○矢山有作君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
国家行政組織法の一部を改正する
法律案について、総理並びに
関係大臣に質問をいたします。
まず冒頭に、
中曽根総理の行政
改革に取り組む基本姿勢につき、お尋ねいたします。
総理が政権を獲得した背景には、田中元首相の強力な援護射撃とともに、行革の大看板が挙げられます。政権獲得の手段として、第二臨調、俗に言う土光臨調を利用したのであります。
しかし、総理は、一たび政権の座に着くや、訪米、訪韓と相次いで行う中で、改憲、軍拡、日米運命共同体など、
わが国憲法に抵触しかねない問題
発言を連発し、あたかも総理が一人で、
わが国の動向を左右できるかのごとき危険な錯覚に陥っているようであります。その結果、
国民の厳しい批判にさらされ、自民党内部にすら反発を招くや、一転して内政重視を打ち出し、再び行政
改革推進の看板を掲げて、
国民の人気を回復しようと躍起になっております。
このような総理の
政治姿勢に対して多くの
国民が不信を抱くことは当然であり、ある新聞社の世論調査結果によると、総理の言動に不信を抱く
国民は実に四〇%にも達し、またそのことから中曽根内閣の支持率も低下し、支持率よりも不支持率の方が高くなっております。あえて言うなら、総理は行政
改革をもてあそんでいるのではないかと思うのでありますが、どうでしょうか、御所見を承りたい。
次に、中曽根行革の手法についてであります。
総理は、行政管理庁長官時代から、行革宣伝の場として土光臨調を最大限に利用してきました。そこで、第二臨調とは何であったのか、いま改めて考えてみますと、臨調は臨調
設置法で定められた所掌範囲を大きく逸脱して、
国家の目標、国づくりまで提言をし、財界主導のもとに社会福祉、文教、
農業など
国民生活に密接な部門を、自立自助、受益者負担の原則を強く前面に掲げて抑制し、他方、財界の利益につながるエネルギー開発、海外経済
協力、防衛などの部門は積極的な
施策の拡大を提言し、
国民が行政
改革に期待した行政経費のむだをなくすること、肥大化した行政機構の整理、不公平税制是正などの諸
課題にこたえるものとはなっておりません。
さらに問題なのは、こうした国の重要政策の決定が密室
審議の形をとり、
国民が強く求めていた
審議の公開、議事録の公開をことごとく拒否し、臨調は現代の枢密院であるという厳しい批判があるように、
国会を越え、
国会の機能を実質的に代行してきたことは、議会制民主主義を守る立場からは絶対に容認できぬところであります。総理の御所見を伺いたい。
次に、最近の報道などによりますと、総理は、この臨調方式の手法を使って、安保臨調とか教育臨調とかを
設置して、その
答申を得て、
わが国の防衛政策の決定や教育
制度の抜本
改革に反映させるという構想を打ち出していると伝えられていますが、このような考えがあるとするならば、われわれは重大な関心を寄せざるを得ません。なぜなら、臨調と同様、
国会の機能を空洞化させ、民主主義を根底から崩壊させる危険性を感ずるからであります。この点についての総理の御答弁を求めます。
次にまず、本
法案は、行政による臨調路線を進める一環として位置づけられます。本
法案の
提出のねらいを端的に言うならば、現在
国会が議会制民主主義の立場からコントロールしている行政組織の立法規制を、行革の美名に隠れ、
政府が勝手に官房、局以下の内部部局や
審議会などの行政組織の
設置、改廃を政令だけでできるようにするものであります。これは憲法で
規定されている
国会の
審議権を制約するものであり、行政による
国会に対する重大な挑戦であり、とうてい容認できないものであります。
政府は、これまでにも本
法案とほぼ同様な
内容のものを第六十五
国会を皮切りに三回にわたって
国会に
提出しましたが、いずれも門前払いの憂き目を見、廃案となった経緯があります。その
理由については、私があえてここで述べなくても御承知のとおりであります。
特にここで触れておきたいのは、第一回
国会に労働省
設置法が
提出されたときのことであります。その
内容は、労働省の内部組織として官房のほかに五つの局を
設置するというもので、そのほかに、新しい部局の
設置を想定して、必要があるときは政令で五つの局のほかに部局を設けることができるという
規定をつけ加えていたのでありますが、この
規定は
国会で削除されました。
その
理由につき、参議院決算
委員長の
報告は、新憲法下においては、行政機構の定め方については、旧
制度とは趣きを異にし、
国民自身がこれを決めるのである、すなわち
国民の代表である
国会において、法律によって決めるというたてまえになっている、政令で部局の増置を
規定する考え方は、戦時中に法律で定むべき
事項をやたらに勅令に委任したのと同じ考え方であり、これは新憲法の精神に反する云々と述べ、さらに、政令で部局の増置を
規定した
規定を削除したことは、その含むところの
内容はまことに重大なものがある、それは、従来の旧憲法の官制大権のごとき思想をさらりと捨てて、すべては
国民の代表たる
国会においてこれを決定すべしとする新憲法の精神にのっとる
国会至上主義の
実現である、われわれ憲法を合理的に運用せんとする考え方を持つ者にとって、これは重大な原則の
確立であると述べて、
政府の姿勢を厳しく批判するとともに、
国会としての態度を明確にしたのであります。総理の御所見を伺いたいと存じます。
第二は、国の行政機関の組織の公示についてであります。
本
法案では、「
政府は、少なくとも毎年一回国の行政機関の組織の一覧表を官報で公示する」となっております。しかし、
答申では、この点に関して、「行政組織規制の弾力化に伴って政令により規制されることとなった組織の
設置・改廃
状況について
国会に
報告するものとする。」と述べています。この両者を比較すると、明らかに行政組織の公示
制度で、
法案は
答申より後退した姿勢であります。これは、
国会軽視のあらわれであるとともに、
政府は
臨調答申を最大限に尊重すると言いながら、
答申の中の都合のよいところをつまみ食いをし、都合の悪いものは切り捨てるなど、
政府の御都合主義の見本を示していると言えます。法制的に
国会への
報告義務を排除した
理由を明確にしてもらいたい。
第三に、「当分の間」と断りながらも、官房、局の総数の最高限度を百二十八に抑えたことについてであります。
われわれは、この問題に対して、内部組織などが内閣の裁量にゆだねられた場合、
国会による規制がきかず、官僚的恣意により弾力的運用の名をかりて、かえって行政機構の肥大化を招くおそれがあることを繰り返し警告してきました。しかし、この警告を無視して本
法案が
提出をされました。
そこで、行管庁長官にお尋ねしますが、行政組織の膨張は、この
規定によって完全に
防止できるという自信がおありかどうか。また、「当分の間」とはどの程度の期間を指しているのか、御答弁を願いたい。
第四は、本
法案には盛り込まれていませんが、自衛隊の組織についてであります。
答申によると、自衛隊部隊等の組織は、その
性格上、行政需要の変化への即応という観点のみをもって規制を弾力化することは適当でない、その規制の
あり方について別途検討するとされております。つまり、自衛隊の
性格論に焦点を当てて、
政府に別途検討することを
答申しているのであります。しかし、臨調は、国の政策に優先順位をつけ、最優先に防衛を位置づけるとともに、これを受けて、
政府は軍事予算を聖域化し、軍事費の増大は歯どめがきかなくなっており、加えて、総理の軍備増強など一連のタカ派
発言、さらに、本院予算
委員会審議の中で論議になった自衛隊のクーデター未遂事件の発覚など、一連の自衛隊をめぐる最近の動きを見ると、シビリアンコントロールを大きく揺さぶる危険性が露呈していると言わざるを得ません。したがって、私は、自衛隊部隊の組織規制の弾力化について重大な関心を寄せております。総理並びに防衛庁長官の御答弁を願います。
次に、国の地方行政機関の
設置と
国会の
承認についてであります。
答申によれば、「国の地方行政機関の
設置についての
国会の
承認に関する地方自治法の
規定については、再検討するものとする。」と述べています。地方自治法第百五十六条第六項の
規定は、「国の地方行政機関は、
国会の
承認を経なければ、これを設けてはならない。」としています。そこでこの
規定を再検討しようというのであります。
本
規定の設けられた
趣旨は、戦後、地方自治が憲法により保障され、地方自治の強化、地方分権の
確立の立場から、国の出先機関を地方に
設置する場合に地方住民の意思を尊重する必要があることから、住民にかわり
国会が
承認するという民主的手続の
必要性を考慮して定められたのであります。したがって、行政の
効率化の側面だけでは割り切れないものがあります、総理、自治大臣の所見を伺いたい。
第五は、行政組織規制の弾力化と
国家公務員法第七十八条第四号との
関係についてであります。
この
規定は、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」には、本人の意に反して降任または免職することができると
規定されております。そうすると、本
法案が成立をし、
政府が勝手に行政組織の改廃を
実施し、意図的に
国家公務員の過員を生じさせた場合には、この
規定を適用して公務員の出血整理を断行できるのではないかという危険性も内在しているのであります。しかも、臨調の最終
答申には、公務員について、一般職員の定員を五年間に一〇%を上回る削減を行うように
政府に要請しております。この点について、行政管理庁長官の御所見を伺いたい。
最後に、予算成立後の
国会運営についてであります。
総理は、本
法案など行革関連
法案の成立を最重要目標としているようであります。中でも
国鉄再建推進臨時措置法案は、総理の言葉をかりれば、日露戦争の激戦地になぞらえて二百三高地と位置づけ、野党側が強力に
法案成立の阻止を図ってくる場合には、解散、総
選挙に打って出ることをほのめかしていたようであります。行革関連
法案の
審議に絡めて解散、総
選挙を考えているのかどうか、総理の態度を明らかにされたいのであります。
以上で、本
法案に対する
反対の立場を明らかにし、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕