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島田委員 ところで、先ほど申し上げましたが、この事業の実行に当たりまして大変大事なのは林業労働力の確保であります。この状態はいま大変憂慮される状態にある。山で稼いでいる人たちも一生懸命がんばっておるのでありますが、雇用が必ずしも安定していない。そればかりではない。現に稼いでいる人たちの社会的な保障もきわめて貧弱である、むしろないに等しい、こういうことも言えるのではないかと思います。特に、すでに森林組合の中には労務班というようなものも組織されて事業の執行に当たっているわけであります。
きょうは時間がもうなくなってきましたから、主として民間の林業労働の実態について問題の提起をしておきたい、こう思うのです。
森林法の第一条によりますと、「森林の保続培義と森林
生産力の増進」云々、そしてその目的達成のためには、森林を守り育てる林業労働者の問題というのは、
計画制度のあり方とこれはまさに車の両輪的役割りを果たしている、きわめて重要だ、こう思うのです。幾ら
計画がよくても、山を実際によくするという実動部隊がなかったら山はよくならない。こんなことは
あたりまえの話ですね。それは、国有林は国有林労働者が分担していますが、民間における労働者、ここに大きな期待をかけなくてはならない。
ところが、いま言いましたように、雇用が非常に不安定である。社会保障も十分でない。まさにないに等しい。そして、職業病に冒されたり死亡災害の悲惨な実態に置かれたり、こういうことが問題として大変
指摘をされています。ですから、そろそろこの辺で本腰を入れて民間林業労働者の問題に手をつけるべきときではないか、私はこう思うのです。
そこで、森林組合労務班、これは組織されており、森林組合という認知された組合の中におる職員でありますから、ここはちゃんとなっているかな、こう思ったが、調べてみますとここだって大変問題がありますね。たとえば社会保障の
関係でいいますと、社会保険には幾つかございます。労災、失業保険、いまは雇用保険、健康保険、日雇い健保、そして退職金の共済、いろいろあります。この加入の実態を見ますと、これは五十五年度の統計
数字だから少し違っているかもしれませんが、森林組合作業班というのは六万三千七百二十名おる。そのうち、労災はさすがに加入率が高く、六万五千人おって、一〇二・六%加入しています。雇用保険は二万三千人の加入者で三七・二%。健康保険が五千人で七・六%。日雇い健保はなきに等しい。二百九十九人で〇・五%という加入率だから、これは話にならぬ。せっかく中小企業法に基づきます退職金共済
制度が新設されましたが、これも三年目に入っているはずでありますが、まだ一二・九%の加入率でしかない。
組織されたところでさえこの始末です。いわんや民間で働く山の労働者たちが大変な状態にいま置かれていることは、容易に想像できるわけであります。こういう人たちは働くのに精いっぱい。毎日毎日の糧を求めて、自分のことさえも考える暇もなく働き続けている。だから、その結果振動障害にかかったり、死亡災害という大変な状態に追い込まれている。
そもそも死亡災害
一つ見てみても、これは時間がないから私の持っている
数字で申し上げます。間違っていたら反論してください。どれぐらい起こっているか、五十年からずっと見てみますと、五十六年までに約九百人が死んでいます。毎年実に百二十八人が山で働き、とうとい命を失っている。これ
一つを見ても、ほっておけないのではないでしょうか。炭鉱にも大変な大災害が、夕張何とかでも起こった。その後も起こりました。大変な人が亡くなったと社会問題化しているのでありますが、それに比べて、年間平均で言いますれば、山で働く労働者が亡くなっている率は実に六倍にもなっているのです。
それから、問題になりますのが白ろう病に象徴される振動障害。これは、現在認定されている人だけが国有林で三千五百八十七名、民有林では七千二百九十七名。これは認定されている人だけですよ。実に一万人の人たちが職業病に苦しんでいる。これはまさに氷山の一角と言ってもいいのではないか。潜在的にはもっとたくさん職業病に苦しむ人たちがいるということは容易に推測できることですし、現に私
どもはその事実を
承知しているわけであります。認定というところまでいくのはなかなか大変であります。そういう中から、職業病の発生がきわめて異常な状態にある。
私も全国をずっと、ほとんど行かないところはないくらい歩きました。行った先々で民間労働者の皆さんから訴えられているのはこの職業病の問題、白ろう病の問題です。しかも、手を握ってみますと明らかにこれは重症だ、仕事ができる
状況にないという人たちが現にチェーンソーを持って山で仕事をしている、相当数の人たちに私は会いました。だから、私は、山の問題を取り上げますと白ろう病をほっておけないということを叫び続けているわけであります。
そういう人たちに、なぜ健康診断をして認定手続をしないのだ、こんな状態なら廃人になってしまうじゃないですかと言いますと、振動病だなどということが親方に知れたら仕事ができなくなってしまう、取られてしまう、こういう訴えをする方が非常に多いのです。首になっては元も子もない、こういう恐怖感が強く皆さんにあるようであります。だからといって、このままで働くなどということはとんでもないことになるじゃないか、こう言ってもなかなか、きょう食べるそのことに一生懸命にならざるを得ない。きょうは、労働省も
おいでですね。労働省も篤と聞いていてください。これは何回もやったから耳にたこができるかもしれぬが、改めて私はこの実態を訴えておきたい。
特に、これは山形の例でありますけれ
ども、山形県で健康診断を行った結果、治療が必要と判断された人が当時四十五人おりました。この四十五人の追跡
調査を行ってまいりますと、そのうち労災認定をしている者がたった四名しかいない。労働省、よく聞いていてください。一体これはどういうことなのだろうか。そして、四十五名のうち、いまなおチェーンソーを持って山で働いている人が十五人いる。その他の人たちも病気を隠し、もちろん治療はしていない、こういうことであります。
ですから、潜在患者というのは相当いるのではないか、私はこういうふうに思います。なぜこんな実態になっているかということを
お話しする材料として、私は、林野庁がお調べになった中の大事な点だけ抜いて
お話をします。いまのは山形県だけです。これからの
お話は山形県だけの話ではございませんが、一般的にこういう傾向。これは林野庁がお調べになっている。
二時間規制について、四十五年の二月二十八日に通達が出されております。百三十四号であります。以来、十三年経過している。しかし、二時間規制を知らないという人がいる。これは、チェーンソーを使っている人で一二%もいるのです。五千八百十六名も二時間規制なんておれは知らなかったという人がいる。刈り払い機がありますが、刈り払い機に至っては、約一万人の人たち、つまり三〇%の人が二時間規制は知らないと答えている。私が調べたのではないですよ。林野庁がお調べになったのですよ。時間がないから、私はそのことをお聞きする前に、私の手にした
資料によりますとこういうことなんです。これはまさか否定なさるまい、林野庁がお調べになっているのだから。そしてまた、二時間規制を知らない人も知っている人も含めて、現に二時間規制を守っていない人たちがチェーンソーの使用者の中に四二%。刈り払い機では二人に一人が二時間規制を守っていない。
それから、労働省がお決めになった三G以下のチェーンソー、これは政令で決められておりますが、三Gを超えるチェーンソー使用者は、依然として、あれだけチェーンソーの買いかえだとかいろいろなことをやったけれ
ども、まだ六%、三千人も三Gを超えるチェーンソーを使っている人がいる。特に、三Gなんていうそんな政令を知らなかったという人が、驚くなかれ一万五千人、三〇%もいるわけです。これはゆゆしき一大事と言わざるを得ないんじゃないでしょうか。
しかも、林業白書を、四十七年から五十六年までの中の八年間をずっと見てみますと、林業労働の動向に関する林業白書がこう言っていますね。高齢化、女子化、そしてこういう職業病の認定にかかわるような問題を持っている者が相当数いることは認める、特に高齢化、女子化の傾向というのは一層顕著になっていると四十七年の林業白書は述べています。
そして、それではこういう実態を踏まえて、この
対策はどうあったのかといいますと、幾つかここに出されています。特徴的なものを挙げますと、学校教育の充実だとか、通年就労促進
対策で通年就労奨励金の助成を行うとか、林業労働環境の
整備を促進していくための助成であるとか、失業保険の季節的受給者通年雇用奨励金の
制度化を図るとか、社会環境の
整備を
制度的にやっていくとか、大変きれいごとが並べられている。しかし、それが六年、七年たった今日実効が上がったのかといえば、全く上がっていないばかりか、ますます高齢化、女子化が進んでいる。災害も依然として、さっき申し上げましたように、死亡災害
一つとってみても六倍も七倍もの、他の業種と比べて驚くべき死亡災害が起こっている。何にも変わっていないですね。
林業白書なんていうのは、何となしに決められているから書けばいいんだ、こういうものではないと僕は思うのです。しかも、これは毎年同じことを言っている。林業労働力
対策の中で学校教育の充実、同じことを言っていますよ。全部同じことを言っている。ちっとも実効は上がっていない。さっき串原
委員が文部省にただしましたけれ
ども、それは文部省の所管だから私は知らぬ、こんなわけにはいきません。としたら、五年くらいたったら、学校教育の充実という文句ぐらいはなくなってしかるべきじゃないですか。同じですね、これは。しかも、就業者の動向というのは、四十年のときに二十六万四千人、それがどんどん減っている。いまは二十万人を切るような状態ではないか、こんなふうに見ていいと思うのです。
そうしますと、私は、大変残念ながら林野庁は民間の大事な労働者のことを考えていないのではないかと思わざるを得ない。これは労働問題ですから、労働省も
関係がある。この実態について、労働省は
承知をしていますか。
承知をしていれば見解を承り、今後どうするべきかもあわせて
お話し願えればありがたいと思いますが、どうですか。