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1983-05-19 第98回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十九日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 土井たか子君    理事 青木 正久君 理事 狩野 明男君    理事 城地 豊司君 理事 武部  文君    理事 岡本 富夫君 理事 林  保夫君       小澤  潔君    吹田  愰君       五十嵐広三君    新村 勝雄君       長田 武士君    岩佐 恵美君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁調整         局審議官    横溝 雅夫君         経済企画庁国民         生活局長    大竹 宏繁君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君  委員外出席者         厚生省公衆衛生         局栄養課長   大澤  進君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 玉木  武君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         厚生省児童家庭         局母子衛生課長 尾崎  明君         農林水産省農蚕         園芸局総務課長 鈴木 一郎君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       海野 研一君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 土井たか子

    土井委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐広三君。
  3. 五十嵐広三

    五十嵐委員 ちょっとよくわからないものですから、まずお伺いしたいのですけれども電気料金あるいは電気料金だけでなくて公共料金全体の決め方にかかわることですが、つまりそれを決める基本になるコストのいわば期間概念というのですか、一体どの程度期間コストをとらえて料金を決めるべきか、ここら辺はなかなかむずかしい、しかもそのコストを論ずる上では決定的にまた大切な問題でもあろうと思うのです。一般的なことで結構ですが、ちょっと承りたい。
  4. 小川邦夫

    小川政府委員 電力料金を算定する場合に、将来コスト予測というものをするわけでございますが、基本的には、電気料金というものは余りアップ・ダウンする不安定な状態は望ましくないということから、ある程度中長期的な見通しに基づいて料金を決めるというのがまず基本になっておりまして、その考えから申しますと、三年ぐらいの見通しを行って、そのもとに料金前提となるコストを算出するということになっておるわけでございます。ただ、オイルショック後、燃料価格を初めとする原価要素が非常に激しく変動する状況になってまいりまして、近年は、電気事業審議会審議などを経まして、その審議の結果では、三年ということを原則とするが、そういう激しい変動状況下ではより短期間を積算の根拠にすることもやむを得ない、こういう扱いになっております。
  5. 五十嵐広三

    五十嵐委員 この前の電気料金改定は五十五年四月でしたね。ちょうど三年ばかりですね。一般的に検討すべき時期に来ている、あるいは燃料費などの流れから見ても一つの節目といいますか、そんな時期にも入っているようでありますが、そんな意味でそろそろ改定期に入ったというふうに一般的には考えていいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  6. 小川邦夫

    小川政府委員 料金改定というものが期間を区切って行うという形にはなっておりませんで、仕組みといたしましては、原則として、電力会社がみずからのコスト変動によって、料金収入コスト関係で著しく経理内容が変化した場合、たとえば料金値上げの場合には大幅赤字という見通しのもとに料金改定の申請をしてくるということがきっかけになりまして、料金改定が進められるわけでございます。そうでない場合には、特に定期的になるということでもございませんので、著しい原価要素の激変というときには、たとえば五十三年の円高差益還元というような形のケースもございます。  そういった時期であるのかどうかという情勢判断の問題につきましては、私どもは、いまは大臣指示のもとに、いろいろ電力会社コスト実態を勉強しろという指示を受けておりますので、現在勉強しておるところでございまして、改定する時期であるかどうかとか、そういった問題はまだこの時点で判断しておるわけではございません。
  7. 五十嵐広三

    五十嵐委員 しかし、あなたさきに答弁したように、大体三年ぐらい、中長期に考えるべきで、三年ぐらいが一般的かというお話はいましたばかりですね。ですから、一般的に言えば、まだ短いとか何だとかじゃなくて、検討すべき時期に入っている、しかも検討すべき基本的な変化要因がかなり出てきているという時期でありますから、そんな意味では、僕はそういう時期に入ったなというふうに思うわけであります。  それと、これはどういうことですかね、長期的に見るということになると、たとえば今回の場合のように、一バレル一ドルで一千億、五ドルというと五千億ぐらいか、概括的にそう言われているわけですね。そうすると、そんなような利益予想が立つ場合には、単年度ではもちろん利益になって出るわけですね。決算の上では利益になって、それは処分対象に出てくる。一部、配当になる、あるいは税金で納める。利益税金で納めればいいんでないかということかもしれないが、しかし、これは消費者にしてみると、下げるべき料金が下がらないで税金として持っていかれるということは、ある意味で間接的な増税を受けているのと同じ、そんな直接的なものではないけれども、しかし、料金として負担をしてそれが税金として納められていくということであれば、ある意味では、何かきわめて間接的なものではあるが、それだけ税を負担しているというような感じもないわけじゃない。もうそろそろ検討すべき時期にあるような気がするのです。  この折ですから、ついでにちょっとお聞きしますが、ヨーロッパなんかでは、たとえばイギリスだとかフランスだとかこういう諸国、あるいはアメリカでも一部の電力会社がやっているようでありますが、いわゆる燃料調整条項というのですか、いわゆる燃料費にスライドして料金を決める。これも一長一短あるなという感じはいたしますけれども、検討なんかをしておられますか、あるいはこれについての考え方はありますか。
  8. 小川邦夫

    小川政府委員 先生指摘のとおり、欧米では燃料スライド条項というものを導入しておるところがございまして、アメリカにも、多くの州で実施しておる、イギリスも、産業用のみでございますが実施しておる、ドイツも、産業用石炭、賃金にしぼってでございますが実施しておる、そういった実態、まさに御指摘のとおりでございます。  ただ、また一長一短という御指摘がございましたが、私どもも、オイルショックによって燃料価格が非常に激変することになりまして以来、当然そういった仕組み可能性ということは勉強したわけでございます。具体的に申し上げますと、昭和四十九年と五十四年の二回にわたって、電気事業審議会料金制度部会という場でこの燃料費調整条項採用可能性を実は審議していただいたわけでございます。  ところが、そこで検討していただいた結果、中間報告ということで報告されておりますけれども、幾つか問題点がございますが、ごくかいつまんで申し上げますと、一つには、こういった仕組みにしますと、燃料が動くことによって料金がほぼ自動的に変わるということでございますので、非常に頻繁に電気料金が変更される。これは先ほど、電気料金は中長期的に安定することが需要家側からも望ましいということをちょっと申し上げましたが、そういう考えがあるもとで頻繁に変更するというのは一つの問題であろうか。  それから次には、燃料は下がるばかりではございませんので、当然上がるときにもスライドしていく仕組みになるわけでございますが、特に燃料価格が上昇しますと料金も自動的に上がるという仕組みになりますと、そういった場合には、電力会社にしてみますと、燃料費の抑制をあえて無理してやらなくてもいいとか、代替エネルギーの開発を無理にやらなくてもいいというような傾向を生んでしまうところがございまして、こういう自動的に燃料費をすぐ転嫁できる仕組みにすることは、企業努力というものをある程度損なうんじゃないかという指摘もされておるわけでございます。  それから、制度技術的にも、一体何ドルが水準か、為替レートは何ぼが水準か、どの程度外れたら動かすか、非常に技術組み立て的にもむずかしい問題がある。そういう問題がいろいろあるので、必ずしも適当ではないんじゃないかという答申をいただいたわけです。  外国がやっておるのにどうしてという問題が残るわけでございますが、いろいろそういうことで外国を調べてみますと、趨勢としては、外国でもやや見直しの動き、つまり燃料費調整条項をむしろ限定するとか、フランスのようにやっておったものを廃止するというふうに、下がってきておる状況にございますものですから、そういうことも踏まえ、いまの審議会答申を踏まえますと、私どもも検討してみましたのですが、どうもこれを導入することは問題があるのかなというのが現時点考えでございます。
  9. 五十嵐広三

    五十嵐委員 一口に一バレル当たり五ドルで電力関係で五千億ぐらいコスト減になるかといま言われているわけですね。これは概括的な計算だろうと思いますけれども、五千億の根拠といいますか、皆さんがそういうふうにおっしゃっている大体の算定の基礎のようなものをちょっと知らせてください。
  10. 小川邦夫

    小川政府委員 原油が五ドル下がった場合に、電力収支上、燃料購入というところで五千億程度収支改善になるのではないかと言われておるわけでございますが、まず五千億になるのかどうかというのは、実は単純には言えないいろいろな要素がございます。五千億というのは、五ドル下がった場合に五千億と言われておるわけでございますが、その場合の前提としましては、まずいつから下がるか。  たとえば年度の途中から実際に電力が買う原油値段が下がるとすれば、これは年度全体での場合には、一ドル一千億という試算機械的計算として出ておりますが、それが縮まるはずでございます。十二カ月でございませんで、十カ月とか九カ月しか引き下げの効果が購入する油で効いておらなければその分は減る、そういうように一年間フルに下がっておるかどうかというような期間の問題。  それから、電力が購入する場合の原油という場合に、大半がC重油という形で購入しておりますが、C重油というのは、石油精製会社電力会社との値段交渉で決まるわけでございます。     〔委員長退席武部委員長代理着席〕 ということは、仮に産油国が五ドル下げたとしてもそれを実際に石油会社がとる値段が幾らか、そしてとったものを精製してC重油という形の石油製品にしまして、その石油製品精製会社が幾らで電力会社に売るか、こういうクッションが入りまして、しかもそれは値段交渉ということで決まるものですから、それがフルに五ドル相当反映されたという仮定をするというようなこと、それから為替レートがどうなるかということによっても全然数字がまた変わるとか、非常に変動要素があるという点はまず御注意いただく必要のある試算だと思います。  そこをあえて、燃料消費量の問題も、そういう為替とか転嫁の仕方の問題とかを割り切って機械的に計算すれば、確かに電力九社でございますと概括一ドル下がれば一千億程度、五ドルであれば五千億程度、それもフルイヤー、一年間フルに下がった場合にはという仮定でなるわけでございまして、その場合には、前提としては大体バレル当たり二十九ドル、三十四ドルが五ドル下がったという試算でやりました場合に、確かに、私ども機械的試算でも御指摘のような数字になると見ております。
  11. 五十嵐広三

    五十嵐委員 大体五十七年度の九電力トータル石油燃料費、これはどのぐらいになりますか。概括でいいです。
  12. 小川邦夫

    小川政府委員 まだ五十七年度決算がまとまってないわけでございますので、五十七年度数字は実は私どもも入手してないわけでございますが、数字のめどを持っていただく意味で、私どもの掌握している最新の数字という意味で五十六年度の九電力燃料費を調べましたら、三兆八千七百億円という数字になっております。それを軸にしまして五十七年度どういうふうになっているのだろうかということで、実はいま申し上げましたようにつかんでおりませんが、五十七年度為替レートが五十六年度との対比で円安ぎみに推移しておるものですから、したがって、燃料費としては五十六年度に比べて五十七年度は若干増加になっているのではないかというふうに考えております。
  13. 五十嵐広三

    五十嵐委員 大体四兆円、こう考えてみますか。そのぐらいか、あるいはそれよりもっと少ないのか、ちょっと上か、一口に約四兆円ぐらい。さっき部長さんがお述べになられましたように、きわめて機械的に考えてみて、三十四ドルが二十九ドルになった。五ドル安くなった。パーセンテージで言うと原油で約一五%くらいですか、そんなものですな。一五%。そうしたらその石油の分だけで約六千億ということにならないですか。かつ石油だけでなくて関連のものがあるわね。石炭輸入炭であるとかあるいはLNGであるとか、こういうようなものがやはり相当なものになるでしょう。これはどのぐらいになるかも教えてほしいと思いますがね。ちょっと何かおかしいなという感じがするのですがね。
  14. 小川邦夫

    小川政府委員 四兆円という数字は私ども確認しておるわけではございませんが、五十六年度の三兆八千億で考えた場合、これは全燃料でございまして、御指摘のようにLNG石炭は入りますのみならず、核燃料の部分も含むということでございます。したがって、そういったすべての燃料が入った数字でございまして、原油値段が下がったということで、その他の燃料すべて同じように五ドル相当下がるというふうには、燃料のそれぞれのマーケット状況で、必ずしも一致するわけでもございませんので、トータル燃料費に直ちに三十四ドルが五ドル下がるという比率を掛けて算出するのは、ちょっと大きな数字になり過ぎるのではないかという気がいたします。
  15. 五十嵐広三

    五十嵐委員 それはどうかな。輸入炭なんかもどうですか、かなり下がっているでしょう。しかもそれは、評価としては相当なものでしょう。それでおっしゃるように機械的に計算をしても六千億くらいになるような気がするのです。しかも為替レートはどうか。五十五年四月に今度の電気料金を決めたときのレートは、言うまでもありませんが、当時は三十二ドルで、レートでいうと二百四十二円。こういうことでやっているわけですね。そうでしょう。いま二百三十二円くらいですか、十円くらい高いでしょう。率にすると四%くらいです。これは金額に置き直しますと千六百億ですよ。そうすると、これだけ合わせて七千六百億。いかがですか。
  16. 小川邦夫

    小川政府委員 為替につきましては、まず五十七年度はどういう状況になっておるかということでございますと、いま御指摘の二百四十二円に対しては二百五十一円ということで、むしろ円安になっておったということでございます。  御指摘の点は、いまの二百三十二円ということでございますが、千六百億という数字は実はかつて私ども試算したことがございます。ただ、それは三十四ドルの場合に為替が一円動いたときでございます。それを原油価格二十九ドルで計算し直しますと、十円動けば千三百億円の動きになるという数字は持っております。  いずれにしても、御指摘のように為替要素が非常に大きな要素になりまして、円高になればそれだけ利益増になることは御指摘のとおりでございます。ただ、五月のこの時点でのレート年度全体として実現するのか、そこは非常に不透明で、私ども今後よほど慎重に見きわめなければいけないポイントだと思っております。
  17. 五十嵐広三

    五十嵐委員 千六百億というのは、僕も大した根拠があって言っているのではないのです。ただ、四兆円の四%というと千六百億だ。そんな意味でちょっと言っただけの話です。大したことじゃない。しかし、ちょっとへそそろばんでしてみてもいま言うようなことは大体出てくる。  どうも五千億というのは、皆さん手がたくおっしゃっているのはわかるけれども、実際には五千億ではきかない。いま返事がなかったけれども輸入炭あたり状況はどうなっているかなという話なんかもちょっと聞きたいのですが、石油以外の発電燃料などコスト状況は、最近の傾向だけでいいですが、非常に高くなっているのか、あるいは安くなっているのか、原発も含めてどんなことになっていますか。     〔武部委員長代理退席委員長着席
  18. 小川邦夫

    小川政府委員 大宗としてLNG石炭核燃料ということでございますが、LNG石油価格にリンクしておりますので、石油価格が下がれば、契約内容によって直ちに石油価格と同時に下がるケースもございますし、当事者が契約改定価格改定という形で下げる場合もございますが、傾向としては、LNG石油価格が下がればそれに追随して下がるという傾向にある。現にそういう傾向が出つつあるというふうに思います。  石炭価格につきましては、マーケットの形としてはやや独自の感じでございますので、必ずしも石油価格リンク的な動きにはならないわけでございますが、傾向としては、確かに世界的な需要低迷のもとに、石炭価格につきましても下落傾向にあると思います。  核燃料につきましては、非常に早くから手当てしているものでございますので、世界のマーケットとしては動きがあるかもしれませんが、電力の実際の使用燃料としては余り動きはないと御理解いただいていいと思います。
  19. 五十嵐広三

    五十嵐委員 輸入炭なんかもかなり安くて、最近の大型の規模の発電所なんか見ますと十一円くらいの価格でしばらく続いているようですよ。原子力発電所のモデル的な価格が十二円なんといっていたのをむしろ割り込んでいるというところがある、そういうお話さえわれわれも聞くくらいかなり安いのじゃないですか。それから、最近は原子力発電所稼働率だって相当高いでしょう。いずれの面から言ったって、電力料金コストの上で非常に安い傾向にいまなってきている。もしそうでないというお考えがあったら言ってください。
  20. 豊島格

    豊島政府委員 先ほど公益部長がいろいろ御説明いたしましたけれども一つ申し上げたいと思いますのは、五十五年に料金改定をいたしましたが、そのときの石油価格はアラビアン・ライト二十八ドル、もちろん、そのころはディファレンシャルもいろいろありましたので、実勢価格はそれほど低くはなかったわけです。電気料金は、毎年資本費がふえるとかいろいろな要素がふえますので、年々コストは増高するということでございまして、五十五年度に定めた料金がその後何年もつかというのが非常に重大な関心事であったわけです。これが今日までもちましたのは、たとえば五十五年は料金織り込み分よりも実際の為替レートが高くなったという問題がございます。それから出水率がよかった、あるいは先ほど先生指摘のように、原子力発電所稼働率を当時五〇%台と見ていたのがだんだん六〇%になってきた、そういうことでわりと長くもったということです。  ただ、先生も御承知かと思いますが、大臣もしばしば答弁をいたしておりますが、五十七年度中間決算というのを見ますと、為替が非常に悪かったこともございまして、中間配当をするにも利益が計上できない、もしこのまま推移すれば、五十八年度になると料金値上げをしなければならない、こういう心配もあった。そこへもってきて為替好転したということが一つ。それからもう一つは、原油価格も五ドル下がった。こういう状況があったわけでございまして、したがって、収益の好転要素はございますが、それがまるまる五十八年度以降の経営の好転になるということには必ずしもならない。もちろんよくなる要素先生指摘のように十分あると思います。  それからもう一つ、第二の点につきましては、先ほど来先生、五ドル引き下げあるいは為替を少し過小見積もりしているのじゃないか、こういう御指摘でございます。非常に概括的に言いますと四兆ですから一五%で六千億ということでございますが、われわれも十分その辺は計算をしておりまして、余り細かい計算を申し上げるのはあれでございますが、石油LNG、これはスライドして全部入れております。それから使っております中にはLPGというのも一時あったわけですが、こういうのはむしろ逆に上がっている。それから石炭につきましては、確かに輸入炭が下がっておるというのですが、現在の日本の石炭火力の中における石炭使用は、やはり国内炭の方が多うございまして、輸入炭というのは非常に微々たるものでございます。したがって、今後は非常にふえていくわけでございます。そういう意味国内炭は、輸入炭が毎年こういうふうに下がっておる状況にもかかわらず、むしろ昨年あたりも上げている、こういう状況でございます。  それからもう一つ石油価格につきましては、原油生だき重油とありまして、重油もかなりあるわけでございますが、重油につきましては、御承知のように電力会社石油業界との交渉によって決まる。しかも従来のルールは、三カ月おくれでその前の輸入原油対象にして計算するというようなことがございまして、したがって、われわれとしては、五千億というのは数字としては通年では出るけれども、五十八年についてはむしろそれは低い、四千億くらいになる、こんなようなことでございまして、必ずしも先生のおっしゃることと矛盾するわけでございませんが、量的な問題についてはいまのような事情がある。原子力発電の向上というのも、これまでの原価高騰を抑制してきた、こういう役割りを果たしているという点にも御配慮いただきたいと思います。
  21. 五十嵐広三

    五十嵐委員 あとの質問もいろいろありますものですから、簡単に答えてほしいと思うのです。つまり僕の言う電力コストというものは、ことに燃料にかかわるもの等は、全体的に見てかなり下降傾向にあるということは概括的に言えるというふうに思うのですが、そのことを簡単でいいですから答えをいただきたい。  それから、さっき五千億、一口に言ってそうだが、しかし、僕の計算ではそうでない。六千億、それにレートの分で千六百億、そんなものなんかがある。そうすると、相当なものでないかということについても、細かいことはいいですが、そういう計算もありますとか、そうかもしれませんとか、あるいは全く違うとか、明快にひとつ答えてください。余りくどくどしたのは要らないですから。
  22. 豊島格

    豊島政府委員 これは計算でございますから、いろいろあると思います。大ざっぱに言って、先生の仰せ若干多目だと思いますけれども、けたが違う、そういうことではございませんで、われわれ五千億が先生六千億という、五千億がちょっともう少し実際問題としては減るだろうと思います。  それから、レートもわれわれ計算しますと、大体千二、三百億というのが十円で成り立ちます。だから、先生の二百四十二円から二百三十二円、十円という前提を置けば、これは大体千二、三百億ということで、そうけたも違わないけれどもちょっと多目であるということだと思います。  それから、改善になっているということは、したがって事実です。しかし一方、コスト増要因もあるので、それがフルに全部利益のように出るということではないということで、利益が貢献するということは先生指摘のとおりであります。
  23. 五十嵐広三

    五十嵐委員 この前、通産大臣が中東訪問の後発言しているのですが、アラブ首長国連邦のオタイバ石油相が、石油輸出国機構は一九八五年末まで基準原油価格を一セントたりとも値上げしないだろう、こういう見通しを語ったというのですね。それからクウェートのアリ石油相もこれに同調したというようなことが報告されているわけであります。こういう点からいって、通産大臣がここ三年ぐらいは原油価格が安定的に推移するのではないだろうかというような見通しを語っているようでありますが、これについての見通しといいますか、大臣から御高見を承りたいと思います。
  24. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 おっしゃいますように、そういうオタイバ石油相等の発言もございますし、石油消費国の方で省エネの効果がいろいろ出ておりますし、それから、OPECの石油の供給能力に比べて、現在の現実のOPECの石油の輸出量というのはずいぶん低うございます。供給力もかなりあるというようなことから考えますと、石油価格が弱含みに推移する環境は一方においてあると思いますけれども、他方においては、先生よく御承知のとおり、中東の情勢というのはきわめて政治的にいろいろな面において不安定なものもございまして、いつどういう不測の事態が起こるかわかりませんし、先進国の方の景気回復もこれからだんだん高まってくるとすれば、そっちの面からはいつ需要がふえ、あるいは供給が円滑にいかないという要因が出るかもしれません。したがって、にわかにいま非常に高い確度をもって三年間石油価格が動かないだろうと断言する十分な条件が必ずしもあるとは思えないと考えておりますが……。
  25. 五十嵐広三

    五十嵐委員 しかし、おたくの大臣が最近いろいろなところで言っておるわけですね。確かに、非OPECが量の上ではいま過半数ですから、全体的に見て、まず中期的にそう――これは世の中のことだから、何がどう起こるかわからないと言えばそれまでのことです。一般的に言えば、かなり安定的に推移するのではないかというのが常識的な見方だというふうに思うのですが、どうですか長官、そんなことでいいですか。
  26. 豊島格

    豊島政府委員 大臣も、三年間はまず二十九ドルで推移するだろうと申しておりますが、いろいろな要因がありまして、本当のところはわからない。  ただ、OPECも上げ過ぎた反動もありまして下げざるを得なかったのですが、やはりほっておいてはいけないということで、生産制限なんかは相当きちっとやろうということでございます。したがって、これから不需要期に向かうわけですが、生産も、現在千七百五十万バレルという生産の上限に対して、実際は千五百万バレルぐらいに落として、それは主としてサウジが調整している。ほかの国も若干ございます。そんなことですから、いまのところこれ以上下がるということはないでしょう。しかし、別途それじゃ上がるのかといいますと、先進国の省エネあるいは代エネというものが進んでおりますから、今後、五ドル値下げがあったからといって急激な上がりということもないだろうということで、いまオタイバ、カリファ両国の石油あたりは何とか八五年末までは維持したいということでございまして、その辺で行くというのが一つの常識的な見方。ただし、変動の要因はいろいろあると思います。
  27. 五十嵐広三

    五十嵐委員 そんなような見通しなんかも背景にしながら、恐らく先日来の通産大臣の値下げ発言というのが出ているのではないかというふうに思うわけです。  この際、大臣電力料金値下げについての意見を聞きたいと思うのであります。
  28. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 五十嵐委員指摘のように、電力料金の基礎となる原価は、燃料費を含め、そしてまたこれは希望が多分に入りますけれども、円レート関係を通じて、私も低下の傾向にあると判断せざるを得ないと思っております。そこで、これが基礎となりますところの料金をどうするか、これは多分に二つの方向があると言われておる。これまで多年収益の関係からおくれておりました修繕の問題を含めての設備投資の問題。しかしながら一方、これは電力供給量を増大しない範囲においての設備投資に限られるべきかどうかといった問題もございます。もう一つは、単純に消費者に還元する、産業用電力料金を含めての引き下げの問題。このいずれを選ぶかということが議論されてまいりました。私の見ますところも、基本的には長期安定料金を立てるべきであるということはもう皆さん方のコンセンサスを得ていると思いますし、私は、消費者保護の見地から見ても長期安定料金でなければならないと思っておるところでございます。  そういった観点から見ますと、たとえば原油の値下がり状況が、私の見るところ、やっと四月から始まったようでございます。三月までは三十四ドルぐらいの税関におけるところのインボイスの申告価格であったように思いますが、四月から原油のインボイスの価格が三十ドルちょっと超したところにきたようでございます。だんだんとこれがどこまでいきますか、恐らく二十九ドルというところまでいくのであろうかと思うのでございますが、それはいろいろ購入地域によって違う。そこで、そのような原油の値下がりの電力会社の原価、経理に及ぼす影響、この点を詳細に見きわめながら、いまの二つの角度を十分に見きわめて検討して、そして長期安定料金を定むべきである。そしておっしゃるように、何といっても電力会社は公益会社であり独占会社でございますから、不当な利益を上げることは許されませんし、またそんなことはないと考えておりますので、こういった観点から検討すべきである、こういうふうに考えております。
  29. 五十嵐広三

    五十嵐委員 何か僕も少し質問に言葉が足らなかったような気がいたしますので、なおもうちょっとお聞きしたいと思います。  山中通産大臣は、通産大臣としては本当に一歩踏み込んだといいますか、ある意味では、総理の発言が一方であるにかかわらず、積極的な意見を出しておられるようで、私は実は非常に評価をしているのであります。これは新聞の報道するところではありますが、この際、電気料金問題で電力九社のすべてのコストを洗い直せということで、通産省の事務当局に指示をして、料金値下げの方向で検討作業に入っているというようなことなんかも報ぜられているところであります。ことに設備投資をという総理の意見も、景気回復とあわせて設備投資でというような見解もあるようであります。  しかし、これは複式簿記を知っている人はすぐわかることであって、何ぼ設備投資しましても利益利益で出るわけですね。それは金がそういう固定資産になったというだけの話であって、決算上は利益として出てくるわけですから、そのことによって消費者への還元が必要ないなんということにはならぬわけです。景気回復の問題は景気回復の問題であって、先倒してやろうとか、それはそれでそういう論議をなさるのは結構だと思う。しかし、料金の問題は料金ですね。そういう設備投資のものと料金の問題とは一緒に判断するのはおかしいことだ、これは簿記のわかっている人はすぐおかしいなということになるわけです。ですから、僕は通産大臣指摘はもっともだというふうに思うのです。  そうして、言うまでもなく、経済企画庁の立場はとにかく物価を抑えていくということも所管している仕事の大きな一つであり、本委員会はまさにそういう使命を持って日々われわれはそのことを考えて論議をしているわけでありますが、長官、やはりそういう立場から、この際通産大臣を孤立させるのは適当でない。同じ経済閣僚として、しかも物価を担当する大臣として、この際、長官の積極的なこのことについての意見をぜひ承りたい。いかがですか。
  30. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、通産大臣の御発言は大変評価するものでございますし、電力料金引き下げ可能性について言及されたものだと、こういうふうに素直に受けているものでございます。  いま複式簿記のお話が出ましたが、私もまた、複式簿記も忘れかけですけれども、ともかくも借方勘定に設備投資があらわれてくる、利益は貸方勘定にあらわれてくると考えるわけでありますが、それがまた異常な利益でありますれば問題でございますけれども、やはり電力会社といえども将来の拡張というものは、産業全体、日本の経済は成長していくわけでございますから、考えていかなければならないかと思いますし、また、設備の更新は絶えず行っていかなければならない。これは通産大臣といえども否定されたものではない。ですから、適当なる範囲においての設備投資、これを上回るところの利益がありとすれば、これはまたひとつ料金の問題に結びつく、私はこういうふうに考えるわけでございます。拡張の源泉は利益しかない。借金でやっておりましても結局それは利益で償却されていくものだ、こういうように考えておりますので、そこは一つの兼ね合いの問題かと、私はこんなふうに考えております。
  31. 五十嵐広三

    五十嵐委員 それは長官、償却だけでしょう。たとえば五千億利益があったとするか。この五千億で何か建物を建てた、施設をつくった、そうすると、その五千億の利益が消えるというものじゃないのですよ。それは金が物になっただけで、資産としてそれだけのものを持っていることに変わりないのですから。役所の場合は違うわけですね、これは簡単に言えば大福帳のような簿記ですから。現金出納帳みたいなものですから。しかし、民間会社はそうじゃないわけですね。ですから、料金の問題と設備投資の問題はやはり分けて考えるべきものだ。それはしかし、そのうちの償却が何ぼ出ていくかということは別ですよ、それは決算上経費で落ちるわけですから。そういうことを僕は言っているのです。  そこで、大事なところ、おしまいのところで、大臣、つまり通産大臣を孤立させないで、物価担当大臣としてここは断固として通産大臣を支援して、閣内においてやはり料金引き下げるような方向に誘導すべきだということについてはどうですか。
  32. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、五十嵐委員の言われますことは理解はできると思うのですけれども料金と設備投資が全く無縁かと言えば、そうじゃないと私は考えておるのでございます。つまり料金からそれが売り上げになって、そしてそれから経費を引いたものが利益になって、料金を下げれば利益は減る、料金が上がれば利益が上がるという単純なことで示される。私は、必要な設備投資はやはり料金から生ずるところの利益によって行われるべきである。償却は設備投資ができてから翌期にかけての減価償却の形であらわれてくるのだ、こういうふうに考えているところでございます。これは多分に原理的な問題でございますから、私はこういった主張をぜひともしたいと思うわけでございます。  いまの最後にお尋ねの山中通産大臣の御発言は御発言として、私はみずから参議院の商工委員会で伺っておりましたが、引き下げ可能性はあるということを率直に言っておられましたが、私はそれも当然検討されるべき大きな可能性だ、こういうふうに考えております。
  33. 五十嵐広三

    五十嵐委員 もう一つ踏み込んで、つまり物価担当大臣でしょう。それははたから見ていて可能性があるようだということだけでないでしょう。やはり国民の立場で、物価が引き下がることを期待しながら大臣のところは仕事をしているのじゃないですか。そういう国民の視点で見ればちょっと発言の仕方が違うのじゃないかと思いますよ。いかがですか。
  34. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 料金引き下げが最も端的に国民、消費者につながることは当然でございますが、私は、設備投資といえども、単に会社のためというよりも、電力会社の性格から見ても、これもまた国民経済のためのものである、こういうふうに考えなければならないと考えているところでございます。もちろん一番わかりがいいのが料金引き下げであることは言うまでもございません。
  35. 五十嵐広三

    五十嵐委員 余りこんなことばかり話していたって時間ばかりたってしまうからあれだけれども、しかし大臣、僕が間違っているのかもしれないけれども、複式簿記というのは僕はそうでないと思うのですよ、会社会計というのは。そこのところは、一遍おたくの方でもさらに検討してみる。つまり利潤から資本投資をするというものだけではない。大体仕事が始まるときに利潤はないのですから、一定の資本はあるが、それは借り入れをしながら資本投下をして事業というのは始めるわけですから、利益がなければ、利益の中からだけさまざまな設備をするということではないわけですから、問題は別だと僕は思いますよ。  どうも物価大臣としては少し物足りないようなお返事であったようだけれども、しかし、通産大臣を支援してあるいは指導して、ぜひひとつ料金が安くなるような努力をしてほしい、こういうぐあいに御要望を申し上げておきたいと思います。  通産省にちょっとお伺いしますが、内部でいろいろ検討しているということの中で政策料金的なもの、たとえば福祉関係料金を下げようとかあるいは特定の産業等についての料金を下げようとか、何かそういうような具体的な政策料金的な検討はしておりますか。
  36. 小川邦夫

    小川政府委員 政策料金という問題は、基礎素材産業対策のときにもいろいろ議論がなされたところでございますが、私ども考えといたしましては、やはり料金というものを決めるときの基本原則としては公平の原則というものが最も重要な原則になっておる。したがって、ある特定のセクターにまけることは、結果としてその負担は他の負担に転嫁するということになって適当でないという基本的理念がございまして、したがって、料金体系といたしまして、たとえば基礎素材産業であるとかいうものへの政策的軽減、いわば政策料金というものをとることはできない、こういう考え方でおります。
  37. 五十嵐広三

    五十嵐委員 部長の段階でのお答えとしては理解できるのであります。つまり政治的判断で政策料金というのは決まるものだというふうに思うのですが、そういう意味では、長官どうですか、そういう配慮での検討というのは全くなされていないですか。
  38. 豊島格

    豊島政府委員 先ほど部長がお答えしましたように、政策料金ということをとれば、当然のことながらコストの配分はよそのそうじゃない人にいくということで、しかもこれを始めましたら切りがないといいますか、何が政策的に大事かという価値観の問題になりますと非常にむずかしい問題もございます。そういうところから大臣も、いろいろと国会でそういう御質問があったときにも、いわゆる政策料金というのはとりがたい、考えておらないということでございまして、事務当局としても、純粋の政策料金というのは考えておらないということでございます。
  39. 五十嵐広三

    五十嵐委員 設備投資の話がさっきいろいろあったわけですが、しかし御承知のように、まずいまの電力の需給関係からいうとかなり供給オーバーということになっているわけです。いま電力会社なんかも新たな売電をねじり鉢巻きで開拓して歩いているというようなことが伝えられているぐらいで、むしろそういう過剰設備そのものがコスト高をもたらすような傾向さえも生じているということであります。したがって、幾ら景気回復とはいえ、設備強化だけ考えていくということもどうかなという感じが僕はしますね。  それから修繕費をどうこうということもわからぬものでもないですが、これはしかし、消費者から見るといかにも利益隠しだなという感じがどうもしますね。いままでしんぼうしたという点もあるかもしれぬが、修繕費の前倒しなどというのはどうも余り聞いたこともない話で、僕はもっと素直な料金政策があっていいのではないかなというふうに思います。ひとつこの際、通産大臣としても積極的な検討を命じているようでありますから、ぜひとも早期に値下げの方向を決めていただきたい、御要望を申し上げたいというふうに思う次第であります。  最後に、もう時間がありませんけれども、ひとつ続きはこの次の委員会ででもしたいと思いますが、少し問題提起をしておきたいというふうに思いますのは、石油会社決算における棚卸しです。いま大変な量の備蓄をしているわけですね。ですから、それぞれの石油会社の棚卸しの在庫評価というのは膨大なものですね。この棚卸しの評価をどういう方式でするのかということですごく違ってしまうわけですよ。そうですね。  石油三十四社のそれぞれが、細かく言うと大体八つぐらい棚卸しの評価の仕方があるようでありますからさまざまなやり方をしていると思いますが、たとえば後入れ先出しなどというのがあるわけです。つまり最近仕入れたものを先に出していくということなのですね。そうすると、昔の在庫はいつまでたったってそのままの評価になっていくわけですよ。最近は下がっていますけれども、いままでの長い傾向からいうと石油は大変な値上がりでしょう。この大変な値上がりの中で、古い、ものすごく安い評価の石油がそのまま今日棚卸しになって含み資産という形で決算の中に内包されているということがあるのじゃないですか。それはそう多くの会社ではないと思いますが、しかし、数社についてこういうような評価方式をとっているところがあるようだと思うのです。こういうところは、膨大な在庫の評価が時価の半分だとか三分の一だとか、そんなところが恐らくあるのじゃないですか、いかがですか。
  40. 豊島格

    豊島政府委員 石油会社の棚卸し資産の評価につきましては、企業会計原則といいますか、それに基づいてやられておるわけで、その中でいろいろ認められておるのが多いわけでございまして、いわゆる移動平均法と総平均法、その中にも月別とか四半期別とかいろいろございますが、そういうものが大部分でございます。先生指摘のように、いわゆる先入れ後出しですとか後入れ先出しですとか、そういう過去のものがたまっておる会社が数社あることは事実でございます。ただ、ずっと前からやっておる会社が一社でございまして、それ以外のものはむしろそんなに古い時代からじゃございませんので、そういう評価額が現在のほかの移動平均法と著しく違うということにはなっておらない。一社についてはかなり差があると思います。  ただ、これは会計法上といいますか会計原則上認められていて、各社の自主的な責任でございまして、一概にどの方法がいいか悪いかということは言えません。したがって、それがどういうふうに価格に反映するかということでございますと、それは市場メカニズムによってやるわけで、どういうコストの配分をしようと、価格は一定のメカニズムで決まるわけでございますから、それが物価上影響があるかどうかということになりますと、そういうことにはならないと存じます。
  41. 五十嵐広三

    五十嵐委員 あと一問で終えたいと思います。  最後に、北炭夕張再建の問題が大変な状況になってきておりまして、これがいわば山場になっております。恐らく、数日中といいますか一両日中にも、協会側の非常に困難だという結論が通産大臣あてに出されるであろうという見通しであると思います。これに対して、通産大臣がまたしかし別途な方法で何としても再建したいというような意欲をほのめかしておられるようにも聞いておるわけでありますが、非常に重大な問題であり、経済企画庁としても大きな関心をお持ちになっているのではないかというふうに思いますし、ぜひ大臣のこれに対する積極的な支援、対応というものを期待したいというふうに思いますので、これにつきましての大臣の御見解を承って、終えたいと思います。
  42. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 通産省が通産大臣を初め皆さん方大変御苦労されてこの問題に取り組んでおられます。所管ではございませんけれども、経済の発展、安定というものは、企業そしてまた雇用によって相当左右されるわけでございますから、この問題については大きな関心を持っていきたいと思います。
  43. 五十嵐広三

    五十嵐委員 終わります。
  44. 土井たか子

    土井委員長 武部文君。
  45. 武部文

    武部委員 きょうは電力料金の問題を中心に質問なり意見を述べたいと思っておりますが、通産大臣に来週来ていただくようにいま取り計らっておられるようですから、重複する点は避けたいと思います。  最初に、公敬の委員長においでをいただきましたので一つだけ。前回の三月四日にこの委員会で、独占禁止法の問題についていろいろお尋ねをいたしました。独占禁止法の緩和とかあるいは独禁法の改正とか、いろいろな意見が財界の一部にある、こういう点について公正取引委員会の見解を求めたわけでございますが、特にカルテル、過当競争それからPAP、そういう問題についての御見解を聞いたわけであります。  その後、実はもう一つ問題が持ち上がっておるようでございまして、独禁法第九条の持ち株会社の禁止条項でありますが、この持ち株会社の禁止条項、これは独禁法が二十二年にできて、二十四年、二十八年と改正が行われた際も、この問題には全然手はつけられておらないまま今日を迎えておるわけであります。ところが、財界の一部にこの持ち株会社の復活論というものが出ておる。なぜ独禁法の第九条にこれが制定をされたかという経過は、私どもはいろいろと勉強させてもらって知っておるわけであります。したがって、第九条はあくまでもこのまま堅持すべきだ、こういう見解を持っておるわけでありますが、公取委員長の御見解をひとつお伺いしたいと思います。
  46. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 昭和二十二年の法制定当時の記録を見ておりますと、これはいま委員からもお話がございまして御存じのことでございますけれども、当時の貴族院で政府委員が説明をいたしました際に「第九條に「持株会社は、これを設立してはならない。」斯う云ふことがはっきり謳はれて居ります。所謂財閥の再現を防ぐ意味に於ける形の上での最もはっきりした規定であります、」こういうふうにその趣旨が述べられておるわけであります。二十四年、二十八年と改正を経て、現在でもこの規定は仰せのようにそのまま生きておるわけであります。  現状で独禁法が持ち株会社の設立を全面的に禁止しておる趣旨と申しますのは、持ち株会社は、その機能そのものがほかの会社の事業活動を支配し、経済力の集中をもたらすものでありまして、これを容認すれば、非常に少額の資本によってピラミッド型の支配を通じて、より多くの経済力を支配することができ、公正かつ自由な競争を阻害し、経済の健全な発達を損なうおそれがある、したがって、持ち株会社の禁止規定を置いておるというふうに理解されておりますし、私どもはそう考えておるわけであります。  業界再編成の手段として持ち株会社を復活してもいいではないか、ことに低成長下でありますから、そういう業界再編成を進めていくためにその点を考慮してもらったらどうかという意見が一部にあることは仰せのとおりであります。しかし、持ち株会社の禁止規定、独禁法の九条の規定と申しますのが、ただいま申し上げましたように、持ち株会社制度を認めますと、ピラミッド型支配を通じて経済力の過度の集中をもたらし、公正で自由な競争を阻害することになるということでありますので、私どもは九条の改正ということは考えていないわけであります。  むしろ、かねて申し上げておりますように、低成長経済のもとにおいては、経済の活性化を実現し、経済の成果を国民に帰着させるために、従来にも増して個々の企業の自由な事業活動を確保するということが必要であるというふうに考えます。そのために、事業支配力の過度集中防止とか、自由な競争を確保する独禁法九条の規定の意義はますます大きくなっているというのが私ども考えでございます。
  47. 武部文

    武部委員 公取委員会のこの問題についての見解は明確でございますから、よくわかりました。  そこで、企画庁長官にお伺いしますが、この間あなたとやってちょっと意見の食い違いがあったのですけれども、このことについては非常に明快な説明をされたわけです。御記憶かどうかわかりませんが、きょう議事録を持ってきましたが、あなたはこういうようにお述べになっているのです。財閥解体、「寡占形態の財閥が力をふるっておった経済から、多数の、財閥に属さなくても済むような企業が出現してここまでの成長をもたらした点において、私は独禁法の効果をまず認めたいと思うのでございます。」こういう実にりっぱな答弁をされておるわけでありまして、いまの公取委員長の見解と全く一致をしておるのです。  それで、私はなぜこれを取り上げたかといいますと、いま公取の委員長がおっしゃったように、これは財界の一部に、産業再編成の有力な手段である、したがって、低成長下には原則自由としてこの九条を変えろ、廃止をしろ、こういう意見がマスコミにも出ておるのです。いまお話がございましたが、そういう財閥解体の経過があってこの第九条が出てきたということを私は勉強させてもらって、いまの委員長の見解はまさにそのとおりだと思うのです。企画庁長官も三月四日にそこでそうお述べになったのです。これは議事録ですから、それを見ますと同じことをおっしゃっておる。したがって、財界の一部にもそういうような意見が出ていると思うのですが、企画庁長官の見解は、三月四日のあなたのお述べになったこの議事録のまことにりっぱな御意見と一つも変わりはないか、それをお伺いします。
  48. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 めったに褒められたことのない私が褒められたので大変恐縮に存じているわけでございますが、確かに、いま武部委員がお読みになったようなことは私も申したつもりでございます。しかし、この問題は、独禁法の基本的な考え方と、そしてまた独禁法をどのように運用していくかという大変むずかしい問題に関連した問題だと思うのでございます。私は、根本的に、昭和二十二年に独禁法ができましたときからの過程をいま申したような形で簡単に申し上げたわけでございます。  しかし、そもそも独禁法の思想はアメリカからもらった思想でございまして、私自身、あんなような思想は初めはびっくりしたぐらいのコペルニクス的な転回の考え方でございました。しかし、それが法律で成文化された。そのときに私はいろいろ勉強させていただいて、今日まで来たのでございますが、大変問題があるという形で私はいつも申し上げているわけでございます。  おっしゃるように、独禁法の三つの禁止事項と申しますか、一つは私的独占、もう一つは不当な取引制限、もう一つは不公正取引、この三つの中で私的独占というのは、公正な競争の社会を維持するためには最も注目すべき問題であろう、それは構造的な形態においてそうであろう、こういうふうに私はここでも申し上げたことがあるような気がするわけでございます。その中の一つに持ち株会社の九条の規定があると私は考えているのでございます。  しかし、この規定の仕方にもいろいろ問題があるんじゃないか。つまり私的独占形態はいけないと思うのです。しかし、それは個別的な、ケース・バイ・ケースの判断があってしかるべきではないか。このように持ち株会社をいきなり禁止するということは、なお研究しなければなりませんけれども、私は、アメリカのシャーマン法を見ましてもクレイトン法を見ても、そんなような規定があることは知りません。独占はいけないということは哲学であって、それは個々のいろいろの合併形態とか結合形態を見ながら、あるいは株式の保有形態を見ながら、判例でこれが果たして独禁法違反になるかということが決められていくような、経済の動きに応じた本当に弾力的な運営が行われておると私は思うのです。  ところが日本は、いまはなくなりましたが、四つの会社の重役を兼ねてはいけないというふうにきわめて狭い範囲の、しかも禁止条項を出している。それが独占に該当しなくても、役員を四社以上兼ねてはならないということを書いてきた。それはさすがに二十八年になくなったわけでございますが、この持ち株会社禁止の規定は、財閥会社解体の歴史的な沿革からこの法律がある。つまり何とか合名、何とか本社という形で持ち株会社を通じて事業を支配した、そのことを頭に置いたからこんな明文が残っておる。  しかし、持ち株会社の中に、果たして私的独占にならないような――私はどうか意味はわかりません。企業の再編成ということもよくわかりませんけれども、初めから一律に持ち株会社は私的独占だと決めることができるかどうか。これは実際の例に合わせてよほど考えるべきであって、経済というものはいろいろの手段を通じて発展していく。その手段がいきなり独占禁止法に違反するという形で、何らの明文の理由なくして書いてあるような規定は、研究することが必要であろうと私は思うのです。これは必ず直せという意味ではありません。  ともかくも、独占禁止法をもらっていままでやってきて、なかなか定着してない。いつも申し上げておりますが、アメリカのように、すごろくから独占禁止法の精神が子供に教えられるように、日本ではそんなような精神がない、また反社会性という感覚が鈍い今日、高橋委員長には大変御苦労だと思いますが、小学校の教科書ぐらいから私的独占とは何か、そしてまた不当な取引制限とは何か、不公正取引とは何か、そういったことを通じて、自由経済を維持するためにどんなに役立っているかというようなことから始めないと、まだまだこんなような議論が出て、独禁法というものは単に法律で禁止しておるからできないものだというような受け取り方では、アメリカ流の独占禁止法の精神は徹底してこない、私は、こういう意味でいつも批判を申し上げておるわけでございます。  天下り的に書きました持ち株会社の禁止の規定も、議論してみればそうかもしれません。そして特定の会社がやればそうかもしれませんが、全般的にこのようなことをやっていくのは、よほど検討する必要がある。日本は判例で物事を解決するのが最も苦手な国だからこういうふうに書いている。しかし、そのために角を矯めて牛を殺したんではいけないかと思うのでございます。
  49. 武部文

    武部委員 この問題はちょっとダウンしたようです。この間のあなたのはとてもいい意見だったのですが、ちょっとダウンしておる。きょうはこの話はこれだけにして、ほかの方が大事ですからまた改めてやりたいと思います。  同僚議員からいろいろお話がございましたが、私はきのう通産大臣に党を代表して料金のことで申し入れをいたしました。その申し入れについてはいずれ大臣から改めて回答をもらわなければなりませんが、先ほど来いろいろやりとりした中に出ておりますので、これは企画庁の考え方も聞かなければなりませんからお伺いをしたいのであります。  原油の値下がりによって、さっきから四千億、五千億、六千億というような数字がいろいろ出ておりまして、確定的な金額は幾らかちょっと推定できませんが、大体五、六千億は出てくるだろう。為替差益は、二百三十二円、これからまだ強くなるだろう。したがってこれは減ることはない、ふえる。そうした場合に、一体これをどのようにして還元をするかということについていろいろと論議をしてきたところでございます。円高差益の問題もそうでございますし、円高になれば利益はある、円安になれば差損だ。いつもそこで大騒ぎをする。この問題と、二つを合わせて恒久的な料金体系を考える必要があるのじゃないか。先ほど五十嵐委員から提案がありました燃料のスライド制の問題であります。  もう一つは、為替変動準備金制度の導入であります。これは触れられておりませんでしたから申し上げますと、円高で差益が出た場合はそれを別途積み立てる。一方、また円安になって差損が出た場合にはそこを取り崩していく。こうなってくれば、われわれはいままで不労所得という言葉で言ってきたわけですが、為替相場の変動というのはまさしく他力的なことであって、企業努力とは全く関係ない。そこで大きな差損なり差益が出てくる。これが一体どう処理されるか。ましてや認可料金である電力料金やガス料金の中でこれが相当大きなウエートを占めてくるということになれば、それは国民の前に明らかにする必要があるじゃないかということをわれわれは当委員会で何回も申し上げて、前の通産大臣もこれは検討に値するというような発言もあったのであります。  この機会に、われわれは二つの問題を提起して、外国の一部でやっておるような燃料のスライド制の導入をもう一遍検討する必要があるのじゃないか。わが国では、二十六、七年当時にこのスライド制を実施しておるわけであります。そういう実績があるわけでありまして、その後、繁雑だとかあるいは企業努力がなおざりにされるとか、いろいろな理由でもってこれは廃止をされて今日に至っておるわけです。  バレル当たり五ドル下がるというようなことは、いまだかつてなかったことであります。原油値段というのは上がるものであって下がるものじゃない、これは常識的な日本人の考え方だった。十年目にして初めてボーナスというようなものが出てきた。そういう画期的な事態のときに、この制度は改めて検討する必要があるのじゃないか。  確かに、フランス、西ドイツ、アメリカの州でやっておりますね。これもみんなそれぞれ違いますよ。しかし中身を見ると、この中で私はやはりフランスが一番いいように思うのですが、あなたの方は簡単に三つの点を挙げて、これはちょっと日本では採用しがたいということで、このことについては検討をやっておらないようであります。私は、こういう機会にこそ、外国のいまやっておる、特に私はフランスのことを言うわけですが、西ドイツ、アメリカイギリスイギリスは途中でやめておるようですけれども、そういうことを再検討して、国民の目に電気料金、ガス料金というものが明確に映るようにしたらどうだということを提案したいのであります。  いま一点は為替変動準備金の導入でありまして、そういうことをやれば、差益のとき、上がったときは黙っておって、差損のときだけわあわあ言っておるじゃないかというようなことも解消いたします、これは明らかになるわけですから。差益が出たときに出せというばかりでなくて、差損のときには取り崩して、損なら損、こういうことになりましたということをはっきり国民の前に明らかにすれば、電力会社は何も遠慮することはないわけですから、そういう料金制度というものを検討する必要があるのじゃないか、こう思うのですが、エネルギー庁長官として、この二つの提案についての見解を述べていただいて、また通産大臣には改めて見解を伺いたいと思います。
  50. 小川邦夫

    小川政府委員 最初に、燃料費調整条項の問題でございますが、すでに先ほど御説明申し上げたところを先生も御指摘されておりますので、その重複は避けさせていただきます。  私どもも、この燃料費変動というものが電気料金の安定という大きな目的にとって非常に厄介な要素になっておるわけで、その点についてはいつも頭を悩ましておるところでございます。それで、まさに御指摘のような調整条項の採用ということがこういう激動のときにいつも議論になるわけでございます。私どもは、そういう関心のもとに、実は今回も過去のこの問題についての議論がどうであったかを勉強したというわけでございますが、その勉強の結果が、ただいま申し上げましたような電気事業審議会での中間報告という形で、先ほどのような問題指摘が出ておりまして、どうも非常にむずかしい問題で、副作用と申しますかそういう問題があるので、採用ということについては相当慎重でなければいかぬ、こういう感じは持っておるわけでございます。  ただ、昨日大臣にそういった問題提起がなされたわけでございますので、そういった問題提起につきましては、扱いは大臣と相談せねばいかぬと思っておりますが、そういった検討状況にあるということは御理解賜りたいと存じます。  それから、為替変動準備金制度の問題につきましても、実はこの点も、まさに先生指摘のとおり、電気料金安定ということにとっての大きな悩み事だということで、何か為替変動電力収支にとって平準化されるようなことはないかという関心は、確かに私どもも持ち続けておるわけでございます。それで、私どもといたしまして、為替変動準備金制度をいろいろ中でも議論してみたことがあるわけでございますが、その場合に、そういった制度の実現にとって非常にむずかしい問題としていろいろ出ておる点もございます。  たとえば、対外取引を直接やっておる企業の場合はともかく、電力会社の場合に非常に厄介なのは、電力会社が購入しておる燃料の大宗は御案内のように重油とかナフサでございますが、こういった重油というのは対外取引そのものではなくて、いわば石油精製会社電力会社との国内取引になる。そこで価格の決め方についていろいろ議論し合って決めていくという形で実は重油価格なら重油価格が決まるわけでございますが、それは、為替そのものの原油の段階での変動がそのC重油価格にどう反映されているかいう点が、非常に結びつきがはっきりしないところがありまして、どうもそこが、C重油価格変動ということだけに着目して制度をつくろうとすると、一種の価格変動準備金のような、為替ということと関係の薄まった形になってしまうというような壁にぶち当たったりしまして、そういう点でも非常に組み立てがむずかしいなと。  それからもう一つ、その背景として、こういった制度を考える場合にむずかしい問題としては、やはりいまの財政問題の中で租税特別措置が非常に厳しく見直されておるというところでございまして、こういった制度をつくろうとしますと、当然ながら、少なくとも取り崩すときには減税という効果を伴う制度にしないとまた効果がないということになります。そういう減税を伴う制度をつくることが、政府部内で、あるいは関係方面と協議する場合なかなか実現がむずかしい、こういう悩みもございます。制度技術的なむずかしさ、そういう背景としての困難さということがございまして、私どももこの問題意識は持ち続けてはおりますが、実現に向けて考えるとすると非常に困難があるという点は御理解賜りたいと存じます。
  51. 武部文

    武部委員 確かに、これは大蔵省との問題が出てくるだろうと思うのです。  外国ではこういうことをやっている国は一つもございませんか。その点どうですか。
  52. 小川邦夫

    小川政府委員 外国の例については、ちょっと承知しておりません。
  53. 武部文

    武部委員 わかりました。これはひとつ検討課題にしていきたいと思っております。  そこで、時間が大分たちましたが、原油の値下がりの利益をどう還元をするか。これはいま非常に関心の深いところでありまして、値下げによって直接還元をする、税金で吸い上げる、あるいは据え置き論、据え置きしてしまって下げない、それから今度は、設備投資に回す、あるいは社会福祉へ還元をするというようないろいろな意見が出ておるわけですね。  これはいずれも、利益がどのくらいかということがはっきりガラス張りになってこそこういうことが出るのであって、あくまでも、この利益は一体幾らぐらいあるかということがまず前提にならなければならぬ。その点はまだ結果が出ぬわけですからなかなかむずかしいと思うのですが、将来を見越して通産大臣のああいう発言があったわけです。  私はエネ庁の長官にお伺いをしたいのですが、あなたといまから五年前にやったわけですね。あなたは当時の、円高差益の還元のときの責任者でございました。われわれはあなたといろいろやり合って、金額にして月二百七十円、六カ月、そして総額は二千七百億ぐらいでしたね、そういうことをやったわけです。初めてのことでございました。したがって、円高差益を還元したということは画期的なことだというふうに私どもは当時評価をしておったわけですが、一年ちょっとたったらぽんと五〇%の値上げが申請されて、上がったわけですね。それは現実のことですから認めるわけです。  ところがいまごろになって、この五ドルの値下げあるいは円高、そういうことでいろいろと利益還元論がまた出てきた。これに対して一体電力業界はどういうふうに見ておるだろうか、私はこのことを指摘をしたいのです。確かに画期的なことで、金額にして言えば月二百七十円、大したことはなかった。しかし、あのときは円高差益というものの内容が国民の前に明らかになった。為替相場の変動はこういうものである、円高差益はこうして電力会社やガス会社にこういうふうに出てくるものだ、逆に言えば円安になれば差損が出てくるのだ、これが明らかになったと思うのです。そういう面ではプラスだったと思うのです。結果的に、金額が少なくなったし、同時に一年ちょっとたったら五〇%もはね上がった、何にもならなかったじゃないか。これは私は結果論だと思うのです。  大体、円高差益の還元論が出たときに、一体だれがイラン革命を想定したでしょうか。ああいう中近東の紛争をだれが想定した者があったか。それによって第二次石油ショックが起きたわけです。これは結果論なんですよ。ところが、今度の五ドルの値下げ、いろいろなことがあったときに、電力会社の首脳陣が新聞のインタビューに答えておる記事を私は読んで、これはまことにけしからぬことを言っておる。そんな考え方をいまだに持っておるなら、これは徹底的に追及しなきゃいかぬというふうに読んだのですよ。ここにありますが、こういうことが書いてある。五十三年の為替差益還元による値下げは結果的に罪深いものだった、こういうことを新聞記者のインタビューに答えているのですよ。これはある大手の電力会社の社長です。罪深いものと。  あなたも当時責任者だったが、われわれも要求したが、罪深いことをしたとはわれわれは一つも思っておらないですよ。あのときいいことをしたなと思って、それこそ喜んでもらった。後で申し上げますが、値上げのときにも、福祉料金を抑えようとあのときも話が出ていたのです。五十五年の値上げのときに、施設の料金の値上げは六カ月延期、抑えたのです。それで生活保護世帯三十五万世帯もああいうふうに抑えたのじゃありませんか。それは当時のあれが結果的には影響しておったと私は思うのです。だから決して罪深いということは一つも思っていない。こういうことを今度の五ドルの値下げのときに述べておる。私は新聞記事を見て、これは意外なことをおっしゃる、こんな考え方をいまだに持っておるなら、これはちょっと問題だなということを考えました。  それから、経団連の会長というのはいろいろなことをおっしゃる人だが、今度も、これもまた大変なことを言っている。三百円や四百円や五百円はパチンコ代にもならぬじゃないか、そんなものを戻すよりも企業にとっておく方がいい、それが税金の根源になればいいじゃないか、経済は消費中心に考えるべきではなくて生産者中心に考えるべきだ、こういうことを述べておられますね。経団連の会長は、パチンコ代だからそんなものは返すなと必ず言ってくるに違いない。通産大臣が下げると言ったら、今度は経団連ががんがんがんがん圧力をかけるかもしらぬ。この次は通産大臣にひとつ叱咤激励してがんばれと言わなきゃいかぬが、こんな物の考え方が堂々と新聞記事に出ていますが、ちょっとエネ庁長官、あなた当時の責任者で、われわれと一緒になって円高差益の還元をやった一人ですが、こういう発言についてどう思われますか。
  54. 豊島格

    豊島政府委員 新聞に出ておることでございまして、私直接聞いたわけではございませんので、別に新聞がうそを書くということではないと思いますが、ある部分については前後の脈絡がやや省かれていることがあるかと思いまして、その真意については私どももはかりかねるところも多いかと思います。  ただ、一つ言えることは、この前差益還元した。半年間、二百七十円下げた。それはそれとして、一年半後には五割値上げをしたということで、そういうことについてのいろいろ批判が、罪深いかどうかは別としてあるということでございまして、その辺につきましては、差益還元をした後で、電気事業審議会の中の料金制度部会というところで、こういう問題についてどうしたらいいか、もちろん、その中には先ほど先生の御指摘になった燃料調整条項を入れたらどうかということも一緒に議論をしたわけですが、そのときに言われましたことは、やはりいろいろのやり方があるし、考え方があるだろう。しかし、その場合、ある程度先を見通して今後やるときはやったらどうか。ただ下げるだけじゃなくて、将来がどうなるかということも考えてやるべきだ。もちろん、イラン革命なんか予想できないわけですけれども、現時点で振り返って考えると、この時点で将来たとえば二年とか三年、できれば三年ぐらいは料金というのは見通してやれということも原則といいますか考え方があるわけですが、その辺を見通して一体どうなるかということを十分考えてやった方がいいだろうということであれば、それは一つ考え方だと思います。  それから、わずかばかり返してもどうか、この辺のところは皆さんの価値観の問題もあろうかと思いますが、それは、そういうわずかばかり返す――わずかと言えるか、それはわかりませんけれども、返す方法とか、いろいろ総合的に判断すべきことで、どの方法がいいか悪いかというのは、利益の幅にもよりましょうし、それから今後の見通しにもよりましょうし、それを総合的に考えてやるべきであって、ただ単に一つ時点、事例だけで判断すべきではない、このように考えております。
  55. 武部文

    武部委員 あなたの弁解に私は賛成なんですよ。あのときだって、別に、いま出ておるからすぐ戻せ戻せ、先のことはどうでもいいということを言った者はだれもいなかったのです。円は相当円高傾向をたどっておるし、いまなら大体これぐらいの円高の差益があるのだから返したらいいじゃないかというので、みんなが同意の上でああいう結論が出たわけでしょう。イラン革命があの直後に起きるなんてだれも考えていなかった。それだからこそわれわれは今度は慎重に、少なくともいま五ドル下がったから、何のことはない、いますぐ返せと言っておるのじゃないのですよ。これから先の原油見通しはどうだろうか、円高はどうだろうか、そういう点を企画庁もエネ庁も十分審議をし、論議をし、情報を収集して、一体これから先これはどういうふうにして返すべきかということを論議をして決めようとしておるわけです。  ですから、その点は、何もわれわれは、拙速で、いま出てきたからすぐ下げるとか、五ドル下がったから一遍に戻せとか、こういうことを言っておるのじゃないのです。それをいまから煙幕を張って、あのときはこうだった。罪深いなんという言葉を言うことは大体間違いだと思うのです。そんなことを言うと何か裏を疑いたくなる。こっちはちょっと人間が悪いから皮肉って考えるかもしらぬけれども、ああいう発言をされると、何かまた煙幕を張って、これはまた業界はいるんなことを考えておるなというふうに疑われても仕方がないと思うのです。そういうような発言はやはりやるべきではないなどいうことを私はこの新聞記事を見まして直観的に思ったのです。ですからこういう発言をしたわけであります。  そこで、それはそれといたしまして、さっきの稲山さんの発言のような意見も財界にはあるわけです。わずかな金額を返す必要はないというような意見もありますね。それから、さっき同僚の議員とのやりとりの中で出ておりましたように、通産大臣の意見はどうも料金の値下げのようです。きのうもちょっと私大臣とやりとりしてみましたが、総理大臣と意見は違うが、総理大臣は私がよう説き伏せるなんというようなことを言って、なかなか元気のいいことですわい。あなたと違うじゃないかと言ったら、いや、私の意見はこっちだ、こんなことでした。それは元気があってよろしい。よろしいが、そういう点についてこれからわれわれはどういうやり方がいいか十分検討を加えなければいかぬと思う。それは相当金額が大きいですから値下げが一番いいと思うのです。いいと思うが、これにはいろんな問題もあるでしょう。ですから、それはお互いが論議をして一番いい方法を考えるべきだ。  ここへ一つ資料を持っていますが、こういう意見がありますね。料金の値下げについてはどういう方法をとるべきか、これは国会の衆参両院の物価特別委員会等の公の場所で十分論議をして、国民の前にこういうようなことが明らかにわかるようにして決めた方がいいという提言があるようです。私はこれはいい方法だと思うのです。ただ通産大臣が一方的に決めるとか、あるいは業界の意見がこうだとか、そういうことでなくて、いろんな意見を出し合って、一体どういう方法が一番いいだろうか、それは国民がどういう点で納得できるだろうか、そういう点をやはりある程度の時間がかかっても論議をし、公の場で、国民の前に明らかになるような料金の決定をぜひやってもらいたいということを私は特に要望しておきたいのであります。  そこで、これに関連をして、昭和五十五年の値上げのときに、先ほどちょっと触れましたように、福祉料金の問題がございました。私どもはきのうもこのことを大臣に提案をしたわけですが、これはなかなかむずかしい。どこで線を引くかということが非常にむずかしくて、当時は生活保護世帯、それと福祉施設ですね、これの料金を据え置いたということが現実にあったわけですが、私どもは今後の料金値下げに福祉料金というものを主張しておるわけです。したがって、通産省としては、もし実現をするとするならば一体どういう人数でどのくらいの金額になるというふうに思っているのか、ちょっとそれを述べていただけませんか。
  56. 小川邦夫

    小川政府委員 福祉料金を政策的に取り入れるという点でございますが、御案内のように、恒常的な料金体系として福祉料金を設けるということは、料金制度の基本原則である公平の原則ということから考えますと、特定の需要家を他の需要家と区別するということで、結果的にはその負担を他に乗っけるということになるわけでございますからそれはむずかしいということで、恒常的な料金体系としてはそういうものは採用されてこなかったわけでございますし、大臣も、政策料金というものを特定需要分野にやることはむずかしいと言っておるところでございます。  ただ、現行制度につきましても、これはもう先生御案内のことではございますが、現在、電灯料金につきましては三段階料金制度というものがございまして、電気使用量の少ない家庭、月当たり百二十キロワットアワー以下のところでは、平均家庭と言える第二段階目のレベルに対しまして相対的に割り安な料金が適用されておる。これは一種の、たくさん使えば負担がふえるという逓増料金制度という思想で設けたものでございますけれども、結果において、こういった所得の少ない世帯にとって負担が少ない体系になっておるという点は御理解賜りたいと存じます。  そして五十五年度ケースは、まさに御指摘のとおり実施したところでございまして、半年間経過措置として実行したわけでございます。ただ、今度それを具体的に人数、金額、どういうふうにという御指摘でございましたが、実はいまのステージは、大臣から、電力の経理、コスト実態をまず勉強しろ、それを自分の方に持ってこい、こういう段階でございまして、それをいろいろ検討した上でどうこの電気料金問題を処理するかという段取りになるわけでございますので、ただいま御指摘のような、もし引き下げをした場合におけるその内容はどうかというところまでは、実は私どもも検討が及んでない状況でございます。そういうわけで、いま御指摘のような具体的な部分についての判断をいま持っておる状況ではございません。
  57. 武部文

    武部委員 これはこれから検討される中の一つだろうと思いますが、三十五万の生活保護世帯で、百二十キロワットアワーで月に二千九百十円、これは大体十億八千五百万、これが一年間で百三十億、施設が一万三千件、概算二十億、これで百五十億、これはまるまるのところですが、大体五十五年度の実績はあるわけですからね。ということもございまして、これは線の引き方ですから、それ以外に母子家庭とかいろいろなことをすれば何ぼでもふえてくるわけですから、そういう点の福祉料金については、今度の料金の値下げの際にぜひ検討を加えておいていただいて、われわれの方からも意見を出したいと思っております。  ちょっと通産省にお尋ねしますが、四月五日の経済対策閣僚会議で景気の対策が出ましたね。その二枚目の第四項に、電力業の設備投資について、「五十八年度下期以降分の繰上げ発注等(約五千億円程度を目途)を行うとともに、設備の効率化、供給信頼度の向上等のための投資等を促進するよう指導する。」と書いてございますね。新聞に大きなタイトルでいろいろ設備投資の金額が出ておりますね。一番最近のでは、五千四百億円の設備投資に三千五百億円の上積みをするというようなことが書いてあります。この五千四百億円というのはここに書いてある五千億円のことだろうと思うのですが、あとの三千五百億円というのは一体何ですか。だれが発表した数字でしょうか、新聞に出ていますが。
  58. 小川邦夫

    小川政府委員 設備投資の前倒しが閣僚会議のところで五千億円をめどというふうに出ておりまして、それにつきましては、電力会社に要請しました結果、電力会社としても積み上げてまいった数字が五千億円強に、つまり私どもの要請を上回る規模に大体まとまるということを私ども碓認しております。ただ、御指摘の三千五百億という数字、これは私も新聞では見ましたが、私どもとしてそういう数字を発表したという事実は全くございませんし、業界においてもそういう数字を発表したという事実はございません。  じゃ、効率化投資等についてどういう状況にあるかということでございますが、私どもは、電力各社に対して、こういった効率化投資をできる限り景気対策の一環としてきめ細かく拾い上げて、積み上げて実施するようにと要請しておりまして、その中身の詳細について余り適当でない投資が積み込まれてもならないということからいろいろ細かくやりとりはしている最中でございます。そういうわけで、それを締めて幾らだというような数字は私どもいま持っておるわけではございませんので、したがって、数字をまとめて幾らということは発表した事実はございません。
  59. 武部文

    武部委員 三千五百億円の出所がどうも不明のようですから、これはそのような説明で了解いたします。  そこで、景気刺激策としてこういうことを考えられた。五千億のことはわかるのですが、この後の設備の効率化とか、いまさっき読み上げましたが、具体的にはこれはどういうことなんですか。いま設備投資は大体どこもみんな控えておって、むしろ電力業界は、ここにもございますが、みんな何年か先送りですね、原子力の設備なんかは。そういうときに何で、需要はダウンをしておるのに何を考えておるのかよくわからぬのですが、これはどういうことでしょうか。
  60. 豊島格

    豊島政府委員 先生指摘のように、需要は非常に停滞しております。したがって、今年の四月に発表しましたといいますか提出されました電気事業の施設計画においても、大体需要は四年おくれということで、いわゆる電源なんかも相当後ろへ送ったということは事実でございます。  ただ、そういう問題はございますが、たとえば電力会社の効率化といいますか、コスト引き下げといいますか、合理化のためには、たとえば変電所とかいろいろなところにおける自動化、そういうことで、むしろ投資の内容としては経営の合理化に役立つようなもの、あるいは非常に老朽化していて能率が悪いものは取りかえる、その方が、やはりコスト的には、コスト引き下げの要因にどちらかといえばなるわけです。  それから、やはり保安上いろいろな設備をしなければいけない。たとえば、住宅が建ったから鉄塔を上げないと危険であるとか、そういうものはもちろんおくらせているわけではないのですが、そういうものについては、こういう情勢の中でも着実にやる方がいいことでございますし、それは同時に景気の振興にもなるということで、そういう配慮を十分した上で景気にも貢献する、こういうことを意味するわけでございます。
  61. 武部文

    武部委員 いまおっしゃったようなことは電力会社は普通の年にも当然やらなければならぬことであって、これが供給の安定につながるわけですから。ですから、ことさらにいまこの時期にそんなことをやると、利益隠しをやるのじゃないか、そういうふうに疑われますね。そういうふうになるのですよ。ましてや、片一方では料金下げるのだ、片一方は下げぬで設備投資に回せ、総理大臣はそう言っておる。こんなことになるとちょっと変に思いますよ。ですから、三千五百億、だれが言ったのだろうか。きちんと書いてありますよ、三千五百億円、だれかが言ったように書いてありますよ。ですから、あなたの方は言った、言わぬというふうにおっしゃるけれども、幽霊みたいに出てきたものじゃないですから、だれかがどこかで何かにおうようなことを言っておるからこんな記事になっておるので、そういう点から見ると、この料金問題というのは、いま通産大臣が明確な発言をしておられるわけですから、これと非常に関係が深いと私は思うのです。そういう面で、内容を聞いておきたかったということであります。  時間が来ましたので、もう一つだけお伺いします。  北海道電力から九州電力に至るまで、電力各社は施設計画での石炭原子力の計画変更をどんどんやっておりますね。それもここに一覧表がございますが、これを見ると、どの電力会社も三年から四年、原子力の計画変更等をやっておるようでございます。  ところが、この中で関西電力の高浜原子力発電所の三、四、それからほかのもう一つ三、四とありますね、四つ、ここだけ全く同じですね。ほかの電力会社が全部繰り下がっておるにもかかわらず、関西電力だけは全然後送りなし、計画変更なし。これはどういう理由でしょうか。何か通産省はそういう計画を認めておられるかどうか。これをちょっとお聞きしたいのです。
  62. 小川邦夫

    小川政府委員 ただいま先生指摘のとおり、施設計画としてトータルとして見ますと、電力需要の低迷に対応いたしまして各種電源立地も後ろ倒しになっておることは御指摘のとおりでございます。  ただ、それが個々具体的にどうかというのは、まず基本的には、同じ発電所と申しましても石油火力はコストが非常に高い。石油代替電源はコストが安い。たとえば原子力発電所であれば、五十七年度の運開であれば十二円程度のキロワットアワー当たりコストになるので、石油火力の二十円に比べてコストが安いというふうに、代替電源はコストが安いということがございます。したがって、全体として電源立地の推進を後ろ倒しする中でも、原子力その他の代替電源については、石炭LNG原子力というふうに並べますと、相対的には原子力はそれほどおくらしてない。コストが安いものはやはり予定どおりなるべく入れていきたいという方向が、各社の中ではどうしても出てまいります。  その中で、ある会社の原子力は非常におくれる、あるいはある会社のものはおくれないというのは、やはりその電源立地の地元との調整状況、進行状況というものが基礎になりまして、地元の調整状況から見てむずかしいものが後ろへいくケースもございますが、順調にいっているものはほとんど動かない、そういう傾向でございまして、御指摘のようなケースについても、そういうことから予定どおり行われておるものと了解しております。
  63. 武部文

    武部委員 そうすると、関西電力原子力発電所の四つは全く順調にいっておって、何も変更する必要がない。ほかは全部三年か四年おくれていますね。そういう理由をあなたの方にきちんと届けてあるのですか、それをあなた方お認めになったのですか。
  64. 小川邦夫

    小川政府委員 まず、六十年度時点の原発高浜の場合でございますが、これは実は建設工事に入っておりまして、そういう意味では、予定のスケジュールも直近の二年後でございます。そういうめどがついておることは、工事の進捗から確かでございます。  それから、六十五年、六年ごろに予定されている大飯の発電所関係、こういったものはまだかなり先でございまして、電調審にこれからかけられるところでございますので、その諸手続、それから工事についてはまだまだ流動的なものはもちろんございましょうが、現時点で明らかに六十五年、六年ではできないということが特に出ておるわけじゃございませんで、そういう意味では、この計画が全く実現可能性がないというような話ではないと了解しております。
  65. 武部文

    武部委員 たとえば北陸の能登、敦賀、いずれもあなたがおっしゃったように大飯と同じ六十一年になっておるわけですよ。これはみんな延ばしておるのですよ。みんな三年か四年延びておるのに、同じ六十一年度からやる大飯の三号、四号、これだけは計画どおり。あと全部延びておるのですよ。私は、これを見て不思議に思ったのです。何でこれだけこういうことになっておるのか。ほかはみんな下がっておる。その点を聞きたかったのですが、もうちょっと言ってくれませんか。
  66. 小川邦夫

    小川政府委員 御指摘の能登との対比で申し上げますと、能登の場合、実は地元との交渉が難航しておるという実態にある、それが反映しているわけでございます。それから、大飯につきましてはその点は進んでおりまして、地元との了解のもとに環境調査に入り得たということで、一応ステップは踏み出し得ておるので、これは特にこの予定で進めていいのではないだろうか、こういう判断で電力会社が出してきたということでございます。
  67. 武部文

    武部委員 はい、わかりました。もう二点です。  ちょっと聞きたいのですが、原油価格がバレル五ドル下がってきた。LNG価格というのは大体これにスライドしてくると思うのですが、そういうふうに理解していいか。一体金額はどのぐらいですか。
  68. 小川邦夫

    小川政府委員 LNG価格につきましては、先生指摘のとおり、大体契約はオイル価格リンクでございますので、石油価格引き下げとともに直ちに下がるケース、また、契約で一応交渉ごとの上で下がるというケースがございますので、すべてが石油価格と同じように瞬間的に下がるということではございませんけれども、全体として石油価格にスライドしているということは言えると思います。第一点はそういうことで間違いないと思います。  それから、御質問のLNGの金額がどういう意味の金額か、ちょっと理解しかねておりますので、お答えになるのかどうかわかりませんが、LNG火力の五十七年度運転開始のケースのキロワットアワー当たりコストというのは、いま十九円という数字になっております。この金額がお答えになっているかどうかわかりませんが、とりあえずお答えいたします。
  69. 武部文

    武部委員 キロワットアワーで十九円ですな。はい、わかりました。  それじゃ、最後になりますが、前回、私はLPG、プロパンガスのことをちょっとお尋ねいたしたわけであります。あのとき、値上がりがあって、それが末端価格へ反映をして値上げをもたらすじゃないかということを言ったら、心配ない、流通段階でこれは吸収する、消化できるという話でございました。同時に、現在ある備蓄も取り崩す必要はない、こんな答弁をされました。  ところが、その後五月十日、サウジがこの十日積みからLPGをトン当たり二十ドル、一ドル二百三十円レートで四千六百円の値上げ、ブタンは十ドルの値上げを通告してきた、こういうことがあるようですが、こうなるとこれはえらいことになってくるなというふうに思うのです。前回の回答と今回の五月十日積みのプロパンとブタンの値上がりというものはどういう関係になるのか、この点はどうですか。
  70. 豊島格

    豊島政府委員 先生指摘のように、私ではございませんが、この前、余り響かないということを申し上げたと思います。それで、その響かない理由につきましては、要するに流通段階の費用というのは七割ぐらいで、三割ぐらいが輸入コストということでございますので、その辺に相当クッションがあるということが一つ、もう一つは、産業用に使われておりますプロパン、ブタンというものは、実は値段によって企業はいろいろと変えるわけでございまして、この値段が上がってくるとナフサに変えちゃうというようなこともございます。  それで、今度十五ドル上がったのはどうかということでございますが、いま申しましたような競合燃料との関係がどうなるか、それから円レートがどうなるかということもございまして、全く響かないということを断言するわけにはいかないと思いますが、いまのところまだそういうふうに動いている、特に生活用といいますかそういうところに影響が出てくるというようなぐあいにはなっておらない、しかし、われわれとしてはその動向は十分見守っていく必要があろうか、このように考えております。
  71. 武部文

    武部委員 そうすると、このことがすぐ小売の値段に直接に結びついて値上がりをするというようなことは、いまのところなさそうだというふうに通産省は見ておるのですか。  時間がありませんから最後にもう一点。  このプロパンガスの今度の通告はサウジアラビアの方から来ておる。日本のプロパンなりブタンも、輸入量の五〇%はサウジアラビアから買っておるわけですが、そういう一つのところからどんと通告を受けるということになれば大変なんだが、輸入先を多角的にやるようなことは考えていないのですか。
  72. 豊島格

    豊島政府委員 第一の点につきましては、現在のところまだそういうことといいますか、非常に値上げになるというような動きはあらわれておらない。絶対あらわれないかどうかということはまた今後の問題ですが、いまのところそういう動きはない。  それから第二の点でございますが、確かに五〇%サウジに依存しておるわけですから非常に不安定といいますか、特にサウジはOPECの中でスイングプロデューサーということで、需要が減ると自分のところは生産を落とすということをやってOPECの調和を保っておるわけですから、そこに依存しておれば、生産量が減ればガスの量が減る、したがって価格にも響いてくる、こういうことでございます。  したがいまして、われわれとしては、現在、このソースの多角化というのは一生懸命やらなくちゃいけないということでございまして、すでに計画としては、アルジェ、オーストラリアあるいは北海、インドネシア等につきまして、企業もそういう方面でいろいろな計画に参加するという動きがございまして、われわれもそういう方向で進むことを支援といいますか応援し、あるいは慫慂していきたい、このように考えております。
  73. 武部文

    武部委員 終わります。
  74. 土井たか子

    土井委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ────◇─────     午後一時三十二分開議
  75. 土井たか子

    土井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  76. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に、けさから電気料金の問題について論議がありましたので、私もちょっとこれを聞いておきたいのですが、中曽根総理は電気料金の値下げについては二回も否定をしている。それに対してきのう、実は私、商工委員会でおりましたのですが、通産大臣は、年内に電気料金引き下げよう、いまこれを検討中だということで、引き下げ時期というものは明らかにしなかったのですけれども、かなり早い時期にしたいというような意見があったわけです。経企庁長官、先ほどの答弁を聞いておりますと非常に関心があるというような、関心ぐらいではちょっとぐあいが悪い。したがって、総理と通産大臣の意見が違うわけですが、経企庁長官はどちらの方にくみしますか。ひとつお聞きしておきたい。
  77. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、先ほどもこの問題について御答弁を申し上げましたように、企画庁長官といたしまして、公共料金の観点、消費者保護の観点から、当然の権限を持つ大臣として関心を持つ、こういうふうに申し上げたつもりでございます。その方向は、通産大臣の御答弁を参議院の商工委員会で私も聞いておりまして、残念なことに衆議院の商工委員会では聞いておりませんでしたが、参議院では値下げの可能性はあるという御答弁でございまして、私は当然そう考えるべきであると思いましたが、通産大臣と総理大臣との意見の食い違い、この問題については恐らく近く調整があろうかと思いますが、私は、とにかくどちらにくみするというのではなくして、企画庁長官として長期安定的な適正な電気料金を決めるべきである、こういうふうに考えております。
  78. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、中曽根総理の言うところの電力の安定供給ということになりますと、値下げをせずにやっていくというように聞こえてならないわけですが、電気料金を下げるということは物価にも相当影響をする。先ほどわずかに触れておりましたけれども、たとえば電気を一番食べるのはアルミ製錬、こういうものも、非常にアルミが高くなって不況になっているのですが、そういうことで、物価問題に対して責任を持たれる経企庁長官の御意見は、どうもただ安定供給だけではちょっと納得できない、もう一度ひとつお願いしたいと思います。
  79. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この点につきましても私がたびたび御説明申し上げましたように、原油の値下げは四月ぐらいからやっと三十ドルを超したばかりの輸入価格に下がってまいったところでございます。インボイスの価格が三十ドル、三十一ドル近くまでの輸入価格に下がってきたところでございまして、これから生じますところのC重油電力会社にだんだんと入ってくる、こういうふうに思います。  そういった意味で、燃料費及び円高の経済的な影響がコストにどのように影響するかは、これから電力会社の経理状況をよく見て判断する必要がある、こういうふうに申し上げたところでございまして、まだまだ、こういうふうに影響があったからこの程度料金は必ず下がるというところまで来ておりませんので、慎重な御答弁を申し上げているところでございます。しかし、考え方といたしましては、電力料金コストは下がる傾向にある。しかしながら、これを設備投資に用いるべきか、あるいは設備投資の中でも供給力の増加につながらない設備投資はどの程度あるか、この点を勘案して電力料金引き下げの問題は考えられる、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  80. 岡本富夫

    ○岡本委員 経済企画庁長官のいまの答弁を聞いておりますと、どうも非常に納得がいきにくいのです。この問題ばかりではどうもあれですが、電力料金コストを全部調べておるのは通産省なのです。私は昔商工委員会でずいぶんやったことがあるわけです。定率から定額に変わったときとかずいぶんやりました。燃料がこうでああで、要するに全部積算主義になっておるわけです。これができるのは、経企庁でなくして通産省だと思うのです。ですから、いま経済企画庁長官が輸入原油がどうなるとかあるいはまたどういうところに設備投資するとか言われましたが、こういうような検討は通産省でおやりになるのです。通産省でおやりになって、きのう山中通産大臣は年内にでも実施するというような非常に強い決意を披瀝しておったのです。  経企庁ではそういうことはできないわけですけれども、いまの答弁を聞きますと、どういうようにするかについてはこれからの問題だ、こういうことです。先ほど私が言いましたように、総理大臣は値下げせずに設備に回す、それで景気浮揚にする、それから通産大臣電力料金引き下げに踏み切る、ちょっと両方違うわけです。経済企画庁長官は物価の問題あるいはいろいろなところの所管大臣ですが、どちらの方を本当におとりになるか、もう一度ひとつお聞きしたいと思います。
  81. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 岡本委員御指摘のように、電力会社の監督はもちろん通産大臣が第一の主管官庁でございます。企画庁長官は、物価政策の観点からあるいは消費者保護の観点から協議を受けて、これを決定する権限があるというのが経済企画庁長官だと思います。そういった観点から見ますれば、物価政策の観点に最も影響いたしますのは料金引き下げの問題であることは言うまでもございません。これらの問題は、まず通産省からそのような判断が行われてくるかと思います。そしてまた私どもに協議がある、こういうふうに官庁の仕組みといたしましてはなっていると思いますので、その前提として、いま総理あるいは通産大臣との間に意見の相違がありますれば、その前に調整が行われてくる、こういうふうに私は考えておりますので、どちらにくみするという問題ではないような気がいたしております。
  82. 岡本富夫

    ○岡本委員 物価を担当する経企庁長官として、両方から話が出てきてから調整するのだというのじゃなくして、やはりここまで毎日のように新聞にも出るということですから、若干の見識を持って、そしてどうすれば国民生活にうまくいくのかということの検討ぐらいはなさっていなければならないと思うのです。  これ以上追及しましてもあれでしょうが、もう一遍、じゃ通産省の方から電気料金引き下げることができる、理由はこうだ、こういう円高輸入原油がここで見通してこうだということになれば、そういう協議があればあなたはそっちの方に向かわれますか。それとも、いや中曽根総理の言うとおりじゃないとだめだ、こういうように考えられますか。もう一度ひとつ伺っておきます。
  83. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、中曽根総理大臣も恐らく通産省とこれまで御連絡をとっていろいろ考えてこられたことだと思いますし、その後通産大臣が中東に行かれて、三年間は値上げはないと判断したという新しい事実を基礎にあのような御判断を示したものだ、こういうふうに私は見ておるわけでございます。  これらの問題について、やはり政府の中においても慎重な討論が行われて、また検討が行われて、そしていずれの方向にいくのか。いま申しました長期安定料金の観点から決められる。物価政策上の観点から見ますれば、料金引き下げの方が簡単でわかりやすい、しかし、設備投資も大変大事な経済的な必要性のある現状だと私は思いますので、その点どちらがいいか、これはまた慎重な検討と、さらにまたどのような設備投資をされるのか考えなければならないと思いますし、そしてまた独占会社、公益会社の性格から利益が過大であってはおかしいと思いますから、そこに料金の問題がくる、そのような総合的な観点から決められるべきだと私は思います。
  84. 岡本富夫

    ○岡本委員 総理と通産大臣の意見が違うわけですから、これにいまなかなか閣僚として口は挟みにくいと思いますので、これくらいにしておきましょう。  きょうは、実は訪問販売あるいは割賦販売の法改正について少し質疑をいたしたいと思うのです。  訪問販売は、住居において消費者がいながらにして商品を購入できるというメリットがあり、その反面、販売形態が無店舗であったり、その販売方法に無責任あるいは強引あるいはまた詐欺的なもの、そういう面が出てきておる。特にわが党では、これは衆議院ですが、訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案を提案しているわけですけれども、実は私が調べましたところ、東京都の消費者センターの資料によれば、訪問販売に対するところの相談件数が五十四年には二千二百八十五件、五十五年には三千百五十三件、五十六年には四千三百二十八件、こういうように急増をいたしておるわけです。  非常にまじめにこういった訪問販売をやっている会社があり、またそれが消費者にとっては非常にいい。しかし、その反面、こういった法の不備につけ込んでいろいろな問題が起こってきておるというのが現状ではなかろうかと思うのです。それで、私どもも実は何ぼか買ったことがあるのですけれども、そういうものを見ますと、悪質な販売あるいはまた詐欺的な問題、こういうものをいまから法規制をしてちゃんとしておかないと、今後もまじめな人たちが損をするし、またそれにひっかかった消費者は非常に不愉快なことでありますので、きょうはこの問題を取り上げて質問をいたしたい、こういうように思います。  そこで、最初に訪問販売法の規制対象。実はこういうことがあるのです。  これは新聞報道によりますと、「訪問販売、割賦販売の勧誘の特徴の一つは、手がこんでいること。」北関東の高校を卒業したあるお嬢さんが銀行に就職しておったところが、うちにいますと、最初パーティーへの参加を誘う電話が来た。地方から来たヤングばかりの誕生パーティーがあるので参加しませんか、そして参加手続を教えるからと言って喫茶店へ呼び出された。ところが、パーティーの話は少しであって、あとは世間話で、二、三日たってまた呼び出されて、今度は教材会社の応接室へ連れていかれた。それでさんざん教材の宣伝をした後、購入を断ると、上司と称する年配の男が出てきて、彼がこれほど親切に説明しているのにあんたの態度は何だ、こういうようにして、このA子さんはその場を逃げたい一心で契約書にサインをしてしまった。ところが、この契約した相手は、商品の製造、卸の業者、アフターサービスする会社、それから運送会社、さらにクレジットの支払いが別々、こういうようになって、実に五つの企業がこれに絡んでおる。こういうような実例が出ておるわけであります。  したがいまして、規制の対象、路上販売、呼び出し販売、中には催眠商法、こういうことがあるのですが、これに対するところの通産省の考え方はいかがですか。
  85. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 訪問販売の規制の対象でございますけれども、現在の訪販法では「販売業者が営業所、代理店その他の通商産業省令で定める場所以外の場所において、売買契約の申込みを受け、」云々、こう書いてございまして、現在の考え方といいますのは、通産省令で定めている場所というのは営業所、代理店その他若干ございますけれども、そういったところ以外で売買契約の申し込みを受けあるいは締結をする、これはもう訪問販売に入るわけでございます。したがいまして、いま御指摘のような呼び出し販売とかキャッチセールスとか、そういったものは訪問販売法の規制の対象の中に入っているというふうに私ども考えております。
  86. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、その対象の中に入っておるわけです。ところが、セールスマンの契約勧誘活動あるいはまた契約締結の手続について規則が非常に不十分ではないか。たとえば具体的には、訪問販売するところのセールスマンの住所氏名を相手に明示しない、それをしなくてもそれに対して罰則がない。また、契約内容、商品自体にかかわる重要事項の書面及び口頭での告知義務、こういうものが非常に不十分であるが、先ほど話がありましたように、そういう不実のことを告げる行為の禁止規定がない。  たとえば、こういうケースがある。ある家に訪ねてきたセールスマンが、御主人の勤め先と家の位置が方角的によくない、実印、銀行印、認め印の三本セットを買えば運が向くと言って、一セット二十万円の印鑑を売りつけた。しばらくして今度は、なでれば幸福になるという大理石のつぽを持ってきて売りつけた。こういうような不実のことを告げたり、あるいはまたセールスマンの氏名を明示して、相手に具体的なことを伝えることをしなければ違反という罰則規定がない。私は、ここに一つの問題があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  87. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 いろいろなことを言ってだますような商売があるので大変困るのでございますけれども、御指摘のような、たとえば業者の氏名であるとかあるいは商品の種類であるとか、そういったものにつきましては、訪問販売の場合においては書面の交付義務というのが課してございまして、その内容まで通産省令で定めているわけでございます。そういう意味で、いまお話しのようなつぼをなでるか何かすると幸福がもたらされるとか、そういったところまではちょっと法律の規制にはなじまないのではないかと思いますけれども消費者としての良識を持って判断してもらう、その場合の判断に必要な事項というのは、書面の交付義務というところで果たしているつもりでございます。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういった不実なことを告げる行為に対する禁止規定はどこにありますか。
  89. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 書面の交付義務というのは法律上の義務でございますから、これに反した場合には罰則の適用がございます。それからまた、たとえばクーリングオフの規定というのがございますけれども、こういったものにつきましても、自由な解除ができる、要するにクーリングオフというものが働くんだということを故意に隠したりいたしますと、このクーリングオフというのは通常でございますと四日間でございますけれども、これが永久に解除できるというようなかっこうで、事実を告げなかった場合には逆に業者に不利になるような手当てをしているところでございます。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 たとえば、相手に私はこういう者だということを、セールスマンが自分自身の氏名を明確に伝えない。しかし、伝えなくとも、それに対して、それをしなかったからといって罰則はないでしょう。いかがですか。
  91. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 おっしゃるように、氏名の点につきましては、これは氏名を告げなかったということが、後で告げなかったか、告げたかということの立証が困難ということで、この法律を準備いたします途中で、それは罰則になかなかなじまないのではないかという議論がございまして、氏名の明示義務に対しては罰則はついておりません。
  92. 岡本富夫

    ○岡本委員 実は会社へ電話したりいろいろしましても、だれかわからないというのがずいぶんあるのですね。この辺も消費者を保護する一つの例として――また、まじめな者が損をしておるのですよ。うちの母親でも、訪問販売が来るとすぐ閉めてしまう。ですから、結局訪問販売といういいシステムが生かされなくなってくるのです。ですから、非常にまじめな人はきちっと名前も言い、きちんとしてやっているわけですけれども、一部でそういうことをしなくても平気だという、そういうことで、いま法改正をする、あるいはまた規則を変えてきちんとしておくことで正常な経済活動ができるのではないか。だから、このくらいのところは、このくらいのところはというような簡単なことではいけない。  それから、消費者の判断によるのだ、こういうようにおっしゃいますけれども、先ほど私が一番最初に事例を挙げましたね、ちょっと催眠術にかかったような。このときはとてもそういった判断ができないわけですよ。ですから、次からはもう絶対に訪問販売は買わない、結局自分で自分の手を縛る、こういうところが一つの問題であろうと思うのです。ですから、きちっと決めることは決めておく、違反すればそうなんだということになれば正常な経済活動ができるのではないか、こう私は思うのですがいかがですか。
  93. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のように、法律の規制で十分手が及んでいないところがあるわけでございますけれども、いまの法律の立て方としまして、たとえば訪問販売の場合には、書面を交付する、その書面の交付の内容につきまして、いま御指摘のような販売業者の氏名とか名称とか、そういうところまで一応書面の中には義務として入っているわけでございます。  ですから、御指摘のような催眠商法のようなものにつきましてどういうかっこうで対処するのがいいのか、なかなかむずかしいと思いますけれども、これも先ほど申し上げましたように、訪問販売の規制対象の中には一応入っているわけでございますから、この現在の訪問販売法の規制の条項を生かしてできるだけ対処してまいりたいと考えているわけでございます。  裏返しに申しますと、そういった催眠商法のようなものについて、法律で規制をすることでどの程度まで効果があるか。要するに、良識と申しますか、判断が怪しくなっている状態についての取引について、いまの訪問販売法では、クーリングオフの規定などを設けまして、ある期間の間なら解約ができるという手当てまでしているわけでございますけれども、それ以上に果たしてどういうかっこうで規制をすれば効果が上がるのか。いまの段階では、私どもは、こういう方法がたとえばいまの催眠商法に非常に効果があるというところまでについて十分結論を得ておりませんので、今後とも、どういうかっこうで規制をするのが効果があるのか、また法律になじむのかということについては勉強してまいりたいと思っております。
  94. 岡本富夫

    ○岡本委員 直接通産省の方に消費者の方から、局長さんやあなたのような偉い人のところには来ない。どこへ来ているかといいますと、各県あるいは市に消費者センターというのがあるのですが、そこへみんな苦情が来るのです。そうしてその苦情をまとめて、こういうことがぐあいが悪いということであなたの方に――あなたの方に吉岡という課長補佐がおるはずです。この問題は、いろいろ細かいところで、こういうことはぐあいが悪いということをあなたの方に何遍か陳情し、あるいはまた話し合いをしておるはずです。もちろん何年もずっとやっている。僕はよく調べましたよ。ところが、通産省はほうってあるということです。検討中、検討中、いまのような答弁がずっと続いておる。その間に毎年毎年被害者はふえていく。それで、こういった訪問販売は受け付けない、こういうことになって正常な取引もできなくなっているということがここに明らかになっているわけですね。  ですから、過酷なようであるけれども、きちっと決めるべきことは決めておく。しかし、それによって今度はまじめな人は得をする、こういうようにするのが法治国家じゃないかと私は思うのです。だから、あえて私はこの問題を当委員会で提起したわけです。いま、検討する、消費者センターに対して言うことと同じことじゃ困るわけですけれども、実際に検討していただかなければ困る。  そこで次に、訪問販売法の規制対象の指定商品というのがあるわけです。一つの例をとりますと、自動販売機というのはないわけです。自動販売機、どんなのをつくって売ったかといいますと、五百円だけ使える自動販売機を買ったところがあるのです。ところが、五百円というのはそんなに出てこないですね。ほとんど百円とかあるいはあれでしょう。ですから宝の持ち腐れ、ずっと置いているのです。これは四日間で解約できなかった。五百円が出ると言って渡辺大蔵大臣のときにずいぶん宣伝したものですから、五百円が使えるようにと思って買ったけれどもどうもならない、それでどうしようもないというような例があるわけです。  この規制対象の指定商品、こういうものも通産省で全部調べるわけにはいかない。特に、まだ行政改革はできていないのに、行政改革で規制は困るなんという人がいましたけれどもね。したがって、こういうのは消費者センターあるいはまたその権限を都道府県知事におろすとか、実際に消費者とそういったトラブルが起こっているところに適切にやれるような法改正を考える必要があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  95. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 消費者の苦情というのは、御指摘のように都道府県でも受け付けておりますけれども、通産省本省にも消費者相談室というのを設けておりますし、それから各通産局にも消費者相談室というのを設けておりまして、そこで、処理について特に法律的なあるいは行政的に配慮が必要なものにつきましては、担当の課長なり私の方に参ることになっておりまして、そういう意味では、具体的な問題についてできるだけの努力はしているつもりなのでございます。  御指摘の自動販売機でございますけれども、自動販売機の売買というのは訪問販売でなされるというのは余りないように私ども理解をしております。むしろ割賦販売で、何カ月かにわたって分割払いをする、そういうことで、法律としましては割賦販売法の指定商品にいたしておりまして、そういう意味で、これによって規制の効果というのはかなり上がっておるのじゃないかと思っております。現実に訪問販売で絶対ないかと言われると、これは商売でございますからあるいはあるのかもしれませんが、いまのところでは、訪問販売法での指定商品というのは、「主として日常生活の用に供される物品のうち、定型的な条件で販売するのに適する物品で政令で定めるもの」こういう書き方をしているものですから、いまのところ、訪問販売法の指定商品にするのは適切とは言えないだろうというふうに考えているわけでございます。ただ、今後もしもこういった自動販売機のようにかなり高額のものについても現金取引で行われるということになれば、「主として日常生活の用に供される物品」ではないようですから、法律の改正も行いまして、手当てをすべきだというふうに考えております。  いまのところは、繰り返しになりますけれども、大体自動販売機などを売りに回る人は、一遍に金額をたくさん払えということじゃなくて、どうせ分割払いでいいのですということで店先なり何なりに置かしてもらう。そして御指摘のように、これは五百円玉だからうんと利用されると言っておいて違っておったということがあるのだろうと思いますけれども、これは割賦販売法の対象でございますから、割賦販売法で必要な規制は行われる。  御指摘のように、商売がうまくいくよといって、三カ月くらいたってみて初めてこれはどうも商売になじまなかったと言われましても、これはおっしゃるようにクーリングオフの期間は超過をしているわけでございます。そういった長いことやってみないと結果がはっきりしないようなものについてまでクーリングオフを適用するのがいいかどうかということになりますと、これはまた別の問題がございますので、いまのところは、自動販売機につきましては割賦販売法の規制で大体手当てができているのじゃないかというふうに考えるのでございます。
  96. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたの言うことはちょっと現実離れしてますよ。机の上の計算だけでありまして、私の妹も実はこの自動販売機買いました。私の友だちも買いましたよ。そしてこうだ。現実に私は見てきてあなたに説明をいたしておるのですよ。  それから、割賦販売法で全部取り締まれるというのだったら、現金で払った場合はどうなるのですか。割賦販売と違うじゃないですか。現金で払うとこんなに安くなるのだ、割賦販売になるとこれだけ金利がつくのです。たとえばおなべ、実はこの間、うちも買ったのです。十七万のやつが割賦販売でやると二十五万くらいになるのです。こんなたくさんの金利を払うのだったら現金で買った方がましだ、こういうことになっているのです。ですから、これは割賦販売法に入らない。ということになると、あなたのいまの答弁を聞いていると、むちゃくちゃな毎日毎日起こっているところのトラブルはなるべくもっと助長しようという考えを持っておるのじゃないですかと言わざるを得ないのです。  ですから私は、正常な取引ができるようにきちんと一つずつやっておいたらどうですかということです。いまのところ検討する必要はないということでなく、これもあなたの方へ消費者センター、各都道府県からあるいは市から皆来ておるはずなんです。もう一遍ちゃんと検討しなければだめですよ。
  97. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のようにいろいろ消費者苦情が出てまいりますと、先ほど申し上げましたように消費者相談室あたりを経由いたしまして、担当部局でどういうかっこうの規制が妥当かというのはいろいろ検討しているわけでございます。ただ、御指摘のように、それでは意に満たないと言われる向きも多々あるわけでございますから、今後ともできるだけいろいろな方々の御要望に沿えるように検討してまいりたいと思います。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから、たくさん残っておるのだけれども、売買契約とそれからクレジット契約、これが抱き合わせになっているわけですね。ですから、もしもその購入した商品が悪くとも、クレジット、すなわち信販会社には金を払わなければならぬのです。ここで非常にトラブルが起こっておる。それで、民法五百三十三条では、買った人が、要求したものがだめなものだった場合は支払いをしなくていいということが決まっておる。ところが訪販法、訪問販売のこのなにを見ますと、そういうふうになってないのですね。ここらも一応検討して、ちゃんと法改正しなければならぬじゃないですか。
  99. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 ただいま御指摘の問題は、特に最近指摘の多い個品割賦あっせんの問題だろうと思います。御指摘のように個品割賦あっせんの問題になりますと、商品の売買契約とそれからそれの支払い、決済に関する契約とが当事者が違うものですから、御指摘のような抗弁権切断の問題が出てまいります。これにつきましては、私どもも、何とか法律上の手当てが必要である、何とか手当てをいたしたいと考えておりまして、昨年の六月以来、消費者信用産業に関する懇談会というのを設けまして、消費者信用に係る問題点の幾つかについていろいろ検討していただいておるわけでございますけれども、これがもう恐らく来月には結論が出ようかと思います。その結論を尊重いたしまして、必要な法的手当てをいたしたいというふうに考えております。
  100. 岡本富夫

    ○岡本委員 それからもう一つ。この契約の書類を見ますと、抗弁権といいますか、裁判は、東京の商品なら東京の裁判所でなければだめだ、こういう明示がある。しかし、関西あるいは九州で買った者は東京まで、その裁判所まで来れないですよ、これは。実はこの条項は消させるべきだと私は思うのです。いかがですか。
  101. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のように、裁判管轄の問題は後の被害救済の問題では大変重要な問題でございますので、割賦販売につきましては、私ども割賦販売協会を指導いたしまして、割販協会で用います場合の約款につきましては、御指摘のように、裁判管轄についてその被害者の場所でも申し立てができるというような指導をいたしているところでございます。ただ、これは割賦販売についての指導をやっているわけでございまして、それ以外の問題についてどうするかということについては、いまの割販についても行政指導でやっているわけでございますが、これについてはどういうあり方がいいか、もう少し勉強いたしたいと思っております。  ただ、これは購入者と販売者の合意で裁判管轄が動かし得るということになっておりまして、通常の取引約款、たとえば保険でございますとか運送でございますとか銀行でございますとか、そういう取引の場合には当事者間の合意で、その企業の本店のある場所をもって裁判管轄とするというふうに、いま御指摘の方向とは逆の解決がなされているケースが多いようでございます。それだからそうしろということを申し上げるわけではございませんで、私どもは、そういうケースがかなりあるけれども、できるだけ消費者の訴訟提起がしやすいような方法というものを御指摘のような方向で検討してまいりたいと考えております。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 きょうは検討ばかりで、話にならぬけれども。  それからもう一つは、割賦販売法等の法令を遵守しないようなそういう業者、苦情がよく出るところの販売会社名の公表制度をつくってもらいたい。これも消費者センターからあなたの方に全部出ている。それに対しては検討、検討ということで、ずっと検討をほってあるのですね。こういうことをしませんと、まじめなところは損をするのですよ。その制度を設けますか、どうですか。
  103. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘の悪質業者の氏名の公表というのは、おっしゃるように大変有効でございまして、私どもも、たとえばマルチ商法の業者につきましては氏名公表をやりまして、大体業者を一掃した経験がございます。それからまた、最近でも、海外先物商品の取引に関しましてなかなかよくない業者があるものですから、これについても公表制度をやろうということで、いまいろいろ準備をいたしております。  御指摘の訪販業者の問題につきましても、本年度からこういった公表制度につきまして、予算がつきましたので、これを運用して措置をしていきたいと考えております。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、消費生活用製品安全法に基づいて製品安全協会というところのSGマークといいますか、これの指定品目が現在五十二あるそうでありますけれども、ということは、事故が起こったときのそれに対する被害者救済制度、私は、実はこれ、恥ずかしいんだけれども、見せないとわからぬものだから持ってきたんです。  こういうもの、これも何かアメリカの版の権利を取っているらしいですね。非常につやがある。ここに、きょうは持ってこなかったけれども吸着盤、こうくっつけるあれがある。ところが、下がつるつるしてないですね、おふろ場というのは。だから吸着盤はだめなわけで、これが滑って、ずいぶん子供がけがしたりあるいは大人が横のガラスで手を切った。ある消費者センターからこの業者にやかましく言いまして、それからは、これはおふろ用のマットとは違います、おふろのところへ張るのですというように宣伝を変えてこのごろ売っているわけです。しかし、そうしてこれを買って滑ったお子たちやそうした人たちは頭を六針くらい縫うているんですね。これは何の補償もないわけですよ。  ということで、こういうSGマークの品目をふやせるように、それは通産省でこういうことを一々できないと思いますので、消費者センターでこういう苦情があったり何かしたときには、どこかでチェックして、最初にこういうふうにならないように、被害を受けないような方法がないだろうか、こういうことなんですが、いかがですか。
  105. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のような問題につきましては、消費生活用製品安全法で二つの取り組みをいたしておりまして、御存じのように、特定製品ということに法律に基づいて指定をしてしまう。それからもう一つは、業界を指導しまして、業界の自発性、自主性に基づいて、先ほど御指摘のようなSG製品にする、この二つの取り組みがあるわけでございます。特に危険度が高くて、基準に反したようなものが売られると非常に問題だというものは、これは特定製品ということで、国が一方的に指定をするわけでございますけれども、御指摘のようなSG製品、認定製品につきましては、これは業界団体と製品安全協会とがいろいろ話をいたしまして、SGマーク対象にして、そして御指摘のように、被害があった場合の保険による救済という制度がなされているわけでございます。  危険が出そうだ、危険がかなりありそうだというものにつきましては、主としてこのSGマークを所掌しております製品安全協会が業界団体と話をいたしまして、対象をふやしているというのが実情でございます。御指摘のような商品につきましては、私どもも製品安全協会に話をいたしまして、製品安全協会が業界団体と話をして対象にするようにいろいろ勧誘をする、そういう仕組みになっておりますので、御指摘のような消費者団体なりあるいは国民生活センターなり消費者センターなり、そういうところで議論がありました場合には、製品安全協会との連携をよくとるように今後話をしてまいりたいと考えております。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 だから、こういう新製品、いろんなものができたときは、やはり消費者センターあるいはまた安全協会とちゃんと連絡をとってからでないと販売しない。事故が起こってからさあ大変だということでは遅い。これも相当あっちこっちで事故が起こっているんですね。これは業者の方は知らぬ顔している。ただ消費者センターの方からやかましく言うて初めて、これはマットと違いますというように変えておるわけですね。ですから、経済活動も必要でありますけれども、後でこういうことが起こらないような何らかの方法を、一般消費者に販売するものについてはやっていく、こういうようにひとつやってもらいたい。  最後に、コンニャクの問題をちょっと。これは調べますと、コンニャクというのは、原料はIQ物資になっておるわけですね。ですから、農林省が許可をしないと輸入できない。私も調べますと、昨年の大体三倍の値段になっておる。それが結局消費者にはね返って、水増しのコンニャクを卸す。こんなのはすき焼きに入れたら水ばかりになってしまう。しかも高い。昨年の台風の影響によってコンニャクが二十キロ当たり大体十三万円ですか、前の価格の三倍に高騰を続けておる。  そこで、業界の方からは七百トンの輸入をするように農林省の方に申請があったそうであります。その後も第二次として千トン、第三次として千三百トン、こういうように業界からも農林省の方に申請が出ておるわけですけれども、七百トンの輸入したコンニャクの原料、二十キロ袋、これを全国の練り業者に平均して渡すと二袋しか来ないというのですね。二袋くらいで価格を下げることはできないというのです。ですから、こういうことはすでに御承知だと思うのですが、この点についての農林省の見解あるいは対策をお聞きしたい。
  107. 鈴木一郎

    ○鈴木説明員 コンニャクの原料価格でございますけれども、ここ数年需要が低迷しておりますし、また在庫が過剰でございまして、価格が低迷しておりましたところ、昨年八、九月に台風がございまして被害があったために、五十七年産のコンニャクは非常に減産になりました。その結果、先生指摘のように、価格が高騰してまいりました。  緊急対策といたしまして、先ほど御指摘のように、三月十五日に七百トンの切り干し、コンニャクイモでございますけれども、これの輸入割り当てを公表したわけでございます。そのコンニャクにつきましては、外国で、インドネシアあるいはビルマ等の産地に自生しております、そういうものを掘り出しまして、日本に入れるということで、第一船が入ってまいりまして、昨日通関をいたしました。これをさらに加工いたしまして、国内に、糟粉と申しますけれども、粉にして配るという手順になります。  そういう割り当ての影響もございまして、いまのところ価格は安定してまいっているというふうに考えております。今後、逐次その七百トンの割り当てによるコンニャクの切り干しが輸入されてまいりますので、一応価格は安定してまいるのではないかというふうに考えております。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなた、実態を調べたかな。実態を調べますと、七百トンの輸入だったら、先ほど言いましたように、二十キロ、大したものではない、それを、練り業者は約三百軒あるのですか、二袋しかならない。それで価格が安定するだなんて、そんなあほなことありますか。一カ所にいったというのだったらこれは話わかりますよ。  それで、いまどんなことが起こっているかといいますと、中間業者がずいぶん隠しているのです。大体、製造業者と精粉業者と生産農家でこんにゃく協会をつくっておるわけですね。そのために、あなたの方ではっきりしないものですから、いまこんにゃく協会の中で、もう製造業者なんかそこから離れたいというような内紛まで起こりかけている。それで、七百トン入ったら十分値下げができて、需要を満たせますか。いかがですか。
  109. 鈴木一郎

    ○鈴木説明員 コンニャクにつきましては、こんにゃく協会の方でも在庫を持っておりまして、それを昨年来放出してまいっております。それとあわせて、ただいまのような輸入割り当てをいたしました。私ども計算では、大体二万袋ぐらいになると思っております。業者の数は三千五百軒でございますので、大体六袋ぐらい一軒当たり行き渡ることになるのではないかと思っております。  いま申し上げましたように、価格については最近のところ安定してまいっております。これで十分かどうかということになりますと、今後の輸入の状況、それから業界のそれぞれの原料の流通の状況などを見ながら、判断してまいりたいというふうに考えております。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょうど前のあの狂乱物価と一緒なんですよ。抱え込んでしまって、それで値上がりを待ってから放出しようというような精粉業者、これをみんな怒っているわけですよ、各製造業者が。ですから、少しよけい輸入すれば価格はさっと安定するわけなんですよ。あなたの方の安定というのは、高くするのが安定なんですよ。農林省は高くするのが安定か知りませんけれども、高くなると、コンニャクを食べる者はどんどん少なくなってくる。そうすると、製造業者は困るからどんどんつぶれていく、こういうことになるのですよ。したがって、その点の調整というものは非常にむずかしかろうと思いますけれども、高値安定をさせてしまわないで、消費者のことを考え、コンニャク離れを防ぐためにも、やはりある程度の手を打たなければならぬと思うのです。  それで、もう時間がありませんから、経企庁長官消費者の立場から、これはコンニャクだけじゃなしに、まだあと昆布もあるのですよ、たくさんあるのです。こういう問題を見ていただいて、勧告をするなり、あるいはまた消費者の物価安定のためのいろいろな手当てがあろうと思うのですが、それに対して、経企庁長官、これも初めて聞いたような顔をせずにひとつ……。
  111. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、消費者の一人でもございますし、また企画庁長官といたしまして、消費者行政の所管大臣でございます。消費者センターは、企画庁の所管だと私は考えております。これらから上がりますところの情報は、十分に私ども取り上げて、そしてこれが行政の中に生きるようにやっていかなければならないと思います。どちらかといえば、各省は生産者側、産業側の立場でございますので、私どもはその間の事情を十分考えながら、消費者の立場に立って、いま御指摘のような点について、特に消費者の啓発、賢い消費者になるように努力をしていきたいと考えております。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 あと三分あります。それで、農林省に要求をいたしますけれども、こういう原料がパニック状態になったわけですから、これで終止符を打つために第二次の千トン、それでもまだ上昇する、それから消費があるということを見れば、あと千三百トンの輸入を何とかしてもらいたいというのが、蒟蒻協同組合からの、製造業者からの要求なんです。それに対して、そういうことを検討し、またやる気があるのか、これをひとつお聞きして、終わりたいと思います。
  113. 鈴木一郎

    ○鈴木説明員 状況は先ほど申し上げましたようにいま第一船、これが七十七トンでございますが、入港したばかりでございます。そういう点で、今後、輸入割り当てを済ませましたものについての入港といいますか、輸送をできるだけ急がせるということを考えておりますが、なおそれをもってしても価格が安定しないという状況でありましたらば、さらに追加割り当てなど検討してまいりたいと思います。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは終わります。
  115. 土井たか子

    土井委員長 林保夫君。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 御苦労さまでございます。  大臣に二月九日のごあいさつのことで聞くのはちょっとまだ早過ぎるきらいもありますけれども、御承知のように、国際情勢が大変変化する時代のさなかにございますし、エネルギーの問題一つとりましても、十年目の節がどうやら来ているような感じもいたします。したがいまして、私の認識といたしましてはよくなるだろう、少しよくなったかなという景気の問題、実際にさしで企業へ入っても家庭へ入りましても、何かきりきりいうような問題、もちろん減税が一向に実現しないとか、いろいろ問題がございます。しかし、それはそれといたしまして、前途真っ暗にしてしまっておってはどうにもなりませんので、きょうはマクロ的に、経済見通しあるいは家計を取り巻くいわゆる国民生活の問題につきましてお話しさせていただきたいと思うのですが、まず、大臣は現状をどのように認識され、展望を持っておられますか、その点から伺いたいと思います。
  117. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 経済の見通しにつきまして、たびたび申し上げましたが、一口に言えば、三年間長雨が降り続いておりますところの不況のもとで、いま大変厳しい状況にある。しかしながら、海外経済の好転によって明るさが増しつつある、またそれを促進するものは原油の値下がり、円レートの安定、改善、さらにまた利子率低下の方向、これらの方向の中に明るさがあるかと私は思います。  しかしながら、何といっても世界全体で三千二百万人の失業がある、構造的な問題を含んでおります世界経済の中に巻き込まれております日本でございますから、日本の経済はどんな国よりもファンダメンタルズにおいてすぐれているといっても、このような影響から逃げ切れない。特に、アメリカの高金利の影響を受けまして、若干明るくなっても、これがかつてのような明るさあるいは成長率を示すということはなかなかむずかしい、これが状況だと思います。そのようなもとで、所得水準の上昇もなかなか大きくない今日でございますだけに、国民生活の面においても、確かにまだまだ明るさよりも厳しさの方が強いような状況であろう、こういうふうに見ております。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣は、この間、五十八年度の経済運営に当たって、三つの柱を立て、これを具体化してまいりたいという御決意でございましたが、九十八通常国会ももうあとわずかでございまして、大臣言われている第一の柱で「国内民間需要を中心とした経済の着実な成長の実現」とうたっておられますが、これは具体的にはどういうものが出てきましたでしょうか。景気対策も一応出ておりますけれども、国内の民間需要の振起という点ではどういう手法をこれからもとられますか、ひとつ具体的にお答えいただきたいと思います。
  119. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 貿易摩擦等の声が私どもの周辺にあります今日では、やはり経済成長の最大の柱は内需の喚起であることは言うまでもございません。その方向といたしまして、私どもは、住宅投資、そしてまた設備投資、さらにまたおくれた社会資本の整備等、これらの内需を振興することによって経済を活性化して、そして国民の所得を上げていって、そのことによってまた消費支出の増加によって経済を支えていく、こういった方向が今後しばらくの日本の経済政策の方向ではないかと私は思うのでございます。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 事務当局からでも大臣からでも結構ですが、大臣いまおっしゃいました設備投資の振興といいますか、これはなかなかむずかしいのです。口先だけでなくて、どういう手法でこれを振興させるかというのを伺いたいと思います。
  121. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 確かに、最もむずかしいのが、林委員御指摘のように現在の状況では設備投資ではないかと思うのでございます。私どもの五十八年度の成長率三・四%の中で相当のウエートを占めておりますのが、前年度に比べて実質三・九%伸びると見ておりますところの設備投資の面でございます。これがなかなかむずかしいのは、現在の世界的不況の影響による問題が一つ、さらにまた、それによって需要が伸びないために起こっておりますところの設備過剰の傾向が第二の大きな問題になっている、こういうふうに私は思うわけでございます。  しかし、下支えには更新投資を含めて、あるいはまだまだ省エネ投資もやりたい、こういう要求が強いわけでございますし、新しい先端技術等の新技術の開発のための投資の要求はなかなか強いわけでございます。しかし、軽・薄・短・小というような言葉があらわされておりますように、膨大な設備投資が要るような産業がだんだんなくなってきたこと、それともう一つ、一番大きな問題は、これは私の見るところかもしれませんけれども、金利が下がると思っておりましたほど下がっていない。  私もいつも言っておりますのですけれども、経済の名目成長率よりも確定利付債券の名目金利の方が高い、こんなことでは、冒険を伴う設備投資をだれもやることがない。むしろどこかに金を貸し付けて利息を取って、安易に、拡大と申しますかもうけた方が、企業収益を増大した方が楽だ、設備投資はむしろ背任罪だ、こんなような声がありとしますれば、これは大変残念なことでございます。  しかしこれは、アメリカがインフレ対策のためにとったタイトなマネーサプライの結果生じたことと、財政赤字が貯蓄率を超えて大きいために高金利をとらざるを得なかった、この影響を受けてきた経過的な、不自然な姿だと私は思います。いずれこれは直さなければ、どんな国でも、経済は正常なる姿に戻って健全な成長を遂げることがむずかしい。  いずれは、名目成長率の方が名目金利よりも高くなることを信ずるものでございますし、日本は逆に貯蓄過剰の国で、アメリカの貯蓄不足とは違った経済状態でございますだけに、この方向は早目に実現しないと、いまのように国に貸し付けるか消費者金融の方に金を貸すしかないというような状態、これは、正常なる、冒険的な社会の開発をやっていくところの設備投資を大変抑えていることになると私は思いますので、これは近いうちに修正されるものだ、金利の低下は図られるものだ、こういうふうに信じております。
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 大変学殖のあるところで、私も全く同感なんでございますけれども、設備投資をやろうといたしますには、先が明るい、いまやらなければいかぬ、こういうものでなければならぬと思いますので、長官のおっしゃるような金利の問題そのほかいろいろあると思うのですけれども、結論から先に申し上げますと、行政なり政治なりの先の構図といいますか、スケッチをある程度大胆にやってもらわなければならぬ。  かつての経済安定本部時代の計画的なビジョンというものはなかなかつくりにくいと思いますけれども、なおそういう視点で来年どうなるのか、再来年どうなるのか、あるいは当面下半期はどうなるのか、うそでもとは言いませんけれども、かなりのものをこれから出していただかないと、これくらい冷え込んでしまったら、そしてまた近隣がかなり倒産しているという現実、統計上上がってくるものもございますし、上がってこないものもございまして、長官御承知のように大変深刻な状態が出ております。その点をひとつきょうはお聞きしたいなと思ってもおったわけでございますけれども、いろいろございますので、また後でお伺いしたいと思うのです。  たとえば、第一の柱の国内民間需要を起こすということの第四に「基礎素材産業や農林水産業、中小企業については、構造政策的な観点を取り入れながら、活性化、経営の安定化を図るため、実情に応じた対策を実施することであります。」とここに出ておりますね。まさにはいそのとおりでございます、やらなければいけませんというのは一億一千万人みんな言うのでございますけれども、具体的にこれがどういう手法としてあり、予算の裏づけが組まれ、そして基礎素材産業の振興、あえて言えば、実際に大臣できますか、そういう問題もございます。それから農林水産業もこれまた同じようなことであります。私がいま取り上げた、大臣これに言っておられるけれども、本当にやらなければならぬ問題なんですが、現在の行政手法としてとりあえずどういうものがあるか、事務当局からお答えいただきたいのですが、いかがですか。
  123. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 ただいま先生指摘の、構造的な問題を抱えておる基礎素材産業あるいは中小企業等に対する対策でございますけれども、先般四月五日に、政府といたしましては、今後の経済対策ということで総合的な対策を決めたところでございます。その経済対策の中で、基礎素材産業につきましては、すでに成立を見ました特安法を中心といたしまして構造対策を進めるということを決めておりますし、中小企業につきましては、金融面等について十分な配慮をするということで進めているところでございます。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 農林水産業では何か際立ったものがございますか。
  125. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 四月五日の経済対策におきましては、特段農林水産業についての対策を決めておりませんけれども先生御案内のとおり今年度の予算におきましても、農林水産業につきまして構造的な改善を含めていろいろ予算措置を講じているところでございますが、その線に沿って現在進めているというふうに承知しております。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 それで大臣、手の打ち方がぬるいとかあるいは規模が大きい、小さいという議論はいろいろあるわけです。そこらあたりを年間を通じまして、私どもの要望としては、こういう国内情勢でございますので、きっちり手を前向きに前向きに打っていただく、企画庁はその監督と促進の役を任じていただきたいのでございます。  ここに出ておりますような、こういうことによって「実質で三・四%程度の成長を達成するものと見込んでおります。」これについては、一月二十四日でございまして、まだ予測は早うございますけれども大臣、いまどういう感触でおられますでしょうか。
  127. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 四月から五十八年度が始まったばかりでございますので、いまこの実績等が明確ではございませんだけに見通すことはむずかしいのですけれども、私は三・四%程度の成長は達成可能である、こういうふうに考えているのでございます。  その原因の一つは、もうすでに御案内のように五十七年度は三・一%と下方修正いたしました。昨今では、当初見通しと実績との乖離、いずれも当初見通しよりもはるかに下の実績しかなかったのでございます。場合によっては実績見通しすら達成できなかったことも多いわけでございますが、今度の三・一%の五十七年度見通しは達成できるというふうに見られております。それは、五十七年の十月―十二月の国民所得統計速報から見て、仮に五十八年の一―三月がゼロであっても、三・二%程度の実質成長率になるではないか。そういうことになりますと、五十八年度の基礎となりますところの土台は固められた。いつも土台が下がるものですから、それが達成できなかったというのがこれまでの下方修正の大きな理由であったといたしますれば、五十八年度について、これまであったような土台が下方修正になるということがないということが、五十八年度の経済成長の見通し三・四が達成できるというまず第一の大きな根拠になりはしないかと思うのでございます。  それからまた、五十八年度の三・四%の策定の際の去年の十二月ごろの数値に比べて、いろいろ新しい、明るい兆しが出ておることはもうここでたびたび御論議があったところでございます。一つは、在庫調整が非常に進んできました。それから第二は、世界経済の回復に伴って輸出が下げどまりをしてきた。十四カ月も下げ続いていたのが下げどまり、信用状から見ますと、四月からむしろ上昇の気配になってきた。こんなようなことが輸出の面に出ておりますし、それから、たびたび出ておりますところの原油の一バレル五ドルの引き下げは、私どもの見ておりました原油値段よりも一五%は低く出ておる。これが国際収支の改善、企業収益の改善に大きく影響することはもちろんでございます。それから第四に、円レートも、去年の平均は二百四十九円でございましたが、いま二百三十円台で、非常に安定したかっこうで進んでおります。まだまだ高くなる傾向もあると言われる。これは企業収益の回復、物価の安定につながるに違いない、こういうふうに思います。  最後に、金利の引き下げも、先ほど申し上げたように一番むずかしい点でございますが、円安誘導をおそれての公定歩合の引き下げのちゅうちょがありますにしても、去年の平均が七・二%くらいでございましたが、現在のところ、七・一くらいに日本の長期金利が下がっているわけでございます。財政再建の方向と同時にいまの公定歩合の引き下げが近くある、必ず行われなければ、先ほど申しました不自然な経済が続くだけでございます。私は、これは今年度中には行われると見ますので、金利の低下からのいい影響が経済の面にある。  まず、そのような幾つかの要素考えてみますと、三・四%程度の成長率が達成できないはずはない。そしてまた、三・四%くらいの成長率では、いま林委員が御指摘のように日本人だれしも満足していない。失業率にしてもしかりでございます。  私はよく言うのですけれども、大蔵省にしても何か高成長をやると金がかかるからいやだと言っておったのですけれども、低成長になってみてますます自然増収が小さくなってきた。五十五年度には三兆一千億であったのが、五十六年度には二兆一千億に減り、そのうちには増税が一兆円もあったと言われる。五十七年度は一兆五千億といま修正を見ておりますが、それがどうも達成がむずかしくて、一兆二千億くらいじゃないかという新聞報道からおわかりのとおり、かつて四兆五千億くらいの自然増収を生じたわけでございますが、それがだんだん生まれる子供が小さくなっていく。一方金利は依然として高目であるとしますれば、国債費にも及ばないような自然増収では財政はやっていけない、これもまた不満の大きな理由になっているかと思いますが、この辺のことを考えますと、三・四%は当然達成しなければいけませんし、それ以上の成長率がないと、各方面はいつもエネルギーの不完全燃焼みたいなもので大変不満が継続し、また日本の経済も世界に対して貢献する程度が少なくなってくるのではないかと私は思うわけでございます。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 御説のとおりで、やはり三・四%程度では活力は出ませんので、これを政策的に行政的にどのようにやっていくかというのがこれからの大きな課題でございますが、局長もう一つ大臣はいま在庫調整が進むとか世界経済が少し明るくなるとか、いろいろいい面を並べられました。しかし、なお心配な半面があるわけでございます。個々の主要経済指標のアイテムによってでも結構ですけれども、どの点をこれから注意し、また努力していかなければならぬことになっておるのでございましょうか。たとえば民間住宅、これも予算を取り、笛を吹いてもなかなか踊らないような状況ではいかぬ、こういうものもございますし、先ほど出ておりました民間の企業設備も、やはり先の保証がなければ出てきませんので、私ども心配なわけですけれども、どの辺に問題があるのでしょうか。
  129. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 今後の景気の見通し、経済の動向については大臣から申し上げたとおりでございますが、ただいま御指摘のとおり、幾つかの要因として私ども考慮すべき事項があるのではないかというふうに思われます。  一つには、一般的に申しますと高金利がなお続いておりまして、大臣指摘のとおり若干下がってはまいりましたが、実質金利がなお高いという状況もございます。それから第二には、世界経済が、一部回復の動きがございますけれども、なおその中で失業率が増大するという事情にございますので、したがいまして、保護主義の動きが起こってこないかという点が懸念されるわけでございます。他方、低開発国、いわゆる開発途上国を見ましても、このところ景気の停滞が先進国の景気を反映いたしまして続いている。一部には債務累積問題があるといったような事情があろうかと思います。  そういった一般的なある意味での不確定要因がございますが、個別の需要別に見ますと、いま先生指摘のとおり、まず住宅の面で見ますと、このところ地価はかなり安定してまいりましたし、また建設資材もかなり落ちついている。卸売物価で見ますと、建設資材が前年比でマイナスという状況でございます。ただ、住宅につきましては、なお都市への流入がこのところ伸び悩んでいる、あるいは住宅自身の数が世帯数を上回っているといったような構造的な要因もございます。しかしその反面では、質的向上あるいは増改築という意欲が大変強いわけでございますが、このところの動きを見ますと、昨年度の第二回の募集の結果、住宅がかなり高水準で推移いたしましたけれども、このところにまいりまして、住宅着工が公庫分を中心として少し減っているという事情にございます。五十七年度全体として見ますと百十五万七千戸でございまして、五十六年度に比べると一・三%ほどふえているということでございますが、今後果たしてそういった水準が確保できるかどうかという点が、一つにはあろうかと思います。  それから第二は、これも先生指摘のとおりでございますが、設備投資につきまして、ここのところ各種機関の調査あるいは当庁の調査を見ましても、大企業の設備投資が前年をやや下回るという見通しでございます。何分にも、このところ続きました設備投資が、このところにきまして若干頭打ちという状況があろうかと思いますが、ただその反面、合理化投資、更新投資の意欲も強うございますし、研究開発投資の動きもあるということでございますが、ただ、このところ若干頭打ちが見られるという点が懸念されるわけでございます。  特に中小企業につきましては、先ほど来大臣から御答弁ございましたように、金利が高いという事情もございますし、先行きとの兼ね合いもございまして、各種の調査を見ますと、先行きマイナスを示しているという事情がございますので、その点が懸念されるのではないかというふうに思います。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 そういったところがこれからの政策努力を要するところで、なかなかこれはむずかしいアイテムだと思うわけです。  もう一つ、ついでに聞いておきたいのですが、輸出入の関係では、大体どんな認識を本年度はお持ちでございましょうか。
  131. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 輸出入でございますが、これは先生御存じのとおり、本年度はおおむね九十億ドルの経常収支というふうに見込んでおったわけでございますが、世界経済全体としますと、このところ上向いているという状況にございますが、おおむね当初の見通し、これも大変低い水準でございますが、そういった線で動くのではないかというふうに思われます。他方、輸入は、石油価格バレル当たり五ドル下がったという影響がございますので、経常収支という面ではプラスになるのではないかというふうに思われます。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 次いで、物価でございますが、間もなく消費者物価の四月分が出てくるのだろうと思いますが、三月までの傾向から見ますと、非常に安定的に推移していると長官のこのごあいさつの中にも出ておりますし、私どももそういう実感でございます。  年度を通じて、たとえば原油の五ドル値下がりなどまだまだ十分これを消化し切ってないというような面もございますが、いま考えられる主な五十八年度変化要因、そしてまたそれがどのような見通しになるのか、卸売物価はごくわずか、一・一%、消費者物価もほんのわずかの三・三%ですか、原油の日本経済あるいは国民生活に占める割合にもよりましょうけれども、ひょっとしたら卸売物価はプラス・マイナス・ゼロになるとか、あるいはそうじゃない、もっとほかの要因があって、騰貴要因もあるんだとか、その辺の新しい見込みと申しますか、どのようになっておりますでしょうか。
  133. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 お答え申し上げます。  最近の物価動向、先生指摘のように大変安定した推移をたどっております。消費者物価で申しますと、大体二%前後ということになってございます。卸売物価は、最近はむしろ前年水準を下回っております。四月の卸売物価は前年と比べまして二・二%の低下ということになっております。  まず、卸売物価から申し上げますと、卸売物価というのは、統計の技術的な性格から、輸入物価、海外物価の影響を過敏に反映する、こういう性格がございます。そのために、ことしの初めに見通しをつくりました時点で予想しました原油価格動き、それから円レート動き、これが有利に展開をいたしました。原油価格が下がってきた、それから円も高くなった、こういう要因がございまして、輸入価格すなわち円建ての輸入物価が非常に下がってきた、これを敏感に反映をしてマイナス二・二%、こういう姿になっておるわけでございます。したがいまして、一月の時点見通しました一・一%よりはかなり低いところに現在瞬間風速としてある、こういうことだと思います。  いま申し上げましたように、海外物価に対して非常に過敏だという技術的な性格がございます。最近のところ、世界景気も多少上向きに転じたのか、こういったような点を反映をいたしまして、国際商品市況などがまた上がってきております。したがいまして、これから先、まだあと十カ月といいますか一年近くあるわけでございまして、その間に海外物価の反騰の影響というものが出てくれば、また再びプラスの伸びになる、こういうことでございますので、年度初めでもあり、いまの段階でこの卸売物価見通し一・一%がどうなるのかということの判断はできないと思います。ただ、現時点での瞬間風速で申しますとこれはかなり低いところを走っている、こういうことを申し上げられると思います。  消費者物価でございますけれども消費者物価は先ほど御指摘がございましたように三・三%の見通し、こういうことでございますが、この点につきましても、原油を中心といたします輸入物価の低落、それから為替レートが若干高くなる、こういった影響を受けて上昇率が下がっている、こういうことだと思いますし、こうした傾向が続きますと、三・三%ではなくて、これが二%台といったようなことになってくるのではないか、こういうふうに現在のところでは判断をしております。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 局長の言葉じりをとらえて言うわけじゃございませんけれども、国民の実感とこの物価指数とがかなり食い違っている問題についてときどき指摘されておりますね。専門的になりますけれども、赤羽局長は先ほど、卸売物価は海外商品市況の影響を強く受ける、受け過ぎると言われたが、たとえば国内との関係ではどういう実感をお持ちでしょうか。このままのあれでよろしいのでしょうか。
  135. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 物価指数の統計と消費者の生活実感、これは常に問題になる点でございます。  ちょっと課長補佐のような理屈を申し上げて恐縮でございますけれども消費者物価、卸売物価もそうですけれども、物価指数というものは、一年前と比べていま二%前後の上昇率だということは、一年前と全く同じ生活をすれば二%だけ余分にお金が必要です、こういうふうなものなんです。ところが、いずれの御家庭におきましても、一年前と全く同じ生活をしているわけではない。たとえば一年前には、坊やがおりまして中学の三年生、こういうことでありましたら、これは義務教育でございますので授業料はかからない、教科書も無償だ、こういうことだったんですけれども、一年たってみますと高等学校へ入る、こうなりますと、たとえ公立高校でも授業料は払わなければいけないし、教科書も自分で買わなければいけない。また一年成長しているわけでございますから、それに応じて食べる量も多くなるだろう、こういうことで、いろんな原因があれやこれや重なりまして生活費というのは確実にふくれ上がっている。したがいまして、世帯主の御主人の手取り収入が仮にいま五%ふえていると、物価は二%だというから三%は実質的に生活は楽になるだろう、こういうふうに思うと、そうではなくてやはり生活は苦しい、こういうことではないかと思います。  こういうことで、物価指数、統計の性質を理解をした上で実感的に生活が非常に苦しいということになれば、それはそれで別の原因の問題としてそれを考えるべきである、こういうことだと思います。別の原因だと申しますのは、たとえば塾に通わなければ学校へ入れない、そういうことでいいんだろうか、学校教育のあり方という問題等を絡めて問題点考える、そういったようなところにあるので、物価指数が実感と合わないから指数がおかしい、こういうことではないというふうに思っておる次第でございます。  ですから、実感と統計とが違うということは当然あり得ることであり、かつそのことを直ちにもって統計が悪いという問題ではないし、消費者物価の伸び率が低くなったからそれでまた生活上の問題がなくなるわけではない、こういうことだと思います。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 質問しましたのも、私も実は矢野さんが卸売物価指数を経済審議会でつくられたときに協力した一人でございますので、コモディティーの取り方が果たしてバランスがいいのかどうかという問題を実は考えまして、あれ以来かなり変えておられますけれども、しかし、なお時代が変わってきておりますので、もしそういう矛盾があるのであれば、それなりにやはり新しいのに対応されたらどうかという私なりの感覚で御質問したわけでございます。  さて、ここに御承知の、言うまでもありません、おたくの方から資料をちょうだいいたしました五十八年度の物価対策関係経費でございますが、これ、いろいろと工夫もされておとりになったろうと思うのですけれども、実際上の問題といたしまして、低生産性部門の生産性向上あるいは流通対策、それから労働力の流動化とか競争条件の整備とか六つまでございますが、これを発動されるといいますか、これの実効が出てくるのは大体いつごろとお考えになっておられるのでしょうか。年度を通じて前年と同じような形でずっとやっておられる部分もあると思いますけれども、際立ったところがどういう節々で、たとえば流通対策はおとりになるのか。従前経費と変わらぬというのかもしれませんけれども、その辺のところを、ちょっとニュアンスをお聞きしたい。
  137. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 物価対策関係経費として四兆数千億円計上しておりますけれども、大体これはすべて経常的な経費と申しますか特別の時点に対策として打つようなものではない、こういうことでございます。私どもの方に国民生活安定対策等経済政策推進費というのがございます。これは物価が非常に高騰したようなときに、いわば緊急時対策として特別の事業をする場合の財源として使う、こういったような性格の部分がございます。すべてがそうじゃございませんけれども、そういうものはございますが、それを除きますと、それぞれの所管当局におきまして経常的な事業としてやられているものがほとんどである、こういうことでございます。たとえば農業の生産性向上ということは、農業政策の一つの重要な事業として、これはいつやるというよりは通年でやる、こういうことではないかと思います。
  138. 林保夫

    ○林(保)委員 長官は、物価問題に対しては自信を持ってことしは行けそうだ、こういう御実感でございましょうか、一言だけちょっと。
  139. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 先ほども申し上げましたように、原油の値下がり傾向円高と申しますか円レートの安定傾向から見まして、私は、物価問題について安定的な形で推移をする、これが上昇してインフレの気配が起こるというようなことは考えられないと思っております。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 国民生活の方に入りたいのでございますけれども、五十八年度の予算に関連した公共料金の値上げはないんですか。そのほかであるいはまた社会保険、これは大したことはことしはなかったわけですけれども、厚生年金の保険料が女子についての改定が多少あったとか、その辺のところが概してどうなっておりますか。国民生活局長さんの方から一応のスケッチをひとつやっていただきたいのです。
  141. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 家計のいわば非消費支出と申しますか、社会保険料の負担あるいは税金といったようなものの負担がどうなるかというお尋ねかと存じますけれども、こうした社会保険料負担は、やはり一方で福祉の充実ということが図られておるわけでございますので、毎年ある程度の上昇はあるわけでございます。最近の状況で申し上げますと、勤労者世帯の家計支出のうち非消費支出といわれる税と社会保険・保障負担を合計したものでございますが、これが実収入に占める比率は、五十七年度で一四・六%という実績になっております。五十五年が一二・六、五十六年が一三・六でございましたから毎年増加がかなりのものであるということは実績から申し上げることができるわけでございます。  五十八年度はこれがどのくらいになるかということは、こうした家計ベースの予測につきましてはなかなか困難でございまして、一概に申し上げることがむずかしいわけでございますが、非消費支出がある程度ふえることはやむを得ない面があるかと存じます。  ただし、一方では実収入の増加、勤労所得の場合ですとほとんどが雇用者所得になるわけでございますが、そうしたものも相当程度見込めるわけでございまして、先ほど来からお話のございますような物価の安定ということも考え合わせますと、実質的な可処分所得の増加もかなり期待ができるのではないかと考えておるわけでございます。
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほどのお言葉を返すようですけれども、賃金はああいうふうに公務員の皆さんに御苦労をかけてゼロということでございますし、民間の方も厳しゅうございますから、どうして実収入がふえるという計算が出るのでございましょうか。
  143. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 これは、政府の経済見通しの中で雇用者所得の計算をしておるわけでございますけれども、雇用者所得が名目で五十七年度六・三、五十八年度六・六の伸びと想定をいたしておりまして、先ほど申し上げましたのは勤労者世帯の実収入でございますから、その大宗をなすものが雇用者所得でございますので、こうした雇用者所得の伸びからこういう推計を申し上げた次第でございます。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 去年の国民生活白書によりましても、「所得伸び悩み下の家計消費」ということで、経済環境そのほかいろいろと取り上げられておりますが、ことしもやはり同じ、あるいは私どもの実感としては一層所得の伸び悩みがひどくなって、一層環境が厳しくなるんではないだろうかという心配をしているわけでございますが、局長どのような御判断でございましょうか。今年度出される国民生活白書のタイトルは一体どうなるんだろうか、こういう問題でございます。
  145. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 昨年度の国民生活白書は、おっしゃるようにそういう題名でございました。しかし、内容をよくごらんいただきますと、五十五年度、それから五十六年度も家計の所得は伸び悩みでございまして、実質で若干のマイナスとかほとんど横ばいという状況でございました。しかし、五十七年に入りましてからそういう傾向が、様相が変わってまいりまして、実質でかなりのプラスになっておるということを書いておったと思います。そういう傾向は、最近の家計調査で見まする限り特に変わっていないと考えているわけでございます。したがいまして、家計の収入の面から見まして、国民生活の今後の姿が非常に暗いものであるとは言えないのではないかと考えておるわけでございます。
  146. 林保夫

    ○林(保)委員 時間が足りませんので、三つだけ大体の傾向を教えていただきたいのでございますが、家計の貯蓄動向と申しますか、定期性預金のことしの伸びがどうなるかということだけでも結構でございますけれども、貯蓄がどういうふうになっていくのか。  二番目は、この国民生活白書の中でも余暇関連支出が非常にふえていっているのですが、五十八年度はどういう傾向になるんだろうか、これについて御説明していただきたいのです。  もう一つは、ここにも出ておりますけれども、いわゆる自由裁量支出、家計の中から自由に繰り出せる支出がどの程度ことしは期待できるのだろうか、去年に比べてどうなんだろう、大体の感覚で結構ですから、三点について御質問したい。
  147. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 第一点の定期性預金の保有率でございます。これは総理府統計局の行っております貯蓄動向調査でございますが、勤労者世帯の定期性預金の保有率でございますが、五十七年で八九・八%でございます。五十年が八二・二%でございますから五十年代を通じまして上昇の傾向にあるということが言えると思います。家計におきましても、利子に関する選好度が相当強まっておりまして、定期性預金の保有が着実にふえておるということが言えると思います。  それから余暇関連でございますけれども、昨年の白書で余暇関連としてスポーツと旅行、それから趣味・鑑賞といった三つの支出を合計いたしまして余暇関連支出として分析をいたしております。傾向的に余暇関連支出の伸びが非常に高くなっております。やはり家計が余暇を重視するという傾向があらわれているわけでございますが、五十年から五十七年まで余暇関連の支出、ただいま申し上げました三本の支出の合計で見ますと、一三・六%ふえております。消費支出全体の伸びはこの間八・五%でございますから、やはり余暇関連支出が傾向的に伸びが高まっているということは言えると思います。  それから自由裁量支出のお尋ねでございますが、これはいろいろな自由裁量支出の取り方がございます。昨年の白書で、選択的支出の額として一定の前提を置きまして計算したもので見ますと、その年々の景気の状況あるいは家計の状況によりましてかなり不規則に変動しておりますが、所得が順調にふえております時期には選択的支出が非常にふえる、五十五年、五十六年といった所得が減少傾向、伸び悩みという時期には同じく選択的支出が伸び悩むあるいは落ち込む、そういう傾向がございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、五十八年の選択的な支出、自由裁量支出という種類の支出は、本年の経済の動向からいたしまして、消費全体の支出の伸びよりも高い伸びを示すのではないかと想定をいたしております。
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 時間が来てしまいましたので、廣江局長に一言。  本年度の経済白書が間もなく出るわけですけれども、見出しは何ですかと聞くと生臭くなりますので、安定なのか、あるいは混迷を脱しつつあるのか、あるいはこれから非常に大きな期待が持てるのか、内外の経済情勢の中で日本はどうなんだ、その辺のところを、短時間で結構ですから一言お話しいただきたい。
  149. 廣江運弘

    廣江政府委員 せっかくのお尋ねでございますので胸を張ってお答えをいたしたいわけでございますが、なお内部で検討いたしております。  ただ、ことしの白書は、過去一年間の経済を顧みて、どうしてこうなったのか、それからどういうふうな方向に持っていくのが国民のためにも世界経済全体のためにもいいのかということでございますが、これを別の観点から言いますと、なるべく皆さんに読んでいただけるようになるべくやさしく書こう、こう思っております。そのことは、厚さも少し読みやすいようにして、それからテーマは国民の皆さんが一番知りたがっていることに、こういうふうに考えるというふうな期待を込めて書きたい、かように思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  150. 林保夫

    ○林(保)委員 国民の皆さんがこうしたいというものをやっていただくには、どうしたら暮らしが楽になるか、景気がよくなるか、こういうことでございますので、処方せんを御期待申し上げたいと思います。  その辺で、大変むずかしいときだと思うのでございますが、なお全体を達観されましてのリーダーシップをぜひ企画庁にお願いしたい、大臣にやっていただきたい、そういうことで、ことしのこれからの経済運営について、一言大臣の御決意を承って、質問を終わりたいと思います。
  151. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま林委員の御指摘のように大変むずかしい情勢でございますが、日本経済は世界に誇り得る体質を持っているものだと私は思いますし、その誇りをさらに強くするように全力を挙げて努力したいと思います。
  152. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。終わります。
  153. 土井たか子

    土井委員長 岩佐恵美君。
  154. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、電力料金引き下げの問題について伺いたいと思います。  ことしの四月十二日の参議院の商工委員会で、山中通産大臣がわが党の市川議員の質問に答えられて、「五千億もう設備投資に回しちゃったから電力料金改定には回りませんよと、そういう数字ではございません」電力会社の設備投資の前倒しと電力料金引き下げとは全く関係がない、そういうことを明らかにしておられるわけですが、そのとおりですね。
  155. 小川邦夫

    小川政府委員 設備投資五千億という数字は、四月五日の閣僚会議で決まりました景気対策の一環として行うものとして、五十八年度下期以降の設備投資について発注を前倒ししてやるように、五千億をそのめどとする、こういうことでございまして、これは景気対策としての前倒しという観点から実施しておるものでございます。したがって、それを電気料金引き下げ問題と関連づけて、これをやるから、そのゆえに料金問題はたな上げとか、そういうふうにリンクづけて行うものではございません。そういう意味で、四月十二日の大臣答弁の方針が変わっておるわけではございません。
  156. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それでは、閣議決定による電力会社の設備投資、先ほどから議論になっているところで、これは生産を拡大していくいわゆる設備投資ではないのだということでるる説明があったわけですが、この設備投資も料金値下げとの関係はないということであるわけですね。
  157. 小川邦夫

    小川政府委員 御指摘の部分は効率化のための設備投資あるいは電力供給の信頼性確保のための投資、そういったものをなるべく促進しようということで、これも四月五日の閣僚会議の景気対策として決められて、その促進方を通産省として電力業界に要請したものでございます。したがって、これはその四月五日の景気対策として実行しているものでございまして、先ほどの繰り上げ発注の問題と同様電気料金の問題と政策的に結びつけて実施しているというわけではございません。景気対策として実施しておるということでございます。
  158. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 一昨日、山中通産大臣は、アラブ首長国連邦など産油国を訪問され、三年間原油の値上げはない、むしろ産油国側では値下げを心配している、そういうことを見聞きしてこられて、電力料金の値下げが必要だという考えを明らかにしておられるわけですが、値下げは当然だというふうに思いますけれども、具体的な日程等についてどう検討を進めておられるのか、伺いたいと思います。
  159. 小川邦夫

    小川政府委員 大臣から私ども事務当局には、電力会社の経理状況について調査分析を進めるという指示がおりております。私ども、それを鋭意進めておるわけでございます。したがって、その調査分析結果に基づいて料金問題をどう扱うかということは、むしろその結果を踏まえて、大臣の判断を仰いで的確に対処するということでございまして、その判断の時期あるいはその判断に基づいて具体的にどういう行動をとるかとらないか、こういったものは調査結果を踏まえた大臣の判断によるところでございまして、私どもとして、いま具体的スケジュールを持っておるということではございません。
  160. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いまそういう調査を進めておられるということで、それはいつごろきちんとまとまった形で出るのですか。
  161. 小川邦夫

    小川政府委員 幅広くいろいろの資料の収集ということでございますので、きっちりといつからいつまでにと日付を切ってまとめ、報告するという形ではございません。逐次まとめつつその都度大臣の判断を仰ぐ、そういうようなやり方になっていくものと考えております。
  162. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 五十八年度上期の決算が出るのはことしの秋、十一月末だということですけれども、上期の決算を待つまでのこともなく、電力会社の経営は非常にいい状態であるということが指摘できると思います。たとえば、私、当委員会ですでに指摘をしましたけれども原子力発電稼働率が五十七年上期では七三・六%、これは認可査定時は五五・八%でしたから、かなり高いものであります。また、燃料消費量も減っているということで、これも査定時から見れば負担が軽くなっている、このことは当委員会ですでに明らかにしたところであります。  さらに加えて、内部留保について計算をしてみますと、五十六年の三月期から五十七年の九月期までの間に、九電力の合計で九百八十五億円もふえているわけです。しかもことしに入ってから円高で推移をして、とりわけ四月の末くらいから、これも先ほどからいろいろ言われています二百三十一円から二百三十二円の円高になっているわけで、電力会社の資金的ゆとりはさらに増しているわけです。  そこで、ちょっと指摘をしたいと思うのですが、役員給与のことであります。これは私が試算をいたしましたところ、役員報酬が五十六年の四月から五十七年の三月までの一年間に五十五億八千四百二十八万円ふえているわけです。もともと、五十六年の三月期三十九億七千三百八十一万円、五十七年の三月期が九十五億五千八百九万円、ですから差し引き五十五億八千四百二十八万円もふえている。これは、通産省に過去五年間の役員報酬の試算をしていただきましたけれども、この試算から見て、過去五年間で五十六年度というのは最高の報酬になっているわけです。これはすでに参議院の商工委員会でも指摘をされたところでありまして、山中大臣も、役員の給与の削減を私が命ずるかもしれぬ、そういう答弁をしておられるわけであります。こうしたこともあるわけですから、一日も早く電力料金引き下げをすべきであると思うわけです。  先ほどからのお話だと、経済企画庁長官、大変慎重なお考えを述べておられるわけですけれども、やはり国民の暮らしはいま非常に苦しいわけです。確かに、景気を拡大する、景気を浮揚していくためには設備投資も役に立つと思いますけれども、私どもは国民生活密着型の設備投資をすべきであるということを言っているわけです。こういう設備投資にお金を回すということも非常に重要ですが、当委員会で前回も私は長官といろいろ議論をさせていただきましたけれども消費者のふところぐあいをよくしていく、いわゆる消費拡大を図っていく、このことが大変重要な景気浮揚対策だと思うのです。その問題について、やはりどこが一番大きな声で言っていくかと言えば、それはもう経済企画庁、大臣が言っていかなければいけない問題ではないかと思うわけです。値下げはもう時の問題だということが、通産当局の答弁あるいは通産大臣の発言からもかなり推測をすることができるわけですけれども経済企画庁長官、ここのところでぜひ積極的に役割りを果たしていただきたい、そう思うわけでございますけれども、お考えを伺いたいと思います。
  163. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 先ほどから公益事業部長の御答弁も伺っておりましたが、私よりもまた慎重なような感じもするくらい、通産省はまだまだ検討段階のような気がするわけでございます。実は二、三日前まで、通産省も設備投資を大変重視をするような印象の御発言をされたわけでございますが、山中大臣、やはり中東へ行かれた大変な収穫でございましょうか、原油価格見通しについて自信を得られたのであのような発言をされましたのか、いま御指摘の四月の御発言とは大分違うように私は伺っておりました。このようなほどなかなかむずかしい問題であるのが電力料金の問題だろうと思います。  私は確かに消費者保護の所管大臣でございますが、しかし、経済全般の成長を図ることも重要な私どもの所管でございます、権限でございます、それらを含めてひとつ十分に検討してまいって、恐らく、おっしゃるように、そんなに時間はかからないと思います。そしてまた供給力をふやすような設備投資は、これはだれもいまやるべきだというふうにも考えておりませんので、そのような設備投資がどの程度のものがあるか、こんなような判断は恐らく通産省が早急にやれるものだ、こういうふうに思っておりますので、いまの料金引き下げか、設備投資かといった問題は適切な形で近いうちに結論が出る、私はこういうふうに思っております。
  164. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 山中通産大臣は、議事録等を読ませていただきますと、値下げについて別に御自分の主張は変わったわけではない、ずっと一貫してそういう方向で進めてこられたということなわけですね。四、五日前から急に変わったという御自覚は御本人は余りないようですけれども、しかし、いま大臣が評価をされたような変化があるということで、私どもも、大いに前進だと思っているわけで、そこを長官が評価されるということについては、やはり経企庁長官もこの線でやっていただけるのかと思ったわけです。だがしかし、このようにいろいろむずかしい問題でして以下がどうも要らなかったのではないか。山中大臣がここ四、五日変わられたというのであれば、やはりそういう点で塩崎大臣もここで同じように変わられて、そして積極的に進めていただきたいということをお願いというか、私はそういうお話をしているわけで、そこのところがちょっとどうも、御答弁の後半になると姿勢がずっと後退をしてしまうという印象を受けるわけですけれども、いずれは時の問題であるということではなくて、やはり経済企画庁が国民生活の消費拡大をやっていくということをもっと声を大きくしていかなければならないそういう事態なんだということを私は申し上げているわけで、そこのところ、もう一度御決意のほどを聞かしていただきたいと思うわけです。
  165. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 たびたび申し上げておりますように、確かに消費支出の増大、国民のふところの楽になることは経済成長にいい影響を与えることはもちろんでございますし、私どもは、これまでの原油の二回にわたるところのショックが料金の引き上げになってきた、あるいは石油製品の引き上げになってきたことも十分存じているところでございます。しかし、そうかといって、設備投資も、何回も申し上げておりますように、いまは冷え切って、少しでも設備投資して、まとめて集中的に雇用の増大につながるように、所得の増大につながるような設備投資は企画庁長官としていま一番欲しいときだと考えております。しかしながら、電力の供給力をふやすような設備投資、これは即発的な雇用効果はございましょうけれども、将来の経費の要する点等を考えますと大変問題がございますので、いい設備投資でないと、設備投資は電力会社といえどもやるべきではない、こんなふうに思って、私は総合的な見地から、岩佐委員のお話を十分念頭に置いてこの問題を進めていきたいと思っております。
  166. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 電力料金について余り時間をかけることができないので、きょうはこれで終わりたいと思いますけれども、ただ、設備投資については、冒頭山中大臣の御真意を伺ったように、五千億円の前倒しについても、設備拡大ではない、いわゆる設備投資についても、これは五ドルの原油引き下げの問題につながるいわゆる電力料金引き下げ問題、これとは連動しないのだということがはっきりしているわけですから、そこのところをどうも長官はごちゃごちゃとうまくつなげられてしまう御答弁をきょうずっとしておられるので、そこのところは切り離して考えていっていただきたいと思うわけです。これで電力の方は終わりますので、どうぞ……。  次に、食品添加物問題について伺いたいと思います。  厚生省は、五月の十七日に、食品衛生調査会に十一品目の新たな食品添加物許可を諮問し、それらを認めることになって、食品の安全性について不安を持つ消費者から強い反対の声が上がっています。今回の、近年かつてない大量の食品添加物を一挙に認める、そういうことになった背景には、アメリカなどの外圧があることは周知の事実であります。  そこで伺いますけれどもアメリカは最初どのようなルートを通じて、どのような内容で日本に対して食品添加物の使用許可を求めてきたのか、その点を伺いたいと思います。
  167. 藤井正美

    ○藤井説明員 政府の市場開放の方針は三月二十六日に公表されているわけでございますが、この公表までに二、三カ月の内部における検討をやっていた次第でございます。また、アメリカとわが国におきましては、日米スタンダードコードの会議を通じまして、アメリカ側から日本の食品添加物の全般的な指定数が少ないという申し入れはあったわけでございます。昨年秋、アメリカ側から、こうした総論的な説明の一つとして百二十八の品目について、これはFAO・WHOの機関でA1リストに載せている食品添加物でございますが、その百二十八が指定されていないと総論的な言い方があったわけでございます。  市場開放の方針の一環といたしまして、私どもアメリカからこうした総論的な品目数ではなくて本当に日本側に要請する添加物は一体何なのか、そういった質問を三月の初めにいたしております。アメリカ以外にECも同じような意見を寄せておりましたので、ECにもこういう連絡をとっております。三月の中旬になりまして、アメリカ側から十品目の添加物の指定要請を受けたという経過でございます。
  168. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、最初アメリカ側はFAO・WHOのA1リスト百二十八品目を示してきたということになるわけですけれども、このFAO・WHOのA1リストの添加物すべてをアメリカでは認めているのでしょうか。
  169. 藤井正美

    ○藤井説明員 アメリカは、百二十八のうち自国では九十六を認めていると承知しております。
  170. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最終的に日本が品目をしぼってほしいというふうにアメリカに要請をした結果、十品目がしぼられてきたということですが、この十品目の名前を列挙していただけますでしょうか。
  171. 藤井正美

    ○藤井説明員 二酸化珪素、グルコン酸鉄、二酸化チタン、アジピン酸、プロピオン酸、クエン酸イソプロピル、EDTA二ナトリウム並びにEDTAカルシウム二ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、そしてTBHQでございます。
  172. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この十品目についてはすべて必要な資料、安全性のデータがアメリカから送られてきたのでしょうか。
  173. 藤井正美

    ○藤井説明員 品目の提示とともに資料が整えられたわけではございません。品目の提示はUSTRと称されております通商代表部が行っておりますが、資料につきましてはFDAが担保し、わが国に送るという形の通告でございましたので、一週間ないし二週間おくれて資料が届けられております。  なお、アメリカの資料によって私どもはすべてをやったわけではなくて、私どもが集め得る資料はその間、十分に探索いたしております。
  174. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 保存料のソルビン酸ナトリウムについては最終的に認めていないわけですけれども、これは何かいきさつがあったのでしょうか。
  175. 藤井正美

    ○藤井説明員 ソルビン酸ナトリウムにつきましては、わが国ではその使用がほとんどないという形で、一度ソルビン酸カリウムを食品添加物とし、ソルビン酸ナトリウムを外しているわけでございます。こういう経過がございますので、アメリカにおいてもソルビン酸ナトリウムの使用はほとんどないのではないかというように考えたわけでございます。この背景といたしましては、ソルビン酸カリウムは吸湿性がございませんが、ソルビン酸ナトリウムは空気中に置いておきますと水気を吸いまして目方が変わってしまいます。そういった関係から、アメリカに問い合わせはしたわけでございますが、アメリカにおいてもほとんど使われていないというような回答が来た次第でございます。
  176. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 貿易摩擦騒ぎに便乗して、アメリカでほとんど使用されていないものがこの十品目のリストに入っている、このこと自体アメリカは――十品目提示もそうですけれども、A1リスト百二十八品目そのまま最初に提示をするとか、そういう点から見て、一体まじめに日本に対応しているのかということを私どもは大変疑問に思うわけです。アメリカでは、現在添加物が何品目使用されているのでしょうか。
  177. 藤井正美

    ○藤井説明員 化学物質はその数え方が非常にむずかしゅうございますから、はっきりと品目数を言うことは一般的に非常に困難でございます。FDAに直接アメリカの添加物を問い合わせた結果におきまして、数ははっきりわからないと言っております。概算として、約三千三百という答えを言う方と、三千八百ということをおっしゃる方と、FDA当局の職員でさえいろいろと数が異なっておる現状でございます。
  178. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 こういうふうに、国によって食品添加物に対する考え方とか使用実態というのは非常に異なると思うのですね。幾ら貿易摩擦の解消だからといって、外国の言いなりになっていたのではたまったものではないわけです。特に今回でも、最初から明らかになっているように、アメリカは最初、A1リスト百二十八品目全部ぽんと出してきたり、あるいは自分の国でほとんど使用していないものをリストに入れたり、やり方がちょっと理不尽だと思うわけです。厚生省はやはり日本の従来の立場を貫くべきだと思います。  一九七二年に食品衛生法が改正されました。そのときの附帯決議に、食品添加物の使用は極力制限する方向で措置することとあります。厚生省は、この附帯決議以降何品目の食品添加物をふやし、そして取り消しをしてきたのでしょうか。
  179. 藤井正美

    ○藤井説明員 五品目を追加いたしまして、九品目を削除してきております。
  180. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、この決議以降差し引き四品目減らしてきた、こういうことになるわけですが、今回の十一品目の食品添加物の許可拡大は、この附帯決議に真っ向から対決をするやり方だと思います。国会の決議を無視したそういう状態であり、私はこれは許されないことだというふうに思います。十一品目にとどまらず、今後とも、外国の要請に基づいてどんどん許可品目を拡大していかれる方向なのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  181. 藤井正美

    ○藤井説明員 私どもは、昭和四十七年の国会の決議、食品添加物を極力制限する方向で措置していくという考え方については、現時点においても妥当だと考えておる次第でございます。  また、こうした考え方はわが国のみではなく、FAO・WHOの食品添加物の国際評価におきましても、その冒頭におきまして、添加物が食品に使われる正当と認められる場合とは、経済的、技術的に、他の方法では達成不可能な場合に限り、かつ、人に危害を与えるものであってはならないというような約束をつくり、さらに、特定の食品に、特定の目的のもとに、特定の条件下で、かつ必要最小限の量を使うものであるということを掲げておる次第でございます。このように、添加物に対する各国の考え方あるいは定義は異なっておりますが、基本的な安全性の評価並びに有用性というものについては相共通するものがあるのではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、品目上、先生指摘のように、四品目の欠落、今度は十一品目の追加という関係については、確かに数の上では御指摘のような点がうかがわれるかもわかりませんが、品目の追加については、いろいろな加工食品の国際交流、あるいはわが国国民の食生活の変動、こういったものを前提といたしまして、その添加物の安全性が従前と同じ考え方で十分に保証され、また必要性あるいは有用性といったものが明らかに存在する場合には、こういったものを追加することについて国会決議は反対している、あるいはそれを認めていないというように私どもは解釈しているわけではございません。
  182. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういう考え方でいきますと、アメリカはA1リスト百二十八品目をまず提示をしてきた。そういう経過から見て、そして現状で、そのA1リストのうちアメリカは九十六認めているという経過からして、いまアメリカの言いなりになるような形で添加物の問題を貿易摩擦ということで考えていくと、かなり大幅にふやしていく。つまり、九十幾つまでふやしていく、そういう方向にならざるを得ない。それも国会の決議に反しないのだということになるのですか。
  183. 藤井正美

    ○藤井説明員 アメリカの要請あるいはFAO・WHOのA1リストのものを私どもが無条件にわが国の添加物に追加するということではございません。こういった要請というものが妥当であるならば、それを受け入れてその後の添加物として指定するか否かは、わが国独自の手続、また判断あるいはまた国民の食生活、こういったものを考えて、食品衛生調査会の議を経て適当なものを指定するわけでございますので、国会決議に反するというようには私ども考えていない次第でございます。
  184. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、A1リストのうち適当なものというと、将来的に一体どのくらいの数になるといま予測をしておられますか。
  185. 藤井正美

    ○藤井説明員 国が必要という形で指定を検討するケースもございますが、私ども、食品産業という方面に直接の権限を持っておりませんので、こうした必要性というものについては、民間あるいは諸外国からの要請が今後ともあるというように考えております。したがいまして、こうした要請がA1リストのうちどれくらい出てくるかというものについては、現時点でちょっと想像がつきかねる状況でございます。  しかしながら、このA1リストは、三百三十九品目が一九七九年の時点でリストアップされておりますが、この中におきましても、評価の時点が十年前であるとか、そういったものがございます。私どもが現時点でこれを評価いたします場合には、現在要求される動物実験の匹数、飼育期間、こういったものが必要とされますので、A1リストに載っているから安全性というものが現時点でもそのまま通るというようなことには考えられないわけでございます。したがいまして、百二十八のうちの四十数品目前後につきましては、現時点での資料は不十分ではないかというような見積もりをやっている次第でございます。
  186. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、百二十八のうち四十数品目を引くと八十ぐらい残るわけですね。それは三百三十九のうちの四十なのかちょっとよくわかりませんけれども、そういうものを落としていっても、厚生省としては十一品目にとどまらず、かなりふやしていく方向なのだ、それもやはり八十までなるのですか。そういうふうにはならないかもしれませんけれども、そういう大きな数でかなりふやしていく方向なのだ、そういうことになるわけですか。
  187. 藤井正美

    ○藤井説明員 私もちょっと算数が苦手なものですから、そうはっきりしたような数字は申し上げかねるわけでございます。また生物学的な資料でございますので、こうした数字がこの先においても通るかどうかということはわかりかねるわけでございます。しかし、残ったそうした品目が、そのままわが国の食風俗等について妥当であるというようなことはあり得ないというように考えておる次第でございます。
  188. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 何か数についてこんにゃく問答みたいになっているわけですけれども、実際に考え方の路線そのままでいくと、非常にふやされるというような状況が危惧をされるわけですけれども、国民の安全を守る上で絶対に安易にふやすということはすべきではない。四十七年の決議以降マイナス四になっている、その行政の姿勢というものを変えるべきではない、このことを強く要請をしておきたいというふうに思います。  それから、添加物の数をふやせば当然添加物の摂取量も多くなるし、それから相乗毒性の問題についても心配をされるわけです。五十五年四月二日の決算委員会で、私の質問に対して厚生省の榊局長は「お話しの相乗毒性につきましては、私どもの方も重要な関心を持って実は進めておる」「こういったものについて今後十分精力的に進めるということについては私どもも努力をしていきたい、」こう答弁しておられるわけですけれども、これらについて厚生省としてどう対応されるか、伺いたいと思います。
  189. 藤井正美

    ○藤井説明員 まず、榊局長が答弁いたしました、厚生省としても相乗毒性の実験を進めていくという状況について御報告いたします。  昭和四十九年から相乗毒性の実験を開始いたしておりまして、毎年二ないし三組み合わせについて、現在まで十八系統の相乗毒性の実験をやってきている次第でございます。まだ四系列あるいは五系列――四系列は継続中でございますが、完全に終わったもの、あるいは中間報告を得ているもの、こうしたものはすべてマイナスと申しますか、相乗毒性効果は認められなかった、あるいは相乗ではなくて相殺と申しますか、かえって毒性が減ったというような結果が得られておる次第でございます。  先生御存じのように、こうした物質の組み合わせといいますものは無限大に存在するわけでございますので、私どもがやっております実験もアトランダムな組み合わせではなくて、赤色二号と赤色三号であるとか、あるいはソルビン酸とデヒドロ酢酸であるとか、こういった保存料と保存料の配合が実在する、あるいはOPPとビフェニルあるいはTBZといったような、ミカンに三者混合で使われる、こういうケースを選んで実験をやっている次第でございますが、相乗毒性につきましては、一般論的にこの相乗毒性作用の発露を探すのは非常に困難であるというような、いままでの科学的常識そのままに、そういうような食品添加物についてはっきりと影響があらわれてくるようなものは現在まだ認められていないというような状況でございます。
  190. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、BHAの問題を伺いますが、ジュネーブでのFAO・WHOの専門家会議ではどういうことになったのでしょうか。
  191. 藤井正美

    ○藤井説明員 FAO・WHOの会議には、さきに行われておりました四カ国のBHAに関する専門家会合のレポート並びにECが発がん学者を集めて開催を行っておりましたレポート、また、それ以降追加されたわが国のレポートあるいはカナダからのレポート、こういったものが四月十六日から二十日までの間、六回の会議に提出されまして、議論が行われております。  その結果は、作業レポートという形で簡単な記録となっておりますが、結論的には、ラットに見られた前胃の発がん性、これをより一層人間との相関において確かめるために、前胃を持たない動物、猿または豚、犬、こういったものについてきわめて短期の実験を行い、早急に結論を出したいというような経過になっております。
  192. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 名古屋の市立大学の伊東教授、これはBHAの実験で発がん性があるという結果を出された方ですが、この方が昨年の十二月からハムスターで実験を行っている。そして、発がんの徴候の出方がラットより早い、つまり灰色の方向がもうすでに出ているということだそうですけれども、その点いかがでしょうか。
  193. 藤井正美

    ○藤井説明員 伊東教授は、ラットについてのBHAの実験終了後、同じラットの中にもいろいろな系列がございます。系列の差と申しますか、系統の差がございます。こういったものを同じように、フィッシャー系の三四四と同じような発がんが起こるか否か、また、マウスについては別系統で行われておりますので、同じくハムスターについての実験等を去年の十二月から一月、二月にかけて次々とスタートをされているわけでございますが、WHOの会合が四月にあるということで、ハムスターを十六週で一部殺されまして観察されまして、その結果については、先生指摘のような観察記録をWHOの会議で御報告されております。
  194. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 一度そのラットの実験でクロの結果が出、そしてハムスターで実験を行って発がんの徴候が出ている、そういうBHAです。BHAについては現在日本では使用されていない、実質上も不必要な食品添加物であるわけです。二月一日から使えなくなるということで、業界では使用を中止しているわけですから、これをいま禁止するという措置をとっても何のデメリットもないと思います。国民の健康を守るためにすぐに禁止措置をとる、これが真の厚生行政だというふうに思いますし、貿易摩擦で遠慮して、国民の健康だとか命を二の次にする、こういう行政というのは私は断じて許すことができないというふうに思うわけです。この点いかがでしょうか。
  195. 藤井正美

    ○藤井説明員 BHAの発がん性の問題につきましては、昨年の五月、食品衛生調査会におきまして検討を加え、この発がん性並びにBHAの有用性、そういったものを総合評価しながら、一定の時期にBHAを使わないように行政指導をしていくことが必要だというような毒性部会の見解をいただいているわけでございます。  この見解を受けまして、私どもは昨年の八月二日に規制の方針を告示し、二月一日から実施の予定のところを、御指摘のように延期いたしたわけでございますが、規制の中身については現時点でも生きているわけでございます。規制するという方針は変わっていないわけでございます。ただその規制の施行を延期しているというのが現状ということになるかと思います。  しかし、この措置につきましては、BHAをめぐるその他一般の発がん性物質の危険性の発見と、そしてその危険性による社会益の抹消というものと別に、その物質が社会に存在しているためにきわめて有用なものであるという有用性と、この両者を比較することが科学的にできるような環境に、発がん性物質についてもここ数年来なってきたわけでございます。特にBHAにつきましては脂肪の酸化、過酸化脂質の発生がまた別の発がん性をも誘引するというおそれを防止するというような関係がございますので、こういった前胃、人間にない前胃の発がん性が有用性をすべて殺してもいいものかというような観点から、純科学的にさらに検討を続ける、あるいはまた、いろいろな科学をもって評価するというような形が学会を中心として今日まで来たわけでございます。  このような状況におきまして、わが国における国民に対するリスク、危険性というものがほとんど無視し得る以上は、この科学的な論争の行方というものを行政としても注目したい、そういうことでございます。
  196. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いろいろ言われますけれども、しかし、日本では一応実験が出て、そして食品衛生調査会で議論をし、結論を出して、行政的にこれは使用を禁止する、業界もそれに基づいて使用をしない、そういう状態がいま日本にはあるわけですね。幾ら私はお話を伺っていても、これは外圧以外の何物でもない。結局、日本の一度決めたことをひっくり返さなければならない、そういう状況というのは、その原因というものは外圧ではないか。そういう中で、本当に厚生省が国民の立場を守る上で積極的な役割りを果たしていっていただかなければならないというふうに思うわけで厚生省は厚生省の言いわけがいろいろあるでしょうけれども、私は、そういう点で、今回のBHAへの対応の仕方については、今後を考えたときに、ここのところできちんとしておかなかったら大変なことになるというふうに思いますので、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。  時間もちょっとありませんので、次に、現在の食品の輸入の検査の状況について伺いたいと思います。  当委員会でも輸入食品の検査の実態調査に行ったわけでありますけれども、食品の輸入は年間三十四万件、二千三百五万トンに及んでいますが、輸入食品の検査は全国十九カ所、六十一名の食品衛生監視員によって行われ、検査率は五十六年度で六%と大変低くなっているわけです。民間の検査機関に輸入業者が委託するもの六%を含めても全体で一二%でしかありません。食生活の多様化、国際化ということで輸入食品がふえる中で、こんなわずかな人員による検査ではとうてい間尺に合わないことは自明のことであります。検査の現場の方々の御意見を伺っても、せめて二〇から三〇%まで検査率を高めたい、そういう強い希望を持っておられるわけです。この点について、厚生省として積極的に取り組むべきだというふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
  197. 玉木武

    ○玉木説明員 輸入食品については、輸入業者の届け出に基づきまして、輸入時の国の食品衛生監視員による所要の検査、調査及び指導を実施しまして、問題のある食品の国内流通を阻止いたしております。  食品等の輸入件数及び量は、ここ数年横ばいあるいは減少の傾向にありますけれども、厚生省としましては、輸入食品の安全性確保の重要性にかんがみまして、昭和五十七年十月一日から輸入食品監視業務を検疫所に移して、組織を改正しまして、従来の十六の海空港に加えて、新たに三つの海空港に食品衛生監視員を配置しまして、監視指導業務を実施いたしております。この組織の改正に当たりまして、十名の食品衛生監視員が新たに発令されております。また、検査機器の整備、輸入食品に関する統計情報業務のコンピューター化、また、食品衛生監視員の技術研修等を実施しまして、監視業務の迅速化、効率化に努めて、検査体制の整備を行っております。今後とも、国民の食生活に占める輸入食品の重要性にかんがみまして、安全性の確保に努力していきたいと考えております。
  198. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 五十六年の一月から十二月までの主な輸入食品の違反事例でも、添加物の使用違反百七十八件、今回アメリカから要請のあったEDTAやTBHQなども入っております。それから添加物の使用基準違反、食品の規格基準不適合合わせて三百九十五件。こうした違反は、食品添加物の許可を拡大する、あるいは輸入食品の量が拡大されるという中でもっとふえていくことは目に見えています。厚生省のこの分野の予算がどうも少ないわけですね。そして軍事費がわあっと突出をする中で、国民の命と暮らしを守るという面が見逃されがちである。食の国際化、欧風化とかいろいろ言って輸入食品がふえてきているということで、この問題は本当に本腰を入れて、監視体制の強化を進めていく上で体制をきちっとしなければならないと思うわけです。大臣もその点で積極的に取り組んでいただきたいと思うわけですが、御意見を伺いたいと思います。
  199. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま質疑応答をずっと聞かしていただきまして、私もこの問題の重要性を十分認識いたしました。閣僚の一人といたしまして大いに努力したいと思います。
  200. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今後を見守りたいと思います。  食品添加物のうち、いわゆる純度が低いために発がん性物質になるというサッカリンのような添加物がありますけれども、輸入食品の検査の場合、添加物の規格検査は対象に入っているのでしょうか。そしてこういうサッカリンのような問題について一体対応方法があるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  201. 藤井正美

    ○藤井説明員 食品添加物そのものが輸入される場合に、わが国の規格に適合しない食品添加物は輸入の対象となりません。しかしながら、加工食品に添加物が使われて入ってきた場合には、不純物までを検討することはきわめて困難でございます。したがいまして、この添加物につきましては、FAOやWHOにおいて国際的に品質、規格を統一する作業が約二十年前から進められている現状にございます。
  202. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 二十年前から検討を進めていて、そして純度の低い、問題のある添加物が野放しに入ってくることがないと言えるのでしょうか。
  203. 藤井正美

    ○藤井説明員 食品添加物の品質、性状の規格につきましては、わが国が世界で一番最初に出発いたしておりまして、指定された品目についてはすべて規格が定まっているわけでございます。次いでアメリカがすべての規格を完了いたしておりますが、ヨーロッパがおくれて現在規格を整備しつつある。国によって違いますが、大体八割から九割ぐらいは規格ができておりまして、一、二割についてはまだ規格がない添加物がございます。  こういったものについては、先生指摘のように、品質の悪い添加物が使われた加工食品の輸入があり得るということが言えるかと思いますけれども、幸いにいたしまして、食品添加物をつくる過程でどのような不純物が発生するかということは化学的に予測がつくわけでございます。そしてその不純物に安全性があるかどうかというような観点についても、その合成過程において予測がつくような事態になっておりますので、こういったものが危険に結びつくというようなことについてはほとんど考えられないというように眺めている次第でございます。
  204. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ほとんど危険がないと言われても納得いかないわけです。現在、そういう食品に添加されている添加物の検査はまずゼロであるということ、これは非常に大きな問題であるわけです。それから日本は整備していて、アメリカがまあほとんど整備されている、しかし、そのほかの国々はないのだということになると、あとは経験則的なことで対応することにならざるを得ないわけで、この点私は新たな問題だと思いますので、大至急納得のいく対策をとってほしいと思うわけであります。  時間がだんだん迫ってきておりますので、駆け足になってしまいますが、次に、食品添加物の全面個別表示及び天然添加物規制についての作業はどうなっているでしょうか。
  205. 藤井正美

    ○藤井説明員 昭和五十六年に、岩佐先生の御質問に対しまして厚生省の政務次官が、原則として全面的な表示について作業を進めるという答弁をいたしております。その後、私どもといたしましては、約五カ年を目途とする行政体系の整備というようなものを都道府県に情報を流してきたわけでございますが、表示との関連におきまして、わが国におきましては天然添加物の法的措置が化学的合成に比べておくれている、両方に格差がある、この格差是正を先にやることにおいて、天然添加物の名称の統一並びに品質、規格の整備、こういうものをやることにおいて全体として表示の問題を検討したいという線で来たわけでございます。しかしながら、天然添加物というものは相当範囲ございますし、この整備には相当以上の時間がかかるというような見通しになってまいりました。したがって、化学的合成品につきましても可能なところからこの検討を始めていきたいと考えております。  手始めに、今回新しく追加いたしました十一品目につきましては、従来表示が要らない分類になっていたものもすべて表示の対象にするというような措置をとるとともに、今年秋ごろに改定を予定しております食品添加物の規格書であります公定書の全面改定のときに、表示を前提といたしまして、非常に文字の長い化学薬品がございます。これは表示という関係では物理的な問題も出てまいりますので、適当な略名を公式に考えるという作業とともにさらに検討を進めていきたいと考えておる次第でございます。
  206. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ぜひ進めていただきたいと思います。  次に、最近、都立の衛生研究所が、インスタントラーメンの食塩が多いということを実験結果から指摘しています。即席めんで一食当たり約五グラムの食塩が含まれ、これは成人の食塩摂取努力目標十グラムの半分に当たります。高いものは六グラムある即席めんもあります。また、最近流行の高級イメージの強いノンフライめん、これは食塩が六・三グラムも含まれているわけで、食塩のとり過ぎというのは成人病対策の上から好ましくないと言われているわけです。食品中の食塩とかあるいは糖分について、これは表示すべきであるということが以前から指摘をされているわけであります。グラム表示がぜひ必要であると思いますが、その点についていかがでしょうか。
  207. 大澤進

    ○大澤説明員 いま先生がおっしゃられましたように、今日非常に多数の加工食品が普及しておりますが、その中にどういうものが、あるいはどういう栄養成分がどの程度入っているかということは一般に明らかにされていないわけでございまして、これらを明らかにすることは、国民の健康増進あるいは成人病予防という観点から、食生活と栄養あるいは栄養と病気の観点からも、栄養成分がどのくらい入っているかを明らかにすることは非常に重要なことと考えておりまして、このため、これらの加工食品の栄養成分表示の制度のあり方について、現在基礎的な調査検討をして、その準備をしているところでございます。
  208. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いつごろまでにグラム表示ができるようになるか、お答えになれたら言っていただけますでしょうか。  それから、ちょっと時間がないので続けていきますが、同じ実験で、植物性油使用と書いてあっても、実際には動物性油使用と同じように、飽和脂肪酸が多かったということが明らかになっています。これはコレステロール予防と考えて植物性油を選ぶ人に正確な情報を与えないということになってしまうわけで、この対策もあわせてお答えをいただきたいと思います。
  209. 大澤進

    ○大澤説明員 栄養成分表示の制度のあり方につきましては、いろいろな問題点と申しますか、検討すべき点がございます。たとえば栄養成分表示制度一つをとりましても、もちろん栄養改善法というものに基づいて検討を進めているところでございますが、これらにかかわるいろいろな関係法令があるわけでございまして、さらにその栄養成分表示そのものの基準、これらの加工食品のどういう品目あるいはどういう食品の範囲とか、それからそれらの栄養成分の内容、カロリーからあるいはビタミン類、糖分、いろいろあるわけでございますが、すべての項目をどの程度拾っていくか、あるいはその表示の方法とか、さらには加工食品の栄養成分表示をどういうぐあいに担保していくか、品質のコントロールとか、いろいろな問題がありまして、いまかなり専門的、基礎的な調査検討をしているところでございまして、できるだけ早期にこれらの検討を進めて、できるだけ早くにこの制度の実現化に向けて努力してまいりたいと思います。  さらに、その中で、いま一つの問題提起として、いわゆる飽和脂肪酸とか不飽和脂肪酸、これは要するに表示の内容なり方法というものにかかわってくることでございまして、その点も含めて、適切な表示を検討してまいりたい、こう考えております。
  210. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間が来てしまって大変申しわけないのですが、公正取引委員会にちょっと一、二問あるのですが、鉄鋼の方はちょっと割愛をさせていただいて、申しわけありません。缶詰表示だけ、委員長の許可もいただいて、物を持ち込んでいますので、させていただきたいと思います。  それで、ちょっと委員長だとか大臣に見ていただきたいのです。これちょっと見ていただきたいと思いますが、一つが輸入商品であります。どれが輸入かというのを老眼鏡をかけないでおわかりいただけますでしょうか。老眼鏡をかけちゃだめなんです、買い物に行くときは余り老眼鏡をかけないで買い物に行きますので。それで、絶対に老眼鏡がなければどれが輸入であるかということがわからない。つまり「ニッスイ紅さけ」と書いてあるわけですね、日本文字で。ところが、これはカナダ産であります。この問題について「ニッスイ紅さけ」と書くんなら、なぜカナダ産というふうにそこの同じところに書かないのか。ちょっと一文字入れればいいわけですね。それを公正取引委員会に要求をしたわけでありますが、やれカナダ産は値段が高いから、別にそういうふうにしなくてもいいんだとか、いろいろ言うわけですね。  ところが、本当にカナダ産、外国の物が高いのかと思って私買い物に行ってみたら、そこにも値段があります、あるデパートのプライベートブランドが七百円、それから輸入品が七百円、メーカー品が八百円ということであります。ですから、安いものだからそういうふうな形で日本の国内の物であるかのような売り方をする。なぜそういうところを一言カナダ産であるという表示を入れさせることができないのか。公正取引委員会、そんなに缶詰業者に遠慮をしなければいけないのか。しかも説明に来られた方が、いや高いからという、現実とかけ離れたそういうことを言ってまでなぜしなければいけないのか。この点は大変遺憾に思うわけであります。  これを早急にやってくれるように強く要望しまして、もう答弁を伺っても恐らくだめなんですね、いまのところは。一度そういうことで決めてしまった。「ニッスイ紅さけ」とあります。それはもともと「の」が入っていたのです。「ニッスイの紅さけ」の「の」を取ったからいいだろうということになったわけです。こんなばかな話ないと思うのです。ぜひ再考をお願いしまして、時間ですので大変申しわけありませんが、これで終わりたいと思います。
  211. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 どうも大分手厳しい御指摘をいただいて、確かに老眼だとあるいは見にくい方もいらっしゃるかもわかりませんけれども、御指摘のあった件につきましては、昨年御指摘がありまして調査をしたわけでございますが、一括表示欄に原産国の表示ということで、明瞭かどうか、先生の御意見と違うわけでございますけれども、記載されておりまして、景品表示法あるいは食品かん詰の表示に関する公正競争規約、こういったものに照らしまして、最善かと言われると、もちろん御議論が分かれるわけでございますけれども、特にいま改善措置を命じなければならない、景品表示法違反として規制しなければならないかという、そこまではちょっと考えられなかったというところでございます。
  212. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこまで言われると、ボツリヌス菌が発生したときにこれが問題になったわけですから、やはり原産国表示というのは、絶対に消費者が判断する上で大事なんですからということを、前段が抜けていましたので、そこも入れて、私は納得がいきませんので、ちゃんとしていただきたいということを申し上げて、大変時間が延びて申しわけありません。以上で終わります。
  213. 土井たか子

    土井委員長 依田実君。
  214. 依田実

    ○依田委員 きょうは、先日埼玉県の嵐山で開かれました国際消費者セミナー、この中から粉ミルクの問題を取り上げてみたい、こう思うわけであります。  このセミナーは国際消費者機構というのが主催して行ったわけであります。キノホルムであるとか農薬であるとか、そしてまた粉ミルクなど六つの分科会でいろいろ討論をやったわけでございますけれども、その中で、発展途上国、そこで日本あるいは先進国から輸出される粉ミルクで赤ちゃんたちが病気であるとかあるいはまた死に追いやられている、こういう議論がたくさん出ておるわけであります。     〔委員長退席武部委員長代理着席〕それは粉ミルクが悪い、こういうわけじゃないのでありますけれども、しかし、それを受け入れる下地のないところ、つまり一種文盲地域、そういうところに先進国から粉ミルクが強引に売りつけられる、そういうことで使用方法もよくわからない。そういう意味から非常に赤ちゃんの栄養失調などが出て、死者まで出ている。こういうことがいろいろ討議されたわけであります。  この問題は非常に古くからあるわけであります。実はこういう問題が起こって、世界のいろいろな人たちが関心を持ちまして、一九八一年の五月の二十一日、WHOにおいて「母乳代替品のマーケティングに関する国際基準」こういうのが採択されておるわけであります。これは粉ミルク禍を防ぐためにこういう基準が世界の各国によって採択されておるわけであります。中身は、要するに母乳で育てるのが一番いいんだ、そういうわけだから、育児用のミルクあるいはその材料というようなものは、母乳保育の保護、奨励を妨げるような方法で販売、配給してはいけないということ、そしてまた、そういうものを売るときに、不当なマーケティング行為があってはいかぬということを言っておりまして、そのために具体的にこういうことはしちゃいかぬ、こういうことはしちゃいかぬという指導の基準をいろいろ入れておるわけであります。  ところが、日本はこれに棄権をしておるわけであります。反対をしたのはアメリカでありまして、百十八カ国が賛成をして、棄権は日本と韓国とアルゼンチン、こういうことでございます。私読んで、実にいい基準だと思うのでありますが、日本が棄権した理由は何でしょうか。
  215. 尾崎明

    ○尾崎説明員 ただいまの委員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。  一九八一年、WHO総会におきまして、この「母乳代替品のマーケティングに関する国際基準」というものが各国を集めて審議をされたわけでございます。日本といたしましては、この基準の中で示されている数多くの事柄、たとえばミルクの缶に母乳が一番すぐれている旨を表示をするとか、あるいは妊産婦に対して無料でこのサンプルを配ったり、そういうことをやらないようにしようとか、そういうような内容であったわけでございます。従来から、私ども厚生省の方針としましては、母乳が一番いいんだ、一番すぐれているんだという基本的な考え方のもとに、母乳推進運動というのを繰り広げてきております。  まず最初の、第一段階の契機としましては、昭和四十年に母子保健法というのが制定されたわけでございますが、そのときにこの母乳推進運動を始めました。それからさらに、約十年後になるわけですが、昭和五十年におきましても、さらにもっと強力な推進を図るべきである、こういう観点から、改めて母乳推進ということに取りかかったわけでございまして、それとあわせて、サンプルの無料配布をやらないようにするとか、あるいは母乳がすぐれている旨を強く教育をしていくとか、そういうこともあわせて行ってきたわけでございます。それからまた、日本の国内におきましては、幸いにもこの基準の中に示されているような事柄というのは余り大きな問題にはなっていなくて、この基準というものをあえてここで日本の国が賛成をするとか、あるいは反対をするとか、そういうことの必要性というものは余りなかったんではないか。  それからまた、企業活動の公正を確保するといいましょうか、そういう観点から見ても、この基準の内容にはちょっと問題がある点があるのではないかというようなことから、各国の間でさらに慎重に審議をして煮詰めていく必要がある、そういう観点から、一九八一年におきます国際基準については、日本は棄権という態度をとったというように理解をしておるところでございます。
  216. 依田実

    ○依田委員 反対したアメリカは、要するに取引の自由、表現の自由、憲法上の理由、こういうことで反対をしたわけであります。日本は、いま聞いておりますと、厚生省はそれより以前に母乳推進運動をやったり、サンプルの配布の禁止をやったり、こういうことをやっておるんだ。つまりこれに書かれておることをやっておるんだ、やっておるからもう要らない、こういうふうにわれわれには聞こえるのであります。最後の理由は、企業の活動に影響を与えるから、私はここのところが厚生省が一番考えたところじゃないかと思うのであります。要するに、企業の輸出の阻害になっては困る、企業擁護のためにこれに棄権をされた、私はどうしてもそういうふうにしか受け取れないのでありますが、そこのところはどうでしょう。
  217. 尾崎明

    ○尾崎説明員 お答えを申し上げます。  また少し繰り返しになろうかと思いますけれども、母乳推進ということを強力に日本としては進めていく、従来からも進めていたという観点からこういう態度をとったというように理解をしておるわけでございまして、しかしながら、企業活動を直接に規制をするというような内容の個所もございますので、その点についてはさらに慎重な審議が必要であるという、あわせて二つの理由からこういう態度をとったというように理解をしておるところでございます。
  218. 依田実

    ○依田委員 繰り返すようになりますけれども、前段の方は、日本と同じことを言っておるんだ、そうですね、だから棄権だ、これもおかしな話だと私は思うのです。ですから、前段は棄権の理由にはならぬと思うのです。要は後段の理由じゃないか、こういうふうに思うのであります。  そこばかり長くやっているわけにいきませんので、次に進めさせていただきます。  先日、NHKの「面白ゼミナール」という番組を見ておったわけですが、鈴木健二アナウンサーが、赤ちゃんはいつから目が見えるか、こういう質問を出して、当たった人は少なかったのですが、要するに、生まれてすぐお母さんのおっぱいを飲みながら、お母さんの顔が見える、こう「面白ゼミナール」の答えは出ておったわけであります。というところからしても、お母さんが子供にお乳をやるということ、つまり母子の触れ合い、そういうものが子供の情操教育に対して非常に大事だろうとわれわれは思っておるわけであります。この基準がつくられましたのも、要はそこにあるわけであります。  そしてまた、出ない人の場合に補助としてということも言われるのでありますが、お母さんのお乳が出にくい場合には、お母さんがそれでも一生懸命出す、こういう努力をするということが、お母さんの子供に対する母性愛というものがだんだん生まれてくる大事な点じゃないか、こういうふうに思うのであります。  第三世界の、発展途上国の話に移ります前に、いま母乳推進運動をやられておる、こういうことでございますが、日本の病院あるいは診療所、そういうもので新生児の母親がお乳をやる、そういうものについて母乳がいいんだという指導を厚生省は具体的にどういうふうにやられておるのですか。
  219. 尾崎明

    ○尾崎説明員 お答えを申し上げます。  私、児童家庭局というところに所属をしておるわけでございますが、私の局から医療機関あるいは産院といいましょうか、そういうところに直接指導するという体系がありませんので、実は日本医師会を通じて、あるいは日本母性保護医協会を通じて、あるいは各都道府県知事を通じて、こういう医療機関において、母乳にまさるものはないということのPRを大いにしてくれるような要請をしております。  それからまた、私どもが直接指導することができる立場にある各県及び市町村というところに対しまして、健康教育の中で、母親学級あるいは新婚学級、そういうような場を通じまして、この母乳の重要性というものについて入念に教育をするように、指導するようにというような通達を出して、現在実行を続けておるところでございます。
  220. 依田実

    ○依田委員 いろいろそういうふうにやられておるようでありますが、実際の母乳で子供さんを育てるいわゆる母乳育児率、これを見てみますと、一番低かったのが一九七〇年、これは三〇%です。十人のお母さんのうちの三人のお母さんしか母乳で子供を育てられてない。それが最近、厚生省のいまの推進運動の効果かどうか知りませんけれども、一九八〇年には、約十年後にはそれが三八%、つまり、十人のうちの四人は母乳で子供さんを育てられる、こういうことになってきておるわけであります。  その推進運動をやられておるのはいいのでありますけれども、しかし実際には、母乳よりも粉ミルクを売りたい一心で、まだまだいろいろ販売作戦がやられておるわけであります。  私もこの間、一つ粉ミルクを買ってみましたけれども、確かに、母乳が一番いいというのが一番上に小さく書いてあるわけであります。しかし、中には相変わらず病院で押しかけ講習会みたいのを開かせてもらったり、あるいはまたそこで講習を受けられたお母さんに後でサンプルを送付したり、あるいは中に、栄養士という肩書きの手紙を新生児を持つお母さんに送って、こういうことが書いてある。  近年、母乳栄養で育った赤ちゃんは二千五百人から五千人に一人の割合で頭蓋骨内出血が見られる、これはビタミンKの少ないためだ、それは粉ミルクの中に入っておる、こういうことを書いて、いかにも粉ミルクを飲めばそういう病気が起こらないんだというようなことを出しているところもあるわけであります。こういうようなことが実際に行われているということを厚生省は知っておるのか、そしてまた、そういうことをしちゃいかぬということで御指導されておるのかどうか、その点を伺いたい。
  221. 尾崎明

    ○尾崎説明員 お答えを申し上げます。  前段の母乳保育率といいましょうか、だんだんと近年向上を見てきたわけでございますが、まだ五〇%、半分までには到達をしてないという段階でございます。さらにその点は強力な指導を続けてまいらなければいけないと思っております。  それからまた、後段の御質問にございましたビタミンKのお話でございます。実は私ども、研究費を使うことによりまして、現在研究者の方々にその辺の実情等の研究をしていただいているところでございます。そういうビタミンK不足による脳内出血というようなものを未然に防ぐ手が何かないであろうかということの研究をしているところでありまして、その研究成果を一日も早くもらって、そして行政としてできる手を打ってまいりたい、このように思っているわけでございますし、また、あるメーカーがそういう過剰宣伝といいましょうか、非常に母親を不安に陥らせるそういうような事実につきましても、私どもメーカー側に当たりまして、そういうことのないように強く指導をいたしたところでございます。
  222. 依田実

    ○依田委員 話はもとへ戻りますけれども、先日の嵐山で開かれたセミナーで問題になりましたのは、主に第三世界、発展途上国、これに対する先進国からの粉ミルクの輸出が子供たちに害を及ぼしている、こういうことでいろいろ取り上げられたわけであります。  これまたNHKの番組でこの間取り上げておりましたけれども、その番組の中で、見ておりましたところ、ファザールというIOCU、つまり国際消費者機構の会長の言葉が出ておりました。日本政府は、第三世界のお母さんと子供たちを助けるために強い処置をとるべきだ、強い処置というのは、製品の宣伝をやめさせろ、こういうようなことをNHKの番組の中で言っておりましたけれども、実際どういう粉ミルク禍というものが発展途上国に起こっておるのか、その実情について厚生省は把握されておるでしょうか。
  223. 尾崎明

    ○尾崎説明員 お答えを申し上げます。  第三世界といいましょうか、発展途上国におきまして、粉ミルクによりますいわゆる栄養不良児あるいは感染症の蔓延あるいは下痢症、そういうような事態が発生をしているということが、先ほど来ございましたWHOのああいう基準をつくろうという動きになってきたのだろうというぐあいに想像しているわけでありますが、そういう嫌な事態というのが現在ではすっかりなくなったというようなことは私ども承知をしておりませんで、その道の専門の方々にお伺いをいたしましても、そういうミルク禍というものがまだまだこの地球上からなくなったというような情報は把握をしてない、こういうようなお話であるわけでございまして、私どももそういう認識をしているところでございます。
  224. 依田実

    ○依田委員 確かに、被害の状況を見てみますと、別に粉ミルク自体に毒が入っておるとかそういうことではないわけでありまして、要するに、発展途上国へ行きますと、貧乏ですから、あるいはまた使用量もよくわからない、英語で書いてあるから読めない、こういうことで規定量の十倍も二十倍も水で薄めて、水みたいなものを赤ちゃんに飲ますから栄養失調になってしまうとか、あるいはまた水道がないから粉ミルクを溶くのに川の水でやるとか、あるいは哺乳瓶を殺菌消毒する習慣もない、こういうことで、言ってみれば使用する側に欠陥があると言えばあるのであります。しかし、そういうところへ売り込んでおるからには、それなりの注意を払って売り込まなければいかぬ、こういうことがこの出席者の論理でありまして、ここに出ておるインドのアナンというお医者さんの説明によると、日本の乳業メーカーの名前を挙げて、先進国の態度に対して非難を浴びせておる、こういうことが言われておるわけであります。  そこで、日本はどの程度海外に粉ミルクを輸出しておるのか、どういう国に輸出しておるのか、ちょっと挙げていただきたいのです。
  225. 海野研一

    ○海野説明員 お答えいたします。  現在、日本からの粉ミルクの輸出につきましては、台湾、タイ、パキスタン、イランを初めといたしまして東南アジア、中近東等の諸国に、ピーク時五十五年度に一万四千トンの輸出をしておりました。五十七年度約一万トンでございます。
  226. 依田実

    ○依田委員 いま幾つかの国の名前が挙がりましたけれども、台湾は発展途上国というよりも中進国でございますから抜いてあれしますが、あとは大体十傑に入るところ、三十二カ国に輸出されておる、十傑は全部発展途上国、こういうことになるわけであります。  それと、また、国内の生産量が一九七〇年六万二千トン、それが一九八〇年六万二千トン、要するに伸びてないのであります。それに対して輸出の方は、一九七〇年が七千百トン、それが一九八〇年には一万三千九百トン、いまのお話だと一万トンまで減ったということでありますが、いずれにしても二倍近く伸びている。すなわち、国内の需要がとまったところから輸出が非常に伸び始めておる、こういうことであります。つまり発展途上国へいろいろな形で売り込みをして、そしてそれが発展途上国の皆さんから日本のメーカー非難という形になってきているのじゃないか、こう思うのであります。  われわれ聞いておるところでも、たとえばマザークラフトナース、こういうように名称はいいのでありますが、現地の販売促進員、こういう者を雇って、サンプルを産院で配ったり、あるいはまた確かに母乳がいいんだとは言っておるのだけれども、実際のポスターは粉ミルクの缶とまるまると太った赤ちゃんのポスター、こういうものを出してやっておるとか、そういう意味で、第三世界の皆さん、発展途上国の皆さん方からすると、日本という国の売り方についていろいろ非難の声が上がっておるのが実情じゃないか、こういうふうに思うのであります。  この問題は、ずっと以前にネッスルのボイコット運動というのがもうすでに行われました。去年のニュースを見てみますと、ネッスルが世界の人々の声に抗し得ず、粉ミルク広告を全世界のテレビや新聞からやめるとか、一切の粉ミルク広告、宣伝あるいは無料配布を中止するというようなことをネッスルは決めた、これは去年のニュースであります。  ところが、おとといですか新聞を見ておりましたらば、「海外スポット」という日経の小さな記事の中に、今度はネッスルが態度を変えまして、自分たちに対する非難は悪意に満ちたキャンペーンだ、こういう見解を明らかにしたとか、第三世界の乳児の福祉とは別の何かを動機としたもので、政治的キャンペーンでわが社は攻撃されているのだというふうなことを言い始めておりますから、必ずしもネッスル社を褒めるわけにいきませんけれども、しかし、日本の国のメーカーに対する非難というのが事実名前を挙げてこういうセミナーで出されているということは大事なことだと思うのであります。輸出するメーカーに対して、これは農林省ですか、何か指導をされておるのかどうか、伺わせていただきたいと思います。
  227. 海野研一

    ○海野説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げました三十四カ国のうちで、まず一カ国タイ、これは先ほどのWHOの勧告に基づいた規制を行っておりますので、その規制の範囲内での企業行動ということになるわけでございます。そのほかに二カ国、マレーシア、パキスタン、これはあの勧告を吟味いたしまして、多少内容は違いますけれども、それぞれ独自の規制を行っております。したがいまして、その三カ国につきましては、その規制の範囲内の企業活動ということになるわけでございます。その他の諸国もそれぞれの各国の判断でいろいろな規制は行っているはずでございます。規制のほかにいろんな指導があるというようなかっこうで、各国の指導に従って企業活動をやっているというふうな報告を受けております。     〔武部委員長代理退席委員長着席〕  したがいまして、各国自体の判断でいろいろなされるということがございますので、一律に日本政府が、特に輸出業者を指導するという必要はないのかと思いますけれども、国によりましては、いろいろ規制をしようにも規制の手段がないというような国もあろうかと存じます。関係国政府からの要請があれば、必要な指導をすることも検討いたしたいというふうに考えております。
  228. 依田実

    ○依田委員 私がこういう問題を取り上げておりますのは、一つは、最初に日本の問題で申し上げましたように、近年自分の、母親のおっぱいで子供を育てるというのが少なくなっている、三八%しかない。こういうことは将来の日本の教育あるいは情操問題について非常に憂うべき状態だ。ですから、粉ミルクよりも母乳がベストだということを書いてあるのだけれども、たばこじゃないが粉ミルクを飲むよりも母乳がいいんだということを、もっともっと大きく書くような指導をしていただきたいというのが一つ。  それから、発展途上国で、いろいろ厚生省、農林省がおっしゃるけれども、事実問題として日本のメーカーに対する非難がたくさん出ているということを真剣に受け入れてもらいたい、こう思うのであります。と申しますのは、これは単に粉ミルクメーカー、乳業メーカーだけの問題じゃない、こう思うのであります。やがてこれは日本の食品メーカーであるとか薬品メーカーであるとか、そういうものに対する総合的な非難となってあらわれてくるんじゃないか。これはもう間違いない、こういうふうに思うわけでありまして、いわゆる発展途上国に対する日本のイメージを非常に低落させる大きな原因になるのではないか、こう思うのであります。  中曽根総理大臣がせっかくASEANを回っていろいろお金を振りまいてきても、実際毎日、日本の粉ミルクを飲んで赤ちゃんが死んじゃったというようなことを言っておる人がたくさんいるということは、何にもならないことになるわけでありますから、その辺の問題についてひとつ厚生省は真剣に考えていただきたい、こういうふうに思うのであります。きのう、この問題をやるについていろいろ厚生省の方をお呼びしましたけれども、どうも余り関心がなさそうな、これからもそういう問題について熱心にメーカー指導をやろうとか、第三世界のそういう非難の声にこたえられるように鋭意国内の政策努力をしようとか、そういうようなことは余り受け取れなかった。非常に残念であります。ひとつぜひそういう意味で、これから大いに厚生行政というものをやっていただきたい。  以上で終わります。
  229. 土井たか子

    土井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十四分散会