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1983-03-02 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    小里 貞利君       太田 誠一君    北村 義和君       近藤 元次君    佐藤  隆君       志賀  節君    高橋 辰夫君       羽田  孜君    保利 耕輔君      三池  信君    三ツ林弥太郎君       新盛 辰雄君    田中 恒利君       竹内  猛君    前川  旦君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 小倉 和夫君         国税庁直税部所         得税課長    日向  隆君         気象庁総務部企         画課長     駒林  誠君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 二月二十八日  日本農業自主的発展等に関する請願日野市朗紹介)(第一〇二二号)  同(井上泉紹介)(第一〇五四号)  同(佐藤観樹紹介)(第一〇九二号)  同外一件(鈴木強紹介)(第一〇九三号)  農林年金制度改悪反対に関する請願田中恒利紹介)(第一〇九一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  漁船損害等補償法の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)  原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二九号)  水産業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出第三三号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業基本施策)      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣劈頭お尋ねをいたしたいと思いますが、二十三日に、私どもは新金子農林水産大臣と、わが国農林水産政策をめぐる幾つかの基本問題について論議を交わしたわけでありますが、その中で大変重要な幾つかの問題を大臣の方から御表明をせられております。たとえば農業基本法の見直しの問題、米の減反の再検討の問題、それと絡んでの二百万トンの備蓄の問題など、きわめて農政上の基本に関する問題が提起をされております。いずれこれらの問題は、当委員会でそれぞれの委員皆さんからさらに具体的に大臣の所信をお伺いすることになると思いますが、私は、農産物自由化の問題に焦点をしぼって伺います。  先般の寺前委員の質問に対する大臣発言の中で、過般の六品目の枠の拡大については、これは小さなことであって大臣は知らなかった、こういう意味発言があったわけであります。この問題は、私ども委員会を含めてわが国農政団体関係農民の間で、この数年来きわめて大きな問題の一環として処理されたことでありまして、日米間においてすでに六、七回の外交交渉の中でいろいろ腹探りを含めて議論をされた一つ解決策として六品目の問題の取り扱いがなされた、こういうふうに理解いたしております。これを大変小さなことで大臣が知らなくてもいいのだということでは、これからの農産物自由化という大きな問題の処理に当たって、私はきわめて憂慮をいたしております。  この際、重ねて大臣から真意をお聞きをいたしたいと思います。
  4. 金子岩三

    金子国務大臣 私が先般六品目について小さな問題だと申し上げたのは、わが国農業に及ぼす影響が小さいという意味を申し上げたのでありまして、別に事柄が小さいのでこれを軽く扱うというような意味のことを申し上げたわけでないのでございます。影響が小さいという意味を申し上げたわけでございますから、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 マクロ的に見た場合に、地域的な産物でありますから、日本農業全体の観点から見た場合には相対的にそういうことを言われることも私はわからないことはありませんが、しかし、この関係地帯、地域の主要な農産物として今日まで政府はいわゆる二十二の残存輸入制限品目の中に入れてまいったわけでありまして、関係地農民諸君地帯皆さんにとっては、この枠拡大の問題はオレンジ牛肉の問題と何ら変わらないと思うのです。大臣が、二千トンであるとか三千トンであるとか、こういう程度の小さなことであるからそれほど顧みなくてもいいのだというようなことでは、私は困るのですがね。そんなことで処理せられたのでは、オレンジだって果実だって、まあ牛肉の場合は比較的大きいですが、やはり同じような論理で処理される心配を感じます。そういう意味では、納得するわけにいきません。この農産物の六品目拡大の背景になっておる問題、ともかく自由化枠拡大は困るということは、これ以上外国農産物輸入拡大せられたのでは日本自給力拡大を中心とする農政基本が崩れていく、ここに問題の焦点があるので、そういう視点からすると、総体的に見てもやはり問題があると私は思います。十分に納得まいりませんが、今後こういうことのないように、特に要望しておきたいと思います。  同時に、今日、自由化問題ではその枠の拡大の問題がやはり一番大きな不安の種であります。ところが、この枠拡大についての最近の国会における大臣の御答弁、先般の予算委員会における質疑に対しての答弁あるいは二十三日のこの委員会における答弁を聞いておりますと、どうもはっきりしないのであります。つまり、枠の拡大というのは、せねばならぬときが来ればこれは考えねばならぬ、こういう問題が一つある。それから、来年の三月まではこのままで行く、こういうことでありまして、三月以降については枠の拡大についてこれまでの経過を考えながら考えねばならない、字のとおり読むと私は大臣答弁をこういうふうに理解をする。ただし、関係団体農民のこの問題についての強い反対の意思があるのでその方向に向かって努力する、こういうふうに私は読んでおるわけですが、このオレンジ牛肉自由化と枠の拡大について、いま一度大臣の方から正確な御答弁をひとついただきたいと思うのです。
  6. 金子岩三

    金子国務大臣 私が申し上げておるのは、牛肉オレンジについては、自由化はもちろんのこと、枠の拡大についても、現在わが国は、仮に柑橘を考えた場合、柑橘生産過剰でありますので、国内生産者競合する、いわゆる柑橘農家に損失を与えるような輸入枠拡大はこの際お断りしたい、一方的にアメリカの都合でこの枠を広げなさいと言ってきても、私はそれはいまの日本柑橘農家を見ると困る、拡大に応ずるわけにはいかない、こういう考え方でおるわけです。  牛肉においても同じことでございまして、いま約十三万トンの輸入枠があります。これは、実際、肉の生産が落ちるとか、あるいは肉の需要が急激に起こるとか、そういった関係で肉が足りないという場合は、当然国民に御迷惑をかけないように、ある程度の枠を広げて肉を輸入しなければならないかもしれませんけれども国内の肉の生産はどんどんふえるし、いわゆる消費量生産性が高まっておるものを、ずっと均衡を見ていきますと、いまの枠で約十三万トンですね。大体いっぱいいっぱいではないかな。これをアメリカ要求だけ聞いて枠を拡大するということは、国内のいわゆる畜産業者に迷惑をかける、それは困る、私は断わる、こういうことを言っておるわけでございます。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 そうすると、後でいろいろお尋ねをしたいと思っておったんですが、この枠の拡大については、わが国国内需給事情を十分に勘案をしながら、いままでのように足らない場合には入れざるを得ないかもしれないが、そうでない場合は枠の拡大はやらない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  8. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 枠の拡大の問題につきましては、拡大といいますか、枠をどうするかという問題につきましては、私どもといたしましては、それぞれの商品ごと需給事情をよく調べた上で、当委員会の御決議の趣旨を体して決めるべきものであるというふうに考えております。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま佐野さんは、当委員会決議に基づいてということでありますが、大臣は、当委員会農産物自由化反対に関する決議というものを採択をいたしておりますが、この決議は、自由化枠拡大についてどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  10. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 自由化とか枠の拡大の問題について、これに軽々に応ずるようなことがあってはわが国農業に重大な事態を招来しかねないので、政府としては、かりそめにも国内農業者に犠牲を強いるような対処をしてはならないということを意味しておるものであるというふうに認識をいたしております。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは佐野さんに聞いた方がいいんだろうが、十二月の日米の小委員会で、アメリカ側農産物、特にオレンジ牛肉自由化の問題については、実質的進展が見られる、こういう状況ができない限り交渉には応じない、こういう意向の表明があって、それから今日までなかなか事態進展をしていないというのが現状だろうと思うのです。そこで、この実質的進展というものは、これはアメリカ側が求める内容もあるし、われわれがアメリカに求める内容もあるでしょう。しかし、この交渉の衝に当たられた佐野局長は、この実質的進展という内容を、アメリカ側わが国に求めておる内容を一体どういうふうに理解をしていられますか。
  12. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先生指摘実質的進展云々というアメリカ側言い回し方は、昨年の十二月に開かれました日米貿易小委員会の席上、農務省のダグラスが行った発言でございますが、これは、私どもは前後の文脈から見ますと、昨年の十月ホノルル協議の際、アメリカがとりました一九八四年四月一日にIQを撤廃すべしという当時の立場にやや弾力性があることを示唆する用語としてアメリカ側が用いたのであろうというふうに解されるわけでございます。したがいまして、前後の文脈から見れば、アメリカ側としては、一九八四年四月一日に即刻自由化ということが一番いいんだけれども日本がなかなかそうはいきそうもないという事情もわからないでもないので、かわりに自由化のめどくらいは示してもらえないかな、それがあればアメリカ側としては実質的進展が見込めるということで協議を再開してもいいんだがな、そういう信号を送るために用いた用語であろうというふうに認識をいたしております。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 アメリカも、五年先とか三年先に自由化をする、それまでのプログラムを示してくれれば交渉に応じる、具体的にはそういうことだろうと思いますが、また、そのことは国内で、たとえば経済同友会がことしの年頭所感で、五年先に農産物サービス部門自由化をやる、そのために必要な農政を展開すべきである、こういう意見も出しておりまして、そういう意味では国内の一部にもそういう動きがあることを承知しておりますが、しかし、全体として自由化を認めない、これは非常にはっきりしておると思うのですよ。だから、自由化の時期をいつだ、こういうことはもちろん言えないと思います。  私は、やはりその次の段階に出てくるのは、この枠の大幅な拡大というものでアメリカわが国政府も対応していく、その危険性を非常に感じております。情報としてはいろいろなことが言われておるわけでありますが。したがって、この枠拡大というものが自由化問題の処理に私はつまるところ落ちついていくような気がしてなりません。したがって、私どもは、自由化も枠の拡大も、これ以上日本農業農民に与える影響を考えた場合には納得できない、こういう立場でこれまで進めてきたし、今後も進めなければいけない、こう思っておるわけでありますが、この際、この枠拡大ということにつきまして、これまで多品目農産物輸入の中で政府IQ処理に当たって処理してきておるわけでありますが、この枠拡大基準となるべきものは一体どういう形で処理されてきたのか。たとえば東京ラウンドでいま問題になっておるオレンジ牛肉一定の上乗せをしておるわけでありますが、こういうものの基準になったものは一体何なのか、このことをちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。
  14. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 東京ラウンド合意は、牛肉につきましても柑橘につきましても、国内農業に対して、国内農業を保護していくという要請と、それから通商上の相手国であるオーストラリアとかアメリカ市場拡大要求というものとを、日本農業の存立を脅かさない範囲現実的に折り合いのつけられるところを模索するという過程の結果決まってきたものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 いや、それは東京ラウンド政治折衝のようなもので、前年対比で幾らということでやったのですが、枠拡大についての考え方というものが、あなたのところは専門だからいままで何かあるわけでしょう。これは経済局でなければ、オレンジであれば農蚕園芸局牛肉なら畜産局、何かあるわけでしょう。そういうものがなくて、いままで目安でこれだけだ、これだけだということでやってきたわけですか。輸入枠拡大の問題はそういう処理をしてきたのですか。そこのところは、経済局でなければ、牛肉オレンジについて担当の部局で。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 東京ラウンドの際に輸入の枠を決定しました考え方としましては、先ほど経済局長から申し上げましたように、国内生産状況をある程度見通しまして、それが全体の需給の中でどの程度比重をかけるだろうかというようなことを勘案しまして、国内の安定的な生産影響させず、かつ、国民に安定的な牛肉を供給するという、その量のバランスを考えて決定したものでございます。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林水産省は、これほど農産物輸入の問題というものは日本農業なり食糧政策の中に大きな比重を占めておるわけですが、年とともに輸入量がふえてきておるわけですが、このふやし方について一定の整理された物の考え方というものはないわけですか。いまのお話では、生産状況需要状況、こういうもので一年なり三年なり、そういうものの枠をぼっぼっとその都度数えてきたということですか。このIQ輸入枠をふやす場合——減らす場合はほとんどないと思うが、そういう場合に判断の基準となるべき問題はないのですか。
  18. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 IQと申しましてもいろいろな種類がございまして、牛肉のように、たとえば牛肉安定価格帯の中におさめるためにどの程度事業団放出量が必要であるかという、したがいまして、その事業団放出量自体一定価格安定帯とリンクされておるような物資、それからそれ以外に、たとえば先般話題になりました六品目のように特定の価格帯とリンクしておらない物資、それからもう一つは、貿易相手国との関係から見ますと、何も外国との間の取り決めがなくて全く日本が自由に決められる物資と、それから東京ラウンド合意のように、外国との間の取り決めがあってそれを尊重していくことが一つの要件として加わっておる物資と、いろいろなものがございます。  まず、原則的には、私ども国内需要動向国内生産動向を見て、そのギャップの分を輸入するというのが原則的な考え方でございまして、こういうやり方で処理しております場合には、しばしば枠の拡大ではなくて枠の縮小ということも起こっておるわけでございまして、雑豆などについては従来ときどきそういうことが起こっておるのは御高承のとおりでございます。  それから、牛肉なんかの場合には、畜産局長専門でございますが、価格安定帯の中でおさめるために幾ら放出するかということですね。  それから、東京ラウンド合意のあるような、外国取り決めをする場合にどういう考え方でやるかということでございますが、これは、元来、日本側が勝手に決めておりますIQの場合とベースになる考え方はさして違うわけでもございませんが、ただ、貿易上の相手国としては、そうはいっても全く見当がつかないということでは非常に不安であるので、そこはある種の保証を得ておきたいということが国際的な取り決めをつくるに当たっての輸出国側関心事でございますから、そういう輸出国側関心事を、国内農業事情と両立し得る範囲でこれにこたえていくという考え方で従来の取り決めはつくっておるわけでございます。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、前もこの問題はちょっとあれしたのですけれども、大体わかることは、国内需給事情に照らして過不足を調整していく、こういう観点はわかります。しかし、それだけではない要素がこれまでの輸入枠の問題には私はあったように思います。ですから、私は、これは農政の非常に大きな分野だと思うのですよ。ともかく、これだけたくさんな外国食糧を入れておる。この入れ方についてきちんとした一つの物差しを考えなければいかぬのじゃないか、こういうように思います。いま佐野局長がおっしゃったように、それぞれ品目別性格も違うし、法律制度上の相違もございましょう。ございましょうが、基本的に、外国食糧を入れる場合にわが国が対応すべき幾つかの基準というものがあってしかるべきだと思う。これだけ大問題が起きておるのでありますが、どうもその辺がすっきりしないものだから非常に不安をつのらしておると思う。  これはぜひ官房長、あなたのところでまとめて、何かそういうことについての農林水産省としての考え方をお示しをいただきたいと思うのですが、どうです。
  20. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  個別の品目につきましては、先ほど来経済局長あるいは畜産局長が御答弁申し上げておるようなことだと思います。原則的には、私ども農産物輸入につきましては、やはり国内での生産性をまず高めながら、国内でできるものはできるだけ国内生産をしていく。そして、需要から見まして不足のものについては、やはり国内の食生活の安定という観点から輸入をせざるを得ないということでございます。  ただ、年々の需給事情につきましては、農業そのものがやはり天候等自然条件によりまして非常に需給事情も変動してくるということもございますので、いまのIQ制度そのものが、毎年毎年その年の需給等の予測を見ながら決定していくというたてまえになっておるわけでございますので、原則的にはいままでそういう考え方で参りましたし、また、これからにつきましても、いま先生指摘の点につきましてもよく頭に入れまして検討していきたいと考えております。原則的には、いま申し上げたようなことでございます。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは、個別でちょっとお聞きしますが、園芸局長オレンジ輸入の問題については、国内温州ミカンや中晩柑などとの関係になるわけですが、これはどうですか。輸入の枠をふやすというような状況にありますか。この二、三年来の需給状況ですね。
  22. 小島和義

    小島(和)政府委員 オレンジ輸入の問題につきましては、牛肉の場合と多少趣を異にいたしておりまして、牛肉の場合は需給上どうしても輸入の必要があるという分があるわけでございます。果物に関して申し上げますならば、ここ数年、果物全体として見ましても消費は停滞の状況でございまして、需給上ある程度外国柑橘輸入が必要であるという事態は、私もないと思っております。東京ラウンド合意は、むしろ完全自由化または季節自由化をしてくれというアメリカ側の強い要求に対しまして、それを阻むためのやむを得ざる輸入、こういう性格を持っておるわけでございます。  ただ、先ほど経済局長からお話ありましたように、仮に輸入をするにいたしましても、国内産果実に与える影響というものを極力少なくする、こういう観点に立ちまして、季節枠設定などを通じまして、国内産柑橘の出回り時期というものとはできるだけ競合を避けるということにいたしておるわけでございます。現実の姿、昨年の輸入状況を見ましても、これは沖縄を含めまして約八万トン強の輸入がございますけれども、そのうちの約六割は六月から八月までの、国内産柑橘がほとんどない時期に輸入をされておるわけでございます。したがって、八万トンのうち約五万トンくらいのものは六—八月に入っておる。残りの三万トンくらいのものは残りの九カ月で入っておるわけでございます。月平均いたしますと三千トン強、うち国内産ミカンの出回り時期に入っておりますオレンジの量は、月にいたしますと二千トン前後、こういう数量でございますから、もちろん二千トン分胃袋が満たされておるではないかとおっしゃればそのとおりでございますが、市況の実勢として、そのもの国内産柑橘により圧迫を加えておる、こういう事態はないように私は考えております。したがって、そういう輸入の仕組みを通じまして、できるだけ国内産柑橘、特にただいま過剰で困っておりますのは温州ミカンでございますから、温州ミカンとの実質的な競合というものはほとんどないような状況で運用されているということを御理解いただきたいと思います。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 畜産局長牛肉はどうですか。
  24. 石川弘

    石川(弘)政府委員 牛肉は、御承知のように四十年代は大変高い伸び率でございましたけれども、最近の事情伸び率も比較的安定している。国内生産は御承知のように毎年着実には上がってきたのですが、たとえば五十年から五十一年にかけてとか、五十三年から五十四年にかけてのように、前年の生産を下回るというような事情もございます。したがいまして、総体としては足らないということと、もう一つ、そういう時期的に上がり下がりがあるというようなことを頭に置きまして、その差を極力安定的に輸入するというのが基本的な考え方でございます。  そういうことから、御承知のように輸入も単に枠の設定ということだけではございませんで、現実実行面では、たとえば足らなかった五十四年あるいは五十五年というようなときは量もかなりふやしますが、逆に国内生産が伸びました五十六年は前年度を下回るような枠を設定して抑えるというようなことも繰り返しながら、全体として言いますと、いま大体国内生産が七、それから輸入が三というようなバランスの中で、価格安定帯の中で極力安定的に供給するというようにやっておるわけでございます。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま果実牛肉について担当局長さんの方から需給状況を御説明ありましたが、小島さんの方、私は大分甘いと思うんだな、影響ないなんて。影響ないことありますか。影響あるから、この十数年来、果実価格というのはほとんど変化してない。  特に温州ミカンの場合ですね。特にことしは三百万トンから三百十万トン、大体二百六十万トン内外、八十万トンまでですよ。ことしの場合は恐らく四十万トンから五十万トンくらい余る、こういう状況になっておるんですよね。さっき減産、生産転換のお話はなかったが、そういう状況であるから、オレンジ輸入なんかというのは、需給状況から見たら全然これは余地なし、こういうことだと思いますよ。季節枠で幾ら幾らと言われたけれども、いまの果実の冷蔵の施設の状況から見て、季節枠というものがないときとあるときとでそれほど大きな変化はなくなりつつありますよ。ますます技術は開発せられておりますしね。だから、果実についてはいまのところない、これははっきりしておるんじゃないですか。  牛肉の場合は、確かに若干の需給上のアンバラがあるようです。しかし、農林水産省の長期見通しを見たって、こういうように冷え切ってくると大体二%か三%内外ではなかろうか。生産の方も大体その程度だから、国内でほぼ賄える、こういう状況のようにわれわれは思います。  ですから、需給事情という限りにおいては、このオレンジ牛肉自由化の問題は、私は全然その余地はない、こういうふうに理解をいたしております。これは、農林水産大臣、そういうふうに私は理解して指摘をしておるわけですが、大臣は、このことについて、そうだ、こういうふうにお考えになっていらっしゃるわけでしょう。
  26. 金子岩三

    金子国務大臣 私の方の事務局の説明と田中先生とは、大変見解が違っておるようでございます。私自身も、事務的に説明を受ける場合に、全く数字をずっと並べてきまして、こんなものかなと、いままでの考え方を改めざるを得ないような内容になっておるわけですよ。したがって、いま枠の拡大のお話があったわけでございますが、ミカンにおいては、仮にこれも二〇%を減反しておるような状態です。これに競合して国内柑橘業者に打撃を与えるようなことはやれない。したがって、要らないものを輸入して、あるいは持ち越して、冷蔵庫の中にほうり込んで味を落として、買い手もおらぬような、そういうことはやるべきではない。  肉でも同じですね。必要なものは自給度を見てやはり最小限度輸入して、食糧の供給でいわゆる国民に不安を与えないようにしなければならぬけれども、無理やり向こうから押しつけられ、それを買わされて、そして冷蔵庫に入れて持ち越すようなことはすべきではない、こういう基本的な考え方でこのいわゆる農産物輸入については取り組んでいくべきだという基本的な私の考え方でございます。
  27. 田中恒利

    田中(恒)委員 私と事務当局との間に大分差がありますか。私は少し甘いということは言いましたけれどもね。しかし、牛肉オレンジについては、需給事情から見る限り輸入の余地はない、そういうふうにいま申し上げたわけです。大臣は大分違うと言われたが、どこが違うのですか。
  28. 小島和義

    小島(和)政府委員 柑橘類につきまして、国産の需給事情からぜひ輸入の必要があるというふうな考えは私ども持っておりませんで、ただいまの国産の需給事情からすれば、ただの一トンも輸入をふやしたくないという意味におきましては、田中委員と思いを同じくいたしておるわけでございます。需給事情の実勢から言えば、まさにそういうことでございます。  東京ラウンドで増枠をしておることと国内需給環境をどのように理解をするのかということでございますれば、先ほどお答え申し上げたような経緯で、また、現実の運用も先ほど申し上げたような、国産の競合を極力避ける、こういう運用になっておるわけでございます。
  29. 石川弘

    石川(弘)政府委員 牛肉で申し上げますと、先生が引用なさいました長期見通しの線では、需要自体も増大をする、それから国内生産も増大をする、しかし国内生産の増大だけでは需要の増大を賄えないので、輸入自身も長期的な線を考えれば増大をするという前提であの長期計画はつくられておるわけでございます。  ただ、これは先ほど申しましたように、需給事情というのは、長く見通すことも大切であると同時に、ある程度近い時期の現実的な姿で判断すべきものでございますから、具体的な輸入枠の決定、あるいはそれに対する交渉というものは、そういう比較的短期の時点を見ながら、そのときどきにおいて適正に決めるべきものと考えております。
  30. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、この六品目輸入枠拡大をやられた際に、三年間の最低輸入枠というものを設定せられておりますね。これは大体どういう意味があるわけですか。
  31. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  最低輸入枠設定することにいたしました物資は、どう考えてみましても輸入枠拡大をやるという決心がつきかねたわけでございます。枠拡大をするという決心がつきかねるという物資について、輸出国側の関心に何か多少なりとも前向きに反応する余地がないものであろうかということを考えてみまして、その場合に、従来の経緯から言えば、需給事情によって枠が縮小した場合もあるわけでございます。したがいまして、そこにある種の保証を与えるということは、対日市場へのアクセスについてアメリカ側に安心感を与えるという意味で、アメリカ側に多少は肯定的に評価される可能性があるのではないかというふうに考えましてそういう措置をとることにしたものでございます。
  32. 田中恒利

    田中(恒)委員 輸入の枠の拡大の問題をめぐって、幾つかちょっと心配しておる点についてこの委員会で議論をさしていただきましたが、要約すると、輸入については国内農業影響を与えないような範囲需給事情を見ながらやっていくということであるけれども、ただし相手があることであるから、相手国との国際関係、友好ですね、そんなものを考えて何かつけ足すようなものがちらほらある、こういうふうに私は一応理解をいたしております。  この問題について、今回のオレンジ牛肉自由化の問題について見ると、国内的に本来の需給事情を中心とした輸入をしなければいけない根拠はほとんどない。しかし、日米関係、非常に大きな両国の関係、こういうものがかぶさってきておる、ここに実は当初からの大きな不安があるわけなんですよね。これについて、中曽根総理がアメリカへ行かれて、専門会議で頭を冷やしてやっていこう、こういう提案をせられたということでありますが、この専門会議でやるということは、私の理解では、きわめて技術的にあるいは科学的に客観的な情勢についてそこで話をしてまとめる、こういうことだと思うのですよ。だから、そういう意味においては結構なことだと思っておりますが、果たして専門会議でこの問題が処理されていくのかどうか。日本政府は、農林大臣も当然中曽根総理のこの提案には事前にお話をせられていらっしゃるのだと思いますが、この線で今後とも貫いていかれるのかどうか、この際、お尋ねをしておきたいと思うのです。これは大臣
  33. 金子岩三

    金子国務大臣 やってみなければわからないことで、専門家同士話をしまして、日本側わが国国内のいわゆる競合する畜産、柑橘、こういう農家の現況を説明して、アメリカ理解をし得るのかどうか、わが方から専門家で出かける人の努力が大変大きな結果を生み出すのじゃないか、このように考えます。  それから、話してみなければわからぬということは、アメリカも、私が農林省に入ってからわずか三カ月の間でも、それとなくじっと遠くから眺めておるといろいろ動きが変わっておるわけですね。非常に強い姿勢になってみたり少し落ちついてみたりということなんですが、これはやはり話し合いの問題でございますから、日本の国情を本当に理解していただける時期が来ると、大変条件がよく話し合いができるのではないか、このように考えております。
  34. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣にこの問題でなお一つだけお尋ねしておきますが、いまこの問題で非常に心配をしておるのは、かつてグレープフルーツの自由化の問題で大体いまと同じような状況が醸されてきたわけです。参議院選挙が終わった直後にこれはばっさりやってしまったのですね。このことが非常に強い先例として頭の中に刻み込まれております。  今度の問題についても、この交渉はいつ始まっていくのか、スケジュールがどうもはっきり立たないようでありますが、いろいろ聞いてみると、選挙が終わらないと——衆参ダブル選挙もあるかもしれぬ、こんな話も飛んでおる。そういう日本の政局をおもんぱかって、アメリカ側が乗り出してこない。わが国の方も、この問題をめぐって与党の内部ではいろいろな議論があるやに聞いておりますが、いずれにせよ、グレープフルーツの二の舞のようなことは断じてない、少なくとも専門会議で徹底的にこの問題は議論をしていく、こういうことについて、大臣はここで言明されますか。
  35. 金子岩三

    金子国務大臣 いま田中先生が述べられておりますとおり、選挙後まで持ち越した方がこの日米交渉日本が有利であるか、不利であるか、いろいろ考え方があると思います。グレープフルーツの前例もよく承知いたしております。六月の参議院の選挙まで黙って話もせぬでほったらかしておると、選挙待ちのようにアメリカさんから誤解されても困る。したがって、専門家が事務的に話すのは、選挙にかかわりなく、総理は一月に訪米してあのようなことを言っておるのですから、話を続けることも一つの得策ではなかろうかなと、いろいろ考えられるわけですね。したがって、アメリカの出方を見て、こちらもこの問題について早く出て話をしかけた方がいいのかどうかも、ひとつ検討してみたいと思います。
  36. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは、委員長、ひとつ理事会で検討してもらいたいと思います。  私は、これは何遍かここで申し上げました。この問題は非常に国際的にいろいろな問題を含んでおる、しかも、農林水産委員会はもう二度にわたってこの問題については決議をしたのだ。だから、農林水産委員会としてこの問題を処理する機関を別途につくって、小委員会ということで言っておりますが、それで進めてもらいたい。平場ではなかなかやれない問題もたくさんございます。ですから、やってもらいたい。委員会としても決議をした以上は責任があるわけですから、決議をして、委員長大臣や総理に伝達するということだけでは済まぬと私は思うのですよ。ですから、この問題の向こう側の対応、こちらの対応、国会、農林水産委員会としてのこの問題の処理について、与野党で一定合意を見ておるわけでありますから、その線に沿っての取り組みをする仕組みをこの際つくっていただきたいということを申し上げておりましたが、何か理事会で懇談会のようなものでというようなことがちょっとあったようでありますけれども、その後全然会合を持たれておりません。  ほかの委員会だって、重要な問題については小委員会をつくってそれぞれ検討しておる。これだけ重要な日本農政上の問題について、農林水産委員会はこのままじっとしておるわけにいかないと思うのですよ。これは新しい委員長のもとでひとつきちっとした仕組みをつくっていただいて、この農産物自由化の問題は、事態は動かないようでいろいろ動いておるわけでありますから、ぜひ委員会として過ちのないような処理をしていただきますように、この際、委員長に御要請をしておきたいと思います。
  37. 山崎平八郎

    山崎委員長 理事会に諮りまして検討さしていただきます。
  38. 田中恒利

    田中(恒)委員 国有林の問題について二、三御質問をしておきますが、先般来、各委員の方から、臨調の部会の報告をめぐって関係事項について御質疑がありましたが、国有林についても臨調から大変厳しい御指摘が出ておるようでありますが、特に私ども、これまで当委員会で、国有林についてはその性格上やはり一貫した作業体系、直営直用方式というのを基本にすべきだという、これはわが党の主張でありますが、議論をいたしてまいりました。直営か、請負か、こういう議論が毎国会ごとに重ねられてきたと思うわけでありますが、今回の臨調の答申は十四日だそうでありますが、動きを受けて、少なくともこの国会で議論をした内容が大きく転換をすることのないように、この際特に要望し、農林水産省の御見解を承っておきたいと思うわけであります。  それからいま一つは、やはり国有林の中で成り立つ山と成り立たない山、これは、国有林の性格上、山奥で、しかも保安林などで、治山治水、自然環境整備、そういう機能が中心であるところがございます。それらの林地区分の問題も林野庁の中ではいろいろ検討されておるようでありますが、こういうものについては、本来、だれがどう考えても国が大胆な財政投資をしなければいけない。国の財政投資については一定の御努力をせられておるということはわかりますけれども、現在の国有林の財政上の問題というものは、これは民間だって材木屋を初め製材屋はぶっつぶれておる、こういう状況でありますだけに、私は国有林の状況からして、ここでもうけるとか採算が成り立つとか、そんな考え方が成り立つような状況ではないと思うのです。そういう意味で、いわゆる経済林、非経済林などと言われておりますが、特に非経済林などについては思い切った財政的な処置を含めた対策が必要であると思いますが、これらについてのお考えをこの際お聞きをしておきたいと思うわけです。
  39. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  現在の国有林野事業は大変厳しい状況に置かれておるわけでございますが、これらをはねのけまして本来の役割りを果たすためには、経営改善を進めていかなければならぬということは当然でございますが、そういう面から見ましても、今回の四部会報告は大変厳しいものだというふうに私どもは受けとめております。  そこで、これを今後検討するに当たりましては、やはりこれは現在実行しておりますところの経営改善計画の抜本的な見直しにもかかわりますし、また、現在の国有林野事業の周辺にありますところの零細な林産業の方々に対する木材供給の問題とか、あるいは現在の職員の雇用問題その他大変いろいろと問題がございまして、臨調のこのたびの報告の中身の原則によるには、やはりいろいろと時間もかかる問題もございます。また、長期にかけまして改善していかなければならない問題でございますので、私どもは今後この正式の答申をいただきましたならば、これを検討して、将来の国有林野事業の改善方向に遺憾のない方向で対処してまいりたい、かように考えております。  なお、第二の御質問の問題でございますが、国有林は全国に分布しておりますが、脊梁山岳地帯もございますし、また、企業的経営のできるところもございます。私ども、やはりこれらの問題につきましては、林地の区分、経理区分等をして検討していくことが大事だと思いますので、この問題につきましても今後積極的に取り組んで重要な問題として対処してまいりたい、かように考えております。
  40. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間がありませんから細かくお尋ねをする余裕はございませんが、いずれ森林法の改正が出てくるわけでありますので、森林問題はその際にまとめさせていただきたいと思いますが、しかし、この間も民間の山に働いていらっしゃる皆さんが東京へ大分大ぜいおいでになって、林野庁なり労働省なりとお話をせられた。私も初めてお伺いをいたしましたが、確かにいまの山の経済不況というものも背景にありますが、民間の企業体の持つ脆弱さ、そこに働く人々の賃金、労働条件を含めて、社会保険などを含めて、一般の人々の水準よりかずっと低い。そういう低いところに焦点を合わして、国有林に働く人々がどうだこうだ、こういう議論が一方ではなされておる。そして、そういうところに請負を拡大させようという動きがある。こういうものについては、私は、国としては少なくとも法律で決められた労働者の権利、労働者の労働条件の最低の線というのはあるわけですから、そういうものが下がったようなところに、国有林が赤字だからそこへ持っていく、こういう考え方は出発が間違っておると思います。  ですから、そういう要素を十分に勘案しながら、私は、国有林の再生のために今後とも御尽力をいただくように特に要望いたしまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  41. 山崎平八郎

    山崎委員長 藤田スミ君。
  42. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 本論に入る前に、最初に、大臣に二、三お伺いをしておきたいと思うのです。  先ほども言われましたけれども大臣、この前の委員会で、所信は役人が書いたものだ、こういうふうにおっしゃったわけです。所信は大臣の責任ではないとおっしゃるのか。そこのところをお伺いしたいわけです。それなら自分の責任で所信を聞かせていただかないと、そういう大臣の御責任のないものを聞かされて審議せよと言われてもなかなか審議することはできませんので、そこのところをはっきりお聞かせいただきたいわけでございます。
  43. 金子岩三

    金子国務大臣 先般、いまの御意見のとおりのことを申し上げましたが、あの所信表明の中に、よく見てみると、  当面の最重要課題となっております農産物の市場開放問題につきまして申し上げます。   現在残されている輸入制限品目は、すべてわが国農業の基幹となるもの、地域振興上特に重要なものに限られ、自由化を行うことは困難な状況にあり、欧米諸国においても、農産物については種々の輸入制限措置を講じているのが実情であります。   私は、今後とも、わが国農業の実情やこれまでの農産物の市場開放措置について諸外国に十分説明し、その理解を得ながら、自由化要求に応ずることなく、慎重に対処してまいりたいと考えております。 こう申し上げておるわけですから、役人の書いた所信表明ですけれども自由化問題に触れてないではないかというような御質問であったので、舌足らずでああいうことを申し上げましたが、この所信表明の中で十分この市場開放の問題については申し上げておるということを改めてひとつ御理解をいただきたいと思います。
  44. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、いまそういうことをお伺いしておるんじゃないのです。いまもここで重ねて役人の書いたものだとおっしゃった。役人の書いたものということは、大臣の責任ではない、所信は大臣の責任ではないと言うのかということを聞いているわけです。  この市場開放の問題についていまお尋ねをしているわけじゃないんです。大臣は、役人の書いたものを読まれたんだ、こういうふうにおっしゃったわけですね。——うなずいていらっしゃいますが、そういうことを認めていらっしゃるわけです。それじゃ、大臣は別の意見を持っていらっしゃって心ならずも読まれたとか、あるいは責任はないけれども読んだとか、こういうことなんですか。そこのところをお伺いしているわけです。だから、後ろの方から助言されなくてもいいのです、大臣の御意見なんですから。
  45. 金子岩三

    金子国務大臣 私はそのようなお答えを申し上げましたけれども、役人が書いたものでもこういうりっぱなものを書いていますということをいま私は申し上げたわけですよ。
  46. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、りっぱでないとか、お粗末だとか、そんなことを全然ここで申し上げているのじゃないのです。所信は大臣の責任ではないのか、そのことをお伺いしているわけです。
  47. 金子岩三

    金子国務大臣 だれが書いたものにしろ、私がそれを読み上げた以上、すべて私の責任であります。
  48. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 どうもそういう言い方では本当は納得できませんけれども、何か大臣という本体がなくて、形式的にいつもそういうことで役人さんがつくりはったものを読む、そういうことやったら、私、本当に大臣て何だろうな、こういう思いがするのですが、何なんでしょうね。
  49. 金子岩三

    金子国務大臣 大臣大臣ですよ。
  50. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 責任を持っていただけますね。少なくともお役人の書いたものであっても大臣は責任を持つ、そういうことですか。
  51. 金子岩三

    金子国務大臣 農林省でやりましたことは、すべて大臣の責任でございます。私の責任でございます。責任を持ちます。
  52. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 当然のことなんですけれども、しかし、私は、こういうのは余り正直過ぎるというのでしょうか、何と言ったらいいのでしょうか、全く納得することができないのです。だけれども、これで時間をとることはできませんから、もう一点だけお聞きしておきたいと思います。  この枠拡大影響は小さいということを先ほどもおっしゃったわけですね。たとえば、私は長野県のトマトの問題についていろいろと調べたわけです。この六品目枠拡大一つにトマトジュースがございますね。これまで、過去三年の平均輸入実績は四百八十一キロリットルだったのです。それが今度輸入枠拡大されて、五倍の三千キロリットルになるというのですね。長野の方ではどうなのでしょうか。長野県といったら全国の加工用トマトの生産の三分の一を占める大きな生産地なんですが、ここは五十五年に千六百二十八ヘクタール、これだけのトマトをつくっていたわけです。ところが、五十六年には千四百六十九ヘクタール、五十七年は千百六十ヘクタールと、作付面積はどんどん減って、そしてもう三割減少を余儀なくされる。全国平均をとりましたら四割減なんです。だから、これ以上輸入拡大されてくれば一体どうなるだろうか。県の方が水田転作の重要な作物として生産を奨励してきたということもあって、農民も県も深刻に悩んでいるわけです。私は、枠拡大影響は小さいと言われた大臣は、そういう実情を知っての上で発言されているのかどうかということだけをお聞きしたいわけです。——いいのです、細かいことを聞いているわけじゃございませんから、どうぞ大臣
  53. 金子岩三

    金子国務大臣 いま長野県だけをとらえて、全国三分の一のトマトの生産をやっているので非常に影響が大きいのだという御説明をお聞きしましたが、私が先般六品目についての問題は小さいと言ったのは、日本全体の農業、いわゆる農家に及ぼす影響は小さい、こういう意味を申し上げましたので、そういう特殊な県、特産物として扱っておる長野県ですか、これには大変大きな被害があることをいまお聞きして、大変これは気の毒だな、こういう感じを持っております。
  54. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣、大事なのは、たとえばトマトでしたら、トマトをつくっている生産地がどういう影響を受けるのかということが見ていただかなければならないポイントなんです。先ほど温州ミカンもありました。私の地元も温州ミカンの産地なんです。ここの産地がどういう影響を受けるのか、そこのところが一番大事であって、日本全体の農業影響からすると大したことがないというような御判断というのは本当に困るのですね。結局、最も影響を受けるところの実情を御存じない上で、影響は小さいということをおっしゃったわけですね。——大臣にお聞きしているのですから……。
  55. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 長野県のトマトというふうな特殊問題になりますと、これは私からお答えした方がいいのではないかと思いますが、私どもは、決して北は北海道から南は沖縄まで全部で薄めてみて薄まってしまうような問題なら適当に処理していいというふうに考えているわけではございませんので、実は、もしそういう考え方をするのであれば、いまごろ二十二も残ってないわけでございまして、それぞれ地域ごとに、それぞれ特定の地域にとっては重大な問題であるというような物資につきましては、それなりの保護の措置を講じてまいったつもりでございます。現在二十二品目残っておりますが、そのうちのかなりの部分は、先生ただいま御指摘のような地域特産的な性格物資でございます。したがいまして、そういい特定の地域にとって重大な問題であるという物資を、全国的に薄めてみて小さな問題であるからといって気軽に処理する、そういう考え方を私どもはとっておりませんので、その点は御理解を賜りたいというふうに存じます。  それで、具体的なトマトにつきましての需給事情云々ということになりますと、これは、本来ならばトマトジュース、トマトケチャップ等の物資を所管しております食品流通局長からお答えすべきことかと存じますが、私どもといたしましては、それぞれ物資別の担当局で、国産の物資輸入物資との競争が需給関係の中で農家に及ぼすべき影響について慎重に検討をしていただいた上で、まあこの程度ならばしのげるのではないかというところを見計らって案をつくったつもりでございまして、ただいま先生が提起されておられますような問題についても、十分食品流通局においては検討の上で案をつくってくれるものというふうに承知をいたしております。
  56. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 結局、局長のお話でも、その最も影響を受ける生産地に対しては十分な検討もした、そういうことでしょう。なのに、その全体の影響だけを大臣は言われる。私は、その細かい話までわかってほしいと言っているのではないのです。そこの農民にとっては生きるか死ぬかという非常に大事な問題に対して、大臣が余り御存じないこと、余りのんきな御発言を軽々しくやってもらいたくない、日本農業をしょっていく大臣なら、そのお立場でもっと真剣に農民のことを考えていただきたいということを、いわばこういうのをお訴えというのでしょうか、本当にたまらないような気持ちがするわけです。第一、大臣がこうおっしゃられると、私は委員会の権威にもかかわる問題ではなかろうかというふうにさえ考えざるを得ません。今後、そういう点では、ぜひ大臣は漁民、農民、酪農家、この日本食糧という基本については、十分これから責任を持ってやっていってもらいたいというふうに思います。  それでは、次の本論に入っていきたいと思いますが、これも最初に大臣にお伺いをしたいわけです。  最近特に大きな問題になっておりますのが、農家の税金問題なんです。  クロヨンという言葉がございますが、不公平の一つの象徴として、クロヨンという言葉が使われております。大臣お尋ねしますが、五十七年の二月に国税庁が発表しました「税の執行に関する実態調査」について見てみましても、言われるほどの不公平はなかった、こういうふうに結論を出しておりますし、それから九十六国会では、当時の渡辺大蔵大臣も、不公平はない、クロヨンといったようなものはないのだということを言っておられます。事実、農家の生活実態を見てみましたら、政府の低価格政策やあるいは災害で、農業所得というのは、これだけは年々落ち込んでおりまして、五十三年に年所得が百十九万円、昭和五十五年九十五万円と、課税最低限の二百一万五千円の二分の一にも満たない、こういう農業所得になっているわけです。当然、農業だけでは暮らしていけませんから、賃労働に出なければならない。私は、農家の申告納税額が低いというのは、まさにここに最大の原因があるんだというふうに考えます。  それからもう一つ、前段が長くなりますが、聞いていただきたい。  私、ここに「農業と経済」という、七九年十一月に出た、京都府立大学教授の西本さんの文章を持っております。この先生は、農家と税金の問題についていろいろ研究をしておられる方なんですが、  農家の税負担は、しばしば軽いといわれているが、農業全体の所得捕捉率が非農業に比べて不当に軽いということではない。いや農家の税負担は非農家のそれに比べて、むしろ重いのではなかろうか。   事実を示そう。政府の「農家経済調査」と「家計調査」で、農家の租税負担率と都市勤労者世帯の負担率を比較すると、昭和五十二年で前者は六・八%、後者は つまり、都市勤労者世帯ですが、  五・五%、農家の負担が重いのである。さらに、本来税負担とは、社会公共的に必要な財やサービスの供給に要する費用を国民が負担するものであると理解するなら、租税だけが税金ではない。「公課諸負担」も税金と考えるべきだ。これを含めて全体の負担を比較すると、都市勤労者の一〇・四%に対して農家は一三・三%で、負担率の差はさらに拡大する。 こういうふうに、農家の税負担は決して軽いとは言えないということを言っているわけなんですが、大臣は、こういう不公平の象徴であるかのように言われております農家の税が、一体不公平というふうに思っておられるかどうか、そこのところだけお聞きしたいわけです。
  57. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 農家の所得税の申告納税につきましては、青色申告による例は約一一%程度でございまして少ないのでございますが、これ以外の農家は通常白色申告者として、税務当局が作成をいたしまして開示をしております農業所得標準に即して、農業所得の金額及びこれに基づく税額を計算して申告納税を行っております。したがいまして、農家の所得の捕捉につきましては、私どもといたしましては適切に行われておるものというふうに考えておりまして、農家の所得の捕捉率が低い、したがって税負担が他の納税者に比べて低いというような、世上伝えられております指摘は当たらないものと考えております。
  58. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣お尋ねしたんですが、適正に行われているという局長の御答弁がありましたので、時間がありませんから進みます。  それじゃ、具体的な問題に移っていきたいと思います。  昨年各地で特に問題になっておりますのが、従来の面積課税から収入金課税へと、課税方式が変わっていっている問題があるわけです。私は、所得税課長さんにかつてこの問題で説明を求めましたときにも、収入金課税への移行については農業団体や市町村にも十分理解と協力を得て行うようにと指示していると言われましたけれども、この点、そのとおりに理解してよろしいでしょうか。
  59. 日向隆

    ○日向説明員 わが国農業の場合におきましては、米麦が中心でございます。また、規模も比較的小さい。加えまして、記帳の慣習になじんでいないということがございまして、委員も御存じと思いますが、従来、面積を基準といたします面積標準課税で課税をしてきたわけでございます。これが主体になっておるわけでございますけれども、ただ、私ども、最近の農業構造の変化というものをよく見ておりますと、都市近郊の野菜とかあるいは果物等は出荷時期によりまして単価が動きまして、また、単位面積当たりにつきましても相当収益が高いものが出てまいりました。こういった収益に格差のある作物について課税を行う場合に、従来の面積を基準といたします課税方式では適正にしましてかつ合理的な課税ができがたいのではないかというふうに考えまして、昨年来特にこういった作物につきましては、従来の面積標準課税にかえまして、収入金を標準といたします課税方式に移行するようにということを進めてまいっておるわけでございます。  ただ、いま委員指摘がございましたように、この面積標準課税方式といいますのは、終戦後長く慣行としてやってまいった問題でございますので、この移行に当たりましては、関係の市町村並びに農業団体理解と協力を得ながら慎重にやってまいりたい、こう考えております。
  60. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 理解と協力を得ながら慎重にやってまいりたいとおっしゃるわけですけれども現実に、私、特に大阪国税局管内で調査をいたしましたけれども、そういうふうに理解と協力を得ながらやっているというような実態になっていないのですね。かなり農協に混乱を起こしておりますし、農民に不安や戸惑いを持ち込んでいる、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。  たとえば、収入金課税で三年分もさかのぼって追徴されるというようなことがあるわけですね。従来は面積課税方式で申告しますから、町役場の税務課だとか公民館、集会所へ税務当局が来まして、去年何反つくったか、これに答えて農家は面積課税で申告をしたわけです。ところが、税務署の方は、農協や市場から資料を提出させて、各農家ごとの売り上げをずっと調べて、非常に一方的に農家に呼び出しをかけて、収入金課税で一方的な所得率で修正申告をやらせているわけなんです。こういうようなやり方があるものですから、「大阪国税局長殿」ということで、近畿府県農業委員会あるいは農協農業課税対策連絡会議というところも、これは近畿各県全部が寄って、収入金課税については態勢が十分整うまでは実施しないことというふうな要望まで出ておりますが、実態はこういうことなんです。  しかも、ひどいのは、収入金課税で修正申告を迫っているのに対して、農家の方は経費がもっとかかっているはずだというふうに言いたくとも、かつて面積課税でしたから、領収書だとか、そういう反論の材料を持ってないわけですね。だから、結局、泣く泣く判をついて承知をしなければならない。税務署の方は、それに対して渋っていると、文句があるんやったら五年分一気にやってみまひょか、三年どころやおまへんでというような言い方で、強引に申告させるということなんですね。こういうふうなやり方はずいぶん乱暴だと思うのですが、どうなんでしょう。
  61. 日向隆

    ○日向説明員 収入金課税に移行しました場合の経費の見方についてのお尋ねかと思いますが、これは、いろいろな経費につきまして実態調査をいたしましたし、あるいはまた、農業関係者からの意見や農林経済関係の各種統計資料等を総合いたしまして、私どもが適正になるようにその経費については算定いたしておりますが、実際問題といたしまして、個々の具体的な農家の場合にその経費を十分見てくれていないといったようなケースも間々生じ得ることはあろうかと思います。いま委員指摘のように、そういう場合には、そういう経費についての資料等をお出しいただきますれば、その点につきましては十分しんしゃくしてまいりたい、こう考えております。
  62. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうしたら、ここでもう一度確認をしたいのですが、面積課税から収入金課税に移行する場合は、これは十分そこの地域の関係団体の納得を得てやる、合意を得てやるということと、それから、農民が資料を提出した場合にはそれは十分参酌して行う、こういうことを確認してよろしゅうございますか。一言で結構です。
  63. 日向隆

    ○日向説明員 先ほど私が申し上げましたように、課税方式の移行につきましては、関係市町村、農民団体等の理解と協力を得ながら進めていくという基本的姿勢には変わりございません。  それから、収入金課税方式をとるに至った場合の経費の問題につきましては、個別の経費が資料等によって明らかになりました場合には、それを見ていくということは当然のことであろうかと思っております。
  64. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この収入金課税移行に対して、私は「農業所得についてのお尋ね」という文書をきょう持ってまいりました。この「お尋ね」というのは、個々の農家あてに配ったりして、確定申告の前の事前調査としてやっているわけなんです。この「農業所得についてのお尋ね」というのは御存じですね。  私がお聞きしたいのは、これは強制じゃない、任意のものと理解してよろしゅうございますか。
  65. 日向隆

    ○日向説明員 ちょっとその実物をここから拝見して正確には把握できませんが、大阪国税局が農家の収入についての実態を正確に把握したいということで各種の努力をしておりますが、その中の一環といたしましてそういうお尋ねのような資料を出したことは、私も大阪国税局から報告を得て、聞いて承知しております。  その資料の性質についてのお尋ねでございますが——ただいま拝見いたしました。これは、税法に規定されております質問検査権等の行使ということではございませんで、いま委員から御指摘がございましたが、私どもに課せられております適正課税のための努力の一環といたしまして、各種の資料、情報等を収集するという活動でございますから、これにつきましてできるだけ御協力はいただきたいと思いますものの、その提出については任意でございます。
  66. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう一つお伺いしておきたいのですが、このごろ農協に税務調査関係する調査がずいぶん来ているというわけです。この農協に対する調査も、質問検査権に基づく個々のものでない限り、私はその協力は任意であるというふうに考えますが、間違いですか、それでいいのですか、それだけで結構です。
  67. 日向隆

    ○日向説明員 いま委員お尋ねの趣旨が、農協を法人としてつかまえまして、それに対する法人税調査を行う場合であるか、あるいはまた、その資料、情報を収集する一環として農協にお伺いした場合であるか、どちらかちょっと明らかではございませんが……(藤田(ス)委員「後者です」と呼ぶ)もしいま御指摘のように後者であるといたしますれば、それは先ほどから私が申し上げていますような、そういう正確に実態を把握したいための資料、情報収集活動の一環でございますので、その点につきましてはできるだけ御協力をいただきたいと思いますものの、その提出は任意である、こう考えていただいて結構だと思います。
  68. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういう任意のものであるという点から実態をもう一度見直してみますと、かなり強制と受けとめざるを得ないような実態になっております。それから「お尋ね」の文書なんかでも、任意であるとするならば、任意であるということをちゃんと明記するべきなんです。その点の明記がないものですから、これは強制と、受け取る側がそういうふうに受けとめて、その点でまた非常に不安を感ずるとか、いろいろな混乱が起こるとかいうようなことが出ております。ぜひともこういう任意という問題についてはそういうことを徹底していただきたい、そのことをお願いをしておきたいと思います。  まだ二、三、お伺いしたいところがありますが、時間が参りました。  最後に、大臣にお答えをいただきたいのです。  時間が短かったので、なかなか御理解をいただけなかったかもしれませんが、要するに、最近こういうことで課税方式が変わってきたり、あるいは収入金課税の税収率の問題、所得率の問題で、一方的とも言えるようなこういう姿勢があったりして、農民はいま税金の問題で非常に深刻な問題が投げかけられております。  たとえば、私、和歌山の印南町というところを調べたのですが、こういう形で追徴金を取られた農家は農協から借金をして税金を払っている。したがって、この町の町長は、所得税で追徴されたわけですから、町民税、県民税、こういうものを追徴していかんならぬわけですけれども、個々の農家の実態を町長はよく知っているだけに、これは気の毒だ、延納を認めましょうということを議会で発言せざるを得ないような、つまり農民の生活の実態に合わない、そういうひどい税の取り立てになっているのが実態なんです。農協の方は農協の方で、こんなふうに税務署からたくさん調べられたら、これはもう出荷体制にもえらい影響が出てくるのじゃないかということで混乱が起こっております。一方ではクロヨンということで何か不公平があるかのようなことを言われながら、農家に対してこういう過酷な税を取り立てることによって、いま出てきている農家の中に広がる無力感、あるいは農協への信頼が失われていっているということを私は非常に心配しているわけです。ぜひ大臣、この問題については一度大蔵大臣とも話し合っていただけませんか。そして、先ほどから言われておりますように理解と納得、あくまでもそういうことで、本当に農民がそのために無力感に陥るというようなことにならないように、ひとつ大臣、がんばってもらいたいと思うのです。  これで終わりますが、一言。
  69. 金子岩三

    金子国務大臣 御指摘の点はよく理解できましたので、政府部内でよく検討をいたします。
  70. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  71. 山崎平八郎

    山崎委員長 阿部昭吾君。
  72. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 水田再編は、五十八年度は六十万ヘクタール。ところが、第二期水田再編の最終年でありますが、六十万ヘクタールの水田再編というのが定着しておらない、米からの転換というのが定着をしておらないと思います。農林水産省におかれて、水田再編という、この米からの転換というものがどういうふうに転換しておると理解をされておるか、これは大臣でなくて局長で結構ですが、御答弁いただきたい。
  73. 小島和義

    小島(和)政府委員 水田利用再編対策は、米の需給均衡を図りますとともに、麦、大豆などのいわゆる自給率の非常に低い作物を増産しよう、こういうねらいを持ちまして始めておるわけでございまして、長年灌漑農業を特質としてまいりましたわが国農業の体質からいたしますと、これをいま申し上げましたような作物に再編成するということは容易ならざることでございます。また、そのように簡単に定着し得ないという問題があるからこそ、水田利用再編対策として奨励補助金を長年にわたって交付しているという実態があるわけでございます。  ただ、そうは申しながら、これまで長年進めてまいりました対策の中でいろいろ新しい芽生えが出てきておりまして、永年性作物が一定期間で奨励金打ち切りになりますので、いわばこれは定着型の転作と考えてよろしいわけでございますが、そのほかにも特定の転作物あるいは転作物の組み合わせを通じまして、収益性の面から見ますと米にまさるとも劣らない、そういう収益を上げておるという転作も出てきておるわけでございます。  また、土地利用の面から見ましても、各農家がめいめい限られたたんぼについて転作をするというのではなくて、転作物の収益性を高めていくという観点からできるだけ集団化、団地化を図りまして、その中で場合によりましては交換耕作とかあるいは作業の受委託を通じましてまとまりのある収益性の高い転作に努めておるというものも、比率としては年々上がってきておるという状況でございますので、定着したと申し上げるつもりはございませんけれども、その方向に向かって努力をしておる、こういう姿でございます。
  74. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 努力をしておるとおっしゃるのですが、六十万ヘクタールの中で、米から転換して大体これでいけるという状況になっておるのはどういう作物で、どの程度の面積か、主要なものを挙げてみていただけませんか。
  75. 小島和義

    小島(和)政府委員 作物別の転作の姿、これは毎年調査をいたしましてわかっておるのでございますが、その中で定着型のものが何%かという意味の計数的な把握はしておらぬわけでございます。ただ、転作の形態に着目いたしまして、団地化加算の対象になっているような比較的まとまった転作ということでございますれば、昨年の場合、大体三〇%ぐらいのものはそういう姿になってきておる。作物別の収益性ということになりますと、なかなかそういう外形的な判断だけでは把握いたしかねますので、事例的にはいろいろ把握いたしておりますが、パーセントで申し上げることはちょっと御勘弁いただきたいと存じます。
  76. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 いまの御答弁のように、なかなかはっきりは把握をされていない。先々の見通しもそんなに明瞭には立っておらない。私などは主として現場をいろいろ回って見ておる。そういう立場からしさいに見ますと、水田再編の第二期が今年最終年で、来年から第三期に入るという段階にあるわけでありますけれども、私の見方は、六十万ヘクタールのうち三〇%と言いますけれども、三〇%などは定着しておらない、先々の見通しは立っておらぬというように思います。だから、いま局長も、どの作物がどのように定着をしてどう転換してどう進んでおるかということはなかなか挙げ切らぬだろうと思うのです。  大豆や麦できちっと定着しておりますか。面積別に主要なものを少し挙げることができますか。六十万ヘクタールのうちこれだけのものは転換してちゃんと進んでおると確信を持って言えますか。私も大変苦労しております。おりますが、なかなかしかく簡単ではない。われわれが現場におって簡単でないものが、農林省がこの霞が関におられて確信があるというのなら、これだけはこのようにちゃんと転換してうまくいっておるよというものを少し挙げてみていただきたい。
  77. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに、麦、大豆は作物の平均的な収益性という点からいいますと米作に比べて落ちるものがあるわけでございます。そういうこともございますので、需給面からの必要性とあわせて、麦、大豆等については特定作物ということで奨励金の水準につきましても他の作物よりは多少高目に設定をいたしておるという経過でございます。  ただ、具体的な事例としてどういうものがあるかということですが、これは、場所によりましては裏に麦をつくって表に大豆をつくるという組み合わせによって、収益性の計算からいたしますと米作を凌駕するだけの粗収益を上げておる、こういう事例は散見されるわけであります。  ただ、そのことが直ちに転作の定着性を意味するかどうかということになりますと、収益性の面からすでにそういう地域は米作をしのいでおるのであるから奨励金のげたを外していいということになるとは私どもも考えておらぬわけでございまして、そういう姿を一層助長いたしまして、収益性のみならず作業の能率あるいは投下労働量、いろいろな面からそれがその地域に根づくにはまだまだ時間がかかる話である、かように考えておるわけであります。
  78. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣にお伺いしたいのですが、いま御答弁のように、私の認識でも二百八十数万ヘクタールの水田を全部そのままやれば大変に余る。しかも、米の国際価格国内産価格の間には大変なハンディがある。したがって、余ったって幾らつくってもいいじゃないかというわけにはいかない。したがって、いろいろな努力をして再編をやらなければいかぬ。しかしながら、この再編という大事業を始めて一年、二年間ならまだいろいろな困難、いろいろな試行錯誤があっていいと思うのです。もうすでに第二期目が終わらんとしておるのです。しかしながら、私の見るところ、当初言われた八十万という話はもうあり得ない、まあまあ六十万というものをどうするのかというのが大勢になっておると思うのですね。しかしながら、この六十万ヘクタールの水田再編というのは、これだけ、六年間もずっと第一期、第二期やってきてほとんど定着しておらないのですよ。これを一体どうするのかということについては、本腰を入れなければ、私は率直に言って日本農業と農村は定まっていかぬと思うのです。  これは、本格的に再編、転換をどこでしっかり固めていくのか。ただ帳面づらをうまく合わせていく、いろいろ希望はあるのも散見されるなどというようなことでは、わずかの面積ならいざ知らず、六十万ヘクタールという面積はそう簡単にいく問題じゃない。私は、この問題は本格的に、一体何でこの再編を固めるのかということをやらないといかぬ問題だろうと思うのです。  その意味で、たとえば大臣の所信表明の中で、稲作と大家畜生産わが国土地利用型農業の基軸をなす、だから努力する、こう言っておるのです。しかし、稲作は、今度の第二期最終年は六十万トン、六十万は減らすのですよ。大家畜というのは牛だろうと思うのですね。牛以外に何かあるのですか。この問題にしても、私の見るところ、やはりもっと抜本的に、どこで広げていくのか。残念ながら、大臣のおっしゃる文章としては、総論としてはわかるのです。各論として、予算もこの関係のために盛ってありますというのですが、その説明をいろいろ聞いてみますと、従来のちょっきりした延長線上にしかない。しかし、六十万は全然定着しない。一体どうするのか。  たとえば、ここで土地利用型農業をしっかりさせていく、そして地域農業集団を育成する、こう言っておられるのですが、総論としてはわかるのですが、この地域農業集団をやらすというのならば、その中に一体何を持ち込むのか。これをやりなさい、皆さんも努力してやりなさい、政治の側もこれに対してしっかりしたことをやりますよということにならなければ、事はそう簡単にいかぬだろうと私は思うのです。したがって、いま六十万は実質的には転換はほとんど定着しておらないという前提に立って、いまのこの地域農業集団の育成とか土地利用型農業というものをもっと充実をさせていく、そのためには稲作と大家畜生産だ、こういう組み立てのように見えるのですけれども、中身はちっとも——従来の感覚で言うと、こういうお話はこの前もずっと聞いているのですよ。今年これを特にここにまた言葉にされて大臣の所信として訴えられたものの中には、従来と異なる、ここまでいくんだよと、何かあるならばぜひひとつお聞かせをいただきたい。
  79. 金子岩三

    金子国務大臣 所信に申し上げておるのは、率直に申し上げますと願望なんですね。考えてみると、いま阿部先生指摘のとおり、私は全く同感です。大変むずかしい問題なんです。米は毎年約十三万トンずつ需要が減ってきておるわけです。いわゆる一ヘクタール当たりの生産性は毎年上昇しておるということなんでございます。ただ、作付を幾らやらせるかということ自体、これは天候に支配されまして大変な大きな誤差も出ますし、いろいろ考えますと、朝令暮改で六十万トンを減反してみたり、八十万トンを減らしてみたり、あるいは米が足りないといって五十万トンに落としてみたり、いろいろなことをやると、これは米作農家はたまったものではないわけです。  それかといって、減反した分を、いまお話の中に触れましたように、畜産、牛だろう、こういうお話がありましたが、それが一番簡単なのかもしれませんけれども、やはり足りないもの、大豆とか小麦、こういうものをどうして自給率を高めるかということに力点を入れなければならないと私は考えるわけですよ。そういうことを考えてまいりますと、容易ではない。したがって、五十九年度に実施しなければならない第三期の水田再編の問題でも、これから予算編成までに検討を続けていきますが、大変な問題で、どういう見通しを立てるかということが非常に困難だというのが実情でございます。役所でかつての長い間の歴史、データを参考にして最善の結論を出したい、このようにしていま取り組んでおるところでございます。
  80. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 さっき局長が言われました、たとえば表は大豆をやって、そしてその後に麦をやる、これはどのくらいの面積まで広げるという計画を持っていますか。具体的には、やりたい人はやれ、こういうことですか。それとも、ここまではぜひひとつ持っていこう、この麦、大豆の表裏の組み合わせで、たとえば六十万ヘクタールのうちここまでいけるよ、そういう麦、大豆の組み合わせに適合する地域は六十万のうちこのくらいあるよ、こういうものは何かお持ちですか。
  81. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは、かなり長期の作物別の生産の見通しとしましては、水田の裏表利用ということを計算に入れたものはあるわけでございますが、転作田だけについて作物別の組み合わせについての計画と申しますか、それは持っておりません。具体的に、裏作の場合はほとんど麦でございますから、麦の表に何を入れるかということについては、地域のいろいろな作物の組み合わせがございまして、先ほど麦、大豆の組み合わせを申し上げましたけれども、収益性の面から申しまして、また、需給事情が許しますならば野菜のようなもっと収益性の高いものを入れていく、こういう選択も可能なわけでございまして、現にそういう組み合わせでやっておるものもございます。  農家経済調査などによりまして転作を実施しておる農家の転作田の土地利用率という観点から眺めてまいりますと、意外に、一般の水田の土地利用率は大体一〇〇%、つまり一年一作という姿でございますが、転作田の土地利用率という点でいきますと、一二〇%を超える水準にたしかいっておるはずでございます。したがって、奨励金をもらいながら裏に麦をつくり、かつ、表も可及的に利用する、こういう姿が、一般の水田の土地利用率に比べればかなり高い水準に来ておるということは申し上げられようかと存じます。
  82. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 どうも局長は、ある意味で言えば実際面における最高責任者だろうと思うのです。したがって、それでもやはり相当総論的に抽象的にしか言われない。私が聞いておるのは、六十万は当分いかなければいかぬというのならば、私は、一年、二年で全部これをやってしまえというようなむちゃなことはできないだろうと思う、農業のことですから。しかし、これから五年なら五年あるいは第三期の終わるときまでなら終わるときまでの間に、この六十万のうち四十万なら四十万、三十万なら三十万はこのように転換させるんだというものを、やはり農林省というのは持っていなければいかぬのじゃないか。皆さんどうぞ御自由にやってくれ、なるべくいいことをやってくれというような話では、たとえばさっきのように、私の地域でも、これは私が指導したのですよ。トマトをやれ、転換のために。ある農協管内で四十何町歩やらせたら、五年続いてきたら、カゴメの方が来年からもう買いませんと言うてきた。しようがない、五年間余りかかってやっと技術的にもなれたものが、がらっとみんな変わらなければいかぬのです。さっきもお話に出ました。こんな問題が随所にあるわけです。  もちろん、それは何から何まで全部政府の責任、農林省の責任というわけにはいかぬ面もあるでしょう。しかしながら、六十万なら六十万というものを持っていこうというのならば、やはり六十万ヘクタール全部このように転換させてこのように持っていくということまではっきりしなくても、年次計画をちゃんと持って、このくらいの面積はこういう条件下にありますからここへ持っていくとか、たとえば同じ転換をやるにしても、皆さんどうぞ御自由に自分の好き勝手なところを転換してくれなどと言わずに、まさにここにありますような集団的な、たとえばこの地域で二百ヘクタールなら二百ヘクタールを転換するんだというならば、それを二カ所か三カ所に団地化をさせて、そして水の問題からいろんな問題、全部やっぱりトータルできちっと指導して、これは、この方向への転換を必ず何年間かの間に定着させるんだ、いまのところそんなものは何にもないのですよ。どうぞ皆さん御自由にやってください。そうするとちょっぴり何かいろんな補助金みたいなものを出すかもしれませんよみたいなことですよね。私は、それではいけないんじゃないか。  少なくとも局長は、全国のそういうものを組み立てていく責任者ということなんではないかというふうに私は思っているわけです。どうもそのかっこうでいくと、何年たっても転換は定着しない。現場でいろいろそれはそれなりの苦労をしていますよ。していますが、政府、行政側とかみ合わないのですよ。せっせと苦労して、一つの小さな集落で四十何ヘクタールもトマトをやったら、五、六年たったらだめ。来年どうかわるか、これはいま大騒ぎですよ。やっぱり私はそこに一貫した、六十万ヘクタールを俯瞰した上での、どこへ持っていくかというものがなければいかぬのじゃないかと思うのですね。
  83. 小島和義

    小島(和)政府委員 六十万ヘクタールにつきましての計画というのはないわけでございますが、第二期の目標の六十七万七千ヘクタールを決めましたときに、その六十七万七千ヘクタールについてどういう作物をはめ込むことが可能であるかという全体の見通しのようなものは立てておるわけでございます。ただ、それはその都道府県別あるいは市町村別、集落別にブレークダウンいたしまして、これらの地域ではこういう作物をつくれという国側からの指導ということではなくて、むしろ全体的なガイドラインというふうな意味でお示しをしているだけでございます。特にむずかしいのは、ただいまお話もございました野菜の中の内訳ということになりますと、これは御承知のようにトマトに限りませず、何十種類という種類があるわけでございまして、それらの作物の一つ一つのものにつきまして、地域別ないしは集落別にこれをおろしていくということはもう不可能に近いわけでございまして、それぞれの立地の問題もございますし、技術の問題もございますから、そういう意味では、地域の自主性というものを尊重しながらいっておるわけでございます。  それから、どういう姿の転作が望ましいと考えるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、ただいまの制度では団地化加算という制度をとっておりまして、できるだけまとまった生産性の高い転作をやってもらうという意味におきまして、本来でありますと、そういう生産性の高いものほど奨励金は少なくて済むのでございますけれども、逆にこれを奨励する意味において加算をつけるという制度をとっておるわけでございまして、その団地化加算の要件というのが、いわば国にとって最小限度望ましい姿というものをお示ししたことになろうと思います。もちろん場所場所によりまして多少の応用動作を考えませんと当てはまりませんものですから、北海道、内地別あるいはその農村部におけるいろんな地域の特殊性を勘案いたしまして、要件にも幅を持たせておりますけれども、そういうものを一つの望ましい転作の姿としてお示しをしている、こういうわけでございます。
  84. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 一方では米をやめてくれと言っておるわけです。片一方の方はお示しをする。これはやはりバランスがとれていないと思うのですね、国家的な政治、ポリシーという立場から考えて。片一方はかわれ、かわってくれ。わが国で足らぬのはこれとこれだ、ここへこのようにかわれと。したがって、私は、どの県にもどの市町村にも大いに議論をさせて、国で考えておるのはこれとこれとこれだよ、そして、これとこれとにかわったものについては、当面、政治はこのように責任を持つよと。だから、六十万の将来の転換した青写真はこれなんだというものがなければいかぬだろうと思うのです。お示しする程度では、十年たっても二十年たっても転換は定まらない。定まりませんよ。局長が農林省にいる間は定まらない。もう十年、二十年農林省におられるかどうかわかりません。そんなにもおられないでしょう。その間には絶対に転換は定まらない。やはりもっときちっとしたものがないといけない。これ以上申し上げません。  それから、農業共済の制度。三年間冷害でした。この冷害というのは大変な冷害で、私の地方などは山間地がほとんど決定的にやられております。私は、いま、この山間地へ出かけてまいりまして、こんな山間地の毎年毎年冷害の起こるようなところで米づくりはやめなさい、肉牛にかわれと言って盛んにハッパをかけております。ところが、農業共済ですけれども、私のところだけではなくて、方々である現象のようですけれども、五十五年の冷害のときは損害評価員の皆さんや何か、第一線で非常に苦労をして、御案内のように農業共済には立毛主義と申告主義という原則があります。その中で、きちっと損害調査をやって申告されたものがほぼ全部給付の対象として認められました。二年目は、お盆の過ぎころまで二年連続の冷害じゃなかろうと思っておったら、刈り取り時期に入ったらひどい減収であるということが明らかになった。したがって、この立毛主義と調査申告というのが制度的にはかみ合わなかった。したがって、地域的に集中されておるのですけれども、初年度の五十五年の冷害よりももっとひどかったにかかわらず、共済給付はほとんど三分の一。去年はまた非常にひどかったんです。これは、今度は第一年目の五十五年に比べるとほぼ十分の一。なぜかというと、連合会段階でびりびり抑えましたね、この第一線の評価員の評価額を。  私は、この共済制度の運用というのは、やはり保険制度ですから、組合員と組織との間のしっかりした信頼関係がなければいかぬだろうと思うのです。いま農水省の関係の方にお伺いすると、私の方は組合の方の申告のとおり扱ったと言っておるのですが、現地の方は、いや、農水省の方は認めなかった、こういう議論なんですけれども、私は、やはり保険制度でありますから、制度の運営についてはきわめて客観的でなければ、相互信頼というのが保険制度の基本にある以上、成り立たないんじゃないかと思うのです。この点については、ぜひひとつ今後の運営のために基本的な留意をしていただかなければならぬというふうに思います。  時間の関係で、次も申し上げます。  これは私の持論でありますが、国有林のお話はいろいろありますけれども、私は民有林の関係です。  いま、山というのは五十年しなければ金にならぬのですよ。特に林業というのは、植えつけを始めてから二十年間くらい物すごく金がかかるわけです。そして、五十年先でなければ収益は還元されてこないのです。いま、農山村は大変経済的には厳しい局面にある。したがって、この五十年先のために投資をやるよりは、現金収入になる出稼ぎとかあるいはどこかへ働きに出るという関係の方がいまの山村の姿なのです。そこで、毎年毎年山が崩れた、川が荒れたといって、災害復旧費は莫大な予算ですね。これは、山を本当に植えつけてきちっと整備をしていけば災害復旧費は相当減るだろう、理屈の上では減っていいはずである。それから、水資源というのも大変な問題ですね。空気の浄化というのも、これもまた大変な今日的課題だと思う。  そうすると、林野行政にちょこちょこと補助金とかなんとかということじゃなくて、この山がいま植え込んで五十年後にはたとえば一億円の山になるという場合には、金がかかるのは二十年間くらいですから、五十年後に皆伐をやったときに収益をするであろうものをあらかじめ二十年の間に五〇%なら五〇%、四〇%なら四〇%をうんと低利の金で融資をする、そうすれば皆さん出稼ぎや何かみんなやめて、山に力を入れようということになってくると思うのだ。私は、何かどこかで山村に対する、たとえば林業にしても、いまのような、あるいは一時期高い山をみんな開田をやらせました。これがいま全部冷害でがたがたやられていますね。こういうところは本格的に畜産に転換をさせていく。この三年続きの冷害の中でも、たとえば一人の農業者が三十頭とか五十頭ぐらいの肥育牛をやっておる、あるいは酪農をやっておる、こういう皆さんは冷害で余りびくびくしなかったのですよ。やはりそういう根本的なやり方というものがいま必要になってきているのじゃないかと思うのですが、林野庁の御見解をお聞きしたいわけであります。
  85. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生承知のとおり、最近林業をめぐる情勢はきわめて厳しいわけでございますが、一方におきまして緑資源の確保に対する要請というのは高まってきておりますので、私どもこれからも特に森林の重要性を考えましての施策の充実を図っていかなければならぬと考えているわけでございます。  御指摘の造林問題につきましては、現在、補助では植栽から除間伐まで含めまして森林総合整備事業というのをやっておりますが、これは間伐まで見ておる、二十五年生まで見ておりますので、これが非常に好評を博して要望が高うございますので、こういう側面からさらに充実をしていかなければならぬと思ってやっております。  一方、融資の問題がございますが、これは農林漁業金融公庫の融資でございますが、現在、造林の、いわゆる小造林並びに公有林につきましては、これは三分五厘の金でございまして、償還期間三十年で、経営計画をつくりましてやる場合には四十五年まで見るということでやっております。しかしながら、現段階ではすでに一千万ヘクタールの造林地ができましたが、いま一番頭が痛いのは、資金が不足のために二十年生前後の間伐時期に参りましてなかなか管理が十分できないというようなこともございまして、私ども今国会に上程しておりますところの森林法の一部改正並びに分収造林法の一部改正におきましては、特に市町村長さん方が中心になられまして地域農林業振興のための計画をつくっていただき、個人的にできない場合には森林組合、造林公社等に委託する、さらに資金関係でできない場合には、下流の皆さんの資金を育林に投入するための分収育林制度を今後考えまして、一緒になって山づくりをする、そういう政策をとっていくことも必要だろうと考えております。  いずれにいたしましても、林業問題は非常にじみでございますが、国全体の森林に対する要請はきわめて高うございますので、いろいろの面からこれが実行し得るように、今後ともさらに努力してまいりたい、かように考えているところでございます。
  86. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 もっといろいろお尋ねしたいのでありますが、三分五厘というのは高過ぎますね。たとえば治山治水、よく言われますね。山を整備することによって災害などが非常に少なくなる、あるいは水資源とか空気とか、こういう面からいったら、金利は、ゼロというわけにはいまの世の中の組み立ての上からいって無理なのかもしれませんが、五十年かからなければ還元されてこない、この割りには、私は、三分五厘などと言わずにもっと下げていいのじゃないかと思います。  それはそれとして、大臣に最後に伺いたいのでありますが、さっきもお話が出ました。私は何というのか、金子大臣が在任中、歴代のずっと継続しておる問題をやはりそれなりにやらなければいかぬのだろうと思うのです。しかし、同時に、金子大臣の在任中にここがぐっと前へ進んだとか、ここが非常に特徴的な農政であり、あるいは水産政策であり、これであったというものを私は希望したいわけであります。大体、大臣を十カ月かそこらでどんどんかえていくこと自体、私は大臣とは一体何かということを思わざるを得ないのでありますが、しかし、最近の傾向はみんなそんなようなことになってきておる。これも私は日本の政治をだめにしておる一つの問題点のように思うのです。私は、金子大臣が在任中、従来のいろいろな引き継いでおる流れと経過があると思いますが、その中で、金子大臣のときにこのあたりががらっと変わった、たとえば水田再編は幾らたっても定着しなかった、これがびしっと定着するめどが立てられたとか、何か一つ欲しいということを考えるわけであります。そういう意味で、これから金子大臣農林水産政策を進められるに当たっての所信を私拝見しましたけれども、率直に言うと従来の延長そのままなんですね。総論としては確かにみんなわかるのです。しかし、いま日本農業の中で言えば、さっき私が一、二のことを申し上げましたが、水田再編なら水田再編のように、六十万がこういうぐあいにちゃんと転換することが金子大臣のもとでしっかり固まったことになるとか、やはり何かがなければいかぬのではないかと思いますが、最後に、ひとつ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  87. 金子岩三

    金子国務大臣 阿部先生の御激励、大変ありがたいわけです。きょうの御意見は全く同感でございます。  ただ、私の在任中にどこまでどのようにどの点を、いわゆる農村が安心して今後農業に取り組む、後継者がどんどん意欲を持つようになるような農政を打ち立てるかということは、だれしも政治家ですからいろいろ野心も持っておりますが、先ほどちょっと触れられておりましたとおり、ぐるぐる大臣がかわるものですから、それでその点いささか心配ですけれども、どんなに短い在任期間でも、やれるだけのことはひとつやって、御期待に沿いたい、このように考えております。
  88. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間、もう五、六分いいですね。  林野庁長官は国産材の供給体制を確立する、こういうことをおっしゃっておりますが、私の認識では、いま国産材はほとんど売れないのですよ。私の周囲でも林業をやっておる人がたくさんいます。この皆さんが、年々ずっと山が売れない。ほとんどが港に揚がってくる外材、そういう情勢になっておるのですね。したがって、国産材の供給体制を強化する、確立をするためには、一体どういう角度から、たとえばもっと木造住宅がよけい建つようにするとかいうことを考える。しかし、住宅政策の方はどうかというと、木造住宅がどんどん建つような、そんな住宅政策を建設省では出していませんね。住宅政策に私非常に不満があるのですけれども、むしろちょっと後ろ向きという感じさえしますよ。住宅政策が景気対策のかなめだなどと言いながら、どうも住宅がぼんぼん建っていくような、そんな流れにいまない。そうすると、ここでおっしゃっておる国産材の供給体制の確立というのは一体何なのか。これは言葉だけで終わるのじゃないかという気がしてならぬわけです。  本当に私らの身内の中に山をやっている人がたくさんおって、この皆さん、昔なら山を少々やっているところは、みんな山村地域では大変よかったのです。この十年くらいの間、山村の山をやっている連中なんて、みんな全然どうにもならぬという状況にありますね。したがって、この国産材の供給というのは、言葉だけじゃなくて、どういう角度からやろうとなさっておられるのか、ぜひお聞きしたいわけです。
  89. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  これまでの国産材の生産体系を見てまいりますと、一番の欠点は、森林所有者と素材生産業者あるいは製材加工業者という方々が一緒になって一つのシステムとして体系づくりをしていなかったというところに問題点があるわけでございます。  そこで、私ども今回検討しておりますのは、それぞれの地域の特性を生かしましたいわゆる地域林業地帯形成という中で、川上、川下と俗称呼んでいますが、森林所有者、木材加工業者並びにそれをまとめるところの市町村長さんも一緒になりまして、計画的に国産材を生産するという、そういう協定を結びながら流通機構の整備拡充、担い手等の育成をいたすと同時に、やはり木材を安く出すためには林道が必要でございますので、特に林道網を重点的にそういう地域に整備いたしまして、それらを総合的な形で足腰の強い林業生産地帯をつくろうということで進めております。  なお、国産材の産業振興資金におきましても枠を拡大いたしまして、間伐を含めました素材生産により低利の金利が使えるようなことも現在考えておりまして、以上のことを総合して進めてまいりたい、かように考えております。
  90. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 終わります。
  91. 山崎平八郎

    山崎委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  92. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  93. 武田一夫

    ○武田委員 まず、大臣に二、三点お尋ねいたします。  農産物自由化枠拡大の問題について、大臣は、今後絶対にそうした要求には応じないというかたい決意をお持ちかどうか、この点、まずひとつ確認しておきたいのでございます。
  94. 金子岩三

    金子国務大臣 これまでもずっとお答えを申し上げているとおりでございます。本委員会でも決議をいたしておりますので、この決議の趣旨を十分踏まえまして取り組んでまいりたいと思います。
  95. 武田一夫

    ○武田委員 自由化の問題につきましては、人によっては、当面は強い抵抗を示すようであっても、時間の問題で、市場開放は必至であろうという見方をしている方もいるわけであります。できるだけ先に延ばすようにしているようではあるけれども、国際化に耐える農業をつくっていくことも非常に困難なだけに、これは本当に時間の問題としていずれ自由化に踏み切るのではないかという心配をしている人がいるわけであります。これは私たちにとっては非常に重大な問題だと思うのですが、そういうことはない、いろいろと対米国の関係もあり、向こうの事情もあるのでしょうけれども、こういうふうに先延ばししているのは市場開放への時間稼ぎではないのだ、いろいろとその対応で苦労しながらこういう状況にあるのだと私は思いたいのでありますが、将来の市場開放は時間の問題というようなことはあり得ないと大臣としては言えるでしょうか。
  96. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  もちろん、私どもといたしましても、わが国農業を国際競争力の備わった農業に体質を強化していきたいと考えておることは事実でございますが、私どもといたしましては、いま、現存のIQを撤廃し得るという展望を持ち得る状態ではないと認識をいたしておりますので、自由化に関する態度が少し時間がたてば変わるというようなものではございませんので、その点は御理解をいただいておきたいと存じます。
  97. 武田一夫

    ○武田委員 これまでの自由化あるいは枠拡大の問題等におけるわが国の対応は、農林水産省とか外務省、通産省、いろいろと思惑があって意見の統一ができないで、どちらかというと外務省や通産省が先にいろいろな発言をいたしまして、農林水産省が非常に迷惑をこうむったというようなこともあります。大臣としましては、こういう閣内あるいは省庁間の意見の不統一などというものを今後絶対に起こさないような努力をしなければならぬと思うわけでありますが、そうした態度で厳然とこの対外国貿易に取り組んでほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先生指摘でございますが、私ども、外務省と一緒に対外経済問題の分野で仕事をしてまいりまして、外務省も私ども農林水産省立場については十分理解認識を持っておりまして、特に差し出がましいことをわきから言われて迷惑を受けたというようなことは幸いいままで経験せずに参りました。今後とも外務省は私ども立場を十分理解し、農林水産省の責任でこの問題が処理されていくという方針を外務省も支持しておるということをお答えしておきたいと存じます。
  99. 武田一夫

    ○武田委員 大臣としても、農林水産省としてわが国農業を守るという観点から、しかとした確信のある対応をとってほしいと思うのですが、どうでしょうか、大臣
  100. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、従来とも、就任以来ずっと、わが国の畜産、柑橘を中心とした競合する農家に少しでも不利益を与えることは許されないという立場に立ってその主張を続けてまいっておるのでございます。
  101. 武田一夫

    ○武田委員 次に、農林水産予算についてお尋ねしたいのでありますけれども、今回の農林水産予算の全体を見ますと、非常に厳しい。財政事情もこれあり、農家の方々、生産団体もそのことを一様に厳しく受けとめているわけでありますが、いま日本の経済を見てみますと、やはり内需拡大型の経済運営へと転換をしなければならぬ、こういうふうに私たちは考えるわけでありますが、そうなりますと、地域経済を担うのはこの農林水産の大きな役割りではないか。こういうとき、やはりその役割りをわれわれは、そしてわが国は一層重要視しなければならない、私はこういうふうに思うわけです。この点について、大臣はどうでしょうか、私の考えに賛成をしていただけましょうか。
  102. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  農林水産業につきましては、たとえば国民生産に占める割合であるとか就業人口等におきまして、確かに国の経済の近代化に従いまして多少減退の方向にございますけれども、その地域地域において占めます重要性は非常に強いものがございます。北海道でありますとか、東北、東山、山陰、南九州、特にいま挙げましたような地域におきましては農業が非常に大きな産業の位置を占めており、また、農外活動を含めました農家の方々のたとえば消費支出に占める割合であるとか、そういう需要面におきましても非常に大きな役割りを占めております。  たとえば、例を挙げますと、山陰では個人消費支出に占めます農家の支出割合は約四三%、南九州であれば四〇%、東山では四六%というように、農家の活動自体がその地域地域の経済を支える大きな柱であるというように見ておりまして、私ども、今後とも農林水産業を中心にしました農家の経済活動を拡張していくということは、国の経済を発展させる上におきましても非常に重要であると考えております。
  103. 武田一夫

    ○武田委員 大臣に聞きますけれども、いま官房長が、地域経済を担う農林水産業の役割りが非常に重要である、こういう答弁をされました。とすれば、それにはやはりそれなりの裏づけをしてあげなくてはいけないと思うのですね。重要なだけに、それに対する対応。それじゃ、日本農林水産業の国家経済の中における重要度を何をもって示していくかという、その指標といいますか、それは何であるとお考えでございますか、大臣
  104. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  行政の面でどのように農林水産業に対します重要性を示すかという手法というのは、なかなかとりにくうございます。たとえば、公務員の農林水産行政に従事している人員の数を見るあれもございましょうし、また、具体的には予算におきますシェアを見るとか、そういういろいろな手法があろうかと思いますけれども、予算におきますシェア、たとえば現在では総予算の中では七・二%、あるいは最近では国債費あるいは地方交付税交付金等ふえております関係で、実態的にはむしろそういうものを除いた予算で見れば一一・一%というような手法も一つございましょう。また、国家公務員全体の数から見ますと、農林水産省の行政担当職員が約一割程度いるというような点も大きな農林水産行政に対します国の姿勢を示すものであるというように考えております。
  105. 武田一夫

    ○武田委員 大臣に答えてもらいたかったのですが、いま答えの中に、農林水産業の国家経済の中における位置づけの指標の一つに、総予算に占める農林水産予算のシェアがどの程度のものかというのも大きな一つのめどになるということですが、私も、それは大事な一つの指標としてしっかりとしていかなければならないと思うのです。  しかし、ずっと見てきますと、残念ながら年々その割合が非常に低くなってきている。昭和五十年度の一〇・二%から、以来ずっと一〇%を切りまして、いま話があったように、五十八年度では一般会計に占める割合が七・二%まで落ち込んだ、こういうことでありますが、日本農業の重要性は、これは国家の安全保障といいますか、そういう面ではもう防衛以上に大事な分野でありますから、こういうときほど、財政事情が困難である、非常に厳しいという事情であればあるほど農業というものの存在価値が大切なものであるならば、踏ん張って、たとえば一般会計の中に占める農林水産の割合が一〇%は必要である、国が農林水産業に相当力を入れているんだという一つ基準であるとすれば、そのぐらいはやはりがんばらなければならないし、がんばっていくのは当然だと私は思うわけです。しかしながら、この調子でいきますと、財政の厳しさによって、もうそれに応じてどんどん落ち込んでいくとなれば、いよいよもって、口先だけで大事だ大事だと言っているけれども、われわれ農林水産業のことは余り真剣に考えてないのじゃないかという、そういう生産農家の皆さん方の希望に沿えないような、というよりも、希望を失わせるような状況になりかねないと私は思っているわけですが、この点はやはり反省して、もっと踏ん張って、ひとつそういう農林水産業の地域経済における重要性というものをしっかとやはり財政当局にも訴えて、それで、国が挙げてそうした重要な産業を守る対応としての予算措置をすべきだ、私はこう思うのです。どうでしょうか、この点について。
  106. 角道謙一

    角道政府委員 いま武田先生指摘のとおり、農林水産関係予算は、五十年度から見ますと、確かに総予算に対します比率におきましては五十年度一〇・二%から五十八年度予算案では七・二%というように下がっていることは事実でございます。ただ、これには、五十年当時に比べまして、国債の関係の償還経費、利払い費等が非常に増額しておる。また、地方交付税交付金につきましても、一種の当然増経費でございますけれども、これも非常にふえているという関係から、見かけ上いま申し上げましたような数字になっているわけでございまして、こういう国債費あるいは地方交付税交付金、あるいは特に五十八年度におきましては五十六年度決算補てん金の戻しがございますが、こういうのを除きまして、通常一般歳出と言っておりますが、これを前提にして見ますと、五十年度一三・七%、五十三年度におきましては一一・九、五十八年度におきましては一一・一と、五十三年度以降大体一一%台を維持してきている実情でございます。国の予算全体を見ましても、社会保障経費であるとかその他の科学技術関係、あるいはその他の財政需要の増大等からいろいろ厳しい財政下の中におきまして、私ども最善の努力をしているわけでございます。  また、このシェアのほかにもう一つお考えいただきたいのは、実額におきまして見た場合、たとえば五十七年度をとりますと、農林水産関係予算は、五十年度に比べまして、五十年の二兆一千億から三兆七千億、約七割の増になっております。この間の物価等の上昇率を見ますと、たとえば卸売物価では三六%、CPI、消費者物価では四七%と比べましても、実質的な予算の拡大ということは、こういう物価上昇の中と対比をいたしましても、そこに非常に私どもは力を入れているという点について御理解をいただきたいと思うわけでございます。やはり私ども農林水産業振興していく上には、補助金を中心にしまして農林水産関係予算というのは非常に重要な政策手段でございますので、この拡充には今後とも努力してまいりたいと考えております。
  107. 武田一夫

    ○武田委員 生産性の向上という問題で、EC諸国と同水準程度農産物価格の実現ということを一つの大きな今後の課題として取り上げているようでありますけれども、このためにいろいろな条件整備が必要だ。そこで、土地改良の問題で、果たしてこういうことが着実に、そしてしかも確実に実現できるものかどうか、ちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、第三次土地改良長期計画ですか、これはどういうふうになっているのですか、簡単に説明をしてください。
  108. 森実孝郎

    森実政府委員 第三次土地改良長期計画につきましては、二月一日の閣議で方針を了解していただきまして、現在、関係機関、農政審議会等の意見を聞くための手続を進めておりまして、近く閣議決定を得たいと思っております。  内容としましては、今後五十八年から十カ年間に三十二兆八千億円の投資を予定しております。その金額の設定に当たりましては、農政審の示された基本方向というものを頭に置きまして、一つは農地の整備率をおおむね七〇%程度までに引き上げていきたいということ、それから目標年次に農用地面積五百五十万ヘクタールを確保したい、こういうことを一つ基本的な指標として積算したものでございます。
  109. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、いままで第一次、第二次と計画がありました。それで、第二次土地改良長期計画、四十八年から五十七年ですか、これを見ますと、実績を見ると、進捗率が九五・三%。計画が十三兆円ですか、実績見込みが十二兆三千九百十億円。ところが、実質ベースでは、いわゆる四十七年度価格で進捗率が四九%。当初計画が十三兆円、実績見込み六兆三千六百九十四億円。それから面積ベースで言えば、圃場整備が四九・三%。計画百二十万ヘクタールが、実績見込み五十九万一千ヘクタール。それから畑地総合整備、これはわずかに一六・六%の進捗率。六十万ヘクタールに対して十万ヘクタール。それから農用地造成が四二・三%。七十万ヘクタールに対して二十九万千ヘクタールですか。それから農地造成が三六%。これは、三十万ヘクタールに対して十万八千ヘクタール。草地造成が四七%。四十万ヘクタールに対して十八万八千ヘクタール。いずれにしましても、これは非常に心さびしい限りの進捗状況ですね。それからまた、農地の整備の現状を見ますと、田畑の整備率が、五十六年度末で田が三九・一、畑が三三・六、こういう状況です。  こういうことを考えますと、これから、先ほども要するに五百五十万ヘクタールの土地がなければならない、それがなければ、六十五年の見通しにおける、日本人が一日二千カロリーでしたか、栄養をとるだけの自給率の向上というのにも及びつかないような状況になるということを考えますときに、いままでの実績からいって、こういう非常にさびしい状況は相当反省をしてもっとピッチを上げていかないと、第三次計画もこのような状況でいくのではないかというような気がしてなりません。この点の心配がないものか、その点についてひとつお答えをいただきたいと思うのですが。
  110. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  土地改良長期計画は、他の公共投資の計画同様、いわば金額として表示された投資ベースで表現されたものでございます。その意味におきましては、先生も御指摘のように、第二次土地改良長期計画は調整費を除いて考えればほぼ一〇〇%の達成率であったことは事実でございます。しかし、反面、その間における賃金、物価等の動向を反映いたしまして、ネットの事業量は五割を若干割った。また同時に、達成面積、たとえば造成面積とか整備率等も目標の大体五割以下であったということは否めない事実でございます。  問題は、これからの第三次の土地改良長期計画をどうして必要な予算手当てを確保していくかという問題に尽きるだろうと思います。もちろん、十年の間に物価の変動とか経済成長の動向等、いろいろ不確定な経済要因がありますので、そういったものに弾力的に対応しながら運営していかなければならないことは事実でございますが、私ども、この三十二兆八千億という数字も計画的に——ネットの事業量に即して言うならばかなり厳しい数字であり、このためには今後格段の努力が必要であろうと思っております。  なお、この第三次の土地改良長期計画のバックデータと申しますか、積算におきましては、第二次土地改良長期計画で実質的に達成できなかった事業量をすべて含めて計算しております。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 当初、三十二兆八千億というのは三十七兆円という要求であったと伺っておるわけでありますが、それが三十二兆八千億に圧縮されたということでありますから、このことによって、特に土地改良の立ちおくれの目立つ山間地などのいわゆる条件の悪いところの農地の確保に問題が出てくるのではないかという心配があるわけでありますが、その点はどうですか。
  112. 森実孝郎

    森実政府委員 三十七兆円の予算要求が三十二兆八千億ということに最終的に査定、調整されたことは事実でございます。  この事務的な意味での積算といたしましては、具体的に申しますと、農地の壊廃見通しというものが、当初の要求時点に比べて最近の数字で修正してみると壊廃がかなり鎮静化してきているという事情があること、それから、防災事業の計画について緊急性のあるものをある程度しぼったということ、それからそのほかでは、目標整備率の一部修正、土地利用の集積の見通しの修正等によって修正したものでございます。  それで、私、これはいろいろな物の見方があるだろうと思っておりますが、この数字自体は、他の公共投資の計画が大体従来の投資計画を物価修正したものをベースにしてまとまっているというのが結果としての事実でございますが、土地改良長期計画につきましては物価修正した数字よりは高目の数字となっている事情があること、それから、融資事業とか調整費等の比率についてはむしろ従来の計画より下げて、直轄事業、補助事業の比率を高めているという点、そういった内容等を点検いたしますと、もちろん百点満点と申しますか、一〇〇%要求どおりのものではございませんけれども、今日の財政状況のもとにおきましては、私、かなり評価され、土地改良事業の果たす役割りというものが積極的に評価されたものであろうと思っております。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 要するに、こういう計画が非常に立ちおくれることによって、いわゆるわれわれが一番問題にしている自給率の向上とかあるいはまた優良農地の確保とかと、いろいろ問題がありますね。いわゆる一番大事な部門が見通しが非常に暗くなってくるということがあるわけです。これは、漁港整備なんかでもそのことによって相当もめるわけですね。それでどんどんおくれていって、そのたびごとに後継者が非常に心配をして、いつになったらわれわれが安心して生活できる基盤が確保できるのだ、こういうことで問題になるわけでありますから、そういう心配を取り除くのもわれわれの、また政府の役目であるということを考える上で、このくらいであっても間違いなくしっかりと対応ができるのだというものを示してやらぬといかぬわけであります。大体いままで見ておりますと、計画がずっとおくれてしまって、それはこういう物価が上昇云々とか予算が取れなかったとか、こういうことでお茶を濁してきた。これは私は非常にいかぬと思うのです。  しかも、最近非常に問題になっているのは、土地基盤整備のあり方なんかを見ていますと、要するに新規造成やら土地改良というのは非常に膨大な金がかかる。ですから、国や地方公共団体なんかは補助を出し、あるいはそれに対して農家も大きな負担を背負わなければならない。ところが、最近兼業農家の方々の中に、金をかけてまで基盤整備をやったりすることに拒否反応を示す人が出てくるわけですね。隣がりっぱに基盤整備をやっているけれども、その隣に兼業農家の方が土地を持っている、それを土地を集約して規模拡大するという方向に持っていこうとしても、何せ自分で少しの金といってもそこに投資をして基盤整備をしようなどということに賛成しないために非常に困っている、こういうことがある。特に私の宮城県などでもそういうことがあるわけです。そうすると、中には強引な町長さんなんかおりまして、基盤整備をやるにしましても、そういうところを除いてやってしまって、変なつくりのそういう基盤整備をやっているところも出てくるわけです。  これでは非常にむだでございまして、私はそういうことを考えますと、やはり稲作経営の皆さん方は、基幹的土地基盤整備、特に転作条件の整備についての基盤整備というのは、国が全額負担するくらいの気持ちでやらぬと、本当に日本の国の重要な土地というものが、いわゆるEC並みの生産性向上をして生産物の価格を安くするなどと、いろいろと一つの方向性を示してもなかなかそのようにいかぬじゃないか、そういう心配をするわけであります。土地というのは農家のものであってそうでないわけで、国家の財産ですし、特に農地というものは非常に壊廃が激しいでしょう。造成しているけれども壊廃している方が多いということになると、後で質問するわけでありますが、将来五百五十万ヘクタールというのが果たして確保できるかということ、このことも心配です。そうなると、生産性の向上の問題あるいは自給率の向上の問題、いろいろな面から、私は、国の計画といいますか、農林水産省のこれからの計画というものは挫折するのは目に見えているのではないか、こう思うのですが、思い切ってそういうふうな全額国庫負担くらいの気持ちで農業の再建の成る土地対策というものをやるべきではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  114. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな見方があることは、私は事実であろうかと思います。私ども、実は臨調等の議論では、むしろ個人の私有財産の形成に直結しているこの種の事業について、負担率の引き下げを図ったらどうかという御議論もあったことも知っております。私どもは、土地改良事業、基盤整備事業が果たしている農業の近代化のための基本的な役割り、あるいは地域社会の発展に果たしている役割り、それから国土の開発保全に果たしている役割り等を主張して、現行の行政体系というものの合理性を主張してきたつもりでございます。しかし、一般的に申し上げるならば、他の公共事業との負担率のバランス、それからもう一つは、やはり事実として資産の形成に資する側面があるという事実、また、現在の段階における収益力と負担とのバランス等を考えれば、今日の財政状況のもとにおいては、私は国の負担率の引き上げということは言うべくしてなかなか簡単なことではないと思っております。  そこで、問題は、先ほども負担の問題に関連して事業費の増高等の御指摘がありました。私は、この問題はかなり受けとめなければならないと思っております。特に、先ほど中山間部地帯の御指摘があったわけでございますが、圃場整備等については、これからは、われわれの事業の見込みでも、中山間部の比重がかなり上がってくると思います。平湯の整備率はかなり進んできたわけでございます。そうなってくると、単価も上がってくる。そういう意味で、やはりできるだけ割り安な事業のやり方ということを考えなければならないだろう。従来の理想だけにとらわれて三反歩区画を非常に強く打ち出していく、あるいはまた地下水の高さというものについても理想的な転作条件だけを考えていくというふうなわけにはなかなかいかないので、地域の自然経済条件に応じて、設計基準につきましてある程度弾力的な運用をしながら、事業費をできるだけ抑えていくという努力が要ると思います。  また同時に、事業費が増高している理由としては、たとえば水路の工法とかあるいはまた道路の舗装等、負担がふえている現実があって、これはわれわれ地元の要望を受けとめてやっている面もありますが、こういった面についても縮減のための合理化努力を払っていきたいと思っております。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 時間がないので、それでは次に進みますが、優良農地確保の問題、これは非常に大切な問題でありまして、農林水産省食糧の安全保障を大前提として、先ほども話がありましたように、国内で農地五百五十万ヘクタールを確保する、しかも、それは整備された生産力の高い優良農地である、こういうことを強調しているわけです。  しかし、これまでずっと見てみますと、農地の壊廃というのは依然として進んでいるわけであります。長期不況で一時のような勢いは衰えたと言っても、年間二万ヘクタール以上のものが宅地などへ転用が進んでおります。さらにまた二万数千ヘクタールの山林などへの転換もこれあり、年間約四万五千ヘクタール前後の農地が壊廃しているという報告があるわけです。それに対して造成も行われているわけですけれども、造成されている農地面積は年間二万五千ヘクタールとなりますと、農地は約二万ヘクタール前後の減少が続いている、こういうことでございます。しかも、五十六年にはすでに農地面積というのは五百四十四万ヘクタール、こういうふうに、いわゆる目標とする五百五十万という最低確保の必要面積をも割り込んでいる状況です。こういうような点から考えると、私は、相当努力をしないと目標達成というものが、五百五十万ヘクタールの確保というものはおぼつかないのではないかと心配で仕方がないのでありますが、この点、達成のめどはどのようにお考えになっているものか、御答弁をいただきたいと思います。
  116. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  農地の壊廃につきましては、四十年代後半から五十年代の初めにかけましては、委員の御指摘のように十万ヘクタールに近い壊廃が行われたことは、人為壊廃、自然壊廃を含めて事実でございます。最近、経済成長の鈍化、その他の事情を反映いたしまして、壊廃は急速に減っておりまして、大体四万ヘクタール前後でございます。これに対しまして、農用地の造成はどうにかこの二、三年、年間三万ヘクタール前後、あるいはそれを上回る水準ということになってまいりまして、そんなに大きくギャップがあるという状況ではなくなってきておることは事実でございます。私どもといたしましては、やはりこういった状況をさらに目標に近づけるために改善していく努力ということを各般にわたって積み重ねることが必要だろうと思っております。  この意味におきましては、一つは、いろいろ御議論もありますが、やはり農用地造成という問題に積極的に取り組む姿勢が要るだろうと思います。それからもう一つは、やはり壊廃の抑制という問題を、農振法あるいは都市計画法等の合理的な線引きの問題、それから転用規制の合理化の問題等を通じて図っていくということに組織的な努力が必要だろうと思います。  今日の膨大な宅地需要というものについて、組織的に農地がその潜在供給者として果たしているという面は事実として否定できませんし、それはそれなりに評価しなければなりませんけれども、やはり秩序ある線引きなり壊廃、転用ということを考えなければならないと思います。またさらに、やはり中核農家の育成なり基盤整備事業の推進等を通じまして、どうやって土地の利用率を上げていくかということも重要な課題だろうと思っております。この問題は、いわば農政基本的部分であり、各般の施策にかかわる問題でございますが、総合的な努力を続けてまいりたいと思っております。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 いずれにしても、造成と壊廃を見ていると、一万ヘクタールですか、減っていることは減っているわけですね。しかも、この減っていく部分というのは、一般的に優良な農地なんですね、大体平たんな。つくる方は山とか、そういうところが多いようですね。  それから、生産性の問題からいっても、生産力といいますか、こういう問題からいっても、そこには二重、三重の、穀物の生産の面からいうと非常に落ち込みというのがあり、これは常識的に考えても相当減っていくんじゃないかという心配があるわけですよね。そういう点はどうですか。それでもある時点までいけばそんなことは解決できて、きちっと、言うなれば一日二千カロリーという最低のエネルギーを獲得できるだけのそういう穀物等の生産は可能なんだ、こういうことは間違いなくできるからという、そういう確信はお持ちですか、どうですか。
  118. 森実孝郎

    森実政府委員 たとえば、いま宅地に年間約一万ヘクタール、既往の農地が提供されております。しかし、その半分である五千ヘクタールは実は市街化区域の農地でございまして、全国の農地の五%を占めている市街化区域の農地が宅地供給の半分を請け負っているという現実があるわけでございます。  確かに、抽象的に考えるならば、平場の都市周辺の農地、過去の歴史においては高い生産力を誇った水田を中心にした農地が壊廃されて、山場で草地を中心にした農用地造成が行われている姿は事実でございます。しかし、一つは、やはり今日の限られた日本の国土資源のもとで土地の利用、産業の立地というものを考える場合、事実として都市周辺の農地が壊廃され、農業の新しい新天地の開発、造成ということがそういった従来の僻地において行われるということは、自然の経済の姿として受けとめていかなければならないだろう。また、そうでなければ、現実にその農地を経営していく農家もなかなか確保できないというわけで、やはり土地の問題というものは所有者との関係、経営者との関係で考えていかなければならない側面があるだろうと思います。  そこで、問題は、農用地造成された土地の生産力でございます。御指摘のように、実は四十年代までは農用地造成の土地生産力が低かったことは、干拓地の水田を除けば事実でございます。しかし、最近は非常に単収が上がってきておりまして、草地の例、麦作の例、大豆作の例等を事例的に調べてみますと、全国の平均ないしはそれより高い水準にあるという状況が生まれてきております。これは、やはり農用地造成なりその後の一連の開発過程を通じて、土壌の管理、土壌の造成というものにかなり行政としてもウエートを置いてきましたし、何と申しましても、こういった新しい農用地を取得し、そこで経営を営むという人は中核農家群でございまして、この方々の経営努力、技術努力というものがあるわけでございます。  そういう意味で、私は、やはり産業の立地の変化というものは受けとめながらも、新しい農用地造成が行われた地域における高い土地生産力の実現ということについては、実績も上がってきておりますし、これから努力を続けていく必要があると思っております。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 わかりました。それは今後の大きな課題だと思うのですね。これは、技術的な問題等含めまして、しっかり対応してほしい。先ほど土地の転用の抑制ということを強調されましたが、これもやはりしっかりとしてほしいな、こういうふうに思います。  それで、もう一つ、農地の管理が悪くて事実上荒れ地になっているというのが、休耕田が減っているとはいいながら、いまだにかなりありますね。これの対応をどうするかという問題ですね。これはやはり真剣に取り組まなければいかぬときでないか、こう思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  120. 森実孝郎

    森実政府委員 稲作転換対策等も一つの誘因になったことは事実でございますが、やはり農業労働力の急速な二次産業等への流出のもとで、土地の利用率が下がってきているということは事実でございます。その意味では、労働力の移動が大きかった中山間地帯の利用率が下がっているというふうな特徴もございますし、それからまた、大都市近郊の水田の利用率が下がってきているという点が一つのメルクマールではないかと思います。  私ども、やはりこの問題を解決していくためには、一つは、主体的な条件としては、中核農家の育成という問題が大きな課題だろうと思います。中核農家群の占める経営比率というものを高めていくことが、やはり土地の利用率の向上に直結するという側面を重視していかなければならないと思います。そういう意味で、地域農業集団の育成あるいは構造改善事業の新しい展開等も今年度の施策で図ったわけでございますが、その努力を組織的に展開することは土地利用率の面からも重要な課題だろうと思います。  それから二番目の問題は、やはり土地基盤の整備という問題だろうと思います。非常に区画の小さい、機械化のできない圃場、排水不良の水田等において利用率が低いということは明白な事実でございます。そういう意味においては、御指摘のようになかなか厳しい状況があり、努力が必要とされることは事実でございますが、基盤整備事業というものの計画的な推進ということが、長期的に見ればその問題を解決する物的な条件だろうと思っております。  そういう二点を中心にして、総合的な努力を続けたいと思っているわけでございます。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 それから農地の利用率の問題ですが、大体いま全国平均で一〇三%ですか。これは、一一二%くらいの見込みをしているわけですね。だから、それでは一一二%まで持っていくにはどうするのだという、一一二%という数字が出たその根拠はどうなんだというと、十分な説明がされていないように見えるわけです。今後、この耕地利用率の停滞の壁をどのように破るかという、その対応策はしかと示さなくてはいけない。というのは、これは昭和三十五年くらいは一三四%くらいですか、大体そうですね。その後、麦や大豆等の作付が激減したためにどんどん落ち込んでいったわけです。それでようやく最近になって、麦類とか飼料作物の裏作への導入などのそういう方向性というものが功を奏したといいますか、やや上向きになってきまして、過去三カ年で一〇三%前後という状況まできた。だけれども、三年間で一〇三%。まだまだ昔に戻るまでには相当苦労が要る、こういうわけでありますから、この一一二%という耕地利用率まで持っていくためにはどういう方法でこれを達成するかという方途はしっかりと示しながら、その示された方向に向かっての対策、実行といいますか、やらなくてはいかぬと思うのです。この点はどういうふうに考えているわけですか。
  122. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  長期見通しの一一二%という数字は、御案内のように作付面積の長期的な展望に立って土地利用率を出したものでございます。問題は、やはりそういったことが可能になる条件をどう整備していくかということではないかと私ども観念するわけでございます。  先ほども指摘がありましたように、休耕地を減らしていく、捨てづくりを減らしていく、それから裏作なり周年利用の作物の導入を図っていくという問題が重要な課題だろうと思います。その意味におきましては、一つは、農業に精進する中核農家の生産比率を高めるための構造政策の組織的展開という問題が第一の課題だろうと思いますし、第二は、裏作の導入や機械化農法の導入が困難な圃場や農地を減らしていくための基盤整備事業の推進という問題も重要な課題になるだろうと思います。なお、それ以外に、大家畜を中心にした畜産業の発展の中でやはり飼料作物がふえてくる。この飼料作物について、できるだけ、たとえば西日本等においては周年利用の体系をつくっていくということも、利用の可能性を通じて作付の比率を上げていくわけでございまして、重要な課題だろうと思います。そういった点を総合的に考えて、具体的な努力を続けてまいりたいと思っております。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 この問題はこの辺にしておきますが、いずれにしましても、農地の保全ということは相当力を入れていきませんと、日本の将来にとって非常にゆゆしき問題が起こってくる。健康で豊かな食生活を保障して生産性の高い農業の実現、そしてさらに食糧の安全保障の確立というような問題にも蹉跌を来す重要な問題でありますし、今後また機会を見て質問できなかった点はお尋ねしたいと思うのですが、特に力を入れていただきたいということをひとつ要望しておきたいと思います。  最後に、転作の問題についてちょっとお尋ねします。  まず、大臣にちょっとお尋ねします。  第三期の水田利用再編対策をどのようにしていくかという一つの方向性は、早く、いまのうちに、できればもうそろそろ明示してもいいのではないかと思いますが、どうでしょうか、大臣
  124. 金子岩三

    金子国務大臣 第三期水田利用は慎重に取り組んで結論を出さなければならないと考えています。したがって、五十九年度の予算を編成するまでには仕上げたい、そういう目安のもとにいま盛んに検討を続けておるところでございます。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 農家の人たちにとっては、早目にその方向性というのを教えていただかないと、いろいろな準備の都合もこれあり、特に、いままでは大変苦しい中で、大体全国的に転作目標を出された場合にはそれを上回る減反をしまして御苦労をなさってきたわけでありまして、その間に三年続きの冷害があったということで、いま六十万ヘクタールに緩和措置をしていただいているけれども、今度これがまた六十七万七千ヘクタールですか、そこまでいくとすれば、かなりまたぐんと第三期というのは御苦労しなければならない。そうすると、それに対する対応というのは、これはやはり早目のうちに出していただいて、どういう事態があっても十分に対応できるようにしてあげなければならぬというふうに私は思っているわけでありまして、こういう農家の御苦労を考えた上での政府の温かい心配り、これは必要だと思うのです。  そういう点で、早目にその方向性を示しながら、きちっと農家の方々もそれなら任せてくれと言えるような方向を早く展開をしてほしい、こういうように思うのです。これはひとつお願いしたいと思うのですが、どうですか、大臣
  126. 小島和義

    小島(和)政府委員 第三期水田利用再編対策につきましては、ただいま大臣からお答え申し上げたとおり、ただいま省内で鋭意検討中でございまして、その中には需給のスケールをどう見るか、潜在生産力をどう見るか、あるいは消費動向をどう見るかという問題もございますれば、転作奨励金の枠組みをどうするかという問題もございます。したがいまして、短時日の間に結論が出にくい問題でございますので、今後の転作の状況なりあるいは米需給の問題をよく踏まえまして、慎重に検討いたしたいと思っておるわけでございます。  ただ、そうは申しながら、ある程度予見性を与えてほしい、こういう御希望もあることは事実でございまして、特に本年度目標面積を軽減するに当たりまして、五十八年度はわかったけれども五十九年度はどうなるのだということが各県からも大変強い御希望でございますので、五十八年度の転作目標面積を決定するに当たりましては、第三期への円滑な移行に配慮する、こういうことを決定文の中に盛り込んでございまして、定量的なことは必ずしも申し上げられないのでございますけれども、五十九年に移行するに当たりまして現地で無用な混乱が起こらないように十二分に配慮していく、こういう思想は申し述べておるわけでございます。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 大事な点は、私は今後考えていただきたいことは、やはり消費者に好まれる米をつくることですね。大体おいしい米をつくっているところは、おいしい米は必ずみんなたくさん食べて、ちょっとくらい高くてもおいしい米を食べたいという人たちの方がいま多いのだそうです。ですから、そういうような志向、消費者に好まれる米をつくるところは、この水田利用再編対策においても制約なくつくれる方向での政策誘導も第三期では考える必要があるのではないかと私は思うのですが、この点はどうでしょうか。
  128. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに消費者の側からの良質米志向というのは大変強いということは私ども承知いたしております。ただ、御承知のようなスケールで水田利用再編対策を実施するに当たりましては、全国の各地域の農家の方々にそれぞれ御協力を願わなければならぬわけでございまして、特定の地域は対象から除外するという扱いもなかなかできにくいという事情も御理解いただきたいと存じます。  実際の扱いといたしましては、目標面積の都道府県別配分に当たりましては、転作の難易度あるいはその圃場の条件でございますとか、そういう問題のほかに、米の自主流通比率というふうなことも一つのファクターとして入れて考えておりまして、県別の目標の数値を転作率ということで眺めていただきますならば、良質米地帯と必ずしもそうは言えないところとではかなり目標の率の開きがございます。そういう意味におきまして、最小限本当の消費者に歓迎される米をつくっております地域につきましては配慮をいたしておるつもりでございます。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、最後に、八〇年代の農政というのは価格政策から構造政策への転換である、こう言われているわけです。私は、やはり現在の転作奨励金、こういうものに対していろいろと臨調等でも厳しい指摘などがありまして、農家の皆さん方はこれはどうなるんだという心配が非常に強いわけであります。転作奨励金があるから麦あるいは大豆、飼料作物等をつくっても何とかやっていけるという、やれない地域もあるのですが、努力すれば何とかやっていけるという地域があるのです。もしこれがばっさり切られるようなことがあれば恐らく大変な混乱が起こるであろうということを考えますときに、現在の転作奨励金というやり方から、いわゆる生産物に対する価格保障という方向はやはりこの辺で考えて、何か研究をしながらしかと対応をやっていく方向に国は取り組む必要があるのじゃないかというように思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えでございますか。  この点についてお答えいただきまして、私の質問を終わらしていただきます。
  130. 角道謙一

    角道政府委員 転作奨励金の問題につきましては、臨調その他から早期脱却というような指摘がございまして、私どもといたしましても、未来永劫この転作奨励金を続けるということにつきましてはまだまだいろいろ問題があろうかと考えております。ただし、現段階におきまして転作作物と水稲の間に非常に大きな収益差があるという段階におきましては、転作を進める上におきましてやはり奨励金というのは非常に重要な誘導施策であるということで、私どもはこれは当面維持していく考え方でおります。その額、方法等につきましては、先ほど農蚕園芸局長から話がございましたように、第三期対策に当たりましてどうするかということも、現在、省内で検討いたしておるところでございます。  全体といたしまして、今後の転作作物の価格政策をどうするかということでございますが、すでに三年前になりますか、農政審議会から、「八〇年代の農政基本方向」という中におきまして、農産物価格の方向というものにつきまして大きな方向が出されております。かつて農業と非農業の間に大きな所得格差があった時代、三十年代の後半から四十年代にかけてでございますけれども、この間、価格政策は主として所得補償という観点に非常に向けられて重点を置かれて運用されてきた。これは、現状におきましては、御承知のように一般家計につきましても今後必ずしも大きな消費増は望めない、また、現在の食生活から見ましても大体二千五百カロリーが頭打ちになる、この中での消費の後退であるというようなこともございますし、需要の面からの大きな制約がありますので、これに従って今後農作物をどのように価格を考えていくかということになろうかと思います。  その上におきましては、価格政策が本来持つべき機能といたしましては、価格変動の防止ということがまず第一でございますので、やはり価格安定、これは消費者の面あるいは生産者の方々からいたしましても、価格安定ということは第一の急務であるという方向を基本にして運営をしてまいりますとともに、今後、現在私どもがやっております需要動向に応じた農業生産の再編成という方向を考えますと、やはり需給調整の機能も考える必要がございます。また、現在の農業者の置かれた地位、たとえば転作奨励金に象徴されるようなことでございますが、今後の農業を担う中核農家というものを育成する上におきましては、やはり中核農家を志向した所得政策というものについても当面は配慮していかなければいかぬというような点がございまして、これらの点を頭に置きながら、基本的には生産性向上を進めながら、農業を担う中核農家の育成に重点を置いて今後の価格政策を当面は運用していきたいというように考えております。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 食糧庁長官に対する質問はできなかったので、この次に回しますので御了解いただきたいと思います。終わらしていただきます。
  132. 山崎平八郎

    山崎委員長 安井吉典君。
  133. 安井吉典

    ○安井委員 金子農林水産大臣のこれまでの御答弁にはかなり失言と思われるような発言があったそうで、それは大変遺憾なことだと思います。日本農業全体が大臣の双肩にかかっているということでひとつお取り組みをいただきたいし、御答弁も願いたいと思います。それを前提にして、きょうは二、三伺ってまいります。  まず初めに、農産物自由化の問題です。  この間の中曽根訪米で、あの際に何か異変が起きやしないかという心配を農業団体も持ったし、われわれも持ったわけでありますが、表で知る限りにおいては、貿易自由化が約束されたというふうな気配はありません。ただ、問題は、枠の拡大についてはレーガンとのさしの話もあったわけですから、そういうようなところでどんなふうに語られたのか、その辺、私どもはまだ疑心暗鬼であります。  次に問題になるのは、五月のアメリカにおけるサミットがありますけれども、このときにまた何か手みやげというようなかっこうで、自由化はないにしても、枠の拡大の問題が持っていかれやしないかという一つの心配、それを乗り越えても、今度は六月末の参議院議員の選挙、その選挙が終わったらまた何かするのではないかというふうな心配もあるわけであります。  特に政府は、昭和四十六年に、参議院議員の選挙が終わって二日後にグレープフルーツの自由化をやったという前科を持っています。ですから、レーガン・中曽根会談において、これはどちらも政治家なんだから、選挙が大変だから選挙の前には結論を出すというようなことはしないということで、何か魚心水心というようなかっこうで、向こうの方も、選挙が終わったら何かやるんだな、そういうことを思っているから、いまちょっと向こうの要求がおさまっているような気がしているのです。だから、私は、一つは今度のサミットの際、もう一つの心配は選挙が終わってからという、その段階で枠の拡大というようなことをバーンとやられはしないかという心配をするわけです。そんなことはないと思いますが、大臣、どうですか。
  134. 金子岩三

    金子国務大臣 安井先生の御心配、そういうことをよく聞くのですが、先般総理が訪米されて、市場開放、いわゆる自由化についてはレーガンとは話題にならなかった、一応こうなっておるわけでございます。ただ、事務的に専門家でひとつ冷静に話し合っていきたい、こういうことで締めくくって帰っておるわけです。  そこで、ただいまいろいろお話があったとおり、憶測があることもよく私ども理解できるわけでございますが、これだけ日本の農家が市場開放はまかりならぬ、枠の拡大さえもいまは困るということを言っていますので、専門家同士の会議で、この日本国内事情、農村の事情をよく説明して理解を求めていくならば、ある程度理解はできるのじゃないか、こういう考え方でおります。したがって、これからはその専門家同士のいわゆる事務的な話が始まったならば、努めてわが国の実情を話して、市場開放されて必要でないものまで売りつけられては困る、そんなものを倉庫に入れて持ち越すようなことはわが国ではできないということと、もう一つは、もし異常事態が作柄に起こった場合、必要な場合はやはり輸入しなければならないわけですから、そのときはひとつ国民食糧の不安を与えないような輸入はやる、こういうような考え方で話していけば、いま強引に直ちに牛肉柑橘類で言われておるような自由化は私は押してこないと思うわけでございます。  また、枠の拡大についていろいろお尋ねがありますが、この枠の拡大についても、枠の拡大を無定見に許すとそこが自由化の突破口になるというような言い方で、私はいままでこの枠の拡大も困るということを言い続けてまいっておるのでございます。ただ、サミットのときにどういうことを総理が持ち込んでいくだろうかとか、あるいはかつてグレープフルーツが選挙後輸入の枠が拡大されたとかいう、いろいろな御心配があることを日本政府は当然心得ておりますので、総理にもそういうような態度はおとりにならないように私どもがいわゆる進言をしていかなければならない、このように考えております。
  135. 安井吉典

    ○安井委員 いま御答弁がございましたが、自由化という形で問題が出てくるというような心配はいまのところはないようでありますけれども、問題は、いま後でおっしゃった枠の拡大なんですよ。どんどん拡大されてしまえば、これは自由化も同じことなんですね。自由化されたって必要な量しか買わないわけですから。したがって、無定見な枠の拡大が進むということでは、これは大変だ。特に、輸入が進めばそれだけこちらの農業はへこむわけですから、いわば向こうからの農業侵略なんですよ。侵略が言葉が悪ければ侵入でもいいですが、いずれにしても、その分だけ日本農業が小さくなるわけですから、したがって、枠を拡大するということに対する心配は、これはもう当然なことだと私は思います。  そういうことですが、専門家同士で話し合ったってなかなかこれはらちが明かないからあとは政治家だ、こうなるのですよ。専門家の方はわりあいしっかりしていますから、そうやすやすとオーケーとは言わないと思いますけれども、問題は政治レベルの話なんです。ですから、後で大臣のおっしゃった政府のどこのサイドで問題を提起しようと、農林水産大臣としてはがっちり進言をしたり、単なる進言だけではなしに、ひとつ横になるくらいの決意で臨んでいただかなければならないと私は思うのですが、重ねて伺います。
  136. 金子岩三

    金子国務大臣 御趣旨はよくわかっておりますので、そういうことを踏まえていわゆる枠拡大についてもひとつ取り組んでまいりたいと思います。
  137. 安井吉典

    ○安井委員 次に、韓国の漁船問題について水産庁長官に伺いたいと思います。  ことしの春、一月五日ごろから北海道の噴火湾沖を中心に襟裳以西海域に韓国漁船が姿を見せて、政府取り決めでは一月十六日以降でなければ操業ができない海域でもそれ以前に違反操業をするというふうな状況もあるし、しかも、警告を無視して十五海里ラインを突破して十二海里の領海すれすれまで来て操業をし、漁場を荒らし漁具に大きな被害を与えているというふうな状況があるわけでありますが、この実態をどういうふうにつかんでおられるか、また、被害額はどれくらいになっているのか、それを伺います。
  138. 松浦昭

    ○松浦政府委員 御案内のように、韓国の漁船の操業につきましては、北海道沖におきまして、昭和五十五年十一月に日本政府と韓国政府の話し合いによりまして、いわゆる韓国漁船の自主規制が行われているわけでございますが、昨年の末から本年一月にかけまして、韓国漁船は、ただいま安井委員指摘の襟裳岬以西海域におきますところの本来禁止区域になっております区域の中で違反操業を行った事実がございます。  また、わが国の取り締まり船に対しまして毎日正午の位置を通報することに約束上なっているわけでございますが、昨年の十二月二十六日から本年一月十八日まで、これを行わなかったという事実がございます。  また、両国の民間団体取り決めに基づきまして、わが国からの沿岸漁業の漁具の敷設通報を先方の漁船は受け取ることになっておるわけでございますけれども、十二月二十六日から一月十三日までこれを受信しようとしないといったような問題が起こりました。  水産庁といたしましては、外交ルートを通じまして、繰り返し韓国水産庁に対しまして規制の徹底遵守方を指導するように申し入れました。韓国水産庁の方も、これを受けまして関係業界を指導いたしておるところでございます。その結果、現在のところはこのような違反がかなりなくなりつつあるわけでありまして、平穏になりつつあるという状況でございます。  しかし、なお、われわれといたしましては、この水域で紛争が起こることを防ぐために水産庁の監視船も三杯ほど張りつけておりますし、海上保安庁の巡視船あるいは北海道庁の監視船等も出しまして、全部で八隻ほどこの水域に現在も船を張りつけまして、トラブルの防止に当たっているところでございます。  なお、お尋ねの五十八年一月以降の漁具被害の発生状況でありますが、トータルといたしまして五十五件、千四百五十万八千円でございます。
  139. 安井吉典

    ○安井委員 一月十六日から二十四日ごろだと聞いていますが、北海道の底びき船の網に死んだスケソが八十八トンぐらいかかったという情報があります。八十八トンといいますと総水揚げ量の一割ぐらいに当たる大変な量になるわけですが、それは、一たん漁獲したのを腹を割いて卵だけとって、いわゆるがらを海中に投棄した、こういうわけであります。それが底びき船にひっかかったわけですね。日本の漁船ですとがらも何もなしにみんな売れるのですから、しかもすぐ近いところに港があるわけですから、すぐ帰れるわけです。だから、日本の漁船がそういうようなことをするとは思えないわけであります。人の国の海の底だからどうなってもいいというようなことからすれば、どうも韓国側の船ではないかという疑惑もあるわけであります。しかし、これは実態がよくわかりませんが、政府においてはこの事態をどうとらえているのか、あるいはまた韓国側に対してその辺の調査をしたり対策を要求したことがあるのかどうか、これを伺います。
  140. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいま先生指摘のように、ことしの一月七日から一月二十三日にかけまして、苫小牧の沖合い海域におきまして、わが国の底びき漁船が八十八トンの身が切られて中の子を出してしまったスケソウダラを水揚げしたという事実がございます。  ただいまおっしゃいましたように、これが果たして韓国船がやったのであるかどうかということは現在のところ定かではございませんけれども、その疑惑がかなり強いということがございまして、実は韓国政府に対しましてその調査を依頼して、実態を調べてほしいということを申し入れているところでございます。
  141. 安井吉典

    ○安井委員 調査依頼中だそうですから、その結果を待たざるを得ないわけでありますが、いずれにいたしましても、このような幾つかの事例を取り上げても、長官の方では監視体制を強めていると言われておりますけれども、一層それを強化していただく必要があるのではないかと思うし、さらにまた、韓国側に対してモラルとルールをしっかり守れということを明確にしていただかなければならないと思うわけであります。  政府取り決めは十月末で期限切れとなるわけで、それまでの間に新しい取り決めも相談をしてもらわなければならぬということになるわけであります。松浦水産庁長官が訪韓をするという報道もありますが、それはどういうことになっていますか。
  142. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいまいろいろ韓国トロールの日本沿岸における違反操業について物議を醸しております。これは、西日本においてもそれに似たようなことがあるわけでございます。この十日から松浦長官を差し向けまして、こういった問題について韓国とひとつ厳重に交渉させたい、このように考えております。
  143. 安井吉典

    ○安井委員 ぜひ当面の問題を処理していただくこと、特に損害をどう処理するかという問題もありますよね。それから、秋の協定切れの段階の話し合いという点について十分御努力をひとつ願っておきたいと思います。  次に、日朝民間漁業協定の問題について触れてみたいと思いますが、外務省おいでですね。  この民間漁業協定の問題は、昨年、日本政府が玄峻極団長の入国を拒否するというふうな挙に出たことで、期限切れ前の再交渉ができなかったわけです。そういうことで、七月一日から無協定状態になったままになっています。ところが、日朝議員連盟等の民間における努力で年末には何とか向こうからの代表団が来てもらえるような状況をようやくつくることができて、政府の方も態度が若干緩和したとでもいいますか、そういうような状況交渉を進めていたやさき、いわゆる日韓会談、中曽根訪韓が行われたことで、共同声明等でも朝鮮民主主義人民共和国敵視的な、そういうような中身と先方は受けとめたようであります。それが刺激するところになって、その後の交渉が全く行き詰まってきている、こういうわけであります。ですから、私は、これは民間が一生懸命に努力をしていて政府がそれを後ろから崩している、そんな状況にとれてしようがないわけです。どういうふうにお考えですか。
  144. 小倉和夫

    ○小倉説明員 お答え申し上げます。  日朝関係に非常に御造詣と御経験の深い安井先生でございますので、御承知のとおりでございますが、政府・外務省といたしましては、昨年以来日朝間の民間漁業取り決めというものが残念ながら期限切れのまま今日に至っておるということはきわめて残念なことだというふうに思っております。  私どもといたしましては、できるだけ交渉開始の環境づくりということでできることがあればやってまいりたいというふうに思っております。いま先生指摘のとおり日朝間には国交がございませんので、政府としまして直接できることには限度がございますが、やはりできる限り民間同士の話し合い、いま先生おっしゃいましたように、単に民間同士の話し合いをすればいいんだ、政府は知らないんだ、こういう態度ではなくて、やはりそういった話し合いができるような環境づくりのためにできることがあればやりたい、こういう気持ちでおります。
  145. 安井吉典

    ○安井委員 何といっても、この協定は双務的なものではなくて、全く先方の好意にすがって成立し、継続されているという協定であるわけです。したがって、朝鮮側の好意にこたえる努力が日本政府としても必要ではないかと思います。ですから、いま課長からもお話がありましたけれども、先方の好意を阻害するようなことはやるべきではないし、そういう意味合いで、もう少し、たとえ国交がないといっても、知恵を働かすべきではないかと思います。  環境づくりという言葉をいま使われましたが、そのことについて何か具体的に考えていますか。
  146. 小倉和夫

    ○小倉説明員 環境づくりと申しました場合に、国交がございませんので、どういうふうなことができるか、私どもも知恵をしぼらなくてはいけないと考えておりますが、いま先生が御指摘になりましたように、もし朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の方に日本政府の対朝鮮半島政策というものについて誤解なりあるいは十分真意を理解していただいていない面があるとしますれば、これは残念なことでございますので、環境づくりと申しました場合の一つ考え方といたしましては、やはりわが国の朝鮮半島政策の真意を、直接北朝鮮当局に説明するわけにはまいりませんが、第三者、第三国を通じてよく説明するということも環境づくりの一環ではないかというふうに考えております。  また、どういう分野でということになりますと、いろいろ御議論はあろうかと思いますが、たとえば貿易、経済面を中心に、人事交流といったことなどについても一定の限度内で柔軟性を持った対応をしていくというようなこともあるいは考えられるかもしれないというふうに考えております。
  147. 安井吉典

    ○安井委員 日本海マス流し網漁は、南朝鮮の海域からだんだん北朝鮮側の方へ北上していくわけですね。四月の初めには朝鮮民主主義人民共和国側の海が主漁場になっていくというわけであります。四月はもう間もなく近づきつつあるわけであります。それからイカ釣りもその後続いてくるわけですね。ですから、いままで無協定でありますけれども、もしそれがそのまま続くということになりますと、その海域に出ている大型船も全部日本海の近海で操業するということになって、全体的な水揚げも減るし、漁場が狭くなって大変な状態が起きるし、さらに、もしもこれができないということになると、損害を補償してくれという声が必ず出てくるような気が私はいたします。  したがって、できる限り早く、三月中に、もう三月に入ってしまいましたけれども、三月中に結論を出すということでなければ、私はこれは大変だと思います。もうすでに漁民の方では着業準備を済ませ、乗組員も漁網も準備しているというふうな状況の中にあります。そういうような中でいまこうやってもたもたしているわけですから、これは大変なんですよ。環境づくりもいいけれども、具体的な対応というものを早急に進めなければならない段階であろうと思います。日朝議員連盟においても、あるいは私たち社会党もいろいろな角度から努力は続けているわけでありますけれども、今度共和国側に代表団を日本に送るというふうな状況がもしうまくできたとすれば、それを絶対成功させるように政府としては全力を挙げて協力するということは言明していただけますね。
  148. 小倉和夫

    ○小倉説明員 先生おっしゃいましたとおり、水産庁はもとよりでございますが、外務省といたしましても、漁民の方々のいろいろな御苦労、あるいはいま先生が御指摘になりましたような漁期、時期の問題、十分認識しております。したがいまして、漁業の問題につきまして北朝鮮の方々がぜひ話し合いをしたいということでありました場合には、もちろんこれは水産庁、法務省、政府部内で協議しなくてはいけないことでございますが、私どもとしては、できる限り問題の解決に資するような形でこれに対応したいというふうに思っております。
  149. 安井吉典

    ○安井委員 大臣に最後にこの問題について伺っておきたいと思います。  これは政府間の話ではないものですから、農林水産大臣が直接どうするというより、むしろ利益享受者の方の立場なのかもしれませんけれども、間もなく始まるマス、それからその次のイカというところに続いていく重大な問題であります。農林水産省としてもひとつあらゆる努力をこの際傾注してもらいたいと思います。どうですか。
  150. 金子岩三

    金子国務大臣 私の方では従来もずっと努力を続けてまいっておりますが、この後一段とうまくいくように、ひとつ努力をいたしたいと思います。
  151. 安井吉典

    ○安井委員 次に、いよいよ日本農政は畜産の季節に入りました。そういうことで、きょうは、特に牛乳を中心にして次の段階は伺っていきたいと思います。  今日までの過去二年間を振り返ってみますと、農水省は昭和五十六年度の場合は民間在庫を六〇%も過大に見積もり、国会をだまし、農民をだましたというふうにしか受けとめられなかったわけであります。後で訂正のお話が三拝九拝して来たわけですからね。それで、その間違ったものを基礎にして限度数量を決め、乳価を決めた、そういうことをおやりになったのが昭和五十六年度です。昨五十七年度の場合は、今度は政府の乳製品需要と供給の見通しが全く誤ったものになってしまったわけです。その誤った見通しによって、つまり乳製品はきわめて過剰で、民間も事業団も在庫がたくさんあってどうしようもないからというので限度数量を据え置き、乳価も、ちょっぴり上げたわけですけれども、抑制したわけです。こういういままでの経過についてどう反省しておられるか、これは畜産局長
  152. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘の五十七年度の限度数量を定めます際に、私ども、畜産振興事業団に比較的過剰な在庫が累積している状態をこのまま放置いたしますと、結果といたしまして、御承知のようにバター、脱粉といった最終製品の値段が非常に低迷をし続ける。そのことが結果的には農民のせっかく生産したものが在庫がたまっていくということで、生産者にとってもなかなか圧迫感が強いということがございました。御承知のように、私ども昨年の限度数量を定めます際には、国内生産にプラスをいたしまして、事業団在庫の相当部分を放出するという大前提で需給計画を定めたわけでございます。  総量で申しますと、生乳換算で約三十万トン弱、正確には二十九万四千トンという数字で算定をいたしたわけでございますが、御承知のバターで約一万二千トン、脱粉二万一千トンという現在までの放出量は、実は当初予定をしました畜産振興事業団放出量とほぼ等しいわけでございます。したがいまして、その見通しの線にほぼ来ていると私どもは思っているわけでございますが、先生の御指摘がございました事態と申しますのは、昨年の、特に四月、五月でございますが、加工原料乳の最大の生産地域でございました北海道におきまして、二カ月連続して対前年を下回ります生産になっておりました。その事態におきまして、御承知のように、好天下で特にバター、脱粉を使いますアイスクリーム等の二次製品の生産が伸びてまいりまして、そういう在庫の中でバターの減少量が著しい。そういう前提で、私どもも御承知のいわば計画生産の費用を逆に北海道における生産増強に使いながら国内生産を誘導いたしますとともに、この価格安定制度を守りますためには、やはり万が一年度末に過熱するようなことがあってはならぬということで、三千トンのバターを輸入したわけでございます。御承知のように、脱粉は現在なお二万トンを超える数量を事業団は持っているわけでございます。したがいまして、私どもは、需給の見通しにつきましてはほぼその線上を来たのだと思いますが、物別に申しまして、バターについて若干不足ぎみ、脱粉についてはむしろ余裕があった、そういう物別のアンバランスはございましたが、需給の総量としましては、幸いその後北海道の生産も大変増強されておりまして、ほぼ予定の線上を現在走っているのではなかろうかと思います。  なお、価格につきましては、必ずしもその需給状況だけではございませんで、御承知のような算定方法を使って価格算定をいたすわけでございますが、昨年からことしにかけましても、市乳、原料乳合わせまして需給がほぼバランスをとっているのではなかろうか。特に生産を刺激したり、あるいは特に生産を抑制する事態ではなかろうと思っておりまして、御承知のような算定方法を使いまして、非常に微細ではございますが、昨年は〇・五六%の値上げという算定をしたわけでございます。
  153. 安井吉典

    ○安井委員 いま御答弁はありましたけれども、私の計算では、たしか十一月の末ぐらいまでに事業団の放出は、バターは八回、脱粉六回というふうに思いますけれども、いずれにしてもそういう放出をした。それは、最初の供給計画の中にそれが入っていたからだ、そういうことなのであります。しかし、実際は、その放出によって市況はちっとも冷えなかった。むしろ乳製品相場の高騰をあおるような結果になって、結局は、最後はバターの緊急輸入三千トン、こうなってしまったような印象を私は受けるわけであります。やはり見通しの誤りが混乱の原因ではなかろうか。生産が落ちたということもありますけれども、これは、生産意欲を落とすような限度数量なり乳価の決め方をなさっているわけですから、落ちるのはあたりまえですよ。今日まで低乳価と生産調整で泣きの涙でいる酪農民にとっては、三千トンのバターの輸入というのは青天のへきれきであり、これはもう憤りいっぱいという状況があるわけです。この放出にしても、もう少し合理的な方法だとか何かなかったのですか。
  154. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御承知のように、放出をいたしましてある程度の水準にしていきますと同時に、価格の安定を図っているわけでございます。バターにつきましては、御承知のように過去数年ほとんど安定指標価格を実現しない低い価格で来たわけでございますが、やはり物の値段としてある程度需要と均衡した価格水準をとることはむしろ必要でございまして、これを大量に放出しまして一〇〇を割るような価格にすることは、いまのバター、脱粉等、たとえば市乳との関係からいっても必ずしも望ましくない、ある程度の水準はやはり実現してしかるべきではなかろうか。そういうある程度の水準ができなかったのは、事業団が過剰の在庫を持っておりましていつでもほうり出してくるということになりますと、価格はなかなか実現しない。したがいまして、ある程度の水準になったことが、生産者にとりましては、たとえば昨年における北海道の乳価の決め方の際にメーカーとの間で若干の手取り増を図ったとか、そういうプラス面がたくさんあるわけでございます。問題の三千トンの輸入も実はかなり早い段階にやりまして、万が一不足していま先生承知のように需給の面からとんでもないような暴騰をすることがあってはいけないという意味ではやりましたけれども、三千トンのバターはなお手持ちでございます。  そういう意味では、全体としては当初需給計画表にあった線を走っているわけでございますが、最初に申し上げましたように、バター、脱粉のアンバランスということから申しますと、脱粉はなお一カ月分以上持っておりますが、バターは現在輸入品の三千トンを保有しているだけ。その点におきましては、御指摘のありましたそこまでもう少し正確に見通せなかったかどうかという話でございますが、この一年間の中で、いわばいままでほとんどバター、脱粉というものは過剰なものだという前提が、そうではなくて、ほどほどの需給のところへ来たのだというところが価格面でもプラスに働いてまいりましたし、それを農民との関係で言いますと納入します価格にもプラスに働いてきた、私はそのように考えているわけでございます。
  155. 安井吉典

    ○安井委員 事業団の在庫の現段階の数量をちょっと正確に言ってください。  それから、適正在庫というのは相変わらず一カ月分というふうな考え方でおられるのかどうか。  それからもう一つは、昨年は八百八十トンぐらい倉庫証券で入っていたという事実が後でわかりました。これはことしはないのでしょうね。どうなんですか。
  156. 石川弘

    石川(弘)政府委員 バターの在庫は、現在三千トンでございます。それから、脱脂粉乳は二万一千トン在庫いたしております。  それから、一カ月という在庫が適正かどうかということでございますが、私ども過去非常に多くの在庫を持っておりましたときに、多くの在庫を持っておりますと価格圧迫要因になるということで、極力在庫というものは必要最小限度にという意味では、一カ月程度あればむしろ操作上十分ではなかろうか。当時よく言われておりますのは、民間に一カ月、事業団に一カ月という意味で一カ月と申し上げたわけでございます。しかし、これは御承知のように、現在のバターが半カ月しかないということになりましても、もしこれをふやそうと思えば、むしろ輸入という手法を使うことはないわけでございます。私どもは、そういう意味では、現在輸入してまで持っておる必要はない、むしろ国内生産が回復して、先ほど申しましたように、北海道は四月から一月までの総計で申しますと対前年比六%の生乳生産増でございますから、輸入をしてまで持つ必要の品物ではないと考えております。  先ほど、私、民間一カ月と申し上げましたが、言い間違えました。事業団一カ月、民間二カ月ぐらいで操作が十分ではなかろうかということでございます。
  157. 安井吉典

    ○安井委員 農水省としては、民間在庫はいまどのぐらいに押さえていますか。
  158. 石川弘

    石川(弘)政府委員 現在調査中でございますので、正確な数字を申し上げるにはいささかあれでございますが、二カ月の水準よりは若干低いかと思っております。
  159. 安井吉典

    ○安井委員 昨年の二月末の悉皆調査では、脱粉一万八千トンでしたか、バター八千トンということで、たしか脱粉の方は一・七カ月分、バターは一・五カ月分というふうに聞いておりましたが、いつも民間在庫の見積もりで問題が起きるわけですね。ですから、工場を立ち入りをしてでもひとつ徹底的な調査をやっていただく必要があるということ。  それからもう一つは、先ほど倉庫証券はどうだったのかということについてお答えがありませんでしたが、どうですか。
  160. 石川弘

    石川(弘)政府委員 まず倉庫証券でございますが、あれは過剰のときの操作の問題でございますので、皆無でございます。  それから、御指摘のありました五十六年の事態は、一定の数量の調査をして、それをいわば推測したわけでございます。したがって、ああいう大きな差が出たということで御迷惑をかけたわけでございますが、昨年度は悉皆調査でございます。悉皆で完全報告させるわけでございますが、御承知のようにこの在庫の見方というものの中には、いわば問屋さんとかいろいろな段階で持つわけでございまして、私どもは一次的なところでとらえますので、その奥行きの深さというものについてはなかなかはかり知れぬところがございます。しかし、これが非常に大事でございますので、私どもは、今回の場合も悉皆調査であると同時に、一月末現在とか二月末現在とか、そういう時点時点で変化をとらえまして調査をするようにいたしております。
  161. 安井吉典

    ○安井委員 昨年は在庫過剰ということで限度数量を決め、乳価を決めたわけであります。いま伺いますと、ことしの乳価を決定する段階では事業団についても民間についても適正在庫に足りないのですよ。去年と全く状況が違っているわけです。したがって、去年と同じ論理から言えば当然限度数量をふやさなければいかぬのではないか。特に生産も進んでいるということであるし、さらに、中酪会議の方も生産計画を出していますけれども、そういうふうな計画状況の中にあるし、また、需要拡大しているというふうなこともありますよね。ですから、限度数量をどうするのか、乳価をどうするのかということをいまここではっきりおっしゃるような段階でないことは私もわかりますし、これはいずれ審議会等の段階で委員会を開いていただいてきちっとしなければいかぬと思いますけれども、この全体的な動きからすれば、少なくも限度数量だけはふやさなければいかぬということには当然なるのではないですか。どうですか。
  162. 石川弘

    石川(弘)政府委員 限度数量につきまして、ここ数年とっておりました百九十三万トンという数字にこだわるような事態ではないと考えております。
  163. 安井吉典

    ○安井委員 これからの様子を見てにいたしたいと思います。  それから、乳製品が世界的な逼迫状況にあります。製品国際市場の高値がかなり続いたときもあります。ただ、これはドルの値段の関係があるわけでありますが、その点はどう考えていますか。
  164. 石川弘

    石川(弘)政府委員 乳製品につきましては、世界的に見ますと、アメリカが過剰在庫を持っておりますし、ECが相当のものを持っているということでございまして、必ずしも不足基調とかいうものではございませんで、むしろ日本外国との関係で申しますと、円の相場いかんによっては大変入りやすくなるし、そうでない場合はそうでないという関係もございます。したがいまして、私どもは対外的な問題から申しますと、主要製品につきましては事業団の一元輸入ということで遮断をしているわけでございます。そういう意味で、そういう対外的な問題との関係から申しますと、今後も事業団輸入制度の活用ということで、極力国内の安定生産が保てるようにしていきたいと思っております。
  165. 安井吉典

    ○安井委員 ECでは深刻な経済不況の状況にあるわけだし、また、ECの域内価格アメリカとの関係貿易摩擦にもなっているという事情もあるのですけれども、それも見据えながら、約五%の農産物の共通価格の引き上げが提案されているという報道もあります。ECがそうだから日本もということではないかもしれませんけれども、域内の農業をしっかり守るという態度がこういうような方向に出ていることも参考にすべきではないかと思います。ですから、日本の場合も、乳製品の価格へのはね返りだとか、いろいろなことがあると思いますけれども、必要な乳価だけはきちっと保証すべきですよ。その点はどうですか。
  166. 石川弘

    石川(弘)政府委員 乳価の算定方式につきましては、御承知のような考え方があるわけでございまして、再生産を確保する乳価でなければならないと私どもも思います。そこで、考えなければいけませんのは、私ども極力努力をしまして、国内生産性を上げまして、いわばEC並みと申しますか、土地条件の似通った地域で行われている農業になるべく早く接近したいと考えているわけでございます。幸い、北海道等におきましては、経営規模その他におきましてECの普通の水準よりもすでに高い程度のものを達成しているわけでございますが、何しろ急速に発展したものでございますから、資本装備に対する償却その他いろいろ問題がございます。  私どもも、経営がある意味では前向きに前進している事態を見ながら、それから短期的に申しますれば、過去一年に実現をしておりますいろいろな数字の動き、たとえば労働費がどのように動いているかとか、飼料価格がどのように動いているか、あるいは生産性がどのように変化しているか、御承知のような現在やっておりますそういう数字を詰めてまいりまして、私どもとして考えられます最も適正なものを審議会にかけて御審議をいただくつもりでございます。
  167. 安井吉典

    ○安井委員 再生産の確保という言葉については私どもと同意見だと思うのですけれども、いつもはいろいろなファクターを決めるときに細工をするものですから、答えが先に出てしまって、何かそれに合わせるような再生産方式、こうなってしまうわけです。そういうのではなしに、みんなが納得できるような方式で乳価算定をしてほしいということを申し上げておきたいと思います。  ただ、乳製品の輸入が全体的にふえていますね。五年ぶりの増加を示しているわけです。たしか生乳換算二百四十七万トンぐらいの数字に去年はなるのではないかと思います。特にふえているのがバター、脱粉やナチュラルチーズもふえているようでありますが、これも時間がありませんので後の問題にいたしますけれども、特に私どもが心配なのは擬装乳製品と言われている部分であります。調製食用油脂だとかココア調製品なのですが、これらがさらにふえていて、国会で、おととしでしたか、ずいぶん議論して歯どめをかけていただいたはずでありますが、その歯どめが外れたのか、大幅増を示している状況がありますが、これに対してはどうお考えですか。
  168. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のございました擬装乳製品と言われております調製食用油脂あるいはココア調製品でございますが、調整食用油脂につきましては、御承知のように五十六年四月から輸出国、これはニュージーとECでございますが、特にニュージーランドにつきましては自主規制をしていただいておりまして、その範囲内で現在もやっていただいております。国内の実需者とか輸入業者にも自粛を指導いたしておりますし、例の貿易管理令に基づきます事前確認制を導入したわけでございまして、去年に比べて若干ふえておりますのは、むしろ去年の落ち込みが大変多うございまして、そういう意味では、自主規制の枠内でございますが、去年がその前の年より大変落ちておりましたので、それとの関係でございます。そういうことで、全体としては自主規制のラインの上を走っていただいている。  それからココア調製品につきましては、御承知のようにこれを使いますものはチョコレートとかココア飲料でございます。それ以外には使えないものでございますが、実はチョコレートの末端実需が伸びているということもありまして、私ども一生懸命指導いたしておりますが、数字は若干ふえる傾向にございます。これにつきましては、関係業者と自主的に極力一定数量に抑えるのだという約束をいたしておりますものですから、私どもあるいは関係するところも一緒になりまして、極力この自主的な規制を守ってもらうようにという指導を今後もいたしていくつもりでございます。
  169. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、乳製品の輸入がふえていることはそれだけ国内生産が抑圧されるということになるわけですから、農民は非常に敏感にそれを受けとめております。したがって、これらの問題も乳価その他畜産物の決定の段階でさらにお尋ねをしてまいりたいと思うし、それから飲用乳の乱売の問題、これも時間がなくなりましたので後回しにいたしたいと思います。  きょうは気象庁からおいでいただいておりますので、最後に、全世界的な異常気象の続発状況、豪州の干ばつ、それが大火事になっているとか、その他世界各地での暖冬だとか大雨だとか異常な寒波だとか、いろいろあるわけでありますが、特に国内では日射量が昨年の十二月以来例年より二〇%も減っているという観測の結果が伝えられているようであります。それに対して、農作物への影響が非常に心配なわけですが、気象庁としてはこの問題をどうとらえておられるか、また、農林水産省とも御連絡があると思うのですが、技術的にもどんな対応を農林水産省としてされるおつもりなのか、両方から伺います。
  170. 駒林誠

    ○駒林説明員 お答え申し上げます。  太陽から直接垂直な面へ到達します太陽の光の量は、御指摘のとおり昨年の秋より減り始めまして、十二月には例年の平均値に比べまして二〇%減っております。しかしながら、青空に浮かぶほこりが反射してくる光の方はかえってふえまして、それらを合わせました全天空から来る光の方はそれほど変化しておりません。いわば秋から冬にかけましては大気が最も透明な季節でありまして、その上空に火山灰があることは、たとえれば真っ白な紙の上に一握りの火鉢の灰をまき散らしたものと同じであろうかと思います。それに反しまして、春から夏にかけますと、春は土ぼこり、夏は水蒸気がこもりまして大気全体が不透明になっておりますので、その上空に火山灰が存在することは、もともと灰色の紙の上に一握りの灰をまき散らしたものと同じであろうかと思います。  それで、今後の気候の推移でございますが、気象庁がすでに発表しております三カ月予報によりますと、特に異常はないものと考えております。夏につきましては、三月十日に暖候期予報を発表する予定でございまして、現在作業を進めております。もし火山灰の影響が及ぶようなことがあるとするならば、それは北極を中心とする極地方の天候に徴候が真っ先に検出されるのではなかろうかと思われますので、北極地方を中心とする天候について、特に気象庁は注目して監視をしていきたいと思っております。  また、農業影響があるかどうかにつきましても、関係の機関と連絡を保ちながら監視を強めてまいりたいと考えております。
  171. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいま気象庁の方からもお話がございましたように、トータルの日射量としてはほとんど違いがない、こういうことでございますが、農業に与えます影響は日射量のトータルだけではございませんで、そのほか気温の問題ですとか、降雨量の問題でございますとか、あるいは暴風雨の問題でございますとか、さまざまな気象上の変動があるわけでございまして、目下のところ、火山活動による影響というのは余り考えられないような状況でございますが、ことしの夏に向けましても、あらゆる気象変動を想定いたしまして、できるだけその影響を少なからしめるように最善の努力を尽くしたいと思っておるわけでございます。  これまでのいろいろな経験に照らしまして、気象変動の影響を最小限にとどめるためには、何と申しましても、農業の面でのいわば基礎的な技術というものを励行するということにどうも尽きているようでございまして、水稲の場合で申し上げますならば、危険分散ということも考慮に入れまして、できるだけ特定の品種に偏らないような作付をする。また、植えつけの段階におきますところの苗についても、健苗育成をいたしまして、適期にこれを定着させるということが大事なことでございます。  そのほか、よく言われておりますように、地力増強というような問題、さらには用排水の適正を期すというような問題が特に冷害対策に効果があるように経験的にわかっておりますので、これまで三年続きの冷害に遭いましたような地帯におきましては、特にこういう基本技術を励行させるということに主眼を置いて指導いたしております。夏以降のいろいろな気象の変動は、これはいまから事前に的確に予想するというのはなかなかむずかしいようでございますが、いろいろな気象変動がありました都度、適切な事後措置を指導してまいるつもりでございます。
  172. 安井吉典

    ○安井委員 これはこの間もここでずいぶん議論されたそうですが、米のことしの端境期がどうなるかという問題にも大きなかかわりを持ってきますので、私どもも関心を持たざるを得ないわけでありますが、政府でも、その点、ぜひ御配慮を願っておきたいと思います。  最後に、農林水産大臣に、畜産の問題でこれからの取り組みの御決意について伺って終わりたいと思いますが、大臣御就任になって初めて価格問題と取り組まれるのが今度の畜産物の価格の問題です。したがって、どういうふうなことでこの問題を処理されるのかということについて、皆が注目をしていると思います。臨調行革のいろいろな動きもあるし、また、農政のさまざまな面でも危機が迫ってくるという状況もあります。そういう中で、農民の再生産が十分にできて、もちろんこれは消費者の生活も考えていかなければいけませんが、成長産業と言われている畜産がさらに前進ができるような、そういう仕組みの中で問題と取り組んでいただかなければいかぬと思いますが、どうですか。
  173. 金子岩三

    金子国務大臣 五十八年度の保証価格及び限度数量については、畜産振興審議会の意見を徴しまして、三月末までに適正な決定をいたしたいと思います。
  174. 安井吉典

    ○安井委員 終わります。      ────◇─────
  175. 山崎平八郎

    山崎委員長 内閣提出漁船損害等補償法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。金子農林水産大臣。     ─────────────  漁船損害等補償法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  176. 金子岩三

    金子国務大臣 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁船損害等補償制度は、昭和十二年の創設以来、漁船の不慮の事故による損害等をてん補する漁船保険の実施により、漁業経営の安定に重要な役割りを果たしてまいりました。さらに、昭和五十六年には、この制度の一環として漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険を本格実施することにより、他船との衝突その他の偶発的な事故により漁船の船主がこうむる賠償責任等を保険する制度を確立し、漁業経営の安定に一層の貢献をいたしました。  しかしながら、近年、漁場の遠隔化、漁船の大型化等に伴って、積み荷の価額は高額化する傾向にあり、航海中の事故によるこれらの損害が漁業経営に重大な影響を及ぼすようになってきておりまして、このような損害を適切に保険する制度の確立が強く要請されております。  政府におきましては、このような事情にかんがみ、昭和四十八年以降、漁船積荷保険臨時措置法に基づいて、漁船に積載した積み荷に関する保険事業を試験的に実施してきたところであります。今般、その実績等を踏まえ、本年十月から漁船損害等補償制度の一環として漁船積荷保険を恒久的な制度として確立することとし、この法律案を提出した次第であります。これにより、漁船損害等補償制度は、漁船に関する総合的な保険制度として整備されることとなると考えております。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、漁船損害等補償制度に、新たに漁船積み荷の不慮の事故による損害をてん補する漁船積荷保険を追加することとしております。  第二に、漁船積荷保険は、漁船保険組合の保険事業及び国の再保険事業により実施することとしております。  第三に、漁船保険組合の漁船積荷保険の引き受けは、漁船保険とあわせて行うこととしております。  第四に、漁船積荷保険の保険料につきましては、漁業者の負担の軽減を図るため、保険料の一部を国庫が負担することといたしております。  第五に、漁船保険中央会が、当分の間、漁船積荷保険に関し、補完的に再保険事業を行うことができることとしております。  このほか、満期保険の保険料の算出方法の改正等を行うこととしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  177. 山崎平八郎

    山崎委員長 補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  178. 松浦昭

    ○松浦政府委員 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  まず、漁船積荷保険の本格実施に関する規定について御説明申し上げます。  第一に、漁船積荷保険によっててん補される損害についてであります。  漁船積荷保険は、漁船積み荷につき滅失、流失、損傷その他の事故により生じた損害をてん補することとしております。  第二に、漁船積荷保険の引き受けの制限についてであります。  漁船積荷保険の引き受けにつきましては、漁船損害等補償制度が漁船保険の保険契約者による相互保険組合である漁船保険組合を基盤として成立しておりますことから、普通保険の申込人があわせて申し込む場合等でなければ組合は引き受けることができないこととしております。  第三に、漁船積荷保険の実施機構についてであります。  漁船積荷保険は、漁船保険組合が元受けを行い、政府が再保険を行うことといたしており、漁業者と漁船保険組合との間に保険関係が成立したときは、これによって当該保険組合と政府との間に組合の保険責任の一部を再保険する再保険関係が当然成立することとしております。  第四に、保険料の国庫負担についてであります。  普通保険の保険料の一部につき国庫負担をしている漁船に関し、漁船積荷保険が成立した場合には、漁船積荷保険についても新たに純保険料の国庫負担を行うことといたしております。  第五に、漁船保険中央会の補完再保険事業についてであります。  漁船積荷保険は、現在のところ加入隻数が十分多くないので、漁船保険組合の段階では十分に危険分散をすることができないおそれがあります。このため、当分の間、漁船保険中央会が組合の保険責任について補完再保険事業を実施できることとしております。  次に、他の保険の仕組みの改善について御説明申し上げます。  第一は、満期保険の保険料算出方法の改正であります。  満期保険の保険料率のうち損害保険料に対応する部分については、従来は契約時点の普通損害保険の純保険料を適用しておりましたが、これを毎年の保険料期間の開始時における普通損害保険の純保険料率を適用することとしております。  第二は、漁船船主責任保険の改正であります。  船主責任制限法の改正による責任限度額の引き上げ等に伴い、漁船船主責任保険の保険金額を引き上げることとしておりますが、この場合に衝突損害のうち船価を超過する部分については、これを一般損害のてん補区分でてん補できるよう法律の規定を改めることとしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上をもちまして漁船損害等補償法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。      ────◇─────
  179. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出、原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。金子農林水産大臣。     ─────────────  原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  180. 金子岩三

    金子国務大臣 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び改正内容を御説明申し上げます。  この臨時措置法は、北洋における外国政府による漁業水域の設定等に伴う水産加工原料の供給事情の著しい変化にかんがみ、これに即応して行われる水産加工施設の改良等に必要な長期かつ低利の資金の貸し付けを行うことを目的として、昭和五十二年に制定されたものであります。  自来、国民に対する食用水産加工品の安定的供給の確保を図る見地から、この臨時措置法に基づき、国民金融公庫、中小企業金融公庫及び農林漁業金融公庫から貸し付けが行われ、水産加工原料のスケトウダラ等北洋魚種から他の魚種への転換、食用利用度の低いイワシ等多獲性魚の食用加工が促進されてきたところであります。  この臨時措置法は、本年三月三十一日限りでその効力を失うこととされておりますが、最近における水産加工原料の供給事情を見ますと、漁業水域の設定等により大幅に減少した北洋魚種の生産量は、ここ数年ようやく下げどまりの傾向を示しているものの、今後、各国の漁業規制の強化により、従来の生産量の確保が困難となることも懸念されております。  一方、わが国近海で漁獲されるイワシ等多獲性魚の生産量は、今後とも高水準で推移することが見込まれ、その食用加工を促進することは、食用水産加工品の安定的供給の確保を図る上で、ますます重要になってきております。  このような水産加工原料の供給事情にかんがみ、引き続き水産加工施設の改良等に必要な資金の貸し付けを行うこととするため、この臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十二年度末までとすることとした次第であります。  以上がこの法律案の提案の理由及び改正内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。      ────◇─────
  181. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、内閣提出水産業協同組合法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。金子農林水産大臣。     ─────────────  水産業協同組合法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  182. 金子岩三

    金子国務大臣 水産業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  水産業協同組合制度は、漁民及び水産加工業者の自主的な協同組織の発達を促進し、漁民及び水産加工業者の経済的地位の向上と水産業の生産力の増進を図ることを目的として、昭和二十四年に発足いたしました。以来、水産業協同組合は、わが国経済及び水産業の歩みとともに発展し、活発な活動を展開してきたところであります。  しかしながら、近年における水産業をめぐる諸情勢は、二百海里体制の定着、燃油価格の高水準の推移等きわめて厳しいものがあります。これら諸情勢の変化に対応するとともに、国民生活に不可欠な水産物の供給を確保していくため、水産資源の維持培養、漁業経営の維持安定等のための諸施策を強力に推進しているところでありますが、これとあわせて、水産業協同組合の機能を拡充強化し、その健全な発達を図ることが緊要となっております。  こうした状況に対処するため、共済事業制度の整備改善を図り、水産業協同組合の系統組織により、共済事業を組織的に推進することができるようにするとともに、内国為替取引に係る員外利用制限の緩和、内部監査体制の充実等を図ることとし、この法律案を提案することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、漁業協同組合及び水産加工業協同組合の事業の種類に、組合員の共済に関する事業を追加するとともに、新たに、共済水産業協同組合連合会を設立することができることとしております。  また、これに関連し、水産業協同組合共済会に関する規定を削除し、現に存する水産業協同組合共済会は、共済水産業協同組合連合会に組織変更できるようにすることとしております。  第二に、信用事業を行う漁業協同組合等の内国為替取引について、員外利用制限を受けずに行うことができることとしております。  第三に、会員の監査の事業を行う漁業協同組合連合会及び水産加工業協同組合連合会は、監査規程を定めるとともに、監査事業には、所定の資格を有する者を従事させなければならないこととしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  183. 山崎平八郎

    山崎委員長 補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  184. 松浦昭

    ○松浦政府委員 水産業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、組合員等に関する共済事業制度の整備改善についてであります。  従来、共済に関する事業は、全国を地区とする水産業協同組合共済会の事業として実施されてきたところでありますが、近年、漁業協同組合及び水産加工業協同組合において事業の実施体制が整備されてきたことに伴い、農業協同組合と同様に、組合員に出資をさせる漁業協同組合及び水産加工業協同組合の事業とすることとしております。  これに伴い、漁業協同組合及び水産加工業協同組合の行う共済事業につき、共済規程の設定、責任準備金の積み立て等について、所要の規定を設けることとしております。  次に、漁業協同組合、水産加工業協同組合等は、共済水産業協同組合連合会を設立することができるものとしております。この共済水産業協同組合連合会は、当該連合会を直接または間接に構成する者の共済に関する事業を行うことができるものとしております。なお、この制度は、農業協同組合における制度に準じたものであります。  第二に、信用事業を行う漁業協同組合等が、内国為替取引について、員外利用制限を受けずに行うことができるものとすることであります。  近年における内国為替取引の取扱量の増大等にかんがみ、漁業協同組合等が、その迅速かつ円滑な処理を行うことができるようにするものであります。  なお、農業協同組合につきましては、昨年の農業協同組合法の改正により、同様の措置を講じているところであります。  第三に、漁業協同組合連合会及び水産加工業協同組合連合会の行う監査事業の整備改善を行うことであります。  近年、水産業協同組合の事業が拡大し、また、多様化が進んできていることから、これに対処して、その事業が一層適正に行われるように、系統組織における内部監査体制の整備を図ろうとするものであります。  まず、漁業協同組合連合会及び水産加工業協同組合連合会が、会員たる水産業協同組合の監査の事業を行おうとするときは、監査規程を定めることとしております。この監査規程には、監査の要領及びその実施の方法並びに監査事業に従事する者の服務に関する事項を記載しなければならないものとしております。また、監査事業には、省令で定める資格を有する者である役員または職員を従事させなければならないものとしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上をもちまして水産業協同組合法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  185. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、明三日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十二分散会