○小沢和秋君 私は、
日本共産党を代表し、
租税特別措置法一部改正案及び
製造たばこ定価法等一部改正案について、
総理に対し
質問いたします。
わが党は、
中曽根内閣成立直後、との
内閣が戦後最悪の、金権擁護、軍拡、改憲
内閣であると指摘いたしましたが、三カ月後の今日、事実はまさにそのとおりになってまいりました。
歴代の
自民党政府が
国民の反撃を恐れて先送りしてきた韓国への四十億ドル借款供与、対米軍事技術協力などの問題を一挙に処理した
総理は、アメリカでは、運命共同体、不沈空母、四海峡封鎖などの危険な公約を連発いたしました。まさに、平和と安定した
生活を願う
国民に対し真っ向から挑戦しているのであります。
税制の面でもこの姿勢は貫かれ、
中曽根内閣は、
国民的憤激の的となっている大
企業・大
資産家優遇の
不公平税制の
是正を放置し、
国民の大幅減税の
要求には背を向けております。その一方、軍拡に必要な巨額の財源を確保するために、最悪の大衆
課税である
大型間接税を
導入する意図をむき出しにしております。
中曽根内閣が発足早々から異例の不人気に直面しているのは当然であります。
私は、このような
中曽根内閣の暴走を許さず、
税制の民主的改革を求める立場から、以下四点にしぼってお尋ねいたします。
第一に、税の不公平の根幹をなしている大
企業に対する異常なまでの
優遇措置をどうするのかであります。
今度の
法案で、民間航空機の
特別償却制度の
対象範囲が拡大され、期限も延長されようとしております。日航や全日空が、これまでもこの
制度を利用して過大な償却費を運賃に織り込んで利用者に押しつけ、さらに帳簿上だけで売ったり買い戻したりの操作を行って、不当な利益を上げてきたことはよく知られております。このような
制度は、償却率のわずかな引き下げでお茶を濁すのではなく、きっぱり廃止すべきだったのではありませんか。
また、コンピューターの買い戻し損失準備金
制度も期限が延長されようとしております。いま、一番もうけている業界の
一つがコンピューターと関連機器産業であることは、
総理も御存じのはずであります。
国民の血税を使って手厚い
補助金を出している上に、
税制面でもなお
優遇しなければならないのはなぜか。
今回の
税制改正に当たって、有力視されていた退職給与引当金非
課税限度の引き下げなど、
企業課税のわずかばかりの手直しも結局見送りとなりました。株式の時価発行による莫大なプレミアムには一円の税金もかかりませんが、これも手つかずのままであります。
退職給与引当金など大
企業優遇税制の
是正が見送りになった背後に財界の強い圧力があったことは、経団連の
税制についての意見書を見ただけで明らかであります。今回の改正には、最近経団連が新設を
要求したばかりの石油化学、アルミなど素材産業の省原料設備の
特別償却制度も早速取り入れられております。まるで
国民の批判など眼中にないと言わんばかりではありませんか。
わが国の大
企業は、すでに国際的にずば抜けた競争力を持っており、このため欧米各国との
貿易摩擦が絶えません。そして、この
不況の中でも、東京証券取引所第一部上場会社約八百社の中で、その四分の一は空前の利益を上げ、または大幅に収益を増加させており、
不況と言われる素材産業でも多くが内部留保をふやしているのであります。これでもまだ
税制で
優遇したり
補助金で助成したりせねばならぬというのでありましょうか。
総理に果たして大
企業優遇税制を抜本的に見直す意思があるのかどうか、その基本姿勢をお尋ねするものであります。(
拍手)
第二に、
国民の切実な
要求である
所得税減税についてであります。
六年連続の減税見送りによる
実質大
増税が、
勤労者、特に
所得の少ない階層ほど
税負担を急激に重くし、家計を破壊していることは、
総理府の家計調査にもはっきりあらわれております。
減税見送りが始まってからのこの五年間で、
勤労者世帯の収入は平均二二・三%の伸びでありますが、
所得税の伸びは平均七三・七%と
所得の三倍以上のふえ方であります。特に、第一階層と言われる低
所得者は、一〇一・六%増と異常なまでの重い
負担になっております。これに住民税、社会
保険料、住宅ローンなどを考えれば、最近の
勤労者世帯の
生活苦の深刻さがよくわかるのであります。
総理、あなたも
政治家なら、このことに胸の痛みを感じるのではありませんか。それでも減税をしないのですか。大
企業への
優遇税制で示した思いやりの何分の一かを
勤労者に示す考えはありませんか。
減税を行う気なら、財源は幾らでもあります。アメリカの言いなりになるのをやめて軍事費を削ってもよし、あるいは総額三兆円を超える大
企業優遇税制の一部手直しをするだけでもできるのであります。この際、五十七年度一兆円、五十八年度一兆円以上の減税が、
国民の購買力をふやし、
経済危機を打開するためにも重要になっていることを強調するものであります。
政府も、来年度の
経済成長三・四%を実現する上で最大の問題が
国民の消費が
実質で三・九%伸びるかどうかにあることを認めております。
実質増税によって可処分
所得すなわち家計の手取り収入が年々落ち込んでいる状態を放置しておいて、どうして三・九%の消費増を実現できますか。この面からも減税は緊急課題ではありませんか。
総理の
責任ある
答弁を求めます。(
拍手)
なお、本日から
国会審議が再開されましたが、その折衝の過程で、
自民党は、
所得税減税について前進した回答を来週前半にも示すと述べてきました。昨年も同じような問題が起こりましたが、結局何の成果もありませんでした。今回は何か成算があってこのような態度を表明したのか、お伺いいたします。
また、五十八年度に減税を本格的に
実施する気ならば、当然
予算案の修正が必要になりますが、その意思があるかどうかも明確にお答え願いたい。(
拍手)
所得税に関連して重大なのは
グリーンカードの
延期問題であります。
ここには大
資産家擁護の姿勢が露骨に示されております。三年前、
政府がこの
制度を
提案した最大の理由は、
総合課税化による不公平の手直し、一部の悪質な
資産家の脱税防止などでありました。わが党は、
グリーンカード制度が個人のプライバシーを侵害する
危険性や高額
所得者の名寄せが確保されない欠陥などを指摘して、その
導入に反対しつつ、
利子配当の
総合課税には基本的に賛成し、そのための接近の手段として
利子配当課税のさしあたり五〇%への
引き上げ、名寄せの徹底など、実現可能な方策を提起してまいりました。
ところが、今回の
政府提案は、そのような
措置は何
一つとらずに、
グリーンカード延期に連動させて
総合課税そのものまで事実上放棄してしまったのであります。このことは、
中曽根内閣が大
資産家の脱税を容認、擁護しようとする態度を鮮明にしたものと受け取らざるを得ませんが、
総理はそれでよいのですか。
しかも、その一方で
竹下大蔵大臣は、庶民のささやかな財産を守るマル優の廃止さえ示唆しました。大
資産家の脱税はよいが庶民のマル優はだめとは、あなた方の税の公平の基準はどこにあるのですか。わが党はマル優の廃止は絶対反対でありますが、
総理の態度をお尋ねいたします。
脱税防止の点では、しばしば裏リベート、
政治家へのやみ献金、暴力団の資金源などとなっている大
企業の巨額な使途不明金への対策を強化すべきであります。
法人税さえ支払えばあとは勝手という現在の
制度を改め、かねてからわが党が主張してまいりましたように、大口の使途不明金に対しては、既定の
法人税に加えて七五%を追徴するなど厳しく対処すべきではないか、お尋ねいたします。(
拍手)
また、たとえば三越事件の岡田、ホテル・ニュージャパン火災の横井などのように、力のある者に対しては刑事事件になるまで脱税を見逃しております。ところが、その一方で零細業者に対しては、事前調査、呼び出し、反面調査、推計
課税などを多くの税務署が強行して、各地で抗議を受けております。このような、強い者には遠慮し、弱い者には高圧的な、ゆがんだ税務行政や行き過ぎた強権的な税務調査は、直ちに
是正する必要があるのではありませんか。
総理の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
第三に、
たばこ値上げの問題であります。
今回の
たばこの
大幅値上げが、もっぱら年間約二千億円の財源を新たに国庫に吸い上げるためのものであることは、
政府も認めております。これは明らかな大衆
課税であり、取りやすいところからしぼり取るという
中曽根内閣の姿勢をよくあらわしております。
いままでも、全国約三千五百万の
たばこ愛好家は、まるで税金を吸っているようなものだと嘆くほど、国の
財政に協力させられてまいりました。この上さらに重税を強いるというようなことは断じて許されないのであります。
総理が「
増税なき」を堅持するというのであれば、直ちにこの値上げは撤回すべきではありませんか。納得できる
答弁を求めます。(
拍手)
最後に、
中曽根内閣が従来のどの
内閣にも増して執念を燃やしております
大型間接税導入についてお尋ねいたします。
五十四年十二月、総
選挙での
国民の厳しい審判に基づいて、
一般消費税に関する
国会決議が行われました。これが
税調答申の言う「広く一般的に消費支出に
負担を求める新税」の
導入を将来にわたって禁じたものであることは明らかであります。ところが、
竹下大蔵大臣は、禁止されているのはいわゆる
一般消費税(仮称)だけだと子供だましの詭弁を弄し、
EC型付加価値税も許されるとまで繰り返して述べております。このような重大
発言が独断でなされるはずはありません。
総理も同じ考えと理解せざるを得ませんが、いかがですか。
直間比率を
見直し、
間接税を半々までに
引き上げるべきだという見解には何の科学的根拠もありません。現在の直接税は、
所得や利益に応じ、つまり
負担能力に応じて税を支払うという原則に立っており、それが税金の中心になるのは当然であります。これに対して
一般消費税などの
間接税は、商品、サービスに対し、税の
負担能力の有無、強弱を無視して一律にかける税でありますから、逆累進的に低
所得者に重くのしかかる最悪の大衆
課税となるのであります。しかし、徴収する側にとっては、
税率は低くても何兆円もの新財源を生み出すことのできるまことに都合のよい
制度であります。
総理などの直間比率
見直し論は、要するに大
企業等への
負担増になる
法人税の不公平を改めず、庶民から取りやすい
間接税に比重を移して、ますます不公平を広げるだけのものではありませんか。このような
大型間接税の
導入は必ず物価の高騰を引き起こして
国民生活を直撃し、
国民の購買力を切り下げて一層
不況を深刻にするだけであります。わが党は、
総理に対し、
大型間接税導入の準備を直ちに中止することを
要求し、
総理の明確な態度表明を求めるものであります。(
拍手)
いま
中曽根内閣が突き進みつつあるのは軍拡大
増税への道にほかなりません。憲法とそれに基づく諸法律、
国会決議よりも、
レーガンに対する誓約を優先させ、
GNP一%という最低の歯どめも取り払って大軍拡を進めるために、その財源確保の切り札として
大型間接税導入を持ち出してきたことは明らかであります。しかし、これは
国民をますます戦争に巻き込む危険を増大させ、
経済財政危機を一層激化させ、
生活を破綻に導くだけであります。ここには何の明るい展望も見出すことはできません。私は、
国民がこのような道を断固として拒否するであろうことを確信しております。
わが党は、今後とも軍拡大
増税を阻止し、
国民生活擁護、
税制の民主的改革の実現のために全力を尽くす決意であることを申し述べ、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕