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1983-03-02 第98回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       片岡 清一君    金子 一平君       倉成  正君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       小林  進君    佐藤 観樹君       沢田  広君    野坂 浩賢君       草川 昭三君    岡田 正勝君       木下敬之助君    竹本 孫一君       小林 政子君    瀬崎 博義君       三谷 秀治君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         内閣総理大臣官         房総務審議官  手塚 康夫君         総理府恩給局長 和田 善一君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 松尾 直良君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省理財局次         長       勝川 欣哉君         国税庁次長   酒井 健三君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  朝本 信明君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省航空局長 松井 和治君         海上保安庁長官 永井  浩君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省人事局長 奥田 量三君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省河川局長 川本 正知君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     片岡 清一君   竹本 孫一君     岡田 正勝君   金子 満広君     小林 政子君   不破 哲三君     三谷 秀治君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     越智 伊平君   岡田 正勝君     竹本 孫一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、昨日の議長見解について政府の所見を求めます。後藤田官房長官
  3. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 お答えを申し上げます。  今回の衆議院議長見解については、昨日、衆議院議長から、各党国対委員長に対しお示しの後、政府に対しても御伝達をいただきました。  政府といたしましては、議長見解に従い、減税の実現のために最大限努力をいたすとともに、人勧問題についても、人事院勧告の持つ重要性を踏まえ、一方、現下の財政状況をも勘案しつつ、二年続けて凍結の事態にならないよう最善の努力をする所存でございます。  なお、この際、つけ加えさせていただきます。  与野党代表者会議において、自民党幹事長から、財政事情困難な時期ではあるが、国民世論動向にこたえ、景気浮揚に役立つ相当規模減税実施するための財源を確保し、所得税及び住民税減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出するとの確約があったことは承知をいたしております。  政府としても、これを尊重いたします。     ─────────────
  4. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田正勝君。
  5. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいまより一般質問に入らしていただきます。  まず冒頭に、先般来、減税問題、人勧問題等をめぐりまして、五日間にわたって国会がストップしたような状態にありました。そこで、各党代表者皆さん、また、委員長初め各党理事皆さん、そして政府関係者の各位の努力によりまして、本日再開の運びになったわけでありますが、私は、いまその結論ともいうべき政府見解官房長官が読み上げられましたので、そのことにつきまして、若干の疑問がありますのでお尋ねをしておきたいと思うのであります。  そこで、まず第一は、政府見解、これ全体が議長見解を尊重する、こういうふうにうたってあります。議長見解というのは、与野党間の合意に基づいたもの、それに基づいて出されたのが議長見解でありますから、与野党代表者会議のいわゆる合意、それから議長見解、それを踏まえて尊重するというところまではわかったのでありますが、実行されますか、されませんか。
  6. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 ただいま議長見解に対する政府の考えを述べましたように、政府といたしましても最大限努力を傾けまして実施するように努めたい、かように考えております。
  7. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 最大限努力ということは、これは非常に重大なことですから、官房長官、ちょっとしつこいようですけれども、お許しをいただきたいと思いますが、最大限努力をしたけれどもだめだったということが過去によくあるのですよ。それで、その手は食わぬ何とやらというのがありまして、五十七年にもそれに似たような問題がありまして、一年間すったもんだやって結局不発に終わったということがありますので、全国のサラリーマンの皆さん、そして公務員の皆さんというのはちょっと疑いを持っているのです。ですから、後藤田さんはにこにことおっしゃいますが、どうも守ってもらえそうな気がするのだけれども、最大限努力という慣用語では、この問題の解決にしてはちょっと軽いのじゃないかな、やはり誠意を持って実行いたします、こういうことをこの際政府を代表してはっきりと言明してもらいたいのです。
  8. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 今回の議長の御見解というのは、政府としては非常な重みを持っておるもの、かように私は考えまして、そこで、その重みを持っておる議長さんの御見解最大限努力をして何とか実現できるように努めたい、こう申し上げておるのですから、そこはひとつ政府を御信頼をいただきたい、かように思います。
  9. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、時間がありませんから次に進ましてもらいますが、いまのお言葉はこう受け取らしてもらいますよ。五十七年度におきましては、議長さんを煩わしてまで、減税の問題について詰めてもらいたいということを打ち出されたのに、一年間かかって何の結論も出てないのです。ですから、巷間伝えられるところによりますと、議長さんは非常に憤慨をされて、何だ、さっぱりおれの言ったことは実行しないじゃないかというふんまんを持っておるということを私は承っております。二度とかようなことはない、議長見解というものは非常に重みがある、そういうことは二度とないように最大限努力をする、期待に背かない、こういうふうに考えていいですか、しつこいようですが。
  10. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 御案内のように、昨年も議長さんのお話があって、これは各党間で話し合いをしてもらいたい、それがまとまれば政府としてはそのとおりやります、私どもとしてはこう申し上げておったのですよ。たまたまどういった事情か、国会内のことでございますから私も詳細はわかりませんけれども、これはまとまらなかったということですね。しかし、今回は与野党間でどこまで詰まっておるのか、これまたわかりませんが、およそのところは減税なんかについては合意があったのじゃなかろうか、私はこう思いますよ。そうすれば、それを受けて議長さんが御見解を出され、それを政府は尊重する、こう申し上げて、最大限努力をして何とか実現したいと思います、こう言っておるわけですね。しかも、それにつけ加えまして、与野党間の折衝の際に、政権を担当しておる自由民主党の幹事長が野党の皆さん方お話をしたことについては、承知をして、これを尊重します、こう言っているのですから、私は去年とはちょっと違うな、こう思っておるのです。そこで、政府誠意はひとつお間違いのないようにお酌み取りをいただきたい、かように思います。
  11. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、これで押し問答してもいけませんので、昨年とは一味違うとちょっと味のある発言をされました。私も人がいいですから信用いたします。ただ、人間を裏切った場合、国民を裏切った場合は、今度は二度続けてですから、これは恐ろしいことになると覚悟しておいていただきたいと思います。  それでは、次に、人勧の問題でありますが、人勧の問題は五十七年度については継続して国対委員長レベル協議を続行するというふうに聞いておりますが、それでよろしいですね。
  12. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 与野党間でその問題については引き続いて検討、協議をする、こうなっておりますね。政府としましては、その協議の結果は尊重していきたい、かように考えます。
  13. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 続いて、人勧の問題でお尋ねをいたしますが、五十八年度は実施をされますか。
  14. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 この点もかねがね総理からお答えしておりまするように、五十八年度の人勧について、人事院勧告があった段階においてこれを尊重し、実施をする、こう申し上げておるわけでございますので、それは間違いはございません。
  15. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 そこで、続いてお尋ねいたしますが、今度は減税関係で、いま政府見解のところでございます。四ページ、五ページの関係になりますが、ここで書いてあります中で、与野党合意の中には全然なかった文言が入っておるのです。それはどういうところかといいますと、「与野党代表者会議において、自民党幹事長から、財政事情困難な時期ではあるが、」と書いてありますね。これは与野党間の合意の中にはこういうものは一切ございません。それから、「国民世論動向に応え、」ということがありますが、与野党合意の中では、国会意見も踏まえというのも入っておるのであります。  それから、その次の五ページになりますと、代表者会議合意は「相当規模大幅減税を」と、こう重ねてあるのであります。日本語的に、相当規模と言えばそれは大幅だよ、イコールだよ、言葉を重ねておるだけだよというのでありますが、事がこういうときでありますだけに、「相当規模減税」というのは書いてありましても、「大幅減税」という文字がころっと抜けておるのは何となく気になるのです。これは何げなしに抜けたものなのかどうか。  それから、一番最後から三行目にありますが、「五十八年中に国会に提出する」、いわゆる二つの税法を五十八年中に国会に提出するとありますが、与野党間の代表者会議合意は「予算成立後直ちに」と、こうなっているのです。  そこで、後藤田さん、ちょっと首をかしげていらっしゃるようですが、これは代表者会議の中でわが党の塚本書記長が読み上げた、まとめた文章ですから、それでどこからも御異議のなかった、自民党代表者二階堂さんも御異議がない、オーケー、それでよろしい、こういうことであったので、ここで念のために読み上げてみますが、こういうことになっておるのです。「五十八年中に」、「度」というのが抜けたのです。「五十八年中に景気浮揚に役立つ減税即ち国民世論及び国会意見を強く考慮し、相当規模大幅減税実施することを約束する。実施に当っては、予算成立後直ちに所得税地方税制度改正の為の措置を政府は講ずる。」と、こうなっているのです。「政府は講ずる。」となっております。  ここらが微妙に違うのですよ。まさか後藤田さんが作為的によけて通っているんじゃないと思いますがね。だから、いまの与野党間の合意事項というのはおわかりになりますでしょう。いかがですか。
  16. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 私は、与野党間の合意という点については、各党からいろいろな御意見が出てきておるということは聞いておりますが、私がいま読み上げましたのは、自民党幹事長としてこういう点を申し上げてある、それを政府与党として勧告するのだ、こういうことでございましたので、それをそのまま受けましてここで読み上げさせていただいて、幹事長与野党代表者会議の席上における発言については承知をし、それを尊重しますと、こう申し上げておるわけでございます。だから、細かな内容は、私は出席しておりませんから、これは自民党幹事長からいただいたものでございます。さように御理解を願いたい。
  17. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 大方そうおっしゃるだろうと思っておったのですよ。なぜかといいますと、二階堂さんと宇野さんが自民党を代表して代表者会議にお出ましになりました。それで、その代表者会議結論、推移、協議はすべて向こうへお帰りになって、本国へお帰りになって御相談をなさるときには後藤田官房長官竹下大蔵大臣が必ず出席をして、それに対して意見を交え、よし、その線でいこう、こうなって代表者会議に党を代表して責任を持ってお越しになったのですね。そのまとまったものがこの与野党合意でございます。ですから、官房長官が余り詳しく知らぬ——その席に出ておらぬことは間違いないです。代表者会議に出ておらぬのは事実です。だけれども、出ておる以上に協議は重ねていらっしゃるわけですから、いまここでとぼけられたら、官房長官、用事があるから早く出たいと言うが、出られぬようになりますよ、いかがですか。
  18. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 いま先生はとぼけているのじゃないかと言われるが、そんなことはないです。これはそのままに二階堂幹事長さんから、こういうことになっているからそれを政府に勧告するから心得ろ、こうおっしゃるから、それは与党を代表しての幹事長の御発言ですからそのとおり承りまして、政府は尊重します、こう言って、文字どおりこのとおりでございます。
  19. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、百歩譲りまして、二階堂幹事長さんからいわゆる与野党合意の、いま大蔵大臣がお手元にお持ちでございますが、これはついては承っておる、それで、議長見解を出してもらうことも承っておる。だから、これも知っておる、それから、議長見解も知っておる。その上においてこの政府見解というものをつくったのであるということですね。ですから、もともとになるのはやはり与野党間の代表者会議合意事項が一番最優先ですね。議長さんを差しおいて最優先というのはおかしいですが、流れからいったら最優先ですね。でございますから、そういう点から言うと、この中で「大幅減税」というのがなぜ落ちたのか。それは日本語だから「相当規模」という文でいいんだよ、「大幅」とイコールだ、そんならイコールだとおっしゃってください。それから、「予算成立後直ちに」、こう聞いておったのでありますが、これが政府見解のこの文でいくと、「五十八年中に国会に提出」でございますから、この国会のことなのか臨時国会のことなのか、それもわからぬわけです。税法改正なんかやるのに、現在のようなコンピューターの発達した時代ですね、そんなに長い日にちが要るわけもございませんので、それから、税務官吏の仕事の面からいきましても、税法改正というのは早い方がいいわけでありまして、ですから、この与野党間の合意の「予算成立後直ちに」、との部分がここで消えておるのは、何かやはり事情があるのかな。それは与野党間で取り決めた「予算成立後直ちに」という精神は生きておるのです、政府もそのつもりですということならそれでいいですよ。  それで、「大幅」というのは「相当規模」という中に含まれているんだ、一緒だというならそういうふうにお答えいただきたいと思います。
  20. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 私は、幹事長さんからお伺いをしたままをお答えしておるのでございますが、御質問の方は、時期は一体いつだ、幅はどうなんだ、こういった具体的な中身に突っ込んでの御質問ですね。そこになると、ちょっと私はいまお答えができないのです。これは、大蔵大臣もおりますから、大蔵大臣からもひとつお聞き取りを願いたいと思いますが、私はそういう突っ込んだ中身までは幹事長からは承っておりません。このとおり承ってこのとおりお答えしておる、それを私は尊重して実施するように最大限努力をするんだ、こう申し上げておるのですから、この政府の気持ち、誠意はひとつぜひお酌み取りをいただきたい、こう思います。
  21. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、官房長官最後にもう一つ。先ほどお答えがありませんでしたので……。  人勧問題の中で、五十八年度ははっきりしましたが、五十七年度は、これからも国対委員長レべルで継続してこれを協議する。その出た結論についてはこれを尊重するということはお約束できますか。
  22. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 そのとおり、協議の結果出た結論は、政府はこれを尊重いたします。
  23. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 官房長官、どうもありがとうございました。  それでは、次に、大蔵大臣お尋ねをしてまいりたいと思います。  いま政府見解が出ましたが、そのことについて、与野党合意の線も踏まえてこれから逐条的に質問を申し上げたいと思うのでありますが、この文言の中に、景気浮揚に役立つ相当規模大幅減税というのがあるわけです。この景気浮揚に役立つ相当規模大幅減税というのは、大蔵大臣から考えてみると、どのくらい減税しないと景気浮揚に役立たないか、これをひとつ見解を発表していただきたいと思います。
  24. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 お答えいたします。  私もちょっと整理いたしてみましたが、いま後藤田官房長官からお答え申し上げましたものは、すでに御発表したとおりでございます。いま岡田先生おっしゃいましたのは、昭和五十八年二月二十八日、各党代表者会談の三回目において与野党代表者会議申し合わせ事項として御提案になった文章、それは各党それぞれの文章がございます。これも私は承知をいたしております。したがって、いわゆる私どもが御説明申し上げておりますのは、いま官房長官お答えいたしましたとおりの、幹事長から承った文言について、それを基礎としてお答えをしておるわけでございます。したがって、いま、その与野党代表者会議申し合わせ事項を土台にしての、景気浮揚に役立つということと、相当規模、大幅、これを観念的にどう考えておるか、これを申し上げるのは非常にむずかしい問題だと私は思います。それは各党それぞれの立場に立って、ある種の数字を念頭に置いてお話しなされたかとも感じます。しかし、私どもはいま政府でございますので、したがって、これを行いますには、当然のことといたしまして、景気に役立つ相当規模減税をするための財源を確保して、所得税住民税減税法案、これを出す、こういうことをお約束なすったということを聞かされております限りにおいては、さて、それではどういうことでそれを考えるかということになると、安易に、財政改革にまさに逆行する赤字国債を念頭に置くわけにももとよりいかない。そうなりますと、それらのことを踏まえて、そして一方景気の動向等を考えると、幾らがそれに値するものでございますというお答えというものは、これは三権の中にあって最も尊重すべき国会のいろいろな意見に対しても、所を変えて仮に岡田先生がいま大蔵大臣の立場におなりになったといたしましても、それを明確に答えるということは私は御勘弁いただける一つの内容ではないかな、こういうふうに考えています。
  25. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 大蔵大臣とは県が隣り合わせでありますが、どうも高い山があるようですね。  そこで、経済企画庁長官、この景気浮揚に役立つ減税というのは、与野党合意どころではない、政府見解にあるのです。政府見解にあるということは、列席をしておられる大臣の各位ももちろん御存じのことでありますから、いま竹下大蔵大臣はちょっとよくわからぬ言葉でおっしゃいましたけれども、経済企画庁長官は歯切れがいいというので有名な人ですから、この歯切れのよいところで、この景気浮揚に役立つ減税とは一体何兆円か、それをひとつ見解を聞かしてください。
  26. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 大蔵大臣が大変むずかしいと言われるぐらいでございますから、企画庁長官ももうひとつむずかしいぐらいな、大変歯切れが悪くて申しわけございませんが、私はこの問題を、幾らになれば景気浮揚に役立つということはなかなか言えないかと思います。  ここで申し上げましたことは、確かに所得税減税ということは、素直に考えますれば、景気の現状から見て、景気浮揚の点で大変魅力のある、企画庁長官は本当に誘惑に駆られるような政策であるということを申し上げましたが、しかし、それは長年国会で御苦労されましたところの財源いかんによるということで、財源いかんによってはその景気浮揚効果も削減されることがあるから、この点は全体の姿を見てからまた意見を申し上げたい、こういうことを言ってまいっておるところでございます。
  27. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 これは与野党代表者会議合意の中でも、その受け取り方はまちまちあるといっても、政府見解にまで出てくる文言ですから、これはもう各党同じだと思うのですね。それから、議長見解も同じ文言を使ってあります。政府見解も同じ文言を使ってあります。「景気浮揚に役立つ相当規模減税」と、こうなっておる。景気浮揚に役立つ減税の額とは幾らかということは、少なくともことで発表ができるようでなくちゃ、何のために与野党代表者会議を五日間もやったのか、全く意味がないと思うのです。このことについて政府のはっきりした回答をお出しいただきたいと思います。
  28. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 せっかくの御意見に対して水を差すようなお答えになりますが、景気浮揚に役立つとは幾らか、これはやはりそのときの経済情勢、そしてまた、それらに対する比較、そういうことであろうと私は思うのです。だから、金額は幾らということをお答えすることはやはり差し控えさしていただきたいというふうに考えます。
  29. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 私は、いままでがまんにがまんを重ねて聞いてきました。官房長官も、国の問題で非常に忙しいことがあるからぜひとも途中で退席をさしてもらいたいと言うから、これも同意いたしました。しかし、事与野党代表者会議合意をし、そして議長見解にもはっきりと出てきて、政府見解文言にもはっきり出てきておる、その中の「景気浮揚に役立つ相当規模減税」というのは、景気浮揚に役立つのはどのくらいの金額かということ——私はいま減税の金額を言えと言っているのではないのですよ。減税の金額をここで約束せいと言うのではないですよ。私の聞いていることは、ごく常識的なことですよ。景気浮揚に役立つための減税というのは少なくとも何兆円を言うのかということを私は質問している。そして、各界の有識者の人々の声も、意見もここにたくさんあります。兆円台、何兆円という大台に乗せなければ景気浮揚には役立たないと各方面の専門家もみんな言っている。政府がそれを知らぬわけがない。政府政府なりに、景気浮揚に役立つ減税というのは幾らかぐらいのことは腹があるはずなんだ。いまここで減税額を約束せいと岡田は言っているのではない。どうしてそのぐらいのことがお答えできないのですか。  委員長、こんなことでは、私は質問を続行できません。
  30. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 政府の答弁を求めます。
  31. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 景気浮揚に役立つ、というのはわかりました。いわゆる減税の目標額を示せということではない、景気浮揚に役立つとはおよそどれぐらいなことが予測されるか、これにつきましては、私はやはり経済成長率を消費刺激によって何ぼ上げるかという数字の議論に入ってくるのじゃないかと思うのでございます。それをいまお答えする準備をいたしておりませんので、そういう点につきましては、あるいは大蔵大臣お答えする——いわば消費を刺激して、それが景気浮揚、成長率の何ぼに寄与する、こういうことを根底に申し上げるべきであると思いますので、いま正確な数字が私にはございませんので、その限りにおいては、あるいは事務当局からお答えをすることをお許しいただきたいと思います。
  32. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 私は、日本人としてごく常識的な、むちゃじゃないことを質問していると思うのですよ。委員長もおわかりいただけるでしょう。減税額をここで約束せいと言うのじゃない。そんなことを言ったら、大蔵大臣の首が飛んでしまう。だから、そんなむちゃなことは私は言いません。だが、景気浮揚に役立つための相当規模減税をやろうではないかと与野党合意をし、議長見解も出、政府見解も出ておるのに、なおかつ、景気浮揚に役立つ減税とは一体何兆円台を言うのであるかということが、いまこの場で発表ができないようなことでは、これはもう五日間のストップをしたのは全く意味がないですよ。私は本当に情けない。政府見解が出てくるまで、私は質問を留保したいと思います。
  33. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 政府側の答弁を求めます。
  34. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 ちょっと委員長、お待ちください。  いわゆる数字の問題でございますが、私も、従来からの経緯、体験にかんがみまして、このような文言ができたということそのものは、明確な数値をそこで規定することは政府の一つの行政権の範囲を制約するという意味でこのような文言になったのではないかというふうに察知をいたします。  したがって、今日の段階で言いますとすれば、いまも協議をしてみましたが、たとえば消費支出をこれだけ上げるためにはこれだけのものが必要ですという、いわば一般論としての数字を申し上げることになる、それは岡田先生がいま私に求められておる答弁にそぐうものかどうか。ただ、とりあえずそれでも言えとおっしゃいますならば、これは経済企画庁の方から申し上げるべきことではないかなというふうに思います。
  35. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 私は、必ずしも単一の数字、たとえば二兆円、三兆円という数字でなければ納得しないと思っておるのではありません。私が言いたいのは、これだけの減税をすれば——これだけと言ったらまた語弊があるかもわかりませんが、減税をすれば、消費支出が何%伸びて、そしてGNPを結果的には幾ら押し上げることになる、これは従来、政府も何遍も言ってきたのじゃないですか。そのくらいのことははっきりとこの場で、決着をつけるためにもおっしゃっていただきたいと思います。
  36. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  いま竹下大蔵大臣が前提を置いて申されましたとおりでございますが、ともかくも、一兆円ばかり消費支出がふえますれば、五十七年度の実績見込みは百五十七兆円ばかりでございますから、名目で〇・六%ぐらい成長率と申しますか、上昇が出ます。これは実質にいたしますれば半分程度ぐらいだと思います。そのような効果は、財源いかんによって変わるかもしれませんが、計算上そのようになる、こういうふうに私は見ております。
  37. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 そこで、政府の方といたしましては、景気浮揚をするため、いわゆる景気浮揚に値するだけの減税をしようとするならば、いまの消費支出の関係をどのくらい伸ばして、そして名目が幾ら伸びる——いま一兆円の問題は言われましたね。一兆円消費がふえれば名目で〇・六ふえる、実質は〇・三ぐらいのものではないかと思う、こういうお話です。ある程度わかります。ある程度わかりますが、もう一息ですよね。いまの経済企画庁長官のお答えは、決して私はだましているとは言いませんよ、お答えにはなっておるが、まさに隔靴掻痒の感がありますね。靴の外から足の裏のかゆいところを一生懸命かいているような感じがしますので、いま少しはっきりしたものが言えませんか。いかがです。
  38. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、計算上の問題でございまして、財源いかんによってこの点が大きく変わりますものですから、相当前提を置いて言わないと的確なお答えにならないと私は思いますので、二兆円になりますればその倍ということになりましょうし、いろいろ財源が、たとえば私が申し上げておりますように大型間接税ならむしろ大きなマイナスになるということもございますので、簡単には、なかなか一義的な回答はできないんじゃないか。しかし、いま申しましたように、一兆円であれば〇・六、そして実質では〇・三、これは間違いないところだと思います。
  39. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、再度お尋ねをしますが、各文言の中に、景気回復のため、こうあるのですから、景気回復のためにどのくらいのものが必要であるか、そこのところですよ。そうなったら、かゆいところへ直接手が届くのですよ。
  40. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 私どもは三・四%という目標を立てておりまして、新しく所得税減税が追加されれば、三・四%がなかなか厳しいと言われますので、大変好影響があると考えております。しかし、三・四%を達成するためには、これだけじゃなくして、新しくまた原油の引き下げも出てきたという要素もございます。これらを全部合わせてどのように景気浮揚に役立つかという点は、全般的な観点からこれから論議される問題だ、私はこういうふうに考えております。
  41. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 そこで、財源の問題というのをいま私どもは論じておるのじゃないのです。財源を論じておるのじゃなくて、財源のことは一応横に置いて、政府が目標としておる三・四%、それを実現するためにも、景気浮揚をするためにはどのくらいの金額が必要であるか、これは減税とかなんとか言わずにですよ、そういうことには関係なしに、どのくらいの金が必要であるか、その点はいかがですか。
  42. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 たびたびお答え申し上げておりますように、三・四%の成長率、これは私どもは景気回復の方向をたどっておると見ておる数字でございますので、これは所得税減税なくしても達成されるべき目標だと考えております。しかし、厳しい要素がありますから、所得税減税がございますればこれに役立つ、それを景気浮揚というというふうに私は考えております。
  43. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 これから先は押し問答になるようですから、観点を変えてお尋ねいたします。  大蔵大臣、いま景気浮揚という問題につきましては、たとえての消費支出の関係お答えがございました。そこで、その答えではどうもかゆいところを靴の外からかいているような感じになりますので、いま一歩お尋ねをしたいことは、それでは、景気回復のため大幅減税をするという、その大幅というのはどれほどの幅ですか。
  44. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 お答えいたします。  これは、私はいま基本的な立場の御認識をいただきたいのは、いわゆる実質三・四%の成長率を見込む、その土台になる歳入歳出見積もりたる現予算をここで御審議いただいておるわけでございます。したがって、その土台になるこの予算は、現状において、言ってみれば最善のものとして御審議をいただいておる。そこで、景気回復ということになれば、三・四%を確保するためにはどうしたらいいかではなくして、一般的にお互いが感じておる不況感を少なくとも脱却していくという観点からこれらの合意がなされたものではないか。だから、いま御審議いただいておりますのは、三・四%の成長率を基礎に置いた歳入歳出の見積もりを最善として提出したものを御議論をいただいておりますので、したがって、その限りにおける答弁として申し上げるならば、大幅とは幾らかと言われても、これはやはりいまお答えする時期、内容ではないではないか、こういうふうに考えます。
  45. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 どうも何か問題をはぐらかされたような気がいたしますので、それじゃ、もう一つ突っ込んでお尋ねをいたしますが、相当規模減税大幅減税というのは、たとえば金額的にいいますと三千億ですか、五千億ぐらいですか、一兆円台に入らなければ相当規模、大幅と言わないか、その点はいかがですか。いよいよ仕方がないから、具体的に聞きます。
  46. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これも、数字を前提にしておっしゃった限りにおいて、三千より五千、五千より一兆が、それは大規模であると私も思います。しかし、どれを念頭に置いておるかと言われますと、それこそ、今度いわばお決めに基づいて作業を始めるに当たりまして——いままでは御案内のように小委員会がございました。今度どういう形になるかは国会でお決めになることだからわかりませんものの、この委員会で問答いたしました内容、そして問答された方々の一人一人の意見を私どもが聞いて歩いて、そうして、そこにおよそのコンセンサスをつくって初めて一つの規模というものができるのじゃないかな、今度はまさに野党と与党、あるいは政府と野党との開きがあっても、それをいろいろな問答の中で縮めていく作業がわれわれに課せられた使命じゃないだろうかな。ここで一方的に、政府は幾らと思うとかそういうことを言える時期でもなし、また言うことそのものが、私はむしろこれから一人一人のお方と相談して決めていかなければいかぬほど、事ほどさように重要であると考えるだけに、ここで三千か五千か一兆かということに対して私がお答えするのは適当を欠くではないかというふうに考えます。
  47. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 なかなかお答えにはならぬのでしょうが、与野党間でも意見の相違があるんだろうがということでありますが、私の伝え聞いておるところでは、与党も野党も通じて、やはり何兆円という台、これが大幅と言うんだよという理解をしておると聞いております。それならば、おおむね与野党合意というものは、景気浮揚に役立つ相当規模大幅減税、それはやはり兆円台だ、何千億円の台というようなそんなものじゃない、そうしなければ景気浮揚にも何にも役に立たぬ、こういう共通の理解の上に立って今日まで五日間かかってきたというふうに理解をしておりますが、大蔵大臣、おわかりになりますか。
  48. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 私が申し上げましたのは、与野党間の開きがあるとは思いません。仮に私が三、五、一のそれぞれの数値を出した場合、政府側から出した数値と野党の皆さん方との数値に乖離があるという意味で、そういうことを断定したら乖離が生ずるという意味で申し上げて、これらの問題は、それこそ国会議長裁定等々各党合意でこういう申し合わせができたのですから、これからわれわれ行政府国会の一人一人の意見を聞くような姿勢でその結論を得ていく努力をしなければならぬという意味で申し上げたわけでございます。そして、各党間で議論をされたものの景気浮揚という概念からすればかなりのものであったという私も認識はございますけれども、それもン兆であったとかということを断定することは、これは岡田委員がそのように自分は合意しておるとおっしゃることについて私は異論を挟むものではございませんが、私もそのン兆円と理解しておりますということは、先ほど来の議論の中で、やはり申し上げることはいま適当なことではないというふうに思うわけであります。
  49. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 いま非常に微妙なお答えをされましたが、与野党間の代表者会議の中においては、先ほどの大蔵大臣のお言葉ではありませんが、大体ン兆円台でないとこれは景気回復なんかに役立つものかいという認識の上に立って協議が進められてきたということは理解できますか。
  50. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは岡田委員がそう御理解なすっておるということは私もよく理解できますが、私が政府を代表して、数値の問題でいわば理解の中へ入ってしまうということが適当でないではないか、こう申し上げておるわけであります。
  51. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、次の問題に入らしていただきますが、「五十八年中」ということを書いてありますね。これは減税の対象となる期間、これは五十八年一月一日から五十八年十二月三十一日までの十二カ月間、それをもって「五十八年中」というふうに理解をしておりますが、よろしゅうございますか。
  52. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 一般論としての税制の問題からすれば一つの考え方であろうと思いますが、政府として、与野党合意を尊重して、そうして財政改革の基本的考え方を踏まえながら、言ってみればこういうことでこれから検討しろと言われておる時期に、いわば時期を明示するということも、もとより国会の問答もございます、各党の先生方の意見もございましょう、そして行政府の立場から言えば税制調査会における審議も、これも欠くことのできない一つのパターンでもございますので、いま時期を申し上げるというわけにはまいらないと思います。
  53. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 ちょっと質問取り違えたんじゃないかと思うのですが、私が言うのは、減税の対象となるのは、税法の改正でもいわゆる暦年でございますよね。ですから、暦年のことを言っておるんでしょうな、「五十八年中」というのは。すなわち、もっと数字的に言えば一月一日から十二月三十一日まで、その間の期間、いわゆる十二カ月間というものを言っておるのでしょうねということを申し上げておるのですが、これは何にもたくらみはないのですから安心して答えてもらいたいのです。
  54. 梅澤政府委員(梅澤節男)

    ○梅澤政府委員 先ほど来大臣が申し上げておりますように、私どもが承っております昨日の幹事長の御見解によりますと、五十八年中に法案を提出するよう努力するということでございますが、その内容といたしまして、五十八年中の所得あるいはいつからかということにつきましては、ただいま大臣の答弁にもございましたように、今後税制調査会等の御議論をいただきましてお決め願うということでございますので、御指摘の点につきましては本日の段階では全く私ども白紙の状態でございます。
  55. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 そうすると、これはえらい重大な問題になってきましたが、そんなら一緒に聞きますよ。大蔵大臣いいですか。税法改正を、いわゆる所得税地方税税法改正を五十八年中に提出をいたします、これはいいんですな。まず、ここからそれじゃ聞きましょう。
  56. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 五十八年中に法律の改正案を提出することを確約されたということは十分私どもも承知しております。
  57. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 そういたしますと、ここだけでも与野党代表者会議における「予算成立後直ちに」ということとは大分かけ離れておる。それで、五十八年のいつ出すのか、それも明瞭ではない。その時期は言えるのですか。新聞では、一説によれば七月というようなことも書いてあったりしておりますが、一体いつの時点に出すのですか。今国会ですか、次の臨時国会ですか。提出の時期。
  58. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これから幹事長が確約されたことを尊重して作業を進めるわけでございますが、いわゆる減税法案、俗に言う減税法案は、従来からの経緯にかんがみてみましても、いろいろ相談をいたしまして、そうして場合によっては、その問題については議員提案の形で次善の措置をしてやろうとか、そういう合意に達したこともあるわけですね。だから、その問題はしばらくおくといたしまして、さて、ノーマルな手続で、いわば私の方で言えば所得税法の改正、自治省の方で言えば地方税法の改正でございましょうが、それを抜本的な、いわゆる基本的な改正をも含めて御審議いただくということになりますと、やはりこれは税制調査会、私もいま行政府の立場としては税制調査会の意見を当然のこととして聞かなければならぬ。そうすると、税制調査会の議論としては、これは便宜主義でなくオーソドックスな議論で申し上げますと、当然いわばその財源として予測される税収見込みというものの御審議に対するいろいろな資料の提出も求めてこられる。そうなると、それはいつかというと、いま岡田委員が御指摘になりました七月というのが、これはいわば五十七年度の決算が確定するわけですから、その五十七年度決算の確定を見て、そして、それがいわば財源問題をコンクリートにするための一つのきっかけになるということは、私もできると思うのでございます。したがって、やはり昨年私も幹事長・書記長会談に責任を持って出席して、そして合意を得てこの小委員会がつくられた。そこで財源問題について、中途のことは私も承知しておりますが、ついに完全な合意が得られなかったということになりましたが、ことほどさように時間のかかる問題であります。したがって、たとえば五十五年が私が大蔵大臣ですから、五十六年度の、いわば五十五年の剰余金に基づく戻し税というものをやった、ああいうときには、話し合いの中で、便宜的に財源も議員立法で、そして減税法案も議員立法でということもやっていただいた。  だから、オーソドックスないまからの手続を言えと言われますと、なるほどおっしゃるように七月というものが五十七年度のいわば決算が確定する時期でございますから、一つのめどを立てる時期にはなるというふうに言えると思うのでございます。
  59. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 だんだんお聞きすればするほどおかしい感じですね。与野党代表者会議とはずいぶんかけ離れた感じを持つのです。  いまの大蔵大臣の御答弁によりますと、財源問題の見通しがつかなければ提出はできないというふうにもとれますが、そういうつもりですか。
  60. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは、現状において御提出申し上げておる予算が最善なるものとして御審議をいただいておるというのがまず前提にあるわけでございます。したがって、そもそも減税というものにつきましては、あるいはこの景気の動向から見れば自然増収が見込み得るとか、あるいはもうその自然増収の問題は後回しにして、赤字国債の発行に踏み切って、そして財源を求めるとかいうことで、財源というものがない限りにおいて、ただ財源なしのいわば減税法案とでも申しますか、それを出すということは、これはやはりできないことであるというふうに私は思います。
  61. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは、もう一つ重ねて聞いておきますが、減税の法案を、両法案を五十八年中に出して五十八年一月一日からこれを実行するということが約束できますか。
  62. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 恐らくいまの前提を考えてみますと、いわば所得税なら所得税減税、そうすると、暦年主義でございますから、その暦年の中における減税でございますから、それそのものが、後からは計算上月々幾らということになるわけですが、全体の中における税制というものは、いま岡田さんがおっしゃっておるようなものに結果としてはなるということで、しかしまた考えの中には、合意が成立すれば、およそ返るのは、五十七年度税制というものの減税で、いわば年末調整をやれば返ってくるとかいうことに具体的になるにいたしましても、それはいつから何ぼに計算したものだということは、これは結果的に——相談し、これからそれこそ財源問題をも含めて慎重に検討しなければならぬことじゃないかなということであります。  だから、むしろ岡田先生の議論は戻し税みたいな便法をとるなという意味であればそれは別でございますけれども、これとて、いろいろな議論の中で便宜的にはそれしかないからということで過去においてやったこともあるということでございますので、確定して申し上げるというわけにはいかぬじゃないかな、こう思います。
  63. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 理解できないままに、ちょっと全体をつかむためにも次の質問をさしていただきますが、それでは、政府の考えておられる税法改正というのは、もちろん私どもは戻し税なんてとんでもない話だと考えております。制度改正であって、すなわち課税最低限を引き上げるという根本的な作業をやるのだというふうに理解しておりますが、政府はそういう覚悟でございますか。
  64. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 もとより財源の問題があることではございますが、いま各党お話しなさったものは、私は、そういうものをいわば基本的に検討を開始せよという意味だと理解してはおります。
  65. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 もう一つ、全般的な包括のためにお伺いしておきますが、まさか政府は、大幅減税をやれというのなら、この際大幅増税を抱き合わせでやらしていただきましょうというようなことは、よもやよもや考えてはおらぬと私は考えております。なぜならば、中曽根総理大臣は土光臨調会長と、増税なき財政再建ということを再度確約をされた今日の段階でありますから、大幅減税をするのだから大幅増税も抱き合わせでいこうなんということは、これはもう臨調路線に逆行することですから、全くあり得ない話であろうと思うけれども、その点はいかがですか。
  66. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは、増税なき財政再建とかつて言われた言葉、そして先日念押しされたことは、これは私は、あくまでも理念として貫かなければならぬ。だから、したがいまして、いわゆる大型、相当額のものを減税しろと、そうすると、私は、どうしても、いま御提案申し上げておる予算の中において、それの減税が減額につながった場合、減収につながった場合、それをどうして埋めるか、歳出を切らなかった場合としていろいろな議論をすれば、新しい負担だとかあるいは赤字公債の増発とか、そういう議論もそれは議論としてはあるかもしれません。しかし、それをいま念頭に置いてやれという、いわば国会の御命令と申しますかお話し合いができたとは私も思いませんので、それを念頭に置かないで、そして、しぼるべき知恵をしぼれと、こうおっしゃっておるからこそなおのこと本当に——僕は非礼だと思うのですよ。山陽と山陰に生まれ育ちまして、陽の方に陰の人がいま一生懸命答弁しているのですが、非礼だと思いますが、そういうものを念頭に置いてはならぬということがあればあるだけに、だから、おまえ歯切れ悪い、非礼じゃないかと言われても、あえてがまんしなければならぬと思って、苦渋しつつ、かつ良心を戒めながらお答えしておるというのが素直な心境でございます。
  67. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 いま一つ確認しておきたいと思いますが、大幅減税の中には住民税は当然含まれておると、いまこの文言の中にもありますから、住民税も含まれていると承知しておりますが、そのとおりですな。  それから、もちろん五十八年には実施をするというふうに理解をしておりますが、それでよろしいですね。
  68. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 文章には「規模減税実施するための財源を確保し、所得税及び住民税減税について」法律案を出せと、こう言われておる。だから、自治大臣がいらっしゃいませんので、含まれておりますとかおりませんとか私の方から言うわけにはまいりませんが、こういう文書が存在し、「政府としても、これを尊重いたします。」と申し上げておるということを読み上げてお答えとさせていただきます。
  69. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 ということは、政府見解としてこれは「所得税及び住民税減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出する」ということを書いてあるのですから、もうそのとおりだ、だから住民税はもちろん含まれておる。それから、五十八年中には実施するということはもう当然のこと、政府見解ですから大蔵大臣といえどもこれに背くわけにはいかない、こういうことに受け取っていいですね。
  70. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは官房長官が先ほど御答弁なすった中で理解していただいて、私自身がやはり所管の大臣のいらっしゃらない前でそうでございますと言うのは、先輩であります自治大臣に対しても、お答えは、先ほど来の包括した官房長官お答えの中へインクルードしていただきたいと思います。
  71. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 以上、私は減税につきまして各党代表者会議与野党合意議長見解政府見解に基づいて質疑を重ねてきたのでございますが、まことにあいまいなところが多いわけです。余りにも多過ぎます。そこで一番重大な全体の規模ということについてもはっきりしたものが出てまいりません。それじゃ一体いつ実施するのかと言っても、それもはっきりしません。法律案の提出もいつかと言えば、これもはっきりしません。これじゃ与野党合意というのは一体どこへいってしまったんでしょうね。与野党合意というのは、わりとはっきりしていますよ。法律案を提出するのでも、予算成立後直ちにというふうにはっきりしておる問題がだんだんとぼかされてきておる。こういうことでは、これはちょっとこの質問をこれで終わるというわけにはいきませんな。  政府のもっとはっきりした、いまもお尋ねすれば、官房長官は用事があるから出してもらいたいというので、私の方もそれは好意的に同意をしたわけです。ところが、肝心なところへくると官房長官もおらぬのでと、こうなってしまうし、これじゃ話が進まぬじゃありませんか、質問が。これは一応休憩をしていただきまして、政府見解を、いま私が質問したことに対して答弁を統一して出してもらうといいと思うのです。ここで休憩してもらえませんか、委員長
  72. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 この「減税実施するための財源を確保し、所得税及び住民税減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出するとの確約があったことを承知しています。政府としても、これを尊重いたします。」ということが書いてありますので、私はそれはそれで、官房長官発言でございますから、受けとめられて結構だと思うのですが、私は言ってみれば所得税の方でございますね。そして、地方税の責任者のいない前で私が地方税の問題に触れるということについてちゅうちょいたしまして、御理解をいただくべく努力しておるのでございますので、やはり官房長官が読み上げましたこのことでもって御了解をいただきたいというふうに思います。
  73. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 大変この減税問題につきましては、政府の対応が、いいのかな、大丈夫かなという感じを残しながら、私は次の質問に入らざるを得ないと思います。  そこで、五十七年度の退職者の年金の問題につきまして、どのような救済措置を講じられるかということをお答えをいただきたいと思います。
  74. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 ただいまのお尋ねは、五十七年度の退職者の年金についてどのような救済措置をとるか、こういう御質問であります。  これは、与野党間の話し合いの中でこのお話し合いが出たということを私も承知いたしております。したがいまして、与野党間の話し合いの経緯にかんがみまして、五十七年度中の退職者の年金について、将来にわたって他の年度の退職者と比較をして不利益となることがないという前提でこれは今後調整措置を講ずることといたしたいというふうに存じております。
  75. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 時間がなくなってまいりましたので、本日御出席をいただきました大臣の各位の中で外務大臣と法務大臣にお残りをいただきまして、その他の大臣の方はお引き取りをいただいたらと思うのですが、まことにどうも恐縮でした。時間が足らなくなりまして恐縮です。  それでは、外務大臣と法務大臣にお尋ねするのでありますが、私はなぜこんなことを尋ねるかといいますと、いま私がこれから申し上げる言葉の中で一つお断りしておかなければならぬと思いますが、北朝鮮人民共和国のことを以下私は略称して北鮮あるいは北朝鮮というふうに言わしていただきたいと思います。委員長、よろしくお願いいたします。  そこで、なぜ聞くかといいますと、先般ミグ19の戦闘機に乗りまして北鮮の空軍大尉が韓国に亡命してきましたね。それで、これは亡命の動機というのが、国民を戦争の準備に駆り立てている北の実情を外部に知らせるためと食糧不足など生活が苦しいというようなことを挙げておると語っております。これに関連して、実は北朝鮮に行っております日本人妻のことについてお尋ねをしたいと思うのであります。  委員長、済みませんが、余りあちらにいらっしゃるのでこっちに……。
  76. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 外務大臣、こちらの方へ。  岡田委員に申し上げますが、先ほど北朝鮮人民共和国とおっしゃいましたが、それは正式国名ではございませんので、朝鮮民主主義人民共和国でございますから、そのように訂正をさしていただきますが……。
  77. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 どうぞ結構です。委員長は何遍も行っておられるからよく御存じで。  そこで、お尋ねをしますが、時間がないので、私の方で質問をするのもできるだけ要約をいたしますが、お答えも要約をしていただきたいと思います。  昭和三十四年の八月十三日に日赤と北朝鮮の赤十字社との間におきまして在日朝鮮人の帰還に関する協定というのが締結されました。そこで、同年の十二月十四日から第一次船が出まして今日まで百八十七回、九万三千三百九十二名の方が北朝鮮に渡られました。この中に日本人が、国籍を日本に置いたままの方が六千六百七十九名、そのうち日本人妻というのは千八百三十一人と承っておるのでありますが、間違いはないでしょうか。
  78. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
  79. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 この六千六百七十九名の人は、一人も日本国籍を離脱はしていないと聞いておりますが、間違いありませんか。
  80. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 六千数百名の方につきまして一人もという御質問でございますと、私は、一人一人については承知しておりません。
  81. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 日本人妻は。
  82. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 日本人妻についても、国籍を離脱した人と離脱しない人と両方あると思います。
  83. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 両方あるのですか。
  84. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 はい。私どもの理解はそうでございます。
  85. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 先般、両省に対して、私があらかじめ質問書を提出しておきましたが、そのお答えでは、一名も国籍を離脱した者はいないと承知しておりますと明記をしてありますが、いまのは違うのですか。
  86. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 申しわけございませんが、先ほどの答弁を訂正いたしまして、離脱しておりません。
  87. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 国籍離脱はなしですか。
  88. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 国籍を離脱しておりません。御指摘の日本人妻約千八百名の方々につきましては、日本国籍を離脱しておりません。
  89. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 こういう人権に関するような問題は、一言の過ちもなくお答えをいただきませんと、国籍を抜けておる者もある、抜けていない者もあるというようなことを言うようでは——これはいまのは外務省ですか。在外邦人の安全と保護については外務省の基本的な任務でしょう。その基本的な任務を持っておる外務省が、これが六千人を上回るような日本人のことについて余りよく知っておらぬというのは、どうも物騒な感じがしますね。以後、御注意を願いたいと思います。  さて、次に移らせていただきます。  この人たちの中で、人間というのは故郷を忘れるという人間はだれもおりませんが、里帰りをいままでになさったという方が一人でもあったでしょうか。それから、安否調査はされましたか。この二つをお答えください。
  90. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 里帰りにつきましては、残念ながら、現在までのところ、実現するに至っておりません。  それから、安否調査につきましては、人道上の見地から、政府は外交上の努力をいろいろ続けてまいりましたが、主として日本赤十字社を通じまして北朝鮮の赤十字にお願いをいたしまして、安否調査を続けております。
  91. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 どうも外務行の返事というのは何か頼りないのですが、里帰りをした者は一人もない、これはよくわかりました。  安否調査は、いまやっておるところでありますと。実際には、昨年に九名の人の安否の確認が北朝鮮の赤十字を通じて日本の赤十字に回答があった。これは、もちろん外務省も動いておられるに違いない。実際は、この九名の人たちのうち五名は、私がいま大臣の手元に差し出しております手紙、日本人妻自由往来実現運動の会の代表世話人の池田文子さん、この人たちが、この会が消息をつかんでおる人です。だから、実際には消息のわかったのはたった四名。こういう状態で日本の政府はいいと思っているのですか、そこのところを聞かせてください。
  92. 橋本(恕)政府委員(橋本恕)

    橋本(恕)政府委員 現にいわゆる日本人妻の相当多数の方々が非常に苦しい立場におられるという点を考えてみましても、先生御指摘のような九名の方、しかも、その内訳をいま先生から御説明がございましたが、私どもはこれでもって十分だと考えておりませんので、引き続きまして、国際赤十字あるいは日本赤十字を通じて北鮮赤十字に対し、安否その他の消息調査を続行いたしますとともに、北朝鮮とわが国と双方と外交関係を持つ第三国に対しましても、今後機会があればできるだけ協力をお願いする、こういうことで精力的に外交上の努力を今後とも続けてまいりたい、こういうように考えております。
  93. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 一名の里帰りもないのに、北朝鮮の方は、一年間に二百人を超える人が、日本に来ては北朝鮮にお帰りになっています。そして、日本にいらっしゃる北鮮の方々は、祖国訪問、いわゆる人道ケースを含めて毎年毎年四千人からの人が、北朝鮮に行かれては日本に帰っております。国交がないのにかかわらずです。だが、日本から向こうへ渡っておりますいま申し上げた日本人妻の方は一名も里帰りがない。これは変なことだと思いませんか、異常なことだと思いませんか、両大臣のお答えをいただきたいと思います。
  94. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 北朝鮮におられる日本人妻からの、故国に帰りたい、一時でも里帰りしたいという切々たる手紙がずいぶん私のところにも来ております。その手紙を見ましても、何とかして一時でも帰りたいということでございますから、一時でも受け入れることができることを私たちも心から期待しておりますし、そのための努力はしなければならない、こういうふうに思います。  そこで、何といっても基本的には国交がないものですから、北朝鮮の政府と日本政府が直接話し合いができないということで、赤十字を通じまして北朝鮮側との接触をいたしております。  安否の調査等については、赤十字の努力で、全面的にはっきりするというところまで行っておりませんけれども、少しずつ調査が進んでおるわけでありますが、これもまだ十分ではない。  それからまた、いまアジア局長が申し上げましたように、日本と北朝鮮と国交を結んでおる第三国等に仲介を頼みまして、安否の調査、消息等について要請をいたしておりますし、それなりにまた第三国の努力をいただいておるわけですが、これもはかばかしくないというのが現状でありまして、私はその点は、あの手紙を見るだけに、また、日本における家族の皆さんも、何とかして受け入れたいということで、これまた私のところにも強い要請をいただいておるのですから、政治とかそういうものを離れた人道上の問題ですから、これは当然実現をしてほしいというふうに考えておりますし、その努力をしていかなければならぬわけであります。  何といいましても、先ほどお話がありましたように、本当に靴の裏からかくような感じであります。直接政府同士で話が進めばそういうことはやれるわけでありますが、それができないという現状ですから、それ以外の方法をわれわれは今後ともいろいろと考えながら、この問題は人道的な問題ですから、この処理のために力を尽くしてまいらなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  人的な交流もあるいは経済的な交流あるいは議員団の交流等もあるわけでありますし、これからもこれは進めていこうということですから、そうした交流の中でこういう問題等も取り上げていただく、それをまた政府もお願いをしなければならぬと考えておりますが、いずれにしても、いまお話しのように、日本人妻の期待に沿うような思い切った措置がいま直ちにとれないということは非常に残念に思いますが、しかし、今後とも努力は積極的に続けていかなければならない、こういうふうに考えております。
  95. 秦野国務大臣(秦野章)

    ○秦野国務大臣 岡田先生お尋ねの点は、御趣旨は全く私も同感なんで、実に妙だと思いますね。法務省も入管所管の関係で心を痛める問題なんですけれども、要するに、北の関係の里帰り妻が一人もないというのは妙だと思うのですよね。それで、いろいろ在日の北の人たちに聞くと、北鮮系の国籍を持ってみんな幸せなんだという紋切り型の答えしか返ってこない。しかし、これは全く人道上の問題で、妙なんですから、これは民間の力あるいは外務大臣がおっしゃったようないろいろな力を用いて、もっと活発な人道上の処理を考えていかなければならぬ、こう考えております。
  96. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 そこで外務大臣、この問題はもう長年続いてなかなか進展をしない。御苦労いただいておるわりあいにはとにかく効果が出てこないという非常にいら立たしい問題でありますだけに、日本に残っております家族の皆さん、もう大変な苦労をしているのですよ。  そこで、この問題を、内閣かその他適当な機関で日本人妻の対策委員会を設けていただきまして、その家族の皆さんとの連絡をよくとり合いながら日赤との間を取り持ち、あるいは国連、第三国、そういうようなものにも働きかけを活発にしていただくようにぜひお願いをしたい。いまわずかに日赤が、こんなものですよ。千九百近くの留守家族があるのに日赤から二百十件こういうものが回っているのです。それで、安否調査をしてあげるからここの上の方へちょっと書きなさいと言う。四行しかないのです。何十年も会ってない人に四行で、これは文意は足りませんよ。向こうから来るのもたった二行ですよ、二行。どうやって書くのですか。だから、こういう対策では家族の人はますますいらいらしてしまう。親はもうすでに年をとってほとんどが七十以上です。  それで、いま差し上げましたこのお手紙、これは実に涙の出るようなことを書いてありますが、わずかにくぐり抜けてきた二通の向こうから来た手紙と、それから大臣に対する陳情文が四つと、それからお父さんが、向こうへ行っておる娘に書いておる遺言書があります。こういうのを読んでみても、これは実際に二十何年前に日本を出たきりの着たきりスズメ、それに継ぎはぎだらけで生活しておる。もう本当に弱り切っているのですよ。こんなことを放置できるわけはないです。話を聞けば聞くほど涙が出るような話でして、だから、政府の中でも何か対策委員会的なものを設けていただきまして、日本におられる家族の人の相談にぜひ乗ってやっていただきたい。これはもう何年もかかった問題ですから、ひとつぜひお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  97. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 岡田委員が日本人妻についての問題を取り上げていただいたことに対して、私は心から敬意を払っております。また、いまの手紙を見ましても、本当に切々たる思いがいたしております。何とかしなければならぬという気持ちでいっぱいでございます。いまお話しのように、外務省だけでなくて関係省庁とも十分相談をいたしまして、また日赤とも十分な相談等もいたしまして、留守家族等とも連絡をとりながら、この問題を前進させるために今後とも努力を重ねてまいりたい、このように存じます。
  98. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 留守家族の方が外務省や法務省にお願いに来るにいたしましても、実際にはこれといって窓口がないわけですね。ですから、それぞれのそのときの係のところへ行ってお願いをしておるわけでありますが、対策委員会ぐらいは外務省でつくっていただくというのはそんなにむずかしい問題ですか。つくっていただくというわけにはいきませんか。
  99. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 留守家族の皆さんが相談をされる場合に窓口がはっきりしてないということになれば、この問題を進めるという上においてもいろいろ支障がありますから、いまの御意見等も踏まえまして、こうした窓口をはっきりさせる、そのための委員会といいますか、あるいはまたそれを受ける窓口といいますか、そういうものだけは、もし、はっきりしてないということなら、はっきりさせなければならない、そのための手段は早速講じたいと考えます。
  100. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 それでは最後に。窓口をつくろうということでございますから、大変ありがとうございます。ぜひひとつこういう困った人たちの相談に乗ってあげていただきたいと思います。  いま私がなぜそんなことをお願いしたかといいますと、御承知のように、これは委員長も御存じだと思いますが、自民党のAA研の方が北鮮に行かれまして、いまの金日成主席とお会いになりましたときに、金日成主席は非常にりっぱなことを一九八〇年の九月に言うておられるのです。その内容というのは、日本人妻の訪日と日本にいる家族の訪朝を歓迎する、事務的な問題は朝鮮労働党、対外文化連絡協会と連絡をとって話を進めてほしいということまで一国の元首がおっしゃっているのですね。ところが、それから以後話は進んでないのですよ。話が進まないのです。一体だれがやってくれているのだろうか。私が対策委員会をつくってくれというのはこういうことをいうのですよ。だれも動いていないのです。まことにもったいないと思いませんか。一国の元首がそこまで言葉を吐いてくれているのに何らそれに対して対策が打たれぬということは、私は非常に情けないことじゃないかというふうに思うのです。  片や、通産大臣も来ておりますが、民間貿易なんかも、もう御承知のように、北鮮との間に輸入と輸出で四億六千万ドルぐらいあるのでしょう。貿易すら進んでいるのに、日本人の六千七百名からの人たちに対する安否の問題がはっきりしないなんということは、日本の国としては許されぬ。これはもうぜひともひとつ、前向きにどころではない、真剣に取り組んでいただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  101. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 お話しの点はよくわかります。日本が何もしてないということではございませんで、実は、先ほど申し上げました第三国を通じまして、北朝鮮政府に対しましてもこれまで何回か強く求めておりますし、これは今後とも続けていきますし、あるいはまた日赤を通じまして日赤活動の中で北朝鮮の赤十字との間の連絡もとりながらいまの問題の解決には努力はしておるわけでありますが、いまの北朝鮮政府の対応ということも一つの問題があると思いますけれども、私はさらにこれは続けていきたい。  それからまた、さっきもお答えいたしましたように、こちらで窓口をつくって留守家族との連絡というものは十分きちっととれるようにしなければならぬということだけはお答えを申し上げ、お約束を申し上げる次第です。
  102. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    岡田(正)委員 ありがとうございました。
  103. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  104. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 武器の技術供与、技術輸出の問題などにつきまして承りたいのであります。  総理にお出かけをいただきたいというふうに思ったりもいたしましたが、また、全大臣おいでになるところで総理お答えになっておりますから、そうも思いましたが、一般質問という性格でもございますから、後藤田さんにお出かけいただいて承る。御答弁いただきながら、必要なら総理の御出席もいただきたいし、法制局の長官の御出席もいただきたいと思っております。何しろ世論調査などでも六二%ぐらい私どもと同じ意見で、武器の技術供与は賛成できないという大変厳しい世論もございまして、将来日本が死の商人になることは避けたいという念願を私は持っておりますが、そういう意味で非常に危険な今度の御決定だというふうに思っているわけです。  そこで、事の次第がわかりませんので、後学のために承りたいのでありますが、何を一体どういうふうに決めてアメリカ側に伝えたのかという、最初からこれは実は私はわからぬわけでありますが、ここに私が持っておりますのは、五十八年の二月十四日、「中曽根総理大臣の訪米」、五十八年一月十七日から二十一日ということで書いてあります、いわばブリーフィングと称するものであります。こういうことだったということを新聞記者の皆さんに知らせているわけですね。正式な「北米局」——北村さんのところでしょう、「北米局北米第一課」となっているのですが、これを見ますと、「大統領より、武器技術供与の問題についても努力を多としたい。」こういうことで、おしまいの方にいきますと、「大統領より、武器技術供与の問題についても努力を多としたい。日米は安全保障の面で責任を持っている。日米共通のゴールは平和である。お互いに平和を目指し、西側がソ連の行動を抑制しなければならない」、こう述べてあります。  どうもこれは文章の文脈から言うと、武器技術供与というのは、西側がソ連の行動を抑制するために非常に役立つと言わんばかりの中身なんですね。しかしこれは、あっさり「努力を多としたい。」と言うのだが、聞いてみると、大統領は質問異議も何も言わなかったという。そうすると、事前に連絡が行っていなければならぬことになる。  そこで、十四日にお決めになった、こう言うのでありますけれども、つまりこれは、後藤田さんの談話でございましょうね、この後藤田さんの談話をお出しになった、つまり十四日、この後どういうふうにアメリカ側にはお伝えになったわけでありますか。
  105. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 十四日に後藤田官房長官の談話が公表されました後、東京におきましては、私が在京米国大使館のクラーク公使を呼びまして、そうして口頭で官房長官談話の趣旨を伝えました。それからまた、ワシントンにおきましては、私どもワシントンに訓令をしまして、わが方の大使館から国防省、国務省に対して同様の趣旨を説明いたさせました。
  106. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、アメリカにおいて大使館からというのは、やはり官房長官の談話の趣旨を伝えた、こういうことですか。
  107. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 官房長官の談話を説明をいたしまして、今回日本政府はこういう決定をしたということを伝えたわけでございます。
  108. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 ちょっと腑に落ちないのでありますが、官房長官談話というのは、国内に明らかにする、それが談話でございましょう。それをアメリカ側に口頭で伝えた。そうすると、談話は渡したのですか、渡さないのですか。口頭でとおっしゃるが、私は口頭了解なんというものにはさんざんこりておりまして、もう藤山・マッカーサー口頭了解なんというものは何年も何年もかかってやっと文書が出てきた。これは往生しましたですよ、事前協議ですから。後になると、核なんというのはイントロダクションなどと言って、解釈が違うなどと言う。口頭了解ぐらい厄介なものはないのですが、一体口頭でというのはどういう効力があるのですか、これは。わかりませんが、したがって、一体口頭了解ということになるのかどうか、もしなるのだとすれば、いつ、どこで、だれが、だれに、いかなるものを、しかも中身は何と言うたかということを、これは文書でいただかぬと、またこれは何年もかかるのじゃかないません。いかがでございますか。
  109. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 先ほど御答弁いたしましたときに、私はクラーク公使に対してまず口頭で官房長官談話の趣旨を御説明して、そうして後で、彼は日本語がわかるものでございますから、その官房長官談話を渡しまして、そしてまた、ワシントンの大使館から国防省、国務省に通報しましたときも、後で官房長官談話のあれを大体仮訳をつくりまして、それを渡した経緯がございます。
  110. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 もう一つ答えてもらわなければ困るのだが、それは口頭で了解し合ったとかなんとかということでは全くないのですか。渡しただけなんですか。それは一体どういう意味があるのですか。もう一遍答えてください。
  111. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 今回の武器技術の対米供与に対する政府の決定は、これはあくまでも日本側が自主的に検討して、そして結論を出したわけでございますから、今回こういう結論を出したということをアメリカ側に伝えたわけでございます。
  112. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 それだけだというわけですね。これは非常に不思議なことなんですが、まあいいでしょう。  そこで、これはどういうふうに言うたかというのは文書でお出し願えませんか。
  113. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 英文で仮訳をつくったものは後で御提出させていただきます。
  114. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、日本側が自主的に決定をして伝えた。まず、その十四日ということは間違いないですか。いかがですか、官房長官
  115. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 十四日に官房長官談話が公表されましたということは、日本政府がこういう決定をしたということを内外に公表したわけでございますので、アメリカに対しては同日、その後、先ほど申し上げましたような措置をとった次第でございます。
  116. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 なるほど、同日。そうなると、これは総理、また一つうそを言っていることになるのですがね。だから、総理にそううそばかり言われたらかなわぬから出てきていただきたいと言った。官房長官、これはあなたに総理の権限はもちろんございませんが、大番頭でございますからおいでいただいているわけでございまして、あなたに聞くよりしようがないが、何なら総理のところに行ってきていただいて、私質問しないで待っていますから。  これは速記を起こしたのですが、つまり武器技術供与の問題について国会とも何ら話もしない、諸手続をとると言ってとらないという質問が出たときに、この間申し上げましたが、事前に議長、副議長に御連絡をした、ここではっきりこう言っているのですね。それで、この間私が再度聞いたら、衆議院の議長さんだけは実は事後であった、こう言っているんですね。おいでにならなかった、だから公邸に行った。これは事後でございます。両院の議長、副議長さんには私からお電話で事前に御連絡を申し上げた、こう言っているんですね。  そうすると、わが党から出ている副議長さんの岡田春夫さんに聞いてみましても、十五日、成人の日に美唄の事務所で十二時過ぎに電話をいただいた。十五日ですね。これは事前にじゃない。念のために申し上げておきますが、秋山長造さんには十五日の夜の十一時半。いまのお話では、十四日に決めて同日、こう言う。十四日にアメリカにもう伝わっているのです。渡しちゃった。それは一体事前にということになりますか。  国会決議との問題が関連をして、鈴木総理が何遍も何遍も国会決議でございますからと答弁をしてきている。武器禁止三原則、政府統一方針、そしてまた先般の国会決議、だからこの枠内でと。しかし、アメリカとは安保条約があり、MDAがある。だから検討中。MDAのいわば効力を中止してきているのだ、だから検討中、こうなる。そうでしょう。  明確にこれは事後連絡。ここのところは官房長官、一体どう思いますか。これは事前じゃないでしょう、事後でしょう。十四日に決めて伝わっちゃっているものを十五日に連絡すれば、事後じゃないですか。いかがですか。
  117. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 一月十四日の閣議で決定をいたしまして、その後外務省としてはいま御答弁のようにアメリカ側に連絡したものと思います。衆参両院議長さんには、私は詳細わかりませんが、その後で電話で御連絡を申し上げた、かように承知をいたしております。
  118. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 きちきちっとこの速記には事前にと総理自身がお答えになっている。そうでしょう。読み上げたとおりだ。改めてひとつ総理にそこのところは釈明を願いたいのですが、いかがですか、両副議長さんは私どもの出身なんですから。お答え願います。
  119. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 いずれにいたしましても、十四日の閣議決定後両院議長に電話で御連絡を申し上げた。副議長さんの方につきましては、総理に私からお伺いをしてみます。
  120. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そこで、いま北米局長でございましたか、答弁をなさいましたが、自主的にと言うのです。そこで、この官房長官談話と私申し上げますが、談話によって、つまりMDAを用いて武器技術供与を行うということですな。そうすると、MDA、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、これは安保条約三条から出てくると解釈していいんでしょう。それが一つと、この第一条のどこで武器技術供与あるいは輸出が行われるという理解になるのですか。
  121. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の安保条約三条との関連について申し上げますと、大出委員承知のとおり、MDA協定は旧安保時代に締結されたものでございますので、法律的に申し上げますと、必ずしも安保三条を直接受けてMDAがあるという関係ではなかろうというふうに考えます。広い意味での安保体制という意味で安保条約の三条とMDA協定は関連があろうと存じますが、法律的に直接は関係がないということでございます。  それから、MDA協定第一条との関連の御質問でございますが、私どもの考えでは、この第一条に「政府が承認することがある装備、資材、役務その他の援助を、両署名政府の間で行うべき細目取極に従つて、使用に供するものとする。」ということがございますので、具体的な供与すべき武器技術が出てきた場合には、ここに書いてございます細目取り決めに従って提供する、こういうことを考えておるわけでございます。
  122. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、このMDAというのは、私が三条を挙げたのは、浅尾安保課長の答弁議事録で、言うならば三条だと言っておるから申し上げたわけでありまして、包括的にという意味ならそれでもよろしゅうございます、要するに安保条約に基づいてMDAがある、こういうわけです。  ところで、そうなりますと、MDAのいまの第一条「細目取極に従つて、」という前に「援助を供与する政府が承認することがある装備、資材、役務その他の援助を、両署名政府の間で行うべき細目取極に従つて、使用に供するものとする。」武器技術というのは、この装備、資材、役務のどこに入っているのですか。
  123. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 私どもの考えでは、具体的にはこの中の役務の中に入るべきものと考えております。
  124. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 国会討論会のときに楢崎さんと私で役務の指摘をした場所がございましたが、いみじくもそういう解釈なんですね。役務となると、これはずいぶん幅の広い話で、本当に北海道の果てから九州までのような話でございまして、それこそ世界じゅうということになるかもしらぬわけでありますが、そうすると、役務に入っているという解釈は、きのうきょうの解釈じゃありませんね、昭和二十九年にできたMDAでございますから。そうなると、長い年月、この協定に基づいて武器技術供与ができるということになっていた、こう解釈しなければ成り立ちませんね。急に役務の供与ができる、役務の中に武器技術が入っているという解釈をとったのじゃないでしょう。そうすると、これは長い年月できることになっておったということになりますな、いかがでございますか。
  125. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 そのとおりでございます。
  126. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 ということになると、なぜこれを実施しようとしなかったか。おかしげな協定がほかに幾つもありますね。三十一年の協定などもございます。情報交換等の取り決めでございますけれども、三十一年、いや三十七年ですね、三十七年に防衛目的のための技術的資料、情報交換取り決めというのがございますね。これは二十九年にできていますね。この種のものとの関連はどうなるのですか。
  127. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 御指摘の資料交換取り決めと今回政府が決定いたしました武器技術の供与とは直接関係がございません。
  128. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 それじゃ一体なぜこれでやれるものをやらないできたのか。卑近な例を挙げれば、鈴木さんの時代に、五十六年でございますけれども、防衛庁長官がアメリカに行った。このときにデラウアー氏から話が出た、要求があった、こういうわけなんでありますが、これは一体なぜ発動されずにおったのか、この点はいかがでございますか。
  129. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 三十一年の特許に関する協定でございますが、これは……(大出委員「三十一年のを聞いているんじゃない」と呼ぶ)まず、三十一年を申し上げますと……(大出委員「必要ない」と呼ぶ)  三十七年の資料交換取り決めは、結ばれまして以降……。
  130. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうじゃない。ちゃんと聞いてなさいよ。  MDAの一条というのがあって、役務の提供ができる。その役務の中に武器技術が入っている。しからば、二十九年にこの協定ができて以来ずっと役務の提供ができるんだが、にもかかわらず役務の提供をしないできた、つまり武器技術供与をしなかったのは一体なぜだと聞いているのです。
  131. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 技術の日本からの供与に関しまして、具体的に技術水準が向上してないというようなことがありまして、実態がなかったということでございます。
  132. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 二つ問題があるのですが、四十二年の佐藤総理の決算委員会における武器輸出禁止の三原則、そして五十一年の三木さんの政府統一方針、この二つがあると、アメリカから供与を求められても、この二つの縛りがあって供与できない、こういうことになる筋合いだったはずでありますが、そこのところはいかがでございますか。条約局長ですか。
  133. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 必ずしもそういうふうに考えたわけではございませんので、先ほど装備局長から御答弁申し上げましたように、最近に至るまで、アメリカ側より具体的に日本に対する武器技術の供与の要請という問題がなかったという一つの実態がございまして、したがいまして、武器輸出三原則、政府統一方針というものに基づきまして、政府が従来からとってきておりました基本的な政策というものと、他方におきまして、アメリカ側から要請が出てきたという実態を踏まえまして、これと、政府が従来からとってきておりました政策との問題をいかように調整するかということが新しい問題として出てまいったわけでございまして、過去一年半、政府が御答弁申し上げておりますように、この調整をいかにするかということで政府は検討をしてまいって、今般の結論に到達した、こういうことでございます。
  134. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そこで、だから承りたいのですが、鈴木総理のときに、五十六年でございますが、米側から正式に武器技術の供与の要求が出てきた。まあ正確に申し上げておかなければいかぬかもしれませんですね。  五十六年の六月ですね、当時の大村防衛庁長官が訪米した際に、デラウアー国防次官から、米国政府の意向として、防衛分野の技術交流を両面通行にしてほしいという要求が出された、こういうわけですね。  さて、この要求に従って、MDA一条による役務の提供ということでやれるという理解で話をされたのは、まずもって防衛庁の和田装備局長でありました。外務省の浅尾安保課長、その前の松田安保課長でございますか、この方々も安保三条というものやMDAを持ち出して、できるという見解をおとりになった。通産省は、当時なかなかむずかしいという見解をおとりになった。これはもう間違いない事実です。できるというのに、ちょっと待ちなさい、いやこっちにまだだめだというのがある。鈴木総理はずいぶんこれは御苦労されている。MDAという協定は厳として存在をする。だから憲法に基づく遵守義務がある。そういう意味で、一条の役務の提供の中に武器技術を含めて、本来入っていたかどうか私は知らぬけれども、できる、やれます、これは外務省もそう答えておられますし、防衛庁もそう答えておいでになった。通産省は、そうは簡単にはいきませんと答えておいでになる。  これを総理がずうっと表に立って答弁をされて、そういうものがあるけれども、国会決議まである。だけれども、いま、アメリカとの関係、MDAもある、検討させておりますというこの総理の権限というのは、どこから出てくるのでしょうか。  内閣というのは、内閣法に基づいてすべて決まっておりますね。後藤田さん、官房長官だから御存じでしょう。総理権限はここにしかございませんね、法律的には。いかがでございますか。
  135. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 内閣総理大臣の権限ということになりますと、たとえば防衛庁の関係であるとか総理府の関係であるとか、個別の法律によって総理大臣の職務権限が決まっているものもございます。しかしながら、一般的な内閣総理大臣の職務権限といいますと、閣議によって決定した事項について行政各部を指揮監督する、こういう権限でございます。
  136. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 お話が出ましたから、その点に先に触れますが、私も長らく内閣委員会におりましたので内閣法がわからぬ方じゃありませんが、「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」第四条ですね。内閣の職権というのは閣議によるのですね。間違いないですね。答えていただけますか。
  137. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 ただいまお答えしたとおりでございます。
  138. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 第六条に「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」いま防衛庁だ何だお話がございましたけれども、事の焦点は、第六条の「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」これがその根拠法規ですね。いかがでございますか。
  139. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 個別法規は別として、内閣法による内閣総理大臣の職務権限はおっしゃるとおりでございます。
  140. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、まず、そこで承りたいのですが、今回の官房長官談話というのは閣議決定でございますか。
  141. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 そのとおりでございます。
  142. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 それでは閣議決定というのをお出しいただけますか。
  143. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 閣議決定というのは、閣議の中のいろんな話は出せませんよ、しかし決定したものについては、これはお出しできると思います。
  144. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、私どもが閣議決定をお出しいただきたいというと、この間私が賃金の説明をしたときもお示ししたように、かくかくしかじかという決定がございますね、決まっておりますね、いろいろ書いて。私、実は、閣議決定なさったというのだから、それをいただきたいと言ったら、皆さんの方のお持ちになったのは、官房長官談話をお持ちになって、これでございます。  私は、調査室その他手続をとって、武器技術供与に関する閣議決定なるものをいただきたい。これでございます。あなたの談話。これではどうもわからぬじゃないかと言ったら、次に出てきたのは黒柳さんに対する答弁書。あすこに、上下ちょっと書いて、あなたの談話を中心にしたものが載っていますが、それを持ってこられる。何回もお願いをした、閣議決定ということで。これも私は内閣委員会十五年もいましたからね、常々閣議でお決めになったものはいただいておりますが、私はいままでただの一度もいただいたことがない。いまお出しいただけるというのだが、本当にお出しいただけますか。
  145. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 ただいま閣議決定と言ったのは閣議了解でございますから、その点はひとつ訂正させていただきます。  そして、その席で決めたものは、私の官房長官談話をこのように発表いたします、こういうことを決定したわけでございますから、官房長官談話で御了承願いたい。
  146. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 ごまかしちゃいけませんよ、後藤田さん。きのう、きょう私はやっているんじゃないんだ。あなたは閣議決定でございますと答弁したじゃないですか。決定のいろいろなことはお出しできないけれども、閣議決定そのものはお出しいたしますと言ったじゃないですか。立たぬでもいいですよ、まだあと言うことがあるんだから。人がしゃべっているとき立ちなさんな。  そういうでたらめしちゃいけませんよ。それでメモが来たら途端に言い直して、そのメモを見せてください、それならば。まあ内輪のことはやめましょう。それはいけませんよというようなことであなたに注意が行ったのでしょう。そういうことじゃ、事武器技術輸出、供与、国会決議違反という大きな騒ぎになっているのに、閣議決定でございますとぬけぬけと言う。いまは閣議了解でございます、念のため。念のためと言ったって、最初に閣議決定と言ったじゃないですか。いや閣議決定、実は了解でございます、念のため。お出しできるのは談話でございます。私は初めからそれしかないと言っているじゃないですか。なぜそういううそをおっしゃるのですか。はっきりしてください。官房長官談話であり、閣議了解であり、したがって閣議決定というものはない、通常の例のものは。紙に書いたものはない、そうでしょう。
  147. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 別段うそを言ったわけじゃなくて、閣議で決めるのは、閣議決定とか閣議了解とか閣議報告とかいろいろございます。閣議決定と閣議了解の性格にいろいろな法律上のあれもありますが、要するに、閣議了解と言っても、私は、そうそう閣議決定と違っておるというふうには考えません。しかし、この際の武器技術の問題については閣議了解であった。その点、私は閣議決定と言ったのは間違いでございますから、それは訂正を申し上げたい。  あのときのは、武器技術についてはこのような決定をしたいということを決めたので御了解を願いたいというので閣議了解をしていただいて、ついては文書を閣僚に配付をいたしまして、官房長官談話をこのように発表いたします、この点の閣議了解を得た、こういうことでございます。
  148. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 文書を配付したとおっしゃるが、私が調べた限りは、あなたの官房長官談話しかないでしょう。何か別なものをちゃんと配付したんだとおっしゃるが、あなたの官房長官談話というものを閣議に紹介したわけですよ。そうでしょう。間違いないでしょう。閣議に紹介した、それであなたが読み上げた、それだけのことでしょう。違いますか。答えてください。
  149. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 閣議決定としての文書はございません。閣議の席で、武器技術供与についてはかくかくの決定をしたいので了解をしてもらいたいということで閣議で了解を得た上で、官房長官の談話をこれまた了解をしていただきたいということで閣議了解を得て、官房長官談話を発表した。したがって、あなたの御質問の閣議決定の文書といったようなものはありません。
  150. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 あなたは官房長官ですが、官房長官の権限というのは内閣法に基づいてどうなっていますか。
  151. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 官房長官は内閣総理大臣を補佐をするということが内閣法で書いてあるように思います。詳細なその条文は知りませんけれどもね。要するに女房役として内閣総理大臣を補佐をする、こういうことだろうと思います。
  152. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 後藤田さん、あなたと私はおつき合いが長いから余り詰めたくはないんだけれども、しかも頭の回転の速い、こんな知恵者は世界じゅうにいないんじゃないかと私は思っているんで、尊敬もしていますので、だから——それにしても官房長官におなりになったんだから、自分の職務権限は何かぐらいのことは読んでおきなさいよ。ちゃんと明確になっているでしょう。  内閣官房長官は、「閣議事項の整理その他内閣の庶務、閣議に係る重要事項に関する総合調整」、調整権限以上に出ないのですよ、官房長官の権限というのは。指揮監督権はない。はっきりしている。調整権限だけ。もう一つは、「内閣官房の事務を統轄」するという権限、この二つだけ。法律を離れて物を言ったって成り立たぬでしょう。あなたは警察庁の長官をおやりになって、法律法律と年じゅう言っていた。私にも言ったじゃないですか。そうでしょう。そういうことじゃ困る。あなたは調整権限しかない人なんだから。  そうすると、官房長官談話はどこで決めたんですか。
  153. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 官房長官談話というのは、閣議にかけて、閣議の了解を得たわけでございます。
  154. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 その前に何やったんですか。その閣議にかける談話をまとめたのはどうしたのですか。どこか天から降りてきたんですか。(発言する者あり)
  155. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 この問題については、外務省それから通産省、防衛庁、それに内閣法制局が入りまして、そして事務的にもそういった四者間で協議をし、その上で関係閣僚で協議をして一応の結論が出たところで、あらかじめ総理の御了承を得た上で、それではこう行こうということで閣議の了解を求めた、こういう段取りでございます。
  156. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、指揮監督権をお持ちでない官房長官が通産、外務、防衛の皆さんを集めて調整をした。いま声がございましたが、そのとおり、調整する権限しかないのですから。そうですね。そうすると、官房長官談話というものは、言うならば、まあいろいろ賛否の意見があった、あったが、こんなことにするという、つまり官房長官の調整役というところに基づいた、まとめた、何となく文章をつくったという程度のもの、それを閣議に紹介をする、読み上げる、こういうことになったということなんですね。それを称して閣議了解とあなたはこう言う。そうですね。なぜこれ閣議決定をしなかったのですかね、これだけ大きな問題を。なぜ閣議決定をしなかったのでしょうかね、皆さんは。何でそういう摩訶不思議な方法をおとりになったのかわからない。  国会決議に違反である云々、こういう問題を抱えているこの時期に、総理は十二月二十一日の国会の答弁で、国会決議というものは、国会が政党間で運営されているという現実にかんがみて、もし大きな変化があれば諸手続をとることが好ましいことである、こう答えている。そういうものをあなた方の方は閣議決定もしないで、官房長官の談話で、どうしてそういうことになったんですか。こんな不見識な話はない。国会決議違反のみならず、閣内における手続にも私は大きな疑義を感じているんですが、なぜそうなったんですか。
  157. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 武器技術はきわめて重要であることは申すまでもありませんが、この件については、先ほど言ったような段取りで一応の関係閣僚の意見が一致をし、総理の了承も得た上でそれを閣議に報告、説明をいたしまして、そして閣議の了解を得、その結果こういう官房長官談話を出します、こういうことの了解も得たわけでございますから、この官房長官談話というのは、これは私はまさに政府の意思である、かように考えております。ただ官房長官の調整権に基づいてやって出したというだけのものではない、これは閣議の了解を得ているきわめて重要なる談話である、かように考えます。
  158. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 さて、ここに一つ大きな問題がございます。  戦後の内閣法というものは、戦前のものに比べて新しい条文がつくられている。称して総理大臣の中止権限。これは学説的にもいろいろな議論がございまして、いろいろ解説をされています。総理の中止権限、それはどういうことかというと、第八条にございますが、「内閣総理大臣は、行政各部の処分又は命令を中止せしめ、内閣の処置を待つことができる。」という条文。  これはどういうことを指すかというと、今回ちょうど同じようなことなんですけれども、外務省も、一昨年の三月末にアメリカへ当時の伊東外務大臣が行って、武器技術供与に関してアメリカ側に日本の考えを説明した。そうしたら、五十一年の統一方針に基づいて、アメリカが戦争当事国になったら慎むという紙に書いた三木さんのときの統一方針があるから提供できない、この項がひっかかってそこで話がつかない。防衛庁は和田装備局長が定期協議に何遍も行って、半ば約束めいた話をした。新聞にも載った、御本人も答えた。もうこのMDAによってやれるというわけだ。ところが、通産はどうしても困る、こうなった。したがって、MDA協定というのは生きているのですから、内閣法に基づいて総理大臣の権限ということに照らして、一年半のこの問題をとらえると、それは三つの省庁に対する総理の中止権限。検討するからちょっと待ちなさい。だから、ここにもございますけれども、国会でも何遍も答えておいでになる。答弁書にもございます。  つまり、先ほどの日米安保条約三条あるいは地位協定十二条、こういうものは義務規定であるのかないのかという議論が延々と続きました。結果として、義務規定ではなく、あくまでも政治判断にかかるという答弁を正式に出されている。これは横山利秋、土井たか子君等々の質問者に対して。これはあくまでも政治判断にかかるものである、地位協定十二条や安保三条は義務規定ではない、こう言う。そこで、あくまでも政治判断だから、三省の一年半のいろいろないきさつというのは、内閣法という総理大臣権限から、条文はこれしかないんだから、この中止権限である。私もいろいろな専門家に聞いてみました。そういうことになる。そうすると、これを解決する、つまりMDA協定で実施をするということを決めるとすれば、それは「内閣の処置を待つことができる。」これに該当する。内閣の処置とは何か。内閣というのは総理個人ではない、閣議だ。閣議決定をしなければならないものなんですね、内閣法のたてまえから。専門家の意見もいろいろと聞いてみました。これしかない。  そうすると、今回おとりになった官房長官談話というやり方は、内閣法八条に違反をする。専門家の数々の御意見があります。解釈もしていただきました。あなた方は安易に物をお考えになっているけれども、事この国会決議に対する解釈も大変にいいかげんだが、内閣の諸手続についても、内閣法八条に触れる、そう考えなければならぬ問題でありまして、単なる談話で済む筋合いではない。御答弁願います。
  159. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 したがいまして、従来からあった武器輸出三原則並びに政府方針というものを、この内閣になって、アメリカに限り、しかも技術に限って政策の修正を行った、こういうことでございます。
  160. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 この法律は、修正を行うのであるとすれば閣議決定でなければならぬということになる。あなたの先ほどのお話は閣議決定ではない。最初にあなたは閣議決定と言った。なら閣議決定を出してくれと言った。中身、やりとりは言えないけれども出すと言った。紙が来た途端にあなたは変わった。変わって、閣議決定ではございません、了解でございます、中身がない談話でございます。明らかに八条違反。これは閣議決定が要るのだ。どこからどう解釈しても。内閣法というものはそんなたくさん条文があるのじゃないのだ。どれにか該当しなければ総理権限の説明はつかない。はっきりしていることだ。  しかも、私どもが承知する限りでは、内閣一体の原則があります。これは、たまたまここへ持ってまいりましたのは、最も権威あると言われる佐藤功さんの解釈、「日本国憲法概説」、この中で明確に、「閣議の決定は通常の合議体において多数決によるのとは異なり、全員一致でなければならないものとする。」これについて異論を差し挟む人はないのです。閣議決定というのは全員一致でなければならぬのですよ。いままでのいきさつからして、私は中身に入ることは人の名前が出てまいりますからやめますけれども、通産がどうしても反対だと言う場面もあったはずだ。つまり、閣議決定というのは持ち回りでやっても全員一致でなければならぬのだ。はっきりしている。そうでなければやめなければならぬのだ。そういう性格のものです、内閣法の解釈は。だから、あなたの方は安易に閣議決定に持ち込みがたい事情がある。  だから、恐らく後藤田さんの知恵で、あなたのところに三省の人を集めて、後藤田さんの頭脳で、回転の速いあなたのことですから、世の中には悪知恵の達者な人だと言う人もいるけれども、そんなことないのだ。私に言わせればそうじゃない。あなたのその精到な頭脳の回転で談話をこしらえて、それで閣議に配って今度読み上げた。それで了承という形にした。これは明らかに国会決議違反のみならず、あなた方の閣内における手続が不備、内閣法違反ですよ。  それを、ぬけぬけとあなた方は何をやっているかというと、予算委員会へ回答を出してきた。予算委員会の回答、何と書いてある。二十三日の衆議院予算委員理事会に正式に提出された対米武器技術供与についての政府見解。前文次のとおり。「予算委員会におけるこれまでの質疑で対米武器技術供与に関する今般の政府の決定」、政府決定とは何か、政府とは内閣しかない。内閣の決定とは何か、閣議決定しかない。閣議で決定していない。了承を求めただけである。これをもって了解と言う。にもかかわらず、ぬけぬけと天下の衆議院の予算委員会の席上に政府見解と称して、冒頭に政府決定、こんなばかな話がありますか。官房長官談話を取りまとめて閣議に報告をして、閣議の了解をいただいた、こう書かなければいかぬ。政府決定なんというものじゃない。政府決定というのは、政府は内閣なんであって、内閣の決定は閣議しかないのであって、これは法律上明確なんだ。こういうものを予算委員会に出してきて平気で政府決定。こんなもの初めから受け取りようがないじゃないですか。これだけ大きな問題を、そういう閣内の手続も内閣法に大きく抵触するやり方で、しかも政府決定という、内閣の閣議の決定というふうにとれる書き方で出してくる、そういうやり方というのは、今回のこの武器技術問題の本質がそこに明確になっている。世論が六二%もやるべきでないと言っている。これは了解いたしかねる。  これは私は、だから総理の御出席を求めたのだが、総理が出てこないというならここで条件を申し上げるが、予算委員会に出したこれは明らかに真実でない。これはあなた方、全部やり直して出し直すべきものだ。いまの閣議了解というのは、これは法律的に成り立たない。いかがでございますか。
  161. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 政府の意思決定というのは、閣議決定以外は一切ないのだ、こういう御理解のようですけれども、政府の意思決定というのは、閣議の決定、閣議了解、これすべて政府の意思決定でございます。
  162. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 いや、そういうふうに言うだろうと思って全部調べてある。そうならないのだ。あなた、御自分の職責というか、官房長官の権限はと言ったら、それも全然おわかりにならない。おわかりにならぬ人がおわかりにならぬ答弁をされて、調べてある方が物を言っているのでは議論にならぬけれども、総理でも呼んできてくれませんか。いかがですか。
  163. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 私の答弁は、法律的にはそんなに間違ってないと思っているのですよ。内閣の意思決定というものは、閣議というああいった決定の方式もあれば、閣議了解という意思決定の方法もあるのでして、この点、私は間違ってないと思います。  ただ、法律的な見解を詳細に答えろというのであれば、法制局長官をすぐに呼びますから、その上でお答えしたいと思います。
  164. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 私が申し上げた第八条、これは、私はこの席で時間をかけるつもりはございませんから、この場の処理はいたしますけれども、官房長官、後でひとつこの点について、こうこうこういうことだという、私のいまの指摘に対する、法制局長官と相談されてもいいですから、御見解をお出しをいただけますか。委員長、諮ってみてください。
  165. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 大出さんのところに法制局長官からよく説明させます。
  166. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 問題がいろいろございますから、その点は後ほどまた改めて質問をいたすことにいたします。  さて、次の問題でございますけれども、先ほど幾つか例に挙げておりますが、また総理の答弁が今般まで幾つもありまして、この中では、武器の共同生産をやらない、試作品までは認める、こういうふうになっているのでありますが、ここで幾つか申し上げておきたいのであります。  まず、この予算委員会でよく質問が出るのですが、日本がライセンス生産を、F15もそうでございますが、幾つもやってきている。で、三十余にわたる技術供与を受けている、しかしこちらから何も向こうに渡していない、だから片面通行だ、こういうふうに言われるのであります。私の知るところによりますと、まず一つ承りたいのは、米国の技術をもらってライセンス生産をする場合、日本側で改良点があったら、米側に速やかに報告し、無償で提供しなければならない契約条項が付れている。これは谷川さんの方になりますかね。いままで皆さんはすべて秘密にして、表にお出しにならない。だから、全く本当の資料が何もなくて質疑をしてきている。ライセンス生産の場合に契約条項の中に、日本側が改良をしたもの、この改良点は米側に速やかに報告し、無償で提供しなければならない。これは一体、どういう契約でそうなっているのですか。
  167. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 アメリカからライセンス生産で技術、情報等をもらいまして、日本で武器を生産します場合に、政府間で取り決めを結ぶと同時に、業者同士で技術提携契約というのを結んでおります。そういうものの中で、日本でもらいました武器を改良等いたしましたときに、その改良の事実について通知をするということが入っている場合がございまして、それによってそういう事実を通知しているケースもございます。  無償か有償かについては、必ずしもはっきりいたしておりません。
  168. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、そういう契約がある。その法的根拠はどこから出てくるのですか。
  169. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 そういう技術提携契約を結びますときに、一般論でございますが、技術をもらう内容の一環として、もらったところがそれに改良を加えた場合に、改良した技術の内容について相手に通知するというようなことは、通常一般でございますので、私どもの了解では技術をもらう中身の一部と考えております。
  170. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 交換公文に基づいて細目取り決め等が行われますね。ここにございますが、たくさんあるのであります。まず資料交換に関する取り決めがあり、それから取り決め本文があり、附属書があり、つまり、いままで幾つか出しているものはありますが、交換公文しか出していない。取り決め本文、附属書、この中にいままでのライセンス生産のいろいろなものが書かれている。だが、それはいままで皆さんお出しにならぬわけですが、こういうものとの関連はどうなるのですか。
  171. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 日本がライセンス生産をいたします場合に細目取り決めを結びますが、これは相互防衛援助協定の一条に基づく細目取り決めを結ぶわけでございます。先生おっしゃいました資料交換取り決めもその細目の取り決めの一つでございますが、これは技術資料を交換するという意味での取り決めを三十七年に結んだものでございまして、ライセンス生産を個々の武器についていたします場合の取り決めとは全く関係ございません。
  172. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうしますと、それはMDAの一条に基づく取り決め、それはどこがどことやるのですか。
  173. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 日本がアメリカから技術をもらいましてライセンス生産をします場合には、取り決め自身は外務大臣とアメリカの大使になる場合が大部分だと思いますが、大使との間で交換公文を結びまして、それに基づいて実務者間の覚書というのを防衛庁と国防省との間で結んでおります。
  174. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 ここに、交換公文だけはほとんど全部ございます。この中にはF4EJ、ナイキ・ホーク、改良ホークミサイル、対艦スパロー、たくさんございます。F15、P3C、いっぱいございます。ただし、これは本当の両方の責任者同士が交換をし合う、つまりイニシアルを送り合うという形のものだけ、ここから先が一体、覚書、細目取り決め、どういうふうにつくられているかというのは、全くわからない。ということになると、いまのライセンス生産に当たっての改良点を、これで言えば無償で直ちに——これは民間生産業者との間にというけれども、この細目取り決めその他は、覚書で決まらなければ簡単にそんなことはできるはずがない。これ、出していただけませんか。いかがですか。
  175. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 技術をアメリカからもらいます基本的なところは交換公文で決めておりまして、その技術的な細目について、先ほど申し上げましたように、防衛庁と国防省との当事者間で覚書を結んでおります。その覚書の中身につきましては、たとえば秘密保持をどういうふうにするかとか、それからどういうふうな形で技術資料を渡すか、あるいは開発分担金をどうするかというような中身について細かく決めているわけでございますが、これはアメリカ政府との間の話し合いで公表しないということになっておりますので、従来から公表は差し控えさせていただいておったわけでございます。
  176. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 後から一括申し上げましょう。  それでは、もう二、三点聞きましょう。  ペリーというアメリカの国防次官、デラウアーさんの前任者。デラウアー氏のところで武器技術供与の申し出がアメリカからあったわけでありますが、その前任者。この方が日本に来られて、これをいろいろ案内した方、これは有名な番匠さんという防衛庁の技術参事官の方でございます。いまはおやめになっているのだと思いますが、この方は何と言っているかといいますと、いいですか、番匠氏は、「今回の政府決定で兵器の日米共同研究開発は全く可能になった。本格的な共同開発はこれからだが、装備品の一部を日本で製造し供給することに米側の短期的なねらいがある。」つまり、今度の技術供与を三原則、政府統一方針によらないことという一片の談話をお出しになった。それによって解禁だというわけですな。共同開発に関する取り決めも覚書も細目取り決めも本文もたくさんございます。皆さん何にも出さない。出さないが、これによって共同生産開発は可能になったと、はっきりしている。  そして、将来のことも書いてありますが、「兵器の共同開発から共同生産へ進む可能性が大きい。」総理は、いみじくも共同生産はしないと言った。しかし、ここで言う番匠さんの言うことをそのまま受け取れば、まずこの諸取り決めによって、このMDA一条から始まるわけでありますが、技術供与が行われることが自由になった。途端に、共同研究開発がそれによって可能になった。そして日本で製造し、供給すること、米側は短期的なねらいはそこにある、こうなんだ。試作品までは認める。日本で製造した、たとえば川崎重工のレーダー誘導対戦車ミサイル、これは防衛庁は武器だと言った。後から時間があれば聞きますが、武器と言い、武器技術と言うあなた方の表現は全くまちまち。いままで、汎用品という言い方をしたいためにいっぱい横に広げたが、最近は、今度は技術供与ができるとなるとしぼってきている、武器だと言った。  しかし、これも試作品ということで五十なり百なり日本がつくってアメリカに送る。試作品である限りは、総理答弁で認めることになる。アメリカに子会社ができていて、武器に使ういろいろなエレクトロニクス関係の機器をつくっておられた会社があって、最近はアメリカの秘密保持のたてまえによって売却をせざるを得なくなって売っているのもあります。子会社、京セラ。向こうに日本の技術者が行って会社をつくった。試作品ということでこっちから送る。向こうに技術者がいて、それをどのようにでも手直しをする。試作品という名における共同開発から共同生産まで進んでしまう。会社をつくるのには、大蔵省に資金届け出をすればいいだけ。ここでそこまで触れている。この点は一遍聞いておかなければいかぬのだ、私ばかりしゃべっていてはいかぬのだが、いまのこの試作品という名のもとに共同開発をして、まずもって共同開発が今度の武器供与で自由になる。なぜそうなるのでしょうかね。
  177. 福川政府委員(福川伸次)

    ○福川政府委員 共同研究開発につきましては、その限りにおきまして武器技術の供与、これは今回の政府の方針の決定に基づきまして、供与し得る道ができるわけでございます。  また、いまお尋ねの試作品の点でございますが、今回の閣議の御了解の中で、あるいは官房長官談話の中で申しております点は、武器技術の供与を行う場合に、当該「供与を実効あらしめるため必要な物品であって武器に該当するもの」という表現は使っておりました。これは、試作品などがその対象に含まれるわけでありますが、これはあくまでも提供される技術、それの理解を助けるということでございますので、そこにおのずと限界があろうと思います。もちろん、現実に処理いたします場合にはケース・バイ・ケースで供与されるわけでございますけれども、通常の常識で申しますれば、試作品等ということでございますから、通常はごく限られた数量である、こういうことになるわけでございます。
  178. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 限られた数量と言うけれども、いまの御説明では私が聞いている答弁にならぬじゃないですか。一部、つまり武器の装備品の一部を日本で製造して供給する。試作品と名がついていればこれは幾らでもできる。それは、いまのお話によれば全く自由になるのだが、その根拠になるいろいろな取り決めはほとんどやみの中。  私は、かつてここで言っておりますが、四十一年の新覚書、共同開発に関する覚書、安田論文なんかにも出てきています。それから資料交換に関する交換公文、その基本取り決め。交換公文というのは何も書いてありませんが、その基本取り決めあるいは附属書。覚書があるのなら、先ほどMDAの場合は覚書と言いましたから、こういうものを国会に出さぬで、武器技術供与をしないのだからというので歯どめになっていた。だから出さぬと言っても、武器技術を供与しないと言うのだから御勘弁願いたいというお話が陰からいっぱいくるからがまんをしておったのだけれども、ここまで来るとそういうわけにいかない。したがって四十一年のこの新覚書、いまの共同開発、それから資料交換に関する取り決め、三十七年の十一月十五日、これも念のため、この取り決め本文、覚書、これをお出しをいただきたい。  それから、先ほどのMDAに関する覚書というのがあるのならば、それは幾つあって、後から御答弁いただきますが、これまたひとつ出していただかぬと検討のしようがない。全く野放しになってしまう。  あわせてここで一点聞いておきたいのだが、MDA一条に言うところの「役務」というのは武器を含むのかどうか、あわせて答えておいてください。
  179. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 四十一年の研究開発に関する覚書につきましては、昨年の当委員会におきましてお答え申し上げておりますし、それから三十七年の資料交換取り決めについての覚書についても同じようにお答え申し上げておりますが、概要は御説明申し上げましたけれども、いずれも日米両政府の間で公表しないということになっておりますので、概要の説明だけということにさせていただきたいと思います。
  180. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 概要の説明、何にもないんだ、これは。「防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容認するための協定というのでございまして、相互訪問についての便宜供与等についてそれまで相互に述べ合った結果を記録したものでございます。」これだけだ。これじゃ、いまあなたの言う共同開発は自由になるのだということについても、どこで何がどうして、さっぱりわからぬ。だから、武器技術供与を認めるという今日の政府決定がある。出さぬというなら、これはもう私の方は撤回を求めておりますが、それはあなた方が武器の生産まで行ってしまう、共同生産まで行ってしまう、そういうことになる。共同生産がなぜできないことになるのですか。さっき私は、役務の中に武器も入るだろうと言いましたが、含めて答えてください。
  181. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 まず、研究開発に関する覚書の点についてお答え申し上げますが、先生先ほどお述べになりましたような形で昨年概要を御説明しております。ただ、今回の対米武器技術供与に関しましては、このようなものとは全く切り離しまして、これは単なる記録的なものだったわけでございますが、切り離しまして、新たに細目取り決めを結んで、それに基づいて行うわけでございます。  それから共同生産と共同開発の問題は、別の政府委員から答弁させていただきます。
  182. 福川政府委員(福川伸次)

    ○福川政府委員 共同生産と申します場合には、それぞれ生産段階に至りました部品を供与し合いまして一つの武器をつくるということになるわけでございますが、そういった本格的生産段階に至りまして、部品をつくりあるいは部分品をつくり提供するということになりますと、今回の政府の方針の決定におきます技術の供与あるいは技術を供与する場合に当該「供与を実効あらしめるため必要な物品」の範囲を超えることになりますので、今回の方針の外になるという考えでございます。
  183. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 総括して申し上げますが、冒頭に申し上げましたように、閣議の、内閣法に基づく諸手続が正規にとられていない。これは国会に対する、国会決議の皆さん方の勝手な解釈のみならず、皆さんのやり方自体にも内閣法に触れると私が考えなければならぬ扱い方をされている。これでは撤回を求める以外に道はない。  いまの細目取り決めその他覚書——ソウル地下鉄の問題のときでも、秘密条項は入っていても、困った皆さんは私のところへ持ってきて、読んでくれと言って全部見せたじゃないですか、全部。そうでしょう。それまで皆さんは、何かなければお出しにならぬというなら、これは改めて考えなければしようがないのですが、きょうのところはそういう態度であっては、これは試作品のみならず、ここに番匠君が言っているように、日本で試作品と称する装備品を生産をして試作品として送る。アメリカに子会社をつくるということもできる。全く武器技術は野放しになっていくことになる。だから、六二%も反対だという世論のとおりに、改めて私はこの席で、総理はおりませんが撤回を求めておきたいと思います。  そして、念のためにいま聞いたのですが、あと二つだけ、時間がありませんので承っていきたいのですが、戦艦ニュージャージーがこの夏に横須賀に入ってくる可能性を持っている。このニュージャージーというのは、トマホークを三十二基ぐらい間違いなく積んでいますね。そこで条約局長は、中長距離ミサイル、非核だからこれは問題ないという御答弁をしましたね。間違いないですか。
  184. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 私の御答弁申し上げましたのを正確に記憶しておりませんが、私が申し上げました趣旨は、核、非核両用のミサイルにつきましては、核弾頭が装着されていないものであれば、これは事前協議の対象にならない、こういうことを申し上げた次第でございます。
  185. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 まず、短時間に旧来の政府答弁を申し上げまして、改めて御答弁を願います。  昭和四十三年四月二十五日の藤山・マッカーサー口頭了解、事前協議についての問題です。ここで、「「装備における重要な変更」の場合 核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」これは事前協議の対象になる、こうなっていますね。間違いないでしょう。  二番目。浅尾政府委員の答弁が五十六年六月二十九日にございまして、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み及びその基地の建設、これが事前協議の対象になる。中長距離ミサイル、これは核弾頭であるというふうに考えて、事前協議の対象になるという答弁。それから、五十六年の五月二十九日、ここで、中長距離ミサイルについてのつまり使い道、これは核弾頭しか使い道がない、だから事前協議の対象になると答えている。  さらに、中川政府委員、この方は三十八年五月二十二日、ここで、「核弾頭を積む以外にほかに全く用途のないいわゆる中・長距離ミサイルというものもやはり核兵器に同じと考えるべきである。」事前協議の対象になる。  それから、三十九年九月十七日、逆に繰ってきましたが、「長距離、中距離ミサイル、これは本来的に核弾頭が装着されるものということであるので、そういう趣旨から事前協議の対象にする、」竹内説明員、これはアメリカ局長ですね。  これは切りがありませんが、たくさんございます。中長距離ミサイルというものは核弾頭を装着をする、それが常態である。非核というのは常態ではない。経済性がないと言っている局長さんもおいでになります。だから事前協議の対象になる。今回どうして、明確に核弾頭を載せることになっている三十二基が事前協議の対象にならぬのか。アメリカが非核と言ったからということになるかもしらぬが、これは筋が通らぬ。いかがでございますか。
  186. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 いま、大出委員の方から幾つか御引用になりました答弁も含めまして、ほかにも、たとえば昭和四十三年、衆議院本会議での佐藤総理の御答弁がございますが、佐藤総理は、たとえば核弾頭のほかに、「核弾頭の専用装置、核ミサイルのようなものですが、そういうような専用装置、これも持ち込みを許さない。」というふうに御答弁になられております。  いずれにいたしましても、政府が一貫して申し上げておりますことは、当然核弾頭を装着することを前提とする、いわば核弾頭を装着しなければ兵器として成り立たないというふうな核専用兵器につきましては、これは当然、核弾頭がついているいないにかかわらず、事前協議の対象である。他方、核、非核両用の兵器につきましては、核弾頭が装着されておらなければこれは事前協議の対象にならない。これは従来から政府が一貫して申し上げておるとおりでございまして、私が御答弁申し上げましたことは、特に新しいことを申し上げたわけではございません。
  187. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 トマホークというふうに明確に——これは陸上発射型も空中発射型も海上発射型もございますが、トマホークというふうに明確になっているじゃないですか。じゃ、トマホークは核、非核両用で使っていくという性格のものですか。
  188. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 専門的なことはほかの政府委員より御答弁申し上げた方がよろしいかと思いますが、トマホークにつきまして私が承知しておるものといたしましては、核、非核両用のトマホークと核専用のトマホークというものと、二種類あるというふうに承知しております。
  189. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 アメリカ側の発表によりますと、当面これは試験的に非核を使う場合があるという。本来これは核である。はっきりしている。方々でアメリカは言っているじゃないですか。欧州に配備するのも、ソビエトのSS20に対抗して、バーシングII型だけじゃない、トマホークを持っていくことになっている。はっきりしているじゃないですか。
  190. 新井政府委員(新井弘一)

    ○新井政府委員 簡単に御説明します。(発言する者あり)
  191. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 あなたはいいよ。長い話は要らない。これだけ答えてくれればいいんだ。  もう一遍念を押しておきますが、中距離ミサイル、トマホークについて、核、非核両用のものがあるから、持ち込みは事前協議の対象にならない、核は対象になるが、非核はならないと答えたいわけですか、焦点だけ答えてください。
  192. 新井政府委員(新井弘一)

    ○新井政府委員 ニュージャージーとおっしゃいましたので、事実関係だけ私は答えようかと思ったわけでございます、討議の基礎といたしまして。  それで、トマホークでございますけれども、核、非核がございます。そのうち、核は対地攻撃型の核でございます。核トマホーク、対地攻撃型でございます。これは一九八四年またはその以降に装備する。他方、非核については二種類ございます。一つは対地攻撃型、もう一つは対艦攻撃型でございます。  それで、ニュージャージーについては、先般の態勢報告等を見ますと、ことし八三年に配備するというふうに言われております。  以上でございます。
  193. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 いまの説明によりましても、八四年に核トマホークを配備する。アメリカ側も、これに対しては恐らく日本に入れてくる都合があるのでしょう、当面は非核を使うのだが、近い将来核装備をする、こういうふうに発表している、正式に。谷川さん、見ているでしょう、新聞もごらんになったでしょう。いかがでございますか。答えてください。どう分けてこれは事前協議の対象になるならぬという問題ですが、そこのところ答えてください、長官。
  194. 新井政府委員(新井弘一)

    ○新井政府委員 ニュージャージーにつきましては、八三年、ことし装備する。私たちの理解では恐らく対艦用非核トマホークであるというふうに理解しております。  他方、核を積むかどうかについては、全くアメリカはその点は明らかにしておりませんので、承知いたしておりません。将来の問題として出てくる。
  195. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 そうすると、アメリカが核を装備するかしないかは承知していない。いまの方、何とおっしゃるか知らぬが、それは彼の予想でございましょう。私はそう思う、アメリカが核を積む積まぬということについては承知しない、こう言うのですから。  そうすると、これはやはりアメリカ側に事前に、このトマホークというのはこういうわけで核でないというならない、はっきりしたやはりアメリカ側の考え方を日本の国民に明らかにする責任が外務省あるでしょう。いかがでございますか、外務大臣。
  196. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 これは日米のいわゆる安保条約、日米同盟関係にあるという信頼関係から、日本がいま核の持ち込みに対しては非核三原則という立場から事前協議があってもこれはすべてノーだということは日本政府として明快にいままでしておりますから、この点についてはアメリカは十分承知しておる、こういうふうに確信しております。
  197. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 だが、アメリカ自身が当面非核というけれども、やがて核を積むと言っているのだから、実際に核を本当に積んでくるのかこないのかわからぬじゃないですか。そこは念を押す責任があなた、あるのじゃないですか。ことしの夏なんだから、何カ月もないのだから。いかがでございますか、それが親切なやり方ではないですか。
  198. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 先ほどからの議論で、非核両用の核兵器、中長距離ミサイルについては、これは事前協議の対象にならない、もちろん核を持ち込むということになれば対象になるわけでありますが、その場合はノーということですから、それはこれまでの確固とした日本の政府の不動の方針でございますし、アメリカ側はこれはすべて承知をいたしておる、政府としてはこういうふうに考えております。
  199. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 政府の方針だからこそ、新しいタイプのものが入ってくるのだからアメリカ側に物を言って明確にする必要があるのじゃないですか。みんな国民が心配をして、現地だって大変これを心配をしている。知事を初めみんなそうですよ。だからその点はそうではないならない、こういう理由でと明らかにしなければいかぬのではないですか。いかがでございますか。あなたの責任ではないのですか、それは。
  200. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 私は、日米関係から見まして、この点についてはしばしば御質問もありましたけれども、アメリカとしても日本の政府方針というのははっきり承知いたしておるわけですから、核の持ち込みということはあり得ない。核の持ち込みをする場合においてはこれは事前協議の対象になる。その場合には日本政府はノーということでありますが、この前からいろいろと質問が出まして、たとえばF16の三沢基地への配置の問題、そういうものを含めて一般的に、最近ではエンタープライズが入るというのが、これは正式なあれはまだないのですけれども、戦艦ニュージャージーのことは全く聞いておりませんが、そうしたいろいろの問題というものが最近出ておりますから、この点について一度、私も外務大臣になりましたから、アメリカ側に一般的に念を押したい、こういうふうに考えております。
  201. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 谷川さんに承りたいのだが、パムス、私もこれはまだこれから勉強しなければいかぬと思っておるのですけれども、あなた、これは知っておられたのですか。つまり、パムスと言えばいいのでしょうけれども、これは一体どういう性格のものであって、そしてこれについて長官は、五十三年からというのだが、知っていたのか知ってないのか。次は韓国だというのだが、ここでは韓国には出席しないことにしたというのだが、申し入れがあって、話があってずっと温めておったかっこう。どうも新聞に出たものだからやめたような感じもするのだが、一体どういう性格のもので、どういう目的で、どういう手続で、あなた知っておったのか知らぬのか、はっきりしてください。
  202. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 この問題につきましては、防衛庁内部で五十三年から内局、それから政府間におきまして協議の上で行われてきたことでございまして、内容につきましては後ほど政府委員から答弁をいたさせますが、少なくとも私自身は、この問題が報道をされるまでは報告は別に受けておりませんでした。また、その後直ちに報告を受けましたが、私の判断では、この問題につきましては、われわれとして制度的に見ましても、それから行われておりまする事柄につきましても、何ら問題はないものであると思っております。  なお、詳しく政府委員から答弁をいたさせます。
  203. 西廣政府委員(西廣整輝)

    西廣政府委員 お答えいたします。  パムスと申しますのは、アメリカのハワイにあります太平洋軍の中の陸軍が主催をいたしまして、太平洋地域、一部インドとかビルマとか太平洋地域でないところもございますけれども、そういった友好国に対して、陸軍の管理法といいますか、マネジメントについてのセミナーをやるということで、年々たとえば教育訓練であるとか、あるいは計画の立て方であるとか、そういった大きなテーマを決めまして、それについて参加した各国が希望があれば三十分ないし一時間、自分の国はこうやっておるとかという研究成果を発表するというもので、セミナーそのものは申し込みますと公開をいたしております。したがって、秘密でも何でもないものでございます。  なお、先ほど長官から御答弁申し上げましたが、五十三年に初めて日本の方に招請がございまして、その際十分検討いたしまして、オブザーバーで参加をしようということで、以後大体参加をいたしておりますが、たまたまフィリピンでありましたときは、実はこのための特別の経費というものを組んでおりませんものですから、ハワイであるときには集団留学、集団の射撃に行くときの人間がついでに寄るということで参加しておりましたけれども、フィリピンの場合は遠慮、そういうことで参加をしなかった。  今年度はソウルであるというふうに連絡を受けましたけれども、これは昨年の暮れに連絡を受けまして、その後検討しましたが、わざわざ韓国まで行くだけの予算措置もしておりませんでしたので、一月に御辞退をしたという状況でございます。
  204. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 これは、われわれがこれを見ましても確かに集まった国々、念のために聞いておきますが、どういう国が集まるかということと、一体韓国でやるのは何がテーマだったのかということと、これは集団自衛権というものが前提になければ意味がない集まり、どれを見ても、細かく言っている時間がありませんが。したがいまして、別に問題がないと長官おっしゃるなら、何で韓国に行かないのですか。余裕がないからやめたと言ったって、いままで出ているのは二人でしょう、韓国まで幾らかかるのですか。何でもない、あたりまえのことだというのなら、ここに制服の方がと書いてあるけれども、何でやめなければいけないのですか。何カ国くらい集まって何をやるのですか、韓国のやつは。答えてください。
  205. 西廣政府委員(西廣整輝)

    西廣政府委員 本年度何カ国が集まるかは集まってみなければわかりませんが、昨年は十八カ国集まっております。  なお、集団的な計画とおっしゃいましたけれども、アメリカと条約関係がある国はそのうちごく一部でございまして、非同盟諸国もございますし、いろいろございますので、そういった性格のものではないし、実際にやっておりますのも、各国それぞれがどういう軍備管理をやっておるかという内容のセミナーをやっておるということでございます。  なお、今回参加いたしませんのは、先ほど申しましたように、経費の関係もございますが、あわせて申し上げますと、そういったやや懇親的な性格もあるセミナーでございますので、特にそのために別に人を出すということではなくて、従来も集団留学の際の、ついでに行けるので参加をしておったということでございます。
  206. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 長官にいまの点、締めくくりに聞いておきますが、別に問題がないというのなら、なぜやらないのですか、長官。将来またずっとやらないですか。
  207. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 申し上げますが、あくまでこのパムスというのはセミナー形式でございまして、公開された会合でございます。しかも、内局と陸幕の間で五十三年以来毎回ずっと十分詰めながら行われたことでございまして、その意味で、私は問題ないと思っております。  なお、パムスだけでございませんで、いろいろこういうようなセミナー方式の会合には、わが国といたしまして、メンバーカントリーとして参加しておるのは余りございませんが、それでも一、二点はございますけれども、セミナー形式のこういう会合にオブザーバーとして派遣するのは、旅費、日程その他の余裕が許す限り、私はできるだけ参加をいたさせたいと、こう考えております。
  208. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 じゃ、今後も参加させるという方針ですか。
  209. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 パムスにつきましては、その都度その都度、どういうテーマでどういう審議をするということが通告されますので、そのケース、ケース、その都度その都度検討をさしていきたいと、こう考えております。
  210. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 最後に、通産になるのでしょうか、この間、関釜フェリーで米軍の機器を大変たくさん運んでいる数字を私挙げまして、チームスピリットもやっておるわけでありますから、いかなるものがどういうふうに運ばれておるか、ああいう街をぞろぞろ迷彩を施したものがどんどん関釜フェリーに、普通の人が行くところに乗っかっていくというのは、中に何が載っておるかわからぬし、横浜ではかつて弾薬という問題もあったし、調査を願いたいと申し上げましたが、御報告を願いたい。
  211. 北村(汎)政府委員(北村汎)

    ○北村(汎)政府委員 先日の大出委員の調査の御要求に基づきまして、関釜フェリーを使用して搬出されたと認められる米軍の物資を、五十三年以降について関係当局を通じて調査をいたしました。その結果、五十七年三月から本年二月までの間に、トラック、消防車、ジープ、それから救急車、クレーン車等の米軍の車両約四十台が搬出されているということがわかりました。  断っておきますが、先生の御要望は昭和五十年度以降ということでございましたけれども、税関その他の資料が残っておるのを調べますと、いま申し上げた結果になります。
  212. 大出委員(大出俊)

    ○大出委員 地位協定上の問題その他については次の機会に申し上げたいと思っておりますが、私は、いずれにしてもこういう車両が次々に地位協定に基づく民間の契約なり役務調達なりということで運ばれていくことには不賛成であります。切りがない。だから、何か事あるときにやたらこの下関が輸送に使われるということになりますので、そういう点はまことに私は不賛成、反対であります。しかし、この点は改めて議論をさしていただきたいと思います。  終わります。
  213. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十四分休憩      ────◇─────     午後二時開議
  214. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三谷秀治君。
  215. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 本日の予算委員会の冒頭におきまして官房長官が述べられた減税問題並びに人勧問題についてお聞きしたいと思うのです。  長官は、議長見解を受けて、減税の実現のために最大限努力をする、こう述べていらっしゃいますが、実現のために努力すると実現するとは違うわけですよ。減税を実現するとなぜはっきりとおっしゃらないのか、お聞きしたいと思います。
  216. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 ただいま五十八年度の予算案の審議のさなかでございます。こういったことも頭に置き、先行きのいろいろな事情も考えて、実現できるように最大限努力をする、こう私は申し上げておるのでございます。
  217. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 努力するとか尊重するとかいうのは相対的な意味を持つものですから、要するに中身は不確定なものです。すべてそういうふうな表現が使われております。たとえば、政府見解最後のくだりを見ましても、減税のための法改正案を国会に提出するとの確約があったことを承知しておると述べて、続いて、「政府としても、これを尊重いたします。」こうおっしゃっておる。尊重するということはどういうことか。尊重することと実施することは同義語なのか、あるいは尊重するけれども実現しない場合もある、こういうことになるわけでしょうか。確約いたしますということがなぜはっきりと言えないのか、お尋ねしたいと思います。
  218. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 ただいま申し上げましたように、いま、ともかく五十八年度の予算案の審議さなかです。それをここで減税実施します、これはちょっと私は、政府に対して言えといっても言いにくい。ただ、お互いに信頼関係なんですよ、これは。  そこで、私どもとしては、議長という立法府の最高の方の見解があり、同時にまた、与党を代表しての幹事長代表者会議でお述べになった、これを受けて、政府としては、ともかく何とか実現できるように最大限努力をする、こう申し上げているわけですから、そこはひとつ御理解をしていただきたい、かように思います。
  219. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 そこが理解できないところです。二階堂幹事長法律案国会に提出するとの確約をされたそうです。わが党はその合意は参加しておりませんから詳細にはわかりませんが、確約されたという。確約されたものであれば政府がなぜ確約できぬのか。自民党は確約したけれども政府は確約できないということでは論理の一貫性を欠くのではないか。官房長官はしばしば信頼してくれとおっしゃっておりますが、信頼という心情的な関係というものは、論理的な、物理的な問題の上に初めてできるのであって、理屈抜きで信用しろというような議論は、これは万機公論に決すべき議会の議論としては妥当なものではない。ですから、確約してもらいたいのです。二階堂幹事長の確約については、政府ももちろん当然確約する、必ずやりますということをおっしゃっていただきたい。
  220. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 二階堂幹事長代表者会議与党を代表して発言した内容、これは午前中に私がここで発言をしたとおりでございます。その内容を、私どもとしては精いっぱい努力をして、何とか実現するように努力をする、政府としても尊重する、こう申し上げているのですから、これで御理解願いたいと思います。
  221. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 そうしますと、尊重するということは実施するという意味にとっていいわけでしょうか。
  222. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 共産党の皆さん方がそのように御理解なさることは、これはもう私の論議すべきことではございません。しかし、政府としてはこれを尊重して最大限努力をする、こういうことでございます。
  223. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 共産党が勝手な解釈をするという意味じゃないのですよ。国民に対して政府としてはどのような確答ができるかということを聞いているわけです。つまり、尊重されるわけですから、尊重するということは実施するのだということと同義語なんでしょうか、あるいは尊重はするけれども実施できない場合もあるということなんでしょうか。
  224. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 三谷さんの御理解は御理解として結構でございますが、政府としては精いっぱいの努力をする、こういうことでございます。
  225. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 どうも意味不明の答弁をなさっては困りますな。私どもは頭が悪いものだから答弁の真意がよくわかりませんが、つまり、幹事長が確約されたわけですから、自民党を代表して確約されたものであれば、自民党政府も当然確約ができるという論理的な帰結になるわけでありますが、そうじゃないわけでしょうか。
  226. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 けさ私がお読みいたしました中に、二階堂幹事長言葉がそのまま載っておるわけでございます。私はそれを承知をして、政府としてもこれを尊重する、ともかく精いっぱいの努力はいたしますから、これはひとつ政府を信頼していただきたい、かように思います。
  227. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 二階堂幹事長見解ですか、国会に提出するとの確約があったというわけですから、それに基づいて政府も同じ解釈でやっていくということだと思いますが、そうですか。
  228. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 そのままに受けとめまして政府は尊重する、こういうことでございます。
  229. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 減税のための法律改正案、所得税住民税減税についての法律案を五十八年中に国会に提出するとの確約があったと承知しておると述べていらっしゃるが、この法律案を提出するのはだれでしょうか。自民党が提出されるのか。つまり、議員提案というふうな手段もあるわけであります。あるいは政府がこれを提出されるのか。この長官の見解文言には主語がないためにそこの理解ができなくなっておりますが、その点はどうでございましょう。
  230. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 与党とも十分に調整を遂げた上、内閣の責任において国会に提案をする、こういうことでございます。
  231. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 景気浮揚の問題が午前中に論議されまして、政府見解の「景気浮揚に役立つ」という文言の解釈について、経済企画庁の長官は、三・四%の経済成長率達成が景気の浮揚だ、しかし、危ぶむ声があり、これを確実に達成するために役立つような減税と理解しておる、そのようにおっしゃっておられますが、そうでしょうか。
  232. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 私は三・四%が危ういというようなことは申しませんでした。三・四%の見方についても厳しい見方があるということは申しましたが、その三・四%の中に所得税減税は織り込んでおりませんことは、もうたびたびここで御説明のとおりでございます。  ただ、私が申しましたのは、所得税減税の効果は、財源との兼ね合いで一概には言えないけれども、たって皆様方が計算してみろ、消費支出にどのような影響があるというふうな計算をしてみろと言われるならば、たとえば一兆円の消費支出がふえれば名目で〇・六%の個人消費の伸びがあり、実質においてGNPではその半分ぐらいの成長促進の効果があるという計算上の結果だけを御参考までに申し上げたところでございます。
  233. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 そうしますと、景気浮揚に役立つ減税ということの意味、それはどのように理解されておるわけですか。
  234. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 景気浮揚という言葉はなかなかむずかしい概念で、私は数量的な概念でないような気がするわけでございます。どうも質的な、いわゆる景気浮揚、すべての経済と一体となってあらわれますところの景気が心理的に浮揚するという意味で私は理解しているわけでございます。これは、一兆円でなければならないとか、五千億ではだめだとか、こういうふうには景気浮揚という言葉からはなかなかとりにくいと私は考えております。
  235. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 大蔵大臣は、政府予算が三・四%達成の土台になるものであって最善のものである、景気浮揚というのは何となく不況感を吹き払うための感じの問題である、こういうふうにおっしゃいましたが、要するに、景気浮揚という問題は、実効がどうとかこうとかということではなしに、そういう感じを吹き払うというふうな、むしろ精神的な意味に重点を置くものなんでしょうか。
  236. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 私がお答えいたしましたのは、いま御審議を賜っておりますこの五十八年度予算というものは、いわゆる実質三・四%という景気見通しというものに基づいて、そして歳入歳出の見積もりを御審議いただいておる、こういうものでございます。それを今日の時点において最善のものとして御提出申し上げ、ただいま御審議をいただいておる、こういう性格のものであるということをまず前提として申し上げたわけであります。  そこで、この景気浮揚に役立つような減税をやれというお言葉が出ましたことそのものも、各党の最高の知恵者がお集まりになって、そして、その中で定量的に数字としてあらわすことは困難なという認定の上に立っての合意されたものであるという認識でございますから、私も同じような認識をしておる、こういうことであります。
  237. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 よくわかりませんが、要するに、景気浮揚に役に立つ相当規模減税というのは、この景気浮揚に役に立つということは、それ自体が確固とした意味を持つものではない、一つの修飾語にすぎないというふうな意味のものなんでしょうか。
  238. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは、共産党のお方はお除かれになっておったかもしれませんが、各党の責任者の方が御議論をいただいたものでありますだけに、それが修飾語であるというような非礼なとり方を申し上げるほど私もおこがましい人間ではない、こういうわけであります。
  239. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 どうも意味がよくわからぬ、御説明を聞きましても。仮に原油の値下がり等がありまして三・四%の成長率の見通しがつくというふうな場合、減税はしなくてもいいという結果になってくる、景気という問題から考えていきますならば。あるいは小幅にしてもいいということになってくるわけでありますが、この点は景気浮揚減税関係はどのように一貫して理解すればいいのでしょうか。
  240. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 仮に原油の値下がり、こういう前提がございました。これそのものも、いろいろ私どもが正確なお答えのできない要因の一つであると思っておりますのは、原油が仮に値下がりがいたします。そういたしますと、たとえば石油会社そのものは、現在のストックというものの評価がえをするわけであります。そのことは、法人税法上で言えばマイナス要因になって出るわけでございますので、直ちに石油会社のいわゆる法人税が増収、私どもの方にとって増収になるという要因では必ずしもない。  一方、さればそれを使う企業の中にいわば利益が出るではないか、こういうことになりますと、それはまたむしろ税の形において吸い上げて、そして国民に還元するよりも、値下げとかいうことでもって直接還元すべきではないか、こういう議論もまた出て、そこのところにまた政策の選択をどこに置くか、こういうことになるわけであります。したがって、その例示された一つにとっても、非常に将来とも不確定要素である、こう認識をしなければならない。  ただ、私どもが申し上げております実質三・四%の成長率というものを土台に置いて、その見通しというものを念頭に置きつつ、いま御審議いただいておる予算でございますので、その三・四というものが確固不動の数値ではない。従来とも下方修正したり、あるいは国民のニーズにこたえていわゆる上方修正したりすることもこれはあり得るものである。だから、これを一つの、各党の最高責任者がお集まりになって、最大公約数としてできた言葉というものの重みというものは、こちらが勝手に定量的な数値でもって、これは幾ら幾らのものと認識をするなどという非礼を申し上げてはならぬと私は考えております。
  241. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 いま、各党代表者皆さんがお決めになったことだから、解釈については政府が勝手な理解を示すべきでないというような意味のことでしたけれども、しかし、これは実際に実施するのは政府なんですから、政府自身がこの事柄について明確な判断がなければ、どこで一体その減税の幅だとか規模だとかあるいは時期だとか、そういうものを決めることができるわけでしょうか。そこのところ、非常にあいまいなことをおっしゃっているのです。  さっき私は午前中に聞きましたが、この合意というのも各党それぞれにその理解が異なっておって、それぞれに文書があるようだ。自分たちはこの二階堂幹事長の報告、文書を基本にして考えておる、こんなふうにおっしゃっておる。つまり、各党がそれぞれ違うようなニュアンスの解釈をしておるとしますならば、ここに一つ大きな問題がある。去年がそれでした。去年あなたは幹事長代理として、この減税についていろいろ努力されて各党を説得されたようでありますが、その理解に非常に差が出てまいりましたのは、二階堂さんはそんな減税でかたい約束していないとおっしゃる。あるいは他の政党の方では、いや、これはもう、たとえば中長期的な減税というふうな表現は、中期は五十七年度だ、こんな理解がなされている。まちまちの理解になっている。  この問題にしましたところで、どういうことが決められたか、どういう討議があったか私は知りませんけれども、いずれにしても、この内容につきまして実施の責任を持つのは政府でありますから、それについてはっきりした判断や見解政府が持たなくて一体どうしてこれが実施できますか。そこをはっきり示していただきたいと言っているのです。
  242. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これはもとより、重ねて申し上げますように、各党代表者の方のいろいろな御議論の集積の中に出たきちんとした言葉でございますので、これは大変尊重すべきものである。これをいわゆる数値の上で定量的なものとするということは、私どもその解釈をどうするかは別として、今日の時点において、いまは私どもが現状において最善と信ずる予算の審議をいただいておるわけでございますから、定量的なものを申し上げるということは差し控えるべきだ、また可能なものではない、このように申し上げておるところであります。
  243. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 減税問題の審議などが予算の審議の中心的な問題なんでしょう。だから、私どもはこの予算の修正を行うべきだということを主張しているわけですが、いま予算の審議中だから減税についての具体的な数字などは示せないとか具体の判断が出せないとか、それはおかしいじゃないですか。審議中だからそれを示すというのが国民に対する政府の責任のある態度だと私は思いますが、どうでしょうか。  そこで、その点ひとつお尋ねしますのとともに、問題なのは減税の目的は一体何かということなんです。あいまいになってしまっている。「景気浮揚に役立つ」なんてあいまいな表現になってしまっておって、その景気浮揚は何かと言えば、それはどうも明確には言えない。各党合意によるものだから、政府がそれについて勝手な解釈もできないというようなことですけれども、それは一体どういうことになっていくのですか。  そこで問題は、景気浮揚を直接の目的にするのではなしに、いまこの減税問題が国民の大きな関心を呼んでおりますのは、六年連続の減税の見送りによりまして家計が非常に苦しくなってきている。そこで、それではまことに申しわけないという立場から、国民生活を守ることを目的にして減税を行うのが一番の眼目だと思う。政府はそのようにはお考えになってはいないのでしょうか。
  244. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 重ねて申し上げるようでございますが、三谷委員の政党は、言ってみれば組み替え動議を提出する御準備をなすっているやに承っております。私どもは、現状において、御審議いただいておる予算が最善のものであるという認識の上に立って、原案どおりこれを通過成立せしめていただきたいということをお願いをしておる立場でございますから、いま出しておる予算の中身について、税目、いわゆる所得税なら所得税においていまの時点でこれをどう変更するかなどということは、いまの原案を御賛成いただきたいとの立場をとっておる者からして言える議論ではない、こういうふうに思います。  それから、景気浮揚という言葉といわゆる国民生活を守るという言葉、両方に対するお話がございましたが、これはやはり各党間の話し合いでございますから、私がとかくの論評を加えるべきものではない。景気が浮揚されれば当然それは国民生活も豊かになって守るということに一般論としてはなるではなかろうか。私の方から、各党の責任者の方が御議論になったものに対して、それは国民生活を守るという意味につながるというものであるという三谷委員発言に対して肯定したり否定したりするべきものではない、こう思います。
  245. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 各党合意したものだから政府としてあれこれの解明はできないとおっしゃっておりますが、これもさっきおっしゃっていますように、これを実行するのは政府なんですよ、政府の責任で実施するわけなんでしょうから。  そこで、減税の論理にしましてもあるいは手法にしましても、どの観点に立ってやるかということによって内容が違ってくるわけだ。たとえば経企庁長官がさっきおっしゃっておりましたが、減税の財源の出し方によっては非常に景気に悪影響が出るというようなことをおっしゃっているわけですから、それは手法によって差が出てくる。  そこで、私どもはいまの減税問題というのがあの文言合意文書でどういうふうな表現が使われたか知りませんけれども、今日まで六年間も所得減税が行われていない、そこで勤労者の税額が非常に高くなってきている、これに対して対応しようというのが一番の根本であって、これは国民の世論もそういうものであって、そこに私は減税の一番眼目がなくてはいけないと思うし、その観点から減税の手段だとか金額だとか財源だとかいうものも考えられていくべきものだというふうに思うわけですが、その点はどうなんでしょう。
  246. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 だからこそ各党の責任者のお方の文章の中に「国民世論動向に応え、」ということもちゃんと入っておるのではないか。それがどういう意味でございますかということになりますと、やはりできたら各党協議の中へお入りいただいて御議論なさることで、政府である私に対して、第三者としてどう思うかということについて私から論評をすべきものではないのではないかというふうに思います。
  247. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 政府は第三者ではありませんよ。政府は行政の執行責任を負うものであって、議会でいろいろな申し合わせをしたり相談をしても、それを実施する、実現をするのは政府ですから、それなりの政府の判断や評価というものはちゃんとしてかからぬといかぬのです。  そこで、いま各党協議に入れというふうなことですけれども、なぜ入らないか、入れないか、それは恐らく御承知だろうと思うけれども、われわれはボイコットしているわけじゃない。しかし、実際にはそういう状態になってきている。しかし、これは大蔵大臣と議論する問題じゃありませんから置いておきます。ですから、そのことと、いま言いました政府がこういう合意などにつきまして実施する際にどういう立場で、どういう観点でやるかということはおのずから別個の問題であって、その点についてお尋ねをしたわけであります。  そこで、「相当規模」ということについてもわけがわからぬ。わけのわからぬことが多過ぎるわけだ。国民の期待は減税規模、幅にあるのであって、「相当規模」というふうな内容不明なものでは、これは国民の期待にこたえるのには余りにもばかにしたやり方だ、そういう記述だと思います。政府はこの規模についても明示すべきではないだろうか。いかがでしょうか。
  248. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 先ほどの御質問の際も、規模等を定量的に明示する段階にないというお答えをしたわけでございます。  承っておりますと、私も若干取り違いがあったらいけませんので、協議にお入りになっておればわかるでしょうという表現で申し上げたのじゃなくて、お入りになっておったとすればおわかりでございましょうが、お入りになっておるかおらないかという問題は、これはハウスのことでございますので、私が申し上げることではもちろんございません。その辺のけじめは私も議会人でございますからきちんと心得て、誤解のないようにしなければならないと思って、あえて申し上げたわけでございます。  先ほどお答え申し上げましたことを要約して申し上げますならば、政府としては与野党合意を尊重して、そうして財政改革の基本的考えを踏まえて、減税実現のために真剣に検討を進めてまいります、しかし税収動向についての見きわめや、そしてまた、行政府といたしましては国会の御議論はもとよりでございますが、税制調査会における検討等も必要でございますので、その規模や時期等を明示できる段階ではございません、こういうふうに申し上げたわけでございます。そのお答えを反復いたしましてお答えといたします。
  249. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 その問題は午前中の質疑で聞きまして、これは政府はなかなか明らかにされないということははっきりしましたが、これを繰り返しますと時間が浪費しますから残しておきますけれども、そこに非常に無責任な態度というものが見られる。  大蔵大臣は、午前中の審議で、財源がなければ減税はしない、もちろんできないわけです、そうおっしゃった。このことは間違いないでしょうか。
  250. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 現在私どもが御審議いただいております予算は、最善のものとしていま御審議をいただいておるわけのものでございます。その予算を対象にして減税とかいう議論が出たといたしますならば、それはいずれにいたしましても、財源というものを念頭に置かずして考えることは、いま御指摘のとおりむずかしいということであります。
  251. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 そうしますと、いまの大蔵大臣お答えによりますと、いま提出しておる予算というものは最善のものであって、減税をするといっても財源などは考えられない、こういう意味でありましたが、そうしますと、財源がなければ減税ができないとなりますと、どういうふうなことになっていくのでしょうか。減税はするとおっしゃった。しかし、いまの予算を編成された大蔵省としては、大蔵大臣としては、これはとても減税財源はない、こういうことをおっしゃるわけです。ここは一体どう理解したらいいのでしょうか。
  252. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 私は再三申し上げますように、いま御提案申し上げ、御審議いただいております予算案は、最善のものとして編成し、御審議をいただいておるわけでございますから、それをまず成立をさせていただきたい、これが基本にあるわけであります。そうして、減税問題というのは、いわばこの予算審議等を通じながら各党の高度な政治的判断においてそのことが論議され、議長見解となり、そして各党合意ともなっておるというふうに理解いたしておりますので、それはやはり尊重すべきである、いまの予算の中身の中で、御審議の過程においてその中身のいじり方によって議論をする課題ではない、こう申し上げておるわけであります。
  253. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 それもよく意味がわかりません。意味不明のお言葉が多いものですから理解に困るわけですが、これは最善の予算を組んだから、まずその予算を審議して通せ、それで減税についてはその後で相談をしてみよう、いまの段階では減税財源はあり得ない、こういうことをおっしゃっている。そうしますと、一体この「相当規模減税」というのは、どこでどのようにして実現するのでしょうか。
  254. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは当然のことといたしまして、減税実施に当たっての財源は、それはいろいろ国会の問答を通じたり、そして国民世論動向を見ながら、また税制調査会等の意見を聞きながら模索していくべきものであるというふうに考えます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  ただ、私が先ほども申しましたように、安易にこれを赤字公債の増発に結びつけて考えるとか、あるいはこれまた安易にいわゆる増税によってそれを賄うとかということを直ちに念頭に置くべきものではない、それは経済の動向等についての見通し等を見ながら定めるべきものである。  ただ、これは委員も御指摘のように、予算というものは、いま御審議いただいておる段階においてその将来にわたっての一つの約束というのは、これは補正予算を意味してみたりあるいは予算の修正を意味してみたり、そういうものは言えるものではない。あなたの党は、漏れ承るところによれば、それは組み替え動議というものをお出しになる考えを基本的に持っていらっしゃる、私どもはそれを期待していないという前提でまず議論をしておるということを御理解をいただきたいと思います。
  255. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 ところが、官房長官大蔵大臣も、最近大型間接税についていろいろ言及されております。そこで、この減税問題の財源というものが明らかでありませんから、この大型間接税を導入をして、それを財源とされるのではないかという懸念が強まっておる。要するに、見返りの増税をやろうという意図があるのではないかという心配が国民の中にも広がっておりますけれども、この点についてはどうお考えなんでしょうか。
  256. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これはまず原則的に今日までの議論を整理してみましても、いわゆる私どもが見返りの大型間接税とか増税とかいうことを念頭に置いておるということは全くございません。広く各方面の意見を聞き、国会の問答等を通じ、そして、これは国会で議題になったことでございますから、やはりそれに参加された方々の御高見も承ったり、そして行政当局としては税制調査会等の御判断をも聞きながらこれは対応すべきことでございまして、大型増税あるいは新税とでも申しましょうか、それを念頭に置いて取りかかるということは、これはまさに財政再建なりあるいは臨時行政調査会、もろもろの御指摘に対しても適当でないというふうに考えております。
  257. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 あなたは二月七日の衆議院の予算委員会でおっしゃっているのは、直間比率の見直しについては税制調査会も指摘しておるから検討の環境は熟しておる、こうおっしゃっておる。それから、EC型付加価値税も検討の対象になり得る、こういうふうにおっしゃっておる。つまり、大型間接税の導入につきまして盛んにアドバルーンを上げていらっしゃる。そのこととこの減税との関連はどうなるのか。多少の減税をしても、たとえば五十八年度に減税をしましても五十九年度にこの大型間接税を導入されたのでは、これは実際の減税という性質のものではないのであって、むしろ増税をごまかすための減税という結果になってくるわけでありますが、その点についてはどうお考えなんでしょうか。
  258. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 ただいまの御議論というものは、私が本委員会において二月七日にいろいろな問題を申し上げた、確かに私が申し上げましたのは、いわゆる一般消費税(仮称)というものが、昭和五十四年当時直間比率という言葉を使えばすぐそれか、こういうふうに結びついた当時から比べれば、五十五年十一月の税調の答申がありましたり、その後の重ねての答申や、また臨時行政調査会の五十七年七日の第三次答申等を見ますと、直間比率の見直しを検討すべきであると書かれておりますので、勉強する環境はずいぶん変わってまいりました、こういうことを申し上げたわけでございます。  そうして、誤解があるといけませんので、いわゆる税制調査会というものは、まず三年の任期がございますが、その最初の任期のときに国、地方の税制一般について広く諮問を申し上げるところでございますので、その中にあって、この税制は議論をしてもらっちゃ困る、これは困るという、その中に手かせ足かせをすべきものではない、こういうことを申し上げましたことが一つと、それから、昭和五十四年以来言い続けておるところでございますところのいわゆる一般消費税(仮称)による手法を財政再建としてはとってはならぬということ、しかし、それは学問的な意味において消費一般にかかる税制そのものを否定することは、税制の学問上これはできませんということを言っておるのでありまして、いい機会にまた重ねて正確に御答弁を申し上げる機会を得ましたことを、私としてはむしろ幸いに感じておるわけでございます。
  259. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 あなたは時と場所に応じていろいろと言い方を変えたり、あるいは意味の全く違うことをおっしゃったり、間接税のアドバルーンを上げるかと思うと、今度は増税ムードの打ち消しのためにいろいろ多言を弄されるというふうなことがしばしばあるわけでありますけれども、しかし、大型の間接税の導入という問題はもうかなり懸念が強くなってきている、そういうふうにあなた方の今後の税制の考え方を国民は見ておるわけです。  そこで、経企庁長官お尋ねしますが、長官は午前中の審議で、大型間接税は景気に大きな影響を与える、マイナス影響を与える、だから、これはやるべきではないというふうな御意見のようでありましたが、そういう御所見は変わりはないでしょうか。
  260. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 けさほどの大型間接税の議論は、私は、たとえば財源が何によるかによって所得税減税の景気に対する効果は変わってくる、たとえば大型間接税と申し上げていたのでございまして、具体的に細かい影響等は申し上げません。しかし、租税の教科書の教えるところ、消費税の方が、消費に対する税の方が、所得あるいは利益に対する税よりも抑制的な効果があるということは通説のように私ども勉強いたしましたので、新聞記者等の会見ではそのように申しました。しかし、税制論として大型間接税を是認する論拠があり、また反対する論拠があることは私も十分理解しておりますし、これはまた別問題でございます。私は、景気に対する影響という、経済企画庁長官の役目という観点から申し上げたわけでございます。
  261. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 つまり、景気の浮揚という観点からしますと、大型間接税は好ましくないということは言い得るわけなんでしょう。
  262. 塩崎国務大臣(塩崎潤)

    ○塩崎国務大臣 景気浮揚と申しますか、私は、一般的に経済に対する影響、それは消費に対する課税と所得あるいは純益に対する課税とでは違う、そういった意味で、消費に対する税というものはまず価格の騰貴を通じて影響して消費購買力を抑制する効果があるということ、そしてもう一つ、新聞記者に聞かれましてこんなことを申し上げたのですが、それが誤解を受けるかもしれませんが、現在大変経済体質が、体力が弱っておる今日ですから、大型間接税というようなものをやることは慎重に考えるべきであるということを申し上げたことはございます。
  263. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 人勧問題についてひとつお聞きしますが、長官は、午前の質疑で、五十七年人勧凍結問題についての各党国対委員長会談の取り組みについてはこれを見守っておる、こうおっしゃった。仮に国対委員長会談において五十七年人勧実施がまとまった場合は、やるべしとなった場合、政府は凍結解除を行われるわけでしょうか、どうでしょうか。
  264. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 議長見解の中で、五十七年度の人勧については国対委員長会談において引き続き協議をする、こう決まっております。それを各党に示された、こういうことでございます。  私どもは、この各党協議が円満にまとまるならば、これは政府としては尊重せざるを得ない、こういうことでございます。
  265. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 その尊重というのは、さっきの尊重と一緒であって、要するに確認というふうな意味だということなんですね。
  266. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 尊重という言葉は、あくまでも尊重でございます。もちろん、実現をするためにできる限りの努力をする、そういう意味の尊重でございます。
  267. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 そこを繰り返しますと時間をとりますから、次に行きます。  仮に五十七年度人勧が凍結されたままという場合は、公務員労働者にとっては労働条件に関して無権利状態に置かれることになりますが、これは憲法上でも重大な問題になるんじゃないでしょうか。
  268. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 まさにいま労働三権、これの代償措置としての人事院勧告制度があるわけでございますから、この人事院勧告制度は政府としては将来とも尊重していく、こう申し上げておるわけでございます。  ただ、何分昨今の厳しい財政の状況、さらにはまた、公務員という率先をしなければならぬといった意味合いでの立場、こういうことを考えまして、五十七年度は異例の措置ではあるけれども、政府としては凍結をしたんだ、このように御理解をしていただきたいと思います。しかし、二年間継続して凍結をするというようなことは、政府としては現在考えておりません、かように申し上げておるわけでございます。
  269. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 先ほどの答弁で、後藤田官房長官は、五十八年の人勧は尊重し、実施すると約束されました。しかし、この約束にも幅があるのではないか。尊重し、実施するということは、人事院勧告を完全に実施するということを意味するのか、あるいはそうではないのか、ここを聞いておきたい。
  270. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 政府は、やはり公務員の生活というものは保障しなければならないというきわめて重大な責任があると私は考えております。そういうような観点において、八月に人事院勧告がございまするので、それを受けてその時点において政府としてはできる限りの措置をして人事院勧告実施をする、かように御理解をいただきたいと思います。
  271. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 尊重ということと実施ということの間にいろいろあいまいな意味が入っている。つまり、尊重すぐ実施ではない、つまり完全実施をされる意思があるかないか、これを聞いておきたい。
  272. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 公務員の生活を考えて、できるだけそういった人の立場に配慮しながら、人事院勧告があった際にその勧告を実施をする、あくまでも実施をする、こういうことでございます。
  273. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 つまり、完全という言葉はそこにはないということですか。
  274. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 実施をする、こういうことでございます。
  275. 三谷委員(三谷秀治)

    三谷委員 わかりました。  そこで、減税問題でも一緒ですけれども、長官の政府見解というのは、政府としてもこれを尊重すると述べていらっしゃいますけれども、いまの人勧をめぐる答弁から見ましても、政府が本気で減税取り組むとは思われない。そういうあいまいさが至るところに残っている。この政府見解減税を約束したものでも何でもないことが、私はほぼ明らかになったと思う。国民の期待にこたえて政府が本当に行政を執行するのであれば、減税をするその計画に基づいて予算を組みかえて、減税規模や時期や財源をとことん詰める以外にはないと思いますが、もちろんそういう努力は全然論外という態度をおとりになっております。  私どもは政府見解を承服しないことを申し上げまして、私の質問は終わりますが、関連して小林議員の質問をお許し願います。
  276. 村田委員長代理(村田敬次郎)

    ○村田委員長代理 この際、小林政子君より関連質疑の申し出があります。三谷秀治君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小林政子君。
  277. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 私は、国民経済の中で自動車と並んで大きな比重を占めている家電産業、今日重大な社会問題となっております家電製品の流通と中小家電小売店の経営危機、転廃業問題について政府の対応をただしたいと思います。  御承知のとおり、家電業界は生産、流通に至るまで寡占化が進み、その流通の系列化による大手メーカーの系列支配はさまざまな社会問題を引き起こしております。全国で七万軒の電気屋さん、家族を含めて五十万人が働いております。最近、倒産、転廃業、深刻な危機が目立ちますが、東京電器小売商組合では、ことしは三分の一がやっていけなくなるのではないだろうか、来年は半分になってしまうのではないか、いま死ぬか生きるかであって、将来のことではないと訴えております。大臣も御承知のとおり、業界では昨年十一月、非常事態宣言を出して、十二月から大手メーカーと交渉に入っております。このメーカー交渉こそ今日の家電業界の問題点を象徴的にする出来事ではないか、このように私は思います。  大臣、中小家電小売業の倒産、転廃業続出の原因はどこにあると見ていらっしゃるのでしょうか。長期不況のもとで、中小企業倒産が多いのは他業種の中にも見られる現象でございますけれども、家電小売業の転廃業が特に目につき、社会問題化している背景についてお伺いをいたしたいと存じます。
  278. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 量販店の問題は、一番初めに問題になったのは、たしか、めがねの大安売り、その次がカメラ、そしていま家電、いろいろな業種があると思うのですが、いまのお尋ねは家電のお尋ねでございました。  確かに家電は、海外においてもいろいろな摩擦も起こすぐらい、あるいはまたテレビのコマーシャルを見ても信じられないような安い値段を意味しながら、まさか三割引きとか何とかというのは確かに抗議があってやめたようですけれども、こういうのと、不当表示というのは公取の範囲にも入りますけれども、そこらのところが、家電業界のみが倒産をしておるというふうにも見えませんが、家電業界の一般の通常小売店ですね、これが系列化というものを拒んだ場合あるいは系列でない自由な販売を選択をした場合に、いろいろな強い系列からの締めつけがあるとかという、いろいろなことは聞いております。  また、末端で買う立場の私自身の体験でも、ある家電製品が欲しいといった場合に、私の店は何何の製品しか取り扱っておりませんということで、その指定した銘柄でなくて、その頼んだ店が売っている品物の中から購入を余儀なくされたことが、田舎でございますけれども、ございます。  そこで、大変末端まで浸透しておりますから、この点は現状をもう少ししさいに分析し、もしそれが、公取委員長も来ておるようでありますが、独禁法抵触のところまでいっているのか、あるいはまた通産省の主としてメーカーに対する行政指導的なものがどの程度必要とされる段階にいっているのか、いまのところ、その現状を分析しつつあるという状態でございます。
  279. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 家電小売業界は本当に根本的なところに問題を抱えている、このように思います。政府も御承知をしていることと思いますけれども、全国の電器小売商組合連合会は、家電大手メーカーに対して、価格を量販店並みの水準にまで引き下げてほしい、こういう交渉を現在やっております。実際に商売人がお客さんに商品を安く売りたい、こういう立場からメーカー側と交渉するということは当然のことではないか、このように思っておりますし、そのために仕入れを安くしたいと努力することもあたりまえのことであると思います。ところが、このあたりまえの要求が、家電業界ではメーカー段階でなかなかうまくいっていない、こういうお話でございます。私は、ここに今日の家電の抱えている系列支配の問題があるのではないか、このように思いますので、お調べをいただきたい、このように思っております。  私どもが調べた資料、お手元に配付されておりますけれども、これはわかりやすいようにサンプルを示したものでございまして、これはいずれも主力製品と言われている新しい品物です。これを全部集めまして、そして、どれを見ても量販店の販売価格の方が中小小売店の仕入れ価格よりも安い、こういう実態が明らかにされたものだと存じます。  ごらんのとおり、量販店も十分マージンを取っています。むしろ一般小売店のマージンの方が少ないんです。実際には東京で月商二百万クラスの店がほとんどで、修理、工事等含めて粗利二〇%、月四十万円程度で、これから店の家賃だとか電気代、車の経費など事業経費を差し引けば、月収十八万円と言われています。これで奥さんと一緒に二人で店をやっているという実態を考えますと、本当に何でこんなことがされているのだろうか、こういった実態等について通産省はお調べになったことがあるでしょうか、この点だけ通産省からお伺いをいたしたいと思います。
  280. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 そのような角度の調査をしたかどうか、私、去年なったばかりでございますから、私の立場ではそのような角度からの調査はしてないのではないかと思いますが、一応事務当局、知っておりましたら答弁させますが。——やっていないそうですから、答弁しなくていいです。
  281. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 ともかくこれは直ちに調査をしてもらう必要があると思います。  業界では、一般に七四、七六掛けというようなことが言われております。これはメーカーから直接小売店が仕入れる場合には、標準価格の七四とか七六掛けというようなことが決められているわけですけれども、事実、資料でもおわかりのとおり、量販店には五〇%から五五%で品物が仕入れられている、こういう実態がこの資料の中にも明らかにされております。地域小売店は、これではとてもじゃないけれども量販店に対して太刀打ちができない。これでは競争にならない。お客様のためにもっと安いものを仕入れたい、そして安く売りたい、こういうふうに思っても、実際問題としては競争条件が整っていない、このようなことが言われております。  私は、この量販の場合をつぶさに調べてみますと、大体量販というのは現在二五%くらいにシェアを伸ばしているそうです。そして実際には、小売店の方は七五%ということで、本当にやっていけない、こういうような実態も明らかになりつつあります。ですから、大臣、この問題については本当に真剣に御調査を願いたい。町の電気屋さんが、こんなにメーカーの系列に締めつけられながらもなおかつ営々として努力をしてお店を開いているのは、これはもう地域の中に本当に入り込んで、そして修理だとかあるいはテレビの取りつけだとか、こういったようなものをやる必要性というものが、社会的役割りが大変大切だということを自覚しているからこうした問題についてもやられているんだということを話しておられました。私は、やはり本当にそうだというふうに思います。ですから、こういった実態については、いま大臣も直ちに御調査いただくということでございますので、この点についてはやはり調査をしていただきたい。このことを申し上げておきたいと思います。  それから、私が試算をいたしました数字によりますと、松下電器は五十七年十一月の決算で、これは史上最高の約九千億円にも上る内部留保をためております。さらに日立は五千七百億円、さらには東芝は三千二百億円の内部留保を持っています。ですから、メーカー自身が本当にその気になれば量販店並みの仕入れ価格で、あるいはまた、そこまではいかないにしても、大量に仕入れるものと少ししか仕入れない小売屋さんとでは若干のマージンの違いはあるにしても、私はやはりこの問題は解決のできる問題だ、このように思っております。  こうした事態をつくり出している原因というのは、メーカーの販売政策に問題があるんだ、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  282. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 初め、私は、調査しますと言ったことはないので、調査したことがあるかと言ったら、ないと言うから、ないならわざわざここに来て言わぬでもいいと言ったので、いまからその答えに入るわけです。  いずれにしても営業のやり方というものが、いま家電製品が一つ問題になっているわけですが、私たちの周辺をずっと見回しますと、大体あるときには3Cとか三種の神器とかいろいろなものが、たとえば電気布団乾燥機とかはヒット作品であると言われたのだけれども、日本だけしか使わないものだから、日本で行き渡ったら製造会社は倒産してしまったというような、そういう一過性的に興ったような産業もありましたが、こういう家電製品も自分たち大体身の回りに、家庭にあるようになったのですね。そうすると、それを今度製造販売する方は、さっきちらっと触れましたが、外国にもダンピング提訴を受ける、しかも、受けたような売り方もしていなかったとあながち否定できないような製造販売のスケールメリットというものを企業は追求します。そうすると、そこに中間で量販店というものが出るでしょうし、その量販店にはスケールメリットに沿ってたくさん売ってくれることによるマージンを、あるいは卸価格を少し少なくしてももとの方の利潤はかえって直接小売店だけで売るよりも上がるといういろいろな企業の計算、企業の論理があると思うのですね。しかし一方、それはどこまでも伸びていって許されるものかというと、そこにはおのずからまた大企業は大企業の倫理というものを持たなければなりませんですね。そうすると、そういうことは不当、不法ということになりますと、多分これは独占禁止法の周辺の行動になると思います。  一方、おやじのときから、ラジオ商から始まって今日まで電気器具を売っている各末端の小さい商店、そして、その周辺の町の人たちと密接に共同して共存してきた人たち、その人たちはもうちょっとした修理でもすぐ御主人が飛んでいって直してくれるものとみんなも思い、また、そのサービスも販売のときに確約も何もしなくても相互信頼があるのですね。しかし、量販店はチラシその他のものでいろいろ一般の購買心を、そんなに安いならビデオを買いかえようかとか、カラーのもう少し近代的な、まあ余りモデルチェンジも過ぎますね、そういうところなんかでまた買いに行くが、その後のアフターサービスについてはどうなっているかについて契約書等があるわけじゃなし、そこのところの問題を浮き彫りにされたのだと思います。したがって、改めてそこらの実態を、単にいまは家電を提起されましたが、問題はほかにも、これから先起こってくるであろう石油がガソリンになった末端でどのような、消費者と小売店、小売店同士、卸と小売店という問題等も出てきましょうし、もちろん法律で持っている大店舗法、こういうものの出店規制その他の問題等もいろいろありますから、それらの一環として、この家電の問題も御提起でありますから、調査してみます。その結果が出たときに、これをどうすべきかについては、また改めて機会を見て御報告いたします。
  283. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 大臣に調査をお約束をいただきました。  そこで、私、公取にもお伺いをいたしたいと思います。  いまお聞きのとおり、メーカーが優越的地位というものを利用して、結局地域の小売店の人たちをがんじがらめにしているという系列支配、こういうもとで小売店が仕入れ先の選択の自由を拘束されているのではないか、このように疑いを持たれるわけでございます。具体的には、地域小売店がその系列の販社以外から品物を取引した場合に、たちまちこのメーカーから出荷を停止されたという事例も起こっております。これはメーカーのセールスが店にやってきて、そして機番というのがありますね、それまで全部調べてチェックをする。こういう中で、これでは結局、地域小売店が自由な安いものを仕入れたいと願っても実際にはそういうことができない、こういう制裁措置が加えられているわけです。また、共同仕入れについても同じようなことが言えると思います。ですから、こうした問題について具体的に御調査を願いたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  284. 高橋(元)政府委員(高橋元)

    ○高橋(元)政府委員 お話しのございました点でございますが、具体的な事実を把握いたしませんと、それに沿った的確な御答弁をいたしかねるわけですが、一般論で申し上げますと、いまお尋ねのありましたように、これが取引拒絶、これは不公正な競争方法であること、取引方法であることは御承知のとおりでありますが、これに直ちに当たるかどうかはちょっとわからないのですけれども、取引拒絶として規制するにつきましては、営業の自由との関連で、事業者には取引するか否か、取引先を選択する自由があるということをまた考慮する必要があろうというふうに思います。独禁法上、取引拒絶が構成競争を阻害するおそれがある場合に、初めて不当という形で不公正な取引方法の一つである不当な取引拒絶に当たるわけでございます。当たればこれを禁止するということは当然でありますが、もう少し具体的な事実を把握いたしまして、その上で独禁法との関係で検討いたしたいというふうに存じます。
  285. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 独禁法に抵触をする疑いもあるというようなことでございましたけれども、しかし、メーカーの販売政策というものをめぐってこれはもう事実上の再販じゃないかというふうにも思われます。疑いが持たれるわけです。消費者には非常に高値で安定をさせる、押しつける、そして小売屋さんには食べていけないマージン、こういったようなことを押しつけながら超過利潤を上げているのがメーカーだというようなことが断定できると思うのです。私どもの調査によってもやはりそのような資料が出ております。やはり公取としても具体的にこういう角度から再度調査をしていただきたい、このことを強くお願いをいたしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  286. 高橋(元)政府委員(高橋元)

    ○高橋(元)政府委員 家電業界、これは申し上げるまでもないのですけれども、メーカー段階で寡占の状態がございます。それから、メーカーによる販売会社の系列化が進んでおるという業界でございます。  そこで、この業界で競争秩序の維持を図っていくことは、私どもの委員会としても非常に大きな関心を持っております。従来から、たとえば五十年、五十四年、五十五年、五十六年と、いろいろな問題を取り上げて流通実態調査をいたしてきておったわけでありますし、流通実態を把握して、必要に応じて所要の改善措置と指導もいたしてまいりました。最近の問題としては、大型量販店等に対するヘルパーの派遣ということの実態調査をして、その結果を昨年の四月でございますか、公表いたしました。現在、業界に対して自粛の指導を行っております。  お示しの問題は、家電業界における量販店と一般小売店との間の仕入れ価格の差の問題も含めまして、取引数量とか取引条件というものとの関係もございます。共同仕入れとしても、一つ一つの物流はメーカーから直接一軒一軒の小売に来るというようなことでコストダウンにならない場合もあろうかというふうに思います。そういう取引条件なり取引数量との関係でなかなかむずかしい問題だというふうに、いま伺った率直な気持ちはそうでございますが、御指摘のとおり家電業界では流通系列化が行われておる業界でもありますし、家電業界の流通について私どもとしても今後とも関心を持って引き続いて注視してまいりたいというふうに考えております。
  287. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 すでに五十五年三月の独禁研の報告書によりましてもやはり指摘されておりますように、流通系列化がもたらすデメリットという報告がされておりますけれども、家電業界に深刻な矛盾、地域小売店の経営危機、消費者不利益となってあらわれているのはデメリットが出た場合、デメリットの場合だというようなことが述べられ、量販店の進出によってこれが一層促進をされている、このようなことが書かれております。公正取引委員会が本当に——メーカーが地域小売店の並べている商品の機番まで調べて、実際にどこの系列の品物が入っているか、こういうものが一目でわかるようになっている。こういうことをされているわけですから、また、それをされた小売店が実際には公取にこういう場合があるということを申告する場合にも制裁措置が加わるのですから、実際にはもうお店に品物を送らない、入れない、こういうようなことになるのを恐れてこれがやられていなかった、こういう実態も報告をされておりますし、ぜひひとつ、重ねてこういう問題意識を持ってメスを入れてもらえるように私は強くお願いをいたしておきたいと思います。  次に、中小企業庁長官にお伺いをいたします。  このようにいま二重の苦しみを受けております家電の小売商、この場合とメーカーとの関係について中小企業振興の立場から、これは経済的、社会的制約の不利を是正するということが中小企業基本法の第一条でうたわれています。ですから、この立場から、この問題を放置しておくのではなくて、やはり直ちに共同仕入れなども含めて振興策を本当に発展をさせていくようにしてもらいたい、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  288. 神谷政府委員(神谷和男)

    ○神谷政府委員 御指摘のように、先ほどから種種御答弁がございましたごとく、家電の流通関係が比較的系列化されているという状況にあることは事実であろうと思いますが、その中において不公正取引が行われておるかどうか、この点については公取の方でも常時チェックをされておるものと思います。私どもでも、具体的な事実が把握できれば公正取引委員会と連絡をとりつつそれに対処をしていく、こういう姿勢であることは変わりございません。  しかし、一般的に申しまして、先ほど大臣からの答弁にもございましたように、大量仕入れあるいはいわゆる出物的な安い物をかなりの量で仕入れながら流すという形態の販売があり得るということも事実でございますし、大量仕入れによるメリットということもあり得る、こういうふうに考えておりますので、いま御指摘のございましたような共同仕入れあるいはボランタリーチェーンといった方式、従来も振興策を講じてまいっておりますけれども、こういうものを各方面にさらに一層努力しながら進めていきたいというふうに考えております。  家電につきましても、現実に数は多くございませんけれども、西の方にボランタリーチェーンのチェーン化されたものがございますので、そういうところの動きといったようなものも業態別に見ながらさらに勉強を進め、中小小売商が力をつけながら執行力も持って自由な競争のもとで営業活動が行い得るようにしてまいりたいと考えております。
  289. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 最後に、私、大臣に大型店問題についてお伺いをしたいと思います。  中小家電商が打撃を受けているこの大型店の問題、量販店も含めてですけれども、こういった問題について、昨年の二月出されました大店法運用の新規通達で、大型店問題は当分抑制効果が上がると通産省はお考えになっていらっしゃるようですけれども、しかし、そうではないのですね。これ、よくよく、まあ地域的にもよるでしょうけれども、たとえば私が調べたところでは、東京昭島市の場合は大変な事態が起こっているのです。これは人口九万六千人で、市内の小売面積は合計約四万四千四百五十一平米の小売面積シェアですね。これが現在まで大型店はイトーヨーカ堂だとかいうものが出店をするという計画も出ておりまして、その場合に三万六千五百九十七平米になってしまう。こういうような問題で、大型店面積は三五%から五六%になってしまうだろうというように言われております。こうした中で、去る二月八日第一家電が、これは昭島店四百九十平米の店を昭島市長の制止をも聞かずに出店の計画を立てたというようなことが事実問題として起こっています。  私は、やはりこうした問題は、通産省が出されている二月の通達をも無視して、しかも、それを形骸化するといったような形で、商調法もやはり無視されるというような結果を招くという暴挙が行われているという事実について大臣の見解を伺いたいと思います。
  290. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 その昭島市の具体的な例は、私は実際存じません。存じませんが、しかし、一応現在の大店法、それをさらに一定期間、通達でもってより厳しいという方向を示してあります。そのことによって、昭島市の例ではないのですが、全国を見ますと、いままでの過去の大型店の出先店ですか、あるいは支店ですか、そういうような形でもぐったような感じで出ていました件数がはるかに減っております。その意味で効果は確かにあったろうと思いますが、そこの個々のトラブルの問題は、やはり法の精神と通達の趣旨を守ってもらう。ましてや商調協を無視し、あるいは市長の権限は別として、法律に定められたそのようなあるべき手続も踏まないで力の論理でもって出ていくということは、これは当然ながら、先ほど申しました大店には大店の、大きな会社には大きな会社のみずからを律する倫理というものが社会的になければならぬ、力ずくで押しまくるということは、私は事実の問題は確認しておりませんが、個所は言えませんけれども、そのようなやり方はあってはならぬと思っています。
  291. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 大変積極的な御答弁をいただきましたが、大店法の問題については、私ども、都道府県の知事の許可制、あるいはまた巨大資本の力量を持った大企業の小売店についてもこれをやはり規制対象にすべきである、こういったような法律を提出をいたしておりますので、今後ともそういうものも取り入れながら、しっかりとした抜本策を打ち出していただきたい、このことを強く要望をいたしておきます。  そして、時間の関係もございますので、私は次に厚生省にお伺いをいたします。  厚生省が今国会に提出をするための準備をいま進めている優生保護法改正案は、指定医が中絶を行うことができる条件のうち十四条一項四号の「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれ」がある場合の経済的理由の条項を削除するもので、これは事実上、人工妊娠中絶の禁止を図ろうとするものであると思います。  人工妊娠中絶は、女性の立場から決して望ましいものではなく、安易な中絶は母体を保護する上からも極力避けるべきであると考えます。しかし、安全な避妊方法というものがすでにいまない以上、これについてはやはり救済の道として残しておくべきではなかろうか、このように思っております。また、一九七五年の国際婦人年世界会議の決議でも、子供を何人産むか、そして、いつ産むかということは、夫婦の基本的人権に属する問題であって国が介入すべき問題ではない、このような立場が主張されております。  ところで、この問題で、特定の倫理観だとか宗教観に基づいて生長の家が改正運動をいま進めていると言われておりますけれども、生命の尊重を願わない人がどこにいるだろうか、このように私は思っております。  厚生大臣、この問題は婦人の生命と健康に直接かかわる問題で、重大な内容を持つものでございますし、多くの婦人団体が反対を主張して運動に立ち上がっているところでもございます。大事なことは、医療に携わっている日本医師会や母性保護医協会などが専門的立場から反対をしていますが、反対理由を簡潔に一つ二つお聞かせをいただきたい、このように思います。
  292. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 小林議員の御質問お答え申し上げます。  優生保護法の改正につきましては、私もここへ持っておりますが、日本母性保護医協会を初めといたしまして、たくさんの方々から反対のお話がございます。与野党を超越して婦人議員の方々も私のところにお越しいただきましてお話がございましたが、いま先生御指摘のように、やはり一つには、婦人の自己決定権というものを尊重すべきではないか、安易な中絶をすることによりまして母体の健康を傷つけることがあってはならないではないか、教育の問題であるとか、その他いろいろな諸施策を講じた上でやっていくべきではないか、こういうふうなことが大体主な反対の御理由ではないかというふうに私は考えているところでございます。
  293. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 いま、大臣は時間がなくておっしゃらなかったのだろうと思いますけれども、母性保護医協会が反対している理由の一つには、やみ堕胎が増加するというようなことも言われておりましたね。ですから、やみ堕胎が、医者でない怪しげな堕胎屋が中絶を行うというようなことが母体の健康をどれほど傷つけるか、こういうことについては大臣もおわかりのことと存じます。  かつて、国立病院医療センターの産婦人科部長我妻先生の論文によれば、イギリスで人工妊娠中絶が法律で禁止をされていた当時、結局生活に苦しい婦人は、お金の払えない女性たちは資格のない堕胎屋に行き、彼らは導尿に用いる細いゴム管を子宮の中に入れて、それを通して薬を注入する。薬といっても台所で使う洗剤とかあるいはコールタールなどを注入して流産の始まるのを待ったということも言われております。このような危険な操作によって重症の感染を起こしたり、子宮が薬品によって破れたり、穴があいたり、こういう問題が起こっておりますけれども、不幸にして亡くなった例も数多く報告をされています。  大臣、計画外妊娠、望まない妊娠の適切な措置や対策を怠ったままで第十四条一項四号の経済的理由を削除した場合には、母体が危険に陥ることはいままでの例から見ても火を見るよりも明らかです。私は、こうした問題については国民的コンセンサスを得るように努力をすべきではないか、このことを強く要求をしておきたいと思います。  お答えをいただきたいと思います。
  294. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 小林先生の御指摘は全く私も同感でございまして、いま言われておりますところの優生保護法第十四条第一項第四号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」というのを削っただけで問題が解決するとは私も一つも考えておりません。あの法文の条項を一条削ったから、それで世の中が直るなどというほど簡単なこの問題ではないということは私も十分認識しておりますし、いまお話のありましたようないろいろな諸影響というものを考えていかなければならない。さらには、私は、現下におけるところの社会風潮、一般的な社会倫理なり、そういったものも含めて考えていかないと大変なことになるのではないか。そういったことも含めて現在鋭意検討中であるということを申し上げておきたいと思います。
  295. 小林(政)委員(小林政子)

    小林(政)委員 最後に、要望だけしておきたいと思いますが、たとえば、この問題についてはやはり環境整備ということも重要な問題でございますので、育児休暇だとか、こういった問題等を十分検討した上で国民のコンセンサスを得られるような形がなければ実施を踏み切るべきではない、このことを強く要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  296. 村田委員長代理(村田敬次郎)

    ○村田委員長代理 これにて三谷秀治君、小林政子君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  297. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 官房長官がまだお見えではありませんから、大蔵大臣が大蔵委員会との関係があるそうですから、ちょっと順序が違いますけれども、大藏大臣の関係について一問質問をしておきたいと思います。  すでに当委員会でもわれわれの同僚委員が具体的な資料を示して、ある程度の仮定は前提としてありますけれども、五十九年度の防衛費は恐らく三兆円程度、九%増、対GNP比は一・〇一ぐらいなるのではないか、こういう指摘をしております。昨年十二月の当委員会においても中曽根総理は、来年度は一%を超す可能性があることを示唆されたわけであります。これは軍事大国化を防ぐための予算上、費用上の一つの歯どめとして大きな役割りを果たしてきたことは事実であります。この一つのめどといいますか、防衛費から見るところの歯どめのこの一%というのがもし外された場合に、それ以降の防衛費増強の歯どめについて、まず防衛庁長官は、正式な決定に至っていないならば長官としての個人的な、こういう歯どめがあるのではないかという考えがありましたらお示しをいただきたい。
  298. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 今日までたびたび当委員会においても答弁させていただきましたように、この一%というのは閣議決定事項でございますので、私といたしましてもでき得る限りこの一%という閣議決定の線に沿ってこれを尊重いたしてまいりたい、こう考えております。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  なお、ただいますでにこの時点におきまして、五十八年度、ただいま御審議いただいておりまする防衛庁関係費は〇・九八%というところへ参っておりまして、その意味ではこれから今後の経済の成長その他を見、さらに五十九年度の予算の編成時期におきまする防衛庁費全体について検討いたさねば何とも申し上げかねますけれども、現在の時点では、私はいま直ちにここで一%の問題について、これについて直ちに枠を取り払うとかそういうことは考えておりませんし、いまのこの時点では当面のところまだ考える必要はない、こう考えております。ただ、その事態が参ったときには、総理からも御答弁申し上げさせていただきましたように、何らか考えなければならないことがあるかもしれませんが、くどいようでございますが、当面するところ、現在のところ、まだそれを論ずる事態に入っておらない、こういうことでございます。
  299. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 いずれ夏以降は予算編成に入るわけですから、遠からず来ることはもう明らかだということはたびたび同僚委員が指摘しているとおりですね。だから、個人的な見解も何もないのですか、長官としての。いずれこれは閣議決定の問題ですから、もしこれが変更される場合は閣議決定の議題になろうと思いますけれども、長官としてのお考えはあるかということを聞いておるのです。何もないなら何もないでいいですが。
  300. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 現在のところ、まだ五十八年から九年にかけての経済全体の様子もよくわかりませんし、それから五十八年度の予算について、防衛庁に関しましては御審議をただいまいただいているところでございまして、実は、五十九年度の予算概要の骨子につきましても内部で詰め切っておりません。したがって、この時点では現在のところまだ何とも申し上げかねる、こういうことでございます。
  301. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それでは、あなたは何としてもGNP一%という五十一年閣議決定は守りたいということですか、来年度以降も。
  302. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 閣議決定事項でございますので、でき得ることであれば私はこの閣議決定を尊重してまいりたい、こう考えております。しかしながら、五十八年度の防衛関係費の対GNP比は、五十七年度当初予算の〇・九三よりもさらに〇・〇五%ばかり増強いたしまして、先ほど申し上げましたように〇・九八%となっておるところでございまして、五十九年度にGNP一%相当額を超えるかどうかということになりますと、これから先の経済の成長いかんにもよりますけれども、この枠を超えないというふうには言い切れないかもしれないという感じを私持っております。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、今後の経済の成長あるいは防衛関係費というのは、先ほど来御答弁申し上げさせていただいておりますように、そのときどきの政府の他の施策とのバランスも考えて概算要求されるものでございまして、五十九年度の予算の骨格について、まだ、五十八年度の予算を御審議いただいているこの時点ではわれわれ考えをまとめておりませんで、いまこの時点では何とも申し上げかねる、こういうことでございます。
  303. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 くどいようですけれども、もう当然後年度負担を考えればわかり切った話なんですよ、そういうそらぞらしいことをおっしゃらなくても。  では、もし超えるような場合は新しい歯どめが必要である、それはそう思っていらっしゃるのですか。
  304. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 五十一年の閣議決定の文言は、防衛費の総額は国民総生産の百分の一を超えない額をめどとして、とこうございますので、一%を超えますればこの閣議決定の線からはみ出すことになりますけれども、しかしながら私といたしましては、その事態においては、これは閣議決定でございまするし閣議の御判断もいただかなければならぬ、こう考えてもおりますと同時に、いま私は新しいそれにかわるべきめどを考えた方がいいかどうかということについては、先ほどから申し上げておりますようにまだわからない要因が多過ぎまして、私自身としてはもう少し先へ行かなければ何とも申し上げかねますけれども、先ほど来答弁させていただいておりますように、でき得る限りこの閣議の決定は尊重いたしてまいりたい、これは私の基本的な考えでございます。
  305. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 大蔵大臣は予算編成上、この防衛費の問題についてはやはり一応のめどがあった方がいいというふうにお考えかどうか。
  306. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 これは五十七年、去年の十二月の二十九日に予算折衝を終えた段階で私自身も記者会見をいたしました。その際、質問に答えてではございますが、やはり私の個人的感じから申せば、一%という歯どめがあったということがよかったと思う、こういう発言をいたしました。気持ちはいまも一緒でございます。
  307. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それでは大蔵大臣、もうよろしゅうございます。  官房長官がお見えですから、せんだっての二十一日のいわゆるクーデター未遂事件についての調査結果の御報告をお願いをいたします。
  308. 後藤田国務大臣(後藤田正晴)

    後藤田国務大臣 せんだっての楢崎先生の御質疑は私はきわめて重大な御質問であるというふうに受けとめておったわけでございます。当時申し上げましたように、そういったことはないと確信はする、するが、しかし、事柄がきわめて重要でございますから御調査を申し上げる。しかも、こういった席での御質問でございましたから、ない場合にはなかったと申し上げて、そして国民の安心も願わなければならない。同時にまた、自衛隊の名誉も回復をしなければならない。こういうような意味合いから実は厳重な調査を関係当局にお願いをしたわけでございます。同時にまた、あの御質問の中にいま一つきわめて重要な問題は、シビリアンコントロール、これを確立しなければならないという御意見でございます。そのとおりこの点も政府としては本当に真剣に受けとめなければならぬ、かように考えたわけでございます。  自衛隊の管理という問題については、これは管理体制をきちんとしなければなりませんけれども、何よりも、少なくともうわさといえどもこのようなことが出るということについては、よほど真剣に考えて内部の一般の隊員、同時にまた中級幹部、下級幹部の物の考え方、意見等が上層幹部に風通しをよくするといったようなことも考えなければならない、こういうようなことで、大変重要に受けとめておりましたが、一昨日防衛事務次官が私のところへ報告に参りまして、十師団関係から百八十七名にわたって調査をした。同時に、関係の書類等も、人事記録等がございますから十分調べました結果、さような事実は確認ができなかった、そのような計画は存在しなかったということが判明をしたので御安心を願いたい、こういう御報告がございましたので、その旨をここでお答えをいたしておきたい、かように考えます。
  309. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 いまさらありましたなどということは言えないわけですね。もしあったなどということになると、それは防衛庁長官の責任どころか総理大臣の責任にも及ぶような重大問題だと思うわけです。本件に関して、新聞や週刊誌やその他でいろいろコメントをなさっていらっしゃる元将官も同じように否定されておりますね。これも私は同じ理由であると思うのですね。いまさらあったなどと言うことは、大変な問題になりますからね。  私はここで申し上げたいのは、元将官に対する、第一線の現役幹部の諸君のそういった将官に対する不信というのが非常にあるのです。どういう点かというと、そういう人たちは事なかれ主義で、何とか終えていって、そして無事退職して、防衛関連の産業なりメーカーなり商社に天下っていく、こういう意味の産軍癒着の状態に対して不満があることは事実なんですね。その辺がどうもいろいろコメントなさっておられる元将官の方々にはおわかりでないような感じが私はするわけです。  それで、防衛庁の方からいろいろとまだ話を聞きたいという連絡がありましたが、私はそういう密室の中でお話をするということは、ほかの意味で大変問題があると思いまして、ここで私が言える範囲のことをまず言っておきたいと思うのです。  まず、二月二十一日の質問では、私は計画のすべてを明らかにしておるわけではないのです。ところが、それを私ははっきり言っているのですけれども、あたかも二十一日に私が出した分だけがすべての計画のように受け取って、それを前提にして、こんなちゃちなとか荒唐無稽だとかいう論評がなされておるのは、私はまことに心外であるわけです。二十一日に明らかにした分はごく一部であるということをもう一遍ここで明確にしておきたいと思います。この点は後で触れたいと思います。  二十一日質問以後、いろいろありました。それに基づいてここで私がはっきり一つ言えることは、私に対して行われた内部告発は、制服の第一線現役幹部たちであります。これは明白にしておきたいと思います。そして、もし異常な事態が起こらないならば、あと十日間ぐらいでさまざまのことが明らかになることを私は確信をいたしております。  じゃ異常な事態というのはどういうことか。たとえばそのうちの一つは、私が最も気を配った点であり、案じていた点でありますけれども、私に対する告発者たちに対して、ある種の弾圧が行われておるのではないかという問題であります。告発された方々は覚悟をされておるようであります。しかし、だからといって、私はやはり心が痛みます。私の質問趣旨がそういうことではなかったということは、二十一日も申し上げたはずであります。  ちょっとここでお伺いしておきますけれども、警務隊や内調の調査が、私も調査をお願いしましたから、厳しくなっておることは事実でありましょうが、その監視と調査が非常に、予想以上に厳しい。それでお伺いしておきますけれども、告発の被疑者関係を連行して追及をされておる事実がないかどうか。
  310. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 二月二十一日当委員会において楢崎先生から御質疑がございましたが、その中に、警務隊の捜査についても触れられておりましたので、警務隊につきましては、特に防衛庁といたしましても関係警務隊それぞれに詳しくこちらから調査をいたしましたことがございますので、これにつきましては政府委員から答弁をいたさせます。
  311. 上野政府委員(上野隆史)

    ○上野政府委員 いま先生のおっしゃいました、警務隊がだれだれを連行して調べておるかということにつきましては、ございません。  ただ、いま大臣がおっしゃいました警務隊云々ということは、先生がせんだっておっしゃいました警務隊が決起寸前の五十五年四月ごろクーデター計画に関する情報を入手して、事情聴取等捜査に着手したので、クーデターは未遂に終わった、そういう御指摘がございました。これにつきましては陸海空の警務隊本部の外、決起部隊等を管轄する陸上自衛隊の習志野、守山等、そこら辺は十分に調べました。ただ現在、先生がいまおっしゃいましたような意味での連行あるいは調査というようなことは行っておりません。
  312. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 私の質問以後にそういうことは絶対にありませんか。
  313. 上野政府委員(上野隆史)

    ○上野政府委員 警務隊の連行、そういうような事実はございません。
  314. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これもやがて明らかになりますから、そのときにまた問題にしたいと思います。  ちょっとこれは念のためですけれども、私を尾行しておることがもしあったらやめていただきたい。それから、私の福岡の事務所、東京の赤坂の宿舎、もし監視をやられておったら、これもやめてもらいたい。これだけは言っておきます、念のために。
  315. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 ただいまの楢崎委員の御発言と申しますかは私に対しての御質疑ということではないかと存じますが、防衛庁といたしましては、防衛庁のやるべき仕事というものはわが国の安全の確保でございまして、およそ私がその他の、防衛庁のやるべき仕事以外に隊員を動かすということは絶対にそれはあり得ません。そのことだけははっきり申し上げさせておいていただきたいと存じます。
  316. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 ぜひそうお願いしたいですね。  それで、二十一日の質問を告発された方々と今日までいろいろと連絡なりコンタクトが続いておることは事実であります。私は二十一日の日も申し上げたのですけれども、私が質問している趣旨がよくわかっていない感じがするのですね。その点も私は現実に非常に困ったことが起こっておるわけです。もう一遍、告発しておる人たちが訴えておることを明らかにしたいわけですが、その前に二十一日の質問について私のミスがあったことを訂正を正直にいたしておきます。  「大隊長補佐」という言葉を使いました。私は大隊長を補佐する者というふうで使ったつもりですけれども、大隊長補佐となっておるからいかにも官職のようにとられた向きがあると思います。それは私の使い方が悪かったことを明らかにいたしておきます。  それから、その後告発者からのこういう連絡もありました。私がこの前指摘した中で、練馬や入間を先生が省かれたのはどういう意味ですかというあれがあったのです。正直に申し上げて、私が最初連絡を受けた段階では、それは入っていませんでした。だから、それはそういうことで私が意識的に抜いたことではありません。私は当然入っておろうと思うのですね。思うけれども、私は正直に言われた点を明らかにしたにすぎないのであります。  ナパーム弾の件ですが、これは別個後ほど明らかにしたいと思います。  それから、くどいようですけれども、ここが重大だから私は趣旨をもう一度申し上げておきますけれども、二十一日の日に私はこういうことを言っておるのですよね。まず、現役の隊員の人たちにさまざまな不満や不信や憤激が渦巻いておる。それはどういう点に対してであるかというと、まず第一に政治に対する不信だ。これは政治倫理浄化問題で今国会でも問題になっておるところですから、われわれもよくわかりますよ、われわれもそう思いますから。  それから教育に対する不信。これはたまたま休み等に新宿などに出かけると同じぐらいの年の人が、自分たちは一生懸命やっておるのに、連中は麻薬を吸ったり、校内暴力を起こしたり、一体どうなっておるんだ、こういう人たちが大きくなって日本の将来はどうなるのであるか、教育は一体どうなっておるんだ、こういうやはり憤激と申しますか不満があるわけであります。  それから三番目に、先ほど申し上げたとおり、どうも産軍癒着の問題がある、これであります。  それから四番目に、日米安保体制に対する不安。これはどういうことかというと、たとえば日米共同作戦をやったときに一体指揮官はどちらになるのか。これは後で聞きますけれども。だから自衛隊員の人たちは、これがアメリカが統一指揮官になったらたまらないという不安があるのですね。不満がある。アメリカのために自分たちは犠牲になりたくない。日本のためには死ぬ覚悟でおっても、それは困るんだという不安があることは事実なんです。  それからせんだって申し上げましたいわゆる認知の問題。これは非常にデリケートな問題で、私も意見があります。これは憲法上にかかわる非常に重大な政治問題ですから。ただ、客観的な事実としては、憲法のもとに自衛隊法と防衛庁設置法がつくられて、そして自衛隊が存在するというこの客観的な事実もまた明らかであります。この辺は、憲法上の認知の問題はいろいろ議論がありますが、私が申し上げたいのは、何か自衛隊員そのものは、憲法違反とかなんとか、個々の自衛隊員には責任のないことですから、そういう意味で何らかの、たとえば嫁にやらないとか行かないとか、あるいは学校に行けないとか、そういった個人的な問題、そういうものは社会的に何とか解決する方法はないのか。これは国民皆さんが過半数以上、自衛隊はあった方がいいと思っていらっしゃるならば、この問題を解決するのは国民の義務でもあろうと思うのです。責任でもあろうと思う。そういう意味では、国民の代表である国会が避けては通れない問題ではなかろうか。これは、私の考えはありますけれども、議論をした方がいいのではないか、これを申し上げておる。  なお、こういうことを二十一日は申し上げたのですが、それ以降なおつけ加えられた点がありますから、これは重要ですから明らかにしておきたいと思うのであります。——もうちょっとですけれども、官房長官、結構です。  それは、自分たちは護憲である。特に憲法第九条は遵守したい。二番目に、シビリアンコントロールは必要である。三番目に、軍は政治に関与してはならない。これは私たちの信念であるというあれがありました。それで銃口は絶対に国民に向けない。ただ、私たちが欲しておるのは、自衛椎だけは認めてほしい。こういう要望でありました。これは私は正確に伝えておきたい。これは健全な考え方であろう、このように思うわけです。  なお、つけ加えるならば、自衛隊員の中にはサラリーマン化しておる者が確かにおる、こういうものは必要ないんだ、だから金もかかるし、むしろ少数精鋭にしてはどうかという考えがあります。これも正確にお伝えをしておきます。そこで内局の意見と同様に、制服もいろいろ現実を知っておるし、上層部は意見取り上げてもらいたい、こういう希望もあります。  実は、では一体何をねらっておったんだということが次に問題になろうと思うのです。この点は正直に申し上げて、実はこのクーデターの問題は、メーンの問題が訴えじゃなかった。もう一つメーンの非常に具体的な重要な問題がある。これを明らかにすれば、どうしてクーデター問題が出てきたか関連が明らかになると思うのです。これは、私は実はきょうやろうと思っておりましたけれども、ちょっと差し支えがあります。しかし、これは必ず機会があれば一週間以内にでもできると思います。これが明らかになれば、告発してきた人たちが何を願っておるのかというのがより明らかになる、このように私は確信をいたします。また、いろいろな点で、新聞、週刊誌等にいろいろひやかし記事が載っておりますが、一々これに反論してきております。これは非常に説得力のある反論ですが、時間がありませんから私は省きますけれども、いずれにしても、あってはならないことだけれども、これは真実である。  ただ、こういうことも言っております。クーデターというよりも実は自衛隊内部の改易の問題なんです。むずかしい言葉ですね。改易というのは、改めるというのと易者の易の字で、革命という意味ですか、そういうことも言っております。いずれこの点は、先ほど申し上げたとおり、大体あと十日前後くらいで明らかになる、このように思うわけです。これはまだ残しておきたいと思います。——官房長官、よろしゅうございます。  次に、こういう不満もあるのです。私も驚きました。中曽根総理はできないことを言い過ぎる、ユニホームにそういう不満があるのですよ。これは私は驚きましたね。もう少し中曽根総理を歓迎しているかと思いましたら、そうじゃないのです。無責任だと言うのです。その、どうしてできもしないことを中曽根さんが言っておるかというのは、私もいまから時間の許す限り明らかにしていきたい。これも私は共鳴をいたします。  順次やっていきますけれども、外務大臣にお伺いします。  先刻、大出委員から出された問題とやや関連をいたします、あるいはダブる点もあるかもしれませんが、対米武器供与、お座敷に入った話の前に、玄関をあけたところが私はわからないのです。何月何日に中曽根総理はどういう形でレーガンさんと会い、そのときに一緒におった者はだれで、どういう言葉で供与を約束されたのか、日本語と英語でお願いしたい。
  317. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 日米首脳会談で武器技術供与について中曽根総理大臣からレーガン大統領に発言をされたとき、私もおりました。この席では、これは中曽根総理からも説明があったと思いますが、実は十四日に閣議で決まって官房長官談話で発表したわけですが、これに基づいて、いわゆる武器技術の相互交流の問題については長い間日本政府でも検討してきた、その結果日本政府としては武器技術については供与する、相互交流するということに決定をいたしたので、これはすでに米国政府に対してもお伝えをしたとおりである、こういうふうな非常に簡単な説明がございまして、大統領からこれに対して非常に評価するというふうな意味の発言があった、こういうふうに承知をいたしております。具体的な言葉につきましては、私も詳細には覚えておりません。具体的にその一言一句については承知しておりませんが、非常に簡単なやりとりで終わった、こういうふうに承知しています。
  318. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 私がどうしてこれを問題にするかというと、これは御承知のとおり国会決議違反の問題があり、撤回しなさいというような問題も起こっているんですよ。この点は、政府側の考えでは約束したから撤回はできない。それほどの拘束力を持つならば、この点は明確にしておきませんと日本国民の権利と義務を拘束することになります。だから、これはちょっとどういう言葉で、ただそういうことを言ったようですなんということじゃたまらぬですよ。そういうことで拘束されたんではたまりませんよ。だからこの点は、非常に形式的なことを言うようですけれども、国際的な拘束力との関係があるからひとつ明確にしていただきたい。  大出委員質問では、何か局長が閣議決定を英訳して向こうの大使館か何かに持っていった、その程度でしょう。そういうことでそれほど拘束力が出るのか。拘束力が出るとすれば、恐らく両首脳者間の約束だろうと私は想像するのです。もしそうであれば、その約束とはどういう形なのか。国際法的に言えば、口頭了解なのか、ゼントルメンズアグリーメントなのか。拘束力との関係で私はそれを問題にしている。お答えをいただきたい。
  319. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 これは先ほどから政府委員が答弁をいたしましたが、日本政府が自主的に決定すべき事柄でありまして、これは閣議で閣議了解事項ということになりまして、官房長官の談話として発表されました。内外に対して発表されたわけでありますから、これを外務省としては在日の米大使館、それから在米の大使館を通じて米国の国務省あるいは国防省に十四日に説明をしたということでございますが、同時に、日米首脳会談におきましては、中曽根総理大臣からこの武器技術の供与は日本政府としてこれを決定したということを明確にアメリカ大統領に伝えたことであります。
  320. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 とすれば、私は、どのように中曽根総理がレーガン大統領におっしゃったか、資料として文書にして当委員会に御提出をいただきたい。  というのは、かつて昭和三十五年のあの藤山・マッカーサー口頭了解も、中身が非常に重要であるから文書で出してくれと言って、それが出されるまで九年間かかったのですね。昭和四十四年に初めて外務省は私のところに持ってこられました。  日本国民を拘束するわけですから、これはぜひどういうふうに約束されたのか、文書で当委員会に出していただきたい。
  321. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 日米首脳会談は、ただ武器技術の供与の問題だけじゃなくて、その他いろいろの論議、討議が行われたわけですが、これは一々明らかにしておりません。外務省として、政府のスポークスマンがブリーフしたということは内外に対して明らかにしておりますが、一々会談の内容について発表はしていないということでありますし、また発表する考えはないわけであります。しかし、何回も申し上げますように、武器技術に関しては、アメリカに対する供与ということについては日本の政府の立場を明確にアメリカに伝えたということは間違いありません。
  322. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 日本政府の立場で自主的に言われたんだったらいいじゃないですか。向こうとのやりとりを出すことにはならぬのでしょう。だから、武器供与の点だけで中曽根総理が首脳会談でどう言われたか、それだけで結構です。そんな密室の幻の約束じゃ困りますよ。
  323. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 これは別に何も秘密にわたるものじゃないわけですね。武器技術については、とにかく長い間日本政府としてもこれを検討したけれども、結論的には、中曽根内閣においてこの武器技術の供与についていろいろと検討した結果これを行うということに最終的に方針を決めたのだ、これは十四日にすでに日本政府から発表しておる、これを中曽根総理から改めて大統領に対して申しますということを言われたわけですから、それ以上のことでもないし、それ以外のことでもない。問題の中心はずばりそのものであると私は思います。
  324. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 非常に形式にこだわるようですけれども、重要だから私言っているのですよ。簡単なことです。  では、この口頭で伝えられたことはどの程度の国際的な拘束力を持つのですか。
  325. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 先ほど楢崎委員御指摘の藤山・マッカーサー口頭了解と本件とは法律的な性格が全く違うのだろうと思います。今般の決定は、国際法的と申し上げるのはなにかもしれませんが、法律的に申し上げれば、これは日本政府が自分の政策として決めたことを一方的にアメリカに通告したということに尽きるわけでございまして、楢崎委員御指摘の藤山・マッカーサー口頭了解というものは、日米間の条約の解釈につきまして藤山・マッカーサー間に了解がなされた、いわゆるゼントルメンズアグリーメントがなされた。これは条約の解釈の問題でございますから、法律的にまさに両方を拘束するものであるということが言えようかと思いますけれども、本件は法律的に申し上げますと、先ほどの繰り返しになりますが、日本政府の決めたことを一方的にアメリカに通告した。法的に、国際法的に別に拘束力があるという性質のものではなかろうと思います。もちろん、総理がレーガン大統領に言われたことの政治的な意味合いは別途あろうかと思いますが、法律的にはいま申し上げたとおりでございます。
  326. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 やや問題がはっきりしてきましたね。それじゃ拘束力はないんだ、政治的な問題だけだ。そうですね。拘束力があれば、私は、当然条約とどう違うのかという疑問が次に出てくるのです。  そうすると、今度は国会決議との関係のほかに、日本国民を拘束する条約、国際法は当然国会で審議をして、その上で批准されるのですね。だから、そういう拘束力がある問題提起だったら、当然国会の議を経てなされるべきである。それが行われていないとすれば、日本政府が政策として決めたのなら、国会でこういう問題が起こっておりますからこれはちょっと凍結をさせてもらいたいと言うこともできるはずでしょう。そうでしょう、日本政府の一方的な申し入れですからね。どうでしょうか。
  327. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 確かにこれは日本政府の一方的な自主的な決定ということであって、いま条約局長も申し上げましたような条約上の義務とかそういうものではない、こういうふうに解釈しております。ただ、中曽根総理がレーガン大統領に対してこれを決定をしたということを言ったことは、政治的には日本政府の決定はこれを守ります、行いますということにつながっていくことは事実であろうと思います。そういう責任が生じているわけです。
  328. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 したがって、国際法的なそういう意味における拘束力はない、これもはっきりしましたね。条約でも、調印をして、それから国会にかけて、国会の承認を得るまで批准はしないのですよね。核拡散防止条約は、調印して批准までどのくらいかかりました。
  329. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 昭和四十五年に署名をいたしまして、批准をいたしましたのは昭和五十一年でございますから、約六年を要しております。
  330. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 大臣、お聞きのとおりですよ。調印しても批准するまでに六年かかっている。これは総理がおられたら私は言いたかったけれども、中曽根総理もいわゆる査察問題がはっきりしない限りは批准はだめとおっしゃった一人ですよね。そういう懸案事項が明らかにならない限りは、条約でも批准しないのです。ましてや今度のやつは、口で日本政府の政策としてこうしました。だから国際的に見ても、幾ら政治的には重みがあっても、十分細部が明らかでない、中身に疑問がある。そういう場合は、これは実行行為は実際にできない。  通産大臣、そうでしょう。取り決めはMDAの一つ一つの取り決めになるのだから、実際問題としてできないと思うのですよ。だからそれを凍結と言うかどうかは言葉は別として、それまでは実行行為に移らない。まず移れないのです。移れないですね。どうして右手を横へやるのですか。あなたにも聞きますから。いや、本当です。どう思います、これは。
  331. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 これは条約については批准行為というのがもちろん必要であることは当然至極のことでありますが、この武器技術供与については日本の政府のいわゆる政策変更の問題ですから、日本政府自体が自主的に決定をすればそれでいいのじゃないかと私は思いますが、ただ、これを具体的に実施する場合には、MDAに基づく細目取り決め等で米国側と話し合って、それで合意を見なければこれが実行できないことは、これはそのとおりであろうと思います。(楢崎委員「それがはっきりするまでできないですね、中身がいろいろ詰められないと」と呼ぶ)  いや、これはまだアメリカからどういう武器技術についての供与を求めるというような具体的な案件がないわけですから、話し合いにも何も入ってないわけなんですが、いよいよそれがあれば、その段階で細目取り決めというのが結ばれるわけですから、これは日米間で合意を見なければ取り決めというものが実施されないことは当然だと思います。
  332. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これでもう一つ明白になったことは、日本政府合意しなければできない。日本政府としては、こういう問題が残っておるからできないということは言い得るわけだ。実際に細部が明らかになるまでは事実上凍結状態になるわけですね、これは。  一月十四日の閣議のときに、日本の企業を守る立場にある通産大臣はどういう意見を述べられましたか、その閣議の席上で。
  333. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 閣議の席上では一言も発しておりません。
  334. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 饒舌な大臣が何で一言も発せられなかったのですか。いろいろあなたもわからぬ点があろうし、いろいろあろうと思うのですがね。私はいろいろクレームをつけられたという話を聞いているのですがね、違うのですかそれは、注文を。——言えない、ここで言えないというのなら、それはそれでいいのですよ。私は当然ある程度のクレームはついたろうと思うのですね。それがあるから、いままで二年間も、一年半以上もずっと懸案事項になっておったのですよね。再度御答弁をお願いします。
  335. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 饒舌なおまえがなぜ黙っていたのかと言われても、私はその内容について賛成でありましたから発言をしなかった、黙っていたということでございます。
  336. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それでは、あなたは全然意見を言われなかった、全面的に賛成ということを言われましたが、承っておきます。  CBR関係、NBCともいいます。核兵器、生物兵器、化学兵器、こういうCBR関係の技術協力は絶対にありませんね。
  337. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 これはすでに答弁いたしておりますが、改めて申し上げますと、国際条約で生物化学兵器あるいは毒ガス、これは第一次大戦後です。それから核拡散防止条約ですね。その他人類の生存あるいは大量殺傷、非人道、そういうようなこと等に基づいて国際協定が結ばれて、日本がそれに加盟し批准しているものに関するものであったならば、その技術に対しても一切協力をしないし、日本国内においてすらそのことはやっていないはずでありますから、お断りするということは答弁をいたしております。
  338. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 先ほども大出委員が触れた点に関連をいたしますけれども、MDAの一条の「装備、資材」の中の装備というものに武器は入りますか。
  339. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 これは過去にも御答弁申し上げたことがございますが、装備というものの中には武器は当然入るということでございます。
  340. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 共同生産はどれに入りますか。
  341. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 共同生産という仮定の御質問でございますが、共同生産をいたしまして、武器が移転されるときには装備に入るのではないかと思います。
  342. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 共同生産そのものはこのMDAの枠内には入りませんな。
  343. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 共同生産という言葉にいろいろと意味がございますので、どういう種類の共同生産かということになると思いますが、この委員会でもたびたび御議論いただいております共同研究開発とかというような意味でおとりになるとすれば、共同研究開発自身は、従来から申し上げておりますように、それに伴って武器あるいは技術等が移転される場合に従来のケースでは武器輸出三原則において対処されるというようなことになっておりましたので、共同研究開発とか共同生産という言葉だけでできるかできないかということは必ずしもはっきりお答えできないと思います。
  344. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 ではちょっと、アメリカのウエスト国防次官補がこう言っております。米国は将来兵器システムの研究開発、設計、生産、製造などで、相互に有益な共同事業を日米両国の民間会社で進めることを望んでおる。こういうことはできないわけですね。
  345. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 昨年ウエスト国防次官補がそういう発言をしたということは私ども資料で読んでおりますけれども、私どもとしては、今回決定しておりますように、武器技術供与、それに若干の武器技術供与を実効あらしめるための物品を含めましたものの供与をやるということを決定したわけでございます。
  346. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 時間の関係がありますから次に移ります。  中曽根総理ができもしないことを約束してきた。こういうことを言うことは、日本国民を惑わし、アメリカには過大な期待を抱かせ、ソ連に対しては必要以上の刺激を与える、私はこう思うのです。特に際立っておるものがこの三海峡封鎖の問題ですね。  長官、中曽根総理はあのワシントン・ポストでこうおっしゃっているのです。日本周辺四海峡を完全かつ全面管制する、コンプリート・アンド・フル・コントロール、そうおっしゃっているのです。完全、しかも全面、二つ並べている、コンプリートとフルと。こういうことができるのですか。何か防衛庁の見解では三〇%封鎖できれば成功だということをおっしゃったように私は記憶しておりますが、これと完全、フルとはどういう関係になるのですか。
  347. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 通峡阻止に限らず、あらゆる作戦について言えることかと思いますが、一〇〇%できるかどうかというのは、そのときの事態にもよりますけれども、一般論としてはなかなかむずかしい問題であろう。通峡阻止についても、われわれ考えているのは一隻も通さないというふうな意味での通峡阻止を考えているわけではありませんで、そういういろいろな手段の積み重ねによって通峡をしにくくする、そういうことが最終的には抑止にもつながるし、わが方の海上交通の安全にも寄与し得るゆえんであるというふうに理解しております。
  348. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 私の質問に答えてくださいよ。コンプリート・アンド・フルというのはどういうことかと聞いているのです。総理がおっしゃっているのです。コンプリート、完全に、フル、全面的に、これはどういうことですか。これもまた気持ちを言っただけだということなんですか。実際問題としてどうつながるのです。できもしないことを言うというのはそこを言っているのです。どういうことなんですか。三〇%しかできないということと、完全かつ全面とはどういうつながりがあるのですか。
  349. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 私も総理発言の真意というものは直接聞いているわけではございませんので知りませんが、私どもの作戦に当たっては、先ほど申し上げたような意味でのことを考えているということを申し上げた次第であります。
  350. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これは何らかの機会に総理に聞かぬといけません。総理の言っていらっしゃる意味はわからぬと言っているのだから。  それから、こういうことも言っているのです。どうもあの総理というのはおかしいですね。二十一日にも申し上げたけれども、あの四十五年の夏に防衛庁長官として渡米した際に、レアード国防長官と会ってこう言っておるのです、同じようなことを。海峡を完全にコントロールします。いいですか。われわれは日本海を日本湖にしたい。シー・オブ・ジャパンではなしにレーク・オブ・ジャパンにしたい。これは何です。どういうことなんです。答弁し切れる人がおったらしてください。日本海というのは日本のものではないのでしょう。領海が一応あるだけでしょう。それを日本の湖にするというのはどういう意味ですか。答えてください。
  351. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 これも私直接聞いているわけではございませんけれども、多分、日本海というのは太平洋に比べて非常に狭い海であるという意味合いから、しかも関係国が多いということから、共通の利益を持った国がそれを仲よく共有する必要があるというふうな意味で言われたものというふうに理解しております。
  352. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 冗談じゃないですよ。海峡封鎖の問題に関連してこれを言っているのですよ。何を言っている。あなた、そんなふざけた答弁をしてはだめですよ。仲よくするために日本の湖にするのですか。何を言っているのです。  委員長、これもお聞きのとおり、非常にできもしないことを言っているのです。これじゃアメリカは過大な期待を抱きますよ。そこを私は指摘している。だから委員長、この点は機会がございましたら総理見解を聞きたいと思います。御配慮をいただきたい。先に進みます。いいですね。
  353. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 はい、理事皆さん協議して、さよう取り計らいます。
  354. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それから防衛庁長官、平時にP3Cが飛んで、これは私は当予算委員会でもやりましたよ。不破委員もやりました。平時はP3Cがとった情報を厚木のおととしできた支援隊に送って、それが横須賀の海上自衛隊の司令部から米軍司令部に行って、そしてその情報を分析してまた打ち返されて、あれはどこどこの潜水艦だ、こういうことをいつもやっているのですよ。それはわかってますね。音響業務隊がやっている。  平時はいいのです。極東有事の際にもそれを続けますか。たとえばアメリカがどこかと紛争を起こした際に、それを続けますか。
  355. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 日本とアメリカの間は、安全保障条約を結んでおります、いわゆる安保体制のもとに緊密な協力をすることになっておりますので、平時、有事を問わず情報の交換というものはやっております。ただ、いかなる情報をいかなるときにどういう方法でやるかについては、御答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  356. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それは何ですか。答弁を差し控えるというのは、言ったらいかぬということですか、わからないということですか。
  357. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 平時におきましても、必要に応じて必要な情報の交換はいたしております。ただ、それがどういうものを交換しているか、どういう段階でやっているかということについては、ひとつ御勘弁賜りたいというふうに申し上げる次第であります。
  358. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 いや、私が先ほど言ったことは確認したのですよ、去年の予算委員会で。平時にはP3Cはそういうことをやっていますよ。私が聞いているのは、平時はまだいいですよ、極東有事になったときにそれを続けますかということを聞いているのです。
  359. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 極東有事になったときにどうかという御指摘でございますが、仮定の問題でございますから一概にどういうことということは申し上げられませんけれども、平時においても情報の交換はやっている。ただ、極東有事になったときどうかということについては、仮定の問題でございますので、どういうことがあるかということをいま直ちに御返答できる材料はございませんけれども、もしそういう時期になっても、いろいろな情報の交換というのはあると思います。
  360. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 ということは、極東有事でもやるということですね。もしこれが——平時にはいいというのはこういうことなんです。平時には、そういう日常業務としてやられる分はいいでしょう。極東有事のときにそれをやるとすれば、日本の海上自衛隊のP3CあるいはP2Jが情報をとる、そしてそれを米側は通報する、そういう情報活動によって、アメリカ側がその情報を基礎にしてたとえば対象国に対して攻撃をかける、こういうことが当然予想されるのです。そうすると平時と違って、極東有事のときにそういうことが続けられれば、実際問題としていわゆるその紛争の一翼を担うことになる。これは非常に重要な点ですから、局長のような役人じゃなしに、大臣の判断を聞きたい。
  361. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 私は、わが国が攻撃を受けましたときには直接の問題になってまいりますが、極東有事の問題になりますといろいろ想定される条件があると思いますので、にわかに私が申し上げるわけにはいきませんが、先ほど政府委員をもって答弁いたさせましたように、平時、有事にかかわらず各種情報の交換はあるし、あり得る、しかし、どういう種類の情報をどういう状態で米側に渡さねばならないか、渡すべきかとか、こういった問題になりますと、いろいろなそのときの情勢を勘案しませんと、いまここでにわかには御答弁はできない、こう考えております。
  362. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これも大変危険なんですね。極東有事のときにそういった情報哨戒活動を続けて、それの情報に基づいて米軍がいわゆる利用して攻撃をかける、これは実際問題として完全に巻き込まれることになる。しかし、いまの御答弁では、その極東有事のときでもやるかもしれない。これは大変危険なことである。その点も、極東有事でも必然的にそういう考えであれば紛争に巻き込まれていく、それを私は指摘をしておきたいと思います。  それから、これは航空自衛隊ですか、C130、これを四機発注中ですね。五六中業では十二機保有する予定である。これは機雷敷設用ですね。
  363. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 C130、御指摘のように五六中業で期間中に十二機をそろえるということで計画を定めておりますが、そのC130はあくまでも輸送用ということで整備をしたいというふうに考えております。
  364. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それは確約できますか。キャメルという機雷投下装置をつける予定ではないのですか。
  365. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 キャメルというものはいわゆる機雷の投下装置でございますが、これは現在米国において開発している、最近終わりたという情報も非公式には聞いておりますが、私どもまだその詳細を存じておりません。したがって、現在そういった結果というものについての関心は持っておりますけれども、いまキャメルを装備するというふうな計画はございません。
  366. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 海峡封鎖用の機雷、これの倉庫は八戸と鹿屋、間違いないですね。
  367. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 八戸にそういった倉庫を有していることは事実でございます。
  368. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 P3Cの前進基地というか訓練基地として、小笠原諸島の硫黄島を考えているのじゃないですか。計画中じゃないですか。
  369. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 現在、わが本土における航空機の教育訓練環境というのは必ずしも十分なものとは言えません。そういった問題点を解決するための一つの手段として、硫黄島にいわゆる訓練が可能なような新設備をつくるということで、逐年計画によってそうした整備を進めておりますが、あくまでも訓練を目的としたものでございまして、現在、倉庫、補給施設等の計画を五十八年度でもお願いしている、こういう状況でございます。
  370. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 訓練基地として整備しても、有事のときにはいつでも前進基地になるんです。  そうすると、この硫黄島のP3C、グアム島のアメリカのP3C、そしてオーストラリアの北部ダーウィン基地のオーストラリアのP3C、ちょうどこれが連動して、西太平洋対潜あるいは哨戒作戦の一元化がそれで完成するんですよ、あなた方が何とおっしゃろうと。そういう体制に向かっていることは事実だ。  もう一つお伺いします。敷設艦の「むろと」、これはグアム島に行ってますね。最近グアム島に行った実績を報告してください。
  371. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 まことに恐縮でございますが、突然のお尋ねでございまして、いま「むろと」という船が現在この時点でどこに行動をしているかということについての資料の持ち合わせがございませんので、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
  372. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 あと二十分ありますから、別の問題に移っておきます。  というのは、この「むろと」は敷設艦になっておるけれども、グアム島に行って何をやっておるか。機雷敷設の訓練をやっている。明確にしてください、あと二十分の間に。
  373. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 「むろと」の行動については別途調べますが、多分その「むろと」という船は、われわれが持っている機雷敷設艦ではないと思いますので、そういうことはあり得ないと思います。
  374. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 そう答えるだろうと思っている。ところが、これは水中音響器とかそういうものを敷設する、わかっているんです、それは。ところがこれで訓練をしている。そこは問題がある。機雷敷設艦は、別に「そうや」というのが一隻あるでしょう。それでは目立つから、「むろと」の方を使っているんじゃないですか。これは証言がある。後ほど報告してください。  それから先ほど問題にいたしました——運輸大臣、こういうことをお聞きしようと思っていたのです。シーレーン絶対守ると総理はおっしゃってますね。船団を守るんでしょうが、運輸省としてはそういう民間の船舶、シーレーンを守るという問題と関連して、その種の有事の場合の立法をいろいろ考えていらっしゃいますか。
  375. 西村(康)政府委員(西村康雄)

    ○西村(康)政府委員 運輸省におきましては、運輸政策との関連で安全保障の問題を検討いたしておりますが、先般、この二月に運輸政策審議会の安全保障部会というところから報告を出してもらいましたが、その場合に、安全保障の諸問題を検討いたしましたが、日本国に対して具体的な外部から武力行使があったような事態における諸問題につきましては、さしあたりは防衛政策等他の政策が中心になって講ぜられることとの関連もありまして、そのような事態における運輸政策のあり方というのは将来の検討課題として残しておりまして、現在のところ、有事法制を直ちにどうだということについては検討いたしておりません。
  376. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これもそうですね。シーレーンを守る守ると言っているが、具体的には何もないのですよ。何もないのです、これは。それもはっきりしたわけですよね。
  377. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    ○長谷川国務大臣 運輸省に海上保安庁はありますが、これはコーストガードで、常時……(楢崎委員「民間の」と呼ぶ)民間の、そういうことでして、有事法制等々は研究はしておりません。
  378. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 同じことですけれども、およそこういう状態の中で、殿だけが向こうへ行って、やあ、シーレーン守ります、守りますと言っているにすぎない。これも、やれもせぬことを言っている一例であります。  次に、先ほど問題にしました日米共同作戦の場合の指揮権の問題です。これは、防衛庁長官、どうなっているんです。
  379. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 細目にわたりましては政府委員から答弁いたさせますが、まず原則論だけ私から答弁をいたします。  あくまで日本有事の場合ほ日米共同して対処することがあり得ますが、その場合といいましても、現在の制度から申しますると、わが国の法制下、わが国の自衛隊は自衛隊として日本の国を守る行為を行いますし、米軍は米軍として日本を、日米安保条約に基づいて日本の自衛隊と共同対処する、こういう形になっております。  なお、それぞれの場合におきまするさらに今日までのただいま申し上げました原則に基づいての細目協議につきましては、政府委員から答弁をいたさせます。
  380. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 御案内のとおり、自衛隊の最高の指揮監督権は内閣総理大臣でございまして、私どもの自衛隊は、総理大臣、それとその指揮監督を受けた防衛庁長官の統括を受けて動いておるわけでございます。  米側との関係におきましては、「日米防衛協力のための指針」に基づきまして、アメリカと日本は別個の系統の指揮系統を持ちまして、それぞれ調整をしながら作戦の円滑な遂行を期すということにしていまして、指揮権はあくまでも日米別個でございます。
  381. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 ところが、実際はそうなってないのですね。だから自衛隊諸君の不満がある。昨年の82リムパックはどうでしたか。私は、きょうはそれをやる予定がなかったから持ってこなかったけれども、昨年のリムパックは、統一指揮官が太平洋軍司令官だ。直接的には第三艦隊の司令官ですよ。これははっきりしている。実際にはそうなるのです。そんな指揮官が別々なのは、実際問題では、言葉では言えてもそんなことはできないのだ。リムパックの問題は別にしますけれども、そうなってないのです。作戦調整所をつくって、三矢作戦のときからずっと明らかになっておるじゃありませんか、統一指揮官はアメリカになる。
  382. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 リムパックに海上自衛隊が参加をいたしたことは事実でございまするが、そのときの対応につきましても、政府委員から詳しく答弁をいたさせます。
  383. 西廣政府委員(西廣整輝)

    西廣政府委員 リムパックのときの指揮命令関係でございますが、たびたび委員会等でお答え申し上げておりますとおり、日本と米国との関係に指揮命令系統はございませんで、調整関係にあるということでございます。
  384. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 そういう言葉のもとにコーディネーターとしてアメリカが上にあるんです、これは。そんなことはここで言葉の上でいかにごまかしても、実態はそうなっている。ユニホームはそれをよく知っているんだ。それも私は指摘をしておきたいと思います。  それから外務大臣、いわゆる特殊兵器の禁止の条約、これは批准はどうなりましたか。
  385. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 大変申しわけございませんが、具体的にどういう条約を御念頭に置いて御指摘になられておられますか。
  386. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これは正式の名前は、特定通常兵器使用制限禁止条約になっておるようですね、おたくの説明では。
  387. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 ただいま手元に資料を持ち合わせてございませんので正確な記憶がございませんが、昨年国会の御承認をいただきまして、批准の手続をとったというふうに記憶しておりますが、正確なところは調べましてまた後刻御報告申し上げたいと思います。
  388. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 あなたはどなた。外務省、防衛庁。大臣、何という答弁ですか、あれは。こういう重要な条約を、さあどうなったか、批准したかもしれません、そんな答弁でいいんですか。何です、それは。明確にしてくださいよ。外務委員は怒りますよ、そういうことを聞いたら。
  389. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 正確を期するために若干御猶予いただきたいと思いますが、昨年国会の御承認をいただきまして批准の手続をとったというふうに承知しております。
  390. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 何月何日にとりました。
  391. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 調べて直ちに御報告します。
  392. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 あと十分ありますから、これもすぐ調べてあれしてください。  いまの条約の議定書のIII、これに該当する兵器の中で、ナパームはどうなっています。
  393. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 焼夷兵器のことをお尋ねだと思いますが、当然のことながら議定書の対象になっております。
  394. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 どうも声が小さいですね。ナパームは該当するんでしょう。  そこで、昨年私が質問をしましたときに、おととし五十六年の暮れにMAPで返還の手続をしておりますと答弁をされました、ナパームを。どうなりました、これは。
  395. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 無償供与でナパーム弾を米軍から供与を受けておりましたが、不用の状況がずっと続いておりましたので、五十七年十二月に米軍に返還しております。
  396. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 何々返還されたんですか。
  397. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 最終に残っておりました弾殻二千三十三でございます。
  398. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 材料は何なんですか。
  399. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 弾殻が一つございます。それから点火器が入っておりまして信管がついておりまして、燃える材料はガソリン、ガソリンをどろどろした状態にするためにゲル化燃料が入っております。
  400. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 完成品として返したのですか。
  401. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 それぞれ別の状況で保存しておりまして、点火器につきましてはすでに五十二年三月に米軍に返還手続をとっております。それから、弾殻を昨年の十二月に返還したわけでございますが、ガソリンは一番最後、弾に詰めます場合につけますので、ガソリンというものは存在してなかったわけでございますが、ゲル化燃料を同時に米軍に返還しております。
  402. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 外務大臣、先ほど明確になったように、これはこの特殊兵器禁止条約の対象になっている弾丸ですよね。今後絶対に保有しませんね。
  403. 栗山政府委員(栗山尚一)

    ○栗山政府委員 先ほどの事実関係からまず御答弁申し上げます。  昨年、国会の御承認をいただきまして、昨年の六月九日に受諾手続をいたしまして、わが国としては国内手続を完了しております。ちなみに、条約自体は二十カ国の批准、受諾がないと発効いたしませんので、現時点におきましてはまだ十七カ国しか条約の加入国がございませんので、条約は発効いたしておりません。  それからもう一つ、条約の中身につきまして御答弁させていただきますと、ナパーム弾の使用を、ただいま条約のテキストを手元に持っておりませんので正確に申し上げることはできませんけれども、ナパーム弾を含めて焼夷兵器自体の使用を全面的に禁止したものではございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  404. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 それは使用区域をいろいろ制限していることはよく知っているのですよ。それで、政治方針として、防衛庁長官でもいい、ナパームは今後絶対持ちませんね。
  405. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    ○安倍国務大臣 条約は遵守しなければなりませんから、条約を結んだ以上は、条約の内容についてはこれはきちっと守っていくというのは当然のことだと思います。
  406. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 日本の自衛隊がアメリカからナパームをMAPで供与を受けだしたのは昭和三十二年、朝鮮戦争が終わってからです。最高六千四百五十八発、これは日本の企業が材料すべてを米軍に納入したのではないかという質問を、私は四十六年当時やりました。そのときの御答弁ではそういう事実はありませんということですが、間違いありませんか、もう一遍確認をいたしておきます。
  407. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 四十六年ごろ、ナパーム弾についていろいろ御質問をいただいた旨の議事録は読ませていただいておりますが、ちょっと日本で生産して納めたものかどうかについては、調べてみた上で御返事させていただきたいと思います。
  408. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 その当時はそういう事実はないという答弁であったが、いまはもう一遍調べ直すということですか。
  409. 木下政府委員(木下敬之助)

    木下政府委員 その当時にかような答弁を申し上げたということであれば、多分そうだと思いますが、もう一度調べて御返事させていただきます。
  410. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 日本の企業がつくっていたのですよ、これは。いいですか、資料がこれだけある。一九七五年発行のSIPRI、これは御存じのとおり、ストックホルムの国際平和研究所の専門書である「インセンディアリー・ウエポンズ」つまり「焼夷武器」、これの四十三ページに朝鮮戦争に関する記述があります。その中でこういう記述があります。「一九五〇年六月には、米国極東空軍資材調達本部は、日本においてナパームタンクを調達することが決定されていた。新しく解放された朝鮮の町や産業(それらの多くは日本人によって建設された)を破壊するために使用されたナパーム弾の生産が日本経済再建の端緒の一つになったことはまことに皮肉である。」と明確にある。  それから、昭和二十八年四月発行の「別冊エコノミスト」百二十ページ、百二十四ページ。「これは米軍のJPAの直接調達方式による。昭和二十六年じゅうに日本冶金に対し、ナパーム用、地雷用バスター三万二千ドルの発注がなされた。米軍発注のナパームタンクは富士車輛によって生産された。」  それから、現在陸上自衛隊普通科連隊が装備している携帯の火炎放射機、これの原料は同じですよ。ゲル化油です。だから、材料はあるのですね。信管もつくっている。私が言いたいのは、このナパーム弾というのは、わかりやすく言えば、ビール瓶に揮発油を詰めたあの火炎瓶、あれと同じ理屈なのですよ。すぐできるのだ。そして、現にナパームがいろいろな形で保存されているという証言もあります。このことだけ私は明確にしておきたいと思います、おたくの方の反論と違うから。  それで、あと残ったものの答弁だけ聞いて終わります。
  411. 夏目政府委員(夏目晴雄)

    ○夏目政府委員 先ほど御指摘のありました敷設艦「むろと」、これは各種の海洋観測機材を積んだ船でございます。ここ数年間毎年一回いわゆるハワイ訓練と称して電纜の敷設、揚収の訓練に行っております。それはなぜ行っているかと申しますと……(楢崎委員「グアムに」と呼ぶ)はい、グアムに。わが国の周辺では航行船舶が多いということ、あるいは米軍の指導が受けられるということ、あるいは米軍の電纜を借りられるというふうなメリットがあるためにそういった形態をとった訓練を毎年実施している、本年も実施したいというふうに考えております。
  412. 楢崎委員(楢崎弥之助)

    ○楢崎委員 これで終わりますが、先ほど申し上げたとおり、これは機雷の敷設の訓練を実際はやっている、このことだけ明確に申し上げまして、終わります。
  413. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  414. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 通産大臣が所用があって急ぐようでありますから、先にお伺いをしてまいりたいと思います。  現在の、いわゆるOPECの石油の値下げによる影響ということで、景気のことあるいはいろいろな分野から問われていると思うのであります。これはきょうの新聞にも載っておりますが、ここに書いてある言葉をかりて言うならば「慎重な姿勢を示していた山中貞則通産相が、一転して料金値下げに積極的な姿勢を見せたこと」あとは省略しますが、この報道は間違いないと言っていいですか。
  415. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 受け取られ方によってはそういうふうに受け取られたかもしれません。いまは電力料金の問題でしょう。(沢田委員「ええ、電力料金」と呼ぶ)これは、石油のOPECの国際カルテルが事実上いま崩壊していますね。したがって、その結果、長期展望では石油値下がりは経済指標その他いいものを与えてくれると思うが、他面デメリット等もあるかもしれないのでいま通産省の中で検討を始めた。  電気料金の質問がありました。そこで、この石油の値下がり、最高値に対しての値下がりで、まだまだ値上がりしているわけですけれども、この環境をしかと受けとめて、これの最終的な恩典の受益者は国民でなければならない。この恩典は経済活動の活性化その他も含めて国民に還元すべきものである。電力料金についてはその一環であります、一つのファクターであることは間違いないと言ったので、私はそのときに、前の委員会答弁と私の答弁とは変わっていないということでございます。
  416. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 そのお答えで十分だと思うのでありますが、言うなら消費者に還元をする、こういう原則である。ちなみに、私も、そうお答えが出るのかどうかわかりませんでしたが、一応各社の前年度利益を見てまいりましたが、いわゆる売上高に対して総利益でありますが、東京電力が二〇%、関西が二四%、中部電力が二一%、それから東北電力が二五%、九州が二三%、中国が一八・五%、それから北陸が二六・四%、北海道が二七・八%、四国が二二・五%、これだけあの当時のいわゆる一バレル当たりのドル相場といいますかドル高、円安の状態においてもそういう状況であった。ですから、当然その点は消費者に還元されるという原則が確立されなければならない、このように考えていたわけでありますが、くしくも一致をいたしました。経済効果その他の問題は、これはまた別の角度からひとつその効果を大いに生かしていただきたい、こういうふうに思いますけれども、要するに電力の利益がほかに還元というか、ほかに転化しないように、消費者にひとつ十分に還元できるように最大の努力を払っていただくことをお誓いいただいて、私の通産大臣への質問は終わりたいと思います。
  417. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 ちょっとそこは待ってください。  私の言っているのは、石油の値下がり、これが恒久的なものであり、一方為替変動は、ちょっと私は円高になる要素の方が多いと思っているのですが、どうも投機筋等の動きもあって円安の方に動いている現象、こういうもの等がいろいろありまして、前のときに円高の差益と申しますか、そういうもので電力料金引き下げをいたしましたが、一年半後には五〇%また値上げをしたという轍は繰り返したくない。ですから、電力会社個々に当期利益の計上はありましょうが、過去の累積の円の安かったこと、高くなったこと、あるいはまたそれ以外にも設備投資その他もいろいろとやっておりますから、そういうものをきちんとして電力料金というものは扱わなければならない。しかし、私の言っている国民に還元すべきものというのは、今回石油の値下がりによる長期展望がわが国経済に貢献する、これは明らかでありますから、その最終的な果実はいろいろな意味において国民大衆に還元されなければならない、いわゆる国民が幸せになる、国民が少しでも生活が楽になる方向に進めなければならない、基本理念を申し上げているわけでございます。
  418. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 終わりにしたかったのでありますが、何かちょっとそこで言いかえられてしまうと困ってしまうのですが、原則はやはり消費者還元である。もちろん他の経済的な条件あるいはまたOPECが違った決定をするかもわかりませんし、円相場も変わるかもわかりません。そういうことはありますけれども、ただ、先ほど述べたように、前年度の実績からいってもこれだけのいわゆる利益を上げているのだから、現在はなおさらその余分の分だけは最小限度消費者に還元できるであろうという、先まで読んだつもりで私は言ったのであります。  なお、ちなみに減価償却の累計を見ましても、これは後でお調べになっていただければわかりますが、とにかく建物、設備等の二分の一を減価償却に回しているのです。こういう企業はないですよ。どんなことを言ったって、六十年、八十年の建物が二分の一も減価償却ができるということはあり得ないです、普通の企業の形態から言ったら。全体の固定資産から言っても、三割の償却ができている。いわゆる償却分そのものは完全に他にこれは利益に上がってくるわけなんでありますから、そういう意味において独占企業という性格も含めて考えてみますると、やはりより一層の監視監督というものが必要であって、何か電力業界ではこれは据え置きだと言っているようでありますが、そういうことには耳を傾ける必要はないのであって、それはエゴというものだと思いますから、ぜひその点に向かってひとつ進めていただきたいと思います。やむを得ない事情があるようでありますから、お答えをいただいて、御退場をいただいて結構であります。
  419. 山中国務大臣(山中貞則)

    ○山中国務大臣 どうも沢田さん、一方的に引っ張っていかないでよ。電力会社というのは、確かにそういう経営上の問題は承知しておりますが、一方、エネルギー、石油の値下がりによるダイレクトの恩典の受け方がいまきわめて少なくなっているわけですね、石炭に切りかえたために。したがって、電力料金一本を取り出して言われると、方向はそういう方向であるし、一つのファクターであるが、その前に今度は、石油会社というものはどうすべきか、あるいは石油の流れですね、末端のガソリンスタンドに至るまでの問題とか、いろいろと多くの面で検討しなければならない。そういう意味で、最終的に国民がその受益は受けるものであるということで、その一環に電力料金も入っております。電力会社が主張することは勝手です。勝手ですが、電力会社は、公共料金であって公的な機関でありますから、やはり公の立場で物を言わないと、余り純資本家的な発想で軽々に物を言ってもらっては困るというのが担当大臣の私の少し苦々しく思っている点でございます。
  420. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 結構です。どうぞお帰りいただいて結構です。  では続いて、実は先般、先輩でもありますが、稲葉委員から質問がありました点について、法制局長官に若干お伺いをしてまいりたいと思います。  一つは、いわゆる国民徴用制度の問題でありますが、ひとつ確認していきますと、「そういう制度は現憲法下においては許されないであろうということを申し上げました。」これはそのとおり理解してよろしゅうございますか。
  421. 角田(禮)政府委員(角田禮次郎)

    ○角田(禮)政府委員 一昨年、参議院の予算委員会で寺田委員から御質問がありまして、かつて総動員法に基づく国民徴用制度があったわけですが、それは現在の憲法下で許されるか許されないかという御質問がございまして、私はそのとき、そういうものは許されないということを申し上げました。その点は全然変わっておりません。
  422. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 遠いから、きょうだけでもどうぞこっちに座ってください、あと幾つか続くわけですから。ほかの大臣の方には申しわけありませんが、そういう続く関係で、上の方へ座らせてもらいます。  重ねてですが、自衛隊法の百三条に基づく従事命令の制度、特に人だけに私は限定するわけでありますが、この制度だとか云々というようなものがあります。これらについては、政府としては「合憲であるという立場をとっていることは、これも御承知のとおりだと思います。」こういうふうに言われているわけですが、自衛隊法の第百三条に基づく、品物の方はある程度わかるのであります、しかし人間について、すべての人間が同じ条件の中において従事命令を受けるということについては、私は疑義を持っているのであります。その点は、どういう解釈をなさっておられるのか、お答えをいただきたい。  もう一回申し上げましょう。この法律を読むと長くなりますから、百三条は申し上げません。いわゆる従事命令はオールマイティーではない。ある特定の条件のもとにおいて、特定の約束といいますか、そういう中において行われる従事命令である、こういうふうに解釈をするわけですが、これはいかがでしょう。
  423. 角田(禮)政府委員(角田禮次郎)

    ○角田(禮)政府委員 百三条の二項は、御指摘のとおり、ある特定の条件のもとにおいて特定の人に対して従事命令を出す制度であります。そういう百三条の二項は、私ども政府としてはかねてから合憲であるという前提に立っているというふうに申し上げたと思います。
  424. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 自衛隊法百三条はそこまで決めてありませんけれども、例を挙げれば、拒否権は果たしてあるのかないのか。腹が痛い、ですからお断りをいたします、きょうはやむを得ない用があります、用があるというと語弊がありますが、親が危篤ですというような場合に、当然これは従事命令について、パーフェクトなものではないので、やはりそれは拒否といいますか、お断りをする、そういう権利を持っているものであると思いますが、いかがですか。
  425. 佐々政府委員(佐々淳行)

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  この百三条の問題は、まだ実は防衛庁内部において検討いたしておりまして、法制局の有権解釈をいただいておりませんので、防衛庁限りの解釈ということでお聞きいただきますが、先生御指摘のように、民間人すべてに対して業務従事命令が出せるという性格のものではございません。御承知のように、百三条に明示されておりますように、医療関係、土木建築関係及び輸送関係の業務、こういう関係の業務に従事しておる者に対して、都道府県知事に対し業務従事命令を出すよう要請することができる、こういう民間人の中の特定の業種であるということが一つ。それから、もう一つ大きな制限といたしまして、いわゆる戦闘地域、これは総理大臣が戦闘地域として告示をした地域以外の地域でないと従事命令が出せないという制約がございます。  さらに、先ほど先生御指摘のとおり、土地の使用、建物の使用あるいは物資の収用、この物に関しましては、災害救助法二十六条のそういう保管命令等に違反した場合、これに準じて若干の制裁規定を設けることが可能であろうかと思いますが、人に対する従事命令、ただいま御設問のような、拒否権があるかというお尋ねでございますが、これは特に戦闘地域、一項地域か二項地域かわからないというようないろいろなむずかしい問題がございますので、この問題については慎重に考えるべきであろう。したがって、従事命令に従わなかった場合、罰則を科すべきかどうかについては、非常に慎重な見解を防衛庁はとっておるところでございます。  繰り返して申し上げますが、これはまだ法制局に意見具申をしておりませんので、政府の有権解釈というわけではございませんが、防衛庁はさように慎重な姿勢で臨んでおります。
  426. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 いまの見解は、若干問題はありましても防衛庁長官としてはそのとおりの解釈でいいと思っておりますか。
  427. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 ただいま政府委員から答弁をいたしたとおりでございまして、これはまだ防衛庁内部だけの解釈でございますが、現在のところ、さらに詰めていく問題点はあろうかと存じますが、現在政府委員が答弁いたしたとおりのことでございます。
  428. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 なぜこういうことを聞くかというと、総理発言は、きわめて外へはみ出る、はみ出るという状況がありますので、何でも解釈をまたはみ出して、あちこちへ行って言ったことを取り消すわけにはいかないものですから、今度は力でそれを押し伏せて承諾させるという傾向もなくはありませんので、法制局までそんなことをされたのではこれは大変なことになりますから、念のために確認をしていこう、こういうことであります。  いま言われた中で、私、念を押しますが、三項目の中には「又は政令で定める者の指定した業務に従事させる場合について準用する。」という項目があります。いまの答弁では、これは入っていないということになるわけなんでありますが、その点は、この準用という内容であります。この準用という法律用語の定める意味は、前の輸送、土木、医療、その内容とは性格が異なる、答弁をわざわざ避けたのかもしれませんが、あるいはこれは考えてない分野だ、万が一の場合について考えた条項だという意味で答弁を外したものだと思っておりますが、そういうふうに理解をしていいのか、それから「準用する」という意味は、この場合もし考えがあるならばどういう意味なのか、その点お答えをいただきたいと思います。
  429. 佐々政府委員(佐々淳行)

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先ほどお答え申し上げましたような三種類の業務について現在検討中という段階で、それ以外の、準用の対象になるようなその他のもの、ここまではまだ考えが及んでおりませんので、現時点においては三業種に限るというふうに私どもは考えております。  それから、ついでに、先ほどのおなかが痛いとか病気とか、そういうときどうするんだというお話がございましたが、業務従事命令に応ずることができない場合の手続として、病気であるとか災害その他やむを得ない事故により業務に従事することができない場合には、その理由を付して都道府県知事に申し出てもらった場合には、都道府県知事がその状況を適当でないと判断した場合にはその従事命令を取り消すことができる、そういう考え方を、将来政令がもし制定される時期が参りましたならば盛り込みたい、かように考えております。
  430. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 この政令は、きわめて日本国民の人権なりあるいは権利その他に多大な影響を与える内容であります。これがいつの間にか防衛庁で政令ができてしまってそのままが施行されていくという事態になりますと、国民の権利義務に与える影響はきわめて大きいものがあります。物はもちろんでありますが、人間についても同様なことが言えるわけでありますので、少なくともそれらの政令を定めようとするときには、あらかじめそれぞれの関係委員会等にかけるとまでは言えないのですけれども、意向を十分聴取する、そういう気持ちがあるかどうか、そういう考えがあるかどうか、これは防衛庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  431. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 ただいまここで御審議いただいておりまする自衛隊法百三条は、その規定内容は災害救助法の規定とほぼ同じ考え方に立っておるものでございます。しかしながら、先ほど来政府委員が答弁いたしておりまするように、この百三条の中身につきましてはまだ防衛庁内部でも詰め切っておりませんが、これを鋭意詰めていかなければならないと存じます。その結果、どういうふうな詰め方に終わるか、いまここでは予測はできませんが、その過程におきまして、必要あればただいま先生の御指摘のような手続もいたしたい、こう考えております。
  432. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 もう一つですが、この第六項では行政不服審査法による不服申し立ての権利を抹消しているわけであります。いまの答弁の中では、行政不服審査法の手続はできないけれども、その事情を添付して、それぞれの管轄官かだれかがいるのでしょうけれども、そこへ届ければ、実際にそれが許容されるかどうかは別問題として、一応手続は可能である。いいとまでは言わないでしょうが、事情があってお断りをするということの行為そのものは可能である、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  433. 佐々政府委員(佐々淳行)

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  そういう御解釈で結構であろうか、私どもはそういう補完措置ということでそういう届け出制による免除という可能性を残しておこう、かように考えておる次第でございます。
  434. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 続いて、今度、今後の年金問題について若干お伺いをしてまいりたいと思います。  ともかくいま掛金を掛けている人が二十年後自分の年金はどうなるのであろうかと大変不安を持っている実態にある。いま二十歳や三十歳ぐらいの人にしてみても四十歳ぐらいの人にしてみても、果たしてこれから掛金を掛けていって、おれたちは年金もらえるんだろうかということを素朴にわれわれも質問を受けるのであります。心配ないですという言葉は言っていますけれども、きわめて財政状況は、ここで細かく私が述べるまでもなく、憂慮すべき状況にある。しかも一方、老齢化は急テンポに進んでいっている。こういう状況を考えてまいりますと、いま政府が提案しているような方向で果たしていいのかどうか。いま法律案出ておりますが、大蔵の方にいまかかっておりますね、電電、国鉄、専売の統合化の法案。これからですか。これから出す予定になっているでしょう。それから、地方公務員の全国一本化の法律案が一つ自治省の方で考えられているでしょう。そこまでは大体予定の日程にあると考えてよろしいですか。ではまず、そこからいきます。
  435. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田委員の御質問お答え申し上げます。  実は国家公務員の年金と三公社の年金を一本にするという問題は、担当は大蔵大臣ということになっておりますし、地方公務員の共済法の改正は自治大臣の御担当ということになっておりますが、私が年金担当大臣ということでございますから、便宜私からいまの進み方を申し上げますならば、いま御指摘のようなことで、この国会に国家公務員と三公社の年金の統合をやっていこうという法案を目下準備中でございますし、地方公務員の共済年金につきましても自治省において鋭意努力をしておられる、この国会にお願いをしたい、こういうふうに私は承っているところでございます。
  436. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 それだけでは事が済まないのでありまして、その後は今度は厚生年金なり国民年金なりにも手を触れなければならない時期がすぐ来る。新聞の報道では、いわゆる勤められている、国家公務員もそうですが、奥さんを全部国民年金に入れたいというような報道もされておりますが、そういう考えはお持ちになっておられるわけですか。
  437. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田委員の御質問お答え申し上げます。  先ほど今国会の話を申し上げましたが、厚生年金と国民年金の統合の問題を五十九年の国会にはお願いをしたいという形で目下鋭意厚生省の中におきましていろいろなところで検討をしているところでございます。その中には、最初にお話のございましたところの給付の問題、高齢化に備えてどうしていくかというような諸問題と同時に、いま御指摘のございました婦人の問題をどういうふうにしてやっていくか、これも非常に大きな問題でございますから、この問題も含めて、いま鋭意検討中でございます。
  438. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 これは検討中ということだけでは済まないのでありまして、いわゆる日本の年金を世帯年金で統一をするのか、個人年金で統一をするのかという、これは基本的な一つの大前提なんですね。これは途中から変わっていいというものではないので、いわゆる年金の骨幹に触れる問題なのであります。ですから、たくさんの問題があるわけです。私は挙げてもいいが、支給年齢の相違がありますね、それから男女差の問題がある、掛金がある、成熟度がある、それから遺族年金問題ももちろんある、それから併給問題がある。挙げていくと、私が挙げても十七項目ぐらいの問題がある。特別割り増しの手当の問題もあるというようなことで、一つ一つこれをならしていくということは一年、二年でできる作業ではないだろう、やはりそれぞれよって来った歴史というものがあり、過程がある。  御承知でしょうが、日本の年金は軍人恩給に始まったわけでありますから、基本が軍人恩給の思想に基づいてきているわけですから、そういう条件の中で、結果的に考えた場合に軍人恩給との関係をどうするか、あるいは文官恩給も含めてどうなるか、こういうことが総合的に考えられなければならない場合に、どうしても個人と世帯の区分はいまからきちんとした発想をしませんと、戸惑ってしまうわけですね。もういま国民年金でも、もらえなくなりそうだからって、脱退者が何百万人か出ている。これは細かい数字はお調べになっていただけばわかりますが、そういう状況もあるわけであります。ですから、その点はただ検討だけで済まされないので、これはいまの政府としてはこの方向で行くんだ、これから二十年後あるいは三十年後の年金のことをいま議論しているわけですから、皆さんの掛けた掛金はこうなるんです、これをいま言おうとしているわけですから、そのときには個人年金になるのですか世帯年金になるのですかという質問に対しては、どちらなんですか。
  439. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田委員の御質問お答え申し上げます。  ただいま沢田先生から御指摘のありましたように、この問題、いろいろな点で差異がございますし、それぞれまた歴史的な発生過程、いままでの成熟過程というものも違っているわけでございまして、そういったものを総合的に勘案しまして、どちらにするかということを決めていかなければならない問題だろうと思います。そういった意味で、どちらにしていったら一番よくまとまっていくであろうかということを考えながら、目下鋭意検討しているわけでございまして、将来的には、お話にございました恩給、いまは共済年金でございますが、そういったものとも全部一本化したような年金というものをわれわれは将来の目標として考えているところでございます。
  440. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 そこで、日本型の福祉という言葉がよく使われるわけであります。これは厚生大臣だけでなく答弁いただかなくちゃならぬのでありますが、私は、世帯年金で日本型の年金は行くべきだと思っているわけです。個人年金はなじまない、男女の労働する場所というものも違う、労働条件も違うし、地域的な環境も違う。ですから、日本の年金制度はやはり世帯で行くのが筋道じゃないかという考えを持っております。これを個人年金にすることは、言うならきわめてむずかしい条件を持ってくるだろうというふうに思いますが、これは後で検討されるということでありますから、お答えいただけないので残念でありますが、その場合、どうしても考えられることが、世帯年金で行きます場合に、このままでいきますと、厚生年金でも、十万円で換算すると一万七千円見当、二十万円でいけば三万四千円ぐらいの掛金、これは個人負担の方でですよ、労使で三四%ぐらいになりますから、結果的には一万七千円見当になってしまう、十万円で行きますと。そのような掛金になったときの可処分の所得を日本ではどの程度に押さえることが妥当なのか、このことの構想なくして年金のことはやはり論ぜられないのであります。税金を幾ら取られるのだ、長期で幾ら取られるのだ、短期の健康保険で幾ら取られるのだ、地方税が加わりますが、その点でもらった給料で幾ら残るのですか。何でも上げればいいというわけにもいかない。そうすると、最小限度、スウェーデン、デンマークのように学校もただです、何でも皆ただです、家賃もただです、それで五〇%ということになれば話はまた別かもわかりませんが、そういうことにならないとすれば、ある一定限度に抑えなければならぬ。それをどの程度に抑えていくことが日本型福祉と言われているものの実態になるのか。その辺の構想はどういうふうにお考えになっておられますか。
  441. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田議員の御質問お答え申し上げます。  いま沢田議員からお話がございまして、自分としては、個人よりは世帯別に考えた方がよろしいというお話がございました。先生は大変お詳しい方でございますから、貴重な御意見として私も承っておきたいと思います。  いまのお話の、どの程度のことにするかというのが、これもまた非常に大きな問題でございまして、いま先生御指摘のように、年金をもらうところのお年寄りと若い夫婦というものほどの程度のものの負担にしたらよろしいであろうか。また、国際的な水準の問題もありますから、そういったものを全体的に総合的に勘案をしていかなければならないのではないかと思います。  ただ、非常に抽象的な話になりますけれども、先生のお言葉をかりて申し上げますならば、日本型福祉社会、こういうことになると、やはりそのお互いの世代の中で、お年寄り夫婦と一緒に住んでいるときのお年寄りの支出の割合と、若い人がもらってくるところの支出の割合、それは一体、大体どのぐらいになるだろうかというようなことは、私は、一つの目安として考えてもいいのではないだろうか、こういうふうに考えているところでございます。申し上げるまでもありませんけれども、単に自分の家族の中のどうだということではなくて、日本の貯蓄形態であるとか、将来におけるところの租税の負担率であるとかそういったものも総合的に考えていかなければならない問題でございますので、いま御指摘の点も踏まえまして、いま鋭意検討中でございます。
  442. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 今度法案が提案されるに当たって、国鉄は赤字でどうにもならなくなりますよ、電電は、子連れの四十のうば桜のところへ、二十八歳か三十歳の人が婿に入れということを勧めるようなものですから、しかも借金もしょっている。そこに、おまえ婿に行かないかと言ったって、これはなかなかうんと言わないですわ、人情として。何もそんな貧乏人のところへ、三十の若い人が四十幾つかのうば桜のところへ婿に行けと言ったって、これはなかなか行かない。これは心理的にもそういうものが残っていくだろうと思うのです。それはある段階において解決してしまえばよかったものが、とにかく破産寸前の状況になってきて、あわてて持ってきた。縁談を幾ら持っていっても、片方は嫌だと言うのは常識だと思うのです。それを一つ一つ解決していくという方式をとったのでは、炭鉱があり、船舶があり、いま言った自衛隊があり、軍人恩給があり、これは大変なものなんですね、職種的に言っても。ですから、これを調整することはきわめて困難だ。十年戦争、十年戦争でもまとまらないだろうと思う。ですから、これをまとめていくためには、いま言った、将来の形はこうなりますと。私は結論的に言うと、政府の出す金は、今年度段階における社会保障費の絶対額で、あとスライドは別ですよ、物価スライドは別として、総額はその程度で抑えていいだろう、それほどふやさぬでいいだろうと思う。その枠内でやっていける方法を考えていかなければ、これはなかなか、防衛費ばかり出すというのはだめですよ、それは。やはりお互いが縮んでいこうというときには、いま言った絶対額は一応その基準にしながら、その中でどう老後の安定を二十年後与えていくか、こういうことの発想を明らかにすることがいまの年金制度を守ることにつながるんだと思うのですね。  私の方がはしょり過ぎているのかもわかりませんけれども、話として、たとえば自治大臣の方にお伺いしますが、大牟田にしても呉にしても海軍工廠などから引き継いだ市役所その他は全部赤字でしょう。やはりそういう歴史的な条件を持っているわけですよね。それは自治大臣もそういうことで全国統一をしなければならぬということになるわけです。遺族年金一つ例にとったって、地方公務員は四百万までいいけれども、国家公務員は二百四十万だよ、こういうことにもなる。全部これをそろえていくためには、みんな上に上げていってそろえれば文句はないでしょうけれども、いまの段階でいったらだんだん下に下にそろえていかなければならなくなってしまうでしょう。これじゃ皆不満がつのるばかりですよ、どうやってみても。五十歳からもらえるところもあれば、四十五歳からもらえるところもあれば、五十五歳もあれば、六十歳もあれば、六十五歳もある、こういう支給年齢でしょう。これを一本にそろえるということになったら、これも大変な騒ぎだと思う。だから、そういういろいろな各種のそれぞれの持ってきた歴史的な過程の条件をおじやにしちゃってぐじゃぐじゃっとしてやるというわけにはいかない。ですから、私は少なくても二十年後ぐらいに年金もらえる人にこれだけは保障をしますということを政府として示さなければいけない。これは私学も同じ、農林も同じですよ。それから、もちろん自衛隊である防衛庁も同じ。それは各省がそれぞれ持っている年金体制について、二十年後の年金はあなたはこれだけもらえます、これは保障します、これを確定することだと思うのです。  それで、ちなみにこれはまだまだ私の私案の私案なんでありますが、きょうのテレビの放送でいきますと、勤労者の平均所得四百七十一万という数字をきょう発表されておりました。現場で掛金を掛けている人から見れば、これは安い方がいい。それから、老後になってもらうときは多い方がいいに決まっているのですね。これは完全にそういう矛盾しているものを持っておるわけです。ですから、その平均勤労所得まで保障をしていくという体制で、それ以上の所得のある人は年金分をその分だけがまんしてもらう。四百七十一万がいま平均給与だということなら、四百七十一万以上、一千万もらっている人も、そして年金もらっている人もいるわけですから、四百七十一万以上もらっている人は四百七十一万分だけでがまんをしてもらう。国民の平均所得によって水準を、お互いががまんをする。社長さんやっていた人もいるし、代議士もいるかもしれぬけれども、それは老後、じいちゃんぱあちゃんになっちゃってるんだから、少しはがまんしてもらって、その水準でいってもらう。それで、所得があればその分はある程度年金財源を削減をする。  私がいま言った四百七十一万、これは特に営業所得と——若干長くなっちゃってあれですが、いわゆる自営業の所得がありますね。いわゆる自営業の営業所得と農業所得、これはクロヨンとか何か言われている所得の捕捉率の差がありますから、二割の差をつける。そういう形で、これはスライドしていきますから、二十年後も四日七十一万になるわけじゃないのですよ、だけれども、その程度まで考えて、一千万ある人は、四百七十一万、ゼロなんですよ。そういう形で年金額をある程度圧縮をする。しかし、政府から出す金は現在時点で抑えます。そのかわり陸軍大将五百八十一万もがまんしてもらう。すべてそれを一つの基準に、全勤労者の水準に合わせながら、そして掛金も可処分所得を少なくさせないように抑え、老後の不安も与えない、そういう両立する案は、私はいろいろ考えてみた結果、自分でこういうことを言えば自分もマイナスになるとは思っていますよ。被害を受ける人から見れば反対されると思うのです。国会議員の皆さんも同じだと思うのですね。しかし、そうしなければ二十年後の年金をきちんと保障することはできなくなるのじゃないか。それをいまからぼちぼち合わせていってもどうにもならぬ。だから、そのスタイルだけはきちっと決めて、四百七十一万は保障します、保障の仕方はいろいろあります、保障の仕方はいま言ったように、給料で働いて保障する人もいるでしょうし、あるいは土地を売るなりして保障される人もいるでしょう。しかし四百七十一万は保障しましょう、そういう約束をしていくことが政治になるのじゃないのか。何かどうもおっつけていく形ばかりがすべてではない、私はこういうふうに思うのですが、ひとついかがでしょうか。
  443. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田先生の御質問お答えいたしますが、いまの先生のお話は、私は御提案として非常に興味深く拝聴した次第でございます。  いまのお話で、四百七十一万円というのが一般の平均水準である、そこまでは何とかやっていこう、こういうふうな話でするということにしますと、確かにそれはそういったことも考えられるかな。しかし、それ以下だったならば年金でやる。お年寄りになっても働いている人は、一生懸命働いても同じだけしかないではないかということになると、勤労意欲をそぐというような話も出てくるわけではないかと思う点がありますし、また年金以外の所得を正確に一人一人に当たりまして把握することがどの程度までやれるか。いまクロヨンというお話がございましたが、その所得を一人一人つかまえていくことというのが技術的に果たしてどうであろうか。私はそのほかにもいろいろな問題があるだろうと思うのです。  そういったような問題を含めまして、私としてはいまの御提案は非常にすぐれた御提案、特に先生は、どちらかというと財政当局の立場に立っていただいて、本当に国の財政を憂えていまのような御発想が出てきたのだろうと思いますので、私もその辺は十分に考えて勉強させていただきたい、こういうふうに考えております。
  444. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 これはもうレクチュアしたし、プリントも渡したのですから、ある程度の明確な方向を示してもらいたいという気持ちがするのですが、四百七十一万というのは、現在は百七十八万から二百万が平均の年金額なんですね、現在でいけば。現在はそういうところが相場なんです。あと二百七十一万働く分までは、じゃ老後働いて、勤めて十五万円ずつ働いたと仮定して百八十万ですよ。えらい人は別ですよ、特別クラスは。一般の勤労者階層として見れば、第二の人生で働いて普通十五万くらいが関の山か二十万くらいですよ。そうすると、二十万としたって二百四十万ですよ。四百八十万ですよ。その場合切られる金額は九万円ですね。その場合は九万円。それで勤労意欲がなくなるかどうかということは、私は寿命との問題では解決できる。人間というのは働きますよ。不思議なものです。でなければ町内会のために骨を折るし、あるいは社会福祉のために骨を折るし、それはぼんやりしていれば老化してしまうんですから。やはり働くことが健康のもとになるわけですから。ですから、そういう意味において私は、そうしなければどうにもならなくなるだろうということなんですよ、そういう形をとらなければ。だから、年金だけでいったら二百万ぐらいになってしまうんです。いまの時点でそのことを翻訳すれば二百万でいくわけです。あとの二百七十一万は働いて、さらに二割サラリーマンの場合はいいということですからね。ただそれでは掛金が——多ければいいに決まっているんです。しかし、掛金がどんどんそれで上がって老若戦争が起きないかどうかということなんです。納得させられるかどうかということなんです。だから、一般の勤労者の生活水準でお互いががまんをするというのが、掛金が上がっていく人にも理解を求められるし、それからお二人になった老後の生活の保障もできる道につながるのではないか。問題はどうやって安心を与えるかということなのですよ。数字じゃないのです。いまの四七一がすべてでないと思いますよ。いろいろ数字は変わっていって結構だと思うのですよ。しかし、問題は、いま掛けている掛金で、どんどん掛金は上がる一方じゃないか、もらえる方も不安じゃないかというのは政治じゃないと私は言いたい。それは少なくとも二十年後はこれだけは最低保障いたします、いわゆる毎月勤労統計の示されている数字の一・七なら一・七は保障しますということを約束していくことが政治じゃないかというのが、私の具体的な例示をして示した案なのであります。それをぜひひとつ国民に示してやるのが、いま私は厚生大臣に課せられた任務だと思う。ここで言葉を濁してはだめですよ。そこがやはり将来の展望の政治家の政治家たるゆえんの道だと私は思います。いかがですか。
  445. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田委員の御意見、非常に私も同感を覚えるところが多々あるわけでございまして、やはり老後の生活に対して不安のないようなことをやっていくというのが、私はお互いが年金をやっていかなければならないところの一つの大きな目的だろうと思うわけでありまして、それをいま先生のお話がありましたように、四百七十一万円に対してそこまでやるかどうかとか、こういうことになりますと、私はなかなかいまの段階では言えませんが、やはり老後の生活は公的年金によってこれだけはやれます、また、そのほかに勤労をいろいろされる方は、それは別の話でありますから、その所得と加算してどういうふうになりますというような大まかなことをするのは、私はいままさに年金問題としてやらなければならない一番大きな問題のように思っているところでございます。
  446. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 あと他の、いままでの議論の中で、きわめて限られた時間でありますけれども、それぞれ年金を持っておられるわけでありますから、みずからの年金の中で婿に行かない方になるのか、いや婿に行ってもいいというふうにお考えになるのか、一言ずつ、婿に行く、行かないという返事じゃないでしょうけれども、とにかくお互いが助け合っていく立場に立つか、それとも独自の道を歩むか、それでみずからが、それぞれが滅びるか。いずれの道を選択されるか、それぞれ所管されている大臣から一言ずつお答えをいただきたい。順を申し上げます。文部大臣、運輸大臣、郵政大臣、防衛庁、総理府、以上一言ずつお答えをいただきたいと思います。
  447. 瀬戸山国務大臣(瀬戸山三男)

    ○瀬戸山国務大臣 文部行所管といいますと、私学関係、御承知のとおりでございます。いま沢田さんの御意見を聞いて、率直に言って、非常にとうとい御意見だと拝聴いたしました。申し上げるまでもなく、これから高齢化社会に向かって、年金制度全般を見直す時期に来ておる、そういう意味で、いまの御意見等を参考にしながら検討していきたい、かように考えております。
  448. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    ○長谷川国務大臣 年金問題は大事なことでございます。しかも、私の方は、国鉄再建のために国鉄の共済の問題等々がございますので、お話しのように、今度の国会に提案いたしますのにぜひひとつ御審議のほどをお願いしたいと思います。やはり負担と給付の関係の調和ということが大事だと思いますので、これはお話のありましたようなことなども考えつつ、年金担当の大臣を中心に善処してまいりたい、こう思っております。
  449. 桧垣国務大臣(桧垣徳太郎)

    ○桧垣国務大臣 御指摘のように、高齢化社会に向かっていきます日本の年金制度としては、全国民が助け合う年金制度という方向をとるべきであろうと思いますが、現実にはそれぞれの公的年金あるいは共済年金、いずれも歴史的な沿革が違い、また財政事情、成熟度が違い、したがって、掛金率あるいは給付も違うわけでございますので、これらは加入者、保険者の理解を得るように、できるだけの話し合いをしながら、高次元の立場に立ちながら、将来の姿に近づく努力をしていくということが大事であろうと思っております。
  450. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 公的年金制度の一元化については、年金財政等の現状から見てやむを得ないものとは受けとめております。しかしながら、今後その過程におきまして急激な組合員の負担増につながる形にならないようなことをわれわれとしてはぜひお願いしていきたいと存じますと同時に、防衛庁といたしましては、職務の特性ということもあわせて判断をしていかなければならぬ。このことにつきましては関係の機関と十分話し合いを詰めていかなければならぬ問題だ、かように考えております。
  451. 丹羽国務大臣(丹羽兵助)

    ○丹羽国務大臣 沢田先生のお尋ねお答えさせていただきますが、総理府担当の恩給につきましては、ただいまいろいろ御意見が出ておりまする年金制度の改正、これとの均衡を図るように努力させていただきたい、こう思っております。
  452. 山本国務大臣(山本幸雄)

    ○山本国務大臣 私の方は公務員の数からいいまして大株主でございますが、年金の問題は、いまお話しのとおり、非常な大事な問題でございます。  いまの沢田先生のおっしゃった御提案は、厚生大臣と同じく私も大変興味深くというか、ユニークな案、考え方として承ったようなことでございます。  私ども地方公務員共済としましては、将来の公的年金はやはり一元化していくという方向でひとつ物を考えていかなければならぬだろう、その線に沿って、保険単位もいまたくさんになっておりますので、まず第一段階として、保険単位の小さなものを少し統合を考えていくということで、一つの段階としてそういうものを考えており、将来に向かって一元化の方向に沿うように進んでいきたい、こう思っておるのでございますが、何せそれぞれの保険単位には沿革がございますので、それらもよくあわせながらやっていきたい、こう思っております。
  453. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 あと一番また問題になっております専売、国鉄、電電においでになっていただいております。各省からお答えはいただきました。  それから、文部大臣はほかにないと思いますから、お忙しいし、結構です。労働大臣も結構です。それから、自治大臣はもう一つありますからちょっと……。総理府は結構であります。運輸大臣は国鉄問題がありますから……。郵政大臣は結構です。  では、次に電電と専売と国鉄、言った順にお願いします。
  454. 真藤説明員(真藤恒)

    ○真藤説明員 お答え申し上げます。  私ども、いまいろいろお話がございましたように、高齢化社会に向けて全体の年金を一つのシステムの中にきちっと入れるというお考えに対しては賛成でございます。できるだけ早くそういうものを具体的にお示しいただくことを希望しているわけでございます。  現在、当面出ております共済年金統合の問題につきましては、実は私の方は供出するばかりの立場に当分立たされるわけでございます。その面で、自分の組織の動きに関係のないことで急激にこういうお話が出てまいりましたものですから、しかし、いずれは避けて通れない道であることは間違いありませんが、急激に出てまいりましたので、自分の給料の中から積み立てたものが無条件に持っていかれるような気持ちが非常に強うございまして、そこら辺をどういうふうに考え方を変えていくのか。この辺の対応に感情的にも気分的にも非常に困っているというのがわれわれのいまの実情でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  455. 高木説明員(高木文雄)

    ○高木説明員 私どもは真藤総裁の立場とちょっと違いまして、もっぱら助けてもらう方でございます。したがいまして、ひたすらにお願いをしなければならぬわけでございますので、いまおっしゃるように、将来の日本の年金の給付の水準なり、あるいは掛金の水準はいかにあるべきかといったような問題について、いま私どもの考え方を申し上げるのはいかにも場所を得ないということになろうかと思います。いまの段階では、とにかくもう数年にして支払い不能という状態でございますので、もっぱら皆さんにお助けいただきたいということでおるわけでございます。
  456. 長岡説明員(長岡實)

    ○長岡説明員 私のところは真藤総裁と高木総裁のちょうど中間にいるわけでございますが、おのおのの公的年金制度が条件の差その他がございまして、口では統合と申しましてもなかなかむずかしいという事情はよくわかるのでございますが、将来の方向としてはやはり公的年金制度の再編統合という方向が避けられないのではないかというふうに考えております。そう考えますときに、今回政府が提案されます国家公務員の共済組合と公企体の共済組合の統合という案は現実的な案ではないかというふうに考えております。
  457. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 いま私が問うているのは、いまの法案でいったのではむずかしいから、将来のスタイルを、まあ家で言えば設計はしちゃって、そうすればそれぞれの特徴は生かしていけますよということを言っているわけですよ。どうもそこら辺がまだ理解がついていないようなんであります。炭鉱は炭鉱のやはり長所があるんですよ。船員は船員のよけい掛金を納めてきた歴史があるわけですよ。看護婦さんは看護婦さんとして、やはり当時結核のあった時代に割り増し給付がもらえる条件があったわけなんですよ。そういう歴史的な過程を無視してただ統合といってもそれは無理だろうから、いわゆる総額的にある程度抑制をすることによって、それぞれが救われていく道を選んだらどうかというのが提案だったわけです。ですから、総裁なんかも年金もらって、国鉄で給料もらっているのかもわかりません。だから、そうかもしれませんから、そういう方は、四百七十一万円という数字を私は出したが、それ以上もらっている人は年金をその分がまんしてもらっていったらどうだというのが具体的な私の提案なんですね。そうしなかったならばその分は掛金に全部はね返ってしまいますよということから、私はあえて、つらい提案でありますけれども、何とかそれぞれの特徴と長所を維持をしていってあげたいという気持ちの方を持っているから、ただ統合でいったら何でもおしなべて同じになって——それは自衛隊ぐらいのものだ。自衛隊ぐらいだけは何とか、戦争に出るかもしれぬからやってくれ、五十歳からもらえるようにしてくれ、こういうことを残してくれということになるかもしれませんが、そういうそれぞれの長所を生かしながら統合するのにはそれ以外に道はないのではないかというのが私の一つの結論なんです。  時間的にありませんから、もう一つ続いて。  そういう回答がもらえなかったことは残念ですが、この前配りました公務員共済組合法の第一条、それから地方公務員組合の第一条、公企体の方の第一条、それから農林漁業組合の第一条、それから私立学校教職員組合の第一条、それから厚生年金の第一条、それから国民年金の第一条、これは全部違うのですが、これをどういうふうに統一していこうとお考えになっておられるか、ひとつあわせてお答えをいただきたいと思います。
  458. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田委員の最初のお話の中で御要望ございましたが、まさに私は、これから年金を統合するというのは並み大抵な話ではない。一つ一つやっていくということになれば大変なことでもありますし、それぞれの年金がそれぞれの歴史を持っているし、それぞれの性格を持っているわけでございますから、その辺を統合するのは並み大抵のことではないが、やはり将来的には公的年金という形で一本化をしていくという方向に向かっていま努力をしていかなければならない、こう思っておるところであります。  それで、いまの御質問の、公的年金各法の目的がそれぞれ違いがあるということでございますが、それも各年金のそれぞれの職場の問題、それから制度の沿革などが異なっているので、表現には若干の違いはあるけれども、ねらいとするところは基本的には同じではないかというふうに考えております。そうしたねらいというのは、憲法の二十五条の一項に規定するところの考え方である健康で文化的な生活を営む権利を有するという考え方がございますから、それに基づきましてお互いの老後の安定を図っていくということがねらいではないだろうか、私はこう思いますし、そうしたことを踏まえていくならば、いろんな表現は、確かに違っております。違っておりますが、基本的な考え方においては同じでございますから、そういった方向で私はいま検討を進めておるところでございます。
  459. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 それで結構です。それを変えないでほしいのです。  たとえば極端なことだけ一つ例を挙げますと、国家公務員は悪いことをやれば、懲戒免職になれば年金はもらえなくなりますし、減額されます。第一、起訴されればもう休職処分になるわけです。厚生年金は、雇用され、掛金を掛けていれば、極端に言えばそれはどこに行っていても年金はついてくる。あるいは贈収賄で言えば、贈った側の方が有利になる場合の方が法理論的にはあり得るわけです、片一方が公務員であった場合は。そういういま言われた厚生年金並みの文章でいくということは、私は理想的だと思いますから、それで結構だと思いますが、国家公務員にはやはりそれだけのペナルティーがついているわけです。だから、そういうものを統合化をしていくためには、さっき言ったような総額的なものでないと、公務員には今度は罰則をつけようじゃないか、悪いことをしたときには年金やらない、こういう論が出てくるだろうと思う。そういうものの批判をどうかわしながら統合化をしていくかということがやはり課題になっていくわけです。ですから、私あえて、総額的なものによってそれぞれお互いが努力をしてやっていくという道以外に、公務員だけは別だよとかあれだけは別だよというわけにはなかなかいかぬでしょうというので提案したのですが、もう年金は以上で各大臣の方にも大体わかってもらっただろうと思うのです。ですから、ぜひひとつその立場に立ってお考えをいただきたい。  だから、いま総裁の連中が答えてくれたが、ちっとも答えてくれていない。いまの、目先の問題だけを論じておる。国鉄だっていまのようなことでやれば二千六百億浮きますよ。国鉄も思い切ってそれをやれば、二千六百億浮きますよ。問題は、先鞭をつけられるかどうかの気持ちの問題なんです。その二千六百億が浮かないというのは、それは金額が四七一か四五〇か三六〇か、その金額によるのですよね。現段階においては、いわゆる毎月勤労統計の給与の一・七なら一・七に抑えられればその程度は出てきますよ。必ずそれは出てくる。それでもし足らず前の分は、国側と大蔵省が何とかそのぐらいは考えてやってもらって、嫌なものを無理に婿さんにとらなくてもいいだろうと私は思う。しかし、その人もいつかはそうなりますよ。わかりますね。婿には行かないと言ってがんばっていても今度は嫁に来る人がいなくなってしまう、こういうことにもなりかねないのですから、これはいつかはお互いの道を歩むのですから、そういうこともひとつ。  ただ、併給の問題もありますよね。厚生年金には所得制限があるのです。片方はないのです。あるいは早くからもらえる人もある。とにかく年金というのは複雑ですから、やはり総額規制でいく以外には道がないのじゃないのかというのがこの提案なのです。これは厚生大臣、ひとつ心して対応に過ちなきを期していただきたい。お答えをいただけますか。
  460. 林国務大臣(林義郎)

    ○林国務大臣 沢田議員の御質問お答え申し上げます。  まさに総額でこうやっていくか、こういうことは財政の問題も踏まえたときには非常にユニークな御提案だというふうに私は受けとめるところでございます。  ただ、先ほど来お話がございましたように、国家公務員の場合とか地方公務員の場合とか各公社の問題というのはそれぞれ違う歴史的な状況がありまして、それぞれで成り立っている問題もあります。いま御指摘のありましたような諸問題があるわけでございますから、それをいまの段階で一刀両断にばしっとやるということになると、これまた逆の問題も出てくるであろう。たとえば国鉄のような問題でも、いまそれでやったならば、それで果たして納得できる案になるかというと、私は正直申してなかなか自信はないわけであります。だから、そこをこれから鋭意進めて、本当に国民の方々に老後の生活については安心してやれる、十分ではないけれども安心してやれる、こういうような体制をどうしてつくっていけるかということは、私たちも一生懸命努力をいたしたいと思いますし、きょうは大変いい御提案をいただきましたから、私たちも十分にこれを踏まえまして検討していく決心でございます。どうもありがとうございました。
  461. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 これは与野党とかそういうことではなくて、将来の日本の年金を国民全体のコンセンサスの中に成長させていかなければならない、そういう気持ちで言って、ただ、いろいろあとは言葉をとられるといけませんからこれ以上は申し上げませんが、そういう意味で提案したわけです。  次に、大蔵大臣おいでいただきまして、いままで各党からもこの間の議長見解について意見が出されておりましたが、要すれば、議長という大変大きな役割りの中から、国会の運営がむずかしくなっていた、一つ一つの言葉の中の問題を取り上げることよりも、アバウトな問題であるけれども、言うならば政党間の信頼関係に立って減税をやるようにお互いに努力しよう、そういう気持ちをあの中にあらわしたものなのだというふうに、短絡的かもわかりませんが、私は受けとめているわけであります。だから、金額がどうとか、いろいろな問題はあるでしょうけれども、要すれば野党も与党もとにかくこの減税実現に何とかお互いが力を合わせてやっていきましょう、そういう一つの表現だというふうに受けとめているのでありますが、大蔵大臣はどう——また一つ、続いてありますから、ついでに。  幾らであるか、年度の中でやるわけですね、七月になるか、八月になるか、六月になるか。その場合の方式としては、いままで減税委員会で議論をしてきた形のものでは、課税最低限を引き上げよう、五万円上げれば千五百億かかる、だが、課税最低限を引き上げることは何とかやらなくちゃならぬことではないのか、それで戻し減税というのは余りやりたくない、同時にまた、比率、この刻みもある程度直せれば直したい、こういうことがほぼ各党意見として集約され、できてきた方向だったと思います。ですから、これは自民党努力してもらわなくちゃならぬし、また政府努力してもらわなくちゃならぬのでありますが、われわれもそういう信頼関係の中にこの減税を実現するんだ、こういうふうに判断をしながら、いま申し上げたようなやり方については、いま予算を提案している中に改正案を提案することは大蔵大臣としては見識が問われるから、そういうことはお答えはできないと言うかもわかりませんが、一歩、予算が通った後ならばと仮定をして、タイムを若干変えて、もし、それが成った後ならばこういう考え方でいきたい、こういうことでお答えをいただけませんか。
  462. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 いま沢田委員おっしゃいましたように、自民党努力、そして政府の責任、これが一つある。しかし、アバウトというお言葉をお使いになりましたが、まさにアバウトに言えば、各党の信頼関係の上に立った積み上げの結果というものが議長見解に盛られ、それを受けとめたのが官房長官の申し上げておる政府見解であるというふうな理解、信頼関係というものを基本に置いた理解、これは私も全く同じ気持ちであります。  その次に、いよいよそれをやる場合においては、課税最低限あるいは刻みの問題というようなものがおよそ念頭にあるではないか、このことでございますが、これこそ私は、いまいみじくも御指摘いただきましたように、予算審議の段階で言及すべき課題でないとは存じますが、そういう各党の小委員会時代からを通じた議論、そしてまた、過般の税制調査会にもそういうことが指摘されておる、そして今日もまた指摘を受けておるということは十分認識して事に当たらなければならない問題であるというふうにお答えすることによってその責めをふさぎたい、このように思います。
  463. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 大蔵大臣として、いま予算を審議している中で補正をするということの約束でありますから、タイムトンネルに入らなければ答えられないだろうというふうに思いますが、その気持ちでいまお答えになったものだと思います。その点は大いに敬意を表したいと思います。ぜひひとつ、政府の責任もきわめて重いのでありますから、国民の期待にこたえられるようにお骨折りをいただきたい、こういうふうに思います。  続いて、今度、住宅の取得控除が大蔵の方にいまかかっているようでありますが、せっかく十五万円に上げていただいたのでありますが、いままで借りていたローンの人は、いま調べてみましたら、給与の中に九・二%ぐらいの比率、約一割を住宅ローンで支払うようになっている。公庫の返済金がそうなっているわけであります。約六百万人いるそうなんであります。これは当時の高い金利の中で借りた分なんでありまして、これを私なりに計算してみますと、現行六万七千円で、定額一万七千円、償還金から三十万を引いて七%をかけて、最高五万円、これがいままでだったのですね。今度は償還金から三十万円引いて、それに一八%をかけますと、年間百十三万円を払っている人にこの十五万円は適用する。そうしますと、いままで借りてきた人との格差が生まれます。それで今度の予算では、前年度対比〇・六%の住宅増設でわずか七万戸でしょう。百十四万戸の前年度実績に対して〇・六%増、七万戸増の計画ですね。それのためにこの制度をつくるならば、それをいままでつらい時代に建ててきた人たち、この六百万人の方の返済についても若干は考慮してやっていいのじゃないのか。これはいま財源がないから大変だろうと思うのですけれども、いままでやっと建ててきた人たちについてこれだけの格差をつけるというのは少し、いかに〇・六%の成長を促進したいからといって、それでこれだけの税制をつくって、既往のものは全然手を触れない、何とかなりふり構わず景気だけなんだという形ではちょっと政策の整合性に欠けるところがあるんじゃなかろうかという気がするのであります。金額がどの程度になるかということになりますから、必ずしもこれと一本、一緒にしなくとも、少なくとも若干でも既往のものにそれだけ、減税の問題もありますけれども、それとあわせて若干でも考慮できる余地は残しておくことが政治ではないのか。私は答えは、金がないと言うだろうと思うのですよ。しかし、このバランスを見たときに、何とかその点を、この格差の解消を考えてやることがやはり政治につながる。何%でもいい、やはりそれが政治じゃないかなという気がするわけですが、いかがでしょう。
  464. 竹下国務大臣(竹下登)

    竹下国務大臣 ただいまの問題につきましては、正確を期するために政府委員からお答えをさすことをお許しいただきたいと思います。
  465. 梅澤政府委員(梅澤節男)

    ○梅澤政府委員 いま沢田委員御指摘になりましたように、いま国会にお願いしております租税特別措置法をお認め願いますと、ことしの四月一日以降入居可能な住宅を収得された場合に、従前の住宅取得控除をかなり大幅に改善をいたしまして、最高額、現行でございますと六万七千円ということでございますが、十五万円までの税額控除を三年間受けられるという制度にしたわけでございます。  今回の改正の基本的な考え方は、従前は定額控除の部分と、それからローンでうちを建てた場合と二つの仕組みになっておったわけでございますが、住宅ローン控除に純化いたしまして、限られた財源の中で大幅に制度改正を行う。その基本的な考え方と申しますのは、そのことによって住宅の建設を促進するということでございます。  もちろん既往の部分につきまして何がしかの恩典を考えるべきではないかという考え方もあるわけではございますけれども、限られた財源で効果を上げるという観点と、もう一つは、いままで取得された方は恐らくそういう税の恩典を前提としてうちをお建てになった方でございまして、従来もこの種の取得控除の改善を行っておりますけれども、既往の部分について恩典を広げるということは従来からも例がないわけでございますので、その点は何とぞ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  466. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 まあ、あなたの方のお答えはそうだろうと思います。しかし、今度は大幅過ぎたんでね。しかも、今年度の予算では七万戸ですよ。百十四万戸の〇・六%増の予算なんですから、建設戸数は。約七万戸のため、そのためにこれだけのものを考えるならば、それはいま言った面にも配慮しなければその価値観としての整合性がないんではないのかということを言っているわけなんで、その辺は事務的な答えじゃなくて、政治的ないわゆる重さをどう考えたのかという比較の問題でのお答えをいただこうということなんであります。  ですから、これは大蔵大臣、いますぐでなくて結構ですが、私がいま言ったような政治的な価値判断の問題として、七万戸増設させたいからこの措置をとったというのでは、いままで建ててきた者との格差というものは余りにもあり過ぎやしないかという比較の問題、七万戸のためにこんなにまで考えなければならぬのかということが問われているんだろうと私は思うのですよね。ですから、このことがいいとか悪いとか言っていないし、既往に戻らないとか戻るとかという議論は、細かい事務的な法律論はありますよ。しかし、百十四万戸になって、これ以上下がったのじゃしようがない。しかし、計画では七万戸増設ですね。そのためにこれを考えるということは、価値観として見たならば少しおかしいんではないのかという意味なんです。これは、じゃお答えいただかないで、後でまた別の機会にお答えをいただきたいと思います。  次に、防衛庁の観閲式なんですが、これは地元でやっていますから、一番よく見ているのですが、あれ、観閲式というのは何なんですか。
  467. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 佐々官房長。(沢田委員「いや、あなたなら要らない」と呼ぶ)
  468. 佐々政府委員(佐々淳行)

    ○佐々政府委員 御指名でございましたので……。  観閲式は、自衛隊の記念行事の一環として行っておる行事でございます。
  469. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 あなたの答弁じゃ……。  国鉄は残ってもらって、電電と専売さん、それから労働と自治は残ってますかな。自治は、観閲式がありますから残ってください。運輸は、国鉄があるのですから、あなたは逃げるわけにいかない。もう時間があと十分間です。お願いします。  で、いまのは防衛庁長官が知っているかどうかを聞きたかったんです。長官が、観閲式というものはどういうものなのかということを実は知っていたか。何も事務官僚には、これは法律に書いてあるんだから、書いてあることを聞かなくたっていいんだ。長官が知っていたかどうか。知っていますか。いや、わからなければわからないでいいんですよ。じゃ、もう結構ですよ。  礼式なんですよ。礼式の中に入っているのです。この礼式の中に入って、防衛庁は陸海空と持っているんでしょう。どうして、まあ山の中のとは私も言いませんけれども、海のない埼玉でなぜ観閲式をやるのか。日本は島国だ。日本は島国なんだから、本来なら海と空の方が重点なんじゃないのかというふうに思いますがね、常識的には。船の見えない観閲式を何でまたやるのだろうというふうな気がするわけです。これは美濃部さんが知事のころはそういうことがあったのでありますが、今度いろいろ準備もかかるでしょうけれども、東京湾へ行って、外国武官を呼んでやられるのですが、わざわざ道の悪いところへおいでをいただくのもわれわれとしては恐縮に思うのですよ。ですから、やはり大使官の多いところからまっすぐ晴海なり何かにお出かけになってやっていただくというのが、やはり首都東京でやるのが筋道じゃないのか、そう思うので、田舎へわざわざ逃げ込んでやるほど自衛隊も落ちぶれたかなという気がしないでもないのでありまして、防衛庁長官は人格円満、識見優秀で、しかも今日の自衛隊を背負っておられるのでしょうから、ひとつ堂々と東京でやっていただくようにしていただく。そして、やはり海も見えるところでやってもらうということが必要なんじゃないかと思うのですが、その点、これは自治大臣も関係いたしますが、主体は防衛庁でしょうから、防衛庁からお答えをいただきたい。
  470. 谷川国務大臣(谷川和穗)

    ○谷川国務大臣 自衛隊の記念行事には、観閲式のほかに観艦式もございますが、観閲式に関しましては、御指摘のように、かつて東京都でこれを行っておりました。しかしながら、いろんないきさつがございまして、現在先生の足元の朝霞でさせていただいているわけでございます。  なお、その経過につきましては政府委員をもって答弁いたさせます。
  471. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 政府委員の方は、もう時間がないですから省略でいいです。もうわかっていますから。  ただ、そういうことで外国武官の手前もあるでしょうから、やはりいままでこれだけ強弁されている中曽根さんなんですから、何も逃げ隠れするようなところでやらぬで、堂々とやられた方が、いわゆる言うこととやることとが違うということになってしまうので、それは中曽根さんだってじくじたるものがあるんじゃないかと思うのだ。だから防衛庁長官、その意を受けて、ひとつ東京でやれるように御考慮をいただきたい。これは要請しておきます。  それから最後に、あと時間がありませんから、行政管理庁長官、大変臨調さんにおしかりをいただきながら御努力をされている御苦労、よくわかります。しかし、徴税職員が一人ふえますと五千万ずつ税金がふえていくのですよ。徴税員一人ふやすごとに五千万ずつ。ですから、いままでは五年に一回、七年に一回の実調調査が精いっぱいなんですよ。これは、被害を受ける側もやはり国民かもわかりませんが、正確になっておれば同じことですからね。脱税とか何かするという立場に立てば議論は別ですが、一応正常なる生活をし、正常なる経理をするという前提に立てば、すべての国民は平等である。その立場に立って、徴税職員の老齢化現象も出ている折ですから、増収という意味を含めて、行管庁と大蔵省、国税庁も来ていますが、それは少し考えて、税金が上がっていくように、正確な、適正な、公平な税金が徴収できるように配慮すべきではないか。大蔵省としては希望していることですから、返事はもらわなくてもいいです。行政管理庁が、よし、これは別だな、こう考えてくれればそれでいいわけですから、その一言をひとつお願いをしたい。
  472. 齋藤国務大臣(齋藤邦吉)

    ○齋藤国務大臣 国税職員の重要性、これは十分理解をいたしておりますので、厳しい最近の定員事情でもございますけれども、実は格段の取り扱いをいたしておるつもりでございます。先生、その点は十分御承知だと思います。五十八年度におきましても増員は厳に抑制するという方針でございましたが、税務署の第一線部門の強化、これは非常に大事なことでございますので、五百九人ふやしておるわけでございます。よその省の方は減りっ放しでございますが、税務署の職員の方は、第一線は増員する、こういうわけでございまして、今後とも大いに格段の取り扱いをいたしたいと考えております。
  473. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 国鉄総裁、大変お待たせをいたしまして申しわけありません。  とにかく国鉄再建はいろいろ問題がありますが、十六兆、十八兆という累積赤字をなくすことに国鉄は何か知恵をしぼっておられますか。細かい説明はいいです。とにかく何とかこれを再建せんければしようがない。また、国鉄再建法案という人手をかりて、国鉄は大蔵省出身の高木総裁がいて、それでようやれぬ、あなたには能力ないですというお墨つきをもらうようなものとかわりがないと思うのです。そういう法律は要りません、自力で何とかいきます、こういうところが総裁として意地を示すときじゃないかと思うのです。これは運輸大臣も同じなんです。運輸大臣が、監督官庁がありながら、あなたできないのか、太田労政だなんて言われながら再建委員会をつくらなければならない、今度は臨調の答申の上にはまた監視の大目付をつくって政府全体も監視しなければおまえら信用できない、こういうようなことを言われるようなことでは話にならぬと思うのですね。だから総裁、これは運輸大臣と一緒に、そういう法律は要らない、われわれ独自でやる。ただ、大蔵省に少し手伝ってもらわなければならぬことは間違いないですよ。大蔵省に何とか手伝ってもらわなければ十六兆円という金がなくなるわけじゃないのですから、これは時間をかけぬために何とかして裸になって出直す、そういう立場で、そういう法律によらないで運輸大臣と総裁が力を合わしてやってもらう決意があるかどうか。これは決意の問題ですから、やる気があればできるはずだと思うのです。いかがでしょう。
  474. 高木説明員(高木文雄)

    ○高木説明員 臨時行政調査会の御意見なり、それを受けられた政府の方針は、改めて申すまでもなく、三つの点であろうかと思っております。  一つは、いまお示しのように、国鉄は自分でやるべきこと、また、やれることは最大限にやれということでございまして、その意味はいま言われたことだと思います。それから第二は、経営形態を変えるかどうかという問題でございまして、これは非常に大きな政策論であると思います。三番目には、いまちょっとお触れになりましたように、大蔵省にもっと手伝ってもらえということで、年金の問題、その他の問題を論議しなければならぬということでございました。  そういう問題を解くために強力な機関をつくるということについては、私どもとしてはぜひ強力な機関ができてお取り組みいただけることに期待をいたしておるわけでございます。それで、われわれの力だけでは、率直に言って解決できない部分がたくさんあって今日に至っておるわけでございまして、より強力な機関というものができて、屋上屋だという御議論もございますけれども、しかし一面において非常に強い機関が生まれるということを私どもは待望をいたしておるということを申し上げてお答えといたしたいと存じます。
  475. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    ○長谷川国務大臣 委員御案内のように、もう国鉄は危機的様相でございますから、この際、国鉄監理委員会等々もやりながら、私の時代に破産しないように国鉄をぜひ守ってまいりたい、こう思っております。
  476. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  477. 久野委員長(久野忠治)

    久野委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前九時三十分より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十六分散会