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1983-04-27 第98回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十七日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 葉梨 信行君    理事 石橋 一弥君 理事 中村  靖君    理事 船田  元君 理事 佐藤  誼君    理事 馬場  昇君 理事 鍛冶  清君    理事 三浦  隆君       青木 正久君    臼井日出男君       浦野 烋興君    奥田 敬和君       高村 正彦君    西岡 武夫君       野上  徹君    三塚  博君       渡辺 栄一君    中西 績介君       長谷川正三君    湯山  勇君       有島 重武君    栗田  翠君       山原健二郎君    小杉  隆君  出席国務大臣         文 部 大 臣 瀬戸山三男君  出席政府委員         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省体育局長 西崎 清久君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁長官   佐野文一郎君         文化庁次長   浦山 太郎君  委員外出席者         議     員 石橋 一弥君         警察庁刑事局搜         査第二課長   森廣 英一君         防衛庁人事教育         局教育課長   平林 和男君         法務省矯正局医         療分類課長   上館  貢君         法務省矯正局教         育課長     佐藤 一男君         自治省行政局選         挙部選挙課長  小笠原臣也君         会計検査院事務         総局第二局文部         検査第一課長  土居 徳寿君         参  考  人         (日本私学振興         財団理事)   別府  哲君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ───────────── 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     鯨岡 兵輔君   浦野 烋興君     小渡 三郎君   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   高村 正彦君     宮澤 喜一君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   小渡 三郎君     浦野 烋興君   鯨岡 兵輔君     臼井日出男君   宮澤 喜一君     高村 正彦君 同月二十七日  辞任         補欠選任   河野 洋平君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     河野 洋平君     ───────────── 三月二十九日  学生寮充実発展等に関する請願栗田翠紹介)(第一八四三号)  同(栗田翠紹介)(第一九三四号)  障害児学校教職員増員等に関する請願佐藤観樹紹介)(第一八四四号)  同外一件(串原義直紹介)(第一八七五号)  同(沢田広紹介)(第一八七六号)  同外一件(栂野泰二紹介)(第一八七七号)  同(佐藤誼紹介)(第一九〇六号)  同外九件(小林進紹介)(第一九三五号)  同外二件(小林恒人紹介)(第一九六六号) 四月六日  私学助成に関する請願小沢一郎紹介)(第一九八四号)  障害児学校教職員増員等に関する請願沢田広紹介)(第一九八五号)  同外十件(北山愛郎紹介)(第二〇六六号)  同(久保等紹介)(第二〇六七号)  文教予算増額に関する請願栗田翠紹介)(第二〇一〇号)  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請願部谷孝之紹介)(第二一一四号)  同(野坂浩賢紹介)(第二一一五号) 同月十二日  学費の父母負担軽減等のため私学助成増額に関する請願外十四件(永末英一紹介)(第二一八五号)  障害児学校教職員増員等に関する請願外一件(久保等紹介)(第二二五三号)  医学教育抜本的改善に関する請願有島重武君紹介)(第二二八四号)  同(馬場昇紹介)(第二三二九号)  高校新増設費国庫補助増額等に関する請願大野潔紹介)(第二三二八号) 同月十五日  育英奨学金制度改悪反対等に関する請願外一件(栗田翠紹介)(第二三七三号)  障害児学校教職員増員等に関する請願外二件(久保等紹介)(第二三七四号)  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請願新村勝雄紹介)(第二三七五号)  同(山下徳夫紹介)(第二三七六号)  医学教育抜本的改善に関する請願栗田翠紹介)(第二三七七号) 同月二十五日  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請願池端清一紹介)(第二六七五号)  同(石田博英紹介)(第二六七六号)  同(熊川次男紹介)(第二六七七号)  障害児学校教職員増員等に関する請願飛鳥田一雄紹介)(第二七八六号) 同月二十七日  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請願梶山静六紹介)(第二八二六号)  同(草野威紹介)(第二八二七号)  同(佐藤誼紹介)(第二八二八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  私学助成に関する陳情書外二件(第一一五号)  九州工業大学大学院総合工学研究科博士課程設置促進に関する陳情書(第一一六号)  文化施設等整備促進に関する陳情書(第一一七号)  富山工業高等専門学校における学科増設に関する陳情書(第一一八号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出第四五号)  商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する法律案石橋一弥君外三名提出、第九十六回国会衆法第三七号)  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  内閣提出学校教育法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。瀬戸山文部大臣。     ─────────────  学校教育法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 このたび政府から提出いたしました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、大学において獣医学を履修する課程修業年限を四年から六年に延長しようとするものであります。  大学において獣医学を履修する課程修業年限は四年でありますが、近年の畜産の発展公衆衛生拡充等による社会的要請にこたえるため、学部段階における教育内容充実を図り、かつ、効果的な教育を実施し得るよう修業年限を六年にし、獣医学教育改善を図るものであります。  なお、現在、獣医師国家試験につきましては、大学院修士課程二年を積み上げた六年の教育受験資格として必要とされているところでありますが、この改正に伴い、これを大学において獣医学の正規の課程を修めて卒業した者に改めることといたしております。  この法律昭和五十九年四月一日から施行することとしております。  また、この制度改正に伴い所要の経過措置を定めることといたしております。  以上がこの法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  4. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ────◇─────
  5. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日の中西績介君の質疑に際し、参考人として日本私学振興財団理事別府哲君の御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  7. 葉梨信行

    葉梨委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  8. 中西績介

    中西(績)委員 先般、九州産業大学問題について質問をいたしておりましたけれども、途中で時間が参りましたので、きょうは引き続いてこの問題について質問を申し上げたいと存じます。そこでまず第一に問題になっておりました不正受給の問題でありますけれども、この分について重ねて質問を申し上げたいと存じます。  先般問題になりました分におきまして特に不正受給されておる分でありますが、五十二年度以降の分として一億六千万を超える金額になっておるわけであります。その中で私は、五十六年度分が終わりまして後にこうした事態が明らかになったわけでありますから、この点について実質的にどのような中身になっておるかということをお聞きしたいと思うわけであります。  そこで、警察庁おいでだと思いますが、立件送致しておる分について示されておりますが、五千五十五万六千円というトータルになっています。ところが、実質的には先ほど申し上げたとおりの中身でありますから、その間における大きな違いが一つ出てきておるわけです。それは見ますと、職員講師として、副手助手として、さらに助教授教授あるいは助手講師、さらに集中講義などで専任教員と認められるものということになっておるわけです。したがって、五千五十五万円というこの金額は、この分の中の職員講師あるいは副手助手として計算した分だけしかないようでありますけれども、あとの分はどうして立件送致されなかったのか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  9. 森廣英一

    森廣説明員 お答えいたします。  御指摘事件につきまして五千五十五万円余というものを送致しておるのは事実でございます。その内訳についてお尋ねでございますけれども、いまもお話がありましたように、たとえば教員でない職員講師にするとか副手助手にするとかして補助金交付を受けた分、これがいま御指摘の五千五十五万円余になっておって、その分が送致になっております。送致になっていない部分は、大部分が時間数の計算において専任教員と認められるかどうかという問題点が打開できない部分でございまして、証拠上補助金適正化法違反の成立に問題点が残っておるというものにつきましては送致がしてないわけでございます。
  10. 中西績介

    中西(績)委員 財団の方にお聞きいたしますが、そういたしますと、財団がこれを算出するに当たった基礎的なものは、何によってなされたのですか。
  11. 別府哲

    別府参考人 お答え申し上げます。  日本私学振興財団といたしましての不正受給額といいますものは、先生指摘のとおり一億六千万円余になっておるわけでございますが、この積算基礎といたしましては、まず年度が五十二年度から五十六年度までにわたっていること、さらにその内容といたしましては、事務職員講師としたもの、副手助手としたもの、さらにそのほかに集中講義等専任教員とは認められないものなどをすべて積算いたしまして、先ほど申し上げましたような不正受給額算定いたしたわけでございます。
  12. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、それは不正受給ということで計算をしたと思うのですけれども、不正受給であれば、適法でないということを認めた上でやっておると思うのですけれども、この点はどうなのでしょうか。なぜならば、少なくともこれを出していく上には、この前の質問を私がいたしました際に、財団側適正化法違反については態度はまだ明らかにしていないということを言うわけですね。法律に照らして違反をしておるから不正だというこうした措置をしたと思うのですが、この点はどうなのですか。
  13. 別府哲

    別府参考人 前回お尋ね適正化法違反の問題について財団がどう考えるかという御質問でございましたので、その際は、この件につきましてはすでに検察庁にも書類送件されており司直の手にゆだねられているという状態でもございましたので、財団として適正化法違反としてこれを認定するかどうかという問題については前回のようなお答えをしたわけでございます。財団として取り扱っております補助金算定に当たりましては、先ほど申し上げましたような内容のものにつきましては専任教員として補助対象にすることはできないわけでございますので、かような計算になっておるということでございます。
  14. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、それは適正化法に基づいて判断をした場合それの基準をつくるわけでしょう。それによってこの分は不適格でありこの分は適格だという振り分けをしていくわけでしょう。そうじゃないのですか。
  15. 別府哲

    別府参考人 補助金額算定に当たりましては、その基礎となりますものは、私大経常費補助金配分基準並びにこれに基づく取り扱い要領に基づいて補助金額算定を行うということでございます。
  16. 中西績介

    中西(績)委員 その基準は何をもとにしてつくるのですか。
  17. 別府哲

    別府参考人 基準をつくります根拠といたしましては、法律的には私学振興助成法並びにこれに基づく文部大臣のお定め等根拠にいたしまして、財団として取り扱い要領を定めておるということでございます。
  18. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、助成法なりそうした法律もとにして基準を作成するということですから、それに違反をした場合には今度は適正化法違反ということになるわけですね。ですから、順序からいくと、補助金はそうした基準があって決められる、その基準というのは法律があって決められる、それに沿ってないから不正だ、不適格だという判定を下すわけでしょう。私が言っていることは間違いですか。
  19. 別府哲

    別府参考人 先生がおっしゃるとおりだと思います。
  20. 中西績介

    中西(績)委員 そうなると適正化法が浮かび上がってくるわけです。ですから、この適正化法の問題については少なくとも私は警察庁なりがこれを指摘する前の問題としてあると思うのですね。警察庁そうお考えになりませんか。
  21. 森廣英一

    森廣説明員 恐縮でございますが、指摘する以前の問題としてあるという御質問の趣旨が、ちょっと私理解しておりませんので、もう少しお願いしたいと思います。
  22. 中西績介

    中西(績)委員 法律違反しておるということですね、それによって不正であると判断返還を求めるわけですから。そうなってまいりますと、適正化法という法律に照らしてみてこれは違反だという判断をし、そうした措置をしていく、こういうふうに考えるわけですから、警察関係立件をして送致するしないによって決まるものではありませんね、これは。
  23. 森廣英一

    森廣説明員 御指摘のとおりだと思います。
  24. 中西績介

    中西(績)委員 そうなると、先ほどから言っている別府さんの答弁大変ごまかしがあるのですよ。この前から私はそこを聞いたのだけれども、はっきりしないままやっておった、時間がなかったからそのまま過ごしておったのですけれども、この部分は少なくとも態度が不明確などということはないのです。明らかにすることはできないということはないのです。ですから、むしろ積極的にこれをやるとするならば告発すべきではないでしょうか。別府さんどうですか。
  25. 別府哲

    別府参考人 いま先生告発と申されましたけれども、あるいは告訴すべきではないかということも従来からいろいろ御意見も承っているわけでございます。従来、財団としてこの助成金を扱うに当たりまして、財団自体補助金適正化法違反として学校法人告訴したケースはまだ前例がございません。財団といたしましては、国と学校法人との間にある第三者機関として、補助金の公正な配分を行うための機関として設立をされているわけでございまして、学校法人との間の信頼関係確保等を考えまして現在に至っているわけでございます。特にこの適正化法違反の問題につきましては、適正化法に基づいて立件をすることは親告罪となっているわけでもございませんし、またすでに書類検察庁送致をされておるという段階でもございますので、その司直の公正な御判断を現在待っているという段階でございます。
  26. 中西績介

    中西(績)委員 私が言っているのは、他の者の手によってそれが問題にされる以前の問題として、あなたたち信頼という良心があるならば、なぜこれを告訴しないのですか。警察関係で取り上げる前に、皆さん方がそれがわかった、そして計算をしてみればすぐわかるのはおたくなんですから、なぜそれをやらなかったのですか。
  27. 別府哲

    別府参考人 財団といたしましては、この問題が判明いたしましてから後十分な調査を行った上で金額算定をし、それを根拠にいたしましてさらに過去五年間にさかのぼる補助金のうち二十五億八千万円について返還を求めるという大変厳しい措置をとらせていただき、学校側はこれに応じて期限内にこれを返還する、また五十七年度につきましては全額補助金交付を行わないという、これまた大変厳しい措置をとったわけでございまして、現在、私学振興助成法並びにこれに基づく補助金配分基準に基づく非常に厳しい措置をとらせていただいた、このように考えているわけでございます。  警察関係につきましては、それぞれの機関の方でこれをお取り扱いになっているわけでございますので、その公正な御判断を見守っているという状況でございます。
  28. 中西績介

    中西(績)委員 問題は、この前から私が言っておる適正化法違反、その判断は少なくともあなたのところでやるのでしょう。
  29. 別府哲

    別府参考人 補助金適正化法違反の問題について、財団といたしましてもその法の運用に当たりましては十分な意を用いなければならないことはもちろんでございますけれども、この適正化法違反の問題については、財団だけがこれを扱うという問題ではなくて、それぞれの所管の機関において御判断があるべきかと考えております。
  30. 中西績介

    中西(績)委員 財団だけで扱えとかなんとか私は言っているのではなくて、財団はそうしたことを判断をする機関でもあるわけですから、この適正化法違反というものは態度はまだ明確にいたしておりませんとこの前あなたは言っていますね。ところが、この分については態度を明確にしなければいかぬのじゃないかと言っているのですよ。警察関係になるならぬにかかわらず、そのことはちゃんとあなたのところで明確に法に違反をしているということになれば、違反をした場合には今度は適正化法しか法律はないのですから、その判断はあなたのところで大体なすべきではないですかと私は言っているのですよ。
  31. 別府哲

    別府参考人 前回答弁を申し上げましたのが若干言葉足らずであったかと存じますけれども、まだ態度を明確にいたしていないと申し上げましたのは、適正化法違反であるという判断をまだしているとかいないとかという問題についてお答えを申し上げたと申しますよりは、この適正化法違反に基づく事案について告訴をするかどうかという問題についての態度をまだ十分に定めていないということを申し上げたつもりでございまして、その点十分な御答弁になっていなかったことを申しわけなく思っておりますけれども、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  32. 中西績介

    中西(績)委員 この前私が質問をした中で、補助金適正化法違反であるかどうか、この点だけを聞いたのです。告訴云々だとかそれはいま勝手に言っているのであって、どうなのだということを長々とやったから私が質問した内容について答えてください、それは補助金適正化法違反であるかどうかを答えてくれ、こう言ったのですよ。そうしたらあなたは、私がさっき指摘しましたように、補助金適正化法違反として財団としてどのように取り扱うかについては、現在のところまだ態度は明らかにしていない、こういう言い方なのですよ。ですから、私が聞いていることに対して、ごまかそうとするのではなしに、的確に答えていただければいま言うような弁解は不必要になってくるのですよ。違反であるかどうか、はっきりしてください。     〔委員長退席船田委員長代理着席
  33. 別府哲

    別府参考人 お答え申し上げます。  このような事案につきましては、補助金適正化法に触れている問題と考えております。
  34. 中西績介

    中西(績)委員 だから、この前もそのように言ってもらえば簡単だったわけです。物すごく長々と答弁した後でまた指摘をした後にそれが出てくる、しかも違った答弁になってくる、そういうことになっているから指摘をしているのです。ですから、告訴をしないのは、いまいろいろな理由を挙げておりますけれども、不正受給を認めて、適正化法違反であるということがわかれば当然そのことは皆さんの方からむしろ積極的に措置をされるということにならぬと、いまのような言い逃れをして、ずるずる同じようなことで、しかも私たちが二回にわたって財団に行っていろいろ聞いた際にも、何とかします、何とかしますでそれに対する態度はなかなか鮮明にしなかったでしょう。そうですね。そして、これがいよいよ本格的に問題になって、警察関係から立件され送致されるという状況になってから初めてそういうことを判断していくというようなあいまいさ、私はここに問題があると思うのですよ。この甘さが、今度は貸し付けをする場合にもそうですし、このように補助金の支払いをする際にこうしたものを生んでいく大きな原因になっていくのじゃないかということを私は大変懸念するわけですね。どうしてそうした態度について早く鮮明にし得なかったのか、この点について答えてください。
  35. 別府哲

    別府参考人 昨年十一月に事件が明るみに出ましてから補助金返還を求めるまでに相当の時間がたっておりますけれども、内容が大変複雑な問題でもございますので、その実態を十分に明らかにするためにかなり長期の期間を要したわけでございまして、その点、迅速な措置をするように今後とも努力をいたさなければならないと考えております。
  36. 中西績介

    中西(績)委員 内容は複雑じゃなかった。きわめて鮮明ですよ。これほど鮮明なものはないのじゃないですか。職員教員として偽る、あるいは助手講師に、助教授教授に、こういうぐあいにきわめて鮮明であるにもかかわらず時間をかけたのはなぜですか。
  37. 別府哲

    別府参考人 学校側の方で教員数を違った報告をする、その裏づけといたしまして教員発令簿でありますとか教員授業時間割り表さらに学生便覧等書類について二重にこれを作成するというふうな、従来では考えられなかったような異例な事態になっておったわけでございまして、その辺の実態を明らかにするために時間がかかったわけでございます。
  38. 中西績介

    中西(績)委員 非常に複雑でしかもわかりにくいもので、それを明らかにしていくためには時間がかかったという言い方ですけれども、そうなってまいりますと、こういう措置をされておるとこれから後あらゆる問題についてどのようにされておってもわかりっこないということですか。ここだけの問題でなしに他のところにおいても、少し頭を使って資料を改ざんしたり何かしたりするようなことが平気で行われるということになってくるのですが、そういうように理解をしてよろしいですか。
  39. 別府哲

    別府参考人 先ほど申し上げましたような教員授業時間割り表でございますとか学生便覧などを、学生配付用文部省財団提出するためのものと二重に作成するなどということはおよそ教育機関としては考えられないわけでございまして、こういったケースが他にあろうとは私たちは考えられないわけでございます。また、今回のケースにつきましては、従来の補助金不正受領事件と多少異なりましてかなり長期にわたっていたということで、過去にさかのぼっての調査相当の時日を要したということもあるわけでございます。
  40. 中西績介

    中西(績)委員 私はどうも腑に落ちないのですけれども、そうしますと、私たち私学財団に参りました際に、大学関係者と財団の人が酒食をともにしたことがあると聞いておったのですけれども、私が最初に聞いたときにはそれを否定しておりました。ところが、それが新聞に発表された途端に、そのことは問題があるとして気づいたかどうか知りませんけれども、それまでは強硬に突っぱねておりましたけれども、それによって助成部長が辞表を提出するという事態になりましたね。大体、そうした酒食、供応と言ったらいいのですか、こういうもののたぐいというのは程度ものがあると思うのですけれども、警察庁にこういうことを聞くのはちょっと酷だと思いますけれども、どの程度のものであれば問題になり、普通一般の常識としてやる場合にはどういう程度のものを指して問題なしとするのですか。
  41. 森廣英一

    森廣説明員 具体的な事実を前提にされましてのお尋ねですので、そういう質問にはなかなかお答えしにくいわけでございますが、それを離れましてごく一般論として答えてみろというお尋ねですので申し上げますけれども、その供応なり接待なりが当該公務員の職務の執行の対価、報酬としてなされたものである、したがってさような供応接待が職務の公正をゆがめるおそれのあるものである場合、そういう場合にはやはり贈収賄罪の問題になろうかと思います。それに反しまして、判例でもありますけれども、いわゆる通常社会一般の社交儀礼の範囲内にとどまるもの、こういうものは贈収賄の問題にならない、さように心得ております。
  42. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、別府さんにお聞きしますけれども、別府さんもそれに応じた一人ですか。
  43. 別府哲

    別府参考人 私は、私学振興財団に参りましたのが昨年の七月末でございまして、そのような席に参ったことはございません。
  44. 中西績介

    中西(績)委員 そうであれば、部長なんかが提出をしたにもかかわらずそれは問題ないとして措置をしたということであるようでありますが、理事会としてはどういう認識に立ったのか、その点をお答えいただきたいと思います。程度はどういうものであり、だれとだれがそれに出席をし、何回そうしたことが行われたのか、どういう中身であったのか、これをお答えください。
  45. 別府哲

    別府参考人 この問題が明らかになりましてから、財団の中におきましてこの実態について調査をいたしたわけでございます。その結果明らかになりましたのが、九州産業大学の人との会食につきましては、東京におきましては、九州産業大学理事長が新たに御就任になった昭和五十五年の五月に一度そういう機会を持っております。さらに五十七年の一月に新年のあいさつという形で、学校の方々が上京された機会に東京で会食をともにしたという事実がございます。さらに福岡におきまして、いろいろな形で、職員が業務説明会その他の関係で九州地区に出張することがございます。この場合は九州の私立学校主管課と連絡をとりながらの仕事の進め方でございますので、県の私学主管課なり、あるいはその地域の当番校が中心となって、その地域の学校と財団職員とが仕事が終わった後懇親を深めるという意味でそういう席を持つことが年に一、二度開かれているわけでございますけれども、これらにつきましては、いずれも先ほど申し上げましたようなそういった形での会合でございますので、内容的には一種の仕事の延長を、その機会にいろいろと意見の交換をするというふうな形で行われているというものでございました。  いずれにいたしましても、東京におけるもの、また福岡におけるもの、調査をいたしておりますけれども、程度を過ごした問題ではないという判断をいたしたわけでございます。
  46. 中西績介

    中西(績)委員 落ちています。だれとだれが、東京では。
  47. 別府哲

    別府参考人 すでに退職した者もいるわけでございますが、東京で開きました場合には、一部の役員、幹部職員も含めて十数名がこれに参加をしておるというケースでございまして、退職者もおりますので固有名詞についてはお許しをいただきたいと思うわけでございます。
  48. 中西績介

    中西(績)委員 ちょっと氏名をはっきりしてください。
  49. 別府哲

    別府参考人 いまその会合ごとの氏名についての資料を持ち合わせておりませんし、その点につきましては、先ほど申し上げたようなことで御了解をいただければ幸せに存ずる次第でございます。
  50. 中西績介

    中西(績)委員 そんなうそを言ってはいけませんね。行っている人、知らないですか、別府さん。資料を持たなくては言えないですか。
  51. 別府哲

    別府参考人 先ほど申し上げましたように、一部の役員並びに職員を含む者が出席をしておるわけであります。
  52. 中西績介

    中西(績)委員 あのね、ちゃんと知っているのですよ。知っていて、それを答弁できぬと言うなら私はこれで質問をちょっとやめますからね。資料を提出してください。直ちにしてください。委員長、取り計らってください。
  53. 船田元

    船田委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  54. 船田元

    船田委員長代理 速記を起こしてください。  参考人お尋ねをいたします。  いまの質問の件についての氏名の公表ですけれども、資料を提出できますでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  55. 別府哲

    別府参考人 お答え申し上げます。  調査の結果で資料にはもちろんだれが出席をしたかということはわかっているわけでございます。そういう点で、委員長の御指示であれば御提出することはできるわけでございます。
  56. 船田元

    船田委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  57. 船田元

    船田委員長代理 速記を起こしてください。  参考人に申し上げます。  ただいまの氏名の資料につきましては、後刻理事会に提出をしてください。お願いいたします。
  58. 別府哲

    別府参考人 承知いたしました。
  59. 中西績介

    中西(績)委員 別府さんはこれは知っておるのですよ。知っていて、うそを言っているのです。本来なら、もうここら辺に出てくる資格ないのですよ。これを知らぬなんというようなことはとうてい考えられませんよ、自分で討議をして、だれがどうしたということから全部調べ上げて。その専任の理事として、ではなぜ座っているか、そこにいるかということが私はわからないですね。ですから、こうしたことで時間をかけるということは大変な損失ですからね。これからはないようにしてくださいよ。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、理事長が就任したときと新年のあいさつということになっていますけれども、結局、地方に出張したときにはそのようにして接待があるし、上ってきて、こういう何かを頼むときにはちゃんとやっているわけですよ。五十七年の一月は新年のあいさつじゃないのですよ。何かがあってこういうことをやるわけだからね。ですから、内容的には大体問題としてこれを追及できないような状態があなたたちの中にあったのじゃないですか。たとえば部長が辞表を提出するというようなことだってあるわけですから、そういう問題自体がこの財団の中にあったという、私はそうした判断を持って、このようにして時間がずるずる、しかも一回だけではないのですね、三回にわたって金額は是正してきたのです、それをこの前聞いたところが、その中身が、後になって資料提出が次次にされてきたから、こう言うんですね。そうすると、うそを言って、こういうことをやっている人たちのやつの提出を求めて、それによって判断をしていく、だから、これだけあります、こうくる。本当かと思っていると、その後になるとまた別のものが出てくる。そうすると、もう一遍違いがあるわけですね。このようにして、結局こういう悪巧みをした人たちが――調査をするだけでしょう。だから、そこは隠しておけばいつまでたっても何もわからぬというシステムになっているわけです。  会計検査院おいでですか。その点で、調査をした結果はどうだったのですか。
  60. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  先ほど来先生指摘のとおり、五十二年度から五十六年度まで調査いたしました結果は、身分詐称等をいたしました者を含めまして八十九名等で一億六千五百四十八万余円となっておりまして、その内容については一応算式がすべて一連の連続になっておりましてどの部分が幾らというようなことはここで申し上げることはできませんが、そういう人数につきまして総額で一億六千五百四十八万余円になっている次第でございます。
  61. 中西績介

    中西(績)委員 ちょっと聞きますけれども、職員から講師副手から云々と、ずっと人員がありますね。そうしますと、五十二年なら五十二年からという、五十一年もあったのだろうけれども、五十二年からということになりますと、職員から講師ということになれば十名ということになりますね。そうしますと、その職員講師とした場合の金額はそれぞれのもの全部で何ぼになるかわからぬですか。
  62. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  これは先ほど財団理事からも配分基準等の計算方法の説明がございましたが、一連の係数を出しまして、それにさらに調整係数というようなものを掛けていくというような計算仕組みになってございまして、他の要因を全部捨象して計算しろということになりますとその部分が出てまいりますが、それは正確な数字にならない、こういうことでございまして、まことに恐縮でございますが、そういう仕組みになってございます。
  63. 中西績介

    中西(績)委員 ちょっとわからないですけれども、じゃ一人一人のものは出ないのですか。
  64. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  一人だけが悪いといたしまして全体を計算し直しますとその分は出てまいりますが、それは正確な数字にはなりません。  以上でございます。
  65. 中西績介

    中西(績)委員 じゃ、この一億六千五百万という金額はどのようにして出したのですか。
  66. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  この私どもが調査いたしました数全部をそれぞれ個々に当たりまして、それに出てくる結果の係数を全体に掛けまして、その結果出てきた数字でございます。
  67. 中西績介

    中西(績)委員 それじゃ個々はわかるわけですね。そうすると、職員講師にという、この部分はわかるわけです。十人分が個々のものがわかっているのだから、そのトータルはこの職員講師とした場合の金額になるわけでしょう。
  68. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げました個々のものを出したものに、一つの調整係数といいましてその他の分の要因を加えた係数を出します。それをそれぞれに掛けてまいります関係上、非常に大まかなものであれば、それに概数的なものは出るのかもわかりませんが、われわれといたしましてはそういう正確でない数字はこの検査の過程においては出してございません。  以上でございます。
  69. 中西績介

    中西(績)委員 それじゃ素人には全然わからぬということですか。
  70. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 いえ、その資料は大変な膨大なものになりますが、これを全部出せばその過程は出てくるわけでございますが、この部分を抜き出すという形のものは正確な数字は出てまいりません。  以上でございます。
  71. 中西績介

    中西(績)委員 正確な数字が出ないのなら、どうしてこれが出るかわからぬですね。これで時間がかかったのじゃかなわないけれども、正確な数字がわからないのにどうしてこのトータルが出るのですか。そのもの自体が第一怪しいのじゃないですか。
  72. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  この要因といたしましては、職員教員と偽ったもの、先生職員から講師が十名ということでございますが、その他集中講義あるいは若干その他のものもございますが、こういうものを全部捨象いたしまして職員を身分を偽ったもの十名についてだけ出せということでございますと、その分のものは一定の計算方式で出てまいりますが、それですと他の要因をすべて無視することになりまして、これの総合係数が出てこない限りその分だけの数字は正確なものにならない、全体をすべて正確な数字で積み上げてまいって初めてこの不正受給額が出てまいる、こういうことになってございます。
  73. 中西績介

    中西(績)委員 委員長、いま聞いておっておわかりになりますか。私はわかりませんね。いいですか。十人のやつはわかると言うんですよ。出てくると言うのです。だからそれを示せと言ったら、それは正確なものじゃない、こう言うんですよ。そして、それに他の要因があるから、ほかのものも全部合わせまして、ここに項目としては 一、二、三、四、五つあるんですよ。それぞれのやつをわからぬか、こう私は聞いているわけです。それはわからぬと言うんですね。ところがこれはそれぞれの分については出ると言うのです。しかしそれは正確なものじゃない、こう言っているわけです。ちょっとわかりにくいのですが、他の要因とは何ですか。
  74. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  先ほど先生お示しの職員講師としたものは十名でございますが、この分だけが悪かった、ほかのものは全然悪くない、こういう計算なら出てくるということでございまして、しかしながら本件におきましては副手助手にしたりその他のものがございますので、個々に出てきたものに掛ける係数がこういうものを全部含めた割合になるものですから、その点が正確でないというふうに申し上げた次第でございます。
  75. 中西績介

    中西(績)委員 それじゃ、どうもわからないのですが、全部のあれが出てそれに今度は掛けることの調整係数ですか、調整係数というのはじゃ何ですか。係数と調整係数。
  76. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  調整係数と申しますのはきわめて技術的なものでございますが、ある一定の単価に人数等を掛けまして、それに、各大学によりましてその経営内容、学生定員に対する実席数とかあるいは教員数に対する学生の在席数とかいう比率を掛けまして、よき大学には厚く、内容の悪いものにはそうでもないという形で使っている数値でございます。  以上でございます。
  77. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、基礎になるものはわかるわけですから、じゃ一億六千何ぼでなしにその基礎金額を出してください。これは後で資料でいいですから、出してください。よろしいですか。
  78. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 はい。
  79. 中西績介

    中西(績)委員 変なところに時間をかけたのですが、そこで警察庁、お聞かせ願いたいと思いますのは、五千五十五万円という金額は、職員講師副手助手にというこの二つだけを挙げたというわけですよ。ところが今度はあとの分、助教授教授助手講師集中講義云々というこの人数はちゃんと挙がってくるわけですね。それは先ほどから私が一番最初に指摘をしました実態と違いがあって、その分を不適正、不正な分として認めて、その分の返還を求めるということになったわけですから、そのように具体的に基準がちゃんとあって、それがなぜここに出てこないのか。わずか三分の一程度の額になっていますから、この点。なぜ私はそのことを言うかというと、ごまかした額というのは大学側は、理事長あたりはわかっておりながら、私たち調査に入ったときに、あくまでもこの五千五十五万円だけを主張するのですよ。ほかにはないという言い方をするわけです。しかも、この一年間十数億円の中でわずか一千万円程度は微々たるものじゃないかという言い方をしているわけでしょう。直接私たちにそれをしたのですから。その要因はどこにあるかといったら、結局この立件した分だけになっておる。ですから大変非科学的なものになってくるわけですね、向こうの言う発言というのは。そこをうまく取りつくろって言うためにそうしたことをやっていますから。なぜそうなったのでしょうか。
  80. 森廣英一

    森廣説明員 お答えします。  私どもは、国の機関である警察庁みずからが証拠書類を全部とって捜査しているわけではございませんで、地方公共団体の機関たる福岡県警察が捜査を実際に担任いたしまして、それから間接的に聞いておることでございますので、非常に緻密な部分についてはあるいは十分お答えできないかと思いますけれども、福岡県警察説明によりますと、いま先生指摘のように、教員ではない一般の職員、それから副手、これを教員であると偽って請求をした分、これについては明白になりまして、これは立件をいたした。その他の部分――その他の部分と申しますのは、主として授業時間数によって専任教員であるかないかということを財団基準によって認定をいたしまして専任教員と認められなければ請求はできない、認められれば請求をできる、こういう関係になるわけですけれども、そこの授業時間数が長い間、自宅実習とかいろいろな形態の講義も含めまして計算をしなければならない。その辺のところが、まあいわゆる刑事裁判に頼るだけの十分な証拠がいまやはっきりしないという関係から、主としてその授業時間数に頼る部分、この部分について立件をすることができなかった、かような報告を受けております。
  81. 中西績介

    中西(績)委員 それで非常におかしいわけですね。さっきから言っているように、基準というのがちゃんとありますね。しかも、あなたはいま言われたけれども、職員教員と偽ったものだけに制限をした、それはなかなか不明確だから、こういう答弁ですね。ところが、助手講師はわからぬだろうか。これほど簡単なものはないと思うのですね。助手講師として偽っている、あるいは助教授教授と偽っているということになれば、これほど簡単なものはないですね。時間数の問題じゃないんですよ。  なぜ私がそういうことを言うかというと、これは二月の一日に学長、学部長団から退陣要求をされた鶴岡発言ですね。これは約一時間にわたってある。それからさらに、教授課長などの懇談会、またあったのですけれども、そのときの発言内容がここにあります。それを見ますと、「十一月九日以来いろいろ進んできたが、警察書類送検はあるだろうと言っている。十一月二十一日の時点で警察適正化法違反以外は立件できないし、適正化法違反についても心配はないと言っている。」、こういうふうに本人が言っているわけですね。これは正式なものですよ。これは本年二月一日の十六時からの発言と十七時からの発言、二回にわたってやっているのです。こういうようなことが本人から言われていますし、そうなると、いま言うように、この歴然とわかるものについてなぜやらないだろうかというのですね。じゃ送致したのはいつですか、おわかりですか。
  82. 森廣英一

    森廣説明員 お答えします。  送致年月日は本年の一月二十日でございます。
  83. 中西績介

    中西(績)委員 一月二十日以降、これは送致してから後の発言です。だから送検ですね。もうそのとおりなんで、そこに適正化法違反については心配ないと言っているというようなことでもって、あいまいなこうした、わかっておるにもかかわらずそれがわかりにくいという言い方がどうしても私は納得できません。あなたが言っている、たとえば集中講義などで自分の部屋でやったとか自宅でやったとか、こう言い逃れしていますよ。だからこれは入るべきじゃないかというような言い方をしていますからね。その分について財団の方としては、それでもいけませんよと、こういうことは従前からわかっている話なんですね。だから、その分がわからぬということを、不明確だから云々というなら私もまだ了としましても、助手講師――助手は講義はできませんからね。そうでしょうが、座学できるわけないのですよ。それなのに、それが何でわからぬだろうかということ。授業時間数の問題じゃないのですよ、これは。さらに助教授教授と偽る。身分詐称なんか平気でやるところですから。こういうことがどうして立件できぬだろうかと思って私は不思議でならぬわけです。それがいま言うような、こうしたことを平気で正式なところで発言していくから、非常に、警察のこの問題についての取り扱いが、そうした意味で私は疑問を持っておるわけです。なぜ、それができないだろうかということなんです。  財団の方に聞きますけれども、こうした判断をしていく場合の基準というものが明確にあるわけでしょう。そしてしかも、それは十一月何日かに福岡県警にはそういうものについては書類として全部お渡ししているのでしょう。どうですか。
  84. 別府哲

    別府参考人 資料は警察の方にはお渡しをしてございます。
  85. 中西績介

    中西(績)委員 基準についても渡していますか。
  86. 別府哲

    別府参考人 補助金算定基準並びにその算定方法につきましては、警察の方から担当職員のお呼び出しもございましたので、その機会に御説明申し上げたところでございます。
  87. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、そうしたものが全部わかっているわけですよ。わかっておるのにこれが全然立件の要件になっていないということになると、私は大変おかしいと思うのです。  ですから、お願いですけれども、一回そうした問題について、なぜできないのか、もう少し詳しく聞いてくれますか。
  88. 別府哲

    別府参考人 若干お許しをいただいて補足させていただきたいと思いますが、いま先生助手講師あるいは助教授教授といったところを御指摘ございましたけれども、専任教員給与費の算定方法に関する限りは、助手講師助教授教授、いずれも専任の教員として認められるものにつきましてはその標準給与費掛ける人数という形になるわけでございまして、その標準給与費は、たとえば昭和五十六年度を例にとりますと、一人当たり五百三十七万一千円という、まさに標準給与費が決まっておるわけでございまして、実際職名を偽るということは大変な問題ではございますけれども、少なくとも専任教員給与費の計算という点に関しましては、助教授の場合でも教授の場合でも同じという形になるわけでございまして、ひとつ補足をさせていただきます。
  89. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、助手講師と偽っても同じですか。
  90. 別府哲

    別府参考人 助手講師の間についても同じ問題でございます。  なお、重ねて補足をさせていただきますと、それが果たして講師と認められるかどうかという問題は別でございますけれども、認定されるものでございましたならば、助手の場合でも講師の場合でも、いずれも専任教員という点で補助金算定に関しては同一でございます。
  91. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、助手講師助教授教授と偽っておる、こうしたことが、数が幾らあろうと、その分は計算の中には入っていないということですね。
  92. 別府哲

    別府参考人 給与費の計算につきましてはそれぞれ同じでございますけれども、ただ、では一切補助金に影響しないかという御指摘でございますと、これは教授の数が違ってまいりますと、それが、きわめて技術的な問題になって恐縮でございますが、非常勤教員計算をする場合のいわゆる依存率とか、他の方面に微妙な影響もあがってまいりますので、補助金全体から見ますと影響がないとは言い切れませんけれども、少なくとも専任教員給与費それ自体につきましては同じでございます。
  93. 中西績介

    中西(績)委員 それじゃ一億六千五百万の中には入っていますか入っていませんか。
  94. 別府哲

    別府参考人 先ほど申し上げましたように他の要素に影響するところもございますので、金額的には入ってございます。
  95. 中西績介

    中西(績)委員 そうであれば、何も給与の面でどうだこうだではなくて、私が聞いておるのは、一億六千五百万それぞれの分野について出しなさいと言っているわけだ。それは非常に困難だから後で資料をもらうということになっているわけです。その分で私は聞いているわけですよ、別府さん。ちゃんとしてくださいよ。だから、助手講師と偽った場合には金額は出るわけだ。そうでしょう。一億六千五百万の中に入っているわけだ。違うのですか。
  96. 別府哲

    別府参考人 先ほど申し上げましたように、教授の場合には非常勤教員関係で影響が出てまいりますけれども、助手講師とした場合につきましては、いずれもそれが専任教員として認定される者でございましたならば、金額的には差はないわけでございます。
  97. 中西績介

    中西(績)委員 だから、いまここに二、二、一、一、四と、こう五年間分が出ていますよ。おたくが出したのでしょう。それじゃ、この分は文部省が私に提出した資料ですかね。
  98. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 ちょっとよく見えませんけれども、文部省から先生に資料を差し上げておりますので、それだと思います。
  99. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、助手講師として偽っているもの――私は各項目別に見ないとそうした正確なことが言えぬわけですよ。立件の問題だって、私はいまそこを非常に問題にしているのです。だからこれを全部出せというけれども、それについてはわからぬと言うのだ。それなのに今度はこれは影響ないというのですか。では一億六千五百万の中には助手講師と偽っていたもの、五人の十名分です、この十名分は影響は全然ないということですね。だからその分については立件の要件にはならぬ、こう言うのですか。
  100. 別府哲

    別府参考人 大変技術的な問題で恐縮でございまして、私も勘違いもございますけれども、依存率その他の関係でごくわずかな金額が影響してまいります。
  101. 中西績介

    中西(績)委員 ないとかあるとか、次々に変わるのだから困るのですよ。こうした人員が総トータルが出て、たとえば昭和五十二年度には二十五名、二十六名、二十名、二十名、三十四名という中で一億六千五百万という、こうしたものが出ているはずなんです。だから、私たちはこれでもって信頼をしてやれば、途中でそれは入ってないのだとかなんとかいうようなことになるから問題なのです。  だから少なくとも、警察庁、お聞きいただきたいと思いますのは、このようにしていま大分時間をかけましたけれども、この中身というのは全部影響あるわけですね。影響あるということを言っているわけです。影響あるもので、しかもはっきりしておるのにそれがなぜできなかっただろうかということがどうしても私には納得がいきません。したがって、これについてはもう少し詳細な回答なり、もしそうした資料があれば提出をしていただきたいと思いますが、その点はよろしいですか。
  102. 森廣英一

    森廣説明員 お答えします。  私どもがいままでに福岡県警察から受けておる報告によりますと、時間数の関係から専任教員と認定できないという理由で送検できなかったというふうに聞いておりますが、御質問でございますので、私どもみずからも文部省財団にお伺いをしまして、計算方法等につきまして自分でも研究をいたしまして、もしその結果判明すればまたお答えをしたいと思います。
  103. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、これは時間数じゃないということははっきりしていますよ。それはおわかりいただけるでしょう。助手講師と偽ったものそれから助教授教授と偽ったものということは、これは時間数じゃありませんので。  ですから、いまの答弁されておることとはちょっと違いますから、時間数が云々ということで私は追及しているわけじゃありませんから、後で聞いて、その点はもう一度よく調べて答弁していただきたいと思います。
  104. 森廣英一

    森廣説明員 いまお尋ねのそういう人数の違いが果たして補助金交付額にどういう影響があるのか、それがしたがって偽りその他不正の方法で補助金交付を受けたという補助金適正化法違反の構成要件に合致するものかどうかということにつきましては、関係の当局から数字その他の説明を受けて一遍判断をしてみたい、かように思います。
  105. 中西績介

    中西(績)委員 それで、適正化法違反問題についてはもう少しそうした調査をしていただいて、その点でもう一度やりますから。ただ、先ほど私が申し上げた二月一日のこうした言動は、大変私にとっては問題のある言動だと思っていますから、そうしたことも受けてお考えいただきたいと思います。  そこで今度は裏入学の問題ですが、裏入学の問題について、そうした寄附金行為を禁止されたのはいつですか。正確に答えてください。
  106. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私立大学医・歯学部における入学に関する寄附金の収受等の禁止及び入学者選抜の公正確保等につきまして、昭和五十二年九月七日付文管企第二百三十号、文部省管理局長及び大学局長名で、関係学校法人理事長及び関係私立大学長あて通知をいたしております。
  107. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、この前文部省から資料をいただいた分ですが、五十二年度以降の入学者にかかわる寄附金の募集状況というのがあります。これを見ますと、先般検査院の方で私聞いたところでは、証憑書類がなくなっておるということを言っていますね。ところが、その証憑書類というのは五年間なら五年間それを残しておく、こうしたものが義務づけられておる、このことも答弁いただきました。ところが、それが全部いまないわけですね。したがってこの前もちょっと警察庁にお聞きしたのですけれども、このようにして、事実証拠隠滅的なものが行われておるわけですね。そして五十二年以降、その前お聞きしたところでは、五十六年度までの分が十三億一千二百万円、これが金額として明らかになっている。しかし、残念ながら氏名だとか金額だとかいうものは全然わからぬという。資料が全くない。したがって、証拠隠滅罪が適用されるかどうかについては、どういうときにそうしたものが適用されるのですか。
  108. 森廣英一

    森廣説明員 お答えいたします。  一般的に言いまして、もとの犯罪がございまして、一たん犯罪が成立しておりまして、その成立、既遂に達しておるその犯罪についての刑事上の証拠を隠滅した場合に証拠隠滅罪が成立するというふうに考えております。したがいまして、いまの御設例の、寄附金を募集してそれについて間違った報告をするという行為自体がもし犯罪になるのであるとすれば、その関係証拠を隠滅した場合には証拠隠滅になると心得ております。
  109. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと検査院、ちょっとお聞かせいただきたいのですが、こうした十三億一千二百万という金額だけれども、裏づけになる領収証も何もない。これは文部省からいただいた分ですが、一人当たり最高額が百五十万、最低が三十万、それから五十七年度が最高額が百八十万で最低額が三十万、こういうふうに言っていますね。私たち調査に入ったときに聞いたある人からの証言によりますと、これは判定会議があって、直ちに電話でもって父兄に通知をする。直接持ってこさせる、あるいは送らせるというわけですよ。そのときの金額は、大体五十六年度で百四、五十万円というのが普通だ、こう言っています。文部省、これは何で調べたか知りませんけれども、最低がこうだということになっていますが、その裏づけになるものがなくて何でこれがわかったか。ですから私が会計検査院に聞きたいと思いますのは、十三億一千二百万という金額はわかるけれども、しかしその裏づけになるものがなくてこれが正しいものであるかどうかの判断はどうしたらいいのですか。
  110. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  調査官の報告によりますと、個々のそういう内容については一切証拠はございませんでしたが、出納をあらわす書類等に総額で載っていたということのようでございます。
  111. 中西績介

    中西(績)委員 出納をあらわす帳簿の中にそのように載っておれば、それが正しいものと判断してよろしいのでしょうか。警察庁どうでしょうか、そういうようなことをもう何も疑惑はない、こういうふうに判断をするのがあたりまえですか。  答弁できなければ、検査院にちょっとお聞きしますけれども。裏づけになるものがなくて、そのことを私たちに信用せいと言われて信用できますか。検査院もそれを信用したということになれば、検査院は何のためにあるのでしょうか。
  112. 土居徳寿

    ○土居会計検査院説明員 お答えいたします。  出納帳簿等に総額としてそういうものが載っていたという事実だけ、その限度においてでございまして、果たしてその内容、個々のものが真実であったかどうかということは、私どもといたしましても確認しておりません。
  113. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、警察庁、ちょっとお聞きしますけれども、とにかくそのようにして金を集めますね。その裏づけになるものがなくて、これだけですと、こうした場合に、それは何かおかしいぞと告発をしさえすれば問題になるのですか。しなければ何もならぬ、いまはそういう状況だと思うのですけれども、それはどうなのですか。告訴すれば問題になるし、しなければ問題にならない、そういう種類のものですか。
  114. 森廣英一

    森廣説明員 お答えします。  寄附金を集めること自体が犯罪であるとは私は思いませんけれども、そこの中で集めました寄附金をだれかが横領するとか背任行為があるとか、そういうことがある場合には、無論告発の有無にかかわらず、あるいは告訴の有無にかかわらず、犯罪というものが成立すると思います。
  115. 中西績介

    中西(績)委員 それでは聞きますけれども、この分については全く調査をしていない、しておる、どちらでしょうか。
  116. 森廣英一

    森廣説明員 お答えします。  福岡県警は捜査をしていないと聞いております。
  117. 中西績介

    中西(績)委員 それでは横領しておるのか、あるいはどうしたのか、もう全くわからぬままこれはやり過ごしてしまう、そういうふうに、私素人ですから理解をしてよろしいですか。
  118. 森廣英一

    森廣説明員 お答えいたします。  捜査というのは確定的な証拠があって始めるものではございません。しかしながら相当確たる容疑があって犯罪の捜査権というのは行使すべきものでございまして、頭の中で考えて、あるかもしれないというだけで捜査を始めるべきものでもないし、またやっていないだろうというふうに思います。
  119. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、たとえばもらった資料でいきますと、五十二年度は寄附金入学者は数がわからぬわけですね。それなのに金額は挙がっておるわけでしょう。二億五千二百十万という金額は挙がっています。あとは五十三、五十四年は人員は挙がっているけれども、領収証は、五十六年度の実際衝に当たった人の話を聞きますと発行せぬそうですからね。領収証は発行していない。ですから、挙げられている数字が本当にそうであるかどうかということは大変に不明なんですね。しかし数は三百八十と二百五十になっている。五十五年になるとまた数が不明なんですね。そして一億九千六百四十万という金額が出てくる。ですから、そういう状況にまず第一にあるということ。それと、この前私がちょっと申し上げましたけれども、時間がなくて十分ではありませんでしたけれども、これを見ますと、五十六年の場合には六十七人という数が挙がっていますけれども、これは私が調べた資料では百三十六名になっているのですよ。それから五十七年の場合は文部省からいただいたのでは四十四名になっていますけれども、これが百二十五名になっているわけですね。したがって、いまもし、たとえば五十六年の六十七件で六千六百八十万円ということになれば、平均化すると約百万円になるのです。その次の四十四件で六千六十万円ということになりますと、平均が百三十七万円になるのです。ところが私がいま言うように、五十六年は百三十六名であり、五十七年は百二十五名。六十七と四十四、正式に文部省に報告してあるものと違いがあるのです。こういうようなことがはっきりしておっても問題にはならないのですか。
  120. 森廣英一

    森廣説明員 伺っておりますと、先生は恐らく刑法で言いますと二百五十二条の横領罪等を想定して御質問されておるかと存じますが、御承知のように横領罪というのは、自己の占有する他人の物を横領したるときに成立するわけでございます。そこでいま御指摘のような材料をもとに考えてみますと、一体そういう寄附金を集めました大学の管理者等が、自己のためにする意思を持ってほしいままにこれを横領した場合には横領罪になるわけでございますが、差額があるからといって直ちに自己のものとしたかどうかは不明であるわけでございます。たとえばその金額関係当局等には虚偽の報告をしておったとしても、仮にそういう報告があったとしても、その差額の分を本来本人である大学のために運用しておるということであれば横領の問題は生じない、かような性格になるわけでございます。
  121. 中西績介

    中西(績)委員 しかしそれは調べてみなければわからぬでしょう。
  122. 森廣英一

    森廣説明員 無論そうでございますが、そのようなことは枚挙にいとまがないわけでございまして、そういう報告がはっきりしないというものをすべて横領の容疑で捕らえるということはいかがかと思いまして、やはり横領について本人がこれを不法に領得しておるという相当な容疑がある場合に捜査権というものは発動すべきものであるというふうに思っております。
  123. 中西績介

    中西(績)委員 これは不明になった分、だからこれは果たして正しい数字であるかどうかもわからぬわけですね、裏づけが全然ないわけですから。まとまった金額をぽんと載せているわけでしょう。  それともう一つは、文部省にちょっと聞きますけれども、一人当たり最高額は百五十万で最低額は三十万というのは、どういう基礎からこれはわかったのですか、文部省
  124. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学当局から事情聴取をした結果でございます。  なお、ただいま人数に相違がある点について御議論が出ておりますが、私どもその点について大学当局から事情聴取をいたしましたところによりますと、先生の御指摘の人数は、恐らく特別入学をさせた者の人数を指しておられるかと思います。その特別入学をさせた者の中で任意の寄附として寄付金を出した者がそれぞれ六十七名であり、四十四名であったというぐあいに私どもは理解をしております。
  125. 中西績介

    中西(績)委員 ただ、特別入学の場合に金銭の授受はあったかないかということは文部省はおわかりじゃないでしょう。根拠はありますか。
  126. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 その点については、私ども調査はいたしておりません。
  127. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、これもわからぬわけですよ。だから、いま言うように、裏づけのないものをそのまま見過ごしてやるということになれば、悪く考えれば、これからはもうどこだってそういうことができるということになるのですね。だから、信頼をしておるという、そして今度はそれを調査するについてもなかなかあれできないし、そういう酒食の供応に当たった人の名前もここではできない。何もかもやみからやみですわ。こうしたことで、私たちがいま論議しておるこの私立学校の助成あるいは補助金問題、行政改革だとかなんとか言ってわあわあ言っているけれども、私たちは一番いまそうした中身について検討していく必要があると思うのですけれども、これはだれに聞いたらいいですかね。  大臣、ちょっとお聞かせいただきますか。このようにして国費を支出をしておるところが、実際にはこうした不明な点がたくさん出てきておる。しかも、文部省判断としては、役所の判断としては、領収書もない、何もない、ただ、これはもらっておらないから数が少ないのですと、こういうようなことで私たち信頼せよなんていったって、これは信頼できないけれども、大臣はこれで信頼できますか。
  128. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 国の助成金を出しておる点につきましては、私は率直に言って、九州産業大学のあり方はきわめて遺憾に思っております。でありますから、文部省の事務当局にも、それから私学振興財団に対しても、人数に制限がありますからなかなかというところもあると思いますけれども、もう少し厳重に審査をする、こういう体制でいってもらわなければ、国民の貴重な税金を教育が大事だということで助成をしておるわけですから、私から言うと、こういうふらちなやり方では困る、こういう態度で臨んでおるわけでございます。  ただ、この入学の点で寄附をもらったという点については、先ほどもお話ししておりますように、これは従来からいろいろ疑惑を受けられるようなことのないように、教育機関でございますから指導しておるわけでございますが、これを一一文部省が調べるということはちょっと困難ではないか。これは私の感想でございます。
  129. 中西績介

    中西(績)委員 問題は、こうして不明な点だとかなんとかあるわけですから。  では、ちょっと聞きますけれども、九州産業大学から二十五億円を超える返還金、これを求めたというその理由の中にはこういうものは入っていませんか。措置の仕方が不的確であると私は断じておるわけですけれども、たとえばもう資料は全部焼き捨てられた、こういうことですから。
  130. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 九州産業大学から約二十六億円の返還を命じ、現に返還されたわけでございますけれども、その理由といたしましては、不正な申請に基づいたものであるということのほかに、入学者選抜のあり方等について必ずしも、たとえば募集要項等に明示することなく特別入学等を行っているといったようなケースにつきまして、適切でない面があるといったような点を総合的に判断をいたしまして返還を命じたものでございます。
  131. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、こういうものも含まれて総合的な判断、こういうことになっていますから、そういう条件の中では、やはりこの点が大きな問題として残っておる。  そこで、最後に警察庁に聞きますけれども、それではこうした横領罪というものになる条件としては、たとえばいま言った年度ごとに寄附金入学者、寄附金総額というのが出て、不明の点があって、その金額もどうなっているかわからぬというようなことがあっても、裏づけのものが全然なくとも、そこに載せられておりさえすればそれは問題にはならぬ、こういうように判断をしてよろしいですか。
  132. 森廣英一

    森廣説明員 刑事事件の成否というものはまさに事実の関係によるものでございまして、それを記録したいろいろな徴憑等は捜査の参考にはなりますけれども、それを究明していって残る事実、この事実に着目をして成否を判断すべきものでございます。したがいまして、一応帳簿上何がしかの記載がありましても、それを直ちに措信するわけにはまいらない。それが真実か否かということを捜査を尽くして判断をするというものでございます。
  133. 中西績介

    中西(績)委員 だから、それは調べなければわからぬでしょう。証憑書類なり何なりがあるかどうかもわからぬわけですね。これほど論議しているわけですから、こういう問題がありますよと、こう言っていても、それは問題にはならぬですか。調べないですね。
  134. 森廣英一

    森廣説明員 いまのお伺いしている限りで考えますと、寄附金を集めておる、その経理がどうも十分明確でないという御論議かと心得ますが、さような問題の状態というものはいろいろな営利法人あるいは公益法人を通じて間々耳にすることでございまして、そのようなことから直ちにこれに横領罪の容疑を警察が抱くということはやや行き過ぎかと存じます。先ほども御説明いたしましたように、本人つまりこの例でいきますと、学校のために金銭を預かり、保管中の者が、本人のためにその金銭を使うのではなくして、みずからほしいままにそれを消費する、あるいは着服するというような場合に横領罪が成立するのでございまして、単に帳簿の記載が不正確であるということのみをもって直ちに捜査権を発動することはいかがであるかというふうに思います。
  135. 中西績介

    中西(績)委員 これは横領したかどうかわからないのですよ。なぜなら、第一基礎になる人員がわからぬから、総額が合っているかどうかもわからぬです。しかもそれは全部証憑書類を焼いて捨てたというのがはっきりしているわけですから、そこまでしておる分について、結局これが正しいかどうかもわからぬわけですから、そうしたときに、じゃ、やろうと思えば何でもできるということですな、いまのあれからいくなら。残しておかなければならない証拠書類は全部焼いちゃって、金はこれだけありますと言いさえすれば、それはわからぬから、わからぬ。だから、私がいま言うように、この人が言っている二月一日のこの分はなるほど正しいことをこの人は言っているのじゃないか、警察関係からいうなら、という気が私はするわけですよ。したがって、この分については私はぜひ、正しいかどうか、そうした疑惑があるかどうかということは大変あれしていますけれども、どうなのかということぐらいは私は調査する必要があると思うのです。そうしなければ、こういうことがうまくやりさえすればいつだってできるということになるわけですから、この点は要望しておきます。
  136. 森廣英一

    森廣説明員 誤解をしていただくと困りますのでお答えさせていただきたいと思いますが、決して私どもは犯罪がそこにないというような保証をする立場にはございませんで、さようなことは申し上げているつもりはございませんが、また全然無感心でおるというわけでもございません。そういうことが国会で御論議になれば、当然私ども警祭庁としてもまた都道府県警察としても関心は持って対応すると思います。しかしその中から、関心を持っていろいろ見聞きしておる間に具体的な犯罪の容疑があれば、そしてそこに犯罪が成立するものであれば警察というのは厳正に対処してまいる。この点はあえて明らかにしておきたいと思います。
  137. 中西績介

    中西(績)委員 何も調査もせずにそれがどうだこうだということがわかるわけがないのですから、関心を深めていただいて調査ぐらいしてもらわなければ、こういうことが許されていくならばこれはもう大変なことですからね。私は一般的な常識としてぜひこの点をやっていただきたいと思うのです。  最後になりますが、私は裏入学ではないかと思うのだけれども、特別協力金の問題についてこの前論議をしておりましたから、特別協力金問題はどういうように理解をしていますか。
  138. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 九州産業大学におきましては、五十二年度以来教育環境の整備充実のために夜間学部を除く全入学者から特別協力金を徴収しているわけでございます。  この特別協力金につきましては、大学側の説明によりますと、毎年その徴収につきまして理事会の承認を得ておりまして、五十六年度からは学生募集要項に明記し、学生納付金として会計を処理していると聞いております。ただし、これは五十五年度までは特別寄附金として処理をしておったようでございます。  以上でございまして、文部省におきましても学生納付金の一種と判断をいたしておるわけでございますが、ただ、推薦入学者から一般入学者よりもより多く徴収するというような形では推薦入学の趣旨からも好ましくないので、推薦入学者と一般入学者で差を設けないよう指導をいたしております。大学側からは、五十九年度以降は差を設けないようにする旨の回答を得ております。
  139. 中西績介

    中西(績)委員 ちょっと最後のところをもう一回言ってください。
  140. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学側からは五十九年度以降は、推薦入学者と一般入学者から徴収する特別協力金について差を設けないようにするように指導いたしておりまして、大学側も両者の間に差を設けないようにしたいという回答をいただいております。
  141. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、指導して後、特別入学金として徴収をしておった時期、そして今度はそのことが指摘をされて五十七年度からそうしたものが変わってきた、全般にやるようになってきたのでしょう。それで、それに差がついているから問題だと言ったところが、それは五十八年度もやって、五十九年度にそれを改める。簡単に言うと、こういう言い方ですか。
  142. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 簡単に申せば、先生指摘のとおりでございます。
  143. 中西績介

    中西(績)委員 そうですね。そうなりますと、この特別協力金というのは寄附金ではないということですか。
  144. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私どもの理解では学生納付金の一種というぐあいに理解をいたしております。
  145. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、こういうあれからすると全く制限なしに幾らでもそういう名目を打ちさえすれば寄附金を取れるということですね。
  146. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 最初に申し上げましたように、大学側としては教育環境の整備充実という観点から必要な経費を入学者から徴収をするという形でございますが、無制限にそれが許されるものでないことはもとよりでございます。当然に良識ある対応をすべきもの、かように理解をしております。
  147. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、この十五万、そして一般は十万というものを五十八年度取っていますね。これは普通の常識としてお考えになったのですか。
  148. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私どもとしては、推薦入学者と一般入学者との間に差等を設けることについては、推薦入学という事柄の趣旨から必ずしも適切ではないのではないかということで、入学者から差を設けない形で学生納付金の一種としてそういう特別協力金を微収する方がより適切ではないかということを大学側に伝えたわけでございまして、したがって、五十八年度の入試のことはすでに終わっておった段階の問題でございますから、五十九年度以降そのような対応をしたいという回答を大学側からいただいておるわけでございます。
  149. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、特別な人から寄附金を徴収するというこうしたやり方を今度一般化しさえすれば寄附金は幾ら取ってもいいということを意味しますね、これは。そのようにごまかせばいい、こういうことになるが、そのように理解してよろしいですか。
  150. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私どもはそのように理解をいたしておりません。
  151. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、この十五万円を認めたというのは何でしょう。
  152. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども申し上げましたように、学生から微収する学生納付金、大学教育環境の整備のために入学者から――もちろん私立大学の経営でございますので、全体の経費の調達については補助金の方から、授業料なり、そういうただいま申しましたような、まあ大学によりましていろいろと名称は異なるわけでございますが、施設整備費でございますとかいろいろな形で入学者に経費の一部を負担してもらうことはこれは多くの私学で事実上行われているケースでございます。先ほど申しましたように、それが無制限にそういう経費を徴収していいというものでないことはもとよりでございまして、当然良識の範囲内でそういう事柄を処理されるべきものと思っております。
  153. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、修学費納入要領などというものが全部あるわけですね。納入金の内訳というのがちゃんとありまして、授業料から施設費から図書充実費から演習実験費から何もかも全部出ていますよ。それとは別個に今度そういうものを取ることができれば、これはこの前私が指摘しましたね、大学の場合に。文部省の指導は、一応のめどというのは一三〇%でしょう、定員数に対する入学のめどというのは立っていますね。それを超えて一四〇%とれば、何もこうした補助金というのは要らないということを言う人がいるわけですね、まじめな人たちは。ここの場合にはもうすでに一三六%入れているのですよ。一三〇という大体のめどを示していますけれども、それよりうんと超えている。しかもこういうことをやれば、何も補助金をこのように削られようが何しようが、要らないということになるのじゃないでしょうか。これは私は計算をしてみたところが、計算では結局、推薦の人あるいは一般の人を総トータルしますと三億八千四百二十五万円入りますね。入学せずに一般的に合格通知が来たので払い込んでいく人あたりまで全部含めますと、この金額は大体五億円近くなるのです。その五億円と、今度はいま言うように、ここが二千百二十名ぐらいですが、それを二千九百名入れているわけですから、その差を全部トータルしてやっていけば、大体補助金なんというのは当てにせずともできるのじゃないですか。どうですか。
  154. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学の経営にかかわる問題でございまして、もちろん私立大学の経営、教育研究条件を改善充実してもらうために補助金も有効適切に使用されるべきものだというぐあいに私どもは理解しております。ただ、私立大学でございますので経費について、たとえば先ほど申しました寄附金の問題にいたしましても、入学を条件とするような寄附金を取ることは私どもとしては困るということを申し上げておるわけでございます。募集要項で明示をした形で、本学に入る場合にはこういう御協力をお願いしたいということを入学者に募集要項で明示をいたしまして、応募する者もそれを承知した上で応募するという形であるならば、私立大学一般の経営としては、通常良識の範囲内にあるものであればそういうことは許されるものだというぐあいに理解をしております。
  155. 中西績介

    中西(績)委員 十五万というのは、これを見るとほかにたくさんちゃんとあって、たとえば施設費だとか図書充実費、演習実験、保健体育費、そういうものが全部出ているわけですよね。そうすると、あとは環境整備だとかという名目をつけさえすれば、これが常識だということになってくればどんなことだってできるというのですよ。しかもその五億円という金が入ってくるわけでしょう。だから、そういう形のものを認めていくということになれば、助成あるいは補助金問題がいまクローズアップされているときですから、よほど考えておかなくちゃならぬと思うのですね。これは大変重要だから私は言っているのですよ。あら探しをやっているわけじゃないのです。こうしたことを十分考えた上でこれを許可しておるというように理解してよろしいですか。
  156. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先生指摘の私立大学全体の経営なり補助金の問題は、私どもとしても十分慎重に事態を把握した上で対応しなければならない事柄だというぐあいに考えております。したがって、重要な事柄として受けとめるべきだという御指摘については私どもも全くそのとおりだと思います。ただ、本件について、それではこの取り方が適切ではないのではないかという御指摘であるとするならば、その点については私どもとしても大学側に指導いたしまして、その指導に沿った形で対応したいということでございますので、その点についてはなお今後推移を見まして、御指摘のような経営上非常にいかがわしい経理が行われるとか――もちろん寄附金なりそういうものについても経理は明確にしていただかなければならぬわけでございますけれども、そういう学校側の対応を見まして、なお指導すべき点が出てまいりますればその時点で対応を十分考えたい、かように思います。
  157. 中西績介

    中西(績)委員 時間が参りましたのでやめますけれども、私はいまのあれでは納得できません。ですから、この次また時間をもらってやります。  以上です。
  158. 葉梨信行

  159. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、前回文部大臣の所信表明に対する質疑の中で教科書問題、今日の校内暴力問題等について質問いたしましたが、時間不十分でありましたので、まず教科書問題、とりわけ五十七年八月二十六日の前宮澤官房長官談話を中心にして質問を進めていきたいというふうに思います。そこで最初に、この種の問題、非常にやりとりが複雑でありまして、国民の皆さんも非常にわかりづらいと思いますので、いままでの前宮澤官房長官談話を中心とする質問のやりとりの議事録を中心に若干整理をしていきたいと思いますので、当然これは文部大臣ということになりますから、そういうことでひとつあらかじめ御了承いただきたいというふうに思います。  そこで、ここに議事録がございますが、昭和五十八年三月二十三日、この議事録を中心に、ひとつ確認をする形で質問をしていきたいというふうに思います。それの四ページの上段にありますが、私申し述べていきますから、大臣よく聞いていてください。私の質問に対する文部大臣答弁という形で、ポイントだけ言っていきますから。  その一つは、「文部大臣は先ほど、是正ということは適当でないものを正しく改めることだということを言われました。この点、まず、いいですね。」、これに対しまして大臣は、「通常はそういうふうに使われると私は思います。」、こういうふうに肯定されております。その次、質問「そうすると、次は「政府の責任において是正する。」という、ここで使われている是正はどういう意味ですか。」ということに対しまして大臣は、「是正というのもやはり同じことだと思いますね。」というふうに肯定されております。したがってこれをつなげば、政府の責任において是正するということは、政府の責任において適当でないものを正しく改めることだというふうになると思います。これが第一点です。  その次に、同じく議事録の四ページ上段、引き続いて私の質問がそこにあります。「だとすると、」ということでずっとありまして、それは宮澤談話の第二項を中心としてさらにそれに沿って質問を続行したわけです。それに対しまして、次の二段目に大臣の答弁が出ておりますが、「それは先ほど来申し上げておりますように、全部の文章の流れから言って、手続に従って善隣友好を深めるための措置をとる、いわゆるよりよいものにする、こういうことでございます。」、こういう答弁なんですね。以下ずっとありますが、その間のところを集約していきますと、適当でないものを正しく改めることだというふうに答弁しながら、いまのところでは、よりよいものにするのだというふうに答弁が重なって変わってきているわけです。それはいかなる根拠によるのかということについてずっと詰めていっているわけです。つまり、適当でないものを正しく改めることだということと、よりよいものにすることだということについて。時間がありませんから、下段の一番最後のところをちょっと見ていただきたいのですが、こういう答弁がございます。冒頭の瀬戸山国務大臣、その次の佐藤(誼)委員、その後です。瀬戸山国務大臣「国語辞典にはこの問題については何も書いてないと思いますが、結局いろいろいざこざがあってこういうことになったわけでございますから、こういう方式で適当でないところを改めるようにいたしましょう、こういうことだと思っておるわけです。」、こういう答弁があります。これが私は宮澤談話第二項に伴う集約的な答弁だというふうに理解しているわけです。つまり、いろいろあったわけでございますが、こういう方式、ここで言えば第三項に是正の方式が書いてありますから、第三項に示してある是正の方式で適当でないところを改めるようにしましょう、これが宮澤談話第二項の中心になる内容文部大臣の理解だというふうに思うわけであります。  そこで、「適当でないところを改める」というこの適当でないということについては、これは文部大臣記憶があると思いますが、その中には誤りも含まれる、これはすでに答弁されていることであります。したがって、この宮澤談話の文書を持っていると思いますけれども、いろいろなやりとりがありましたが、特に第二項の「このような日韓共同コミュニケ」からずっといきまして、特に二項の中でも問題になっておりますのが、ちょうど真ん中辺から、「今日、韓国、中国等より、こうした点に関する我が国教科書の記述について批判が寄せられている。我が国としては、アジアの近隣諸国との友好、親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正する。」、こういうふうになっていますね。いまの大臣の答弁によりますと、この最後のくだりのところの「政府の責任において是正する。」、このことについては、先ほど議事録で確認したように、政府の責任において適当でないところを改めるというふうに理解できると思うのです。それでそのことを中心に第二項をもう一度要点だけを集約して言うならば、この中心になるところは、「こうした点に関する我が国教科書の記述について批判が寄せられている。」、その批判が寄せられている教科書の記述について「政府の責任において是正する。」、つまり政府の責任において適当でないところを改めていくのだ、これが文部大臣がこの前答弁されたことの集約的な中身だと私は理解するし、それから宮澤官房長官談話の全文の文章から言っても、またこのことが対外的に政府の見解発表としてなされたという経過から言っても、私は当然だと思うのです。  このところをはっきりしないと、せっかくあれだけ国際あるいは外交問題になり、国民の関心を呼びながら、何か国民にわからないままに事が推移しているということになりはしないかと思いますので、重ねてでありますが、その点についての、私のいま述べたことについて御答弁いただきたいと思います。
  160. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 この問題については、いま速記録を中心にお尋ねのように、前にも申し上げたわけでございますが、いまの私の考えは従来申し上げたことに尽きるわけであります。いわゆる宮澤官房長官談話、一項から四項までありますが、その三項に、特に私この前も申し上げておりますけれども、こういう日中共同声明等の点について配慮する必要がある、こういうことを書いて、そういうことだからこのために今後はかくかくしかじかの手続を経て対応する、こういうことを申しておるわけでございます。そのことは、前にも申し上げましたが、宮澤官房長官が、この談話を出された御本人の言葉として、よりよいものにするためにこういう取り扱いをするのだ、こう言っておられますから、そういうふうにわれわれも解して措置をとることにしております。そういうために、これは政府の責任において是正すると申し上げましても、佐藤さんに申し上げるまでもないことでございますが、わが国の教科書はいわゆる国定教科書、国でつくるわけではございませんから、著者がつくられたのを初中教育に適当なように、いわゆる検定制度でやっておる。こういう法令の手続があるわけでございますから、それに従ってやる。そこで検定の基準ということもそれこそ政府の責任において変えまして、今後の教科書についてはこれに盛られておるような趣旨を生かすような進め方をしようじゃないか、こういうことに措置をとって今日まで来ておるわけであります。  この間、私は直接の当時の当事者じゃありませんけれども、韓国なりあるいは中国についてはこちらから係が行きまして、日本の教科書のつくり方の経緯、制度ということをよく御説明申し上げて理解を得ておる、こういうふうに了承しておるわけでございます。
  161. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は漠然とその状況とか経過とか聞いているんじゃないのですよ。その点はっきりしてもらいたいのですが、宮澤官房長官の談話というのは現在の政府あるいは文部大臣をずっと行政の筋としてある意味においては拘束するといいますか、これに沿った対処をしていかなければならぬと思うわけです。しかも教科書問題はまだ尾を引いているわけです。したがって私は、宮澤官房長官のこの文書全文について、これが根拠になっているわけですから、これについて文部大臣はどのように考えるかということを聞いているわけです。  そこで、いろいろございますけれども、先ほど申し上げたように、簡単に言えば、この中の中心は、教科書の記述に批判が寄せられている、したがってそのことに謙虚に耳を傾け、教科書の記述について政府の責任において是正する、こういうことだと思うのです。その政府の責任において是正するとは何かというと、これは何遍もくどいようですけれども、あなたは、是正するというのは適切でないものを改めるのだ、その中に誤りも含まれるということを言っているのですから、だとすれば当然これは政府の責任において適当でないものを改めるのだというふうに理解するのが素直だと思うのです。私はそう思うのですよ。また、これはいままでの議事録で確認されて、あなたはそういう趣旨の答弁をされている。ところがいま聞きますと、問題をはっきりするためにこのことについて端的に言うと、政府の責任において是正するというのは、前宮澤官房長官はよりよいものにするのだという答弁をしているから私もそう思っているのだという趣旨のことをいま言われました。つまり、瀬戸山文部大臣は、前宮澤官房長官が是正するということをよりよいものにするのだと言っているから私もそう思っているのだというふうに思うのか、いや私は文部大臣としてこの責任において是正するという、この是正という意味を含めてそう思っているのか、この辺をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  162. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 宮澤官房長官がこの談話を出してこの趣旨はどうかと聞かれたときに、よりよいものにするという趣旨だということを申し上げておられる、これはきょう初めて申し上げたのじゃなくて前にもお答えしておるわけであります。私はこの前の政府がとりました態度を受け継いでやっておるわけでございまして、その方式に従って改善策を講じておる。  繰り返して恐縮でありますが、これにも書いてありますが、第三項に、「このため、今後の教科書検定に際しては、教科用図書検定調査審議会の議を経て検定基準を改め、前記の趣旨が十分実現するよう配意する。すでに検定の行われたものについては、今後速やかに同様の趣旨が実現されるよう措置するが、それ迄の間の措置として文部大臣が所見を明らかにして、前記二の趣旨を教育の場において十分反映せしめるものとする。」、こういう談話の趣旨に従って今日まで措置をとってきておる、こういうことに解しております。
  163. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 後段の方は私まだ質問していないので、その中心部分をはっきりさせてもらいたいと思います。それは、くどいようですけれども、政府の責任において是正するということについて宮澤官房長官はよりよいものにするのだと答えている、したがって私もその態度を継続するのだ、こういう趣旨のことを言われておるわけです。それは文部大臣としてあなたもやはりそう思っているのですか。是正するというのはよりよいものにするのだというふうにあなたも文部大臣として思っているからやっているのか、私は若干違うけれども前の宮澤官房長官がそういうことを言ったから私もそれを引き継いでいるのだということになるのか。私はそこがどうもすとんと落ちないわけですよ。というのは、この是正するということについてあなたは、先ほど議事録で明らかなように、適当でないところを改めるのだということを言っているのだから、これは矛盾しているのじゃないですか。どうなんですか。
  164. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は実は矛盾しておるとは考えていないのです。  前にもお答えいたしましたように、是正という日本語の言葉はどうだとお聞きになりましたから、通常は改めるのだ、間違ったことを改めるというふうに使われております、ただこの場合、是正という言葉が使われておりますけれども、この全体の文章の流れからいいますと、いままで繰り返し申し上げて恐縮でありますが、こういう手続その他でよりよきものにするのだ、こういう趣旨にできております、われわれもそう解しておる、こういうことでございます。そして、外交関係においてもそのことを理解してもらって今日に至っておる、こういうことでございます。
  165. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 どうもこれ、私はあなたが抗弁されることはいいんですよ。だけれども、一般の国民なり小中学校の生徒が聞いておったら、ちょっと理解できないんじゃないかと私は思うのだ。これは文教委員会ですから、はっきりしてもらいたいのですけれども。  いま是正ということを言えば、これは間違いを正すということがあるのだ、しかし、この文章の中の「政府の責任において是正する。」ということになれば、文章全体の流れからいえば、是正ということはよりよきものにすることになるのだ、こういうことを言われていますね。同じ是正という言葉を使いながら、是正という言葉はそういうことになるのだが、誤りも正すのだ、だけれども、この文章の中に是正という言葉が入ると、よりよいものにするのだということを言っているわけですね。これは矛盾じゃないですか。どうなんです。
  166. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は、一つの文章を読むとき、あるいは一つの意見を理解するとき、その一字一句だけでは間違いを起こすことがあると思います。全体の文意というものはどこにあるか、こういうことを見てわれわれはいろんな本を読む場合も解釈するわけでありまして、途中に一行こう書いてあったからそれは全部がそうだというふうには――なるほどそこだけ取り上げますと、そういうふうに解される場合もあるけれども、作者あるいは著者の全体の考え方というものは、その全文を見なければわからない、あるいは一節を見なければわからない、こういうふうに私は通常考えておりますから、そう理解ができないものではない、かように考えております。
  167. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 まあ、これは議事録も公になるわけですから、皆さんから判断してもらえばいいと思うのですけれども、ただ、私はどう考えても、「政府の責任において是正する。」というこの是正という言葉は、適当でないものを改める、あなたはいまいみじくも言われていましたけれども、誤ったものを正す。しかし、この文章全体の中に是正するという言葉が入ってくると、全体の文脈からよりよいものにするのだ、こういうことですね。これは私はちょっと、どなたが考えても常識的に無理なあなたの答弁だと思うのです。つまり、是正するという言葉が文章の中に入りますと、適当でないものを改めるというそのニュアンスといいますか、そういうものは全然なくなっちゃって、よりよいものに改めるのだということにすとんとなってしまうというこのことが私は無理だと思う。  そこで、私はあえてあなたに提言しますが、これは自然な解釈じゃないですか、文脈からいっても、是正という言葉をこの中に位置づけて解釈する点からいっても。いいですか、「政府の責任において是正する。」ということは、あえて言うならば、政府の責任において適当でないものを改め、よりよいものにしていくのだという、少なくともそういう解釈が成り立つのじゃないですか。これが私は国民皆さんのとらえ方、感情として当然の最低のとらえ方だと思うのですよ。どうなんですか。そう無理なさらなくてもいいですがね。
  168. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 物の見方の相違といえばそこまででございますが、繰り返して恐縮でありますけれども、わが国の法律、制度では、こういう場合には第三項に書いておるような方法でやるのだ、そういうことを示して、政府が勝手に教科書を書き直すなんということはできないわけですから、それを前提にしてこの談話が出ておる。私どもはそういうふうな立場に理解しておるわけでございまして、それはおわかりいただけるのじゃないか、かように考えるわけでございます。現在の制度、法律を踏みにじって、そう言われたから、こう政府の責任で直すのです、こういうことは言えないのが現状、わが国の制度でございまして、したがって、式に従って改善を図る、まあ宮澤流で言うと、よりよいものにする、こういうことになる、かように考えております。
  169. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 法律の制度とかそれからこの第三項とかということは、私は何も質問していることじゃないので、悪いけれども、質問している中心のことからは外れているのです。  確かに第三項では、その是正の方式といいますか中身というか、これを示していることはこのとおりだと思うのです。この点は一致していますね。ところが「政府の責任において是正する。」という点は、私はどう考えてみたって、百歩譲っても、素直な解釈としては、政府の責任において適当でないものを改め、よりよいものにするのだという、これが自然な解釈であり、適当でないものを改め、よりよいものにするための方式、内容というのが第三項に書いてある、このように理解するのが自然ではないかというふうに私は思うのですよ。文部大臣どうなんですか、それは。私はとらえ方として素直だと思うのですがね。
  170. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 宮澤官房長官、当時の政府も、やはり日本の現行の教科書に関する制度を前提にして物を考え、そして国民に談話を発表し、国際関係も話し合いをされたという、これは当然なことでありまして、それを前提にこういうふうな談話を出しておられるのでございますから、これは繰り返して恐縮でありますけれども、「政府の責任において是正する。」という意味は、そういう意味で是正をする、こういうことにわれわれは考えております。
  171. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そういう意味というのは何ですか。
  172. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 現在の日本の法制すべてを前提にして改めるという趣旨で談話が出されて、その方式に従ってやっておる、こういうことでございます。
  173. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 その日本の法制を前提にして改めるということはどういうことなんですか。私はそういうことを聞いているのじゃなくて、改める前提としてある是正ということが、適当でないものをあるいは適当でない部分を改め、よりよいものにしていく、こういうことではないのかということを聞いているわけです。だから、法制とか何かということを私は聞いているのじゃなくて、あえてあなたがいま答弁されたことを言うならば、第三項の関係だと思います。これはいいですよ、第三項の問題は。これは改める是正の方法なんですから。その前のことを言っているわけです。念のためにもう一度言ってください。
  174. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 繰り返して恐縮でございますが……(佐藤(誼)委員「これは納得できないのだよ」と呼ぶ)私はよく納得しておるのです。一から二、三、四と続いてこの談話ができておるわけでございますから、全体を見て物を判断しなければならぬ。それに従って政府としては、また文部省としては措置をとっておる、こういうことでございます。
  175. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私、このことについてはここでやめたいなと思うのだけれども、これは是正という言葉を使えば、先ほど言ったように、適当でないものを改める、しかし、この全体の文章を見ると、是正はよりよいものにするのだ、こういう解釈ですね。私は、どう見たって、これは全体の文章の流れからいったって、外交上の経過からいったって、そんな解釈にならぬと思うのですよ。少なくとも私は、あなたが是正ということを言われているように、適当でないものを改め、あえて加えるならば、よりよいものにするという、これが自然なとらえ方だと思うのです。もしあなたが言われるように、是正というものがよりよいものにするのだということであるならば、なぜ自然に改善という言葉を使わなかったのですか。あなたは是正と改善は違うということを言ったでしょう、この前の答弁で。なぜここに是正と改善という使い分けが出てきているのか、なぜ改善としないのか。もしあなたが言われるようなことであるならば、政府の責任において改善する、こういうことにならなければならぬはずです。これが一つ。  それからもう一つは、是正という言葉が出てきた経過というのは、外交上の問題からずっと尾を引いているわけです。これはさかのぼる話になりますけれども、特に中国の側からは、最後の末尾のところに、文部省の検定の過程の中に出てきた教科書のゆがみ、ひずみといいますか、それを是正することを要求する、こういうくだりになっているわけです。これは文章を正確なものを持っていませんけれども。その是正という言葉にこたえる形で対外的に是正という言葉がここに出てきたというのは、これは国民が等しく見る常識じゃないですか。したがって、ここにあなたが言われるような流れとしての解釈ということになれば、改善という言葉を使われるはずです。ところが、いま言ったような一つの外交上の経過からいっても、それからその当時の対応の仕方からいっても、当然是正という言葉が使われるべきであって、しかもこの是正というのは、百歩譲ってもあなたが是正という言葉に答弁されているように、誤っているものを、あるいは適当でないものを改めてよりよくしていくのだという、少なくともこれは一つの常識的なとらえ方ではないのかというふうに私は思うわけです。したがって、宮澤官房長官の談話を引き継いで行政を行っているあなたとしても、少なくともこのくらいのところのとらえ方をすべきでないかというふうに私は思うのですが、重ねてどうですか。
  176. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私がこの談話あるいは取り扱いを理解しておるのについて、それなら改善と書いたらどうだ、それはその当時この文章を起案された人の考えですから、それをとやかく言うわけにはまいりません。しかし、繰り返すようでございますが、ここの第二項に、中国や韓国からの教科書に対する異論が出て、それについて改善といいますか、是正する、それは繰り返すようでありますが、日本の教科書作成の制度に従って改める、こういうふうになっておるわけでございますから、そういうやり方をしよう、こういうことでございます。
  177. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ、それ以上のところは、国民的な関心を呼んだ教科書問題ですから、議事録も公的に残りますから、国民の皆さん判断していただきたいのですが、それは非常に無理な解釈であって、いまの外交上の経過からいってもこの談話が発表された全文の流れからいっても無理な解釈だと私は思う。私が素直に解釈するならば、少なくとも百歩譲ってもこの部分については適当でないものを改めよりよいものにするという、これが第二項の結びの趣旨だというふうに私は理解します。  そこで、それとの関連で第三項の問題に入っていきますけれども、この第三項の「このため、」つまり是正を行うため、このため、検定の基準を改めて昭和五十七年度の検定から適用する、このことについてはいいわけですけれども、すでに検定済みのものについては、ここには文章化されておりませんけれども、その後の経過を見れば、五十六年度検定の教科書、つまり五十八年度から使用される高校の歴史教科書、このものについては検定を一年繰り上げて五十八年度検定にし六十年から使用する、そして五十八年度、五十九年度は言うなればそのまま使用していくのだ、こういうことを言っているわけですね。ところが、簡単に言うと、五十八年、五十九年そのまま使用するというこの教科書は、第二項の是正、つまり適当でないものを改めよりよくするということから言うならば、適当でない部分を改めてよりよくするという趣旨でその個所については直ちに直していくべきだと私は思うのです。その直す方法は、教科用図書検定規則第十六条第四項の正誤訂正でやるべきだと私は思うのです。  第四項は御承知のとおりの中身になっていますから、学習上不適切ですか、ちょっと私も持っていませんけれども、こういう条項になっていますね。私は、そういう流れになっていくと思うのです。そこのところをあえて、これは間違っているものでもないし使用にたえ得ないものでもないから、二年間がまんしろ、いずれそのうち直しますよというようなことでは、それは文部省の一つの自分たちの殻の中での筋論としてはいいかもしれぬけれども、国民はなかなか理解がすとんと落ちないし、現場の教師、子供は戸惑うだけだと思う。直すべきものはどんどん直した方がいい。早く直すべきだ。しかも直す手続は、先ほど言った検定規則の第十六条の第四項でやるのが自然だと私は思う。こういう流れが外交問題なり国民が関心を呼んだその教科書に対する正しい、しかも納得のいく対応の仕方ではないのかというふうに私は思いますが、どうですか。
  178. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 ただいまお挙げになりました第三項でございますが、これはやはり大臣がお話しいただきましたように、二項を受けまして、その内容としてこのような手続なりこのような措置をとるということでございまして、この件につきましても官房長官談話が出されました翌日の衆議院の文教委員会におきましていろいろと御質疑等がありまして、そのとき小川文部大臣から、これはいろいろ問題になりました個所につきましてはそれぞれ理由があって検定をしたものでございまして、間違ってはいないということをお答えしているわけでございますが、ただこの二項等に書いてございますように、中国なり韓国から批判を受けたという事実を受けとめまして、それをよりよきものに改めるという趣旨からこのような三項に定めるような措置をとるということでございますので、もともと前提として先生からいろいろお話がございましたような内容の是正という言葉からお話がございましたように、間違ったものがあったから改めるのだということではございませんで、そのような点についての批判を受けてよりよきものに改めるという観点から検定基準等も改めまして、そして手続に従って著者が申請をしたものについてのそのような配慮を加えてよりよきものに改めていく、適当なものに教科書を仕上げていくということを言っているわけでございますので、その内容につきましては過般来の文教委員会等の質疑におきまして明らかになっているとおりだというふうに考えます。
  179. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 ちょっといま、間違っておったから直すのではない、こういう趣旨のことを言われましたね。私はあえて間違いという言葉を使っていないのです。大臣も、適当でないものを改めるという、そして適当でない中には間違いというものも含まれております、こういうことを言われておりますけれども、適当でないというのは、事実に即して言えば、事実が間違っているという場合もありますが、この場合で言えば対外的なアジア諸国との善隣友好の配慮からいって適当でない、そういう場合もあるのです。ですから、適当でないものを改めよりよくするのだというのは、そういう趣旨で言っているのであって、そういう点から言えば、あなたの方で無理してそんなにかたくなにならなくても、外交上の配慮からいってもその記述は適当でないし、教育的な配慮からいっても適当でないというふうな部分を改めてよりよくする、これは私はやぶさかであってはならないと思うのです。そのために、二年間無理してそのまま使わせておく、いずれ改めますよということではなくて、せっかくそのための検定規則十六条四項もあるのですから、かつてそういうことのために改めた例もあるのですから、当然そういう形で改めていいのではないかと思うわけです。そういう扱いが国民の皆さんも納得できる扱いではないのかということを、私はあえて質問という形で意見を述べているわけです。私はどう考えても、あなた方のとっているのは無理な解釈であり、無理な取り扱いであるということを言わざるを得ません。  そこで、あえてそれに関連して言いますけれども、その第三項の後の方に「それ迄の間の措置として文部大臣が所見を明らかにして、」以下云云、こう書いてあります。つまり文部大臣の所見並びにその具体的な措置としては文部広報に挙がっておりますね。これなどを見ますと、この宮澤談話全体のその当時の趣旨から言うと、本来から言えば補完のための経過措置としてこれは文部大臣が述べるべき内容だというふうに理解していくのが自然だし、そのとおりの見方だと思うのです。ところが実際出てきたところの談話なり文部広報を見れば、背景説明、経過説明であって、扱い上についてこのような扱いをするのだということが酌み取れないような内容と記載になっているわけですね。それでは現場の皆さんが、いずれ二年後には改まるのだけれども、はてどのような形で二年間この教科書を扱ったらいいのか、これは現場の判断だということを言うけれども、私はきわめて無責任ではないかと思うのですよ。文部省としては自分たちの筋が通ったということでそれはいいかもしれぬですよ。現場が混乱するだけであって、戸惑いをするだけです。そんな不親切な教育行政は私はないと思うのです。どうなんですか。
  180. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 この点につきましても、これが経過的な措置というふうに解釈される立場と、すでに官房長官が談話を出されましたときに補足の説明をしておられますが、この文部大臣の所見ということにつきまして質問がございまして、これは教科用図書検定調査審議会の議を経て教科用図書検定基準の一部改正が行われるのを待ち、日韓共同コミュニケ、日中共同声明の精神が学校教育の場においても尊重されるべきことを文部大臣が声明し、全国の小学校、中学校、高等学校、大学並びに各都道府県及び市町村教育委員会等に配付される文部広報に発表し、周知徹底を図ることとするということが補足説明でございまして、経過的な措置ということではございませんで、文部大臣がその間に何もしないということではなくて、所見を明らかにする、その所見を明らかにする内容、方法は、文部広報にそのようなことを声明して載せる、それを配るということでございまして、そのことはこの過般来の文教委員会等の御質疑におきましても明らかにされておるわけでございまして、二年間の間は何もしない、何らの措置も講じないということではございませんで、このような所見を文部広報に載せて配ります、そういうように官房長官がこの談話を発表されましたところで明確に述べておられるわけでございまして、その方向に従って、私どもとしては文部大臣の談話が出され、文部広報にその趣旨が載っているというふうに考えるものでございます。
  181. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 その部分も見解が違う部分でありますが、先に進みます。  そこで次の問題は、昭和五十七年度の教科書の検定が行われたと聞いておるわけです。もちろんこれは社会科歴史教科書についてです。ところがその検定の基準改正される以前、つまり十一月二十四日以前に検定された社会科歴史教科書については、簡単に言えば従来のままの検定がされた。したがって第一項が加わった、検定の基準改正された十一月二十四日以降、それ以降例の「侵略」という記述に戻すように訂正を求めたところが拒否された。つまり十一月二十四日、検定基準改正される以前に検定された五十七年度の社会科歴史教科書については従来のまま検定されていて、そして検定基準改正された後に、例の「侵略」という言葉に訂正をするように申請をした、そうしたらそれが拒否された、こういう事実を新聞で私は読んでいるわけです。この点、事実ですか。言っていることの意味はわかりますか。
  182. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 具体的な検定の内容でございますのでつまびらかにすることはできないわけでございますけれども、そのようなことがあるいは新聞に出たかもしれませんが、私どもとしては詳細、そういうことがあったということは聞いておりません。
  183. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 担当の方もいると思いますが、新聞にも出てここにもあるのですけれども、これを担当の局長が全然知らないというのはちょっとおかしいですね。三月三十一日ですよ。朝日新聞にも出ているのです。それで担当の方もいると思うのですが、どうなんですか、わからぬですか。
  184. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 新聞には著者なりいろいろな立場の方々からのお話として、取材の形を通じまして出ることがございますけれども、ただいま五十七年度検定をやっている最中でございまして、その一々について明らかにするというような時期ではないわけでございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  185. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 時期ではないということを言われますけれども、いつこれが公になって公的になるのかちょっとわかりませんけれども、もしそうだとすると、私はこれまた大きい問題が後に尾を引くと思うのです。そうだとすると、という前提ですがね。なぜかと言うと、この五十七年度の検定で、これは当然「侵略」と是正されていくだろうそのものが、「侵入」「進出」ということでそのままになっている。その教科書は五十九年度から使われるわけですね。そうでしょう。五十七年度の検定ですから五十九年度からこれはずっと使われていく。ところが検定はいつになるかというと、二年後であれば五十九年、一年繰り上げで。三年後であれば六十年です。五十九年の検定だとすれば六十一年に新しくなるわけです。六十年の検定であるとすれば六十二年から新しいものとして使われていくわけです。そうなりますと、六十一年、場合によっては、長ければ六十二年まで「侵入」「進出」ということで教科書はずっと使われていくのですよ。いま五十八年度ですから、五十九、六十、六十一、四年間ですよ。これはあなたの先ほどの第三項の扱いからいけば、こうなっていくだろうと思う。こんなことが許されていいのかと言うのです。文部省としては検定の枠内だということで、自分たちは筋を通してかたくなな答弁をするかもしれないけれども、国民の皆さんから言えば、当然直されるべきものが四年間もそのまま放置されて子供に使われておって、子供はそのうちもう高校を卒業してしまいますよ。仮定の問題ですから私はそれだけにとどめておきますけれども、こういうひずみ、ゆがみがたくさん出てくるということです。これは文部大臣、あえて言いますけれども、あなたがこの第二項というものをよりよいものにするのだ、よりよいものにするのだという答弁を繰り返しているから、このようなひずみ、ゆがみがずっと出てくる。これを私が言うように――私は誤りという言葉を使っていないのです。適切でない部分、適切でないものは改めてよりよいものにするのだとなれば、幅のある扱いができるはずです。私はそのことをあえていまから指摘しておきたいし、このことは事実が明らかになったときに改めてまた行いたいと思います。  そこで教科書問題について、私は最後に、当然これは教科書の中身、記述の中身が問題になったことはそのとおりなんですが、同時にこれは検定制度そのものも問題になっていると思うのです。これは発端になった外交上の経過からいってもそうなんですね。それはここに当時の中国からの例の申し入れ文書がありまして、これは外務省で翻訳した文書ですから御承知だと思いますが、これにこのように書いてあるのです。七月二十六日の分には、「日本文部省は高校、小学校の歴史教科書の検定にあたつて日本軍国主義の中国侵略の歴史を書き改め、」以下云々と書いてあります。つまり、書き改めたという記述の内容を問題にし、申し入れされていますが、文部省の検定に当たってということで、ここがセットになっているわけです。最後の部分の「文部省検定の教科書の誤りを訂正するよう希望する。」というように「文部省検定」というものがくっついているわけです。それから重ねて来た八月五日、これも同じようです。「七月二十六日、中国政府は日本文部省が教科書検定の過程で」ということで「教科書検定」というのが必ずついている。最後にも「日本文部省の教科書検定における誤りを是正するよう中国政府は要求する。」、こうなっております。ですから、検定そのものはずばり言ってはおりませんけれども、検定とのかかわりで記述の誤りを是正するようにということを言っているわけです。そういう点から言うならば外交上の配慮、あえて言うならばアジアの近隣諸国と善隣友好ということを前提にしてずっとやってきているのですから、そういう配慮から言うならば、検定制度そのものも私は見直すべきであるし、あるいは少なくとも検討すべきだというふうに私は思うのです。  それからもう一つは、この教科書問題がクローズアップされて国民の関心を呼んできた、そのときに教科書の検定についての報道がいろいろなされた。そのときに国民の世論としては、その非公開性や密室性に対して大変な批判が出てきた。その程度の問題はあるでしょうけれども、これは何らかの形の公開制度をやはり貫くべきでないか、公開すべきでないか、こういう議論がやはりなされている。それからこの間の新聞の記事で、私も確かめたわけではございませんけれども、新聞の報ずるところによれば、この中で教科用図書検定調査審議会ですか、三人の委員辞任しておりますね。それで第二部会長の大石さん、会長の名取さん、これも辞任のうわさというふうに新聞にある。つまり、これにはいろいろあると思うのです。その新聞の報ずるところでは、政府の責任で訂正する、事前に審議会の審議に枠をはめたということの不満もあったということが言われている。いろいろこういう審議会の構成の問題、それから人選の問題、それから現にそういう委員の方がやめているというようなことを考えてみますと、ゆえなきものではないと思うのです。私は、この際どういう形で検討し、どういう形に改めるか、これは問いませんけれども、この際やはり教科書検定制度について検討し、しかるべく国民の要望にこたえるという形があっていいのではないか。この点どうですか。
  186. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 教科書の検定についてのお尋ねでございますが、まず検定の内容を公開すべきであるという御趣旨につきましては、現在の検定の制度が文部大臣が検定を行うわけでございますけれども、その際には教科用図書検定調査審議会の答申に基づきましてそのとおりにそれを尊重して検定をしておるということでございますとか、あるいは教科用図書検定基準というものを公示いたしまして明らかにしているわけでございますが、そういう物差しによって客観的な判断をしながら、それに教育的な配慮を加えてやっておりますということでございますとか、あるいは個々の検定についての意見につきましては、著者なり発行者等に対しまして具体的にその理由を明らかにいたしまして、必要な場合には録音をとらせるということも認めているわけでございますので、この検定を進める上の当事者と申しますか、そういう者間における問題はないわけでございます。それをなおさらに一般の国民にすべて明らかにせよということにつきましては、私どもとしてはこのような公正な手続に従ってやっており、そのようなデュープロセスと申しますか、そういう手続も保証されている事柄でもございますので、これを明らかにすることはできないということと同時に、このことによりまして、教科書の採択という観点から見ますと、教科書の内容についての採択の公正が阻害されるということがございまして、従来からこれは差し控えさせていただくという方針でいるわけでございます。  なお、このような問題も含めまして、教科書検定あるいは採択、発行等教科書制度の基本的なあり方につきましては、ただいま中央教育審議会におきまして検討をされているわけでございますので、中央教育審議会におきましては、いろいろな御意見が出されていることを勘案して、慎重に今後の検定も含めまして教科書制度のあり方について検討が進められておる段階でございますので、その答申をいただいて私どもとしては行政的な対応をしなければならないというふうには考えておる次第でございます。
  187. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 事務レベルの考え方といいますか出されたのですが、これは大枠としてきわめて政治的な判断を必要とする内容だと思うのです。具体的なことは別ですよ。そこで、瀬戸山文部大臣、いまの教科書検定の現在進めていることが全然検討の余地ない、完全無欠とは言わないけれども、このままでいいのだということになるというふうにお考えなのか。やはり国民のいろいろな疑問もあるし、あるいは意見もあるし、この際、中身は別としてやはり検討すべきだというふうに考えられるのか、その辺どうなんですか。
  188. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 教科書の問題のみならず、事教育の問題については検討すべき問題たくさんあると思います。教科書検定については、いま局長からお話しになりましたいろいろな技術的な問題もありますが、これは教育の基本に関する問題でありますから、できるだけ国民の皆さん信頼を得られる教科書でなければならない。そういう意味で、いまあらゆる観点から審議会等で検討してもらっておりますから、その結論をいただいて、衆知を集めて改善すべきところは改善したい、かように考えております。
  189. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは次に、例の非行、校内暴力問題について質問をしていきます。私は、時間もかなりなくなってきましたので端的に質問していきますから、なるべく要領よく端的にひとつ回答していただきたい。  最近の少年非行を見ると、資料を見ますと、昭和五十七年度は若干校内暴力は減少しております。しかし、刑法犯少年それから教師に対する暴力の増加など全体的には増加傾向にある、あるいは増加の傾向は衰えない。また、非行が非常に粗暴化し、悪質化してきているというのが、私は大体最近の少年非行の特徴でないかというふうに思うのですが、どうですか、端的に言ってそういうとらえ方で。
  190. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いまお話しになりましたような点があろうかと思いますが、改めて申し上げますと、中学生の増加など非行の低年齢化の傾向が一層顕著になっているということが一つございます。  それから非行の内容につきましては、万引きでございますとかあるいは乗り物盗など、手段がかなり容易で、動機が単純な非行が増加している、それから中学生による校内暴力事件、特に教師に対する暴力事件が増加している、またその手段もかなり悪質なものになっているというふうなことが指摘できようかと思います。それからそのほかのシンナーとか覚せい剤とかそういうような方面につきましても、その乱用の傾向が増加をしているということが指摘をされております。
  191. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大筋は私が言ったようなことと流れとしては変わらないというふうに私は思うのですが、そこで文部省も手をこまねいておったわけじゃありませんので、私が得ている資料では、昭和四十九年十月七日付の例の四百三十五号通達ですか以来ずっといろいろな通達を通じまして関係機関教育現場を指導されているわけです、これをずっと見ますと。ごく最近のものでは昭和五十八年三月十日の通知があるわけですね。こういうふうにいろいろ指導されてきてはいるのだけれども、先ほど申し上げたように、少年の非行は傾向としては減っていない。私は、すべて文部省あるいは文部行政の責任とは言わないけれども、やり方についてやはり反省すべき点があるのではないか、私はそのように思うわけです。現に量も減っていないわけですし、質も悪質化しているのは皆さん御承知のとおりですから、この際補導のあり方を反省してみる必要があるのではないかというふうに私は思うわけです。  そこで、具体的な例として申し上げていきたいのですけれども、最近の五十八年三月十日の「校内暴力等児童生徒の問題行動に対する指導の徹底について」という通知が出ていますね。ここにありますけれども、この通知をずっと見ていきますと、簡単に言えば学校の管理運営の点検と指導に重点が置かれているわけですが、このことだけにウエートを置いたって効果を上げることはなかなか困難だろうと私は思うわけです。特に「点検項目」などを見ますと、本当に今日の少年非行あるいは校内暴力の真の原因を探り当てようとしている点検の項目なのかどうか、私は疑問を持たざるを得ないわけです。  長いものですが「別添」を読みますと、ずっといきまして指導の「点検項目」として「校務分掌」という項目があります。その中に、たとえば①の「校務分掌組織はどうなっているか。」以下ずっとありまして、③の「主任の命課の時期、」というのはちょっと意味がわからぬですけれども、そこに「校長は主要な役割を果しているか。」、④に「主任には、年齢、指導力などの点で適格者が選任されているか。」、⑤「主任は充分その機能を果しているか。」というふうに、学校の管理運営のその部分だけに焦点を当てた点検指導になっているわけです。  私は、これは不必要だとは言っていませんよ。こういう形だけで、つまり事が起きたときに、学校の管理運営指導というところに焦点を当てた指導通達のやり方で果たして今日根の深い少年の非行、それから校内暴力の問題を本当に長期的にこれを是正し、なくしていくことができるのかどうか、私は疑問だと思います。この通達を見ると大体そういう流れになっております。その辺もう少し考えなければならぬのじゃないか。あなた方も原因が多面的だということを言われるのですから、そういう扱いだけではなくて、なぜこういう少年非行、校内暴力問題が出てきたのか、その背景までえぐった形で対応し、そして指導していかなければ、これは後追いに追われるのではないかという感じがしてならないのですが、どうですか。
  192. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 少年の非行といいますか、現状は先ほど佐藤さんが御指摘になったようなことで、非常に憂えておるわけでございます。  実は私、文部大臣就任後、いまおっしゃったように、文部省としては従来から責任上一生懸命文教行政に努力してこられたことは間違いないことでありますが、そればかりでなくて、よけいなことでありますけれども、法務省も総理府もいろいろ対策を講じてきておるわけでございます。それでもなおかつ余り減る傾向はない、むしろ粗暴化するような傾向がある。これはいろいろな原因があると思いますが、ここら辺で一体どこに根本原因があるのか、そういう点も全部ここで洗い直してみて、過去にあれほど努力したのになおかつ必ずしも効果が十全でなかった点は反省しながら検討する必要がある。こういうことで十項目ばかり私が気がついた点も取り上げまして、文部省事務当局にいま検討させております。これは中長期にわたるところもあると思いますが、たとえば受験のあり方、試験のあり方あるいは教科の内容はこれでいいのかどうか、これは相当大問題でありますけれども、余りにすさまじい状況が青少年の中にあるということ、この原因をもう少し分析して一つずつ解決していくということをしないと、従来一生懸命やっておったのがそれほど成果を上げておらぬところに反省の必要があるのではないか、こういうことで現在やっておるところでございまして、細かい問題については局長から御説明をいたさせます。
  193. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いや、時間がありませんから大臣の答弁だけでいいです。真摯に取り組んでいるということは私も認めますが、そのやり方と攻める角度の問題があるような気がしてならないのです。というのは、先ほども言ったように指導通達はいろいろ出されておりますが、たとえば三月十日の通知では、長い文章ですからあれですが、その中段あたりに「学校に対しては、重点的に、学校の管理運営の全体にわたって、必要な指示や指導を行い、」以下云々とありまして、その管理運営全体の指示や指導のための点検項目として先ほどのようなことがある。どうしてもこういう形になる。これは一面的ではないかということを私はあえて指摘したいわけです。  それからもう一つは、いま文部大臣がいろいろな研究なり提議をされていると言われましたが、ここにたくさんあります。私、資料を持っておりますが、たとえば昨年の豊かな心を育てる施策推進会議の設置以下云々ですね。それから例の総理府の青少年問題審議会の答申もあります。いろいろありますが、大変いいことを書いてあるのです。私も賛成な部分がかなりあるのです。特に総理府のこの答申などは、現状のとらえ方、あるべき論としては非常にいいことを言っているのです。  長いですから一、二だけちょっと言いますと、「今日の社会においては、学歴偏重の風潮が強く、そのための受験競争等から教育における知・徳・体の調和が崩れる傾向が見られる。こうした学歴偏重の風潮は、父母はもとより、学校、教師にも広く影響を及ぼしている。親や教師は、児童・生徒の個性や多様な能力を引き出す努力を払うべきである。」、このところですね、この辺は私はそうだと思うのですね。「特に、学校及び教師は、こうした学歴偏重の風潮に流されることがないよう積極的に努力すべきである。」、すべき論です。それから次のところに出てくるのですが、「常に魅力のある学習指導と人間味にあふれた生徒指導を行うのがその基本でなければならない。特に、児童・生徒の発達過程に応じた学習態度や生活態度の育成が行えるよう努力する。」云々、大変結構です。  それから、指導の中にも私も賛成な部分があるのです。たとえば、これは五十五年十一月二十五日の文部省の通知ですが、その「記」の1「児童生徒が学校教育に不適応を生じて問題行動に走ることがないよう、」とありまして、その後に「児童生徒が指導内容について十分理解し、興味・関心をもつて意欲的に取り組むことができるようにすること。」それから「児童生徒の個性や能力に応じた指導を行い、その一層の伸長が図られるようにすること。」と書いてあるのです。大変いいですよ。  ところが私が言いたいことは、こういうことが現場において、現場がなじむ状態になっているのかどうかということなんです。個性を伸ばせとか一人一人の能力に応じて引き出せとか言ったって、教育の現場はそれが定着するような、なじむような状況になっているのかどうか。たとえば馬が大変病気している、これはやはりニンジンを食わせるべきだ、ホウレンソウを食わせるべきだというべき論はありますよ。ところが、その肝心の馬がニンジンもホウレンソウも食えないような状態になっているのにべき論を述べたってしようがないと私は思うのです、極論を言うならば。こういうべき論は大変結構なのだけれども、教育現場の状況から言うとこれはなじまない、なかなかかみ合わない状況にいまなっているのではないかというふうに私は言わざるを得ないわけです。  皆さんも御承知のとおり、学校の一面を見れば、この間文部大臣が言われたように、言うなればテストと塾通いでしょう、偏差値と輪切りでしょう、それに伴う落ちこぼれでしょう。つまり、受験競争のるつぼの中で生徒も教師も振り回されているのですよ。個別指導だとか知・徳・体で能力を引き出すなどと言ったって、やる余裕がないのです。さらにその背後には、おれの子供は大学に入れたい。大学じゃないです、もっと言うならば一流大学や有名校に入れたいのです。これが受験競争のもとなんです。こういう教育ママの目が光っているのです。これが現場の実態じゃないかと私は思うのですね。このことを考えるときに、いま言ったようなこと、個性を伸ばせ、能力を引き出せと言ったって、なかなかなじまない状況に現場はなっているじゃないか。そうすると、こちらからこうあるべきだということを述べながら提言し、指導していくと同時に、やはり現場を、受け皿を改革していかなければならぬのではないか、私はそう思うわけですよ。確かにこの間も私たちが東京都の十何中でしたか、十二中を見ました。いろいろ勉強になりました。それは非常によくやっているところもあります、教師の涙ぐましい努力によって。しかし、おしなべて言うならば、そういう状況にあるということを事実として認めながら、それにどうやはり軟着陸させていくかということを考えないと、幾らべき論や指導のところを強めようと言ったって無理ではないのかなと私は思うわけです。  そこで、時間もなにですから、私はあえて私の見解を述べながら、後で文部大臣の見解を聞きます。  私はいま申し上げたような、あえて言うならば教育の荒廃そして非行、校内暴力の温床をつくり上げているのは何か、学歴偏重の社会とそれに結びついた過熱した受験競争だ、このことは否定できないと私は思うのですね。これがすべてとは言いませんよ。学校もあれば、私は学校の中の過熱した受験競争ということに焦点を当てて言っているわけですけれども、そのほか、つまり高度経済成長とともに変わってきた社会環境の問題もあるし、核家族の家庭の問題もあるし、いろいろありますよ。ありますが、あえて私はそこに焦点を当てたいわけです。  そこで、この過熱した受験競争が現場にどういうひずみやゆがみを与えているか、私なりに言うならばテスト主義と幼児からの塾通いでしょう。これがたとえば体力の低下や情緒の不安定を招いている大きな要因だと私は思う。それから一方においては偏差値、輪切りの教育ですよ。テストのドリルですよ。そこから出てくるものは私に言わせれば差別と選別、一方においては管理強化、つまり一定のレールに乗せてとにかく受験競争を走らせるという、その結果不適応な子供が出てくるのはあたりまえだと私は思うのです。いみじくも指導の中で、不適応な子供云々ということが先ほどありましたけれども、これは当然出てくるのです。私から言えばそれが落ちこぼれであり、落ちこぼれの子供は差別感と自信喪失になっているのですよ。当然そういうものは出てくるのです、必然的に。また、現にありますね。そういう落ちこぼれなり差別感、自信喪失にさいなまれた子供、反抗すれば非行、暴力になると私は思う。無気力になれば登校拒否と孤独感にさいなまれることになると私は思う。そういう一つの状況下にあるのではないか。これは私は思いつきではなくて、たとえば非行暴力生徒の調査ということで、この前も挙げましたけれども、昨年の十二月二十六日の警視庁調査、その逮捕、書類送検された中学生百九十人、これを見ると、家庭環境はいいですね、両親もおりますし、中流以上の家庭です。ところが、そういうふうに書類送検、逮捕された子供、この百九十人のうち、クラスの十番目以下八三%、そして本人の意識としては授業がわからない、ついていけない、差別されている、不信感、こういう子供なんです。そういうことを考えますと、そのよって来る原因というものは、われわれは本当に突き詰めていかなければならぬと思うのですよ。ここに焦点を当てなければならぬのではないか。  それでは、時間の関係がありますから続いていきますと、過熱した受験競争というのはなぜ生まれてきたのか、偶然に生まれたのかどうかということです。つまり、今日のいわゆる学力テスト中心の過熱した受験競争を引き起こしたものは、これは学歴偏重の社会的風潮、もちろんあります。次が重要なんですね。同時に高度経済成長政策の一翼を担ってきた能力開発政策、つまり教育行政の責任もまたあったのではないかと私は思うのです。ここのところ、これはきょうやきのうでできたものじゃないのですけれども、こういうところまでさかのぼる必要があるのではないか。私はあえて言うならば、いま学歴偏重の社会と言った、これはどこでもあると思うのです。親の気持ちになれば有名大学に入れて将来有利な方向を歩ませたい、これは親としての人情ですから、これは否定するものでもありません。そういう意味では、親の願いというのは大学進学ではなくて有名校に殺到するところにある、それが過熱した受験競争の一つでもある。そうすると、有名大学に入りたいという、そのことのために受験競争が起こる。つまり、入るための受験の競争が起こる。そのためには何をやるかというと、学力テストに強くなる子供です。もっと具体的に言えば、私に言わせれば知育偏重の学力です。知識、知育偏重、あえて言うならば知的能力をドリルする教育です。もちろん教育にはよく言われるように徳育も体育も社会性もいろいろありますけれども、やはり中心は、有名校に入るために、この受験戦争、つまり知的能力、知育偏重の学力、もっと具体的に言えば知育や体育は捨てても偏差値を上げる、テストに強い子供、これでもってやってくるわけです。そういう受験体制になっているのです。  ところが、この間、教育の問題についてNHKの放送がありました。私は非常に興味深く思いましたのは、ハーバード大学の入学、ケネディ大統領は日本流の偏差値で言えば大変低いのですね、ところがあえて入ったという。それは彼の徳性と個性と社会的な行動、つまり日本でいう特別教育活動ですね、そういうものが総合的に判断されて彼は入った。もし日本流の偏差値尊重のやり方だったらケネディ大統領はハーバード大学に入れなかったであろうということを言っている。しかし彼は入って、ああいうふうになった。しかし一方、日本流で言えば大変知識の豊かな、そういう女の子が、社会性が欠如をしているということで入れなかった。  そういう知識の偏重、知的能力をもって大学に入れるというこのことは、私はあえて言うならば、国民所得倍増論というのが昭和三十五年の十二月にできました、この中にこういうことが書いてある。「経済政策の一環として、人的能力の向上を図る必要がある。」と書いてあるのです、国民所得倍増論の中に。本もありますけれども、この本がそうです。その当時の本なんです。この中に書いてあるのです。これ、古い本ですね。そして「人的能力の向上は国民全体の教育水準を高め」云々とあります。つまり教育政策の一貫として人的能力の向上を図る、そのために教育水準を上げる、教育の役割り、こうなっておるのですね。それからその後の昭和四十年の中期経済計画の中では、「指導的役割を果すハイタレント養成のための高等教育充実」、ハイタレントという言葉が出てきます。そして、その次に続いて、「ハイタレントの資質を有するものを、重点的に選択し、その養成のために必要な大学充実しなければならない」と言っている。  つまり簡単に言えば、経済成長、経済政策のために、技術の向上、そのための言うなればマンパワー、知的能力の開発、そしてそのために教育は任務を担う。簡単に言ってそういう流れだと思うのです。つまり言うなればいまの考え方は、すぐれた能力を選択し、すぐれた大学に入れて養成する、マンパワーポリシーです。そしてその卒業した者は指導的役割りを果たして経済の発展に寄与する。ずっとこの流れですよ。そして経済の発展に寄与する、こういうことですね。とすると、すぐれた能力の選択というこのことはどういうことかと言えば、つまりこういう人がすぐれた大学に入れるわけですから、そうするとすぐれた能力の選択というのはいま申し上げたように知的能力、学力テスト、偏差値の高い者、これが入れるということになりますから、もっぱら学校教育はここに焦点を当てた形でやってくるわけです。そして、よい大学に入って、指導的役割り、経済発展に尽くす、そういう分野に教育の役割り、任務が位置づけられているのです、この中でちゃんと。  ですから私は、今日の学校の受験競争、つまり偏差値教育といいましょうか、そういうものは偶然に出てきたものではなくて、やはり高度経済成長、そして経済政策と教育の任務という結びつきの中から、そういう知的能力を引き出し、育て、大学に入れて経済発展に役立たせる、こういう側面と切り離すことはできないと私は思うのです。ですから、そういう点から言うならば、時間になったからやめますけれども、非行、校内暴力に対する対策は、教育の荒廃に対する対策であると同時にそれは過度の受験競争、それから学歴社会の風潮を改めさせること、同時に教育を本来のものに改めるというこのことと深くかかわらなければ、私は今日の非常に根深い非行や校内暴力を将来にねたつて本当になくしていく営みということはできないのじゃないかと思うわけです。あえて言うならば、教育の基本の見直し、それは人格の完成であり、平和な国家、社会の形成者というこのことに基本を置いてもう一度、教育は手段ではなくて本来目的だ、あえて言うならばそういう観点に立ったことを考えなければならないのではないか。  それから第二番目は、学校教育の改革、教育内容をゆとりのある全人教育という形からもう一度つくり直さなければならない、それから、指導を実際行う教師集団としては、管理型ではなくて自治型の指導体制を確立していく、そういうものが私は必要だと思う。私もこの間、中学校を見ましたけれども、大変がんばっております。しかし、どちらかといえば管理型で校長が張り切っているからとにかく学校全体がエンジンが回っている。しかしそれが息切れしますと、かつての千葉県の流山中学校の校長の自殺というようなことになりかねないと思う。こういうことでは私は続かないと思うのです。その辺をやはり抜本的に考えなければならないのではないか。  それから第三番目は、私は何といっても教育諸条件の整備だと思う。それは行き届いた教育、個別指導というふうに言われておりますが、そのためには過大学校の解消、よく言われておりますね、教職員定数の充実、四十人学級の実現、それから最後にこのことについて言えば生徒のクラブ活動の助長強化。このクラブ活動は非常に大きな意味を持っていると思うのです。特にその中で、先ほど第一番目に言わないでしまいましたけれども、教育の基本の見直しの中では文部省の入試の改善がいま行われていますが、入試制度の改善というものも本来の教育のあるべき姿に関連して改善すべきだと私は思うのです。  なお、その点についてちょっと加えておきますが、文部省で入試の改善会議が行われておりましていろいろ検討されているようですが、もう六月ごろには要領が出されるそうですね、要綱が。そういう点から言うと、申し込みの時期がちょっと早過ぎるのじゃないかという声があります。その点をおくらせる考えはないのか、テストの時期も若干おくらせる気持ちはないのか。これはきわめて具体的なことですが、ちょっとつけ加えておきます。後で答弁願います。  そういうことで、ちょっと時間がなくなってきたものですから、私の見解をずっと連続的に述べました。これは私は個別的に輪切りしたり切り刻んでこのことが解決できないと思っているから全体に私の考えを述べましたが、時間も迫っておりますから、文部大臣の総括的な見解としての答弁をいただきたいと思います。
  194. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いま佐藤さんからいろいろ御意見がありましたが、おおむね私も同感でございます。  いまおっしゃったように、これは個別の問題で解決する状態ではない、やはり総合的にあらゆる問題を先ほど申し上げましたように再検討してみる時期に来ている。しかし、これは率直に言って文部省だけの力では無理である、もう家庭から社会、学校、私に言わせると国民が総立ちをしてこの問題を解決すべき時期に来ておる。言いかえると、教育とは何であるか。私に言わせると、結局、いまやもう人間再発見をすべき時代に来ておる。これは非常に抽象的で恐縮でありますが、こういう観点から、あらゆる問題を過去にとらわれないで、旧来の形式にとらわれないで、一挙に解決しないと言いますけれども、教育とは何だ、こういうことを順次改善していくといいますか是正していく時期に入っておる、かように考えております。
  195. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学入試の改善につきましてはいろいろと御指摘もいただいておりまして、改善策については入試改善会議等を通じて検討いただいておるところでございます。ただ、五十九年度の入試については従来の線を変更することは事実上むずかしいわけでございまして、私どもとしては、いろいろ言われております線、たとえば入試期日の繰り下げの問題でございますとか、そういうように具体的にそれらの点についてできるだけ早く結論を得て対応できるようにいたしたい、かように考えております。
  196. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 これで終わりますけれども、いま大臣は総括というようなことを言われました。つまり、人間の再発見、新しい発想で教育とは何かということを見直し取り組んでいかなければならない、こういう趣旨を言われましたけれども、私もそういう考え方の枠組みとしては賛成なんです。私は、そういう中身として先ほど私なりの意見を述べ、提言したわけでございまして、いまや次代を担う子供をどう育てていくか、特に非行や校内暴力の姿を見たときに、何はさておいてもわれわれとしてはあれに取り組まなければならぬという衝動に駆られるわけです。したがって、これは共通の課題、認識だと思いますので、そういう点から私は、やや総括的にそれから全体の経過の中で述べていったわけでありまして、大臣、私が述べたことを参考にしていただきたいと思いますが、どうですか。
  197. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほども申し上げましたようにおおむね賛成でございますから、同意見でございます。
  198. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 では、以上で終わります。
  199. 葉梨信行

    葉梨委員長 午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時七分休憩      ────◇─────     午後二時二分開議
  200. 葉梨信行

    葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍛冶清君。
  201. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 本日は、一般質問の機会をおかりしまして、要点的に三つの項目でお尋ねをしたいと思います。一つは高校入試の見直し問題について、二番目には学制改革の問題、三番目には道徳教育の問題、時間の関係で割愛することもあるかもわかりませんが、以上三点についてお尋ねをいたしますので、よろしくお願いをいたします。  最初に、高校入試の見直し問題についてお尋ねをしたいのでありますが、今回、文部省では高校入試の見直しを、校内暴力、本年あの横浜、町田市で起こりました事件を契機にしていろいろ対策を練る中で問題懇から提言があり、その中で高校入試の問題が触れられておりまして、それをきっかけに高校入試の見直しに踏み切った、こういうふうに伝えられているわけであります。この件について、私は、ただそれだけのことで高校入試を見直しをすると大変矮小化されたことになるというふうにも心配するのでありますが、この取り組みの姿勢についてまず大臣にお答えをいただきたいと思います。
  202. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いわゆる高校入試の制度については、御承知のとおりいろいろな意見があるわけでございまして、たまたま今度の、最近特に起こっております学校生徒の非行、暴力等の関連で、この問題も大きくクローズアップされて検討を進めることにしておりますが、これだけでこの問題を取り上げておるということでは私どもの方としてはないわけでございまして、先ほど来佐藤さんもお話がありましたが、いろいろな変化が起きております。現在、私としては、これは簡単なことではないと思いますけれども、教育のあり方、教育全般についていまやもう一遍考えてみる時期に来ておる。社会、経済全部違っておりますから、ですから、そういう意味で、もちろん非行、暴力等についても偏差値の問題とかなんとか言われております。これほど受験競争が激しくなると、子供たちといいますか青少年の精神、肉体にも非常に大きな関係がある。こういう観点をもちろん含んでおりますけれども、教育全般の一環としてこれをさらに再検討してみよう、こういうことでございます。
  203. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 その立場、姿勢はひとつぜひ貫いてやっていただきたいと思います。これは先般、国公立の大学の共通一次試験の見直しもすでに着手しておられることでありますし、ひとつ一貫性を持ちながら子供のための教育というものが確立できるように、この見直しに対しても取り組みをしていただきたいと御要望をまず申し上げておきます。  引き続きまして、今回の見直しをされるにつきまして、その理由それから今後のスケジュール、方針等についてお答えをいただきたいと思います。
  204. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 高等学校入学試験のあり方につきましては、先生御承知のように、昭和四十一年までは文部省が具体的な指導方針を示しまして、それによって各都道府県が実施をしていたわけでございますけれども、高校の進学率が非常にふえまして多様化してまいりましたことをきっかけといたしまして、四十一年度の通達によりまして、各都道府県が主体性を持って入学試験を行うということになったわけでございまして、文部省といたしましてはその経過をずっと見守っていたわけでございます。  その結果、最近におきましては、試験の科目数につきましても、当初九科目でございましたものが五科目に大体集約されてまいりましたとか、あるいは面接を行うとかいろいろ工夫が加えられてまいりまして、まずまず都道府県の努力によりまして改善の方向に向いたわけでございますけれども、一方におきまして進学率が非常に高まってまいりましたことと比例いたしますけれども、生徒、志願者の能力、適性と申しますか、これが非常に多様化してまいりまして、また、それをできるだけ多く高校に入れるというふうな要望もございますので、進学のための準備でございますとか、あるいは偏差値等を利用した進路指導でございますとかいろいろな問題が言われてまいりまして、当初予想いたしましたいわゆる調査書によります生徒の適性を判断する場合の扱い方につきましても、どちらかといいますと知的な教科の学習に偏するというふうないろいろな問題点指摘されておりますので、各都道府県の努力に今後も期待するわけでございますけれども、この際、大臣がいまお話しいただきましたように、高校教育全体のあり方という観点も含めまして、高校入試のいろいろな問題点を私どもなりに検討いたしまして、各都道府県の努力に援助をするような方針が出れば、何らかの形で方針を示して、協力しながら改善していきたいというようなつもりでやっているわけでございまして、まだスケジュールを具体的にいつまでというところではございませんで、明日、代表的な県を呼びまして入試に伴う諸種の問題点を、実態的な面の問題点をお聞きしようというところから着手をしたというところでございます。
  205. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 新聞報道等によりますと、この見直しを始めた折に文部省は記者会見をなさったようですが、その折の新聞報道かと思いますが、その中で、できれば来年度、五十九年度の入試から間に合うものは間に合わしたいというふうな話が何か出たのかどうか、そういう報道が実はなされております。もしそうだとしますと、これはやはり相当に急いで作業をしないと間に合わないのじゃないか。やはり中学で準備する都合もあるだろうというふうに思いますし、もう一面から言いますと、余り急ぐと、その場しのぎの、充実した内容の高校入試の見直しということにはならないのじゃないか、こういう二面的な心配が出てくるわけでありますが、こういった点についてどういうふうなお考えであるのか、お尋ねをしたいと思います。
  206. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 先ほど申し上げましたように、一つには校内暴力の問題解決の一つのきっかけということもございまして、早急に検討を始めたわけでございますけれども、非常にこの問題の背景は深いわけでございますので、早急に簡単に結論を出してすぐに着手をするということはなかなかむずかしい点があろうと思いますので、私どもはまず都道府県の抱えている問題をしっかり把握をいたしまして、それから諸種の学識経験者の意見等も聞きまして、慎重にこの問題を解決したいと思いますが、当面また、余りにもゆっくりということでは父兄なり国民の要望にもこたえられないという面もございますので、その辺の緩急は今後合わせながら検討させていただきたいと考えております。
  207. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大体おおよそのめどとしてはいつごろくらいまでにはまとめてみたいというお考えがあるのでしょうか。
  208. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 これは各都道府県との意見交換、それから各都道府県の教育長の意見も聞いてみなければなりませんし、県によりましては非常に対応が異なりますので、わが県はこれでよろしいという県もあるかもしれませんが、いずれにいたしましても、その実態の把握をまずいたしまして、それから高校なり中学校なりの教育関係者の意見も聞かなければなりませんし、できるだけ早くという気持ちではおりますけれども、いつまでというめどはいまのところ画然と立たないで、できるだけ問題点を正確に把握しながら対応してまいりたいというようなところでございます。
  209. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 その次に、見直しの主な課題ですね、どういう点に見直しの焦点を当ててやろうというお考えなのか。最初のお答えの中でもちょっと触れておられたようではありますが、具体的にお考えをお持ちならばお聞かせをいただきたいと思うのです。この課題というのは、今度は裏返しすれば現在の高校入試の問題点ということにもなるわけでありますが、この点についてお尋ねをいたします。
  210. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 私どもが問題であろうと考えております私どもなりの問題点は幾つかございますが、たとえば申し上げますと、調査書の記載内容とその取り扱いの仕方、たとえば教科の学習の記録を活用しているわけでございますけれども、どちらかといいますと、いま教科の学習の記録の活用がウエートが高い。同時に、行動、性格の記録という部面でございますとか特別活動の記録の面とかいろいろあるわけでございますので、そういうものをどのように評価をしているのかという実態をまずつかんでみたいということでございます。  それから、先ほど申し上げましたが、学力検査の実施教科の数につきましては、当初の九教科が五教科に集約されてまいっておりますけれども、これについて現在、五教科の実施状況が各府県におきまして適当と考えられているかどうかというようなこと、あるいは現在工夫されておりますところの職業高校に対します推薦入学の方法でございますとか、あるいは面接を用いる選抜方法の問題でございますとか、そういう問題につきましてもどのような工夫が必要であるかということでございますとか、あるいは九四%にまで進学率が上がってまいりまして、現在の選抜試験のプリンシプルは高校教育を受けるに足る資質と能力を有する者というふうになっておりますが、その辺のところの受け取り方が一体どのようになっているか。実情をお聞きいたしますと、教科の点数の非常に低い者がいろいろな形で高校に入っているという場合に、それをどのように扱って評価をしているのかというふうな問題もございますし、あるいは通学区の問題でございますとか、入学の調整の問題でございますとか、あるいは評価の方法でございますとか、いろいろございますので、そのようにいま私どもが問題点であると考えております事項も含めまして、また各県から出される各種の問題もあろうと思いますので、そういうものをテーマにいたしまして検討をいたしたいと考えております。
  211. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 課題としては取り上げて取り組みたいという御意向のようでありますが、これについては相当初中局の中で時間をかけて御検討もなさったのじゃないかと思います。聞くところによると、この入試見直しについてはもうすでに二、三年前あるいはその前から検討する必要があるということでされていたとも伺っているわけですが、そういうふうなことで検討はされた中でいま言ったような課題というものを持ち上げてこられたのかどうか、その点をちょっとお聞きしたいと思います。
  212. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いま私どもが申し上げましたような問題点は、かねがねいろいろな形で高等学校の入学者選抜の問題点として言われている点について、組織的なものではございませんが、いろいろ情報を収集いたしまして検討した問題点が浮かび上がってまいりまして、それを申し上げたわけでございまして、部内におきましてはかなり前から高校入試のあり方についての検討はしていたわけであります。そういう検討の成果を踏まえて、これから都道府県の担当者の実際的な経験というふうなものも踏まえて検討の第一歩を踏み出したいということでございます。
  213. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 こういう高校入試というのは、校内暴力を初めいろいろ教育の荒廃と言われております原因の大きな一つにいつも数えられているわけでありますけれども、その中で偏差値教育ということがよく言われるわけですね。この偏差値ということについてどういうふうな考え方を持っていらっしゃるのか、ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  214. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 偏差値は一つの統計学上の数の処理の方法であるわけでございますが、ある個人の得点が基準となる集団において、その集団の中のどのような位置にあるかということを示すものでございますから、一つの学校だけで子供の力と申しますかそれをはかるのではなくて、相当大ぜいの集団の中で子供の学力なりそのような力を位置づける、そういうような方法が開発されてまいりまして、高校入試あるいは大学の入試におきましても、進路の指導に当たってその偏差値を用いて志望校の指導とかそういうことが行われているわけでございます。  これは必要が生んだ一つの方法とは思いますけれども、学校におきます進路指導に当たりましては、日ごろから生徒の特性なり性格を十分に把握している教師がその学力を評価をいたしまして、その特性に合ったような進路指導をすることが望ましいわけでございますけれども、ただ、現在の社会におきましては、できるだけこの志望校への希望をかなえるような進路指導をしなければならないという要請もありますし、また高等学校においては中学浪人をつくらないというふうな考え方もございまして、偏差値という一つの処理方法、統計上の方法を用いて進路指導いたしますと、それが蓋然性が非常に高いというふうなことも証明されておりまして、使われているわけでございます。偏差値そのものが悪いということではございませんで、偏差値のみによって、日ごろの生徒の特性なり性格というふうなものを十分に評価しないで、その面だけで指導をするということがあっては十分ではございませんので、私どもとしては、指導の方針としては、偏差値のみを過度に信頼をし、あるいはこれのみによって進路指導を行うということではなくて、これを用いることも必要な場合もあろうと思いますけれども、担任の教員が日ごろの子供の性格、力等を十分に評価をして、その子供に合った進路指導を行うということが望ましいと考えているわけでございます。
  215. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 あした、二十八日に教育委員会側との意見交換をされるようでありますけれども、それは九都府県に限って意見交換をなさるようでありますが、果たしてそれくらいの数ですべてをカバーした形で意見というものが集約できるのだろうかというふうな気もいたします。先ほどの御答弁でも、できるだけ各都道府県でのユニークなものもよく聞きながら生かしてもいきたいというような御答弁もあったようでありますから、そういう意味からいっても果たしてどうなのかなという気がするわけですが、そういう点についてどういうふうにお考えなのか。こういう九つの都府県を選考された基準というのはどういうところに置いてされたのか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  216. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 九都府県は、青森、東京、神奈川、富山、愛知、京都、広島、徳島、宮崎でございまして、主として各ブロックと申しますか、その代表の県という形でお願いをしているわけでございますけれども、その中でも、たとえば青森のような場合には全志願者に面接を行っておるというふうな方法を用いておりますし、京都におきましては本年度から九教科から五教科に減らしたというふうなこともございます。各ブロックの代表を選ぶわけでございますけれども、その中でできるだけ特色のある、いろいろ工夫しながらやっているような県を選んで、その実施をいたしました成果とか問題点等について聞くことができますならば今後の改善の指針になるのではないかということで選んだわけでございまして、これのみによりましてすべての四十七県の実態が全部わかるとは私どもも考えておりませんで、さらに必要ならばそのほかの県についてもお聞きをするということも考えたいと思っております。
  217. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そこで、一番最初にもちょっとお尋ねをしたのと多少重複するかもわかりませんけれども、この高校入試改善というものを単なる入試方法だけの技術的な面での改善に終わらせると、本当の意味での中学、高校の改革にはつながらないように思いますし、せっかく取り組みをしたのですから、そこのところを真剣に考えてやらなければならないのではないかということが一つ。  それからさらに、やはりそういったことをいろいろ考えてみますと、現在、一説によれば高校入試を取っちゃって、いわゆる学制改革とつながる問題ですが、中、高を一緒にして試験を外したらどうかというふうな意見、これは非常に簡単な意見ですからよしあしは検討しなければならぬでしょうが、そういう意見等も実はあるくらいでありますから、もう一つ掘り下げて、一つの学校の制度というものも踏み入って今回やはり考えていくというところまでしておかないといかぬのではないかなというふうにも思いますが、以上の二点についてお答えをいただきたいと思います。
  218. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 高校入試のあり方が学校教育、中学校なり高等学校教育に関連することは御指摘のとおりでございますが、私どものいまの問題意識といたしましては、ともかくも、いま高校入試におきまして指摘されている問題点につきまして各都道府県の努力を期待しながら、どのような改善が可能であるかというところから始めまして、少しでも改善点が見つけられるならば、合意が得られるならば、その一つだけでも進めたいという感じでいるわけでございます。そのことが、先ほどスケジュールはどうかというお話もございましたが、すべて洗い直して全面的な改善をしなければならないという考え方もあろうと思いますけれども、改善の可能なものから少しでも前進をさせまして、それが大臣のおっしゃいました高校教育改善なりあるいは校内暴力に関連する問題点の一つの改善の道としての考え方が示されますものならば、そういう観点から前進をさせたいというふうに考えているのでございます。これをすぐまた学制の問題でございますとか、大きな状況に結びつけて考えるというところまでは現在のところ考えていないのでございますけれども、そのような問題点につきましては中央教育審議会に文部大臣から諮問をいたしておりまして、教育内容との関連でそのような問題点が審議をされているということも念頭に置いて、この点につきましての改善を考えたいと思っているわけでございます。
  219. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 高校入試問題で最後にお尋ねをいたしますが、現在、高校入試は昭和四十一年の文部省の通達で地方の教育委員会にいろいろと権限をゆだねているという形で行われているわけでありますが、これはやはりその結果が悪い面も出てきたという面もありましょうが、私はいい面も大変あるというふうにも思います。そういう意味で、再びこういう関係に取り組まれた、それで結論が出る。その場合に当然いろいろな施策を推し進めていかなければならぬと思いますけれども、その折にやはり地教委、現在の教育委員会には、自主性はできるだけ生かすという方向で十分尊重してあげなければいけないのではないかと思いますが、こういう点について、高校入試の最後にお尋ねをいたしたいと思います。
  220. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いまお話のございましたように、四十一年度の通達によりまして従来の方針を転換いたしまして、各都道府県の教育委員会の自主的な判断にお任せをしたということでございまして、今回の改善の考え方につきましても、その基本的なものを動かすということではございませんで、各都道府県が努力をいたし工夫をした結果がいろいろ問題を生んでいる、そこのところを私ども着目いたしまして、都道府県の努力のみでは足りない、何らかの方針を出してその改善を助けるというふうなことが必要な時期に来ているのではないかという考え方がございます。そういう観点から、原則といたしましては都道府県の改善の努力に期待しつつ、文部省としてもその方針なりあるいは助言をすることによりましてさらに問題点の解決が進むようなことがあればそういう方向で進めたいということでやっておるわけでございまして、お話しのような都道府県の自主性というものをここで変えて云々というふうなことは考えていないわけでございます。
  221. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それでは次に進みまして、学制改革の問題でお尋ねをいたします。  本年に入りまして学校制度の改革ということはいろんな議論が盛んに行われました。特に中曽根総理もこれに触れられておりましたし、行革の次は教育の問題でこれに取り組むというふうにも明言をされておられたようでありますし、また文部大臣からもこの問題での発言もあっておりました。  改めて大臣に、この学制改革の問題につきまして最初に大臣のお考えを伺いたいと思います。
  222. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 まだ私の考えとして確定的な考えを持っておるわけではございませんが、いわゆる六・三制、戦後始まりました制度、これは御承知のとおりに教育の機会均等、教育の普及等日本の教育発展に非常に大きく貢献をしてきておると思います。しかし、いかなる制度でも時日が経過いたしますと、反面弊害も起こるわけでございますが、いま各方面で六・三制というのがいいのか悪いのか、あるいはさっきもお話がありましたが、中高校まで一緒にした方がいいのではないかとかあるいは小学校から、昔の中学校のようなかっこうにした方がいいのじゃないかとかいろいろな意見が出ておりまして、確定的な、これはなるほどというものを残念ながらまだ把握できない状況であります。そういう問題がありますから、学校の教科その他の問題も含めて、これこそ教育は百年の大計と言われますが、学制をどうするかということがまさに国民全体の大問題でございます。教育の基本に関する問題でありますからもちろん慎重に扱わなければならない、そういう意味で各方面の意見を集約しなければならぬわけでございまして、現在のところは中央教育審議会で学科の内容とあわせて御検討をいただいておる、こういう状況でありますから、そういういろいろな意見の出そろいを見て考えなければならない、かようにいまのところ考えております。
  223. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 文部当局としてはこの問題について過去御検討なさったことがあるのか、この点をお尋ねをいたします。
  224. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 学校制度の改善の問題につきましては、かつて昭和四十六年に中央教育審議会から学校教育の拡充整備に関する答申が出されたということがございまして、その中でたとえば先導的試行で学制改革に着手せよというような御提言もいただいたこともございまして、これらの問題についてかねてから十分研究は進めておるということは言えるかと思いますが、現在の段階で具体的な構想を持つとか、あるいは具体的な検討に入るとかという状況にはないわけでございます。
  225. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 研究を進めているですか、ややこしいな。具体的にはやっていないけれども、研究は進めている、ちょっとわかりにくいのですけれども。そういう研究なり検討なりなさっていなければ、いまお話があったように、四十六年に中教審答申があっているのに、私はむしろ怠慢じゃないかという気がしますが、それはまた後で触れるといたしまして、現行の学制について一応研究なり検討なりされた中で、その功罪、六・三・三制というもののいい面はどういうところにあったのか、また悪い面はどういうところにあるのか、こういった点についていろいろと御検討をなさっていられるのではないかと思うのです。文部当局のお考え、判断をひとつ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  226. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 この問題につきましては、去る三月二十三日であったかと思いますが、鍛冶委員から御質問ございましてお答えも申し上げたわけでございますが、現行の六・三・三制の学校制度の、他のヨーロッパ諸国等に見られる学校制度との比較において大きな利点といいますかそういうものは教育の普及ということにある、また欠点と言えるかどうか問題がございますけれども、他の制度に比較しますと、特に中等教育段階におきまして能力、適性に応ずる教育の実現が、単線型でございますと困難な問題を起こすわけでございますが、これらにつきましても、現在特に高等学校につきましては職業、専門教育を主とする学科を設けるとか、あるいは高等学校教育全体につきまして、教育内容の思い切った弾力化を行うとかということで多様化を推進しておる、そういうことでそういうような問題点の解消に努めておるということでございます。
  227. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 前にお聞きしたときもちょっと漠然としておりましたので再度お尋ねをしたのですが、もう少し具体的にお話をいただけるといいという気もするのですが、一つ具体的なこととして、子供の成長発達ということがいろいろ言われているわけですね。これとの関連で、いまの六・三・三制は、発足した当時の子供の成長発達と現在とでは二歳ぐらい違いがあるのだということが言われているわけです。そういう意味からいっても、この制度は、私はそれなりの功績は功績として認めながらも、これからの日本の教育を考えていく、さらにはいままでの教育の中でいろいろな問題点が吹き出てきている、そういう中で、どうしてもこの際学制については本当に立ち入った検討をする必要があろう。先ほど中教審に諮問してあるからという大臣のお答えもございましたし、それは承知はしておるのですけれども、ただそれだけではなくて、四十六年に中教審から答申が出て、あの当時ですらこの六・三・三制を見直しをする方向で考えた方がいいのではないか、そして先導的試行もやってみたらどうなんだというようなことが出ているわけです。いま言った子供の成長発達という形での関連で、これだけをとってみても私は見直す必要があるのではないかと思うのですが、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  228. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 かつての子供の実態と現在の子供の実態とを比較して、心身の発達の状況がかなり異なっているのではないかという御指摘も多々ございます。情報化社会が進展しております関係で、あるいは知的な発達の面では早まっているのではないか、さっき二歳ほどというお話がございましたが、そのように考えておられる学者もいらっしゃることも承知しておるわけでございます。他方また、徳性の面と申しますか、社会的あるいは情緒的な面ではいわば自立のおくれということも指摘されておるわけでございまして、子供の成長発達全体をとらえてみて果たして早くなっているのかどうかについてはコンセンサスが必ずしも得られていないのではないかというふうに考えておるわけでございます。成長発達が早まると、むしろ就学の時期というような観点で問題が出てくるのかと思いますけれども、果たしてそれを検討する時期であるのかどうか、まだ文部省として自信がないと申し上げておきたいと思います。
  229. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そういうことも一応は研究の課題としていろいろ資料を集めたり検討はしている、ただ具体的にこうだという結論的なものを出すタイミングとか、まだまだいいのかどうかということの判断ができないのだ、こういうことになるわけでしょうか。
  230. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 子供の心身の発達状況の研究という面について申し上げますと、先ほど御説明しました四十六年の中教審の答申以降、先導的試行という、学校制度の改革ではなくて、教育課程の面からこの問題にアプローチをしよう、研究をしていこうということで検討していただいておる、それを取りまとめをしておるという状況でございます。
  231. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは私も十分承知しておりますが、先ほど大臣は中教審にいま諮問をしておるからということでございましたが、中教審の審議の状況はいまどういうふうな形で進んでいるのか、また学制についての答申が出てくるのはいつごろになる見通しなのか、そういった点でお尋ねをいたします。
  232. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 現在、中央教育審議会には、時代の変化に対応する初等中等教育教育内容のあり方についてという諮問をいたしておるわけでございます。主として教育内容を中心に学校教育のあり方について検討をするということでございまして、学校制度の改革という諮問はいたしておりませんけれども、教育内容の検討に関連をいたしまして当然に討議されるのではないか、その審議の状況を見ましてこの問題に取り組んでいこうというのが文部省の現在の態度でございます。  中央教育審議会の審議の状況でございますが、教育内容の問題を扱っておりますのは教育内容等小委員会でございまして、この審議の中身が大変幅が広いということ、それから現在の進行状況等から見まして、現在第十三期の中央教育審議会、一昨年の十一月から発足しまして、任期二年、ことしの十一月に任期が切れるわけでございますけれども、二期、四年でこの問題について結論をいただくことになるのではないかというふうに予想をいたしておるわけでございます。
  233. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 答申が教育内容と関連して学制に触れて出てきて、やっぱりやるべきであるというふうに出た場合、これは仮定になりますが、前回、四十六年に出たときはほっぽらかして――ほっぽらかしてと言うと悪いかもわからぬが、本当に真剣に取り組みをされていたという様子がどうも見えない感じがいたしますけれども、今回答申がそういう形で出た場合には、これは進めるという方向で文部省ではお考えになっていらっしやるのかどうか、その点お尋ねをいたします。
  234. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 これから先、審議がどのようになるかという仮定の問題でございますので、その審議の状況を見て、文部省といたしましても対応いたしてまいりたい。現在お答えできるのは精いっぱいそんなところでございます。
  235. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 とにかく答申が出ればそれを尊重してやりたい、こういうことになるわけですね。そういうことでよろしいですね。  先導的試行というのが出ました。教育政策を進める上で、変えていくというのは時間がかかりますし、またその効果というものが、ただ机上で考えただけではわかりにくい面があるとすれば、先導的試行というのは大いに取り入れてやるべきであろうと思いますし、特に学制改革と絡んで、仮にやろうという方向が出た場合にはこういったものを大いに取り入れてやるべきだと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  236. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 学校制度に関します先導的試行につきましては、四十六年の中央教育審議会の答申が出されたわけでございますが、この先導的試行それ自体が、学校体系の特例としまして法律改正を必要とするということでもございますし、また当時、学校教育体系の案につきましては国民的なコンセンサスが必ずしも十分得られるというふうに判断できなかった要因もございまして、直ちに先導的試行に着手することを避けまして、むしろ、先ほど申し上げましたように、教育内容の面からこの問題にアプローチをするということで研究を進めてまいってきておるわけでございます。このように、先導的試行というのは大変むずかしい課題であるというふうに考えているわけでございます。
  237. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では学制問題は一応これで終わりまして、あと道徳教育の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  四月十五日、先日でありますが、文部省は各都道府県教育委員会に対して、「公立小・中学校における道徳教育の実施状況等の調査について」、こういう表題で、初中局長名の照会文書を各教委に送付をしているようでありますけれども、この全国実態調査を行うようにしました理由、目的、意図について、まず最初にお聞かせをいただきたいと思います。
  238. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 ただいまお挙げになりました「公立小・中学校における道徳教育の実施状況等の調査について」という照会でございますが、これは過般来の校内暴力等が非常に社会的な問題となりまして、有識者による懇談会等を開催いたしまして、いろいろな提言をおまとめいただいたわけでございますが、その中にも、やはり問題を起こす子供の中には、基本的な生活習慣でございますとか、あるいは善悪の判断でございますとか、非常に基礎的な資質、判断力というふうなものが十分でない者が非常に多く見られるというふうな指摘もございまして、学校教育の中におきます道徳教育の重要性に着目いたしまして、これを充実すべきであるというふうな意見もあったわけでございますし、またいろいろな世論調査、ごく最近の総理府の教育に関する世論調査等におきましても、小学校で特に力を入れてもらいたい項目といたしまして、大ぜいの方が道徳教育を挙げているわけでございます。  そのような国民の要請と申しますか、それから懇談会におきます御意見等も踏まえまして、昭和三十三年以来道徳の時間を特設いたしまして、これを中心として学校教育全体の中で道徳的な実践力を高めるということの教育活動を行っているわけでございますが、これが十分に効果的に行われているかどうかということもございますし、今後の道徳教育充実と申しますか、そういうものを進める上で、この辺で実情をしっかりと調べまして、今後の改善に役立てたい、そういう趣旨で照会をしたわけでございます。
  239. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまもお答えにありましたように、昭和三十三年から道徳教育特設をされた。もう二十五年を経過しているわけですね。それから三十八年の七月十一日には、当時の文部大臣荒木萬壽夫氏に対して教育課程審議会より「学校における道徳教育充実方策について」という答申が出されておりまして、道徳教育充実方策というものについて具体的に、いまでもそのままそっくり当てはまるような内容で実は答申が出されているわけですね。ところが、そういうものがありながら、二十五年にわたって、特設の時間を施行以来ほうりっ放しでもなかったのでしょうが、実態調査というものもいまだにやられていなかったというのはむしろ遅きに失しておるのじゃないか、こういうふうな気がいたしますが、こういう点についてどういうふうな取り組みをいままでなさっていたのか、なぜいまこういう十何年にもなって、もちろん問題懇からの提言があったとはいいながら、取り組むということになったのか、そこらあたりの事情をお聞かせをいただきたいと思います。
  240. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 三十三年に道徳の時間を特設いたしましてから、文部省といたしましてもいろいろな施策を進めまして、道徳教育充実に役立つようなことを考えてまいったわけでございまして、いま鍛冶先生お挙げになりましたような昭和三十八年の教育課程審議会の「学校における道徳教育充実方策について」の答申の中では、教育の目標の具体化でございますとか、あるいは教師用の資料の整備でございますとか、あるいは教員の養成、現職教育、校内体制の確立など、いろいろと御提言がございまして、これを受けた形におきまして、文部省におきましては昭和三十八年から道徳教育研究学校、現在は道徳教育共同推進校として、単一の学校ではございませんで、小中学校等が組み合わさりまして共同で道徳教育の研究推進をするということをやっておりますが、そのような学校の指定でございますとか、あるいは指導資料をつくりましてそれを教員に無料で配付をするとか、あるいは道徳教育の講習会を開くとか、そのような予算措置等をいたしまして施策を進めてまいったわけでございまして、各都道府県におきましてもそれなりに努力をしてまいったわけでございます。  しかし、ここにまいりまして、特に校内暴力を中心といたします少年の非行が顕在化してまいりましたときに、学校における道徳教育が十分に行われているかどうかというふうな指摘が各方面からなされておりまして、私どもといたしましても、組織的な調査ではございませんが、都道府県の実情なり、あるいはいろいろな情報をとりますと、学校によりまして非常に格差のある実態等も聞きますので、この際、道徳教育の実際の進め方について、どういう点に指摘されるような問題があるのかということを改めてしっかり調査をいたしまして改善しなければならないということで照会をお願いしたわけでございます。
  241. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまもちょっと、いろいろと学校現場の情報も、実情も一部収集したというお話もございましたが、格差もあるというお答えも出ましたけれども、現在学校現場において道徳教育がどういうふうに行われているかという現状を、さらには、それがどういうふうな効果が上がっていると御判断なさっていらっしゃるのか、そこらあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  242. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 道徳の一時間は、これは組織的にいろいろな方法によりまして、教材を用いましたりあるいは指導資料を用いましたりして、道徳的な心情でございますとか実践力を深めるような指導をするという時間でございまして、これだけで十分な効果があるわけではございませんので、他の社会科でございますとか特別活動でございますとか、そういうものとも十分関連づけてこの道徳教育の活動は行う必要があるということでやっておるわけでございます。各学校におきましてはそのような方向で十分に努力をされていると思います。  ただしかし、道徳の指導というものが、生徒の生活体験と申しますか、そういうものに訴えながら、やはり自分でこれはこうしなければならぬというふうに思わなければなかなか実効が上がりませんので、指導に困難な面があろうかと思います。しかし、やはり教科と並びましてそのような徳育を現在の学校教育活動の中でしっかりと身につけさせるということの必要性はこれまでよりも非常に高まっておりますので、十分でないところはさらにこれを充実するということが必要であろうと思います。私どもとしては、一生懸命やって成果を上げている学校もあると思いますけれども、仮に成果が上がらない、あるいは教員の指導力が十分でないという学校があれば、そういうところもひとつ力を入れていただくような指導をしてまいりたいという観点から今度の調査に踏み切ったということでございます。
  243. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 先ほどの御答弁で、文部省でお調べになった中でも格差があるというふうに言われましたですよね。格差という言葉を使うと、相当差があるというふうにわれわれは感ずるわけですね。だから、いい方はこれは私どもいいと思いますし、これはまた道徳の時間だけで議論はできないことだとも思います。しかし、道徳の時間について格差があって、悪い方はどの程度悪いのか私よくわかりませんが、悪いところで文部省で把握なさっている内容をひとつこの際お聞きをしたいと思いますし、さらに、道徳の時間だけで道徳を云々はけしからぬということがよくいろいろと議論されておるわけで、学校教育全体の中でこれを進めながら道徳の時間を生かしていくという形、文部省はそういう方向で考えて指示もしてはいらっしゃるようでありますけれども、そういうものがどうも学校現場で余り受け入れられていない形の中で格差が出ているのかなという気がするのですが、その悪い方の実例としてはどういうようなものがあるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  244. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 たとえば問題行動の生徒を出しましたような学校の教育課程の組み方とか指導の全体計画などを調べてみますと、せっかく特設いたしました道徳教育の時間が明確に位置づけられていない、したがって、どのような指導をしていたのかということを把握することが困難なような学校があるわけでございます。たとえば町田市の忠生中学校におきましてもそれらの点を調べてみましたけれども、実際に特設の時間が道徳教育の活動の場として活用されていたかどうかということについては、私どもが調査をいたしました限りにおきましては分明でないということもございまして、父兄から見ますと、せっかく学校の教育活動の中に道徳教育という時間があって、そこで自分の子供たちに善悪の判断でございますとか、生活の基本的な様式のようなものをしっかり教えてもらいたいというような要請があるにもかかわらず、それが十分に使われていないというようなことは、これを特設いたしました趣旨にはなはだ反するわけでございまして、そういう点があれば、私どもとしてはぜひ是正をしてもらいたいというふうに思っておるわけでございますので、そういう実態を調べて今後の指導に役立てたいということでございます。
  245. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 四月十六日の朝日の社説にも出ているのですけれども、学校教育の中で「道徳心を養わせることは、教育の中心的な目的といってもよい。知識・技能をいかに身につけさせても、それだけでは教育したことにならない。このことを否定する者は、どこにもいないだろう。」、こういうふうなことが書かれてあります。これは私も大変同感であるわけですが、そういう意味からも道徳教育というものには今後真剣に取り組む必要があると思うのです。  しかし、道徳教育というと、学校の現場あたりをいろいろと私なりに当たって聞いてみましても、何かそれをやることに大変アレルギーがあるということを全般的に耳にすることが多いのでありますけれども、その理由は一体どういうところにあるのか、そこらあたりの判断文部省ではどういうふうになさっていらっしゃるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  246. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 アレルギーがあるというようなことも言われるわけでございますが、これはもしあるといたしますと、昭和三十三年に一週間に一時間の道徳の時間を特別に設定するという方針を出しましたときに、一部におきまして、これは修身科の復活であるという形で反対を唱えた教職員もございまして、そういうような考え方が今日におきましても尾を引いているというふうなことも考えられるわけでございます。しかし、教育課程の中で指導要領によりまして明確に指導の事項が示されましてこれを指導するということが決まっているわけでございますから、しかも、このように校内暴力を中心といたします少年非行が非常に社会の関心の的になっているときに、そのような過去の経緯によりましてこの問題に真剣に取り組まれないということがあると大変残念なことでございますので、ほとんどの学校ではまじめに取り組んでいただいたと思いますけれども、そういうアレルギーがもしあるといたしますと、それを払拭いたしまして、道徳教育の時間はできるだけ感動を与えるような工夫をいたしまして、子供に道徳的な心情とか実践力を深めるような授業をぜひしてもらいたいと思っておるわけでございます。
  247. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 昭和五十五年に東京都の中学校の道徳教育研究会というところが調査したところによりますと、教師の三〇%が道徳の授業の仕方がわからない、こういう結果が出ているようであります。これはどうも特設されて二十五年間進めてきたにしては、五十五年ですから三年ぐらい前ですか、調査したところが中学校の教師の三〇%が授業の仕方がわからないというのは、どんなことを教えているのか大変心配になるわけであります。確かに一般教科と異なって指導のむずかしさというものがあるのかもわかりませんが、そうなりますと、教師自体が大変問題になるなという気がするわけですね。こういった点の指導のあり方というのはどういうふうにするのか。これがまた管理優先の形でやられると大変まずい結果になると私は思いますけれども、本当に子供の将来を考え、全人格的に育てていくという意味からこれは必要なことでもあると思いますので、ここらあたりはどういうふうな取り組みをされているのか、お聞きをいたしたいと思います。
  248. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 道徳の指導は、各教科と異なりまして教科書を使うということはないわけでございますし、先ほど申し上げましたように児童生徒の生活体験とかあるいは発達段階に応じましてどのような価値を指導するかということにつきましては相当工夫、努力しなければならない点がございますから、教科の指導と異なるむずかしさがあることは御指摘のとおりかと思います。  しかし、これまで指導要領につきましても改善を加えているわけでございますし、教員に対しましても講習会等を実施いたしまして実際の指導のあり方についての研修もしているわけでございますし、教科書はございませんが、三十八年の教育課程審議会の答申に基づいて教師の指導する資料を文部省がつくりまして無償配付しておりまして、工夫して努力をいたしますれば実効の上がる指導は十分可能だと思うわけでございます。実はこの間の懇談会の席上におきましても、工夫をして非常に感動を与えるような道徳の時間を実践しているという教師の報告もございましたので、この際、むずかしい点もあろうかと思いますけれども、ぜひ努力をして子供に道徳的な心情を植えつけるようなことを現場の教員におきましてもしっかりとやっていただきたいと考えるわけでございます。
  249. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 時間が参りましたので、最後に一つだけお尋ねをいたします。  今回全国調査をやられておりますが、その結果によっては現在の道徳教育のあり方を見直してこれを進めていくというお考えがあるのかどうか、この点を最後にお尋ねいたします。
  250. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いまの道徳教育の時間またはそれを中心といたします学校教育活動全体の中におきます道徳教育の指導という方針につきましては、これはそのとおり進めてまいらなければならないと思っておりますが、その活用の仕方とか、いま特に必要だと考えている指導項目がどのようなものであるとかあるいは現場におきます教材がまだ十分でないとかいろいろな問題点があるいは出るかもしれませんが、そういうものが出ましたならば、その実態調査に出ました問題点を踏まえましてさらに充実するための改善策をとらなければならないと考えているわけでございます。
  251. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 どうもありがとうございました。
  252. 葉梨信行

    葉梨委員長 三浦隆君。
  253. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 本日は、少年非行の問題を中心にお尋ねをしたいと思います。  初めに大臣より少年非行根絶に向けての御決意をお伺いしますが、いま問題となっている学校も大変に困って、お手上げのような状況であります。また、家庭においても社会においても本当に困ったと言っているわけですが、現にいま法務省の矯正教育という中でかなりの成果を上げているところもございます。そういう意味で本日は、余り文教でも取り上げられてなかったようでありますが、少年鑑別所なり少年院なりそうしたところで行われている矯正教育というところにポイントを置きながらまずお尋ねをさせていただき、次いで教員の資質というか教員の養成のあり方についての一つの提案をさせていただきたい、こう考えております。初めに、今日の少年非行の概略につきましてざっと私の方から述べさせていただいて、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。  警察白書におきまして、昭和五十六年度を見てみますと、刑法犯少年が十八万四千九百二名、特別法犯少年三万五千三十名、触法少年(刑法)六万七千九百六名、触法少年(特別法)八百四十五名、虞犯少年四千九百二十二名、そして交通事故に関連する致死傷者五万一千百七名という大変な数になっております。それぞれが前年に対していろいろプラスが出ているのが多いわけです。特に、刑法犯の少年の扱いなんですが、昭和五十六年度は刑法犯少年が十八万四千九百二名で、いま言いましたように触法少年も六万七千九百六名、五十二年度を一〇〇としますと一六四という指数でふえております。これが成人の指数は、昭和五十二年を一〇〇として五十六年が九六と減少傾向を考えてみますと、少年たちの著しい増加ぶりがなお浮き上がってこようかと思います。  特に、年齢構成などを見ますと、刑法犯少年と触法少年を合わせました数が二十五万二千八百八名のうち、十五歳以下が十六万二千七十五名と六四・二%、大変に低年齢層にこの問題が大きく広がってきております。ということは、学歴別にこれを見てみますと、勢い中学生、小学生の占める比重が高くなっておりまして、特に中学生、小学生では合計五四・三%、うち中学生が四六・三%ということになっております。中学生の占める比率が多いということから、校内暴力事件と言われるものも年々のようにふえてきているわけでありまして、五十六年度で中学生で補導された者が八千八百六十二名、前年度よりも千七百五十四名ほどふえてきております。  同時にまた、教師に対する暴力事件もだんだんふえてまいりました。中学生によるいわゆる対教師暴力は、昭和五十二年三百四十二、五十三年二百九十六、五十四年四百七十三、五十五年七百六十三、五十六年千五百四十二名、こういうふうになっています。という意味で、これからの時代をしょって立つ子供たちのことですから、こういう少年非行の数が年々低年齢層に広がるということは、本当にゆゆしき問題だと思います。  そんなことから、総理大臣の方も、この二月二十一日におきます首相官邸でのNHKのビデオ撮りの発言あるいは三月二十九日の同じく首相官邸での民放テレビでの「総理と語る」という録画撮りなどが新聞に載っておりますが、その中では、もはや少年非行の問題を文部省だけには任せておけないというふうなことも述べておるようですし、あるいは大学入試に関連しては、希望者は全員入学させるということも言っております。前回、教科書問題で文部省を飛び越えて外務省が大変に華々しくと言ってはおかしいですが、かなりの役割りを占めたように思うのですが、今度の少年非行の問題で文部省を飛び越えてこれまた総理大臣の手によって文教問題が次々と提案されていくのでは、これは大変おかしなことだと思います。  そういう意味では、文部大臣の方も、二月二十三日に文部省の各局長を集めた臨時省議というものを開かれて、公立校と私立校での校内暴力の状況に差があるかというふうなことに対する調査とかその対策を指示されたようですし、またこの四月十五日付では、文部省の鈴木初中局長名における「公立小・中学校における道徳教育の実施状況等の調査について」というふうなものも出されている。そうした問題にこたえて、三月八日付では、最近の学校における問題行動に関する懇談会、そこでの提言が示されておったりしまして、各方面でこの少年非行に対する問題が、いまいろいろと何とかしなければならぬというふうに差し迫ってきたように思います。そういうことで、これまでの経過を踏まえながら、文部大臣から改めて少年非行根絶に向けての御決意をお尋ねしたい、こう考えるわけです。
  254. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 少年非行根絶というお言葉でございますが、もちろんそういう考え方で対応しなければならないと思いますけれども、人間社会で根絶ということを断言することはちょっとはばかりたいと私は思います。ただ、いまいろいろな数字を示して皆さんからお話がありましたが、まさにこれは国民的に憂慮すべき時期に来ておる。日本だけの問題じゃありませんけれども、しかし、よそがそうだからそれでいいんだというわけにはまいらないのでありまして、わが国はわが国としてこれの根絶に向かって対応しなければならない。  ただそこで、根絶根絶と言いましても、問題はこういう青少年といいますか、特に低学年、低年齢の時代には人間まだ未熟でございまして、人間社会の中のマナーもわきまえておらない。やはりそれを指導しなければ人間社会でどういうマナーを持って生きていけばいいかわからない。それは生物としての常識でありますから、そういう点を前提に置きながら、しかもいつも何かと申し上げますが、これは十四、五になりますとだんだん意欲もわいて羽ばたいてみたい、こういう時期に差しかかることと、それから最近は、先ほどもちょっとお話が別にありましたが、このごろは成長が非常に早いということで、だんだん低年齢化していくという傾向にあるわけでございます。いつも申し上げて恐縮でありますが、これには本人の素質ばかりでなくて、家庭のしつけ方あるいは学校の教育のあり方、それから社会経済の非常に急激な発展の中で物質万能時代みたいになってしまった、そして社会にはいろいろと魅力的な、しかも欲望がだんだん出てくるという、しかもマナーは知らない子供たちがいつでもどこでも利用できるようないろいろな施設あるいは目に触れるものがある。いろいろなものが重なってこういう状況がだんだん出てきておると思います。  でありますから、反面からいいますと、私は率直に申し上げていまのそういう青少年といいますか、非常にかわいそうだという感じを持っておるわけであります。でありますから、いまもっとたくさんあると言いますけれども、そういう原因をできるだけ分析をして、一挙に解決するというわけにはまいらないと思いますけれども、原因を分析した上で一つずつ対応策を立てていかなければならない。これは文部省云々のお話がありましたが、あるいは総理からのお話もあったということでございますが、一文部省云々の問題じゃなくて、国民全体がそういう気になって、この時代の社会現象として起こっておるわけでございますから、その原因を突きとめて原因の排除に努めなければこの問題は解決しない、えらい抽象的な話でありますが、そういう決意で全力を文部省文部省として尽くしたい、政府政府としてやるべきことはやらなければならない、国民の皆さんの奮起も促したい、こういう考えを私は持っておるわけでございます。
  255. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 少年非行という概念そのものも大変あいまいですし、昔がなくて今だけあるということでもないし、日本だけにあって外国にないということでもございませんから、そういう意味では少年非行、なかなかむずかしいと言えばむずかしいです。ただ、私が言いたかったのは、もういろいろな方から原因と分析も語り尽くされたように語られております。同じようなことを堂々めぐりしていても少年非行はさっぱり数が減ってこないということなんです。行きつくところ、先ほど鍛冶委員からもお話がありましたように、学制の問題はどうであろうか、あるいは入試の問題はどうであろうかというふうなことも提言されてくるわけでありますが、またそうすると、学制を改革するには、六・三・三制はいいところ悪いところ、これこれしかじかだから、審議会をつくってまた検討しよう、あるいは入試の変更もやろう、そこでまた年月がたっていって、いわゆる責任の所在がしばらくあいまいになってしまうと思います。病気ではありませんが、原因とかしかるべき対策がはっきりしてから治療する場合もあるでしょうけれども、仮にもう現実に病人ができてしまった以上は、何でそれが病気になったのか、はっきりとした科学的な対応策が果たして言えるかどうかわからなくても、あずかった医者としては即座に対症療法なり治療をしなければならないわけです。  そういう意味においては、むしろこれまでのわが国で、そうした専門のせっかくの機関がありながら注目を浴びていなかったところ、私はそれが法務省の管轄下における各種の矯正施設だろう、このように思います。いわゆる矯正というのは、国家行政組織上は法務省の所管に属する一つの行政分野であると言われておりますので、まず法務省から概略、その矯正施設、矯正教育というふうなものについて御説明をいただきたいと思います。
  256. 佐藤一男

    佐藤説明員 お答えいたします。  法務省所管の施設のうち、少年院と少年鑑別所について申し上げたいと思います。  少年院におきましては、満十四歳以上二十歳未満の少年のうち、家庭裁判所で少年院送致の決定を受けた者を、原則として二十歳まで収容して、少年の自覚に訴え、紀律ある生活のもとで生活指導、教科教育、職業補導等の教育を行っております。少年鑑別所におきましては、家庭裁判所から観護の措置として送致された者を収容しますとともに、家庭裁判所で行います少年に対する調査及び審判並びに保護処分の執行に資するための少年の資質鑑別を行っております。     〔委員長退席船田委員長代理着席
  257. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 まず、少年鑑別所についてお尋ねをしたいと思います。  昨今、昭和五十年以降における少年鑑別所での収容人員の推移、どうなっておりましょうか。
  258. 上館貢

    ○上館説明員 お答え申し上げます。  昭和五十年の被収容人員は、一万一千二百六十一名でございます。それが逐年増加いたしまして、昭和五十七年では二万六百五十九名となっております。これは五十年に比べまして八三%の増加となっております。一日平均収容人員について申し上げますと、昭和五十年には六百四十六名であったものが、逐次増加いたしまして、五十七年では千二百三十九人となっており、これも五十年に比べまして九二%の増加となっております。
  259. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうした収容された少年たちの昨今の特徴的なものはどういうふうになっていましょう。
  260. 上館貢

    ○上館説明員 まず、年齢構成でございます。十六歳未満を年少少年、それから十八歳以上を年長少年、十六歳から十七歳を中間少年といたします。それを昭和五十年それから昭和五十六年というふうに区別して比較してみました。男子の場合は、人員の上では年長少年が半数を占めておりますけれども、構成比を見ますと、年少少年、十六歳未満につきましては、五十年一一・二%から五十六年には一三%、それから十六歳、十七歳の中間少年につきましては、五十年が三二・一%、それから五十六年には三七・六%というふうに増加傾向があって、低年齢化がうかがえます。しかし、女子については、その傾向は見られませんでした。  しかしながら、従来から女子は、女子の中で見ますと、年長の十八歳以上の女子というのは二〇%程度でございまして、昭和五十六年におきましては、十六歳未満の年少少年は三七・四%、それから十六歳、十七歳の中間少年が四二・五%ということでございまして、女子については非常に低年齢層の者が多うございます。  それから、非行名別といいますか犯罪名別で見ますと、この統計が昭和五十三年からとり出したものですので、昭和五十三年、それから昭和五十六年について申し上げ、最後に比較してみたいと思いますが、男子は窃盗がおおむね三分の一を占めております。二位は、五十三年が傷害、それから五十六年が道交法違反、三位は、五十三年が虞犯で、五十六年が覚せい剤取締法違反ということになっております。女子につきましては、虞犯が過半数を占めております。これが第一位でございます。それから二位は、五十三年が窃盗、五十六年が覚せい剤取締法違反ということになっております。  そこで、五十三年と五十六年とを比べてみますと、男子においては四三・五%、女子は二六・二%数が増加しております。男子では、道交法違反が一七八・二%、覚せい剤取締法違反が一五一・一%、暴力行為等が一一〇・一%、傷害が五七・一%の増加を見ております。女子では、暴力行為等が二二五%、覚せい剤取締法違反が一五〇・五%、傷害が一〇〇%、恐喝八七・五%の増加を示しております。男女とも五十三年と五十六年を比較いたしますと、覚せい剤取締法違反と粗暴犯が大幅に増加しております。  このような特徴が見られました。
  261. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 先ほどの、冒頭に言いました統計と似たように、近年少年鑑別所でのそうした低年齢化、同じような刑法犯というのがふえてきております。  特に鑑別所における処遇のあり方なんですが、昨今ふえておりますいわゆる校内暴力あるいは暴走族に対する対応、薬物乱用少年といったものに対する処遇、何か特に問題となるものはございますか。
  262. 上館貢

    ○上館説明員 少年鑑別所の入所者というものには、非常に粗暴傾向の強い者、それから薬物乱用で精神に一時的な変調を来している者が年々増加してきております。その取り扱いについては苦慮しているわけでございますけれども、早期に少年の心理を把握いたしまして、それから綿密な行動の観察を行って、そこに不安の強い者などを見つけましたときには、心情安定を図るための面接とか助言というものを行っております。このようにいたしまして、少年が落ちついて鑑別及び審判を受けられるよう配慮をしているところでございます。
  263. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 鑑別対象者の内訳なんですが、昨今特に家庭裁判所関係のうちの自所収容者が増加して、一方、一般鑑別が減少してきていると言われていますけれども、その理由はどういうところにあるでしょうか。
  264. 上館貢

    ○上館説明員 統計によりますと、昭和五十年家庭裁判所関係が一万七千九百十二件でございましたが、逐年増加いたしまして、昭和五十七年には二万三千六百二十九件というふうになっております。その反面、一般少年鑑別の方は、昭和五十年の時点で一万七千七百十四件であったものが逐次減少して、五十七年には一万三千三百十六件ということになっております。  このように一般少年の鑑別は、家庭裁判所関係鑑別の増加によって減少しているものでありますけれども、地域社会の要請はむしろ強まっていると考えられますので、業務処理の効率化を図るなどによって一層の活発化を促進してまいりたいというふうに考えております。
  265. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 鑑別所から考えて、一般鑑別というのは今後ふえた方がいいと思うのですか、減った方がいいのですか。
  266. 上館貢

    ○上館説明員 中心となる業務は家庭裁判所からの収容鑑別でございますけれども、社会の要請が非常に強い昨今でもありますし、私ども努力をいたしましてふやしていきたいというふうに考えております。
  267. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これまで、いま御説明いただきましたように、少年鑑別所というところは、いわゆる学校で手に負えない、家庭でも手に負えない、また警察とも違った尺度の中から、現実に大変に問題を起こした少年だけを本当にとらえてその矯正のために努力されているという点では大変すばらしい施設なんだろうと思います。しかも、それがはっきりと暴力事件を起こしてしまってから対応するのは、これは病気で言えば、完全にひどい病気になってから治療効果をする。病気の場合、本当はそれよりも病気にならない以前というか、軽い程度、予防医学というのはより大切だと思うのです。とすれば、こうしたひどい、たとえば暴力事件を子供が犯したとします。先日、中学生を中心とする十人の子供たちが浮浪者を襲撃して傷害致死事件を起こしたといったような場合も、急にそういう事件が起きているわけではないわけです。あるいは先ほどお答えになった忠生中における事件も、ある日一回急に起こったわけではない。これまでに何回となく、繰り返し繰り返し行われていたのに、その対策が大変にまずかったから、だんだんだんだんひどくなってきたわけであります。とすれば、むしろそういう危なそうな問題が出かかったときに、どうしたらばひどくならないで済むかというそういう処置が必要だと思うし、しかもそれが学校の、たとえば英語を教える先生は英語が達者、数学を教える先生は数学が達者であるけれども、一般的なそういう少年非行に対する対応策を特に持っておらないわけです。家庭のお母さん、お父さんにしても、子供がかわいいとは思うけれども、それぞれそれが専門家ではありません。そういう点では少年鑑別所の人はそういう鑑別をするのを専門の職とされているわけであって、事前に早く気づけば気づくほど、そこに一般鑑別というか、早くから相談されることが最も望ましいことなんだろうと思います。せっかくあるものが使われないこと自体にまず一つ大きな問題があります。  しかも、それほどの数でないのに、いまのお答えをいただくと、もう自所収容者の増加とともどもに一般鑑別に手が回らないというふうになってきております。ということは、いま国を挙げて行革に取り組む必要がある、これはもちろん大切なことではありますけれども、漠然とただ一般的に一割削減とかすればいいというものではなくて、今日、総理大臣以下文部大臣が国を挙げて少年非行の問題に取り組もうとするのであれば、それに取り組もうとして真剣に立ち向かっている職員というのは、減らすのではなくて、むしろふやさなければならないと思うし、それに対応する施設というのは整備充実していくことの方がむしろ望ましいのじゃなかろうかというふうに考えます。ただ、それにしても職員をふやせ、あるいは施設を充実せよと言っても、肝心の少年鑑別所なり、あるいはこれからお話しする少年院を、多くの国会議論を踏まえて、多くの先生方なり多くの国民が知らないと、せっかく御努力されている人の評価が余り目に映ってこない。大変遺憾なことだと思います。そういう意味からいたしまして、こういういままで余り日の当たらなかったところで大いに努力されておる人により日の当たるように、そして言うならば少年非行というものが、できるならば事前に少しでも抑制されていくようにしていくべきではないか、こういうふうに思います。  さて、鑑別に当たりましていろいろと情報収集というか、資料収集が必要だと思います。特に学校に通っている子供たちを対象とする以上は、学校でもその子供たち状況を知らなければ対応がむずかしかろうと思います。そこで、少年鑑別所としては、学校からの資料収集をどのように行っているのか、直接的に行っているのか、家裁から間接的に入手されているのか。いずれにしましても、どのようにいわゆるその問題の、たとえば中学生で非行を起こした場合のその中学生に対する学校からの資料収集をどうして行っているか、あるいは資料収集に伴う何か問題点があったら御指摘いただきたいと思います。
  268. 上館貢

    ○上館説明員 鑑別に当たりましては、学校関係の資料は非常に貴重なものの一つであります。必要があれば学校に照会できる制度になっております。ところが観護措置により入所した少年につきましては、家庭裁判所が審判に必要な事項を調査しておりますので、この調査の中には当然のことながら学校照会も含んでおります。少年鑑別所といたしましては、二重調査を避けるというふうな意味もありまして、家庭裁判所から学校の資料を含めて鑑別に必要な情報を得ております。なお、在学中の生徒につきましては、先生が面会に来所された機会に少年のことについて職員に相談されますので、その際に必要な範囲において詳しい情報を得るように努めております。
  269. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 鑑別所にまず入所しますと、その最初の日に本人の自画像をかかせると言われておりますけれども、昨今の事件の中での自画像、どういうふうな特色がその絵から見られるのでしょうか。
  270. 上館貢

    ○上館説明員 人物など絵をかかせることで人格を知る方法にHTPという方法、ハウス・ツリー・パーソンというのがございますが、各地の鑑別所で用いております。先生が御視察になられた鑑別所で、自画像から少年の性格を分析する方法を研究されておったと思いますが、これらを利用して人格を知るというふうな検査の研究をしておるわけでございます。その研究結果によりますと、非行少年にはどぎつい色を使用するとか、タッチの荒さというようなものが見られたということでございます。
  271. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 私は、少年鑑別所を通して見る少年の姿というのと、恐らく学校の教員が学校で暴力を働いた少年に対する印象とでは大変違ったものがあると思います。といいますのは、たとえばある事件で十人の子供が大変にひどい悪いことをした。私はどんなひどい顔をした子供たちかなと実は思いました。ところがその十人の子供たちというのは、本当に事件を起こしたのかなと疑うばかりの顔かたちなんですね。と同時に、その絵の中で、十人にかかしたところが、一人の少年は、自画像をかけと言いながら、おりの中に小さな犬をかき、小さな猫をかいてありました。解説にいわく、そのおりの中に小さくうずくまっているのが私なんです、一人でさびしいので猫もかきましたというのがありました。もう一つには、その画用紙を半分に割りまして、そこに道路、だんだん広くなる道をかいている。説明の中に、私もまっすぐの人生を歩きたいのです、だけれどもいろいろとむずかしい。その道路の回りにはあらしが吹いたような絵をかいて、子供の心理状況の乱れが示されてました。それから、ほかの自画像をかいた中に共通点が一つありました。一つの絵だけが唇をだいだい色に薄く塗って、あとは軒並みすべて真っ赤な唇を塗っているわけです。普通の絵ではない。まさに圧倒的多くの子供たちが、どういう理由でか真っ赤に唇を塗っているわけです。私は専門家じゃないので分析はわからないけれども、たまたま事件を起こした子供たちの家庭環境が、夫婦は離婚あるいは離婚訴訟中、共稼ぎで家にはいない、いろんなことがあると言っておりました。言うなれば、普通であれば朝寝坊すれば、学校におくれるから起きなさいよと声をかける。あるいは顔を洗わなければ、歯を磨いて顔を洗いなさいよと親が声をかける。あるいはまた学校へ行ってきますと言えば、行ってらっしゃいと声をかける。また学校から帰ってただいまと言えば、お帰りなさいと声をかけるはずの家庭です。これに対して、鑑別所に入った両親その他に恵まれない子供は、朝起きろと言って声をかける人がいない。顔を洗わないと言ってしかってくれる人がいない。学校へ行くのに、行ってらっしゃいと声をかける人もいない。学校から帰ってただいまと言ったときに、お帰りなさいと言う人がいない。学校から家に帰るのがおもしろくないから盛り場に行く。同じような子供たちが大ぜいいた。お金がないから万引きをした。お金がないからということで事件を起こした場合、もちろん子供の犯した行為は許し得ないにしろ、そういうふうに子供を追いやっていった家庭なり、その場合にただ一人の教員でもいいから、おまえが家庭に帰っておもしろくなければおれの家に来ないか、おれがおまえのおやじがわりになってみせようじゃないか、おれの家で一緒に食事でもしてみないか、そういう声をかける教員が一人もいなかったという現状の姿の方に、私は大きな問題があるように思います。  私流の解釈で言えば、唇の赤いのは母親の愛に乏しい子供たちの願望かもしらぬし、あるいは赤く目立たせたいという突っ張った気持がそうさせるのかもしれませんが、とにかくそういう子供の姿というものは、家庭で暴力をふるっている親にはわからないし、学校で暴力をふるっているときの先生の目には見えない子供の姿が少なくともそこには出てきているということであります。家庭や学校でだらしのない子供が、少年鑑別所に入ったときの生活態度は、朝起きてから寝るまで一貫していわゆる規律正しい生活をしているじゃないかということなんです。私は、こうした事実をもっと学校関係者は知るべきではなかろうかというふうに思います。  そこで、そうした鑑別所に対する学校側の対応であります。少年鑑別所というものに対して、校長さんなり生徒指導主任と言われる人なり担任の教員なり、鑑別所をどの程度利用されているのかということをお尋ねしたいと思います。
  272. 上館貢

    ○上館説明員 ほとんど利用されてはおりません。
  273. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ほとんどの統計もないくらいに、大きな事件を起こしている、先ほど言った忠生中学でも結構ですが、数々の問題を起こしている札つきの中学というのは幾らでもあるのですよ。そういう札つきの中学の連中が、校長という職にある人が、生徒指導主任という職にある人が、暴力事件を起こしたり自分で子供をひっぱたくような暴力教員が、なぜそういうところを知ろうとしないのか、私は大きな問題がまずここに一つあると思います。  時間ですので先に進みまして、ここで程度が軽ければそのままということですね。ただ、これがもう一歩ひどくなりますと、少年院なり少年刑務所のお世話になるということですが、そこで少年院についてお尋ねをしていきたいと思います。  少年院といいましても、行かない人では全然知らない方もあるかもしれませんから、少年院にはどういう種類のものがあって、現在どういうふうな収容状況であるのか、あるいは最近の特色はどういうふうに見られるのかというふうなことを、簡単にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  274. 佐藤一男

    佐藤説明員 少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された者を収容しましてこれに矯正教育を授ける施設でございますが、四つの種別がございまして、初等少年院、中等少年院、特別少年院及び医療少年院、こういうふうな種別がございます。  初等少年院といいますのは、心身に著しい故障のない十四歳以上おおむね十六歳未満の者を収容いたします。中等少年院は、心身に著しい故障のないおおむね十六歳以上二十歳未満の者を収容いたします。特別少年院は、心身に著しい故障はございませんが、犯罪的傾向の進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満の者を収容いたします。最後に医療少年院は、心身に著しい故障のある十四歳以上二十六歳未満の者を収容いたします。  なお、少年院における最近の収容状況でございますが、少年院は全国に五十九庁設置されておりまして、昭和五十七年の一日平均収容人員は三千九百六十一人、一年間に新たに収容された新収容人員は五千二百五十九人となっております。これら在院者の収容状況を一日平均収容人員の推移で見ますと、昭和五十年の二千五百三十二人を一〇〇としまして、最近三年間の指数を見ますと、昭和五十五年が一三九、五十六年が一四五、五十七年が一五六でございまして、増加傾向を示しております。  また、その特色は、十四歳から十五歳の中学生等、低年齢少年の増加傾向が顕著でございます。昭和五十年を一〇〇としますと、昭和五十七年は二五三という指数になります。  さらに、いわゆる現代型と称される学校内暴力事犯、暴走族等暴力的傾向を有する少年、覚せい剤等薬物乱用事犯少年及びこれらを併有するいわゆる複合型とも言うべき特色を有する在院者が増加しております。
  275. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 少年院に入る子供たちが大変にふえてくるということは、その少年院に入った子が出た後、大人になったことを考えますと、そこで立ち直って出るのか、少年院帰りという、かえってひどくなって出るかということは社会にとっては大変に大きな問題であります。幸いなことに、少年院に入って出てくる子供が再入院するという率が大変減ってきているということは、収容者が多い、しかも同じ施設、手不足の職員の中で再入院の人が減っているということは、それは少年院における矯正教育の大きな成果であり、働く人の大きな誇りを持っていいことだと思います。  そこで、その矯正教育というのはどういう目的でどういう教育方針を立てられているのか、いろいろと細かく打ち合わせさせて、質問をしたいことがあるのですが、時間でございますので、できる限り簡単にひとつお願いします。
  276. 佐藤一男

    佐藤説明員 少年院における教育方針は、在院者を社会生活に適応させるために本人の自覚に訴え、規律ある生活のもとに教科教育並びに職業補導あるいは生活指導等を授けることにございます。
  277. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 少年院の日課表的なものはどうなっていましょう。
  278. 佐藤一男

    佐藤説明員 施設によって若干の差はございますが、ごく標準的な日課表について御説明いたします。  起床は六時三十分。大体七時三十分ごろから朝食に入ります。八時三十分に朝礼。九時から午前の課業が始まります。課業の内容は、職業補導あるいは教科教育、クラブ活動等がそれぞれの施設によって組み込まれております。十二時に昼食。午後一時から午後の課業が始まります。これも午前と同じような内容になります。夕方五時から夕食。それから、大体夕方六時ぐらいからそれぞれの寮舎の中でミーティングが行われるのが通例となっております。その後、学習。学習には、自習の場合もございますし、またそれぞれ教官が一斉に指導する場合もございまして、一概には申し上げられません。それから、九時に一日のまとめ。これは日誌をつけたり、それからそれぞれ反省をしたりというふうなことで、おおむね十時に消灯というふうな日課になっております。
  279. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ふだんだめな子というのは、起きる時間からそして寝る時間まで大変に不規則でだらしなくなってくる。あるいはまた服装なりその他言葉遣いも大変にだらしなくなってくるのだと思います。そうしたことが現在の家庭なり学校ではなかなか正すことができない。ところが、現実の少年院ではそうした子供たちを相手にしながら、この責任は家庭にあるの、社会にあるのという泣き言を言わないで、来た子供たちをりっぱに矯正させているということは大変すばらしいことだと私は思います。  そこで、特に教育の問題について御質問したいと思うのですが、こうした子供たち、たとえば中学に行っている子供ですと、そこで勉強を教えて、場合によっては卒業資格的なものが与えられるわけですね。言うなら準学校的な役割りを少年院は果たすことができます。  そこで、これに対して教科に関する文部大臣の勧告というふうなものが、この少年院法の五条一項ですと、出されることになっておりますが、文部省、どのような教科に関する文部大臣の勧告というのをなされておったのでしょう。
  280. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 少年院法の五条一項には、いまお話のございましたように、「少年院の長は、在院者に対する矯正教育のうち教科に関する事項については、文部大臣の勧告に従わなければならない。」と規定しておりまして、文部省におきましては教育課程基準改善が行われますたびに、法務省当局に対しまして教育課程基準改善の基本的な方針並びに学校教育法施行規則及び学習指導要領の改正内容を通知をいたしまして、これに基づき、法務省御当局の方からその内容につきましては少年院長に通達されているというふうに承知をしております。  ごく最近の教育課程基準改正につきましては、五十二年八月の十五日をもちまして文部事務次官から法務事務次官に改正の趣旨につきまして通知をしておりまして、それに従いまして法務省の方におきます手続が運ばれているというふうに承知しております。
  281. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 教科に関する文部大臣の勧告というのは、一度ならず何回でも、いわゆるいろいろとそのときどきに変わってくるものだと思うのですが、文部省はその都度出しておりますか。
  282. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 これは教育課程基準改正が行われますたびに、法務省にはその趣旨を通知をもちまして連絡をしているわけでございます。
  283. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうすると、その教科を実際に行うためには、教科を担当する職員が必要です。その教科を担当する職員教員の資格なり人数なり持ち時間なり専任なり非常勤の身分、あるいはカリキュラムの組み方、授業方法、成績判定を文部省はどのように把握していますか。
  284. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 文部省が勧告、連絡いたしますのは、教科の内容に関する事柄でございまして、その資格でございますとか教員の数でございますとか、そういうものにつきましては、ただいまのところ連絡はさせていただいてないわけでございます。
  285. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これでは教育にならぬのだろうと思います。  なぜならば、義務教育ということでは学校は教科書は無償だし、しかるべき額の、かなりの金をどんなに苦しくても出そうとしているわけです。そうして、そこで義務教育が不十分であれば、そこで教えた者に卒業資格と同じものを、証明書なりを法によって与えようとしているわけですが、全然だめなところでもって卒業資格にかわるべきものの証明書が与えられるということは本来あり得ないはずであって、文部省教育に対して本当に責任を持たれるならば、自分たちの出している大臣の勧告というふうなものが具体的にどのように行われているものかどうか、もっと関心を持ってしかるべきものじゃないか。特に今度の非行少年の問題というのは、現場の教員がもう半ば投げ出しているような形の子供たち、こういう乱暴な子供たちは教えられぬというふうな、むしろ、逃げ腰な連中を引き取って、それを教育し、ちゃんと矯正して、そして卒業資格にかわるべきものを与えようとしているわけです。やはり文部省としても、実際の小学校、中学校の教員や何か行き詰まっているのですから、勉強さすためにも、そういうふうなものが具体的にどのように行われているか、もっともっと知っておく必要があると思います。言うならば、いま知らないのでしたならば、これからよく法務省、少年院その他とも連絡をとって、文部省として、いわゆるそうした少年院でどういうふうな教科、それが実践されているものか知った方がいいと思うのですけれども、その今後の取り組みとして御意見を承りたい。
  286. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 少年院法の規定によりまして文部大臣の勧告をいたす内容は教科に関する事項でございまして、ただいま申し上げましたように、教育課程基準改正が行われますと、それをお知らせする、それを受けて教員の配置でございますとか、それは少年院法に定められました趣旨に従って、法務省におきまして措置をされているものというふうに考えておるわけでございますが、どのような教育が行われているかということにつきましては、今後法務省の方とも御連絡申し上げまして、私どもとしてもぜひ勉強させていただきたいというふうに考えています。
  287. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いままでこうした角度での質問が余り行われなかったようですから、きょうは仕方のないことだと思うのです。ただ問題は、これは希望として述べたいのは、少年非行というものがことし終わるのではなくて、来年も再来年もまだしばらくは続くであろうという前提に立ちます。現場の教員がお手上げの状況になって、中に教員は自信を喪失してノイローゼになる者もあるという調査が出ていることは文部省も知っているところでありまして、しかも問題は、そういうふうな子供を現実に預かって教育をしているわけであります。学校教育の場では勉強を聞こうとしない子供がそこの中では聞いているわけであります。あるいは自習時間も与えられて勉強もしておるというのであります。とするならば、いわゆる文教関係の所管にある先生方も、いわゆる法務省である文部省である、そういう縄張り的なことではなく、特に同じ教育です、教育となったら文部省の方がその点に関しては専管事項だと思うのですが、少なくともそういう実態を今後よく知っていただきたいと思います。いいところがあればそういうのは現場の教員にも教えなければならぬだろうし、取り上げていいところは取り上げていくべきものだろうというふうに思います。  そこで、今度は少年院における普通教員と違いまして特殊教育課程というのはどうなっていますでしょうか。
  288. 佐藤一男

    佐藤説明員 特殊教育課程といいますのは、精神薄弱者及び精神薄弱者に準じた処遇を必要とする者並びに情緒未成熟等により非社会的な形の社会不適応が著しいため専門的な治療教育を必要とする者を収容しております。昭和五十七年中に特殊教育課程の対象とされた少年の数は新収容者総数の約四%を占めております。これらに対しましてはグループカウンセリングですとかサイコドラマあるいは作業療法等の治療的な処遇を中心にしまして、その特性、能力に見合った教育を展開しております。しかし、在院者の資質及び保護環境面から特に帰住環境の調整に困難を来す例が非常に多いことが問題として挙げられると思います。
  289. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうした子供たちがいま言った少年院には全国的にいろいろと分かれて入っているわけですが、少年院の施設として、家庭のお母さん方なりが面会に来れば、遠いですから当然お母さん方を泊める施設というものが附属的にあるだろうと思うのですが、学校の先生方が面会に来る場合の施設状況、どうなっておりますでしょうか、法務省にお尋ねしたいと思います。
  290. 佐藤一男

    佐藤説明員 学校関係者の面会状況は、少年院に収容される少年の年齢とか種別等によって異なりますので一概には言えませんが、中学生等低年齢少年を収容する初等少年院の代表施設一つを取り上げてみますと、最近の出院者百名中八十三名の者に延べ三百六十三名の学校関係者が面会に来ております。面会に来られた先生方にこれからどういうふうな形でより面会の効果を上げていくかということにつきましては、それぞれ方法を検討していきたいというふうに考えております。
  291. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いまのお答えにありましたように、面会に来る先生が大変少な過ぎます、まず一つには。それから、来る先生方、たとえばそこの問題となった学校の校長先生だとか、生徒指導主任という主任の肩書きを持った人だとか、一般の教員だとか、そういうことはいまの統計の中でおわかりになりますか。
  292. 佐藤一男

    佐藤説明員 面会票の記録の仕方は、学校関係者というふうに統轄してございますので、その区分けはしておりません。
  293. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 それでは今後のこととしてお願いをしたいと思うのです。学校関係者だけではなくて、やはり教育という立場ですと、問題を起こした学校の校長さんだとか、あるいは主任さんだとか一般の先生方とか、大ぜいいらっしゃるわけであります。学校の管理体制のあり方とも関連しながら、どういう地位の人がどのような対応をしているかというのは大きな問題だと思いますので、今後の面会票のところに、たとえば校長とか生徒指導主任とか普通の教員とか、丸か何かでくくらせるようにしていただくと、同じ学校関係者だけではなくてわかりよくなるので、お願いをしたいと思います。  それから、施設については十分に整っているところと整わないところとあろうかと思います。私は、これまで整っていなかったのもあたりまえだと思います。というのは、訪ねてくる人が少ないのですから、当然そういう施設までは手が回らないと思います。特にこれから行革の問題が来れば厳しいと思うのですけれども、これもしかし、先ほど言いましたように、少年非行、そしてそれを解決することが大変何よりもの今後の大きな課題であるとするならば、先生方にどんどんとそういう少年院に行って子供の状況を見てもらいたいと私は思うのです。学校での先生に食ってかかるような本当にかわいげのない子供たち、それが少年院で、同じ人かと思うばかりによくなっている子供たちというのを見ると見ないでは大変な違いです。たとえば乱暴して少年院に行った。やっと教室が静かに穏やかになったかなと思ったときに少年院から出てくる。ああまた学校の中ががたがたになってしまうんじゃないか、先生によってはそういう不安を持つ人もいらっしゃるかもしれないし、また事実、知らなければそういう目で見るかもしれません。先生が生徒に対してそういう目で見ることは、子供もまた先生に対しておかしな目で見るようになる。先生の指導が悪ければ、同じ迎えるクラスの人たちも温かく迎えることは恐らくありません。とするならば、先生方が一生懸命少年院に通っていけばいくほど、学校とは違った生徒の姿を見ることができ、その生徒が再び学校に戻ってくるときには、みんなに対しても温かく迎えるようにという配慮がなされてくるだろうと私は思います。そういう意味で、施設がいま不十分であるとするならば、ひとつ積極的に予算の中で少年院における教員などの宿泊施設を新規につくりたいというふうに項目を出していただきたいと思います。先生がそこで一泊でもいいから泊まって、夕食でも朝食でもともに食べながら、子供の学習している姿、子供の作業している姿を見るということに大きな意義があるのじゃなかろうかというふうに私は考えますので、ぜひとも、行革の中ではありますけれども、していただきたいと思います。それから、まだ質問もありますが時間ですのでちょっと飛ばさせていただきまして、今度は教員の問題についてです。といいますのは、これもいろいろと教員についての質問というかお尋ねをしてから入った方がよろしいかと思うのですが、残る時間がないものですから問題点だけ指摘させていただきます。  といいますのは、まず第一点に、文部省の考えている一つの考え方として、教員の資質向上という言葉を言った場合に、確かに免許法を改正して必須科目をふやしていくというのも教員の実力をふやすという点ではプラスがあります。あるいは学部を大学院マスターにして十分に勉強させるというのも、これまたいいことだと思うのです。ただ、それだけでは済まないというのは、正常な学校の現場ならば、教える者、教わる者がおとなしい、いわゆる平常な姿でありますから、英語の実力のある人、英語の教え方のうまい者がいれば英語の勉強が達者になるだろうと言えると思うのです。ただ問題は、少年非行を起こす子はめったに学校に来なかったり、たまに来れば学校の中で暴れたり授業を妨害したりして、まともに英語の先生なり数学の先生の話を聞かないことも出てきます。そこで学校の先生はその対応に大変苦しまれている、それが今日の現状だろうと思うのです。  そこで、教員研修のあり方についてなんですが、いわゆる職務研修として外部から講師を呼んでお話を聞くというだけではなくて、職務研修の一環として少年院等への参観というのをぜひ組み入れていただきたい。現実にいま先生になっている人もたくさんいらっしゃるのですが、その人たちも少年鑑別所であるとか少年院だとか婦人補導院だとか少年刑務所とか、どこでも結構ですから、いわゆるそうした非行を起こした子供たちの矯正に携わっている施設に見学に行く、参観に行くといいましょうか、そういうふうに文部省はお考えいただけないのだろうかと思いますが。
  294. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど来三浦さんのいろいろなお話を承っておりまして、私もきわめて同感であります。と言いますのは、いま最初にお話がありましたが、非行云々というのは、初期に芽を摘むといいますか、矯正するというのが一番大事だと言いますけれども、どうもそういう点が、しばしば過去にも出ましたように、親もそれを余り問題にしない、学校の先生も余り問題にしないということでだんだん深みに入っていくという場合が多い。少年院とか少年鑑別所のお話がありましたが、少年院あたりの職員と申しますか指導者、問題は愛情と情熱、どうしても一遍非行に走った、あるいは刑法を犯した、こういう者を自分の愛情と力で直そう、こういう情熱が非常に強い方が多い。私は学校の先生にはそれが、全部というとおしかりを受けるかもしれませんけれども、非常に欠けておるような気がいたします。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕 やはりそういう非行に走るような少年は自制力が足りない。あるいは事の善悪を指導し、規律を守らせる、こういういろいろな指導がなければ、ただ口で言ったって矯正できるものではない。これは余談でありますけれども、私は全国の例の司法保護司連盟の会長をしておりますが、これは外部の司法保護司の皆さんも、本当に非行に走った刑余の人、こういう人をいわゆる真人間にしよう、一つのボランティアでございますけれども、こういうことで精力を尽くしている。こういう事例があるのです。非行少年が麻薬、覚せい剤使用に走って、これがいろいろ少年院や鑑別所で指導されて、そして出てきて、それがなかなかやまない。そこでこれを預っておる保護司の相当年配の方ですけれども、これは何とか直して覚せい剤から遠のけなければならない。どういうことをやったかというと、これはたばこの非常に好きな方なのです、もう何十年もたばこを吸っている。自分はおまえのためにいままで吸ってきたたばこをやめるから、おまえも覚せい剤をやめろ。最初はなかなか聞かなかったそうですけれども、真剣さと愛情が移って、結局覚せい剤をやめる、真っすぐな人間になった。これは事実の話でございますが、私は、非行少年、校内暴力というのは、もし先生方が本当にこの子を真っすぐにしなければならぬという愛情と情熱があれば相当効果があるのではないかと思います。でありますから、先ほど初中局長、余り連絡がないという話がございますが、全部の学校の先生が見学するというのは事実上不可能でありますけれども、現に非行に陥っている子供をできるだけまともな人間に仕立てようとしている、そういう姿を、できるだけ連絡しながら研究してもらうようにしたいと思います。
  295. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 教員研修のあり方として、職務研修に少年院等の参観を加えてほしいということ、いまの先生方の人数と行かれる場所との関係が確かにございます。しかし可能な限り行っていただきたい。しないよりも行っていただければかなり違ってくると思いますので、ぜひお願いしたい。それを大臣ではなくて、ひとつお答えをいただきたい。
  296. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 教員研修の中でいろいろ工夫をしておりますが、いまの少年鑑別所あるいは少年院等の状況を見学するということも、特に校内暴力等が問題となっている昨今におきましては、一つの研修のあり方かなというふうに思います。私どもといたしましても、文部省が行っておりますところの生徒指導講座の中におきましては、少年院とか教護院とか、そういうものの措置につきましては取り上げるような指導をしておるわけでございますので、今後ともそのような見地をも含めまして、都道府県教育委員会が研修を行う場合に、そういう観点も含めて研修計画の中に考えるように指導をしたいというふうに思います。
  297. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いままで少年非行に対する問題として、いま言ったように少年院その他いわゆる法務省管轄における矯正教育というものが比較的日が当たらなかった。これからはひとつ大いに日を当てて、より充実したものとして学校教育と連携プレーを密にしまして、相乗効果としてよりよいものを生み出していただければありがたいというふうに思います。  時間ですので、本来そうしたことと関連して教員養成の問題点その他もう少しお話ししたかったのですが、次回に譲らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  298. 葉梨信行

  299. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、この委員会で一緒に質疑応答してきた相手でございますから、この質問は私にとりましても余り愉快でない質問でございますけれども、文部省の前管理局長の柳川覺治氏のことにつきまして質問をしておきたいと思います。  柳川さんは、現在、参議院の比例代表選挙区の予定候補者として選挙運動を展開しておられます。特に管理局長であった肩書きをフルに活用しまして、管理局管轄下にある約三十の団体、業界挙げてのいわゆるぐるみ選挙を進めておると言われまして、そのやり方にかなり批判が出ております。そしてこの国会でも取り上げられてきたわけでございますが、この問題について、最初にこの選挙運動に文部省としては関与していることはないと断言できますでしょうか、伺っておきたいのであります。
  300. 高石邦男

    ○高石政府委員 その動きについては、全く関係しておりません。
  301. 山原健二郎

    ○山原委員 今度の参議院全国区が比例代表制という制度に変わりましたために、党の入党勧誘工作というのが非常に激しくなっておるわけです。それが入党勧告が直接選挙につながるということで、非常にすさまじい形態をとっているわけですが、共通したやり方として、各団体、業界が上から下へ資料を配付しておるわけです。  たとえば、ここへ持ってきておりますが、こういう資料が文部省管轄下の団体に配られているわけです。この中にはもちろんこういう入党申込書が幾つか入りまして、それから柳川さんの写真入りのこういう資料、さらには党費納入の振込依頼書だと思いますが、そういうものが入っております。その中で、一例を挙げますと、たとえば全国専修学校各種学校総連合会というのがございますけれども、それが一月十七日に文書を出しておられるのです。これは新聞によりますと、事前運動のおそれがあると書いておる新聞もあるわけです。それからまた、二、三日前の参議院の決算委員会におきましても藤波官房副長官が、事実とすれば遺憾であるということを述べておられます。特定の候補、特定の政党への支持勧誘を組織ぐるみでやるというのは問題ではないかと思うのですが、この点自治省に聞きたいのです。たとえばこの文書によりますと、「柳川覚治先生の参院選応援のお願い」ということで、全国専修学校各種学校総連合会の会長の大沼淳さんから各会員校理事長、学校長に対して一月十七日に出されておりますが、これは柳川さんのことにつきまして「先生には昨年七月文部省の管理局長を退任されるまで、専修学校・各種学校の振興のため、言いつくせぬご配意とご指導を賜わりました。また省内でも私学出身の異色の局長として、広く私学関係者から親しまれてきました。」ということから、「ここに柳川事務所からの入党勧誘書類が同封されておりますが、事情ご了察の上、会員の皆様並びにご家族、職員の方々はじめ学校関係者、取引先など、ぜひ入党勧誘にご尽力賜わりたく存じます。」ということで、「教育界では入党という問題は大変難しく、抵抗感もあるかと思いますが、以上申し述べました経緯から、これが選挙応援に必要な条件であることをご理解いただき、ご協力賜わりますよう重ねてお願い申し上げます。」ということで、柳川先生の参議院選挙応援のため入党が必要であるというこの文書が流されているわけですね。自治省、これは全く問題のない文書だというふうに判断をしておりますか。
  302. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 ただいま御指摘のありました文書の内容を実は私ども詳細に存じ上げておらないわけでございますけれども、一般の党員獲得運動につきまして文書を出されることは、選挙に関する事前の運動ではないというふうに考えておるわけでございます。選挙に関連する文言が入っておりましても、その文書の配られる態様、時期あるいは範囲、そういうようなものを総合的に判断しなければ、それが公職選挙法に抵触するかどうかは断定できない、このように考えております。
  303. 山原健二郎

    ○山原委員 私もここでこれが選挙違反であるかどうかということを煮詰めるほど知識は持っておりません。だからお聞きしておきたいのですけれども、いまおっしゃったように入党勧告という政治活動という範疇ならば、どこでもやられることだと思いますね。ただ、これは名前が入っておりまして、「柳川覚治先生の参院選応援のお願い」ということでございまして、こういうかっこうになっておるわけですね。まさに単なる入党勧告、勧誘ではなくて、柳川先生の参議院選挙応援のためにこの入党というのが必要になってきたのだからお願いする、こういうのが上から下まで系列を通して流れるということは、果たして私はいまの自治省のお考えだけで了承できるものかどうか、もう一回伺っておきますが、いかがですか。文書を見ていただいてもいいですよ。
  304. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 選挙に関連をいたしましていろいろな準備があるわけでございまして、その準備に関係して関係者の間で文書が出されるということがあるわけでございますが、そういう場合、必ずしもそれが一般の有権者に対して広く大量に出されたものでありません場合は許される場合もございますし、先ほど申し上げましたとおり文書の文言だけではなくて、その文書が配られる対象、範囲そういうようなものを総合して判断しなければ断定できないか、このように考えております。
  305. 山原健二郎

    ○山原委員 もうちょっと具体的な資料ですが、これは学校法人関係してまいります日本電子工学院の場合ですけれども、日本電子工学院の理事長の片柳さんから「全職員講師各位」、こういう文書が一月二十七日に出ております。電子工学院は専修学校でございますが、「文部省前管理局長柳川覚治先生の参議院選支援のお願いの件」、こうなっておりまして、その中に、この電子工学院は「本年は仮称東京工科大学の計画推進に当たり、諸問題を克服していかねばならない大切な年であり、ことに文部省関係の認可申請業務については広く各方面のご協力を得て、目的達成できるよう万全を期して進めたいと考えており、各位に対して万般のご協力をお願いする次第です。さて、本年はまた参議院選挙の年でありますが、」と、こうなってきまして、「柳川覚治先生が昨年七月退官されて、」今回「自民党公認候補として立候補されます。」、こういうふうになっておるわけです。そしてこの認可の問題につきましても、「先生に多大の期待をお寄せ致しており、先生が国政の場でご活躍されることを心から念願しております。」ということから、そこから「各位ならびに奥様のお二人のご入党並びにご親族へのお声掛けをしていただきたくよろしくお願い申しあげます。」ということから、「記」となりまして、記の最後に、学校法人日本電子工学院総務部の村瀬鉄夫さんという名前が出てくるわけです。そうしますと、これは学校の中に柳川さんの後援会をつくってやっておるということではなくて、これは総務部に入党届その他を出すということで、学校の組織そのものが選挙運動をやっておるというふうに理解できるのじゃないかと思いますが、これはどうですか。
  306. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 ただいま拝読いたしました文書、いまお聞きしたばかりでございまして、その文書自体についてとかくのことは申し上げる立場ではないと思うわけでございます。先ほど来繰り返しておりますけれども、事前運動になるという問題は、特定の選挙に特定の候補者あるいは比例代表選挙の場合におきましては特定の政党のために投票依頼をするような行為でございまして、ただいま先生の方からお聞きしました範囲では、最終的には入党勧誘ということでございますので、それが主体だとすれば、文言の上からも直ちに選挙の規定に触れるということには必ずしもなりませんし、それから問題はその対象の範囲でございますけれども、それにつきましても、いま職員講師というようなお話もございましたけれども、どの程度の範囲になるのか、その辺のことも十分に総合的に判断をしなければならないか、このように思うわけでございます。
  307. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省に伺いますが、理事長さんがこういう文書を全職員講師各位に出されるわけですね。そして理事長さんが部課長会議を開きまして、党費は学校が払いますということを、事実そういうふうにやっておられます。それで、党費を学校が払いますというようなことがもしあるとするならば、これはまさに不可解千万なことでございますが、もしそういうことがあればどうなんですか。それも結構ですか。
  308. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 党費の立てかえといいますか、党費を学校がお払いになるということが一体どういう行為になるのかということでございます。学校が法人として党費をお払いになるということでしたら、それはまた法人として当然できる問題でございますし、職員にかわって立てかえて払うということでございましたならば、果たしてその職員と意思を通じて入党ということの行為とそれから党費を払うという行為が密接に関連して結びついておるかどうかというようなことも判断をしなければ、公職選挙法上のどの条項に触れる問題になるか、にわかには断定ができない、このように思うわけでございます。
  309. 山原健二郎

    ○山原委員 選挙課長ですからね、私は公職選挙法百九十九条の四、百九十九条の五、こことの関連でいま質問をしているわけですね。それと、もう一つは政治資金規正法の二十二条の二、寄附の限度の額の問題がございます。それから、もう一つは公職選挙法二百二十一条の利益誘導の問題、この三つの法律をいまここへ持っているのです。それで、それとの関連で質問しているわけですが、先へ進みたいと思います。  その後はちょっと文部省に聞きたいのですが、この学校は専修学校ですから、専修学校は学校教育法でも位置づけられております。そして国からの補助も受け、税制上の優遇措置も受けている点では公的な教育機関としての性格を持っています。たとえば補助金は研修費、教員の研修に対する補助、奨学金制、それから大型設備にも直接補助、これは五十八年度から専修学校に対しても行われるわけですね。それから、税の優遇は固定資産税に対する優遇あるいは地方税の優遇、ほとんど私立学校とは変わりなく行われているわけですが、そういう学校が特定の政党の党費を立てかえて払う、納付するというようなこと、これはだれが考えても異常なことですけれども、その点は文部省としてはどうお考えになりますか。
  310. 高石邦男

    ○高石政府委員 具体的内容について承知しておりませんので、いま具体的問題についてここですぐお答えすることはできないわけでございます。  ただ、お話のありましたように私立学校は一般的に経常費まで国の補助金の対象になっておりますが、専修学校はいま御指摘になったような特定の事項についての補助制度があるということでございます。したがいまして、専修学校の経営に必要ないろいろな事業活動の経費その他が合法的な手続によって処理されている限りにおいて、それは問題ないと思うわけでございまして、法令に違反しない限りにおいて、専修学校の出費がどういう形で行われるかということを国の立場でとやかく申し上げる筋合いのものではないと思うわけでございます。
  311. 山原健二郎

    ○山原委員 不思議なことなんですね。国が補助金も出しておりますし、税制上の優遇措置もしているし、そういう学校が特定の政党の党費を払います、これはやはり党員になった方が払うべきでしょう。党員に名前だけ出せば学校が払います、それだって金額は百五十万以上してはならぬという政治資金規正法の規定がありますから。それも九百人という数字も出ていますが、党費三千円で二百七十万ですか、百五十万以上してはならぬという政治資金規正法の規定もちゃんとあるわけですね。その規定のこともありますけれども、しかし専修学校としてこれから先だんだん整備をしていく、この場合は私は利益誘導じゃないかと思うのです。いわゆる大学へ申請する段階ですからね。認可、許可権を持っているのは文部省ですからね。  そんなことを考えますと、この方に出ていただいて認可申請をやっていただくのだというようなことになってきますと、これは選挙も全くめちゃくちゃになってきますよ。だから国会の中でも各党ともこれをずいぶん問題にしているわけですが、これは文部省としても襟を正すべきところは正さなければならぬという意味で、私は、特に教育に携わる行政府でございますから、そのことを言っているのです。  また後で繰り返すかもしれませんが、もう一つの問題は、党費を後援会が立てかえるということですね。これは自治省どうですか。党費を後援会が立てかえるということはできますか。
  312. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 後援会が党費を立てかえるという問題でございますが、関連の条文といたしましては、先生が先ほど一部お挙げになりましたけれども、公職選挙法の百九十九条の三あるいは百九十九条の四あるいは百九十九条の五、こういう規定があるわけでございます。いずれも寄附の禁止、後援団体が寄附をすることについての禁止の規定でございますけれども、一体党費の立てかえということが寄附に当たるかどうかというところがなかなか事実認定を要する問題でございまして、全く選挙人が意識をしない、認識をしないで一括して立てかえられたのかどうか、そこのところは確かに三千円なら三千円の党費分を、自分が本来払わなければいけないところを立てかえてもらったという利益があったというその認識があるかどうかというような問題も判断をしなければなりません。  それからなおかつ、後援団体は一切いけないということではございませんで、候補者または候補者になろうとする者が構成員または役職員になっておるような後援団体、それが候補者の名前を表示するような方法でやってはいけないとか、あるいは百九十九条の四でございますと後援団体が候補者の氏名を類推させるような団体はやってはいけないということになっておるわけでございまして、党費の立てかえの性格自体がいろいろ問題がございますけれども、後援団体が党費の立てかえをやったことが直ちにすべて公職選挙法に触れるかどうかは、いま申し上げましたようなことも含めていろいろ判断をしなければならないだろう、このように考えております。
  313. 山原健二郎

    ○山原委員 これは自治省、その点、おつしゃる点はよくわかりますが、これは全国図書教材販売協議会の専務理事の清水厚実さんから出されている「都道府県図書教材販売協会会員各位」、この文書です。これは一月十日に出されていますが、「業界の恒久的基盤固めをするための学校教材法制定促進について」、これは法律促進です。そのサブタイトルが「文部省前管理局長の参院選応援についてのお願い」というのが出てくるのです。この中にいまおっしゃったことがひっかかってくるわけですよ。これはちょっと読み上げてみますと、社団法人の申請をしたとき文部省におられた柳川さんがずいぶんお世話をしたということが書いてありますが、党費の問題ですね。「柳川先生は新人の中でも最有力候補の一人でありますので、業界としても挙げて応援し、かねてからの懸案である「学校教材法」の制定を促進し、業界の恒久的な基盤固めを図らなければならないと考えております。つきましては、ここに入党申込書を同封送付いたしますので事情ご了察の上、会員の皆様ならびに奥様の二人がぜひ入党していただき、柳川先生の当選にご尽力下さいますようお願いいたします。入党申込書とともに会費も納入することになっていますが、会費については当方」、「当方」は括孤しまして柳川後援会、明確に出ています。「(柳川後援会)で一切納入することにしておりますので、別紙入党申込書に氏名、印、性別、生年月日、職業、郵便番号、住所、電話番号のみを記入し、同封封筒により」、こうなっている。氏名、住所のみを書きなさい。党費は当方柳川後援会で払います。ここまで来るとこれは文書としても大変で、いまおっしゃったように特定の個人が推定できる。推定どころじゃありません。柳川後援会、柳川覚治さんの選挙応援のために、党費は当方柳川後援会が払います。いまおっしゃった自治省の解釈から言いましても、これは私は一番問題のあるところだと思いますが、これも何か解釈のしようによって違いが出てきますか。
  314. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 確かに柳川後援会ということで、はっきり後援会の名前が候補者になろうとする方の名前と同じでございますと、百九十九条の四に規定いたしております、公職の候補者となろうとする者の氏名が表示されまたはその氏名が類推されるような名称が表示されている団体になろうかと思います。なろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますが、党費の立てかえということが即選挙に関する寄附ということになるかどうかというところは、単に一般的な政治活動の延長としての入党、加入及びその党費の立てかえということでございましたら政治活動として許される面があるわけでございます。選挙に関するかどうかというところがもう一つ判断を要する点ではなかろうか、このように思っておるわけでございます。
  315. 山原健二郎

    ○山原委員 私はここで人を陥れるために言っているのではないのですけれども、明確に表題からしまして柳川さんの参議院選挙応援のためにという文書の中で、入党してください、それが選挙に直接関係があるのです、この党費については当方柳川後援会が納入いたします、だからあなたの方は名前、住所その他のみ、「のみ」ですよ、ほかは要らぬというのですから、ちょっとあなたのおっしゃることは理解できませんけれども。どんなに考えたってこれは明らかに違反文書ですよ。公選法百九十九条違反ですよ。こういうのは注意しなければいけませんね。だから問題になるわけでして、高級官僚がおやめになって選挙に出ることだってあり得ると思いますけれども、ここまで来て系列化、しかもお役人をしておったときの地位を半ば利用して、そして有無を言わせぬのですよ、理事長が学校の職員に対して出されたらね。奥さんと二人で入れと言われたら、思想の自由も何もないですわ、雇われている人たちですから。これはまさにぐるみ選挙ということになるわけですから。また選挙を目の前にしていますので、もっとこれが激しくなってくる可能性があるわけで、これは文部省としては襟を正して――文部省をおやめになった方ですから責任はないとおっしゃるかもしれませんけれども、何と言っても長年にわたって文部省におられて教育行政に携わってきた人ですから、火のないところに煙は出ないというが、うわさであってもやはりそれについては文部省内で、また政治家としての文部大臣は注意する必要があると私は思うのです。  さらにもっと率直に言いますと、これはうわさだから明確に言えませんけれども、文部省の管理局の中で審議官が選対部長を努めて指揮をとっているといううわさも、政治家はみんな知っています。そこまで来ると文部省というのは一体何かという疑問が出てくるわけでございまして、それが事実であるとするならば、公務員地位利用を初め重大な違法行為であるわけでございますから、そういう点では火のないところに煙は立たないということわざもありますので、明確にこうした事実はないと言い切れるのかどうか。断言できるのか。また、一律に部課長以上は幾らカンパせよなどというようなことが来ているわけでしょう。そんなことをやっているわけですからね。そういうことについては文部省としては襟を正してほしいと思うのです。先に高石さんの方から、どういうお考えか明らかにしてもらいたい。
  316. 高石邦男

    ○高石政府委員 文部省内にそういう選対みたいな組織は全くつくっておりませんし、そういう責任者もいないわけでございます。ただ、柳川さんが文部省に長くいたということから、励ます会というような形でいろいろな行事が行われる際には、文部省にいた同僚諸君が自主的に積極的にお祝いをするということは当然あり得ることでございまして、それは組織の系列でどうこうすべき筋合いのものでないわけでございます。
  317. 山原健二郎

    ○山原委員 自治省にもう一回、時間がありませんけれども伺っておきたいのですが、おっしゃったところ、百九十九条の四ですけれども、「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような名称が表示されている会社その他の法人又は団体は、」とずっと出て、「いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。」、こういうことが明確にあるわけですから、この点は本当に注意してもらわないと困ります。文部大臣、どうでしょうかね。私はいま一連の選挙運動のことに関して言ったわけですが、私は、公務員であろうと政治活動は自由、選挙活動だって自由だと思っていますけれども、しかし、こういう形で人の思想、信条を無視するような、また上部団体、権力機構から、言うならば下の職員その他に対してこういう形の押しつけ、それからまた、党費についてはこちらで払うというふうな不正常な姿ですね。選挙というのは全く公明正大でかつ正々堂々としなければならぬものですが、そういう点では、文部大臣法律の専門家でもありますし、それからまた政治家としての判断として、正しくなければ正しくない、好ましくなければ好ましくない、文部省としては襟を正すということをこの場所で言えるかどうか、最後に伺ってみたいのです。
  318. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 かつて文部省に勤務しておりました柳川覚治君、御承知のとおり昨年七月やめておるわけでございますが、柳川君が参議院選挙に関連してとかくの行動をしておるようなことを参議院の決算委員会でもお尋ねがありました。従来新聞等にも出ておりましたから事務当局に事情を聞いてみますると、先ほど官房長がお話し申し上げましたように、当然にこれは公務員でありますから世間の信頼を失うようなことは断じてやらないという方針で、また、文部省管下の各機関にも――総理府副長官もそういう通達を諸官庁、全公務員に出しております。文部省文部省として官房長が出して指導しておることでございます。いまいろいろお話がありましたが、つまびらかには承知しておりませんけれども、やはり従来の柳川君の業績等をできるだけ理解してもらおうということで、知人とか法人等がいろいろ内容を書いたものでいわゆる広報宣伝等をやっておるのじゃないかと思いますが、これは政治活動としてやれる部面もあるわけでございますけれども、しかし、いまもお話がありましたように、事文部省に関することでございますから、世間の誤解を受けるようなことのないように、指弾を受けるようなことのないように願っておるわけでございまして、柳川君と会ったことはありませんけれども、もし機会がありましたら、柳川君自身がやったとは思いませんが、従来の知人などが応援をする意味でやっておられると思いますが、本人にはそういうことのないように私からも注意をしたい、かように考えております。
  319. 山原健二郎

    ○山原委員 では、この問題は終わります。  次に、防衛庁教育課長おいでくださっていますが、いわゆる国費派遣自衛官だと思いますが、大学並びに大学院にどの程度毎年入学をしておりますか、それから、どういう目的をもって派遣をしておりますか、あるいはどの大学に対して、また大学のどの研究科に対して入っておりますか、これについてお答えできますでしょうか。
  320. 平林和男

    ○平林説明員 防衛庁では昭和三十二年度から、自衛官を職務の必要によりまして国内の大学及び大学院に派遣をしております。年度の在籍状況を申し上げますと、昭和五十七年度は大学院に三十八名、大学に四十六名、計八十四名でございます。ちなみに五十六年度を申し上げますと、大学院に三十四名、大学に五十八名、計九十二名ということになっております。  なお、派遣先の大学あるいは研究内容、研修内容につきましては、先方の同意も得ていないということ、それから、これを明らかにいたしますことによりまして過去において派遣先に大きな迷惑をかけたということもございます。それから、結果的に防衛庁におきましても、そこの派遣先大学に自衛官を派遣できなくなったという苦い経験もございますので、公表は差し控えさせていただきたいと思います。
  321. 山原健二郎

    ○山原委員 日本の大学というのは戦後、大学の自治、学問の自由ということを原則にして出発をしてまいっておるわけですね。そして、大学研究というのは平和の目的のために使われるというのが憲法、教育基本法のたてまえでございまして、そこへ自衛官が国費をもって派遣をされて入ってくる、しかもどの大学へ入っておるか、どういう科目へ入っておるか全く公表されないということでは、私は逆にむしろなぜ公表できないのかという疑問が出てくると思うのです。  なぜ私はこんなことを言うかというと、この前、兵庫教育大学をつくりますときにも、これは教員の経験のある人を大学院に入れるという問題で、その資格はどうなのか、あるいは地方教育委員会の添え状といいますか申請状をどうしたら取れるか、大学入試の資格はどうか、試験はどうかと物すごい問題になったのですね。大学あるいは大学院の問題については、入試の問題、入学定員の問題それから入試資格の問題、そういったことが問題になるわけですが、これはいまお答えになれないということで、私も予算委員会で資料要求をしましたが、そこだけは出てこないのですね。  ちょっと伺っておきますが、これは大学の定員の枠外で入っておるのでしょうか、あるいはまた入試はどういうふうになっているのでしょうか。そこらはどんなふうにお考えになっておりますか。
  322. 平林和男

    ○平林説明員 私どもは正規の大学入試の手続を経まして入学をさせているところでございます。
  323. 山原健二郎

    ○山原委員 防衛庁としての業務命令を出してやられておるのですね、国費で派遣する場合は。
  324. 平林和男

    ○平林説明員 どこどこ大学において研修を命ずるという人事発令を出しております。
  325. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、きょうは時間がありませんからこれ以上申し上げることはないのですが、大学の性格からいって、しかもどの大学ヘ――国費で入っているわけですからね。どういう研究テーマで入っているということなどは私は発表してもいいのじゃないかと思うのですよ。防衛庁のやられることは、率直に言ってむしろ戦術、戦略、その他の問題に関係する戦争との関係になってきますからね。だから、そういう点では、発表できないということはむしろ疑惑を残しますし、また大学の性格も変わってくる。国費で派遣されておる、しかも業務命令で派遣されておる自衛官にとりましては、二十四時間、四十八時間防衛庁の管轄下にあるわけですからね。  この前の兵庫教育大学のときにも、地方公務員で学校の先生をやっておって、何年間かやられて大学へ入る場合に、その人の資格の問題がここでずいぶん問題になったのですね。大学というのはそれだけのものなんです。だから公務員は、たとえばストライキのときにはやるのかどうかとかいうような問題まで出たわけです。それはしかし、法律的にそういう制度ができましたから公開でここで論議ができたのですけれども、いまあなたのおっしゃる自衛官の国費派遣というのは中身がわからぬものですから、どこへ何人派遣されておるのか、あるいはむしろ入学というよりも防衛庁の派遣研究生ということになるわけですから、どういう教科を研究されておるのか、あるいは大学における研究の成果はどういうふうに使われるのかというようなことになってきますと、これは問題が中に相当介在しておると私は思います。その自衛官個人の問題ではなくて、大学の制度の問題としてこれは検討する必要があると思いますね。  大学局長おいでになりますか。文部省はこういう事実を知っていますか。――大学局長はさっきおられたと思って尋ねたのですけれども、大学の定数問題ですね。私学の問題でさえ、ここではうるさくその定数問題、水増し問題なんか出てくる。ましていわんや国立大学でしょう。国立大学における定数問題というのは、それは大変なことですね。教授の配置の問題にしましても研究科目の問題にしましてもオープンで討議できる要素があるのですが、この場合は討議できない。だから、防衛庁はそういう要求で、業務命令でどこそこの大学へ、大学院三十八名とおっしゃったのですが、これは私費で行っておる方は数千名おられるわけですからね、私の言っているのは私費で行っておられる人のことじゃなくて、防衛庁の命令で行っておる人のことについては秘密にすべきものではないと思います。しかし、文教委員会でそれ以上詰めることはできませんのでこの程度でおきたいと思いますが、私は率直に言って公表してもらいたいと思うのです。そのことがむしろいろいろな憶測を解消することになると思いますので、その点最後にお伺いして、防衛庁お帰りいただいて結構です。いかがですか。
  326. 平林和男

    ○平林説明員 先ほど申し上げましたように、かつて大学名を公表したことがあるわけでございますが、結果的には公表しました大学のほとんどが、その後自衛官を受け入れなくなっておるという私ども大変苦い経験をいたしておりますので、何度も申し上げて申しわけございませんけれども、その辺のことにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。
  327. 山原健二郎

    ○山原委員 国と国との関係文部省政府機関、防衛庁も政府機関ですから、その辺は公然と話し合っていいような気が私はしますけれども、いまのこの段階ではそういうお答えですから、これ以上は進みませんので結構です。どうもありがとうございました。  次に、障害児教育の問題でお尋ねをしたいのですが、いま障害児、特に重度の身体障害者の施設の場合、教職員の健康管理の問題ですが、腰痛あるいは女子職員における妊娠異常が非常に多くなっておるわけでございます。それから寄宿舎の定数の問題、定数をふやしたらいいのじゃないかということ、あるいはその公務災害の認定をもっとスムーズにやってもらいたいというような問題が当然起こっております。これは長年の要求でもございますし、事実どこへ行きましても大変な事態だと思っているのです。それから勤務改善の問題、これなども当然検討しなければならぬ問題だと思うのです。みんな子供さんを抱えておりますから、抱えて移動をする。それに対してたとえばエレベーターをつけるとか、あるいは傾斜のついたスロープの、車が行けるような状態をつくるとかいう施設の充実の問題もあります。  文部省としまして、こういう腰痛あるいは妊娠異常というような問題について、これが多くなっておることはお感じになっておると思いますが、いつか何年か前でございましたが文部省の方へお尋ねしましたら、たしかこれは調査されるというふうなお答えもあったのです。けれども確認をしておりませんから、何となくそれが不確かなんですが、この点ぜひ調査をしてもらいたいと私は思います。調査をしなければその対策も出てきませんので。厚生省の場合は、一九七五年に「重症心身障害児施策における腰痛の予防について」という通達を出しています。その点では厚生省の方が文部省より一歩進んでいるのではないかと思いますが、いやそうではない、文部省は進んでおるというのだったら、その進んだところを聞かせていただきたいのですが、いかがですか。
  328. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教職員の疾病の問題につきまして、その実態関係を把握するためには職員の健康診断が行われておりまして、これは学校保健法に基づき学校の設置者が毎学年六月末までに健康診断を実施することになっておることは先生も御承知のとおりでございます。  ただ、その健康診断の項目につきましては法に基づく省令の規定がございまして、原則的には身長、体重、視力、色盲、聴力、結核の有無、血圧、尿というような事項が挙がっておりまして、御指摘のような腰痛その他の特別の疾病については健康診断の事項に挙がっていないわけでございます。そういたしますと、養護学校の場合都道府県が多いわけでございますが、設置者が設置者としての判断に基づいて特別の疾病について調査をし、あるいは診断をしてその実態を把握する、こういうふうになるわけでございます。  その経緯からいいまして、先生指摘のどういうふうな実態を把握しておるかという点に入るわけでございますが、文部省として把握しております数字といたしましては、昭和五十四年に学校保健課の方で調べた調査がございます。これは二十六都道府県についての数字が挙がっておりまして、この数字の内容としましては、腰痛、頸腕症候群、膀胱炎、腎臓炎、この四種目についてやっておるわけでございますが、腰痛については四・七%、頸腕症候群については一・〇%、膀胱炎については〇・四%、腎臓炎については〇・一%という数字が挙がっておるわけでございます。  その後といたしまして、昨年でございますから昭和五十七年の十月でございますけれども、もう一つサンプルで調査をいたしております。腰痛だけについて昨年サンプルで五県ばかり調査をいたしておりますが、県によって大分数字の差がございますけれども、一・〇%から一・六%の腰痛というふうな数字が挙がっておるわけでございます。二十六都道府県の調査によりますと四・七%でございますが、たまたま五県調べた昨年の例では、三・六%という数字もございますが、若干全体的には少ない数字でございます。  これをもって、数字が少なくなっているがゆえに腰痛が減っているというふうに即断するわけにもまいりませんし、これらの点につきましては設置者の方でのいろいろな措置なり健康診断等の実情があるわけでございますので、私どもも機会に応じましてこれらの点について都道府県の設置者の、たとえば体育保健課長等との協議の際実情をいろいろと聞いて、方向をつかんでまいりたいというふうに考える次第でございます。
  329. 山原健二郎

    ○山原委員 これは東京都の例ですけれども、教員組合などがやっておる調査もあるようですが、四人に一人腰痛とか、女子職員の場合は五人に一人異常妊娠とかいうような数字が出ております。これはやはり組合のみに任してやるべきではなくて、行政府としてきちっと資料、トータルを握って、それに対する対策を立てていく必要があるのではないかと思います。そういう点ではこれはどなたも反対するものはないわけですよね。できる限りのことは一つ一つやっていくという意味でぜひ――いま健康診断と言ったが、いま私は腰痛を取り上げたのですが、現実に学校へ行ってみますと非常に多くなっているのですよね。そういう点では特別な配慮をいただきたいと思いますが、よろしいですかね。
  330. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教職員に関する疾病が発見された場合には、学校保健法の規定に基づきまして、先生御案内のとおり事後措置といたしまして、その結果を総合いたしまして職員の職務内容、勤務の強度等を考慮しまして、いろいろな面での配慮が行われるようなことになっております。これは設置者として、服務の監督者としての当然の措置でございまして、そういう疾病とその勤務との関係についての配慮ということが個別のケースに応じて行われるわけでございます。文部省として、その個別の症例ごとに指導するということは、非常にケースも多いわけでございますし、なかなか困難な面があると思うわけでございますが、腰痛その他最近多くなっているではないかという御指摘ケースにつきましては、一般的な問題として設置者の注意を喚起するということについては努めてまいりたいというふうに思う次第でございます。
  331. 山原健二郎

    ○山原委員 十分満足するわけではありませんが、厚生省の場合腰痛に関して特別通達を出している面もあります。だから、その点よろしくお願いします。  それから最後に、これは文部大臣お尋ねしたいのですが、例の四十人学級の問題です。  これは大臣も腹を決めておられると私は思いますけれども、いわゆる赤字国債からの脱却の特例期間ですね、五十九年度までこれが凍結をされております。けれども、現在の非行や暴力問題から考えまして、四十人学級というのはもっと早くすべき事態を迎えたのではないかというふうに思うのです。大体過密学級における事故が多いわけでございますから、これを手前にやるということと同時に、五十九年度赤字国債からの脱却ということは不可能な事態を迎えたということも言えると思います、来年ですから。そういう場合に、特例期間ということでまたこれを引き延ばすなどということが起こったら、これはもういままでの国会における答弁その他から見ましても大変なことになるわけですが、まかり間違ってもいま文部省が立てました十二年の六十年からの実施、その問題について文部大臣はいまどういうお考えでおりますか。しかも、この問題、年次がかかるわけです。そうしますと、文部大臣の任期中にすべてできるわけではありませんので、この点は瀬戸山文部大臣としては絶対にやるのだ、そして次の文部大臣に対しても必ずやらせてみせるというそのことを私ははっきり聞いておきたいのですが、いかがでしょうか。
  332. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いわゆる四十人学級は、いまおっしゃるように六十六年度まで計画的に目的を達成しようということになっておりましたが、たまたま国の財政事情等の関係から、いまおっしゃったように五十七、八、九の三年間は、全部とめるというわけじゃございませんけれども計画を抑制しよう、こういうことになっておるわけで、これは法律でそうなっておるわけでございますから、残念ながらある程度の財政上の遠慮はしなければならない。しかし、いまおっしゃられるように学校教育はきわめて重視しているつもりでございますから、六十六年度までという計画そのものを延ばしたわけじゃありませんので、後に多少しわ寄せが来るかっこうになりますけれども、全力を挙げてこの計画の達成を期したいというのが文部省の変わらざる決意でございます。
  333. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省としては、児童減の問題もありますし、それから財政状況もあるわけでございますが、これは本当を言えば大した金額でもないわけですよね。五十八年度は五十六億程度でしたから全く大した金額でもないのにこれが先送りになったというのは、本当にやりきれない思いがするわけで、むしろ四十人学級問題の引き延ばしというのは政治責任が問われるほどの問題だと思うのです。そういう意味で、むしろ国民の要求としては手前で解決していく。どこへ行っても非行、暴力問題が論議されておるときに、これだけが非行問題をなくする唯一のものではないとしても非常に大きなモメントを持っていることを考えますと、四十人学級の実現について文部省は恐らく計画を持っておると思いますが、計画を立てておりますか。十二年の先へ全部だんごにしてやるのじゃなくて、少なくとも六十年度からこれだけずつやるという計画はきちっと持っておられてそれをやる決意を持っておりますか。
  334. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 四十人学級の十二年計画につきましては、五十七年、五十八年、五十九年の三カ年におきます財政再建期間中は一応抑制するということによりまして、その都度予算によりましてやっているわけでございますが、しかしその中でも五十五年度から実施をいたしました分につきましては引き続き実施をしておりまして、わずかながらも前進をしているわけでございます。  今後の四十人学級計画の推進につきましては、これからの状況を財政再建期間が終わりました時点におきまして総合的に判断をして考えていかなければなりませんので、いまどのような計画を持っているかと言われましても明確にお答えすることはできないわけでございますけれども、大臣のお答えの趣旨もございますし、財政再建期間が終わりました暁には、できるだけ全体計画を変更しないでいくわけでございますから、予算の段階におきまして努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  335. 山原健二郎

    ○山原委員 できるだけという言葉ですけれども、これ以上延ばすなんということになりますと、もう本当に政治責任の問題になると私は思います。そういう意味で、相当な決意でやらないと、また赤字国債の脱却が延びた――もう延びることは必至ですから、そうすると特例期間だということでまた延びるということになったら、現在の文部省は本当に責任を問われると思いますので、その点は決意を固めてやってもらいたいと思います。  それからもう一つ、マンモス校の校舎の分離の問題ですね。ちらっと新聞で見ましたが、文部省としては実態調査をやられているようでございます。これはどこの都市へ行きましても校舎は分離しなければならぬという状況へ来ているわけですね。その校舎分離について、人口急増地の指定を受けていないところでその分離の実態調査は、いつまでに大体結果が出るのでしょうか。そしてその結果に基づいてどういうことをお考えになっているのか。たとえば用地に対する補助の検討、そういったことも含めてやられているのかどうか伺いたいのです。
  336. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 大規模校解消の問題でございますけれども、かねてから文部省として努力してまいりました。特に補助採択に当たりましては、優先的にこれを採択するということを各都道府県にも明示をいたしまして対応してまいったわけでございまして、最近大体毎年三百校程度の新設が行われておるわけでございます。しかしながら、急増期にちょうどぶつかったというような事情もございまして、小学校関係は急増を過ぎたということで若干減少の傾向が出てまいりましたけれども、中学校についてはなお若干はふえそうな見込みもあるわけでございますので、この時点におきまして、この大規模校解消の問題に、急増対策もある段階までまいりましたので、本格的に考えてみたいというようなことで、現在その実態調査しておるわけでございまして、この調査の結果は大体五月中くらいにはまとめるべく考えておるところでございます。  なお、この調査の結果につきまして、その後の対策をどうするかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては、調査内容、どういうところにネックがあり、あるいはどういうテンポで解消が図られそうかといったあたりの状況全体を見ませんと、いまの段階でこういうことを考えているというところまで申し上げかねるわけでございますけれども、調査の結果を見た上で適切な対応を検討したい、こういうことでございます。
  337. 山原健二郎

    ○山原委員 必要ならば五十九年度の概算要求に出すということもあり得るわけですね。
  338. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 仮定の問題でございますので非常にお答えがしにくいわけでございますし、また現在のような財政状況でもございますので、端的にお答えすることは困難でございますけれども、解消のための適切な措置文部省としてはできるだけ努力をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  339. 山原健二郎

    ○山原委員 ありがとうございました。      ────◇─────
  340. 葉梨信行

    葉梨委員長 次に、石橋一弥君外三名提出商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。石橋一弥君。     ───────────── 商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  341. 石橋一弥

    石橋(一)議員 商業用レコード公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、商業用レコード公衆に有償で貸与する行為に関し、著作者、実演家及びレコード製作者の権利を定め、これらの者の複製権や録音権の保護に資することを目的とするものであります。  商業用レコードを販売価格よりはるかに安い価格で公衆に貸与することを業とするいわゆる貸しレコード業は、昭和五十五年六月ごろ東京三鷹に出現して以来、全国的に急速な普及を見て、現在では全国千六百店舗を超える状況にあると言われます。  その貸しレコードの利用者の多くが借りたレコードからテープに録音しているためにレコードの売り上げの減少を来し、著作者、実演家及びレコード製作者がその収入に影響を受けるという事態が生じるに至っています。  このような影響を放置する場合には、音楽文化創造のリサイクルを乱し、ひいては、わが国音楽文化の発展を妨げるのではないかということが懸念されます。  よって、商業用レコードに関して、著作者、実演家及びレコード製作者に新たな権利を設定し、その公正な行使により関係者の間における秩序の形成を図るということを考えたものであります。  以上が、本法律案提出した理由であります。  次に、本法律案内容について申し上げます。  第一は、商業用レコードに録音されている著作物、実演またはレコードの録音について複製権や録音権を持つ者は、新たに商業用レコード公衆への有償貸与についての許諾権を享有することといたしました。なお、商業用レコードに複製されているレコードのうち、著作権法第八条第三号に掲げるもの、すなわちレコード保護条約によりわが国が保護義務を負うレコードについては、このような許諾権は同条約の保護の内容とされていないので、これを許諾権の対象から除くこととしております。  第二は、そのような許諾権を設定した結果として、商業用レコード公衆に有償で貸与しようとする者は、商業用レコードが国内で最初に販売された日から一年を経過するまでの間は、これら許諾権を有する者の許諾を得なければならないことといたしました。  第三は、許諾を得ないで商業用レコード公衆への貸与を行った場合には、複製権や録音権を侵害する行為とみなして、著作権法上の民事救済及び罰則の規定を適用することといたしました。  第四は、この法律の施行期日は、実施の準備のための期間を考慮し、公布の日から起算して六月を経過した日から施行することといたしました。  第五は、経過措置として、この法律の施行前に国内で販売された商業用レコードについてはこの法律は適用しないことといたしました。  以上がこの法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  342. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  次回は、来る五月十一日午前九時五十分理事会、午前十時に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会