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坂本参考人 坂本でございます。
私は
タレントでございまして、
保護司のお役をいただきまして大体足かけ十年ということでございます。現在
川越少年刑務所の
特殊面接員というのもやらせていただいております。現在、
少年を四人、それから女子を一人担当させていただいております。御存じの方もあるかもしれませんが、
子供番組を二十五年やりまして、
タレント生活三十年でございますけれ
ども、二十五年間
子供と一緒にやってきました中で、何かのお役に立てばということで
保護司という
仕事で活躍させていただいております。
いま、なるたけ
全国を回ろうと思っておりますが、
対象者を見ておりますと、やはりほとんどが八〇%が
家庭の欠損ではないかと私は痛切に感じます。それを何とか賢い
お母さんになり、
お父さんになっていただくために、私は
全国を回って
お母さん方と話し合って、少しでもいいから
手抜きのない
子育てをやっていただくために、とにかく真剣に取り組もうじゃないかということで
お話をさせていただいているわけでございますが、現実問題、いま
専門の
先生方がおっしゃったように、
非行になった
現象だけをただいま騒いでいるというのが、私にとりますと、実に何か見苦しい
大人の足らないところを
子供に見透かされているのではないか。
本音の
立場で、
大人はたてまえを一生懸命申し上げておりますけれ
ども、
子供たちはその
本音を見抜いて、それに立ち向かってきているんではないだろうか。そういうこが
一つ一つに何かあらわれてきているように思いますので、とにかく
子育てのところからいかないと、私はいつも申し上げるのですが、もう
幼児期に、本当に六歳までにすべての
人間としてのぴしっとしたものを持っていなければならない、
人間らしい
人間をつくるのはもうその辺で決まってしまうのじゃないかというくらいに私は思っております。
いまも
先生が落ちこぼれとかなんとか言いますが、結局落ちこぼしている、彼らは落ちこぼれたんではなくて落ちこぼされているという、それが現実にあらわれてきている、そしてわれわれに向かって、天に
つばと申しますか、上を向いて
つばをしてそれが
自分の顔にべたっとかかってきている、それがいまの現状のような私は気がいたします。これをよくするというためには、とにかくもうたてまえ論をしゃべっていたんではにっちもさっちもいかない、何とか
本音で
大人たちが立ち向かっていかなかったらばどうなるんだろうかというところに私はもう来ておると思います。
ですから、この間
あたりも有識者の皆さんがお集りになって、いろいろな
お話を聞いておりますと、何となくたてまえ論で終わってしまって、そしてそれを
子供たちが聞いているわけでございます。あの程度のことを
大人たちがしゃべって、そして何か
上っ面でおれ
たちのことをわかってくれているんだなというような
気持ちを彼らに見抜かれているんだったらば、これは大変なことだ。
マスコミでも何でもそうでございますけれ
ども、
現象面だけをとらえて、そして
子供をああだこうだと言うあの見苦しい姿を見たときに、
子供たちはどういうふうに感じているんだろうかと真剣に私
ども感じます。
いま、特に
幼稚園、
保育園へお邪魔いたしまして
お話をさせていただいているのですが、あの
幼稚園、
保育園にいる
子供たちが、顔を見ていると、この
子供たちが絶対に悪くなるはずがないんだ、こんなにかわいらしい、すくすくと育っている
子供たちが悪くなるはずがない、その
子供を悪くしていくのは、私を交えてですが、われわれ
人間社会、
大人の
社会ではないんだろうかとやはり痛切に感じてまいります。
ですから、毎日のように新聞、そしてテレビで騒がれているあの
子供たちを見ますと、私
どもはやはり、特に私は、あの
子供たちがとてもかわいそうになります。本当に真剣にわれわれは取り組んで
子供たちにやってやっているんだろうか。私も「
ピンポンパン」という
番組を十五年半、長かったのでございますが、やらしていただきまして、親子三代見ていただきました。おばあちゃまがいらっしゃいますと、四代の
方々に見ていただいた。そして真剣に
子供たちとやってまいりましたが、いま現在
マスコミの中でも
子供番組というのはなくなってしまいました。あんなに毎日たくさんの
番組があったものが、
子供番組は、
幼児番組は一本もなくなりました。いま現在やっと一本残っておりますが、それも長くないという
お話でございますが、本当に
子供のために真剣にわれわれ
大人はやってやっているんだろうか、細かいところまで気を使っているんだろうか、
大人の都合のいい、
大人の考え方だけで
子供を縛っているんじゃないんだろうか、そういうことを痛切に私感じております。ですから、これは
世の中よくするためには
あと何十年かかるかもわからないと思います。いまここで法律なり規則をちょっとした
上っ面だけ変えても本当に直らない。
あと何十年か、世代がかわって、何代かかわったところで、その
人間づくりをやったところからその
子供たちがよくなってくるんではないかと私は思っております。
ですから、この間
あたりも
文部大臣の
お話を聞きまして、これから
道徳教育をやらなければいかぬなと言われたことを聞きまして実に残念に思い、また嘆かわしく思ったのですが、もうそんなことを言っている場合じゃないのじゃないか、もう真剣にすぐにでも、あしたにでも、
子供たちのことを本当に考えたら、直してやらなければにっちもさっちもいかない
世の中になってしまうのじゃないか。
ですから、
非行に走ったり、親に刃向かったり、
先生に刃向かったりする
子供たちは、われわれ
保護司にとってもどうすることもはっきり申し上げてできません。そんな、一
人間を直そうなんというおこがましいことは考えておりません。ただ、あの
子供たちが
自分で立ち上がらなかったらば絶対に起きられないということでございます。
きょうも所長さん方がお
見えになっていらっしゃいますけれ
ども、本当に大変な苦労です。私
どもも
川越に行きましたり
喜連川へもお邪魔しましたりしておりますけれ
ども、こういうところにお勤めの
方々は大変な、本当に人には言えない
努力をしていらっしゃいます。その
努力が報われないという方が多いのでございますけれ
ども、もうそういうところに入るような
子供になった場合には、
先生方にお任せして、とにかく何とかみんなの力で直すような
方向へ持っていきたいとは思いますが、しかし、そういう
子供たちをつくらないような
社会づくりを何とか、私のような小さな力でございますけれ
ども利用して、そして
全国の
お母さん方にも立ち上がっていただくような
方向に持っていきたいと思います。
現実問題としまして、あの
非行に走った
子供たちが、突然何かああいうふうに悪くなったごとくに言われておりますけれ
ども、決してそうではなくて、
現象としてあらわれるのはある日突然でございますね、きょうからやめた、きょうからまじめ
人間やめたというところからがらっと百八十度ひっくり返る。しかし、そこへ来るまでに十年、二十年という月日をかけて
手抜きをして育てているわけでございますから、それを何とかするというのは、それは並み大抵のことでは直りません。
専門家の
先生方がいらっしゃる前で本当に失礼かもしれませんけれ
ども、本当に直る
子供たちというのは何分の一、本当に直るのは何分の一だろう、半分以上はまた何かの
きっかけで再犯を犯し、事故を起こし、
自分でだめになっていく子もたくさんいると思います。しかし、周りからだめにされる子もたくさんいると思います。そのためには、私
どものできることというのは、そういう
子供にならないようにとにかく真剣に
お母さん方に訴えて、そして
手抜きの製品をつくらないでくださいよ、普通の品物であるならば、ぶっ壊してもう一回つくり直すことはできますけれ
ども、本当に一個の
人間というものは、壊れたらばそれを直すということは大変だと思います。
でございますので、
全国おかげさまでどこへ行っても
子供たちも知っていてくれますし、そういう中で、
対象者でも私のうちへ参りますと、最近でございますけれ
ども、やはり一人の高校二年生でございますけれ
ども来まして、そして両親そろって
見えられました、
本人の前で私はいつも言うのですが、
お母さん、
お父さん、手を抜いて育てましたね、きっと
本人はさみしかったと思いますよ。そういうことすらも
社会では、その
子供に対してかけてやっていないんです。ですから、
お母さん方にそういうように言いますと、確かに手を抜きました、きっと
本人は小ちゃいときにもさびしかった
ろう——さびしくないはずはなかったわけです。ところが、親は気がつかないだけのことでございまして、
本人が初めて両親の前でそれを言ってくれたということで、やはりからっと変わってくれました。そんな小さなことでございますけれ
ども、
本人も言っておりましたけれ
ども、
本人にとったら大きな救いだった。それ以来、やはりちょっとした
きっかけでよくなる。それを
大人のたてまえでもって
子供とぶつかっていたらば、私は幾らたってもよくならないし、どんどんできてくるんではないかと思います。
この間もちょうとニュースを見ておりまし
たち、ああいう
子供たちをどんどん取り締まって、そして処分をするなり何なりするなりという
お話を聞いておりまして、そこをやって本当によくなるんだろうか。そうではない。
子供たちが本当に悪くならないような
社会づくりを、
人間づくりをやるととが私一番大事な面だと思いますので、ぜひひとつたてまえ論で終わらずに
本音で
子供たちにぶつかっていただいて、そして一人でもそういう
子供がなくなるような
世の中にしていただければ私はありがたいと思います。
偉そうなことを申し上げまして大変申しわけないのですけれ
ども、
幼児の小ちゃな
子供たちを見ておりますと涙が出てまいります。この
子供たちが本当にどうして悪くなるんだろうかということを痛切に感じます。そして、
少年院なり
川越に入っている
子供たち一人一人に会ってみますと、本当にいい子です。そういうことを肝に銘じながら毎日
仕事をしておりますが、またそういう意味で何かお役に立つことがありましたら、ぜひさしていただきたいと思います。
簡単でございますけれ
ども、これで終わります。