○
山田説明員 それでは、
昭和五十八
年産米穀の
政府買い入れ
価格につきまして、本日
米価審議会に
諮問いたしましたので、その
諮問の
内容につきまして御説明させていただきます。
まず、お手元に配らせていただいております「
諮問」、それから「
諮問についての説明」、これを朗読させていただきます。
諮問
昭和五十八
年産米穀の
政府買入
価格について、米穀の需給の均衡を図るための対策が行われている需給事情に即応しつつ
生産費及び所得を考慮して
決定することにつき、
米価審議会の
意見を求める。
昭和五十八年七月十三日
農林水産大臣 金子 岩三
次に、
諮問についての説明
米穀の
政府買入
価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、
生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再
生産の確保を図ることを旨として定めることになっており、その
算定については、
昭和三十五年以降
生産費及び所得補償
方式により行ってきたところであります。
米穀の
政府買入
価格につきましては、
昭和五十三年産以降その水準を据え置く等近年の米穀の需給事情を考慮した
決定を行ってきたところであります。また、一方で水田利用再編対策及び米消費拡大対策を中心とする各種施策を通じて米需給の均衡を回復するための努力が続けられております。
しかしながら、最近の米需給の実情は、三年連続の冷害等の影響による米の減産にもかかわらず、基調としては、米の
生産力が高い水準にある一方で米消費の減退がなお引き続いており、依然として過剰傾向を脱するに至っておりません。また、米の管理に係わる
財政運営も、国家
財政が深刻な
状況にある中で、困難な局面に直面しております。
今後の米の管理におきましては、以上のような事情に対処しつつ、米需給の均衡の回復に一層努めるとともに、各般の面にわたり
合理化努力を行っていく必要があるものと
考えられます。
また、最近の稲作経営の実情については、稲作の
生産性及び収益性並びに稲作所得への依存度において作付規模により大きな差がみられるようになってきております。
他方、
農家経済を取り巻く最近の諸事情の下で、稲作の
生産性の向上に努めるとともに
農業生産の再編或に取り組む
農家の意欲に及ぼす影響にも何らかの配慮を払う必要があると思われます。
本
年産米穀の
政府買入
価格につきましては、以上の事情を総合勘案の上、現下の米穀の需給事情に即応しつつ、
生産費及び所得補償
方式により
算定することとしてはどうかということであります。
それから、お手元にお配りしておりますところの「
昭和五十八
年産米穀の
政府買入
価格の
試算」という資料がございますが、この資料に基づきまして、今年の米審への
諮問の
内容を説明させていただきます。
まず、
算定の基本的な
考え方でございますが、この
算定に当たりましては、従来どおり
生産費所得補償方式によることとしておりますし、対象
農家の平均
生産費につきまして、物財、雇用労働費など実際に支払う費用につきましては
生産費調査結果を物価修正するとともに、自家労働部分につきましては都市均衡労賃で評価がえし、この評価がえ
生産費を平均単収で除して、求める
価格、これは米全体のいわゆる
農家庭先
価格でございますが、それを算出します。
なお、この場合におきまして、対象
農家のとり方につきましては、前年産米の
政府試算の
考え方と同様に二つの
考えをとっております。また、
算定要素のとり方につきましても、基本的には前年と同様にしております。
ただ、都市均衡労賃につきまして、今年の場合におきましては、昨年と同様に都道府県別の米販売量をウエートとする平均賃金をとりますと、最近の景気停滞のもとで、特に
北海道なり東北、北陸、九州などの米
生産地帯の賃金の伸びが著しく低下しているという事情を反映いたしまして、きわめて低い伸び率になります。そこで、このような急激な変化をそのまま
米価に反映させますと
農家の所得等に与える影響が大きいものがあると
考えられますので、これを緩和するための特別措置といたしまして、都道府県の米販売量をウエートとする平均賃金について、労働者数をウエートとする平均賃金の
上昇率を用いて調整をするという
考え方、いわゆる賃率調整というのを今回はとっております。詳しくは、いまの「
政府買入
価格の
試算」の資料の中の「
算定要領」というところに、五ページ及び六ページに家族労働費の評価がえについて説明しておりまして、その中でいまの賃率調整を説明しております。
以上が大体基本的な
考えでございますが、資料に即して申し上げますと、ページ一の「
基準価格」でございます。
基準価格につきましては、一万七千九百九十六円と記載されておりますが、これは前年の
価格一万七千六百八十一円と対比いたしますと、三百十五円のアップになっております。
この
基準価格は、米販売
農家のうちの
農林水産大臣の定めるもの、いわゆる対象
農家の平均
生産費を基礎といたしまして、四ページの「別記」に
算式がうたってありますが、ここで「求める
価格」というのを計算いたします。その求める
価格に運搬費を加算した額でございまして、これについて、いまごらんいただいております一ページの(1)に
算定1を掲上しておりますし、また一ページの後段の部分に
算定2というのを掲上しておりますが、その両者を勘案いたしまして最終的な
基準価格一万七千九百九十六円としたわけでございます。
具体的な
算定について御説明いたしますと、まず最初の一ページの(1)に書いております
算定1でございますが、これは、対象
農家を
生産費の低いものからその累積
生産数量比率が、
価格決定年、すなわち五十八年でございますが、
決定年の米穀の需給事情を基礎として定める比率になるまでのものとした値であります。
最近の米需給につきましては、
生産力が高い水準にある一方で、消費は引き続き減退傾向にありますし、依然として過剰基調を脱するに至っておりません。そこで、潜在的な需給ギャップは大きなものがあります。このため、水田利用再編対策の推進によりまして、
生産調整に多大の努力を順注しているところでございます。従来から
米価算定に当たりましては、
生産費の全平均ではございませんで、需給事情を反映して、
コストの低いものから順に並べまして、その累積数量が一定の比率になるところまでのものをとってきておりますが、このように大きな潜在需給ギャップが存在するという
状況のもとにおきましては、適切な
米価算定を行うため、この比率といたしまして、潜在需給ギャップをそのまま反映させる必要がありますので、それを端的に示す資料といたしまして潜在
生産量に対する総需要量の比率をとることとしたわけでございます。
この点は昨年から導入しておるわけでございまして、今年の具体的比率につきましては、五十八年産について潜在
生産量といたしましては千三百七十五万トン、総需要量といたしましては在庫積み増し分を含めました千九十五万トン、この比率でございます。この比率は、計算いたしますと八〇%ちょうどとなるわけでございます。前年産の場合におきましては、この比率は七九%でございました。
こうした
考え方による
算定値は、求める
価格にあと運搬費を加えまして、ここに書いてある式でございますが、分子が十四万九千九百八十五円でございます。この評価がえ
生産費を三年平均の単収五百五キロ、これは分母でございますが、これで除しまして、六十キロをぶっかければ六十キロ当たりの
価格が出るわけでございまして、それに運搬賃として百七十六円を加え、一万七千九百九十六円と
算定したわけでございます。
次に、資料の一ページでございますけれ
ども、(2)というところの
算定2について説明させていただきます。
算定2は、対象
農家を水稲作付面積一ヘクタール以上のものとした値でございます。
最近の稲作経営の実情を見ますと、稲作の
生産性及び収益性におきまして作付規模により大きな差が見られるようになっております一方、兼業化の進展に伴いまして稲作所得に収入の多くを依存しないような
農家がふえてきております。
たとえば、水稲の作付規模が一へクタール未満の層におきましては、稲作の単一経営で見ましても
農家総所得に占める稲作所得の割合は一割にも達しておりませんし、農外所得だけで家計費を賄っている
実態にあります。また
生産面におきましても、一ヘクタール未満層は、第一次
生産費に経営の外部へ支払う、すなわち支払い地代と支払い利子でございますが、この経営外部支払いを加えましたものが
米価水準を上回っているにもかかわらず
生産が継続されておるような次第でございます。
さらに、農地の権利移動の
状況から見ますと、おおむね一ヘクタール以上の層が農地の受け手側になっておりますし、一へクタール未満層が農地の出し手となっており、一ヘクタール未満層は
一般に経営規模拡大の意欲に乏しい、このように
考えられるわけでございます。こうしたことから、作付規模が一へクタール未満の
農家は
米価に対する
関係の度合いがそれ以上の規模の
農家に比べまして薄いのではなかろうか、このように
考えられます。
このような
稲作農家の
実態からいたしますと、現下の過剰基調のもとで補償すべき合理的な
価格の水準を求めるに当たりましては、これらの
農家を
算定の対象から除外して得られる水準を考慮することが合理的であろうと
考えたものでございます。
こうした
考え方によりまして、水稲作付規模一ヘクタール以上の
農家を対象
農家といたしまして
算定いたしますと、ここの最後の行に書いてあります、
基準価格で六十キロ当たり一万七千四百十円になります。
この二つの
算定値を勘案するわけでございますが、その場合、
農家経済を取り巻きます最近の諸事情のもとで稲作の
生産性の向上に努めるとともに、
農業生産の再編成に取り組む
農家の意欲に及ぼす影響にも配慮を払う必要があると
考え、
算定値の高い方でございますけれ
ども、
算定1によるものといたしまして、
基準価格は一万七千九百九十六円ということにしたわけでございます。
続きまして、ページ二の方に移らしていただきます。
ページ二の2のところでございますが、ウルチ軟質三類一等裸
価格、これはいわゆる等級間
格差、この
価格に等級
格差というものを加除いたしまして、
類別・等級別
政府買い入れ
価格を
算定する際の基礎になる
価格でございます。いわゆるへそ
価格、このように申しておる
価格でございます。
これは、先ほど説明さしていただきました
基準価格に等級間の
格差、それから類の
格差、歩どまり加算、こういうふうなものを加除して計算いたしました結果一万八千百十二円に相なるわけでございます。これは前年一万七千七百九十七円でございまして、ここも三百十五円のアップになるわけでございます。
次に3でございますが、ウルチ一—五類、等級は一、二等平均、包装込みのもので、これがいわゆる
生産者の手取り予定
価格になるわけでございまして、
一般には基本
米価と言われているものでございます。
この基本
米価につきましては、2で算出いたしました一万八千百十二円に類間の
格差、それから等級間の
格差、歩どまり加算、包装代を加除いたしまして一万八千二百六十六円に相なるわけでございます。これが
基本価格でございまして、この
価格は前年の一万七千九百五十一円に比べますと三百十五円のアップでございますし、比率にしてみますと一・七五%のアップということになるわけでこざいます。
次に三ページは、参考といたしまして
類別・等級別
政府買い入れ
価格を掲げてあります。先ほ
ども若干触れましたが、等級間
格差、一等、二等、三等の
格差なり、また類間
格差、一類、二類、三類、四類、五類の
格差でございますが、こうしたものにつきましては前年どおりの
格差でもって
算定されております。
次に四ページでございますが、四ページ以降ずっと細かい
算式なり
算定要領、こういうふうなものを記述しておりますが、これにつきましては省略させていただきたいと思います。
それから、最後から二ベージ目でございますが、「過去の
米価と諸要素との
関係からする
試算」というのをやっております。これは昨年も一応掲示をさせていただいたわけでございますが、ここに提示いたしましたのはあくまで参考でございまして、
米価算定の要素として過去の物財
価格、賃金、
生産性なり需給事情の変化と
決定米価との
関係を計数的に求めまして、この真ん中辺にございます対数式でございますが、こうした
関係式から本年の
米価水準を
試算してみたわけでございます。
その最終結果につきましては、2のところに書いておりますように、この
関係式に本年の諸元を入れて計算いたしますと、対前年
価格は九八・九%ということになりまして、本年の
米価の理論値は前年の
決定米価より一・一%
程度低くなる、こういう
数字でございます。これはあくまで参考ということで一応提示しておるわけでございます。
以上、多少はしょりましたが、今年の
諮問米価の
算定につきまして御説明させていただきました。