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1983-04-19 第98回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十九日(火曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 堀之内久男君    理事 矢山 有作君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    池田 行彦君       上草 義輝君    小渡 三郎君       狩野 明男君    亀井 善之君       吹田  愰君    堀内 光雄君       宮崎 茂一君    角屋堅次郎君       山花 貞夫君    鈴切 康雄君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      丹羽 兵助君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    服部 健三君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         内閣総理大臣官         房管理室長   菊池 貞二君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府恩給局長 和田 善一君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部少年課長  阿部 宏弥君         警察庁警備局公         安第二課長   渡辺  勇君         防衛庁防衛局運         用第二課長   上田 秀明君         外務省アジア局         中国課長    畠中  篤君         大蔵省主計局共         済課長         兼内閣官房内閣         審議官     野尻 栄典君         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     遠山 敦子君         厚生省年金局年         金課長         兼内閣官房内閣         審議官     山口 剛彦君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 棚橋  泰君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ───────────── 四月十九日  臨時行政改革推進審議会設置法案内閣提出第四九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案内閣提出第二二号)      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度出されました恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案の中で、長期在職の七十歳以上の旧軍人だけが一号俸引き上げられることになりましたが、それ以外の恩給受給対象者は今回なぜ引き上げ対象にならなかったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  4. 和田善一

    和田政府委員 今回、長期在職の七十歳以上の旧軍人等につきまして一号俸是正いたしました理由についてお答え申し上げます。  これは長期在職の旧軍人等仮定俸給の格づけが文官の同様の七十歳以上の人に比べまして四号俸低い、そういう格差があるという事実がございまして、これをどうしても埋めなければならないという懸案従前からございまして、昭和五十六年度にはまずそのうちの二号俸を埋めましたが、なお二号俸残っておりました。今回とりあえず、その残っております二号俸のうちの一号俸格差を埋めようということで、このようなアンバランスを長く放置しておくのは適当でないということで、真に必要と思われますこの改善につきまして今回措置いたしました。そういう事情でございます。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、あと号俸残っているわけですね。このあと号俸というのは、今度いつごろ是正するおつもりなんですか。
  6. 和田善一

    和田政府委員 残りの一号俸につきましては、財政事情等種々事情を考慮しながらも、私どもといたしましては誠意をもってできるだけ早い機会に改善したい、こういうふうに思っております。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、恩給等給付に当たっては政府は不公平であってはならないと思うわけですが、今度傷病者遺族特別年金改善ということで、昭和五十八年十月から新たに年額四万八千円を加算されることになっておりますが、この額の算出根拠を示していただきたいと思います。
  8. 和田善一

    和田政府委員 傷病者遺族特別年金につきましては、従来、傷病年金あるいは特例傷病恩給受給者が平病死いたしました場合には遺族に対しまして何の給付もなかったということでございましたので、その御家族の方も傷病者を抱えられまして長年御苦労され、また、本人生存中は年金が支給されまして、死亡と同時にそれがすっかりなくなってしまうということは適当でないということで、昭和五十一年から傷病者遺族特別年金を設けましたことは御案内のとおりでございます。  今回改善いたしましたのは、この年金水準が重症の公務傷病者、すなわち増加恩給を受けております方たちが平病死いたしました場合に支給されます増加公死扶助料水準、これが年額百四万七千円というものと比べまして余りに低額であるということで、従前から改善の御要望が強かったわけでございます。それで今回、傷病者遺族特別年金につきましても遺族加算という制度を新たに設けまして四万八千円を上積みしたわけでございますが、この四万八千円という金額根拠は、増加恩給を受けられます方、それから今回措置します傷病年金等を受けられます方との傷病程度の差が明らかに違いますので、その差に基づきまして半額の四万八千円とした、こういうことでございます。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 傷病者遺族特別年金を受ける方方は非常に少額のために、それをある意味では補てんするというか、そういう一つ考え方も入っておるのですか。
  10. 和田善一

    和田政府委員 新しい制度を今回設けまして、傷病程度増加恩給を受けられます方とかなり違うということで、四万八千円ということを今回算出根拠にいたしまして決めたということでございます。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 つまり、この金額というのは傷病程度によって決めた、こういうことに受け取っていいと思うのですが、まあそうなると、これは一律に決めたのはどういうあれでしょうか。傷病程度というのはいろいろと等級があるだろうと思いますが、それを半分ということで一律に決めた理由はどういうものですか。
  12. 和田善一

    和田政府委員 遺族加算という制度には、大きく増加恩給グループ、それから傷病者遺族特別年金を給されますグループというようなことで、今回グループ別二つに分ける。それ以上の細分まではちょっと今回考えられませんので、二つの大きなグループに分けて考えた、かような次第でございます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に移りますが、今回の旧軍人仮定俸給額改定は、恩給法第二条ノ二によらない改定考えられますが、そういう考えでいいでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  14. 和田善一

    和田政府委員 今回の旧軍人仮定俸給改善は、先ほど申し上げましたように文官との格差を埋めるという、制度内部の不均衡を是正するというための措置でございまして、恩給法二条ノ二の規定によります改定はいわゆる恩給の実質的な価値維持していくという観点からの改善でございますので、二条ノ二の規定による改善ではないというふうに考えております。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今回全体に対しての改定がなされなかったということは、恩給法第二条ノ二の価値維持ということが可能でしょうか。
  16. 和田善一

    和田政府委員 恩給実質的価値維持という観点からの措置ではございませんので、その点はまた別個の問題になると思います。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その点が別個のものになるということは当然であります。すなわち同法二条ノ二の精神に基づいて、本来ならば当然に価値の変化に対応する措置が講じられなければならないわけですが、それが今回は講じられていない。  そこで、この恩給法第二条ノ二の精神に基づいて分析した場合、昭和五十八年度は理論的には当然人事院勧告に基づいた改定をなすべきではないかと考えるわけですが、その点はどうなっているでしょうか。
  18. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきますが、ただいま先生の御指摘恩給ベースアップは、現職公務員給与改善基礎として行っておるのでありまして、元公務員に対する年金額の調整のあり方としてはこの方法が最も妥当であると私ども考えております。したがって、厳しい財政事情のもとにおいて現職公務員給与改善が見送られたにもかかわらず、恩給について人事院勧告指標としてベースアップを行うことは妥当ではない、こう考えて、今回の措置をとらしていただきました。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 二条ノ二というものは、物価賃金経済事情、こういう三つ要素から成っておるわけですが、そうすると、この賃金というものが人事院勧告実施凍結によって動かなければ、あと物価経済事情というものは全然考慮に入れられないということになるわけですが、この三つ条件というものは不離一体のもので、このうちの一つでも欠ければ他の二つ条件は死んでいく、こういうふうに解釈することになるのですが、その点はいかがでしょうか。
  20. 和田善一

    和田政府委員 私ども恩給改定公務員給与決定指標として行っております意味は、公務員給与決定と申しますものが、人事院勧告、すなわち官民較差調査しました結果の人事院勧告に基づいて給与改定がなされる。したがいまして、給与改定という結果の中には、民間賃金水準、あるいはその民間賃金水準が決まる根底には物価等の変動もございましょう、そういったようないろいろな社会事象公務員給与改定という事実の中に取り込まれまして、いわば公務員給与改定の結果というのはいろんな指標の総合された結果である、こういうふうに考えますので、公務員給与改定恩給改善指標としている次第でございます。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 公務員は直接月給をもらっておるわけですが、年金生活者というものは公務員並みの給料を受け取っていないわけですよ。つまり、老後生活をこれで支えるというのがその趣旨だと思いますが、そうなると、こういう経済事情が厳しくなれば、公務員の方が凍結されたからといって直ちに恩給にこれが連動して老後生活を脅かすようなことでは、せっかくの恩給趣旨というものは死んでいくのじゃないでしょうか。
  22. 和田善一

    和田政府委員 今回、きわめて厳しい財政事情のもとで、公務員給与改定も五十七年度は見送られている、こういう状況でございます。したがいまして、従前から公務員給与改定指標として恩給改定も、同じ公務員でございますから、現職公務員給与改定指標として行ってまいりました長年の制度あり方から考えまして、今回恩給につきましてもベースアップを見送らざるを得なかった、こういうことでございます。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、恩給というのは何もよけいなことを書いている必要がないと思うのですよ。第二条ノ二に物価経済事情というようなことは全然書く必要がなくて、人事院勧告実施の結果によりというふうに書いた方が一番すっきりするわけですね。ところが、こういうふうに賃金物価経済事情ということを並列しておるということは、私はそういう自動的にただ連動するという考え方は間違いじゃないかと思うのです。そういう点で、少なくとも財政事情が非常に窮迫しておるというならば、それでも若干何とか色をつけるという、その愛情というものの発露が具体的になければならないと思うのですよ。御承知のように、一方、防衛費予算は六・五%もふえているのですから、そういうところにふやすならば、こういう大事なところをまずやってから考えていくべきだと私は思うのですよ、どうせ考えるにしても。ところが、こういうものを全然やらないで、そうして都合のいいところではふやして、都合の悪いところでは財政が窮迫しておる、こういう理屈が通るでしょうか。その点はいかがなものでしょう。
  24. 和田善一

    和田政府委員 公務員給与改定の結果を指標といたしておりますのは、恩給法の二条ノ二に書いております国民生活水準物価公務員給与その他の諸事情ということの総合指標のあらわれであるというふうに考えまして、指標といたしておる次第でございます。  なお、昭和五十八年度、そういう財政事情のもとでございますが、先ほど申し上げましたような二項目の個別改善につきましては、真にやむを得ないものとして措置させていただいた、こういうことでございます。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、それほど財政事情が窮迫してやむを得ないものだとおっしゃられるならば、本改定案による該当者数、また恩給受給者全体に対する今度の七十歳以上の旧軍人比率はどういうふうになっておりますか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  26. 和田善一

    和田政府委員 今回の個別改善該当者数でございますが、まず、長期在職老齢軍人等に係る仮定俸給の一号俸引き上げ措置に伴う対象人員は三万五千人でございます。それから傷病者遺族特別年金に対します遺族加算措置に伴う対象人員は一万一千人でございます。したがいまして、昭和五十八年度予算におきます年金恩給受給者数は約二百三十三万人でございますから、今回の個別改善対象人員比率は約二%ということでございます。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 過去の改定の歴史を見ますと、大体人事院勧告がいつも基礎になって改定がなされてきたことは、先ほどおっしゃられたとおりでございます。今回受給者全体を対象として全然改定がなされなかったのは、人事院勧告凍結にならったものとして受けとめざるを得ないわけですが、人事院勧告恩給との関係は絶対的な結びつきを持つものかどうか、その辺の関係について明らかにしていただきたいと思います。
  28. 和田善一

    和田政府委員 公務員給与改善指標といたしますことが、恩給法の二条ノ二に書かれておりまするいろいろな国民生活水準給与あるいは物価等に対する総合指標ということで最も適当であると考えておりますので、恩給改定指標としては、公務員給与改善ということ以外には、いまのところちょっとほかの要素考えられぬということでございます。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それで、人事院勧告凍結された際に、それでは困るという、何らかの恩給法本来の精神に基づいて行動をされたでしょうか。
  30. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  先生からいろいろお尋ねいただき、当局から考えを述べさせていただいておりますが、なお恩給改善基本的な考え方について述べよ、こういうことでございますから、私からまとめて申し上げさせていただきたいと思いますが、昭和五十八年度予算における恩給改善については、現下の厳しい財政事情のもと、恩給費増加を極力抑制せよとの臨調答申及びその具体化方策に関する閣議決定趣旨も踏まえまして、長期在職老齢軍人等仮定俸給改善及び傷病者遺族特別年金改善という真にやむを得ない懸案事項に限って今回は措置することとさせていただいておりますが、お尋ねのように、御意見もありますので、なお恩給年額改善取り扱いについては、昭和五十八年度人事院勧告取り扱いを検討する際に、これとのバランスを考慮して誠意をもって先生の御指摘のようなことをひとつ検討させていただきたい、かように考えております。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひ、昭和五十八年度人事院勧告がなされた際には、大臣の方から強力にその実施とそれから恩給改善を迫っていただきたいと思います。  次に、一九八二年、総理府の出した老人生活と意識という国際比較調査資料があるわけですが、これによりますと、公的な年金収入源としている者は、日本においては六四・六%、アメリカにおいて八二・一%、イギリスが八七・七%、フランスが七四・九%となっておるわけであります。また、公的な年金が主な収入源となっている者は、日本が三四・九%、アメリカが五三・九%、イギリスが六四・〇%、フランスが六四・六%となっているわけでございます。これは公的年金国民生活に占める度合いというべきものと考えますが、言いかえれば年金制度の充実の度合いとでも申しますか、それがこういう数字にあらわれたと言ってよいだろうと思います。  そこで、この数字について政府はどういうふうに解釈されるのか、また、総理府がこのような数字を掲載した目的は一体どこにあるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。――これは総理府数字を出しているのだから、総理府が答えたらいいじゃないですか。
  32. 和田善一

    和田政府委員 老人対策室でまとめました数字でございまして、私ども直接担当しておりませんので、至急調べましてお答えしたいと思います。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 やはり統計資料とか何かそれを参考に出す場合は、ある意図が必ずあると私は思うんですよ。この数字によって何を訴えようとしているか、それが大事であって、専門というのはどこがこれの専門で出したのですか。そのことは、それではいま手元に答えが用意されていないとなれば、後からでも結構ですからお願いしたいと思います。  それでは次に移りますが、恩給年金等の額の決定に際しては従前公務員賃金物価等にスライドさせる、こういう姿勢が今日まで、五十七年度凍結以降は違いますが、それまではそういう姿勢が堅持されてきたわけですが、これは今後もそういう姿勢を堅持するおつもりなのかどうか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  34. 和田善一

    和田政府委員 恩給法二条ノ二の趣旨に従いまして、必要な改定を行っていくという基本的な考え方でございます。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、つまり人事院勧告実施に伴ってそれに見合った改定をしていく、こういうふうに解釈していいでしょうか。
  36. 和田善一

    和田政府委員 従前から前年度公務員給与改定指標といたしまして恩給改定を行ってきた、こういうやり方、考え方は、今後とも堅持していきたい、このように考えております。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、今回適用者以外の一般受給者恩給改定が見送られたことは、人事院勧告凍結に起因しておることが明らかになったわけでございます。したがって、その基本をなす人事院勧告というものをこの際再検討して、その本質を確認しておく必要があると思うわけでございます。  そこで人事院総裁にお伺いいたしますが、第一に、現行人事院制度はいまも正しいと思っておられますかどうか。第二に、臨調答申を受けて今後どのような方針で臨まれるおつもりか。その方向なりあるいは考え方なりを明らかにしていただきたいと思います。
  38. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  第一点の、この人事院勧告制度というのは、公務員につきましては、その従事する仕事の性質上、公正しかも能率的に、中立というようなことで仕事をしていかなければならぬという一つ要請がございます。そういう特殊性にかんがみまして、公務に従事する公務員というものについては最小限度のいろいろな制約があるわけでございます。服務を中心として、その他労働基本権制約までに至る一連の制約というものが一般民間労働者と違って特別に課せられているわけでございます。といたしますと、それに対応いたしまして、特に労働基本権制約の代償的な措置というものは当然講じなければならない。一般労働者と比較して非常に不均衡にもなりますし、また、公務の場にそれ相当の優秀な人を誘致しなければならぬ、そういう要請にこたえるわけにもまいりません。そういう意味で、代償機能の一番大事なものとして人事院勧告制度というものが設けられておるというふうに私は理解をいたしておりまして、この制度は、現在のいろいろなことを検討いたしました結果でも、私は一番妥当な、しかも正しい制度であると確信をいたしております。  事実、そういう考え方一般にございました結果、いろいろ国会でも御協力をいただきました末、四十五年度から、勧告実施時期を含めて完全実施ということで実は最近まできておったのでありまして、これは制度として確立をした安定したものであり、私は正しい制度であるというふうに確信をいたしております。  それから第二の点といたしましては、臨調答申が最終的に出されました。この中でいろんな点が論議をされたわけでございますが、その中でも公務員制度あり方というものが大変重要な問題として位置づけられました結果、種々角度から論議がございました。その中の一環といたしまして、当然公務員給与あり方というものについても熱心な論議が展開されたわけでございますが、その結果、答申といたしましては先生承知のように四つの原則が明示をされたわけであります。  その一つは、公務員給与あり方について、やはり現行人事院勧告制度というものは維持し尊重されるべきであるというのが一点。第二の点としては、給与勧告するに当たって何を基準にするかといえば、やはり官民比較という原則に立って、較差があればその較差を埋めるように勧告をするという原則が正しい原則であるということが第二点でございます。第三点は、勧告内閣のみならず国会に対しても行われるわけでございますが、最終的には公務員給与というものは法律でもって定められるものでございますので、国会及び内閣において諸般の情勢を考慮し、なかんずく財政事情も考慮して、その責任において内閣国会が最終的には決断を下すべきであるという点が第三点でございます。第四点は、総人件費立場から全体として、やはり給与というものは国民の税金で賄われるものであるから、公務の部内においてはいろいろな角度であらゆる努力を傾むけて、総人件費自体はこれを抑制する方途をいろいろな角度から工夫をしてもらいたい。この四点が明示されておるのでありまして、この方向自体人事院立場としてもおおむね妥当な線ではないかというふうに私は解釈をいたしております。特に、人事院勧告制度自体維持し尊重されるべきであり、またその場合に官民較差というものを原則としてやるべきであるというふうに言っておりますことは、非常に正しい方向を示しておるものであるというふうに考えております。  そこで、五十七年度の点についてはいろいろ熱心に御議論をいただきましたが、最終的には五十七年度はすでに経過をしたというかっこうに相なっております。五十七年度勧告がその年度間において最終的な決定を見なかったということは大変残念に思っておるということは繰り返し申し上げてまいりました。ただ、参議院の予算委員長の報告にもございましたように、なおこの問題の取り扱いについては今後もさらに誠意をもって努力をしていくのだというふうに言っておられますので、われわれといたしましては、その最終的な取り扱いがどうなるかということについてなお若干の期待を持って、関心を持って見守っておるというところでございますが、年度も経過いたしましたので、大変苦しい環境になってきたということは覆い隠すことのできない事態でございます。  となりますと、五十八年度はどうするのだということに相なりましょうが、この点は、われわれとしては五十八年度官民比較調査について作業をすでに開始をいたしております。これが従来のペース、大体の手順に従ってやっていきたいということでいま鋭意準備をやり、すでに実行に移している部面も出てきているわけであります。その結果、四月時点でもって調査をいたしました結果が出てまいりますので、この結果が出ますれば、これを調査、検討、分析の上精密な結果を出しまして、その結果に基づいて、要すれば当然本年、五十八年度についても勧告を出すということを目途にして、目下精力的に作業を進める段階に入っておるというところでございます。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この五十八年度の問題についてもいまお話がありましたが、五十八年度の作業をする際に、五十七年度勧告実施されなかった場合、この五十七年度プラス五十八年度官民較差、こういう是正の仕方になっていくのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  40. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五十七年度分を見合わせるということが確定的になりますれば、五十七年度の分はそれが実施されないということですから、五十八年度四月について調査をいたしますと、実施されなかった分が当然その較差の中には送り込まれてくるということは理論的に当然なことであろうというふうに考えます。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、憲法二十八条の労働基本権の保障は公務員に対しても基本的には及ぶものとお考えになっておりますかどうか、その点、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  42. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 これは人事院立場として私の口からいろいろ申し上げることはむしろ差し控えた方がいいのではないかと思いますが、一般論でもって申しますと、憲法自体の規定はこれは公務員を特に除外をいたしておらないわけですから、お述べになりました条文については、黙っておれば公務員も含まれるということに相なろうかと思います。したがって、これは二十三年の国家公務員法の改正以前におきましては、実は労働基本権もそのまま認められておった時代があったわけであります。ところが、それがいろいろな情勢の変化と公務員特殊性から見て、やはり制約を加えるべきは制約を加えることが公務の執行からいって適当であるという、いわゆる公共の福祉の立場からの総合的検討の結果、現行制度が行われてきたわけでありまして、この点、過去三十年にさかのぼってみます場合に、十分その制度の機能というものは発揮され定着をしてきたかというふうに私は評価をいたしておるのでありまして、現行制度はそれなりに十分の理由があり、また妥当性を持っているものであるというふうに確信をいたしております。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで私は、この全農林警職法反対あおり事件というものの昭和四十八年四月二十五日最高裁大法廷判決を見まして申し上げますが「勤労者として、自己の労務を提供することにより生活の資を得ているものである点において一般の勤労者と異なるところはないから、憲法二八条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶものと解すべきである。」云々とかかって、ただ、この「勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れないものであり、このことは、憲法一三案の規定趣旨に徴しても疑いのないところである」こういうふうになって、結局、公務員に対する諸制約というもの、これを一つ国民全体の共同の利益の中に包含していくために、この人事院勧告によって労働基本権にかわる代償措置、こういうふうになったと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  44. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そのとおりであると思いますが、この判決等につきましては、人事院立場としてかれこれいろいろ内容にわたって論評をいたしますことは差し控えた方がよいのではないかというふうに思っておりますが、大筋のことは私も十分研究さしていただいておりますが、そのとおりであろうというふうに思います。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 人事院総裁というのは、この憲法の代償機関の最高責任者として、言ってみれば憲法を守らせる一つの責任があると思うのです。義務があると思うのです。そういう点で、余り消極的になることは逆に問題があるのじゃないだろうか、言うべきは言って、政府にただすことはただしていく、この姿勢がなければ人事院というものの性格がぼけてしまうんじゃないか、こういうふうに私は思うわけですが、その点はいかがなものでしょうか。
  46. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 限界はありますが、私は言うべきことは言った方がいいという立場を、御説のとおりそのまま受け取って結構であるというふうに思っております。そういう立場がございますので、国会のあらゆる論議を通じ、またその他の機会を通じまして、私といたしましては人事院立場、またあるべき姿というものについてはっきりと物を申し上げておるつもりでございまして、これは先生予算委員会その他の論議を通じて十分御承知になっておられることであろうというふうに思っております。  すなわち、五十七年度勧告というものが政府決定において一年間凍結をされるという結論が出ましたことについては、私は昨年の九月、いち早く、これは大変遺憾である、人事院勧告制度立場からいって大変遺憾であるということを申し上げましたし、その後機会のあるごとに、大変残念なことである、尊重していただかなければ困るということは累次はっきり申し述べているところでございます。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、先ほど申し上げましたこの最高裁大法廷の判決の中に「公務員についても憲法によってその労働基本権が保障される以上、この保障と国民全体の共同利益の擁護との間に均衡が保たれることを必要とすることは、憲法の趣意であると解されるのであるから、その労働基本権を制限するにあたっては、これに代わる相応の措置が講じられなければならない。」この「相応の措置」というのはどういうことを具体的に指しておられるか、その辺をお答え願いたいと思います。
  48. 斧誠之助

    ○斧政府委員 非現業の職員につきましては、これが人事院給与勧告制度ということで代償措置がとられておりますし、現業の職員につきましては仲裁裁定という代償措置がとられているわけでございます。  それで、先ほど来先生おっしゃっております、国家公務員労働基本権制約されるという場合に、これはもともと憲法で国家公務員にも勤労者として労働基本権が原理的にある、公務特殊性でそこのところが制約されている、そういう勤労者としては非常に制約された状態にある公務員についてしかるべき保障がなされなければならないということにつきましては、人事院としましては、それあるがゆえの勧告であるというふうに強く観念しているところでございます。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それから「争議行為等が、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の保障という見地から制約を受ける公務員に対しても、その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。」こういうふうに指摘しておるわけですが、その「準司法機関的性格」というのはどういうことなのでしょうか。
  50. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院の担当します業務には、準司法的機関としての業務とそれから行政官庁としての業務と二つあると思いますが、準司法的機関としての業務といたしましては、不利益処分の審査に当たりまして判定を出しまして黒白をつける。それから措置要求に対しまして、これは勤務条件に関しまして職員団体あるいは職員個人から要求のあった場合に判断を下すわけですが、勧告を行う、これが準司法的機能として人事院に存在するわけでございます。  勧告につきましては、これは司法的機能を果たすと申しますよりは、労働基本権が奪われております、そういう状態にあります職員に対してどういう保障を与えるかという行政機能であるというふうに思います。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この準司法機関的性格というのは、勧告をしてもこれをサボってやらない、こういう場合に何らかその手を打つ、そういうことも含まっているでしょうか。
  52. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 勧告実施をされないという場合に、その見合いとして何らかの措置を講ずることも準司法的機能の中に含まれているかという御質問でございますれば、そういうものは、いわゆる準司法的機能の中には含まれておりません。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それで、人事院公務員給与、勤務時間その他の勤務条件について、いわゆる情勢適応の原則により国会及び内閣に対し勧告または報告を義務づけられているということは、言ってみれば、国会及び内閣に対し、勧告に対する可能な限り誠実に履行することを求めているというふうに解釈できると思いますが、やはりこの実施する国会及び内閣側にもその誠意の限りを尽くす義務、これを要求しているのではないでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  54. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 この点につきましては、先生指摘になりましたとおりであろうと思います。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今回この人事院勧告実施されなかった、また、まあまだ尾を引いておりますが、どうもされそうでないので、こんなにもたついたことはいままでにないと思います。これは一体、五十七年度人事院勧告に何らかの瑕疵があったと思いますか、それとも瑕疵はないと思っておられますか。その辺についてお考えを述べていただきたいと思います。
  56. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 私たちは従来の豊富な経験もございますし、また職員にもそのところを得て十分有能な人もいるわけでございまして、これが毎日鋭意努力をして仕事をやっております。そういう点から、事務の能力等についてはいささか自負も持っておるくらいでございまして、去年出しました五十七年度人事院勧告自体について、これに瑕疵があるとは考えておりません。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、五十七年度人事院勧告に対しまして、政府の対応の仕方が誠実に法律上及び事実上可能な限りのことを尽くしたとお認めになられますかどうか。
  58. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 内閣人事院勧告取り扱いについて誠心誠意努力をしたかどうか、どういう評価を人事院はするかとあえてお尋ねでございますからお答えをいたしますけれども、その点につきましては、むしろ内閣の方からお答えいただくことが適当であろうと思います。しかし、あえてお尋ねでございますから申し上げますと、給与関係閣僚会議等についても意を尽くしていろいろ言われておりますように、もっぱら大変厳しい窮迫した財政状況に対応するための一種の緊急避難的な措置であって、公務員諸君には大変申しわけないけれどもがまんをしていただきたいという趣旨が繰り返し述べられておったというふうに思っております。したがいまして内閣としては、あるいはその後の国会論議を通じてわかりますように、国会においても相当の、あらゆる限りの努力をしていただいたということは事実であろうというふうに思っております。  ただ、勧告というものは、従来いろいろな経緯がございましたけれども、四十五年以来はずっとその時期をも含めて完全実施されてきておるわけであります。それなりの実績を持った安定した制度として運用されてまいっておるわけであります。それが、厳しい財政事情のもととはいえ凍結あるいは見合わせの措置を講じられたということにつきましては、人事院立場としては、これは大変残念であり遺憾の措置であるというふうに言わざるを得ないということを繰り返し申し上げてきておるところでございます。
  59. 渡部行雄

    渡部(行)委員 長官、いま総裁の御答弁を聞かれたと思います。あなたの前の長官は、この前、昨年だと思いますが、必ずやりますという答弁をしておったのですが、今度は、凍結になっても総理府総務長官は何も言っていないようですが、あなたはこの問題をどういうふうに受けとめておりますか。その所信のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  60. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 先生の私に対するお尋ねでございますからここで申し上げておきたいと思いますが、勧告をせられた人事院側のお考えはいま述べられたようでございまして、当然なことだと思っています。また政府としても、せっかく人事院から勧告をいただいたのでございますから、それを守らなくてはならないし、また国会もそういうために御努力をいただいたのでございますけれども、しかし今年度は、先生承知のように大変に財政の厳しい事情であって、特に税収が六兆円も減ったというようなことで、給与改定をしようにも財源がないというような非常に苦しい立場でございます。  そういうことから前の長官は、閣議で決定されまするときに、働いていただく方々の気持ちを酌んで、そうした見送り、凍結ということについては反対である、いい労働慣行がいま行われておる、そしてまた、人事院勧告は労働していただく方々の労働基本権制約の代償措置としての一部であるからこの凍結は賛成するわけにいかないというので閣議でもずいぶん意見を吐かれたのでございますが、先ほど私も申し上げましたように、昨年の九月二十四日、こういうような事情であるから今年に限っては何とかごしんぼうを願いたい、そのように働いていただく公務員の方々の御了解を得られるように努力してほしいということで、泣きの涙で賛成をせられたのであります。  その後引き受けました私でございまするから、黙っておるがという先生からのおしかりでございますけれども、決して黙っておるわけじゃなくして、そういうような事情で前長官は残念ながら了承せられたのですけれども、そうは措置されたものだが国会並びに政府において財源等考えて何とか五十七年度においてでも措置できないものかということは、私としてはずいぶんいろいろの場でお願いもしたり意見も述べてまいりました。特に五十八年度をすぐ迎えることになりますから、五十八年度は二度とこういうことが繰り返されないように、何としてもこういうようなことが五十八年度は行われないように最善の努力を、国政全般の中で考えていかなくてはならぬことでございますが、誠実に最大の努力を払っていきたいという考えを持っておるのでございます。  いま、せっかく先生のお尋ねでございますから、おまえどう思っておるのだ、今後どうしていくんだということでございますから、五十七年度はこのように私がお願いするつらさというものも御理解いただき、申しわけない、大変お気の毒だ、こういう気持ち、そうしてぐあいよく勧告が守られていくことによっていまありますところの結構な労働慣行というものは守られていくんですから、そういうことも考えまして、五十八年度においては、国政全般の中で考えることではございますけれども、できる限り努力をして繰り返さないようにしていかなくてはならぬ、かような考えを持っておることを申し上げておきたいと思います。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は言葉はどういうふうにも使われると思うのですよ。それは全く敵に対してもこよなく愛するような言葉も使われるわけです。問題は、実態がどうあるかということで判断することが大事だと思うのですよ。会社や工場が倒産しても、普通の債権者よりも税金と労働賃金は優先権を持っているんでしょう。この労働賃金というのはそれほど重みを持っているんですよ。それを、五十兆三千七百九十六億円の予算を持っていてそれが払えないというようなばかな話が聞けるでしょうか。しかも、官民較差の是正を訴えていながら、ますます較差が広がっている。そういう中で、F15を一つ節約したらどうですか。幾ら公務員といえども、人民に尽くす、国民に尽くすという立場であっても、もっと公務員の日ごろの仕事なり――国家の重要な権力の機能を支えている本当に大切な人たちなんですよ。それをこんなふうに取り扱っていいでしょうか。しかも、企業に比べたら、これは大変な大企業、日本一の大企業です。こういう企業を動かす際に一番大事な人件費を削る、節約するというようなことは、私は非常に問題があると思いますが、その辺は長官どういうふうにお考えですか。
  62. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきますが、先ほど申し上げましたように、昨年の九月二十四日閣議決定いたしましたそのとき、前長官が給与担当大臣としていま先生から御指摘のような気持ちで努力したことも認めていただきたいと思いますが、事はどうあれ非常に財政が困窮しておりましたので、万やむを得ず賛成したのでございます。その後を引き継ぎました私は、ただ労働基本権制約だとか労働慣行という問題ではなくして、これは先生おっしゃいましたように生活権だと考えておるのですから、生活していただくために、しかも大事な国の行政をやっていただく公務員の方々の賃金改定ができないとかというようなことは大変遺憾なことであり、給与大臣としてもまことに申しわけないことでございますから、ことしも、昨年の補正のときにせっかく組まれておりました一%も他の方に回さなくてはならぬということになっておりましたが、今年度予算はその日に私ども主張いたしまして一%をのせてある。五十八年度改定人事院勧告が出てくるということを前提にして、私はまずとにかくのせていただかなくてはいかぬというので一%をのせておるのでございますから、いま先生指摘のような気持ちで、給与担当大臣として、仕事をしていただく公務員の気持ちに沿うように全力を挙げて努力をさせていただく。いま言葉は何とでも言えるとおっしゃいますけれども、ここだけの逃れの言葉になるのか、私は先生と同じ気持ちだということを申し上げて、その努力をさせていただくということをここで申し上げておりますが、今度人事院勧告が出されたときに先生と同じ思いをもってやらせていただきたい、がんばらせていただきたいと思いますので、それで御了承をいただきたいと思います。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは長官、今度五十八年度人事院勧告が出されるわけですが、その際は、給与担当大臣としてその権限を十分生かして、完全実施に最善の努力を尽くす、こういうことをはっきりと言っていただけますか。
  64. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 それが私の任務だ、こう考えておりますので、そのように努力さしていただきます。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひひとつきょうの御答弁をお忘れなく、五十八年度完全実施のために全力を尽くしていただきたいことを申し添えておきます。  次に、昭和五十六年度給与改定の際、結果としてかなりの値切り措置がとられたわけですが、財源的に見て約三分の一カットされたと言われております。そのとき前総理は本委員会において、きわめて異例な措置であるとして、再び繰り返したくない旨の所信を述べられたわけでございますが、それにもかかわらず、五十七年度給与改定は全く見送りとなってしまったわけです。このような実態の中で、給与担当大臣としての長官は、労使関係についてどのような対処をなされようとお考えですか、その点をお伺いいたします。
  66. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 答弁させていただきたいと思います。  われわれ仕事をしていく場合に、労使関係が一番大切なことだと思います。いま先生からいろいろ言われましたように、公務をめぐる状況は非常に厳しいわけでございますけれども、われわれといたしましてはできるだけ労使関係を大切にして、職員の士気の高揚を図ってまいりたい、かように存じております。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは労使関係ですから、基本的な関係ですね。したがって、これについては大臣のきちっとした考え方をお答え願いたいのです。
  68. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 先生の御質問にお答えさせていただきたいと思います。  労働慣行と申しますか、それは一番大事なことでございまして、崩れるようなことになったら大変だと思っております。そこで私は、公務員給与決定方式、一番いいのは人事院勧告制度だと思っておりまして、その人事院勧告制度が崩れるようなことがあったら大変だ、何とかしてこの制度はお互いのために守っていきたい、こう思っておりますので、いま先生の御指摘のことについてそうした考えに立ってお答えさせていただきたいと思いますけれども政府の方が使う側、そして公務員の方々が働いていただく側というようにとりますと、その真ん中の給与担当大臣の私の立場は、やはり政府側の財政事情考えなくちゃなりませんし、働いていただく公務員の方々の生活考え政府側に強く要請しなくちゃならない。だから、家庭で申しまするならば、お母さんのような役になって、お父さん、子供たちの要求を聞いてやってくれ、しかしおやじは、非常に苦しい立場にあるんだからここは理解してもらうようにおまえ話せというような、中にあって、政府というと変ですが、政府と働いていただく公務員との間にあるのが私の務めだというような考えを持っております。  先日も私は組合側の方々と、一杯話やろう、話し合っていきましょうや、いろいろと聞かせてください、そしてまた、政府に対して迫るところは私があなた方の代表になって強く代弁をいたしますというようにやっておりますので、私の気持ちはいま申し上げましたように、政府と国家公務員との間に立ってぐあいよくやってもらえるように、しかし人事院勧告制度はあくまでも守っていきたい、こういう心持ちでやらせていただきたいと思いますので御了承をいただきたいと思います。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度の人事院勧告凍結によって出た影響は、全体で一兆五千億円から二兆円に上ると言われております。しかもこれが、人数にすれば三千万人を超える数になると言われております。こういうことがまた今度の八三年春闘に大変な影響を及ぼしていると考えられるわけでございますが、この人事院勧告の及ぼす影響というものを具体的にある程度御説明願いたいと思います。
  70. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 いまここに資料を持ってきていないので的確なお答えはできないと思いますけれども、これはいろいろな見方があると思います。いま先生が示されたような案も一つでございますし、それよりも低い人員あるいは金額を掲げているものもございます。一概に言うのは非常にむずかしいと思いますけれども給与改定見送りの影響を受ける職員は、国家公務員が八十五万人、地方公務員が三百二十五万人、特殊法人が九万人。五十七年度の雇用者所得の伸びが一人当たり大体六・九%ぐらいといたしますと、人事院勧告の見送りが雇用者所得に及ぼす影響というのは〇・四八ポイントぐらいになるのじゃなかろうかと考えております。  給与改定の所要額でございますが、国が約三千三百八十億円、地方が四千七百十億円、合計で八千九十億円ぐらいのマイナス、これは直接でございます。ただ、これが国民全体に及ぼす影響というのは、いまちょっとここでは資料がないので申し上げかねます。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはいろいろ直接的な数字をはじき出せば私の言った数字よりもっと低くなることは当然ですが、しかし、この勧告凍結によって、まず恩給や退職金、それから経済が冷え切った中で購買力が低下するということが私は一番問題だと思うのですよ。いま景気の回復をやろうと口では言っておるけれども、やることなすこと、みんな景気の足を引っ張るようなことしかしていない。明らかに人事院勧告凍結によって地方自治体は物すごく困っているのです。ある町などは当然何億か入るものが入らない、これは頭からその分貧乏しているということなんですよ。そういうことを考えますと、この影響ははかり知れないほど莫大なものである。しかも購買力の低下ばかりでなくて、それは最近特に中小企業の倒産を呼び込んで、ふえる一方であるわけです。あるいはまた、そのために失業者が増大している。こういう現状を見てどういうふうに思われますか、その点についてお答え願いたいと思います。
  72. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 これは一概には言えないと思います。いろいろな影響が出てまいると思います。この給与財源を何に求めるかという話になりまして、そういった観点から考えると、逆に給与を上げることが必ずしもいいかどうかという点については意見が分かれるところじゃなかろうかと考えます。
  73. 渡部行雄

    渡部(行)委員 意見が分かれるということでお茶を濁されたのでは困るわけで、事実は明白なのですよ。それじゃ、人事院勧告凍結によって何かプラス面がありますか。
  74. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 財源を税金に求めれば、その分、景気にはマイナスの要素も出てくると思います。
  75. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その問題はそのくらいにしまして、五十七年度実施された仲裁裁定は、国鉄あるいは営林署職員に差がつけられているわけでございます。そうして一方、国家公務員あるいは地方公務員人事院勧告凍結ということで、同じ官庁に勤めながらそれぞれ待遇が違っておる。一体これでいいのでしょうか。仲裁裁定と人事院勧告という二つ制度関係についてどういう関係が最も望ましいのか、これについて、ひとつ長官並びに人事院総裁からお伺いしたいと思います。
  76. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 同じように公務員としては国の仕事に携わっておっていただく方でございまして、人事院勧告と仲裁裁定とは、いずれも労働基本権制約に対する代償措置一つであるという点ではいわゆる共通の性格を持っておるものでありますが、先生承知のように、両者の給与財源、それから給与決定方式と国会のこれらに対する関与の仕方も異なっておりますので、実際に過去においても差が出てきたこともあり、その取り扱いに差異が出ることもやむを得ないと私ども考えております。
  77. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 ただいま総務長官からお答えをいたしたと同じことでございますが、制度的には成り立ち等が違いますので、取り扱いについてある程度の差異がございました時期が過去においてもございました。ただ、私といたしましては、労働基本権制約の代償措置としての実質的なたてまえは同じであるべきだと考えております。  特にいま御指摘の中にもございましたように、なかんずく仲裁裁定の対象になります現業の職員の中には、一般の非現業の公務員と同じ部屋で席を並べて仕事をしておるというような部面もあるわけであり、こういうのは一般的に言って取り扱いを異にすることはやはり不公平感、不均衡感というものはぬぐえませんが、そういう者がなかんずく同じ部屋で隣り合わせでやっているというような場合には、これは大変際立ったものになってくるということで、士気にも影響するというふうに言わざるを得ません。私が従来からも申し上げておりますように、制度の成り立ちが違うにしても、実質的な取り扱い方としては仲裁も勧告も同じようにしていただかなければ困るという立場を貫いてきておるわけでございます。
  78. 渡部行雄

    渡部(行)委員 総裁の御答弁はまことに明快で、私も全く同感であります。ただ、長官は、やむを得ないで済まされますか。たとえば家庭の中で、長男は大変高給取りで働きがいいから、おまえには毎晩ビールとあとはビーフステーキでもあげよう、どうも次男は余りうちに貢献しない、少しばかりの金しか持ってこないから、おまえはきょうは目刺しで、あすはサンマの焼き物だ、それから三男坊はまるっきり持ってこないでときどき金をせがむ、だからおまえはもう何にもやるものない、御飯はみそでもなめなめ食べたらいいじゃないか、こういうふうに家庭の中でやられたら、長官、その家庭はどうなりますか。
  79. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えしますが、そんな家庭は円満にいくはずはないと思っております。
  80. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そういう家庭は成り立たないと思うのですね。その成り立たないことをいま政府がやっているのですよ。それをやっているのです。そうじゃないですか。公務員と公労協というのは、ただ取り扱いが違うだけで、雇い主は同じ国家ですからね。国家が雇っているのですから、言ってみれば政府の子供ですよ。その子供が、しかも国鉄についてはどうです、赤字が出たからおまえの分け前はそれだけやれない、みんなよりも少なくやるということで、しかも、その赤字は労働者が出したのじゃないでしょう。その赤字の責任は国鉄の経営権の中に入るものです。それを労働者の責任に転嫁するようなことをやって、一体本当の国家の秩序というものが保てるだろうか、私はそう思います。  大体、きのうもおとといも、学校の生徒が暴力をふるった、友達を金属バットで殴り殺した、あるいは銀行強盗だ、それから警察官が賄賂を取って賭博ゲーム機の営業者と組んで金もうけをする、内閣総理大臣が国防の名のもとで五億円もふところに入れる、こういうことをやっておいて、毎日汗水流して営々として働いておるこの労働者たちの生活の糧をピンはねするみたいなやり方は政府はやるべきじゃないと思うのです。そういう差別をなくして、本当におれは国のために働いてよかった、そういう実感をみんな労働者に与えていかなければだめでしょう。おれは国鉄に勤めて失敗した、おれは営林署に勤めて失敗した、おれは電電公社に勤めてよかった、同じ政府の機関に勤めていながらこういう心情の差が出てくるということは、親たる政府としての責任が重大であると私は思うのです。この辺はどういうふうにお考えですか。これはあなたじゃない、大臣だ。
  81. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 まず私からお答えさせていただきたいと思います。  先ほどから大臣あるいは人事院総裁から御説明がございましたように、三公社五現業の職員と非現業の国家公務員と申しますのは、それぞれ仲裁裁定、人勧という制度が設けられておりまして、これが労働基本権の代償措置であるという点においては全く同じでございます。ただ、給与財源や給与決定方式、すなわち非現業の国家公務員給与財源というのは税金でございます。これに対しまして三公社五現業の給与財源というものは、いわゆる事業収入でございます。それから給与決定方式、これは非現業の国家公務員の場合は人事院勧告でございますし、それから三公四現の職員の場合はいわゆる仲裁という形になっておるわけでございます。三公四現の給与は労使交渉によって決定されるたてまえでございまして、紛争がある場合に仲裁裁定に移行する。さらに、仲裁裁定が企業体等の予算上、資金上実施不可能な場合には、国会が関与するという形になっております。これに対しまして人事院勧告は、国会及び内閣に同時に提出されて、最終的には国会決定される。国会のこれらに対する関与の仕方が違っておるわけでございますので、その取り扱いが違ってくるのはやむを得ないのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。
  82. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 いま仲裁裁定と人事院勧告制度、三公社五現業とそして一般公務員との給与決定の方式の経緯と申しますか、財源とかあるいは決定方式とか、いろいろと相違を述べて先生に申し上げたのですが、先生のお考えのように、自分の勤めたところで、おれはよかった、おれはこういうところに入って大変恵まれなかったというようなことが、同じような国家公務員、どんな仕事をしておろうとも、これはあってはならぬことではないか、そういう御指摘でございますが、私も実際そう思います。  しかし、いま人事局長が申し上げましたように、採用のときから、そして給与決定の方式が人事院勧告と仲裁裁定というのに分かれておるからどうしてもそういう御指摘のようなことになりますが、結果的には、先ほど人事院総裁の述べられましたように、そうではあるけれどもなるたけ両者の開きのないように私ども考えていく方法を考えなくてはならぬ、こう思いますし、また、制度全体として一遍、ここで私だけが申し上げるわけにはいきませんが、先生のような御指摘があれば、これは国会にしてもまた政府にしても、そうしたいままでのような二本立てになっておる行き方がいいかどうかということは大いに検討する必要があろうか、こう考えておりますので、ひとつ検討させていただきたいと思っております。
  83. 渡部行雄

    渡部(行)委員 制度が違うとか生い立ちが違うなどというのはわかっていますよ。そういうことではなしに、現実に、国鉄の赤字を理由に国鉄の職員は期末手当を低く抑えられる、そうして赤字でないところは高く決める。これは差別じゃないでしょうか。賃金というのは労働の代価ですよ。サボって労働をしなかったなら別ですよ。労働はあたりまえに八時間なら八時間、電電公社も国鉄もやっているわけだ。その労働の代価をそんな生い立ちやあるいは制度の違いで片づけられたんじゃ、何のために官民較差の、是正なんということをやらなくてはならないのですか。これこそ、まるっきり質的に違うんじゃないですか。その違うものでさえも官民較差を是正しようと努力しておる中で、いまの局長のそういう答弁は許されないよ。私はそういう差別をなくせと言っているのですから、その点はどうなんですか。
  84. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 この点についてはいろいろ御議論のあるところかと思いますけれども、現にいままで出てまいりました人事院勧告のパーセンテージあるいは仲裁裁定のパーセンテージを見ても違っている場合もございましたし、それから人員構成も違いますし、それから給与の種類その他も違っておるわけでございます。したがって、これが全く同一に取り扱われるというようなことは制度の上からいって考えられないと思います。
  85. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は働く人の実感、感じというものに差別感を与えてはならないということを言っているのですよ。それならそれなりに、差があればあるなりに相手が納得する説明が必要でしょう。それを、説明じゃなくて力で押しつけているじゃありませんか。そういうことでは困るということなんです。だから、もちろん計算の基礎が違ったりいろいろすれば結果が違って出てくるのはあたりまえでしょう。しかし、その違った中にも、そういう差別感を与えない、いや、これでいいんだ、おれはこういうものを了解するんだ、そういう形でこの問題の解決に当たるべきではないか、こういうことなんですよ。
  86. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 先生の御議論というのは私も理解できます。ただ問題は、現在こういう制度になっており、こういう結果が出てきたということでございます。この結果についてはいろいろ御議論があることは十分わかりますけれども、いずれにしても、合法的な手続によって国会によって最終的に決められた結果でございます。われわれといたしましても、非現の公務員の皆さん方にはまことに申しわけございませんけれども、未曾有の国家的財政事情を御理解いただいて、御協力を願いたいというふうに考えております。
  87. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に移りますが、ILOの結社の自由委員会から政府に対して報告が届いていると思いますが、この報告の内容は長官はどのように受けとめておられますか、その所感をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  88. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  ILOとの関係でどういうふうに考えておるかということでございますが、先ほど来私が先生に申し上げておりまするように、労働基本権制約の代償措置一つである人事院勧告は尊重されるべきであるという従来からの方針に立っていつつも、国家財政の危機的状況のもとで人事院勧告実施見送りを決定せざるを得なかったという事情を私どもILOに御説明に参りました。ILOにおいては、このような、いま申し上げました政府考え方を十分理解されたものと考えております。特にILOからは人事院勧告制度を尊重するようにとも言っておられますので、何度も申し上げておりますように、先々私としては人事院勧告制度が尊重されていく、そのことはいい労働慣行を守っていくことだ、こう考えておりますので、お尋ねに対して、ILOからのものはそういうように解釈しており、理解しておるということを申し上げてお答えにさせていただきます。
  89. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ILOの報告書の中で、今回とった政府措置は、つまり代償機能としては十分に果たされていない、こういう指摘があったと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  90. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 代償機能について直接、日本制度がおかしいというような指摘はございません。  そこの部分は肝心でございますから読んでみますが、結論部分のうちの勧告の一番初めのところでございます。   委員会は、本件のように、不可欠な兼務又は公務において団体交渉権又はストライキ権のような基本的権利が禁止され又は制限の対象となる歩合には、その利益を守るための必須の手段をこのようにして奪われている労働者の利益を十分に保護するため、迅速かつ公平な調停及び仲裁の手続きのような適切な保障が確保されるべきであり、その手続きにおいては、当事者があらゆる段階に参画することができ、かつ、裁定が一旦下されたときには完全かつ迅速に実施されるべきであるとの原則を想起する。   委員会は、政府人事院勧告を尊重するとの基本方針を堅持し、かつ、将来においては人事院勧告を尊重するよう最善をつくす意向であるとの政府の保護に留意する。   委員会は、一九八二年において人事院勧告実施されなかったことを残念に思い、今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施され、団体交渉に関する労働組合権及びストライキ権に対し課せられた制限の代償措置関係公務員に確保するようにとの強い希望を表明する。 というにとどまりまして、別に人事院勧告制度が欠陥のある制度だというような指摘は受けておりません。
  91. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうもあなたは私の言うことを曲げて解釈しますね。  私は制度に欠陥があるなんて一言も言っていません。そんなふうに受け取ったら答えが万八になるのはあたりまえでしょう。制度の欠陥でなくて、代償機能としての働きが十分でないじゃないかと言っているのです。先ほどから人事院総裁が言っているように、制度はこれが最善で最高だと言っているじゃありませんか。
  92. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 代償機能が十分じゃないという指摘はございません。
  93. 渡部行雄

    渡部(行)委員 指摘は具体的には書いてないけれども、その中でそのことを要求しているのじゃないでしょうか。
  94. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 その点は私が先ほど読み上げたとおりでございます。
  95. 渡部行雄

    渡部(行)委員 読み上げたとおりには間違いない、それはその文章を読んだのですから。だから、そういうことをその文章は、つまりもっと代償機能を発揮するようにという立場でそういう表現になっているのじゃないかと聞いているのです。あなたの判断を聞いているのです。
  96. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 本年度の問題については理解した、来年度以降については人事院勧告を尊重するよう最善を尽くすように努めなさいという趣旨であろうと思います。
  97. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、人事院制度の中で最も重要な中心課題は、私はこういうことだろうと思うのです。  これは、先ほど申し上げました判決文の中にある一節ですが、「わが国で、公務員の争議行為の禁止について論議されるとき、代償措置の存在がとかく軽視されがちであると思われるのであるが、この代償打置こそは、争議行為を禁止されている公務員の利益を国家的に保障しようとする現実的な制度であり、公務員の争議行為の禁止が違憲とされないための強力な支柱なのであるから、それが十分にその保障機能を発揮しうるものでなければならず、また、そのような運用がはかられなければならないのである。」こういうことだろうと思うのですよ。これはひとつ長官、どういうふうに考えますか。これが私は、この人事院勧告制度の中心的な思想だと思うのです。
  98. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 全農林事件に関する最高裁の判決におきましては、公務員労働基本権の合憲性を公認する一つ理由といたしまして人事院勧告制度を挙げているということだろうと思います。したがって、人事院給与勧告制度が実効を上げるように国会及び内閣が最大限の努力をしなければならないということがこの趣旨であろうと思います。  しかしながら、人事院勧告をいかなる状況においても完全に実施することが代償措置の不可欠の要件であるか、言いかえれば、憲法上の直接の要請であるかという問題につきましては、この判決におきましては直接は言及しておりません。同判決が、公務員給与財源は国家の財政とも関連して主として税収によって賄われるものであり、国家公務員給与その他の勤務条件が同氏の代表者によって構成される国会において論議の上決定さるべきものであるとしていること、さらには多数意見に属する二裁判官が代償措置の意義を特に強調いたしまして、それが十分に保障機能を発揮し得るようなものでなければならないとしながらも、当局側が誠実に可能な限りを尽くしたと認められるときは、要求されたものをそのまま受け入れなかったとしても、この制度が本来の機能を果たしていないと即断すべきではないと述べていることなど、判決全体を総合的に考えてみますと、そこまでは断定してないんじゃなかろうかというふうに思います。
  99. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいま人事局長からお答えさせていただきましたが、私も局長の答えたことと同じような考えを持っておりますけれども、最後に一つつけ加えておきたいことは、政府としては、この人事院勧告制度が完全に守られていくように、こういうことが必要だからどうしても守られるように最善の努力をしていかなければならない。また、これができぬようであるならば、大変残念なことでございますけれども勧告制度というものをやめて、これにかわるところの制度賃金決定制度というものを考えていかなければならぬことになりますので、そういういま目新しいいい制度というものはないし、いまの制度が一番いいと思っておりますから、人事院勧告制度が守られていくためには、このような裁判所やあるいはILOからの報告があるものですからこれが守られていくように、最善の努力を国政全体の中でひとつ考えていくようにさせていただきたい、こう思っております。
  100. 渡部行雄

    渡部(行)委員 藤井局長の答弁は非常に問題がある。あなたの思想上の問題だよ。あなたは公務員の職員の側に立っていない、政府の側で話している。だからそういうことを言うのですよ。この判決の中に「当局側が誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、」というこの条件づきなんですよ、受け入れない場合というのは。この誠実に可能な限りというのをどこで立証しますか。あなたは少なくとも労働者の側に立って物を考えないとだめですよ。この人事院勧告の中心思想というのは、先ほど私が読んだこれが中心思想であって、こういう今日のような事態というのは全くの特例であって、これは変形した事態ですよ。  これについては藤井総裁にひとつ御高見をお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  101. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御質問にもございましたし、また、私から繰り返しお答えを申し上げておるところでございますが、公務員労働基本権制約に対する代償措置としての人事院勧告制度は、私はやはり大変重要な重みを持っていることであろうと思います。この取り扱い方いかんでは、憲法問題にも発展しかねない、そういうやはり大変な重みを持っておることであろうというふうに考えております。  そういう立場から、大変深刻な財政状況その他も、私も公務員の一員ですから、それを知らないわけではございません。知らないわけではございませんけれども、しかし、制度の重みからいって、やはり財政状況云々よりももっと重視をしてもらわなければならない、そういう要請があるべきなのではないか、そういう信念に立っておりますので、繰り返し凍結ということが行われればこれは大変遺憾、残念でございますということを申し上げてまいったのであります。この点については私の信念として変わりはございませんし、今後この制度が継続をしてまいります限りにおいて、一貫した姿勢でもって取り組んでいきたいというふうに決意を固めておる次第でございます。
  102. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大変明快な御答弁、ありがとうございました。  そこで、政府一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を出してこないから、これを議員立法で何とかやりたいということでいろいろと努力をしたわけですが、最後に、野党共闘もなかなか困難なために、社会党単独でこの法律案を提出したわけですが、これは自民党につぶされて、いまいまだに議運の中で議題にならないであるわけです。はなはだ残念で仕方ありません。本来ならば、この議員提出の法律案を中心に議論を展開すべきでございましたが、そういう事情で、この恩給の計算の基礎をなす人事院勧告の問題、こういう一つの関連においていままで御質問したわけでございます。そういう観点を明らかにして、この人事院勧告問題については終わりたいと思います。  そこで、次に大蔵省にお伺いします。  国家公務員共済組合に対して、公共企業体職員等共済組合を吸収合併と申しますか、統合すると聞いておりますが、その一つの具体的な日程と申しますか、計画について明らかにしていただきたいと思います。
  103. 野尻栄典

    ○野尻説明員 お答え申し上げます。  国家公務員共済組合と公共企業体の共済組合を制度的に統合することを目的といたしました法律案は、三月三十一日に国会に提出させていただいたわけでございますが、この法律案が目的としておりますのは、現在国家公務員共済と三公社の職員を対象とした公企体共済とが制度的に分かれておりますのを一本のものにするということで、それに伴います三公社の共済組合の給付水準を、あるいは支給の要件を国家公務員のそれと合わせていくというのが一つの目的。それからもう一つは、昭和六十年度以降年金の支払いが非常に危ぶまれております国鉄共済組合に対しまして、その年金の支払い原資と申しますか財源を確保するための財政調整事業を行っていく。この二つが大きな柱になっている法律案でございます。  法律案の内容は以上でございます。
  104. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この合併をする際に、双方の一番違っておる点はどういうところでしょうか。
  105. 野尻栄典

    ○野尻説明員 給付の面で違っておりますのは、一つは、年金を算定する基礎俸給のとり方でございます。国家公務員の場合は、退職前一年間の平均本俸を基礎俸給といたしますし、それには四十四万円という上限がついております。ところが公企体共済法は、やめたときの最終の俸給を基礎といたしますし、四十四万円といったような上限がついていない。この基礎俸給のとり方の違いが一つでございます。  それから年金額の上限が、国家公務員の場合は基礎俸給の七割で、それ以上の年金は払わないということが規定されているのに対しまして、三公社の共済組合にはそういった上限の規定がない、この辺が大きな違いかと考えております。
  106. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、この違いを調整するにはどういう方法で調整していくおつもりなのか、また、いま国家公務員共済組合の年金改定はどのような状況になっておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  107. 野尻栄典

    ○野尻説明員 御提出申し上げております法律案考えておりますのは、一応三公社の公企体共済の給付の算定の仕組みを国家公務員並みに合わせるということでございますので、その法律の改正が施行されました後はすべて国家公務員並み基礎俸給のとり方、上限のつけ方等において行われていくわけでございまして、言ってみればそういった期待権的なものについては経過措置を余り考えておりません。  それから、給与改定に伴う年金のスライドでございますが、これは、私どもの共済年金の場合は恩給改定にならいまして毎年年金額改定法をお出ししておるわけでございますけれども、本年度につきましては、恩給あるいは厚生年金等すべて年金のスライドについての措置がなされておりませんので、バランス上、私どもの方も年金改定措置考えていないわけでございます。
  108. 渡部行雄

    渡部(行)委員 国鉄について運輸省にお伺いしますが、運輸省の今度の年金対象人員はどのくらいいるのでしょうか。それから、年金会計は、もし赤字があったらどのくらいの赤字があるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  109. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 国鉄共済組合の年金受給者の数でございますけれども年金受給者昭和五十六年度で三十二万九千九百九十六人でございます。  それから共済組合の収支でございますけれども、これも同じ五十六年度で収支にいたしまして約四十五億円の赤字でございます。
  110. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この四十五億円の赤字は、統合された場合に、統合した共済組合で解消するのか、その解消方法はどんなふうに考えておられますか。
  111. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 ただいまお願いをいたしております年金統合法におきましては、先ほど大蔵省からお答えのございましたように、その目的の一つに、赤字になります国鉄共済組合の年金に対する対策が盛られておるわけでございますが、そのやり方といたしましては、統合いたしましても、各共済組合それぞれは、当分の間は従来どおりそれぞれの共済組合単位で財政運営をいたします。そうなりますと国鉄の共済組合には赤字がふえてくるわけでございますので、それについて、一つは国鉄自体が掛金を引き上げるとか、それからすでに年金を受けておられる方の年金のスライドをとめるとか、そういう自助努力をいたします。さらに国鉄本体は追加費用等、諸種の負担をいたします。それでなお生ずる赤字につきまして、その他の各共済組合から財政調整という形で資金を出していただきまして基金のようなものをつくりまして、そこから財政調整という形で国鉄共済組合に繰り入れをいただく、そういうことで赤字の対策を講じていく、こういうふうな骨子になっております。     〔愛野委員長代理退席、田名部委員長代理着席〕
  112. 渡部行雄

    渡部(行)委員 地方公共団体の共済組合についても、国家公務員共済組合の中に統合していく方針ですか。その辺はどうなんですか。
  113. 野尻栄典

    ○野尻説明員 地方公務員の共済組合につきましては、年金財政単位が十六くらいにたくさん分かれておりまして、それをまず統合するという形で、別途地方公務員の共済組合法の改正案が今国会に提出されているわけでございますが、地方公務員の方はそういう形で自分の制度の中の保険者の財政単位を統合していくという形で現在進んでいるわけでございます。  私どもが御提案申し上げておりますのは、公企体共済組合法というのは昭和三十一年にいまの形に独立いたしましたけれども、その前は国家公務員共済組合法の中で設けられていた三公社の共済組合でございますので、とりあえず当面の措置といたしましては、国家公務員の共済と一緒になる、もとへ戻ると申しますか、そういう形で処理するのが現実的であろうと考えまして、現在御提案申し上げているのは国家公務員と三公社の共済組合の統合ということでございます。
  114. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度の臨調年金の一元化という課題が出されておるわけですが、これは最初に国民年金、厚生年金の統合、それから、それとまた共済年金との統合ということで進んでいくかと思いますが、こういういま出た年金のいろいろなものの最終的に一元化へ持っていく一つの過程と申しますか、どういう順序で、どういう段階で持っていかれるのか、その辺お伺いいたします。
  115. 山口剛彦

    ○山口説明員 厚生省の年金課長でございますが、内閣審議官も兼務しておりますので、その立場でお答えをさしていただきたいと思います。  公的年金制度の改革につきましては、政府といたしまして、昨年九月のいわゆる行革大綱におきましてその方針を決定をいたしております。  簡単に申し上げますと、「公的年金制度の長期的安定を図るため、将来の一元化を展望しつつ、給付と負担の関係制度全般の在り方について見直しを行い、昭和五十八年度末までに改革の具体的内容、手順等について成案を得る」という方針でございます。そういうことでございますけれども、その成案を得ますために、まずおおよその方向とその段取りの目安を定めて、これに従って検討をしていくことがよかろうということで、去る四月一日、公的年金制度に関する関係閣僚懇談会というところで、今後の公的年金改革の進め方について決定をいたしております。  その内容を簡単に御説明させていただきますと、まず第一段階では、五十八年度において二つ措置を講ずるということで、いま共済課長から御説明いたしました国家公務員と公共企業体職員の公済組合制度の統合を行う、またこれとあわせて国鉄共済組合に対する財政上の対策を図るというのが第一点でございます。  それから第二点が、これも御説明がございましたように、地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図る。これを五十八年度実施をしたいということで、今国会にすでに法案を提出をしているところでございます。  その次の段階でございますが、五十九年から六十一年にかけて、高齢化社会の到来に備え、長期的に安定した制度の確立を図るために、公的年金制度の一元化を展望しながら二つ措置を講じていくということで、まず第一点は、国民年金、厚生年金、船員保険の間の関係の調整を図る。二番目に、その関係調整を図るための改革の趣旨に沿いまして、共済年金制度について国民年金、厚生年金等との関係の整理を図る。これが第二段階でございます。  第三段階といたしまして、以上のような措置を踏まえまして、給付面の統一化に合わせて負担面の制度間調整を進め、これらの進展に対応して年金業務の一元化等の整備を推進するものとして、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了をするというおおよその方向なり段取りの目安というものを一応決めまして、この方針に沿って、今後さらにこの一元化問題を含めた公的年金制度改革の全体像を明らかにしていきたいというのが現時点での政府考え方でございます。
  116. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、これが一元化されていく場合、軍歴加算というのはどういうふうに取り扱われるんでしょうか。
  117. 山口剛彦

    ○山口説明員 軍歴の問題は、いろんな恩給あるいは年金制度双方に関連する問題だろうと思いますけれども、この公的年金制度改革の進め方、いま御説明いたしました中では、直接的にはこの問題について触れておりません。ただ、一般論といたしまして、年金制度の改革と恩給制度の改革、これは関連いたす事項が種々出てまいると思いますので、この調整は必要であろうかというふうに考えております。
  118. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が余りありませんから、別の方に移ります。  軍人恩給欠格者連盟というのがあるわけですが、しかもこれは、国会内でも超党派で議員連盟をつくっており、その会長に櫻内前外務大臣がなっておるわけですが、最近、参議院議員の選挙が近づくにつれて、自民党に入党すればこれはすぐ解決できる、そういうことで自民党入党を呼びかけておるということを私は聞いておるのです。一体そういうことがあるんでしょうか。自民党に入党すれば本当にすぐ解決してもらえるんでしょうか。これはどなたか、私は政府に尋ねているんだから、答弁者は政府の方で探し出してください。
  119. 和田善一

    和田政府委員 軍人恩給の欠格者につきましては、これは恩給制度としてどう考えているかということについて私から御答弁申し上げます。  年金恩給を差し上げる最短恩給年限に達しておりません旧軍人の方々につきましては、三年以上の実在職年がございますれば一時恩給を差し上げております。それからまた、これは継続した三年以上の実在職年でございますが、断続いたしました三年以上の実在職年をお持ちの方にも一時金を支給するという措置をとらせていただいております。  以上でございまして、さらにこれに年金恩給を給するということは、最短恩給年限というものが昔から恩給制度として決まっております関係上、恩給としては非常にむずかしい、そういうふうに考えている次第でございます。  なお、これら欠格者の問題につきましては、戦後処理に関する懇談会においても、その取り扱い考え方につきまして御検討されているというふうに伺っております。
  120. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、これが戦後処理問題懇談会の中で検討されていることはよく知っておりますが、しかし、欠格者連盟の方々は超党派で議員連盟をつくり、しかもかつて自民党の幹事長までやられた櫻内氏がその会長になっているということについて、これは物すごい期待をしておるわけですよ。この期待の上に乗っかって、さらに今度は自民党に入党しなければこの軍恩欠格の問題は解決しない、こういうようなことを言う人が組織の中にいるわけですから、そういうでたらめは、はっきりとこの場で、そういうものが関係あるのかないのか、これをきちっとしてもらいたいんですよ。そうでないとこれは非常に混乱する危険性があるから、私はそれを聞くのです。これは大臣どうですか。総理府の諮問機関として戦後処理懇がやっているわけですから、大臣にも一半の責任があると思うのですが、そういう意味大臣からひとつお気持ちをお聞かせ願いたい。
  121. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 戦後処理懇では戦後処理の問題は一応片づいたということにはなっておりますけれども、その後いろいろな問題について強い要望、要請等がございますので、どういう問題を戦後処理として取り上げたらいいかということで懇談会の方でもやっておっていただいておるのでございまして、そのうちの一つにはなっております。けれども、いま先生の御指摘の話のようなこととは全然関係ありません。何にも関係ないことで、政府政府の独自の立場で戦後処理懇でそうした問題を検討させていただいておる、お願いしておる、こういうことでございますから、重ねて申し上げますけれども、そうした御指摘のようなこととは全然関係ないということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  122. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはそのとおりでありまして、関係があったらおかしいものになってしまうわけです。  そこで、この戦後処理懇談会というのは、ことしも五百万円を予算化しておられるようですが、五百万円で一体どんなことができるでしょうか。これはいままで、去年一年やってこられて、その経過から大体二年で終わりたいと思うという答弁がかつてされておりますので、あと一年、五百万でこれはできるでしょうか。
  123. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理問題懇談会は、御指摘ございましたとおり昨年の夏に設けられまして、現在いろいろヒヤリングを中心に検討いたしております。  その懇談会の運営経費といたしまして、五十七年度五百万円、五十八年度におきましても五百万円の予算総理府の中に計上いたしまして検討しておるわけでございます。関係する各省もたくさんございますけれども、この懇談会の運営の経費といたしましては、私ども、この五百万円で五十八年度必要にしてかつ十分なものと、かように考えております。
  124. 渡部行雄

    渡部(行)委員 運営だけすればいいのではなくて、ある程度三つの課題に対しての結論を出す責任があるわけです。  そこで私は、これらの委員の方の考え方をまずきちっとしていただきたいと思うのです。どういうものか日本だけはなるべく支払いはしたくないという姿勢を崩さないようですが、たとえばシベリア抑留の問題にしましても、同じ抑留をされた西ドイツあるいはイタリア、またそういう経験を持っているフランスなどは全部問題解決をしているわけですが、日本だけはシベリア抑留の問題なんか全然解決していない。そうしてそればかりではありません。大体解決しようという思想があるのかどうかすら、私は疑わしいと思うのです。  と言うのは、なぜかと申しますと、すぐに政府は、戦後処理問題は一たん解決済みだと考えておる、こういうことの回答がはね返ってくるわけですよ。解決したなら、なぜそれじゃ戦後処理問題懇談会なんというものをつくるのですか。つくる以上は解決していないという証左なんです。だから、かつては解決しておっても現在は解決していないという認識に立って、しかも、政府が出した結論に対して国民からの要求が余りにも強いためにこの懇談会を置かざるを得なかった、この事情を考慮すれば、これは新たに問題として取り組むという姿勢の中で考えてもらわないと、いつも政府は、一たん戦後処理は終わった、終わった、その上に立って物を言うなら、こんな人をばかにした話はないですよ。これはこの関係団体ばかりでなくて、七名の委員の人に対しても大変失礼なことだと私は思うのです。終わった問題についてなぜ議論しなければならぬのか、もうその終わったという考え方は捨ててもらわなければならない、私はこういうふうに思います。  しかも、この間アメリカで、戦中の日系米人強制抑留損害補償という問題が提起されて、これはアメリカの上院本会議で集中討論が行われたとき、日系米人に公式謝罪をすべきである、こういう結論を出して、しかもその請求額は八兆円に上っている、こういうふうに言われているのです。アメリカが、日本の二世、三世あるいはアメリカにいるアメリカ国籍を持つ日本人に対する強制抑留をした行為に対して謝罪をする、そしてその慰謝料というか賠償金というか、そういうものを支払おうとしておるわけですよ。これは世界の風潮じゃないでしょうか。国のためにみんなが同じ苦労をしたのだからがまんしろという、そんな単純な抽象的な言葉で国民をごまかしてはならないと思うのです。  そういう点で、シベリアの抑留者というのは具体的に国の賠償のかわりに労働を提供させられているし、その労働の過酷さはまさに戦地以上だというこの現実は、外務省の書類にもはっきりしているのですよ。これに対してどう責任を感じておられるのか、長官ひとつお聞かせ願いたいです。
  125. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  政府としては現在のところ一貫して戦後処理はもう片づいたという方針をとっておりますが、先ほど来先生からもおっしゃられましたように、また私からも申し上げましたように、そう終わったと結論づけておりますけれどもその後強い要請等が出てまいりましたので、いまお話しのような向きの問題を、七名の各界からお願いしました方々によって戦後処理懇談会で御検討をいただいておる。それで御検討いただいた結果が出ますれば、そのときに政府としては新しい考えをまた見出すであろう、こういうように思っておるわけです。  先生おっしゃいましたように、そういう要請があって懇談会を持ったから、戦後処理は済んだというのを撤回といいますか、そういうふうにまで踏み切っておらずに、それはそれとしまして、非常に強い要請がございますから、民主主義の時代、皆さんの意見を聞いて、その意見によって何か答申なり結論が出されましたときには、政府としてはいままでの考えを変えなくちゃならぬとか方針を新たにとらなくちゃならぬではないかというようなことが出てくるかと思いますが、いま急いで御検討をいただいておるので、御検討をいただいた結果待ち、こういうような実情でございます。
  126. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この戦後処理問題懇談会というのは、総理府総務長官の私的諮問機関としてあるわけですね。そうだとすれば、諮問するのは総務長官でしょう。そうすれば、どういう姿勢で諮問するのか、この戦後処理は終わったという感覚の中で諮問していくのか、いやそうじゃないんだ、これはどうしても特殊な事情であるから何とかしなければならぬ、こういう立場で諮問していくのか、その辺の考え方をひとつお聞かせ願いたいわけです。
  127. 禿河徹映

    禿河政府委員 七名の有識者から成りますこの懇談会に対しましては、私ども従来の経緯等々も十分御説明を申し上げまして、一応四十二年をもってこれまで政府は戦後処理問題は終了したものとしてきたのだけれども、その後シベリア抑留者の問題、恩給欠格者の問題、在外財産の問題、この三つの問題を中心といたしましていろいろ各方面からも要望がございます。そもそも戦後処理問題というのは一体どう考えるべきか、これにあわせまして、いま申しましたような三つの問題についてどう考え、あるいはどういうふうなことを今後考えていけばいいのかということについて御意見をちょうだいしたいということでお願いをしておるわけでございます。  そういうことで、先ほど総務長官からお答えいたしましたとおり、その御結論をいただきましたならば、それを踏まえまして私どもがこの対応策を考えてまいらなくちゃならない、こういうことであろうと考えております。
  128. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大臣に要求しているのだから、要求したとおりにやってください。
  129. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 大変御無礼いたしました。私がお答えしなければならないところ、事情のよくわかっております室長からお答えさせていただいて恐縮に存じますが、ただいま室長が詳しく御説明申し上げたことと同様でございますので、御了承いただきたいと思います。
  130. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大臣は、去る三月七日の予算委員会の第一分科会で、川俣分科員に対して、「シベリア問題を私どもは軽く見ていないということだけを申し上げておきたいと思います。」非常に重視していますという趣旨の御答弁をされておられるのですが、この気持ちはいまもお変わりありませんか。
  131. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきますが、国会先生からお尋ねがあったことに対して考えを述べましたことは、変えるべきものではない。それと同じ考えを持っております。
  132. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が参りましたから、ぜひひとついまのお考えを堅持していただいて、いい結論が出るように諮問等で御努力願うことを期待いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  133. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ────◇─────     午後一時四十三分開議
  134. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回提案された恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案についてでありますが、五十八年度恩給改善について政府のとった基本的な考え方をまずお伺いを申し上げます。
  136. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいまお尋ねの五十八年度における恩給改善基本的な考え方、これを述べろとおっしゃっていただきましたので、それをお答えさせていただきたいと思います。  昭和五十八年度予算における恩給改善については、現下の厳しい財政事情のもと、恩給費増加を極力抑制せよとの臨調答申及びその具体化方策に関する閣議決定趣旨を踏まえ、長期在職老齢軍人等仮定俸給改善及び傷病者遺族特別年金改善という、まことにやむを得ない懸案事項に限って措置することとしております。  なお、恩給改定取り扱いについては、昭和五十八年度人事院勧告取り扱いを検討する際に、これとのバランスを十分考慮して、誠意をもって検討させていただきたいと思います。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このたびの恩給改善についてはやむを得ない措置だけということに実はなっているわけでございますけれども、本来ならば抜本的な改正がなされなければならない問題でございます。  そこで、五十八年度予算における恩給種別の受給者数あるいは金額及び人員の割合、また一般会計に占める割合というのは、どういうふうな形になっておりましょうか、その点について御説明願います。
  138. 和田善一

    和田政府委員 五十八年度予算におきます恩給種類別の受給者数及びその割合についてまずお答えしますと、昭和五十八年度予算における年金恩給受給者数は全部で約二百三十三万人でございます。このうちの九〇%以上の二百十九万人が旧軍人であるということでございます。  それで、これを恩給種類別に見ますと、普通恩給受給者が約百二十万人で、全体の約五一%でございます。これが最も多いわけでございます。それから公務扶助料の受給者が約五十三万人でございまして、これは全体の約二三%でございます。それからその次に、普通扶助料の受給者が約四十四万人で、これが全体の一九%ということでございまして、この三種類の受給者で全体の約九三%を占めている。その残りが増加恩給受給者あるいは傷病年金受給者特例傷病恩給受給者、それから増加公死扶助料、特例扶助料、傷病者遺族特別年金受給者、こういうことでございます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 長期在職の旧軍人仮定俸給を今回一号俸アップされましたけれども、その理由についてはどうお考えでしょうか。
  140. 和田善一

    和田政府委員 長期在職の旧軍人仮定俸給につきましては、従前から文官の七十歳以上の方々の仮定俸給の格づけとの間に四号俸の差がある。文官の方につきましては昭和四十八年度措置いたしましたものでございますから、そのときから四号俸格差が生じていた。それで、この格差は埋めるべきであるという見解に立ちまして、昭和五十六年にまずそのうちの二号俸を埋めたわけでございます。まだあと号俸残っている。今回、放置できない問題といたしまして、とりあえずそのうちの一号俸格差を埋めた、こういうことでございます。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二号俸格差があるから一号俸をアップさせたということでありますけれども、それならば、二号俸格差があるなら二号俸上げればいいのじゃないですか。それはどうお考えでしょうか。
  142. 和田善一

    和田政府委員 きわめて厳しい財政事情のもとにございまして、公務員給与が五十七年度は見送られたことに伴いまして恩給年額改定もいまのところ見送らざるを得ないという状況で、しかも放置できない問題ということで、とにかくとりあえず一号俸だけ格差を是正しよう、残りの一号俸につきましては、財政事情等を考慮しながら誠意をもってその格差を将来埋めることを検討していきたい、このように考えております。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の恩給改善措置は、一つは、長期在職の旧軍人に係る普通恩給または扶助料で、七十歳以上の者または七十歳未満の妻子に給するものの年額計算の基礎となる仮定俸給の格づけを一号俸引き上げるということと、もう一つは、傷病者遺族特別年金受給者に対し遺族加算として年額四万八千円を加算するという、この二点だけ改定することになっておりますけれども、それについて対象人員と、実際どれくらい所要額が必要であるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  144. 和田善一

    和田政府委員 対象人員でございますが、長期在職の旧軍人等に係ります仮定俸給の一号俸引き上げに伴います対象人員は三万五千人、それから傷病者遺族特別年金に対する遺族加算措置に伴う対象人員は一万一千人でございます。これに要します初年度の経費は、いずれも一億三千万円ということでございます。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど御答弁がありましたけれども恩給受給者は全部で約二百三十三万人、そのうちのわずか四万六千人ということであり、実際には数から言うならば二%の人しか実は対象になっていないわけであります。また実施時期についても、長期在職の旧軍人仮定俸給改善は十二月からであり、傷病者遺族特別年金改善は十月である。従来は四月から改定されていたものが昨年は五月、ことしは十月及び十二月という内容であり、これでは実際には恩給改善にはならないのではないか、こういうふうに私どもは思うのですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  146. 和田善一

    和田政府委員 この個別改善二つにつきましては、いずれも従来から長い間持ち越されてまいりました懸案事項でございまして、これ以上解決を引き延ばすことは適当でない。しかし、一方きわめて厳しい財政事情のもとにあります。したがいまして、初年度の所要額は相当程度抑制しなければならない、しかし制度改善の芽は出したい、こういうことで、実施期日は十二月、十月というふうにおくらせましたが、制度改善の芽をここに出させていただいた、こういうことでございます。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年度恩給改善は、五十六年度公務員給与改善率にスライドさせただけで、新規の個別改善は行わなかったわけであります。文官については昭和四十八年に優遇措置として四号俸アップしたけれども軍人は五十六年度に二号俸アップしただけで、まだ実際には先ほどからの御答弁のとおり二号俸格差があり、今回一号俸だけアップさせて格差を埋めていこうとするものでありますけれども制度間の格差は、文官昭和四十八年から上がったことと比べると実質的な格差は非常に大きいと言わざるを得ないわけです。残る一号俸も早急に改善されなければならないわけでありますが、明年度には改善する予定と考えてよいのか。そうでないとすると、これをどう対処されようとしているのか。先ほどはとりあえずというような御答弁でございましたけれども、とりあえずというのでなくして、むしろこれについては明年度改善を予定している、そういう御答弁がないと、いつまでもこの格差は是正されないと思うのですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  148. 和田善一

    和田政府委員 私ども、まだ格差が一号俸残っているということはしっかりと認識いたしております。したがいまして、財政事情等を考慮しながら誠意をもってこの格差の是正を検討してまいりたい、現段階ではこのように申し上げざるを得ないわけでございますが、誠意をもって検討してまいりたいと思っております。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 財政事情を勘案して誠意をもって考えていくんだということは、いつも政府の逃げ答弁なんですね。改善といっても、実際には当然やらなければならない問題をいままでやらなかったということであって、これは予算的な措置からいってもそう大きな問題でないわけですから、明年度実際に改善をする、こう約束をしてもいいのじやないでしょうか。
  150. 和田善一

    和田政府委員 先生のただいまの御質問の趣旨を体しまして、できるだけの努力をしてみたい、こう思っております。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 長期在職の旧軍人またはその遺族で、七十歳以上の者は何人おられましょうか。
  152. 和田善一

    和田政府委員 長期在職の旧軍人で七十歳以上の者とその妻子につきまして、今回この制度対象となります該当者は三万五千人でございます。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対象者三万五千はわかっているのですけれども、私の聞いているのは、長期在職の旧軍人またはその遺族で七十歳以上の者は何人いるかということなんですね。そうすると三万五千人ということじゃないのじゃないでしょうかね。
  154. 和田善一

    和田政府委員 ただいまは今回の改善者につきまして御答弁申し上げましたが、先生のただいまの御質問、七十歳以上の者全部ということでございますと、八万七千人ということでございます。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 八万七千人の内訳は、普通恩給と扶助料で大体何人ずつになるのでしょうか。
  156. 和田善一

    和田政府委員 普通恩給を受けておられます方が三万二千人、扶助料の方が五万五千人、こういうことでございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど対象者は三万五千人ということなんですけれども、いま八万七千人なんですね、実際に普通恩給と扶助料の方々の人数からいいますと。なぜその対象者が三万五千人ということになったのでしょうか。
  158. 和田善一

    和田政府委員 普通恩給と扶助料につきましては、原則的な計算で計算いたしますと非常に低額になる方に対しまして最低保障ということで底上げをいたしておりますので、一号俸アップということでの原則的な計算をいたしましても、この最低保障がそれ以上になってしまう、最低保障に埋没してしまうという方がおられますので、今回の改善対象者は三万五千人、このようになるわけでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 長期在職の旧軍人等に係る仮定俸給改善実施時期を本年十二月からとし、そして傷病者遺族特別年金改善を十月から実施としたというその理由はどういうことなんでしょうか。もっと早くやったらいいじゃないかという声があるわけですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  160. 和田善一

    和田政府委員 とにかく放置できない問題でございますので、厳しい財政事情のもとではございますが、とにかく制度としてここに法律改正をいたしまして、制度の芽を出したい。しかし財政事情が非常に厳しいという実態がございますので、実施時期を十月、十二月ということにせざるを得なかったわけでございます。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはさほど理由にならぬのじゃないですか。財政事情が厳しいので、芽を出すために十月、十二月というふうに決めたというのは理由にならぬのじゃないですかね。もう少し何か理由があるのではないですか。
  162. 和田善一

    和田政府委員 財源が限られております場合は、要するに制度として、たとえば四万八千円という額を二万でも三万でも四万でもというような場合、できるだけその額を高くしたい、そのために実施時期を少し後へずらすということもございます。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の改定によりまして、傷病者遺族特別年金遺族加算として年額四万八千円を加算して三十万七千円になるわけでございます。「これに伴う所要の調整を行う」というふうにありますが、それはどういうことを意味しているのですか。
  164. 和田善一

    和田政府委員 従来から傷病者遺族特別年金よりも扶助料の額の方が上回っているという制度上のバランスがございまして、今回傷病者遺族特別年金遺族加算を上乗せしました場合にそのバランスが逆転するケースがございますので、これを逆転させないためにその逆転した差額は補償する、こういう調整でございます。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公務扶助料、増加公死扶助料及び特別扶助料には、遺族加算として定額九万六千円が含まれているわけでありますけれども傷病者遺族特別年金遺族加算は四万八千円となっております。これは九万六千円の半分という額なんですが、算定根拠というものはどこにあるのでしょうか。
  166. 和田善一

    和田政府委員 今回、傷病者遺族特別年金遺族加算制度を新しく設けることといたしましたのは、この年金水準が、重症の公務傷病者増加恩給受給者が平病死した場合に支給されます増加公死扶助料水準年額百四万七千円と比べてきわめて低いということで、従来から強い改善の要望がございました。また、増加公死扶助料には遺族加算という制度がある、こちらの方にはなかったということでこの制度をこの年金についても設けたわけでございますが、増加恩給を受けておられる方とこの制度対象となります傷病年金を受けておられる方との傷病程度につきましてはかなりの差がある。これは客観的な事実でございますので、増加公死扶助料の場合の遺族加算の半額である四万八千円とさせていただいたわけでございます。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 話はちょっと変わりますけれども、すでに支給されております旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に関する五十八年度予算はもう組まれているわけでありましょうけれども対象者あるいはそれに必要とする所要の金額はどういうふうになっていましょうか。
  168. 菊池貞二

    ○菊池(貞)政府委員 昭和五十八年度予算におきます旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金の支給対象者の数は、二千二百八十七人でございまして、これに要する経費といたしましては三億八百九十六万二千円でございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは恩給法に基づくものでなくして、慰労給付金になっているわけですね。となりますと、この人たちの身分というものは非常に不安定な状態になって、恒年の予算措置によって支払われるということになりますけれども、もちろん五十九年度もこれについての予算は計上する、このようにはっきり申し上げていいのではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  170. 菊池貞二

    ○菊池(貞)政府委員 この旧日赤看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦の慰労給付金の支給は、先生おっしゃいましたとおりこれは予算措置ということでやっておりますが、五十八年度に引き続きまして、来年度予算要求も続けてやってまいりたい、このように考えております。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この旧日赤看護婦並びに旧陸海軍従軍看護婦については対象者がだんだん減ってくるということでもあり、そういう意味において制度としてぜひ続けていかなければならない問題だろうというふうに思うわけです。そういうことで、財政が苦しいからこれもというふうなことにはならぬだろうとは思うのですが、その点もう一度。
  172. 菊池貞二

    ○菊池(貞)政府委員 来年の要求につきましては、私どもも、先生の御趣旨等も体しましてがんばってやってまいりたいと思っております。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、恩給局が出しておりますところの「恩給改善」という説明資料の最初に、大蔵大臣と総務長官との了解事項というのがございます。ところがこれを読んでみましても、全体的にどういうことを言っているのか余り意味がよくわからないのですが、これはどういうことを言っているのでしょうか。
  174. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいま先生のお尋ねの恩給年額案の決定に関する大蔵大臣と総務長官との間の了解事項、これはどうなっているのだ、こういうお尋ねでございますから、それにお答えさせていただきますが、恩給ベースアップ取り扱いについては、大蔵大臣との間の了解事項があるとおり、私は昭和五十八年度人事院勧告が出された場合には、これを尊重して、その取り扱いを検討する立場にあると同時に、恩給を所管しており、その際には、恩給取り扱いについても人事院勧告取り扱いとのバランスを考慮するとともに、恩給改定における従来からの経緯、恩給受給者の置かれておる立場寺に思いをいたし、誠意をもって検討するという趣旨でありまして、具体的なことを前提にしたものでなかったのでございます。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、人事院勧告取り扱いとのバランスを考慮するということはどういう意味なんでしょう。
  176. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 人事院勧告取り扱いとのバランスを考慮しつつと申し上げた、そのことは一体どういうことかというお尋ねでございますが、お答えさせていただきますけれども恩給年額改定は社会経済の諸事情の変動に伴って恩給の実質価値維持することを目的とするものであり、このような変動の状況をあらわす指標として前年度公務員給与改善にそのよりどころを求めることが最も適当であると考え、前年度公務員改善を分析した結果に基づいて恩給年額を増額することとしたのであります。したがって、五十八年度人事院勧告取り扱いを検討する場合にも、恩給取り扱いについては従来どおり人事院勧告取り扱いとのバランスを考慮して検討していきたい、こういうことでございます。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 恩給改定は、前年度人事院勧告を受けて公務員給与改善率を翌年度恩給改善にスライドさせるのが通常の方式であります。にもかかわらず、この文面でいくと、恩給改善一つとして、五十八年度中に五十八年度の人勧を受けて何らかの恩給改善をするように受け取られるように思いますけれども、真意はどういうふうにお考えでしょう。
  178. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  五十八年度予算において恩給ベースアップについては、きわめて厳しい財政事情のもと、従来から恩給ベースアップ基礎としてきた現職公務員給与改定昭和五十七年度は見送りとなったという事情を考慮して見送ることとしたものでありますが、なお大蔵大臣との間で恩給ベアの取り扱いについては、昭和五十八年度人事院勧告が出された場合、その取り扱いを検討する際に、恩給取り扱いについても人事院勧告取り扱いとのバランスを考慮していく、こういうようなことの話し合いと申しまするか、了解になっております。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、公務員のベアを見送ったということについて、実際には恩給にも大きく影響してきた。恩給に影響してきたということは、これは本当に恩給生活している方々の生活上の問題を大変に脅かす問題である、こういうふうに私は思うわけでありますけれども、弱者を守るという意味からいうならば、やはり恩給というものは大胆にこれからも改善されていかなければならないと思っております。  話は少し変わりますけれども、昨年総理府予算に初めて計上されました戦後処理問題懇談会検討経費が、本年度も同額の五百万円計上されておりますが、昨年一年間の検討結果としてどのようになっているのか、またどういうテーマを中心にして検討されているのか、その点について御報告ください。
  180. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理問題懇談会は、昨年の六月三十日に第一回目の会合を開きまして、これまで六回開催されております。この間におきまして、戦後とられました援護行政の経緯だとかシーベリア抑留者の問題、在外財産の問題、それからいわゆる恩給欠格者の問題、この三つの問題を中心といたしまして、これまで各省庁が講じてまいりました措置のヒヤリング、それについての質疑応答というふうなことで勉強を続けていただいておるところでございます。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和四十二年のたしか政府・自民党間の了解事項として、一切の戦後処理問題は終わったということに実はなっておりまして、現時点では戦後処理問題の見直しを行うことは適当でない旨、政府はそういうことを明らかにしておりますけれども、そうしますと、この戦後処理問題懇談会の基本的な考え方政府の了解事項と矛盾するのではないかととられる節もありますけれども政府としては、戦後処理問題にまだ積み残し問題がある、そういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  182. 禿河徹映

    禿河政府委員 確かにただいま御指摘がございましたとおり、さきの大戦に関しましては、すべての国民が、程度の差こそあれ、生命、身体、財産の上で犠牲を余儀なくされたところでございまして、それを国民の一人一人、それぞれのお立場で受けとめていただかなくてはならないと考えておりまして、政府といたしましては、昭和四十二年の引き揚げ者等に対します特別交付金の支給措置、これをもちまして戦後処理に関する措置はすべて終了した、こういうふうに考え国会等々の場におきましてもそういうことを申し上げてきたわけでございます。  しかし、その後の経緯を見ますと、特にこの数年間、一部にやはりなお強い御要望、御要請等がございまして、特に先ほど申しました抑留者の問題、恩給欠格者の問題並びに在外財産の補償の問題、この三つにつきましてなお強い御要望が生じてまいりましたものですから、いろいろ検討いたしました結果、民間有識者によりますところの公正な検討の場として、総務長官の諮問機関といたしまして戦後処理問題懇談会を設けまして、そもそも戦後処理問題というものをどう考えていくべきであろうか、それから御要望の強い先ほど申しましたような問題につきまして、これを政府としてどのように受けとめていけばいいのかということを中立的なお立場から御検討願おうということでこの懇談会が設置されたわけでございます。したがいまして、これまで政府といたしましては戦後処理問題はすべて終了したということで一貫してきたわけでございますけれども、以上申しましたような事情から、この七名の方の懇談会で御意見を出していただきまして、その御意見を踏まえまして政府としては必要な対応策を検討してまいりたいという趣旨で、この懇談会のいまの審議の状況を見守っておる状態でございます。
  183. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦後処理問題懇談会によって現在ヒヤリングや検討が進んでいる段階だと思うのですけれども、検討の結果、懇談会がある程度の結論を出した場合は政府の方針を変更する場面も出てくる、こう判断してよろしゅうございましょうか。
  184. 禿河徹映

    禿河政府委員 先ほど申しましたような事情からこの懇談会を設けまして御意見をちょうだいしようということでございますので、結論にはまだかなりの時間も要すると思いますし、その結論がいかようなものになるのか、私どもにももちろん全くわからないわけでございますが、その結論、御意見をちょうだいすれば、それを踏まえて政府も所要の対応策を考えていくべきものと考えております。
  185. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この懇談会については、政府の方ではもう諮問されたのでしょうか、まだ諮問の段階までいっていないというのか。諮問をされた場合においては、当然それに対する答申が出るという形になるわけですが、この取り扱いをどう考えておられましょうか。
  186. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理問題懇談会は総務長官の私的諮問機関でございまして、御意見をちょうだいしたいということでございますが、昨年の六月三十日に、いままで政府昭和四十二年をもって戦後処理問題は一切終結したと思っておるのだけれども、実はこういうふうな問題が起こっておりまして、戦後処理問題というものをまずどういうふうに考えるべきであろうか、さらに現在シベリア抑留者の問題、恩給欠格者の問題並びに在外財産の問題などが大変大きなこととして起こっておりますので、これについてどのように考えたらいいのか、またどのような措置が必要と考えられるのかというふうなことにつきまして、一括して御意見をちょうだいいたしたいというふうにお願いしておるわけでございまして、細目について、特定の項目についてかくかくしかじかであるからどうすべきであると思われますかという文書で特にしたものではございませんけれども、そういう三つの問題を中心として、そもそも戦後処理問題はどのように考えていったらいいのかということを実はお願いしたわけでございます。それがいわば諮問事項とでも言えるかと思っております。
  187. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま、長期間かかるだろうと言う。大変長期間かかるだろうということは、こういうふうな懇談会を持つことによって実際には時間稼ぎをしておって、結論はなかなか出ないだろう、こういうふうに言われる向きもあるわけなのですが、政府考え方いかんによっては、こういう問題もできるだけ早く結論が出るという形にもなるわけなのですね。しかし政府みずからがそういうふうに長期間かかりますよということでは、いま私が申し上げたように時間稼ぎじゃないだろうかと思えるのですけれども、いつをめどにこれに対する結論をお出しになろうとしているのでしょうか。
  188. 禿河徹映

    禿河政府委員 いまいろいろ御検討いただいております事柄は、そろそろ戦後三十八年たつ時点でございますし、一応政府としてすべて戦後処理問題が終結したと考えましてからも十数年たって起こってきた問題でございます。いずれも大変むずかしい問題であるということから、昨年の第一回会合におきまして委員先生方にもいろいろ御相談申し上げたわけでございますが、戦後処理問題というのはいまの時点で検討するということは大変むずかしい、どの一つをとってみても相互に関連することもあり大変むずかしい問題である、したがってどういうふうにこれに取り組み、いつごろ結論を出せばいいのかということを各委員先生方におきましてもいろいろ御検討願いました。そのときの状況で申し上げますと、私どもがいつまでにということでなしに、各委員先生方の方で、大変むずかしい問題であるので少なくとも二年ぐらいの期間はちょうだいしないとなかなか結論は出しにくいのではなかろうかというのが大方の委員の御意見でございました。
  189. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 めどは二年と大方の委員がおっしゃっているというわけですから、二年がめどということでこれからいろいろと詰められていくのじゃないかと思いますが、めどすらわからないような懇談会であるとするならば本当に時間稼ぎだなと言われてもしようがないわけですが、二年ということでございますから、それはそれで精力的にやっていただけばいいのじゃないかと思います。  この戦後処理問題懇談会につきまして、先ほど一回から六回やったということなのですが、どういうようなやり方をしておられるのか、またヒヤリングとかそういうことで詰められておるのか、あるいはまた、これから七回以降はどういうふうな方針でおやりになるのでしょうか。
  190. 禿河徹映

    禿河政府委員 これまで六回開催いたしました戦後処理問題懇談会での状況を簡単に御説明いたしますと、第一回が昨年の六月三十日でございまして、私どもの方から問題の経緯等々を御説明して、各委員の間で、どういうふうなスケジュールで、どういうやり方でこの問題に取り組むかということを自由に御討議いただいたわけでございます。  一々日にちは申し上げませんが、第二回目は、第一回目の自由討議の結論を踏まえまして、まず各省からのヒヤリングをやろう、まずじっくり勉強をしなくてはいかぬということから、ヒヤリングの第一回が行われましたのが第二回の開催時九月でございました。そのときは、厚生省の方から戦後とられてまいりました援護行政の経緯、内容等々の説明をいたしまして、それについて質疑等が行われたということでございます。  第三回が昨年の十月で、これは大蔵省と総理府の方から在外財産の問題につきまして、どういう経緯で、その経緯に従ってどういう措置がとられてきたかというふうなことのヒヤリング、それから第四回目が昨年の十一月で、総理府の方から、恩給問題等々につきまして戦前から戦後にかけましての沿革とか改正の内容等々につきまして説明を聴取したということでございます。  それから第五回目が本年に入りまして一月で、外務省と内閣官房の方からシベリア抑留者の問題等をヒヤリングいたしました。外国においてどういう措置がとられたのか、またシベリア抑留者の現状とか墓参の問題とか、シベリアに関連いたします諸措置の経緯を聴取したわけでございます。  それから第六回目が三月で、こういう問題につきましていろいろ訴訟が起こっておりますので、法務省の方からその訴訟関係の内容、経緯等々をヒヤリングいたした、こういうことでございます。  こういうふうなヒヤリングを行いながらやってまいりますうちに、各委員の間からもいろいろ、資料を作成してもらいたいとか再度こういう問題についてもう少しヒヤリングも続けていきたい、こういうふうなお話がございまして、それを踏まえてまいりますと、あと二、三回はヒヤリングあるいは補足説明をしていかなくてはならないのではないか、かように考えられます。そのヒヤリングがそういうことで全般的に終わりました段階で、さらに懇談会をどのようにその後運営していくかということを御協議いただこう、かように考えております。
  191. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 また話はかわりますが、政府は五十七年の九月二十日に、人事院勧告対象となる国家公務員給与については、未曾有の危機的な財政事情のもとにおいて、国民的課題である行財政改革を担う公務員が率先してこれに協力する姿勢を示す必要があることにかんがみ、また官民給与較差が百分の五未満であること等を考慮してその改定を見送るものとするとして給与関係閣僚会議決定した内容について、総務長官にお伺いをしたいと思います。  第一番目は、この決定公務員労働基本権制約の代償措置である人事院勧告を無視するものであって、全農林最高裁判決の趣旨に反するものではないだろうかということが第一点であります。  第二点には、全農林最高裁判所判決の追加補足意見が示した基準の一つ、当局側が誠実に法律上及び事実上可能な限りのことを尽くしたとは言えないと私は思いますし、また政府は、公務員の使用者である立場を忘れて、実際に事前に公務員を納得させる手続が足りなかったんじゃないだろうかというふうに私は思うわけでありますが、その点について、政府はどう釈明をされましょうか。
  192. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えをさせていただきます。  この全農林の最高裁判判決は、人事院制度の運用については直接触れていないが、人事院給与勧告制度公務員労働基本権制約する場合に講じなければならない代償措置一つであり、この制度が実効を上げるよう政府は最大限の努力をしなければならないことは、先生指摘のように最高裁判判決の趣旨であるとは考えております。  それにもかかわらずとりました今回の措置は、未曾有の危機的財政事情のもとで、人事院給与勧告制度が実効を上げるよう最大限の努力を払った上できわめて異例な措置として決定したものであり、最高裁判所の趣旨に反するものとは考えておりませんが、先生、他の方から見ていただくと、異例の措置とはいえ、政府が最大限の努力をしたとは見受けられないじゃないか、そういう御指摘のあることはまことに遺憾でございますが、政府としてやれるだけのことを考え国会の方にも勧告が出ておることでございますけれども、今回は、政府としても財政上やれるだけのことはやって考えたけれどもこれ以外の道はとられない、考えられないということでやったのでございますから、その考えたこと、努力したことは、異例の措置として決定したものであって、最高裁判決の趣旨には反するものでないと良心的に考えておるのでございます。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  193. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 先生の御質問で総務長官からお答えいただいたわけでございますけれども、二点抜けておりましたので、私の方から答弁させていただきたいと思います。  まず、政府人事院勧告制度が実効を上げるよう最大限の努力を尽くしていないのではないかという問題でございます。この点につきまして、政府は従来から人事院勧告制度公務員労働基本権制約の代償措置一つとして設けられていることを十分認識いたしまして、このため、本制度が実効を上げるような最大限の努力を尽くしてきているところでございます。昨年度におきましては、六兆円を超える巨額な減収に対処するため、地方交付税の大幅減額、行政経費の一〇%節減、税外収入の増、国債費の定率繰り入れの停止等の措置を講じましたけれども、人勧実施のための財源を捻出することはきわめて困難であったということでございます。他方、国民的課題である行財政改革について、これを担う公務員が率先して協力する姿勢を示す必要があること等の状況にも留意する必要がございました。今回の措置は、以上のような諸点を総合的に勘案して決定したものでございまして、政府としては勧告実施のために最大限の努力を尽くしたものと考えております。  また、先生が最後に言われました、この勧告見送りの措置決定するに当たって職員側を十分納得させていなかったのじゃないかという問題でございますけれども、五十七年度人事院勧告取り扱いにつきましては、総務長官と私ども人事局におきまして、政府決定に至るまでの間におきまして職員団体と数度にわたって会見を重ねております。この間におきまして、政府部内における検討の状況あるいは未曾有の危機的な財政事情につきまして十分に説明してまいったところでございます。特に、政府部内におきまして給与改定の議論がされ出した段階におきましては、その議論について説明し、それに対する職員側の意見を聞きまして、誠意をもって対応してきたところでございます。さらに、給与改定の見送りが決定されました当日、昨年の九月二十日でございますけれども給与関係閣僚会議の前にも職員団体と会見いたしましてその意見を聞き、決定された直後にも職員団体に対し給与改定を見送らざるを得なかった事情等も説明して、理解と協力を求めてきたような次第でございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人勧見送りについては皆さん方の方で説明をされたということだけに終わっているわけでございまして、実際には説明を受けた人が納得をしているわけではないわけであります。人勧の見送りは、仲裁裁定との均衡についても全く配慮されていなかった。仲裁裁定は国会に判断をゆだねられまして完全実施の議決がなされたわけでありますけれども人事院勧告も、実は政府だけに勧告をしているのではなくして、政府国会に対して行われている以上、政府の一方的な判断だけで見送りを決定するということは国会の軽視もはなはだしいというふうに私は言わざるを得ないわけですが、少なくとも国会に対して政府は何らかそれに対する判断を求めなきゃならないはずでありますけれども、それもしないままに、論議も余り尽くされないままにこの問題を一方的に決めてしまったということについて、非常に問題があるだろう、私はこう思うのですが、人事院総裁、どうお考えでしょう。
  195. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お説のように、この人事院給与勧告というものは内閣国会に対して行われるものでございます。こういう制度は、現行日本の行政その他の諸制度の中ではございません。それだけに、人事院勧告制度というものの大変な重みというものをやはり端的に裏づける制度的運用、制度の仕組みになっておると考えるわけでございます。  ただ、勧告人事院が出しました後の手続、進めぐあいというものをどうやっていくかということにつきましては、これはいま鈴切先生がお話しになりましたような、そういうような取り扱い方もございましょう。また、従来がそれほど問題にならなかったのは、内閣自体が勧告を受けてこれを完全実施するということになったものですから、それは当然のこととして国会でもその手続については問題にならなかったというような点もございましょう。しかし、この点は内閣国会の事務の進めぐあい、お取り扱いの政治的な話し合いの事柄でございまして、この点、人事院立場からとやかくの批判を申し上げることはむしろ差し控えた方がよいのではないかと思っております。  要は、勧告自体は内閣だけでなくて国会にも行われておるというこの制度の重みというものを十分大方にも御理解をいただきまして、これは完全実施の所期の趣旨が貫徹をされますように従来からも御配慮をいただいてきておりますし、今後とも、われわれも責任でございますから十分努力をしてまいる所存でございますけれども国会におきましてもしかるべくよろしく御配慮を賜りたい、かように考えております。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ことしの予算委員会で官房長官は、二年続けての凍結をするようなことはしない、こう答弁をされておりましたけれども給与担当大臣の総務長官は、当然五十八年度人事院勧告の見送りとかあるいは凍結をするようなことは私はないと思いますけれども、担当大臣としてはどうお考えになっていましょうか、その点、大臣
  197. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  ただいま御指摘昭和五十八年度人事院勧告取り扱いについては、例年のごとく八月に勧告が行われた段階で検討していくものではありまするが、私としては、給与担当大臣として良好な労使関係維持に配慮していかなくてはなりませんので、このようなことが、五十七年度のようなことが繰り返されることのないよう、責任を感じて最善の努力を尽くしていきたいと考えております。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁にお伺いいたします。  本年度人事院勧告の際に、五十七年度勧告が見送られた分については、人事院としてはどのような処置をされるのでしょうか。やはり本年度民間給与に当然上乗せをしての勧告になると思うのでありますが、その点、どういうふうにお考えになっておりましょうか。また実際に、たとえ財政事情がどうあろうとも、人事院としては当然民間給与のベアについての調査をされて、その上において勧告をされなければ第三者機関としての役目がなされないだろうと私は思うのですが、その点についてはどうなのか。  また、実際にこれから調査に入るわけでありましょうけれども、本年度民間給与のベアというものの傾向、これはまだ調べなくてはわからないでしょうけれども、大体どのような状況だというようにお考えでしょうか。
  199. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五十七年度給与勧告が見送りになるという事態になりました場合に、五十八年度勧告はどういう推移をたどるだろうかという点でございますが、これは仮にそういうふうに相なりました場合においては、人事院としては、いまの制度がある限り、毎年のやり方に従いましてこの春闘の結果を精細に調査をいたします。具体的に申せば、四月分の給与として支払われる分について調査をいたしまして、この集計、分析をいたした結果、較差が出ますれば、この較差を埋めていただきたいということで勧告をいたします。その場合に、五十七年度分が実施されておりませんとすれば、その分は当然今年の四月に持ち込まれて出てくるということは、これは当然でございます。それが出てまいりますれば、人事院立場としては、やはり財政状況ということにかかわらず、勧告勧告としてやってもらわなければならぬのですから、これは従来の方針どおり勧告をいたしますという方針で進んでまいりたいと思っております。  それから、春闘の結果については、これはまだいま進行中でございますし、大変微妙な問題で、われわれの方もその点は機関を動員していろいろなことを調べております。調べておりますが、いまこの時点で大体何%に近づくだろうか、どれくらいになるだろうかということは、問題が微妙でもございますので、その点はひとつ御勘弁を賜りたいと思います。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後でございますが、五十七年度人事院勧告の見送りによりまして、実は公務員の不平とかあるいは士気の低下というのは否めない事実だろう、私はこう思っております。今後当然行政改革を進めるとしても、現在勤務している公務員にすべてのしわ寄せをするということは、労働基本権の代償措置である人事院そのものの存立すら大変に危ぶまれる問題となることは必至だと思うのです。こういうような状態が続くことは好ましくない、私はそう思っておりますが、人事院総裁はこの問題についてどうお考えになっておられましょうか。それをお聞きして、私の質問を終わります。
  201. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 臨時行政調査会においても、公務員給与あり方について四つの原則を示しております。その中で第四点として、行政改革の趣旨を達成するためには、やはり人件費自体が重要な問題でございますから、そういう観点に立って総人件費の抑制ということについてはあらゆる工夫努力を傾けなさいということは言っております。そのこと自体は私は結構だろうと思うのです。  ただ、いまお述べになりましたように、現在一生懸命に働いている公務員の月々の生活の原資に充てるこの給与について民間並みの保障ができないということは、これは私はゆゆしき問題であろうというふうに考えておりまして、これが何らか長く続くとか見通しが暗いというようなことになりますれば、ひいてはやはり職場の秩序なり良好なる労使関係あるいは士気にも大変大きな影響を持ってくることは必至だろうというふうに思っております。特に、行革といいましても、実際にそれを実施していくのは公務員の諸君であります。これに安んじてそういう重大な仕事にも取り組ましていくためには、やはりそれなりの身分の安定、保障というものを図っていくことは絶対に必要であろう、こういう認識で私としては仕事を進めるという決意を持っております。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 以上をもって終了いたします。
  203. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 鈴切康雄君の質疑をこれで終結します。  和田一仁君の質疑を許します。和田一仁君。
  204. 和田一仁

    和田(一)委員 恩給法改善基本的な考え方についてこれからお尋ねしたいと思いますが、その前に、ちょっといまニュースで入りましたことについて、若干長官にもお聞きをしたいと思うのですが、大変不幸なことに、自衛隊の輸送機C1が、けさ七時ごろですか、名古屋の空港を出てから間もなく墜落したというニュースが入りました。六機編隊で飛んでいたうちの一機が墜落確認されておって、八名が死亡、さらに乗員六名のもう一機がまだ行方がわからないという状況のように聞いておるわけでございますけれども、これは大変不幸なニュースだと思います。恐らく長官は、ずっと委員会にくぎづけになっておられたので余り詳しいニュースはお入りになってないと思いますけれども、国家公務員のこうした恩給の法案やら公務員給与の問題を論議している最中にこういうニュースが入りまして、私がいま承知しているのは、その辺までのニュースを知ったわけでございますけれども、もし長官がそれ以上のニュースがおわかりでなければ、どなたか防衛庁の方からおいでになっている方でこのニュースについてさらに御説明できる方があったら、まずこの墜落事故についての報告をお願いしたいと思うのです。
  205. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいま和田先生からお聞かせいただいた以上のことを私も承知しておりませんので、防衛庁の方から担当官においでいただいてございますので、そちらから詳細を御報告させていただきます。
  206. 上田秀明

    ○上田説明員 御説明申し上げます。  本日、四月十九日七時十分過ぎに、三重県鳥羽市菅島の山中におきまして、いま委員指摘のC1の事故が発生いたしました。このC1は航空自衛隊輸送航空団第一輸送航空隊、小牧基地所属でございますが、これの二機でございます。  このC1は、実は六機編隊を組みまして本日七時に小牧基地を離陸いたしまして、小牧から多治見、岡崎、伊良湖岬、御前崎、横須賀という海上のルートを通って入間基地に向かう予定でございました。ちなみに、このC1六機は、入間におきまして習志野の陸上自衛隊第一空挺団、落下傘部隊でございますが、これらの隊員を入間基地で乗せまして、本日、東富士演習場で降下訓練を行う予定になっておりました。  小牧基地を立ちましてから、三重県にございます航空自衛隊の笠取レーダーサイトがこの六機の機影をレーダーで捕捉しておったのでございますが、七時二十分ごろ、これの一番機、二番機の機影を追跡できなくなったわけでございます。ロストコンタクトと申しますが、コンタクトがとぎれたわけでございます。ちなみに、この六機は縦隊の編隊で飛行しておりました。  現場では海上保安庁、警察その他地元消防団等々関係各位の御協力を得まして捜索活動が行われておりまして、自衛隊の先発の捜索隊もようやく現場に到着したやに情報が入っております。その情報を総合いたしますと、いまのところ、二機おりましたうちの一番機、〇〇九号でございますが、これの機体の一部が発見されておりまして、それの山本三佐以下八名の遺体が確認された模様でございます。なおまた二番機、〇一五号でございますが、これにつきましてもほぼ墜落、炎上した模様でありますが、これにつきましては、機体ないし乗組員、河野一尉以下六名でございますが、いまのところ発見されておりません。  航空自衛隊の方では、森空幕副長を長といたします事故対策本部を設けまして、鋭意捜索救出活動に当たっておりますし、また、監察官を長といたします事故調査委員会も直ちに活動を開始いたしまして、事故現場に向かっております。  いずれにいたしましても現場付近は依然として天候が悪い由でございまして、小牧基地からのたとえば後続機ないし僚機によります空からの捜索等が思うに任せない状況にあるやに聞いておりまして、いまのところ私どもで把握しておりますのは、以上申し述べましたようなことでございます。
  207. 和田一仁

    和田(一)委員 一機の方は確認されたようですが、もう一機、六名搭乗の方はまだなんですか。
  208. 上田秀明

    ○上田説明員 まだ確認されておりませんが、残念ながら墜落した模様であるというところでございます。
  209. 和田一仁

    和田(一)委員 大変残念な事故だと思います。殉職された隊員の方にはもちろん大変お気の毒だと思うわけですが、民間への被害というようなものは、まだつまびらかではないわけですか。
  210. 上田秀明

    ○上田説明員 まことに不幸な中ではございますけれども、私どもの把握しております限り、民間その他自衛隊外の被害は、もちろん山林その他の被害はございましょうが、人命その他を棄損したというようなことについては情報は入っておりません。
  211. 和田一仁

    和田(一)委員 もう一点だけちょっとお聞かせいただきたいのですが、C1という輸送機は、私が承知している能力としては、兵員六十人ぐらいのほかに、ジープ三台ぐらいが輸送できる大変大型な輸送機であり、純国産機として大変性能の高い輸送機である、こういうふうに聞いておりましたけれども、今回の原因はこれから究明されていくと思うのですが、いまの報告を聞いておりますと何か大変低空飛行しているような感じがいたしますが、現に低空飛行での事故のようですか。
  212. 上田秀明

    ○上田説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、C1六機は入間において第一空挺団の隊員を乗せてから東富士で降下訓練を行うことになっておったわけでございますが、それに至る間、先生指摘のとおり、やはり低高度飛行訓練と称します訓練を行っておったというふうに聞いております。
  213. 和田一仁

    和田(一)委員 大変残念な事故でございまして、こうした事故が再び起きないことを念願いたしまして、この件についての質問は終わります。こうして殉職された方は、これは国家公務員災害補償法の適用ではなくて、自衛隊員の皆さんの別の補償で補償されるものと思いますけれども、むしろこういう事故の起きないことを心から願っております。  年金制度というものは、これは老後生活の保障という大変重要な問題がございますし、さらにその老後生活の安全保障、あるいは事故、疾病のために働く能力がなくなったとき、あるいは生計を維持しているそういう人が何らかのかっこうで死亡したときの生活破綻がないようにということだけでなくて、国民が安心して働いて生活することができる社会をつくろうというのが大きな目的であろうと思います。社会福祉の向上のためにこういうものは政策上大変大事な柱である、こう認識をいたしております。  そこで大臣にお聞き申し上げたいのですが、恩給制度は、長年勤務した公務員が退職をし、あるいは公務のためにけがをしたり病気になったりあるいは亡くなったりと、こういった場合に、本人や遺族に対して給付をしていくという非常に社会福祉上重要な制度でございますけれども、初めにお伺いしたいのは、今回のこの恩給改善について、どういう考えでこれを行おうとしておられるのかを基本的な問題としてお伺いしたいと思うわけでございます。  大変問題点がございまして、その問題点は、今朝来の同僚委員の皆さんの御質問で大体そういった問題点について触れられておると思うので、私これから御質問申し上げることもあるいは重複してくるかとも思いますけれども基本的なことからお答えをいただいて、なるべく同じことは言わずに終わらせていただきたいと思いますけれども、まず基本的なことから大臣にお伺いして、進めたいと思います。
  214. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 五十八年度における恩給改善基本的な考え、これを述べろ、こういうことでございますから、さきにもちょっと述べさせていただきましたけれども、要点だけを申し上げたい、御了承いただきたいと思います。  昭和五十八年度予算における恩給改善については、御承知のように現下の厳しい財政事情のもと、恩給費増加を極力抑制せよとの臨調答申及びその具体化方策に関するさきの閣議決定趣旨を踏まえまして、長期在職老齢軍人等仮定俸給改善及び傷病者遺族特別年金改善という真にやむを得ない懸案事項に限って措置することとしております。  なお、恩給年額改定取り扱いについては、昭和五十八年度人事院勧告取り扱いを検討する際に、これとのバランスを十分考慮しつつ、誠意をもって検討したい、こういう考え基本的な考えでございます。
  215. 和田一仁

    和田(一)委員 恩給を受けておられる受給者の数というものは、五十八年度でその全部の数が二百三十三万人以上というふうに聞いております。先ほどもそういうお話でございました。その内訳について、どういうふうな状態にあるのか、これが一点。  それから、現在は公務員については共済制度に移行しておりますから、いま現にあるこの二百三十三万人を超える恩給受給者昭和四十四年ごろがピークである、こう聞いておるのですけれども、今後どういうふうにこれが推移していくかの見通し等についてお答えをいただければと思います。
  216. 和田善一

    和田政府委員 受給者数二百三十三万人の内訳でございますが、この内訳を恩給の種類別に見ますと、一番多いのは普通恩給受給者でございまして、これが約百二十万人、五一%を占めております。それから二番目に多いのが公務扶助料の受給者でございまして、これが約五十三万人、二三%を占めております。それからその次は普通扶助料の受給者でございまして、これが約四十四万人、一九%、これで大部分を占めております。その九〇%以上をこれで占めておりまして、その余が、増加恩給受給者傷病年金受給者特例傷病恩給受給者あるいは増加公死扶助料、特例扶助料、傷病者遺族特別年金受給者、こういうことになっておるわけでございます。  それから、これがどのように推移するかという見通しでございますが、これを恩給統計に基づきまして推計いたしますと、現在は約二百三十三万人でございますが、これが昭和六十五年には約二百万人になりまして、それから昭和七十五年には約百三十万人程度になる、二十一世紀に入りまして約百三十万人ぐらい、こういうような推計になっております。
  217. 和田一仁

    和田(一)委員 今度のこの恩給改善というのは、長期在職の旧軍人仮定俸給を一号俸上げる、それから傷病者遺族特別年金、この二点についてのようでございます。これのそれぞれの対象になる人員と、それから、それのために必要な所要額はどれくらいでしょうか。
  218. 和田善一

    和田政府委員 二点の改善について順次申し上げますが、まず長期在職老齢軍人等に係る仮定俸給の一号俸引き上げ措置に伴う人員と所要額でございます。対象人員は三万五千人、所要額一億三千万円ということでございます。次に、傷病者遺族特別年金に対する遺族加算措置に伴う所要額及び対象人員でございますが、まず人員は一万一千人、所要額は一億三千万円、こういうことでございます。
  219. 和田一仁

    和田(一)委員 いまお答えいただきましたそういった数字二点にだけしぼって改善を提案されている。恩給改善対象者全体はいまの話によりますと合計で四万六千人ということになりますけれども、これは先ほどの数字からいうと全体の約二%ぐらいではないかと思います。この二%の対象者という、この二つにしぼった理由が何かあるのかどうか。それからほかの残された受給者対象としなかったのに別な理由があるのかどうか。これをちょっとお伺いしたいと思います。
  220. 和田善一

    和田政府委員 この二項目の改善措置を今回特に取り上げた理由でございますが、この二項目につきましては、従前から制度内でのアンバランスを是正しなければならないという強い御要望がございまして、多年の懸案でございました。長期在職の旧軍人仮定俸給の引き上げにつきましては、すでに文官につきましては昭和四十八年に同様の人たちにつきまして四号俸格差是正をしております。軍人につきましては、これが取り残されておりまして、昭和五十六年度にそのうちの二号俸を是正いたしましたが、なお残っておる。それで、きわめて厳しい財政事情のもとでございますが、放置できない問題だということで、そのうちの一号俸を今回是正した次第でございます。  それから、傷病者遺族特別年金改善につきましても、これは同じ傷病者でございますが重い方方、増加恩給を受けておられます方々が平病死されました場合に、御遺族が受けられます増加公死扶助料水準が百四万七千円ということになっておりますが、こちらの傷病者遺族特別年金につきましては、逐年改善は加えてまいりましたが、まだ二十五万九千円という水準でございましたのを少しでも埋めなければならない。しかも、増加公死扶助料につきましては遺族加算制度があるが、こちらはその制度がないということでございますので、これも多年の懸案で放置できない問題といたしまして特に今回取り上げさせていただいた、こういうことでございます。
  221. 和田一仁

    和田(一)委員 いまの御答弁を伺いますと、まだ格差は一号俸残っている、こういうことになりますね。そういったことを踏まえて今回の改定の方針について、まだそれでも格差はあるじゃないかというような意見も含めて、受給者の間でどういう要望が寄せられているか、それに対してこれをどういうふうに解決していかれるお考えか、その辺をお聞かせいただきたいのです。
  222. 和田善一

    和田政府委員 恩給受給者からのいろいろな御要望、御意見等につきましては、各受給者のそれぞれの代表の方々からいつもお話を承っております。それからまた、私ども恩給局も、全国各ブロックにこちらから出向きまして恩給相談の会を毎年開催いたしておりまして、そのような場所でもいろいろ御意見、御要望を聞くという機会を持っております。受給者の御要望、御意見につきましては謙虚に耳を傾けまして、施策に反映することが適当であると考えられるものについては積極的に取り上げて、その改善努力してまいっておるというつもりでおります。  いろいろな御要望もございます。いま先生が御指摘のように、長期在職の旧軍人については今回一号俸改善の法案を御審議願っておりますが、まだなお一号俸格差がある。これにつきましては、私どももその格差がまだ残っているということはしっかり認識しております。その他いろいろな御要望がございますが、いま申し上げましたような方法でよく承りまして、今後ともその改善努力していきたい、このように思っております。
  223. 和田一仁

    和田(一)委員 残り一号俸についての、来年とかあるいは再来年とかいうめどはまだ別にないのですか。
  224. 和田善一

    和田政府委員 これはその格差がありますことはしっかりと認識しておりますので、財政事情等を顧慮しながら、誠意をもってこの改善努力していきたい、このようにお答えせざるを得ない次第でございます。
  225. 和田一仁

    和田(一)委員 恩給額の増額については、従来、人事院勧告に基づいて公務員給与にスライドして実施されてきたわけですけれども、今度の五十七年度の人勧凍結、これに伴って恩給についても同じように増額が行われず凍結、こういうかっこうでございますが、これを同じように見送りにした理由は、やはり同じような経済情勢、財源問題、そういったことであるのかどうなのか。受給者というのは、これは現職公務員ではないので、しかも大変高齢者が多い、こういう人たちのことを考えますと、経済基盤も、国も苦しいでしょうけれども、こういった個人も大変苦しい状態になっているのではないか。ましてや経済的にも大変厳しいこういう状態になりますと、国も苦しいでしょうけれども受給者もこれは相当苦しい実態ではないか、こう思うわけなんですが、そういう実情を考えたときに何らかの措置を講ずる方途はないのか。五十七年度の人勧は四・五八%だったと思いますけれども、これが凍結されて何もないということになると、物価だけでもことしの二月の対前年消費者物価というのを見ますと約一・八八%ぐらい上がっているんではないかと思うんですね。こういうことを考えますと、弱い立場受給者考えるとこのままでいいかどうか、その辺についての配慮があるのかどうか、措置を講ずべき余地はないのかどうか、その辺をお聞きしたいのです。
  226. 和田善一

    和田政府委員 先生仰せの点、まことにごもっともな点でございますが、従前から恩給年額改善につきましては、現職公務員給与改善というものを見て措置してきておるわけでございます。恩給年額改定につきましては、恩給法におきまして、国民生活水準あるいは物価あるいは公務員給与といったようなものに著しい変動があった場合は、その変動後の諸事情を勘案して措置しなければいかぬ、こういう規定がございまして、そういう諸要素国民生活水準物価あるいは公務員給与等の諸要因の指標といたしましては、それらすべてを勘案しまして現職公務員給与改定されておりますので、現職公務員給与改定というものがそういう諸指標の集約されたものであると考えざるを得ませんわけで、これが指標として最も適当だということで、これに伴って、公務員給与に伴いまして恩給改定してきておる。  昭和五十七年度はきわめて厳しい財政事情のもとで現職公務員給与改善が見送られてしまったということでございますので、恩給公務員給与指標とするという観点から、今回予算に計上することができなかったわけでございますが、先ほどから総務長官が御答弁申し上げておりますとおりに、昭和五十八年度人事院勧告が出されました場合には、総務長官がその勧告取り扱いに合わせて恩給取り扱いについても誠意をもって検討するというふうにお答え申し上げているところでございます。
  227. 和田一仁

    和田(一)委員 先ほども同僚の御質問の中で、いま御答弁にあったように、人勧の取り扱いとの「バランスを考慮しつつ、誠意をもって検討する。」という大蔵大臣と長官との間の了解事項に触れられましたけれども、この「バランスを考慮しつつ、」という点を質問されたときに、長官はいいことをお聞きくださいましたと言って答弁されておったんですけれども、私ももう一回ここら辺を伺いたいのですが、恩給を受けている人の年齢構成というのは、これは高齢な人で、生活費というのは、このほかに余り収入というものが十分ないのではないかと思うんですね。そういう人が多い。全然ないわけではないでしょうけれども、多いのではないかと思う。そういう実態を、生活費の中で受けている受給がどれぐらいのウェートを占めているかというような調査を行っているのかどうか。行っているとすれば、その状態がどれぐらいの比率かをお聞きしたいと思うのです。いかがですか。
  228. 和田善一

    和田政府委員 恩給を受給されております方々の生活実態につきましては、恩給局におきまして、毎年度いろいろな恩給種別につきまして逐次実態調査をいたしておるわけでございます。昭和五十一年度以降、順に、扶助料の受給者、それから旧軍人の普通恩給受給者一般文官普通恩給受給者傷病恩給受給者、それから公務扶助料の受給者等を対象といたしまして、大体一年ごとぐらいにそれらを一つずつ調べてまいっております。今後もなおそういう調査は続けていくつもりでおります。  大ざっぱなことで恐縮でございますけれども生活費の中に占めます恩給のウエートにつきましては、それらの調査によって見ますと、大体御遺族の方、扶助料受給者の世帯におきましては、生活費を主に何によって得ているか、生活費の出所の主体が何であるかということにつきましては、その六割の世帯の方が年金または恩給であるというふうにお答えになっております。それと同時に、重複回答で、子供の収入も同じく六割ぐらい生活費の主な出どころになっている。要するに、恩給年金と子供の収入、この両者で生活を立てておられるということになっておるようでございます。それから、御遺族ではなくて、文官の普通恩給受給若御本人の世帯におきましては、これはもう八割を超える方々が恩給が主な生活収入源である、こういうふうにお答えになっております。  このような実態で、恩給生活に占めるウエートというのは、やはり非常に大きな割合があって大事なものである、こういうふうに私どもも認識しておる次第でございます。
  229. 和田一仁

    和田(一)委員 大分ウエートは高い感じがいたします。特に本人の場合には八割これに頼っている、生活の主たる収入になっている人が八割以上ということなんで、そうなりますと、やはり先ほどの「バランスを考慮しつつ、誠意をもって検討する。」という、ここの文言が大変重きを持ってくるのではないかと思うんですね。  きょうはもう総裁はいらっしゃらないようですけれども、ことしの人勧は五十七年度分四・五八%が凍結されまして、今度は、ことしの賃金闘争がどういう妥結状況か、これも一つの大きな要素でしょうけれども、そういうものから見て人事院給与改定勧告率というものは、五十七年度凍結分を含めると五十八年度分としては、新聞報道によれば「凍結分含め六%台の公算」というような見出しが出ております。この数字が妥当かどうかは別として、そういう公算大、こういう記事があるぐらいでございまして、五十八年の人勧が出た場合、まず総理府としては、五十七年度凍結を含めて、五十八年度人事院勧告についてこれを完全実施で臨もうとされますかどうでしょうか、長官にお伺いしたいと思います。
  230. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  五十八年度人事院勧告が出された場合、おまえはどういう気持ちで対処するかというお尋ねでございますが、五十八年度人事院勧告取り扱いについては、御承知のように、例年のごとく八月に勧告が行われた段階で検討していくものではありまするが、私としては前々申しておりまするように、良好な労使関係維持に配慮するということが一番大事なことでございますからして、そういう良好な労使関係維持できますように、今回のようなことが繰り返されることのないよう、最善の努力を尽くして対処していくということが給与大臣としての務めと、こう考え努力させていただきたいと思っております。
  231. 和田一仁

    和田(一)委員 最善の努力をされるというお答えでございました。最善の努力とは、私は、やはり勧告をそのまま完全実施することが最もよいことではないか、こう思うわけでございまして、ぜひそう御努力を願いたいと思います。  それでさらに、そうなったときに、恩給の増額のことになりますけれども、これとのバランスを考慮して誠意をもって検討する、こういうふうな先ほど来の御答弁でございます。これは、とりようによってはどっちにもとれる表現ではないかと思うので聞いておきたいと思うのですけれども、いまの人勧が出てそれを実施する、こういうことになったときに、この恩給増額についてはやはりバランスという言葉を同じような率でスライドして増額する、こういうふうに受け取ってよろしいかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  232. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 五十八年度人事院勧告取り扱いを検討する場合にも、恩給取り扱いについては従来どおり人事院勧告取り扱いとのバランスを考慮して検討してまいりますと申し上げたら、いま先生は、バランスとは同じようにということかと、こうおっしゃいますけれども、いわゆる大きな意味の、従来どおり人事院勧告取り扱いとのバランスがとれるようにしていく、これ以上どう言ったらいいですかね、バランスを失わないようにしっかり考えて、いわゆるバランスのとれたように考慮してまいりたい、こう考えております。
  233. 和田一仁

    和田(一)委員 その辺、もう少し伺いたいなと思うのですけれども、要するに、どういうパーセンテージの勧告が出されるかは別といたしまして、その出された率と同じ率ぐらいをバランスあるものと考えられるのかどうか、その点なんですが、いかがでしょう。
  234. 和田善一

    和田政府委員 従来から公務員給与改善指標としてきている、公務員給与改善の中身を分析いたしまして恩給の方に持ってきておる、こういうこと、これにつきましては今後ともそういう方針を続けていくということが公務員給与とのバランスを考慮したこと、こういう御趣旨だというふうに考えております。
  235. 和田一仁

    和田(一)委員 まあその辺が、これ以上は無理なのかもしれませんけれども、上がるときに下がるというのはこれは確かにアンバランスなんで、上がるときに上がるというのがバランスだといえば、数字はなかなか具体的には出てこないのかなとも思いますが、その比率が同じような比率で上がればこれはバランスがとれておる、私どもはそう理解したいわけでございますけれども、ではその辺はおきまして……。  それでは、昨年の改正のときに附帯決議がつけられまして、附帯決議の二項目目に「恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等を図ること。」こういう決議がつけられております。現在、どういう検討が進められておるのでしょうか。それと、今後どういう方針か、出ておりましたらお聞かせをいただきたいのですが。
  236. 和田善一

    和田政府委員 恩給の最低保障という考え方は昔はなかった考え方でございまして、在職年数あるいは階級等に応じまして上下の格差があったわけでございますが、やはり他の公的年金制度にならいまして、公務員として長期間勤務したにもかかわらず恩給年額がきわめて低いという方々につきましては低額恩給改善する、機械的な年数あるいは階級だけでなく底上げしていくことが必要である、こういう考え方を取り入れまして、昭和四十一年に設けたものでございます。  そういうことでございますから、最低保障額の改善につきましては、厚生年金や共済年金等の他の公的年金給付水準との均衡を考慮しながら、またさらに、恩給制度及び恩給受給者の実情に即した形で公務員給与改定等を勘案しましてその額を定めてきたところでございます。今後ともそういう考え方で引き続きその改善には努めてまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
  237. 和田一仁

    和田(一)委員 それでは、もう一つ同じ附帯決議の中で、恩給実施時期というものが現職公務員給与よりおくれる、このおくれをなくすようにしよう、ために「特段の配慮をするとともに各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。」こういう附帯決議がついておりました。この点についてどういう努力をされておるか、相変わらずこれだけのおくれというものは今後ともなかなか取り返せないのかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  238. 和田善一

    和田政府委員 恩給年額改定は、社会、経済の諸事情の変動に伴って恩給の実質的な価値維持する、こういうことを目的にしておるわけでございます。それで、このような社会諸事情の変動をあらわす指標として何が適当であるかということで、現在のところ前年度公務員給与改善の結果によりどころを求めるのが最も適当であるという考え方に立ちまして、恩給増額の指標として前年度公務員給与改善の結果をとっておるわけでございます。この指標によりまして、五十七年度まで毎年恩給年額改定をやってまいりましたので、恩給年額水準そのものが必ずしもいわゆる一年おくれになっているとは言えないのじゃないかというふうに私ども考えております。改定時期のあり方につきましては、いろいろなお考えがあろうと思いますけれども、他の公的年金等との関連も考慮しながら、これは慎重に検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  239. 和田一仁

    和田(一)委員 それでは、同じ附帯決議の一番最後に出ております「かつて日本国籍を持っていた旧軍人軍属等に関する諸案件」について、これも検討を行う、こういう附帯決議がついております。この、かつて日本国籍かあった者で――戦後処理が済んでいないといういうのはもう数少ないと思うのですね。具体的に取り上げるとすれば元日本兵の台湾の方ぐらいではないかと思うわけです。その補償はやはり人道的見地からも解決していかなければならない大変大事な問題と考えているのですけれども、その補償の検討を行うということになっておりますけれども、どういう検討をされておるか、お聞かせいただきたいのです。
  240. 畠中篤

    ○畠中説明員 お答えいたします。  戦死されました台湾人元日本兵の御遺族及び戦傷されました台湾人元日本兵に対しまして救済のための措置をとることにつきましては、関係各省いろいろ協議はしておりますが、日本と台湾との間の全般的な請求権の問題が未解決でありますこと、台湾以外の分離地域等との公平あるいはその波及の問題、さらにはわが国の厳しい財政事情等の問題を考慮する必要がございます。そういうことがございますために、したがいまして、政府といたしましては救済の措置をとることが非常にむずかしい状況にございますけれども、今後とも慎重に検討していく必要がある問題であると考えております。
  241. 和田一仁

    和田(一)委員 先般、台湾の人で元日本兵であった方の裁判がございました。かつて二十万と言われる台湾の人が旧日本軍の軍人軍属として徴用され、戦死された方も数多くあるわけです。そういう中で、この裁判を見たときに、いまの恩給法で適用を受けられないために個人的な訴訟でこれを解決しよう、こういうことで訴訟が行われて、そしていまの恩給法の性格、運用の論議というものが大分この裁判の中でされたようでございます。給与も宙に浮いてしまっておったり、これは未払い給与ですね、それから郵便貯金、債券、こういったものもそのまま供託されっ放しである、こういうようなことはやはり早く解決していかなければいけないことではないか、私はこう思うわけなんで、そういう意味を含めて前回も附帯決議がつけられておるというふうに理解をしておるわけなんです。にもかかわらず、こういう問題は相互にいろいろな問題が絡んでいてなかなか困難である、こういう一語に尽きているようでございますけれども、これについてはぜひ努力をしていただかなければいけない、こう思うわけです。  先ほど来のいろいろな質問の中で、ダブるのでもうやめようかと思いましたけれども、長官の私的諮問機関である戦後処理問題懇談会はそのために設けられた委員会ではないかと私は思うのです。こういう懇談会をせっかくつくられて、予算もつけて、そしてこれを活用されている、こういうことのようでございます。五十七年十一月に開かれた第四回目の委員会では、先ほどの御答弁では、恩給問題、戦後処理、戦前戦後の恩給問題ですか、そういう問題やら、あるいはその前の委員会でも在外資産の問題その他についてと、こういうことがございますけれども、こういうところでこういう問題解決のための諮問をされている以上、前向きの検討がもっとされていいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  242. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理問題懇談会におきましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、シベリア抑留者の問題、恩給欠格者の問題、在外財産の問題、この三つを中心といたしまして検討をお願いしておるわけでございます。もちろん、戦後処理問題ということを考えてみます場合に、この範囲を広げればこれは範囲も大変広くなり、実は種々さまざまの問題もあろうかと存じます。そういう問題につきましてことごとくこの懇談会で検討するということは事実上困難でもありますし、戦後処理問題というものを全般的にどう考え、どう受けとめていくべきかというこの懇談会の性格から申しましても、すべての事柄にまで論議対象を広げていくということは必ずしも適当なものではないと考えております。  特に、いまお話がございました台湾の旧日本兵に対します補償の問題ということになりますと、これは実はきわめて外交上の配慮を必要とする事項でもございます。そのこと自体、外交上非常に問題でありますと同時に、先ほど外務省の方から御答弁がありましたとおり、日台間の請求権問題全般の問題あるいは他の分離地域への波及あるいは公平の問題、そういうきわめて外交上の問題にわたってくるわけでございまして、やはりこの懇談会におきましてこの問題を取り上げて論議すること自体非常に問題でございまして、この問題については慎重に考えていくのが適当であろう、かように私は考えております。
  243. 和田一仁

    和田(一)委員 慎重にやるのはいいんですよ。慎重にやるのはいいんですけれども、たとえば韓国の場合には、戦死戦傷病者には六五年の日韓請求権あるいは経済協力、こういった協定で一括補償の解決ができているわけですね。しかし一方、台湾の人たちについては、戦争補償はもとより、軍人軍属として払うべき給料やあるいは戦死したときの葬祭料さえまだ未払いがあるとか、あるいは軍事郵便貯金をされていた、それも一括供託しているだけである、こういう実態がある以上、慎重審議は結構なんですけれども、じゃ、これはほおかぶりでこのまま何もしないでいていいというふうに考えているのかどうか。私は、もちろん何もそのことによっていろいろな紛争を起こす種にするというのではなくて、そういう道義的な責任をとる方向政府としてもっと真剣に考えるべきではないか、こういうふうに思うからお尋ねしているのであって、それはこの問題がそう簡単にいくとは思いませんよ。だから、そういう懇談会でだめならばだめなように、もっと別のことでそれを考える。正規の外交ルートを通じてできないのなら、民間の機関を通してでも何とか補償しようというような姿勢が出てくるのかこないのか。その辺が一番大事ではないかと思うので、これは長官、いかがでしょうね。こういうものは必要ならば立法措置をとるなり何なりをしてでもやるべきなんでしょうけれども、そこまで一気にいかなければ、民間機関でいまあるルートを通してそういう補償ができないものかどうか。その辺をお聞して、私は質問を終わります。
  244. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 私もいま事務当局とちょっと耳打ちをしたんですけれども、事務当局は事務当局としての考えがございますが、私どもはお互い政治家でございますから、先生が御熱心に提唱していただくことをよく理解できます。正直申しまして、理解できますが、何と申しましても、私の名においていま懇談会をお願いして、戦後処理の問題としてどういう問題に取り組んでいただくか、どういう問題を取り上げるか、どういうふうに考えたらいいかということをいまお願いしておる段階でございますから、そこの中へ私どももこれをどうという押し込みはいたしませんけれども、そういう考えを持っておりませんが、先生の御指摘のようなその気持ちが伝わるようには努力したい、こう思っておりまするし、なおまた、そういう段階でございますから、いまほかの機関を設けてこれをどうこうということは考えていない、まずその御検討、御研究いただいた結果を踏まえてひとつやっていきたい、こう考えております。
  245. 和田一仁

    和田(一)委員 時間が来ましたので、それでは終わります。
  246. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 和田一仁君の質疑はこれで終了いたします。  中路雅弘君の質疑を許します。中路雅弘君。
  247. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に恩給に関連して二、三お尋ねしますが、人事院勧告凍結と関連して恩給ベースアップを中止するという今回の措置は、いわゆる臨調答申に沿ったものであると思いますが、今回の措置臨調答申との関係はどのような関係を持っておるわけですか。     〔堀之内委員長代理退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  248. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさしていただきます。  昭和五十八年度恩給改善臨調答申との関係はどうかというお尋ねでございますが、五十八年度恩給改善に当たっては、現下の厳しい財政事情のもと、恩給費増加を極力抑制せよとの臨調答申及びその具体化方策に関する閣議決定趣旨を踏まえ、従来からの懸案事項であった長期在職老齢軍人、旧軍人仮定俸給改善及び傷病者遺族特別年金改善という、先ほど来言っておりますように真にやむを得ない改善に限って実施することといたしておるのであります。
  249. 中路雅弘

    ○中路委員 恩給ベースアップ公務員給与との関係ですけれども、戦後だけとってみましても、人勧を凍結した昭和二十四年あるいは勧告の見送りがあった昭和二十九年、三十年のときでも、恩給のべースアップはしたこともあるわけですね。逆に、公務員給与改定されたけれども恩給ベースアップをやらなかった例、昭和三十八年、三十九年、四十一年ということもあります。給与改定にスライドさしてべースアップするという現行の方式は、昭和四十八年以降とられてきたわけです。この戦後の経過を見ても、人勧を凍結するから恩給ベースアップも中止するということには必ずしもならない。この点についていかがお考えですか。
  250. 和田善一

    和田政府委員 最近におきましては前年度公務員給与改定指標といたしておりますが、先生指摘のような昭和三十年代等におきましては、必ずしも前年の給与じゃございませんで、何年も前の給与等を参考にしたこともございまして、要するに、ベースアップ年度あるいは人事院勧告に基づく給与凍結年度恩給改善年度というものは、必ずしも前年、後年という関係で一致しておりませんので、その間ばらばらないろいろな取り扱いがございました。これらがだんだん整理されてまいりまして、いろいろな方式が間にございましたけれども、結局、恩給年額改定につきましては公務員給与改善、前年度のものを指標としてやるという方式が四十八年度以来定着してきている。また、この公務員給与改善は、物価国民生活水準等の基礎の上になされたそれらを総合した指標であると考えられますので、これをとるのが適当であると考えられてずっと来ております。したがいまして、この制度は定着しておりまして、昭和五十八年度は、従来からその指標としておりました公務員給与改定が五十七年度見送りになっているということから、予算上これを計上することをいたしていない、こういうことでございます。
  251. 中路雅弘

    ○中路委員 恩給法の第二条ノ二を見ますと「年金タル恩給ノ額付テハ国民生活水準、国家公務員給与物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定措置ヲ講ズル」となっていますね。この恩給法第二条ノ二の規定から見ても、今度のべースアップの中止というのは私は問題だと思うのです。国民生活水準その他の諸事情を、この中には公務員給与というのも入っていますけれども、諸事情を考慮してということは出ていますから、そういう観点からすれば、ベースアップを行わなかったというのはやはり私は措置として適当でないというふうに思うのですが、恩給法との関係についていかがですか。
  252. 和田善一

    和田政府委員 先生指摘のとおり、恩給法第二条ノ二におきましては、経済諸情勢の変動が生じた場合に年金の実質的な価値維持を図る必要があるという基本的な精神がございますので、その精神に基づきまして、国民生活水準、国家公務員給与物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合に、変動後の諸事情を総合勘案して年金恩給改定を行うべきであるということを決めております。  それで、年金の実質的な価値維持する方法といたしましては、恩給法第二条ノ二の規定にもありますように、種々指標によって行うことが考えられるわけでございますけれども恩給におきましては、元公務員に対する年金の実質価値維持する、そのための方法として現職公務員給与改善基礎とすることが最も妥当である、また現職公務員給与改善というのはもろもろの指標の総合された指標として考えることができるということで、昭和四十八年以降は公務員給与改善指標として恩給年額の調整を行っているところでございます。  今回は、厳しい財政事情のもとにおきまして現職公務員給与改善が見送られたということから、恩給年額改定につきましても予算措置を講ずるに至らなかったということをどうか御了承いただきたいと思います。
  253. 中路雅弘

    ○中路委員 最近は公務員給与と連動して措置をとられてきたわけですけれども、しかし先ほどお話ししました過去の経緯を見ても、また特にこの恩給法で定められているのは、もちろん国家公務員給与というのもその一つ指標に入っていますけれども物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合あるいは国民生活水準、そういったものを全体総合勘案して改定措置ということを述べていますから、いままでこの数年の間はそれの一つ指標として公務員給与というものに連動させてこられたわけですけれども恩給法趣旨から言えば、公務員給与凍結されたから恩給のスライドは一切中止だということには――この法の精神から言えばやはり独自に検討すべき問題ではないかと思うのですね。その点をもう一度お伺いしたいのですが、いかがですか。
  254. 和田善一

    和田政府委員 確かに先生指摘のとおり、恩給法二条ノ二には、国民生活水準物価公務員給与等に著しい変動が生じた易く口には、変動後の諸事情に応じてしかるべき措置をすべきであるということで、いま列挙いたしましたような諸事情というものは前年の公務員給与改定の結果というものに反映しており、それらの諸事情が総合されて公務員給与改定という結果になっておりますので、これを総合指標といたしまして恩給改定を行ってきたというのがこれまでの経緯でございまして、現在もこの考え方に立って恩給改定というのを行うべきである、私どもはそのように考えておりますので、この点御了承いただきたいと思います。
  255. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの見解は、この恩給法規定から見ても私は大変問題だと思うのです。  きょうの理事会で、人事院勧告をもとにして恩給局の従来の方式に基づいたベースアップその他の改定を、修正案として私たちは提出しました。ごらんになっていると思うのですが、提示をしたこの修正案は、恩給年金生活者生活実態やいまお話しをしました恩給法第二条ノ二の規定に沿って当然の修正であると考えますが、この修正案についてどのようにお考えですか。
  256. 和田善一

    和田政府委員 恩給ベースアップにつきましては、私どもは、ただいま申し上げましたとおり、現職公務員給与改善がどうなったかということを指標といたしまして行っておりますので、人事院勧告そのものから直に仮定俸給等を決めまして、現職公務員給与いかんにかかわらず勧告に基づいて恩給ベースアップを行うという考え方はとっておりませんので、そういう意味で、拝見させていただきました修正案につきましてはまたそれなりのお考えは十分わかるわけでございますが、私どもといたしましては妥当とは思わない、こうお答えせざるを得ないわけでございます。
  257. 中路雅弘

    ○中路委員 大臣にもう一度お聞きしますけれども、いまの恩給年金受給者生活の実態や要望あるいは恩給法規定から見て、私たちは当然従来の恩給局のやられている方式に基づいてベースアップ改定の修正案を出したわけですけれども大臣としてどういうお考えですか、見解もお聞きしておきたい。
  258. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 先生の方から修正案をお出しになって、その修正案に盛られておる気持ちというものは私どももよく理解できるあれでございますが、いま恩給局長の申しましたように、政府としてはここずっといわゆる公務員の給料というものを基本にして恩給の額を算定しておるということをやっておるのでございますから、いま直ちに先生方のお出しになった修正案に賛成するということは、気持ちはわかりますけれども政府側としては同意はできないということを申し上げておきたいと思います。
  259. 中路雅弘

    ○中路委員 気持ちはわかるけれども政府として同意できない、その根拠になっているのが臨調答申に基づいた人事院勧告凍結という扱いだということは、きょうの質疑でもはっきりしているわけですけれども、したがって、この五十七年度の人勧の扱いについて幾つか御質問したいのです。  これは私も出席しましたのでよくわかっているのですが、最近は三月三十一日にこの問題で与野党の国対委員長会談が開かれていますが、このときにも、与野党がそれぞれの考えを表明しましたけれども国会として与野党の会談でまだ決着がついた問題ではないわけです。しかし、政府は一貫してこの問題について、五十七年度人勧については国会としても態度が決まっているのだということをとっておられるのですね。  ことしの二月、ILOに提出した日本政府の見解を見ますと、「人事院勧告を受けた政府は、国政全般との関連を考慮して、その取扱いを決定し、最終的には、国権の最高機関たる国会の判断を仰いだ」。そしてその結果、「補正予算等の審議のため開催された臨時国会において、その取扱いについて論議が行われたが、人事院勧告実施見送りを前提とした同補正予算は、十二月二十五日に成立した。」として、この時点で、昨年の十二月二十五日に決着がついたような説明をILOに行っておられるわけですけれども、その時点でも、御存じのように、五十七年度人勧の扱いは引き続き協議するというのがいわゆる与野党の合意なんです。しかし、引き続いて協議すると国会では合意をして協議が行われているにもかかわらず、ILOにはこの状況が報告されていない。五十七年度人勧に国対委員長会談では、実施を見送ったということで決して合意はしていないのですが、この点についてILOにこういう報告をされているのですが、政府のお考えはいかがですか。
  260. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 お答え申し上げます。  ILOに提出いたしました政府報告では、昨年九月の人事院勧告実施見送りの決定を前提とする補正予算を臨時国会に提出し、同予算は昨年十二月二十五日に国会で成立したという明白な事実関係を述べたものでございます。国会において各党間で種々の御論議が行われたことは十分承知しておりますし、与野党協議が行われていることも十分承知しておりますけれども、その中で人事院勧告実施に関連する何らかの決定を下したという事実はございませんので、政府報告では特に触れなかったような次第でございます。
  261. 中路雅弘

    ○中路委員 いや、私がお尋ねしているのは、いま私が述べましたように、この時点で引き続き協議するということになっているわけですね。それを、その部分だけはILOに報告していないわけです。補正予算が通ったということは報告されているわけですけれども、しかし、この人勧の扱いについては国会としてまだ態度が決まっていない、引き続き協議しているということは事実ですから、自分の都合のいいところだけ報告したのでは、ILOの判断を誤らせることになるわけですね。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕  現にILOの出した文書を見ますと、こうなっていますね。ことし三月四日、ILO理事会が承認したILO結社の自由委員会報告は、「人事院勧告実施を見送る政府決定は、本件人事院勧告実施のための措置を含んでいない補正予算が一九八二年十二月二十五日に採択されたときに、国会によって承認されたことに留意する。」ということで述べているのですけれども、まだ国会として引き続き協議中だということになれば、ILOの報告は、こうした判断にはなっていないと私は思うのですが、そうした点で事実を正確に報告されるということがなければ、ILOの審議の判断も誤らせるわけです。その点で、政府の、まだこうした協議中だという問題が報告されていないという責任は大変重要だと私は思うのですが、いかがですか。
  262. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 私ども、先ほど述べましたように、決定された事実関係について述べたわけでございます。実はこのILOに提出いたしました政府見解というのは、たしか一月の下旬だったと思いますけれども、私どもでつくりまして直ちに組合の方にも出して、組合の方にも見てもらっているわけでございます。それで、組合の中でも、これは仄聞でございますから真実かどうかわかりませんけれども先生の言われました政府が協議中だということを追加資料として提出するかどうかについてはいろいろ議論があったようでございます。と申しますのは、先生承知のように、昨年の十一月に仲裁裁定に関するILOの報告が出ているわけでございますけれども、これの中で、政府で審議中だということで結論が見送りになっているわけでございます。したがって、組合の中でも、このことを言えば結論が見送られるのじゃなかろうかというような疑念を抱く方もあったのじゃないかと思います。そういう関係で追加情報として提出されなかった、これは私の全くの想像でございますけれども、ということが考えられるのではないかと思います。私どもとしては決してこのことを隠したというふうには思っておりません。
  263. 中路雅弘

    ○中路委員 組合に責任を転嫁するようなことは私はけしからぬと思いますよ。やはり正確に、国会でまだ合意を得ていないとすれば、それは当然報告をされなければ、こうしたILOの誤った判断を持たせるわけです。この点は強く指摘しておきたいと思うのです。  それで、人事院にお聞きしますけれども、五十八年度の人勧、これは従来の方式で勧告するのだということを繰り返し言明されていますが、この点は間違いありませんか。
  264. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 繰り返し申し上げておりますように、五十八年度民間給与の実態調査については、すでに諸般の準備を整えて、現在いつでも調査に着手できるようにやっておるわけでございます。そういうことから、いままでも御質問に対して累次お答えをいたしておりますとおり、従来のペースで調査を行い、較差があれば勧告を出すという方針には変わりはございません。
  265. 中路雅弘

    ○中路委員 この場合、五十七年度実施を見送るという見地に立てば、いまおっしゃったように官民較差というのは上積みされてくる。しかし、まだ未決着だという見地に立てば、作業をやる場合に従来方式では出せなくなるわけで、その点では、人勧の基礎作業を始めるに当たって、五十七年度人勧について何らかの決着をつけなければならない。それについては、やはり人事院としても五十七年度の問題について国会に対して何らかの意思表示をすべきときではないかというふうに考えるのですが、総裁の見解はいかがでしょうか。
  266. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五十七年度給与勧告取り扱いについては、国会でも種々の段階でいろいろ御苦労をいただいたわけであります。形式的に言いますれば、いま御指摘の中にもございましたし、また、五十七年度の最終段階と思われまする参議院段階における予算委員会の報告として委員長が本会議でなされましたその内容を見ますると、ここでもなお最終的に決着したという言い方はしておりません。引き続き誠意をもって努力するということを言っておるわけでありまして、私たちといたしましては、なお一縷の望みを持ってこの取り扱いの行方というものを注視したいという気持ちになっております。  ただ、この点については、先生も御承知のように、私はいままで機会のありますごとに委員会あるいはその他の場所で御質問にお答えを申して、五十七年度の人勧が見送られるあるいは凍結されるということは人事院勧告制度趣旨からいってはなはだ遺憾でございます、残念でございますということは繰り返し述べておるところでございます。したがって私は、これは見送りに対する人事院の確固たる一つの意思表示であるというふうに御理解いただいて結構ではないかと思っております。それを改めてこの段階で、これはもうだめになったからと言う必要はございませんので、調査に当たりまする段階、これは具体的に動き出しますのが御承知のように五月の連休から一月、四十日くらいにわたってやるわけなんですが、この段階においてなお決着がついていなければ、当然四月時点においてその較差というものが出てくるということで、おのずから五十八年度較差というものが決まってくるということで結構ではないかと思っております。
  267. 中路雅弘

    ○中路委員 五十八年度の人勧については、政府は衆議院議長の見解に対して、「二年続けて凍結の事態にならないよう最善の努力をする所存でございます。」というふうに答えられていますけれども、五十八年は完全実施するということは述べておられない。ILOの理事会も三月四日に、「今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施され、団体交渉に関する労働組合権及びストライキ権に対し課せられた制限の代償措置関係公務員に確保するようにとの強い希望を表明する。」という勧告を承認して、政府にその旨を勧告しております。  政府としてこの勧告に沿って五十八年度人勧は完全に実施すべきだと私は思いますが、この点について大臣はいかがお考えでしょうか。
  268. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  五十八年度人事院勧告が出ましたときには、五十七年のようなああしたことを起こさないように、繰り返さないように、五十八年度勧告完全実施するとは言っておりませんけれども、誠心誠意こたえていくように努力をさせていただきたい、こういうように考えております。
  269. 中路雅弘

    ○中路委員 人勧の完全実施が初めて実施されることになった一九七〇年、当時の山中総務長官は国会でこう述べているのです。「かりに予備費等において、途中で災害その他予期せざる支出があって、人事院給与完全実施が困難であるような財源状態に現在の経常予算の中でなったと仮定いたしましても、」「どんなことがあってもその完全実施の線は昭和四十五年から貫徹するという方針においては変わりはございません。」ということを繰り返し言明しています。またその後も、歴代の総務長官、少なくとも総務長官は、財政当局がどう判断し政府全体としてどうなるかわからないけれども給与担当大臣としては完全実施方向努力するということを答弁されております。  いま、誠心誠上心努力をするとおっしゃったわけですけれども、これは給与の担当大臣ですから、政府全体としてどうなるかわからないけれども財政当局がどう判断するかわからないけれども、従来の担当大臣としての構え、考え方、担当大臣としては人勧完全実施方向で力を尽くすのだということは、この席上でも明らかにしてほしい。そうでなければ、担当大臣自身がそれも言えないようでは、山中長官以来完全実施の方針ということを言ってきた、これの大きな変更ということにもなるわけですが、大臣、いかがですか。
  270. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 国のために働いていただく公務員の方々の生活権とまで考えられまする労働基本権の代償措置としての人事院勧告でございますから、この人事院勧告制度というものは最もいい制度であり、将来とも何としても続けていただきたい、これは私の念願でございます。  そうした考えから申しますると、その人事院勧告が出ましたときには五十八年度完全実施したいのはやまやまであり、完全実施を望むのでございますけれども、いまこの公の場で先生に、完全実施を必ずなし遂げますとまでは私は言いませんが、それ以上の気持ちを持って、先ほど申し上げたような気持ちで、特に私は何度も申しますけれども人事院勧告制度というものは守っていきたい、そしていい労働慣行を続けていきたい、一生懸命やっていただく方々に生活の不安を来さないようにしたい。それには人事院から勧告されたものを完全に実施してあげることが必要であるということは私も考えておりますが、いまここでそのとおりに完全実施いたしますとは私は言い切れないのであります。  なぜかと申しますると、山中長官らその他の全長官がおっしゃいました当時の国の財政事情といまの財政事情とは非常な異なりがありまして、特に昨年なんか、せっかく組んでおかれたところの一%までちょうだいして、他の方に回さなくちゃならない。しかも、この一年凍結をと御無理願った。こういう事情でございますから、私はそういう気持ちは持っておりまするし、それ以上に願ってはおりまするけれども、いまここで、こういう事情でございますから、担当大臣として必ず完全実施をいたすように努力いたしますと言うよりは、そこまで言い切れませんが、誠心誠意働いていただく方々のことを考え努力させていただくと申し上げた方が親切ではないか、私はこう思って申し上げた次第でございます。
  271. 中路雅弘

    ○中路委員 少なくとも担当大臣として完全実施方向努力をするということははっきりさせていただきたいと思っているわけですが、誠心誠意ということでいま大臣が述べられております。しかし私は、これまでの政府の答弁や、あるいは担当大臣としての総務長官のいまのお話でも、五十八年度人勧がまたまた不完全実施になる、そういうことも危惧するわけです。そういう点で人事院として、一応凍結されて五十八年度もまた不完全になるということでは、人事院の存在も問題になってくるということにもなります。ただこのままで漫然と勧告の仕方をしたのでは私は問題だと思うのですが、その点で、今後もう少し完全実施を担保するための人事院総裁としての何らかの見解なり物を言わなければいけないのじゃないかと思いますが、総裁のお考えはいかがでしょうか。
  272. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五十七年度取り扱いというものは、最近における非常に異常な事態であるというふうに理解をいたしております。したがって、この立場に立っていままでも私の決意として申し述べさせていただいたところでありますが、それだけに、五十八年度の人勧の取り扱いというのが大変ゆゆしい結果を持つ、やり方によっては正念場であるという認識に立って、私は今後強く、完全実施ということが実現いたしまするように決意を固めて当たってまいりたい所存でございます。
  273. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点だけ、人事院との関係でお聞きしたいのですが、公務員制度の見直しの問題です。  いまお話しの五十八年度人勧に関連して、六十年度を目途とした公務員制度の見直しについてお尋ねしますが、五十八年度人勧とその報告にどの程度盛り込まれるのか。研究テーマや研究の現状、到達点、簡潔に御報告いただきたいと思います。
  274. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 内容にわたりますと少し長くなり過ぎますので、時間の関係もございましょうから、簡潔にというお話でございますのでその線に沿って申し上げます。  今度の長期的な見通しで、総合対策をやろうという気持ちになりましたのは、ごくまとめて申しまして三つございます。  一つは、戦後三十有余年にわたって現行公務員制度の骨子というものは変わらずに維持、運営をされてきたわけであります。それなりの効果は上げて、安定したものになってきておると思いますが、その後における社会経済情勢の変更、変転というものは大変目覚ましいものがございます。なかんずく高学歴化、高年齢化ということが非常に顕著になってまいりましたので、これに対応して公務員制度全体について見直しをしていかなければならない部面がたくさん出てまいりました。これらについてやはり何らかの手を打っていかないと今後の変化に対応できないということが出てまいりましたので、研究に着手をしたということが第一点。  それから第二点は、これも先生承知のように、現行制度は見方によっては大変変則的でございまして、給与制度にいたしましても、それから任用の制度にいたしましても、実は職階制実施を前提にしておるというようなたてまえから、暫定的な制度として長く運営されてきたのであります。それ自体は非常に変則的なものではなかったかと私は思います。これはやはり、こういう時代のことですから、相当長期にわたってたえていけるような恒久制度にやらなければならぬ。それのためには基本的な職階制の問題等を中心に改定を行わなければならぬという点がもう一つございます。  それから第三点といたしましては、端的に申しますと、たとえば休暇制度のように、さかのぼって明治時代の初期から続いておるというようなものを援用しているというような場面がございます。これらについてはやはり装いを新たにした新しい制度に衣がえをする必要があるというふうに考えております。民間でもそういうようなことで新しい制度がすでに実施されて、長くわたってきておるわけであります。これに対応する制度改正というものはやる必要がある。  この三点が長期見通しの検討を行うに至った根本的な原因でございます。  そこでこの問題につきましては、事柄が給与だけでなくて、任用、給与、いま申した職員局所管の休暇制度、それから研修制度、こういうもの全般にわたって再検討を加えて、新しい事態の変化に対応するようなことをやっていかなければならぬということで、目下基礎的な調査を終わりまして、大体の改革のデッサンというものをいまつくりまして、これをこれから月末にかけて関係各省の人事当局者、それから各種の組合関係に提示をいたしまして意見を求めて、そこでもってそれを中心に論議を交わしながら素案をつくっていくようにまとめ上げていきたいというふうに考えております。これが大体まとまりましたところで、昨年、一昨年に引き続いて、ことしの八月の給与勧告では、報告としてさらにもう少し詳細な内容にわたってかくかくのことというものを取り上げて書いていこうというふうに思っております。  それらの反響をさらに見ながら、今後の処置としてどういう処置を講ずるか。勧告を要するものは勧告ということもございましょう、法律案の改正で意見の申し出をしなければならぬものもございましょう。そういう区分けをやることと、時期的な見通し、これについては、これも累次私も申し上げておりますように、六十年から定年制が動き出しますので、でき得れば、やはり公務員制度全体の整合性がある統一的な運用を可能ならしめるためには時期も大体のところそれに合わせていく方がいいのではないかという時期的な見通しの問題もございますので、それらをにらみ合わせながら順次手を打っていきたい。また場合によりましては、機会があるごとに委員会等にも報告をいたしまして、御意見も承りながら固めてまいりたい、こういう段取りで進んでいるわけでございます。
  275. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題であと二、三質問をしたがったのですが、ちょっと時間が限られていますので、特に、人事院として最終的な結論をいきなり勧告に盛り込むのでなくて、広く国民関係者の意見を仰ぎながらひとつ進めてほしいということを強く要望しておきたいと思います。  あと、関連で榊委員の質問がありますので、私は残された時間で一、二点だけ、ちょっと飛ばして御質問します。  一つは軍歴通算の問題ですが、昭和五十七年の四月七日に当時の田邉総理府総務長官に、五十五年の九月十六日に研究委嘱をされた軍歴通算問題についての報告が出されています。軍歴通算に関する報告書ですね。これを読ましていただきました。  要するに結論を見ますと、「恩給受給資格年限に満たない軍歴期間を厚生年金保険及び国民年金に通算することは適当でない」という結論を出しておられます。短期軍歴者のかねてから出されている要望に対して、前向きに検討したものでなくて、否定的な結論を導くための議論を行ったのにすぎないかと思われますけれども、この報告において国家公務員共済年金制度などで短期軍歴者の軍歴期間を共済組合期間に取り入れていることを明らかにしておられますが、これも簡潔にお願いしたいのですが、具体的にどのように軍歴通算が行われているのか。また、軍歴を通算した一般公務員普通恩給受給者及び各種共済年金対象者、受給見込みの者を含んで、それぞれ何人か、結論だけ、おわかりでしたら教えていただきたい。
  276. 野尻栄典

    ○野尻説明員 お答え申し上げます。  現在の国家公務員共済組合制度ができましたのは昭和三十四年でございますが、その昭和三十四年にできた共済組合制度は、それまでにございました公務員年金制度、つまり恩給と旧共済と申しますか、この二つを統合したために現在の共済制度になっているわけでございます。したがいまして、統合する前の年金制度であった恩給の期間あるいは雇用人であった旧共済組合の期間、これらをすべて新しい共済制度では通算するというたてまえになっているわけでございます。  そこで、その恩給期間と申しますのは、御承知のように、文官、警察監獄職員あるいは教育職員とか軍人とかというふうにその中の種類は分かれていたわけでございますが、ひとしく恩給公務員であったということでは変わりはないわけでございまして、私どもの方は軍歴を通算したということではございません。恩給制度上処遇されていた恩給公務員期間を通算した。その中には、過去の軍人期間も含まれている方もあったわけでございます。つまり、恩給期間を通算している結果として軍歴もその中に一部入っている方がおられるということでございます。  なお、その軍歴を持っておられる方々だけの数というのは、ちょっと私どもの方では把握できませんので、把握しておりません。
  277. 中路雅弘

    ○中路委員 この軍歴通算問題に関する報告の一番最後に、資料として「軍歴保有者数等の推計」というので、「軍歴を通算した一般公務員普通恩給受給者二・三万人」、二万三千人ですね、「軍歴を通算した各種共済年金対象者(受給見込みの者を含む)五十万人」というのが出ていますから、この資料が一応確かな資料じゃないかと思います。  そこで一、二点お尋ねしますが、共済年金制度における軍歴期間に相当する給付の財源ですね、これは予算上どのように措置されているのか調べてみましたけれども、非現業の一般の国家公務員の場合は一般会計、それから現業の場合は各特会で計上して、連合会や共済組合に振り込むという形ですから、いずれにしても組合員の負担する掛金やそれに対応した国の負担金及びその運用収入によって賄われたものでないと思いますが、これは確認ですけれども、間違いございませんか。
  278. 野尻栄典

    ○野尻説明員 恩給期間につきましては、いま先生のおっしゃったとおりでございまして、共済組合の方では追加費用あるいは整理資源と呼んでおりますが、それぞれの所属した会計から負担していただいております。
  279. 中路雅弘

    ○中路委員 この通算問題に関する報告では、厚生年金保険及び国民年金は保険料拠出を伴う一定の加入期間を有することを受給資格要件とする社会保険方式の仕組みを採っているとして、社会保険方式であるために軍歴通算は適当でないとしているわけですね。軍歴通算を行っている共済制度と社会保険方式をとっている厚生年金国民年金と比べて多くの共通点が見られるわけですけれども、後者について軍歴通算が適当でないという理由根拠となる共済制度との違い、これはどこにあるのですか。根本的な違いですね。
  280. 野尻栄典

    ○野尻説明員 先ほど申し上げましたように、現在社会保険の技法、技術を応用しながら組み立てている年金制度は、昭和三十四年から始まった現在の共済年金制度でございます。それ以前にございました恩給あるいは旧共済といいますのは、きちっとした社会保険方式で組み立てられた年金制度ではございません。したがって、たとえば恩給の場合でございますと、軍人文官に限らず、恩給制度上の費用というものはそれぞれの所属会計が負担するという仕組みでございましたし、また、その受給資格年限とか支給額とかいうのも、現在の共済組合が払う年金のそれらとは違った算定の方法をとっておりましたから、そういった過去期間については、すべて費用負担の問題、給付額の算定の問題を含めて過去の制度の方法を踏襲して、それと新しい保険で支払われるあるいは財源を調達することになる共済年金といわば継ぎ合わせた形でいま支払っているというのが現在の共済年金でございます。
  281. 中路雅弘

    ○中路委員 国家公務員法の百七条ですね。退職年金制度第三項において、「第一項の年金制度は、健全な保険数理を基礎として定められなければならない。」としておって、一般の社会保険方式とは基本的に変わらないわけですね。私はその点で、国民年金制度のもとで共済年金についてだけ軍歴を通算しているのは片手落ちだと思うのです。やはり厚生年金国民年金についても軍歴を通算するという措置を検討すべきだと考えるわけです。その点では、再度この軍歴通算の問題では十分検討をしていただきたいということを強く要請をしたいわけです。  その点でもう一点。報告では、この恩給制度恩給受給資格年限が設けられているのは、恩給が永年にわたって忠実に公務に服したことに対する報償としての性格を有するためであるとされているわけですが、恩給法上どこにこの根拠があるのか、私もよくわからないわけです。  たとえば軍人恩給では、例で挙げますと、太平洋戦争中、たとえば応召後内地に四カ月いて、その後フィリピンに派遣されて二年十一カ月勤務についた場合は、ちょうど加算年を加えて十二年になり恩給対象になりますが、実在職年は三年三カ月にすぎないわけですね。それでも永年にわたって公務に服したことになる。他方、一カ月おくれて応召した後、内地に三カ月いて、その後フィリピンへ同じ部隊へ派遣されて、二年十一カ月同じ勤務についた場合でも、今度は年金である恩給対象にならない。わずか一カ月で永年にわたって公務に服したことにならないという差が出てくるわけですね。たとえば内地だけにいた軍人で加算年がない場合は、准士官以上では十二年十一カ月でも永年にわたって公務に服したことにならない。外地だと三年三カ月ですね。文官や教育職員の場合は十六年十一カ月でも永年にならない。  ところで、この文官や教育職員の場合、最短恩給年限十七年であることを前提にして公務についたものと考えられているわけですが、兵役の義務を国家が強制して、いやおうなしに戦地に派遣されて軍務につく場合は、永年という意味は私は文官等の場合の永年と大きく異なってくるのではないか。むしろ、忠実に公務に服したことに対する報償というよりも、短期の軍人期間は公務に服した期間に対する国家補償という対象として考えるべきではないか、また、その上に立って、厚生年金国民年金一般の拠出者とは無関係に軍歴を通算することは、性格からいっても、こういう点でも検討すべきじゃないかと考えるのですが、この点について御意見をお聞きしておきたいと思います。
  282. 和田善一

    和田政府委員 いろいろな考え方があると思います。私ども考え方を申し上げますが、恩給は、公務員が相当年限忠実に勤務して退職した場合に給付される、あるいはその公務による傷病のために退職した場合、または公務のために死亡した場合においても給付される。要するに、国がそれらの方たちとの特殊な関係に基づきまして使用者としてその公務員またはその御遺族に対する国の補償として給付するものでございまして、公務員の退職または死亡後における生活の支えとなるものでございます。  で、最短恩給年限というのがございますから、一定期間の勤務が普通恩給については必要である。ただし、その公務員が戦地勤務等特殊な勤務、危険な勤務に服しました場合には、その勤務期間を割り増し評価するために加算年という独特の制度を設けているのでございまして、これは、このような勤務に服した場合にはそれだけ心身の消耗が多い、そういうことを考慮したのでございまして、たとえば戦地におきまして一年勤務された場合には通常の内地の四年の勤務と同価値である、そういう判断から、この戦地の勤務は内地の四年と同価値である、こういうふうに考えまして、これで四年として最短恩給年限の中に加えていく、こういう考え方をしているわけでございます。  ですから、最短恩給年限という原則、これは法律上一カ月足りなくても足りないわけで、法律上救いようがないわけでございまして、その点、もう一歩という方のいろいろな御不満というものはあろうかと思いますけれども、これは法律で決まっておりますのでどうしょうもない。そうしまして、戦地勤務等非常に心身を消耗する勤務につきましては、それだけ長く勤めた、こういうふうに認めまして処遇している、こういうことでございます。
  283. 中路雅弘

    ○中路委員 この軍歴通算問題については、また改めて、きょうの御答弁をもとにして論議をしたいと思います。  最後に一点だけ、これはたびたび取り上げてきた問題ですが、旧日赤の看護婦さん、救護看護婦に対する慰労給付金の問題ですが、五十四年度に発足して四年経過しています。その間に、第二次の石油ショックによる五十五年の七・八%の物価上昇ですね、毎年数%ずつ消費者物価も上昇しています。制度が発足してから、五十四年度から五十七年度までの間でも、試算してみますと一四、五%消費者物価が上昇していますし、五十八年度政府見通し三・三%を入れますと一八%から一九%の物価上昇になるわけです。慰労給付金はその分確実に減価しているわけですから、その点でこれまでの答弁もございますし、ここで早急に減価分を補償する増額が必要じゃないかと思うのです。  昨年の四月一日の私のこの問題の質問で田邊国務大臣から、今後社会経済情勢の変化が生じた場合には私どもはこの問題について何らかの考慮を払わなければならないのではないかと考えておるという答弁もいただいているわけですが、現在この慰労給付金の増額の問題について前向きな検討をされる必要があると思いますが、最後に大臣にお考えをお聞きして、終わりたいと思います。
  284. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  ただいまお尋ねの旧日赤救護看護婦さん及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金は、女性の身でありながら、軍の命令により戦地、事変地に派遣され、旧陸海軍の戦時衛生勤務に従事した特殊な事情を考慮して日本赤十字社が支給することとしたものであり、これによって所得の保障を図るという年金的な性格を有するものではないので、増額は困難であります。しかしながら、国会の附帯決議の趣旨を尊重し引き続き検討いたしたい。また、将来、社会経済情勢の大きな変化があれば、慰労給付金の額の改善について、日本赤十字社の意向等を参酌しながら慎重に、前長官もお約束しておられることでございますから、ただ言葉だけの慎重じゃなくして、前向きに検討さしていただきたいと考えております。
  285. 中路雅弘

    ○中路委員 あとの残された時間、関連で榊委員が質問します。
  286. 橋口隆

    橋口委員長 この際、関連質疑の申し出がありますので、これを許します。榊利夫君。
  287. 榊利夫

    ○榊委員 恩給受給者につきましてまずお尋ねいたしますが、現在、総数が何名で、それから何歳から何歳まで、つまり最高年齢の方は何歳なのか、何歳から何歳までの人たちなのか、まずお伺いいたします。
  288. 和田善一

    和田政府委員 現在、恩給受給者の総数につきましては二百三十三万名ということでございます。  それから年齢でございますけれども、年齢につきましては、私どもの把握しております数字を申し上げますと、六十五歳未満、六十五歳から六十九歳、七十歳以上というふうに恩給の処遇に合わせまして分けて集計した結果でございますが、六十五歳未満が七十二万四千七百七十名で三一・一%、六十五歳から六十九歳が七十三万二千三百二十三名で三一・四%、それから七十歳以上が八一十七万四千八百七十四名で三七・五%、こういう結果になっております。
  289. 榊利夫

    ○榊委員 最高年齢は幾つですか。
  290. 和田善一

    和田政府委員 受給者の方の中に最高年齢幾つの方がおられるかということは、直接恩給年額関係する問題でございませんので、ちょっと私どもつかんでおりません。
  291. 榊利夫

    ○榊委員 私の推測ですけれども、大体百歳近い方もおられるんだろうと思うのですが、いまお聞きしました年齢の幅から見ましても、ほとんどがいわば老齢の方々ばかりであります。恩給自体が独特の年金という性格を持っておりますし、その受給者にとりましては、とりわけ多くの老齢者にとりましては生活費そのものだと思うのです。それが今回は財政の非常事態ということを理由にして、人勧凍結に合わせて恩給ベースアップを中止する、こういう措置がとられているわけでありますけれども、その点では特にお年寄りにとって大変冷たい措置ということになると思うのです、働き盛りの人じゃないわけでございますから。仮に人勧に基づきましてベースアップしたとしましても、その必要経費というのはせいぜい年間約六百億程度であります。これなら、たとえばF16の三沢配備に伴う思いやり負担をやめるだけで必要な財源が出てまいりますし、筋といたしまして、軍事費の異常突出をやめたりあるいは財界本位の行財政を是正すれば財源というのはいっぱい出てくる。そういうことには手を触れないで、恩給年金生活者はほとんどが老齢者という、そういうお年寄りの生活にしわ寄せする結果になるような措置をとられる考えというものが実は解せないのでありますけれども、この点、どういう見解をお持ちなのか、お伺いしておきます。
  292. 和田善一

    和田政府委員 先生指摘のとおり、恩給受給者老齢の方が多いわけでございます。したがいまして、今回の個別改善におきましても、七十歳以上の長期在職の旧軍人仮定俸給の一号俸アップを、従来からの懸案でございましたので図る。恩給制度といたしましては、老齢者あるいは御遺族、そういう方たちの処遇には従前から最善の努力をしてきたつもりでございますが、何せ昭和五十八年度予算におきましては前年度公務員給与改定が見送りになった。これは厳しい財政事情のもとでそういう結果になった。公務員給与改定というものを指標として恩給ベースアップを行っていく、これはもうここ定着した恩給制度あり方でございますので、本年度予算に計上できなかった、これはやむを得ないことである、こういうふうに考えております。  なお、大蔵大臣と総務長官との間で、恩給ベアの取り扱いにつきましては、昭和五十八年度人事院勧告が出された場合、その取り扱いを検討する際に「恩給の取扱いについても人事院勧告の取扱いとのバランスを考慮しつつ、誠意をもって検討する。」こういう了解がなされている次第であります。
  293. 榊利夫

    ○榊委員 型どおりの御答弁ですけれども、私質問申し上げましたように、恩給というのは老齢者の生活そのものなんで、人勧凍結そのものが筋は通らないわけですけれども、それに合わせて、俗に世間の言葉で言えばお年寄りいじめみたいな、そういうことはやはり筋道といたしまして避けるべきだ、そこに少しでも配慮をするような措置というものを政治の場でとることが必要なんじゃないか、それが皆さん望まれている政治のあり方じゃないか、そう思うわけでありますから、あえてそのことをつけ加えさせていただいたわけであります。したがいまして、これからの問題といたしまして、恩給の問題について人勧とバランスをとってと言われたその場合も、むしろお年寄りに温かい態度をとるんだ、配慮をするんだというふうな前向きの姿勢でぜひひとつこの問題については取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思います。  それとあわせまして、青少年白書の問題と関連いたしまして、非行、暴力の問題について総理府に質問させていただきます。  青少年の非行、暴力が大きな社会問題になっております。正直なところ、親も先生たちも頭を痛めている。これに関連しまして、総理府としても青少年対策本部が毎年青少年白書を出しておられます。ことし一月発行の五十七年版の白書を見ますと、青少年健全育成の事業について数多く述べておられます。そして、官民一体の地域運動あるいは文化、スポーツ活動などを奨励しておられます。  しかし、ここで少しどうかなと思いますのは、父母や教師が一体になって地域で進めている非行克服運動とかあるいは自主的な教育運動、文化、スポーツ運動などが、いろいろ草の根的にあるわけであります。それに対して行政としてどう援助していくか、こういう姿勢がどうも欠落しているように思われるわけです。健全育成事業というものが官製運動を指向されているのかな、こういう疑問がわくのでありますが、総理府として、この草の根的な非行克服その他の運動についてはその意義をどういうふうに見ておられるのか、そういうものは大したことない、こういう考えなのかどうなのか、その点お聞かせ願います。
  294. 瀧澤博三

    ○瀧澤政府委員 私どもといたしましても、非行防止は行政の対応だけで十分なことができるものとは思っておりません。やはり地域の大人たちが家庭、一般社会あるいは学校、職場それぞれの場で大人としての責任を果たし、子供の非行防止、健全育成について十分目を配っていくことが大事だと思っております。そういう意味で、いろいろ民間の団体の方々がそれぞれ地域で御活躍をされているわけでありまして、私どもとしても各都道府県にもお願いし、民間の動きと十分連携をとって行政としても対応していくように求めているわけでございまして、今後とも、そういう方向民間の力を十分に活用すると申しますか、相互に協力をして進めてまいるように配慮してまいりたいと思っております。
  295. 榊利夫

    ○榊委員 国民運動というのは、本来自発的なものであってこそ大きな力になると思うのです。まして、子供たちを健やかに育てる運動ということになりますと、学校の内外の暴力をきっぱり否定する、そういうことを大前提にする必要があると思いますけれども、その上に地域の実情に合った創意ある運動でなければならないと思うのです。上から画一的な健全育成運動を押し出すのではなくて、自発的なさまざまな運動がある、それを援助し、可能ならば財政的にも助成するといった姿勢が望ましいと思うのですが、これから年々白書も出されていくと思いますが、そういう姿勢を白書に盛り込む考えはないのかどうか、この点いかがでございましょうか。
  296. 瀧澤博三

    ○瀧澤政府委員 白書につきましては、いわゆる白書でございますから、まずは青少年の実態をもろもろの統計をもとにして整理をするということでございますが、私どもといたしましては、毎年それぞれその時点におきます主たるテーマを取り上げているわけでございます。五十七年度におきましては、これだけ非行問題が世間的に取り上げられていることも背景にいたしまして、非行に重点を置いたわけでございます。五十八年度どういうテーマを取り上げていくかということにつきましては、いま検討中でございます。
  297. 榊利夫

    ○榊委員 いや、私がお尋ねしているのは、非行克服のための、スポーツを含めましてさまざまな自主的な、自発的な運動がある、そういうものを行政として援助していく姿勢こそが必要なんじゃないか、場合によっては財政的な助成だってやっていいんじゃないか、こういうことなんです。ですから、そういう姿勢を対策本部としてもとってもらいたいし、その点についてはいかがお考えなのかということなんですが、おわかり願えますか。
  298. 瀧澤博三

    ○瀧澤政府委員 地域に密着いたしましたそれぞれ民間の住民の方々の活動が大事だということは、私どももそのように考えておりまして、総理府といたしましては、いわゆる国民運動としてそういう地域ぐるみの活動を起こすことについて、従来から青少年育成国民会議、あるいは都道府県の県民会議、市町村民会議等を通じてそういうことをお願いをし、これらの団体に対して援助もいたしているわけでございます。各地域におきます民間の団体との関係につきましてはまた都道府県それぞれのお考えがあるかと思いますが、私どもといたしましては、行政と民間の活動との連携は非常に大事だということを踏まえて、今後とも、都道府県に対しましても必要なお願いをしてまいりたいと思っております。
  299. 榊利夫

    ○榊委員 希望ですが、いわゆる官製運動じゃ成果は余り上がらない、下からの運動を実効あるものにしていくということをあえて申し述べて、次の質問に移ります。  警察庁来ていただいておりますか。お尋ねいたします。  昨今、教師に対する中学生の暴力事件までも激増しておりますが、一九八二年でも先先に対する暴力が八百二十五件、七八年に比べますと五倍近くに激増しております。それぐらい、中学生相互間あるいは学校の外に出て暴力をふるうといったことだけではなくて、学内でも先生にまでふるう。暴走少年とか、あるいは二、三日前ずいぶん大きくテレビ、新聞等でも報道されましたけれども、女子中学生の集団暴行であるとか、覚せい剤に汚染されているとか、きのうの新聞でしたか、東京の文京区で起こっておりますけれども、番長がどうのスケ番がどうのとか、女子中学生を含めまして昨今の中学生の非行、暴力等の増加の実態というのは相当のものがある。憂うべき事態でありますが、もし十二月までの五十七年中の刑法犯少年の実態、数がまとまっていればお示し願いたいし、また、三月までの第一・四半期についてもまとまっていればお示し願いたいのでございます。  それとともに、増加の傾向があるのじゃないかと思うのですが、そのあたりについての判断と、この実態についてどういう認識をお持ちなのか、その点についてあわせてお伺いしたいと思うのです。
  300. 阿部宏弥

    ○阿部説明員 お答えいたします。  まず少年非行でございますけれども昭和五十七年中犯罪を犯したということで補導されました者は、われわれは刑法犯少年と呼んでいるわけなのですが、十九万一千九百三十名でございます。本年度に入りましての統計でございますけれども、まだ作業中でございましてここで先生に御報告できるような数を持っておりませんので、五十七年中のもので御了承いただきたいと思います。  そこで、増加傾向にあるのかどうかということでございますけれども、五十七年度中のものについて考えますと、依然として増加を続けている。対前年に比べまして三・八%の増加であるということでございます。しかし、伸びの率が若干縮まってきているのじゃないかという印象を持っております。  それから、こういう少年非行をどういうふうに考えるのかという点でございますけれども、少年非行につきましては、数量的に非常にふえてきているという実情と同時に、いままでにないような新しい形態の非行が大変目についているということでございます。特に学校の中で教師に対する暴力事件だとか、あるいは一時盛んに報道されました家庭内暴力、家庭の中で両親、特に母親に暴力をふるうといった暴力的な非行が非常に目立っているという感じを持っております。それから、先ほど先生も御指摘されておりましたけれども、女子の性非行の問題だとか、覚せい剤とかシンナー乱用少年、あるいは暴走族少年といったいろいろな形の非行が起きております。私どもといたしましては、この非行の要因なりあるいは背景を考えてみますと、いろいろな状況がございまして一概に指摘するわけにはいきませんけれども、家庭における問題だとかあるいは学校における問題とかあるいは地域社会における問題等々、いろいろな問題が複雑に絡み合って少年非行の背景をなしていると考えておるわけでございます。したがいまして、いろいろな人たちの協力をいただきながら私どもといたしましてはこういう少年非行の発生を未然に防止する、それによって非行から少年を守るために全力を尽くしてまいりたいと考えております。  なお、数量的には若干伸びが落ちているのですけれども、その非行の内容を見てまいりますと、先ほどのいろいろな社会上の原因、地域社会に見られるいろいろな要件だとか、あるいは家庭の中に見られるしつけの問題だとか核家族の問題その他等があるわけです。そういうものを考え合わせますと、少年非行がこのまま減少に転じていくというようなことも一概に言えないのじゃないだろうか、いついかなる時期にまた再び激しい勢いで増加するかもしれないといったような感じで理解しております。  以上であります。
  301. 榊利夫

    ○榊委員 いまの十九万三千でございますか、この数字は初めて伺いましたけれども総理府から出ております青少年白書で示されているのは五十六年度が十八万四千九百二人、これが戦後最高を記録したということですが、そうしますと、五十七年にさらに戦後最高を更新したと見てよろしゅうございますか。約一年間でほぼ二万件ふえているということになりますので、伸び率は若干縮まっているかのように見えると言われながらも、非常に深刻な上昇だということは間違いなかろうと思うのです。  そこで、特に総理府の方にお尋ねしたいのですが、増加の傾向をたどっているその中で、政府も昨年六月二十五日に関係の十二省庁が集まって非行防止対策推進連絡会議が設置され、総理府総務長官が議長を務めておられるわけです。そして地域における非行防止活動の強化、学校における生徒指導の充実などをうたった当面の非行防止対策に対する申し合わせを採択されております。この採択後どういう措置をとられたのか、どういう施策が重点施策なのか、長官はそれに対してどういう所感をお持ちなのか、この点をお伺いいたします。
  302. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  非行防止対策推進連絡会議における申し合わせの推進状況については、その後のこの会議において適宜報告を受けておるほか、必要に応じ関係省庁の課長クラスで構成されている非行対策関係省庁連絡会議を開催するなど、事務当局を通じて報告を受けております。  この申し合わせの進捗については、厳しい財政事情のもとにあるものの、各省とも青少年非行防止、健全育成の重要性を十分認識し、踏まえて、申し合わせの方向に沿ってそれぞれ創意工夫をこらして施策の充実に努めておるものと私は認識しておりまするし、今後とも、関係省庁と連絡をとりながらこれらの施策の円滑な実施及び充実に努めてまいりたいと考えております。  なお、詳細につきましては役所の方から御報告させていただきたいと思います。
  303. 榊利夫

    ○榊委員 余り具体的じゃありませんけれども、その後横浜での中学生による浮浪者襲撃事件などもありまして、この三月四日でしたか、非行防止対策推進連絡会議が再度、暴力的非行集団の解体、補導の徹底など五項目の実施が早急に必要な措置だということを申し合わせたということもお聞きしてはおります。しかし、正直申しまして、いろいろな措置を申し合わせてはおられるのですけれども、どうも具体的に何が進んでいるのかなというのは大変わかりにくいのです。  具体的な例で一つお尋ねをいたしますが、昨年六月二十五日の申し合わせの中に、暴力等の生徒の問題行動を防止する上で教育委員会の機能の充実を図るというのがありますけれども、これはどういうふうな措置の充実を指しているのでしょうか。
  304. 遠山敦子

    ○遠山説明員 昨年六月二十五日の御指摘の申し合わせに掲げられております教育委員会の機能の充実という意味は、児童生徒が学校生活に関連いたしまして不適応や悩みを持っておりますが、そういう悩みにつきまして、きめ細かい指導を行うための教育相談に関しての指導体制を充実するということと理解しております。  この申し合わせの趣旨あるいはこれまでにとってまいりましたいろいろな施策との関連等を総合的に考慮いたしまして、今年度新たに教育相談活動推進事業を実施することといたしました。この事業は、都道府県の教育委員会が学校経営とか生徒指導、カウンセリング等に関しまして専門的な知識と経験を有する人を教育相談員として委託いたしまして、各県内の一定地域の市町村を定期的に巡回訪問させまして、そこで児童生徒をめぐる校長とか教員とか父母などの具体的な悩み、相談にこたえる、そういう専門的な立場から適切な指導助言を行う、そのような機能を強化することによってこの申し合わせの趣旨に合致した事業とするという観点で事業を行っております。
  305. 榊利夫

    ○榊委員 私、教育委員会のそれについてあえてお尋ねしましたのは、実はちょっと具体的な問題で頭にあるからなのです。いまの問題を聞きましても、指導助言を行う、相談を行うということにとどまっておりまして、どうもそれだけで問題が解決できるだろうか、もっと現実は深刻なのじゃなかろうかということなのです。  具体的な問題でお尋ねしたいのですけれども、東京の大森に少年補導センターがございます。それについては時間がありませんので細かいところはお尋ねするのは省きますけれども、この少年補導センターが置かれている大森で、これは当然運営費として総理府から年間補助が出ているわけでありますけれども、この大森で、近年中学生が暴走族に入って、それが右翼暴力団体に取り込まれて武闘訓練に参加させられたり、その団体から抜け出ようとした中学生がつめを詰めろと言われてつめを詰めさせられるとか、それから、こわいものだから東京から手の及ばない他県に、田舎の県に転校せざるを得ないとか、そういう非常に異常な事態が起こっているわけです。それで、右翼の街頭行動などに参加することもしょっちゅうだ。結局、登校拒否とか無断外泊などは常態になっている。  それがどんな状態になっているかというのは、ここにちょっと雑誌を持ってきて写真がありますのでごらんになればと思うのですが、たとえばこんなことに参加している。中学生なのですよ。これは日本刀です。生身ですよ。これを持ちまして、やいばを上にしていわば人を刺す訓練をやっているとか、これはちゃんと身元もわかっているのです。中学生でどこの何町のだれだれさんの息子でということもわかっているわけです。同じようなことが幾つもの雑誌、カメラでとらえられていまして、本当にぞっとするようなあれなんですね。それで親御さんはもちろん大変な心配だ。これもそうなんです。生身を持ってこうやって、やはり訓練をしておる。  こういう中学生の問題についてまずお尋ねしますけれども、警察庁なり文部省としては、この実態をどういうふうにお考えになっているのかということなんです。
  306. 渡辺勇

    ○渡辺説明員 ただいまお尋ねがありました大森センターの具体的問題につきましては、承知いたしておりません。  現在、行動右翼、この中に参加しております未成年者の数というのは、約三百人ほどおります。このうち中学生層と見られますのは、補導等の実績から見まして約三十人ぐらいじゃないか、このように見ております。しかしながら、これらの未成年者のほとんどは確固たる信念を持ってこの活動に参加しているというものではなくて、いわば先輩等に誘われまして一時的に参加しているというのであります。したがって、定着性もありませんし、正式な右翼団体の構成員になっているという中学生はいまのところございません。  しかしながら、思慮分別に乏しい未成年者、とりわけ中学生が、不法行為に巻き込まれやすいこういう活動に参加することは大変好ましくない、こういうことで、具体的事実があるごとに、本人はもちろん、団体の指導者やあるいは家族に対しましても、学業に専念するよう的確な補導措置を講じております。それからさらに、これら中学生を含めまして少年の違法行為を見逃して法無視の傾向を植えつけることのないように、不法行為に対しましては的確な検挙等の措置を講じているところであります。  一方、右翼団体の指導者等の中に、少年を甘言をもちまして自己の組織に取り込もう、こういうような傾向も見られますので、こうした面に着目いたしまして、厳しく取り締まっておるというところであります。  以上のような具体的な措置を講じているのを初め、昨年五月二十七日には警察全組織を挙げて、長期的な展望に立って少年非行対策を推進していくという観点から、警察庁内に少年非行総合対策要綱というものを策定いたしまして、現在、この要綱に基づきまして全般的な少年非行防止のための各種の対策を鋭意推進しているところであります。  また、右翼団体の指導者に対しましても、中学生を組織に加入させたりあるいはまた思慮分別に乏しい未成年者に違法行為を起こさせたり、あるいはいわゆる武闘訓練等によって暴力的な素地を与えるようなことのないように、日常的な警告、あるいはまた、各種の活動に際しましては少年を動員しないよう継続徹底した警告を実施する等によりまして、少年の健全な育成に努めているところであります。
  307. 榊利夫

    ○榊委員 大変問題なのは、こういうふうに中学生を引きずり込んでいる右翼暴力団体に対して、行政側が必要な措置を直ちにとるということになっていない。先ほど教育委員会の問題で尋ねましたけれども、所要の地方自治体とか、それからそこの教育委員会ども、こういう問題になりますとどうも逃げ腰。義務教育過程にある中学生ですから、日本刀を持って人を刺す訓練に加わっているとか、あるいは街頭行動にも率いられているとか、そのため学校も無断欠席が続いている、そういう場合に、取り込んでいる団体に対して、警察はもちろん、行政側があいまいな態度をとるとそういうのがずっと野放しにされていく。実際上そういう事態が広がっているように見えるので大変不可解にも思うわけでありますが、ぜひひとつ、非行暴力対策推進連絡会議の長としての総理府長官といたしましても、そういう実態、というよりもこれは異常事態ですよね、普通じゃない。そういう異常事態に対しては、関係行政機関が子供を親元だとか保証人に返すように当該団体に厳しく要求するとか、そういうことが必要なんじゃないかというふうに思うのですけれども、その点、長官の所見を伺いたいと思います。
  308. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  最も大事な青少年の非行防止でございますが、これは何をおいてもなさねばならない大事なことでございます。しかし、これはなかなか口では言っても非常に根の深いことでございまして、むずかしいことでございますが、しかし、家庭も学校も社会も、みんなしてやらねばならない。お互いがよく理解してやっていただかなければならない。そうでないと成果は上がらないと思いますが、わけても、いま先生から御指摘のあったようなそういう暴力団の手先にこうした大事な子供たちが使われて、しかもそれだけにだんだんと数多く悪の世界に陥るということを見逃しておくわけにはいかない。だから、連絡会議におきましても、きょう先生から御指摘のあったことを私から強く強く申し上げまして、早速対策をとるよう、今後そうしたことの取り締まりを十分やるようにさせていただきたい、こう思っております。
  309. 榊利夫

    ○榊委員 終わります。
  310. 橋口隆

    橋口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  残余の議事については、後日に譲ることにいたします。  次回は、来る二十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会