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1983-05-13 第98回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十三日(金曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 葉梨 信行君    理事 石橋 一弥君 理事 狩野 明男君    理事 中村  靖君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 鍛冶  清君 理事 三浦  隆君       青木 正久君    臼井日出男君       浦野 烋興君    奥田 敬和君       高村 正彦君    坂本三十次君       西岡 武夫君    三塚  博君       渡辺 栄一君    伊賀 定盛君       中西 績介君    湯山  勇君       有島 重武君    栗田  翠君       山原健二郎君    河野 洋平君  出席国務大臣         文 部 大 臣 瀬戸山三男君  出席政府委員         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁次長   浦山 太郎君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   森廣 英一君         警察庁刑事局保         安部少年課長  阿部 宏弥君         行政管理庁行政         監察局監察官  竹内 幹吉君         会計検査院事務         総局第二局文部         検査第一課長  土居 徳寿君         参  考  人         (日本私学振興         財団理事)   別府  哲君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ───────────── 五月十二日  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請願(吉田之久君紹介)(第三一七九号)  同(米沢隆紹介)(第三一八〇号)  同(石井一紹介)(第三二七七号)  同(奥田敬和紹介)(第三二七八号)  同(矢山有作紹介)(第三二七九号)  同(山下元利紹介)(第三二八〇号)  同(綿貫民輔紹介)(第三二八一号)  同(渡辺省一紹介)(第三二八二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三二八三号) 同月十三日  子供のための文化予算増額に関する請願金子満広紹介)(第三四九四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三四九五号)  同(寺前巖紹介)(第三四九六号)  同(中路雅弘紹介)(第三四九七号)  同(林百郎君紹介)(第三四九八号)  同(不破哲三紹介)(第三四九九号)  同(正森成二君紹介)(第三五〇〇号)  同(山原健二郎紹介)(第三五〇一号)  同(渡辺貢紹介)(第三五〇二号)  同(稲富稜人君紹介)(第三五二八号)  同(岡田正勝紹介)(第三五二九号)  同(河野洋平紹介)(第三五三〇号)  同(木下敬之助紹介)(第三五三一号)  同(中井洽紹介)(第三五三二号)  同(林保夫紹介)(第三五三三号)  同(宮田早苗紹介)(第三五三四号)  同(山口敏夫紹介)(第三五三五号)  同(米沢隆紹介)(第三五三六号)  同(有島重武君紹介)(第三五五九号)  同(石田幸四郎紹介)(第三五六〇号)  同(岩佐恵美紹介)(第三五六一号)  同(小沢貞孝紹介)(第三五六二号)  同(柿澤弘治紹介)(第三五六三号)  同(栗田翠紹介)(第三五六四号)  同(小林政子紹介)(第三五六五号)  同(坂井弘一紹介)(第三五六六号)  同(榊利夫紹介)(第三五六七号)  同(瀬崎博義紹介)(第三五六八号)  同(中島武敏紹介)(第三五六九号)  同(中村正雄紹介)(第三五七〇号)  同(西田八郎紹介)(第三五七一号)  同(野間友一紹介)(第三五七二号)  同(春田重昭紹介)(第三五七三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三五七四号)  同(部谷孝之紹介)(第三五七五号)  同(松本善明紹介)(第三五七六号)  同(三浦久紹介)(第三五七七号)  同(三谷秀治紹介)(第三五七八号)  同(蓑輪幸代紹介)(第三五七九号)  同(四ッ谷光子紹介)(第三五八〇号)  同(和田耕作紹介)(第三五八一号)  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請願岡田利春紹介)(第三五五五号)  同(北山愛郎紹介)(第三五五六号)  同(倉石忠雄紹介)(第三五五七号)  同(八田貞義紹介)(第三五五八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  3. 中西績介

    中西(績)委員 先般、私は、予算分科会の際に、識字学級問題についてわずかでありますけれども確認をしたことがございます。それは、二年前、田中文部大臣国会答弁におきまして、字を知らない人の存在は国の恥であり、早急になくすよう努力をすると言っています。ところが、具体的な措置がどのようにされたのか。この点について、早急になくすような努力をしたそうした内容が具体的にはどのように努力されていったのか、この点についてお聞かせください。
  4. 宮野禮一

    宮野政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘田中大臣の御答弁昭和五十六年三月の予算委員会第二分科会での御答弁でございます。  文部省といたしましては、その後、社会教育の一環といたしまして、識字教育学級識字学級と呼んでおりますが、昭和五十七年度から新たに読み書き能力を身につけることを主たる学習内容といたします識字学級ができるように行政措置を行いまして、昭和五十七年度から識字学級推進を図っているわけでございます。
  5. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、この分は五十七年度から識字文字を覚えるための、内容とする学級を設置をしたということになっておるようでありますけれども、昨年行われました識字実態調査、これはどのようになっておるのか、行われておるはずでありますけれども、この分についてお答えいただきたいと思います。——時間がかかるようですから、この分はわかったときに私の方に提出をしてください。  そこで、実際に文部省の方から出ております識字学級の開設の状況を見てみますと、五十七年度には全国で六十七学級参加者数は二千八名、一学級当たり三十名ということになっています。そして、五十八年度の計画数は七十五学級と言っています。  ということになりますと、中身文字を習うための学級であるかどうかというその規定づけ、識字学級というものの規定づけはどのようになっておるのか。
  6. 宮野禮一

    宮野政府委員 まず学級数から申し上げますと、昭和五十七年度に実際に開設いたしました学級数は、実績は六十八学級でございます。(中西(績)委員文部省がくれたのは六十七になっている」と呼ぶ)失礼いたしました。六十八学級になっています。それから、現在、各市町村からの計画を取り寄せまして計画実施作業をしているわけでございますが、五十八年度は約一割程度ふえまして七十五学級ということになります。  私どものいま申し上げました識字学級事業につきましては、読み書き能力識字を身につけることを主たる学習内容とする学級講座等事業というふうに定義づけまして、実際の実施に当たりましては年間百時間程度。この百時間程度と申しますのは、仮に週一回二時間とすれば年間で大体百時間になるわけでございますので、大体その程度を標準といたしまして、それの要件に合ったものを識字学級ということで実施しているわけでございます。  なお、それ以外に百時間程度に及ばないような場合も実際にはありますので、それらのものにつきましては、別途集会所指導事業という事業がございまして、集会所におけるいろいろな学級講座、諸集会開催等が行われる事業がございます。そこの中でも百時間程度に達しないような事業現実実施しておりますが、その方面は、そのうちどのぐらいが識字学級に行われているかという調査はできておりません。  それから、先ほど先生が御指摘になりました識字実態調査でございますが、五十六年に実施をいたしております。先生たしか昨年とおっしゃったように思うのですが、五十六年度に実施をしておりまして、そのときに全国でどのぐらいこの識字学級に相当するといいますか内容的に相当するようなものを実施しているかを調べたわけでございますが、大小取りまぜて約三百学級でございます。全国で約三百学級ほどありますが、それに相当するもののうち、これは五十六年度の調査ですけれども、先ほど申し上げましたように、五十七年度で六十八学級をただいまの識字学級として実施し、残りのものは諸集会指導事業の中で措置している、そういうふうになっているわけでございます。
  7. 中西績介

    中西(績)委員 いま五十六年度が三百学級、大小取りまぜてということですから、いま言われました百時間ということを規定づけずに、百時間以内であろうとなかろうと、そうしたことを含んでの三百学級、こう理解をしてよろしいですね。  そうなりますと、私、福岡県を調べてまいりましたが、福岡県全体で、現在、学級らしきものは、大小取りまぜれば四百五十学級あるのです。そして、そのうち、確かな数ではありませんけれども、これはおたくでわかっていると思いますが、識字学級が二十程度になっているのではないかと思うのです。  これは私の出身田川考えてみました場合に、田川市の場合が、識字が三、そして、解放学級と申しまして一般教養、あるいは部落の歴史からいろんな教養的なものを含みまして、主に識字をやっておるのですけれども、その識字をやるについて、皆さんが関心を持ち、集まるような態勢をつくるためには、それだけではなかなか集まらぬわけですから、それを週に一回あるいは二回を行うということになっておるわけです。こうした学級解放学級と言っておりますが、十二あります。田川郡の場合が六の識字学級で四十八の解放学級です。  こうなってまいりますと、さっき言う福岡県における数は四百五十というのが出てまいるわけでありますけれども、このようなわずか一割程度ずつぐらいの進展状況では、これはとうてい、大臣が言われた、字を知らない人の存在は国の恥であるということをこの国会の場の中で表明をするような、具体的な施策にはなってきてないですね。この点はどうお考えですか。
  8. 宮野禮一

    宮野政府委員 先ほど御説明いたしました昭和五十六年度の調査で、約三百学級識字学級的なものということで調査に上がってきていると申し上げましたが、そのうち私どもが新しく昭和五十七年度から委嘱の要綱を改正して、新しく正規にといいますか識字学級として、いままでなかった事業として取り上げたものに相当するもの、つまりおよそ百時間程度以上という意味でございますけれども、それが約三分の一ほどあったわけでございます。五十六年度の実態でございます。  それにつきまして、一応そういう事業を新たに実施するということで各都道府県教育委員会を通じまして市町村実施計画の希望をとりましたものを全部拾いましたのが、五十七年度の先ほどの実施の数でございます。五十七年度は初年度だということで、多少現実実施の準備がおくれていったところもあるいはあったかもしれませんが、したがって五十八年度は約一割ぐらいふえるというふうな話になっております。  そういうことで、将来どの程度ふえるかということは、都道府県市町村のお考えにもよるわけでございますが、現在のところ私ども予算措置でいまの分は対応できるのではないかと思っています。  それから、先生お話しになりました、いろいろたくさんのものがあるではないか、現実田川等で非常にたくさんの数があるではないかというお話でございますが、先ほど申し上げましたように、昨年度から正規識字学級ということで取り上げた学級が私どもが御説明しているものでございまして、それ以前から集会所指導事業ということで、これは識字に限りませず、いろいろな事業を含めまして包括的に集会所指導事業ということで現実にいままでもやっておったものがあるわけでございます。その事業内容の中に、それぞれの集会所の中では、先生の御指摘のように識字の部分が入っておるというのもたくさんあったわけでありまして、そういうものが集会所指導事業として予算的に約十億円ほど計上いたしておりまして、いま申し上げました七十ないし八十学級に達しない要件のものは、そういうもので現在拾っており、それで措置しているということでございます。
  9. 中西績介

    中西(績)委員 いま言われました六十八学級の場合には、委嘱として四十六万の費用を各自治体に出しておるということになっておるようでありますが、そうしますと、いま言われました集会所指導事業費というのは、どの程度になっているのですか、個別に。
  10. 宮野禮一

    宮野政府委員 集会所指導事業の方は、一集会所につきまして、単価は九十五万円を差し上げているわけでございます。この九十五万円の中で、集会所における社会教育活動として集会所で行う学級講座、諸集会あるいは諸活動、その他その活動を企画するために必要な調査事業をその中でやっていただくという内容でございます。一ヵ所につきましては九十五万円差し上げております。  それから、先ほど御説明落としましたが、五十七年度から識字学級として取り出してやり出したものは、一学級につきまして四十六万円、これは識字学級のその一学級だけで四十六万円というふうになっております。
  11. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、いまたとえば百時間という一定の単位を設定をしておるようですけれども、それより以上にこの解放学級というものは行われています、百時間以上。その中に、百時間は切れるかもわからないけれども、そうした識字をやっておる。ところがいまあなたが言われるところでは一ヵ所九十五万円という。これは、いわゆる生け花だとかお茶だとかそうした普通の一般教養から全体的なものを含めて、いろいろな集会所で行う諸事業に対してやられておると思うのですね。ですから、実質的にこの識字学級参加をしておる教師たち、私が申し上げた数からいたしましても、福岡だけで四百五十学級ある、この人たちは全部ボランティアでやっておるわけですね。したがって、そうしたものについて、たとえば高等学校教師たちが出ていく場合に旅費だとかいろいろなものを要求すれば、そういうことをやめろという学校校長指導ですね。したがって、完全なボランティアでそれをやらされておるわけですね。  しかも私がここで指摘をしたいと思いますのは、同和教育のための加配をされておる教員定数が五十七年の場合でも百五十名、五十八年も百五十名あるわけでありますけれども、この人たちは全体でいま千四、五百ぐらいになっておると思いますが、その中の配置されているわれわれの近くにおる人たちは、全部同和推進教員として配置をされています、特別加配された教員は。ところが、この教員役割りというのは、当然学校内におけるあるいは教育上におけるこうした同和教育をどう推進していくかということを考え任務づけされておるわけでありますけれども、その場合に、この識字学級にほとんどが動員されておる実態ですね。動員と言うよりもボランティア的に行っているし、ぜひという要請があって行っています。ですから、結果的にはどうなっているかというと、物すごく過重なものになってきています。これが実態です。ですから、今度同和教育推進というこの役割りが十分果たされないという弱さがまた出てきています、両方兼ねるというかっこうになるわけでありますから。こういう点についてはどうお考えですか。どう把握をしておりますか、実態を。
  12. 宮野禮一

    宮野政府委員 お答えいたします。  いま時間数等が相当になっているではないかという、まずその辺から申し上げますと、先ほど申し上げました集会所指導事業につきましては、いろいろな事業を全部合わせて集会所指導事業ということで実施しているわけでございますが、それの延べ時間は、これはおおむねでございますが、大体年間おおむね二百四十時間以上。おおむねですからそこら辺は幅があるものとお含みおきいただきたいと思いますが、それは、一集会所につき年間おおむね二百四十時間以上の活動をやるものということでお願いしているわけでございます。  それから、先ほど申し上げましたように一集会所につき九十五万円の委嘱費を差し上げているわけでありまして、これは、私どもが国から差し上げる委嘱費が九十五万円でございます。それぞれの市町村がそれに自己負担と申しますか、そういうものを加えまして、集会所事業運営をやっているわけでございます。その中で、たとえば申し上げたような講師謝金等も支払われているということになっています。  それから指導者が、同和教員加配で担当されている者がほとんど全部つぎ込まれているというお話でございますが、私どもの方が識字学級調査をしたときの、識字学級に来られる講師はどういうふうになっているかといいますと、大体教員が七割でございます。そのほかは社会教育主事とか指導員とか行政職員ですかとか、いろいろそのほか民間のボランティアとかを含めてその他が三割でございまして、教員が七割という実態に、五十六年度の調査でございますが、なっております。
  13. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、あなたのいまの答弁によると、九十五万円プラスの各市町村のそれを加えてそうした人々には講師としての代金が支払われておるという言い方ですね。ないから私は言っているんですよ。われわれの同僚が実際に言っているんだから。実際に私もその場所には何回も行っていますから。それで私はこれを指摘しよるわけですね。だから、そうした点についての完全な調査があるのですか。それでは私に、いまあなたが答弁されたように、ちゃんとそうしたものにはこのように支払いがされておるという資料を全部提出してください。委員長、それをお願いします。
  14. 宮野禮一

    宮野政府委員 私どもから差し上げている委嘱費九十五万円につきましては、申し上げたとおりでございます。それ以外に市町村の方でどれだけ自己負担をしているかということについては、私どもとしては資料は持っておりません。
  15. 中西績介

    中西(績)委員 いや私が言っておるのは、その指導参加しておる教師たちに対する支払いがされているかどうかということのその確認をしてくれと言っているのだ。それなしに平気でこういう答弁をするからいろいろ問題が出てくるわけですよ。運営費だとかいろんなものからいくと、いろんなものが要るわけでしょう。そうしたときに、こうした費用がどのように使われておるかということが全然はっきりされていないのです。ですから、少なくともこのようにしていま同和加配教員とそれからこうしたものがちゃんと確立をされて、同和教育推進する教師任務とそれからいまボランティア活動などでやっておるこうした人々任務というものを明確にしておかないとアブハチ取らずになってしまうわけですよ。こうした点からいたしまして、いま言われているように資料がないわけですから、それにあたかも払われたかのように、九十五万円払っているのだから勝手にやっているからそのことによってすべてが済まされているような言い方では納得できません。したがって資料を全部出してください、どういうふうになっているかを。
  16. 宮野禮一

    宮野政府委員 調査の上御提出いたします。
  17. 中西績介

    中西(績)委員 では調査をして提出をするということでよろしいですね。確認しますよ。  では次に大臣にちょっとお聞かせいただきたいと思いますけれども、いまのような識字学級について実態は大変なものであります。実際に一日労働した皆さんを集めて、その人々にそうした識字学級。ですからそれではわからないので、今度はたとえばカラオケをやって、その中に出てくる文字を一つずつたどりながら教えていく。そうしたようないろんな形式があるわけですね、やり方としては。だから、そうした内容をきわめて過酷な中でやっておる教師たちに対して、いまのような状況では中身がどうなっておるかという実態がわからないまま過ごしておるんですね。しかも先ほど答弁があっておりますように、学級数は六十八しかまだない。そうして五十八年度には七十五というのですから、わずか一〇%程度の伸びでしかないわけです。これでは何年かかっても、前の大臣が言った、字を知らない人の存在は国の恥であるというこの規定づけは全く無視されておると言っても過言ではありません。この点どうお考えですか。
  18. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いまの中西さんと事務当局との質疑応答を私も聞いておりまして、やや不徹底な点があるように思います。でありますから、そういう識字学級等について事態がどういうふうに進行しておるのか、もう少し実態を調べる必要があるのじゃないかと思います。なかなかそう簡単じゃないと思いますけれども、国の経費を出しておるわけでありますから、それがどういうふうに有効に使われておるのか、どのくらいの効果があるのか、できるだけ実態調査してみたい、かように考えます。
  19. 中西績介

    中西(績)委員 ぜひそれをやっていただきたい。この種問題は、教育面が物すごく重要な位置づけにある。施設をつくったり環境整備ということがいままで中心でありましただけに、こうした教育面をどう充実させていくかということが大変重要です。ぜひこの点を調査した上で、五十八年度の追加予算なり何なりを組む際にはそうしたことも含んで御検討いただければと思っています。よろしいでしょうか。
  20. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いまも申し上げましたように、この種の問題は実態調査が必ずしも完全かどうかわかりませんけれども、できるだけ実態調査に努めまして、適切に処置をしたい、かように考えております。
  21. 中西績介

    中西(績)委員 次に、同和対策奨学金制度の問題でありますけれども、これも、先般質問をいたしました際に不十分でありました点を確認していきたいと思っています。  先般、同和対策のための奨学金制度給付制度から貸与制度に変わったわけでありますけれども局長は、この問題で進学率の低下が起これば伸びるよう努力をするということを再三にわたって言っています。そうした結果、再検討を制度的にもしなければならぬと言っていますし、大臣は、考え直す作業をしなければと言っています。  そこで、十分ではありませんけれども私が実際に調べてきた中身では、たとえば私が住んでおる周囲を見ましても、すでに本年度入学した者から三名、退学をしたいという申し出があっております。その意思表示はなぜかというと、たとえばこういうことであります。A君といたしますけれども、A君の場合は、親御さんが身体障害者で車いすを使用しておる人で、家の収入が皆無に近い。したがって生活保護になっています。その中で名古屋の自動車関係事業所に就職をして、卒業後の返済能力などについてただした結果、現在アルバイトによって賄っていますから、結局だんだん勉強がおくれてきておるということもあり、しかも、もし将来大学を出て帰ったとしても、筑豊産炭地においては部落出身の場合にはなかなか職がない。こういうことになってまいりますと返済する能力はないだろう、こう言っています。  それでは、この前から局長が言っておりますように、こういう者については特別措置をして、救済措置があるではないか、返還義務免除という言葉を使っておるようでありますけれども、こうすることが果たして救済になるのかという問題であります。そのことができないということを行政に申し出て、だからこうしてほしいということをこの子たちが意思表示をしなければならぬことがどのように影響しておるか。いままでは給付であったわけですからこのことは関係なかったのですけれども、そういう状況をいま文部省行政者としてどのように考えられておるだろうかということを私は大変危惧しています。そういうことから考えまして、私の住んでおる地域で三名の退学意思表示が出てきておるのも、聞いてみるとそういうところに起因をしておると言われています。  さらに五十七年度末に、これが実施をされる段階からでありますけれども、北九州なんかで調査をしています。それを、ずっと細かく数字がありますけれども、時間がございませんからここで一々申し上げることはできませんが、この中でも、たとえば貸与になれば進学をやめようという人、貸与でも行くという人、わからないという人、それから今度は、そういうことを全くなしで進学をするという人、無理だという人、あるいは退学をする人、いろいろな項目で調査をした結果は、大変な数でもって貸与になると大変困難だという調査が出ています。これは二百名にわたって調査をいたしています。さらに、同じ筑豊地区の場合、飯塚を中心としたところでありますけれども、ここでもやはり大学希望を断念をしておるという実態等が出てきています。  したがって、こうしたことを考えてまいりますと、もしそうした実態等が出てくれば、先ほど申し上げたように子供たちにそうした影響がないようにするためには、この前確認をいただきましたように、もう一度この貸与制度というものを検討するということがあり得るのか、この点の再確認をしていただきたいと思います。
  22. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 具体的な事例を挙げてのお尋ねでございまして、私どももこの制度の円滑な実施のために、今後とも努力はいたしたいと思っております。いま御指摘のような事例についても、私どもも関係の府県なりによく事情は聞くようにいたしたい、かように考えます。  御指摘の点は、実際に悪影響が出てくることになればどうするのかというお尋ねでございまして、その点は、前回もお答えしたわけでございますけれども、御指摘の点を踏まえまして、地域改善対策事業の趣旨に沿って今後検討いたしたい、かように考えます。
  23. 中西績介

    中西(績)委員 ちょっとごまかしがあるのじゃないでしょうか。一番最後に言われた地域改善事業に沿って云々ということで何か全部ぼやっとぼやかしてしまっているようでありますけれども、前回言われたように、考え直す作業をしたいということを大臣言ったわけでありますけれども、そういうように理解をしてよろしいかどうかということを聞いているわけです。
  24. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お尋ねの点については、私ども先生指摘のような線に沿って検討するという気持ちには変わりはございません。
  25. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、前回宮地局長の発言がありますからちょっと問題を感じますので、この点だけは局長、訂正をするなり何なりをしないといけないと思いますから申し上げますが、地域改善対策の奨学金と日本育英会の特別奨学金の貸与、この比較をした際のものでありますが、あなたはこのように言っているわけです。私学進学者が多いという実態を勘案すれば、「地域改善の場合の奨学金の単価の設定というものも、一応私学の単価を高く設定してやるというのも理にかなっているのではないか」ということを言っています。  文部省からいただきました資料を見ますと、進学者の数は、五十七年度ですけれども、私立の場合が五千八百九十二名、国公立が八百六名になっています。確かに私立学校が多いから、それを金額を拡大して、多ければ理にかなっておるのじゃないかななどと言っておりますけれども私はこれは大変な言葉だと思っています。そうなると、国公立進学者が少ないからといって低額でよいということにはならないわけですね。と同時に、なぜそのときに貸与なら同額あるいは高くするということが言えなくて、そういう言い回しで、まさに、国公立には部落出身者はもう行く必要はないしそこは少ないから当然なんですということで処理されるということは、これは大変問題のある発言だと私は思いますけれども、この点についてどうですか。
  26. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の件につきましては、三月四日の予算委員会分科会での説明が、私の説明としては意を尽くしてなくて十分でなかったという点については、まことに申しわけない点であったというぐあいに感じております。  国公立の地域改善対策の奨学金の単価についても、過去、単価の引き上げについては私どもとしても努力をしてきたつもりでございますし、また、その単価の引き上げについては今後とも努力をいたしたい、かように考えております。
  27. 中西績介

    中西(績)委員 したがって、そうしたことが、知らず知らずのうちにわれわれの中にある差別意識というのが出てきたと、私はあのときは認識をしたのです。ですから、そうしたものにつながらないように、ぜひこれからの行政の中で具体的な施策によってそのことをあらわしてほしいと私は思います。これ以上もう追及しません。  そこで、最後、大臣にお伺いしますけれども、この前も説明を申し上げましたように、被差別部落大学進学率が大変低いですね。一般のところに比べると半分以下になっています。一般のところが三六・何%かになっておりますけれども、ここの場合には昨年が一七%台であります。それでも一%ずつ伸びてきてこういう実態になっておるわけであります。なぜこのように低いか、その原因はどこにあるかということを御理解いただけますか。どういうふうにお考えですか。
  28. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 なぜそういうふうに比率が低いかということについては、残念ながら私はその理由を明確にしておりませんが、いろいろな過去の歴史的な関係でお困りになっておる状態については、いまや見直しをしなければならない、そういうことでこの対策が講じられておるわけでございますから、真に進学を希望し、またそれだけ能力のある方であれば、できるだけ希望を達成させてやらなければいけない、これが現在の政治であろうと思います。
  29. 中西績介

    中西(績)委員 そうした内容についてはそう時間がかかる中身ではないと思いますから、ただ、大臣にわかりやすくその点についていろいろ説明なりできない部分もあるかと思いますけれども、いまの行政が十分だという認識の中で、おれたちは努力しているのだということを前提にして大臣にいろいろお聞かせすると、もう中身は本当にちぐはぐなものになってしまうのですね。ですから、そこいらがやはり局長のさっきのような言葉になって出るわけですから、この点をひとつ十分注意をしていただいて、大臣にもそうした点の御認識がいただけるように、省内における同和教育問題についての意思統一をぜひ一度遂げておいていただきたいと私は思います。これは要望です。  次に、私学の問題で、経常費補助金と私学振興財団の運営について、行管庁から監察の結果ということで五月五日に新聞報道が出ました。それに対する文部省なりのいろいろな意見あるいは私学振興財団のコメントなりが出ておるようであります。この部分についてちょっとお聞きをしたいと思います。  時間がございませんから簡単に申しますが、監察の報告は正式には出されておらないようでありますけれども、これはいつ出されるのか、そしてその目的は何か、簡単に答えてください。
  30. 竹内幹吉

    ○竹内説明員 行政管理庁におきましては、日本私学振興財団の業務運営に関する監督行政監察を、昭和五十七年四月から実施いたしております。現在、取りまとめ中でございますが、六月を、それもできるだけ早い時期を目途に作業を進めておる段階でございます。  その目的でございますが、国は、学校教育の中できわめて大きな役割りを担っております私立学校の健全な発展に資するために、経常費補助金とか施設設備費等に対する融資等を行っております。こういった振興助成施策の多くは日本私学振興財団を通じて実施されておりまして、年々充実されてきております。したがいまして、これらの施策が十分効果を上げているかどうかという見地から、同財団の業務運営等を中心に調査実施しているものでございます。
  31. 中西績介

    中西(績)委員 十分この効果が上がっているかどうかということで、お調べになっているということでありますけれども、五月五日の新聞に出ておる内容は御存じですか。と同時に、監察結果というのが出ていますけれども、これは御存じかどうかが一つ。それから、内容的にこれは大体認められる中身であるかどうかですね、この二点。
  32. 竹内幹吉

    ○竹内説明員 行政管理庁のこういった監察調査につきましては、その結果は勧告という形で取りまとめ、公表いたしております。その勧告につきましては、先ほど申しましたように、六月を目途ということで作業を進めておるものでございまして、その中途の段階でこういった結果を公表する等のことはいたしておりません。したがいまして、あの報告書なるものがいかなるものか、われわれはちょっと了解に苦しんでおるわけでございますが、恐らく、われわれの作業といたしまして、現地からの報告が来ましてから、それを整理し、検討し、勧告案に取りまとめていくという過程があるわけでございますが、その過程のデータの一部に内容が近似したものがございます。したがって、そういった中身のものではないかと思います。  その内容の信憑性等でございますけれども、現在、調査取りまとめ中でございますので、内容にわたることにつきましては、説明を控えさせていただきたいと思います。
  33. 中西績介

    中西(績)委員 いずれにしましても、問題があることは事実ですね。全く皆無ですか。
  34. 竹内幹吉

    ○竹内説明員 先ほど申しましたように、われわれの作業過程のデータの一部に近似したものがございます。したがいまして、傾向といたしまして、一部ああいった感じのものがあるということは言えようかと思います。
  35. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、私は私学財団にお聞きしますけれども、行管庁の監察結果について、別府理事はコメントをしているわけですね。このコメントを見ますと、こうした感じのものがあるということなんだけれども、最後の方に、五日の新聞に出ておる中身では「経常費補助金については臨調答申に沿って、五十七年度から総額を抑制し、配分方法も改善している。」などということを言っています。そのほかまだ前にありますけれども、時間がありませんから……。  そこで、私は前回からの答弁を聞いておりますと、全く主体のない答弁が非常に多いわけですね。臨調から言われているからやるということであって、いろいろ問題があるということの意識はあるのですか、ないのですか。それだけ答えてください。ほかのことは要りません。
  36. 別府哲

    ○別府参考人 お答えを申し上げます。  大いに問題意識は持ってございます。  新聞記事につきましては、必ずしも取材に応じてお話を申し上げたとおりに書かれているとは言えないところもあるわけでございまして、臨時行政調査会において取り上げられておる項目についての質問もございましたので、その点について、すでに五十七年度においては私学補助金が前年度と同額になっている、また五十八年度は減額をされているということを説明したわけでございますが、そういった説明があのような記事になったのではなかろうかと考えている次第でございます。
  37. 中西績介

    中西(績)委員 会計検査院、おいでになっていると思いますが、行管庁の監察結果、断聞報道、この中身は御存じですか、これが一点です。もし知っておるということであれば、この内容について、行管庁が指摘をした問題について、検査院は問題を感じますか。
  38. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  いま先生お話しの、行政管理庁の監察について知っているかどうかという点でございますが、そういう内容のものが新聞等で報道されているという事実については承知いたしております。しかし、何分にも内容、詳細についてはまだわれわれとしても調査いたしておりません。ただ、その結果について、会計検査院とのかかわり合いというような趣旨のお話だと思いますが、内容が定かでございませんので、いまはっきりした答弁を申し上げるのは早計かとも存じますが、先生御案内のとおり、行政管理庁の監察と本院の検査というものはそれぞれ基盤あるいは職責は異なるところでございます。私どもといたしましては、公会計経理が法令の規定に準拠し適正であるかどうかなど、いわば会計経理の合規性、経済性あるいは合理性等について検査いたしているところでございまして、その際に、行政監察が対象としておられる行政と会計経理が表裏をなす場合もございます。こういった点を勘案いたしまして、いずれ行政管理庁から正式の監察の報告が出された段階におきましては、こういった点を十分関心を持って見守り、今後の検査に対処してまいりたい、かように考えております。
  39. 中西績介

    中西(績)委員 文部省の方にお聞きしますけれども、新聞では——こうとばかりは言えぬと思いますけれども、これを見ますと、「文部省がクレーム」「厳し過ぎる指摘」、書き直し要求で公表おくれるなどという、いろいろな見出しがついています。しかし、中間的なものでありますけれども、この結果を見ますと、たとえば設置基準の中における専任教員の不足数だとか、兼任教員が多過ぎるとか、あるいは無資格者が授業をしているとか、学生数が多過ぎるとか、設置基準だけを取り上げてみましてもいろいろ問題があるわけですね。こうした問題意識は、あるのはあるのですね。こうした「文部省がクレーム」だとかなんとかいうと、そういうことまで全部否定するつもりみたいな見出しになっていますけれども、そうでなくて、問題意識はあるかどうか、この点だけお答えください。
  40. 阿部充夫

    阿部政府委員 お答えをいたします。  現在、行政管理庁の監察の結果は取りまとめ中ということでございますが、もちろん、その中間の段階におきまして、私どもといたしましても実態を行政管理庁に御説明をする、あるいは制度の仕組み、制度の趣旨等について御説明をするというような作業は行っておるわけでございまして、たとえば、大学設置基準についてのお話がございましたけれども大学設置基準についてはどういうふうに適用していくのかという技術的な問題等について行政管理庁に御理解をいただくように努力をしているところでございます。したがいまして、記事が掲げております具体的事例につきましては私どもはかなり違った印象を持っておるわけでございますが、しかしながら、全体として全く問題がないということでは決してないわけでございまして、問題のあるところももちろんあるわけでございます。そういった点につきましては、行管の監察の結果等を待ちまして、また文部省としても十分検討してまいりたい、かように考えております。
  41. 中西績介

    中西(績)委員 この分については行管庁に要請をしておきますけれども、今度はもう延びることなく六月には出されると思いますから、この点は間違いなく早急に出していただきたいということの要請をしておきます。いままでの延びについては、もう時間がございませんから一々細かく聞きませんけれども。  次に、九州産業大学問題について一、二の点について質問を申し上げたいと思います。  一つは警察庁にお伺いしますけれども、この前私が指摘をしました公文書改ざん問題あるいは土地交換問題など、問題になった部分の調査なりその進行状況はどうなっていますか。
  42. 森廣英一

    森廣説明員 お答えいたします。  公文書改ざん問題というお尋ねでございますが、学部の新設に際して、公文書ではございませんで各種の申請書類に添付すべき私文書を改ざんした問題、これにつきましては、現在福岡県警察が捜査をしておるところでございます。
  43. 中西績介

    中西(績)委員 土地交換問題については、やっていないのですか。
  44. 森廣英一

    森廣説明員 土地交換問題というお話でございますが、そのようなことで福岡県警察が捜査をしておるというような事実は、報告を受けておりません。
  45. 中西績介

    中西(績)委員 では次に、九州産業大学との私学財団会食出席者について、先般私の方から要請をいたしたわけでありますけれども、これはもうすでに新聞などで報道されておるにもかかわらず、私が要求したことに対してなぜ提出ができなかったのか。そして、理事会にはそのことが発表されるということになれば、まさに国会の中における——どこかで秘密の会合をなされて、その中でそれが具体化されるという中身になっています。少なくとも、この国会の場というのはわれわれは最高の場である、こう考えていますけれども、これはそのことを無視したやり方ではないかと思っていますけれども、この点、委員長、どうですか。
  46. 葉梨信行

    葉梨委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  47. 葉梨信行

    葉梨委員長 速記を始めて。
  48. 中西績介

    中西(績)委員 委員長に一応聞くのはやめましよう。  それでは私、具体的に言います。私が十二月八日に財団に参りました際に、この件に関してはわれわれは氏名まで申し上げたのです。このことは財団の方は知っているはずですね。しかも、そのときには、このような会食あるいはこうした問題は全然ないということをわれわれに対して強硬に突っぱねたのですね。ところが、十二月の十一日の日に新聞で、文部省あるいは財団、そうした接待が明るみに出たわけであります。ところが、十二月の十三日には、八木敏春という助成部長は辞表を提出しているのですね。理事なんかのことには触れません。そのときいた理事は、この関係のあった理事はもう退職しているのですよ。退職していますからもう名前は言いません。そしてこの八木敏春という人は、助成部長ですけれども、辞表を提出しておるわけですが、われわれが今度その次に行ったときにいろいろ聞いてみますと、この問題については内容調査しましたということを言っています。そして、問題がなかったということを言っておりますけれども、この点、いつ、どこでやられたのか、そしてどの程度のものがやられたのか、調査をしているわけですから知っているわけですね。問題ないと言うならどの程度のものを問題ないと言っているのか、この点を別府さん、答えてください。
  49. 別府哲

    ○別府参考人 お答えをいたします。  九州産業大学の関係者との会食の問題につきましては、先生の御質問もあり、先般委員長からの御命令がございましたので、出席者の氏名を理事会あて御提出させていただいたところでございます。その中には、先ほど先生指摘の助成部長等も含まれているわけでございます。この点につきましては、すでに理事会に御提出いたしましたように、昭和五十五年と五十七年の二回、東京におきまして儀礼的な会食が行われているということを私ども調査の結果御報告をさせていただいたというところでございます。
  50. 中西績介

    中西(績)委員 儀礼的と言っていますけれども、どの程度を儀礼的と指しているのですか、規定づけていますか。
  51. 別府哲

    ○別府参考人 お答え申し上げます。  五十五年度のものにつきましては、向こうの理事長が新しく就任されたというごあいさつで上京されたというものでございますし、五十七年度については一月、正月のごあいさつということで上京された際に行われたものであり、内容もいずれも度を過ごしたものではないという意味で儀礼的と申し上げたわけでございます。
  52. 中西績介

    中西(績)委員 度を過ごしたものでないという程度はどの程度であったのですか。お調べいただいているからわかっているはずです。
  53. 別府哲

    ○別府参考人 お答え申し上げます。  一々幾ら幾らの金額というふうな点についてまでは私どもの方の調査はなかなかできがたいところでございますので、それに出席をいたしました者から聞き取りをいたしまして、度を過ごしたものではなかったというふうに判断をしたわけでございます。
  54. 中西績介

    中西(績)委員 この八木敏春という助成部長がやめられるという辞意表明をしたのですね。これはなぜ辞意表明をしたのですか。
  55. 別府哲

    ○別府参考人 お答えいたします。  助成部長は、すでにかなり長期にわたって助成部長として私学助成金の仕事を担当しているわけでございますが、この担当職務である私学助成金の問題をめぐって大変世間を騒がせるような事態が起こったということについて深く責任を感じて、担当上司である理事に進退伺いを申し出たというものでございました。
  56. 中西績介

    中西(績)委員 私たちが行ったときに、私は発言するつもりはなかったけれども、そのときにいた早田理事あるいはこの八木助成部長などは、その際には横を向いて、いろいろこちら側から聞きますけれども、その点に対して大変不遜な態度で臨んだのです。しかも、この中身についても絶対そういうことはあり得ないということまで言っておったわけですよ。それがなぜこのように、あなたが言われる理事長就任、あるいはこれにありますように経営学科の新設のときか何か知りませんけれども、いずれにしても五十七年一月の段階でこのようなことがなされたのか。してないというのに、新聞で発表されればこういうことが出てきたわけですが、なぜ隠さなくてはならなかったのでしょうか。
  57. 別府哲

    ○別府参考人 お答えを申し上げます。  十二月八日の日に先生がわが財団にお越しいただいたときに私は出席しておりませんでしたので、出席しておりました者から聞いたわけでございますが、決してそのような事実を全面的に否定申し上げたのではなくて、儀礼の範囲を超えておりませんということを御説明申し上げたというふうに聞いております。
  58. 中西績介

    中西(績)委員 委員長、それはうそなんです。私、記憶があるのです。そういうことを平気で言うところなんです。そこに私は問題があると指摘をしておきます。ですから、言われないというのも、儀礼的だということで隠していますけれども、これがうそなんですよ。でなければ、そのときに言っているはずなんです、われわれは名前まで出していろいろ指摘したのですから。それをもう全部、全面的に否定をしたのです。認めたのはその次のこれが明らかになってからの段階ですよ。二回目に行ったときにそのことを認めた。問題はそこなんです。この点はもうああいうふうに言い張りますから、いかにうそであるかということをここで明らかにしておきます。  その次、今度は文部省です。宮地大学局長、高石官房長、北橋氏、彼はいま何をやっているか知りませんけれども、五十五年あるいは五十六年の国際経営学科新設、これをめぐる当時に、九州産業大学中村、鶴岡、平野ほか三名、こういう者に接待供応されているという事実が暴露されました。九州産業大学側に私たちが調査に入ったときもそのことは認めております。やったということは認めておる。ところが新聞では、その間に商品券などももらっているなどということまで含まっています。この点、いつ、どこでされたのか、私がいま氏名を発表した者に間違いないかどうか、この点を当事者からお答えください。
  59. 阿部充夫

    阿部政府委員 昨年そのようなことが新聞に報道されました際に、私ども新聞に報道されました当事者に事情を確かめたわけでございますけれども、私学と儀礼的なおつき合いをするということは皆無ではないけれども、言われておることが数年前のことでもあり、十分記憶していない、こういうことでございました。いずれにいたしましても、今後こういうたぐいのことについては十分襟を正して対応したいということでございました。
  60. 中西績介

    中西(績)委員 私は関係者に出席を求めたのですがね。関係者はいらっしゃいますか。だから、当事者の方から答えてくれと言っているのです。
  61. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 すでに予算委員会でもそのような御質問を受けまして、私お答えを申し上げたわけでございますけれども、新聞に報道された事柄そのものについては三年ぐらい前のことであって正確に記憶をしていないということでお答えをいたしました。  私学の関係者と私どももちろん、あるいは新聞に報道された当時は私は官房長であったかと思いますけれども、いろいろと仕事の上で相談を受けたりその他いろいろな事柄はございます。したがって、懇談をする機会ももちろんございますし、その点が社会通念上認められる範囲内のおつき合いということがあることは私どもも決して否定はいたしません。ただ、そのことがたとえば認可の事柄そのものに影響があるというようなことは断じてございませんし、もちろんそういうことに影響のあるようなことが行われていいものではないことはもとよりでございます。ただ、そのことが報道された以後、そのこと自体で文部省の行政そのものが世間からゆがめられているのではないかというように受け取られがされてはもちろんならないことでございますし、したがって、そういう事柄について、私どもとしても襟を正して今後とも対応していかなければならない事柄だ、かように考えております。
  62. 高石邦男

    ○高石政府委員 私は、福岡出身でございまして、地元の大学のことでございますので、いろいろな形で相談を受けることはあるわけであります。したがいまして、鶴岡、中村両氏も知っているわけでございます。役所にお見えになって、大学運営とかいろいろな問題について御相談に乗るということは当然あり得るし、そういう形でお目にかかっていることはあるわけであります。しかし、会食の件につきましては、私学関係者のパーティーであるとか、いろいろな私学関係者の人たちと儀礼的に会食をするということはあり得るわけであります。しかし、その際にも、先ほど大学局長が申し上げたように、およそ公正な職務執行に影響するような形で考えてはいけないということで、十分注意をして今日まで対応してきたつもりでございます。  なお、具体的な御指摘内容につきましては、数年前のことでございますし、明確な記憶を持っていないということでございます。
  63. 中西績介

    中西(績)委員 少なくとも、いつ、どこで、何を、どの程度でなければ、いま言うような事柄について関係がなかったとか、相談を受けることはあって懇談をする機会はあると言ったとしても、それは信頼できませんね。少なくともそうした中身がこういうものであってということを、どこでどうしたということを、料亭で会ったということは事実でしょう。だから、やはりこうした点がもし誤解であるならば、誤解を招く大きな原因になるわけです。この点は十分今後気をつけなければならぬと思います。  しかしそれにいたしましても、私はなぜこのことを追及するかというと、大変大事なことは、九産大問題について文部省指摘をしてある「運営体制の刷新等」ということで第一項目目に出ています。「長期間にわたる経常費補助金の不正受領などの適正を欠く学校法人の運営に関し、関係者の責任を明確にし、社会的に信頼を得ることができるよう運営体制を刷新、確立するとともに、今後いやしくも社会の批判を受けることのないよう運営の適正を期すること。」という、第一項目目に、刷新を図るべきこうした中身が出ています。運営組織全般にわたる問題であります。ところが、個々の運営体制の刷新ができない大きな理由はどこにあるかということを考えなくてはなりません。第一、私学財団がそうであります。平気でうそを言っている。そしてさらに政治的な介入があったということがだんだん明らかになってきているのです。  たとえば一つの例を挙げますけれども、一月十九日の新聞に出ておりましたけれども、これは自宅で、ある代議士が言っています。大学の経営に詳しい理事長からやめては再建がむずかしいという趣旨だ、私学人事に口を出すなと文部省幹部に話した、こういうことを言っています。そしてしかも、きょうお見えですか、文部省の澤田審議官、この澤田審議官から非公式に側面的援助を頼まれてやったのだということを言っているのです。政治家にこういうことを頼んで、側面的に援助を頼まれてこういうことをしたのだということを言っているのです。そこで、今度は審議官は、一月二十日のある新聞には、文教問題に詳しく地元出身である三原代議士に収拾をお願いした、こう言っています。このように本人も認めていることです。この組織図を見るとわかりますけれども、この中で、昨年のあれからいきますと顧問の中に衆議院議員が、以前発言をして問題になった人一名、それからもう一人いま私が申し上げました方が一名、それにもう一名熊本出身の方がいらっしゃいます。私がさっき申し上げた二名は福岡県です。熊本出身がいらっしゃいます。参議院議員が福岡県の一名おる。ところが、ことしのものを見ますと、これが落ちています。今度はいま私が申し上げた福岡県の方が落ちているし、さらにもう一名これを落としておりますけれども、そういう人が顧問になっていて、しかも、こういうことが具体的に言われておるわけです。こうしたことが結局私が指摘をするようなことにつながり、そしてしかも、問題になりました九産大の中村産業学園理事辞任問題などでもいろいろ取りざたされました。  こういうように、一番大事なことをいまからやらなくてはならぬ、私学の信頼を取り戻さなくてはならぬというときにそれができない最も大きな原因というのは、政治家と官僚とそうした者の結びつきがあるというような実態がこうしたものからうかがい知ることができるわけなんです。しかも、頼んだと言っているわけです。本人が言ったと載っているのですよ。もしこれが間違いなら、告発なんかしておるのなら別です。こういうような状況があるということを私たちは知った上でこの問題に対処しないと、いつまでもこれを誤りを正して正しい方向に持っていくことはできないと思うのです。時間が過ぎましたから、私やめます。  大臣にお伺いしますけれども文部省の勧告からいたしますと、九産大の現状というものは満足できるものであるかどうか、問題ありとすればどこが問題なのか、今後の文部省の対応はどうするのか、この三点について大臣からお答えいただきたいと思います。
  64. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 端的にお答えいたしますが、九産大の文部省の勧告に対する措置は十分であるとは考えておりません。運営体制の刷新、それから入学等の扱い、いろいろ項目について御承知のとおり勧告をいたしておりますが、特に運営体制の刷新、改善という問題については、まだ十分であるとはこちらは考えておりません。ただ、しばしば申し上げておりますように、私学の自主性ということをできるだけ尊重しながら、その良識に訴えておるわけでございまして、その推移をしばらく見届けたい、これが現在の立場でございます。
  65. 中西績介

    中西(績)委員 終わりますが、その時期はいつごろですか。文部省はこのままじっとがまんをしておるということですか。いまのような実態が依然として続くということは、相手はなめ切っておるわけですよ。こっちに来たときに頭を下げているかもしらぬけれども、地元で発言することは全部敵対関係的な発言が次々に出てきているわけでしょう。そのやり方は、何かをやったら必ず後で恫喝できるような仕組みにしてあるのですよ。そうしたことを十分われわれは踏まえてやらないと、なかなか弱みを握られておったのではできないと私は思いますよ。
  66. 阿部充夫

    阿部政府委員 二月の末であったかと記憶しておりますけれども、学園側から持ってまいりました回答につきまして、特に先生指摘のございました運営体制の刷新、理事体制等の問題でございますけれども、この点については文部省指導の趣旨に沿ったものとは認められないということで、いわば差し戻しのような形で再検討を学園側に伝えたわけでございます。現在、学園の内部で再検討が真剣に行われておる。私ども、もちろんその後今日に至るまでの間若干接触等を持っておりますが、現在検討が行われておるということで、決して文部省指導がなおざりにされておるわけではないと考えております。もう若干の時間をちょうだいいたしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  67. 中西績介

    中西(績)委員 私は先ほど、本院出身の方が一名やめられたということと、あわせてもう一名衆議院議員がと言いましたけれども、これは間違いでした。これは、かつて参議院議員で大臣までやられた人、現在すでに参議院議員ではありませんけれども文部省の先輩である、そういう人たちが全部顧問に名を連ねておるわけですね。そして、こういう人々に頼んであるから大丈夫だ、こういうように現場では言っておるわけですからね。私はここに問題があると言っているわけです。だから、今度は地域の人たち、たとえば福岡県における、あるいは九州における人たちが新聞などを見る場合には、そうした実態があるからこの分についてはいまだに解決できないでおるじゃないかという、こうした意識になっておるということを私は申し上げておるのです。ここがいま一番問題であるということが一つ。  それともう一つ、最後になりますけれども、今年度の組織運営機構をずっと見ますと、この前出されている運営面における具体的な問題で、たとえば財務部、業務部、教務部、学生部あるいは総務部という、それぞれ部局がございますけれども、これに座っておる人が全部理事長であり、以前の副理事長であり、問題のある人ばかりなんです。しかもここの場合には、教務部に事務部長として前の副理事長が座ってから以降教学部門にどんどん理事会側の意向が入っていって、入学問題からいろいろな問題を起こしていった事実があるわけです。今度の場合、そうした二名の、平野副理事長、それから安武財務部長ですか、こういう連中が常任から理事に格下げをされた、こう言っていますね。しかし、依然として毎日学校に行っておるわけですよ。ことし出されたこのいろいろな組織図表を見ますと、確かにそういう人たちの名前は消えています。しかし、その財務部の例を一つ申し上げますと、次長というものがあるけれども、ここには財務部長はいないのですね。同じように業務も教務も学生部も全部部長はいないのです。そして全部次長がその最高のあれになっているわけです。ということは、実質的には依然としてそういう連中が全部そうした業務を取り仕切る仕組みになっておる。こういうような具体的なものをずっと挙げていきますと、まだまだたくさんあるのです。もう時間が参りましたからやめますけれども。  私は、こうした点が本当に解決できるためには、先ほど申し上げましたように、文部省の大先輩の人たちがそうしておったりするから大丈夫だというように地域で流布されておるように、こういう実態があるということを私たちは十分知った上で対応しなくてはならぬと思っております。したがって、大臣の今後における決意を、先ほど言われたようなことでなくて、もう少し断固たる措置をするということをぜひお答えいただきたいと思います。
  68. 阿部充夫

    阿部政府委員 大臣からお答えいたします前に若干補足をさせていただきたいと存じますが、昨年の暮れにこの件が新聞報道されまして以来、非常に多数の国会議員の先生方がこの問題に御関心をお持ちになり、私どもに事情の説明を求められたということは、各党全体にわたって皆さんからあったわけでございまして、それだけの多数の方々に私どももできるだけ部下を派遣をいたしまして、現状なり問題点あるいは文部省の解決の方向等について、何回にもわたりまして御説明申し上げておるわけでございます。しかしながら、その段階におきまして個別にこれこれしかじかのことについて政治家の方々のお力をおかりしたいというようなたぐいのお願いをしたことはないわけでございまして、もちろんやりとりの言葉の中でひとつよろしくお願いしますという程度の言葉は出たかもしれませんけれども、そういう趣旨のものだということでぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それからもう一点、事務処理体制についてのお話がございましたけれども、この点につきましては大学側に、第一項目の運営体制の刷新、改善ということを指導いたしました際にも明確に、この中には事務処理体制のあり方についても問題があると考えているということを明確に伝えまして、その改善の今後の方策を現在見守っているというところでございます。
  69. 中西績介

    中西(績)委員 大臣ちょっと待ってください。  ところが、八三年の学生便覧を見ますと、また平気で先ほど私が申し上げたような中身でしか全部出していないのですよ。そして、いま言うように部長はいないのです。全部次長です。そして実質的に、降格をしましたという人たちが全部そこにいてやっているということなんですよ。
  70. 阿部充夫

    阿部政府委員 それでございますので、大学側の改善の体制は十分でないということで、大学側の対応を現在求めているというところでございます。
  71. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 事情はいま局長から申し上げたとおりでありますが、どういう方々がこの大学にかかわりがあるか私はよく知りませんけれども教育の場としての学校としてふさわしくない運営その他がありますれば、法律、規則によって処断すべきものは処断する。なめられるようなことはございませんから、それだけ申し上げておきます。
  72. 中西績介

    中西(績)委員 なめられぬように、しっかりやっていただきたいと思います  以上です。
  73. 葉梨信行

    葉梨委員長 伊賀定盛君。
  74. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 私の質問時間が一時間あったのでありますが、いま中西さんが精魂を込めて調査された資料に基づいて約半分ほど食い込んでしまいましたので、当初予定しておったとおりに私の質問が進行するかどうかちょっとわかりませんが、要点をはしょりながら質問をしたいと思います。  その一つは、共通回次試験制度についてでありますが、この問題はすでにもう衆議院でも参議院でも幾たびか取り上げられておりまして、論議されてきております。その間この制度のメリット、デメリットが明らかとなり、いまや抜本的な改革の必要性は国民的なコンセンサスが得られたものとして、文部省並びに、きょうは国立大学協会は来てもらっておりませんが、着手されていると承っておりますが、文部省、いいですか、それで。
  75. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のとおり、国会でも何度か御論議いただきまして、私どもとしましても問題点については十分意識をいたしまして、それぞれの関係者で御検討いただこうということで取り組んでいるところでございます。
  76. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで具体的に伺います。  毎年共通一次試験の実施要項が六月の二十日ごろ、昨年は六月二十四日に発表されてきております。したがってあと一ヵ月余りしかないわけであります。まず一つは、それに関連いたしまして願書の提出期間であります。例年十月の一日から十五日となっておりますが、これは大変早過ぎるということであります。アメリカの共通テストの場合は試験の五週間前、すなわち一ヵ月前であります。ところが、日本におきましては三カ月半前であります。ですから、この際一ヵ月おくらせて、これを十一月一日から十五日までということにしても十分余裕があると思います。  なぜ早過ぎるかといいますと、それの弊害が幾つかあります。一つは、現役生の場合には学校単位で入試センターに願書を送付いたします。そうしますと、夏休みが終わりまして九月に入りますると、すでに学生の方からいいまするとどこにするかというようなことの記入が具体的に始まるわけであります。高校生生活からいいますと、二学期というのは気候もいいし、文化祭でありますとか体育祭でありますとかいうようなものがありまして、いわば高校生活の中で充実したものであるのでありますが、夏休みが終わると直ちに受験生の場合にはその出願準備にかかるというようなことでありまして、いわば充実した高校生活が送れないという欠点があります。したがって、高校生自身まだ本人の意思が十分に固まっていないために、たとえば三十六万人からの受験生中欠席者が二万人も出てくるということは、やはりこれは夏休みが終わって直ちにというところに一つの原因があるのではないか、こういうことが予想されるわけでありまして、ひとつこの際、まず一ヵ月提出期間をおくらせるということはどうかということであります。  それから、もう一つは試験日についてでありますが、過去五回の実施実績が一月中旬の土曜、日曜日の二日間となっております。これも早過ぎるために、高校の三学期は実質的になくなってしまう。一週間でもいいからおくらせてほしい。すなわち一月二十一日ないし二十二日に繰り下げてほしいという意見は全国高等学校の校長協会あたりからの一致した意見であることももう御承知のとおりであります。同時にまた、受ける生徒側も、いろいろな新聞の投書等通してみますると、やはり一週間でもいいからおくらしてほしいというふうに多くの意見が出ておるわけでありますから、この際ひとつ試験日もせめて一週間おくらしていく必要があるのではないか。またこのことは、前入試センターの所長であります加藤さんもそれは事務的に可能だということをある雑誌に発表しております。  そこで、以上二点につきまして、入試改善会議文部省から提案をしてほしいと思います。これは事務的にもすでに論じ尽くされておりますから、大臣から直接この点を伺いたいと思います。
  77. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大臣からお答えする前に、私から補足して初めに答えさせていただきたいと思います。  まず第一点の、願書の提出、受付の期日が高校生活全体から大変早過ぎるから、それをもう少し繰り下げられるようにしてはどうかという御指摘でございます。実は試験日までの間に相当日数をとっております点は、一つは、全体で三十六万人に及ぶ志願者がおりまして、それを全国一斉に同一問題で実施するということで試験場の慎重な準備が必要であることがまずございます。それから第二点としては、志願票の記載事項の確認はがきの送付なりあるいは志願者ごとの試験場の設定、試験場ごとの問題の送付、それらの事柄が処理しなければならぬこととしてあるわけでございまして、そのために必要な日程をとってあるわけでございます。一つには、御指摘の試験期日の繰り下げの問題もいろいろ御意見をいただいていることは、私ども十分承知をしております。それらの点についても検討願っているわけでございまして、試験期日の繰り下げの問題、それとの関連におきまして試験日までの願書の提出についても繰り下げというような問題も検討しなければならない課題ではないか、かように考えております。  ただ、先生指摘の明年度の入試要項が六月ぐらいにまとまるがという御指摘でございますけれども、共通一次試験の問題についてはほかにもいろいろ基本的な問題が指摘をされておるわけでございまして、それらについて関係者の御検討をいただいて実施をするということになれば、これはやはり非常に慎重に対応しなければならぬ事柄でございますので、明年度からそのことをという点は、私ども実態としては無理ではないか、かように考えております。
  78. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 いま試験場の準備だとかはがきだとかいう話がありましたけれども、そんなことは、初めてやるのならそれは御指摘の点もわかりますよ。いままでもうすでに五年間の経験を持っておるわけでありまして、いまもアメリカではわずか一ヵ月ぐらいの期間しかない、それでも処理できておるわけで、しかもアメリカの場合は、人口構成からいいましても日本の受験生よりはるかに多いと思うのです。それを一ヵ月あたりでいま御指摘になった点あたりもすべて解決してやれておるのに、しかも五年の経験を持つ日本でそれができないというのはちょっと納得できないですがね。何かほかの理由があると違うのですか。
  79. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 願書の受付と試験の期日との間の問題点としては先ほど申し上げたことでございます。  先ほども申し上げましたように、試験場の準備の問題、それと志願者ごとに試験場の設定をいたしまして、さらに試験場ごとに問題を送るというような、問題の送付ももちろんあるわけでございます。したがいまして、願書の受付と試験期日の間については、私どもとしては、現在置いている期間はやはり必要で、もちろん五回の経験もございますから、それに伴う改善ということも十分考えなければならぬ点でございます、そういう点ももちろん今後検討させていただきますけれども、そういうような事柄があるということを先ほど申し上げたわけでございます。したがって、試験期日そのものの繰り下げの問題がまず基本にあるわけでございまして、その問題も検討を願っておるわけでございます。  それとの関連で、願書の受付期日についても、もちろん高校生活にできるだけ影響を少なくするような形で繰り下げるということも検討しなければならない課題だ、かようにお答え申し上げたわけでございます。
  80. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 局長さんあたりは実際現場の経験がありませんから、文部省の机の上で、頭の中で考えておるわけですけれども、私も現場経験の一人でありますが、少々そういう事務的な困難がありましても、やはり高校生活の受ける側の生徒の立場、それから直接生徒のそこら辺をよく知っておる高校の校長あたり、ここら辺の気持ちというか立場というものも十分に考える必要があるわけでありまして、いま局長文部省の都合ばかり言うておるわけでしょう。これはやはり正しい態度じゃないと思いますよ。ですから、局長のおっしゃることはもうよくわかりました。  そこで大臣、いまお聞きのとおりでありまして、いま局長文部省側の都合だけをおっしゃっておられるわけでありますが、一体文部省側の都合でやるのかそれとも受ける生徒並びに生徒を管理するといいますか指導するといいますか、そういう全国の高校の校長あたりの意見を重視してやるのか、どっちをとるのかということなのですが、大臣どうですか。
  81. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 実は、私が文部大臣就任以来、いろいろな意見が全国各地から参っております。その中で大きな受験問題、その中の共通一次についてもいろいろな意見が来ております。その試験期日の問題あるいは科目の問題といろいろあるわけでございまして、そういう意味で文部省ももちろん検討しておりますが、先ほど来局長から申し上げておりますように、国大協、入試センター、それにやはり高校の学校側の意見も聞く、こういうことで現在進めておるわけでございます。ただ、私はそこまではよくわかりませんが、これはいろいろな実施の技術的問題もあろうと思いますから、文部省文部省なりにそういう心配もしておる、こういうことを局長は申し上げておるわけでございまして、これはもちろん受験をする側、学校側、こういうものの意見も十分尊重して、可能な限り改善をする、こういう立場でございます。
  82. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこですね、大臣、もうあと一ヵ月ほどしかないわけですね、例年の例から言いますと。そうすると、いまのような答弁では間に合わないわけでして、これは大臣の決断一つだと思います。いまおっしゃいましたように、もう五年間も経験を持っているのですから、そんなことはもうとっくにできるはずなんです。
  83. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私の決断一つとおっしゃいますが、それはなかなかそうはいかないですね。いまこういう問題があるのですから、できるだけ解決に向かって努力をしているということだけでございまして、私が決断したからといって、たくさんの関係者がいらっしゃるわけですから、そう簡単にはいかないと思います。しかし、大きな問題になっておりますので、速やかな結論を出すように努力したい、かように考えております。
  84. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 なお、この問題につきましては緊急を要することですから、大臣ぜひ決断をしていただきたい。強く要望しておきます。  その次は、本年の四月十七日付の東京新聞によりますと「文部省は五教科七科目という試験科目が受験生に過剰負担となったり、偏差値による進路指導などの影響で、」云々とありまして、「具体的には二次試験の際にあらかじめ定員の一部を留保して行う二次募集や、推薦入学の枠を拡大したり”門前払い”と受験生に評判の悪い二段階選抜の廃止を求めていくもので、近く国立大学協会に申し入れる。」と書いておりますが、これは四月十七日であります。もう一ヵ月以上たっているわけでありますが、これは国立大学協会にお申し入れいただいたのでありましょうか。
  85. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ちょっと新聞記事は私正確に手元に持っておりませんが、ただ、国立大学協会ももちろん入試改善会議という公的な場にはその代表者にも入っていただいておるわけでございます。たとえば四月の中ごろでございますが、私どもとしては、国立大学協会の幹部の方々と共通一次試験の基本的な問題についてはいろいろと御議論をお願いをしてございまして、国立大学協会でも、従来第二常置委員会で検討しておりましたものをさらに特別委員会を設けて検討するという方向が話し合われております。具体的には五月に開かれます国大協の理事会で決められるわけでございますけれども、入試の問題を検討するための特別委員会を設けるというような方向なども打ち出されておるわけでございます。  さらに具体的な点で申し上げますと、五月二日付でございますけれども、国立大学協会の第二常置委員会委員長名で各国立大学長あてに「国公立大学の入学者選抜方法等の再検討についての依頼の文書も出されておりまして、その中の具体的な項目として、たとえば各大学が第二次試験の実施期日を独自に設定するとか、あるいは一期、二期校の再検討を行うことなども含めて御検討をいただいた結果を寄せてもらいたいということを各大学に申しております。それから、たとえば現行では入学定員の一部を留保して二次募集をすることができるようになっておりますが、必ずしもその制度が十分に活用されているとは思われない現状でございます、したがって、その理由がどういうところにあるか、そして二次募集を行っている大学ではその成果をどのように考えているかというようなことなどについても各大学の見解を寄せてほしいということを述べております。それから、推薦入学制度も現在各大学でいろいろな対象、方法で行われておりますけれども、これを一層充実、拡大することについてどのようにお考えでしょうかというような事柄について、いわばアンケート調査をする事柄も、すでに五月の上旬でございますが、国立大学協会の第二常置委員長名で各国立大学長あてに出しているところでございまして、そういうような事柄を通じまして私どもとしてはそういう線が積極的に個々の国立大学においても検討されてその結果が寄せられてくるのを期待しているところでございます。
  86. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 その点はわかりました。  引き続きまして、昨年、五十七年四月二十六日付で「昭和六十年度以降の高校学力検査実施教科科目の範囲について」と題する通達を文部省から各大学に出しておられますね。また、昨年十二月二十四日に参議院予算委員会におきまして、宮地大学局長は通達内容はほかならぬ共通一次の五教科七科目を指すことを言明されておられますね。あわせまして、大臣も受験生の個性と各大学の自主性を尊重するアラカルト方式への転換と試験期日の繰り下げに積極的に取り組む意向を表明したと伝えられておりますが、そう理解してよろしいですか。
  87. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 実は、予算委員会でのやりとりの件につきましては、ほかにお尋ねもございましてお答えをしたわけでございますけれども、質問者の御質問の中身に対する答弁としてはややすれ違いの点がございまして、国公私立全体を通じての事柄として述べております通知の件は、各大学実施をいたします、国立について言えば二次試験の中身のことでございますし、私立はもちろん私立が実施する試験のことでございます。したがって、共通一次試験の科目についてであるというぐあいにその点が受け取られたといたしましたら、その点は私の答弁が十分でなかった点で食い違いが出た点でございまして、その点はすでに御指摘があってそういう趣旨でなかったということはお答えをしたわけでございますが、考え方といたしましては、共通一次試験についてのいろいろな問題点は、先ほどのように試験科目の問題もございますし試験期日の問題もございます。そうして、これらの点については大学関係者、高等学校の関係者、それぞれ関係者の御意見をいただいて、共通一次試験そのものについても大変社会的に関心も深いわけでございますし、それらの点については積極的な対応で改善について取り組むということは、もちろん従来からもそのような取り組みをいたしておりますし、これからもその点については私ども努力をいたすつもりでございます。いずれにいたしましても、共通一次についてそういう基本的な問題について改革をするとすれば、よく時期についていつかということをお尋ねがあるわけでございますけれども、私どもとしても本年度じゅうには結論を出して実施をすることにしたいということを申し上げておるわけでございます。そうすれば、一番早い時期でその改革が実現を見るとすればそれは六十一年度以降の入試からであろうということを申し上げておるわけでございますが、実現できるところからでも早くやるべきではないかという御意見もあるわけでございます。それらの点についても積極的な対応で検討いたしたいと考えておるわけでございます。  ただいま御質問のございました昨年の四月の通知の点は、その点が国会での質疑の際には不十分な点がありました点を補足をさせていただきたい、かように考えております。
  88. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 共通一次試験についてアラカルト制にしたらどうかという委員からの御質問もありましたが、そういうことが適当であるかどうかということを含めて共通一次試験のあり方については検討を進めなければならない、こういう趣旨のことを申し上げておるわけでありまして、ただ、五教科七科目ですか、これをアラカルト式にして一体学校教育として標準的な教育を学ぶ体制ができるかどうかという疑問もまた反面あるということでございますから、そういう点も含めて検討しなければならない、かように申し上げておるわけでございます。
  89. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 従来から言いますと大臣、後退したような感じですね。期日の問題、それから願書の問題等がありますが、御承知のとおり受験科目を削減するということが共通一次の中では一番大きな問題ですね。三十六万人受験するわけでして、三十六万人の家族や父兄なんかを加えますと何百万人に影響してくるわけです。しかも、いまの共通一次のメリットはもう何もないじゃないかというところまで極言されておるわけでありまして、それがだんだんと高じてきまして受験生が悩んだり悲しんだりしてついに受験生の自殺あるいは親が子供を殺す、これが毎年繰り返されておるわけです。ですから、ここら辺を考えますと、いまの大臣の、そういうことも含めてなんというなまぬるいことでは今日の共通一次の持つ悲劇を解消することにはならぬわけでありますから、この際、一挙にということができぬなら、せめて七科目を大学側は利用しなくてもいいというような柔軟な姿勢で、もう一歩それを前進させるために、大臣、各大学側に通達を出すというようなこともしてほしいと思うのですが、どうでしょうか。
  90. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のように大変重大な影響のある問題でございますし、私どもも問題の重要性については十分認識をしているつもりでございます。ただ、このことについては関係者の理解を得ながら取り組まなければならないわけでございまして、大学側、高等学校側その他いろいろな関係者にその問題について理解を求めて、その合意のもとに実施をしなければならぬ課題でございます。もちろん受験生ないし父兄の持っております願望といいますか、そういうような声についても十分耳を傾けて対応しなければならぬ課題だ、かように考えております。
  91. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 御指摘の点はよくわかります。わかりますけれども、生徒側も受ける高等学校側もこうした点については異論がないと理解すべきだと思いますし、国立大学協会と文部省というのは、大学の自治というようなところから、必ずしも文部省が声をかけて、大学が、はい、わかりました、待ってましたというわけにいかないということは従来のいろいろな経過から私もわかります。しかし、それは国立大学の自治、自主性ということは尊重すべきでありますが、いま申しますような点を踏まえて文部省がもう一歩指導的な立場といいましょうか、大学側の世論を喚起するというような意味からももう一歩前進する手だてが必要だと思いますが、どうでしょう。
  92. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国会での御論議等も踏まえまして私どもとしても対応しなければならない課題だ、かように考えております。
  93. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 伊賀さんのおっしゃるように文部大臣の通達一本で事が片づくのであれば非常に簡単でございますけれども、それではまた大きな間違いを起こす場合も考えなければならない。でありますから、くどいようでありますが、先ほど来、大学協であるとか入試センターであるとか高校側の意見、こういうものを聴しながら、問題が非常に深刻であるということは十分認識しておるわけでございますから、全力を挙げて努力をしたい、こういうことでございます。
  94. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 もう時間もありませんからこれは御答弁は要りません。  これもすでに新聞や雑誌等でいろいろと指摘されておりますが、大学入試センターの平均点のごまかし発表、ごまかしということがちょっと適当でなければ平均点の調整ということにつきましてもいろいろあります。朝日新聞の「論壇」によりますと、二月十日に高校の先生が、三月十四日には国立大学の教官が公開質問状ともいうべき姿で意見を発表しております。三月二十六日には参議院に入試センターの所長さんが出席されたが、これに十分な説得力がある回答がないし、この公開質問状に対しての説得力ある回答も入試センターの所長さんがいまだ発表しておられないということになりますと、ごまかしといいますか平均点の調整が行われている事実あるいは疑惑というようなことが一層深まってまいります。  きょうは時間がありませんから、いずれこれは委員長さんと理事会にも諮ってもらいまして、入試センターの所長さんに衆議院にもおいでいただきまして、具体的に論議を進めていく必要があろうかと思いますが、これは意見だけにとどめさせていただきます。  きょうは、私はあと二つ予定しておりました。少年非行の問題でありまして、文部省は少年非行の原因をどう規定しておられるか。これも時間がありませんから私の方から急ぎます。  そこで警察白書というのが五十七年度にありまして、その三十四ページに「少年非行の分析 (1)少年非行の原因」「ア 少年の規範意識」、そして「生活水準の向上という目標が一応達成されたことから、一般にあくせくしないせつな的な風潮が広がり、青少年の間には、無気力、無関心、克己心の欠如といわれるような意識の変化が生じつつある。そして、こうした意識の変化は、家庭の教育機能の低下、受験教育中心の学校教育の在り方等とあいまって、少年の規範意識を低下させる要因となっている。」、これは警察庁の白書でありまして、この白書の指摘を言いかえますと、受験体制に今日の少年非行の原因があるのだ、こう警察庁は指摘しておるわけでありますが、文部省はどうお考えですか。
  95. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 警察白書に書かれておりますところは、必ずしもこれのみに原因を帰しているものというふうには考えられないわけでございますけれども、一つの要因としてはこういうことも考えられるということではないかと思います。  私ども、校内暴力等を中心といたします少年非行の問題等を、都道府県教育委員会等の報告によりましたり、あるいは学識経験者等を集めましていろいろ分析いたしてみますと、御指摘になりましたような大きな状況と申しますか、そういうものが直接影響しているかどうかということよりも、まず、家庭の状況でございますとか、あるいは子供自身の性行でございますとか、あるいは学校における生徒と教師の関係でございますとか、いろいろなものが個々によってその要因が違いますので、一概に、共通のものを抜き出しましてこれが非行の最大の要因であるということがなかなか言いがたい点がございます。ケースによりましては、それぞれ個別のケースによってその原因が違うということをやはり私どもとしては注目しながら対応していかなければならない。  しかし、御指摘のような受験競争の持っている学校教育におけるひずみということがありますならば、それはやはり学校教育におきます教育課程のあり方とか生徒指導の問題として対応していかなければならないというふうに考えているわけでございまして、その原因の究明と同時に、日々の学校教育の実践を児童生徒にとりまして実のあるように、学校における不適応を起こさないように、そういう指導を積み重ねていく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  96. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それはよくわかるのです。文部省の方は、ある事件が起きましても、校長先生はなるべく教育委員会に知らさぬように、どうしても町の教育委員会に知れた場合は、今度は県の教育委員会に知られぬように、県の教育委員会文部省に知られぬように、隠していくわけですね、いままでが。そういう立場と、今度は警察の方は、現に犯罪を犯している、たばこを吸っている、そういう少年を直接取り調べをしまして、そこで家庭まで調べていますね。そういうことで立場が違います。だから、文部省の方はそんななまぬるい、まあ一種の分析ですわ、そんなことを言っているから、今日の少年非行というものがだんだんひどくなってきておる。最近、中曽根総理大臣教育臨調だというようなことを言い出しておりますが、きょうはもう時間がありませんからこれ以上は申し上げません。  最後に、警察庁の方、御意見を伺いたい。
  97. 阿部宏弥

    阿部説明員 お答えいたします。  私どもの方は、先生指摘のとおり、事実関係に基づいて少年をその事実を通じて見るということでございまして、具体的な非行行為あるいは犯罪行為を犯した少年について、その原因、動機などをいろいろと事情聴取して把握するわけでございまして、特に少年の保護という観点から、やがてもう一度社会に復帰させる、そのための環境調整ということも必要になってまいります。そういうことで、非行の原因になったものをいろいろと成育過程、小さいころからの成育経歴なども含めて広く原因などを調査することにしております。そうなってきますと、非行の原因あるいは問題として、家庭の問題、学校における問題、地域社会における問題、非常に幅広い問題が指摘されてくるようになってまいります。  特に学校の問題といたしましては、やはり白書にも書かれておりますように、受験教育を中心とした学校教育の中で、学校教育についていけない子供たちが、ほかの直接的な動機がそれに結びついてまいりますけれども、非行に走ってしまうといったようなケースも事実としては多く見られているところでございます。  以上でございます。
  98. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 これももっと論議を進めたいと思いますが、時間がありませんから、今後に譲りたいと思います。  いよいよ時間がございませんが、この間私は、政府委員室を通しまして、戦後の文教行政の法体系というものについて重立ったものを報告してもらいたいということで出してもらいました。昭和二十二年の教育基本法から始まりまして合計十九本。もっとも、これはたまたまか意識的かどうかは知りませんけれども教育基本法に出発いたしましてずっとありまして、放送大学学園法など十九本のこれを私見ておりましたら、教育委員会法、昭和二十三年七月十五日、教育委員会の公選制という法律が抜けておるわけです、文部省から出してもらったものに。これはたまたまそうなったのか、あるいは意図的にされたのかわかりませんが。そこで、これも時間をかけて、戦後の文教行政教育行政の法体系がどういうふうに歩んできて、それから、今後どういう方向に日本の教育を持っていこうとされておるのかというようなことについても、これまた順次機会を追いまして論議させてもらいたいと思っております。  この間参議院で本岡さんが、島根県の日大附属松江高校での建国記念日の教育勅語の朗読云々ということを指摘されておりました。私はここに五十七年度の学事報告というものを持っておりまして、これにはちゃんと君が代斉唱、こういうふうにプログラムにあります。それから、昭和二十三年六月十九日に、衆議院会議録第六十七号によりますと、これは官報でありますが、教育勅語等排除に関する決議というものがございます。参議院でもございます。その後小中高等学校指導要綱というようなものが出たりしまして、そこで、国旗でありますとかあるいは国歌でありますとかいう言葉が出てくるわけでありまして、そこら辺も具体的に論議させてもらいたいのでありますが、この指導要綱というのは告示になっておりまして、そこら辺の拘束力でありますとかいうようなことについて準備しておったのでありますが、もう時間がございませんので、いずれ次の機会にこれらの問題について触れておきたいと思いますので、これも答弁は要しません。  あと、私がお願いをしました戦後日本の教育の法体系という立場でもう一度、ひとつ文部省の方で的確な資料をお出しいただくことを要求して、私の質問を終わります。
  99. 葉梨信行

    葉梨委員長 有島重武君。
  100. 有島重武

    有島委員 学校制度の改革につきまして文部大臣確認をさしていただきたいと存じますけれども、今国会の冒頭に、本年一月二十八日、公明党の竹入委員長質疑の中で、「いまや六・三制は、中等教育を中心に多くの問題が明らかとなり、改革を具体的に進めなければならない段階に至ったと判断するもの」である、どうだ、こういう質問がございました。これに対して中曽根総理大臣が、「御指摘のように、確かに検討の必要がある」、そして「確かにそういう段階に来ている」、改革を具体的に進めなければならない段階、こういった段階に来ている、これを「検討してまいりたい」、こういう答えがこれは本会議でなされたわけでありますけれども、これはこの文教委員会において文部大臣に対してもう一遍再確認をさしていただきたい。文部大臣、いかがでしょうか。
  101. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 戦後の教育制度、いわゆる六・三・三制、これについては御承知のとおりいろいろな意見があることを承知いたしております。六・三・三制が施行されてからもう三十五年余になるのでしょうか、教育の普及といいましょうか、機会均等等、教育の発展に大きな寄与をしたという点は認められておりますが、その反面、やはり、何の制度でもそうでございますが、時間の経過に従って実情に合わないとか、あるいはいろいろな弊害があるとかということはあるわけでございまして、教育制度についても各方面からこれを改革をした方がいいという意見があるわけでございます。しかし、さればといって、これが一番将来いいのだというところまでの結論は私はまだ承知しておらないわけでございまして、先ほど来出ております受験問題あるいは教科の問題、そういう問題を含めて、現在、中央教育審議会等においても検討を願っておるわけでございますから、そういう各方面の意見を徴しながら文部省としても検討を進めておる。といいますのは、学制制度といいますのは、私から申し上げるまでもなく、これはまさに五十年、百年、千年の大計と言われるくらいの基本的な問題でありますし、関係するところ、影響するところ非常に大きな問題でございますから、慎重にいろいろな意見を総合して検討しなければならない、こういう立場で現在進めておる、かような次第でございます。
  102. 有島重武

    有島委員 「改革を具体的に進めなければならない段階に至ったと判断する」、こういうことでございますね。ということは、従来はこの改革について非常に慎重で、近くは昭和四十六年に出されました中央教育審議会の中にもいろいろな改革案、基本的な構想というものが述べられているわけですね。こういう点も踏まえまして、こうした具体的な改革を進めていかなければならない段階に来た、これを中曽根総理大臣は、「確かにそういう段階に来ている」、こう言われたわけであります。これにつきまして文部大臣にいま再確認をいたしたい、こういうことでございます。
  103. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 確かにいまやもうそういう段階に来ておるという感じを持っております。
  104. 有島重武

    有島委員 この問題につきまして総理と何かお話し合いをなさいましたでしょうか。
  105. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私と総理大臣と格別にその問題について意見交換したことはございません。
  106. 有島重武

    有島委員 本会議でもって総理大臣がこういうように明言されてしまったわけでございますね。これについては、もうそれから大分日にちがたっておりますけれども、近日中に、いろいろ政治日程が込んでおるわけでございますけれども、やはりお話し合いをなさるべきじゃなかろうかと思うのでございます。大臣も当然そういった御用意があるもの、近日中にそういったお話し合いがあるものというふうに考えてもよろしゅうございますか。
  107. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 かつて、参議院の文教でありましたか予算の分科会でございましたか、総理大臣がいわゆる教育臨調というような考えを述べておられるという新聞記事か何かがあったがということについて、どなたかから御質問を受けたことがありますが、私は直接聞いておりませんからということで、一度総理大臣の意向を確かめておきなさいという御質問があったことがあります。あなたじゃありません、どなたかでありました。その際に、総理大臣に、何か教育臨調問題というような話が委員会で出ておりますがそういう考えはどうですかと言ったら、いや、自分はまだそこまでは考えておらないということでありました。いまの学制改革について、せっかくの有島さんのお話でありますから、近日中に話し合ってみたいと思います。
  108. 有島重武

    有島委員 改革の問題は全般にわたるから何局というわけにいかないように思うのでございますけれども、改革を具体的に進めていくということになりますと、どういう手順でもって進めていくのかということをやはりこれも近日中に御発表いただかなければならぬ問題であると思いますね。断片的な改革はそれぞれ文部当局の方でも御苦労なすって進めておられるわけです。しかし、これに対しまして、先ほども言ったように、もう昭和四十六年から、いろいろな、物の考え方であるとか改革に対してはどういう考え方でやっていくのかとかいうようなことについては、もう相当年月がたっておりますしいろいろな作業が進んでおる。いまここで言っているのは具体的に踏み出すというお話でございますから、これはどういった手順でこれをいつごろからどう始めていこうか、それには予算措置をどういうふうに組み込んでいこうか、こういう問題でございます。こういったことを含めてひとつ御相談をいただきたい。これは大臣
  109. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、この問題は影響するところ大きな課題でございますから、文部省だけの考えでももちろんまいりませんし、先ほども申し上げましたように、現在、教科の内容その他等含めて制度の問題も中央教育審議会で検討願っておるわけでございますから、そういうところの意見を見まして、これは各方面の意見を徴しなければ簡単にいかないと思いますので、進めたいというのがわれわれの現在の立場でございまして、どういう案でいつごろまでということをいままだまだ申し上げるだけの作業ができておるわけではございません。
  110. 有島重武

    有島委員 そうすると、いつごろになったらばそういった具体的に何かスケジュールを示しながら踏み出されるというおつもりなんですか。当分はだめだという話ですね。総理がここで言っておられるのは、いま御指摘のとおりだ、具体的に進めなければならない段階に至ったと判断するということなんです。すると文部大臣は、総理は少し何かこういった答えをされてしまってこれは困ります、こういうふうに消極的に、足を引っ張ると言っては悪いけれども、そういうお話になりますか。それとも、それを受けて、じゃひとつ具体的なスケジュールをつくるから——つくると言っても実はできておると私は想像するわけです、優秀な官僚の方々がいらっしゃるわけですから。それで、それじゃ予算はどうしよう、こういうお話し合いになるのだろうと私は期待するわけだけれども、いかがですか。
  111. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 総理がそういう御発言を国会の本会議場でやっておられますし、当然それはわれわれも承って承知しておるわけでございますから、そればかりでなくて、先ほど来繰り返し申し上げておりますが、この問題は各方面で議論されていまや具体的に検討を進める時期に来ておる、こう判断しておるわけでございますから先ほど来申し上げておるようなことをいまお答えしておるわけでございまして、いま、それじゃしからばどういう案が、こういうようなのがあるという段階には来ておらない。これはまたいまお話がありましたように、国家財政にも大きな関係のあることでございますから、各方面の意見を徴して具体化しなければならない、こういう問題であるということだけは御理解をいただきたいと思います。
  112. 有島重武

    有島委員 どうも瀬戸山さんの方が総理大臣みたいであれですな。大きい判断がもっと必要だからそれはもっとゆっくりやった方がよかろうというふうにニュアンスとして受け取られるわけです。官僚の方々の御判断は現実を組み立てながら徐々にということ、これは綿密に間違いなくやっていただかなければならぬことであります。しかし、その時を判断する、これはやはり総理大臣が断を一つ下されたわけですから、これにすぐ呼応して、じゃどう手を打つかということに、いま手順と申しましたけれども、手順の第一番はもう始まっておるわけです。そういうふうに私は思うのですけれども、これは大きな問題だ、これは百年、千年の問題だからもう少しじっくり煮詰めましょう、これは相当じっくり煮詰めてきたわけなんですよ。その上で言っているお話でございますね。これはぜひとも具体的な——いま具体的検討とおっしゃった。こっちは具体的改革ということを言っておられるわけだな。その辺、文部大臣の御認識をもう一遍、しつこいみたいだけれども、もう少し進んだお答えをいただきたい。
  113. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 それこそ聞いてみなければわからぬことですけれども、総理が現在、学制について、こういう改革案がすばらしいというのを持っておられると私は思わないのです。いまや改革する時期に来ておるという判断を示された。それに従って、われわれも前からこのままではいけないと、各方面から意見がありますから、考えて、先ほど来申し上げているようなことをやっておるということでございますので、もう少し、現在の作業等については局長からお答えさせたいと思います。
  114. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 総理の御答弁等を正確に覚えておりませんので、そこのところ間違うといけないのでございますけれども、結局教育改革とおっしゃるお言葉の中に、学校制度の区切り方の問題を含めまして、あるいは受験体制あるいは生徒指導を含めました教育のあり方全般を含めて教育の改革というふうにおっしゃっている場合もございますし、あるいは御質問がございまして、そのように学校制度というふうにお答えになる場合には、教育内容等含めて中教審で検討しているというふうなことで、やはり文部省におきます中教審の教育内容を通ずる将来の教育のあり方についての検討というものを踏まえてお答えになっているというふうに記憶しているわけでございまして、そういう非常に幅の広い教育改革、教育についての改革の考え方ということを取り上げてみますと、大臣が申し上げましたように、文部省といたしましては教育課程の改善をやって定着を図っておるところでございますし、また教育内容の将来のあり方といたしましては中央教育審議会にすでに諮問をして検討をお願いしている、その関連で教育内容のあり方を審議する過程で学校の制度に触れるような場合にはそれも審議をしていただこうというような対応でいるわけでございます。また、入試制度の改善でございますれば、共通一次を初め私どもとしては高等学校以下の、高等学校の入試のあり方につきましても検討しているということで、逐次、教育の改革という観点から申しますと、広い意味で私どもとしてはそれぞれの問題点については検討し、着手できるものはしているというところでございますので、いつから時間を区切ってやるかというふうな先生のお尋ねでございますと、私どもとしてはそういうふうにお答えを申し上げるということでございます。
  115. 有島重武

    有島委員 じゃ時間を差し上げるから、もう一遍この議事録をしっかりお調べくださいませ。  それで、いま局長からせっかくのお答えがございました。中央教育審議会にこの種のことについて諮問をまた重ねてきたということも知らないでやっておったというわけではないわけですね。そして、文部当局におかれましてもいろいろな部分的な改革ということについて努力をしていらっしゃることを無視して御質問をしたわけでもないわけですよ。それを今度具体的に改革する、そういう趣旨で質問をし、総理大臣は、確かにその段階に来ている、そういった判断を下されたわけでございます。それだけ言っておきましょう。  それで大臣、これは提案なんです。学識経験者によっていろいろと議論をしていただく、これも一つの検討でございましょう。私どもとしては、現場の学校において先導的な試み、ぼくたちはパイロットスクール、こういうふうに申すわけだけれども、これを各都道府県に数校指定する。いままでいろいろな議論が出ておりましたけれども、それをいきなり全国的に、画一的にやあっと改革するということはこれは不可能でありましょう。しかし、地域によっては、たとえばもう現実に中学校と高校の一貫というようなこともでき得る、ないしはもうほとんど実質的にはそれと同じであるというようなことも起こっているわけであります。それから五歳児入学というようなこともございますけれども、幼稚園が併設されて校長先生が園長先生を兼任しておられるところもあるわけですよ。いま問題になっておりますのは、いろいろありますけれども、高校の先生と中学の先生と資格ないしは給与体系といったものが違うとか、幼稚園の先生と小学校先生とが相談し合うというようなことにはいまの制度上障害があるとか、そういうようなことが事実上あるわけですね。現実にいま全国でもって数校の、先導試行と言うにはまだまだ踏み出し方が小幅といいますか少ないものでございますけれども、そういった試みを初中局でもうやっていらっしゃる。それの結果ももう出ておるわけであります。具体的に言いますと、パイロットスクールを指定してそこに助成をしてあげる。こうして机上の検討から、今度は現実的問題としての検討を来年度からでも行う。いままで全然芽がなかったわけじゃないのですから、これを少し大幅に進めていく、こういうようなことは可能であると思うのですね。そしてこれも数年かけて検討していく。ただし、うちの子供を試験の材料にされちゃかなわぬというような親御さんがあっては困るわけでございまして、従来とそれほど変わりはないし、従来よりかはましなんだという確証を得ればそういった実験に踏み切ることは十分できるわけであります。たとえば中高一貫的なところはもう地方によってはある。そうすると、別に中学校でもって偏差値の厳しい輪切りというようなことを経なくても高校にみんな行かれる。これは地域的にはもうすでにあることでございますから、そういったところから実験に踏み切っていく、こういうようなことを提言したい。  実は最近、私ども八つほどの提言をまとめて発表をいたしましたことは報道されましたので御存じかと思いますけれども、こういったことはできることですから、ひとつ踏み切られたらどうか。大臣、いかがでしょうか。
  116. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 有島先生お話の公明党の五月十一日の八つの提言というのを拝見いたしますと、その中にパイロットスクールが出ているわけでございますが、これを拝見いたしますと、たとえば小学校にゼロ学年を設けるというふうなものがございまして、そのゼロ学年というものは教育制度上どういう位置になるのかということも明らかでございませんし、たとえば六年間の中高一貫教育を公立学校で試みると申しましても、設置者が異なる市町村の中学校と県立の高等学校をどうしてつないでいくかというふうないろいろな問題がありまして、拝見いたしました限りでは、なかなかそういうものを各県に一つつくってやるということは、これはこのとおりにいたしますと学校教育法の改正を伴って、先導的試行で指摘されておりますような制度上の特例を設けてやるというふうなことになるような性格のものではなかろうかというように考えるわけでございまして、私どもがいまやっておりますのは、たとえば公立の学校で、市町村立の中学校と県立の高等学校とが教育内容で連関をしていく場合、どのような問題点があるか、あるいは教育内容上、中学三年、高校三年を一貫した教育課程が組めないかというふうな観点からの研究をしておるわけでございまして、これはある程度学校教育法施行規則を改正いたしまして、そのようなカリキュラムを組めるような枠組みをしてやっているわけでございますけれども、法律改正いたしまして、そこまでいたしまして各県にそのようなパイロットスクールをつくるというところまでは、この制度改正の趣旨から見ましても、国民的なコンセンサスという観点から見ましても、その時期には至っていない。私どもとしては、いまやっておりますような教育内容上の連関性、あるいはここに書いてございますように小学校の上位学年における中学校並みの授業形態とありますが、教科担任制を導入するというふうなことでございますれば各県において試みられておりますので、そういうものを奨励するというふうなことは可能であろうと思いますけれども、法律改正をした形のパイロットスクールを各県に設置をして勧奨していくというところまでの結論なり合意には達していないというふうに考えるわけでございます。
  117. 有島重武

    有島委員 大臣、お聞きのとおりでございまして、局長としてはいまの法律を守っていかなければならぬわけですね。いまここで問題になっているのは、そういう制度をある程度踏み出した実験を許可する、特例を許すようなことを大臣として御決断なさることが必要なんじゃないのだろうか、こういうわけです。いまの制度の枠内でのいろいろな工夫はいまやっているわけです。これから制度改革というならば、一遍制度を抜本的に全部変えるのは大変だけれども、特例を設ける。いまゼロ学年のことを言われましたけれども、申し上げましたように、すでに幼稚園併設というようなことで実質的にそれは行われているわけなんですね。ですから、いまのことで法改正をするというような大げさなことではなくて、多少の例外規定を設ける場合もあるかもしれませんけれども、これはお母さんたちにとっても子供にとってもいままでと余り変わりはない。しかし、そうした一つの意識を持ってこれを検討対象にしていく、検討課題にしていく、それで具体的な検討の段階に一歩を踏み入れる、これが重要であろう、こういうふうに思うわけなんですよ。ですから、局長さんのお答えは、確かにいまの法律は守っていく、その範囲のお話でございまして、制度改革ということについては、これはちょっといまの局長お話とはなじまない話ですから、これは大臣のお仕事になる。こういうことについて、ひとつ総理ともよくお話しをいただきたい。そして文部省にひとつ号令を下していただきたい。
  118. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 有島さんからもそういう話がありましたが、公明党さんの学制改革についての御提案、私も詳細検討しておるわけじゃありませんけれども、一応目を通しました。率直に申し上げて、いま直ちにこれがそのまま実行できるかどうかということについては、私もその方の専門家じゃありませんから確言できませんが、興味のある課題だ、興味のある提言だという感じを実感として持っております。でありますから、これはそれこそ、またそんなことじゃいかぬとおっしゃるかもしれませんけれども文部省だけの考えでもいけない。地方教育委員会その他、こういうことで改革のサンプルとしてやってみたらどうかといういろいろな相談がなければいかぬと思いますから、コンセンサスがなければ成果を上げられない。私、大変興味のある御提言だと思っておりますから、検討を進めたい、かように考えております。
  119. 有島重武

    有島委員 それを含めてひとつ御検討くださいませ。  それで、いまの大臣のお答えの中でちょっと気になりますのは、あちこちと相談しなければならぬことだということがございますけれども、それはやはり省内と相談する、省内としては、また審議会と相談するという方向を、これは従来やってきたことでございます。これはむしろ労働省であるとか通産省であるとか、そういうもっと広がった形の御相談、こういったこともやっていただかなければならない、そういう意味でございます。いま検討してくださるということでございますから、その経過を見守りたいと思います。  その次、国際社会に対応していかれる日本人をつくらなければならぬ、こういった課題があるわけでございますけれども、これについて外国人の教員の私学共済組合加入について、これは問い合わせがいろいろ来ているものですから。  御承知のように外国人の教員、これはしギュラーな資格を持って常勤になっておられる方、数年前の調べですけれどもすでに千五百人。こちらで捕捉してない方々の方が多いという話ですから、約四千人ぐらいはおられると推計されております。そこで、滞在期間が二年、三年と短いわけですね。これに対して長期給付の年金制度、これが自動的に課せられているわけであります。それで、確かにこれでもいいわけなんですけれども、二十代、三十代の若い方々は、自分の国に帰って六十になって手続をとればお金をもらえるわけですね。これは相当厄介なことですね。それで短期給付のみにできないかというようなこと、これもひとつ検討課題にしてもらいたいんですね。  それからもう一つは、私学共済からこういう私学共済についてのガイドブックが組合員のために出ているわけですね。これは大変親切につくってある。組合に入るとどんな恩典があるのかというようなことについては、外国人教員のほとんどは知らないですね。出しているのに知らぬ方が悪いのだと言えばそれまででございますけれども、人数が相当多くなっておるわけでございますし、それから、日本に来てから初めて知るというようなことではなしに、この英語版みたいなものをつくって各在外公館にも一つぐらい置いておくとか、サービスしてあげるとか、そういうようなことも当然考えなきゃならぬ時期に来ておるのではなかろうかと思うのです。これをひとつ御検討いただきたいのですけれども、余り時間がないから簡単に。
  120. 阿部充夫

    阿部政府委員 御質問の件でございますけれども、先般外国人教員任用法等も成立をいたしまして、国公立それから私立と、いろいろなところに外人が入ってくるというふうになっておるわけでございますが、国の場合あるいは地方の場合、それから私学の場合、いずれも共済組合制度がございまして、外国人、日本人の区別なしに平等に適用されておるわけでございます。ただいま御指摘がございましたように、途中で六十歳になる前に退職をいたしました者については、六十歳になった時点で脱退一時金が支給される。この脱退一時金の金額は、利息等を含めますので相当多額の金額になるわけでございますけれども、決して掛け捨て等の損はないような仕組みにはなっているわけでございます。  それで、短期給付と選択制にできないかというお話かと承りましたけれども、この点につきましては、そういうふうに国家公務員、地方公務員それから私学と全部共通の問題でもございますし、また教員だけの問題でもない、あるいはまた、外国人だけではございませんで、日本人でも短期間しか勤めないというケースの方もあるわけでございますので、共済組合制度の一番基本にかかわる問題でもございます。文部省の立場でにわかにこういう方向でということを現段階では申し上げかねるわけでございますが、もちろん研究は続けていきたいと思っております。  それから第二点のお話がございました外人用のガイドブックの件でございますけれども、御指摘をいただきまして、私どもの方もそのような問題を意識いたしておりまして、先般の外人任用法案の関係等もございますので、文部共済それから公立学校共済、私立学校共済と三者協力して外人向けのガイドブックをつくろうではないかということで現在検討しておるところでございまして、なるべく早い時期にそれをつくって配付するようにいたしたい、かように考えております。
  121. 有島重武

    有島委員 大臣、お聞きのように、この制度は大体国内において日本人の先生が一番便利なように組まれておるわけです。それで、定年というとあれだけれども、相当御年配になるまでお勤めになる、こういうものを前提としているわけですね。外国人の場合はそんなお年寄りになるまで勤める人は例外なんですね。ですから、この辺のことを踏まえられまして検討していただきたい。  それから、これは文化庁に属する問題かもしれませんけれども、芸術家を海外研修に派遣する制度がございます。これは五つの分野で美術、音楽、舞踊、演劇映画それから舞台美術等、これに推薦団体が昭和四十三年から、発足のときから決まっておったということになっているのですけれども、この推薦団体をどういうふうにお定めになったのかということについては、これは文部省に事前に問い合わせました。これはどういう基準でもってやるというような確たるお答えはございませんでした。どういう団体ならばだめというようなこともないようであります。  そこで、もう年限もたっていることでございますから、これは文書で出していただいても結構です、推薦団体になる要件は何か、新規参入ですね。  もう一つは、こういった場合があるのですね。たとえば歌舞伎をやっておる。その方が、外国の演劇の演出法を、行って研修したい、こういうような場合が起こってくるわけですね。いまの推薦団体というのは、大体、外国に本当の先生がいて、そしてそこに学びに行きましょう、そういう向きでできているわけであります。今後の国際社会いわゆる国際人を考えた場合に、やはり日本文化をちゃんとしっかり身につけて、その土台の上にまた外国のものを学んでこよう、こういった向きがまた多くなるのじゃなかろうかと思います。それから、いろんなメディアが発達してまいりまして、ジャンルが多岐にわたっていくというようなこともあろうかと思います。ですから、これをひとつ検討してもらいたい。もう時間がありませんから、検討しますと、こういうお答えをいただければそれで結構です。
  122. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 在外研修制度につきましては、昭和四十二年度から行っておりまして、かなり私どもとしては成果を上げているのではないかというように考えているところでございます。  その中で、先生指摘のように、全国的な主要な団体を通じて推薦をいただいているという現状でございまして、大体これで網羅できているのではないかというように考えておりますけれども、その点につきまして、もしまだこういう団体が必要ではないかということであれば、その点なお検討させていただきたいというように考えております。  それから、団体に属しないものにつきましても、そういう団体を通じて希望を申し出て、そして私どもで審査をして決定できるという、そういう制度になっておりますけれども、なお先生の方でその点いろいろと不都合があるということであれば、その点さらに検討させていただきたい、かように考えております。
  123. 有島重武

    有島委員 そういうことでございまして、いまのところは、一つの、もう昭和四十二年ですか定められた推薦団体を経なかったらば文化庁としては受け付けないというようなところで来ておりました。もっとそれを弾力性を持たせるというようなお答えに承ったわけでございますけれども、とにかく、時代がかわっておりますし、これからの日本人ということを考えた場合、やはり十年前の意識とは大分違っておると思いますので、その辺ひとつ検討し直していただきたい。  大臣から、しますというお答えをいただいて、終わります。
  124. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 何年かたちますと、やはりほかにまた新しいそういう芸術団体ができないとも限りませんから、そういうことで、よく検討してみたいと思います。
  125. 有島重武

    有島委員 終わります。
  126. 葉梨信行

    葉梨委員長 午後三時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ────◇─────     午後三時三分開議
  127. 葉梨信行

    葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について質疑を続行いたします。三浦隆君。
  128. 三浦隆

    三浦(隆)委員 初めに、国際文化交流の推進の問題についてお尋ねをしたいと思います。  今日、教育、学術、文化の国際交流派、わが国の教育、学術、文化の発展に資するとともに、諸国民との間に十分な相互理解を促進し、真の友好関係を築いていく上に大変重要な意義を持っております。また、首相もそして文部大臣も含めて、国際文化交流の必要性を常々お訴えになられてきたところでもございます。  そんなことで、一つには教育の国際交流が、留学生事業の進展あるいは教員等の国際交流あるいはまた国際機関としてのユネスコ、OECDの事業への参加協力、そして二つには、学術の国際交流あるいは協力ということで、国際的にも学術研究の進歩発展がまことに著しく、相互の情報交換は言うまでもなく、先端的分野における第一線の研究者の交流、核融合や宇宙科学など特殊大型の設備を必要とする分野における国際交流など不可欠と言われるような分野も次第にふえてきております。と同時に、研究者の交流も進み、国際的共同研究も次第に発展の一途をたどってきております。また、芸術その他文化の国際交流も大変に今日盛んになってきているところであります。そういう意味において、今後の国際文化交流の広がりということを考えましたときに、わが国にもこれまでにない大規模な国際会議場の建設というものが必要になってきたと思うのですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
  129. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 わが国の学術、科学、あるいはその他、文化は最近非常な交流を見ておることでございまして、なおわが国が将来生きていくためには、それが国際間に相通ずるものであって、相互に稗益するものでなければならない、こういうようにわれわれは考えて努めておるわけでございます。でありますから、国際会議場というものがいますぐ必要であるかという結論を出す段階ではないと私は思いますが、ずっと前に、これは私事なんですけれども、私がちょうど建設大臣をしておりますときに、京都に御存じの国際会議場をつくりまして、国立の国際会議場という名のつくものはあれだけではないかと思うのですけれども、あれだけで賄えるのかどうか私もまだ深く研究しておりませんので、将来はそういうことが必要になる可能性があるという想定はできますけれども、いま直ちにここで結論的なことを申し上げる段階ではない、かように考えております。
  130. 三浦隆

    三浦(隆)委員 国際文化交流、そういうものが大変に大切なことである。いま京都にもある。しかし、これからさらに将来を見通して、より発展していくわが国の姿を考えたときに、より大規模なそういうものがますます必要になってくるだろう、このように考えるわけであります。そして仮に、京都にある、それでは西にあってやはり東にも必要だろうというふうなことを考えて、ひとつ——現状は確かに財政難その他いろいろな問題がかかっておりますから、これは容易なことではないというふうに思います。しかし、国際会議場というふうなものの考え方、いわゆる国際文化交流の一環としてのたまり場をつくっていこうというふうなことは、これは必要性が薄まるのではなくて年々高まっていくばかりであろう、このように考えるわけであります。ですから、いますぐつくるということではないわけでありますけれども、こうしたものをつくっていこうという方向性くらいは考えて検討していこうという姿勢は必要なんじゃなかろうか、私はこう思うのですが、再度大臣のお答えを聞きたいと思います。
  131. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 重ねて申しますが、いま直ちにつくる可能性を申し上げる段階じゃないと思うのですけれども、傾向としましては先ほど申し上げたように、わが国は国際交流といいますか国際的な地域の交流がますます必要でございまして、そういう段階が将来来る可能性はある、そういうことを頭に置いて、これは文部省だけで考えられる問題じゃないと思いますので、そういう将来のと申しますか先のことを考えていろいろ知恵をしぼる、こういうことはあるべきだ、かように考えております。
  132. 三浦隆

    三浦(隆)委員 こうした国際文化交流というのは、文部省あるいは外務省も含めてというか、日本的な大きな一つの今後の行き方を示すものだと思うのです。これまでの旧来の日本がとかく鎖国的に小さくかたまりやすかったのに対して、教育も万般踏まえて、国際的な視野をどんどん広げていかなければなりません。事実、留学生の数あるいはその他研究者の交流、そうした活動にしましても、年々その規模が広がるばかりであります。今回の首相の外遊にしましても、そうしたことを少しずつでも約束しながら拡大していかなければならないところだと思います。ただ、いまのいまという点は、確かにこれは文部省、外務省予算に限りませんで、なかなか厳しい状況にあります。しかし、これをもう少し長い目で見たときに必要であるとするならば、そうしたことを当然検討していかなければならないというふうに私は思います。  そして、いまこの日本でそれじゃどこら辺に検討したらよかろうかと言えば、やはり首都圏に私は必要だと思うのですが、東京はすでに過密の状況を抱えているとするならば、私は、昔から国際的な窓口であった横浜こそこうしたものを置く最もいい場所なのじゃなかろうかというふうに考えております。ただ、その横浜におきましても、いま直ちにと言っているわけではございません。横浜ではいま「みなとみらい21計画」というふうなものを立てておりまして、そうした一環として横浜にはいま東京と横浜を結びますような湾岸道路の建設というふうなことが行われて、これがつくられますと、東京−横浜をわずか三十分かかるやかからずで簡単に結ぶことができます。あるいはまた鉄道新線の整備ということで、こうした「みなとみらい21計画」ができますと、この新しい横浜を象徴しますそうした分野にも鉄道の乗り入れがさらに進んでくるようになります。また、「みなとみらい21計画」は、あわせてヘリポートの整備というふうなことも考えておりますし、そしてまた、そういう国際会議場にふさわしいような良好な環境づくりということも行い、またさらに横浜の後背地としましては、富士、箱根あるいは鎌倉といったような日本を代表するような土地を背後に控えておる。そして、とにかくそれよりも、港横浜というイメージは、明治以来諸外国の文化交流の窓口として発展した世界的な港町と言ってもいい。国際都市としてのイメージはいまや諸外国に広く認識されているところだと思うのです。  そういう意味で、いま直ちにということではありませんが、将来的な検討の課題として、これからわが国がますます文化交流というふうなものが盛んになるとするならば、どうしてもそういう大規模な会議場は必要であろう。そうしたことを前向きに検討する上においてこれはぜひ検討していただきたいと思うし、そこで再度大臣には、そういう前向きに検討していこうという、横浜のそういうものを仮に企画したときには、ひとつ文部省も協力の姿勢を持って、前向きに協力姿勢の気持ちを示していただきたいし、またそれにはぜひとも首都圏の一画としての横浜を、いい場所じゃないかというふうな御認識をいただきたいと思うのですが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  133. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 将来は、先ほども申し上げましたように、そういう時代が必ずや来るのじゃないかと思います。また、そうあるべき日本の姿というものは今後のすばらしい姿につながるのじゃないか、こう思っておりますが、大規模な国際会議場というものをつくりますれば、いまもお話があったように、交通であるとか通信の施設であるとか、あるいは環境その他いろいろ条件が整うことが必要だと思いますが、東京都内ということは、私は率直に言って、そういう大規模なものをつくるにはもう限界が来ておる。東京以外にどこにつくるかといいますと、もしつくるとなるとあれもこれもだと言って出てくると思いますが、いまの横浜あたりも、これは国際的に知られておる港でありますから一つの候補地であろう、かようには考えるわけでありますが、いま結論的なことを申し上げるということはちょっと無理だと思っております。
  134. 三浦隆

    三浦(隆)委員 それでは、引き続きひとつ前向きにそういう方向を検討していただきたいということで、学術局長の方、どうでしょう。
  135. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先生おっしゃいますように、留学生の交流あるいは研究者の交流、国際協力の増大というのは年を追って強まっておるわけでございますので、私どもといたしましても、各大学におけるその種の施設の整備等多様な角度から努力を続けておるわけでございますが、ただいまのお尋ねの件につきましては、大臣の御答弁の趣旨に沿いまして、私どもといたしましても対応してまいりたいと思っている次第であります。
  136. 三浦隆

    三浦(隆)委員 それでは、いまの件についてはひとつぜひ前向きに検討をしていただきたいということで先に進ましていただきたいと思います。  二番目には、不就学者、義務教育を受けるはずであったのに受ける機会を何らかの理由によって失った人たちに対するそうした学習指導の問題についてお尋ねをしたいと思います。  今日わが国は義務教育を課しているということは、義務教育が大変必要であるからだろうと思うのですが、あたりまえのようでありますが、まず第一番目に、義務教育はなぜ必要なのであるか、ひとつ大臣なり局長の方から答弁をお願いしたい。
  137. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 近代国家におきます国家、社会の形成者といたしまして必要な資質を確保するということは、近代国家の発展にとりまして欠くべからざる基礎でございまして、そういう意味で義務教育というものを設けましてすべての国民に教育の機会を与え、必要な国民的な資質を形成するための教育を提供するということが義務教育でございまして、そういう意味で、日本のみならず近代国家におきましては義務教育制度が設けられているということだろうと存じます。
  138. 三浦隆

    三浦(隆)委員 そのように義務教育が必要であるということからして、法規上どのような法規的な位置づけを持っていましょうか、義務教育について。
  139. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 日本國憲法は、第二十六条に教育条項を設けまして、その第二項におきまして「すべて國民は、法律の定めるところによりその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と書いてございまして、その法律の規定が教育基本法第四条でございますが、第四条におきまして「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」と書いてございます。また、憲法二十六条二項の法律の規定が学校教育法二十二条にございまして、そこに小学校におきます就学義務を定めている。こういう法制になろうかと存じます。
  140. 三浦隆

    三浦(隆)委員 義務教育を含めまして、教育が大変に必要であるということからして、憲法二十六条あるいはいまお答えになりましたところの教育基本法の一条における「教育の目的」から始まって、二条の「教育の方針」、あるいはまた三条の「教育の機会均等」、そしていま述べられました第四条あるいは第十条二項における条件整備、そうしたような数々の規定、そしてそれに支えられながら学校教育法その他が現在あるわけであります。  ただ問題は、義務教育を課しているわが国において、なおかつ、義務教育未了者といいましょうか、そうした人たち存在するということであります。不就学者といいましょうか、義務教育を終わっていないそうした者をこのまま放置しておいてよいものでしょうか、その点についてお尋ねいたします。
  141. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 義務教育を憲法に定めまして課しております制度的なたてまえをとっております以上、これが行われないということは、やはり制度といたしましては大きな問題であろうかと存じます。そのために、これにはいろいろな原因があるわけでございますけれども、たとえば就学猶予・免除を受けて義務教育の制度から外れるという方があるわけですが、その際には、その猶予・免除に該当いたしました心身の故障等が回復いたしまして義務教育、特に中学校の卒業程度認定試験を受けるような力が出た場合には、そういう制度等を設けましてその機会を与えて義務教育が終了できるような措置をすることが必要であるというふうに考えているわけでございます。
  142. 三浦隆

    三浦(隆)委員 現在義務教育を終えないという人が、たとえば犯罪を犯した人の中にもおります。そういうときには、たとえば刑務所では、その人が刑期を終了して出るという、わずかな期間かもしれませんが、間もなく刑務所から出所するというときに、その近所の駅までその刑務所の職員が付き添って切符の買い方を教えるというふうなことも行うし、あるいは本当に読み書きそろばんと言うけれども、きわめて基本的なことを教えて実社会に送り出しているわけであります。すなわち、義務教育が不十分であるということは個人の人格云々の形成そのものに影響を及ぼすだけではなくて、実社会に生活していく生活適応条件を欠くことによってあるいはともすれば犯罪へと陥りやすい可能性を持ってくるかもしれないということにおいて、とにかく義務教育はだれにおいても最低限度やっておかなければならないことだと思います。特に今日、いま朝テレビで「おしん」というのをやっておりますけれども、昔のように大変貧しい時代でどうにも学校に行くことができないという状況があったとすれば、もちろんそれはまたこの義務教育そのものを生み出した一つの理由であったと思うのですが、今日はそれだけでもなく、いろいろな理由があって義務教育を終えることのできない人がたくさんいるわけであります。  そこで、新しい学制の発足以来、この義務教育未了のままの人がどのくらいであるか、文部省の方からお答えいただきたいと思います。
  143. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 新学制発足以来の数字は持ち合わせておりませんが、昭和三十五年の国勢調査によりますと、義務教育未修了者が百四十二万五千六百人でございましたが、四十五年にはこれが六十万一千人に減りまして、さらに五十五年の調査によりますと三十一万人となっているわけでございまして、教育制度の普及に伴いまして義務教育未修了者が減ってきたということはこの数字が示しているとおりでございます。
  144. 三浦隆

    三浦(隆)委員 ただいまの文部省の報告を聞きましても、とにかく何万、何十万という人が現在もなおそうした状況にあるということは本当に大きなことだろうというふうに思います。そういう意味で、今度はさらにもうちょっと、昨年度においての小学校、中学校におきます長欠者の数あるいは十五歳以上になると除籍者とされるようでありますが、そうした方は何名なのでしょうか。
  145. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いわゆる長期欠席児童生徒、これは一年間に五十日以上欠席した者をいうというふうに定義いたしますと、五十七年五月一日現在で申し上げますと、学齢児童生徒合わせまして五万九千百三十九人でございます。そのほか、就学猶予・免除者が二千百四十六人、それ以外に一年以上居所不明というのがございますが、これが四百四十人というふうになっております。
  146. 三浦隆

    三浦(隆)委員 このように、昨年度において数を見ましても驚くほど多くの人数がここに入っているわけであります。そして、長欠者がそのまま行き着くところは、学校を終えないままいわゆる成人してしまうということかと思います。そういう点において、いわゆる不就学者、特に学齢児童に対するための措置あるいは学齢児童を超えた人たちに対する措置、二つあわせましてどのような具体的な措置がそうした人たちのためにとられているのか、お尋ねしたいと思います。
  147. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 義務教育の諸学校におきます不就学、特に長期欠席児童生徒が非常にふえた時代があったわけでございますが、昭和三十年の九月に文部省は「義務教育学校における不就学および長期欠席児童生徒対策要綱」というものを設けまして、不就学解消のための指導の徹底を図ってまいったわけでございます。そのためにさらに就学奨励費等の支給を行いまして就学奨励措置も講じてまいったわけでございます。また、学齢を過ぎましたいわゆる除籍者、そのほか学齢児童生徒以外の者が公立の小中学校に就学するということを希望いたします場合には、市町村教育委員会が諸般の事情を考慮いたしまして、これは適当と認められる場合には就学を許可する、差し支えないというふうなことをやっておるわけでございまして、以上のような措置を通じてこのような不就学者を解消するということに努力をしてまいっているわけでございます。
  148. 三浦隆

    三浦(隆)委員 再度同じお尋ねをしたいと思うのですが、これまで義務教育を終えないできた方、先ほどお答えいただきました一番最後のところをもう一度述べていただきたいと思います。何名だったでしょうか。
  149. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 先ほど申し上げましたのは、昭和五十五年度の国勢調査の数字が三十一万と申し上げたのは累積された数でございます。それから昨年度、五十七年五月一日現在の義務教育を終えていないという者の数、これは長欠とは違うと思いますが、就学猶予・免除者が二千百四十六人、居所不明者が四百四十人、そういう数かと思います。
  150. 三浦隆

    三浦(隆)委員 いま答弁がありましたように三十万を超えるという数が累積されてきたということは、これまでそういう人に対する対策が大変に薄かったからだろうと思います。これまでになったのは、一方では年々お年寄りなどになって対策をしなくてもひとりでに減ってきて、そういうことで少なくなってきているかもしれませんけれども、やはりこれは猶予できない問題だと思います。いま中学校卒業認定試験というのが行われて、その人たちにいわゆる義務教育修了の資格を与えようという制度があるやに聞いておりますけれども、昨年の場合、あるいは昨年がわからなければおととしでも結構ですが、何人ぐらいの方がその試験を受験されて何人ぐらいの方が合格されたのでしょうか、ちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  151. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 この中卒認定試験の状況でございますが、五十七年度の出願者が七十五人でございます。受験者が六十五名、そのうち五十一名が合格をいたしております。なお、五十六年度を申し上げますと、出願者が八十名、受験者が六十九名、合格者が四十九名というような状況でございます。
  152. 三浦隆

    三浦(隆)委員 先ほど来お尋ねしたりしたように、実際に義務教育を終えてない人が大変なおびただしい数に上っているにもかかわらず、いまお答えいただいたように中学卒業認定試験を受けた人はまことに微々たる数であります。言うなら、多くの人がそこから除かれてしまっている。すなわち、わが国は憲法なり教育基本法によって義務教育を特に必要なものとうたっておきながら、なおかつ現在そこから大きくはみ出ている人が現にいるということは、そうした人たちに対応する文部省のあり方が大変に弱かったからだろうと、お答えを聞いていてもすぐ浮かんでくるところであります。そこから文部省にだけは任しておれぬぞというふうなことで、自然発生的に夜間中学あるいは人呼んで夜間学級なり二部学級と呼ばれるものが生み出されて今日まで及んできているのだろうと思いますけれども、そうした夜間中学の実情、現状についてお尋ねしたいと思います。
  153. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 その前に、先ほどの数字をちょっと読み間違えましたので、訂正をさせていただきたいと存じます。  認定試験の五十七年度の出願者が百十五名、受験者が百一名、合格者が八十名でございます。五十六年度が百三十七名、百二十四名、九十三名という状況でございます。失礼いたしました。  それから、夜間中学の現状でございますが、これは夜間学級を設置している中学校の数が八県で三十三校でございます。それから生徒数が二千六百五十六人、教職員の専任者が三百二十三名、こういう状況でございます。
  154. 三浦隆

    三浦(隆)委員 そうした夜間中学と言われるものに対します予算措置はどうなっておりましょうか。
  155. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いわゆる夜間中学、中学校の夜間学級に対しましては中学校夜間学級調査費というものを計上いたしておりまして、これは四十六年度からやっているわけでございますが、五十七年度におきましては七百三十六万六千円、五十八年度の予算案におきましては六百六十三万円というのを計上いたしております。そのほか教科書の無償配付をいたしておりますし、教員の定数配置等につきましても特別な措置を講じているというところでございます。
  156. 三浦隆

    三浦(隆)委員 夜間中学という、大変日の当たらないような感じでありますし、いまの正規の昼間の学校人たちに比べると予算措置も大変手ぬるいというふうに思います。しかし、こうして必要に迫られたいわゆる夜間中学と言われるものは、できましてから今日まで、どのくらいの卒業生を外に送り出したのでしょうか。
  157. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 卒業者の開設以来の数は把握いたしておりませんが、五十六年度におきましては三百七十九人が卒業しているという数字は把握いたしております。
  158. 三浦隆

    三浦(隆)委員 昭和二十四年に神戸の市立駒ケ林中学というところで夜間中学が開設されました。そこでは長期欠席不就学生徒救済学級と呼んでいたようです。そして、その昭和二十四年以来、途中経過の数は、ちょっと部屋に置き忘れてまいりましたけれども、かなりの数に上っております。いまそれを改めてお尋ねして答えが出ないということは、答えが出ないだけ文部省はこうした夜間中学に対する関心が薄かったというか、そうしたことを示していることだろうというふうに思います。  こうした夜間中学では予算措置も少なく、専任教員もそれを踏まえて大変——むしろここにおける教員はきわめて献身的によくやられているのだろうと思いますが、そうしたところこそもっともっと日の当たるようにしなければならないだろうと思います。そうじゃないと、そういう措置が少なければ少ないほど、義務教育をしないまま社会に生活する人がふえてくるからでありまして、今日の厳しい社会生活を営んでいるときに、学歴を持っていてさえも大変に生活しづらいときに、義務教育すら終わらないで今日の社会を生き抜いていくということは容易ならざることであります。勢い社会から脱落しかねない、そういう懸念を多く抱えていると思うのです。そして、脱落してからそれに対する対応措置考えるというよりも、何とかそれを脱落させないように事前に防衛する措置ということの方がよほど大切であって、だからこそこの夜間中学というものが、本来余り好ましくなかったのかもしれないけれども生まれて、そして根強く今日まで来たのだと思います。  改めて、文部省はそうした夜間中学の実態をもう少し御調査されて、現在まで社会にいわゆる義務教育未了者が累積どのくらいおり、そしてそれがどのくらい夜間中学によって救済されてきたか、そうしたこともよく調べていただきたいと思います。
  159. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 夜間中学の歴年の推移は数字を持っておりますが、これを卒業した、義務教育、中学校は終わったというところが把握できなかったのは、この中に入っております者が児童生徒だけではございませんで、義務教育該当年齢を終了いたしました者、あるいは最近になりますと中国からの引き揚げ者でございますとか、あるいは関西におきましては在日朝鮮人の婦人たちが入っているというふうに実態が変わってきておりますので、そういう数字を申し上げたわけでございます。  たとえば学齢者の比率を申し上げますと、昭和四十年は四三%であったわけでございますけれども、五十七年度は〇・四%で、きわめて少ない者が夜間中学に学齢生徒該当として入っているわけでございまして、ほとんどはそういう学齢を過ぎた者でございますので、いま申し上げたような、夜間中学の実態が変わってきているということを御認識をいただきまして——これまで私どもとしては、たとえば定数の配置にいたしましても、普通の学級とは違って特別に独立した形で積算をいたしますとか、あるいは調査費にいたしましても、これは夜間学級におきます特別の教育困難ということを考え調査費という名目で委嘱をしているというふうなこともございまして、夜間学級に対しましてある程度措置をしてきたというふうに考えているわけでございます。
  160. 三浦隆

    三浦(隆)委員 夜間学級が当初開設されてからと今日、質的に変わってきたことは事実だと思います。しかし、たとえば中国からの引き揚げ者云々というのは、調査統計を見ますとたしか一人くらいだったのじゃないでしょうか、大した数ではありません。  当初出たのは、「おしん」のように、行きたくても貧しくて行き切れないという子供が多かったわけです。ところが、今日だんだん年代者がふえてきたということは、それだけ一応の生活安定になりながら、しかし振り返ってみて、自分が義務教育すら終えていないということを何となく恥ずかしさもあるだろうし、何となく勉強してみたいという意欲がわいてきたことですから、むしろ大変すばらしいことだというふうに思うのです。  ただ問題は、夜間中学の中で積極的に卒業資格を取得しようとみんなが考えているわけではありませんで、パーセンテージ的には三〇%くらいかどうかなと思います。しかしいずれにしましても、そうした人たちが望む以上はそれにこたえられるような措置こそ、むしろ進んでとっていかなければならないことだろうと思います。それから、〇・何%というのはパーセンテージで言うと少ないようでありますが、しかし、人間の人数でいけば万位を数えるということは大変大きなことではなかろうかというふうに考えます。  そうして、時間でもございますけれども、行政管理庁の昭和四十一年十一月の勧告がありまして、それが当時文部省、労働省、警察庁の方に出されていたようです。これには三つの点が指摘されております。  まず第一点、夜間中学は法上認められないとこの行管庁の勧告には書いてあったようですが、これに対して文部省の御見解を尋ねたいと思います。
  161. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 夜間中学は、義務教育を提供するという場合にはこれは昼間を原則としているわけでございまして、非常にイレギュラーな形態でございまして、法令上どういう根拠かということになりますとやはり問題があるというふうに考えるわけでございます。  しかし、いま申し上げましたように、義務教育を受けないでいる方々に対する何らかの措置という形でこういうものができてまいりました以上は、義務教育を終了するような形の夜間学級という形態をある程度認めまして、それに対する措置をしなければならないというふうに私どもとしては考えているわけでございます。行管庁の勧告がございましたけれども、それを受けまして種々の奨励措置等を講じてまいったわけでございまして、その結果、学齢児童生徒が減ってまいったというふうなことをいま申し上げたわけでございます。
  162. 三浦隆

    三浦(隆)委員 学校教育法施行令の二十五条の第五号というのは、いつつくられた規定ですか。
  163. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 二十五条の規定は、恐らく施行令ができました昭和二十八年当時からあった規定かと存じます。
  164. 三浦隆

    三浦(隆)委員 もし二十八年からあったとするならば、行管庁の勧告は昭和四十一年のことであって、四十一年のとき、夜間中学は法上認められないと行管庁は述べておったわけです。当初文部省もまた、法上認められないと答えておったやに聞いております。今日、この学校教育法施行令二十五条の五号が二部学級についての一応の法規上の根拠であるとするならば、なぜ最初文部省はそれを認めなかったのか、そこも問題だと思うのです。  というよりも、むしろ、最初に義務教育そのものについて私がお尋ねしたのもそこにあるのです。法令というものはだれのために何のためにあるのかと基本を考えたときに、解釈上、いわゆる弱者を見捨てるような解釈の発想というのは本来おかしいわけであります。「おしん」という女の子がいま昼間一生懸命働いておる。働きたくて働いているわけじゃない、働かなければならないから働いていたわけであります。そして、向学心があるからこそ仮に夜学へ通おうとした場合、そういう夜学へ通うことは法の規定では認めないのだ、だから、行管庁のせりふというのは、そういうのは早いところなくせ、なるべく早く廃止せよというふうに出ているのです。廃止せよというのは廃止されても痛みを感じない人のせりふであって、廃止されたら困る、痛みを感ずる人の方の立場に立っていないのじゃなかろうかというふうなことを考えるわけです。そういう点をあわせて初中局長からお答えをいただきます。
  165. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 二十五条というのは、市町村教育委員会が小中学校について一号から五号に掲げるような事由があったときに都道府県教育委員会に届け出る旨の手続的な規定でございまして、「二部授業を行おうとするとき。」というのは入っておりますが、これはいまの夜間中学を想定したというよりも、市町村実態によりましては二部授業ということが戦後には考えられたというふうに思います。  夜間学級ということは高等学校の定時制を考えていただきますとわかるわけでございますけれども、全日制という形で昼間を基本として定時制を認めたということでございますし、やはりわが国の義務教育においては昼間の学校における修学というものを前提としておりますので、いまの二十五条の五号が夜間学級の根拠規定というふうには私ども考えていないわけでございます。したがって、法的にはやはり問題があるということは行管庁の勧告の指摘するとおりだと思いますが、しかしながら、実際上こういう措置都道府県におきましてとられてまいりまして、その中に学習の意欲があるという方々がおる以上は、それに沿うような何らかの措置をしながら未修了者をなくすというふうな措置をとらなければならないということで私どもはやってまいったわけでございます。
  166. 三浦隆

    三浦(隆)委員 昭和四十一年から現在昭和五十八年、もしその規定が夜間中学を認める法規上の根拠としては薄いというのであるならば、なぜはっきりと認めるような法改正などをとってこなかったのか、むしろその点をお尋ねしたいと思います。
  167. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いま二十五条の五号を申し上げましたのは、戦後の、特に新制中学をつくりましたときに急に校舎を増設するというふうなことがありまして、校舎の都合とかいろいろな形で市町村におきましては苦労をいたしまして、それを二部授業という形で青空教室から始めたところもあったわけでございますから、そういう規定が二十五条の五号にあったということでございまして、一般的に夜間における中学校の修学という形態を法改正をしてまで認めるということではございませんで、やはり新しい中学校の形態としては全日制の中学校をしっかりつくってそこに生徒を収容するという政策をとるべきであって、たまたまいろいろな理由で義務教育を受けられなかった方についての措置を、法改正をいたしまして夜間学級というふうなものを法上認めるということはやはりわが国の新しい新制中学校のたてまえから申しまして認められないということで、実際上は自然発生的にそういう形の夜間学級のようなものができてきたという経緯かとも思います。それを法上認められないからだめだというふうなことではなくて、それは必要が生んだ制度であるということで、私どもとしては必要な援助なり措置を講じてまいったということでございます。
  168. 三浦隆

    三浦(隆)委員 時間なので残念なのでありますが、基本的な考え方が若干やはり納得できないわけです。現実に義務教育を憲法上も課しておって、というか教育法令上課してあって、しかし現に義務教育を満足に終えない人がたくさんいるわけです。その理由は、貧しいこともそうかもしれない。健康上の理由もあるかもしれない。あるいは学校嫌いといったような当今よく指摘されますようなそうした理由であるかもしれない。いろいろな理由があるかもしれませんが、それをのけてもう一度勉強したくなって勉強するのだということは悪いことなのかいいことなのかということなんです。「おしん」という女の子が昼間疲れたから、子供だから疲れて夜寝てしまうのがいいのか、仮に疲れていても向学心に燃えて勉強しようという気になるのがいいのかどうかという認識なのであります。あるべき姿としては義務教育、昼間だけで済めばこしたことはないかもしれないけれども、何らかの理由でそうできなかった人たちに対して、夜間でなければだめであるというならば、はっきりとそれを認めていくのがわれわれの本来の趣意だったのじゃなかろうか、こう考えるわけです。  現に、法の解釈だけじゃありません。きょうは残念ながら質問できませんでしたけれども、少年刑務所の一連の問題について実はお尋ねしたいと思っておりました。少年刑務所に現在入っている人の中にも義務教育をまだ終えてない、そういう子供たちだけを専門に入れている少年刑務所があります。そこで現に義務教育の勉強を教えているわけです。しかもそこは、ある中学の分校という形をとって教えておるのです。法の規定なんていうものはあるものじゃありません。少年刑務所そのものが、ある公立の中学の分校という異例の形式をとることによって、そこで勉強した子供が少年刑務所を出ながらちゃんと中学卒業の資格を現実において取っているのです。法務省という矯正機関でありながら実態的にはいわゆる文部省の管轄である義務教育の一端のものをやっておるのです。ということは、そこもまた、いわゆる少年刑務所に入っている子供たちが義務教育がやってないものならばむしろ子供たちに積極的に義務教育を授けていった方がよろしいといった、きわめて教育的な配慮が法務省においてはあると私は思うのです。逆に、教育をつかさどる文部省の方がそれを切り捨てかねないような発想をとるということはきわめて遺憾なことではないかというふうに思います。  本日はそうした問題点だけを指摘しまして、質問を終わらしていただきたいと思います。
  169. 葉梨信行

  170. 山原健二郎

    ○山原委員 英語教育の週三時間問題について質問をいたします。  この問題では先日も五万名の請願署名をいただきまして、また、昨年もそうでございましたが、しばしば請願が出まして、この委員会でも請願の採択あるいは保留の問題で論議をしてきたわけですが、きょうはこの問題について最初に伺いたいと思います。  ちょうど一昨年の一九八一年の四月に標準週三時間が出まして、私はその年の五月に質問主意書を政府に対して出しました。この質問主意書に対する答弁書が、ここへ持ってきておりますが、たしか六月の十二日に出されております。これが出ましたときに、私はある新聞記者の方から、大体質問主意書に対する政府答弁書というのは非常に木で鼻をくくったような答弁書が多いのだけれども、これは全くいわゆる官僚作文の典型のようにひどいものですね、こういう話を伺いまして、私も実は赤面をしたのです。そういうことにならないように、一般的な論議でなくてかなり細かく私は質問主意書を作成しまして、それに対する政府、といっても文部省でありましょうけれども、その答弁をいただきたかったのでありますが、結果はこういうごく短いものになってしまいました。  ところが、この問題をめぐりまして、全国的には教育の現場におきましても、また父母の間にもかなり大きな運動も起こっておりますし、また今日の非行あるいは校内暴力問題との関連におきましても、英語の問題は非常に重大な問題になっているわけです。その意味で、きょうは私の見解を述べながら文部省の意見を伺いたいのです。  まず第一番に、今日この問題は全中学生の問題、また親の問題になっておるわけですね。また、教師の問題にもなっておりますが、それに対する文部省の認識はどうなのかということを最初に伺っておきたいのです。どういうふうに考えておられるか、簡単にお答えください。
  171. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 中学校の英語の授業時間の問題でございますが、これは何度か当文教委員会等におきましても質疑応答があったわけでございます。私どもといたしましては、今回の教育課程の改訂の趣旨が十分に国民の間に理解されなければならないという観点から、今回の全体の教育課程改訂の趣旨を申し上げますと、先生御承知のように、できるだけ基礎的、基本的なものにしぼりまして、そしてゆとりのある学校生活を送れるような措置でございまして、選択教科のみならず、国語、算数、理科、社会等におきましても教科の授業時数を削減いたしまして、基本的なものにしぼってしっかり教えると同時に、ゆとりのある学校生活ができるようなカリキュラムにするような基準をつくったわけでございます。そういう全体の趣旨をまず御理解いただくならば、英語の問題だけではなくて、教育課程の他の分野につきましても全般的な理解をいただいて、英語の問題も考えていただくのが必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  172. 山原健二郎

    ○山原委員 それだけでは対処できないところへ来ているんですね。だからその点について申し上げたいと思いますが、もちろん英語、数学、国語というのはあるのですけれども、英語の場合はこれは選択科目ですね。それから、これは義務教育においては中学校一年、二年、三年だけです。その点では算数や国語と違うわけですね。しかもこれが受験の際にはまた重要な科目になってくるわけです。必修科目でない選択科目であって、しかも受験の一つの重要な要素になってくるわけです。そういう点から考えますと、これはいまお答えになったようなことだけでは今日の情勢には対応できない問題が出てきておると思います。  現在、これはどの資料を見てもそうですけれども、一学期でもうすでにわからない子供がふえているわけでございまして、結局英語は嫌だということになってくる。  それから、この間、忠生中学校で八木先生の問題が起こりました。八木さんは英語の先生です。あそこは過密学級ですから、他の学校の例も調べてみたのですが、四十五名の生徒七学級を持っているんですね。三百人近い子供を持ってそして教えておられるわけですが、目の前で落ちこぼれていく生徒がわかるというのです。わかるけれども、それに手を差し伸べることはできない。その子供たちは最初はおもしろくない、嫌なものですから、学校の中で黙っている、それが重なってくると突っ張りになってくる、そして先生に対する暴力になってくるというような経過をたどっておるわけでして、これは単に英語だけではございませんでしょうけれども、まさに子供も先生も犠牲者になっているわけでございまして、英語が非常に大きな要素の一つになっています。  たとえば、週三時間とおっしゃいますけれども学校の行事その他がございまして、大体平均しまして年間八十時間、週にいたしまして二・二時間程度が相場じゃないか、こう言うのですね。そうしますと、反復練習しなければならぬのが外国語の練習でありますけれども、結局反復練習ができない。言うならば、先生に会うのが三日に一回程度なんだ、そういったことで結局わからなくなってしまう。この落ちこぼれが非行問題の一つの大きな要素になっているわけですから、この点は私はどうしても考えなければならぬ問題だと思います。そうすると、文部省の方ではゆとりの時間をとるのだとか他の教科との問題だとか、こう言うのですけれども、そういう意味では英語は一つの特殊な性格を持っているわけですね。中学校年間の問題、それからまた、いま申しましたように受験の重要な科目になるという問題などを含めまして、特殊な事情を持っておると思います。  それともう一つは、文部省の方では、いままでの内容を減らしたのだ、だから週三時間でもやっていけるのだ、こういうことをおっしゃっているわけですが、この点について、私はどこが減っているのか調べてみたのです。そうしますと、三つあると思いますが、一つは文型の種類、これを五種三十七から五種二十二に減らした。それからもう一つは新語の数、これをいままでは九百五十から千百五であったものを、九百から千五十五に減らした、こう言っております。だからここでは単語なら単語が五十減っているわけですね。それから、必修語の数を六百十から四百九十五に減らした。それから、文法事項については二十一項目を十三項目にした。これが文部省のおっしゃっている教えるべき内容を大幅に減らしたという中身だと思いますが、大体それは間違いありませんか。
  173. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 ただいまお挙げになりましたほかに、言語活動の領域におきましては二十項目を半分の十項目にしたということを加えますと、御指摘のとおりかと存じます。
  174. 山原健二郎

    ○山原委員 それで一つずつ私、言っていきますけれども、文型の種類というのは何を指しているのか、指導要領を見てもわかりません。実際減っているかどうかということが現場の教員にとっては全く実感がないのです。  それから二つ目に必修語の削減というのがございますけれども、必修語の削減の例を見てみますと、たとえば一人称、三人称単数の過去形のウォーズ、ワー、これはアーの過去形ですね、それからビーン、ビーの過去分詞、つまりビーの動詞の過去形、過去分詞までが必修語から外されているわけであります。しかし、これは学習すべき文法事項に過去形が入っているわけでございますから、当然覚えなければならぬ問題として残っているのです。数字の上では消したようですけれども、実際は消えてない。またベター、ベストも必修語から削除されておりますけれども、これも比較が学ぶべき文法事項に入っていますから当然覚えなければならない単語なんです。だからこれも削られていないのです。だから、必修語の削減が学習負担の軽減と結びつくかのようにおっしゃっておりますけれども、その文部省の論理というのは、こういう意味ではまさにトリックがある。これが一つです。  もう一つは、文法事項について申し上げてみますと、これは五項目削減された、こうなっておりますが、各学年一つずつありました接続詞の事項ですね、合計して、一年生で一つ、二年生で一つ、三年生で一つですから、三項目が項目から除外されたとなっております。けれども、一年生の接続詞のうち、たとえばアンドとかオアとかザンとか、二年生の場合はビコーズとかバットとかザット、ホェンとか、あるいは三年生の場合、アズ、イフ、ゾウ、これらは全部実際は出てくる事項でございまして、教えなければならないものなんです。ところが、これが三項目減った理由に挙げておられるのですね。実際の現場で教えなければならぬものですから何一つ減ったという実感が出てこないのは当然のことです。それから、比較の文法事項の場合でも、一学年で形容詞の規則的な比較変化、それから二項目で副詞の規則的な変化、そして二学年で一項目、形容詞の不規則な比較変化、合計いたしまして、この三つですね。三項目になっていたのを今度の学習指導要領では、二学年で形容詞及び副詞の比較変化、一項目にまとめた。だから結局項目数では三から一に減ったのですけれども、実質的に教える内容は変わっていないわけです。二学年で形容詞及び副詞の比較変化、こうなっているのです。  だから、結局、以上の点から見ますと、いまの計算からいいまして、五項目減ったというのですけれども実際はそうではない。二十一項目から十三項目に減ったということをおっしゃっていますが、それはもう形式的なものにすぎないで、実質的には二十”項目が十八項目になったにすぎない。しかも減った文法項目は関係副詞また前置詞プラス関係代名詞ぐらいでございまして、この項目は御承知のように関係代名詞が理解できれば短時間で教えられることです。したがって、結局時間がかかる、そして子供たちに理解させなければならぬものは残ってしまった。短時間で教えなければならぬ、また短時間で理解さすことのできるものを削って、それが項目になってこれだけ削ったのだから週三時間でもよろしいのだという論理ですね。  これは、文部省の頭の中で考えられたことかもしれないけれども、現場の実感としては全く違います。だからいろんな問題がいま起こってきているのですが、これについて簡単にそうではないとおっしゃるかどうか伺っておきたいのです。
  175. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 ただいま先生が一から三までをお挙げになりまして私が四を追加したわけですが、そのような学習内容の削除ないし統合、精選というようなこともございますが、英語教育全体の考え方を細かくいろんな単語を十分にマスターするということだけではなくて、やはり話題の中心をとらえて事柄の必要なところを早く的確につかむような指導をするとか、そういうふうに指導内容につきましても今回の指導要領におきましては変更を加えているわけでございまして、そういうものとあわせまして、整理されました学習内容を的確に、必要なものは教え込むということが今回の指導要領の眼目でございますので、形式的な数字の語数のあれもございますけれども、そういうものとあわせまして、教科書におきましてもその趣旨が反映されまして相当簡略されているということもございます。  また、減ったと先生がおっしゃいますけれども、従来とも百五時間という標準時間はたてまえとしては変わっていないわけでございまして、これが選択教科の幅の中で実際上、中学校におきましてはそれにプラスしてとられていたということがありまして、指導要領の内容等は標準百五時間を基礎として組み立てられておりまして、それにさらに今回の指導要領におきましては、いま申し上げましたような学習内容の精選と、さらにそれを指導方法におきましてもしっかりと基礎的なものにしぼって教えていくというふうになりましたので、英語教育における考え方をやはり現場においても変えていただいて教えていただく必要があるということでございまして、そういう教育課程全体のあり方、その中における英語教育の方針というものを現場では受けとめまして、そのような形で、たとえば私どもが調べたところによりますと、第三学年におきましても三時間という学校がほとんど九割になっているという実態を見ますと、そのような新教育課程の趣旨が理解されまして、三時間で行えるような方向で定着をしつつあるというふうに私どもとしては見ているわけでございます。
  176. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題はかなり時間をかけてやらなければならぬ問題ですが、わずかの時間でやるわけですから。  いま言いましたように、実態としては、本当に重要な、時間をかけてきちんと基礎的に理解させなければならない問題は残っておりまして、そしてまた、比較的簡単に、教えなければならぬ、また教え得るものが削られて、それが週三時間に削減の一つの材料になっているということ、これは私は幾つもの例を挙げることができます。けれども、時間の関係でそれを省略しまして、教科書です。  教科書が、これはページ数は減っているわけですね。ところが、では教える中身がどうかというと、これは減っていないのです。教科書そのものは、まあ教科書によって違いますけれども、五ページないし六ページ減っておりますが、その結果どういうことが起こっているかというと、逆に密度の濃いものになっているわけですね。時間数は削られる、教科書は減っていますが、いかにも教科書が減っているからこれは時間が少なくともやれるのじゃないかということなんですけれども、非常に中身が濃密になってくる。  それから、二つ目としては、繰り返しがなくなっているのです。外国語の教育というのは、これは繰り返し、反復練習ですよね。そして覚えさせていくわけですから、それができなくなってしまって、結局子供がわからなくなってしまう。  これは先生方の意見を聞きますと、非常に頭の回転のよい子はわかるというのですね。ところが、あとは、家庭教師、塾でもだめだ。塾の先生の悩みが出ていますけれども、塾でもいかぬ。優秀な家庭教師につけてマン・ツー・マンでやっている子供に理解できぬということです。だから、大変なことです。塾の先生の言葉をちょっと紹介しますと、前は学校教育で教わってわからぬところを塾に来てそれを教えておったのですが、いまはまるで学校でわからないで来てしまう。学校は何しているのだ、どうなっているのかということまで塾の先生方がおっしゃっておられるわけです。  これは文部省のかつての視学官をしておられました宍戸良平さん、この人が、学習指導要領の前の改定のとき、一九六九年のときですが、「学習指導要領の展開」の中でこういうふうに述べています。「週四時間ないし五時間のとき、このときでも、一学期に三分の一落ちこぼれていく、二学期には三分の一落ちこぼれていく、三学期に三分の一落ちこぼれていく」、そう言っておられます。  四時間のときでもそうですから、いまや一学期で落ちこぼれていくというのが、全くわからない子供が出てくるという。そして、その子供は、黙って座っている。結局、おもしろくないものですから、子供のあれはわかるでしょうが、存在感を表明しなければなりませんからね、だから突っ張る。突っ張っていく、そして教師に反発する。教師はどうなるかと言うと、わからないものだから子供たちは騒ぎ出す、騒ぎ出すから授業が成立しない、成立しないから先生方も自信を失ってしまう。  きょうも新聞に、これは数学の先生が、非常に優秀な先生のようでありますけれども自殺をしておられるのですね、自信を失ったということで。これも過密学級です、三百人を目の前にして。これは私が聞きましたら、八木先生の場合も、先ほど言いましたけれども、わからぬ子が目の前にいるのだけれども三百人近い子供を教えているのですね、一人一人に目が届かない。結局こういうところから、しかし教科書は進めていかなければならぬという任務もございますから、教師自信がやる気を失っていく場合が多いし、すごい過労になってきます。  一例を挙げますと、たとえばdという字ですが、これを書く子供のノートを一つ一つ点検しないとわからぬのだそうですね。こういうふうに普通のdと書く子供はいいのですけれども、逆に書くのです。それからさらにoを書いてlを書いてこうひっつける、こういうのabcd、アルファべットのdでさえこういう落ちこぼれが出てくるのですね。書き方もわからない。その子供の目の前に寄ってそのノートを点検していくならば、それは見つかって、だめだよと言って教えることができるのですけれども、それは大変なことです。先進国でいけば十五名でしょう、外国語を教える場合十五名。日本は四十五名ですから、実際に四十人学級の問題がここに出てくるわけですが、それをいま言っても仕方がありませんけれども、よほど文部省としてもこういう声を聞いてあげないと、ますます落ちこぼれとそしていわゆる悲しい事態が出てくる可能性を持っております。  高等学校の方へ聞いてみますと、高等学校の方はどうかといいますと、マイナスからの出発だと最近は言い出したのですね。英語の授業についてはゼロからの出発じゃないのです、マイナスからの出発だ。高校一年生へ入ってきた子供を教える場合に、ゼロからの出発じゃなくてマイナスからの出発だ。何ということかと聞きますと、英語に対して生徒が恨みつらみを持って来ると言うのです。その子供たちに対してまずその恨みつらみをのけてやる、このマイナス部分からいかなければならぬというわけですね。だからこういう実態、これは文部大臣もお聞きいただきたいのですけれども、こういう実態というものを文部省としては本当に深部にわたって把握をしてほしいのです。だから、テレビでも最近は英語は使われますし、外国人は来るし、交流は深まっていく。あっさり言えば、すべての国民がこの英語の問題について、単なるいままでの英語という観念とはまた別に、国際交流の面でも重要なものになっておりますし、これはNEC、日本電気の語学教育の文書を見てみますと、これはシンポジウムで、この語学教育を企業でやっている場合ですが、企業内の英語教育は基礎に週三時間では困る、学校教育を基礎にして教えていくわけですから、四時間以上あればそれが基礎になり得るのだけれども、このままでは、週三時間ではエリートでも英語嫌いが出てきて、しかも受験英語しか考えていないゆがんだ形でであらわれてくる、これでは国際競争できないということまで言っているわけですね。そういった点から考えまして、本当にこの問題は重大な問題だと思います。  ところが問題は、この学習指導要領には、総則の中に、地域あるいは子供の発達段階あるいは学校における創意工夫というもの、創意工夫を持って編成をすることができる。それは総則の中にうたっているわけでしょう。ところが、学校の中で意思統一して、父母も一緒になりまして、じゃここでは週四時間にやってみようという意思統一ができた場合でも、恐らく文部省の指示でしょうね、これを教育委員会がとめてしまう。これは熊本の例も出ております。もうこれは各地に出ていまして、実際に言えないのだそうです。苦労してたとえば三年生の場合に四時間あるいは三時間半やっておることも、報告すれば、ここであっさり言えば抑えられてしまう、そんなことやっちゃだめだと。この強制ですね、私はこの強制はやめるべきだと思うのです。  これは熊本の人吉でPTAの総会の席上で出されておりますけれども、人吉の場合はPTAの方たちが集まって一千名が会をやって、この週三時間ではいかぬという会を持とうとする。そうすると教育委員会の方から全県のPTAに指示を出して、ああいう運動に参加するな、こういうことがある。集まっている人たちは思想、信条、全然別ですよ。みんな子供たちに力をつけたいということで集まってきて、何とか、このいまの状態ではいかぬからこれを改善するように運動しようじゃないかといってPTAの皆さんが集まっているのに、それはだめだ、こういうふうになってくるわけですね。いわゆるこの強制は少なくとも私はやめるべきだ、こう思いますが、その点いかがです。
  177. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 これは何度も申し上げているわけでございますが、英語の授業時数が減ったというような形で喧伝されているわけでございますけれども、そうではございませんで、やはり従来の百五時間という標準のたてまえは変わっていないわけでございます。たまたま他の選択教科を英語に充てていたという実態学校にありまして、その結果として新しい教育課程になって時間が減らされたということでございまして、その辺のところは正確にやはり理解していただかなければ、教育課程のたてまえが十分に理解されないままにいろんな議論がなされていくということでございますので、やはり私どもとしても、教育委員会としてもそういう趣旨を十分に理解いただくということを前提といたしまして、この選択教科の中にどれだけの時間を充てるかということは、教育課程審議会におきましてるる議論をいたしました結果、選択教科全体としてもやはり時間数を減らす。それは必修教科の方もそうでございますけれども、そういう形でゆとりある、しかも基礎、基本的な教育内容にしぼったという、そういう教育課程改訂の一環としての選択教科の英語のあり方でございますから、そういう趣旨をまず十分に理解していただく必要があると存じます。  そういうことから申しますと、この教育課程の基本的な立て方の中で選択教課としての英語に何時間を充てるかということは、学校教育法施行規則に書いてございますように、私どもとしてはそこに定める標準に従って行われませんと、他の選択教科を志望する子供の選択でございますとか教科全体のバランスでございますとか、そういうものが適正でなくなってまいりますので、そういう観点からやはり教育課程の趣旨に沿った実施と申しますか、そういうことを指導してまいらなければならないというふうに考えておるのでございます。
  178. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、他の教科に対してそれを削って何とかということを言っているんじゃないのです。それもゆとりの問題から出ていると文部省は言う。ゆとりなんかどうなっていますか、いま全国的に。どんなゆとりのことをやっていますか。みんな迷って困ると言っているのですよ。そしてかえって、この週三時間を強制したためにもうゆとりそのものがなくなっているのです。ゆとりどころじゃない。とにかく詰め込まなくちゃならぬ。わかろうがわかるまいが突っ走らなくちゃならぬというところまで来ておりますから。そういう意味で私が言っておりますのは、この学習指導要領の総則にございますように、学校の創意性を生かしていく、授業の時間割りの編成に当たっては地域、学校、生徒の心身の発達、特性を考慮しながら創意的な課程を組んでいくということもございますし、だからその意味では、私はいまこれを週四時間にせいなんということを言っているのじゃありませんよ。でもそれを、標準週三時間ということに対して、あらゆるその学校を取り巻く情勢の中で皆さんが合意をして、ここではこういう状態にしなければだめだということについてやろうとしておるときに、これを強制してとめるということはいかぬということを私は言っているのです。結局そういうことがいま子供たちを塾へ追い出していく、家庭教師をつけなくちゃならぬというような、結局そこで選ばれた者のみが英語の習熟をしていくということになるわけですからね。文部省は今度は習熟度別のあれを出すなどということがきのうの新聞にも出ておりますけれども、きょうはそこまで申し上げるつもりはありませんが、この点ははっきりと申し上げておきたいのです。強制するのではなくて——趣旨を体するということはわかりますよ。わかりますけれども、その上に立って学校において一定の方法が考えられるならば、それに対してそれをやめると強制をする必要はないと思うのです。  大臣、この点はいかがでしょうね。英語の問題について少し時間をとってお話ししましたが、このままでほうっておきますと、またこれが一つの大きな欠陥を生じてくる、また国民の間からもさらに大きな運動が起こってくると思いますが、大臣も御存じないことではないと思いますので、その点について見解を伺っておきたいのです。
  179. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 大臣にお尋ねでございますが、私の方からお答えをさせていただきます。  英語につきまして、百五時間を標準として選択教科の中でとるということは、やはり新しい教育課程の中で選択教科を削りましてその中でとらせるということでございますから、そのほかの、たとえば三年生で選ぶところの美術、音楽というふうな選択教科もあわせて考えますと、それをやめて英語だけにするというふうなとり方は適正ではないということで、私どもといたしましては、新教育課程の趣旨に従って各学校教育課程が組まれるように都道府県教育委員会にも指導しているわけでございまして、強制と言われましたけれども、趣旨に従った指導をしているということでございます。
  180. 山原健二郎

    ○山原委員 これは、必ず破綻をするであろうということを私は申し上げておきます。  次に、文化予算の問題ですが、これは文化庁長官においでいただいておりますけれども、日本の文化予算は、本当にだんだん惨めな状態に、過去十五年間の最低記録になっている。一般会計に占める文化庁予算は、四十九年には〇・一%、それが五十五年度からずっと後退を始めて、五十八年度は〇・〇七九%、こういう結果になっています。そしてイギリスは、五十六年の例ですが、〇・二%、フランスが〇・五%。今度フランスは、ミッテラン政権になりましてから大幅に増になっておりまして、御承知のように、フランスの国家予算に占める文化予算の比率は、ことし一九八三年度で〇・七九%。一%を目指しておるようですが、〇・七九%にとどまっておりますけれども、金額にいたしまして三年前に比べて約倍ですね。これに比べて日本の文化庁の予算というのは、過去十五年間で最低の記録を示しておりまして、四百億円という数字でございますけれども、文化庁長官、これについてどういうふうにお考えでしょうか。
  181. 葉梨信行

    葉梨委員長 浦山文化庁次長。(山原委員「長官は来てないの」と呼ぶ)
  182. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 次長でございます。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 長官はどうしたの。長官に対して文化政策を聞こうとしておるのだから……。
  184. 葉梨信行

    葉梨委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  185. 葉梨信行

    葉梨委員長 速記を起こして。  浦山文化庁次長
  186. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 一応、私の方から答弁をさせていただきます。  国家予算の中で文化予算の占める割合というものの外国との比較につきましては、外国の制度、組織あるいは予算の内容等がそれぞれの国で非常に異なっておりますために、これが文化予算でこれこれであるということはなかなか一概に言いにくいわけでございまして、それぞれの国に従って予算を組んでいるというような状況であろうかというように考えております。  わが国におきます文化庁の予算につきましても、芸術文化の振興あるいは伝統的文化の象徴である文化財の保護を図る観点から、厳しい財政状況下にはございますけれどもできる限りの配慮をしているところでございまして、五十八年度の予算総額はいま御指摘のように四百億五百万円で、前年度に対しまして一億四百万円、〇・三%の増という形になっているわけでございます。長期的には、ただいま先生の方から御指摘ございましたように、若干経済情勢の変化あるいは財政状況等を反映をいたしまして少なくはなっておりますけれども、先ほど御指摘のように〇・〇八%というような数字をともかくも維持をしているということでございまして、私ども、今後ともこういった文化予算の確保については十分努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 これは大変なことです。行革の関係もあって、たとえば民間の芸術等の活動費に対する補助は一割減、十一億二千五百万円になっております。オペラ、バレー、オーケストラ、演劇などの創作活動、あるいは新劇団協議会、児童演劇協議会の学校公演などの補助もこの中に入っておるわけでございますが、調べてみますと、文化庁直轄のこども芸術劇場にしても八・八%の減、青少年芸術劇場八・六%の減、移動芸術祭八・四%の減というようなことです。  この間、私はこども劇場の人たちの要請を受けたわけですが、ずいぶん苦労しておられるわけですね。実際に文化の向上のためには、私はもうちょっと文化庁もがんばってほしいと思います。また、文部大臣もがんばってほしいと思うのですが、きょうは時間がなくなりましたので、一つは、子供の学校演劇をやっておる数というのは、ずいぶんたくさん苦労してやっておられますけれども、この際に、要保護児童それから準要保護児童に対する観劇料、これは大体劇団の方で払っているのです。ところが、全幼稚園、小学校、中学校高等学校生徒、大体二千四百万おりますが、そのうちの二七・六%が観劇をいたしておるわけでございまして、年間一万日、六百六十四万人が観劇をいたしております。その中には、いま申しました要保護、準要保護の児童もおるわけですが、学校教育法を見ましても、やはりこういうものに対する補助問題があるわけですから、そういう意味では私は、これなどに対しては市町村が中心になると思いますけれども、国としてもこれに対する補助などというのは、一つの問題の提起として考えておく必要があるのではないかと思いますが、この点が一つです。  もう一つは、これとちょっと関係が外れますけれども、これは初中局長に対しまして、文部省の行っている研究指定校の選定の問題ですが、これがどうなっているのか。  実は、先ほど言いました英語の問題につきましても問題が出てくるのですが、これは一つの例です。大阪の堺市の白鷺小学校の場合ですが、ここに突然理科の研究指定校が、たまたま文部省から来られた指導官の言葉によって発表されるわけです。それまで、ことしに入りましてから指定校の問題が出まして、ここも過密学級でありますけれども先生方も困って、そして過労の問題、異常の問題が、前からの研究指定の問題等ありまして、そのために、これ以上はもうかなわぬということで、先生方の中には、これを受けるかどうかでとうとう採決までやっているのですね。そうすると、受けるという方が七名、受けないという方が三十八名と、二回やっておるわけですが、新学期を迎えて新しい先生が来たものですから、また受けるかどうかで採決をしてみますと、今度は三十八対七で、七名の方が受けるというのですが、三十八名の方は嫌だというような例。こういうものに対して、文部省は、そういう学校の合意なしに研究指定校という、これは指定を受けた場合は大変なんですね、そういう押しつけをいままでやっておるのか、また、こういう場合に学校の教職員の意思を聞く必要があるのではないかと思いますが、この二つの点について伺いたいのです。
  188. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 先生指摘のように、児童、青少年がすぐれた芸術、文化に接するということは、豊かな人間形成を図る上できわめて重要なことでございまして、私どもも、特に文化庁といたしまして、平素すぐれた芸術、文化に接する機会に恵まれない地方の児童、青少年を対象にいたしまして、すぐれた舞台芸術の巡回公演を行うこども芸術劇場、青少年芸術劇場といったようなものを文化庁主催で行うとともに、芸術関係団体の行います民間の児童、青少年を対象とした舞台芸術公演活動に対しても助成を行うといったようなことで、努力を重ねているところでございます。  したがいまして、私どもの補助の考え方といたしましては、やはり舞台芸術の公演事業に対して助成をするという観点からこれを考えているわけでございまして、鑑賞活動についてまでこれを及ぼすかどうかということにつきましては、従来の考え方からいたしまして、やはり舞台芸術公演事業に対して助成を行うという考え方でやってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  189. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 研究指定校の問題でございますが、文部省が指定いたします一般的な方針といたしましては、まず実施要綱を示しまして、各都道府県教育委員会に推薦を依頼するわけでございます。教育委員会におきましては、管下の全般的な学校状況を勘案し、あるいは学校の希望なり、力と申しますか、そういうものをいろいろ考え学校を選びまして、そして推薦をしてくるわけでございます。私どもとしては、教育委員会が推薦する際には、学校の体制なり、学校の希望というふうなものも十分考えて、そういうものも確認して推薦しているものと考えているわけでございます。  文部省は、最終的にこの決定をいたします際には、推薦を受けましたものをそのままではなくて、やはり地域的なバランスでございますとか、あるいは教科間のバランスとか、いろいろな問題を考慮いたしまして、調整することもあるわけでございますけれども、やはり都道府県教育委員会の推薦を尊重いたしまして、それに基づいてやっているということでございます。  いまの個別的な問題で申し上げますと、大阪府の教育委員会におきましては、推薦の際にそういう学校実態なり、研究体制というふうなものも十分勘案して、推薦をいただいているものというふうに考えておるわけでございます。
  190. 山原健二郎

    ○山原委員 いまおっしゃったことは大変不満ですけれども、時間がありませんからこれでおきますが、実態としては本当に意思統一ができてないのですね。だから、最後には少数グループでやるというようなことになりますと、学校運営というのはまとまりませんし、そういう意味では、あらかじめ校長さんあるいは教育委員会の意見だけを単に聞くのじゃなくて、実際に研究体制を進めていく教職員が本当にやるという気持ちになるかどうか、これが問題なんですね。そうでなければ、成果は上がりませんよ。  そういう点では、今後、この問題については、また実態もよく調査をしてもらいまして、余り無理なことはしないようにしてもらいたいということを申し上げて、きょうは終わりたいと思います。
  191. 葉梨信行

    葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会