤、憤慨をするのですが、総理、いかがですか。
  190. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは竹本理論からして私は痛憤されるというのはよくわかります。痛憤されないようにこれからやらなきゃいかぬと、基本的に、本当にそういうふうに真剣に考えております。
  191. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、それでは一口だけですが、デノミの問題もよく出ますが、私は、経済再建をやって、いまは二百三十円だ、二百四十円だというものが、経済の実体がよくなることによってだんだん二百十円プラス・マイナス十円、できれば二百円ぐらいのところで安定した段階で初めてデノミというものはやるべきである、いたずらにこれこそあわてるべきではないと思いますから、その点についても慎重な対応を望みます。  総理のお考えを承って、終わりにいたします。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 デノミは考えておりません。
  193. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わります。
  194. 久野忠治

    久野委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  次に、中路雅弘君。
  195. 中路雅弘

    中路委員 私は最初に、B52核爆撃機への発進通信基地である大和田基地の問題について若干お尋ねしたいわけです。  わが党は、このB52核爆撃機への発進指令基地、いわゆるジャイアント・トーク・ステーションと言われておりますが、何回かこの国会でも質問してきました。嘉手納と横田にあって、嘉手納の米軍の広報部の発表では、このほかに世界に十数カ所あるということを認めています。ジャイアント・トーク・ステーションは、発進したB52へ攻撃実施のゴーサイン、ゴーコードを伝達する通信基地ですが、この通信基地が嘉手納とともに首都圏のど真ん中である横田に置かれ、横田を管制基地として大和田、所沢で送受信を行っている。こうした核攻撃指令の基地が首都圏に置かれているということについて、周辺住民は、戦争になった場合の相手の第一次攻撃目標があるとして大変な不安に思い、また最近は撤去の声も高まっているわけですけれども、最初に、総理にこの点についてどうお考えなのか、一言お尋ねしたいと思います。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題については、私は詳細を知悉しておりません。担当大臣あるいは政府委員答弁させます。
  197. 塩田章

    ○塩田政府委員 大和田に米軍の通信施設がございますことは御指摘のとおりでございます。地位協定第二条一項(a)によりまして提供された施設でございまして、首都圏にあることかどうかというお尋ねでございますけれども、米軍が必要な通信施設を確保しておくということは米軍にとっても重要なことでございまして、特段地位協定上も差し支えないというふうに考えております。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  198. 中路雅弘

    中路委員 私が総理にお尋ねしたのは、防衛庁長官をやられた総理ですし、いわゆる総理昭和四十五年九月に訪米されたときの報告、膨大な訪米記録がありますけれども、これは「昭和四十五年九月 防衛庁長官中曾根康弘」という名前で報告書が出されています。随行として当時の防衛局長や陸幕二部長も出ているわけですけれども、マル秘となっておりますが、この報告書の百四ページに相当詳しくこの機能について書かれています。したがって、私は総理にまずお聞きしたわけですけれども、この中でも「敵襲来の警報を受けた場合、SAC」戦略空軍司令部「の司令官は直ちにB52を発進させ、ソ連領土近くに設けられたポジティブコントロール」、最終的な指令を受けるところですね、「の線まで到達させることができる。但し攻撃実施は大統領からの命令”ゴーコード”が確認された時に限る。」という、あなたの名前で出されている報告書の中にも出ているこの基地が大和田通信基地だということですから、この指令基地の一つである大和田について住民が大きな不安を抱いておるわけですが、総理はこれについてどういうお考えですかということをお聞きしているわけです。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が防衛庁長官のときにそういう記録を私の名前でつくったことはございません。それは前から申し上げているとおりでございます。あるいは秘書官あるいはその他の者が自分のメモで書いたものはあるかもしれませんが、防衛庁の正式の報告というような形で、私の名前でつくったものはございません。また、いまお話しのようなそんな細かい話を防衛庁長官が相手とするはずはないのでございまして、私は関知しておりません。
  200. 中路雅弘

    中路委員 この問題は後でもう一度時間があればお尋ねしますが、いま施設庁長官答弁にもありましたが、もう一度確認をしたいと思いますが、この大和田通信基地、約三十万坪という広大な地域ですが、これは安全保障条約六条に基づいた地位協定二条一項(a)ですね、いわゆる全体がアメリカ専用基地だということを確認したいわけですが、あわせて、この基地はフェンスで囲まれた立入禁止というのはほんのわずかな部分ですね。いわゆるオペレーションがある区域だけで、あとの大部分は住民による耕作が行われている、あるいは住民が居住している。約五百人以上の人たちが埼玉県民、あるいは一部清瀬ですから東京都民が住んでおられる。市の公園もあり、住民が自由に使用し得る道路網が存在しておる。こうした二つに分かれた、全国で百十数カ所ある米軍基地の中でも初めての形態だと思いますが、こうした提供施設だと思いますが、いかがでしょう、結論だけ簡単に。
  201. 塩田章

    ○塩田政府委員 二条一項(a)に基づく提供施設であることは、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。  面積は百十八万八千平米、うちフェンスに囲まれた部分が七万七千平米、それ以外の地区に、先ほど御指摘がございましたように、住民が約百二十戸住んでおられます。それだけの土地が農耕等に使われておるということも御指摘のとおりでございます。
  202. 中路雅弘

    中路委員 これは外務省ですか、施設庁ですかね、地位協定二条一項の施設の中に住んでおられるいまのお話の日本国民は、日本国の法律が適用されるのか、アメリカの法律が適用されるのか、いずれですか。
  203. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 施設、区域の中といえども日本の領土でございますので、日本国民に対して日本の法律が適用になる、当然でございます。
  204. 中路雅弘

    中路委員 いま確認しましたように、日本の法律が適用される。これはかつて昭和五十六年の十一月十三日に私どもの参議院議員の安武洋子議員が鈴木善幸総理あてに出した質問主意書に対する政府答弁書でも、地位協定二条一項の施設にはわが国の国内法令が適用されるということが出ておりますから、間違いないところです。  これから私はお尋ねしたいのですが、実は中曽根総理が訪米をされた後、ことしの二月になってから、この施設の中に、いままでの看板を取りかえて新しい掲示板が一面に出始めた。ちょっと配ってください。——いまお配りしました中に写真のコピーが出ていますが、これは私が先週の土曜日に現地に行きまして撮ってきた写真です。コピーが入っていますからごらんになっていただきたいのですが、ごらんのように、この中には、「当施設司令官の許可なくこの区域に立入ることは違法である。」「何人も当施設に居る間は身体及び所持品の捜索を受ける場合もある。」ということで、ここで明記されているのは、アメリカの国内安全保障法、アメリカ合衆国法律七百九十七号というのがこの掲示板では明記をされているわけです。  ここで言われているアメリカの国内安全保障法七百九十七号というのはどのような法律ですか、おわかりですか。
  205. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 御質問の法律は一九五〇年の米国国内治安法、USコード五十でございますが、それの第七百九十七号を指すものと思われます。  同号の趣旨をごくかいつまんで申し上げますと、国防長官または国防長官の指定する軍司令官等の定める規則、それから命令であって、国防省など指定の機関やその職員等の管轄ないし管理下にある港湾であるとか空港、基地等の財産または場所の保護、保全を目的とするものに故意に違反した者は、五千ドル以下の罰金または一年以下の懲役ないしその双方に処するということを定めたものと承知しております。
  206. 中路雅弘

    中路委員 私も国会図書館で調べたわけですけれども、いまお話しのように、この法律は、安全保障規則及び命令違反に関する刑罰ということで、この法律に違反した場合は、有罪判決を受ければ五千ドル、約百万近いを超えない罰金または一年以下の懲役に処し、また、これを併科、両方合わせることもできるという罰則のついたアメリカの法律であります。  これまで米軍のこういう施設にかけられている掲示は、まだ大和田でも若干取り残されているのがありますが、これはいままでどこの基地にも出されているのですが、参考に読みますと、同じような文句ですけれども、たとえば大和田に残されているのは、横田空軍基地司令部の許可なくこの区域に入ることは法律違反である。当該施設にいる間はすべての人は身体及び所持品の捜索を受けるかもしれないということで、これに違反した者は日本国法律によって罰せられる。括弧して刑事特別法第二条ということが書かれている。  刑事特別法については憲法を超えるのではないかという議論がありますが、いずれにしても日本国法律によって罰せられるということが明記されていたわけですけれども、今度この大和田基地、三十万坪の広大な地域、そして日本の国民、埼玉県民が五百人から住んでいるこの地域に出された掲示板は、明らかにアメリカの法律によって日本国民を罰するという掲示であります。しかも、これは二月十二日ごろにはまだ出てなかったのです。十九日ごろから出始めているという話ですから、総理がアメリカに行って帰ってこられてから後ですが、何かアメリカで約束をされてきたのかとも思わざるを得ないような掲示であります。  外務省、施設庁は米軍と協議したと思いますけれども、この掲示についてどういう経過でこういう掲示板を出されたのですか。
  207. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘の警告の看板につきましては、設置に当たって私どもの方に協議がございません。
  208. 中路雅弘

    中路委員 全く無責任なことじゃないですか。施設庁長官が知らないで施設の中にこうした日本国民をアメリカの法律で罰するような掲示を出す、こんな無責任はことはないでしょう。外務省はいかがですか。
  209. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員御指摘のウォーニングというあれは、いわゆるこの施設の中における米軍人ないし米側の人間に対するウォーニングでございまして、要するにそれをただ翻訳いたしてここに書いてあるわけで、そのところに第七百九十七号というのが出ておるわけでございますけれども、この七百九十七号は、これに違反した日本人を罰するというような、そういうものではなくて、あくまでもこれはアメリカの施設の中におけるアメリカの軍人軍属そのものに対する法律であるというふうに解釈しております。
  210. 中路雅弘

    中路委員 いま私が言ったわずかのオペレーションの地域以外、三十万の地域にアメリカ人は住んでいるのですか。
  211. 塩田章

    ○塩田政府委員 アメリカ人は住んでいないと承知しております。
  212. 中路雅弘

    中路委員 アメリカ人が住んでなくて、日本の国民が五百人から居住しているのですよ。その地域に看板を出しておるのでしょう。写真の原版幾つかここにありますけれども、これはアメリカ人じゃないですよ。皆日本の婦人がバスを待って立っているのです。このバスの停留所はいまの施設の中に囲い込まれているのですよ。その後ろにいまの掲示が張ってあるのです。まだありますよ。これは子供が遊んでいるのですが、子供の遊んでいる後ろにこの掲示が出ているのです。全部日本の子供ですよ。  北米局長、アメリカ人に対して出した掲示だとどうして言えるのですか。
  213. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 日本人に対しましては、先ほども委員御指摘の日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法というのがございまして、その第二条に、「正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料に処する。」云々、こういう規定がございます。したがいまして、日本人に対してはこの刑特法が適用されるわけでございまして、ここに書いてございますアメリカの第七百九十七号という法律というものは、日本人に適用はあるものではございません。
  214. 中路雅弘

    中路委員 アメリカ人がいなくて日本国民だけがいるところに、アメリカの法律が適用されるような掲示が出されている。あなたら全く答弁にならぬじゃないですか。しかも、いままでの掲示は、基地の中でも、提供施設の中でアメリカ人がいてもそこに働いている日本人に対する刑罰は——捜査はいろいろ協定があって日米の官憲で合同捜査あるでしょう。しかし、日本国内に住んでいる日本国民は日本の法律によって罰せられるのです。したがって、そういう場合は当然刑事特別法が問題になる。どんなところにいようと、日本の国民がアメリカの法律によって罰せられることはない。ましてこれはいま日本国民だけがいる地域に出されている掲示じゃないですか。全然答弁にならない。
  215. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 この大和田の通信施設、区域というものにつきましては、これは米側が通信所の円滑な機能の維持という施設、区域の提供目的というものと、それから従来からそこの施設、区域の一部に住んできた日本人の地元住民の生活上の必要というこの二つの要請というものを調和してできたいろいろアレンジメントがあるわけでございまして、そういう中でやはり一部の地域については米軍の方から立ち入りを禁止しておることがあるわけでございます。しかし、その立入禁止というものに対して日本人がそれを守るということは、それは先ほど私が申し上げました日本の法律によってそういうことを守るわけでありまして、決してアメリカ側の七百九十七号、おっしゃいましたその法律によって立ち入りが禁止されているというわけではございません。
  216. 中路雅弘

    中路委員 この掲示が明らかに違法なものだということははっきりしていますが、もう少し聞きます。  いま立入禁止区域とあなたはおっしゃいましたが、では、この看板が出ているところは立入禁止なんですか、看板が全部出ている地域は。私も自由に入っていますよ。住民が住んでいるところです。子供もこうやって遊んでいるところなんです。この地域で「許可なく」、ここに出ていますね、「何人も」ということが出ています。「許可なく」ということは、今後この地域に住む人に許可証を出すのですか、施設庁か外務省は。子供にまで許可証か何かぶら下げて遊ばせるのですか、どうするんですか。
  217. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 私が立入禁止区域と申しましたのは、この立て札のところに書いてあることを申し上げましたので、これは私は実態をつまびらかにはいたしませんけれども、きわめて限られた地域であると思います。  その他の地域については、いま委員がおっしゃいましたように、それは先ほど申し上げましたように、米軍の方の通信施設の障害がないようにという一つの目的と、それから前から居住しておる日本人の方の居住の必要性というものの二つの要請を調和して行われておるというふうに承知しております。
  218. 中路雅弘

    中路委員 資料に地図が入っていますから見ていただきたいのですが、いわゆる立入禁止でフェンスで囲まれているのは、この中に鉄塔とありますね。ほんのわずかの局舎のある部分なんです。この地図の広大な三十万坪全体は、いま確認したように日本国民が住んでいる。ここに出ているこの地域はということで、この地域一面に出されている掲示板なんですよ。立入禁止区域と言われるフェンスで囲まれたところに出されている掲示板ではないのです。私がいま写真で示したように、バスの停留所にもかかっているのです。子供の遊び場にもかかっているのです。全然答弁と違うのですよ。
  219. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどお答えいたしましたように、この看板を米軍が立てましたときに、私どもの方に協議がございませんでしたので、私ども実態を承知しておりません。  それで、いま御指摘ございましたので、どういうところへ立てておるのか、そういった実態をよく調べてみたいと思います。
  220. 中路雅弘

    中路委員 だから、私は先週の土曜日に行って写真を撮ってきたのですよ。いつ立てたかわからないと言うから、土曜日の新聞を持った写真も撮ってあります。これは、土曜日の朝日新聞と読売新聞を持って掲示板の前に私が立っている写真もあります。現実に存在しているのですよ、先週の土曜日にこの掲示板が。そして、いま写真で出してあるでしょう。バスの停留所の後ろにも出してあるのです。調べてみてというより、だから写真で示しているのです。こういう掲示は全く違法なものだ。日本国民をアメリカの法律で罰するということは施設の中だってできないでしょう、立入禁止の施設の中だって。しかも、それは日本国民が自由に出入りできるところなんです、提供施設は。こういうところにこうした看板を出すということは全く違法だ、これはお認めになりますか。いかがですか。
  221. 塩田章

    ○塩田政府委員 実情を調べてみますということは先ほど申し上げましたが、その看板の中身が、先ほど来外務省からもお答え申し上げておりますように、日本の法律が適用される日本人に対するものであればおかしいわけでございますから、そういった点も含めて検討してみたいと思います。
  222. 中路雅弘

    中路委員 総理、いままで基地にはこうした掲示板は一切出されていないのです。当然のことなんです。立入禁止の中でも日本国の法律で罰せられるという掲示なんです。不沈空母だとか運命共同体という政治姿勢をとられるから、ますますこうしたものが出てくるわけです。これまでの基地の掲示は、当然国内法で罰せられる掲示がすべてです。  日本国民がアメリカの法律で捜索、罰せられる、こういうことこそ、いまの安保優先の、いわばこうした体制の典型的なことがこの掲示板に端的にあらわれたと思うのですが、この点についてアメリカ政府、日米合同委員会を通じて抗議をし、撤去をさせるということを確約いただけますか。
  223. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまお話を聞きまして、私も初めて聞いたのですが、警告が出ておっても、日本人がその警告によるところのアメリカの法律によって罰せられることはあり得ないわけであります。  しかし、いま施設庁長官も申し上げましたように、どういう意味でその警告という看板が出ておるのか、実態をこれから調べてみたいと思います。
  224. 中路雅弘

    中路委員 外務省、これは施設庁、米軍協議なしにこういう看板は出せないのですよ。いま調べるとおっしゃるが、調べて私の指摘が当然ならば、これは当然アメリカに抗議をし、撤去させる、お約束できますか。
  225. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 調べた上で善処したいと思います。
  226. 中路雅弘

    中路委員 私は、調査をして事実ならば、当然これは抗議をし、横田の司令官あるいは米国政府から県民に対して謝罪をすべきだと思いますが、いかがですか。
  227. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどから申し上げましたように、実態を調べて、その調べた上で、これに対して適当に対処していきたいと思います。
  228. 中路雅弘

    中路委員 総理、問答をお聞きになっていると思いますが、調査するというお話ですが、調査をして、これは事実を私お示ししているので、当然これは撤去させ、そして埼玉県民、東京都民に、こうした不法な掲示をされたという問題については、当然謝罪を公にされるべきだと思いますが、要求されますか。
  229. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務大臣が御答弁したとおりです。
  230. 中路雅弘

    中路委員 この結果については、それでは後で御報告いただけますか。
  231. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 合同委員会等の場においてこの問題を取り上げ、その結果につきましては適当なときに御報告をいたします。
  232. 中路雅弘

    中路委員 私は、この問題と関連して、この際総理に要求したいのですが、多数の住民が住んでいる地域ですね、日本国民が。しかも、ここは後から住んだのではないのです。住民が住んでいるところをアメリカの基地に提供したわけです。そして、いわば基地の中に囲い込んでしまった。そして、人権や財産権にも、いろいろの現地協定によって制約が加えられている。こうした日本国民が何百人もいる。こういうことを私は許すわけにいかないと思うのです。細かい現地協定についても一切公表しない、どういう協定があるか。この自由に通れる道路の中で日本人同士で自動車事故が起きた、そうするとアメリカの官憲と日本の官憲で調査が始まる。子供がプールに落ちて死ねば、やはりアメリカの官憲が出てきて日本の警察と合同調査をする。こうした異常なことがこの地域では行われているわけです。多数の住民が住んでいる地域をアメリカの要請にこたえて基地として施設として提供していくことができるならば、こういうことが全国に広がれば、それこそ総理の言われる不沈空母になるじゃないですか。  私は、こうした基地の中に住民を囲い込んで、憲法の保障する基本的な人権や生活権、財産権に重大な制限を加えている、こうした不自然な基地の形態はやめるべきだ、基地の指定の解除を強く要求いたしますが、いかがですか。
  233. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど外務省からもお答えいたしましたように、この通信所の機能について米側としまして必要な範囲としての百十八万八千平米をこちらから提供しているわけでございますが、その中に先生は住民を囲い込んでいるという表現をなさいましたが、米側から見た場合には、通信機能に影響のない限り、住民に住んでもらってもあるいは農耕してもらっても差し支えないということで、そういう実態が現在あるわけでございます。しかし、御承知と思いますが、その場合でも建物を建てたり等につきましては米側の了解を得て通信機能に支障はないということで認めてもらっているということでございまして、米側の通信機能の維持という点からあの区域百十八万八千平米は必要であるということで、私どもはこれに対して返還を求めるという考えはございません。
  234. 中路雅弘

    中路委員 あなたは日本政府の代表で答弁しているのですか。アメリカ側から言えば恩恵的に住まわしてやるというあなたの立場に立つのですけれども、日本の国民がそこに住んでいる。住んでいるところを基地に提供して、文字どおり囲い込んで人権まで制限をする、そんなことは私は許されないと思うのですね。この問題について検討いただけますか。  総理、いかがですか。こういう不自然な基地の形態というのは許しておくわけにいかないですよ。後から住んできたのじゃないのですよ。住んでいるところをどんどん提供していく、こんなことは許されない。
  235. 塩田章

    ○塩田政府委員 旧海軍時代から施設そのものはあったわけでございますが、その後米軍が入りまして区域を広げて、その際に、御指摘のように、住んでおった人がおるということは事実でございますが、先ほど申し上げましたように、必要な区域でございますから、米側としましては百十八万八千平米を使って機能を果たしておるわけでございますから、これはわれわれとしましても必要な区域として提供していくということについて今後変えるつもりはございませんし、中に住んでおる人との権利関係等につきましては、先ほど外務省からお答えいたしましたように、両者の利害を調節しまして、現実的な解決として現在のような形で運営しておるということでございますので、その点を御理解賜りたいと思います。
  236. 中路雅弘

    中路委員 納得できないです。私はこの基地の指定を解除することを改めて強く要求しておきたいと思います。  そして、最初にお話ししましたように、この大和田基地は九月から巡航ミサイル用の改造工事が始まります。アメリカの文書でも明白なわけですし、そういう意味ではまさにB52の戦略空軍の指揮管制の中枢な通信基地として強化されようとしているわけです。また、かつて昭和十六年の十二月のあの帝国連合艦隊に対して、この前の戦争の始まりですね、「ニイタカヤマノボレ」という、ハワイ奇襲攻撃せよという電令を打電したのもこの通信基地なんです。こうした首都圏にある基地が、いわゆる新しいこれからの核戦争の発火点になる、これを皆さんは心配をしているわけです。そういう点も含めて、私はこの基地の撤去、解除を強く要求しておきたいと思います。  この問題は後で日米合同委員会を通じて調査をしてさらに御報告をいただくということになっていますから、これは確認していただけますね。そして、私が指摘したとおりであれば、当然これは撤去をされなければなりませんし、米軍に謝罪を要求しなければならない問題だと思いますが、最後に、外務大臣、いかがですか。
  237. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この大和田基地につきましても、これは日米安保条約、さらにその関連規定によりまして提供しているわけであります。日米安保条約というのは、御承知のように、日本の平和と安全を目的として結ばれた条約でございますし、したがって、アメリカ側が基地についてこれを返還するということを示さない限り、わが方としていまお話しのように撤去を要求する考えは全くありません。  それから、いまの警告のいわゆる看板につきましては、これは先ほどからお話をいたしておりますように、十分調査をして、その調査の結果を待ちまして適当な措置を講じていきたい、こういうふうに存じます。
  238. 中路雅弘

    中路委員 限られていますので、あとわずかですが、人事院勧告問題で二、三御質問したいのです。  同僚の議員のこの予算委員会における質問でも、政府は財政危機を口実にして五十七年度の人勧凍結方針をあくまで変えないだけではなくて、五十八年度人勧についても完全実施をするということは明言されていないわけですが、これは総理ILO勧告でもこの凍結が遺憾だということを言って、「今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施」されるよう求めるという勧告が出ていますが、この勧告についてどのようにお受けとめになっておりますか。
  239. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  政府ILOに対する政府見解にも述べたとおり、人事院勧告を尊重するという基本方針を堅持してまいります。  次に、昭和五十八年度の人事院勧告については、勧告が行われればその段階で国政全般との関連において検討することとなるが、政府としては勧告制度の持つ重要性を十分踏まえてまいりたいと思いますし、一方現下の財政状況をも勘案しつつ、二年続けて給与改定を見送るような事態にならないよう最善の努力をする考えであります。  御答弁にいたします。
  240. 中路雅弘

    中路委員 完全実施とあくまで言われないわけですね。  私はこの際、人事院総裁にお聞きしたいのですが、いまのままでは人事院のいわゆる代償機能というのは一層形骸化されてくる、これは必至だと思いますが、人事院がみずからのこうした状況を、危機をどう認識し、今後どう対処していくおつもりですか。
  241. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五十七年度の給与に関する人事院勧告の取り扱いについては各先生からいろいろ御意見があり、また繰り返し私の考え方を申し上げてきたところでございまして、これは一切変わっておりません。すなわち、公務員についての労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告でございますから、これはあくまで尊重していただかなければなりません。そういう意味で、財政事情その他がございましたけれども、五十七年度については凍結やむなしという政府決定がございましたことについては遺憾の念を禁じ得ないということを、これも申し上げてきたところでございます。  ただ、この勧告の問題は国会に対しても出されておるものでございますので、現在も引き続き国会を場としていろいろ御検討いただいておる、御協議をいただいておるという段階でございますので、私といたしましてはこの場においても適切な御判断の上で適切な御結論をいただきたいというふうに念願をしておるというのが現在の心境でございます。
  242. 中路雅弘

    中路委員 いまのまま凍結が五十七年度解除されないということになれば、この部分はずっと欠落して残されるわけですね。人事院はそのまま放置しておかれるのか。五十八年度人勧はそういう事態の場合にはどのようは進められるおつもりですか。
  243. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 仮に五十七年度の勧告が見送りということに国会の場においても確定いたすという段階になります場合にどうかということでございますが、まだわずかではございますが、期日が残っております。そういう意味で、国会の場においてあくまで協議の上で趣旨の貫徹をお願いをいたしたい。仮にだめだという場合のことを仮定して、私はこの場で、この時期でいろいろなことを申し上げることはむしろ差し控えさせていただきたい、それが適当ではないかと思っております。
  244. 中路雅弘

    中路委員 これは午前中の質疑にもありましたけれども、ILO勧告の背景に、政府深谷総理府総務副長官を通じてブランシャール事務局長日本政府見解を持っていっておられます。その見解を見ますと、国会も政府人勧凍結に同意をしてすでに決着済みであるかのような説明を行っておられるわけですけれども、たとえばILOに対する日本政府見解の中では、国権の最高機関たる国会の判断を仰ぎ、人事院勧告の実施見送りを前提とした補正予算が十二月二十五日に成立したとか報告されているのですが、これはこれまでの国会の、昨年の臨時国会以来の経過、また、この国会でいまお話しのように引き続いて協議をされているこの経過からいっても、全く欺瞞的な報告がなされている。この報告についての責任はどうされますか。ILOの窓口はどこですか、労働省ですか、副長官を出された総理府の長官ですか。
  245. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいま、総理府の深谷長官ILO結社の自由委員会の方に参りましていろいろと政府立場の御説明を申し上げてきた、そのところへ送り出したのはだれであり、そしてまた、深谷長官の申し上げたことが間違ったような報告をしてきているんではないかという御指摘でございますが、その点について私は明らかに先生に申し上げておきたいと思いますが、深谷長官がいたしました政府報告では、昨年の九月の人事院勧告の実施見送りの決定を前提とする補正予算を臨時国会に提出いたしました、同予算は昨年十二月二十五日国会で可決成立したという、そういう事実関係を述べたのでございまして、なおまた、いま御指摘の、国会において各党間に種々の論議が行われておることは私も十分承知しておりまするが、人事院勧告の実施に関係する何らかの決定をしたという事実は私は聞いておりませんので、そういう決定を下されたという事実はないということを政府報告の中で申し上げたことを申し上げておきたいと思います。
  246. 中路雅弘

    中路委員 日本政府報告というのは、明らかに、この全体の文章を見ますと、五十七年度凍結についてはすでに決着がついている、そういう文章になっているのですね。こうした誤った報告を出されているということについては私は大変けしからぬ、責任も大きいと思います。午前中この問題の論議もありましたから、この点については、こうした報告を出された政府に私は強く猛省を促したいと思います。  もう一、二点お伺いしますけれども、このままだと五十七年度に退職する職員の退職金あるいは共済年金ですね、人勧凍結で大きな損失をこうむりますし、私も昨年来実務者会議に出席しておりますが、そこで出された資料を見ましても、たとえば三十年勤続で退職金だけで約七十四万円の損失になります。特に五十七年度に公務で死亡した職員の遺族、これにも影響しますね。退職金だけではなくて遺族年金にも生涯影響する。こうした冷酷な処置を続けていくのか、この問題の救済は私は当然考慮しなければならないと思いますが、いかがですか。
  247. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきますが、過去に人事院勧告が完全に実施されなかった場合でも、退職金、退職手当は退職時の俸給月額を基準に計算することとしておりまして、格段の救済措置をいたした例はございませんが、しかし昨年のとき、一般職員は給与改定を行ったのでございますけれども、本省課長等の管理職員は給与改定が行われなかったので、一般職員と管理職員との間で退職手当について不均衡が生ずることとなりましたので、これを是正するために特別措置を講じていただいたことはございます。  私としては、やめていかれる方々、長い間お勤めいただいた方々に、給与が据え置きになったとかあるいは見送りになった、そのためにいただかれる給料が、退職金が、一時金が少ないということは大変お気の毒なことでございますけれども、法のたてまえから申しまして、算定の基礎がこうなっておりますので、こういうようにやらしていただくより方法はございませんと申し上げるつらさというものをどうか御理解いただきたいと思います。
  248. 中路雅弘

    中路委員 政府はいま言った、まだ非常に冷たい態度でありますけれども、人事院総裁人事院は、たとえば国公法の百八条でも、年金制度等に関して研究を行って、必要な意見を国会及び内閣に申し出ることもできるという権能も持っています。この際、こうした付与された権能も駆使して、こうした不利益を受ける人たちに対する救済を考えるということは人事院としても当然のことだと思いますが、何らかの救済措置を講じるという考えはございませんか。
  249. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 これも実はくどいようですが、仮定の問題でございまして、この問題も各党間において五十七年度給与勧告にかかわる問題の一環として御協議がなされておるということを承っておるのであります。  したがいまして、私といたしましては、やはり勧告は実施していただきたいという基本線を保持しつつ、御協議等の結果を見守っておるというのが現状でございますので、仮にこれが見送りということが確定した場合にどうするのか、特にその一環としての退職年金の取り扱い等をどうするかというようなことは、やはり国会における御審議、また、その後における政府のこれに対する対処方策というものを見ながらその時点においてどうするかということを考えていけばよいことでありまして、現在この時点でどうこうすると言うようなことはむしろ差し控える方が適当であるというふうに考えております。
  250. 中路雅弘

    中路委員 この勧告の凍結というのは、今度の予算でも連動して恩給や年金のスライドまで引き上げを凍結されているわけですし、これが消費不況への影響ということになりますと大変大きいものだと思います。さらに、公務員の基本的な労働基本権に関する問題です。代償制度が実施されないということになれば、公務員は全く無権利の状態に置かれるということにもなります。私は改めて、こうした不当な凍結方針を撤回して完全に実施されることを強く重ねて要求しておきたいと思います。  あと四、五分でありますので、対米武器技術供与問題について、私たちの見解も含めて述べたいわけですが、二月二十三日、それからきょうも政府統一見解というのが出されました。二十三日の対米武器技術供与に関する見解、これはもう去る一月十四日の官房長官談話を変更するどころか、何ら論証もなく、今般の政府の決定は国会決議に反するものでないという居直りの態度に終始した文書だと思います。  国会決議の趣旨というのは、同僚の東中委員もこの予算委員会で指摘をしましたけれども、その成立の過程からも、武器輸出原則及び政府統一方針を貫徹するため政府が実効ある措置をとるべきであるということに尽きるわけですね。だから、鈴木前首相も、政府としては、米国に対する武器技術輸出についても基本的には武器輸出原則及び政府統一見解に基づいて対処するということを答弁されておるわけですし、政府、外務省当局も、武器輸出原則政府統一見解及び国会決議、これは基本的にアメリカにも適用されるといままで答弁されてきました。安保条約を結んでいるアメリカも例外でないことを明確にしているわけです。国会決議は、アメリカへの武器技術供与武器輸出原則の例外として扱うような立場は全くとっていません。そういう点で、政府回答が国会決議に違反であることは私は明白だと考えるわけです。また、この問題は、対米武器技術供与が、いまの憲法の平和主義にも真っ向から反する点でも大変重要だと思います。  時間がありませんから、私は一問だけ聞いておきますが、この委員会の席上で、アメリカが紛争の当事国になっても武器供与を行うという答弁自体大変けしからぬことですけれども、政府回答にあります「仮に第三国への移転につき事前同意を求められた場合には、政府としては米国に対して武器技術供与を認めた趣旨及び武器輸出原則等を踏まえて慎重に対処する所存である。」ということが書かれています。「慎重に対処する」と書かれていますが、これは第三国が紛争当事国である場合は、当然絶対ノーだと思いますが、いかがですか。
  251. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本がアメリカに武器技術供与して、そのアメリカがその武器技術を第三国に供与する、こういうふうな場合においては、もちろんMDAの協定に基づいてアメリカに技術供与をするわけでございますから、日米関係においてMDAの精神を守らなければならないという権利義務が発生をしますし、同時にまた、第三国への供与等については日本同意がなければこれができないというのがもちろん基本的な原則でございます。  わが国としては、こうした場合においても、これはこれからの具体的な事例によって細目取り決めを結ぶわけでございますが、日本がアメリカに武器技術供与することにしたその趣旨、さらにまた安保条約の効果的運用という面から、同時にまたMDAの国連憲章を守る、そういうふうなさまざまな原則等も踏まえて慎重に対処をしていかなければならないというのがわれわれの基本的な考え方でございます。
  252. 中路雅弘

    中路委員 いや、私がお尋ねしているのは、この「慎重に対処する」という中で、第三国が紛争当事国である場合は絶対ノーですねということをお尋ねしておるのです。
  253. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この武器技術供与によって紛争の助長を起こすというふうなことに対しては、もちろん武器技術供与の趣旨から言いましては、これに対しては同意を与えないというのが基本的な考え方であります。
  254. 中路雅弘

    中路委員 この場合は同意を与えない、ノーだということの御答弁がありました。この政府回答で、国会決議が日米安保条約と武器輸出原則の調整までも禁じているものではないと述べられていますけれども、こうした立場に立てば、将来武器そのもの輸出も可能になってくるわけですし、国会決議で確立された非核三原則にも対米例外の道を開きかねない危険性を持つものだと思います。  国会決議にも反し、また日本国憲法の平和主義も真っ向から踏みにじるこうした今度の政府の対米武器技術供与の問題については、私は断じて容認することができません。この全面撤回を強く要求して、私の質疑を終わりたいと思います。
  255. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 これにて中路君の質疑は終了いたしました。  次に、中馬弘毅君。
  256. 中馬弘毅

    中馬委員 わが会派の楢崎委員質問において、通産省と外務省の見解が違うということで問題になり、きょう政府統一見解が冒頭になされたわけでございます。いわゆる武器輸出の問題でございます。  そこで、山中通産大臣は、本当に政治家山中貞則としての真情を吐露されました。何といいますか、私どももじーんと聞かされたようなことでございまして、なかなか九州男児やるわいなという気持ちで、むしろこの理念というものをしっかりと、場合によっては学校の教科書にでも載せたいという気持ちを持ったようなことでもございます。そのとおりにこの統一見解がなされておったらいいのですけれども、しかし、どうも言葉足らずであったり、あるいは余分な言葉が入っておったりするんですね。従来と変わらないということを一生懸命おっしゃっておられます。  しかし、その従来の政府見解あるいは国会決議というものには、平和憲法の理念をしっかり踏まえてということがいつの場合にも書いてあるんですね。この五十一年の政府見解におきましても、「憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのつとり、」ということがはっきりうたわれておりますし、あるいは国会決議におきましても、「日本国憲法の理念である平和国家としての立場をふまえ、」とはっきり書いてあるわけですね。しかし、ここでは書かれていないわけです。しかし、これは従来どおりだとおっしゃる。  そうしますと、これは言葉足らずであって、やはりここの「従来から」というところの意味には、日本国憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえてということがちゃんと入っているのかどうか、これをひとつお答え願いたいと思います。官房長官
  257. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 官房長官談話の中には、やはり日本は平和国家として生きていくんだ。平和を守るためにどういう道筋をとるのがいいのか、ここらが野党の皆さん方と私どもとの間に若干開きがあるのかもしれませんね。しかし、精神においてはあくまでも私どもは日本の平和を守る、その観点で私どもは日米安保というものを結んでいるわけですね。そういう観点に立ってやっていく、かように御理解いただきたいと思います。
  258. 中馬弘毅

    中馬委員 ですから、ここで「従来からの方針に何ら修正を加える考えはない。」とおっしゃっている。しかし、先ほど言いますように、この中はどうも表面的に読みますと、政策的、技術的な表現だけになっているんですね。しかし、いままでのはちゃんとした平和憲法としての理念を踏まえて物事が書かれておったわけですから、この従来どおりというところには、それがちゃんと入っているものだと理解していいのですか。それは一応ここでは除くんだとお考えなのかどうかをはっきり御答弁願いたいと思います。
  259. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私の談話の第三項に、「なお、政府としては、今後とも、基本的には武器輸出原則を堅持し、昭和五十六年三月の武器輸出問題等に側する国会決議の趣旨を尊重していく考えであることは言うまでもない。」ということでございますから、従来どおりでございます。
  260. 中馬弘毅

    中馬委員 そのことをはっきり確認いたしておきます。  このような言葉足らずと同時に、今度は余分な言葉があるんですね。「中曽根内閣としては、」とわざわざ条件がついております。なぜこれをおつけになるのか。総理としては、自分のときはいいんだ、しかし後はどうなろうとこうなろうとというお気持ちちなのか。いや自分の後もそれは確かにわからないけれども、しかし、その方にも守ってもらいたいというお気持ちがあるのかどうか、そこのところ、こで限定をつけられたことの真意も含めてお答え願いたいと思います。
  261. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法の平和的理念あるいは日米安保条約等に盛られておりまする同じような平和を維持する念願、そういうような精神を貫いて今後とも歴代内閣、自民党はいくだろうと思います。それをまた私は当然のことであると思っておりますが、私の内閣のときに自民党の将来の党議を縛るようなことは、これは越権である。あるいは将来の内閣の当事者がいろいろな局面に遭った場合に、その場合といえどもこの平和憲法の理念あるいは安保条約の理念というものはあくまで堅持するということは当然だろうと思いますが、そのときも同じ精神でやってもらいたいけれども、具体的な行為について一内閣が将来について縛っておくということは越権である、そういうふうに考えまして、中曽根内閣におきましてはと、そういうふうに申し上げた次第です。
  262. 中馬弘毅

    中馬委員 内閣としては、とお書きになって何ら差し支えないんじゃないかと思うのでございますけれども、いまおっしゃったのは確かに理屈かもしれませんけれども、しかし人と人との信頼関係あるいは人に物を約束するといったときには、こういう言い方は普通はしないのですよね。お金を借りるときに、たとえば銀行で、自分が社長で在任中は必ずお返しします、こういうようなことを言ってお金を借りますか。じゃ、そんなところに銀行は貸しますか。そんなことよりも、ちゃんとお返ししますと言って判こを押してやるのが、これが一つの当然の社会的な規約でございますね。  ですから、ここにあえてこういうことを書かれるから中曽根さん、誤解をお受けになるんじゃないでしょうか。なぜおつけになるのか、そこのところだけ、もう一度だけお願いします。
  263. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、平和憲法の理念とかあるいは安保条約に盛られている国連憲章を尊重する理念とか、そういうものはあくまで堅持して、政策の指針としていくべきものであると考えております。
  264. 中馬弘毅

    中馬委員 このことを一つ申し上げておきますが、また、このいわゆる通峡阻止の問題につきましてもちょっと気にかかる言葉がございますので、指摘をしておきます。  と申しますのは、この二ページのところで、「わが国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等」、この「国籍不明」ということですね。国籍不明のものにやられたからといってすぐこういうことを行うのですか。逆に、国籍不明のものにやられた場合には、その国籍がどこであるかということを確かめてからでなかったら非常に危険じゃないかと思うのですね。     〔江藤委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 蘆溝橋事件ではないけれども、このような侵略的な行動を起こすときには何らかの名目をつけて、場合によっては自国の軍隊で沈めてでもそういう言いわけをつくってやっていくのがいわゆる侵略のときの場合のケースでもあるわけですから、このような国籍不明の艦船か何かによってやられたというだけでこういうことを起こすということは非常に僕は危険だと思うのですけれども、このところの解釈をひとつ具体的にお願い申し上げておきます。
  265. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 けさお示ししました統一見解に沿って御説明申し上げます。  二の(二)で、「わが国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等わが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合」ということでございまして、御指摘のように、国籍不明ということでわが国の船舶を攻撃しておる艦船の国籍がまだ明確に認識されるに至っていない事態ではあると思いますが、他方におきまして、「武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合」ということでございますので、この国籍不明の艦船と申しましても、この艦船の所属しております国、これはまだ明確に確認されておらないわけでありますけれども、この国と、アメリカが他方におきまして通峡阻止のための実力行使としての自衛権行使の対象になっておる国、この二つの国が理論的に考えられるわけでございますけれども、この二つの国が同一であるという蓋然性が非常に高い場合ということを一つの例示として、「わが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合」ということの一つの例示として総理がお示しになったと、こういうふうに理解しております。
  266. 中馬弘毅

    中馬委員 何かわけのわからない御答弁でございますけれども、国籍不明、これは場合によっては韓国なのかフィリピンなのかソ連なのかわからない段階でこのところを封鎖してしまうということ、これはどういうことですか。総理大臣がこの言葉をお使いになったようですから、総理からもひとつ御答弁願います。
  267. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに、わが国の防衛というものは、個別的自衛権の発動としてわが国の防衛ということを中心に物を考えるわけでございます。  そのわが国への武力攻撃緊迫性が出てきている、そういうふうに考える場合、その一つの例示として、いまの日本の船舶が被害甚大を起こしているという状況を一つの例示として申し上げたので、本質的には、わが国に対する武力攻撃緊迫性が出てきている、そういう状況というふうに条件をつけておる。しかし、その場合といえども、わが国同意を求めるということと、それから、わが国がその紛争に巻き込まれないように最大限の注意をするということ、それから、その場合に判断を下すという場合には、やはりそのときの国論あるいは議会筋の考え方あるいは日本の経済的実相、こういうようなものをよく見きわめて考うべきである、そういうふうにまた条件もつけておるわけであります。
  268. 中馬弘毅

    中馬委員 この「国籍不明の」という言葉にしましても、先ほど言いました「中曽根内閣としては、」という限定がついている意味におきましても、今回のこの政府統一見解、私どもは少なくともこれは納得できないということをここで改めて表明をいたしておきます。  それから、武器輸出の問題は、先ほど山中大臣がおっしゃったように当然の話なんでございますけれども、軍事技術におきましても、果たして今回の措置が国益に合うのかどうかというのは私は非常に疑問に思っております。基本技術において、アメリカにない技術で日本にだけあるといったようなものはほとんど私はないと思うのですね。日本がすぐれているのは応用技術であったりあるいは生産技術、これを欲しがっておるんでしょうけれども、しかし、わが国立場に立つならば、それだけで、その中でなおかつよその国よりもすぐれているといったものがあるならば、これを専守防衛の技術としてむしろ日本は独自の防衛体制を、その専守防衛の意味で技術的につくる方が有利じゃなかろうか。そして、そういうのを目指すのが、これが平和国家日本のあり方ではないかと思うのですね。やたらにこれを拡散するような形で外国に渡してしまうということがいいのかどうか、こういう点に関しましても、若干、今回のこの軍事技術を外部に出していくということに対しまして、私たちは国益に反すると思っております。  総理大臣の御見解をお願い申し上げます。
  269. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 安保条約の有効な機能を発揮させるという配慮のもとに、また国連憲章や憲法の平和主義の精神を尊重しつつこれを行うということでございますので、御了承をお願いいたしたいと思います。
  270. 中馬弘毅

    中馬委員 時間が非常に限られておりますから次々に移らしていただきますが、総理は御就任と同時に韓国にお飛びになり、それからアメリカにいらっしゃり、また幹事長を中国に派遣をされ、そしてまた今度はASEAN諸国にもすぐまた飛んでいかれるようでございます。非常に精力的に外交を展開されておる点は、私は評価したいと思います。  ただ、行く先々でいろいろ問題が出ていることは別でございますけれども、しかし、そうしてずっといま申し上げたところを回っておられますと、やはり逆の立場に立ちますと、ソ連としては余り気持ちのいいものじゃないと思うのですね。しかも、そういうことがそれだけで、友好関係の訪米だけであればいいんですけれども、軍事的な意図を、少なくとも御本意じゃないかもしれませんが、不沈空母だとかあるいは運命共同体といった言葉が出てのことになってきますと、ソ連も余り気持ちのいいものじゃないと思うのですね。  その対ソ外交については総理もかなり熱心でございまして、三十一年六月ですか、鳩山首相に対しましても何か献策をされたようでもございます。いつも御答弁になりますように、こういったことが誤解だと言うのであれば、ソ連に対してもどういう形で今後接触をされるか。領土の問題がございます。しかし、領土の問題が解決しなければ話し合いに応じないというのであれば、いつまでたっても日ソ関係は修復されないわけでございますので、むしろ率直にお話し合いになる機会をみずからおつくりになることが得策じゃないかと思うのですが、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 領土の問題というのは、やはり国家存立の上については非常に重大な基本的問題でございます。世界の歴史を見ましても、やはり領土問題というのは国家主権に関する重大な問題を含んでおるわけでございます。わが国におきましても、北方領土については同じような性格の問題を抱えておるわけでございますから、この基本的問題を解決して、そして平和条約を締結するということが国の歩みとしては正しい、世界の公理にかなった歩みである、そう考えております。  したがって、こういう基本的立場を踏まえてまいるつもりではございますが、また一面、隣国でもございまして、経済関係とかあるいは科学技術の協力とか文化交流とか、さまざまな面、あるいは漁業交渉という問題もございます。そういう問題もあるということもやはり認識せざるを得ないと思っております。  そういうような基本的問題と、それから基本的ではないが、隣国としてお互いにつき合っていく上で考えていくべき問題というもの等、よくわきまえながらこのいろいろな問題を打開していく、そういう考えで基本的に立ってまいりたいと思っております。
  272. 中馬弘毅

    中馬委員 アフガニスタン問題以来閣僚級の対話がとぎれておりますけれども、この点に対して、総理は今後どのようなソ連との関係をお進めになるおつもりでございますか。
  273. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ソ連との関係については、いま総理からお答えになったのが基本的な方針でありますが、実務的にはいろいろと交流が続いております。  先般もカメンツェフ漁業大臣もやってまいりましたし、永野ミッションの訪ソということもございました。四月には日ソの事務レベルの協議を東京でやることになっております。われわれとしては、いたずらに対決を好むだけではなくて、やはり具体的な対話というものも積極的に進めていただく、こういうふうに思います。  日ソの外相定期会談というのもあるわけですが、これは、日本の外務大日がこれまで何回も行きましたけれども、ソ連の外務大臣が日本にやってくる番になっておりまして、われわれとしてはグロムイコ外務大臣を日本に迎えまして、そして日ソ間の問題について外相会議をぜひとも開きたい、こういうふうに思っております。
  274. 中馬弘毅

    中馬委員 これは、日本の置かれた立場が非常に微妙な位置関係にもございますので、この間総理が御就任になったときに、逆にソ連にまず飛んでいくのが一つの国策的な上での方法じゃなかったかということをおっしゃっておった方もおられます。というのは、相手もアンドロポフにかわったわけですし、自分もかわった。ですから、いままでとぎれている対話をひとつ率直にやろうじゃないかということで、まずはソ連に飛ばれて、それからアメリカに行かれましたら、アメリカは場合によったら今度のような形ではなくて、もっと下にも置かないような形で総理を歓迎なさったんじゃないかというような見方もあるわけでございます。アメリカとの関係はもちろん大事でございますけれども、やはりソ連は横に相当な軍事力を持った大国でもございます。そこに変な意味を起こさせない意味におきましても、ソ連との関係をひとつ友好的にやっていただきたい、そういう対話の窓を広げていただきたい、このようなことをひとつお願い申し上げておきます。  それから、時間がございませんので、減税の問題に入る前に、税収の問題を少しお聞きいたしておきます。  五十七年度、現在までの税収、これはきょうの三時に発表ですか、一月の税収が達成率としてどの程度になっているか、ちょっと主税局の方からでもお答え願います。
  275. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 一月末の税収がまとまりましてきょう発表するわけでございますが、進捗割合が六八・四%でございます。補正後の税収の大体七割弱ぐらいがいま達成されておるわけでございますが、前年同期と比較いたしまして六%でございます。十二月末が六・三%でございますので、〇・三%ポイント、やや低調という傾向が出ておりますが、補正後の予算は前年度に比較いたしまして五・三%の伸びで見込んでおりますので、なお若干の余裕があるということでございます。
  276. 中馬弘毅

    中馬委員 源泉所得分だけでこの十二月が、補正比で六五・八%税収が達成しておりました。一月のこの十二月の六五・八%に対応する数字がありましたら、ちょっと教えてください。
  277. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 進捗割合の六五・八というのは同じでございます。
  278. 中馬弘毅

    中馬委員 いや、それがずっと上がっていくでしょう。一月の数字を。
  279. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 失礼いたしました。八四・九でございます。
  280. 中馬弘毅

    中馬委員 五十六年度は、当初予算に比べまして三兆五千ほど税収不足となりました。五十七年度は六兆以上の税収不足になっております。そして、それによって補正をされたわけでございますが、大きく変動しておるのは法人税なんです、あるいは申告税でありまして、源泉所得の方はかなり上がっていっているのです。そうしますと、五十七年度はともかくといたしまして、五十八年度あたりの源泉所得税、少なくとも減税をしないといういまの予算の編成でありますと、この税収がこんなに低くなるのかどうか、もっとふえるのじゃなかろうかという気がいたしております。  少し数字を挙げてみますと、たとえば、これは名目にリンクするわけでございますから、五十四年は名目成長率が七・四%のときに源泉所得税は一九%伸びているのです。それから、五十五年は七・七%でまた一九・三%伸びております。五十六年度、五・五%に成長率が落ちておりますけれども、しかし税収は一三・四%、源泉所得税だけどんどん上がっていっているわけです。ところが、五十七年になりますと、これはほとんど変わらない五・一%の見込みでございますけれども、ここで六・七%まで減らしているのです。しかし、いま言いましたように、少し補正よりも上がりてくる可能性がございます。また、五十八年度につきましても、五・六の成長率に対して八・六しか源泉所得税を見込んでいない。逆に言いますと、これは五十七年度、余りにも大きな税収不足が出てしまった、その反省と言ったら逆でございますけれども、これに対して、むしろ少し少な目に見積もり過ぎているような気がするのです。これははっきり言いまして、前のときには国債を少し減らさなかったらいけないというので、余分に税収を見込んでしまった。その裏が六兆という大きな税収欠陥になってしまったのです。ところが今度は、はっきり言って国債を少しはふやしてもいいという中で、むしろ行革でゼロベースの予算を組まぬといかぬ。そういうことから税収を少し、どうもあちこちを検討しましても低く見込んでおります。  それからもう一つは、予算編成の時期が違います。この税収を見込んだのは五十七年の秋でございますけれども、しかし、いまとは大分情勢が違っております。あのときには、五十七年のときには、私たちは初めから五兆ぐらいの税収欠陥が出ますよということをここではっきり言いましたのに、皆さん方はそれを否定なさいました。しかし、結果は六兆にもなりました。ところが今回は、私たちいろいろな試算をしてみましたら、これは明らかに見積もりが非常にかたくなっていると同時に、半年前といまとはまた情勢が違ってきております。個人消費が少し伸びてまいっております。アメリカの景気が少なくとも上向いてきております。それから、石油がかなり大幅に下がりました。こういうことからすると、少なくともこの見込まれた三十二兆という税収は、三十三兆なり三十四兆にかなり上がってくると私なんか試算できるのですけれども、その点は企画庁長官どうですか。
  281. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 企画庁は税収の見積もりをいたす役所ではございませんので、いまおっしゃった点を私なりに答弁として考えてみますと、いま源泉所得税の税収が経済成長率から見て五十八年度に関してはかた目ではないか、こういうお話のように聞こえました。税収の見積もり、特に源泉所得税は、経済成長全般というよりも、主税局の見方としては雇用者所得の伸び、雇用人員の伸びをその積算の根拠としていると私は考えております。  そのような点から見まして、いまの源泉所得税はそうかた目と申しますか、まだまだ自然増収が生ずるほどのものではないというふうに私は考えておりますし、経済成長を基礎とするというようなことより、税収というものは経済成長の見通しよりももう少しかた目に見るべきである、むしろ、補正予算で自然増収が生ずれば、その後に決算が出てから使うくらいのかたさが、いまの財政再建の必要なときには逆に必要だと、こんなふうに企画庁長官として考えております。
  282. 中馬弘毅

    中馬委員 時間がございませんので、そのことを余り議論しておりますとあれですけれども、最後に、大蔵大臣にひとつその点を確かめさしていただきたいのでございます。  先ほど言いましたように、われわれまだ議論がしたいのですが、かなり細かく計算してみましても、今度の予算は税収がかた目に編成されております。かた目に編成したことが悪いとは言っておりません。そうあるべきだと私たち思っております。しかし、出る可能性がございます。一兆ないし二兆円、自然増収と言ったらちょっと語弊がございますが、見積もりがかたかったがために、あるいは情勢が変わったがために税収が伸びる可能性があります。そのときに出た税収の増収分はどうお使いになりますか。国債を減らされるのですか。それとも、私たちはだからこそいますぐにでも減税をやっても大丈夫だという判断があるのですけれども、その点も含めて大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  283. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、基本的に申し上げますのは、いまの歳入歳出に基づいてこれが最善の予算として今日御審議いただいておるわけでございますから、これの見積もりにつきまして、将来変化することを前提に御議論を申し上げるのは適当ではないと思います。  ただ、一般論として言えますことは、これからの問題でございますが、石油コストの値下げ等がございましても、これが直ちに税収に影響するものでもなければ、各般の問題で不確定要素が大変に多いところでございますので、その際どうするということをお答えすることは差し控えさしていただきたい。
  284. 中馬弘毅

    中馬委員 最後に、政策課題に何を置くか、その順番ということでございますから、大蔵大臣よりも総理の方が適当かと思うのですが、そういった税収は、もちろん減ったりふえたりするわけでございますけれども、しかし、ふえた場合には、これはまずは公共投資に使おうとおっしゃるのか、あるいは国債を減額しようとおっしゃるのか、あるいは約束もあるから、まずは減税をやろうとおっしゃるのか。総理として政策課題を何に置くかという点を最後に御答弁願いまして、私の質問を終わらしていただきます。
  285. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはまさに国会の問答等を通じながら、その時点で総合的に判断すべきであって、国会におきまして各党間のいろいろな合意があったことは十分承知しております。
  286. 久野忠治

    久野委員長 これにて中馬君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  287. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大蔵大臣、いまの御論議を聞いても、これまでの長い審議を通じてどうしてもわからないのは、財政運営の今後の展望についてですが、ついにもう時間があと幾らもない段階で明らかにならなかったと自分で思っております。数字的に見ては、今後の歳入歳出のギャップである要調整額がどう処理されるのか。大蔵大臣は、歳出カット、自然増収等を含む負担増、二つ目には借りかえを含む公債発行といったような要素を並べてきただけにすぎなかった。それがどう組み合わされ、どう運営されていくのかというのが不明なままに終わったことは、非常に遺憾であります、せっかくの予算委員会で。  そこで、数字のつじつまがどう合うのかという点についてはひとまずおくといたしまして、私は、この際、今後の財政運営の中身について聞いておきたいと思います。  先ほど、けさ早々でしたか、大出議員の質問に対しても、電話税等はいまのところ頭にない、考えていない、大衆課税であるとか赤字公債の借りかえに安易に頼ることは、これは認めるわけにいかないというのが、予算委員会審議でおわかりのとおりだ。そうなると、必然的に中心的な課題は、まず歳出カットということにならざるを得ない。一体、これを政府はどう考えていこうとするのか確認しておいて、それから事務当局に伺っていきたいと思う。まず大臣から。
  288. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはいみじくも御指摘になりました、私もそれぞれの考えられるものを想定してお答えしておりますが、どれに幾らだけ頼っていくとか、そういうことはお答えしないままに今日に至っておるわけでございます。  考えてみますと、五十五年というものの予算が、いわゆる初めに一兆円の減額ありきというところで公債発行額を減額いたしまして、ここでこれからの財政再建への、ある意味におけるスタートが切られたと思うのであります。そうして五十六年、五十七年、苦しい中に御協力をいただきながら、歳出カットというものが、マイナスシーリングでありますとか、あるいはゼロシーリングでありますとか、あるいはさかのぼればサマーレビューであるとか、ときにはスプリングレビューであるとか、そういう言葉で継続されてきたと思うのであります。ただ、まさに国際経済の不透明感あるいは同時不況、そういうことから、それの一つの目安としての五十九年度赤字国債脱却、これをギブアップしなければならなかったというところで、当初からお答えしておりますように、五十八年度予算編成からが、一つの財政改革のスタート台として位置づけすべきものではないか。そして、その五十八年度予算の編成を通じて、お手元にお出しいたしました財政改革の考え方、そして中期試算等を審議の足がかりとして御提出申し上げたわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、今後まず歳出削減、なかんずくこの歳入歳出の構造の見直しという、特に歳出の構造の見直しというところから手をつけていって、そして現在の政策水準をそのまま維持するという意味において、国民の皆さん方との対話の中に、場合によって負担増ということをお願いすることもあるかもしらぬ。しかし、当面はまずやはり歳出の構造見直しというところから着手すべきものである、こういう考え方であります。御説のとおり、大衆課税とかあるいは安易な赤字公債の発行とか、そういうものを安易に念頭に置いてかかるべきものではないというのが基本的な考え方であります。
  289. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、主計局長、まあ間もなくサマーレビューがやってくるわけだから、大臣は歳出カットに重きを置いて云々と言うのだが、具体的にはどういう進め方にするのか。まずさしあたっては五十九年度の概算要求、いわゆるシーリングをどう設定していくつもりなのか。その辺、頭がいいからわかるか、いまの大臣の話を聞いて。どうです。
  290. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 五十九年度の財政事情はもとより明らかではございませんが、いずれにいたしましても、ただいま大臣が申し上げました財政改革という考え方に立ちまして、まず歳出全般にわたって徹底した見直し、抑制を行う必要があること、申すまでもございません。  そのためはは、まず要求する方の各省庁におきまして、自分の所管する施策、経費全般にわたり厳しい見直しを行い、取捨選択を行っていただく必要があろうかと思います。こうした見地から、いわゆるシーリング、概算要求の限度枠についても厳しいものとしてまいらなければならないわけでございまして、この点につきましては、すでに一月の末に本委員会に提出させていただきました「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」におきましてもそういうふうに申し述べておるところでございます。  ただ、具体的には、まだしばらく時間もございますので、今後経済情勢等の推移を見ながら政府部内において十分検討させていただきたいと思っております。
  291. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そんなあなた、財政当局で経済の見通しが変わるわけないですよ。いいですか、あと二、三カ月で八月なんだから。私だって歳出構造の見直しは行うべきだと思っておるが、ただその結果、いままでの大臣の苦し紛れの答弁というか、結局こういうことになるのじゃないの。弱者へしわ寄せされるという気がしてならないのだね、歳出カットというのは。財政の立て直しに名をかりた企業優遇です。そして、防衛はもう聖域として突出する。そうすると、自然と弱者切り捨てというものしかないんじゃないかというように私は思うのだけれども、違いますか。どうです。
  292. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはまさに短絡的に、歳出カットということになるならば、歳出カットの犠牲者は福祉ではないか、こういう御議論でございますが、五十八年度予算を見ていただきましても、苦しい中においてもこの福祉予算につきましては、〇・六%ではございますものの、これはふえております。そしてまた、中身にはそれぞれそれなりのアクセントがつけられておる。だから、確かに社会保障全体については、高齢化社会の進展に対応して諸施策が今後長期的に安定し、有効に機能するという考え方に立って、真に必要な施策だけは配慮して、そして総合的には給付と費用負担の両面にわたる見直しということが必要になるであろう。これはそれぞれの御答申の中においてもいろいろ指摘されておりますので、これからの正念場だというふうに考えておりますが、ただ、防衛が聖域である、こういうような考え方はございません。聖域を設けることなく、各般にわたって調和をとりながら、国民のための最善の予算をその都度編成していくということであろうかと思います。
  293. 川俣健二郎

    ○川俣委員 防衛費でも聖域ではない、総理も聞いておられると思うが、問題はやはり数字を示して、態度で示してもらわなければならないので、それはまあ八月になって大体わかると思います。  それでは最後に、税外収入について簡単に聞いておきたいのですが、まず五十八年予算では税外収入について特段の増収策を講じているようなんです。税外収入というものを非常に当てにしているようなんです。これはちょっと危険であるというか、財政運営では邪道と言っては専門の人方に悪いが、一体可能なんだろうか。よければいいですよ。財政改革という考えに適するのか、この点ちょっと聞いておきたいのです。
  294. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはやはり税外収入ということにも絶えず眼を向けておかなければならない問題であると思っております。したがって、税外収入の確保につきましては引き続き努力をいたしますが、今年度のような大幅な増収は期待しがたいというのが現実の姿であると思っております。確かに、今年度は五十六年度の決算不足の補てんの繰り戻しという臨時的な支出がございましたので、いろいろ御議論をいただきながら税外収入に多くを頼ったわけでございますが、本格的に税外収入に多くを頼るということにつきましては、税外収入というものは先人の蓄積でもございますし、必ずしも適当であるとは私も考えておりません。
  295. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私もそう思うのですがね。  それじゃ、もう一つだけ、せっかくですから大臣に伺います。  いままでのあれを締めくくったつもりで今後の財政運営の基本とも言うべき点をかいつまんで聞いてみましたが、いずれにしましても政府考え方は、残念ながら具体的にはどうするのだろうかなというようにわれわれは案じておるわけです。ただ、やはりお互いに考えなければならないのは、財政問題というのは財政当局だけの問題と言っては悪いが、聖域化してきたというか、大蔵省もわれわれは聖域だという観念があったのじゃないかという歴史が、ほかの官庁にもあるし、政治にも、大蔵省に任しておりさえすれば少しくらいの赤字財政というのはそのうちに何とかしてくれるだろうという、政治全体のあれが歴史的にあったのじゃないかなと思うんですよ。  だから、将来日本の政治をしょって立つと思われる竹下大蔵大臣、その辺はやはり財政当局というのはもっと国民生活の全体のものだ、こういうように世に示すいい時期なので、あなた、貧乏になってから大蔵省は世の中に出てきたのかと言われる可能性もあるが、もう少し全体につまびらかに、聖域化しないで——あれは大蔵省の門構えの関係もあるかもしらぬけれども、何となくあそこに任してさえおけば日本の国は借金でつぶれるなんということはないんだと思われがちなんです。その辺はどうですか。
  296. 竹下登

    ○竹下国務大臣 門構えの点は別といたしまして、私はまさにある時期瞬間的に日本の大蔵省の大臣になっておるにすぎないものでございますが、長い歴史と伝統の中に国民がある種の依頼心を持ったとすれば、それは信頼があったからだということにもなろうかと思います。  しかし、現実問題といたしましては、財政民主主義という原則にも立ち、そして国会でこのようにもろもろの御議論をいただいておるところでありますので、大蔵省自身が一つの独断と予見を持って事に当たるということはなく、各省との協調、調和の上に物事を進め、また国会等での御議論を絶えず体して、鞭撻を受けながら財政改革の任に当たるべきものである。御激励をありがとうございます。
  297. 川俣健二郎

    ○川俣委員 というようなわけで、これから総理にぼつぼつ聞いていきたいと思うのですが、その前に、けさ早々理事会で、与党の理事は九時半にはぱちっと始めるからということだったのです。ところが、あのような場面になって委員長に厳重注意をされまして、官房長官おわびする、総理大臣も御丁重におわびの弁がありましたが、何だろうなと思ったら昼のニュースのトップに、毎月出す貴重な総理府統計局の失業率をめぐって、いろいろとクレームというか論議があったやに報道されております。これはどういうことかなと思ったら、なるほどいままで完全失業率というのは、二・四五、二・四七、二・三九、二・四三、大体こういうところで、百三十五万人から多くて百三十九万人、百四十万人以下なんだ。ところが、一月になったら百六十二万、二・七二。これはたとえば農民の出稼ぎなどは仕事がなくて帰った一月だからこういう場面かと思ったら、そうじゃなくて、去年の一月は二・二五だから、二・七二というのはやはり積み重ねた数字だから、それはそれでそういう数字を見て対処すべきではないかと私らは思うのだが、官房長官、別に遅くなったことはもう言いませんから、どういう論議だったのですか。
  298. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 けさの閣議が四、五分長引きましたその理由は、まさにけさ閣議に総理府の方から労働力調査、一月分の報告があったわけでございます。  この報告の中身は、就業者の人口も相当ふえております。他方、非労働人口、これが大変減っておる、そして失業者の数がふえておる。非労働人口が大体二十九万減っていると思います。それで、失業人口が三十一万ですか、その程度。これはほぼパラレルになっておる。それで、失業率だけを見ますと前月が二・三でしたね。それが今回二・八か七でしたか、いかにも一カ月でそれだけ上がるはずはないではないか、統計のとり方等について一体どういうことだったのだろうかという疑問が閣僚から出たわけでございます。これは当然の疑問だと私思うのです。  といいまするのは、有効求人倍率等は変わってないわけでございますね。しかも、非労働人口が二十九万減って失業者が三十一万ということになると、非労働人口というのは、御案内のように、家庭の奥さん方とかいろいろおりますね。そうしますと、この統計のとり方に何か変わったところはないのかということになると、これは変わったのです。変わったのならば変わった数字そのまま、これは客観的事実ですから一向に差し支えないが、従来のやり方でやるならばそれは幾らになるということを正確に出さないと、雇用情勢そのものについての判断が間違いやしないのか、これは私あたりまえの議論だと思います。そういったことで時間が超過をしたわけでございます。  そこで、こういった統計のとり方等について、果たしてそれが適切であるのかないのか、数字は前の調査でやれば幾らになるのか、こういったこともひとつ総理府等においてもさらに勉強してもらおう、こういうようなことになったのが実情でございます。それで三、四分おくれて申しわけない、こういうことでございました。
  299. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはりそれだったか、長談義の理由は。失業率が下がるときはわりあいに論議しないのだね。そうだろう、いいだろうと、こうなる。上がると何だかんだ。  どうです、永山さんに来てもらっているが、どこかファクター変わったのですか。
  300. 永山貞則

    ○永山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま官房長官からお話がありました調査方法の変更でございますが、実はただいまの労働力調査は、従来三万世帯の調査をしておりました。それでやっておりますと大体全国平均の結果は十分出ますけれども、地域別の結果が出ない。そこで、やはり雇用情勢を見るには、北海道とか関東とか東北とか、そういう地域別の結果がもう少し出るようにしたらどうだという各省からのいろいろな御要望もございまして、昭和五十六年から計画いたしまして五十七年度予算でそれに取りかかりまして、それで五十七年の十月、十一月、十二月、一月、四カ月にわたりまして従来の三万世帯から四万世帯にふやしたわけでございます。したがいまして、今回の調査改正は調査票を変えるとか質問を変えるとか、そういうやり方には一切手をつけておりませんで、ただいま申し上げました標本数を三万世帯から四万世帯に四カ月にわたって切りかえたというのが今回の改正でございます。
  301. 川俣健二郎

    ○川俣委員 三万世帯を四万世帯にした。私も余り優秀な学生じゃなかったが、統計というものを時子山先生という人にちょっと教わったのだが、このとる数字が多くなればなるほど統計というのは確度が高まるのであって、閣議もひとつその辺も今後検討の材料に入れてもらいたいのですよ。できればもっと入れてもらいたいのだ、数字というのはね。一人より十人、十人より百人の方が統計としては確度があるわけだから。  まあ、こういう論議をしてもあれですから、それでは労働大臣、問題は雇用問題だ。けさほども大出議員が詰めておりましたが、いよいよ五十七年度の人勧凍結は国対委員長会談でやる、だから予算審議に入れ、そうですかということで言うことを聞いてこのとおり審議しているわけですが、問題は、地方は退職希望者が、大出議員がきょうよく数字で示したように、やはり人勧のあれを見ないと、それが基礎になって年金なり退職金のあれになるから、勧奨しても、肩たたきしてもなかなかやめない。ところが学校の場合は、うちの息子は学校に採用が決まっているがということでこれは非常に混乱すると思う。そうなると勢い、行革行革で詰めていくのはいいが、行革を詰めると同時に失業者はだんだんにふえていくと私は見るのだが、労働大臣はどうでしょうか。それからさらに、新規学卒者をたとえば国鉄は一人も採らない。これは現実ばっちり来る、これは生首はとらないといっても新規採用はないのだから。  こういうことを考えますと、これは全部のしわ寄せが最後は労働省に行かざるを得ない。こういったところをひとつ労働大臣、少し長くなってもいいから抱負を聞かしてくれませんか、これからどうすればいいか。
  302. 大野明

    ○大野国務大臣 お尋ねの五十七年度の人勧凍結による雇用の影響ということでございますが、退職希望者の方の新規採用とか、こういう問題については、現況において労働省としても十二分に把握しておるところではございませんが、新規学卒者につきましてはいろいろと調査もし、また、できる限りのことはしてきたつもりでございます。  確かに昨年夏ごろは、特に高校卒の人たち、これは非常な厳しい情勢下でございますからどうなることかということで心配いたしましたが、その後、中小企業を中心として雇用がふえてまいりまして、幸い、現況では前年並みと言っていいところまで参りました。また、大学卒業者もほぼ前年並みでございまして、特にこの中では女子が非常に厳しいんではないかということでございましたが、これもほぼ前年並みまで参りました。  いずれにいたしましても、新規学卒者、まだ決まらない幾らかの方々に対しても、できる限りのことを労働省としてもいま考えて、適切に処置していきたいと思っております。
  303. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう少し長い演説をぶっても失礼じゃない大きな問題だということを篤と促しておきたいと思います。  さっきの官房長官の、そのニュースの際に、ぞろぞろあわてて総理以下、総理官邸からここまで、それ、遅くなったという雰囲気がテレビから映ってきた。総理官邸は目と鼻の先なんだがというようなことから、ひょっと私は聞いておきたいんだが、第二の首相官邸を立川に、これは誤報だろうと思うんだが……。  私も災害委員長をやってきたが、こういう話は一切聞いていなかったし、これは国土庁長官に聞いたらいいかな。しかも、有事の際、こうなると、これはいよいよ中曽根総理と結びつく、こう思ったりするのです。工事費一千億円、「立川に「基地」建設」、これはトップ記事だからね。ちょっと、これはどうなんですか。
  304. 加藤六月

    加藤国務大臣 先般、一部新聞で報道せられたことは確かでございますが、実はこれは立川広域防災基地(仮称)の施設配分につきましてはかねて発表いたしておるところでございますし、先生が災特でもお聞きいただいておると思うわけでありますが、経過を申し上げますと、五十四年十一月十九日付の国有財産中央審議会の答申に、「立川飛行場返還国有地の処理の大綱について」というものがありました。これに沿いまして、南関東地域における災害応急対策活動の拠点となり得るように、すでに配置が決まっております自衛隊飛行基地のほか、災害対策実施本部、警察、消防等の防災関係機関の施設、備蓄倉庫、医療施設等の施設を配置することにした国土庁案というのを作成しまして、五十七年九月に地元立川市に示したところでございます。  そしてなお、この立川広域防災基地内に第二首相官邸を設けるという構想が報道されたという御質問がいまございましたが、あくまでもこれは、南関東が甚大な被害を受けた場合に、それに対する適切な対策をとる本部としての機能を考えておるところでございますので、はっきり申し上げておく次第であります。
  305. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その辺のくだりまでなら私も国土庁に災特で世話になってきた者として知っておったのですが、第二官邸を、おれに黙って、教えないで、総理が、と思ったのですが、それにしても余りにも結びつきが妙なんですね。これ以上言いません、もったいないから。誤報であるということであれば私も引き下がりますが……。  そこで、総理にようやく伺うことになるのですが、私、総理はずいぶん変わったというか、変わってみえるのですね、そこに座られて。一月二十四日総理の施政方針、それから二月二日にわが平林書記長が——死去されまして、御一同に数々の弔意をあらわしていただきましたが、あのころの総理というのは、自分の国は自分で守らにゃならぬ、あなたの考え方と思想が違うんだと、それぞれの書記長や書記局長を相手に……。私も心臓に響いたんですが。ところが、あれから三十五日目に、きょうは三十五日目なんだそうですが、いろいろと審議してくると、その審議の中で、がん対策、それから青少年非行暴行事件問題、初めは脱兎のごとくというか、「守るも攻むるも」でも歌い出すのじゃないかなという感じがしたんですが、だんだんに、この間はある席で「こんにちは赤ちゃん」をうまく歌っておったから、これはニュースでせっかく報道されたので、私は、総理もなかなか上手だからひとつ「津軽海峡冬景色」でもそのうちに歌ってもらおうかなと思って、北の方へちょっと話を持っていきたいと思います。  青函連絡船、原子力船「むつ」、それから北の方、ソ連との問題、それから渤海湾の石油。石油というのは全部北にあるというふうに歴史が教えておる、日本海に石油があるということは教えておる、こういった問題。そして、北海道から民主主義が始まるんだろうと思う、革新は北海道からだと私ら確信しておるが、それがだんだんに、ソ連のウドカンの銅山を掘りに行くかというところまで話ができるかどうか知りませんが、まず私が聞きたいのは、本当に総理は国内問題で本腰を入れてやろうとするのか、それとも、予算委員会で当初、外交、防衛だけの質問だったからああいう場面になったのか。だんだんに国内問題が出てきたからそれに乗ってきたのか。あるいはこれはいかぬというので、注意されて「こんにちは赤ちゃん」を歌い出したのか。その辺、ちょっとやはり態度で示してもらいたい問題があるので、それを一つ一つ、大変恐縮なんですが、同わしてもらいたい。  まず、がんの問題ですが、これは早速厚生大臣を呼んで、何とかしろ、厚生省の問題ではなくて内閣全体のものと位置づけてやる、こういうことであったようだが、厚生大臣、その辺はどうでしたかね。それで、今後どう対処するつもりですか。
  306. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員の御質問にお答え申し上げます。  がんは、いまや死亡率第一位というところまでなってきた病気でございますし、総理からも御指示がございましたし、私も、がんの対策は早急に立てていかなければならないとかねがね思っておったところでございます。  そうした意味で、いま方向を鋭意検討中でございますが、私が考えますのに、これは行政庁だけでがんばってみたってできる話でもない。やはりお医者様とか研究者という方々の御協力をいただくことが必要でありますし、また、民間にもいろいろな団体がございますから、そういった方々と一体になりまして対策を推進していかなければならない、こういうふうに考えているところでございまして、また、政府部内におきましても関係の省庁、文部省であるとか科学技術庁、それぞれ予算も持っておられますし、そういったところと一体となりまして総合的な方策を立ててまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  307. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、そこで問題は、かけ声だけじゃだめだよ、また代議士の選挙運動対策だろうがと思われて、終わりなんだから。アメリカが年間の予算二千五百億円、日本の国は二百億円、これは科学技術庁、文部省みんな集めてです。これじゃどうにもならないと思うよ、動きは。総理大臣から厚生大臣、事務次官、みんな並べられて、国内問題の一大眼目だ、青少年の問題と、こう言われたからには、財政問題の裏づけも、総理、どうしましょうかというお話もありましたかね。
  308. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員の御質問にお答え申し上げます。  先ほど予算のお話が出ましたが、予算、いわゆるがん対策という中にはいろいろありますが、私の方では大体二百六、七十億円ぐらいだろうと、こう思っておるのです。(川俣委員「二百億円」と呼ぶ)この前、二百億円というお話がありましたから、どこの項目をどうやるかという問題があるかと思いますから、結構でございますが、やはりこれだけの予算では、かつてアメリカでニクソン時代にやりましたものと比較すれば、非常に少ないことも事実であります。  特にがん対策をこれからやっていく場合におきまして、研究開発体制というものを中心にしてやっていかなければならない。これはがんの専門家のお話をいろいろ聞きますと、いわゆるDNAというのが最近非常に出てきておりますけれども、そういったものの発展が非常に著しいものがある。そういったところに研究をやっていただくならば、場合によったら、もう思いがけぬ早い段階で原因の究明その他もできるんではないかという話もございますので、そういったところへ金が向けられるように、もちろん財政当局ともお話を申し上げますが、単に財政当局だけではない、やはり非常に広い意味でこれは国民的な運動にしていかなければならない話でございますから、どういうふうな形でその研究費を出していくかにつきましても、現在検討中でございます。
  309. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やっぱり総理に出てもらうしかないんだね。予備費の使用についてずいぶん調べてみたが、これは非常にいい課題だと思う。みんな集めても二百六十億。何か新聞によれば、たばこを吸う人に少しずつ出してもらおうと。ずいぶんみみっちいことを言うものだなと思って聞いておったんだが、そうじゃなくて、中曽根内閣の国内問題の大眼目の一つにするというのなら、厚生省の方から綿密に計算して、やっぱりこれだけのものは要るようだ、築地のがんセンター、研究所——アメリカは二十カ所ほどあるが、日本の国は三カ所程度。これを国の全体の問題として取り上げるとなればどのぐらいかかるかということを大蔵省ははじいているはずなんだ。ただ、持っていけない。そういうものがあれば、予備費の流用ということも考えられる大きな問題であるというように考えられていますか。
  310. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最初の御質問からまずお答えいたしたいと思いますが、私は、就任早々外交案件がございまして、まずこれを解決して足元を固めてから内政に入ろう、こういう考えで、韓国あるいはアメリカあるいはEC、経済摩擦等のことを処理いたしまして、いよいよ内政の季節に入ってきたわけであります。  そこで、各省庁の事務次官、官房長等を呼びまして、各省庁の問題点を全部お聞きをいたしました。その過程でいろいろ指示もした点がございますが、その中で大きく重視してきたのは、がんの問題でございます。  それで、がんにつきましては、いま日本の死亡率が最大に上ったということと、それから最近は遺伝学の進歩に応じまして、いわゆるバイオケミカルの面からがんの研究が非常に進んできておるようであります。ここで力を入れてやりますれば、ある程度の学問的解明も進むかもしれない、そういう状況になっていると聞いておりました。それで、専門家にもいろいろお聞きをいたしましたら、大体そういう状況である。そういうことで、先般もアメリカのがんの研究の中心におりまするスローン・ケタリング・ガン・センターというところがございますが、そこのポール・マークスという博士が参りまして、いろいろアメリカの状況も聞きましたら、大体、日本とアメリカは同じように遺伝学の解明に非常に力を入れて、そっちからがんの発見に努めておるようでございます。  そういうようないろいろな情勢も調べまして——この際、地震の予知について十カ年計画をつくってやりました。それで、東京ほか関東あるいは海の中に千メーターぐらい掘ってメーター計を入れるとかいろいろやって、地震予知のこともかなり進んできておりますが、がんは地震に負けないぐらいの大事な仕事だから、十カ年計画ぐらいで対がん総合戦略をつくって、そして厚生省とか科学技術庁とか文部省とか、各省庁が連絡してそういう一つの体系をつくって、これから本格的に新しい段階に進ませよう、そういう考えで、各省庁にその連携をいまやらしておるところでございます。  問題は、やり方とそれから予算の裏づけ、まさにそこにございます。それらの点につきましても、いろいろいま検討しておりまして、実効性を持ってこれが進められるようにしていきたいと思っております。  一つの例を申し上げますと、たとえば実験動物等についても、純粋実験動物がなかなか入手難のような状況もあるそうでございます。それ一つにしてもお金のかかることでございまして、そういう面につきましてもこれから具体的に裏づけをしてあげる方法を考えていきたい、そう思っております。
  311. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大蔵大臣、やっぱり先立つものはという話も出るのだが、もしも厚生省の方からそういう実効ある特別支出の必要性を考えられた場合に、予備費の流用に値するかどうかという大きな検討になるだろうが、その用意はありますか。
  312. 竹下登

    ○竹下国務大臣 がん対策、これはいま総理からお述べになったとおりでございます。きわめて事務的に言えば、いま要求があったという時点ではございません。しかし、これを重点として行え、そして、それの財源については種々検討しろ、こういう御指示はいただいておるところでございますので、十分これに対応する覚悟はしなければならぬと思っております。  ただ、いまおっしゃった予備費使用ということになりますと、国会が開かれているときの予備費ということについて、予備費でやりますという答弁は従来ともしない、こういう鉄則になっておりますので、御了承をお願いいたします。
  313. 川俣健二郎

    ○川俣委員 予算審議をやっている中で予備費でやりますということは言えないにしても、まだ五十七年度というのは三月三十一日まであるわけですから。したがって、確かに国会開会中はという歯どめはある。しかし、これらを除いて予備費の使用を行わない、次に掲げる経費を除いてと書いてある。次の経費を除いてというのは、何といっても一番大きいのは災害問題です。しかし一項目には、事業量の増加等に伴う経常の経費、こういうこともあるので、いま五十八年度のことは確かに審議しているときに予備費を使いますということは言えないだろうが、五十七年度もある。なぜかというと、総理の姿勢が早くやれと言っているのです。厚生大臣、どうです。
  314. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員の御質問にお答え申し上げます。  この対策は、総理の御命令でできるだけ早くということでございますので、私も事務当局を督励いたしまして、いま川俣議員御指摘のように、大体どのくらい金がかかるだろうか、どういうふうな形でやるかという話も鋭意いま詰めているところでございまして、できるだけ早く打ち出せるような形で進めたい、こういうふうに考えておるところであります。一日早く解明できれば、一日早く人一人でも人間が救われるわけでございますから、そういった意味でこれからも一生懸命やりたいと思います。
  315. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはあなたがわかっているとおりにやってくださいよ。  そこで厚生大臣、ついでと言っては悪いけれども、一つだけここで締めくくってもらいたいのは優生保護法です。優生保護というのは名は体をあらわしてないのだな、戦前の国民優生法から来たようですが。だから、七年前なんか改正案が出たときに、経済的を削除というのに付随して、追加して、胎児が重度の障害を持つときに中絶を認めるということを書いたものですから、これはかなり社会問題化して、車いすで障害者たちが国会に座り込んだわけです。何が優生で何か劣等か、われわれ代議士はどっちに入るのか知りませんが。  優生保護法には余り介入してはいけない。したがって、私は多くを論議するつもりはないのだが、一般質疑でも審議させてもらったので、問題は法案の提出があるかどうかです。出す気があるかどうかです。まだわからぬではきょうは引き下がらないですよ。もう二、三日で法案提出なんだから。法制局長官も来ておるようですが……。  したがって、世の中では、片や女性軍、片や自民党の生命尊重議連だって、取ってつけたような、生命を尊重する議連だなんて、もっと別にあるだろうと思うのだが。反対側は女性軍だけではない。大臣の御母堂も山口県の連合会長、親の意見はむだがないんだから。この専門的な立場である産婦人科医も挙げて反対。それから、日本母性保護医協会、こういうもので反対。弁護士会、反対。自民党の中でも半分は反対。生命尊重国会議員連盟なるものは一体親玉はだれだ。親玉と言っては悪いが、この場合は固有名詞を挙げても失礼じゃないと思う。齋藤邦吉、小沢辰男、橋本——ここまで言えば言わなくたっていいな。橋本何何、それに森下元晴さん。もう大じゅうと、小じゅうと寄ってたかりてこの新進気鋭の将来性のある大臣を、お婿さんと言っちゃえばいいんだが……。  これはちょっと、そんなことよりも、食える方策を考える方が先なんだろう。産めとか産むななんと政治が関与するよりも、産んでも食える、あるいは子供を抱えて働き場があるとか、そういった問題がいろいろあるのじゃないですか。一つだけでいいんだから。もう出すか出さないかだ。
  316. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員の御質問にお答えを申し上げます。  一つだけだとお話しでございますが、実はこれは賛否両論分かれておりまして、生長の家では七百万人の署名ですし、推進しろとおっしゃる。わが省にはいま反対署名が五十二万ほど来ております。それから、各市町村なんかでやっておりますのを見ますと、改正すべきだというのが九十九市町村あります。それから、反対が五十ほどある。こういうふうに全く分かれているわけでありますし、国会でもこの当予算委員会でいろいろな御議論がありました。私も一つ一つ丁寧にお答えをしたつもりでございます。  きょうは川俣先生最後の締めくくりというお話でございますから問題を言いますと、生命の開始の時期をいつにするか、あるいはいつから胎児というか、一体産まれ出る子供の権利をどう考えるのか、それから逆に、産むところの権利、人権宣言、各条約等に係るところの婦人の権利をどう考えるのか、婦人の地位の向上をどう考えるのか、それから性教育の問題、それから非行問題ややみ中絶に対してどう対処するのか、家族計画の普及ということも考えていかなければならない。それから、母子の福祉対策も考えていかなければなりませんし、住宅対策もその中の一つではないか。さらには、避妊技術の開発というようなことも考えていかなければならないというようないろいろな問題を御提起になっておるわけでございまして、私は、最初から申し上げますように、これは国民的なコンセンサスの得られるような形でなければいけないだろうということでございまして、いろいろな御議論が国会の場、当委員会の場を通じまして出てきたわけであります。国民の代表としての諸先生方の意見は十分に聞いて、これが納得していただけるような案をやはり考えていくということが必要だと思っております。  したがいまして、提出予定法案というのがございますが、予定法案というのは、政府の方で出しました中にありますが、出すのは十一日ということになっていますが、これには間に合わない。ただ、優生保護法と母子保健法の問題につきましては検討すべきものだ、こういうことになっておりますから、私の方は、やはり一つには生命の尊重とか、こういった性教育の乱れをこのままにしておいてもいいとはなかなか言い切れないものだろうと思っておりますので、いま申し上げました諸問題を含めまして総合的にやはり考えていくべき問題ではないだろうかというふうにいま考えているところでございます。
  317. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その辺の答弁までだろうが、法制局長官は優生保護法なんか予定にありませんよという顔をされておるようだから、これ以上聞きません。もう間に合うわけがないから。  そこで、がん対策の取り組む姿勢で、総理の国内問題に対する姿勢はまやかしではないようだなというふうは、疑念はかなり晴れましたが、もう一つ聞いて疑念を晴らしたいと思います。  それはいまの青少年の非行暴力問題ですが、これも大変ないま社会に猛威をふるって、われわれ政治でも黙っているわけにいかないと私らも思うのだが、中曽根内閣もこれは大変だということで政策の重点をこれに置く。単に防衛から内政に移すということなのか、そうでもなさそうだし、その辺はどうだろうかなと思うわけです。  そこで、そうじゃないという答弁があるだろうが、さらに疑念を晴らしてもらうと、待てよ、総理は五十六年一月に臨時代理をやられて、諮問機関である青少年問題審議会にいわゆる青少年非行暴力問題の対応策を諮問している。諮問したはずなんです。御記憶があると思うのです。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕 それが五十七年六月二十四日、これはもちろん鈴木内閣の当時ですが、あなたは臨時代理で諮問して、六月二十四日に答申したが、その答申どおりやっていればなと思うのですよ。答申の内容、専門の皆さん方が後ろにおられますが、それを見せてもらうと、その答申どおりやっていればいいのに、また別の審議会をつくる。これは今度懇談会ですが、まあ文部省には任せられないので内閣に置くという考え方ならまだ理解できるが、内閣が諮問したものじゃ物足りないから文部大臣に諮問させる、こういうのが今度の懇談会のようですから、その辺がどうもすとんと落ちないんだな。  まず、それを一点お聞きしたい。
  318. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 青少年育成の問題は、わが国民全体の大きな重要な問題であると考えております。最近におきましては、神奈川県やあるいは町田市におきまして不幸な事件が起きまして、ああいう事件を見ますと、政治の責任もまた痛感せざるを得ないのでございます。  そこで、いま内閣、あれは総理府でございましたが、青少年育成国民会議というのがございますが、それを中心にして各省庁力を合わせてこれをやれるようにいま督励しておるところでございます。  その中に、大体五つくらいの目標をつくりまして当面力を入れよう、三月末に卒業式のあるところもかなりふえてまいりますから、卒業式等におきましても、これは大事なしつけの場でもありますし、そういう意味におきまして、学校、家庭、社会、これらが一体となっていい子供たちをつくっていくために格段の努力をするということをいま努力しているところでございます。  ただ、ここで注意を要することは、政治権力が過剰に家庭に介入していったりあるいは学校に対して介入していくという点は、これはよく注意をしてやらなければならぬところでございます。また、警察権力が学校等に過剰に入り過ぎるということも、これはよく慎重にやる必要があるのでございまして、そういう点はくれぐれも注意してやるように言っておるところでございます。
  319. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、それはそれでいいんだが、せっかく審議会というものから答申されたものを受けておる、内閣ですから、継続性がある。しかも、総理大臣は臨時代理で諮問した方でもあるし、そうなると、答申が遅いから督促せいというなら話はわかるが、答申されておるんで、これでは欠けておる、補完せいという意味なのか、その辺がどうもすとんと落ちないのだ。屋上屋のごとき、諮問諮問でやっていることなのかなというように思うのですよ。これはどなたに聞いたらいいかわからぬが。  ではついでに、これは緊急対策を必要とすると思うのですが、当面の緊急対策、それから根本的要因の対策、この辺に分かれると思うのだが、そういった面で、ちょっといままでの審議会の答申ではいかぬのだ、そうなると、当然構造的な病理という、病根というものにメスを入れなければならぬわけです、政治が関与するという意味ではなくて。そういうことを考えると、これは一体これからどういうようにやるつもりなんでしょうかね。やはり文部大臣の方がいいんでしょうかね、だれですかね。
  320. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 先生、私のお答えでよろしゅうございますでしょうか、まずそれをお許しをいただいて申し上げます。  先ほど先生からも御指摘のございましたように、総理が臨時代理であったとき、昭和五十六年の一月に、お話のあったように、青少年問題審議会に青少年の非行等問題行動についてという、幅広い分野においての諮問がありました。ずいぶん長くかかりまして、一年半ほどかかったのですけれども、昭和五十七年の六月二十四日にそれを受けて答申をいただいたのであります。  それからが、先回の分科会でも先生から御指摘がありましたように、お前たちはかけ声ばかりで、会議ばかり開いたり、協議ばかり開いておって、一向に実行に移していかぬじゃないかという御叱正をいただいたのでございますが、きょうもまたそんなことになるかと思いますけれども、五十七年の、その翌日、六月二十五日に、青少年の非行防止対策について閣議決定をいたしまして、そこで総理府に、私のいま所管いたしております総理府に非行防止対策推進連絡会議というものをそういう流れで置かれたのであります。しかし、その後いろいろやっておりますけれども、非常に各省庁関係の多いことでございますし、特に先日来の町田市だとか横浜市等の一連の事件にかんがみまして、これは今後具体的に実効の上がるような取り組み方をしていかなければならない、こういうことで、私どもはこの事件だけではなくして、この事件がこうやって起きてくることにかんがみまして、局長会議、これもおしかりを受けるかもしれませんが、局長レベルの会議を二回ほど、それから青少年問題審議会の会議、懇談会、これもまた数回開きまして、そうして先回新聞に出ましたように、関係省庁との国民的な運動の推進など五項目の対策を申し合わせたのでございます。  これは総理も言われましたように、ただ警察が取り締まるだけでなくなっていくものではないし、そういうものが起きないようにしていかなければなりませんし、文部省も関係があれば環境庁にも、先回お話がありますように関係もある、その他の役所が関係しておりますので、特に関係省庁との連絡協調をしていかなければなりませんから、そうした方々に集まっていただきまして、五項目の対策を申し合わせました。これに基づいて具体的に進めていく、こういうことにしたのでございます。  特に総理府といたしましても、去る四日に先生に申し上げたかと思いますが、五日に都道府県青少年主管課長会議を開きまして、これほど各省庁が一生懸命になって不良化防止、健全な育成に努力するんだから、各県においても積極的に取り組んでいただきたい、こういうことでお願いいたしたのでございます。  五項目の項目等について、先生十分知ってみえるから言うまでもないことでございますけれども、もし必要があるとするならば、室長も来ておられますので、ここで説明させていただいても結構かと思いますが、先生十分御存じのことでございますから、省略させていただきます。
  321. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いや、私はわからないものですから質問しているので……。  時間もあれですから、別に移りますけれども、海峡封鎖海峡封鎖とずいぶん聞かされたのですが、海峡の下の話なんだ。青函トンネルの話であります。これは運輸大臣とはいろいろと審議させていただいて、二十一年かかって、北国の人方は悲願であった。洞爺丸事件、われわれの先輩のとうとい生命も失った洞爺丸事件のこの荒波の津軽海峡、ここにまた原子力船「むつ」を定係させるという勇ましい人も出てくるが、おやりになるというのならしようがないかもしらぬが……。  まず、外務省に、私は無知なもんだから聞かしてもらいたいが、公の海、公海にこの種トンネルは世界にはないね。一つだね。もし、問題が起きた場合、あるいは国際法に触れる場合、私の記憶ではドーバー海峡か何か話があった時代がある。それから、イギリスが石炭を掘って海底に入っていったときに、何か公海に入っていったということがあるが、このトンネルの場合はどうですか。
  322. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  沿岸から海底にトンネルを掘って、そのトンネルの先が公海の部分の底に出る場合にどうかという御質問でございますが、これは昔からいろいろ議論がありまして、まさにいま川俣委員御指摘のような、石炭を掘るために公海の底まで出ていく、その場合のトンネルの法的地位がどうなるかというような議論は昔からございまして、結論から申し上げますと、そういうことは国際法上別に公海の自由を侵すものではない。沿岸国の自由な権利として、そういう沿岸からトンネルを掘ってそれが公海の底の部分に及ぶということについては、国際法は何ら禁じてないということで学説上もコンセンサスはございまして、したがいまして、青函トンネルの場合、国際法的には何ら問題がないということでございます。  そのような海峡の底にトンネルを掘るということにつきましては、私の承知しておる限り、ドーバー海峡で英仏間でそういう海峡を結ぶトンネルを掘るというような計画が一時議論されたことがございますが、実際にそういうトンネルが掘られた例というのは承知しておりません。
  323. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何となく海峡封鎖なんて物騒な話が出てくるので、何か海底に事故が起きた場合、しかも、その間は公海だった、何かあるような気がするのですが、これは後日論議されることだろうと思いますから、やめます。  総理、問題は、北国の人間としてはこれは非常に悲願であった。ところが、新幹線は、片や盛岡、片や新潟、四国の方はいいもんだ、橋を三本かけてもらう、そういう感情が北国でも非常に強いよ。しかも、それ以上は延ばさない。延ばして、本来の計画であったトンネルに新幹線を通した場合は収支問題がどうなるだろうか。さらに、北海道のマンモス組織のホクレンの農産物を運ばせてもらったらどうなるのか。いまの青函連絡船を地下にもぐらせるわけだから、そうしたらどうなるだろうか。こういったものをやはり強力に、コンピューターの発達している時期なんですから——まだないんだ、運輸省に。そういう計算はない。非常に残念だと思う。せっかく総理が、総理官邸でスイッチでばあんとやっていいところを見せたんだが、あら高木総裁どうしていないんだろう、こういう話もあったが、その辺がどうもすとんと落ちない北国の気持ちを察してもらいまして、運輸大臣の話だと、この使い方をどうしたらいいだろうか、みんなを集めるということだ。お知恵拝借するわけです。どうやって使ったらいいだろうか。一部の新聞だったか、自衛隊がおれに使わしてくれと言ったそうだが、その論議はしませんが、これはやはりせっかくの宝なんですから、日本の国の財産なんですから、せっかくつくったんですから、将来考えるだろうというんじゃなくて、中曽根内閣、強い内閣として、やはり強力なるものを検討せいということを、国内問題としてこれはどうですか。
  324. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 先日、分科会で川俣委員からこの問題に対しての御質問、その中にホクレンの話などは非常に参考になったと思います。  何といっても日本の技術が誇るべきすばらしいプロジェクトですから、これを有効に活用したいという気持ちは腹いっぱいでございます。そして、まず第一、在来線を通す。新幹線はいまのところなかなか見込みがございません。しかも、これを国鉄の方に貸すということになると、借料で借りるから高いということでございますから、これをひとつ国民の知恵を借りて何か活用方法を考えようということで、役所の者以外に、私の私的諮問機関として知恵のあるような方々にお集まり願って会合を開きたい。たとえば浅利慶太さんとか、あるいは「日本沈没」の小説を書いた小松左京さんとか、あるいは日本人でありながらパンアメリカンの重役をしているソニーの盛田さん、こういう方々などによって私的諮問機関としてつくり、そして、このプロジェクトを生かしてまいりたい、こう考え、そして何といっても北海道と本土を結ぶ経済交流というのは大変なことでございますから、地域開発、物流の効用のあることは必至でございます。それを期待しているものです。
  325. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何か報道によれば、トンネルが貫通したと同時に南風がさっと北へ行ったというのは本当だかうそだか知らぬが、総理どうですか、笑い事ではなくて、国鉄に貸すとか貸さないとかなんというからこういうことになるんで、国全体の財産なんですから、その辺どうですか。  いまずっと話ししたのは、日本海というのは、裏日本とだれがつけたか知らぬが、裏日本ほど資源の多いところはない。さっき話ししたように、石油は全部裏日本なんだ。歴史が教えておる。渤海湾の話をこれから聞きたいのですが……。ところが、日本海に来るのは何もいいものは来ない。日米合同演習とか、はえ縄切断、こういうようなものばかりだ。そこに座っている方でも、恐らく大蔵大臣以外は日本海出身はいないんじゃないか。日本海は対岸貿易というもので友好の船、青年の翼、こういうことで北を向いている国民も半分いるということ、そういう意味合いからいまのこのトンネルの有効活用、これはどうです。
  326. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 川俣委員御指摘のとおり、これは国全体の大事な財産であると思います。運輸省とかあるいは何省という枠を離れまして、国全体でいかにこれを活用していくか、特に先ほどのお話のように、北海道と内地とを結ぶ大事なへその緒みたいな役目を果たしていただけるだろう、そう思いまして、せっかく勉強して、勉強の上はそれを実施していきたいと思っております。
  327. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理がいみじくも内地という表現をされたように、差別用語になるかどうか、私は訂正は要求はしませんが、やはり事ほどさように非常に思っている。  ところが、さっき合同演習ではえ縄を切ったというばかりではなくて、私は、この原子力船「むつ」は何といったってやめた方がいいという信念に燃えている。原子力船「むつ」は何といったってやめた方がいい。どんな角度から見たってやめた方がいい。  もういろいろ言うあれはないのですが、何回もここで取り上げましたが、昭和三十八年、一九六三年日本原子力船開発事業団法というのができ上がりまして、定係港は大湊につくって、そして原子炉に燃料を積みまして洋上に出たとたんに放射線が漏れたというので大騒ぎをした。それがどこにも引き取り手がないというので、横須賀も断られ佐世保にやっと、そして今度はまた戻ってくる。いまは亡き中川さんとも論争した。むつ子は帰ってきたから何とかして、こう言われたが、あれから二十年、さまよい歩いてきた。今度はどこへつくるか、これを例のまさかりの上に、津軽海峡冬景色。ところが、その間に会計検査院も、大概にしてやめろとは言っていないが、何とかしないと、やめるか開発を早くするかしないとむだだよ、こういうことを言われた。それから、事業団のある参事も決算委員会に来られて、うちの方の同僚議員の質問に対して、どちらかと言えば、やはり開発をあきらめないで進めようかなと思っているという、こういう段階の「むつ」だ。  さて、これからどのぐらいかかるか、いまざっと計算して八百億円、来年は七十六億、事業団は百十億の予算、役員その他が十億。しかし、科学技術庁に言わしてみれば、大臣は悲願だと言うけれども、筑波の科学博覧会の準備もしなければならない。この間の東海村の事故の問題もまだそれっきり。金がないんだ、研究費がないんだと。ところが、こういうものに金をかけていくより、この際少し閣議で検討してみたらどうかと私は思うんだね。どんな角度から見たってこれはやめた方がいいと思う。この原子力船というのは、ソ連はいま砕氷船に使っていますよ、北ですから。アメリカはほったらかし、ドイツも最初の用途は捨てています。そういう状態なんだ。日本の国は、もしやるとしても新しく出直してつくった方がまだ得だ、こうまで言われておる学者もいるのです。これでもまだ悲願だと言ってやるよりは、この際、総理大臣のあれで検討する要があると私は思うので、しつこく、原子力船「むつ」というのは廃船の方向で検討すべきだと思う。  しかも、この前に活断層はあると言っている学者がいる、東大の研究室は。これは地質学会だろうからね。こっちはないということである。あるないでやっている。どっちも資料を持ってこいと言ったら、いまだに持ってこない。持ってこれないんだよ、両方の学説があるから。したがって、もしも活断層なんかあって、一千億もかけた定係港が将来になったらどうなるか。もちろん地元は公共事業もないんだもの、七、八百億円の公共事業に群がるよ。定係港に群がるよ。それはわかる。そんなのは、別に使う方法があるではないか。こういう考え方で、原子力船「むつ」は廃船の方向で検討すべきだという執念を燃やしています。  どうです、総理。——いやいや、総理でいいよ。あなたなんか悲願だからだめだよ。
  328. 安田隆明

    ○安田国務大臣 川俣先生重ねての質問でごさいますけれども、もう歴代内閣の一貫した方針のもとでこれを推進してまいりました。そのよって来るところは先生御承知のとおりであります。本当にエネルギーとして、長期安定の上に立った、しかも経済性のあるそういう燃料、エネルギーを果たして確保し得るであろうかどうか、長期展望に立って。あるいはまた、この前も申しましたけれども、本当に海運国、造船国としてこの開発技術というものを手に入れないことが将来どういうことになるであろうか。そして、同時にまた、先進国はいかがであろうか。もうすでに舶用炉というものを蓄積いたしておりますし、蓄積しようと先進国は一生懸命にやっているわけであります。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  あれこれ考えれば考えるほど、われわれ日本としては長期展望に立ってこの事業、この政策を推進したい、すべきである、こういう歴代内閣考え方であります。ただ、不幸にしまして本当にトラブルを起こしました。この反省の上に立って、私たちは一日も早く定係港をつくって、そうして臨界実験に入りたい、こういうことで地元の御協力を得つつ推進いたしておるわけであります。御了解を願いたいと思います。  活断層の問題につきましては、これは技術的な問題でございますので、ひとつ政府委員の方から答弁させていただきます。
  329. 川俣健二郎

    ○川俣委員 要らない、要らない、時間がないから。  総理、大臣が出てきて答弁したことは、全然答えてない。原子力船が要るか要らないかという問題を言っているのじゃなくて、これはだめだ、一回きずものになったのはだめだといろいろな学者方が言っているんだから。しかも、今度の関根浜へ行ってみなさい、あなた。容易でないんだよ、あのまさかりの上だもの。まさかりの頭だもの。何であんなところへ定係港をつくるかというんだよ、日本の国にはこんなに内海があるのに。条件がいいからというんじゃないでしょう。騒ぐ条件がないからでしょう。それだけの話でしょう。  そこで、最後に質問します。  渤海油田ですけれども、日中共同開発ですが、これは試掘段階ですけれども、試掘段階で非常に成功が相次いでいる。世界的に見て中級の油田が誕生する可能性がきわめて強い、こういうように報道もされているし、事業団からも私は聞いているのですが、これはそのとおりかということと、今後の方針を聞かしていただきたいと思います。
  330. 山中貞則

    ○山中国務大臣 石油の試掘というのは非常にリスクの多いものでありますけれども、この日中共同でやっております渤海湾は五本試掘して四本成功したという、世界でもちょっと珍しい例だと思うのですが、そのことは中国側も非常に高く評価しておられますし、日本の方としても公団を通じてそれに対して援助をしていくということで順調に進んでいる、世界でも珍しい地域である、そう評価しております。
  331. 川俣健二郎

    ○川俣委員 今後はどうですか。これをさらに進めていくということですか。
  332. 山中貞則

    ○山中国務大臣 中国の石油開発公社の総裁ともお会いをいたしました際、やはりさらに渤海を進めながら、南の方にも日本の方もぜひ参加しないかというようなお話もございまして、熱心な態度でございますので、日本側も、条件はいろいろありますが、積極的に参加、協力、推進していきたい、そう思っております。
  333. 川俣健二郎

    ○川俣委員 最後に、外務大臣にちょっと聞きたいのですが、この前も日ソ漁業交渉の話を出したのですが、永野使節団長にチーホノフ首相が会うという場面が出てきた際に、まだ日本の公式な高島大使が会っていないのにということでぎくしゃくがあったやに報道されておりますが、その後まだ高島大使と首相と会っている場面がないのかということ、その雰囲気があるのかどうかということ。  それから二つ目は、向こうから漁業大臣は来たが、こちらからも行くべきだと私は提起したが、外務大任の場合もということになるわけで、園田さんが行かれてからまだ大臣同士の交渉はない。それは外交の慣例として、こちらが一回行ったら向こうが来られる、それがないので今度はグロムイコ外相のおいでになる番だという考え方でおられるのか、それともそういう雰囲気じゃないということなのか、雰囲気がなくてもつくってこちらから行くということなのか、その辺非常にこれから北方領土の返還の問題、きょうは話が出ませんでしたが、ウドカンの開発の問題等々ありますので、最後に外務大臣のお話を伺いたいと思います。
  334. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 高島大使は赴任して一年以上になるのですが、ソ連のチーホノフ首相とはこれまで会えなかったわけでございます。これは外交の慣例からすると非常におかしい話でございます。今回、永野ミッションが行かれた際に、永野団長とともにチーホノフ首相に会えたわけでございますが、その際、ソ連側から高島大使に対しまして、これまでチーホノフ首相もなかなか時間がなかった、近いうちにぜひとも会いたいということでございましたが、まだ正式には会っておりません。恐らく近いうちに会うのではないか、こういうふうに思っております。  それから、日ソの外相会談でございますが、これはこれまでも何回か行われました。そして、これについては、今回はグロムイコ外相が日本に来られる番でございます。したがって、私としましてもぜひ日本に迎えて、そして日ソ間のあらゆる問題につきまして十分話し合いたいと念願をしておるわけで、カメンツェフ漁業大臣が日本にお見えになった際も、私のその考えをグロムイコ外相に伝えてほしいということを申し入れまして、漁業相からも日本の外務大臣のその要請をグロムイコ外相に伝えるということでございますので、このグロムイコ外相の訪日が一日も早く実現をすることを私も期待をいたしております。
  335. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一点、もう一分ありますので。  農林省の佐野さんにちょっと待ってもらっておるので——来ていますか。  実はきょう、貿易自由化の問題で少し詰めたかったのですが、事務レベルで交渉しろということになっているようだが、ハイレベル会議をOECDの場でやられたと報道されておるのですが、その辺の感触と、今後どういう日程で進めていくのだろうか、意地悪な質問ではないが、選挙後になるのだろうか、貿易自由化の交渉は。その辺も聞かしてくれませんか。
  336. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  今回私が出席いたしました三月五日のOECDのハイレベル協議というのは、これはむしろ多数国間で農産物をめぐる貿易問題などについて協調した行動をとることができないかということを非公式に議論をし合うというような場でございますので、日米間の生々しい話を議論する機会では全くございませんでしたけれども、ちょうどそのときにアメリカからはリン副長官が来ておりましたので、社交上の機会でそういう話をすることがございましたが、ただいま先生の御指摘の点につきまして申しますれば、先方は、選挙が済んでからゆっくりなどというつもりは全くございませんので、先方もできるだけ早くやりたいというふうに思っておるようでございます。  それから、協議を行われるレベルにつきましては、従来総理及び外務大臣からお話のございました、平たく申せば要するに私どものレベルでということに先方も異存があるわけではないということのようでございました。
  337. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。
  338. 久野忠治

    久野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして締めくくり総括質疑は終了し、昭和五十八年度総予算に対する質疑はすべて終了いたしました。     ─────────────
  339. 久野忠治

    久野委員長 ただいままでに、日本社会党・護憲共同川俣健二郎君外十名から、及び日本共産党中路雅弘君外二名から、それぞれ昭和五十八年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。  これより、両動議についてそれぞれ提出者より趣旨の弁明を求めます。嶋崎譲君。     ─────────────  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  340. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました予算三案についての動議を提出し、その理由と概要を説明いたします。  まず、動議の主文を朗読いたします。   昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算については、政府はこれを撤回し、左記要綱により速やかに組替えをなし、再提出することを要求する。   右の動議を提出する。  そこで、組み替え動議の提案の理由について申し述べます。  政府提出の昭和五十八年度予算案は、わが国が当面している課題にこたえていないばかりでなく、逆に事態を一層困難にするものであります。  わが国が直面している課題は、防衛費を削減し、平和国家としての姿勢を内外に明らかにし、世界の軍縮、非核武装を通じて世界平和に貢献するとともに、長期不況のもとで苦しめられている国民生活を向上させ、経済を内需中心の安定成長に向かわせ、財政を再建することであります。  しかるに、政府予算案は軍事費を突出増額させ、福祉、教育を切り詰め、所得税減税を行わず、国民に犠牲を強いる軍備拡大、生活圧迫、経済財政悪化の予算となっているのであります。  その理由の第一は、軍事費を聖域化し、三年連続突出増額をさせていることであります。これは危険な米国のレーガン戦略に加担し、軍拡と戦争の危険を激化させるものであり、この危険な動向は、十六兆円にも及ぶ五六中期業務見積もりや総理の不沈空母、日米運命共同体発言によって一層明らかになっているのであります。加えて政府が、武器輸出禁止三原則を公然と踏みにじり対米武器技術提供を決めたことは、憲法よりも安保条約を優先させ、国会の意思を無視するものであり、断じて容認することはできません。  その二は、年金、福祉、教育の実質切り下げが行われていることであります。長期不況のもとでの失業の増大、中小企業の倒産で国民が苦しんでいるときこそ社会保障は充実しなければなりません。しかるに、政府予算は年金の物価スライドを行わず、福祉諸手当を据え置き、老人に医療費の負担を強い、私学助成、教育費の削減すら断行しています。  その三は、所得税減税を六年連続実施しなかったことであります。この六年間で所得税の国民所得に対する負担率は四・三%から六・一%へと一・八ポイントもふえ、この負担増分は額にして四兆円をはるかに超えるのであります。したがって、勤労国民の一兆円以上の減税要求はささやかな要求であり、政府は与野党話し合いに基づく議長見解を尊重し、所得税減税案を直ちに提案すべきであります。あわせて住民税減税をも実施すべきであります。  その四は、わが国の経済の不況をさらに深めるおそれがあることであります。公共事業費の一部は前年度において先取りされており、実質減となっているのであります。したがって、生活関連公共事業をふやし、中小企業への助成を充実させることによって、景気に対し、てこ入れし、経済を安定成長に向かわせる予算をつくることが必要であります。  その五は、不公平税制の是正が不徹底な上、不要不急経費の削減が不十分であり、財政再建の方途が全く不明確なことであります。グリーンカード制度の延長を初めとして富裕者、大企業への適切な課税を怠っているばかりでなく、財界向け補助金等には手をつけず、経費節減が不十分であります。大量な赤字公債への依存を続け、財政再建計画をさえ明らかにしないままに、大衆増税である大型間接税の導入を企図しているのは本末転倒と言わなければなりません。  第六は、地方財政をさらに困難に陥れていることであります。地方交付税特別会計の借入金利子は全額国が負担すべきであり、地方自治体に負担を転嫁させるべきものではありません。  その七は、人事院勧告の扱いについてであります。政府は、議長見解ILO勧告を尊重し、人事院勧告を完全実施すべきであります。昭和五十七年度人事院勧告の凍結は、賃金の引き上げを抑制し、年金の実質的な切り下げをもたらすなど、全勤労国民に影響する問題であり、断じて認めることはできません。  以上の理由により、日本社会党・護憲共同は、昭和五十八年度政府予算案を承認することはできません。したがって、政府提出予算案を撤回の上、最低限、次の基本方針及び緊急重点組み替え要綱に基づき速やかに組み替えることを要求するものであります。  そこで、組み替え動議の基本方針について申し上げます。  日本社会党・護憲共同は、財政の中期目標を計画的に達成するための第一歩を踏み出す予算として、昭和五十八年度予算を次の基本方針に基づいて編成するべきであると考えます。  その基本方針の第一は、軍事費を聖域として認めず、削減の対象とし、後年度負担を減らし、次年度以降もGNPの一%以下とすること。  第二には、年金、福祉などは実質を維持し、低い水準にあるものは引き上げ、教育、雇用対策は充実し、一兆六千億円規模程度の所得減税を実施すること。  第三には、公共事業は事業量を維持し、住宅などの生活関連投資を拡大し、中小企業の受注をふやし、前項の施策による個人消費の拡大とあわせて経済の回復を促進すること。  第四には、不公平税制の是正により歳入を確保し、歳出のむだをなくし、国債の発行額を減らして財政の再建を目指すことであります。  続いて、組み替え要綱について申し述べます。ここでは組み替え要綱の主な点についてのみ申し上げ、詳細はお手元に配付されている動議の文案を御参照いただきたいと存じます。  初めに、歳入関係についてであります。  この動議によれば、一兆六千億円の所得税減税を実施いたします。所得税を一兆五百億円減税し、標準世帯の課税最低限度額を二百一万五千円から二百四十二万四千円に引き上げます。あわせて住民税を五千五百億円減税し、地方財政に対する必要な財源補てんを行うことにいたしております。  その財源は、ほぼ不公平税制の是正によるものといたしております。グリーンカード制度を実施し、利子配当所得課税の特例を廃止して総合課税とすること、配当軽課の廃止、退職給与引当金の圧縮などを行い、大企業に対する課税を適正なものとすること、企業、法人関係の租税特別措置を整理、改廃すること、社会保険診療報酬課税、配当税額控除などの特例措置を廃止すること等であります。  次に、歳出関係について述べます。  その第一は、防衛関係費の凍結であります。防衛関係費は昭和五十七年度当初予算額と同額とし、一千六百八十一億円削減するとともに、五六中期業務見積もりは凍結することであります。  その第二は、福祉の水準を維持する対策であります。厚生年金、国民年金などの物価スライドを実施し、老齢福祉年金等を月額三万円に引き上げ、老人医療費の一部負担を中止し、難病対策、介護サービス、老人ホーム、精神医療などを充実することであります。  その三は、教育条件の後退を認めない措置を講ずることであります。そのために私学助成をふやし、国公私立間の格差を是正すること、四十人学級教職員定数改善計画を進めることなどであります。  その四は、生活関連公共事業に関連し、公営、公団住宅、公庫住宅の建設をふやし、公共下水道、都市再開発などの公共事業をふやすことなどであります。  その五は、雇用の安定と確保であります。定年の延長をさらに助成し、高年齢者雇用率達成の義務化等を行うこと、臨時工、パートタイマーの労働条件を引き上げ、雇用における婦人差別をなくすこと、週休二日、週四十時間制を実現することなどであります。  最後に、これらの歳出増は不要不急経費等の節減によって補てんすることといたしております。その方策は、一般行政経費を節減し、補助金等を抜本的に整理統合し、総額を削減すること、医療費のむだを省くことなどであります。  右の組み替えにより、予算規模は政府案と同じ額とすることといたしました。  以上、五十八年度予算案組み替え動議の提出は、多くの国民が期待し、切望するものであると確信をし、政府は潔く予算案を撤回し、速やかに組み替えを行い、再提出することを強く要求いたしまして、趣旨説明を終わります。(拍手)
  341. 久野忠治

    久野委員長 中路雅弘君。     ─────────────  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  342. 中路雅弘

    中路委員 私は、日本共産党を代表し、昭和五十八年度予算三案につき、政府がこれを撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、提案理由及び概要を御説明いたします。  動議の案文はすでにお手元に配付してありますので、簡単にいたします。  レーガン政権と財界、臨調の要求に忠実に従って編成された政府提出の来年度予算案は、第一に、一般歳出を二十八年ぶりにマイナスに抑え込みながら軍事費を六・五%増と異常突出させた大軍拡予算であり、第二に、歳出歳入の両面にわたって大企業優遇を温存、拡大する大企業奉仕予算であり、第三に、軍拡と大企業奉仕の犠牲のすべてを国民に転嫁する国民生活総攻撃の反国民的予算であり、第四に、財政危機を破局の泥沼に導く予算であります。  しかも、予算案は明らかに大増税を意図するものとなっており、中曽根内閣は前内閣が振りまいた増税なき財政再建と五十九年度赤字国債ゼロの二つの公約を投げ捨て、五十九年度大型間接税導入を既定路線化しつつあります。  このような軍拡、大企業奉仕、国民収奪の政府予算を、軍縮、財界奉仕からの脱却、国民生活最優先、地方自治拡充へ転換させることは、いまや文字どおりの国民的課題となっております。これが撤回、編成替えを求める理由であります。  次に、その主な内容を申し上げます。  第一は、軍事費の大幅削減であります。軍事費はP3CやF15、ミサイル護衛艦など正面装備費二一・二%増を初め、全体で六・五%増の異常突出とされたばかりか、後年度負担方式の悪用で新たに一兆八百億円のツケが追加され、実際の伸びは六・五%をはるかに上回るものとなっております。しかも、当面の軍拡計画である五六中業は、五年間に五十七年度価格で十五兆六千億円から十六兆四千億円に上る膨大なもので、五十九年度にはGNP一%を突破することが確実になっています。中曽根首相はこれを見越して、GNP一%の歯どめの放棄さえ宣言しています。  こうした軍拡路線は、福祉、教育、国民生活圧迫や大増税の元凶になっているだけでなく、憲法とこれに基づく諸法親、国会決議よりも日本列島不沈空母化などの対米誓約を最優先させたファッショ的な日米軍事同盟体制間家づくりの核心をなすものであります。P3CやF15、ミサイル護衛艦など正面装備の大増強が、中曽根首相がアメリカに約束したバックファイアへの防壁、四海峡封鎖、シーレーン防衛の三つの軍事分担目標を遂行するためのもので、いかなる意味でも日本の防衛と無縁であることは明白です。  中曽根内閣の大軍拡路線は、まさに日本の国土と国民、資源のすべてをレーガン政権の限定核戦争構想に組み込み、国民を危険な核戦争の道に導くこの上もない危険なものと言わなければなりません。  軍事費の徹底的な削減なくして国民の安全、日本とアジアの平和はあり得ず、軍縮なしに国民生活の安定、日本経済と財政の民主的再建はもはや不可能であります。正面装備増強予算や在日米軍人への思いやり予算の全額削除などで、軍事費を一兆一千億円以上削減すべきであります。  第二は、歳出歳入の両面にわたって大企業奉仕と浪費を圧縮することであります。歳出面では、コンピューター開発補助など聖域化された大企業補助金や、事実上の軍事協力費、大企業の海外進出促進費と化した海外協力費、そのほとんどが大企業に流れ込む仕組みになっているエネルギー対策費、公安調査庁費を初めとする国民弾圧、スパイ経費などのむだと浪費を徹底的になくすことです。これで一兆一千億円以上の削減が可能であります。  歳入面では、株式の時価発行プレミアム非課税制度、受け取り配当益金不算入制度、各種引当金、準備金、特別償却制度など大企業、大資産家優遇税制を抜本的に是正するとともに、法人税への段階税率制の導入、もうけ過ぎ大企業に対する超過利得税の復活などを行うべきであります。これらの不公平の抜本的是正を行えば、三兆円を大きく超える税収増加が可能でありますが、来年度はさしあたり一兆九千億円程度の改正を行うべきです。  このほか、大企業の脱税や不正談合入札など、政財官癒着の汚職、腐敗にメスを入れ、財源対策として役立てることも必要です。  第三は、国民生活防衛のための予算を拡充することであります。国民生活の諸指標は、中小企業の倒産、失業率、可処分所得比率など軒並み悪化し、経済の低迷と財政危機に一層の拍車をかけております。こうした国民生活の窮状を打開することは、現下の政治の急務であります。  このため、何よりもまず一兆円の所得税減税と四千億円の住民税減税を実施して、購買力の低下による個人消費の著しい不振を打開することです。同時に、年金、恩給の物価スライド実施、教育、雇用対策、生活密着型公共投資の拡充、農林漁業、中小企業の振興、人事院勧告の完全実施などのため、約二兆四千億円を追加計上すべきであります。こうした国民生活最優先への転換は、長期不況の打開と財政の民主的再建のきっかけをつくり出すことにも役立つことは確実です。  なお、これらとあわせて、スーパー規制や官公需中小企業発注の拡大など、予算を伴わない国民生活防衛対策の実施を求めます。  第四は、地方財政対策費を追加計上し、地方締めつけから自治拡充への転換を図ることであります。わが党は、地方自治と地方財政を締めつけることによって、自治体を国民生活破壊の先兵に仕立て上げようとする中曽根内閣と財界、臨調のにせ行革路線に断固反対し、憲法がうたう地方自治の本旨に基づいて、三割自治の現状打破、住民サービス向上のための財源と権限の保障を求めるものです。  さしあたり来年度予算では、三兆円を超える財源不足の地方自治体への押しつけをやめ、国の責任で補てんすること、交付税特別会計による借入金の利息半額分の自治体負担導入を中止し、従来どおり全額国庫負担とすること、交付金総額を少なくとも前年度以上確保することなどが必要であり、このため地方財政対策費を六千五百億円追加計上すべきであります。  以上、私は編成替えを求めるの動議について、提案理由と概要を説明しましたが、これが平和・軍縮、国民生活防衛、地方自治拡充、経済財政の民主的再建の出発点となることの確信を表明し、委員各位の御賛同をお願いして、提案の趣旨説明を終わります。(拍手)
  343. 久野忠治

    久野委員長 これにて両動議の趣旨の弁明は終わりました。     ─────────────
  344. 久野忠治

    久野委員長 これより討論に入ります。  昭和五十八年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議二件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。堀内光雄君。
  345. 堀内光雄

    ○堀内委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度予算三案について、政府原案に賛成し、日本社会党・護憲共同並びに日本共産党から提出された編成替えを求める動議に反対の討論を行います。  御承知のとおり、このところ世界景気の回復は遅れており、多くの先進諸国はマイナス成長やゼロ成長が続いて、軒並み一〇%前後の失業率を砲えるきわめて深刻な事態となっております。  こうした中で、わが国の経済は毎年三%程度の成長を遂げ、欧米諸国に比べて失業率、物価、国際収支のいずれの点においても格段の実績を示しております。これはひとえに国民各位の営々とした努力日本経済の高い適応力に負うところが大でありますが、同時に、政府・自民党が日本経済のあり方を的確に把握して早目早目に諸施策を運営し、経済環境の整備を図ってきたからにほかなりません。  しかしながら、世界の同時不況の影響等から輸出の減少が見られ、生産、出荷が伸び悩むなど、経済社会構造の変化の中で厳しい対応が迫られている分野も見られております。このような中で、大幅な税収不足の発生により財政はさらに困難を増し、国債残高は約百兆円に達して、経済金融政策の円滑な運営にも大きな支障を及ぼすに至っております。したがいまして、今日、最も緊急かつ重要な政策課題は、行財政改革を通じて財政再建を強力に推進し、財政の適応力を速やかに回復することであります。  五十八年度予算は、まさにこのような観点から、歳出面において、経費の徹底した節減合理化を図り、その規模を厳しく抑制しつつ、限られた財源の中で各種施策について優先順位の選択を行って、質的な充実に配慮をしております。また、歳入面においても、税外収入について大幅な増収措置を講じ、これによって公債発行額を抑制することを基本方針としておるのであります。私は、今日のきわめて困難な環境の中にあって、増税なき財政再建の基本理念に沿いつつ、財政改革に向けて本格的な第一歩を踏み出す本予算を編成されました政府に対し、心から敬意を表する次第であります。  以下、私は、本予算に賛成する理由を申し述べます。  第一に、概算要求の段階において画期的なマイナスシーリングを採用し、各省庁に対して所管予算の厳格な見直しを求めるとともに、その後の予算編成でも聖域を設けることなく、徹底した歳出の削減を行っていることであります。この結果、一般会計予算の伸び率は一・四%と、昭和三十年度以来の低い水準となっており、一般歳出については、前年度当初比でマイナスとなっているのであります。また、昭和五十六年度決算不足補てんに係る国債整理基金への繰り戻し額を除いた実質的な一般会計予算は、三・一%マイナスという超緊縮予算となっているのであります。  第二に、歳入面においては、価格変動準備金の整理、貸し倒れ引当金の見直し等所要の措置を構ずる一方、税外収入についても補助貨幣回収準備資金の取り崩しを初め、特別会計、特殊法人からの納付金の増額等格段の努力が払われているのであります。  また、公債発行額については、税収の伸びの鈍化に加え、五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的な支出に対処する必要があったにもかかわらず、五十七年度補正後発行額に比べ一兆円の減額を行い、公債依存度は三〇・二%から二六・五%と改善されております。  第三に、本予算は、聖域を設けることなく、痛みをともに分かち合う予算となっておりますが、真に恵まれない人々に対する施策等については、特段の配慮が行われているのであります。  すなわち、社会保障関係費は、一般歳出の伸び率ゼロの中にあって約五百五十億円、特に社会福祉費について見ると約二千億円近い増加となっており、各種福祉の給付水準の維持に努めるとともに、たとえば在宅福祉の拡充については、家庭奉仕員派遣事業、在宅障害者デーサービス事業等を推進するなど、社会的、経済的に弱い立場にある人々に対しては、きめ細かい配慮がされているのであります。  第四に、自由世界第二の経済大国日本に対する世界の目は年を追って厳しく、貿易、防衛、経済協力等の各分野でのわが国への期待と要求は一層強くなっておりますが、これにこたえて最大限の配慮を行っているのであります。すなわち、防衛関係費については、他の諸施策との調和に配慮しつつ、「防衛計画の大綱」に基づいて、装備の更新、近代化など着実な整備を図っております。これは日本が現在置かれている国際環境などから見て妥当な内容と言うべきであります。防衛関係費は、人件糧食費の比重が、かつては五〇%を超えていましたが、これも年々低下してきているのでありますから、それだけ質の高い防衛力の整備に努めていると言えるのであります。  また、経済協力費は七%の増となっており、中でもODA予算は八・九%増であり、わが国の国際的責任を果たさんとしているのであります。  さらに、貿易摩擦の解消については、市場開放対策の一環として、関税率の引き下げを行い、二百六十億円の減収さえ見込んでおります。  以上のほか、中長期的な観点に立って、エネルギー対策費、科学技術振興費について重点的配分を行っている点も評価されるべきだと考えますが、その他にも住宅対策として、住宅金融公庫の貸付限度額の引き上げや住宅取得控除の拡充を図り、また中小企業対策としては、政府関係中小三機関の融資規模の拡大や設備投資促進のための減税措置を講ずるなど、厳しい財政事情の中にあって、景気対策を念頭に置きつつ、さまざまの配慮を行っております。  以上、申し述べました理由により、私は、昭和五十八年度予算に賛成の意を表するものでありますが、この際、政府に若干の要望をいたしたいと存じます。  まず第一に、今後ともさらに一層の努力を積み上げ、歳出歳入構造の全面的な見直しを通じて、少なくとも特例公債依存の体質からできるだけ早く脱却するよう全力を挙げていただきたいことであります。  第二に、臨時行政調査会は、近く最終答申を提出する手はずとなっておりますが、政府は、これらの答申を最大限に尊重し、その改革方策の着実な実施を図られたいのであります。  第三に、最近の原油値下がり傾向は、世界並びに日本経済に好影響を及ぼすものと期待されております。幸いにして、このたび与野党の代表者会議において減税について合意ができましたが、これを速やかに実現するためにも景気の回復が急がれるのでありまして、政府は、この際、ますます機動的な経済運営に一段と努力されんことを望みます。  第四は、いわゆる不公平税制の一層の是正と税務執行の適正、公平化の推進に格段の努力を払われたいと思うのであります。  以上、私は、五十八年度予算について賛成の意見を申し述べてまいりましたが、財政について国民の関心と理解がいまほど盛り上がり、また深まっているときもございません。いまこそ国民の総力を結集して、活力ある経済社会、「たくましい文化と福祉の国」づくりを目指して真剣に取り組むべきであります。  なお、私は、こうした立場から、日本社会党・護憲共同並びに日本共産党から提出された編成替えを求める動議については反対いたします。  私ども自由民主党は、政府と一体となって、困難な諸問題に正面から立ち向かい、国民各位の御期待にこたえるべく全力を尽くしてまいる決意であることを表明して、私の討論を終わります。(拍手)
  346. 久野忠治

    久野委員長 岡田利春君。
  347. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、日本社会党・護憲共同提出の昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成し、政府提出の予算三案に反対する討論を行うものであります。  予算は、時の政府の顔であり、その政府の性格を語るものと言われています。昨年末、中曽根内閣は、かつての内閣には見られないような異例の速さで予算案を編成されました。しかし、その内容は、国民の要望と国際的に課せられている諸課題にこたえるどころか、逆に、問題の解決を困難にするものと言わざるを得ません。  私は、以下、その理由について率直に申し述べたいと思います。  その第一に、防衛関係費が三年連続で特別扱いされ、その聖域化が一段と進んだ突出予算となっていることを指摘しなければなりません。一般歳出予算の実質マイナスという厳しい中で、防衛関係費の前年度当初予算対比六・五%の伸びは特別扱いそのものであって、すべての歳出に聖域を設けることなく切り込むとした予算編成方針をみずから踏みにじる行為であると断ぜざるを得ません。防衛関係費の伸び率六・五%、増加額千六百八十一億円は、社会保障関係費の伸び率〇・六%、増加額五百四十九億円を大きく上回り、従来の社会保障重視型から防衛費優先型へと予算の重点が移行したものと言わざるを得ないのであります。また、防衛関係費の歯どめとしてのGNP一%の枠も、この予算では対GNP比が〇・九七八%まで捕まり、その上に、防衛関係費の特質である後年度負担額もさらに増加し、防衛関係費本体の七二%に上る一兆九千七百五十億円の巨額に達しています。これは将来にわたって防衛関係費の膨張を助長し、また財政の硬直化を深める原因となっているのであります。  世界の軍事費総額がすでに六千億ドルを超え、先進諸国家は世界不況の中で三千万人を優に超える失業者を抱え、一方、発展途上国の対外累積債務残高は六千五百億ドルに上り、国際的信用不安を引き起こしている現状を直視するとき、この制約を解き放ち、世界経済の活性化と発展途上国の国民生活の向上に資するため、平和国家わが日本が率先して軍事費の抑制及び削減を図ることこそが、崇高な国際的任務であると言わなければなりません。  政府は、逆風への悪乗りをやめ、防衛費の増加の歯どめをまず遵守し、軍拡から軍縮への第一歩を踏み出す予算として位置づけをし直すべきであります。  その第二は、行財政改革路線に立った歳出削減が、福祉、教育費の圧縮に集中され、国民生活を圧迫する予算となっていることについてであります。  臨調行革路線による民生関係費削減が、社会保障関係費の伸び率〇・六%、文教及び科学振興費の前年度比四百五十一億円の減額に端的にあらわれています。年金、恩給の据え置きは、年金水準の実質的切り下げとなり、弱い者いじめの予算と言わざるを得ません。政府は、弱い者ほど少しの痛みでも強くこたえることを片時も忘れてはならないのであります。  教育費では、私学助成費、すなわち経常費助成削減について、特に私立高等学校等に厳しく、私学に通わせる父母負担を高めることは必至であります。教育分野における受益者負担の強化という考え方は、格差と不公平を一層拡大するものであることを反省しなければなりません。  また、住宅対策費においても、公的賃貸住宅政策費が削減されるなど、民生関係費の集中的な圧縮が行われ、その上に、たばこの値上げ、消費者表価の値上げが加わり、大衆負担が強化されるのにかかわらず、一方では、原子力発電関係に象徴されるような大企業に対する補助金、補給金、出資金等については受益者負担の枠外という大企業擁護の姿勢では、歳出削減について国民の合意を形成することはとうてい不可能なことであると断ぜざるを得ないのであります。  第三の問題は、国民の税負担の不公平が一層拡大している予算となっていることについてであります。  所得税減税が六年も見送られ、課税最低限は七年間同一水準に据え置かれていることによって、給与所得者税負担は収入の増加四〇%に対し二〇〇%もふえているという重税状況に置かれているのであります。税負担の不公正は一向に是正されず、サラリーマンの税負担に対する不信は、いまや政治不信となって爆発寸前にあると言っても過言ではないのであります。そして、その一方では、グリーンカード制度の適用延長によって利子配当所得の総合課税の見送りなど、不公正税制の是正が大きく後退し、退職給与引当金の引き下げは行わないなど、資産所得者と大企業に対する増税なしの対応はとうてい国民の納得できるところではないのであります。  まして、直間比率の是正という羊頭を掲げて、大型間接税の導入という狗肉を売るというのであっては、税負担の公平と税に対する信頼性の回復などは百年河清を待つの愚考に等しきものと言わざるを得ないのであります。  第四の問題としては、厳しい歳出削減と不公平な税負担を拡大しても、なおかつ、財政再建の展望を何ら示し得ない予算となっていることについてであります。  中曽根内閣は、予算編成に当たって、財政再建の目標も財政改革の内容も明らかにできないまま、国債発行額十三兆三千四百五十億円、国債依存率二六・五%の大幅な赤字予算を組み上げたのであります。政府の特例公債削減計画も、新年度で六兆九千八百億円の巨額となり、もはや短期間にこれをゼロに抑えることは不可能な状況に立ち至っているのであります。巨額な国債発行の結果、来年度末の国債発行残高は、百十兆円にも及ぶと見込まれるに至っておるのであります。しかも、国債整理基金特別会計への繰り入れ停止など、国債管理政策についても実質的な変更を行わざるを得ない事態を迎えているのであります。  このように、財政再建の目標も財政改革の内容も示し得ない状況では、財政危機打開はますます困難となるばかりであります。財政の運営が政治的要素を多分に含むものであることからして、かかる対応ぶりでは無責任のそしりを免れることはできないことを政府は肝に銘じておくべきであります。  最後に、わが国が現在直面している内需型経済への転換と財政改革への展望を欠いた予算であることを指摘せざるを得ないのであります。  政府予算案のように、所得税減税を見送り、人事院勧告凍結による賃金の抑制、年金、恩給の物価スライドの見送りでは、現在の消費不況の打開は期待できず、公共事業費も実質減では、内需依存の経済成長はきわめて困難であります。  また、財政立て直しの観点から、その主要な柱となる地方財政の状況は日増しに悪化させられつつあるのであります。  地方債の消化資金としての政府資金の比率は低下し、その上、交付税特別会計の利子の二分の一を地方に負担させるなど、国の負担の地方への転嫁が行われており、このままでは内需型経済を支えるべき地域経済発展にとって大きなマイナスとなることは明らかであります。政府の財政改革の問題意識には、地方分権の発想がきわめて希薄と言わざるを得ません。いま求められているのは、大衆減税を実施する一方で、利子配当所得の総合課税の強化、富裕税、土地増価税の導入など、税の所得と富の再配分機能を活用して、内需型成長のための税財政改革を図ることでなければならないのであります。  以上、来年度予算案に対して、わが党提出の組み替え動議に賛成し、政府提出三案に反対する理由を述べてきましたが、政府予算案は、一言で言えば、軍備拡大、生活圧迫、経済財政悪化の最悪の予算案と言わざるを得ないのであります。国民に苦しみを与え、わが国の将来を限りなく不安と危険にさらす予算案では、断じて認めることができないことを強く申し添え、なお、日本共産党提出の動議につきましては、その内容面で同調できかねる点がありますので、反対する意思表示をし、私の討論を終わります。(拍手)
  348. 久野忠治

    久野委員長 草川昭三君。
  349. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三であります。  私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度政府予算三案に対し、反対の討論を行います。  以下、五十八年度予算案に反対する主な理由を申し上げます。  反対する理由の第一は、政府予算案が内需拡大のための対策を著しく欠いていることであります。  すなわち、当初予算における所得税減税の見送りを初め、大幅な実質減少をもたらす四年連続の公共事業の据え置き、五十七年度の人勧凍結と連動させた恩給、年金等の賃金物価スライドの停止など、景気後退要因がメジロ押しであります。このままでは、政府経済見通しで掲げる内需拡大による景気回復はとうてい望めそうもありません。  政府は、わが国の景気回復を内需拡大によって図るために、大幅な所得税、住民税減税の実施に加えて、公共事業の追加、中小企業投資減税の拡充、年金福祉の充実を早期に行うべきであります。  反対する理由の第二は、五十九年度に赤字国債から脱却するとの政府公約を一方的に破棄しながら、財政再建の手順、方策等を明示せず、棚上げしていることであります。  中曽根総理は、できる限り、早期に特例公債依存体質から脱却すると約束しながら、その具体策は何ら明確にしておりません。この政府の姿勢は、財政再建を棚上げするばかりか、増税なき財政再建を放棄するものとさえ言わざるを得ません。  政府は、増税なき財政再建を実現するため、われわれの主張する景気回復による税収確保、行財政改革の断行、不公平税制の是正などを柱とした財政再建計画を策定するよう強く要求するものであります。  反対する理由の第三は、行政改革や不公平税制の是正に真剣に取り組まず、問題を先送りにしていることであります。  政府は、五十八年度予算について、一般歳出の規模を前年度予算よりマイナス三・一%に抑え、行政改革に取り組んだと宣伝しています。ところがその実際は、歳出面における国債整理基金への定率繰り入れの停止、国民年金特別会計からの借り入れ、防衛費の後年度負担の増加、歳入面では補助貨幣回収準備資金の取り崩し、自賠責再保険特別会計からの繰り入れ、電電公社の臨時納付金の五十九年度分の先取り、たばこ値上げ等々、まさに歳出の見せかけの圧縮と財源あさりに終始しているのであります。  不公平税制の是正も、政府税調や臨調が答申で指摘する執行上の問題に全く手をつけず、制度面でもグリーンカード制度を延期するなど、きわめて不十分であります。  反対理由の第四は、福祉、文教予算の大幅後退であります。  五十七年度の人勧凍結は、恩給、年金等の賃金物価スライドの停止をもたらしました。その上に、政府は老齢福祉年金など各種の福祉年金も据え置いております。また、文教予算についても、公立文教施設費の七・六%もの削減を初め、国立大学入学金、受験料の値上げなど、同様に大幅後退を迫られております。  この際、政府は行財政改革によって歳出を削減する一方、活力ある福祉社会を実現するため、政策の優先順位を明確にした予算編成を提案するものであります。  反対する理由の第五は、一般歳出の伸びはマイナス三・一%に抑え込みながら、防衛費の伸び率を六・五%と異常突出させていることであります。  防衛費の異常突出が、総理の改憲、軍拡路線と結びつき、国民の不安と反発を強めており、見逃しにできません。  以上、五十八年度政府予算三案に反対する主な理由を申し上げましたが、最後に、共産党を除く与野党合意によって五十八年度中の実施が約束された大幅な所得税、住民税の減税は、早急に実現すべきことを強く要求いたします。  なお、日本社会党・護憲共同と日本共産党がそれぞれ提出した組み替え動議には、賛同する点もありますが、意見を異にするため、反対いたします。  以上で、討論を終わります。(拍手)
  350. 久野忠治

  351. 木下敬之助

    木下委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算に対し、一括して反対の討論を行うものであります。  昨今のわが国経済は、第二次石油ショックの後遺症が尾を引き、不況感が一掃されないままに実質成長率は年々低下の一途をたどっております。これは世界不況の余波による側面もあるとはいえ、政府が第二次石油ショックが発生したころに打ち出した五十九年度赤字国債脱却方針に固執し、所得減税や公共投資の拡充などの積極的な景気対策を講じなかったのみならず、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことに、より大きく起因するものであり、まさに政府対応の拙劣さが招いた政策不況と言わなければなりません。  わが党は、政府わが国経済、財政に関する中期的展望を早急に提示するとともに、来年度予算を減税の実施と行財政改革の断行による内需拡大型予算と位置づけて編成するよう強く主張してまいりました。しかるに、本予算案は、緊急かつ最大の国民的要望となっている所得減税の実施や公共事業の拡充などの景気対策をないがしろにし、行財政改革に十分手をつけないままに年金、恩給の物価スライドの見送り等福祉の後退を図るなど、低成長、国民生活圧迫型予算と断ぜざるを得ません。  特に、政府が本予算案において所得減税の実施を見送ったことは、所得課税の実質増税が著しく進んでいる現実や給与所得者に重い負担を強いている現行税制の不公正な実態を全く無視しているばかりでなく、最近の個人消費を中心とする内需の不振をさらに長引かせ、政府が達成可能と公言してはばからない三・四%の実質経済成長の実施すら困難なものとし、ひいてはそれに伴う税収減が財政再建をさらにおくらせるという悪循環をもたらすことが必至であり、きわめて遺憾であります。  また、公共事業費は、当初予算では五年連続の横ばいとなっておりますが、来年度は五十七年度補正によって先取りされた分があることや物価上昇分を考慮すると、実質では大幅なマイナスとなっております。これを反映して、政府の経済見通しでも政府支出全体は実質〇・七%のマイナスと、政府部門が完全に景気の足を引っ張る形となっていることは、来年度とろうとする政府の政策方針の誤りを現時点からすでに政府みずからが認めているものであり、とうてい容認できるものではありません。  来年度においては、少なくとも政府支出を名目経済成長率と同程度に伸ばす財政運営を講ずることが、わが国経済の安定的発展のためにも、国際経済摩擦の緩和のためにも必要不可欠であることを深く認識し、政府がいまからでも積極的な経済運営への転換を図るよう強く求めるものであります。  わが国の財政は大量の国債残高を抱え、憂慮すべき状況に立ち至っているにもかかわらず、政府は本予算案において臨調第二部会報告の指摘のごとく徹底的な歳出構造の見直しに十分手をつけないままに、国債費の定率繰り入れ等の停止、自賠責特会からの一般会計への繰り入れ、住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べなど、財政技術的操作による表面的な歳出の抑制を行っているのであります。このような一時的な、いわば緊急避難的な措置は、財政体質改善の見地からは何の意味もないばかりか、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味できわめて問題であり、とうてい容認できません。特に自賠責保険の運用益を一般会計に繰り入れることは、交通事故の被害者救済という創設の目的を無視したものであり、四千万人を超える自動車のユーザーにとってとうてい納得のできないものであります。  このような制度の根本的改革につながらない実質的赤字国債の発行は今後行わず、既往の措置は早急に解消するとともに、政府がいまだ明らかにしていない赤字国債解消の目標年度の設定と財政再建計画並びに中長期にわたる経済計画を早期に決定し、もって企業や家計の先行きについての不透明感を払拭することにより、わが国経済の発展と国民生活の安定を図るよう政府に強く求めるものであります。  次の反対理由は、政府が国家公務員の給与に関する人事院勧告制度を無視し、ILO判断でも完全実施を求めている五十七年度勧告の実施を見送り、これを前提として五十八年度予算案を編成しているということであります。  われわれは、さきの臨時国会以来、政府のこのような措置は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置を踏みにじり、給与決定の基本ルールを政府みずから否定するものであること、労使関係の安定を損うものであること、そして政府がまず行うべきことは、むだな仕事や行政機構を整理し、公務員定数を大幅に削減し、それによって総人件費を思い切って抑制すべきことなどを主張し、政府に強く再考を求め続けてきました。  しかるに政府は、われわれの主張に耳を傾けることなく、定員削減にほとんど手をつけず、五十七年度人勧見送りのみを強行しました。政府のこのような行為をわれわれは断じて承服できません。  最後に、減税問題に関する与野党合意について、政府に強く要望しておきたいことがあります。  今回ようやく減税を実施することの合意を見たことは大いに評価するにやぶさかではありません。しかし、国民はまだこの合意に全幅の信頼を置いているというわけではないのも事実であります。昨年の二の舞になるのではないかという疑念が残りております。万が一、そのようなことになれば、政府のみならず、政党政治そのものが国民から信用されなくなることは明らかであり、絶対に避けなければならないことであります。  政府は、国民の熱い期待を裏切ることなく、与野党合意の線に沿い、景気浮揚に役立つ相当規模の減税、すなわち一兆円規模の所得税減税を一刻も早く実施すべきであります。そのための税法改正案を今国会中にも提案されることを強く要望いたします。  以上が、政府三案に対する反対理由でありますが、あわせて日本社会党・護憲共同並びに日本共産党から提案されている組み替え案については、それぞれ考え方が違うので賛成できないことを明らかにし、私の反対討論を終わります。(拍手)
  352. 久野忠治

    久野委員長 瀬崎博義君。
  353. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、日本共産党を代表して、政府提案の五十八年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算三案に反対し、日本共産党提案の予算組み替え動議に賛成の討論を行います。  いま真に国民に責任を負うべき予算は、平和と軍縮、国民生活防衛と景気回復、そして民主的財政再建の予算であります。しかるに、政府が提出した五十八年度予算案は、日本列島不沈空母化と日米軍事同盟体制国家づくりを目指す大軍拡予算であり、軍拡と大企業奉仕のために国民生活を徹底して犠牲にする臨調路線の全面実行予算であり、財政危機と不況を一層激化させる財政再建なき大増税準備予算であり、断じて認めることはできません。  以下、政府提出予算三案に反対する主な理由を述べます。  反対理由の第一は、この予算案が軍事費を前年比六・五%も突出させているだけでなく、F15やP3Cなどの正面装備費の伸び率を二一・二%とするなど、文字どおりの大軍拡予算になっていることであります。  しかも、この軍拡路線がアメリカのレーガン政権の核戦略に沿ったきわめて危険な方向に向いていることは、さきの中曽根首相の訪米で首相みずからが、日本列島を不沈空母化するとか、海峡封鎖を行うとか、憲法や安保条約をも乗り越えた約束をしてきたことによって一層明白となりました。  とどまることを知らない軍事費増大によって、後年度負担は二兆円近くにも達し、さらに五六中業とも相まって、五十九年度には軍事費がGNPの一%を突破することは確実となっています。こうした軍備増強の行きつく先は、日本の核戦場化と民族破滅の道でしかなく、日本共産党はこの危険な道を阻止するため、中曽根内閣と真正面から対決して闘い抜く決意を改めて表明するものです。  反対理由の第二は、六年連続の所得税減税見送りによる実質的な大増税予算であり、一層国民に負担増を押しつける国民生活破壊の予算となっていることであります。  臨調路線に基づいて、社会保障、教育などの長年の運動で築き上げられてきた諸制度が根本的に改悪されつつあります。政府は五十七年度人勧凍結を撤回しないばかりか、五十八年度人勧についても完全実施を明確にしていないことはきわめて重大であり、しかも、人勧凍結に連動させて年金、恩給を初めとする福祉諸手当のスライドを全面的に停止しようとしていることは、高齢者、障害者、母子世帯など年金を支えとしている人々を窮地に追い込む非情なやり方と言わなければなりません。また、この二月に施行された老人医療の有料化は、来年度だけでも総額五百二十億円もの負担増を老人に押しつけるものであります。  教育の分野においても、父母、教師から強い要望の上がっていた四十人学級実現は、予算が凍結されたままとなり、私学助成はついにマイナス二%まで減額されるなど、実質的に大幅な犠牲を国民にしわ寄せする内容となっているのであります。  このような軍拡、国民犠牲の予算は、国民からも決定的な反撃を受けるであろうことを断言するものであります。  反対理由の第三は、大企業奉仕と浪費を温存する予算となっていることであります。  大企業に対する優遇策では、たとえば新技術開発などを名目とした三菱重工、石川島播磨、川崎重工、東芝、日立五社に対する補助金、委託費は来年度も二百十四億円にもなり、過去六年間の合計では千二十億円もの巨額に達するのであります。また、利益が出たら返還させるという収益納付の制度の改善にも全く手をつけず放置されているのであります。  税制面においても、大企業の内部留保は、一九七一年度の三兆円台から八一年度の十三兆円台へ急上昇しているにもかかわらず、退職給引当金の見直しなど、大企業優遇の不公平税制の是正には手がつけられていないのであります。  公共事業においても、全体の伸び率を四年連続ゼロに抑えておきながら、その間に高速国道二・三倍、本四架橋三倍と、大型プロジェクトの予算は大きく伸ばしているのであります。  さらに、もはや開発の意義も持たないのに、なお巨額の国費が投入され続けている原子力船「むつ」、長期の運転停止に追い込まれた東海再処理工場、現実性も計画性もない新幹線建設、工業再配置政策の失敗がもたらした莫大な遊休工場用地などの巨額のむだ、浪費も、財政破綻の大きな要因となっているのであります。  ところが政府は、こうした大企業本位の公共事業のあり方や、むだ、浪費を見直して改めるどころか、新潟三区に典型的に見られるような、公共事業が大企業の利益と政治家の利権に奉仕するというゆがんだ状態を放置しているのであります。金権腐敗政治の温存を図る中曽根内閣のもとでは、財政破綻はますます深刻にならざるを得ません。  反対理由の第四は、この予算が財政破局を拡大するだけでなく、大型間接税に道を開く大増税準備予算だということであります。  この予算による十三兆三千億円余の国債発行で、国債発行残高は百十兆円を超え、実に国民一人当たり百万円の巨額に達するのであります。政府が国民に公約した五十九年度赤字国債発行ゼロという財政再建策は、わが党が指摘したとおり完全に破綻を来しているのであります。  大蔵省が本委員会に提出した財政中期試算には、毎年の国債費が十兆円を超え、赤字国債発行と要調整額の合計も毎年十兆円に達することが示されているにもかかわらず、政府は、破局的な財政立て直しについての具体的な将来計画を何も出さず、いたずらに危機感だけをあおる無責任な態度を続けているのであります。  その上、予算審議を通じて、政府が直間比率の見直しなど大型間接税の早期導入の意図を固めていることは明白になってきています。形を変えた一般消費税の導入は国会決議にも反するものであり、断じて許せません。  私は、ここで議会制民主主義の根本にかかわる重大な問題を指摘しておきます。  そもそも減税、人勧は、予算に直接かかわることであり、また確実に実施するためには本来予算修正をしなければならないし、それはまさに予算委員会の任務なのであります。わが党は、予算委員会理事会における減税、人勧の協議を繰り返し主張し、二月二十二日には日本共産党の予算組み替え提案を理事会に提出して、修正の協議を議題とするよう要求したのであります。  これに対し、他党は、減税、人勧予算理事会での協議事項とせず、国会の機関とは別の政党間協議の場をつくって折衝を繰り返し、その合意に基づいて、あいまいな内容の議長見解が出されるに至ったのであります。  わが党は議長見解を了承せず、減税、人勧を明確なものとするため、再三集中審議を要求しましたが、それすら見送った各党の態度は、国民に対し責任を負う立場から見てきわめて遺憾だと言わなければなりません。  また、対米武器技術供与の問題で、あくまで国会決議違反ではないと詭弁を弄する中曽根内閣に対し、わが党は国民に論点を明確にし、国民の世論を背景に政府決定の撤回を迫るため、集中審議を要求したのであります。  予算審議は、武器問題についての政府見解をめぐってしばしば審議中断に及んだのでありますが、この場合にも終始国会の機関を離れた特定の政党間の協議で予算委員会の運営が左右され、しかも減税、人勧に関する議長見解が示されるや、今度は武器問題を棚上げして審議日程が組まれるという、国民には何ともわかりにくい結末となったのであります。  国権の最高機関はあくまで国会であり、特定の政党間の協議をその上に置くことは絶対に許されないことであります。  日本共産党が要求した証人喚問を、自民党が多数を頼んでその可否についての委員会採決も見送り、今後の理事会協議の日程も決めないまま棚上げを策したことに、本討論を通じて厳しく抗議します。私は、広く世論に訴えながら、証人喚問実現のための理事会協議を強く要求し続けていく決意を明らかにするものです。  最後に、日本共産党が提出した歳入歳出の両面にわたる全面的な組み替え提案こそが、日本を核戦場とさせないための軍縮への第一歩であり、一兆円所得減税を初め、福祉、教育など国民生活を守ることによって消費拡大、不況打開の道を開き、さらに不公平税制の是正や、むだ、浪費を一掃して真の財政再建への出発点となるものであります。  なお、日本社会党・護憲共同提出の組み替え案は、その内容が不十分であり、反対であります。  以上、わが党提案の組み替え動議に賛成、政府提出予算三案に重ねて強く反対して、討論を終わります。(拍手)
  354. 久野忠治

  355. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表し、昭和五十八年度予算三案に反対の立場から討論をいたします。  昭和五十八年度予算は、きわめて厳しい内外情勢をいかに打開していくかの処方せんであり、同時に、治癒策でなければなりません。私たちが来年度予算に求める課題は、まず第一に、国民生活及び国民経済の安定と向上であり、第二に、長期低迷状態にある経済の速やかな回復、第三に、行政改革を中心とした財政再建の実質的な着手、そして第四に、社会的不公正の速やかな是正であり、これらの課題を達成するための歳入歳出の両面にわたる合理的かつ効率的な予算であります。  五十八年度予算案は、一般会計を前年度当初比一・四%増、財政投融資計画を二%増とした超緊縮型予算案となっており、財政の再建が急務である折、外見上それなりの評価が可能なものとなっております。しかし、その内容をしさいに検討いたしますと、国民生活の実態を無視し、景気動向にも配慮がなされてないつじつま合わせの実態が明らかになっております。  厳しい財政状況のもとで編成される五十八年度予算は、すでに破綻した財政再建計画を一から見直し、将来展望に立った財政計画を策定し、その計画の初年度の予算として位置づけられるものでなくてはなりません。しかしながら、予算委員会質疑等を通じて明らかになりたことは、このような明確な計画も将来への展望もないままに、基本問題への対処をすべて先送りし、合理的、効率的予算への改革も不十分なまま、不足額を国債の発行と予算編成上の技術的粉飾によって数字合わせを行っている実態であります。まさにこれは場当たりの対処策でしかありません。  前年度踏襲主義のもとでの一律削減は、むだな施策、非効率な組織、機構が温存され、その一方で、福祉、文教など、真に国民生活に必要な予算までをも削減する結果を招来しております。このような予算編成手法は、国民の期待を裏切るのみならず、国民生活を脅かすとすら言わざるを得ません。国民が中曽根内閣に求めるものがあるとすれば、日々の暮らしの安定、すなわち国民生活の防衛であります。  ここ六年間、予算案の審議が行われる中で、国民が常に注目し、期待してきたのは、所得税減税の実施ではなかったでしょうか。国民の重税感、また課税の不公平に起因する不満は、いまや頂点に達しております。今年の予算審議の過程でも、この減税の問題が最大の課題とされ、私どもを含む各野党が、減税を実現するために政府・与党と幾たびかの折衝を行ってまいりました。その結果、今年度中に減税を実現することの合意を見たわけではございますが、残念なことに、いまだにその具体的な実施時期も、また減税の規模等その内容も明示はされておりません。減税は国民の大きな願いであり、政府のあいまいな態度は国民の不信を呼ぶのみでありましょう。政府の具体的かつ早急な決断を求めます。  五十八年度予算の特徴としてだれの目にも異常に映るのは、防衛費の突出であります。防衛費は、一般歳出の伸びが前年度比マイナスゼロという厳しい抑制の中、概算要求時点から特別枠を与えられており、大蔵原案の段階でも異常な伸びでございました。このバランスを失した防衛庁の要求に対し、削減どころか、政治的決断という総理の一言で、原案を上回る前年度対比六・五%増の予算が認められました。この結果、後年度負担も二兆円に迫る史上最高の額に上っております。  国民の理解と協力のない防衛構想は、まさに画餅以外の何物でもありません。国民生活に直結する予算が削られる中、本質的な議論もないままに防衛費のみを突出させた予算案は、国民の防衛支出に対する許容を超えたものであり、日本の防衛の観点から見て、マイナスでしかありません。  国民の防衛に対する合意でもある防衛予算のGNP一%以内という政府方針も、五十九年度の放棄が必至となっております。私たちは、歯どめなき軍備拡張路線への道を一歩前進させる今回の予算案には、とうてい賛成できるものではありません。  前内閣は、行政改革を当面する最も重要な政治課題とし、前総理は、これに政治生命をかけると言われておりました。中曽根内閣も、この路線を踏襲することを宣言されており、その意味から、本予算案は中曽根内閣の行政改革に対する姿勢を判断する指標でもございます。しかし、残念ながら全くの期待外れとしか申し上げられません。  第二次臨時行政調査会が設置され、すでに第四次までの答申が出されております。本予算案にも、そのうちの幾つかの指摘が生かされてはおります。しかし、実行されている改善策にしても、答申に具体的改革が明言されている事項に限られ、いわゆる三Kについての改革の放棄は象徴的事例でありましょう。この三月十四日には、最終答申が出されると聞いております。行政改革に期待を持って注目している国民に失望を与えることのないよう、あらかじめ政府にその完全実施を求めておきます。  なお、日本社会党・護憲共同及び日本共産党の組み替え動議には、部分的に賛成し得る点もありますが、整合性で難点がありますので、賛成しかねます。  以上、私たちは、昭和五十八年度予算三案に反対するものでありますが、この際もう一度政府は現在の日本が置かれる位置に深い認識を持ち、また、行政改革の原点に立ち戻り、その初心を貫かれることを強く望むとともに、長く放置されている税の不公平の改善に速やかに着手し、国民の不満、不安を払拭されるよう要望し、反対討論を終わります。(拍手)
  356. 久野忠治

    久野委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  357. 久野忠治

    久野委員長 これより採決に入ります。  まず、川俣健二郎君外十名提出の昭和五十八年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  358. 久野忠治

    久野委員長 起立少数。よって、川俣健二郎君外十名提出の動議は否決されました。  次に、中路雅弘君外二名提出の昭和五十八年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  359. 久野忠治

    久野委員長 起立少数。よって、中路雅弘君外二名提出の動議は否決されました。  次に、昭和五十八年度一設会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算の三案を一括して採決いたします。  右三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  360. 久野忠治

    久野委員長 起立多数。よって、昭和五十八年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました昭和五十八年度予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  361. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  362. 久野忠治

    久野委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る二月一日に総予算の審査を開始して以来、真剣な論議を重ね、本日ここに審査を終了するに至りました。  審査は精励されました委員各位の御労苦に対し、深く敬意を表し、ごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会