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1983-03-23 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)     午後三時二十九分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    小里 貞利君       小渡 三郎君    狩野 明男君       川田 正則君    岸田 文武君       北村 義和君    久間 章生君       工藤  巖君    佐藤  隆君       志賀  節君    田名部匡省君       田原  隆君    保利 耕輔君       松野 幸泰君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    伊賀 定盛君       串原 義直君    新盛 辰雄君       田中 恒利君    前川  旦君       松沢 俊昭君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君       石原健太郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   石田 博英君     工藤  巖君   太田 誠一君     久間 章生君   田名部匡省君     田原  隆君   高橋 辰夫君     狩野 明男君   羽田  孜君     小渡 三郎君   竹内  猛君     伊賀 定盛君   阿部 昭吾君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   小渡 三郎君     羽田  孜君   狩野 明男君     高橋 辰夫君   久間 章生君     太田 誠一君   工藤  巖君     石田 博英君   田原  隆君     田名部匡省君   伊賀 定盛君     竹内  猛君   石原健太郎君     阿部 昭吾君     ───────────── 三月二十三日  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三四号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  漁船損害等補償法の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)  水産業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出第三三号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三四号)(参議院送付)  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)      ────◇─────
  2. 加藤紘一

    加藤(紘)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、出席されるまで、委員長の指名により私が委員長の職務を行います。  内閣提出漁船損害等補償法の一部を改正する法律案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  3. 小川国彦

    小川(国)委員 いま提案になりました二法につきまして、農水省、特に水産庁にいろいろ所見を承りたいと思います。  日本漁業というものは国民のたん白資源の半ばをここから生産をしているわけで、非常に重要な位置づけを持っているのですが、現状の漁業というのは非常に行き詰まっている状況にあって、その対策が憂慮されているわけであります。第一次石油ショック以降、日本漁業対策というのはどうも金融対策一本に依存をしてきているのではないか、政策的にもっと抜本的な見直しということを考えなければいけないのではないか、そういうふうに考えるわけです。五十六年度生産額が二兆八千億円というのに対しまして融資残高は二兆九千億円ということで、生産額よりも融資残高の方が上回っている。こういう状況から見ると、まさに日本漁業借金漬け漁業という状況に置かれているわけでありまして、漁業対策というものが非常に立ちおくれていた結果が、抜本的な対策の立ちおくれがこういう状況をもたらしたのではないか。もっと早期に漁業振興対策というものを予見して手が打てなかったものか。そういう反省があるのかどうか、その点からまずお伺いしたいと思います。
  4. 松浦昭

    松浦政府委員 先生指摘のとおり、第一次オイルショック、第二次オイルショックを昭和四十九年と五十四年に迎えまして、過去十年間の間で最も重要な資材でありますところの燃油が約七倍に高騰する。これに対しまして魚価は二・五倍ということで、軒並みに漁業経営が赤字になりまして、このために、いわば緊急避難と申しますか、当面の応急措置という形で、経営安定資金あるいは燃油対策資金といったような制度資金を次々と融資をしてまいりました。その結果、年間の水揚げ高に匹敵する借金を抱え込むといったような状態になったということは御指摘のとおりだと思います。私は、このような緊急な事態におきまして、当時の水産庁がそのような対策をとらざるを得なかったということはわかるわけでございます。しかしながら、それだけをもってしてはとうていこの危機は乗り切れないということは御指摘のとおりだと思います。  そこで、五十七年度から考えました政策は、やはりこのような体質をそのままにした形で金融を行っていくということでは不十分であるという考え方から、いわゆる生産構造再編対策ということを考えまして、特にその中におきましては、まず漁業者の自主的な努力において、場合によっては減船を含んだような生産構造再編成を行う。従来までのように漁獲量は多ければ多いほどいいのだといったようなことではなくて、資源に見合い、あるいは需要に見合った形で漁業再編成していく。そのためには汗もかいていただく。それの見返りで共補償資金なり、あるいは五十七年度から創設をいたしました負債整理資金をお貸ししていくという形をとっていったわけであります。  このような対策と同時に、私、基本的に非常に重要だと思っておりますのは、この基本にありますところの燃費というものをどうやって節減していくかという対策でございます。このためには、技術の再開発ということを通じまして省エネ省力といった形でコストを引き下げていくという努力、これはやはり科学の力をもって乗り切っていかなければならぬということでございますので、さような角度から、本年度予算案におきましても、三億一千万円でございますが、技術の再開発費ということで予算の御要求を申し上げているという状況でございまして、昨今燃油がOPECその他の状況から見ましてやや値下がりの傾向が出てまいりましたので、この機会を通じて特に省エネに努めて根本的な体質改善を行っていく、これが必要であるというふうに考える次第でございます。
  5. 小川国彦

    小川(国)委員 政策的に見ますと、金融による緊急対策ということで、たしか御答弁のように第一次、第二次石油ショック以後の対応に追われてきた、これはわかるわけです。そのために、燃油資金が四十九年から見ましてすでに六回、それから経営維持安定資金が五十一年から見まして七回というふうにやってきているわけです。この経過を見ますと、これはもう緊急ではなくなってしまって、生じたひずみをどういうふうにして糊塗していくかというようなことに追われておりまして、私がいま申し上げているようにもっと抜本的な対策というものを、ずるずると経過をしてくる中ではなくて、もっと早く、こうした漁業全体が重体に陥る前に考えられなかっただろうか。立法的な、政策的な打つ手はなかったのか。こういうことは、漁業後進性とあわせて行政の立ちおくれもやはりあったのではないか、私はこういうふうに考えるわけです。  そういう中でいま御答弁漁業構造再編成という方向考えられたことは、一つの打開の糸口ではある、こういうふうには考えるわけでありますけれども、問題は、マグロなどの大型船はこういう業種指定の中で救済されていくという可能性考えられるわけでありますが、中型とか沿岸漁業業種が果たしてこの中で救済されるのかどうか、こういう問題がやはり今後に残るのではないか、こういう懸念がされるわけでありますが、その点の対策はどのようにお考えになっておりますか。
  6. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに五十七年度予算実施の過程におきましては、この実施運用面におきましてやや通達等がおくれたというようなこともございまして、また同時に、自主計画を立てて減船までやっていくといったような業種ということを考えますと、そこに踏み切っていくには相当な決意が要るわけでございます。さようなことから、現在はまだマグロ漁業が二割の減船ということを決定いたしまして、これに乗りまして負債整理資金あるいは共補償資金を借りるという状況になっているという状況にあるわけでございますが、今後の対策といたしましては、減船だけではなくて、たとえばイカ釣り漁業におきましては、生産性を高めるような、そういう効率的な漁業を営むといったようなことによりまして減船と同じような効果を持つ、そういう対策をとった業種につきましてもこの負債整理資金の貸し付けを行っていくといったようなことも考えておりまして、実はイカ釣り業界明年度からはかなりこの線に乗って生産構造再編対策を進めてくれるというふうに考えておるわけでございます。  そのほかにつきましても、私どもやはり抜本的な生産構造再編が必要であるという業種につきましては、今後とも相談に乗り指導もいたしましてこれに対処していくということを考えているわけでございますが、ただ問題がございますのは、沿岸漁業につきましては果たしてこのような資金で乗り切れるかどうかということにつきましてやや問題がある向きもございまして、私どももこれは工夫しなければならぬなという感じをいたしておるわけでございます。ただ、この場合におきましても、先ほど申しましたような減船、共補償といったようなことがなかなか沿岸には向かないという事態もございますので、これに対しましてはそれにかわる措置として生産性の向上、生産効率化といったふうな措置減船と同様にとり得るということであれば、これに対応する措置として負債整理資金も貸し出せるという制度もございますし、また、農林漁業金融公庫経営維持安定資金といったような制度を活用いたしまして、これらの業種についても振興策を図っていくといったようなことも考えられますので、総合的な政策によってこの生産構造再編ということを行ってまいりたいというふうに考えている次第であります。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 いまの特定漁業再編対策事業を打ち出してきたことは、いま申し上げたように一応評価されるわけですが、問題は、これを業界業種ごとにまとめていく、こういうことになりますと、たとえばマグロとか中型イカ業種とか、わりあい業界ごとに、業種ごとにまとまっている、そういうところはいろいろ減船の問題にしても省力化の問題にしても国が所要の助成をするという面ではやりよいというふうに思うわけです。  ただ問題は、業界単位再編計画を業者全体でつくる場合に援助をするということですが、中小漁業で、そしてこれが二種類とか三種類とかの業種にわたっているものの場合は指定業種になるということがなかなかむずかしいのではないか。たとえばいま非常に問題になっておりますサバなどでも、サバ一本で漁業をやっているわけじゃない。サバを釣りながらまたサンマもとる、こういう複数業種になっている。あるいはまたイカ釣りなどを見ましても、沖合い底びき、これなども地理的に見ると千葉とか茨城、福島、宮城、こういう海域にわたっている。また、サバなどの例を見ましても、たとえば東京の島部、三宅島の方あるいは神奈川とか千葉とか、そういう複数県にわたっている。こういうふうに複数業種にわたったりあるいは複数の府県にわたる範囲になってまいりますと、その中からどういうふうに拾い出して業種指定をやっていくことができるか。あるいはまた、いろいろ経済的基盤の違う各県の漁業漁連あるいは漁業組合、そういうものが複数県にわたっているものを再編事業の中に組み入れていくには、これをまとめ上げていく国の積極的な指導なり努力なりがないと、せっかく打ち出された再編対策事業というものも、いわば大型漁業者に対しての福音にはなったけれども中小漁業者を救う道にはならない、こういうおそれがあるように思うのですが、その点の対策はどういうふうに進められるのか。
  8. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに先生指摘のように、この負債整理資金を貸し出すに当たりまして当初から非常に大きな問題になりましたのは、業種別指定をやっていきます場合に兼業船がたくさんあるわけでございます。兼業船があります場合にこれをどのような指定をし、どのような形でもってユニットとしてまとめてこれを業種対象としていくかということが非常に問題でありまして、場合によっては地域的な一つユニットというようなことも考えてはどうかということも考えてみたわけでございますが、負債の貸し借りという関係考えてまいりますと、ある業態としてまとまった形でもって負債整理を行っていくということを考えませんとこれが処理し切れないということから、いまのような要綱になってきているわけでございます。  たとえばイカ釣りにおきましても同じような問題がございまして、イカ釣り船は必ずしも年間通してイカ釣りをやっているわけじゃございません。たとえばサケマス裏作をやっている場合もあれば、あるいはサンマをとっている場合もある、いろいろな形でございます。しかし、その場合に一つ業種としてまとまりがありますれば、これに対しましてはその業種指定をいたしまして、それによって、裏作をやっておりましても、それをも勘案しながら負債整理をやっていくということを考えておりますので、そのようなユニットとしてまとまる形をひとつ業界として対策をまとめる単位として考えてくれないかということを実はいま指導しているところでございまして、さような指導が徹底してまいりますれば、たとえばサンマサンマあるいはイカ釣りイカ釣りというような形である程度なりのユニットが出てくると思います。それが軌道に乗るもとであるというように考えているわけでございます。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 いま大臣許可指定漁業というのは、大まかに見ますと、沖合い底びきとか以西底びきとか遠洋底びきとか、北洋はえ縄とか大中型まき網漁業とかあるいは遠洋カツオマグロ、近海のカツオマグロ、こうしたたくさんの船を持っている集団、総体的には四千六百隻ぐらいが大臣許可業種としてある。しかし、一方に県知事認可業種が全部では二十三万近くありますが、実質的には知事許可漁業というのは三万ぐらい。こういうふうに考えてみると、四千六百隻の大臣認可の方の漁業についてはわりあい業種も一本化されているし、それから組織的にも規模の大きい漁業を営んでいる方々、こういう人たちの場合は確かに国の再編整備事業の中で対象として救済しよい形が最初からできている。しかし、問題は三万隻に上る地方自治体に散在している中小漁業をどういうふうにこの業種指定の中に織り込んでいくか、これは非常に至難のわざだ。それが地方自治体任せであってはこの再編対策事業の本当の趣旨が生かされないのじゃないか、そういうことに私ども非常に懸念感じるわけですね。その辺のところをさらに掘り下げて水産庁当局として進めていく対策を私どもは期待しているわけでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  10. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに知事許可漁業というものは非常にたくさんの隻数もございますし、現在この事業に乗ってくるというのは比較的大型の、共補償能力もあるマグロ漁業といったような大臣許可漁業に限られているという状況はあるわけでございますが、私ども知事許可漁業を決してこの対象外に置いているわけではございません。知事許可漁業でも一つまとまりがあってユニットとして共補償関係を結び、また減船計画を立て、あるいは生産効率を上げるためのまとまりを持ってこの事業に乗ってもらえばその対象にするわけでございます。  かような点で、まだ十分な指導あるいはこの考えが十分普及していないという点もあってさような問題が起こっているかもしれませんが、今後とも国といたしましても、県を通じまして十分その趣旨は徹底いたしまして相談には乗ってまいり、このような業種についてもこれを適用していくということを考えてまいりたいと思う次第でございます。  ただ、問題がございますのはやはり沿岸の問題でございまして、たとえば沖底のような場合には県単位でまとまらなくても海域ごとというような形でこれをまとめて業種指定をしていくといったようなことも考えているわけでございますが、非常に零細な沿岸漁船ということになりますと、なかなかこのまとまりがむずかしいという点は御指摘なさったとおりであろうと思います。こういう点につきましては、どのようにするかということは実はわが方もいろいろと考えてみなければならぬというふうに思っているわけでございます。これにつきましても決して道は閉ざされているわけではございませんし、また、なかなか共補償といった形で乗りがたい沿岸漁船につきましては、このような形よりもむしろ農林漁業金融公庫資金を活用していただくといったことの方が早道ではないかというような感じもいたします。さような点は今後検討してみたいと考えております。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 結局、農水大臣承認を得たもの、こういうものが特定業種になっていく、その農水大臣承認を得たものというのが非常に抽象的である。具体的に一体どういうものが入ってこられるのかというのがわからないということを末端自治体では言っておるわけですね。特に業種単位通達から理解していくのが非常にむずかしい。それからまた、借り入れ条件とか借り入れの手続、それから整理対象債務というものはどういうものが入ってくるのか、これも非常に条件が厳しいように思える、こういうことで、せっかく国が打ち出したこの対策、方針は、ひとり国だけではなくて、地方自治体協力、それから末端漁業協同組合協力の中でこの事業が成功していくというふうに考えられるわけで、農水大臣承認を得たものというのをもう少し具体的に末端自治体なり協同組合方向性として指示できないものか、こういう声があるのでございます。
  12. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに非常に難解な通達であることは事実でございまして、私も何遍も読み直しましてよく内容がわかったというような状況でございまして、これを地方自治体なりあるいは協同組合なりに徹底しなければならぬわけでございます。そして、それのさらに先に漁民の方々の御納得を得るということが必要でございまして、これからその努力をやるところでございますので、まだなかなか末端までそれが浸透していないというように思うわけでございますが、大臣指定ということにつきましては、まずこの自主的な計画を立てるという意欲のある業種ということが前提でございまして、どのような業種が手を挙げてくださるかということがまず最初にあるわけでございます。しかし、そのような手を挙げていただくということを前提にいたしましても、このような恩典がありこのような計画を立てるということがあなたの業種にとっては非常にいいですよということを啓蒙することがまず先にあろうと思います。  さような意味で、まだまだこれからいろいろな指導相談に乗っていかなければならぬということがございますので、先生のおっしゃられることまことによくわかるわけでございますから、さような点で十分今後とも地方公共団体等を通じましてこの趣旨徹底を図っていきたいというふうに考える次第であります。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 長官おっしゃられるように手を挙げる業種が出てくればいいのですが、どうもいまの漁業を見ると、もう虚弱児童になってしまっておりまして、栄養不良で手を挙げる元気もないというような状況が、本当に厳しいものが私ども感じられるわけです。本年度マグロ適用になった。しかし、本年度以降不振業種として先ほども申し上げました中型イカ釣り沖合い底びきあるいは北海道小型サケマスとかあるいはサバ釣り漁業とか、こういった非常に不振な業種があるわけなのですが、先ほども御答弁あったようにそれが複数業種になっている、そういう場合でございますけれども、やはりイカ釣りとかサバ釣りとか小型サケマスとか、こういう少なくも複数県にわたってどうやら一つのまとまった業種にはなっている。しかし、裏作があったり複数業種があったりするわけですけれども、その中の主要なものを拾い上げて、自治体任せではなくてやはり国が沿岸漁業なり中小漁業を振興させるという観点から踏み込んだ対策というものをこれから思い切ってやっていただきたいというふうに考えるわけです。そこまでの決意とか勇断を持って臨んでいただきたいと思うのですが……。
  14. 松浦昭

    松浦政府委員 私どもも、ただいま先生が挙げられました業種、たとえばマグロのみならずイカ釣りカツオ、それに底びき、それからサバ釣りといったような業種、さらにはサケマス、特に日本海のサケマス、これは八県くらいにまたがる業種でございますが、こういった業種につきましてこのような生産構造再編対策ができればその効果が非常に大きいということで期待もいたしておるわけでございますけれども、その問題はユニットとしては成り立つものであろうというふうに私は考えますので、適用の面においてはいろいろな細かな問題がありますが、一番深刻な問題は、私、耳にいたしますのは、共補償能力がないという業種がかなりあるという点でございます。逆さに振っても減船のための共補償ができないので、そのために自主的な計画が立ち得ないという業種がかなりあるようでございます。  しかしながら、私どもとしましてはこのような自主的な努力というものを前提にいたしまして、その努力に応じてこの負債整理資金という長期低利資金を貸していくというたてまえでございますから、やはりそこは業界の方も汗を流していただくということをお願いいたしたいというふうに考えるわけでございます。さような意味で、今後とも十分に相談には乗ってまいるつもりでございますから、ほかの業種にもマグロのみならず拡大していくということをわれわれの大きな目標にいたしまして、今後とも指導に努めてまいりたいというふうに考えている次第であります。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 一番問題は、いま答弁の中で出てきた共補償能力がない、言うなれば弱い者同士であるということ、お互いを団結して道を見出すというところに結集できればいいのですが、結局弱い者同士散り散りばらばらになってしまっているというのがいまの漁業者の実態なんじゃないか。だから、そういう意味では、かなり水産庁当局もこの辺、自主的計画がもちろん下から盛り上がってくることも必要ですけれども、手を差し伸べて、そういう自主的な計画をいま申し上げたような、あるいは長官の御答弁にあったような業種について、そういうものを官民合わせてつくり上げていく、そういうお気持ちをぜひ持っていただきたいと思うのです。  この点は、大臣、いかがでございましょうか。大臣もいろいろこういった漁業の面に携わっておられて、大臣の方は何か大型漁業の方で非常に安定した方のように承っているのでありますけれども、やはりこういった中小漁業の結集という中から救済策を見出していくことにはもう一歩踏み込んだ対策をお考えいただきたいと思うわけでございますが、いかがですか。
  16. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御指摘の点、大変当を得た御意見でございます。私も中小業者ですから、沿岸をいかにして今後伸ばしていくかということを考える場合、いろいろ政策もあると思います。松浦長官が一生懸命この問題に取り組んでおりますので、私は大いにひとつこの長官のしりをたたいて、私が在任中に何か一つ目立つものをやっていきたい、このように考えて取り組んでおります。
  17. 小川国彦

    小川(国)委員 望むべくは、その目立つものをこの漁業振興対策の中でぜひ実現をしていただきたい、こういうふうに要望申し上げておきたいと思います。  それから、時間が制約されておりますが、いま全国の単位漁協が約二千くらい、沿海の出資漁協があるわけですが、いずれも表面的な欠損、含み欠損、固定化した債権というもので見ますと大変な赤字経営の中に漁協も苦しんでいる。もちろんそれは末端漁業者の苦悩がそこに反映しているのだというふうに思うわけです。かつては板子一枚下は地獄と言うけれども、いまの漁業は板子の上も、戻ってきてもやはり経営難、行き詰まりの中の地獄だというふうに私は思うのです。  そういう意味では、かつて漁協の整備促進法、再建整備法、こういうような法的措置によって再建を図ってきた。しかし、いまのたとえば緊急融資だけでも三千億になんなんとする状況を見ますと、あるいはまた生産高を上回る負債状況を見ますと、この辺で漁業基本法のようなものをつくって、漁業者にも将来のあるべき姿をしっかりとビジョンとして与えられる、そういう漁業基本法のようなものをつくって、先ほどの一時的な金融対策、それから今度は政策的な対策まで進んできたわけですから、さらに法的な対策にまで歩を進めて、農業基本法のように漁業の目標をしっかり定める。それから目標達成のために必要な施策を講ずることを義務づけていく。あるいは財政上の構造として、法制上財政上の措置もこれを義務づけ、講じていく。こういった漁業基本法の制定といったようなものもこれからの農林水産省の仕事として、農業に対するに漁業、非常に立ちおくれた原始産業的な形態を残している漁業、それからまたいまのオイルショックの中で、近代化の中で立ちおくれていく漁業、これに将来の日本の食糧確保という観点からの展望をひとつこういった漁業基本法制定のような考え方の中でつくれないものか、こういうふうに思うわけでございますが、この点、いかがでございましょう。
  18. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに二百海里規制の強化あるいは燃油価格の高騰といったような漁業の情勢、非常に厳しい変化をいたしておりまして、漁業の不振が続いているわけでございますが、この情勢というのはきわめて流動的でございまして、将来に向けてかなり不確定な要素が多いと思います。したがいまして、私どもとしましては、当面、ただいま申し上げておる漁業生産構造再編成あるいは省エネルギーの対策の推進といったようなことで明るい展望を開いていきたいということで、せっかくの努力を続けているところでございます。  そこで、お尋ねの漁業振興のための基本法でございますが、実は先生も御案内のように、沿岸漁業等振興法という法律がございまして、漁業の場合には農業と違いまして資本漁業というものも入っているわけでございますが、こういうような大規模な漁業を除きました沿岸漁業等につきましては、これは中小漁業も含んでいるわけでございますが、農業基本法と同じような法律の制度を持っておりまして、水産資源の維持増大、生産性の向上、漁業経営の近代化、水産物の流通加工の合理化といったような各般にわたる施策の基本方向というのは、この法律に全部書いてあるわけでございます。いわば農業基本法の沿岸漁業版といったような法律があるわけでございまして、これに基づきまして実は具体的な対策を講じているということがございます。  それからまた、漁業再編対策ということにおきましては、漁業の構造改善あるいは漁船隻数の縮小等につきましても漁業の再建整備を図っていくということで漁業再建整備特別措置法という法律がありまして、一応法体系としては整っている形になっております。したがいまして、沿岸につきましては、このような沿岸漁業等振興法という基本法に匹敵する法律に従いまして今後の政策を展開してまいりたいというふうに考えている次第であります。
  19. 小川国彦

    小川(国)委員 時間がございませんので、法的な問題の論争についてはまた後に譲りたいと思います。  最後に、大型中小型の調整の問題、たとえば大型のまき網などを見ておりますと、サバ釣り漁業とまき網漁業との調整というものが一つあるわけでございます。大型まき網のように魚群探知機で一網打尽にとれる漁法と、釣りとかたもですくう漁法でやっているサバ釣りですね。これは何か昔のことわざで網大尽と釣り貧乏という言葉があるのだそうでございますが、どうも網大尽の方が釣り貧乏よりも魚価の面でも漁獲量の面でも優位に立ってしまう。何か大臣の方も源福丸という網大尽の方に属するようなんでございますけれども、やはり大臣におなりになったらこういう点の調整もぜひお考えいただきまして、網大尽と釣り貧乏ということがないように、一網打尽にとる方もある程度自主規制していただきたい。  伺いますと、たとえば千葉県の銚子の沖合いで中小小型船がイワシの大群が来るのを待っている、そうすると大型のまき網船がどっと来てどさっと網でとってしまう。捕獲量が一〇対一の割合になってしまう。一〇〇対一という話もございますが、そうすると、量をたくさん持っている方が安い値段で売れます。そういうことで、この調整もぜひひとつ大臣の課題として取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。
  20. 金子岩三

    ○金子国務大臣 適切な御提言、ひとつ検討に値すると思います。
  21. 小川国彦

    小川(国)委員 では、終わります。
  22. 加藤紘一

    加藤(紘)委員長代理 次に、田中恒利君。
  23. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 水協法の問題を中心にして、若干御質問をいたしたいと思います。  大臣御出席でございます。大変長い間水産業の問題には精通をされていらっしゃるし、水産関係の諸団体の長い経験もございますが、今日の水産業協同組合、特に漁協でございますが、この漁協についての金子大臣の長い経験の上から、わが国の水産業の進展の上に大臣として今後どういうお考えでさまざまな政策を推進していただけるか、まずこの点を最初にひとつお尋ねしておきたいと思うわけです。     〔加藤(紘)委員長代理退席、玉沢委員長代理着席〕
  24. 金子岩三

    ○金子国務大臣 協同組合経営は、私も戦前から漁協長をやっておりますが、いろいろその漁協漁協、その地域、そして主たるその組合における漁業種類等によって漁協の経営内容が大変変わっておるようでございます。農協が営農にどれほど力をなしておるか、近代的な農業協同組合がかねてわれわれが考えておったものとは大分変わってきたというような感じがしますように、漁協においてもやはりそういうふうな漁協の実態から少しかけ離れて、購買、販売、いわばスーパーみたいなことに専念しておるようなものもときどき見受けます。あくまでやはり漁協は漁業の振興をいかにして図るか、不振漁業をどうして救済するかといったような漁業の安定、それから今後の成長発展を指導する役割りを果たさなければならないと思います。
  25. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 漁協が漁民、漁業者に焦点を置いて必要な所得向上の諸施策を図っていくというのが協同組合の基本である、こういう大臣の御見解、私も同感であります。本来、漁業協同組合は戦前から一つは漁場の管理、今日法律的には漁業権という形で一定の法律上の権利を持っておるわけですが、この漁場、漁業権をどう管理していくかという問題。それから、戦前には多分問屋資本との対決という意味で販売事業、こういうものでつくられて、戦後、水協法を通して民主的な組合運営というような要素が入ってきた、こういうふうに私は理解をしておるわけでありますが、その後、沿岸遠洋を問わず、漁村、漁業経営の異常な変化の中で、いまやはり漁民とは何か、こういう問題が問われておると思うのです。  この水協法ではたしか従事者は年間九十日から百三十日、こういう規定が組合員の資格、こういうことになっておるわけですが、すでに部分的にはこの組合員資格を引き上げるべきではないか、こういう主張も出ておるやに聞いております。特に各地の漁業の漁場の問題をめぐって、漁業権の放棄に関しましていわゆる海で漁業者として生きる人々とほとんど漁業の比重の少ない方々との間で、特に漁業権の補償問題などをめぐっては実はさまざまな出来事が起きておりまして、この漁業協同組合の組合員資格というのは一体どうあるべきなのか、海で生きて漁場で生きる人々とそれほど比重の少ない人々との間で、特に補償金などの問題がぶら下がると、正直言って大変な利害の対立を示す。数が大きいから、海が失われるというようなところも沿岸ではたくさん見受けられるわけでありますが、この問題について、水産庁は漁家とか漁業協同組合の組合員の資格といったようなものについてはどういうお考えで今後臨まれるのか、この際ひとつお尋ねをしておきたいと思うわけです。
  26. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業協同組合は農業協同組合と同じ協同組合組織であるわけでありますが、やはりそこにはある種の差があると申しますか、特色があるという感じがいたします。  それは何かと申しますと、一つは、農業の協同組合、私も経済局長をやっておりましたので、農協課の所管をいたしておりまして、ある程度まで勉強をいたしてきたわけでございますが、農業の協同組合と比較いたしますと、その組合員の組織の均一性と申しますか、そういったものがかなり違った要素を持っているという感じがいたします。特に、協同組合法の中で規定がなされておりますように、この組合員の中にもいろいろな方々が入っておるわけでございまして、専業的な漁業の従事者もおられますし、それからまた兼業的な漁業の従事者もおられます。さらには、ある程度まで企業的な漁業経営を営んでおられる方、この方も組合員の資格を持っている。もちろん非常に大きな方は除いております。さらには漁業従事者、いわば雇用関係にあられる方、こういう方々も含めましてこの漁協の組織というものが成り立っている。非常な多様性を持っておる組織だという点が一つの特色であろうかというふうに考えるわけでございます。  これは、農地改革以降におきますところの均質的な農業者、畜産の経営とかあるいは園芸とかにおきましては大分別の形態が出ておりますけれども、一般的には均質的な農民の協同組合組織というのとはやや違った要素があるというふうに考えざるを得ないと思います。  それからいま一つは、先生いみじくも御指摘になりましたように、農業の協同組合と違っております点は、いわゆる漁業権の管理主体になるという点でございます。これは明らかに農業協同組合の場合にはない点でございまして、特に古来からの、いわば農業の場合には入会権にも匹敵すべき共同漁業権というものの管理主体になっている、こういう点も非常に大きな違いであろうかと思うわけでございます。  そこで、お尋ねの組合員資格の問題でございますが、確かに先生おっしゃられますように、いわゆる組合員資格の純化論と申しますか、できるだけ専業的な経営の方々を中心にしてこの組合員資格を与えるべきである、現在この組合員の資格が九十日から百二十日ということで定款で定めるということでございますが、これをもっと引き上げるべきであるという御議論があることも私承知をいたしておるわけでございます。しかし、一方におきまして、このような純化論に立ちますと、今度は漁業権の現実の行使を行ってまいります場合に、それでは従来から権利を持っていた方々に対しまして、これを准組合員の資格に落としてしまうということになりますと、民主的な運営と申しますか、表決権を持たないかっこうになってしまいますから、それでこのような漁業権の行使に当たっての民主的な運営ができるかという問題もございます。このように、純化論につきましては長短いろいろな議論があるというふうに考えるわけでございます。  このような正組合員資格の問題につきましては、組合員の性格を決めるという非常に重要な問題でございまして、私もまだ水産庁として一定の方向を出し得るまでの結論を得ていないという状況でございます。しかし、一方におきまして、この問題は、今後の漁業の実態あるいは漁村の実態を考えますると、決して避けて通れない問題であるということもまた先生指摘のとおりでございます。私どもとしていま結論を持っていないということを申し上げたわけでございますが、鋭意この問題は研究の課題とさせていただきまして、私ども十分に詰めてみたい、その上でこの問題につきましても的確な対応策というものを検討していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  27. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いま長官がお話しになったように、これはなかなかむずかしい問題だと思います。ただ、基本的には漁業協同組合も農業協同組合も、やはり農業なり漁業なりで生きる人々が中心になって動くということが原則であることには間違いないと思うのです。しかし一方、後でいろいろ御質問をしなければいけませんが、信用事業とか共済事業とかいうことになると、地域的な性格が、地域組合的な性格が非常に強いし、漁協などでも、貯金をするのは零細な漁民で使うのはいわゆる中小の企業漁家のような、そういう特徴が極端に出てきておるわけです。零細な漁民の所得の源泉は何だといったら、漁業収入よりも兼業収入なんかなんですね。その辺がミックスせられて、信用事業なり、後でいろいろ議論したい共済事業ども私は動いておると思うのです。ですから、地域的な性格を持った、漁協も農協も森林組合も同じようなものですが、そういうものであるというような立場から立つと、なかなか割り切りにくい面はあるけれども、しかし、漁業の発展という意味に立てば、主体はやはり組合員でありますから、そういう組合員はきちんとした漁業者というところに焦点を置いて漁協の構成単位なり政策というものの対象が向けられないと、やはり効果も出てこない、こういうように思うのです。そういう意味で、非常にむずかしいと思いますが、これは詰めていただきたいと思うのです。  それから漁業権の問題でありますが、私は余り大きな漁業を承知しておりませんが、私も大分小さいときから魚をとった経験があるわけですが、どうもこれは非常にむずかしくて、特に漁協というものが沿岸漁業を中心にして漁村の大きな経済単位として動かなければいけないと私は思うのです。ところが、漁協の中でもこの漁業権が、漁協が管理をしておるものがあるかと思えば、組合員管理のものがある。  私どものところは真珠養殖が非常に盛んなところでありますが、真珠養殖でも大型の定置であるとか、個々がやっておる、組合がまた管理しておる共同の漁業権というものもあるわけです。許可漁業権というものがある。そういう形で非常にばらばらでありまして、これも非常にむずかしいと思うけれども、漁協を中心として漁場なり漁業権というものの管理を任せていくという方向が必要じゃないか。地域の漁業開発、管理、特にこれからは海の汚染防止の問題など全体的に取り組まなければいけない問題がたくさんあると思うのです。非常に必要じゃないかと思っておるわけですが、この漁業権をできるだけ漁協に集中するというと大変あれですけれども、漁協というものに主体を置くというような考え方を今後とられるような意図があるのか。この問題についても長い間水産庁は検討してきたと思うのでありますが、あわせてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  28. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいま先生おっしゃられますように、漁業権の管理というものをどのような団体に持っていくかということにつきまして、戦後の漁業改革を経まして、長い間これは論議され、また、現実に漁業協同組合がその主体となるケースも相当あるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、漁業のそれぞれの実態あるいはその地域の実態に応じまして、協同組合営がいいところもあれば、あるいは非常に歴史的な伝統もございまして個人営が残っているというところもございまして、さような実態に即した形で漁業権というものを運用しませんと、この運用がうまくいかないということもございます。したがいまして、私は、先生おっしゃいますように、業種によりあるいは地域によりましては組合営というものがいい場合もあるということは当然わかっておりますけれども、しかし、業種によってはその実態に応じた漁業権の主体というものを考えてまいらなければならぬというように考えておる次第でございます。
  29. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は余り大きな外海なんかのあれはわからないですけれども沿岸漁業については、私などもいろいろ調べてみると、漁協がりっぱで主体がきちんと確立せられておりましたら、いろんな漁業権がありましても漁協がきちんと管理しておるのです。そして、全体の組み合わせができておるのです。ところが、漁協が弱いというか、しっかりしていないものだから、いわゆる大きな漁業者がいろいろ動いて、むしろその全体の統制が乱れておるというようなところがありまして、これは漁協の力の問題が非常に大きいと思うのです。  もちろん、遠洋なんかいろいろありますよ。大きな、両県にまたがるようなものについてはまたいろいろあれがあると思いますが、私は、沿岸漁業については漁協を軸とした漁業権のあり方というものが想定されてしかるべきじゃないか。こういうことを、私のそれほどたくさんな経験ではありませんけれども、身近な状況を学んだ範囲で実は考えておるものであります。ちょっと水産庁長官考えと——実態に応じてという、その実態とは何だといったらありのままのものをということになりますと、そこでは見通しはこうしていくんだというものがないと思うのですね。漁業権の問題はむずかしいですよ。むずかしいけれども、こうしなければいけないというものを出さないと、この漁業権問題というのは一番の大きな土台になっていると私は思うのですよ、いい部面も悪い部面も。だから、そこのところに切り込んでいかなければ本当の漁業政策というのは生きてこぬのじゃないですかな。どうですか。
  30. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに、私も水産庁長官を拝命いたしましてから、わりあい体のあいたときはできるだけ沿岸の浦を回ってくることを心がけましてあちらこちら参ったわけでございますが、やはり協同組合で非常にうまく管理されているところはたくさんございます。それは私よく存じておる次第でございます。  しかし、漁業権の問題ということになりますと、非常に長い歴史と、また権利関係という非常に法的な問題も入ってまいりまして、そこを一方的に非常に強い一つの線だけでもって切り込んでしまうということにつきましては、いろいろな問題が起こってくる。たとえば定置の問題なんかにつきましても、いろいろな歴史がございます。そのことも私学んでまいりましたので、ここでは、確かにそのような漁協が強くてその権利関係を民主的にうまく運営できるところについてはそういう方向へ進めていくべきであるという先生のお考えには私同感でございますけれども、やはりなかなかむずかしい地域も業種もあるということについては御理解をいただきたいという趣旨で申し上げている次第であります。
  31. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから漁協の合併でありますが、これはもう御承知のようなことで、四十二年に漁協合併助成法ができてから三度にわたって当委員会でも延長をやってまいりましたが、さほど延長した効果が出ていない。四十五年末の組合数三千四百九十七、五十五年三千三百九十八、ふえたのもあるのでしょうが、なかなか思うような形で進んでないわけですが、せっかく法律をつくって予算もついておるのですが、一体漁協の合併が農協などに比べるとそれほど進まないという壁は何か。そして、それを農水省はどういうふうに持っていくのか。これはあと六十年三月までですから、もうそんなにたくさんないわけですけれども、やはり合併は必要だと思うのです。必要だと思うのですが、漁協の場合はいまの漁業権と同じように非常に壁が多い。漁業権も一つの大きな理由でしょうが、しかし、これは何とかやらなければいけないと思うのですが、その原因は一体どこにあると見ておるのか、それから本気になってやってきたのか、この際はっきりひとつ御答弁いただきたいと思う。
  32. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業協同組合合併助成法が四十二年に施行されてから合併件数が百六十一件でございまして、合併参加組合数が四百四十八組合、実は立法当時に見込んだ数の三五%しか達成されてないということは事実でございます。  これがどうしてこのような進捗率になっているかということでございますが、いろいろ言われておりますけれども一つは合併予定組合間の漁業権行使につきましての利害の対立、それから合併予定組合間の漁業形態、漁業生産力の相違、組合間の財務内容の相違、組合間の経営規模、経営方針の相違、組合間の地縁性の弱さといったようないろいろな要素があると言われております。しかし、率直に申しまして、いろいろと話を聞いてみますると、農業協同組合にない特殊な問題、それは漁業権の問題であるというふうに思うわけでございます。これをどのような形で解決するかという指針がない限りは、この三五%という壁を破りまして目標を達成するというわけにはなかなかいかない。そこが農協との違いであるという感じがいたすわけでございます。  そこで、この漁業権という漁協に非常に特殊な、またむずかしい問題にどう切り込むかという問題がまたここで出てくるわけでございますが、これにはいろいろな先生方の説がございまして、私、どれが正しいということがまだ判断できないわけでございますけれども、現在の合併に当たりましては、やはり漁業権が、合併組合において第一種共同漁業権と申しますか、たとえば旧町村単位の組合が合併して新町村の単位になったといった場合に、その旧町村単位の組合が持っていた漁業権がその期間だけ存続するという形にいまなっているわけでございます。その期限が切れますと、これが従来の漁業権者にとりましては非常に心配、不安な状態に陥る、こういうことが一番大きな問題であるということがございます。  そこで、一説によりましては、いっそのことこのような漁業権だけ切り離してしまって、合併は合併でそのほかの機能に着目した協同組合の合併を進めていけば問題は解決するじゃないかといった説もございます。それからまた、この存続期間そのものに切り込んで、これをある程度まで延ばしていくといったようなことを考えれば問題は解決するのじゃないかといったような考え方もございます。どの説が正しいか、また、どれが最も実態に即応して、しかも生産基盤を伸ばしていくことのために有効であるかということは、これまたまことに申しわけないわけでございますが、まだ私ども判断かつきかねている問題でございまして、実は率直に申しましてわが水産庁協同組合課はいままで金融対策に追われておりまして、この協同組合の問題に切り込むところまでなかなかいっていないというのが実情でございます。  現在、金融問題の研究会もいたしまして、金融問題は相当詰めておりますが、これからはこういった問題にも切り込みまして、いろいろな説があり、いろいろな問題を解明しなければならない問題でございますが、さような問題につきましても取り組んでまいりたいというのが私ども考えでございます。しかしながら、一方におきましてできる合併は推進していかなければならぬということでございますから、合併を推進していく方針には変わりないということでございます。
  33. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 漁業権の問題は漁業者の利害に直接関係する大変大きな問題でありますから、むずかしいということはよくわかりますが、それにしても合併の問題は非常に鈍い感じがする。これは、理由はいまいろいろ挙げられたようなことだと思いますが、主体的に漁協の系統組織の中でこういう組織の合併とか、いま大臣指導事業といったようなもので組合員経済を高める、そういう視点でというお話があったわけですが、そういうものがやはり十分でないのじゃないか。この合併というのは、私は農協の合併を大分仕上げた組ですが、これは正直言ってなかなかむずかしいので、ばかにならなければ進みません。そういうムードというわけじゃないが、そういう空気をつくっていくエネルギーを出すところがちょっと希薄なんじゃないか。それは、漁協の系統組織の中に指導機関というか、指導部というか、指導部署というものがどうも明確になっていない。今度監査士というものが置かれることになって、これがどういうふうに強化されていくかということが問題でありますが、そういうところにも大きな理由があるように思うのです。そのことは水産庁もやはり同じような考えで、いま水産庁協同組合課は銭のことでそこまで頭が回らぬとおっしゃられたけれども、そんな気がしてならない。  私、いまここに漁協の業務報告書の基準様式というのをもらっておりますけれども、これを見ると、たとえば大臣はいま漁民の漁業の振興中心と言われたんだが、この業務報告書は、一つには漁協の管内の漁場というものは一体どういう漁場なのか、その漁場の管理の漁業権というのはどういう漁業権をこの漁協は持っておるのか、漁船はどういう種類の漁船がどれだけあるのか、こういう生産条件生産手段については、前提としてこれは必要なんですよ。どれだけの販売をし、魚をどれだけ売り、どれだけ資材を買うか、これは載っておりますよ。しかし、その前提となる海面の面積であるとか——私は農林水産統計で、漁場の面積というか、その数字を見たことがないのです。漁業権の種類であるとか漁船であるとか、そんな生産条件というものはこれにはないんですね。それから事業の概況というのがある。これを見ると、信用事業、購買事業、販売事業、ずっと書いておりますが、一番最後に指導事業というのを書いておりますね。こういう書き方もおかしいんだ。大体、指導事業というのが一番先にあって、この指導事業に基づいて購買、販売、いろいろな水産加工事業がどう位置づけられるか、こういう指導がなされないと、本当に漁協というものは漁民、組合員というものに焦点を向けた組合にならないんですよ。こういう様式は全国的に統一しておるわけです。これは水産庁指導なんですけれどもね。こういうものは、どう考えても漁協に対する指導事業というものについて、お役所も含めて私は非常に明確になっていないと思うのです。そこのところを考えを改めさせてもらわないと今日のこの情勢に対することはできないのではないか、こういうふうに考えるわけですが、いかがなものです。
  34. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいま先生おっしゃられましたのは漁協等の業務報告書をごらんになったんじゃないかと思いますが、この様式につきましては、経営の合理化あるいは経理の適正化を図るという見地から、水産庁として基準様式を設定いたしましてこれを作成するように指導しておるわけでございますが、これは業務報告書でございますので、組合の事業なり財産なり財務の状況というものを明らかにするということで、生産手段まで特に記載するということを要求していないわけでございます。  ただ、私、現実に末端の組合に出張して行ってまいりまして、参事さん等から報告を聞きますと、漁船がどのような現状であるか、それからまた漁業収入、漁獲量その他どのぐらい上がっておるかということはきちんととっておりまして、これにつきましては相当きちんとした台帳がございます。したがいまして、漁業協同組合の段階におきましては、こういった施設あるいは漁業権あるいは漁船といったような漁業勢力と申しますか、そういったものは的確にとらえているということは、実態として事実でございます。私どもとしましては、仮にそういうことがまだ徹底していないところがございましたら、もちろん指導してまいるにやぶさかではございませんが、私が行った限りにおいては、かなりそれは的確にとらえていたということは言えると思います。  ただ、先生指摘指導事業というものが十分じゃないんじゃないかということでございますが、かなり重点を置いて全漁連指導しておりますけれども、農協に比べますればこの指導事業の分野というものがまだまだ弱体であると言わざるを得ない。私、実際に浜に参りましてそういう感じがいたします。と申しますのは、指導事業というのは賦課金でやってまいる事業でございますので、農協のように財政基盤が非常に強力でない漁協につきましてはなかなかこの指導事業というものが推進できないということが事実でございまして、たとえば営農指導員というようなものが農協においては末端の組合に皆置かれておりまして営農の指導もやっておりますが、なかなかそこまで手が回っていないというのが漁協の実態であるというふうに思います。  さような面で、今度監査士制度も設定いたしまして指導事業の強化というものを図ってまいりたいと考えておりますので、この分野の強化も図ってまいりたいと思います。しかし、要は漁協自体が強くならないとなかなかここまで手が回らないというのが実態ではないかと思いますので、さような面での漁協の経営基盤の強化ということがわれわれにとって一番重要な課題ではないかというふうに思う次第であります。
  35. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いや、単協、単位漁協へ行くとそれは皆知っておりますよ。知らなければ仕事になりませんからね。そういうものを、業務報告書だからそれは要らないということは間違いだと思うのです。それは業務報告書だから要るんですよ。今度、監査士でしょう。農協も実は十分じゃないです。農協の場合を見ますと、大体半分ぐらいはそういうものは出てきますけれどもね。この監査士を今度置きますね。漁協指導監査士と書いておった。私は非常にいいと思う。農協の監査士は、あれは監査士だけですからね。指導監査士と書いておる。何を指導するんだということをぴしゃっとさせてないと、今日の協同組合というのは、農協も含めてでありますけれども、経営主義に突っ走る、そういう危険性が非常に多いわけなんです。そして、特に今日、漁村をめぐるこういう厳しい経済環境の中では、たくさん水揚げをし、たくさん利益を得、購買、販売、今度は共済、信用事業といろいろなところへ手を入れて、そして肝心の漁場であるとか水であるとか水質であるとか、あるいは漁民の協同組合理念というか、考え方、そういうものは手抜かりになる客観情勢が非常にあるわけですよ。だから、私は、大臣がそういうところへ目を向けてやらなければいけないと最初言ったんだと思うのです。  であるならば、そういう方面の基礎データというものこそ水産庁は集めなければいけないのです。そういうものに基づいて販売、購買事業はどう進められているかということを監査士が監査をしなければいけない。監査士というのはただ財務がバランスがとれておるか、貯貸率がどうであるとか出資金がどうであるとか、そういうことだけやっていたのでは、これは単なる漁業協同組合の経営合理化にとどまってしまうのです。それであれば、これは漁業会社であろうが変わらないわけですからね。そうじゃないはずなんだから、だから、私はそういう前提になるものを業務報告書や何かに載せるべきである。指導事業なんかというものを事業報告の一番最後につけ足しのように書いておくということは、それは金はないですよ。賦課金ですから金がないし、漁協の場合収益も余りないからそれはわかりますけれども、やはり位置づけだけはぴしゃっとしてやらないと、これはやるのは大変ですからね。だから、漁協の指導体制というものについてはそういうことができるような指導をやってもらわなければいかぬと思うのだが、どうもちょっとあなたはあいまいだな。
  36. 松浦昭

    松浦政府委員 農業協同組合運動に長年携わってこられました田中先生の御意見でございます。監査士の制度をつくりまして今後指導事業を強化してまいりたいという気持ちを持っておりますので、御意見十分に承りまして今後の指導に当たりたいと思っております。
  37. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それで、監査士の問題ですが、全国の漁連、県の漁連にもいま監査士は相当数いらっしゃるわけですが、実際の仕事の内容を聞いてみると、それほど監査業務に専念をするという状況にはいまのところまだ十分な体制がとれていないわけですね。今度こういうものを制度化していくということで、これは漁協自体が内部の機構ですからきちんと決めることではありますけれども、行政指導考え方としては、監査士の担当部署であるとか、せっかく試験で受かった監査士が十分に自分の能力を発揮できるようなそういう活動状況をつくらしていくような、計画的な監査業務に専念できる、そういう体制を同時につくらなければ、ただ監査士の制度を置くということだけでは済まないと思うのですね。そのことについてどういうお考えを持っていらっしゃるか。  それから、監査については県、水産庁もあるのですか、行政監査と組合がやる自主監査と二つあるわけですが、この二つについてやはりきちんとしたそれぞれの機能の分担というか、性格的な相違が多少あるわけですけれども、行政監査の補完を組合の監査事業でやるといったようなことでは、これは余りにもちょっとあれなんですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  38. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の法改正で監査事業に関する規定を入れていただくわけでございますが、この趣旨は、近年水産業協同組合事業も拡大して多様化している、これに対処して事業が一層適正に行われるということが必要でございますので、系統組織内における内部監査制の整備を図ろうというものでございます。この監査事業に従事する監査士の方につきましては、一定の知識経験を有するということが当然必要なわけでございます。また、その中立性を保つということが非常に重要であるということもよくわかっております。そこで、法改正案におきましては、監査事業には省令に定める資格を有する者である役員または職員を従事させなければならないということにいたしまして、さらに、監査規程にその服務に関する事項も記載しなければならないということにいたしております。このように、系統組織の健全な発展のために監査士がその職務に専念し、かつ、その役割りを十分に果たし得るように漁連内部におきますところの監査事業部門の独立等組織体制の整備、その身分の保障、処遇の改善というようなことが重要であると思いますので、この点につきまして法改正ができますれば漁連を十分指導していくというつもりでございます。  それからまた同時に、この系統組織に対しましてはいわゆる行政の検査というものもございます。県による検査、あるいは大きな規模につきましてはこれは国の検査というものがやられておるわけでございますが、行政の検査というものは、検査は当然法律に基づきまして一年一回常例ということで決まっておりまして、行政上の指導指針を前提として行う強制検査であることは先生御承知のとおりでございます。漁連の行う監査事業というのは、系統組織の上部組織が下部組織の漁協等に対して自主的に行う指導事業ということでございますし、漁協等の監査はいわゆる組織内部における自己規制というものが重点に置かれるということは当然のことでございます。  そこで、このような行政検査、それから漁連の監査、さらに漁協等の監事が行う自主監査というものは、おのおのの職務あるいはその立場というものは異なるということでございますが、終局的にはこれは漁協の経営を健全化する、そして組合員たる漁民の地位の向上、経済的な向上というものを図るということが目的であるわけでございますから、その立場は異なってもその目的は共通であるということでございますので、この三者がいわば唇歯輔車と申しますか、相互補完の関係を持ちながら、うまく監査事業が行われていくように考えてまいりたいと思っております。
  39. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この監査士の制度化を軸にして、漁協の系統組織の中にこの指導体制というものがきちんと打ち立てられて、組合員にまで一体的な、連帯的な共同意識が高まっていくような、そういう機能が漁協の系統運動として盛り上がっていく、これがないと、いろいろな事業もそうでありますけれども、特に海の汚染防止などを問題にする非常に大きな社会的、国家的な使命に対応する体制がちょっと不十分であると私は思うのですね。ですから、監査士の制度というものをこういう形で打ち立てることを契機にしながら、ぜひひとつそういう方向で漁協組織と十分協議をして進めていただきたい、こういうふうに思っております。  監査については、農協の場合は一定の監査を受け入れる一つ協力的な義務づけのようなものが多少あるのですけれども、たしか漁協や森林組合などの場合そういうものもありませんから、これはやはり相当きちんとしたものを行政指導としても考えておかないと、不徹底になる嫌いがあると思います。単に不正があるからそれをどうこうするといったようなけちなことではなくて、やはり指導事業の強化を通して今日の漁業の危機に対応する漁業者の総団結の体制をつくらせる、こういうところが大きなねらいだと思いますから、そういうところに特に留意をしていただきたいと思うのです。  それから第二は共済事業でありますが、この共済事業は、一つは三段階ではなくて二段階の運用をやっていくということでありますが、法律的には県の漁協共済連合会の設立あるいは全国の共済の連合会の設立ということが可能になるわけですね。したがって、運用としては二段階というようなことを聞いておりますが、法律的には三つの段階というものも考えられるわけであります。これは農協共済などが先駆しておるわけですけれども、三つになっておるわけですが、そういうものの要素もありますが、水産庁としてはこの二段階、三段階の問題についてはどういうふうにお考えになり、今後処理せられるのか、特に県連の設立の問題についてはどういう対応をせられるのか、この際お聞きをしておきたいと思うのです。
  40. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の法律改正におきましては、都道府県段階におきましても連合会を置くことができるということで、一応三段階制もできる形になっております。しかしながら、私どもといたしましては、まず基本的にはこれは関係団体の判断に任せたいというふうに考えておりまして、この点、漁協の系統組織に判断を任せているわけでございます。  しかし、共済事業が従来から全水共という全国一本の組織で行われてきたということから、私ども聞いておる限りにおきましては、昨年の十二月二十三日の全国漁連、信漁連指導連会長、漁業共済組合長合同会議におきまして、事業組織については、当面、単協元受け、全国連再共済の二段階で発足するということが決まっておるわけでございます。私どもといたしましても、このような系統団体の意思は当然尊重しなければいかぬというふうに考えておりますので、当面は二段階で発足させることが適当であると考えております。  しからば将来はどうかということでございますが、この点につきましては、都道府県別の事業量の格差が著しいという現状でございまして、さようなことから考えますと、三段階制をとった場合には都道府県によってはかえってコストが増高するといったような場合があると考えられますので、このような場合には、そういった可能性がなくなるまでは、現在の関係団体間において確認されている二段階制をとっていった方がいいという考え方をとっておる次第であります。
  41. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この団体の問題というものはなかなかお役所もむずかしくて、いまはそういう方針で処理できるのだと思いますが、いつかどこかで二段階が三段階になる可能性がないとは言えないと私は思うのです。いろいろな複雑な事情が県などによって起こることが想定されるだけに、大きな検討課題として、はっきり言えば、農協の組織、段階制も含めて、協同組合の段階の問題は漁協も農協もそう変わらぬと私は思うのですが、やはり考えなければいけない問題を持っておる、こういうふうに思います。ひとつ十分に検討していただきたいと思います。     〔玉沢委員長代理退席、加藤(紘)委員長代理着席〕  それといま一つは競合の問題ですが、農協共済、それから一般の保険会社ともありますが、特に同じ農林漁業団体の間で、共済事業の問題をめぐってやはりその地区ではさまざまな波紋を描くと思うのです。このことについてはあらかじめこういう機会に水産庁の方で関係団体とやはり十分話し合いをしていただいておかないと、末端単位漁協の間あるいは組合員の間でいろいろなことが考えられます。この事業競合について調整のようなものを進めておく必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  42. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の法改正によりまして漁業協同組合が元受け共済事業を行うことができるようになりましたことから、火災共済が中心だろうと思いますが、そういった共済事業につきまして、他の協同組合とかあるいは同種の事業を行っている組織との間に競合が起こる可能性があるということは否定しないわけでございます。ただ、漁協の場合にはその規模も農協に比べて非常に小そうございますから、また、いまの漁協の実際に活動している状況等も考えてみますと、一部の臨海地域を除いてはそれほど大きな競合は起こらないであろうというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、やはり競合問題が生ずることは否定できないということを申しておるわけでございまして、たとえば既契約を解除するといったようなことで、ボーリングと申しますか、無理な推進活動といったようなことが起こる可能性もございますし、私も経済局長でずいぶん苦労もしてまいりましたので、この問題が起こったときの事態というものはよくわかっておるわけでございます。また、事故が発生した場合の共済金の支払い分担といった問題も、非常にもめたケースがあります。さようなことは私十分経験として知っているわけでございまして、何とかこういった事態は発生を防止した方がよろしいと考えている次第でございます。  そのようなことで、やはり第一義的には共済事業は組合員間の相互扶助を目的とすることでございますから、団体間で節度と良識を持って事業を適正に推進するということが必要であると考えるわけでありまして、国におきましてもトラブル発生の未然防止という見地から、特に員外利用者だと思いますので、員外利用者の取り扱いについてはいたずらにトラブルを誘発するような行動のないように慎重にしてほしいということとか、あるいは万一トラブルが発生した場合には当事者間で協議の場を設けるといったことによりまして、誠意を持って解決を図るといったことを随時関係団体で話し合っておくということで、国としてもこういう指導を行いまして未然防止を図り、仮に不幸にしてそういった事態が起こった場合には早期解決をしてもらうということで指導しておきたいというふうに考えております。
  43. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これは余り頭の中で考えるようなわけにいきませんからね。共済組合というのは、組合員とか組合員外とかいうけれども、それはボーリングでやらなければ、各業界が入り込んでいるわけですから、漁業地帯と半農半漁地帯などでは水産庁まで届かないのがたくさんある。あなたのところまで届いたのはよほど特殊な事例のようなもので、さまざまのがあるので、こういう機会に両関係者の間で、それぞれ団体ですから、あらかじめ話をしておった方がいいように私は思います。  そこで、漁協の共済事業を認可する単協というのはどういう程度の組合を考えておるのか。それから、共済資金の運用については大体どういう方針でおるのか。この二つをちょっとお聞かせいただきたい。
  44. 松浦昭

    松浦政府委員 二つの御質問がございましたが、まず前者の御質問にお答えいたします。  今回、元受け責任を漁協に持たせるわけでございますが、実質的には共済責任を負うわけではございません。一〇〇%再保をつけるわけでございます。したがいまして、実際の実務は共済の引き受けあるいは掛金の収納といった事務が適正に行い得るということであればよいわけでありますから、このような適格性がある組合は、原則として希望する漁協について元受けを認めましても大丈夫であろうと考えている次第であります。したがいまして、事務処理体制が整っているかどうかということにつきまして、定款変更あるいは共済規程の認可の際に都道府県でチェックをしてもらいまして、どの組合に共済事業を認めるかということを決めていくわけでございますが、私ども考えは、現行の全水共が委託している共済事業を約二千の漁協がやっておりますので、大体その組合については事務処理体制が整っていると考えられますので、これに元受け責任を認めても差し支えないのではないかというふうに考えている次第であります。  いま一つ資金運用の面でございますが、共済事業は何と申しましても多数の組合員を対象とする事業でございますので、その事業内容も複雑であります。また、非常に高度な、技術的な事業でございます。同時に、組合員の利益の保護を図るという観点からも、健全な運営ということが絶対必要でございます。さような意味で、共済事業の基礎となる共済財産につきましては、安全、有利かつ流動的な運用というものを確保する必要があります。  ただいま御審議を願っております水協法の改正案では、共済関係の財務関係は省令で定める方法によるほかはこれを運用してはならないという規定を置いておるわけでございまして、具体的には、現在の水産業協同組合共済会の財産運用方法、運用資産の規模等を勘案して決定したいと思っておりますが、現在の共済会の資産運用というものは、全共連あるいは県共連の運用よりもかなりかたい運営をさせておりまして、このような方針でまいりますればこの資産運用の面について問題はないと考えている次第であります。
  45. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 信用事業について内国為替取引の員外制限を撤廃するということでありますが、先ほど来いろいろお話がありましたように、漁協の信用事業というのも非常に格差が大きいわけでありますが、大体どういう漁協が為替の取引をやっておるのか。どういう程度のものを想定をしておるのか。それから、多分、これは全銀連ですか、全国銀行の内国為替制度への漁協としての一括加入というのが前提になるわけですが、そういうものに対してはどういう対応をせられていくのか、この点を。
  46. 松浦昭

    松浦政府委員 信用事業の問題につきましては、なかなかむずかしい要素を持っております。先生指摘のように、漁業協同組合はある意味では非常に大きな協同組合もございます。たとえば焼津の協同組合のように大規模な漁業者を中心にした漁業協同組合があるわけでございますが、一方では非常に小さな、地域的な集団としての組合もあるといったことで、非常に千差万別でございまして、そのような意味でも漁協と農協とはまた相当違った要素がございます。  また、信用事業そのものにつきましても、かなり農協と違った面がございます。たとえば貯貸率の面で見ましても、貯金に対しての貸付率がかなり大きいという要素もございまして、農協の悪口を言うわけではございませんけれども、組合員の預金を他の産業部門で運用するといってもそんな力はない、むしろ協同組合の原点に近いような信用事業を行っているという組合も多くあるわけでございます。  さような意味で、私どもとしましては、信用事業の今後の運営を考えてまいりますると、協同組合らしい信用事業の運営を心がけていくということも一つ非常に重要なポイントじゃないかと考えられるわけでありますが、一方におきまして、このような銀行業務というものが非常にオンライン化し、そして信金なりあるいは協同組合もどんどん銀行の業務に近い業務を行っていくという時代になりますと、取り残されていくという問題も生じてくるので、これも非常に解決のむずかしい問題でございます。現在、金融問題研究会におきまして、どのような信用事業のあり方をしたらいいかということも研究していただいているわけでございますが、内国為替の業務だけはどうしても緊急の事業といたしましてこの法律の改正をお願いしているような方法でやらなければ時代に取り残されてしまうということで、このような法改正をお願いしたわけでございます。  ただいまの御質問の点を申し上げますと、信用事業の専従職員の数が四人以上、それから信用事業にかかる貯金残高が五億円以上という協同組合につきましてこの内国為替を認めていこうというつもりでございます。ただ、これは全国ベースでやっていかなければ内国為替業務というのは円滑な遂行ができないということは事実でございますが、まだまだその力はございません。しかし、将来は全漁協がこのような内国為替業務ができるような形にして、それでオンラインの波に乗っていくということが必要であろうということで、全漁連を中心にそのような方向指導が行われているという状況でございます。
  47. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 細かいことになるとたくさんありますが、漁協の信用事業というのは、確かに為替の取引は便利になるわけですが、なかなか手間が大変なようでして、農協なんかでもこれで収益を上げるというのはなかなか考えられぬ、非常に厄介な業務のようでありまして、いまの漁協の職員体制の中で新しい仕事が加わっていくということが、いまですら漁協に働く諸君の労働条件などあるいは執務条件などを見ても問題がたくさんあるわけです。しかも、一方では人材を集めなければいけないということは緊急の課題になっておるわけでありますので、オーバーワークになるようなことでもいけないと思いますが、その辺を十分に見詰めながら、漁協に働く役職員の日常の研修なりいろいろな労働条件の整備について、従来も問題になっておりますけれども、特に配慮をして新しい事業に取り組むような内部体制を打ち立てていただくように要請しておきたいと思います。  時間が参りましたので、これは後で沿岸資源の法律のところで細かく議論をさせていただきたいと思いますが、海の環境整備の問題は沿岸漁業にとっては当面する非常に大きな問題であります。海を汚さない、きれいにしていくということについて関係住民の意識もだんだん高まってきておりますけれども、これは単なる熱心なグループ活動や漁協の行う漁場清掃作業などで事済む問題じゃないのでありまして、海流、海底、水質、そういうものについての総合的な、科学的なデータがどうしても必要になってきたと思うのです。また、そういう期待がだんだん高まってきております。私どもも、こういう流れをしておってこの水域ではこうだというようなものはある程度聞かされますけれども、農林漁業のいろいろな流通情報のようなものまで入った水産関係の基礎的なデータがやはり不十分だと思うのです。特に、海の底の科学的な調査、潮流などについての総合的なデータを整備していく、こういう思い切った漁場の汚染防止の施策の基本を打ち立ててもらいたいという要望が非常に強いわけであります。私もこの点を特に要請しておきますが、当局のお考えをお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  48. 松浦昭

    松浦政府委員 漁場の保全ということは、漁業の基本的な、いわば生命とも言えるものであると考えるわけでございます。さような意味で、私どもも、国の施策として漁場をきれいにしていくことにつきましていろいろな助成もいたしながら進めておるわけでございますが、今後、漁場の状況を十分に調査していくことが非常に重要でございます。特に、漁場の条件として一番深刻な赤潮の問題といったようなことにつきましては、最近の技術開発ではたとえばリモートセンシングといったようなことを使いまして科学的に漁場の状況を把握するといったような手法も考えられてきている時代になっております。さようなことも取り入れながら、先生のおっしゃいますように漁場の環境を的確につかむことにつきまして今後とも努力をいたしてまいりたいと思っております。
  49. 加藤紘一

    加藤(紘)委員長代理 次に、日野市朗君。
  50. 日野市朗

    ○日野委員 私は、水協法で今度水産業協同組合が幾つかの新しい事業を持つことになるわけでありますので、漁協等の水産業協同組合体質を強化していくという観点から、幾つかの質問をいたしたいと思います。前回も私質問に立ちまして、特に漁協の労働者の労働条件について若干の質問をいたしました。その継続というふうなぐあいになるわけでありますが、人間にきちんと働いてもらうためにはそれに対する労働条件をきちんと整えることが重要であろうと思いますので、若干の質問をさらにつけ加えたいと思うのです。  労働条件の調査がずっと行われまして、その結果、まず賃金の点について、私、漁協の職員には失礼でありますが、よくこの程度の賃金で働いておられるなというような状況を現実に直視せざるを得ないと思うのですが、賃金の水準について水産庁の方ではどのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  51. 松浦昭

    松浦政府委員 昭和五十六年度におきます漁協職員の平均給与は、月額でございますが、十六万八千円でございます。男女別で申しますと、男子が十九万三千円、女子が十一万二千円ということでございます。比較として最も対象に適当であると考えます農協等と比較してみますと、漁協職員の給与は、森林組合の職員の給与より一〇%ほど高くなっておりますけれども、農協職員よりは約五%、町村の職員よりは一〇%程度低いというのが給与の実態調査の結果でございます。  給与水準の比較は、単に給与月額のみではなくて、男女別の構成あるいは年齢構成等も考慮する必要がありますけれども、農協等との比較においては、男女別構成はほぼ同じでありますものの、平均年齢は農協が三十五歳に対しまして漁協三十八歳と、漁協の方が三歳程度高いということがありまして、少なくとも農協との比較におきましても給与の格差は大きいということは言わざるを得ないと思います。
  52. 日野市朗

    ○日野委員 私のところにもあるデータがございまして、これは中学、高校卒の男子、三十歳、これは県連段階で十二万というような方、それから十三万ぐらい、単協だとやはり三十歳で大体そのくらいというようなデータが出ております。また、大学卒でも三十歳程度で十二万程度かなと思われる。われわれから見て賃金水準は非常に低いというふうに直接感じざるを得ないわけであります。  いま、長官、農協との比較、町村との比較などでやはり低いとおっしゃったわけですが、このような賃金水準でも自分たちの使命感を持って漁協等で働いておられるわけでありますが、こういう人たちの賃金水準はもっと高くあるべきではないかと私思いますが、そこら辺についてはいかがでございましょうか。
  53. 松浦昭

    松浦政府委員 私も、昨年体があきました際にずいぶん全国の漁協を回らせていただきまして、いろいろと実態も伺ってまいったわけでありますが、そのとき非常に印象を受けましたことは、漁協の職員の方々が使命感がございまして一生懸命働いておられる、また、規律も非常に正しいという感じがいたしました。そして、その働きを見ましても、本当に漁民、漁村のために働くのだという気持ちにあふれている感じがいたしたわけであります。  いま、農協と比較しても賃金水準が非常に低いという実態を申し上げたわけでございますが、私どももその職務また働きぶりにふさわしい給与を差し上げたいと期待をいたすわけでございますが、何分にも、恐らく後で御議論があると思いますけれども、漁協の経営が非常に脆弱であるということからこういう賃金水準になっているということでございまして、組合長としてもさらに引き上げをしたくてもなかなか引き上げられないというのが実態ではないかというふうに思うわけであります。さような意味で、まず漁協の強化、さらにそのもとである漁業の強化ということが重要であると考える次第でございます。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 いま長官もおっしゃったとおり、本当に職員の方々は使命感を持って働いておられるわけでありますが、自分たちの仕事にふさわしい賃金を与えるということによってさらにその使命感を高め、漁協の具体的な体質も強化されて、漁協の事業面からも好ましい傾向に向くのではないかというような感じを私は持つわけでございます。  それで、人数なども、いろいろな漁協を見てみますと、仕事の割りに人数が非常に少ないという感想を私は持つのでありますが、調査を通してごらんになってのそこら辺の御感想はいかがでございましょうか。
  55. 松浦昭

    松浦政府委員 漁協の平均職員数は十・四人でございまして、しかも、職員数五人以下の零細組合というのが約五割を占めているという状況でございます。また、多くの漁協では一人の職員が各種の業務をかけ持ちしているというのが実態であるようでございます。このようなこともございまして、五十六年度水産庁の調査によりますと、年次有給休暇の消化率が三〇%以下の職員の割合が約六割に達している。また、五十六年九月一カ月間において時間外労働を行った職員の割合が約六割ある。さらには、農協に比較しても所定の労働時間が長い組合が多いということから、人員に比較いたしまして業務量が相当多いところが多いということがこの調査からもうかがえるところでございます。しかも、漁協に参りますと、やはり水揚げといったようなものを考えますと時期を選ばないということでございまして、さような意味でも、都会のサラリーマンのような勤務状態ではそもそも漁協はもたないということもございまして、業務に熱心な、また使命感に燃えた職員の方方が漁協をしょっておられるなという気持ちがいたしておる次第でございます。
  56. 日野市朗

    ○日野委員 問題点の所在は水産庁においてもよく把握しておられるというふうに思います。私、こういう漁協の職員の方々の労働条件というのは、これはかなり長い沿革を持ったものであろうというふうに思いますが、これはやはり漁協全体の体質を向上さしていくという点から、真剣にわれわれも考えなければならないところであると思います。  それで、一昨年になりますか、一昨年から昨年にかけまして、労働条件の調査をわれわれの方からもお願いをし、そしてその調査が行われたわけでありますが、このような調査の結果というものは、われわれが考えていた以上に漁協の職員の方方の労働条件というものが下回っていたということをはっきりと示したというふうに私は見ていいのだろうと思います。こういう調査をこれからもずっと私は続けていただきたいというふうに実は考えております。これをずっとこれからも折に触れて続けていただくということについては、いかがでございましょうか。
  57. 松浦昭

    松浦政府委員 漁協職員の労働条件の調査でございますが、五十六年度に所要の予算を計上しまして第二回の調査を実施したところでございます。御指摘のとおり、漁協職員の労働条件の改善を図っていくということにつきましては、その基礎となる実態把握というものが必要でございまして、六、七年に一度ということではなくて、もっと密度を濃くしてやった方がいいというふうに考えておる次第であります。このために、今後といたしましては、水産庁は、毎年度都道府県を通じまして実施しております漁業協同組合一斉調査の調査項目の中に、職員の給与、労働条件、労働時間、定年制等、主要な条件の項目を追加しまして、毎年継続して実施するということを検討するとともに、五十六年度の第二次調査のような詳細な調査につきましても、今後必要に応じて適宜実施していくという態勢に持っていきたいというふうに思っております。
  58. 日野市朗

    ○日野委員 では、今度は少し角度を変えてみたいと思います。  漁協をずっと見た場合、特に単協を見た場合、単協の規模の小さいことは、非常な問題点として先ほど田中委員の質問の中でも取り上げられたわけであります。やはりこれからいろいろな事業を拡大していく、水協法の改正によって共済事業やら内国為替の取り扱い等、そういった仕事を扱うについても、規模を拡大していくということは必須の条件ではなかろうかというふうに私考えているわけでございます。現在の漁協の単位でこれらの仕事をやるということについては、かなりの不安感を私は禁じ得ないところでありまして、事業をやらせるためには合併の促進ということがぜひとも必要だろうというふうに思っているわけであります。  先ほど水産庁長官の方から、合併がなかなか思うように進まぬということでその理由等も述べられたわけでありますが、今後さらに信用事業などをやる場合に、現在の程度で信用事業をさらに拡大をしていくということについて私が抱く不安感というようなものについてどのようにお考えか、水産庁としては信用事業などを担っていくために不安をお持ちにならないかどうか、ちょっと伺いたいと思います。
  59. 松浦昭

    松浦政府委員 合併の進捗率が当初の計画に対して三五%程度であるということを先ほど田中委員の御質問にお答え申し上げましたし、また、漁協の体質の強化のためには合併の促進を図っていかなければならぬという基本的な考え方も申し上げました。ただ、その場合に、漁協の合併にはいろいろのネックがあるけれども、その中で非常にむずかしい問題は漁業権の問題である。これをどういう形で一体処理をしたらいいか。そこがこれからの研究課題で、いましばらくお時間をかしていただいてこの問題に切り込んで考えをまとめていきたいということも申し上げた次第であります。  しかし、現実に協同組合が現在のような旧市町村の単位にかなり置かれているということは、このままの状態で推移いたしますと、どうしても漁協の信用事業といったような面では非常に弱体な基盤のもとで信用事業を行わなければならぬ。これは時をかすというようなことではない、差し迫った問題であるということは事実であるわけでございます。  そこで、私どもいろいろな試みがなされていることを聞いているわけでございますが、合併が進捗するまでの間に、いわばつなぎ的な措置でございますが、また、合併が非常に困難な場合の代替策といったようなことでございますけれども、一部の地域ですでにやっておるたとえば統合信用部方式というようなことがございます。これは、例が適切でないかもしれませんけれども、市町村の一部事務組合みたいなことでございまして、信用事業部門だけを統合してやる方式、こういったことが考えられます。それからまた、信漁連が直取り扱いをするという方式もやっておりまして、すでに先進的な漁連におきましては、このような方式によりまして信用事業につきましては現在の単位のネックというものを解消しているという組合もございます。  このようなことにつきまして、どのような方法が一番いいのであろうということを現在金融問題研究会で研究をしていただいております。その成果を踏まえまして、私ども、この信用事業の扱いについての今後の方針を取り決めてまいりたいというふうに考えている次第であります。
  60. 日野市朗

    ○日野委員 私も、この漁業権の主体としての一面を持つ漁協の性格と、それから、事業をできるだけ拡大していきたいという経済団体としての漁協の性格と、これをどのように調和させるかというのは非常にむずかしい問題であるということはよくわかるわけであります。     〔加藤(紘)委員長代理退席、委員長着席〕  それで、いま長官が挙げられましたいろいろな試みなどをできるだけ温かく見守るということも必要であろうかと思いますけれども、できるだけこういったむずかしい問題を乗り越えて、漁協の合併を進めて規模を拡大していくという方向での御努力をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  それと同時に、漁協の場合、地域的に単協が置かれているというようなことから、いろいろな地域におけるどろどろした、地域における派閥の争いといいますか、地域における権力、主導権争いといいますか、そういったものも漁協に反映されているのではないかと思われる面もないわけではないであろうというふうに思います。そういったものは漁協の合併を妨げている要因として挙げられるのではないかというような感じがするが、いかがなものでしょうか。
  61. 松浦昭

    松浦政府委員 やはり漁協の場合には、このような漁業権の管理主体であるという一面もありまして、特に旧町村単位と申しますか、そういう小単位の中で、特に地域的な地縁関係というものを協同組合の基盤にしている漁協が非常にたくさんあるわけでございます。こういった地域社会というものを基盤にした協同組織というものは決して否定すべきものではないので、やはりそういうコミュニティーというものを前提にして協同組合運動というものの原点もあり、また、協同組合の健全な組織というものもそこに育ってくるというふうに考えるわけでありますが、これがある程度までまた機能化する、そういう要素も必要でありまして、そこの関係をどのように調整していくかということが今後の合併の課題でもあり、先ほどから研究をさせていただきたいと申しておるのもそういう点であるわけでございます。  特にこのような旧単位で、しかも地域社会というものの中に溶け込んだ協同組合というものは、また一面においては、機能化した社会ではなくて、むしろいろいろな地縁関係、血縁関係の摩擦といったようなものも協同組合の運営の中に持ち込んでくるという要素もあるわけでありまして、そういった要素がまた合併の阻害要因にもなっているという事例もなきにしもあらずであるという気がいたす次第であります。
  62. 日野市朗

    ○日野委員 いまのことに関連をするわけでありますが、こういう地縁関係、血縁関係のいろいろなトラブルが漁協内に持ち込まれますと、非常に深刻な問題を招来するということが間々あるようであります。  これは一例でありますけれども、ある漁協で、裁判がその漁協の運営をめぐって起きる、こういうようなことは残念なことでありますけれども、そういう裁判ざたにまでなっているという漁協の内部でのトラブルがあるようであります。ある漁協でありますが、定期預金の出し入れということの単純なミスから発して、それが裁判ざたになり、そして証人としてある理事が出頭をした。そうしてそこで証言をしたこと自身について、これはその漁協の利益に関する問題、当該漁協の利益に反するということで、その役員の地位をめぐっての裁判ざたがまた起きているというような問題などがあるようであります。  これなんかは、私どもから考えてみれば、証人として裁判所に呼ばれれば出頭の義務がありますし、もうそこでは、証言をするということになれば、当然これはうそを言うことは許されない。証言を拒否するということもできないわけでありまして、証言をするのは当然なわけでありますが、それすらも漁協のトラブルの種になるというような、これは常識的に見ても非常におかしな事態がある漁協で発生しておるわけであります。  恐らくやはり地縁問題、血縁問題、その中における政治的ないろいろな問題をも含めてトラブルが発生しているんだと思うのですが、こういう事態というのは、私は、漁協が本当に水協法にのっとって、それから定款にのっとって運営が行われていれば、こんな事態は本当は恐らくは起きるはずがないんだろうというふうに思うわけです。しかし、現実にこういう漁協なんかもあるわけでありまして、これに対して、こういう事態が起こらないようにしていく指導というものが必要になってくるだろうと思うのです。私は、適切な指導が県を通して、また、水産庁を通して行われなければならないだろうというふうに思います。  そういう点についての、民主的な運営という点についての指導に遺憾なきを期さなければならないと思うのですが、こういう点については水産庁としてはどのようにお考えになりますか。
  63. 松浦昭

    松浦政府委員 漁協は他の協同組合と違った性格があるということを先ほどから何回か繰り返して申し上げたわけでございますが、経済事業主体という性格のほかに、特に漁場の管理主体といったような性格を持っておりますために、やはり共同体組織というものが持っているよい面と悪い面をあわせ有しているんじゃないかという感じがいたすわけでございます。そこで、漁村内の人間関係というものがそのまま漁協の運営に持ち込まれるといったようなことがあって、それがいま先生指摘のような非民主的な運営といったようなものにつながってきたんじゃないかというように思うわけでございます。  水産庁といたしましては、当然、協同組合法のでき上がったとき以来、漁協の運営が協同組合精神にのっとって適正に運営をされるように、また、これが民主的に運営をされるようにという指導をしてまいったわけでございますが、さような事例があることも伺いましたので、さらに今後適正にこのような協同組合の運営がなされ、法令を遵守し、また民主的な運営が行われるように、都道府県に対しましてさらに指導を徹底してまいりたいというように考える次第であります。
  64. 日野市朗

    ○日野委員 この例は極端な形で、司法判断まで仰ぐという形で裁判所に持ち出されておりますけれども、このような事例は、私、いろんな漁協を見て、これはこの漁協だけではないんだろうというふうに実は考えているわけであります。もう漁協そのものがその地域における政治的な争いとか主導権争いの場に化してしまうというようなことが散見されるところなんでありますが、そのような事態、これは地域共同体というような一面を持つということからほうっておいてはいけないわけなんでありまして、これはきちんと指導しなければならないところだと思うのです。県などの指導も、これはややもすると地域のこととして余り触れないでおくというような傾向が見られるのではないかというふうに思いますが、こういう傾向についてどのようにお考えになりますか。
  65. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども協同組合法ができ上がりまして以来、民主的な運営というものを協同組合の基本的な理念に挙げてまいりましたし、また、協同組合精神というものは個々の組合員が平等の権利を持ってこれに参画するということが基本であろうというふうに考えているわけでございます。これがまた漁業権の改革ということを土台にしてでき上がった協同組合の理想であったというふうに私ども考えているわけでございまして、このような考え方は私ども終始一貫持っているわけでございます。  さような意味で、古いしきたりあるいは人間関係というものが協同組合の運営の中に持ち込まれるケースもあろうと思いますが、都道府県に対しましても、今後とも民主的な運営が図られるように指導してまいるという方針には変わりがない次第でございます。
  66. 日野市朗

    ○日野委員 こういうトラブルが起きますと、県に対してすぐに指導を求めるということを大体の場合は行っているようでありますが、その県の方の指導がおくれるというような事例をかなり聞くわけであります。そういった場合に県としては迅速に指導を与えていく、または水産庁なんかに問題が持ち込まれた場合にこれに迅速に指導を与えていくという、その迅速性というものも必要ではなかろうかと思います。こういう問題はもうもつれ始めるととめどなくもつれるものでありまして、そういった迅速性ということについてはいかがでしょうか。
  67. 松浦昭

    松浦政府委員 御趣旨に沿ったような組合の運営が図られるように、指導につきましても十分に迅速性をたっとんで措置をしたいと思います。
  68. 日野市朗

    ○日野委員 いま言った漁協のトラブルの問題点は、実は信じられないような問題の発生の仕方をいたしております。定期預金をおろしに行って、そして預金証書から何から全部漁協に預けてしまったというようなところに問題の発端があるのでありまして、そして、その預金そのものがあるかどうかというようなことが問題になったというところからこの問題は発生しているわけであります。  これは、漁協の側も組合員の側もお互い非常によく知り合った顔でありますから、お互いに信用し合ってそういう形をとったというふうに思いますが、これは、普通信用事業をやるということからいえば本当は考えられないようなことですね。これがもし地域の漁協でなくて銀行だったら、そんなことはまず起こり得なかったろう。お互いの信頼関係というものが裏目に出てしまったというところに問題があったようですが、これから信用事業をやる場合にはそういう本当にイロハのイの字からきちんとしたやり方をしていかなければならない、そういうところに非常に甘さを感じるわけです。やはり地域でお互いによく知り合っているところから、むしろ逆にこの信頼関係が裏目に出るというようなことがございます。  こういう点、これから漁協が信用事業を拡大せざるを得ないわけでありますし、内国為替の取り扱いをやるについても本当にイロハのイのところがどうもうまくいっていないという、常識外というようなところからトラブルが発生する、そういうことがないようにしていくことがそもそも大事なんだと思うのです。やはりきちんとしたマニュアルをつくっておいて、それを守らせるということが必要になってくるのじゃないかというふうに思うのですが、そういったところは、指導をするについて当然のこととして指導漏れがあるようなことがあってはいけないというふうに思います。そういった本当のイロハのイからやっていく必要があると思うのです。  これは、私の方からそういうところはきちんと指導してもらいたいと言うことがおかしいくらいの問題なんですが、そういう点についても、これは手をとり足をとって指導していかないとぐあいが悪かろうというふうに思うのです。いかがでございましょうか。
  69. 松浦昭

    松浦政府委員 私いま伺った事態で、私も驚いた次第でございますが、ある意味では非常に極端な例ではないかと思います。県なりあるいは漁協なりで信用事業等につきましては相当厳重な指導もいたしておりますし、監査もいたしておるわけでございますから、そのような事態は異例であるとは思いますけれども、私どもとしてはそのようなところからたとえ一ケースでありましてもそのような事態が生ずるということは大変なことでございますので、十分今後の指導徹底を図りますと同時に、もしもそういう事例につきまして私ども伺わしていただけるならば、そういう事例につきましても個別に県も指導いたしまして、さような事例がないように今後徹底してまいりたいというふうに思います。
  70. 日野市朗

    ○日野委員 一般的な問題になりますが、漁協でのトラブルというのは、表面化したものもございますけれども、表面化しないところで実に陰にこもるような形で、各漁協の人たちと話をしてみますといろいろな問題がわれわれのところには寄せられるわけであります。これは、トラブルが出ますと、また漁協は漁協でそれができるだけ外に出ないようにする。これは漁協ばかりじゃなくて、農協なんかにもずいぶんあるようであります。  そういうときにいつも問題にされるのは、組合の役員の方々体質というのが非常に問題としてわれわれの方には指摘をする意見が寄せられるわけなんですね。組合の役員が、言葉は悪うございますけれども、ボス化しているというようなことが非常にわれわれに言われます。また、よく見てみると、組合長などという人はずいぶん長くそのポストにとまっているということが非常に多いようでございまして、これはわれわれ見ても余り好ましい傾向ではないと思わざるを得ないわけなのでありますが、こういう漁協の運営そのものがボス化しないように、これからもわれわれとしてもきちんと監視をしていかなければならないのではなかろうかと思います。この点については、余り表面化しない問題を聞いてみるのも変な話でありますけれども、そういう事態について、水産庁としては、役員が非常に長く一つのポストにいるというような点なんかについてどのようにお考えになるか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  71. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども、基本的に漁協の運営というものは民主的に行われるべきであるという考えを持っておるわけでございますが、やはり組合長になられる方につきましては、それだけの力量と識見もおありでございますし、また、漁協の事業というのは非常にむずかしい販売事業、購買事業、いろいろとむずかしい事業をやっておられると思います。それにつきまして、特に小さな単位協同組合で本当に八面六臂の働きをなすっておられる組合長もおられるわけでございまして、在任期間が長いとか短いとかということでその方をお決めするというわけにはいかないと思うわけであります。  要は、やはり組合員の問題であると思うわけであります。組合長を選出するのは組合員であるわけでありまして、一人一票という原則のもとに役員を選出するわけでございますから、組合員の自覚によってその組合が民主的な運営が保たれるようにすべきであると考えるわけであります。もちろんそのような一般的な、民主的な運営をすべきであるということについてのわが省の指導の方針は変わらないわけでありますし、さような方針で今後とも臨んでいくべきであると思います。
  72. 日野市朗

    ○日野委員 内国為替事業を、今度協同組合が、漁協がそういう機能を持つということになりますと、信用事業を強化していく必要はあるわけでありますが、先ほど田中委員からも指摘されたように、零細な漁民が貯金をして、そして事業的な漁業家がこれを使うというような形も一つ心配されるところであります。もう一つは、信用事業について漁民の側が漁協よりもむしろ他の金融機関の方を使うというような傾向が若干見られるような感じがいたします。もちろん資金量は漁協の場合零細でございまして、他の金融機関と競合いたしますと、他の金融機関がどのようにサービスをやるかにもかかってくると思いますが、これは漁協が太刀打ちできないというような事態も十分に心配されるわけでありますが、そこらについてどんなふうにお考えになっておりますか。
  73. 松浦昭

    松浦政府委員 漁協の信用事業でございますが、私、ある意味では、漁協の信用事業というのは協同組合の信用事業らしい信用事業をやっているのじゃないかという感じもいたすわけであります。決して農協の悪口を申すわけではございませんけれども、農業の中でたまった資金が他産業に運用されるということも一つの方法でありますが、やはり漁業の内部でそれが運用されているという意味では、漁協の信用事業はある意味では協同組合の信用事業の原点であるという感じもいたすわけでございます。確かに零細な漁民の貯蓄というものが漁船漁業を行っている方々資金に流れる。特に系統の資金を使いながら制度資金をやっているものでございますから、どうしてもそういう方向に向かうということがございますけれども、しかし、やはり漁業の内部で回っているという意味では、私はある意味があるのじゃないかという感じがいたすわけでございます。  ただ、このような事業の運用をいたしてまいる場合におきまして、特に他の信用事業との間でその資金が流れてしまう。たとえば銀行であるとか信金であるとか、あるいは郵貯といったような方向に流れていくということが懸念されるわけでございまして、私どもとしては、協同組合運動の中でできるだけ漁業協同組合資金を蓄積して自分たちの力をつけていく、そういう運動理念の中でこの問題を解決していきたいというふうに考えているわけでございまして、特に貯蓄増強運動というものを全漁連が一生懸命やっているわけでございますが、何分にも貯蓄の増加率が農協にはとても及ばない状況でございまして、残念であるわけでございます。今後ともこのような運動を通じまして、漁協の中に資本が蓄積されていって、そしてそれがまた漁業の中に回っていくように、そういう制度にしていきたいというふうに考えておる次第であります。
  74. 日野市朗

    ○日野委員 では、私の質問はこれで終わりまして、後は新盛議員の関連質問をお願いしたいと思います。
  75. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 新盛辰雄君。
  76. 新盛辰雄

    ○新盛委員 水協法一部改正の法律に関連をして、前回から私の方で漁業経営負債整理資金制度のあり方について資料も求め、さらに、具体的な問題について三月一日に水産庁通達をお出しになった経緯がございます。その問題について一問一答でお答えをいただきます。  まず、異例とも言われる負債整理資金関係通達、十九項目余に上りますね。これは、せんじ詰めてみれば、資金需要をしぼり込んでいくのじゃないだろうか、貸し付け選別を行うためにこういう複雑なものをつくったのじゃないかとか、漁業者借り入れを縛るのじゃないかとか、いろいろと言われておるのですが、今度水産庁が緊急資金以外の資金の計算方式を変えられたのでありますが、その結果、五十七年度融資枠三百五十億、これは資金需要としてどの程度見込まれますか。
  77. 松浦昭

    松浦政府委員 借り入れの申し込みの期限につきまして、当初二月二十八日という予定をしていたものを三月二十二日まで延長いたしまして、あわせて、ただいま申されましたいわゆる個別算定方式にかえまして一括算定による簡便法を採用したわけでありますが、これによりまして借り入れ申し込みが延びた関係上、申込額を現在計数整理中でございます。したがいまして、この申込額につきまして、今後金融機関の融資審査を経て融資額を決定するということになりますと、どうしても四月初めごろに実際の額が判明するという状況でございまして、きょう現在では概算的なお話しかできないので、それはお許しいただきたいと思います。  この前御質問のときに、非常に厳しい貸し付けの条件なので五億か十億ぐらいしか出ないのじゃないかというお話でございましたが、この簡便法を採用いたしましたので、当初に比較いたしまして数十億円程度の増加をするものというふうに考えております。
  78. 新盛辰雄

    ○新盛委員 数十億円程度ということになると、十億ではないわけですな。われわれは思うのでありますが、ここでどの程度かということは後の問題にかかわるものですから、五十億を超えますか。
  79. 松浦昭

    松浦政府委員 これからの金融機関の融資審査等もございますので、的確なことは申し上げられませんが、私どもの見込みとしては五十億から七十億の間にあるというふうに考えております。
  80. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そうしますと、三百五十億の融資枠があるのでありますが、この中から五十億から七十億となりますと、残りますね。一体三百億近い融資枠はどうなるのでしょうか。
  81. 松浦昭

    松浦政府委員 残念ながら予算は単年度主義でございますので、残りは使い切れなかったということになるわけでありますが、明年の枠が六百五十億ございますので、それによって対処したいというふうに考えております。
  82. 新盛辰雄

    ○新盛委員 昨年漁特法を審議し、そして新たに漁業経営負債整理資金制度をつくりまして、三百五十億という融資枠を決めたのであります。そうしますと、いま長官がおっしゃるように、単年度でありますから、その金はなくなります。五十八年度に繰り越していくということではありません、こういうことですね。そうなりますと、結局三百五十億積算をされて予算要求された時点で、どういう判断で、どういう積算の根拠でもっておつくりになったか、いかがですか。
  83. 松浦昭

    松浦政府委員 この資金は、従来の経営維持安定資金とかあるいは燃油資金とは違いまして、やはり漁業生産構造再編成を行う業種負債整理ということでございますので、業界ぐるみのコンセンサスが必要であるということから、減船対象業種がどのような業種がどの程度まで出てくるかということがよくわからなかったわけでございます。したがいまして、資金需要を当初的確に算定するということがなかなかむずかしかったということがございます。  そこで、私どもとしましては、この三百五十億を設定しました場合に、主要な業種漁業経営の実態、特に固定負債状況あるいは減船等の実施の見込み、制度資金、特に緊急融資の年次別の償還額といったようなことを総合的に勘案して、三百五十億程度あれば対応できるのじゃないかということで判定をいたしたわけでございますが、残念ながら業種対象カツオマグロに限られたということとか、あるいは恐らく明年度になりますると非常に資金需要が起こってまいると思いますけれども、前の長官の時代に実施いたしましたいわゆる二年間の償還期限の延期という措置がとられておりましたので、まだ償還期限が来ていない債権が大分あるということから、三百五十億まで使い切れなかったというのが実態でございます。
  84. 新盛辰雄

    ○新盛委員 負債整理資金対象資金が残存者向け、漁協協力資金、保証債務履行資金等と種類がございますね。こうしたことは大きなあれになるわけですが、大蔵省なんかをここへ呼んだら大変なことになるのじゃないかと思うのですけれども、これは非常に厳しい現実である。何でこういうふうになったのかという原因追及を水産庁としてもやっていただかないと、次の六百五十億の問題をいまから触れますが、五十八年度の六百五十億の融資枠も、これは大幅に増額をされているわけですね。そうしますと、せっかくとったこの貴重な水産予算三千六百億という枠の中で、五十七年、五十八年度合わせて一千億ですから、まさしく大変誤算が生じたとかということでは済まされないのじゃないか。言うならば使えないような制度を、どうしてこういう積算根拠を、いまおっしゃるような事情もあるのでしょうけれども、見せ金に終わらせてしまっていいのだろうかという危惧を持ちますね。  長官、非常に大事なことは、宮城県の気仙沼市の大手のマグロ業者が負債を三十億背負ってしまいまして、実は倒産をしているわけですね。この方は日鰹の副会長でもあるのだそうですけれども、不況の中で、さらにこういう資金融資の面でこうした倒産の現状がある。とするならば、なぜこういうものに活用できないのか。打つ手はないのか。素人筋が考えましても、そういうためにこの金はつくったのではないかということにつながるのですが、六百五十億も果たしてこれから先負債整理資金として展望なき資金ということになるとこれは大変なことでして、どうでしょうか。明確に三百億近い金が五十七年度でもうおしまいだ、あと六百五十億に期待をかけたい、こういうことにつながる話ですが、これがまた結局使えなくなってしまうような状況になりますと、非常に大きな問題なのです。だから、私、水協法の一部改正の附帯決議がもし出されるなら、熱心にここのところはみんな漁業者は期待をしているから条項に入れてくれと理事会にも申し上げておいたのですが、何か政府側の方ではどうも困るということなのですが、困るならばここで具体的にお答えいただきたい。そして、この貸出条件考え直す必要があるのではないか。言ってみれば発想の転換ですね。この辺はどうでしょうか。  ここは、長官もですが、大臣、水産業界の大御所でもございますし、非常に皆さん心配しておられますから、ここで少なくともつくった金が見せ金であってはならない、展望なき資金であってはならない、生きた金でなければならない、それにはどうすればよいかということをひとつ明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  85. 松浦昭

    松浦政府委員 実は明年度の六百五十億の消化の見通しでございますけれどもカツオマグロだけについて申し上げましても、先ほど申しました二カ年間の政策資金の償還猶予というものが響いておりまして、五十七年度につきましては貸付額が減少しておったわけでございますが、カツオマグロだけとりましても、実は政策融資の各年別の償還状況を見ますると、五十八年が二百六十九億、それから五十九年が二百八十三億あるわけでございまして、かなりの部分が実はカツオマグロだけで出ていくという状況になっておるわけでございます。それからまた、当然イカ釣りにつきましては、ことしはできませんでしたが、来年度は恐らく減船並びに生産性の向上の努力というものを前提にいたしまして対象業種に入ってくるというふうに考えられますので、六百五十億のうちのかなりの部分は消化ができるというふうに考えておるわけでございます。  このほかの業種につきましても、目下いろいろと相談をいたしていることもございまして、われわれの努力、それから業界の方の自主的な努力ということと相まちまして、資金のかなりの部分はこれによって乗りかえられていくというふうに考えるわけでございます。  ただ、償還条件の緩和につきまして私申し上げておかなければいけないことがあるわけでございますが、従来の経安資金あるいは従来の燃油資金とは非常に性格を異にした資金であるということは、この前るる申し上げたわけでございます。やはり自主的な努力というものに応じてこの資金は出しますということを当初から申し上げているわけでございまして、これだけの低利の、しかも長期の資金でございますから、それだけの努力はしていただきたい、それが条件の中に盛り込まれているというところから、なかなか貸し出しがむずかしいという一要素もございまして、さような一線は私どもとしてはなかなか崩すことができない、これはいわば融資の基本になる条件であるということは御理解いただきたいと思う次第であります。
  86. 金子岩三

    ○金子国務大臣 いろいろ御指摘いただきましたが、十分検討さして、できることはぜひひとつ御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  87. 新盛辰雄

    ○新盛委員 確かに長官も当事者として苦しい御答弁で、それ以上追及するということではございませんが、ただ、常識並みに物事の考えを置かないと、せっかく皆さんが汗水流して積算をして、大蔵省に要求して、そして第一次、第二次査定を受けて、最終的にマイナスシーリングの中でこれだけの金を積算をして確保されたわけですよ。その金が生きた金にならない。ということになりますと、やはりこれは一体どういうことが原因なのか、こうなるわけですね。だから、率直に申し上げて、これからの発想の転換を図らなければいけないじゃないですかとか、あるいは十九項目にわたるような、ある意味においては縛りをきかしたような通達をお持ちなので、それを簡便方式にしようと鋭意努力されておるわけですけれども、現実は倒産する漁業者がいる。こういう絡みをしっかりと見詰めていかないと、水産のこの資金等について不信が生まれてくるのではないか。結局、水産振興どころか、停滞をしてしまうということになりはしないか。それを憂慮するがゆえに、くどいようですがお聞きしているわけです。  だから、この対策として、確かにいろいろむずかしい問題もありますし、他の資金と違いまして、これは漁特法を中心にしてできた金ではありますけれども、しかし、有効適切にこれの資金運用というものを、需給計画を立てていかなければならないときにいま来ていると思うのですね。それによって一挙に活力が生まれてくる、そういうようなことになりはしないか。だから、固定負債整理ということともつながりますが、この際これだけの金をもって処置をしようと意気込んだのですから、効果をあらわし得るようにしてほしい。そのためには、やはり何といっても大蔵省あたりから眺められて、これは何じゃと言われて、もう答えるすべもないじゃ困るのでありまして、この辺のところをひとつしっかりと、当然やっておられると思いますが、もう少し方法をお考えいただきたいと思うのです。どうですか。
  88. 松浦昭

    松浦政府委員 この問題につきましては、従来から通達を何度も直しまして、できるだけ御要望に沿うような形で直してきたことは、先生よくわかっておられると思います。そういうことで、たとえば五十五年度末に起点を定めまして、例のプロパー資金の設定などもいたしましたわけでございますが、このような点につきましても今後よく検討して処置をしたいというふうに考えておりまして、趣旨が生かされなければ意味がないわけでございますから、さような点はよく考えてまいりたいと思っております。  しかし、一方におきまして、先ほど申しましたようなこの制度の特殊性と申しますか、この性格という点はやはり一線きちんと守らなければならぬ点でございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思っておる次第であります。
  89. 新盛辰雄

    ○新盛委員 一層の御努力をお願いして、終わります。
  90. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 武田一夫君。
  91. 武田一夫

    ○武田委員 前回質問したのでありますが、多少確認をしながら質問したい点がございますので、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案でまずお尋ねをいたします。  これは二点お尋ねをいたしますが、試験実施期間中における本制度の収支状況はどういうふうになっているのか。それからもう一つは、これは加入者の拡大促進といいますか、このための対応としての保険料率の引き下げという問題があると思うのですが、この点に対する取り組みはいかがなっているか。この二点をお尋ねいたします。
  92. 松浦昭

    松浦政府委員 漁船積荷保険の試験実施中の収支状況でございますが、昭和五十七年三月末現在で、収入三十九億七千百七十八万円に対しまして支払いが二十五億二千二百九十二万円、損害率六三・五%ということになっております。しかし、この中にはいわゆる未経過期間のある保険契約がございますので、支払いが確定いたしております五十四年度契約までの収支状況を見てみますと、収入が二十四億九千百三十二万円に対し支払いが十九億六千六百三万円でございますので、損害率は七八・九%という状態に相なるわけでございます。このように一応損害率が一〇〇%を切っておりますので、漁船保険中央会には昭和五十六年度末で九億一千八百万円の準備金がございまして、また、多くの組合におきましても黒字を計上しておるという状況でございます。  そこで、第二のお尋ねの積み荷保険の保険料率の引き下げをして一層加入の推進を図るべきじゃないかという御質問につながってまいるということだろうと思うのでございますが、この積み荷保険の保険料率につきましては、最新の危険率に関する資料に基づきまして適宜その改定を行うということにしておりまして、具体的にも四十九、五十二、五十四、五十五の各年に料率改定を行いまして可能な限り引き下げを図っておりますし、また、四十九年、五十四年にはいわゆる無事故割引を導入いたしまして負担の軽減をいたしておるところでございます。本格実施になります本年十月以降の料率につきましても、最新データを取り入れまして危険率を算定いたしまして適正な料率を算定していくつもりでございます。
  93. 武田一夫

    ○武田委員 いよいよ十月以降、いま長官話されたように本格実施になりますといろいろと予期しないことも出てくるわけでございまして、加入している方々がふえてくるということは一つの支えでありますから、そういうよき条件をつくる対応にひとつ全力を尽くしてほしい、こういうふうに思います。  次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。  現場に行っていろいろお話を聞いているうちに、水協法の組合に加入している方々の中で、大きい業者にとっては融資等の問題でもいろいろ恩恵を受けているのが多いのですが、中以下の方々はどうもお流れさえも回ってこないという苦情を聞くわけです。聞いてみましたら、どうも大きな業者が融資の食い合いをする傾向があるんだ、そのために中以下の、一番経営的に大変な、しかも一生懸命やっている方々にそれが回ってこないときもあるんだ、そういうようなことを聞くわけであります。  こういうようなことが現実にあるとすれば、よく実態を調べながら、適切な指導をしながら、いかなる方であろうともそれなりの融資が受けられて、水協法における組合に加入したというそのよきものがちゃんと受益されるように、利益が受けられるように取り組んでいかなければいけないと思うのです。こういうことについて、今後十分なる指導と、改正するわけですから、この機会によく実態を調べてほしいと思うのですが、これはどうでしょう。
  94. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業協同組合は当然組合員に直接奉仕するということが目的でありますから、いやしくも一部の組合員の利益になるような運用をしてはならないということは当然でございます。  私ども、いまお話を伺いまして、担保力あるいは信用力が弱い漁業者が希望する融資をなかなか受けられないということがあり得るかなという気持ちはいたしますが、一組合員に対する最高限度も決まっておるわけでございますし、また、制度資金融資枠が十分に用意されているわけでもございますし、あるいは中小漁業融資保証制度があって、弱い漁業者に対する資金の融通の円滑化のためにいろいろなてこ入れもいたしておりますので、そういう事態があるということはちょっと信じがたいような気もいたすわけでございますけれども先生指摘のようなことがあるとすれば、これは大変問題であるという気がいたします。私どもとしては、今後組合の貸付事業がそのような一定の人にかたまったりあるいは特別な人に有利なことがあるといったことがないように、適切に運営し、指導してまいりたいと思います。
  95. 武田一夫

    ○武田委員 また、組合に新規加入をしたいという場合、どうも加入を認めないという場合もあるんだそうでして、コネがないとだめだ、そういう話を聞くわけですが、こういうことがあるとすれば、これまたゆゆしき問題ですね。いままでそういうことはなかったかどうか。私は塩釜という地域で、かまぼこやいろいろな加工業者もかなり多いところですから、そこの現場にいて長年そういう立場にいた方の話だからまんざらうそじゃないと思うのでありますが、この点も実態をよく調べながらきちっとした指導というものをしてほしい、こういうふうに思うのです。
  96. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業協同組合の正組合員たる資格を持つ方につきましては、法律上のきちんとした規定がございまして、加入申し込みをした場合には組合は正当な理由がないのに加入を拒んではならないとちゃんとあるわけでございます。このような規定があるにもかかわらずさような事例が出るということは、ちょっとこれも信じがたい話でございますけれども、私どもも従来から不当に漁協加入が制限されるようなことのないように指導いたしておりまして、組合員たる資格を有する者が漁協に加入の申し込みをした場合には、戸籍筆頭者でないことあるいは同一世帯に属する者がすでに加入しているといったようなことを理由にして加入を拒むことがないように指導されたいというところまで実はやっているわけでございます。  しかし、先生またそういう実態をお話しになりますので、私どもも本当に気をつけなければならぬというように感じます。今後もこのような問題が生じないように指導いたすつもりでございます。
  97. 武田一夫

    ○武田委員 それから、漁業者の老後の生活の保障ということですね。これから老齢化社会を迎えるときでありまして、老後の生活の安定と福祉の向上というのは大きな課題でありますが、特に漁業の担い手、後継者対策は、いわゆる農業、漁業、林業というものの中で林業と並んで漁業もかなり厳しい、後継者に苦労しているところだと思うのです。  こういう後継者を十分に確保するための対応というのは、一つは年金の問題だろう、こういうふうに思いますね。ですから、皆さん方からは農業者年金等に準じた優遇措置ども講じてほしいものだという切実なる要望をわれわれ聞くわけでありまして、長官の耳にも入っていると思いますが、具体的には共済掛金の全額所得控除の問題とかあるいはまた給付金の給与所得扱いの措置という問題についての優遇措置をしてほしい。言うなれば給与所得扱いというのですか、そういうようないろいろと具体的なことを言ってくるのですが、いずれにしてもいろいろな対応をしながら老後の生活も間違いなくその職業の中で安全な対応ができるんだという環境づくりをひとつこの際していく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。この点についての当局のお考えをひとつ聞かしていただきたい、こういうふうに思うのです。
  98. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業における後継者を確保いたしますことは大変重要でございまして、このために、一つ対策として年金を充実し拡充していくということが必要であると思います。この福祉年金はつきましてはすでに制度があるわけでございますが、政府としましても二億円の事務費の補助を計上いたしまして、今回の五十八年度予算にも御要求申し上げておりますので、ひとつぜひこれを通していただきたいと思う次第でございます。  また、いろいろな税制の対策につきましては、これはいろいろとどのような税制措置をとったらいいのかということを伺った上で個別に判断いたしたいと思うわけでございまして、もしもそのような御要望がございましたら、お聞かせいただければ検討させていただきたいと思います。
  99. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、時間は十分あるのですが、余り遅くならないように気を使ってこれ一問でやめますので……。  いま新盛委員が非常にきめ細かい鋭い御質問をいたしました漁業経営負債整理資金の問題ですね。これは先ほどのやりとりを私も聞いておりましたが、やはり効果的な有効活用ができる方向制度を直すことができれば直して、困っているところにきちっと回っていくような対応、これはもうどこへ行っても聞く要望の強い点でございますので、この点についての水産庁としての取り組みを私は重ねてお願いをしたい。そうでないと、こういう方々は非常な努力をしているわけですな。一番努力をしている、苦労をしている方々でございますから、こういう一つの法案などが出たときに、われわれのことを少しは考えてくれるんだろうなという大きな期待を必ず持っているわけです。それだけに、その期待が裏切られてまたどうしようもないとなると、さっき後継者の話が出ておりましたけれども、子供たちは見ているわけですね。おやじの苦労やあるいは兄貴の苦労、先輩の苦労をいろいろ見ていますと、どうしても仕事への取り組みに対する意欲というものを失ってしまうことになる。これは人情だと思うのでございます。ですから、そのところに大臣初め長官の人情味ある配慮が必要ではなかろうか。詳しいことは先ほどの質問の中でありますので、そのことだけひとつお願いして、決意をお話ししていただきたいと思います。
  100. 松浦昭

    松浦政府委員 この負債整理資金の貸し付けにつきましては、手続等にも大分時間がかかりましておくれてしまいました関係上、来年度までもう少し見てこの状況についての御判断をいただきたいという気持ちは持っているわけでございますが、五十六年度末を起点とするプロパー資金の算定等につきましても今後十分検討してまいるということを申しておるわけでございます。さようなことでこの趣旨が生かされるように考えてまいりたいと思っております。  なお、蛇足でございますが、この資金の性格というものはあくまでも自助努力前提として考えております点につきましては、どうか漁民の方もひとつ御理解をいただきたい。その範囲内においてわれわれも努力をしたいと考える次第であります。
  101. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃ、時間は十分ほどありますが、終わらしていただきます。
  102. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 寺前巖君。
  103. 寺前巖

    ○寺前委員 いろいろ皆さんがお聞きになっておりますから、大体もう出尽くしておると思うのです。それで、私が気になることだけを数点だけ質問をやりまして、採決に移るようにしたいと思います。  まず、その一つは水協法の問題です。  私の京都の漁連へ行ってもそうなんですが、漁協連合会などが行う自主的監査が法の中で今回位置づけられました。漁協指導監査士について規定されるようになったわけですが、その監査がスムーズにいかなかったらぐあいが悪いわけです。農協法の場合は、七十三条の十一の二の五項に監査事業実施する場合に単協の方がそれを受けて立つところの協力義務が規定されているわけです。ところが、漁連は法的にこういう位置づけをされますけれども、今度は単協の方が受け入れるという協力義務の問題が法的に整備されていない。こういうことで果たしてスムーズにいくのだろうかという懸念を若干の幹部の方から聞かされたものですから、こういう問題については一体どのように考え、対処されようとしておられるのか、お聞きしたいと思います。
  104. 松浦昭

    松浦政府委員 農業協同組合法における監査事務は、もっぱら会員でございます農協及び同連合会に対する指導監査関係事業を行うことを目的として設立されましたいわゆる農協中央会があるわけでございます。この中央会が監査業務を担当するということで、いわば実施計画に基づきまして会員に対しては他律的に事業実施を行えることになっておりまして、つまり組織が別になっておるわけでございます。そういうことで、会員の協力義務が逆に規定されているということでございます。  しかしながら、水協法は漁協、漁連の実態や事務のコストから見てどうしても中央会制度をとるに至っておりませんので、そのために漁運自身が経済事業と並びまして監査事業を行うということになっております。もちろんその企画、実施につきましては、漁協というのは会員でございますから、そのコンセンサスを得て、その前提に基づいて監査事業が自主的に行われるという形になりますので、特に協力規定を置いていないということでございます。  ただ、農協法と違いまして、水協法につきましては、いま申しましたようなことから協力義務は課さなくても監査の実効を期し得るということでこのような規定になっているわけでございますが、今回の法改正によりまして監査士そのものが自主的に独立してちゃんと監査を行っていくということにならなければその指導事業の目的を達成できないということはお説のとおりでございます。したがいまして、監査従事者の服務につき監査規程に定める、あるいは監査従事者の所定の資格を規定するといったようなことに関しましてきちんと規定をいたしまして漁連の監査実施体制の整備を図りますと同時に、高水準の監査が行われるように制度上担保している次第でございます。  われわれとしては、このような監査士をつくりました上は、今後ともその制度運用に当たりまして実際に監査士の仕事が十分行われまして、今後協同組合あるいは連合会の段階できちんとした業務が行われるようにこの事業を推進してまいる体制に持ってまいりたいと思っている次第であります。
  105. 寺前巖

    ○寺前委員 次に、漁船損害補償法改正についてですが、漁協へ行って、今度法改正がなされるのだがという話をやりますと必ず出る話がある。各種保険料がいろいろあるんだ、ずいぶんいろいろ金を納めんならぬことになるので、できるだけそういう金は安い方がいいんだ。それはわかります。二百海里規制や燃油の高騰、魚価の低迷など漁業経営が非常に悪化していることから考えても、何とか高負担に感じられないような措置をやってもらえぬか。ところが、普通保険は、ここ数年大事故が減ってきているというのか、一貫して保険金より支払い保険料の方が額が多くなってきている。国の特別会計にはかなりの積立金がたまってきているじゃないか。ですから、五十九年度保険料率の改定期ということを聞いているだけに、危険率が低下しているという事実も考えてみて料率を下げることが考えられないのかということは、各所へ行きまして必ず聞く問題なんです。みんなの要求ですからぜひ聞いていただけぬものだろうか、どういうふうにお考えになるだろうか。
  106. 松浦昭

    松浦政府委員 漁船保険の料率につきましては、おおむね三年ごとに見直しを行っております。最近では五十六年に改定いたしまして、その際は平均七%の引き下げを行っている次第であります。次回の料率改定は、三年ごとでありますから五十九年度に予定しているわけでございますが、当然危険率に見合った適正な料率を定めるということがこの漁船保険の運用にとって重要であることはよく承知をしております。私どもの予想でございますが、このままの事故の状態で推移をいたしますれば、五十九年は下げ得る可能性があるというふうに思っております。
  107. 寺前巖

    ○寺前委員 次に、先ほども出ておった話ではありますが、漁業経営負債整理資金の問題についてです。  五十七年度、本年度より発足させたわけですが、三百五十億円の融資枠を設けられております。ところが、締め切り予定日であった二月二十八日になっても申し込みの金額が十億円にも満たなかったということが新聞を読んでいますと出ていました。こうした事態に対応するというのか、貸付条件の緩和とか手続の簡素化などの措置をおとりになったようですが、一体これだけの予算の中で現状どれだけの額の希望があったのか、まずお聞きをしたいと思うのです。
  108. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、当初締め切りをいたしましたところが数億円しかなかったということでございましたが、私ども要綱等につきまして修正をいたしまして、簡便な方法によってこの資金の所要額を算定するといったような措置もとりました結果、なお今後の金融機関の審査状況等も見てみなければなりませんが、少なくとも五十億から七十億の資金につきまして貸し出しが行われるという見込みでございます。
  109. 寺前巖

    ○寺前委員 その三百五十億から準備したものが、緩和措置をやってもこうだった。それで、来年度に至っては枠をさらに六百五十億円にふやそうという話になってきている。希望が少ないのに枠だけはふやしていくというのはどうも解せないことになるではないか。  そこで、おたくの方が計画されたとおりいかないのには、いってしかるべきなのにいかないというのには、そこには原因があると思うのです。しかも、負債整理資金というものに対する期待は大きいのです。期待はありながら実際にはわずかしかないとすれば、それはやはり条件上に問題があるということを言わざるを得ないのじゃないだろうか、私はそう思うのですが、一体どこに問題があってこういうことになっているのかを御説明いただきたいと思う。
  110. 松浦昭

    松浦政府委員 当初三百五十億の資金枠を創設いたしましてこの事業に取り組んだわけでございますが、これがこのような数十億の台であったということにつきましては、幾つかの原因がございますけれども、大きな点は、一つは何分にもこれは自主減船ということを伴うそういう資金の貸し出しの条件でございましたために、カツオマグロ業界以外の業界ではなかなかこういう自主努力のコンセンサスが得られなくて、結局カツオマグロ中心の資金の貸し出しということに相なったという点でございます。  それから第二点は、カツオマグロにつきましても同様なことが言えるわけでございますが、実は前に借り入れ制度融資につきまして償還期限の延長をやっておりまして、このためにまだサイトが来ていない制度資金がたくさんあるわけでございます。したがって、これが決済の時期になりますれば、期限が参りますれば当然この負債整理資金に乗りかわるということがあるわけでございますが、まだこれが五十七年度には来ていなかったという点がございます。  この二点が一番大きな点ではないかと考えるわけでございます。  そこで、明年六百五十億をまた枠として設定いたしまして、これもまた空枠になってしまうのではないかという御懸念でございますが、先ほども新盛委員に御答弁申し上げていたとおりに、マグロ業界だけとりましても、政策融資で明年償還期限が来るもの、当然これは負債整理資金に乗りかわるわけでありますが、これが二百六十九億もございます。それからまた再来年、五十九年には二百八十三億もございますので、当然、これがほとんど大部分が負債整理資金に乗りかわってくるということが考えられます。  それからまた、イカ釣り漁業そのほかの漁業につきましても、この新しい拡大された対象業種に入ってくる可能性のある業種もございますので、私どもとしてはかなりの部分が消化できるのではないかというふうに見込んでいるということを先ほど申し上げた次第であります。
  111. 寺前巖

    ○寺前委員 私もそれを新聞で知っておるのですよ。ですから、二年間の延長措置があったから、その分がこれから今度は集中的にふえてくるだろうということがあるにしても、それにしても二月から三月期にあえて緩和措置をとったわけでしょう。とることによって少しの条件の変化が生まれたことは事実だ。とするならば、やはりこの制度に対するところの緩和措置というものがこれからのあり方の上においても検討しなければならない問題じゃないのだろうか。やはり枠を有効に生かすためには、単なる経過措置として今回の三月に若干の緩和措置をやったということではなくして、今後もそういうやり方をすべきではないのだろうかと思うのですが、その点はいかがなものですか。
  112. 松浦昭

    松浦政府委員 この措置につきましては、先ほども御答弁申し上げましたようにいろいろな緩和措置をすでに講じてまいっておりまして、このようにやってまいったわけでございますが、今後の問題につきましても、本制度資金制度をつくりまして初年度であったといったことや、やはりこの実施要領等がなかなか時間がかかりまして、早い時期にこれを打ち出すことができなかったというようなことで問題が生じておることは事実でございます。  そこで、五十八年度におきましては、国の制度資金以外の民間のプロパー資金、この計算が一番問題でございますので、先ほどから新盛委員にも御答弁申し上げておりますように、五十七年度において対象となったもの以外のものをどの程度まで本資金の中に組み込んでいくか、これが非常にポイントであるということは専門家の方はよくわかっていただけるところでございます。そこで、これにつきまして目下鋭意検討中でございまして、このようなことと、それからまた五十八年度においては、民間プロパー資金対象とする場合には、その範囲にも関連いたしまして、整理対象債務の確定が円滑に行われるということが必要でありますので、この点も含めましていろいろ配慮すべき事項があるということを先ほどから申し上げているわけであります。  ただし、一方におきましてこれをいわゆる制度資金の本質でございますところの自主的な努力というものとリンクさせるという点は私どもどうしても一線として引かなければなりませんが、いま申しましたような点につきましてはいろいろと検討いたしますということを申し上げておる次第であります。
  113. 寺前巖

    ○寺前委員 この資金は二百海里や燃油高騰、魚価の低迷などで困難に陥っている漁業生産構造再編成に資するためとしているが、実際はいまおっしゃったように二削減船とか共補償とか、そういうようなことに業界として自主的に取り組むことが前提だということで盛んにおっしゃっているわけですけれども、実態の面から考えると、負債整理をしなければならない、したいと思う人が真に活用できないという問題が現実的には起こっているように思うわけですね。ですから、長官もいろいろ弾力的にやるような話をされるわけですけれども、やはりそこは実態に合うようにぜひ考えていただきたい。  この間も千葉県の銚子に行ったわけです。そうすると、燃油高や魚価安などで借金漬けになっている人というのが現実にあって、それで権利を売って廃業に追い込まれているという人を現に見てきたわけです。別に私は大臣の話をここに持ち出すこともないのですけれども大臣のところの船も私の方に来ていますよという話を実際見せつけられました。片一方では廃業していく、片一方では権利を買っていくという姿が現実の社会の中では強まっていくわけですね。そういうことから、負債整理資金に対するところの零細漁業者負債に、共補償や何やらというときだけじゃなくして、本当にそういうところの沿岸漁民の負債整理のために積極的にこたえてやるという立場に立った制度考えられてもしかるべきじゃないのだろうかということを、いろいろ話を聞いていると、こういう制度を言うと、この話が沿岸漁民から必ず出るわけですね。ですから、そういう意味でさらにこれを一段と積極的に打って出る問題としてお考えいただけないだろうかということで、これはひとつ大臣にお答えいただきたい。
  114. 金子岩三

    ○金子国務大臣 先ほどから新盛先生を含めていろいろ御指摘をいただいております。実態をよく把握して、できるだけひとつ善処いたしたいと思います。
  115. 寺前巖

    ○寺前委員 また話を変えますけれども、私の方の丹後町に中浜漁港というのがあるのです。実は、先般一月二十五日の朝方に、小型の底びき網漁船の経洋丸というのが、六人乗り組みですが、座礁し転覆して、そして船長と甲板員が死亡するという事件が起こったわけです。  私は、漁船の損害補償の問題として現実にどんな問題があるのだろうかと思って、実はそれで行ったのです。行ったら、話はそんな話ではなくして、漁港そのものがちょっと検討してもらわなければいかぬという話にたまたまなったものですから、そこで、私は漁港の問題についてちょっと聞いておきたい。  というのは、ここの漁港は京都府の日本海側におけるところのただ一つの四種漁港なんです。四種というのは何事だと聞くと、それは避難港としての役割りを果たしてもらう。ですから、考えてみたら避難港としての性格を持っている漁港がそこただ一つなんです。そして、そこの港のどこで沈んだと聞いたら、出口、出たところで沈んだ。何でやと言うたら、船長さんやらが前々から砂がたまってこのままでは出入りしにくいぞということを言っておって、いやだな、いやだなという思いのままで出ていったというわけです。それで砂の上に乗ってしまって動かなくなって、そしてどんと当たって転覆してしまうということになって、死に至らしめたということになっているわけなんです。  こういうような避難港としてのレッテルを張る四種漁港、そこで三十年来船長さんとして船に乗っておってよく知った人でさえも出入りが非常に困難な事態になっているということで、果たして避難港としてその性格を持つことができるのかどうかという問題にもなってくると私は思う。そうなってくると、避難港としての整備をもっと積極的にやる必要があるのじゃないか。いま第七次の漁港整備をやっておられるけれども、そっちの方ではどうなっているのだと聞いてみたら、その対象でいまやっているわけでもない。砂の方はずっとたまっておる。現にこの事件が起こって以後一カ月余りたって、砂を取って初めて船を出すことができるようになった。  ということから考えてみても、そういう避難港になるところについては、日常的に砂がたまるところだったら砂を取ってやっておかないとその機能を発揮することにならぬじゃないか。だから、こういう避難港について、それの所管が府だ、県だということにとどまらず、国自身が避難港に対する取り扱いについて、整備がどういう計画になっているか、日常的な管理がどうなっているのかということを見て指導していくことが必要なんじゃないだろうか。加えて、たとえば砂を取るということになってくると、これは費用のかかる、府県にとっても大きな問題だろうと思うのです。だから、こういう問題に対して、これは避難港という性格から見ていくと何もその府県だけの話じゃないのだから、国としてもめんどうを見ていく、そういう対応策があってしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  116. 松浦昭

    松浦政府委員 この中浜漁港で一月に起きました事故につきましては、お二人の方が命を亡くされたということでございまして、大変心の痛む思いがいたす次第でございまして、心から哀悼の意を表したいと思う次第でございます。  この中浜漁港は丹後半島の先端にあると聞いておるわけでございます。沖合いに漁場が形成されていますけれども、とにかく日本海の荒波を直接受けるという自然条件でございまして、避難港としての機能に着目して第四種ということにいたしているわけでございます。  そこで、去年から始まりました第七次の漁港整備計画につきましては、泊地の安全性を増大させるために現在の主防波堤の延長が整備の主体となっているわけでございますが、これに加えまして、先ほど先生、これ以上何もしないのじゃないかとおっしゃいましたけれども、航路保全上の、沖合いに新しい防波堤の建設ということも計画しておるわけでございまして、これも計画に盛り込まれております。今後、その位置とか延長等につきましては地元の意見もよく聞きまして定めていきたいと考えておりまして、十分に第四種漁港としての機能を発揮できるようにしたいと考えているわけでございます。  次に、しゅんせつの問題でございますが、確かに漁港の維持管理につきましては、漁港法の規定によりまして漁港管理者が行うということにされておりまして、この点につきましては、四種でございますから、当然都道府県がこの漁港の管理を行ってまいるわけでございます。  ただ、ただいま先生、常時しゅんせつ船を置いておいた方がいいのじゃないかという御意見をおっしゃったわけでございますが、常時置きますと一日三十四万円程度かかりまして、これは余り大きなしゅんせつ船ではございませんが、一月に一千万円かかるということでございまして、一回の作澪で大体六百万円か五百万円くらいのものでございますから、管理者が利用者と十分に打ち合わせをしまして適期にしゅんせつを行うという体制をつくることが非常に重要じゃないかと考えます。さような方向で私ども指導してまいりたいと考える次第であります。  最後に、しゅんせつ費についての国の援助ということでございます。  第四種漁港は御案内のように国の負担率も非常に高くしているわけでございますけれども、維持管理はやはり漁港の利用者の方から利用料をも徴収いたして管理者がやっていただきたいということで、地方交付税の算定につきましても単位費用の中にこれを入れているという状況でございます。国が補助金を出してもしゅんせつ費を見たらいいのじゃないかという御意見でございますが、何分にもこの非常に厳しい公共事業の中で、とにかくたくさんの漁港の要望がある中で新設、改修等を行っている状況でございますから、ひとつ維持管理の面につきましては管理者の方で適切な対応をしてほしいというのが私ども考えであります。
  117. 寺前巖

    ○寺前委員 私、常時そこにだけ船を置けということを言っているわけじゃないのです。ただ、砂がたまって一カ月余りも事故が起こった後も動けぬような事態で避難港でございますでは、避難港にはならない。そういうことを考えたら、おっしゃったように適切な体制があればいいと思う。常時確保できるような体制をぜひ考えておいてほしいということを提起をしているわけです。ぜひ引き続き御検討いただきたいと思うのです。  また避難港の話ばかりになりますけれども、私はたまたまこの前北海道へ行ったのです。網走の新しい港を見てきたのです。これはわざわざ見に行ったわけじゃなくして、たまたまあの付近を通ったときに、すばらしい港があるけれども、港の横の加工団地というのは広々してコンクリートで舗装がぴしっとしてあるし、これはどうなっているのかな。それから建物を見たら、魚の取引をする市場なのでしょう、人はがらがらだ、建物のガラスは割れておる。新しいものが幽霊屋敷みたいになっておるけれども、一体どういうわけかな。見たら、船も入っていない。それから遠くの方を見ると、湖の海側のところに白波が立っているのが見えます。私、そういうことでずっと回ってみてよくよく聞いてみたら、網走の漁港をこちらへ持ってきて四種漁港として整備をするのだ、費用としては百四十億からかけておるのだ、十五年来の仕事なのだ、こういうわけですね。これはどうなのでしょうか。  そこで、いろいろ聞いてみたら、船乗りさんたちは、漁労長さんたちは、あそこは避難港として入るのには非常にこわいので、私ら、かなわぬのです、こう言うのだ。前からそう言うているのだという。それにもかかわらず、ここへ百四十億からの金をかけられて港をつくっておられるというのです。現実には、避難港としては、避難はひしめき合いながら網走のところへ入っています。考えてみたら、どういうことでこういうことになったのだろうな。帰ってきてしばらくすると、会計検査院ですか、行管ですか、どちらですか、新聞を見ると、使われてないじゃないかという指摘を受けている。せっかくつくったものを使わなければいかぬな、こう思う。思うけれども、使いたくないという漁労長たちがおるとするならば、それを無理に避難港でございますといって上塗りを何もすることはなかろう。やはり使いやすいようにしてやるのが僕は基本的な姿じゃないだろうかというふうに思う。  計画を聞いてみたら、加工団地をさらに拡大する計画があるようです。しかし、これは市の計画らしいけれども、現に何年もたっているのに建物も来ないで、そしていまのままで公害対策もやりながら進んでおられるということを考えたら、僕はそんな計画というのはおやめになるべき筋合いじゃないだろうか、計画の変更をされるべきじゃないだろうかということを感じました。  それからもう一つは、せっかくやり出したのだから港はいいようにしておくにこしたことはないと思うけれども、四種漁港でございますということで、お金の出し方の問題もあるからそれはそれでいいとしても、避難港として本当に整備をしなければならぬとするならば、漁労長たちがそこへ入りたくないというこの提起している問題を率直に聞いて、あり方を再検討されるべきじゃないだろうか。いま使っていないからということで、使わすように使わすようにという、指摘を受けたからという立場からだけで物を見ていくというのはちょっと違うのじゃないだろうか。むだ遣いの上塗りにならぬようによく研究をしてもらう必要があるということをあえてこの際に提起したいと思うのですが、いかがなものですか。
  118. 松浦昭

    松浦政府委員 能取漁港の安全性の問題について、それからその活用についてのお話だろうというふうに思うわけであります。  この安全性につきましては、いわゆる湖口地区と二見ケ岡地区のそれぞれについて考えてみますると、糊口地区につきましては、確かに秋口、北西風が吹くということで航行の不安を訴える漁労長、船長がおられるということは私どもも承知をしておりますが、これらにつきましては、今後島堤の建設、それから糊口部のしゅんせつ等につきまして地元と十分話し合いをしまして、これが整備を進めますれば安全性が保たれるわけでございますから、これをやりまして漁港としての機能を十分に果たすようにいたしたいというふうに思います。  また、船長さんもまだこの周辺の水域に入っておいでになった知見も皆無であるということで、かなり不安も感じておられるということもあろうかと思いますから、航路に関する資料の提供等に努めまして、安心をしていただくということも必要であろうというふうに思います。  それから、二見ケ岡地区につきましては昭和五十六年度に南防波堤の建設を行いまして、陸揚げ時の安全性については確保されたと考えておりますので、今後は必要に応じまして北防波堤の改良等避難係留の安全性も向上していくということによって、これは大丈夫であるというふうに思います。  それから、先ほど草がぼうぼう生えておるところであるというお話がございましたが、あれは別に計画をしている部分ではないわけでございまして、そういうことはございません。われわれの計画に入っておりますところはきちんと整備をいたしまして、りっぱな漁港の背後地にしていきたいというふうに考えているわけでございます。  ただ、申し上げますと、この能取漁港につきましては、かつては北転船の活動がもっとあるというふうに考えておりまして、当初の計画は相当大きなものを考えていたということはあったようでございますが、実際上はやはり二百海里の実施によりましてそれだけの漁港としての大きさが期待できないというところに問題があったというふうに私どもは承知しております。したがいまして、能取漁港の整備につきましては、湖口地区、二見ケ岡地区、それから卯原内、能取地区の四地区についてわれわれ検討しておるわけでございますが、糊口地区につきましてはいま申しました島堤の新築、糊口の航路のしゅんせつ等につきまして安全性の向上を図ってまいるということで地元と調整をしたいというふうに考えておりますし、二見ケ岡地区につきましてはほぼ完成を見ておりますが、これはやはり現状の施設を有効に活用するということがたてまえでありまして、これ以上拡張していくというふうな考え方は持っていないわけでございます。したがいまして、船揚げ場あるいは七メーター岸壁、泊地しゅんせつ、北防波堤改良等につきまして、今後の利用状況、地元の意向等を十分にそんたくいたしまして、必要に応じましてその調整も図りつつ整備を進めていくということによりまして、基本的な方針を遂行できますというふうに申し上げてよろしいと思います。  それから卯原内地区と能取地区につきましては、糊口が永久開口となって湖水に海流が侵入してきて以来、能取湖内の漁業生産が著しく増大しておりますので、むしろここは拡張すべきところでございます。したがいまして、ここは当面二メートルの物揚げ場を主体といたしまして施設の整備を進めるということでございます。  以上のようなことで、この点につきましては今後の方針も十分に考えておりますので、これによりまして処置をしてまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  119. 寺前巖

    ○寺前委員 莫大な金がかかる話ですから、よく関係するところの船乗りさんたちの意見を尊重しなかったら、避難港としての性格を失うことになりますからね。その点はよく御配慮いただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  120. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  121. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 まず、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  漁船損害等補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  122. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  123. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。新盛辰雄君。
  124. 新盛辰雄

    ○新盛委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     漁船損害等補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり左記事項の実現に努めるべきである。        記  一 政府が漁船積荷再保険事業を行うに当たつては、保険契約、損害査定等が画一的、形式的となり、また、保険金支払いが遅滞することのないよう、漁業経営の実態に即した弾力的運用を図ること。  二 漁船積荷保険の試験実施期間中に漁船保険中央会に積立てられた支払準備金については、漁船積荷保険事業の円滑な運営と健全な発展のために使用すること。  三 試験実施期間中における本制度の収支状況にかんがみ、保険料率の引下げに努め、一層の加入拡大を図るとともに、漁船保険制度の安定的運営を確保するため、保険組合の合併促進について引き続き検討すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じてすでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  125. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  126. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  127. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力をいたします。     ─────────────
  128. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  水産業協同組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  129. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  130. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。日野市朗君。
  131. 日野市朗

    ○日野委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   漁業協同組合は、組合員の漁業経営の安定、生活の向上、さらには、漁村福祉の確立を図るという極めて重要な使命を担っている。   よつて政府は、漁業経営の悪化を反映し厳しい状況にある漁協経営の基盤の強化、その健全な発展に万全を期するとともに、本法の施行に当たつては、左記事項の実現に努めるべきである。        記  一 都道府県段階の共済水産業協同組合連合会の設立については、本任意共済制度事業規模等にかんがみ、慎重に対処すること。  二 任意共済事業の推進に当たつては、農協共済等他種共済との行きすぎた競合が生ずるおそれがあることにかんがみ、相互は節度ある運営が行われるよう指導すること。  三 本任意共済制度、漁船損害等補償制度及び漁業災害補償制度の一元化問題については、漁業者の便益を考慮し、今後とも検討を続けること。  四 漁協等の適切な運営を確保するため、監査事業実施体制を拡充、強化するよう指導すること。  五 漁協信用事業の在り方については、そのぜい弱性及び他種金融機関の動向等にかんがみ、その特性、専門性を発揮し得る体制を早急に整備すること。  六 漁協経営対策については、漁協経営の実態等を踏まえ合併の促進等適切に対処するよう努めること。  七 漁協等職員の給与等労働条件の改善につき適切に指導すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の経過等を通じてすでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  132. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  134. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  135. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  137. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 次に、本日付託になりました内閣提出参議院送付北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を求めます。金子農林水産大臣。     ─────────────  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  138. 金子岩三

    ○金子国務大臣 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法は、それぞれ、北海道及び南九州の劣悪な自然的条件のもとにある畑作地域内の農業者に対し、農林漁業金融公庫が必要な資金を貸し付けることにより、農業経営の安定を図ることを目的とするものであります。  これら二法は、昭和三十四年あるいは昭和四十三年の制定以来、両畑作地域内の農業者の営農改善に大きく貢献してまいりました。  これら二法により資金の貸し付けを受けようとする農業者は、営農改善計画を立て、所要の資格認定を受けることとされており、その申請期限は、両法ともに昭和五十八年三月三十一日とされております。しかしながら、両畑作地域内には、たび重なる災害の発生等によりいまだ安定経営に達しない農業者が数多く存在すること、最近における農業をめぐる情勢にかんがみ、わが国の主要な畑作地帯である両畑作地域における農業経営を安定させる必要があること等から、引き続き本資金制度を継続する必要があります。  したがいまして、この二つの営農改善資金の貸付資格の認定の申請期限をさらに五年間延長して、昭和六十三年三月三十一日までとし、関連土地基盤整備事業等の一層の推進と相まって、両畑作地域における農業者の経営の安定を図ってまいることとした次第であります。  以上がこの法律案の提案の理由及びその内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。      ────◇─────
  139. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 次に、内閣提出農業改良助長法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を求めます。金子農林水産大臣。     ─────────────  農業改良助長法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  140. 金子岩三

    ○金子国務大臣 農業改良助長法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農業の振興を図る上で最も基本的なものは、技術開発と普及であります。このため、従来から農業改良助長法に基づき、農業に関する試験研究を助長するとともに、都道府県が農林水産省と共同して行う協同農業普及事業実施しているところであります。  現下の農業、農村は、一部の農産物の供給過剰、土地利用型農業の規模拡大の停滞、兼業化や混住化による農村社会の活力の低下等の問題に直面しております。こうした中にあって、需要の動向に応じた農業生産再編成、農業の生産性の向上、土地利用型農業を中心とした農業経営の体質強化、活力ある農村社会の形成等が農政上の重要課題となっており、技術開発、普及につきましても、このような課題に的確に対応していくことが期待されております。  こうした状況に対処するため、協同農業普及事業について、助成方式の変更と運営の方針の明確化を行い、事業運営の効率化と内容の充実を図るとともに、農業に関する試験研究の効果的な実施を図るための措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、協同農業普及事業の助成方式の変更であります。本事業につきましては、都道府県の農業の実情に応じて、その自主的、弾力的な運営を促進するため、定率負担金方式から定額交付金方式に改め、これに伴い助成関連規定の整備を行うこととしております。  第二に、協同農業普及事業の運営の方針の明確化であります。本事業につきましては、生産性の向上等現下の農政上の諸課題にこたえるため、農林水産大臣事業の基本的事項に関する運営指針を定め、都道府県はこれを基本として事業実施方針を農林水産大臣と協議して定めることにより、国と都道府県を通じて一貫した方針のもとで、事業の効率的な推進を図ることとしております。  第三に、最近における農業情勢の変化に対処し、農業に関する試験研究を効果的に推進するため、都道府県農業試験場は、農業試験場その他の農林水産省の試験研究機関に対して共同研究の実施を求めることができるものとするとともに、都道府県における試験研究実施体制の整備等の実情を踏まえ、農業改良研究員制度を廃止することとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  141. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 補足説明を聴取いたします。小島農蚕園芸局長
  142. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農業改良助長法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一に、協同農業普及事業の助成方式の変更であります。  協同農業普及事業に要する経費につきましては、従来、個別経費の積み上げにより予算を計上し、国と都道府県とが一定割合で負担し合う定率負担金方式をとっておりましたが、今回、都道府県の自主性の発揮を促進するとともは、農業をめぐる諸情勢の変化に即応した事業の効率的、弾力的な運営を図る見地から、標準、定額の交付金方式に改めるものであります。  また、これに伴い、都道府県の負担に関する規定の整理、交付金の配分及び交付手続に関する規定の改正を行うとともに、定率の負担金について定めている地方財政法の関係規定の整理を行うこととしております。  第二に、協同農業普及事業の運営の方針の明確化であります。  現在、協同農業普及事業につきましては、農政上の課題にこたえて、高生産性農業の育成、地域農業の振興、すぐれた農業の担い手の育成等に重点を置いて推進されるよう、事業内容の刷新と効率化を図ることが強く要請されているところであります。また、助成方式の変更に伴い、従来にも増して都道府県の実情等に応じた弾力的な事業の運用が行えることとなるところであります。こうした中で、当該事業が、事業の根幹となる内容が確保されつつ、国と都道府県を通じて一貫した中期的な方針に従って効率的に推進されるよう、農林水産大臣は都道府県の意見を聞いて事業の運営指針を定めることとするとともに、都道府県はこれを基本として農林水産大臣と協議して事業実施方針を定め、当該方針に従って事業実施することとしたものであります。  事業の運営指針及び実施方針には、普及指導活動の課題、専門技術員及び改良普及員の配置に関する事項及び資質の向上に関する事項、普及指導活動の方法に関する事項その他協同農業普及事業実施に関する事項を定めることとしております。  第三に、農業に関する試験研究の効果的な実施に資するための措置であります。  現下の農政上の課題に対応するための総合的な技術問題の解決が迫られている情勢にかんがみ、今後国と都道府県の試験研究機関の間の協力関係をより一層強化するため、都道府県の農業試験場は、農業試験場その他の農林水産省の試験研究機関に対し、共同研究の実施等を求めることができることとしたものであります。  また、これまで協同農業普及事業に必要な試験研究を推進するため、都道府県農業試験場には農業改良研究員を置くものとしておりましたが、都道府県における試験研究の実施体制の整備等の実情を踏まえ、今回、これを廃止することとしたものであります。  最後に、この法律は、昭和五十八年四月一日から施行することとしておりますが、助成の申請等に係る附則の規定は、公布の日から施行することとしております。  以上をもちまして農業改良助長法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  143. 山崎平八郎

    ○山崎委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、明二十四日木曜日、午前九時四十分理事会、午前九時四十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会