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1983-02-14 第98回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月十四日(月曜日)     午前九時四十五分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       上坂  昇君    佐藤 観樹君       沢田  広君    木下敬之助君       竹本 孫一君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    正森 成二君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         内閣総理大臣官         房管理室長   菊池 貞二君         総理府人事局長 藤井 良二君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         国土庁長官官房         会計課長    金湖 恒隆君         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文化庁次長   浦山 太郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         労働省労政局長 関  英夫君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   栗原 祐幸君     今井  勇君   野坂 浩賢君     上坂  昇君   山原健二郎君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     野坂 浩賢君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ち、公明党・国民会議所属委員出席要請をいたしたのでありますが、いまだに出席がありません。やむを得ず議事を進めます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正森成二君。
  3. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、総括質問をさせていただきます。  まず第一に、財政経済の問題について若干伺いたいと思います。  総理、いままでの経過を見ておりますと、外交、防衛については脱兎のごとく、財政については処女のごとくお言葉が少ないようでございますが、どうか財政経済についても遠慮なく指導性を発揮して御答弁を願いたいということを最初に申し上げておきたいと思います。  まず最初に伺いますが、お手元資料をお配りしていると思いますが、ございますか。――それでは、資料を配っていただけますか。  まず第一に、五十八年度予算案審議するに当たっては、五十六年度、五十七年度予算案の反省から審議を行わなければなりません。そこで、私がお手元資料No.1をお渡しいたしましたが、それをごらんいただきたいと思います。  まず第一に、大蔵省に伺いますが、五十六年度補正の後、念のために申しますが、五十六年度当初ではありません、五十六年度補正の後なおかつ三兆円近い税収欠陥が出て、五十七年度予算では六兆一千五百億円も税収欠陥が出た。その責任は、一体どこにありますか。
  4. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま御指摘がございましたように、五十六年度補正で二兆八千七百九十億円、五十七年度補正予算におきまして六兆一千四百六十億円の当初税収見積もり補正減額いたしたわけでございます。  この大きな税目で申し上げますと、何といいましても、両補正を通じまして法人税額補正額が大半を占めておりまして、これに所得税を加えますと、五十六年度、五十七年度年度補正額のおよそ八割から九割を占めるという状況でございます。  これにつきましてはいろいろ御議論があるところでございますけれども、私ども当初税収見積もりをいたしました段階と、その後、年度経過を経まして実体経済が急速に低下してまいるということでございまして、税収面で申しますと、五十七年の二月の税収、つまり昨年度税収の残り三カ月分ぐらいの時点で急激に税収伸びが鈍化いたしました。その結果、当初の見積もり額及び五十六年度につきましては第一号補正額以降さらに二兆八千億余の税収不足を生じたわけでございまして、実体経済の急激な変化とはいえ、私ども事務当局といたしましては、当初、あらゆる資料から判断いたしましてこれくらいの税収額は何とか達成できるのではないかということで作業したわけでございますが、結果として大変多額不足額を生じまして、国会議論等も通じまして大変御議論をいただいたわけでございますが、その意味で、大変混乱を生じたことを大変遺憾に存じておるところでございます。
  5. 正森成二

    ○正森委員 いま梅澤主税局長から答弁があったのですが、それでは十分に納得できないのですね。そこで総理大蔵大臣、特にお示ししましたNo.1の資料をごらんになってください。  まず、五十四年度のところを見ていただきますと、実線部分実績税収累積伸びであります。点線部分予算額であります。この五十四年度は、当初二十一兆四千八百七十億円見込んでおりましたが、実績がずいぶん高くなってまいりました。そこで、当初七・七%の伸びだったのを補正で一七・三に変更いたしました。そのときには、実際は一八・九%伸びたわけであります。この点線が上がっておりますのは十月ごろになっておりますが、それは十月の税収がわかるのが十二月で、十二月に大体補正予算をするので、十月のところで上に上がっているわけであります。つまり、これを見ますと、五十四年度補正額というのは、税収実線にきちんと符合しているわけですね。  五十五年を見てください。五十五年も当初は二十六兆四千百十億円を見込んでおりました。一一・三%の決算比に換算した伸び率を予定しておりましたが、実績はいずれもこの線を上回ったのですね。そこで、十月の税収のわかった十二月段階で、補正予算で一四・四に伸ばした。その後少し税収が衰えましたが、大体一三・二、二十六兆八千六百八十七億円税収が入り、見込んだ額と誤差は非常に少なかったということになっておるわけであります。  ところが、五十六年度を見ていただきますと、五十六年度は三十二兆二千八百四十億円見込んだのです。これは五十五年度予算額に比べると一八・九%伸びで、実績に比べると二〇・二%の伸びでありました。ところが、実際の税収を見ておりますと、五月ごろから急激に税収が減りまして、累積では十月段階を見ると一〇%を切るという状況になっております。いままでの五十四年、五十五年から見るならば、十月までの累積実績というのは、実際に締まるのは三月あるいは五月ですね、その額にほぼ符合しているわけで、十月段階で一〇%を切るような伸びの場合に、当初比二〇・二%というような税収の得られるわけがない。ところが、五十六年度補正では、わずか四千五百億円減らしただけで、依然として前年実績に比べて一八・五%の伸びを見込んでおった。だから実際は七・八%しか伸びずで、二十八兆九千五百二十一億円しか入らないから、二兆八千億円もの赤字が出たのであります。  しかも、五十六年度の十二月には五十七年度予算案編成いたします。だから、そのときには七・八ぐらいしか税収伸びないということを当然前提にして予算案を組まなければならないのに、何と五十七年度当初予算は、高く見積もった補正予算の一五・一%伸びで、これを決算実績額に換算いたしますと、驚くなかれ二六・五%伸びの三十六兆六千二百四十億円を見込んだ。こんなこと、図を見ていただいてもわかりますように、できるわけがない。そのできるわけがない予算を組んだから、五十七年の十月の税収がわかる十一月段階になって、一挙に五・三%の伸びという三十兆四千七百八十億円、実に六兆一千五百億円も減額補正をしなければならなかった。  だから、この図面を見ていただいたらわかりますように、税収実績累積、これを見れば、大体十月前後になれば決算がどうなるかというのはおおよそわかるというマクロ的な数字をみごとに示しているわけであります。  大蔵省、なぜ専門家がいるのに二年にわたってこういう不手際なことをしたのですか。これは単に国際経済が冷えたとか、そういうことでは説明がつかない。第二次石油ショックは五十四年、五十五年も影響がありましたが、そこでは大きな見込み違いはなかった。なぜ五十六年度補正と五十七年度予算に限ってこういう大きな乖離を生じたのですか。それを説明してください。
  6. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、現時点から申し上げますと、過去の経緯につきまして、私ども必ずしもこれは弁解意味で申し上げるわけではございませんので、その点だけはあらかじめ御了承賜りたいわけでございますが、先ほどの時間的な経緯で見ますると、累計比につきましては、ただいま正森委員が御指摘になりましたように、五十六年度補正予算編成時点までの税収実績をそのまま等率で伸ばすとすれば、あの時点でもう少し減額をしておいてしかるべきではないかというふうな御指摘かと思うわけでございますが、ただ十一月以降、十一月、十二月、それから一月、この辺までが大体昨年の二月末までに判明した実績でございますが、この辺を見てまいりますと、各月のいわゆる瞬間風速は、十二月も一月も、むしろそれ以前の月よりもしり上がりになっておったような事態があったわけでございます。  一つは、法人税でございますが、一昨年九月決算以後、九月決算、十月決算、十一月決算の大法人税収というのは、前年同期に比べまして二割増とか三割増くらいの水準で推移したという経緯がまずございました。それから、間接税等につきましても、物品税補正を提出しました後の判明しました月で、たとえば十二月も一月もいずれも前年同期二割を上回るような水準で推移しておったということでございまして、一昨年の補正予算編成時点では、あながち、事務的に明らかに大変な歳入不足であるということを予測しながら補正の作業の手を抜いたというわけではございませんで、そういった各税目ごとの勢いといいますか、状態を見ておりました場合に、五十六年度補正一号で税収補正をいたしましたが、それ以降、いま申しましたような経緯がございまして、何とか達成できるのではないかというふうな背景があったということは申し上げなければならないと思います。  いずれにいたしましても、現時点から申し上げまして、必ずしも私ども、これは弁解という意味で申し上げてはおりません。今回の非常に苦い経験を教訓といたしまして、今後税収見積もりの精度を高めるべくいろいろな手法を新しく試みておりますが、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  7. 久野忠治

    久野委員長 梅澤君に申し上げますが、もう少し大きい声で答弁してください。
  8. 正森成二

    ○正森委員 そして、簡単にやってください、私の持ち時間ですから。よろしくお願いします。  いま御説明がありましたけれども、瞬間風速が何とかかんとか言うたって、五十六年度のこの図面を見ていただいてもわかりますように、実績で言えば微々たるものです。その実績があなた方の見込み額と非常な乖離があるということは、一目瞭然なんですね。  ところで伺いますが、桜田武さんというのは、いま政府諮問機関でどういう役をしておられるんですか。
  9. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ほかの関係は存じませんが、私ども関係では、財政制度審議会会長でございます。
  10. 正森成二

    ○正森委員 財政制度審議会会長で、非常に重要な役割りを果たしておられますね。その人が東京新聞で、十月十二日から「桜田武の直言「日本破産」を救う道」という連載をしておられます。その中でこう言っておられるんですね。   五十六年度税金収入は三十二兆円を見込んでおったわけですが、四月から九月まで半年分の税収大蔵省で締めてみたんです。その年の十月でしたな。そうして僕のところへも言ってこられて、僕はびっくりしたんです。   というのは、税収が全体の三四%しか入っていない。この時期に三九%になれば、大体翌年三月までの税収が一〇〇%入るという。それが、五%も下回っているんです。   私は、そのとき主要な閣僚にじかに「えらいことだ。(税収不足は)二兆円では済みませんぞ」と申し上げたんです。だから、いまさら「知らん」とは言えないはずです。   ところが閣僚のみなさんはね、一度国会を通した税収見積もりが二兆円以上も不足する実体をさらけ出す勇気がないのです。私は「こういう赤字が出たときは、国民に知らせるべきです。そして補正予算を組みなさい」と言ったんです。   すると「一兆円以上もの(歳入不足補正を組んだら、内閣がもたない」というから「もつ、もたんではなく国民経済上、そうなさい。悪いことは悪いと知らせたらええやないか」といったんだけれど、それをだれもしませんでしたね。 こう書いてある。  いいですか、あなた方の財政審会長である桜田武さんが、十月に、これじゃもう二兆円以上赤字になるといって閣僚やら財政当局に注意した、そうしたら、一兆円以上もの補正を組んだら内閣がもたないからと言ってやらなかったとはっきり書いているじゃないですか。  それだけじゃないのです。その同じ中でこう言っています。   国会で議決された予算ですら二年連続の粉飾予算、それも一割も違っているために、国民経済を混乱させているではありませんか。そして米国や英国の評論家、官吏からまで指摘されています。   タックスイーター(税金食い)という権勢の座に安住して、真実が見えないでいるこの連中の習性を、このさいたたきなおすのは、タックスペイヤー(納税者たち国民の良識でなければなりません。 こう言っているのです。桜田武さん、財政審会長が、二年連続して粉飾予算をやったということを明白に指摘しているわけであります。  総理、これをどう思われますか。つまり桜田武さんは、五十六年の十月の段階から、二兆円以上は赤字になる、そう言っていたのに、一兆円以上もの補正予算を組んだら内閣がすっ飛ぶ、だから本当のことを言えない、こう言うたと政府側立場に立つ人が言っているじゃないですか。  それはなぜでしょうか。それは、当時の鈴木内閣が、定率繰り入れという国債を返すためのお金を積み立てて、なおそれ以上一年間に約二兆円ずつ減額して五十九年度までに赤字国債依存から脱却、こういう政策をとっていたから、それにつじつまを合わそうと思えばいやでもおうでも税収見込みを上げなければならない。五十六年度補正予算でもし二兆円も税収を下にすれば、五十七年度予算発射台が下がってきますから、初めから二兆円下がる。しかも伸び率も下げなければならないから、当然五十七年度予算税収は低く見なければならない。そうすれば、二兆円の赤字国債減額ができないだけでなくて、下手をすれば五十八年度にやったように定率繰り入れをやめなければならぬ。そうなれば鈴木内閣がすっ飛ぶからそれはできないと言って、桜田武さんが言ったのに、閣僚やら大蔵省が抵抗したんだということを桜田武さんが言っているじゃないですか。  それを、主税局長は何とかごまかそうとするから、委員長にも注意されるように、自責の念に耐えかねて小さい声でぼそぼそとしか言えない。僕は梅澤さんは大阪の国税局長をやっているときから知っていますけれども、もっとはっきりした人なんです。英気さっそうとしている。それが、きょうは満座の中でああいうぼそぼそした答弁しかできないというのは、桜田さんが言うているように粉飾をやった、そのときは主税局長じゃなかったですけれども主税局長はいまよそのポストにおりますけれども、そういうことなんですね。  大蔵大臣、それは認めざるを得ないでしょう。そういう政治予算粉飾予算を五十六年度、五十七年度にやった。だから、五十八年度はそうでないように、中曽根内閣国民真実を語らなければならないということを私は議論の当初に言うているのです。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 いま正森委員から資料が提出されておりますが、まさにこの資料の示しますごとくで、五十四年度の当初から補正にかけて実績は大変よかったというのは、私は、これこそある意味において公債政策、すなわち公債財政に対する対応力というものが最終段階で一番充実したときではなかったかな、こう思っております。したがって、むしろ公定歩合を上げて、それから公共事業の繰り延べをして、その余力が五十五年度実績としてまたつながってきたのではないか。これは経済評論家みたいな話をするようですが、そういう財政の持つ対応力の限界というものがある種の失速状態にまで来たかなというのが五十五年の終わりぐらいじゃなかったか。したがって、それをげたにして従来の租税弾性値を掛けたもので五十六年度予算を組めば、私は、一応当初の予算はあのような姿になるのではないか。そこのところは、正森委員弁解と御指摘される点は、十一月、十二月、一月というときは、先ほど瞬間風速という言葉を使っておりましたが、確かにこれはある種の上昇機運に向かったではないかという一応の判断もできたのじゃないかと私は思うのであります。ところが、それがアメリカのいわゆる高金利あるいは円安等々の理由から、全く予期に反した状態になったのが五十六年度の下期ではなかったかというふうに考えるわけであります。したがって、それが五十七年度に至ったわけでございますので、私は、やはりこういう一つの流れの中で、まあ従来も一回あります、予想以上に、五十年でございましたか、そういう見込み違いとでも申しますか、ございますが、それは従来の手法の中で考えたらやむを得ないことではなかったかなというふうに私はこれを理解しております。  ただ、五十四年、五十五年というのは、ちょうど私、大蔵大臣でございましたが、大変いいときでございました。と同時に、桜田会長は見識りっぱな方でございますから、高度な立場から私どもを叱咜鞭撻するという意味においていろいろな御指摘をいただくことに対しては、謙虚に耳を傾けて財政運営の万全を期したい、このように考えます。
  12. 正森成二

    ○正森委員 それはこれだけ事実があれば謙虚に耳を傾けざるを得ないですね。まさに桜田財政審会長が二年続けての粉飾予算だということを五十六年の補正と五十七年の本予算でやったわけですからね。  そこで、そういうことのないように五十八年度以降の経済運営をしなければならないということを中曽根総理にお願いしようということで、これから質問させていただきます。  そこで伺いますが、財政中期試算というのをお出しになりました。これを見ますと、A、B、Cとありまして、Aというのは三年で三分の一ずつ赤字公債を減らす、Bというのは五分の一ずつ、それからCというのは七分の一ずつで、この間からの総括を聞いておりますと、竹下大蔵大臣は、三分の一ずつ減らすというのについてはどうもむずかしいというので戦意を喪失されたようでありまして、大蔵委員会でも五、七年というようなおもしろい言葉をお使いになりまして、五、六年というのもおかしいから五、七年というようなことを言われて、五年で五分の一か、七年で七分の一かというところぐらいをターゲットに置こうという意図が相当濃くにじみ出ているということになるわけですが、しかし、七年としますと毎年一兆円ずつ赤字国債を減らせばいいんですが、そのかわり赤字国債を仮にゼロにするとすれば先は六十五年になりますね。ところが、六十五年というのは、一難去ってまた一難で、六十五年になれば赤字公債の返還がどっとふえますから、六十五年の財政支出というのは五十九年や六十年に比べて問題にならないぐらい大きくふえるということになるのではありませんか。  大蔵省に伺いますが、仮に七年で七分の一ずつ少なくするということになりましたら、六十五年が最終年になりますが、その六十五年の国債費というのはどのぐらいになりますか。国債費というのは、利払い費と、それから定率繰り入れをやるというのですから定率繰り入れと、そのときにはすでに国債整理基金がゼロになりますから、毎年毎年予算繰り入れをやらなければなりません。この三つと国債事務費を足したものが国債費になると思いますが、大体どのぐらいになりますか。
  13. 山口光秀

    山口(光)政府委員 国債費の表がちょっと手元に見当たりませんので、要償還額ということで申し上げたいと思います。  六十五年には四条債つまり建設公債でございますが、その系統が十兆四千三百億、それから特例債が七兆三千億、合わせて十七兆七千三百億でございます。しかし、これは例の試算の一のC、この前お出ししたそれに基づいて申し上げております。したがって、その前提での話ということでお聞き取りいただきたいのでございます。ただ、借換債の収入が、これは四条債系統でございますけれども、九兆二千五百億ございますので、借換債以外の財源による償還額が八兆四千八百億ということになろうかと思います。
  14. 正森成二

    ○正森委員 それは私のお聞きしたうちの半分しか答えていないのです。国債費がどれだけになるかと言えば、そのほかにあなた方がお出しになった同じ資料の中に二のCというのがありまして、利払い費がどのぐらいになるかというのが書いてあります。六十五年のところを見ますと十一兆一千億円の利払い費ということになりますから、国債費はいまあなたが言われた予算繰り入れ、定率繰り入れにこの利払い費を加えなければいかぬ。それに事務費を加えるということになりますから、算術計算をすると約二十兆円になるのじゃないですか。
  15. 山口光秀

    山口(光)政府委員 やはり同じ前提の仮定計算でございますが、六十五年に利払い費が十一兆一千億ございますので、先ほどの償還額と合わせまして十九兆六千億でございます。
  16. 正森成二

    ○正森委員 事務費が入らずにですね。
  17. 山口光秀

    山口(光)政府委員 事務費はごくわずかでございますので、ネグってよろしいかと思います。
  18. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、いまお聞きになりましたように、何となく七年間で赤字国債を一兆円ずつ減らしていくというと非常にできやすいように思うのですね。ところが、前門のトラ後門のオオカミというので、こちらの減らすのが少なければ逆に赤字国債脱却の年はおくれてくる。六十五年にどうなるかと言えば、国債整理基金は底をつく、一方で赤字国債の償還はしなければならない、定率繰り入れ予算繰り入れが加わって、利払い費は国債がどんどんたまっていくからふえて、何といまの主計局長の話でも十九兆六千億、ざっと二十兆なんです。そうすると、ことしの国債費が大体八兆円ですから、何と二・五倍にふえるのですね。国債費だけで十二兆円もふえる。そういう負担に大蔵大臣耐えるのですか。  あなたは藤田委員の質問に対して、私は非常に的を射た質問だと思いますが、一体どうするんだ、赤字国債の償還についてと言いましたら、答弁の中でいろいろ言っておられますが、六十一年から予算繰り入れが必要となりますが、大量の予算繰り入れが必要になるのは六十二年度以降であります、それをどうするかという御質問の趣旨でございますと、こう言うて、四年先のことだからそれまでに何とかするんだという弁解を一応した上で、理論的には要調整額に対しては歳出カット、負担増、あるいは借りかえということも含めてのいわゆる公債発行の三つが考えられるところであります、こう言うております。  そこで、大蔵大臣国民に不安のないように答えていただきたい。国債費が六十五年には十二兆もふえて二十兆近くなる。そういうような状況の中で十二兆円も歳出カットができるわけがない。そうすると、残るところは二つで、負担増かあるいは赤字国債の借りかえかという二つに一つを決断せざるを得ないということになるのじゃないですか。赤字国債の借りかえが、四条債のように六十年で全額返済するということにするのか、あるいは十年じゃ無理だからもう十年待ってもらって二十年、半分借りかえということにするのか。それはこれからの検討課題でありましょうが、赤字国債を全額借りかえせずに、ということは、つまり予算繰り入れで全部賄っていくということになればこれはもう大変なことになる。増税を行うか、それとも再び赤字国債を発行するか、何らかの処置をとらざるを得ない。これはもうあなた方が出してきた資料から当然言えることじゃないですか。こういうようなことについて明確に答えないから、国民の間で、中曽根内閣財政政策というのは非常に不透明だということになるのですね。  総理、大蔵、どちらでもいいですから答えてください。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに藤田委員の御質問に対して、またいま正確に御質問の中でもお言葉がございましたように、三つの方法についてお答えをいたしました。が、まず私は、一つの点といたしまして、たとえば、これは当然、現行制度、施策を前提に置いての展望等でございますが、五十六年度予算編成に際して将来の姿としてお示しいたしました五十八年度予算は歳出が五十八兆三千億、そして現在御審議賜っておりますのは五十兆四千億、こういうことでございます。したがって、この限りにおいては八兆円というものが何らかの形で当時の試算からすれば抑制されておる、こういうことでございますので、歳出カットが不可能ではないかということは断定するべきものではないというふうに私は思います。  われわれといたしましてはさらに、これは個人あるいは家庭に帰する問題ではないかとか、あるいはこれは企業の自主努力に帰する問題ではないか、自治体の責任に帰する問題ではないか等々、いわゆる歳出構造の見直しということをやりまして、徹底的にこれに対応しなければならないと思っております。  そして、御親切に国民に対する不安を除くという意味であえて御指摘がありましたのは、とにかく償還期に来たものは現金で正確にお返しする、これは当然のことでございます。これが間違うことはありません。いまいろいろ誤解を受けやすい議論をいたしたといたしますならば、そのときの財源を、お返しするための金を何に求めるかということが、いかにも国民自身に借りかえそのものを強制する、こういう印象を与えておったら、私ども答弁の不手際でもございますし、この際、お返しするものはこれはまさに現金でもって正確にお返しする、こういうことで、国民の不安が少しでも除かれれば幸いだと思います。
  20. 正森成二

    ○正森委員 竹下大蔵大臣、あなたの御答弁を聞いていると、言葉の上ではわかったような気を与えるけれども、内容は何にもないのですね。たとえば、あなたは予算額は五十兆だと言って、それを何ぼ削っておると言われますけれども、五十兆の中身を見ると、どうしようもないふえる一方の国債費というのがあるのですよ。それから、地方交付税の税率でも変えなきゃ、いまでも地方は大変なのに、頭から取られる部分があるのです。一般歳出というのは五十兆のうち今年度予算でもわずか三十二兆しかない。削るとすればここから削るより仕方がない。たとえば、昭和六十五年には国債費が十二兆円ふえるのですよということを言っている。どうやって三十二兆から、一兆、二兆円削るのさえ大蔵省は脂汗を流しているのに二けたのものを削ることができるのですか。それはできないでしょう。そうなれば、増税かあるいは赤字国債の借りかえしか仕方がないでしょう、こう言っているのです。  そして、公債国民に現金で返す、そんなことはあたりまえじゃないですか。その現金で返す金を増税で賄うのか借りかえで賄うのか、こういうことなんです。借りかえで賄う場合には、現金で償還はするけれども、その渡した現金がまた借換債を買うてくれるということで還流しなければ、これは大変なインフレになったり返還不能になってくるのですから。ところが、現在では、国債を持っておるのは日銀やらあるいは市中銀行だけじゃないのです。証券を通じてどんどんと一般国民が持っておるから、このことは、当然一般の国民が、一たん現金償還を受けたらその金でもう一遍国債を買うてくれるということを前提にせざるを得ないのです。  だから、あなたの言っていることは、口では何となくすらすらすらすらと立て板に水を流すようだけれども、実際は何にも答えたことにはならないのです。そういうぐあいに問題を先送りせずに、政府としては、負担増もしくは赤字国債の借りかえということも考えざるを得ないということを国民の前に明らかにする責任があるのじゃないですか。  さらに、私はもう一つ聞きましょうか。財政制度審議会の報告というのは政府として尊重しなければならないものですね。そこの五十七年十二月二十四日の答申を見ますと、定率繰り入れをやめることはやむを得ないということを答申して、その中で「特例公債を発行しながら償還財源を積み立てることは、結局は、それだけ特例公債の増発をもたらすこととなり、それはまた、将来の負担によって将来の償還のための財源を、利子を支払いつつ蓄えることにほかならず、不合理であるという意見がある。」こう書いた上で、「これらの諸点にかんがみれば、特例公債を発行せざるを得ない五十八年度において、定率繰入れを停止することはやむを得ないものと考える。」こう言っております。  大蔵大臣、この理屈をもし政府が認めたとするなら、五十八年度も五十九年度赤字国債を発行するのは同じですから、五十九年度定率繰り入れはやるべきでない、あるいはやるのは適当でないという当然の結論になるのじゃないですか。それなのに、あなた方の財政中期試算では、定率繰り入れはやるということになっておる。この財政審の報告とこの中期試算と明らかに違うじゃないですか。もし、これをのんで五十八年度定率繰り入れをやらないということにしたのなら、五十九年度定率繰り入れはやらない、そして時期が来たら全部予算繰り入れで賄うか、あるいはそれができなければ赤字公債の借りかえに踏み切らざるを得ない、こういう結論になる萌芽の理論が、この財政審の報告は入っているじゃないですか。それも含めて率直な答弁を求めます。
  21. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ただいま御引用になりました財政制度審議会の答申でございますが、実はその後に「他方、国債整理基金への繰戻しが五十八年度に実施されれば、」これはやったわけでございますが、「同年度の定率繰入れを停止しても、同基金は、公債の円滑な償還に必要な流動性を確保し、また、公債の市価維持のためある程度の資金を保有することとなる。」「これらの諸点にかんがみれば、特例公債を発行せざるを得ない五十八年度において、定率繰入れを停止することはやむを得ない」というので、五十八年度においてはやむを得ないと、その実情をいろいろ総合勘案いたしましてという答申になっておるわけでございます。
  22. 正森成二

    ○正森委員 それは山口主計局長、我田引水の読み方ですな。これは国債整理基金への繰り戻し、つまり二兆二千五百億円が五十八年度に実施されれば、同年度定率繰り入れを停止しても何とか償還に必要な金はある、こういうことで、こういう理屈で言うなら、この二兆二千五百億円の残りは残っておるから、五十九年度定率繰り入れしなくても、五十九年度国債整理基金がゼロになることはないということだって当然言えるわけじゃないですか。  ですから、私は決して定率繰り入れをやるなということを言っているのじゃないので、政策の一貫性からいいますと、五十七年度も五十八年度も、いままでやったことがない定率繰り入れをやめるというような重大なことをやって、やっとこすっとこ予算編成したのでしょう。そして、財政中期試算によれば、要調整額は六十一年度まで見ると物すごく多いし、七年かかって一兆円ずつ減らすということになれば、六十五年はもう大変なことになる、それをどうするのですかということは、国民として聞かざるを得ないということを言うているのですね。  そこで、大蔵大臣、これについてお答え願う前に経企庁に伺いたいと思います。  経企庁は新経済社会七カ年計画をお出しになりました。これは二、三年するとたちまちできないということがわかりまして、その後毎年毎年新経済社会七カ年計画フォローアップ昭和五十四年度報告、フォローアップ昭和五十五年度報告、フォローアップ昭和五十六年度報告、こうなりましたね。  こういうぐあいにたびたび変わりましたが、ここであらわれている数字のうち、変わらなかったものが三つないし四つあります。それは何ですか。
  23. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 突然の御質問であったものですから、私の頭の中にございますもので恐縮でございます。  一つは、租税負担率であろうと思います。それから技術研究開発費の目標値三%というのがございます。それから、あとは物価関係の数字というようなものを思いつくわけでございます。  どうも恐縮でございます。
  24. 正森成二

    ○正森委員 経企庁というのはいかに情けない官庁であるかというのは、いまの答弁でもわかるのですね。  塩崎さん、決して皮肉を言うわけじゃないですけれども、よくできているのですね、これは。読んでみましたら、数字ができておりまして、ここには卸売物価がどうとか、消費者物価がどうとか、あるいはGNPがどのぐらい上がるとか、名目成長率がどうだとか、いろいろなことがずっと書いてあるのです。しかし、それは新経済社会七カ年計画実行不可能だということがわかってきたから、次々に数字を変えたのですね。成長率も変える、消費者物価も変える、卸売物価も変える、失業率もまたあっという間に変えているのです。  ところが、終始一貫変えなかったものは何かと言えば、いま局長が言うた租税負担率、これを六十年度二十六カ二分の一%程度にする、これは変わらない。社会保障移転、これを十四カ二分の一%程度にする、これも変わらない。社会保障負担を一一%程度にする、これも変わらなかった。もう一つ変わらなかったのが公共投資額の二百四十兆円ですが、これは昭和五十五年度のフォローアップで、不可能であるというので二百四十兆から百九十兆円にするというように変えたのですね。だから、四つ変わっていなくて、そのうちの一つだけが途中で半分変わった。終始変わらないものがその三つであるということになるのですね。  なぜこれが変わらなかったのでしょう。
  25. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この点につきましても、新経済社会七カ年計画を今般新しい観点から、経済運営の指針という形で新しい答申を求めているところの中で、私はその点を変えるべきである、こういうふうに考えているところでございます。  御案内のように、五十四年の八月にでき上がりました新経済計画、おっしゃるように直ちに第二次石油ショックの影響を受けまして、おっしゃるように五十四年、五十五年、五十六年、フォローアップしたところでございます。五十七年に、いまおっしゃったような数字を含めて全般的にフォローアップするという意味で、鈴木内閣のもとで五十七年の七月に諮問をいたして、新しい五カ年計画をつくってくれ、こういうことを申し上げておったのでございますが、十一月に、先ほど来申されましたように大きな変動があった。  そこで、中曽根内閣ができましたので、いま申しました観点から、ひとつ全般的に、しかもより長期に、しかもより弾力的に、そしていま申されました数字を全般的に見直したい、こういうことで諮問して、その答申を待っているところでございます。
  26. 正森成二

    ○正森委員 いろいろおっしゃったのですが、総理、いま言いました租税負担率、社会保障移転額、それから社会保障の負担、公共投資、まあ公共投資は途中で一回だけ変わりましたが、これは新経済社会七カ年計画は一般消費税の導入を前提とした計画ですから、一般消費税導入がなかなかできないということがはっきりしてきたにもかかわらず、終始変えなかった。なぜ変えなかったかと言えば、卸売物価がどのぐらいになるとか、消費者物価がどのぐらいになるとか、あるいはGNPがどのぐらいになるかは民間の問題やら世界経済の問題でいろいろ変わるけれども、早い話が円がどのぐらいになるかだって変わってくる。しかし、租税負担率や社会保障移転率や社会保障負担や公共投資というのは、まさに政府が、財政当局が主体的に決めなきゃならないものだから変わらなかった。そうでしょう。  ところが、どうです。経済審議会の審議経過報告というのが五十八年一月十三日に出ましたが、この中には、新経済社会七カ年計画でもフォローアップでも終始厳然と変わらずに政府の姿勢として示されていたものが一つも載ってないじゃないか。租税負担率をどれぐらいにするかも載ってないじゃないですか。社会保障移転をどれだけにするかも載ってないじゃないですか。社会保障負担をどうするかも載ってないじゃないですか。公共投資をどうするかも載ってないじゃないですか。そんなものが載ってなくてどうして名目成長率や実質成長率が出てくるんですか。そんな経済がありますか。そういうでたらめをこの経過報告に書いて、それに基づいて財政中期試算を出してくる。でたらめじゃないか。
  27. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま御質問のように、まさしく財政の点が大変むずかしい問題となっているために、新五カ年計画の際にもずいぶん論議してきまして結論が出なかったところでございます。しかし、そういった財政の計画も頭に置いておりますけれども、私は全般的、総合的な観点から、成長率というものは長年の経験で企画庁として十分立てられる。それが経過報告の中で三%ないし四%の幅を示しての成長率で、これでもって財政計画、中期展望もこの幅の中で、かっちりしたものはなかなかできないかもしれませんが、ひとつ弾力的なものとしての財政計画を、今後、新しい計画の中で、新しい展望の中で考えていただくことにしているところでございます。
  28. 正森成二

    ○正森委員 もういまの答弁政府の存立意義というものを全部否定したような答弁ですね。一体大きなウエートを持っている公共投資をどれぐらいかは決められない。国民の個人消費に大きな関係のある社会保障移転をどのぐらいにするかも決められない。そこからどれだけ国民から税金を取るかということも決められない。そういうことをしておいて、経済が何%の名目成長、実質成長、税収が何ぼある。そんなでたらめな内閣経済がありますか。そんなことを言うというのは、新経済社会七カ年計画が破綻した大平内閣鈴木内閣でもあえてできなかった。それを、中曽根総理、あなたはやっているのですね。  そこで、経企庁長官、えらいあなたにばかり出てもらって申しわけありませんが、あなたはこの間二十四日にずいぶんりっぱな経済演説をされましたね。私はそれを読んでおりましたので、そのさわりを読んでみます。  「中長期の展望、指針を明らかにし、企業や家計の先行きについての不透明感を払拭することは、現下の景気回復のためにも欠くことのできない条件であります。正しい海図があって初めて船は確信を持って航路をとることができるのであります。」  こう言われたことに間違いないですか。
  29. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 文章で配りましたくらいでございますから、間違いは全くございません。
  30. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、あなたの経済審議審議経過報告というのは、私がいま言った重要な四つの項目が入っていない。それはどうするんだと言ったら、中曽根総理が、いやいや、余り社会主義経済みたいなことをやって、かた苦しくて、後で拘束されたら困るから、八年か十年のふわっとした展望やら見込みというのをつくれ。そういうように審議会に諮問になったから、答申の出てくるのは、当初の予定よりはるかにおくれて八月ごろになるのでしょう。そうでしょう、経企庁長官
  31. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 経済審議会の委員の任期が七月末でございます。七月末までには出していただきたいと思っているのでございますが、新しい提案と申しますか、新しい形での要望でございますので、そんな観点からおくれる場合もあり得るということを想像しているところでございます。
  32. 正森成二

    ○正森委員 経企庁長官非常に苦しい答弁ですけれども、七月末が任期で、七月末ないし八月初めに出るであろうということは、すべての新聞が言っているところなんです。  そうすると、経企庁長官、お言葉を返すようですが、七月末、八月初めまで出なければ、経企庁と中曽根内閣は正しい海図がなしにそれまで航海なさるということになりますね。
  33. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 五十八年度の見通しにつきましては、御案内のように、私どもが責任を持ってつくって、実質三・四%、その他の指数もつくっておりまして、皆さん御案内のとおりでございます。しかし、それをもとにしながら五十九年度以降についても早目に経済審議会の答申が期待される。私は、いま経過報告でお示ししておりますように、これまでの検討の結果はずいぶん生かしたつもりでございます。おっしゃるように、財政、公共投資、こういった点について、非常に議論はありましたけれども、一応の目安ができませんでしたけれども、検討はしたところでございますので、早期に私はこのような見通しが期待できる、こういうふうに考えております。
  34. 正森成二

    ○正森委員 五十八年度の指標はあると言いますが、まさに五十九年度以降どうなるかがわからなければ、船がこう行きましても、ここに大きな暗礁があれば船は右へかじを切らなければならないし、こっちに暗礁があれば左へ切らなければならない。中曽根総理は海軍ですから、面かじとか取りかじとかを御存じでしょうけれども、それがわからないで船出をしておるというのが中曽根内閣の実態だということを経企庁長官経済演説で言っているのです。正しい海図は八月までできない。そうならざるを得ないのです。  そこで、中曽根総理に伺いたいと思います。あなたは定率繰り入れを二年にわたってやらないという大変な予算を組まれたわけですね。そして、いま、大蔵大臣は、明確にはなかなか御答弁になりませんが、赤字国債の借りかえというようなことも考えざるを得ないというような超非常時ですね。そういうときこそ、租税負担率はどうしい、社会保障移転額はどうしい、公共投資はどうしいというような、そういう指標も含めた展望やらプランというのが要るのじゃないですか。いままで新経済社会七カ年計画が五十四年の秋にできてから、一貫してそのフォローアップのときにも掲げてきたことを、この一番重大な、定率繰り入れさえもできない、国債整理基金は空っぽになるというような一番大事なときに示さない、そんな無責任な財政経済運営がありましょうか。  この経済審議会の審議経過報告の中に重要な四つの指標を入れなかったこと、それは、大蔵省が経企庁にそんなものを入れられたら将来増税するときに妨げになるから入れるなと言ったということが新聞で報道されております。また、中曽根内閣も、四月、六月の選挙までフリーハンドでおりたい、うっかりそんなものを出されたら選挙に差しさわりがあるということで、経企庁は、わざわざ経過報告あるいは答申は一月ないし四月までには出せるというのに待ったをかけて、いやいや、八年ないし十年にしろ、そうしたら答申が七月、八月にずれる、選挙は済む、国民の批判を受けないでうまいことクリアできる、それが中曽根内閣の考えでしょうが。そうでないなら四月までにこれについての明確な指標を出すべきじゃないですか。それがなければ財政中期試算なんというのは絵にかいたもちにすぎない。総理答弁を求めます。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 まず私から……。  大蔵省がいわゆる中期試算というものを出しておるわけでございますが、おのずから経済計画というものは、これは今後のわが国の経済社会の将来展望をお示しいたしますとともに、また、中長期の経済運営の指針を明らかにするものであります。それに対して、この財政の中期展望や中期試算というものは、国の一般会計予算における現在の制度、施策を前提として、一定の仮定のもとに財政の姿を将来に投影したものである。これは何回も国会議論がございますので、それの要請にこたえてぎりぎりの努力をしながらそういう手がかりとしていただくために出しておるわけであります。したがって、これそのものの点から、いわゆる経済計画というものに対してわれわれが注文をつける筋合いのものではない。この経済計画と中期試算というものは手法的にも性格的にも違っております。ただ、そうは言いましても、この経済審議会の審議経過報告で見込まれております経済指標を参考にしてつくったことは、これは事実でございます。したがって、私ども財政計画の立場からいった場合において、国民に確然たるいわゆる財政計画というものを示すということは、自由主義経済を基調とし、なおかつ国際経済がこれだけ変化の激しいときにおいて、いわば腰だめでもそうしたものを示すことは、それこそ国民の皆様方に対して私は親切な行為とは言いがたいではないか。財政財政としての立場できちんと、不透明なら不透明なりにまたいろいろなケースをお示しして、もって御批判を受ける。なかんずく、そうして将来の展望については、このような貴重な国会の問答を通じて、これがやはり基礎ですよ、そして財政制度審議会とかいろいろなところの意見を聞いて、そういう展望というものを国民の皆さん方に示していくというのが現実的な手法ではないかというふうに私は考えております。
  36. 正森成二

    ○正森委員 総理、いまの答弁は実に重大なことを含んでいるのですよ。あの大蔵大臣の言明どおりだったら、この七月末に八年ないし十年の展望を示すのさえ国民に対して差しさわりあるということになりかねないのです。それなのに、どうして五十九年から六十一年までの財政の中期展望なんか示すのですか。五十九年から六十一年までの間については、なるほどいま言われたように経済審議会の審議経過報告は参考にされたでしょうけれども、それは政府が一体租税負担率をどうするか、公共投資をどうするか、社会保障移転をどうするかもわからないで、やみくもに名目成長率やら物価上昇率を決めた。それに基づいて出しているのじゃないですか。そんな無責任なことはないでしょう。だから、それをはっきりさせるのが当然じゃないか、それをはっきりさせないで財政を語っても意味がないではないか、こう言うているのです。総理答弁してください。――いやいや、総理に聞いているのです。総理は、外交、防衛は脱兎のごとく出てこられるのに、経済になると処女のように控えて物一つ言わない。
  37. 久野忠治

    久野委員長 大蔵大臣答弁を求めました。
  38. 正森成二

    ○正森委員 そんなことでどうしますか。審議ができないじゃないですか。
  39. 竹下登

    竹下国務大臣 いま委員長から御指名が……。
  40. 正森成二

    ○正森委員 いや、大蔵大臣が脱兎のごとく出てくることはよくわかっているのです。今度は総理に願っているのですよ。
  41. 竹下登

    竹下国務大臣 委員長から御指名がございましたので、まず私からお答えをいたします。  財政のいわゆる中期試算というものについて、それは本院の議論の中でたびたび出せという御要請にぎりぎりこたえて出したものであって、私の説明が、いわば経済計画というものをエンドレスにこれを審議して出さないという議論に結びつく御説明を申し上げたつもりはございません。これはあくまでも今日の段階の中で、いま御指摘のように、経済審議会の審議経過報告というものに見込まれております経済指標を参考として、そして現行の制度、施策を前提に置いての一定の仮定で、皆様方の本院における要求にこたえて、そしてわれわれも今後の財政運営の手がかりにはなるという形でお出ししたわけでございますから、これが経済審議会の審議とか経済計画というものに対して、これに対しての論評に続いていく前提となるものではないというふうに私は思っております。
  42. 正森成二

    ○正森委員 総理の御答弁がありません。
  43. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 正森さんが御指摘のように、五十六年、五十七年というのはかなり大きな狂いが出ました。これははなはだ遺憾で残念なことでありますが、これはやはり第二次石油危機以降の世界経済全般の大きな変化が出てまいりまして、いまその調整期に入っている。この調整期がどの程度続くであろうか。そのためにアメリカの高金利が出てきたり、あるいはヨーロッパ、そのほかにおける相当な失業が出てきたり、非常に経済的に未確定の要素が多いわけです。たとえば油の値段一つにいたしましても、OPECが分裂いたしまして、一体油がどうなるものであろうか、あるいは為替相場一つにいたしましても、必ずしもまだ安定性を持っている状態ではございません。世界経済自体をどうするかということは、ある程度国際協力を必要とするという状況にもなっております。  そういう非常に未確定の要素が多い状況ですから、日本の国民経済の前途について、ある程度長期的に見通しをつくるということは、よほど今度慎重にしないといかぬ。いままで過去二年、あなたが御指摘してきたような、去年は六兆二千億円にも及ぶような歳入欠陥を生じた、再びこういう過ちを繰り返してはならぬ、そういう意味によりまして、非常に政府は腰をかがめまして慎重な構えでいまやっておる、そういうことで御了承いただきたいと思うのです。
  44. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁は御答弁になっておりません。経済審議会に八年ないし十年という展望を求めておられますが、その中では最小限、租税負担率や社会保障移転額や社会保障負担や公共投資額、こういうものはお入れになるのでしょうね。
  45. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 より弾力的より長期的な観点から、いまのような問題につきましても、できる限りその中に織り込んでいただくようにお願いしたいと思っております。
  46. 正森成二

    ○正森委員 時間の関係で、これ以上この問題は申しませんが、中曽根総理が外交、防衛については歯切れがよ過ぎるぐらいお答えになるのに、事経済については慎重過ぎるぐらい慎重である。国民にはわからない。それが結局四月、六月の選挙が済むまで本音は言いたくないという一点に出ていると見るより仕方がないというように私は思います。  時間がございませんので、簡単に伺いますが、人事院勧告が五十七年度見送られましたが、政府は五十八年度の人勘の報告、これは政府見込みでも、当然消費者物価の上昇を見込んでおりますし、雇用者所得の上昇を見込んでおりますから、政府関係の公務員についても何らかの対応をしなければならないと思いますが、それについてはどうお考えですか。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 財政当局でございますので、私からその角度からのお答えをいたします。  今年度人事院勧告につきましての考え方というものは、たびたびここで申し上げたわけでありますが、昭和四十五年以来の慣行についてずいぶんと議論を重ね、そして可能な限りの努力をいたしましたが、異常な財政状態のもとにおいて、公務員の方が今日まさに率先して痛みを分かつということで忍びがたきを忍んで見送るとの決定をいたしたわけであります。  五十八年度予算編成に際しましては、従来の慣行もございますので、いわゆる一%分を人事院勧告給与改定費としていま御審議いただいております予算書の中に計上いたしておるところでございます。したがって、従来ともわれわれが持ち続けております考え方を基礎に置きながら、五十八年度人事院勧告の実施に当たっては、その勧告が出た場合、検討をして決める、こういうことであります。
  48. 正森成二

    ○正森委員 ILOに対して労働組合等が人勧等について申し立てましたが、それに対して日本政府が見解を発表いたしました。その中の結論部分の第四項を読みますと、「来年度以降の」、つまり五十八年度ですね、「人事院勧告の取扱いについては、それが政府に提出された時点で、国政全般との関連において検討することとなるが、政府としては、今回のような措置が繰り返されることのないよう最善の努力をすることとしている。」こうなっております。これは間違いありませんか。
  49. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  政府といたしましては、そのような見解をILOに対して行ったところでございますので、これからまだILOの委員会あるいは理事会等もございますけれども、いずれにいたしましても、そのような方針でいきたいと考えております。
  50. 正森成二

    ○正森委員 人事院。人事院に伺いますが、五十七年度の人勧は、現在のところは見送られたままですが、五十八年度政府見通しでも雇用者所得が上昇することになっております。六・六%上昇しますが、雇用者の伸びを引きますと、五・二%雇用者所得が伸びる予定になっております。また、消費者物価も政府見通しではそれなりに上昇することになっております。そうすると、人事院としては、五十七年度分が実施されなければ、それに加えて五十八年度のしかるべき調整額を加えた人事院の勧告を行う、こう考えてよろしいか。
  51. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五十七年度の人事院勧告の取り扱いにつきましては、内閣においては見送りということでもって所要の予算措置等が講ぜられたところでございますが、これに対しましては、国会において現在なお御協議をいただいておる段階でございまして、われわれといたしましては、あくまで人事院勧告の精神なり従来の沿革から申しまして、これはやはり完全に実施をしていただかなければ困るという態度でもって臨んでおる次第でございます。よろしくお願いをいたしたいと思っております。  五十八年度につきましては、五十七年度の決着いかんという問題にも関係がございますが、われわれといたしましては、現在の制度がございます限り、これは従来の方針をそのまま踏襲していくというのが正しい方向である、それ以外にとるべき方法はないというふうに考えております。したがいまして、本年の四月一日現在で、従来の方針に従って官民の給与の実態というものを比較検討いたしまして、その結果、ここに較差が出てまいります場合に、仮に五十七年度について実施されないということになりますれば、その分と合わせて五十八年度分が上積みされて出てまいる。その数字が出ました段階において較差がございますれば勧告をするという従来の方針は踏襲してまいる所存でございます。
  52. 正森成二

    ○正森委員 結構です。人事院がそういう方針であるということはわかりました。  そこで、資料のNo.2を見てください。防衛庁長官に伺います。  防衛庁としては、「防衛計画の大綱」を実現するために五六中業というのはできる限り速やかに実施する予定ですね。実現する予定ですね。
  53. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国の防衛力整備につきましては、「防衛計画の大綱」の水準にでき得る限り早く到達をいたしたい、こういう考えでおります。したがいまして、五六中業につきましても、その線に沿ってつくられておるわけでございます。
  54. 正森成二

    ○正森委員 中曽根総理もこの総括質問でのやりとりの中で、「防衛計画の大綱」というのはできるだけ速やかに実現したい、こう言われました。  そこで、資料を見ていただきますと、これは防衛庁が出している五六中業、軍事費十五兆六千億から十六兆四千億、五十七年度価格に換算したものであります。それを見ていただきますと、五十七年度が二兆五千八百六十一億、五十八年度は二兆六千九百四十九億――失礼しました、二兆七千五百四十二億円でありますが、これは名目で六・五%の上昇であります。しかしながら、五六中業は五十七年度価格で見ておりますから、これを五十七年度価格にデフレートいたしますと、伸び率は四・二一%で二兆六千九百四十九億円、こういうことになります。そこで、便宜上十五兆六千億ないし十六兆四千億、最小と最大から五十八年度のデフレートした額を引いて、残りを等率で五十九年度から六十二年度まで伸ばして十五兆六千億円ないし十六兆四千億円の五六中業を達成する、こう見ますと、実質の、左のところを見ていただきますと、防衛費は最小七・三三%から九・八四%実質で伸びなければなりません。  そこで、それが政府経済見通しの消費者物価と卸売物価の上昇率に見合って名目ではどのくらいになるかを計算したのが右側の名目であります。そうすると、五十九年度から六十二年度まで、最小で一〇・一五%、最大の場合は一二・七二%、これだけ防衛費がふえなければならない。したがって、六十二年度は四兆五百四十五億から四兆四千四百六十三億、こういうことになり、名目の総計は十六兆八千六百五十一億から十七兆七千四百九十億円になります。  そこで、それを政府統計による六%のGNPの中間値をとってGNPがどれだけ伸びるかと計算しますと、その右側にあります。  そこで、それに対してこれらの防衛費の伸びが対GNP比幾らになるかを計算した額が一番右側であります。それを見ますと、五十八年度が〇・九七八%でありますが、五十九年度は一・〇一六ないし一・〇四、順次ふえまして、六十二年度には一・一四%ないし一・二五%、つまり五十九年度から一%を突破して、六十二年度に近づくにつれて急速にふえるというのが政府経済見通し等による冷厳な事実であります。つまりGNPで確実に一%を突破する。  それだけではありません。ここに書いておきましたが、いま人事院総裁あるいは労働大臣の言明によりますと、ILOに対しても人勧はできるだけ誠実に実施する、それは去年の額にことしの賃金の上昇を加えた額であるということでありますが、どれぐらい人勧が実施されれば五十八年度でもGNP一%を突破するか見てみますと六・二三%、一%はすでに予算計上しておりますから、残りが五・二三%で、人勧が六・二三%以上答申があれば、そしてそれを実施すれば、それは現在の物価上昇や雇用者所得の伸びから当然予想されることでありますが、五十八年度にすでに一%を突破するということがこの計算から出てくるわけであります。  つまり政府が言う五六中業を期間内にできるだけ早急に達成するということは、財政的には必然的にこういうことにならざるを得ないというのが冷厳な数字の出てくる結論であります。  そこで、防衛庁長官中曽根総理大臣に伺いたいと思います。  こういうようなことに対して、かつて谷川長官は、防衛費の一%枠突破に備えて各界の有識者に防衛問題の検討、答申を求める諮問機関を設置する予定である、こういうように言われたこともありますし、中曽根総理も、安全保障問題等に関する臨時調査会の新設を考慮すると言われたことがありますが、こういう数字を前にしてどういうようにお考えになりますか、伺っておきたいと思います。
  55. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 まず最初に、五六中業の性格について一点触れさせておいていただきたいと存じます。  この五六中業と申しますものは、必ずしも国防会議あるいは閣議決定などを経ておる数字ではございませんで、これは「防衛計画の大綱」に基づいて各年度の概算要求を作成する際の、いわばわれわれの内部の参考資料として使われておるものでございまして、必ずしも各年度予算年度別に拘束していくものではございません。  それから第二点といたしまして、この中業の性格そのものの中に、少しくどいようでございますが、正面装備につきましては比較的精細に積み上げてございますが、その他後方経費などはそのときどきの情勢その他におきまして変動をいたすものでございますから、それほど詳しくは積み上げてございません。  それから一%の問題でございますが、一%の問題につきましては、これは五十一年の閣議決定でございまして、私といたしましてはできる限り厳正に今後ともこの閣議決定の線には沿っていきたい、これは基本的にそういう考え方を持っております。  それから、五十八年度中にも人勧の取り扱いいかんによっては一%を超えるのではないかという御指摘もございましたが、これは実は防衛庁の申し上げることでございませんで、人勧の取り扱いがどうなるかによって変わってくることでもございまするし、いまここで仮定のことで超えるとか超えないとか申し上げられません。申し上げられませんが、現実の問題といたしまして、当初計画がなされておった当時と比べますと、確かに経済の成長が鈍化の傾向にあるような感じは受けます。したがいまして、五六中業をこのまま年割りにしてどれだけのものにしていけば、いつの時点でどうなるかというような試算その他は、私ども持ってはございますけれども、これはそのときどきの経済の動向、あるいは予算編成のときに国の他の施策などとの関連も考慮しながら防衛予算がつくられていく過程において決まっていくものでございますから、いまから直ちに一%を超えることを前提にする、そういうような検討を加えているわけではございません。  最後に一言申し上げさせていただきますが、すでに御案内のようにGNP比〇・九八というところまで来ておりますので、もしそういう一%を超えるような形になった場合には、われわれといたしまして、そのときの状況を判断しながら物を考えていかなければいかぬと思っておりますけれども、いま私自身が、それを前提に置いた審議会をつくるとか、あるいはそれを前提に置いた内部の検討をしておるとか、まだそういうところまで事態は立ち至っておりませんが、そのときになればまたそのときで、これは閣議決定の事柄でもございますので、閣議の中におきまする御判断もいろいろとちょうだいをいたしながら考え方をまとめなければなるまいとは思っております。  以上でございます。
  56. 正森成二

    ○正森委員 防衛庁長官も一%突破の可能性を否定されませんでしたが、私どもはこれまで質問してきましたように、財政が非常に困難なときに、私ども資料でも五十九年度は必ず、五十八年度でもGNPの一%を突破する可能性があるということは、中曽根内閣財政が、軍事費だけは突出させて国民の福祉、教育等を削る、国民にとってはどうしても許すことのできない、あるいは認めることのできない予算であるということだけは申し上げておきたいと思います。  それでは、政治倫理の方に移ります。  法務省に伺います。  先般、榎本敏夫氏がテレビ朝日のプロジェクトチームのインタビューに答え、あるいは文芸春秋や週刊文春、そういうところで発言をされまして、いろいろ言っておられますが、要約すると、正月を挟んだという記憶はないが、四十八年ごろ数回にわたって五億円、丸紅から金を受け取ったことは事実である、そのときには、アリバイ主張で言った清水という運転者の車でなく、検察の主張しているような笠原の車を使った、どこへ運んだかといえば、消去法をもってすれば田中角榮氏の自宅へ運び込んだ、こういう三つの重大なことを公の席で語っているようであります。  これは、いままでの六年ないし七年の裁判の経過から見ますと、全く異なった発言であり、どちらかといえば検察側に対する自供調書にきわめて近寄った発言であると思われます。  この重大な裁判に関連する被告の重大な法廷外の発言に対して、それはもちろんそのままでは法廷での証拠になりませんが、事の重大性にかんがみ、検察はどういうような対応をする考えであるか、伺っておきたいと思います。
  57. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のような発言があったことは承知しておるわけでございますが、ただいま正森委員も仰せになりましたように、現在裁判を受けている被告人のいわば法廷外の発言でございまして、法的に申しますと、裁判の判断の対象にならない発言であるわけでございます。したがいまして、そういうようにしか申し上げようがないということであろうと思います。
  58. 正森成二

    ○正森委員 私は、いまの前田刑事局長答弁は、国民にとっては非常に理解しがたい発言であると思うのです。  私も法律家の端くれですからよく知っておりますが、どんな発言でも法廷に持ち出せなければ、裁判官も検察官も弁護側もそれを証拠として主張することはできない。だから、どんな発言をしようと、法廷外の発言である場合には裁判の成否とは無関係であります。しかしながら、検察側の供述調書では、五億円もらった、笠原の車に乗っておった、目白の座敷の奥へ運び込んだということを認めているのに法廷ではずっと否定しておった人間が、いよいよ結審間近というときにそれと異なる、検察の自供調書にほぼ合致するような発言をした。もちろん時期の細かい点や趣旨は異なっているようでありますが、大筋から見て、検察にとってはきわめて重大かつ有利に活用することもできる発言であります。それを何らかの形で審理の上にのせるという考え、それが全然なくて単に法廷外の関係のない発言だと、そうして済ましておいていいのですか。
  59. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど申し上げましたのは、正森委員も御自分で御指摘になりましたように、いわば法廷外の発言であるという法的な評価といいますか、そういうものを申し上げたわけでございます。ただ、こういう発言をどういうふうに扱うかということになりますと、これは今後の裁判の進行にも関係するわけでございますし、具体的に言えば、弁護人側でどういうふうな対応をされるかということとも関係するわけでございますから、そういう意味で今後検察当局がこれをどういうふうに受けとめ、どういうふうに対応していくかということについて具体的に申し上げるのは事柄の性質上適当でない、こういう意味でございます。
  60. 正森成二

    ○正森委員 いまの発言は、弁護側や榎本側がどう対応するかによっては検察も対応せざるを得ないという含みを持った発言であるというように伺いました。  そこで、私は、田中角榮氏の丸紅関係の裁判について若干伺いたいと思います。  ここに検察側がこの間行った論告があります。その論告を見ますと、五百五十八ページにこう書いております。  本件は、国の行政の最高責任者である内閣総理大臣にかかる事件であること、賄賂の額が現金五億円にのぼる巨額なものであること、その金員が外国企業により海外で調達され、密かに我が国に搬入されたという国際的な犯罪であることなど、その規模、態様において類例をみないものである。   しかして、国政の頂点に立つ者にかかる本件の如き行為は、職務の公正と廉潔を旨とすべき公務員一般の綱紀のみならず、国民全体の道義の維持に深刻な影響を及ぼし、我が国の政治・行政に対する国民の信頼を著しく低下させるものであり、この種行為に対する厳正な処断を欠くときは、ひいては、民主政治の根幹を揺がす虞があるといっても過言ではない。 こう言っております。  これは衆議院と参議院における決議の趣旨、三木総理のフォード大統領に対する親書、あるいは議長裁定の精神と全く同じであると思います。  そこで伺いますが、五億円という額はわが国の賄賂史上で最高の額ではありませんか。また、これまで総理在職中に外国からの金員を受け取ったという者がおりますか。
  61. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の金額の点でございますが、御指摘のようにこれまで具体的に扱われました事件の中では最高の額であろうと存じます。また、第二問につきましても、そのような事実はなかったと承知しております。
  62. 正森成二

    ○正森委員 私は論告を見て、証拠に基づいて主張されているので初めてわかったのですが、これまで田中角榮氏側は金を持ってくるのが遅いと言って催促をしたのは四十八年の六月一回だけであると思っておりましたが、四十八年の十二月ないし四十九年の一月にも、残りの二億五千万円を持ってこないじゃないかと言って、二度まで催促をしたということになっておりますが、そのとおりですか。
  63. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の論告におきまして、そのような事実を指摘しておるところでございます。
  64. 正森成二

    ○正森委員 ちょっとそこにおってください。  論告の四百五十五ページを見ますと、事件が明らかになってから、返すと言ったのも事実ですか。それからまた、丸紅に対して、しっかりがんばってくれと言って、あえて偽証を教唆したあるいは勧めたというのも事実ですか。
  65. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 論告におきましては、そのような事実をやはり明示しております。
  66. 正森成二

    ○正森委員 論告の五百六十ページを見ますと、   更に、田中は、ロッキード事件発覚後、国会における国政調査権の行使に際し、本件金員収受の事実等一切を秘匿するよう丸紅側に働きかけるなどの証拠隠滅工作を行い、これが丸紅側被告人らによる本件偽証に相当の影響を与えていることも見逃すことはできない こういうぐあいに書かれております。  そして、さらに、   本件議院証言法違反事件は、チャーチ委員会の調査に端を発したいわゆるロッキード事件について、種々の疑惑の解明を求める国民の期待に応え、国会が真相を究明し、政治家の政治的・道義的責任を明らかにするために行った国政調査権に基づく証人尋問に際してなされたものである。しかして、その尋問の主たる事項は、ロッキード社が日本の政府高官に贈るために支出した五億円の流れということであって、まさにロッキード事件の核心に触れるものであった。しかるに、檜山らは、田中側から右金員授受がなかったことにしてもらいたいとの要請もあって、田中、榎本らに累の及ぶことを恐れ、かつ、丸紅の信用が失墜することを懸念し、虚偽の陳述を行ったものであり、 こう言っております。  つまり、そうすると田中角榮氏は、わが国の賄賂史上最高の五億円という額を、いままで前例のない総理大臣の身分で、いままで前例のない外国からもらった。しかも催促を二回もしておる。ばれたら、返すと言った。そして受け取ってもらえなかったら、今度丸紅に対して、しっかりがんばってくれと言って、事実上、政治的道義的責任を明らかにする議長裁定やら両院の決議に基づく国政調査権を妨害して偽証させることをやったんだということを、この論告では証拠に基づいて認めていることになります。  法務大臣に伺います。  法務大臣は、この論告の前に約一時間にわたって前田刑事局長から論告の説明を聴取したようでありますが、結論としては、何らかの変更を求める意味での指揮権の発動をされませんでしたね。
  67. 秦野章

    ○秦野国務大臣 前田刑事局長から、担当の局長ですから、当然報告を聞いたということでございます。
  68. 正森成二

    ○正森委員 後の質問に答えてください。あなたは、これについて変更を求めるという意味での指示はされませんでしたね。
  69. 秦野章

    ○秦野国務大臣 報告を聞く場合に、報告を一方的に聞くだけじゃなくて、この点はどうなっているのだ、この点はどうかというようなことはしたと思いますが、細かいことはもう忘れました。  長い論告でございますからね、私が一時間聞いたからといって、そんなにわかるはずのものでもない。正森さんより私の方が研究が足らぬかもわからぬ。法律的な問題については、私もかつていろいろ質問したことがあります。これは法律的な問題でございます。事実の関係につきましては、目下公判係属中でございますから、しかも論告は検事の意見として述べられたのでございまして、裁判はいま係属中でございますので、私がとやかく申し上げることはむしろ適当じゃない、こう思っております。
  70. 正森成二

    ○正森委員 いまお答えになったことは、報告を受けて、これはどうだ、あれはどうだということは言ったけれども、これを直せ、あれを直せというようなことは言ってないという意味答弁であります。つまり、この論告は、法務大臣もとやかく言わなかった論告であります。  つまり、これは、行政府である法務大臣がこのとおり論告することを事実上認め、あるいは行政府としての中曽根内閣は一体としてこういう論告の立場で物事を判断しなければ、論理的に一貫しないという立場になるんではないでしょうか。  私は、こういうことであるならば、他の者はともかくとして、法務大臣としては、あるいは内閣としては、そういう検察をバックアップして、その刑事責任及び政治的道義的責任にも関連するような、そういうことについての理非曲直を正さなければならない立場にあると思いますが、いかがです。
  71. 秦野章

    ○秦野国務大臣 正森さんも御案内のとおり、やはりいまの司法制度は、原則が当事者訴訟主義で、検事の意見があって、一方弁護団の意見があり、これをじっと見守っている裁判官が最後の決断をするというたてまえでございます。したがって、そのプロセスの中で検事の論告求刑という一つのプロセスがあるということでございますから、内閣がどうのこうの、法務大臣がどうのこうのというプロセスの中で私はいまとやかく言うべきじゃない、こう考えております。これはもう恐らく政府としてもそういう態度であるべきだと思います。
  72. 正森成二

    ○正森委員 私は、法務大臣は御答弁になりましたが、法務大臣がわざわざ報告を求めて異議がなかったということは、検察を指揮監督する法務大臣もこのような論告の立場を認めざるを得なかったということにならざるを得ないと思います。  そこで、刑事局長に伺いますが、論告の九十四ページないし百四十二ページを見ますと、昭和四十七年の十月五日から六日にかけて、飛行機の売り込みについて、全日空にはダグラスのDC10を割り当てる、日本航空にはボーイングの747を割り当てる、しかしロッキード社にも日本航空に飛行機を売る機会を与えるという、まあ言ってみれば三方とも少しずつ得をするというような計画が実際にはあって、それを直すためにコーチャンがいろいろ努力し、丸紅については大久保、伊藤を通じて榎本にそれがどうなったかを問い合わせたというような点が証拠に基づいて述べられているようですが、そのとおり間違いありませんか。
  73. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 コーチャン氏がL一〇一一を売り込むいろいろな努力をしている間におきましてそういう一過程があったといいますか、そういうことが述べられていることは事実でございます。
  74. 正森成二

    ○正森委員 そこで、この論告を見ますと、総理、私は率直にあなたに伺いたいと思います。証拠としてコーチャン証言録が引用されてあります。このコーチャン証言録というのは裁判で採用された資料であります。このコーチャン証言録、ここに載っておりますが、それを見ますと、あなたのことが出てまいります。これは決して私が独断で言っているんじゃなしに、証拠に基づいて裁判所に採用された資料、そこに載っていることであり、それを検察が間接的に引用していることであります。  つまり、四十七年の十月五日にコーチャンは朝、福田太郎から、私がいま言いましたような、全日空に対してロッキードは売り込めなくて、逆にこれをダグラスに取られるということを聞き、びっくり仰天して夜八時ごろ、児玉譽士夫のところへ駆けつけるわけであります。そして、児玉譽士夫のところで、証言を見ますと、約三十分ぐらい話をした後で、八時半過ぎないし九時までの間で約十五分余り中曽根氏、当時通産大臣のところに電話をして、この事態を直すようにお願いをしたということが書かれております。  あなたは国会での証言で否定をされましたけれども、しかし、それは十分に人を納得させるものではありません。  あなたは当時、八月二十一日の朝日新聞ですが、そこで弁明をされておりますが、当日は「午前七時半上野発の汽車で新潟に行き、通産相として中小企業全国大会に出席した。午後三時四十分新潟発の汽車に乗り、同七時三十九分上野駅に着き、自宅には八時十分すぎに戻った。」こう言っておられます。  そうしますと、非常に俗な言い方ですが、コーチャン証言録によれば、電話がかかったのは八時半から九時の間ですから、八時十分に家に帰っておったあなたについては、十分に電話を受ける余裕があったわけであります。あなたは電話をお受けになったのではありませんか。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういう事実は全くありません。
  76. 正森成二

    ○正森委員 そういう事実は全くありませんと言って否定することは、非常にやさしいことであります。しかし、このコーチャンの証言録を見ますと、コーチャンは、児玉のところへ行きましたら児玉が出てきて、話をしたところは大きな部屋で、ガラスのつい立てがあるだけで、部屋じゅう全体が何でも同じ部屋のように見たり聞いたりすることができる状況だ。すりガラスですから見えないところはあります。そこで約三十分話ししたら、児玉はたちどころに大きな声で、中曽根氏に電話をしろ、こう言って、それを受けて大刀川というのがすぐあなたに電話をした。中曽根氏が出ましたと言って、児玉が受話器を取って話をした、こういうぐあいになっております。  あなたは、何者かが自分の名前をかたったのではないかということを言っておられるようですが、児玉が大刀川との間で実は中曽根以外のところに電話をせよ、こういうことを相談する暇は全くなかったことは証拠上明らかになっております。  また、児玉は当時、時間がございませんから検察から聞きませんが、ロッキード社との間に基本契約で年間五千万円報酬をもらっておりました。トライスターを売り込むならば、初めの三機ないし六機で十二億円余りのお金をもらうことになっており、現にもらいました。それ以後の飛行機の場合は、一機について十二万ドルとか六万ドルもらうことになっておりました。さらに、P3Cを五十機以上売り込むならば二十五億円もらうことになっておりました。児玉にとっては大変なお得意であり、長い間基本契約でコンサルタント料をもらっていたお得意であり、しかもコーチャンが大変なことだと言って駆け込んできて、それに対して、うそをついてまでごまかしをするという必然性は全然ないばかりか、全力を挙げてその解決をしてやらなければならない立場にありました。現にコーチャンは、児玉がやってくれた中でこれは一番大きな功績であると、この嘱託尋問調書で言っております。  そうすると、何人かがあなたの名前をかたるためにやったという余裕もない。児玉はそういうようにうそをつく必然性は何もない。むしろ、うそをついたら自分のいままでのロッキード社との関係が全部つぶれてしまうという状況の中で、あなたに電話をしているんですね。そうすると、あなたが、何人かが自分の名前をかたったに違いないというようなことは、理屈が通らないではありませんか。  また、あなたは翌日、これこれこういうことをして、そういうことをする暇がなかったと言われますけれども、あなたのこの弁明を見ますと、当日は閣議があった、国防会議の議員懇談会もあった。ここで十分に田中総理に会う機会があったではありませんか。だからこそあなたは、その翌十月六日の午前中に事態を直すことができ、事態が直ったということを、児玉を通じてあるいは伊藤を通じてコーチャンが六日の正午ごろに二回にわたって電話を受けて安心したのではありませんか。そう考えるよりほかに方法がないじゃありませんか。  重ねて伺います。こういう事実に基づいて私はお伺いしているわけですが、何人かがあなたの名前をかたったという必然性もなければ、必要性もなければ、その可能性もなかったということを私は指摘したい。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ないものはありません。
  78. 正森成二

    ○正森委員 それでは伺いますが、当日の新聞を見ますと、あなたはこういうことに対して非常に腹をお立てになって「このような記事について私に事実を確かめないで報道したことに対し朝日新聞社に抗議するとともに弁護士とも相談して法的措置を講じたい。」こういうことを言っておられますし、また児玉に対しても同様である、こういうように言っておられます。あなたは朝日新聞ないし児玉、大刀川に対し法的措置をおとりになりましたか。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 外国人が勝手なことを言っておるそういうことについて一々目くじら立ててやる必要はない、そういうふうに考えまして、特別な措置はとりません。
  80. 正森成二

    ○正森委員 それは総理、非常におかしなことではありませんか。私は、あなたがどうお答えになるかと思って事前に朝日新聞の編集局にも電話をして、あなたが何ら法的措置をとっておられないことを確かめました。また検察庁に伺って、全国津々浦々ございますから、鹿児島県とかあるいは沖縄県はいざ知らず、少なくとも東京においては告訴の措置をとられていない。したがって、恐らく全国的にも措置をとっておられないであろうという回答もいただいてまいりましたが、あなた自身、何らの措置をとっておられないということを伺って、私は、自分の調査が確かめられたと思っております。  しかし、総理、外国人が勝手に言ったことに対してとやかく目くじらを立てることもあるまいというのがもし本当であれば、田中総理や丸紅の諸君は、いま現在こうやって刑事問題で裁判を受けている必要はないはずであります。コーチャンがアメリカの上院でああいうことを言ったから問題になり、しかも、私があなたに言っているコーチャンの証言は、アメリカの上院の外交小委員会で言っていることではなしに、わが国の裁判所が法に基づいて嘱託尋問で証拠能力ありとして採用した証拠の中に書いてあることであります。現にそれは田中角榮氏の論告の中に引用されているのであります。これは、一国の総理として無視することのできないことではありませんか。  巷間こう言っているんです。中曽根総理は、もし児玉譽士夫や大刀川が実際はおれは中曽根さんにあのとき電話したんだと言えば、田中角榮氏が十月六日の朝、実は中曽根君はおれにこの点はどうなっているかと聞いたんだ、こう言えば、あなたはたちどころにうそつきである、こういうことになるのですよ。だから、言ってみれば、あなたは右翼と田中角榮氏に最も弱い点を握られている人物であると言わなければなりません。だからこそあなたは政治倫理についてかくもあやふやな、国民の納得できない答弁を繰り返すのではないか、かくもあなたは右翼が喜ぶような不沈空母だとか四海峡封鎖だとか運命共同体ということを次々にアメリカでしゃべるのではないか、こういう疑惑が国民の間に広がっているのです。それを解こうと思えば、外国人が言ったというようなことではなしに、外国人は児玉や大刀川が言ったことを聞いておって言っているのですから、少なくとも児玉や大刀川に対して厳正な措置をとるということが、公人としてあなたの当然のことではありませんか。それをやらないで、外国人の言ったことだから勝手にしろ、こういうことを言っても国民は納得しないのではないでしょうか。  私は、時間が参りましたので、もう一つ言っておきます。  あなたは、わが党の不破委員長の質問に対して、自分が外国人特派員に配った「マイ ライフ イン ポリティックス」、これは自分が総裁になったときに衆議院議員として配ったのだと言われました。しかし、委員長、そこに写しがございます。原本もここにございますが、ごらんいただいたと思いますが、みごとな字で「ヤスヒロ・ナカソネ」と書いてあります。それを見ると、明白に総理大臣の地位についたからと書いてあるじゃないですか。「イン コネクション ウイズ マイ エレクション ツー ザ ポスト オブ プライム ミニスター」。いかがですか。  そういうように、あなたはここに明白に書いてあることだって資料がなければうそをつく。ワシントン・ポストでも、録音があるということがわかったら初めて認める。政治は信なければ立たずと言うのです。総理大臣が証拠がなければ認めない、そういうようなことでどうして一国の国民総理大臣を信用しますか。その点についてあなたの答弁を伺って、時間が来ましたので私の質問を終わります。
  81. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほどの電話の事実は全くありません。それから、児玉や大刀川が電話をかけたということも言っておりません。そういうような状態のもとに、告訴とかそういう手続をする必要はないと思っています。  それから、いまのこれは、まず第一に国会議員としての中曽根康弘の紙で書いてあるので、総理大臣というようなことで、ステータスで述べているものではありません。それから、出した手紙もヤスヒロ・ナカソネと書いてあるだけで、肩書きや何かは一切書いてありません。  そして、この中の文章を読んでみると、「イン リスポンス ツー リクエスツ フォー ディテールズ アバウト マイ ポリティカル ビューズ アンド キャリア」と書いてあって、要するに外人がいろいろ聞いてくるから、「イン コネクション ウイズ マイ エレクション ツー ザ ポスト オブ プライム ミニスター アンド リベラル デモクラティック パーティー プレジデント」、つまり、総理並びに総裁の選挙に関して私の経歴や見解を聞きたいと、つまり、こういう人間がもし総裁や総理になった場合に、どういう考えを持っているか、そういう意味でいろいろ聞いてきた、「イン コネクション ウイズ マイ エレクション ツー ザ ポスト オブ プライム ミニスター」あるいは「プレジデント」、そういうことを言っているので、選挙に関して聞いてきた、そういうことであります。  それで、その中に、私はこの本を去年からポジションとバックグラウンド、私の地位や背景について書き始めた、しかし、行政管理庁長官になって非常に忙しくなったのでやめた、しかし、急にこういうことが起きたのでとりあえず出すと、そして「ア ナンバー オブ ポインツ メイ リクワイアー アップデイティング オア ファーザーエラボレーション」、将来について相当の点で直す必要があるということをちゃんとここに書いてある、急につくったものだからそうですと、そういうことで書いてあるのでありまして、総理・総裁というステータスで、そういう地位でこれを出したものではない、御了承いただきたいと思っております。
  82. 正森成二

    ○正森委員 そういう説明も成り立ち得るでありましょうが、「イン コネクション ウイズ マイ エレクション ツー ザ ポスト オブ プライム ミニスター」というのは、私がこのたび総理大臣に選出されたこととの関連でというように訳すことができるのですね。しかも、十一月二十六日に出しているのです。  私はここに書かれてあることの内容についていろいろ申し上げる時間はございませんけれども、しかし、あなたがこういうように事実を私どもに示されるまでは、あくまで総理になったからだと言わないで、総裁になったからだというように御弁解なさるというのはいかがなものであろうか。御自分の言動に対しては十分に責任を持って行っていただきたいし、重ねて、私は、四十七年十月五日、六日の件については、あなたの今後の政治生活について重大な影響があるので、これについて公的にけじめをつけられることを心から期待して、私の質問を終わらしていただきます。
  83. 久野忠治

    久野委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十六分休憩      ────◇─────     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕