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1983-03-04 第98回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月四日(金曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 土井たか子君    理事 青木 正久君 理事 狩野 明男君    理事 岸田 文武君 理事 中島源太郎君    理事 城地 豊司君 理事 武部  文君    理事 林  保夫君       今枝 敬雄君    熊川 次男君       長野 祐也君    野上  徹君       長田 武士君    塩田  晋君       岩佐 恵美君    依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁国民         生活局長    大竹 宏繁君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君  委員外出席者         経済企画庁経済         研究所次長   吉岡 博之君         外務大臣官房外         務参事官    佐藤 嘉恭君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      田辺 俊彦君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     黒田 直樹君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 土井たか子

    土井委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 私は、最初に、物価景気動向について経企庁長官の見解をただしておきたいと思います。  物価は非常に落ちついておりますが、中曽根総理もたびたび演説でこのことについて触れておられます。  中曽根内閣が発足いたしました直後に、各紙で世論調査が行われました。この世論調査の中で、内閣に特に期待するものという項目で、この回答の中で断然トップを切ったのが物価対策であります。六一・二%という大変高い数字を示しておりました。景気対策が四九・九、たくさんございますが、防衛力の整備は四・七%、こういうことが世論調査国民の前に明らかになったわけであります。物価が非常に安定をしておると演説の中に述べられておる中曽根内閣に対して、国民は発足直後に、物価対策が断然第一位、これは一体何を意味するだろうか。  私は、多くの内閣がかわるたびにこの問題を取り上げてきた者の一人でございますが、それまでは、非常に紆余曲折はございましたが、どの内閣でも物価対策というのはいつもトップでございました。高いときならいざ知らず、これほど数字が下がって、総理自身が安定をしておると、大変自慢とまではいきませんが、言っておるのに、なぜこういう数字が出てくるのだろうか。これは、国民の側から見れば、深刻な不況が続いておる、せめて物価だけは抑えてもらいたい、こういうことが庶民の切実な願いとしてこのように世論調査の中にあらわれたと見てよかろうと思うのであります。  五十五年、五十六年の勤労者の可処分所得マイナスであります。五十七年はやや持ち直したものの、決して数字はいい方向を向いておらないのであります。相変わらず税金も厳しいし、社会保険料も高いし、貯金の引き出しも多いし、勤労者にとっては大変なのであります。物価が落ちついて、現在の政策はりっぱなものだと言って自慢できるだろうか。せめて物価が可処分所得と同じようにマイナスならば、私は話がわかる。しかし、現実には三%あるいは三%台、こういう状況なのでございまして、そういう意味で、国民が、中曽根内閣に対して、物価対策を非常に強く求めておる背景を、企画庁長官はぜひ認識をしていただいておかなければならぬ、この点が第一なのであります。  さて、われわれはこの委員会狂乱物価の時代からいろいろ論議を続けてきたわけですが、いまはまさに逆に、新オイルショックだとかあるいは逆オイルショックだとかという新語がはやっております。相次いで原油値下がりが発表されておりますし、為替相場もやや上向いてきておる、これは非常に結構なことだと思うわけであります。そこで、この原油値下がりあるいは為替相場の安定、円高傾向わが国経済にこれからどんな影響をもたらすと考えておられるのか。  一バレル四ドル下がりますと、年間約十六億バレル輸入しておるわが国は、支払い代金というのは年間六十四億ドル、日本円にして、大体二百三十円台ぐらいの為替相場でいって一兆五千億円、これだけの支払いが軽減するわけであります。  この一兆五千億円に上る膨大な支払いの軽減は、物価の面から言うならば、第一義的には、産業界に投入される原燃料コスト値下げにつながるというふうにだれもが考えるだろうと思います。そういう面で、まず石油製品、電力、ガス、そういうものがこの中から取り出されてくることは当然だろうと思うのです。  かつて石油業界は一年間に十一回も値上げをして、われわれとここで大変やり合ったことを記憶をいたしておりますが、この原油値下げを受けて、経企庁国内関連価格値下げの指導に乗り出すという新聞報道が出た途端に、経団連会長は全く逆なことを発言をされたのです。御承知のとおり、これは企画庁流消費者還元論であって間違っておる、こういうことを経団連会長はその翌日、企画庁発言に対して反論をされたのであります。その内容がまた問題であります。企業判断によって製品価格が下がるのはよいがという前置きなのであります。  われわれは、この原油と直接結びつく、最も近い企業石油業界、それと何遍もここでやりとりしたわけですが、一体、この経団連会長が言われるような、企業判断によって製品価格が下がるのはよいがというようなことが考えられるだろうか、そんな夢みたいなことが考えられるだろうか。上げるときには一瀉千里で引き上げて、一年に十一遍も上げておいて、下がるときにはカタツムリよりも遅いような速度で、くだくだいろいろなことを言ってなかなか下げぬ、それが特に石油業界の体質だということは、もうこの委員会で何遍も同僚議員と一緒に追及したことであります。  一体政府は、どういう態度でこの原油値下げ為替相場円高傾向、こういうものでこれからの物価対策を進めていこうとされるのか、これを最初にお伺いをしておきたいと思うのです。
  4. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 まず第一点の、物価問題の重要性認識の問題でございます。  当然のことながら、企画庁長官は、何と申しましても物価問題の主管大臣でございますし、私は、何といってもまず第一に、国民生活観点から、物価問題は大変重要なものだと考えます。さらにまた、産業的、経済的に見まして円レートの安定、これも物価基礎になる問題でございますので、そういった観点からも物価問題は重視していきたいと考えております。  第二は、原油値下がりに対する何と申しましょうか、根本的な取り組み方という御質問であったと思いますが、オイルショックで十年間どもは大変苦しんでまいりました。しかし、やっと国民の努力で、大体三割程度の節約によって産油国側がこのように値下げ方向に来た、この点を大変私はうれしく思い、これを経済の上において、政策の上において活用しなければならないかと思うのでございます。ただ、まだまだ残念なことに、あすぐらいかと言っておりますけれどもOPEC側引き下げの幅も決まっておりません。したがいまして、引き下げ幅がどのようになるか十分注視しながら、私は、すべての方面においての原油コストの中において占める地位、このような点に着目しながら物価行政に取り組んでいきたいと考えております。
  5. 武部文

    武部委員 きょうは時間の関係で、石油値下げ円相場動向、それと物価、このことについては避けまして、いずれ改めて具体的な問題としてお伺いをいたしたいと思いますが、もう一点だけ長官に聞いておきたいことがございます。  それは景気との関係でございますが、いま大型間接税の問題がいろいろ取りざたをされておりますが、長官はこの大型間接税について、それは消費を冷やすことになるので反対だということを表明されたことが大々的に報道されたのを私は承知をいたしておりますが、いまでもそのお考えに変わりはないのか、これをひとつお聞きをしたい。
  6. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 大型間接税についてお尋ねでございますが、私は、企画庁長官として大型間接税について意見を申し述べたわけでございまして、税制論といたしまして申し上げたつもりではございません。税制論としては、賛成論反対論、いろいろあることはもう御案内のとおりでございますけれども企画庁長官といたしまして、まず第一に、いまの経済情勢のもとで、特に景気の回復が一番大事なときである。こんなことを考えますと、まず、大型間接税というのは、業者価格転嫁力を利用して商品価格をまず購入する前に上げていく税でございますから、それが直ちに消費影響する。私は現状において賛成はできない。所得税の減税の財源としてもこれを相殺して、むしろ所得税の方は消費と貯蓄に分かれる性格のものであるから、消費税の方が端的に消費影響を来して、景気によりマイナス的な効果を生むであろうから、私はやるべきではない。  しかもまた、第二の理由といたしまして、大変長年の長雨で体力も弱っておるところでございます。体力の弱ったところに大変強い薬を飲まされたのでは、これはもうとてもじゃないが、十分消化できなくて、また悪くなるから、私は、この際はとるべきではないことを申し上げただけで、経済的な観点での私の見方でございます。
  7. 武部文

    武部委員 それではこれだけにしておきましょう。  次いで、ひとつ公取委員長にお伺いをいたしたいのであります。  いま深刻な不況が続いておりますが、この不況時における経済政策について、与党である自民党の皆さんやあるいは財界の皆さんの中から、独禁政策緩和やあるいは独禁法そのもの改正すべきであるという議論がされておるわけでありますが、これはもうすでにお聞きのとおりだと思いますが、競争政策をつかさどり、独禁法の番人である公正取引委員会委員長として、このような議論についてどのようにお考えでございましょうか。最初にこれをお伺いをいたします。
  8. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ことに第二次の石油ショックの後でございますが、世界的に独禁法制を整備すべきだという考え方が強くなってまいりまして、現在およそ世界じゅうで三十九カ国が独禁法制というものを備えるに至っております。その内容は必ずしも一律ではありませんけれども、私的な独占それから不当な取引制限それからもう一つは不公正な取引方法、それらを禁止することによって、経済健全性企業の行動の健全性と、全体としての経済効率化を図っていくという趣旨に帰するかと思います。  独禁法制と申しますのは交通法規のようなものだとよく言われておりますけれども、そういうものだという考え方は私は非常に正しい考え方だと思っておりまして、いまお示しのように、低成長下にあって、企業合理化などによって減量経営に努めておるわけでございますけれども、こういう事態から脱却をして、日本経済をもっと生き生きとしたものにしていくという力をつけますためには、公正で自由な競争を促進していくことによって民間の活力を維持して、これを生かして経済効率を高めるということが、経済全体からしても、国民生活観点からいたしましても、ますます重要であるというふうに思っております。  不況になりますと、とかく自分のことを考える余りに取引の相手方に不利益を押しつける、こういうことが往々行われがちでございまして、したがって、企業間の取引の公正ということがとかく阻害されるような事例が見られます。したがって、経済全体としては、企業間の取引の公正を維持していくという必要が強まってまいるわけでございますから、独禁法で定めておりますルールにのっとって各企業が適切に競争していくという必要があろうと思いまして、私ども公取委員会としても、引き続いて公正な取引の実現に向かって努力してまいりたいというのが私の所存でございます。
  9. 武部文

    武部委員 よくわかりました。  そこで、次にお伺いしたいんですが、最近アメリカその他の国々で独禁政策緩和が、いまのお話とちょっと関係いたしますが、図られているというようなことが各方面で言われておりますが、それは事実でございましょうか。いまあなたがおっしゃった三十九カ国のお話を聞きますとちょっと違うようですが、そんなことが流されておるわけですが、これはいかがでしょうか。
  10. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、欧米諸国独禁法制内容は必ずしも一様とは言えません。しかし、さっきも申し上げましたように、石油ショックの後、経済不況物価の上昇という中で各国が独禁法制を整備してまいったことは事実でございまして、こういう不況事態であるから独禁法緩和しようという事例は見当たらないわけでございます。  一番よく言われますのは、アメリカレーガン政権になりましてから、従来の独禁政策経済効率を害している面があるから今後この運用については劇的な変化、ドラマチックという言葉を使っておりますが、劇的な変化をするんだというスミス司法長官演説がありまして、それがアメリカ独禁法の適用を緩和する動きだというふうに考えられておるわけでございますが、事実はそういうことではないというふうに思います。  レーガン政権独禁政策と申しますのは、アメリカ経済の再活性化を図るということを基本趣旨にしておりますから、全般的なそのような経済政策理念の中で経済効率を高めていく、資源最適配分を図る、経済の進歩を図る、それによって民主的な社会制度維持増進をする、こういうのが基本理念でございます。そのためには、市場経済基礎になっております競争というものを大事にしていく必要がある。したがって、競争を一層強化促進する反面で、経済効率的な運営を阻害してまいったような独禁法運用を改めていきたいということになるわけでございますから、独禁法緩和というふうにこれをとることは当たらないというふうに思います。  やや具体的に申しますと、たとえば水平的な協定と言っておりますが、水平的な競争業者間のカルテルでございますけれども、これにつきましては、経済効率を害する、経済の公正を害するという観点から従来以上に厳しく対処するということで、禁錮を含む厳罰をもって臨むという、実績もそのようであります。  それから合併の問題でございますけれども水平合併、つまり同業者間の同じ取引段階での合併でございますけれども、これにつきましては、依然として規制日本よりも厳しいというふうに思っております。ただ、いわゆるコングロマリットとか、それから取引関係が上下にあります製造業者販売業者製造業者原料業者、こういった関係合併、非水平的な合併、また全然業種の違ったものの間の合併、それにつきましては、従来はかなり厳しい運用がなされておりましたけれども水平段階での競争影響が大きいものだけを規制していくという考え方に改まっております。  したがって、合併につきましては新しくガイドラインというのができておりますけれども、これは単純に、従来の五%と五%の業者がくっつくだけでその合併がいけないというような機械的な運用に対する反省としまして、やはり企業の相互の規模の格差なり全体の市場集中度というものも判断いたしまして、一定のガイドラインをつくっております。そのガイドライン内容を詳しく申し上げる時間もございませんけれども、概して申せば、私ども公取委員会がやっております合併審査基準よりはなおかなり厳しいものというふうに御承知いただいて結構だというふうに思います。  アメリカはそのようなことでございますけれども、ドイツでも、一九八〇年、昭和五十五年に競争制限禁止法、いわゆる独禁法強化改正がなされまして、合併規制とか市場支配的な地位乱用規制というものが強められておるわけであります。イギリスでも、同じ昭和五十五年に競争法が制定されまして、抱き合わせでございますとか、全量購入契約でございましょうか、そういった競争を害する行為というものが規制の対象になるということでございますし、一方で国有企業民営化というものも進められておるわけであります。  ECでは、ローマ条約の中で独禁規定を持っておりますけれども、最近不況カルテルが認められたというようなことが大きく伝えられておりますけれども独禁政策緩和という評価をいたしますよりは、従来の運用の範囲内で審査と認可の基準を明らかにした、こういうことが具体的な内容でございまして、繰り返して申すようでございますが、欧米諸国において独禁法緩和しようとする国は見当たらないと申し上げてよろしいと思います。
  11. 武部文

    武部委員 わかりました。私が申し上げたのとは全く逆に、独禁政策強化方向が図られつつあるというふうにお答えをいただきましたので、その点はわかりました。  そこで、同じく独禁政策問題に関連をしてお尋ねをいたしますが、昨年の七月、ここにございますが、OECD閣僚理事会積極的調整政策いわゆるPAP、これを宣言をし、決定をし、勧告をいたしました。PAP、これはポジティブ・アジャストメント・ポリシー、大変むずかしい名前ですが、この趣旨は一体何だろうか。このことについて、先日公正取引委員会からお届けいただきました「公正取引」の二月号に、つい先日いただきましたが、ここに新野幸次郎さんという神戸大学経済学部の教授の方が論文を書いておられまして、これを拝見をいたしました。これはこのPAPのことを書いておられるわけですが、これから私は独禁法との関係お尋ねをいたしたいのであります。  このPAP趣旨は一体何だろうか。これは経済に対する政府介入はできるだけ排除するが、例外として認められる場合でも、限界企業を温存するというか救済する、そういうことではなくて、それにかわってその国の成長可能な産業の伸長を図るというところにある。言いかえるならば、競争政策産業構造の転換を図るということに真意があるのであって、構造的に弱い産業政府が保護するために介入することを言うのではないと、この趣旨を述べておるのであります。仮にそのための支援措置がとられるとしても、その支援措置はあくまでも一時的であるべきだし、可能な限り、支援段階的に減らしていく計画を前もって立てておくべきである、これがPAP基本的な趣旨だということをこの神戸大学教授は述べておられますし、これをずっと読んでみると、そのように理解ができるのであります。  公取委員長は、この昨年七月のPAP宣言勧告、これをどう評価をし、独禁政策にどのように結びつけようと考えておられるのか、これをお伺いいたしたいと思います。
  12. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまお話がございましたように、PAPは非常に広範な内容を持っておりますけれども、その骨子は、いまお話があったことに沿っておると思います。  繰り返して申し上げるようでございますが、PAP骨子というものを三点にまとめて申し上げますと、一つは、産業構造などの調整については市場メカニズムにゆだねるのが積極的調整政策PAPの原則だということであります。  二つ目に、仮に構造的に弱体な産業援助するために政府介入等が必要であるといたしましても、その援助は常に一時的なものにとどめるべきだ。また、可能な場合にはあらかじめ予定したスケジュールに従って漸減せらるべきものだというのが第二であります。  それから三番目に、カルテルに触れられておりますけれどもカルテルコスト高企業を保護するもので、また生産工程の改良とか新製品開発の意欲をそぐ傾向が強い。したがって、支配的企業とか、それから合併よりもはるかに問題を含んでいる、こういうことを言っております。  以上、PAP骨子を私なりにまとめて申し上げるとそういうことでございます。  公取委員会といたしましては、先ほど申し上げましたように、構造不況産業への対処は、基本的に市場メカニズムによる企業合理性に即して、個々の企業の自主的な判断と責任に基づいて行われる、これが最適の道だというふうに考えております。そういう意味で、PAPに述べられております、私なりにまとめました骨子というものと考え方は相沿っておるというふうに考えております。
  13. 武部文

    武部委員 わかりました。  そういたしますと、私はあえて読み上げませんが、公正取引協会の発行しておられるこの「公正取引」という本の二月号、この中にございます新野幸次郎先生論文、この中ではっきりと言われておりますが、PAP基本精神というのがございますが、これといまの公取委員長のお考え方は一致しておるというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  14. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほど申し上げましたように、PAP考え方と私ども構造不況に対する考え方というものは、基本的に同じであるというふうに御理解いただいて結構でございます。
  15. 武部文

    武部委員 わかりました。  それならば、通産省にちょっとお伺いいたしたいのであります。  通産省は、今回の特定不況産業安定臨時措置法、いわゆる特安法改正に当たりまして、このPAPをしきりに強調しておられます。ところが、これを詳細に検討してみますと、改正法、新特安法は、改正によってさらに五年間延長が予定をされておる法律であります。アルミ、電炉、合繊、紙などは、合計十年間政府援助を受けることになるわけであります。しかも、この現在の特安法過剰設備廃棄が中心であったのに、今回はそれに加えて生産販売購入保管運輸、そういうものをひっくるめた共同化あるいは営業譲渡、そういうものまで今度の新しい改正法案には追加をされております。  これは、先ほど私がここで読み上げましたが、OECDPAPの示しておるところの、仮に認めるとしても一時的なものである、こういう基本的な精神に反するし、また、次の段階で述べましたけれども、仮に一時的にやったとしても、これは漸次減少を前提として行うべきであるというこの精神にも反すると思うわけでありますが、いま申し上げた改正法案の、過剰設備廃棄から、さらに生産販売購入保管運輸、こうした共同化営業譲渡、こういうことまで踏み込んで改正するということは全くPAP精神に反すると、このように思うのですが、なぜ通産省PAPを強調しておられるのか、私はこの点がよくわからない。  同時に、この改正法案が発表されてから、外国からしきりにわが国のこうした政策に対して非難が上がっておる、これはもう皆さん承知のとおり。この外国非難に対して通産省はどういうふうに考えておられるか、これを通産省側からお聞きをいたしたいのであります。
  16. 田辺俊彦

    田辺説明員 先生御指摘のPAPについてでございますが、先ほど来公取委員長から御説明がありましたとおりの方向でございますが、じゃPAPの中身は何かと申し上げますと、一つは、過剰設備ないしは老朽設備の縮小を進めるということと、それからもう一つは、生き残れるものは活性化をしなさい、エコノミックバイアブルなものにする、経済合理性を持たせるようにしなさいと言っているわけでございます。そして、それは市場メカニズムの流れの中で、かつダイナミックな動態的な市場の中で、規模の経済性を追求してやりなさい、こういうことが中身でございます。  私どもの新しい特安法でございますが、まず、先生御指摘の第二点からお答え申し上げますと、過剰設備処理という縮小の原則が一つあります。まさにPAPの二つの柱の一つを法律の中に取り込んでいるわけでございます。それから第二の活性化につきましては、新しいエネルギー事情に対応する設備投資、活性化投資とか技術革新とか、それと同時に、規模のメリットを追求するための、先生御指摘のとおりのさまざまな事業提携、共同化、これを必要に応じて促進する、こういう考え方に立っております。したがいまして、PAPの申します縮小と活性化という方向に沿って基本的な骨格が立てられているという理解でございます。  それからなお、PAPの中に詳細に、閣僚会議の合意にはございませんが、要約と報告の中を見てみますと、合併等の集約化、規模メリットの追求は非常に結構であると言っておるわけでございます。そういう指摘もございます。  それから第二点でございますが、PAPのそういう前提となる条件といいますのは、第一に開放市場体制でございます。私どもの新しい法律は、この開放市場体制のもとで、一切の輸入制限を排してやろうという、私どもとしましては、世界的にも、衰退産業に関してはアメリカのように輸入制限とか輸出規制を求めるとか、ヨーロッパのように補助金をつぎ込むとかいうことではなしに、企業の自助努力をベースとした対策を進めていくべきだと思っておりまして、そういう方向で構築されているかと思います。  それから時限性に関してでございますが、これは先生の御指摘のとおり、特安法年間、それからさらに五年間改正延長という形で新しい法律を提案しているわけでございます。このゆえんは、特安法が第一次石油ショックの後を受けた構造不況対策であるのに対しまして、私どもの今度の新しい法体系は、第二次石油ショック基礎素材産業が受けまして、そしてより深く、広く問題が、構造的困難が産業に行き渡っております。地域社会や雇用にも行き渡りつつあります。それを自助努力をベースにどう活性化するかということで、新しい装いを整えて特定産業の構造改善という形で法案を上程している次第でございます。  それから第三点の国際的なかかわりでございますが、外国からの御批判について御指摘ございました。先生御指摘のとおり、新聞等で私どもも拝見しております。先般商工委員会で通産大臣がお答えになりましたが、アメリカのUSTRのブロック代表が通産大臣のところへ先般参りましたが、一切の批判を申しておりません。何ら言及はございませんでした。新聞等で拝見しておりますが、私どもといたしましては、開放経済ということはこのPAPの原則でもあり、かつ、私どもの進めます基礎素材産業対策基本的前提でございまして、仮にそれが輸入を制限するようなことをやるのじゃないかという誤解があるとすれば、私どもとしては、その理解を求めるための努力を一層進めなければいけないと思っておりますが、海外に対しても十分理解され、そして国際的な流れに十分適合した政策であると確信している次第でございます。
  17. 武部文

    武部委員 いまブロック代表のことは否定されましたが、新聞はまだその後引き続いてアメリカの議会でこの問題が取り上げられたということさえ報道しておるわけでして、われわれは新聞の報道で一応そういうことを知っておるわけですが、ブロック代表が通産大臣にそういうことを言わなかったとおっしゃれば、それは水かけ論ですからそれ以上のことは申し上げませんが、それならば、いまあなたは縮小の原則、それから活性化、技術革新を中心とした活性化ということがこのPAPの指摘の中にあるとおっしゃったわけであります。私が指摘をした一時的な限時性の問題やあるいは漸次減少の問題についてはどうお考えですか。
  18. 田辺俊彦

    田辺説明員 PAPの一時性の原則につきましては先生御指摘のとおりでございまして、私どもも、この装いを新たにした産構法は、一時的な五年の限時立法で活性化を進めていくという考え方に立っております。  それから、PAPは漸進的にまず縮小を進めるということでございますが、これも一方でPAPは、構造的な需給の流れをよくにらんで計画的に廃棄を進めるという考え方が背景にもう一つございます。その意味におきまして、法律の中での基本計画において、地域や社会や雇用にも十分な配慮を払いつつ計画的な廃棄の促進をやっていく、そういうたてまえになっております。  それからまた、経済事情の変化によってこの新しい法体系が不必要になった場合、そういう場合には産業界がそこから卒業するという形で、こういう政府の環境整備したフレームワークから抜け出るということの法的たてまえも条文の中にあるということでございます。したがいまして、そういう意味におきましても、PAP精神の中で、あるいは内容の中に合致しているということが言えるのではないかと思っております。
  19. 武部文

    武部委員 いろいろ説明をしておられますが、あなたの方はこのPAPを強調しておられますけれども、私は、先ほど公取委員長がおっしゃった基本的な精神PAPの最も正しい解釈であるというふうに理解をいたします。その面から言うならば、今回の新特安法PAP基本精神から逸脱をしておるというふうに思わざるを得ないのであります。しかし、新特安法は商工委員会に付託をされた法案でございますし、そこで論議がいまも続いておるようでございますし、これからも行われるでございましょうし、また、法案の中身については私も参加をさせていただきたいと思っておりますから、いまは通産省の御意見だけお聞きをしておくということにいたしたいと思います。  そこでもう一点、公正取引委員長お尋ねをいたしたいのであります。  先ほど引用いたしました新野幸次郎教授論文の中にも出てまいりますが、過当競争の問題についてであります。世の中が大変不景気になって深刻になってまいりますと、必ずと言っていいほど過当競争論というものが台頭してくる。景気のいいときは非常に協調的であった業界でも、一たん不況になって深刻な状況になりますと価格競争が起こってくる。一つの例をとりますならば、あの鉄の団結を誇ってきたOPECでさえも、経済原則の前には価格カルテルを崩さざるを得ない、これが現実の姿ではないか、最も典型的な見本だというふうに見てよかろうと思います。  そこで、過当競争という言葉、これはなかなかむずかしい、私どもはよくわかりませんからお聞きをするわけでございますが、よく使われます。この過当競争という言葉は、物を売るための価格引き下げ競争を過当競争と言うのか、そんなものかなというふうに思いますが、この過当競争が起きますと、必ずと言っていいほど、独占禁止法が悪いとか、あるいは独占禁止法を改正させるとか、あるいは独禁政策緩和させなければならぬとか、こういう議論が起きてまいります。このたびの財界からの発言もこの種のものというふうに私は理解をいたしますが、独禁法ないし独禁政策が悪いから過当競争が起きるというのか。この点は独禁政策と過当競争論ということになりかねないわけですが、この関係について、公正取引委員長はどういうお考えをお持ちでございましょうか、これをちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  20. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまもお話がございますように、いわゆる過当競争ということが具体的にどういう内容を持っておるのか、論者によって、必ずしも意見の一致を見ているとは言いがたいと思いますけれども、いまお尋ねのありましたような趣旨で、不況になりますと過当競争が目について、それを防止するために独禁法緩和改正が必要だ、こういう意見に対しての私ども考え方ということにしぼって申し上げたいと存じます。  さっきもお答えいたしましたことでございますが、独禁法は、公正で自由な競争の促進、こういう市場経済体制のもとでの基本的なルールを定める、それに反する企業行動を規制するという趣旨でございます。したがって、独禁法があるためにいわゆる過当な競争が生ずるということにはならないというふうに私ども考えておるわけであります。  低成長下でありますれば、一方で競争が激しくなって、その結果、中小企業等の弱者に不利益を押しつける行為が生ずる、また一方で企業が協調してカルテル等を生みやすいというような弊害が目についてまいります。そこで、低成長下においては、独禁政策を適切に運用していくことがますます重要であるというふうに考えるわけであります。  仮に、いわゆる過当競争を防止するため独禁政策緩和する、こういうことになりますと、経済全体がいわゆる協調体制へ移行していく、また一方で、有力なプライスリーダーが生まれてまいりまして産業の適正な競争が減少していく、製造コストが安易に価格に転嫁されるというような弊害が出てまいるだけでなくて、経済全体の活力、それから向上の能力というものが害されていくというふうに思うわけであります。  しばしば言われますのは、不況下で中小企業者は大きな影響を受けやすい弱い立場にあるから、したがって、そういう部門での過当競争を何とかしなければならないということでありますけれども、そういう中小企業者が大きな影響を受けやすい弱い立場にあるということは事実でございます。そこで、そういう実情にかんがみまして、一定の要件を満たす場合には、中小企業者の団体が不況乗り切りのためのカルテルを結ぶということを独禁法の中でも認めておるわけでございますし、一人では有効な競争単位とか取引単位になりがたい中小企業者、これは相互に結合して、中小企業等共同組合法に基づく共同組合をつくってその認める範囲で共同経済事業を行う場合には、原則として独禁法の適用除外という制度もあるわけであります。  全体として、経済基本的な枠組みであります独禁法によって守られていく公正でかつ自由な競争というものが全体の経済の公正を高めていく、また経済効率最適にしていく、そういう観点から私ども運用してまいりたいと思いますし、独禁法があるからいわゆろ過当競争が生ずるんだという意見には同意しがたいわけでございます。
  21. 武部文

    武部委員 私の意見と大体一緒ですから、もうこれでよろしゅうございます。  そこで、それならば今度は企画庁長官にちょっとお伺いをいたしたいのであります。  企画庁長官は、昨年十一月、長官就任直後の記者会見で景気対策について述べられておりますが、私どもは新聞だけではわかりませんので、これをもとにしてお伺いをしたいのであります。  この十一月の長官就任後の記者会見の報道によりますと、景気対策一つとして構造不況対策、これが一つの柱だ、これで下支えしていかなければならぬ、「このため独禁法にはもう一度考え直さなければならない点がある。景気低迷時には過当競争を防がなければならない。過当競争の防止に役立つように独禁法改正運用考える必要がある。」これが日経に出ておる会見の模様であります。  同じようなことが書いてありますが、この同じ会見の内容が、新聞記者によって違うのですけれども、もう一つの新聞読売は、「中小企業は、過当競争でヘトヘトになっているが、話し合いには厳しく、不当廉売はやり得になっている感じさえある。」こういうふうに書いてあるのであります。  さらに、本年一月二十日、長官が金沢に行かれて講演会でお述べになったことが大々的に報道されました。五十八年一月二十一日の各紙に、写真入りで大きな見出しで出ておりますからごらんになったと思いますが、見出しは「公取委は中小企業いじめ」「独禁法改正せよ」とあります。  内容を見ると、「公取委の姿勢は、中小企業者いじめになっており、問題がある。独禁法も、日本社会の体質になじまないので改正すべきだ」こう長官発言をしておる。そうしてその後、四国地区の牛乳販売メーカーの独禁法違反の排除勧告を受けた問題を例に挙げてお述べになったようであります。次いで、現行の独禁法は、協調を美徳とする日本社会の体質に合わない、憲法と同じでタブー視する声があるが、運用緩和はもちろん、景気浮揚の面からも法律改正すべきだと述べたと報ぜられております。  私は、先ほど来独禁法の問題、独占禁止法の番人である公取委員長からいろいろお聞きをいたしました。長官もお聞きになったとおり。この一連の新聞の談話を見て、長官は、かねがね人間はもたれ合って生きていかねばならぬということが持論のようでございます。そういう人生論を持っておられるようでございまして、そういう中から出た発言ではないかとも思われますが、少なくとも経済運営の最高の責任者として、これは実に重大な発言だと私は思うのですが、真意は一体どこにあるのか、これをお伺いいたしたい。
  22. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま新聞の私の記事を基礎にいろいろお話がございましたが、確かに、真意を申し上げなければならないほど正確には伝わっていないようでございます。  この独禁法の論議に私はなぜ呼ばれたか、いまも考えておりましたが、いま武部委員高橋委員長、さらに通産省との間の御論議で、経企庁長官よく聞いておれということだと思って伺っておりました。聞いておりましたし、非常に不幸なことと申しますか、独禁法について大きな認識の差異といいますか、そのような事実があることは私は大変残念でございます。  自由経済を本来推進すべき自民党の私どもが、独禁法に対して大変批判的である。私だけじゃありません。先般山中委員長も、独禁法改正のときに、強化の改正案を出したらだれもついてこなかったという話をされたことを私は商工委員会で聞かされましたが、いまも独禁法改正調査会ができているところでございます。  社会主義経済、計画経済と言っては失礼かもしれませんけれども武部委員を初め社会党の方々が、自由経済の憲法とも言われる独禁法を——憲法といいますか、アメリカ的憲法と言った方がいいと私は思うのでございますが、それを推進される。まことに不思議なことで、これはどういう現象か、この点はよほど考えなければならないと私は思うのでございます。  しかも、私も大蔵省で多年高橋委員長から指導を受けた方でございますから、高橋委員長と私との間にあつれきでもあったら大変なことだと思います。これも不幸なことだと思うのでございますが、私は、独禁法についてはまず三つばかりの評価を申し上げたいと思います。  昭和二十二年に、憲法と同じような形だと私は思いますけれどもアメリカから教えをいただいてつくった独禁法の効果は、まず認めるつもりでございます。財閥解体、経済力集中排除、農地解放、財産税、一連の中に位置すべき性格を持ち、寡占形態の財閥が力をふるっておった経済から、多数の、財閥に属さなくても済むような企業が出現してここまでの成長をもたらした点において、私は独禁法の効果をまず認めたいと思うのでございます。  しかし、第二点といたしまして、いま確かに個人的なような印象を受けましたが、人生観と申しますか、日本人の考え方アメリカ人の考え方の違いと申しますか、それから来たところから、独禁法日本に定着していない。この点を直さない限りは、独禁法は自民党の中にもなかなか定着しないし、経済界にも定着いたしませんし、なおさら中小企業には受け入れられないであろう。アメリカでは、すごろくにあるように、子供のときから独禁法の性格、独占禁止の思想、哲学を教え込まれることを、私も調査に参りまして知ったわけでございますし、カルテルというような行為は共謀罪的なものであって、ともかくも道徳に支えられた犯罪。しかし、日本ではこれが法律でつくられた違反行為、こういったふうに受け取られるところは、協調を美徳とする、全体の中に埋没する個性の少ない日本人の考え方から生まれたところだと思いますので、この点を直さない限り、また小学校の教科書から教えない限り、私はこの問題はなかなか解消しない大きな問題だと思います。  第三点は、私は、高橋委員長は大変御苦労されておると思います。しかし、すでに法律で各方面に法律カルテルみたいなものがあるようなとき、しかもまた、大企業は法律によって不況カルテルとかさらにまた特安法とかいうような形で、みんなの共同行為によって仲よく不況に対処できる、構造改革までできるのに、中小企業は数が多くて、過当競争の体質を持っておると私は思うのでございますが、なかなか意見が一致しない、数多いのが中小企業者。労働者や農民は団結できて、独禁法で違反というようなことがないのに、労働者とそんなに変わらないような中小企業者は、カルテルということは——さらにまた不当廉売というようなことがなおざりにされている独禁法の現状を見ると、やはり根本的に考えて、社会党よりも喜んで独禁法をサポートするような自民党にならなければいけない。これは非常に根深い問題を持っていることを私は感じておりますものですから、記事では大変不十分でございますけれども、新聞記者会見あるいは各地の講演でそのようなことを申し上げているつもりでございます。
  23. 武部文

    武部委員 いまの発言をお聞きいたしておりますと、社会党が独禁法を推進するのはまことに不思議だ、こういうことをおっしゃいましたが、そういう御発言こそ私はまことに不思議でございまして、われわれは独占全く反対、これが基本なのであります。いま独占禁止法反対を言っておられる財界の旗振りをなさっておる方は、ミスターカルテルと異名がございます稲山経団連会長だということは、だれも知らぬ者はございません。私は、この新聞記事をずっと見ておりまして、経企庁長官の真意ではない点があるいはあったかもしれません。しかし、どうも稲山さんと同じ立場にお立ちになっておるのではないだろうかというふうにとりました。  先ほど読みました「公正取引」の論文の中にもございますが、独禁法亡国論というのがあるようでございまして、これはまさしく稲山さんの考え方と一致をしておる。それと同じことを経企庁長官はお考えになっておって、ああいう発言が出たのではないだろうかと私は読んだのであります。したがっていまそういう質問をしたのでありまして、もう時間になりましたが、この問題は基本的な問題であります。非常に重要な問題であります。現実に新特安法というものが出てまいりました。すでに国会に付託をされておるのであります。私は、この新特安法というものは、独占禁止法の問題から見てゆゆしい問題だと思っておるのであります。わずか一時間ばかりのことでこれを論議することは不可能でございますから、公正取引委員長のお考え方なり、あるいはこれに関連をして独禁法についてお述べになった長官基本的なお考えをお聞きしてみたかったというのが、きょうの質問の本意でございますから、いずれ改めて、いま御答弁になりました点、議事録にもはっきり載るわけですから、詳細に検討させていただいて、改めて論議を繰り返した方がよかろう、こう思います。ちょうど時間になりましたから、これで終わりたいと思います。
  24. 土井たか子

    土井委員長 次に、長田武士君。
  25. 長田武士

    ○長田委員 長官、この間商工委員会独禁法を私はやりましたので、きょう引き続きと思いましたけれども武部委員が先にやられてしまいましたから、きょうは石油問題をやりまして、またの機会に独禁法の問題をあわせてやりたいと思っております。  まず石油問題でございますけれども、二月十八日、英国石油公社が北海原油を一バレル当たり三ドル値下げをいたしました。翌十九日には、ナイジェリアの原油が五ドル五十セント値下げをされた。そういうことが引き金になりまして、GCCでもこの間会議をやったようでありますけれども、これがちょっとまとまらなかった。しかし、ロンドンに舞台を移して、三月三日、第一回目の協議に入った。聞くところによりますと、どうも生産調整を多少しなくちゃいけないのではないか、そうして値崩れを何としてでも防ごうということで、きのう昼飯を食いながらいろいろ会議をしたということが報道されております。引き続き四日にも協議をしようということで、イギリスはオブザーバーで出ておるようでありますけれども、GCC六カ国に加えまして二カ国が参加をしたようでありますが、石油価格の決着、見通しについてまずお尋ねをいたします。
  26. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 ただいま長田委員御指摘のように、恐らくあすぐらいだと思いますが、OPECが価格引き下げの決定をするであろうということが言われるところでございます。もうすでにイギリスの北海石油、さらにまたナイジェリアの石油については四ドルばかりの引き下げがございました。  さて、OPECがどうするか。世界最大のカルテルと言われておりますOPECでございます。その動向がまだはっきりいたしませんので、どのような値下げ幅になり、そしてまた二十五ドルでとまるかどうか、あるいは二十ドル以下になったらまた世界的な金融恐慌が起こるだろうと、いろいろ取りざたされていることは存じておりまするが、いまのところ、このようになるであろうということはまだ言えないような状況であろうと私は思います。
  27. 長田武士

    ○長田委員 長官もよく御存じのとおり、価格を三十四ドルで抑えておくということになりますと、ではナイジェリアはどうなんだ、あるいは北海原油はどうなんだという問題が出てくると私は思うのです。一たん下げたものをまた値上げするということをOPECが要請できるかというと、できない。そうなると、長官も御存じのとおり、ナイジェリアというのは国家財政が非常にピンチなんですね。もう石油を売るしか生活の道がないというような、非常に逼迫した国家の財政状況です。  一方、非常にタカ派と言われておりますところのイラン、OPECで千八百五十万バレル・パー・デーに生産を抑えようということになっても、いつも守らないのはイランであります。そういう点では、価格はとどめる、一方においては生産をするというようなことであったのでは、これはイランだってそう強い立場には出られないということを考えますと、一たん下げたナイジェリアあるいは北海原油がまた値上げができるかということになると、現実的に無理だろう。ということになると、私はやはり二十ドル台に突入するという感を強く持つのですが、長官どうでしょうか。
  28. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま長田委員のおっしゃっておりましたようなうわさはもう伺っておりますが、やはり影響が大きいものですから、企画庁長官としては、何ドルになるというようなことを言ったらまた大変になりますので、それは差し控えさしていただきたいと思います。
  29. 長田武士

    ○長田委員 そこで次に、原油値下げによります国内経済、各国とも非常に好影響があるということは間違いない。そこで、先進国の中でも、わが国経済に及ぼす影響と申しますか、先進諸国といろいろ比較いたしますと、一番メリットが多いだろう、そういう点を考えますけれども、石油輸入費のGNPに対する比率、この点、各国との状況をひとつ比較していただきたいと思います。
  30. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 数字にわたりますので、政府委員から御答弁さしていただきたいと思います。
  31. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 石油輸入額のGNP比でございますが、いま手元にちょっと資料がございませんけれども日本は大体五%でございます。各国のものは後ほど調べまして、御説明申し上げます。
  32. 長田武士

    ○長田委員 質問通告してあるのだから、ちゃんとやっておいてくださいよ。  これは、経済企画庁の試算は四・七%といっているのですね。製品輸入を加えると、大体五%を突破するだろうということなんです。これは野村総研の試算でありますけれどもアメリカが二・四%、西ドイツが四・三%、北海原油関係でありますけれども、イギリスがマイナス一・〇%、こういうふうに試算が出ております。大体これは間違いないですか。
  33. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 大変恐縮でございましたが、数字についての要請を私ども聞いておりませんでしたので、細かい点はちょっといまお答えできませんけれども、いまの数字は、大体先生お話のとおりかと思います。
  34. 長田武士

    ○長田委員 原油値下がりにつきましては、経済に与える影響というのは非常に膨大だろうと私は考えます。  そこで、経企庁は世界経済モデルをつくっておりますね。これによりますと、物価、GNP、為替レート、金利、経常収支、いろいろな面について経済効果という点で試算をいたしておるわけであります。そういう点では、この経企庁の世界経済モデルによりまして、輸入物価の問題、さらには、国内物価、GNP、為替レート、この推移というのはどういうふうに見ておられますか。
  35. 吉岡博之

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  私どもの世界経済モデルによる影響でございますが、五十四年から世界経済モデルの研究に入ったということで、基礎的なデータが五十三年より以前のデータでモデルをつくったということを最初にお断り申し上げておきたいと思います。それから、モデルでございますので、経済が急激に変動したとか、あるいは価格が大層下がって、アラブの諸国で政治的な不安が起きたとか、そういう極端な場合はモデルの性格上、ちょっと申し上げることはできないということを限定して申し上げます。  私どもの試算でございますが、石油の価格が一〇%ぐらい下がったときに、日本のGNPは大体〇・二三%ぐらい上がるのではないか、あるいは内需のデフレーターは下がるのではないか。為替レートにつきましては、御承知と思いますが、石油の値段が上がりますと国際収支が悪くなりますので、円安になることになっておりますから、その逆の形で円高になるというように思っております。輸出入の関係につきましては、円高ということがございますので、必ずしも急激な増加あるいは減少ということは、世界経済モデルで見ますと、そう大きな数字にはならないということでございます。
  36. 長田武士

    ○長田委員 余り大きくならないということはないのですよ。一〇%下がった場合の卸売物価とか消費物価、そういう点について数字をはっきり言ってください、ほかの要素があるのはわかるけれども、一応方向として。少なくとも一年目、二年目と別々に言ってください。
  37. 吉岡博之

    ○吉岡説明員 消費物価、卸売物価というふうな形での数字を私ども出しておりませんので、国内の需要のデフレーターという形で出ておりますが、一年目に大体一・三六%ぐらい下がるであろう、それから二年目に二・六%ぐらい下がるであろうというふうに見ております。
  38. 長田武士

    ○長田委員 輸入物価はどうですか。
  39. 吉岡博之

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  輸入価格の方は、輸入の価格全体でございますが、大体一年目に五%くらいは下がるのではないか。二年目にももうちょっと大きな価格の低下があるのではないかというふうに見ております。それはもう先生承知のように、日本の輸入に占める石油の比率が高いわけでございますから、一割下がれば輸入品の物価としては影響が大きいということだろうと思います。
  40. 長田武士

    ○長田委員 どうもはっきりしないですね。一〇%下がった場合、輸入物価といたしましては五・五二と出ていますね。二年目は九・四四。ちょっとくらい下がるどころじゃないのですよ。九・四四なんです。じゃ、為替レートについて言ってください。これはおたくでつくったんだよ。こっちがつくったんじゃないんだよ。
  41. 吉岡博之

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  為替レートにつきましては、一年目に大体一・四%くらいの円高になる。二年目については五・一%くらいの円高になるというふうにモデルの計算が出ております。
  42. 長田武士

    ○長田委員 そういうことでございまして、私は、なぜ日本が非常に好影響を受けるか、先進国の中でもそういう点では最も好影響を受ける、メリットがあるということを申し上げたわけであります。特にこの数字が大きいと思いますのは、輸入物価に対する影響力が物すごく強いということが第一番に挙げられます。それから為替レート、これはいま五・一と言っていましたが、五・〇八というのが試算に出ております。そういう点を考えますと、日本経済に及ぼす影響は非常に大きいということは間違いございません。  そこで、私は、原油の輸入から考えてみまして、石油の値下がりによるわが国の利益は、これは五十六年度ベースでございますけれども円レート二百三十円で換算いたしますと、バレル当たり一ドル下がるといたしますと、私の試算ですと大体三千二百九十億円程度見込める、このように考えますが、この数字は間違っていますか、正しいですか。
  43. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 五十六年度の数字としてはそういうことかと思いますが、五十七年暦年で見ますと、輸入量が減っておりますので約三千億円になります。
  44. 長田武士

    ○長田委員 そういうことでございまして、膨大な金額がこのように算出されるわけであります。多少輸入量も減っておりますので金額は多少下方修正しなければならない、そういうことも私はよく理解をしております。  そこで、たとえば原油が三十ドルになった。いま三十四ドルですから四ドル下がる。こうなりますと、年間で一兆三千百六十億円といういわゆる原油支払いの金額が軽減されるということであります。また、二十八ドルになりますと一兆九千七百四十億円、二十七ドルになりますと二兆三千三十億円、二十五ドルになりますと二兆九千六百十億円、約三兆になります。こういうような膨大な、石油輸出国に対しますところの支払いが少なくなるということもまた事実であります。こういう膨大な利益は、製品の価格であるとかそういうことにはね返ってくるわけでありますから、そういうものが引き下げられて消費者に還元されない限り、このままにしておけば企業の収益になってしまいます。そういう意味で、筋からいけば当然消費者に還元すべきである、これが経済一つの原理である、私はこのように考えておりますが、経企庁長官どうでしょう。
  45. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま長田委員の御指摘のように、値下がりいかんによって日本経済、特に価格に対しては大変な好影響をもたらすものと私も考えております。  第一次石油ショックが起こりましてからことしがちょうど十年目だと思います。その間物価が二・三倍に上がりました。そうして私どもは、苦労して節約をしたわけでございます。輸入量を三割ばかり節約しているわけでございますから、その効果が報いられてこのようになってきたわけでございますから、何としても価格の中に反映するような努力を私どもは払っていくべきであるし、またそのような結果になるのではないか。もうすでに先行きを見越して、ガソリン価格の百五十円台とかいうようなことが新聞に出ておりますことからその点はおわかりだと思います。
  46. 長田武士

    ○長田委員 長官考えてもらいたいのは、原油価格の高騰によりまして企業も内部努力をずいぶんいたしました。しかし、最終的には消費者がその大部分を負担していると言ってもこれは言い過ぎじゃないですね。公共料金を初め値上げいたしました。それは何が理由かと言えば原油が上がったからで、国民はそれなりの納得も、できない点もありますけれども、ほぼ了解を得て値上げもお願いしたという経緯があります。そういう点を考えますと、原油が下がる、物価が下がるというのは経済の原則ですから、これは企業の利益にあらわしてはいかぬ。少しでもいい、消費者にそれに見合うものは必ず還元するという経済原則はどうしても踏まえなくちゃいけない、そういう原理原則を長官はどう考えていらっしゃるかと私は言うのであります。
  47. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 おっしゃるように、消費者も大変な努力をしてこのように値下がりをもたらしたわけでございますが、企業も省エネ、代替エネルギーの開発、さらにまた、考えてみますと失業率が一・四%から二・四%に上がるほど企業も苦労してきたわけでございますし、国もまた国債の残高が当時の六兆五千億くらいから九十八兆円くらいにふえるほど苦しんでまいったわけでございます。このようなことが経済の各方面にあらわれるようになるのが私は当然だと考えております。
  48. 長田武士

    ○長田委員 経企庁物価の担当でございますから、そういう意味で、どうかひとつ消費者還元に十分役立つような行政指導をがっちりやっていただきたい、この点を要望いたしておきます。  次に、円レート動向でありますけれども日本の例をとりますと、かつて五十二年、五十三年、非常に円高傾向でございました。しかし、経常収支の面から見てまいりますと、日本は四十八年、四十九年はマイナスであります。しかし経常収支の赤字も、これは第一次オイルショックでございますから赤字になるのはあたりまえでありますけれども、五十二年、五十三年プラスに転じております。五十二年は、日本の場合百三十九億ドル、五十三年は百十九億ドル、こういうように経常収支は黒字に転換をいたしております。一方、アメリカの方を見てまいりますと、経常収支は五十二年、五十三年マイナスであります。五十二年は百四十一億ドル、五十三年が百四十八億ドルというような大幅な赤字でございました。  一方、金利の面を見てまいりますと、日米間の金利の差というのは当時物すごく開いておりました。それがようやく乖離が狭くなった。そういう状況下で日本はどういう経済であったかといいますと、円が非常に強くなりまして、長官も御存じのとおり一時百七十円台を記録いたしました。そういう背景を考えてまいりますと、私は、第二次石油ショック以後の日米の経常収支の動向、それと第一次石油ショック後の動向と何となく類似点が出てきておるような感じがするのです。その点についての経企庁長官の見通しはどうでしょう。
  49. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私も、いま長田委員のおっしゃるように、日本アメリカとの経常収支の動向を比較しておりましたが、そのような相似的な傾向が見られることを認識したところでございまして、このような観点から、日本アメリカとの間には二国間のインバランスがありますけれども、世界経済全体の経常収支ではいまのようなことだと思います。
  50. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、経企庁長官も円は強くなる方向に行くだろうというお考えですか。
  51. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 石油に弱い円だから、円安になったことの逆が行われることは経済原理の当然だと考えております。
  52. 長田武士

    ○長田委員 石油が値下がりしますと、日米ともに貿易収支は好転するということは想像にかたくありません。しかし、日本の場合は一〇〇%近い原油を輸入しておるという体質ですね。ところが、アメリカは自由圏では第一位の産出国であります。あわせて最大の輸入国でもあります。そういう点では、プラス、マイナスの要因というのは同時に働きまして、アメリカの貿易収支というのは、今回の値下がりによって急に変わるという感じを私は持っておりません。しかし、日本の場合には、非常に影響力を強く受けるという点を私は指摘しなくてはならぬと思いますね。  そういう意味で、最近のアメリカの輸出の動向を見てまいりますと、特に南米あるいはカナダ、これに対する輸出というのは四七・二%、五割近い輸出をやっておるのですね。しかし、ドル高と金融不安でこれが激減しておるという状況であるようであります。そうなりますと、日米間の貿易収支の格差といいますか、これはますます拡大していくということが予想されるわけであります。  一方、金利においては非常に縮まってきておる。アメリカの金利を見てまいりますと、これは公定歩合でありますが、五十六年十月には一四%でありました。ところが、五十七年には七回金利を下げております。公定歩合を下げております。そうして最終的には、十二月十四日でありますが、八・五%になっておるわけであります。一方TBレートでありますけれども、これは大蔵省の証券三カ月ものでありますけれども、五十六年には一五%。ことしの一月に八%まで引き下げております。そういう点では、日米の金利格差というのは非常に縮小いたしております。  そこで、日本の公定歩合はいま五・五%、さらにコールレートだって大体六・七%、そういう状況でございます。そうなりますと、経常収支の格差といい、あるいは金利の格差が非常に狭まっておる。そういう点を考えますと、円は二百円ぐらいになっても決しておかしくない、こういう私個人としては持論を持っていますけれども、あなたはどうですか。
  53. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 おっしゃるように、私は円のレートはだんだんと日本によくなってくるものと思います。しかし、長田委員が言われましたように、アメリカの金利と日本の金利は、七回にわたる引き下げで接近はしてきたものの、まだまだ差がありまして、日本銀行が公定歩合を引き下げないのは、円安助長というようなことを言われる。それは、いま円のレートを決定するものは、経常収支だけじゃなくして長期資本の移動である。金利の高いところに資金が流れる、そのために円が安くなるおそれがあるからということが言われていることを考えてみますと、円レートの問題がなかなかデリケートでございます。  そして、いま幾らになるかということを言えとおっしゃいましたが、これも大変なタブー、これは憲法以上のタブーじゃないでしょうか。解散を言うのじゃありませんが、これは幾らになったらいいというようなことを言いますと大混乱が、企画庁長官でもそうでございます、日本銀行総裁や大蔵大臣が言ったら世界的大混乱だと言われますので、言わないことになっているそうでございます。企画庁長官もひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
  54. 長田武士

    ○長田委員 私は、経企庁長官が大蔵省に非常に長くいられまして、専門家でございますから、そういう見通しは非常に鋭いものを持っていらっしゃるという高い評価のもとに質問をしたわけであります。  次に、経常収支の黒字幅でございますけれども経企庁の見通しといたしましては、五十七年度に七十億ドル、五十八年度には九十億ドル、これは見通しが立っておりますね。一方、アメリカは五十七年度は八十八億ドルの赤字、五十八年度は三百十三億ドルと乖離が非常に広がってきているのですね。そこで長官原油値下がりによりまして、恐らくプラス百億ドルぐらい出てくるような感じが私はするのですね。こうなりますと、また大問題が起きるのじゃないかという感じがいたしております。この点の見通しはどうでしょう。
  55. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 日本は、御案内のように産業力の強さもございまして、経常収支はいまおっしゃったような七十億ドルから九十億ドルプラスでございます。アメリカは、ドル高の傾向で輸出が大変むずかしくなってきている。この点を大変心配しているようでございますが、おっしゃるように、経常収支は赤字幅が拡大するおそれがある。そこで産油国でない、石油輸入国の日本には石油価格引き下げは恐らく円レートにもいい影響を来すと思いますが、その点は輸出がふえるということではないと私は思います。円高の傾向はむしろ輸入に有利に働くことだと思いますので、これはやはり円高を契機に、内需拡大の方向で、アメリカとの間の貿易の幅は縮小していく方向に向かうべきである、こういうふうに私は考えております。
  56. 長田武士

    ○長田委員 経企庁長官、世界から非難される、特にアメリカから貿易問題で非難される。閉鎖的であるとかどうのこうのということをずいぶん言われますね。そういう点を考えますと、輸入を伸ばすというのは内需の拡大、国内の景気をよくするということがやはり主たる要因になりますね。そうなりますと、二百億ドルぐらいの黒字になってしまうのではないかということを考えますと、また貿易摩擦の問題が相当大きな政治課題になるというふうに見ているのです。そういう見通しは長官どうなんでしょう。
  57. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私どもは、貿易摩擦という最近の各国から寄せられておりますこの非難は、もう縮小の方向に行くべきである。ですから、経済政策の中心的な方向は何としても内需拡大でいくべきである。輸出と民間企業設備投資で伸びてきた日本でございますけれども、いまでは、もはや輸出ではなくて内需拡大で政策を推進すべきである。しかもまた、そのようなことを防ぐ意味産業協力、いままでは輸出振興が私どもの生命線のように言われたことがございましたが、今後は産業協力で、外国企業あるいは工場をつくっていくようなことによって貿易摩擦、経常収支の幅が輸出によって大きくなることを避けていくような方向によって、いま長田委員のおっしゃったような二百億ドルも経常収支がふえますれば、これまた大変な非難を受けるに違いない。それならばもう少し日本は拡張政策をやれ、そのことは貯蓄超過だからということを言われることは必至でございますので、その点は政策の重点として大きく注意しなければならないと思います。
  58. 長田武士

    ○長田委員 次に、金利の問題についてお尋ねをいたします。  日本経済新聞によりますと、アメリカのメジャーオイルの年金積立金運用担当者や大手商業銀行の資金運用の責任者たちの言葉として、「石油は不需要期の夏ごろになれば二十五ドルまでに値下がりするだろう。そうすれば一番利益を受けるのは日本であり、円は百八十円まで高くなるだろう。われわれは資産を日本に移して運用したい。」そのようなことを言ったと報道されておるわけであります。そうなってまいりますと、五十六年度に入って以来ずっとマイナスを続けていました長期資本収支、これもプラスに転ずるということは当然考えられます。現に五十七年度、七月には二十七億ドルのマイナスであった長期資本収支が、十一月にはプラス六億ドルに転じております。  そこで、金利の問題でありますけれども、昨年から景気対策の残された問題といたしまして、私はもう金利の引き下げ、これしかないなという感じがしたのですけれども、日銀ももたもたしてそのチャンスを失ってしまった。アメリカの金利がどうも下がらないとか円がどうも弱含みであるとか、そんないろんな理由があったのでしょうけれども、結局それは見送られてしまったわけであります。  そういう意味で、石油の値下がりもありますし、景気対策一つの大きな要因といたしましては、やはり金利の引き下げしかないんじゃないかということを私は感ずるのです。特に、企業も設備投資が非常に減退してしまっていますね。長官も御存じのとおりです。もう軒並みマイナスです。そういう点を考えますと、どうして企業が設備投資ができないかというと、物価はこれほど安定をいたしておりますが、しかし、金利が高いために、金利負担ということを考えますと、どうも設備投資の意欲が出てこないというのが実情なんですね。そういう意味で、私は、この石油値下がり一つの契機にして、今度こそは公定歩合を下げるべきであるというふうに考えるのです。長官はどうですか。
  59. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 長田委員の御指摘はもう全く同感で、その方向に行くべきだと私も確信をいたしております。ただ、日本銀行は、先ほど御指摘のような長期資本収支からおわかりのとおり、アメリカの金利が高いものですからアメリカにどんどん日本の資金が流れていった、そのために円安になってきた、それがまた非難を受けたというようなことで、大変慎重でございます。  しかし、ボルカー連邦準備委員会の議長が言われますように、金融緩和は、物価対策と申しますかインフレ対策が成功したと見て進めつつあるような状況でございます。たしか、アメリカも近いうちに金利は下がるのではなかろうかというふうに見ておりますし、日本銀行はそのような状況を十分注視していることだと思います。それから、ドイツも下げようとして中断いたしましたのは、三月六日にありますところのドイツの選挙のせいである、こんなことが言われておりますが、昨今の状況では、ドイツもまた下げるんではなかろうかというふうに言われているわけでございます。  おっしゃるように、金利を引き下げなければいまの景気の回復は決め手を欠く。御案内のように、名目成長率が六%程度、来年度五・六でございますが、金利が七・五%から八%、そして租税の自然増収が、例の予算委員会で出しました中期展望から見た六・六%くらいであるのに、国債費の伸びは八%とか九%とか、こんなことを言っておったんでは、とうてい経済の成長もできないし、財政の再建もできない。金利から引き下げていって初めて成長はできる、私はこういうふうに見ているわけでございます。  そのような意味で、巨額な財政赤字が金利を高めておる、これはアメリカでも言われておりますが、日本でも言われております。三月債は、御案内のように、事業債を上回る長期国債の利子をつけるといういままでにないような事象が起こっていることを見ますと、私は金利を下げることが一番大事なことではないか、こういうふうに思っております。
  60. 長田武士

    ○長田委員 私も、長官のおっしゃるとおり、やはり公定歩合を下げる一つのチャンスだなという感じがいたしております。それで、所管が違いますけれども、ぜひひとつ努力を願いたいと考えております。  もう一つ、ちょっと話題が変わりますけれども、与野党の代表者会議では減税問題について言及をいたしました。これについては、大規模な減税を実施するという方向で合意ができておるわけでありますけれども、いずれにしても、金額も明示してはおりませんし、時期も明示されていない、こういう状況で内需を拡大するためには、金利政策と減税ということが大きなインパクトを与えるのじゃないか、私はそういう感じがするわけですが、長官の減税に対する基本的な考え方、私見でもいいですが、教えていただきたい。
  61. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私は、企画庁長官として、経済に及ぼす影響といたしましては、所得税減税だけつかまえますれば、おっしゃるように、まず消費、貯蓄にいい影響をもたらすことで経済的には大いに支持できるということを言っているところでございます。しかし、それは御案内のように財政困難の折からでございます。このかわり、財源いかんによって経済に対する影響は違う。これが大型間接税のような場合には、消費を直撃して、せっかくの所得税減税以上のマイナスの効果を生むことがあるから、私、企画庁長官といたしましては、財源問題を離れてこの経済効果を論ずることは、これは落第であろうということを言っております。  しかし私は、純粋に税制的に考え、しかもそれ以上に、いまや政治問題になっていると考えております。それは、過去には毎年毎年減税をしてきた。しかし、ここ五年間、所得の伸びがあるのに減税をしていなくて、サラリーマンを中心として社会的なフラストレーションと申しますか、いらいらを起こしておることを治すことは、政治の上で一番大事なことではないか、こういうふうに考えておりまして、私は財源を探す、このことがぜひとも必要である。財政赤字を少なくすることは金利の引き下げを通じてでも、これも経済成長を促進する上で大事でございます。私は、財政困難との関係を見合いながら、ひとつぜひとも所得税減税はやるべきではないか、こういうふうに考えております。
  62. 長田武士

    ○長田委員 長官、経常収支の問題等に触れましたけれども、二百億ドルあたりになりますと、これはアメリカだけじゃないですよ、各国から日本に対する非難、中傷というのが非常に厳しいと思いますね。そういう意味で、やはりサミットでも、世界の景気の問題、これは一番の柱になりました。そういう点を考え合わせますと、こういうチャンスに景気対策をしっかりやっておきませんと、経済というのは後じゃ間に合いません。ああしておけばよかった、こうしておけばよかったなんというようなことを幾ら論じましても、経済はどうにも動きませんから、そういう点で、心理的な効果もあわせて重要な部分に入っておりますから、減税もしっかりやる、あるいは金利の弾力的な運用もしっかりやる等々、いまの時点でしっかりやらなくてはいけないんじゃないかということでしつこく申し上げている次第なんです。  そこで、そのためにも、石油価格引き下げによりまして、何といいましても各物価引き下げるというような大きな要因が含まれますから、石油にかかわる物価動向というのは非常に密接不可分ですから、石油が下がれば当然物価も下がる、これはもう現に間違いない、そういうふうに経企庁は強力に指導してもらいたい。そして物価を下げて、それと合わせて金利が下がる、ずいぶん経済も見通しが明るくなりますよ、こうやりますと。そうすれば消費が拡大する、これはあたりまえのことじゃありませんか。そしてそのことによって設備投資も伸びると私は思いますね、住宅の建設も推進できるし。そしていま話がありましたとおり減税も実施する。そうすれば、内需が本格的に拡大してくる。そうすれば、勢い景気も好転し、国民生活も向上するわけでありますから、これは何が結果として出るかと言えば、内需が拡大しますから輸入製品だって売れるんです。そうすれば、貿易収支の問題に役立つ、そういうことを私は申し上げたいのです。  そういう点、柱がたくさんございますけれども経企庁長官、この柱をどうかがっちりした柱にして、しっかりがんばってもらいたいと思います。
  63. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 大変御激励をいただきまして、感謝申し上げなければなりません。財政上の困難が一方にございますが、そこの中をうまく活用して景気対策を進めていくことが、大変むずかしいのですけれどもやっていかなければならないことだ、こんなふうに考えております。
  64. 長田武士

    ○長田委員 そこで、このような時期に、長官、五十三年に導入した石油税、これは従価税でございますから金額によって決まるわけですね。これはいま三・五%、五十六年度ベースで実績が四千九十一億円、五十七年度の予算では四千三百四十億円。この税収が石油の値下がりで減るので税率を引き上げた方がいいのじゃないか、そして税収を確保したい、あなたはこういう発言をしているのですね。私は、物価担当大臣として、一方では物価の安定をしなければいけない、一方においては税金を上げるべきだなんとあなたが発言することに対しては、その真意がどうもわからない。これはひょっとしたら、長官、二枚舌を使っているのじゃないかというような感じがするのだけれども、その点どうですか。
  65. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 この点につきましては、私はいまの新聞記事にありますように、引き下げるべきじゃなくて引き上げるべきであるという考え方を持っているのであります。  それは、二つばかりの理由がございます。一つは、いま長田委員が言われました従価税を三・五%にしたねらいが何かということでございます。私は、昔は税の職人みたいなものをやっておりましたのでよくわかりますが、これまで従量税でキロリッター幾らとなっておったものを従価税にしたのは、値段がどんどん上がったときに、従量税ならば増収が出てこないじゃないか、こういうことを考えますと、値段の引き上げ——下がるなんて夢にも考えてなかった。従価税なら、値段が上がっていくときは自然に税収がふえていくからこの仕組みの方がいいじゃないか、間接税にはきわめて少ないのですけれども、そういう仕組みにしたのは、やはり値下げなんかを考えてなくて、値上がりだけを考えている、これが第一点でございます。したがって、自分の意思に基づかないで減税になってくるような減収、これはやはり相殺すべきじゃないかという、税の仕組みから来る当然の帰結でございます。  第二の理由は、この石油税は、備蓄とかあるいは代替エネルギーの奨励とか、そういう目的税的に使われているわけでございます。いま御案内のように、このように下がってはおるけれども、また十年後のみならず、キッシンジャー前国務長官に言わせますれば、中東の情勢から、もう値上がりは必ずや来るに違いない。こういうことを考えますと、備蓄とか、それからまた代替エネルギーの開発とか省エネとかということはまだまだ進めていかなければならない、ここで消費をふやしてはいけないと思います。そういうふうに考えますと、まだ原子力にいたしましても代替エネルギーのサンシャイン計画にしても必要なんだ、そうなれば、ここでむしろ財政需要を減らすような減収は避けるべきではないかという考え方で私は言ったんでございます。  しかし、根本的によほどこれは吟味してみなければならない。私は、生産手段に対する税金というのはこの世の中にあってはいけないと思います。消費に対する税はあってもいいと思うけれどもコストにかかる税金は、国際競争を激しくやっております自由世界の中で、生産手段に税金というものはあるべきではない。しかし、いま財源がない、しかもまた、目的税的に使うのならば、代替エネルギーとかあるいは備蓄とか、石油の受益者に還元するような仕組みなら、このような生産手段に対する税金でも許されるという観点からつくった税。  しかし、いま石油がこのように緩和し、将来どうなるか、これは根本に返って、いまのような長田委員の御指摘にあるように、全部やめてしまうというような考え方もあり得るかもしれない。ただ漫然と、値段を下げたからそれに自動的に応じて減収を来す、そうして財政上どうするかという意識なくしてやっていくことは、私は、政策当局として大変申しわけない、無責任な態度であると思いましたから、だれしも嫌がるところの引き上げというようなことを、企画庁長官涙をのんで申し上げたのであります。
  66. 長田武士

    ○長田委員 長官、あなたは経企庁長官なんだから、大蔵大臣じゃないんだからそこは踏み込み過ぎじゃないですか、どうですか。あなたは物価担当大臣なんだから、税収が落ち込むからこれはふやすべきだなんという態度で出るべきではないと思うけれども、どうかね。
  67. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私は大蔵大臣じゃありませんが、経済を担当する企画庁長官といたしまして、依然として備蓄は必要であり、省エネは必要である、代替エネルギーの開発は必要である。いまここで一〇%や二〇%ぐらい下がったところで、石油の消費を増加すべきではない。その手段の一助にでもなればという考え方でございます。
  68. 長田武士

    ○長田委員 答弁になっていない。あなたは、税収の増加の問題については発言を控えた方がいいという意味のことを私は言っているのです、大蔵大臣じゃないのですから。  もう時間がなくなってしまったから先に行きますけれども、あなたも御存じのとおり、エネルギー関係の税金としまして石油税、いま申し上げました。それから石油関税というのもあるんですよ。これは五十六年度の収入では千二百九十八億円、これは従量税です。それから電源開発促進税というのがあるんですね。この電源開発促進税は五十八年度に一・五倍引き上げられるんです、これはあなた御存じのとおりです。五十七年度の収入の予算では四百七億円、五十八年度では五百七十八億円見込まれております。これらの税は、私はちょっと調べたんですけれども、どうも日本が一番過酷ですね、長官。  そういう意味で、今回、あなたも商工委員会に出られましたけれども、新特安法というのがかかっているのです。あれは、石油価格の値上がりによって企業が成り立たない、素材産業が主でございますけれども、そういうところで、ああいう企業石油製品、なかんずく電気料を下げてもらいたいということが大きな大きな願望なんです。石油価格の値上げによって商売がやっていけない、そのために国として保護政策として臨時に処置をしようという法案なんです。その点考えますと、私は、この際、不況業界からも非常に強い要請がございますが、そういう点は考慮すべきではないかという感じを強く持ちますが、あなたはどうですか。
  69. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 どんな税でも税はない方がいいわけでございます。がしかし、それでは国の財政がやっていけませんし、いまの財政事情、大変困難でございます。恐らく外国にないような石油税、関税あるいは航空機燃料税、私が最初申し上げましたような目的税という名のもとに生産手段に対して税を取って、そのために、そのためではありませんけれども、石油が高くて成り立たない産業が出たとすれば問題かもしれません。しかし、税ではそんなようになるとは思いませんけれども、そのようなことを考えなければいけないほどの財政事情。しかし、一方所得税は減税しろ、こういうふうに言われますと、やはり受益者がまず負担していくような税、そしてだんだんと石油の備蓄ができあるいは省エネができることによってエネルギー事情が、需要が安定するまでの仕方がない目的税としてこれはがまんしてもらうしかないのではないか、こんなふうに私は考えます。
  70. 長田武士

    ○長田委員 私はこれで終わりますけれども経企庁長官、目的税だと言いながら、原油価格というものは、世界どこの国をとっても、日本は高い部類なんですね。そういう意味で私はいま申し上げたのです。所得税の減税とはまた次元が違います、あれは実質増税なんですから。  そこで、最後にお尋ねします。  読売新聞の二月二十五日のに出ておりましたけれども、ガソリンスタンドに業界が圧力をかけている。百五十八円とか百五十九円とかという看板を撤去せよというようなことを業界がやっているそうなんですよ。これに対しては、福岡では公取調査に乗り出しておるということなんですけれども、こういう自由経済社会にあって、製品を下げようというときに業界が、だめだ、こんな看板とっちゃえ。私も環七のところを毎日通ってくるから、いっぱい出ているのだよ、あなたも御存じでしょう。これを外せ、安く売っちゃいかぬ、こういうことを業界がやっているというのですが、長官どうですか。
  71. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 この問題は、先般、長田委員の質問に私がちょっと触れました不当廉売の問題に関連しておるかどうか、よくわかりませんけれども、独占禁止法上の不公正取引、不当廉売というものがありますれば、そのようなことがあるのかなと思ったくらいでございます。しかし、正当なる値段なら、そういった看板の撤去とか、しかもいろいろ業界という団体の力でやることについては、それがどのような内容であるか十分調べて、独占禁止法によっていろいろ処置ができるんではないか、こういうふうに思います。
  72. 長田武士

    ○長田委員 長官、くどいようですが、私は、石油製品値下がりしても物価に反映しない、そういう面が非常に出てくるのではないかという心配をしておるのです。こういう意味で、こういうようなことを業界が堂々とやるということに対しては、やはり経企庁は目をがっちり光らせて、これじゃいかぬというぐらいの行政指導をしっかりやってもらいたい、そういうことを私は申し上げたいのであります。  以上で終わります。
  73. 土井たか子

    土井委員長 次に、塩田晋君。
  74. 塩田晋

    ○塩田委員 物価対策政府の最高責任者であられます、また、経済政策全般について責任を負っておられます塩崎経済企画庁長官に対しまして、御質問を申し上げます。  現在のわが国経済、これは世界の同時不況影響で輸出が減少しておる等によりまして、景気の回復は緩慢となっており、経済の現状はきわめて厳しい情勢にあるという認識を、先般所信表明でも、また、本会議での財政演説でも表明されたところでございます。この世界同時不況という状況の中で、日本経済がこの不況から脱して、回復をしていくという方策をどのように考えておられるか、戦略的にどう考えておられるかということにつきまして、主として御質問をしたいと思います。  そこで、まず最初に、現在の世界経済の現況、これをどのように把握しておられるか、お伺いいたします。
  75. 廣江運弘

    廣江政府委員 世界経済の現状でございますが、まず、アメリカでは、最近若干明るい指標が見られてきまして、いわば底入れに向かって動いているのではないか、底入れが見られるのではないかと考えております。それは住宅着工、個人消費、それから最近では生産、さらに昨今の情報では、景気先行指標にかなり明るい要素が見られるということでございます。  一方、西ヨーロッパではなお停滞色が強まっておると思います。そしてこうした諸国では、総体的に見てみますと、インフレの鎮静化が進んでおる。ただ一方、雇用情勢の悪化は依然続いておるということかと思います。  ただ、先ほどアメリカについて申し上げましたような次第ではございますが、アメリカ景気の動き自体につきましても、いい要素といたしまして、先ほど申し上げましたような需要項目、さらに在庫調整が進展しておるというようなことも考えられるわけでございますが、設備投資の動きというようなものは、これはなお依然として停滞をしておるということがございますし、さらに、ドルが割り高であるというようなことの反映かとも思いますけれども、輸出が停滞をしておるということ、そして何より、金利が実質で見た場合にはなおかなり高い水準にあるというような点は、これからのアメリカ景気の動きを考える場合には頭にとどめておかなければいけない。そういう意味での警戒的な要素はなお蔵しておると思います。  一方、ヨーロッパの景気は、先ほど申し上げましたように停滞を続けておりますけれども、昨今の情報等では、たとえば西ドイツ等につきましても、若干受注に明るい要素が見られるということはございますが、総じて申しますと、先ほど来申し上げておりますような停滞基調をいまだ脱していない。今後の見通しといたしましても、ヨーロッパについてはなお緩やかな動きといいますか、緩やかな回復にとどまるのではないかと思っております。  一方、西欧先進国以外の国について若干触れますと、中進国それから低開発国を通じまして、中進国にしても、先進国のそういう景気の情勢によりまして輸出が停滞ぎみであるということが、たとえば韓国、台湾等についても言われると思います。さらに低開発国は、先進国の景気の停滞、さらに一次産品価格の低迷というようなことから輸出が停滞をしておる、景気が少しずつ停滞をするという状況は一般的に言えるかと思います。  共産圏、東欧の国でございますが、農業生産、工業生産ともに目標からやや下離れをするというような傾向も見られ、やはりこの辺にも活況がないというのが総体的な現状かと思います。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  76. 塩田晋

    ○塩田委員 各国とも非常にインフレに悩んでおったわけでございますが、今日デフレ政策を各国ともとって、今日の失業者の増加あるいは売り上げの停滞あるいは輸出の減退というのは、言うならばインフレ対策からくるところの政策的な景気の停滞ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  77. 廣江運弘

    廣江政府委員 景気停滞の原因が政策要因ではないかというお尋ねかと思いますが、世界経済全体がこういうふうな同時不況の色を強めておりますことをさかのぼって考えてみますと、二回にわたりますオイルショック経済に与えた大きな影響というものを見逃すことはできないと思います。こういうものの直接的な調整は終わっても、間接的な調整がなお続いておったということも一つ挙げられると思います。  次に、特にアメリカそれからヨーロッパ、イギリス、ドイツ等におきましても、特にアメリカ、イギリスでございますけれども、非常に長くはびこりましたインフレ体質の脱却こそが経済の再生につながるという認識のもとに、非常な引き締めをやった、そのことが非常にインフレをおさめたと同時に、一方、失業を生み出したことも一つの事実であることは否めないと思います。  ただ、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、インフレは鎮静化しつつあり、若干明るい要素が出てきつつあるということは評価しなければいけないと思います。さらにつけ加えますと、こういう先進国では、やはりそういう景気の進行の過程におきまして財政が総じて赤字化をしておって、先ほど申し上げましたような金融を引き締めるということのほかに、財政からの手当てがなかなか打ちにくかったという事情もあろうかと思います。そういうふうなことが大きな原因となっているというふうに言えるかと思います。
  78. 塩田晋

    ○塩田委員 世界経済につきまして、現況の概要を話をしていただいたわけでございますが、東欧、共産圏諸国を含め、また第三世界、特に開発途上国等の状況も含めまして、グローバルな世界経済、開発途上国では債務が非常に累積しているという問題があるし、先進国におきましても失業増加あるいは財政赤字というものが累積している。低滞した経済がこの域から脱するにはまだまだ時間がかかりそうだという状況だと思いますが、今後の見通しとしてどのように考えておられるか。  昨年の暮れ、OECDが世界経済、各国別に経済見通しを発表をいたしております。これを見ますと、大体ことしから来年にかけて各国横ばい、アメリカ、イギリスはちょっと早く、ことしの終わりごろから来年、八四年にかけまして上昇に転化するという、具体的にアメリカについては来年四%、ことしが三・二五%ですか、実質成長率の増が見られるという見通し等も発表したところでございますが、その後経済の全体的な変動から、先ほど言われましたように、アメリカにおきましても明るい見通し、兆しがわりあい早くあらわれているということを含めまして、また産油国の石油価格の低下、これをまだその段階で織り込んでなかったと思うのですけれども、そういったものを織り込んでみた場合にどのように推移すると言っておられますか、お伺いいたします。
  79. 廣江運弘

    廣江政府委員 数字的な見通しでございますが、いまお尋ねにもありましたように、OECDは昨年の十二月にアウトルックを出しまして、OECD全体で見まして八一年一・二%程度の成長、八二年にはこれは幅を持たせるという意味で二分の一%マイナス考えております。それが一九八三年には一カ二分の一%程度のプラスに転ずるであろうと、こう見ておるわけでございます。その中でアメリカにつきましては、一九八二年がこれはいまの実績見通し速報段階マイナス一・八、こう言われておるわけでございますが、OECDではこれを一カ四分の三%と、こう見ておるわけでございます。そしてそれに対しまして、一九八三年のアメリカを二%程度とこう見ておるわけでございます。ちなみにEC全体では、八二年が四分の一%のプラス成長、そして八三年も四分の一%程度のプラス成長、こう見ております。  オイルの価格値下げをこれにどう見込んだかということを勘案して考えますと、これを定量的に幾ら見込んだということは不明ではございますが、見通しを立てますときに、当時の経済情勢から考えられる傾向というものは入れたと考えられますが、これに幾ら幾ら入れたというようなことまではちょっとお答えいたしかねるのが現状でございます。  そこで、アメリカでございますが、アメリカは最近政府経済見通しを出しましたし、さらに民間の機関にもいろいろの見通しが出ておりますし、また最近では、FRBの議長が証言をいたします際に若干数字のコメントもいたしております。アメリカ政府の見通しは、八三年の年平均では一・四%、そして第四・四半期、十—十二月対比で見ますと三・一%というふうに、政府は公式に一応見通しを立てたわけでございます。それに対しましてFRBは、第四・四半期対比の成長率で実質政府が三・一%と言ったところを三・五ないし四・五というふうな幅を持たせた数字を発表いたしております。  さらにもう少し追加をいたしますと、政府は第四・四半期対比の失業率が一〇・四%程度であろうと言っているところを、FRBの方も一〇・四%、あるいはもう少しよければ九・九%ぐらいになるかなというような見通しを立てておりまして、総じて言いますと、政府の出したのより少し後に出しましたFRBの見通しの方がすべて少し高目に修正をされておると思います。そして先ほどの御質問とも絡みますけれども、最近の景気先行指標の動きであるとかあるいは生産の動き、それから在庫調整が昨年の第四・四半期にかなり進展したというようなことを考え合わせ、若干の金利の低下が消費、住宅需要というものを振起しておるというようなことを考えるならば、漏れてきます情報は三・四%よりも少し高い数字になるのじゃないか、四、五%の数字が期待できるのではないかというようなことも言われておるわけでございます。  ただ、先ほどのお答えの中でも申し上げましたように、そうは申し上げましても、なお金利が実質かなり高いレベルにあるということ、なお経済は流動的であるというようなこと等は、警戒的に考えなければいけないというふうに思っております。
  80. 塩田晋

    ○塩田委員 八三年の年間についての見通しはお伺いしたわけですが、八四年もOECDは触れていると思うのですが、いかがですか。
  81. 廣江運弘

    廣江政府委員 OECDは八四年の前半まで出すわけでございますが、ちょっといま手元の資料を探しておりますので、猶予をいただきたいと思います。
  82. 塩田晋

    ○塩田委員 世界経済の状況、今後の見通しにつきまして概略お伺いしたところでございますが、やはりその中でも主導的な役割りを果たすものはアメリカ経済であり、しかも、このアメリカ経済が以前と違いまして世界貿易に占める割合が、レーガン大統領も言っておりますようにかつての倍になっているといったことを含めまして、アメリカ経済の動きが世界経済に及ぼす影響というものは非常に大きいと思います。  そこで、アメリカ経済について特にもう少し詳しくお伺いしたいと思います。  先ほど言われましたように、ごく最近、アメリカ経済の回復の兆しが見えてきたということでございますが、これについての見方も、いやまだ一時的なものだというのと、いやこれから回復に向かっていくという見方、アメリカ政府は、これはもう本格的に回復し、景気が上昇していく第一歩を踏み出したのだということを言っておりますが、これの評価をどのようにしておられますか。
  83. 廣江運弘

    廣江政府委員 最初に、先ほど御猶予いただきましたOECDの八四年の前半の見通しを申し述べさせていただきます。  OECD全体で、実質経済成長率は年率で二カ四分の三%でございまして、アメリカは三カ二分の一%ということになっております。  次に、アメリカ経済の最近の明るい要素をどういうふうに評価するかということでございますが、御承知のように、一九八二年の第四・四半期、十—十二月期のGNP速報は、対前期比年率で一・九%のマイナスでございます。ただ、この内容を見てみますと、一・九%というマイナスに大きく寄与したものは在庫投資でございまして、在庫投資が寄与度でマイナス五・八%、そしてその次には民間設備投資がマイナス〇・九%、さらに純輸出がマイナス一・一%というのが大どころのマイナスでございまして、他の需要項目、すなわち先ほど来申し上げております消費、住宅といったものはプラスに転じております。特に消費は三・一%のプラスでございます。そのほかでは政府支出が増加の方に寄与をしている、こういうことでございます。  この数字から勘案できますことは、在庫調整がかなり進捗をしているということでございます。在庫調整が進捗をすれば、その次には生産に活気が出てくるというふうに読めるわけでございますが、いまアメリカ景気の中でいいのは、先ほど来申し上げました消費、住宅関連のものと、それから在庫調整がかなり進んでいるのではないかという点を評価できるわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、実質金利はまだかなり高く、稼働率も七〇%を切っているというような状況から見ますと、景気の本格的な起き上がりを証明する設備投資というのは、まだまだそう急には期待できない状況かなというふうにも考えられるわけでございまして、非常にいい要素は出てきておりますけれども、すぐこれから従来の景気回復局面におけるような成長はとうてい期待できないのではないか、こう思っております。  一口で言いますと、明るい要素があるということは評価できますけれども、なお警戒的に見てまいりたい、こういうふうに私ども考えております。
  84. 塩田晋

    ○塩田委員 そこで、もう少し詳しくお聞きしたいと思いますが、アメリカの国内需要、特に消費が大きく伸びてきた、最終需要が増加に転じたこと、これを評価しているのだと思いますが、GNP全体としては、ふえているというよりは、四半期別の統計を見るとむしろ減っておるわけで、最終需要の伸びを重く見ているのだと思います。  そこで、最終需要のうちの消費は、耐久消費財と非耐久消費財とどちらがどういう動きをしてどちらが特にふえてきているのか、根強いものなのか一時的なものなのか、そのあたりはいかがでございますか。
  85. 廣江運弘

    廣江政府委員 四半期ごとの数字でございますので、かなりぶれるということは前提として考えなければいけないのでございますが、先ほど先生のおっしゃいました個人消費というものがかなりふえてきているのではないか、そしてそれが在庫を除いた最終需要に大きく寄与しているのじゃないかということでございまして、そのとおりだと思いますが、個人消費の寄与度は三・一%でございまして、それを耐久財と非耐久財、さらにいま消費の項目といたしますとサービスという項目に分けられておりますので、その三つに分割いたしまして数字で申し上げますと、個人消費三・一のうち耐久財が昨年の第四・四半期では一・七、非耐久財が〇・四、サービス〇・九でございます。  こういう数字のよって来るゆえんといたしますと、かなり金利が低下をした、あるいは販売政策でローンのレートを特定のものについては少しおろしたというようなこと、要するに金利要因がある意味では効いてきたと言われております。
  86. 塩田晋

    ○塩田委員 消費財が伸びておるということ、これはいま言われましたように住宅の需要増、伸びとともに、また、サービス関係アメリカ経済ではいまや三〇%を占めるようなウエートになっておりますから、これも大きいと思いますが、確かに金利が低下してきておる、一時の半分になった現状、そこからいい効果が出てきたようだと思うわけでございます。もちろん、クレジットカードとかその他で賄っている世帯が日本よりずっと多いわけですから、金利の響きが大きいと思いますけれども、それだけではなしに、もっとほかにもいろいろ要因があるのじゃないでしょうか。自動車なんかの伸びも出てきておるようですし、大型車にもまた回復の兆しがあるということです。金利はもちろん大きいですけれども、ほかにもあるのじゃないでしょうか。
  87. 廣江運弘

    廣江政府委員 消費、住宅が少し活気を取り戻してきている要因の一つとして金利の要因というのを挙げたわけでございます。  そのほかの要因もあるではないかというお尋ねでございますが、詳しく検証した上ではございませんけれども、循環的な要因も耐久財等についてはある程度考えられないこともないと思います。住宅につきましてもそういう要素があろうかと思いますが、御承知のように、レーガン政権は一方で減税政策というのをとったわけでございまして、それがかなり効いてきたのではないかということも一つ考えてみないといけないと思います。もともとの政権の政策目標といたしますと、減税を貯蓄に結びつけて、生産能力の増に結びつく新規の設備投資を図ろうということだったと思いますが、いま貯蓄率がどういうふうに動いてきたかというのを見ますと、八一年六・四%の貯蓄率が八二年六・六%ということで、さほど大きく動いてない。その分は逆に投資ではなくて消費の方に動いたのではないかという推測もできるわけでございますが、一方、実質個人可処分所得の伸びを見てみますと、八一年二・五%が八二年は一・二%と落ちておるわけでございますので、せっかくのお尋ねではございますが、一義的に何が効いたというふうにも申しかねる現状にあることをお許しいただきたいと思います。
  88. 塩田晋

    ○塩田委員 確かに、金利のほかに減税の効果があると思われる節が多いわけでございます。これは設備投資に回すものが途中消費に回っているという見方が多いようでございますが、可処分所得が余り伸びてないというのは、ちょっとこれは統計上の問題もあろうかと思いますし、また失業の増加、これは大量にふえて一〇%をずっと超えているわけですから、大変な失業状態でもあります。それから政府支出も、これは実際はそんなに減ってないかもわかりませんが、政策的には政府支出を思い切って削減しようというのがレーガンの政策一つの大きな目玉でございます。いろいろな要素が加味されておりますけれども、減税につきましてアメリカのとっている政策、この内容をお聞きしたいと思います。  御承知のとおり、大臣、レーガン大統領は、大統領になると同時に公約として四つのことを国民に約束いたしました。第一は、先ほど申し上げました歳出の削減、これを思い切ってやるということ、二番目が大幅の減税、三番目が政府の各種の規制緩和するということ、四番目が安定的な金融政策、これは低金利の政策だと思いますが、金利を下げていくという、この四つを大きな柱として経済政策を運営する、こう言って、しかもそれを相当思い切って、勇気を持って実行してきているというところですね。  レーガンは世界戦略、強いアメリカを目指していろいろな政策を打ち出しております。批判もあるわけでございますけれども、しかしながら、こういった公約を思い切って果断に決定をして実行に移していっている、これが成果をかなり上げてくるのじゃないかと期待されるわけでございますが、中曽根内閣、非常にいろいろなことを新しく唱え、また実行に移していっておられると思いますが、どうも経済に弱い。あれだけ思い切ったことを言われるなら、経済におきましても、レーガンを少し見習って、大幅の減税あるいは政府の支出の削減、こういったことを、中曽根さんは政策として国民に公約されたらどうかと思うのでございます。  特に、経済に弱いと言われても、租税を初め財政金融政策に非常に明るい塩崎長官経済の全体の総元締めとして控えておられますので、ひとつ長官、大きく力を出していただいて、実力大臣として、中曽根内閣経済政策をもっと際立って大きく、これをやるのだというものをもっと鮮明に出していただきたいと思うのでございます。その点についていかがでありますか。
  89. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま塩田委員から特にアメリカ経済についての御見解がございまして、レーガン経済政策のような思い切った政策わが国に取り入れたらどうか、こういうお話でございます。  確かに、レーガン政策、大変大胆な思い切った案でございます。しかし、その評価はまちまちでございまして、むしろいまのところはまだその効果が定かではないといったことが当たるかと思うのでございます。私は、アメリカの事情と日本の事情とはその基盤において相当な異なりがありますものですから、よほどこれは考えてやっていく必要がある。つまり四つの政策、大変おのおの特徴がありますけれども、大幅減税、これをとりましても、日本なら大幅減税についていつも言われますことは消費奨励である、消費を刺激するといったような考え方で、皆さん方は所得税の減税を推奨される。ところがアメリカでは、貯蓄奨励という見地から所得税の減税を三分の一減税する、これを三年間にやるという大胆な政策をとったわけでございます。  そうしてそのバックにありますのは、御案内のサプライサイド・エコノミックスという経済理論である。つまりインフレの際に需要を追加しても、アメリカでは物価が上がるだけである、それは貯蓄が少ない、投資がない、したがって、最新の生産設備がないから、有効需要を追加するとすぐインフレになるのだ、こういう考え方で、民間貯蓄を日本のように推奨していこう、その手段が減税だ、こういう大胆な発想に立っているわけでございます。  まだまだ効果があらわれておりませんし、あらわれておりますのは赤字財政だけの効果、これでもしかし、何年かたてば産出効果が生じて、ケンプ・ロス・ルールとか言っておりますけれども、税収が生ずる、増収が生じてきて、結局は減税による減収をオフセットするであろう、こんなふうな考え方をとっておるようでございます。それから設備の更新の近代化の方法として、減価償却を大胆に、十二年、十年、五年、三年とか、想像もつかない短い耐用年数に、四つの資産の種類ごとにしておるようなことは、とうてい日本ではついていけないぐらいの大胆な政策でございます。  しかし日本は、御案内のようにむしろ貯蓄過剰、アメリカは六%ありました貯蓄率が三%までに減ってきておる。日本は依然として二〇%の個人貯蓄率を誇っておるようなところでございまして、しかも生産設備はどの国にも負けない最新鋭の生産設備、そして投資をしてきているような状況でございますので、私は、いまの日本経済困難とアメリカの当面しております経済困難とは違う、こういうふうに思うのでございます。  ただ、私も、ケインジアンではありませんけれども、おっしゃるように財源は苦しくても、財政赤字であるのですけれども、とにかく財源を探してでも、公共投資によるところの経済に対する刺激はやはり必要ではないか。アメリカですら、四セントのガソリン税を九セントに上げて道路の普及を始めるように、久しぶりのケインズ方式を採用しているわけでございます。日本は六兆六千五百五十四億円の公共投資がずっと横ばいで四年間続いているわけでございますが、その一方、自然増収は三兆一千億円から一兆五千億円にだんだん減るような傾向を示しますと、またもう一遍公共投資によるところの経済効果というようなものを考えてみる必要がありはしないか、こんなことを私は考えているのでございますが、財政がこんなような状態でございます。  しかも、財政も御案内のように、きょうの新聞にありますように、三月債は事業債よりも高目の利子を払わなければ信用がないというふうに言われるぐらいの国債の発行状況だといたしますと、やはり国債が過剰で金利の引き下げを阻害している。やはり財政再建も早くすることが、あるいはそこまではできないにしても、赤字公債の金額を減らすことが景気にも大きな影響があるような根拠を持つ、こんなふうに考えているところでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕  私は、いま考えてみますと、今度の公共投資が横ばいみたいなところで、企画庁長官また無能のようにときどき言われるのでございますが、そういう考え方に立ってこれから考えていかなければならない。私が長官に就任したときには、もうゼロシーリングが決まった後でございましたが、今後石油価格引き下げ、それからアメリカの金利低下に伴うような日本の金利の低下の傾向、それから円レートの安定、この三つくらいの条件を政策の上に生かして、経済政策の天井を気にしなくても済むくらいの条件だといたしますれば、財政赤字が唯一の天井と考えて、ここをうまく縫いながら経済の成長を図っていかなければならぬと思っております。そうしなければ財政再建もできない。  自然増収が六・六%くらいの計算で、八%ふえていきますところの国債費を減らすことができない。要調整額が六兆円、七兆円というようなことを増税でやりますれば、これは経済が萎縮するに決まっている。いま塩田委員がおっしゃいましたように、経済の回復のみならず、やはり経済の大きな成長が財政再建に最も役立つという考え方が必要だと思っております。
  90. 塩田晋

    ○塩田委員 サプライエコノミー、レーガノミックスと言われるレーガンの経済政策経済についての見方に対しまして塩崎長官は、シオザキノミックスと言えるかどうか、ケインジアン的なお考えを述べられたと思います。公共投資は総額、金額で横ばいですから実質はどんどん少なくなっていっている。これが景気に非常にマイナスに作用していると私は思いますので、この点は企画庁長官言われるように公共投資はふやすべきである。これは補正予算等の問題も出てくると思いますが、少なくとも実質で質的、量的に前年よりも落ちないように措置しなければならない。  かつて池田内閣時代に、一兆何千億の総予算の中から新しい政策として一千億減税、一千億施策、しかもそれは、公共投資とともに福祉に重点を置いて、非常に大胆な経済政策を打ち出されて、これを契機として日本の高度成長が出発したということも考えられるわけです。所得は十年間で倍増というのが七年以内に達成されるという状況が起こったことは御承知のとおりでございまして、ここで余り従来の考え方にとらわれず、最近非常に憶病な政策でやってきたと思うのですが、塩崎経済政策で特色あるものを打ち出して、大胆に取り組んでいただいて、中曽根内閣経済の一番の大黒柱ですから、アメリカの状況も検討されて、ひとつ思い切って打ち出していただきたい、このことを希望申し上げたいと思います。  先ほど言われた中にちょっと問題のあるところはあるのですけれども、貯蓄の問題、これはアメリカでそう思ってやったところが、貯蓄にならないで消費に回っていますね。それから、日本の場合にも国の財政赤字が非常に大きいのですけれどもアメリカは軍備拡張のツケとはいえ、これは日本以上の赤字じゃないかと思うのですね、一兆ドル。去年が千八百何十億ドル、ことしは二千億を超える財政赤字ということが見込まれている。これをいまどんどん削減しようとしているわけですね。  そういった点から見ますと、赤字の問題は確かにあります。しかし、ずっと租税の行政を担当してこられた長官のことでございますから、素人には財源がないからできぬとおどかしに来ます、減税をする場合でも、財源がないから見つけてこい、そんなのはだめだ、こう言っておればみんなだめになりますけれども、素人をおどかすのにはいいですけれども長官はよく御存じだと思うのです。  現に昨年減税をやるといって議長裁定になって、小委員会をつくって財源探しをやったけれども、七月になってあけてみたら財源があるどころか歳入欠陥だ、三兆円だと大騒ぎしましたね。結局うやむやになってパアになってしまった。ことしまた同じようなことになるんじゃないかという危惧が非常にあるのですが、去年より一歩も二歩も前進だということでわれわれ一応しんぼうしておるのですけれども、財源を言えば何とでも、ないとも言えるしあると言えばある。というのは、去年三兆円足らないと言ったのをちゃんと埋めて、補正予算で手当てしましたね。いろいろなことをやられました。中にはごまかしのようなものもありますけれども、いずれにしても知恵を出せば大蔵官僚がちゃんと、何とでもつくってこられる。  また、五十七年度につきましても、六兆足らないと言っておったのに、これもいろいろ措置をして何とかやっている。半額は赤字公債で賄っていますが、とにかく六兆といってもちゃんと措置をしておられる。来年度にいたしましても、九兆と言われておった。これを歳出削減、横ばいで五十兆で何とかちゃんと措置しておられる。  だから、一兆円の減税なんということじゃなしに、レーガンのやったことは、御承知のとおり八一年一律五%所得税の削減ですね。そして八二年は引き続いて一〇%削減ですね。そして、ことし七月になお一〇%削減。そして八五年からは物価が上がっただけ減税をしていくという物価調整減税をやる。これはもう立法化してしまったわけですね。こういうふうに大胆にどんどんやって、しかも内需がふえて物価が上がるかというと、物価はレーガンも言っておりますように、一時の三分の一、昨年の暮れで三・九%まで落ちている。わが国が優等生と言われて、われわれ国民的な努力で物価は下げてきましたけれどもアメリカもそこまで、近くに来ているわけです。そしてなお減税をやろう、こういう大胆なことをやっております。この辺をもっと参考にされまして、塩崎経済政策をひとつぜひとも打ち出していただきたいということを要望したいと思います。  時間が参りまして、ここでひとつ、外務省のアメリカ局の関係者に来ていただいていますが、アメリカのレーガンの所得減税、企業減税もあったわけですが、この内容、規模あるいはそのやり方、これについてわかる限り、調べておられる限りで結構でございますが、ここでお知らせをいただきたい。もし詳しいことがわからなければ、後ほどまた資料等で出していただきたいのです。概要をお答えください。
  91. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  アメリカの減税の具体的な実行計画についてのお尋ねかと承知いたすわけでございますが、私どものところで目下作業を進めておりますので、後ほど資料として御提出を申し上げたいと思いますので、それにて御了承いただけますでしょうか。
  92. 塩田晋

    ○塩田委員 アメリカ経済とともに世界経済を構成する大きな分野は、ソ連を中心とする東欧諸国、いわゆる共産圏経済でございますが、これは世界経済の中でどれくらいのウエートを持ち、どういった問題を抱えておるか。特にソ連経済は停滞をして苦しんでおるわけですけれども、また、食糧をアメリカあるいはカナダ、アルゼンチン等から買い入れたり、そして東欧諸国にソ連からいろいろな物を提供している、また吸い上げているという形ですね、この供給している一つの大きな物に石油と天然ガスがあると思うのです。石油の価格が下がることによって東欧諸国経済、特にソ連のそういった経済、対外政策、これにどういった影響が出るとお考えになりますか。最後にお答えいただきたいと思います。
  93. 廣江運弘

    廣江政府委員 ソ連、東欧経済につきましては、先ほど若干触れましたが、農業不作の継続、労働生産性の伸び悩み、それから原燃料供給の制約、対西側債務負担増というようなもの等から経済計画の未達成状態が続いて、総体としますと厳しい情勢が続いておるわけでございます。  そこで、今回伝えられております原油価格値下がりが、原油輸出国でありますソビエトの外貨繰りにどういう影響を及ぼすかということだと思いますが、一般的には外貨繰りを悪化させると考えられます。具体的にどういうふうになるかということは、ここで申し上げられるようなデータをまだ持っておりません。  そこで、原油生産量の推移を申し上げますと、一九八一年が世界の計が五千六百万バレル・パー・デーといたしまして、私ども承知しておるところでは、ソ連は千二百十七万バレル・パー・デーということで、約二三%くらいかと考えております。これが、現在伝えられておりますような石油の価格引き下げというものによって、こういうソ連の生産量、輸出量の上において影響が出てくるだろう、こう考えるわけでございます。
  94. 塩田晋

    ○塩田委員 輸出ですか、生産量ですか。
  95. 廣江運弘

    廣江政府委員 先ほど申し上げましたのは原油生産量でございまして、生産量の比が世界計に対しまして約二三%、千二百万バレル・パー・デーといいますのは一九八一年でございましたが、二三%程度と申し上げましたのは一九八二年の十一月までの平均値をもとにした数字でございまして、そう大差はございませんが、二三%程度でございます。
  96. 塩田晋

    ○塩田委員 貿易の関係は。
  97. 廣江運弘

    廣江政府委員 いまその数字をちょっと用意いたしておりませんので、後ほど先生の方にお答えいたします。
  98. 塩田晋

    ○塩田委員 終わります。
  99. 土井たか子

    土井委員長 岩佐恵美君。
  100. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 塩崎経済企画庁長官の所信表明の中で、五十八年度の経済運営に当たって第一の柱として「国内民間需要を中心とした経済の着実な成長の実現を図ること」こういうふうに言っておられるわけですけれども、このお考えはもちろんいまでもお変わりはないということでしょうか。
  101. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 もちろん変わっておりません。
  102. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 先ほど同僚委員からいろいろ指摘がありましたけれども国民の暮らしの問題ですが、物価が安定をしているからといって必ずしも暮らしが楽であるということにはならないわけであります。毎年この数字を指摘させていただいているのですが、厚生省が調べました、国民の暮らしに関する実態調査というのをやっているわけですけれども、暮らしが苦しいというふうにしている世帯が、厚生省の場合、所得の四分位階層別に見ているわけですが、全体の階層合計で四二%が苦しいというふうなことを言っているわけです。その中で、大変苦しいというのが一一・二%、やや苦しいというのが三〇・八%というふうになっているわけですが、合計して、苦しいという人たちが半分に近い、それから一番所得が少ない階層で見ますと、これがもうちょっとふえて五二%が苦しいということを訴えているわけです。  そういう中で、原油価格値下げの問題であるわけですけれども、電力、ガス料金、石油製品値下げをすること、これによって消費者に還元をして、そして個人消費支出を旺盛にする、それによってまた国内民間需要を盛り上げて景気の回復を図っていく、これは政府経済運営から至極当然出てくる考えであろうと思うわけですけれども、この点いかがでしょうか。
  103. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま岩佐委員がおっしゃいました、生活の実感から来ますところの消費の実態、苦しさ、この数字も、私もときどき勉強させていただいているわけでございます。企画庁消費者行政の担当官庁でございます。消費生活が一層よくなるように、物価の安定はその意味で一番大事な施策だ、こういうふうに考えておりますし、今回の石油の値下げもその方向に役立つように十分に推進してまいりたいと思っております。
  104. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 経企庁は、先ほど同僚委員からすでに指摘があったところですが、世界経済モデル、これを使って原油値下がり影響を試算しておられます。原油が一〇%下がると一年間にGNPが〇・二三%ふえる、そういう試算をしておられるわけですが、これは、原油値下がりが一〇〇%石油製品価格やあるいは電力、ガス料金、そうした料金の値下げ国民に還元をされた場合というふうに理解をされるわけですけれども、もしこれが実現をしない、つまり一〇〇%実現をしないというふうになった場合には当然数字が変わってくるのだろうと思うわけですけれども、この辺の検討はどうでしょうか。
  105. 吉岡博之

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  先ほど長田委員からの御質問のときにも申し上げましたけれども、世界経済モデルの研究は五十四年度から始めたということでございますので、基礎になりますデータは五十三年までの資料でございます。したがいまして、現時点で直ちにそのとおりになるということにはちょっとならないということを一つお答えの前提で申し上げます。  それからもう一つは、繰り返すようで恐縮でございますが、モデルでございますので、急激な変化が来た場合にはそれをとても追い切れないということがございますし、経済ではなくて政治的な変化まで及びますものについては、とても経済理論からいっても追求はできないという前提で私ども、第一次石油の後といいますか第二次石油の前に、石油が一〇%下がったらということで試算をしたわけでございます。したがいまして、そのモデルの中身は、全体として日本経済のモデルだけでも百四十本ぐらいございますし、このモデル全体で申し上げますと、千八百本ぐらいの大きなものになりますので、そこで個別具体的に、それがどのように個別の価格に反映してどうのこうのという形にはなりませんで、総合的な輸入物価がどうであるとか、それから国内の内需のデフレーターがどうであるかというようなことの反映が、最後に回ってGNPの増加になるということでございます。
  106. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 原油値下がりの問題ですけれども、これも先ほどから議論になっているところですけれども日本の大きな輸出市場であるOPECの所得の低下あるいは石油の探鉱投資、代替エネルギー開発の低下、そういう影響を受けて、逆に日本の総輸出にマイナス影響が出るのではないか、そういう心配もされているわけです。現在、長期不況ということがあるわけですが、これも輸出の停滞ということがかなり響いているわけで、その辺を考えますと、今回の原油値下がりというのは、その面からも考えていくべきではないか。そうした場合に、いまの世界経済モデルは、原油値下がりが一体日本の総輸出にどういう影響を与えるのかという試算もあるようですが、これをちょっと言っていただきたいと思います。
  107. 吉岡博之

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  石油が一〇%下がったときの影響でございますけれども、当初は、御承知のとおり、経常収支が改善いたします。したがって、為替が円高になるということがございます。中近東は恐らく手持ちのドルが少なくなりますので、日本の中近東に対する輸出の影響マイナス方向に動くのではないかと思います。したがいまして、日本の総輸出は第一年目も第二年目もほとんど影響を受けないというような状況でございます。
  108. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 一年目はプラスの要因に働くけれども二年目からマイナスになる。そういう状況で、これは長期的に見ればどうなるかわからないという面はあるわけですけれども、常識で考えても、その傾向から見ても、数字的に総輸出の大きな伸びが図れないということで、国民経済にはマイナスに働く、そういうことが言えるというふうに思うわけです。  そういう状況の中で、先ほど経済企画庁長官は、原油値下がりの状況について、石油製品値下げやあるいは電力、ガス料金の値下げによって、国民経済上にプラスになるように消費拡大を図る、そういう方向で努力をされていかれるというようなことを言っておられるわけですけれども、たとえば、いまの輸出にブレーキがかかるのではないかというようなことで、鉄鋼業界では、逆オイルショックで輸出が減るおそれがあるとか、あるいは自動車業界でも、原油値下げによって収入減が車の輸出をそのまま減らしていくというようなことになるのではないか、そういうおそれも言われている中で、先ほど経企庁長官は答弁の中で、同僚議員の別の議論でしたけれども、円高景気のところで、円高景気は内需拡大にも役立てるべきなんだというふうに言っておられました。  この原油値下がり問題も同じ観点で、積極的に進めていかなければならない問題であろうかというふうに思うわけですが、どうも経済企画庁長官も通産大臣も、お目にかかるたびに何かトーンが、ニュアンスが違うという感じがするわけです。しかし、この問題について経済企画庁としては、ちゃんと値下げをやっていくのだという強い決意で臨んでいってほしいというふうに思うわけですけれども、再度その点のお考えを伺っておきたいと思います。
  109. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 原油値下げ、さらにまた円高傾向の定着は、当然国内の物価の低落をもたらすと私は思うのでございます。そこにひずみが生じたり、変な乱用がありますれば、企画庁長官としては当然それを是正する形での政策を進めていかなければならないかと思うのでございます。とにかく、いま貿易摩擦がやかましい折からでございます。円高の傾向とそれから原油引き下げは、まさしくそれと逆の内需拡大をしろという神の声のような気が私はするわけでございまして、その方向はみじんだにも動かない。さらにまた、円高によって輸入が促進され、原油価格引き下げによって、かつて第一次石油ショックから十年目に二・三倍も上がりました物価を少しでも取り返さなければならない、こういうふうに考えております。
  110. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それでは、個別の問題を少し伺っていきたいというふうに思います。  一バレル四ドル値下がりするということによりまして、石油業界だけでどれだけの利益になるかというと、一兆一千六百八十六億円、私ども、現実の数字を使ってやってみた場合にそういう試算になるわけでございますけれども、これを一キロリットル当たり製品価格にいたしますと、六千円の値下げが可能である。この一バレル四ドルの値下がりの問題は、現在三十四ドルでありますから、それが三十ドルになるということで、第一次的なかなり可能性の強いそういう数字だということだと思うのです。その後、いろいろな説がありますけれども、二十三ドルから二十五ドルぐらいにまで引き下がる、これが石油専門家筋の話だとか、あるいはいや、二十ドルまで行くかもしれない、二十ドルを割るかもしれない、そんな話もあるわけですが、そういう中で、一バレル四ドル値下がりという意味は、ごくごく可能性が高い数字だということを申し上げておきたいと思います。  この一キロリットル六千円の値下げということによって、たとえば灯油をこれに当てはめてみますと、北海道の平均家庭では、一冬で約一万二千円程度の燃料費の節約になるわけです。そういう点で言えば、こういう生活必需品ですから、そういう商品の値下げというのは、即家計に大変いい影響を及ぼしていくということになるわけですが、一方、通産省はこの問題について、市場メカニズムによって値下げがあるので、行政指導をするべきではないのじゃないかということで、この問題については事務当局はかなり否定的であるわけです。ただ、通産大臣は積極的に値下げはすべきであるというようなことも言っておられるわけですが、新聞報道によっても、直接消費者還元の形でメリットを受けさせた方がいいというようなことの判断で、いま通産大臣は考えておられる。  そういうこともあるわけですけれども、一方、石油業界原油値下げは在庫評価損になる、あるいは自己資本比率が悪いからよくしたいので、あるいはいままで赤字が積もり積もっているというようなことを言って、値下げをなかなかしようとしない、そういう実態があるわけです。円安や原油値上げのときには石油業界はすぐに製品を値上げします。これは、私たちがよく在庫評価があるじゃないかと言っても、在庫評価なんかしていられない、緊急事態なのだということで、すぐに値上げをするわけで、こういう石油業界の主張というのは、国民生活が厳しい中で納得できないものであるわけです。この問題について、通産省はいま一体どういうふうに考えておられるのか、今後どういうふうな指導をしていかれるのか、この点を具体的に伺いたいと思います。
  111. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 ただいまの御質問の点につきまして、通産省といたしましては、いまいろいろ先生御指摘ございましたけれども原油の値段が下がりましたということに仮になりましても、それはドルベースの原油調達コストの低下ということにはなりますけれども、その後それが現実の石油産業にとりましてどういう経営面の影響をもたらすか、あるいはまたそれが製品価格に具体的にどのような影響を及ぼすかということにつきましては、こうしたコストの変動が市場メカニズムを通じまして価格に反映していくことが基本だと存じますので、具体的な影響につきましては、私どもといたしましては、そのような市場メカニズムを通じまして価格がどのように動いていくか、動向を見守っていくことにいたしたいと存じます。
  112. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ドルベースの問題だと言われますけれども、為替レートについても去年の暮れから非常に円高の傾向になってきているわけですね。先ほどの当委員会での議論でもおわかりいただけるように、今後円高の傾向というものはますます強まるんではないか、そういうことが言われているわけで、いまの答弁では全く納得がいかない。もっと積極的に、現在どのぐらいの状況になっているのかというようなことで計算をしたり、いろいろ資料をそろえたりということをしているんでしょうか。
  113. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 先ほども申し上げましたようなことで、ドルベースで仮に原油の値段が下がるといたしましても、具体的にどのような製品価格あるいは企業経営への影響が出るかにつきましては、いろいろな考慮すべき要素があろうかと存じます。たとえば、いま申し上げた円レートの問題もさようでございますし、各石油製品ごとの需給の状況なども価格形成に当たりましては影響すべき要因だろうと存じますし、御案内のように、五十六年度以降石油産業は大変経営が厳しい状況にあることもございます。さらにまた最近の石油の値段の動きを見ましても、需要の低迷とか円高に加えまして、原油の値段が下がるのではないかという期待感が大変出てまいっておりますために、そういった引き下げ期待感を反映いたしまして、市況はもうすでに相当程度軟化いたしているわけでございまして、これからの影響を具体的に、定量的に把握することはなかなか困難なことだと存じております。
  114. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この間通産大臣にお話をしたときに、これは申し入れという形でしたけれども石油業界は自分が困ったときには行政指導、行政指導と言うけれども、今度、もうかったときには行政指導は要らないと、そういうこともあるなというふうに話しておられたわけですけれども、そういう観点から、事務当局がいまのような非常に後ろ向きなことでは、とうてい国民が納得できない状況だというふうに思うんですね。灯油、ガソリンの値下げというのは、一般の国民生活に、直接家計を潤すということで影響するわけですけれども、たとえばA重油の値下がりというのは漁船の燃料費の節約にもなるわけです。漁船の燃料費が下がれば魚の値段も下がる、そういう関連もあるわけですし、それから軽油の値下がりはバスだとかトラックの運賃の値下げにもなるわけです。  こうして見ていくと、たくさんの関連国民生活すべての分野にわたってあるわけです。農業でも同じようなことになっていくわけです。こういう波及効果を考えてみた場合に、いまのようなことでは、一体国民がどれだけ原油値下げによって利益を得るのかということがはっきりしない。そして便乗値上げや、あるいは値下げをしないでそのままにしておいて、利益隠しを許してしまうような状況がどんどん起こってくるのではないかというふうな心配が非常に大きいわけです。この分野についてぜひ監視をしていく必要があるのではないかと思うのです。これは物価の官庁としての経済企画庁が監視を積極的におやりになるのが、国民にとっては一番納得のいくところだろうし、また実際の効果も上がると思うのです。こういう視点で、何か具体的に監視の実質的な対応をとられようとしているのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  115. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 お答え申し上げます。  実は、当委員会で昨年の夏以降何度も御説明しておりますけれども、私ども石油製品についての考え方は、円滑な供給を確保した上で、後は市場メカニズムに任す方がよろしい。当時は石油製品の値上げが問題になりました。値上げが問題になりました際に、一時的にはそれが消費者に対してつらいものになるかもしれませんけれども、長い目で見れば必ずその方がまた安くなる、こういうことを申し上げました。その後の経緯をとってみますと、たとえば灯油で申しますと、確かに十一月までは値段が上がりましたけれども、それ以後東京都区部速報で見ますと、二月小売価格は十八リットル当たり千八百十二円ということで、十一月の千八百八十二円に比べまして七十円下がっている、こういうことでございます。  私ども、灯油を初めといたしまして石油製品価格動向、これは国民生活に大変重要な物資であるということで関心を払っております。私どものモニターなども通じまして価格動向を常に調査をしている、こういうことでございます。その結果、やはり市場メカニズムに任せておればコストが下がる、あるいは現にコストが下がらない状態であってもこれから下がる、こういう見通しがあれば、むしろ末端の方から値段が下がっていく、こういう状況が確認されているものと認識をしております。したがいまして、これからも価格の動き等につきましては監視は続けますけれども考え方としていままでのやり方が効果があるのではないか、こう考えている次第であります。
  116. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこのところは、私たちは今回の灯油についても議論があるわけです。いま赤羽局長が、最初消費者は非常に苦しい思いをしたけれどもというふうに言われましたが、実際にそうなんです。一缶千八百円の灯油を十二月までは消費者は買わされたわけなんです。特に需要期が早い北海道等では、そこのところの負担は大変なものであったわけです。その後確かにほうっておいて多少値下がりがありましたけれども、しかし、それは全国おしなべて均等に値下がりがあったということではなくて、共同購入活動だとか生活協同組合だとか、そういう消費者の抵抗の組織が強いところに限ってかなり下がったということはあると思うのですけれども、一般的に国民全体がそういう恩恵をこうむったというふうには必ずしもなっていないと思うわけです。  ですから、灯油の今回のやり方を見て、これからそういうふうに野放しにしておくのがいいんだということでいかれるというのは必ずしも適切ではない。やはり個別の商品についてきちんとチェックをしていって、価格メカニズムで下がるものであるならばそれはそれでいいかもしれないけれども、かなりカルテル的な体質が強い業界については、それは働かないわけですから、そういう特殊なものについての監視というのは非常に強めていかなければいけないと私は思うわけですけれども、その点局長考えはいかがでしょうか。
  117. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 私どもが日ごろ注視をしております国民生活上重要な物資というのは、何も石油製品に限らず、いろいろな農産物でありますとか加工食品でありますとか、そういうものがございます。そういったものにつきましても、今後とも物価モニターその他の既存のシステムを通じまして情報を収集し、その動きを注視していきたい、こういうふうに考えております。
  118. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、電力業界の問題ですけれども、一バレル四ドル値下がりをすることによって、石油業界全体で四千二百八億円の収入増になるわけです。額として大変大きなものになるというふうに思います。しかも、先ほど申し上げましたように、原油値下がりは長期的にある一定時期続いていくわけですし、一バレル四ドルというのはかなり控え目に考え数字であるということから言えば、これは無視できない大変な事態だというふうに言えると思います。しかも、電力業界は、五十五年の値上げ以降、経営が大変よくなっているというような状況があります。  たとえば、為替レートの好転の問題です。五十五年の査定のときには、為替レートは二百四十二円だったわけですけれども、最近では二百三十円台になっているわけです。これで差益がかなり出る状況が生まれている。それから原発の稼働率についても、認可査定時では五五・八%であったのが、五十七年の上期では、電力業界全体ですが七三・六%になっているわけです。それから燃料消費計画について言えば、たとえば東電では、認可査定時の二千三百二十七万二千キロリットルに対しまして、五十六年の実績では二千九十二万キロリットルになっている。それから、五十七年の計画でも二千二百五十八万キロリットルというふうに、燃料消費面で大幅に節約をしている。これも負担が軽くなっているということが言えると思います。  そういう中で、今度たとえば東電は千数百億円の経常利益を計上できる。当初は数百億円ぐらいかなというふうに言っていたものが、千数百億円だということが言われているわけです。この点について、まず通産省のお考え伺いたいと思います。
  119. 黒田直樹

    ○黒田説明員 お答え申し上げます。  幾つかの点について御質問があったわけでございますが、まず原油値下がりによりまして四千二百億程度の収入増があるという御指摘がございました。  原油が、CIF価格が一ドル下がった場合にどのように電力会社の燃料費に影響してくるかという点につきましては、厳密に試算することはなかなか困難でございます。先ほど石油部長の答弁のときにもございましたように、そもそも原油の輸入価格への影響というものについていろいろ不確定要因があるということを申し上げたわけでございますが、そういう問題もございますし、それから電力会社が石油会社を通じて購入する実際のC重油等の価格がどうなるかという点も不明でございますし、それから、先生いまいろいろおっしゃいました燃料の消費量がどのくらいになっていくかというのも不明確な点でございます。為替レートの問題もございます。したがいまして、試算はなかなか困難でございますが、いずれにいたしましても、燃料費の減少があるということは予想されるところでございます。  ただ、先生おっしゃいましたように、それがそのまま収入増になるということではなくて、それだけ燃料費の減少になるということでございます。それで、今後の問題といたしましては、そういうことでございますので、そもそもこれからどういう引き下げが行われるのか、それからそれがどの程度持続していくのか、あるいは電力会社の収支状況にそれがどう結びついてくるのか。具体的に申しますと、燃料費以外にも諸コストがかかっているわけでございまして、それらの動向がどういうふうになっていくのかとか、あるいは今後の為替レートであるとか出水率の見通しであるとか、いろいろな要因を総合して考えていく必要があろうかと考えているところでございます。  それから第二番目に、電力会社の経営がよくなっているというお話でございます。どの時点をとらえて考えるかでございますが、最新時点の電力会社の決算は、五十七年度の中間決算でございまして、この状況を見ますと、前年の中間決算と比較してみますと、経常利益のベースでは約四六%の減益になっております。それから税引き後の利益ベースで見ますと約三七%の減益ということでございます。  そこで、先ほど先生、たとえば一例として現在の料金に織り込まれている、あるいは現在の料金の前提となっております為替レートが二百四十二円、最近の実情は二百三十五円前後だということでございますが、最近のデータ、五十七年度というのはまだ出てないわけでございますが、五十七暦年で見ますと、為替レートは二百五十円ぐらいでございまして、したがって、そういう意味では、確かに最近、一、二月、円高傾向になってきておりますけれども、年ベースでとらえてみますと、いま申し上げましたように、二百四十二円よりも円安ということで、むしろ差損状態にあるわけでございます。  したがいまして、これは一例でございますが、先ほど先生おっしゃいましたような原子力発電の高稼働とか、したがって、石油消費量の減少というような形でいろいろな経営の努力をしているわけでございまして、その結果、現在は電気料金は三年間一応据え置きになっているということで、安定的に推移しているというのが実態でございます。したがいまして、現在の状況は、経営がよくなっているという状況ではなく、むしろ非常に厳しい決算になっているというのが実態ではないかと考えております。
  120. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いまの試算ですけれども、これは電力業界の試算ということで、原油価格が一バレル当たり一ドル下がると、九社合わせて年間約一千億円の節約になるという報道があるわけですので、それが収入増になるというふうな言葉を使うか節約という言葉を使うか、そこら辺は、電力会社側の言い方あるいは通産省の言い方というのは、同じ土俵で考えておられるのだろうけれども国民から見れば、これは収入増なんじゃないかということになると思います。いま言われたように、実際に電力業界全体として、原発の稼働だとかあるいはそういう燃料消費量が減っているというようなこともあるわけで、これにプラスして原油値下げというのは、経営面にかなり大きないい影響を与えていくということははっきり言えると思うのです。  それで一方、国民生活の方から電力料金どうなっているんだということを見てみますと、総理府の家計調査ですけれども、電気料金の家計費に占める割合、これは五十五年度に値上げをする前には一・八九%だったのです。ところが、値上げをした後二・六%、非常にウエートが高くなっているわけです。やはり実際に、電気が高いので使えないという状況あるいはうんと節約をするという状況というのは生まれてきているわけですけれども、先ほどから議論になっているように、五年間所得減税がありません。あるいは収入がふえないために実質国民所得が減って、大変生活が苦しくなっている。そういう状況の中で、いま通産省が答えられたような電力業界の立場に立ったような考え方だけではどうにもならない。やはり電力料金の値下げという形で、内需中心の景気回復を図っていかなければいけないのじゃないかということを痛感をするわけですが、大臣のお考え伺いたいと思います。
  121. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 電力料金につきましても、私は今回の原油値下げが確かにいい影響を来すと思うのでございます。しかし、これは電力料金の前回の改定のときに言われましたように、前回わずか下げてまた一年半後に大幅に上げた、これに対していろいろの反省の声があるようでございます。私どもは、電力料金が消費生活に及ぼす影響が大変大であることをいま御指摘がございましたが、長期安定の方向でひとつ考える必要があろうかと思いますし、また、電力会社の省エネあるいは代替エネルギー等の投資、これらの奨励、さらにまた国民の電力消費に対する省エネ的な考え方の浸透というようなことが、これからもまだまだ必要かと思うのでございます。このような観点も総合的に見ながら、やはり原油値下げ国民全体に還元される方向の姿をひとつ推進していくべきである、こういうように考えております。
  122. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 電力、ガスあるいは石油製品値下げ問題については以上で終わりまして、次に、消費者行政の問題についてちょっと伺いたいと思います。時間もなくなってきましたもので、簡単に伺いたいと思います。  臨調の第四部会報告では、国民生活センターの整理合理化、こういうことが強力に打ち出されているわけです。そういう流れの中で、五十八年度予算で、経済企画庁国民生活センター予算、年間運営費十九億九千八百万円、そのうち人件費が九億一千九百万円、ですから実際の運営費は十億七千九百万円足らず、そういうところを九千四百万円も前年よりも削減をするというような状況が生まれていて、これによって苦情相談規模が縮小する、あるいは商品テスト規模が縮小する、あるいは商品検査料の値上げがされるというようなことで、消費者行政全般が非常に圧迫をされていくという、そういう消費者側からの不安が強いわけです。  臨調は、消費者行政を縮めるに当たって、現在、消費者問題については、たとえば販売戦略の上からも、消費者サイドに立った販売マインドが定着しているのだとか、あるいは消費者が、主婦層が高学歴になって、あるいは情報化が進んでいるから、別にいろいろな情報をそうより丁寧に提供してあげなくてもいいんだというような考え方が根底にあるようですけれども、現実には、訪問販売だとかあるいは商品の安全、あるいは薬や化粧品だとか、そういう日常使うようなものを初めとして、おもちゃのたぐいに至るまで、大変消費者被害というのはふえているという、そういう深刻な実態だというふうに思うのです。こういう状況から見て、もっと国が積極的に消費者行政を推進していかなければならないのではないか、このような予算の削減ということを放置しておいてはいけないのじゃないかということを思うわけですが、この点を伺いたいと思います。
  123. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 ただいま御指摘のありましたような御議論が臨調の部会の中で一部あったことは私ども承知しているわけでございますが、やはりいまお述べになりましたような消費者行政の必要性、重要性につきましては、私どもも全く同じような考え方でございまして、ますます充実をしていかなければいけないという考え方に立っておるわけでございます。臨調もその点につきましては御理解をいただいておるものと思います。  それから、予算の点についてのお尋ねがございました。確かに、予算全体が厳しい状況にあるわけでございまして、消費者行政の予算につきましても、やはり補助金等の一律削減の影響によりまして減少しておることは事実でございますが、こうした厳しい財政状況のもとにおきまして予算を効率的に使用するということは、やはり政府に課せられた非常に重要な仕事ではないかと思っておるわけでございまして、この予算の効率的な執行によりまして、消費者保護行政が、ただいま申し上げましたような点について遺憾のないように十分努力をしてまいりたい、こう思っております。
  124. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間がちょっとなくなって、いろいろはしょらせていただいて申しわけないと思いますが、BHA、酸化防止剤の問題で最後に一言ちょっと伺いたいと思います。  これは、BHAについては発がん性があるという学者のデータが出て、そして食品衛生調査会がこれは使用規制をすべきである、そういう意見を出し、厚生大臣が二月一日からその規制をするということを決めていたものを、アメリカを初めとする外国の意見によってこの措置が覆されるということがあったわけです。  私は、質問主意書で、この問題について、発がん性があるものが市場に出回るということによって国民の健康が冒されるのではないか。その責任について厚生省は一体どう負うのかということに対して、厚生省は、しばらくの間だったら構わないのだ、国民の健康にとっては大して影響が出ないというふうな言い方をされているわけですけれども、弱い発がん性だといっても、やはり他の添加物との相乗効果、相乗毒性はあるというふうに思いますし、そういう考え方というのは大変危険な考え方であるというふうに思うわけです。この点について意見を伺いたいと思います。
  125. 藤井正美

    ○藤井説明員 現在、わが国におきましては、BHAが使われている主要な食品はございませんが、しかし、諸外国におきましては、自由にBHAが使われております。また、一人当たりの摂取量も、わが国においては、かつて〇・二ミリグラム前後でございます。しかし、諸外国においてはこれが十倍の二ミリグラム前後が一日の摂取量というように計算されております。したがいまして、一時延期したレベルにおいては、公衆衛生上の問題はまずないというように考えております。
  126. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこにすごく問題があると思うのですね。国内では、いまのところ自主規制みたいな形で、使われていない。しかし、外国から入ってくるものについては、一時延期をすることによって、野放しに入ってくるという実態が出てくると思うのです。この委員会でも議論しましたけれども、輸入食品についての検査というのは全体の五・六%ですか、大変低い率でしか検査されない、そういう実態があるわけで、この延期措置というのは、やはり国民生活にとって大変な事態なんじゃないかと思うわけです。一体、いつまでこんな状態を続けようとされるのか、その点、明確なお答えをいただきたいと思います。
  127. 藤井正美

    ○藤井説明員 来月、このBHAの安全性の問題について国際会議が行われます。これはFAO並びにWHOが主催する会議でございますが、BHAの安全性につきましては、その会議で明らかになるというように考えております。
  128. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 早くこういう状態を払拭をしていかなければいけないのじゃないかと思います。  それから、今回の措置は毒性学者にかなり大きなショックを与えている。発がん性の試験をしてそれを実証するのが悪いかのような雰囲気がつくられていくんではないか。こういう雰囲気をつくることは、国民の健康を守る上で大変危険なものだと思うのですね。厚生省に、この点どうなのかということを伺いたいと思います。  最後に大臣に。経済企画庁は、安全性の問題もやはり広い意味消費者行政として考えていただく、そういう立場にあると思うのです。非関税障壁を取り払うということで、食べるものあるいは商品の安全性について検査を省略したり、あるいはいま言ったように添加物、外国の圧力でこういうふうに日本の政治というか、日本の対応が左右される、そういうことがこれから起こってくる危険性が非常に高いと思うのですね。そういう点で、大臣、国民の生命を守るという立場でしっかりとがんばっていただきたいと思いますし、その決意をお伺いしたいと思います。
  129. 藤井正美

    ○藤井説明員 岩佐先生のお言葉でございますが、日本の毒性学者はこんなことでびくびくするような者は一人もおりません。大丈夫でございます。
  130. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 生命の安全は、最も重要な政策課題でございますから、企画庁長官としても、最も力を入れてまいりたいと思います。
  131. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  132. 土井たか子

    土井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会