○楢崎
委員 元
防衛庁長官の坂田さんはこういう心配をされておる。平時の自衛隊の存在というものを非常にこわく
感じられておる。これは、私は、重大な
指摘であろうと思います。
私がいま、以下明らかにする問題は、決して
政府を、中曽根
総理を追及する、そういう立場ではありません。ある事実を明らかにして、これは相ともにわれわれが真剣に考えなければならない、そういう
意味で取り上げるわけでありますから、決してこの問題を機密漏洩事件に切りかえたり、かつての沖縄密約電報のように切りかえたり、あるいは谷川さんもおっしゃったけれども、私は決して関係者を弾圧しろというような気持ちでやるのではない。そういう次元をはるかに超えて、本当にいまこの点が
一つの盲点になっておるのではなかろうか、だからシビリアンコントロールを、制度はあるけれども、もう少し実効あるものにすべきではなかろうか、有効性のあるものにするためにはどうしたらいいか、そういう立場から明らかにいたしますので、その点は
誤解のないようにひとつお願いをしたい。
事実はこういうことであります。
「五十四年国体改造論(クーデター)」未遂事件であります。「決起予定年月日」は「五十五年六月×日」である。五十四年から五十五年にかけ七カ月問計画を練る。決行日は関係将校全員が当直日に当たる「五十五年六月×日」とする。「決起部隊」、参加予定総員数は「一個師団規模」、つまり九千人ないし一万人であります。「陸上自衛隊、クーデターの主力部隊は名古屋の第十師団」、当時の大隊長補佐中隊長が問題を提起しております。「及び千葉習志野の第一空挺団。」「海上自衛隊は大湊地方隊、航空隊など。」「航空自衛隊は浜松の第一術科学校など。」
「計画の概要」、「浜松より飛来する航空機がナパーム弾二発で首相官邸を爆破、国会、NHK、自民党本部、社会党本部などを占拠、首都道路、海上を封鎖、制圧する。次に戒厳令をしき、臨時首班はあらかじめ決定、X氏になっておる。第一空挺団が決起すれば予定外の部隊も蜂起する予定。成功率は五〇%。ただし、決起部隊を鎮圧する部隊は恐らくないと確信し、現在の上層部には鎮圧する力はないと判断する。」
これは未遂になっておる。未遂の原因と結果はこうなっておる。「第一空挺団の動きが鈍く、同志の間で脱落する者があって五十五年四月ごろ決行寸前に自衛隊の誓務隊が情報をつかみ、内閣調査室も動いて未遂に終わった。」
どういう処分が行われたか。「処分、これが公になれば参加予定者はもちろんのこと、上層部にも責任が波及することを恐れたと同時に、全員がほとんど教官資格者で処分をすれば防衛に穴があくということで図上演習(治安行動研究あるいは暴動鎮圧研究)」この図上演習の行き過ぎという名目で極秘のうちに部内的に処分が行われております。連行されて事情聴取を受けた者は下士官ばかりであります。そして、処分の対象になった総員は百十二名。第一線勤務から外され、閑職に回されております。配置転換であります。航空自衛隊の場合は准尉クラスを含む将校四十二名が処分の対象になっております。
これは、私はこの計画に参加した人から聞き、ある程度の資料を持っております。先ほど申し上げたとおり、今後どうするか、これを望んでおりますがゆえに、その点は私は伏せます。真剣に受けとめていただきたいということが私の願いであります。
こういう計画は、あの三矢計画以来毎年行われておる。しかも、第一線の指揮官が参加している。そして五・一五、二・二六事件の失敗を教訓として綿密な計画が立てられております。時期的に言えば秋の御殿場演習のときが一番要注意の時期であります。関係者は、このまま現状が変わらないとすれば、四、五年じゅうに必ず起こるであろうと言っております。私はおどかしを言っておるのじゃない、関係者の言をそのまま伝えておるのであります。これら一連の計画には政治家や右翼は絡んでおりません。
そこで私は、今後どうすべきか、それについて提言をしてみたいと思います。
この関係者の、なぜこういう気持ちになったか。こういうことを言っておるのであります。
その第一は、政治不信であります。政治倫理が確立しない。一体何をやっておるのか。あのビラに言われるとおりでありましょう。したがって、政治の自浄能力喪失に対する絶望感というものが根底にある。
二番目に、産軍癒着に対する不信感があります。上級幹部の関連産業への天下り、政治家と防衛関係産業、商社との癒着、官民一体の堕落に対する憤激。そのとおりに言います、私は。言われたとおりに。
三番目に、教育不信。
総理も先ほど言われました青少年の非行化の問題であります。学校内の暴力の問題であります。あるいは受験地獄、こういった教育の荒廃に対する失望があります。
四番目に、ここも大事であります。
総理は、日米は同心円と言われましたけれども、日米安保体制に対する不安を自衛隊は持っておる。どういうことか。一体日本有事の際、日米共同作戦が行われたとき、統一指揮官はどっちになるのか。日本なのかアメリカなのか。アメリカの場合は、
自分たちはアメリカの盾になるんじゃないか、われわれ自衛隊員は。そういう不安を持っておる。それから、有事の際に本当にアメリカは来援に来てくれるのであろうか。現にそういう心配を持っているんですね。
そうして、一番
最後に、私はこれは特に訴えたいのでありますけれども、これは問題のあるところであります。つまり、自衛隊認知の問題でありましょう。現実に自衛隊員の諸君は、われわれはそうでもないけれども、やはり白い目で見られておる。あるいは日陰者だというような意識が根底にある。一生懸命、命がけで訓練しているのに、そういう感情があるのは事実であります。しかし、この自衛隊認知の問題は、憲法とかかわる重大な政治問題である。とはいえ、現実に三十万人近い武力集団である自衛隊員が存在をしておる。この存在を無視することはできないのであります。したがって、自衛隊認知にかかわる政治問題は、自衛隊員個々の責任ではない。個々の責任ではない、そこに
一つの問題がある。したがって、自衛隊員に、やはりまじめな自衛隊員も多いのですから、誇りと使命感を持たせるためにはどうすべきかというのは、国民が七、八割支持しておる以上、国民の責任でもあると私は思うのであります。
〔村田
委員長代理退席、
委員長着席〕
したがって、私は、国民がその責任をどう果たすか、これはシビリアンコントロールの有効性、これを確保するための最も基本の問題であろう。したがって、私も個人的にはいろいろ見解がありますけれども、私が
提案したいのは、この問題についていつかは結論を出さなければならない。したがって、真剣にこれは国会としても
政府としても取り上げるべき問題ではなかろうか、こういうことを非常に今度の事件を聞きまして痛感をしたのであります。
それで、私は、シビリアンコントロールの活性化の問題について幾つかあるうちで二、三
提案したいと思うのであります。
制度的にはあります。まず、防衛庁に内局がある。シビリアンでなくては
大臣になれない。国防
会議があります。閣議があります。国会があります。制度的にはあるんです。しかし、実際にはどれほどの有効性を持っておるであろうか。たとえば、国防
会議は、防衛庁設置法でつくられておる諮問機関であります。もう少し、現実に武力集団がある以上、私は、内閣が責任を持って、内閣直属の安全保障
会議というようなものをつくるべきではないか。そしてそこで、単にその武力の問題だけでなしに、広く総合的な安全保障を検討する、責任を持たせるべきではなかろうか、これが
一つであります。
それからいま
一つは、国会のシビリアンコントロールであります。われわれもいろいろ主張をしまして安保特別
委員会ができました。私はいいことであると思います。ここで大いに私は議論をしてもらいたい。もう少しこの特別
委員会が権威あるものになるべきであろう。本当にコントロールできるような何らかの仕組みを工夫すべきではなかろうか。そのための
一つの
提案としては、情報を知らなくてはコントロールしようがないわけです。しかし、防衛情報というのはマル秘が多い。この国会の安保特別
委員会だけにはできる限りの防衛情報を提供をして、そして真の歯どめを考えるべきではなかろうか、そういうことを私は考えるのであります。
以上の点について、
総理あるいは官房
長官の御見解を承りたい。