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1983-04-27 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十七日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       太田 誠一君    川田 正則君       岸田 文武君    佐藤  隆君       志賀  節君    羽田  孜君       吹田  愰君    保利 耕輔君      三ツ林弥太郎君    串原 義直君       新盛 辰雄君    田中 恒利君       竹内  猛君    前川  旦君       松沢 俊昭君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    神田  厚君       寺前  巖君    藤田 スミ君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産政務次         官       楢橋  進君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         林野庁長官   秋山 智英君  委員外出席者         環境庁大気保全         局特殊公害課長 松隈 和馬君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 瓜谷 龍一君         農林水産省経済         局国際部長   塚田  実君         建設省都市局都         市計画課長   城野 好樹君         建設省住宅局市         街地建築課長  長谷川義明君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   森  整治君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     宇野 宗佑君   小里 貞利君     小渡 三郎君   太田 誠一君     赤城 宗徳君   川田 正則君     石原慎太郎君   岸田 文武君     大西 正男君   串原 義直君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     太田 誠一君   石原慎太郎君     川田 正則君   宇野 宗佑君     上草 義輝君   小渡 三郎君     小里 貞利君   大西 正男君     岸田 文武君   上原 康助君     串原 義直君 同月二十七日  辞任         補欠選任   田名部匡省君     吹田  愰君 同日  辞任         補欠選任   吹田  愰君     田名部匡省君     ───────────── 四月二十二日  食管制度拡充に関する請願外一件(井岡大治紹介)(第二五三八号)  同(井上一成紹介)(第二五三九号)  同外一件(池端清一紹介)(第二五四〇号)  同外一件(串原義直紹介)(第二五四一号)  同(伊藤茂紹介)(第二六〇九号)  同(大島弘紹介)(第二六一〇号)  同(沢田広紹介)(第二六一一号)  同外二件(伊賀定盛紹介)(第二六三〇号)  同(伊藤茂紹介)(第二六三一号)  同(佐藤観樹紹介)(第二六三二号)  同外一件(山田耻目君紹介)(第二六五一号) 同月二十五日  畜産経営の安定と拡充強化に関する請願小沢貞孝紹介)(第二七四七号)  同(中村茂紹介)(第二七四八号)  蚕糸業振興に関する請願小沢貞孝紹介)(第二七四九号)  同(中村茂紹介)(第二七五〇号)  食管制度拡充に関する請願外一件(上原康助紹介)(第二七五一号)  同外二件(小川省吾紹介)(第二七五二号)  同(城地豊司紹介)(第二七九五号) 同月二十七日  畜産経営の安定と拡充強化に関する請願(林百郎君紹介)(第二八九九号)  蚕糸業振興に関する請願(林百郎君紹介)(第二九〇〇号)  食管制度拡充に関する請願小野信一紹介)(第二九〇一号)  同(佐藤敬治紹介)(第二九〇二号)  同(阿部哉君紹介)(第二九四六号)  同(五十嵐広三紹介)(第二九四七号)  同(上原康助紹介)(第二九四八号)  同(城地農司紹介)(第二九四九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  酪農振興法の一部を改正する法律案内閣提出第四三号)      ────◇─────
  2. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出酪農振興法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、畜産振興事業団理事長森整治君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸田文武君。
  5. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 昨今のわが国農業をめぐる情勢はまことに厳しいものがあるように見受けられます。農産物需給緩和、あるいは土地利用型農業低迷、さらにまた農業従事者高齢化、それに加えまして海外からは市場開放の要請が強く行われる等々、まさに今日の農業は試練のときを迎えておるというように受け取っておるわけでございます。さらにまた、長期あるいは中期の展望を行ってみますと、この面におきましても将来予断を許すものではないということを強く感じております。  このような情勢の中で、一億一千万人の国民に対して安定的な食糧の供給を行う、豊かな食生活を保障する、こういうことのためには、やはり基本としまして、自給度の向上を根本に据えました総合的な食糧政策というものが求められておるように思うわけでございます。ちょうどその際に、今回、酪農振興法改正提案をされたわけでございます。その意味におきまして、これは大変時宜を得た提案である、こう考えるものでございます。  今回の法律は、肉用牛中心とする大家畜、これの振興を図ろうというものでございますが、肉用牛生産は、酪農と並びまして草を利用するという意味国土資源利用型の産業である。さらにまた水田の利用編成対策の推進など地域農業の展開、さらにまた山林や里山などの有効利用を通じての農山村の振興を図るという上で、大変重要な意義を有しておると思っておるわけでございます。今後、この肉用牛生産という問題は、土地利用型農業というもののいわば基幹をなすものとして、長期的、総合的に力を入れていかなければならない分野である、こう私ども認識をいたしております。  以上のような認識のもとに、法案内容についてお尋ねをいたしたいと思うわけでございますが、内容に入ります前に、数点、農林水産省考え方をただしておきたいと思います。  その第一は、自由化の問題でございます。  御承知のとおり、米国などにおきましては、貿易摩擦緩和という問題の一環としまして、牛肉あるいはオレンジをいわば象徴的な商品としまして、この市場開放を迫っておる、こういうことは新聞あるいはテレビでも毎日報道されておるところでございまして、このような動きに対して農家は一体どうなるのだろうかということについて心の底から心配をいたしておる。このことはいまさら申し上げるまでもないところでございます。昨年春以来、子牛の値段が低迷をいたしております。これも考えてみますと、肉用牛生産の将来に対して農家が非常に不安を感じておる、このことの一つの象徴のような気がいたすわけでございます。  この間にありまして、御承知のとおり中曽根総理が今年春アメリカに行かれまして、この牛肉オレンジの問題については貿易自由化は行わない、そして具体的な問題については専門家同士協議にゆだねよう、こういう方針が打ち出された次第でございます。そして、まさにいま申し上げました専門家協議ということのために農林水産省佐野局長アメリカに行っておられる。  そこでお尋ねをいたしたいのは、今日行われております専門家協議、これがいかなる基本的姿勢のもとに行われるのか。いかなるスケジュールのもとに、どのような目標を頭に置いてこの協議が行われておるのか。これについて農林水産省から御報告を賜りたいと思います。
  6. 楢橋政府委員(楢橋進)

    楢橋政府委員 牛肉自由化、また枠の問題、また交渉についてのお尋ねでございますけれども牛肉につきましては極力国内生産を図っていく。また、国内生産で不足する分を安定的に輸入していくということが基本となっておるわけでございます。また、わが国牛肉生産というものは、わが国農業の再編成を図る上で不可欠でもあります。したがいまして、輸入制限を撤廃することは困難であると考えております。  また、枠の問題につきましては、農林水産委員会の昨年の四月の決議及び十二月の申し入れにおける、農業者が犠牲にならないよう対処するとの趣旨を踏まえて慎重に対処していく次第でございます。  今後の交渉進展ぐあいにつきましては事務当局から答弁をいたします。
  7. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 お尋ねの今回の日米交渉でございますが、昨日の夜からけさにかけまして第一回目の交渉を行っているわけでございます。さらに、日本時間で言いますときょうの夜からあしたの朝にかけて二回目の交渉をすることでございますが、交渉態度内容等につきましては、いま政務次官からお答えしましたような基本的態度交渉に臨んでいるわけでございます。
  8. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 過般の農林水産委員会決議を踏まえまして、慎重に対処せられんことを望みたいと思います。  なお、それに関連をいたしまして、実はこの法律自由化の問題との関連、これをひとつお尋ねをしておきたいと思うわけでございます。  と申しますのは、この法律を受けとめる際に、いわばこれは自由化前提として、そのための地ならしをする法律だ、こういうような受けとめ方をする向きもあるわけでございまして、この辺についてどうお考えになっておられるのか、あらかじめお伺いしておきたいと思うわけでございます。
  9. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 今回の法律は、国内におきまして極力効率の高い肉用牛生産を行いまして、国民に安定的に牛肉を供給するということの考え方基本としてつくっておるわけでございますが、対外関係で申しますと、何と申しましても豪州あるいはアメリカといったような大変な広大な土地を有しております国の肉用牛生産とは基本的に生産構造を異にするわけでございます。こういう基本的に生産構造を異にする国との国境措置につきましては、いかに国内生産振興いたしましても、やはりそこに基本的な格差があるわけでございます。私どもは、その格差につきましては、やはり従来のような国境措置を設けませんとその間の調整ができないというのが基本的な考えでございますので、本法案前提として自由化があるわけではございません。
  10. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 次に、牛肉価格の問題についてお考えをただしておきたいと思うわけでございます。  牛肉価格につきましては、日本はとかく諸外国に比べて非常に高いというような声が消費者の中にたくさんございます。また、そういうことが一つの背景になりまして、貿易摩擦の問題が出てきておるという面もあるような気がいたすわけでございます。今後肉用牛振興していこうという際には、もちろん生産者協力も必要でございますが、消費者理解というものも必要でございます。そういう立場も含めまして、今後牛肉価格、これをどのように持っていこうとしておられるのか、この辺をお尋ねをいたしたいと思います。
  11. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、やはり消費者理解を得る形での国内生産増強考えませんと、国内生産増強が単に消費者の負担だけで行われるということになろうかと思います。幸い最近牛肉消費が伸びておりますことも、ここ数年牛肉価格比較的安定的に推移をいたしておりまして、そのことが消費者消費拡大にも役立っていると考えております。  しかしながら、いま御指摘がありましたように、海外との間では、格差は縮小しつつありますが、なおかなり格差がございます。先ほど申しましたアメリカ豪州のような広大な土地を保有する国とは比較はなかなか不可能でございますが、比較土地条件が近接しておると思われるECとの間でも、なお、物の比較は大変むずかしいわけでございますが、二割から三割ぐらいの格差はあるのではなかろうか。この二割、三割程度格差につきましては、ここ数年間における格差の縮まりぐあいなり、あるいはこれから生産者協力を得ながら生産性を上げていくことによりまして、ある長期期間と申しますか、中長期的な目標を掲げて接近するわけでございますが、この二、三割程度格差は縮減する可能性は十分あるのではなかろうか。したがいまして、よく私ども申しておりますが、ECにおきます牛肉価格水準とほぼ似通いました国内牛肉ECは大半が乳用種でございますが、この乳用種においてほぼ均衡をとれるようなところを今後の生産及び流通合理化目標としたいと考えております。
  12. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 いま、乳用種についてはヨーロッパと二割ないし三割の格差がある、これを何とか埋めていきたいというお考えを承ったわけでございますが、さてそれをどうやって実現するかということがいろいろ問題があるように思うわけでございます。日本のように国土が狭い、傾斜地が多い、そういうような自然的制約の中で、この土地利用型産業としての乳用牛育成ということはいろいろむずかしい問題があるように思うわけでございますが、具体的にどこをポイントとしてどういうふうに進めていこうとしておられるのか、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、私、EC比較的似ているとは申し上げましたが、いま御指摘ありましたように、土地の広がりなりあるいは傾斜度というようなことも考えますと、なお日本ECよりも土地条件には恵まれていない面があろうかと思います。  私どもがそれにもかかわらずEC並みを目指してと申しておりますのは、一つは、日本の場合、ECに比べまして経営規模においてまだ小そうございます。これは、牛肉生産、それから酪農もそうでございますが、日本の場合まだ歴史が浅うございましたが、かなりテンポ経営規模拡大が行われておりまして、このことがもう少し供給しますコストを下げるような要素になるのではないか。たとえば肥育で申しますと、三十頭程度肥育規模考えますと、労働時間四十時間とかかっておりますものが、たとえば百頭規模まで上げますとその労働時間が半減するとか、それから、これがわが国の場合一番弱いわけでございますが、粗飼料、特に飼料自給度の問題が日本は低うございます。これを上げていくことによって生産効率化を図られるとか、それからもう一つ、御承知のように日本の場合は比較的いろいろと手を尽くして牛を飼っております結果、出荷の月齢が大変延びてきているとか、あるいはそのために、えさを与えた場合に平均一日当たりどれだけ体重が増加するかという、このあたり効率が落ちているとかというような問題もございますが、このようなことにつきましては、流通消費の面も含めて、なお経済的肥育に対する改善余地が残っていること。それから、たとえば乳牛につきまして常に言われておりますように、乳用種の場合、その乳雌を要するに乳牛として飼う場合よりも、乳雄の場合に事故率が大変高うございますが、このあたりもいわばもう少し酪農段階乳雄も飼うことによって事故率を下げられるとか、あるいは肥育コスト自身についても、先ほど申しましたようないろんな形で若干下げられるというような改善余地はあるわけでございます。  私ども、そういう改善すべき点を一点一点、今回の法律に掲げておりますいわばいろんな基本的な指標とかあるいは計画とかという中に織り込んでまいりまして、いま申し上げました点を逐一農家段階に普及することによって、日本の場合はECテンポよりももっと早いテンポ改善し得る可能性があるのではないか。それだけ後から追いつく姿勢でございますので、その点を中心にいわばEC並みを目指していきたいと考えております。
  14. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 それでは、法案内容に入らしていただきます。  今回の改正によりまして、法律の題名が、いままでの酪農振興法から新たに酪農及び肉用牛生産振興に関する法律、こういう形に改めようとされておられるわけでございます。また、従来の酪農近代化計画制度、これにつきましても酪農及び肉用牛生産近代化を図るための計画制度、こういう形に改められることが計画をされております。  言うまでもなく、酪農経営肉用牛経営、この二つはともに牛という草を食べる動物を飼育しまして営まれる畜産経営でございまして、共通する面を多く持っておるわけでございます。したがって、両者を一体として扱うということは大変的を射た対応策であろう、こう受けとめるわけでございます。ところが、昨今、北海道やさらに愛知県等の酪農が盛んな地域におきましては、酪農家が生まれた子牛を保留いたしまして、肉用牛として哺育、育成を行うという例がだんだんふえてきております。また、今後ともさらにふえていくよに見通されておるように聞いておるわけでございます。  このような状況を踏まえまして、農林水産省は今後酪農肉用牛生産との関連をどのようにとらえていかれるのか、また、新しい計画制度の中でどのようにこれをとらえていこうとしておられるのか、これについて御答弁をいただきたいと思います。
  15. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、わが国肉生産の七割が乳用種から出ているということは御承知のとおりでございますが、そういういわば酪農というものの中に肉用牛生産の非常に大きな部分があるということが一点ございますし、それからまた、御指摘がありましたように、その酪農経営の中にも、酪農というものは単に乳を得るものだけではなくて、そこで生まれます子牛だとか、あるいはさらにそれを一貫的に肥育する。この一貫も、経営の中の一貫という場合のほかに、地域として一貫的な生産をするというような場合もございます。そういうことから、いわば今回の法改正におきましては、酪農肉用牛生産を大家畜生産という意味で一体的にとらえてあらゆる計画なり実行をやっていこう。これはもちろん、たとえば肉専用種のみの生産を決して否定しているわけではございませんで、地域におきましてはそういう専用種のみの生産が相当行われている地域もあるわけでございますが、この場合とて、先ほど先生も御指摘のありましたように、草地を使うという問題あるいは肥育技術というような問題になりますと、非常に共通的なものがございます。さらに、今国会にも御審議いただいております、たとえば家畜改良増殖法の中の受精卵の移植の技術というようなことも考えますと、今後ますますこの両者は一体的に考えるべきものと考えておりまして、そういう意味で、国が立てます基本方針におきましてもそれから都道府県計画あるいは市町村計画あるいは各経営体経営改善計画におきましても、この両者結びつきを頭に描きながら最も効率的な大家畜生産ができるようにということで、両者結びつきを大変強調した形で制度を組んであるわけでございます。  もう一度、誤解があると申しわけございませんので念を押して申し上げますが、そのことは決して肉専用種だけの合理化というようなことを否定しているわけではございませんで、両者関連は十分考えてやっていきたいと思います。
  16. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 いろいろお尋ねしたいことがございますが、次に、肉用牛経営問題に触れてみたいと思います。  今回、新たに肉用牛生産農家経営改善計画を作成しまして、市町村長認定を受けることができる制度が設けられまして、この認定を受けた企業に対しましては農林漁業金融公庫などから長期かつ低利の資金が供給されることになりました。大変結構なことでございます。ただ、私いろいろ実情を聞いておりますと、肉用牛経営というものをひとつ本格的にやろうということになりますと、かなり資本を要するわけでございますし、その資本の調達及びそれに関連する資金コストというものが経営を大きく圧迫しておる面もあるやに聞いておるわけでございます。  こういう意味におきまして、肉用牛経営農家の現状をどのように認識をしておられるか、また、これをどういう方向改善をしていこうとお考えになっておられるか、これについての御意見を承りたいと思います。
  17. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘がございましたように、大家畜生産の中で、酪農分野につきましてはかなり早い時期から生産振興施策が集中しておりまして、専業的で、かつ大規模酪農家群が出現してきたわけでございますが、肉用牛生産は、行政のタイミングといたしましてもあるいは生産者対応といたしましても、酪農よりも若干おくれて出発をしてきているように思います。担い手としましても、専業あるいは第一種兼業のウエートも高うございますが、どちらかと申しますと、まず繁殖経営につきましてはまだまだ小規模でございますし、その場合に事業的というものよりもむしろ稲作その他のものとの複合型が多うございます。そういうことで、いわば子牛価格変動等もございまして、率直に申しますと酪農に比べまして比較生産の伸びが低かったように私は思います。  それから、肥育につきましては特に乳雄肥育中心にしましてかなり規模経営も出現したわけでございますが、この場合、残念ながら草地を伴っておりませんで、どちらかといいますと購入飼料依存度が高い、あるいは肥育期間長期化してコストが上がってきているというような問題もあるわけでございます。したがいまして、今回私どもは、かつて酪農につきまして試みましたと比較的似たような考え方、いわば国として基本的な政策方向を打ち出し、それを地域に結びつけますための都道府県計画なり市町村計画を策定して、改善すべき基盤の問題あるいは飼養技術の問題、そういうようなものに目標を掲げてこれを誘導しようという、酪農においてかつてとられましたとほぼ同様の手法をこれに加えてやっていきたいと思っております。  先生も御指摘のように、新たにこういうものを創設いたします場合に、やはりそれなりの資本の投下が必要でございます。特に、食肉経営の場合は酪農のように日銭が入る仕事ではございませんし、比較長期資本を寝かせなければいけないという特性を持っておりますので、いまお話がありました改善資金というような比較長期資金を入れていくとか、あるいは基盤整備等につきましては草地改良その他のものを集中していく、あるいは家畜導入のためのいろいろな助成制度を充実する、あるいは子牛の価格変動経営に大変大きな影響を与えますので、子牛の価格安定対策を充実するといったことで、いわば酪農に追いついていくつもりで政策を充実したいと考えております。
  18. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 続きまして、飼料の問題について二点お尋ねいたしたいと思うわけでございます。  まず第一点は、自給飼料の問題でございます。これからコストを下げていこうというときに、自給飼料の活用は政策上も大変大事なポイントになってくると思うわけでございますが、自給飼料増強、この面につきましてどういう政策考え、どういうふうにこれから進めていこうとしておられるのか、これが第一点でございます。  第二点は、今度は輸入飼料の問題でございます。自給飼料に大きく依存していこうとお考えになりましても、やはり輸入飼料に依存せざるを得ないという面は当然出てまいりましょう。ところが、この輸入飼料の供給が果たして安定的に確保できるものだろうか、仮にこれが高騰したりした場合どんなことが起こるだろうか、こういう面がいろいろ懸念されるわけでございます。  飼料の問題について二点お尋ねをいたします。
  19. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 いわば自給飼料の給与を向上させることが大家畜経営の場合の基本であることは、酪農の場合でも同様であったわけでございます。そういう意味で、私ども施策の相当重要部分を自給飼料生産増強に充てることにいたしておりまして、御承知の今回策定されます第三次の土地改良長期計画におきましても、約四十七万へクタールの農用地造成のうちの約六割は草地造成に充てるという計画をいたしております。  それから、何と申しましても既耕地における飼料作物の作付拡大が必要でございまして、いま私どもが用意をいたしております畜産総合対策等の中で、ばらばらにあります飼料基盤をいかに集積をしていくかとか、転作作物の中に飼料作物をより多く入れ、かつ定着させていくかとか、あるいは水田裏がかなりあいておりますが、こういうものにもっと飼料作物が入らないか、あるいは飼料作物自身も家畜と結びつかない生産もある程度導入せざるを得ないわけでございますので、そういう飼料作物の生産流通組織をどう整備するかといったこともやっております。それから、稲わらとか野草といった低利用あるいは未利用資源をどう活用するかとか、五十八年度予算で大分充実いたしましたが、公共育成牧場をもっと再整備していこう。そういうことを通じまして、われわれの総力を注入しても粗飼料の給与率を上げる施策を邁進したいと思っております。  もう一つ、御指摘の輸入飼料でございますが、御承知のようにここ数年比較的安定的に推移をいたしておりましたが、三月にアメリカのいわば穀物の作付削減が表に出ましてから穀物の価格が若干上向きに来ましたけれども、その後は安定的に推移いたしております。私ども、結局今回の措置が価格を急速に上げる可能性は少ないとは思いますが、どちらかといいますと、ここしばらく下がりぎみの穀物相場が若干引き締まる効果は出てくるのではないか。  外国の穀物価格と円相場によってほぼ輸入飼料価格が決まるわけでございますが、極力あらゆる情報を収集しながら、長期的に比較的上がり幅の少ない形で供給できるような形を期待しながら、万が一上がりましたときには、御承知のように配合飼料価格安定制度がございまして、急速な上げにつきましてはこれを補てんすることによって価格の暴騰を防ぐという措置も持っております。それから、若干ではございますが備蓄制度も備えておりますので、こういう制度を巧妙に運用しながら、極力海外飼料価格変動が直接生産農家に及ぶことが少なくなるように運用をしていきたいと思っております。
  20. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 続きまして、子牛価格の安定制度、これはいままで法律によらない形で実施されておりましたことを、今回の改正を機会に法律の上でも明定をする、大変意義は深いと思っておるわけでございます。今回法律で明定をするのを機会に、特に新しい運用を考えておられる面があるかどうか、これが第一。  同時に、昨年来子牛価格低迷によりまして、大分基金の支出が行われたようでございます。一体その辺、また昨今低迷が一層続いておるわけでございますので、財源の面で心配はないか。こういうことをひとつお尋ねいたしたいと思います。
  21. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 肉用牛肥育の場合に主要な経費と申しますと、子牛の価格とえさでございますが、この子牛の価格につきましては、育成いたしております繁殖農家にとりましては高いことを望み、しかし、肥育します農家はどららかというと割り安な方がいいということで、同じ生産農家の中でいろいろと利害が対立してきた問題でございますが、双方にとって望ましいのは、やはりある程度安定した一定の価格で推移することが一番いいわけでございます。  したがいまして、いままでも子牛価格安定制度を運用していたわけでございますが、これは御承知のように予算的な措置だけで維持をいたしておりまして、特に今回のように比較的長い期間価格低迷をいたしました場合に、原資の問題なりその他農家の方々に不安をかけるという要素も若干はあったかと思います。今回の法改正によりまして、この制度は恒久的な制度となるわけでございますし、国もそれに必要な財源を確保するということになっておりますので、この制度を適切に運用していくことによって、農家の不安を早く静めたいと思っております。  御指摘のように、昨年から今年にかけまして約百億近いものが出るわけでございますけれども、これにつきましては、過去における積立金が相当ございますので、大半の県におきましては原資に不足を生ずることはないと思っております。ただし、若干の県について若干そういう不安もございますので、今回の法律で明定されます全国の協会が不足いたします原資を各都道府県の基金に融通をすることになっておりますが、この点につきましては、昨年までの基金が七億でございましたが、今回の畜産物価格決定の際にこれに約三十七億円をプラスいたしまして、四十四億円の原資を持っているわけでございます。  なお、その際に、現在基金協会に融資をいたします場合に年利二・五%の金利を取って貸し付けることにいたしておりましたが、今回、基金の充実と相まちまして、全国協会が各県基金に融通をいたします金利を無利息といたしますとともに、償還期限につきましても四年据え置き八年償還という有利な条件を付することによりまして、県基金が欠乏した場合におきましても生産者に不安をかけないようにというような内容的な充実措置をやっているわけでございます。  なお、今後、本法成立の暁におきましては、この基金の運用につきまして、さらに全国的に整合性を保つ等、基金の内容を充実したいと思っております。
  22. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 最後に、政務次官から、以上のような議論を踏まえまして、肉用牛振興についてのお考え方について集約をしていただきたいと思います。
  23. 楢橋政府委員(楢橋進)

    楢橋政府委員 牛肉国民にとりまして重要なたん白質の供給源であり、また、肉用牛農業経営の重要な一部門でありまして、農業及び農村の振興を図る上で重要な役割りを担っている、こういうふうに考えております。  したがいまして、肉用牛生産土地利用型農業の基軸として位置づけ、長期的な視点に立ってその振興を図っていくことが肝要である、かように考えておる次第であり、また、これは課題であるというふうに考えております。  このため、今回の法改正に基づき、酪農肉用牛生産近代化基本方針において、肉用牛生産振興合理化に関する基本的な方針を明らかにしまして、この方針に即しまして、飼料基盤の整備、低利資金の融通、子牛価格の安定など諸施策を総合的に実施し、振興を図ってまいりたい、かように考えております。
  24. 岸田委員(岸田文武)

    岸田委員 終わります。
  25. 山崎委員長(山崎平八郎)

  26. 串原委員(串原義直)

    串原委員 私は、最初に自由化問題で大臣に伺いたいと思いましたけれども、何か参議院の本会議の都合で大臣が後ほどになるようでありますから、それは後に譲りまして、法律改正案について伺ってまいりたい、こう思います。  まず伺いたいと思いますのは、大臣がいませんから次官からお答え願いたいが、今度の法律改正によりまして、酪農並びに肉用牛の農政上の生産の位置づけ、これはきちっとしておかなければいかぬと思う。この際、明確に御答弁を願いたい。
  27. 楢橋政府委員(楢橋進)

    楢橋政府委員 今回の法律改正に当たって、今後の肉用牛生産の農政上の位置づけにつきまして御質問でございます。  牛肉については、今後多くの農産物の需要が停滞し、あるいは減少傾向をたどると見込まれている中におきまして、従来ほど高い伸びではないものの、今後とも引き続き安定的な需要の伸びが見込まれているというふうに思います。したがいまして、このような需要の伸びに対応した国内生産の増大を図っていくことが必要となっております。  また、肉用牛生産は、酪農とともに本来草資源を利用して行う国土資源活用型の産業であって、水田利用再編対策の推進など、地域農業の発展や山林等の有効的な利用を通じて農山村の振興を図る上で重要な意義と役割りを果たしておりまして、今後、わが国土地利用型農業の基軸として長期的観点に立ってその振興を図ることが農政上重要であると考えます。  以上のような肉用牛生産の農政上の位置づけについては、今回の法律改正によって国の基本方針内容として新たに設ける酪農及び肉用牛生産近代化に関する基本的な方針の中で明らかにし、国民的合意のもとでその振興を図ってまいりたい、かように考えております。
  28. 串原委員(串原義直)

    串原委員 その考え方に立って、この法改正に基づいた肉畜振興を図っていこうといたしますならば、次に伺いたいわけでございますが、需要に見合う安定した生産長期計画というものがなければならないと私は思う。その計画は、言うならばこの制度運用の基本となるべきものである。その長期見通しについてはどのようにお考え、進められようといたしておりますか。
  29. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 牛肉長期の需給見通しにつきましては、御承知基本法に基づきます「農産物の需要と生産長期見通し」がございまして、これによって示されているわけでございます。  私どもも、現在の長期計画の需給の状況等を見まする場合に、牛肉につきましてはほぼこの見通し線上に近いところを動いているわけでございますが、今回、本法の改正によりまして新しく計画をつくります際には、やはりこの長期見通しの線に即しまして計画を立ててしかるべきではなかろうかと思っております。したがいまして、最初に立てます場合には、現行長期見通しの六十五年を一応の目標年度といたしまして、この長期見通しとの整合性を考えながら目標を定めていくつもりでございます。
  30. 串原委員(串原義直)

    串原委員 つまり、五十五年十月ですか、長期見通しというものを発表された。その見通しに基づいて基本的なレールは進めていこうということでありますが、いま局長さん若干答弁の中で触れたけれども、私はあの程度の大ざっぱな見通しではだめだと思っておる。いつもそうでありますけれども、過去の例について検討してみますと、見通しと実績が常に大きくかけ離れていくというのが過去の例だった。したがって、生産体制に大きな影響を与えたばかりではなく、結果は農家畜産経営をひどく悪化させた。  したがいまして、今回法改正までして肉用牛対策を推進するということであるならば、より具体的にきめ細かな、言うならば年次別というくらいな長期計画というものをきちっとつくっていかなければいかぬ。こういうつもりで十年経過しましたけれども、知らず知らずの間に答えはずいぶん違っておりましたということではいけないと思う。どうですか。
  31. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 もちろん生産の中でも、たとえばつい最近の動きを見ましても、需要につきましても景気の低迷等でいわば線上よりも若干低かったこともございますし、また、逆にこれを上回るようなこともございますが、需要べースで申しますと、最近の動きは三%台から四%台の間をほぼ動いております。生産につきましても、過去のたとえば石油ショックのいわば後遺症と申しますか、御承知のように五十三年、五十四年あたりは供給量が若干減りまして、結果的に輸入を拡大するというようなこともございましたが、その後は、今度は酪農の方の駄牛淘汰が進むというようなこともございまして、線上にまた戻ってくるということもございます。  したがいまして、一年一年あるいは非常に短期に見ますと必ずしもあの線上ではございませんが、牛肉の場合、特に幸いに消費需要が伸びているということもございまして、需要なり生産なりについてもいわば全くけた外れということではございませんで、ほぼそれに似たような傾向値で動いているということがあろうかと思います。  今後、生産につきましては、やはりある程度政策的努力をいたしませんと必ずしも長期計画の線上を走らないという不安もあろうかと思いますが、私どもは、むしろこの長期計画に示されておりますような生産の量につきまして、極力それが達成できるように今後の各施策を集中していきたいと考えておるわけでございます。
  32. 串原委員(串原義直)

    串原委員 つまり、長期見通しというものは六十五年という目標で示してありますね。その大きなレールは違わないものであろうし、変更するつもりはないであろうけれども、しかし、それにしてもいま少し計画的に、生産と需要を含めて年次別というほどにきめ細かな計画というものを立てた上で対策を講じていく必要があるのではないか。大体十年後はこうなるでございましょうということだけでは、実は農家の期待にこたえる、ある意味では消費者の期待にもこたえる肉用牛振興というものは達成できていかないのではないか、こう思うのですよ。そういう意味で私は質問しているわけであります。いかがですか。
  33. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 肉用牛の場合、肥育に相当の期間がかかるわけでございますから、毎年ということもさることながら、やはり少し先のことを見通してやりませんと農家の方が安心して仕事ができないということは事実でございます。そういう意味で、六十五年というものを見通しながら生産がこの程度までできるということ、これは今回は県計画におきましては頭数等もある程度示していくわけでございますので、そういう面である程度の見通しはいままでよりはよりはっきりする。ただ、毎年毎年の需給ということになりますと、何と申しましても短期的需給変動が大きく作用いたしますので、今回は長期の見通しを示しますと同時に、地域地域での飼養頭数等についても目標を掲げるわけでございますので、農家にとりましてはいままでよりかなりはっきりした政策目標として出るのではなかろうか。  御指摘のように、非常に短い期間で切ってまいりますればよりはっきりいたすということもございますが、そうなりますと今度は短期の需給との変動格差ということをどうするかというような別の問題も出てくると思いますので、私どもは毎年ということもさることながら、ある程度の中長期的見通しと、それから地域地域でどのような飼育をしていくかということをあわせながら農家を誘導していきたいと思っております。
  34. 串原委員(串原義直)

    串原委員 いま答弁の中でも触れられましたけれども、肉牛生産というのはずっと長い長期的なものがなければ目標達成が不可能なものである、これは議論の余地がないと思います。そういうことでありますだけに、私はそのことを強調しておきたいわけでありますけれども、いま言われました中長期計画あるいはさらには地域別の目標、こういうようなものをこの法改正に合わせてやるということでございましょうが、そのかがみというのはいつごろ決める、お示しになるということになるのですか。
  35. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 法律を施行しました後六カ月以内でやっていくわけでございますので、そういう時期を目当てにして準備はいたしておきたいと思っております。
  36. 串原委員(串原義直)

    串原委員 では、およそ今年末には作成をして全国、各県、各地域目標を示していく、こういうことですね。
  37. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 今年中にそういうことになろうかと思います。
  38. 串原委員(串原義直)

    串原委員 そういたしますと、その計画ができ上がる、その計画を達成いたしますためには、関係する団体、農協等もそうでありましょうが、関係する団体と一体にならない限り不可能なことだと私は思う。つまり、官民一体という言葉がいいかどうかわかりませんが、そういうかっこうでお互いに協力していかないと計画達成はなかなか不可能だ、こういうことにもなりかねないと思う。  したがいまして、私は、ここで一つの組織、たとえばこれは仮称でありますが、肉用牛生産対策会議、対策協議会と言ったらいいでしょうか、そういうような機関をつくりまして推進していくべきだと思う。いかがでしょうか。
  39. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 今回いろいろ制度を見直しました際に、一つの参考といたしましては、酪農がたどってきた道ということをいろいろと考えてみたわけでございます。酪農の場合は、いろいろな制度的なものと同時に、いわば行政側とまさしく生産サイド、普及組織その他いろいろなものが一体となってこれを伸ばしてきたということ、これは非常に重要なことだと考えております。  私ども、いま御指摘がありましたように、今回の肉用牛生産につきましても、そういう意味で系統組織その他各種の組織を活用いたしまして、いわば今回改正しました趣旨が徹底し、かつ経営がそのような形で発展していくということで、現在考えておりますのは、五十八年度におきます指定助成事業の中で肉用牛関係の民間諸団体を組織化いたしまして、肉用牛生産振興協議会というものを設けまして、行政と連携を保ちながら生産技術に関する指導とかその他の諸活動をすることを援助するつもりでございまして、御趣旨に従ったような意味でわれわれもこういう民間の諸活動と一諸になってやっていきたいと考えております。
  40. 串原委員(串原義直)

    串原委員 振興協議会というような名前の組織を考えて進めていきたいと思う、大変結構だと思っているのでございますが、いまのところ考えているその振興協議会に参加を願う団体はおおよそどんなところを考えていますか。
  41. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 農業協同組合系統とかあるいは肉用牛協会あるいはその普及組織、その他この問題の推進に必要な諸機関はすべて包含をいたしたいと考えております。
  42. 串原委員(串原義直)

    串原委員 次に移ることにいたしますが、酪農肉用牛生産とを結合させたいわゆる乳肉複合経営を推進しようとしているようでありますけれども、その本当のねらい、真のねらいはどこにあるのか。その乳肉複合経営の現状はどんなぐあいになっているのか。さらに、この乳肉複合経営を推進しようとしていく方向はどんなところを考えていらっしゃるのか。この際明らかにしてもらいたいと思うのです。
  43. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 乳肉複合経営と言われておりますものは、たとえばEC等におきましてはこれは別に乳肉複合経営というような名前ではなくて、そういうこと自身を農業考えているところが多いわけでございますが、わが国の場合、酪農が非常に専業的に発展いたしました結果、酪農家がいわば肉のところまでやっているものは、例といたしましては必ずしも現段階で多いわけではございません。比較酪農の比重の高い地域でサンプル調査をいたしました結果、百六十八の市町村での調査でございますが、いわば乳肉複合と言われるものはまだ経営体制としましても五%程度でございました。これは五十五年でございますが、五十七年の同様の調査、これはちょっと調査の仕方が違いますので調べにくいと言えば調べにくいのですが、この五に当たりますパーセンテージが七というように上がってきておりまして、私は地域によってはかなりこういうものが現に行われていると思っております。  そこで、乳肉複合経営でございますが、一つ農家の中で、個別経営の中で、酪農に加えて肥育も行う。肥育と申しますか、育成の段階までとかあるいは一貫して肥育まで行うというのもございますし、あるいはそういう個別経営では無理といたしましても、一つ地域としてとらえましたときに、たとえばそこで生まれます乳雄が遠くに動かされるのではなくて、地域の中で専門的な肥育の方によって肥育されるという場合もございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、そういうことが酪農経営の面から申しましてもわが国肉用牛生産の面からしましてもかなりのプラスになるのではないか。たとえば、よく言われます乳雄事故率が二〇%弱あるわけでございますが、その事故のうちの十数%、ほぼ大半がこの哺育、育成期間中に起こっております。たとえば乳雌のことを考えますと事故率が非常に低いわけでございますので、個別の酪農家といたしますれば、余りめんどうなことをして子牛を育てるよりもスモールの段階で放した方が経営的に楽かもしれませんが、国の肉資源という観点から見ますと、ここで起きます十数%の事故というのは大変もったいない、要するに国民経済的に見ればそれが肉資源に回ります場合ははるかに有利だということもございまして、これに対する助成も今年度考えております。そういうことから、もう少しこの乳肉が複合して経営されるような酪農経営体なりあるいは酪農経営地域が育つことがわが国肉生産にも大変なプラスになります。それから酪農の面からしましても、牛乳の価格だけではなくて肉においても収入を得るという面でもプラスになるのではないか、そういうことがこの考え方の基礎でございます。  しかし、私どもはすべてを乳肉複合でと言っているわけではございませんで、非常に大規模な専業的経営としての酪農経営も当然あるわけでございますし、あるいは肉用牛のみの専業的経営も特にこれは和牛地帯等についてあるわけでございますので、そういう地域とか経営の実態に応じまして、必要に応じてこの乳肉の複合経営がより大きな地位を占めるようにということで考えていきたいと思っております。
  44. 串原委員(串原義直)

    串原委員 そういたしますと、肉専用種につきましてはどのような推進策をとっていかれますか。
  45. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 肉専用種につきましては、大きく分けまして二つあるわけでございますが、一つは御承知乳雄肥育でございます。これは比較的大規模で、かつどちらかと申しますといわば企業的な形でございます。この分野につきましては、供給源たる酪農との結びつきを強化をいたしまして、極力先ほど申しました子牛の事故等もなくする。経営面でも草地を極力利用する。それから、どちらかといいますと草資源から離れて購入飼料に依存しがちでございますので、自給飼料率を向上するとか、それからいつも御指摘があります肥育期間長期化といった問題もございまして、こういう経済肥育を目指すということで推進をやっていく。いままでもかなり規模化しておりますが、一つの推進の方向は出ているかと思います。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕  問題は、もう一つの、どちらかといいますと和牛でございますが、和牛につきましては、まず大体繁殖農家規模が大変零細でございまして、そこでの変動が非常に大きいという問題がございます。ただし、この繁殖農家につきましても、御承知のように五頭以上飼育層から出てきておりますものがすでに四二%程度になっておりますので、この繁殖農家規模拡大あるいは他の兼業との結びつきを強化いたしながら安定的に規模拡大するということが第一義的であろうかと思います。そこから出てまいります肥育につきまして、どうも繁殖と肥育というものがかなり強く分離をいたしておりますが、このようなものにつきまして、これも経営一貫あるいは地域一貫ということで、子牛価格変動が極力経営に影響を及ぼさないようにするということも一つの方途かと思います。  いずれにいたしましても、何度も申すようですが、粗飼料基盤を強化するとか、経営技術、これは肥育の短縮化ということもございますが、そういう経営技術改善していく。それから、頭数をふやすという意味では、家畜導入その他の資金対策を充実する。それから、一番問題の子牛価格変動幅を小さくするために子牛価格安定対策を充実する。以上のようなことを中心にいたしまして、肉専用種につきましてもそれなりの必要な対策は今後も充実をするつもりでございます。
  46. 串原委員(串原義直)

    串原委員 そういたしますと、乳用種、それから肉専用種というよりは、すっぱり申し上げますと和牛と言った方がよろしいかと思いますが、日本牛肉確保のために乳用種か和牛か、将来どちらに重点を置いていくとお考えになっていらっしゃいますか、お答えを願います。
  47. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 どちらに重点を置くというよりも、やはり双方相まって日本の肉資源でございます。  乳用種の場合は、子牛の価格が安いとか、あるいは比較的増体量も大きいとかいうメリットもございます。しかし、これには牛乳生産という意味でただただ拡大だけしていくということには障害が出ております。もちろん、雌の子牛も使って肉用にも回しておりますけれども。  それに対しまして、和牛につきましては比較的高品位の肉の生産ができるといったプラス面もございます。和牛がたまたま超高級品種に偏った生産をいたしましたような場合には問題はあろうかと思いますが、和牛のすべてがそういうことではございませんで、和牛は和牛なりに、それから和牛と申しましても比較的子牛価格なり製品価格も安くつくっております短角のようなものもございます。  したがいまして、各地域地域の実情に応じた、いわばその地域での拡大対策を今度定めます都道府県計画とか市町村計画の中でつくっていっていただく。私たちは、その両者相まって日本肉用牛生産のいわば二本柱としていくというつもりでございます。
  48. 串原委員(串原義直)

    串原委員 先ほど局長から答弁願ったように、肉牛の生産の中長期計画、それから地域に対する計画等々も今年末までにかがみをつくって各地域への要請をしていきたいという話がありましたが、その中で乳用種、和牛、この割合はいまのところどのくらいですか。七、三ぐらいですか。そのことも聞きたいし、長期的に見て、乳用種、和牛の割合をどの程度にバランスをとっていこうといまのところ農林省としては考えているか、お答え願いたいと思います。
  49. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 七、三と申しますものはでき上がりまして出てくる肉の量でございまして、乳廃から相当のものが出てきます。七、三ということでございますが、飼育頭数につきましても、現在は一定の幅を持った飼育が行われているわけでございます。私どもとすれば、いまの線上でほぼ伸びていくというようなことも頭に置いて考えているわけでございますけれども、これは各地域地域でのいろいろな御要望もあろうかと思います。たとえば肉専一つとりましても、御承知のように量的にはまだ少のうございますが、外国産肉用種というようなものを飼育いたしております北海道、東北という地域もございます。そういう種類別を考えまして、かつ、全体といたしましては一番安定的な供給が可能になる大きさを推定しながら各県と協議をしたいと思っております。
  50. 串原委員(串原義直)

    串原委員 それは、長期計画のできるところを見守っていきたいと思っております。  そこで、今回の法改正のねらいますところの乳肉複合経営の重視というようなことで、将来の酪農振興法が担います酪農を育てるという任務がいささかなりとも軽くなるということがあってはならないと思う。どうですか。
  51. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 題名も酪農及び肉用牛生産振興に関する法律ということでございますので、酪農を軽視するわけでは決してございません。私の率直な感じからいいますと、酪農に比べて肉用種に対する生産政策的なものが若干おくれてきている。それが少なくとも酪農並みに追いつかなければいけないということでございますので、酪農についても同様に今後とも振興するつもりでございます。
  52. 串原委員(串原義直)

    串原委員 それと若干関連をいたしまして伺いますが、一九七六年四月、関係者の間でロングライフミルク、つまりLL牛乳三原則なるものを確認したようでありますが、その内容を教えてください。
  53. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 LL三原則と申しますものは、LLの取り扱いにつきまして生産者の代表と乳業者の代表との間で合意されたものでございまして、基本的な考え方といたしましては、まず第一に、わが国の飲用牛乳の供給に当たっては、普通牛乳、いわばフレッシュミルクと言われているものを基本とするということ。二番目として、ロングライフミルクの海外からの輸入には反対をするということ。三番目は、ロングライフミルクの要冷蔵要件については現行の取り扱い、つまり要冷蔵でやるということを維持すべきであるという、この三点について合意をしたものでございます。
  54. 串原委員(串原義直)

    串原委員 その合意というものは別に法律でも何でもない、ではございましょうけれども、LL三原別として関係者が相談をして好ましい姿として確認したということは、今日も生きているという表現がいいかどうかは別にいたしまして、今日も大事にしていくべきものであろう、こういう理解ですか。
  55. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 当事者の間の合意でございますが、合意をいたしましたときからかなり時日が経過いたしておりまして、基本的な三つの合意ということだけではございませんが、その合意の中から、たとえば生産数量五万トンということを予定いたしておりましたのがすでに五万トンに近い数字になってきているとか、いろいろと合意そのものの中にお互いに論議すべきものがあると聞いております。
  56. 串原委員(串原義直)

    串原委員 厚生省に伺いますが、今年三月三十一日、厚生省はLL牛乳についていわゆる常温流通に関する結論を出したようでありますけれども、どのような試験経過を経て答えを出したのか。なお、その内容を、本当の概略でよろしいけれども、示してもらいたい。
  57. 瓜谷説明員(瓜谷龍一)

    ○瓜谷説明員 厚生省としましては、LL牛乳の特性を勘案いたしまして、昭和五十五年度から食品衛生上の問題につきましていろいろな試験を実施してまいっております。  その一つといたしましては、長距離輸送試験。これは、常温流通しますと全国流通するという観点から比較的長距離に輸送されるということで、容器の耐性の問題というようなことを兼ねまして長距離輸送試験をやっております。  それから、常温で流通するということから常温で長期保存試験。これは、最高六カ月まで室温で保存した試験をやっておりますが、これにおける食品衛生上の問題はないかというような試験。  それから、いわゆる変異原性物質が生成するのではないかというような疑念も一部の消費者から提起されておりますので、果たしてロングライフミルクのような高温殺菌状況におきましてこういうような変異原性物質が出るかどうかという問題につきまして、食品衛生上の観点から調査研究をしてきたところでございます。  これらの調査研究の結果がまとまりまして、またさらに内外の各種文献がございますので、これらのことから総合的に判断いたしまして、LL牛乳につきましては常温流通を認めても特に食品衛生上問題はないという結論を出した次第でございます。
  58. 串原委員(串原義直)

    串原委員 いま、食品衛生上特に問題はないという結論に達したという経過についてお答えがございましたが、このこと自体に対する質問を深めていくことは機会を改めたいと思っております。そのことは御了承いただきまして、もう一つ厚生省に聞きたいのは、いま安全性に心配はありませんよという意味の御答弁をいただきましたが、仮にそうであったといたしましても、栄養価という問題ではどうなのでしょうか。
  59. 瓜谷説明員(瓜谷龍一)

    ○瓜谷説明員 各種の加熱殺菌によるビタミンに対する影響、これの試験を厚生省の研究班が実施いたしております。たとえば現在流通しております六十三度、三十分の殺菌の牛乳、それから七十五度、十五秒の殺菌方法による牛乳、それからいわゆるUHT牛乳、つまり百二十度、数秒の殺菌方法による牛乳、それからいわゆるロングライフミルク、この四種の殺菌方法の差によるビタミンに及ぼす影響について調査研究をいたしておる次第でございますが、いずれの殺菌方法におきましてもそのビタミンの損失の傾向に大きな差はないという結果が出ております。さらに、たん白質やカルシウムの消化吸収についての疑念もございます。これにつきましては、各種文献から栄養上特に問題はないという報告が多数ございます。  以上のことから、殺菌方法の差によります栄養面に及ぼす影響につきましては特に差はないというふうな判断をいたしております。
  60. 串原委員(串原義直)

    串原委員 栄養価についても、殺菌方法の差による栄養価というものについての影響はないのではないか、こういう意味答弁をいただきましたが、このことに対する質疑を深めるということもまた改めた機会にしたいと思っております。  そこで、農水省に伺いたいのでございますが、ただいまの厚生省の結論を受けまして、LL牛乳三原則の言う牛乳はフレッシュを原則とするということ、あるいは栄養価の問題等々を踏まえまして、常温流通についてどのように対処いたしますか。
  61. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 LLにつきましてはかねがねいろいろ御議論のあるところでございますが、私どもは、これは乳業者あるいは生産者を含めまして、わが国の場合にほとんどすべての地域におきましてフレッシュな牛乳が飲めるような立地条件でございます。御承知のように、こういう首都圏におきましても、非常に近郊に相当規模酪農があるわけでございまして、そういう意味では、物理的にLL化しなければ飲めないということではございませんで、むしろフレッシュは十分に飲めるということにつきましては、これは関係者一致した考え方でございます。消費者の嗜好としましても、今後ともフレッシュが主力になろうと思っております。  しかしながら、LLにつきましては、かつてもそうでありますし、今後もありますが、たとえば離島だとか僻地だとか、あるいは船舶用だといったような特殊な利用の仕方もありますし、それから、たとえばスポーツドリンクだとか豆乳といったものが牛乳の競合商品としてどんどん出てきているわけでございますが、自動販売機利用ということを一つ考えました場合は、やはりLLの方がその種の競合商品と優に競争しやすくなるとか、そういうLLの持っております特質もあるわけでございます。したがいまして、要冷蔵要件の可否の問題を除きましても、牛乳をさらに消費拡大いたしますためにこのLLというものをうまく使っていく手法は十分あり得る。  ただ、皆さん方の中で大変御心配がありますのは、一つは、このLLというものが、ここ数年いろいろ問題になっております牛乳の乱売問題だとか、そういうもののいわばけんかの道具と申しますか、そういうものに使われました場合に、LLのメリット以上に混乱が多いのではないかという御心配であろうかと思っております。したがいまして、私ども、現在このLLの要冷蔵要件の撤廃の可否の問題を超えまして、むしろLL牛乳の取り扱いというものを、生産者、それからメーカー、流通業者あるいは消費者といったものがどのように受け入れていくかということにつきまして関係者の協議を進めることを考えておりまして、まず第一義的には、生産者とメーカーの間で、いわばかつて行われましたLL三原則といったようなものを一つは土台にいたしますけれども、関係者の間で意見の調整をするようなことを始めさせているところでございます。  問題は、調整の仕方としてはいろいろあるわけでございますけれども生産者なりあるいは流通関係者が自主的にこのLLをどう扱うかということが決まりました上で、さらに厚生省とも要冷蔵要件の撤廃問題について話し合いをするつもりでございます。
  62. 串原委員(串原義直)

    串原委員 つまり、こういうことですね。このLL三原則をかつて確認をしたこともあるので、それを踏まえて関係者と、農林省が必要によれば間に立つこともあって、相談をして一定の結論を得ることがまず最初である、こういうことですね。
  63. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私どもがと申しますよりも、関係者もそのつもりでおるわけでございますので、そういう合意を踏まえた上で事柄を進めていきたいと考えております。
  64. 串原委員(串原義直)

    串原委員 それでは、その経過を見守っていきたいと思っておりますが、それと関連して、これは局長にきちっと聞いておきたいわけでありますが、農林省の基本方針としてLL牛乳、飲用乳は今後とも輸入はしない、こういうふうにお考えだと思いますが、いかがですか。
  65. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 現在LL牛乳と言われておりますものは、関税番号の〇四・〇一のうちの滅菌牛乳に当たるわけでございまして、これはいわば割り当て品目、IQ品目でございます。私どもは、いわばそういう滅菌牛乳を海外から輸入する必要は現在全くございませんので、IQの割り当てをする考えは全くございません。
  66. 串原委員(串原義直)

    串原委員 委員長、ちょっと速記をとめてもらいたいですがね。大臣が大体三十三分までには来るという約束だった。いつ来るんですか。大臣に質問したいということを私は保留しているわけだ。私は余り時間に制約されては困るんだよ。十二時六分に制約されては困る。約束なんだから、三十分から三十三分の間には大臣は来ます、こういうわけだった。きちっとしてくださいよ。
  67. 玉沢委員長代理(玉沢徳一郎)

    ○玉沢委員長代理 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  68. 玉沢委員長代理(玉沢徳一郎)

    ○玉沢委員長代理 速記を起こしてください。
  69. 串原委員(串原義直)

    串原委員 大臣、いまこの酪振法改正関連をいたしまして、酪振法の中に肉用牛振興を加えたそのねらいと目的、方針について若干政府の考え方を伺ってきたところでございます。  そこで、重要なことでありますから大臣に伺いたいのでございますが、牛肉につきましては、増大する需要に対し、国内生産だけでは供給できない。つまり、五十七年度の牛肉輸入量は幾らであったか、後で御答弁を願いたいが、国内生産の恐らく三分の一くらいな割合のものを輸入しているのではないか、こう思っておりますけれども、つまり、その大きな数量は国内生産体制を強化すべきだということを教えているわけですね。でありますのに、一部には、外国の牛肉は安いのでもっと輸入したらどうかという動きがある。しかし、日本農業を守り、食糧自給率向上を図るためには、その考え方は間違いだというふうに私は思っている。大臣もそういうふうに考えていらっしゃるし、そういうことで今日まで進めていらっしゃったというふうに思う。したがって、これ以上輸入量をふやすということは許されないことだというふうに思う。  ことに、当面する牛肉自由化ないし輸入枠の拡大は絶対に阻止しなければならぬ、こう思います。この取り扱いを誤りますならば、わが国牛肉生産は崩壊の道を歩むことになりましょう。もし自由化、輸入枠の拡大を行ったならば、いかに今回酪振法を改正いたしまして肉牛生産振興を図ろうといたしましても、まさにざるに水をくむような結果を生む。まことに重大問題だと私は考えておるわけであります。  この際、アメリカ財界からどんなに圧力があろうとも、大臣は毅然として、自由化はしません、枠拡大も行わないという態度を貫くべきでございます。所信を伺っておきたいと思います。
  70. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 わが国食糧の需給状況を考えますと、御承知のとおり、牛肉については約七〇%を自給をしておる状態でございます。したがって、現在輸入しておるのはその足りないもの、三分の一、三〇%内外が輸入になっておるわけでございます。  食糧全体につきまして、いま恐らく完全に自給率を一〇〇%持っているのは米、あるいは肉類でいうと鶏、卵、そういったようなもので、無論野菜も自給率は一応確保しておりますけれども、その他の足りないものはやはり輸入いたしまして国民食糧の不安を与えないようにしなければならない。  ただ、将来とも日本食糧は国の安全の根本をなす、いわゆる食糧による安全を保障するという考え方に立ちますならば、やはり牛肉生産も年々ふやしていかなければならない。コストの高い国内産、こう言われますけれども、もう間もなく欧米のいわゆる生産コストとやや均衡のとれるような生産コストになっておりますので、できるならばやはり国内生産を今後も大いに伸ばしていかなければならないという考え方に立って、畜産の基盤を強めようとしておるわけでございます。  そういうことで、かねてアメリカとの農産物の貿易の問題について、まず牛肉自由化あるいは柑橘類の自由化、これはもう当然やってはならない。それをやると、日本農家生産意欲をそぐことになる。したがって、外国産が安いとはいえども、やはり国内産を確保するということは消費者の立場に立つ、全国民もこれには理解を持って協力していただけるもの、私はこのように考えております。したがって、そういう考え方に立って、いわゆる自由化は今後とも絶対やってはいけない。これはいわゆる柑橘類と牛肉ですよ。  それで、枠の拡大については、来年三月まではいまの状態が当然続くわけでございまして、いまワシントンで専門家が事務的に協議をしておるのは明年四月以降の問題でございます。これについても、やはり足りないもの、足りない分は輸入しなければならないけれども、それを超えて枠を拡大する必要はない、こういうことを私は主張しておるわけでございます。足りないものはやはり供給を完全にしなければ価格も高騰するでしょうし、それから肉をずいぶん消費するように日本の食生活が変わっていっておりますので、それにこたえるだけのものは、足りないものは輸入をしなければならない、こういうことでございます。ただ、要らないものまで輸入するようなことをしてはいけない。輸入してストックを持つようなことはやってはいけない。本当に足らない分だけは輸入せざるを得ないということは、私は国民の皆さんに御理解をいただいておると思うのでございます。  したがって、私が終始一貫自由化は絶対いたしません、枠の拡大についてもいまのところ必要ありませんと言うのは、いま足りておる分で結構じゃないか、これから将来、来年四月以降足りないとするならば、これはやはり考えなければならないわけですが、いま現在足りておるわけですから、いま必要はない、こういうことを強調しておるわけでございます。
  71. 串原委員(串原義直)

    串原委員 大臣、つまり大事なことは、足らないときにはどうするかという考え方基本の問題なんですよ。将来足らなくなった、足らなくなるであろうとしたら、まず国内生産を優先すべきである、このことは大臣認めますか。賛成ですか。いかがでしょう、御答弁ください。
  72. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 私のこの問題についての基本的な考え方は全く同感でございます。それは、国内生産を大いに畜産基盤の整備をやって伸ばしていく。やがては自給自足ができるようにコストも下げ、量も一〇〇%自給ができるように持っていくべきだ、こういう考え方に立っておる。その過程において、そこに到達するまでの間は、足りないものは輸入していかなければならないでしょう。こういうことを申し上げておるわけです。
  73. 串原委員(串原義直)

    串原委員 重ねるようでございますが、見通して足らないということがある程度想定されるならば、国内生産がまず優先されるべきものである。輸入枠をふやす、それを考えないでまず国内生産することが第一義である、そういう方針で農林大臣としてはやってまいります、こういうことでいいですね。御答弁ください。
  74. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 そのとおりであります。
  75. 串原委員(串原義直)

    串原委員 そこで伺いますけれども、いま大臣も御答弁になりましたが、二十六、二十七でございますか、ワシントンで再開されている専門家協議、これは何かしら報ずるところ枠拡大前提として交渉再開が行われているのではないかという心配を持つ。いかがですか。
  76. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 アメリカ側は、やはり枠を拡大したい。枠拡大どころか、自由化してくれということを言っておるわけでございます。そういうことを言い続けていますので、一月に中曽根総理が訪米した折に、やはりこれは専門家が冷静に検討をしていこうということで、その後二、三回、公式非公式に私の方から経済局長を差し向けて、一応瀬踏みですか、そういう打診的な非公式の話、公式の話をしてまいりましたけれどもアメリカ側は非常に強い姿勢でこれに取り組んでおります。  したがって、これをどのようにしてアメリカ姿勢緩和させようかとして時間をかけて努力をしてまいっておるのでございまして、今度専門家レベルで協議をして、アメリカがどのような要請をするのか、その内容を十分お聞きしてから今後の対応を検討していかなければならない、このように考えております。
  77. 串原委員(串原義直)

    串原委員 その大臣のきちっとした姿勢は今後期待をいたしていますけれども、そういたしますと、新聞の名前はちょっと遠慮いたしますが、これは報道されているわけでありますが、ある報道機関によりますと、四月二十三日、この中心になってアメリカ側と話をしてまいりました佐野局長が、輸入枠拡大の用意がある、自由化はできないけれども輸入枠拡大の用意がある、農産物六品目ということでそういうことを示唆したという報道がここに大きく載っている。内容をここで繰り返す時間はありませんが、載っている。  さらに、これも権威ある報道機関の報道として伝えられておりますけれども、「農産物交渉 輸入枠拡大日本案」日本の案ですよ。アメリカではない。牛肉は四年間で一万三千トン増加させる、これもずっと記事になっております。ちょっとこれを読み上げる時間を持ちませんが、四月二十三日であります。つまり、輸入枠拡大日本側の案として、四年間で牛肉を一万三千トン増加をさせる、年平均ベースで三千四百トンぐらいをふやす、譲歩する、こう報道されているわけですね。これは大変だと私は考えたわけでありますけれども、これは誤報であるという理解でよろしゅうございますか。
  78. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 私もいま読み上げられました新聞を見て実は驚いたのですが、どこからその資料が出て記事になったのか全くわからない。役所の中で関係の幹部の方にお聞きしても、全く役所でも関知してないということでございます。したがって、その報道された数字については全く私は関知してないというように御理解をいただきたいと思います。
  79. 串原委員(串原義直)

    串原委員 それでは、いま一度確認をさせていただきますが、つまり自由化はしない、この基本姿勢はきちっといたしております。しかも、輸入枠拡大についても、この数字は別にいたしまして、日本側の案としてアメリカ側に提示するなどということはさらさら考えていません、そんなことはありません、こういうことで確認しておきたいと思うが、いいですか。
  80. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 交渉の衝に当たる佐野経済局長交渉の手段、手順についてはお任せしておるわけですから、どういう交渉の仕方をしますのか、日本がこのような数字をこう考えておると言ってこちらから切り出すのか、あるいはアメリカがいままで言っておるようなことを、やはり同じようなことを繰り返してくるのか、あるいは変わった考え方アメリカ日本にいろいろな持ち込み方をするのか、そういう状況を見て専門家である佐野局長交渉協議をしておるのではないか、私はこのように考えております。まだ何も連絡はありませんから、どういうふうな協議の経過か、そういうことも全然聞いておりません。
  81. 串原委員(串原義直)

    串原委員 それは話し合いですから、当事者が若干の話し合いは深めてくることになりましょう。そこで、さらに伺っておきたいわけでありますけれども佐野局長交渉をされて具体的な話を若干深めてお帰りになった、しかし、判断は大臣としての金子農林大臣が結論を出す、こういうことでしょう。一切が大臣の責任において答えが出ていく。それは交渉でありますから若干のやりとりはあるにいたしましても、先ほど言われるように日本側から提案する、日本の案として出すようなことはありません、こういうことであったから、ないでございましょうが、若干のやりとりがあってしかるべき報告を受けたといたしましても、大臣が結局答えを出す、結論を出す、こういうことでしょう。したがいまして、枠拡大もいたしません、こういう立場での答えを出すわけでしょう。いかがですか。
  82. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 私は、自由化はもちろん、枠拡大もいたしませんという決意でこの問題に取り組んでいくことが国益である、こういう考え方でこの姿勢を続けております。佐野君が専門家ですからどういう事務的な話をしておるか、そのすべては、その功罪は私が責任を負います。けれども、どういうテクニックでやっておるか、それはわからないですね。いまこれをこれ以上議論をすることは、交渉中ですから、この程度にしておいた方が賢明ではないかと私は考えます。
  83. 串原委員(串原義直)

    串原委員 大臣、あなたの言わんとすることは理解できないことはない。しかし、いまいみじくも大臣は、自由化はしない、枠拡大もしない、これが日本の国益にとって大きなプラスであるのだという信念でやります、こういう答弁でした。その立場で今後も貫いていくということを私は確認をしたいわけなのであります。国益のために、大臣、ぴしっとしてもらいたい、こういうことなんです。その点をきちっとしていただければよろしい。もう一度お願いします。
  84. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 いま話し合いをしておるアメリカに筒抜けになりますから。終始一貫繰り返して申し上げておるとおり、私の姿勢は変わってない。いわゆる自由化はもちろん、枠の拡大もいまのところは必要ないという考え方は変わりません。
  85. 串原委員(串原義直)

    串原委員 もう時間が来てしまいました。  最後に価格対策と飼料対策に触れたいと思いましたが、許されませんので、一点だけ伺っておきたいわけでありますが、今後、日本の肉牛生産にとって重要なことは価格の問題であることは間違いないことであります。つまり、政府としては、日本の肉は高いけれども、できるだけEC並みに近づけたいということ、これは農民の犠牲を求めることでないならば私は賛成であります。しかし、演説をするほど簡単ではない。したがって、EC並み価格に近づけていくための諸施策が大事なことになってくるでございましょう。とりわけ今度の法改正関連して重要になってくる。これは長期的なものを持たざるを得ないでございましょうけれども、この価格対策に対してはどういう基本的な姿勢をお持ちですか。これは最後になりましょうけれども、伺っておきます。
  86. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 牛肉価格につきましては、現在の畜安法に基づく価格安定制度があるわけでございます。この中では、御承知のように、いわば市場で形成されます実質的な価格中心にいたしまして生産性その他を勘案して定めておるわけでございますが、幸いなことに、最近はまず第一には生産コストも安定をしてきておる。それから生産合理化も進んでおるということがございまして、いわば市場実勢も変わらない。したがいまして、比較的安定的に推移してきたわけでございます。そのことがまた消費を伸ばしているということにもつながっているわけでございますので、今回のこの考え方におきましても、規模拡大あるいは粗飼料の給与率を向上する、肥育その他の経済肥育を推進するというようなことを続けてまいりますれば、大きな諸資材の変動さえなければかなり安定的に価格は推移できるのではないか。そのことは、結果的には国内価格をほぼいまの水準、あるいは動いたとしても微小な変動に抑えられる。それに比べまして、御承知のように、ECにつきましてはある意味でこれ以上急速な合理化とか経営の体質改善はございませんから、ここ数年の傾向を見ましてもわかりますように、かなり価格テンポで上がってくる。遠からずその差は接近ができるのではないかと思います。  EC並みにするのは、何か人為的に価格を下げるというよりも、生産体制の合理化の中で国内牛肉価格を極力抑制的に運用していけば、諸物価の中で牛肉価格は非常に割り安に感ぜられ、消費が伸びたというこの数年の傾向をさらに伸ばす。そのために必要な生産流通その他の施策をやっていくことが基本でございます。
  87. 串原委員(串原義直)

    串原委員 つまり、私の言いたかったのは、報道されますところEC並み価格日本の肉をしたいのである、そう受け取りますと、じゃ三〇%程度日本の肉を安くするんだというふうに直訳される。それではいけません、そんなことまでできようはずがない、してはならないと私は思うのです。価格差を縮めようとする諸施策を進めるという意味での努力というものは評価をするにやぶさかではございませんけれども、そういうことではないということをここで確認したかったわけであります。  つまり、もう時間がありませんから触れませんけれども、畜産物の価格安定等に関する法律によりまして肉に対する安定価格制度は保証されているわけでありますから、それを推進しつつ、できる限り諸施策、たとえば飼料の問題、粗飼料自給率向上の問題等々も含めて対策を立てることによって日本の肉の価格ECに順次近づけていくという努力をしていこうと考えているのだ、法改正もその辺にも一つの大きなねらいと効果を期待しているのだということであろうと思いますので、価格の問題だけではなくて、なお一層の努力を期待いたしまして質問を終わることにいたしたいと思います。  ありがとうございました。
  88. 玉沢委員長代理(玉沢徳一郎)

    ○玉沢委員長代理 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  89. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  90. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 酪農振興法の一部を改正する法律案関連をして、若干の質問をしたいと思います。  まず、午前中に同僚の串原委員から農産物の自由化の問題がいろいろ質疑をされておりましたが、串原委員とタブらない形で、なお自由化の問題について若干質疑を続けていきたいと思うのです。  前の委員会で六品目の問題が問題になっておりました。自由化には反対だけれども、六品目についてはこれはやむを得ないというような形で大臣がこれを認められている経過がありますね。この六品目の問題はわれわれにとっては非常に大事な問題なんです。参議院で社会党のある議員が若干の外れた発言をしておりまして、これについては厳重に注意をしておる経過がありますが、この六品目の問題について現在どうなっておるのか、この点についてちょっとお尋ねします。
  91. 角道政府委員(角道謙一)

    角道政府委員 お答え申し上げます。  六品目につきましては、昨年の暮れ、私どもある程度の枠の拡大ということを決めたわけでございますが、その後アメリカにおきましては、米側関心の六品目については、日本側の提示をしました、あるいは日本側が決定をいたしました数量につきましては依然不満であるということで、これにつきましてはなお枠の拡大をするようにという強い要求がございます。四月の初めになりまして、アメリカのマンスフィールド大使から外務大臣に対しまして、この六品目の問題並びに現在行われております日米の柑橘、牛肉につきましての実務者会談の問題につきまして、米側が非常に深い関心を持っておるというように申し入れがあったわけでございます。  そこで、佐野経済局長が四月の初め、米国に参りましたが、その時期におきましても、米側からは、六品目につきましては相当程度枠の拡大を要求をしたい、それでない場合には四月中にもガット提訴ということも考えられるというような態度を示しております。そういうことを受けまして、現在、佐野経済局長が二十六、二十七両日ワシントンで会議を行っておりますけれども、この段階におきましても、米側からは六品目につきまして相当の譲歩を求めるようなことになるのではないかというふうに考えております。
  92. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 二十二品目を自由化しても金額にしてはきわめてわずかであるということは前から指摘をしたとおりだし、まして六品目というものは日米経済の中ではほとんど問題にならないくらい、金額的に言えばそういうものだと思う。それで気分として市場開放しろ、自由化しろ、こういうことであればわからないことはないけれども、そのことが日本のこれからの農業にとってきわめて重要なものばかりであるだけに、六品目が日本農業に持つ意味は大きいということですね。アメリカ日本の経済の関係から言えば大したことはない。しかし日本農業から言えばこの六品目は大きいという点で、私どもは六品目について非常に強くがんばっているのはそういうことなんです。  たとえば落花生にしても、その他柑橘等々――柑橘は別な六品目以外のものなんですけれども、いろいろなものが、雑豆にしてもコンニャクにしてもそうですが、それらはもう特産化していて、こういうものがアメリカから押しつぶされるということになれば日本農業はどうにもならなくなってしまうということですから、問題が大きいわけだから、枠の拡大という形で、枠はゼロから五にし、五から八にし、それから十にし、二十にしていってもだんだん拡大になるわけだから、一体どこまで拡大をするか。九十九まで行ったらこれは全部になってしまうのだから、一体どういうふうにしていくのかということについてはどうなんですか。
  93. 角道政府委員(角道謙一)

    角道政府委員 お答え申し上げます。  現在とっております残存輸入制限品目につきましては、私ども国内の需給事情あるいは生産事情あるいは農家の経済、全体を見ながら、毎期輸入割り当て量を決定するたてまえをとっております。  いまのお話の落花生その他の品目につきましては、米側の関心品目ということで昨年九品目の指摘がございまして、そのうち三品目につきまして一応合意を見た。したがいまして、残りの六品目について現在アメリカはなお枠の拡大を求めているということでございますが、現在残っております二十二あるいはいま問題になっております六品目につきましては、地域の特産物であるということと同時に、国内におきまして水田利用再編対策というものを農政の非常に重要な柱として実施をしておりますが、その転作作物としても重要であるということで、私どもとしては、アメリカ側の一方的な要求に屈しまして枠を拡大するということは一切考えておりませんし、需給事情等見ながら数量につきまして適正な枠を決定していくという態度で臨んでおりますし、米国に対しましても今回もそういう強い態度で臨んでおるところでございます。
  94. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 私は、日本農業は現在二つの大きな圧力の前にあると思うのですね。一つは、何といってもアメリカ中心とする外国からの農畜産物輸入の圧力ですね。これがひしひしと迫ってきていることは事実なんです。もう一つ国内における減反というような問題で、せっかく長い間土地改良をして増産をする状態にあるものが、いま減反で倉庫の中には米がない。農家の皆さんはこういう状況の中で展望を失っているというのが事実なんです。  この状況の中で、工業が伸びるためにはある意味においては自由化もやむを得ないじゃないかというような論理がある。臨時行政調査会の議論なんというのは、まさにこの自由化の路線を言葉をかえて貫こうとしているにすぎない。こういうことでは、安全保障としての農業は非常に困る。その立場から、私は前からこの議論をしてきているわけなんです。だから、自由化の問題については、国会の決議もあることでありますから、ぜひ大枠としての自由化を抑えるということと、もう一つは、その中で、六品目の問題も含めて、いま官房長からお話があったように一切枠の拡大もしないという強い立場に立って日本農業と農民を守ってもらいたいと思うのです。  これは、大臣、どうですか。大臣は非常に強く言われておるけれども、ときどきうっかりするときがあるから、ひとつそこのところをぐっと締めてもらわないといけない。どうですか。
  95. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、私のこの問題に対する考え方基本的な姿勢はいささかも変わっておりません。いま事務的に専門家がワシントンで協議をしているさなかでございますので、余り立ち入ったことは申しませんけれども自由化はもちろんのこと、枠の拡大についても、今日までずっと肉も七〇%は国産品、三〇%は輸入という比率で続けております。どうしても足りないものは国民に不安を与えないために輸入をしなければならぬけれども、必要ないものまで枠を広げて輸入する必要はないということを言っておるわけですから、私の姿勢基本的な考え方は終始一貫変わってない、このようにひとつ御承知願いたいと思います。
  96. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 重ねて、くどいようですけれども要望しておきますが、特に先ほど官房長から答弁があったように、六品目の問題はこれから日本の転作の重要な作目でありますだけに、量が少ないからという形で見送らないで、これはどうしても阻止をするという立場に立ってもらいたいと思うのです。  そこで、酪農振興法関連する問題でありますが、題名の中に肉牛を振興するという形で入ってきますから、当然今度は牛肉との関連にもなるわけです。この牛肉国内振興しようというときに、いま豪州アメリカからは牛肉自由化日本に肉を入れる、こういうことで非常に問題になっている。したがって、この法律の中の精神を貫いていって和牛の振興をするということになれば、何といっても自由化を阻止することが大前提でなければいけないと思いますが、これはどうですか。
  97. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 国内におきまして極力合理的な肉用牛生産振興を図ってまいるわけでございますが、御承知のように全体の需要の中で国内生産が現在約七割程度でございます。私ども、今度の法律の中にもうたいましたように、国内の資源を合理的に利用して極力国内生産増強するわけでございますが、若干のものは今後も海外に資源として頼らざるを得ないと思います。  この場合、たとえば比較土地条件等の似通いましたEC等につきましては十分競争的な関係でやっていけるようになろうかと思いますけれどもアメリカあるいはオーストラリアというように土地条件基本的に違っておりますところとの生産性格差を縮めるということはなかなか、これは縮めることはできますが、基本的に競争関係が成立するところまで持ち込むことは、いまのわが国土地条件からして不可能だと思っております。したがいまして、そういうところとの関係におきましては、今後におきましても必要な国境措置は講じてまいる必要があるわけでございます。したがいまして、朝も申し上げましたけれども、この法律をやります場合でも、対外関係、特に国境措置につきましては自由化というものをしないという前提考えております。
  98. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 酪農並びに和牛の振興の大前提としての自由化という問題は何といっても重大なポイントでありますから、ぜひこの点は守っていってほしいということを重ねて要望しておきます。  そこで、現在の酪農は一戸平均二十一・三頭、乳用肥育牛が大体二十頭になっておりますが、肉牛の場合にはまだ七頭、子取りの経営の場合には二・九頭、これでは非常に不十分だと思います。そこで、一体何頭ぐらいの経営をすれば専門としてやっていけるのか、兼業をしないでやっていけるのかという目標については立てられているのかどうか、これはどうですか。
  99. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 むしろ、今後この法律にのっとりまして基本方針その他を定めていきます場合に必要な目標を定める必要があろうかと思いますが、これは、国内におきましても比較土地条件の制約の少ないところ、たとえば北海道とか東北の一部のようにかなり広大な土地を想定いたします場合と、内地の都府県のように土地条件の制約が比較的大きいところによってかなり違うと思います。もう一つは、かなり専業度の高い経営として考える場合と稲作その他の複合経営のようなものを主として考える場合におきましても、これはかなり差があろうかと思います。  大変大ざっぱに申しますと、たとえば繁殖経営が複合型で比較土地条件の制約が少ない地域、例としましてたとえば岩手あたりのものを頭に置きまして、たとえば肉用牛経営を六〇%、稲作経営を四〇%ぐらいに置いて考えますと、常時の繁殖の雌牛として二十頭ぐらいのものを持ちます場合にかなり程度のものが想定できるとか、あるいは繁殖から肥育まで一貫するとしてたとえば北海道の地域等で想定いたしますと、乳用牛だけで所得を確保するということでございますと、繁殖雌牛で五十頭、肥育で二十八頭ぐらいのものとか、そういういろいろなタイプをいま頭に置きましてプランニングをやっております。もう少し精度を上げていくために、しばらく時間をかしていただきまして、地域の実情に合致したそういう経営目標を定めていきたいと思っております。
  100. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 この点になりますと、当然金がかかるわけでございます。それで、金の問題は後にして、先に施設の問題から質問をしていきますが、この法律によると、特別の融資をするという項目が目新しい一つのものとして出ております。それは結構なことだと思いますが、問題は、旧債を抱えている畜産農家が非常に多い。特に北海道方面では多いわけですが、この旧債の問題の処理なしに新しい仕事には取りつけないだろうと思うのです。したがって、経営をしようとする場合に旧債処理というものはどうされようとするのか。いままでしばしば畜産物の価格を要求するときに、基本価格を値上げをしないで金を貸してそれによって何とか回転するという形でここのところ二、三年やってきた経過がありますが、そのために借金だけは大分たまっている、それがなかなか返せないでいるというのが現状だろうと思うのです。旧債処理はどうされるのかということを、まず第一にお伺いします。  同時にもう一つは、施設をつくる場合には相当な器材、資材がかかりますね。この場合に、これはかつて大蔵大臣の渡辺美智雄さんがまだ政務次官のころ、この委員会で古い材料も使ってよろしいということを言われて、それが農林省の方針にもたしかなっているはずですね。ところが、あるときにこの発言をしたところが、またそういう行動をしたところが、会計検査院がやかましいからどうしても古材は使えないのだということがありました。ところで、五十六年二月二十八日の予算委員会の分科会で、私は会計検査院を呼び出してこのことについてはどうかという質疑をしたところが、これは会計検査院としても農林省のその方針は結構です、こういう答弁があって、きょうここへ会計検査院を呼び出そうと思ったら、答弁は同じですから特に改めてそれをおっしゃらなくてもいいじゃないかということだから、それは結構だ、こういうぐあいになっておりますが、問題は古材を使うということと、それから同時にその古材は建築基準法上に問題があるということで、むしろ建設省の方にこれは問題があるのだということを言う人がいます。  そこで、この質問は二つに分かれて恐縮ですけれども、前段は旧債をどう処理するかという問題。後段は、その旧債との関係は別にないのですけれども、施設に金がかかって、実際に運転をしようとすればさらに金がかかるということでありますから、この施設との関連で、古材の問題とそれから建築基準法上の問題がどこにあるのかという点をお伺いしたい。
  101. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 畜産経営拡大のために農家が背負っております負債問題でございますが、御承知のように酪農関係につきましては、急速な規模拡大の結果、かなり農家は順回転と申しますか、負債は多くても償還も可能であったわけでございますが、特にいわば計画生産の中でそれが崩れました農家がございまして、五十六、五十七年とやりました負債整理につけ加えまして、今年度、五十八年度にさらに百五十億の枠を設定したわけでございます。  肉用牛経営につきましては、どちらかといいますとそういう形ではございませんでしたが、数年前の比較的子牛価格が高かった、えさも相当高い、しかしながらでき上がりました肉そのものが比較価格低迷期に当たりました経営で、いわば経営の仕方が若干粗放であったと思われるものの中に負債問題がございました。したがいまして、これにつきましては、昭和五十七年度の畜産物価格を決定いたします際に、肉畜経営改善資金と申しますいわば負債整理資金を貸し付けまして、かなり程度農家の方の負債の借りかえを行ったわけでございます。  これは単に借金を肩がわったというだけではございませんで、経営の本質にわたるような指導もいたしました結果、その後における畜産物価格あるいはえさ価格等が比較的順当であったかと思いますので、個別の経営を見ますと、一頭当たりの借入金の額が増高しているというような状態は見当たっておりません。したがいまして、私どもとすれば、五十七年に行いました肉畜経営改善資金の貸し付けの結果、一般的な意味での負債整理をさらに続けるという必要はないのではないかと思っておりますが、個別の農家につきまして、やはり経営の悪化しているものにつきましては自作農維持資金の活用等も考えていく必要があろうかと思います。こういう農家につきましては、どちらかというと資材の購入その他につきまして若干甘い点もございますので、新規の融資を抑える等のことをしながら逐次経営改善をさせていきたいと思っております。  それからもう一点、御指摘資本装備をいたします場合に極力安価に上げるという意味で、あるいは古い素材を使うとか、私どもといたしますと、たとえばいま林野の方で問題になっております間伐材を活用するといったようなことを、昭和五十六年とか五十七年に行いました私どもの諸通達の中で特に織り込みまして、そういうものを使って極力安価に装備をするようにということをやっております。また、そのことにつきましては、先生もいま御指摘になりましたように、会計検査院からもそういうことの了解を得ておるわけでございます。
  102. 長谷川説明員(長谷川義明)

    ○長谷川説明員 御説明申し上げます。  施設の建築に古材を使用した場合、建築基準法上建築できないことがあるのではないか、こういう御質問でございますが、建築基準法におきましては、柱等に使用する木材の品質につきまして、節とか腐れ、あるいは繊維の傾斜等、耐力上の欠点がないものでなければならない、こういう政令の規定がございます。古材につきましては、腐れでありますとかあるいは欠き込みといったような耐力上の欠点があるものについては使用を制限する場合もございますが、欠点のない古材について特に使用を禁止しているということはございません。
  103. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 これでよく理解をしましたから、その点はぜひそのように取り扱いをしてもらいたい、こういうふうに思います。  続いて、酪農なり和牛を進めるためには、自給飼料というものが非常に必要です。これはやはり何といっても大事だと思うのですね。そこで、濃厚飼料に関しては、当然のこととして、石油の価格が下がった、やがてこれはえさの値が下がるであろうという期待があります。先般来肥料の審議をするときにも、油の値が下がったからこれは肥料に反映するのじゃないかという質問をしたら、通産省は直ちにそれはそういうふうにならないということでありますが、値が下がっているのに、直ちにそうならないといってもいずれはそうならなければ、それではだれが下がった分の利益はもうけるのだということになると、これはちょっと納得がいかないですね。当然、最終消費者のところに何がしかのメリットがなければならない、こう思うのです。だから、輸入飼料に関しても、油代、輸送代あるいは加工賃等々については当然その部分だけは値が下がっているはずだから、それはそれとして取り扱いをしてもらいたいと思います。けれども、一番の問題は、何といっても自給飼料を大いに拡大をしてそれを与えていくということが大事だと思う。したがって、国有林であるとか公有林であるとか民有林の一部もこれに参加をする、あるいは河川敷等が使えるものは大いに使うということでいかなければいけないと思うけれども、これについての考え方はどうです。
  104. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、効率的な畜産経営、特に大家畜経営をいたします際には、一番大切なのは飼料の自給率を向上させることでございます。残念ながら、現在までは、たとえば乳用雄牛の肥育等も頭数等はどんどん増加をしたわけでございますが、飼料自給度は他の諸国家における肉用牛経営に比しまして大変低いというところが欠点でございます。極力合理的な生産をいたしますためには、いま御指摘のありましたような飼料の自給率を上げるわけでございますが、何と申しましても、まず第一にはいわば草地基盤整備、われわれといたしましては公共事業でいたしておりますような事業でございますが、これは御承知のようについ先ほど閣議決定になりました第三次土地改良長期計画におきましても、農用地造成面積四十七万ヘクタールの約六割はこの草地造成を見込んでおるわけでございます。このような、要するにいわば外向きに、外延的に拡大するというのが一つでございます。  それからもう一つは、やはり既存の耕地というものを使うわけでございますが、既存の耕地を使います場合には、御承知のように水田利用再編の中で牧草といったようなものの比重を高めていくというようなことも必要でございますし、今回新しく予算措置をとりました現在あります公共牧場の効率利用、これはいわば再整備でございますが、こういうことにも力を入れる必要があろうかと思います。  いま御指摘のありました林野の畜産的利用拡大の問題でございますが、林野のうちに相当部分が採草放牧地として使われておりますし、あるいは国有林野の中におきましても、国有林野の活用法等によりまして活用決定がされたものがございます。いままでそういう畜産的利用がされていない部分、先生の御指摘になりました河川敷等もかなりのものがございますが、こういうものも含めまして、われわれが活用できるそういう土地の広がりのすべてにつきまして活用の度合いを上げていくとか、あるいはさらにもう少し利用度の高いものにしていくといったような努力を今後も続けていくつもりでございます。
  105. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 これはぜひ自給飼料拡大ということについて配慮をしてもらいたいということと関連をして、特に私はいま局長からお話があったように、五十八年から三十二兆八千億の膨大な予算をもって向こう十カ年間の計画を立てられている第三次土地改良長期計画、これと農用地開発公団との関連について質問をしたいわけです。  今日まで、四十七年から第二次土地改良長期計画の中から四十万ヘクタールのうち二三%の九万二千四百ヘクタールが十年間で公団の事業によって開発をすることになってきた。五十七年度で約三万ヘクタールを終えて、第三次の長期計画にもまた手をつける、こういう話になるわけですが、これもまた二三%ぐらいのものになるのかどうか、その比率等はどうなのか、この辺はいまどういう位置づけをされているか、それについてちょっと説明をお願いしたい。
  106. 森実政府委員(森実孝郎)

    森実政府委員 お答え申し上げます。  今回の第三次の土地改良長期計画総枠三十二兆八千億円のうち、この中には調整費とか融資事業も含まれておりますが、いわゆる直轄または補助事業で実施いたします農用地造成事業費としては四兆六千百億円を想定しております。これは、先ほども指摘がありましたように、四十七万ヘクタールの農用地の造成を行おうとするものであり、私が申すまでもなく、この農用地造成の大半が飼料畑または草地等の造成につながるものでございます。  そこで、公団事業のその中での役割りをどう見るかということでございますが、公団事業のあり方等については、たとえば臨調の議論等でもいろいろ指摘があったことは御案内のとおりでございます。しかし、いわゆる遠隔地における大規模畜産の創設、土地利用型農業の創設にとっては、やはり私ども公団事業の果たす役割り、特にその一貫施行の持つ効果というものは評価していかなければならないという見方をしております。そこで、いろいろな議論はございますが、公団事業というものも、その事業のやり方等については、これからも検討を加えながらもやはりしっかりやっていかなければならないだろうと思っております。  ちなみに、いわゆる造成面積におきます公団事業の占めます比率というのは、年度によっていろいろございますが、大体農用地造成全体の中では一五%程度でございます。ただ、御案内のように農用地造成を公団でやります場合は、遠隔地の大規模事業であり、しかも農地の造成なり草地の造成以外に、一貫して施設の整備なり家畜の導入等も図っているわけでございまして、いわば手厚いモデル地区でございますので、事業費に占める割合は御指摘のようにそれより高いものになっております。
  107. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 すでに根室が五十九年ですか、それから阿武隈、八溝等々においても終了をする。それから六十年には北上、それから阿蘇、久住、飯田というように四地区が五十九年から六十年の間には完了をするという見通しが立っている。そこで農林水産省の方では、いま局長から話があったように、公団の持っている特殊な機能それから技術、こういうものを新たに第三次に拡大をしていくということについてもう一度説明をしてもらいたい、こう思います。
  108. 森実政府委員(森実孝郎)

    森実政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、土地改良長期計画における全体の見通しは、数量として農用地造成を全体として四十七万やっていく。それに対する投資規模は先ほど申し上げたような数字で考えていくということでございまして、四兆六千百億という数字を考えているということでございまして、国営とか県営とか団体営あるいは公団営事業ということで割り振りはしておりません。これは他の事業についても、国営、県営、団体営という区分は設けておりませんで、直轄、補助事業一本で考えているわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、面積比率としては、従来造成面積比としては大体一三ないし一五ぐらいの数字をやってきたということを申し上げているわけでございます。私が申すまでもなく、農用地開発公団事業はいわば遠隔地等におけるモデル的な大型畜産基地の建設とか広域的な農業開発を進めるための事業であって、いわば農用地開発事業の中でモデル的な先駆性を持った集中的投資を行う事業でございます。いろいろ臨調等でもなかなか厳しい議論があることは事実でございまして、われわれもこれからいろいろな反省すべき点は反省し、訂正すべき点は訂正していかなければならないと思いますが、やはり大規模なモデル性を持った事業としては重要な役割りを持っているという原点に立ちまして、従来の調査計画等の実績を踏まえながら、十分に営農のめどのついたものについては計画的に着手してまいりたいと思っているわけでございます。
  109. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 もう一つ農用地開発公団の問題で局長に質問しますが、これも肥料のときにもちょっと質問をしたわけですが、昨年来国際経済開発事業団ですか、JICAと嘱託の関係になって、いま発展途上国に調査団が入っていますね。これは直ちに仕事に取りつけるということではありませんが、これからの課題として、その国の生産を高め、国を富ませ、そしてその中で了解を得て有無相通ずる、機械とか技術とか人とか、そういうものを通じていくということで、その中には友好が含まれてくると思いますが、そういうことも当然公団の事業として考えられていますか。
  110. 森実政府委員(森実孝郎)

    森実政府委員 昨年農用地開発公団法を改正していただきまして、いわゆる国際的な意味での農業開発のための技術協力の業務をJICA等の委託を受けて実施することができたことについては、私ども大変時宜に適した措置を認めていただいたものとして感謝しているわけでございます。  私が申し上げるまでもなく、開発途上国におきましては、こういった農業開発が食糧の安定供給という意味からも、地域社会、農村の振興を図る意味からいっても、基礎的な事業であり、年々こういった需要は増大してきているし、かつ、大規模複雑なプロジェクトがウエートを増しつつあることは事実でございます。そこで、大規模複雑なプロジェクトについてはJICA等の委託を受けて農用地開発公団が事業を実施するということで、すでにパラグアイ国のヤシレタダムの灌漑排水事業につきまして現在準備を進め、調査団の派遣等も図っているわけでございますが、これ以外に、昨年も御説明申し上げましたが、プロジェクトファインディングの調査等も進めておりまして、私ども、逐次こういった事業が当初申し上げたように毎年大規模地区を二、三地区ずつはとっていけるような条件が出てくるのではないか。このことは、わが国の国際協力を実りあるものにするためにも、また、農用地開発公団で養成されたたくさんの人材やノーハウを生かしていくためにも有益な問題であり、積極的にこれからも取り組んでまいりたいと思っております。
  111. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 ぜひせっかくの技術を活用してほしいということを強く要望したいと思います。  そこで、畜産振興について公団の事業がさらに積極的に活用されるもう一つの面としては、ホルスタインの雌の対策と国内事業の活用について、国内肉用牛生産の七割は乳用種によって賄われているのが現状ですね。そこで、肉用種の振興とあわせて乳用種のホルスタインの雌の育成肥育を従来の区域内に限定せずに、広く区域外の農家をも対象にして事業化する必要があると考えるが、この点についてはどう考えられるか。
  112. 森実政府委員(森実孝郎)

    森実政府委員 お答え申し上げます。  公団事業によります乳用雄子牛の扱いでございますが、広域農業開発事業、畜産基地建設事業とも事業対象畜種として扱っております。内容といたしましては、哺育、育成関係の通常の哺育、育成にかかわる場合、それから肥育を含める場合、いろいろな態様があるわけでございまして、現に広域地区では三地区、それから畜産基地では四地区の事業に着手している実績があるわけでございます。  そこで、公団事業の採択要件でございますが、これは造成面積、飼養頭数、区域の未墾地率、周辺未墾地の状況とか、いろいろな条件をつけております。ただ、現在まで採択いたしました地区はいずれもこれらの条件を満たしておりまして、特にいま要件の改定という具体的な話は伺っておりません。それから隣接市町村を含めるかどうかという問題でございますが、これは過去においても要望に従って、並行して隣接市町村を含めた事例もございますので、そのことを申し上げたいと思っております。  いずれにせよ、この区域の特定につきましては、都道府県から区域を特定して公団事業の申し出があってそれを審査するという方針になっておりますので、具体的な事情に応じて対応していきたいと思っております。  ただ、私が申すまでもなく、乳用雄子牛を哺育、育成するまでは結構なんですが、問題は、肥育段階になるとなかなか従来の和牛の場合と違ってむずかしい問題があるだろう。どうしても割り安な商品でございますので、濃厚飼料が安く手に入るかどうかとか、仕上げの技術がしっかりしているかどうかという問題もあるでしょうし、また、事業対象施設についても過剰投資にわたらないような十分な配慮がないとなかなか採算が合わない点があると思いますので、そういった面ではよく地元の話を聞きながら指導体制を強化したいと思っておりますが、制度としてはいま申し上げたようにすでに取り組んでおりますし、これからも現実的に対応したいと思っております。
  113. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 第三次土地改良長期計画関連をするわけですが、いままでの公団がやってきた仕事は、根室とか岩手とか福島とか九州の阿蘇、久住、飯田という広範な地域であったわけですが、そういう地域はこれからは見当たらないわけであります。したがって、地域も狭くなるであろうし、農業経営から言ってみれば水田と畑作と畜産が絡み合ったような状態、複合的な経営にならざるを得ない、こういうところであろうと思うのですね。そういうような場所について、いま私が指摘したような方向考えられているのか、また別な構想があるのか、その辺はどうですか。
  114. 森実政府委員(森実孝郎)

    森実政府委員 お答え申し上げます。  いまここで数字を持っておりませんが、この三年来、従来のいわゆる脊梁山脈寄りの北東北、北海道、それから阿蘇に集中しておりました公団事業が、内地にかなりふえてまいりまして、特に西日本がふえてきているという現実があります。私は、これからは農用地造成についても小団地の組み合わせによる西日本への投資比重が全体としては高くなってくることは、資源の賦存量から見て当然のことだろうと思って、それはまず受けとめていかなければならないと思います。  そういたしますと、ただいま竹内委員指摘のように複合畜産経営の創設という問題があるわけでございまして、現にいまプログラムしております鹿児島等におきましては、単に乳牛だけではなくて豚、鶏も一定の範囲で導入していくという問題もあるわけでございます。そういう意味において、地域の状況に応じた営農のあり方なり、それに応じた経営のあり方は事実として受けとめていくのが、農業政策の一環として考える場合、公団事業としても正しいものだと思って、その点は現実的、弾力的に対応してまいりたいと思っております。
  115. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 次に、酪農振興も和牛の振興も、問題は農家の所得が補償されるということでなければいけないと私は思うのです。そうすると、価格の決定の問題と流通の問題に関連をしてくるのです。  そこで、特に牛乳の場合には前から議論をしているように一物一価という原則は守られていない。加工原料乳があるし、市乳がある。決め方についても、一方は政府が決める、一方においては会社との間で決めるという形で、価格の決め方が全く同じものでありながらばらばらである。また、肉の場合においては、これまた事業団によっていろいろ操作をされているけれども、一物二価ではないわけです。牛乳の決め方については非常に問題があるし、さらに牛乳の場合には脱粉として輸入したものが今度は色をつけて牛乳という形で売り出されるという形で、それはまたおかしな話になる。化け物みたいなものになる。この流通過程はどうしてもわかりやすくしなければならないというのが一つの問題点だろう。  そこで、牛肉に関してはそういうことはないのだから、何とか牛肉を一般化する意味において、牛肉の日のような日にちを決めて、大宣伝をしていくということは考えられないか。牛乳についてはいまちょっと無理ですが、それはどうですか。
  116. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 牛肉に関しまして、販売団体等がたとえば二十九日を肉の日等と定めまして消費拡大という意味でやっておりますことは、現在もございます。私どもとすれば、価格自身はいわば自由な取引の中で決まっていくわけでございますけれども、今後はやはり牛肉消費をもう少し拡大をしていく。先ほど申し上げましたように、ここ数年来牛肉価格が非常に落ちついておりますことが、こういう状態の中でも牛肉消費を伸ばしているわけでございますので、やはり消費拡大するという観点からは極力安定した価格で供給すべきであろうと思っております。  そこで、実は肉の日等の催し物につきましても、外国産の牛肉につきましてまだ必ずしもなじみがないというようなこともございますので、関係団体等がこの肉の日に外国産の肉を売ります場合に、その材料を事業団から提供するというようなことも今年度考えておりますが、こういう催し物等を通じまして消費拡大価格の安定ということに努めてまいりたいと思っております。
  117. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 乳価の関係については非常にむずかしいから議論はしないけれども、これは御承知のとおりですから、また別の委員から話があろうと思います。乳価というものはもう少し一物一価というものにしていかなければわかりにくいものになるであろうし、原料乳が市乳に使われないという保証もありませんから、非常に不愉快なものだということだけは改めて申し上げておきたいと思うし、それから生産者の所得が補償されるような価格の決定が望ましい形だということだけは申し上げておきます。  さて、時間が来ましたから、だんだん問題が整理をされてきますが、環境庁が見えていると思いますが、畜産を振興する中で環境汚染問題というのが大変問題になっていますね。  私は、法律を議論するときには必ず現地へ行って生産者なり周辺の人々の話を聞いてくるのをたてまえにしているのです。模範農家あるいは団体の責任者から話を聞いてきます。そうすると、私の地区は畜産の大変盛んなところでありますが、先に住んでいたところで、二町歩ほどの酪農経営をやっている方がいます。もちろん牛肉もとっております。そこは地域的に言えば農業振興地域、いわゆる調整地域になっています。ところが、そのところの前に国道があって、国道を越してそこが市街化地域になっております。だから、住宅ができる。後から住宅ができてそこへ移ってきて、前々からそこで経営をしている畜産農家のふん尿が臭いといって署名をとって、今度は役所に行って抗議をする、役所からは畜産の経営者に注意が来る、こういうわけなんです。こういう形が起こっている。  家畜のふん尿というもののにおいは一体公害なのか公害でないのか、その辺をひとつはっきりさせてもらいたい。この辺はどうですか。
  118. 松隈説明員(松隈和馬)

    ○松隈説明員 お答え申し上げます。  悪臭の規制につきましては、悪臭防止法によって規制を行っているわけでございます。悪臭防止法では、不快なにおいの原因となります、また、生活環境を損なうおそれのある物質を国が悪臭物質として定めまして、都道府県知事が悪臭を防止する必要があると認める地域を規制対象地域として指定するわけでございます。なお、基準につきましても、工場、事業場からの悪臭物質の規制基準を県知事が定めることとなっているわけでございます。  なお、御質問のいわゆる先住、後任の件でございますが、悪臭防止法に基づく規制区域にありましては、当事者同士の居住開始の時期を問わずに、悪臭の発生原因者となっている事業者は生活環境を損なわないよう悪臭物質の規制基準を遵守する必要があるわけでございます。
  119. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 これは知事が地域認定するという形になっていますね。この地域は、いまから十年ほど前に、工業団地をつくることについて、やがて十年後には人口十万にするということで都市計画をやったのです。ところが、現在、十年たっても十万にならない。五万ですね。したがって、その地域が一方においては調整地域になり、一方が市街化地域であり、その先には工業団地があって、工業団地の先にまた調整地域がある。そこで、工場に働く従業員の居住というのは、国鉄の線を越して、駅を越して、その後ろ側に住宅地域があるのですね。市街化地域がある。本来であるならば、工場の周辺に住宅地域があり、工場に通う便益がいいというのが常識だけれども、ところが十年間思うようにならない、人口がふえない、ために線の引き直しもできないという形にあります。  建設省の方では、そういう当初計画と著しく違ったような市については、線引きの見直しなどをして、もう少し住民の生活がしやすいようなことができないのかどうか。これはどうなんですかね。一遍建設省にお伺いしたいのですが。
  120. 城野説明員(城野好樹)

    ○城野説明員 御説明を申し上げます。  御案内のように、線引き制度と申しますのは市街化区域と市街化調整区域に区分をいたしまして、市街化区域につきましては計画的な市街化を図る、調整区域につきましては原則として開発を抑制する地域ということに制度上仕組んであるわけでございます。昨年建設省の方で行いました調査の結果では、都市計画区域全体といたしまして千二百万人の人口が増ということになってございますが、そのうち市街化区域内に一千万人、調整区域内に二百万人という形で人口がふえてございまして、そういう実績からしますと、制度の所期の目的は達し、農地の保護でございますとか市街地の計画的な形成という観点からは大きな役割りを果たしているというふうに評価をしておる次第でございます。  ただ、局地的に見ますと、いまお話がございましたように、当初の目標人口までとうてい達しないというようなところが出てきておることも承知をいたしております。そこで、昨年の九月に、線引きの見直し、これは国勢調査が五年ごとに行われますが、それを基礎にいたしまして線引きの見直しを五年ごとに行うということにいたしております。昭和五十五年の国勢調査の結果がはっきりしてまいりましたので、昨年の九月に線引きの見直し通達という形で都市局長通達を出してございます。その骨子は、なかなか当初どおり市街化しないようなところで営農の継続の希望が強いようなところは積極的に逆線引きをする。そのほかのところにつきましては、土地区画整理事業、地区計画というような計画的なコントロールを強めて都市づくりをしていくということで、昨年九月に通達を出しましてから、各部道府県におきましては現在その見直しの作業中でございます。  その見直しの基礎となりますのは、もちろん人口、経済そのほかの動向を見きわめることは重要でございますが、市町村長が原案を作成するという形に今回改めてございまして、そういう意味からしますと、やはり地域住民との間でわが町をどうしていこうかということの議論が十分重ねられ、適切な見直しが行われるようにわれわれの方も助言をいたしたいと思いますし、ことしの秋以降その成果があらわれてくるものと期待をしておる次第でございます。
  121. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 時間が来ましたけれども、もう一点だけ、どうしてもいままでの経緯があるから質問して終わりますが、去年の二月以来、私はここで豚コレラの問題を取り上げてきました。  この間の村長選挙が行われた二十四日、みごとにこの豚コレラの不始末をした村長が敗れまして、対立候補が勝ったわけですね。農林水産省の畜産局の皆さんが大変いろいろ心配をしてくれまして、現地調査をしてくれたし、ワクチンの問題についてもいろいろ骨を折ってくれましたが、いままでの村長のもとではどうにもならなかった。今度は新しい村長のもとでありますから、あの六千頭という薬殺をされた豚の損害等々の問題もあるし、損害の賠償をここでしろということではありませんが、その人々に激励をし、豚を飼っている皆さんが元気で次の生産に向かっていけるようにするために、どうかひとつ格段の指導を願いたい、こういうふうに思いますが、一言局長のお答えをいただいて、終わります。
  122. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 新治村の豚コレラ問題につきましては、たびたび先生から御指摘がございまして、県からの指導のみならず、私どもも直接担当者を派遣しまして改善方をやってきたわけでございます。  いろいろと現地における事情もあったようでございますが、新しい執行体制のもとに畜産振興をされるということにつきまして、私どもも十分応援をしてまいりたいと思っております。
  123. 竹内(猛)委員(竹内猛)

    ○竹内(猛)委員 これで終わります。
  124. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 吉浦忠治君。
  125. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 酪農振興法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたしたいと思いますが、本法案は、酪農振興法改正いたしまして肉用牛振興を図ろうとするものであります。それは評価するといたしましても、これはむしろ遅きに失したのではないかと考えられるわけであります。  本法案内容に入ります前にぜひただしておきたい点がありますので、二、三それをお伺いいたしたいと思いますが、まず大臣にお願いしたいのですが、牛肉自由化問題の取り扱いについてであります。  昨年来、事あるごとにアメリカわが国に対して牛肉オレンジ等の自由化を主張しておるわけでありますが、われわれとしても非常に心配をいたしているわけであります。近くアメリカとの専門家会合等を持つとの報道がなされておりますし、これに対処する農水省の考え方を、特に大臣から御説明をまずいただきたいと思います。
  126. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 私の基本的な考え方は、自由化はもちろん、輸入枠の拡大もやるべきではないという考え方はいささかも変わっていません。ただ、いまワシントンで佐野経済局長協議中でございます。先ほど、この協議中の模様はどうだろうかというような質問がありまして、私は何もまだ連絡はあってないと言うて答弁しておきましたけれども、昼の休みに官房長にいろいろ聞いてみますと、きょうお昼ちょっと前に電話があって、予期以上に大変厳しいものがあるという連絡があったということを聞いております。  そういう状態でありますけれども、私は、やはりいままでの考え方は変わりません。必要なものは輸入する、必要のないものを輸入する必要はないということであって、その枠の拡大というのはどの辺を言うのか。需要が伸びておるだけ国内生産が均衡がとれて伸びておれば、いままでの輸入よりも枠はふえるわけはないわけですね。必要量だけは、やはり国民に不安を与えないように輸入をして供給しなければならないと思いますが、必要のないものを枠を拡大して、諸般の事情で特別に牛肉、柑橘類の枠を広げるようなことはしたくない、いたしません、こういう考え方でおります。
  127. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 もう一点、大臣、大臣の強い意思は、私も日ごろから信念の強い方であるということで敬服をいたして、また、おつき合いもそういう点で私は尊敬もしておつき合い願っておるわけでございますが、頭越しの、大臣の力の及ばないような国際関係、いわゆる総理がASEAN等にも赴かれますし、またアメリカ等の考慮もして、頭越しの拡大なりあるいは輸入のそういう方向へ向かわれるのではないかという危惧は確かにあるわけです。大臣の心の中にも恐らくそういうものもおありじゃないかと私は考えているわけですが、力強い御答弁をもう一度いただきたいわけであります。
  128. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 いろいろ御心配いただいておりますが、政治の世界でよくあることであるのでいろいろ御心配なさっていらっしゃると思いますが、この問題については、担当大臣が責任を持って処理しようとしておるのを、それを頭越しで、私の知らないうちに片をつけるようなことはない、このようにひとつ御信頼をいただきたいと思います。
  129. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 牛肉自由化はしないとの大臣の心強い答弁でございますので、ぜひともその姿勢でがんばっていただきたいと思うわけでございます。  以下、順次、私、法案内容につきまして質問をさせていただきたいと思います。  その第一は、肉用牛生産振興を図ることについては私も賛成でございますが、それならそれで、酪農振興法改正というよりも肉用牛生産振興法といったものが適当ではないかと考えるわけでございます。なぜ酪農振興法改正により対処しようとなされておられるのか、お答えをいただきたい。
  130. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私どもこの改正案を考えました際に、御指摘のように、肉用牛中心一つ振興制度をつくるということも一つ考え方として考えたわけでございますが、現在の私どもの置かれております状況から申し上げますと、一つは、牛肉生産の七割が乳用種から生まれているということでございます。それからもう一つ、そういう形で乳肉一体となったような経営というものも現実の問題として拡大の傾向にある。それから、双方とも大家畜、要するに草を中心として飼育すべきものでございまして、そういう意味振興の方法としてはやはり土地利用型、土地を使ってやっていくという面での共通点がある。それからさらに、いわば酪農が、どちらかといいますと肉用牛生産の先達としまして大型化その他の道をたどっていったということがございまして、この際、私どもはいろいろなことを勘案しました際に、言葉で言いますと、たとえば大家畜振興法といったような意味酪農肉用牛を一体として制度化する方が、現在置かれておりますわが国肉用牛生産の位置づけとしては適当ではないかといったようなことで判断をいたしたわけでございます。
  131. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 酪農振興法改正によりまして肉用牛振興を図ることとしたのは、これは酪農肉用牛生産とのかかわり合いが密接不可分となっておりますし、あるいは酪農肉用牛振興のための施策が総合的、一体的に運用されなければならないからでございますが、こういう御説明をいただいてよくわかるわけでありますけれども、それならば、酪農振興法改正を行うのであれば、酪農についても飲用牛乳の安売り問題の対処等の酪農問題等があるわけでございます。こういう解決しなければならない問題等について積極的に取り組んでいただきたい、こういうふうに私は思うわけでございますけれども、この点についてどういうふうにお考えでございますか。
  132. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 酪農につきましても、もちろん先生指摘のような問題点がございます。私ども今回の制度改正考えました際に、酪農につきましても問題点の整理ということを一応行ったわけでございますが、どちらかと申しますと、酪農の問題につきましては直ちに法律によって事柄を直すべきであるというような問題よりも、いま御指摘のありました、たとえば市乳における乱売問題等、これらのものは現行制度の中におきましても行政運営として改善ができることが相当ございます。それに対しまして、肉牛問題につきましては、いろいろと酪農施策に比べまして立ちおくれをしているというようなこともございまして、今回の改正肉用牛にしぼりました形で改正をいたしたわけでございます。  酪農につきましては、いま御指摘がありましたとおり、たとえば市乳の混乱につきましてはここ一年ばかりいろいろと勉強してまいりましたけれども、結局これを解決いたしますためには、生乳の用途別の計画的な生産をやるとか、あるいは地域の実情を踏まえました形での合理的な価格体系とか、あるいは生産者団体間の秩序ある取引といった問題、それから市乳プラントの抑制、統合、それから乳業経営につきましての商系、農協系、そういうものを通じます共通認識を形成しまして過当競争を防止するといったような、いろいろと是正すべき点を整理をいたしております。これらにつきましては、法律とまではいきませんけれども、現行制度の運用の中で極力これらの事柄が解決できるように、特に今年度は限度数量の拡大等、この種の問題を整理しやすい環境にあるわけでございますので、制度の運用につきまして十分の取り組みをやっていきたいと思っております。
  133. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 酪農問題についてはまた別の機会に取り上げる機会もあろうと思いますので、本日は牛肉問題にしぼりまして質問をいたしたいと思います。  牛肉といいますか、あるいは肉用牛といいますか、これらの問題は、生産者の問題はもとより、冒頭申し上げましたとおりに対外的な摩擦等の問題にこれは象徴されているとおりでございます。さらには物価問題として、あるいは消費者問題でもあるわけでございますが、そこで世界一高いというふうに言われて悪評の高いこの牛肉価格について政府はどのようにしようというふうにお考えなのか、まずこの点から明確にいたしていただきたいと思います。
  134. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 牛肉価格につきましては、対外的な比較におきまして大変高いんだというお話が多いようでございます。ただ、ここしばらくの経緯を見ますと、国内における牛肉価格といいますのは大変安定的に推移しておりまして、諸物価の値上がりはもちろんのこと、食品の全体の値上がり幅よりも低い、比較的安定的に推移しているかと思っております。そこで、その結果といたしまして、これは比較でございますが、一種の割り安感と申しますか、肉の中で一番消費が伸びているという現況でございます。  ただ、残念ながら対外比較をいたしましたときには、米国ないし豪州に比べまして二倍から三倍、比較土地条件の似通ったECに比べましても二、三割高というのが大体現在の水準であろうかと思います。私どもとすれば、土地条件が全く違うような新大陸型の国と同程度にするということは、これは不可能ではございますが、各種の生産努力を重ねますことによりまして、比較土地条件の似通ったEC諸国並みの水準にすることは可能と考えておりますので、今回の制度改正におきましても、遠からずこの水準に到達できることを目標生産流通対策を集中するつもりでございます。
  135. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 そうしますと、将来EC諸国並みの水準を目指すということでございますので、それは結構なことだと私も思いますけれども、それに至る行程が非常に厳しいのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、牛肉価格EC水準並みに持っていかれるという今後の施策のあり方というものは、どういうふうにEC水準に持っていかれるのか、この際明らかにしておいていただきたい。
  136. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 EC水準に到達します手法としましては、私ども現在の価格安定制度の運用の中で考えておりますが、あの価格安定制度は御承知のように需給実勢方式と申しまして、市場で形成されております需給実勢価格というものを頭に置きまして、生産費それから合理化要素というもので決めていくわけでございます。  ここ数年の動きを見ますと、御承知のように資材価格比較的安定しているということもございますが、生産合理化要素が効いてまいりまして、ほぼいまの水準価格に非常に近い水準で近年推移しているわけでございます。今後のこの推移を考えます場合に、経営規模拡大の要件は今後も続き得る。先ほど申しましたように、経営規模拡大いたしますと一頭当たりの労働時間というものは大変縮減してまいります。そういうことで、今後もこの規模拡大は続く。それから、これは大変大事なことであり、かつむずかしいことではありますが、飼料の自給率を向上させる。このことが飼料費を低減させるゆえんでございますが、これについても相当の努力をいたしますれば飼料自給率を上げてこられる。それから産肉経済性向上と申しますか、よく申します出荷月齢が大変長くなっておりますものをもう少し短くしていくということによりまして、そのことだけではございませんが、粗飼料の供給というようなものも含めまして、同じ肉をつくるに必要なえさの量を下げるとか、あるいは一日当たりの増体量をふやすといった家畜改良的な手法も今後進む。それからもう一つ、たとえば乳雄等に見られますように、現在スモールの段階で移しますことによって大変事故率が高いわけでございますが、乳肉の複合経営といったようなものとか衛生条件を上げるというようなことでこの哺育中の事故率を下げる。  こういうものをすべて集中的に投入をしていった場合に、私どもとすればかなり期間いまの牛肉の支持価格水準というのを上げないで済むのではないか。飼料その他の値上がり等によって上げるといたしましても、大した幅で上げる必要はないと考えております。そういう中で、一方すでに経営としてはでき上がっておるECにつきましては、毎年の支持価格水準が上がってまいっております。そういう中で対外格差も縮小いたしますし、さらに国内的にも諸物価が上がる中で牛肉比較的割り安感を持ってくる。こういうような中でECとの格差の縮減、それから国民の方々にとって牛肉の割り高感がなくなるというようなことは達成が可能だと考えております。
  137. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 肉用牛経営の姿については御説明願ったわけでございますが、酪農についてもたしか第四次酪農近代化計画というものがあったというふうに思いますが、その中で、今後育成すべき経営のモデルとして近代的な酪農経営基本的手法というものを示されたわけであります。それによりますと、頭数などを定めているというふうに思うわけでございますが、この酪農に関するものと先ほど御説明いただいた肉用牛に関するものと考え方が違っているのかどうかという点でございますけれども酪農経営の指標と現実の酪農との関係が、頭数規模などで見た場合どのような状況になっているか、こういう点でお尋ねをいたしたい。
  138. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、酪農経営につきまして、第四次酪近においていろんな規模を示しているわけでございます。  あそこに示しております基本的指標と現状の比較でございますが、頭数規模では規模拡大が着実に進展をいたしておりまして、三十頭以上層の戸数シェアでは、北海道で申しますと、五十三年が二〇%でございましたのが、これが倍増いたしまして四〇%。それから都府県では、五十三年が五%でございましたのが一〇%ということで、増加をいたしております。  それから投下労働時間当たりの生乳生産量で申しますと、北海道の四十頭以上経営では、指標の指数を二割程度下回っております。他の経営形態ではほぼ同程度でございます。  それから飼養管理労働時間でございますが、これは各経営形態とも指標数値に対して二割程度、二十ないし三十時間上回っておりまして、なお一層合理化が必要と考えております。  それから、飼料作の生産は指標数値の二ないし三割程度、また飼料の自給率につきましては、北海道では二、三割程度、都府県では五割程度下回っておりまして、この分野につきましては今後さらに一層努力すべきものと考えております。
  139. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 次に、今後の肉用牛生産については、酪農との結びつきを強化するとの趣旨がもう明らかにされているわけですけれども、俗に乳肉複合経営というふうに言われるものの積極的な推進を図るという点から、酪農家はすでに相当の借金をしょっているわけです。いわゆる負債に苦しんでいるわけでありますが、このような実態を考えると、これらを前提として新たに投資させていわゆる乳肉複合経営を推進することはますます困難なんじゃないか、また、かえって経営が苦しくなるのじゃないかというふうに思うわけでありますが、こういう点ではどういうふうにお考えでございますか。
  140. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 酪農家の中で急速に規模拡大しました後で、いわば牛乳の計画生産という時期に当たりました農家の一部につきまして、御指摘のように、どちらかといいますと借入金が過大となっておりまして、生産の努力にもかかわらず償還が十分にできないというものがございました。五十六年、五十七年と二年にわたりまして相当程度の負債整理と申しますか、長期低利資金の借りかえをいたしますと同時に、新規投資の抑制あるいは家計費等につきましてもいろいろ御努力をいただいて、さらに若干不足する部分につきまして、本年度の価格決定の際に百五十億の貸付枠を増枠いたしまして、借りかえを実行中でございます。  そういう意味で、負債の多い方々に対する対策はすでに打ってきているわけでございますが、私どもこの乳肉複合経営というようなものを推進する立場で考えておりますのは、必ずしもそのために大きな施設投資までして乳肉複合に向かうということだけを考えているわけでございませんで、既存の施設等を十分活用し、あるいは既存のみずからの飼料基盤等を活用して、もう少し乳雄の哺育期間を長くするとか、あるいは一貫経営まで持っていってもらうことがその酪農経営にとってプラスになる場合も十分考えられるわけでございます。  たとえば、いままででございますと、乳雄というものを生後間もないスモールという段階で肉牛の経営農家に渡しているという場合がございますが、これは先ほども申しましたように大変事故が多いわけでございまして、これを自分の経営の中でやっていただくことだけによりましても事故率が相当下がる。そういう場合に、今回の価格決定の際に一頭当たり七千円以内という助成等も考えておりますが、これはやはり酪農経営家にとっても特段の施設投資等も要らなくて収入を上げる道につながり、なおかつ国内の肉資源の向上にもつながるのではないか。そういうところから始めまして、さらに若干施設等も加え、あるいは飼料基盤等も加えた経営一貫とか、あるいはその地域全体としての一貫というようなものも考えたいと思っておりまして、乳肉複合経営の推進につきましては、そういう先生指摘の、余りまたこのために資本を投下して経営が傾くといったようなことのないように、極力既存の施設、そういうものを有効利用しながら乳肉複合経営の道を開くというつもりでやっていきたいと思います。
  141. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 負債対策でございますが、具体的にどのような負債対策をなさるつもりなのかをもう少しお尋ねしたいわけですけれども規模拡大やあるいは乳肉複合経営を推進するに当たっては、現在問題となっております飼料基盤やあるいは畜舎等の施設の整備、さらに資本回転の長期化に伴う資金の手当て問題等を克服しなければならないというふうに思うわけでございますが、この助成措置を政府がお考えにならないのかどうか。この点、お尋ねをいたしたい。
  142. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 今回の制度改正の中で、法律にまで及びます資金制度もございますが、それ以外にもいろいろと考えておりますので、御説明をいたします。  一つ肉用牛経営改善資金でございまして、これは農林漁業金融公庫等から貸し出されるものでございますが、いままでの畜産経営拡大資金の据え置き期間、償還期限をいずれも五年延ばしております。これは、肉用牛生産が非常に長期化するということでございますので、据え置き八年、償還期限は二十年以内ということにいたしております。  それから貸付限度につきましても、個人九百万円、法人三千六百万円等、枠を拡大いたしました。  それからもう一つ比較的便利に使われております農業近代化資金でございますが、この農業近代化資金の中の主務大臣の特認資金といたしまして肥育牛の購入、育成資金がございましたが、これは、従来規模拡大部分、十頭の方が十五頭になさるというのでございますと、その五頭分だけというような貸し付けをいたしておりましたけれども、今回の制度改正の中で、その規模拡大の分に加えまして、もととなると申しますか、十五頭なら十五頭という数につきましても資金を貸し付けられるというような方法も考えております。  それから農業改良資金の部門経営開始資金でございますが、これの貸付限度額を四百五十万、特認の場合は五百五十万まで拡大することといたしております。  そのほか、たとえばいま私が申しました乳肉一体経営で、自分のところで乳雄を保留をいたしまして一定期間飼っていくという農家の方に対しまして、一頭当たり七千円以内の奨励金を交付するということも考えております。  そのほか、既存のと申しますか、われわれが持っております畜産総合対策というようなものの中で、乳肉複合経営に対します共同利用施設の整備とかあるいは肥育素牛につきましての施設、その他のものにつきましても必要な助成ができることといたしております。
  143. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 また、合理的な大家畜生産基盤となります粗飼料についてでありますけれども草地開発の推進あるいは転作田による良質粗飼料の確保及び低未利用資源の活用、山林等への放牧の推進が大きな課題となっているわけでありますが、これらの施策をどのように進めようとお考えなのか。また、この結果、大家畜にかかわる粗飼料自給率をどの程度まで引き上げようとお考えなのか。この点をお尋ねいたしたい。
  144. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 基盤の整備というのは大家畜の場合最も必要な施策でございまして、一つは、公共事業での草地開発事業を推進いたしまして外延的な拡大を図りたい。第三次の土地改良長期計画、これは五十八年から六十七年でございますが、この間に農用地造成として四十七万ヘクタール、うち草地造成が二十九万でございますが、こういうものが一つの大きなてこになろうかと思います。  それから既耕地に飼料作物を入れる問題でございますが、これは畜産総合その他の予算でやっておりますが、まず飼料基盤の集積、あちこちにあります土地利用集積いたしまして飼料作物が入りやすくするとか、それから水田転換の中で極力飼料作物を入れ、あるいはこれを定着化させる。それから未利用の水田裏を活用するとか、それから粗飼料流通組織を育成するというようなことがこの対策に入っております。  それから稲わら利用とか野草といったような低利用あるいは未利用資源の活用ということもございますし、現在あります公共牧場が必ずしも十分な活用をされていないというような御批判もございまして、これの再整備のための助成も考えております。  そのほか、優良品種の選定とかあるいは飼料作物を入れます利用管理技術といったようなものも進めていきたいと思っております。  粗飼料の給与率でございますが、現在、五十六年の数字で見ますと酪農は五〇%でございますが、われわれが六十五年見通しで立てております数字は六八%でございまして、これにはまだかなり改善すべき点がございます。それから繁殖経営でございますが、これは同じく五十六年の粗飼料給与率は七一%でございますが、これも六十五年見通しでは九〇%となっております。  それから、粗飼料給与率で最も問題がございますのは肥育経営でございまして、去勢若齢の肥育では、現状五十六年が一八%でございますが、六十五年見通しでは四〇%というかなり高い目標を掲げております。さらにそれが低いのが乳用雄の肥育でございまして、これは現状五十六年が八%でございますが、六十五年見通しでは三八%程度の粗飼料給与率を掲げているわけでございます。
  145. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 さらに、肥育段階における生産コスト低減のための方策として、局長も先ほどから肥育期間の適正化が必要というふうに言われておるわけでありますが、近年肥育期間長期化が顕著となっており、これが価格の面からも飼料効率の面からも大きな問題となっているわけであります。こうした傾向はわが国固有のサシ志向という消費形態が大きな原因と思われますけれども、安い牛肉の供給体制の確立を図る視点から見ますと、こうした問題をどのように解決をなさろうというふうにお考えなのか、お尋ねをいたしたい。
  146. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のとおりの実情でございまして、実は私ども家畜改良増殖目標を掲げました際にも、肥育期間の適正化ということを掲げてその指導をしてきたわけでございますが、いま先生からも御指摘のありましたサシ志向と申しますか、比較的高級志向ということもございまして、ここ数年出荷月齢は延び、出荷体重も増大する、特にその傾向は高級と言われます去勢和牛において顕著でございます。肥育牛の生産費といいますのは、もう御承知のように素牛代とえさ代ということでほぼ尽きるわけでございますので、この肥育期間が延びてまいりますと飼料費というものがどんどん増高をする。大変高級なものになりますればそれでも個別経営としてはいいわけでございますが、全部が全部そういう銘柄牛というような高品質とはならぬわけでございます。私ども、そういう意味では、かつて掲げました家畜改良増殖目標におきましても、肥育期間長期化を避け、効率的な肥育に努めるということになっておりまして、たとえば乳用牛で申しますと、現状の二十一カ月に対して目標では十七カ月ということになっているわけでございます。  ここで考えるべきことは、単に生産段階の指導だけでは解決ができませんで、やはり最終商品としての評価ということにもございますので、現在そういう牛肉の各部位なりあるいは品位といったものをどうやって決めるか。サシというものに比較的重点を置いたものでは問題がございますので、そういう面からの接近も図ります一方、現実の事業といたしまして極力そういう短期肥育、粗飼料多給型の経済肥育が現場に定着いたしますように、五十七年度から肉用牛経済肥育普及促進事業という実験的事業もいたしておりまして、そういうところでつくられました牛肉というものがそれなりに評価されて市場に流れるようにというようなこともすでに開始をいたしておるわけでございます。この点は、比較コストを下げて牛肉を供給する非常に大事な面でございますので、今度の法律に定めます基本方針の中にもうたい、かつそれが各現地に適合できるように指導体制を強化するつもりでございますし、流通段階につきましても、それが受け入れられるような素地づくりをしていきたいと思っております。
  147. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 次にお尋ねをいたしますが、政府は一貫して、牛肉については従来ほどの伸びではないものの、今後とも需要は伸びるというふうに説明をされているのでありますけれども、先般、食生活懇談会というのがございまして、「私達の望ましい食生活」という報告書が出されているわけです。これによりますと、米と牛乳を中心とした食生活を営み「脂肪、特に飽和脂肪酸が多く含まれている動物性脂肪のとりすぎに注意すること。」こういうふうに言われておりますが、今後とも牛肉の需要は伸びるとの政府の見解と食生活懇談会のこの提言との関係についてどのように理解すればよいのか、国民にわかりやすく説明していただきたいと思うわけでございます。  この場合に、飽和脂肪酸が多く含まれている動物性脂肪というのはどういうものであるのか、こういうこともおわかりであればお答えいただきたい。
  148. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私ども牛肉の需要につきましてある程度伸びるだろうと申しておりますが、実はわれわれが摂取いたしております牛肉の量は、一人当たりにしますとまだ三キロから四キロ台のところにございます。これは諸外国の水準よりもかなり低いのでございまして、御承知のとおり日本の場合はたん白質を摂取いたします場合でも植物性たん白の摂取が多いし、動物性たん白の中でも半分は魚類からとる、そういう意味で非常にバランスのとれたといいますか、そういうとり方をしているということからでございます。したがいまして、私どもが申しております三%から四%台の伸び率の牛肉消費が行われたといたしましても、近い将来において、たとえば欧米水準における牛肉消費水準よりもはるかに低位にあることは間違いがないところであろうかと思います。そのほかに、われわれがやっておりましたアンケート調査の中でも、もう少し食べたいというようなものの中に牛肉が書かれる場合が大変多うございます。かつて高度成長期牛肉が実は一〇%ぐらい伸びた時代がございます。これは一〇%と申しましても、もとの数字が小そうございますから、ちょっとふえるとすぐ一〇%ぐらいの伸び率になりましたが、六十五年見通しの中で言っております三%台から四%台というものはまあ間違いのないところではないかということでございます。  それから、先生いま御指摘の食生活懇談会の提言でございますが、これは先ほど申しました日本的食生活の具体的あり方ということで、いわば牛肉等、牛肉だけではございませんが、そういうものにあります動物性の脂肪の中にある飽和脂肪酸が多く含まれるものをとり過ぎないようにという注意でございますが、これはあくまで六十五年長期見通しで見込んでいるような需要の伸びを前堤といたしました場合には、まだこのとり過ぎというような状態にはならないようでございます。そういう意味で、私どもは矛盾するということではございませんが、たとえば食事の洋風化というようなことで日本的なバランスのとれた食事をやめて一挙に肉類だけに集中するというようなことになりますと、血液中のコレステロール値を高める作用があるわけでございますので、成人病を引き起こすという意味でこういう御注意があったものと思いますが、長期見通しで見通している程度の伸び率ではとてもこれが多過ぎるというような状態にはならないと考えております。
  149. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 飽和脂肪酸が多く含まれている動物性脂肪というのは、どういうものに多く含まれているのですか。
  150. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私も専門家ではございませんけれども、魚肉じゃございませんで、要するに動物性の肉類とか卵黄とか、そういうものにあるようでございます。
  151. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 次に、輸入問題についてちょっとお尋ねいたしたいのです。  畜産振興事業団の牛肉の輸入差益についてお尋ねいたしますが、行管関係から、特に肉用牛生産振興対策に重点的に使用しなさいとか、あるいは生産対策とあわせて消費者対策も考えていきなさいというふうなことが指摘をされているわけですが、今後の輸入差益の見通しはどういうふうにお考えなのか、あわせて、この使途についてどういうふうにお考えなのか、お尋ねをいたしたい。
  152. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 先ほどから申しておりますように、われわれの施策のやり方が海外との牛肉格差を極力縮めるようにという運用をいたしておるわけでございますので、それだけ施策が進む度合いに応じてと申しますか、差益の発生の度合いは小さくなってきております。これは、輸入量が毎年増加をいたしておりますけれども差益の総量が減るということで、そのこと自身、外国の牛肉価格国内価格の差が少なくなっている。これは価格差だけではございませんで、いわば円相場というようなものにも大変影響はいたしますけれども、五十七年度の売買差益で見込まれますものが約二百六十億でございまして、五十八年度はさらにこれを下回るものという想定をいたしております。いずれにしましても、かつてのようなたとえば三百数十億あるいは四百億といったような差益を生ずるような事態は今後はなかなか考えられないと思っております。  そこで、この差益でございますが、基本的には消費者の負担により発生するものでございますので、これを極力消費者に還元する手法として、まず一般的に考えられますことは、国内産の牛肉が極力安く供給できるような、国内牛肉生産のいわば経営基盤を強化するということがその一つの方策だと思っております。  よくこの差益につきまして生産対策、消費者対策と仮に分けますけれども、この生産対策と言われますものも、生産者を保護するという観点よりも、たとえば生産者が値段を上げないでも生産できるようにする。ここ数年、御承知のように国内牛肉の支持価格はほとんど動かしておりませんが、そういう価格のもとでも生産ができるように生産者生産基盤を強化するという意味では生産対策と申しますけれども消費者にその利益が行き渡るようにというつもりでやっているわけでございます。直接消費者の方々に還元いたしますために、たとえば一つの方法とすれば、まず差益が出ます前に、事業団で比較的安価に売っておりますいわば指定店等の販売事業、これはそれだけ差益が生ずる額が少ないというわけでございますが、そのほかに、たとえば生協と農協等が直接結びつきまして、いわば産地直結的な取引をすることに対して援助をするような助成とか、いろいろな流通対策、それから表示の適正化といったような消費者対策等にも使っておりまして、いろいろな年次によりまして割合は違っておりますが、この牛肉のためにほぼ九割近くのものが与えられているわけでございます。もちろん肉の対策と申しましても酪農関係に相当の資金は回っておりますが、これも先ほど申しました酪農経営の中で国内牛肉の供給の七割が行われているということから申しますと、やはり肉対策というものは相当な比重を占めていると考えております。  今後におきましても、差益の使途といたしましては牛肉をなるべく安定的に供給するとか、あるいは直接的に牛肉消費者に渡りやすいための流通ルートを改善していくとか、そういうことに充てるべきかと考えております。
  153. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 畜産経営拡大資金拡充についてお尋ねをいたします。  畜産経営拡大資金は昭和三十八年に農林漁業金融公庫法の改正によりまして創立されたものでありますけれども、今回の改正において酪農及び肉用牛生産振興に関する法律、こういうふうに関連づけた理由は、その貸し付けを、計画制度に即して経営改善に対する意欲と能力を有する農家に対して積極的な支援を実施するためである、こういうふうに言われております。また、これとあわせまして、融資条件の改定と貸付手続の変更をしようというふうになさっているわけですけれども、今回の措置に伴いまして本資金利用は相当程度伸びることが想定されておられるだろうと思いますが、政府はどの程度の見通しを持っておられるのか、お尋ねをいたしたい。
  154. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 先生いま御指摘ございましたように畜産経営拡大資金ということでつくりまして、しばらくの間はかなり資金需要がございましたが、その後、たとえば自立経営のための資金等がつくられますとともに資金需要も比較的停滞的に推移したわけでございます。  私ども、今回、特に肉用牛につきまして据え置き期間、償還期限の相当大幅な改善をいたしましたことによりまして、この資金に対する需要はある程度拡大すると思いますけれども、この資金が本格的に動き出しますのはどうしても五十九年度ぐらいになろうかと思います。私ども、どれくらいの資金量ということも予測することはまだ大変困難でございますけれども、こういうせっかくの資金制度でございますので、公庫の総枠の中で、どんな新需要が出てまいりました場合でも、枠の流用等も含めまして融資枠は十分確保していきたいと考えております。  それから、今度の制度の中での改善点で申しますと、畜産経営拡大資金の場合、これは例の酪農経営肉用牛経営と両方あるわけでございますが、私どもといたしましては、現行の制度の中で極力地域の実態に合った貸し付けができますように、貸し付けの諸手続その他について検討中でございます。そういうことで、この資金が極力地域の要望にこたえられるように各種の手続その他を変更いたしますと同時に、それが真に受け入れられますように――われわれ資金をつくりますときに常にそうでございますが、役所ではかなりやったつもりでございますが、現地では制度内容がなかなか周知徹底しないということもございますので、この資金制度あるいはこれを含めまして、先ほども御説明しました農業近代化資金その他の資金改善も含めましたいわば畜産に関する資金制度の一覧、改善の一覧といったようなものも各農家のお手元まで渡るようにして、よくこの制度を周知徹底させるつもりであります。
  155. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 次に、今回の改正措置に伴いまして、本資金の貸付対象者は市町村計画が作成された地域の者、こういうふうになっているわけでございまして、借り受け希望者は、市町村計画に沿った経営改善計画を作成して市町村長から計画認定を受けることになっているわけであります。現行制度に基づきました貸付対象者の範囲及び貸付手続に比べてどのように変更されようとされるのか、またそのメリットは何なのか、この点をお尋ねいたしたい。
  156. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 貸付対象者でございますけれども、今度の資金につきましても、中規模経営へ移行することな助長することを目的としたものでございますので、現行制度で行っております畜産経営拡大のためのもの、これは現在は酪農、肉用両方あるわけでございますが、それと位置づけといたしましては特に異なるところはないわけでございます。新制度のもとでの貸付対象者は、経営改善計画につきまして市町村長認定を受けた者ということになりますけれども、現行制度におきましても要綱の中で実はおおむねこれと似たようなことを義務づけておりますので、中身といたしましては実質的に余り大きな変更はなかろうかと思います。  それから貸し付けの手続でございますけれども、現行の制度で申しますと、申込書の公庫提出後、都道府県知事の意見を求めることになっておりますが、今回の資金の場合は借り受け希望者が市町村長認定を受けた経営改善計画書を添付した上で公庫へ申込書を提出するということになっております。したがいまして、変更後は、地元の市町村長さんがこれを必要と認め、このアフターケアもできるということをやっていただきますればそれで資金が借りられるという意味で、若干のメリットがあろうかと思います。
  157. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 また、家畜導入に関する制度として、畜産経営拡大資金等による融資措置のほかに、国や県の補助によって農協等による家畜導入事業が実施されているわけでありますが、経営改善計画作成農家に対しては導入事業の運営に当たって何らかの重点的な配慮がなされるのかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  158. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 大家畜の中で特に肉用牛経営につきましては、どちらかといいますと酪農に比べまして収益性が低かった、それから、拡大生産を行うといいましてもかなり資金が寝るといったような制約があったわけでございます。そういうことから、経営規模拡大を志向する農家につきましても、単なる融資事業のほかに、いわば家畜導入事業というものをやったわけでございます。私どもは、そういう意味で、今度経営改善計画を作成する農家というものも当然そういうことを期待していると思っておりますので、これは単に低利資金の融通という道だけではなくて、家畜導入を必要とします農家につきましては、これを極力対象とすると考えております。
  159. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 肉用牛生産振興合理化を図るとしても、牛肉流通段階の抜本的な改善が図られなければ、生産者のみが厳しい立場に立たされまして、消費者への還元が行われない懸念が強いわけでありますが、流通段階におけるいわゆる段階別価格も明らかにしながら、これらについての対応策をどのようにお考えなのか、お尋ねをいたしたい。
  160. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 一般的に申しますと、御承知のように、牛肉の場合には単にその品物が一定のマージンで動いていくというだけではございませんで、産地において屠殺解体、それから枝肉、部分肉といろいろな流通経路を経るということだけではなくて、いわば一種の加工というようなことが加えられながら最終消費者に渡るということでございまして、流通条件の段階でどのような段階的な価格形成がなされているかということをただ一般論として申し上げますにはなかなかむずかしい問題がございます。現に、たとえば卸売市場等を通じます場合はその卸売段階、あるいは中卸段階といったものの価格もございますし、部分肉につきましても部分肉センター等で集計いたしておりますように、各段階別の価格というものも一応あるわけでございます。  日本の食肉流通の場合に、よく複雑であるという表現があるわけでございますが、諸外国の例等と比較しましてどこの段階が特別不合理であるということはないようでございまして、生産者手取り価格等を対比しました場合でも、日本の場合は最終消費者価格の六五%程度生産者手取りということになっております。アメリカ農務省の調査事例等を見ましてもこれに似たような約六〇%水準といったようなことから、一般論として申しますと、特段の問題はないと思います。  ただ、これは流通近代化という手法で考えてまいります場合に、産地における食肉処理の問題とか、たとえば部分肉流通の問題とか、あるいはもっと大量流通させる手法があるかとか、商品の規格化の問題、いろいろと流通につきましてさらに合理化を進めるべきことがあると思っております。これは、今後ともわれわれの施策の大きな一つの柱といたしまして、この流通改善に努めていくつもりでございます。
  161. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 今回のこの法改正によりましていわゆる肉用牛生産に対する国内体制が整備されるわけでございますけれども、最近、牛肉自由化や輸入枠の拡大に対する諸外国の強い要請があり、先ほど大臣からも心強い答弁がございましたが、このように国内生産体制ができ上がりますと、この法改正によって自由化もいつでもできるのじゃないかというふうなことの懸念がかえって増してくるような気がいたしますけれども、どのようにお考えでございましょうか。
  162. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 最初に申し上げましたように、牛肉につきましては世界各国でいろいろな生産体系があるわけでございますが、やはり一番牛肉生産の盛んなところは、最も粗放な生産をしております、要するに土地が安くて最も経費をかけないで子牛をつくれる地域、オーストラリアが一番安い。口蹄疫があって直接輸入できない国ではアルゼンチン等がございますけれども、それに次いで土地の広大なアメリカというかっこうになっております。それに対して、やはりECとか日本のような土地制約のある国は、どんな合理化あるいはどんな経営努力をしましてもそういう国との間で価格かなり大きな格差があることは事実でございます。  したがいまして、私どもは、そういう比較的似通った国との間の経営格差をなくするための努力は一生懸命いたしますけれども、そういうことに到達した段階でも、たとえば現にECが可変課徴金制度をもってその他の国からの牛肉を抑えているように、やはり国境措置というものは必要なわけでございます。私どもは、国内に合理的生産を展開して極力消費者に満足していただけるような価格国内生産することはいたしますけれども、そういう状態の場合でも、やはりもっと違った生産構造の国との間では国境措置が必要だと考えております。
  163. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 最後に、本法案におきまして子牛価格の安定制度が法制上明確になったことは、いわゆる子牛価格低迷している現在に大変時宜を得たものというふうに思うわけでございますが、やはり単に絵にかいたもちで終わらせてはならないと思うわけであります。子牛価格の安定について今後具体的にどのような措置を講じて充実を図っていこうというふうにお考えなのか、明確にお答えをいただきたいと思います。  私は、以上をもちまして質問を終わりますが、酪農といわゆる肉用牛振興を図ろうとするものでありますこの畜産の法律でありますが、養鶏もございますし、養豚もあるわけでありますから、これらについても十分な施策を講じていただきたいとお願いをいたしまして、御答弁をいただいて終わります。
  164. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 子牛の安定につきましては、育成農家にとっては自分の生産物でございますし、肥育農家にとりましては自分の生産資材でございます。お互いに高い方がよかったり安い方がよかったりするわけではございますけれども、これが安定をいたしませんと肉用牛生産全体としては安定しないということでございますので、今回の制度改正におきましても、単なる予算制度から国の法律制度に上げることによりましてまず信頼感を得ること。それから、特に今回のようにかなり基金が出てまいりますと不安がございますので、全国基金に相当大きな基金を積み増して各県基金への融資を可能にした。その場合の融資も特に無利子にしたということが今回の制度の中で大きな前進であろうかと思います。  しかし、真に子牛価格を安定いたしますためには、現在非常に零細でございますいわば繁殖経営というものをもう少し経営基盤の大きなものにしていく必要があろうかと思っております。これにつきましては、繁殖農家規模拡大のために、たとえば基盤整備から施設の援助あるいは家畜導入といったようないろいろな手法がございますので、これらを集中的に投入しまして、繁殖農家経営規模を大きくすることと、もう一つは、繁殖農家育成を一体としましたいわば一貫経営、あるいはこれが個別経営でできない場合には地域一貫というようなものも進めていく必要があろうかと思います。  最後に、御指摘の養豚、養鶏でございますが、これは土地の広がりという意味での制約がないことから、すでに国際競争力にたえるほどの強さの産業になったわけでございますが、この場合、養豚につきましては価格安定制度がございます。それから、採卵鶏につきましても価格安定がございますが、そういうものを適切に運用すると同時に、この二つの経営の場合はえさの価格の安定が最大の施策でございますので、飼料の備蓄とか配合飼料価格安定基金制度を運用することによって経営の安定に努めていきたいと考えております。
  165. 吉浦委員(吉浦忠治)

    ○吉浦委員 ありがとうございました。
  166. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 神田厚君。
  167. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 酪農振興法の一部を改正する法律案につきまして、以下、御質問を申し上げたいと思っております。  まず、今回の酪農振興法の一部を改正する法律案のねらいは、牛肉肉用牛生産振興を図るための法制度の整備にあるとのことでありますが、現在、わが国の重要な外交課題の一つとなっております日米間の貿易摩擦におきまして、牛肉自由化ないし輸入枠の拡大が大きな焦点となっております。  そこで、大臣に御質問したいのでありますが、今回法律改正してまで肉用牛生産振興を図ろうとする趣旨は一体何なのか。また、牛肉自由化問題との関連はどのようになっているのかについてお伺いしたいと思います。
  168. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 やはり食糧の自給率を高めるという観点から、この畜産振興を図ろうとしておるのでございます。それと競合する牛肉をいまアメリカの方ではいわゆる市場開放ということで盛んに日本に売り込もうとして、いろいろな手を使って話を持ち込んでまいっております。そこで、現在経済局長が出かけて事務的に協議を続けております。きょうお昼の連絡では、具体的な内容は聞いておりませんけれども、依然として強い姿勢日本に申し入れがあっておる。  そういうことで、足らないものを輸入するという考え方に立って基本的な姿勢を貫くわけですから、何といっても畜産を振興して牛肉の自給率を高めていくことはわが国の農政の重要な政策であろうという考え方でこの法案提案いたしておるのでございます。
  169. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 ただいま日米交渉の問題が出てまいりましたが、この問題につきましては、大臣は先ほどの質問に対しまして、自由化、枠拡大は行わないというようなお考え方であったようでありますが、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  170. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 そのとおりであります。
  171. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 私どもとしましても、いろいろ問題はありますが、この自由化問題等につきましては生産農家の立場に立ちまして日本態度を貫いていただきたいと思っております。これに関連しましては、また後ほど御質問申し上げたいと思っております。  さて、この牛肉問題でありますが、牛肉国内生産と輸入の関係についてであります。現在、自給率約七〇%でありますが、この自給率は今後どのように推移するとお考えになっておられるのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  172. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私ども、六十五年長期見通しを策定いたしました段階におきまして需要量の伸びをいろいろと想定いたしておりますが、三%台から四%台というものの中に牛肉の需要量がほぼ落ちつくと考えておりますが、それに対しまして、国内資源を有効に活用して生産をしていきます場合には、ほぼその伸び率に等しい程度生産拡大は可能であると考えております。したがいまして、六十五年見通しの線で申しましても七〇%程度の自給率は確保し得るものと考えております。
  173. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 次に、日米交渉関連しまして、交渉のスケジュール、妥結の見通し、時期とかにつきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  174. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 第一日目はすでに終わっておりまして、日本時間としますと本日夕刻から明朝にかけて第二回目の会議をする予定でございます。会議の日程といたしましては二日を予定いたしておりますので、特段の変化がない限り二日間の会議の後に佐野局長は帰国を予定いたしております。  私もまだ情報を得ておりませんので、その後どういうような展開をするかはいま聞いておりませんが、極力専門家同士の話し合いによりまして話を詰めたいということで出かけておりますので、今明日の会議の結果を見まして判断をすることになろうかと思います。
  175. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 次に、牛肉価格の問題でありますが、価格では、国際比較によりますとアメリカの二倍、オーストラリアの三倍、EC諸国の三割高程度となっております。今後肉用牛生産振興を行うとしても、これが現在のような高い牛肉生産振興となるようであっては大変問題があるということでありますが、この点、どういうようにお考えでありますか。
  176. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 限られた国土の中での生産でございますので、生産者の方々の相当な御努力をお願いしなければならないと思いますが、土地条件におきまして比較的近接していると申しますけれども、実はECの方が日本より耕地面積が広く、かつ平たんであることは御承知のとおりでございますが、それはいろいろな技術的な問題等も含めて解決可能と考えておりますので、われわれはまずEC程度価格水準目標として展開すべきものと考えております。
  177. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 EC諸国並みの価格牛肉を安定的に供給するための具体的施策はどういうふうにお考えでありますか。
  178. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 EC並みと申しますのは、いま直ちにECのように下げるということは意味しないわけでございます。御承知のように、ECの場合はすでにかなり肉用牛生産におきましても成熟をした国でございますので、ECにおける価格政策の運用をごらんになりますとわかりますように、どちらかというと支持価格かなり上げてきておりますが、わが国の場合は、幸いにいたしましてまだ生産の歴史も浅いことがございまして、最近の価格の決定は、生産性の向上とか資材費が安定しているということで、ここ数年ほとんど水準が変わらない形で来ております。そういうことができますのも、やはり規模拡大というのが順調に進んでいるということでございます。今後もこの規模拡大は順調に展開をしなければいかぬと思っております。  もう一つ大事なことは粗飼料の自給率を上げることでございますが、わが国肉用牛生産は先ほど申しましたように粗飼料自給率が目標よりかなり低いわけでございますので、これを向上することによって経営費を下げていく。それから産肉経済性向上という観点からは、要するに効率的な生産ということでございますので、家畜改良の中で一日の増体量を上げていくとか、同じ肉をつくります場合の飼料の供給量を下げていくということができるような家畜改良をやりますと同時に、出荷月齢、特に超過して出荷している月齢を短縮していくというような問題。それから乳雄の場合に特にあります事故。スモールという段階で親から離しますので、そこで事故が起きておりますが、この事故率は、たとえば雌の子牛は五%、雄子牛が二〇%もあるわけでございます。この格差をなくすだけでもかなり経済性が上がるといった、こういう幾つかの要素をその経営に必要なように粗み合わせていきまして、経営費を極力増高させないようにやっていく。そういうことが続きますれば続きますほど海外との価格差は縮まってまいりますし、国内価格で申しますと、いろいろと物価水準が上がる中で同水準に置くということは、相対的に牛肉価格が割安感を持ってくる。実はここ数年がそういう動きでございますが、これをさらに伸ばしていきたいと思っております。
  179. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 そういう形で果たして規模拡大なりその他複合経営のようなものが実際にできるかどうか。そうでなくとも負債やその他で大変経営が苦しい酪農畜産の経営者にとりまして、そういう形でこれが進んでくるのかどうか、ちょっと疑問なのでありますが、その点はいかがでありますか。
  180. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 実は肉の経営の場を論じます場合に、数年前までの主張の中に、どちらかといいますとわが国肉用牛生産が歴史も浅く、かつ大変零細だというところから書き起こす場合が多かったわけでございますが、最近その数字を見ておりますと、実は経営規模と申しますのもかなりテンポ増強をいたしておりますし、一番零細だと言われております繁殖経営、まだ平均で三頭もないわけですが、これも現実に五頭以上飼っている人が出している牛が全体の子牛の四二%というぐあいに、かなり速いテンポで展開しているように思います。今後この制度を展開していきます場合に一種の合理化目標となりますような核、国の基本方針なり県とか市町村計画をつくりまして、それを目指して誘導いたしまして、また、施策もそこに集中するということをいたしますれば到達は不可能ではないのではないか。  と申しますのは、酪農も十数年前にこういう歴史をたどったわけでございます。そういう意味では酪農という一つの先達があるわけでございますので、それにやはりある種の模倣と言っちゃなにでございますが、そういう先達をまねながらやることによって、かなりの水準へは行けるのではないかと思います。
  181. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 次に、家畜改良増殖法とも関連するわけでありますが、牛肉効率的な生産を図るためには、経営面の合理化とともに、牛の品種改良や人工授精、受精卵移植などの新技術の開発と普及に努めることがきわめて重要であるわけであります。今後考えられる技術革新の方向とそのような技術の開発普及のために、農水省としてはどういうふうな施策を行うおつもりなのか、その点につきましてお答えを願いたいと思います。
  182. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 経営改善は、いわば資本的なものと経営的な知恵と技術的なものの組み合わせでございますので、この技術改善向上という要素というのは大変重要に思っております。酪農におきましても、一頭当たりの泌乳量が五千キロを超えるというような世界にかなり自慢ができるような水準になったことが日本酪農の安定にもつながったわけでございます。  肉につきましては、御承知のようにいわば雄の方から接近します改良手法は、精液を使いました人工授精その他のものでございますが、もう一つ、今回の法改正をお願いいたしております受精卵の移植技術というものがございます。これは雌の側からの改良増殖を可能にした、いわば画期的な技術でございますが、すでに五十七年から予算措置を講じておりまして、この技術を実用化いたしますために、牛の受精卵移植技術利用促進事業というものをパイロット的にやっております。大変評判がいい事業でございまして、各県からぜひやらしてほしいというようなこともございますので、五十八年度におきましてもさらに数をふやしてやっているわけでございます。この受精卵の移植技術は、改良スピードを上げるという意味の改良面だけではございませんで、たとえば、受精卵を乳用牛に移植しまして乳用種のところで肉用種の牛をつくっていくということも可能でございますし、それから、二個の受精卵を移植しまして双子生産をするという、きょうも実は農業新聞にそういうことが出ておりましたけれども、そういうことも可能でございます。いろいろといままでになかった改善の手法、たとえばさらに言いますと、雄と雌の産み分けとか、いろいろなこともございますが、そういうような利用面でかなり大きな期待がかけられるわけでございます。  ただ、何と申しましてもこれは慎重に取り組むべき問題でございますので、今回の家畜改良増殖法改正をしていただきました暁には、これをまず改良面で大いに活用いたしますと同時に、その技術の習熟度に応じましてさらに生産面にまで応用をしていきたいと考えております。
  183. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 先ほどもちょっとお話がありましたが、安い肉用牛生産のためには飼料自給度の向上が不可欠であります。現在の飼料の自給率はどの程度で、今後どのような措置によってその改善を図ろうとするのか、お答えいただきたいと思います。
  184. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のとおりでございまして、粗飼料の給与率を上げるということが何より経営の安定、コストの低減に役立つと思っておりますが、五十六年の数字で申しますと、酪農では粗飼料の給与率が五〇%でございますが、これは六十五年見通しでは六八%までにしたいと思っております。それから肉用牛の繁殖でございますが、同じく五十六年が七一%でございますが、これを六十五年見通しでは九〇%まで上げる。それから肥育経営の中の去勢若齢肥育でございますが、これは五十六年が一八%でございますが、これは非常に目標が高うございますが、四〇%程度まで上げるというのが現在の六十五年見通しでの数字でございます。  これは実はいろいろと実行いたしていきますと、なかなかこの六十五年見通しというのは達成するには容易ではない過程がございますが、やはりここが安い牛肉をつくります最大のてこでございますので、何度も申し上げますが、草地開発事業だとか、あるいは既耕地における飼料作物の作付拡大とか、未利用利用資源活用、これは稲わらとか野草でございますが、そのほか公共牧場の利用といったことを通じまして粗飼料給与率を上げていきたいと思っております。
  185. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 また、粗飼料の確保がいま現在草地造成や森林、林野の活用で行われているわけでありますが、いわゆる水田利用再編対策等によりまして水田の遊休化というのが進んでおりますから、この遊休化した水田をその方に充てて飼料作物の作付面積の拡大やあるいは飼料用としての飼料米等の開発、こういうことが考えられるわけでありますが、この点につきまして農林水産省としてはどういうふうにお考えでありますか。
  186. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 水田を利用しまして飼料作物をつくってまいります場合に、その水田の状況が乾田と申しますか、あらゆる場合に利用できますような場合におきましては、えさの栽培といたしますと、飼料米といいますものよりもたとえば青刈りトウモロコシ、イタリアンといったようなものをやります場合に最も生産量も多うございますし、畜産農家としてもその方が好評でございますが、いろいろな形の水田がございまして、必ずしも全部が全部そのような飼料作物だけではいかないという場合もございます。水田の場合でも、たとえばオオクサキビのような水田でも使えます牧草も実験をいたしておりますが、そういうものの一環といたしましてかねがね飼料米の利用考えられているわけでございます。  飼料米につきましては、単に一年間かかって米だけをつくるという場合にはその他のものに比べましてなかなか有利だという数字は出てまいりませんけれども一つは、やはりいまの収穫量というのは問題でございますので、多収穫米というのが本当にできるかどうかというような試験研究は現在も努めているわけでございます。そのほか、米だけつくるという形ではございませんで、米と何かを裏表につくってホールクロップとして使えないかとか、いろいろな利用形態も含めまして、現在、第三次の転作問題と絡めました検討を省内でいたしておりますが、そういうものの結論を待ちまして、水田の転作の中での米の問題というものを位置づけてまいりたいと思います。
  187. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 今回の法律改正によりまして、国、県、市町村というふうな一貫した計画制度酪農と並んで肉用牛生産についてもできるようになったわけでありますが、この計画制度というやり方がどの程度の実効性を有するのか。特にその先例となりました酪農近代化計画制度酪農振興に果たした役割りについて御説明いただきたいと思います。
  188. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私ども、今回の制度改正で例といたしまして酪農の発展の過程を追ったわけでございますが、酪農近代化計画につきましては四十年以降四次にわたって策定をいたしまして、この間、わが国酪農というものは大変飛躍的に発展をしたわけでございます。この場合に、国、県、市町村といった一貫した方針のもとで各段階での目標を示した、これに即して各種の経営合理化をやっていったという意味で、酪農近代化計画というのはかなりの位置づけが与えられるべきではなかろうかと思っております。  肉用牛生産につきましては、先ほどから申しておりますように、酪農比較しまして諸制度がいわば立ちおくれてございます。特にいろいろなことをやっておりますが、これは法律の高さではなくて、その大半がどちらかというと単なる行政上の措置でございましたけれども酪農振興法の場合、ああいう酪振計画というものが国の制度として位置づけられ、いわば国民的なコンセンサスを得てやられたということが大変計画を効果あるものにいたしておりますし、また、そういう国、県、市町村に通ずるということから、関係者の一種の一致団結というものが見られたように思います。  今回、私ども肉用牛につきましてもそれと同じようなことを期待しているわけでございまして、そういう意味では、酪農のよき前例にならいまして、肉用牛についても関係者のコンセンサスを得ながらこの計画制度をつくり、また、これを実行に移したいと思っております。
  189. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 計画制度でありますが、具体的な施策がばらばらであっては非常に問題があるわけでありますから、その点は整合的な制度がつくられるように要望しておきたいと思います。  さて、問題点でありますが、一つは、今回の改正肉用牛が加えられた結果、都道府県計画市町村計画において酪農肉用牛の両方について一本の計画をつくらなければならないということになっております。実際には、酪農地帯である北海道あるいは肉用牛の繁殖地帯である南九州というふうに一方に特化している地域かなりあるわけで、酪農肉用牛とをセットにして一本でないと計画を作成できないということになるとこれは大変問題があると思っておりますが、その点はいかがでしょう。  さらにもう一つは、農林漁業金融公庫からの資金の貸し付けの問題でありますが、市町村計画の作成された市町村の区域内にいる酪農家または肉用牛経営者のうち経営改善計画を作成した者に限られているわけでありますので、酪農家肉用牛経営者にとっては、自分の住んでいる市町村計画をつくれるかどうか、あるいはつくるのかどうかということが大変重大な関心事になるわけであります。  そこで、なぜ一定の基準に適合した市町村についてのみ市町村計画を作成できることにしたのか、一定の基準の具体的な内容は何なのか、その結果どのくらいの市町村計画を作成することになるのか、この見通しについてお聞かせ願いたいと思います。
  190. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 最初に御指摘のありました、たとえば根釧のような酪農専業地帯とか南九州の肉用牛の専業地帯に両方立てるのかという御質問でございますが、そのように経営が完全に特化されておる地域につきましては双方を立てる必要はございませんで、一本の、たとえば根釧ならば酪農計画、南九州であれば肉用牛生産振興計画を立てれば十分かと思っております。  それから、市町村計画の場合に一定の基準を満たすということにいたしておりますけれども、これは肉用牛生産にしろ酪農生産にしろ、ある程度の頭数規模がありまして――これは、あるというのは現にあるということだけではございませんで、ある程度の将来見通しも含めてでございますが、そういう集中的な生産が行われるところに改善余地があるわけでございまして、非常に散発的にやります場合にはどうしても集中的な投資がしにくいわけでございます。この一定基準につきましては、現に私どもも、行政的なことではございますが、肉用牛についてのある種の地域制度も持っておりますし、酪農についてはすでに酪農近代化計画制度があるわけでございますので、この施策との継続性を見ながら、現在その両方、肉用牛生産振興地域制度であるとか酪農近代化計画制度にあります基準、これは飼養頭数とか飼養密度とか農用地等の利用に関する条件というものがその条件でございますが、こういうようなものをにらみながら決めていきたいと思っております。  もう一つ指摘の、どれくらいの市町村数になるかということでございますが、現在酪農近代化計画を策定いたしております市町村は千五百十五ございますが、今回の市町村計画の策定につきましては、私どもとしてまだ予断を持っているわけではございませんが、これをやや上回るような市町村が樹立をしてくるのではなかろうかと思っております。
  191. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 計画制度関連いたしますが、市町村計画に即して経営改善計画を作成した酪農家あるいは肉用牛経営者については、資金の裏づけだけではなくて、何かもっと違う形での支援というものを考えているのかどうか、その点、お聞かせいただきたい。
  192. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 こういう改善計画をも立てまして積極的に経営拡大していきます農家につきましては、当然融資だけではございませんで、私どもの各種の施策、たとえば畜産総合対策事業にあります共同利用事業とか、あるいは公共事業の中にありますような基盤整備とか、あるいはその他いわば事業団の助成事業にありますような事業も極力集中をいたしたいと思っておりまして、そういう補助、融資、その他、単に補助、融資だけではございませんで、各種のコンサルタント事業のようなソフトな事業も含めまして、こういう経営改善計画を立てるという積極的な農家がその改善目標を達成できるように考えていきたいと思っております。
  193. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 さらに、農林漁業金融公庫からの貸し付けの問題でありますが、今度、肉用牛の購入及び飼養に必要なものについては、償還期限あるいは据え置き期間の五年間延長が行われたわけでありますが、肉用牛振興を本気になって行おうとするならば、融資の面におきましてもより抜本的な措置を講ずるべきでなかったかと思うのであります。単に償還条件の改定のみでなくて、たとえば金利の大幅な引き下げを行うなどの措置がなぜとれなかったかについて御質問申し上げたいと思います。
  194. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 私どもも、案をつくります段階で、金利にまで及ぶ改善ができないものかというようなことも含めて検討したわけでございますけれども一つは、やはり今回の問題となっております肉用牛経営につきまして、どうしても初度投資の、投資をいたしましてから回収にわたる間の期間比較的長いという特徴は大変説明しやすうございまして、五年間延長、八年据え置きというのはこの種のものとすれば若干異例に長いと思いますが、その点につきましては財政当局とも合意を得たわけでございます。  しかし、金利につきましては、同種のものといいますと農業近代化資金の六%とか、あるいは主務大臣指定施設の七・三%といったようなものがございまして、これらとの関連からいいまして、五・五%という金利水準は必ずしも高いものではない。私どもとして何を選ぶかといいます場合に、やはり据え置き、償還を延長するところに一番のメリットがあるのではなかろうかと考えまして、御指摘の点も考えたわけではございますが、据え置き期間、償還期限の延長ということをまずとったわけでございます。
  195. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 次に、子牛価格安定基金制度の問題でありますが、今回、子牛価格安定基金制度を法制化することになりまして、このことについては大変高く評価をしたいのでありますが、本制度の運用に当たりまして政府の対処方針を二、三お聞きをしたいと思っております。  まず第一に、改正案は、事業の円滑な実施に必要な助言、指導、経費の補助等を行うよう努めるとなっておりますが、現在と比べ、政府の施策はどのような点が前進をしているのでありましょうか。
  196. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 まず、何と申しましても現在の制度は予算措置のみをもって賄われておりまして、御承知のように昨年来の子牛の価格低迷の際にも論議されましたが、いわば基金がなくなればこの制度は終わるのではないかという関係者の不安感もあったわけでございますが、法制度化をお願いいたしておりますこういう形になりますと、これは国の制度として金の切れ目が縁の切れ目といったことではなくて、制度としての永続性が保証される、このことが何よりの前進だと思っております。  それからもう一つは、予算措置でやっておりました結果、各県における運用に若干の幅がございまして、いい意味で申しますと幅と申しますが、悪い意味で言えばある意味では必ずしも整合性がなかったということがございますが、今回は法制度化を機にこの制度の均一性と申しますか、均衡を保っていきたいと思っております。  それからもう一つは、これはこの法制度化と直接とは申しがたいかもしれませんが、特に今回全国協会をも含めまして法律化したことに伴いまして、全国協会が持つ地方基金に対する融資機能を特に強化する必要があるということで、現在融資基金七億円のものに三十七億円をプラスしまして四十四億円の基金にいたしました。その際に、基金に融資をいたします場合はその基金がいわばパンクの状態でございますので、極力それに対する融資を優遇することを考えておりまして、金利が二・五%でございましたが、この際この金利を無利子といたしました。さらに償還条件につきましても、四年据え置きの八年償還という大変有利な条件をこの全国基金に与えたわけでございます。  以上のようなことによりまして、基金制度が一応土台が固まれば、この肉用子牛価格安定事業もより生産者の信頼を得てこの基金が信頼を得るということがやはり子牛の価格の乱高下の防止に役立つと考えておりますので、制度化の暁におきましては、その趣旨が貫徹できるように関係者を指導してまいるつもりでございます。
  197. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 基金への加入率を見ますと、肉専用子牛が九一%、乳用雄子牛が一八%となっております。今後乳用子牛の安定的な加入の促進が課題となるわけでありますが、政府はどういうふうに考えておりますか。  また、事業の拡大に必要な予算措置の拡充についてはどういうふうに考えておりますか。
  198. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 乳用子牛につきましては、実は今回の低落の場合でももし外国との関係が心配になるということでございますと、理屈の上だけから申しますと乳用種の方が影響を受けやすいと思うのでございますが、実は乳用種の方が肉用種よりも価格変動の幅が比較的小そうございまして、特に五十年代に入りましてからも乳用種価格変動比較的低うございます。そういうこともございまして、乳用雄牛の方の基金加入はきわめて低うございまして、現在二〇%を割るくらいでございます。  私ども一つはやはり育成農家一戸当たりの飼育頭数が大きゅうございますので、経営基盤が強い。和牛の方が非常に零細経営でありまして、一頭一頭の価格変動に敏感だということもあろうかと思いますが、先ほどからも申しておりますように、乳用種というものの比重がだんだん増してまいりますので、やはりこの基金へ相当加入をしていただいていいのではないか。率直に申しますと、この基金の存在についても必ずしも熟知していらっしゃらない方もあるようでございますので、まず制度のPRを図る必要もありますし、私どもとすれば、そういう趣旨が徹底しまして加入がふえますれば、いつでも国あるいは県が助成すべき資金も出す用意はいたしておりますので、極力まず制度の趣旨の徹底から始めまして、乳用雄につきましても加入率がある程度向上するように指導してまいりたいと思っております。
  199. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 本制度のかなめであります保証基準価格につきまして、政府はその設定水準についてどのような指導を行う考えでありますか。
  200. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 保証基準価格につきましては、過去に市場で実現しました価格趨勢を基礎といたしまして、肉用種の種類ごとに各県のバランスをとりながら指導しておりまして、いわば需給実勢方式といったようなものでやってきたわけでございます。  これは、やはり繁殖農家にとりましては所得確保上高いものを求めるわけでございますが、今度はこれを肥育いたします農家にとりましては資材費の高さになるわけでございますので、これは余り高いものでは困るという、双方のバランスがあろうかと思います。私ども、いま和牛、黒牛のあれについて申しますと、たとえば現在二十九万円台というのは農家の共通認識としてほぼそれぐらいのものが欲しいということはかねがね申しますが、これを極端につり上げたいという動きは現在ございませんので、むしろいまの保証基準価格並みぐらいのところで極力安定できるように、繁殖農家にとりましては経営規模拡大等によってそれが実現できるようにしていくことが必要ではなかろうかと思っております。
  201. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 肉用牛生産振興を図るためには、経営合理化ももちろんでありますが、流通問題に手をつけていかなければならないと考えております。農林水産省としては、この牛肉流通消費面においてどのような問題があるというふうに考えておりましょうか。さらには、どのような対策をそれによって講じようとなされておるのか。その点をお聞かせいただきたいと思います。
  202. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 流通改善が非常に重要な部門でございますので、かねがね産地における食肉センターの整備等いたしまして、極力産地で枝肉あるいは部分肉化して流通合理化を図るということもやっております。それから卸売市場の整備、それから特に部分肉センターの設置によります部分肉取引の量的な拡大、あるいは価格の安定ということもやってきております。このようなことは今後とも努力すべきものと考えておりますので、そういう流通施設の整備等取引の公正化といったことでこの問題に対処したいと思っております。  それから消費者対策でございますが、一つは、やはり何と申しましても消費者に対する食肉に関する知識の普及とかあるいは調理方法、その中でも、牛肉につきましても部位別とか、だんだんいろいろな形での流通が行われますし、輸入の牛肉もございますし、国産につきましても和牛もあり乳用種もありということでございますから、そういう食肉に関する知識の普及とかあるいはそれを利用する調理方法といったものも必要でございます。それから、これを業者のサイドから見ますと表示の適正化とか、いろいろな問題がございます。  私ども畜産振興事業団の助成事業等の中でこの種の施策をやってきておりますが、今後もこの種のものにつきましては充実をしてまいるつもりでございます。
  203. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 牛肉流通機構の合理化、さらには牛肉の規格、品質表示の明確化、こういうことは今後ともどんどんと進めていただきたいと思っております。  最後になりましたが、さきに米国政府は大幅な減反政策に踏み切りました。穀物の大半を米国に頼っておりますわが国にとりまして大変大きな影響があると思っておりますが、政府は、このような政策転換によりまして、短期的及び中期的に飼料穀物の需給、価格等がどのように推移すると考えているのか。また、それに対しましてどのように対処していくお考えか。  さらには、わが国の穀物備蓄水準を引き上げる必要はこのことによってあるのかないのか。  そしてまた、日米の農産物の貿易摩擦緩和に資するように、米国産穀物を中心とした世界的な備蓄機構を創設する考え方をお持ちにならないかどうか。  この点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  204. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 三月の二十二日に、米国政府が穀物の作付制限とPIK計画の参加申し込み状況を発表いたしておりますが、この作付の減反申し込み面積がかなりの面積になっておりまして、これによりましていわば非常に過剰基調であった穀物の基調が変化するのではないかというようなことが言われたわけでございます。米国におきましては、減反計画を実施いたしました後におきましてもまだ大変多量の穀物を保有をいたしておりまして、直ちに供給不足に陥ることはないと考えております。  穀物価格につきましては、今回の減反計画への申し込み状況が明らかになりました直後にちょっと上昇したわけでございますが、その後比較的落ちついて動いております。わが国が輸入いたします場合は、現地における穀物価格とそれから円の相場が一番大きく左右するわけでございますが、この双方を見ました場合に、直ちに国内における穀物原料価格が急騰する様相はないように思いますけれども、いろいろと関係するところが多うございますので、今後の成り行きにつきましては注意深く見守ってまいる所存でございます。  それに関しまして、穀物の備蓄について、あるいはもし穀物が上がった場合の対策はどうするかというお尋ねでございますが、備蓄につきましては、御承知のように短期的な輸入途絶に対応するという観点から、年間必要量の約一カ月分を備蓄目標にいたしまして、国の財政負担のほかに飼料のメーカー等が通常一カ月持つというようなことで進めてきたわけでございます。現在、配合飼料供給安定機構が国の助成を得まして、トウモロコシ、コウリャンにつきまして五十六万トン、それから政府におきましては飼料用大麦を八万七千トン、それぞれ備蓄しておるわけでございますが、五十八年度におきましては、トウモロコシ、コウリャンはさらに三万トンの積み増しをいたしておりますし、飼料用大麦につきましては、飼料米がなくなってきたことも絡みまして、約七万五千トンの積み増しを行うことを予定いたしております。したがいまして、着実に備蓄水準は増してきておりますけれども、これはあくまで短期の需給変動にたえるということでございまして、非常に大きな国際的な穀物需給というものをこれだけでクッションをするわけにはいかないと思いますが、これともう一つの配合飼料価格安定制度を極力有効に使いまして、穀物の価格変動が直ちに生産農家経営を圧迫することのないようにという趣旨で運用いたしたいと思っております。  最後に御指摘の、単に日本という問題ではなくて、さらに大きな国際的な観点からのグローバルな穀物備蓄構想のようなものが論ぜられておりますことは承知をいたしておりまして、FAO等の理事会等でもこの種の討議がなされているわけでございます。論議としていろいろなことがございますが、一体どういうような備蓄の構想にするかとか、あるいは当然大きな財政負担を伴いますのでそういう拠出はどうするのだといったような問題がございまして、各国が持っております関心の度合いなりあるいはその問題についての理解程度が違いますため、現段階においても合意がされていないのは御承知のとおりでございます。私ども、多大の困難があることではございますが、日本も相当大量のものを国際的に依存する立場でございますので、諸外国の意見等も聞きながら慎重に対応すべきものと考えております。
  205. 神田委員(神田厚)

    ○神田委員 終わります。
  206. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 寺前巖君。
  207. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 いろいろ論議もされましたので、私は、四点お聞きをいたします。  この法改正に基づく気がかりになる点、これが一つです。第二点は、皆さんも御心配になり、お聞きしておられる日米農産物交渉をめぐる問題。第三番目には、この間うちから少し話題になっておりました輸入粗飼料の安全性の問題。第四点に擬装乳製品の輸入問題をめぐる問題。四つの点について聞きたいと思います。  まず第一点です。  今度の法改正は現行の酪農計画制度肉用牛生産を加える。計画面でも資金面でもそういうふうな総合化をやっていく。国内産の牛肉の七割が乳用種で占められている現状を見るときに、一般的に見て、関連性でもって発展させるということなんですから、これは一定の合理性を持つところの法改正である。しかも、子牛の価格安定というのですか、これは法定化しようというのですから、それは非常にいいことだと私は思うのです。  ただ、気がかりになりますのは、酪農振興法ができて、第一次、第二次というふうにいろいろ計画を立てておやりになってきた。おやりになってきて、そしてその結果が、ずいぶん負債を背負って酪農民が泣いているという問題が現実に発生したことは否定できない事実だと思う。こういう計画的に仕事をしていった結果が、酪農民やあるいはこういう関係の畜産で生活する人たちにとって喜ばれ、そして日本国民にとって全体としてよかったなというものが法律的に整備されなかったら、自画自賛を幾らしていようったって、それは評価に値しない、こういうことになると私は思う。  ですから、たとえば全体的に見ると、酪農民の経営内容というと、平均すると二十一・三頭ですか、非常に大きな頭数を持っている。それに対して、和牛で複合経営をやっておられる人を見ると、これは七・何頭ということになる。明らかに経営のあり方は基本的に違うんだから、違う実態のままで画一的な指導をしてしまったら、これは被害が及んでくる。だから、地域性も地域差もあるだろうし、個人差もあるだろうし、そういう点を十分に配慮した指導をやらなかったら、結果において、総合化させた近代的な計画性を持ったやり方は実際上は新しい矛盾をつくることになる。  この点について、従来の経験はどういうふうに踏んまえておられるのか。この法改正に基づいて、これからの計画のあり方の問題についてどういうふうにやろうとしておられるのか。後でしまったということにならないように、その点に対するところの対応がどう計画されているのだろうか、私が懸念するのはこの点なんです。この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  208. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 最初に酪農の点から御説明いたしますと、酪農につきまして、御指摘のような負債整理を必要とする農家群が、特に北海道を中心といたしまして相当数できましたことは事実でございますが、この酪農近代化計画の四十年以降の流れを見ますと、経営規模にいたしましても、農家が持っております資産にいたしましても、あるいは一日当たりの収入にいたしましても、これはかなり改善をされたわけでございます。したがいまして、日本酪農一般で申しました場合に、やはりこの酪農近代化計画制度のもとでこれだけの生産拡大され、かつ、国内においても相当程度の自給力を保持できるようになったというメリットはあったかと思います。もちろん、御指摘のような負債が過大になった農家群があったことも事実でございますので、それについては必要な改善措置をいたしておりますけれども、私は、全体として見ました場合に、やはり酪近計画のもとでの酪農民の努力というものが現在の日本酪農を築いたように考えております。  その次に、今度はこれを肉用牛に応用いたします場合に、肉用牛の場合は、いままで単に発展がおくれたというだけではございませんで、それにはそれなりの理由があったわけでございます。特に和牛の繁殖経営等にいたしますと、これは御承知のように、発展の歴史から申しますと、役牛として各日本じゅうのほとんどの農家が飼っておりました牛を肉用牛に回してきたわけでございまして、非常に零細であり、かつ、それだけで事業として成り立つものでない。いわば兼業、兼業といいましても、非常に零細なものから発達してきたわけでございます。したがいまして、歴史的に申しますと、まだまだ酪農に比べましても発展の非常に早い段階、初期の段階にあろうかと思います。  そこで、私どもはこの肉用牛生産計画化いたします場合にも、そういう地域地域の発展の度合いとか、あるいはその地域が持ちます自然的条件、これは先ほどもちょっと申しましたが、比較土地資源に恵まれた地域とそうでない地域では基本的に違うわけでございます。われわれがあるべき姿を掲げます場合にも、相当数のタイプ分けをいたしまして、たとえば先ほども申しました土地の制約の比較的少ないものと多いもの、それから兼業の相手方がかなりはっきりしているもの、それから専業的にも発展できるもの、そういう幾つかのタイプを現在頭に描いておりますが、国でもそのようなことで考えますと同時に、今回、国の基本方針に基づき各県あるいは各市町村計画を樹立します場合は、その地域の置かれました発展の度合いなりあるいは自然的環境というようなものを十分頭に描いた計画を立てていただく、それをわれわれとしても応援をしていくという形で制度を組み立てているわけでございます。  したがいまして、先生御心配の画一的ということではなくて、むしろ地域の自主性といいますか、地域の特性に応じた、しかしながらもう少し先を見た計画を立てていただいて、それに必要な援助、助成を加えていくつもりでございます。
  209. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 十分御配慮いただきたいと思います。  次に、日米農産物交渉をめぐる問題です。  昨年の六月ごろでしたか、衆議院でも参議院でも農産物交渉をめぐって枠の拡大自由化について論議になりました。参議院で農水大臣は、当時、絶対に枠の拡大はやりません、こう言っておりながら、三品目の枠の拡大を決めて帰ってきたのですね。去年の中ごろだったですかね。それから去年の十二月二十三日、当委員会で、これは委員長委員会を代表して態度を表明いたしました。それに対して、枠拡大に反対していく態度を金子農水大臣は表明されました。ところが、実際にはその後、六品目の枠の拡大を手みやげにしてアメリカへ行ってしまうという事態が発生した。ことしになって農水大臣の所信表明を聞いていたら、自由化は反対だ、こう言うけれども、枠の話がなかったので、ここで私が質問した。  一連、こうやって去年から毎回毎回私ずっと聞いてくると、自由化については反対だ、こう言いながら、枠の拡大の問題についても常に言いながら、実際上起こってくることは違うことが生まれてきたというのが現状の事実であった。  私は、そこで気になったものですから、一月ほど前になりましたか、当委員会であえてまた質問をいたしました。そうしたら、現時点で枠の拡大は必要ない、こういうふうに大臣おっしゃいました。ともかく言うこととやることが違うから気になって仕方がない。そうこうしているうちにまた今度は、きょうもいろいろ論議がありましたけれども、新聞を見ていると、今月中旬から中曽根首相の了解のもとに牛肉オレンジの枠拡大案を検討して、二十六日からの日米交渉に臨むんだという新聞記事が出始めました。一カ月前に必要ないとまで言い切られたのがこんな話になって新聞に伝わってくると、一体国会で言っておられることは本当なんかいな。何回か続いてきているだけに、きっぱりした、必要ないとおっしゃるのは、二度とそんなことを言う必要はないというぐらいに何でならないんだろうか。記者会見になるとまたややこしくなるし、アメリカに行くとややこしくなるし、国会での言明と異なることが出てくるというのは一体どういうことなんでしょうか。まず御説明いただきたいと思います。
  210. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 いろいろ私の考え方が変わってきておるじゃないかという御質問ですが、私は変わってない、こういう考え方でおるわけです。  時間をとるものですから、いままで余り詳細に私の考え方を申し上げたことはございませんけれども、きょうはもっと詳しく申し上げます。  国会で昨年四月に、自由化、もちろん枠拡大も、わが国の農民に犠牲を負わせるようなことはやるべきではないという決議をしていただいております。十二月にも、やはり委員会の同じような趣旨の申し入れがあっています。こういうことを踏まえて、いかにして自由化アメリカに対して断り、枠も広げないようにしていくかということを苦慮しておるのでございまして、いまでも私は、自由化の問題は皆さん認めておるようですけれども、枠の方は少し動いてきておるように申されておりますが、私は枠も全然拡大すべきではないという考え方基本的な姿勢はいるわけですよ。  そこの枠の方の問題をもっと詳しく、私の考えておる枠を申し上げます。  大体、日本はいま七〇%の自給率を持っておる。三〇%は主として豪州アメリカから輸入をして日本牛肉の需要にこたえておるわけです。したがって、日本生産がどれだけ伸びるか、あるいは消費がどれだけ伸びているか、この均衡を考えてみますならば、生産消費かなりテンポで伸びておるとするならば、いまの輸入しておるいわゆる足りないもの、その数量は変わらないことになるわけですね。そういう常識に立って、これ以上の枠を拡大する必要はない、私はこう申し上げておるわけですから、何も別に私の言葉に半年前といまとは大変変わっているような、政治家として自分の良心、言動に恥じるようなことは私は言ってまいっておりません。
  211. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 農協中央会の岩持会長さんが十九日に大臣にお会いになったときに、新聞の報道によるとこういうことを言っておられますね。これ以上の自由化、枠拡大は、わが国農業を崩壊に導くものであり、断じて容認できない、岩持さんはそう言っておられる。わが国農業を崩壊に導くからあかぬ。農業団体を代表しておっしゃっているのだろうと私は思うのです。こういう農業団体が毅然たる態度をとっておるもとにおいて、また大臣はきっぱりと、生産消費の伸びで足りないものは別として、そうでない限りは絶対に拡大はしないんだ、私の良心においてもはっきりしておるんだといまおっしゃったわけですね。  そうすると、この農業団体の了解も得られないような、六品目を枠を拡大していくとか、そういうようなことは交渉の中でやれませんな。はっきりしていますな、これは。やれないと言い切れるわけですな。岩持さんも、日本農業を崩壊に導くものだ、こうおっしゃったというのだから。農業団体がそういう態度でぱちっとしておられる。大臣もぱちっとしておられる。それなら交渉に行かれる人は、去年の暮れに六品目の枠の拡大を言われた、そんな程度で受け入れられない。ああ、受け入れられないなら受け入れられないで構わぬじゃないか、はっきりしてこいよということで、いま実務者の交渉をやっておられる。態度の問題としてそう理解してよろしゅうございますか。
  212. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 六品目のお話があっていますが、六品目は、牛肉、柑橘類の輸入問題、枠拡大とは、これはちょっと別枠になっておるわけですね。そこで、アメリカはずっと以前から六品目を挙げて、これを緩和しなければガットに提訴するぞということは昨年の暮れからたびたび言い続けておるわけでございます。したがって、ガット提訴がこわくてこれの枠を動かしておるわけじゃなくて、実際日本の農民に被害を与えない程度のものはということで、六品目の枠については国内でも話が進められておるのでございます。  そこで、今度は牛肉と柑橘類の問題でございますが、先ほど申し上げたとおり、いまアメリカで、いわゆる総理が一月に訪米しまして、専門家レベルでひとつ冷静に話をしようじゃないかということのつながりが、一昨日から私のところの経済局長が出かけていって、ゆうべから話を続けておるわけです。これはアメリカがどういうことをこの時点で言ってくるか。いままでは御承知のとおり大変強い姿勢でいたが、いろいろ仄聞すると多少緩和したようなにおいもするし、行ってみなければわからぬ。行ってみてどういうことを向こうさんがおっしゃるのかということで、まず、出かける前は別に日本側から一つの枠をはめてああだこうだということもいたしておりません。  したがって、実際、その枠の問題については、私も聞かない方がいいということで、行って向こうの空気を見て、日本の僕の意見も聞く必要があるならば電話で連絡しなさい、こういうことで行っているのでありまして、先ほど申し上げましたとおり、枠の考え方なんですね。枠を拡大しないというのは、もっと細かく言うならば、毎年大体三万トンずつ日本アメリカの肉を輸入しておるわけですよ。両方で大体十三万トンですね。日本はこれだけは輸入しなければ国民に肉の供給を完全に満たすわけにいかない。しかしながらこの枠は広げない、こういうことを私は言っておるわけでございまして、それを仮に三万トンを四万トンにするとか五万トンにするとか、そういうことは全然考えてない。この枠は広げない、こういうことを私は強調しておるわけですから、その点はひとつよく理解をいただきたいと思います。
  213. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 ちょっと待ってくださいよ。六品目の枠の拡大については、これは向こうの要請を聞いて枠を拡大します、こういうことですか。これが一つです。  それから牛肉オレンジについては、これは八二年度まではちゃんと約束があったわけなんだから、それは毎年毎年枠拡大じゃなくてちゃんと計画があったんだから、これで終わるから八三年度からどうしようかという問題が残っておる、こういうことでしょう。  それで、これについては一部の新聞にこういうことが情報として流れていますね。二十六日から始まっている日米交渉で、日本側は、高級牛肉八三年度枠三万八百トンについて、来年四月から年間一〇%程度、約三千トンずつ、オレンジは八万二千トンについて同じく年間五%程度、約四千トンずつ、それぞれ八七年の東京ラウンド終了年次をめどに、四年間にわたって段階的に拡大するとの案を提案すると伝えられている。これは一部の新聞の情報に出ているのです。  そこで、火の気のないところにこんな話が出てこないのだろうから、いまの大臣の話からちょっと気になり出したので私はもう一度きちんと聞きたいのですが、六品目については、われわれがここで決議したときには、牛肉オレンジだけを言うておるのではないのですよ。この枠の拡大について私らはあかぬと言うているのですよ。そして、してきませんと言っておいて、去年三品目やった。そして十二月になったら、ここでわっと言うた後で六品目が出てきた。これはもうそのときから出ておった話だけれども、そしてその六品目は、そんなものは満足のいく状態ではないというので、今度はその六品目の中身について量をふやすということでどんどんまた枠を拡大するとは一体何事だ、ちゃんとしろというのが、これがみんなが思っている気持ちなんですよ。  だから、もう一回はっきりしてほしいのですが、六品目の問題についても、たとえばトマト、トマトジュース、これを一番たくさんつくっているのは長野県だ。三割の減産をやっていますよ。地域の特産品だといって転作奨励にも入れてやっておるのだけれども、これがいま生産制限をやっているのですよ。そこへさあ持っていらっしゃいなんということで枠を拡大してきて、日本農業に影響を与えないと言えるのか。六品目だって、枠の拡大というようなものはただごとでないという問題を持っていますよ。小さい問題だというわけにはいきませんよ。枠の拡大について具体的に言いますと、その点はっきりしているのですかというのが一つです。  それからもう一つ牛肉オレンジオレンジについても、温州ミカンの場合二割ですか、自主的に生産制限をやっているでしょう。自主的にやっているところにそんなものを持ち込まれていいのか。枠を拡大することは断じてあかぬ。牛肉の問題だって同じことです。だから、牛肉オレンジのそういう枠の拡大について一部新聞に流れたような考え方は毛頭ないのかあるのか、許せるような枠の拡大考えられるのかということで国民は疑問を持っているのですよ。だから、牛肉オレンジの問題に対して一部新聞に流れたような考え方は毛頭ない、そんなものは絶対にできませんということ、これが第二点。これをもう一回きっぱりと言ってほしいのです。
  214. 塚田説明員(塚田実)

    ○塚田説明員 お答え申し上げます。  まず御指摘の第一点の六品目でございますけれども、これは御指摘のように去年の春ごろから一年がかりの課題でございますけれども、私ども一貫してとっております態度は、昨年の四月の本委員会での決議、また十二月の申し入れにおける、農業者が犠牲とならないよう対処するという趣旨を踏まえて慎重に対処してきているつもりでございます。御案内のように、米側はガット提訴をするとか、相当厳しいことを言ってきておりますけれども、私ども国内の需給事情を十二分に踏まえて、なおかつ不測の悪影響が起きないように米側とは厳しく交渉してきたつもりでございます。今回の協議におきましてもそのような厳しい態度で、国内農業者が犠牲とならないように、需給事情も十二分に踏まえて対処しているところでございます。  それから、ただいま牛肉、柑橘の新聞報道についていろいろ御指摘がありましたけれども、私ども、新聞に報道されている数字については一切事実無根であるというふうに考えております。そのようないろいろの数字についての事実は全くございません。私どもはこの牛肉、柑橘の問題につきましても、先ほども申し上げました本委員会決議及び申し入れを十二分に体して慎重に対処しているところでございまして、本来、輸入の枠と申しますのは需給の実態に即して設定されるものであるというふうに考えております。かかる観点から、これはかねてからでございますけれども、この問題について私ども慎重に検討し、米側と折衝しているところでございます。
  215. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 そうすると、二つの問題について、結論的に言うたらどっちも慎重に対処だ。枠の拡大はあかぬと言うておるのに、何でそうだと言わないのか。何で慎重に対処としか言えないのか。委員会のあれを尊重して慎重に対処していく。大臣は、さっき、これ以上枠を拡大しない、良心に恥じることはできぬと言ったでしょう。それから農協の会長さんは、枠拡大わが国農業を崩壊に導くからあかぬとはっきり言うている。あなたは国内農家に被害を与えない範囲で慎重にやる、需給の実態を無視した拡大はやらぬと言うが、私は与えると言うておるのです。大臣もそう言うておるのだったらはっきりせい、そんな慎重に対処なんてばかなことを言うな、枠拡大なんてばかな交渉をしてくるなと言うておるのです。枠拡大はしないと言うたら済む話が、何でそうならないのです。だから、こんなまことしやかな新聞報道が流されることになる。一切事実無根だと言うが、事実無根だと言わなければならぬような数字が何で流れるのですか。慎重に対処ということでいろいろな数字をはじいているのじゃないですか。そんな数字をはじくなと大臣がはっきり言わなければならないのじゃないですか。
  216. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 私ははっきり申し上げておるつもりですが、枠の拡大についてもいまのところ必要はない。足りないものは輸入して供給しなければ国民が困りますが、余るほどのものを輸入して冷蔵庫でストックを持つようなことはやらない。足りないものは輸入する。これは輸入しなければならぬでしょう、従来もそれをやってきておるわけですから。  それで、現状を見ますと、仮に七〇%の生産力を持っておる牛肉、これは三〇%は輸入で補完しなければならないという現状ですから、新しく必要が生じなければこの輸入の枠を広げる必要はない。いま見たところで、枠を広げなければならないように供給が逼迫しておるというような見方は私はしてないわけですよ。したがって、いまの枠を広げる必要はない、こういうことを言っておるわけですから、その点はひとつよく御理解をいただきたい。  枠の拡大についてどこの時点をとらえて言っておるかというと、現時点の枠を拡大する必要はない、こう言っておるわけです。これはちょうど足りない分だけをいま枠を設定して輸入しているわけですから、先ほどからいろいろ御指摘になっておりますが、それ以上のものは要らない、拡大の必要はない、こういうことを農業団体の方々にも私は強調しているわけですよ。これが私の基本姿勢ですから、ひとつ。
  217. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 それなら、あなたが農水省の中の諸君たちに、慎重に対処だなんていうわけのわからぬようなことを言わないで、枠の拡大はないと大臣は言うているんですというふうに言い切らしたらいいわけだ。どっちが頭が悪いのか知らぬけれども、議員の方が頭が悪いから了解せいと言わないで、私のところの内部は頭が悪いから了解さす指導をちゃんとしますとはっきり言えばいいんだ。どうも私にはようわからぬ。慎重に対処だなんて、何言っているんだというわけだ。  私、農家へ行きますやろ。そうすると、この前も宮崎へ行きましたら、これから交渉やと、枠の拡大をはっきりせぬみたいなことが伝わりますわ。伝わると、牛というのは、きょう言うてあした食えるようになるものじゃないんだからね、何カ月もかかるんだから。そうすると、それがちゃんと値に響くというのです。だから、現に雌の子牛の平均価格が十九万円を割り込んだ。四十九年のオイルショックに次ぐ暴落に見舞われたという報道が、四月二十日の農業新聞を読んでいたら出ていました。そういうふうに、態度というものはそれにすぐ敏感に影響していますよ。  私どもの京都でも、子牛の生産農家にこの前集まってもらって話を聞いたのです。一番に言いよったのはやっぱりそれだ、枠がどうなるかと。これからだあっと入ってくると言ったら、いまから和牛の飼い方についてもちょっと考えんならぬさかいなと、こうなって値にぱっぱっと響くんですわ。だから、ちょっと一言でも大きく影響するということを考えたら、きっぱりした態度をこの分野についてとっていただきたい。  それからもう一つは、ガット違反の意見が向こうから出ているとさっきからもおっしゃっていました。結局、日本は圧力をかければかけるほど譲歩するんじゃというふうに扱われたら、たまったものじゃないと思うんです。日本は、大体いいお客さんなんでしょう。向こうが売り手で、こっちは買い手なんだからね。売り手が買い手に偉そうなことを言うこと自身が、なめるなというようなものだと私は思うんですわ。しかも、アメリカ自身はいろいろな輸入の制限をやっているわけでしょう。そのくせ、日本に対して閉鎖的やと言うのは、何を言うんだ、ちょっと顔洗ってこいぐらいの、ガットでやるんだったらガットでやりまっかと、そういう気魄が欲しいと私は思うんです。だから、こういう点について、交渉団ももう少し大所高所に立って毅然たる態度をとってほしいと思うんですがね。その点、大臣、どうですか。
  218. 金子国務大臣(金子岩三)

    ○金子国務大臣 毅然たる態度を私ほど堅持しておる者はないのじゃないでしょうか。これはやはり交渉事ですから、もし私が少しでも弱気を吐くようになったら一体どうなるでしょうか。私は、国益を守るためにいかなる泥かぶりをやっても、とにかくこの際ひとつ――日本で私ほど強い姿勢をとる人はいないんじゃないでしょうか。したがって、いろいろ批判もあるかもしれません。しかし、やはり交渉を続けていく上には、私のように頑迷と言われてでもそういう姿勢を堅持するのが国益である、私はこのように考えています。  余り外交上のテクニックを打ち明けると、いま交渉中ですから、手の内を暴露することになりますから、これ以上申し上げません。申し上げられないことがたくさんございます。寺前さんもこの点はひとつよく御理解いただいて、いま盛んにやっている最中ですから、余りこれ以上私に聞かない方が国益になるんじゃないかなと私は思います。その点はひとつ信頼していただきたいと思います。  それから、検討検討と先ほどからしきりに言いますが、私は検討ということは一口も言っておりませんから。検討は、あれは官僚のいわゆる官僚用語ですから、そう思って、私とは全く違った立場で答弁を事務的に専門家がやりよるわけですから、決して農水省の考え方が絶えず検討で逃げ切っておるようなお考え方にならないように、ひとつお願い申し上げます。
  219. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 責任を持って内部を指導してください。  次に行きます。  輸入粗飼料の安全性の問題、これは数年前から問題になっているようなんですね。乳牛が金属異物などを食べて死亡、廃用になってしまう。創痍性疾患というのですか、いわゆる金属病ですね、これがふえていることが、家畜共済の資料を見ても出てくるんですな。昭和五十二年の資料を見ると三千百件。それが五十六年になると三千五百件と、ずいぶんふえているのです。原因は何なんだ。アメリカ産へイキューブにまじっている針金の問題だというふうに指摘されているわけです。  ここに千葉県の共済連の診療所の所長さんの調査が出ていますけれども、創傷性疾患による死亡牛などから見つかった金属が、これはいつなんですかな、百十七例のうち六割は針金だ。その形や太さが共通していることから、ヘイキューブの製造過程に混入したものだという指摘が出ていますね。同じことが愛知県の半田市の酪農組合で、ヘイキューブ七十トンから針金が約二百五十本見つかっている。香川県のある飼料メーカーの調査でも、ヘイキューブ八十トンからやはり針金がずいぶんいろいろ見つかっているようです。全酪新報の四月一日付レポートでは、乳牛十頭に一頭は針金混入のへイキューブにねらわれているというのが出ていますね。  これはずいぶんひどいことになっているのだなと思って、僕はいろいろなところの資料を見るにつけて、本当にこんなことになってきておったらえらいことやな。輸入へイキューブに問題があるというふうに農水省は見ているのか、見ていないのか。どういうふうに見ておられるのか、ちょっと聞かしてください。
  220. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のような事実があちこちの新聞等にも出ておりまして、私どももその後その実態についていろいろと調査なり検査をいたしておるわけでございますが、私どもの数字によりますと、ここ十年間ばかり、いまおっしゃいますようないわゆる金属病による死廃頭数は大体二千頭前後、いま先生がおっしゃいました数字よりも私どもの方の数字が若干小そうございますが、最近におきましても二千七百頭ぐらいでございますが、それくらいの死廃頭数がございます。  これがすべてへイキューブかということにつきましては、これはなかなか原因究明があれでございますが、たまたまこの十年間のへイキューブの輸入量を見ますと、四十七年で約五万トンオーダーぐらいから、最近は多い年で約三十万トンぐらい。これは五十四年でございますが、二十九万六千八百トンということで三十万トン近い、六倍くらいのふえ方をいたしておりまして、その間の死廃の頭数自身はそれほど大きい急カーブはいたしておりませんから、すべてをへイキューブのせいにするということも、これはなかなか問題かと思います。しかしながら、最近の調査事例の中で、どうもその中に入っておりますような金属片がそういうものから出たのではないかという事例があったり、それから輸入をいたしましたへイキューブを、これは非常に大量なものから非常に少なく出てまいりますので、なかなか探しづらいわけでございますが、これをいろいろ聞きましてその中からやはり針金の片を見つけているというような事実もございますので、少なくともこの金属病の一つの原因に輸入へイキューブに起因するものがあるということは確かではなかろうかと思っております。
  221. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 これは私は本当にちょっと考えなければいかぬなと思うのは、山形県の人が親子で一生懸命心血を注いで牛の改良に取り組んでおられて、突然死んだ牛を調べてみたら、心臓に十本以上の針金が突き刺さっていたというような記事がありました。五、六センチの同じ長さのものが出てくるのだという。もうどう考えたってこれはへイキューブしか原因がないというのが記事にも出ていました。  あるいは、こんな話を聞くにつけても、それじゃ、こういうものを輸入しているんだから、輸入品の中からそういうものを規制するというふうにはいかぬものなんだろうか。国民の生命、生活、営業、それを保障するためにそういう政府機関というのがあるんだから、その政府機関というものが、外国から入ってくるもので、日本の心血を注いで酪農をやったりいろいろ牛を育てている人にこんな欠陥が生まれているのに、手を打つことがないのか。なければあるようにすればいい。そういうことが考えられぬのだろうか。  それで、輸入関係の人の話もちょっと聞いてみました。アメリカ生産者のルーズさがありまっせという話が出てきますわ。中には、梱包用の針金を注意深く除去せず牛の生産者に対するところの責任を感じてない、そういう問題があります。あるいは、輸入をしている、商売している人なんかでも、そんなのは数限りなく、百社、百五十社というのがありますのや。だから、これは無責任な、ともかくもうかったらいいという人も出てきますさかいな。いろいろ輸入関係者の話を聞いておったらむちゃくちゃな話になっていきます、結局のところ。そうすると、そういうことを聞くにつけても、ますます農水省というものの真価がどういうふうに生きているんだろうか。こっちも農水委員に所属している以上、こっちが怒られているみたいな感じになりますさかいね。  それで、ちょっと聞いてみたら、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律というものがあるのですね。安全性の確保の法律がある。それなら、この法律は役に立たぬのかいな。役に立つんだったら役に立つようにしてもらわなければいかぬし、役に立たぬのやったらこれは直さなければいかぬですな。こういう問題について何かやり方がないものか。輸入粗飼料についてのチェックをやる、安全性の検査をやる、何かその法律に基づくところの執行ができまへんのかいな。いかがなものですか。
  222. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、飼料安全法の中には、有害物質について販売禁止をするというような規定もございます。それから、一種の輸入検査という形での飼料の検査もできるわけでございます。  ただ、このへイキューブの場合は、いま申し上げましたように大変大量な物資の中に少量混入をする。しかも、これは何か一定の、たとえばランダムにサンプリングしますと大丈夫というようなものではございませんで、各農場におきます牧草生産なり、その牧草をへイキューブにいたします過程で入るものでございますから、検査というような手法をとりました場合に、大変な莫大な人員とか施設とか、それから期間とかいうものがかかるわけでございます。  私ども、やはりこういう事実が発生をしている事実を相手国、これは米国でございますが、米国に伝えまして、そのようなおそれのある品物をまず生産しないこと、特にそういうものを輸出してこないというような体制をつくることがまず大切だと考えておりまして、これはこういう粗飼料だけではございませんで、たとえば穀物飼料の場合でも、比較的品質の悪いものがこちらに来ました場合に関係者に注意を喚起するわけでございますが、穀物の場合は、御承知のように大変向こうの出先というようなものもこちらに持っておりますし、向こうも非常に慎重な態度で販売をしてきますので、その関係団体なり、あるいは必要によっては在日の大使館等に通報いたしますことによって、ほとんどのそういう問題点は解決できるわけでございます。しかし、このへイキューブは、先生も御指摘のようにいろいろな形で生産されたものが各個ばらばらに入ってきているということもございまして、たやすく対応することがむずかしかったわけでございますが、われわれといたしましても、このようなことを放置いたしますと、率直に言って大変不安な素材を輸入し続けるということになりますので、在日のアメリカ大使館にこの問題を説明をいたしまして、米国において厳重に注意を喚起をしていただきたいということをまず申し入れました。  さらに、飼料の輸出入協議会という、えさを扱っております輸入商社の集まりがございます。ここに私どもとしてのこの問題点を説明をいたしまして、このようないわば危険な、粗悪なと申しますか、そういう商品が日本に輸入されることによって米国産のへイキューブのいわば声価を落とすということを強く申し入れておりまして、米国のへイキューブの生産者の間におきましても、まず、農場でその牧草を梱包いたします際に、針金で梱包しないでマニラ麻で梱包するように切りかえるといったような動きも出てきているようでございます。これは梱包したものをいきなり粉砕にかけますものですから、どうしても針金を完全に取り除かないうちに粉砕することによってできる問題でございますので、いわばマニラ麻に切りかえるというのは、そういう意味では非常に役立つことではなかろうかと思っております。  それからわが国国内問題といたしまして、肥飼料検査所を通じまして、現在酪農比較的盛んな十五県におきましてへイキューブ中の金属片の混入状態、そのことと、金属異物性疾患の発生状態の現地調査をいたしております。  以上の三つのことを現在やっているわけでございますが、これはやはり何と申しましても、まず出す側のアメリカにおきましてこのようなものが生産されるもとを断つということが必要だと思いますので、一遍申し入れたというだけではございませんで、今後におきましても、またこういう問題が出ました場合には再度強くこういうことを要請しまして、まず商品自身の中にそういうものが入ってくる可能性を極力少なくするということをいたしますと同時に、そういうことが商業ベースとしても徹底されるよう輸出入協議会等を指導してまいるつもりでございます。
  223. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 時間がなくなってきましたので、最後に、擬装乳製品の問題なんです。  これは、酪農の人のところへ行きますと、一方で自主規制をやってきた。自主規制をやっている場合は、何か自主的に、それ以上生産した場合にはペナルティーをかけられるということで罰金を払わされているところがありましたよ、私の方で。ところが、今度は、急遽乳が足らぬようになったというて輸入された。そうしたら、ペナルティーをかけられたところが、冗談じゃない、わしらがペナルティーをかけられるまでぐらいこれでやっておって、そうして足らぬようになったというて輸入してくる、そんな割り当て自身がおかしいんだと言うて、わあわあ、けんかにはならないけれども、言い合いが起こるという事態まで生まれるぐらいに計画生産をめぐっていろいろ意見が出たわけですね。  こういうことを考えてみると、これからの擬装乳製品の輸入という問題と、それから生乳の計画生産とは、これは非常に重大な関係があるわけです。  そこで、擬装乳製品の輸入量が、五十七年にココアの調製品無糖が二万七千トン、調製食用脂が一万六千五百トン、それで前年度を一五%上回っている。ところが、四十七年に農水省の指導で輸入を日本のチョコレート業界が決めたのは一万七千五百トンだった。ところが、何ぼ需要が伸びているからといって、二万七千トンですか、ここまでずっと広がってきている。だから、擬装乳製品に対して、輸入に対する行政指導をもっと実効あるようにしてもらう必要があるのと違うかということを強く出されているわけですね。これについて、口先だけでなく実効のある、効果のある行政指導を今後どういうふうにやっていこうとしておられるのか、これをちょっと聞かしてほしい。  もう一つは、乳用雄子牛の子牛価格安定制度への加入率が非常に少ないですね。二割ありませんね。この加入数が少ないというのは、事情があるから加入数が少ないわけだろうけれども、これについては今後どういうふうにすることが必要だというふうにお考えなのか。  この二点についてひとつお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  224. 石川(弘)政府委員(石川弘)

    石川(弘)政府委員 調製食用脂につきましては、御承知のようにニュージーランドとの自主規制もございますし、これは大変バターというようなものとの競合性の強いものでございますので、若干ふえておるとは申しますが、これは前年が計画以下でございましたので、ほぼいい水準に来ていると思います。  ココア調製品は、御承知のようにこれはチョコレート原料でございまして、どうしてもチョコレートの需要の増減にバランスをするという性質を基本的に持っております。もしここで抑えますとチョコレートそのものとして入ってくるという性質がありますので、いわば食用調製脂とはちょっと性質が違いますが、私どももかねがね自粛を要望しておりますので、今後もさらに自粛をするよう関係業界を指導するつもりでございます。  それからもう一点の子牛の価格安定制度でございますが、乳用雄子牛につきましては比較価格が安定したということもございまして加入が少のうございましたが、やはり今後これが相当大きくなってまいりますとこの価格変動は重大でございますので、制度の趣旨徹底を図るようなことを初めといたしまして、和牛と同じようにもう少し加入率が上がりますよう行政指導をしていきたいと思っております。
  225. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 終わります。
  226. 山崎委員長(山崎平八郎)

    山崎委員長 次回は、明二十八日木曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会