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1983-03-04 第98回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月四日(金曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 太田 誠一君 理事 中川 秀直君    理事 羽田野忠文君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       大西 正男君    高村 正彦君       森   清君    山崎武三郎君       石橋 政嗣君    栂野 泰二君       安藤  巖君    林  百郎君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秦野  章君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      関   守君         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務大臣官房司         法法制調査部長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 前田  宏君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      藤原 和人君         自治省行政局行         政課長     中島 忠能君         最高裁判所事務         総局事務総長  勝見 嘉美君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         最高裁判所事務         総局経理局長  原田 直郎君         最高裁判所事務         総局民事局長兼         最高裁判所事務         総局行政局長  川嵜 義徳君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ───────────── 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     奥野 誠亮君   亀井 静香君     藤本 孝雄君   木村武千代君     根本龍太郎君   高村 正彦君     武藤 嘉文君   白川 勝彦君     正示啓次郎君   高鳥  修君     海部 俊樹君   森   清君     藤田 義光君   山崎武三郎君     澁谷 直藏君 同日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     今枝 敬雄君   海部 俊樹君     高鳥  修君   澁谷 直藏君     山崎武三郎君   正示啓次郎君     白川 勝彦君   根本龍太郎君     木村武千代君   藤田 義光君     森   清君   藤本 孝雄君     亀井 静香君   武藤 嘉文君     高村 正彦君 同月三日  辞任         補欠選任   栂野 泰二君     岡田 利春君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     栂野 泰二君 同月四日  辞任         補欠選任   鍛冶  清君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     鍛冶  清君     ───────────── 二月二十八日  国籍法の一部改正に関する請願土井たか子紹介)(第一〇八〇号)  刑事施設法案廃案に関する請願安藤巖紹介)(第一一五八号)  同(林百郎君紹介)(第一一五九号) 三月三日  刑事施設法案廃案に関する請願稲葉誠一紹介)(第一二〇五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出第三号)      ────◇─────
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所勝見事務総長山口総務局長大西人事局長原田経理局長川嵜民事局長行政局長小野刑事局長栗原家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 綿貫民輔

    綿貫委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。秦野法務大臣。     ─────────────  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  5. 秦野章

    秦野国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、その内容は、地方裁判所における特殊損害賠償事件等及び覚せい剤取締法違反等刑事事件の適正迅速な処理を図るため、判事員数を七人増加しようとするものであります。  これがこの法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いをいたします。
  6. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川秀直君。
  8. 中川秀直

    中川委員 ただいま提案理由説明のございました裁判所職員定員法一部改正案について若干の御質疑を申し上げたいと存じます。  このたびの定員法改正判事を七人増員するという内容でありますが、その増員分地方裁判所における公害差しめ請求等特殊損害賠償事件等処理充実のために、あるいは近年急増いたしております覚せい剤取締法違反等刑事事件処理充実強化のために充てる、かようになっておるわけでございますけれども、それぞれの事件数推移及び処理状況等を含めてもう少し詳しく御説明をいただきたいと存じます。
  9. 千種秀夫

    千種政府委員 まず私どもから一般的に御説明を申し上げさせていただきたいと存じます。  最近の民事事件の第一審事件傾向を見てまいりますと、地方裁判所におきましてずっと増加傾向をたどっております。この内容は最近の消費者金融のような事件が非常にふえてきていることによるものと思われますけれども、数の上ではさほどふえていないように見えますところに非常にむずかしい事件がございます。それがただいま御指摘にございますような特殊損害賠償事件でございまして、これはここにるる御説明を申し上げる必要もないかと存じますけれども、最近のいわゆる公害訴訟と申しますか、大ぜいの庶民の生活環境生活条件を悪化するような問題が絡んだ事件がございまして、これらは非常に当事者が多い、また法律的にもむずかしい、また立証その他の訴訟手続も困難であるということから非常に手間のかかる事件でございまして、この処理が非常に社会的な影響を及ぼすということもございまして、これが民事事件の一審におきまして非常に重要な課題になってきておるわけでございます。  その事件傾向をここ五年ぐらい見てまいりますと、年間の新受事件というのは大体千件前後でございますけれども、これは先ほど申しましたような経緯から審理期間が長引くためにだんだんと累積事件、要するに未済事件累積がふえてきております。  その数字の一端はお手元資料の二十七ページ、終わりから二ページ目でございますが、その下の方に出ております。いわゆる狭い公害という事件ではこ三年ばかり大体八百件ぐらいでございますが、その他広い意味の公害訴訟というものは、ここにございますように二千六百件から二千八百件ないし九百件程度にふえてきておりまして、その累積はここ三年のところ合計で三千五百件から四千件に近づこうとしているわけでございます。そのために裁判官増員につきましても、ここ数年来二名ないし四名の増員を毎年お願いしてまいりまして、ことしは四名の増員お願いするということになったわけでございます。  一方、刑事事件につきましては、先ほど申し上げましたように一審の刑事事件を見てまいりますと、全体的には横ばいでございます。この数字資料の二十四ページのところに出てございますが、刑事の第一審訴訟事件はここ三年来大体八万八千ないし九千件ということになっておるわけでございます。しかし、先ほど御指摘にもございましたように、その中で特に顕著な増加を見せております問題は覚せい剤取締法違反等事件でございまして、その資料はお手元資料の二十八ページ、一番最後の上段に出ておりますけれども、ここ三年ばかりを見てまいりますと、二万四千件台のものが次の五十五年には二万六千件台になり、さらに昭和五十六年の数字を見ますと二万七千件台まで伸びておりまして、この傾向はなおも持続しているように見受けられるわけでございます。そこで、裁判官増員につきましても、ここ三年ぐらいの間毎年二、三名の裁判官増員お願いして処理に当たってきた、こういう経緯でございます。
  10. 中川秀直

    中川委員 ちなみにその特殊損害賠償訴訟事件でありますが、これの一審段階における実際の審理期間というのは平均どのくらいになっているのか、また未済がふえているというお話でありますが、どのくらいの件数になっているのか、もしお手元資料があったら教えてください。
  11. 千種秀夫

    千種政府委員 詳しくはさらにまた裁判所からお聞き取り願いたいと存じますけれども特殊損害賠償事件審理期間というものは、大体一般の事件の三倍程度と理解しております。もっとも、これは既済事件を調べた結果判明していることでございまして、未済事件というものは長い間係属しているものも多々ございまして、十年に及ぶものもございますし、五年を超えるものもあると存じます。そういうことで、全体が何年ぐらいだということを出すのは、いろいろな計算方法がございますので一概には申しかねると思います。  なお、件数につきましては、未済累積が三千五、六百件ということでございますので、現在係属している数がそこに出ているわけでございます。
  12. 中川秀直

    中川委員 わかりました。  また、今回の改正増員地裁ということであって、対象として簡裁家裁、いわゆる下級裁判所というものはなっていないわけでございますが、そうした下級裁判所における事件受理処理件数動向、及び、そういうところも社会現象の変化を反映していろいろ大変なところもあると思うのですが、その下級裁判所における裁判官補充必要性の有無あるいは今後の増員などの方針、こういうものについてもあわせて御説明を願いたいと思います。
  13. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  最初にお尋ね家庭裁判所における事件処理状況でございますが、法律案関係資料の二十五ページをごらんいただきますと、新受事件動向が記載されてございます。  まず家事事件におきましては、審判事件は五十四年二十四万程度ございましたのが、五十六年になりますと二十六万七千程度にふえております。大体新受事件に見合いまして既済事件動きがございますので、未済事件といたしましては五十四年度は一万八千六百三十六件でございましたが、五十六年度は一万八千四百八十二件、かえって減少いたしております。  次に、家事調停事件でございますが、二十五ページにございますように新受の動きは、若干ふえておりますが、そうございません。大体新受に見合いまして既済が出ておりますので、未済事件も五十四年では二万六千五百ほどございましたのが、五十六年になりますと若干ふえまして二万八千程度になっております。  それから少年審判事件でございますが、これは最近かなりふえてまいっておりまして、五十四年五十四万でありましたのが七万ほどふえまして、五十六年には六十一万七千三百九十九、こういうふうになっているわけでございます。大体新受を若干下回るような既済状況でございまして、五十四年には十万七千三百七十一件ございました未済件数が五十六年には一万七千件ほどふえまして、十二万四千三百九十二件、こういう状況でございます。ほぼ新受に見合った既済を出しておりまして、未済は若干ふえる傾向にある、こういう状況でございます。  次に、簡裁事件処理状況でございますが、これは二十六ページに最近の民事刑事の新受件数等が記載されてございます。まず民事でございますと、五十四年七万件でございましたのが五十六年に九万件と、約二万件の増加となっております。既済事件も新受件数にほぼ見合っておりまして、したがいまして未済事件の方は五十四年には二万一千六百ほどございましたが、新受件数が二万件ほどふえておりますが、未済の方は六千件くらいの増加の二万七千件程度になっております。それから簡裁刑事の第一審訴訟でございますが、五十四年は二万八千四百件程度ございましたのが減少しておりまして、五十六年には二万七千百三十六となっております。大体新受を若干上回る既済を出してもらっておりますので、未済件数で見てまいりますと、五十四年には五千七百程度ございましたのが減少いたしまして、五十六年には五千二百六十三件、こういうふうに相なっているわけでございます。  そこで、第二のお尋ね家庭裁判所及び簡易裁判所における裁判官増員の点でございますが、家庭裁判所裁判官につきましては、いま申し上げましたように家事少年とも若干増加傾向がございますし、特に少年保護事件は著しく増加いたしております。しかしながら書記官家庭裁判所調査官等補助者を活用いたしましたり、あるいは調停事件につきましては調停委員裁判官役割りの合理的な分担を図りまして、裁判官調停委員と密接な連携を保ちながら事前準備充実等のため事務官等補助職員を活用する。そのため事務官六人の増員お願いしておるわけでございますけれども、そういう裁判官増員以外の方法によって処理充実強化を図り得る面がございますので、今回は増員措置を講じなかったものでございます。  簡易裁判所裁判官につきましては、先ほど民事では五十六年で九万件と申しましたが、昭和四十六年には約八万七千件ございまして若干上回る程度でございます。しかも最近の簡裁の新受件数内容を見てまいりますと、クレジット関係等の比較的定型処理が容易な事件が多うございます。それから簡裁刑事訴訟事件につきましては、五十六年の新受件数は四十六年のそれの七割程度でございます。もっとも昨年九月簡易裁判所民事事物管轄の拡張がなされたわけでございまして、それに伴いまして簡易裁判所の新受件数増加いたしております。しかしその増加はまだ短期間の動向でございますし、その増加分も先ほど申しましたクレジット関係等金銭訴訟が大半でございます。事件数自体は増加いたしておりますけれども簡易裁判所裁判官負担が特に過重になるとは考えていないわけでございます。したがいまして、今回は増員措置を講じておりませんけれども民事訴訟事件以外の督促事件調停事件も全般に増加いたしておりますので、今後とも事件係属状況推移を見ながら、簡易裁判所裁判官負担が過重になり、そのため適正迅速な裁判支障を来すことのないよう、その手当てに遺漏なきを期していきたいと考えておる次第でございます。  それから、今後の定員に関する方針でございますが、五十三年三月十七日当委員会におきまして「裁判所職員増員、適正な配置充実等についてより積極的対策を講ずべきである。」という附帯決議をいただいておりまして、私どもこれを十分尊重いたしまして、五十四年以降の予算要求につきましてできる限り努力をいたしておるわけでございます。  ただ、委員御承知のように、裁判官給源に限度がございます。そのレベルの保持を図らなければならないという点もございまして、充員の面から考えてまいりますとかなり困難な面も出てくるわけでございます。私どもといたしましては、今後、事件動向等十分見ながら充員可能数もあわせて検討してじみちに努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  14. 中川秀直

    中川委員 よくわかりました。  さらに、この政府提出資料によりますと、昨年の十二月一日現在、「下級裁判所裁判官定員・現在員等内訳」という表でありますが、判事で三十三名、判事補で五名、簡裁判事で二十一名の欠員ということになっています。こういう人数は、年度末さらに退職者というのも出てきてふえていくと思うのですが、その補充の見通しは立っているのか。特にたとえば司法修習生三十五期ですか、この人たち志望状況はどうなのか、いわゆる充員の面での御説明をいただきたいと思います。
  15. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 それでは、裁判官充員関係につきまして御説明申し上げます。  ただいま御指摘ございました資料の十八ページでございますが、まず判事について申し上げますと、昨年の十二月一日現在で三十三名の欠員があります。それと今回お願いしております七名の増員定員がふえます、合わせまして四十名、そのほかにただいまお話しございましたように四月ごろまでの減耗分、減っていく分というのがございまして、およそのところ約六十前後というような欠員が生ずるのではないかという予想でございます。この判事充員につきましては、判事補から判事へのちょうど判事補に任官いたしまして十年たちました者が五十数名おります。そのほかにその他のたとえば検事等からの転官者等もございまして、ほぼことしの四月に充員できる、そういう予定でございます。  それから、次の判事補でございますが、判事補は昨年十二月現在で五名の欠員でございますが、それに加えまして、ただいま申し上げましたように、判事補から判事になります者が五十三名おりますので合計五十八名、そのほかに昨年末以来の若干の減耗というものを補充する必要があるわけでございますが、これは修習生を今度終わります者から採るわけでございまして、ただいまお話しの三十五期の修習生からということになりますが、本日現在で、三十五期で判事補を希望しておる者が六十二名でございまして、ほぼそれで充員できるという予想でございます。  次に簡裁判事でございますが、簡易裁判所判事は二十一名の欠員でございます。簡易裁判所判事は、主として夏に充員しております。いわゆる裁判所法四十五条の特任簡易裁判所判事ということで八月に充員予定でございますが、この二十一名から、さらに八月までの減耗分が相当ございます。それを六月ごろから試験をいたしまして夏に採用をいたします。そのほかに、若干弁護士あるいは判事退官者からの補充というものもございまして、そういうことで補充していくわけでございますが、ただ、簡易裁判所判事につきましては、予想といたしまして、夏の補充後におきましてもごく若干の欠員が残る、そういう予想でございます。充員状況は以上でございます。
  16. 中川秀直

    中川委員 わかりました。  弁護士学者ですね、最後簡裁判事でちょっとそんな話もあったけれども、そういう分野からも判事に多く任命されるべきではないか、こう思いますが、その方針あるいは近年における実績をごく簡単で結構ですが、御説明願いたい。
  17. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 弁護士学者等からの最近の任官でございますが、過去五年ということで申し上げますと、弁護士からは判事一名、判事補四名、簡易裁判所判事五名が任官しておられます。学者からはそうたくさんではございませんで、ここ十年くらいの間にトータルで五人くらいでございます。裁判所といたしましては、優秀な弁護士さん、学者からどんどん裁判官になっていただきたいというふうに考えておりますが、任地でございますとか収入の面等の問題がございまして、いま申しましたような数字にとどまっておるという状況でございます。
  18. 中川秀直

    中川委員 引き続きこの点はいろいろ諸条件緩和等も考えまして、全体のバランスもあるでしょうが、御努力を願いたいと存じます。  時間が余りありませんので、一括してお尋ねをいたしますが、さらに、提出された資料によると、裁判官以外の裁判所職員が、昨年十二月一日現在で書記官百三名、家裁調査官二十四名、速記官タイピスト等のその他の職員二百七十八名の欠員、こういうことになっています。今度の法案改正は、これら裁判官以外の裁判所職員定員数の総枠においては増員を図っていないわけですが、各裁判所における事件の新受件数増加傾向にかんがみて、大丈夫なのか、問題はないのかということをちょっとお伺いをしたい。  それから同時に、第六次定員削減計画への協力として、昭和五十八年度裁判官事務官三十九名の定員削減予定をしているわけでありますが、このことによる事務への支障は生じないのか、これについてもごく簡単で結構ですが、お尋ねします。
  19. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 中川委員指摘のとおり、今回におきましては、裁判官以外の裁判所職員増員は総枠においてはお願いしてないわけでございます。法律案関係資料十七ページにございますように、実は地方裁判所における特殊損害賠償事件等処理充実強化等によりまして書記官五名、事務官三十四名、合計三十九名の増加を図っているわけでございます。したがいまして、最近の事件動向等にもかんがみまして裁判部門職員充実強化を図るわけでございますので、事件処理には影響を来さないというように考えております。その給源は、やはり十七ページにございますように、最高裁、高裁、地裁家裁司法行政部門事務官減員を図るわけでございまして、司法行政事務分野におきましては、機械化を考えるとかあるいは報告事務の整理をするとか、そういう方法によりまして簡素化能率化が図られるわけでございます。したがいまして、事務官合計三十九名の減員をいたしたといたしましても、司法行政事務処理にも影響を来さない、こういうふうに考えております。  第六次の定員削減計画につきまして、裁判所の方におきましては、五十七年度に引き続きまして五十八年度も尊重することといたしておりますが、今後につきましても、いま申しましたような司法行政事務簡易化能率化に努めまして、本年度と同程度の規模の減員協力していきたいというように考えております。  以上でございます。
  20. 中川秀直

    中川委員 せっかく大臣御出席ですから、一言だけ。  いま政府は挙げて行政改革に邁進をいたしておるところでありますが、こういう中で、一方では大変事件が複雑化し、長期化し、また件数もむずかしい事件がふえておる。こういう中で今回の法改正があるわけでありますけれども法務大臣として、裁判所職員の現在のいろいろな状況の中での勤務、任務の遂行、こういうものについて全体としてどのような御感想を持ち、どのようなことを期待しておるか、最後一言だけお聞かせ願いたい。
  21. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ねの問題につきましては、裁判所にしても、たとえば法務省関係で検察とか法務とかといったような現場的な仕事、こういう仕事については、少なくとも量が大体のところふえる傾向にある。それに対して行政改革というのは人を減らさなきゃならぬという問題でございますから、仰せのように大変苦しい問題でございますけれども、できるだけ部内の調整等に力を入れて仕事支障がないようにして、なお行革の目的達成にはどうしてもやはり協力をしていかなくてはならぬ、そんな観点から、いろいろ中で配置転換その他、今日までもそうですけれども、これから工夫をこらすという努力を続けたいと思います。
  22. 中川秀直

    中川委員 ありがとうございました。終わります。
  23. 綿貫民輔

  24. 横山利秋

    横山委員 質問を始める前に、委員長にちょっとお願いがございます。  先ほど理事会でちょっと荒れましたので、失念をしてしまって提案するのを忘れたわけであります。  先般の委員会でも少し話題になりましたが、少年犯罪がきわめて社会的な問題になっておる。当法務委員会及び法務行政におきましても、罪を犯しました少年の処遇あるいは少年院なり鑑別所なり少年刑務所を出ました少年保護等について、きわめて重要な役割りをしておるわけであります。  昨日でしたか、参議院におきまして、学校暴力を中心にするいろいろな討議が行われましたけれども、当委員会としても、激増いたします少年犯罪につきまして大変関心を持ち、かつ心配をいたしておるわけでございますから、もしお願いができましたならば、現場で少年犯罪を扱っておる法務行政傘下の人々、たとえば鑑別所長だとか、あるいは少年院長だとか、あるいは保護司だとか等々、現場で実際にいまの社会的な問題を扱っております人々の体験上から、一体何をわれわれが考えたらいいのか、そういう点について、一回関係者においでを願ってお互いの意見交換をする場をつくっていただいたらと思うのでございます。御検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  25. 綿貫民輔

    綿貫委員長 横山委員の御提案につきましては、理事会で一遍協議させていただきたいと思います。
  26. 横山利秋

    横山委員 よろしくお願いをいたします。  最初に法務大臣にお伺いをいたしますが、先般、いわゆる箕面判決が出ました。慰霊祭に出席いたしました教育長は、これは私的なものであるのに公人として出たのは適当でないから、その分の給料は返還しろという趣旨でありますが、根本を貫きますものは、前の慰霊碑移転判決と相並んで、明確に宗教と政治の分離、これをきわめて明白に貫いておると思うのであります。  それに関連いたしまして、靖国神社の参拝問題が微妙に社会の議論になっております。本件については、さきに五十五年の十一月に、政府としては、国務大臣の資格で靖国神社に参拝することは違憲の疑いを否定できないという政府見解を出しましたが、下って五十七年になりましてから、公人、私人、いずれかを聞かれても答えない、こういう状況で閣僚の集団参拝が現実に行われております。もっとも、昨年、行政管理庁長官でありました中曽根さんは、私人と答えたと言っています。  私ども法務委員として、判決というものが与える影響については、他の委員会と違って、きわめてシビアに受けとめておるわけであります。事憲法に縁因いたしますだけに、箕面の判決について、一体どういうふうに考えるべきかという点について、法務大臣はいかがお考えでございましょうか。
  27. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ねの具体的な判決は、公判が係属中でありますので、大きな原則だと私は思うのですけれども法務大臣から評価にかかわるような発言は差し控えた方がいい、こう考えておりますので、どうぞよろしく。
  28. 横山利秋

    横山委員 法務大臣は、昨年靖国神社に参拝をなさいましたか。
  29. 秦野章

    秦野国務大臣 靖国神社の参拝の問題は、中曽根総理が発言をした線で私も結構だと思っております。
  30. 横山利秋

    横山委員 あなたは参拝なさいましたか。
  31. 秦野章

    秦野国務大臣 法務大臣になってからは、しておりません。
  32. 横山利秋

    横山委員 次の機会にはどうなさるおつもりですか。公人としてお行きになるのですか、私人としてお行きになるつもりですか。
  33. 秦野章

    秦野国務大臣 総理がああいう発言をしておられますから、私はその線で結構だと思っております。
  34. 横山利秋

    横山委員 ちょっとよくわかりませんが、総理がああいう発言というのはどういう意味ですか。
  35. 秦野章

    秦野国務大臣 たしか、いま横山先生おっしゃったとおりの発言だったと思います。
  36. 横山利秋

    横山委員 私人ですね。
  37. 秦野章

    秦野国務大臣 ええ、そうです。
  38. 横山利秋

    横山委員 法務大臣として、公判中のものについて余り言及はしないとおっしゃるのですけれども法務大臣というものは、もっぱら憲法及び法律の安定という立場において仕事をなさるのでありますから、宗教と政治の分離を明確にうたった憲法及びそれに関連いたします諸法規については、きわめて厳正な立場で処理をなさるべきであると思いますが、いかがですか。
  39. 秦野章

    秦野国務大臣 法務大臣の立場から言えば、まさに憲法、法律を厳正に守るということは基本的な、大事な問題であります。  いまおっしゃった具体的な裁判の問題は、裁判が係属中でございますから、係属中、途中だということ、まだプロセスだということ、結論が出てないということ、そういう意味において、私が私の立場で評価にかかわるような発言はやはりすべきでない、こう考えております。
  40. 横山利秋

    横山委員 私は、判決についての判断を必ずしも願っておるわけではありません。少なくとも宗教と政治の分離を明確にしたという意味において、これからの法務大臣の出処進退で、靖国神社の参拝なり靖国神社の国家護持ですか、そういう点について一体どうお考えになるかということを実は聞きたいのであります。
  41. 秦野章

    秦野国務大臣 いままでお答え申し上げたことで御理解願ったらいいんだろうと思います。
  42. 横山利秋

    横山委員 同様に、いま注目すべき判決として、宮崎地裁の判決がございます。黒木知事、これもきわめて峻厳な判決でありまして、三年の懲役、追徴金三千万円、そして千五百万円の保釈金を払って、わずか一時間で刑務所から出た。くしくも先般、ロッキード判決の田中被告は、一般論としてどういうことになるかといって聞きましたところ、前田刑事局長は、判決がある、保釈請求をする、再保釈の請求をする、それから保釈金を払う、その間、検察庁でお待ちを願うというような話でございましたが、黒木被告は、わずか一時間ではあるけれども刑務所へ入ったということですね。先般の御答弁の雰囲気と、宮崎地裁黒木被告のこの問題はきわめて類似性があると私は思われてなりません。時期についても、四十九年に収受したか、五十年に収受したか、その時期判断もまたきわめて微妙につながってまいりますし、職務権限についても議論があった模様であります。  この黒木被告の三年懲役、追徴金三千万円、千五百万の保釈金、一時間で刑務所から――たんは刑務所におったという問題と、先般の前田局長との、一般論ではあるけれども答弁の違いがあるわけですね。法務大臣はどうお考えになりますかね。
  43. 秦野章

    秦野国務大臣 具体的な手続につきましては、私も一々承知してない部分もありますので、政府委員から答弁させます。
  44. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 前回の御質問に対するお答えが、何か間違いがあるようにいま言われたわけでございますけれども、この前は一般論ということでございまして、特定の事件ということではなかったわけでございます。したがいまして、いま御指摘のような特定の事件についてどのようなことになるかということになりますと、そのときの情勢もあるわけでございますし、また、その時点におけるそれを取り巻くいろいろな状況等もあるわけでございますから、どういうふうになるかということは一概に申し上げかねるわけでございます。強いて申しますと、宮崎の場合は、従来から多くの場合、そういう実刑の判決がございますと、検察庁へ連れてこないで直接裁判所の方から刑務所の方へ連れていくというような扱いが行われていたようでございますが、東京の場合には、むしろ直接ということはなくて、一たん検察庁に連れてくるというようなことでございますから、一般的にも扱いが違うのじゃないかと思います。
  45. 横山利秋

    横山委員 次に、どなたに御答弁願ったらいいかわかりませんが、牧さんが最高裁判事に就任になりました。そこで新任の牧最高裁判事が、自分の信念をお語りになったのかもしれませんが、就任の記者会見で「死刑制度廃止の時期はわからないが、いずれはなくなっていくべきだと思う」と、当面は死刑必要、将来は廃止という注目すべき見解を明らかにいたしました。  これに関連いたしまして、実はここ数年間再審がいろいろな裁判で課題になりました。一月三十一日には死刑確定判決に対する再審事件である松山事件について、仙台高等裁判所が検察官の即時抗告を棄却し、再審開始決定を確定しました。五月ごろには、同じ死刑再審事件の免田事件についても第一審判決を迎えることになりましょう。これは熊本地裁であります。  ところで、このような死刑再審事件については、遅くも再審開始決定の確定と同時に、請求人の身柄を拘置する適法な根拠を欠くに至るものと従来も議論をされておったわけであります。しかるに、裁判所、検察官、法務省当局は、再審開始確定後も無罪判決の確定までは、請求人は被告人たる身分のほか死刑確定者たるの地位をなお併有し、この死刑確定者たる身分の併有によって死刑確定者としての拘置(刑法十一条二項)を継続し得るとの見解をとり続けておると私どもは前から指摘をしております。こういう見解を改めない限り、免田事件判決でわれわれが確信する無罪判決が言い渡されたとしても、その無罪判決は即時確定するわけではないので、被告人の拘置は無罪判決にもかかわらず継続するという事態を予想するわけであります。これは健全な国民の法常識にもとり、憲法及び人権上の重大な問題になっておるとして、先般来日弁連を中心にして、再審決定と同時に、その者の身柄の拘置の問題について、死刑確定者としての拘置を継続する、死刑確定者と同じだという処遇をすることは社会常識からいっていかがなものか、そういうふうに考えておるのでありまして、この見解を少し改めたらどうかと思われるのでありますが、いかがですか。
  46. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の点につきましては、いま横山委員も仰せになりましたように議論の存するところであろうと思いますけれども、先ほど横山委員も御引用になりましたように、従来の私どもの考え方、また具体的に現に裁判が行われております財田川事件あるいは免田事件につきましても、裁判所の見解とされまして、再審開始決定が確定したといっても、前のといいますか確定判決自体が失効するわけではないという解釈が示されておるわけでございます。このことは、詳しく申し上げるまでもないと思いますけれども、従来から申し上げているとおりでございますが、再審開始になった場合に、もとの確定判決の効力はどうなるか。消滅するということについて、そういう規定はもちろんございませんし、刑事訴訟法の四百四十八条二項を見ますと、再審開始の決定があったときには刑の執行を停止することができるというふうに書いてあるわけでございまして、そのことからも、逆に判決は消滅しないということが前提で、しかし消滅しないことを前提としてその執行を停止することができるというふうに書いてあることからも明らかであるというふうにも考えられるわけでございます。  また、再審後の裁判で、どのような裁判になるかはわかりませんけれども、その裁判で仮定論として無罪の判決があった場合にどうなるかという問題もあるわけでございますが、やはり確定判決があって、その効力が存続するというふうに解されます限り、直ちに拘置が解かれるというふうな制度には現在なっていないわけでございまして、その当否については御議論があろうかと思いますけれども、現行の制度上はそういうふうになっていると申し上げるほかないわけであります。
  47. 横山利秋

    横山委員 これは法務大臣、ちょっと考えてほしいと思う。あなたもこの方面ではベテランで、全くの素人の法務大臣ではないのですから考えていただきたいのですが、再審開始の決定というものは本当に針の穴を象が通るようなことなので、そうめったにあるものではありませんね。その再審開始が決定した、再審公判が行われる、そして無罪判決が出る。再審開始をしたから無罪になるとは、だれも法律上は言えません。けれども、再審開始になったもので、もとの判決がそのままだ、それでよろしいというような事例はないと私は思っていますよ。社会では、再審開始になったのだから、本人はもちろん、関係者、検察陣、裁判所等も、この人は無罪の道が切り開かれたと思うのは当然なので、それが社会常識になっています。その人を刑務所で依然として死刑の判決を受けた被告人と同じ処遇をしておる。同じ処遇をしておるという点については、現行法がそういうふうな解釈であるとするならば、これはいささか社会常識を欠くのではないか。過去は再審開始がそうあったものじゃないのです。最近きわめて多いのですから、この機会に健全な社会常識、一般的な認識に沿ってその処遇について若干の改善をする必要があるのではないかと思いますが、法務大臣、いかにお考えになりますか。
  48. 秦野章

    秦野国務大臣 いま前田局長が答弁いたしましたが、日本の司法制度というのは、常識的に見て三審制度というものが非常に入念に行われていると思うのですよ。そういう制度の中で確定判決を受けたのですから、したがって、再審決定があっても、再審が決定したのであって、まだ裁判の結論が出たわけではございませんので、日本の基本的な司法制度というものは大切にせにゃいかぬ、私はそう思います。  同時に、人権の問題というものもまたきわめて重大な問題であることも事実でございますが、いずれにせよ、再審問題というのはマスコミも非常に大きく扱いますし、再審になったら無罪だと思う人も確かにあるかもしらぬ。また、そういう例もなきにしもあらずでしょう。ただ、司法制度の根幹を大切にするということからいきますと、一審、二審、三審と実に入念な裁判を重ねていっているわけでございますから、それによって確定しているというその前提を、これはやはり制度の基本といいますか、憲法に基づくその基本というものを大切にするという観点からいくと、いま前田君がお答えしたようなことに私はやはり判断をすべきではなかろうかというふうに思います。  いま横山さん、急に私がベテランだなんておっしゃるけれども、この前の委員会のとき、あなた、素人だみたいなことをおっしゃられたのだけれども、これは要するに、これこそ健全な常識で判断をすべきだ。その健全な常識というのは、日本における司法制度の歴史あるいは業績、これをトータルして判断をすべきだ、こう考えます。
  49. 横山利秋

    横山委員 あなたが前段に言っていることはいいですよ。一審、二審、三審と、その制度の根幹を私はどうのこうのと言うつもりはさらさらない。私、再審法の改正を前から提起しております。本当に針の穴を象がくぐるような厳密な中にいまの再審の制度がある。それはもう、三審制度を守るからなのであります。しかし、余りにその穴が小さ過ぎる、もう少し訴える場所というものをつくってやりなさい、こう言っておる。  それから、再審開始が決定するということは、それだけの理由があるわけですね。最高裁でも高裁でも、再審開始を決定したときには、十分な論拠を持って、これはおかしい、この点がおかしいからやり直せということなんですね。この点がおかしいからやり直せと言ったことは、これはもう金科玉条ですよ。それを受けて再審をやる裁判官は、おかしいと言われたところは金科玉条として判断をするわけですね。そして今度は再審の公判が行われる。そしていままでの、従来からの例からいうと、無罪なりあるいは刑が軽減されるというのはもう常識で、もとへひっくり返って、またもとのとおりになったという例はないですよ。  しかも、死刑確定事件の場合、長い間、おまえは人を殺したから死刑だと言われて、そして死刑確定した被告として刑務所なりどこかで処遇を受けておるが、再審開始決定しても同じようにおまえは死刑判決を受けた人間だというふうな処遇をするということはいかがなものであるか、こういう点ですからね。なるほど、私も法律はそんなに詳しくないから、解釈は前田さんの言うとおりかもしれぬ。けれども、いまの解釈は、少しいまの再審の状況からいうと適合しないのではないか、改善をしても決して国民常識に合わないということはないのではないか、こう言っているのですからね。だから、これはいまの前田局長の解釈を改めよ、ないしはそれに必要な改正があるならばしろと言っているのですから、前田さんが答弁できるはずがないから、あなたの健全な社会常識で、せめて検討するというくらいは言わなければいかぬじゃないの。
  50. 秦野章

    秦野国務大臣 再審が決定したというような情報を私どもが聞いたときに、いまおっしゃったような発想というものをひょっと私も思うことがあるのですよ、正直言って。長年にわたって拘禁をされておって、もしそれが無罪―無罪じゃなくて無実であった、無罪と無実は私は違うと思うのだけれども、無実であったということであったら、こんな悲惨なことはないというふうに思うのです。ただ、人間がつくった制度で裁いていく、そういう制度論ということになってくると、やはり私はさっき申し上げたような方向でせざるを得ぬだろう、こう思うのです。  再審自体を私はいかぬとかなんとか言っているのじゃないのですよ。それはもう、再び審理をする、また続けて三遍やってもいいのですから、そういう慎重な審理をするということ自体は結構でございますけれども、制度の本旨から申しますと、どうもいろいろ御意見のところはわからぬでもないのだけれども、制度を検討するというところまではとてもいかないなというのが私の率直な見解でございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 わかっておると思うのだけれども、私の言いたいことは、被告人の拘置が、再審開始になったにかかわらず、拘置及び刑務所の処遇というものは、死刑判決を受けてもう確定して再審も何もない、死ぬばかり、あなたの判こを待つばかりという人とは違った処遇をしてもいいのではないかということなんですよ。一番簡単なことは、刑務所における処遇、あるいはまた再審のためのいろいろな仕事、準備をしなければならぬものだから、釈放だとか、そういうような被告人としての扱いについて、全く確定してあなたの判こを待つばかりの死刑確定者と違った扱いをしてもいいのではないか、こういうことなんですが、わかっているでしょうね。それならば検討の余地がありはしませんか、どうなんですか。
  52. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 基本的なことは先ほど申し上げたとおりだと思っておりますけれども、具体的にいまの処遇の面ということになりますと、一面、矯正局の問題にもまたがりますけれども、当面の問題、つまり被告人としての立場もあるわけでございますから、そういう刑訴法上の被告人としての権利の保護といいますか、そういう点はもちろん刑訴の規定も当然適用があるわけでございまして、そういう意味では単なる死刑確定者というだけではなくて、被告人としての扱いもされているわけでございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 矯正局長、来てますか。刑務所における扱いについてはどうですか。―来ておらぬ。これは大臣、考えてくださいよ、あなたのところへも日弁連や再審法改正実行委員会の方から正式な文書が行っておると思いますが。  次は、最高裁のありようについて、少し憲法上の立場についてお伺いをいたします。  きょう、最高裁の問題について、いろいろ意見を含めて議論をいたしますが、それは言うまでもありません、私ども立法府として、司法の分野に介入をしたり、あるいはまたいちゃもんをつけたり、そういう気持ちはさらさらございません。要するに、それは立法、司法、行政という憲法に基づく三権の分立というものが適正に行われているかどうか、または憲法なりそのほかの法律は適正に解釈され、適正に実行されておるかどうかということが主眼点でございます。  申すまでもなく、憲法第六章司法は、特に一章を設けて、七十六条は司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立の項を設け、すべての司法権が裁判所に属するとなし、七十七条で最高裁判所の規則制定権を設け、あるいはまた七十九条で最高裁判所裁判官国民審査を設け、あるいはまた八十一条で法令審査権と最高裁判所の項を設け等、七十六条から八十二条に至りますまで、憲法はわが国における民主主義の根幹としての三権分立の裁判所役割りというものをきわめて明白にいたしておるところであります。  そこで、今般最高裁長官に寺田治郎さんが就任をされました。就任に当たって寺田長官が談話を発表されまして、職責の重大さを痛感しておること、裁判所に課せられた使命が具体的な紛争の適切妥当な解決を通じて国民の権利の擁護と法秩序の維持を図ることにあること、また、先年来の不祥事により司法に対する国民の信頼が損なわれるという遺憾な事態が生じたが、この信頼回復に全力を挙げること等、就任に当たって談話を発表されました。  また本年、新年に当たって長文の新序の言葉を発表されましたが、その中で、裁判所の使命は具体的な紛争の適切妥当な解決を通じて国民の権利を擁護し、法秩序の維持を図ることにあるとされ、時として裁判所職員に対する国民の信頼が損なわれるような事態の発生を見たことは深く遺憾とするところであるとし、それから時代が激しく動いておる、裁判に携わる者は時代を先取りすべきではないとも言われるが、このことは裁判所職員が社会の動向に無関心であってよいということを意味するものではないとし、また、しばしば従来にない型の事件としていろいろなものが持ち込まれておるから、裁判所は適切な処理を迫られる。最後に、常に廉潔公正の姿勢を堅持するとともに、確固たる信念に基づいて毅然たる態度をもって司法の健全な運営による法の支配の確立のために努力をしなければならない。  この二つの談話及び新年の言葉を読んでみまして、それぞれ適切なことをおっしゃっておると思いますが、中心をなすものは適切妥当な判決、そして裁判、司法部にある不祥事の問題それから法の支配という言葉が力点になっておるのではないかと思うのであります。  そういう意味で、私が私なりに最高裁に伺いたいと思いますのは、この中に書いてないこと、この二つの談話並びに新年の言葉に書いてないこと、しかも重要な三点についてどうお考えになっておるのであろうか、裁判所の運営というものがどうなっているのであろうか。  その第一点は、適切妥当という言葉はあっても敏速という言葉がないのであります。私どもは日本の裁判裁判遅延を数年来ずいぶん問題にし、今回の法案におきましても、判事の人数をふやすということは、裁判の遅延ということがあればこそずいぶん努力をしてきたつもりであります。敏速な裁判という言葉がこの二つの中に出てこないのはいかなる意味があるのか、まずそれから伺います。
  54. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 裁判所の使命につきましては、寺田長官が発表しました談話ないし新年の言葉のとおりだと私どもも信じております。  ただいまお尋ねの第一点の迅速ということが二つの談話ないし言葉の中にないということでございます。寺田長官の意図といたしましては、決して迅速でなくていいという趣旨ではないと私どもは考えます。このたび発表されました二つの談話ないし言葉の脈絡を追っていきますと、そこに迅速という言葉を入れないことについて、そう重天な意味を私どもは考えておりません。御指摘のとおり、憲法にも被告人の権利といたしまして、迅速な裁判を受ける権利ということを明記してございますので、繰り返しになりますけれども、寺田長官が迅速でなくていいということを申し上げているつもりはないと私どもは考えます。  ただ、迅速適正ということが従来言われてまいった言葉でございます。迅速と適正が矛盾する概念でないと私は思いますが、ただ、適正でない拙速な裁判というものは、果たして裁判たり得るかどうかというような問題。一方、御承知かと存じますけれども、おくれたる裁判裁判の拒否に等しいという趣旨の法格言もございます。その辺のことは、実務家である一線の裁判官が十分承知の上で裁判事務を処理しておられるというふうに私どもは信じている次第でございます。先ほどから申し上げておりますように、この点につきましてはそのように私どもは理解している次第でございます。
  55. 横山利秋

    横山委員 敏速でなくていいとお考えになっておるとは私も思いません。いま最後におっしゃったように、適切妥当をとるか敏速をとるかという点で、適切妥当をとるという気持ちかと思われるのであります。  かつて歴代の長官の新年の言葉なり、談話なりを比較、分析をしたことがございましたけれども、やはり長官の人柄といいますか、あるいは自分の信念というものが常ににじみ出るのが普通なのであります。そういう点で私は適切妥当か、ないしは敏速か、いずれを選択するかについて、適切妥当をとって敏速という言葉がないという点については、一つの所見ではあるとは思います。けれども、われわれいまここで法案を審議をして、先ほども与党から裁判所定員その他についていろいろと質問がございましたが、要するにその法案趣旨たるところは、増員お願いしても行政改革のときにはなかなか思うに任せぬ、これだけ増員してもらったのがやっとであるというような趣旨の答弁にいつも終始をしておるのでありますから、もう少し敏速という言葉、裁判遅延を解消するという問題が出てこないと、法案に対する説得力がないんではないかと私は思うのですが、矛盾を感じませんか。
  56. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 現在、定員法法案の御審議をお願いいたしておるところでございます。この提案理由につきましては法務大臣から申し上げたところでございますし、また、現在の事件処理状況につきましても、担当の総務局長からあるいは申し上げたかと存じます。また、お手元に差し上げてございます資料にも載っているところと存じます。私どもはいま御指摘のように、定員法の御審議をお願いしておるに際して、裁判のあるべき姿というものにつきまして十分念頭に置いておるつもりでございます。  具体的な数字はまた担当局長から必要があれば申し上げますが、いわゆるおくれた裁判というものが少しずつでも改善されているというふうに私は信じております。この際、長官の談話、言葉に言及されたわけでございますが、先ほどから申し上げておりますように、長官といたしましても定員法の審議をお願いしている立場から、もちろん、決して裁判の遅延というものについて無関心でおられるはずはないというふうに私は考えておる次第でございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 敏速に続いて、第二番目の私どもの気持ちを端的に表現いたしますと、憲法理念がないんではないか、もう少し表へ出てきていいんではないかと思います。  承れば、いま最高裁に係属をしております定数是正の違憲訴訟、それは二十数件あるそうですね。地方におきます違憲訴訟というものがきわめて多いわけであります。  私は、立法、司法、行政の中で、司法部が常に憲法を踏まえて、三権がお互いに侵さず侵されずという立場ではあるけれども、少なくとも憲法を土台にして裁判所が、違憲訴訟なりあるいは憲法に反する疑いのあるものについては、常に積極的に、俊敏にこの問題に対処なさることが必要ではなかろうか。かつての歴代の長官のごあいさつの中には、憲法理念というものがよく散見をしたわけでありますが、寺田長官のごあいさつの中には憲法理念が、ちゃんと承知をなさっておりながらも、ないことは、最高裁に係属中の違憲訴訟が多いだけに、私は一抹の不満――不安ではありません、不満を持つわけですが、いかがですか。
  58. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 裁判官が、一線の裁判官も含めまして、裁判事務を処理するに際しましては、憲法にも高らかにうたわれておりますように、独立して職務を行い、良心に従って、憲法、法律のみに拘束されるという憲法上の条文がございます。これに従って裁判事務を処理しているというふうに私どもは信じているところでございます。また、現在最高裁判所の大法廷に係属しているとただいまお尋ねになりました案件につきましても、最高裁判所裁判官は長官以下、いま御指摘の憲法の理念に従って処理されるものというふうに私どもはもちろん信じているわけでございます。具体的に現在大法廷に係属中の事件がどのような形でどのように処理されていくのか、事務当局といたしましてはもちろんつまびらかにはしておりませんが、憲法に従った裁判が当然なされるものというふうに信じておる次第でございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 第三番目の一抹の不満は、人権擁護の理念が乏しいのではないか。断っておきますが、私は、寺田さんのこの書いてある談話なり言葉、それの内容自身についていいとか悪いとか言うわけではない。それなりの一つの骨格を備えておられるのだけれども、憲法と最高裁判所の立場からいえば、新任されて司法部の頂点に立たれて、これを全裁判所なりあるいは司法部すべての人々が読んで仕事をする上においては、いま言いましたような敏速、憲法理念、それから人権擁護の理念が乏しいのではないか。そう言いますのは、最近、人権よりも公益を重視しがちな傾向というものがいろいろな判決の中で随所に見られがちなことを私どもは憂慮するわけであります。人権の理念が足らないのではないかという私の不満についてはどうお考えになりますか。
  60. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 先ほどお読み上げいただきましたように、裁判所の使命は、寺田長官も申しておりますように、具体的な紛争を適切妥当に解決して、よって国民の権利を擁護し、法秩序を維持するというところに尽きる、私もそう考えます。  ただいまの御指摘は、人権擁護に欠けるところがないかという御趣旨お尋ねでございますけれども、私どもの司法の機能というものは、具体的な紛争を通じて裁判という形で処理されていく仕事が司法の業務そのものであるわけでございまして、その中に、先ほどお読みになりました国民の権利擁護ということがあるわけでございます。ただ、なされた裁判に対して、いま御指摘のような批判のあることは私ども十分承知しておるところでございますが、最高裁の裁判も含めまして、私ども一線の裁判官全員が、ただいまの人権擁護あるいは公共の秩序維持ということのどちらにウエートを置くかというようなことは、あくまでも個々の具体的な裁判を通じてなされることでありまして、当初からどちらにウエートを置くというような考えで裁判はなされていないというふうに私どもは考えている次第でございます。
  61. 横山利秋

    横山委員 司法権が憲法上存在をいたしますのは、これはもう民主主義政治の体制の根幹の問題だと私は考えているわけであります。  司法権が独立して、行政と立法との間に明確な三権分離、ある意味では協力し合うであろうが、ある意味では介入しない、それぞれの独立した機能を発揮しなければならないのですが、憲法上の立場からいって、政治の干渉が随所に見られる。たとえば、最高裁判所判事の数は十五名ですけれども、法律で決められる。これは法律で決めるのですから、立法府なりあるいは行政府が決める、任命は内閣が決める、予算は内閣が決める、政府が決める。こういう大事な急所を司法府は押さえられておるというところに、問題は一体本当にないと言い得るかどうか。その点はどうお考えになりますか。
  62. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 非常に大きな問題についてのお尋ねでございまして、私が私の現在の立場でお答えする資格あるいは能力があるかどうか問題でございますが、私の考えでは、結局、現行憲法の三権分立の秩序というものをどういうふうに解するかという問題であろうかと思います。  ただいまの御指摘の、最高裁判所裁判官の数を法律事項にゆだねたことは別といたしまして、たとえば最高裁判事の任命が内閣、長官の任命が内閣の指名に基づく天皇の任命というこの制度自体は、すでに憲法にはっきりうたわれているところでございます。内閣におかれましては、十分憲法の理念に従って任命されているというふうに私どもは信じているわけでございます。具体的に三権の間、特に司法権とその他の二権との間のいわば干渉というようなものは、私どもといたしましてはそういうことはかつてなかったし、現在もないというふうに考えている次第でございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 次に規則制定権について伺います。  これは一体だれにこの解釈を聞いたらいいのか、法制局もおいでを願っておるわけでありますが、この規則の制定権というもの、最高裁判所の決める規則というものは、一体法律として解釈すべきであるか。法律であるならば、それは一体立法権として特別に許されたるものなのか、法律であるとするならば、この規則について国民は従うべき義務があるのであるか。規則制定権の解釈について、どなたか正確な答弁を願いたいと思います。
  64. 関守

    ○関(守)政府委員 お答え申し上げます。  最高裁でお定めになります規則について私が申し上げるのもちょっといかがとは思いますけれどもお尋ねでございますので…。  いまお話しのように、法律と申しますと、形式的意味で申しますと国会の御制定になるものでございます。ただ実質的には、規則の制定というのは、ちょうど内閣が政令を定めますとか、そういうものと同じような意味で立法行為であるということはほとんど定説であろうかと思います。今日では少なくとも定説だろうと思います。したがいまして、国民を拘束するものであるということも、その限りで当然であるというふうに思います。
  65. 横山利秋

    横山委員 国民を拘束する法律と見るべきであるということですね、そうですか。ちょっと聞き間違えたが、そういうことですか。法律と見るべきであるとおっしゃったのですか。
  66. 関守

    ○関(守)政府委員 いわゆる法律と申しますと、国会が御制定になるのが法律でございますので、立法行為であるというふうに先ほど申し上げたのはそういう意味でございます。したがいまして、その立法という意味は、やはり国民がこれに従わなければならないものである。そういう意味では、規則制定について、これはほかの意味もございますけれども、国会がお定めになる法律というものの唯一の立法権は国会に属するという憲法上の大原則の一つの特則として、また憲法自体でも規定を設けているところでございます。
  67. 横山利秋

    横山委員 何だかわかったようなわからぬような答弁だが、要するに立法行為である。それで、下級裁に委任することができるとありますね。立法行為、国民が従う義務があるということであるならば、下級裁にそれまで委任して一体いいのだろうか。下級裁にこの規則制定を委任した実績はあるのかないのか、その点はどうです。
  68. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  憲法七十七条の規定によりまして、最高裁判所下級裁判所に委任をし、その結果でき上がりました規則というものにつきましては――最高裁判所で規則を制定いたします場合、これを官報で公告されるようになっております。委任に基づいて制定されました下級裁判所の規則も、最高裁判所の規則に準じて官報で公告するような定めができております。これは、最高裁で定めました規則に公文方式規則というのがございまして、その中にそのような規定がございます。これまでのところ、その公文方式規則によりまして公告された下級裁判所の規則はございません。  以上でございます。
  69. 横山利秋

    横山委員 なければいいというものでも必ずしもないので、立法行為を最高裁判所が認められておるが、その立法行為をさらに下級裁に委任をし、下級裁が仮に決めたものを官報で公告するにいたしましても、国民に従う義務を持たせるものを下級裁で決めても差し支えないという点については、私は疑問を持たざるを得ない、こういうことを言うておきます。  それから規則制定権の範囲ですが、訴訟手続弁護士、内部規律、司法事務の四つが挙げられておりますね。これは限定列挙だというふうに見ていいのでしょうか。弁護士とちゃんと書いてある。弁護士と何を決めるのでしょうか。何で規則制定権で弁護士を例示しておるのか。弁護士について決めた実績はございますか。この解釈をお伺いしたい。
  70. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 弁護士に関する事項を規則で定めました例はいまだございません。もっとも、法律の規定によりまして、弁護士に関する事項について最高裁判所の規則に委任した例はございます。たとえば弁護士法七条に基づきまして、最高裁に委任されてできました規則といたしまして外国弁護士資格者承認等規則等がございます。それから沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律六十五条の授権に基づきまして沖縄の復帰に伴う特別措置に関する規則というものが制定された例はございますが、憲法七十七条の規定に基づきまして弁護士に関する事項を定めました規則はいまだございません。  以上でございます。
  71. 横山利秋

    横山委員 私も、七十七条規則制定権の中に弁護士とあるのは、実は異様に感じたわけであります。最高裁判所弁護士に関する規則を制定するということは一体どういう意味があるのだろうか、なぜこの文字が入るのだろうか。実績がないとすれば、それでいいのでありますけれども、この弁護士についての規則制定権というものについては、規則は存在するけれども、実際、実効性はない、またこれは慎重であるべきである、そう思いますが、いかがですか。  あわせて、なぜ検察官が従わなければならないという文字があるのか、二点を伺います。
  72. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 憲法七十七条にいわゆる弁護士に関する事項の解釈につきましては、文言からいたしますと、弁護士に関する一般的事項について規則で定め得るかのように読めますけれども、最高裁判所に規則制定権がゆだねられた趣旨に照らしますと、一般的に弁護士の職務、資格あるいは身分について定めることは、その範囲を超えるものであって、これらは法律で定めるべきものと解されるわけでございます。  そういたしますと、憲法七十七条にいわゆる弁護士に関する事項は何を示すのかということになるわけでございますが、憲法が制定されました当時の議論をちょっと見てまいりますと、訴訟というものは弁護士裁判所とが一体になって運営していくものである、そういうことから訴訟運営に当たっての弁護士との関係における一つのルールをつくるのがどうであろうか、こういうような議論がなされたようでございます。したがいまして、これにつきまして、仮に強いて考えられるといたしますと、戦前は弁護士さんも制服を着用されて法廷に見えられていたわけでございますが、仮に弁護士に関する制服のようなものを定めるといたしますと、そのようなものはこの最高裁判所の規則で定めることができるというようになるのではないだろうか、かように考えております。  それから、検察官がこの規則に拘束されるという点でございますが、検察官は公訴の提起、遂行その他職務上裁判所と密接な関係を有するわけでございまして、検察官も、裁判所において職務を行う場合には当然に最高裁判所規則に拘束される。これは訴訟手続を円滑に進めるために定められました規則本来の性質に由来するものでございまして、この趣旨を明確にしたものというように考えております。  以上でございます。
  73. 横山利秋

    横山委員 次に、規則制定権の範囲、四項目あるのですが、この四項目については国会の立法権を排除するというふうに見るのが正しいのであるかどうか。国会がこの四つについて何らかの規定を決めることについて、何ら差し支えないというふうに考えるべきであるかどうか、これが第一。  それから、限定列挙されておるのでありますが、この四項目以外のものについては、規則制定権は一体存在すると見るのが妥当であるか否か。あわせて、その中には現在、簡易裁判所判事選考規則、昭和二十二年の最高裁規則。皇室典範二十八条の委任による裁判官たる皇室会議議員及び予備議員互選規則、二十二年最高裁規則。あるいは国家公務員法九条六号の委任による人事官弾劾裁判手続規則、昭和二十五年最高裁規則。これらがあるのでありますが、一体これらがあるということは、四項目の限定制限列挙してある以外に規則制定権があると見るのか、いかがですか。
  74. 関守

    ○関(守)政府委員 最初の方の問題にお答えしたいと思いますが、この問題につきましては、仰せになりました法律で七十七条に書いてある事項について定められるかどうかという問題でございますが、かつて政府からも、国会からの質問主意書にお答えするという形等で明らかにしてございますけれども、憲法七十七条第一項の定めは、先ほど申し上げましたように、国会を唯一の立法機関とする憲法上の原則の特則として憲法七十七条第一項に規定する訴訟手続等につきまして、法律の委任がなくても最高裁判所規則として定めるということにしたわけでございますので、これらの事項でございましても法律をもって規定することが排除されるわけではない。むしろ一般に国民の権利義務に直接関係のあるような事項については法律で定めるのが相当であるというふうに理解しているところでございます。
  75. 横山利秋

    横山委員 右以外の簡裁や皇室典範、国公法については。
  76. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 横山委員ただいま御指摘簡裁判事選考規則、これは裁判所法四十五条二項の授権に基づいて制定されたものでございます。  それから、裁判官たる皇室会議議員及び予備議員互選規則は、皇室典範二十八条三項におきまして「最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官の互選による。」という定めによりまして制定されたものでございます。  それから、四項目以外の規則という関連で申し上げますと、裁判所職員臨時措置法によりまして、国家公務員法中人事院規則、政令、命令を最高裁判所規則と読みかえるという規定がございまして、これもやはり規則に授権することになるわけでございまして、これに基づいて最高裁判所規則である裁判所職員に関する臨時措置規則というものが制定されまして、それによりまして人事院規則が準用され、さらにこれらを具体化するものといたしまして裁判官以外の裁判所職員の任免等に関する規則、裁判官以外の裁判所職員の俸給の特別調整額に関する規則というようなものが制定されてございます。  以上でございます。
  77. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、規則制定権は国会の立法権を排除しない。規則と国会の決める法律とが理論上は両立する。両立した場合に、その規則制定権の効力は立法行為である。事実上は法律と同じ効果を持つとするならば、法律と規則制定権によって決められた規則とどちらが一体優先すると解釈するのか。あるいはまた、優先、不優先ということはない、同位としたならば、それは一体その矛盾があった場合にどう考えるべきか。あるいはまた、規則制定権がもし違憲の疑いありという批判を受けたときに、だれが一体その違憲判断をするのか。規則は、最高裁判所裁判官会議で決めるのだろうと思うのですけれども、そこで決まった規則が違憲の疑いがあった場合に、だれが一体その違憲の取り扱いをするのか。
  78. 関守

    ○関(守)政府委員 これまた前段の方だけお答えさせていただきたいと思いますけれども、法律と最高裁判所の定めた規則との間に矛盾、抵触があった場合にどのように考えるべきかというお話でございますけれども、先ほども申し上げましたように、憲法におきましては国会の立法権というものが大原則でございまして、もしこれに最高裁規則の定めが抵触するというようなことがございますれば、当然法律の方が優先するというふうに考えております。
  79. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 後段についてお答え申し上げます。  先ほどから法制局の方から御説明がございましたように、規則制定そのものは司法部内の立法というふうにお考えいただければ――司法部内の立法も広い意味での司法行政、私どもが申し上げておる司法行政の中に入ると思います。規則制定につきましては、最高裁判所裁判官会議で司法行政として規則制定をいたすわけでございます。御指摘のその規則が、ある具体的な規則が違憲かどうかという問題はまずないというふうに信じておりますが、裁判官の構成が、時移り人がかわれば、あるいはかって十年前に制定された規則が違憲の疑いあるというような形で問題提起がなされることは論理的にないわけではないと思います。その際には、やはりこれも具体的な事件を通して規則が問題になった場合には、裁判体で判断することになろうかと思います。  また、司法行政上の裁判官会議がかつての規則が違憲の疑いあると言えば、規則の改正というような形になることもあり得ると思います。しかし、私どもといたしましては、最高裁判所裁判官会議が定めた規則に憲法問題はまずないというふうに信じておる次第でございます。
  80. 横山利秋

    横山委員 特定した問題を議論しておるのではありません。憲法解釈及び法律解釈の点から私は遺憾ないか、こういうふうに言っておるわけであります。なるほど、人がかわれば解釈も変わる。最高裁の判例をもってしても従来の判断が、判決が十年たったらくるっと変わる、八対七が七対八になったという事例も私は承知をしておりますから、それは人がかわれば変わるから、前にやったやつが違憲だとすればいまの人が直す、それは理屈は通らぬではない。けれども、そんなことは国民は知らない。最高裁が、自分がつくったやつが違憲だと言われて自分で直す、同じ穴のムジナじゃないか、そんな理屈は通らぬぜ、こういう常識がやはり働くと思うのであります。ここのところは、この違憲性ある規則はだれが判断するのかという点については、一つの矛盾を残しておる、そう私は思うのですが、法務大臣、思いませんか。――判断できないか。
  81. 秦野章

    秦野国務大臣 いま、ずっとお聞きしておって、大変理論的な追求で、若干の問題を残しているような感じがしますけれども、しかし、これは私が軽々に判断しない方がいい、こう考えます。
  82. 横山利秋

    横山委員 司法行政権とは一体何だろうということなんであります。裁判所の組織、構成、人事、人的・物的施設の管理、俸給、財政、そんなことが司法行政権ではなかろうかと思うのでありますが、解釈に間違いありませんか。
  83. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 司法行政権と申しますのは、裁判所が、その本来の使命である裁判権の行使を適正、円滑に行うことができるようにするため裁判所の人的・物的施設を設置、管理いたしまして、事務の合理的、効率的な運用を図ることができるようにするための権能を言うわけでございまして、その内容は、横山委員指摘のとおり、裁判所職員の任免、配置、監督等の人事行政事務、あるいは裁判所の組織、機構に関する運営管理、裁判所の諸施設についての物的施設管理、裁判所予算に関する経理会計、あるいは参考資料の整備、刊行等がこれに属するわけでございます。
  84. 横山利秋

    横山委員 その中で一つ、二つ伺いたいのですが、最高裁判所判事の任命については従来どういうことなんですか。一人の欠員があったときに一人を推薦する、そして総理大臣がそれで結構だと言う。従来、一つの空席に二人を出す場合があるか。あるいはまた、一人を出したけれども政府がそいつは嫌だ、かえてくれという内面指導する場合が従来あったことがあるか。この辺の任命権の実態について御説明を願いたい。
  85. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 最高裁判所判事の任命につきましては、先ほども話に出ておりましたように、憲法上内閣の専権になっておるわけでございまして、最高裁判所として推薦するとかなんとか、そういう問題は実はないわけでございます。実際問題といたしましては、従前の慣例といたしまして内閣の方で御任命になる際に最高裁判所長官の御意見をお聞きになるというふうなことがあるようでございますが、この関係につきましては、実は事務当局といたしましてもそこの詳細を承知しているわけではございませんし、ただいま横山委員指摘のように、意見をどういうふうに聞かれるのか、どういうふうに言うのかというような問題と関連いたしますので、結局二人推薦、一人推薦という問題には実はならないわけでございます。  問題外でございますが、下級裁判所裁判官につきましては、最高裁判所が出しました名簿に基づいて任命するということになっておりますために、最高裁判所裁判官会議で決めまして名簿を提出いたしまして、その名簿どおりに任命するかどうか、そういう問題が御指摘のようにあるわけでございますが、その関係につきましては、最高裁判所が提出いたしました名簿につきまして先生のおっしゃる拒否権といいますか、そういうものが行われた実例は従前ございません。
  86. 横山利秋

    横山委員 それは非常に結構なことでありまして、名簿提出したものについて拒否をされたことはない、それはわかったのですが、最高裁判所判事は総理大臣の専権に関することだからと言って言葉があいまいになったのですけれども、実態論としては最高裁判所長官が意見を聞かれた場合に推薦をし、その推薦どおりになるということにはなっていないのですか。
  87. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ただいま人事局長から申し上げたように、憲法上先ほど申し上げたとおりでございますので、事内閣の専権事項に関する事項でございます。私どもといたしましては、その間の問題につきましてはやはりお答えをする立場にはないものというふうに御理解いただきたいというふうに考えます。
  88. 横山利秋

    横山委員 司法行政権の行使についてでありますが、各裁判所は独立をしておる、最高裁判所の監督権は、言うまでもなく地方裁判所裁判権に影響を与えていない、そう理解していいでしょうね。裁判権に影響を与えていないし、何らの制限も与えていない。しかし、実態としてはどうなんですかね。実際問題として人事権を持っておることが微妙に影響を与えるんでしょうか。  それから、この前本委員会で私が言ったのですが、裁判官も神様じゃないから、いろいろな裁判官がある。それが弾劾裁判所や訴追委員会に随時提起されておる。そういうことをあなた方はちょっとも知らぬのですね。だれが出ておってだれが訴追されておるか、全然知らないわけですね。そういうことと人事権とは一体どういうふうになるんでしょうかね。かつて私は、裁判官の勤務評定という言葉は適切ではないが、どうなさっておると言ったら、前の事務総長は、おのずからなる評価がされております、こう言うわけですね。えらい高い次元のお話をなさると思って、私にはわからぬと言ってある地元の弁護士に聞いたら、いや、それは適切な言い方ですよ、世間が見ておる、周辺が見ておる、あの裁判官はどういう人か、おのずからなる評価というものが大体決まっていきますよ、こう言うのですね。けれども、あなたの方は石の壁の最高裁判所の中にあって、本当におのずからなる評価というものが適切に行われているだろうかどうか、人事権の行使が裁判権に影響し、制限はできないけれども実際問題としては人事というものはきわめて微妙にこれに絡み合っていくのではないか、そうだとしたら、そのおのずからなる評価が、たとえば、訴追委員会に出てる者がみんな悪いというのではないですよ。私もやってみたけれども、訴追屋というのがおりまして、めちゃくちゃやる者がおるんだから。そういうことはあるけれども、どういうふうにおのずからなる評価をなさっていらっしゃるか。
  89. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 人事をやっておりますものといたしましては、人の評価というものは本当にむずかしいものでございます。横山委員指摘のように、前の総長がおのずからなる評価と申し上げておりますが、まさに言い得て妙と申しますか、おのずからなる評価ということでやっておるわけでございます。  そういうことでおのずからなる評価をした、その人事権が裁判権に影響を及ぼすかどうかという御心配でございます。ただ、それぞれの人が内心、たとえば転勤ですとか昇給ですとか、そういう問題を頭の中に置いておりますその人自身の心理を推しはかることはできないわけでございますけれども、具体的に私どもが取り扱っております人事がこうであるからそれを頭に入れて裁判をどういうふうにしなければいけないんだという裁判官は、裁判官としてのまず資格の問題でございまして、そもそも裁判官というものにはそういうものはないのだと私どもはかたく信じておりますし、現実には人事によって裁判が左右されることはあり得ないものだと確信しておる次第でございます。
  90. 横山利秋

    横山委員 次は、国政調査権と司法行政権との関係について伺いたいと思います。  私がこうして最高裁にいろいろお伺いをしておるのは、憲法上の、最高裁が健全かつ着実な仕事をしてほしいという立場なのではありますが、少なくとも、最高裁、こういうところが足らぬじゃないか、ああいうところがまずいじゃないかということに結局はなるわけですね。私どもは国政全般にわたる権能を国政調査権として持っておるのですけれども法務大臣に言うことと最高裁に言うことは、これでも最高裁にちょっと遠慮しているわけです。どこまで一体国政調査権が及び得るか、かつて参議院で国政調査権の発動をやり過ぎた、要するに、それは私の想像するところによれば、個々のいま進行中の裁判についてとやこう言ったということじゃないかと思うのです。私どもは進行中の裁判についてとやこう言わないけれども刑事局長には何やっておるんだ、もっとしっかりやれと言うことはあたりまえですよ。裁判官に何やっているんだ、しっかりやれ、おまえのやっているのは罪が軽過ぎる、重過ぎると言うことはちょっとできぬのですが、しかし同時に、済んだ後の裁判批判というものは、これまた自由ではあろうと思うのです。また自由であっていいのではないかと思うのですが、この国政調査権と司法行政権との兼ね合いというものは一体どう考えたらいいか。どなたが御答弁されますか。
  91. 関守

    ○関(守)政府委員 この点につきましても、国会の国政調査権の問題と司法権との関係がございますので、私から申し上げるのはいかがかと思いますけれども、かつてこの問題につきましても御質問がございまして、それにお答えしたということもございますのであえて申し上げますと、その際にも申し上げておるわけでございますけれども、司法権の本質でございます裁判作用については司法権の完全な独立が保障されているわけでございまして、先ほどお話もございましたように、特に現に裁判所に係属中の事件のようなものについては国政調査を行うことは許されないということはございますし、確定判決につきましても、前に参議院で問題になりました事件もたしか確定判決の問題じゃなかったかと思いますけれども、そのやり方いかんによっては司法権の独立を害するということにもなる場合もございますので、そういうようなやり方では許されないだろうというふうに考えます。それが大方の学説のようでございます。  司法行政の面でございますけれども、これは同じく裁判所がやるということでございましても、司法行政に対するコントロールという問題につきましては、これは一般の行政事務に関して内閣に対して国会がコントロールなさるというのとはちょっと違う面がございますけれども、法律の制定でございますとか予算あるいは決算の審査というようなことに資するという観点からの国政調査というのは当然許されるべきものであろうと思います。ただ、内閣と同じように裁判所に対してああせいこうせいと言うことには若干問題があるのではなかろうかというようなことを前にも御答弁を申し上げておると思います。
  92. 横山利秋

    横山委員 裁判所に伺いますが、私どもは司法の独立は認めるけれども、独善は戒める、こういう立場ですね。それから行き過ぎがあってはいかぬ、こういう期待を持っておるということなんですが、私どもの国政調査権を含めた裁判批判、これは一体、裁判官は弁解せずと言うばかりが能ではないと思うのですけれども――かつて松川事件裁判進行中の問題について、雑誌で広津先生がずいぶん取り上げられた。あるいは私どもも、弾劾裁判所なり訴追委員会裁判官のありようというものが随時議論をされておる。新聞を見ましても、判決が出れば論評が行われるということがやはりあるわけですね。こういう国政調査権の発動とか、あるいはちまたにおける裁判批判というものを最高裁はどういうふうに受けとめられるか。そんなものはおれの知ったことではない、おれのやったことは裁判官は弁解せずで、一切物を言うな、だれが何を言おうと知ったことではないということになるわけですか。どういうふうに考えたらいいのですか。
  93. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 裁判官が裁判事務を処理するにつきましては、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、独立して裁判事務を処理しているわけでございます。その間に、御指摘のように独立と独善とは全く違うことでございます。えてして独立して仕事をやるということが独善につながるそこに契機がございますので、私どもといたしましては独善に陥らないようにそれこそ自粛自戒するというのが私ども裁判官のあり方だというふうに考えております。  その点はその程度にいたしまして、いわゆる国政調査権と司法の独立の問題は、ただいま法制局の方からお答え申し上げたとおりでございます。この問題はむしろ憲法上の問題でございますので私の立場でとやかく申し上げるのはいささかいかがかと思いますが、結局は、司法の独立という観点からどの程度まで具体的に国政調査が及ぶかということになろうかと思います。具体的に先ほどもお話がございましたように、予算、決算、それから法案等につきましての国政調査ということは当然あり得ることだと私どもは考えております。  それから一般の裁判批判の問題でございますが、この点につきましては、国会の司法に対する国政調査とやや質を異にするのではなかろうかというふうに考えます。もちろん言論の自由という問題もございますので、果たして裁判批判というものがどこまで許されてしかるべきか、司法のあり方としてどこまで国民の言論の自由と調整されるべきものか、一概にはお答えできないと思いますが、この点につきましても、国会と裁判所との関係と同様に、あくまでも裁判の独立を害しないというのが基本的理念であろうというふうに私は考えます。
  94. 横山利秋

    横山委員 午前中の質問はこれで一たん中止をいたします。
  95. 綿貫民輔

    綿貫委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ────◇─────     午後一時七分開議
  96. 綿貫民輔

    綿貫委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  97. 横山利秋

    横山委員 先ほどうっかりしておりまして、一つだけ自治省にお伺いをいたします。  先ほど箕面の判決について法務大臣の所信を伺いましたけれども、この判決文を読んでみまして、こういうことは市町村で日常茶飯事行われていることではなかろうか、市町村が慰霊祭なり何なりで宗教との分離というものはいろいろやかましくやっておりながら、まだいろいろこの種の問題があるのではないか、こういう問題について自治省としては全国の地方自治体に対して問題の起こらないように指導すべきではないかと思っているのですが、それをなさっているか、なさっていないとするならば、どうなさろうとするおつもりであるか、伺っておきたいと思います。
  98. 中島忠能

    ○中島説明員 政教分離の問題につきましては、この箕面で昨年三月の末にも判決がございました。また先ほど御指摘になりました判決もことしになってございます。この大阪地裁で争われておる問題のほかにも、全国他の地方団体に関して他の地裁でも争われております。そこで、最初に大阪地裁で判決が出たわけですけれども、私たちといたしましては、この問題が憲法上の政教分離にかかわる問題でございますし、他の地裁においても係争中の問題でございますので、いましばらく裁判の成り行きを見守ってから行政としての態度を決めていきたいというふうに考えております。
  99. 横山利秋

    横山委員 それはちょっと迂遠じゃないか。なるほど判決は確定はしていないけれども、あれほど明確な――箕面なんかは二回目ですね。判決が決まらないんだからいままでどおりやってもいいというようにあなたの答弁は聞こえるのですね。こういう誤解を与えたりあるいは問題が起こりそうなことについては、政教分離ははっきりしているのですから、誤解のないように善処すべきであるというようなことは行政指導として当然あるべきではないかと思うのですが、知らぬ顔しておるのですか、いまのところ。
  100. 中島忠能

    ○中島説明員 憲法で言う政教分離が具体の事件についてどのように解釈されるかということの判断が裁判所として最終的に出ておりませんので、私たち行政としてはいまのところ見守っていきたいということでございます。
  101. 横山利秋

    横山委員 ちょっと驚きましたな。あなたの言っていることは、理屈は確定していないからということはわかるのですけれども、これほど明白になった地裁の判決が出たものについて、ほかの地方においては、あれは確定していないんだから心配することはない、ほかっておけということのように聞こえるんだがね。少なくとも政教分離が社会的に非常に問題になっているときであるから、この種の誤解のないような措置をとるべきであるというようなことは行政指導として当然ではないかと思いますが、当然とは思いませんか。おかしいな。そう思いませんか。ほかっておけか、驚いたな。
  102. 中島忠能

    ○中島説明員 先ほど申し上げましたように考えておりますが、具体的には、地裁の判決が出ますとそれぞれの地方団体で判決を読みまして、それぞれの地方団体においてその判断を行うだろう、それが地方自治だというように考えております。
  103. 横山利秋

    横山委員 地方自治を否定するものじゃないですよ。けれども全体を見ているんだから、あなたの方の所管としてもう少し指導性があってしかるべきです。あなたちょっと仕事に怠慢じゃないかな。それはちょっとおかしいな。あなたの顔をつくづく見ているんだが、腹の中で何を考えているんだかおれはよくわからぬな。ちょっとそれは怠慢ですよ。これだけ政教分離の声の厳しいときに、まあ、あれはまだ確定していないんだから、いままでどおりやっておればいいや、判決が出たらと言うんだけれども、仮に判決が最高裁まで争われるとすると十年戦争になるのですな。おれがおるうちは知らぬ顔で、おれは転勤するんだから後のやつがやってくれるんだろうということですかね。これは時間がありません。あなたには忙しかろうと思って冒頭にちょっとやってすぐお帰り願うつもりでおったのですが、大変残念ですな。もう一遍会うときがありますから、あなたの顔をよく見ておきます。ちょっと怠慢ですよ、これは。時間がありませんから、大変おかしなことを言うということだけ記憶しておきます。どうぞ。  さて、先ほどの続きをいたします。  財政法の第二節、予算の作成、第十七条で最高裁は見積もりに関する書類を作製し、内閣に送付するとあります。それから十八条では、内閣は閣議の決定をする前に、決定に関し最高裁に意見を求めなければならない。それから十九条では、内閣は、裁判所の歳出見積もりを減額した場合においては、国会、裁判所等の送付に係る歳出見積もりについては、その詳細を歳入歳出予算に附記するとともに、国会、裁判所または会計検査院に関する歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならないとあります。俗に二重予算権と言うておりますが、きょうは最高裁だけを突出して議論をするわけですが、最高裁の独自性を財政法上認めたものなんであります。  そこでお伺いしたいのは、十八条のあらかじめ内閣が閣議決定する前に意見を求めなければならないとありますのは、これはほかの省とは違って特筆してあるわけでありますが、どういう方法で意見を求めていますか。
  104. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  財政法等の定めによりまして、前年度の八月末までに内閣に対しまして裁判所の概算要求をいたすわけでございます。その後年末までにかけまして調整あるいは意見具申、意見交換という手続に入るわけでございます。一口に概算要求と申しましても、非常にたくさんの項目、また細かな内訳がそれぞれございまして、一括してどうという論議の対象になるわけのものではとうていございません。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕 結局一つ一つの項目について時間をかけて論議を交換し、調整作業をしていくわけでございます。一回の折衝ですべてを申し上げるということにはとうていまいらないわけでございます。で、概算要求提出後閣議決定がなされるまでの間におきまして、いま申し上げました個々の細かい項目全般にわたって時間をかけて、ほとんど連日といってもいいぐらい折衝を繰り返していくわけでございます。  その際、非常に細かい問題はともかくといたしまして、ここぞという重要な問題につきましては、そのたびごとに長官に御報告し、また裁判官会議の御了承を得ながら、お許しをいただきまして権限を持って折衝しておるということになります。ただ、折衝事項のいかんによりましては、場合によっては係長段階のこともございますし、あるいは課長補佐の段階もございます。あるいは主計課長の段階、経理局長段階、あるいは次長段階ということで折衝を積み重ねてまいるわけでございます。そういうことで十分に時間をかけて煮詰めてまいりますが、その間に見積もり事項の修正、減額というような種々の調整を行うわけでございます。このようにして時間をかけて煮詰めてまいりまして、どうしても最後に煮詰まらないところ、これは事務総長が長官の命を受けまして直接大蔵大臣と折衝をして長官の趣旨を体して実現に努力をする、こういう経過をたどるわけでございます。  以上申し上げましたような次第でございますので、折衝の全体を見ていただきますならば、その過程全部が長官の意見を聞いて決めていただくことに相なる、このように私どもは考えておる次第でございます。
  105. 横山利秋

    横山委員 その運用はわかっているのですよ。運用はわかっているが、結局八月ごろ歳出に関する見積もりの書類を送付したのでしょう。結果としては、十九条で内閣は裁判所の歳出見積もりを減額するわけだ、いつもいつも。そうでしょう。十七条によって出したものが十九条によって減額をされるわけです。それは実際問題としては、あれは困るからやめてくれ、はいわかりました、それじゃあれはやめますとか何とか言ってるんだけれども、十七条で送ったものが十九条で内閣が決めた場合は減額されておるでしょう。私の言うのは、各省には十八条の二項にあるような「決定に関し意見を求めなければならない。」という項目はないのです、財政法には。最高裁だけあるわけでしょう。「その決定に関し意見を求めなければならない。」ということは、あなたの話によると、まあネゴシエーションをやって最後に決まったものですと、こういうことなんだが、惰性に陥っているのではないか。十八条の二項をきちんと要式行為をもって、内閣から決定に関し意見を要式行為できちんと求められておるか、そういう質問なんです。
  106. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 委員仰せの十九条の減額という言葉の意味でございますが、これは最終的に裁判所と内閣あるいは財政当局との意見の調整ができなかったという場合をとらえた意味であると私どもは考えておりまして、先ほど私が説明申し上げましたように、時間をかけて煮詰めて、そして両者の意見が合致して仮に当初要求から裁判所の額が減ったといたしましても、それは裁判所の方が財政当局から十分に財政事情も承り、いろいろ勘案、調整しながら自主的に要求額を調整したということでございます。したがって、先ほど申し上げましたように、減額という意味は私どもはそのようにとらまえておらないわけでございます。
  107. 横山利秋

    横山委員 問題が二つあるのですよ。十七条による内閣へ見積もりに関する書類を作製し送付するというのが、あなたの話だと八月のものはそうではない、十七条のものではない、そうなんですね。そう言いたいのでしょう。どっちだ。そうだと言えばいいんだ。違うのか。八月に出したのは十七条ではない、こういうことを言いたいのか。
  108. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 八月に出したものは十七条のものでございます。
  109. 横山利秋

    横山委員 そんなら、十七条によって見積もりに関する書類を作製し、概算要求をしたということですね。  問題が二つあって、十八条で決定する前に意見を求めなければならないとあるが、それは要式行為をしているかということが第一の質問です。ただ事務総長が行ってごちゃごちゃ話した、あなたが行ってごちゃごちゃ話した、そんなことは十八条の二項によるものではないよ。わざわざここに書いてあるんだから、文書をもって意見を求めるという、要式行為をなぜきちんとやらないのか、これが一つ。  二つ目は、十七条が概算要求であれば、十九条で「歳出見積を減額した場合においては、」ということで明らかに減額されているではないか。そちらが、あなたが承知をしても、それでよろしゅうございますと言ったところにしたって、十七条から見れば減額されているではないか。そうしたら十九条は生きてくるではないか。その論理をきちんとしなさいよ。
  110. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 十七条で概算要求をお出しいたします。それから要式行為はどうかということについて申し上げますが、この「意見を求めなければならない。」と書いてある十八条第二項の末尾の条文でございますが、これにつきましては、特別機関である裁判所等の機関の予算につきましては、十分にその機能が発揮できるように予算面から制約をされないようにということで「意見を求めなければならない。」という趣旨の規定である。私どもは、これは要式行為を伴うものではない、そのように考えております。  また、先ほど来仰せの減額という意味でございますが、これは先ほどお答え申し上げたとおりで、十分に時間をかけて調整をして、それで最終的に裁判所、財政当局の間で納得の線が出た場合には、これは減額とは申しておらないので、最終的には裁判所が自主的に調整をした、そういうふうに理解をして作業をしておるところでございます。
  111. 横山利秋

    横山委員 そういう解釈をしたのでは、何のために財政法の「予算の作成」で最高裁の二重予算権というものが明記されておるかという趣旨がちっとも生きてこないのですよ。最高裁や、まあ国会もそうだけれども、きちんとこの条文を法律どおりに要式行為を伴って適用する、さしてもらうということをしなければ、何のためにこれが書いてあるのです。あなたの言うようなら、各省みんな一緒だから、こんなことを書く必要はないじゃありませんか。国会、裁判所、会計検査院の問題についてわざわざ特筆してあるのは、各省の予算要求の仕組みと違う独自性を持っておるということだからここに書いてある。あなたの言い方は、全く各省と同じやり方で同じ立場で、要式行為なんかそんなものはいいですよ、十七条で百億出したものが十九条で五十億になろうと、これは納得したのですから減額とは言えませんと、そんなばかなことはないですよ。何のためにこれが書いてある。何のために二重予算権がある。趣旨が徹底してないじゃないですか。それこそ最高裁が惰性に陥って、まあ最高裁は人件費が多いから、けんかもしないのでよくめんどう見ていただきますからという最高裁の姿勢というものがこの中にうかがわれる。  事務総長どうですか、私の言うことがわかっているかね。
  112. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 お尋ねの御趣旨は十分理解しているつもりでございます。  ただいまの御質疑に対しましてお答え申し上げたのは、現行の財政法の解釈として要式行為を要求されていないという前提で経理局長から申し上げたところでございます。また、十八条にその趣旨の規定が設けられましたことは、まさに委員指摘のとおりでございまして、独立機関である裁判所等に対する財政上の手当てといいますか、そういうものを保障しようとした規定だと思います。  したがいまして、財政当局のお考えが裁判所側の考えと大幅に違って裁判の運営がどうしてもいかないというような場合には、とことんまでいま御指摘の二重予算制度の活用といいますかに乗っかって予算を決めていただくということに相なろうかと思います。現実、大分過去でございますけれども、まさしく財政法の条文、規定に従っていわゆる二重予算を要求しようとしたこと、また、したこともございます。私どもといたしましては、財政法にその趣旨の規定のあることを十分念頭に置いて予算上の折衝をしているつもりでございますし、財政当局の方におかれましても、この条文の存在というものについて十分御認識いただいているというふうに考えておる次第でございます。
  113. 横山利秋

    横山委員 ここに「五十八年度裁判所所管予定経費要求説明」とありますね。これは、要するに経理局長の言うのは十九条の妥協した数字ですね。要するに話し合って決まった数字ですね。それじゃ十七条では総額幾らだったんです。
  114. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 約二千四億強でございます。
  115. 横山利秋

    横山委員 それから、大蔵省に伺いますが、十九条に「減額した場合においては、」「国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。」と書いてありますね。これは一体どういうことでしょう。財源を、ここに銭がこれだけあります、削りましたのは五十億です、その五十億はここにありますということを明記しろという意味ですか。
  116. 藤原和人

    ○藤原説明員 財政法十九条についてのお尋ねでございますが、これは先ほど来最高裁判所からお話のございましたとおり、最高裁判所と私どもの間であくまで合意に達しない場合の規定ということでございますので、たとえば五十八年度でございますと、先ほどお話のございましたような手順で合意に達しているわけでございますから、十九条の発動ということにはならないわけでございます。  そこで、理論的な問題として、仮に十九条になった場合の必要な財源とはどういう意味かというお尋ねでございますが、これはそのときどきの財政事情などもございますので、このような事態の起きない現段階で一般論として申し上げることはなかなかむずかしいわけでございますが、御参考として、先ほど事務総長からお話のございました過去に一度、二十七年度予算で二重予算を行使されたことがあるわけでございます。その際には必要な財源として予備費をもってこれに充てるということが附記されたという例がございます。
  117. 横山利秋

    横山委員 要するに私が十九条を確認したいのは、国会が「修正する場合における必要な財源」、国会が、それは気の毒だからもとへ戻してやれ、その銭どこにあるかというその挙証責任は国会側にはない、それは大蔵省、政府側にあるんだから、削った分についてはあろうとあるまいと探してきて出さなければならぬ、こういうふうに理解をしてよろしいんですね、大蔵省。
  118. 藤原和人

    ○藤原説明員 十九条は、先ほど申しましたとおり、裁判所と私どもとの間で予算額について合意に達することができなかった場合の議論でございます。実際には、九月以来各レベルで連日のように議論いたしまして、最終的には大臣折衝の段階で最高裁の事務総長から御意見がございまして合意に達するということでございまして、私ども裁判所の予算につきましては財政法にこのような規定があるということにかんがみ、十分御意向を尊重してお話を伺い、私どもお願いすべきところはお願いするわけでございますが、そのような協議を経て合意に達するわけでございますから、そのような場合には十九条の減額ということには当たらないということでございますので、十九条に基づく必要な財源という問題も起きないんじゃないかと考えております。
  119. 横山利秋

    横山委員 そうじゃないんだ、そんなこと聞いておるんじゃないんだ。  これは改めて法律どおりにやってもらいたいということをかたく言っておきますよ。  先ほどのお話によれば、八月に出すのは、概算要求は十七条である、そして十八条によって閣議決定する前に意見を求めよということになっておるのだから、その要式行為を迫るべきだ、大蔵省も政府も最高裁もきちんと十八条どおりにやるべきだ。それから十九条で、たとえば百億のものが五十億になったとか、そんなことはないとは思うのだけれども、十七条と十九条とは結果として違えればそれは減額したことになる。双方納得したんだから減額でない、そんな子供みたいな理屈は通らぬ。だから、減額した場合においてはこの十九条をしてもらうべきだ、そういうことがきちんと行われなければ、財政法の裁判所に対する――これは司法権の独立の基本問題ですよ。私が先ほど例示したように、人事について政治の介入ができる、予算について政治の介入ができる、任免についてできる。四つばかり政治が司法行政権について介入ができるのだから、その介入のできる点についてはいつもきちんとしておかなければいかぬというのが私の意見です。ですから、これはぜひ財政法どおりにやってもらいたい。  それから、年々歳々国家財政がないときであるからいろいろと双方協力をしなければならぬにしても、司法行政が円滑に行われ、先ほど言われるように裁判が敏速にその役目を達するためには、常に二重予算権の存在を大蔵省ももちろんだけれども、最高裁としては十分に念頭に置いて仕事に遺憾なからしめるように努力してもらわなければ困る、かたく言っておきますが、事務総長、長官によく話してください。
  120. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 午前中以来いろいろ御意見をいただきましたように、裁判所の場合に三権の一つとしてほかの二権との均衡というものが常に基本問題にあるわけでございます。予算につきましては、私から申し上げるまでもなく国会でお決めになることでございます。また財政当局である大蔵大臣が責任を持って財政を切り盛りしていらっしゃるわけであります。その間における裁判所の予算の問題は、三権の中にどのように位置づけるかというのが現行の財政法の規定だというふうに私ども理解しております。先ほど申し上げましたように、裁判所の司法の独立ということから来ている規定でございます。私ども、その規定の趣旨を十分体得して予算の獲得に遺憾のないように努力していきたいと考えております。
  121. 横山利秋

    横山委員 次に、裁判官のことにつきまして、寺田長官が不祥事続出と二回にわたっておっしゃったことをどんなことかと一遍整理をしてみました。私、一応新聞を整理してみたのでありますけれども、実に多いことに驚いた。その内容はどうであったかということについてそちらにも言い分があるでしょうけれども、いま個々の事案について一々よしあしを言うつもりはございませんが、一応列挙をしてみます。  新聞どおりでいきますと、五十七年六月には大分地裁の千葉隆一判事補、これは家出女高生を二晩アパートに泊め、二カ月間交際して十万円のバイクをやった。結論として辞表提出、最高裁が依願免。坂本武志地裁所長はもみ消し指示をしたとかしなかったとかという問題、進退伺いを提出したというのですね。  二番目は、大阪地裁の後藤邦春判事補、五十八年一月ゴルフの練習中マイカーから訴訟記録三件のかばんを盗まれた。これは宅調日であった。結審済みで裁判の進行には別に問題はなかったけれども地裁は捜査結果を待って判事補の処分を決めるという報道です。  三番目は、熊本地裁の大石一宣判事、五十七年十二月民事の現場検証の際に女性被告に酒酔い暴言を吐いた。これについては福岡高裁に分限裁判の申し立て、戒告になった。  四番目は、岐阜地裁の長良川水害訴訟。これは一審判決のミスで損害認容額が請求額の四倍であった。判決後、計算間違いの誤りに気がついた。名前のミスも二カ所あった。民事訴訟の規定で地裁で更正決定されたのは名前ミスのみであって、その後わかった認容額は百八十六条で控訴期間も切れているから高裁に任せるよりしようがないということになった。  五番目は、岸和田簡裁の二人の裁判官。法定よりも多い罰金の略式命令を出した。そこで最高裁第二法廷は十月二十九日検事総長の非常上告を受け、法定どおり訂正判決をした。  六番目は、東京地裁で丹野益男裁判長、五十七年六月。無罪裁判で判決言い渡しまで拘置を認めた違法性、検察官と裁判官の過失である。これは目撃者証言があいまいで科学的裏づけもなく起訴したのは違法である。拘置についての裁判官のあり方を指摘された。  七番目は、岡山地裁勝山支部蔦昭判事、五十七年五月。求刑五年、宣告一年六カ月、これより重いはずであった。判決文には三年六カ月とあったはずである。副検事の問いただしでミスがわかった。蔦判事は自分のミスだから控訴を望むと地検に言っておる。  八番目は、東京地検から東京家裁に、また地検、また家裁とぐるぐる回っておる。五十七年の九月。これは、東京地検から東京家裁へ行ったけれども、証拠に疑点があるから刑事裁判で明らかにせよということでまた地検へ行った等々で二カ月も身柄拘束をしてかずけ合いをしておる。技術的にはいろいろ議論はあるだろうけれども、もう少しうまくやれぬかという指摘があった。  九番目は、東京八王子公判、五十八年一月。起訴状が二カ月以内に被告に届かない場合起訴無効となるが、起訴状が書記官の帳簿に挟まっておった。法廷内であわてて起訴状を渡した。  十番目は、横浜地裁執行官。酒酔い運転事故を現金渡しでもみ消ししようとした。近く最高裁で処分すると伝えられておる。  十一番目は、宇都宮地裁書記官、支部の中で泥棒をやった。  十二番目は、大阪の池田簡裁書記官、庁舎内でわいせつ行為。  十三番目は、武蔵野簡裁八王子支部の裁判官だまし。アパートの所有者から盗んだ実印で所有者に五千万円貸した借用証書偽造、これによって裁判官をだまして支払い命令や競売開始決定を出さした。警察も相手にせぬので、本人は全く腹が立つけれども、判決が出た以上は裁判で訴えなければだめだと言われて、もう本当にどうなっておるという問題。  十四番目は、福岡高裁の宮崎支部。これは夫婦殺害事件、ホステス殺人事件、国鉄暴行事件、三件とも最高裁で逆転判決になった。三件ともそういうことになって、宮崎支部は偶然にしてはちょっとえらいのじゃないかという問題。 等々、まことに最近、寺田長官が不祥事があると――これが全部事実だと言っているわけじゃないですよ。新聞の披露ですけれども、それにしても多過ぎる。こういう裁判官の不祥事が長官の訓示の中に二回にわたって出てくるというのはまことに残念至極で、もう少し何とかならないのかということが言いたいところなんですが、いかがですか。
  122. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員、数多くの事例を特に新聞記事を中心として御紹介いただいたわけでございますが、横山委員御自身御指摘になりましたように、いろいろな態様のものがございますし、裁判所職員がやったものではないようなもの、あるいはこれは定義の仕方にもよると思いますが、非違行為と申しますか不祥事というものではないようなものも若干まじっておると思いますが、全体としては裁判官及び裁判所職員でそれこそ国民の皆様に対して申しわけないような事例もその中に幾つかあるわけでございます。実は、一昨年も東京地裁破産部の問題、特に大きな問題がありまして、裁判所といたしましても、裁判官裁判所職員一同自粛自戒いたしまして、再びこういう不祥事のないようにということで各人肝に銘じておりますとともに、私どもといたしましても何とかそういうことのないようにということでいろいろの施策も考えてきたところでございますけれども、それにもかかわらず、大きい小さいは別といたしまして、いまお挙げになりましたような事例がたびたび起こっているということは、まことに申しわけないと思っているわけでございます。  と申しましても、いまの事例、それぞれいろいろの態様のものがございますし、全体としてこれをどうしたらいいかということになりますと、実は非常にむずかしいわけでございます。  基本は、先ほども申し上げましたように各人の自粛自戒と申しますか、自己修養、自己研さんによってこういうことがないようにということをやっていかざるを得ないというのが基本ではございますけれども、私どもといたしましてもそういう自粛自戒、自己研さんというものを助ける意味でのいろいろな施策というものをいままでも若干考えてまいりましたし、今後も何とか工夫をしてそういう不祥事が起こらないような施策というものをさらに考えていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  123. 横山利秋

    横山委員 個々の問題に入ると時間が非常にたちますので、余り多くは申しませんけれども、百日の説法へ一つということがございますね。とにかく司法、検察、いずれも同じでございますけれども、日本の司法、検察は世界でも水準が高いものだと私どもも認め、外国へ行きましても自負をしておるわけです。国民もまたそう思っておる。特にロッキード裁判における検察陣なりあるいはまた裁判所体制なりというものに対して、まさにいま政治の倫理が問われているときに最後に国民が期待するのは検察陣であり、しかも司法陣、裁判所である、そういう期待が非常に高いのであります。  私ども政治家として、国会で田中角榮被告の辞職勧告決議案がいま最後の山になっておりますけれども、私どもも全力を挙げておるけれども、しかしながら今日の国会の状況ではなかなかうまくいかない。国民が、いずれにしてもとにかく検察陣は本件については一体になって一生懸命やっているから、また裁判所も厳正な処理をするであろうからという期待を持っておるときに、全部とは言いませんけれども、かくも多くの裁判官の不祥事というものがあるということは国民の期待を裏切るものだ。そういう点で数々の要望があるのですけれども、さりとてその要望というものは最高裁の人事権あるいはまた管理権を強めればいいというものでもない。そして長官の号令一下、何でも長官の言うとおりにするというようなことでもない。そういうことではますます今度は裁判の独立権が侵されるということなんであります。そういうときに、これはちょっと拝見をしましたけれども、中堅裁判官を新聞社で研修をするということを見ました。なかなかおもしろいアイデアだ、こういう発想は非常にいいのではないかと私は思ったわけですが、法廷外で裁判官にマスコミの研修をさせるということは、一体どんな成果、どんな経験を教えましたか。
  124. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官の研修につきましては、昨年の春ごろから司法研修所で裁判官研修を専門にやれるような体制を整えましていろいろな施策をやっておるわけでございますが、そのうちの一つといたしまして、ただいま横山委員指摘の新聞社に対して一定期間中堅の裁判官を派遣しよう、そういう試みをいまの研修の一つとしてやってみたわけでございます。大体裁判官になりまして十年から十五年ぐらいというようなところの層をとりあえずは朝日新聞、読売新聞に昨年の秋に派遣いたしましたし、現在も一人はNHKに行っておりますし、またさらに近く毎日新聞にもお世話になるという予定になっておるわけでございます。  この趣旨は、日常裁判業務に忙殺されてそればかりやっておるのではなくて、外の世界も一遍見てこいということで、自由にふだんの仕事とは離れて外の世界を見てくるというのがいいのではないかということで始めたわけでございます。いま申しましたように、まだ一回やっただけでございまして、終了した者は二人というふうな状況でございます。事柄の性質上、その成果というものは、いま申しましたように一回だけやったということではわかりませんで、もう少し長期的に見なければその成果はわからないというふうに考えておりますけれども、少なくとも行ってまいりました二人の話を聞きますと、非常によかったということを言っておるわけでございまして、そういうことでございますので、もう少しこういうやり方を進めてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。とりあえずは、まず成果があるのではなかろうかという感じでございます。
  125. 横山利秋

    横山委員 私は先ほど言ったように、こういう発想は非常に結構なことだと思います。裁判官が独善的に陥らないように、社会の実態に触れて、そしてきわめてすぐれた常識を持った法廷指揮をしてもらいたい。かつて私ども法務委員がそろって西ドイツの最高裁判所へ訪れたことがあります。私が、一言でその裁判官像というものをかいてくれと言ったことがあります。そうしたら、正確には記憶をしておりませんけれども、二つのことを言いました。一つは、裁判官も人間であり、常識家である。二つ目は、しかし普通の人よりもちょっとすぐれた常識家であると言いましたかな。いずれにしても、常識ということが強調されたことが私の印象に残っておるわけであります。こういう意味合いでは、新聞社に触れ、社会の実態に触れ、そして人の心に触れる、ちまたの人に触れるという点について、裁判官の見識、すぐれた常識が一層発展されるよう期待をしたいところであります。  ここにいろんな論説や何かを集めてみましたが、その中の某論説にこういうのがあります。  ちょっと不信の念が前に書いてありますけれども、   そんな最高裁も、時として人権擁護の色彩を強く打ち出したもう一つの「顔」をのぞかせる。大阪空港訴訟の判決でも、過去の損害賠償に関しては、大阪空港を「欠陥空港」と言い切り、画期的な被害認定、損害額の算定をした住民側全面勝訴の二審を認知した。また刑事事件では、いずれも小法廷ながら、今年一月、殺人犯とされた被告の自白に疑問を投げ、一、二審の有罪判決を破棄したほか、死刑囚としては初めての「免田事件」の再審開始決定、銀行員を殺害した「勧銀大森支店事件」の無罪確定なども出た。   「九十九人の真犯人を逃がしても一人の冤罪者も出さない」 ちょっと消えておりますが、要するに、刑事問題のポイントであるという意味でしょう。   最高裁のこの「顔」は評価されてよい。 「ただ」がっく。   ただ、いずれも国の政策の根幹に触れない点では共通している。有罪、無罪を決める刑事裁判で、どんなに人権重視の判断が示されようと、「政府に遠慮がちな最高裁」という批判への免罪符とはならない。 しまいが言いたいところなんでしょう。人権擁護の顔もある。その実績もある。けれども、それは国の政策の根幹に触れない点で共通しておるという指摘なんであります。この指摘はいろいろなところにも出てきておるわけでありまして、きわめて厳しい指摘である。  労働判決を例に引いてみましても、全逓中郵事件でございましたか、八対七で勝訴になったのが、年ふりて、同じような事件が七対八で逆転をした。それはもちろん最高裁の判事がかわっていけば、判決内容も人によって変わっていくということはあり得るであろう。あり得るだろうけれども、しかしながら、これを社会的、歴史的に見ますと、どういう表現をしたらいいかわかりませんが、一つの創造期といいますか、人権を尊重するという時代が一ころある。それがきわめて勇敢な判決――勇敢というか、その当時は常識的というか進歩的というか、そういう判決が出た。それが今日では逆転判決で、非常に秩序を重視する、いい言葉で言えば秩序を重視するといいますか、そういう傾向に最高裁が変わってきつつあるのではないかという指摘が最近強い。そしてまた反面、公益擁護という部面がきわめて重視をされてきておるのではないか。  もっとずばりの評論を見ますと、憲法解釈権を武器に統治過程に深く関与し、社会の改革に向けて積極的に発言をする傾向、これは極端に言いますとね。それから今度は、自己の役割りを狭く限定する傾向、つまり最高裁は国の根幹に触れないようにしよう、その限りにおいてできるだけのことはしようという、そういう傾向と二つの流れが、ある時期には片一方がふえ、ある時期にはそれが逆転していくという傾向が看取をされるというのが、一般的な最高裁を眺める評論家の一致した物の考え。どちらがいいとか悪いとかいま言っているわけじゃありませんけれども、少なくともこの司法の消極主義といいますか、そういう時代にいま入っているのではないかという批判がかなり強いのですけれども、どうお考えになりますか。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 具体的な事件の名前も出ましたので、私から御説明をいたします。  講学上、司法積極主義とか消極主義あるいは公益優先、人権優先というようなことが言われますけれども、これは御承知のとおり裁判所はいつの時代でも事実を認定してこれに法律を適用して紛争を解決していくのが責務であります。でありますから、そこでは厳正な事実の認定ということと厳正な法の適用ということがあるわけでありまして、その結果が、仮にいわゆる司法消極主義と称せられる事項の範疇に入るといたしましても、それはあくまでもその結果でありまして、初めに司法消極主義あるいは積極主義、あるいは公益優先、人権優先という考え方があるのではないというふうに考えておるわけであります。  なお、これと関連するかとも思いますけれども、司法権には一定の限界があるということは一般に認められているところでありまして、その中で司法権の限界を画する事由が幾つもありますけれども、よく問題にされるのは統治行為の理論であります。最高裁が苫米地事件とか砂川事件で言っておりますとおり、司法権に内在的な制約があるという考え方がこれであります。こういう考え方、こういう理論をとりますと、勢い司法消極主義ではないかという批判が出てくるのだろうと思いますけれども、それはその時代における一つの一般的な理論を適用したということにほかならないわけでありまして、消極主義あるいは積極主義というものが最初にある、あるからそうなるんだということではないというふうに考えておる次第であります。
  127. 横山利秋

    横山委員 まあそうであろうと思いたいところですね。しかし、あなたもおっしゃるように、必ずしも最初に消極主義ありきではないにしても、結果がそういう批判が強くなっておるということもまた事実。私が言いたいのは、いま政党政治の中にあり、自由民主党が絶対過半数を持っておる。そして自由民主党と政府とはある意味では完全一体化している。一体化し過ぎているぐらいに一体化している。その意味では立法権と行政権とが癒着している、こういうことも言い得ると思うのであります。  三権分立が必ずしも正しく運営されておらない。与党の皆さんは、政府の出した予算なら、政府の出した法案ならどんなことがあっても通してくれという立場に終始して、ここ数年、何ら国会は別だという立場がないわけであります。なるほど、野党がいろいろ文句をつけるから妥協はせんならぬ、そういうことが国会運営技術上はあっても、政府が出したものといえども立法府はまた別だ、だから新たな観点でこれを眺めて、これを国会として処理をするという観点はまるっきりゼロだと私は思っている。頼むで法案早く通してくれ、頼むで質問時間は少なくしてくれ、早う通してくれ、委員長以下与党の皆さんの努力たるや恐るべきものがあると思う。全くその意味では与党は政府の決定どおりである。立法府と行政府とが憲法に基づく三権分立の意味をなしておらぬ、癒着しておると思う。その癒着しておる力と政治力というのは大したものであります。  今度は司法府であります。この大きな力になってしまったときに、司法府がひとり文句をつけたところでどうにもならぬ、だから国の政策の根幹に触れない程度でひとつ判決も予算も人事もいろいろなことをうまくやっていくよりしようがないというところに司法府もなっているんではないか、私はそう思われてならぬのであります。野党が今度の選挙では勝つに決まっておりますけれども、もう少し野党が勢力均衡をする、あるいは自由民主党が、立法府はまた別だ、政府が言うことすべてをうのみにするわけにはいかぬと、立法府と行政府との関係が憲法に基づく三権分立の意義に徹するならばいいけれども、いまなかなかそうはなっておりませんからね。  そうなると、私がきょうは最高裁を憲法上の立場、それから行政上、法律上の立場で叱咜激励をしておりますのは、要するに、最高裁もつらかろうけれども、これだけ政府・与党が癒着しているときにはつらかろうけれども、しかし、憲法上の立場やあるいは法律上の立場は毅然としてやらなければいけませんぜ、こういうような癒着の時代においては、やり過ぎがありますよ、そういうときに勇敢に、違憲訴訟も予算も人事も、法律、憲法で許されておる権限をきちんと行使をしなければだめですよ、こういう意味で私は言っておるのですよ。それはそこまで高い次元で言われてもちょっと返事のしようがないというような顔を事務総長してみえるけれども、私の真意はそういうことなんですよね。御答弁していただかなくてもいいのですが、何かありますか。
  128. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私ども司法に対する御理解を午前中からいろいろ御質問の中に御意見を含めていただきまして、非常に感謝いたしているところでございます。  私も午前中からお答え申し上げているとおり、司法のあり方、特にきょうは三権分立という至って基本的な憲法の最大の原則を前提とした御質問が多かったわけでございます。私どものお答えも、この三権分立をいかに考えて、いかに運用されているかという前提で申し上げているつもりでございます。  最後に御指摘の国の政策の根幹云々の問題でございますが、これとても憲法上の司法の機能、先ほど行政局長から統治行為論の説明が簡単にございましたけれども、統治行為理論そのものも憲法上の大問題でございます。現在は最高裁の判例で統治行為論の存在を肯定しているわけでございます。ただ、先ほど行政局長から結果であるという趣旨の御答弁を申し上げましたけれども裁判所が非常におじけづいて、いろいろな批判のあるような判断を、いわば他の二権に対する遠慮、憶病からそういうことを裁判しているのではないことだけは最後に言わせていただきたいというふうに考えます。
  129. 横山利秋

    横山委員 どうですか、大臣。二時間半にわたりまして最高裁に対して希望意見や問題点を投げかけました。最後に私が言いましたように、いまの行政と立法との関係も、私ども野党の責任でもある、あるけれども、いまは本当に癒着し過ぎておるという点からも最高裁に希望を言ったのですが、あなたの感想はどうですか。
  130. 秦野章

    秦野国務大臣 きょうの御質問を承っておりまして、大変鋭い理論的な追求、正直に言って私も拝聴して大変参考になりました。  しかし癒着、癒着とおっしゃるけれども、その点については戒めとせにゃなりませんが、三権は分立であって分割じゃございませんから、その観点に立って見ると、日本の三権分立は比較的うまくいっているのじゃなかろうかというふうに思うし、しかし、そうだからといって一〇〇%満足というわけでもなかろう。私も十分自戒すべき問題は与党にも当然あろうと思います。まあ正直言って、万年与党と万年野党じゃ余りうまかないのですよね。しかし、与党というのは政権を担当しているその立場では、やはりそれ相応の責任を感ぜざるを得ないという立場もあるから、その辺のところはおのずからみずからの努力というものを私はある程度していると思うのですよ。しかし、お説のとおり、これでいいということはない、一生懸命やらなければならぬ、こう思います。
  131. 横山利秋

    横山委員 では、質問を終わります。
  132. 綿貫民輔

  133. 栂野泰二

    栂野委員 私はこの間初めて法務委員になりまして、質問も実はきょうが初めてという新米でございますので、ひとつよろしくお願いします。したがいまして、過去どういう議論がこの委員会で行われたか余り詳しく知りませんので、もう議論の出尽くしたような問題で重複的な質問もするかもしれませんが、お許し願いたいと思います。  初めに、この間二月二十五日の日経に、小さい記事ですがこういうのが載っております。「司法試験を判・検事と弁護士の二つに 法務次官、首相に提言」とあります。「中曽根首相は二十四日午後、首相官邸に法務省の藤島事務次官を招き、同省の所管事項について説明を聞いた。この中で藤島次官は「最近、司法試験が難しくなり、大学在学中の合格者が年々減少し、有為な人材が他の行政職や民間会社に流れてしまう」と指摘、①試験の教養科目を大幅に増やす②裁判官・検事コースと弁護士コースの二つに試験を分ける――などの改革案を説明するとともに「その実現には最高裁、法務省、日弁連の協議が整うことが前提だ」と述べた。」こうなっているわけでありますが、一体この記事が事実かどうかお伺いをしたいと思います。
  134. 根岸重治

    ○根岸政府委員 御指摘の日経の記事は非常に簡単な記事でございますので誤解を生みやすい点もあろうかと思いますので、その趣旨をもう少し敷衍して申し上げたいと思います。  藤島次官が中曽根総理に説明いたしました前置きの部分はいま委員指摘のとおりでございまして、要するに、最近の司法試験が年々むずかしくなりまして、そのために大学の在学生離れが顕著であり、優秀な者が他の分野に流れるおそれが強いということを指摘いたしまして、このことの弊害をなくして若い有為の人材を法曹三者に採るためには司法試験法の改正といいますか、司法試験の改善が必要であるということを述べたことは事実でございます。  ただ、この新聞記事によりますと、現在法務省で試験の教養科目を大幅にふやすとか、あるいは裁判官・検事コースと弁護士コースの二つに試験を分けることを検討しているかのごとくに受け取られる記事になっておりますが、この点がいささか誤解を生むような記事になっておると思うわけでございまして、この司法試験の改善の方策として、いま申し上げたような教養科目をふやすとか、あるいは裁判官・検事のコースと弁護士コースの二つに試験を分けるとかいうような意見も出ております。そういう意見もありますけれども、事はいろいろむずかしい問題がありますので、この法曹三者で意見をまず一致させていかなければならないと思うということを申し上げたのでございます。  なお、付言いたしますと、現在法務省といたしましては、司法試験の合格者の若返りを図るため、その運用面、制度面で改善すべき点があるかどうか種々検討を続けてはおりますが、いまだ見るべき成案を得ているわけではございません。
  135. 栂野泰二

    栂野委員 わかりました。その前半の部分は私も同感なんです。ですから、何とかしなければいかぬということでいろいろ議論があるのは結構だと思いますが、特に二番目の裁判官・検事コースと弁護士コースを分けるというこれは大問題でして、司法修習制度の根幹にかかわることですから、こういう発想は絶対にやめてもらわぬといかぬと私は思うのです。  そこで、いろいろ意見があるというお話ですが、そもそも司法試験をどういうふうにするかというのは、最終的にはどこで意見をまとめることになるのですか。
  136. 根岸重治

    ○根岸政府委員 司法試験管理委員会で決めるべきものだと思っております。
  137. 栂野泰二

    栂野委員 そうだと思いますね。そこで、司法試験管理委員会、最高裁事務総長と事務次官とそれから日弁連推薦の弁護士、こういうことですね。いまの司法修習制度の実態からいってそこが最終的に意見を出されるということになろうと思います。ですから、そこで意見が決まったわけでもないのに、いやしくも法務事務次官が総理大臣にこの種のことを――いろいろ意見がある程度とおっしゃいましたが、それにしても、言われれば総理大臣はその印象をかなり強くお持ちになる、マスコミにこういうふうに出ればこれは大問題で、そういう問題はよほどしっかり司法試験管理委員会で議論が煮詰まってからにしてもらいたいと思いますが、こういう問題に事務次官が触れられるというのは、総理大臣に対していささか軽率じゃないでしょうか。法務大臣、いかがでしょうか。
  138. 秦野章

    秦野国務大臣 先生いまおっしゃったように問題があるということで、言うならばそういう問題の所在、問題提起というような程度の発言だったと思うのです。したがって、どういう経路で新聞に出たか私も知りませんけれども、総理にもそういう問題があるということを知っておいてもらった方がいいという意味でございますから、そう他意はないだろうと思います。
  139. 栂野泰二

    栂野委員 最高裁にお聞きしますが、いま言いました二番目の裁判官・検事コースと弁護士コースの二つ試験を分けるということですね。こういう意見が最高裁の中にはございますか。
  140. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 私どもも、いま栂野委員指摘の日経新聞に載りましたのを見まして、初めてと申しますか知ったわけでございますけれども、最高裁判所の方でそういう意見があるかどうか、そういう意見を固めるという段階にまだ全然至っておりませんので、あるともないとも申し上げる、まだそこまではいっていないというのが現状でございます。
  141. 栂野泰二

    栂野委員 次に、裁判所法務省の人事交流の問題、ちょっとお聞きしたいのです。  これも前にこの委員会で議論になったようでありますが、私はきのう最高裁の方から資料をいただきましたけれども、非常に簡単な資料でして、五十年から五十七年の間に裁判官が検事へ、検事から裁判官へなった者の数が総数幾らあるかという、これだけでございまして、これでは何もわからないのですが、私が別に入手した資料なり情報によりますと、裁判所法務省との人事交流が昭和四十六年ごろから急速にふえている。それから、特に訟務検事の中に裁判官出身者の占める割合がかなり高い。それから、地検の捜査、公判担当と裁判官との交流というのですね、これも数がかなりあります。  それから、そういう人事交流は大体三年ぐらいでもとのポストに戻るというシステムがほぼ確立している、大体こういうふうに思われますが、率直に言いまして、これは私は決して好ましい現象じゃないと思うのですね。特に捜査、公判担当検事ですね、この間までそこへ座っていた人が、今度は裁判官席に座るということになりますと、これは国民から見れば裁判所に対する信頼を失わせることになりはせぬか、こう思っているのですが、いま私が申し上げましたような点、一体どういう実態にあるのか、なぜこういう交流をしなければならぬのか、ひとつその辺のところを御説明願いたいと思います。
  142. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所法務省との人事交流でございますけれども、これは端的に申しまして、最近特に急激に多くなったということでは必ずしもございませんが、まあしかし相当古くから相当数の交流が行われておったというのは事実でございます。  ただ、少し前の時期になりますと、かなり長期間行っておる、長期間たってから帰るというふうな事例がわりあい多うございましたが、最近では比較的短期間で帰るというふうな事例がふえておりますために、毎年毎年の交流そのものをとりますと、ややふえておるのかなという感じがしないわけではございませんが、交流そのものは前からずっとあるというふうに申し上げていいかと思います。  そもそも、法務省の方におかれまして、特に訟務の関係につきましては、御承知のようにやはり民事系統の仕事が多うございまして、当初から検察官におなりの方々は、何といっても長い間特に刑事関係の方の仕事を主としておやりになっておりますと、すぐに民事関係のことはどうかというようなこともございまして、そういうところの必要性から、裁判所の方から訟務検事に送るというようなこともやっておったようでございます。  検事の方も、これはそう古くはございませんけれども、数はわりあい少のうございますが、行われておることも事実でございます。これは、いわば、かつてからやかましく言われております法曹一元ということから考えますと、いわゆる当事者経験というものもある方がいいのではないか。別に、特段不祥事に絡むわけではございませんが、裁判所の外の世界も少し裁判官は見る必要がある。これは検事に限らないことでございまして、いろんな方面で外の世界も裁判官は見るということも、裁判所にとっても裁判官の育成という面からはいい面もあるわけでございます。栂野委員の御心配の、昨日まで壇上に座っておったのが下へ来るとか、下から壇上に上がるということで国民はどう思うかという、そういう御懸念自体ごもっともな面もないわけではないというふうに思いますけれども、そもそも栂野委員も法曹でいらっしゃいまして釈迦に説法でございますけれども、法曹というものはそういうリーガルマインドを持って、どこの部署に行きましょうとも、それぞれの職責を尽くすというのがいわば法曹の基本的資格であるというふうに私ども考えておるわけでもございまして、それが先ほど申しました法曹一元の理念にも通ずる面があるというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、御心配の点、全然そんなことは問題にならぬというふうに申し上げるわけではございませんけれども、それぞれ交流いたしましたときには、それぞれの部署でその職責を尽くすということをそれぞれの方が考えていただいていると思いますし、重ねて申しますと、それが法曹の資格そのものではないかというふうに考える次第でございます。
  143. 栂野泰二

    栂野委員 いま法曹一元というお話が出ましたけれども、私が理解する法曹一元というのは、これは在野、弁護士資格を持った者と裁判官との交流といいますか、そういうことであって、検事と判事が人事交流するというようなことは、およそ私が理解する法曹一元とは全く関係がない。まあ、ときには検事と判事の交流というのもまあまあやむを得ない、そういうことはあるかもしれませんが、こう数が多くなってきますと、これは大変問題ですね。  特にいまお話があるように、訟務系統はまあ後でお話しするとして、捜査検事、公判検事にわざわざ裁判官から来てもらわなければいかぬという必要性法務省には全くないと思うのです。検事だけで十分間に合うんじゃないですか。現行の検事の体制で間に合うはずですね。それと、訟務関係は確かに十年も検事をやっていれば大体民事、行政関係は忘れますね。いきなりやれと言ったってこれは無理ですよ。しかし、そういう訟務部門に行政事件なり民事事件をできる人が必要だというのは、これはわかった話でありまして、これからもずっと続くわけでございますね。そうすると、最初からそういう人を法務省で養成すればいいのであって、何も民事事件、行政事件に堪能な裁判官に横すべりで入ってもらう必要はないと思う。この辺はいかがなんでしょう。まず法務省……。
  144. 根岸重治

    ○根岸政府委員 捜査、公判の仕事裁判官から来ていただく点についてまず申し上げますと、これはいわゆる検事が足りないから来ていただくという趣旨ではございませんで、先ほど最高裁の人事局長も言われましたように、他の法曹の他の分野仕事も経験して、いわば法曹としての見聞を広めていただくという意味でやっておるわけでございます。検察官を裁判所に送り込む意味も同様であると思うわけでございます。それが委員指摘のような理解のいわば法曹一元という言葉に当たるかどうかは別といたしまして、他の仕事の経験を積むことは有用であろうという観点から行っておるところでございます。  訟務検事の点につきましては、現実問題といたしまして、ある程度裁判官をやられて、その培った知識経験がきわめて法務省の仕事の中で有用な領域の職務もございますので、そういう意味で来ていただいておるということでございます。  なお、一言付言させていただきますと、裁判官、検察官、弁護士等の法曹は、もう委員御承知のとおり、法律専門家としての良識と自覚を持ってその職務を遂行するものでございますから、相互に交流し、その立場が変わりましても、その立場、立場におきまして、厳正公正に事件あるいは仕事処理に当たるものであって、おっしゃるような相互の人事交流によって特段の弊害があるというものではなかろうというふうに考えておるわけでございます。
  145. 栂野泰二

    栂野委員 先ほど横山委員の質問にもありましたように、たとえば新聞社へしばらく裁判官が行って、そういう外の世界を見て経験を積まれるる、これはまあ有意義でしょう。しかし、捜査なり公判担当検事に裁判官が一時なって経験を積むという、それはそれなりのメリットはあるかもしれませんが、これはやっぱり外から見たマイナスが大きい、私はそう思わざるを得ないのですね。ですから、ここはぜひやめてもらいたいと思う。いまの訟務関係の方も、おっしゃるように、そうは言っても限られた面で、どうしてもすぐに使えるというか役立つというか、そういう有能な裁判官が来てもらいたいという事情があるかもしれませんが、例外的にそういうことはある程度私もわかる。ともあれ、公判、捜査担当検事との交流、これは考え直してもらいたいと思う。大臣、いかがでしょうか。
  146. 秦野章

    秦野国務大臣 法曹一元の解釈の問題でありますけれども、いわゆる一般的な常識的な範疇としての法曹一元、三者ですね、この枠の中での交流というものは、立場が変われば職責が変わり、職責が変わると職責から生まれる理論なり政策なりもまたおのずから変わる、そういうことで、われわれの、これはまあ法曹界だけの立場でもなかろうかと思いますけれども、縦社会の論理でずっと貫くよりも、別の立場を体験し、特に法曹の場合はみんな法律屋ですからね、別の立場で別の理論あるいはいろいろな考え方、思想といったようなものも学ぶと思うのですね。それが交流される方法というのはやっぱり人事交流しかない。  したがって、いま先生おっしゃるように、訟務の問題にしましても、ただ初めから法務省へ勤めて民事訴訟の研究をするよりも、実際の裁判をやってきてもらった者が入ってもらうと、御本人もさることながら、役所としても大変勉強になる、好都合である。私は判事と検事の場合でも、やっぱり交流することによって豊かになるのじゃなかろうかという気がするのですよ。それで階層間交流あるいは職業間交流みたいなこういう発想が一般的にございますね。その適用においても私は司法部内だけが別でいいというふうには思わないで、むしろ短い人生で勉強したり経験したりすることが一層能力開発に役立つためには、そしてまた、日本社会の全体の活力がそれによって向上するといったようなことのためにも、立場が変わった者が交流するということによってかなりメリットがあるんじゃなかろうかというふうに思いますので、お説のような御心配の部分はそれなりに配慮するとして、交流自体は、これはお互いにいいんじゃなかろうか。決してそれは職責を曲げるものでも何でもなくて、むしろ豊かにするものではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  147. 栂野泰二

    栂野委員 一般論になりますのでなんですが、先ほどから法曹一元化という言葉が出るので気になるのですけれども、それなら弁護士との交流というのをもう一回ここら辺で考え直すべきものであって、さっきから質問が出ておるように、政府裁判所の癒着という、法廷で言えば裁判官と検事というものの癒着というふうな、国民から見ればとかくそういう不信が出がちですから、ここのところだけはやっぱり非常に神経を使ってもらいたいと思うのですよ。個々の裁判官なり検事にとっては、それは経験豊かになるということかもしれませんが、それはそういう観点、あくまで国民という観点から、これは非常に神経質に考えてもらいたい。要望しておきます。  そこで、裁判官定員の問題ですが、もう私の前の質疑でも出ていることですけれども、今日、司法の中の大問題の一つが訴訟遅延の問題、特に民事訴訟の遅延であるということは、これは言をまたないところだと思います。この問題は何もきのうきょうに始まったことではなくて、言ってみれば日本の裁判の宿命みたいになっているところがあるように思いますが、しかし、それにしても近年の民事訴訟の遅延というのは放置できない状況にあるように私思います。ちょっとむずかしい事件だと、一審だけで二年や三年はもうあたりまえという状況になっていますよね。  ですから、国民から見ますと、とてもじゃないが、司法救済なんというのは頼りにならない、こういうことになる。暴力団なり事件屋がはびこる。そっちに頼んだ方が手っ取り早いなんという傾向も出てきていますね。これは大変憂うべき状態だと思うのです。いろいろ原因はありましょうけれども、とにかく裁判官の数が余りに少な過ぎるという、どうしても私はここへくると思うのです。この点はもうずっと議論になっているのでしょうけれども、率直のところ、最高裁は裁判官定員の問題は、いまのままでも何とかやりくりできると思っておられるのでしょうか。このごろ東京地裁あたり大体民事は三カ月に一回ぐらいというのでしょう、証人尋問に入るのは。横浜がどうも四カ月から遅いときは半年に一回くらいしか入らない。一回何かあって延期になれば一年に一回、こういう状態ですね。結局は裁判官の手持ち事件がいっぱい、どうしてもそういうことじゃないのでしょうか、ちょっと御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  148. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、民事事件は時代によって多少波はございますけれども、高裁、地裁簡裁とも増加傾向にあるわけでございます。戦後の混乱期を一応経過いたしました昭和三十年を基準といたしますと、十五万五千件余りから五十六年には二十三万六千件余り、これは高裁、地裁簡裁合わせておりますけれども、指数にいたしますと約一五二、一・五倍の増となっております。この間、私ども裁判官増員を怠ってきたわけではございませんで、昭和二十五年以降五十七年までの判事判事補簡裁判事全体の裁判官増員数でございますが、合計四百六十三名となっております。沖縄復帰による沖縄の裁判官員数を含めますと、五百六人、指数にいたしますと、昭和二十五年当時に比較いたしますと一二〇%、つまり二〇%の増になっております。  もっとも、先ほど申しました民事訴訟事件との対比におきますと、事件の伸びの割合に裁判官は伸びていないのじゃないかとあるいは仰せになるかもしれませんが、他方、裁判官負担民事だけではございませんで、刑事訴訟その他の事件も考えなければならないわけでございます。民事訴訟と刑事訴訟を合わせまして高裁、地裁簡裁全体の訴訟の比較をいたしてみますと、昭和二十五、六年当時と比較しますと、昭和五十六年で大体一一〇%の増になります。と申しますのは、刑事訴訟事件がその間に非常に激減いたしております。たとえば、高裁の事件で見てまいりますと、二十五年当時二万七千五百八十件ございましたのが約二万件減っております。五十六年には七千五百二十三件になっております。それから、地裁刑事事件につきましても二十五年当時十一万二千ほどありましたのが、二万件減って約九万件ということになっております。それから簡裁について見ますと、二十六年当時八万五千六百六十六件ございましたのが、約六万件近く減りまして、五十六年では二万七千百三十六件、こういうふうになっているわけでございます。したがいまして、民事訴訟につきましては、おっしゃるとおりかなりふえてきてはおりますけれども、民刑合わせた全体の数で見てまいりますと、さほどふえてはいない、こういうことになるわけでございます。  しかし、ただいま御指摘のとおり、民事訴訟事件につきましてはこの五、六年来急激な増加傾向を示しております。今回特殊損害賠償事件等民事事件処理充実強化刑事事件もございますけれども、そのための判事七名の増員お願いいたしておりますのも、こういう事件処理充実強化を図りたいという観点からでございまして、今後とも現在の裁判官数で十分であるというふうに私ども考えているわけではございませんで、事件数動向等を十分見きわめながら、委員御承知のとおり、裁判官、特に判事につきましては非常に給源が限られております。充員というものがなかなか困難な状況にもございますので、その充員の可能性を見ながら、裁判官負担過重にならないように所要の措置をとってまいりたい、かように考えております。
  149. 栂野泰二

    栂野委員 私もきのう資料をもらいましたけれども、たしか二十五年から見ると、民事事件は倍以上ですね。弁護士の数も大体倍になっていますね。裁判官は一・五倍。確かにいまお話がありますように、多少刑事事件が減ってきたり等々、いろいろ部門別その他によって事情が違って、全体としては一一〇%増ということのようですが、それならば民事事件ももう少し早く片づくようになればいいけれども、現実なっていないですね。だから、配置がえその他で合理化するにはやはり限度があるはずです。これはもちろんやっていただかなければなりませんが、限度がある。この資料だと、開廷数といいますか審理期間は十五カ月ぐらいですかな。民事が、高裁が十五カ月ぐらい、地裁が十二カ月ぐらいとなっていますね。平均ですから、十五カ月ないし十二カ月ならこれは問題にすることもないでしょうが、これはあくまで平均でして、実際問題としてさっき言いましたように、ちょっと複雑になれば、もう二年、三年平気という、これが実態です。ですから、さっきもちょっとお話もありました行政改革が問題になっている今日でと、すぐこうなるのですが、これはあくまでも行政改革でして、裁判所は行政部門じゃないですから、やはり独自の立場で要求すべきものはきちんと要求するという姿勢を貫いてもらわないと、結局被害をこうむるのは国民という、こういうことになりますので、これはきょうどうなるという問題じゃありませんからこのぐらいにしますが、いまお話があったように、確かに、たとえば刑事事件が少し少なくなったから民事の方に融通するといいますか、配置がえをするというふうなことはやっていただかなければならぬと思いますよ。  ちょっとお伺いしますが、東京地裁ですが、これもきのう最高裁からもらいましたけれども昭和三十七年から昭和五十六年までの東京地裁民事の平均審理期間が大体昭和三十七年が十五カ月、後ちょっと十二カ月ぐらいに落ちた年もあるようですが、十七カ月ぐらいになって、ここのところへきて五十四年が一四・五、五十五年が一四・〇、五十六年が十三・〇と少し短くなっているようには見えますが、一方、刑事の方は年を追って少なくなってきて、特に昭和五十三年からは三・七カ月、五十四年が三・四カ月、五十五年が三・四カ月、五十六年が三・〇カ月、こうなっている。大変少なくなっていますね。  そこで、東京地裁には民事部というのが三十七あるようですね。刑事部が二十八で、一部欠部というのですか、二十七のようですが、実際聞いてみますと、確かに刑事部の方は大分楽だ、それに比べると民事部は大変だということのようですが、この辺はどうにかならぬものですか。
  150. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 東京地裁の現状でありますけれども、私も実は二年前まで地裁民事部におりましたので、大体の実情はわかっておるつもりでございますが、確かに東京地裁民事通常部の一カ部平均の手持ちは五百五十から六百ぐらいの間にあると思います。かなりの忙しさでございます。そういうような状況にありましたために、たしか二年前だったと思いますけれども民事部を一カ部増設して三十七部ができたということであります。その後におきましても、民事部、刑事部の話し合いで、刑事部が民事部を応援するというような話が進んでいるように聞いております。そういうことで、できるだけ民事部の負担刑事部の負担がアンバランスにならないような配慮が地裁の中で行われているというふうに聞いております。そういう状況でありますので、一時期よりは東京地裁民事部、実は昨年の事物管轄の改正もありましたために、負担が若干軽くなってきているという状況にございます。
  151. 栂野泰二

    栂野委員 民事部をもっとふやして刑事部を減すなんということになりますと、部が減るわけですから、総括判事のポストがなくなるのがどうもという話を聞かぬでもない。こんなことはどうか知りませんよ。しかし、そういうことがもしあれば、こだわりなくこの辺はきちんとやってほしいものだと思います。しかし、そういうことをやってみたってこれは大したことないんで、やはり本来に返って、とにかく本当に裁判の実情に照らして要るべき定員はふやしてくれという要求は毅然としてやってもらいたい、こう思います。  それから裁判官の報酬についてちょっと御質問したいのですが、憲法上、裁判官には相当額の報酬を受け取るという権利が保障されております。「この報酬は、在任中、これを減額することができない。」こういうことになっていますね。  そこで、まず伺いますが、この在任中減額することができないという意味はどう受け取ればいいのですか。つまり定額が減らなければいいのか、実質価値として減ってもだめなのか、そこら辺はどうなんでしょう。
  152. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 憲法には、いま御指摘のように裁判官の報酬は在任中減額することができないというふうに書いてあるわけでございますが、その減額ということの意味をいまお問いになっておるわけでございますが、これは、いま普通に解釈されておりますところでは、報酬たる金銭の額を減らすことである。いまたとえばということでおっしゃいましたような、たとえばインフレ等によって実質的な購買力が減るというふうな場合は、この憲法に言う報酬の減額には当たらないというふうに考えられているのが一般ではないかということでございます。
  153. 栂野泰二

    栂野委員 これは私が申し上げるまでもないのですけれども、これだけ報酬について憲法上の保障があるということは、裁判官の地位にかんがみて出てくることでして、安心して仕事に励めということでしょう。ですから、今度のように人事院勧告が凍結になって横並びで裁判官も凍結されるということ自体、裁判官にも相当不満があるのでしょう。あると思いますよ。インフレも幸いにして二、三%のうちはいいですよ。しかし、インフレ率がもっともっと高くなることだって考えられますね。考えられる。また、国家財政はいよいよ窮迫して、人事院勧告はマイナスの勧告が出ることだって理論上考えられますね。五%の上下で増額ないしは減額の勧告をすることに国家公務員法上はなっていましょう。なっていますね。とにかくいろんな事態が考えられるのですが、いま御説明のように定額さえ低くならなければいいんだというふうに簡単に言えるんですかね。これも程度問題じゃないのでしょうか。やはり実質的に裁判官が安んじて裁判官としての仕事ができないような、そういう実態になったら、定額は同じでもこれは憲法上の問題になると考えなきゃいかぬと私は思うのですが、どうでしょう。
  154. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 実は私が先ほど申し上げましたのも、私ないし最高裁判所がそういうふうに解釈しておるということではございませんで、額自体を減らすことは減額に当たるんだというふうに、一応、憲法の解釈としてそういう学説等が一般的であるということを申し上げたわけでございまして、私ども自身が憲法の解釈をする、ここで私が憲法の解釈をするという立場にはないことを御理解いただきたいというふうに思います。ただいまの著しくというような場合、これも仮定論でもございますし、その場合にどうなるかということも、ここで私の憲法解釈ということになりますと、それを述べる立場にはございませんので、御勘弁をいただきたいと思います。
  155. 栂野泰二

    栂野委員 最高裁判所が余り遠慮した解釈をなさる必要は私はないと思うのです。実際、いまの国会状況を見ますと、五十八年度だってまたどうなるかわかりませんね。これ、だんだん問題になってくると思うのですね。そのときに最高裁がどういう態度をとられるか、見守っていたいと思うのです。  人事院勧告を凍結するという閣議決定があった。これにはもちろん最高裁は何の拘束も受けませんね、そういう解釈でいいですね。
  156. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
  157. 栂野泰二

    栂野委員 そのはずですが、実態は、人事院勧告で給与引き上げが行われると、裁判官裁判所職員の給与も上がってくる。上がるときはこの裁判官報酬法の十条にあるからいいですよ。上がるときはいい。しかし、これもやはり一般国家公務員の給与が上がるときにはそれに準じて上げなさいと書いてあるのですね。下がるときにはそれに準じて下げなさいとは書いてないですね。ですから、人事院勧告あるいはそれに対する閣議の決定がどうあろうとかかわりなしに、やはり裁判官の報酬については、あくまでも憲法上の保障があるという観点から、最高裁が独自の立場で検討してもらいたい、こう思っております。  そこで、さっきからの質疑を聞いておりますから、答えが大体わかっているから余り質問したくないのだけれども、少なくとも裁判官の報酬を引き上げるにはやはり法案を出さなければいけませんね。そうすると、また法務省ということになりますが、今度のような場合、最高裁としては、少なくとも裁判官は別なんだ、だから人事院勧告、たとえば四・五八ですな、それを基準にするかどうかは別にして、ことしも裁判官の報酬は引き上げたい、法案をつくってくれという要求法務省になさったらどうなんですか。私はそう思うのですよ。  そこで、法制調査部といいましたな。この種の法案をつくって出されるのは法務省なんだけれども、これはただ形式的に法務省が法案作成を担当されるだけで、実質決めるのは最高裁で法務省は何の発言権もない、こう見ていいのでしょうか。
  158. 千種秀夫

    千種政府委員 事務の流れといたしましては、もちろん最高裁判所の方から立法依頼を受けまして私どもが動くわけでございますが、情報と申しますか、どういう状況のもとでどういうふうな立法をするかという情報交換のような意味におきます意思疎通ということは常に行われているわけでございます。
  159. 栂野泰二

    栂野委員 いや、意思疎通は結構なんですけれども、たとえば最高裁判所が報酬を引き上げたい、裁判官報酬法の改正案を出してくれと言われたら、法務省としては、いや困るなと思ってもこれはつくらなければいかぬものじゃないですか。どうなんでしょうか。
  160. 千種秀夫

    千種政府委員 法務省としてはということになりますと、かなり事務的なレベルのことになりますのでそういうことになりますけれども、結局法務省が立案をして政府で法律を出すということになりますと、これはまた政府部内の手続が要るわけで、最終的には内閣の閣議決定を経て出ていくわけでございますから、そこで出ないということになりますれば、それはまた出ないことになるわけでございます。
  161. 栂野泰二

    栂野委員 予算は最高裁が直接あれされるわけでしょう、法務省を通さないで。それでさっきいろいろ議論がありましたが、財政法のところの議論になっていくのだろうと思いますが、法案についてはそういう特別の規定はありませんね。じゃ、法案の場合は閣議決定で、いやそれは困るということになるのでしょうか。そうすると、結局行政府が実質生殺与奪の権を握るということになるのでしょう、法律を改正しなければ報酬は上がらないのだから。ここら辺はどう考えたらいいのでしょうね。両方答えてください。
  162. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど調査部長からお答えがございましたように、たとえば報酬法に例をとって申し上げますと、法案そのものは私どもの方から立法依頼をいたしまして法務省から閣議決定を経てということになるわけでございますが、報酬を増額いたしますためには、予算の裏づけ、具体的にたとえば補正予算に人件費を入れる必要があるというような問題がございまして、そういう意味での財政当局とのお話し合いが必要なわけでございます。そこのところは、先ほどから予算に関連して話が出ておりますように、裁判所の方で財政当局とお話し合いをするということになって、そこで増額ができるというところで立法依頼をする。報酬法に例をとって申し上げますとそういうことになるわけでございます。
  163. 栂野泰二

    栂野委員 何だか大分時間もたったようですから、これはまた後で私もよく勉強させてもらいます。  実は、私きょうは、いま横山委員から質問がありました財政法の問題をちょっとお聞きしようと思ったのですが、さっきありましたからやめます。ただ、ちょっと先ほどはっきり聞こえなかったのだけれども、何だか昭和二十七年に一回事例があったというお話ですが、これは財政法の十九条までいって、国会に内閣が「歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。」ここまでいった事例のことなんでしょうか。
  164. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  昭和二十七年度の予算のことでございます。何せ三十年ほど前の古いことでございますので、私どもも残っておる資料限りにお答えすることに相なるわけでございますが、裁判所の営繕費の関係で内閣の決定と裁判所要求額との間に差がございまして、結局、調整不能ということになった結果、先ほど委員のお話にございましたような手続をとったということでございます。(栂野委員「十九条の……」と呼ぶ)はい。ただ、その後大蔵省との間で話し合いがついたということで、裁判所側から原案撤回の申し出があって、実質上は自然消滅の形になっておる、このように私どもは承っておるわけでございます。
  165. 栂野泰二

    栂野委員 最高裁はとにかく遠慮しないで、せっかくこの財政法の規定があるんですから、むしろしょっちゅうこの十九条の適用があるような事態があっていいと私は思うのですよ。そうすれば、国会で議論になるのですから。さっきからお話のようなやり方をしていたんじゃ、結局、最高裁と政府との間だけですよ。国会はわからないんですよ。最高裁は独自の立場から、三権分立の一翼を担っている最高裁は別なんだということで出していただければ国会の審議になる。国会で問題になりますから。先ほどもありましたが、この十九条がせっかくあるんですから、ぜひこの意味を体して今後の事態に備えていただきたいと思っております。  それから、予算の問題も、きのう資料をいただきましたが、昭和二十三年から五十八年までの国の予算の総額に対する裁判所の予算額の比率を出していただいたんだけれども昭和二十三年が〇・五〇一%、ここから始まって一番多いのが昭和三十二年で〇・九三八%というのがありますね。ここが国家予算に占める裁判所予算額の比率が一番多い。それからだんだん下がりまして五十八年は〇・三九六%ということになっていますね。なぜこう比率が下がってくるのか。裁判所が金が要らなくなったという事態はないはずですな。やはりほかの官庁よりも最高裁が予算獲得能力がない。遠慮なさっているとしか私には思えないんですね。いま横山委員の質問にもありましたけれども、率直に申し上げて、昭和三十年代と申し上げましょうね、比率が高い。実はこのころが最高裁華やかなりしころだと私は思いますよ。  初代長官の三淵さん、りっぱだったと思いますね。それからあれは何年になりますか横田正俊さん、四代ぐらいかな、あの人ちょっとよかったなという感じがするんだけれども、あとは率直に申し上げてどうもいただけない。最高裁が政府に弱くなった。それはそんなことないとおっしゃるんでしょうが、われわれから見れば、国民から見れば明らかにそういう印象が強い。弱くなるに従って、ということは、国民が最高裁に対する信頼感をだんだん失っている。初代長官のころはもっと最高裁輝いていましたよ。だから、裁判官になる人も、金稼ぎのうまいのは弁護士になればいいし、しかし私はそんな能力はないが、少なくとも裁判官は独立していて思ったことがやれるんだという、それが裁判官にいい人が志望した原因だったと思うのですね。  ところが、今日のように、われわれから見て、最高裁は何だ、違憲審査といえば逃げ腰になる、政府相手の事件は絶対勝てないなんていうようなことになってきますと、決していいことじゃないと私は思いますよ。そういう印象が強くなるに従って予算も減っている。まあ言葉が過ぎるかもしれませんが、政府と真っ向から対決した時代が一番予算の獲得率が多いですね。とかく政府寄りになった、どうも最高裁、腰が弱いじゃないかと言われるようになったら予算も少なくなった、皮肉なことですが。この表を見ればそう出てきますね。定員の問題しかり、この裁判官報酬の問題しかりですけれども、予算の割合がなぜこうなったか、ちょっとこの辺お聞かせください。
  166. 原田直郎

    原田最高裁判所長官代理者 委員仰せのとおり、昭和二士二年の裁判所の予算額は二十億百十八万九千円、ただいま国会で御審議中の五十八年度の予算額は千九百九十六億五千八十九万二千円ということに相なっております。この五十八年度の予算額の国の予算に対する割合は、いま委員仰せのとおり〇・三九六%でございます。  ただ、私ども一点、こういう観点からも申し上げてみたいなと思う点があるわけでございますが、それは、いまのパーセントは一般会計予算に対する割合でございますが、これを一般歳出予算と比べてみたらどうだろうか。つまり、一般会計予算ということになりますと、御案内のような国債関連費だとかあるいは地方交付税交付金というようなものが入っております。それをのけたものが御案内のように一般歳出予算ということに相なります。それとの比較ではどうなるかということでございますが、一般歳出予算は五十八年度では三十二兆余りでございます。それを御審議中の裁判所の予算額千九百九十六億と比べてみますと、割合は〇・六一二%に相なります。これが前年度でそのような観点から割り算をしてみたのは〇・六〇八でございまして、前年度と比べましてただいま御審議中の予算は微々たるものではございますがふえてはいる、こういうような結果には相なろうかと思うわけでございます。  ただ、そのようなことを申し上げてもそう意味はないよとおっしゃるかもわかりませんが、つまるところ裁判所の予算額が国の予算に占める割合はどの程度がいいのかなということはきわめてむずかしい問題だと思うわけでございます。御案内のように、国の総予算額と申しますものはその年度年度での政策によりまして大きく変わってくるものでもございますし、そのような観点から年々増額を続けてきておることになっておるわけでございますが、裁判所の場合は大きな事業というようなものもありません、大きな政策決定というものもございません。全予算の中の八五%は人件費で動いておるといういわば典型的な事務官庁である、こういうようなことに相なるわけでございます。そのようなことがただいま御論議いただいておりますような一般会計予算に占める裁判所の割合にあらわれてきているのではなかろうかなという感じもいたすわけでございます。  ただ、そういうようなことで、私ども裁判所の予算につきましては、先般来御論議いただいておりますように、きわめて重要な事柄であるということはもちろん私どもも骨身にしみて努力を続けてまいっておるところでございますが、他の省庁に比べて施設面あるいは執務環境面において特段に劣るところはない、そのようには考えております。ただ、大きな制度改正があって事件が飛躍的に増加するという事態でも起こらない限り、裁判所の予算は飛躍的に大きくなることはまずないのではないかなという気もいたしております。ただ、お金のことでありますので、あればいいということには相なるわけでございますが、その辺のところ、今後も十分に努力を重ねていって裁判所の予算がよりよくなるように懸命の努力を続けてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  167. 栂野泰二

    栂野委員 いまの御答弁ですが、実際部内でもいろいろ不満の声もあるわけで、少なくともほかの省庁の比率がふえるのに、格段の立場にある最高裁が遠慮するということのないように、そういう態度をとっていただくことが予算面でも裁判所に対する国民の信頼を高める道だと私は思っています。  きょうはこれで質問を終わらせていただきます。時間超過して済みません。ありがとうございました。
  168. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十八分散会