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1983-03-03 第98回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三日(木曜日)委員長の指名で 、次のとおり分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費国会、裁判所、会計検査  院、内閣及び総理府所管経済企画庁環境庁  、国土庁を除く)並びに他の分科会所管以外  の事項)    主 査 橋本龍太郎君       石橋 一弥君    久野 忠治君       岩垂寿喜男君    坂井 弘一君       竹本 孫一君    楢崎弥之助君  第二分科会法務省外務省及び大蔵省所管)    主 査 砂田 重民君       高鳥  修君    宮下 創平君       稲葉 誠一君    藤田 高敏君       大内 啓伍君  第三分科会文部省及び自治省所管)    主 査 海部 俊樹君       亀井 善之君    三原 朝雄君       木島喜兵衞君    武田 一夫君       寺前  襄君  第四分科会厚生省及び労働省所管)    主 査 上村千一郎君       大村 襄治君    白川 勝彦君       小林  進君    草野  威君       瀬崎 博義君  第五分科会総理府環境庁)及び農林水産省  所管)    主 査 武藤 嘉文君       相沢 英之君    植竹 繁雄君       江藤 隆美君    大出  俊君       野坂 浩賢君  第六分科会総理府経済企画庁)及び通商産  業省所管)    主 査 今井  勇君       浦野 烋興君    小渕 恵三君       倉成  正君    岡田 利春君       草川 昭三君    木下敬之助君  第七分科会運輸省及び郵政省所管)    主 査 越智 伊平君       金子 一平君    鴨田利太郎君       堀内 光雄君    沢田  広君       中路 雅弘君  第八分科会総理府国土庁)及び建設省所管 )    主 査 藤本 孝雄君       奥野 誠亮君    熊川 次男君       村田敬次郎君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君 ────────────────────── 昭和五十八年三月三日(木曜日)     午前九時三十四分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    石橋 一弥君       今井  勇君    上村千一郎君       小渕 恵三君    越智 伊平君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       白川 勝彦君    砂田 重民君       田中 龍夫君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    五十嵐広三君       稲葉 誠一君    岩垂寿喜男君       大出  俊君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    小林  進君       佐藤 観樹君    沢田  広君       土井たか子君    野坂 浩賢君       鍛冶  清君    草川 昭三君       柴田  弘君    木下敬之助君       三浦  隆君    安藤  巖君       小沢 和秋君    瀬崎 博義君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      禿河 徹映君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         警察庁警備局長 山田 英雄君         北海道開発庁計         画監理官    竹下  淳君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 大池 眞澄君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         国土庁大都市圏         整備局長    京須  実君         法務省刑事局長 前田  宏君         公安調査庁長官 鎌田 好夫君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁次長   浦山 太郎君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 吉原 健二君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省援護局長 山本 純男君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         運輸省航空局長 松井 和治君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君         郵政省人事局長 奥田 量三君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業訓練         局長      北村 孝生君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 永田 良雄君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         自治大臣官房長 矢野浩一郎君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         参  考  人        (石油公団理事) 松村 克之君         参  考  人        (日本銀行総裁) 前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   澁谷 直藏君     白川 勝彦君   正示啓次郎君     宮下 創平君   田中 龍夫君     亀井 善之君   渡海元三郎君     石橋 一弥君   根本龍太郎君     植竹 繁雄君   藤尾 正行君     浦野 烋興君   藤田 義光君     鴨田利太郎君   村山 達雄君     熊川 次男君   岡田 利春君     五十嵐広三君   沢田  広君     土井たか子君   大久保直彦君     柴田  弘君   矢野 絢也君     鍛冶  清君   竹本 孫一君     三浦  隆君   小林 政子君     小沢 和秋君   三谷 秀治君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   五十嵐広三君     岡田 利春君   土井たか子君     沢田  広君   鍛冶  清君     武田 一夫君   柴田  弘君     草野  威君   三浦  隆君     竹本 孫一君   安藤  巖君     中路 雅弘君   小沢 和秋君     寺前  巖君     ───────────── 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 限られた時間でございますから、私は質問を文書にして読み上げることでなるべく無駄を省いていきたいと思いますので、ひとつ答弁くださる方もそのおつもりで答弁をいただきたいと思います。しかし、用意いたしました質問が限られた時間でおさまらぬときには分科会分科会でおさまらぬときにはまた改めて所管委員会に行きまして質問を継続してやりたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。  まず第一番に、質問に入る前に委員長一つ要望いたしたいと思います。  それは、理事会でもこの問題は取り上げられたそうでございますが、私はこの予算委員会における審議をずっとながめておりまして、腑に落ちないことが一つあります。一つではありません。幾つもありまするけれども、その一つだ。それは、政府委員と称する官僚態度に了承できないものがあります。厳重に注意するとともに、ときには政府委員たる資格の付与をとめて、国会への出入りを禁ずることも考慮されたい。  というのは、官僚答弁は目に余るものがある。議員質問した場合、指名された主管大臣答弁に立つ前に、むしろ大臣を牽制するような態度官僚が飛び出してきて、答弁席に立っててこでも働かぬような姿勢を示しているのです。これほど失礼な態度は、従来の予算委員会では見られなかった現象であります。本来役人答弁に立つときには、まず主管大臣担当役人をして答弁せしめるという承諾を委員長及び質問者に求め、その上で大臣から指示された役人答弁に立つというのが順序であります。従来の慣行であります。こうして立法府権威も保たれ、あるいは秩序も維持されるものであります。それを役人がさも議員に教えてやるような高圧的な態度で終始している。こんな失敬なことは断じて許されることではありません。かような思い上がった役人に対しては、委員長は厳重な注意を与えられるとともに、政府委員たる資格を剥奪して、国会への出入りを禁ずるくらいの処置を講ぜられること、荒舩元委員長はこの点は厳重に注意されて、委員会権威秩序を保たれました。あえて委員長に御要望申し上げておきます。よろしゅうございますか。
  4. 久野忠治

    久野委員長 小林委員の御要望につきましては十分配慮いたしまして、この審議を円満に進めさせていただきたいと存じます。
  5. 小林進

    小林(進)委員 委員長の御答弁を了承いたしまして、次に移りたいと思います。  外務大臣行政改革の問題についてお伺いいたしたいと思います。  いま行革臨調等で進められておりまするけれども、外務省はこの臨調を横目に見て外務省行革をどのようにお考えになっているか。私ども率直に申し上げまして、経済大国としての日本外務省機構人員にはまだまだ不備な点がある。特に情報収集能力等外務省は非常に劣っているのじゃないか。また先進国に比較いたしましても、イギリスや西ドイツあるいはイタリア等に比較しても、わが外務省人員合わせて三千名そこそこということでは、世界の中に日本が超一級国として伍していくことに、私は人員機構が非に足りないと思っております。この意味において、早急に外務省機構人員というものは五千名くらいを目途にして大いに内容を充実していただかなければならぬ。  この問題をひとつ外務大臣要望いたしながら、私も実は世界各地立法府の一員として調査視察をしてまいりましたけれども、なかなか人員の足りない外交公館もありますが、中には不要のものと思わるるものもなきにしもあらず。限られた時間でありまするが、その一つモンゴル大使館、これは私はどうも大使館を設置するまでの必要はないのではないかという感じを受けております。  モンゴルには私はどうしても腑に落ちない点が三つばかりあります。一つは、あの国は一九二一年に成立したという建国の記念日をやっておりますが、その後において日本モンゴル独立国家は戦争をした。そして、日本に対して大勝利を得た。戦勝国である、モンゴルは。こういうことがモンゴルの立国の歴史の中に明記せられているが、私は今日まで歴史を学びながらも、モンゴルという国に負けたという記憶はない。ところが、モンゴルに参りますと、ウランバートル等には戦勝記念碑ができていた。しかも、モンゴル独立国家日本勝利を得るためには、ソビエトロシアジューコフ元帥ですか、大元帥等の大きな御協力を得た。そのためにモンゴル勝利を得たのであるということで、どうもジューコフ公園があったり、通りがあったり、何か記念館があったりして、私どもはあそこへ行くと敗戦国の民としての待遇を受けている。これが一つ、腑に落ちない。  第二番目は、モンゴル戦勝国であるから、当然日本賠償を要求する権利があるから、賠償をよこせという、そういう要求がしばしば日本に当てられている。これに対して日本政府は、賠償という形では受け入れることはできないがというようなもやもやした回答の中で、五十億円ですか日本円をお出しになって、モンゴルで羊毛のカシミアか何かの生産工場設備を、これは寄附されたのか、供与されたのか、賠償という名目で支払われたとは聞いておらないけれども、そういうことがある。非常にあいまいであります。こういう点は、やっぱり独立国家として是非善悪、白黒は明らかにしておいてもらわなければならぬ。  それから第三番目に、モンゴルという国はソ連圏における一番ソ連忠誠を誓った国、第一にハンガリー、第二にモンゴル、第三にキューバと言われるくらい、ソ連圏では一番忠誠国家です。だから、ソ連せきをするとモンゴルせきをする。ソ連日本に対して軍事大国だとかあるいは云々という批判をすると、必らずモンゴル政府官僚あるいは首相ですか、大統領ですか、あるいは外務大臣等ソ連に口を合わせて日本批判したり攻撃したりするような発言があった。あるいはまた、ソ連のイズベスチャとかなんとかという機関紙の中に、モンゴル外務大臣の名前でそういう日本排撃批判の文章が載ったりして、大変どうも日本にとっては余り有利な国家じゃない。これが三番目。  第四番目は、一体経済的にモンゴルから何を得るか。何もありません、あそこは。何もない。あるのは石炭だけ。その石炭日本に買えという要望が出ているそうでありまするけれども、じゃあどうやって運搬するか。それは中国大陸を通過して大連港あたりから日本へ持っていけばいいと言っているそうだけれども、御承知のとおりモンゴル中国とは非常に仲が悪い。仲が悪いから、モンゴル石炭等中国大陸を通過させるわけがないのであります。経済的にも交流すべきものは一つもありません。  あそこに大使館を置いているが、じゃあの大使館の仕事は一体何だ。それは、あそこにおいてソ連情報をとるくらい。あとは何も用事がない。  ところが、用事がないのじゃないのです。大使館は非常に困っている。何で困るかというと、自分の日常生活食事に困っている。ウランバートルにおいても食うものがないのだ。じゃどこへ一体食べ物を買いに行くかというと、国際列車に乗って、一カ月に一回とか二回ですよ。あの国際列車ウランバートルから北京まで特急で三十時間かかる。普通の急行では五十四時間かかる。その国際列車ソ連圏へ入ると、ソ連国際列車の食堂には何もない。紅茶だかお湯だかわからないようなものが、何かちょっと出てくる、このくらいのものであって、砂糖はといったらごとごとして、つぶすのでも一時間もかかるようなかたいのが、それが砂糖だそうでありますが、出てくるだけだ。だから、北京まで買い出しに行くときには、北京大使館まで握り飯をつくっていく。握り飯をしょって北京まで行って、野菜を買ったり肉を買ったり、そして帰ってくるという、そういう状況です。大使館員も気の毒だ。なぜ一体――それはソ連圏ですから、ソ連へ行く飛行機は一時間置きも二時間置きも出ているから、何でその飛行機ソ連へ買いに行かないかといったら、ソ連はモスクワでもイルクーツクでもハバロフスクでも、食事は何もありません。肉も野菜も売っていません。ソ連の食糧の窮乏の状態は想像に余るものがあるのです。だから、しようがない。ソ連圏にいてもソ連では買えないから、北京まで買いに行っているのです。  こういう惨たんたる状況の中で、なぜ一体こういう大使館等を設置しておく必要があるのか。私はこれは規模を小さくして、単なる公館をちょっと置く程度でよろしいと思いますが、以上の点を外務大臣に御質問いたします。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省のいわゆる外交陣容ですが、これは諸外国に比べて、いまの日本世界における立場からいうと非常に貧弱であると言わざるを得ないと思います。まだ外務省定員はインドなんかにもとうてい及ばない。せめていまの三千数百人を五千人にしたいというのが外務省の悲願でございます。そのために、非常に財政が厳しい状況でありますが、外務省については定員について毎年わずかずつ伸ばしていただいておりますが、これでは不十分であります。これからの世界における日本役割りを果たしていくためにも、あるいはまた、情報化時代でございますから、情報を収集してそして臨機応変な適宜な外交措置をとるためにも、やはりもっと充実したものにしなければならぬ。これは非常に行政改革等厳しい時代でありますが、特にこれからの日本世界における役割りというものを踏まえてひとつ考えていくべきであるということで、私たちも常々臨調の皆さんに対しても、また財政当局に対しても、国民に対しても要望をいたしておるわけであります。  それからモンゴルの問題でこざいますが、確かに小林委員のおっしゃるような問題もあると思います。しかし、モンゴルソ連圏とはいえ世界の一国でありますし、日本とは歴史的には長い関係もあるわけで、深い関係とは言えないと思いますけれども、長い関係もあるわけでございますので、やはり外交の窓口をあげるということもこれは大事なことであろうと思っております。しかし、外交活動としてはおっしゃるように非常に局限されたものであることは事実であろうと思うわけでありますが、これから長い将来、先のことを考えますと、いまはそういうふうな非常に厳しい条件のもとに外交活動も十分できない、こういう状態ではありますが、将来のことを考えますと、モンゴル日本大使館を置いているわけでございますし「そういう立場日本大使館を置いて、もちろん大使館陣容等につきましては非常に限られた陣容になっておるわけでございますけれども、しかし、将来的に見れば、いまこれをやめるということも一方的にはできないわけでございますし、将来の問題を考えますと、あそこでひとつ大使館を置きながら、そしてこれからの外交活動をもっと積極的な立場でできるような方向でいろいろと努力はしていかなければならない、こういうふうに思っておりますが、いまおっしゃいましたことは、いろいろとわれわれとしても参考になるわけでございます。これを踏まえていろいろな改善措置等は講じてまいりたいと思います。
  7. 小林進

    小林(進)委員 モンゴル大使館存置の問題は、これはひとつ将来継続して私もまた改めてやらしていただくことにいたします。  時間がありませんから、次に、これは外務大臣厚生大臣関係いたします。ちょうどいましゃべることは余り時宜を得ないのでありまするが、ちょっとお許しいただきたいと思うのであります、しゃべる機会がないものでありまするから。  二十七日から中国残留孤児が四十五名日本に来て親、親類捜しということをやっております。これは人道上の問題で重大な行政一つでありまするから、私はもとより賛成であります。賛成でありますが、これに関連して、政府一体この問題について中国側がどう考えているかということをお考えになったことがあるかどうか。  これは二つの問題点があります。一つは、せっかく親捜しに来たが、来たその人が結局中国における三十七年、三十八年、父として母として一緒に暮らした養父母との関係がこのために貧しくなって、定着した中国における家庭が破壊されるという問題。それからまた、本人は日本へ来たら日本の文化にあこがれて、今度は本国に帰るのがいやだ、日本に定着したいというので、二十年なり十五年連れ添ってたのが夫婦別れをするとか、あるいは産んだ子供を中国に存置をして自分だけが日本に帰ってくるとか、あらゆる悲劇が生じている。だから中国は、せっかく戦争が済んで三十七年もたって、事態が安寧定着をしているときに、むしろ死んだ子を起こすような形でこれをやっていただくことは中国側は非常に迷惑だ、こういう意見が一つある。  しかし、それよりももっと大きな問題は、一体その残留孤児は日本人だけかという問題がある。いま来ているのは黒竜江省の孤児が一番多いのでありますが、私は黒竜江省へ毎年行っている、三江平原の問題がありますから。現地で聞きますと、一体孤児は日本人だけか。日本一つの侵略戦争、こう言ったならば問題があるかもしれませんが、侵略戦争のために父を失い母を殺され家族を殺された中国自身の孤児が何万、何十万いるのだ。それも、中国の国土の中でいわゆる孤児として惨たんたる生活をして、いまでも日本のために家族、両親をやられたという切々たる恨みを腹の中に持ちながら、われわれはせつない逆境の中に生きてきたのだ、その生きてきたときに、われわれのせつない気持ちに対する一点の考慮もない。ただ日本の孤児だけ日本の孤児だけということでお祭り騒ぎをしていたときに、この中国の孤児の心情を一体どう考えているか。なおかつ、この戦争の惨たんあるいは悲惨な中から、われわれは日本に対する恨みも忘れたい忘れたいと思っているさなかに、この日本人孤児の問題でまた新たに日本に対する恨み、そういう気持ちにわれわれは火をつけられている、こういう問題を日本関係者、政府はどう考えているか。  だから、結論から言えば、本当にこの戦争の惨禍から中国の孤児も含めて何とかその傷痕をなくしたいというならば、せっかく落ちついている現状に火をつけるようなことをしないで、中国の孤児もたくさんいるようなそういう黒竜江省、吉林省や遼寧省あたりに日本政府が――中国は一銭も賠償金を取らないでしょう。賠償金を取らない。戦争のことは過去の夢と見てあきらめているというのだから、そのことも勘案をして、その地域に対する日本人の気持ちが通ずるように、あるいは経済的援助でもしていただくとか産業的な援助をしていただく。私がやっております三江平原の農業開発等にも、そういうことを通じて温かい施策を講じてみんなが、中国の孤児も日本の孤児もともに幸せになるような、そういう政策を考えてもらえないか。これは現地の声です。こういうことに対してひとつ率直な御意見を承っておきたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中国の残留孤児、日本人の残留孤児の問題については、御承知のようにこれまで八百人ぐらいから肉親捜しの依頼があるわけでございまして、これは中国に残っている日本人孤児の切実なる思いがあるわけでございますから、これに対してやはりわが国としても報いなければならぬということで今日の孤児捜しということで、後で厚生大臣からもお話があると思いますが、厚生省を中心にして国内に呼びかけて積極的に行われておるわけでありまして、テレビなんかで非常に感激的な対面もあるわけでありますが、一面においては、小林委員のお話のように、またかえって家庭悲劇というものにもつながっている面もなきにしもあらずということも聞いております。しかし、何としても残っておる孤児のああした切々たる思いをかなえさせてやりたいというのが日本としてのある意味においては責任だろうと考えております。  同時にまた、中国でいま、戦争の結果孤児が生まれたわけでございます。これに対して日本として責任があるか。まさに私は日本あるいは日本人、日本国として反省しなければならない戦争でありましたし、当然だと思うわけであります。この問題については、お話のように、日中国交回復ができましたときは、賠償金の問題は中国がこれを放棄したわけでございますが、日本としてはそうしたこれまでの歴史の経過も踏まえ、またその反省の上に立って、中国のいわゆる国の建設に対して積極的に協力をしていくということがやはり最も大事なことだろうと私は思います。  そういう観点から、これまでも近代化に対していろいろと日本としても経済協力を初めとして協力を進めておりますが、さらにまた、中国も五カ年計画も終わりまして新しい五カ年計画で第二次の経済協力についての要望も出ております。われわれはそうした全体的なこれまでの歴史というものを振り返りながら反省の上に立って、これはやはり積極的に進めていくべきである、こういうふうに考えて、いままさに第二次の借款問題についても全体的にこれに対して前向きで対応しようということで検討を始めておるところでございます。そうした基本的な観点から、これからも、日中関係せっかくことまでよくなってきたわけですし、いま最も両国の関係は安定しておるわけでございますから、これを崩さないで、さらにこれを進めるような中でわれわれひとつ努力を重ねていきたい、こういうふうに私は考えるわけであります。
  9. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答えいたします。  ただいま外務大臣から御答弁がありましたことで大要は尽きておるわけでございますが、私も今週の初めに孤児のところへお伺いしまして、来日の目的が達成されるように心から期待をいたしますし、厚生省としても一生懸命努力をするということを申し上げました。お会いしまして、本当に私はこの三十何年という形で別れておって望郷の念やみがたいというお気持ちをひしひしと胸の中に感じまして、私がお話を申し上げたならば涙を流しておられる、私も本当に胸のつかえるような思いがしたわけでございます。  だから、そういった形で、これは全くヒューマンな話である、全く人道的な考え方でやっていかなければならないと私は思いますし、その人道的な考え方に立っていくならば、いま小林先生御指摘のありました養父母の関係であるとか、残されたような関係も十分に配慮していかなければならない。過去におきましていろいろな問題があったことも承知しておりますが、そういったことが起こらないようにこれからもやっていかなければならないと思いますし、中国政府とも約一年間にわたりましてこの辺の協議をしてきたところでございます。そうした意味で、これからもできるだけ現地で混乱が起こらないようにいたすということがわれわれのやっている施策の大きなポイントでございます。  もう一つの問題の御指摘がございました。中国の人に対して、日本人だったならばこういうふうなことになるけれども中国人はどうかというような問題、正直申しまして私はあると思います。けれども、これはいま外務大臣が御答弁されましたようなことでありますし、田中総理が一九七二年の九月二十九日、日中共同声明の中に、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」というこの精神が基本として流れてなければならないのだろうと私は思うのです。そういった意味で、もちろん先ほど外務大臣からも御答弁いたしましたように、賠償権は放棄されている、しかしこれはヒューマンな気持ちである、人道の問題である、こういった形でこの問題はいろいろと考えていかなければならない問題ではないかというふうに思っておるところでございます。
  10. 小林進

    小林(進)委員 これに関して、大蔵大臣、一言ひとつ御回答いただきたい。いま日中共同声明の一部をお読みになりましたが、そのとおりであった。しかし、その共同声明をつくるまでに、田中元総理が北京に飛んでいってつくる前までは、特に自民党は、もう名前を言ってもいいが、亡くなられた賀屋先生等を中心に、日中の国交回復は反対だ、これをやると中国は五百億米ドルの賠償日本に要求してくる、これでは日本は立っていけない、また戦争のような惨禍に陥るくらい惨たんたる目に遭うから、その中国賠償問題一つ考えただけでも国交正常化はやるべきじゃないという声が、当時圧倒的に与党・自民党の中に多かった。  ところが、行って国交正常化したのを見たら、一銭の賠償金も取らない。一寸の国土も日本からは取らない。まさに無賠償、無分割の原則で温かく日中の手を結んでくれたわけでありまするから、これを考えると、惨禍に遭われていまなお苦しんでいる中国の孤児の問題等を考えた場合には、彼らが要求するような経済援助の問題や産業援助の問題で、思い切って無利子や低利子の金くらい少しお出しになって、この中国の温かい恩義に報いるくらいのお気持ちがあってしかるべきだと思いますが、どうですか。やはり財布はかたくて出しませんか。これを一言だけひとつお伺いしておきたいと思います。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私が大蔵大臣就任以前の話でございますが、一昨年の夏、円借千三百億、輸銀千億、バンクローン七百億の交渉妥結の際に、二階堂ミッションに私もお供をいたしました。そのときの相互の話し合いにおきましても、今後、それぞれ両国の立場、両国のために役立つという認識のもとに、友好を基調とした経済協力の問題についてはもとより、具体的に言えば、プロジェクトごとにいろいろな議論を詰めてまいるわけでございますけれども、そういう姿勢は今日でも貫かれておるというふうに私も理解しております。
  12. 小林進

    小林(進)委員 それでは次へ移りたいと思います。  文部大臣、共通一次試験の問題、これはもう参議院においても衆議院においても論じられておりますので、むずかしい理論はやめにいたしましても、この共通一次試験については実に評判が悪い。あらゆる父兄、関係者は皆むしろ迷惑しているという状況でございますが、すでに五回の実施を経たこの共通一次試験は、最近は特に弊害が指摘されている。それを見直すべしという論がもはや世論になっている。競争を緩和するのが最大の目標であったはずでありまするが、文部省発表の学校基本調査における私立合格率がだんだん低下している。かえって競争が激化をしているというのが現状であります。最初の目的はどこかへ行ってしまった。こうした事態について文部大臣はどういう対策をお考えになっているか。  時間がありませんから続けて言いますけれども、まず共通一次試験の試験科目数が多過ぎるということ、これが第一、受験生が負担に耐えられない。これで共通一次離れの問題がいま起きておることは大臣御承知のとおりであります。去る十二月二十四日の参議院予算委員会において、わが党の吉田正雄君の質問に答えて文部省は、昭和六十年以降は受験生の個性と各大学の自主性を尊重するアラカルト方式へ移行するということを言明しておられるが、この際、改革は早い方がいい。まだ五十八年が済んだばかりなので、五十九年か六十年まで行ってから考えようなんというのは実に文部省方式で、時代の進展にマッチしていませんよ。だから、私は早急に行うべきだと思っておりますが、大臣いかがでございましょう。
  13. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 小林さん御承知のとおり、共通一次試験は五回目をやりました。これはお互いに実情を見ておって、受験問題、非常に悩ましく感じておるわけでございます。もう少し大学の受験の緩和の方法はないかということで案出された制度で、五回目をやっております。  しかし、いまお話しのように、現在になりますといろいろまた欠点、難が指摘されておる。五つの教科、七つの科目をもう少し減らしたらどうかとか、あるいは時期をもう少し繰り下げたらどうかとか、あるいはいまお話しのように、選択式、アラカルト式でやったらどうかとか、いろいろあります。そういう問題がありますから、早急にとおっしゃいますけれども、こういう制度は広範な影響がありますから、そう文部省だけで簡単にまいりません。国立大学協会あるいは入試センター等でそういう問題を含めて目下改善の方法を検討中でございますから、できるだけ早く検討の結果が出るのを待って処置をしたい、かように考えております。
  14. 小林進

    小林(進)委員 私は、問題はどうも国立大学協会の審議の経過にあるんじゃないかと思う。大体が審議会等を設けて隠れみのにするということですから、もとは文部官僚も悪いと思いますけれども、その審議がどうもはかどっていないということであります。来年の秋まで時間をかけてのんびりと改革案を出すというようなことが新聞等に報道されている。文部省の方針は新聞にも報道されて、世論の支持もあります。さらに、具体的には二期分離案などのすぐれた実施可能な案も提唱されている。三月いっぱいにも、あるいは四月末までにでも、やる気になれば結論を出すことができるのではないかと私は思うのでありまするが、一体なぜ国大協の審議がもたついているのか、これがどうしても私ども理解がつかない。先ほども言うように、時代の進展にマッチしていない。  共通一次の実施が国会通過の際には、文教委員会はこれに附帯決議をつけているのであります。必要に応じて見直しのために経過を国会に報告せよという要求がつけてあるのです。どうもこの要求にもこたえていないようであります。国大協の態度のいかんによりましては、国大協の委員長でも委員でも国会へ来ていただいて、参考人として御意見を聞かなければだめな問題ではないかと私は考えておる。それほど世論は硬化しているのですよ。こういう問題について大臣、ひとつ明快な御決意のほどを承っておきたいと思います。
  15. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 国大協の審議状況等は事務当局から答弁させていただきます。
  16. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お答え申し上げます。  国大協の入試問題についての審議状況でございますが、新聞等でも報道されているとおりでございますけれども、大学入試の問題については大学関係者全体の理解を得ながら進めていくことが必要でございます。そしてまた、入試制度は大変影響の大きい問題でもございますので、共通一次についていろいろ評価されている点について御指摘のような点があることは事実でございまして、それらの点について関係者の合意を得ながら、全体の合意を得て進めていかなければならない問題でございますので、御指摘のように時間を要している点も事実でございます。私どもとしては、そういう御指摘のある点について積極的にとらえながら一日も早く改善を進めてまいりたい、かように考えております。
  17. 小林進

    小林(進)委員 一日も早く改善を進めるという点だけはちょうだいいたしましょう。ただし、全体の審議が云々だとか、がちゃがちゃがちゃがちゃ言っているようなことは決まり切ったことで、それは言わずもがなの答弁です。そんなのを聞いているんじゃないのだ。私の言いたいのは、むしろ国大協に集まっている先生方、それは専門家であろうけれども、少し年をとり過ぎている。どうもアクションが遅いのではないか。いま少し新進気鋭な諸君と、ひとつ人員を入れかえることもこの際考えておいた方がよいのではなかろうか、これは私の注文であります。  以上、注文いたしておきまして、これは文部大臣、また最後に別の問題で御質問いたします。  次は、ひとつ厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。  日本ケミファの臨床データが偽造された。一体これは何種類が偽造されたのか。時間がありませんから私から言いますけれども、ノルベダンあるいはシンナミンなど相当のものが、これはみんなデータが偽造されているのでありますが、そのほかトスカーナなどという、これも偽造のものがあるのです。八十日間の製造禁止ですが、これは二月二十五日から解除になって、いまどんどんどんどん製品をおつくりなっておるようではございますが、これが社会に及ぼした影響というものは想像以上のものがある。御承知のとおり、薬なんというのは人命にかかわる鎮痛剤であったり、顔痛消炎剤であったり、あるいはトスカーナなどというのは血圧降下剤、老人病には欠くべからざるものだ。こんなのが全部偽造されているということになったら、薬なんというのは安心して飲めないのです。こういう悪徳業者を八十日間、これは重いとか軽いとか、ジャーナリストによって評価は違いますけれども、私なんかは軽過ぎると思っている。一罰百戒で、こんなのは永久に営業できないぐらいの厳罰処置可なりと思います。しかし、これを許可した責任は厚生省でしょう。厚生省の中で、一体これに対して責任をとる者が出てきましたか。責任とらない。  同時にいま一つお伺いしたいのは、こういうデータを偽造した薬屋は、一体一会社だけですか。いいですか、ケミファだけですか。ケミファだけであったと断言し得るだけの自信が厚生官僚、まあ大臣はちょいちょいおかわりになるから大臣を責めるのは何ですが、厚生官僚の中にこれがあるかないか、確信があるかないか、それを先にひとつお伺いしておきたいと思うのであります。
  18. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答え申し上げます。  薬がどのくらいの数かというお話がまずございましたが、これは事務当局の方から詳しく説明をさせていただきます。  私も、日本ケミファの事件が大変に国民に衝撃を与えたということは深く考えているところでございまして、薬というものは非常な信頼性を持っていなければならない、この信頼性が私は一番の問題ではないか、こう思いますし、そのためにわが方におきましても、薬事法に基づきましてその有効性を、また有効性等がない場合には承認を与えてはならない、こういうふうな規定になっておるところであります。審査に当たりましては、中央薬事審議会におきまして、その道の専門家の方々の御審議を経てやったものでございます。  ただ、もう先生御指摘のように、こういうデータを偽って出したというようなことでございますから、こういった問題について当然、普通常識からすれば、そういった学会論文、学会雑誌等に出ているものを疑うということになるのは、私は大変に異例中の異例のことだろうと思うのです。だから、そういったことについてだまされたということが役所の方の責任ということではあるかもしれません。そういった意味では、役所の中の審査の仕方、審査の方法、いまの薬事審議会の審査の方法、大変たくさんの数が出ておりますから、その中でどういうふうな審査をしていくかという手続、組織等の問題につきましては、やはり検討を加えていかなければならない問題ではないかというふうに考えております。いまの点につきましては、事務当局から御答弁させることをお許しいただきたいと思います。
  19. 小林進

    小林(進)委員 私は事務当局の答弁要りません。私は内務官僚、特に薬務官僚に対して信頼をしておりませんから。そんな形式的な答弁で限られた時間をとられたのじゃたまりませんから。  そこで、私は続いて申し上げますが、形さえ整えば、偽造されようと、ペーパーメーカーといいますか、これは化粧さえしておれば、内容はどうでも、ペーパー上だけで整っていれば、これは全部許可するのですか。これが厚生官僚のいわゆる薬務行政ですか。私はその点がどうしても腑に落ちない。そうしておいて、人命に関するようなこういう重大問題をさっささっさと全部認可、許可している。そしてこれができ上がってしまうと、審議会に諮ったんだから厚生官僚は責任なしと言って、責任一つとらなければ、悪かったと国民にわびるやつ一人もいない。こんな行政が続いたら、国民の命なんか幾つあったってたまったものじゃありません。了承できませんよ。  その問題と関連して私は言いますけれども、大臣、この前もわが党の川俣健二郎委員があなたに質問いたしました。がんの新薬がまだ許可にならない。許可にならないが、愛する妻のためにせめてこれをひとつ服用さして妻の晩年をみとりたいという声を、あなたは人道上の問題であるからといって、課長を派遣してその実情の調査をおやりになった。私はそのことに対してあなたにけちをつけようという気はない。それはあなたの行為はりっぱだ。しかし、する行為があるならば、いまこの国会の中で、これは数年ですよ、国会の中にはいわゆる特別の超党派の委員の集団も設けられている。これは丸山ワクチンです。丸山ワクチンというものをがんの薬として、これは効果がある、これをなぜ許可しないかということで、丸山ワクチンを保険薬に採用するために、これは国会議員が超党派でつくって、そしてあらゆるデータをもって厚生官僚要望しているけれども、いまだこれを、治験薬の範囲までは持ってきたけれども、まだ一般にこれを許可しない。あなたは一人の関係者の要望で課長をお出しになったが、現在国民がどんなにこの丸山ワクチンの問題を要望しているかという実情をあなたごらんになりましたか。厚生大臣日本医科大学へ行ってごらんになりましたか。毎日のように全国から集まっている、この丸山ワクチンを得たいということで行列をしている、この国民の切なる要望をごらんになりましたか。  大臣、これをごらんにならないとすれば、ちょっとおかしい。あなたは課長か何かそこに派遣されましたか。丸山ワクチンを使って治療をしている人が、いままで全国では延べ十七万六千人いるのですよ。この丸山ワクチンを注射をしてから、いいも悪いも、この十七万六千人の中で丸山ワクチンに恨みを持っておる者は一人もおりません。そしてそのカルテが全部そろっているのです。十七万六千人のカルテが全部そろっているのです。一部も欠如しておりません。あなたはそれをごらんになりましたか。いまでもこの丸山ワクチンを注射している人が日本で三万八千名いるのです。いいですか、その三万八千名の九九%がもう全部進行性の末期がんです。どこのお医者あんもさじを投げたという末期現象の患者が九九%、それが進行状態の中でこの丸山ワクチンの注射を受けているというのが現状なんです。いいですか。あなたはなぜこういうことに抵抗を続けている厚生官僚を払いのけてでもこの実情をごらんにならないのですか。一人の要望だけで課長まで派遣しておいて、十七万八千人の経験を積みデータを持って、いまなお三万八千人もの人々が皆これにすがりついてその治療を受けている、注射を受けているにもかかわらず、あなたはそれを見過ごしているというのは、ちょっと大臣としての行政に不公平があるのではないかと私は思いますが、いかがですか。
  20. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答え申し上げます。  TNFの問題と丸山ワクチンの問題をお引きになりまして、不公平ではないかというふうな御指摘でございますが、TNFの方の問題は各先生方のところにも、恐らく小林先生のところにも私と同じ文面の御陳情が行っていたのだろうと思います。これを読みまして、やはり切々と訴える気持ちがありますから、私も、それはなかなかむずかしい話である、まだ動物実験も完成されておらないし、そのほかのいろいろな臨床的な検査の問題もまだやらなければならないということであるし、大学の先生も、薬をいまやろうとしておられる先生も、また主治医の方も非常にむずかしいというお話でありますから、どういうふうな形でやったらいいだろうかということで、厚生大臣個人の資格として、担当の課長さんはお医者さんでありますから、その方に、行ってひとつ話をよく聞いてください、何かいい方法はないだろうか、こういう気持ちでやったわけでありまして、この気持ちにつきましては、私は丸山ワクチンを持っておられる方についても全く同じであります。  ただ、先ほど来日本ケミファの問題で御指摘がございましたように、薬というものはやはり相当厳しい審査を経た上でやるということの国民的な信頼がそこにある、そういったことからいたしますと、いまこの薬につきましての有効性その他の問題がまだ依然としてできないというのが薬事審議会での答申でございますから、そこで治験薬という形でいま御必要な方々にはお分けをしているというのが実情だと思っております。  私の方でいただいた数字は先生の持っている数字とちょっと違いますけれども、私は数字の問題ではないと思うのです。数字の問題ではなくて、やはりそういったことをできるだけ早く解決されるように、これは会社の方にも言わなければなりませんし、現在会社の方でいろいろな形のデータの整備その他をやっているわけでありますから、それを待ってやりたい、こういうふうに私は思っているところであります。
  21. 小林進

    小林(進)委員 大臣日本ケミファはさっきも言っているように何も内容を調査もしない、でたらめなんだ。よその資料をもって届け出の書類だけ、ペーパー上だけは整えたというのを完全だと言ってどんどん許可をしている。それから、がんの薬だって出たものは全部許可している。許可しないのが一つこの丸山ワクチンだけだ。あとは継続中はありまするけれども、がんの薬で不許可にしたものは一つもない。その許可したがんの薬の中でいわゆるピシバニール、クレスチン、これは皆大製薬メーカーです。私は、癌学会の諸君と癒着しているとは言わぬけれども、大メーカーだ。この諸君のやつを薬にして、いま一年間に幾らずつ売れていますか。何百億円ずつとのピシバニール、クレスチンは売れているが、効果があると確信を持っている者がいますか。ないからこそ何百億円も治療薬で用いながら、一方で本当に効くか効かぬかという研究機関を各関係業者から金を出していま改めて設けているじゃないですか。その研究の結果はどうなりましたか。本当に効くものであり、厚生省が許可したものなら、改めてそういう強大な研究機関を持って研究する必要はないじゃないですか。そういうでたらめをやって何百億円もがん妙薬と称して金を取りながら、効き目があるかないかの研究機関を改めて設けている。その研究機関の結果は後で資料を出してくださいよ。いま設けているはずですから。そういうことをしておきながら、一方で丸山ワクチンは一体何です。  あなたは資料を整えてと言うけれども、あなたの前の村山厚生大臣に出した薬事審議会の答申の中には、動物の実験がまだ足りないから資料として不足だと言うのだ。そんなにネズミの実験が重要ですか。こっちの丸山ワクチンではネズミじゃない、人体だ。人間を十七万も十八万もやっているし、現在でもこの丸山ワクチンを事実使って実験をしている医者は全国で一万人です。一万人の人の保証がなければこの治験薬は買えないのですから。一万人の医者が一人一人保証して、これを売ってあげます、注射をしてあげますから丸山ワクチンを買いなさいと言ってこの先生方がやっている。ネズミの実験と人間の実験と一体どっちが重要なんです。そういうようなペーパープランやネズミだけに重心を置いてこれを許可しないところに、厚生官僚の断じて許し得ない問題がある。まだ言いますよ。限られた時間でもう時間がないから言います。  なおかつ、ここにはこの丸山ワクチンが効くという学者の経験が、資料がこれほど来ているのでありまするけれども、これは木本哲夫という川崎医大の教授です。アメリカの学会、アメリカの医学会ですから権威があります。その資料がありますが、全部資料を出して、アメリカの学会の中でもこれは承認せられておりますよ。ここにみんな資料がありますから。なおかつ東海大学から東北大学から、あらゆる大学から、丸山ワクチンの効果ありという緻密な資料が全部出ているのです。なぜそういう資料に対して、やれ完全じゃないとか、やれいちゃもんがあるとかという、あらゆるけちをつけてこれを不許可にするのか。あなた、いま欲しいならこれを見てください。こういう優秀な、これは世界の学会の中で皆了承をされているのです。それが一体なぜやり得ないのですか。改めて私は言いますけれども、ネズミの実験データは必要だが、人間の実験データは用をなさないと言うのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  22. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答えを申し上げます。  丸山ワクチンの話に関連いたしまして、いろいろなデータその他いただきましたことはお礼を申し上げたいと思いますし、いまお話にありましたように、一万の治験薬という形でいま使っておるところでございますし、そういったいろいろな形でデータが積み重ねられた上で認められてくるのだろうと私は思います。御質問は、ネズミの実験か人間の実験かと、こういうふうなお話でございますが、私は、ネズミが大事だとか人間が大事だということは申し上げるつもりはございません。ただ、薬の実験をやり、医学の研究をするときには、ネズミであるとかその他の動物を使ってやるということが、これは日本のみならず世界の常識にもなっているところでありますから、そういったデータなしに、いきなりすぐに人間様に実験をしたり何かしたら大変なことになりますから、ネズミでやっている、そういったことで、これは学会でも一般に行われている方向でありますから、そういったルールに従ってやらなければならない。先生もそうでありますし、私もそうでありますが、政治家がそういったものについて判断をして、よければいいのですが、悪いときにどうするかということがまたございますから、やはり薬の問題は冷静な科学的な評価というものをベースに置いてそれでやっていかなければならない、これが薬の信頼性を確保するゆえんのものだろう、こう私は考えているところでございまして、これからも一生懸命努力をさせることをお誓い申し上げまして御答弁といたします。
  23. 小林進

    小林(進)委員 厚生大臣答弁を私は了承できませんよ。あなた、それを役人に言われて言っているのでしょう。私は政治家だから何も許可せいと言っているのじゃないのですよ。こうやって一万人のいわゆる医学者、医学の専門家がこれを効果ありとして使っているじゃないか、一人として反対者がいないじゃないか。がんの薬でこれぐらい専門家に圧倒的支持を受けている薬は他にありますかということをあなたにいま私は聞いている。ないでしょう。それをネズミに重点を置いて、この専門家の医学者の言うことをなぜあなたは用いないのかということ。しかも、ここに川崎医科大学教授の木本哲夫先生、これほど微に入り細に入り資料をお出しになっているものがありますか。人型結核菌体抽出物質(S・SM)の臨床比較対照試験成績(東海地区の臨床試験)なんて厚生省にありますか。そうしてそれを世界の学会にもアメリカの学会にも発表せられているという、その資料を一つも重要視していないじゃないですか。そしてピシバニールだのクレスチンだとか効くか効かぬような、そんなのを厚生省官僚は売る手伝いをしているとも言わぬけれども、結果においてはそういうわけのわからぬものだけを一生懸命に売る手伝いをしていると言いたくなるくらいの不公平な医療行政をやっているじゃありませんか、われわれから見ますれば。そこをひとつ大臣聞かしてもらいたい。これは後でまた官房長官がおいでになったときに言います。  あなたの前任者の森下前厚生大臣は、丸山ワクチンを一日も早く人命救済のために採用すべきであるというわれわれと一緒にやった猛運動家、われわれの先頭に立って闘った人ですよ。丸山ワクチンを守る議員連盟、議員懇談会の彼は有力な幹部であった。私は厚生大臣になったら必ずこれは実施いたしますと言って、彼は大手を振って厚生省に入っていった。入っていって厚生大臣になった途端にしゃべらなくなっちゃった。何でしゃべらないか。右顧左べんしているけれども、それは手にとるようにわかるんだ。官僚に十重二十重に囲まれちゃって、しゃべりたくてもしゃべれないんです。まさに厚生省官僚天下です。その前は村山達雄先生、これは大蔵官僚から厚生官僚へおいでになったから、官僚のおやりになることは手にとるようにおわかりになっているでしょうけれども、だからなかなか慎重に発言された。  その前の厚生大臣の園田直さんは何と言った。この人も終始一貫丸山ワクチンの支持者だった。そして、厚生大臣になると断じてこれはひとつ実施させます、私の責任でやりますと彼はしばしばわれわれにそう言ってくれたけれども、残念ながら厚生大臣の期間が短かった。その関係官僚の抵抗で、ついに彼は厚生大臣のときに日の目を見ずしてさびしく大臣のいすを去られていった。  そういうことで、この丸山ワクチンはそんな一遍の動物の実験がどうだなんというなまやさしい問題じゃないのです。これは日本の学会も世界の学会も専門家も挙げて支持しているというのに、大きな世界的な世論が立っているときに、断じて厚生官僚だけが抵抗している。そうしておいて、片っ方にはこういうペーパーだけで人の命を損うようなケミファなどというものをさっささっさとみんな許可しておいて、そして人の命をこれほど軽べつしておきながら、まだ一人も責任をとるやつがいないというんだ。考えたら大臣、その首を切りなさい。それでなければ官僚の姿勢なんか直りません。またそれは、課長以上局長ぐらいになったら自分のやることに対して責任を持つのはあたりまえだ。やりなさい。私はあなたと問答する気はない。やりなさい。やって責任をとらせなさい。やらなければまたこれをやるんだ。分科会から次の社労委員会でも、あなたがやるまで私はがんばる。こんなことは人道上許されるものじゃありません。もしあなた決意表明して、やるという決意があるならしゃべってもいいけれども、ぐだらぐだらする答弁なら私は聞かなくてもよろしい。よろしいですか。やりますか。
  24. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答え申し上げます。  先生のお話もよくわかりますし、丸山ワクチンをぜひ認めろというふうな形での議員連盟ができていることも私も承知をしておるところでございます。私の昔からの友人で現在東大の教授をしております篠原君、私は大変仲よしだったのです。彼からも、私の息子が教え子だったものですから、一遍陳情に行くという話もありますし、私もその辺、気は十分にするつもりでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、やはり科学的な評価というものが薬にとっては一番大切なことである。そうした意味でお医者の方々がいろいろな論文を出される、そういったことは当然中央薬事審議会の中にも反映されてしかるべきものであろうと私は思いますし、そういった手続を通じてやるということが薬の信頼性、ひいてはまた、丸山ワクチンの信頼性を確保するゆえんのものではないかというふうに考えているわけでございます。
  25. 小林進

    小林(進)委員 またあなたが言われたから言うけれども、それほど薬の信頼性を保つと言うのならば、でたらめなデータだけでもってそれを許可しておいて、何万人、何十万人にそんなでたらめなものを飲ませていた厚生官僚をちゃんと処分することから薬の信頼性を回復しなさいよ。おやりになるならそれをおやりなさい。  それから、篠原教授というのは東大の法学部の教授、りっぱですが、篠原さんだけじゃありませんよ。篠原教授を通じて大学の有名な教授の中でこれを飲んでいる人たちがたくさんいることはあなたも御承知のとおりです。その人たちに一人としてこれはだめだという人がいないのです。まさにその点も含めてやっていただきたいと私は思うのです。  これをしゃべっているとだんだん時間がなくなっちゃうから次へ移りますが、もうこれは答弁じゃないのです、私は所信を述べてあなたのイエスかノーかを聞けばいいのです。  それは麻薬と覚せい剤事犯です。これも国家、民族の将来に関する重大問題だから私は申し上げるのですが、だんだん時代の変遷はある、三十年代、四十年代、五十年代と様相は変わっているけれども、いまはこの覚せい剤の使用者の犯罪者の中のパーセンテージというものは、十九歳以下が七%も覚せい剤を用いている。二十歳以上から二十九歳までが一番多い、これは六〇%、三十歳から三十九歳までが大体一五%、四十歳から四十九歳までが五%、五十歳以上が一二・六%というくらいで、だんだん若い学生だとかそれから主婦だとかいうのがこの覚せい剤を用いてくるが、これは材料はみんな海外から入ってくるわけです。  だから、結論を申し上げますが、私は法務委員会でもしばしば言うのですけれども、こういう覚せい剤や麻薬やアヘンなどという犯罪は情状酌量も何もないのです。これは普通の犯罪と全く違うのです。初めからもう悪いことはわかっているのだ、ちゃんとわかっているのだ。一〇〇%承知をしながらこれを流したり使用したりしているのだから、この麻薬、覚せい剤に関する限りは、情状酌量とか犯意があるとかないとか、つまらない刑法論でこんなものを取り調べている必要はないのだ。私はこれを抑えるには厳罰主義しかないと思うのです。こんなものをつくって販売したり、人の魂を濁らせたり、精神を攪乱撹乱させたりあるいは犯罪を醸成するような、こういう者には一片の同情の余地もないのだ。こういう覚せい剤などを使用したら一生刑務所にでも入れられて、もうしゃばは終わりだというくらいの厳罰主義でやらなければだめだ。あとは水際作戦です、よそから入ってくるのですから。この前、どこかの社長が四十億だか五十億の覚せい剤の材料を得たとか、きのうはアメリカの駐留軍の、何か特務曹長だとか曹長の奥さんが、四億だか五億の覚せい剤を入れたとか……(「自衛隊だよ」と呼ぶ者あり)自衛隊だ。そういうようなことをきちんとひとつやらなければいけない。これは厚生省の麻薬課と警察庁、姿勢を変えなきゃいけない、国の姿勢を。この問題についてひとつ確信のあるところを聞きたいと思う。がちゃがちゃとした理屈は要らないのです、きちっとしたところを聞きたい。
  26. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答えを申し上げます。  麻薬、覚せい剤の犯人は、本人が承知でそれをやっているのだから厳罰をもって処すべきである、こういうふうなお話であります。実は、私、地元で密輸がたくさん挙がりまして、しょっちゅう出ておりまして、非常に苦々しく思っているところでもございますし、これの強化を図るということは非常に必要なことだろうと思います。  覚せい剤取締法を昭和四十八年に改正しまして、麻薬取り締まりの罰則とほぼ同一にいたしまして、最高刑として無期懲役まで、先ほどの先生のお言葉によればずっと監獄におれ、こういうふうな、そこまで科すことができるなど厳しい罰則規定に現在なっていることで御答弁といたします。
  27. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、覚せい剤の事犯は昭和四十五年以降ほぼ一貫をして増加を続けておりまして、昨年私どもで検挙いたしましたのは三万七千七百三十九件、二万三千三百六十五人というものを検挙いたしまして、そのうち約百七キログラムの覚せい剤を押収いたしました。御指摘のように、最近では主婦やあるいは少年を含む一般市民層にまで広がりつつあるということ、あるいは覚せい剤の薬事作用によると見られる殺人、放火などの凶悪事件が続発をしているということは、やはりきわめて憂慮すべき状況だろうと思います。  わが国で使用されております覚せい剤は、そのほとんどが海外から輸入をされておることは事実であります。また、暴力団が資金源として介入をいたしまして密売ルートを支配しておるという実態にもございます。したがいまして、警察といたしまして、まず供給の遮断ということで、密輸入事犯の水際検挙、それから暴力団を中心といたしました密売組織の壊滅あるいは需要の根絶ということから末端の乱用事犯の徹底検挙、これを三本柱といたしまして強力な取り締まりを行っておりますが、もう一つ、やはり覚せい剤の乱用を根絶するような、拒絶をするような社会環境をつくるために、警察独自あるいは関係機関、団体と連携をしていろいろな啓発活動を積極的に推進しておるところでございます。今後とも、国際的な問題もございますので、関係国との連携あるいは国内では税関その他、関係機関との緊密な連携を進めて、一生懸命取り締まる所存でございます。
  28. 小林進

    小林(進)委員 くどいようだが、これだけは民族やわれわれの魂を腐らせる実にけしからぬことですから、これには、警察庁なかなかがんばっています、それでいいです。厚生省の麻薬取り締まりはまだ検挙率が少ない。それから大蔵大臣、いまの麻薬、覚せい剤の問題はあなたの大蔵省の関税も非常に影響いたしますから、これは大蔵省、警察庁、それから厚生省、三者横の連絡をとりながら絶対的に撲滅する。一年と言いたいけれども、まあ無理だから、三年間でわが日本からはこの麻薬、覚せい剤犯罪を撲滅するというひとつ目標を掲げて堂々と取り組んでもらいたい。特に関税の違反が多いのですよ。大蔵大臣、ひとつがんばっていただきたいと思います。もう時間がないから、残念だが、これはまた次の委員会で私はやります。  次には、老人医療の問題だ。これは重大問題。老人保健法は今日昭和のうば捨て山法だ。お年寄りは死んでしまえという、こういういわゆる老人保健法をつくり上げたんだな。いいですか。ちょっとこれはしゃべっていると時間がなくなっちゃうけれども、いま大体孤独の老人が九十万人以上おりますね。孤独の老人ですよ。家族は何にもいないんだ。それから、半年以上入院をしている老人が三十万人以上いるでしょう。これに対して、いまこの老人保健法は何と言った。いいですか。  ちょっと申し上げますけれども、六十九歳までは注射料はまだ普通並みにやってもらえるから、大体一日七百五十円の範囲で注射や治療をしてもらえるが、七十歳以上になるとこの老人保健法で途端にこれはもう注射はできない。症状の軽重、緊急性あるいは必要性などというものは一切関係なく、点滴注射料として同じ注射は一日二百円、二百円以上使っても金は払わぬよ、こういうふうに制限されてしまう。いいですか。お年寄りは、あなた方もう注射なんか七十歳以上は打ってもらえないんだよ。六十九歳までで。  それから、四月一日から実施される事項で、老人を六〇%以上収容しているいわゆる老人病院では、老人の医療料金として別に点数が使われる。たとえて言えば、この法律によれば、一般臨床の検査、いわゆる検査項目というものは三十一項目あるんだが、各項目とも月一回ずつ検査を実施していただくことになりますると、六十九歳までは一万二千円ぐらいを要する、それを老人は全部臨床検査を受けていたが、それが七十歳になると途端に月千五百円。何やっても千五百円だから、医者は千五百円では、一万二千円だからちょいちょい丁寧に検査するけれども、何をやってもトータルは千五百円以上払わない、打ち切りだから、これではやりませんよ。だからこれは老人は死んでいきなさい。  注射はどうだ。注射は、皮下注射でも、静脈でも、点滴注射でも、どれをやっても七十歳以上は一カ月千円だ。これは何をやっても千円以上払わない。  それからまた、目や耳、鼻、お年寄りは耳や目が一番やられるんだ。この処置としても、目や耳もみんな含めて月三百円だ。それ以上は何やっても全然払いませんよというのだ、これは。いいですか、一日十円ですよ。目が悪いといって医者のところに行っても、医者はそれで目を診ても十円しか医療費をもらえないから、まあまあよそへいらっしゃいというようなもので、医者だって商売だからめんどうは見ないですよ。  さらに、心電図や内臓の超音波検査は、月に何回やろうと、原則として月一回しか認めない。どんなに心臓ががたがたしても月一回しか診ない。そして、それでは私はつらいから心電図をもっととってもらいたい、検査をしてもらいたい、そのためには、いわゆる差額は患者の小林進自体が払いますよと言ったところで、差額の個人負担はだめよと言って断られる。個人負担も差額の徴収もやらせない。そして、しかし何をやっても月に三百円以上は、金は厚生省が払ってくれないという、これが一体うば捨て山でなくて何ですか。  七十歳になると途端にこういう冷遇を受けるのです。そして厚生官僚はこれに対して、お年寄りなんか入院しても孤独になるから、早くうちへ帰して、在宅治療といって、うちに置いて、そして訪問看護婦だとかホームヘルパーなどが行って、きめの細かい親切な治療や手当てをしてくれるところに老人の人間性が生まれ変わるのでございます、こういう説明を官僚はしている。説明をしながら、経済的には、いままでの老人医療からこれをやることによって費用は六分の一だ。六分の一の費用でこれは上がるのです。だから、老人保健法というものはまさに国の経費を、いわゆるいままでのやつを六分の一の安上がりにしようとするためにこういう法律をつくったんだ。喜んでいるのは大蔵大臣だけですよ。あとはもう年寄りは全部うば捨て山に捨てられるのと同じ状況ですよ、これは。こういう残酷非道なことをやってまで一体臨調行政改革をやる必要があるのですか。いいですか。こういうひどいことをやって、もう時間がないから、もっと残虐なことを説明したいが、私は結論として申し上げる。  こういう老人保健法の実施は、しばらくテスト期間を置くということで、延期したらどうですか。四月一日から実施することを延期し、そしていま少しきめの細かい処置を講ずるというふうにやるべきであると思うが、いかがですか。
  29. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答え申し上げます。  老人保健法はうば捨て山をつくるのではないか、そういう御指摘でございますが、私はそうは考えておりません。今回の老人診療の設定に当たりましては、老人の心身の特殊性を踏まえて、やはり長期的に入院をしているということは不必要な場合には是正をしていかなければならない。入院して治療をするよりは、できるだけ地域から及び家庭における医療というような形へ転換していった方が御本人のためにも望ましいことであろうし、それからいまのお話の投薬、注射、点滴等についても、日常の生活指導に重点を置いて指導していくという形にしたわけでございます。主としてまた、老人のみを収容している病院につきましては、それにふさわしい診療報酬体系を設定いたしまして、医療の適正化を図るというのを基本にしてやっているわけでございます。  いま先生からお話のありました注射料がどうだとか耳がどうだ、目がどうであるとかという話につきましては、私から細かくお答えするよりは、お許しいただければ事務当局からお答えをさせますのでお許しをいただきたいと思いますが、私ども考えておりますのは、決してうば捨て山にするとか――やはり老人の方々に適正な診療を受けていただく、これがわれわれの願いであり、また、そうした形によりまして健康な老人になっていただくということが私たちの基本的な考え方であることを申し上げまして、御答弁とさせていただきます。
  30. 小林進

    小林(進)委員 全く厚生大臣気の毒だけれども、官僚の作文読んでいるだけです。あなた、勉強足りないよ。世の中で一番悪いのは文部官僚と厚生官僚だ。これはやっているけれども、これくらい始末に負えない官僚はいないのです。あなた、その官僚に追い回されている。  特に厚生省が悪いのは横割り行政ができてない。あなた、在宅でやれと言ったって、一体六十万の孤独な老人が病院を追い出されてどこへ行って住むのですか。どこへ行ってやるのですか。そういうことをやるならば、ちゃんとそういう孤独な老人を入れる保護施設というものがこの法律に並行してできてなくちゃいかぬ。社会局及び保険局やっているかね。何にもできてない。それから、在宅できめの細かいめんどうを見ると言うが、一体ホームヘルパーは何人いるかね。九十万人も孤独の老人がいるのに、それをめんどう見るホームヘルパーがいま日本には一万人しかいない。スウェーデンなんか人口が八百万人という日本の十五分の一もないようなそういう国でも、在宅のめんどうといえばホームヘルパーは二万人からおりますよ。ここで初めて手が届く老人の保護ができるだろうけれども、それがたった一万人で、それを二万人にするのに何年かかる。それから訪問看護と言うが、一体看護婦何人いるかね。老人を病院からおっぽり出して在宅へ行きなさいと言って在宅へ行って、その訪問看護婦は何人います。全国でまだ三万人もいないでしょう。そんなもので、言葉ではできても実際やれますか。  あなたはきめ細かくと言ったけれども、これをきめ細かくやっておったら、それをあなた方の言葉どおりに実施するのに何年かかる。十五年かかるか二十年かかるか。そんなときには皆死んでしまう、老人は。あなたはこういう息の長いことをやっていると言うのだけれども、ここでも厚生官僚は言っている。いやいや、これはいい制度ですからこれを完了するには十年か十五年かかりますと。あすも知らぬ老人に十五年も二十年もかかる長期の政策をやって、何で一体人助けになるのです。だめです、そんなことは。ですから、一番悪いのは、厚生省の各局の中で横割りの政策が何もない。何もできてない。老人医療設備の一つもできてない。ホームヘルパーもない。看護婦も足りない。だからあなた、何を言ってもだめだ。この法律を延期しなければだめだ。――しゃべるならしゃべりなさい。時間もないが、しゃべりなさい。
  31. 林義郎

    ○林国務大臣 小林議員の御質問にお答え申し上げます。  しゃべれというお話でございますが、私は老人保健法は先ほど御説明したようなことでやってまいりますし、とかく厚生省の中が縦割り行政ではないか、こういうふうなお話は、御指摘は私も謙虚に受けとめまして、横におけるところの連絡体制というものは十分にやっていかなければならないと考えております。特に医療費の適正化なんというものは、私が厚生大臣になる前から医療費適正化推進本部というものを設けまして、各局協力してやるという話になっておりますから、そういった体制をこの問題につきましてもさらに一層強力に進めるべきものだろう、こういうふうに考えているところでございます。  ただ、私は思いますのに、いまお話のありましたようなことも一気にできる話ではない。ただ、十五年かかるなどということは考えておりませんので、できるだけ早く、昭和六十一年度を目標にしていろいろな施策を準備をしているところでございます。決してうば捨て山にならないような、また老人保健法は本当に世界にユニークな制度でございますから、このユニークな老人保健法の制度ができるように私も一生懸命努力いたしますが、先生におかれましても格段の御指導、御鞭撻を賜りますことを心からお願い申し上げまして、御答弁とさせていただきます。
  32. 小林進

    小林(進)委員 私は、いまの厚生大臣の御答弁を聞いても、これは七十歳以上の老人のうば捨て山、昭和のうば捨て山法であるということに対する私の見解はいささかも変えるつもりはありません。これは間違いないです。やってみればすぐわかりますから。これは大変な人道上の問題を日本じゅうに巻き起こすことだけは私は予言をいたしておきます。  次に、時間もありませんから、ひとつ皆さん方のお手元に出しましたこれを見てください。これは郵政官僚の選挙運動の資料です。原案はここにあります。原案を見ると、この中に入っているa―1だのa―2、何町、何町という特定郵便局の名前が全部出ます。この資料を提供した特定郵便局の局長は言いました。これを出されますと、私どもは郵政官僚から首を切られたり弾圧をされたり、この世に生きていられないほど痛めつけられますから、どうか名前だけは出さないでください、こういうことですから、私は甲市、乙郡東、乙郡西だとか、そういう架空の名前で入れましたが、原案はこれで全部正確そのものの郡市の特定郵便局と名前が出ております。  その中で、どうですか。これは、いわゆる政党に局長が加入せしめられる、丸がついてるのは局長が強制的に自民党という政党に入れさせられた印です。ところが、その中に次に「夫人」というのがありますでしょう。自民党加入状況、その「夫人」というのにみんな丸がつけてある。これは夫人も局長に並べて全部政党へ入っているのです。(「入りたい人でしょう」と呼ぶ者あり)  入りたい人とあなた言ったでしょう。それだから、私はきのうあの忙しい中をぐるっと回りまして、自民党の先生方に一々聞いて回りましたよ。あなたの奥さんは自民党へ入党していますか、いや、おれの女房は入っているというものはわずかに一、二名です。入っていると答えた人もいたのです。八対二だよ。十人のうち二人だけはああ、おれの女房も政党に入れているよ。そのとき高鳥君なんかも正直だからおれの女房入れていると言ったけれども、あとの八人の方々は、そんなものは入れていない、大体おれの言うとおりやっているので、そんな、政党なんかに入れない、それが実情でしょう。  自民党から立候補し、自民党の委員になっている人でも、黙っておけば自分の女房さえも入党させないのが、一末端の特定局長が自分の女房までこうやってずっと入党せしめるなんということは、自然の形でできていると考えられますか。圧力であり強制である、これは。しかもその人の職場を奪うような、弾圧をするような形でこういうことを全部やっている。これは明らかに国家公務員法違反でしょう、私はもう言わぬけれども。人事院のここに皆ありますよ。公務員法違反ですよ。全部法律違反です。特定局長といえどもこれはやはり一般公務員であることは間違いない。ただ採用の仕方がちょっと違うだけだ。一般公務員は一体こういう政治活動が許されていますか。時間がないけれども、いいですか、許されていません。  「特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。」これは禁止をすると厳格に出ている。政治目的とは、「特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること」だ、それをやってはいけないと書いてある。特定郵便局全部やっているじゃないか。自分の女房から友人まで強制的に勧誘しているじゃないか。これについては人事院のいわゆる運用方針というのにもちゃんと出ている。「「勧誘運動をすること」とは組織的、計画的、又は継続的に、勧誘すること」を言うのであって、たとえば党員倍加運動のような行為はその例であって、これは断じて違反だと書いてある。たまたま友人同士であの政党がいいとか悪いとかと批評する程度のものは差し支えない。これは政党法いわゆる公務員法に違反したものであります。百二条に違反する、公務員法の百二条です。それには三年以下の懲役、十万円以下の罰金に処すとあります。もしこれを厳罰処置をおやりにならぬとすれば、私はおれを告発いたします。国家公務員として、公正に国民に奉仕すべき役人が特定政党に女房や友人まで強制的に入れて政治運動をするなら、世の中はやみですから、私は断じて黙視するわけにいきません。  これは何も郵政省だけを言っているのではないですよ。運輸省から警察庁までやっているのだ。これほどまで官僚が腐敗堕落したら世の中やみですよ。郵政大臣、ここへ来て答えなさい。
  33. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 特定郵便局長が一般職公務員であることは仰せのとおりでございます。一般職公務員が特定の政治目的をもって特定の政治行為をやることは禁止されておるということも、おっしゃったとおりでございます。  ただ、一般職公務員が政党の構成員、党員になることは許されておるわけでございまして、それ自体は何ら違法であるとは思っておらないわけであります。勧誘をすることは禁止をされておるわけでございまして……(小林(進)委員「あなたの奥さんも入っているか」と呼ぶ)私の女房も入党いたしておりますが、私が勧誘をしたわけではございませんで、夫婦は一体ということがございまして……(小林(進)委員「時間がないからもういい」と呼ぶ)そういう事情でございます。
  34. 小林進

    小林(進)委員 ここには「取扱注意」という注意が書いてあるじゃないか。その中に何と書いてある。「入党は県連直轄の職域支部とし、局長を含み三名とする。」いわゆる入党は三名とする。「申込者は局長、夫人、親、予等の親族とするが、縁故者やこれに準ずる者でもよい。ただし親族以外の場合は縁故者等であることを明確にしておくこと。」こういう秘密書類を全部流した。そして、強制的に勧誘している。君は何を言っているのだ。まだこんなことが正当性があると言うのか。この行為が正当だと言うならば、私はこれはあなたにいま一回問いかける。正当であるか正当でないかということだけ答えてくれればよろしい。強制勧誘であることは間違いないのだ。こういう秘密書類を出している。何でこれを秘密書類にする必要がある。  ここにもまだありますよ。私は時間がないから残念ながら言うのだけれども、秋田県では、細かく微に入り細に入り違反行為をしています。この記事は秋田県内における特定郵便局長の勧誘情勢が書きとめてある。ノルマで念押しだ。遠いやつも機関紙で呼びかけて勧誘させている。これはノルマで実行しなければ左遷あるいは降等の理由にするという。官僚OB全国参議院選出のため特定郵便局長会議まで開いて、そしてこういうことを強制している。これがいいのですか。正当な行為ですか。郵政大臣、これが正当の行為であるか。イエスかノーか。
  35. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お示しの文書について私は承知をいたしておりません。承知をいたしておりませんが、党員になるかならないかは本人の意志であるわけでございますから、党員にならなかったからといって職員分限上のことに及ぶようなことは、郵政大臣としては絶対にいたしません。
  36. 小林進

    小林(進)委員 私は、いままでのいいかげんな答弁で了承するわけにはいきません。これは後を引きますよ。私は、この問題は告発をしても最後まで争うつもりです。こんなことがこの国会の中でまかり通って、われわれ立法府に籍を連ねる者がそんなような答弁でごまかされるとなったら、悔いを千載に残すことになる。こんなことは了承できない。  時間が来たから残念だけれども、ただ一つ官房長官にも、経済企画庁長官にも、建設大臣にも談合問題もやりたいのだけれども、時間がないので、これは弱っちゃうな。  経済企画庁長官、あなたの答弁を聞いていると、まだ半分は大蔵省の役人のしっぽをけつにつけているような答弁ばかりしているから聞くのだけれども、五十七年度のいわゆる日本の経済見通しが五・二%。大きく狂った。何で狂ったか。一体五十七年度の経済の見通しは何%で落ちつくのかお聞きしたいし、その見通しの上に立ったために、五十七年度の予算に六兆円も欠陥が出たりして、非常に政界、財界、日本国内を混乱に陥れた。その責任をだれが負うのか。これが一つ。言いっ放しで、経済の見通しなんというものは狂うのがあたりまえだなんて、素人が言うような答弁ではちょうだいしかねる。国民に対して重大影響がある。  第二番目として、今年度の経済見通しについて三・四%、三・四%と言っているけれども、われわれは三・四%が出てくる資料というものを何にも拝見しない。何を根拠に三・四%日本の五十八年度の経済が成長すると言うのか。これはひとつ根拠を示してもらいたい。あなたはきのうあたりどこかで演説して、やはりひとつ内需を助長しなければならぬと、われわれが言っているのと同じようなことを言っておったが、まだここではそんなことを言っていないかもしらぬが、それが問題です。三・四%の根拠。  それから第三番目、景気を浮揚するファクターとしては、輸出と内需といろいろありますけれども、輸出の問題は別にして、国内だけの問題で言う場合には、やはり個人の消費、それから政府による財政投融資、それから民間投資、この三つが、私は景気浮揚の三大ファクターと思っているが、その三つのファクターの比率を聞きたい。個人消費がどれくらい影響し、財政投融資がどれくらい影響し、民間投資がどれくらい影響するかというその見通し、あわせて、輸出がまたわが日本の経済を浮揚するために一体どれだけのファクターを持っているのか。ただし、ことしは輸出は見込みがない。そういうことを聞いて、もしあなたの三・四%の経済の見通しが狂った場合には一体どういう責任を持つのか。  以上です。
  37. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 五十七年、五十八年の経済見通し、それからまた景気浮揚に関しての責任問題が恐らく中心の御質問であったように思いますが、確かに見通しの改定は、しかも下方修正で大幅の改定は、本当に残念なことでございます。しかしながら、これはもうどこの国でも生じました大きな世界経済不況、そうしてまた、それに伴いますところのアメリカの高金利、インフレ対策、この影響が三転、四転した、そのためにこのような結果が起こったわけでございます。  前内閣でつくりました見通しがこの内閣で変わりましたことについても、大変申しわけなく思っておるところでございますけれども、今後とも私どもは実現可能な見通しを立てて努力をしていきたいと思っております。
  38. 小林進

    小林(進)委員 それから景気浮揚のファクターの問題がある。
  39. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 今年度の三・四%の根拠につきましては、内需が二・八%、外需が〇・一六%、そしてまた外需のうちの各項目の伸び率は、個人消費支出が三・九%、民間住宅投資が二・六%、民間設備投資が二・九%、こんなような伸び率を考え、それをウエートに応じて加重平均いたしましたものが二・八%となるということでございます。(小林(進)委員「三つの比率を聞いているのだ」と呼ぶ)  これをウエートで見ますと、民間消費が二・一%、住宅が〇・一%、設備が〇・五%、合計二・七%程度になります。
  40. 小林進

    小林(進)委員 時間がまいりましたようでございますので、質問はこれで打ち切りたいと思います。  文部大臣、残念ながら、あなたに来てもらったけれども、文部関係のこと言えなかったからしようがない、今度分科会でやりますからどうぞひとつ……。
  41. 久野忠治

    久野委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、鍛冶清君。
  42. 鍛冶清

    鍛冶委員 私は、文教関係の問題について質問をさせていただきます。三つぐらいの柱を立てておりますが、一つは教科書の問題、それから一つは青少年の非行、校内暴力の問題、もう一つは学制の改革の問題、この三つを柱にしまして、いろいろといろんな角度から御質問を申し上げますので、よろしくお願いをいたします。  最初に、教科書の問題でございますが、これは大蔵大臣にまずお尋ねをいたします。  教育というものは国家百年の大計である、こうよく言われるわけでありますが、戦後日本がこれまで発展をしてまいりまして、先進国の仲間入りをすることができたわけです。この点につきましては、諸外国等でも、どこに原因があるのかという中で、日本の教育がそれを支えているのではないか、こういう判断をしているようでありまして、日本にもいろいろ調査団も来ているようであります。さらには、将来を展望いたしましたときに、日本は科学技術の向上、ここらあたりに資源のない日本としては生きる道があると思いますけれども、諸外国に追いつけ追い越せで来て、これからは追われる立場が大分出てまいりましたが、そういう中で、やはりこれを支えるのは教育である、こういう私は認識を持っているわけでございますが、この点についてまず大蔵大臣の、いま私が申し上げたようなことにどういうお考えであるか、さらには、つけ加えることがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 鍛冶委員と違いまして教育の専門家でもございませんが、いま仰せになりました、教育は国家百年の大計であって、戦後日本の目覚ましい成長の大きな原因というものは教育水準の高さにある、これは私は、たとえば文盲率が世界一低いとか、あるいは高等学校進学率等で日本より高い国が一つだけありますが、まあこれもまた世界一であるとか、そしていろいろ忌まわしい事件が毎日目につきますものの、総じて、いわゆる勤勉性というようなものも世界一である、そういう意味において、私は御指摘の意見に異論を差し挟む考えは全くございません。
  44. 鍛冶清

    鍛冶委員 御承知だと思いますが、ユダヤ人が非常にすぐれたところがあることは言われておりますが、これは何百年もの間、国というものがなくなってから世界を流浪する中で、また歴史上いろんな迫害を受けてきておりますけれども、どんなに押し詰められたときでも教育だけは絶対に守り切った、教育と教育の場だけは守ってきた、こういう中から、いまイスラエルという国をつくっておりますが、いま全世界の頭脳と金持ちを集めるとユダヤ人が相当の比率を占めるとまで言われております。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 これはやはり大臣からお答えがありましたように、教育というものをほかのいろいろなものに最優先をさせて、場合によっては命がなくなるかもわからないような場に置かれたときでも、この教育というものに対しては大変な執念を燃やして守り続けてきた、これが今日のユダヤの人たちのすぐれた、そういう全世界での影響力を持つに至った大きな原因である、こう言われておるわけですが、大蔵大臣もそういった点について、再度お尋ねをしますが、お考えはいかがでございましょうか。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに私も、教育というものが事ほどさように重大なるものであるということは、これは日本歴史の中におきましても、近代国家以前においても日本民族はそのことに対して大変熱心であった。それは国土が狭いとか資源が少ないとか、そういう環境がそうせしめたといたしましても、今日いろんな水準で見て世界にすぐれた民族であるという自負と同時に、その根底には教育というものが存在しておったという認識は一緒であります。
  46. 鍛冶清

    鍛冶委員 そこで、現実的な話になるわけでありますが、いわゆる国家予算の中での教育費の、文教予算の占める比率というもの、これはことしは予算がマイナスに初めてなったわけであります。まあ初めてというよりも、戦後、調べてみましたら、昭和二十五年のときと二十九年の二回だけは教育予算が前年度対比でマイナスになっております。ただしかし、二十五年の折は予算全体が前年度よりマイナスであったというところから、これはやむを得ないかなという気がします。二十九年はそうではなくて、前年度の伸びが二八一%、教育予算がそのまた前年度に比べて伸びておったという驚異的な伸びをしておりますので、そういうところからの配慮もあったんだろうと思いますが、マイナスの予算になっているわけです。そのほかには、この文教予算については歴代の大蔵大臣また関係の方々も配慮したとみえまして、相当に前年度を上回る予算というものを組んできているわけですね。  ところが、いろいろな財政上の理由があったにしろ、いま大臣からお答えいただいたような認識がもしおありならば、たとえ財政上どういうことがありましょうとも、今年度のようにマイナスの予算に教育費を持ってくる、こういうことは、日本の将来を考えたときに大変な問題をはらんでおる、こういうふうに思うわけでございますが、この点について大蔵大臣のお答えをいただきたいと思います。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、この予算というものは、言ってみれば、まさにそのときどきの財政事情によりまして、いわば相対的な調和をとりながら、重点施策をそれぞれ念頭に置きながら編成されるべきものでございます。したがって私は、予算そのものにつきましては、今度確かに御指摘のとおり一・一%減少となっております。しかし、その減少の内容を御検討いただきますならば、五十八年度文教予算につきましては、約三分の二を占める人件費について給与改定が見送られたことと、そして児童生徒数の減少に伴って学校施設整備費が減少する等のいわば当然に減少する要因がありまして、それで前年度より減少することとなっておりますが、わが国の教育水準の維持向上に緊要な施策は可能な限りの配慮をしておるというところでございます。  教育そのものは、いわば予算額そのもので評価されるべきものであるか否か、教育行政そのものの問題につきましては、私からお答え申し上げますよりも、担当の大臣からお答えするのが適切であろうかと思いますので、財政的見地からのみお答えいたした次第であります。
  48. 鍛冶清

    鍛冶委員 そういう事情は私もわかった上で申し上げておるわけでありまして、だから最初に教育というものの大切さということについてお答えを願ったわけでありまして、さっき申し上げたように、ユダヤの人たちは、自分の身が危ないときでも教育の予算確保はやってきたという、そういったことに照らしてみても、むしろいま防衛予算などが大変、まあ聖域化じゃないとは言われておりますけれども、聖域化に準ずるような扱いで相当大幅に伸びが出てきている。もし防衛費がそれで認められるとするならば、教育費はそれに劣らぬような形でむしろ考えるべきであろう。これから教育の分野で投資しなければならない部面というのは大変たくさんあるわけでありまして、そういう意味で申し上げているわけで、やはり教育に対して、通常の形で、人数が減ったからとか人件費の増がなかったからというようなことで教育費がマイナスになったのはあたりまえですという形でお考えいただくのは誤っているのではないか。むしろプラス面をつけ加えながら、財政の悪いときであればこそ、そういう将来に対する投資ということを含めて教育予算というものは準聖域化扱いをして考えていかなければならぬのではないか、こう思いますが、この点について再度お答えをいただきたいと思います。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 財政当局立場から予算編成等を通じて申し上げる言葉といたしましては、聖域化とかあるいは準聖域化とかいうものを念頭に置くわけにはまいらないと残念ながら申し上げなければなりません。ただ、委員が御指摘になっております教育は国の大本たれという、その思想そのものを否定するものではありません。
  50. 鍛冶清

    鍛冶委員 ここで文部大臣の方にお答えをいただきたいと思います。  いま、父兄の教育に対する支出というものが毎年だんだんふえてきているようでありますが、その傾向等を統計の上からひとつ簡略に御説明をいただきたいと思います。
  51. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いまちょっと資料を探しておったのですけれども見つけ出せませんが、十年前と比較をいたしますと大体二・何倍にふえておる、物価の上昇等からしますると大分低くなっておる、こういう状況でありますが、詳細なことは事務当局からお答えさせます。
  52. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 最近十年間の父兄負担の義務教育費の推移でございますが、五十六年度におきます父兄負担の学校教育費は、児童生徒一人当たりに換算いたしますと、年額小学校で七万六千六百七十四円、中学校で十一万五千六百八十六円でございます。十年前に比較いたしますと、四十七年度の父兄負担の額は小学校三万一千九百八円、中学校四万二千四十二円でございまして、小学校で二・四倍、中学校で二・八倍となっております。  一方、児童生徒一人当たりの公財政の支出でございますが、この教育費は、五十五年度で計算いたしますと、小学校四十三万二千五百五十円、中学校五十二万七千八百六十九円でございまして、十年前の支出額と比較いたしますと、小学校で三・二倍、中学校で三・四倍となっております。  これを合わせまして父兄負担の教育費と公財政支出教育費の合計額、その中で父兄負担の教育費の割合を計算いたしますと、四十六年度が小学校一七・九%、中学校二〇・三%でございますが、五十五年度は小学校一四・六%、中学校一七・〇%と幾分低下しているわけでございまして、父兄負担の教育費は十年前に比べて上がっておりますが、全体の公財政を含めた中で考えますと、以上のような数値になっておるわけでございます。
  53. 鍛冶清

    鍛冶委員 経済企画庁が出しました「物価レポート’82」というものの中で、これは昨年の分でありますけれども、この教育費に触れている部分があるわけです。その中で言われているのは、一つは物価の中で総じて上昇率が高かったものの代表として教育費を挙げ、その上昇率は他の商品やサービスの物価上昇率を上回っている。その典型は私立学校の授業料である。こういう指摘がされているわけですね。さらには、東京都の消費生活モニター調査の中で言われておることは、消費支出の中で家計を圧迫する費目として教育費を選んだ人の割合が一番多い。教育関係の支出はこと数年間消費支出の伸び率を上回っている。こういうふうに書かれてあるわけです。  私は、こういったことを考えますと、これは統計の御報告をいただきましたが、統計の内容によって額というものはさらにずいぶん変わってくるわけでありますけれども、生活実感として、私自身、また私自身の周囲の方々、知っている方々を含めていろいろこの問題を話し合うことがあるのですが、お子さんが三人、四人とあって学校にやっておりますと、もう家計費の約四〇%を超すものを教育費に出しているという事実もあるわけですね。こういう中で、父兄負担の軽減というものはぜひ図っていくべきものである、こういうふうに思うのですが、これは大蔵大臣と文部大臣に一言ずつお答えをいただきたいと思います。
  54. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 確かに、特に私立学校などでは教育費が増高しておることを私も承知いたしております。これは一面から考えますと、鍛冶さんお話しのように非常に教育熱心な国でありまして、親は多少しんぼうしてでも子供の教育をしようという、私はこれはとうとい考え方だと思いますが、できるだけ私学等についても助成をするようなことで、あるいは育英資金を出すようなことで父兄負担を低くしたいという努力をしておりますけれども、そのほかに、私考えますと、何と申しますか、一般の教科書以外にもいろいろ参考書その他にたくさんの教育熱心な方々が経費をつぎ込んでおられるのが相当加算された計算になっておるのじゃないかということを考えております。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的には教育担当の国務大臣たる瀬戸山文部大臣と同じ認識を持っております。
  56. 鍛冶清

    鍛冶委員 いろいろな分析ができると思いますが、結局日本を将来支えていくという上からは好ましいことであろうと思うのですね。だからそういう立場から言えば、これは文部大臣の御持論でもあるようですが、国の予算を教育費に入れ込むということは、すべての日本の国民が税金という形で納めながら日本の将来を支えていく教育をまさに支える、こういうことになるわけでもありましょうし、そういう意味での負担の軽減というものは今後も大いに努力をしながら財政当局を含めておやりいただきたい、こういうふうに思います。  そういうものを踏まえながら、義務教育教科書の無償化の問題でお尋ねをいたしたいのでありますが、ここ数年来、予算編成時になりますと義務教育教科書が有償か無償かということで大変議論になるわけであります。この件で大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、大蔵省は常に有償化を叫ばれているわけでありますけれども、その理由をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、いわゆる義務教育教科書無償制度が実施されました当時、自由民主党の文教部会に所属いたしておりました。その当時いろいろな議論がございました。たとえば、私は大正十三年生まれでございますが、大正十五年三日三十一日生まれまでの者は、小学校一年生の教科書といえば「ハナ ハト マメ マス ミノカサ カラカサ」と全部暗唱しております。そして大正十五年四月一日以降のお方は「サイタ サイタ サクラガ サイタ」、こういうふうにみんなが覚えております。しかし、私自身が私の孫の一年生の教科書をそらんじておるのであろうかというと、そうではありません。そうなれば、教科書はというものを教育の場で考えた場合に、単なる無償制度だけで論ずるべきか否か、こういうような議論もいたしたことを想起いたすわけであります。しかし、結論として私どもはそれを推進してまいりました。  財政事情が厳しくなり、また、国民の富もそれなりに上がった今日、教育というものについて、それが形の上であらわれておる義務教育無償制度についてもろもろの議論があることは事実でございます。大蔵省といたしましては、過去において財政制度審議会また臨時行政調査会等より教科書無償供与制度の見直しについての指摘も受けておるところであります。そして、財政資金の効率的使用等を図るという財政当局の見地から、これを見直しを主張をしてきたということは事実でございます。
  58. 鍛冶清

    鍛冶委員 これは文部大臣にお尋ねいたしますが、文部省は無償化の立場でいままで推進をしておられるし、これも堅持するということでありますが、そこで、いまも大蔵大臣が若干触れられておりましたが、この教科書の無償制度ができるまでのいきさつについて、ひとつごく簡略にお答えをいただきたいと思います。
  59. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 鍛冶さん御存じだと思いますが、昭和三十七年の国会でこの無償制度が論議されております。三十八年からまず順次施行するということで、一学年から施行されておるわけでございますが、そのときの政府の提案理由の説明は、憲法二十六条の義務教育無償の情神を生かすためだということになっている。そして、これは教育はいかに大事か、先ほどお話しのとおりでございますが、わが国の将来に向かって画期的なすばらしい政策だということを政府は御説明申し上げておる。その際に、一体これは社会保障的なものかどうかというお話があり、そういうものでなくて、まさに教育の根本に触れた、憲法の精神を生かしておるもので、社会保障的なものであるとかあるいは援助するとかいう問題ではない、こういう説明をされて今日に至っておるわけでございます。
  60. 鍛冶清

    鍛冶委員 いま大臣もちょっとお触れになりましたけれども、再度無償であることの法的根拠と、これを堅持していくという姿勢を貫いておる文部省のお考え、これをひとつ具体的にこの際お聞かせをいただきたいと思います。
  61. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 この無償制度がいいか悪いかということ、いいか悪いかといいますか、財政の問題から、先ほど大蔵大臣からもお話がありましたように、いろいろ議論がされております。臨調等でも無償制度見直しを含めて検討を要するということになっておりますから、これはもちろん検討しなければならないということで、中教審等でも検討をしてもらうことになっております。  ただ、文教といいますか、教育を担当しております文部省あるいは文部大臣としては、無償制度が正しいという立場を持っております。といいますのは、いま申し上げましたように、憲法二十六条の「義務教育は、これを無償とする。」という、法律といいますか憲法の精神にのっとってやっておるということでございますが、私なりにこれを根本的に考えてみますと、一体教育とは何だということを考えてみると、妙なことを言って恐縮でありますが、まさに教え育てるということ。義務教育は小学校と中学校まででございますが、これはちょうど生物が生命を得まして、それがだんだん成長していく、その間の、いわば大体世の中に出て自分で考え、判断し、働き、生命を保って、できれば文化的な生活ができる素地をつくってやろう、鳥で言いますと、卵からひよこが出ていく。私もよくその姿を見ておりますが、小さいときには親が小さなえさを持ってきて食べさせる。成長するに従ってだんだん大きなえさを持ってきて食べさせる。そして羽が生える。そして翼が大きくなって飛んでいく。それを見届けて、どこへ行ったかわからないようになりますけれども、これで一人前に生活ができる。そういうことで、まさに人間でも同じだと思います。  でありますから、人間の歴史を見ますると、以前は学校制度なんということはなかった。それぞれ親がえさを与え、あるいは保護し、そして生活のすべを教えて、いわゆる教え育てていった。これが、社会がだんだん発展いたしまして社会組織ができる。そして国というものをつくる。そうなりますと、これはいわゆる部族の子供である、あるいは社会の子供である。あるいは国をなしますと、国民の子供である、将来を担う子でございますから。この国民の子供が一本立ちで生きていく道を歩めるようにはぐくみ育てる、そこまでは国民の責任である。こういうことは、私は憲法二十六条の少なくとも義務教育は無償にする、いわゆる国がやる、こういう精神から来ておるものと考えておりますから、これはどうしても貫いていきたい、こういう考えでございます。
  62. 鍛冶清

    鍛冶委員 これは大蔵大臣の先ほどの御答弁の中にもありましたし、ただいまの文部大臣の御答弁の中にも出てまいりましたが、昭和三十七年の三月に義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案が審議されました際に、確かに憲法第二十六条の規定に基づく無償の方針を貫くためにこの法律を提案した、いわゆる憲法の義務教育無償の方向へ本格的に踏み切ったものである、この法案を機としてそういう理想のもとに出発するのだということを宣言したことになる、こういうふうに当時大蔵大臣は言い切っておられるわけでありまして、この精神はいまも貫いておる、私はこういうふうに思って理解をいたしております。  そのことを確認しながら次に進みますが、教科書代は有償化を言う人の中に、年間わずか小学校で平均二千百円、中学校で約三千二百円、これぐらいしかかからないのだから、これは女性の一回分のパーマ代にすぎない、だから有償化すべきだというようなことを、ある自民党の女性の参議院の方がおっしゃっているようでありますけれども、こういうことについて文部大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  63. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 現在の状況で小学校が二千二、三百円、中学校が三千円そこそこ、年間でございますから、このくらいのことは、いまの生活の状況から見れば、コーヒー一杯飲んでも二百円くらいするじゃないかというようなことで、そういう議論もありますし、また、あるいは教科書を親が買い与えることは親の愛情が伝わって教育上いいんだとか、いろいろ御意見があります。それも一面私はもっともなところがあると思います。  しかし、私は、先ほど申し上げたような教育の本質という問題から考えて無償が適当であるということでございますが、二千円、三千円だから、それは父兄負担が正しい、何でもないじゃないか、そのほかに、先ほども申し上げましたように、いろいろな参考書なんかもっと何千円も買っておるじゃないか、こういう議論があります。私は逆に、二千円あるいは三千円だから、そのくらいは将来の日本をしょう子供は国民が負担してちゃんと教育する、これが私は正しいんじゃないかと考えております。
  64. 鍛冶清

    鍛冶委員 全く私も同意見でありますが、ここでちょっと気になることは、巷間いろいろ言われておりますので文部大臣にお尋ねをいたしますが、文部省はこの無償化を存続するということに固執するのは、もし有償化されますと、教科書の検定問題との絡みで、これに対する文部省が口を差し挟む余地が少なくなる、ないしはなくなるからだ、こういうようなことが言われておりますが、この点についていかがでしょう。
  65. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 教科書の無償制度と検定とは直接つながらないと思います。検定は、これは昔のように国定教科書、国がつくるということは、私個人としてはそういう画一的な教育は適当でないという感じを持っておりますが、そういう制度は戦後とっておりません。さればといって、いま申し上げましたように、国民の子供と私は言いますが、それが小中学校、十五、六歳になるまでのやや常識的な判断ができるように養育するまでのものは、いわゆる何といいますか平均的と言うのでしょうか、標準的と言うのでしょうか、客観的と言うのでしょうか、そういうもので教育する方が適当である。でありますから、そういう標準的なものを、いろいろ意見がありますけれどもつくって、みんな平均的な教育をする、こういうことが適当だろう、こういう意味で検定制度というものがある、それは支持するべきである、かように考えております。
  66. 鍛冶清

    鍛冶委員 現在、義務教育教科書の無償制度については中教審に諮問されているわけでありますけれども、それの審議状況、ないしはその答申がいつごろ出てくるのか、これがわかるようでございましたら、お答えを文部大臣にお願いをいたします。
  67. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 その点は事務当局からお答えさせます。
  68. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 ただいま中教審は第十三期の中教審でございまして、これは一昨年、五十六年十一月に発足いたしまして、十一月に文部大臣から「時代の変化に対応する初等中等教育の教育内容などの基本的な在り方について」という諮問をいただいておりますが、その中に教科書の問題も含めて検討いたしておりまして、無償制度を含めました検討につきましては教科書小委員会というものを設けまして、これまでに十六回にわたりまして検討いたしております。各団体でございますとか参考人の意見を聴取いたしまして審議を重ねておりまして、ほぼ意見の取りまとめの段階に入っておりますので、さらに小委員会、総会等の意見を徴しながら答申の運びになると思いますが、その時期につきましては、私どもまだはっきりしたことが申し上げられませんけれども、ほぼ意見の取りまとめの段階に入っているということでございますので、遠からず結論をいただけるものと考えております。
  69. 鍛冶清

    鍛冶委員 文部大臣にお尋ねをいたしますが、今回自民党内に教科書制度に関するプロジェクトチームが二月二十二日発足をして、第一回の会合を同じく二十五日に開いている、こういうふうに言われておりますが、このことは五十八年度の予算の復活折衝の折に、これは昨年の十二日二十九日のようでありますけれども、無償化についての予算は復活したものの、自民党三役と大蔵大臣、それから文部大臣、この五名の方の中で署名入りの申し合わせ書がつくられてしまった、こういうことで条件がつけられたというふうな流れが出ているようで、これが無償化堅持ということに大変影響が出てくるのではないかと私ども心配をしているわけでありますが、これがつくられた真意と、大臣も署名されているようでありますから、いつごろ、どのような形で結論を出そうとしているのか、もし大臣でおわかりならばお答えをいただきたい。
  70. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いまお話しの予算編成時に、最終の段階でございましたが、教科書無償制度をどうするかということがずっと長く議論になっておりました、その予算を編成する最終の段階で、いまお話しのように大蔵大臣、文部大臣も連署で党三役も署名をしておりますが、これは五十九年度の概算要求時ぐらいまでにどうあるべきか結論を出すということでございまして、先ほど申し上げましたように、中教審等で検討を要するとありますから、検討することはもちろんやぶさかでない、これだけのことでございます。
  71. 鍛冶清

    鍛冶委員 無償化についてはこれで質問を終わらせていただきますが、これは、われわれは世論調査を見ましても、はっきりと国民の大多数がこれを支持いたしておりますし、さらには文部大臣の御決意のほども伺いましたし、また大蔵大臣からは無償制度発足当時の、憲法の精神に基づくこの無償化の法案の制定であったというふうにもお伺いいたしました。こういうことを踏まえながら、ぜひ今後とも無償化については堅持をする、この線を財政当局を含めて貫いていただきますように御要望申し上げて、次の問題に移らせていただきます。  少年非行と校内暴力問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  官房長官に最初お尋ねいたしたいのですが、中曽根総理は施政方針演説の中でも、さらに二月二十一日には、横浜、町田両市に発生いたしました大変ショッキングな事件がきっかけであろうと思いますけれども、教育の問題、特に青少年非行問題についていろいろと強い発言をなさっておられるわけです。この総理の真意と、この総理の発言をどのように受けとめて今後こういう問題について対処していかれようとしておられるのか、官房長官にお尋ねをいたします。
  72. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お尋ねの中にありましたようなショッキングな事件が発生をいたしました。こういった事件の発生にかんがみまして、総理としては今日の青少年の教育をめぐるいろんな問題について、その背景に非常に根の深いものがあるのではないのか。学校の中にもいろいろ問題があるし、家庭にも問題がある。同時に、子供を取り巻く社会の環境あるいは日本の学歴社会、掘り下げていけば非常にむずかしい問題がある。従来から政府はそれらの問題に取り組んでおるけれども、依然としてこういった世間の耳目を聳動させるような事件が発生する。これらについてはやはり政府として幅の広い対応策というものをじっくり腰を落ちつけてやらなければいかぬのではないか。さきの内閣以来、総理府においても審議会等をつくって検討を進めておるが、それらを踏まえながらじっくり政府として取り組んでいきたい。もちろん足元から烏が立つようなことではありません。教育の問題は長い将来を見据えた民族の大きな課題でございますから、慎重に取り組んでいかなければならぬということはあたりまえのことでございますが、総理はこういったことを踏まえながら、最近の事件にかんがみて非常に心配をしておる、何とかひとつ教育の問題、青少年の育成ということに政府を挙げて取り組んでまいりたい、こういうようなお気持ちでああいった御発言をなさったもの、私はかように考えております。
  73. 鍛冶清

    鍛冶委員 ここで総務長官にちょっとお尋ねをいたしますが、私は昨年、やはりこの予算の一般質問の中で、同じように青少年非行問題を取り上げていろいろと御質問を申し上げました。そのときに、やはり国民運動の盛り上げが必要だ、これはいろんな答申の中にも指摘されておりましたし、そういう観点からその対策として、とりあえず実践していただく内容としては、総理府が毎年七月に行っている青少年を非行から守る全国強調月間、これに対して総理を初めとして各大臣、またその他われわれを含めていろんな方々の取り組みをむしろ総理府が提案して、また総理にも、これは前総務長官でありましたけれども直接お話しをいただいて、総理自体もこの月間のときに飛び出していって、たとえ一日でも二日でも取り組みをやる、こういう流れをつくっていくべきではないか。単なる行事を消化するという意味ではなくて、本当に青少年問題を流れを変えるという、昨年も申し上げたのですが、本当に上り坂の青少年の非行というエネルギー、この流れを変えるためにはやはり総理みずからが先頭に立って、すべての人、関係の方々が立ち上がってこれに取り組むという、強大なエネルギーを注ぎ込むことによってこれを変えることができるし、それ以外ないのではないか、こういうふうに御提案を申し上げたのでありますけれども、どうもその後余りぱっとした話が出てきません。これについてどういう取り組みをなさったのか、お聞かせをいただきたいのです。  さらに、こういうことを踏まえてであったかどうかわかりませんけれども、昨年の六月二十五日には青少年の非行防止対策について三項目にわたって確認をしながら推進をするということで閣議決定もしているのですね。第一の柱は国民運動の展開、第二の柱は青少年の非行防止等の施策を推進、第三番日は非行防止対策推進連絡会議を設置する、こういう三つの項目について強力に推進するという閣議決定までしているわけでありますが、こういった問題が、私が昨年御質問申し上げたことと絡めて果たしてどう機能し、どう対処をされたのか、ここでお答えをいただきたいと思います。
  74. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 ただいま鍛冶先生からのお尋ねの件につきましてお答えさせていただきたいと思います。  この青少年の健全育成、非行化防止ということについて大変御熱心に取っ組んでいただく、情熱を燃やしておっていただく先生から、昨年のこの委員会においてあのような御注意と申しますか御指摘がございまして、そのときに政府自身が陣頭に立って事をやらなければだめじゃないか、こういうような強い強い御指摘がございましたので、その御指摘に従って政府はどのような陣頭に立っての行動をとってきたかということをお尋ねでございますから簡単に述べたいと思いますが、御指摘のように昨年七月の、全国青少年の不良化防止と申しますか非行化防止と申しますか、それの全国強調月間においては、四十七都道府県においてそれぞれの地方公共団体及び関係機関の長が出席し、非行防止決起大会が開会されたのでありますが、東京の大会においては、先生からも御注意がございましたので、田邉総務長官みずからが出席し、積極的に参加いたしました。テレビ等によって呼びかけ、青少年の非行防止対策に出演と申しますか、テレビ等を通じてその努力をいたし、広報活動の促進等に努めてきたのでございます。  なお、今後青少年の非行防止の重要性を認識し、先生の御指摘のとおり陣頭に立って私は青少年の非行防止に取っ組んでまいりたいと考えております。
  75. 鍛冶清

    鍛冶委員 これは官房長官にもお答えをいただきたいのですが、先ほどの官房長官の御答弁を聞いておりますと、先日、一般質問の中で民社党の中野議員が同じような形で御質問をされておりました。あのときは大変官房長官、えらいやる気満々で、もう任しておいてくれと言わんばかりの御答弁だったように記憶するのですが、いまお聞きしますと、大変慎重にというような言葉が返ってきておりますけれども、まあその中で私がちょっと記憶しているのは、いままでのこういう問題の取り組みについて、中野議員質問に答えてこういうふうに言われていたと思うのです。これまで会議をやり印刷物を配る等でこういう問題の対処は終わっておった、これからどのように行政に反映させるかがむしろ問題である、これまでの答申などを踏まえながら国民運動的なものとしてやろうということだ、地域社会がどういう仕事をするかというような具体的なやり方にまで手を入れてこれを積極的に推進していきたい、こういうように言われていたわけですね。この中で、最初の方では、いままでは会議をやったり印刷物を配ることで終わっておったみたいな、こういう言い方でおっしゃっておった。  さらには、これは丹羽総務長官が、二月二十三日の非行防止対策推進連絡会議で、この後、記者会見をなさった中でこういうことをおっしゃっているのですね。いつやるかわからぬ文言ばかりの対策ではだめだ、非行の起きた原因、環境などを追跡調査をして、根本から対策を請じていかなければならない、こういうように強調をされているわけですね。  さらには、その同じ会議の中で、深谷総務副長官が、非行防止問題について、その議論はもう出尽くしているのだ、問題は具体的にどうやって防止するかだ、こういうふうに言っているわけでありまして、この点では私は同感なんですが、これを裏返してみますと、政府関係の方々が、官房長官を含めていままで政府はいろいろ取り組みをやったけれども、結局はそれはただ会議をやったり印刷物を配ったりするだけで終わっておりましたというふうに認めていらっしゃるようにも思うのですが、この点についてはいかがでしょう。
  76. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私のお答えを出し上げておるのは、前回も本日も変わっておりません。申し上げたいことは、何かあった際のにわか仕立てのこう薬張りで成果が上がるものではないということが一点。いま一つは、子供の非行防止であるとかあるいはもう少し幅の広い健全育成とでも言いますか、そういったような青少年の教育というものは、単に文部省だけに責めを負わしてそれで教育の成果が上がるとは思わない、やはり非常に根の深い問題であるだけに政府としては幅広い施策というものを着実に進めていく、これが必要なんだ、そういった立場に立って、従来のやり方についても反省を加えながら一層の充実した改善策をこの内閣としては取り組んでいきたい、こういう決意を私は申し上げたわけでございます。
  77. 鍛冶清

    鍛冶委員 いまの点で総務長官いかがですか。
  78. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  先ほども先生からもお話があり、私からも申し上げましたように、さきの閣議で決定いたしましたその決定に基づきまして総理府に設置された非行防止対策推進会議において関係各省庁の非行防止対策の具体的な対応策を取りまとめてきておるのでございますが、なるほど先生から御指摘のありましたように、私も議論するだけではだめだ、実行に移していかなくちゃだめだということを言っておりまするので、その後私どもは、その取りまとめました内容、これを国民運動の展開とか啓蒙活動の強化とかを図るとともに、健全な家庭づくりを促進し、学校における生徒指導の充実を図る等で、これらに沿って各省庁が、先生からいま御指摘のありましたように、また私も申し上げましたように論議だけではなくして、今日のような問題が後を絶たずにとは言い過ぎかもしれませんが、残念ながら不幸なことながら起きてきておりますので、けさもやりましたが、明朝も各省庁の関係者お集まりいただきまして、積極的にこの防止に取っ組んでいくような具体策を実行に移していくように努力させていただきたい、こう思っております。
  79. 鍛冶清

    鍛冶委員 重ねてのようですが、この青少年非行のエネルギーを抑え、ないしは流れを変えるには強大なエネルギーを注ぐ以外にはないと思いますし、これは全員でかからなければならぬと思いますが、政府関係の対策については、これは文部省も含めてでありますが、何かあると会議をやったり印刷物、通達を出したりというようなことを繰り返しているという感触を、官房長官も言っておられましたように私は感じてなりません。意地悪な言い方をすれば、国会で追及されたりまたいろいろとマスコミから追っかけられたときの答弁用にただ形だけを整えているのだ、しかし実態は皆さんが言っておられるように、会議をやったり印刷物を配ったにすぎませんというような形で終わっているという状況ではないか、それが実態ではないか、本当にそう思っています。今回はそういうことはないように、必ずやるという決意は持っておられるとは思うのですが、このことについて御決意なりまた具体的な対策でいままで検討をしてきた中で、これは重点的にやりますというようなこと等があれば、これは官房長官、総務長官に再度お答えをいただきたいと思います。
  80. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私も鍛冶さんの御質疑の中での御所見、同感でございます。政府としてもそういう強い決意で取り組んでまいりたい、かように思います。
  81. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  総理府として、特に私の考えとしては、重ねて御指摘のありましたように、会議を繰り返したり印刷物を配っておるだけでは実効の上がることではない、政治の目標でもないのでございますから、さしあたって、先ほど申し上げましたように、当面これを急いでやらなくちゃならないというものを明日決定いたしまして、それでやれるものから進めていって、この次先生からお尋ねのありましたときには、これを進めました、このようにやらせていただきましたと良心的に言えるように誠意を持って進めさせていただき、青少年の非行防止に努力させていただきたい、これを期待し、お約束を申し上げておきたいと思います。
  82. 鍛冶清

    鍛冶委員 対策については総花的に出ているのがありまして、中期的、長期的、短期的にいろいろあるのですが、すぐにできないようなこと、またできもしないようなことが書かれてある場合もございますので、これは消去法をとって、本当にこれは確実にやれるし、やることによって変えていくぞ、こういう決意の中で実行していただくように御要望を申し上げて、次に移ります。  そこで、最近町田市、横浜市で発生した事件、これは先ほど申し上げましたようにまことにショッキングなものであったわけでありますけれども、こういった事件につきまして、警察庁においてはどういうふうにとらえているのか、その認識について、傾向性についてお尋ねをいたします。
  83. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答えを申し上げます。  横浜の事件は、十四歳から十六歳という比較的年少の少年による凶悪な犯行であるということ、それから被疑少年の中には、学校への登校状態がきわめて悪く、成績も不振であるなど、いわゆる落ちこぼれに属する者が多いということ、それから無抵抗の浮浪者に対して多数で暴行を加えるなど、いわば弱い者いじめの犯行であるということ、それから犯行の動機を調べてみますと、おもしろ半分であるとかあるいは日ごろのうっぷんを晴らすとか、中には誘われてやったからだとかというようなことで、みずから犯した行為の重大性に対する認識というものに欠けているというような特徴が見受けられます。凶悪化、粗暴化する最近の少年非行の深刻さを浮き彫りにした事件であると受けとめております。  また、町田の事件は、教師が果物ナイフで教え子を刺して負傷をさせたという余り例を見ない事件でありますけれども、この事件の発生の背景といたしましては、生徒が校内において番長グループを結成をし、他の生徒や教師に対して日ごろから暴力をふるっておった、今回の事件に関係する生徒二名もその番長グループのメンバーであったということ、それからこの教師は日ごろから生徒の暴力におびえていたというような供述もしておりまして、このような状況に対して必ずしも学校側の十分な対応がなされていなかったように見られることなどの事情がございまして、校内暴力事件の深刻さをうかがわせる事件である、このように受けとめております。
  84. 鍛冶清

    鍛冶委員 この事件もいろいろ言われておりますので、御説明を伺うのはそれくらいにしておきますけれども、こういった一連の青少年の非行、校内暴力についてやはり早急に対処し、いろいろな施策、対策を講じてこれをなくしていく、またいい方向に向けていくということは大変必要なことでありますけれども、そういう早急に講じ得る実効のある対策というものがあるのかどうか、もしあるというようにお考えでありましたら、具体的にひとつ警察庁、それから文部大臣の方でもありましたら、お答えをいただきたいと思います。
  85. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 警察庁といたしましては、最近の非行情勢は確かに戦後最悪な状況にございますし、少年の非行を防止し、その健全な育成を図るという観点から、昨年五月に少年非行総合対策要綱というものを制定をいたしまして、総合的な少年非行対策を推進しておるところでございます。これをやったらすぐなくなるというような問題はなかなかございませんけれども、最近の少年非行が、先ほども申し上げましたように、凶悪化あるいは粗暴化の傾向を強めておる。特に、校内粗暴集団あるいは地域の粗暴集団あるいは暴走族などの非行集団による悪質な暴力非行というものが多発をしておるということは、まことに憂慮すべき事態であるというふうに考えます。  当面、警察といたしまして考えておりますことは、もちろん関係団体、関係機関との緊密な連携のもとに、こういった暴力的非行集団の解体補導を徹底をする。たとえば夜間における街頭補導活動を強化をする。特にまた春休みの時期にも近くなりますので、そのようなことも考えたい。また、当然学校との連携を強化をする、あるいは少年のことについていろいろ悩みを持っておられる方が多いわけでありますので、その少年の相談活動を充実強化をする、あるいは地域の方々の協力も当然得なければなりませんので、地域ぐるみのこういった暴力非行防止活動といったものを推進をしたいというようなことを考えておる次第でございます。
  86. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 教育関係の方としては、即効薬というのは私はそうないと思います。御承知のとおり、こういう問題については従来からいろいろ努力をしてまいりましたが、特に今回の事件で大変なことだというショックを受けているのが現状でございます。でありますから、多くを申し上げませんが、原因が非常に広範にわたっておる問題だと思いますから、これは分析しながら、直ちに、即効薬といいますか早くできるもの、制度を変えなければならぬもの、いろいろあると思いますが、ただ、学校で一番大切なことは、直ちにできることは、校長先生以下全員が子供をよく指導する、ただしかるということだけではなくて、本当に指導するという愛情を持ってこれに対応する、この点が欠けておったような気が私はいたします。従来も、そういうことを今日までずっとやってきたわけでありますが、こういう事態が起こった現状を見ますと、確かにその点に欠けておったところがある。全員一致で子供をいい方に指導する、対応策を講ずる、これは緊急にやれる仕事であろう、かように考えております。
  87. 鍛冶清

    鍛冶委員 私も全くそう思いますが、文部省は、その点については、大臣がおっしゃるようなことをもうずいぶん前から言ってきているわけですね。通達もし、いろいろ指導もしたり会議を開いたりはやられているようでありますけれども、これがまた、こういう事件が起こってみますと、特に町田ではそういう団結がなかったというようなことも指摘されているわけですが、こういった問題について、文部省が二十三日に開いた緊急省議の中でこうあるべしというもの、また問題点を提起している中で、二番目に、やはりいま言った校長を中心とした校内体制の整備を真剣に考えねばならぬというようなことを項目で出してきているわけですね。私は、こういうことを一体何回やって、いつから言われてきているのか。これは官房長官にお尋ねしたことと通ずることでありますけれども、こういったことが、単なる通達やら会議をやるということ、ないしはごろ合わせだけ、起こったときのその場限りの逃れに、意地の悪い極端な言い方をしますと、終わらせる、むしろそのためにやっているだけで、実際に現場でこういうものに対処しているのかどうか、非常に疑問に思うわけです。  そこで、もう一つ突っ込んでお聞きしたいのですが、こうやって幾ら指導しても、通達を出しても、会議をやっても、いろいろな手当てをしてみても、学校内で校長を中心に力を合わせるという体制がどうしてできないのか、この原因について、また理由について、ひとつ文部省のお考えをお伺いをいたしたいと思います。
  88. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 鍛冶さん御承知のとおり、文部省としては、教育行政全般について関係しておるわけでございますが、現場の教育そのものに直接関与ができない仕組みになっております。御承知のとおり、小中学校は全部都道府県教育委員会等で指導するわけであります。こういう機関と連携をとりながらずっと進めてきておるわけでございますが、詳細な点については初等中等教育局長から御説明申し上げます。     〔村田委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕
  89. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 教育行政の仕組みは、ただいま文部大臣が申し上げたとおりでございまして、文部省といたしましては、指導方針を先生お挙げになりましたような通達によりまして明示をいたしまして、特に学校の校内体制を整備して、校長を中心とした指導体制をきちっと組んで当たる、これが大事だということはいろいろな会議のたびにるる申し上げているわけでございますし、また、校長、教頭が管理職手当を支給され、主任等が手当を支給されまして、それぞれの職務に精励するという学校内の管理運営組織ができておりますのも、学校がそういう学校全体として、組織体としての使命を遂行するために一体となって当たるということで、いろいろな制度的な整備ができているわけでございますけれども、具体的に個々の学校の問題になりますと、校長のリーダーシップの問題でございますとか、教員間の問題でございますとかありまして、なかなか協力体制ができていない。しかし、大体の学校におきましては、それを非常に苦心しながらやっているわけでございまして、たまたま、いろいろ問題が起こったところを考えてみますと、リーダーシップが欠けておりましたり、学校内の調和が欠けていたということでございまして、そういう点も点検しながら、それを他山の石として、さらに指導体制については、協力体制を改めて考え直してやっていかなければならない。  大臣がお挙げになりましたように、不断に指導するわけでございますけれども、来る十日には、また会議だけというおしかりをいただくかもしれませんけれども、都道府県の教育長等を緊急に招集いたしまして、問題についての反省を含め、指導の徹底を期したい、かように考えておるところでございます。
  90. 鍛冶清

    鍛冶委員 文部大臣も、直接的には教育現場に関与しにくいということもおっしゃったのですが、そうかもわかりませんけれども、今度の町田の事件でも、その前日ぐらいでしたか、文部省の方とお話し合いをしたときに、なぜ文部省は現場に飛んでいかないのかということでずいぶん申し上げたのです。これは権限があるとかないとかいうよりも、バックアップ体制と、本当に現場で認識をするという重大な問題であるだけに、ぱっと飛んでいってその状況を調べてくるとか、現場にあって激励するなら激励する、措置はするというようなことも、越権かどうか、私もそこまではわかりませんけれども、現場に行ってそうするというだけでも違うと思うのですけれども、それが非常にスローモーです。私が言ったから政務次官が行かれたのかどうか、それとはまた別に、まあ決められていたようでもありますけれども、わかりませんけれども、そういう文部省自体の姿勢というもの、これが僕は大切じゃないか。それが欠けているのじゃないか。だから、教員にしろ、地方の教育委員会にしろ、校長さんにしろ、文部省が出てくるとむしろしかられる方にどうもなるのじゃないか。応援してくれて激励されるという感じがなくて、そういう意識の方が強くなっているのじゃないかという気がするのです。こういうことも改めるべきであろうと思いますが、文部大臣、いかがでしょう。
  91. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私なんかも、できるだけ現場を見せていただきたいと思うことがあるのでございますが、なかなか時間がございませんが、御注意を十分肝に銘じておきたいと思います。
  92. 鍛冶清

    鍛冶委員 ここで、ちょっと時間がかかるのですが、ひとつ私が最近読んだ本の中で感動しました内容のものがありますので、後々の質問との絡みの中でちょっと読ませていただきたいのですが、これは鈴木健二さんという方が書きました、いまベストセラーになっている「気くばりのすすめ」というのがございます。この本の中で「一粒の豆」という非常に感動的なお話がございまして、私もこれを読んでいて大変泣けて仕方がなかったのですが、お読みになっているかもわかりませんが、官房長官、大蔵大臣、文部大臣もおそろいでございますし、総務長官もいらっしゃいますし、公安委員長もいらっしゃいますから、それをちょっと読んでみたいと思うのです。  この中で「一粒の豆」と鈴木健二さんが言うのは、   私は一粒の豆を自分の生きがいにしている奥さんを知っている。その奥さんには二人の息子さんがいて、ご主人はすでに亡くなっているから、正しくは妻の役割はすでになく、母親としての役割だけの立場だが、母親がどう振舞うことがこどもにとって最高の教育であるかということを身をもって示した方なのである。こういう中で状況が語られているわけですが、この一家は、お子さんが二人あって、上の子が小学校三年、次男が小学校一年のときに御主人が交通事故で亡くなられた。ところが、加害者であるというようなことで、結局土地も家も全部売り払ってそれに賠償した。残されたのは母親と子供二人で、路頭に迷ったのですが、結局各地を転々として、ある家の好意にすがって、納屋の一部を借りてその親子三人が生活を始めた。何もない中で、勉強机もミカン箱一つというような中でやっていた。お母さんは、生活を支えるために朝六時から起きてまずビルの掃除をやり、昼間は今度は学校給食の手伝い。これは文部省関係があるところでやられているようです。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕 夜は料理屋で皿洗いというようなことで、朝早くから夜おそく、十一時、十二時まで働きづめに働いて、何カ月も何カ月もがんばったらしいのですね。その中で、結局はどうにもならぬという中でもう死ぬことも考えられたようでありますけれども、子供と一緒にお父さんのいる天国へ行こう、そればかりを考えるようになった。  そこで、その後、こういうふうに書いてあるのですが、   ある日、お母さんは鍋の中に豆を一ぱいひたして、朝出がけにお兄ちゃんに置き手紙をした。  「お兄ちゃん。おなべに豆がひたしてあります。これをにて、こんばんのおかずにしなさい。豆がやわらかくなったら、おしょうゆを少し入れなさい」   その日も一日働いて本当にくたびれきってしまった母親は、今日こそ死んでしまおうと、こっそり睡眠薬を買って帰ってきた。二人の息子はムシロの上に敷いた粗末なフトンで枕を並べて眠っていた。   お兄ちゃんの枕元に一通の手紙が置いてあるのに気がついた。「お母さんへ」。お母さんはなにげなしに手紙を取り上げた。そこにこう書いてあった。  「お母さん、ボクはお母さんの手紙にあったように一生けんめい豆をにました。豆がやわらかくなったとき、おしょうゆを入れました。でも、夕方それをごはんのときに出してやったら、お兄ちゃんしょっぱくて食べられないよといって、つめたいごはんに水をかけてそれを食べただけでねてしまいました。   お母さん、ほんとうにごめんなさい。でもお母さん、ボクをしんじてください。ボクはほんとうに一生けんめい豆をにたのです。お母さんおねがいです。ボクのにた豆を一つぶだけ食べてみてください。そして、あしたの朝、ボクにもういちど、豆のにかたをおしえてください。だからお母さん、あしたの朝は、どんなに早くてもかまわないから、出かける前にかならずボクをおこしてください。お母さんこんやもつかれているんでしょう。ボクにはわかります。お母さん、ボクたちのためにはたらいているのですね。お母さんありがとう。でもお母さん、どうかからだをだいじにしてください。ボク先にねます。お母さん、おやすみなさい」 こういう置き手紙がしてあった。   母親の目からどっと涙があふれた。  「ああ、申しわけない。お兄ちゃんはあんなに小さいのに、こんなに一生懸命に生きていてくれたんだ」   そしてお母さんは、こどもたちの枕元に坐って、お兄ちゃんの煮てくれたしょっぱい豆を涙とともに一粒一粒おしいただいて食べた。   たまたま袋の中に煮てない豆が一粒残っていた。お母さんはそれを取り出して、お兄ちゃんが書いてくれた手紙に包んで、それから四六時中、肌身離さずお守りとして持つようになった。 その後でありますけれども、   もし、あの晩、お兄ちゃんが母親宛ての置き手紙を書いてなかったとしたら、この母子たちはたぶん生きていなかっただろう。一通の手紙、一粒の豆が三人の生命を救ったのである。しかもそれだけではない。母親は気をとり直していっそうよく働き、その働く母の尊い姿をみつつ育った二人の兄弟は、貧乏のどん底でもけっして絶望することなく、よく母親の手伝いをし、勉強をした。それから十数年の歳月が流れた。お兄ちゃんも弟さんも明るく素直で母親思いの立派な青年に成長し、ともに世の教育ママたちが憧れている超一流の国立大学を卒業し、就職した。   塾に通ったわけではない。夜は暗くなると電気代を節約するため早く寝なければならないような生活だったのだ。生育環境は劣悪そのものである。そんな生活の中で、いったい何がこの兄弟に作用したのか。   それはたった一つ、母親が毎日を一生懸命に生きたことだったのである。それだけである。その母親の後をこどもたちは小さな足で一生懸命についてきた。人間にとってもっとも大切なのは、毎日を一生懸命に生きることである。 こういう話です。  ここで私があえて長い文章を読み上げましたのは、生きざまということ、それから子供たちは大人の、そして先生の生きる姿といいますか生きざまを見ている。言葉ではない。言葉でいろいろ指導もでき、会議をやったり通知を出すことはできるかもわかりませんけれども、子供たちが本当に見ておるのは、むしろ大人の人たち、身内の人たちの生きざまだ、後ろ姿だ、これを実は申し上げたかったわけです。  私の知っている方も、息子さんがことしの一月十五日に結婚式を挙げました。このお母さんも、主人がいなくてこれと似たような中でがんばった人です。一体どうなるのだろうかと思って見ておりましたら、私どものところから離れて、千葉の方へ住んで十八年の歳月が流れた中で、結婚式へ行ってみましたら、子供さんが本当にりっぱに成長しているわけですね。話を聞いてみますと、やはり言葉は何も言わなかったけれども、お母さんの生きざまを見てきた、こういうことですばらしい成長をされているわけでした。  これを考えまして、反面、ではいまわれわれを含めての反省、きょうは特に教育現場ということだけを問題にしているわけですけれども、その中で、教師というものは生きた教科書である、むしろ私はこういうふうに考えるべきであろうと思うのですが、残念ながら、現在のわれわれ政治を取り巻く状況も、田中前総理の政治倫理の問題、これは間もなく決議案が取り上げられることになるようでありますけれども、こういう問題等を含めて、一連の政治の中では変な空気が流れておる。さらには、悪を取り締まるはずの警察の関係で、悪い者と手を組んで変なことをやって、大量に逮捕者が出たりというようなことが行われている。さらには、教える教員の中で、残念ながら、私の出身地の九州の方でありますけれども、教材を入れるについて汚職、収賄、いわゆるお金をもらったり、また教頭、校長になるためにお金、まいないを使ったりというような事件が起こっておる。これはまさに、少年非行というものも、大きく詰めていきましたら、現場におけることもさることながら、家庭におけることもさることながら、こういった状況がむしろ青少年の非行化または校内暴力につながっておる、こういうふうに思うわけでございますけれども、こういった点について、官房長官、文部大臣それから警察庁の方で、ひとつ一言ずつお答えをいただきたい。
  93. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私もその書物は読んでおります。  御指摘のように、まさに教育をめぐる問題は根が深いということでございますから、そういったことを腹に置きながら真剣に取り組んでいかなければならぬと、決意を新たにしているような次第でございます。
  94. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いま鍛冶さんからお示しになりました文章は私はまだ見ておりませんが、いまお読みいただいたことを聞いて感激をしているわけでございます。あるいは鍛冶さんごらんになったかどうかわかりませんが、先月放映されたと思いますけれども、第四チャンネル、日本テレビで北海道の雪の中の物語でありますが、「母ちゃんの黄色いトラック」という約二時間もののテレビ映画が放映されました。これは豆とは違いますけれども、お父さんが病気で、子供が三人あって、学校に行きたいがとうてい行けない、大学に行きたいが行けない。お母さんがそれこそ命がけで毎日トラックを運転してやっているその姿、そうして学校に行けないということを聞いて、娘も非常に憤慨しておるところですけれども、お母さんがひそかに泣いておるその姿を見て、子供が反省をして、すばらしい人間になるというような筋書きの物語でございます。  私はおっしゃるとおりだと思うのです。私は教育者じゃありませんけれども、教育は言葉とか文章じゃないと思います。やはり全身でおのずから教えていく。それは、さっき動物の教育のことを申しましたが、一般動物、鳥とか猫とかの教育の仕方は私はそうだと思います。  そこで、こういうことを申し上げると、また人間が古いからそういうことを言うのだというお話が出るかもしれませんけれども、やはりその精神は、学校の先生方の姿もそうでありたい。御承知のとおり、昔われわれ教わったのは「三尺下がって師の影を踏まず」、師の影を踏まずというそのくらい先生というものが神々しくといいましょうか、教えといいましょうか、そういう師弟の関係といいましょうか、そこに教育はあるのだというような感じがいたします。いまは時代が違うということになるのかもしれませんけれども、いまのお話はまさにそうだ。いろいろお話がありました。大人の世界も、これは人間の世界でありますから、理想どおりになかなかいきませんけれども、もう少し子供に示すところがあるのではないか、かように考えております。
  95. 山本幸雄

    山本国務大臣 少年非行問題というのは、いまお話しのように大変根が深く、また関係する方面は非常に広い、こう思います。警察の窓から見た場合、やはり家庭教育の問題あるいは学校教育の問題。たとえば、いまなぜ公立学校にそういう校内暴力が多いのかというような問題など学校教育の問題、また地域社会の浄化という問題もあると思います。いま仰せられたように、警察といたしましても先般来大変遺憾な事件を起こしたわけでございますが、規律を生命とする警察といたしましても、国民の信頼を回復するように、今後一層努力をしていかなければならない、こう思っておる次第でございます。
  96. 鍛冶清

    鍛冶委員 ここで、生きざまということで、やはり学校現場における校長を初めとする教員の姿というものが、私は大変重大ではないかと思います。その点についてちょっと触れてみたいと思うのでありますけれども、先ほど初中局長のお答えの中でも、学校内がまとまらない原因に先生の間の調和の問題があるというような表現をなさっておりました。いろいろとこういう調査があったり提言があったりしている中で、学校の現場が本当にまとまったときに、現実に非行問題が急速に平静化いたしますし、さらには、いい方向に愛情を持った形で進んでいったという例が幾つもあるわけで、これは絶対しなければいかぬと思うのです。  ところが、私も現場に行ったり、知っている人たちないしは同級生の人たちに学校の先生をしている人がずいぶんいるわけですが、そういう現場に行っていろいろなところで聞いたり、また同級生なんかに聞いてみたりするときにいろいろ出てくるのは、学校の中において、校長のリーダーシップというものはまさにそのとおりでありますが、その校長と、それから同時に教員の中でも、組合に入っておられる方とそうでない非組合員の方、こういう先生方の確執が非常に続いておって、これを子供に、口ではいろいろなことを言いながら結局そういう生きざまといいますか、見せることが非行、校内暴力につながっている面が多いと思う、こういう言い方をする教師の方がずいぶんおられるわけです。特に、本当に純粋に子供のために教育に取り組んでおられる先生にそういう御意見を持っておられる方が大変多いのですね。  そういう私自身が現場で見聞きしてきた中でも、教員室がもう組合員の先生方とそうでない方と真っ二つに割れて、それこそ机の並べ方まで通路を隔てて並べて、それでいがみ合いながら、それが一年以上も続いた。いまはなくなっているようでありますが、そういう話も現実に聞きました。また、中学の子供たちといろいろ話し合いをしたときに、どうも学校の先生が授業中にほかの先生の悪口を言うというのですね。こういうような話も聞きました。  これは私は本当に悲しい思いで聞いていたわけでありますけれども、やはりこれからの日本考えますときに、さらには本当にこれからの教育というものを考えますときに、こういう形というもの、組合の皆さん方、それから文部省関係の皆さん方を含めて、親の方もありましょうが、戦後の教育の中で大きなプラス面があったということは事実だと思います。しかし、これからの日本考えると、こういう形で来たものの悪い面がいま一挙に噴き出してきて、どうにもならぬところまで来ている。これは、そういう教育現場におけるあり方をもう変えるべきときが来ているということを、子供が姿をもって教えているんではないかなという気も私はいたします。  そういう意味で、この問題、これは直接組合の方々、ここにはいらっしゃいませんからあれですが、文部大臣、こういった点について、これは校長がリーダーシップを発揮して、それを乗り越えた強力な指導ができれば私はいいとは思うのですけれども、やはりいろいろ聞いてみると、まだ校長は敵であるという考え方を持っている先生方がずいぶんいるとかというふうなことを聞きますし、中には、先生方でも来年は大変暴力行為が噴き上がるぞというようなことがわかるそうでありまして、そうすると、もう異動申請、転任届を全校の全部の先生が出したというような例もあるわけですね。こういうような状況、いろいろな意味を含めて、学校現場というものはもっとちゃんとしていかなければならぬと思いますが、文部大臣にお答えをいただきたいと思います。
  97. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いま鍛冶さんからお話しのようなこと、私は漏れ承っております。また、その考え方についても、ほとんど鍛冶さんと同じような感じを持っていまお話を聞きました。  私は教育者としての経験はないのですが、やはり一番教育で大切なことは、先生と子供の信頼と尊敬の関係がなければ本当じゃないんじゃないか。それが欠けておる。それで学校の先生方の中でも、何かいまお話しのような状態、非常にかわいそうといいましょうか、残念な状態があるわけであります。しかし、さればと言って、これはもう学校の先生方の自覚といいましょうか、教師としての自覚を持ってもらわなければならぬわけでございますが、文部省として今後検討しなければならぬということを私は言っておりますのは、教師の資格、採用についてもっと再検討する必要がある。それから、教員になりましてからの研修といいましょうか、それももう少し徹底する必要があるということを言っておるわけでございますけれども、これも短兵急に一挙にはまいりませんが、いまお話しのようなことを今後心がけて努力をしてみたい、かように考えております。
  98. 鍛冶清

    鍛冶委員 学校現場を、さらに進んで組合の皆さん方とそれから文部省関係も、これは文部大臣がその代表になるわけですが、いままでのようなあり方はもう変えていただきたいと私は思います。  これは私が個人で体験したことであえて申し上げてみたいと思うのですが、昨年私は、教員組合の大会に招かれて、ごあいさつに参りました。いろいろないきさつで、ほかの党の方々はメッセージにかえるというようなこともあって、私のところには組合の方々から大変丁重に電話やいろいろな形で、もうぜひ出席を願いたいというようなお話でございまして、私も党代表という形で同わしていただいたわけです。そのときに私が非常に痛感したことが一つございます。  いろいろな来賓の方のお話がございました。そういう中で、私がいよいよごあいさつをするときに、公明党の鍛冶ということを紹介された途端に、もう場内からはやじと悪口みたいのが猛烈に起こってまいりまして、話をしても声が聞こえないというような状態です。私も人間ですから、むらむらっとしたのですけれども、同時に、それ以上に実は大変深い悲しみに襲われたわけでございまして、私は、ごあいさつをして褒めてもらおうとか拍手してもらおうとは思いませんけれども、少なくともごあいさつに行ったのは味方であります。そういう中でごあいさつをするのに、残念ながらそういう形で、話をするのも大変できがたいような雰囲気であったということについて、最後になりまして、たった一人だったような記憶がしますが、がんばれというような言葉が聞こえましたので、私もああよかったなというような感じで帰ってはまいりましたけれども、こういう教員自体のモラルといいますか、やはり来てくださいというようなことで、お伺いしますということで行ったわけですから、褒めていただかなくても、少なくとも礼儀正しくお話を聞いていただき、送っていただけば私はそれで大変満足であったし、よかったのが、そういう状況の中で、本当にもう何とも言えない悲しい感じで実は帰ってまいりました。  こういう形でもしも学校現場で教員の先生方がいろいろやっていらっしゃるとすれば、この生きざま、先ほど私はあえて本を読ましていただいたわけですが、こういう形のものがやはり子供に大きく影響をしているんじゃないのかな。さらには、これからの日本の将来を考えますと、科学技術というものが発達してまいりますと、バイオテクノロジーの分野、マクロエンジニアリングの分野、こういう部面では善悪の区別がつかないような子供が育っては困るわけです。たとえば、警察の方からもちょっときょう御答弁いただいた中にありましたけれども、町田の事件にしろ横浜の関係にしろ、また校内暴力を行う、先生に乱暴をふるった生徒というものはほとんどが罪の意識がない、これをやって悪かったということをわからないんだということを言っているわけです。これはだれに、どこに責任があるか、私は先生だけにあると思っているわけじゃありませんが、きょうはそこのところで一番大切な――日本の教員の方々は世界の中で一番たくさんなものを抱え込んで苦労をなすっていらっしゃいますから、そういう意味であえてこういうことを申し上げるのは私自身も気が重い感じではありますけれども、子供のことを考え日本の将来を考えますと、そういう子供がどんどんこれからもふえてきたときに、ちょっと金を持っていて科学者を買収すれば遺伝子工学的なものを悪用できる、そして善悪の区別のつかないというようなことが出てきたときに一体どうなるのか、こういうことを考えますと、私は、いままでの教育の歴史は、いろいろ取りざたされておりまして、それは大変いい面はいい面であったと思いますけれども、その悪い面がいままた大変出てきて、これが重大問題になっておる。  したがって、さっき申し上げましたように、これからの教育のあり方は、私は前から申し上げておるのですが、教育についてはイデオロギーを抜きにして、本当にこれは文部省も含めて、これは文部省も大変けしからぬところがいっぱいあるわけで、最初から申し上げたわけですが、そういったことを含めて、本当に対話をする、話し合いをして、力を合わしてこれからの日本を背負う子供たちを育てていくという空気をこれからの教育の世界では絶対につくらないと、日本というものは支えていけないんじゃないか、子供はよくならないんじゃないか、そのことを実は痛感をいたしておるわけです。  そして、いろいろ申し上げるわけですが、これで文部大臣にもお尋ねをしたいのですが、大臣は就任されてから、組合の関係の皆さんとは会ってもいいけれども、こんなことなら会わぬぞとかいうようなことをおっしゃいますが、そんなみみっちいことを言うんじゃなくて、何度でもひとつ組合にも呼びかけていただいて本当に話し合うということ、いわゆる対話ですね。これは広中平祐さんがおっしゃっておられますが、これからは対話が必要だ、対話というのは本当に相手のことを理解し、こちらのことも理解してもらう、そして話し合う中でより高い次元で合意をしてそれを実行していくというのが対話だ、こういうふうに言っておられるわけでありますが、私は、そういう姿がこれから教育の世界に出てこないと、また大きくは文部省対組合の皆さん、さらには教育の現場においては、校長先生と組合員の方、非組合員の方を含めて、そういう中でその意識を持っていく。それを、われわれも当然責任がありますから守り立てていくし、父兄の方々にもお考えいただく、こういう流れが出てこないと教育はよくならない、こういうふうに思いますが、文部大臣に組合関係の方々とも真剣な対話をやっていただきたい、その突破口を開いていただきたい、こういうように思いますが、以上のことについて、感想を含めて御決意を伺いたいと思います。
  99. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いま鍛冶さんが体験された話を聞きまして、すさまじいことだという感じがいたしました。私は、いわゆる組合と申しましょうか、会うことを何も避けておるわけではありません。ただ、私はよう知りませんけれども、組合の幹部とか代表者という方々がいろいろなところでいろいろなことを言っていらっしゃいますが、ああいうことで話して一体うまくいくんだろうかという感じを持っておりますから、ちょっと控えておるわけでございますが、(「大臣も同じだ。あっちこっちで勝手なことを言っているから」と呼ぶ者あり)私はこれを避けておるわけじゃないということを申し上げておきます。
  100. 鍛冶清

    鍛冶委員 時間が参りましたので、まだいろいろ御質問申し上げたいこともございましたけれども、また学制改革についても御質問申し上げたいと思いましたがやめまして、またの機会にやらしていただくことにいたしますが、どうかひとつ、まず文部大臣から、いままでの殻を破って、本当に対話の姿勢を貫きながら子供のための教育というものに取り組んでいただきたいし、また財政的にも、大蔵大臣初め官房長官、総理にもお伝え願いたいと思いますが、そういう意味での教育に対する本当に真剣な取り組みとバックアップをぜひやっていただきたい、このことを御要望申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。
  101. 久野忠治

    久野委員長 これにて鍛冶君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  102. 久野忠治

    久野委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  昭和五十八年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣総理府(ただし経済企画庁環境庁及び国土庁を除く)並びに他の分科会所管以外の事項  第二分科会は、法務省外務省大蔵省所管  第三分科会は、文部省自治省所管  第四分科会は、厚生省労働省所管  第五分科会は、総理府環境庁)、農林水産省所管  第六分科会は、総理府経済企画庁)、通商業省所管  第七分科会は、運輸省郵政省所管  第八分科会は、総理府国土庁)、建設省所管 以上のとおりにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、分科会分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ────◇─────     午後一時四十五分開議
  106. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三浦隆君。
  107. 三浦隆

    三浦(隆)委員 本日は、田中元首相に対する辞職勧告決議案に関連する問題、レフチェンコ証言について、朝鮮人樺太抑留者の帰還問題について、台湾元日本兵士に対する補償問題について、なお時間があれば箕面訴訟の判決について、さらに国会決議の効力について質問させていただきます。  そこで、外務大臣が大変お急ぎであるということでございますので、大臣の方にとりあえず二、三お尋ねをしたいと思います。  例のレフチェンコ証言に関連してでありますけれども、このレフチェンコ証言が公にされましてからの大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連日本におきましていろいろな工作を行っておるということは、これまでうわさとしては聞いておるわけでございますが、今回の証言は、実際に東京で四年半にわたりましてこの工作に関与したとされる人物の証言であります。それなりの受けとめ方をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございますが、私どもとしては、こうした工作を許したというふうな点等も踏まえまして、今後ともいろいろな面でこうした工作等に対してどういうふうに対応していくべきか、国民の意識とともに、政府としてもいろいろな角度から、全貌が明らかになればこういう問題について検討もして、これに対する対応策というものも場合によっては考えていかなければならぬ、こういうふうに考えているわけでございます。
  109. 三浦隆

    三浦(隆)委員 続いて、さきのラストボロフ中佐の米国亡命のときには、事前に何か打ち合わせというか、通告があったように承っておりますが、それが今回はなかったというふうに聞いております。この点について大臣の御意見をお尋ねします。
  110. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 お答えいたします。  ラストボロフ事件、これは昭和二十九年の事件でございますが、当時は、ラストボロフが亡命しました直後に、亡命が一月二十四日ですが、二月五日に、当時外務省の職員であった関係者の一人が警視庁に自首いたしまして、ラストボロフに対して情報提供していたという供述があったわけでございます。そのことに端を発して、在日ソ連情報機関の違法行為、違法な機密探知活動が明らかになりまして、これを発端といたしまして警視庁の係官がアメリカに出張いたしました。これは同年七月でございますが、そうして捜査を進めました結果、八月十四日に警視庁で関係者を逮捕いたしますとともに、日米当局が同時にその事件の全容を発表したというのがラストボロフ事件の経緯でございます。  これに対しまして今回は、アメリカの下院情報特別委員会の秘密会でレフチェンコ証言が行われたわけでございますが、それが昨年十二月二日にリークされまして新聞に報道されたことから、十二月九日に下院の情報特別委員会においてその証言を公表したことに端を発したということで、事件の性質、経緯において大いに異なるところがあると考えております。
  111. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次に、朝鮮人の樺太抑留者の帰還問題に関連いたしまして、問題が現在行き詰まっているようでございますが、外務省としては何か打つ手をお持ちでしょうか。
  112. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先生御案内のとおりに、日本が戦に負けましてサンフランシスコ講和条約ができましたときに、朝鮮半島に対するすべての権利権限を日本が放棄した、その結果朝鮮が分離することになるわけでございますが、その結果、樺太に残留しておりました朝鮮出身の方々の中で、本国に、つまり朝鮮半島に帰りたい、それからもう一つの方は、日本に親族縁者がおりますので来られたいということで、鋭意政府はいろんな努力をやってまいりましたが、先生御指摘のとおりに、これは現在ソ連領である、ソ連政府と交渉するということが大筋でございまして、何度も粘り強く交渉したのでございますが、残念ながら、ソ連政府は現在までのところ、この問題については日本政府と話しない、この問題は北朝鮮とソ連との間の問題である、こういうことで行き詰まっているというのが現状でございます。  ただ、そのうち四百十一名の方々につきましては、日本に入国される御希望があればいつでも受け入れますという入国許可証を発送しておりまして、そのうち三名の方はすでに日本に帰り、そのうちの一名も朝鮮半島に帰ったわけでございます。  ただ、この問題は、先生御指摘のとおり行き詰まっておりますので、さらに外交上の努力を続ける一環といたしまして、二国間の外交交渉のほかに、現在国際赤十字に、何とか人道問題としてよろしくお願いしたいということで、お願いしているというのが現状でございます。
  113. 三浦隆

    三浦(隆)委員 この問題と同じように、日本の戦争責任を問われていると私には思えるのですが、同じような問題が台湾元日本兵士に対する補償問題についてあります。  それで、今度はやはり外務大臣の方から御意見を伺いたいのですが、さきの朝鮮人樺太抑留者の帰還問題に関してであれ、あるいは台湾元日本兵士に対する補償問題についてであれ、大臣の御所見を承りたいと思います。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 さきの大戦で戦死をされました台湾人元日本兵の遺族及び戦傷をした台湾人元日本兵に対しまして救済のための措置をとることについては、日本と台湾の間の全般的な請求権問題が未解決であること、台湾以外の分離地域等との公平及びさらに波及の問題、さらにまたわが国の厳しい財政情勢というふうなこともあるわけでございます。  私も、日本のために命を捨てて戦ってこられたそうした元日本兵の方の遺族に対しましては、日本人としても大変御同情にたえない、こういうふうに思っておるわけでございますが、現在の時点におきましては、救済のための措置をとるということが、そうした請求権問題未解決であるとかその他の地域への波及というようなこともあって、なかなか制度的にも実質的にも困難であるわけでございますが、これに対しては国会の中でもいろいろと議論もあるわけでございまして、今後ともこうした問題に対しては慎重に検討をする必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  115. 三浦隆

    三浦(隆)委員 外務大臣お急ぎのようですから、これで結構でございます。  それでは、本題に入らせていただきまして、田中元首相に対する議員辞職勧告決議案に関連しましてお尋ねしたいと思います。  田中元首相に対する議員辞職の勧告決議案、全野党共同提出のものでありますが、この提案理由の説明がいよいよあしたより行われる見通しとなりました。そこで、自民党は議論を通じて、新聞の伝えるところですと、決議案の問題点を指摘し、議院運営委員会の採決あるいは本会議上程はあくまで阻む考えを崩していないというふうに伝えております。といいますことは、ロッキード事件にかかわる田中元首相に対する論告求刑の評価あるいは収賄罪等についての認識が、与野党間で大きく隔たりがあるからだと思います。  そこで、この決議案に関連して質問いたします。  初めに、田中元首相に対し行われたこの懲役五年、追徴金五億円という論告求刑は、戦後の贈収賄に問われた国会議員に対する求刑としては最高のものですが、この求刑に対して政府はどのようにお考えでしょうか。
  116. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今回の検察側の論告は、やはりそれなりに受けとめなければならぬ、こう思っておるわけでございます。  ただ、今日の裁判制度は、昔と違いまして、当事者主義のたてまえでございます。起訴した側の検察の論告ということでございますし、同時にまた、この事件はまだ裁判係属中の問題でございます。したがって、政府としてこれに対してとかくのコメントをするという立場にはない、こう考えております。
  117. 三浦隆

    三浦(隆)委員 田中元首相は、昭和二十三年にも炭鉱国管汚職事件において収賄罪で一年六カ月の求刑を受けたことがあり、国会議員として二度目の恥ずべき収賄事件を起こしたわけであります。同じ容疑で二度も有罪の論告求刑を受けたということは、これは大変大きな意味があると思うのです。そして、二度あることは三度あるとも言いますし、このようなことの繰り返しは、ひとり田中元首相に対してだけではなくて、衆議院の名誉と権威を著しく傷つけ、国民の政治不信を増大させることで、まことに遺憾なことだと思うのです。  そういう意味では、この辞職勧告決議案というものは決してうやむやにしてはいけないし、そういうことが国民世論に背を向けることになると思うので、側面から政府は積極的にそういうふうなものが通るように、そういった御意見というのはありますか。
  118. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 国会決議の問題は、これは国会マターでございまして、政府立場でとかくのことを申し上げることはできない、こう考えておるわけでございます。  二度あることは三度ある、それはあるかないかわかりません。そういうことは御本人自身の問題でございまして、これまた政府がとかく言う筋合いのものではない。
  119. 三浦隆

    三浦(隆)委員 国会議員といい、あるいは政府の役員といい、いずれにしろ議院内閣制下の総理大臣ですから、国会議員であることにおいて変わりはないのだというふうに思います。特にわが国の国会制度はそうしたものだろうと理解いたしております。  さて、中曽根首相が本年一月二十二日の自民党大会での総裁演説では、政治倫理に一言も触れてない。ということは、自民党には、例の三越が元社長をやめさせたような自浄作用を自民党内には持ち合わすことがなかったのだろうというふうに思います。そしてさらに、田中元首相は無自覚、無反省、無責任なままに開き直っているわけでして、そうしたことでの政治倫理のあり方というものについて、政府の御見解をお尋ねします。
  120. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 政治倫理が重要であるということは、これはあなたと私と認識において変わりはございません。しかしながら、自由民主党の中に政治倫理についての自浄作用がないとおっしゃられると、これまた自由民主党としては大いに異論があるところだと思いますよ。しかし、これまた私は官房長官という立場でこざいますから、党の中のことについてとかくのことを申し上げる立場にはございません。
  121. 三浦隆

    三浦(隆)委員 当初田中元首相は、このロッキード事件で問題になりましたときに、初めには、「国民の皆さまに多大なご迷惑をかけたことに心から恐縮しております」あるいは「公人たる者、疑いを受けただけでも何をなすべきか、その方途についても十分に考えました。」というふうな、むしろ大変謙虚なというふうな感じを私は受けたわけであります。  また続いてその後でありますが、「起訴事実の有無にかかわらず、いやしくも総理大臣在職中の汚職の容疑で逮捕、拘禁せられ、しかも起訴に至ったということは、それだけで総理大臣の栄誉を汚し、日本国の名誉を損なったこととなり、万死に値するものと考えました」、ここまでは本当にそのとおりだろうと思うのです。  ところが、だんだん時間がたつに従いまして変わってまいりまして、議員のところの応援演説などを見ますというと、たとえば「こんなに聴衆がいれば、「ロッキード」とヤジる人が必ずおるのですよ。いないじゃありませんか」というふうな開き直りの姿勢が次第に出てきます。そしてまた、私は「いずこにあっても自民党所属議員以外の何ものでもない」と、党籍を離脱した後にもそう述べておりますし、また、やめるかやめないかという意見に対しては、「これからもまたやる。やめる気はない。」というふうに述べております。そしてまた、「田中がやめればいい、で日本の政治ができますかっ。」というふうな、まことに開き直ったような発言が相次いで新聞では報じられてきたわけであります。  さて、そんなことでいま田中さんに対する国民の世論というものが大変厳しくなってきているのだと思うのですが、ここで私たちは、お互いに忙しいせいもあって、なかなか地元でのいろいろな意見あるいは特に若い人たちの意見というのを聞く機会がございません。そんなことで、お互い忙しいのですが、最近若い人たちにはやっておりますのに「三年目の浮気」というのがあるのですが、そうした歌の中に、「三年目の浮気くらい大目に見てよ」というふうに言います。ところが、これに対して、そっくりとこれを「五億円の汚職」と置きかえたらどうなるだろうかというのであります。これは男性と女性とかけ合って歌うようなせりふになっているのですが、たとえば五億円の汚職を大目に見てよ、そうした開き直った態度が許せないと相手は答えます。再度、五億円の汚職くらいは大目に見てよと言ったときに、両手をついても許してあげないというふうに片方は答える歌になります。まさに私は、こうしたことがいまの庶民感情じゃなかろうか、また同時に、まじめに働く人たちの、国民の多くの気持ちではないんだろうかというふうに思います。  これに対して、いまの田中さんのがんばっている姿勢というのは、まさに「石が浮かんで木の葉が沈む」というか、あるいは「憎まれっ子世にはばかる」というか、あるいは「無理が通れば道理が引っ込む」というのか、そんなことわざのようにきわめて異常に思えるのです。そして、幾らわれわれが何と言ってもどうにもならないという意味では、「豆腐にかすがい」「ぬかにくぎ」といったような感じすら受けて、国民は政治浄化というものに対するきわめてもどかしさを感じているんだと思います。  そういう意味では、速やかに政治倫理の確立のためにも倫理委員会を設置するなり議院証言法の改正を行うようにしまして、金権腐敗政治の根絶を図るべきものと思うのですが、この点についていかがでしょうか。
  122. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 田中さんの御発言を官房長官に聞かれましても、これはちょっとお答えは私はしにくいと思います。  あとまた、政治倫理、証言法ですか、いろいろな実例をいま挙げましたが、これはまた国会でいまいろいろ御議論をなさっていらっしゃるわけですから、官房長官としてはそれについてはお答えができない。ただ、政治倫理が重要であるということだけは、これはもう間違いのない事実である、こう思います。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  123. 三浦隆

    三浦(隆)委員 少なくとも閣議の中でも、改めてこの事の重大性ということから、このことだけで閣議の決定というのはできないものでしょうか。
  124. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 そういうことが閣議の決定になじむかなじまないか。私は、日本内閣制度としてはちょっとなじまないのではないかな、こう思いますが、御意見としては承っておきます。
  125. 三浦隆

    三浦(隆)委員 それでは、最近田中元首相に対する批判が大変厳しくなりまして、内閣の支持率もこのところ急落している状況にあると思います。たとえば不支持の方が四五・二%、支持の方が三四・五%となっておりますが、この不支持の大きな理由が、首相を信頼できない、あるいは汚職追及に真剣でないというふうなことが示されております。  また同時に、田中さん自身に対する批判も大変厳しくなっておりまして、田中さんの影響力が一般に強まったのはどうしてだろうかといったことに対して、金の力が大きいとか、田中さんというとお金の力、金権の力というふうな答えが大きいし、また、田中さんが日本人のモラルにどんな影響を与えたかというと、政治不信をきわめたというのが、これまた大変に大きな比率で出てきています。また、田中さんがもし一審で有罪の判決を受けたらどうしたらよいかという問いに対しては、辞職すべきだと思うというのが、八五%という大変大きな比率を示しております。そしてまた、将来田中さんが総理大臣に返り咲くことがよいかどうかという意見に対しては、圧倒的にこれまた復権させるべきではないというふうに言っております。  こうしたことが、一般の世論調査のほかにも、学生自体を、たとえば若い連中を対象としました全国二十二大学の学生新聞の連合会が調査しました学生意識調査というのがありますが、これはもう大人の人よりも大変厳しい言葉が連なっておりまして、中曽根さんの内閣の支持率がわずか一三・六%、支持しないが圧倒的に多くて四六・九%というふうになってきているわけです。すなわち、こうした若者の評価というのが、中曽根さんの支持率急落に対して田中さんとの深いかかわり合いということで出てくることは、疑いを持っていないというふうに思います。  そういう意味で、先ほど来の政治倫理確立に向けての政治姿勢なんでありますけれども、政府としても、もちろん国会としてもでありますが、政府自体としてももっとしっかりとした姿勢をおとりいただきたいというふうに思います。  それからもう一つ政府として、首相の施政方針演説の中で、各党各議員協力を得て「清潔な政治を目指し、政治倫理の確立に努める」とあります。「清潔な政治を目指し、政治倫理の確立に努める」、言葉は本当にりっぱな言葉なんでありますけれども、各党各議員協力を得てということですと、先ほど来言っております辞職勧告決議案というものが速やかに可決されることこそが首相も望むことなんじゃないかというふうに思うわけでして、この点、首相の意を酌んで、首相を助ける立場にある人の意見として首相にそうしたことを進言されるようなお気持ちをお持ちじゃないでしょうか。
  126. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 内閣としては、各新聞社等で世論調査をなさっていらっしゃるその結果は謙虚に受けとめなければならぬ、私はこう考えているわけでございますが、田中さんの問題については、御本人は無罪を主張し続けていらっしゃる、しかも、それが現在裁判進行中であるということでございますので、やはり裁判の結果を冷静に見守っていくべきものではないのかということが一点。  もう一つは、総理の施政演説に絡んでのお話でございますが、まきに倫理の重要性、これを訴えているわけでございます。その際に一番肝心なことは、現在の政治の現状から見て、それぞれの各党はもちろんのこと、何よりも政治家自身が脚下照顧、足元をみんなが反省をして国民の信頼を得るような政治のあり方にする、ならば、それがためには一体何がこういうような現状に立ち至らしめておるのかといったような根源にメスを入れて、そして与党だ野党だという立場はありませんよ、お互いに議会人としてそういう点についてメスを入れて、協力しながら解決の方途を探る、特定の人だけが悪人である、それ以外はすべて善人であるといったような物の考え方でこういう問題は解決しない、もう少し全体が真剣に取り組もうじゃありませんか、こういうふうに私は考えております。
  127. 三浦隆

    三浦(隆)委員 確かにこの問題は、一個人の責とは言い切れませんけれども、しかし、少なくとも首相の地位にあった人の事件として大きな重大な意味を持っていると思うのです。と同時に、同じような事件を起こした場合、外国の事例というのが大きな参考になろうかと私は思うのであります。この点で、政治倫理の確立に向けましてアメリカのことをやはり思い出してみる必要があろうかと思います。  アメリカでは、例のウォーターゲート事件が一九七二年に起こって、一九七四年にはニクソン大統領が辞任しているわけです。御承知のウォーターゲート事件は、ニクソン大統領再選を策するグループが、民主党の党本部に侵入し、盗聴装置を仕掛けようとして未遂に終わった事件であります。そして、この事件の終わりました後に、アメリカではウォーターゲート改革法というのが一九七六年にできておりまして、ここでは、政府高官の違法行為というものを特別告発する権限を持つようないわゆる特別検察官というのを政府から半ば独立した形でつくろうじゃないかというふうな趣旨のことです。そしてまた同時に、一九七八年には政府倫理法というのが成立しておりまして、公務員の倫理強化の方向に進んできているということであります。  こうしたいわゆるアメリカの政治倫理の問題に関しての厳しい対応というのを見ましたときに、この点はやはり日本も大きく参考にしなければならぬのじゃないかというふうに思います。  こういうこともやはり政府の首脳としてひとつお考えいただいて、同時に、この政治倫理確立についてなぜそう厳しく出てくるかとすれば、これは、アメリカにおいては収賄罪というものに対する認識が日本より大変厳しいからだろうというふうに思います。例のニクソンも最後までがんばりたかったんでしょうけれども、がんばり得ない状況ができたから、やむを得ずむしろやめてしまったと考えるのがあるいは自然かもしれません。とするならば、なぜニクソンがやめるに至ったかと言えば、これはアメリカ合衆国憲法の一条二項五号あるいは一条三項六号あるいは二条四項に示しますような、下院がいわゆる大統領の弾劾権を有し、そして上院が審理権を専有して、そしてまた、そこで有罪となったら、大統領は、たとえば収賄罪などで有罪の判決を受けたらその職を免ぜられるというふうに書かれているからでして、この点が、ニクソンは居座りを策したんだけれども、アメリカの下院の中でいわゆる訴追に付されそうだということになって、また同時に、自分の足元から、同じ党からやめた方がいいというふうに言われてやめてきたわけであります。  そんなことを考えますと、私たちの日本においても、こういう点でのアメリカのあり方というのはやはりしっかりと、同じ民主主義の先輩の国として、あるべき姿勢として受けとめるべきだろうというふうに考えるわけであります。  特に、アメリカの場合には三権分立という考え方が日本以上に徹底しておりまして、行政府の長である大統領の権限というのはきわめて強大です。しかし、にもかかわらず収賄罪のような場合には立法府の優越というものを認めているわけであります。いわゆる行政府よりも立法府の優越を認めます。とするならば、日本は議院内閣制でして、国会は憲法上国権の最高機関として位置づけられておりますし、特に田中首相の場合は、国の行政を担う内閣の首長たる内閣総大臣の要職にあった、そうした時期にあった行為が収賄罪として問われてきたものであります。同時に、長い年月をかけて裁かれて、こうした懲役五年、追徴金五億円というふうな求刑が下されておりますし、そして恐らく秋と予想されます判決においても、執行猶予なしの実刑判決が下るものだと考え、予想されているわけであります。  そういうことで再度、首相を補佐しておるというか首相を支えております官房長官なりあるいは多くの閣僚の皆さんが主唱して政治倫理に向けて強い姿勢をとりますように、国民の一人としても議員としても強く願いたいと思うのです。  これについて、改めてひとつ官房長官の御意見を伺いたいと思います。
  128. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私はアメリカの制度は詳しくはございませんけれども、アメリカはアメリカなりに、長い政治の土壌の中でああいったいろいろな議員の倫理の問題についての制度ができておるんだろうと思います。したがって、日本でもこういうものを何とか制度的にということになれば、やはりそういう外国の制度というものもこれはもちろん参考にしなければなるまい、かように私は考えておるわけでございます。  同時にまた、ウォーターゲート事件というのは、私は余り詳しく知りません。しかし、これもまたアメリカという政治の土壌の中で、大統領というものの地位がいかにあるべきかということでああいう結末で終わっておるのではなかろうか、かように思います。
  129. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次に、レフチェンコ事件についてお尋ねをしたいと思います。  昨年の十二月十日のNHKニュースというのが日本の各方面に大変大きな衝撃を与えました。同ニュースは、十二月九日米下院情報特別委員会が、七月十四日同委員会秘密聴聞会で行ったスタニスラフ・レフチェンコ元KGB少佐の日本での秘密活動の証言を公表したからであります。そこで言われておりますソ連の対日工作の指令系統ま、トップのソ連共産党政治局書記長のアンドロポフ、その下に国際部長のポノマリョフ、日本課長のコワレンコがおり、KGB議長を経由して、対外工作担当の第一総局、さらに日本担当の第七局へ、そして大使館内にある在日KGBに、そして、その一つである政治宣伝班に波は所属していたようでございます。そして東京では、KGB東京支局の活動班に属して、政界、学界、マスコミ界に対する情報収集工作、宣伝工作、にせ情報工作に当たっていたと言われます。  そこで、特にこの問題で大変重大な意味を持ちますのは、この中に、彼が日本におけるソ連エージェントとして大変多くの人と接したということの中で、いろいろな人の問題が、個人名ではございませんけれども、いろいろなことが取りざたされているわけであります。これは個人名ではないけれども、類推可能なような言い回しをされた人たちにとっては大変に名誉を棄損されるというか、大変重大な内容を持っているというふうに思うのですが、このレフチェンコ証言そのものについて、ひとつ関係各省の大臣の方に御意見を承りたいと思います。――官房長官に御意見を伺います。
  130. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 これはしばしばこの委員会でもお答えをしておるのですが、やはり四年有余にわたってのKGB職員であったレフチェンコのアメリカ下院における宣誓した上での証言でしょうから、われわれとしてはそれなりに、あなたがおっしゃるように重要に受けとめております。外交ルートを通じていまアメリカ政府に照会しているように私も承っておるのですが、そういった結果を見ながら、その結果いかんによって政府としても対応を検討しよう、こう考えております。
  131. 三浦隆

    三浦(隆)委員 防衛庁長官並びに国家公安委員長に御意見を承りたいと思います。
  132. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 レフチェンコ証言につきましては防衛庁といたしましても関心を有し、事態の推移を見守っているところでありますが、これまで入手した証言録あるいはこれに関する新聞報道等による限り、防衛庁関係者がレフチェンコの働きかけを受けたりあるいは防衛上の秘密を漏らすといった事態は認められておりません。しかし、遺憾ながらこのような事件は国の安全に深くかかわるものでありまして、防衛庁としては、今後とも秘密保全等に遺漏なきを期してまいろう、こう考えておる次第でございます。
  133. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今後の治安対策のあり方についてお尋ねします。  中曽根首相が大変突出したとも言われるくらいの国防論を展開されておりましても、日本国内から、それも日本の中枢から情報が海外へ流出して、しかも、そのルートがつかめない、それでは国防論というのは余り役に立たなくなってしまうのではないかと思います。アリの穴からも堤が崩れることもあると言いますけれども、日本の秘密が、それがどのようなものであるか判然とはしませんけれども、いずれにせよ、海外に流れることは大きな問題だと思います。公安委員長なり公安調査庁の御意見を承りたいと思います。
  134. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 お答えいたします。  レフチェンコなどソ連情報機関員が多数わが国内に所在しまして、いろいろ政治、経済、軍事、科学技術などの秘密情報、これを収集しておる、あるいはレフチェンコ証言にあらわれましたような各種の政治工作を行っておるということはわれわれ十分に承知しておりまして、いわゆるスパイ事件につきましては、過去にソ連関係で十一件検挙しております。著名なものを申し上げれば、コノノフ事件、昭和四十六年、ソ連の武官補佐官が米軍のミサイルレーダー装置の情報を収集したというケース、検挙しております。あるいは五十一年、マチェーヒン事件、ノーボスチの特派員がこれも米軍の情報を収集したというケース、あるいは五十五年のコズロフ事件、これは、コズロフ武官が自衛隊の軍事情報を収集したというケースについては、それぞれ厳正に検挙いたしております。  われわれ警察としましては、こうした秘密の情報収集については、実態解明に平生から努力を尽くしておるところでございまして、今後とも厳正な検挙を図って、国益を守ろうと考えております。  また、政治工作の関係でございますけれども、これ自体が法律に触れるということはございませんが、これに関連して違法行為が介在するということでありますれば、ただいまお答えしましたスパイ行為同様、違法行為は看過しないというのが警察の基本方針でございます。今後とも厳正な取り締まりを行ってまいりたいと考えております。
  135. 三浦隆

    三浦(隆)委員 先ほどもちょっとお尋ねしたのですが、ユーリー・ラストボロフ中佐の米国亡命時には、日本関係当局者と米国との間に事前に相談があったように承っておったわけですが、今回の場合には、政府関係のどこの機関も、たとえば警備局長の方も公安調査庁の方も外務省の方も、どこも知らなかったのでしょうか。
  136. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、ラストボロフ事件の際は、関係者の自首、これが発端でございまして、それに基づいて捜査官がアメリカに出張いたしまして所要の捜査を遂げた上、秘密を漏洩しました関係者を検挙したわけでございます。  そういう経緯でございまして、今回のレフチェンコ証言につきましては、先ほど申し上げましたとおり、われわれ警察といたしましては、レフチェンコが政治工作担当の情報機関員であるということは在日中から承知しておりました。波の行動についても承知するところがあったわけでございますが、下院の委員会における証言内容につきましては、リークされた後、アメリカにおいて公表されたということで承知いたしておるわけでございます。
  137. 三浦隆

    三浦(隆)委員 レフチェンコ証言というのが近々本になってあらわされるというふうにも聞いておるのですが、もう外務省あたりでもこのレフチェンコ証言について米国へ問い合わせているだろうと思うのですが、そのことについて外務省にお尋ねします。
  138. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 四年半にわたるレフチェンコの活動はそれなりに重大なことと受けとめておりまして、外務省といたしましても関連情報の入手に努めるという方針を固め、一月の下旬に、米国政府に対しまして、外交チャネルを通じて関連情報の提供方を要請しております。先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、いまもって米国からの回答はございません。恐らく米国側といたしましても、本件は非常に慎重に受けとめ、あらゆる角度から慎重な考慮を加えている、そのために回答がおくれているのではないか、かように考えております。
  139. 三浦隆

    三浦(隆)委員 実際には米国のレフチェンコ証言というものの事実ですね、どういうことを述べたかということはもうすでにわかっているんじゃないですか。外務省にお尋ねします。
  140. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 先ほど先生が御指摘になりました下院の情報秘密委員会における証言の公表文書は入手しております。それ以外の文書等は、私ども外務省としては全く入手しておりません。
  141. 三浦隆

    三浦(隆)委員 レフチェンコの証言だけを入手しているといいますと、レフチェンコの証言そのものが必ずしも正しいかどうかはまだわからないわけですが、少なくともレフチェンコ証言がこちらに入手できているとすれば、その限りで具体的にどのようなことがそこに書かれているかについてお尋ねさせていただきたいと思います。  まず、レフチェンコはいつごろ日本に来て、そして日本についてどのくらいの時期がたった後にいわゆるスパイ活動というものを始めたのでしょうか。
  142. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 レフチェンコが「新時代」誌の東京特派員として日本に入国いたしましたのは、昭和五十年の二月でございます。同人が亡命いたしましたのは、五十四年の十月でございます。したがって、四年八カ月にわたって本邦に滞在した。到着後の動静等を必ずしも十分把握しているわけではございませんが、もともとKGBの工作員ということで東京に派遣されておりますので、本邦到着直後から各種の工作を開始したものと推測いたしております。
  143. 三浦隆

    三浦(隆)委員 その各種の工作を始めますときに、どういうルートで、初めにどういう人と接触を保ったのでしょうか。
  144. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 公表されております証言によりますれば、着任俊二週間目に、自分の前任者が日本社会党の著名人物に自分を紹介してくれたということを言っております。また、同人は、本邦における活動ぶりにつきまして、幾多のジャーナリストと関係を持った、それから国会関係の方々の話も聞いたというようなことを言っております。
  145. 三浦隆

    三浦(隆)委員 いま具体的に特定政党名が出るというふうになりますと、いろいろな各種選挙もありますし、及ぼす影響は大変大きいと思います。また、その証言内容が真実であるかどうか。さらに、著書が発行されたりすると、またその本も真実かどうか関係者にとっては重大なことでありますから、やはりいつか何らかの方法をもって真実を確認する方法というのをお考えいただかないとまずいのではなかろうかというふうに思います。  さて、彼は何人くらいの人と、そして、どのくらいの期間にどのくらいの回数をもって情報収集を行ったのでしょうか。
  146. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 KGBが日本でコンタクトした人の数は大体百ないし二百名、自分がコンタクトしたのは十名ないし二十名という数字で証言しておったと思います。ただいまちょっと手元に資料がないので、すぐ調べて別途正確に御報告いたします。
  147. 三浦隆

    三浦(隆)委員 その接触した、たとえば十人のエージェントならエージェントとすると、月にどのくらいの情報収集というのを行ったのでしょうか。
  148. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 そういう細かい数字は、必ずしも公表された文書の中では出てきておりません。ただ、ある日本の政治家が本を出す際に、百ないし百五十万円を渡したというようなことは言っております。
  149. 三浦隆

    三浦(隆)委員 じゃ、質問を変えます。  その情報提供者の中には政府の与党なり政府閣僚なりあるいは高級公務員というのは含んでいるというふうに書かれておりましたでしょうか。
  150. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 その部分を正確に読みますと、自分の使っていたエージェントのうちの四名は著名な日本のジャーナリストであった。これらのエージェントは、自民党あるいは閣僚をも含む政府の高級公務員と高いレベルの接触を有しており、日本政府の内外政策に関する秘密の口頭情報ないし文書をソ連に提供しておった、こういうふうに証言しております。
  151. 三浦隆

    三浦(隆)委員 ソ連はどういうふうな意図を持って、どういうふうな情報を収集しようと考えていたのでしょうか。
  152. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 レフチェンコが自分の日本における工作の目的として挙げておりますのは、十項目でございます。  第一は、日米間の政治及び軍事協力の深まりを防止すること。第二点は、財界、政界及び軍事筋の間に日米間の不信を呼び起こすこと。三番目に、特に政治、経済の分野における日中関係の一層の発展を防止すること。四番目に、日米中の反ソ三国協力関係の形成の可能性を除去すること。五番目に、自民党の、そして社会党の著名な政治家の間に新しい親ソ・ロビーをつくること。六番目には、影響力のある高級エージェント、著名な実業界の指導者、マスコミを通じて、ソ連との経済的結びつきを急激に拡大する必要性を日本政府の指導者に納得させること。七番目には、日本の政界において日ソ善隣協力条約を署名するための運動を組織すること。八番目には、日本社会党を初め野党に浸透すること。各野党の政治綱領に影響を与え、自民党に国会で独占状況を占めさせないこと。九番目に、同時に、野党の指導者に対しては、連立政府の結成に対し消極的にならしめること。最後十番目に、クリール諸島に軍部隊を派遣し、北方領土に新たな住宅群を建設することなどにより、ソ連の意図について日本人の受けとめ方に影響を及ぼし、日本政府に、これらの領土に対するソ連の支配について議論をすることの無意味さを納得させるための活動を起こすこと。  この十項目を列挙しております。
  153. 三浦隆

    三浦(隆)委員 これに関連しまして、いまちまたではスパイ防止法の制定とか云々ということがよく言われておりますが、スパイ防止法の制定というふうなものを、官房長官政府としてお考えになってみたことはありますか。
  154. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 独立国家で機密保護法がない国というのはまさに例は少ない。そういう面においての一般論としては、これはやはり耳を傾けなければならぬ、私はそう思います。しかし、さらばといって、それではいまのような科学技術の発達しておるときに、いわゆる機密保護法ということになると、収集探知の罪が入らなければなりません。そうなってくると、これは運用次第によっては非常に暗い世の中になるおそれがある。むしろ国全体の健全性といいますか、強靱性といったようなことを考えれば、開かれた社会の方がベターではないのかといったような、議論もあります。あれこれ考えまして、これはよほど慎重に検討しなければならぬ問題である、かように考えます。
  155. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次には、樺太残留朝鮮人の帰還問題についてお尋ねをいたします。  二、三日前の新聞に「ここにも残る戦後責任」という見出しで載っておりました。この新聞の中で「「もはや戦後ではない」といわれて久しい。しかし、昨今の中国残留孤児の肉親捜しは、外国侵略と植民地支配の傷がいかに深いかを、如実に物語っている。」というふうに書き出しながら、「中国残留孤児問題と同様に、あるいはそれ以上に、深刻な戦争の傷跡をいまも生々しく物語っているのは、樺太残留者の帰還問題である。」としまして、「敗戦直後、四十万人近く在住していた日本列島出身の日本人は、ほぼ全員無事に引き揚げて来ている。しかし、朝鮮出身の日本人は、引き揚げ事業の対象とされず、とり残されてしまった。」そういう意味で「ポスト植民地問題は今なお未解決である。」「日本人として戦争目的に協力させておきながら、日本政府は、法律によることなく、これらの人達が日本国籍を喪失したものとみなし、帰還の責任を果たしていない。」というふうに書いてあります。  確かに帝国統計年鑑によりますと、日韓併合の前年の一九〇九年には、日本にいる朝鮮の人は七百九十人でありまして、清国の九千八百五十八人、英国の二千四百六十八人、米国の一千六百二十七人に比べまして四番目の数を占めておりました。それがたんだんと多くなりまして、特に国家総動員法、昭和十三年の国家総動員法体制が広がるに従いまして急速に在日朝鮮人の数がふえてまいりまして、昭和二十年の敗戦時には二百万から二百五十万にも達したと言われております。そうして、樺太に強制連行されたとも言ってもいい朝鮮の人たちが引き揚げに取り残された、そうして朝鮮出身の日本人は約四万三千人だと言われております。国籍はすべて日本国籍であります。しかし、ソ連当局が樺太占領後、日本人及び朝鮮人を民族別に分けまして、その国籍は、従前どおり日本人の場合には日本国籍とし、朝鮮人の国籍は無国籍といたしたわけであります。その後そちらに残った無国籍の人も生活のためだんだんいわゆる北朝鮮の国籍なりソ連の国籍へと変わっていったようでありますが、いまだになおかなりの多くの人がいつの日か韓国なり日本なりに戻れる日があるのではないかということで無国籍になっているやに伝えられておりまして、そういう意味できわめて人道的なゆゆしい問題だと思います。これに対しまして外務省なりのお答えをひとつ聞きたいと思います。
  156. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 一九五二年のサンフランシスコ平和条約によりまして、朝鮮のわが国からの国独立が法的に確定いたしました。そこで、従来日本国籍を有しておりました朝鮮半島の出身者は、南樺太在住の方も含めましてすべて日本国籍を喪失したわけでございます。したがいまして、現在のところ、法的には日本政府はこの方々の救済措置と申しますか、この方々にしてあげられることは非常に局限されているということで、まことに残念でございます。  しかしながら、法的な問題は別といたしまして、これはやはり私どもは道義的な問題としてできる限りの御協力日本政府としてできることは何でもやろうということで、再三にわたりましてソ連政府、つまり樺太の領有権はソ連にございますから、ソ連政府と粘り強く何度も何度も交渉してまいったわけでございますが、まことに残念ながら、ソ連政府は、この問題は日本政府と話し合う問題ではない、これは話をするとすれば北朝鮮の政府と話をして解決すべき問題であるということで現在まで及んでおるということでございます。
  157. 三浦隆

    三浦(隆)委員 わが国の憲法の前文には「自國のことのみに専念して他國を無視してはならない」とあるのですが、この「自國」を日本人に、たとえば「他國」を朝鮮人に置きかえてみますと、その取り残された人がきわめて気の毒であるし、日本国憲法の趣旨にも合わないのだろうというふうに思います。よく政治の要諦は、聞いた言葉なんですが、法にかない、理にかない、情にかなうことだと言っておりますが、この問題は法にもかなわない、理にもかなわない、情にもかなわない典型的な事例ではなかろうかと思うのです。いま外務省が一生懸命やられても、北朝鮮と交渉せよというふうなことを言われてうまく行かないというふうに聞いておりますが、しかし、これは国内においてもそうですが、一片の法律論で済むことでもないし、北朝鮮任せに任すわけの問題でもないと思うのですね。少なくともこの問題に関して朝鮮の人を無理やり日本国籍に直してこういう事例を起こしているからでありまして、この問題についてかなり早い時期でありますが、わが党の受田新吉議員が、この「徴用により樺太に居住させられた朝鮮人の帰国に関する質問主意書」というのを昭和四十七年の七月十二日付で出しております。そして、それに対する政府答弁書が出ているわけでありますけれども、その答弁書によりましても、「引揚げの実現につきできる限りのことはしたい」というふうに述べてあります。としますならば、いま行き詰まりの状況にあるようでありますけれども、とにかく残されている人も年がいっておりますし、本当にもう引き延ばすことができない。もはやあすも短くなっているという人でありますから、何とかこの引き揚げの実現に向けてより力を尽くしていただきたい。  そこで、外務省として、行き詰まった中で、何らか新しい具体的な手段というのをお考えになっていないのでしょうか。
  158. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 樺太に残留いたしまして、日本あるいは朝鮮半島にお帰りになりたいという御希望のある方につきましては、在ソ連日本大使館を通じまして、それぞれ直接御本人たちに手紙を送りまして、もし日本あるいは日本を経由して朝鮮半島にお帰りになりたいということであれば、日本政府としては入国を許可いたしますよという手紙を差し上げたのが四百十一名でございます。ところが、残念ながら、その方々のうち現在までわずか三名しかそれが実現しないわけでございます。  そこで、先ほども御答弁申し上げましたとおりに、外交上の努力、つまり日本ソ連政府との間の交渉ではなかなからちが明きませんので、そこで現在国際赤十字に対しまして、これは人道上の問題としてぜひお願いしたいということで重々頼んでおるのが現状でございます。今後引き続き努力してまいります。
  159. 三浦隆

    三浦(隆)委員 これまでも国際赤十字にはしばしばお願いしてきたと思うのです。ただ、それをお願いしっ放しというのか、それではどうもらちが明かないのでありまして、それを単にお願いしたということではなしに、もう少し具体的な手段というのが何か考えられないのでしょうか。外務省考えておりませんか。
  160. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先生御指摘のとおりに、目に見える効果がなかなかあらわれないという点におきましては、私どもも先生と同じように、いわば隔靴掻痒の感が確かにございます。  そこで、通常この種のケースの場合は、一般論として申し上げますと、国と国との外交交渉による、それでうまくいかない場合は、国際赤十字を仲立ちとして問題の解決を図っていく、残念ながらこの二つしか主要な方法はないわけでございます。  国際赤十字につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、何度も熱意を持ってお願いをしてありますが、現在私どもが承知しておりますところでは、国際赤十字は相当真剣に対応してくれておりまして、非常に詳細な資料、情報を十分日本政府からよこしてくれるように、こういうリアクションがあったところを見ますと、何らかの動きを――現在まだ具体的な成果はございませんが、国際赤十字といたしましては何とかしてくれるのであろう、こういう期待を持っておるところでございます。
  161. 三浦隆

    三浦(隆)委員 国際赤十字のそうした機関に限りませんで、いわゆる北朝鮮から日本に来る人も多いし、わが国からも向こうに行かれる人も多いのでありまして、そういう人事交流の面からも何らかの手がかりというものは得られるのじゃないかというふうに考えられるのですが、そういうふうないわゆる学術研究であれ、理由は何でもいいのですが、そういうふうなことから、今度は法務省の方でどなたかお答えいただけますか。
  162. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 ただいま先生から御指摘いただきましたような第三の道と申しますか、そういう方法につきましても、一つの貴重な御意見として今後検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  163. 三浦隆

    三浦(隆)委員 貴重な意見としてただ聞かれただけでは、私は済んでも向こうにいる人には何の役にも立ちませんので、聞いていただいて、それを何らかの方法でひとつ即実行に移していただきたいということをお願いしたいと思います。  それから、先ほどの政府答弁書の中の言葉なのでありますが、仮に日本政府のこの引き揚げに対する便宜供与の一環として二つの点を触れております。一つは、「日本は単に通過するのみで全員韓国に引揚げさせる。」こう書いてあるわけであります。政府答弁書は、「日本は単に通過するのみで全員韓国に引揚げさせる。」私は、これは本人が仮に日本にいることを望み、韓国政府なりもそれを認めるとすれば、その本人の意思を生かして行うのがむしろあたりまえなんじゃなかろうかというふうに考えるのですが、政府としてはそれ、どうお考えでしょうか。
  164. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 すべての方を全部、日本をただ通過するだけで朝鮮半島に引き揚げてもらうということではございませんで、その後方針を先生御指摘のように改めまして、日本に近親者がいる方、それから日本に特に残留、居住したいという強い御希望を持っておられる方にはそれなりの配慮をするというのが現在の方針でございます。
  165. 三浦隆

    三浦(隆)委員 そして、もう二点目では「引揚げに要する費用は一切韓国側において負担する。」とありますが、これは間違いなんじゃなかろうかと思うのです。向こうにいる人を無理やり日本の力で樺太へ強制的にも、連行という言葉が当てはまるかどうか私にはわかりませんが、連れていったわけで、いまそのことを問題にしているわけで、むしろ日本の戦争責任こそが問われていることであって、日本の方が申しわけなかったということで、日本がむしろ費用を負担すべきものじゃないのだろうか。いわゆる答弁書の中の姿勢が、何となく、「日本は単に通過するのみで全員韓国に引揚げさせる。」「引揚げに要する費用は一切韓国側において負担する。」というのはきわめて冷たい響きを、少なくとも抑留されている人というか、残留している人に与えているんじゃないかというふうに思いますが、外務省どうお考えですか。
  166. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 お金の問題につきましては、これは現実に樺太から日本あるいは朝鮮半島に出てこられる方々が出てまいります現実の事態になりましたときに、十分財政当局とも御相談の上、あるいは関係各省とも御相談の上決定してまいりたい、こういうふうに考えております。
  167. 三浦隆

    三浦(隆)委員 これはむしろ問題としては、日本が負担する、韓国が負担するというのは仮定の問題であって、現実にはいまなかなかそういう状況になり得ないわけにあるわけですけれども、ただ私が言いたかったのは、韓国が費用を負担すると、答弁書であれ、書くこと自体がというか、そこの中に冷たさがあるということであります。そうしたこれまでの政府答弁書を書かれた人の気持ちというのは、私には余り引き揚げに熱心でないような感じがあります。だから、きょうまでおくれてきてしまったんじゃないか。しかも、おくれている間にその人たちが一年一年年をとられてしまうということについて、本当にゆゆしい問題だと思いますので、本当に外務省、ひとつ層一層お力を尽くしていただきたいし、また法務省の方においても、何らかの形でひとつお力を尽くしていただきたいというふうにお願いして、この問題、先に進ましていただきます。  同じような問題でありますが、これもしばしば問題とされております台湾人、台湾の元日本兵士に対する補償問題についてであります。これも大変長い経緯がございますので、概略こちらの方でざっと振り返ってみながらお尋ねをしたいと思います。  この台湾人元日本兵士に対する補償問題の契機は、昭和四十九年末のモロタイ島で発見救出された中村輝夫さん事件というものが、台湾人元日本兵士の存在と彼らに対する補償の問題を考えさせる契機となったわけであります。  そして、昭和五十年の二月二十八日に日本人と台湾人有志により、台湾人元日本兵士の補償問題を考える会が、代表世話人宮崎繁樹明大教授をめ、結成されました。  また、昭和五十二年八月十三日にはトウ盛氏以下十三人が、総額七千万円の台湾人戦死傷補償請求を東京地方裁判所に提訴していたわけです。  国会でも、超党派で昭和五十二年六月二日に、台湾人元日本兵士の補償問題を考え議員懇談会が発足しました。  そして、こうした運動の盛り上がりの中で、昭和五十五年の十月二十八日、台湾人元日本兵士の補償問題を考える第三回議員懇談会が開かれて、そこで鈴木総理大臣あてに台湾人元日本兵士の補償に関する要望書というのが提出されました。  裁判の方は、昭和五十七年二月二十六日、台湾人戦死傷補償請求事件の東京地方裁判所の一審判決が出たわけですが、原告の請求いずれも棄却され、三月十日、原告側は東京高等裁判所に控訴状を提出し、現在に至っています。  その後、昭和五十七年十二月七日、昨年の暮れでありますが、議員懇で、対象者三万三千百三十三人に対して、一人当たり三百万円、総計約一千億円を見込みまして議員立法を行ったらどうかというふうに決めたのですが、これもまた紆余曲折がありまして、政府は同月二十四日、財源難を理由としましてだめになって、きょうまで解決されていないわけです。  この間、わが党の民社党にしましても、党内にこの問題に関する特別委員会を設定しまして、補償問題解決に総力を挙げて取り組みまして、私も文教委員会で発言しましたし、ほか多くの議員がこの問題を各委員会で取り上げてここに至ってきているわけであります。  そこで、この補償問題につきまして、政府はいまどのように考えていられるのか、御意見を承りたいと思うのですが、これは官房長官でしょうか。
  168. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 台湾の方々で、かつて大日本帝国の領土であったわけでございますが、日本軍と同じように戦に、第二次大戦に参加され、あるいは軍属として日本軍に協力された多数の方々に対しまして何らかの措置を講ずる道義的な責任があるということは、まさに先生御指摘のとおりでございます。  残念ながら、これは法律的に申しますと、この問題につきましては日華平和条約というものがございまして、いわゆる特別取り決めの対象とするということだったわけでございますが、日華平和条約は現在のところ消滅、法律的な効果を失っておりまして、したがいまして、法的に日本政府が交渉をして解決することができないというのが現状でございます。  しかし、法的な問題は別といたしまして、道義的に確かに心痛む問題としてずっとそのまま戦後長きにわたって残ってきたということは、まさに先生御指摘のとおりでございます。しかしながら、先ほど先生の御質問の中でもお触れになりましたとおりに、この問題は日本と台湾以外の他の、かつて日本の領土であって分離した地域との公平、あるいはどこまで波及するかという問題、さらには現在のわが国の厳しい財政事情などの問題を総合的に頭に入れて解決を図らなければならないという困難がございます。したがいまして、道義的責任、お気の毒だという気持ちは十分ございますが、しかし、現実にどうやって解決するかということになりますと、大変申しわけないことでございますが、解決がむずかしい、こういうのが現状でございます。
  169. 三浦隆

    三浦(隆)委員 これもちょうど先ほどの朝鮮人の樺太残留者の問題とそっくり同じような感じです。いずれにしましても、日増しに、延びればお年を召していくだけであって、早い解決をしなければどうにもならないことであります。そして同時に、これまた日本が無理やり日本国籍にしたりしながら、そして日本の戦争のために協力させたわけです。  記録を見ておりましたらば、B、C級戦犯の受刑者となった台湾人百七十三名、うち死刑執行二十四名、獄死二名とあります。あるいは朝鮮人百四十八名、うち死刑執行二十三名というふうな記録もありますし、さらに、アジア各地でのB、C級戦犯として裁判を受けた日本人軍属四千八百五十五名のうち、台湾人及び朝鮮人の元日本兵士、軍属が三千名というふうな記録もあるわけです。まさに日本の戦いの中にこれらの人々を巻き込んでいるわけです。  そういう意味では、法律論や財政論を超えてでも一日も早く救済しなければならない責任が日本にはあると私は思います。ちょうど自分のうちにだれか悪い人が入ってくる、家族が協力してその外部の敵に当たるのだというときに、自分のうちだけでは足りないからお隣、向こう三軒助けてくれと力をかりた。どうやら事は終わったといったときに、よそ様の人の助けをかりたのに、もう終わったからといって、他人だからといってお礼の言葉も述べないうちに、単にありがとうくらい言うのでしょうか、何もしない。自分のうちの家族、親や子供たちに対してだけ御苦労さんでしたとお金を支給する。これがいまの、たとえば戦に参画した人に対する、あるいは死んだ人に対する、家族に対する何らかのお金をわが国が出している問題だろうと思うのです。とすれば、もし財政難を理由とするならば、申しわけないけれども日本国内の人を仮に詰めてでも、できる限りの処置をむしろそういう人々に対してこそ先になすべきものなのじゃなかろうか、ここに根本的な考え方の違いがあるように思うのです。日本が力ずくで一方的に日本人を名のらせ、一方的にもはやあなたは日本人でない、だから知らないと言って済む問題ではないように私は思うのです。いわゆる日本の戦争責任と信義というものに絡みます。  そういう意味で、いまここに大蔵大臣もいますので、財政の大変なときではございますが、こうした問題をどういうふうにお考えでしょうか。突然で大変恐縮でございますが。
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、私ども、前回の大蔵大臣のとき、それから、やめました後も議論をしたことがございますので、たまたま手元にその際の資料がありましたので申し述べてみたいと思っております。  この問題は、先ほど橋本さんから御答弁がございましたが、いわば救済措置の対象を台湾人元日本軍人軍属に限定することと仮にいたしますと、在日朝鮮人及び在日韓国人を含む北朝鮮及び韓国の元日本軍人軍属等の問題をどうするか。そこで、韓国とは日韓協定によって請求権問題は一応決着しているが、韓国人が個々に請求を行い裁判が起きた場合、それはどういうことになるだろうか。それから、在台湾の残置財産、これは日本の問題でありますが、台湾人元日本軍人軍属の戦死傷補償請求等の請求権問題とは一連の問題であることから、台湾人元日本軍人軍属の戦死者等について何らかの救済措置を講じれば、台湾に残置した財産の補償問題をどうするかという問題がございます。さらに最終的には、国内、他国内、いわゆる国内外のすべての、たとえば戦災補償でございますとか、そういう問題に波及していくということもあるわけでございます。  したがって、この問題につきましてはいろいろな面から検討をいたしましたが、いま先生のおっしゃる、いわば人道的な問題という意味を私が理解しないという意味でなく、問題としては非常に困難な問題であるというふうに申し上げざるを得ないのかな、こういうふうに考えるわけでございます。その他、いわゆる政府間協定を前提とする必要があるということになれば、国交のない国との協定は結べないとか、そういう余りにも多岐多様にわたる困難な問題が多かったということを、私が経験いたしました段階について申し上げるわけでございます。
  171. 三浦隆

    三浦(隆)委員 続いて、厚生省その他皆さんにお聞きしたいのですが、時間の都合もありましてこれは飛びます。  ただ、考えてみますと、台湾人元日本兵士だけではなくて、朝鮮人元日本兵士の問題もあるのじゃないか。記録を見たところ、そちらの方は余り見当たらないように思うのでありますが、同じような問題としてとらえた場合に、台湾人ではなくて朝鮮人元日本兵士に対する問題として外務省はどうお考えでしょうか。
  172. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 南の方、つまり韓国につきましては、これは日韓の国交正常化交渉におきまして、韓国側から日本に対する請求の一つとして提起された問題が、まさにこの軍人軍属に対する補償の問題でございますが、これは先生御案内のとおりに、昭和四十年に締結されました日韓の間の請求権及び経済協力協定ということで、日韓間の外交問題としてはすでに解決済みでございます。私どもが承っておりますところによりますれば、韓国政府は一九七四年に、日本軍に徴用されたり、軍人でありますとかあるいは軍属の戦死者の遺族に対しまして補償を行ったというふうに承知しております。  ただ、先生御指摘のとおりに、朝鮮半島の北の方の問題につきましては、これは残念ながら現在のところ白紙の状態で残されておりまして、この問題は将来の問題として考えていかざるを得ないというのが現状でございます。
  173. 三浦隆

    三浦(隆)委員 それでは、先に進むことにいたします。  時間もあと幾らもないのですが、箕面市の慰霊祭訴訟判決に関連しましてお尋ねをしたいと思います。  先ごろ判決が下りまして、新聞によりますと、こんな大きな見出しで「公務員の公人参列は違憲 慰霊は宗教行事 大阪地裁判決 箕面の忠魂碑訴訟」というふうな記事があるわけです。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 この場合に、忠魂碑前の戦没者慰霊祭を靖国神社における戦没者慰霊祭、あるいは教育長を閣僚にと置きかえてみますと、影響があるような気がするのですが、これに対して靖国神社に、私的な立場であれ、参列された大臣の方いらしたら、御答弁をお願いしたいと思うのです。
  174. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 参列したことはございます。
  175. 三浦隆

    三浦(隆)委員 この判決についてどうお考えでしょうか。
  176. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 これは裁判所の一応の判断ですから、これはまたそれなりに受けとめなければならぬと思いますけれども、私は行政府の者でございますから、裁判についてかれこれコメントをするのはいかがかと思いまするので、差し控えたいと思います。
  177. 三浦隆

    三浦(隆)委員 時間ではございますが、この問題と関連しまして、例の二月十一日の建国記念日の問題についてちょっとお尋ねをしたいのです。  といいますのは、建国記念日は、御承知の国民の祝日に関する法律によりまして、「国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日」というふうに定めておりまして、その限りにおいては本当に心から祝いたいというふうに思っております。ただ、たまたま建国記念日の行事というか、そうしたものが次第に各神社に行われるようになったりしますと、次第に宗教行事とそうしたものの区別がむずかしくなってこようかと思うのです。私は、この判決というものは、憲法に準拠してはっきりと政治と宗教の分離ということを目して出た判決だと理解いたしますが、建国記念日もそういう意味で特定の宗教というか、そうしたものとかかわりをなるべく持たないように、本当に国民こぞって祝えるようになすべきものだというふうに思います。ですから、そういうふうにとらえた場合に、総理府なり文部省なり自治省なりがこれを後援し、あるいは中曽根首相がことしになって祝電を打たれたというのもわかるような気がするのです。ただしかし、いままでの歴代の首相が祝電を打たなかったのに今度初めて祝電を打ったということは、やはりいままで打てなかった状況なり理由があったと思いますし、今度打つに決断をしたには、祝電を打ってもよろしいという、何かやはりお考えが首相にあったんだと思うのです。  ただ、それがことしの式典で、新聞あるいはテレビで読んだり見たりした多くの人が異様に感じましたのは、いままで初めの法律で書かれたこととは大分異なりまして、式典そのものにおきまして、式典が紀元節の歌が流れる中で始まり、日の丸を通じ、神武天皇陵に拝礼の言葉で始まっている。そして、その式典の主催をした委員長が、八紘一宇だとか、いわゆるわれわれにとって忘れられたような、あるいは万世一系とか天壌無窮というふうな言葉が出たりして、最後の閉式の辞では、一日も早く政府主催となり、中曽根首相だけでなく、神武天皇の子孫である天皇をお迎えしたいというふうな発言まで飛び出したというふうに聞きますと、これはきわめて祝日法の趣旨と合わないと私は思いますし、もちろん判決では、もし、こういうふうなことになったとすれば大きな問題になるのだろうと思います。  そういう意味で、これまで総理府なり、昨日文部省にはお尋ねしましたので、文部省としてもこれまでのような国民こぞっての祝日であればこれまでと同じように後援するけれども、それがこれから全然また変わっていくのなら後援を取りやめると大臣の御発言がございました。そこで、同じような趣旨のことを総理府あるいは自治省関係の方にお尋ねしたいと思うのです。あるいはまた官房長官から、その祝電の問題でも、お尋ねできれば聞きたいと思うのですけれども、いわゆる国民こぞって祝える建国記念日が、きわめて戦前的な色彩、いわゆる旧紀元節と似たような流れをした場合には、これはもう政府としてはかかわり合ってはならないのじゃないだろうかというふうに思いますし、後援もしてはならないのだろうと理解いたします。  総理府、自治省の関係者の御意見をお尋ねいたします。
  178. 山本幸雄

    山本国務大臣 建国記念日の式典につきましては、私の自治省としてことし初めて後援をしたわけでございます。これは従来から総理府あるいは文部省で後援をされてきたことであるし、いま仰せのごとく、国民こぞって祝うべき日である国民の祝日として決められておるわけでございますから、そういう日を祝うということは一向に差し支えないことであろうということで、ことし後援を決めたわけでございます。  ただ、仰せのように、これは国民全体が心から建国をお祝いする、式典も私は、いまお考えのように、そういう形でありたい、こう思っておるわけでございまして、ぜひそういう、喜んで国民全体が参加できるような式典にしていただきたいと思っておる次第であります。
  179. 三浦隆

    三浦(隆)委員 時間ですので、もう一言お尋ねして終わりにしたいと思います。  初めて後援された。ところが、後援してみたところ、ことしの状況は、恐らく後援した方の趣旨とは違った方向に進んできたのだろうと思いますが、そういう意味で、来年も恐らく行われる行事でありますので、はっきりと、その行き過ぎた戦前的な旧紀元節の色彩は絶対に出しては困る、もし、そうであるならば後援は取りやめるというふうな御返事はいただけないものでしょうか。
  180. 山本幸雄

    山本国務大臣 いま申し上げますように、国民全体が心からお祝いのできるような形の式典にしていただくようにお願いをしていこうと、こう思っております。
  181. 三浦隆

    三浦(隆)委員 昨日の文教委員会では、文部大臣ははっきりとそうお答えいただいたのですし、いまも大臣にお答えを願いたかったのですが、詰めていくには時間もございますし、おしまいになりましたので、この辺にさせていただきたいと思います。  終わります。
  182. 久野忠治

    久野委員長 これにて三浦君の質疑は終了いたしました。  次に、木島喜兵衞君。
  183. 木島喜兵衞

    ○木島委員 きょうは私が三十分で、あと一時間を土井たか子先生が御質問なさいますから……。  青少年問題と申しましても大変に幅広い問題でありますから、政府が取り組むというのでありますからその姿勢のほどだけをお聞きしたいと思うのでありまして、それだけに実は官房長官においでいただきたかったのですが、どうも仕事が忙しそうでありますからすかっと譲りましたが、その分だけ、文部大臣にあとは任かせるから、そのことをもっておれの答弁とせよということでありますから、そういう意味で……。  そこで、青少年問題というのがばかに急に浮かび上がりましたが、新聞によると、外交、防衛では中曽根内閣の人気が下がってきておるから、そこで、これから内政問題にということでもって青少年問題をやるのだというようなことが書いてありますけれども、急に青少年問題が浮かび上がったその真意はどこにあるのでございましょうか。まず、そこからお聞きいたします。
  184. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 官房長官がおられませんから、私の立場でお答えいたします。  青少年問題といいますか、あるいは校内暴力等の非行の問題は、前々からいろいろ心配されておったわけでございまして、もちろん今日までいろんな手だてを講じてその是正といいますか、努力してまいったところでありますが、特に最近、毎日のように新聞その他で報道されておりますし、しかも、御承知のとおり横浜のああいういまだかつてないような事件、それから忠生中学の問題等引き続いて起こりましたが、これはゆゆしいことであるということで、別にほかの方で中曽根内閣が人気が云々という、そういうことでなしに、これは将来のために真剣に取り組まなければならぬということで始まったわけでございます。
  185. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ぜひそうお願いしたいのでありますけれども、これは初中局長に聞きますが、第二反抗期というものの心理はいかなる心理でありますか。
  186. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 お答えいたします。  第二反抗期は、小学校の高学年から中学校の時期にかけてあらわれる、このような心理学上の学説でございますけれども、親からの心理的な独立を図り、自我が確立していく過程におきまして起こるものです。  これは発達過程上は不可欠なものでありますけれども、これが正当に発現されない場合には、人格形成に影響を及ぼしまして、問題行動が発現しやすくなる。このような心理的不安定な時期の指導はきわめて大事だと思います。ただ、これは最近はその時期が早まっているというような傾向がございます。
  187. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大臣、いまあえて第二反抗期と申したものは何かと申しますと、この時期はまさに成人になる過程としてだれもが通らなければならない時期であり、そして、それは多分に反抗心なり攻撃心を持っておるものであります。これが逆にないものですから、このごろの青年全体がおとなしいとか消極的過ぎると言われるから、あるいは中曽根さんはたくましい文化なんと言わなければならないのかもしれませんよね。  こういう時期でありますから、いま局長が言うとおり、自我が完成し目覚めるときでありますだけに、そして、そのことを通して成人になるわけでありますから、権威とかあるいは価値に対する反抗、抵抗の気持ちがあるわけです。私は、最初に申し上げたように、もしも政府が青少年問題というものを取り上げるのに、人気取りとして、風見鶏が人気鳥に変わったとするならば、そこに対する反感が青年から起こって、青少年問題を解決しようとするものが、むしろ逆に火をつける結果になるであろうと思うから、あえて申し上げるのであります。しかし、先ほど官房長官が、鍛冶さんの質問に大変積極的な姿勢でございますから、そういう意味ではそのように考えましょう。  しからば、いままでの外交、防衛等の問題から内政問題へということでこの問題を取り上げるということは、中曽根内閣の内政問題の中においてはこの青少年の非行暴力問題というものを最大なりあるいは最高の政策の一つとして考えると考えてよろしゅうございますか。
  188. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 外交問題については緊急の課題としてやられたわけですけれども、これは内政上の大きな問題として取り上げておるわけでございます。
  189. 木島喜兵衞

    ○木島委員 具体的にはどうするつもりなんですか。具体的にはどんなことをするのですか。これから真っ先にまずどんなことをやるのですか。
  190. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 先生のお尋ねにお答えさせていただきたいと思います。  思いつきに青少年問題ということを取り上げたり、にわかに取り上げておることではないことは、先ほど先生の御発言の中にもございましたように、すでに昭和五十六年の一月に青少年問題審議会に対し、青少年の非行等の問題行動について各般の分野においてとらるべき基本的な対応策について諮問をいたしました。これに対して同審議会が昭和五十七年、昨年の六月二十四日に答申されていたものでございまして、これまた先生からお話がありましたように、この答申は青少年の問題行動の動向と特徴、その背景を十分把握した上で、社会の各分野における対応なり、さらに各行政施策への提言をいただいておるのでございまして、政府はこの答申が現代の青少年の問題行動への対応の基本を示したものと受けとりまして、この答申に盛られた提言の実施に実際取り組んでおるのでございます。  その取り組み方はどうだということでございますが、まず六月二十五日に青少年の非行防止対策についての……(木島委員「その辺でいいです」と呼ぶ)そういうことで、われわれは真剣に取り組んでおります。
  191. 木島喜兵衞

    ○木島委員 思いつきでなくて取り上げておるとおっしゃることでございますから、大変安心いたしました。世間は、中曽根さんというタカ派の方でありますから、中曽根式の道徳教育、あの人、ことに古い言葉が好きでありますから、教育勅語的、徳目的道徳教育とか、あるいは力によるところの管理というようなもの、教育管理、家庭管理、家庭への介入、学校管理、そういう式のことになりはすまいかと世間が思っておるものでありますから、いま大臣が思いつきでないとおっしゃったことによって、世間はそういう点では安心するでありましょう。  そこで、いま大臣がおっしゃったとおり、昨年六月のあなたのところに出した答申、この答申、確かに先ほどありましたように、いろいろ会議をなさいましたし、文章としてもおよそりっぱだと思うのです。ただしかし、じゃ、どうするかとなると、いささか欠けるものがある点は大臣も御同感だと思うのです。  そこで、総理大臣の中曽根さんは、すべてはいまの受験地獄から来ている、根本的な解決をやりたいとおっしゃったと新聞で見ました。すべてじゃないでありましょうけれども、非常に大きなウエートが今日の受験中心の学校教育、受験地獄にあると総理大臣はお考えであって、そこから発想されたのだと思うのでありますけれども、その点については文部大臣同感ですか。イエスかノーかだけでいいです。
  192. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 すべてとは思いませんが、大きな原因があるのじゃないかと考えております。
  193. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だれもが受験教育偏重がこの青少年問題の基本問題だと申します。すべてとは、おっしゃるとおり言わないけれども、重大な一つのテーマだと言います。しからば、いかにして受験教育の偏重を是正するのか、その背後には明治以来の学歴社会がある。学歴社会というのは、何を学び何を得たかではなくて、いかなる学歴を、いかなる学校歴を有するか否か、それによって社会的な地位や経済的地位が決まる、それが学歴社会であります。これは明治以来できてまいりました。そして、戦後高度経済成長の上に進学率が高まった。したがって、全国民をそこに巻き込んで、入試がより激しくなって地獄と言われ、戦争と言われる入試になったわけでありますが、これをどう解決するかということを抜きにして、具体策なくして、受験教育偏重、そこに青少年問題の基本問題があるのだからといって、根本から解決すると言われたところの問題の解決にならぬと思うのでありますが、どうなさるつもりでありますか。
  194. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 学歴社会の成り立ちはおおよそ木島さんのお話のとおりだと思います。これを行政で直ちに改める、こういうことは私はそう簡単にいくものではないと思います。これは国民の反省に基づかなければなりません。ただ、戦後の日本の国は、御承知のとおり個人の尊重、独創、こういうことで来ておりますから、これが定着するまで相当困難な道を歩かなければならないのじゃないか。最近は学歴偏重の傾向が幾らか減ってきておると思いますが、これを全部一遍に払拭するということは残念ながら簡単ではないと思います。
  195. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もちろん、そう簡単にできるなら、いまもう解決しているはずだから。じゃなくて、総理が、青少年問題の一つの非常に大きなテーマは入試地獄にある。しかし、その入試地獄がなぜできたかというならば、学歴社会というものが背景にある。だから、それを直さなければ根本的に直らぬわけでしょう。だから、それに向かって進むのですかと聞いているのです。時間がかかるかかからぬか別です。それがなかったら根本的な解決はできぬじゃないですか。
  196. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 木島さん専門家ですから、いろいろお詳しいところがあると思いますが、私も中学校の受験、高校の受験大学の受験等、若い成長期から青年期にまで受験受験といくのがいいのかどうなのか、この点を、これは大きく学校制度にも関係がありますからそう簡単にはいかないと思いますけれども、こういうところからも検討を進めなければならない、こういうふうなことを考えておるわけでございます。
  197. 木島喜兵衞

    ○木島委員 さっき私は、総理大臣 中曽根さんは、この青少年の非行暴力問題のすべてはいまの受験地獄にあるとおっしゃるが、それはすべてとは言わなくても、せめて非常に大きな要素だろうと言ったら、あなたはそうだとおっしゃったでしょう。したがって、それをなくさなければ、直さなければ、すべてじゃないけれども大きな要素なんだから、大きな原因なんだから、それを直さなければだめでしょう、論理的に。筋道はそうなるでしょう。そのことを聞いているのよ。時間がかかるかかからぬかじゃないの。受験地獄の解消のために努力しないのですか。しなければだめでしょう。解決せぬでしょうが。
  198. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 一つの大きな原因でありますから、これを解消することに努力はしますが、そう急にはまいらないということを申し上げておるわけでございます。
  199. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま私はそういう意味で姿勢を聞いておると最初から言ったとおり、この問題に取り組むと中曽根さんがおっしゃって、政府は、文部省だけではなくてすべて全力を挙げて、内閣を挙げてやるというのだから、その姿勢を聞いているのであります。  そこで、それをやろうとするときに、現在の指導層から反対は出ないでしょうか。なぜなら、入試は競争であります。入試は競争原理に基づきます。競争原理は資本主義の原則でもあります。したがって、この競争原理によって明治以来の経済の繁栄があった。だから、この競争原理がなくなったならば経済の繁栄がなくなるのじゃないか。落ちこぼれのない、たとえば黒柳徹子の「窓ぎわのトットちゃん」みたいなああいう教育だったらGNPががた落ちするのじゃないか、ヨーロッパ病になるのじゃないかという反対の声がいまの指導層の各界から出てきませんか。入試があるからよいのだという声が出てきませんか。そこを乗り切らなければ入試の地獄がなくならず、そして非行暴力問題の根本的な一つの大きな原因が解決しなくなるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  200. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 木島さんとは根本的に、あるいは基礎的な考え方が異なるかもしれませんが、生物の社会ではどうしても競争原理というものは免れない。特に人間の場合は他の生物よりいわゆる知恵、才覚が多いですから、よけい欲望がある。その欲望がまた進歩発展を、また自己の生命を延ばすというための努力の源泉でありますから、これを全部なくするというわけにはいかないでしょうけれども、これをある程度チェックするという制度などは考えられる、かように思っております。
  201. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ちょっとよけいなところへ入ってしまったのだけれども、けんかを売られたら私も買わざるを得ないのだが、さっきのあれでも教育は生物と一緒だと言った。違う。育つことがあっても、生物の間では教えることがない。動物の中に教育があるだろうか。動物の中に知性があるだろうか。本能はある。本能のまにまにならば、あなたのおっしゃることは正しい。そこが人間の違うところでしょうが。あなたの基本的な違いです。あなたがそういうことを言うと、だから競争があるのだ、競争があるのだから入試競争が正しいのだとなれば、さっき言ったように、総理がおっしゃっていらっしゃる入試戦争というものが青少年の非行暴力の一番基本だ、そのことにあなたが同感だと言った。入試はするでしょうが。しないのですか。
  202. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私は、自分では矛盾するつもりはございませんが、そういう欲望を全部チェックしてしまうわけにいかぬですけれども、そういう状態に弊害がありますから、それをどのくらいに是正するかということが人間の知恵であろう、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  203. 木島喜兵衞

    ○木島委員 では大臣、学歴社会を直すために具体的にどのようなことをしますか。なさろうと考えますか。
  204. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 完全になくするということは現在の状態ではできないと思いますが、個人の能力に従ってこれを登用する、こういうことにできるだけ努力をしなければこの問題は解決しないと思います。
  205. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いろいろ問題があると思います。学校教育だけの場合もありましょうし、あるいは社会全体、たとえば総理大臣の中曽根さんの所信表明の中にも生涯教育的なことがよく出ておりますけれども、もはや今日、教育というものは学校の独占物ではない。もし、生涯教育というものがあるとするならば、それは乳児期でも幼児期でも少年期でも青年期でも壮年期でも老年期でも、それぞれ充実した生活を送るためにおのおのに学習があるということですね。とすれば、生涯が学習であるならば、何も青年の一時期だけをもって学習し、そのことによって、その成績でもって、あるいはどの学校を出たかによって人生を決めるようなことがなくなるわけですね。そういう生涯教育全体の中に学校教育というものを生涯教育の一部分として取り上げれば、この問題の一つが解決するわけです。したがって、そういう意味では、たとえば大学なら大学が、生涯のいつでも大学に入れるような制度になれば、一つの解決の道になりますね。  それで労働大臣、ILOの百四十号条約というのは、有給教育休暇というものを労働者に認めております。その場合、一方において学校で大学がいつでも何歳でもとれるということの門戸を開くことと相まって、しかし就職しておりますから、その就職しておる労働者がいつでも有給の休暇――私は、あえて有給でなくて無給でもいいと思うのであります。しかし、ILOの百四十号条約は有給の教育休暇です。これがあれば、一つは、学歴社会の解決への大きな道になると思うのですが、これは私は繰り返し言っておるのだけれども、労働省はなかなかうんと言わない。しかし、いま総理が青少年問題を内政問題の一つの大きな問題として取り上げようとするならば、この辺が思い切るところのチャンスじゃないのかと思うのですが、労働大臣、時間がありませんから、イエスかノーか的な簡単な見解を。
  206. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  本条約の問題につきましては、各規定の具体的な解釈あるいは国内法制との関連がございますので、いま直ちにということは困難であるということでございます。
  207. 木島喜兵衞

    ○木島委員 困難だけですか。
  208. 大野明

    ○大野国務大臣 さようでございます。
  209. 木島喜兵衞

    ○木島委員 何もしないの。
  210. 大野明

    ○大野国務大臣 一生懸命努力はいたしますけれども……。
  211. 木島喜兵衞

    ○木島委員 時間がありませんから……。  いま言った学歴社会をということならば、たとえば指定校制度を、各大臣、文部大臣はいつでも協力を企業に頼んでいるのですが、なかなか解決しません。あるいはペナルティーを考えなければならぬかもしれません。大学の卒業証書というものをなくしたらどうですか。考えてみませんか。労働大臣、あるいは人材独占禁止法というようなもの、有名大学の者からたくさん採るのは、一定の制限をしながら徐々に解決していくとか、学歴社会というものがもしもそれほど大きな弊害が根底にあるとするならば、よほど大きな力を加えなければ解決せぬでしょう。そういうものは、私は、いま時間がありませんから、そんなことを考えるほど思い切ったことでなければ、今日の青少年問題は解決せぬだろうと思うのです。まあ、いいです。  青少年問題は、また家庭にあると言います。だれもが言います。このことはもう余り言いませんが、しかし、核家族だとか少ない兄弟や共稼ぎ、もちろん親の資質の問題もありますけれども、人間の脳機能というものは六〇%、三歳までにでき上がる。三つ子の魂百まで。ところが、この三歳までは実は教育の対象にならない、幼稚園は三歳以上ですから。  そこで、どうするかということは、一つは、育児休業法を、少なくとも一年間なら一年間、子供を産んだならば有給で休めるというものを全婦人労働者、あるいは男がかわってとってもよろしい。(「男はいいんだ」と呼ぶ者あり)とってもよろしい、部分的に。そういうことも含めて検討せねばならないのではないかと思うのですが、このことも労働大臣、もはや世界的な一つの方向でありますから、簡単に答えていただきます。
  212. 大野明

    ○大野国務大臣 育児休業に関する法的整備につきましては、婦人少年問題審議会において、現在、男女の雇用の機会の平等であるとかあるいはまたその他の施策とともに審議しておりますので、その結果を待った上で対処していきたいと考えております。
  213. 木島喜兵衞

    ○木島委員 世間では青少年問題を、一つは、社会にあると言います。まさに、多感なる青年が社会に大きく影響されます。そういう意味では、たとえば田中元総理にかかわるいろいろな問題に対して、いま青少年問題をと言って、社会が責任があると言いながら、中曽根内閣のその倫理の問題に関する消極さを見たときに、青少年はどういう影響を受けるだろうかということも考えねばならぬことでありましょう。もうそんなことは聞きません。要は、今日の社会全体のいろいろな問題が、集中的に、集約的に集まっておるのがこの青少年の非行暴力問題ではないかと思うのです。  新聞によると、瀬戸山さんは、占領政策が悪いのだ、占領政策によって米国好みの日本人をつくったのだと言っていらっしゃいますけれども、今日確かに米国も大変です。ロサンゼルスという一つの市だけで、昨年一年間に中学校で押収したピストル二百丁。これは全米でありますけれども、凶悪犯の六五%が未成年者であったり、毎年百万人の少女が妊娠をし高等学校に行く事実があったり、二百五十万人の少女が売春をしている等。しかし、これは単にアメリカだけでなしに、ヨーロッパもそうであります。先進国全体の一つの傾向であります。先進産業国の共通の問題であります。産業社会の社会的な問題が大きくあらわれておることに、未来に生きる青年の現在の産業社会に対する告発ではないかとすら思うのです。  人類は、数百万年の狩猟時代、一万年の農耕時代、そして三百年の産業社会、その産業社会のそれが、いまのあらわれている姿はひずみなのだろうか、第四の新しい時代の兆しなのだろうか、私は常にそのことを疑問に思っておるのです。占領軍のせいさ、アメリカ好みのそのことによって今日の青少年の非行暴力があるのだなどという、そういう狭い視野でなしに、もっと広い視野から考えなかったならばこの問題は解決するわけでもなし、中曽根内閣が内政の重大問題だと言ってここに取り組むところの姿勢を具体的に受ける文部大臣の姿勢ではないと思うのです。そういうことも含めて、大臣の御所見を承りたい。
  214. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 新聞記事をもとにしてでございますが、いまの問題はそう単純なものじゃないと私は思っておる。占領政策がこれの全部の原因だなどと私は考えておりません。これにも根があるということを申し上げておるわけです。極端な個人主義、極端な何といいますか自我主義、他人のことを思わないというような、そういう社会を奨励してつくってきたところに一つの原因があるということを申し上げておるのでありまして、これが全部の原因だとは思いません。  ただそれから、私もこんなに経済が発展することが、こういう状態一体人類の幸せになるのかということを疑問に思っている一人であります。しかし、これが終わりでなく、人間はまた知恵が出ますから、これを境にしてまたいい方向に向かう努力をするのじゃないかという考えも持っておるわけでございます。
  215. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私の三十分が来ましたから、関連質問土井たか子先生が外交、防衛問題――青少年の非行暴力と外交、防衛とは無関係なのに何で関連だとおっしゃるかもしれませんが、実はそうでないのでありまして、しょせん関連があることはやがてわかるだろうと思いますので……。
  216. 久野忠治

    久野委員長 この際、土井たか子君より関連質疑の申し出があります。木島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。土井たか子君。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま木島委員の方からの御質問の中にもございましたが、中曽根総理の訪米は、まことに国民の間では不人気でございます。非常に人気が悪くなってきているというかっこうでございますが、まず安倍外務大臣にお尋ねをさせていただきます。  中曽根総理がアメリカで、日本はアメリカとの運命共同体という認識を持って臨まれるということになりましたが、アジア、ソビエト等も含めまして、外交を行いますのに、このようなことを言って、外務省としては外交をやりいいというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、その辺からお尋ねをさせていただきます。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、この日米首脳会談は、基本的には日米間のいわゆる同盟の再認識といいますか、日米間の信瀬を高めたという意味においては成功であった、こういうふうに思っておりますし、日本外交というのはやはり日米外交が基軸でございますから、そうした信頼の上に立って、これからアジア外交あるいは対ソ外交にしても、これは対ソ外交にしてもいたずらに対立を好むわけじゃないのですから、対話を進めていくとか、いままでの基本的な外交の方針といいますか枠組みというものは変わらないと思いますし、そういう上に立って努力をしてまいりたいと思うわけでございます。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 それはいままで外務大臣ずっと言い続けられているところでございますが、運命共同体ということをはっきり言われたことによって、より外交問題がやりやすくなりましたか。これによって外交はやりやすくなったかどうかを私は承らせていただきたいという質問なのです。その点いかがでございますか。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは総理大臣の発言といいますか、そういうもので全体を判断するというわけにもいかないと思いますし、この運命共同体というのは、総理に言わせますと、日本とアメリカが同じ価値観を持っている、そうしてまた経済的にも膨大な交流関係がある、だから、そういう意味での運命共同体ということを言ったのだ。私は、それなら日米関係そのものを非常に象徴しているのじゃないか、こういうふうに思っておりますし、そういう発言が世界的にそう大きな反響を呼んだとも思いませんし、悪い影響を与えたとも思いませんし、私は、外交を進めていく上においては、もちろん信頼関係が高まったという意味においてはやりやすくなってきた、全体的に言えばそういうことだと思います。
  221. 土井たか子

    ○土井委員 これは後で出てくる問題にさせていただきます。  日本はアメリカに対して運命共同体と言ったのですね。さて、アメリカは日本に対して同じような言葉を用いてその認識を披瀝されておりますか。アメリカも日本に対して運命共同体だと言われているのですか。いかがです、この点は。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 聞きますと、英語では運命共同体という言葉はないということです。ドイツ語では、たとえばゲマインシャフトとか私、聞いておりますけれども、英語ではそういう言葉はないと聞いておりますが、アメリカも日米関係で安保条約を結んでおりますし、日本が攻撃を受けたときはアメリカがこれを守るということをはっきりと条約の上にうたっておるわけですから、そういう意味においてはアメリカも日本との間には非常に深いつながりといいますか関係を持っておるということは、はっきり言えるんじゃないかと思います。
  223. 土井たか子

    ○土井委員 関係状況をお尋ねしているわけではないのです。安保条約があるという条件は日本も同じなのに、わざわざ日本が断って運命共同体と言っているところが非常に問題なんです。アメリカ側は日本に対して運命共同体と言っていないのですよ、いまの御答弁からしたって。そういうことを具体的に日本に対してそういう言葉を用いて披瀝しているという事情がないのです。  さらにお尋ねをいたしますが、アメリカに向かわれる前に韓国にいらしたわけでありますが、韓国の場合は、ここに私は持ってまいりましたが、八一年の五月十五日に時事通信の韓国訪問団に対しまして全大統領は、八〇年代に対処するには運命共同体であるとの認識がある、次元の高い経済協力が望ましいと日本に対して具体的に披瀝をされているのです。日本側もこの韓国の認識と同じように運命共同体という認識をお持ちになって韓国側とお話をなすっていますか。いかがですか。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは運命共同体という言葉の問題もあるわけですが、日本と韓国との関係から見ますと、隣国であるし、とにかく仲よくしなければならない。そういう立場で経済協力あるいは首脳会談というものも行われたわけでございますから、そういう考えで今後とも進んでいけばいいんじゃないか、こういうふうに思います。  韓国がどういうことを言っているのかということは韓国の問題ですから、日本としては外交の中では別にことさら運命共同体という言葉を使っているわけではありません。
  225. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、日本はアメリカに対して運命共同体ということを具体的に言われた。アメリカは日本に対してそれは言っていない。韓国は日本に対して折あるときにそういう運命共同体であるということを言われている。日本は韓国に対してそういうことは言っていない。こういう関係にあるわけであります。  さて、その韓国との間で、これはいま国内ではひとり歩きをしております観がございますが、四十億ドルの対韓援助というのは国対国の約束になっているわけでございますか、いかがでございますか。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは約束ということではありません。これは日本側としてのめどを示しただけでございまして、双方で合意した約束ということではないわけであります。経済協力というのは、日本の経済協力の方針というのは積み上げ方式ですから、そういう中で大体めどとして四十億ドルぐらいになるでしょう、こういうことを一方的に言っているだけであって、約束ではない。
  227. 土井たか子

    ○土井委員 これから積み上げていく、そのめどが四十億ドルであると言われたにすぎない。ということになってまいりますと、さあ、そこでお尋ねをしたいのですが、これは向こう何年間かの積み上げになってまいりますね。その間、たとえば七年間全体の積み上げが四十億ドルということを一応の目安というふうに考えておられると理解をいたしましょう。この間にいつまでも自民党が政権をとっているとは言えないのです。政情も変わっちゃうのです。どのように変わるかというのは予測できないのですよ。日本の国内の政情も変わる。もちろん、言うまでもなく財政のいろいろな状況も変化をしてまいります。国外からも、もうすでにASEANの方らも聞こえてまいっておりますとおりで、援助の中身に対しての要求も、対韓関係がこうなってまいりますと、強くなってくるということも考えられます。そうなると、これからずっと積み上げてまいりまして、さあいまの四十億ドルをめどにと言われているときが来て、中身が十億ドルになっても、これは背信行為ではないのですね。十五億ドルになっても、これは背信行為ではないのですね。別に四十億ドルにこだわる必要はないのです、約束じゃないのだから。そういうことでしょう。
  228. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは積み上げ積み上げていくわけですから、たとえば五十七年度もいま交渉していますけれども、韓国は六百億円とか七百億円とか言っているのですが、日本の場合はプロジェクトを精査してやるわけですから、四百億ぐらいしか認めざるを得ないということで、いま交渉を進めておるわけです。これは毎年毎年単年度ごとにやっていくわけですから、その結果として、めどとして四十億ドルになる可能性はある。  これは中国も同じことなんです。中国もずっといままでやってきているわけですから。これも五年間が終わりまして、三千数百億が終わりまして、約束どおりやって、約束といいますか、めどどおりやったわけですが、これから後の五年間を中国は六十億ドルというふうな要請も十二プロジェクトについて出しているわけです。これについても毎年毎年単年度で行くわけですから、私はこれからいろいろと変化があることは政治の上でも変化があると思いますけれども、単年度ごとでやるわけですから、それは差し支えないことだし、そういう日本の経済協力の基本方針を変えるわけにはいかない、それはもうそのとおりであります。
  229. 土井たか子

    ○土井委員 したがって、いまの御答弁からすると、四十億ドルと別に約束したわけでもない、これが一つ。単年度の積み上げでいうからどうなるかわからない。四十億ドルにならなくても、中身が十億ドルぐらいになっても約束違反ではないし、背信行為でもない、こういうことに相なる、こういうふうに理解させていただいてよろしゅうございますね。
  230. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま韓国が出しておるプロジェクトを日本で大体これから七年間ぐらいの間にいろいろと調査をしまして、概略的にそのプロジェクトを進めるということになれば四十億ドルぐらいになるだろうというめどなんですが、しかし、そのプロジェクトそのものがどういうふうに変化するかわからない。それは日本側の事情もありますし、韓国側の事情もあるわけですから、すでに五十七年度においても、韓国の出したプロジェクトについてはわれわれとしても受け入れられないという面もあって、いま交渉を進めておるわけですから、そういう一つの概略的なめどであって、単年度ごとに積み上げて、その結果としてそうなればそのめどを達成したということになりますが、そういう両国の合意が単年度に煮詰まらなくてそういう結果にならなくても、両国間で合意しなければ経済協力というものはできないわけですから、私はこれはやむを得ないことである、しかし、お互いにそういう努力はしていこうということではあるわけです。
  231. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いまの御答弁からしたら、四十億ドルにならなくたって仕方がない話だ、場合によったら十億ドルということも、事実上の問題としてあり得る問題だということに相なるかと思います、実情からすれば。  さて、そうすると、場合によったら中断をしても約束違反でもないというかっこうだろうと思いますが、いかがですか。
  232. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん約束ではありませんから、両国が単年度で――日本は単年度でやるわけですから、その日本の方針によって経済協力をするわけですから、それによっていくわけですからね。最終的にはどうなるか、いまの情勢でいけば大体四十億ドルぐらいはめどとしていけるだろう。これはもうすでに中国についてはそういうめどを達成したという実績もあるわけですから、これを積み上げる結果どういうことになるか、日本としては、いまの韓国の提出しているプロジェクトを日本がいろいろ調べた結果、大体七年間で協力のめどとしては四十億ドル程度にはいく可能性がある、めどとしてはいくのじゃないか、そういうふうに言っておるわけで、あくまでもこれは約束ではないわけです。
  233. 土井たか子

    ○土井委員 るる言いわけめいたこともおっしゃいますけれども、要は、約束ではないということのために、単年度積み上げをやっていって、その中身がどうなるかまだわからないということなんですね。したがって、十億ドルになるかもしれません。場合によったら五億ドルでとどまってしまうかもしれない、極端なことを言えば。もう一つ言うと、中断のやむなきを得るという事情も起こってくるかもしれない。こういうことも考えておかなければならない中身だろうと思います。  さて、この日韓の間で安全保障のお話をされたのかどうか。ちょっとお尋ねをしたいのですが、日本政府はソビエトを潜在的脅威というふうに考えておられるのは、もうこの国会予算委員会の席でも明白になっておりますが、さて、韓国はソビエトを脅威という認識を持って臨んでおられるかどうか、この点はいかがでございますか。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 韓国のそういう立場は、私は明確には首脳会談等で聞いておりませんが、韓国はとにかく北、いわゆる北鮮というものとの間に非常に厳しい緊張関係にあるというのが韓国自体のいまの非常な強い認識になっておる、こういうことがはっきり言えるのじゃないかと思います。
  235. 土井たか子

    ○土井委員 いま北とおっしゃったのは、ソビエトも含んでいるのですか、いかがですか。
  236. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 僭越でございますが、事実関係でございますので、私から……。  先ほど大臣が御答弁いたしましたように、韓国は北朝鮮を脅威というふうに考えておりますが、ソ連につきましては脅威という言葉を使っていないというのが私の理解でございます。
  237. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、日本はソビエトを脅威と思い、韓国はソビエトを脅威という認識を持っていないと。  さて、そうすると、いまも外務大臣がおっしゃった北というのは、朝鮮民主主義人民共和国ということを認識するということに相なるかと思いますが、そのとおりでございますね、大臣
  238. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 韓国が脅威と認識しているのは北朝鮮であるということです。
  239. 土井たか子

    ○土井委員 日本は朝鮮民主主義人民共和国を脅威というふうに認識をいたしておりますか。これは委員長もこういうことに対しては大変強い関心をお持ちでいらっしゃるはずでありますが、大臣、いかがですか。
  240. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私の判断では、確かに北朝鮮と日本との間には国交はありませんけれども、日本が北朝鮮に対して脅威というふうな認識は持っておらないと思います。
  241. 土井たか子

    ○土井委員 さあ、そういたしますと、今回のこの共同声明なるものは、これは何でございますか。この四項のところを見ますと、「特に朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含む東アジアの平和と安定にとつて緊要である点について」、その次です、「認識を共にしつつ、」とあるんですよ、これは。日韓間でこういう事情について具体的に話を詰められた上での共同声明でなければ――共同声明は重いですよ。共同声明の中身というものは、いま聞いた限りにおいても韓国と日本とのアジアにおける認識の上において差がある、違いがあるということがはっきり言えるわけでありますから、これはまことにおかしいということをまず言わざるを得ないのです。大臣、どのようにこれをお考えになりますか。
  242. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 共同声明というのは、おっしゃるように、非常に私は重いと思いますし、今度の日韓首脳会談ではっきりしておりますのはこの共同声明だけでありますが、確かにこの四項で「特に朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含東アジアの平和と安定にとって緊要である点について認識を共にしつつ、」これはこれまでの、従来の日本の認識であるわけでありまして、これに対して韓国も同じ認識を示したということでございますから、日本のこれまでの長い間の政府の認識というものは変わっていない、そのままをこの共同声明に述べたということであります。
  243. 土井たか子

    ○土井委員 国際情勢についての意見交換をし、朝鮮半島における平和と安定の維持について認識をともにするという前提には、いま申し上げた具体的な問題についての認識が一致していなければこういうことは言えないのです。なぜかというと、その次に「この地域の平和と安定及び繁栄のため今後とも互いに努力していくことを確認した。」とあるのですから。ちぐはぐで、どうしてお互い努力し、協力し合うことができるのです、平和と安定のために、そうして繁栄のために。これはもう基水的なことですよ、外務大臣。基本的な認識において、日本考えておることと韓国が考えておることとの間で差があるというよりも違いがあるのです。大変な違いがある。こういうことを度外視して、どうしてこの四項というものを具体的に生かすことができますか。まことにインチキだということを言わざるを得ない。
  244. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私から基本的に申し上げますが、基本的には、私は、この第四項の共同の認識というのは間違っていない。日本と韓国の基本認識というのは間違っていないと思うんですね。というのは、「朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含む東アジアの平和と安定にとって緊要である」、これはまさにそのとおりである、こういうふうに思っておりますし、これまでの日本の政策の基本である、こういうことですから、これに対して韓国もこの認識をともにするということでございますから、決して両国の関係、両国の認識が違っておるというふうなことが共同声明から出てくるということではない、こういうふうに考えております。
  245. 土井たか子

    ○土井委員 それはすでに出た共同声明でございますから、るる質問を申し上げても、外務大臣としては、つじつま合わせの言いわけめいた御答弁しか恐らくおっしゃらないだろうと思うのです。  さてそこで、場所をアメリカにまた移しますが、中曽根総理はワシントン・ポスト紙の記者会見で、はしなくも四海峡と言われた。四海峡と言われて、四つ目はどこであろうかというのは、これは大変な問題になったわけでありますが、恐らくはアメリカに向かわれる前に韓国にいらしているという事情ももちろん加味をされるということがございまして、朝鮮海峡のことであると、国民は言わず語らずのうちに、この四海峡の四つ目の問題にだんだん認識を持つということになってまいっております。  さてそこで、お尋ねを進めたいと思うのですが、朝鮮海峡には公海部分がございますね。朝鮮半島有事のときに韓国だけの意思で海峡を封鎖しようというとき、日本はどうするわけでございますか。
  246. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 一般的な形でお答えしたいと思いますが、沿岸国が、いわば交通の要衝でありますところの海峡というものを自分の、たとえ自衛権の行使の一環としてでも、他国の利害というものを無視して一方的にやるということは、国際法的に言っても認められないところであろうと思います。
  247. 土井たか子

    ○土井委員 国際法的に言っても認められないことであろうと思いますじゃ、これは答弁にならないのです。朝鮮半島有事のときに、韓国がこの朝鮮海峡を韓国だけの意思で封鎖しようというとき、日本はどうするかということをお尋ねしているのです。何もしないで、それは仕方がないことだというふうにお認めになるのですか。いかがでございますか。どうなさいます。まだ一般論を聞いているわけじゃないのです。そんなことは国際法上許されないという問題じゃない。ちょっとお尋ねします。いま申し上げたことに対してまずお答えください。
  248. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 全く理論的なケースとしてお答えしたいと思いますが、先ほど私が申し上げましたことの当然の帰結といたしまして、仮に韓国がそのような行動をとろうといたしましても、それは当然海峡を隔てた反対側にある沿岸国でありますわが国の意思を無視して行うことはできない、こういうことになろうかと思います。
  249. 土井たか子

    ○土井委員 日本が朝鮮海峡に対して海峡封鎖をしようというときには、どういう措置をおとりになりますか。
  250. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 具体的などういう措置をとるかということを私から御答弁申し上げることは適当ではないと思いますが、当然先ほどの裏返しの問題でございますので、わが国の一存ではそういうことは許されない。したがって、反対側にある国とも十分話し合いを行わなければならない問題である、こういうふうになろうかと思います。
  251. 土井たか子

    ○土井委員 さあ、いままで海峡封鎖の問題については、この当予算委員会でしばしば取り上げられてまいりました。大約を申し上げれば、ケース・バイ・ケースのようなかっこうで論議が進んでおります。大変大切な原則的なことからきょうはお尋ねを進めてみたいと思います。国際法的に詰めたいと実は私は思うのです。  海峡封鎖をすると言いますね。この国際的な根拠と申しますか、国際的な根拠になる法と申しますか、これは何でございますか。
  252. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 法的な根拠といえば、これは一般国際法あるいはその中に入ります海洋法の問題であろうというふうに考えます。
  253. 土井たか子

    ○土井委員 海洋法で封鎖の問題を決めておりますか。どうです、条約局長
  254. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員の御念頭にあるのは成文化された一連の公海条約等の条約が御念頭にあろうかと思いますが、これらの条約そのものといたしましては、もちろん過去においても政府から御説明申し上げているとおりに、戦時においてそのままの形で適用されるということはございませんが、しかしながら、そういう国際法の中にございます法理というものは、有事あるいは戦時の場合においても当然妥当する面があろうかと思います。
  255. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと局長は混乱をなすっておるようですね。これは、封鎖について国際法上の根拠は何でございますかということを聞いておるのです。海洋法というのは、公海自由の原則というのがございまして、あくまで公海というものは自由航行というものが保障されなければならないという原則を決めておるのが特徴なんです。よろしゅうございますか。これは平時国際法と申し上げていいでしょう。あくまでこれを決めてるにとどまるんですよ、海洋法も。いま問題にしているのは封鎖の問題なんです。封鎖を決めている国際法というのはどんな国際法なんです。国際的に根拠になる法というのはどんな法なんです。これをひとつはっきり言っていただきましょう。こんな基本的なことを抜きにして、海峡封鎖だの、やれ海洋封鎖だのと言ったって、これは通用しませんよ、国際的に。どうです。
  256. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員御指摘のとおりに、直接いま御質問になっておられますいわゆる海峡封鎖というものにつきまして定めておる具体的な成文の条約あるいは国際法というものはございません。
  257. 土井たか子

    ○土井委員 条約局長、そういうお答えなさってよろしゅうございますか。私は調べてきたんです。厳然としてありますよ。もう一度調べ直して出直していただきましょう。これは本当に大事な問題なんです。このことからそれをはっきりさせていただかないと、封鎖といったってこんなものは国際的に問題にならないんですよ。こういうことについても、ございませんなんて断言をされるようじゃ、これは条約局長の値打ちなしだ、本当に。調べ直して出直してください。  委員長、お願いしますよ。これは少し調べていただかないと。それから、私ももう一度出直します。
  258. 久野忠治

    久野委員長 政府委員答弁を求めます。
  259. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員がどういうものを御念頭に置いて御質問になっておられるか、私よくわかりませんが、国際法学者のいろいろな文献を見ましても、ただいま御議論になられておりますような海峡における武力行使、現在の国連憲章のもとにおきます海峡における武力行使について明確な規則というものは存在しないというのが現在の国際法学者の意見であるというふうに私は理解いたしております。
  260. 土井たか子

    ○土井委員 質問のすりかえをなさらないようにお願いを申し上げます。  海峡における武力行使なんて、私はただの一言も言っていないのです。封鎖について国際的根拠になる法は何でございますかと聞いているのです。封鎖ですよ。御答弁の上でいま勝手に私の質問をつくり直しておっしゃっている感がございますから、もう一度答弁をしていただきましょう。
  261. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まことに申しわけないのでございますが、私、委員の御質問を別にすりかえたつもりは毛頭ございませんで、海峡封鎖と称する武力行使につきまして、国際法で明確な規則を定めたものというのはございませんということを申し上げておるわけでございます。
  262. 土井たか子

    ○土井委員 海峡封鎖と私は言っていない。封鎖と言っているのです。よろしゅうございますか。海峡であろうと領海であろうと公海であろうと、これはそれを限定して私は言っていないのですよ。特に公海について言うならば、平時国際法として海洋法で公海自由の原則というのがあるのです。これはもう言うまでもない話で、それは平時国際法なんです。よろしゅうございますか。その公海についても封鎖を決めている、海峡についても封鎖を問題にされている、封鎖ということを問題にしている国際的な根拠になる法というのはどんなものかということをいまお尋ねしているのです。おわかりいただけるでしょうか。これはあるのですよ。
  263. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 どうも私、委員の御質問に対して必ずしも十分理解ができないわけでございますが、戦前のいわゆる中立法規あるいは戦時国際法と言われたものとの関連での封鎖ということについての御質問であれば、それはまた別の問題かと思いますが、しかし、その場合におきましても、戦前のいわゆる伝統的な戦時国際法におきます封鎖のルールというものが、今日の国際法のもとでそのまま妥当するというふうには考えられておりませんので、その御質問であれば、いま私が申し上げたことになろうかと思いますが、それ以外のものにつきましては、大変申しわけございませんが、私の念頭に浮かぶものはございません。
  264. 土井たか子

    ○土井委員 その戦時国際法がいま国際的には妥当しないと言われているが、それが妥当しないというそのいきさつをはっきりしていただきましょう。これは国際慣習法化して、慣習法としては現に生きていますよ。どこで局長は、それがもう生きていないというふうに勝手に認識をされているのですか。
  265. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 戦前の伝統的な国際法、戦時国際法というものがそのままの形で妥当しないということは、従来から申し上げておるところでございます。もちろん、すべてないということではございませんが、戦後におきましては、これは委員には釈迦に税法でございますが、国連憲章のもとで自衛権以外の武力行使というものが認められなくなったという状況のもとにおきまして、戦前の伝統的な国際法のもとでのいわゆる中立法規というようなものがそのままの形では適用にならないということは、従来から政府が申し上げているところでございます。
  266. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、具体的にお伺いしますが、局長は戦時国際法規として認識をされているが、どういうものですか。具体的に何を認識されていまそういう御答弁をされているか、明らかにしていただきたいと思います。
  267. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今日の国際法におきましては、伝統的な戦時国際法の中でいわゆる人道法と称せられておりますような、各種の戦闘手段、行為についてのいろいろな人道的な考慮からの制限というようなものはそのまま今日においても妥当すると思います。しかしながら、たとえば典型的な例で申し上げますと、中立法規に伴います中立国の義務でありますとか、それに対します交戦国の中立国の中立の尊重義務でありますとか、そういうようなものは今日の国連憲章のもとではそのままの形では妥当しないということでございます。
  268. 土井たか子

    ○土井委員 そんなものじゃないでしょう。具体的に封鎖ということを決めている、決め手になる戦時国際法親というのがあるのです。それは何を認識されておりますかと私は聞いておる。お答えいただきたいと思うのです。
  269. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 封鎖につきましても、たとえば今日の国連憲章のもとでは自衛権以外の武力行使は認められませんので、たとえば戦前の平時封鎖というようなものは、一般的には今日の国連憲章のもとでは違法な実力行使というふうに認められるだろうと思います。そのような意味で、封鎖に関するルールも今日の国際法のもとにおきましてはいろいろ変遷を遂げておりまして、国際法学者の間におきましても、今日そういうものについての明確なルールが、戦前と異なりまして存在しているというふうには認識されておらないだろうというのが私の理解でございます。
  270. 土井たか子

    ○土井委員 ここは学会の場所じゃないのです。よろしゅうございますか。学識経験者の意見は意見としてそれはあるでしょう。それの説明をしなさいと私は言っているわけじゃないのですよ。現実にあなた、外務省にいて、外交問題にタッチしている官僚でしょうが。お役人なんですよ。そういう立場を忘れないで、いま私の質問に対して、答えは質問に対する答えをやっていただきたい。  一体、戦時国際法としてある、封鎖に関係をする、それを決めている具体的な国際法というのがあるのですが、先ほどそれは国連のもとで意味を持たないというふうな趣旨を局長自身はおっしゃっているのだけれども、具体的に国際法のどういうものを指して意味を持たないとおっしゃっているのかを言っていただかないと、私にはよくわからない。どういうものを意識してそれは意味を持たないとおっしゃっているのか、その主体をはっきりしてもらいたいのです。あなた自身がおっしゃっている戦時国際法のこの封鎖ということを決めている法規はどんなものでございますか。具体的にあるのです。どういうものを認識されているのですか。
  271. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 土井委員に対して大変申しわけございませんが、もし私ども不勉強であればお許し願いたいのでございますが、土井委員の御指摘のような、封鎖について今日一般国際法として認められているようなルールが成文あるいは条約の形で存在するということは、少なくとも私の知る限りございません。
  272. 土井たか子

    ○土井委員 さて、もうこれはいろいろな逃げ口上にしかすぎないと思うのです。具体的には一八五六年のパリ宣言があるのです。さらにおくれて一九〇九年のロンドン宣言というのがあるのです。このパリ宣言並びにロンドン宣言において、具体的に封鎖ということを決めているのですが、戦前これを具体的に日本の国内法で決めた法があったのですが、防衛庁長官、御存じでしょうね。
  273. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 機雷に関する日本が加入した条約があることは存じております。
  274. 土井たか子

    ○土井委員 機雷じゃなくて、私はいま封鎖の問題を問題にしているのです。どういう手段で封鎖をするかはちょっと後におきましょうよ。封鎖ということについて具体的にこれを取り決めた国内法があったことを御存じだろうと思うのです。ありましたね。どうですか。御存じない……。そういうことも調べず、封鎖封鎖といまおっしゃっているのですか。これはまたいいかげんなことだ。基本的なこういう問題を国際的にはどういうふうに取り扱っているか、いままでの過去の事情として日本としてはどういう取り扱いをやってきたかということくらいは調べた上で封鎖の問題には取りかかってくださいよ。いまの封鎖はひとり歩きをやっちゃっているのです。これは日本が勝手にやったらそれで済むという問題ではないのですよ。いかがです。
  275. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 たびたび答弁させていただいておりますように、わが国に対する武力攻撃が発生いたしましたときには、自衛のために最小限度の範囲内において、わが国を攻撃する相手国の艦船の通峡を阻止することもわが国の自衛権の行使として許される、こう考えておるわけでございます。そしてその場合に、通峡阻止という言葉を私どもは使っておりますが、あえて封鎖という言葉を避けておるわけでもございますけれども、通峡阻止の手段としては、艦船、艦艇あるいは航空機、こういったものの総合的な累積効果を考える。ただし、あるいは機雷を敷設する行為もその中に行われることもあり得べし、こう考えております。ただし、そのときに、機雷を敷設するときには、先ほど私ちょっと答弁させていただきましたように、日本の加盟いたしました過去の条約がある、こういうことでございます。
  276. 土井たか子

    ○土井委員 条約の点については、加盟した過去の条約があるという認識を防衛庁長官としては持っていらっしゃるのだけれども、さて、戦前に日本の国内法があったことについての御認識は全くなかったですね。それは御存じなかった。  さあ、それじゃ、ここで出して申し上げざるを得ませんが、海戦法規というものがあるのです。大正三年につくられているのですが、まさにこの中の封鎖というところはロンドン宣言そのままの引き写しですよ、日本としては。ロンドン宣言そのままの引き写しなんです。そして、言うまでもありません、日本の海戦法規そのものはいまはもう無効です。姿を消して、消えてなくなっているわけでありますが、しかし、ロンドン宣言そのものはただいまも国際慣習法としてまかり通っている。これは、さっき学者の中にはということを局長が言われましたが、私も学者の見解を調べてあるのです。学者の見解の中には、戦争法という項目をわざわざ新たにして、封鎖ということでるる述べてある中身は、国際慣習法として有効であるという説ですよ。  さて、このロンドン宣言の中にどういうことを封鎖について決めておりますか。こういうことをしないと有効でないと決めている問題がある。どういうふうに決めておりますか。
  277. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ロンドン宣言は、ちょっと私いま手元にテキストを持っておりませんので大変申しわけございませんが、封鎖でございますとか海上捕獲等についての一連の規則を定めたものでございますが、これは私の承知しておる限り、結局発効いたさなかったものでございます。
  278. 土井たか子

    ○土井委員 日本は署名をしたけれども発効いたさなかったというのが事実上の経過でありますけれども、国際慣習法として生きているということの認識は国際間にあるということが現実の問題だと、あなたが先ほど引き合いに出された同じ学会に属する学者の見解としてございます。私もこれは正当な意見だと思う。いろいろ争いはあるけれども、国際的にこの条約は意味がないとか慣習法としても認められないなどということをはっきり決めた場所はいままでにないでしょう、国際間において。そういうことになってくると、国際慣習法として有効だということを言わなければならないと思うのです。  さて、非常に大事な決め手は、封鎖が有効になるのに条件を決めているのです。こういう条件を満たさない限りはこの封鎖は国際的に認められないという条件を決めているのです。しかし、こういう条件を決めていることに即応して、先ほど申し上げたとおりその部分の引き写しのようなかっこうで戦前の日本の海戦法規というのが条文をきちっとここに持って、三十九条、四十条という条文を起こしているんですよ。そのまま引き写しなんです。このもとになっているのはロンドン宣言の九条なんです。九条の中でどういうことを言っているかという問題は調べていただきたいと思うのです。よろしゅうございますか。これはいま局長ははっきりわかってない。局長の認識も私は、ずれていると思いますけれどもね。  しかしこれは、ここではっきりさせておきたいと思うのは、海上封鎖をすることは平時国際法である海洋法でできることではないと思われますが、いかがですか。
  279. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いまの御質問は、国が海上封鎖というものを平時において行い得るかという御質問でございますか。
  280. 土井たか子

    ○土井委員 もう一度、それじゃ質問を変えて言いましょう。海上封鎖というものは平時国際法で論ずる問題ではないということですねと聞いているんです。これは当然のことですよ。
  281. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 失礼いたしました。先ほど私が御答弁申し上げたことに戻ると思いますが、今日の国際法のもとでは自衛権、当然のことながら国連憲章の五十一条におきまして武力攻撃に対応する場合以外の武力行使というものは認められておりませんので、そのような武力行使としての封鎖という行為が平時において認められるということではなかろうかと思います。
  282. 土井たか子

    ○土井委員 回りくどいのは要らないの。よろしいか。局長のいまの答弁からすれば、封鎖というのは平時国際法で論ずるものではないという結論に到達する、そうですね。平時国際法では論ずる対象にならない、封鎖というのは。そうでしょう、いまの御答弁からすれば。  そうすると、封鎖を問題にする国際法というのは、さっきも局長はすでに言われているのだけれども、平時国際法でなければどういう国際法になるのですか、これは。どういう範疇に属する問題になるのですか、封鎖ということを問題にする国際法ということになってまいりますと。国際的な取り決めとでも申しましょうか。
  283. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げたことの繰り返しでございますが、いずれにいたしましても自衛権行使以外の武力行使は認められませんので、公海におきまして一般的に船舶の通航を阻止するとか、その他のあるいは船舶を捕獲するとか臨検するとか、そういうような行為を自衛権の範囲外のこととして行うということは、これは国連憲章のもとでは認められないということでございます。
  284. 土井たか子

    ○土井委員 そんなことを私は聞いているのじゃないのですよ。自衛権の範囲であろうがなかろうが、海上封鎖、封鎖という行為に対しては、平時国際法の対象じゃないのです、こんなのは。そうすると、そういうことを問題にする国際的な法といいますか、決め手というものはどういう範囲に属するのですかと言っているのです。平時国際法じゃないのですよ。平時じゃない国際法というのはどんな国際法なんですか。
  285. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 それは名前をつければ、いわゆる戦時国際法の分野に入る問題であろうと思います。
  286. 土井たか子

    ○土井委員 戦時国際法の中に入る封鎖ということの取り決めは、国際慣習法としてあるロンドン宣言はいまだに生きているのです。そうしてその中では、封鎖をするに当たって有効にすべき条件というのがちゃんと明確に決められているのです。こういう国際的な措置というものに対して認識なく、ここでいろいろ封鎖封鎖と言ってみたってこれは始まらないのですよ。日本が勝手にできることかできないことかと言ったって、それは国際的に通用しませんわ。国際的な観点からすると、この国際法の取り決めがどのように決めているかということを改めて調べて出直していただいてから、私はこの問題に対してさらに質問を続行いたします。
  287. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ロンドン宣言につきましては突然の御質問でございましたので、あいにく手元にテキストを持ち合わせておりませんのでただいま取り寄せております。接到次第テキストに基づいてお答えいたしたいと思いますが、いずれにしても個々の規則の中身を離れまして、ロンドン宣言自体が今日一般国際法としてそのまま生きておるということにつきましては、私どもは必ずしもそういうふうには認識しておらないわけでございます。
  288. 土井たか子

    ○土井委員 これは資料もないと。しかし、初めにはそんなことを決めた国際法規はないと断言された条約局長ですから、認識の外でおありになったのであろうと思います。にやっと笑っておられるけれども、そうでしょう。少しそこのところをお調べになって、そして出直されたときに私はこの問題を保留して出直しましょう。  どうですか委員長、そのことを認めてください。
  289. 久野忠治

    久野委員長 政府委員答弁を求めます。栗山条約局長
  290. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 最初の段階で私が御答弁申し上げましたときに、先生の御質問を若干私が取り違えたかもしれませんので、その点はおわび申し上げますが、私は実は、委員の御質問はいわゆる海峡における実力行使、いわゆる封鎖という言葉で一般的に御質疑がございますが、海峡における武力行使というものについて今日国際法として一般的に受け入れられている具体的な法規があるかという御質問であろうというふうに理解いたしましたので、そのような法規は存在しないということを申し上げました。私の答弁が必ずしも委員の御質問に正確にお答えしなかったのであれば、その点はおわび申し上げます。
  291. 土井たか子

    ○土井委員 その点は、それはいま言われたとおりです。したがいまして、あと私は待ち時間は、きょうは五分ぐらい残っているわけでありますけれども、もう一度はっきり局長から中身を調べて出直されるということでよりはっきりする問題が後で出てまいります。しかし、これは一つだけ、栗山答弁、二月二十二日の局長答弁でございますが、その中身を見るにつけてもどうも私としては意味がわからない部分もございますから、その点を少しお尋ねをしておいて、あと保留部分というのを置きましょう。  さて、日本有事でない場合、日本は公海部分に封鎖はできません。領海部分もできません。これは当然のことです、日本有事じゃないのだから。ところが、アメリカが極東有事の際に封鎖をするということを言ってきた場合、それに対しての答弁を栗山局長答弁として私が見てまいりましてわけのわからない点が二点あるのです。まず、海峡の「公海部分についてアメリカが日本の了解なしに一方的にやるということは、必ずしも主権の侵害という概念で法的にとらえるということではなかろう、かと思います。」回りくどいのですが、その次です。「しかし、いずれにしても、国際法のもとにおいて認められておるアメリカの権利を越えたものであるというふうに観念されると思います。」と言われているのですが、問題は二つある。「国際法のもとにおいて認められておるアメリカの権利」とは何ですか。もう一点は、その「権利を越えたものである」と言われている「越えたもの」というのは何ですか。この二点をちょっと答えておいていただきましょう。
  292. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私の御答弁申し上げましたことは、公海部分についてアメリカが一方的に通峡阻止の目的で武力行使をすることが日本の主権侵害になるかという御質問でございましたので、私から申し上げましたことは、そこは公海部分であって、したがいまして、わが国の領域ではありませんので、そこに対するアメリカ――まあどこでもよろしいわけでございますが、そういう水域における第三国の実力の行使というものが、日本の主権を侵害するという法的な性格のものとしてとらえるものではなかろう。領海部分であれば当然そういうことが成り立つわけでございますが、御質問の水域が公海部分でございますので、公海部分については主権侵害という形でとらえるべき性格のものではないであろうということを申し上げたのが第一点でございます。  次に、第二点として、しかしながら、アメリカがそういう――一般論として申し上げますと、当然、そういう国際海峡でございますから、沿岸国というものはそういう海峡の通航の確保というものにつきまして特別の利害関係と申しますか、利益を持っておるわけでございますから、そういう利益というものを無視して、第三国がそういう特別な水域において沿岸国の利益というものを無視して実力の行使をするということは、一般国際法の問題として、たとえ自衛権の範囲内ということであっても許されないことであろう、こういう私の認識を申し上げた次第でございます。
  293. 土井たか子

    ○土井委員 そうなってまいりますと、いまの御答弁も釈然としないのです。少しすりかえの部分もあるようにいま私は承りましたけれども、日本からアメリカが戦闘作戦行動で出たいと言ってくる場合ですね。海洋封鎖、封鎖という行為、これは戦闘作戦行動をとるというそのときは、これを取り扱うのは、いまも局長がはっきり御答弁になりましたように、戦時国際法で取り扱うということにならざるを得ないわけですから、幾ら日本は有事じゃない、有事じゃないと言ったって、これは巻き込まれるどころか、みずから戦時国際法の範疇に入る国になっているということにならざるを得ないのですよ、公海部分であろうとなかろうと。よろしゅうございますか。私の言っている意味、わかるでしょうね。アメリカが日本から戦闘作戦行動で出たいと言ってくる場合、公海部分に対してそれは封鎖をするという行為に出るという場合であっても、それを取り扱う国際法というのは、先ほど局長も言われたとおり戦時国際法なんです。もはや平時国際法じゃないのです。これは戦時国際法がそこでは問題になっておりまして、平時国際法というのは眠るというかっこうになるわけです。つまり戦時国際法に突入をして、既存の平時国際法というのは眠ってしまうというかっこうになるわけです。巻き込まれるどころの騒ぎじゃない。日本はもう戦争状態に突入したということが国際的に言える状況だということを言わざるを得ない。これはどうです。
  294. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカでもどこでもよろしいわけですが、そういう第三国の武力行使というものが、国連憲章その他いわゆる戦時国際法というもののルールのもとで行われなければならない、そういう御質問であれば、それはそのとおりであろうと思います。
  295. 土井たか子

    ○土井委員 したがって、そうなってくると、巻き込まれる可能性があるとか、日本は好むと好まざるとにかかわらず、そういうことの巻き添えを食うとか、そんな問題じゃないのです。日本自身が戦闘国になってしまうのです。日本自身が戦争に入っている国になるのです。戦争状況の国になるのです。このことを避けて通るわけにはいかないです。国際的に見た場合に、幾ら日本がいばって、それはあたりは有事であっても日本は平時であるなんて言ったってそうは通用しないと思われるのが昨日の御答弁です。極東が有事でも日本は平時という答弁をされているわけですが、日本からのアメリカの戦闘作戦行動を認めるということは、つまり有事という問題に対してその瞬間にしてゴーということになっているということを、いま申し上げた理屈からいったら認めざるを得ないのです。したがって、幾ら極東有事の場合であっても、日本自身が有事でない限りは平時でございますという理屈は、これで通用しなくなるのです。このことだけをはっきり申し上げて、時間ですから、留保部分は後に回しましょう。  以上で終わりますが、いまの点、栗山さん、一言あったら言っておいてください。
  296. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員長のお許しをいただいて、一言だけ補足させていただきます。  戦時という事態の定義、私必ずしもそういうふうにとらえるものだとは思いませんが、従来から申し上げておりますとおり、日本の施設、区域からの戦闘作戦行動のための基地の使用という問題は、これはいま御指摘のような非常に特殊なケースも含めまして、従来からいろいろ御質疑があるところでございますが、いずれにいたしましても、武力攻撃というものがわが国の近辺で発生しておるという事態が基本的な前提でございまして、そういう事態のもとにおきましてアメリカが自衛権を行使する。その自衛権行使につきまして日本の施設、区域を使用することに日本が同意するということが、そのまま法的に日本を戦争に巻き込むというようなことにはなりませんので、この点は従来から政府が申し上げておるとおりでございまして、そういう意味での伝統的な戦前の中立法規というようなものがそのまま今日の国連憲章のもとでは妥当しない。先ほども申し上げましたが、まさにそういう関連のことも念頭に置きまして私は申し上げたということを御理解いただきたいと思います。
  297. 土井たか子

    ○土井委員 理解できません。したがいまして、これは出直していただいて、もう一度留保部分はいたします。
  298. 久野忠治

    久野委員長 これにて木島君、土井君の質疑は終了いたしました。  次に、安藤巖君。
  299. 安藤巖

    安藤委員 まず最初に、環境庁長官にお尋ねをしたいと思います。  公害健康被害補償法に基づく補償制度、これは民事責任を踏まえた損害賠償制度だということは間違いないと思いますが、どうでしょう。
  300. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 そのとおりでございます。
  301. 安藤巖

    安藤委員 ところで、臨時行政調査会が今月の十四日に最終答申を出そうとしておりますが、その前に第三部会が報告を出しましたが、その中で個別補助金の整理合理化という項を設けて公害健康被害補償協会交付金、これを掲げているわけですね。そして、この補償金を整理合理化の対象にしようとしています。これには公害病患者の会の人たちが、これは命綱を断ち切るものだということで強く反対をしておられるわけですが、これはまさに重大問題だと思います。環境庁は、これに対してどういうふうに対処をしていこうとしておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  302. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 第三部会でいまお話しのような報告が出ておることは事実でございますが、これは部会報告でございますので、いまここで私どもがこの部会報告に対しましてコメントすべき段階じゃない、このように考えておるわけでございます。  しかし、この健康被害補償制度、これをめぐる基本的な問題、いろいろございます。その問題につきましては、これはやはり十分な科学的な知見の上に立ちまして冷静に議論を進めていく必要がある、こういうことで、いま私どもの方でも鋭意調査研究をいたしておる、こういうことでございます。  なお、先ほど民事責任の話が出たわけでございますが、私どもも臨調に対しましては、これは民事責任を踏まえた補償制度であるから、若干一般の補助金とは性格が異なるということはるる説明はいたしたわけでございますが、いま申し上げた第三部会の報告そのものは、これは臨調の判断によって出されておるということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  303. 安藤巖

    安藤委員 いわゆる保護助成のための補助金とは、若干どころか根本的に違うと思うのですが、経団連の幾つか出されております文書によりますと、これは、たとえば許認可等の改善に関する要望とか、あるいは許認可の改善に際しての基準とかというのを見ますと、公害補償制度について、企業に対する賦課金をできるだけ少なくしようというようなねらいがずっと出ているわけですね。この第三部会の報告は、これにこたえようとするものだとしか思えないわけなんです。  ところで、一方これは環境庁からいただいた資料なんですが、公害病の認定患者の数ですね、それから死亡者というのはどんどん毎年ふえているのです。たとえば、名古屋市の中南部地域でも、昭和五十六年三月末現在の被認定者四千四百八十人、それが五十七年九月末四千八百三十五人、死亡者が、その当時五十六年三月までの累計で二百九十五人、それが五十七年九月末では累計で四百十二人、こういうふうにふえているわけですね。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  こういうようなことからしますと、それからさらに、公害病患者だというふうに認定されていない人の数は、認定されている人の数の数倍もしくは数十倍になるというふうにも言われているわけです。こうなりますと、この補償制度というものはさらに一層充実していかなければならぬというふうに思うのですが、その点についてどういうふうに考えておられるか、お尋ねします。
  304. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 ただいま、先ほどお答えしましたように、これはやはり十分な検討をいたしまして、科学的な知見に基づいて――経団連からもいまお話しのような要求もございます、一方、患者側からふやせというような意見もある、両方の意見があるわけですね。ですから、これはどういたしましても十分検討いたしまして、科学的な知見に基づきまして私どもは冷静に判断していきたい、かように考えております。
  305. 安藤巖

    安藤委員 大臣の出席の都合で、私の質疑はこれで一たん中断しまして、関連質問小沢議員の方からしてもらいますので、よろしくお願いします。
  306. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 この際、小沢和秋君より関連質疑の申し出があります。安藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小沢和秋君。
  307. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は二つ質問があるのですが、まず第一に、白島と上五島の洋上石油備蓄基地の問題でお伺いしたいと思います。  いま政府は、国家的プロジェクトとして石油備蓄基地の建設を進めているわけでありますが、本日取り上げるこの二つの基地は、その国家的プロジェクトの一部であります。世界で初めての洋上備蓄方式で、それぞれ五、六百万キロリットルを貯蔵する巨大なものでありまして、二つの工事費を合計すると約四千億円にも達するわけであります。  そこで、まず大臣にお尋ねしたいと思うのですが、着工の見通しであります。昨年十二月の国会では、白島の着工は一応春ごろをめどというふうに言われているのですが、現時点での見通しはどうか。  それから、このときの大臣答弁のニュアンスを改めて議事録で読んでみますと、漁業補償に関連して警察の捜査があったりあるいは起訴されたりしているような人物もいる、だから、こういうような疑惑がなくなったところで、すっきりした形でこの発注をしたいという趣旨だったように思うのですが、その点もう一度確認をしておきたいと思います。
  308. 山中貞則

    ○山中国大臣 おっしゃるとおりでございます。(小沢(和)委員「着工の時期」と呼ぶ)着工の時期については、いま一応警察の捜査は終わって、そして名前は申し上げませんが、漁業協同組合長及びその関連者が検察庁に送られたといいますか、要するに逮捕、送検されたということで、その後そのことの周辺で関連するようなことがあるのかというようなことを静かに見守っているのでありますが、きょう警察が来てくれていると助かるのですが、警察庁は来ているの。後で警察庁にちょっと言わせますが……(小沢(和)委員「それはいいです」と呼ぶ)そうですか。ですから、いまのところ私どもの知る範囲では、それ以外の不正不当な行為があるという報告はありませんので、一応予定どおりにいけるのではないかという感じでおります。
  309. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、漁業補償のほかに、もっといろいろな疑惑が解明されなければならないのじゃないかと思うのです。私は、最大の疑惑は、この二つのプロジェクトというのは、歴史を調べてみますと、白島は日立、それから上五島については三菱が、造船不況の当時に、自分たちの工場を動かしたい、その需要をつくり出したいということもあったのでしょうけれども、民間プロジェクトとして始めた、それが国家計画になっていったわけですね。私は、この計画がそういうふうに変わっていったこと自体に非常な疑惑があるのではないかと思うのです。  そこで、次の質問ですけれども、政府は、いままで民間でかつてそういう計画があったものが国家プロジェクトになったけれども、それは県や市などの誘致があったからであって、一たん取り上げた以上は、それは民間がいままでやっていたようなものとは全く無関係に進めていっているのだ、こういうふうに言われておったと思うのですけれども、そうでしょうか。
  310. 山中貞則

    ○山中国大臣 私の引き継ぎを受けた後の調査においては、その過程において国家備蓄計画にするための不当不正な干渉があったとか裏工作があったとかという事実は認められませんでした。
  311. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いやいや、私がお尋ねしたのは、県や市などの誘致があったから民間で一たん計画があったこういうものを取り上げたけれども、しかし取り上げた以上はあくまで国の責任でやっているので、それまでの計画とは全く無関係なものだ、こういうふうに言っておられたけれども、そうでしょうかと伺っておるわけです。
  312. 山中貞則

    ○山中国大臣 もちろんそのとおりでございます。
  313. 小沢和秋

    小沢(和)委員 しかし、実際に私が調べてみると、この民間で立てられた計画がそのままその後もずっと国家備蓄計画になってからも引き継がれて、それがいわば国家計画という名前で実現される方向に動いていっているような感じがしてならないわけであります。  もうちょっと具体的に申し上げてみますけれども、ここに福岡県の企画開発部が県議会に提出をした資料があります。これを見ますと、その「いきさつ」の中でこう書いておるのです。「石油開発公団の業務に新たに備蓄を加えるという法改正の動きの中で、日立造船は昭和五十三年一月より公団に接触し、白島を国家備蓄基地として積極的に推進する態度を示した。」実は県が誘致する意向などを表明する前にすでに日立造船がこのような形で公団に接触し、ずっと工作をしたということが県の文書の中に書いてあるのです。いかがですか。
  314. 豊島格

    ○豊島政府委員 公団としましては、五十年ごろから共同備蓄会社に対する投融資業務、こういうのを始めるということでいろいろな石油基地に関する情報を収集しておった、その中に当然こういう構想もあるということは知っておったわけでございます。しかし、それを本格的に国家備蓄として取り上げるに当たりましては公団としてもいろいろ概査を行い、その中で地元の県からも正式に要請が出される、それから五十七年度末までに完成するというような点からスクリーンした結果、これを国家備蓄にするということの調査を開始したわけでございまして、民間がこれをやってくれというより、国としてそういう国家備蓄の視点からいろいろ検討していった結果有望なものがあった、そういうことで、県の推薦もあり、そういうふうになったということでございます。
  315. 小沢和秋

    小沢(和)委員 もう一つお尋ねしますけれども、ここに、この前もここで取り上げられました「洋上石油備蓄システム基本計画策定業務報告書」、いわゆるフィージイリティースタディーの文書があるのですけれども、この中に「福岡県から提示された基本構想をもとに概略設計を行った。」ということが書かれているのです。  私はかつて福岡で県会議員をしたこともありますけれども、福岡県にこういう洋上石油備蓄基地の構想を練るような能力などあるはずがないのですね。そうすると、結局これは「県から提示された基本構想をもとに」と書いてあるけれども、実は日立がつくったものそのものを県が出して、それがフィージビリティースタディーの対象として検討されたということじゃないのですか。
  316. 松村克之

    ○松村参考人 お答えいたします。  いま資源エネルギー庁長官からも御説明いたしましたように、この白島プロジェクトについては石油公団といたしまして県に十分御連絡をし、また県からの強い御要望もあって立地候補地点にしたということでございます。  いまお話がございました点についても、県が非常に熱心に御勉強になってデータあるいは資料等をまとめられたというふうに伺っております。
  317. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そんなことがどこで通用するでしょうか。洋上石油備蓄基地というのは世界で初めてなんですよ。しかも、ああいう荒海の、白島と言えば非常な荒海の玄界灘の真ん中にあるのですよ。そこに世界で最初の洋上備蓄基地をつくるというようなことについて、福岡県の何にも知らないお役人さんたちが幾らねじり鉢巻きで勉強したって、あなた、そんなたたき台になるような計画を出せるはずはないでしょう。そういういいかげんなことを言ってはいかぬと思うのです。  いま白島の話をしましたけれども、上五島のことでも一言申し上げたいと思うのですが、上五島の計画については三菱重工が鹿島建設の協力を得て三菱浅海タンク船式貯油システムとして開発したものそのものなのです。そのことについては三菱の人が幾つもの論文を書いているのですが、昭和五十四年十二月発行の「日本造船学会論文集」の中で、そのことについては、「本構想はその後国家備蓄計画の一候補に選ばれ、現在石油公団において安全性、経済性等の詳細検討が進められている。」というふうに、ちゃんと自分たちが開発した案がフィージビリティースタディーで検討されている、それがたたき台になっていることをこうやって証言しているのですよ。違いますか。
  318. 松村克之

    ○松村参考人 お答えいたします。  この上五島あるいは白島のプロジェクトが世界で初めての洋上備蓄であるということは御指摘のとおりでございまして、この構想自体が民間で生まれたということも事実でございます。  ただ、私が申し上げましたのは、このプロジェクトを採択するに当たりましては、県の御要望というものをもとにして公団は独自にFSを行ったということを申し上げたわけでございます。
  319. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうすると、いまの答弁は、結局のところ日立やら三菱の計画というのを事実上たたき台にしたということをあなたは認めるわけですか、認めないのですか。
  320. 松村克之

    ○松村参考人 お答えいたします。  民間でいろいろ検討された技術的なデータというものを参考にさせていただいているわけでございます。
  321. 小沢和秋

    小沢(和)委員 とうとう参考にしたまでは認めたのですけれども、あなた方は参考にしたというふうに言われるけれども、では実際にこの三菱が開発をしたという最初の計画とフィージビリティースタディーででき上がったものと、単なる参考にした程度であるかどうかというのはでき上がったものを見てみれば歴然としていると思うのですよ。こっちがいまの造船学会の論文集に載っているもともとの三菱の案の図なのです。こっちがフィージビリティースタディーででき上がった図なのですよ。ところが、私ずっと比較してみると、それは微細なところはちょっと絵が違うかなと思うところはあるけれども、ほとんどうり二つですよ。これでも単なる参考ですか。あなた方は結局、詳細にでき上がっている民間の計画をフィージビリティースタディーで検討してみて、事実上ほとんどそのままこれでいこうということになったということじゃないのですか。
  322. 松村克之

    ○松村参考人 上五島につきましても白島につきましても、やはりそれぞれの島の形状がございます。あるいはまた水深あるいは気象状態といったようなものがございますし、また潮流の方向等があるわけでございます。したがいまして、そこでそのプロジェクトを検討するとした場合には、ほぼ同様のものになってくるということは事実かと思います。
  323. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ほぼ同様のものになってくるということは、もともと三菱や日立がここのところで、自分の会社でつくりたいというふうに思って描いた絵が、結局自分のところに注文がはね返ってくるような事態にいまずっと進行していっているということになるわけじゃないですか。
  324. 松村克之

    ○松村参考人 企業がどういうつもりでいるかは存じませんが、石油公団といたしましては、これらのプロジェクトについてどのような発注をするかということは全くまだ決定していないわけでございます。
  325. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それはあなた方が決めていないとか厳正にやるとかいろいろにおっしゃっても、たとえばタンク船のサイズをちょっと考えてみたって、日立と三菱以外には受注してつくれないサイズになっているわけでしょう。しかも、その構想をそのまま認めたということになったら、どんなにあなた方が厳正だ、公平だと言おうと、これは日立と三菱に言いなりの値段で注文を出してやらなければいけないという事態になっているわけでしょう。  このことについては、七九年の四月十日のエコノミストがどういう内幕であるかということについてかなり突っ込んだ報道をしておるのです。こんなふうに書いてあります。これは上五島の部分の記事を読んでみたいと思うのですが、三菱がユーザーなどを加えた上五島洋上石油備蓄会社を設立した。「ところが、長期不況による石油消費のガタ減りと、値動きが大きくリスクのある石油を大量に背負い込むことを嫌った民間の石油ユーザーの備蓄意欲が急速に減退する事態を迎えた。窮地に陥った三菱は昨年七月、同備蓄会社の役員会で民間備蓄から国家備蓄方式に切り替えた。国が九〇日間の民間備蓄に上乗せして新たに一〇日分約一〇〇〇万キロリットルを国家備蓄する計画のワク獲得をねらおうというもので、計画の大幅転換をはかったわけだ。これもよくいえば戦術の転換といえる。だが、本当のところは三菱が久保勘一・長崎県知事に、国家備蓄に転換させてもらいたいと泣きついたのが実情である。」こう報道して、次のくだりでこう言っているのです。「久保知事は三菱が民間備蓄から国家備蓄に切り替えを企画した際、こうクギをさしている。「民間備蓄でなく国家備蓄でやるなら、三菱が工事を独占することはできん」。その結果は工事量を三菱八〇、佐世保重工一五、大島造船所五と配分することになったが「三菱はかなり抵抗した」ものの、大筋で話がついたといわれる。」エコノミストにここまで書いてあるのですよ。  これでもあなた方はまだ発注については白紙である、こう言えますか。
  326. 松村克之

    ○松村参考人 当時の久保知事の御発言等につきましては、全く存じておりません。
  327. 小沢和秋

    小沢(和)委員 あなた方がどう言い逃れようと、やがてこれは日立と三菱にあなた方が注文を出すようなことになるだろう。そういうことはわれわれは認めませんけれども、事態はそう動きつつあるのだということを私は改めて申し上げておきたいと思うのです。こういうふうに、日立や三菱などが二千億円というような巨額のプロジェクトを、自分のリスクでやるのじゃなくて国の計画に乗せさせるというためにいろいろ画策したであろうということは、これは十分想像されるわけです。このことに関連をしていろいろ政治家が動いたとか、金が働いたというような話があるわけです。  私は、次に、警察庁にちょっとお尋ねをしたいと思うのですけれども、すでに昨年末の国会で、田中元通産大臣がある人物から二千万円贈られて、同氏がこれは受け取れないということで供託したという事件がここでも問題になりました。これについては、その後御本人から事情を聞いたりしたかどうか。  また、そのときの国会で五十二年九月二十日付の日立グループの会議要録の存在が指摘されたわけであります。その後私もこれを読み返してみましたけれども、満井というフィクサーが、共産党以外の五十六名の北九州市会議員に合計三億ないし六億円を工作のため献金する必要があると報告したとそれには記録されているわけです。この人々の名誉にもかかわることですけれども、これもその後調査されたかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  328. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えいたします。  去年御指摘がありまして以来、福岡県警察におきまして現在までも引き続き、幅広く情報収集中でございます。
  329. 小沢和秋

    小沢(和)委員 どうもいまの話では余りよくわかりませんけれども、それも含めて調査をしておるというふうに理解しておきたいと思います。  この五十二年九月二十日付の会議要録というのを改めて読み返してみたのですけれども、満井忠男というフィクサーが日商の代理人として地元の漁業補償や政界工作を担当し、その見返りとして十五億ないし二十五億の手数料、砂利納入の権利、それから照明工事の請負、今後の基地整備や船の洗浄の権利などをよこせというふうに要求していることが述べられております。  その満井忠勇氏が昨年九月二日には、自民党の大物政治家であります白濵仁吉代議士とともに長崎県土地開発公社を訪れ、上五島の川上貞雄氏などの土地をそのままの姿で売るのではなく、管理ヤードとして造成工事を完成させた上で買い上げてほしいと要望書を提出しております。その日は川上氏などの土地の売買契約調印をすることになっていたわけですが、これでだめになったというふうに聞いております。  これも私は利権をあさる働きの一つではないかと思うのですけれども、当局は御存じでしょうか。
  330. 松村克之

    ○松村参考人 上五島の石油備蓄基地の用地の取得並びに造成につきましては長崎県が行う、これは長崎県にかわりまして長崎県の土地開発公社が代行しているわけでございますけれども、その長崎県が行った取得及び造成した土地を公団が購入する、こういうことでございます。  いま御指摘のございました新聞報道については、私も新聞報道があったということは存じておりますけれども、これは県の問題でございまして、私どもとしては直接関与していないということでございます。
  331. 小沢和秋

    小沢(和)委員 問題は、こういうような二千億にも上ろうかという大プロジェクトに、この機会にもうけてやれということでいろいろなフィクサーやら何やらが暗躍をするというようなことを野放しにしておいたら、これはもう大変なことになるわけであります。だから私は、刑事事件になるとかならないということではなくて、こういう疑惑は徹底的に究明していただきたい。  最後に、いま石油が大暴落をして、省石油化、脱石油化ということもかなり進んでいるわけであります。すでに民間備蓄量が減らされ、幾つかの備蓄タンクの工事も中止をされているわけです。こういう財政危機のときに、四千億円の巨額を投じて国家プロジェクトとして洋上備蓄基地をつくったはいいけれども、結局無用の長物で、空のままで放置というような事態にでもなったら、これはとんでもない話であります。全く三菱と日立をもうけさせただけというようなことになったんでは話になりません。ですから、財政再建のためにも、私はこの際、この両プロジェクトについては抜本的な再検討を求めたいと思います。  時間もありませんからこのことはこれくらいにして、次に、第二に、九州産業大学の補助金不正受給問題に関連してお尋ねをしたいと思います。  この補助金不正事件は、過去に例がないほど大がかりで悪質なものであり、大学をもうけの手段ぐらいにしか考えない鶴岡理事長らのこれまでの大学運営そのものを根本的に改めさせなければ、真の大学の再建はあり得ないと思います。最近、鶴岡理事長は二十五億円を返納し、若干の改善案を提出したわけですが、みずからの進退については二、三年後に退任、つまり当面は居座るぞという態度を表明しているわけです。  私は、このような案はおよそ改善案の名に値しないと考えますけれども、大臣はこの案をどう評価しておられるか。大臣としては今後もあくまで理事長以下の総退陣を要求していくという考えなのかどうか、明確にお答え願いたいと思います。
  332. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 お尋ねの九州産業大学のああいう不正事件は、まことに遺憾に思っております。  そこで、いま小沢さんの御質問のとおりに改善策を文部省として打ち出したわけでありますが、改善策のうち人事についての改善は、先ほどお話しのとおりに、両三年後の体制をつくってからやめる、理事を降格させるとか副理事長を降格させる、いろいろありますけれども、運営の改善については大体文部省から打ち出した方針になっておりますけれども、運営体制の構成についてはまだ文部省から要請、勧告したような状況になっておりません。でありますから、再度その問題を指摘して善処を求めておる、これが現状でございまして、まだその後の返答は参っておらないというのが現状でございます。  細かく申し上げると長くなりますから、筋だけ申し上げておきます。
  333. 小沢和秋

    小沢(和)委員 あくまで退陣を要求するわけですか。
  334. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 あくまで退陣要求ということをここで申し上げかねるわけでございますけれども、いわゆる私学のことでございますから、できるだけ自主的に改善策を講じてもらいたい。いまの回答だけでは文部省が期待しておりますような改善策になっておらないということで、再度その勧告を申し上げておるわけでございますから、もう少しその事態を待って、その上で検討したい、かように考えております。
  335. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今回の補助金不正受給については、鶴岡理事長などは、結果としてはそうなっただけで悪意はなかったというような弁解をしておるようであります。しかし、いわゆる教授陣のでっち上げというようなことは、この補助金の不正受給に関連してだけじゃないのですね。ほかにもいろいろあっているのです。  私がひとつ調べた事例を申し上げたいと思うのですが、五十六年に開設が認められました経営学部国際経営学料というのがありますが、この設置認可の申請のときにもそういうでっち上げをやっているわけです。いまお手元に「九州産業大学の国際経営学料増設時の教員履歴(身分)詐称の実態」という資料を差し上げております。おれは学科新設の申請のときにも、大学の設置等の認可の申請手続等に関する規則というものの第二条に基づいて、全学部の教員の履歴書などを提出しなければいけないということになっているわけですけれども、この出された申請書類の中から私が整理してこういう資料をつくったわけであります。  これを見ますと、五つの学部全部にわたって、実に四十六名の教員が実際と違っているわけです。いままでもその実態が違うとか、あるいは不足しているとかいうようなことが言われましたけれども、それは新聞の報道では私は十数名というふうに書かれておったように思うのですが、四十六名なんですね。それが、助教授を教授と偽ったものが十二名とかいうようなのはまだ序の口でありまして、不明とか不在とかいうようなものが十三名、どこを探してもそういう人は見当たらないというような人が堂々と申請書類の中につけ出されているわけです。  警察庁にお伺いをしたいと思いますけれども、こういうような申請書類を出したりする行為というのは、私は私文書偽造、刑法の犯罪行為ではないか、これは捜索する必要がある問題ではないかというふうに考えるけれども、いかがですか。
  336. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 御質問の件につきましては、私どもの方は状況を把握していないわけでございます。  ただ、お尋ねの点、私文書偽造になるかならないかという点でございますが、これは作成権限がある者が作成するかどうかといったようなこと、それから行使の目的であるとか刑法上のいろいろな条件がございますので、事実関係を把握した上でないと何とも判断いたしかねる、こういうことだと思います。
  337. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私がいま申し上げた中身だけでは、いわゆる構成要件全体を満たすかどうかということがはっきりしないということですけれども、しかし、どういう端緒に基づいてでも悪いことは悪いということで捜査をするのがあなた方の仕事ですから、私の発言もひとつ端緒にしていただきたいということだけ申し上げておきます。  文部省は、これほど実際とかけ離れた申請の書類が出た、それは全く気がつかなかったというのも私は納得がいかないのです。当時は、私立学校法の附則十三項で、昭和五十六年三月三十一日まで私立大学の学科の設置は原則として認められていなかった時期なんです。当局として特に必要があると認め、認可したはずなんですね。特に必要があるというふうに認めるというためには、当局としては当然いろいろと調査したりしたはずじゃないかというふうに考えるのですけれども、特に調査しても気がつかなかった。これはいよいよもって私は納得できないのですけれども、その辺はどういうことだったのでしょうか。
  338. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 九産大の国際経営学科の新設申し出は昭和五十五年になされておりまして、五十六年に認可されておりますが、事情を聞きますと、御承知のとおり大学設置審議会等で調査されて、その答申を得て認可しておる。ところが、いまお話しのように、いろいろ虚偽といいますか、不足している部分が後で発見された、こういうことでございまして、私自身も、そこまで調べておるのにどうしてそうなっておるんだということを聞いたわけでございますが、細かい事情については大学局長から御説明をさせたいと思います。(小沢(和)委員「簡単に願いますよ」と呼ぶ)
  339. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、その後の調査によりまして申請書類に虚偽の事実があったということはまことに遺憾に存じております。これは経営学部の国際経営学料の増設の申請でございまして、必要性としては、新しい時代の要請にこたえるため、国際的、経済的活動のできる人材の養成を図るというようなことが必要性でございまして、特に大学設置審議会の専門委員会等におきましても、国際経営学料の専門学科の設置についての教員組織については、特に専任教員等について十分個別の審査をいたしまして、具体的に適格性があるかどうかということを個々に判断をしたわけでございます。言われております御指摘の点は、特に教養部の教官につきまして、たとえば助教授を教授として申請をしておったというようなことが言われているわけでございまして、そのほかほぼ御指摘のような点があるわけでございます。  なお、若干御指摘の点で申し上げておきますと、この大学では特遇教員というような規定を設けておりまして、御指摘の中では、専任教員が非常勤講師として扱われているというようなことなどは、そういうような点もかかわっております。そしてまた、不在と言われております者の中には、申請時点では五十六年四月から採用予定ということで申請をいたした者が、実際に認可になりました時点では採用に至っていなかったというような事情の者もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、大学設置基準に不足しておりますものについては、先般その充実について厳しく指導したところでございまして、さらに二月下旬、大学側からもその教員の採用については設置基準を満たすよう努力をするというような回答をいただいておりまして、私どもとしては、教育内容、学生に対する教育に遺憾のないように、その点の整備について今後とも十分厳しく指導してまいりたい、かように考えております。
  340. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いままでの九産大問題の経過というのを見てみますと、私は、文部省がこの九産大に対して非常に甘かったのではないかというふうに考えるのです。その甘かった背景には、私は、全部とは言えないかもしれないが、少なくともその一つとして、文部省の幹部が何回も九産大から接待を受けたというような問題が絡んでいやしないかということを、ここでずばりお尋ねしたいと思うのです。  新聞では、宮地大学局長、高石官房長らが東京赤坂の料亭で接待されたというようなことが報道されているわけです。もし、これが事実と違うのであれば、あなた方は重大な名誉棄損を受けているのですけれども、この報道がなされてもう大分たつけれども、名誉棄損で告訴をするとかいうようなことをおやりになったか、あるいはおやりになる意思があるか、ここで宮地さんにお伺いをしておきます。
  341. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 報道されておりますような事柄は、五十五年の五月というように報道されておりまして、私も当時のことについては正確な記憶は持ち合わせておりません。  大学の設置認可に当たりまして、申請書類が出ておりますようなものについて、もちろん私ども文部省といたしまして、対応については最大限の配慮をいたしておる点でございまして、そういう事柄がこの九州産業大学の学科増設の設置認可申請について影響があったということは、私は、これは決してないということはこの席で明確に申し上げることができるわけでこざいます。(小沢(和)委員「告訴するかね」と呼ぶ)ただその点につきましては、私ただいま申し上げましたとおり、五十五年当時のことでございまして、正確に記憶をいたしておりません。  もちろん御指摘のようなことのないように、今後とも私ども事務の処理に当たっては厳正、公正にやってまいらなければならぬことでございますし、いやしくも誤解を受けることのないような対応は必要なことだ、かように存じております。
  342. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私、いまじっと伺ったけれども、それは完全な確信を持っての否定というふうにはどなたにも聞こえなかったのではないかと思うのです。だから、この点は私は厳しく指摘をしておきたいと思います。それで、もし、あなたが本当にもう一遍胸に手を当てて考えてみても、間違いなくそういうことはなかったというのであれば、これは告訴をすべきである、このことをもう一遍言っておきます。  最後に、私、申し上げたいのですが、九産大を再建する上で、教学と経営の分離ということを確立することが非常に重要だと考えます。九産大では、昭和四十九年に法人事務局と大学事務局が統合されまして、これ以来、経営手動の全く金もうけ本位の大学運営が行われるようになったわけであります。たとえば、入学試験の合格者判定会議に常務理事を出席できるようにして、特別入学を強引に認めさせた、そして裏では金を取るというようなことがやられているわけですね。あるいは学内規則を教授会にかけずに一方的に改正したり、今回ピケを張ったというような騒ぎがありましたが、その三十名くらいの学生には無試験で進級、卒業を保証したりというような事態が相次いで起こっているわけです。ところが、二月三日の指導メモには、この肝心の教学と経営の分離が全く触れられていない。この点を改善させることが必要ではないか。この点を文部大臣にお尋ねをして、関連質問を終わります。
  343. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 この問題にお答えいたします前に、先ほどの国際経営学科の認可の問題でございますが、私もこの事情を聞きましたとき、先はど申し上げたように、大学設置審議会等で審査をされて認可されたということになっておりますが、こんなに事情が違うということを非常におかしいと私も思います。余りに形式的な審査になっておるのじゃないかということを、私、素人でございますけれども、それを感じましたから、今後は厳重に、正確な調査をして大学の設置等を認可するように、かように指示をしていきたいと思います。  それから、いまの大学の管理体制でございますが、これは管理体制そのものは、法人全体の運営ないし経営面については理事会で、また大学の教学関係については大学の教授会等教学側で審議をし、取り進めているということでありまして、理事会の構成についても、十三人の理事中に大学、短大の両学長を含む四人の数学側理事が加わっているそうでございます。これらの点について、他の私学の場合とそう大差はないということでございます。     〔村田委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕  ただ、運営面において教学側の意向が十分に反映されていないという点が改善を要するところであります。それと同時に、先ほどお触れになりました入学者選抜の合否判定の際に理事者側の意向が非常に強い、こういう問題が指摘されておりますので、こういう点も改善の指導をいたしたい、かように考えております。
  344. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。
  345. 安藤巖

    安藤委員 続いて、お尋ねをします。  まず最初に、自治省にお尋ねをしたいのですが、公職選挙法の第百九十九条の三には「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない。」こういう規定があるわけでございます。そして、この百九十九条の三は、百九十九条の二の「公職の候補者等の寄附の禁止」、この脱法行為を防止するためのものであるというのは公知の事実であります。そして、この「役職員又は構成員」というものの中には顧問も当然入るというのも確立された見解であります。だから、顧問である候補者または候補者になろうとする者の名前の入ったタオルあるいはカレンダー、ハンカチ、扇子、鉛筆などを選挙区内に配るということは、これは百九十九条の三にまさにずばり該当すると思いますが、どうでしょうか。
  346. 岩田脩

    ○岩田(脩)政府委員 お答え申し上げます。  この百九十九条の三という規定が、ただいま安藤議員御指摘のとおり、公職の候補者または公職の候補者となろうとする者がその役職員または構成員である会社その他の法人または団体が、選挙区内にある者に対して、それらの者の名前を表示し、または類推されるような方法で寄附をすることを禁止していることは、お話しのとおりでございます。  具体にいまお挙げになりましたようなケースについて個々の判断はまた別でございましょうけれども、規定につきましては、ただいま御指摘のとおりであります。
  347. 安藤巖

    安藤委員 それで、これから具体的な話に入るわけでございます。  ここに持ってきておりますのが証拠書類。「御歳暮 西阿」、西阿というのは西の阿波の国ですな、後藤田さん、にっこりと笑ってみえるけれども、「牛尾良太郎」、この箱に入って、これはことしの日めくりですな、「一九八三年 賀正」。問題は、この最初のページ、「謹賀新年 新春を迎え 皆々様の御多幸をお祈り申し上げます 昭和五十八年元旦 衆議院議員後藤田正晴」、いいですか。そして続いて「徳島県議会議員山口俊一 西阿グループ協力会会長石井潔」、こういうのがあるのです。字が大きいからよくわかると思いますがね。一日からは、こういうふうに「西阿」というのが一番最後に、下の段に全部載っておるわけです。  後藤田官房長官は、この日めくりを配った――これは後でも申し上げますが、相当多量に配られておるのですが、こういうものが配られているということを知っておりますか。
  348. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は全く関知をいたしておりません。そこで、あなたが二日間にわたって徳島県へ行っていろいろな御調査をやられた。その結果、私は、これは地元の後援者ですから、こういう調べがあったということを聞きました。しかし、現物を見たのは、きょうこれが初めてでございます。
  349. 安藤巖

    安藤委員 これはもう相当の期間配布をされておるのですが、こういう写真が入ったというのは今回が初めてのようですけれどもね。  この西阿というのは、徳島県の西部、ですから西の阿波の西阿と書くらしいのですが、三好郡というところがあって、高校野球で優勝したあの阿波池田町のある郡ですが、この三好郡に本拠を置く土木建築、運輸関係の会社のグループですね。相当手広くやられておって、後から問題にしますが、「会社案内」によりますと、全国的に仕事をしている企業グループ。ついでに申し上げますと、これは徳島県の年鑑。この西阿というグループは、これに広告が出ておりますけれども、西阿生コン株式会社、西阿採石株式会社、西阿土木株式会社、株式会社牛尾組、牛尾良太郎さん、代表者の名前ですね。有限会社西阿工業、それから日本機械建設株式会社、この西阿グループと後藤田さんとはどういうような御関係なんですか。
  350. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 西阿の牛尾君は、いまおっしゃったように、徳島県の三好郡池田町でそういう会社をやり、全国的に、それほどでもありませんけれども、たとえばほかの県にも出かけておりますが、これは昭和四十九年、私の参議院選挙以来私の応援をずっとしていただいておる人でございます。
  351. 安藤巖

    安藤委員 あなたは、この西阿グループの顧問をしておられるのではありませんか。
  352. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 最初からではありませんが、途中から顧問をいたしております。もちろん、閣僚になったときはやめております。
  353. 安藤巖

    安藤委員 最近閣僚になられたというのは、官房長官になられたときですね。それは昨年の十一月の二十六日。先ほど後藤田さんがおっしゃった、私が徳島県へ行っていろいろ調査をした、このときはことしの二月の十二日なんです。そのときにこの牛尾良太郎さんにもお会いしました。この牛尾さんは、そのときに、後藤田正晴先生はうちの会社の顧問でございますと、はっきり言われたのですね。そして、後藤田先生に顧問になっていただいているということは、非常に会社の信用に役立って、全国的に仕事を広めるということにも役立っているというようなことも言っておられたのですが、そのとき顧問であるというふうにおっしゃったのですが、いまやめておられるというのと違うのじゃないですか。
  354. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、閣議の決定に従って、すべての顧問はやめるように秘書に命じまして、そのような手続をいたしております。牛尾君がそういう発言をしたかどうかは知りませんけれども、私自身はやめておることは間違いがございません。
  355. 安藤巖

    安藤委員 幾つか調べてきましたから、もう一つ、これは西阿グループの「会社案内」というのです。先ほど徳島年鑑の広告のところで示しましたように、二枚目に西阿として、先ほど私が読み上げました同じ会社の名前が書いてあるわけです。そして、三枚目に本社の写真があって、四枚目に牛尾良太郎さんのごあいさつというのがあって、そして五枚目に後藤田さんの、これは自筆じゃないかと思うのですが、サインがあって、「顧問 衆議院議員後藤田正晴」、ここにちゃんとあるのです。これを私が入手したのが二月の十五日なんです。ということは、私は何も国会でこうこうするというようなことではなくて、普通の、ただの訪問者としてお邪魔をしましたら、宣伝の意味でこれをくれたのです。となると、二月十五日現在、だから現在もそうじゃないかと思うのですがね、当然。やはり後藤田正晴衆議院議員は顧問ということになっておることははっきりしておるのですね。  だから、顧問はやめたと言っても、牛尾良太郎さんの、この代表者の認識はやはり顧問であるし、その取引先でも後藤田さんは顧問として通用しておるのだし、その選挙区の有権者の人たちも、後藤田先生は西阿の顧問だということでずっと認識されっ放しでおるのですよ。だから、あなたがそうじゃないとおっしゃっても、顧問として現在もあり続けるのではないか。こういう物的証拠もちゃんとあるのです。そういう点、どうですか。
  356. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 それは何ですか、「会社案内」ですか、それが十一月二十六日以降印刷したものであれば、あなたがおっしゃるとおりかもしれぬ。そのサインをちょっと見せてください。(安藤委員、資料を示す)わかりました。このサインは、去年の夏ちょっと前でしたか、私のところへ来たときに、「会社案内」をつくるので顧問だからサインをしてくれと言うので、私が紙にサインしたものでございます。したがって、そのサインは私が閣僚になる前でございます。この点は間違いございません。
  357. 安藤巖

    安藤委員 顧問をおやめになったというのなら、本当にしかるべき手続をとって、その辺のところは出処進退を明らかにするという意味で明確にしておくべきですね。私が二月十二日に牛尾さんにお会いをしたら、後藤田先生はうちの顧問ですと、私の方から聞かないで向こうからおっしゃったのですよ。そして、こういうのも、顧問というのを消してもらわなければいかぬというところまで徹底をされなければ、やはりこれは会社の信用の関係ですからね。結局は商売を拡張するために後藤田さんを利用しているわけなんですからね。だから、やはりこれは顧問として西阿グループは後藤田さんを考えている、有権者もそう思っていると思わざるを得ぬと思うのですよ、幾らそうじゃないとおっしゃっても。  それから、この西阿との関係で、後藤田さん一番詳しいと思うのですが、先ほどカレンダーに協力会というのがありましたね。この協力会の総会というのが年一回、三月か四月に行われるようです。それで、これはグループの年間の最大行事の一つで、もうこれまで八回やっているそうです。そのうち六回は後藤田さんが出席をして、あいさつをしておられるということなんですが、昨年は四月四日に行なって、後藤田さんもそこへお出かけになってごあいさつをされたと思うのですが、どうですか。
  358. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 牛尾君は、ずいぶん長い間、毎年一回、世話になっておる人たち、これは子供さんまで全部連れてこさせて、一日、芸能界の有名な人を引っ張ってきて、そして慰労会をやる、こういう年中行事を必ず一回やるのです。私にそれに出てきてくれと言うので、私は大体出席しています。それで、まあ五分ぐらい顧問としてごあいさつをしておる。これは間違いありません。
  359. 安藤巖

    安藤委員 私がお邪魔しました件で、ついでに申し上げますが、この写真が西阿グループの本社、いいですね。先ほどのこの「会社案内」にも写っておった同じ写真ですわ。そして、これは西阿グループの有力工場、民間車検工場、西阿工場というのがあるのです。これですね。私も写っておるのですが、私が行ったという証拠です。県会議員の山口俊一後援会事務所、後藤田正晴後援会事務所、ばんとしたりっぱな看板がかかっておるわけですね。だから、非常にこういう緊密な関係におありになるわけですが、こうなると、この西阿グループという企業そのものがもう後藤田さんの後援会と言ってもいいのじゃないかというふうに思われるのですが、もう地元の人たちは、西阿と言えば後藤田先生、後藤田先生と言えば西阿、こういうような認識をしているようなんですが、その点は否定はなさらぬでしょうね。
  360. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 西阿グループが即私の後援会、そういうものではございません。これは、牛尾君が私の後援会の有力なメンバーであり、選挙等の際には選挙運動をこの人がやってくれておるということは間違いありません。  それからいま、その写真にある、何ですか、私とそれから山口君ですか、ある。これは特殊な関係がございまして、山口君のおやじというのは私の友人でございます。それで、県会議長等もやった人ですが若くして死んだ。この山口というのが親の跡を継いでやるとき二十五歳でした。それで、私のところへ救いを求めに来た。私は全面的にバックアップしました。この山口というのは牛尾君の親戚なんです。そういうような関係で、今日も山口君も西阿の顧問をやっております。それで、私も顧問をやっておる。こういった古い関係でございます。
  361. 安藤巖

    安藤委員 相当密接な関係を西阿グループと持っておられるということはわかるのですが、そのほかに、これは徳島県報の号外で、先ほど言いました西阿グループの中の有限会社西阿工業から十六万円、後藤田さんに対して選挙資金が出されておる。これは報告が出ておるのです。そういうような関係にある西阿がこの日めくりを配っておるわけなんですよ。  牛尾社長の話によりますと、先ほどもちょっと言いましたが、七、八年前から配っておる、こういう名前は以前から載せておる、写真を載せたのは二年ぐらい前から載せておるのだ、こういうふうにおっしゃるわけです。そして、これは四、五千部つくって配布しておる。そして、千五百円から二千円かかっておる。そうですね。そういうふうにおっしゃる。本人がおっしゃるのですから間違いないと思うのです。  そして、これは取引先ばかりかと思ってお尋ねしたら、そうではない。実際に配った人に私は会って聞いてきたのです。そうしましたら、その人は、会社の幹部、工場長から五、六部渡されて、これを隣近所や知人に配ってくれ、こういうふうに頼まれて配ったと言うのです。だから、先ほど言いました四、五千部の日めくりが、取引先関係ではなくて、無差別に四、五千部配られておるということになるのです。  こうなりますと、これはまさに、先ほど最初に申し上げましたように、後藤田正晴さんというこの名前入りのものは、いかなる名義をもってするを問わずだめだと言っておるのですよ、これはお歳暮というふうに配っておるのだからね。有権者に配ってはだめだ。これは配られておるじゃないですか。これはどう思われますか。構わぬと思われますか。
  362. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 それは商売用の日めくりでして、私がやったんじゃないのです。私は全然関知してない。私に相談があれば、それはやめてくれと当然言いますよ。しかし、私は知らないのですからね。商売用の日めくり、しかもそれは、彼自身が平素から商売上で世話になっておる人にそれを配っておるのです。私は関係ないのです、それは。
  363. 安藤巖

    安藤委員 公選法の百九十九条の三は、その候補者の人たちが知っておるか知らないかということは関係ないのです。そういうことは全然書いてないのです。後藤田さん御自身は、こういうものが配られておっても商売上とおっしゃるけれども、先ほど私が言いましたように、別に取引関係ばかりではなくて、従業員の人たちに五、六部渡して、隣近所や友達に配ってくれということで、毎年四、五千部配られておるのですよ。これはおかしいのじゃないかと思うのです。  そこで、自治省にお尋ねしたいのですが、こういうようなのはほかっておいてもいいのかどうか。これは選挙の公正を損なう問題じゃないかと思うのです。これがいいということになったら、こういうことはどんどんはびこって、まさに選挙の公正を疑わしめることになる。どうですか。
  364. 岩田脩

    ○岩田(脩)政府委員 百九十九条の三については、先ほど安藤委員の御指摘のありましたような規定があるわけでございますけれども、それではその具体の日めくりがどういうものになるかということになれば、ただいま官房長官の御答弁がありましたように、あるいは構成員であるかどうかという問題もございましょうし、かつまた、その文書が商売上の云々というような問題もございましょうし、ただいま御指摘のことだけをもって直ちにその百九十九条の三に該当すると断定するわけにもまいるまいかというふうに存じております。
  365. 安藤巖

    安藤委員 だから私は、該当するのかどうかということをはっきりさせるために調査をすべきだと思うのですよ。調査もしないでほかっておいて、いま言われただけではわからぬというようなことでは、まさにこれは野放しになりますよ。野放しにしてもいいかどうかということですよ。少なくともこれは調査すべきだと思いますが、どうですか。重ねてお尋ねいたします。
  366. 岩田脩

    ○岩田(脩)政府委員 ただいまお話のありましたような具体のケース、ましてやいまのお話のケースからすれば、恐らくことしの話ではなくて数年前のケースについて調べるということになりますと、これは私ども選挙管理委員会の方の手に負えることではないと思います。ただいま安藤先生がある程度こういうような性格のものだということをはっきりしてお話しになったのでございますから、その上で取り調べるべき必要があると思われれば取り締まり当局においてしかるべき反応を示されるものだというように考えております。
  367. 安藤巖

    安藤委員 これはカレンダーですから、毎年行われているのですよ。これからも毎年行われる可能性が十分濃いのですよ。だから、その辺のところは十分調査をして、しかるべき処置をとっていただきたい。これは公正選挙のためです。  それから続いて、後藤田さんの本籍地は美郷村というところですね。その隣に山川町という町があるのですが、私はここも行ってきたのです。そこに、山川をよくする会という後藤田さんの後援団体があるのです。その後援会が、昨年の二月に国会見学を兼ねた東京観光旅行というのをやりまして、後藤田さんも国会であいさつをなさったということですが、覚えてみえますか。
  368. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 まず、その前に日めくりのことを申し上げておきたい。  私と意思を通じてやったのなら私は責任ありますよ。私と意思を通じてなしにやったものを一々私に言われましても、これは私は責任を負うわけにはまいらない。  それから、もう一点の方の国会見学という件でございますが、これはフェリー会社があるのです。七、八千トンの船を徳島と東京の間、それから、その船はどこか門司まで行くのですかね、そういうフェリーの会社がございます。この会社は、これはフェリーですから車中心でございます。ところが、いつも客席があくわけでございます。そこで、フェリー会社が商売の一環として、最初は私の後援会に働きかけて、そして東京旅行を計画をしたようでございます。それが来たときには、私はこの国会の正門で写真を一緒に撮っております。そこでまたあいさつもいたします。しかしながら、これについては実は来る希望者が大変多いのです。いま私の後援会だけじゃありません。ほかの人も来ております。それはなぜかというと、私が聞いたらば会費が一万円だそうです。そうすると、二泊で一日の旅行になるのですが、これは安い。そこで大変希望者が多い。それで来た人を調べてみると、大体八割は東京に、生まれて初めて来る人のようでございます。  そこで、これは何で安いかといいますと、船の中で二泊するわけでございます。私の秘書がお世話をするのは、この国会の見学であるとか、それからNHKを見学したり、あるいは時によると宮城見学とか、靖国神社の参拝とか、浅草見物等もやるようです。早朝に芝浦に着いて、それで昼の間それをやって、夜また船に帰る。船中泊が二泊でございます。それで安いのだそうです。  そこで、私はこの計画を聞いたときに、船会社に迷惑をかけるのならおれはごめんだ、こう言ったらば、船の中でやはり飯を食う、飲食をする、あるいは簡単なみやげを買うというので、結構船会社もそれでいいんだそうです。というのは、空気ばかり運んでいるのです、人が乗らないと。車の運転手だけですからね。だから、空気を運んでおるのならこれを運ぶといったようなことで、これは来る人も喜んでおるし、船会社もいいし、私もそこへ行ってあいさつするということで、これはずっと続けております。これはずいぶん長い間のあれでございます。
  369. 安藤巖

    安藤委員 いろいろ気になるとみえまして、後藤田さん、いろいろ弁解をなさったのですが、それは私の方から申し上げようと思っておったのです。  御承知のように、行きも帰りも船の中で泊まるんですね。それでこれはオーシャン東九フェリー、これは私ももらってきました。これによりますと、料金が書いてあるのですが、特等、一等寝台、一等、二等座席指定は抜きにして、一番安いやつで二等というのがあるんですね。二等は東京まで一人八千二百円、往復を買うと帰りは一割引き。だから、これは合計しますと一万五千五百八十円ですね。団体だから、さらに三割ぐらいというのはよくありますから、割り引くかもしれぬということも計算してみたのです。しかし、先ほどのお話にもありましたように、往復船の中で泊まって飯を食うわけです。東京見物をする。だから、この飯は七食食べるわけです。東京見物全部入れて七食、そういう計算になるのです。アルコールも恐らく出るだろうと思いますがね。山川町というのは大分奥の方でございまして、一時間ぐらいバスに乗らぬと徳島へ行けないところです。東京もバスで東京見物する。このときは百人参加されたから、バスが二台。ですから、そういうバス代、飯代、先ほどの運賃は割引をしたとしても、最低一人二万円は下らぬと思うのですよ。それが一人一万円ということになると、これは安いから行きますわね。残りの一万円はどうなったかということなんですね。百人ですから、百万円ですよ。大きいのです。  そうなりますと、これはまさに買収行為に該当するのではないのかと思うのですよ。これは別に後藤田さんがおやりになったとまでは言っておりませんよ。これはまさに公職選挙法の二百二十一条一項一号の買収行為になるのではないか。まさに供応接待に該当することは間違いないと思うのです。そして、これは後援会ですから、まさに後藤田さんに当選を得せしむる目的であったということも、これははっきりしていると思うのです。まさにこの公選法第二百二十一条一項一号の構成要件に該当する行為だと思うのですが、これは自治大臣どうでしょうか。
  370. 山本幸雄

    山本国務大臣 私、余り法律に詳しくないし、やはりそういう公職選挙法のみならず法律の適用ということになってきますと、事情をよく調べてみないとわからない。また、御本人の意思がどこにあったかということも調べてみなければわからないということでございまして、いまここで直ちに違反であるとか違反でないとかということは私からは答えられないわけでございます。
  371. 安藤巖

    安藤委員 これに違反をするということになりますと、三年以下の懲役もしくは禁錮または二十万円以下の罰金ということで、ちゃんと罰則がついているわけですね。ということになると、これは刑事事件になる可能性もあるんですよ。となりますと、現在の官房長官にかかわり合いのあることだ、あるいは元警察庁長官にかかわり合いのあることだというようなことで、手心を加えてもらっちゃ困るわけですよ。これはいま調べてみなければわからぬというふうにおっしゃったのですが、きちっと調べていただけるんでしょうね。
  372. 山本幸雄

    山本国務大臣 違反であるかないかというのは際どい問題もありますし、それから、調べてみても余り犯罪容疑もないなというものまではなかなか私は警察も調べにくいんじゃないだろうかと思うのです。それは専門家の実務家が来ておりますから、また必要があれば答弁をしてもらいます。
  373. 安藤巖

    安藤委員 そういうようなことを言っておられるから、こういうことがあちこちで行われるのです。しかも、後援会の旅行というのは毎年春とか秋とか、そういうようなときに何回も行われているんですね、これまでも。よその町やよその村でも行われていると私は現地へ行って聞いてきました。だから、調べてもなかなかむずかしいだろうなみたいなことを言うておっては何にもなりません。何のために警察があるのですか。こういう選挙の公正を破るようなこと、こういう買収というような疑いのあるような行為が行われていること、これが一番政治の腐敗のもとの一つじゃないですか。その辺のところをきちっとやってもらわなくちゃいかぬですよ。調べていただけるのですか、どうなんですか。もう一遍お尋ねします。
  374. 山本幸雄

    山本国務大臣 犯罪の容疑がどの程度のものなのか。余りこれは取り上げてもむずかしいなという事案もたくさんあるわけなんです。ですから、その辺のところは調べてみろとおっしゃれば私は調査は警察としてはしてもいいと思いますが、その辺のところの警察のやり方というものについて私はなかなかむずかしい問題じゃなかろうかと思うのです。
  375. 安藤巖

    安藤委員 最初からそんなにむずかしいんじゃなかろうか、やろうと思ってやってみぬこともないけれどもというようなことをやっておったのではこういうようなことを何回でも行われることになりますよ。  時間がありませんから次の問題に移りますが、ところで……
  376. 江藤隆美

    江藤委員長代理 安藤君に申し上げますが、ちょっと官房長官からそのことについて答弁をいたしたいということでありますので。
  377. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 どうも安藤さんの話を聞いておれば、これは買収の容疑でないか、こういう席でもう少し正確に調べて私は発言してもらいたいと思うね。だれがこれが買収になりますか。各人がみんな金を出し合って東京旅行をやっているのですよ。私はそこへ行ってあいさつしている。あなたは二万円かかるとおっしゃる。一万円しか払ってないんでしょう。安過ぎるとおっしゃる。どうしてそれが安過ぎるとわかるのですか。そんなことないでしょうが。事実それだけしか払ってない。しかも、私自身が金を出しているならいいですよ、あなたのおっしゃることは考えなければならない点がある。私は一文もやってない、この点はっきりしておきます。
  378. 安藤巖

    安藤委員 先ほどの百九十九条の三の問題でも、私は後藤田さんが知っているということまで言うておりませんよ。(後藤田国務大臣「それなら言わなきゃいいじゃないか」と呼ぶ)いやいや、あなたの名前が出ているから知っているのかと……(後藤田国務大臣「知らない。こういう席でいかにも違反だ、違反だと言うから」と呼ぶ)違反の疑いが濃いじゃないですか。だから、調べてくださいと私は言っているのですよ。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕 それから、いまの後援会の方も、私は後藤田さんが出したって一言も言ってませんよ。(後藤田国務大臣「それなら違反じゃないじゃないか」と呼ぶ)違反じゃないんじゃないのですよ。法律の条文をよく読んでくださいよ。後藤田さんがこれに触れるということを言うているのじゃないのですよ。(後藤田国務大臣「買収じゃないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)後藤田さんはその辺のところを誤解しておられるようですが、私はちゃんと法律に基づいて言うておるので、後藤田さんがお金を出したとか……(「大事な時間に、くだらぬ話をがたがたやっておって」と呼ぶ者あり)くだらぬことじゃないですよ。大事な問題ですよ。後藤田さんが知っているか知っていないかにかかわりなくそれに該当するのですよ。そういうことを私は言うているのです。(発言する者あり)不規則発言はやめてくださいよ。私が質問しておるのですよ。妨害しないでください。(発言する者あり)
  379. 久野忠治

    久野委員長 静粛に願います。
  380. 安藤巖

    安藤委員 不規則発言をとめさせてください。
  381. 久野忠治

    久野委員長 静粛に願います。
  382. 安藤巖

    安藤委員 それから、後藤田さんは日本機械建設株式会社、御存じですね。うなずいておられるから御存じだと思うのですが、この日本機械建設株式会社は、先ほど言いましたように、西阿グループの一員なんです。この日本機械建設株式会社、私、これの登記簿謄本を持ってきておりますが、この代表取締役は後藤田英治朗さんという方です。この後藤田英治朗さんという方は、後藤田さんの実の兄さんだと伺っておりますが、そのとおりですか。
  383. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私の実兄でございます。
  384. 安藤巖

    安藤委員 この日本機械建設株式会社の本社は平河町にあるのですが、私はここも行きました。そうしましたら、先ほどの西阿グループの一つの株式会社牛尾組と二つの看板がかかっているのですね。この日本機械建設株式会社の取締役に河野保夫という人がいるのです。この人は、この国会便覧、それから国政四季報、どちらでもいいのですが、後藤田さんの国会における第一秘書です。お認めになりますね。
  385. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 地元に置いておきました第一秘書でございますが、いまは私の政務の秘書官をやっております。
  386. 安藤巖

    安藤委員 この会社へ行きましたら二つ看板がかかっているのですが、日本機械建設株式会社の従業員はいなくて、机が三つあるのですが、株式会社牛尾組の従業員の人が二人おるということなんです。代表取締役の後藤田さんはほとんどお見えにならない、いま言いました取締役になっている河野保夫さんがときどき顔を出す、こういう話ですが、これはどういうような仕事をやっているというふうに知っておられますか。
  387. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、仕事の中身はよく存じておりません。
  388. 安藤巖

    安藤委員 御存じないようなんですが、普通の素直な、素朴な疑問を私持ちました。お兄さんが代表取締役をやっておられる、ほとんど姿をお見せにならない、ときどきお見せになるのは後藤田さんのいま秘書官をやっておられる河野さんだということになると、後藤田さんとこの会社というのは何らかのつながりがあるのではないのかなというふうに普通でも思うのじゃないかと思うのですが、私もそういう疑問を持ちました。私は、田中角榮元総理の東京ニューハウスとか室町産業とかというような、よくマスコミにも登場しましたいわゆるペーパーカンパニー、そういう問題を追及したことがあります。それで、これも私の素朴な疑問ですよ、後藤田さんと何かかかわり合いがあって、そういうような意味の会社じゃないのかなというふうに疑問を持ったのです。そして、そこのやっておる仕事は、伝票をこっちからこっちへ動かす、そういう商社もありますが、そういうようなことでやっておるんだという話も聞いているのです。この「会社案内」を見ましても、名前はちゃんと載っているのですね、日本機械建設株式会社。ほかの会社のことは営業案内がいろいろ書いてあるのです、それぞれの会社のことが。ところが、日本機械建設のことは一言も書いてないのです。というので、よけい私はこれはいよいよおかしなことだなというふうに思っておるのですが、そのいわゆるペーパー会社、幽霊会社みたいなことで後藤田さんと何かつながりがあるのかなというふうに思うのですが、その点はどう認識をされておられますか。
  389. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 これは私の兄貴が社長になっておる会社でございまして、私の兄貴ですから、そういう意味においては大変深いつながりがございますが、会社と私は関係は全然ございません。
  390. 安藤巖

    安藤委員 時間が来ましたから、これで終わります。
  391. 久野忠治

    久野委員長 これにて安藤君、小沢君の質疑は終了いたしました。  次に、岩垂寿喜男君。
  392. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまの話よりもどうも宇宙的な話をすることになってしまうわけでありますが、実は宇宙的規模の環境保全の問題、そして国内の緑の問題、これらの問題に関連をして質問をしたいと思います。  あらゆる統計から予測されるわけですが、一九七五年の世界人口四十億人が二〇〇〇年には六十億人に達するだろう、食糧の問題も深刻だろう、それよりも非常に重要なのは、生態系が非常に重大な事態に立ち至るだろうということをいろいろな統計が示しています。たとえば、アメリカの「紀元二〇〇〇年の地球」という報告によると、現在の熱帯雨林の約四〇%が二〇〇〇年までに消滅するということが証明されています。また砂漠、これは世界の陸地面積の三分の一を占めているわけですが、それが二〇%もっと多くなるだろう、つまり半分近く砂漠化が進むだろうというふうに言われています。それから、この間も開かれたのですが、国連砂漠化防止会議の資料によると、二十年間に世界の耕地に適する土地の三分の一が破壊されてしまう、あるいは動植物について見ても、五十万ないし二百万種の生物が今世紀末までに消滅をするというふうに証明されている。私は「紀元二〇〇〇年の地球」という本を実は読みまして、大変勉強になりました。  その中で特に考えなければならないのは、日本は木材の輸入の二分の一を占めているわけです。こういう深刻な事態の中で、地球規模の環境保全という問題を、日本あたりが積極的に提起をしていかなければいかぬのではないだろうか。特に、最近の軍拡競争と言われるような状態のもとで、そうした予算の何分の一でもそういう問題に回していく必要があるのではないだろうか、こんなふうに考えまして、緑の地球防衛基金というものを超党派の諸先生や財界や学者や専門家、ジャーナリストを含めて発足をさせました。いま、NHKが難民救済のキャンペーンをやりまして、伺うところによると十億円に近いお金が集まっているそうであります。私どもの基金もその辺のところを目標にしながらというふうに考えているわけですが、まだまだそんな段階にはとうていいっていません。しかし、心ある多くの人々がこの趣旨に賛同してくれまして、いまぼつぼつ基金を寄せてくれています。  そういう点に関連をして、環境庁長官に最初にぜひ、これらの先進国、発展途上国を問わず、人類にとって共通の財産である環境及び資源にも及ぶ地球的な規模の広がりを持つ課題について、環境庁としてどんなお取り組みをなさろうとしていらっしゃるのか、その点について最初に伺っておきたいと思います。
  393. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 いま岩垂委員お話しのように、たとえば酸性雨林にいたしましても、年々確かに千二百万町歩ぐらい減っていっておる、こういう現状でございまして、まあ酸性雨林も申し上げるまでもございませんが……(岩垂委員「熱帯雨林ね」と呼ぶ)まあ熱帯雨林でございますが、食糧問題から見ましてもあるいはまた防災的見地から見ましても、これは大変なゆゆしい問題だとわれわれもそのように考えておるわけでございます。  そこで、環境庁としましては、もちろんいま申し上げましたような地球的規模におきましてこの環境問題は大変重要な課題であるという観点に立ちまして、環境庁長官、私の私的な諮問機関でございますが、地球的規模の環境問題に関する懇談会、これを持ちまして、いろいろ先生方に検討をいただいているわけでございます。  そこで提言をいただいたわけでございますが、この提言の趣旨に沿いまして昨年も、委員も御承知と思いますが、この提言に基づきまして私どもの方から積極的にUNEPで前長官が発言もした、こういう経緯もございます。  こういうことで、今後とも環境庁だけで処理できない問題もございますので、あらゆる関係の省庁とも協力をいただきながら積極的に取り組んでいきたい、かように考えておるような次第でございます。
  394. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま長官お述べになりましたが、UNEPで原前長官が、環境問題のある種の委員会、ブラント委員会にも匹敵すべき委員会を提唱しておられます。その後それがどうなっておるのか。そして一体政府がどういう努力をなさっていらっしゃるのか。これは外務大臣もおられるわけですが、すぐれて環境庁長官が、前任の環境庁長官でございますが提案をして、閣議でも決めて提案をしている問題ですから、どういうことになっているのかということ、その見通しはどうか、それからいつごろにそれを具体化させようとして努力をなさっていらっしゃるのか、そのスケジュールを示していただきたいものだと思います。
  395. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 ただいまも申し上げましたように、懇談会の提言で、私どもも六項目ぐらいにわたりましてUNEPに提言しまして、たとえば委員会を設けるというようなことにつきましては大体その線で進んでいくのじゃないか、かように考えておる、UNEPの中の特別委員会でございますがね。しかし、いまおっしゃったような全部がすべて直ちに処理できるともはっきり申し上げる段階にまだ至っておりませんが、まあ外務省等とも相談いたしましてこの問題に積極的に取り組んでまいりたい、かように考える次第でございます。
  396. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 一般的に努力をなさるわけですが、それじゃ、日本が提唱するわけですから、ある種の負担というものも考えて、予算的な措置をとって、そして国際的に呼びかけていかなければ、会議で提案をしただけでは、国際的なそういうものというのはできてくるものではないと思うのですが、そういう裏づけというのはあるのでしょうか。
  397. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 予算的にどうのこうのという問題もございますが、私はやはり先ほど申し上げました特別委員会等でこれから検討いたしまして、その結論に基づいて、また予算的措置が必要であれば検討しなければならぬ。先ほど申し上げました、たとえば熱帯雨林なんかにつきましては、これは木材を買うだけではなくて、いわゆる森林の開発とか植林とか、こういう問題につきまして技術的な点で林野庁等にいま積極的ないろいろな施策をやっていただいているわけでございますが、こういうところとも私ども関係しましてやっていきたい。技術協力の面ではできるだけのことはやっていきたい。  いま申し上げました提言の点につきましては、また結論が出て検討させていただく、こういうことになるのじゃないか、かように思います。
  398. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 わが国が提唱したわけですから、ある程度予算的な裏づけも持って、そしてお互いがどのくらい負担すればそういうものができるのかというふうに進めていかなければ、演説をなさっただけで、それはそれなりに努力はなさっていらっしゃると思いますけれども、そう簡単に実現できるものでは私はないと思うのです。いまここでUNEPの議論などを大体伺っていますから申し上げるつもりはございませんけれども、そういうものを設置するという以上は日本政府の積極的な働きかけ、努力、このことが必要だと思います。  特に、この間緑の地球防衛基金のシンポジウムのときにUNEPの事務局長のトルバさんがお見えになりまして、そのときにその問題についても個人的なお話をいたしました。やはり日本自身がもっと積極的な取り組みをしないとこの問題の実現というのはむずかしいという感じを私なりに持ちましたので、環境庁長官、御新任でございますけれども、その問題について積極的なお取り組みをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  399. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 先ほど申し上げましたように、気持ちとしてはいま委員のおっしゃるような気持ちを私は持っておるわけでございますが、具体化するとなりますと、いろいろ各方面の検討をさせていただきまして、具体的に予算の問題と取り組んでいきたい、かように考えますので、御理解賜りたいと思います。
  400. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国際的にそういう会議を呼びかけたわけなんだけれども、日本自身の姿勢がどうなっているかということが問われなければいけないと思うのです。率直に言ってこの問題はたとえば農林水産省がございましょう、外務省もございましょう、環境庁はもちろんありましょう、通産省もありましょう。それぞれの縦割り行政、これはやむを得ません。だから、そういうものに取り組んでいくためには日本のそういう意見を集中的に出していく、そうした体制をつくっていかなければなりません。その点については長官はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  401. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 私どもが調整的な役割りを果たしておりますので、今後とも先ほど申し上げましたような積極的な気持ちでもって各省庁といろいろ御相談申し上げていきたい、かように考えております。
  402. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 後ほどまたそれには触れますけれども、いまの地球的規模の環境問題の重大な一つの要素として熱帯雨林の問題、これは木材資源だけではなしに、遺伝資源としても、あるいは気象への影響、先ほど申し上げたようなことを含めて重大な意味を持っているわけですが、熱帯雨林に対する具体的な取り組みを、先ほどちょっと取り組んでおりますがというふうにおっしゃったのですけれども、ぜひ示していただきたいと思うのです。
  403. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 熱帯雨林の減少は、先ほど申し上げましたように、大変ゆゆしい問題だと考えておりますので、従来からUNEPあるいはFAOなんかとこの問題につきまして特に保護あるいは守っていく、こういう問題につきまして国際協力の推進を私ども一生懸命働きかけておるわけでございますが、何といいましてもそういう熱帯雨林のたくさんございます開発途上国への造林等の技術協力、これが一番大事な問題じゃないか、かように考えておりますので、関係の特に林野庁等ともよく御相談申し上げて積極的に進めていくような働きかけを私どもとしてはいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  404. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 熱帯雨林のことについて言うと、さっき申し上げたアメリカの「二〇〇〇年の地球」あるいは国連のレポートなどを見ると、文字どおり一刻の猶予を許さないような状態になっているわけですが、それはそうなんです。日本の面積の半分の縁が毎年切られている、四国と九州とを合わせた面積の砂漠がどんどん広がっているという事態なんです。恐らくはこういう状態になっていくと地球が温室化して、普通のところで二度ないし三度気温が上がってしまう、極地では十度も上がるのじゃないかというような説もございます。氷が解けて、そして海岸にある都市などというのは沈んでしまうのじゃないだろうかというようなことも言われております。二〇〇〇年と言えばいまから十七年後のことでございます。そういう意味では国際的な協力がなければできませんし、国連機関という形で取り組む課題でもございましょうが、今後日本政府としてこの熱帯雨林ということでどんな形を考えて保護に立ち上がろうとなさっていらっしゃるか、伺ってみたいと思います。
  405. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 具体的な問題につきましては、政府委員の方から御答弁させます。
  406. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 具体的なお話につきましてはただいま関係省庁と、特に熱帯雨林の問題につきましては、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたとおり、林野庁を中心といたしまして検討を進めておる段階でございまして、いまこういう案というところまでは残念ながら参っておりません。
  407. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大体どの辺をめどにしてそういう結論を導き出そうとなさっていらっしゃるのですか。
  408. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 時間的な問題でございますが、直ちに明年どうこうというところまでのめどが立っておりませんけれども、そう遠くないうちに手を打ちませんと、先生申されましたとおり、例の「二〇〇〇年の地球」という推計は、これは読み方がいろいろございます点はもう先生十分御承知のとおりでございまして、相当な幅があるものではございますけれども、手は打たなければならない。  具体的にと言いますと、これはなかなかむずかしい問題がございます。といいますのは、造林、植林等の技術的なことはある程度めどはあるわけでございますけれども、それ以外にも例の切りました後の持っていき方、つまり焼き畑等に使われておる部分等もございまして、現地の住民の生活の糧ともなっておりますので、その辺の関係もよくとらえながら、現地政府もございますのでその辺の打ち合わせも進めなければなりませんので、具体的にいつ、どういうめどと問われましても、いま直ちにこういうことというのは残念ながら持っておりませんが、鋭意研究を進めてまいりたいと思っております。
  409. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、UNEPなどに対する日本の貢献というのはどんな形になっているのでしょう、突然でちょっと恐縮ですが。
  410. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 UNEPに対しましては日本世界で第二位の協力をしておる、こういうふうに承っておりますが、具体的には政府委員から答弁させます。
  411. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  国連環境計画、UNEPにおきましては、御指摘のございました熱帯雨林の保全についての計画を持っております。陸上生態系の保全に関する計画、これでございます。  予算的に申しますと、八〇、八一年の二年度にわたりまして環境基金の中から一千百六十万ドル、総予算の一七・一%というものがこの陸上生態系の保全に関する計画に振り向けられているという実情でございます。  わが国は、先ほど大臣からお話がございましたように、この計画に対しましては応分と申しますか、十分の資金的協力をしておる、ただいまもそれを実施いたしておる、こういう状況でございます。
  412. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この間フィリピンのべニテスという文部大臣それからインドネシアのサリムという環境開発大臣がそのシンポジウムに参加してくれまして、日本世界に先駆けてこういうシンポジウムを開いてくれたことに対して心から感謝をする、できればやはりASEAN規模でそういうような会議が持てないだろうかというふうなことを個人的に言われました。その意味は熱帯雨林の、もちろんアマゾンもございます、アフリカもございます、しかしASEANというわれわれの一番身近な、しかもそこから材木をたくさん輸送しているという状況のもとでは、そういう会議みたいなものを私たちはシンポジウムとして開く必要があるんじゃないだろうか、こんなふうに思いますけれども、これはどなたになるのかな、環境庁長官外務大臣かどっちかわかりませんが、御答弁をいただけますか。
  413. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ASEAN諸国に対しましては特に日本との関係が深いわけでございますし、いまお話しのように、森林資源は日本はずいぶん利用している、こういう立場から経済協力、特に技術協力は積極的に進めておりまして、特に森林の保護に資することを目的として、フィリピンにおける森林造成センター及び森林保全センターに対する技術協力及び無償資金協力をいたしております。同時にまた、インドネシアにおける熱帯降雨林造林研究センターに対する無償資金協力等を行っているわけでございまして、いまのお話のようなASEANのこの環境を守っていく、熱帯雨林を守っていくという意味においてのASEAN諸国のそうした会合が持たれるということになれば日本としてもそれなりの対応をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  414. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはちょっととっぴもない話になるのかもしれませんが、いまのような地球的な規模の危機が進んでいる、これに対する対応が実は正直なところほとんどないのです。いま積極的に日本協力しているとおっしゃいましたが、私はそれなりに調べてみましたけれども、実はそれほど多い金額ではない。私はもっともっと日本として貢献する道があるだろう、こう思いますが、たとえば熱帯雨林や砂漠化防止などの問題でサミット、つまり首脳会議みたいなものを地球的な規模でやる必要があるのではないかというふうな提言を恐らくいろいろなところがしていると思います。その意味では環境庁長官、こういうことが必要だとは思いませんか、また、なさるおつもりはございませんか。
  415. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 先ほど来くどくど申し上げておりますように、私どもは地球的規模のそういう問題は大変大事だと思っておりますので、いま御指摘の点につきましては必要だなという感じはいたしております。
  416. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 必要だなと思っておりますというのではなしに、日本はある意味では公害対策の先進国です。そういう日本の貿易摩擦問題など含めて、単なるエコノミックアニマルではないよ、国際的にこういう貢献をするんだよということをやはりしていくことが、日本の位置というか地位というものが国際的な評価を受けることになるんじゃないだろうかと思いますので、この辺はぜひ外務大臣にもお願いをいたしておきますが、問題提起をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  417. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに大事なことだと思います。わが国も特にASEAN諸国に対しては熱帯雨林の保護だとか造成とかいうプロジェクト四つについて積極的な協力もしておりますし、また同時にODAについては、このASEANに対して日本のODA予算の三割を投入しておる、こういうことでございますから、そういう中で、ASEAN諸国の要請がなければこれはなかなか受けて立つわけにいきませんが、ASEAN諸国の意見等も聞きながらそうした問題につきましては積極的に取り組んでいかなければならぬことだ、こういうふうに思っておるわけであります。
  418. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 総理のASEAN訪問というふうなことが予定されているわけですけれども、日本へ技術者を呼んで研修をして、そして戻してあげるということも大事ですけれども、現地にそういう研究センターをつくっていく、いま二つの例を挙げましたが、やはりもっと積極的にそういう形でASEAN諸国に協力するということが必要ではないだろうか。つまりそれは調査研究所というふうな形の設置の問題などもある意味ではおみやげになり得るのではないだろうかというふうに思いますが、その辺はどうなんですか。
  419. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この四月の末から中曽根総理がASEAN諸国を訪問するわけでございますが、それに関連をいたしましてASEAN諸国からいろいろと経済協力についての要請が来ておるわけでございます。私どもはASEANに対しての協力はこれからも進めていかなければならぬ、ただ具体的な案件として、いま私が聞いている範囲内ではそうした研究センターといったような要請が来てないというふうに承っておるわけでございますが、これは今後そうしたASEAN諸国の要請等があれば、確かにお話しのように公害に対しては日本は非常に先進国でございますし、そういう点でASEAN諸国に非常に喜んでいただけるならばそうした問題等については検討をしていきたい、検討に値する、私はそういうふうに考えております。
  420. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 地球的規模の問題というのは、実は国民一人一人の理解がなければどうにもならないことだろうと私も思います。  それで、日本の国民は先ほど申し上げましたように、私は川崎なんですが、公害問題に対する苦い経験から環境問題についての意識は非常に高い。そういう意味では、これらの問題に対する貢献というものを国際的にやる必要がある。貿易摩擦だとか海外における日本の企業の活動に対する批判が非常に強いという状況のもとで、経済大国としての日本の海外援助の量と質がやはり私は問われているように思われてなりません。そこで、海外協力のあり方というようなものの中で、さっきのODAですが、こうした問題に関する日本の積極的な貢献というものに、予算措置のことになってしまうわけですけれども、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  421. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この限られた協力関係の予算でありますが、そういう協力については非常に効果的な効率的な質の高い協力というものがやはり必要ではないかと私は思いますので、そういう点は関係各国とも十分相談をしながらこれは進めてまいりたい、とういうふうに思います。
  422. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは一つの例なんですけれども、UNEPのあるナイロビの七十キロぐらい奥のところで日本がODAで水道の施設をつくったんですって。それを各戸ごとに配管をしなかったものですから、真ん中にあった配管の蛇口というのですか、それが壊されちゃって、それで結局もう一遍やり直した。確かに水道の施設ができて定住農業がそこで成り立つようになった、三万人ぐらい。ところが、御存じのように薪炭林が全部切られてしまって、特に主婦の仕事というのはまきを集めてくることなんです。一日がかりで集めてくる。せっかく水道を引いて農業を定住してやれるようになったにもかかわらず、薪炭林というものがなくなっちゃったおかげで、水道の施設があってもまたよそへ移らなければならないというような例が具体的にあるわけです。  これらのことは、私は、ODAの金額だけでなしに、そのやり方をもうちょっと現地の状況に即して対応していかなきゃいけない、つまり見直しをしていかなきゃいかぬ、このように思いますけれども、外務大臣、いかがですか。
  423. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、おっしゃるように、そういうふうなことになればせっかくの大事な経済協力資金というものがむだに使われるわけでありますから、大事な、特にODA予算については現地の方々が本当に喜んでいただけるような形でこれが使われなければならない、こういうふうに思います。そういう意味で、ODA予算をこれから活用する場合においては十分いろいろな面を現地の実情等も特に調査をしてやることは当然のことであろうと思うわけであります。
  424. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、お忙しいようですから最後に一問だけ伺いますが、諸外国では、その国の援助を相当の予算を使って国民の間にPRしているのですね、わが国はこういう形でこれをやっていると。ところが日本は、私は寡聞にして余り国民に対するPRというものを知らない、少ない感じがしてならないのです。何をどうやっているのだということを国民が考えたときに国際的な連帯のきずなというものがもうちょっと確かなものになっていくだろうというふうに思うのですけれども、外務大臣、やる、援助する、やはり国内で、こういうことをやっているのだ、そこから人間同士の触れ合いというか連帯が始まると思うのですが、その点どう思っていらっしゃいますか。
  425. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは財政の厳しい中における大事な海外協力の予算ですから、これはやはり使う場合も大事に使わなければいけませんし、同時に、わが国においてもどういう方面で使われるかということについては十分国民に知ってもらう、あるいは相手の国においても、日本協力の予算がどういうふうに裨益しているかということについて国民の皆さんに理解をしてもらって日本というものを知ってもらわなければならぬ、こういう面においては、それなりのPRといいますか、これはやっておると思いますけれども、おっしゃるように、こうした海外協力、ODA予算等については、私はもう一回いろいろとそういう面も含めて見直して、十分効果のある、効率的な、そして喜ばれる形の予算の活用ということにしなきゃならぬ、そういうふうに思います。
  426. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、結構です。日程があるそうですから。  環境庁長官に伺いますが、いまの熱帯雨林だとか砂漠化の問題を取り上げますと、どうしても熱帯または亜熱帯の地域の諸国の皆さんを、特に技術者が中心だと思いますけれども、日本に招いてシンポジウムなどをやるというぐらいのことをなさったらどうですか。その点ちょっと提案をしますが。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  427. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 いまのところ具体的に考えてはおりませんが、民間団体で岩垂委員も一生懸命やっていただいております緑を守る基金でしたか、あそこで昨年やっていただいたああいうのを一つのモデルといいますか、そういうことをして私ども検討させていただきたい。とりあえずあの方を一遍どんどん進めていただきまして、私ども勉強さしていただきたい、かように考えます。
  428. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 民間は民間で努力をしますけれども、やはり環境庁自身も積極的にそういう取り組みを、国際会議というようなものを、大して金がかかるものじゃないのですから、おやりになることが大事ではないだろうかと思いますので、提案をしておきたいと思います。  来年は自然保護憲章の十周年だそうですね。環境庁は、憲章制定の十周年の記念としてどんな行事を考えていらっしゃいますか。
  429. 山崎圭

    ○山崎政府委員 仰せのとおり来年は自然保護憲章を制定しましてから十周年に当たります。それで、来年を期して自然保護憲章がより広くより深く国民の間に普及できますようにいろいろといま準備動作をしている段階でございまして、あれは御案内のように民間の先生方が中心になっておつくりいただいた国民的な制定会議というものをもってつくられたものでございますから、そういう趣旨からいたしましても、いま当時制定に参画いたしました関係団体が中心になって準備をおいおい進めているところでございまして、私どもも私どもの立場で積極的な御助言なり何なりをしている段階でございます。
  430. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今度は国内の問題に少し移りたいと思うのですが、ナショナルトラストの研究や運動が進んでいます。この間も実は私がかかわりまして日本のナショナルトラストを考える会というので、たとえば知床とか天神崎とかあるいは鎌倉とか、そういう日本版ナショナルトラストの経験を持っておられる方々に集まってもらって、何でもかんでも国に買えとか地方自治体に買えと言ったってそう財政があるわけじゃございませんから、ある種の国民の力で残すべきものを残していくということも大事だというふうに私は思いますので、このナショナルトラストの研究を環境庁がなさっていらっしゃいますが、どんな問題点がいまあるのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  431. 山崎圭

    ○山崎政府委員 御案内のようにナショナル・トラスト研究会を昨年の七月に設けまして、自来六回ばかりお集まりいただいて勉強をしていただいているところでございます。座長は御案内のように林修三先生でございますが、六名の民法あるいは信託法あるいは税法の専門家の方々も参加をしていただいておるところであります。  そこで、御案内のようにイギリスのナショナルトラストは九十年の歴史がある。日本は、先生も深くかかわられているところでもありますが、まだ萌芽の段階であると言っていいと思うのです。ただ、私どもはこれを何とか育てていきたい、やりやすいような姿にしたい、これが私どもの立場であろう、かように認識しております。そういう意味でそういう研究会も発足させたわけでこざいますが、いままでのところ、イギリスの例をよく勉強したということ、それから各地の知床あるいは天神崎というような方々にもお出ましいただきまして実情をつぶさにヒヤリングしていただいた、こういうようなことでいま問題点を探っている、こういうようなことでございます。
  432. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題は、大蔵大臣もお詳しいことだろうと思うのですけれども、やっぱり税制の問題がかなりひっかかってくるのです。たとえば不動産取得税、贈与税、地方税ですが固定資産税、そういうものの優遇措置がございませんとなかなかできないのです。租税特別措置法はだんだんだんだん直していけという主張をしながら一方でそういうことを言うのは私自身自己矛盾を感じますが、しかし、やっぱり守るべき自然あるいは文化財、そういうものをみんなの力で守っていくとすれば、私はそういう税制上の特別な措置というものが求められてしかるべきではないだろうかと思いますが、その辺についての御答弁をいただきたいと思います。
  433. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるナショナルトラスト運動、これはまさに委員が中心となられてこういうナショナルトラスト運動に範をとった自然保護運動とでも申しましょうか、これがわが国でも起こりつつあるということは承知しております。いままた環境庁からお答えがございましたように、言ってみれば十分まだ定着していないから環境庁において検討をしようという段階であるということも承知しております。それから、私が前の大蔵大臣のときに、参議院におきましても、北海道のたしか丸谷……(岩垂委員「衆議院です。島田さんです」と呼ぶ)島田さんでございましたか、御質問がありまして、そのことは存じております。その際は、税制の問題のみならず、いわゆる公益信託の問題についての御質問も私受けたことがございます。  したがって、この研究段階でいまコメントするということは差し控えるべきであろうかと思いますが、しかし、一般的にいま租税優遇措置の問題でございますので、岩垂委員も自問自答しながらお聞きになったわけでございますけれども、優遇措置を講ずるということになると、一つ一つ具体的に考えた場合なかなか困難な問題だな、しかし、おっしゃる意味の御提言というものはやはり検討すべき課題ではあるという認識は私も持っております。私自身の地方もそういう運動が起こりまして、そういうお話も聞いておりますが、いまの租特の中で位置づけるというのはまだなじまないのじゃないかな、むずかしいのじゃないかな、こういう感じでございます。
  434. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やはり日本でそういう自然を守っていくというためにはいま申し上げた税制が非常に大きな問題で、実はイギリスでナショナルトラスト運動が発展したのは税制面のきっかけが一つでずっと全国的に広がってきたという経過があるわけでございますので、ぜひこの点、大蔵大臣、重ねて大変恐縮ですが、ぜひ御検討を願っておきたい、このように思いますが、いかがですか。
  435. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、一九〇七年でございますか、ずいぶん古い歴史と伝統というものを持って今日まで来ておりますので、そうした経緯も踏まえながら勉強させていただきます。
  436. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは、実は高校から大学にかけて自然保護のクラブ活動に精力的に活躍して、去年の十月、不幸にも病いを得て亡くなった一人の青年日笠山環君の遺稿集の一文がございます。「自然の失われた都会に、失われたものは心だったのかもしれない。校内暴力を起こす彼らが、一鉢でも自分の花を持っていたら、自分の手入れひとつで、美しい花を咲かせられるし、枯れもしてしまう。そのことを知っていたら、物に対するやさしさも、人に対するやさしさも解ったにちがいない」私はこの言葉に実はじーんとさせられました。自然保護や緑についての教育の果たす役割りというものをかつてなく大切なことだというふうに感じました。  そこで、文部大臣要望をいたします。小中高大学での環境教育、指導要領や教科書ということになるのかもしれませんけれども、これらについてぜひ積極的な指導、助言といいましょうか、これらをなさるおつもりはございませんでしょうか。
  437. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 岩垂さんの自然環境保護にかける情熱のすばらしいこと、先ほど来感激して聞いておりました。といいますのは、われわれ人間、よけいなことでございますけれども、生物は、大自然の中でその自然の法則に従って生きていくということでないとついには滅びるだろう、こういう考えを私は持っておるわけでございますが、最近、いろいろな科学技術の進展に応じて自然が破壊されてきているということは、まさにゆゆしいことでございます。そういうことをいまや考える時期に入っている、世界的に入っている。わが国もそうでございます。  そういう意味で、いまおっしゃったように、学校教育上も教科書等では小学から中学、高校、全部の理科教育に、ここにありますけれども、自然の必要あるいは森林の必要、効用、生物に対する作用、こういうことを教えておるわけでございますが、いまおっしゃったように花一つでも育てるという、私も花が好きでございますけれども、よけいなことでありますが、一日でも花がない日は私のうちではない。自分でやるわけでございますが、花を愛する心、花でなくても小さな植物を育てる、このことを子供に指導するということは非常にいいことだ。そういうことをやっておる学校も相当ありますけれども、今後ともそういう方面に力を注ぎたい、かように考えております。
  438. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境教育というのは、特に現場の教師たちの力にまつところが多いと思うのです。そういう意味では大学なんかでの指導者の養成講座の中の必須科目としてそういうものを加えていくというようなことを含めた配慮というものがやはりどうしても必要ではないだろうかというふうに思います。  それから、時間を急ぎますので、もう一つ。  子供たちが自然と親しむ、その中で、先ほどの日笠山君の言葉じゃないけれども、人や物に対するやさしさを学ぶ。これは私ども田舎のころには学校林みたいなものがありまして、子供たちがみんなでその森林を管理するというふうなことをやってきた経験があるわけですが、そういうふうなことを含めた対応というものをぜひしていただきたいと思いますが、文部大臣、いかがでしょう。
  439. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 わが国は御承知のとおりに、自然の状態からいいますと諸外国に比べて非常に恵まれておる土地柄だと思います。しかし、最近は都会の集中に従ってだんだん都会から緑あるいは自然がなくなった。これは非常に不幸なことだと思います。そこで、学校の施設等についても、大都会ではなかなか思うとおりにいきませんけれども、できるだけ植木を植えたり自然の山をつくったりするような設備をするように学校施設等についても奨励をしておりますが、地方等では山に連れていくとか畑に連れていくとかいうことを学校教育の一部として進めておる。大都会でも、近所にありませんから、そろえて地方の森林に連れていくとか、こういうのは非常に大切な教育の方法であろうと思いますが、今後ともそういうことに注意をしていきたい、かように考えております。
  440. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 総務長官にお尋ねしますが、総理が緑化運動に取り組むという姿勢を示されまして、自民党も二階堂幹事長を本部長として緑化を推し進めるということを決意をされました。大変結構なことだと思います。選挙目当てとかなんとかというのじゃなしにやはりやっていかなければならぬと思うのですが、どんなことをなさるおつもりでございましょうか。
  441. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 岩垂先生のお尋ねにお答えさしていただきたいと思います。  政府はこれまでも関係省庁において緑化政策を、鋭意と申しますか、ある程度気持ちを入れて推進してきたのでございますが、特に今回中曽根総理の御提案もございまして、国土の緑化を総合的かつ効果的に進めるために、先ほど先生からも御指摘のありましたように、こうした仕事は関係省庁が非常に多うございますので、関係省庁の連絡調整を図る機関として緑化推進連絡会議を設けたものでありまして、先生に申し上げるまでもないことでございますが、緑は国土の保全、水資源の涵養等の面からはもちろん、生活環境の整備や、先ほどお話しのありましたように、青少年育成の面からも重要な意義を持つものであります。  そこで、私はこの連絡会議の議長として関係省庁の協力を得ながら具体的に緑化対策の推進に努めてまいりたい考えでございまするが、実は先生のように自然環境と申しまするか環境保全、またはただいままでお話がありましたように自然保護に、御造詣が深いというよりは熱心に取り組んでおられて、自分の選挙区の川にサケを放流して、それが戻ってくるかどうか、いままでのその川でふ化することができるかどうか、そういうふうな川にしたいと熱心に取り組んでおっていただくことも私も承知しております。だから、きょうはきっと先生からいいお話も聞かせていただけるであろうということを思いまして、明日午後からこのための連絡会議を開かせていただいて、大いに参考にして進めていきたい、こういうように考えております。
  442. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実はお願いしておきたいのは、木を植えることも大切ですけれども、いまある緑を保存するということが基本的に大切だと私は思うのです。連絡会議の中でそういう位置づけはぜひお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  443. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 いかにも、先生のお尋ねに同感でありますとか、私もそのとおりに考えておりますと言うと、お上手を言うように言われますから心苦しいのでございますけれども、しかし、先生の御意見はもっともだと思いますので、大いに参考にしていきたいと思います。
  444. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 政府主導ではなくて、それは機関として設置することは結構でしょう。しかし、民間の力、特にこれまで緑化に取り組んできた団体や個人、こういう人々の力を結集しないと、なかなかこれは国民運動にならぬと私は思うのです。連絡会議の中では、ぜひそういう国民運動の方向というものを、つまり民間の人たちも含めた、経験者も含めた、あるいは学識経験者も含めた、そういうものにした形での本部というものをおつくりになるおつもりはございませんか。
  445. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 それは、いま先生からも御指摘がありましたが、私もそれを実は考えて、明日の連絡会議で各団体等の協力を得て、国民全体の国土の緑化、これを進めていくようにしたい。やはり先生の、これまた何と申しますか、同じようなことになるかもしれませんが、先生のおっしゃることと私は同感であります。正直申して同感でございますから、明日も、各団体すべての国民運動として盛り上げていくようにしたい、こう考えております。
  446. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 せっかく国土庁長官もおられますから、緑化の運動についてえらい熱心にお取り組みをなさるように伺いましたが、一言御発言ございませんか。
  447. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど総務長官がおっしゃいました線、国土庁としても一生懸命その線に従ってやっていきたいと考えておるところでございます。
  448. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 関連で五十嵐議員に譲りたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  449. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 この際、五十嵐広三君から関連質疑の申し出があります。岩垂君の持ち時間の範囲内でこれを許します。五十嵐広三君。
  450. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 自治大臣にまずちょっとお伺いしますが、ちょうどあしたは田中決議案を審議するということになっておるわけでありますが、ついこの間、二月二十五日に大阪府堺市で、わが国で初めて倫理条例というのをつくった。最近いろいろな意味で、いわゆる田中的政治風土というものが中央に限らず地方全体を含めていろいろ論議をされておる中で、大変に国民としては一陣の清風を感ずるような思いでなかったかというふうに思うのでありますが、これの内容につきましては御存じのとおりでありますから改めて申し上げません。  この堺市の倫理条例をごらんになられて、自治大臣の御感想はいかがですか。
  451. 山本幸雄

    山本国務大臣 これは私の個人的な感想ということを申し上げても仕方がないことでございますが、何せいろいろな経緯を経てこれが制定されたと承知しておりますが、政治倫理ということの内容でございまして、これはいままでなかったことだと思います。  そこで、これを条例でお決めになったわけでございますが、条例というのはもちろん地方自治体が自主性を持っておつくりになるものでございます。自主性でおつくりになるという条例の中身が政治倫理ということになっておるのでございまして、そうなってまいりますと、自治省という立場ではこれについていまのお話のように私の感想ということを申し上げる筋合いではないのではないか、こう思っております。
  452. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあしかし、この種のものでは全国で初めての条例なわけですね。しかも、あそこはわが国でも歴史的に、いわば中世の自治都市といいますか、非常に特色のある伝統というものを持った町で、今度の条例制定のあり方などを見ましても、住民運動を続けて、直接請求を法で定める約四倍以上のものを集めて、そしてほとんどそういう住民運動の内容と変わらない趣旨の条例制定に成功した。僕はそういうものを見ていると、まさにいまわが国のそういう、さっき言ったような政治風土の中で手づくり条例のようなものをつくって、足元のところから政治をきれいにしていこう、こういう運動というものはやはり地方自治体のあり方として大変に注目すべきものであって、これは自治大臣、個人的な感想の範囲でとどめて、さしたる印象のないようなお話はいかがかと思うのであります。私はやはりこういうような運動というものは、これはあちこちの自治体に広まって当然だと思うし、むしろ国レベルだってそういうことに学ぶことがあっていいとさえ思うのでありますが、もう一遍。
  453. 山本幸雄

    山本国務大臣 新聞にもずいぶん出たようでございますから大変世の関心を呼んだ条例であると思います。  私どもの立場からいえば、やはり地方自治の業務とかあるいは事務とかといったような内容のことであればまた私どもも申し上げる余地もあるかと思いますけれども、事が政治倫理という、そういう従来の条例の内容とは違った、全くと言っていいくらい異質のものを盛り込んだという条例でございます。しかも条例というのは、地方自治体でおつくりになれば、私ども自治省としてはさようなことについてかれこれ申す筋合いではなかろう、いままでのお答えをもう一遍繰り返すわけでございますが、そういうふうに考えております。
  454. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 時間がありませんからこのことばかりも申し上げておられませんが、きわめて消極的な姿勢で、自治大臣立場からいうと僕はいかがかというふうに思います。僕などはやはりこういう運動が大いに広まってほしい、こういうぐあいに思っているところであります。  さて、どうもことしは国の財政も大変だけれども、地方の財政も約五十兆円を超える借金を持って、大変な状況にあるわけであります。しかも、ことしの地方財政の内容を見てみますと、どの数字をとっても戦後初めてというような悪い状況が重なっているということは、これも改めて言うまでもありません。  一般歳出全体の伸び率はマイナス〇・一%ですぬ。それから地財計画は〇・九%増あるいは地方単独事業の伸び率はゼロ、こういうものはいずれも戦後初めての状況であります。なかんずく、地方交付税の伸び率は初のマイナス四・九%あるいは地方債の発行は過去最高の三一・三%、何もかも記録破りの史上最悪の地方財政状況にあるわけであります。  そういう状況の中の今年の地方財政対策の中でも、私どもが実は一番頭にくるといいますか、これはもうどうしてこういうことになったのかというふうに思いますのは、地方交付税特別会計の借入金の金利を今年は大蔵省との話し合いの中で地方が初めて二分の一負担する、こういうことになった。これは自治省の内部あたりでも、仄聞すると、本当に大変なことを決めてしまったものだ、こういうような意見もあるやに伺っているわけでありますが、そこで、以下少しお聞き申し上げたいと思うのです。  まず第一に、地方交付税というものの性格なんでありますが、地方交付税の性格は、われわれはこれはもういつの場合でも、長い間歴史的にそういうことが確認され続けてきているのでありますが、地方公共団体の固有の、いわば共同の税源という考えを持っているのでありますが、こういう考え方について、そういうことであるか、そうでないのか、自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
  455. 山本幸雄

    山本国務大臣 今日の国民の納める税については、私は、いま国が約地方の倍ぐらいの税を取っている、その国税の中から地方に渡すというものが出てこなければならぬわけでございますが、それが地方交付税という形になっているものであろう。したがって、これが国の徴収する国税三税の一定の割合を地方に交付税として渡すということでありまして、ただいまのお説のように、本質的には地方団体固有の財源であると観念はしております。
  456. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大蔵大臣、歴代の大蔵大臣もややそういう見解を示されてきているのでありますが、いかがでしょうか。
  457. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり最初は昭和四十四年福田大蔵大臣国会答弁というところから、これが継続して今日に至っておると思います。これは五十嵐委員御承知のとおりでございます。そもそも地方交付税は、地方団体がひとしくその行うべき事務を遂行することができるように地方財政の調整のため国が地方に交付する使途制限のない一般財源としての交付金であって、法律でまさにその総額が国税三税の三二%と決められているものである、したがって法律による国税三税の一定割合が地方団体に当然帰属するという意味において地方固有の財源であると言って差し支えないというのが、いわばこの定着したお答えであるというふうに認識しております。
  458. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうすると、時折、ことにこういうぐあいに国も地方も財政事情大変なときには、議論として出るのでありますが、どうも何か地方交付税の存在が国の経費として国家財政圧迫の一つの原因になっている、そこではいつでも削減の対象として、厳しくなってくると地方交付税をどうとかこうとかという、地方交付税の性格を知らない立場からの論議がどうも生まれてくる場合が少なくないのでありますが、これは全くの誤りというものであろうと思うのですが、大蔵大臣、そうですね。
  459. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、やっぱり私は、国の財政と地方の財政はまさに公経済の車の両輪である、ともにその適正かつ円滑な運営が図られなければならない、そういう趣旨のものであって、そこで、いわば役所の名前でいえば自治省と大蔵省が同床異夢であるとか、あるいは私どもも年一回必ず地方行政委員会へ出てその種の議論の対象になるわけでございますが、先ほど申し述べました基本的な考えをまずそこにきちんと持っておれば、車の両輪としておのずから解決の得られる問題であるというふうに解釈をすべきではないかと思っております。
  460. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 何だかどうもちょっとよくわからぬ話でありますが、つまり車の両輪というたとえも、こういう意味ではわからないことないと思いますね。大蔵大臣が先ほど説明をしたように、これは自治体の独立共有の財産というような、財政的な秩序といいますか、お互いのそういう立場というものを認め合って、そして、その車の両輪といいますか、右左それぞれあって、それが回りながら国全体の行財政を進めていくという、この独立性という意味で二つ車があるという意味では僕は理解できるような気がするのであります。  何にいたしましても、いま言うように、何かどうも一般の経費と同じように地方交付税というものを簡単に削減の対象にして論議するというようなことは全く誤っているものだ、筋違いのものだ、こういうぐあいに思うところでありますが、もちろん大蔵大臣はそんなことはお考えになっておらぬとは思いますが、自治大臣、いかがですか。
  461. 山本幸雄

    山本国務大臣 地方行政に大変に御経験もあり御理解もある先生の御意見のとおりに私は思っております。
  462. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ありがとうございます。  大蔵大臣、大筋そんなようなことでないかと思うのですが、どうですか。
  463. 竹下登

    竹下国務大臣 公経済の車の両輪であるという共通認識ではないかなと私もおもっております。
  464. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつこの地方交付税の持っている本来の性格というものを尊重して、歴代の大蔵大臣、またきょうも竹下大蔵大臣のお話もそうであろうと思いますが、その立場に立って、ぜひひとつ地方固有の税源を侵さないようにお願いを申し上げたいというふうに思います。  この折でありますから、交付税のさっき申し上げました金利負担の問題でありますが、これはもう金利の問題は、昭和三十九年から今日まで、実に長い間、国の責任において国が全額負担するというルールがずうっと続けられてきているわけですね。これはもうそういう制度が生まれたときの大蔵省側の説明でもそうでありますし、その後、機会あるごとに国会内の論議でもそういうことは確認されてきているわけでありますが、今回これが二分の一地方が持たされるということになったことは、きわめて遺憾だというふうに思うのであります。  自治大臣一体どうしてこういうことになったのか。これはあなたの責任は非常に大きいものがあると思いますが、いかがですか。
  465. 山本幸雄

    山本国務大臣 この問題は、五十八年度予算編成に当たりまして、先ほどお話のように、地方財政は非常に厳しい状況にあるわけでございますので、この問題が一番の題目、一番の問題点になったわけでございます。地方財政も非常に厳しいことでございますから、私どもとしては、もちろん従来のルールでやってほしいということを考え、大蔵省とも折衝をしたわけでございますが、何せことしの地方財政も苦しいけれども、国の財政も相当ことしは苦しい状態にあって、少し言葉をかりれば危機的な状況にある、こういうことでございます。  先ほど来、車の両輪論が出ておりますが、地方財政も、ひとつ私は何とかやれるようにしていきたいと思う。同時に、国の財政も、苦しいながら地方財政と同じように回っていかなければならない、こういうことでございまして、五十八年度につきましては、まことに残念ではありますけれどもやむを得ないものがあった、こう考えております。
  466. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは本来地方交付税法の六条の三の二項ですね。この本則に基づいて本来であれば税率を上げなければならぬ状況に今日ある、本来であればそういう状況にある、こういう認識については自治大臣、そうですか。
  467. 山本幸雄

    山本国務大臣 六条の三につきましては、これはもう私どものかたく地方財政を守っていく上での大事な条項だ、こう思っております。
  468. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 六条の三の第二項にあるように、著しく継続してこういう状況のときには、これは税率について変えていかなければいかぬ、こういう今日の状況だということについて、これは自治大臣、そういうことですね。
  469. 山本幸雄

    山本国務大臣 おっしゃるように、制度の改正かあるいは税率の引き上げをやるという条項になっておるわけでございますが、確かにそういう状態には当たっておる、こう思っておりますが、何せ財政状況というものはそういうことを許さないくらい非常な厳しい状態にある、まことにやむを得なかった、こう思っております。
  470. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうですね。そのこともわからぬわけじゃないのでありますが、そういう状況の中で五十三年に、この交付税特会で借り入れた元金について、二分の一というようなことの制度化がなされたということになっているわけですね。したがって、当然本来であれば税率を上げなければならぬところが、国の財政もなかなか容易でない関係からそうできないということの中で、こういう制度というものが五十三年以降ルール化されているということなのであって、どうもいま、今年から利子について二分の一持つようになったというようなことは、いずれの趣旨からいったって納得がいかないですね。本来国の責任において税率を上げるべきところを、上げ得ないがためにこういうような措置をとっているわけでありますから、したがって金利は当然国が持つべきものであって、全くこれについては私どもは不満であります。  もちろん今年限りですね。自治大臣、どうですか。
  471. 山本幸雄

    山本国務大臣 おっしゃるとおりのことでございまして、六条の三あるいはその後の元金二分の一、利子全額というルールは、かたく私どもも守っていきたいという気持ちには少しも変わりないわけでございます。ただ、五十八年度については事情やむを得ないものがある。国家財政の現状を考えてやむを得ないものがあった、こういうことでございます。
  472. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大蔵大臣、いま自治大臣が非常に苦衷のほどをにじませながらのお答えなんでありますが、こういう自治大臣のお言葉について、大蔵大臣としても覚書を交換した当事者として御理解いただいておるのかどうか、お伺いをいたします。
  473. 竹下登

    竹下国務大臣 経過を申し上げましても、それは五十嵐委員百も承知のことでございますが、臨時国会、補正予算の合間を縫って、数度大臣折衝もいたしました。大臣折衝の過程におきましていろいろな経緯がございましたが、まさにいま自治大臣がここでお答え申し上げたような心境を吐露され、私の方も財政事情の困難な事情を吐露し、何たびか協議を重ねた結果の合意として、年末やっと合意を見て御審議いただいておるという事情でございます。  五十嵐委員の御指摘も、また自治大臣のお答え申し上げました点についても、私ももとより理解をいたしております。五十九年度以降、その時点において協議すべきこととして残っておる問題ではございますけれども、いまおっしゃったその心境というものを全くネグってこれに対応すべきものであるとは考えておりません。
  474. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この折でありますからちょっと大蔵大臣の御意見を伺いたいのでありますが、仄聞するところによると、大蔵省は政府税調の審議予定を当初から二月ぐらい早めてスタートする、こういう報道なんかもあるわけでありますが、大体いつごろ答申を得るというような計画でございますか。
  475. 竹下登

    竹下国務大臣 政府税調の問題でございますが、この十一月の十七日でございましたか、たしか三年の任期が来るわけでございます。したがいまして、そのような事態を考えながらどう対処するかということは、まだ私の頭の中に去来しておることでありまして、部内で相談をしてどうするかということは、まだ相談をしていない、まだ私の頭の中に去来しておることである、今日の時点ではそういう現状でございます。
  476. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 御予定になっている政府税調で、減税についてもその中身の御検討をいただくということになりますか。
  477. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる議長見解をも含む各党の責任者のお方が合意に達せられた問題につきましては、これは国会の論議を踏まえ、そしてまた国会での御論議は政府税調に御報告申し上げるわけでございますので、もとより行政府として政府税調にいろいろな、そもそもは地方、国を通じてあるべき税制の姿という大きな諮問を申し上げておる審議会でございますけれども、当然のこととしてそこの意見を聞くべきであるということだと思っております。
  478. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうしますと、従前の御答弁等から察するに、七月ぐらいまでには答申を得ながら、かつ五十七年度の税収状況も踏まえて対応することになるということになろうと思うのでありますが、そのくらいまでにといいますか、まだ胸の中にあるというお話でありますが、つまりそれの答申を得て早急に与野党合意に基づく、また議長のお取り計らいの方向の減税を具体化していく、こういうぐあいに解釈してよろしゅうございますか。
  479. 竹下登

    竹下国務大臣 先般、七日という言葉が私の口からも出ましたし、また新聞等にも報道されております。七月というのを厳密に申し上げますならば、五十七年の決算が確定するわけでございます。したがって、その決算情勢を踏まえた今後の経済情勢、それに伴う税収というものを議論する一つの大きなきっかけになる時期であるというふうに理解をいただければ幸いであります。
  480. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、お話によりますと、つまり政府税調の意見も聞いてということでありますから、そこら辺のタイミングは、そこら辺にぶつかってそして判断するということになるのじゃないかというように思いますが、その点をお聞きしたい。  それからもう一つは、第二臨調で近々答申がある。従前、部会であるとか部会長のメモであるとか、こういうもので直間比率の問題について一定の見解がちらほら出ているわけでありまして、しかもここ一両日の仄聞するところによると、最終答申でもややそういう方向で示されるのではないかというふうにも言われるわけでありますが、仮に第二臨調が直間比率の問題を含めて税収構造のあり方について検討すべきだというような方向が出た場合には、臨調の答申というものはもちろん尊重して大蔵省としては対処するということになりますか。
  481. 竹下登

    竹下国務大臣 直間比率の問題でございます。確かに、私が前回大蔵大臣をしておりました当時は、この直間比率の見直しと言えば、直ちにいわゆる一般消費税(仮称)の導入とかいうふうにとられがちでございました。しかしながら、その後税調の答申、あるいはいま御指摘になりました臨調でも、まさに直間比率の見直しを検討すべきであるとされております。したがって、そのような当時と比べますと、言ってみれば環境はずいぶん変わってきたという認識はしております。  ただ、結局、直間比率というものを厳密に考えてみますと、これは結果として生じたもので、あらかじめ先見性を持って固定した概念でとらえるべきものではないのではないか、こういう感じも率直にいたすわけでございます。その意味においては、税体系の見直しという言葉の方がむしろ適切ではないかという感じを、本委員会における問答を通じながら私自身も感じておるところでございます。  いま、いわゆる直間比率を見直すという問題を検討したとか、あるいは指示を受けたとか、また私が指示をしたという状態にはないわけでございますけれども、そういう指摘がある限りにおいて、これは大いに勉強しなければならぬ課題であるというふうには受けとめておるわけでございます。そして税調に対しては、これはやってもらっては困る課題だとかこれはやってくださいとかいうような問題ではなく、やはり幅広く見識のある皆さん方に諮問申し上げておりますから、その中で御検討があるであろうと思っております。
  482. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、第二臨調はもう目の前のところで答申がある、その答申の中でそういうようなものが示されてきたという場合に、今度は政府税調がスタートするわけですね。これは当然そこのところの関連が出てくるといいますか、臨調の答申を得つつ税調でまた論議をするということになっていくものではないかとも思うのです、もちろんそこのところには大蔵大臣という存在が間にあって。ですから、その意味では、臨調がややそういう方向ということになったとすれば、そういう方向での御検討はもちろん大臣の手元でなされていくということになると思うのですが、手短で結構でありますが、そこのところはどういうことかというふうに……。
  483. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり臨調の答申がどういうものが出るかということについては、まだ過程の段階でございますので定かに申し上げるわけにはまいりませんが、税調答申の中でも、課税ベースの広い間接税税体系の見直しという言葉が使われて答申がなされておりますので、そういうものはいわゆる御検討の対象になるものであろうと思っております。私どもの方からこれを審議してくださいと言える性格の審議会では必ずしもないと思っております。
  484. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この直間比率について見直すといいますか検討することになりますと、これは当然地方税財政に大きな関連を持つことになってくるわけですね。そうしますと、ことでやはり抜本的に地方税財政についても関連して検討するということになろうと思うのですが、これはどうですか。
  485. 竹下登

    竹下国務大臣 これも税調にあるべき地方、国の税制についてという幅広い形で諮問を申し上げておるわけでございますので、それらの御検討は行われるのではないかというふうに考えております。
  486. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 せっかく厚生大臣、お忙しいところおいでいただきましてありがとうございます。端的にお聞きしますが、地方自治体における俗に言う福祉上積みの問題であります。  最近ことにいろいろ論議になっているのは、御承知のように老人保健法の実施に伴ってこの問題がいろいろ言われているわけでありますが、どうもそれに関連して、それぞれの自治体でいろいろな工夫をし、上積みなりをしている、それは歴史的な経過もあるわけですが、これは厚生省としては好ましいことでない、これらについて一つの制裁措置といいますか、補助金等についてコントロールするとか、そういうようなことをも考えているような話をときどき伝え聞くのでありますが、しかし、そういうことはないのかどうか。
  487. 林義郎

    ○林国務大臣 五十嵐委員の御質問にお答え申し上げます。  老人保健法の施行がこの二月一日からでございまして、老人保健法は、もう先生御承知のとおり、一部負担を老人の方にお願いをするということになっておりまして、広く拠出者を求めて老人の医療の問題を解決していこうというのが大きなねらいでございますが、厚生省といたしましては、地方公共団体に対しまして、老人保健法の中にはっきりと、地方公共団体もいまの法律の趣旨に沿ってやってもらいたいということが書いてございますので、そうした規定もありますし、老人保健法の趣旨について十分理解を求め、国の施策との整合性等を考慮して、適切に対応していただくようにお願いをしているところであります。  制裁措置などというような話は、ちょっと大げさな話でございますから、そういった大げさなことをやって、何か何でもひん曲げてやろうというようなことは考えてないところでございます。
  488. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大臣、つまりそういう制裁措置はしないということですね。そうですね。――わかりました。  自治省においても、起債の許可だとかあるいは特別交付税だとか、こういうようなことで、福祉上積みがあるから制裁するなんというようなことはもちろんないと思いますが、いかがですか。
  489. 山本幸雄

    山本国務大臣 地方公共団体でそういう地域の実情をお考えになって、主体性を持っておやりになるということについては、私どもはそれはそれなりに考えていかなければならないと思っております。しかし、私どもといたしましては、現在は非常に厳しい財政事情にあるわけでございますから、そういう中ではやはり整合性ということも考えていただいて、ひとつ厳しい取捨選択をしていただきたい、こう私どもは考えております。
  490. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっとわからないですね。つまり、起債の許可だとかあるいは交付税だとか、こういうようなことで制裁をするのかどうかということなんですよ。質問にどうもお答えになっていないものだから、ちょっと言ってください。端的に、するならすると、こう言ってもらえばいい。
  491. 山本幸雄

    山本国務大臣 端的に申せば、国の考えておる、厚生省考えておることと整合性を持って自治体も選択をしていただきたいと、こういうことでございます。
  492. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 制裁をするということですか。それ、はっきりしてくださいよ。それはいままで、われわれは、地方制度調査会なんかでも、そういう制裁はしないという自治省の見解を私はずっと聞いておりますよ。大臣の言うことは、そういういままでの経過と違いますよ。明快に答えてください。やるならやると言ってください。
  493. 山本幸雄

    山本国務大臣 少なくも制裁なんというようなことは考えておりません。さようなことは考えておりませんが、私どもとしてもそういう整合性を持った措置をしていただくようにお願いをする、こういうことでございます。
  494. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 済みません、もう一、二分で終わりますから。  旧土人保護法についてお願いをしておりましたように、この旧土人保護法の問題が、もうそろそろ判断をしなければならぬ時期に至っているのではないかというふうに感ずるのでありますが、もう深いことは要りません。私もまた深く触れようとも思いませんし、これについて厚生大臣並びにウタリ対策についてお取りまとめの窓口になっている開発庁長官、御両氏のお考えを一言ずつで結構でありますが、伺いたいと思います。
  495. 林義郎

    ○林国務大臣 北海道旧土人保護法、明治三十二年の法律でございますが、立法当初の目的とずいぶん変わってきておりますし、名称も私はどうかと思いますし、内容的にも給与地の取得制限に関する規定を除き、実効性を失っているというふうに考えられております。その廃止をするということになると、やはり現地の方々の御意見を聞かなければなりませんし、北海道庁初め、地元の意見を尊重しつつ検討するということではないか、こう考えております。
  496. 加藤六月

    加藤国務大臣 同法の存続につきましては、ただいま厚生大臣答弁されたようでございまして、北海道庁を初め、地元関係者の意見を尊重しつつ検討していく必要があると考えております。
  497. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 委員長、どうもありがとうございました。
  498. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて岩垂君、五十嵐君の質疑は終了いたしました。  次に、柴田弘君。
  499. 柴田弘

    柴田委員 各大臣、大変御苦労さまでございます。それから日銀総裁には、本日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。  私は、きょうは財政経済問題を中心にして質問をさせていただきたいと思っておりますが、本題に入る前に、いま大きな話題を提供いたしております中国残留孤児の問題ですね、昨日もテレビを見ておりまして、肉親の方に会いまして抱き合って涙を流して感涙にむせんでおる、こういった姿を見まして、やはりこの問題はもっともっと積極的に推進をしていかなければいけない。そして、同時にまた戦争の悲惨さ、平和の大切さというものをいま身にしみて感じているわけであります。  そこで、これはまず厚生省にお尋ねをしていきたいわけでありますが、現在日本人の中国残留孤児と言われる人は何人まだ向こうにおみえになるか、そして、その人たちが今日のようなこういった日本へ訪問をして肉親に会われる、こういったことはあと何年かかっていけばこれが完了するのか、まずこの辺から御答弁をいただきたいと思います。
  500. 林義郎

    ○林国務大臣 柴田議員の御質問にお答え申し上げます。  中国残留日本人孤児におきまして、調査依頼のあった方が千四百五十一人、これまで身元が判明している人が六百八人、現在調査中の方が八百四十三人でございます。今回、四十五人ほど来ておられるわけでございますが、昭和五十八年度には百八十人の孤児について訪日調査を行うほか、関係資料の国内周知等も図ることとして、中国政府協力もお願いして、孤児の肉親捜し調査を促進するように努力をしてまいりたい。まあ予算の関係もございますし、また中国側の態勢もございますが、われわれとしてはできるだけ早く早期に肉親捜しを終了させたい、こういうふうに考えているところでございます。
  501. 柴田弘

    柴田委員 あと八百四十三人まだおみえになるわけですね。それで今回は百八十人だということでありますが、あと何年かかるかということなんですね。問題は、こちらの御両親あるいはまた身内の方、特に御両親も相当な年齢になっておみえになると思うのですね。だから、できるだけ早くといういまの厚生大臣の御答弁でありますが、私は、これをもっともっと効果的あらしめるために、やはりテレビ等の活用というものが非常に大事になってくるのではないか。現実に毎朝テレビで放映されております。あれを見て消息がわかった方も私は多々あるのではないか、こんなふうに思います。     〔村田委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕  そこで、郵政大臣に来ていただいておりますのでお答えをいただきたいわけでありますが、国内におけるそういったテレビの放映だけではなくて、やはり現実に、でき得るものならば、これは放送各社の協力も得て、厚生省の職員の方が同行されて向こうへ行って、中国の方へ行って、そうして取材をしてこちらへ持って帰って全国ネットで放映をする、こういった効果的な方向、もちろん中国側の国内事情もあると思いますが、粘り強い折衝の中で、一日も早く私は肉親の皆様方に会わしてあげたい、こういったことからお尋ねしているわけでありますが、どうでしょうか。郵政大臣、そこら辺のお考えはありませんか。
  502. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 中国残留孤児問題は、人道上の見地からも、また社会問題としても、私は大変重大な問題であると認識をいたしておる次第でございます。  現在、御案内のように、こちらへ参りました残留孤児については、NHKを初め放送事業者にできるだけの協力を要請してまいっておる、また実行しておるところでございますが、中国へ入国の上で取材をし、ビデオ撮りをするということは、残留孤児問題の早期解決に私は大変役立つことであると思っております。ただ、中国側の事情もあるやに聞き及んでおるのでございまして、外交の問題もございましょうし、また主管の厚生省の今後の中国側との協議等もあろうかと思うのでございますが、その結果、入国取材の門が開かれることになりますれば、私も放送事業担当の閣僚といたしまして、NHKその他民放等の協力を改めて要請する考えでございます。
  503. 柴田弘

    柴田委員 いま郵政大臣から、事情が許せば、こういうことで前向きな答弁をいただいたわけであります。  そこで厚生大臣、やはりこれは外務省にも問題があると思いますね。ひとつ外務省と協議をして、できるだけいま郵政大臣から御答弁がありましたような方向へ厚生省としても今後積極的な御努力をいただきたい、また努力をすべきではないか、こんなふうに私は思いますが、どうでしょう。
  504. 林義郎

    ○林国務大臣 柴田議員の御質問にお答え申し上げます。  今回、たとえば日本に来ております孤児の問題を各テレビ会社に大変御協力をいただいてやっておりまして、父母に会えるというチャンスが出てきたのだろうと私は思いますし、テレビの効果というのは大変なことだろうと思います。ましてや、中国にいまおられる方のところを映して国外で肉親捜しをするというようなことは、私は一つの方法だろうと思います。政府職員が訪中して孤児や関係者から直接面接調査等を行うということ、これもまだ実は実現しておりませんが、その際テレビ局によるビデオ撮り等を行うということにつきましては、その実現につきましてはやはり中国側の問題でございますから、外務省を通じる等いたしまして中国政府とも十分に協議をやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  505. 柴田弘

    柴田委員 郵政大臣、どうぞもう結構ですから。ありがとうございました。  厚生大臣に次の問題でお伺いしておきますが、残留孤児の問題でいろいろなことが起こっているわけであります。その一つは、こちらへ孤児が参りまして幸いにして肉親に会った、そこまではいいわけです。ところが、あと残された養父母の問題があります。恐らくもう六十代、七十代あるいは八十代近いであろう。そういったことを考えますと、いわゆる中国側の養父母の生活問題、生活保障の問題として政府としても考えていかなければいけない、私はこんなふうに思います。私がいろいろと聞き及んでいるところによりますと、大体一カ月に二十五元、三千円くらいで足りるのではないか、こんなように聞いておるわけでありますが、これに何らかの形で国として対応していかなければいけない、こういうように思います。その辺のお考えはありますか。
  506. 林義郎

    ○林国務大臣 柴田議員の御質問にお答え申し上げます。  孤児が日本に永住帰化した場合に、中国に残っているところの養父母の扶養の問題につきましてはいろいろといままで問題があったわけでございますが、御指摘のように、やはり政府の援助ということを考えなければならない。扶養費の二分の一を政府が援助して、残りは民間寄附金などで賄うことにより解決するということ、こういうことで中国政府との間に基本的な合意がまとまったところでございます。今後どういうふうにしていくか。たとえば扶養費の二分の一というその扶養費というのはどの程度の範囲にするのか、また分け方もいろいろあるでございましょうからというような問題であるとか、送金の方法であるとか、いろいろな問題がございますから、そういった細目、詳細につきましては、外交ルートを通じて協議の上最終的な合意を得る、こういう形で進めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  507. 柴田弘

    柴田委員 半分は国が出して半分は民間の寄附金ですか。もちろん中国政府との合意を得る、今後どういう方法でと、こういうことになると思いますが、厚生省でもう具体的な問題として、今年そういったスケジュール、今後こういうふうにしていきますよというのはどうなんでしょうかね。
  508. 林義郎

    ○林国務大臣 柴田議員の御質問にお答え申し上げます。  原則が決まったわけでございますから、現在孤児を受け入れいたしまして一生懸命援護局の連中もやっているところでございますが、そういった問題が解決しましたならば、できるだけ速やかに中国側と交渉する用意があるということだけは申し上げておきたいと思います。これからいつどこで中国側とそういったことをやるかというのは、外交ルートを通じましてやってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  509. 柴田弘

    柴田委員 もう一点、中国残留孤児の定着問題。新聞、テレビ等の報道を見てまいりますと、せっかく肉親に会って、こちらで住もうとおっしゃっているわけであります。ところが、中にはなかなか日本になれないとか、職業の問題とか、その他いろいろな問題で泣く泣くまた中国へカムバックされる、帰られる、こういうような方も多々見受けられるわけでありますが、この定着対策について、何か定着センターというのを建設して、日本語の教育とか日本での社会生活の習慣をつけていく、あるいはまた職業訓練がされるのかどうかわかりませんが、そういったことを聞き及んでいるわけであります。この辺の構想というのは一体どうなっておりますか。具体的にひとつ、どこへそういうのがつくられて、規模はこんなものだ、あるいはこういうふうにやっていくのだ、そういうものが厚生省の方にあると思いますが、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  510. 林義郎

    ○林国務大臣 柴田議員の御質問にお答え申し上げます。  孤児等の引き揚げ者が、定着先において一日も早く自立して安定した社会生活が営めるように、帰還手当の支給、帰国時のオリエンテーション、生活指導等の指導員の派遣等の援護措置を講じるほか、関係各省にお願いを申し上げ御協力いただいて、公営住宅の優先入居を図ること、職業訓練、就職あっせん等のいろいろな施策を行っているところでございます。  昭和五十八年度におきましては、定着化の促進をさらに図るために、日本語教育を含めた生活指導を行う施設として中国帰国孤児定着促進センターを設置する予算を現在お願いをしているところでございます。この中国帰国孤児定着促進センターは、予算が成立いたしましたならば、大体の構想といたしまして、入所期間は約四カ月、年間に延べ百世帯の方々に入っていただけるだけの規模を持つ、総建築面積としては約二千平米を考えております。場所は現在探しておる、こういうことでございます。  帰還手当の額は、大人が十二万五千六百円、子供は半額。生活指導員は、帰国後原則として一年間派遣、月四回というのが大体の骨子でございます。
  511. 柴田弘

    柴田委員 どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。  次は、日銀総裁、どうもお待たせしました。  最近の経済状況を見てまいりますと、本当に景気が回復をしていくんだなとはまだまだ感ぜられません。たまたま原油価格の値下げの問題がいま大いに問題になっておるわけですが、この問題につきましては、プラスになる面もあるでしょうし、またデメリットもある。総体的に言えばプラスになるのではないかというふうに言われておるわけでございますが、総裁としては、果たして国内経済、国際経済、つまり内外経済にはどのような影響を与えると御判断になっているか、そしていま一つは、金融面、特に国際金融面においてはどのような影響というものがあるとお考えになっているのか、この辺からひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  512. 前川春雄

    ○前川参考人 原油価格の引き下げが目下関係産油国の間で討議されておるわけでございまするが、どのくらい下がるかということはいまだはっきりしておりません。その下がり方によって影響がまたいろいろ変わってまいりますものでございますから、そういう引き下げ幅が決まっておらない現状におきましては、一般論として申し上げるほかないと思いますが、一般論として申し上げますれば、原油価格が第一次、第二次のオイルショックによってあれだけ上がりまして、そのために産油国に膨大なる所得の移転が行われた、そのために原油の輸入国は一斉にその影響をこうむったというのが現状であろうというふうに思います。そういう意味におきまして、原油価格の引き下げが行われればそれだけ所得移転の来方が少なくなるわけでございまするから、輸入国にとりましては実質的な購買力がふえるということになりまするので、そういう意味では世界経済にとってもいい影響が出るということが一般的には考えられるわけでございます。なかんずく、日本のように輸入原油に依存する度合いの大きい国では、そういう恩典に浴する度合いが大きいだろうということが一般的に言われるわけでございます。  もう一つは、原油価格が上がることによって世界的な物価騰貴ということが起こります。それがいまの世界のインフレの一つの原因になっております。そういう意味におきまして、原油価格の引き下げが行われますることは、物価の面におきましても世界的に物価の上昇がそれだけ抑えられるということになるわけでございまするので、これも世界経済にとってはいい影響があろうかというふうに思います。  もちろん、産油国の方はそれとは逆でございまして、所得がそれだけ減るわけでございまするから、産油国向けの日本の輸出なんかにはやはり悪い影響が出てくるということになります。したがいまして、その辺は引き下げ幅がどのくらいになるかということによって具体的に計算してみないとわからないわけでございまするけれども、概して言えばプラスの方が多いのではないかというふうに思います。  ただ、国際金融の面においてどういう影響があるかという御質問がございましたが、引き下げ幅が余り大幅に、急激に行われるということになりますると、いま国際金融の面では一つの大きな問題となっておりまする債務の累積問題、幾つかの国において債務累積、借金が非常に多くなる、利払いもなかなか容易ではないという事態が起きておるわけでございます。これが世界恐慌につながるということではないようにわれわれも努力しておるわけでございまするけれども、そういう債務累積国の中には産油国がございまするので、余り原油価格が大幅に、また急激に下がるということになりますると、そういう国にとっては負担がさらにふえるということになりまするので、そういう点では問題なしとしないということでございます。これも、引き下げ幅がどのくらいになるかということによって変わってまいりまするので、一概には申せませんけれども、問題としてはそういう問題がございます。
  513. 柴田弘

    柴田委員 国際金融面の影響につきましては、また後で大蔵大臣にお聞きをいたします。  そこで、総裁にお聞きしたい第二点は、今回の原油の値下げの波紋ですね、いま大体プラスになるであろう、こういうことであります。いろんな各方面に影響が出てくるわけでありまして、やはりこのチャンスといいますか、これを国民生活と経済の安定というものを中心にして景気の回復、それからいま物価の問題にもお触れになりましたが、物価安定、あるいはまたエネルギーの需給などのバランスを十分に考慮した経済運営というものを選択をしていかなければいけない、いまこういうときに来ているのじゃないか、こう私は思うわけです。このような質問を申し上げて恐縮でございますが、こういった中において、では具体的にどこをどうしていったらいいか、もし意見があれば、あるいはまた御答弁をいただける範囲で結構でございますが、ひとつお聞かせをいただければと思います。
  514. 前川春雄

    ○前川参考人 長い間世界が悩みました原油価格の上昇が変わってくるわけでございまするから、このよって来る恩典を十分に生かしていかなければいけないということが、これからの経済政策運営の基本になるというふうに思います。そういう意味におきまして、積極的にいろいろやらなければならないこともあるわけでございますけれども、これだけはしてはいけないという面から申しますれば、せっかく原油価格が下がりましても、それが輸入されましてそのときに円相場が円安の方に振れるということになりますると、国内の価格は原油価格の低下の恩典に浴さない、輸入価格が同じになってしまうということになるわけでございます。そういう意味におきまして、円相場を円高方向に定着させるというのは私どもがいま目指している目標でございまするが、そういう方向をぜひ実現してまいらなければいけない。円安の方にまいりますれば、原油価格のせっかく引き下げがありましてもその恩典に浴さないということになるわけでございます。  また、先ほど申し上げましたように、原油価格の引き下げが世界的な物価の鎮静、引き下げということに好影響があるだろうということを申し上げました。その点につきましても、せっかく原油価格の引き下げがございましても、国内でそのほかの要因によって物価が上がってしまっては相殺されてしまう。原油価格の引き下げの効果が均てんしないということになるわけでございまするから、一般的にいままでと同様に物価が上がらないような経済政策をとってまいらなければいけないということになろうかと思います。  この二つの点は、原油価格の引き下げがあったからやるということではございません。いままででもすでにそういう方向で私どもも努力しておるわけでございまするけれども、その努力の効果が現実に発揮できるようにしてまいらなければいけないというふうに考えております。
  515. 柴田弘

    柴田委員 そこで、端的に公定歩合の引き下げの問題についてお尋ねいたします。  本来、日銀といたしましては、一月に引き下げられるという予定を立てておみえになったのではないかと私は推察をいたします。ところが、いろいろな問題がある。現在、一つは国内の長短金利差の問題、この縮小の問題がある。二つ目には、円相場が特に高下のぶれがいま大きいということで、やや安定しつつあるかもしれませんが、この円相場の問題がある。それから三つ目には、やはり米国、西独との協調的な利下げ、公定歩合の利下げ、これが望ましい。私は公定歩合の問題を論ずるときにはその三つが大きな問題になる、こういうように思います。  ところが、政府の景気対策を見ておりまして、やはり総合対策の中の一環としてのいわゆる金融の機動的運営というものは、これはきわめて景気回復への大きな一つの足がかりになるものであります。今日の財源難あるいはまた即効性というものを考えた場合には、やはり公定歩合の引き下げというものが大事じゃないかというふうに思うわけでありますが、この公定歩合の引き下げの見通し、これは非常にまだまだ先の話になるのか、あるいはその機は熟しつつあるのか、どうなのか。ひとつ率直に御意見を承りたい。
  516. 前川春雄

    ○前川参考人 公定歩合を含めました日本銀行の金利政策あるいは金融政策、どういう条件が整えばその政策を発動するかという点につきましては、いまいろいろなお話がございましたが、国内の景気、物価、為替、そういう問題を総合的に判断いたしまして発動するというふうに申し上げるよりほかに方法はないわけでございます。  景気は、御承知のようにいまのところ停滞傾向を続けております。物価につきましては安定と申しまするか、いまのところはそれほど心配はない。世界の中では最も安定した国であろうというふうに思います。  そういう点をいろいろ判断いたしまするときに、私ども一つの要素といたしましては、円相場が非常に不安定だということがあるわけでございます。円相場が不安定でありまする背景はいろいろございます。いろいろございまするが、やはり海外の金利が相対的には日本より高い。この金利水準も最近はかなり下がってまいりましたけれども、それでも日本の国内の金利水準に比べますると、まだ向こうの方が高い状態にあるわけでございます。それが全部の背景ではございません、原因ではございませんけれども、そういうことも含めまして、まだ相場が非常に不安定である。この円相場が不安定でございまする、ことに円安の方により大きく振れるというような事態につきましては、これが物価や何かにも影響するということもございます。また、いまのような世界的に貿易摩擦が非常にやかましいときには、日本の円相場を円高の方にどうしても定着さしてまいらなければいけない。とかく海外には円安誘導論というようないわれなき非難もある折からでございまするので、政策対応といたしましては、そういう点につきましても十分慎重に判断してまいらなければいけないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、私ども金利政策、金融政策につきましても、総合判断という中でも円相場が円高の方に定着するということを一つの大きな目安としていま考えておるわけでございます。  油の値段がこういうふうにもし下がりますると、世界的なインフレを収束させるにはいい影響があるわけでございます。そういう点がさらに世界的な海外の金利を引き下げる方向に働くであろうというふうに思われます。そういう意味で環境はいろいろ変わってくることが期待されるわけでございますけれども、なかなかそれが一遍にいかない。そういうことの効果があらわれまするまでにはまだ若干の時間がかかることであろう。ましてやいまどのくらい油の値段が下がるかまだ決まってない折からでございますので、大きな方向としてはだんだん環境にとってはいい方向に進むと思いまするけれども、そういう基本的な環境の中におきましても、相場が非常に最近はまた不安定である。今週になりまして、御承知のようにまた円安に大きく振れたということもあるわけでございます。世界じゅう油の値段がどういうふうになるのか、あるいはヨーロッパの政局がどういうふうになるのか、そういういろいろな不安定な様相に対してまだ不透明感がつきまとっておるというのが現状でございまするので、そういう点につきましての市場の判断あるいは世界的な関係者の判断がもう少し落ちつきませんと、なかなか対応がしにくいという環境であろうと思います。  しかし、いま申し上げましたようないろいろな環境につきましては、金融政策は非常に機動的に発動できる政策でございまするので、十分そういう点につきまして慎重に対応してまいりたいというふうに考えております。
  517. 柴田弘

    柴田委員 総裁、最後の一つの問題ですが、変動相場制の問題。どうもいろいろな報道を見ておりますと、この変動相場制について、総裁は為替相場を安定させる機能という点では不十分じゃないか、これは私の見間違いかもしれませんが、それで見直しを示唆されているのではないか、こんなふうに感ずるわけであります。  確かに、わが国の公定歩合の引き下げというものが国内的には余り問題がないにもかかわらず、海外要因からなかなか引き下げるという状況にはない、これは一つの見識であると私は思う。今日まで例のスミソニアン体制、これは一九七一年でありますね。一ドル三百六十円から三百八円への切り上げ。それから十年前の変動相場制への移行、フロート制といいます。それからまた急激な円高。そういったいろいろな通貨制度の変化によって、一時的にしましても国民経済というものが混乱したということはこれまでの事実であるわけであります。総裁もこの辺の事情というものはよく御理解をいただいているわけなんですが、この辺の見直しの真意というのは一体どこにあるのか、あるいは私のこれは勘違いなのか。しかし、もし総裁が見直しを言われるならば、その代替方式というものもお考えになっておると思います。そこら辺についてひとつお聞かせいただきたいと思いますし、同時に、この変動相場制の見直しは今後国際社会、たとえば今年五月のサミットでも議題になるやに聞き及んでおるわけでありますが、どのように進展をしていくであろうか。この辺の見通し等も含めてひとつお聞かせをいただきたいと思っております。どうでしょうか。     〔江藤委員長代理退席、村田委員長代理着席〕
  518. 前川春雄

    ○前川参考人 私が二月十六日にいたしました記者会見がいろいろ解釈されておるわけでございますが、私がそのとき申し上げましたことは、いま変動相場制になっておるわけでございますけれども、固定平価制度が維持できなくなった結果変動相場制になっておる、やむを得ずとられた制度であろう、基本的にはそういうふうに思っておるわけでございます。いろいろ変動相場制につきましては、そういう移行した当時はそれによって為替相場、国際収支等によって余り影響されないで国内の経済政策が発動できる、したがって、むしろそれは自由に国内政策、国内の目的を持って発動できるという利点もあるというふうに言われておったわけでございますが、現実に変動相場制になりましてから必ずしもそうはまいらない。国内政策、経済政策も海外の状況考えて実行してまいらなければいけないということでございます。  変動相場制はそういう意味でやむを得ずとられたものでございますが、その結果、たとえば、いまお話にございましたように、昨年円相場が非常に大きく変動してしまった。しかも、日本の経済のいわゆるファンダメンタルズというのは世界的には一番いい状態であるにもかかわらず、円がああいうふうに安くなったということがあったわけでございます。ああいうふうに大きく変動いたしますことは、日本の企業活動あるいは経済運営の上においても非常に悪い影響がある。何とか為替を安定させることが望ましいということでございます。  いままでああいうふうに大きく変動いたしました大きな背景は、世界各国の間のインフレ率に非常に大きな差がある、あるいは各国の生産性に大きな差がある、あるいは経済成長率に大きな差がある、そういうことがございますと、どうしても相場もその影響を受けるということがあったというふうに思います。ところが、だんだん各国のインフレ率はそろってまいりました。まだかなりの違いがございますけれども、一時のような二けたのインフレ率の国は先進国ではもうなくなっておるということもございますので、そういう意味ではインフレ率はだんだんそろってきつつある。経済成長率は国によって違いはありますけれども、それでもこれもだんだん近づいてくるということは期待できる。そういう意味では相場安定への環境はいままでとはかなり変わってきているということは言えるだろうというふうに思います。  そういう環境の中で、相場の変動というのは非常に悪い影響があるということであれば、そういう環境がよくなってきたということをとらえて、関係国の間で相場安定のための努力が払われることは当然であろうというふうに思うわけでございます。そういう意味で、まず関係当局が相場安定のための意欲がそろわないといけない、またそれだけの能力がないといけないわけでございます。そういう点はそれぞれの国の問題でございますから、いま私がことでどういうふうになるということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、そういう環境はそろってきたということは言えるだろうというふうに思います。  基本的には、為替相場が安定するためには先進国の経済政策の間に整合性かないといけない。整合性がなかったために、過去二、三年間、ああいうふうにある国はインフレ率が十何%になる、物価の上昇が十何%になる、日本のように物価の安定が非常に早く実現できた国がある、ということになりますと、どうしても金利も違う、相場も不安定だというふうになるわけでございます。そういう意味におきまして、先進国同士の間が、やはり経済政策の間に整合性がないといけない。そういうことはサミットでも当然議論される大きな一つの題目ではないかと私は想像いたします。けれども、そういうことがないとなかなか相場というものは安定することにならない。  あと、変動相場制の中での技術的な安定方策というのは、いろいろな案が考えられます。これはまだそこまで、技術的なところまでの話が進んでおらないわけでございまするけれども、基本的にはやはり経済政策の整合性があれば、為替というのはその結果でございまするからかなり安定するようなことは基本的には考えられる。その上で技術的にどういうふうにするかというのはいろいろ案がございます。まだそういう案が煮詰まっているわけではございませんけれども、環境がいま申し上げましたように整い、かつ関係当局に相場安定のための意思と能力が備わる、同時に経済政策の整合性がとられるならば、相場というものはだんだん安定していくことになるであろうというふうに考えております。
  519. 柴田弘

    柴田委員 総裁、どうもありがとうございました。  そこで大蔵大臣にお聞きをしますが、いま総裁から変動相場制の問題についていろいろお話がありました。とにかく政策の整合性というものを各国が持たなければいけない、それから、しかし環境が徐々に整いつつある、こういうことですね。どうも本委員会においても大臣はこの見直しについては余り賛成じゃないわけですが、それはそれとして、たまたま先進国サミットが五月にあるわけです。アメリカのレーガン大統領もこの機会にやはり為替レートの問題について新たな国際金融会議の開催を検討することを決定されるであろう、このようなニュースも実は伝わっているわけでありますが、この為替安定のために、円相場安定のためにやはり各国の協調が僕は非常に大事になってくると思います。この辺、変動相場制というものの本質を踏まえてサミットでどう対応されるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  520. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる変動相場制の問題につきましては、いま日銀総裁からもお述べになりましたが、私自身も一九七一年、スミソニアン体制のときでございます、たまたま内閣官房長官でございまして、まあ率直にいって五十七年度予算というものを、従来は固定相場側がすべて基本であっただけに、どうして組むか本当に困りました。基礎的知識が乏しいままにあれだけ困ったことはございません。(「四十七年」と呼ぶ者あり)そうでございます。四十七年予算でございます。したがって、その当時結局三百八円というスミソニアンレートが決まったときにやれやれと率直に思いました。これが予算が組める一つの基礎になるな。そうして今度変動相場制というものに移行いたしまして、したがっていま日銀総裁からも述べられたようにまさにこれはやむを得ず、世界としてはあれしかなかったということでそれなりの効果を今日まで果たしてきたのであろうと私も思います。  したがって、これにつきましては当時から一定のワイダーバンドを設けるかとかいろいろな議論がございました。結論的に私ども絶えず感ずるのは、先進国がいわば協調介入をすることによって、用意ドンというわけにいかぬにいたしましても、先進国の通貨の安定を図ることが必要だという議論も基本的にはしてみたわけであります。しかし、確かにそれこそ成長率から物価からすべて違うので、なかなかそういうことも、個々がいいとしても現実問題としてそれがなされないというままに今日まで来たと思うのであります。しかし、いまも総裁からも申されましたように、乖離の激しかったものがやや近づきつつある。だから、私は、いま委員がサミットとおっしゃいましたが、恐らく四月に行われますIMF、そのあたりから真剣な議論として出ていくものではなかろうかという感じがいたしております。だから、いまどういう案があるかと言われますと、確かによりベターなものはこれでございますというものは、私には確然とお答えする自信もない状態でございますけれども、そういう見通しの上に、委員とある種の共通の見通しの上に立って、サミットとは言わない、それ以前にもそういう問題が議せられてくる時期だ、ある意味においては積極的発言もしてしかるべきではないかというふうに私は考えております。
  521. 柴田弘

    柴田委員 では、次の問題に参ります。  大蔵大臣、逆オイルショックということが言われております。この逆オイルショックと国際金融不安の問題。いま総裁の御意見にもありましたように、もちろんどこまで原油が下がるかということにも問題があると思いますが、やはり産油国の中で債務の累積している国がある。利払いも容易ではない、問題なしとしない、こういうような総裁からの発言をいただいたわけでありますが、巷間いろいろと国際金融不安の問題については言われております。原油価格の下落、それによって、OPEC諸国の石油輸出の減少を通じてオイルマネーの流入減や取り崩しをもたらす、ユーロ市場の規模の縮小や混乱、これは国際金融市場に大きな影響を及ぼすことが懸念をされる。  あるいはまた、先ほど来お話がありましたように、石油輸出収入に依存をしている産油債務累積国、たとえばメキシコ、ベネズエラですね、これは原油価格の下落により一層厳しい状況に陥る。聞くところによりますと、日本からメキシコは八百億ドルの対外債務のうち百億ドルを借りている。だから、原油が二十五ドル以下になるとデフォルトが起こるのではないか、こんなふうにも言われるわけでございますが、大蔵省としては、今回のこの原油価格水準の引き下げ、これによって国際金融不安は起こらないと判断をしているのか、起こると判断をしているのか。もし起こらないと判断をしておれば、その根拠というのは一体何か。外務省等もいろいろ分析をしているようでありますが、大蔵省としてはその分析は行っているのかどうか。ひとつそういったものがあればここでお示しをいただきたい、このように思います。
  522. 竹下登

    竹下国務大臣 私ども、この点につきましてそれぞれ数字を基礎にしながらも検討をいたしております。何はさておいて、原油値下げが国際金融不安を招来するということになるとまさに国際的な不安でございますので、ここに総合的に申し上げますと、私は今日までのこのIMFを基礎とした一つの機能の仕方等においてこれは切り抜け得る課題だというふうに考えておりますが、非常に興味深い問題でございますし、正確を期しますために、これは国際金融局長からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  523. 大場智満

    ○大場政府委員 まず、御指摘の第一点でございますが、ユーロ市場の問題、ユーロ市場にどういう影響があるか、それからまた国際金融市場にどういう影響があるかということでございますが、私どもは、石油価格の下落が余りにも大幅になるというような場合は別でございますが、いま新聞等に伝えられておりますような価格の下落であれば影響はないというふうに考えております。  その根拠を示せという御質問でございますので、二つほど根拠を申し上げたいと思いますが、一つは、現在ユーロ市場の規模は約七千億ドル近くになっております。このうち産油国の占める比率は一四%足らずというふうに考えられます。この一四%の比率といいますのは、産油国がいわゆるユーロ市場、先進諸国の銀行に預けている預金とお考えいただいていいわけでございますが、この預金の比率がおおむね一四%ぐらいということになりますと、これが若干減りましても影響はないということが言えるのではないか。  それから第二には、確かに石油価格の下落によりまして産油国の経常収支が悪化し、したがって、ユーロ市場への放出といいますか預金が減るわけでございますが、それは先進諸国の経常収支の改善、したがって、先進諸国からユーロ市場への預金の増加ということで相殺といいますか、補われるというふうに判断しております。そういうことで、私はユーロ市場への影響はないものというふうに考えております。  これを数字で申し上げてみますと、最近のBISの数字でございますが、産油国は昨年九月に終わります一年間に預金が大体百七十億ドルぐらいすでに減少しております。産油国から先進諸国の銀行、ユーロ市場への預金がすでに減少しておりますが、その間に米国からユーロ中場への預金の増加が三百五十億ドルぐらいございます。したがいまして、片方で預金が減りましても片方で預金が増加するというのらとでございますので、ユーロ市場の規模そのものは着実に拡大している、こういう状況にあるかと思います。  それから第二点の、メキシコあるいはベネズエラ等債務累積国の問題はどうか、心配がないかという御質問でございますが、確かにメキシコ、ベネズエラは石油価格の下落によりましてその経常収支は悪化いたします。私どもの大まかな試算でございますと、メキシコにつきましては、一バレル当たり一ドルの石油価格の下落によりまして大体五億ドルぐらい経常収支が悪化する。それからベネズエラにつきましても、おおむね一バレル一ドルの価格の下落によりまして四億五千万ドル程度経常収支が悪化するものと見ております。しかしメキシコにつきましては、この一年間必要とする借り入れ所要資金約八十億ドルと私どもは見ておるわけでございますが、その八十億ドルは、すでにIMFからの借り入れ十三億ドル、それから先進国の輸出信用機関等からの借り入れ二十億ドル、したがいまして、その差額の五十億ドルが問題になったわけでございますが、きょう恐らくニューヨークで、この五十億ドルについて先進諸国の銀行五百数十行による貸付の調印が行われていると思います。そういうことで、所要資金八十億ドルはすでに調達済みというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。  問題は、いまの一バレル一ドル石油価格が下落することによりまして五億ドル見当は経常収支が悪化するわけでございますが、その分がファイナンス、借り入れ所要額の追加になるわけでございます。仮に四ドル石油価格が下落しますと、メキシコの新たな追加必要額は二十億ドルぐらいということになるわけでございます。実はメキシコは、先ほど先生御指摘のように借り入れ残高が八百億ドルあるわけでございますが、金利の算定を比較的高い金利で算定しておりまして、恐らく一四、五%で算定しておるかと思いますが、これが現在平均の金利は一〇%近くなってきております。したがいまして、一%の計算違いが生じますと約八億ドル、メキシコの金利の支払いが節約されるわけでございます。ですから、三%の節約で大体二十四億ドルぐらいの節約になるということで、私は、石油価格の四ドルの下落と金利の三%の低下ということで、メキシコに対する新たな追加の融資は必要ないのではないかというふうに見ております。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  ベネズエラもほぼ同様の事情にございますが、ベネズエラの場合には、もともと経常収支が黒字の国でございます。一九八〇年には四十八億ドルぐらいの黒字、一九八一年には約四十億ドルの黒字が出ております。昨年は若干赤字に転化しているかとは思いますが、もともとそのような力を持った国でございますので、債務累積国には違いありませんが、特段の問題が出るというふうには考えておりません。
  524. 柴田弘

    柴田委員 いずれにいたしましても、問題はないと、こういう理解をさせていただきます。  経企庁長官、非常にお待たせをいたしました。  一つは、経済動向に関連をいたしまして、景気見通し、先ほど来日銀総裁のお話の中にもありましたように、公定歩合の引き下げというのは、これはなかなか慎重を要する。金融政策の機動的な発動というものもどうもすぐ、なかなか簡単にできそうもない、こういう一面がある。それからもう一面は、原油の引き下げ、これはやはりわが国の経済にとってはプラスになってくる要因の一つではないか。いわゆるここで好悪相半ばした材料が最近出てきておるというのが実態じゃないかと思います。あなたの方で経済見通しをつくられましたのはたしか一月二十二日ですか、それ以来そういった少なくとも二つの要因がここへ出てきておるのじゃないか、私はこんなふうに思いますが、果たして五十八位度の経済見通し、そういった要因の中で経済見通しのそういった変更というものは必要ないのか、このままでいいのか、ひとつお聞かせをいただきたいわけです。
  525. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 特に原油の値下げの傾向等にかんがみて、経済見通し、私どもがつくりました三・四%の成長率の見通しをこの際修正することが必要であるかどうか、このような点についての御質問でございました。確かに原油値下げは、私は、石油輸入国でございますところのわが国にとって、大きな福音と申しますか、いい影響をもたらす、こういうふうに考えております。ことでも御説明申し上げましたが、一九七八年当時の資料を基礎にいたしまして、第一次石油ショック後直ちに一〇%の引き下げをやればどのような効果があるか、この点につきまして企画庁のモデル計算の例をお話し申し上げまして、初年度は〇・二三%、翌年は〇・六二%、一〇%の引き下げはこのような計算上のいい効果を生むのだと申し上げました。しかし、まだまだ原油の値下げも定かではございません。しかし、だんだんそのような傾向が目に見えるような気がするようなところでございます。  しかし、世界状況も、だんだんとインフレは安定いたしましたし、きのう、あるいはきょうの夕刊で新聞紙の報ずるところでは、アメリカの先行指標は大変好調のようでございます。したがいまして、一%と見ておりました成長率も四%ぐらいではないかと、一九八三年の一―三月見ておるようでございますが、しかしそれは先行指標で、まだまだ実態は厳しいようでございます。さらにまた、私どもの企業の状況などはまだまだ実際は厳しいようでございますけれども、だんだんと先行き明るくなってくる、在庫調整も進んでまいる、このようなことをひとつ見守りながら、まだ当分経済成長率は十分注目しながら見ていくべきであって、まだこれを修正することは適当ではない、こういうふうに考えております。
  526. 柴田弘

    柴田委員 公定歩合の引き下げの問題についていまお話がなかったわけでありますが、総じて言えば、今回の原油値下げ、企画庁としては、それは確かにいますぐ三・四を修正するというようなことは私も言っておらないわけでありますが、少なくともそういったいろいろないい、プラスに影響していくという判断から、長官としても、またわれわれとしても、やはり三・四以上の成長率になってもらいたい、私は、こういった期待感というものは十分持っていらっしゃると思います。また、それを引き出していけるような、いまこの原油値下げという十年ぶりに訪れた一つのチャンス、と言うと言い方が悪いかもしれませんが、そういったものをひとつことで大いに活用をして、わが国の経済運営を行っていかなければならない、私はそんなふうに思うわけであります。  そこで長官にお尋ねしたいのですが、そういった方向での取り組みというものは何か考えていらっしゃいますか。どうでしょう。具体的にひとつ御説明を賜りたいわけであります。
  527. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お話しのように、私もこの原油値下がりの傾向を政策の上で活用して経済成長率の向上に大いに役立てたいと考えているところでございます。昨今の経済政策の天井と申しますか、限界は、国際収支の点においても、あるいは物価の点においても、石油という点においても、この三つの点において天井の心配がなくなってきた。そんなようなことを考えますと、私どもはこれを好機に少し、何と申しますか、民間資金の活用等を行ってでも景気浮揚につながるような政策をとっていくべきではなかろうか。しかしこれは財源の問題、いろいろ関係いたしますので、今後の大きな研究問題だと考えております。
  528. 柴田弘

    柴田委員 研究課題と言うのですが、もうすでにここいらでこの原油値下げの問題、プラス面もありますしマイナス面もありますが、しかしプラス面の方が多い、やはりチャンスだと長官もおっしゃるからには、やはり私は、民間資金の活用ということもお話がありましたが、もうすでにこういった対策というものを具体的に講じていきますよという段階に入っていなければだめだと思うのです。ただ単に経済研究所のモデル試算だけ、ただいまおっしゃいました〇・六二%経済成長率が上がる。あるいはまた、これは通産省の所管になるかもしれませんが、この原油値下げを、総裁もおっしゃいました、ストレートに物価に反映をしていくような施策というものを講じなければいけないと私は思います。いま私いろいろとお聞きいたしておりますと、これに対する影響に対してどう対応していくかという問題あるいはどういうふうに見るかという問題について、大蔵省は大蔵省、通産省は通産省、企画庁は企画庁、ばらばらの取り組み方をしていらっしゃる、そういうふうに私は感ずるわけであります。十年ぶりの絶好のチャンスというのであれば、いま長官がおっしゃったように、やはり日本の景気回復、ひいて言えば三・四じゃなくて四%ぐらいの経済成長を目指すぐらいの、いろいろな政策の選択あるいは経済の運営、こういったものをやっていくべきではないか、私はこんなふうに考えますね。どうでしょうか。
  529. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 原油の値下がりがまだ定かではありませんが、私は、企画庁が各省と連絡をとりながら、そのような研究と申しますか、政策におけるところの活用、これを進めてまいりたいと思っております。
  530. 柴田弘

    柴田委員 研究ですか。研究されてどうされるのですか、後。
  531. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 経企庁のことでございますから、私どもは、やはり原油値下げの経済的な効果を見ながら、これを政策の上で生かして経済成長の上昇の方向で検討を進めてまいりたい、こういう意味でございます。
  532. 柴田弘

    柴田委員 ですから、ばらばらの対策というか研究でなくて、やはりこれは企画庁が調整局となっていただいてひとつ関係省庁対策会議といいましょうか、そういったものも一遍設けていただいて、真剣な検討と政策の選択、そして実施、これはやはりいま一番必要だと私は思いますよ。私の考え方、どうでしょうか。くどいようですがね。
  533. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 全く同感でございます。
  534. 柴田弘

    柴田委員 じゃ、ぜひその方向へ推進をしていただきたい、こういうふうに思います。  そこで長官、あと時間がだんだん迫ってまいりましたが、あなたの公共投資に対するお考え方をこの際聞いていきたいわけでありますが、今回の五十八年度予算を見てまいりますと、要するに減税はなされていない。昨日、政府見解が出されたものの、減税はなされていない。しかも公共投資は、これは実質的に減額である。いわゆるこういった有効需要縮小の政策をとって、果たして景気回復への足がかりが成るものであるかどうか。長官どうでしょうか。
  535. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この問題につきましてもたびたび私の考え方をここで述べたつもりでございます。日本は確かに有効需要拡大のために財政政策、そして金融政策を最も有効に活用してきた国だと私は思います。しかし、このようなケインズ流の考え方、公共投資の考え方が昨今変貌しつつあって、いろいろな批判を受けて、また実現の点においてもむずかしい点に逢着していることは御案内のとおりだと思います。  まず第一に、ケインズに言わしますれば好況のときにはむしろ縮小すべきであると言ったところが、政治家がむしろ不況のときに使ったものを依然として好況のときにも大きな金額をそのまま支出して使うというようなことで、財政上の行き詰まりを来している点がある。これは日本にもそのような傾向があるためにいま苦労しているのではないかと私は思うのでございます。しかし、私どもは何としても、財源を発見してでも公共投資をやっていって有効需要の拡大を図ることが、新鋭設備を持ってアメリカのようにサプライサイド・エコノミックスといったことが言われない日本でございますから、そういった方向で財源を探してでも努力すべきだ、こんなふうに考えております。
  536. 柴田弘

    柴田委員 そこで長官、やはり私は景気回復の三本柱というのは、一つは公定歩合の引き下げである。これはいま日銀総裁から御説明を賜りまして、慎重に対応するということであります。それからいま一つは、所得税減税である。これはもう昨日来ここで議論された。いま一つは公共投資だ。やはり経済への波及効果というのはこれが一番大きいわけだ。  それで三・四%の見通しを立てていらっしゃいます。願わくはその目的を達成し、同時にまた上方修正されることを私も願っておるし、長官も願っていらっしゃると思う。そこで、もし三・四が達成をされなければ、これは雇用問題というのは大きな問題になります。これはもう私が言うまでもない、絶対の生命線なんですね。それで、要するに昨年前倒しもやりました。それから、現実に景気対策の一環として補正予算で追加投資もいたしました。三・四の達成のために、やはり将来そういった方向での対応はお考えになっていらっしゃるかどうか、いかがでございましょうか。
  537. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私どもは、三・四%は現在の財政の枠の中で達成できるものと見ております。
  538. 柴田弘

    柴田委員 それじゃ、こういう聞き方をいたしましょう。  三・四は生命線である。もうオイルも下がる。もっともっと経済の成長率等を高めていく。そういったために公共投資をもっと有効に活用していく。そのためにも、今後、先ほど私が言ったようなことはあなたの頭の中にあるかどうか、こういう質問、どうですか。
  539. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いろいろと考えておりますが、これは予算の成立後にまたひとつ新しい問題として研究すべきことかもしれません。いままで公共投資は六兆六千五百五十四億、当初予算ではいつも同額でございますが、実際の施行の面におきまして、災害その他等がございまして増加した面もございます。このような問題はこれからの問題だと考えております。
  540. 柴田弘

    柴田委員 それでは次に、公共投資の長期展望という観点でひとつ長官のお考えを承りたいのですが、私はこんなふうに考えます。  一つは、この公共投資、社会資本の整備というのは、いまのうちに、投資余力のあるうちに、まあそれは財政事情というものはいろいろありますが、二十一世紀、今後十年、十五年あるいは二十年を展望して考えていった場合に、やはり今後は高齢化社会というものがますます顕著になってくる、そうすれば投資余力というものはだんだん減ってくるのじゃないか、だからやはりそういった観点で、将来後追い投資にならないような一つの中長期の展望を踏まえた公共投資をやっていかなければならない。それからもう一つは都市化の現象ということがあります。都市化というのは、聞くところによりますと都市に七〇%の人が住む、七〇%以上ですか、これが都市化だ、こういうように聞いております。そういった現象もこれから顕著になってくる。それが一つ。だから、後追い投資にならないような一つの計画性を持った公共投資というものをやっていかなければならない。  それから二つ目には、やはり経済の波及効果の問題、これはもう一番顕著である。これはもうだれが見てもそうなのです。モデル計算を見てもそうなのです。  それから三つ目は、やはりわが国の今後行く方向というのは、公共投資、これがリード役になって国際化社会への進展、あるいはまた先ほど言いましたような高齢化社会もそうでありますが、もう一つは産業構造というものの付加価値の高いものへの転換というものを図っていかなければならない。  私は、いろいろ公共投資のあり方というものを将来展望に立って考えてまいりますと、以上のようなことが大事になってくるのではないかと思います。だから目先的なものでなくて、やはりそういった一つの展望を踏まえた一つの計画、そしてその実施というものが今後とも必要になってくるだろう、いまそのときに来つつあるのじゃないかというふうに私は思いますが、あなたの御見解はどうですか。
  541. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 社会資本は日本は立ちおくれでございます。おっしゃるように、私どもは今度の中期計画と申しますか、新しく経済審議会にお願いいたしておりますところの経済展望並びに経済運営の指針の中に、いまおっしゃったような方向で、財源との兼ね合いを考えながら、しかも財源を積極的に発見してでも社会資本の整備を図っていき、同時にまたこれによって経済の発展を図っていくべきだと考えております。
  542. 柴田弘

    柴田委員 長官、あなたは私の意見に反対するものじゃない、全面的にはどうか知りませんが、まあ賛成できる、こういうことでございますね。――じゃ、長官、どうもありがとうございました。  その議論を踏まえまして、私は、国土庁長官と運輸大臣にお聞きしたいと思いますが、やはりそういった公共投資のあり方あるいは公共投資がリード役を果たしていかなければならないという一つ役割りに準じて、国土庁長官、えらいずっとお待ちいただきましてありがとうございました。地元の問題で恐縮でございますが、名古屋を中心とする東海環状都市帯整備計画です。  御案内のように、この東海地方、中部圏というのは、発展の可能性を秘めながらまだまだだめであります。東京、大阪のはざまにありまして、現在はむしろ地盤が沈下をしておる。しかしいろいろなデータから見てまいりますと、やはり国と地方自治体との連携のもとに適切な政策の展開、投資を図っていけば、まだまだこれは十分発展をする余地がある、こういうふうに言われております。いま言われておることは、国の三全総というのはこれはあくまで東京中心だ、地方のために余りならない、こういうことをいま言っている人がずいぶんあるわけであります。だから、私はそういったことを聞くたびに、やはりこれは何とかしなければいけない、こういうことできょうは御質問をいたすわけでありますが、これはどうでしょうか。  いま整備計画策定のために五十七年度から調査をされているわけでありますが、これに取り組まれる長官の基本的な理念、姿勢、それからもう一つは、時間が余りありませんからお聞きしておきますが、事業化、これについてはどういう展望を持っていらっしゃるか。この三点、お聞きをしたいと思います。
  543. 加藤六月

    加藤国務大臣 御質問の前段における三全総は東京中心という考えではないかというのは、これは訂正さしていただきたいと思います。国土の均衡ある発展を目指す地方定住構想というものを中心に進めておるわけでございますし、それを着々と整備しておるわけでございますから、ひとつその点については誤解がないようによろしくお願いいたしたい、このように思います。  そして、御指摘になりました東海環状都市帯整備計画について御説明申し上げますと、名古屋を中心とする中部、東海地域の発展を図っていくことは国土政策の重要課題である、このように考えております。そして東海環状都市帯整備計画は、中部、東海地域において計画的な都市化の誘導により良好な環境を維持しつつ、既存の都市集積と土地、水等の国土資源に恵まれた開発余力を生かして、名古屋とその周辺に環状に展開する諸都市の連携を図りながら、潤いと活力に満ちた都市圏を構築しようとするものであります。これが一つの大きな理念とねらいであります。  このため、昭和五十七年から二年間の予定で関係省庁とも、本地域における産業の振興、都市基盤、交通運輸施設等の整備に関する調査を行い、総合的な計画をとりまとめようとしているところでございます。厳しい財政事情の中ではございますが、関係各省とも協力し、地方自治体を初めとする地元関係者の意見を聞いて、二十一世紀を展望し新しい時代に対応できる内容の充実した計画を策定し、その実現に努めてまいりたいと考えているところでございます。  柴田委員、地元でもございますので、ひとつ一層の御支援をいただければありがたい、このように考えておる次第でございます。
  544. 柴田弘

    柴田委員 私だけではなくて、きょうはいろいろなこの関係者が、地元の方もお見えになります。それで長官、いまの三全総の問題は私も訂正しておきますが、これは私が言っておるわけじゃない。地元の方が言っておるわけですから、そういうことで声を伝えた、こういうことですから、私はよくわかって質問していました。これは何遍やっておっても同じことだと思いますが、どうかひとつそういった意向を受けて早期事業化、これはひとつよろしくお願いいたしますよ、わかっておみえになると思いますが。  それでもう一つ、これは調整局が国土庁ですからお聞きしておきますが、これはいろいろな各省庁にまたがっておるわけでありますが、こういった問題がいま出ているわけであります。  一つは「先端技術産業等の導入及び関係地域の都市基盤等の整備に関する制度的な援助方策」、それから二つ目には「学術、試験研究施設等の立地整備及び技術情報機能の強化方策」、三つ目には「広域的な幹線交通網の整備の方向及び港湾機能等の充実強化の方策」、それから四つ目には「中核都市名古屋の中枢機能の強化策」、五つ目には「環状都市帯における農業振興のあり方」、こういったものを今回の調査に当たってはひとつ格段の配慮をしていただきたい、そして総合的に実施されたい、こういうことでありますね。  これは、先ほど申しましたように通産省とか運輸省とか農水省とか建設省とか各省にまたがるわけでありますが、調整局ですから、ひとつ長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  545. 加藤六月

    加藤国務大臣 いま柴田委員がおっしゃいました問題について、それぞれ国土庁、農水省、通産省、運輸省、建設省等から総合開発事業調整費というのを昭和五十七年度もいただきましてやっておるわけであります。五十八年度はいま検討中でございますが、先ほど申し上げましたように最後の仕上げをやるべく各省庁にお願いいたしておるわけでございます。
  546. 柴田弘

    柴田委員 そうしますと、こういう理解でいいですね。いま私が申し上げました五項目についてはこの調査の対象になって、五十八年度末を目指してやる、やっておる、こういうことでよろしゅうございますな。
  547. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいま委員がおっしゃったとおりの調査項目をやるべく、各省庁と折衝いたしておるところでございます。
  548. 柴田弘

    柴田委員 わかりました。長官、ありがとうございました。  最後に運輸大臣。この東海環状都市帯整備計画を実現をするには、やはりどうしても伊勢湾沖に新しい中部国際空港というのが必要なんですよ。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)いま後ろからもまた応援団が出ましたけれども。  要するに、とにかく御案内のように、名古屋あるいは東海地方、そして中部、これはいままでトヨタ自動車を中心にして発展をしてきました。やはりもう一本これに先端技術産業の導入、設置というものがどうしても必要であると私は思います。そうしますと、伊勢湾沖につくって、名古屋から四十キロ圏、そういった臨空港型流通地帯あるいは生産地帯、こういったものは、この空港が扇のかなめのようになっていくということが中部圏の発展のために必要である、私はこういうように思っております。  ですから、いろいろと言うてきておると思いますが、私の記憶に間違いがなければ、たしか昨年の九月に前運輸大臣が名古屋にお見えになりましたときに、この中部新国際空港については、昭和六十一年度から始まる第五次空港整備計画ですか、それには入る可能性もあるかもわからぬ、こんなような非常に御理解ある考え方もいただいたそうであります。私は直接そこにおったわけじゃありません。それから、その後そういうことで十月、そして年末にはたしか長谷川運輸大臣にも地元から要請があった。そういった観点で、先ほど来経企庁長官との間での議論をお聞きになっておったと思いますが、地域発展のためにもやはりどうしても後追い投資にならないようなそういった社会資本の充実ということも大事である。だから、私はそのためにもいまは中部のことを言っておるわけでありますが、九州にも国際空港も必要になってくるでしょうし、またあちらこちらに国際空港も必要になってくる。それからいま行っておみえになります成田、それから関西、それから羽田のいわゆる二期工事、こういった三大プロジェクトも私はどんどん推進をしていかなければいけないと思いますが、そういった中で、空港の位置づけ、中部新国際空港の位置づけというものも運輸省においてもひとつ真剣に考えていただいて、前向きに取り組んでいただきたい。必要性、重要性という観点から、ひとつ大臣のお考え方をお聞かせをいただければこれで終わります。いかがでしょうか。
  549. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 伊勢湾沖にそういう国際空港という話は、私は、中部経済連合会が「二十一世紀の中部ビジョン」というのを書いている、そんなことであそこの書類はわりあいに読むものですから存じ上げておりました。そしておっしゃるとおり、年末には商工会議所の会頭、あなたを初め、ことに予算委員長なんか非常に熱心で、私のところへやかましく言ってきました。  そこで、いま考えますと、現空港をいま非常に整備しております。そして、そういう大きなビジョンでございますから、これは長期的な展望の中にぜひひとつ研究してみたい、こう思っております。
  550. 柴田弘

    柴田委員 研究ということですが、どうかひとつその重要性をしっかりと認識をしていただきましてお願いをしたい、こう思います。  あと大蔵大臣にいろいろ質問しようと思ったのですが、時間もほとんどありません。それで、あすたまたままた大蔵委員会が開かれますし、大臣御出席いただきますので、残余の問題につきましてはまた大蔵委員会でやらせていただきまして、この程度で終わります。
  551. 久野忠治

    久野委員長 これにて柴田君の質疑は終了いたしました。  以上で一般質疑は終了いたしました。     ─────────────
  552. 久野忠治

    久野委員長 この際、御報告いたします。  先ほど分科会設置の際、分科員の配置及び主査の選任につきましては委員長に御一任願っておりましたが、分科員の配置につきましては公報をもって御通知いたします。  次に、分科会の主査は次のとおり指名いたします。         第一分科会主査 橋本龍太郎君         第二分科会主査 砂田 重民君         第三分科会主査 海部 俊樹君         第四分科会主査 上村千一郎君         第五分科会主査 武藤 嘉文君         第六分科会主査 今井  男君         第七分科会主査 越智 伊平君         第八分科会主査 藤本 孝雄君 以上であります。  明日から分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後九時二十四分散会