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1983-04-13 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十三日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       青木 正久君    上草 義輝君       小里 貞利君    川田 正則君       岸田 文武君    北川 石松君       北村 義和君    高村 正彦君       近藤 元次君    佐藤  隆君       笹山 登生君    志賀  節君       白川 勝彦君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    西岡 武夫君       羽田  孜君    浜田卓二郎君       保利 耕輔君    松野 幸泰君      三池  信君    三ツ林弥太郎君       串原 義直君    新盛 辰雄君       田中 恒利君    竹内  猛君       前川  旦君    松沢 俊昭君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         林野庁長官   秋山 智英君         林野庁次長   島崎 一男君  委員外出席者         行政管理庁行政         監察局監察官  堀江  侃君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      阿部 憲司君         自治省財政局調         整室長     前川 尚美君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   石田 博英君     北川 石松君   太田 誠一君     浜田卓二郎君   川田 正則君     高村 正彦君   岸田 文武君     青木 正久君   近藤 元次君     西岡 武夫君   渡辺 省一君     白川 勝彦君 同日  辞任         補欠選任   青木 正久君     笹山 登生君   北川 石松君     石田 博英君   高村 正彦君     川田 正則君   白川 勝彦君     渡辺 省一君   西岡 武夫君     近藤 元次君   浜田卓二郎君     太田 誠一君 同日  辞任         補欠選任   笹山 登生君     岸田 文武君     ───────────── 本日の会議に付した案件  森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二七号)  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)  肥料取締法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る三月三十日に質疑を終了いたしております。  この際、本案に対し、亀井善之君外三名提出修正案及び藤田スミ君外一名提出修正案が、それぞれ提出されております。  両修正案について、提出者から順次趣旨説明を求めます。亀井善之君。     ─────────────  森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  3. 亀井善之

    亀井(善)委員 私は、自由民主党を代表して、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付いたしましたが、朗読を省略して、以下、修正内容を簡単に申し上げます。  すなわち、林業普及指導事業助成に係る改正規定等施行期日昭和五十八年四月一日となっているものを公布の日に改めるとともに、林業普及指導事業助成に係る改正後の規定は、昭和五十八年度の予算に係る交付金から適用するものとしたことであります。  委員各位の御賛同をお願いいたしまして、説明を終わります。
  4. 山崎平八郎

    山崎委員長 藤田スミ君。     ─────────────  森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  5. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、日本共産党を代表して、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案提案理由とその内容について説明いたします。  案文はお手元に配付してございますので、朗読は省略させていただきます。  わが国森林は、第二次世界大戦、戦後の復興、昭和三十年代以降の高度成長のもとで乱伐が行われてきました。そのため、人工林の大部分生育途上にあり、その間伐保育が急務であることは言うまでもありません。しかし、一方では、政府の安易な外材依存政策により材価が低迷し、林家の林業への意欲は減退しています。  わが党は、今回の政府案人工林間伐保育を促進する上で一定の役割りを果たす側面があることを否定するものではありません。しかし、政府案は、扱いによっては大手林業資本大山林地主への林地立木権利流動化につながりかねない危険な側面も持っております。この点について、政府案では何らの歯どめ措置もとられていません。また、林業普及指導事業に対する助成方式変更普及事業縮小後退につながるものであり、容認できません。  わが党の修正案は、こうした危険な内容に歯どめをかけ、地域林業振興を図るためのものであります。  その内容は、第一に、市町村が策定する森林整備計画について地域林業関係者の意向を反映させるため、その策定に当たっては、あらかじめ公聴会開催等により森林所有者など森林整備計画に関して利害関係を有する者の意見を聞くことを義務づけたことであります。  第二に、市町村の長が森林整備計画に基づき森林所有権等を指定する者に移転する勧告を行う場合には、大手林業資本大山林地主への林地流動化を防ぎ、地域林業振興を図るため、地方公共団体林業公社森林組合学校設置者などを指定するよう努めなければならない旨の規定を設けています。  第三に、都道府県知事が行う分収林契約締結あっせんの場合も、地域林業振興のため、造林者または育林者について同様の規定を設けています。  第四に、林業普及指導事業助成方式については現行どおりで行うこととしております。  以上が修正案内容でございます。  委員各位賛同をお願いいたしまして、説明を終わります。
  6. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で両修正案趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案を一括して討論に付します。  討論申し出がありますので、これを許します。寺前巖君。
  8. 寺前巖

    寺前委員 私は、日本共産党を代表して、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  反対の第一の理由は、林業普及指導事業に対する助成方式定率補助方式から交付金方式変更することについてであります。これによって地方財政法上の国の負担義務がなくなり、今後の政府施策によっては補助金削減され、受けとめる府県の姿勢と相まって、中小林家の切り捨て、普及員削減など、林業普及指導事業後退が起こる可能性を持つからであります。  第二は、今回の改正案では、市町村長森林所有権立木権利の移転まで勧告できることになり、これが運用によっては大手林業資本大山林地主への林地立木権利流動化を許す危険性を持っていること。また、分収育林方式導入についても、投資効果が見込める森林について大手林業資本が進出する条件ができること。さらに、一般投資家からの資金導入が可能になることから、間伐対策事業などの国の助成活動が弱まるおそれも出てくるなどであります。  わが党は、一千万ヘクタールに及ぶ人工林の大部分生育途上にあり、その間伐保育が重要となっているにもかかわらず、今日それが適正に行われていない状況のもとでは、改正案が果たす役割りをすべて否定するものではありませんが、幾つかの指摘した危険な面について何ら歯どめ措置もとられておらないところから、以上、政府提出改正案反対するものであります。
  9. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  10. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより採決に入ります。  森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案並びにこれに対する亀井善之君外三名提出修正案及び藤田スミ君外一名提出修正案について採決いたします。  まず、藤田スミ君外一名提出修正案について採決いたします。  本修正案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  11. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立少数。よって、藤田スミ君外一名提出修正案は否決されました。  次に、亀井善之君外三名提出修正案について採決いたします。  本修正案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立多数。よって、亀井善之君外三名提出修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  14. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党国民連合日本共産党及び新自由クラブ民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。田中恒利君。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党国民連合日本共産党及び新自由クラブ民主連合を代表して、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案趣旨を御説明申し上げます。案文朗読いたします。     森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、最近の森林林業をめぐる厳しい諸情勢に対処し、森林整備森林公益的機能確保を図るとともに、林業振興山村社会活性化に資するため、本法の施行に当たっては、左記事項実現に努めるべきである。       記  一 森林整備計画樹立に当たっては、市町村自主性を尊重するとともに、森林所有者及び計画実施に当たっての林業関係者等による会議開催等により、関係者意見の聴取に努めるよう指導すること。  二 森林整備計画樹立及びその実効性確保を図るため、市町村における林業行政体制充実に努めるとともに、間伐保育をはじめとする各種林業施策に係る所要の措置等を関連づけて実施し、森林整備林業振興が図られるよう努めること。  三 林業普及指導体制充実のため、経済変動を適正に反映した交付金確保に努めるとともに、都道府県において必要な財源確保に努め普及指導職員確保とその資質向上に努めるよう指導すること。  四 分収林契約制度の円滑な普及を図るため、契約締結造林育林費用の使用、災害等の場合の損害てん補措置活用等について適切な指導を行い、契約に基づく適正な施業確保費用負担者の正当な利益の保護に努めること。  五 木材の需給及び価格の安定のため、製材、木製品等外材輸入適正化を図りながら、国産材需要拡大とその安定供給体制を確立するための施策を積極的に推進すること。また、間伐等施業を促進するため、実行体制整備に努めるとともに、間伐材需要拡大及び作業路網整備に資する各般の措置を講ずるよう努めること。  六 山村地域活性化林業生産活動活発化を図るため、森林組合育成強化林業事業体整備林業後継者育成確保を図るとともに、林業労働に従事する者の雇用機会確保各種社会保険適用等労働条件充実を図るよう努めること。  七 森林緑資源確保及び国土保全等に果たす役割の重要性にかんがみ、都市住民をはじめ国民森林林業に対する理解と協力を深める措置を講ずること。   右決議する。  以上の附帯決議案趣旨につきましては、質疑の過程などを通してすでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。  以上です。(拍手)
  16. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  17. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  18. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  19. 山崎平八郎

    山崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  21. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出農業改良助長法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。亀井善之君。
  22. 亀井善之

    亀井(善)委員 農業改良助長法の一部を改正する法律案、この問題について若干の質問をさせていただきたいと存じます。  昨日は、関係皆さん方からそれぞれ参考人として御意見を承ったわけであります。そこで、まず大臣に、協同農業普及事業に対する基本的な認識についてお考えを伺いたい、このように考えるわけでございます。  普及事業は、国と都道府県との共同事業としてすでに昭和二十三年七月に農業改良助長法が制定され、三十五年の歩みを続けてまいっているわけでございます。その間、普及職員等のたゆまぬ努力によって、わが国農業振興農村近代化に大きな成果を上げてきました。その果たした役割りは高く評価されているわけでございます。  一方、普及事業については、先般の臨時行政調査会答申を初めとして各方面からいろいろの改善意見が出されているところでもあります。しかしながら、現下の農業農村は一部の農産物の供給過剰、土地利用型農業規模拡大の停滞、兼業化混住化等に伴う農村社会の活力の低下等の問題に直面をしております。このような中で、需要の動向に即応した農業生産の再編成、農業生産性向上によるコストの引き下げと経営構造体質強化や活力ある農村社会形成等が農政上の重要な課題となっているわけでもあります。  こうした状況に対処して、普及事業については今後新しい技術の開発と普及地域農業の方向づけや組織化、すぐれた農業の担い手の育成、合理的で健康な農家生活実現農村地域社会活性化等の面で果たすべき役割りはますます大きくなっていく、このように考えるわけでございます。  今回の改正法案提出に当たって、協同農業普及事業についてはどのような基本的認識大臣はお持ちでありますか、まずお伺いをしたいと思います。
  23. 金子岩三

    金子国務大臣 戦後の日本農業をここまで発展させた、その原動力になったいわゆる改良普及制度でございます。長い間日本の営農あるいは農村環境についていまの制度を続けてまいっておりますけれども、より時代にふさわしい適応した合理化を図るべきではないかというのが臨調考え方、言い分であります。私は当然だと考えます。それに対応した、いわゆる限られた財源をいかに有効に、効果的に使うかということでこの改正の目的をしぼっておるのでございます。したがって、いろいろこれから審議に当たって御意見を承っていきますが、いま提案されております原案は、やはり最大限の新しい考え方国土の狭い日本でどのようにして農業生産性をより以上に高めていき、あるいは農家生活、いわゆる所得水準をいかにして引き上げるか、あらゆる面から考えまして、やはりこの普及制度をこのたび提案しておりますような方法に改めた方がより効果的であるというような考え方提案を申し上げておるのでございます。  新しい仕組みになりましたので、当然いろいろ問題もあろうかと思います。将来懸念される点も幾つかあるようでございますけれども、これはやはり運用の面で最善を尽くしていかなければならない、このように考えております。
  24. 亀井善之

    亀井(善)委員 ただいまは、この改正案について現在の農業をめぐる情勢の変化に即応した、またこれを発展させる、こういう趣旨ということを承ったわけでございます。ぜひ今後ともそのような御決意で普及事業運営、推進を図っていただきたい、このようにお願いを申し上げるわけでございます。  現行農業改良助長法において規定をしております協同農業普及事業負担金、これにつきまして、昭和五十二年の法改正において、従来補助金となっておりましたものを負担金名称変更した経緯があるわけでございます。負担金への名称変更は、国民食糧確保にとって基本的重要な技術普及にかかわる事業については、単に奨励的な趣旨で行うものでなく、国と都道府県との共同責任において行うものであるという性格法律上鮮明にするための措置であり、この点については普及関係者から高く評価をされた、このように考えておるのでありますが、今回の法改正案においてこのような意味を持つ負担金交付金に改める理由についてお伺いをしたいと思います。
  25. 小島和義

    小島(和)政府委員 昭和五十二年の改正におきまして、普及関係職員にとりましては多年の宿願でございました補助金から負担金への切りかえということが実現をいたしました。この制度につきましては、この負担金制ということによりましてより安定した今後の運営が可能であろうという意味におきまして、私どもも数々のすぐれた長所を持っているものというふうに理解をいたしております。  しかしながら、その後における情勢の展開といたしまして、御承知のように、昨年七月に出されました臨時行政調査会基本答申におきましては、二年以内に原則として人件費補助打ち切りにするという方針が打ち出されております。また、普及事業自体につきましても、今後の一層の効率化を図るべき旨の答申が出されておるわけであります。  この答申が出されるに当たりましては、私ども特に人件費補助打ち切りという問題については重大な関心を持っておりまして、当初から普及事業につきましてはいろいろ御意見がございましたものを、積極的に臨調にもこの制度趣旨を御説明いたしまして、やっと現在のような答申になったわけでございます。しかしながら、一たんこれが客観的な存在となりました以上は、仮に一年、二年持ちこたえることができたといたしましても、いつまでもこの問題は尾を引く、こういうことが避けられないと思うわけでございまして、問題が持ち上がりますたびごと制度の動揺、関係者の不安というものを免れないということになろうかと思います。  そういう意味におきまして、この制度共同事業としての本旨を生かしながら、人件費補助の持っております一つの過剰介入性と申しますか、そういうことの弊害を緩和いたしまして、新しい交付金制度に切りかえることにいたしたわけでございます。従来の負担金方式では、個別の経費につきましての積み上げを行いまして、その積み上げました経費について負担率を乗ずる、こういう予算の積算でございましたが、今回の予算におきましては、普及事業に要します経費をいわば標準、定額化いたしまして交付するわけでございますので、人件費補助の持っております弊害というものを緩和しながら国と県が費用を負担し合う、こういう基本的な性格は生かし得るというふうに考えております。  また、事業実行面におきましても、この与えられました資金の中において、都道府県が自主的に創意工夫をいたしまして事業効果的運営が実施可能であろう、そういう長所もあるわけでございます。それらを総合勘案いたしまして、今回の制度改正に踏み切ったわけでございます。
  26. 亀井善之

    亀井(善)委員 今度の法律改正によって、ただいまの答弁にもありましたが、都道府県創意工夫自主性発揮、こういう点が長所である、このようにもおっしゃっているわけでございます。この事業効率的運営が図られる、いろいろ長所がある、こういうことは御答弁を承ったわけでございますが、昨日も参考人の方々からも、あるいは委員皆さん方からも、質問の中で、普及事業水準低下の問題を指摘されているわけでございます。  まず、交付金に移行しても都道府県裏負担確保については大丈夫なのかどうか、この点をひとつ伺っておきたい。  さらに、いまの長所の問題、都道府県自主性発揮自体はよろしいわけでございますが、都道府県姿勢によって普及事業水準低下を来すことがないか、こういう心配がまた出てくるわけでございます。普及事業につきましては、普及職員設置が根幹でもあるわけでございます。あるいはまた普及職員資質向上農業後継者育成農家生活改善等にも力を注がなければならないわけでございます。したがって、今回の改正によって普及事業がその役割り発揮できないことになっては問題であるわけでございます。この点についてお伺いをしたいと思います。
  27. 小島和義

    小島(和)政府委員 交付金制度に移行したことに伴いまして、従来の国が三分の二、県が三分の一という負担関係というものが基本的になくなるわけでございますが、ただいま御指摘の裏負担の問題については、以下のように考えておるわけでございます。  まず、交付金に対して都道府県がいわば自主的な財源を継ぎ足しまして事業の執行を図るということがだんだんなくなって、いわゆる交付金だけにその財源を依存するという形で事業縮小をするのではないかという問題が一つあるわけでございます。  この点につきましては、まず国と都道府県との間に普及事業必要性について基本的な大きな認識の差はないということを前提として考えておるわけでございまして、都道府県が現在やっております事業について直ちにその規模縮小するという事態はないというふうに考えております。もちろん、ただいまの制度のもとにおきましても、国家公務員の場合と同様に、年次計画によります人員計画削減というのは実行中でございますから、そういう意味人員の多少の縮減ということは現在でもあるわけでございますけれども、今回の改正によってそれが加速されるというふうな事態はないし、また、そういう事態は避けなければならないというふうに考えております。  そのためには、都道府県におきます具体的な考え方をベースといたしまして、普及事業規模内容につきまして、今回の改正案でお諮りいたしておりますような県の実施方針についての協議、それの前提としての国の運営指針というふうなことを法定いたしておりまして、それらの協議を通じまして、どの程度の規模あるいは内容普及事業を各都道府県において実施するかということについて国と県との意見調整の場が用意されております。それらの協議の場を通じまして調整は十分可能であるというふうに考えております。  第二の問題は、そのように都道府県が自主的な財源を継ぎ足しまして事業を実施いたしました場合に、その県の持ち出し分について、地方交付税の算定に当たって都道府県の負担分を基準財政需要額の中で見てもらえるかどうか、こういう問題があるわけでございます。  この点につきましては、自治省とも再三にわたり話し合いをいたしまして、都道府県の負担分に相当する財源につきましては基準財政需要額の中で算入する措置を今後とも継続するという話し合いになっておりますので、県が自主財源の不足というふうなことから継ぎ足しができないということはないというふうに考えております。  また、事業全体の内容的な問題につきましては、先ほど申し上げました運営指針あるいはその実施方針協議を通じまして、ただいま政府が考えておりますような今後の普及事業の持っていき方というものと、各県の農業事情に即応いたしました都道府県普及事業運営方針というものを十分意見調整をいたしまして、内容にわたりましても各都道府県におきまして大きなそごを来すというふうなことがないようにいたす所存でございます。
  28. 亀井善之

    亀井(善)委員 ぜひそのような考え方でお進めをいただきたいと存じます。  次に、先ほどもお話がございましたが、第二臨時行政調査会答申とのことにつきましてちょっとお伺いをしたいと思います。  協同農業普及事業に対する各方面の期待にどのようにこたえているのかという点であります。これまでも普及事業につきましては、時代の要請にこたえる活動を展開するため、制度面のみならず運用面においても改善を進めてきたことは十分承知をしておるわけでございますが、現在、第二次臨時行政調査会答申を初めとして、普及事業に対して各方面から改善を求められておるわけでございます。中でも第二臨調答申では、生産性向上のための事業への重点化、事業内容の刷新、効率化及び地方公務員に対する人件費補助の一般財源化が指摘をされておるわけでございます。農林水産省においても、これらの情勢を踏まえて、五十六年の秋以降普及事業研究会を発足をさせ、事業の改善策を検討されてきたわけでもありますが、昨年秋にその報告がまとめられた、このようにも聞いておるわけでございますが、今回の第二次臨調答申について基本的にどのように受けとめておられるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  29. 小島和義

    小島(和)政府委員 第二次臨調答申全般を通じまして、農業につきましても一層の生産性向上を図り、産業としての体質を強化する、こういう精神が流れておるように存じます。その意味におきまして、普及事業そのものの存立につきましてきわめて強い御批判があったというふうには私ども理解をいたしておりませんが、御指摘ございましたように、この事業内容面の刷新、効率化あるいは事業の重点化あるいは人件費補助の一般財源化というふうな問題が指摘されておるわけでございます。  その意味におきまして、先ほども申し上げましたが、人件費補助をどうするかという問題がこの答申を受けましての一番の問題点でございまして、私どももこの制度のさまざまな長所というものを考慮いたしまして、非常に迷った点でございますが、先ほど申し上げましたようにこの答申を現実的に受けとめて、今後の制度の安定的発展を図る、こういう観点から答申趣旨を生かしまして、このような交付金制度に切りかえることにいたしたわけでございます。この答申趣旨は、主として人件費補助制度の持っております過剰介入性と申しますか、そういうものに着目をいたしまして行われたものと理解をいたしておりまして、国が都道府県に対して財政的な支援をすることを全く封じたというふうな趣旨とは理解をいたしてないわけでございまして、その意味で、形こそ変わりますが、共同事業としての本旨は生かし得るものというふうに理解をいたしておるわけでございます。  また、答申の中にございます、生産性向上のための事業への重点化あるいは事業内容の刷新、効率化という問題は、臨調答申を待たずして当然私ども考えなければならない問題でございまして、御指摘ございましたように、一昨年以来、普及事業についての研究会を組織いたしまして、今後の普及事業のあるべき姿についての検討を進めてまいりました。その答申が昨年に出されておりますので、これを受けとめまして、都道府県とも協議をしながら内容の逐次具体化を図るという意味において、臨調の御趣旨に沿ってまいるつもりでございます。
  30. 亀井善之

    亀井(善)委員 次に、農業後継者の問題についてお伺いをしたいと思うのでございます。  農業後継者育成確保の問題についてでございますが、わが国農業の発展を図るためにはすぐれた担い手の存在が不可欠の条件である、このように考えるわけでございます。近年若い農業後継者の減少が著しく、きわめて憂慮すべき事態である、このようにも考えられるわけでございます。  私は、若い農業後継者育成を抜きにして将来の農業農村の発展はない、このように考えております。現在、農業に取り組んでいる若い後継者は一生懸命やっております。しかし、やはり農業の将来に対して不安を持っておるわけでございます。これが農業後継者減少の最も大きな原因である、このようにも考えられます。私は、農業後継者が希望の持てるような農業農村の環境のもとで希望を持って農業経営に取り組めるよう対策を進めることが必要ではないか、このように考えているわけでございます。  そこで、農業後継者の最近の動きはどうなっているのか。また、政府農業後継者育成確保のためにどのような対策をとろうと考えておられるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  31. 小島和義

    小島(和)政府委員 後継者の動きを端的に示すものといたしまして、新規学卒者の就農者の数という問題があるわけでございます。これにつきましては、年々減少いたしておりまして、五十六年三月の場合には五千七百人というふうな水準まで低下をいたしたわけでございますが、五十七年三月期におきましては、七千百人ということで多少上向きに転じております。しかしながら、私どもは、この数をもちまして将来の農業の担い手たるべきものというふうに考えておるわけではございません。御承知のように、高校卒業程度の方の親の世代ということになりますと、大体四十歳代あるいはせいぜい五十歳代ということになりますので、通常の農業経営の場におきましては、親子二代が完全に就農するというだけの経営規模と申しますか、内容が与えられておらないという現実があるわけでございまして、ある程度の親の年代になりましたところでこれが農業にUターンをしてくる、こういう現象も見られるわけでございます。最近のUターン就農者の意向調査によりますれば、そういう戻ってまいりました就農者の中で、今後とも農業を継続してやっていきたい、こういう希望を持っておる人の割合というのはかなり高うございまして、そういう人たちも含めて将来の農業後継者として育成すべきものと考えておるわけでございます。  ただ、農業後継者育成する具体的な対策というのは、昨日も参考人の方から御意見がございましたように、端的な決め手になるものというのはなかなかむずかしゅうございまして、一般的に申し上げれば、農業をより魅力ある産業として、また、住みよい農村社会をつくるということが基本的な対策であろうと思います。御承知のように、農業生産基盤の整備を初め農用地の流動化の促進あるいは地域農業振興、さらには農村環境整備、こういう各般の対策を推進していくことが必要であろうかと思います。  また、狭い意味での後継者育成対策といたしましては、農業に実際に必要な知識なり技術なりを実践的に学ばせる、そういう学習の場を用意いたしておりまして、これは都道府県農業者大学校というふうなものが中心でございますが、そういう施設の整備等を通じまして研修教育の場を設ける、さらには、就農を希望する青少年の自主的な集団活動を助長する、あるいは先進農家、海外等に勉強に行きたいという方に対してそれなりの御援助を与えているわけでございます。  また、農業改良資金制度の中におきまして農業後継者育成資金という無利息の資金が用意されておりまして、みずから勉強をしたいという方々やあるいは新しい部門経営を開始したいという方に対しまして、一種の奨学金的な意味での融資を行っておるところでございます。  そういう対策を総合的に充実いたしまして、今後の後継者の農業就業意欲といいますか、そういうものを守り育て、また同時に、優秀な後継者が育つように努めていきたいというように考えております。
  32. 亀井善之

    亀井(善)委員 最後に、昨日もいろいろ参考人の方々の話あるいは御意見にもあったわけでありますが、試験研究の問題についてお伺いをしたいと思います。  農業の健全な発展を図っていくためには、構造政策を初めとする各般の施策と相まって、最近の科学技術の目覚ましい進歩があるわけでございます。農業技術の開発普及の推進が大変重要な課題でもあるわけでございます。このため、国及び都道府県の試験研究機関の果たす役割りは大変大きなものがあるわけでありますが、これらの試験研究機関の研究成果は迅速かつ的確に農業者へ伝達される必要があります。特に近年、水田利用再編対策の推進に伴う技術問題など、農業経営の現場から要請される試験研究問題が非常に多くなっておりまして、このような問題は緊急にその成果を現場に伝えて生かさなければならない、このようにも考えるわけでございます。  そこで、現場の要望を試験研究に反映させ、また、そこで得られた研究成果を農業者へ迅速に伝達するためには、試験研究と普及事業とが相互に密接な連携をとることがきわめて重要であると考えるわけでございます。この点についてお考えを伺いたいと思います。
  33. 岸國平

    ○岸政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘をいただきましたように、試験研究と普及との連携というのは非常に重要な問題であるというふうに考えております。農業に関する技術を有効に普及してまいりますためには、農家普及事業と試験研究というものが常に密接に関連を持っていかなければいけないということを常々考えておりまして、農家からの要望は普及関係を通じて常に試験研究に伝えられ、試験研究はその要望を受けまして常に農家の要望する技術を開発することに一生懸命になるということで努力をいたしております。  最近、農業の現場におきましては、先ほどの御指摘にもございましたように、水田利用再編に関するような技術問題、こういう問題になりますと、ただ品種をつくるとかあるいは病気や虫の防除をするといったような個々の問題だけではございませんで、非常に総合的な、普及も研究も一緒になってやらなければなかなか解決がつかないような問題というものがたくさんになっております。そういうような状況でございますので、私どもは最近はこういった問題につきましては現地の実証圃場を設けるというようなこともいたしまして、その実証圃場の試験におきましては普及も研究も一緒の圃場で試験をし、研究を進めるというようなことも実施をしておりまして、その成果は直ちに農家の場に移されるようなことを現に実施をしているわけでございます。  それからまた、今回の法改正の中で都道府県から国の試験研究機関に対して共同研究の実施を求めることができるということに改めることをお願いしているわけでございますが、この趣旨もまさにそのところを今後とも一層推進していきたいということのためでございまして、そういったことを今後も一層進めてまいりたいというふうに考えております。  それから試験研究と普及事業との組織的な連携ということにつきましては、これは単に精神論だけではまいらないのでございまして、常にこれを組織的にやる仕組みをつくっていかなければいけないということを考えておりまして、現在も試験研究機関の関係職員と行政担当の職員、専門技術員あるいは改良普及員といったような者を含めまして開かれております県の農林水産技術会議というような機会でありますとか、あるいは県の試験場を核にいたしまして普及情報センターの整備というようなことも図られようとしておりますけれども、そういったところを中心といたしまして試験研究の成果が迅速に伝達を図られる、また、農家側からの要望が迅速に研究にも伝わってそれの要望にこたえるような研究ができるということを図っておるところでございまして、今後ともその点について努力をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  34. 亀井善之

    亀井(善)委員 時間が参りましたからこれで終わらせていただきますが、協同農業普及事業の持ちます大変すばらしい点、特に新しい技術の開発であるとかその普及地域農業の方向づけや組織化あるいは農業後継者問題、あるいは合理的な健康的な農家生活農村地域社会実現、いろいろの面で果たすべき役割りは大きいわけでございます。なお一層の推進をお願い申し上げまして、これで終わらせていただきたいと存じます。  ありがとうございました。
  35. 山崎平八郎

    山崎委員長 松沢俊昭君。
  36. 松沢俊昭

    ○松沢委員 助長法の一部改正につきまして質問申し上げたいと思います。  きのう参考人の皆さんにおいで願っていろいろと御意見を聞きましたが、四人の参考人の皆さん、みんなそろって改良普及事業のいままでに果たしてきたところの業績を高く評価しておられましたし、また、これからの農業の発展のためにもこの事業が非常に大きな役割りを果たすということも強調しておられたわけであります。また、農林省の説明を聞きましても同様でございまして、立場は異にしておりましても、これをもっと強化していかなければならないという気持ちは変わらないのじゃないかと思っておるわけであります。  ところが、去年の七月の臨調答申の第一章「行政施策に関する改革方策」のところでこの普及事業について言及しておりますが、それによりますと「生産性向上のための事業への重点化、生活改善普及事業の見直し等事業内容の刷新と効率化」をやりなさいと言っておりますし、それから第四章には「国と地方の機能分担及び地方行財政に関する改革方策」が載っておりまして、そこでは地方公務員に対するところの人件費補助を原則として二年以内に一般財源措置に移行するというふうに答申をしているわけであります。  つまり、この助長法の一部改正法案というものはこれを受けて提案しておられるようでございますが、私の受けとめ方からいたしますならば、臨調は一つは福祉切り捨ての方向をたどっております。それからもう一つは教育分野の切り捨て、それからもう一つは農業の切り捨て、この三本が臨調の大きな柱になっているように私たちは受けとめているわけなのです。農業に対しましてもいろいろな分野におきまして切り捨て政策が進められておりまするが、この改良普及事業につきましても切り捨て縮小という方向を打ち出してきた、こういうぐあいに考えるわけなのでありまして、それにこたえて農林省がこれからこの事業を進めていこうとするための一部改正法律案であるとするならば、これは後退意味するのじゃないかと思うのですが、大臣は一体どうお考えになってこれを出されたのか、御説明をいただきたいと思います。
  37. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいま縮小後退という御意見がありましたが、松沢委員からお話があったとおり、臨調は、地方公務員に対する人件費の補助は二年以内に原則として一般財源措置に移行するとともに、一層の効率化を図るべき旨の答申をなされておるわけでございます。したがって、財源をこれによって縮小せよとかということは言っていなくて、限られた財源でより以上の効果と成果を上げるような合理化を図るべきだ、こういう趣旨を踏まえて私どもは今度の法案をつくっておるわけでございます。決してこれによって後退したり、将来縮小されたりというような懸念はないのではないか。  いろいろいままでにない新しい仕組みになりましたので、将来はどうなるだろうか、多小縮小傾向になるのじゃないかとか、県によってはいろいろ手を加えていまより悪い方向に行くのじゃないかというような御心配があるかもしれませんけれども、その点は農水省がきちっとした指針を提示をして、それを絶えず検討しながら指導していくのでありますから、いままでの普及事業縮小されたり後退したりすることはない、より以上に効率的に大きな飛躍をして、時代の要請にこたえていくことができる、このように考えております。
  38. 松沢俊昭

    ○松沢委員 みんながそういうつもりでこの事業を見守っておるわけでありますから、ぜひ大臣の方からも——私は、この前の森林法の審議の際におきましても大臣に申し上げているわけでありますが、臨調委員は九人おられましたね。そのうち農業団体の代表は一人も出ていなかったのですから、率直に申し上げますと農業に対しましては素人の方々が意見を開陳しておられた、私はこう受け取っておるわけです。それだけに、農業に対する見方も非常に厳しいものがあったように受けとめておりますので、農林水産大臣といたしましては、いま御答弁されました線に沿って強く主張をしてもらって、これらの事業の衰退が起こらないような歯どめを十分考えておいていただきたい。これは要望を申し上げておきます。  それで、弱体化するのじゃないかという具体的な問題といたしましては、いままでは政府から出るところの金は協同農業普及事業負担金という名称になっていたわけです。今度は交付金になるわけでありまして、つまり、地方財政法の第十条で支出しておったのが今度は第十六条ということに変わるわけであります。つまり、定率助成が定額助成に変わっていく。そうなりますと、一つは、定率の場合におきましては五つの項目がございまして、普及職員設置、それから普及所の運営などの経費、三番目といたしましては県農業者大学校の運営、四番目は普及員の研修、集落リーダーの育成、五番目は県農業者大学校の施設整備、要するに五つの事業が行われることになっておりまして、そのうちの一、二、三は三分の二国の方で負担をいたしまして三分の一が県の負担、四、五は二分の一が国、二分の一が県、こういうぐあいにきちんと分担が決まっておったわけです。そして、予算を編成するときには事業ごとに積算をしてやってきておるわけです。今度は定額助成でありますから、したがって、簡単に言えばつかみ金のような状態で予算化されてそれを出してやる。したがって、積算というのは今度は事業ごとには行われない。こういうことでありますから、事業ごとの流用ができるということがあるわけですね。そうして、十条であるならばいま申し上げましたとおり県が負担することになりますが、今度十六条になりますと、県の方でどうしても金の裏づけをやらなければならない性格のものではなくなってくる、こうなると思うわけなんであります。  そうなりますと、いま地方財政に対しましても行政改革、財政再建という二つの面からして大変圧迫が加えられている。こういう状態であるとき、県によってはいろいろ違いがあるとは思いまするけれども、県が財政的にも大変苦しくなってきているわけでありますから、提案理由趣旨説明からしますと、地方に自主性を持たせて弾力的に対応していくというようなことを言っていますけれども、それは一つの言いわけ、私から見まするならば言いわけだ。つまり、金が非常に苦しくなってきた場合、国の方で定額で出して、そして事業ごとの流用ができるわけでありますから、したがって、この主なるところの助成というのは普及職員の人件費になっていますから、普及事業というのは人がいなければ普及はできないわけでありますから、人が削られるということになりまするならば、これは根幹を揺さぶるということになるわけです。  いままでもずっと国家公務員の定員削減計画に準じましてこの普及職員の数も各県で減らしているわけですね。だけれども、ここまで来れば限界でございますということをきのうも参考人の皆さんは言っておられるわけなんですよ。それで地方財政が苦しくなっているから、したがって、県の方で金がないのだから、国の金にそれを裏づけするところの義務はないわけだからということでもしも手抜かりの点が出てくるということになりますと、事業ごとの流用ができるということになれば、大学の問題もあるし、その他いろいろな問題があるわけだから、勢い普及員の数を減らして、それでその場しのぎをやっていく以外にないのではないか、そういう不安というものが出てくるのではないか。これがこの法律の一部改正案の一番不安なところだと私は思っております。  その点、この不安を不安でないのだということを、不安を持たなくてもいいのだよという御当局の何かあればお聞かせ願いたいと思うのです。
  39. 小島和義

    小島(和)政府委員 幾つかの問題を御指摘になりましたが、逐次お答え申し上げます。  まず地方財政法の問題でございますが、確かに分類上は第十条の負担金から十六条へ移行するということになるわけでございます。十六条は一般的には任意の奨励的な補助金というふうに受けとめられておりますが、私どもは、十条に該当しないものが大体十六条に来る。十六条の中にも何らの法的裏づけのないものもございますが、ただいま御提案いたしております改良助長法のように、国が交付金を交付することはこの法律上義務づけられておるという意味において、きわめて安定性の高い交付金制度であるというふうに考えております。  それから、事業ごとの流用が可能になるという点は、まさにこの交付金制度の一つの長所でございまして、都道府県の実情に応じまして経費を重点的に使えるという点が一つの長所であろうかと思います。ただいまの定率負担金の仕組みのもとにおきましては、各都道府県の実情を考慮いたしましてずいぶんきめ細かに予算を組んでおるつもりでございますけれども、必ずしもすべての県の実情にマッチするということはあり得ないわけでございます。  たとえば、一例で申しますと、自動車の新規購入費について金を出すという場合に、ある都道府県においてはもう自動車は要らない、ある県においては必要である、こういうことが出てまいります。その場合に、ただいまの仕組みのもとでございますれば、都道府県としてその分については裏負担も持てないし、また、その必要もないということになりますと、その分が負担金返上という形になって出てくるわけでございますので、その意味では、ただいまの定率負担のもとにおいても必ず残りの経費を県に無理無理持たせてその仕事を行うということはできないわけでございます。それに比べますれば、交付金の中で、もちろん大きな使い道の枠は決まっておるわけでございますが、その中で県の実情に応じて最も必要なものに経費を振り向けていくというところに一つの長所があろうかというふうに考えております。  しかしながら、御指摘がございましたように、県費負担の問題について歯どめというものはなくなるという点においては全くおっしゃるとおりでございます。この点につきましては、都道府県ごとの事業規模をどの程度のものとして想定をするかという問題があるわけでございます。私ども、基本的な方向といたしましては、農林水産省の考えと各都道府県の考えと大筋において大きな食い違いはないというふうに理解をいたしておりますが、具体的な人数あるいはその規模ということになりますれば、多少の見解の食い違いというものは出てくるわけでございます。その点につきまして、この法律規定をいたしております都道府県実施方針についての協議という場を通じまして、都道府県考え方と国の物の考え方、国の物の考え方につきましてはあらかじめ運営指針という形でお示しをいたしますが、そういうものの調整の場を通じまして各部道府県ごとの事業規模というものに大きな食い違いが出てこないように対処をしてまいるつもりでございます。それが一つの歯どめといえば歯どめというふうに考えております。また、都道府県が負担すべき県費分と申しますか、これについては従来同様地方交付税の中においては基準財政需要額として織り込むという自治省との約束もできておりますので、その意味でも都道府県財源的な問題から著しく困難に陥るという問題もないというふうに考えております。  それから、そういう事業人員規模という問題だけではなくて、普及内容の問題につきましても、いま申し上げました運営指針あるいは実施方針協議の場を通じまして、各都道府県ごとのそれぞれの農業の特色はございますけれども、その実質的な内容、レベルというものが大きくそごを来さないように扱ってまいりたいというように考えております。
  40. 松沢俊昭

    ○松沢委員 いま御答弁がございましたように、財政のこの都道府県の裏づけの問題、その点については自治省とも連絡をとって地方交付税の中にそれを含めるという約束がなされておるのだ、こういう御答弁でございましたので、この際、自治省の方からおいでになっておられますので、自治省の方から御答弁を願いたいと思います。
  41. 前川尚美

    前川説明員 お尋ねの件でございますが、今回の定額交付金化の問題に関連いたしまして、先ほど先生の御意見の中にもございました協同農業普及事業について府県の自主性をより高めるという意味で、地域の実情に即した普及事業がこれから展開できる一つの基盤ができたものという意味で、私ども、今回の農林省の御提案には賛成をいたしておるわけでございますが、その場合に、いろいろ御心配いただきました交付金の流用の問題等々がございます。今回改正法案として提案されております法案によりましても、交付金協同農業普及事業以外の事業へは流用されないということで禁止をされておりますから、こういう点で、私といたしましては、交付金がその他の事業に流用されるという事態は府県においては起こらないというふうに考えております。  また、裏負担の問題でございますが、これは、従来法十条に基づきます負担金制度のもとにおきましては、法律上の義務として地方財政計画上対応することになっておりますし、また、交付税も対応してまいったわけでございますが、今回交付金ということになりますと、そこが地方団体の自主性が働く場面になってまいります。したがいまして、裏負担は一体どうなるのかという御心配が出てまいると考えるわけでございますが、私ども、今般のこの改正前提といたしましても、なお国の予算におきまして組み込まれております事業前提といたしまして、いわば国の予算措置を踏まえて所要の人員あるいは経費を計上いたしまして、交付税におきましてこれに見合った基準財政需要額を算定するということで制度的にも財源保障の措置を講じておるということでございます。  そういう意味におきまして、従来の裏負担という考え方とは性格が異なることになるわけでございますけれども、私どもといたしましては、この交付金に見合う事業を実施するのに必要な経費についても、各地方団体の実態に即して十分捕捉しながら基準財政需要額の算定を行っていきたいと考えておるわけでございます。
  42. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それじゃ、もう一回確認しますけれども、事業ごとの流用はさせないようにしていくということですね。  それからもう一つは、いままでのような裏負担というのではないにしても、それと同じような考え方で進んでいくということですか。つまり、もっと具体的に申し上げますと、一、二、三の大学校の運営のところまでは国の方では三分の二の負担、あとの三分の一は県、自治体で持ってくれ、こうなっておるわけですね。それからあとの四、五の問題につきましては二分の一、半分ずつ、こうなっておるわけですが、これは十条であろうと十六条であろうと、自治省の方としては従来の考え方で進みます、こういうことなんですね。
  43. 前川尚美

    前川説明員 まず第一点の、国から交付されます交付金の問題でございますが、これにつきましては、交付金そのものについては改正法にも流用禁止規定がございます。そういう意味で、各府県ともこの流用禁止規定を遵守されることと私どもは考えております。  それから第二点の、従来の裏負担の問題でございますが、これにつきましては、五十八年度の地方交付税の基準財政需要額の算定に当たりましては、従来の負担割合を念頭に置きながら所要の財政需要を算定するということにされております。
  44. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そうすると、いまのお話は、ちょっと私の受けとめ方の間違いであったと思いますが、流用はさせないというのは、つまり普及事業のいままでの負担金というのは定率であったのですね。これは定額なんですから、事業ごとでなしにつかみでいくわけだから、そこには一、二、三の分類がなくなってしまっているわけですね。一、二、三、四、五までありますが、その分類が今回の法律改正によってなくなってしまうわけです。ですから、あなたの言っておられるのは、要するにこの一、二、三、四、五の事業ことの流用ができないことになっているという意味でなしに、ほかの方に使うのはできないことになっている、こういうことなんじゃないかと思いますが、どうですか。
  45. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいま自治省の方からお答え申し上げましたように、この交付金協同農業普及事業以外の費目に使うことは法律上禁止をいたしておりますが、交付金の中には法十四条の各号に掲げております経費別の内訳というものはないわけでございます。  したがいまして、従来でございますれば、たとえば旅費なら旅費が余った場合はそれは返上ということになるわけでございますけれども、これを節約いたしまして自動車の購入に振り向けることもできますれば、あるいは自動車代はもう要らないという場合に人件費の方に振り向けることも可能なわけでございますが、経費全体の大枠については何らかの原則と申しますか、これは定めてまいらなければならぬと思っております。
  46. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そこで、局長、あなたはいいことを言われます。要らない自動車、あるいは旅費が余った場合においては、いままでは返上してもらわなければならぬけれども、今度は返上してもらわなくても別な方向に使われるのです。それはなかなかいいことなんでありますが、逆に、普及員のために使おうと思っている金を足りなくなったから旅費の方に使うということもできるわけでしょう。私が心配しているのは、そういう傾向が出てくるのじゃないかと思うのです。だんだんと普及員の数が減らされる可能性が出てくるのじゃないか。そうなれば普及事業の根幹が揺れ動く、そこのところが私たちの一番心配しているところだとさっきから指摘しているわけなんです。  そこで、普及員の定数基準ですが、これは、いままでこの法律の十六条の二の規定に基づいて、予算の割り当てを通じて都道府県別の設置数を決めてこられたわけですね。そこで、そのほかに運営指針というものをおつくりになるわけですね。その運営指針の場合に配置という項目が二番目にありますが、そういうところにこの定数、数の問題が出てくるのですか。どういうことなんですか。
  47. 小島和義

    小島(和)政府委員 私どもも、今次改正の過程におきまして、先ほど申し上げましたように交付金自体は非常に目鼻だちのはっきりしない性格の金になりますので、普及職員の定数基準のようなものを法定できないかということを実は真剣に検討した段階があるわけでございます。ただいま御指摘になりました十六条の二は一号経費及び二号経費についての資金配分の基準ということになっておりまして、人の頭数を直接的に規定したという規定になっておりませんものですから、そういうことができないものかということを実は考えたわけでございます。  ここに二つ問題が出てまいりました。  現在の普及員の配置数自体がかなり歴史的な沿革によりまして定まっておりまして、それを現時点で一定の物差しで合理的に説明をするということに非常にむずかしい点があるということがまず一つでございます。  それから第二の点は、仮に基準を決めることにいたしました場合に、ただいまの十六条の二で定めておりますような耕地面積あるいは農業者の数、市町村数、これは比較的簡単に測定もできますし、これらが資金配分の要素になるということについては疑いを入れないわけでございますが、そういった事柄のほかに、たとえば都道府県ごとにおける地形条件と申しますか、交通の便利という問題、さらには作物の数、種類、特に最近では施設利用型の畜産あるいは園芸というものが多くなっておりますが、こういったもののファクターもなかなか織り込みにくいわけでございます。  それから同時に、普及職員の数を決定づけるもう一つの要素といたしまして、他のいろいろな行政機関、たとえばたばこ関係でございますと専売公社が独自の指導組織を持っておる、また養蚕の場合には養蚕の指導員がある、そういった問題でありますとか、市町村あるいは農協あたりの指導水準という問題も実際には関連をしてまいるわけでございます。  それからさらに、普及の対象となります農家の方の技術的な水準というふうな問題も普及のニーズに関係をしてくる問題でございます。  そういうさまざまな要素が絡んでまいりまして、なかなか物差しをつくりにくいという問題もあるわけでございまして、これは具体的に普及が物差しを決めるよりは、都道府県の内部事情というのは一番都道府県が知っておるわけでございますから、そういう県の方針というものについて国が相談を受けるという仕組みの方がいいのではないかということで、ただいまの実施方針規定事項といたしまして普及職員の配置に関する事項というのを定めておるわけでございます。もちろん、これは各県がめいめい自由濶達にということではございませんで、配置についての物の考え方の大筋は運営指針において定めてまいりまして、あとは具体的な相談ということにしていくのが一番実際的ではないか。その際において具体的な数まで書かせるのか、あるいは都道府県における考え方を定めていくのか、この辺の問題については各県の意向も承りながら今後も詰めてまいりたい、かように考えております。
  48. 松沢俊昭

    ○松沢委員 わかりましたが、予算を配分する場合においては、これは十六条の二でやっておる。これはいままでと変わりないわけですね。  それで、いまお話しになりましたように、定数基準をつくるというのは、いままでの歴史的経過があるわけですからむずかしい、これもわかります。ただ、これ以上減らされたらこれはもう普及事業の根幹が揺らぐよということも、きのうの参考人の御意見の中に出ているわけでございます。だから、各県ごとにそれぞれの歴史的経過があるわけだが、その歴史的経過を踏まえ、今日の数というものができ上がっているわけですね。その数を減らさないような歯どめというものが考えられないものか、一番心配しているのはそこなんですよ。そこのところを、要するに農林省の方としては各県には弾力性を持たせるけれども、しかしこれは予算が足りないからそっちの方を削ってもいいよというようなことだけが先行してしまって、数が減ってしまって、実際上は普及事業ができなくなってしまったじゃないかというようなことがあってはならないということがみんなの不安であるわけです。だから、各県のいまあるところの数というものが減らないようにするにはどういう保証があるのか、これを局長の方からお伺いしたいのです。
  49. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいま政府全体といたしまして公務員の計画的削減を実施中でございまして、私ども農林水産省におきましても、毎年一定の削減を実施いたしておるわけでございます。従来の国庫負担の仕組みのもとにおきます普及職員につきましても、国家公務員同様に一定の割合で削減をするという計画を実施中でございまして、過去四十三年から昨年までの間に約一四%の削減が現実に実施されております。そういう削減というものを今後は一切否定するということは私どもも毛頭考えておりませんが、今回の改正によりまして従来以上に人員減が加速されるということは何としても避けたい、かような考えを持っておるわけでございまして、そのための実施上の歯どめ措置といたしまして運営指針あるいは実施方針というものを積極的に活用していこうと考えておるわけでございます。  ただし、都道府県によりましては農業情勢変化というものが起こっておるわけでございまして、かつて相当な農業地帯であった地域がその後において都市化が進みまして、農業的な実態が乏しくなってきた、こういう地域も現実にはあるわけでございますから、そういうことによる人数の増減というものは、これは都道府県の判断によってはある程度は許されるということであろうかと思いますが、大筋、大枠というものについては国の考え方と県の考え方と十分に調整してまいりたい、かように考えております。
  50. 松沢俊昭

    ○松沢委員 わかりましたが、そうすると、公務員の削減計画に準じて普及職員削減が行われていく。これは法律改正されなくても行われていくわけですから、そこまでやってはならぬということを私は主張したいのだけれども、それは無理な話だと思いますが、この一部改正案が出たことによってさらにそれに輪をかけるというようなことはない、やはり従前どおりで進めていくのだ、こういうことでありますが、そのようにして進めていく場合においては、歯どめというものは、それじゃ運営指針にあるわけですね。運営指針のところで歯どめをかけていく、こういうふうに受け取っていいのですか。各県によっては情勢変化がありまして、農業県であったのが工業県になってしまったという場合にはいたし方がないと思いますけれども、大体いままでどおりだという場合においては運営指針の中で歯どめをかけていく、こういうことなんですか。
  51. 小島和義

    小島(和)政府委員 今回の改正内容が公表されました段階で、各都道府県の方からいろいろな意見が実は寄せられておるわけでございます。私どものところに参りました意見のかなりな部分、大部分と申し上げてもよろしいのですが、それは、今回の措置によって自分の県に交付されるべき交付金が減るようなことがあっては困る。なぜならば、各都道府県における普及の実態は一年や二年でちっとも変わらない、にもかかわらず金だけが減るということになったのでは困る、こういう御意見の方が非常に多うございまして、各都道府県における普及必要性といいますか、その必要とする規模を含めまして、各県がお考えになっていることは私どもの考えとそう大きく食い違っておらないということが一つの心強い点でございます。  もちろん、先ほども申し上げましたように、過去におきましてかなり農業のウエートの高かったところで、いまでも人は抱えておるけれども実態的にはかなり比重が低下しておるという場所もあるわけでございまして、県内の配置転換という問題ももちろんございますが、都道府県別に眺めてみましても、各県の普及職員の配置数というものは必ずしもバランスがとれてないという面もあるわけでございます。そういう点につきましては、国と県の相談を通じまして正すべき点は正していくし、全体に必要な数というものは確保していく、こういうことを運用を通じて適切に対処してまいりたいというように考えております。
  52. 松沢俊昭

    ○松沢委員 次の問題ですが、これも具体的に示してもらわぬとよくわかりませんが、運営指針というのは五つの項目で成り立っていますね。活動の基本課題、専技と改良普及員の配置に関する基本事項、資質向上の事項、それから指導活動の方法、その他。それから、実施方針もこれに準じたものになっておるわけでありますが、これはどうも非常に抽象的でありまして、具体的な説明というのはこれはできないのですか、どうですか。
  53. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、今後の協同農業普及事業の、量的と申しますか、同時に質的な水準確保する、こういう観点から、ただいま御指摘になりましたような運営指針及び実施方針というものを、国、県の意見交換を通じて固めていく、こういうことを法定をいたしておるわけでございます。  項目について具体的に織り込む事項につきましては、法律の中にもございますように、都道府県意見も聞きながら国の運営指針を決めるという筋になっておりますので、細目まで申し上げることはいかがかと存じますが、ただいまの考え方といたしましては、たとえば第一号の「普及指導活動の基本的な課題」といたしましては、これは従来同様でありますが、高度技術普及あるいは高能率農業経営の確立、すぐれた農業の担い手の育成農業者の健康の維持増進、農村婦人、高齢者の自主的活動の助長というふうなアイテムが取り上げられるだろうというふうに考えております。  二号の「専門技術員及び改良普及員の配置に関する基本的事項」といたしましては、効率的に普及活動を推進する観点から、普及職員配置の標準的なモデル等も含めまして概括的なビジョンを提示することを検討いたしております。思想といたしましては、先ほど申し上げましたように、農業事情の変化の実態に即しまして都道府県間で均衡のとれた普及指導水準を維持し得るような配置の考え方、同時に、都道府県内におきましても、農業振興の期待される地域農業者のニーズの強いところに対する重点的な配置の考え方を定めてまいりたいと考えております。  第三号の「専門技術員及び改良普及員の資質向上に関する基本的事項」といたしましては、普及職員の研修体系の枠組みあるいは試験研究機関等との人事交流の考え方といったことを定めたいと考えております。  第四点の「普及指導活動の方法に関する基本的事項」は、試験研究機関との連携のあり方、中核農家農業集団等の重点指導対象をどういうふうに考えるか、農業改良と生活改善の一体的活動の進め方、その他効率的な普及活動の手法にわたることを定めたいと考えております。  五号の「その他協同農業普及事業運営に関する基本的事項」といたしましては、普及事業の支援協力体制の整備問題、そういったことを現在念頭に置いておるわけでございます。  詳細にわたりましては各県のいろいろな御要望というものを踏まえましてまた細目を詰めてまいりたいと思っておりますが、大筋は以上申し上げたようなことでございます。
  54. 松沢俊昭

    ○松沢委員 去年の臨調答申を踏まえまして改良普及事業の研究会というのが発足されまして、それで「普及事業の刷新について」というパンフレットのようなものがつくられて、私、見せてもらったわけなんでありますが、いまの運営指針というものの説明を聞きますと、大体そこに載っているような文言が答弁として出てきているようでありますが、あれを今度は四つの項目に分けて具体化していく、こういうことなんですかね。
  55. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及事業研究会は、必ずしも今回法律改正の中で組み入れました運営指針等の法律上の条文を念頭に置いて始めたものではございませんで、むしろ普及事業に寄せられておりますさまざまな期待あるいは批判というものに対してどのようにこたえていくかという観点から始めたものでございます。したがいまして、この研究会のプロセスにおきましては必ずしもいまのような条文を念頭に置いたわけではございませんで、むしろ都道府県との協議を通じていかにしてこの内容実現していくかということを想定しながらまとめたものでございますが、結果的には、この内容をなしておりますものが運営指針内容として相当程度採用できるものと考えておりますので、内容を吟味いたしまして、またさらに都道府県意見も十分聞きながら、この中で活用すべきものは取り上げていきたい、かように考えております。
  56. 松沢俊昭

    ○松沢委員 この中に「普及職員総数の見直し」という言葉が使われておりますが、どういうふうに見直すのですか。
  57. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、この研究会自体は必ずしも今回の法律改正まで前提として始めたものではございませんが、普及事業に関する御批判の中に、農業の実態が相当大きく変わってきておるにもかかわらず普及職員数はそれほど大きく変化してないではないか、こういう御批判もあるわけでございます。それからまた一方においては、事業効率化ということについて非常に強い御指摘が外部から寄せられておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、ただいまの普及職員の全体の頭数というのは、先ほども申し上げておりますように歴史的な経過の上に成り立っておる数でございますので、この数自体についてある種の合理的な根拠というものが積算の上ではっきりあるわけではございません。そういう事態を踏まえまして、この研究会の中におきましては、このほかに取り上げましたいろいろな項目を実施する過程におきまして普及職員の全体数についても見直しの余地があるのではないか、こういうことを言っておるわけでございまして、そういう見直しを行った上で、普及事業の安定化を図る観点から長期の展望を明らかにする、将来どの程度のスケールとしてこの事業を維持していくかということについてやや長期の見通しを立てるべきである、こういうことを御指摘いただいておるわけでございます。  これをこのまま読みますと、何か普及職員の数の長期見通しみたいなものを定めるかのごとくとられるわけでございますが、実際問題として、そう長期の見通しというのはなかなか決めにくうございます。そこで、先ほど来申し上げております運営指針あるいは都道府県実施方針は大体五年程度の期間で決めたいというふうに考えておりますので、そういう五年ぐらいの期間では普及職員全体の数をどの程度に持っていくのか、あるいは維持していくのか、そういう都道府県ごとの考え方が当然出てこようと思います。また、私どもの方におきましても、ある程度都道府県ごとの期待数というものは抽象的には持っておるわけでございますが、そういうものとすり合わせをいたしまして、都道府県意見もよく聞きながら県別の今後の姿、余り長期のものは実際問題としてなかなかできかねますが、五年程度のものとしては見通しが立つようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  58. 松沢俊昭

    ○松沢委員 わかりました。  もう時間がありませんのでその次に進みますが、今回の法律改正の中身としましては、一つはさっき申し上げましたものが一番大きい問題だと思いますけれども、その次には、農業改良研究員制度の廃止ですね。もう一つは共同研究ですか、地方の研究機関と中央政府の研究機関とが合作でいろいろやってみる、そういうことが改正の新しい点ということになっておりますね。それとの絡みというものがあってこの改良研究員の廃止ということになっているんじゃないかと思われるのです。  ただ、地方の御意見を聞きますと、この改良研究員ということの資格はなかなか大変な努力をしなければ取れない資格だということを聞いているわけです。各県に一人ずつ配置されているということを聞いておりますが、やはり資格は資格として残しておいた方が、一つの誇りといいますか、生きがいといいますか、そういう意味では非常に必要なんじゃないか、こういう感じを持っておりますが、その点はどうお考えになっているか、これが一つであります。  それから、改良普及員の資質向上という問題がございます。それはきのう参考人の人も言っておられましたけれども、採用してから、採用する前でもいいのですが、とにかく現場で働く前に一定の期間というのは、やはり普及員として現場に配置された瞬間から十二分に活動のできるような、そういう教育研修期間というようなものを新たに考えて設置をして、そこで養成した者を現場へ送り込んでやるという方法というのが必要なのじゃないか。いままでの経過からしますとそういうあれがあったそうでありますが、これはやはり資質向上という面からしまして一つ考えていかなければならぬところの問題だと私は思っておりますが、その点、どうお考えになっているか。  それからもう一つの問題は、普及員の仕事というのが、これはもちろん行政の一部分として普及事業があるということは私も知っておりますけれども、しかし、普及員というのは技術普及をやっておるわけなんでありまして、行政事務の出先機関としての役割りというのは果たしていないはずなんであります。そういう意味からすると、普及の分野というものと行政の分野というものを、要するに普及員に活動の自由の幅というものをうんと持たせる、そういうことが農民の考え方にこたえていけるところの普及員になるのじゃないか、こんなぐあいに実は思っております。そういう点、各県の状況等を見ますと、行政事務職員のような動かし方で、大体三年ぐらいいるともうよその普及所の方に移してしまうという。やっと三年ぐらい居座っていることによって少し芽が出てきているというのに、もう動かしてしまうということになれば、これはさっぱり成果が上がらぬうちにどんどん配転が行われていく。それはやはり事業成果を上げるには芳しくないじゃないかというふうに私は思っておるのですが、そこらのところを、国の方から金を出していくということになれば、当然運営指針だとかそういうのを決める際、県とも打ち合わせをやって、なるべく長くその地域にいて定着するようにして、定着する中でそこの技術水準というものを高めていって、また新たな創造的な農業発展というものを考えさせるという必要があるのじゃないかというようなことを当然指導されたらいいのじゃないかと私は思っております。  それから、普及所がございまして、私の町にもありますけれども、そこの町の住民は一人もいないですよ。全部よそから来ているのです。それはいま申し上げたような配転の関係からだと思いますが、あるいは人がいない、数が減らされたという関係もあると思いますけれども、普及員地域農業と密着するためには、その地域に定住してもらわないとうまくないのです。活動の自由の幅を持たせる。ということは、つまり一般の職員と違って、朝八時半に出勤して五時に退庁なんというものではないと思います。夜の十二時ごろまでいろいろと農村のリーダーなんかと話し合いをするということも必要であろうと思います。そうすると、十二時ごろまで働いて、そして翌朝八時半に出勤するなんというわけにはいかないわけであります。たまには若い人たちと酒も飲まなきゃならぬと思いますね。そういう場合に、三十分も一時間も離れたところから通勤しているなんということになったらなかなか大変なんでありまして、自由の幅というものを持たせるということを考えてもらうように、ひとつ地方の自治体と御相談を願ってもらいたいと思いますが、そういうことはできるものかどうか。  それからもう一つは生活改良普及員の問題です。これはいろいろ言われておりますけれども、具体的に申し上げますならば、農村はなかなか嫁がなくて困っているのです。嫁がないというのは、やはり生活の面でほかの社会とはそれなりの格差があるから嫁が来ないということになるのじゃないかと私は思うのでありまして、要するに、それをどのようにして改善していくかという努力をやっていくというのが生活改良普及員だというふうに私は受けとめておりますので、それらの点についてもこれからやはり強化をしていかなければならない。お話を聞きますと、全国で二千人ちょっとしかいないのじゃないですか。これをさらに減らしていくなんということになったら、とてもじゃないけれども、いま私が申し上げましたような、いまでも解決がつかぬところの大きな問題があるわけでありますが、その解決なんというのはつけようがないじゃないか、こう思っておりますので、それらの点につきましての局長の考え方を承りまして、終わりたいと思います。
  59. 岸國平

    ○岸政府委員 改良研究員の問題について簡単にお答え申し上げますが、いま御指摘いただきましたように、改良研究員はいままで行ってまいりました試験も大変むずかしい試験でございまして、改良研究員の資格を持っておる人たちはそれぞれの都道府県におきまして大変重要な試験研究の役割りを果たしております。そういうこともございますので、今回の法律改正によりまして正式な改良研究員の名称あるいは試験制度というものはなくなるわけでございますが、今後もそのいいところを活用できるような措置を考えてまいりたい、そういうふうに考えております。
  60. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず普及職員の研修訓練の問題でございますが、ただいまでも普及職員資質向上を図るという観点から、新任者あるいは普及所長、漁家担当の生活改良普及員などにつきましては、その職務を遂行するに必要な職務研修を実施いたしております。また、特に専門的な知識、技術向上を図るという観点から、技術向上研修を、これはさまざまな種類がございますが、実施をいたしております。さらに、農政上の緊急課題や地域の重要課題を解決するための課題解決のための研修、大ざっぱに分けますと、研修の種類はその三つになるわけでございますが、研修に集まります人の頭数あるいはレベル、そういったものを考えながら国と県が分担をして研修を実施いたしておるわけでございます。  ただ、そういう研修の仕組みというのは勢い集合研修にならざるを得ないわけでございますが、それは同じような立場の人が切磋琢磨するという利点がある反面、どうしても画一的な内容になる、あるいは他動的なものになり、一過性の研修に終わる、さまざまな欠点もあるわけでございます。今後の研修のあり方といたしましては、御指摘ございましたような新任者や若年層に対する研修内容充実を図ると同時に、自分の内発的な動機によって行う自己研修と申しますか、さらには普及所内における職務を通じて行う職場研修、さらにいままでやっておりました集合研修、この三つをうまく組み合わせまして、やや息の長い体系的な研修が実施できるように体系改善を検討しておるところでございます。  それから人事異動の問題でございますが、確かに普及職員は一般の事務職員などと違いまして、ある程度地域の事情に明るくなければ普及活動自体ができないという特殊な性格を持っているわけでございますので、その意味では、一般の職員に比べれば一定の場所に対する勤務期間はかなり長いように感じております。これは事例的な調査でございますので全体がこうかどうかわかりませんが、事例的な調査によりますと、普及所に在勤しております人のこれまでの年数、その年数が来たらかわるという意味ではありませんが、在勤の平均年数で申しますと四・五年くらいになっておりますので、一般の職員に比べればやや長い配置になっているように配慮されておると思います。具体的には県の人事管理の問題にわたりますので、運営指針等で定めるのはいかがかと存じますが、考え方としては私どもも全く同感でございます。  それから嫁さんの問題でございますが、これはおっしゃるとおりでございまして、外見的には農家生活もいろいろよくなってきておりますけれども、まだまだ農家特有のさまざまな困難な問題があるというところに配偶者が得られないという悩みがあるようでございます。生活改善事業におきましても、そういう点も念頭に置きながら、農家生活が他の一般の家庭に比べて質的に見劣りのしない生活になりますように重点を置いて指導してまいりたいと考えております。
  61. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これで終わりますが、大臣に最後に一言だけ御答弁願いたいと思いますが、財政的にも後退しないように御努力いただきたいと思います。どうですか。
  62. 金子岩三

    金子国務大臣 御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたします。
  63. 山崎平八郎

    山崎委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ────◇─────     午後一時六分開議
  64. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  65. 日野市朗

    ○日野委員 今度の法改正について、午前中、松沢委員から若干の根本的な考え方についての疑念も述べられたように私は思いますが、こういった普及事業そのものの必要性ということについては、きのうも参考人各位が非常に熱心にこれを説いておられたところでございます。皆さんのおっしゃることを聞いておって、普及事業に対する関係者の非常な熱意、それから農業の発展に対する普及事業の果たしている役割り及び現場の御苦労など非常によくわかったところなんでありますが、今度の法改正内容を見てみますと、こういった関係者の熱意が果たしてこの法律にそのまま盛り込まれているのかということについては、私も若干の危惧なしとしないところでございます。  そこで、普及事業の現状に対する評価といいますか、現状認識といいましょうか、むしろ私は評価という方にウエートを置いて、ひとつ農水省はどのように考えておられるのか、その点についてまず伺っておきたいと思います。
  66. 小島和義

    小島(和)政府委員 協同農業普及事業は、昭和二十三年の改良助長法の制定に始まりまして、自来、時代の変遷とともに内容的には多少の変化、充実を遂げながら、その基本的な性格は維持し続けてまいり、そのときどきの時代の要請に応じまして農業生産の増大あるいは生産性向上、さらには農家生活の改善等に大変大きな役割りを果たしてまいりました。このような普及事業の成果は農政の各般の面にわたってさまざまな貢献をしているというふうに理解をいたしておりますが、その役割りにつきましては、今後とも変わることない重大な使命を持っている、かように考えておるわけでございます。
  67. 日野市朗

    ○日野委員 私の手元に、普及事業研究会が昭和五十七年十月に出されました「普及事業の刷新について」という小冊子がございます。ちょっと午前中にも言及されたのでありますが、この普及事業研究会、これはどのような性格の研究会であって、どのような目的のもとにこれが設置をされて、この小冊子、これはレポートでありますが、こういうレポートがどのような経過を経てでき上がったものであるのか、これについて若干述べていただきたいと思います。
  68. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及事業につきましては、かねがね各方面から今日の農業なり農村の非常に多様化した要請に対して十二分にこたえておらないのではないかという御意見、御批判が寄せられております。同時に、一昨年の七月のいわゆる臨調中間答申においても、ややそれに類したことが言われておるわけでございます。そういった事態を踏まえまして、これまで三十有余年にわたってやってまいりました普及事業につきまして、この際全般的な検討を加えましてその実施体制並びに事業運営についての刷新の具体的な方策を明らかにしよう、こういうことで私的な諮問機関として設けたものでございます。  具体的なメンバーの構成につきましては、そういう世の中の批判にどうこたえるかということでございますので、なるべく普及に直接関係している人は構成メンバーに入れませんで、やや客観的に眺めている方々を中心として組織したつもりでございます。  その意味におきましては、普及事業についての忌憚のない御批判、御意見というものが続出をいたしまして、それらをもとにいたしまして、しからばどういう点を改善したらいいかということに議論を集約いたした、そういう性格のものでございまして、私ども、今後の普及事業運営のための有力な指針であるというふうに受けとめているわけでございます。
  69. 日野市朗

    ○日野委員 私もこの研究会の構成メンバーをずらっと拝見をさせていただきまして、いま局長のお答えになったとおりに、これは直接この普及事業に関与しない、外側から見ていた人たちがこれに参画をしているわけでありますが、このことに若干の不満を私なども抱いているわけであります。そこで、こう言っては失礼でございますが、普及事業の本当の内容といいますか、そういうものを十分に——かなり有識者であるというふうに思いますが、若干の危惧もないとしない人たちがこういうふうにお集まりになっておられるわけでございますけれども、ここでの現状認識が書いてあります。この冊子の第一という項に現状認識が書いてございますが、この現状認識は農水省の現状認識と一致するものというふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  70. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、この研究会は普及事業をいわば外側から眺めている方ということで構成をいたしたわけでございますが、普及事業の実態について全く知識、経験を持たない人を集めたという意味ではございませんで、普及事業につきましては直接担当しておる方ではないかもしれませんが、さまざまな意味において普及事業についての御意見をお持ちの方々、こういう意味でございます。また、普及関係者につきましてはメンバーには加えませんでしたけれども、その代表と申しますか、具体的な仕事をやっている方々にも御出席いただきまして、その現地の意見を聞くというふうなこともやりました結果まとめたものでございます。  それから、その冒頭の現状認識でございますけれども、これは委員さんの普及事業に対する見方というものを集約したわけでございまして、すべてにわたりまして農林水産省が考えておりますところと完全に意見一致ということではございませんけれども、大筋におきましては私どもとしても受けとめ得るものというふうに考えております。
  71. 日野市朗

    ○日野委員 これを読みますと、普及事業についての一応の評価をやっております。「大きな役割を果たしてきた。」こういう評価になっているわけでありますし、その点は、いろいろな面で大きな役割りを果たしてきたということはだれしもが率直に認めなければならないところであろうかと思います。  しかし、一方ではいろいろな問題点の指摘がございます。「現下の農業農村について見ると、農産物の供給過剰、土地利用型農業規模拡大の停滞、兼業化混住化等による農村社会の活力の低下等の問題」に現在日本農業農村が直面している、こういうふうに書いてあるわけでございますが、まず、現在の問題点について、農産物の供給過剰ということが指摘をしてございます。この点について農水省はどのように理解しておられるのか。まず、その点、いかがでしょうか。
  72. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  「農産物の供給過剰」と書いてございますが、ここで私ども認識しておりますのは、農産物の中でも特に米あるいは牛乳、柑橘類等、一部の農産物につきまして、現在の消費動向から見まして生産が過剰になっている。ただ、この中におきましても米のように将来ともたとえば消費が減退すると予測されるものもございますし、逆に牛乳、乳製品につきましては、今後むしろ消費は伸びていくだろう。ただ、それに対しまして消費の拡大のテンポ以上に生産の拡大のテンポが速いというふうな二つの類別があろうかと思いますが、私ども、この現状におきまして農産物の需給が必ずしもうまくバランスをしていない、そのために農用地につきましても十分活用してないというような面もございますので、今後の方向といたしましては、こういう現状を踏まえまして需給の調整を図っていく、主として水田を中心にいたしまして、水田利用再編成という方策を基軸にしながら、今後とも農業生産の再編成を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  73. 日野市朗

    ○日野委員 その次には、「土地利用型農業規模拡大の停滞」こういうふうに問題点の指摘がございます。土地利用型農業規模拡大するというのは農水省の一貫した方針であろうかというふうに思いますし、問題点の指摘としては確かにここに記載してあるとおりでございますが、もう一つはっきりしないのは、では農水省は規模拡大をするということからどのような農村の姿をイメージしているのかというような点が、どうももう一つはっきりいたしません。  ここに記載してございますこれは、ほぼ農水省と同じ認識でありましょうから、農水省の認識としてお伺いいたしますが、規模拡大、これは一体どういう程度までの規模拡大を図ろうということをイメージとしてお持ちなのか。いままでもこの点については何度かこの委員会の中で問題にはされてきておりますが、もう一度ここでそのイメージをはっきりと伝えていただきたいというふうに思うのですが、いかがでございましょう。
  74. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  規模拡大につきましては、作物あるいは花卉、畜産、それぞれの業種またはそれぞれの地域地域によりまして望ましい姿というのはなかなかつかまえるのはむずかしいかと考えております。ただ、私どもやはり今後の農業生産効率化していくためには、先ほど御指摘ございましたように施設型のものはおおむね西欧並みの生産性を上げるところまで来ておりますけれども、やはり土地利用型の農業につきましては、地価が高いとか農地に対する農家の保有欲が強いというようなこともございましてなかなか進まないわけでございますが、今後農業生産を効率的に進めるためには、土地利用型の農業をできるだけ生産性を上げる。このためにはやはり規模拡大が必要だというふうに考えているわけでございます。  そこで、いま御指摘の規模はどの程度であるかということになるわけでございますが、この推計には非常にむずかしい問題がございます。そこで、昨年の夏、農政審議会に特に専門委員会を設けられまして、約小一年がかりに作業を続けまして、一応想定したものがございます。これは、昨年の八月に農政審議会が報告した「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」というものの中に、将来の全国平均といいますか、マクロでの一つの展望が示されております。これによりますと、五十五年から六十五年までの間におおむね九十万ヘクタール程度の農地の流動化が進む。これが相当程度中核農家に集積をされていくということになった場合、土地利用型の農業におきまして特に経営規模の大きい中核的なものを考えるわけでございますが、都府県におきましては平均的に大体一ヘクタールから三ヘクタール程度現状よりも伸びるのではないか。昭和六十五年におきましては、稲作主業の場合には都府県では大体五へクタール程度、北海道では十ヘクタール程度。酪農の場合には都府県で大体八ヘクタール程度、北海道で三十五ヘクタール。肉用牛を考えました場合には、これは肥育でございますけれども、都府県で五ヘクタール程度、北海道で二十ヘクタールというような一応の見通しでございます。ただ、これは都府県につきましては平均的な姿でございますので、これがさらに地域地域でどのようになるかということにつきましてはなかなか問題もございますが、現在農政局ごとにいろいろな検討を重ねているところでございます。
  75. 日野市朗

    ○日野委員 いま官房長が示された文章は私も読んでいるところなのでありますが、規模拡大しようというその精神は非常によくわかるのですけれども、それがなかなか前進しないで現在いるわけでございますね。これは、やはり根本的には土地の財産的な所有ということもございましょうけれども、農民の生産に対する執着、生産を離れて農民というものは存在し得ないのだという農業者の精神的なものが非常に強いのだろうと私は思うわけです。そして、普及員の方々もそれらの点を非常によく知っておられるのではないかというふうにも考えるわけでございますが、規模拡大が停滞をしている原因について、私がいま述べたような認識と農水省の認識とは違いましょうか。
  76. 角道謙一

    角道政府委員 先ほどお答えいたしましたように、基本的には日野先生御指摘の御認識と大体同じかと考えております。したがいまして、これを今後どう進めるかということにつきましては、一昨年国会で御制定をいただきました農用地利用増進法、こういうものを中心にいたしまして、現在主として利用権設定という方向で大いに流動化を進めているわけでございまして、その成果も逐年上がってきておるわけでございます。先ほど申し上げました九十万ヘクタールというものも、これらの動向を踏まえながら客観的におおむねその程度の流動化が行われるのではないかというように見ているわけでございます。
  77. 日野市朗

    ○日野委員 増進法の事業の成果というものは、私はもう一つだなと感じているところでございますが、ことは私の認識を述べるにとどめておきましょう。  もう一つ、「兼業化混住化等による農村社会の活力の低下」ということが指摘してございます。兼業化は別として、混住化が農村社会の活力の低下に直に結びつくかというと、私は直に結びつかないのではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  78. 小島和義

    小島(和)政府委員 それぞれの地域によって様相は違うかと存じますが、兼業化も含めまして、混住化それ自体は、地域の所得レベルを引き上げるとか、あるいは場所によりましては地価の高騰というようなことから、経済的な意味での活力を沈滞させる面ばかりではないという点は、全く御指摘のとおりだと思います。  ただし、農業のサイドで見てまいりますと、農家と非農家が混住することによりましてその間の心理的な摩擦が高まる、あるいは公害問題なんかが起こってくる、環境問題が起こってくるというようなこと、さらには従来の村が持っております連帯感のようなものが希薄化するということから、地域農業生活の面から見ればだんだん農業がやりにくくなってくるという環境が出てくる場合が多いような気がいたすわけでございます。したがいまして、この場合の「農村社会の活力の低下」というのは、農業のサイドから見まして農業がやりにくくなるような社会的な環境がだんだん大きくのしかかってくる、そういう問題意識から書かれたものではないか、かように考えております。
  79. 日野市朗

    ○日野委員 それについては私は若干の異論があるところでございまして、確かに現在のような社会情勢になってくれば混住化は必然的に進んでまいります。しかし、従来の村の機能というものは非農業者なども含めて機能しているというふうに私なんかは考えているところでございます。ここでも私の認識を追加しておきたいと思うわけであります。  そして、小冊子「普及事業の刷新について」によりますと、そこに四点ほどの課題を提起しているわけでございます。そして、普及事業についての一つの評価を出しております。  その一つは、「課題の重点が必ずしも明確になっていない」こういうふうになっておりますね。課題の重点を明確化するということは改正法の中でも一つの大きなテーマになっているような気がするわけでありますが、現下の農業農村についての問題点の指摘をやった研究会の観点は、農政上非常に大きな争点をそれぞれ構えたものであろうかと思うわけでございます。私、一つ一つについてちょっと伺ってみたわけでありますが、やはりそれぞれ争点を構えている。そして、行政サイドと現地の農村における意識、その二つの間にかなりの格差があるのではないかと思われるのであります。ここで普及事業が課題の重点をとらえようとしても非常にむずかしい点があるのではないかと私考えるのでございますが、いかがなものでしょうか。
  80. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに農業なり農村なりが著しく変貌いたしておりまして、農家の持っております特質もその階層なり作目なりに応じましていろいろ多様化してきておるわけでございます。そのことが普及事業に寄せられていろいろいろな要請をまたむずかしくしておる理由であるわけでございます。先ほど申し上げましたように、この研究会は普及事業に対する批判を集約してそれに対するお答えを出しているという基本的な性格を持っておりますので、その中で重点の選択ということについては相当傾斜をかけたまとめになっておるというふうに私も理解をいたしております。  ただ、本文にわたって眺めてみますと、それは重点の並べ方の問題でございまして、重点化志向が即特定の農家だけを対象にするとか、あるいは特定のテーマだけを対象にすればそれで普及事業は終わりであるというようなことを内容にわたって述べておるわけではございませんで、数々の普及に対する要請の中で力点をどこに置くかというふうな相対的な問題として問題提起をしているのではないか、その意味においては、私どもも十分受けとめ得る問題だと考えておるわけでございます。
  81. 日野市朗

    ○日野委員 私が心配しますのは、現在の農政の動きというのが農業関係以外からの圧力が非常に強い。そして、農水省自身が苦労しておられることも私よく存じながらこれを申し上げるわけでございますが、そういう農業以外のサイドから来るプレッシャーは農業関係者の関心とはかなりぶれがあるような感じが私はしてならないのでありまして、農民切り捨てであるとか農業切り捨てであるとか、そういう表現が使われるほどに非常に激しいものがあることもわれわれは考えておかなければならないわけでありますが、この重点的な課題ということにとらわれて、課題の重点をしぼるということにとらわれて、非常に無理な重点課題の設定の仕方をしていくというようなことがあったら大変だと実は思っているわけでございます。そういう点について、いま若干、本文の方を見ると、といったようなお話がありましたけれども、やはり総論的にこのように研究会が提言をするというようなことになってまいりますと、私はそういう危険が非常に強く感じられて仕方がないわけでございます。その点はいかがでございましょうか。
  82. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほども申し上げましたように、農業農村の変貌に伴いまして普及事業に寄せられているニーズというのは大変多様化をいたしておるわけでございます。それはそれなりにみんな理由のあることでございますが、同時に、普及事業がそのすべてにわたって同じような濃度をもってこたえていくことはこれまた非常にむずかしい問題でございますので、おのずからそこに力点というものがなければならぬわけでございます。  普及事業について現在一番大きな期待として寄せられているものは、健全な能率の高い農業経営を確立するということにあろうかと思いますので、そういう意味では重点目標を非常に大きくクローズアップしておる。そういう意味では、お話しのように、最初に出てまいります現状認識としてはことさらその点を大きく強調している、こういうふうな構成になっておるのだろうと理解しております。
  83. 日野市朗

    ○日野委員 私がこの点で特に心配いたしますのは、今度の法改正によりまして農水大臣普及事業運営指針を決めるということがございます。そして、自治体との協議をした上で実施方針が決められる。これの運用が非常に政策的に、これは政策的なものが背景にあるのはもうやむを得ないとしても、農民のサイドや現地にいる普及事業関係者から見て非常に偏ったものになりはしないか、彼らの実感するところと偏ったところでこういう運営指針などが決められていきはしないかということを私は非常に危惧するから特にこの点を伺っておきたいのですが、いかがでございますか。
  84. 小島和義

    小島(和)政府委員 今回の法改正によりまして予定いたしております運営指針及び実施方針の策定のプロセスにつきましては、その都道府県の実情を反映させる二重三重の安全装置と申しますか、そういうものを配慮したつもりでございます。  まず運営指針の策定の段階、これは中央で農林水産大臣が定める問題でございますから、勢いどうしても全国について画一的なものにならざるを得ない。そのことが都道府県の考えておりますその地域の具体的な問題と非常に大きく乖離が生ずるということになりますと、これは中央指導型の問題を大変はらんだ指針になろうかと思いますので、その意味におきまして、運営指針の作成段階で各都道府県意見を十分聞く、こういうプロセスを用意いたしておるわけでございます。  また、その実施方針につきましても、これは当然国の運営指針をそのまま書き写して持ってくるというものではございませんで、各県の実際の普及事業の持っていき方というものを御用意いただくことになるわけでございまして、それと国の考え方との意見調整のプロセスを経まして、それで最終的な事業方針が決まっていく。その意味では、国と都道府県共同事業という真髄を生かしまして、この方針決定のプロセスに当たりましても念には念を入れて慎重を期しておるというふうに考えておるわけでございます。
  85. 日野市朗

    ○日野委員 私、特に心配をいたしますのは、特に生産調整等を非常に強力に進めるとか、それから農業規模拡大地域の実情を無視して強力に推し進めていくというようなことになりますと、普及事業と農民との間のアレルギー的な現象が起きはしないかということを非常に強く心配をいたします。そういう心配はない、農水省の今後の方針としてそういうことは絶対にあり得ないといまの局長の答弁から理解をしてよろしいでしょうか。いかがでしょうか。
  86. 小島和義

    小島(和)政府委員 農業改良普及事業も広い意味で行政の一翼を担っておるわけでございますから、国、都道府県の政策と無縁の存在としてはあり得ないということは、この事業の基本的な性格としてはあるわけでございます。ただし、行政としてやっておりますものの中にもさまざまな性格の仕事があるわけでございまして、ものによりましては権力的な部分もございますれば、あるいは補助金の交付でございますとか、さまざまな経済的な利益を与える行政領域もあるわけでございます。  しかしながら、普及事業につきましては、その本質が教育的な手法による仕事であるということから、他の行政事務的な仕事に直接携わらせることは極力避けるという方針で従来から運用してまいっております。したがいまして、水田利用再編対策の実施に当たりましても、たとえば目標面積の配分でありますとか限度数量の配分という問題につきましては市町村という行政当局にゆだねておりまして、普及事業はそれを推進するために必要な転作物の選択でありますとか、栽培方法の指導でありますとか、その後の流通問題でありますとか、そういった極力技術的な手法によって解決できる問題の側面でこの事業を推し進めている、こういう一種の分業的な体制をとってやっておるわけでございます。この基本は今後とも崩すことなく続けていく所存でございます。
  87. 日野市朗

    ○日野委員 私、今度の法改正、それからことに出ている研究会の提言を読んで、普及事業そのものにもっと行政の一翼を担わせたいという感じが若干あるのではないかという感じがするのですね。これは、私、全体を眺めての印象でございます。そういうことはこれから絶対にいたさぬ、行政と普及事業との基本的な違いは今後とも堅持なさる、これは間違いございませんね。
  88. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、普及関係の職員もいわば都道府県職員でございまして、広い意味の行政職員には違いないわけでございます。また、その頂点とするところは都道府県の農林担当の部局であり、あるいは都道府県知事である、こういう基本的な性格はあるわけでございますから、行政と無縁の存在であるというふうには理解をいたしておりません。  ただし、行政の作用の中にもさまざまな面がございまして、かなり権力的なものから、あるいは指導、助長的なものから、教育的なものから、さまざまございますので、普及事業は発足以来その中で教育的な手法によって仕事を展開するのだという意味で、都道府県の他のいわゆる行政端末と申しますか、そういうものとは分離した機構のもとに運用してまいりました。そういう基本的な性格は今後とも維持しなければならないと考えておるわけでございます。  今回の研究会の答申の中で「行政施策への協力」という見出しを挙げまして若干の問題を提起いたしておりますが、たとえて申しますと、農用地の流動化促進というふうなテーマがございます。先ほど官房長からも申し上げましたように、大変むずかしい問題でございますが、農林関係施策の重要な柱として推し進めておるわけでございます。この問題につきましては、たとえば市町村でございますとか農業委員会でございますとか、直接担当する行政組織があるわけでございますけれども、普及事業といえども、そのことについての必要性あるいはその制度そのものの理解を進めるということは普及事業として取り上げておかしくない問題ではないか。具体的な農地の移転事務を取り扱うとかそのことを管掌するという問題ではないわけでございますから、そういうそれぞれの持ち分に応じて、本来の機能として実施できる側面においてこの政策に取り組んでいく、こういうことを述べておるというように理解しております。
  89. 日野市朗

    ○日野委員 この点ばかりやっていると時間がなくなってまいりますので次に移りますけれども、この研究会は「地域の要請に的確に応えた密着活動が弱まってきている」という指摘をいたしております。私も、かつての農業普及員の人たちのかなりきめ細かい活動というようなものと対比して、現在確かにそういう傾向は指摘され得るのではないかというようにも感じるわけでございますが、ただ、これは無理もないところだと思うのですね。現在のスタッフで非常に多くの問題点を抱えた農業について普及事業をもっと密着してやれと言っても、これは現状ではなかなかむずかしい。これをむしろ強化するこのことによってしかこの密着性というものは乗り越えられないのではなかろうかというふうに実は私考えておりますが、これについてはどのようにお考えになりますか。
  90. 小島和義

    小島(和)政府委員 この改良普及制度は、スタートの初期におきましては、御承知のことと思いますが、市町村に対する駐在制ということからスタートをいたしております。そのことは、まさに場所的な意味においても地域に非常に密着をいたしまして、それなりにすぐれた面もあったわけでございますが、同時に、勢い小人数にならざるを得ない。それから、市町村との上下の関係と言うと妙でございますが、市町村行政との相対的な独立性というふうな問題、さらには普及職員の処遇の問題、いろいろ問題がございまして、その後、中地区制、さらにはただいまのような広域普及所体制に移行したわけでございます。そのことはそれなりに大変長所もあるわけでございますが、御指摘ございますように、従来のようにその村に駐在し、場合によりましてはその村に居住をいたしまして日夜接触しておったという関係から見れば、やや疎遠な関係ができ上がったのではないかというふうな御批判があるわけでございます。  広域普及所体制をとりました最大の理由のものは、これだけ技術が高度化してまいりますと、勢い普及員の担当も専門分化せざるを得ないというところから、いろいろなスタッフを集中する、こういう動機が非常に大きかったわけでございます。そのことが逆にまた地域との密着度からいえば薄れていく。その両方の問題点を同時的に解決するということで、ただいまでは広域普及所の中において地域分担制というものをしきまして、そういう一つのチーム編成を前提といたしましてそれぞれの分担地域を受け持っていくということで、地域密着性の問題と広域普及所の持っておるよさ、両方を生かすような工夫もしながらやっておるわけでございます。  しかし、そのことが地域の密着度の問題についてのすべてのお答えであるかどうかということになりますと、私どもも必ずしもそうだとは思っておりませんで、今後またさらに工夫をしなければならない幾つかの問題があるような気がいたしております。その意味で、今回の研究会で指摘しております幾つかの問題は十分今後の参考になるものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  91. 日野市朗

    ○日野委員 私、この研究会の提言を見まして、こういった普及事業に対する評価というのは必ずしも当を得たものではないというふうに思います。この現状認識のところで、一応「農業生産の増大、生産性向上農業経営の改善等に大きな役割を果たしてきた。」一方ではこうやって褒めておりますけれども、これはリップサービスなのではなかろうかというような感じが実は若干いたすわけですね。そして、こういう一つ一つの指摘されている欠陥、課題の重点が明確になっていないとか、密着活動が弱まってきているなどと幾つか挙げておりますが、こういう点を見ると、この研究会の一応出している指針というのは普及事業そのものに対して非常に冷たい見方をしているのではなかろうかというふうに私感じているわけでございます。そして、この線に沿って、やはりそのような評価をそこに置いて今度の法改正に取り組まれ、そしてこれからの普及事業運営指針実施方針等が決められていくことになると、これは非常に問題が大きいのではないかというふうに私感じるのでございます。これは私の感想でございますが、いかがでございましょうか。
  92. 小島和義

    小島(和)政府委員 冒頭にも申し上げましたように、この研究会自体は、普及事業に対しまして世の中から寄せられておりますいろいろな批判、意見というものをどういうふうにこなしていくか、こたえていくか、こういうふうな観点からつくったものでございますから、お褒めの言葉を集大成いたしましても研究会報告にはならないという基本的な制約はあるわけでございまして、勢い、どちらかといいますと耳の痛いことをいっぱい盛り込んである、こういう性格のものだと思いますので、委員の方々がすべて普及事業に対して冷たい見方をしておるということでは決してございません。むしろ努めて客観的に眺めて外部のいろいろな批判に対して的確にこたえていく、そういう努力をなすった成果であるというふうに思っておるわけでございます。  ただ、この研究会のまとめにつきましては、とれを直ちに農林水産省が一方的に実行するという性格のものというふうには考えておりませんで、研究会の中にもたしかそのことに触れておるはずでございますが、今後の進め方といたしましては、都道府県との間で十分協議しながら一貫した方針のもとにおいて事業を進めていく、こういうふうなことが述べられておりますので、このことが即一つの方針についてのファイナルなものではないというふうには考えておるわけでございます。
  93. 日野市朗

    ○日野委員 私は、普及事業というものはより強化さるべきであるという観点に立ちまして、以後、若干の質問をいたしたいと思います。  午前中、松沢議員の方からも質問がございましたが、定額交付金方式に今度変わってくるということなんですね。いままでの負担金交付金改正するということでございますけれども、午前中の自治省の方からの説明がちょっと中途半端であったように思います。これは交付金に見合った予算措置をとるというふうにお答えになりましたね。自治省の方、いかがでしょう。
  94. 前川尚美

    前川説明員 お尋ねは、地方財政計画なりあるいは地方交付税での扱いということであろうと存じます。  私の先ほどの答弁では、地方財政計画なり地方交付税につきましては、今回の改正による国からの交付金に見合って地方団体の負担すべき分をそれぞれ所要の経費を算定して計上してあるということでございます。この見合っているという意味がやや不明確であったというお尋ねでございますけれども、見合っているといいますのは、従来、人件費補助でございますと国が三分の二、地方が三分の一、事業費でございますと二分の一と、いろいろございますが、そういう補助負担割合でそれぞれ負担金ということで手当てがなされておったわけでございますが、その点が今回交付金となりますと、負担金ではございませんので性格が違った形になる。でございますから、交付税の取り扱いにつきましても、従来のような裏負担という形で措置をするということではございませんけれども、五十八年度の交付税につきましては、午前中にお答え申しましたとおり、国に計上されました交付金と地方がそれに関連する事業として従来支出等をしてまいりました分を含めまして、従来の財源の持ち方を頭に置きながら五十八年度の交付税は算定をされておるということをお答え申し上げたのでございます。
  95. 日野市朗

    ○日野委員 そうすると、その算定の基準は従来のものを維持されるというふうに伺ってよろしゅうございますか。
  96. 前川尚美

    前川説明員 五十八年度の交付税の算定におきましては、従来の経費の負担の割合といいますか、そういうものを念頭に置いて計上されているということでございます。ですから、具体的に申しますと、人件費につきましては従来国が二、地方が一という負担割合でございました。五十八年度の交付税につきましては、基本的にはそういう考え方で基準財政需要額の算入が行われているということでございます。
  97. 日野市朗

    ○日野委員 五十八年についてはわかりましたが、それから先の方はいかがでございましょう。
  98. 前川尚美

    前川説明員 その後の問題につきましては、これはるる申し上げてまいったところでございますが、今回の改正法が施行されますと、それぞれ地方団体の自主的な判断によりまして、各地方地方でその地域の実態に応じて必要とされる協同農業普及事業予算化するということになるわけでございまして、当然国から交付されました交付金はその一部として予算に計上さるべきであると私どもも考えておりますし、さらにそれに加えてその他の一般の財源でどういう措置をするかということは、これは地方団体の自主的な判断によって行われていくということになるわけでございます。私どももそうした各地方団体における協同農業普及事業の実情、実態を十分に注目しながら、それに必要な財政需要というものを交付税上カウントしてまいりたいというふうに考えております。
  99. 日野市朗

    ○日野委員 それから、行管おいでになっておりますね。行管に伺いたいのでありますが、行管では昭和五十五年の十二月にこの普及事業についての勧告をなさいました。その中で生活改良普及員の数の縮小というようなことを言っておられるわけでありますが、こういうことを勧告された基本的な認識というのはどういうものであったのでしょうか。
  100. 堀江侃

    ○堀江説明員 お答えいたします。  私ども、昭和五十四年度に実施をいたしました「農業技術の開発と普及に関する行政監察」の結果に基づきまして、生活改善普及事業につきましては、御指摘のように、大都市地域における生活改良普及員の縮小あるいは事業のあり方の基本的な検討に努められるように勧告を行っております。  その理由は、要約して申し上げますと三点ございます。  第一には、昭和五十年代に入りましてからの農家生活は、農業所得の向上でございますとか、都市的な生活様式の浸透などによりまして相当の改善、向上が見られるようになりまして、特に都市部においてその傾向が顕著であった。  第二の論拠といたしましては、調査をいたしました生活改良普及員全体の現地の活動時間数の八四%でございましたが、これが一般的な生活知識等の指導に充てられておりまして、しかも、これらの指導活動が十分な効果を上げていないのではないかという認識を私どもとしては現地の調査で持ったわけでございます。  第三の根拠でございますけれども、本事業の実施地域では、地方公共団体あるいは農業協同組合あるいは地域住民等によります各種の生活改善活動が現実に行われておりまして、これらの活動内容は、本事業による生活改善指導のそれとほぼ共通の面が非常に多かったわけでございます。  以上申し上げましたような三つの点を根拠といたしまして、当初申し上げましたような勧告をいたしたわけでございます。
  101. 日野市朗

    ○日野委員 いま行管の方からそのようなお話があったわけでありますが、これは農家生活について十分な理解がないのではないかというふうに私考えざるを得ないわけでございます。これは、特に大都市部における生活改良普及員の活動についての問題点として御指摘になっているようでありますけれども、農家の場合と他産業に関する場合ではこれは非常に違いがあります。その違いを一概にここで申し上げるということも非常にむずかしいことでありますけれども、こういうような行管の意見に対して農水省側としてはどうですか。
  102. 小島和義

    小島(和)政府委員 五十五年十二月の行政管理庁の勧告を初めといたしまして、臨時行政調査会でもそうでございましたが、生活改善普及事業に対する各方面からの批判の中には相当厳しいものが多いように私どもは受けとめております。その理由はいろいろあるわけでございますけれども、大ざっぱに申しますと、都市化の進展等によって農家生活水準が相当向上しているにもかかわらず、農家だけを対象にした生活改善事業はおかしいのではないかという御批判と、逆に、現在の普及活動は変貌しております農村なり農業なりの実際の切実なニーズに十分こたえ切っていないのではないか、こういう両方の批判が混在しているような気がいたすわけでございます。  それで、生活の問題は、農業の問題に比し非常にむずかしい問題がございます。確かに生活改善事業も、改良助長法に規定いたしておりますように、農業者、法律規定によれば農民を対象として行うという性格を持っておりますので、農民的な特質を持たなくなった家庭というものは対象から除外されるべき基本的な性格を待っておるわけでございます。ところが、農業の問題以上に生活問題は地域的、社会的な側面を非常に強く持っておりまして、その非常に広いすそ野のどの辺で仕事をするかという問題が農業の場合以上に非常に判断のむずかしいところでございます。  そこで、どうも農業者のためにというよりは、一般的な住民サービス行政と見分けがつかなくなっておるのではないかという御指摘は、いわば、いま申し上げました広い普及事業のすそ野の中の一つの断面でとらえてみますと、まさにそういう指摘が当たっている点があるわけでございますが、さらに吟味して考えますと、普及事業の対象自体は農業者ではあるけれども、その農業者の課題解決のために地域の共通問題に取り組まざるを得ないという性格も同時にあるわけでございます。  そういった点を十分に踏まえて今後の普及事業を進めなければならないと思っておるわけでございまして、私どもの役所の中でございますけれども、先ほど来話題になっております普及事業の研究会、これはいわば協同農業普及事業全体を取り上げた研究会でございましたが、ただいま申し上げましたように、生活改善そのものについて特に取り出しまして、今後の生活改善をいかに進めるかという検討会を実はかねてからつくっております。今次法案の提出などによりまして作業が多少遅延いたしておりますが、いずれ再開をいたしまして、この事業を今後いかように進めるかという問題をさらに十分詰めまして、世の中の批判にもこたえ、同時に生活改善事業の発展も期していきたいと考えております。
  103. 日野市朗

    ○日野委員 特にこの部分は風当たりの強い部分でございまして、ここに対する一般の理解をもっと高める必要があるだろうと私は思います。特に農家生活というものは生産というものと密着をするものでございまして、一概に行管さんのように割り切って考えることはいかがなものかというふうに私考えますので、ことについては一層理解を高める努力を要請いたしておきたいというふうに思います。  それから、農業改良研究員の問題について若干伺っておきたいと思います。余り時間がありませんので、お答えはぜひ簡潔にお願いをいたしたいと思います。私も簡潔に伺います。  この改良研究員、これを廃止してしまうということになりますと、研究と普及活動とがばらばらになってしまう。つまり、研究者は研究室に閉じこもって、そして研究の成果を論文にでも書いて出せばそれで事足りるというふうな風潮を生みはしないかということを恐れるのですが、そういう心配はどんなものでしょうか。
  104. 岸國平

    ○岸政府委員 お答え申し上げます。  今回、法改正によりまして農業改良研究員は廃止をすることにいたしましたけれども、この農業改良研究員を廃止することにいたしました大きな理由といたしまして、いままで農業改良研究員を各県にそれぞれ一名置きまして、これが現在の都道府県の試験場でございますと、農業だけでございませんで、畜産でありますとか園芸でありますとか、たくさんの試験場があるわけでございますが、その中に一名おって活動してまいりました。この制度ができました二十七年当時に比較いたしますと、都道府県の試験研究機関におきます体制も大変整ってまいりまして、最近の研究問題を見てみますと、かつてと違いまして、組織的な研究をしなければいけない問題が非常に多くなってきたというような事情も片方にございます。そういうような都道府県におきます研究体制が整ってきたこと、あるいは研究の内容がそういうふうに推移してきたことを背景といたしまして、改良研究員の果たしてまいりました役割りは組織的に果たしていく方がむしろいいのではないかというふうに考えられるわけでございまして、今後、農業改良研究員が廃止されましても、そのような形で対応してまいりたいというふうに考えております。  ただいま御指摘の中で、これが廃止されることによって普及都道府県における研究あるいはさらにつながって国の研究とが非常に離れて、研究は勝手なことをするようなことになるんじゃないかという御指摘がございましたが、そういうことは決してないようにしたいと存じまして、そういうことのおそれはないんではないかというふうに私ども信じております。
  105. 日野市朗

    ○日野委員 この研究員が廃止されることによって、いままで研究員だった方々の身分、それから給与等の待遇、これはどのようになりますか。
  106. 岸國平

    ○岸政府委員 今回の措置によりまして農業改良研究員の制度がなくなりますので、その名称はなくなります。それからまた試験制度もなくなるわけでございますが、現在の農業改良研究員というのは、いずれもそれぞれの県の試験研究機関におきまして大変重要な役割りをすでに果たしている人たちでございますので、その人たちの改良研究員という身分はなくなりますけれども、試験研究機関における重要な役割りというものは全く変更がございませんので、そういう点におきましては心配は要らないというふうに考えております。  なお、農業改良研究員の制度はそれ自体非常に有用な役割りを果たしてまいりましたので、今後もそれにかわるようなものをさらに継続できるようなことも検討してまいりたいというふうに考えております。
  107. 日野市朗

    ○日野委員 時間がなくなりましたのでこれで終わりますが、最後に要望だけ一言つけ加えておきたいのです。  各国を見てまいりますと、どこでもやはり指導、それから普及事業のようなものをきわめてきめ細かくやっているなという感じを私は持っております。ぜひともこの普及事業がこれから弱体化することのないように十分に留意されたいということだけ最後に一言つけ加えさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  108. 山崎平八郎

    山崎委員長 竹内猛君。
  109. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農業改良助長法の一部を改正する法律案に関連をして、さきに私どもの同僚が質疑をいたしましたが、それと重複するところがあるかもしれませんけれども、なお総括して質問いたしたいと思います。  質問の前に、これは大臣に要望をしたいと思いますし、また後で時間があれば質疑をしたいと思いますが、農業基本法に関しては、私どもは現在の農業基本法に対案を出した経過があり、いまの農業基本法に対しては同意をしないという立場に立っております。現在、それを押し切ってまで農業基本法ができた。その基本法の第八条に基づいて農業白書が出されたのはきのうでありますね。きょうの新聞にはその論説が出ている。国会が五月の二十六日に終わろうというときに、農業白書をいまごろ出すということについては、前から本委員会でもいろいろ議論をしてきたところですね。本来ならば、前の年に行った農業政策の問題については、予算を審議する段階、大臣が農林の施政方針を行う段階にこのようなことをやるんだということでなければこれはつじつまが合わない。いまごろ出すというのは、義務として出すことがあったとしても、それは意味がないというように私は思います。したがって、この農業白書を通じて、あるいは林業も水産業も同じですけれども、本会議においても本委員会においても一度も議論したことがありません。こういうことでは、何のために苦労されるのか、わけがわからない。  この点については、まず関係者に対して、なぜ一体いまごろになって出すのかということについて一言どうしても質疑をしておかなければならないと思います。これはいかがですか。
  110. 小島和義

    小島(和)政府委員 農業白書につきましては、毎年できるだけ早く提出するように内部の作業を急いでおるわけでございますが、さまざまな理由がありまして、本年の場合大変おくれましたことを申しわけなく思っております。できるだけ早く検討し、提出するように、内部によく伝達しておきたいと思います。
  111. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは、大臣、どうですか。農林省の総括としての大臣の所見を承りたいと思います。
  112. 金子岩三

    金子国務大臣 例年と余り大差のない時期に出しておるようでございます。いろいろおくれた手違いは申しわけないと思います。
  113. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それがよくないと言うわけです。そういうものを出すときには、当然大臣の施政方針を述べられるときに、前の年にはこれこれこうやって、現状はこうなっておる、だからことしはこうするんだというものと一緒にして、本委員会が常にこれを議論をする対象にしていかなければだめだ、こういうぐあいに思いますから、この委員会としても、これは委員長の方にお願いしますが、強く政府の方に要望してほしいということを委員長に要望します。  次いで、本法の問題に入りますけれども、昨日も四人の参考人の御意見伺い、なお先般来の質疑を通じてまだまだ不明瞭な点がありますから、明らかにしていきたいと思いますが、第一の問題は、農業技術というか、改良普及技術者が果たしてきた今日までの役割りをどのように評価をされるかという問題についてお伺いします。
  114. 小島和義

    小島(和)政府委員 日本の農林行政が始まりましてこの方、明治新政府が最初に手がけましたのが技術の開発とその伝達ということでございます。自来、形はいろいろ変わってきておりますが、一貫いたしましてその技術の開発、伝達という問題は農政の中において非常に重要な役割りを占めてまいりました。戦後におきましては、ただいまの農業改良助長法によりまして試験研究体制の整備、あわせて普及組織をつくりまして、今日まで技術行政を進めてまいっておるわけでございます。その後行政の内容が拡充するに伴いまして、価格政策でございますとか、あるいは農業基盤整備というふうな新しい手法もつけ加わっておりますが、依然として農政の中において最も重要な役割りを果たしておる分野である、かように理解をいたしておるわけでございます。
  115. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その中で、改良普及制度ができてからなお一層技術が前進をしてきた。その点についての、改良普及制度ができてから、先ほど松沢委員質問の中にもあったけれども、配置の基準というものが、どういう基準で配置をされたのかということがまだ定かでないですね。これをどういう基準で配置を各都道府県にされたのか。あるいは生活改善普及員にしてもそうですね。
  116. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいまの改良助長法では、第十六条の二であると存じますが、資金配分の基準という形で、間接的ながら普及員の配置についての考え方を定めておるわけでございます。要素といたしましては、耕地面積、農業者の数、それから市町村数、さらに第四号といたしまして、そのほかに普及事業を緊急に推進すべき事情があればそれも考慮に入れる、こういう定めになっておるわけでございます。  この制度が発足いたしましたのは昭和二十三年でございますが、その当時におきましては、いわばこの事業の前身となった、たとえば農業改良技術員でございますとかそのほかのさまざまな技術職員が現実に存在をいたしまして、そういう方々を急速にこの普及体制の中に組み入れてただいまの普及事業の体制をつくったという歴史があるわけでございます。また、その当時におきます各都道府県の財政事情というものも大変大きく作用しておったように思います。  その意味におきまして、今日置かれております普及関係職員の頭数を統一的な観点から合理的に説明しろということになりますと大変むずかしいわけでございまして、何といってもそういう歴史的な沿革がまず一つ先行いたしておるわけでございます。そういう沿革と先ほど申し上げました十六条の二の規定と、極力調整しながら運用をしてきたというのが今日までの偽らざる姿でございます。その意味におきましては、普及の職員の頭数というものについても、また都道府県別に眺めてみますならば、いろいろ問題を含んでいるところがあるというふうに理解をいたしております。
  117. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 昨日も私は内閣委員会で、農林水産省設置法の一部改正、その質疑のときに、日本の産業なり社会的な条件の中で農業が果たしている役割りというものについて明らかにしたわけですが、やはり一つは食糧の供給、新鮮にして栄養価のある食糧を確実に供給できるもの、もう一つは治水治山、環境保全等々におけるところの社会的な役割り、こういう二つの面から農業というものは大事な産業であるということを指摘をし、それはそのとおりだという形になっている。それを守り、そしてさらに育成をしていくのが農政であり、その農政の中に土地と水とそれから労働力が必要だ。技術、機械、肥料というようなものは、それをよりよくするための一つの手段であるというふうに解釈をしてきたわけです。  そういう中で、日本の食糧自給というものが三〇%を割るような状態の中で、国会においても、五十五年には自給力を高めようという決議をし、そして五十七年と五十八年においては、外国からの食糧の自由化には反対をする、国内でできるだけ増産をしていこう、こういう決議をし、それに対しては国会の同意を得、そういうものと関連をして八〇年代の農業の方向というものがつくられている。これを実行していくためには、やはりこの技術改良、普及というものはきわめて重要な仕事になってくる。だから、改良普及員というものは大事な位置を占めているということについては、これは確認をされると思うし、同時に、その物をつくるのは人間でありますから、人ですから、その人の問題からいえば、生活改善普及員の持つ仕事というものはますます大きくなるし、特に日本の今日の場合には、女性がもう六〇%以上日本農業の担当者なんだ。したがって、この生活改善の普及員というのは、物をつくる側にあり、また家庭を守る側にあり、あらゆる面から大事なことであって、行管が言うように、それはほかのところでやっているからいいじゃないかというようなことでは済まされない問題だと思うんですね。その点についてどういうふうに考えられるのか、これはしっかり答えてもらいたいと思うのです。
  118. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいまの御指摘につきましては、総論としましては、私ども、全く異存はないわけでございます。  ただ、具体的な事業の展開過程におきましてやはりさまざまな問題が出てきておるわけでございまして、先ほど来御議論もございました研究会を組織したということも、この事業につきまして客観的にさらに突き詰めて言いますならば、やや冷徹な目で眺めてみまして、この事業の今後の展開について改めるべき点があるのかないのかということを掘り下げまして、それを今後の事業展開に反映させていく、こういう態度が常になければならないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、事業必要性、その本旨というものは私どもも堅持するつもりでございますが、具体的な仕事の展開ぶりにつきましては、農村農業の変わっておりますいろいろなニーズがございますので、そういうものに的確にこたえていくように今後の事業運営を十分考えていかなければならぬ、かように考えております。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう一つは、臨時行政調査会の物の考え方に対して私は大変に意見があるんですね。この臨時行政調査会考え方というのは、物でさえあれば、だれがつくっても、どこでつくってもよろしい。だから、外国に物があれば、それを輸入してくればいい。国内では比較的零細な経営でありますから、労働生産性が低いというような段階からすれば値が高いという形になって、それはよろしくない。だから、外国の農畜産物の輸入もやむを得ないじゃないか。零細な農家はこの際廃止をしてしまえ、こういうような考え方が強い。自由化の路線が強いですね。これは国会の決議にも反するし、それから与野党の一致した生産目標にも反する。そういう点から言ってみて、物でさえあれば何でもいいという物中心の考え方というものがびまんをしている。  そうではなくて、農業というのは物をつくる人間を大事にしなければならないし、人間がいなかったら、これは後継者がなくなってしまうのだから物もつくれない。いざというときにはどうにもならないということになる。ですから、物をつくる人間を大事にするという思想、これがなければいけないと思います。この点についてどうです。これは大臣からもひとつ答弁をしてもらいたいと思う。農政の中に人間を大事にする思想というものがなければならないということを私は主張したい。
  120. 小島和義

    小島(和)政府委員 この問題については、後ほど大臣の御発言があろうと思いますが、私ども、臨調答申を全体を通じて流れます物の考え方というのは、農業も一つの産業であります以上、それなりの産業としての能率を高める、あるいは健全な経営体をつくっていく、そういうことにより大きく主眼が向けられておるような感じで受けとめております。したがいまして、ただいまの主題であります協同農業普及事業ということになりますと、事業運営の仕方についてのたとえば効率化とか重点化というふうな指摘がございますが、この種の普及事業をやめてしまえというふうな御指摘はついぞなかったように思っております。  また、都道府県職員に対する補助金の問題につきましても、この事業をやめてしまうという観点からだけではなくて、財源負担の問題として一般財源化ということを言っておるにとどまるわけでございまして、事業の本体そのものを消滅させてしまうという意図は、臨調答申のどこにも盛り込まれていないという気がするわけでございます。  そういう意味におきまして、臨調の御指摘の中の組み入れるべき点は十分組み入れて今後の行政展開を図っていかなければならない、かように理解をいたしております。
  121. 金子岩三

    金子国務大臣 臨調答申は大変きつい答申で出たのでありますけれども、いろいろ説明をして、農業の実態、営農の実態、いろいろ詳細に説明をすると大体理解を得るわけですね。その中でどうしても合理化をやるべきだ、そして生産性を上げるべきだ、その結果コストダウンを図るべきだ、こういうような考え方については私どもも同感でありまして、臨調の中で素人なりに、素人考えでいろいろ農林省にたくさんの意見を持ち込んでおりましたけれども、ずいぶんそれは整理されて、理にかなった、私どもの理解のできるものだけが今日残ってこのような法律改正にも取り組んでおるわけでございます。  日本農業を守るためには、何といっても日本は御承知のとおりこういう狭い国ですから、技術革新が何より先決である。それから、御意見にもいろいろ申されておりますが、日本農業労働は六〇%以上は御婦人になっておる。したがって、家庭と職場両方を双肩に担ったような日本農村を見ると、営農のいわゆる普及指導も大事ですけれども、生活面の普及もこれからますます大事ではないか、私はこのように考えております。  したがって、いまの法律内容皆さん方いろいろ心配がある、将来各県思い思いの考え方で、この普及事業にいわゆる手厚いところと手薄くなるところとできやしないかとか、いろいろと御心配があるようでございます。これは、農林省が一つの基準を持って強い姿勢指導していきますならばその心配も薄らいでくるのではないか、このように考えております。  いずれにしましても、やはりより以上の、より効率的な、より発展的ないわゆる普及事業をやろうとするのがこの法律趣旨でございます。御理解をいただきたいと思います。
  122. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私どもの要求しているのは、物を中心の考え方から人間を大事にする考え方というものを農政の中に持ってもらいたい、こういうことを申し上げておるわけであります。私どもは決して工業が発展することを否定するものではない。工業は大いに発展をしていきますけれども、優良な農地をつぶし、公害をたれ流しにしてあちらこちらに問題を起こしているのは、工業がそういう問題を起こしている。けれども、これについても一定の措置をしながら、公害防止、あるいは汚濁防止、あるいは悪臭防止というような形でやってきておりますが、農業は、逆に食糧を生産するより、その何倍かの酸素や水やあるいは空気の浄化の役割りをしている。だが、どうしても農業というものについては物の側面だけで考えがちなんです。それ以外の社会的役割りというものについてはほとんどただのように考えられてあたりまえだと思っている。そこに経済の法則だけで割り切ってしまう。これが農業理解しない人々の経済主義に陥りやすいところではないかと思う。だから、この点を農林水産省はもっと拡大をしなければ、山の問題にしても海の問題にしても、すべての問題が金がかかり過ぎる、過保護であるということになるのじゃないですか。  そういう点について、局長、これはしっかりひとつ踏まえてもらわなければ、財界に農林省は壊されてしまいますよ。どうですか。
  123. 小島和義

    小島(和)政府委員 お話しの点は私どもは大変よく理解できるわけでございまして、昨年の夏に出されました農政審議会の「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」という文書がございますが、その中におきましても、一章を割きまして、農業の持っておりますいわゆる経済外と申しますか、産業的な役割り以外の役割りというものについてかなりなべージを費やしまして力説をいたしておるわけでございます。そういう農業自体の重要性ということにつきましては、農業外の人の御賛同を得る意味におきまして私どもも極力PRをいたすつもりでございますが、同時にまた、産業としての役割りも持っておるわけでございますので、その点の合理化というものについては、これまで以上に強く合理化を進める必要があるだろうというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  124. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、今度のこの改正は、いままでよりも前進をする方向であるのか、それとも後退をしたのかという、この点についてはどのようにお答えになるか。
  125. 小島和義

    小島(和)政府委員 従来のいわゆる負担金方式というのはそれなりに数々の長所を持っておる制度でございます。したがいまして、もし外部の環境にいささかの変化もなければ、五十二年にせっかく創設いたしました制度でございますから、これを積極的に変えようという意図を私どもも持たなかっただろうというふうに考えております。その後、御承知のような臨時行政調査会基本答申が出てまいりまして、それに対してどういう受けとめ方をするのかということについては、私どもも種々迷ったところでございます。臨調答申の中におきましても、人件費補助については二年以内に原則として一般財源化というふうなことを述べておりますので、極論すれば二年間はもつとか、あるいは「原則として」と書いてあるわけでございますから例外もあり得るとか、さまざまな希望的な観測もあり得たわけでございますけれども、こういう答申が一つの客観的な存在になりました以上は、たとえ一時的にこの制度をもたせることはできましても、その後折に触れてこの問題が再提起されることは火を見るよりも明らかである。そういうことになりますと、そのたびごと制度自体の今後の持っていき方が話題になるわけでございますし、同時に、その過程において普及関係者に非常に大きな不安、動揺を来すということも避けられないわけでございます。  それらを考え合わせますと、今回の制度臨調の、人件費補助の持っております一種の地方公共団体に対する過剰介入性と申しますか、そういう問題を緩和しながら同時に共同事業としての本質的な部分は残す、こういう意味において一つのお答えではないかというふうに考えてこのような措置に踏み切ったわけでございます。  さらに、従来の負担金制度と今回の交付金制度との長短ということで比較考量いたしますと、ただいままでの積み上げ方式によります定率負担方式というのはそれなりに予算として安定した制度でございますけれども、反面、今日のように財政が非常に厳しいということになりますと、負担の率を守ることができたといたしましても、その員数の問題なり単価の問題なりあるいは経費の内訳の問題について厳しく査定のメスが入ってくるということが行われかねないわけでございますが、ただいまのような交付金にいたしますと、一種の定額化いたしたものでございますから、なかなか内容にわたっての縮減ということが起こり得ないという意味においては、予算的な安定性という問題もあろうかと思います。  また、再々申し上げておるところでございますが、都道府県の実施段階におきまして、従来のように金の内訳の仕切りがございませんものですから、県の自主的な創意工夫によって金をより有効に使っていくという道もあろうかと思います。  もちろんマイナスの点も全くないわけではございませんで、そういう予算としての安定性ということは、逆に申し上げますならば、事情が変わった場合の予算措置変更という問題について、よりむずかしくなるのではないかという問題も考えてみたわけでございます。  この点につきましては、ただいまの交付金総額で今後の事業運営が非常にむずかしくなるというような物価なり賃金の変更がございました場合には当然改定要求を出すべきものというふうに考えておりますし、また、そのときどきの政策的な必要によりまして計上いたしております事業費のようなものにつきましては、これまで同様に補助金の形で存続させております。本年度予算で申し上げますならば、約二十九億円ばかりいわゆる交付金以外の予算も計上いたしておりますので、そういう世界でまた勝負をするという道もあろうかと思います。  さようなことを彼此考量いたしました結果、考えに考え抜いた結果いまのような制度に踏み切ったわけでございます。
  126. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 局長からるるお話がありましたから了解はできるわけですが、私は、ここへ立つ前にいろいろと各省庁との間でお話をしたときに、大蔵省との間では局長との話も十分にできているし、自治省も話はできている、だからあえて委員会に呼び出していろいろ話をする必要はないじゃないかというお話もございましたが、なお心配であります。  念のために自治省にお伺いをしますが、予算の流用とかあるいは割り当て等々についての変更とか、つまり改良普及事業あるいは生活改善の事業に使うべきものを他のところに流用しないというような話し合いについてどういうようなことになっているのかということを、これは自治体のことですから、今度は自治省の方からもひとつあえてお答えをしてもらいたい、こういうふうに思います。
  127. 前川尚美

    前川説明員 定額交付金の流用の問題でございますが、午前中にもお答え申し上げたところでございますが、改正後の姿で申しますと、従来、法の一号から五号に掲げられておりました事業相互間の流用禁止というのは改正後の交付金のもとにおいてはなくなる。そういう意味で、農林水産省の方からも御答弁がございますように、私ども、地方団体の実情に見合って必要な事業が必要なところで行われる、そういう意味での自主性が非常に強化されたものだというふうに受けとめるということを申し上げたわけでございます。  ただ、その協同農業普及事業を越えて、それ以外の他の事業交付金を流用するということは、いま御審議をいただいております改正法においても明文の規定をもって禁止されることになるようでございますし、そうでございますれば、当然、地方公共団体もその法の趣旨を踏まえて対応されるものと私ども考えております。
  128. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題については先ほどから嫌というほど質疑があったわけですけれども、仮に物価が上がったというような場合、定額であれば定額で抑える。定率であるとすれば、この率に応じて予算が変化をするわけです。それで、仕事の量は依然として拡大をすることはあっても減ることはないと思うのですね。そうなると、仕事は多い。町村の数も減ることはないですね。そういうことであります。ところが、予算の方は、定額であるとすれば、通常、人員を減らすか仕事をやめるか、どちらかということにしかならないと思いますね。物価の変動があった場合等においては、お話があったように定額というものはさらに変更することができ得る、こういうように理解をしていいですか。
  129. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは予算の問題でございますから、農林水産省として改定要求を出す権利と申しますか、立場は持ち続けているものというふうに理解をいたします。ただ、予算性格といたしましては、一種の標準、定額ということで決めたものでございますから、若干の変動があればすぐたちどころにその積算が変わるかということになりますと、従来にも増して弾力性があるという意味においては、ふところは深くなっているという性格はあろうかと思います。従来、単価等につきましてのさまざまな積算上の改定をいたしたこともございますが、反面におきまして、従来の負担金制度のもとにおきましても特定の費目を査定を受けるとかあるいは人員数の計画削減の対象になるとか、そういう形で予算の中身が切られていくというふうなこともあり得たわけでございます。そういう予算が査定をされまして縮減されるという危険が少なくなった反面において、多少の増加要因についてはこれを吸収してしまうという問題も出てくるわけでございます。  いずれにいたしましても、この交付金総額が実情に合わなくなりまして、事業運営ができなくなるというふうな事態にはしないように、予算確保に努めてまいりたいと考えております。
  130. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今度は普及員自体の問題にちょっと触れていきたいと思いますが、普及員の皆さんは、農協には農業の生産の技術員がおります。これは各府県ごとにかなりばらばらになっておりますね、農協の関係は。非常に多いところもあるし、少ないところもありますが、農協はだんだん普及員というものを減らして、販売とか保険の方に人を回しているように見受けられます。農協の組織問題、これはこれから別なところで議論しなければいけないと思いますが、役場では経済課というところが農業の窓口になっております。あるところでは農産課というところもありますが、実際に農家の庭先で直接に営農指導なり技術指導なり相談をしているのは改良普及員の皆さんですね。夜といわず昼といわず、時間を苦にせずに大変骨を折っておられる。こういう方々が最近では大分年もとられてきておりますね。この入れかえなりあるいは雇用なりという問題について、年齢の状況から見て現状のままがいいと思われますか。それとも、もっと工夫をしなければならぬなというような考え方がありますか。
  131. 小島和義

    小島(和)政府委員 御指摘がございましたように、この改良普及制度が発足いたしまして以降、たとえば市町村段階の農業行政の水準というのは非常に向上してまいっております。かつて私どもが若いころ村へ行きますと、勧業係、産業係という程度しかなかったものが、多くの市町村においては、農業課でございますとかあるいは産業課でございますとか、そういうふうな主として農業を担当する部局ができ上がっている。  一方また農協におきましても、これは普及員とは若干性格が違っておりまして、ある程度別な仕事も持ちながら営農指導をやるというふうな職員の方々もずいぶんふえてきております。もちろん農協の仕事でございますから、販売事業あるいは購買事業といったものと非常に密着した形でこの事業が行われているわけでございまして、そういったものを適宜組み合わせまして、普及事業といたしましても、そういう関係の機関と連携を持ちながら仕事を進めていくというのが今後の姿であろうというふうに考えております。  それからまた、普及員の年齢の問題でございますけれども、確かに発足当初、非常に若い人たちをそろえて発足いたしたわけでございますが、一年たちますと一歳年をとるわけでございますから、年齢別構成という点からいたしますと大変高齢化しております。ちなみに、四十一歳以上の方の割合は、昭和四十一年には三五・七%でございましたが、昭和五十六年には六二・六%ということで、四十歳代以上の方が六割というふうな水準になってきておるわけです。  こういう高年齢化ということは、いずれはこれらの方々が退職時を迎えるということになりまして、このときにおいてその後をどういうふうにして埋めていくのかというのが大きな問題になろうかというふうに考えております。したがいまして、普及職員の採用に当たりましても、計画的な採用あるいは人事の交流等を通じまして、年齢構成ができるだけ散らばりますように努めていく必要があろうかと思っております。  また、こういう普及職員の年齢の構成の高まりというものに応じまして、普及職員自体の技術水準を一層高めていくというふうな必要があるわけでございまして、その意味におきましては、新任者や若年層に対する研修強化ということももちろん必要でございますけれども、それぞれの職場において現に働いている方々につきましても、できるだけ新しい技術、さらには現地の課題を解決するための手法、そういったものを重点といたしました研修を行いまして、現在の人的構成がフルに活用できるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  132. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 同じようなことを生活改善普及員の方にもちょっとお尋ねしてみたいと思うのですね。年齢の構成とか今後の構想というようなものについて、特に生活改善普及員はどうなっているのか。
  133. 小島和義

    小島(和)政府委員 生活改良普及員の場合には、年齢構成は農業改良普及員に比べますと非常に若うございまして、三十六歳ぐらいが平均年齢というふうになっております。むしろ、この世界におきましての問題は、せっかく採用いたしました若手、新進気鋭の普及員の方々が結婚等の理由によりまして比較的短い時間で退職をされる。したがって、若い人の顔ぶれはある程度そろっておりましても、軸になるような中堅どころあるいは練達の士という人に不自由をするという、農業改良普及員とはやや趣の違う問題を持っておるわけでございます。  もちろん婦人の就職という問題については、最近若い方々の意識も変わってまいりまして、結婚したらすぐ退職するということではない勤務形態というのが年々ふえてきておりますが、そういったことが一層定着をいたしまして、生活改良普及員につきましても、年齢構成が、極端な言い方をすれば老、壮、青と申しますか、ある程度年配の方、中堅どころの人、若い方というものが適正な構成比で組み合わされまして仕事ができるようにすることが一番望ましいというふうに考えておるところでございます。
  134. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 特に農業が女性の人たちが中心になっているということをさっき申し上げましたが、そのとおりだと思うのですね。そこで、この女性の権利が非常に著しく抑えられているというのが現状じゃないかと思うのですね。  一つの例を挙げると、たとえば農業者年金の問題は、ここで議論するわけじゃありませんが、憲法において平等が認められ、民法でもそうなっているけれども、農業者年金に至ると、経営移譲というものは男にのみあり、年金も男だ。どうしてもこれを改めることはできない。ここらあたりは余りいいことではないというので、これは議論のあるところですが、余りここでは議論しないけれども、これはどうしても直らない。そういう点が一つありますね。  それから今度は、兼業農家のほとんどの中心は、女性の方々が経営をされている。機械も運転をする。たとえば農業機械で災害になっても、災害補償法の適用がなかなかされない。これはいろいろ運動しても、なかなかされませんね。どこで災害があったか、現認者がいないじゃないかという形でいつも拒否されてしまう。あるいは、かまどとかそういう問題は最近は大分楽になったけれども、やっぱり子供を育て、それから教育をし、隣近所つき合いをしなければならない。その上に営農という形で、農村の女性の任務は大変重い。  そういうところで、生活改善指導員はそれらの人々に、グループをつくって仲間づくりをし、自信を持ってがんばってほしい、こういう激励をされるわけですが、それではその方々の健康状態はどうかというと、健康状態は、茨城県の例で言うと、ビニールハウス等々に関係をしていることもあるかもしれませんが、三分の一は直ちに病院に入って治療しなければならない。三分の一はどうしても健康診断を受けなければならない。本当に健康だと言われる者は三分の一だと言われているぐらいに体が冒されている。  こういう問題を考えると、日本農業もそのようにほとんど冒されてしまっているけれども、女性の体も冒されてしまっている。ここらをどのように直していくかという問題は、これは単に改良普及員だけの問題じゃありませんが、その一番かかわりがあるのが生活改良普及員であり、また農業改良普及員でありますから、ここはやはり重要な相談の場所になっているのではないかと思いますが、こういう問題をどうすればいいのかという点について、いかがなものですか。
  135. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに農家生活も、この普及事業が始まりました初期の段階のように、一つには貧困、一つには生活上の技術の不足と申しますか、ということから著しく立ちおくれておりましたものが逐次改善されまして、一見、外見的には都市生活者と比べて遜色ないような生活様式というものが逐次農村にも入りつつあるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  ところが、この内容に立ち至って考えてみますならば、農業というものは、どんなによくなりましても、結局自然を相手にして仕事をいたしておるわけでございますから、その時期によりまして相当過度の労働をしなければならないという特質がございます。  また、収入の面におきまして、農業保険その他整備されてまいりましたものの、価格の変動もございますし、通常のサラリーマンのように月々入るものが一定ということでは決してございません。また、家族の構成から見ましても、都会の一般の家庭に比べますと高齢者の比率が高い。二世代同居というふうな形が通常でございます。  また、さらに御指摘ございましたように、生産面、生活面、一切の負担が主婦に相当集中しておる、こういうふうな問題もございまして、農家の持っております生活上の特質というものは依然として解消されてないというのが現状だろうと思うわけでございます。  その中でも、特に御指摘ございましたような健康問題というのが、御本人はもちろんでございますが、家族を含めまして主婦の役割りということになるわけでございまして、健康管理をどう進めるのかということは、健全な能率的な経営を確立する上において非常に大きな問題だろうと思います。最近、農村地域におきましても保健婦その他の組織が整備されてまいりましたけれども、まだまだ全体として行き渡ったものではございませんし、農家の日常の生活の断面断面におきましてこの健康管理問題というのは非常に大きなウエートを占めておるわけでございます。もちろん専門の保健医療という段階になりますと他の機関にゆだねるべき問題でございますが、そういう生産なり生活の日常活動の場におきまして、生活者であるところの農家自身が知恵を出してみずからの置かれている環境をよくしていく、生活内容充実させていく、こういう努力を助けるのが生活改良普及員の役割り、私どもはそういうふうに理解をいたしておるわけでございます。そういったことが実を結びまして、世の中の農村婦人に対する意識の変化と申しますか、御本人自身の意識の変化と相まちまして農村婦人の役割りが高く評価されるという時期が一日も早く来るように念願をいたしておるわけでございます。
  136. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういう理由であって、生活改善普及員の持つ仕事が非常に大きく拡大されている割りに、そこのところをまた削っていこうというようなことを言うような筋もないわけじゃない。これ以上数が減ってしまうとその任務にたえられなくなってくる。そうなると、じゃ、いっそのこと全部やめてしまえという形になったのでは大変なことになる。これは、これからの見通しとしてはどういうことになりますか。
  137. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは、確かに関係職員の頭数の確保という問題も大事な問題でございますが、同時に、大変広い領域にわたります生活の問題にどういう形で取り組んでいくか。先ほど申し上げましたように生活問題は地域的にも社会的にも非常に大きなすそ野を持っておるわけでございますから、そのすべての問題について限られた普及関係職員で立ち向かうというのは非常にむずかしいわけでございます。  そのための手法といたしまして、もちろん対象を重点化する、あるいは課題をしぼるという問題もございますが、つまるところ、生活の問題というのは生活者みずからがどういう形で取り組むかということについて、普及員がいかなる刺激を与えてみずからの活動を呼び起こすかという問題だろうと思います。教育的な役割りと申しましても、生活の問題については一人一人に生活の仕方を手にとって教えるというふうなことではないと思います。個々の生活の問題というのは家庭家庭によりましてみんな特色もあるわけでございます。その意味で、生活改良普及員の役割りというのは、そういう生活問題についてみずから考え、みずからの生活を改善していくという自主的な努力をいかにして引き出していくか、こういう問題意識でなければならないと思うわけでございます。そういう仕事の面の役割り充実ということと相まちまして人員確保問題が論ぜられなければならない、かように考えておりますので、その両面にわたりまして今後この事業を守り立てるための努力をいたしたいと考えております。
  138. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 だんだん時間もなくなりましたが、最後に、改良普及員の皆さんが非常に努力をされている例を申し上げたいと思うのです。  私のところでは、昨年、季節外れにひょうが降りました。そのときに、ナスであるとかモロコシであるとかキュウリ、スイカなどもやられたわけですが、特にナスの産地でありまして、ちょうどナスの花の咲くころであったわけですが、そのときに役場の産業課、経済課の諸君は非常にあわてて右往左往するというようなことになっていましたけれども、改良普及員の皆さんがそこへ駆けつけてきて適切な指導をされた。芽を摘んで追肥をやって新芽にならせる、こういう努力をしましたね。これは完全に成功しております。大変喜ばれておりますね。  そういうように改良普及員の皆さんが地域の皆さんに信頼をされる。あるいは、あるところの改良普及員は土づくりの運動をやっております。いま土壌が金肥、農薬によって非常に有機質を失っております。そういうときに土づくりの運動をやるということは、やはり大事なことですね。一方で生活改善普及員は人づくりをやるし、改良普及員は物をつくり土をつくるという形で、地域では大変大事にされているところがあります。  ところが一方、またもう一つは行政の一角でありますから、農家が一番嫌がっている減反の指導もしなければならない。せっかく土地改良をやり品種改良をした中で、これに米をつくるなということを言うことは身を切られるほどつらいと言っておりますね。もうぽつぽつとの辺で減反というものは再検討する時期ではないかというのが末端の偽らざる声ですね。ところが、どんなりっぱな改良普及員でもこれを拒否するわけにはいかない。これはどうしても先頭に立ってやらなければならない。この間までこういう品種でやれ、このように土地改良をやれと言って指導してきた者が、今度それをやめろと言うのだから、それにかわるべき作目が明らかでないし、なかなか見出せない、こういう悩みがあります。  一方においては大変尊敬され、大事にされながら、一方では一番嫌なことをやらなければならない、こういう悩みというものを十分に承知しながら、なお日本農業の前進のために努力をしている皆さんの教育なりあるいは慰めなり、こういうことはどこでやられるのか、ひとつ教えてもらいたい、こう思います。
  139. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及員が災害の際において非常に評価をされるという動きは私どもも承知いたしておりまして、日ごろ普及組織に対して余り重きを置かない農家層まで含めまして、災害のときには大変頼りにされるという実情は各地にあるようでございます。  お尋ねの件は、普及員の養成、研修というふうな御趣旨だろうと思いますが、ただいまの普及員の採用のシステムといたしましては、四年制または二年制の大学を出た人の中から採用するということにいたしておりますが、全般的に農家の必要とする技術水準が高まりつつあるという実態を踏まえまして、五十九年度からは四年制大学卒業者を原則とするというふうに改めてまいりたいと考えております。  ただ、昨日の参考人の御意見にもございましたように、大学を卒業した人が直ちに農業普及役割りを十分果たせるかという問題になりますと、確かに大学教育と現場の指導というのは異質な問題があるわけでございますので、そのまま直ちに普及員として十分活動できるかという問題は十分考えなければならぬと思います。従来も採用いたしました普及員についての新任者研修というふうなことをやってまいりましたけれども、そういう一般的な集合研修というだけでは、これはどうしても画一的なものになりますし、また他動性、一過性というふうな問題もどうしても避けられないわけであります。したがいまして、採用いたしました人につきまして、本人の内発的な研修意欲というものを引き出しながら、自己研修あるいは職場での研修、さらには集合研修というものを組み合わせました人の育て方というものを考えていかなければならぬと思っております。  なお、職員採用のソースといたしましては四年制大学を一般原則とするというふうに申し上げましたが、普及員養成の機関といたしましては、過去におきまして各都道府県農業講習所という仕組みがございまして、そこが多くの優秀な普及員を輩出してきたという歴史がございます。今日、各都道府県におきまして農業者大学校というような仕組みができ上がっておりますので、講習所につきましても大学校の中のある種のコースということに改編をいたしまして、これを普及員の養成の場としても活用したらいかがか、ただいまそのようなことを考えておるわけでございます。
  140. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がありませんから、最後に一問質問して、大臣答弁をいただいて終わります。  いままでいろいろと意見を述べたりお答えをいただいてまいりましたが、農業における目標というものがはっきりしない。きのうの参考人の中では、筑波大学の川俣助教授は、今後の後継者をつくるためにどうすればいいかと言ったときに、私にはわかりませんというふうな非常にむずかしい御答弁があったし、自治労の堀井参考人からは、農業政策をはっきり出してほしい、農業政策を明確にしてほしいというような政策上の要求がございました。確かに八〇年代の農業の方向なり展望なりというものは出ておりますけれども、これをなお具体的に地域農政に結びつけるとするならば、そのように、地域の皆さんに理解をしやすい、そしてその地域の人たちが本当にこれならば農業を産業として参加してやっていけるのだというような、そういう努力をするために、普及制度というものはそのうちの一端でありますから、目標を明らかにし、技術指導の面を明確にし、そして財政をちゃんと裏づけをして、人間を大事にする、こういう農政というものを明確にしながら食糧の自給力を強める、自給度を高めるということについてがんばってもらいたい、こう思います。  本法案はいろいろと質疑の中から心配なところもあるけれども、それを答弁の中から見ると、なお一部前進をしている面もあるし、なお後退の面もないとは言えない。けれども、それは運営の中で配慮をしてもらうことにして、ともかく成立をさせながらこれからの発展のためにお互いにがんばっていきたいと思いますから、大臣の方から最後にひとつこのお答えをいただいて、私は終わりたいと思います。
  141. 金子岩三

    金子国務大臣 大変有意義な御指摘をいただきました。これからの農業をどうするかということになりますと、大変むずかしい問題であります。したがって、このたび改正しようとする普及員事業も、技術開発をして生産性を高め、そして日本農業生産のコストダウンを図るとか、いろいろな面から考えてこれが非常に大きな役割りを果たす、こういう考え方でやっておるのでありまして、やはり積み重ねて気長に日本の農政に取り組まなければ、いま高邁な構想を私が申し上げましても、そう短兵急に事が運ぶわけでもありませんので、ひとつじっくり落ちついて、こうしたいろいろな機会に皆さん方の御意見も十分承りまして今後の農政に取り組んでまいりたい、このように考えます。
  142. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  143. 山崎平八郎

    山崎委員長 武田一夫君。
  144. 武田一夫

    ○武田委員 農業改良助長法の一部を改正する法律案につきまして、いろいろとお尋ねをしたいと思います。  これは、五十二年の四月にも法の一部改正が行われまして、その際も、私は、いろいろ現地の状況を聞きましてお尋ねをしたわけであります。私は、普及事業につきましては非常に関心を持っておりまして、非常に重要な部門だ、こういうふうに思います。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕  御案内のとおり、協同農業普及事業農業経営あるいは農家生活の改善等を通じましてわが国農業の発展に果たした役割りは非常に大きいということは、万人が認めるところであります。最近、世界的な食糧需給の逼迫を契機にいたしまして、食糧自給率の向上あるいはまた地域農業の確立、さらにまた農業後継者育成確保あるいは農業生産基盤及び農村環境整備等が農政推進の上に大きな問題として横たわっているわけであります。そういういろいろな重要な問題を抱えているこの農業にありまして、この普及事業というものが果たす役割りは従前に増して重要な分野であろう、こういうふうに思いますので、以下、数点にわたりまして当局のお考え、御見解等を伺いたいと私は思います。  まず最初に大臣にお尋ねをいたしますが、この協同農業普及事業の果たす役割り、いわゆる普及事業農業における位置づけというものをどのようにお考えであるか、ひとつこの点をお尋ねいたしたい、こういうふうに思います。
  145. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいまも竹内委員に申し上げましたが、やはり今日まで長い間、戦後の日本農業を育ててきたその役割りを果たした普及事業でございます。これをより以上に時代の移り変わりに対応させようとしているのがこの法律でございます。したがって、今後この事業後退するとかいうようなことがないように、いろいろ皆さん方御心配をいただいておりますので、より能率的に、より効果を上げて、そしてわが国農業のこれからの発展に貢献ができるような強い姿勢で農水省ではこの新しい事業に取り組んでまいりたい、このように考えます。
  146. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつその決意をいろいろな面に具体的に実行してほしいと思います。  ところで、国と県の農業担当者の間に、大臣の考えるような普及事業重要性とか日本農政に果たす役割り等の考えに違いがあるとは私は思わないのですが、こういうようなところは、一つ一つ中央としてもその仕事の実態なりその対応ぶりを通して判断をされていると思うのです。私は、今後この普及事業実行において、以下いろいろとお尋ねする中で心配することがあるわけでありますが、農政の中における位置づけというものはどの県であろうともやはり同じであるという考えを持たなければならない、こういうふうに思うのでございます。その点の当局としてのお考えと、そういうことから外れるようなものがもしあるとすれば適切な指導もしなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、その点についてどのようにお考えでございましょうか。
  147. 小島和義

    小島(和)政府委員 私どもの承知しております限り、この普及事業そのものの必要性ということにつきまして、各部道府県の首脳の方々、さらには臨時行政調査会委員の方々も含めまして、この種の事業が全く要らないというお考えの方はまずいらっしゃらないだろうというふうに理解をいたしております。もともと協同農業普及事業は、国と都道府県との間に、事業運営の基本的な部分については方向性は一致しているということを前提として成り立つものでございますので、その意味においては、両者の間に大きな食い違いはないと考えております。意見としてしばしば出ました問題は、普及事業に対する国の財政的な関与のあり方、さらには普及事業全体の大局的な持っていき方と申しますか、そういうことにつきましてはいろいろ御意見もあったわけでございますし、臨時行政調査会におきましても一般財源化というふうな指摘が出ておるわけでございますが、今回の改正はそれらを含めまして一応のお答えであるものと理解をいたしております。
  148. 武田一夫

    ○武田委員 現地を回ってみますと、普及事業が、行政の手先と言うとちょっときつい表現かもわかりませんが、往々にしてそういう方に流れがちである。言うなれば、行政の奨励事業のみがウエートが強くなりまして、本来の事業が十分に行えないような傾向もある、こういうことも聞くわけでありますから、そういう点も踏まえていま確認をしたわけでございますので、適切なる対応ができるように、普及員の皆さんが普及事業に専心できるような御配慮は今後も十分にしていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、二番目にお尋ねいたしますが、負担金交付金改正することについての問題でございます。  普及事業にかかわる国の経費負担については、現行制度では地財法第十条の規定によりまして国の負担が義務づけられているわけでございますが、今回の改正の場合にはこの経費負担は地財法第十六条の規定が適用される、こういうことであります。そこで、国の義務負担が解消されることにはならないかという心配を抱いている。そしてもう一つは、普及事業に対する都道府県の財政負担の根拠を失うことになるのではないか。  この二つの問題がございますが、この問題について、そうした関係者の心配、不安のないような対応は十分なされているものかどうか、その点についての答弁をお願いしたいと思います。
  149. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず、今後国が支出いたします協同農業普及事業交付金性格でございますが、地財法の世界で申しますと、定率の負担ではなくなりますので十条からは削除されることになりまして、十六条の補助に移行するということになると思いますが、今回の改正後の法律におきましても協同農業普及事業交付金は交付するというふうに規定をいたしまして、国が義務的に支出する国庫支出金であることにおいては性格は変わりないと理解をいたしております。  それから、国が支出いたしました交付金のほかに、都道府県がいわば自主財源を継ぎ足しましてこの事業運営するかどうかという問題は、各都道府県において実際に行います普及事業規模の問題にかかわるわけでこざいます。今回の改正によりましては、普及事業規模内容につきましてはある程度県の自主性にゆだねて、そこに効率的な実施を期待するというねらいが込められておりますけれども、都道府県において全く自由自在ということは普及事業の全国的な整合性ある実施という観点からいかがかと思っておりまして、今回の改正法におきましても、国の定める運営指針、さらには都道府県が定めて国と協議をする実施方針、そういうものの協議の過程を通じまして、都道府県のお考えと農林水産省の考えを十分調整していくことが可能であると考えておるわけでございます。  それからまた、そのようにいたしまして都道府県が継ぎ足しをいたします県費につきまして地方交付税等の世界において財源措置がなされるかどうかという問題についてでございますが、自治省とも相談いたしまして、基準財政需要額の算定上これまで同様にその裏負担分と申しますか、県費の負担分は織り込むことになっておりますので、その意味においても御心配はないものと考えております。
  150. 武田一夫

    ○武田委員 自治省おいでになっていると思いますが、この点についての自治省のお考えを……。
  151. 前川尚美

    前川説明員 お答えをいたします。  今回提案されております改正によりまして、協同農業普及事業負担金が定額交付金化されようとしているわけでございますが、その趣旨は、この交付金の使途の弾力化と都道府県による義務負担の廃止等によりまして協同農業普及事業における都道府県自主性を強化する、あわせてそれによって地方の実情に即した事業効率的運営確保するという趣旨であるというぐあいに承知をいたしております。したがいまして、今後交付金額を上回る歳出予算を計上するかどうか、交付金に継ぎ足して予算を計上するかどうかということは、もっぱら当該都道府県地域の実情に即して行われます協同農業普及事業規模にかかってまいるわけでありまして、その内容等をどうするかということは、地方団体の自主的な判断にゆだねられるものでございます。そういった意味で、この交付金額を上回る都道府県の支出というのは、その分につきましては都道府県の義務負担とは私ども考えておらないわけでございます。  しかしながら、この五十八年度の地方交付税につきまして、先ほども御答弁申し上げましたが、従来の裏負担に相当する額につきましては、これは的確に算定されているところでございますし、また、今後の交付税における取り扱いにつきましても、今後の各地域地域における事業の実態なり国の予算づけの仕方なりを見きわめながら的確に対処していきたいと考えております。
  152. 武田一夫

    ○武田委員 これからは都道府県自主性という問題が非常に拡大していくわけでありますから、そうなると、反面からいうと、これは補助金の使用の弾力化が広がるというふうにも考えられるわけでございます。その結果、都道府県によって事業水準あるいは事業内容に不均衡が生ずるようなことがあれば非常に心配でございますが、そのような懸念のなきようしっかとした指導が必要だと思いますが、この点については十分な対応をなさることができるものかどうか、当局の見解を聞かせていただきたい、こう思います。
  153. 小島和義

    小島(和)政府委員 予算の世界の問題でございますから、毎年の御相談ということが当然あるわけでございますが、私どもといたしましては、精いっぱい対応いたすべく努力いたしたいと思っております。
  154. 武田一夫

    ○武田委員 定額による予算については、前にも質問の中であったわけでありますが、たとえば物価上昇とか人件費の増高による場合の予算額の増額要求等ができるようなシステムというか、方向を検討しているものかどうか。自治省としてもこれについてはどういうふうに考えているか。  それから、今後人員削減してまいります。そうすると、その分の人件費が浮いた場合の使い方、これは各自治体で自由に行えるものか。さらに、その中で高齢になりまして退職する人も出てきます。そうすると、高給取りが退職するわけですから、その分は余裕が出る。こういう場合、若い者を少しよけいに採ろうというふうな方向が望ましいと思うのですが、行革からいうと人が多いとかなんとか言われているだけに、そういうことをやりたくてもなかなか思い切ってやれないという地方自治体があるとすれば、そういう問題もめんどうを見てやる必要があるのじゃないか。  要するに、そういう問題についてどういうふうにお考えなのか、農水省と自治省とにお考えをお聞かせ願いたい、こう思います。
  155. 小島和義

    小島(和)政府委員 今回の交付金におきましては、通常の予算におきますような積算というものがないことになるわけでございますので、その意味では、単価の一つ一つを、物価の変動がありました場合に直ちにこれを改めなければならないという基本的な性格は持ってないというふうに理解をいたしております。若干の価格変動等につきましては、これを運用面において吸収し得るという性格が強いというふうに考えております。  そうは申しながら、物価、賃金事情の変更によりましてこの事業の円滑な推進に支障を来す、交付金の与えられておる総額ではとても円滑な事業の実施ができないというふうな事態が想定されるわけでございまして、そういう場合には、予算の問題といたしまして、これを改善すべく最大限の努力をいたしたいと考えております。  また、このような交付金の仕組みをとりましたことの一つの利点といたしまして、費目相互間の流用、これは従来も全く封じておったわけではございませんけれども、非常に硬直的な運営がされておったわけでございますが、そういう問題が自由にできるということになるわけでございます。したがいまして、都道府県の中におきまして、たとえば高齢者の退職等によりまして人件費の負担に余裕が出てくるというふうな場合におきまして、これを協同農業普及事業の中のほかの経費に充当するということは当然許されるわけでございまして、やや長期的に考えてみますと、現在の普及職員はやや高齢者の構成比率が高いものでございますから、今後におきましてはそういうメリットも出てくるのではないかというふうに考えております。     〔亀井(善)委員長代理退席、玉沢委員長代理着席〕  それから交付税の問題は、自治省の方からお答えいただくのが筋でございますが、従来私ども見ておりますと、物価、賃金事情の非常に大きな変更が出てまいりました場合には、毎年の交付税の積算上の単価もまた是正をされているようでございますので、その意味におきましては同じような弾力性というものを交付税自体の制度の中に持っているのではないか、かように考えております。
  156. 前川尚美

    前川説明員 定額交付金化に伴いまして物価あるいは人件費のアップにどう対応するかというお尋ねでございますが、この負担金交付金化されました後におきましても、協同農業普及事業の根幹はやはり普及職員設置とその活動であるということには変わりないと私は考えております。したがいまして、先ほど農林水産省の局長さんの方からのお答えにもございましたが、今後物価あるいは給与等の水準が上昇してまいりますれば、当然毎年度の交付金の総額、国の予算の総額というものもこれを踏まえて所要額が計上されるようにされるべきと考えておりますし、こういう点につきましては、私どもも関係当局にその要請をしてまいりたいというふうに考えております。  交付税の人件費の積算単価等につきましても、これもやはり経済実勢に見合ってそれを調整するというのが従来の方式でもございますし、今後とも交付税制度一般の問題として、そういう方針を変えるつもりはございません。  それから、高齢の職員の方が退職をされ、あるいはそれにかわって若年の職員の方が採用されて、結果として人件費が浮いてくる、それはどうなるかということでございますが、これもただいまお答えがございましたように、私ども、今回の改正によりまして、それが協同農業普及事業である限りにおいて、その人件費をむしろ他の事業の増強に回せるというメリットも出てきているというふうに考えております。  そういう意味で、私ども、今回の改正自体、普及事業の強化という見地からも一歩前進ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  157. 武田一夫

    ○武田委員 次に、普及員資質向上についての問題を質問いたします。  事業は人なり、こういうことを言われますが、農業、特に人の問題というのは非常に重要な問題でございまして、普及員資質向上というのは非常に重要な課題でございます。そこで、普及員資質を高めるための研修制度の強化拡充ということが非常に重要ではなかろうか。各都道府県あるいはまた町村等においても、国もやっているようでありますけれども、この件につきましては、五十二年の四月の当委員会での附帯決議の中でも、明らかにこの問題については重要な問題であるとして、一項を附帯決議の中に入れたわけであります。  先日の参考人の御意見の中でも、この問題については各参考人からたくさんの御意見をちょうだいいたしました。そこで、この研修というものを今後やはり一つのカリキュラムといいますか、たとえば新任の職員であれば、いまは先端技術も非常なスピードによる日進月歩の発展ですね。それにまた農家皆さん方も、一生懸命農家をやっている人ほど進んで勉強しているという傾向もこれあり、それに対応できないということで余り役立たないという批判もあるというようなことを考えますと、もっと組織立てた対応が必要でないか、私はこういうふうに思うのでございますが、当局としては今後どういうふうな対応をして資質向上に努めていくかということに対する御見解をひとつ聞かしていただきたい、こういうふうに思います。
  158. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及関係職員の研修につきましては、現在でもそれなりの研修体系というものを持っておるわけでございます。  大変大ざっぱに分類をいたしますと、新任の普及員あるいは新任の普及所長、あるいは漁家担当の生活改良普及員、そういう方々に対しまして新しい仕事につくために必要ないわば職務研修と申しますか、そういう研修、さらには、ある程度勤務年限を積み重ねた方々に対する技術向上のための研修、さらには、農政上の重要課題、地域の緊急問題に対する課題解決のための特別な研修という、大ざっぱに申し上げますとそういう三種類の研修、内訳はさまざまに分かれておりますが、その研修を、研修対象人員あるいは研修の内容等によりまして国と都道府県が分担をいたしまして実施をしているのが現状でございます。  さはさりながら、御承知のように最近の農家技術のレベルというのも大変向上してまいっておりまして、やはり普及職員技術能力を高めていかなければ十分な普及指導ができないという問題が出てきておるわけでございます。その意味におきまして、これまでやってまいりました研修の一つの評価の上に立ちまして、今後の研修の体系といたしましては、これまでやってまいりました集合研修のほかに、自分の内発的な動機に基づきますところの自己研修あるいはグループによる研修、さらには、職場内における職務の積み重ねないしはその職務の場を通じての研修、そういった三つのものを組み合わせまして新しい研修体制を整えなければならない、かように現在考えておりまして、新しい仕組みをただいま検討をいたしておるところでございます。  また、そのほかに、普及職員の一般的な能力向上というものを目指しまして、新任の普及員の採用条件といたしましては、従来四年制大学卒及び二年制大学卒の二本立てでございましたが、五十九年度からは四年制卒を原則として採用するというふうに改めてまいりたいというふうに考えております。ただいまの大学卒の実際の農業の場におきます訓練の積み重ねということからいいますと、それだけで問題の解決になるわけではございませんが、そういうこともあわせて行いまして、普及職員のレベルアップに努めていきたいというふうに考えております。
  159. 武田一夫

    ○武田委員 いろいろと各都道府県、国も最近特に力を入れているようなことは存じておりますが、なお、いわゆるコンピューターの普及する時代でもこれあり、それから今後バイオテクノロジーとか、そういういろんな問題が農村の中に出てくることは必至でございますから、やはりしっかりした技術と知識と指導力と、それと人間の中身ですね、こういうものがそろっていれば、農家の方は非常に信頼して心強く相談に応じているようです。ですから、こういう意味で、そういう方々が農村の中で地域農政の発展のために貢献する度合いといいますか、貢献度は非常に高いということも事実であります。ですから、反面、そうでない人間が普及員として動いているところは、それなりに停滞しておるということもはっきりしているわけでございますから、今後そういう内容充実を一層期して、充実した体制の中で普及員資質向上に努めてほしい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、現場に行って聞きますと、期間をやはり一年なら一年じっくりやってほしいという声もある。また、したいという声もあるわけです。その際、県などでやる場合には、やはり予算的なものに非常に苦労する。たとえば、一人職場から抜けますとその穴埋めのために残っている人たちが苦労するというようなこともございまして、やはりどうしても関係してくるのは財政的な問題である、こういうことでございますから、こういう集中的に、またしっかりした技術を習得させるようなものにつきましてはやはり経費を国はめんどうを見てやるというように、これは特別の力を入れなければならぬというふうに思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  160. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいまでも、御本人の希望なり都道府県側の必要性に応じまして、大学等に対する長期の研修という道は開かれておるわけでございます。通常でございますと、大学に対して一年程度入学をいたしまして、そこで自分の専門をさらに磨きをかける、こういう研修の道が開かれております。もちろんこれにつきましては、普及側の必要性というばかりではうまくいきませんで、大学側の受け入れ可能性というものがあるわけでございます。したがいまして、農林省が中に立ちまして、文部省と連携をとりまして各大学の受け入れの可能性というものを十分集めまして、各県の希望とこれをつなげていく、こういうことをやっております。そのほかにも、都道府県それぞれ知恵をしぼりまして、場合によりましては海外研修なども含めました研修体制をとっておるわけでございます。  今後、国の研修の体系整備とあわせまして、都道府県のいろんな自主的な工夫というものも加味いたしまして、全体として普及職員の能力向上につながるように研修体制をつくっていきたいと思っております。
  161. 武田一夫

    ○武田委員 農業改良普及員は五十六年の三月三十一日現在で九千四百八十五人、それから生活改良普及員が一千九百五十二人、大体合わせると一万名以上の方がいるわけですが、こういう方々はいままで、たとえば五十二年の法改正がございましたね、それ以来こういう方々はどのくらい研修に時間をとって、どの程度の要するに勉強をしているのかというようなことは、これはどうですか。あのときは、これは非常に重要だから力を入れて資質向上をすべきだということも言っているわけですから、その中の一項目として、具体的にたとえば農業改良普及員の場合であると、九千四百八十五人に対してはそういういろんな研修等々は県ではもうすでに半分以上、しかも一年以上の時間をかけているとかというような実態がわかれば、ちょっと二、三参考に聞かしてもらえればありがたいと思うのですが……。
  162. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは、研修を受けました職員の延べ人数ということになりますと相当に大ぜいの人数になるわけでございまして、たとえば課題解決のための研修、その中での一般課題解決研修ということになりますと、一年間に二千三百人ぐらいの方の研修をいたしておるわけでございます。期間は十日程度でございますから、決して長くはございません。そういうふうに普及職員の各段階段階に応じて研修をいたしておりますので、延べで何人というのも余り意味がなかろうかと思います。  逆に、普及所に張りついております普及員の方が、全体の職務時間の中でどれぐらいのパーセンテージの時間を研修参加に当てているか。これは平均値でございますから、すべての人が同じパーセンテージということでは決してございませんが、平均で申し上げますならば、大体年間勤務時間の六%程度が研修に当てられている、こういう統計がございます。
  163. 武田一夫

    ○武田委員 いまの年間勤務時間の六%という数字ですね、これは毎年の傾向としてはふえているわけですか、それともこの程度のレベルで来ているわけでしょうか。
  164. 小島和義

    小島(和)政府委員 最近の数年間で見ますと、ほとんど変わっておらないようでございます。
  165. 武田一夫

    ○武田委員 やはりこれはちょっとまずいと思うのですね。私はもっとふえていてもいいはずだと思うのですよ。それは、やはり高度な技術を要求する、あるいはまた、後で質問をいたしますが、最近いろんな冷害等々における土づくりとか、やませの研究とかやっていますね。特に土づくりというようなことの研修とかというのは、研究機関だけでなく、やはりそういう方々もどんどん勉強させるというチャンスを与えながら、一緒になって考える方向が望ましいのではないか。  たとえば、いい米をつくる、優秀な米をつくって研究開発をしたというのは、国の研究機関よりもどちらかというと篤農家の方がいままでのケースだと多かった。これは一例でございますが、そういう傾向もあるわけですから、そういう一つの勉強、研さんをする時間というものも設けることによって、それで学んだものが現場に行っては強い確信のある指導となってあらわれてくる。となると、ここ三、四年間同じようなレベルであったということはちょっと心配なような気がするので、この点はやはり考えていただきたいというふうに思います。これは答弁はいいです。  そこで、普及員皆さん方というのは本当に勉強していますよね。それから動きます。よく農家のめんどうを見ております。私も感心するくらいでございまして、この間もある地域に行きましたら、どこでもつくるのでしょうけれども、こういう計画書を丹念に、これはちょっと字が小さくて見えないくらいびっしりと年間計画を立てるわけです。これから始まって、みんなでいろいろと頭を悩ませながらつくり、それによって動く。その動き方も大変な時間をかけている。  私の地域のある普及所の女性の方の去年八月の活動の記録などを見ましても、夏休みなものですから三日間ほど夏休みをとっておりますが、それでも日曜日も出勤しているのが一日あります。それで、百八十六時間のほかに超過勤務が二十二時間、これは少ない方です。少ない例をいま挙げているわけです。  ところが、今度は地域指導の担当の方、これは男の方ですが、この方の五月の活動記録を見ますと、まず休日勤務で三日間出ているわけです。休みを返上して出ている。それで、二百八十五時間の正規の時間だけで足らぬで、何と百二十一時間も超過勤務をしている。この方の報告書を見ますと、この方はずいぶん御苦労しているなというふうに思いましたが、かなりのかんばりをやっているわけです。  ですから、この地域は県内でも非常にいい地域なんです。普及事業を見たければその地域に行きなさいと言われるような模範的な地域です。その原因は、こういうとにかく自分の生活も多少犠牲にするような中で、しっかりと計画を立て、活動に移して、それでよく相談に乗っているというようなところであります。私は非常に敬服をしまして、激励をしてきたわけであります。  そこで問題なのは、そういう方々に対する評価といいますか、待遇というのは、やはりもっとしっかりと保障してやる必要があるのではないかということを痛感いたしました。聞くところによりますと、一二%という手当が出ているので、その中で超過勤務の分はやりなさいとか言われている。ですから、出張などの場合は手当なども正直言ってもらえないときもある。それから、超過勤務をしても全部まるまるもらえない。これはわれわれの財政状況が厳しい中だからもうやむを得ないというふうには言っておりますけれども、しかしながら問題ではないか、こういうふうに思うわけでございます。そういう実態はよく御承知とは思うのでございますが、この点に対する対応というのは、やはり今後普及事業に当たる方々の意欲にかかわる問題でもありますし、また、若い、これから新しい優秀な人材をそこに求める場合の大事な要件でもないか、こういうふうに思うのでありますが、この点についていかがお考えでございましょうか。
  166. 小島和義

    小島(和)政府委員 御指摘ございましたように、普及員の職務なり勤務の実態というのは、通常の県庁あるいは市町村等の職員には見られない特別な性格を持っておるわけでございます。そういう意味におきまして、お話のございましたような普及手当を支給するというふうなことになりました経緯もあるわけでございますが、なおまた、この仕事自体が大変じみで、なかなか目に見えた成果というものがはっきりしないという点もございますので、その意味では、この普及職員の処遇をどうするかというのは大変むずかしい問題であるわけでございます。  過去におきまして、普及所の地区担当というものを市町村駐在から中地区制あるいは広域普及所制ということに持ってまいりましたのは、普及それ自体のさまざまな意味もあったわけでございますが、同時に、広域普及所体制に持っていくことによって普及員の中においてもある程度高位号俸の方が輩出し得る、こういうことも配慮した結果でございまして、現実に各都道府県の最近の普及所の処遇を見てまいりますと、おおむね普及所長ということになりますと本庁の課長程度の処遇を与えるというふうな県がふえてきておるようでございます。今後とも都道府県といろいろな場を通じて協議をしてこの仕事を運営してまいるわけでございますから、現地業務の多い土地改良職員でありますとか、あるいは研究職員とか、そういった方々との均衡が損なわれることもなく処遇が行われますように、私どもとしても十分注意を払ってまいりたいと考えております。
  167. 武田一夫

    ○武田委員 その中で、女性が多く占めているこの生活改良普及員ですが、最近、夜にいろいろと会を持ったり、訪ねていくケースが多いのだそうです。ときにはもう十一時ごろに帰るときもございますということでございまして、今後生活改良普及員をこれ以上減らすということは私はないだろうとは思うのですが、もう地域によっては人が足りない。しかも、要するに混住化社会になりますといろいろとバラエティーな問題が出てくるということで、私が行った地域普及所は一市一町なのですが、一人、二人でやっておりまして、これは大変だということで、それでも多いときには日にちの三分の二は現場の方に出かけて行っているようでございますが、かなり夜というものに対する負担が大きくなっている。しかし、だからといって、朝はゆっくりいらっしゃいと言われても、朝は朝なりに電話が来たり仕事の準備がいろいろあるということでございますので、この点は私はよく実態を調べまして、女性に対する負担が大きくなっている。これは特に奥さん方が多いわけです。私のところは三十六歳と四十歳の方でした。聞きますと大体そういう方が多い。何年やっていますかと言ったら、一人の方はもう二十年近くやっているというのですから、高校を出てすぐやっているようですね。  そういうようなベテランの方々も、やはり若手をも育てながらいきたいのだけれども、こういうことでは若手が試験に合格しても、どうももっと楽な方の仕事にいこうということで、こちらの方に来ないのですよという切実な悩みも訴えていました。ですから、こういった点の改善というものもあわせてお願いをしたいものだな、こういうぐあいに思いますが、特に生活改良普及員の問題についてのそういう対応をひとつ十分にお考えいただきたい。この点、いかがでございますか。
  168. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに生活改良普及員の場合には女子職員がほとんど全部でございますから、これまでも比較的退職年齢が若い、こういう問題がございまして、普及職員確保の上からも一つの問題を投げかけておったわけでございます。  これは、一つには、御指摘ございましたような仕事が非常に厳しいという問題もございますけれども、同時に、日本全体の婦人の職場に対する意識と申しますか、結婚をしたことを機会に家庭に入る、こういうふうな習慣と申しますか、社会意識と申しますか、そういったことも作用しておったということは想像にかたくないわけでございます。  最近は女性の方の職場に対する意識というものがだんだん変わってきておりまして、結婚までの暫定的な職場というのではなくて、いわゆる一生の仕事として取り組む、こういうふうな気風も少しずつ出てきておりますので、そういうことが定着をいたしまして、職場においてある程度の年輩の方と中堅どころの方と若い方、そういうものが組み合わさった形でこの事業が進められるということが最も望ましいことであろうと考えておるわけでございます。具体的には、人事管理は都道府県がいたしておるわけでございますが、私どもといたしましても、気がつきました場合において適切な指導をいたしたいと考えています。
  169. 武田一夫

    ○武田委員 次に、農業改良普及員あるいは生活改良普及員、九千四百八十五人、千九百五十二人、これは五十六年三月三十一日現在の数字を申し上げました。東北を見ますと、農業改良普及員が、青森が二百二人、岩手が二百七十人、宮城が二百十人、山形二百人、秋田二百十六人、福島二百五十五人。それから生活改良普及員が、青森が四十二人、岩手が六十四人、宮城が四十九人、山形三十五人、秋田五十人、福島四十九人。そして、以下一万近くの方々がおるわけですが、問題は、この数字の各県の配分というのは適正なものであるかどうかということなんです。  どうも聞くところによると、以前の決めた人数割りがそのまま来ているのではないか。ですから、農業に少し力が入らなくなったところも以前のとおりあって、逆に、そのときは余り農業に力が入らなかったけれども最近は特に農業に力を入れているところもある。その密度といいますか、問題というものが余り考えられないで出てきたものではないかというようなことを聞くのでありますが、そうであるならば、やはりこれの中身を少し直すべきではないか。きのうの参考人は、各県の普及所の皆さん方はこれはこれでいいんだというふうに言っているというのでありますが、それは減らしてもらいたくない、減らされるのがこわいからであって、ふやす分には一向差し支えないけれども、ふやせない。しかしながら、やはり適正な職員数の配置じゃないと思う。私は具体的なことは言いたくないのですが、確かに見てみますと、あんな——あんなと言えば怒られますが、非常に貧乏な県で何であんなにたくさん抱えておれるのかな。抱えなくちゃならないのかな。しかも、東北のような農業の中心地がそちらから比べると極端に低いというようなことを見ますと、私は実態はよくわからないんですが、そういうことを言う普及員の方々の御意見というのは無視してはならぬと思うのでありますが、これを決める根拠となるものはどこから出てきたのかということをまず聞かしてもらいたいのです。
  170. 小島和義

    小島(和)政府委員 この普及員制度がスタートいたしました当初におきまして、もちろん全体の補助対象職員の数というのは政府がそれなりの考え方によって算出をし、要求したわけでございますが、これの都道府県別の配分という点につきましては、その当時の各都道府県の受け入れ希望と申しますか、それがかなり大きく影響したような経緯があるようでございます。特に純農村地帯を抱える都道府県におきまして比較的、相対的には普及員の数が少ないという地方は、当時非常に地方財政もむずかしい局面にございまして、財政の面から見ましてなかなか十分な普及員を置けなかったという経緯もあるようでございます。そのほかの理由もいろいろございまして、ただいまの都道府県別の普及職員数を一つの単純なプリンシプルで説明することはなかなかむずかしい。それだけ歴史的な経過のある定数に相なっておるわけでございます。したがいまして、御指摘ございましたように、どちらかと申しますと西高東低というふうな姿になっているのが率直な姿だろうと思います。  私どもも今回の制度改正に当たりまして、何か普及員都道府県別の頭数についてもっと明快な基準みたいなものがつくれないものかということでいろいろ検討した経緯もあるわけでございますが、なかなか単純な要素では割り切れないいろいろな要素が絡んでおります。したがいまして、都道府県農業の実情、普及必要性というものについて、各都道府県考え方をベースにいたしまして、国の考え方とのすり合わせを通じまして普及職員の数の適正化を図っていく、こういうことが望ましいことであると考えておりますし、また、そのように運営いたしたいと考えております。
  171. 武田一夫

    ○武田委員 この問題はこの程度にしておきますが、いずれにしても適正な普及員の数を確保できながら、その数によって地域の農政というものの発展やあるいは地域農業に対する取り組みが十分に効果があるような対策をこれからもう少し検討してほしいな、私はこういうふうに思います。  それから、今度共同研究の実施ということがございますが、この際、果たしてそれじゃ各都道府県の試験場、研究機関が農林水産省の試験場、研究機関と共同して一体的に効率的に試験研究を行えるような体制は整っているのかという問題があるわけです。ですから、国の研究機関のスタッフは大丈夫なのかとか、あるいは機材、機器等も十分に対応し切れるのかということを心配しているわけでありますが、その点はどうでございますか。
  172. 岸國平

    ○岸政府委員 お答えいたします。  今回の法改正によりまして、都道府県農業関係の試験場が国の試験研究機関に対して共同研究の実施を求めることができるということにいたしたいわけでございますが、国と県との共同研究の点につきましては、これまでも形はいろいろでございますが、実施をいたしてまいりました。これまでやってまいりましたこと以上に今後はその点を充実してまいりたいということが今回の趣旨でございますが、それにつきましては、ただいま先生の御指摘のように、それの受け入れの体制がなければいけないわけでございます。  私ども、その点につきましては、今回の県から国への共同研究の実施を求めるということにつきましては、国の方の体制がその点に対して十分でなければいけないということをまず考えておりまして、国の方といたしましては農業研究センター、これは筑波にありますが、それから北海道から九州までそれぞれの地域にございます地域農業試験場、これがまず中心になりまして都道府県との間の共同研究を実施していくということを考えております。そのために、農業研究センターは五十六年の十二月に新しく設置したわけでございますが、そちらの方も整備をいたしておりますし、また、各地域農業試験場につきましても経営の研究体制あるいは野菜、畑作、そういった関係の研究体制の整備を進めておるということもございまして、今回の共同研究を進めるに当たって、そういう点では十分準備をしておるというふうに申し上げられるかと思います。  それから、先ほどの御指摘の中にもう一つ、国の機械とか施設の活用ができるのかということでございます。これは、共同研究をしてまいりますときには、たとえば東北ですと盛岡にございます東北農業試験場と東北地域の県の試験場とが共同研究をするわけでございますが、その東北地域の県の試験場が東北農試に参りまして、そこで東北農試の機械、施設を一緒に使いながら共同研究をやるということは十分にいたせるようにしております。そういう点につきましては準備があるということが申し上げられると思います。
  173. 武田一夫

    ○武田委員 もう一つ聞きますが、非常に大事な情報提供があるわけです。最新の情報を早く的確にとなりますと、私も教育関係の仕事にも携わったのですが、文部省等々の仕事一つ見ていましても、中央志向型でございまして、なかなか地方によこさないという悪い癖があるのです。  それで、オンラインシステムなんかによって、特に大変なところほど新しい情報を提供することが必要になってくるわけでございますから、そういう情報システムについての取り組みは万全な体制であるのかどうか。なければ、今後その点は農村地帯を中心として——たとえばテクノポリス構想などというのが出てきますと、農業、工業、いろいろな部門が入ってきますが、どうも東北なんか見ていても非常に弱いわけであります。しかしながら、東北、北海道という食糧供給基地のようなところはそういう情報におくれては相ならぬと思うわけでありまして、そういう情報提供の万全の対応はできるのかどうかについてひとつお答えいただきたいと思うのです。
  174. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及員普及上必要とするさまざまな技術上の知識、知見というものにつきましては、個々の普及員が自分で修得し得る、集め得る情報量はおのずから限界があるわけでございます。それを補完するものとして、お話がございましたように、できるだけその種の情報を集中いたしまして必要に応じてそれを引き出す、こういうシステムがなければならないとは存じております。数年前から全国レベルにおきましては普及情報センターというものをつくりまして、これは全国的に共通する課題が主でございますが、各都道府県その他のルートから情報を集めましてそれを必要によって現地に送り返す、こういう仕組みをつくっております。  さらにまた、本年度以降の問題といたしまして、普及所と都道府県段階のセンターをオンラインで結ぶ、こういう試みもやってみたいと思っておるわけでございます。これはどの程度十分に活用できるかという問題がございますので、まだ試行の段階でございますけれども、仮にそういったことが軌道に乗ってまいりますれば、普及情報のネットワークというものもでき上がるのではないかと期待をいたしておるわけでございます。また、地方農政局段階で各都道府県の有しております情報のリスト交換というふうな仕事も本年度より始めてみたいと思っておりまして、逐次そういう情報サービス体制の強化に努めていく所存でございます。
  175. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、農業後継者育成確保の問題について、文部省にも来ていただいておりますが、学校教育との連携による青少年の農業の啓蒙、これはもっと中身のある、しかも実際的なものを教育の現場でもしていかなければならぬじゃないか。農業高校にしたってしかり。大学の農学部においてもしかり。きのうも参考人の御意見の中にもありましたけれども、農学は学ぶけれども農業を学ばないというようなことも指摘されております。これは教員の問題もこれあり、総合的に今後見直しをしなくてはならないんじゃないか。学んだらその人間が農業についてその力を十分に発揮できるのだ、またするのだ、それだけの自信と力とを与えていくような教育というものが私は要求されると思うわけでありますが、その点について農林省と文部省との今後の取り組みを私はここでお聞きをしておきたいと思いますが、どうでございましょうか。
  176. 小島和義

    小島(和)政府委員 農業後継者育成確保という観点から、就業年齢から見ますとほど遠い小中学校生、義務教育の段階から農業に対するある種の理解と関心を持たせるということが大変大事でございまして、従来、私どもの方といたしましては学校教育と連携をとりながら小中学生を対象としまして地域農業の手引書をつくって作成配付する。これは、教育委員会あたりの御協力を得まして大変いいものをつくっている地域がございます。あるいは農業体験学習の実施といったこと、さらには高校生を対象としまして農村青少年のクラブ員との交流とか、あるいは先進農業経営の視察等を通じまして、まず農業に対する関心を持たせるということを予算面においてやっているわけでございます。  具体的には、市町村農業後継者活動対策費、全市町村ということでは必ずしもございませんけれども、そういったことを通じてできるだけ学校にいる間に、つまり本人自身がまだ就農するとも何とも決めてない段階からのアプローチということを心がけておるわけでございます。今後とも文部省とも十分連絡をとらしていただきまして、適切な事業がございますればこれを実行に移してまいりたいと思っております。
  177. 阿部憲司

    阿部説明員 文部省におきましては、農業後継者育成確保につきましては、特に小中学校段階におきまして農業への関心と理解を持たせるための教育につきましては、社会科においてわが国農業の特色とか農業と地理的諸条件との関連、その他もろもろの農業に関する問題点等につきまして児童生徒の発達段階に応じて理解させるように指導しておるところでございます。  また、高等学校段階につきましては、農業学科におきまして専門教育としての農業教育を実施しておるところでございますけれども、特に農業後継者育成の問題につきましては、全寮制の寄宿舎を持つ自営者養成農業高等学校の整備につきましては特に意を用いまして、近代的な農業経営を担当するにふさわしい資質と意欲を備えた農業後継者の養成に努めておるところでございます。  そのほか、今般の学習指導要領の改正におきましては、特に勤労体験学習の重要性を強調したところでございまして、この線に沿いまして、各学校におきましては、たとえば農作物の栽培などを児童生徒に体験させるなど、より実際的な教育についても十分配慮しておるところでございます。こうしたことを通しまして、文部省としても農業後継者の養成、確保につきましては一層意を用いてまいりたいというふうに考えております。
  178. 武田一夫

    ○武田委員 じゃ、終わります。
  179. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 神田厚君。
  180. 神田厚

    ○神田委員 農業改良助長法改正につきまして御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず最初に、今回協同農業普及事業につきまして助成方式負担金から交付金変更する、こういうことになるわけでありますが、こういうことになりますことにつきまして、まず負担金交付金との予算の仕組みの相違点があるわけでありますが、そういうことと同時に、予算要求の考え方、これらについてどういうふうにお考えでありますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  181. 小島和義

    小島(和)政府委員 従来の負担金方式のもとにおける予算要求といたしましては、人件費、活動費、施設費その他につきまして、それぞれ必要なところにつきまして単価、員数を積み上げまして、それぞれに負担率を乗じまして必要予算額を計上しておったわけでございます。  今回の交付金はそういう積み上げというものを格別有しておりませんで、従来この事業政府が投じておりました経費をベースにいたしまして、標準、定額のものとして決めたわけでございますので、その意味では、人件費が幾ら、活動費が幾ら、施設費が幾らというふうな内訳の積算を有しておらない、その点が決定的な違いであろうかと思っております。
  182. 神田厚

    ○神田委員 こういう形でやっていきまして、都道府県間で普及指導に不均衡を生ずることがないかどうか。その点はどうでありますか。
  183. 小島和義

    小島(和)政府委員 従来の方式のもとにおきましても、国が予算を交付することによってその事業実行都道府県に義務づけるという性格はないわけでございまして、従来の予算の執行のもとにおきましても、必要な事業量については都道府県と相談をしながら決めて実行してきたという経緯がございます。  ただ、お話がございますのは、従来の事業の執行の場合には、国の出します経費都道府県が自主的な財源で負担しますものとの間にある種の割合が保たれておったのに対しまして、今回はそういう負担割合というものがなくなるわけでございますから、国の交付金規模事業量をとどめまして、自主財源の持ち出しをしないという形によって事業量が縮減するのではないか、かようなお尋ねではないかと思います。  この点につきましては、まず都道府県事業規模をどの程度のものとして考えるのかという問題がございまして、毎年の予算執行とは別に、やや中期の問題といたしまして、都道府県事業実施方針についての国との協議ということを法定いたしております。その前提といたしまして、国側の考え方を明らかにするものとしての運営指針というものを農林水産大臣が定めることにいたしております。そういう協議の場を通じまして、各都道府県ごとの事業のスケールにつきましては十分お話し合いができるものというふうに考えております。現在までのところ、各部道府県が考えておりますこの事業に対する必要性認識と国側の認識との間に大きなそごはないというふうに理解いたしておりますので、これらの話し合いを通じまして十分その事業規模確保できるのではないかと思っておるわけでございます。
  184. 神田厚

    ○神田委員 また、予算の抑制につながる、こういうふうな心配も考えられますが、今後の予算確保につきましてはどういうふうに御対処をなさるつもりでございますか。
  185. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは予算の問題でございますから、毎年の予算の交渉というものが当然あり得るわけでございますが、従来の積み上げ方式の負担金の場合には、その員数、単価それぞれにつきまして毎年毎年の見直しが行われるという意味におきましては、物価、賃金等の上昇に対応しやすい性格があった反面、今回の交付金方式はそのような積み上げがないわけですから、相対的には予算変更というのがしにくい性格を持っておるというふうに存じております。しかしながら、最近のような財政事情のもとにおきましては、いかにして予算をふやしていくかという問題よりは、いかにして予算が削られないで済むかということの方がより力点の置かれるところでございますので、そういう交付金制度の持っている相対的な安定性というのは、この制度長所でもあれば同時に短所でもある、こういうことであろうと思います。  もちろん、私どもといたしましては、物価、賃金事情に大きな変更がございまして、このままでは事業がうまく円滑に遂行できないという事態がございますれば、予算の追加要求をいたすつもりでございます。  また、定額化いたしました交付金と外枠に、そのときどきの政策的な経費等を織り込みました普及事業推進補助金というものを約二十九億円ばかり計上しておりまして、これは、他の補助金と同様に、いわば毎年毎年の勝負ということになるわけでございます。そういう性格予算もあわせ計上いたしておりますので、そちらの部分におきましても、さらに研究の余地が出てこようかというふうに考えております。
  186. 神田厚

    ○神田委員 次に、運営指針実施方針の策定についてでありますが、策定の指針とされております普及事業研究会報告「普及事業の刷新について」の具体的な実施方針運営指針でどのように反映をしていくのか。つまり、対象の重点化とか、あるいは新たな課題の設定とか、職員の配置の問題とか、それから資質向上対策、こういう点について出ているわけでありますが、これにつきましてはどういうふうにお考えでございますか。
  187. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及事業の研究会の報告は、今回御提案いたしておりますような運営指針のようなものが法定されるということを前提といたしませんで、普及自体の今後のあり方をどうするかという意味において、内外の批判にこたえる観点から報告をまとめていただいた性格のものでございます。  この報告書の末尾にもございますように、今後これを実際に運営面に展開いたします過程におきましては、都道府県との意見調整を通じてやっていくというふうなことが述べられておりますので、その意味におきましては、運営指針に盛り込むに当たりましても、この都道府県との意見調整を経ながら運営指針を定めていくということになろうかと思っております。大筋におきましては、研究会の報告の中に盛られていることが運営指針のかなりな部分を占めるということになろうかと思いますが、具体的には、さらに今後の検討にまつところでございます。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 神田厚

    ○神田委員 改良普及員の技術水準向上の問題が大変重要でありますが、この改良普及員の技術水準向上にどういうふうに対処をしていくのか。特に、研修の充実強化ということが非常に大事だと思うのでありますが、その点についてはどういうふうな御計画をお持ちでありますか。
  189. 小島和義

    小島(和)政府委員 御指摘のように、最近の農業事情の著しい変化に即応いたしまして効果的な普及指導活動を展開するためには、改良普及員の資質向上ということがきわめて重要な課題であると考えております。したがいまして、まずできるだけ資質の高い人を確保するという観点から、良普及員の資格試験におきましても、現在四年制大学卒業程度と二年制のいわゆる短期大学卒業程度の方の二本立てで試験を行っているわけでございますが、昭和五十九年度から、四年制大学卒相当に試験を一本化いたしまして、水準を引き上げる措置を講じたいというふうに考えております。もちろん、改良普及員としての資質、能力という点でありますと、単に四年制大学を出たからというだけで能力があるわけではございませんので、従来から新任者の研修等を通じてレベルアップに努めてきておるわけでございますが、今後農家側の普及に対するニーズがますます高度化していくという過程から考えますと、現在の各種の研修制度を全般的に見直しまして、研修の内容なり研修の方法につきまして改善を行いまして、研修体系を新しく策定したいというふうに考えておるところでございます。  従来の研修の体系は、大変大ざっぱに申しますと、新しい仕事につくための職務研修と、それから技術の高度化研修と、特別な課題解決のための研修と、三種類の研修制度があるわけでございまして、実行段階は国と県がそれぞれ分担をいたしてやっておるわけでございます。ただ、この種の研修は、どちらかといいますと集合研修に力点が置かれているわけでございますので、集合研修ということになりますと、勢いどうしても画一的な内容になる。あるいは、一人一人の方にとってみれば必ずしも希望しないような他動的な研修になるわけでございます。また、一定期間を終わりますとそれで研修が終了いたしますので、その意味では一過性だというふうな問題もあるわけでございまして、そういう研修制度自体の持っております問題も十分改善していかなければならないと思っております。  もちろん、集合研修には、同僚が相切磋琢磨するというふうな利点もございますし、場合によりましては仲間同士の連帯感を醸成するというプラスの面もあるわけでございますが、そういう意味においては、集合研修のよさも残しながら、同時に本人の内発的な動機と申しますか、そういうものを引き出しましてその課題に取り組んでいく、そういう自己研修とかあるいはグループ研修、さらには職場の実践の傍らにおきまして研修を積み重ねていく職場研修と申しますか、そういった問題も加味いたしまして、新しい研修体制をつくるという必要があるのではないかというように考えております。
  190. 神田厚

    ○神田委員 問題は、一つはやはり普及所の広域化によりまして指導範囲が非常に広がってしまっていることによって、農家との密着度が大変希薄になってしまうのではないか、あるいは研修のあり方が農家の要望しているものとはかけ離れているのではないか、こういうようなことが言われておりますが、その点についての心配はどうでありますか。
  191. 小島和義

    小島(和)政府委員 普及所の管轄区域の広域化、いわゆる広域普及所体制は、それなりに普及上の必要性に基づいてできてきたものでございます。御承知のように、歴史的には市町村の駐在制度からこの事業が始まりまして、その後中地区制、さらには広域普及所体制と移行をしたわけでございます。  その過程を振り返ってみますと、かつては、ほとんどが稲作栽培を念頭に置いた指導でありましたものから、昭和三十年代以降におきまして、果樹でございますとか野菜、畜産と、新しい専門的な分野がどんどんふえてまいりまして、少数の普及員では異なる作目について十分な普及指導ができないというような観点から、できるだけ専門の人を多く配置するということになりました。そういうことになりますと、どうしても一種の総合病院化と申しますか、広域普及所体制に持っていかなければならない、こういう面があったわけでございますが、反面におきまして、個々の農家との密着度ということになりますと、従来村におりました方がどこかの町に集まって配置しているということでありますから、従来に比べまして農家とのつながりぐあいが薄れていくという問題も出てまいりまして、そういう相反する二つの要請にこたえるために、ただいまでは広域普及所制の中におきまして、チームをつくった地域分担方式と申しますか、そういう体制をとりまして、問題の生じないようにいたしておるところでございます。今後もこういう普及の体制が基本になろうかと思いますが、農家側のいろいろな需要も出ておるわけでございますから、今後の運営の方式につきましてはさらに知恵をしぼりまして、農家側のさまざまなニーズというものに十分こたえられるように努力をいたしたいと考えております。  また、研修につきましては、先ほど申し上げましたように、一方においてその普及員の学歴が高度化していくという反面、本当の農業の総合的な姿と申しますか、それとの距離がだんだん離れていく。先般の参考人の御意見にもございましたが、大学は農学を教えておって農業そのものを教えてないという問題があるわけでございますから、そういう基礎的な素養を持った人を生きた農業の場に置いて、役に立つ専門家に仕上げていく、こういう努力が当然なければならないわけでございます。その意味で、先ほども申し上げましたような今後の研修の体系のあり方ということにつきましても十分検討いたしたいと考えております。
  192. 神田厚

    ○神田委員 普及職員の定数問題につきましてお尋ねいたしますが、これは国が定数基準を定めて都道府県に示すのか、あるいは都道府県に任せるのか、その辺の問題が一つ明確でないと思っております。  さらには、今後の普及員は量的に長期的にはどういうふうな展望を持っているのか、この点についてお聞かせいただきたい。
  193. 小島和義

    小島(和)政府委員 今回の改良助長法の改正に当たりまして、交付金自体が御承知のとおり人数その他についての積算を持ってない資金交付になりますので、法制的な面から都道府県別の定数基準のようなものを決められないかどうかということについては、実は私どもも真剣に検討した経過があるわけでございます。ところが、今日ただいま現在の都道府県別の普及員の配置状況は必ずしも単一のプリンシプルによって整然と割り切れるような配置になっておらないわけでございまして、昭和二十三年にこの制度が発足しまして以来の歴史的な積み重ねによる定数なわけでございます。そういう意味において、何か新しい原理、原則を決めるということについて必ずしも各都道府県の御賛同が得られないという問題もございますし、また、仮に定数基準のようなものを決めるにいたしましても、ただいま資金の配分の基準にいたしております耕地面積、農業者の数あるいは市町村数というふうな単純な計数だけでは割り切れないさまざまな複雑な要素を持っております。  具体的に申し上げますならば、地域地域の交通事情でございますとか、あるいは作物の種類の数の問題、さらには耕地面積をもっては代表されないような施設型の畜産とか施設園芸、こういった問題も出てまいります。さらに、たばこでありますとか養蚕でありますとか、他の普及指導制度を持っておる作物の扱いの問題でございますとか、あるいは普及対象になります農家自体の技術的なレベルの問題、なかなか計数化しにくいいろいろな要素が絡んでまいるわけでございます。  その意味におきましては、今回の制度におきまして国は定数配置の一つの基準、考え方の物差しのようなものはお示しいたしたいと考えておりますが、具体的に人数をどうするのかという問題は、国と県との協議の枠組みのもとにおきまして各都道府県の自主的な判断にゆだねていく、こういう仕組みにいたしたいと考えております。
  194. 神田厚

    ○神田委員 次に、研究員制度の廃止の問題がありますが、この協同農業普及事業に必要な試験研究の推進にこれもまた大変支障を来すというふうに考えられるし、同時に、農業改良研究員にかわる人材の育成についてはどういうふうな考え方を持っているのか、その点についてお伺いします。
  195. 岸國平

    ○岸政府委員 お答えいたします。  このたびの法改正によりまして改良研究員制度は廃止することになるわけでございますが、これに踏み切りました一番大きな理由は、昭和二十七年にこの改良研究員制度ができまして以来、都道府県におきます試験研究の体制が大変整備されてまいりました。特に最近はその点が顕著でございます。それからまたもう一方で、最近の農業におきます技術開発の現状を見ておりますと、非常に総合的な問題、組織的に研究対応をしなければいけない問題、そういうものがふえておりまして、私どもこれからの対応といたしましては、むしろそういった組織的な対応を重視していかなければいけないんではないかというふうに考えております。  そのためには、国と県とのそれぞれの研究機関の十分な連携ができるように、そのために共同研究を県から国に要望することができるようにということも含めまして今回の法改正をお願いしているわけでございまして、これによってむしろ今後の農業技術の開発については促進することができるのではないかというくらいに考えておりますので、ただいま御指摘のような心配はないのではないかというふうに考えております。
  196. 神田厚

    ○神田委員 それにかわる人材育成の問題についてはどうなんですか。
  197. 岸國平

    ○岸政府委員 失礼いたしました。  農業改良研究員はいままでにも千名を超える有資格者が生まれておるわけでございますが、現在現役で約六百名ぐらいの者が都道府県に散らばっておりますけれども、それぞれ都道府県の試験研究機関におきまして大変重要な役割りを果たしている人たちばかりでございます。  今回、その制度はなくなるわけでございまして、正式な名称はなくなるわけでございますが、その資格を持った人たちの力は今後とも試験研究の上に生かしていかなければいけないと思っておりますし、それを十分に生かすためには、やはりそれの後継者が生まれていくということが重要だと考えておりますので、今回、改良研究員制度はなくなりますけれども、それにかわるもの、何か試験の実施あるいは研修の実施というものを含めましてかわるものを考えていきたい、こういうふうに考えております。
  198. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  199. 山崎平八郎

  200. 寺前巖

    寺前委員 朝からやっていますから、いささかグロッキーになりました。聞いている方もしゃべっている方も大変だと思いますが、最後になりましたので、ひとつざっくばらんに教えていただきたいことは教えてもらうというふうにお願いしたいと思います。  まず最初に、提案説明を聞いているとむずかしい言葉がいっぱい出てきて、日本語というのはこういうむずかしいものかなあということからまず直面するのです。だから、農村で直接仕事をしている人にわかる言葉で、何で今度法律改正しますのやということを大臣に率直にぽんと言うてほしいんですわ、お役人さんのむずかしい言葉はやめて。ちょっと大臣の率直なやつを言うておくれやす。
  201. 金子岩三

    金子国務大臣 余り率直に申し上げると、またいろいろ失言になりますから。  ただ、役所用語というのですか、私どももやはりわかりにくいような点がありますけれども、これは長い間日本の優秀な官僚陣がつくり上げた歴史でございますから、余り干渉しない方がいいんじゃないですかな。ひとつ苦労して読んで判断する以外にないと思います。
  202. 寺前巖

    寺前委員 要するに、三つ変えた、こう書いてある。助成方式変更だ。それから運営方針を明確化させた。それから試験研究を効果的に推進する。大体この三つをやる、こう言うておるのですから。  それで、さっきの局長の話を聞いておったら、この助成方式のところが大きく変わりますのや、こういう話でしょう。そうすると、ざっくばらんに言うと、きのうここで問題になりました、第二臨調が、去年の七月に「普及事業については、生産性向上のための事業への重点化、生活改善普及事業の見直し等事業内容の刷新と効率化」を図れという意見をばんと政府に出してきておられるわけでしょう。そしてその一方で、「地方公務員に対する人件費補助は、補助対象職員が担当する事務・事業の円滑な実施を確保するための必要な措置について検討を加え、二年以内に、原則として一般財源措置に移行するとともに、新規の人件費補助は、今後、原則として行わないこととする。」要するに、普及事業については、生活改善普及事業のようなものはやめておけ、そして生産性向上のための重点的な仕事だけしたらええのや。そのために人件費を、わざわざ地方に金を出してまでやらぬかてええやないかというのがざっくばらんに提起している話やろうと思うのですね。こういうざっくばらんに出てきている話に対して、そうじゃというので乗った話なのかどうかということ。大臣、どうですか。それは乗った話なんですか、乗らぬ話なんですか。どの点は乗って、どの点は乗ってないのか、俗っぽく聞かしておくれやす。局長はんの話だとむずかしくなるさかい。
  203. 小島和義

    小島(和)政府委員 それでは、お許しをいただきましてざっくばらんにお答えを申し上げますが、従来の方式は、予算の積み上げを通じまして、その一つ一つの費目の使用ということを通じまして都道府県普及事業指導をいたしてきたわけでございます。今回は、金の性格といたしましては、そのような積み上げは持っておりませんで、都道府県の自主的な使用にゆだねる。と同時に、事業は共同の事業でございますから、金を出すだけではなくて、口も出す。こういう意味におきまして、都道府県との間の大変慎重な意見調整をしながら話し合いで共通の方針に基づいて事業運営していく、こういうことにいたしたわけでございます。  臨時行政調査会も、人件費補助をやめるという問題は提起しておりますが、仕事をまるごとやめてしまえということまでは言ってないと私どもは思っておるわけでございます。人件費補助の持っております地方公共団体に対する過剰な介入というものの弊害をできるだけ緩和いたしまして、この事業の本質的な内容、つまり国と県が費用を持ち合うことによって仕事をやっていくというこの仕組みを維持しよう、こういうことでございまして、決して臨調の意図に逆らっておるというような内容でもございませんし、また、おっしゃいましたような意味でうのみにいたしたわけでも決してないわけでございます。
  204. 寺前巖

    寺前委員 要するに、わかったようなわからぬようなことにまたなってしまうのですがね。それでまあよろしいわ。  それで、昨日ここで参考人の各界の方からお話を聞きました。第二臨調が提起している問題については、ほとんど皆さん異口同音に批判の意見を提起しておられたように私は思うのです。そして、それとの関係でこの法案に対する危惧をお持ちであるということもまた事実だと思うんですね。  一番危惧を持たれるのは何かというと、従来は国の方が一定の積み上げをやった。人件費についてはわしの方はこう持つさかいにおまえのところはこう持てよ、ちゃんと責任を持つさかいに、その人が配置できるようにしてやっているさかいにがんばれ、いわばこういうことでしょう。事業についてもこういう事業をやる、わしのところは何ぼ持つからおまえのところは何ぼ持て、こうやって積み上げて一定の金を準備しているから、したがって普及事業というのが国と県との一体の共同の事業として、しかも単に物をつくるという意味だけではなくして、非常に教育的な内容を持って、画期的な性格であった。こういうせっかく積み上げてきたものを、金を一定部分やるさかいにうまいことやれということでは、それは府県の自主性でぱっと積極的に打って出るところもあるじゃろうし、打って出ぬところもあるし、そこは適当にやれではぐあいが悪いんじゃないかということで、これからどうなるんじゃろうかという不安を持たれたというのが、これもまた異口同音の話だと思うんですね。  それで、とれから生産性の高く上がるもののところだけ重点を置いたところの農水省の指導が入って、それで実際の農村の隅々の中では小さい農法で苦しんでおるものにこたえる仕事はできなくなるんじゃないだろうかとか、あるいはまた生活指導の分野については臨調のこんな意見が出てくるぐらいだから、こんなものはもう相手にされぬのやないだろうかとか、そういうような不安がずいぶんきのう出たと思うんですね。私は、そういうことを考えてみると、積み上げ方式の持っている積極面に対する不安というのがやはり大きかったんだろうというふうに思うのです。  そこで、農水省としてはこれはどうするんですか。従来の積極的な役割りをさっきから評価しておられるところを見ると、やはり農水省自身としてはちゃんと人がおって従来どおり広範な人々の期待にこたえるところの仕事は引き続きやってほしいんだという気持ちだろうと思うのです。そうすると、問題は人が人を育てていくんだし、物をつくっていくんだから、そういう意味で言うならば、この改良普及員の皆さんの人件費というのが、ちゃんと交付金とそれから都道府県の側との持ちつ持たれつがぴちっと一つのものになってくれぬと困る。ところが、交付金一般ということになってくると、たとえばベースアップが公務員全体に国の場合は起こる。そうすると、従来だったらその負担をちゃんと持ったものをつけて出す。それで都道府県の方はそれに対する負担割合を持つ、こういうことになるわけでしょうけれども、もう交付金でことしのものを渡してしまったら、人件費の積算をやるわけじゃないから、そのベースアップ分を後から追加して渡すとか、そういうことはもうやらぬのやとか、あるいは物価の変動に伴うところの補正を一般の場合はやるとしても、これからの交付金の計算の中では、もう一たん今年度の交付金を渡してしまったら、そんなものはもう計算の外なんだということで、そういうことはもう心配せぬのやということになるのかどうか。やはり人件費の問題というのは位置が高かっただけに、こういう問題の取り扱いは今後どういうことになりますか。
  205. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに定率の負担方式というのはそれなりに数々の長所を持っておるわけでございまして、せっかく五十二年の改正によりまして今日の協同農業普及事業負担金制度ができたわけでございますから、私どももこの周りの環境さえ許せば従来の制度を残したいというのは率直な気持ちでございます。したがいまして、臨調におきまして人件費補助制度、これは普及だけでございませんで全般でございますが、これが話題になりましたときに、最も強くこのことについてかみついたのは農林省ではなかったかと私どもは思っております。そういうこともございまして、当初の草案に比べますれば、最終的な臨調答申はかなりいろいろなことが書き込まれておりまして、事業の円滑な推進に配慮するとか、あるいは原則としてとか二年以内にとか、さまざまな表現が盛り込まれておりまして、その中に若干の希望を見出すというのが当時の心境でございました。  しかしながら、一たんこういうものが出されまして、これが客観的な存在になりました以上は、今後、後々までこの答申が追いかけてくるということは避けられないわけでございまして、そのたびごと制度の防衛をどうするかとか、あるいは関係者が、この制度変更に対する不安、動揺というものは避けられないわけでございます。そういうことを周囲の環境として踏まえました上で、この新しい制度と定率負担の利害得失を総合判断いたしまして、この制度はそれなりの安定性を持っておる、こういう判断から今回の改正に踏み切ったわけでございます。  具体的に申し上げますならば、たとえば確かに従来の方式ですと、人件費が何%上がったという場合には、それなりの予算措置は自動的に講ぜられるという利点もございますが、逆にある程度の欠員が生じたという場合には、その分の予算は当然のことながら返上になるわけでございます。また、人の計画削減、これは国家公務員全体、補助職員を通じて行われておりますが、そういう削減の進行する過程におきましても予算ははがされていくわけでございます。また、人件費以外の経費につきましても、その経費内容あるいは員数等につきまして査定のメスがふるわれるということは、他の予算についても同様にあるわけでございます。こういう臨時行政調査会答申、財政の一般的な厳しさという環境の中で考えてみますと、今回の制度はそれなりに相対的な安定性を持った制度であるというふうな判断によりまして、利害得失いろいろ考えました上で決心をいたした、こういう経過でございます。
  206. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、結局のところ利害得失いろいろあるので、要するに、たとえばベースアップとか、いろいろな当然増が出てきますね、物価の。そういう当然増が起こったって、減るときもあるしふえるときもあるからがまんせい、わかりやすく言ったらそういうことですか。当然増に対する交付金の問題については考慮するというのですか、しないのですか。
  207. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに、標準、定額化いたした予算でございますから、個々の計数の変動に対して、すべてこれを対応するということになりますれば、従来の負担金方式といささかも変わることはないわけでございます。そうは申しましても、この交付金も一つの予算でございますから、全体予算を通じまして、これでは普及事業がうまく動かないということが想定されます場合には、当然予算の増額要求をするという権利は留保いたしておるわけでございます。  その意味におきまして、一たん定額で決めたものであるから絶対に動かせないということはないものでございます。逆に申しますと、一々細かな変動に対応するということになりますと、減額も自由自在ということになりますので、従来の方式に比べれば相対的に安定したと申しますか、総額についても変えにくい仕組みにはなっておりますけれども、増額の可能性が全く封じられたものではない、かように理解をいたしております。
  208. 寺前巖

    寺前委員 それは、それをまたうまく考えればうまくいくのかもしれませんが、やはり一番大きいのは、人を配置している、負担金制度でもってやっていって事業拡大さしたということの持っていた優位性というものを交付金制度の中においても重視して、いまおっしゃった十分な配慮をやってもらうということが大事じゃないだろうか。やはり精神を引き継いでもらいたいと私は思うわけです。  それで、きのう参考人の人々から出ておった話の中で、これに対して協議会の事務局長さんは、やはり心配なのは裏負担だ。それから自治労の方も、義務経費が任意になるということから、都道府県の態度によっていろいろ変わってくるということが心配だ。あるいは群馬県の農政部長さんですか、一般財源化の方向に流れていって裏づけが危ぶまれる。みんな共通しているのは、積極的な役割りを従来担っていたことに対して、義務負担でなくなることからよってくるところの不安をみんな共通して言っていましたね。ですから、この分について責任を持って義務負担をさせ得るような指導というのか、裏づけを、具体的に、財政的にも何らかの形で明確にしていかないとその不安は消えないのじゃないだろうかと思うのですが、自治省、どうですか。
  209. 前川尚美

    前川説明員 今回の改正案によります定額交付金化に伴って、裏負担というものがどうなるのかというお尋ねでございます。  今回、従来の協同農業普及事業負担金を定額交付金化されますと、これは先ほど来御議論に出ておりますとおり、地方財政法十条の負担金から十六条の補助金性格が変わるということに相なるわけでございまして、私ども、今回の交付金化の趣旨等を踏まえますと、今後各都道府県におきまして交付金を上回る歳出予算を計上するかどうかということは、これはもっぱら地域の実情に即して、各都道府県においてこの協同農業普及事業規模をどうするか、その内容をどうするかということにかかってまいるわけでございます。その点はもっぱら地方団体の自主的な判断にゆだねられる、地方団体が自主的にそこは決めていくことになるというふうに理解をいたしておるわけでございまして、その意味で、この交付金額を上回る都道府県の支出というのは、従来のような法律上の義務負担とは考えていないわけでございます。  ただ、そうは申しましても、従来からこの協同農業普及事業というものが実施をされておりますし、現実にこの農業改良普及事業の中核と申しますか、根幹はやはり普及員の方々の活動にあるわけでございますから、普及職員設置、その活動のための予算というものが重要なものになることは変わりはないわけでございまして、私ども、都道府県協同農業普及事業に対する予算を計上するに当たって、交付金がその財源の一部となるというふうに理解をいたしているわけでございます。法律上の負担義務を伴う裏負担ということではございませんが、地方交付税の基準財政需要額の算定に当たりましても、五十八年度は従来の負担割合を頭に置きながらこの算定をさしていただいているということでございます。  なお、そうであるならば、交付税で算定をされた従来の裏負担相当額を地方団体に支出するように義務づけられないかというお尋ねでございますと、これはもう先生御承知のとおり交付税は一般財源でございますから、それによる部分を各都道府県に支出を義務づけるということはできない御相談であろうかと存じます。
  210. 寺前巖

    寺前委員 ともかく不安なことは事実なのです。いろいろ配慮しますということになっておるけれども、ここが一つの問題点だろうと思うのです。  そこで、臨調のことが出たからついでに聞きますが、生活改善活動について臨調で見直せという提起が出ておるのですね。私、この前当委員会で秋田県でしたか、山形県でしたか、行きましたときに、生活改善指導員の人の話は非常に感銘を与えられた話でした。いまは昔と違って、新しい農作業の変化が生まれていますね。昔は単純で、稲作をやっておって冬になったらこうでという生活だったが、いまは多角経営に変わっておる。多角経営の中におけるところの家庭生活のあり方、そこから健康の問題、諸問題について非常に分析をして、そして農家指導を総合的に婦人の方がやっておられました。私は、ああいう姿を見るにつけても、新しい時代にふさわしい新しい活動が次々と発展している。きのうもここで聞いておったら、いまの生活改善普及員の配置の問題については現状をぜひ守ってほしいということをきのうの人も提起しておられましたけれども、これはもっともな話だなというふうに感じたのです。  それで、片一方で第二臨調で見直せという問題が提起される中で、この問題についてどういうふうに農水省として見ておられるのか、どういうふうに位置づけておられるのか。ちょっとみんな心配しておられる一つの点だと思うのです。それから配置の状況についても、これに限りませんけれども、農業改良普及員全部がそうなのですけれども、現状を守ってもらいたいという問題提起についてはどういうふうにお考えになっておられるのか。
  211. 小島和義

    小島(和)政府委員 生活改善普及事業につきましては、臨調におきましても特に話題が集中した事柄でございます。と申しますのは、生活問題というのはあらゆる職業、あらゆる階層の方にあるわけでございまして、一般的に申し上げますならば、この事業の発足当初に比べれば農家生活内容が一段とよくなっているのではないかという世の中の認識のようなものがあるわけでございます。確かに外見的に眺めてみますと、都会の人に比べればより広い住宅に住んでおるとか、自動車を二台持っておる人もいるとか、いろいろなことが提起されるわけでございまして、必ずしも農家生活の実態について十分な御認識がないままに、すでに歴史的な役割りが終わった、こういうことをおっしゃる向きが多いわけでございます。また、いま一つの問題といたしましては、この事業農村なり農家なりから提起されております本当の切実な問題に十分に取り組んでないのではないか、こういうふうな意味の御指摘もあるわけでございまして、その意味におきましては議論百出というテーマだったわけでございます。  私どもは、この事業に対する基本的な認識としまして、確かに農家生活が質量ともに改善されておるということは認めつつも、農家であります以上、どうしても不可避的に起こってくるさまざまな宿命的な困難な問題があるというふうに理解をいたしております。端的に申し上げますならば、何と申しましても自然を相手にした仕事をやっておるわけでございますから、労働が十分計画的にできないという問題、さらには収入がサラリーマンのように毎月毎月決まった金が入ってくるというわけではない、また、農村の現実から申しまして多世代同居型の家庭が多いというふうな問題、主婦が農業生活面と両方担っているということから大変過剰な労働の負担を余儀なくされておる、そういう実態がございますので、農家の抱えております根本的な問題というのは決して解消してないのだ、こういう理解をいたしておるわけです。  問題は、そういう事柄の理解と具体的な普及員の活動とどうつなげていくのか、こういう問題でございます。生活の問題は大変広い社会的、地域的なすそ野を持っておりますので、その広いすそ野の中でどの辺で仕事をするのかということによりまして世の中の評価が分かれてくる、こういう問題だろうと思います。その意味で、この普及事業研究会におきましても若干の問題提起はいたしておりますが、なお今後、生活改善問題だけに焦点を当てました検討会は別途先行させておりまして、今回の法律改正によって若干検討が中断いたしておりますが、その作業は今後とも続けたいと思っておるわけです。そういうことを通じまして、生活改善普及事業に対する世の中の評価というものの高まりと、あわせて人員確保、二本立てでいかなければいかぬ、かように考えておるわけでございます。
  212. 寺前巖

    寺前委員 それで、農業改良普及員の問題ですが、これについて、交付金を算定するに当たってもそうだけれども、単純な面積や人口とか、そういう形で積算をしないようにしてほしいという意見がきのう出ておりました。結局、これはどういうことになるのです。従来、一定の積み上げに基づいて一定の割合で各府県に対するところの負担金を出しておったわけでしょう。今度、自主性を尊重するということでもう一度一から積算を大幅に変えて、そして普及員の配置の人数も変えていくというようなことが起こるのですか。それとも、従来の実績の上に運営指針を出してやっていこう、こういうことになるのですか。そこはどういうことになるのです。
  213. 小島和義

    小島(和)政府委員 協同農業普及事業の具体的な内容につきましては法律の十四条各号に列記いたしておりまして、それが今回の交付金の対象に含まれる事業になるわけでございます。従来、この資金の配分につきましては、その具体的な各県の積み上げによる内容の審査、同時に、十六条の二という条文がございまして、第十四条の第一号と第二号に該当いたします経費、主として人件費系統でございますが、これにつきましての配分の基準というのを法定をいたしております。その中に若干のアローアンスがございますが、おおむね八割程度のものは農地、農業者の数、市町村、そういったものをベースにして割り当てるという規定があったわけでございます。今回、交付金の全体が資金配分の規定でありますので、従来の人件費配分に比べますれば、たとえば農業者大学校の施設費のようなものまで入ってまいりますので、県の仕事の量に応じまして伸び縮みできる要素、従来第四号と呼んでおりましたが、このウエートを多少高くしなければ実行上困るのではないかという感じを持っておりまして、いずれその配分基準につきましては政令をもって定めることにいたしたいと思っております。  今回、その資金配分の政令が従来法定いたしておりました配分基準と変わるようなことがございましても、わずか一年の間に各県の普及の実態が大きく変わるということは全く考えられないわけでございますので、各県の御懸念のように前年に比べて非常に大きく交付金額が減るというふうな事態は避けられるものと私どもは考えております。
  214. 寺前巖

    寺前委員 それから改良普及員の研修の問題ですが、たとえば私の京都では、府独自で先進産地の研修や県外の試験研究機関へ人を派遣しているわけですね。今度交付金制度になってきたときに、こういうものが交付金の中から使う対象になるのかどうかなんです。私は、こういう研修については国自身がもっと積極的にこういうものを取り上げていいんじゃないだろうか。海外研修とか、国内のそれぞれのところがあそこの特産を学んで帰らせるとか、一定期間研究機関に行くとか、こういうものをもっと積極的に考えたらどうなんだろうかと思うのですが、これはいまどういうふうにお考えになっているのですか。
  215. 小島和義

    小島(和)政府委員 従来は国の方で考えました研修の体系がございまして、これももちろん各都道府県意見を聞きながら組み立てたものでございますが、国の方で予算措置を講じておりまして、いわばその国の方の積算上の対象研修が助成の対象になっておったわけでございますから、都道府県独自でお考えになった研修というのは国の助成の対象にならないという仕組みでございました。  今回は御承知のような交付金制度でございますから、協同農業普及事業の大枠から外れたものについては交付金を使うことはできませんが、県が独自に考案をいたしました独創的な研修でございましてもそれは交付金の対象になるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  ただ、研修自体につきましては特定の県だけの問題ではもちろんないわけでございまして、ある県においてはこういう研修をやり、ある県ではこういう研修をやらないということになってまいりますと、そこに一種の混乱も生じてまいりますものですから、交付金の使途については従来にも増して弾力的な余地が出てくるわけでございますが、研修体系というものは国が中心になりまして何らかのめどを示していくということは当然必要であろうというふうに考えております。
  216. 寺前巖

    寺前委員 最近、農協なんかでも海外へいろいろ研究に行ったりする諸君がおるでしょう。そうすると、こういう改良普及員の皆さんも国で積極的にそういう海外への研修に派遣することを考えたらどうなんだろうか。前はやっておったようですね。最近はやっておられないようですが、これはどうですか。
  217. 小島和義

    小島(和)政府委員 たしか私の記憶では、昭和五十二年度くらいまで国が中心になりまして普及員等の海外研修というのを実行いたしておったわけでございます。その後これを取りやめにいたしましたのは、一つには、各都道府県におきまして県庁職員全体の海外研修という機会が非常に多くなってきておりまして、いわば普及中心の海外研修と各都道府県、県庁の中全体を通じての海外研修とのかち合いが非常に激しくなってまいりました。なかなか普及だけで企画いたしましたものが十分な人数が集まらないという問題が一つと、御承知のような財政の厳しい状況になってまいりましたので、できるだけ海外の旅費等も節減をしていこうというふうな配慮が重なりまして、その後中止になっておるわけでございます。しかし、事柄自体といたしましては、農家が海外も含めてどんどん先進地へ視察に行っておるような段階でございますから、普及員の方々が海外に勉強にいらっしゃるということにつきましても交付金の対象としていささかもおかしくない、私はそう考えております。
  218. 寺前巖

    寺前委員 それから後継者育成の問題の一つとして、学童農園設置事業というのがやられているようですね。ところが、これを調べてみると中途半端なんですね。全面的に取り組んでいるというようなかっこうでもないのですね。ほんのわずかな学校で全国的にやっているというようなことで、やるんだったらやるらしく取り組んだらどうなんだろうかなというふうな印象を持ちます。  それから海外研修事業というのが、これはどこがやっているのですかね、やはり補助事業か何かであるようですね。これは、このごろはいろいろ視野が広がっている時代だけに積極的にやってもらいたいという意見が多いのですが、どういう計画をお持ちなのか、ちょっと聞かせてもらえますか。
  219. 小島和義

    小島(和)政府委員 学童農園の設置につきましては、実は国におきましても一つの予算措置を持っておりまして、農業後継者地域実践活動推進事業、大変長い名前の予算でございますが、そのうち市町村に交付されます補助金の中の一種のメニューといたしまして、地域農業の手引書の作成とかあるいは学童農園による農業体験の実施、こういうメニューがございます。大変残念ながら市町村の数が二百五十ということに限られておりますので、全体の市町村から見れば非常に少ないのでございますが、御希望のある向きにつきましては大体需要を充足しておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから青少年の海外研修につきましても、中央の団体に補助して実施をいたしております。これには若干の種類がございまして、かなり長期にわたってホームステイと申しますか、海外の農家に宿泊をいたしまして農業を実際に仕事をしながら学ぶという仕組みのものもございますれば、あるいは若干形の変わった形で海外研修をやるというふうな事業もございます。こういったものについてもできるだけ拡充をいたしたいと思っておりますけれども、何分にもその相手国の受け入れ体制と両立てで考えてまいりませんと、日本からどんどん押しかけていくというだけでもうまく動かない仕事でございます。受け入れ国側の体制整備と相まちまして、拡充も心がけたいと考えております。
  220. 寺前巖

    寺前委員 その留学の研修制度で、何か期間が長いので行けぬとか、たとえば留学でも、普通内地留学だったら半年ぐらいの留学があるけれども、外国では語学の勉強もせんならぬからせっかく行くんだから長くなるんだというような問題もあるらしいけれども、一年以上でないとだめだとか、何か対象期間の問題があるのですね。だから、それをもう少し縮めてもらった海外留学というのが行われてもいいのじゃないかとか、それから対象国の問題でも、少し国を変えてもらってもいいのじゃないかとか、そういうのを少し考慮してくれたらぜひ行きたいんだという問題なんかが関係者のところへ持ち込まれているようですね。ですから、そういう意見もひとつこれから研究してもらったらどうだろうかというふうに思うのですが、いかがですか。
  221. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほど申し上げました海外の農家に宿泊をいたして行います研修は、一農年と申しますか、農業の一サイクルを勉強するという意味において一年にいたしておりますが、別途もう少し短期のものも国のやっております仕事としてはございます。  御指摘ございますのは、恐らくただいま農業後継者資金の中で研修の費用を貸し付けておりますが、これにつきましてはたしか原則一年ということにいたしておるはずでございます。これは、極端に短期のものになってまいりますといわば観光旅行と研修との区別がなかなかつきにくいというようなことから、比較的長いものを貸付対象にいたしております。無利息の資金でございますからそういう運用をいたしておりますが、確かに行く人のいろいろな事情もあろうかと思いますので、ひとつ検討をいたしてみたいと思います。
  222. 寺前巖

    寺前委員 それから、農村で後継者対策としてやっている一つに特別対策基金というのがあるのです。結婚相談の仕事をやったり後継者のグループや個人の研究活動なんかに資するために基金を集めて、運営を、そこから資金を出していくようにしていくというようなことを都道府県で大分考え始めているようです。農村の一つの新しい僻地化していく中における問題点ではあろうと思うのですが、国の方はこういう問題についてどういう対応をしておられるのか、今後どうしようとしておられるのか、聞かせてください。
  223. 小島和義

    小島(和)政府委員 お話がございましたのは、各都道府県で、県の数にいたしますとまだ十県そこそこでございますが、農業後継者育成基金というファンドをつくりまして、その果実等を利用いたしまして、農業後継者の奨学金の支給でございますとか、あるいはさまざまな研修活動に対する助成を行っているという例がございます。  一般論として申し上げますと、政府の財政も大変窮屈でございまして、ファンドを寝かしておいてその果実を利用するという予算は大変組みにくい時代になってきております。私どもの方でも、先ほど申し上げましたように、青少年活動につきましてのさまざまな助成策を持っております。先ほど申し上げました市町村に交付されております資金のほかに、農業後継者の自主的な集団活動に対する助成といったものもございますし、また、後継者資金というふうなものもあるわけでございますから、こういうファンドを寝かしておいてその果実を使うという制度に対する助成は非常にむずかしいと思っております。むしろ具体的な中身で国の予算で取り上げる必要のあるものがございますれば、それは研究させていただきたいと思っております。
  224. 寺前巖

    寺前委員 今度の法改正の中の一つの重点に、試験研究機関に関する問題が出ておりました。  さっきも質問が出ていましたけれども、都道府県農業試験場は農水省の試験研究機関に対して共同研究の実施を求めることができる、こういうことを決めたのだけれども、国と県との共同研究の予算は、昭和五十七年では八億六千万円であったものが五十八年に八億三千万円と減ってきている。前年比九七・三%。これは、新しくわざわざこういうふうに法律的にも設けてきているのに予算の面では減っていて、積極的に打ち出していった値打ちがあるのだろうかと気になるのですよ。打ち出しただけのことをこれから改善するというのかどうか、これが一つ。  それから、共同研究ですから、国の研究の側と府県の研究の側の実態がどうなっているのかということをちょっと考えてみました。国の側の体制から言うと、農林水産省本省の試験研究機関の予算は、昭和五十六年で三百十二億円、それが五十八年は三百七億円と減ってきているわけでしょう。都道府県の試験研究への助成は、昭和五十六年は三十二億五千万円、五十八年は二十九億四千万円と一割近く減ってきている。それから人数の面でも、五十六年には二千五百六十一人の研究職が五十八年は二千五百十一人と減ってきている。だから、予算面からも人員面からも減ってきている。  そこへもってきて、研究旅費を見ると、細部は省略しますけれども、昭和五十四年に比べて八八・二%に減っている。ところが、その昭和五十四年と今日の国鉄運賃の変化を見ると、国鉄運賃は五十四年に一二%、五十五年に五・五%、五十六年に九・五%、五十七年に六・七%と、どんどん上がっている。  そうすると、研究予算の面からも、人員の面からも、旅費の面からも、それから諸物価の面からも、こうやって考えてくると、共同研究を重視すると言うけれども、国自身の分野においてはこういうふうに非常に落ちてきているではないか、対応策としてこれは成り立つのかどうかということを心配するわけです。  加えて、試験研究の人たちの学会への参加状況というアンケート調査を調べてみたら、学会に出席したくても取りやめた人は六七・七%おる。何でやめたかというたち、そのうち半分の人が旅費が出ないからなんです。ですから、私は、国の側自身が実際に研究予算についてのあり方をこの際再検討してもらわなかったらうたい文句どおりにならないのではないかという問題を一つ指摘したいと思うのです。  もう一つ指摘したいのは非常勤職員です。たとえば筑波の研究機関を見ると、二九・一%も非常勤職員が占めているのです。去年は二七・六%だったから、だんだん非常勤職員がふえておるのです。そして、その非常勤職員は大部分が研究費から出されておるのでしょう。五十六年度の非常勤職員を雇う費用は四億二千二百万円で、そのうちの七八・七%は研究費から出ているという。しかも、非常勤職員の六八%は一年以上の雇用になってしまっておるわけです。  私は、国の研究機関のあり方自身が異常な段階に来ているという問題を少し考えてみる必要があるのではないだろうかと思うのです。そこで、筑波の組合の資料を見てみましたら、研究職三千三百九十七人のうちで、二十歳代が八・二%、三十歳代が二三・二%、四十歳代が二四・八%、五十歳代が四三・八%、全部高年齢になってしまっているのです。これは十年後になったらどうなるだろうか。退職していって、現在の七割の人になってしまうのではないか。  こういう調子だと、研究の予算の面から、配置されている非常勤職員の運営の問題から、それから現在の研究者自身が十年後には非常に限られてくるという事態から、これで果たして将来を見通したところの国の側の研究のあり方と言えるだろうか。だから、それをどういうふうに考えておられるのか、改善しなければならないと思っておられるのかどうか、これが聞きたい一つなんです。  それから、今度は都道府県の側です。都道府県の側はどうなっているかというと、これは私の出身の京都府の農業総合研究所の話なんですが、五十六年には八億八千六百万円あったものが、五十八年には五億三千七百万円と、四〇%も減っているのですよ。だから、都道府県の側自身も金がなくなっているのです。それで、国の方にそれでは助成をしてもらって共同研究になるかと言ったら、国自身がさっき言ったようなことでしょう。だから、関係の機関の連中は、国にお願いしたって無理ですし、たとえばこちらがやる研究に来てくださいという要求を出したって、実際来てもらえるような状況にありませんということを、また県も言うておるわけです。ですから、研究問題というのを非常に重視した一つの法律体系になっているけれども、県に対する助成のあり方も再検討する必要があるのじゃないか。重視するように予算化する必要があるのじゃないだろうか。わざわざ法にうたった以上はどういうふうに改善されるつもりなのかをちょっと聞かしてもらって、終わりたいと思います。
  225. 岸國平

    ○岸政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろな点を御指摘いただきましたが、現在、国家予算全体も大変厳しい中でございますので、研究予算につきましても例外ではございませんで、大変厳しい状況に置かれております。そういう中で、その予算あるいは人員、そういったものをどういうふうに有効に使っていくかということをこれからは考えていかなければいけないと思っているわけでございまして、今回の法改正におきまして国と県との共同研究を強化するということをつけ加えておりますのもそういう意味でございます。都道府県においても大変苦しい状況がございますし、国においても苦しい状況がございますが、その中で協同農業普及事業に必要な試験研究をしっかりやっていくためにはそういうことによってそれを果たしていく以外にないのではないかということで、その点をつけ加えておるわけでございまして、今後、その共同研究が十分に果たせますように、決まった予算の中でこれを有効に活用するということを図ってまいりたいというように考えております。
  226. 寺前巖

    寺前委員 大臣、いま言った、わざわざ法律改正してまで重視することを言っておりながら、国の方も貧弱だし、県も貧弱だし、それで重視すると言ったって実態を伴わないことになるけれども、これは全面的に真剣に考え直してくれますか。それを最後に聞いて、終わります。——や、大臣に聞いておるんだ。あなたの話はもう聞いた。
  227. 岸國平

    ○岸政府委員 大臣から答えてこいということでございますので、お答えを申し上げますが、試験研究を有効に推進するためには、人員予算も、これは基本的に大変大事なものでございますので、その点につきましても、今後、努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  228. 寺前巖

    寺前委員 終わります。
  229. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  230. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対し、北口博君外三名提出修正案提出されております。  まず、修正案提出者から趣旨説明を求めます。北口博君。     ─────────────  農業改良助長法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  231. 北口博

    ○北口委員 私は、自由民主党を代表して、農業改良助長法の一部を改正する法律案に対する修正案趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付いたしましたとおりであります。  その案文朗読は省略して、以下、修正の趣旨を簡単に申し上げます。  修正案の主な内容は、原案においてこの法律施行期日昭和五十八年四月一日となっているものを公布の日に改め、これに伴い、農業改良研究員についての助成昭和五十八年四月一日から廃止し、協同農業普及事業交付金を交付する規定昭和五十八年度の予算に係る交付金から適用すること等を内容とするものであります。  以上が修正の趣旨及びその内容であります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げて、説明を終わります。(拍手)
  232. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で修正案趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  233. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより農業改良助長法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論申し出がありますので、これを許します。寺前巖君。
  234. 寺前巖

    寺前委員 私は、日本共産党を代表して、農業改良助長法改正案に対する反対討論を行います。  普及事業は、戦後、農村の民主化と農業の再建を図るため、農地改革、農協の設立とともに農業の三大改革の一つとして発足した事業であり、農業者の自発的活動を助長し、農業の発展と農家生活向上に資するという理念のもとに実施されてきたものであります。  この普及事業の特色は、改良普及員が直接農業者に接し、みずから考える農業者を育てるという教育的事業であること。農業生産農家生活の一体的指導が行われてきていること。試験研究機関と農家との媒介的役割りを持っていること。国と都道府県が共同して行う事業であることです。  普及事業は、こうした理念と特色のもとに、今日まで、農業生産性向上と専門技術普及農村婦人や老人の健康管理や集団活動の促進など大きな役割りを果たしてきたのであります。  ところが、今回の法改正は、過去日本農業に不可欠の役割りを果たしてきた普及事業縮小後退につながる内容となっています。  その第一は、今回の法改正では、助成方式負担金方式から交付金方式に変えるとともに、地方財政法上の国の負担義務を削除しています。また、都道府県負担義務もなくなっています。これによって、今日の政府姿勢のもとにおいては、普及事業予算削減の方向に進むことは必至であります。また、国と県との負担義務を削除することは、普及事業は国と県との共同事業であるという理念を薄めることにもなります。  第二に、今回の法改正では、国が普及事業運営指針を定め、県はそれに基づき実施方針を決めることとされていますが、これによって、現在政府が進めている中核農家育成、兼業農家切り捨ての選別政策が普及事業においても一層強化される危険性があります。また、都道府県によっては生活改善事業を軽視する動きも出ていますが、これに一層拍車がかかるおそれもあります。  第三に、今回の改正では、いままで法律で明記されていた負担金の割り当て基準が政令事項になっていますが、これは国の恣意的な運用を可能とするものです。  第四に、農業改良研究員制度については、現状が不十分であるからといって廃止すべきものではありません。  以上が反対理由ですが、日本農業の再建、食糧自給率の向上国民食糧の安定的確保など、あすに希望がある農業をつくり上げていくためには、第二臨調が言う普及事業の見直し、効率化ではなく、普及事業の理念を堅持し、すべての農民に対する普及活動を充実強化することこそが必要であることを指摘して、反対討論を終わります。
  235. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  236. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより採決に入ります。  農業改良助長法の一部を改正する法律案及びこれに対する北口博君外三名提出修正案について採決いたします。  まず、北口博君外三名提出修正案について採決いたします。  本修正案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  237. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立多数。よって、北口博君外三名提出修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  238. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  239. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対し、北口博君外五名から、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党国民連合日本共産党及び新自由クラブ民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。松沢俊昭君。
  240. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私は、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党国民連合日本共産党及び新自由クラブ民主連合を代表して、農業改良助長法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文朗読いたします。     農業改良助長法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   農業改良助長制度農業技術の革新と普及とを通じ、我が国農業の発展と農村社会近代化等に果たした役割は高く評価されている。今日、農業農村を取り巻く情勢は、水田利用再編対策の実施に伴う農業生産の再編成をはじめ、混住化の進行等による農村社会の活力の低下等緊急に解決しなければならない問題が山積されており、協同農業普及事業の果たす役割はますます重要なものとなっている。   よって政府は、本法の施行に当たり普及事業が本来の使命を達成できるよう左記事項実現に努め、普及事業の推進に万遺憾なきを期すべきである。       記  一 普及事業に係る助成が定額交付金方式改正されることに伴い、物価、貸金等の変動によって普及事業の推進に支障を生ずることのないよう、事業水準予算確保に努めること。  二 定額交付金方式への移行により、都道府県間の事業水準等に不均衡が生じないよう制度運用に万全を期すること。  三 普及職員に対する国の予算定数が廃止されることに伴い、都道府県における普及事業の推進に支障を生ずることのないよう、適正な普及職員数の確保に努めること。  四 普及事業に対する要請が多様化、高度化している現状にかんがみ、農業者の期待に的確に応え得るよう、特に、普及員に係る研修の強化、普及情報システムの整備に努めること。    また、行政と普及の分野を明確化し、創造的な普及指導ができるよう配慮する。  五 農業農村を取り巻く環境が著しく変化する中で、農業者の健康維持増進、生活環境の改善等がますます重要になっている現状にかんがみ、生活改善普及事業充実に努めること。  六 農業後継者育成確保については、これらの者が農業に意欲をもって取り組むことができるよう、その体制整備に努めるとともに、これに必要な施策の推進を図ること。  七 農業改良研究員制度が廃止されることに伴い、普及事業に必要な試験研究の推進に支障をきたさぬよう試験研究実施体制の整備充実に努めること。   右決議する。 以上であります。  決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じまして委員各位の十分御承知のところでございますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。  以上であります。
  241. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  北口博君外五名提出動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  242. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  243. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  244. 山崎平八郎

    山崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  246. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出肥料取締法の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。金子農林水産大臣。     ─────────────  肥料取締法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  247. 金子岩三

    金子国務大臣 肥料取締法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  肥料は、農業生産に欠くことのできない基礎資材であり、農業生産力の維持増進を図るためには、肥料の品質を保全し、その公正な取引を確保することが重要な課題であります。このため、従来から、肥料取締法に基づき、公定規格の設定、登録、検査等を行ってきているところであります。  しかしながら、近年、肥料については、製造方法の多様化等に伴い、配合肥料を中心として、銘柄数が著しく増加し、登録業務量及び肥料の生産業者等の事務量の増大を招き、その簡素合理化が求められるに至っております。また、他産業の副産物の肥料化等に伴い、従来以上に品質の保全に努める必要が生じております。  このような肥料を取り巻く諸情勢にかんがみ、肥料取り締まり行政の効率的な実施と肥料の一層の品質保全を図るための措置を講ずることとし、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、指定配合肥料についての登録制から届け出制への移行であります。登録を受けた普通肥料のみが原料として配合される指定配合肥料につきましては、生産業者または輸入業者は、その氏名、住所等の届け出のみで足り、登録を受ける必要がないものとしております。  第二に、普通肥料の一部についての登録の有効期間の延長であります。現在、登録の有効期間につきましては一律に三年としておりますが、尿素等生産方法の安定した普通肥料につきましては、これを六年に延長することとしております。  第三に、肥料の品質保全措置の強化であります。近年における肥料の生産の実態の変化に対処して、肥料の一層の品質保全を図るため、原料、生産の方法等から見て特に必要がある普通肥料について、登録時の調査内容を拡充し、植物に害があると認められるものについては登録しないことができることを明確化しております。また、植物に害があると認められるに至った肥料につきましては、当該肥料の流通を規制し、またはその登録を取り消すことができることとしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  248. 山崎平八郎

    山崎委員長 補足説明を聴取いたします。小島農蚕園芸局長
  249. 小島和義

    小島(和)政府委員 肥料取締法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、指定配合肥料についての、登録制から届け出制への移行であります。  従来、普通肥料を生産し、または輸入しようとする者は、当該肥料について、農林水産大臣または都道府県知事の登録または仮登録を受けなければならないこととしておりましたが、今回、肥料取り締まり行政の効率化と肥料業者の負担の軽減を図る見地から、品質保全上特に問題のない肥料につきましてはこれを要しないこととしております。すなわち、登録を受けた普通肥料のみが原料として配合される普通肥料であって農林水産省令で定めるものを指定配合肥料といたしまして、これにつきましては、当該肥料の生産業者または輸入業者が、その氏名及び住所、肥料の名称等を農林水産大臣または都道府県知事に届け出るものとし、登録または仮登録を受ける必要はないこととしております。  第二に、尿素等一部の普通肥料についての登録の有効期間の延長であります。  登録の有効期間につきましては、従来、一律に三年としておりましたが、尿素等の普通肥料につきましては、生産の方法が安定し、その公定規格も相当期間これを変更する必要がないと見込まれることから、これらの肥料についての登録の有効期間を六年に延長することとしております。  第三に、肥料の品質保全措置の強化であります。  農業生産の基礎資材である肥料につきましては、従来からその品質の保全に努めてきたところでありますが、近年における肥料生産の実態等にかんがみ、農業者が安んじて肥料を施用し得るよう、今回、品質保全措置を一層強化することとしております。  まず、原料、生産の方法等から見て特に必要がある普通肥料につきましては、登録申請書に植物に対する害に関する栽培試験の成績を記載させることとするとともに、当該肥料について、調査の結果、植物に害があると認められるときは、農林水産大臣または都道府県知事は登録をしないことができることとしております。なお、仮登録の申請のあった普通肥料につきましても、同様に措置することとしております。  また、農林水産大臣または都道府県知事は、通常の施用方法に従い施用する場合に植物に害があると認められるに至った肥料につきまして、必要があるときは、生産業者、輸入業者または販売業者に対し、当該肥料の譲渡もしくは引き渡しを制限し、もしくは禁止し、またはその登録もしくは仮登録を取り消すことができることとしております。  以上のほか、大臣登録普通肥料の一部についての知事登録への移行、その他所要の規定整備を行うこととしております。  以上をもちまして肥料取締法の一部を改正する法律案提案理由の補足説明を終わります。
  250. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で本案趣旨説明は終わりました。  次回は、来る十九日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会