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中島政府委員 新しい
法律の六条は現行法の五条という条文と同じでございますので、この禁止
規定は現行法も同じでございます。その違反行為に対してどういう措置がとれるかということにつきましては、
法案の五十七条が「共同の利益に反する行為の停止等の請求」という
規定を新設いたしましたが、この
規定は新設でございますけれども、この
規定がなくても現行法のもとにおいてもこういう請求はできるというふうにわれわれは
考えておったわけであります。しかし、必ずしもはっきりいたしませんので、明文の
規定を置いたということでございます。したがいまして、現行法におきましても、
改正法下におきましても、この五十七条によりまして行為の停止、それから行為の結果を除去し、その行為の予防をするための必要な措置をとることができるわけであります。そのために必要な場合には
訴訟を提起することができるわけであります。
ただ、その請求あるいは
訴訟による請求というものは、ただいまも御
指摘になりましたように、必ずしも的確な効果をおさめ得るとは限らない場合が多いわけであります。裁判に従う
考えの者には効果もありますけれども、裁判があってもそれに従わないというような者に対しては無力であるということになりますので、今回はそれに加えまして、五十八条の「使用禁止の請求」というものができることにしたわけであります。
もちろん、五十七条の手続をとったからといって直ちに五十八条ができるのではなくて、それとは別にまたきわめて厳格な
要件を
規定しておりますけれども、使用禁止の請求ができる。そうなりますと、この
区分所有者は
相当期間自分の
区分所有
部分を使用できないということになります。この使用禁止ということになりますと、先ほどのように騒音を差しとめるということよりはかなり形がはっきりしてまいりますので、かなり実効が上がるのではないかというふうに思うわけであります。
しかし、これもやはり不作為命令でありますから、その執行方法は間接強制しかないということになるわけであります。したがって、これにも一種の限界もありますし、あるいは使用禁止では間に合わない場合もあるわけでありますから、さらに進んで
要件をしぼりまして、五十九条におきまして競売の請求ができるということになるわけであります。競売ということになりますと、これは競落によって当該
区分所有者は
所有権を失うことになりますから、これはその
区分所有関係からは全く排除される、こういうことになるわけであります。
この新設
規定につきましては大
部分の方が賛意を表明していただいておるわけでありますけれども、一部からはこれを若干疑問視する向きもございます。それは一つは、先ほど申し上げましたけれども、これによって一時使用禁止を命ぜられる者あるいは競売を申し立てられる者に対して酷ではないかという面からの懐疑的な御
意見でございますけれども、それに対しましては私どもとしては、先ほど申しましたように、五十八条、五十九条で十分に
要件を厳格にいたしましたし、手続的にも使用禁止等につきましては訴えの提起そのものに特別
多数決議を必要とするということにいたしておりますし、最終的な判断は
裁判所がするというきわめて厳格な形になっておりますので、この加害者と申しましょうか、それに対する不当な
権利の侵害ということにはならないというふうに
考えておるわけであります。
むしろ、そういうふうに
要件、手続が非常に厳格になり慎重になっておりますために、果たし
てこれで実効が上がるのかというただいまの後の方の御
指摘が若干
心配と言えば
心配な面でありますけれども、こういうふうな
制度にいたしましたので、私どもとしてもこういう
制度ができたからといっ
てこういう事件が頻発をするというふうには
考えておらないわけであります。しかし、義務違反者については最終的にはここまでいって排除することもできるんだという
制度をつくりましたことによって、先ほどもおっしゃいましたように、これが抑止力になっ
てこの六条の
規定が守られるという面が出てくるのじゃないか、それを期待する面もあるわけであります。