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1983-04-28 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十八日(木曜日)     午前九時四十七分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    植竹 繁雄君       臼井日出男君    太田 誠一君       鴨田利太郎君    川田 正則君       岸田 文武君    北村 義和君       熊川 次男君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       白川 勝彦君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    中山 正暉君       羽田  孜君    保利 耕輔君       串原 義直君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    田中 恒利君       竹内  猛君    前川  旦君       松沢 俊昭君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    神田  厚君       玉置 一弥君    寺前  巖君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君       小杉  隆君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房審議官    古谷  裕君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         農林水産省畜産         局畜産経営課長 三浦 昭一君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   石田 博英君     臼井日出男君   小里 貞利君     植竹 繁雄君   岸田 文武君     鴨田利太郎君   松野 幸泰君     熊川 次男君   三池  信君     中山 正暉君   渡辺 省一君     白川 勝彦君   新盛 辰雄君     島田 琢郎君   神田  厚君     玉置 一弥君   阿部 昭吾君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     小里 貞利君   臼井日出男君     石田 博英君   鴨田利太郎君     岸田 文武君   熊川 次男君     松野 幸泰君   白川 勝彦君     渡辺 省一君   中山 正暉君     三池  信君   島田 琢郎君     新盛 辰雄君   玉置 一弥君     神田  厚君   小杉  隆君     阿部 昭吾君     ───────────── 四月二十八日  食管制度拡充に関する請願外一件(阿部喜男紹介)(第三〇一一号)  同(五十嵐広三紹介)(第三〇一二号)  同(佐藤誼紹介)(第三〇一三号)  同(城地豊司紹介)(第三〇一四号)  同(阿部喜男紹介)(第三一二八号)  同(高田富之紹介)(第三一二九号)  同(武部文紹介)(第三一三〇号)  同(戸田菊雄紹介)(第三一三一号)  畜産経営の安定と拡充強化に関する請願下平正一紹介)(第三一三二号)  蚕糸業振興に関する請願下平正一紹介)(第三一三三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 四月二十八日  農業改良普及事業充実強化に関する陳情書(第二〇八号)  畜産酪農経営改善に関する陳情書(第二〇九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  酪農振興法の一部を改正する法律案内閣提出第四三号)  家畜改良増殖法の一部を改正する法律案内閣提出第五五号)  沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)  漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案内閣提出第五二号)      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出酪農振興法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。安井吉典君。
  3. 安井吉典

    安井委員 酪農振興法の一部改正というわけでありますが、酪農そのものをもっと問題点解決して振興していくというような形での発想はほとんどないように思います。ですから、この酪農現状農林水産省としてどう理解しているのか。やはり今度の改正の際にも、どうせ改正するのなら肉牛だけじゃなしに酪農そのものが抱えている問題点解決もこの際同時に考えていくべきじゃないか、こういう姿勢があってよかったと思うわけであります。そういう問題意識もあるいは対策もゼロだということについて、私は非常に問題だと思うのでありますが、その点どうですか。
  4. 石川弘

    石川(弘)政府委員 昨年来、酪農肉用牛といいました大家畜生産の今後のあり方につきまして、省内において鋭意検討を進めてきたわけでございまして、そのとき、先生も御指摘のございましたように酪農についても問題なしとしないということで、いろいろと酪農現状についても検討いたしました。  まず第一に酪農として問題になりますのは、どちらかといいますと大変生産伸びが高まってきた中で、需要がある程度落ち込んできた。そこで、生産需要の間のギャップができまして、御承知のような計画生産を余儀なくされたという時代が続いたわけでございますが、このようなどちらかといいますと非常に高く伸びてきました酪農生産を乳製品あるいは生乳需要に応じた計画的生産に移行するためには制度的に何か必要なのかどうかとか、あるいは酪農施設等につきましても、御承知のように酪農業自身合理化のスピードに比しましてどちらかというと乳業工場統廃合等がおくれているのではないか、そのために必要な統廃合を進めるための措置が必要ではないかというような、いろいろな論点につきまして私どもも内部で鋭意検討したわけでございます。  そういう中で、われわれのいまの時点での結論を申しますと、酪農関連のことにつきましては、問題点はいろいろあるわけでございますが、現状制度運用の中でまだこなすべきことが相当あるのではないか。たとえば、生産者生乳をいろいろと需給調整し、あるいは価格交渉するということ一つ考えましても、いまの指定生乳生産者団体制度自身が真に法律の期待しているところまで成熟しているかどうかとか、現行法の中でより改善すべき点が多いのではないかという結論に達しまして、どちらかというと酪農に比べまして制度的に立ちおくれておりました肉用牛生産のところに改正点を集中いたしまして、今回の改正案の御審議をお願いしているところでございます。もとより、私ども酪農に全く問題なしとしているわけではございませんので、現在の制度の中の運用といたしましても、できるだけのことをまず現行法の中でやりますと同時に、さらに現行法を超えるような問題点についてはなお検討を進めたいと思っております。
  5. 安井吉典

    安井委員 ですから、そういうようなお考えのもとで、どうせ改正するのなら問題点改正を一緒に進めるべきであったということ。そしてまた、一たん法律改正をやってしまえば、次に改正といったって、おっくうだというか、めんどうだというか、わりあいにしにくいものなのですよ、従来の経験から言って。来年の国会にまた酪振法の改正が出てくるということにはなかなかなりにくい、そういう経験的な言い方ができるわけです。  そういうような意味合いから、なるほど運用の問題で未解決のものもたくさんあります。それを進めることは当然なのですけれども、この際、制度論的に、立法論的に検討すべきものは同時に入れてほしかった、そういうふうに思うのです。したがって、いまの局長の御答弁からすれば、次の段階、たとえば来年なら来年、そう遠くない段階までに新しい状況が出てきたらその場合には法改正を行う、そういうような措置に当然出るべきだ、そういうお考えを持っておられるということだけは間違いないですね。
  6. 石川弘

    石川(弘)政府委員 法改正をいたします時期まで、いつのことかということを申し上げるにはまだ私ども大変準備不足でございますが、私ども現時点で特に市乳問題等中心にいたしまして行政的にやるべきことが大変多いと思っております。そのような点につきましては、御承知のように去年からことしにかけまして牛乳の生産流通に関します環境は大変改善されてきておりますので、この時期に極力そういう施策を集中し、かねがね懸案の市乳問題についてある程度の前進を得ました上でさらに今後の展開考えていきたいと思っております。
  7. 安井吉典

    安井委員 肉牛の問題を中心にして書かれている今度の改正案の中身について、若干伺っていきたいと思います。  自給率七〇%程度に維持していくのだという御答弁を昨日来繰り返されていたわけであります。そして、安定供給をするためには輸入枠だけは必要なのだという言明もございました。ただ、これは国内需要者の気持ちもあるし、価格の問題その他いろいろあると思いますけれども、本来肉牛をどんどん振興し、伸ばしていくという立場からすれば、輸入が少なくなって自給が高まっていくということが望ましいことではないかと思うわけであります。その点についてはどうお考えですか。
  8. 石川弘

    石川(弘)政府委員 国内にあります土地資源なり家畜資源みたいなものを極力活用いたしまして、国内供給できる限界を織り込んだ生産計画を立てているわけでございます。私どもも、消費者が受け入れがたいような経費をかけてまで生産するということにはいささかちゅうちょいたしますけれども農家方々合理化努力消費者に受け入れていただける限りのものを国内でつくっていく。そのために、あります資源をフルに活用するという意味で、長期計画の中でもできるだけの国内自給を確保する、そして需要伸びとの間で不足するものを輸入するということを基本的な考えとしてあの六十五年見通しをつくっておりまして、長期見通しでございますから、短期的なたとえば石油ショックの後の牛の数が減ったことによって供給が減った場合、あるいは最近ありましたように酪農の駄牛淘汰を進める過程で若干予定の供給量を上回って供給したりするようなことがございますが、ここ数年の動きは、いろいろな政策的努力をしながら、長期見通し考えております国内生産のボリュームをほぼ維持してきておる。  これからますます飼料基盤その他を整備しながらやってまいりますので、いろいろと努力は要りますが、極力国内ででき得るものをつくっていく、その場合に消費者の合意も得られるような合理的生産を伸ばすというのが基本的な考えでございます。
  9. 安井吉典

    安井委員 いずれにいたしましても、肉牛生産が抱えている問題は、自由化を要求してくるような国外からの圧力というのが問題として一つあるわけですね。しかし、与えられている土地条件その他の中で国内生産最大限度拡大していくことを目指していくべきであり、輸入というのは必要であることはわかるけれども、とにかくそちらの方を先に決めて国内自給の度合いは後から、輸入を決めてしまって足りない分を自給していくという考え方では、これは本末転倒になるわけです。その辺はいろいろな与えられた条件をどう考えていくかということと絡んでくるわけですから、一概には言えないけれども国内自給度拡大を先に置いていくのだという基本的な物の考え方だけはきちっとしておかなければならぬ、そう思うわけであります。  そこで、第四次酪農近代化計画の改定の問題が出てきているわけでありますが、この際、本来の酪農についての近代化計画の方は見直す必要がないのか。先ほどそのことを最初に議論したわけでありますけれども、実績と大体接近しているので見直しの必要はないというようなお話も聞いているわけでありますけれども、この際、全く見直さないのかという点をまず伺っておきたいと思います。  大臣、よろしいです。
  10. 石川弘

    石川(弘)政府委員 酪近計画につきましては、酪農推進の基本的な計画でございますので、私ども、第四次計画を制定以来、それの実行についていろいろと検討しているところでございます。  酪農オンリーの問題にいたしましては、私ども、非常に概括的に申し上げまして、現時点で大幅な見直しをしなければいけないような条件はないと思っております。ただ、やはり肉とも関連いたしまして、酪農の中からどのように肉用種の資源を出してくるかという問題がございますので、それとの絡みを考えまして、酪農サイドから完全に別途の見直し作業をするということではございませんけれども、どうせ新しくつくらなければならないということがございますので、特に肉牛生産との絡みにおきましては、やはり必要な検討はいたしたいと思っております。  細部につきましては、なおこれからの検討にゆだねたいと思っております。
  11. 安井吉典

    安井委員 そうしますと、肉牛計画のことを後で伺うわけでありますけれども、それの作成過程において酪農近代化計画についても若干の手直しがあり得る、そういうふうに受けとめてよろしいですか。
  12. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初から手直し考えてやるということではございませんが、再点検をいたすことでございますので、その過程において必要な見直しをしてみて、現状のままでよければいいわけでございますし、若干直した方がよりすぐれているということであれば、全く直さないということをいま決めているわけではございません。
  13. 安井吉典

    安井委員 肉牛についての近代化計画作成の基本的な考え方、それは法律の条文にも基本的指針ですか、そういうようなのがまず書かれているわけでありますが、そういう点についてどうお考えなのか。とりわけ、最も効率的な経営構造をいかにして確立するかという問題がありますね。その点についてのお考えも伺っておきたいと思います。
  14. 石川弘

    石川(弘)政府委員 現在、これはあくまで私ども検討事項でございますが、近代化基本方針の中で幾つかの項目で書いていこうと思っておりますが、まず基本的な指針といたしましては、酪農とか肉用牛生産位置づけをいたしまして、この位置づけの中では、米に次ぎます土地利用型農業の基軸として明確に位置づけをしていきたいと思っております。  それから国内供給の確保という観点から、合理的な生産によって国内供給を増大していくということを明確にしていきたいと思っております。  また、価格につきましては、比較的品質が似通っております乳用種につきまして、西欧の先進諸国と同水準程度のものを目標にしながら、それに順次接近をしていくという考え方を明らかにしたいと思っております。  さらに、効率的な経営構造の確立といたしまして、酪農地帯におきます哺育、育成等牛肉生産を取り込んだ乳肉複合経営育成、それからこれに連携しました地域内の肥育経営育成による地域一貫生産推進といったようなものもこういうところに掲げていきたいと思っております。  また、野草地等草資源に恵まれた地域での肉専用種繁殖経営育成なり安定的な規模拡大を図りますとともに、繁殖肥育までの一貫生産推進も掲げていきたいと思っております。  それから生産担い手育成生産性向上につきましては、技術あるいは経営能力にすぐれた中核的な担い手育成すること。それから飼料自給率向上すること。それから育成期間の短縮あるいは事故率の低下といった効率的生産を誘導すること。そのほかに、流通、加工の合理化問題とか、あるいは技術革新といたしまして、牛群改良とか、受精卵移植技術実用化とか、粗飼料生産利用技術、そういったようなものもこの基本方針の中に掲げていくつもりでございます。
  15. 安井吉典

    安井委員 いつまでに国段階都道府県段階市町村段階、その計画をつくっていくつもりなのか、そのめどですね。畜産審議会意見聴取というのもあるのだろうと思いますが、そういうのも含めてスケジュールをちょっと伺いたい。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 この法律を施行いたしましてから六カ月以内ということで、まずことしの年末ぐらいまでに国はその基本方針等をつくっていきたいと思いますが、そういうことと同時並行的に県にもいろいろ作業をお願いいたしまして、年度内くらいに県計画がつくられるように進めたいと思います。  市町村計画は、その県計画整合性を保ちながらつくっていただくわけでございますので、若干ずつずれてまいると思いますが、その県計画がつくられた後、市町村がいろいろと自分の市町村内での意見をまとめられて、県との調整を経てつくっていただくわけでございますので、これに引き続いた形でつくっていただけることになろうかと思います。
  17. 安井吉典

    安井委員 肉牛生産目標は、できるだけ高いことが望ましいけれども、実行可能でなければならぬわけですね。そういうこともあるわけなんですが、農政審の六十五年目標が、現在の二百万頭を約倍にしていく、それから乳雄は一戸当たり百頭ぐらいにして、EC並みコスト引き下げだとかいうことだったように思うのです。それに伴って乳牛がふえていくのかどうか、そういう絡みもあると思うわけですが、その見通しとか過程についてどうですか。
  18. 石川弘

    石川(弘)政府委員 六十五年見通しを策定いたしました段階では、いま御指摘のように五十三年度で肉用牛飼養頭数が二百三万頭でありましたものが、六十五年では三百九十二万頭ということを一応頭に置いて計画が策定されております。そのうち、肉専用種につきましては百四十六万頭でありましたものが二百四十五万頭に、それから乳用種につきましては五十七万頭でありますものが百四十七万頭にふえるというのが一応の当時の計画でございます。  現在の姿を見ますと、この水準を若干下回った時期もございますし、時期によっては若干上回ったこともあるわけでございますが、この六十五年見通しまで伸ばしますためにはかなりの政策的努力を伴わなければならないと思っております。
  19. 安井吉典

    安井委員 それに伴う政策的努力はするおつもりなんですね。
  20. 石川弘

    石川(弘)政府委員 長期見通しはあくまで一つの行政的な見通しでございましたけれども、さらに今回の制度改正をお願いいたしまして、全体としての肉用牛生産振興見通しをつくるとか、あるいはこれをさらに県とか市町村にまでおろしながらやるということでより具体的な目標をつくるわけでございますので、それに従って事柄が実行できるような政策的な支援はしなければならないと思っております。
  21. 安井吉典

    安井委員 価格政策の問題について若干伺います。  日本の場合は、アメリカあるいはオーストラリア、ECと比べてもそうなんですけれども土地制約のため割り高になるのは、これは当然であります。しかし一方、消費者の方のできるだけ安いものを食べたいという要求、これも当然ではないかと思います。そういうような中で、EC並み価格というのを政策課題として政府は設定しているのではないかとも思います。  そういうような中で、ことしはとうとう据え置きの決定が三月の末になされてしまっています。価格の方をどうおさめるにしても、コスト引き下げがいずれにしても緊急的な課題になっていくことだけは間違いありません。そのためには、飼料の草による自給度を高めていくとか、肥育期間適正化というような問題も出てくるのではないかと思いますが、このコスト引き下げの問題について積極的なお考えはお持ちなんですか。
  22. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま御指摘のありましたように、消費者の納得を得ながら国内生産を伸ばしていきますためには、どちらかといいますと、やはり価格で刺激をするという手法をとりがたいわけでございます。したがいまして、私どもとすれば、生産者方々経営改善努力の中で、価格は上げなくても農家の手取りとしてはふえていくという手法によりながら国内生産を増強する必要があろうと思っております。  いまも御指摘がありましたように、畜産物価格、特に牛肉価格につきましては、現在の畜安法に基づきまして、安定価格帯の中で生産者も安定的に生産でき、消費者もその利益を享受するという手法になっております。あの考え方は、御承知のように需給実勢方式と申しておりまして、現に市場で成立いたしております実勢価格中心にしまして、農業生産者生産費あるいはコストの変化というものを見てやるわけでございますが、ここ数年の動きは、先生承知のとおり、経営改善、これは飼養規模拡大といった問題もございますし、いまおっしゃいましたようないろいろな生産関係の諸合理化というようなこともございまして、市場実勢も余り大きく変動をしない。それから、幸いに資材費等につきましても大きな変動がございませんで、むしろ資材費が若干ふえましても合理化要素によって打ち消されるということで、実勢価格自身が安定的に推移したわけでございます。そこで、世の中のいろいろな諸物価が若干上がる中で、牛肉価格が比較的安定していたということもございまして、消費も堅調にいったというのが現在の姿だろうと思います。  私ども、今後の国内牛肉価格政策考えましたときに、この数年行われましたような、ある意味では順調なと申しますか、非常に望ましいような展開が長く続けば続くほど、いま目指しておりますEC等との価格の格差は縮まりますし、また、消費者の方にも牛肉価格のいわば割り安感と申しますか、諸物価が動く中で牛肉だけは価格が余り変わらないということで消費伸びると思っておりますので、いま先生指摘のとおり、コストを下げるような手法政策中心を置くべきものだと考えております。  その手法といたしましては、現在もそのように動いておりますけれども、やはり何と申しましても飼養規模拡大するという経営規模拡大でございまして、このことによって労働時間等の減少はかなり大きいものになろうかと思います。  それからもう一つは、これも先生指摘のように、飼料の中で粗飼料供給を多くする、飼料自給率を上げるということでございます。現在比較的順調に伸びました乳用種肥育最大の弱点は、この飼料基盤が弱く、購入飼料比率が高いということでございますので、これも基盤整備とかあるいは粗飼料を有効利用するという形で、粗飼料自給率を上げていくことがその次に必要かと思います。  それからもう一つは、経営技術あるいは生産技術、そういう点で申しますと、一つは、やはり家畜改良ということを通じまして、いわば一日当たりの平均的な体重増加量をふやしていくとか、同じ一キロの牛肉をつくるにしましても、より少ないえさで飼えるような形にしていくとか、それから、これもいま御指摘のありましたように、出荷月齢が残念ながらだんだん延びてきておりまして、いま、たとえば乳用種で言いますと二十一カ月程度のものを、われわれが合理的と考えております十七カ月程度に縮めていくとか、それは当然のことといたしまして、現在六百数十キロになっております出荷体重を六百キロ台ぐらいにまで抑え込んでいく。このことは、単に生産者努力だけではなかなか問題でございまして、流通させます側にも協力が必要でございますし、さらには、消費者についても御協力をお願いしなければいけませんが、いま申しましたようないわば産肉経済性向上といったことがその一つでございます。  それからもう一つは、特に乳雄肥育につきまして、御承知のようにスモールの段階肥育サイドに渡しますために、実は乳の雌との間で一五%程度事故率が違うわけでございますが、この事故率を低下させますために、乳肉複合経営とかあるいは衛生条件整備というようなことを通じまして、要するに事故を少なくして、より多くの産子生産物に回していく。  以上のようなことを丁寧にやっていく必要があろうかと思いますが、これらのことは、数字で見ましてもかなりの経済効果を上げ得るはずでございますので、そういうことから極力価格を抑制的にしながら、かつ農家の収入を減らさないという手法でがんばっていきたいと思っております。
  23. 安井吉典

    安井委員 まだ融資制度の問題等もありますが、後回しにいたしまして、大臣がいまお戻りでございますから、ちょうどいま牛肉の問題を含めた日米専門家協議がアメリカで行われている段階でありますので、そのことも同じ関連の問題としてお聞きをしてまいりたいと思います。  子牛の価格が低落をし始めました。これは、ちょうど農林水産大臣が総理と会って話をされたり、あるいはまた農林省側の考え方として、貿易の自由化はしないけれども枠の拡大には踏み切らざるを得ないというような方向で今度の日米交渉に臨むのだ、こういう報道がなされたことが大きな原因になっているのではなかろうかと思います。もちろん、そのほかにも子牛の価格の低落の原因はいわば複合的原因という形であるのではないかと思いますけれども、やはりこの自由化問題で新しく牛を飼おうというような意欲に減退を来しているということは間違いないと思います。このことはアマナツカンの問題についても言えるわけです。それぐらいいま行われつつあるアメリカとの交渉の問題が日本農業にとって重要な位置づけになっているわけであります。きょうまた引き続いてやっておるはずですが、きのうの話し合い、それからきょうの、現在アメリカ時間はどうなっているのですかね、一番新しい情勢についてまず報告してください。
  24. 金子岩三

    ○金子国務大臣 昨日電話がありましたが、私は聞いていません。官房長が聞いておるのですが、私に伝えられるところでは、非常に厳しい、予想外に厳しいということで、中身は何も触れてないようでございます。  詳しくお聞きになりたいならば、官房長にひとつお答えをさせます。
  25. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  二十六日の会議では、お互い基本的な立場あるいは需給状況等について相当厳しい応酬があったように伺っております。ただ、二十七日の会議につきましては、夜までワーキンググループの会議があったと聞いておりまして、ちょうど日本時間で先ほどぐらいにほぼ終了したかと思いますが、まだ電話その他の連絡を受けておりません。間もなく報告が来るかと思っております。
  26. 安井吉典

    安井委員 向こうの状況ですから、会議が終わったという段階で、中身がわからないままでも質問をやらなければならぬというちょっと妙なかっこうになるわけでありますけれども、今度の交渉に臨む場合における日本側の態度というのは、新聞等が伝えているところでは、自由化はもちろん拒否する。いつから自由化への日程を始めるかという、その設定についてももちろん反対する。しかし、枠の拡大については弾力的に対応していく。そしてその数字はこうだ。これは農水省が発表したものかどうか知りませんけれども、新聞は各紙とも書いておりました。ですから、きのうもここでやりとりがなされていたわけでありますが、農林大臣は、就任当初は、自由化はもちろん、枠の拡大にも絶対反対というふうに受けとめられる大変強い抵抗姿勢を表明していたのが、だんだんいわゆる自由化をきちっと抑えるためには枠の拡大は仕方がないんじゃないかというようなことになって、それが現実にいまの日米交渉の中であらわれてきているのではないか、われわれはそう受けとめざるを得ないわけであります。  今度の日米協議に佐野経済局長をおやりになったときにお与えになった指針ですか、それはどうなのか、新聞に伝えられているとおりなのか、その点をちょっと伺います。
  27. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私の姿勢がずっと日にちがたつに従って軟化しておるようなことをいろいろ御心配されているようでございますが、私はただ話を詳しくするようになっただけで、軟化はしてないのです。いままではごく率直に、自由化はもちろん、枠の拡大も必要はない、それだけ言っておったのですけれども、いろいろ御心配になってお尋ねをされますから、もう少し詳しく私の考え方を申し上げた方がいいと思って、最近は詳しく申し上げたわけですね。  それは、日本の牛肉自給率は七〇%になっております。したがって、三〇%は現在輸入をやっておるわけですね。かいつまんで言うなら、豪州から十万トン、アメリカから高級牛肉三万トン、こういうふうになっている。これだけでは足りないわけですね、日本の牛肉は。もっと肉の生産を高めて需要に応ずるだけの生産伸びが均衡がとれていかなければ、やはり長期的にいまの十三万トンでは足りなくなるわけですよ。そこで、生産がうんと伸びてくれば、あるいは十万トンの輸入で抑えることができる時期も来るかもしれません。したがって、食用肉を大いにひとつ増産して、自給率を高めるために大いに力を入れるべきだなという考え方でいまの法案も提案しておるわけでございます。  そこで、枠の拡大もいまのところ必要はないというのは、現在の輸入枠で不足しているということは私は聞いていないのですから、不足しないものを枠を拡大してふやす必要はないではないか。要らないものまでおつき合いで買い込んで冷蔵庫に保管する必要はない。それは私の基本的な考え方です。それを強調しておるわけでありまして、決して私が軟化してきて、アメリカに少し弱音を佐野さんが言っておるというようなことはないと思います。  私が佐野さんの行くときにどういうあれでやったかといまお尋ねでしたが、僕は何ら数字的なものは見ない。僕は見る必要はない。向こうに行って、向こうがどういうことを言うのか、それは協議をしてみなければわからぬので、出かけるからといって数字は聞かない。数字を僕に説明するということになると、何となくそれが漏れる。漏れて日本の新聞にそれが書かれると、すぐその日にもアメリカにそれが行ってしまって交渉に非常に不利になる。おまえだけの腹で行け、こういうことを言い渡してやった。あわてずに、日程をきょうとあしたやって、あしたの二十九日に帰ってこられるのですが、そんな日程を決める必要もないじゃないか、十日でも十五日でも滞在して、粘って交渉、協議してきなさい、こういう言い方をしてやっておるわけです。  それで、私がこの姿勢でおることが大分アメリカには強く響いておるようでございます。ところが、やはりお互いが、アメリカはアメリカの国益、農民を守ろうとして言っておることですし、日本の担当大臣の私は日本の国益を守り、日本の農民に被害を与えないように、犠牲を強いられないようにする。それは昨年四月のこの委員会の決議もあるわけですから。十二月の申し入れもあります。私はそれを尊重して、それ以上輸入枠をふやして日本の農家に被害を与える、犠牲を強いることはしない、こういう基本的な姿勢で佐野君にも十分話をしてやっております。数字のことは全然こちらでは言うておりません。  そういうことですから、やはり私だけでも最後まで強い姿勢でおることが国益を守ることじゃないでしょうか。そう私は思ってこの姿勢を貫いておるわけでございます。その点をよく御理解をいただいて、せっかくいま話し合い中ですから、余りこれ以上議論せぬ方がいいと思います。
  28. 安井吉典

    安井委員 いまのお考えどおりならいいのですけれども、後になって、もっと詳しく言いますと、ということで、たとえば枠の拡大は当面しませんといまおっしゃいましたけれども、もっと正確に言うと来年の四月以降なら別です、そういうふうに詳しく内容が出てくるたびにどんどん実質的に変わってしまうということでは私たちは困るわけです。そうしてまた、大臣は数字は知らぬとおっしゃるけれども、現実の交渉の中では数字がぼろぼろ出ていたのかもしれません。これはわかりません。あるいは出ていなかったのかもしれません。それはわかりませんけれども、ただ、そういうような御答弁だけで私ども引き下がるわけにはいかぬわけであります。  さっき枠拡大は当面は必要ないと言われたのは、当面というのはいつまでなのか。来年の四月以降も絶対やりませんという意味なんですか。そうじゃないのでしょう。そうなんですか。その辺、はっきりしてください。
  29. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私のいまのところ枠拡大の必要はないというのは、先ほどから申し上げておりますように、輸入牛肉が十三万トンでいま足りておるわけですね。これが、うんと需要伸びたり、日本が何か生産に異常状態があって生産が落ちたりして、もうちょっとふやさなければ足りないというような事態が発生しない限りは、この枠を大きく広げる必要はない、これはたてまえ論じゃなくて本当のことを私は申し上げておるわけですよ。  そこで、来年四月以降どうなるかということは、交渉事ですから、アメリカとあらゆる関連のものを引き合いに出して交渉する場合、何かそこに色がついたりしてくるというと皆さんにやはり申し開きができませんから、用心して、そして来年四月以降のことははっきり言わないわけですよ。私は、ふやす必要はない、こう思っている。足りないということはいまのところないわけですよ。どうぞひとつ……。
  30. 安井吉典

    安井委員 用心して言われないというだけでは、やはり私どもも、もう少し用心した気持ちをこちらの方も持たざるを得ないわけであります。自由化の時期を明示せよという向こうの要求があるのだろうと思いますけれども、そしてそれがまた一つの大きな焦点になっていることも間違いないと思いますが、それを拒否しながら、弾力的に譲歩案を少しずつ出していく、そういう考え政府がいるのだ、こういう報道もあるわけです。拒否はしますと言いながら、拒否したら向こうの方が怒るから、それじゃというので少しずつ小出しにやっていく、そういうような弾力的な譲歩案の提出という考え方だという新聞の報道は誤りなんでしょうか。そういうことはないのでしょうか。
  31. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私も、今日までのこの問題の経過をいろいろ考えてみますと、段階的にずっと枠をふやしていって、やがては、いつの日にか自由化をというねらいで、アメリカさんは今日までの、来年三月までの取り決めをしておるわけですね。今度もその続きで、いま自由化ができないならば、やはり枠を少し拡大して、そしていつの日にか、こういうことを向こうさんは言っておると思いますよ。  しかし、私どもは、いつの日か、そんなことを考える必要はない。自由化はもうこんりんざいまかりならぬ。永遠に自由化はまかりならぬ。自由化をもし認めることになったら、いわゆる日本の畜産酪農業界は崩壊しますよ。生産意欲はもう恐らく減退してしまうんじゃないでしょうか。したがって、私は、永遠に自由化は認めないという基本姿勢でいきますということをはっきり申し上げておきます。
  32. 安井吉典

    安井委員 いや、私が弾力的にと言うのは、自由化を弾力的にという意味じゃないですよ。そういうのは言葉が大体おかしいですから。つまり、枠の拡大を弾力的に出していくという考え方なのではないかというのですよ。枠の拡大も永遠にしないのですか。
  33. 金子岩三

    ○金子国務大臣 それは、私は先ほどから申し上げておりますとうり、いまの輸入量で事足りておるから枠を広げる必要はない、こう私は言っておるわけですね。そこで、何か日本の生産に異変があったり、あるいは需要が非常に大きく予想外に伸びて、年間十三万トンでは足りない、もう一万トンはやはりよけい輸入しなければいかぬということであれば、あるいはその分だけはふやす場合があるんじゃないでしょうか。それはやはり肉は足りないんだということになると、価格が暴騰するだろうし、国民に不安を与えることなんですから、必要なものは輸入をして、皆さんに不安を与えないようにする。その必要なものが来年四月以降どうなるかということは見当つかないから、私は、枠をいま広げるということは言うべきではない、このように考えておるわけですよ。
  34. 安井吉典

    安井委員 新聞の報道によりますと、政府の譲歩、妥協案、これは自民党とも合意した案だというような伝わり方をしておりますね。それは、一九八四年度から東京ラウンドの農産物合意の終わる八七年度までの四年間に枠を拡大していく。高級牛肉、オレンジ、オレンジジュース、グレープフルーツジュースの四品目、それからもう一つはトマトケチャップや落花生等の六品目、それぞれについて数字を書いていますね。農林省筋から出ている数字だと言って報道していますね。  大臣が口をきわめていまそう言われている一方に、こういう報道がどんどん出ているわけですよ。ですから、この報道がうそなんですか。それとも、お話はお話だけれども、腹の中にはそんなものもあるんだということなんでしょうか。どうなんですか。
  35. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私は、腹の中と腹の外と違ったことを言ったり考えたりする人間じゃないですよ。それは全く私は知らない。したがって、その新聞を翌朝見て、官房長を呼びつけて、ここにおりますから、やかましくとっちめた。官房長も、実際省内でも、もし数字を持っていくとするならだれも聞かない方がいい、見ない方がいいということを指導しておるわけですから、それを見た者は大臣の言うことを聞かぬのですから、処分しますよ。したがって、私は、農林省の中からあれは漏れてないと思います。みんな推測記事じゃないでしょうか。これは、各紙が一生懸命しのぎを削って推測をしておるから、そのうち少し当たるものが出てくるかもしれぬ。ところが、私の方は、数字については省内では全然触れてない。だれもそれを見たり知ったりすることはできない、こう言っておるわけですから、その点はひとつ御信頼をいただきたいと思います。
  36. 安井吉典

    安井委員 官房長、どうなんですか。いま本人の経済局長がいないものですから、よくわからないんだが。
  37. 角道謙一

    角道政府委員 私どもは、交渉に当たるに際しましては大臣からも厳しい訓令をいただいておりますし、また、与党あるいは関係団体の強い意向も承知しております。そういう態度で現在交渉に臨んでおるわけでございますし、この交渉に先立ちまして、日本側がどう考えているかというようなことを私ども外に言うわけはないわけでございまして、新聞等におきましてもある意味ではいろいろな推測で記事を書かれておると思います。そういう意味では、私どもむしろ非常に不利益といいますか、非常に迷惑を受けておる方でございますが、新聞報道につきましては、そういう意味で私ども一切責任を持つわけにはまいらぬと思っております。
  38. 安井吉典

    安井委員 農林水産大臣は、この問題は首相レベルには持ち込まない、私の責任で処理します、こう言われたと、これも新聞の報道です。これも新聞の推測記事かどうか知りませんけれども。  ただ、サミットが近づきつつあるわけですね。それだけに、サミットにおいてやはり日米間の大きな問題が未解決のまま行ってしまっては困る、その前に何らかの決着をつけて行かなければならぬというような中曽根首相の気持ちもあると思いますね。そういうようなのが農林水産大臣に伝わって、それでこういうような発言にもなっているのではないかと思うのですけれども、サミットと日本の農民の利益とは違う問題ですからね。何か譲歩をして、アメリカの方が少しいい気持ちになって中曽根首相が行ったら、それは総理大臣そのものはいいかもしれませんけれども、それでは日本の農民は困りますよ。ですから、サミットでわが国の総理大臣がいい顔になるということと日本の農民の利益をてんびんにするわけにはいきません。その点、大臣のお気持ちを明確に伺っておきます。
  39. 金子岩三

    ○金子国務大臣 それは、昨日ですか、頭越しで片をつけられていくのじゃないかというようなことを大変心配して参議院の方でもお尋ねになっておったようでございます。しかし、私は、少なくとも担当大臣が了解しないものを上の方で、官邸の方でさっさと決めてしまうようなことはありません。そうして、いまのサミットとの関係も、あるいは総理になってみますと、やはり懸案ですから、懸案は片をつけて、そして新しい段階に入ってレーガンさんと話をしたい、それはそういう希望と意欲を持つことは私は当然だろうと思いますね。できることならそうして差し上げたいけれども、サミットがあるからといって焦って交渉をすることは、これは不利だ。交渉事だから落ちついてやりなさい。サミットや選挙を考える必要はない、こういうのが私の基本的な姿勢です。  これは先ほどから申し上げておるとおり、私はそんな芸当のうまい人間じゃないのですから。さっき言うた腹の内と外を使い分けしたりするような芸は持たぬわけです、不器用な人間ですから。それは安井先生が同期の桜で二十五年、私をよく知ってくれておる。私のやっておることは正真正銘の真心で取り組んでおる話ですから、余り憶測をしないようにお願いいたします。
  40. 安井吉典

    安井委員 憶測はしているわけじゃないのですけれども、ただ、大臣が知らないうちに何もかもみんな決まってしまっているということではこれは困りますから、私は、大臣のためを思って言っているわけです。憶測ではありません。  貿易の自由化という問題については、どちらの党の中にも、都市中心から出ている人の意見とか農村の関係の意見とか、いろいろ意見の対立があります。これはもうどこの党でも同じようにあるようでありますし、われわれの党の中にも、そういう党内での論議の過程ではいろいろ意見の対立はありますけれども、しかし、あくまで今日の段階自由化反対をしっかり守っていくということが国民経済全体の中で大事な問題だ、そういう観点に立って、そしてまた消費者団体の中からも、たとえば消費者の生協がこれも自由化反対を決めましたよね。そういうような立場もあるわけですから、われわれは全体的な立場で方向をきちっと決めて、自由化反対特別委員会という、私が委員長ですけれども、そういうのを党がつくり、大会できちっと反対の決定もしているわけです。ですから、たまたま落ちこぼれて別な意見が出たりする場合もあるいはあるかもしれませんけれども、それは党の中できちっと決着をつけていきます。(「できるかな」と呼ぶ者あり)それはもう明確にしております。その辺は、自民党よりももっと私どもの方がはっきりしていますから。  そういう事態をひとつ明確にしつつ、この問題について、私は、大臣を激励する意味できょうはあるいは裏返しの質問をしたかもしれませんけれども、あくまで日本の農民を守っていく。それはもう農民の票が欲しいからやっているわけじゃないですよ。そんなさもしい考えで、ここにそんな人がいるのですかね。そうじゃなしに、日本経済全体の中からの利益でわれわれの主張があるわけですから、そのことをひとつ明確にしておかなければならないと思うわけでありますが、ひとつ最後に、大臣の、先ほどから御決意を大分何度も伺ったわけですけれども、最後の最後の御決意をひとつ伺います。
  41. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私は、やはり国会で、いま佐野さんが向こうで協議をしておるさなかですから、大いに議論をして大臣を突き上げた方が賢明と思うわけですよ。私は、どんなに大いに突き上げられても、突き上げられるのが国益だと思って喜んで答弁をしておるわけですから、大変御激励をいただき、ありがとうございました。  やはり日本の国会には相当強い野党勢力があって、大臣が突き上げられて毎日困っておる、したがって、この強い姿勢は崩れない、こういう認識をアメリカにさせなければいかぬ。それが、はい、はい、はいと言って何もかもスムーズにいきよったら、それこそ赤子の手をひねられるようにアメリカからひねられてしまう。私の考え方は始終そういう考え方です。極端に言うならば、池田総理がアメリカへ行って帰ってきたときに私は述懐したことがある。日本に強い社会党がおるから日本は救われておる。こういう時代があった。かつて、二十年前の話ですよ。そういうことで、やはり日本が今日まで外国から、特にアメリカからなめられないように持ってきたのは野党のおかげなんですよ。野党の中の社会党ですよ。  そういうことで、私どもは皆さん方の御提言なり御意見は、やはり大事な御鞭撻を受けておるという考え方で絶えず真剣に受けとめてお話を聞いておるのですから、国益のために議論は大いにひとつやっていただきたい。議論することも一つの国益ですから。さっき申し上げたとおりです。  どうもありがとうございました。(拍手)
  42. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  43. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出家畜改良増殖法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  44. 島田琢郎

    島田委員 ちょっと官房長、いてくれませんか。おられますね。  家畜改良増殖法改正案の質疑に入るわけでありますが、その前に、昨日からけさにかけまして東北地方で大変火災が発生をいたしました。まだ火災によります被害の実態はつまびらかになっているわけではありませんが、本日のテレビの報道によりますと、相当の被害が山林火災において起こり、それが集落にも延焼いたしまして大変大きな災害が起こっているという実態にございます。とりわけ山火事によりますものでありますだけに、この災害の対策はきわめて緊急を要するのではないか、このように思います。  まだ対策そのものが現に方向づけされているわけではないと思いますが、しかし、この災害に当たりましての農林省の、特に山の関係が多うございますから、ひとつぜひ万全を期していただきたいという気持ちを持ちながら、大臣のこれに対応するお考えを聞かしていただきたい。  きょうはちょっと林野庁がおりませんので、官房長にかわっていただいておりますが、一言この点に触れて伺っておきたい、こう思います。
  45. 角道謙一

    角道政府委員 昨日発生いたしました林野火災につきましては、まだ詳細な被害状況はつかんでおりませんが、けさ七時現在で私ども承知しておりますのは、関係県が約六県、市町村が二十六、焼損面積が約七千五百九十一ヘクタールというように聞いております。各県別には、青森県で約七百三十八ヘクタール、岩手県が五千四百十四ヘクタール、宮城県が千二百九十四ヘクタール、秋田県二十ヘクタール、福島県五十五ヘクタール、石川県七十ヘクタール、合計いたしまして七千五百九十一ヘクタール。  これは各所で同時多発をしております関係で、対策につきましては非常にむずかしいと考えておりますが、現在自衛隊あるいは警察、消防署等でこの消火に努めている最中でございます。林野庁からもけさ担当官を現地に二名派遣をいたしております。現地営林局、営林署に対策本部のようなものを設けておりますし、また、私ども地方農政局とも連絡をとりまして、まず当面は消火あるいは被害者の対策でございますが、この後の造林、復旧等につきましても万全の手当てをしたいと考えております。
  46. 島田琢郎

    島田委員 この際、災害の今後の取りまとめや対応策等について、随時ひとつわれわれにも報告をいただけるようにお願いしたい。これは、委員長にお願い申し上げておきたいと思います。ぜひ万全の対策をとっていただきますようにお願いをしておきたいと思います。  さて、本案につきまして関連する問題も幾つかございますし、すでに審議が終えました酪振法の改正の問題も私なりに意見がございますので、意見を述べさせていただく中から政府側としてひとつお考えがあればお尋ねをしてまいりたい、こういう進め方でお願いを申し上げたいと思います。  まず、ことしの乳価や畜産物の価格を決めた段階で、要求価格を大幅に削られている結果に相なりまして、あるいはまた諸対策におきましてまだ十全の方向性が必ずしも立っているわけではないわけでありますが、この際、関連する対策等も含めまして若干お尋ねをしておきたい、こう思うのであります。  乳価の要求九十九円六十八銭がきわめて内輪な要求であったにもかかわらず、これがわずか七十銭という、まさに据え置き同然、微調整に終わったという点について、われわれは生産者を含めて失望を隠し得ないでいるところであります。したがいまして、今後の酪農あるいは畜産の振興に当たって、私は、さらに重厚な措置がないと、負債整理の問題を含めて畜産酪農家の経営が大変困難な状態にさらに落ち込んでいくのではないか、こういう懸念があるわけであります。したがいまして、せっかく今回関連対策として幾つかの項目を新たに盛り込まれたものも含めて出てまいりました。金額も二百億を超えるという状態であります。これらの具体的な要綱とかあるいは推進策というものは、すでに部内において検討がなされていると思うのでありますが、先般農林省畜産局からいただきました資料によってひとつお尋ねをしていきたいと思うのであります。  まず肉用牛対策の面で、新たに肉用子牛価格の安定対策として三十七億という金額をつけて、特に安定基金制度の問題をさらに重厚にやっていくんだ、こういう説明をいただいているわけでありますが、もう少し中身についてお尋ねをしたいと思いますので、御説明を賜りたいと思います。
  47. 石川弘

    石川(弘)政府委員 価格決定時に関連しまして幾つかの対策を決定をいたしておりますが、今回の価格関連対策といたしましては、御審議をいただいております今回の法改正の基本的な考え方に従いまして、これが有効に活用できるように、特に肉用牛対策を中心にしまして、極力簡素にしてかつ強力なものをということで考えております。  いま御指摘の肉用子牛の価格安定対策でございますが、これは、現在都道府県の基金協会が子牛の低落に対応しまして交付金を交付をいたしておりますが、これがその交付準備金に不足を生じました場合に、これも今回の法改正でお願いをいたしております肉用子牛価格安定基金全国協会が低利融資をしますための準備財産の拡充をする必要がございます。現在約七億円程度の積み立てでございますが、これでは不足を生じました場合に十分ではないということで、約三十七億円をこれに加えまして、総額四十四億円という原資にするつもりでございます。  もちろん単に資金を積み立てるだけではございませんで、今回は特にこの融資が県の協会にとって負担にならないように、現在この全国協会から金を借ります場合は、非常に低金利ではございますが、二・五%の金利が要りますことと、ほぼ四年ぐらいの期間に返済をしなければならないことになっておりますが、今回この基金を大幅に増資をいたします機会に、大変例外的ではございますが、無利子というぐあいに金利をとらないことと、それから償還につきましても四年据え置き八年償還という有利条件を付しまして、これによりまして、県協会が交付準備金が不足して、これはいずれ国、県それから生産者によってまたこの基金を積み立てるわけでございますが、この積み立てます間の原資をこの低利と申しますか、無利子資金で賄う。本法を改正していただきました暁には、この資金を有効に活用したいと思っております。
  48. 島田琢郎

    島田委員 実態的にはどうなっているのでしょうか。また、見込みといいますか、酪振法の改正との関連で言えば、見通しをどういうように持っておられるのですか。
  49. 石川弘

    石川(弘)政府委員 各県の積み立て状況を勘案いたしますと、非常に少数な県以外はまだ自分の県の資産を食いつぶすという状況ではございませんが、二、三の県におきましてもう少し子牛の低迷が続きますと原資に不足をするということが予想されますので、私ども、極力早くこの資金は全国協会に出していきたいと思っております。
  50. 島田琢郎

    島田委員 ちょっと私の尋ね方が悪かったかもしれません。  子牛の価格が下がった、それは各県によって違うのか。あるいは全国一本なのか。どこがこのボーダーラインで、それを下回った線というのはどこまでなのか。そこら辺、どこで子牛の価格保証をするのか。その辺の具体的な問題は今度の法案の中で明らかになっていくのだろうと思いますが、その見通しを伺ったのであります。
  51. 石川弘

    石川(弘)政府委員 現在は平均的に二十九万二千円というのが価格保証の水準でございまして、これを下回りました場合、下回りました額とその二十九万二千円との間の九割を補てんをするという制度でございます。  現在、残念ながらかなり多くの県でこの基準を下回っておりまして、前四半期に続きまして今四半期においても相当の支払いが行われているわけでございます。
  52. 島田琢郎

    島田委員 いまのお話は和牛ですね。乳の場合はどういう形になっていきますか。それとも、これからどういうふうにそれを取り上げていこうとしておられるのか。
  53. 石川弘

    石川(弘)政府委員 乳雄は十三万四千円が保証基準でございますが、去年ちょっと下回りました時期がございましたが、その後その水準を下回っておりませんので、乳雄については補てんの必要はなかろうかと思っております。
  54. 島田琢郎

    島田委員 さらに、昨年に引き続いて肉用子牛の生産奨励措置、これに四十七億を予算づけいたしまして関連対策を進めていこう、こういうお考えのようであります。これは従来と中身が大きく変わるものではないというふうに説明を受けておりますが、言ってみればもう少し一頭当たりの単価を上げてもいいのではないかというふうに私は考えているわけでありますが、この点はいかがですか。
  55. 石川弘

    石川(弘)政府委員 この子牛の生産奨励措置につきましては、御承知のように一時期肉用子牛の生産がなかなか拡大傾向になかったということもございまして、かつて一定価格という、価格水準と無関係に、要するに子牛一頭幾らというような形で生産奨励をしたわけでございますが、いわば財政効率というようなことから、たとえば生産が縮小している方にもお金がいくというような批判もあったり、いろいろございました。  私どもは、現在のこの肉用子牛の生産奨励につきましては、一つは、先ほど申しましたように、どうも昨年の四月以降この基準を下回っておるわけでございまして、基本的には九割補てんをするわけでございますが、生産者の気持ちといたしましては、せっかく手塩にかけましたものの手取りが十分じゃないという不満感もございます。そこで、五十八年度のこの生産措置運用につきましては、子牛価格が三十万を下回った場合に子牛一頭当たり、これは規模のいかんを問わず、頭数のいかんを問わず一万円を交付する。ただし、これがもし三十万を超えまして、十分それで農家として満足できる状態になればことさらに一万円を継ぎ足す必要はないという意味で、三十万を下回った場合の全面的交付というのが一つでございます。  もう一つは、やはり私どもはこの種の生産奨励というのはある程度政策的な誘導に乗ってくださる方に交付すべきだと考えておりまして、新たに繁殖雌牛の規模拡大をなさった方から生まれた子牛、たとえばいままで五頭飼っていらっしゃった方が七頭とか、あるいはこれは一頭ふえてもいいのですが、その頭数をふやしてくださった方から生まれた子牛につきましては、この三十万を下回った場合の一万とは別の形で一頭当たり一万円の交付をするということで、この生産奨励につきましても一種の政策的な方向づけといいますか、多頭飼育をして極力経営合理化なさる方に生産を奨励する。  この二つの事業が行えますように、所要額で約四十七億円を準備をいたしているわけでございます。
  56. 島田琢郎

    島田委員 というと、いまの新たに繁殖牝牛の子牛助成を行うということになりますと、いままでやってきたのとダブってもいいということになりますか。
  57. 石川弘

    石川(弘)政府委員 三十万を下回った場合の一万円と、それから増頭によっての一万円という意味なら、この三十万を下回った状態のもとでたとえば増頭なさった方の子牛については、結果的にダブって二万円が出るということでございます。
  58. 島田琢郎

    島田委員 私は単価一万円、もう少し上げてもいいじゃないかというお話をいたしましたが、子牛価格の値の動きを見ていますと、かなり幅が大きく振れる場合がありますね。十万円なんて下がったりすることがあります。そうすると、三十万円を下がったら、一万円下がったら一万円やるというのならこれはちょうどカバーできますけれども、一ころのように十万円も下がったなんというようなときは、一万円くらいもらったってどうしようもない。ですから、少し段階的にやるという方法も一つ手法として加えていいのではないかなという感じを私は待っておるのでありますが、こういう改善策なんというのはお考えの中にはないわけですか。
  59. 石川弘

    石川(弘)政府委員 たとえば二十九万二千円から、十万と申しませんでもたとえば五万なら五万下がりますと、それの九掛け部分は、先ほど申しました子牛安定基金から補てんをされるわけでございます。ですから、普通に申しますと、その九掛け補てんというところでまず農家とすれば満足すべき水準ということになるとも言えるわけでございますが、この生産奨励措置というのは、それとは別個に、やはり一種の増産運動というような形で行われてきました経緯にかんがみまして、特に三十万円を下回っているという現状とあわせまして一万円交付するということを考えたわけでございます。  それから追加の一万円につきましては、やはり一種の政策づけと申しますか、増頭をなさってくださると結果的に手取りが有利ですよということ。非常に零細な頭数だけで、いわばふえもせず減りもせずということですと、経営としても余り誘導すべき対象ではないということでございますので、いま御指摘の下がったときのということでございますれば、先ほど申しました価格安定基金の方で充実させることでいいのではないか。この奨励金はあくまでそれとは別途のものとして、さらに生産の方向づけをしていくというようにお考えいただきたいと思います。
  60. 島田琢郎

    島田委員 繁殖牝牛の新たな増頭策に対します奨励金の措置というのが大変に大事な点で、その点をお考えになったということについて、私は政策的には大変いいことだ、こう思って評価をいたしております。  そこで、いまの問題はわかりましたが、この繁殖牝牛の増殖というのは、今後の肉用牛の六十五年見通しに立ちましたいわゆる目標達成の上では大変大事なかぎになるわけですね。それで、全国平均で肉牛七頭ぐらいしか飼われていない、こういう状況でありますから、これでは肉牛生産される基盤として大変貧弱なものだという点については、私どもも何とかこれをふやしていく、一戸当たりの保有頭数も多くしていくといったような点については、政策的に推進を図っていかなくてはならないという立場でいままでも議論をしてまいりましたから、その点で一定の踏み込み方をしたという点での評価はやぶさかではないのでありますが、せっかくここまで踏み込んだら、もう少し積極推進策を図っていくことが必要ではないのか。こういう点で、一万円というのは何ともどうもおさびしいなという感じを払拭できないのでありますけれども、将来ひとつ御検討願うということにして、ここのところは次に移っていきたいと思います。  三番目の、これも新たな酪振法の改正に伴います措置一つであろうと思うのでありますが、乳肉複合経営推進に当たっての六億の措置というようなことが出ております。六億で一体どの程度推進していく気になっているのかなということで、これもまことにおさびしい金額ではないかという感じでありますが、お考えはどの辺にあるのでしょうか。
  61. 石川弘

    石川(弘)政府委員 この乳肉複合経営推進の六億というものでございますが、私ども、先ほども申し上げましたように、乳雄肥育の問題の一つといたしまして、乳雄につきましては大変早い段階で、スモールの段階で親から離して育成に回る。その場合の育成段階事故率が多分二〇%近いものになっておるわけでございますが、同じ乳用牛でも雌の方は親のもとにつないで育成をしておりますので、その間に一五%に近いような事故の格差がある。これはやはり何としましても肉資源として大きな牛になるように育てることが、いわば大きく言いますと国民経済的に大変大事なことだと思います。  酪農家の方々にお聞きしますと、特に大規模専業酪農家等については、そうはわかっているけれども、自分の酪農経営という、いわば専業的な酪農経営としてはそこまでなかなか手間暇をかけにくいんだというふうなお話もございました。  一方、御承知のように昨年まで牛乳の需給調整の一つの手段といたしまして全乳哺育ということをいたしておりまして、全乳哺育によりまして、これは乳雄に限らず雌につきましても大変事故も少なく、それから健全な牛が生産される、そういうメリットは酪農家の方々に大分定着をしてきたわけでございます。  今回考えました場合に、酪農の方で全乳哺育的なことを御要望なさる方もございましたけれども、現在の酪農生産現状は、先生よく御承知のように、特に加工原料に回すものを量的に強いて調整するほどの事情ではございませんので、そういう全乳哺育的な手法は使えないわけでございます。  しかしながら、今度の酪振法の中で乳肉複合経営推進していくという柱を立てておりまして、その中で、いま申しましたような事故率を低下させるということにつきましては、極力やはり酪農家の段階で、雄につきましてもできれば六カ月ぐらいまで、もう少し短くてもいいというお話もございますので内部的に検討いたしますが、そういうことをなさることがやはり非常に経営上もあるいは資源上もいいのではないか。本来、大変経営的にもプラスになることであれば、何も財政的な援助をすることなく、独力でおやりになっても十分という考え方もあり得るわけでございますが、何せやはり個別経営にとりましては、なれない、ある意味では手間暇をかけざるを得ないということと、それから極力早くこれを推進いたしまして、酪農家が雄につきましても相当程度まで乳を使って育成をしていくということを定着いたしますために、新しい助成事業としてこの助成金を考えたわけでございます。  単価といたしましては、いろんな諸掛かり等も勘案をいたしまして、六カ月程度まで肥育をしていただく場合には一頭当たり七千円という単価を一応積算いたしておりますが、これは実施の段階でよく関係者と相談をいたしたいと思っております。といいますのは、六カ月でなくても、もう少し短い期間で十分効果が上がるというお話もございますので、そういう場合はこの七千円という単価を若干小さくすることになろうかと思いますが、私どもの積算では一応一頭当たり七千円で約八万頭程度のものはぜひこの事業の対象にしたいと考えておりますし、実施段階におきましては関係団体とよく調整をするつもりでございます。
  62. 島田琢郎

    島田委員 事故率が一五%もあるという点は、やはり大変経営上大きくリスクとなってくる問題でありますから、この点に着目をされることは私はいいことだと思います。  私は、経営論的に言いますと、大体二%ぐらいに抑えるということでないとなかなか経営を維持することはできないというのが常識だ。私自身経営をやっておりまして、肉牛経営も含めまして、やはりそれぐらいのところに抑えていかないと、事故率が一五%もあるのではとてももうかるなんということにならないという点は、これは経営者自身も生産者自身も自覚を持っておるところだと思います。それはもう抑えていかなきゃいけないだろうと思っております。  それから、いま、実施の段階ではまだいろいろな人たちとお話をして変わることはあり得るというお話でありますが、一頭当たり七千円まで変えるというのじゃなくて、ここはここで置いておいていただいて、ただ六カ月というのは、これは技術論でありますけれども、ちょっと長過ぎると思いますよ。これまた私の経営のことを例に出して悪いのでありますが、大体雌牛でありますけれども、四十五日ないし六十日が全乳哺育の期間であります。後は、昔は脱脂乳に変えたんです。ところが、いまなかなか脱脂乳がそう簡単に手に入りません。したがって、全乳を一定量薄めるということで、水を入れて薄めて脱脂乳に近い状態で飲ましていく。こういうようなことを続けていきましても、大体やはり離乳期というのは三カ月、九十日から百日で離乳させていく。同時にまた、二カ月たたないうちに育成飼料といいますか、哺育飼料に切りかえていく。こういうような点で、うまく乗っていきますと大変いい牛ができる。全乳を余りたくさんかけますと、成牛になってからの能力にも影響するということが試験結果でも言われておりまして、大体そういう技術的な面を配慮しながらやっていくということが大事だろうと私は思っているのであります。もちろん、これは個別経営において差がございますから、私の経営が即みんなに当てはまるということではございません。ですけれども、私はそういう子牛育成の方法をとってやってきたわけであります。  局長がおっしゃりたいのは、さっき、そんなのは金をもらわぬでも、ただでも、自分の家族じゃないかと言わぬばかりのお話がありました。もちろんそれが大事な一つの理念でなくちゃいけないのは私は否定しません。せっかく産まれた子牛は、雌であろうと雄であろうと、区別なしにやはり肉資源としてもあるいは将来の乳を出していく基礎牛としても忘れてならない大事な基本でありますから、そこを私は否定するものではありません。しかし、お話にもありましたように、なかなかこれは金のかかる話でございますから、その面について行政の手助けがあるということは大変好ましいことだと思います。  そういう点で積算もしているのだというお話もございましたが、私はこの六億はいかにも貧弱でないかと申し上げたのは、八万頭ぐらいではないのではないかという気がするからであります。現にいま乳牛が二百万頭おるわけですね。そのうち三分の一が経産牛だとしても、これは大変な頭数でございます。それを雌も雄も、産まれた子牛には全乳哺育をやるのだということになりますれば、それはこのけたじゃなくて、恐らく八十万頭というけたになるのじゃないか。そうすると、八万頭というその頭数の見込みというものはどこから出たのか、私はちょっとその点で不可解に思うのです。ですから、八十万頭というのであれば私はわかります。従来も八十万頭から九十万頭、大体一年間に子牛を産みます。そのうち、年によって多少の違いはありますけれども、雌雄トータルでいいますとフィフティー・フィフティーに産まれるというのが、これまた不思議なことに大体そうなっているのであります。しかし、昔は雌にしか飲ませなかったというようなことがありますが、今度は肉資源である乳雄にも飲ませる、ぬれ子にも乳を与えるということになりますれば、産まれた牛には全部全乳哺育をしていくということになりますから、そうなりますれば、少なく見積もっても七、八十万頭、多ければ百万頭という子牛が産まれてくるということになるのであります。それで六億というのは足りないということを私は申し上げたのであります。これは、意見として私は申し上げておきたいと思います。  先ほど、関係団体ともよく協議をしていろんな技術的な問題、経営的な問題も含めて検討していきたい、こういうことをおっしゃっています。その場合、六億のキャパシティーで抑えるのじゃなくて、場合によってはふえてもいいんだという考え方くらい持っていただかないと、せっかくのいいお考えが生きてこないのではないか、こんなふうに思いますので、その点は指摘をしておきたいと思います。  それから四番目の、これも新たな対策でございますが、肉用牛生産振興特別対策というのがございます。何か書いてございますからおおよそわかりますが、これも二億くらいで何をやるのかなという感じが一つするのでありますが、せっかくの機会ですから、お考えのアウトラインだけ聞かせていただきたい、こう思います。
  63. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に申し上げましたように、ことしは、この関連施策を決めます際に、今回の法改正等も頭に置きまして極力肉用牛対策を充実しようと考えたわけでございます。いままで申し上げましたのは、どちらかというとハード、ハードと言っても施設ではございませんが、直接生産者方々にお金がいくという対策でございますが、この生産振興特別対策は、どちらかというと肉用牛生産振興のためのいわば組織づくりなり運動といったようなソフトの経費でございますので、二億数千万というオーダーは、実はかなり思い切った金額でございます。  これは、私ども酪農振興の歴史を見ますと、酪農振興につきましてはやはりいろんな生産をなさる方、あるいは行政も、畜産の部局だけではなくて、たとえば普及の部局とか、あるいは畜産の場合特に衛生とか、そういういろいろな方々が集まりまして、一種の精神作興運動と言えばいささかオーバーかもしれませんが、本当にそれをやっていくんだというような運動の成果がだんだん現在の酪農をつくっていったと思います。肉用牛につきましては、最近そういう意味で非常な盛り上がりはありますものの、なおそういう生産者団体、これもいろいろと団体がございまして、いわば経済団体としての団体とかあるいは指導団体としてのたとえば中央畜産会といったいろいろなものが相寄りまして、行政と一緒になって新しいものを開発していく、そういう面ではいささかまだ足らないように思います。  そういう意味で、肉用牛生産振興のための協議組織をつくるというのが大きな一点でございまして、これは国から県、市町村という各段階に応じた生産振興組織をつくり上げていって、先ほどから申し上げましたいろいろな助成事業もこういうところを通じてPRをし、生産者の個々の方によくわかってもらう。また、たとえば今度の子牛の低迷のように、自由化問題で非常に揺らぐとは言いますが、自由化で最も影響を受けやすい乳雄価格が下がらないで、どちらかというと対外競争力の強い和牛が下がるといったようなことが起こりますのも、やはりそういう生産者に対してもっとPRをすべきだと思っておりますので、そういうことにも活用したいと思います。  そのほか、牛肉生産いたします場合に、たとえば畜舎、こういうものも極力コストの安い畜舎を開発したいわけでございます。現在、私どもも古材はもちろんのこと、たとえば林野サイドから利用促進を求められております間伐材、こんなものも極力畜舎に利用したいわけでございますが、そういうものを大量に利用していきますためには、畜舎についての共通の設計あるいはそれの開発のプロセスといったようなものがまだ未熟でございます。そういうものもこのソフト経費の中で見てまいって、極力コストの安い牛肉生産ができるような素地をつくっていきたいと思っております。
  64. 島田琢郎

    島田委員 間伐材の利用というような面まで含めての対策ということは、私は大変結構なことだと思います。ただ、北海道と内地と一緒になりませんで、また豪雪地帯なんというところとは一緒になりませんから、その辺は技術的にはかなり検討を要するのでしょうが、アイデアといいますか、お考えになっている点は大変結構だと私は思います。まさに山村振興の面からも肉牛生産を図っていくという面が生きてくるという点で、二億九千万じゃ足りないというお話もありましたから、これはぜひボリュームを上げまして、積極策に打って出るという、ここのところは目玉にしてもいいではないかぐらいに私は思っております。しっかりおやりいただきたい。  それから流通対策でありますけれども流通対策をやっておりますとこれはずいぶん長くかかりますので、後ほどまた酪振法の改正の中におきます問題点として私挙げていきたいと思っておりますから、酪農対策の方でお聞きをいたします。  市乳問題ですが、きのうからもお話が出ていたようでありますし、三月の乳価の決定の時期にも市乳問題というのは大変話題になっていた点でございます。正常化対策に十八億という予算をつけてやるんだ、こういうことでございますが、加工原料乳の価格決定あるいは数量決定に当たって、昨年、あるいはことしもそうですが、とりわけことしなんかも大事な年だというふうに指摘をしましたのは、価格決定、数量決定というものが大変混乱をいたしている飲用乳あるいは市乳のところにも大変影響をもたらす点が多いので、そういう点を十分勘案をして決定をしていかなければならない大事な年に当たっているということを指摘をいたしました。残念ながら、数量は二十二万トンほどふやしまして、その点のお考えがその中に含まれているという御説明ではありましたけれども、実際には需給表で私問題にいたしましたように、必ずしもあのいわゆる需給計画の中で飲用乳の正常化が図られるかどうかということに私は依然疑問を持っている一人でございます。  その辺をカバーする立場で正常化対策を新たにお組みになるということなのかどうか、その辺のところを聞かせていただきまして、市乳問題については本日とても議論し尽くせない問題がたくさんございますから、改めてまた農水等で議題にしながら、ぜひ正常化を図っていかなければならない、私どもも私どもなりに努力をしていかなければならぬと思っておりますので、当面関連対策で出されておりますお考えを聞かせていただきたいと思います。
  65. 石川弘

    石川(弘)政府委員 加工限度数量を二百十五万トンとかなり大幅に増大いたしました際には、いろいろな御指摘もございましたが、私どもある意味の心配もいたしておりました。といいますのは、そのことによりまして乳製品の市場価格にどのような影響を与えるかという面で、大方の予測よりもかなり大きいという感じを受けておったわけでございますが、その後の需給状況を見ますと、乳製品につきましてもほぼ安定的な価格で推移をしている。二百十五万トン程度の加工向け割り当てはほぼ適切な水準ではなかったかな。もちろんこれは今後のいろいろな需給にもよることでございますが、その点につきましては私どもは一応安堵をいたしておるわけでございます。  今回、それに関連をいたしまして飲用牛乳市場正常化対策といたしまして十八億円を向けることといたしておりますが、これは御承知のように牛乳、飲用乳市場はいつでも過剰生産をつくり出し得る素地はいままで持っておるわけでございます。わが国の酪農業はかなりの力を持っておりますので、その気になればと申しますか、えさを多投するとか、そういうことをいたしますと、地域的にあるいは時期的に市乳が過剰になる素地を持っておるわけでございますので、生産者努力による計画生産をやりました上で、なおかつ、万が一需給変動等によって余乳が発生しました場合に、その余乳を加工に振り向けますために生産者団体みずからが共補償した場合に、その必要な原資を助成するということを昨年に引き続いて行いますとともに、市乳地帯で発生します余乳がその地域全体として的確に処理がなされませんと、無理無理市場に入りまして価格を下げるということで、これについては農協とか中小とか大手と言いませずに、その地域全体で集中的に余乳を処理するようなモデル的施設につきまして必要な助成をするということを考えております。どういうものに対してどのようにやるかにつきましては、これはかなり具体的な話でございますので、生産者の組織なりメーカーなり地域の関係者の御意見を承りながら、今後どのように実施するか決めてまいりたいと思っております。
  66. 島田琢郎

    島田委員 昨年に続きまして飲用牛乳の消費拡大対策に十五億、同額がついておるわけでございます。これは私ども十五億じゃ足りない、もっと量も消化したいし、幼稚園、妊産婦、お年寄りという範囲を拡大していくべきだという意見をこの一年間たくさんいただいてきました。昨年と同じような考え方で進めるのではなくて、その辺もひとつ幅広く検討されまして、飲用乳の消費拡大対策でありますから大いに力を入れてもらいたい、こう思っておりますので、私の考えとして要望をいたしておきたいと思います。  最後に、五十八年度も引き続き酪農の負債整理対策を進める、こういうことで百四十三億の原資をもって負債整理の推進を図る、こういうことでございますが、この点につきましても、この二年間かなりおやりになりました経過等も承知をしたいし、また、今後の見通しどもしっかり立てていかなければいけませんで、議論をいたしますとこれも一時間やそこらじゃとても終わらない問題でありますから、これもきょうはアウトラインだけお話を伺っておいて次に移りたいと思います。その点、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  67. 石川弘

    石川(弘)政府委員 酪農の負債整理につきましては、御承知のような諸事情、特に計画生産推進の中で規模拡大が比較的後期に行われました農家群につきまして、かなりの御努力をなさった上でも合理的な償還ができないというのがございまして、すでに五十六年、五十七年度に総枠で三百億円の貸し付けを行ったわけでございます。  何度も申しますように、この負債整理につきましては、単に低金利の資金に乗りかえるというだけではなくて、農家経営のあり方、これは家計をも含めました合理化努力を促しておりますし、それと同時に、関係いたします農協等につきましても農協の経営のあり方、運営の仕方等についてもいろいろと改善を願っておるわけでございます。これもお約束いたしましたように、二カ年の貸し付け後においても真に借りかえを行うことによって経営が再建できるものについてはさらに融資枠を拡大するということを申し上げておりましたので、その後、道庁や関係県ともいろいろ相談いたしました結果、五十八年度に約百五十億円の増枠をいたしたわけでございます。  その後における情勢の変化を申し上げますと、今回の乳価は比較的低い水準のいわば微調整でございますが、それにも増して、限度数量を二十二万トンふやしましたことは、特に原料乳の供給の主力でございます北海道の酪農家にとってはかなり大きな収入の増になるのではないかと思っております。  せっかくのチャンスでございますので、こういう負債整理と同様に、負債整理をしていく中で引き締めていただいております経営費なり家計費をさらに御努力をいただいて、今回の負債整理の貸し付けとそれから前向きの枠拡大ということをあわせて、現在再建中の酪農家のかなり多くの方々がこの機会に自立の道に踏み出していただくということを期待しておりまして、道へも、そのようなこととも関連させながら極力早くこの資金が流れるようにしたいと思っております。
  68. 島田琢郎

    島田委員 そこで、近代化計画についてでありますけれども、すでに五十五年の十月に公表されました六十五年見通し酪農畜産見通しというものが立てられて、公表されているわけであります。今度の酪振法改正に伴います計画制度の問題に当たりまして、この六十五年見通しというものがどのように生きてくるのか。特に酪振法に基づきます酪農近代化計画というのはいつも目標が下がってまいりまして、それより上がるなんということはほとんどなくて、みんな手直しされていってだんだん目標が下がっていく、こういうことでありますので、酪近計画というのは余り信用できないという印象の方が強いのであります。  それは計画だから狂うことがあるのは仕方がないと言ってしまえばそれまでの話であります。しかし、時に計画見通しよりも上回るというのであればいいのでありますけれども、下がるということが多い。そして、下がるたびにそこに合わせるように見通しもまた下がっていく。これでは長期計画というものの信頼性が失われてしまうのではないか。法律にあるからやらなければならないのだというだけで計画が立てられていくべきものではないと私は思います。  したがって、今度は肉の近代化計画が長期にわたって立てられていくわけでありますが、いまのところ六十五年見通しというのは変わらない、こういうように理解をしていいのか。  それから次の点は、その場合、生産目標価格水準というものがどういうふうになっていくと見通されているのか。  もう一つは、牛肉価格制度が畜安法によって保証されているわけであります。価格制度の上で畜安法と今度の新しい肉牛酪農振興法が一体どういうふうにかかわっていくのか。そういう点を考えますと、価格水準はどのようになっていくのかというのが大変気になるところでございます。ここのところをひとつお聞かせ願いたい。
  69. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に、酪農近代化計画が逐次目標が下がっているのではないかという御指摘でございますが、御承知のように早い時期のものは需要伸びの見方が大変高うございまして、酪農生産が大変な勢いで伸びまして、かつて一けたでも大変高いところで伸び続けた。そういう中で、需要伸びを高く見たことと現実の需要がそれに対応できなかったということから来るギャップがあったことは確かでございます。それからもう一つ経営合理化指標等につきましては、かなりの努力をしますがそこまで到達し得なかったというようなものもあろうかと思います。  今度私ども考えております計画は、酪農肉用牛あわせてでございます。一応今回は六十五年という農産物の需給の長期見通しのところに目標時点を合わせまして、それに応じた計画を立てたいと思っておりますが、酪近のいろいろな物の考え方につきましては、現時点では特に大きく見直す必要はないのではないか。ただ、酪農の中から出てきます肉用牛生産ということに絡んで見直しをする必要があれば、そういう点で必要な見直しをすればよいのではなかろうかと思っております。  それから二番目の御質問でございます。  いわば価格をどう見るのか、特に価格と畜安法で定めます畜産物の安定価格考え方の関連でございますが、価格につきましては、私どもここ数年の動きが実は日本の肉用牛生産なり牛肉消費に非常にプラスになったのではないかと考えております。と申しますのは、生産サイドで申しますとかなり生産合理化が行われた。これは規模拡大であったり、あるいは各種の合理化措置が絡まるわけでございますが、頭数もある程度ふえ、そういう合理化要素もありました結果としまして、資材費が安定したことも確かにプラスにはなっておりますけれども、あの需給実勢方式という方式をとりましても余り価格変動させないで来れたわけでございます。結局、資材費が若干上がりましても合理化要素でこれを消し得た。ですから、需給実勢は余り動かない。需給実勢方式ですから、価格水準が余り動かなければ計算方式でも大きく動いて出てこない。その間に諸物価が若干は上がりますから、そういう中で国民的に見ますと牛肉は余り値段が変わらない。比較的割り安感があって消費伸びた。対外的に見ますと、たとえば五、六年前を考えますとECは日本の半分ぐらいの値段だったのが、七掛け水準まで追いついてきた。  こういうようなことが今後もある程度続きますと、国内消費者にとっても牛肉割り高感はだんだん消えていくであろうし、さらに、アメリカ、オーストラリアとの対比では無理でございますが、比較的土地条件の似通った、あるいは日本よりははるかに土地条件がすぐれていると言うべきかもしれませんが、EC価格水準に近づいていく。したがいまして、そういうことができるような環境づくりをやりながらいまの畜安法の価格政策運用していけば、事柄とすれば大変前進をするのではないかと思っております。  結局は、生産者コストを下げるような手法をうまくとり得るかどうか。何度も申しますが、規模拡大を順調に続けられるかどうか。それから、経費の最大部分であるえさが購入飼料から自給飼料にどれだけ転換し得るか。それから、いい家畜を使ってなるべく少ないえさで産肉能力を上げて肉の生産を上げると同時に、いつも申します肥育期間が長期化するものをもう少し短くして合理的、経済的に肥育するとか、先ほどもちょっと申し上げましたような子牛段階事故を下げていくとか、こういうことをうまく組み合わせてまいりますれば、これは価格でございますから一切上げないとか下げるとかということではございませんが、あの価格水準を大きく変動させないで国内需要量もふやしていけますし、外国との格差も縮め得る可能性が出てくる。そのあたりを今回の制度改正のねらいといたしておりますので、価格につきましては、たとえばECに合わせるというと何か七割に合わせるように下げるというようなことをお考えの方もあろうかと思いますが、私は、そんな手法をとらなくてもEC水準に合致できますし、消費者牛肉に対する割り高感も払拭できるのではないか、そのように考えているわけでございます。
  70. 島田琢郎

    島田委員 価格面からいいますといま説明のあったことであろうかと思うのでありますが、ただ、肉牛のポリシーといいますか、戦略目標というものが、先ほど話題になっておりました海外からの牛肉自由化攻勢、枠拡大攻勢といったものが一つあります。国内的なポリシーを言えば、EC水準のところを考える。価格は何も七割方のところのEC型に持っていかなくてもそれはできるのです、そういうお話でありますけれども、私はちょっと疑問があるのです。  というのは、長期見通しで肉の需給関係の数字が出ております。大体六十万トンを中心にいたしまして需要量が定められております。それに対して国内生産は四十四、五万トン。そうすると、足りない分が大体十六、七万トン、こういうことになります。大臣はさっき来年の四月以降のことはわからぬ、こういうことを言いましたけれども、実は見通しとしてはいまよりも五、六万トン輸入がふえるという見通しを持っているわけであります。しかも、その中で特にEC型ということになりますれば、規模とか頭数というものが比較のもう一つの対象にならなくてはいけません。価格の上では十対七である。それは六十五年までの間にどういうふうになっていくのか、その辺、いまの説明だけでは私はわからぬのですけれども、下げないでいっても大体EC水準になる。わかりやすく言えば、ECの値段がだんだん上がってくることを待っていて、これはそれにつり合いがとれるという感じにしかならないのでありますが、頭数の上では、私はこれはとてもEC水準ということに近づくのにはいまのままでは大変だと思うのです。しかも、いま申し上げましたように、六十五年の長期見通しでもそんなに国内生産がばかに伸びるという感じになっておりません。むしろ輸入の方がふえてくる。輸入をふやして需給に対応する、こういう考え方が明らかになっているわけです。  そういたしますと、いまの御説明では六十五年長期見通しは変えないのだ、こういうことで済むかどうかという点。それなら、何のためにいま酪振法を改正して肉牛生産に力を入れるのかという点が私はどうも疑問になってくるわけであります。むしろ長期見通しはこれではいかぬ。大臣は、現在の国内の需給と輸入とのバランスからいえばいまの状態は大変いいのであって、それ以上ふやすなんということは考えられぬことだ、こう述べておられる。そうすると非常に矛盾だと私は思う。大臣のおっしゃることが正しいとすれば、現在の輸入量を抑えながら国内生産をふやして需給に対応していくという姿勢がここに出てこないといけないのではないか。そういう点で、私は長期見通し見直しをしなければならぬのではないかという意味で先ほど質問をしたのでありますが、どうも見直しはしないでそのままいくのだ、こういうことであります。  したがって、私は改めてここで聞きたいのでありますが、EC型のキャパシティーというのは一体どういうふうに考えておられるのか。EC型と言ったらおおよそ百頭規模の肉牛生産の規模になっているのではないか。そんなことがとても国内で、いま平均七頭しかいないのに百頭規模に持っていくのにはどうやれば一体持っていけるのでしょうか。そういう点からも、長期見通しというものは早期に検討してかからなければならないのではないか。それが前提で酪振法の改正というものが出てこなくてはならないのではないか、私はこんなふうに思うのですが、時間が参りましたので、この答弁は午後からに譲りたいと思います。  問題を提起しておきますので、どうか矛盾のない、私が納得できるようなお答えをいただきたい、心から期待して、午前中の質問をこれで終わりたいと思います。
  71. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後、直ちに再開いたします。     午前十一時四十六分休憩      ────◇─────     午後一時二十九分開議
  72. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、金子農林水産大臣から発言を求められております。これを許します。金子農林水産大臣
  73. 金子岩三

    ○金子国務大臣 先ほど、アメリカにおいて農産物の問題で協議を続けておりました佐野局長から連絡がありましたので、それを官房長から御報告をいたさせます。
  74. 角道謙一

    角道政府委員 二十六、二十七日両日、ワシントンにおいて行われました日米農産物協議につきまして、佐野経済局長から、先ほど終了した旨の連絡がございましたが、まだ公電が入っておりませんので、電話連絡の内容で簡単に結果だけ御報告申し上げたいと思っております。  二十六、二十七日両日、日本側は佐野経済局長、アメリカ側は米国USTRの次席代表スミス大使を代表にしまして協議が行われたわけでございますが、この協議におきまして、日米双方は、牛肉、柑橘及びその他の品目につきまして非公式かつ予備的な意見交換を行ったところでございます。  協議におきましては、非公式かつ予備的なものであるという性格から、どちらからも具体的な提案は行われなかったということでございます。また、協議の内容につきましては、交渉が引き続き行われるということもございますし、双方とも内容は公開しないということで合意をいたしております。この協議の過程におきまして、米側は牛肉、柑橘以外の輸入制限品目の幾つかにつきましてガットの規定に基づく協議を近い将来提起することを検討しているという旨を述べているようでございます。最後に、今回のような協議は日米双方にとってきわめて有効であるので、可及的速やかに次回協議を行うということで意見が一致を見たというふうに報告がございました。  簡単でございますが、協議結果につきまして御報告を申し上げました。      ────◇─────
  75. 山崎平八郎

    山崎委員長 家畜改良増殖法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。島田琢郎君。
  76. 島田琢郎

    島田委員 先ほどお話しした点についてまず回答を求めてから、私からまた始めたいと思います。
  77. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先ほど先生から、EC並みを目指すということではあるけれどもECにおける規模というのはかなり大きいのではないか、それに簡単にわが国の経営が追いつくのかどうかという御指摘がございました。  先生もよく御承知のように、EC牛肉生産は八割が乳用種から行われておりまして、あと二割が専用種でございます。この点は、わが国の牛肉生産が七割が乳用種で行われ、あと三割が専用種で行われているのとほぼ似通っておるわけでございます。結局、EC牛肉の八割が乳用種でございますから、乳用種生産をいたしております酪農の規模というのがどういうことかということでございますが、これも先生よく御承知のとおり、酪農の規模は国におきまして、たとえばオランダのような比較的大きな規模のものから比較的小さな規模まで突っ込みでの話でございますので、ごく大ざっぱに申しますと、よく言われておりますように、ECと日本は、乳をしぼれます成牛の規模で大体十三頭から十四頭といったようなところで似通った水準になっているわけでございます。  そこで、向こうでは酪農家が酪農を行いますと同時に肉の生産をやっておるわけでございますので、そういうかっこうを日本でも想定をいたしますと、酪農家の経営規模が比較的似ている。これももちろん階層は相当ございますが、実はEC九カ国平均と日本の平均をこの階層規模、頭数規模で並べてみましても、非常に似通った形をしております。ただ、五十頭以上層は日本よりもECのシェアが若干多うございますが、たとえば二十頭以上というような線で切りました場合、いずれも約六〇%、若干超えたりいたしますが、その程度の規模であるというようなことから、酪農生産の高さにおいてはほぼ似たような形だということが言えるかと思います。  したがいまして、素牛が出てきます酪農の分野で規模がほぼ同じわけでございますので、そういう意味で全く手が届かないということではございませんで、酪農の中で肉用生産を入れていくことによりまして十分太刀打ちができるのではなかろうか。先生先ほど百頭以上の肥育というものが相当あるというお話でございますが、日本の場合でございましても乳雄肥育段階ではかなり規模が大きくなっておりまして、御承知のように現在乳雄供給量の約四割は戸当たり百頭以上の階層から供給されておるわけでございます。  これから私どもといたしましては、いま申しましたような酪農基盤ECに近づいておるわけでございますので、ここで乳肉複合をやっていったりあるいはそこから肉用の生産だけを分離しました場合でも、百頭規模の肥育がすでに総供給の四割を占めておるというこの現実を踏まえまして、ECに近づけることは十分可能ではないかと思っております。
  78. 島田琢郎

    島田委員 そこで、私がもう一つ尋ねておりますことにお答えがなかったのでありますが、六十五年見通し、これで言いますと、いまのままでいくということは、法整備の目的からいうと半減するということを指摘したわけです。  それは、いみじくもいま牛肉の外圧が強まっているわけでありますが、六十五年の見通しの中で、輸入されてくる牛肉は数字的にはいまよりも五、六万トンふえるという見通しを持っている。そこのところが、日本がねらわれている一つの要素にもなっているとも言えるのではないか。つまり、牛肉のいわゆるポリシーというものは、日本について、消費面でもあるいは生産の面でも十分ターゲットにしていい国である。つまり、他の作目からいいますと、あるいは消費部門からいいましても非常に牛肉伸びる。しかし、国内における生産見通しからいえばそれほど高くはない、依然として不足するという状態がこの先日本にはある。私は、ここにねらわれている原因があるのではないか。もちろんそのほかいろいろ政治的な要因というものもあることも事実です。  したがって、私は、せっかく乳肉複合型の経営を目指して国内牛肉生産を高めていくんだということであるならば、やはり現状を固定した輸入量にしておいて見通しを立てていくというぐらいの前向きの政策があってしかるべきだ。ここのところは全く手直しをしないんですということであるならば、これから先も牛肉はねらわれるということになりかねない。そういうことを前提にして、せっかく法案をおつくりになるのであるならば、やはりそういう戦略部門というものをしっかり法律の中でカバーできるようなものにすべきではないのかというのが、私がもう一つ尋ねた点であります。その点はいかがですか。
  79. 石川弘

    石川(弘)政府委員 長期見通しを策定いたしました段階でも、実は国内生産というものはかなり意欲的に見通しておるわけでございます。  これはもちろんまず需要を想定したわけでございますが、まず需要について申し上げますと、これは現実にそうでございましたように、国内のいわば経済的な動向、特に可処分所得の伸びをどう見るかによりまして需要伸びには幅を持って見ておりまして、高い場合には四・二%くらい伸びるだろう、しかしそんなに伸びないということを考えましたときは三・五%台というようなものを見まして、需要伸びを一定の幅で見たわけでございますが、そういう見通しの線上に需要はほぼ動いてきております。  これに対しまして、生産につきましては、まず主力でございます乳用種からの肉生産につきましては、生乳需給バランスという問題がありますので、野方図に伸ばすということは不可能ではございますが、これもかなり意欲的に見通しまして、いわば目いっぱいの見通しを立て、特に肉専用種につきましてはいま申し上げましたような現状国内生産が七、需要との差が三、結局輸入が三というバランスをある程度維持いたしますためにも、かなり意欲的な見通しをしているわけでございます。したがいまして、過去に行われました、特にたとえば駄牛淘汰等のような場合で一年間に急速に伸びましたような事態を除きますと、ここで見通しております生産伸びはかなりのものでございまして、私は先生指摘のようなことを相当腹に入れて見通しをつくっておるわけでございますが、何と申しましても、資源的にも、あるいはこれは肉の総資源の問題もあるいは土地その他のこともございますので、余り現実離れをしたような伸び率というものまで期待することは困難だと思います。  結局、私どもは現在程度の需給のバランスというものはぜひ維持をしたいというかなり意欲を持ち、意欲を持っているということは、結果的には相当政策的努力をして達成できる生産見通しをつくっているわけでございます。
  80. 島田琢郎

    島田委員 それから、畜産というのが基本として考えていかなくちゃならぬのは、国土の利用ということだと思うのですね。そういう意味で、草資源を有効活用するという点で草地型肉牛生産というものを目指すという、その目指し方というのは私はいいと思うのです。  ただ、一体その草地基盤というものが目標に沿って活用できるような状態になっているのかどうかという点になりますと、非常に私はこれはお粗末過ぎるという気がいたします。草地は、統計上あらわれておりますのは百万ヘクタールと言われております。それは大半が搾乳牛に利用されているわけなのです。ごく一部で放牧をやっているという程度肉牛生産でしかないので、今後肉牛に草を入れていくということになりますれば、いまの草地基盤でやれるかという問題に一つぶち当たってまいります。少なくとも草地型に持っていくという発想が出てくるいわゆる背景には、そうした草地というものが確保されているという前提がなければそういうものが発想されるというのはおかしいわけですから、土地改良あるいは草地の開発、造成、また未利用地の有効利用、また府県におきます水田の裏作の有効利用といったような面にまで目を向けて考えてまいりますれば、私はこの法律というものがどういう目的を持っているということがはっきりしてきますから理解ができるのでありますけれども、その辺のところはさっぱりどうも政策的には明示されていない。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕 こういうことでありますから、私は一言で言えば、この法律の持っております性格というものがこれまた半減されるということになりはせぬか。  この際、一昨日ですか、土地改良十カ年計画というのが構造改善局から出されたわけです。三十三兆円かけて田畑輪換の推進を図っていくための土地改良事業をやるんだ、新たに農地約五十万ヘクタールを造成していきます、こうなっていますが、しかし、この農地造成、新たな四十七万ヘクタールないし五十万ヘクタールというのは、実際には年々壊廃されている畑地がございますから、トータルで言えばこれは一つもふえないわけであります。しかも、この中で、こうした土地改良計画というものが一体それでは酪農畜産の部門にどういうふうに有効に働いていくのかということになりますと、その辺のところは余りこの計画の中では明示されていないので、むしろせっかく三十三兆円もかけてこれから土地改良をやっていくということでありますならば、今度の草地型肉牛経営に持っていくという、こういう構想というものがこの土地改良の中にも示されていっていいんではないか、いくべきではないのか。  そういう点では、所管が違うのでそれは構造改善局がやる仕事だということなのかもしれませんけれども、やはり大事なのは、草地の基盤というものは畜産局にとってはこれからの目玉でありますから、そういう点で、一体この計画の中で畜産局としてはどの程度考えになっているのか。あるいはこれはもう全くわれわれとは関係ないんです、こういうことなのか。この際、そういうことであるならば私は積極的に次に申し上げますような施策を講じていってもらいたい、こういう希望を持っているわけであります。  まず、この土地改良十カ年計画に対する畜産局としての見解を聞いておきたい、こう思います。
  81. 石川弘

    石川(弘)政府委員 まず、今回の法改正の中でいわば肉用牛生産についての基本方針をうたうことにいたしておりますが、この基本方針の中で草地を重要視しまして飼料自給率を上げていくということを明示いたしますと同時に、各県におきましてそういう計画を立てました際にも、そのような要するに土地利用型の形で畜産、特に肉用牛生産を伸ばすというようなことをはっきりさせていきたいと思っております。  そこで、いまお尋ねの三次の土地改良長期計画でございますが、これは総枠の問題とか、あるいはそれが圃場整備とか農用地造成にどのように志向するかというような意味で、構造改善局長からも前日御説明しましたような割り振りで、たとえば農用地造成にしますと四十七万ヘクタールというようなボリュームと、あるいはそれに見合う金額が定められているわけでございます。大変率直に申しますと、今後造成しますもの、これは飼料畑であろうがあるいは草地であろうが、非常に多くのものが実は畜産利用のものとわれわれは理解をいたしております。現段階で相当生産拡大できる余地を持っておりますものは大半この大家畜の世界でございますので、私どもはこの内訳がどうこうということを抜きにいたしましても、現に農用地造成で行われました場合でも草地開発で行われました場合でも畜産的利用をいたしておるわけでございます。したがいまして、この長期計画に見通されております農用地造成の非常に多くの部分は畜産のための基盤整備として当てられるであろうし、これはあくまで長期計画でございますから、毎年毎年の予算の決定の段階で、私どもは必要な、たとえば国営とか県営とかあるいは公団営とか団体営という予算を獲得し、その中で所期の目的を達成したいと考えているわけでございます。  私は、そういう意味では、壊廃等もいろいろあるわけでございますが、過去の事例から見ますと、この草地的なものの壊廃というのは割合としては若干低いわけでございますし、現に造成されるものは畜産的利用が比較的高いわけでございますので、この与えられた枠の中でもかなりの外延的拡大は可能だと思っております。もちろん先生指摘のように、単なる外延的拡大にとどまらず、既耕地におきまして飼料畑として飼料作物をつくっていく問題とか、あるいは野草地とか、そういうようないままで比較的利用度の低いものを使うとか、ありとあらゆる形で粗飼料自給率を上げていくということが今回の眼目になろうかと思います。
  82. 島田琢郎

    島田委員 新たな造成地を求める前にやらなければならぬことがあるという点を私は指摘をしたいのですが、北海道でいいますと、水田の面積が半減いたしまして、他の作物に転換がされているという実態でございます。その中で、特に六割強程度は牧草が転作物としてつくられている。ところが、それではこれが完全に牛の口元まで運び込まれているのかどうか。つまり、家畜の腹に入っているかということになりますと、これは大変問題があります。  なぜ問題があるのかというと、水田のいわゆる水抜きが完全に行われておりませんから、一昨年のように長雨が降りますとトラクターが入りません。したがって、一番牧草も二番牧草も畑に放置せざるを得ない、こういう状況であります。昨年は幸い大変天気がよかった。水田にも機械が入りました。かなりの部分は牛の口元まで運び込むことができました。こういうことでありますが、去年のような年というのを考えて水田の牧草転換ということは、これは見通しとしては決して正しくありません。  したがって、土地改良によって、少なくともいま全国平均で地下水位四十センチと言われておりますが、これはやはり七十センチまで下げる、そういう土地改良事業というものが必要であります。そういたしませんと、牧草に限らずどの作物をつくっても、長雨、湿害という年にはこれが完全に収穫できないという事態に相なるわけでございます。したがって、私は、米の転作という問題について、この前にもそういう指摘をしたのでありますが、牧草が大変たくさんつくられているということを考えますと、こういう面にも目を向けて、せっかくつくられた、しかも補助金までついてつくられている牧草でございますから、それを牛舎まで完全に運び込める、こういうことでなくては、これは国策的にも決して得なやり方じゃない、こういうことになるのであります。  それから、かつて府県におきましては、米の裏作で麦がつくられておりましたが、いまなかなか裏作麦が思うように進まない。こういうところはそのままにしておくのではなくて、少なくともこれだって二百万ヘクタールくらいにトータルではなるのではないかと私は思います。それは永年牧草というわけにはいきませんが、ここに単年度のレンゲとかあるいはクローバー類のようなものをつくって、これはかなり高たん白なものでありますから、これを肉牛に与えていく、こういうことは決して不可能ではない。  さらにはまた、先ほど申し上げた水田の水抜きということがどうしても計画どおり進まないということであるならば、稲わらをつくりまして、その稲わらをホールクロップサイレージにしまして、そして通年与えるということも技術的には可能である。これだって相当の面積になるでありましょう。そうしますと、当面そういう有効活用といいますか、耕作率を高めていくというか、そういうことによって、政府考えております草地型肉牛生産ということも可能になるというふうに私は見ているわけであります。  ですから、こういう小まめな目配りのきいたいわゆる対策というものが、同時並行してこの肉牛の新たな目指す方向に向かって進められていくということであれば、私はこれは非常に生きてくる、こういうふうに思うのです。その辺のところをしっかりお考えに置いていただいて、肉牛生産奨励、振興を図っていくのだということにしていただきたいと私は強く願っているのであります。この点についての農林省としてのお考えというのはどの辺にあるのか、この際ひとつ正確に聞いておきたい、こう思うのです。
  83. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私どもも既耕地の中で極力飼料作物が入っていくことが必要だと思っておりまして、現在、たとえば五十七年で申しますと、先ほどおっしゃいました水田転作の場合で申しますと約十七万五千ヘクタール、これは転作面積の三〇%弱になりますが、それだけのものに飼料作物が入っておりますし、また、そのことは飼料作物の生産全体の一七%でございますから、かなりのシェアを占めているわけでございます。ただ、残念ながら、御承知のように特に北海道のように転作が多く、かつ、それが飼料作物が集中していますところでは、約六五%ぐらいのものが畜産的な経営をなさっていない方の圃場で行われているわけでございます。内地ではこれが三二%程度でございますから、かなり低うございますが、こうなりますと、いま御指摘のありましたようなつくられた飼料作物をどうやって的確に畜産農家のもとに結びつけるかということが絶対の要件となってまいります。  そこで、私どもといたしましても、この結びつきというものを極力強めるために、まず、こういうものが非常にばらばらにつくられますことが問題があるわけでございますので、そういう転作田等につきましては、極力使いますサイドとしても便利に使わせますための一種の利用の集積を図ることが必要でございますが、そういうことも行っております。さらに、そこに、個人対個人ではなかなか結びつきません場合に、農協等が仲立ちをいたしまして、計画的に生産させ、かつ畜産農家へ結びつけるというような手法とか、あるいは畜産農家といろいろな飼料供給契約を結ばせるとか、あるいは農作業の受委託契約を結ばせるといったような形での、前もってつくられたものが畜産農家に完全に行われるようにする。それから、北海道の場合のように比較的大規模なものとしてはなかなかむずかしいかもしれませんが、よくありますように、畜産農家と無畜農家群の間で、片一方からは飼料を提供すると同時に、畜産農家が堆肥等のものをいわば耕種農家に返すといったような形での地域の結びつきを強めるといったようなこともやっておりまして、実はこの種のことが円滑にできるような対策を、畜産総合というような事業の中でも組んでおるわけでございます。  それからもう一つ指摘のありました裏作利用、これは御承知のように、かつてはわが国の水田裏というのは相当程度活用されたわけでございますが、水稲の栽培の時期が前へどんどん出てまいりまして、いわば早期栽培ということがどんどん進む中で、昭和五十二年あたりまではむしろ減少の一途でございましたが、その後イタリアンライグラス等を使うような形で漸次裏の飼料作物の作付面積はふえてまいりまして、五十六年で申しますと六万ヘクタール弱のところまで拡大をしてきております。  そういう裏利用ということになりますと、表の生産と裏の生産とをいかにうまく結びつけるかということでございますが、いま御指摘がありましたように、やはり表裏完全利用をいたしますためには、圃場条件整備がどうしても必要でございます。そういう意味で、圃場条件整備しながら、飼料作物で申しますと、比較的有利なものは、地域にもよりますが、青刈りとイタリアンの裏表をやっていくというのが単当の収量も一番高いようでございますが、これにはいろいろな事情もございますので、あるいは圃場条件においても違いますので、極力裏表をうまく組み合わせる。その場合に、たとえば数年前から実験的に、さらに実事業化しておりますホールクロップサイレージといったようなものは、裏表の収穫期間をうまく合わせ得る一つ手法でございますので、ぜひこういうものも伸ばしていきたいと思っております。それから、現に私どもが行っております事業といたしまして、水田裏飼料作物高位生産対策事業というものを実施いたしておりますが、この事業におきましては、相当程度のまとまりを持ちました地域で水田裏に飼料作物を導入いたします場合、これは事業主体としては市町村とか農協あるいは特認団体というものを認めておりますが、そういう場合にいろいろな生産計画し、あるいは期間借地をし、あるいは圃場の簡易な排水をするとか、あるいはつくられました飼料作物の貯蔵用の資材を入れるといったような事業のために、一事業当たり一定の定額の助成をするという、いわば非常に使いやすい助成事業も起こしておりまして、これらの事業も周知徹底いたさせまして、極力既存耕地におきまして飼料作が安定するようにやっていきたいと思います。
  84. 島田琢郎

    島田委員 さて、肉牛を仕上げていくノーハウみたいなもので、一つ考えてみなければならぬことがあります。  現在、わが国の肉牛の完成時におきます体重というのが実態的には六百キロを超えているのではないか。あるいは、人によっては七百キロくらいまで太らせていくといったような実態にあるのではないかと思うのです。しかし、これはグレーン型からグラス型に変えていくという手法を取り入れながらも、なお穀物の効率的な給与の仕方というのを技術的に真剣に考えてみなければいけないと私は思っているのです。  というのは、欧米諸国では大体五百キロ以内くらいで仕上げていきますね。アメリカは大体四百五十キロから五百キロの範囲ぐらい、平均すると四百八十キロくらいで市場に出していくようであります。それは、一つの理由といいますか、技術的な点からいっても、あるいは経営論的な立場からいっても、非常に理屈に合っているようであります。わが国でもそういう研究の結果というのが出ておるようでありまして、大体和牛で四百五十キロから五百キロくらいまでにするのに、一日当たり配合飼料を大体七キロから八キロくらい食わせますと生体重が一キロふえる。これは試験結果が出ております。  ところが、乳雄では五百キロくらいまでの範囲でありますが、これ以上に太らせていくということになりますと、一キログラムの肉をかけていくのに十キロから十二キロくらいの濃厚飼料を食わせていかなければいけない。非常に飼料効率が落ちるわけです。これは実に損な話でありまして、特にあふれるほど国内飼料穀物といいますか、粗粒穀物というのがつくられているわけではありませんで、ほとんどこれは外国から買ってきているわけでありますから、これは大変むだな話でありますから、やはり一番効率のいいところで仕上げていくという方向で考えを持っていくべきではないか。今度の乳肉複合型経営で、肉牛生産というものを考える場合の完成時におきます生体重は六百六十キロと前に聞いたように記憶いたします。これはとてもむだだと私は思うのです。ですから、むしろ欧米型のように四百七、八十キロでどんどん市場に出していくことによって、回転率を高めていくということになるのではないか。  ただ、牧草を入れてくるということが肉をつくっていく上の効率性からいって果たして非常に効率性が高いかどうかという点については、これは草の質とか食わせる時期とか、一体何キロくらいのところで草を食べさせていくのかといったような、そういう経営技術上の問題というのをかなり精細に審査いたしませんと、やたらにいつでも食わせればいいというものではないので、ここら辺のところは、新たな肉牛をそういう四百八十キロ程度市場に出していくという場合の検討を要する事項というのがあることは事実であります。しかし、この辺のところはやはり真剣に検討を加えまして、目標をしっかり定めて、六十五年見通しにおける国内生産の率を高めていくという方向に持っていってもらいたい、こんなふうに私は考えているのでありますが、いかがでしょうか。
  85. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のありましたように、日本の場合に特に購入飼料の依存度が高く、かつ肥育の期間も比較的長期間で、したがって出荷体重も大きいというのが現状でございます。私ども、先ほどECとの対比で申し上げましたが、ECは普通十八カ月程度出荷体重で四百五十キロから五百五十キロ。それから濃厚飼料にいたしますと、これは自家用の穀物がむしろ多いわけでございますが、〇・八ないし一トン。それから粗飼料といたしまして、乾草換算で千五百ないし千八百キロ。こういうものに対しまして、日本はいま乳雄肥育で申しましても平均二十一カ月。それから出荷体重が六百ないし七百キロ。それから購入の配合飼料で三トンから四トン。乾草とか稲わらで五百ないし六百キロ。この差がやはりかなりのコストにつながっておると思います。  先生もいま御指摘のありましたように、わが国における肉用牛生産が比較的短期に拡大してきました過程の中で、どちらかというと購入飼料に多く依存した形の、いわばいろんな指導団体がやりました肉牛肥育の方式、名前を申しますと、たとえば開拓牛方式とか、いろいろな方式がございましたけれども、こういう団体におきましても、現在私ども考えております経済肥育、これが単に生産者段階だけではなくて、流通消費段階でもうまく適合されるようにという実験事業を現在行っております。こういう成果を見詰めながら、私どもとすればいかにしてより少ない購入飼料で、あるいはより少ない飼料そのもので有効に肉をつくっていくかということが基本でございますので、その辺を、いままでもそういうことを努力いたしましたが、今回はさらにその辺を詰めました上でそういうことをこの法律の施行に関しての基本方針の中にうたいまして、それが単なるお経の文句に終わらないように、生産サイドではそういう肥育の仕方を十分指導いたしますとともに、流通あるいは消費のプロセスでも、そういう努力したものがそれなりに評価をされる——いま非常に多量の穀物を食べさせ、かつ長期間肥育をしておるわけでございますが、その中で、いわば非常に上物としてそれなりの価値を実現しておりますものはその中のごく少部分でございます。もちろんそういう特別の生産を全く否定するわけではございませんが、生産の大半はいま申しております経済肥育、特に乳牛等につきましてはこれに中心を置いてやっていくつもりでございます。
  86. 島田琢郎

    島田委員 さて、そうやってつくられてまいります肉が、つまりサシ型一部を除きまして大方赤肉生産という方向を目指すわけであります。  そこで、ちょっとわが国の牛肉の食べ方というのが気になるのでありますが、従来、明治開化の時代から牛肉を食べるのは特権階級みたいなもので、文明開化の音がするなんといって食べた時代から今日は大衆化されまして、一般家庭でも牛肉を食べるようになりました。ただ、残念なことに、わが国の牛肉志向はどうしてもサシ型、それが牛肉であるかのごとき観念から抜け切れないわけであります。生産段階で赤肉をつくって市場にどんと送り込んできても、果たしてそれがどんどん食べられていくのかどうかということになりますと、私はちょっと心配がございます。特にサシのスライス型、どこのスーパーに行っても牛肉屋へ行っても大体それが主軸をなしているわけであります。ブロックで買ってくる、ブロックで台所に持ってきてフリーザーに入れる、こういう習慣というのは実はまだまだ欧米諸国に比べてないわけでありますから、食べてくださる消費者の志向、いわゆる牛肉を食べる方向というものをある意味では誘導していかなければいけないわけでありますけれども、それだからといって無理やり口をあけて赤肉を食べてください、ブロックで買ってください、こう言ったってなかなかこれは進みませんね。  ここら辺のところは、牛肉消費流通という問題を含めて大変新しい政策誘導が必要だ。これは、農林省にそれまでやれというのは無理だと言う向きもあるかもしれませんけれども、しかし、つくったものを食べてもらわないことにはこれはどうしようもありませんので、そうした点についてはどのようにお考えになっておられるのか。具体的なお考えがあれば、この際お聞きをしておきたいと思います。
  87. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘がありましたように、生産されたものは、それはそれなりに有効に消費者消費していただいて、また、それの価値がそれなりに実現いたしまして初めて生産者にとっては有効な手取りとなるわけであります。  よく言われておりますが、日本の肉の消費の仕方が御承知のように従来すき焼きとかそういうものが中心で、非常に薄い肉を少量ずつ食べていく。購入の単位も、二百グラムとか三百グラムという非常に小さな単位で購入されておる。それに、よく言われるのですが、日本の食事、日本の食の文化というのは御承知のようにはしを使って食べるということでございますので、欧米のようにナイフとフォークで固いものを切ってでも食べるという手法でない。そういうことからどうしても比較的サシが入る。どうこうということではございませんが、やわらかい、薄い肉を食べていくというのがわれわれの食生活の中心にございました。しかしながら、いろいろと世代の交代等、そういうものの中で、たとえば現在は焼き肉のような、どちらかというとそういう必ずしも薄いものということでなくてもある程度食べれるものとか、あるいは御承知のハンバーグのようなひき肉を使ったものとか、それからカレー等に見られますようにある程度のかたまりというようなものも使うとか、いろいろそれなりの変化はしてきているように思います。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕  したがいまして、ある日突然全く欧米型ということにはならぬと思いますが、要するに私どもといたしますれば、かなりいまの穀物重視の、しかも長期肥育というものをある程度飼料重視型の、しかも短期肥育にしたところで、日本の肉の品質というものは、草だけで飼った、たとえば典型的には豪州等の牛肉に比べてはるかに品位の高いものでございます。したがいまして、いま申しましたようないろいろな消費者の最終的な利用の仕方に応じて、率直に申しますとすき焼きのときのような肉を何もカレーに入れる必要もないわけでございますし、焼き肉のときに使う必要もないわけでございますので、そういうかなり消費が多様化し、したがいましていろいろな形の肉を供給しても、それが最終消費につながる。しかも、そういうものはそれだけ安いなら安いなりに需要がふえるという見通しのあるものに応じまして供給できるようにする。そのためには、やはり流通段階でそれなりにそういうものの評価をしていただく。ある部位だけを極端に高く評価して、他のものはある程度値が下がり過ぎても、これは困るわけでございます。  そういうようなことを流通段階にも定着させますためには、やはり牛肉の評価の仕方についていろいろと再検討する必要もあろうかと思いますし、そのことを最終的に消費者に受け入れていただくためには、単なる取引上の問題だけではなくて、牛肉消費の仕方に対していろいろと啓蒙活動も要ろうかと思います。現に私どもも先ほど申しましたいろいろな価格決定時の対策の中で、消費者方々に肉をもっといろいろな形で利用していただくための啓蒙のための経費も組んでおりますが、こういうものもこれから逐一各地域地域におろしてまいりまして、いわば生産者合理化をするためにいろいろなやりました努力が結果として消費者にも十分受け入れられるように、そういう努力を進めていくつもりでございます。
  88. 島田琢郎

    島田委員 家畜改良増殖法で、従来の人工授精といったようなところから今度は卵を取り出して他に移植をする、こういう新たな技術が開発され、すでに実用化一歩手前まで来ているということに伴ってこの改正がなされるわけであります。そういたしますと、これが実用化段階に入ってまいりますれば、雌牛に卵を植えつけるというか、受精をさせまして、そうすると七個か八個の卵ができます。それを取り出して、一個ずつか二個ずつか、二頭産ませたいと思えば二つ持っていけば二頭できる。これは大変な増殖になるわけであります。そしてまた、場合によっては乳牛に植え込みました卵に授精のときから肉牛の精液を入れまして、そして乳牛の雌牛の中で肉牛を育てる、こういうことも多角的にできる。  こういうことで、これは大変画期的なものだ。これは画期的と言いましても、わが国で発明して始まったものではなくて、先進国ではすでにこれが実用化段階に入っているということでありますから、わが国もやがてそういう方向で実用化されていくのでしょうが、そういう応用動作というものが大変きく。中には五頭産ました。五頭というのは極端な話かもしれませんが、五つ子が欲しいなと思ったら、五つ取り出して五つ埋め込むというとおかしいが、移植をすれば五つ子が生まれてくる。それで、肉牛をたくさん育てたいときには一頭の牛に五つずつやっていけば、これは一頭に一つの子牛と違いますから、一遍にずいぶんたくさんふえる。それを十分育てて肉にしていけば、肉生産としてもずいぶん効率のいい、しかも速度の速いものになっていくという点で、私はこれは注目していい事業なんだろう、こう思っておるわけであります。  ただ、こういう法律改正に伴いまして実用化される段階で、やはり授精師さんとかあるいは獣医師さん等の技術分野における役割りというものがいろいろありますから、だれでもかれでもこれはできるというわけにはいかないので、そういう点について獣医師の資格とかあるいは人工授精師の資格という範囲でこうした大変画期的な仕事に取り組むということはそれなりに制約があるのだろう、こう思っておりまして、この際国会に提案されているようでありますが、獣医師の四年を六年にするという問題やら、あるいはまた人工授精師のこの種の技術を新たに習得するための講習とか研究会とかいったようなものが必要になってくると思う。そういう点については十全の対策として組まれているのかどうか。こういう新たな対応のできるような、そういう全国的な面で見た場合の受け皿となるべきそういう面はきちんとなっているのか。あるいはまたきちっとなるという見通しを持っておるのか。その辺のところをひとつお聞かせいただいておきたいと思います。
  89. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま先生からも御指摘のありましたように、この受精卵の移植技術につきましては、いわばいままでの人工授精の手法が雄の系統からの改良でございますが、雌のサイドからの改良のスピードアップ、あるいはいま御指摘のございました双子生産といったような、生産そのものを変えるという意味でかなり画期的な技術であるわけでございます。これは御承知のようにかなり早い段階ですでに国の試験場等においても開発されたわけでございますが、実は思ったよりも速いスピードで各地に行われておりまして、その主力は現在なお国とかあるいは都道府県の試験場といった公的機関でございますけれども、最近になりまして、民間におきましても、これはいろいろな乳業の関係の会社等もございますが、実施されておりまして、大変それが増加傾向が著しいわけでございます。五十七年に入りましてからも、四月から昨年末まででも、九百頭以上のものがこれによって生産をされている。遠からず一千頭というオーダーに乗ろうかと思います。  そうなってまいりますと、先生もいま御指摘のありましたように、人工授精というああいう手法につきましても、特定の資格を持ちました人工授精師にやってもらう。そうでありませんと、いろいろとこれは家畜改良の問題あるいは生産の問題にも混乱が起きるということで、特定の資格を持った者だけにその技術の施行を認めておるわけでございますが、それよりもはるかに高度な技術でございます受精卵の移植技術法律的には全くフリーであるということでは、これは今後の家畜改良上も大変問題があるということで、今回の制度改正をお願いしているわけでございます。  そこで、それに当たります技術者といたしましては、いろいろと職務分野の調整ということもあったわけでございますが、まず何と申しましても受精卵を採取をいたします技術につきましては、これは家畜の子宮の中でかなり外科的なことも行いながらそれを採取するわけでございまして、その家畜の健康管理と申しますか、そういう面からもいわば獣医さんのお仕事の範疇に入るということで、採取に関しましては獣医師さんがもっぱらこれを行う。  それから、それを採取しましてから、御承知のように還流しました液の中から卵を見つけ出しまして、それをいろいろと検査をし、処理してくるわけでございますが、この段階では獣医師さんがみずからこれを行っていただくか、あるいはその採取をいたしました獣医師さんのいわば指揮監督を受けながら、同様な、比較的似たような仕事をしております人工授精師、この場合もどなたでも結構ということではございませんので、この技術に関して特別の研修を受けまして免許を受けた方に限りましてその処理を行うことにする。  それから、この取り出しました卵を別の家畜に注入をいたします段階になりますと、これはいわば人工授精の手法に比較的似通った手法でございますので、これは獣医師さんはもちろんのこと、受精卵移植技術につきまして免許を受けました人工授精師さんもやれるということに法律上しておるわけでございます。  先生の御指摘の、そういう技術を持った人間がちゃんと育っているのかどうかという点であろうと思いますが、実はそういう技術につきましては、私どもいろんな形でいままでもやってきておりますが、まずこの家畜受精卵の移植技術の普及のために、五十七年度から国の種畜牧場におきまして研修の場を設けまして、その研修をするに必要な指導者の養成をやっております。それから、北海道ほか八府県におきまして、牛の受精卵移植の技術利用促進事業ということもすでに行っているわけでございます。  こういう形で、いわば技術、これは国、都道府県等の試験場等には蓄積されつつある技術でございますが、こういうものをいま言ったような形の中で指導者を育成してまいりまして、その指導者を通じまして獣医師さんあるいは家畜人工授精師さんに技術習得をしていただく。そのために必要な講習会等につきましても、これは制度的にもあるいは予算的にも用意をしているわけでございます。
  90. 島田琢郎

    島田委員 技術もそこまでいきますと、何とも温かみがない感じもするわけで、人の腹を借りて、そこで子を育ててよそにまた移していくなんというのは、本当は私なんか四十年近く牛を飼ってきておりますと、借り腹でかわいそうになという感じもしないではありません。しかし、各国含めて世界の趨勢がそういう方向にあるのだとすれば、問題は、そういう事業が末端において混乱を起こしたりあるいは不必要な摩擦を生じたりしないように、それを行政の側がしっかり指導し、誘導を図っていくという点で、今度の改良増殖法の改正の問題というのはその辺のところがポイントであろう。  ただ、時間がもう少しあれば、精液の輸入の問題等もありますから、それをやりたかったのであります。長いようで結構時間というのは足りないものでありまして、七割くらいしかやらぬうちに二時間の時間が終わるわけでありますが、最後に、大きいことはいいことだという時代はもう終わったわけですから、ひとつ日本型の酪農畜産、これがいま新しく目指していく大事な点でないか。EC型ということを言っておりますが、EC型でも、でかいところじゃなくて、本当に日本の国内で土地を有効に利用して、しかも効率のいいそういう畜産あるいは酪農ができる。しかも、そこには単年度負債が、赤字が出て負債になって残っていく、固定化負債として残っていくといったようなことがないような、そういうことを方向として目指してもらいたい。  この与えられた法案に関連いたしまして、やや関連する部分の方が多い質問になりましたけれども、私はそういう願いを一つ持っているわけで、ここに三浦課長おりますけれども、まあ、よう貸しも貸したり、借りも借りたりなんというようなことを私はずいぶん言われまして、借りる気で借りたわけじゃありませんで、貸す方も貸す気になって貸したわけじゃないのでありますが、負債というのは今日の畜産酪農家の大きな重圧になっていることは紛れもない。そういうことが、さらに新たな乳肉経営を目指すために投資をしていって、それがまたぞろ固定化負債になっていくということになれば、結果的には行政は不親切であったということになるわけでありまして、よう貸しも貸したり、借りも借りたりなどというふうなことが出てこないように、畜拡資金のいわゆる新たな使用の方向というものをこの酪振法の中で取り上げていくという方向でありますが、何も目の先にニンジンをぶら下げてもらわぬでも、われわれはやはり自分の経営を自分でしっかり守っていくということが基本であります。そういう点は、一ころのような時代といまの時代は違うという認識は生産者もしっかり持っているつもりですから、有効な金融政策を出していただくということで、何でもかんでも馬の先にニンジンをぶら下げたような、そんなうまい話だけを先行させていくような政策誘導は厳に慎んでいただきたいということをこの両法案の問題点として指摘をいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。  ありがとうございました。
  91. 山崎平八郎

    山崎委員長 藤田スミ君。
  92. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 本論に入ります前に、一点だけ酪農振興の立場からお尋ねをしておきたいことがございますので、お願いをしたいと思います。  きのうも近郊酪農業の問題について、公害の問題が取りざたされておりました。私の住んでおります地域でも、やはり酪農業というとイコール公害といったようなことが言われておりまして、そうして結局酪農業をやっておられる皆さんはどんどん、できるだけ人のいないところへ移り住んでいくのですが、気の毒なことに、開発が進んできますとまた追い立てられていくというようなのが現状でございます。最近になりまして、ふん尿処理の問題でも相当のお金をかけて、これも借金の一つですが、ずいぶん努力を尽くしているのですが、にもかかわらず、こうした問題ではやはり都市近郊の酪農業を営む皆さんは大変不安定な状態に置かれているのではないかと思います。  きょうの日本農業新聞に報道されておりますが、東京都の農水部が、この都市の農業の問題について「都市化の中での地域づくり農業ある都市」ということで調査をしております。私が日ごろ考えておりましたことと同じような調査の結果が出ているなと思って、大変興味深く読ませてもらいました。この中では、「都市化の中での地域づくり」として「農業ある都市」の長所を前面に打ち出して、そして農業ある地域の姿、つまりここで私が申したいのは酪農なんですが、そういう姿を学校教育で子供たちに考えさせていく場にしていくとか、あるいはまた「農家と非農家を結びつけ」、つまり生産者消費者とをここで結びつけ、「意思疎通をはかるコーディネーターの育成が必要」であるとか、あるいは「農協は多彩な活動の中で都市農業を育成、確保する指導事業を展開する」こういうような結論が出されております。  まことにそのとおりだと思いますが、緑の問題がやかましく言われている中で緑の保全の役割りもここで果たしているわけでありますので、そういう点では、単に新鮮な牛乳がここから提供されるということ以上に、近郊の酪農業というのはまた違ったそういう意味からの大きな役割りを果たしているのじゃないかというふうに考えるわけであります。  そういう点では、すでに私の住んでおります堺市でも当局が酪農団地を含む農業公園構想計画というのを立てまして、そういうことで経営を安定させていこうという援助をしているわけなんですが、国の方も近郊の酪農業に対してそういう点からの積極的な援助というのでしょうか、それから位置づけというものをやっていくべきじゃないか。そのことから大きく日本の酪農業を消費者の力をかりながら振興させていくという点でも、長期的に考えれば必ず効果が出てくるというふうに私は考えるわけでありますので、ひとつこの点についての御見解をお伺いしておきたいわけです。
  93. 石川弘

    石川(弘)政府委員 実は、わが国の酪農の場合によく北海道のような典型的な大型酪農地帯の例が出されますが、意外に都市近郊に相当の生産規模を持っておりまして、首都圏で申しましても、茨城、千葉あるいは神奈川、東京にも一部ございますし、埼玉といったような首都を取り巻く各県でかなりの酪農生産が行われているわけでございます。  いま先生から御指摘のありましたように、酪農というのは、一つは、フレッシュなものということからいいますと、非常に近郊にそういう産地があるということはそれなりに意義があることでございますし、それから、酪農の場合、一面では公害というようなとられ方をしますふん尿の問題も、近郊の蔬菜生産にとりましてはなくてはならない有機質でございます。御承知のように軟弱野菜のようなものは東京の場合でも都市近郊でつくられているわけでございますが、そういう場合の有効な堆肥の供給源であるというようなこと。それから、いま先生がおっしゃいましたような一つの環境、これは悪い意味で環境問題というとらえ方もあると同時に、いい意味での環境という見方もあろうかと思います。  私ども、そういう意味で、われわれがやっております施策の中でもこういう近郊の酪農というものについても決して特別の扱い、逆に言いますと否定的な扱いはしておりませんで、いろいろな生産対策なりあるいは流通消費、たとえば学校給食、そういうものでもそれなりの対策を入れているわけでございます。  それはいろいろな形がございますが、しかしながら、そうは言いましても、酪農といいますものはどうしても土地の広がりが要りますので、その広がりが大変な高地価ということで耐えられなくなるとか、余り過密になりました環境の中では、公害問題ということだけでなくて、そういう意味では動物の飼育も必ずしも十分じゃない。そういう場合に、たとえば農用地開発公団が行いますような諸事業でいわばそこへ移転をしていく。比較的地価が高うございますので、十分の資産を持ってそういうところへ変わっていかれるという例もあると同時に、いま先生指摘のような余り規模拡大とか、そういうことは考えないで、現状のままの、いわば有利な立地条件を生かして、たとえばえさ等につきましても、よくかす酪という言葉がありますが、いろいろなかすなどを使いながら有効な生産をするという場合もございますので、現地に踏みとどまって、しかもそれなりの生産を行うという場合もあろうかと思います。私ども、そういう地域地域の実態に応じまして今後とも所要の施策をやっていくつもりでございます。
  94. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 余り開発が周辺まで迫ってきてどうにもならないというところは別としましても、いま現在少なくとも一定の条件を持っているところについては、ぜひそこで展望が持てるように積極的な施策を重点を置いて進めていっていただきたいということだけ御要望しておきます。  ところで、今回のこの家畜改良増殖法の一部改正の問題なんですが、従来、政府は、家畜の精液は家畜改良に対して長期にわたって大きな影響を与える繊細微小な生命体であり、家畜改良の方向に沿って良質の精液を体系的に使用していくための特別の配慮が重要である、こういう見解をお持ちであったかというふうに承知をしております。私もまさにそういう立場は今日もなお堅持していかなければならないと思いますが、まずこの点について、法改正を提案された現在の御見解をお伺いしたいわけです。
  95. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま先生もお話しなさいましたように、家畜改良いたします場合の重要な手法でございますので、単に商業的な利益の追求というような観点から何でも売り買いをするというようなことでこれを動かすことには大変危険があるわけでございます。したがいまして、私どもはいままでは外国から優良な改良資材を入れてまいります場合は生体のまま入れてまいっておりまして、その生体のまま入れてまいったものを国内で臨時検査というような手法を使いながら、そのわが国における適応性を見ながらやってきたわけでございますが、最近におけるいろいろな情勢を申し上げますと、まずわが国におきましても、商業的なものは別といたしまして、試験研究という形では、凍結精液の輸入ということを、若干ずつではございますが、行ってまいりました。  それから各国におきましても、この種のことにつきましては、慎重さは持ちながらでございますが、家畜改良増殖のために、比較的経費をかけないで改良増殖のスピードを上げますために、外国のそういうすぐれた遺伝子等を入れてくるということは行われているわけでございますが、われわれも国内にそれなりの改良の体制を整備いたしました上で、特に信頼ができるもの、これは国際的にもかなりはっきりとその資質等につきまして判定ができるような条件ができつつございますので、そういう改良増殖上有益であるということが明らかにされますようなものにつきまして、やはり技術の進歩に応じた体制の整備をすることが必要かと考えまして今回の改正をお願いしているわけでございます。
  96. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今回のこの改正は、それは確かに時代の一つの趨勢でもあり、それから積極的に改良を進めていかなければならない、こういう要求も高まっている中でこういう改正が行われているわけなんですが、にもかかわらず、国内家畜改良に混乱を与えるような結果を招かないだろうかという心配は一方にあるわけですね。  もう一つは、特に信頼ができる、そういう判定の条件も大分国際的に整備されてきたということなのですが、輸入精液が遺伝性疾患だとか繁殖機能障害を持っていないことの証明、採取処理の経過についての証明を一切外国の政府機関に任せてしまうということに対して、それで十分担保できるのだろうかという不安はやはり一方に残っていると思います。この点についてはいかがでしょうか。  二点、お伺いいたします。
  97. 石川弘

    石川(弘)政府委員 一点目の改良体制の混乱の問題でございますが、私どもも今回の改正をいたします際に、関係者等を通じましていろいろと相談をしたわけでございます。結局、私どもといたしましても、かなりの組織を使いまして長年にわたってこの改良体制をつくってまいったわけでございますが、現在私どもは独自に検定済みの種雄牛あるいは海外から育種素材として輸入いたしております種雄牛につきましては、米国その他の先進国とほぼ同等程度まで素質を上げてきていると見ております。それから、海外精液の輸入に際しましては、やっております凍結精液の取引といいますものは、国内のそういうものを取り扱っております限られた方々、これは主として北海道の家畜改良事業団といったようなもの、それからブリーダーのある種の集団がございますが、そういう改良集団を通じまして、また、これは御承知のように人工授精師という人たちの手のみによって注入ができるということもございますので、いま築き上げております改良増殖体制は基本的に維持できると考えておるわけでございます。  今後とも、私どもといたしましては、国が持っております種畜牧場とかあるいは都道県の畜産試験場を中心にいたしまして、民間団体とも有機的な連携を保ちまして、入ってまいりましたものも使いながら優良な種雄牛の後代検定、これは、これをやることによりましてどれだけその牛が能力があるかということがわかるわけでございますが、そういうことで検定済みの種雄牛をどんどんつくっていく。それから肉用の雌牛の群につきましては、これは群としての、一頭一頭というよりも集団としての能力検定をやりまして、これを用いていくといったような手法を使いまして、優秀な素材を使って改善するスピードは上げますが、そのことが国内のいまやっておりますきちっとした改良体制を混乱させないようにやっていきたいと思っております。  それからもう一つ御心配の点といたしまして、今回外国の政府等が発行します証明書で、いわば日本が国内でやっております検査をしたものと同等なものと認めまして、それを国内流通させるということにいたしておりますが、外国の政府機関等、これは私どもが入れてまいりますのは、それなりにわれわれも信用できるような畜産技術とか衛生の技術あるいは改良技術を持った国だと思っております。  ただ、政府機関に限っておりませんのは、国の法制度の中で政府機関に最も権限を与えている国と、あるいはみずからの団体が自主的に検査することに重きを置いておる国がございますので、これは私どもほぼ同等のものと考えておりますが、そういうわれわれとしても信頼するに足る政府あるいは政府機関が採取しました種雄牛が遺伝性の疾患だとかあるいは繁殖機能の障害を持っていないということ、それから一定の資格のある者が必ず採取し、これを処理したということ、それから衛生的な施設の中で採取し、処理したというようなことをはっきり証明をしてくれまして、そういうものに限りまして国内流通を認めるわけでございます。また、こういうものは一たん信用を害するようなことをいたしますと二度と立ち直れないようなことでございますので、私どもはこれらの証明にある程度信憑性を置いていいのではないかなと思っております。もちろん、これは単に一方的に信用するだけではございませんで、これを制度化いたします際には、外国の機関なり外国のその種の団体と十分打ち合わせをし、その中でわれわれが信用するに足ると思ったところでやろうと思っております。  それから能力の点でございますが、輸入精液を採取した種雄畜につきましてある程度これがりっぱなものであるという等級を明らかにしていただくように考えておりまして、そういうものがないもの、比較的劣悪なものは私ども考えておらないわけでございます。現に、海外の主要国の種雄畜の能力はある程度公に公表をされておりまして、あの牛はこういう系統でこのくらいの乳を出す能力があるといったことは公知の事実でございますので、そういうものから取られたものであることが明らかなものについて国内に入れていって国内家畜改良を進めるという基本的な姿勢でございます。
  98. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういう基本姿勢を堅持していただくためにも、国の試験場など公的機関が中心になって改良を進めている現在の体制は今後もますます強化されていき、維持されていかなければならないものになってきたと私は考えるわけでございます。  今回の措置によってもう一つの問題は、人工授精の精液の流通に商社など営利企業が介在する可能性が生まれてくるのではないか、そうした企業の思惑で日本の家畜改良事業や畜産経営がゆがめられる事態が出てきはしないかということについての不安があるわけです。そこで、精液の流通についても一定のルールはしっかりしていかなければならないと思いますが、この点についてはどういうふうに……。
  99. 石川弘

    石川(弘)政府委員 大変特殊な商品でございまして、しかも相当な信用をもとにしまして、端的に言いますと、目で見ていいか悪いかがわかるということではなくて、きちっとした証明の中でそれなりに技術に熟知しております者が初めてその価値がわかる品物でございます。国内流通ルートは、いま申し上げましたように私どもがつくっております家畜改良のルートははっきりしておりますし、しかも扱う人は人工授精師という人たちに限られております。したがいまして、私どもは、海外から入れてまいります場合に、たとえば従来からも家畜輸入してきたというような意味で非常に専門的知識を有します商社等がこの種のものを扱うことはあると思いますけれども、それはあくまで国内流通組織に渡すための手段でございまして、そういう商社が独自にたとえば個別の農家に売り歩くというような性質のものではないと考えております。そういうことで、私どもも極力流通ルートの混乱は防止をするつもりでございます。
  100. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私がこういう問題について心配をいたしますのは、鶏のひなの問題、これはかなり事情が違うと思いますよ。しかし、私はいま鶏のひなの問題を考えましたときに、大変心が痛むわけです。昭和三十五年に貿易の自由化で外国から大量のひなが入ってまいりまして、民間のブリーダーは激減をしていったことは私が言うまでもないことですが、現在、日本の鶏のひなは採卵用で九割、ブロイラーで十割が外国の企業の供給に依存している。しかも、そうした育種企業は、石油メジャーだとか穀物メジャーだとか巨大製薬資本だとかによって支配されてしまっているわけです。こうなりますと、日本の畜産というのは単に飼料だけではなしに、こういうふうな家畜の種までも巨大な国際資本の戦略によって支配されかねないという状況になっている。そういうふうにひなの問題を考えますと、この問題についてもこれから慎重に取り組みを進めてもらいたい。牛と鶏では大分話が違うと御専門の方は言われるでしょうけれども、あえて申し上げたいわけです。  この際、鶏について聞きたいのですが、今日のこの事態、卵を産む方は九割、肉用の鶏は十割まで外国産のひなに頼っているという現状について一体どういうふうな見解を持っておられるのか、この問題を聞いておきたいわけです。時間がありませんから、できるだけ簡単にお願いします。
  101. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のありましたように、三十年代後半に主としてアメリカ中心に大量の外国種鶏が導入をされました。これはもう御承知のことでございますように、外国鶏は当時群全体として平均能力あるいは斉一性がすぐれていて、当時小規模経営だった日本の養鶏に対しまして大規模経営に非常に適合する種鶏であったという面で、また、大規模、組織的な販売方式で販売をいたしましたので、非常に小規模な経営を前提にし、また、経営自身が小規模だったわが国の養鶏は、おっしゃるような形で激減をしていったわけでございます。  現状を申しますと、これを外国鶏だけに依存するということになりますと、現在のように高度化した鶏の育種方式の場合には、輸入されます種鶏ではわが国独自の育種はできないわけでございます。もとは向こうが持っておるわけでございますので、それだけに頼っておりますと半永久的に外国から種鶏を仰がなければいかぬようになる。それから、外国鶏は御承知のように民間の営利企業でございます。そういう意味でそれなりの値段である。それから各企業非常に競争が激しゅうございまして、これは、鶏の名前でもいろいろ変わっておりますように、供給が常に不安だということがございます。  したがいまして、若干おくればせということになろうかと思いますが、私どもの方でも外国のみに依存するという体制ではまずいということで、わが育種牧場の中で相当の国産鶏のひなが供給できるように、しかもそのひなが大量飼育その他の現状にたえて、かつ非常に有利なものであるということで、幾つかの新しい国産鶏の種鶏を開発をし、現にこれを普及中でございます。
  102. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 農水省の方も国産鶏の改良努力をしているということなんですが、一体育種改良技術水準というのはいまどこまでいっているのでしょうか。
  103. 石川弘

    石川(弘)政府委員 三十九年以来育種牧場の再編整備をいたしまして、それまでのどちらかというと一つ一つの個体能力を中心にしました育種理論から、現在は集団飼育理論を採用することによりまして本格的な大規模育種を開始いたしております。  現在は、育種の技術水準自身は外国にも十分匹敵できるものになっていると思っております。卵用鶏につきましてノーリンクロス、それから肉用鶏につきましてはノーリン五〇二というようなものをつくっておりまして、その能力は外国種に十分比肩できる段階に達しております。
  104. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 国際的にも遜色のない相当の水準に達しているということなのに、実際には卵用鶏の方は九割までが外国のひな、肉用鶏はもう十割外国のひなという現状にあるわけです。だったら、いま農水省が力を入れて育種改良を進められて優秀なものになってきた、その日本のひなをもっと広げていく努力をしていかなければならないのじゃないかと思うのです。  大臣、毎朝食べていらっしゃる卵の先祖、先祖と言ってもおじいさんぐらいのものが実はアメリカのものなんです。全部そうなんでしょう。何かあって次の世代にそこのひなが来なくなったときには、日本の鶏はめちゃめちゃになってしまうのですよ。そうじゃなしに、日本で育種改良されてきたひなのシェアをもっと広げていく努力をしていかないと、長期的に見たときに、こういう状態をいつまでも放置しておいたら何かあったときに大変だなと私は思うのです。卵は安いので毎朝食べているし、日本人にとっては重要なたん白源になっている。その卵はもとをただせばよその国にまるきり依存しているというこの状態は大変だ。しかし、技術的にはぐんと改良が進んで遜色ない状態に来ているとしたら、あとは、外国の大きな企業の圧倒するような宣伝などに押されてなかなかうまく市場に乗らないこの状態を、農水省としても国産鶏を広げていくという立場で何とかする努力をしていくべきじゃないかと思うのです。
  105. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ようやく試験場と申しますか、育種場の段階で、そういう能力を持っております、卵用鶏で言いますとノーリンクロスであるとかノーリン一〇二、肉用鶏ではノーリン五〇二というものができました。これからもう少しひなを生産します業者の方にこれをやっていただきまして、何しろ鶏は数が多うございますので、それなりのひなの供給をいたしませんと、真に農家の実用の段階までいかないわけでございます。私どももその必要を認めておりまして、昭和五十七年度から優良国産鶏普及促進事業というものを行っております。これによりまして、いわばそういう能力があるということを展示をする。五県ばかりでございますが、一万羽クラスの飼養農家にこの鶏を飼わせまして、単に口先だけではなくて本当にいい鶏だということを知ってもらうというようなこともやっておりますし、それからこの国産鶏の飼い方の技術指導書のようなものも頒布をいたしまして、最近ようやくその成果が認められてきているわけでございます。  私どもとすれば、いま御指摘のありましたようにすべてが外国種のもので賄われていく必要は全くございませんし、能力的にも国産の種鶏というのは能力が高うございますので、近い将来かなりの普及を見ると思っております。
  106. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最後に、大臣にお伺いをしておきたいわけです。  貿易の自由化の問題がいろいろ言われている中で、鶏の問題などはその最たる姿になっていま出てきていると私は思うのです。さっきから私が言っていることは御理解いただいていると思いますが、とにかく九九%以上外国に依存せざるを得なくなった。形が非常に小さいとか当時の日本の養鶏の非常に脆弱な条件の中に、自由化で外国から入ってきた結果がこういう形になったわけです。  いまの牛の種の問題も、そんなことまで心配しなくていいというようなものですが、私は自由化の問題はここまできちっと考えて取り組んでいかなければ、何年かたって気がついたときには自分の国のは何にもないというようなことになりかねない、そういうことを非常に教訓として出していると思うのです。ともあれ、大変長い期間こういう外国依存の養鶏の姿があります。ここらでもう脱皮して、本当にわが国がせっかく力を入れて技術を高めたひなをもっと広げていくためにひとつ力を入れていくということで、大臣の方からもお約束いただけますか。
  107. 金子岩三

    ○金子国務大臣 自由化が後々どのようにわが国の農家に大きな打撃を与えるかという基本的な考え方は皆一緒でございます。鶏の種だけが入ってきているようでございますが、できるだけ日本の生産者生産意欲をそがないように、ひとついろいろ御指摘の点も踏まえて検討させていただきたいと思います。
  108. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  109. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  110. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、先刻質疑を終了いたしております内閣提出酪農振興法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  酪農振興法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  111. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  112. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。串原義直君。
  113. 串原義直

    ○串原委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、酪農振興法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     酪農振興法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   大家畜生産の振興は、今後の牛肉、牛乳・乳製品の需要の堅調な伸びに応えるとともに、国内草資源の有効活用とあわせ地域農業の展開、農山村の振興を図る上で重要な課題となっている。   よって政府は、大家畜生産を我が国の土地利用型農業の基軸として位置づけ、その積極的振興が図られるよう左記事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。         記  一 牛肉国内生産の維持増大と肉用牛経営の安定・合理化を図るため、繁殖経営等の規模拡大乳肉複合経営育成、一貫経営推進肥育期間の短縮等に必要な各種施策の積極的な推進に努めること。  二 牛肉輸入自由化及び枠拡大要請については、本委員会の決議の趣旨に従い、国内畜産農家が犠牲になることのないよう対処すること。  三 経営改善計画作成に当たっては、過剰投資につながることのないよう十分指導するとともに、畜産経営拡大資金については、資金需要の実態に応じた融資枠の確保、借入手続の簡素化等に努めること。  四 繁殖経営の健全な育成に資するよう、肉用子牛価格安定事業の推進に必要な予算の確保に努めること。    また、これとあわせ、肥育農家に対する素牛価格の安定対策の推進に努めること。  五 牛肉流通合理化を図るため、産地食肉センター等の整備、取引規格の改善及び品質表示の普及等必要な措置を講ずること。  六 肉用牛生産振興とあわせ、酪農の固定化負債の整理等酪農経営の体質の改善強化を図る各種施策の実施に的確を期するとともに、飲用牛乳の流通については、秩序ある取引と適正な価格形成が図られるよう早急に体制の整備をすること。  七 合理的な大家畜生産基盤となる粗飼料の増産を図るため、草地開発と田畑輪換使用のための土地改良推進、裏作の促進及び低未利用資源の活用等に必要な施策を積極的に推進すること。    また、転作田による良質粗飼料の確保を図るとともに、飼料用稲に関する試験研究を推進すること。   右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  114. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  115. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案に対して附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  116. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  117. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出家畜改良増殖法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  本案に対する質疑は終了いたしております。  討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  家畜改良増殖法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  118. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  119. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。日野市朗君。
  120. 日野市朗

    ○日野委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     家畜改良増殖法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、家畜改良増殖事業の促進が畜産の安定的発展の基本的要件であることにかんがみ、国内における事業体制の一層の整備拡充に努めるとともに、本法の運用等に当たっては左記事項の実現に留意すべきである。         記  一 家畜受精卵移植については、これが無秩序に行われ、特定の近縁系統への集中等家畜改良への悪影響を生ずることのないよう適切な指導を行うとともに、受精卵移植の応用技術及び凍結技術を確立しその普及を図ること。  二 海外から輸入される家畜人工授精用精液及び家畜受精卵の使用については、我が国の家畜改良の促進に資することを基本として、国内改良増殖体制に混乱を生じないよう充分な配慮を行うこと。    また、優良遺伝子の導入が図られるよう、海外との情報交換や技術交流を積極的に進めること。  三 受精卵移植の実用化家畜繁殖分野に係る技術が急速に進歩している実情にかんがみ、獣医師や人工授精師に対する適切な研修の実施について充分指導すること。  四 畜産経営の体質強化に資するよう、家畜改良増殖目標の達成のための各種施策を的確に推進すること。   右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いいたします。
  121. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  122. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案に対して附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  123. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  124. 山崎平八郎

    山崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  126. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。金子農林水産大臣。     ─────────────  沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  127. 金子岩三

    ○金子国務大臣 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  沿岸漁場整備開発法は、沿岸漁業の安定的な発展等に寄与することを目的として昭和四十九年に制定されました。以来、同法に基づき、沿岸漁場整備開発計画を策定し、魚礁の設置等の事業を計画的に推進するとともに、漁業協同組合等による特定の水産動物の育成を図る事業の実施を推進してきたところであります。  しかし、近年、国際的に二百海里体制が定着してきたことに伴い、わが国沿岸漁場の生産力を一層増進することが必要となっております。  このため、栽培漁業を計画的かつ効率的に推進するとともに、沿岸漁業と釣りとの間の安定的な漁場利用関係の確保を図ることとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、栽培漁業の計画的な推進のための措置についてであります。  農林水産大臣は、栽培漁業の対象とする魚種について、その種苗の生産及び放流並びに育成に関する基本方針を定めることとしております。  また、都道府県は、国の基本方針と調和を図りつつ、当該都道府県の地先水面の実情に応じた基本計画を定めることができることとしております。  第二に、栽培漁業の効果の実証及びその普及を図るための措置についてであります。  漁業者による栽培漁業の本格的実施を推進するためには、生産された稚魚を放流して漁業生産の増大の効果を実証し、その成果を漁業協同組合等に対し普及する放流効果実証事業の効率的な実施を推進する必要があります。  このため、都道府県知事は、この事業の実施主体として、一定の要件を備える民法法人を、当該都道府県に一を限り指定することができることとしております。  第三に、沿岸漁場の安定的な利用関係を確保するための措置についてであります。  国民のレクリエーションとしての釣りが盛んになったことに伴い、沿岸漁場の利用をめぐり、漁業との間で紛争が見られるようになっております。  このため、漁業協同組合等と釣り舟業者団体等との間で漁場利用協定の締結が促進されるよう都道府県知事は勧告をすることができることとするとともに、当該漁場利用協定の遵守について紛争が生じた場合にあっせんをすることができることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  128. 山崎平八郎

    山崎委員長 補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  129. 松浦昭

    ○松浦政府委員 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一に、目的規定の改正についてであります。  目的規定につきましては、沿岸漁場の生産力の増進を図るという観点から、栽培漁業の計画的かつ効率的な推進に関する措置及び沿岸漁場の安定的な利用関係の確保に関する措置を加える等の改正を行うこととしております。  第二に、栽培漁業の計画的な推進のための措置についてであります。  農林水産大臣は、沿岸漁場の生産力の増進に資するため、魚介類の稚魚の生産、放流及び育成に関する基本方針を定めなければならないものとし、基本方針においては、栽培漁業の推進のための基本的な指針と指標、技術の開発に関する事項等を定めることとしております。  また、都道府県は、その区域に属する水面における沿岸漁場の生産力の増進に資するため、国の基本方針と調和を図りつつ、基本計画を定めることができることとしております。この基本計画においては、栽培漁業を推進することが適当な魚介類の種類、その種類ごとの稚魚の放流数量の目標技術の開発、漁業協同組合等が実施する特定の水産動物の育成を図る事業に関する事項等を定めることとするほか、放流効果実証事業に関する事項を定めることができることとしております。  第三に、放流効果実証事業についてであります。  都道府県知事は、基本計画に放流効果実証事業に関する事項を定め、業務実施計画に基づいて、稚魚の放流等を行い、当該放流によって漁業生産の増大の効果を実証し、その成果を漁業協同組合等に対し普及する事業を実施する民法法人を、その申請により、当該都道府県に一を限り指定することができることとしております。  この場合、都道府県知事は、放流効果実証事業が適正かつ確実に実施されることを確保するため、その指定を受けた民法法人に対し、当該事業に協力する者が任意に拠出した協力金の収支に関する事項を含む事業報告書を提出させるとともに、業務の方法の改善命令等必要な行政上の監督を行うことができることとしております。  第四に、漁場利用協定についてであります。  漁業協同組合等と釣り舟業者の団体等が、漁場の安定的な利用の確保に必要な事項の遵守につき、それぞれの団体の構成員を指導すべきことを内容とする漁場利用協定の締結をしようとする際に、相手方が交渉に応じないときは、都道府県知事に対し、交渉に応ずべき旨の勧告をするよう申請することができることとしております。この場合において、都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該相手方に対し、交渉に応ずべき旨の勧告をすることができることとしております。  また、漁場利用協定の遵守につき紛争が生じた場合には、都道府県知事はあっせんをすることができることとしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。      ────◇─────
  130. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。金子農林水産大臣。     ─────────────  漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  131. 金子岩三

    ○金子国務大臣 漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁業法及び水産資源保護法に規定する罰金の額は、それぞれ昭和二十四年、昭和二十六年の法制定後現在に至るまで改正されておりません。この間における物価上昇等経済事情の変動には著しいものがあり、両法の罰金の額は現在の経済事情等に必ずしも適合したものとなっておりません。また、栽培漁業の進展に伴い、密漁等両法の違反が多発しており、その発生を防止することが緊要となっております。  このため、漁業法及び水産資源保護法に規定する罰金の額等について所要の改正を行うこととし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、漁業法及び水産資源保護法に規定する罰金及び過料の額をそれぞれ十倍に引き上げることであります。  第二に、漁業法及び水産資源保護法の規定に違反した者に科する没収の対象として、水産動植物の採捕の用に供されるものを加えることであります。  以上がこの法律案の提案の理由及び改正内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  132. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る五月十日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十分散会