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1983-04-15 第98回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十五日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 堀之内久男君    理事 矢山 有作君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    池田 行彦君       石井  一君    狩野 明男君       亀井 善之君    熊川 次男君       始関 伊平君    中村正三郎君       堀内 光雄君    宮崎 茂一君       角屋堅次郎君    嶋崎  譲君       山花 貞夫君    鈴切 康雄君       三浦  隆君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房審議官    大坪 敏男君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         行政管理庁行政         監察局監察官  堀江  侃君         科学技術庁計画         局科学調査官  高橋  透君         科学技術庁計画         局調査課長   笹谷  勇君         農林水産技術会         議事務局研究総         務官      中野 賢一君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     黒田 直樹君         建設省河川局海         岸課長     大河原 満君         自治省税務局固         定資産税課長  鶴岡 啓一君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   森  整治君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ───────────── 委員異動 四月十五日  辞任         補欠選任   小渡 三郎君     熊川 次男君   吹田  愰君     中村正三郎君   木下敬之助君     三浦  隆君 同日  辞任         補欠選任   熊川 次男君     小渡 三郎君   中村正三郎君     吹田  愰君   三浦  隆君     木下敬之助君     ───────────── 四月十五日  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出第三九号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願柿澤弘治紹介)(第二三三六号)  同(神田厚紹介)(第二三五三号)  同(和田耕作紹介)(第二三五四号)  同(菅直人紹介)(第二四七七号)  新潟陸運局の存置に関する請願串原義直紹介)(第二三五一号)  同(清水勇紹介)(第二三五二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産省設置法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林水産省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として畜産振興事業団理事長森整治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 橋口隆

    橋口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 橋口隆

    橋口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  5. 矢山有作

    矢山委員 まず最初に、農水省設置法の一部改正案に直接関連をした問題で二、三お伺いをしておきたいと思います。  今回の農水省設置法の一部改正案の中身であります農業生物資源研究所農業環境技術研究所設置につきましては、新しい時代に向けた生産技術研究開発を進める上で意義のあるものだと考えます。ただ、懸念される点が一、二ありますので、その点を御質問を申し上げておきたいと思います。  まず第一は、種子食糧戦略のかなめとなるとさえ言われておる今日の国際情勢に十分対応できるような内容にこの研究所がなり得るのかどうか、その点がまず第一点であります。  それからもう一つは、研究スタッフの問題でありますが、有能な研究スタッフがそろっておるというふうに私ども先般の現地調査のときに感じたわけでありますけれども、さらにこの優秀なスタッフ海外に流出しておるというような事態が起きておるのではないかとも思われる節もありますので、その点いかがでしょうか、お伺いいたします。
  6. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からの御指摘に、種子の問題が非常に重要であるけれども、今回の二つ研究所設立によってその問題に対する取り組みはどうかというお話でございますが、私ども今回お願いをいたしております二つ研究所のうちの農業生物資源研究所におきましては、この種子の問題についての基本的なところをしっかりと研究をしてまいりたいと考えております。農業生産力を高めて食糧の安定的な供給を図るためには技術開発が非常に重要であると考えておりまして、中でも、いま御指摘の点については大変重要であると認識をいたしております。  わが国におきましては、これまでも遺伝資源収集、特に海外からの収集あるいは収集したものの保存、配布といったところに力を注いでまいりましたし、また新しい品種開発を推進をしてきたところでございます。その一層の充実を図るために、今回の農業生物資源研究所設立いたしまして、最近大変進展の著しいバイオテクノロジー技術を活用いたしまして従来の交雑育種法では不可能であったような画期的な新品種作出というようなことに向かってまいりたい、そういうふうに考えておりますので、先ほど先生から御指摘いただきました種子の問題については今後十分に対応できていくと考えておりますし、そのように努力をしてまいりたいと思っております。  それから、御指摘の第二点でございました新しい研究所研究スタッフを十分に充実できるのかという点でございますが、私どもは今回の新研究所設立に当たりましては、農業技術研究所植物ウイルス研究所並びに蚕糸試験場の一部の組織、定員を振りかえまして、二つの新しい研究所研究スタッフ中心にする予定でございますが、これらの研究機関におきましてはいままでにもバイオテクノロジーあるいは環境科学関連いたしました研究実施してまいっておりまして、新たな研究員配置に当たりましては、その研究対象研究手法といったものを十分に勘案いたしまして配置をしてまいりたいと考えております。  なお、御指摘の中にありました海外に出ているような人材の活用も図ってはどうかというお話でございますが、その点につきましても私どももそのとおりだと考えておりまして、現在までにもアメリカに出ておりました有能なスタッフをすでに二名ほど採用いたしまして研究に対応している部分もございますし、今後も大学あるいは他の試験研究機関との人事の交流、そういったものを含めまして優秀な研究人材確保を図っていきたいと思っております。また、研修制度あるいは流動研究員制度、そういったこともこれから活発に活用いたしまして、御指摘のような研究スタッフ充実を図らなければいけないというふうに考えております。
  7. 矢山有作

    矢山委員 遺伝資源収集の問題ではいま御答弁いただきましたが、われわれの伝え聞いておるところでは、アメリカなんかは非常にこれが進んでおるんじゃないかというふうな話も聞いておりますが、特に新品種開発研究には欠かせないものでありますから、この点はさらに努力をお願いしたいというふうに考えます。  次いで、次の質問でありますが、農業技術研究所の廃止、それから蚕糸試験場大幅縮小と改組に伴って人員の異動や減員が出てくると思いますが、これに対する人事問題というのはどういうふうな状況でありますか。  それから第二点は、放射線の利用による研究がなされるわけでありますけれども、この点はすでに農業技術研究所育種部門経験済みであると思います。しかしながら、この種のものにつきましては、事故の発生には十分注意を払ってほしい、そのために設備や施設の設計、配置にはもちろん万全を期してもらいたいと思うわけでありますが、御見解を承っておきたいと思います。
  8. 岸國平

    岸政府委員 第一点の農業技術研究所並びに蚕糸試験場植物ウイルス研究所研究者配置についての問題でございますが、私どもは今回の組織再編に当たりまして、職員ができる限り速やかに新しい研究活動に対応して研究成果を上げられるように、そのことを十分に配慮しなければいけないというふうに考えておりまして、このために、組織再編に伴う人事異動に当たりましては、現在従事しております研究領域手法、そういったものと、今後行います研究領域手法との類似性を十分に踏まえまして、適材適所を旨として配置を行ってまいりたい、そういうふうに考えております。  それから第二点の放射線育種関係のことでございますが、放射線育種につきましては、ただいま御指摘のようにいままで農業技術研究所放射線育種場において実施をしてまいりました。今後この放射線育種につきましては、今度設立予定しております農業生物資源研究所にこの放射線育種部門配置いたしまして、そこで研究をしていく予定にしております。  この放射線育種場におきましては、安全性確保する観点から、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、これに定める基準に適合した放射線施設、たとえばガンマフィールドでありますとかあるいは屋内の照射施設でありますとか、そういったものを整備をいたしまして研究に活用しております。また、その中の取り扱う放射線取扱主任者、そういったものの設置も十分にいたしまして、またそれらの研究者の問題につきましては、定期的に所定の教育訓練あるいは健康診断、こういったものを実施をいたしまして十分に安全の確保には努力をいたしておりますし、今後も努力をしてまいりたいというふうに考えております。そういったことを守りまして安全を確保しながら、この重要な放射線育種手法を今後の育種の上に活用してまいりたいと考えております。
  9. 矢山有作

    矢山委員 引き続いてもう一点お伺いいたします。  遺伝子の組みかえによる新作物作出に関する研究は、新人間の作出にも応用し得る基礎研究ともなり得るわけであります。科学研究は、言うまでもなく人類の幸福と世界平和のためにあらねばならないわけでありますから、悪用されると、倫理を逸脱して科学研究の本義にもとることになります。これは十分な注意が肝要であると思いますので、この点、御見解を承っておきたいと思います。
  10. 岸國平

    岸政府委員 私ども、今回設立予定しております農業生物資源研究所におきましては、いままでの交配による育種手法によるだけではなくて、DNAの組みかえあるいは細胞融合といったような技術を駆使いたしまして、いままでに得られなかったような新しい形質を備えた植物作物をつくってまいりたい、そういうふうに考えておりまして、ただいま御指摘のございましたような遺伝子の組みかえの作業も主に植物対象にいたしましてやってまいるつもりでございますが、その場合には十分に安全性注意をいたしまして、また目的を十分にしぼりまして研究を進めてまいりたいと考えております。  なお、この生物資源研究所で行います遺伝子組みかえに関しましては、対象が主に植物でございますし、それからその目的も新しい形質を持った有用な作物をつくり出すというところに置いておりますので、ただいま御指摘のような安全性の問題は万々ないと考えておりますが、十分に注意をしてまいりたいというように考えております。
  11. 矢山有作

    矢山委員 農林水産省は、これまで試験研究機関の改編を何度かやってまいっております。仏つくって魂入れずという言葉がありますが、そんなことにならぬように、今回の再編整備農業生産技術革新を推進すると同時に、自然の生態系と調和した農業技術開発を図るという目的意図に十分沿って展開され、機能を発揮されるように、関係者努力を要請をいたしまして、この点に関する私の質問は終わります。  引き続いて、先般行政管理庁が行いました畜産振興事業団監察結果との関連についてお尋ねしたい点がありますので、その質問に入らしていただきます。  まず最初にお伺いしておきますが、牛肉価格安定のための制度、施策、これについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
  12. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御承知のように価格安定帯を設けまして、その牛肉の量を操作することによってその安定帯の中で価格の安定を図ることといたしておりますが、御承知のように国産牛肉は全体量といたしまして需要の約七割程度でございます。あとの三割程度輸入をいたしまして需給をバランスさせるわけでございますが、毎年牛肉につきまして、和牛とそれからその他の牛、これは乳雄等中心でございますが、それにつきまして一定の安定帯中心価格を決めましてその上下一三%ずつ開きました安定帯をつくります。その中に東京とか大阪の卸売市場卸売価格がほぼ安定するように、いまの場合は余るという場合が比較的少のうございますが、足りないという場合に放出量をふやす、あるいはその放出の仕方を変えるということで、極力この安定帯の中におさまるようにという操作をしているわけでございます。
  13. 矢山有作

    矢山委員 畜産振興事業団の方にお伺いいたしますが、事業団はその事業目的であります牛肉価格安定に関して、その役割りを十分果たし得ているというふうにお考えになっておりますか、どうでしょうか。
  14. 森整治

    森参考人 輸入牛肉放出の量なり時期なり品目なり、それぞれの見直しを毎月行いながら操作を行っておるわけでございまして、完全に役割りを果たしておるかと言われますと、結果的には若干安定価格上限を突破したことがございました。そういうものにつきましては、今後の反省材料としていろいろ努力をしておるわけでございます。ともかく、安定帯の中に価格が入りますことを常に念頭に置きまして操作を続けてきておるわけでございます。
  15. 矢山有作

    矢山委員 御答弁ですけれども、どうも行政監察の結果の資料を見てみますと、和牛牛肉については五十四年の四月から五十六年の二月ごろまで約二年、それから乳用牛牛肉については五十四年の四月から五十五年の二月にわたって一年足らず、上限価格を上回っておりますね。それから、その後の状況を見てみましても、和牛牛肉の場合はどちらかというと上限価格の方に近いところで上位安定といいますか、そういうかっこう、乳用牛牛肉の方は大体価格安定帯の中間辺を、多少の上下はありながら動いておるようです。  そういうふうに全体を眺めた場合、それから先ほど言った五十四年の四月から五十六年の二月にかけての和牛牛肉上限価格を超えておったとき、また乳用牛牛肉について五十四年の四月から五十五年の二月にかけて同じく上限価格を超えておったときに、その価格安定帯の中におさめるために輸入牛肉放出が行われるのでありましょうが、その放出状況がきわめて適当でなかったということからこの価格の安定が長期にわたって図り得なかった、こういう結果になっておるように思うのです。その点でやはり行管監察指摘しておるところというのは私は当を得た指摘だと思っておるのですが、この点、どういうふうにお考えになっておるんでしょうか、農林水産省の方は。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のありました時期に牛肉が著しく高騰したというのは事実でございますが、これは御承知のように第一次石油ショックのあの畜産危機がございまして、それによります生産規模縮小がこの五十四年の時点にあらわれてまいりました。したがいまして、法の定めるところによりまして輸入量をふやし、放出量をふやしたわけでございます。  実は、五十四年の輸入牛肉売り渡しは、対前年比三五%増ということで大変量をふやしたわけでございまして、この場合におきまして、比較的輸入牛肉でもって値の冷ましやすいいわゆる乳雄の方につきましては、比較的その効果が早く発現をしてきておりましたので御承知のように価格安定帯に早く入り込んだわけでございます。しかしながら、実は和牛の方はなかなか、その肉の品位から申しまして当時の輸入牛肉放出では直ちに値が下がりにくい状況にあった、そういうことがございまして、その効果発現が大変おくれた。現在振り返ってみますと、やはり当時の操作としては、それだけの量の放出もいたしたわけでございますが、十分でなかったのではないか。私ども、そういう過去の苦い経験にかんがみまして、その後の運用につきましては、牛肉のいろんな部位輸入の仕方なりあるいは放出の仕方なり、そういうものにつきましていろいろ反省をいたしておりまして、極力、価格がこの安定帯の中に入るようにということを基本に操作をいたしているわけでございます。
  17. 矢山有作

    矢山委員 そこで、五十六年の七月から九月にかけて行管庁による監察が行われて、この一月ですか、その報告書が出されたわけでありますが、ひとつ、直接監察をやられた行管庁の方から、この畜産振興事業団による価格安定制度運用についてどういうふうにお考えになったか、要点を御説明いただきたいと思います。
  18. 堀江侃

    堀江説明員 お答えをいたします。  先ほど先生の方からすでに御言及されましたけれども畜産振興事業団における価格安定制度運用につきましては、実態を調査しました結果、牛肉については、安定価格が定められることになりました昭和五十年五月以降、指定食肉たる牛肉卸売価格の推移を見ますと、おおむね安定価格帯の範囲内におさまっておりましたが、次のような問題が認められました。  第一は、指定食肉である去勢和牛牛肉「中」、それからその他の去勢牛牛肉「中」の卸売価格昭和五十四年から五十五年にかけての時期に安定帯を超えておりまして、その間、事業団保管牛肉放出を行ったのでありますが、価格引き下げ効果が十分に上げられ得なかったと認められる状況があったということでございます。  第二点は、事業団輸入牛肉売り渡し方法につきまして、食肉卸売市場売り、それから需要者団体売り、その他売りの三つの方法がとられておりますが、食肉卸売市場売りの割合が約二六%程度にとどまっておる、そういう状況が見られた、こういうことでございます。
  19. 矢山有作

    矢山委員 そこで、効果が上がらなかった原因ということについて、先ほど農林水産省の方からちょっと一部お話がありましたが、一体、こういう制度があって効果が上がらないその原因を、和牛牛肉に見合うような適当な品質のものがあるとかないとかというような議論をしておったのでは、この安定制度それ自体が意味をなさなくなってくる、私はそういうことになると思う。こういう制度がある以上は、その制度運用することによって価格の安定が図れるようなことを考えていかなければならぬ。そうすると、価格を安定させるのに見合うような品質牛肉確保するなりあるいはそういった部位のものを放出するなり、そういったことがやはり必要なんじゃないかと思うのですね。そういうことに対する努力というのは果たして行われておるのか、行われておらぬのか、これはやはり監察結果の勧告に対する一つの重要な反省点だと私は思うのです。  それからもう一つは、価格安定のために食肉卸売市場の果たす役割りが大きいということは、これは農林水産省も認めておられるだろうと思うし、事業団も認めておられると思う。ところが、いまお話を聞きますように、食肉卸売市場に対して放出されるのが二六%程度。で、五五%以上じゃないですかね、需要者団体売りが。そういうような売り渡し方法自体もやはり、価格安定に効果あらしめるような輸入牛肉放出考えた場合に、当然再検討しなければならぬのじゃないかと思うのですが、その点、どうでしょうか。
  20. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に御指摘の、そういう制度の安定的な運用のために必要な部位輸入あるいはその放出ということが必要じゃないかという御指摘でございますが、御承知のように、私どもの現在の輸入の中では、かなりの部分をいわばハイ・クォリティー・ビーフと申しますか、高品質のものと言われているものもだんだん量をふやしてまいっております。ただ実際の運用で見てみますと、和牛の「中」という品種牛肉は、比較的品位がだんだん高くなってきているというような問題もございまして、輸入する牛肉品質の問題にあわせて、国産牛肉のどこを支えるかという問題、特に和牛の「中」というものが非常に高品位のものにまで及んできているというような現状もございますので、そういう牛肉のいわばどこの点を支えることが一番合理的かというようなことも含めまして、現在さらにそういう牛肉品質の評価というものを、見直しのための勉強を開始しているわけでございます。しかし、幸いなことにその後の運用におきましては、五十四年あるいは五十五年のような、非常に長い期間上位価格を超えるということはできておりませんが、御指摘のそういう事態十分頭に置きまして、さらに国産牛肉のいわば品位というものをどういう形に分けるかという問題と、それに必要な輸入をどうするかということを詰めていきたいと思っております。  それからもう一点、御指摘のありましたことでございますが、市場売りと需要者に対する売り渡し割合でございますが、現在の比率は、国産牛肉について行われております比率とほぼ同じ比率で市場売り、団体売りをやっているわけでございまして、比率自身はほぼ適当な水準ではなかろうかと思っております。ただ、その売り渡しの仕方あるいは方法、現在月一回売り渡し等も行っておりますが、たとえばその需要等の変動が非常に大きいときは売り渡し回数をさらにふやすとか、いろいろそういう方面についてはなお慎重に詰めるべきことがあろうかと思います。  それから、市場売り、団体売り割合等につきまして、それ以外に直接小売に対する売り渡しもございますが、こういう比率につきましても、将来の問題といたしまして、どういう形が本当にバランスのとれた形かというようなこともなお検討してみたいと思っております。
  21. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、一つはこういうことですか。市場売りの率というのは現在の割合ぐらいでいい、こういうお考えなんですね。  それからもう一つは、放出の量がずっと牛肉が高騰しておるときに適切でなかったのじゃないか、そういうことも私は監察のグラフなんか見ながら感じておるのですが、たとえば五十四年の四月ごろから五十五年の二月ごろまでにかけては、和牛牛肉乳用牛牛肉もいずれも上がっていっているのですね。そのときの放出状況を見てみると、七千トン以上放出しておるというのが、五十四年の六月に一遍ですか、それから五十四年の十一月、十二月、さらに五十五年の二月、四回ぐらいですね。     〔委員長退席田名部委員長代理着席〕 そこで、その放出をやって、乳用雄牛牛肉は大体上限価格より下がり出した。しかし和牛牛肉の方は、上限価格を超えてずっとそれ以後横ばいの状態が続いておる。ところが一方、輸入牛肉の在庫量の方を見ると、五十四年四月に約一万三千トンですか、それがずっとふえていますね。そしてふえ続けて、五十五年の十月に三万二千トンですか、それから五十六年の十月には三万七千トン近い状況になっているわけです。  こういう状況を見ると、品質部位の問題もさることながら、売り渡しの量、放出の量というものがやはり余りにも少なかったんじゃないかな、価格安定のためには売り渡し量をもっとふやすべきであったんじゃないかなという感じがするのですが、この点はどうですか。
  22. 森整治

    森参考人 確かに数量が一番問題でございます。このときは、五十五年につきましては十三万五千トンに近い、十三万四千トンのベースの割り当てがございまして、事業団も全部使い切っております。もちろん最近割り当ては全部使っております。したがいまして、このときは、五十七年が全体で十三万五千トンでございますから、それに近い水準の売り渡しを行っておるわけでございまして、精いっぱいやったというふうに思っておりますが、なお足らなかったのではないかと言われますと、結果論としましてはそういうことも言えたかもしれません。しかし私どもは、ともかくこの数量というのは相当なものだったというふうに考えております。  それから、在庫の問題でございますが、実は五十五年の、たしか春、吉野家さんの倒産問題が発生いたしました。そういうことで、この五十五年というのは、民間の肉屋さんの倒産の最大の件数のあった年でございます。われわれそういう問題も、乳雄が下がりだしまして、どの程度で売っていくかということについては実は大変頭を悩ました時期でございまして、倒産の足を引っ張るという結果にもなりかねないし、かといって和牛は高値をいく、それから乳牛は落ちてくるということで、操作にはいろいろ苦労をした時期でございます。最近、そういう意味で品質につきましては、チルドが高値に対しては非常によく効くと思います。それから部位にいたしますと、ロイン系統、しかもグレーンフェッド、穀物を食べさした牛のロイン、ストリップロインなりヒレなりですね、そういうものが値段に相当影響を与える。そういうものをまた勘案しながら、さらに新しい品目も追加しながら、今後いろいろ考えていくべき問題だというふうに思っております。
  23. 矢山有作

    矢山委員 価格の安定には、先ほどもちょっと出ておりましたが、売り渡しをする牛肉の種類や部位、そういったものを市況に合わせて適量放出をしていくというような操作をやるのだろうと思うのであります。しかし、その操作というのがなかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。というのは、われわれちょいちょい聞くのに、畜産業界の有力筋の方から圧力がかかるというか、今度の入札のときには何を出せとか何を出さぬようにしろとか、そういうことを言われたりするようなことがいろいろあるのだということを聞いておるのですが、これはどうなんでしょうね。  というのは、私が思うのに、やはり市況をつかむのに、つまり市況の状況をつかむのに畜産事業団が十分独自でつかめるようなことになっておるのか、あるいは食肉専門業者あたりから市況状況等をつかまなければ十分につかめないようなことになっておるのじゃなかろうか。そういうことになると、市況をつかむということからして、いま言ったような、圧力という言葉は適当でないかもしれませんが、業界有力筋からいろいろな話が出て、それに従わざるを得ないということにもなりかねないと思う。そういうような気もするのですがね。それから、畜産振興事業団理事の中には、非常勤だと思うが、業界の有力者も入っておるというような状況等もありますので、そういった懸念を持っておるのですが、この点はどうなんですか。
  24. 森整治

    森参考人 先生のいま御指摘になりましたような御懸念は、私どもは持っておりません。  では、情報はどうやってやっておるかといいますと、そういう特定の人からの圧力といいますか、そういうことがないように、むしろ当然東京と大阪の屠殺頭数と価格の動向は毎日その日のうちに把握しておりますし、それをもとにいたしまして、われわれが売っておりますものの仲間相場というのが立っております。これは毎月二回くらい定期的に、定例的に事業団で報告を受けておりまして、それから毎月の民間の在庫も、これも特定の筋からといいますか、相当公の筋から入手をしております。それからもう一つは、卸とそれから生産団体あるいはメーカーあるいは外食関係のレストラン、そういうような業界の代表者と毎月意見を交換しております。そういうことによりまして需給の動向を把握しながら、その月々の売却を決めておるわけでございます。  それから、事業団の非常勤理事に業界代表といいますか、業界御出身の方が六人のうち三人、あと生産者関係が三人。業界関係が三人おられますけれども、この方々は、予算なり決算なり、それから事業計画、そういう基本的な事項の際に非常勤理事も入れた理事会を開催いたしておりますが、常時は常勤の役員だけでその都度の価格なり数量なりを決定しておりまして、輸入牛肉につきましては結果を御報告するというにとどまっております。これがいいか悪いかわかりませんけれども、現在の運用はそういうことになっておりまして、むしろそういう業界の方々には、大局的な見地からのいろいろ見方なり、あるいは今後どういうふうに考えていったらいいかというような方針なり、そういうものにつきまして御意見を承るというふうに考えて、またそういうことで運用しておるわけでございます。
  25. 矢山有作

    矢山委員 価格安定の問題につきましては、いずれにいたしましても価格の安定に十分役立つような品質、種類の牛肉確保するという問題、それから輸入牛肉を市況に合わせて適質なものを適量、適期に放出をするということ、また売り渡し方法について等々行管当局も指摘しているところでありますから、これらの問題、いままでの運用の実績というものを十分検討しながら、この価格安定制度が十分な効用を発揮するように、今後の努力を特に要望をしておきたいと思います。  次に移りますが、事業団はいわゆる差益金を財源にして、畜安法に定めておる指定助成対象事業に補助または出資を行っておりますが、この事業は効果的に実施されておるのかどうか。監察の結果を見まして、助成や補助の対象領域が分散し過ぎておる、つまり総花的になり過ぎておるというような嫌いがあるように感ぜられます。特に、肝心の肉用牛の生産振興対策というものが重点的に取り上げられるべきだと思うのですが、この点がそうなってないのじゃないかというふうに思います。  そこでまず最初に、行管庁の方の監察結果の要点を、先ほどのようにかいつまんで御説明をいただきたいと思います。
  26. 堀江侃

    堀江説明員 お答えをいたします。  指定助成対象事業につきましては、多種の事業が行われておりますが、個別事業の中には、実績が低調なもの、事務処理手続の不適切等によりまして円滑な実施が図られていないものなどの例が一部で見られました。したがいまして、肉用牛の生産振興対策を中心として重点的な事業の実施についての検討を求めましたほか、円滑な事業実施のための指導監督の強化について勧告をいたしました。
  27. 矢山有作

    矢山委員 そこで、この勧告に対して農林省の見解と、これに対する具体的な対策を御提示願いたいと思います。
  28. 石川弘

    石川(弘)政府委員 この指定事業につきましては、御承知のようにかつては相当差額が多うございまして、年間に差益が四百億を超えるような事態もあったわけでございますが、御承知のように、内外の価格差がだんだん縮小してまいっておりますので、結果といたしまして売買差益は縮減の傾向でございます。したがいまして私どもは、せっかく出ております差額を国内の牛肉の生産の安定化なりあるいは流通の改善のために重点的に使うべきものと考えておりまして、御指摘のいろいろな点を踏まえまして改善をいたしたいと思っております。  まず第一に全体として申し上げますと、この差益の非常に多くの部分は、やはり牛肉にかかわる牛関係に使われております。これは酪農というものにも使っておりますが、御承知のように国内の牛肉生産の七割はこの酪農から出てきておりますので、私どもは肉用牛とそれから酪農というものに、大体各年、どんなに少ない年でも八割以上、普通の年は九割以上これに充てているわけでございまして、これは今後も、そういういわば肉の供給の安定ということを眼目に考えていきたいと思っております。  その場合に、実は生産対策と流通、消費対策ということに大まかに分けておりますが、実はこの生産対策なるものも、結果的には国内の牛肉の生産者の価格を極力上げないで済むように、御承知のように牛肉の支持価格は過去二年間、ことしも含めまして据え置いておりますし、過去数年さきをさかのぼりましても非常に低い上げ幅にとどめておりますが、そういうことができますように、生産の基盤を整えるためとか、あるいは生産者が負債を抱えております場合の負債の整理のためとか、そういうことに、大体全体の数量で申し上げますと、まあ七割程度のものが投入をされております。  そのほかに流通対策といたしまして、たとえば食肉の流通施設整備しますとか、あるいは生協等が産地と直結しました牛肉を供給する事業とか、そういういわば流通関係の対策に、肉に投入されるもののほぼ三割程度のものが投入されるわけでございます。  それから、これは差益ではございませんが、御承知のように一種の安売りをやっておりまして、これは差益を生まないという形で結果的に消費者に還元するということもやっているわけでございます。  以上申し上げましたような形で、特に最初に申しましたように、差益は順次縮減するという厳しい現実のもとでやらなければいかぬわけでございますので、御指摘がありましたように、重点的かつ効率的に事柄が行われるよう見直しをしていくつもりでございます。
  29. 矢山有作

    矢山委員 そこで、これを見ると、いま私は鶏だとかあるいは卵だとか豚、こういったものはもう国際競争力を備えてきておると思うのですが、行管指摘しておるところも、一部そうした国際競争力に不安のないものにもかなりこの差益金が使われているんじゃないか。事業数にすると三十数%くらいになっておるようでありますが、先ほどお話がありましたように、差益金も縮小の傾向にあるというふうにおっしゃっておるときでありますから、できるだけそういったもう競争力を備えて余り不安のないものについて支出をするというよりも、先ほど来のお話牛肉生産対策、特に肉用牛の生産対策について重点的にこれを向けるようにという努力を一層お願いしたいと思います。  その次に、牛肉流通の近代化、合理化の促進と公正な取引の確保のために、一、二お尋ねをしておきたいと思います。  牛肉の流通につきましては、その近代化、合理化及びその公正な取引を阻む慣習あるいは制度がたくさん残っておる、それがどうも障害になっておるということが言われておるわけでありますが、そういったものの改善のために農水省は一体どういう措置をいま講じておるのか。それからもう一つは、公正な価格形成を目指して卸売市場法を制定するなどやって、中央、地方市場の設置に金をかけてきておるわけでありますが、最近の利用の実績というものはどういうふうになっておるのか、こういった点を御説明をいただき、それから行管からの指摘もあったはずでありますから、そういう指摘に対してどう対応するかということもあわせてひとつ御見解をお示しいただきたいと思います。
  30. 石川弘

    石川(弘)政府委員 食肉に関する流通でございますが、御承知のように、かつての食肉、大都市まで生体を持ってきまして屠殺をするというようなことでは、これは効率も上がりませんし、またいろいろ衛生上の問題もございますので、私どもの基本的考え方は、極力産地に近いところ、産地で処理をする、そうしまして価格形成上、必要な大都市の卸売市場で大量のものを上場いたしますことによって価格を形成していく。ですから、一つは産地における食肉センターの整備と、それから都市周辺におきます食肉市場の整備、この二つを使いまして流通の改善を図るということでございます。  産地の食肉センターにつきましては、おかげさまでかなりの整備ができてまいったわけでございますが、今回の指摘の中にも若干ございますが、そのつくられました規模と、現実にそこで行われます事業量との間に必ずしもバランスがとられていないという問題もございます。これはやはり新しいセンター等を設置します場合に、旧来の施設を統廃合しながらやっていく必要があるわけでございますが、その間の関係が必ずしも十分でない場合もございますので、これらは産地の食肉センターの整備とあわせまして、いわば既存の施設の統廃合というようなことも図り、その機能を強化したいと思っております。  それから食肉市場につきましては、これは中央卸売市場のほかに地方の卸売市場等も整備ができてまいっておりますので、極力そういうものに上場されます量というものを安定的にするためのいろいろな努力をいたしております。  市場における取引の公正化の問題につきましては、食品流通局長からお答えいたします。
  31. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 食肉市場の整備につきましては、現在、中央卸売市場が十、地方市場が十六にまでふえてまいってきております。中央卸売市場につきましての施設整備につきましては、主として既存の市場の内部の施設整備、冷蔵庫等の整備等でございます。あるいは新設の場合でも、既存の市場の移転をするという場合が多うございまして、現在進行中のものも大部分がそういった状況でございます。今後とも、取引の改善のために必要となります施設整備等につきましては、できるだけの助成をしていきたいというふうに考えております。
  32. 矢山有作

    矢山委員 そこで、食肉卸売市場の入場頭数が大体全体の四〇%程度、それからその市場に上場される分、つまり市場流通量ということになるわけでありましょうが、これは大体三〇%程度だと言われておるわけであります。やはりこの状態から見て、この食肉卸売市場を通しての流通、つまり卸売市場への上場量というものをもっと上げていかないことにはいけないのじゃないかという気がするわけでありますが、つまりそれがふえてこぬと卸売市場の機能が十分全うできぬわけでありますから、だからその市場流通量をふやしていく、つまり上場量をふやしていくためには、具体的にどういうふうなことをやったらいいのか、この点をどうお考えになっているか、ひとつ承っておきたいと思います。  それからまた、先ほど食肉センターの問題も答弁の中に出てきましたが、食肉センターの整備も大分進んでおりますね。ところが、この食肉センターの中に稼働率の低いものがあるというようなことも指摘されておるようでありますが、そうしたものの稼働率、機能、これを高めていくためには具体的には一体何を考えておるのか、こういう点をお聞かせいただきたい。
  33. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のございました搬入頭数と実際に競りにかけられます上場頭数とのずれというのは、確かにあるわけであります。これはよく言われることでございますが、市場ができました歴史的な背景といたしまして、多くの場合、屠場がありまして、屠場が発展して屠場併設の市場になり、そこで取引が行われるようになってきたというような歴史的な経過というものがその最大の原因であるわけであります。これを一挙に入場頭数と上場頭数をイコールにするということは、長年の取引の慣習等々ございますのでなかなか現実問題としては困難な問題も多いわけでございますが、その間のずれをなくすための努力はこれからも続けていきたいと思っておるわけであります。  それから、そういうことも含めまして上場頭数をふやすということにつきましての御指摘、まさにそのとおりでございまして、どういつだことがそのために有効であるかという幾つかの点が指摘されているわけでありますが、たとえば、先ほども先生若干お触れになりました、取引の際に、屠殺したものをすぐ温屠体で取引をする場合、そうではなくて産地で枝肉にされたようなものの搬入量をふやす、あるいは市場で屠殺されても、一日置いて冷屠体にして取引をするというようなことも一つの要素としてあるわけであります。現在、冷屠体取引を行っている市場は中央卸売市場の場合には半分の五市場しかないわけでありまして、冷屠体取引の方が、取引の場合におきましても温屠体取引に比べまして肉質もいいとかあるいは取引時間に拘束されることが少ないということによる労働力の有効利用が図られるというように、取引面におきましてもすぐれた面があるわけでありまして、そのために必要な冷蔵庫等の設置につきましてはできるだけの助成をしてまいったわけであります。現在、たとえば中央卸売市場の中でも大阪の場合は移転をするという計画を持っておりまして、新しい市場を建設中でございますが、そういう建設中の新市場ができ、そこで取引が新しく始まるというようなときを契機に、温屠体取引から冷屠体取引に切りかえるというような計画もあるわけでございます。こういったことも含めまして、市場の上場量の増大に努めてまいりたいというふうに考えております。
  34. 矢山有作

    矢山委員 それから、この市場の上場量をふやすということと並んで、食肉センターの機能の向上ということで、監察の上で行管の意見というのは、卸売市場と食肉センターとの有機的な連携というのですか、そういったものを指摘しておるようでありますが、これにこたえていくためには具体的にはどういうことが考えられるわけですか。
  35. 石川弘

    石川(弘)政府委員 食肉センターは、単にそこで解体いたしまして製品にするという以外に、それが安定的に消費地の市場に流れる必要がございます。  一つは、先ほど食品流通局長からお話ししましたように、卸売市場へ冷屠体の形で送りまして、そこで上場量をふやす。そういうことのためには、いわば産地のセンターとそれから卸売市場との間に安定的にかつ長期的に荷が出せるような、そういう提携と申しますか、そういうことをすることが一つだと思います。  さらにもう一つは、御承知のように、さらにカットいたしました部分肉にして、実は御承知の川崎に部分肉センターという大変大規模な施設を持っておりますが、こういう施設と、産地のそういういわば食肉センター、これを経営しておりますもの、非常に多くの部分が農業協同組合系統の団体等が中心でやっておりますが、そういうものとの結びつきも強化して、そういう部分肉センターにも荷を送る。いわばこれは一種の商業ルートの提携ということになろうかと思いますが、そういうことをさらに進めるように、系統団体とかあるいはそういう卸というものとの話し合いというようなものを進めさせていきたいと思っております。
  36. 矢山有作

    矢山委員 いずれにしても、この牛肉取引というのは、われわれも余りよくは知りませんが、なかなか古い慣習というのか、そういうようなのがあって、それがやはり農林省が考えておる流通の近代化、合理化というところにすぐ即応してこない原因になっているんじゃないかと思うのです。したがって、そういうような古い因襲というか、取引慣習というか、そういったものをなくしていくということが一つは要るんだろうと思うのですが、これはなかなか長年の慣習ですからむずかしいと思いますが、それをなくさなきゃやはり流通の近代化、合理化、公正な取引ということはできないわけですから、そういった点で農林省、どういうふうに考えながら指導といいますか、そういう手を打っておられるんでしょうかね。
  37. 石川弘

    石川(弘)政府委員 食肉も農業生産の三割を占めるような大産業でございますので、よく言われますような何か古い体質ということだけではとてもやれるものではございませんし、また特に輸入牛肉というようなことになりますと、向こうの非常に巨大な産業から出てくる品物でございます。私ども常々食肉関係の各種の団体ともいろいろと密接に情報の交換をしたり、あるいは話し合いの場を持ったりいたしておりますし、それから現に生産者団体自身も、食肉が占めます生産量は大変大きくなっているわけでございますので、生産だけではなくて流通にも相当参画してきております。したがいまして、そういうお互いの大きな経済事業の推進という面での協力とか、それから、現に新しい施設をつくり新しい進んだ取引をするあるいは物流をするという中で、私は、かつて言われているような食肉というのは何か非常に特殊な形のものではないということはすでにだんだん定着してきておると思いますけれども、いま申し上げましたようなことを根気強くやることによりまして、御指摘のようないわば近代的な産業として生産、流通が今後とも伸びるように指導していきたいと思っております。
  38. 矢山有作

    矢山委員 昭和六十五年度の牛肉需要見通しとして、農林水産省の試算がおよそ九十万トン、それから生産の見通しが六十万トン、三十万トンの不足が今日予測されておるようであります。  そこで農林水産大臣にお伺いいたしたいのですが、大臣はこの前、五日の閣議後の記者会見で、牛肉、オレンジの輸入枠の拡大をやるんじゃなかろうかというようなニュアンスの発言をしておられるようであります。そこで国内の肉牛生産との関係で、これはそういうことになるとするなら事はきわめて重大であると思いますので、予定されておる酪農振興法の一部改正案とも関連をさせて、大臣の基本的な見解を承っておきたいのであります。いかがでしょうか。
  39. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御指摘の点でございますが、私は終始一貫、牛肉、オレンジの自由化はもちろん、枠の拡大もこの時期必要ではない、こういう主張を続けてまいっております。その基本的な私の考え方は変わっておりません。  ただ、中曽根総理が一月に訪米いたしました折に、この問題について事務レベルで専門家に冷静にひとつ今後協議を続けてもらおう、こういう約束をして帰っておりますので、やはりアメリカとどのような協議をしていくのか、その手順なり、内容にまで立ち入って検討していかなければならない必要があるわけなんですね。したがって、先般、七日の日に佐野経済局長アメリカに差し向けまして、一昨日帰ってまいりました。帰ってきての報告で、いろいろアメリカ側の感触を聞きました。それは従来の感触と余り変わってない、非常に強い姿勢で日本にこの市場開放を迫っておるというようなことでございます。そこで、いつまでもただ空回りをするような協議をするわけにはいかないので、一体どのような対応でまずこの問題に取り組んでいけば、アメリカが市場開放、自由化を盛んに強調してごり押ししておるのが態度を変えてくるのか、態度に変化があるのかということも見通してひとつ見きわめをつけなければならないわけなんです。そのために、今度いわゆる事務レベルで私のところの経済局長アメリカを訪問する場合は、ある程度、いままで枠の拡大もこの時期に必要はないと私が言っておりますけれども、やはり来年四月以降の問題については、枠については当然話をしなければならない手順になっておるわけなんです。  ただ、現在の牛肉、オレンジの生産を見ると、オレンジは御承知のとおり生産過剰でございます。肉の方は、いま国内で生産されておるのが七〇%、したがって約三〇%はアメリカと豪州から入っておるのでございます。実際、需要が伸びて供給が足りないというような事態が起これば、それはやはり国民に食糧を安定して供給しなければならないという考え方に立ちますと、それに対応した輸入もしなければならないでしょう。ところが私の見たところでは、現時点では足りないということはないので、枠を拡大して輸入をふやす必要はないではないか、こういう主張を続けておるわけでございます。  それで、これから交渉に入りまして、わが国の国内の農業で特に競合する柑橘、牛肉の生産業者、団体、こういう方々の御意向が、どの辺までもし枠に手をつけようとすれば譲歩ができるのかどうか、あるいはこんりんざい、これを少しでも広げたら日本の農業は崩壊するのだというようなたてまえで今後も進むのかどうか、まず生産業者、農業団体、こういう方々の意向を打診する必要があるということで、きょうからいろいろそれぞれの団体に御意向をお聞きするようにいたしております。
  40. 矢山有作

    矢山委員 大臣の基本姿勢としては、オレンジ、牛肉輸入枠の拡大には反対であるという態度はわかりました。  私は、現在の日本の畜産の状況等から見て、いま輸入の枠が大幅に拡大されれば、とても国内の畜産はもたぬと思うのです。しかも考えてみますと、ここ十年くらいですか、国内の自給率というのは、牛肉については九〇%から七〇%程度に下がってきておりますね。そこへもってきて世界的な牛肉需要というのは今後逼迫するだろうということも伝えられておるし、それから日本の牛肉消費は今後やはりふえていくだろうということも伝えられておるわけです。そうなると、これは国内での食糧確保という点から、牛肉についてはできるだけ国内生産を強化するということこそがとられるべき方策であって、輸入枠を拡大することによってその生産を減退させるようなことがあってはならぬと思うのです。特に国内の牛肉の生産に伴う牛の飼養をやるわけですから、その牛を飼うということは一般の作物耕作、農業全般の上にもいろいろな意味で重要な意味を持っておるわけであります、土地の問題とかその他。したがって、輸入枠の拡大についてはそう軽々にというか、もう原則的に応じないという態度を私はぜひ堅持してもらいたいと思う。しかもアメリカが言うように、輸入の枠の拡大拡大と言ってみたところで、これをただ拡大しただけであるなら、恐らく日本に入ってくるのは、大量に入ってくるのはオーストラリア、ニュージーランド等の肉の方がむしろアメリカの食肉よりは安いのですから、その方が入ってきてしまって、アメリカ自体にはそんなに効果のない話だと思うのです。そういった点も十分勘案をしながら、ひとつ対処をしていただきたいというふうに強く要望をしておきます。  そして私は、こうなってくると国内における牛肉生産コストをどう下げていくかということが重要な課題となってくると思います。先ほど言いましたような、酪農振興法の一部改正によって牛肉の生産にも積極的に取り組まれようとしておる点はよく理解できます。しかし同時に考えなければならぬのは、行管指摘にあったと思いますけれども乳用牛牛肉、これの伸び率というのは、いままではかなりのテンポで伸びてきたが、今日の段階で将来を見通した場合に大幅な伸びは余り期待できないというふうに見ておるようです。そうすると、農業との関連考えましても、和牛牛肉をふやしていくということが一つの重要な課題になってくるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけですので、その点で最近の飼養の問題についても、関連をして多少言いましたけれども、この和牛牛肉の生産増加ということも重視して対応していただく必要があるというふうに思いますが、大臣の所見を承っておきたいと思います。
  41. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御指摘のとおりです。  わが国は豪州、アメリカとは全く土地条件が違うのでありますから、生産性を高め、コストをダウンさせて、まずEC並みのいわゆる牛肉と同価格ぐらいには一日も早く持っていかなければならない。それがためには、食肉を初め畜産の基盤整備をやることが何より緊要だと考えております。したがって、ずっと見ますと、生産は五、六%ずつ伸びておりますが、需要が少し上回っておりますので少しずつ足りなくなってくるというような傾向になっておるわけでございますし、それは穀物も含めて食糧の自給率をいかにして高めていくかという農政の基本方針でもありますから、畜産についてももっとコストダウンをさせて、安上がりの生産を目標としていろいろな政策に農林省ではこれから積極的に取り組んでまいらなければならない、このように考えております。
  42. 矢山有作

    矢山委員 和牛牛肉の供給をふやしていくために、すでに農林水産省では繁殖雌牛の導入、子牛価格安定制度に係る補助事業、それから公共育成牧場の整備事業などをやって繁殖雌牛の増頭を図っておるようでありますが、どうもその成果が必ずしも満足し得る状態にはないというふうに思われます。  そこで、特に生産コストを下げるという点から見て、公共育成牧場の持っておる役割りというのはかなりのものがあるのじゃないかと思っておるのですが、この公共育成牧場について十分な効果が発揮できていないような点も指摘されておるようでありますが、この点についてどういうふうに受け取っておられるか、また、そうした公共育成牧場の一層の効果的な活用といいますか、そのために具体的にどういうふうに対処したらいいとお考えになっておりますか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  43. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生指摘和牛の生産の場合が特にそうでございますが、一番ネックになっておりますのが子牛をつくる段階でございます。これは御承知のように、非常に規模が零細であるというようなこともございまして、その子牛生産のところの安定というのはなかなかむずかしゅうございまして、いま先生お話もございましたように、子牛の価格安定制度とかいろいろな家畜導入制度も、これを極力安定するために考えられ、また実行された制度でございます。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 おかげさまで、非常に零細だとは言っておりましたけれども、最近は母牛を五頭以上持っている方が生産する牛が四割を占めるというぐらいにだんだん最零細の子取り経営も大型化をしてまいっておりますが、それをやります場合にやはり一番問題はえさでございます。  そのえさというのは結果的には草地でございまして、これがなかなか個人ではむずかしいということがございまして、いわば市町村とか農協が公共育成牧場をつくりまして、そこで極力安い値段で放牧をする、こういうのが公共育成牧場でございます。これは従来からの草地改良事業等で建設を進めまして、いろいろと整備はされたわけでございますが、今回の行管の御指摘にもございますように、整備をされて大変うまく活用されているものもございますけれども、一部のものにつきまして必ずしも十分じゃないというものがございます。私ども、そういう面からこの公共育成牧場をもう一遍見直しをしてみる必要があると思っておりまして、いろいろと各種調査もいたしまして実態を把握したわけでございます。  先ほど申し上げましたように、非常によく使われているものもございますが、一部に、周辺の家畜を飼っていらっしゃる方々の状況が変わってきたとか、あるいは草地の管理技術が必ずしも十分でないとか、そういうようなことも見られましたので、五十八年度から新たに公共育成牧場の再編整備と利用農家の飼養基盤等の一体整備、これは夏山冬里方式とか申しまして、夏は公共牧場に放牧をしまして、冬になりますと自分たちのところへ連れて帰るわけでございます。そういう場合に、公共牧場はある程度整備されているが、自分の里へ連れ帰った場合に草地が足らないというようなもの、これを一体として整備するといったような新しい事業を考えておりますし、公共育成牧場を現実に使います利用計画とか、あるいはそういうことをどうやって仕組むかという指導事業、そういうものも考えております。  さらに、放牧の際に問題となります放牧上の衛生問題、ピロプラズマとかそういういろいろな問題がございますので、これらにつきましてもさらに畜産総合といったような施策の中に織り込みまして、公共育成牧場をその地域の大家畜生産の中核にするというような形で、新しい事業、新しい助成等を含めましてこの牧場整備をさらに前進させたいと思っております。
  44. 矢山有作

    矢山委員 農林水産省としては、繁殖雌牛の飼養頭数の伸び悩みが子牛生産の収益性の低さや子牛価格の不安定性に根差すものである以上、牛肉輸入の自由化とか輸入枠の拡大とか、絶えず不安を抱いておる生産者、農民が、安心して牛飼いに専念できる政策的な裏づけこそ頭数増加を実現する要件であると思います。したがいまして、これにつきましては先ほど来いろいろな見解が示されましたが、行管監察結果に基づく勧告等も踏まえ、さらに実態を農林省みずからが十分に把握をされまして、着実な対策を展開をしていただきたいということを特に要望いたしまして、次の質疑に入らしていただきたいと思います。  生産対策を推進するためには、ただ単に飼養頭数をふやせというだけでは不十分であります。当然生産費を引き下げ得る生産方式の確立に向けての対策が必要となります。コストの引き下げは、単に牛肉を安価に供給する基礎となるだけでなく、対外競争力とも関係をして、国産牛肉の足腰の強い生産基盤を固める上にきわめて重要な課題であります。  ところが現状は、濃厚飼料依存度の高い肥育方式、肥育期間の長過ぎることなどが阻害要因となっておりまして、容易にコスト低減が実現をしておりません。この点につきましては行管庁指摘をされ、改善の必要を勧告しておられるとおりであります。農林水産省は、すでに昭和五十五年の十二月の家畜改良増殖目標の設定以来、肥育期間の長期化、濃厚飼料の多給を避けよという指導を始めていらっしゃいます。肉用牛生産の方式を変え、飼料構造を変えるということについて指導を徹底していく自信はお持ちでしょうか、お伺いをいたします。
  45. 石川弘

    石川(弘)政府委員 経済的な肉用牛の肥育をいたします場合には、いま御指摘がありましたように、極力飼料基盤、要するに自給飼料の給与率を高めるということと、それから合理的な肥育、特に肥育期間等も含めました合理的な肥育をするということにかかるわけでございます。  そういう意味で、私どもまず飼料基盤整備につきましては、これは大変じみな仕事ではございますが、いろいろと予算の制約の中でも、この飼料基盤整備に政策の非常な重点を置いてまいっておりまして、ことしの公共事業の中でも、わずかではございますが、前年を上回る予算を割いておりますし、さらに畜産総合といった補助事業、それから先ほど御指摘のあった公共牧場の再整備の問題、こういう形で極力自給飼料の比率を高めるように努力をしていきたいと思います。  それからもう一点は、まさしく御指摘がありました経済肥育のために肥育期間というのが適正に行われるかどうかということでございます。この問題は若干牛肉品質にも絡みまして、一般的に品位の高い牛肉を求めることから肥育期間の長期化が行われているという面もございます。したがいまして、これは私どもは余り、よく言われます奢侈志向といいますか、そういうことのためにいたずらに期間が長期化したり、あるいはいわゆる穀物で飼育する時間が長くなったりということは決して生産者にとってもプラスではございませんで、先生から御指摘のありました改良増殖計画の中でも、期間をある程度短くする方がより効率的であるということをすでに明らかにしているわけでございますが、残念ながらそういう肥育期間が若干ずつ延びてきたということには重大な関心がございます。現に私どもの指定助成事業の中でも、経済肥育を推進する、そういう経済肥育をしたものが市場でも適正に評価がされるようにというようなことをねらいました実験的事業もいたしておりますが、いま御指摘がありました点も踏まえまして、この粗飼料給与率の向上とか肥育期間の改善ということを大きな政策の柱にしたいと思っております。今回法律を改正いたしまして、酪振法を酪農及び肉用牛生産振興法といたしますが、その中で国が基本的方針を定めて、それに基づいて県あるいは市町村が計画をつくっていただくことになっておりますが、その際にもこの粗飼料の給与率を高めるようにすることとか、あるいは合理的な肥育期間に合理的手法で肥育をするということは国の大事な方針として掲げまして、これが周知徹底できるようにやっていきたいと思っております。
  46. 矢山有作

    矢山委員 いまおっしゃったように、農林水産省としては肥育期間の問題やあるいは粗飼料の給与率を上げることに相当努力しておられるようですが、なかなか傾向としては粗飼料の給与率は上がってないし、というのは逆に濃厚飼料に依存する率がふえておるし、肥育期間もなかなか短縮してないというような状況にありますから、これはさらに一層徹底した指導が要るだろうと思います。ひとっこの点につきましては一層の御努力をお願いしたいと申し上げておきたいと思います。  その次は、この肉用牛における肥育期間の長期化の傾向というのは、いわゆる霜降り肉志向を温存する、旧態依然たる業界主導とでも言うべき格づけや取引の慣習というものが隠然として残っておるというこの事実に私は由来しておると思います。畜産における古くて新しい問題でありまして、いわば近代化を指導し続けてきたはずの畜産行政の恥部であります。これを克服していくための具体策というものをどういうふうにお考えになっておりますか、承っておきたいと思います。
  47. 石川弘

    石川(弘)政府委員 非常に高位のものをねらっていわば銘柄牛というものが行われているのも一部にございます。これは大変な高級志向というようなこともあって行われているわけでございますが、これらのものは実は総供給力のごく一部でございまして、そのごく一部のもののまねをするというとおかしゅうございますが、非常に確率の少ないものをねらって生産が行われるということであれば、これは大変生産者にとってもマイナスのことだと考えております。これはやはり取引規格の問題にも絡みますが、実はそういういまのごく一部のものを重視するほどではないわけでございますが、一般論として、わが国の場合はごく普通に、たとえば和牛の「中」と言われているようなものでもかなりそういう高位のものと申しますか、他の諸外国に比べればはるかに品位の高いものがどうしてもあるということでございます。  私どもは、これからの供給、たとえば先ほど申しましたように日本の牛肉の供給の七割は乳牛から出てまいるわけでございますが、こういうものにつきましては、そういう嗜好よりも現実的にもう少し経済性を重視したことをやりましても、結果的には外国から入ってきております肉よりもさらに品位の高いものでございますので、日本的な生産と言われているものでごく普通にやりましても外国のいわばハイクォリティービーフより品質のいいものができているということを考えますれば、余り高品質をねらう必要はなくて、むしろこれからの行政の指導の中心は、どうやったらコストを下げられるかということを中心考えるべきだと思っておりますし、また、そういうことが現実に消費にも結びつきますように格づけ問題その他につきましていろいろと勉強も始めておりますが、基本的な方向は、いま言いましたように、より安定的な価格で供給できるものが生産者も生産でき、そのことがまた消費者にも受け入れられるような生産、流通のシステムにしてまいりたいと思っております。
  48. 矢山有作

    矢山委員 行管庁の農水省畜産振興事業団に対する勧告は、さらに消費者対策にまでわたっておりまして、きわめて総合的な監察をやって勧告をされたようであります。  そこで、ここでお聞きしておきたいのは、行政監察に基づく勧告というもの、この勧告の性格、それから勧告に対する回答というものは一体いつまでに出すということになっておるのか、さらに、一回の勧告で是正や改善がされない場合の対応についてはどうなるのか、行管庁からひとつ承っておきたいと思います。  特に行管庁としては、せっかく監察をし勧告をしたわけでありますから、その趣旨に沿って是正なり改善措置がとられるまで、やはりしっかりこの監視をし督促をしていくということが必要じゃないか。監察をし勧告をして、何らかの回答があればそれで終わり、こういうことでは余り効果がないと思いますので、以上の点について行管庁の所見を承っておきたいと思います。
  49. 堀江侃

    堀江説明員 お答えをいたします。  行政監察に基づく勧告の根拠につきましては、行政管理庁設置法によりまして、当庁の「所掌事務及び権限」といたしまして、「各行政機関の業務の実施状況監察し、必要な勧告を行うこと。」こういうふうに規定をされております。  行政監察結果に基づく勧告は、所管行政の責任を有する各省庁に対しまして強制力を有するものではございませんが、当該行政の運営の実態に即しまして、いわば実証データに基づく改善、合理化の意見を提示するのでございますので、関係省庁が勧告の趣旨に沿った改善努力を払われるよう、行政管理庁としては期待をいたしております。勧告の効果確保する観点から、勧告実施後、原則として三カ月後、さらに九カ月後の二回にわたりまして、改善措置の報告を求めることといたしております。  一回の勧告によって改善、是正が図られない場合というお尋ねでございますけれども、当該行政の動向に注意と関心を払いまして、継続的に監視をいたしながら、新しい行政監察実施いたす必要が生じました場合には適宜実施を図っていく、こういう考えでございます。
  50. 矢山有作

    矢山委員 先ほどのお話のように、勧告それ自体には強制力はないわけでありますから、それだけに私は、やはり下手をすると勧告のしっ放し、通り一遍の勧告に対する改善案を示すということに終わりがちになるのじゃないかという心配があります。したがって、先ほどお言葉にもありましたように、一たん監察をして勧告した以上は、その結果が効果があるように継続して監視をし、改善されない場合には督促をするという措置は、ひとつ積極的にとっていただきたいというふうに思います。  それから、農林水産省に最後に要望いたしておきますが、行政管理庁がかなり克明な実態の調査もして監察をしたわけでありますから、そしてその結果として勧告案を出しておるわけでありますから、その勧告に基づいて、さらに農水省としても実態というものを十分把握をされて、そして勧告に対する措置はもちろんでありますが、実際に勧告が生かされてくるように十分に具体的な施策というものを展開をしていただきたい。特に財政的に厳しい状況でありますだけに、この施策の展開にはいろいろ困難があるとは思いますけれども、何しろお話のありましたような国内の食糧自給率を高めるということに大きな重要性をわれわれは感じておりますし、特に、増加傾向を続けておる牛肉の消費に対応して十分な供給をやっていくためには牛肉生産対策の強化ということは特に必要なことでありますので、十分な御配慮を願いたい、そして積極的に対処してほしいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  51. 橋口隆

    橋口委員長 次の質問者の予定がおくれますので、皆さんしばらくこのままお待ちください。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  52. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 中路雅弘君。
  53. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に二、三、法案に関連して御質問したいのですが、一つは、今回の法案提出に際して、農水省が行管庁の審査を受けられたほか、臨調に対しても説明を行って、その了承を取りつけられたと聞いておりますが、今回の二つ研究所設置二つ研究所の廃止に対して臨調はどういう理由でオーケーされたのか、お聞きをしておきたい。
  54. 角道謙一

    角道政府委員 私どもかねてから、農業生産性の向上につきまして、今後の農業発展のための非常に重要な課題であるということを常に痛感をしておりまして、特にこのためには農業関係におきます技術開発向上を図ることが必要である、そのためには、最近特に問題になっております遺伝子組みかえその他の先端技術、これを農業にどう取り込んでいくのか、また、最近におきまして特に土壌あるいは水その他の環境問題、これにつきましてどう環境管理をしていくか、そういうような問題に対処するためには研究体制を抜本的に組みかえ、強化をする必要があるということを考えていたわけでございますが、臨調におきましてもやはり、現在の専門別といいますか、そういう形の場、所のあり方につきましてどういう考えを持っているかというようなヒヤリングが当初ございました段階で、私どもいま申し上げたようなことを説明をし、そのために今回御提案申し上げております二つ研究所に再編をしていくという考え方をるる説明してまいったわけでございます。それについては、今後の農業の発展を図るために必要な方向であろうということで、今回の二つ研究所の再編案につきまして、臨調としてもこれは結構なことであるというふうに私ども部会で御了解を得たように理解をしております。
  55. 中路雅弘

    ○中路委員 臨調が八二年の九月十三日に、蚕糸試験場の農業研究センターへの整理統合等について指摘をされていますね。八二年の九月三十日に農水省の回答というのが出ていますけれども、要点は今度の法案に出ている中身です。附属機関等の農業試験研究機関について、このときは仮称ですが、農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所設置して、これに関連して農業技術研究所植物ウイルス研究所の廃止及び蚕糸試験場を大幅に縮小改組するという回答が出されておりまして、これがいまのお話で臨調でも了承されたと思いますが、そういう意味では、今度のこの改正内容は臨調の言われている行革の目指す方向の枠内のものだと思いますけれども、そのように理解していいわけですね。
  56. 角道謙一

    角道政府委員 私ども考えております研究所の整理の方向と臨調の方の考え方とがたまたま同一方向にあったという意味で理解をいたしております。
  57. 中路雅弘

    ○中路委員 農水省もそのように理解されているということですね。  もう一点お聞きしたいのですが、これは前回の委員会で同僚の榊議員の質問を私聞いておりまして特に感じることなんですけれども植物ウイルスの基礎研究ですね、これは新しい農業環境技術研究所でやると言っておられますが、予定されているのが細菌分類研究室、寄生菌動態研究室、土壌微生物分類研究室と説明されています。私は、果たしてここで植物ウイルスの研究が本当にやれるのか。また農業生物資源の研究所においてもウイルス研究がやられるということですが、分散するわけですね。いわば植物ウイルス研究所が新環境研といまの新農業生物資源研究所、それからウイルスの病理部門というのは農研センターに移管されるということになりますから、こうした中で、たとえばウイルス病理部門が農研センターに移管されるということになると、後は電子顕微鏡などの専門施設がないまま仕事ができるのかどうかということもありますし、こういう点で、ウイルス研究遺伝子工学等の研究の分野にだけ事実上限られてくるということについて、これまでの農作物のウイルスの被害というのは年間を通じても数百億と言われるくらいの大きな被害が予想、想定されているわけですし、この分野の研究に私は重要な後退を示すんじゃないかという危惧を持つわけです。しかも三年前の七九年に二十数億円かけて筑波に移って、いますぐこうした改組がやられるということについて大変危惧を持つわけですが、もう一度この点についてお尋ねしておきたい。
  58. 岸國平

    岸政府委員 お答えを申し上げます。  私は、植物ウイルス及びウイルス病に関する研究のポイントは、現在御指摘のように多数の作物に被害が出ておりますウイルス病の防除をすることである、そこが最終の目標であるというふうに考えております。  ただいま先生の御指摘にございました植物ウイルス研究所を、今回農業生物資源研究所並びに農業環境技術研究所を新設するに当たって廃止する。そのことによってウイルス病に関する研究が非常に弱体化するのではないかというような御心配をいただいたわけでございますが、現在私ども考えております中身は、前回のときにもお答えを申し上げましたように、ウイルス及びウイルス病に関する基礎的な研究は、農業環境技術研究所において行うということにいたしております。  一方、先ほど申し上げましたように、ウイルスに関する研究の最もポイントになるウイルス病の防除ということを目標にいたします研究につきましては、植物ウイルス研究所設置されましてその後すでに十数年を経過しているわけでございますが、その結果大変ウイルス病に関する研究の能力が私ども試験研究機関全般を通じまして上がってまいりました。その植物ウイルス研究所設立された当時に比べますと大変上がっておりまして、現在野菜のウイルスに関しては野菜試験場で、果樹のウイルスに関しては果樹試験場でかなりのところまで実施ができるようになっておりますので、その点については今後も一層研究充実していくということで対処いたしたいと思います。  それからまた、今回植物ウイルス研究所等の廃止との関係もございまして、農業研究センターにウイルス病の研究をする研究室を二研究室、いままで植物ウイルス研究所においても実施してまいりましたマイコプラズマ病に関する研究につきましても一研究室、農業研究センターに振りかえで新設をいたしまして、この方面の研究充実してまいりたいというふうに考えております。  そういうことからまいりまして、ただいま先生の御指摘にありましたようなウイルス病に関する研究が弱体化するのではないかという御指摘でございますが、その点については心配はないというふうに考えておりますし、今後そういうおそれのないように、各研究機関におきまして十分に連携をとりながら研究充実してまいりたい、そういうふうに考えております。
  59. 中路雅弘

    ○中路委員 私はいまのお話を聞きましても、やはり事実上廃止によっていろいろのところへ三つに分割されるわけですし、三年前に筑波に移転の際に二十数億かけて移って、三十数名ですか、研究員も置いてやったのが、直ちにまたこうした廃止になるということについては納得できないわけです。  もう一点お聞きしますが、農水省の皆さんが説明されるとおり、土壌汚染というのは非常に深刻な状態にあります。土壌汚染で苗代や稲が育たない、苗が育たない、あるいは土の盗掘が頻発しているというわけです。したがって、この土壌汚染のメカニズムの研究が急務になっている最中に、筑波では研究室の玉突き移動だということで、現農研の化学系の実験室の取り壊しが進められようとしているわけですが、植物ウイルス病が蔓延して対策強化が言われながらも、この植物ウイルスの研究のシステムがこうして解体されていく。農水省はプロジェクトの研究だとか応用研究で対応すると言われていますが、やはり基礎研究の蓄積があってこそいろいろ対策が立っているわけなので、基礎研究をつぶしていって応用研究というのが進むかどうかという危惧も大変持つわけです。この点はいかがですか。
  60. 岸國平

    岸政府委員 基礎研究が大変重要であるが、今回基礎研究を軽視するのではないかという御趣旨かと思いますが、農業関係の試験研究を進めてまいります場合に、実際に農業に役立つ研究をやってまいりますその基礎になる部分研究というものが非常に重要であるということは私どもも大変深く認識をいたしております。今回新設をいたします農業生物資源研究所農業環境技術研究所につきましては、いずれも基礎的な研究を行う機関として位置づけておりまして、先ほど先生の御指摘にありましたような土壌汚染の問題あるいは水質の問題、そういったようなことは農業環境技術研究所の非常に大きな研究部分として考えておりまして、基礎的な研究実施してまいりたいと思っておりますし、また農業生物資源研究所の方におきましては、主としてバイオテクノロジー関連をいたしますような基礎研究充実してまいるつもりでございます。その基礎研究充実させることによって、それにつながる農業に直接役立つ開発的、応用的、そういった研究をつなげて実施してまいりたい、そういうふうに考えております。  それから、先ほどの御指摘の中に、それに関連して農業技術研究所で土壌関係の実験施設を、せっかくあるものを壊すのではないかというような御心配の御指摘もございましたが、私どもはその点につきましては、先ほどの御指摘にもございましたように、筑波におきましてまだ新設いたしましてから日の浅い、しかも大変高額な予算をかけてつくっていただいております施設は基本的にそのものを有効活用するということを基本に置いておりまして、特に非常に専門的なあるいは特殊な実験をするような実験室あるいは別棟の施設、そういったものは現在ある姿をそのままで有効活用することを基本にいたしておりまして、むだな取り壊しとかあるいはむだな使用をしないように厳に努力してまいる、そういう考えでございます。
  61. 中路雅弘

    ○中路委員 他人の土を取ったり、せっかく育てたキュウリやスイカを焼き捨てたり埋めたりしなければならない農民の心に思いを寄せて、そこに研究者としての生きがいを見出している人たちも、私も筑波へ行きましたけれども研究者でたくさんおられるわけですね。新たな研究のロマンといいますか、先端技術開発研究活性化の道を求めるということについて一概に否定はしませんけれども、前の農政審議会の会長をやっておられた小倉武一さんもあるところで書いておられるのですが、日本の農業が絶対的な縮小にいま入っている、衰退から衰滅に向かっているのではないかということも言われておりますけれども、このような農業危機の中で、実際に役立つ研究ということでがんばっている人たちを激励するような、そういう立場での研究のあり方を私は特に強く要望しておきたい。そういう点では、そういう人たちの夢を壊すようなごり押しはぜひなさらないようにしていただきたいということを、要望を含めて、現地に行って研究者の皆さんと懇談しても強く感ずるのですが、この点についてもう一度御意見をお聞きしておきたいと思います。
  62. 岸國平

    岸政府委員 私どもも、先ほども申し上げましたように、研究を進めます場合に、基礎的なものと、その基礎的なものの上に農業に直接役立つ、農家に喜ばれるような技術開発と両方の面があって、その両方とも大変大切であるというふうに考えております。今回の二つ研究機関の新設にいたしましても、むしろ目的は大学における基礎研究のようなことをやろうとしているわけではございませんで、最終的な農業に役立つ研究のそのまた基礎になるところを実施をして、それを活用して農業に役立つ研究に使っていこう、そのために今回の二つの基礎的な調査研究を行う機関をつくろうといたしておりますので、ただいま先生の御指摘にありましたような点につきましては十分に配慮をいたしまして、研究者の活力を十分に引き出すような研究管理をいたしながら実行いたしたいと思っております。
  63. 中路雅弘

    ○中路委員 限られた時間ですので、私はあとの時間で、都市農業の問題について若干御質問したいと思います。  宅地並み課税の徴収猶予制度が五十七年度に創設されまして、市街化区域おおむね十アール以上の農地で十年以上農業を続けることを約束した農家は、宅地並み課税による増税分の徴収が猶予されて、五年たった時点で免除されることになりました。長期営農継続農地とも言われていますが、最初に自治省にお尋ねしますが、三大都市圏全体で、五十七年度長期営農継続農地の対象となる農地面積、それから実際に申告された農地面積及び認定を受けた農地面積は、それぞれ全体で幾らか、また、対象農地に対する割合ですね、申告を受けた農地、認定を受けた農地の割合は、パーセントどれぐらいになるか、教えていただきたいと思います。
  64. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 お答え申し上げます。  昨年の税制改正で三大都市圏のC農地まで課税の適正化措置を拡充したわけでございますが、その際には、直ちに全部を対象にするということは若干無理があるということで、三・三平方メートルの評価額が三万円以上のものを対象にするということにしております。その数字を申し上げますと、それと従来のAB農地と合わせまして新しい課税の適正化措置の対象になっておる面積は、首都圏が三万三百七ヘクタール、それから中部圏が四千六百十ヘクタール、近畿圏が七千六百四十九ヘクタールで、合計しまして四万二千五百六十六ヘクタールが課税の適正化措置の対象でございます。  これにつきまして長期営農継続農地の申告があった農地の面積は、三大都市圏合計で、いまの四万二千五百六十六ヘクタールに対しまして三万七千三百四十七ヘクタールの農地につきまして申告がございました。  それにつきまして、農地課税審議会の議を経まして長期営農継続農地に認定されました農地は三万五千五百四十二ヘクタールでございますので、この課税の適正化措置の対象になる四万二千五百六十六ヘクタールのうちの八三・五%が長期営農継続農地に認定されております。
  65. 中路雅弘

    ○中路委員 いま御説明いただいた数字を見ましても、申告があった農地ですね、課税の適正化措置の対象となる農地に対して八七・七%、大変高い営農意欲を示しているわけですし、認定を受けた農地が八三・五%ですか、これは営農意欲を示すとともに、実際に対象となる農家の比率が高いということを示しているのじゃないかと私は思います。  私どもで調べました神奈川県の場合ですが、県の農協中央会と県の農業会議が取りまとめました長期営農継続農地の認定状況を見ますと、対象面積が七千七百十四ヘクタール、うち申告面積が七千九ヘクタール、認定面積が六千五百八十四ヘクタールとなっています。パーセントにしますと、申告面積が九〇・九%、認定面積が八五・三%と、三大都市圏全体に比べてもさらに高くなっているわけです。市街化区域の都市農家の営農意欲が高いことを示しているのではないかと私は思います。  少なくとも十年間の営農継続が前提となっているので、この制度の発足を契機にして農地の有効利用、都市農業の振興という考えも強まっていると思いますが、農水省として、こうした営農意欲にこたえて都市農業の振興について今後どういう施策を考えておられるのか、まず最初にお尋ねしたい。
  66. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  都市農業全体は、私ども特に野菜、花卉等の供給産地として今後とも重視していかなければならないと思っております。たとえば東京都の例を申しますと、東京都下の野菜の出荷量というのは東京都の消費量の四%ぐらいを占めておりますし、物によっては六割、八割というふうな近郊蔬菜品目については例もあるわけでございます。  ただ問題は、その都市農業の中の一部に市街化区域の農業があり、またその中の一部に今回の宅地並み課税の対象になった農地があるわけでございまして、市街化区域の農業自体を即都市農業というふうに考えるわけにはいかないだろうと思います。そこで私ども、市街化区域につきましてはやはり都市計画法上のたてまえがございますので、いわゆる長期に効用が継続するような投資については配意していかなければならないと考えますけれども、具体的な問題といたしましては、野菜関係の諸施策とか災害復旧の仕事とか営農指導の仕事等については、いわゆる市街化区域につきましても当然これを重視してやっていかなければならないだろう、特に野菜作、花卉作等についてはこれを重視してやっていかなければならないだろうと思っておりまして、いままでも続けておりましたが、いま先生指摘のように今回のような調査なりあるいは申告状況も確認できたわけでございますから、そういった指導等もこれからさらにきめ細かく行えるものと、このように思っております。
  67. 中路雅弘

    ○中路委員 従来、市街化区域の農業については、宅地化すべきところだとして基本的には農業施策の対象でないというような考えを持たれていたのではないかと思うのですね。これは「都市計画法による市街化区域および市街化調整区域の区域区分と農林漁業との調整措置等に関する方針について」ですが、この中身を見ましても、「土地基盤整備事業その他効用の長期に及ぶ施策は行なわない」ということが具体的に例示されてあるわけです。しかし、先ほどの三大都市圏あるいは神奈川県内について、こうした中でも営農意欲も非常に高いわけですし、私は、やっぱりそれにこたえるような施策、単にこれは宅地化すべきところだからということじゃなくて、農業施策として適切な施策が必要だというふうに考えるわけですが、前はこういう方針も出ていますけれども、いまこうした新しい制度が出発した時点でお考えはいかがですか。
  68. 森実孝郎

    森実政府委員 実は、並行いたしまして昨年から線引きの見直しということを実施しております。長期に営農を継続すべき客観的条件を持った地域については、むしろ逆線引きと申しますか、線引きの見直しを通じて市街化調整区域に編入するという問題が一つ基本にあるだろうと思います。それからもう一つは、生産緑地制度をしっかり活用してやっていくという問題があると思います。そういった問題と並行しながら、しかしそうは言ってもなかなかそれだけではカバーできないということは、私も委員指摘のとおりであると思いますので、先ほど申し上げましたような野菜等の現実に営農されている作目に着目した技術指導とか施設整備等については今後ともきめ細かくやっていく必要があると思っておりますし、また、そういった中心的な農家に対する営農指導、特に野菜等の営農指導は、現に各県も非常にやっておられますが、私どもも重視してまいりたいと思っております。また、このほかに、一部ではいわゆる緑の空間という視点に立って家庭・家族農園制度というものの導入も認めて、これについての資金的援助の道も開けておりますので、こういったものの活用も重視してまいりたいと思っております。
  69. 中路雅弘

    ○中路委員 国の補助制度等の施策においても、都市農業の中で差別を行うべきではないと私は思います。神奈川県は、この制度が発足したのを契機に、市街化区域の農業継続を当面十年間保障されたことを受けて五十八年度の予算で初めて都市農業対策費というのをつくりまして、当面は調査ですが、調査研究費として二百四十四万円計上しています。長期営農を目指す農地を対象に今後の基本計画をつくるための調査研究費でありますけれども、これは市街化区域農業の振興のために五十八年度は農家がどういう計画を持っているかということを調査して、五十九年度にはそれに対してバックアップしていこうということがねらいだと聞いております。  こうした各自治体の都市農業の対策について国も一定のバックアップをするための施策を今後検討していただく必要があるのではないかと私は思いますが、この点についてのお考えはいかがですか。
  70. 森実孝郎

    森実政府委員 神奈川県初め幾つかの県で最近こういった調査を実施し始められたことには敬意を表しております。その調査結果をわれわれも十分フィードバックいたしまして、具体的な都市農業の施策については現実的な視点で対応したいと思っております。私は、でき得べくんばそれは市街化区域の農地だけに限定した議論ではなくて、むしろ近郊農業全体の問題としてとらえて、その中で市街化区域は制度の枠組みを前提に置きながら現実的に対応するというふうな二段構えの姿勢が要るのではなかろうかと思っておりますが、御指摘も頭に置きまして、今後十分検討させていただきます。
  71. 中路雅弘

    ○中路委員 私、幾つか調べてみたのですが、神奈川県内で、市街化区域等の農地に関連して自治体や農協などがさまざまな形でいま事業を行っているわけですね。幾つか拾って御紹介しますと、川崎市の場合、市民農園、市民に土に親しみながら都市農業を理解してもらおうというので、市が市の園芸協会の協力で地元の農業者から借りた土地を無料で市民に開放するというようなやり方、あるいは同じく川崎市ですが、農協が、都市化の中で農協を活性化させて開かれた農協にするということで、子供たちにも農業を知ってもらうという趣旨で、非農家の子供たちを対象に子供キャンプとかあるいは芋掘り大会とか、こうした行事もいろいろやっています。  あと二、三挙げてみますと、たとえば津久井郡の農協の場合ですが、昭和五十五年から学校農園制度がスタートしているわけで、農業を知ってほしいと呼びかけるだけではなくて、積極的に体験の場と機会を提供していくということで、農地の無料あっせん、農作業用の機材や種、肥料などの提供、栽培技術の提供と応援を行っています。希望する学校にとっては、農地探しや技術面での手間や苦労が大変軽減されるということで喜ばれているわけです。  藤沢市では、都市と農業の調和を将来の市民として考えていくことを目標に、これは全国で初めてだと思いますが、農業副読本というのがつくられまして、市内の小学校五学年に利用されています。学習後、学区内の農家や農地、畜舎などを見学したり、地元農家から水田や畑を借りて水稲、カンショなどをつくったりなどの例もありますが、これは農業を知る機会、体験をつくっているわけです。  もう一、二御紹介しますと、大和市ですが、ここでは障害者福祉センターという精神薄弱者の人たちの社会参加を目指す施設ですが、ここで更生訓練の一つに園芸作業を取り入れて、指導に当たる先生にとっては思うように作物が育たないということが悩みの種なんで、農業の専門家に指導をしてもらおうということで、農協の青壮年部が引き受けて野菜づくり等に全面的に協力するというようなこともやっているわけですね。  こうした例を幾つか挙げましたけれども、市街化区域内の農地や農業が、都市との関係で緑地空間をつくり、また生産で大きな役割りを果たすとともに、教育や福祉の分野にも非常に密接な関連を持ってきています。農業従事者からも、また都市、市民からもこうした関係の一層の発展を期待する話も私はよく聞くわけですけれども、国としても農水省としても、こうした期待にこたえて都市農業の施策を研究し発展させていくことがいま重要ではないかと思うわけですが、検討して、できるところから実現していっていただきたい。これは政治の問題でもありますが、担当の皆さんとともに、この点について幾つか例示を挙げましたけれども、こうした今後の都市農業の施策の検討についてあるいは自治体のやっていることについてバックアップしていくという点で、ひとつ検討してほしい。これは大臣にもひとつお願いしたいのですが、いかがですか。
  72. 森実孝郎

    森実政府委員 いまお話のございました市民農園の問題は、都市住民に緑の空間、レクリエーション空間の供給以外に、やはり農業を理解していただく、生物体系を理解していただくという意味では非常に重要なことだと思っております。その意味で実は数年前から、この市民農園の開設に必要な小農機具のセットとか格納舎とか給水施設等の購入資金等につきましては、農業近代化資金の貸付対象に拡大をいたしまして、その資金の活用も認めておるところでございまして、ただいまお話がありました事例のうちでも、こういった近代化資金の活用等がかなり図られていると思います。私どもも、今日の状況で都市住民の方々に農業を理解していただくことは大変大事なことだと思っておりますので、そういうことについては今後とも十分神経を使ってきめ細かく相談に乗り、施策を講じてまいりたいと思っております。
  73. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど例で挙げましたけれども、これはまた、教育や福祉の分野で非常に密接な関連を持っておるのですね。そういう点で、こうした点を国としてもよく検討していただいて、できる問題についてはバックアップをしていただくという点で努力をしていただきたいのですが、大臣、いかがですか。
  74. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまいろいろ御意見がありましたが、御指摘の点は十分検討して、御期待に沿いたいと思います。
  75. 中路雅弘

    ○中路委員 あと一、二点です。  これは農事用電力の問題ですが、昭和五十五年三月二十一日だったですか、電力八社の総平均アップ率が五〇・八三%という大幅な電気料金の改定を通産省が認可されましたが、この際に、農事用電力は、当初、供給規程本則から削除して既設の需要家に限って適用するといった申請が各社から行われたと聞いていますが、認可された内容はこれまでどおりとなりました。農事用電力については今後も引き続いて存続していくお考えなのか、それとも廃止する方向なのか、農事用電力の需要者にとっては大変大きな影響を及ぼすことになるわけですが、最初にこの点についてお考えをお聞きしておきたい。
  76. 黒田直樹

    ○黒田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の農事用電力という制度は大変古い制度でございまして、古くさかのぼりますと戦前から存在しておりますし、現在の電力会社の体制ができました昭和二十年代からも引き続き存続している制度でございます。電気事業法によりまして、電気料金といいますものは原価主義を一つの大きな基本原則としているわけでございますが、当時の実情から申しますと、日本の電力の供給構造は水力を主体といたしておりまして、たまたま雨の多く出る豊水期の余剰電力を農業面で有効に活用するということで、灌漑あるいは脱穀等を中心といたしましてでき上がってきた制度でございます。  その後の事情の変化を申し上げますと、日本の電力の供給構造の面から申し上げますと、昭和三十年代の半ばごろまでは水力が中心という時代が続いてきたわけでございますけれども、四十年代、さらには最近というふうに移行するにつれまして、電力供給の主体は水力から火力、さらには原子力へと供給力が移行してきているのが実情でございます。また、需要面から申し上げましても、昔は冬が一番電力を多く使う時期であったわけでございますが、最近の実態は、冷房需要等中心にむしろ夏にピークがシフトしてきているというような実情があるわけでございます。したがいまして、農事用電力の本来よって立つ基盤であった原価的な基礎というものが失われてきているという実情でございます。ただ、そうは申しましても、やはり公共料金である電気料金につきましては、料金水準が一気に変わるということもまた避けなければならないというような一つの要請もございますので、そういう観点から現在に至るまで農事用電力という制度が存続してきているのが実情でございます。  したがいまして、そういう実情も踏まえ、かつ、農業以外の他の需要家への影響等も考え合わせながら、本件の取り扱いにつきましては今後慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  77. 中路雅弘

    ○中路委員 農事用電力について検討をするというお話ですが、当面は引き続き存続するというお考えですか。いますぐこれを廃止するということを考えていられるわけじゃないですね。
  78. 黒田直樹

    ○黒田説明員 結局は料金改定をする時期にその取り扱いを決めるということでございまして、現在その時期ではございませんので、ただいま申し上げましたようないろいろな要因、それから先生がいま御指摘になりましたような農業需要家への影響等も勘案しながら、今後慎重に考えていくということでございます。
  79. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、これはぜひ存続をしていくということで努力をしていただきたい、検討していただきたいと思います。  あと一点ですが、現行の農事用電力は、調べてみましたら電力会社ごとに適用対象が大変異なっているのですね。たとえば東京電力、北海道電力は灌漑用は米麦のみでありますけれども、他の会社は果樹や畑にも適用している。あるいは農事用の電灯では、電照栽培を認めているのは中部電力と中国電力のみで北陸電力は既設分しか認めていないというように、地域によって対象が大変異なっているわけです。この点は、それぞれ電力会社が違うわけですが、全国的に農事用電力ということですから余り対象が異なっているというのも不公平になりますし、検討していただきたいと思います。  また、農事用電力の対象を、先ほども取り上げましたけれども、都市農業に拡大していくということも検討すべきではないか。たとえば施設園芸に使う電力とか畜産に使う浄化槽等の電力ですね、この点については農水省のお考えもお聞きしておきたいと思います。最初は通産省ですが、こうした対象が大変異なっている点についてはどのようにお考えですか。
  80. 黒田直樹

    ○黒田説明員 先生指摘のように、電力会社によりまして農事用電力の適用範囲が若干異なっているのは事実でございます。その原因は、いま申し上げましたように非常に古くから存在する制度でございまして、各社の原価の実態であるとかあるいは地域の特性であるとか、ほかの需要家への影響であるとか、いろいろなものを勘案して現在に至っているということでありますけれども、ただいま申し上げましたように、基本的には今後慎重にその取り扱いを検討してまいりたいと考えております。  ただ、ただいま御説明申し上げましたように、農事用電力の本来の原価的な基礎というのは失われてきているわけでございますし、したがって、原価主義を離れて特定の分野にいわば政策的に料金を割り安にするということにつきましては、結局それ以外の需要家への不公平ということになってまいりますので、なかなかむずかしい問題があるという点を御了解いただきたいと思います。
  81. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農事用電力の適用範囲の問題につきましては、ただいま通産省の方からお答えいたしましたように、電力料金の理論の問題としましては、当然安くあってしかるべきだという理論的な根拠に乏しくなりつつあるわけでございます。農林省といたしましては、かねて料金改定のたびごとに、この制度が大変長い歴史を持っておるという経過を十分尊重して、これを存続すべきであるということが唯一の主張の根拠になっておるわけでございます。そういう経過からいたしますと、従来そのような背景を持たなかった部門にまで追加拡大をしてくれという要求は理論的にはなかなかつらいことでございまして、むしろ現在適用になっているものをいかにして守っていくかということに主眼を置かざるを得ない、こういう事情にありますことを御理解いただきたいと存じます。
  82. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの点は私の要望としてひとつ検討していただきたいと思います。  きょうは約束が五十分ですからあと五分ぐらいなので、もう一点だけ時間の中でお尋ねして終わりたいと思いますが、私、先日現地へ行きまして、神奈川県知事も何度か視察に行っているのですけれども、強い要望があった問題ですので最後にお聞きしておきたいのです。  これは農業の問題をちょっと離れて漁業の問題ですが、神奈川県の三浦市の松輪という地域ですが、ちょうど剣崎の灯台の直下で、東京湾口に面して自然の湾がたくさんありまして、この湾を利用して漁業が行われています。京浜地区という大消費地を抱えていまして、鮮魚だとかそういうものを供給する沿岸漁業の拠点になっているところです。  この松輪という地域は、一つの漁協なんですが組合が二つに分かれていまして、一つは間口、これは漁港に指定されている本港なんですが、もう一つは江奈地区と、二つに分かれているわけです。この地域は魚種も非常に豊富で、一本釣りの漁業を中心にしてノリ、ワカメの養殖等多角的な漁業をやっています。大型漁船の建造もやり、後継者の育成についても非常に盛んな地域ですけれども、その中で本港になっている間口の方は大体百十隻ぐらいですか、これは農林省の所管ですが、漁獲量が三百十二トン、江奈湾の方が百四十隻ぐらいで四百二十九トンと、組合員もそうですが、こちらの方が多いのです。しかし江奈の方は建設省の所管になっていまして、十年前ですか、県が建設省に要望して、お金をかけて防潮堤をつくったという歴史的な経過もあるのですが、建設省の所管になっているわけです。したがって、天然の海岸を利用していますから、高潮対策事業等による斜路の護岸を利用しているわけですが、漁港の区域外ですから、たとえば荒天のときなどはそうした施設が全くありませんので、台風のときなどは外郭施設がないので近くの油壺とか三崎へ全部避難しますから、その間は一週間程度操業が不能になる。一日四、五万としましても三十五万ぐらいのハンディが出てくるということで、いずれにしても漁港区域に早く指定していただいて、条件は備わっているわけですから、漁港として整備をしてほしいという要望が強く出されています。  問題は、建設省の所管でありますし、これをどういうふうに解決するかということで建設省はいま県とも話し合いを進められていると思いますが、どういうふうな現状になっているのか。漁港として緊急に整備が進むようにしていきたいと思いますが、建設省あるいは水産庁等のお考えも含めてここでお聞かせを願いたいと思います。
  83. 大河原満

    ○大河原説明員 お答えいたします。  いまお話しの江奈湾の海岸でございますが、先生お話しのように、ここは昭和四十六年の五月二十五日付で建設省所管の海岸保全区域というのに指定されておりまして、すでに海岸保全のための堤防が六百九十メートル、それから突堤が二基というぐあいに整備されておる海岸でございます。  それで、いまお話しの漁港計画でございますが、これに伴う所管がえにつきましては、現在、神奈川県内の関係部局の間で調整中であると聞いております。そこで、県内の関係各課の調整がなされた段階で、御承知のように河川局長通達に基づきまして、県より建設省の方に協議がなされると考えております。協議がなされた段階におきまして、せっかく御指摘のような海岸のことでございますから、海岸の利用面と、すでに防潮堤も設置されておりますが、そういった国土保全上の立場というのもございますので、地元住民が災害等を受けることのないように慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  84. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答えを申し上げます。  三浦市の松輪地区の江奈湾を漁港地域に指定することにつきましては、ただいま建設省の方から御答弁ございましたように地元の調整ということが必要でございまして、私どもといたしましては、地元の調整がなされまして神奈川県知事から正式に申請が水産庁に提出された場合には、漁港審議会に諮問するといった所定の手続をとりたいと考えております。
  85. 中路雅弘

    ○中路委員 いま関係者で話し合い中ということですから、できるだけこれを急いでいただいて、早急に漁港として整備ができるように重ねて関係省庁の皆さんにもお願いをして、ちょうど五十分なので、質問を終わりたいと思います。
  86. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 午後二時より再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ────◇─────     午後二時三十一分開議
  87. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部行雄君。
  88. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最初に大臣にお伺いいたしますが、日本農業の将来について、一体大臣はどのような農業の形態、総体というか、そういうものを考えておられるのか。  まず、自給体制確立ということを一方で唱えていながら、他方では穀物自給率はどんどん低下するばかりでありまして、どうも掲げた旗が逆の方向になびいているように思えてならないのですが、そういう点を含めて、この日本農業というものの姿について、おれはこうしたい、こういう農業をつくりたい、大臣ですから当然こういうものを持っていてよいと思うのですが、その点について大臣の御所見をお伺いいたします。
  89. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御承知のとおり、農業は非常にむずかしい時代を迎えております。それはやはり食糧の米だけが完全に自給率が満たされておりまして、他の食糧はほとんど自給率が世界の先進諸国と比較してみても日本が一番低いわけでございます。したがって、将来少なくとも七、八〇%の自給率を維持確立したいというのが、まず食糧の自給率のいわゆる目標でございます。  それがためには、やはり農業の生産性を高める手段としてはいろいろございます。まず、基盤整備をしなければならない、あるいは過剰農産物については、いま米を減反しておるように減産を図って、輸入に依存しておる農産物を主としてその転作に当てはめていくというような合理的な方向に進めていかなければならない、その手段も進行しつつありますけれども、まだ緒についたばかりで成果が上がっていません。  そこで、これからの農業、将来の農業の展望をどう考えておるかと申しますと、昨年の農政審議会の報告にありますとおり、八〇年代に向かってのわが国の農業は、まず生産性を高めること、自給率を高めること、あるいはコストダウンをやって、やはりアメリカ、オーストラリアみたいなああいう立地条件の違う地域のような安い畜産物の生産は不可能ですけれども、やや立地条件が似たEC並みのコストによる農畜産物の生産は努力次第では遠からず可能になって、均衡をとれるようになるのではないか、このように考えております。  いろいろ後継者の問題、やはり農業、林業あるいは漁業、こういうものを含めて、後継者がどのようにこの農林水産業に意欲を持って育っていくか、こういうことも大事なこれからの農林水産の振興については大きなポイントでございます。これについては、やはり農業、漁業、林業すべてに意欲を持つような魅力のある産業にさせていけば、おのずから若い者も意欲を燃やして定着してくる、このように考えております。  いろいろ並べていくと切りもないように、これからの農業政策については、あれもやりたい、これもやらなければならないというようなことがたくさん山積しております。したがって、そうこうしておる中で今度は食糧の、いわゆるアメリカごときからは半強制みたいな強力な輸入を迫られておるといったような悪条件も日本の農業の将来には伴っておるわけでございますが、こういうものもやはりアメリカをよく説得、理解してもらって、日本の農業の発展に支障になるようなことはやってはいかない、このように考えております。
  90. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 日本の農業というのは、条件が諸外国と非常に違っている面がありますし、また、いろいろな点で大変な問題を抱えていると思うのです。たとえばアメリカと日本農業を比べて、アメリカ並みに農業の競争力を果たしてやれるのかどうか、こういうことを考えていきますと、初めから土地条件や農業を取り巻く諸条件が違う、あるいは農業に投資するそれぞれの農機具の問題なりあるいはその他農薬、肥料、そういうものの価格においてもあるいは反当たりの量においても非常に違っておるわけで、そういうものを細かに考えた際に、日本農業というのは目標を国際競争力に置いて考えていくのか、それとも日本の独立を維持するために農業の位置づけというものを考えていくのか、その辺をやはり明確にする必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点、大臣はいかがにお考えでしょうか。
  91. 金子岩三

    ○金子国務大臣 まず食糧の自給率を確立して、食糧による国の安全を保障したいということが一点です。もう一つは、やはり何ぼ生産が上がってもコストが高くては、やはり諸外国との競争に打ちかつような体制でなければという考え方で、努めて生産性を図り、そしていわゆる低コストの農産物を生産するように、これも農業政策の柱の一つでございます。  こういう両面、国の安全保障のため食糧の自給率を高めていくということ、あわせて今度は世界の農産物に、アメリカ、豪州には太刀打ちできぬでも、先ほど申し上げたとおりEC並みぐらいのコストダウンをやって、そして輸入農産物に押されることのないように、そういった面、これが私はいわゆるこれからの農業政策の大きな柱としておるのでございます。
  92. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この問題はもっと細かに突き詰めて議論したいと思いますが、これは少し後に回して、次に移りたいと思います。  今度の法改正によって、今日までずっと研究されてきたものの流れには何らかの変化が出るのか、あるいはその流れをただ発展させるだけの意味なのか、その辺の問題について御説明願いたいと思います。
  93. 岸國平

    岸政府委員 今度の二つ研究機関の新設によって研究の流れがいままでと変わるのかどうかというお話でございますが、私ども二つ研究所をつくりましても、これはわが国の農業の発展のために資する研究を進めることが基本でございますので、基本的にまた大きく流れが変わるとは考えておりません。しかし、今回お願いいたしております二つの新しい研究所は、少なくともいままでの研究の中に少しずつは芽のありましたものを今回将来に向かって新しく大きく育てるということで考えておりますので、そういう意味では、いままでの流れの中では到達点を見ても必ずしも達成できるかどうかわからなかったようなところにまで、今回の二つ研究所の力によって到達する可能性を得たいと考えておりますので、その意味では流れが変わるという見方もあるいはできるかもしれませんが、基本的には先ほど申し上げたようなことを考えております。  一つ農業生物資源研究所の場合には、将来の育種のために必要な非常に基盤的な研究を進めるということで、その研究が大きく達成されてまいりますと、いままでの研究では得られなかったような新形質を持ったような作物あるいは品種がつくり得るということになろうかと思いますし、もう片方の農業環境技術研究所の方は、自然生態系にマッチした農業技術開発を図ることを目的といたしておりますので、その点については、いままでの研究の中でもそのつもりで研究はしてまいりましたけれども、そういう観点でそのことを主目的とした研究所をつくり研究を進めるということでございますので、その面の研究が大きく発展するというふうに期待いたしております。
  94. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、この研究は今度の法案によって一層バイオテクノロジーというものが発展を遂げるようになるものと確信いたしますが、このバイオテクノロジーというのは、申すまでもなく一つの時代の要請と申しますか、先端技術としてこれからはどうしてもこういうものを先取りしていかなければならない、そういう使命については十分わかるわけでございます。  問題は、こういう学問は生命に挑戦すると申しますか生命にかかわった学問だけに、それが人為的に自然をねじ曲げる、歪曲する、あるいは人間社会の秩序を乱す、そういうことが非常に心配されるわけです。ところがこれらの問題を、ひとり植物分野だけでなく動物の分野あるいはその他軍事的な意図を持った関連研究、そういうものとあわせ考えていくと、今回のバイオテクノロジー研究の範囲は一体どこに置いておられるのか。また、そういう生命に挑戦していく場合に万が一そこに危険なりあるいは人道上問題になるような行為、現象が起こった際にそれを何でチェックするのか、そういうことを考えると、やはりそれにふさわしいポイントをつかんだ法的措置が当然考えられてしかるべきじゃないだろうか、こんなふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  95. 高橋透

    ○高橋説明員 御説明申し上げます。  ライフサイエンスについての御質問でございますが、ライフサイエンスは種々の生物が営む生命現象をその基礎から総合的な立場でとらえまして、生物に特有の調節機構、遺伝、エネルギー代謝、自己防御などの生命現象に見られる複雑かつ精緻なメカニズムを解明いたしまして、人間生活にかかわる諸問題の解決に役立てようとするものでございまして、その研究成果は保健医療、環境保全、農業生産、工業生産等の諸分野において全く新しい技術発展の可能性をもたらすものとして期待されているわけでございます。  このように、バイオテクノロジーはライフサイエンスの中でも特に重要な分野でございまして、遺伝子構造の解明等の基礎的な研究から医薬品の生産、作物品種改良等の応用研究に至るまで、非常に広い範囲で人類の福祉に大きく貢献するものと期待されているところでございます。  近年の科学技術の進歩に伴いまして、ライフサイエンスと自然環境及び人間社会との関係をめぐり種々の問題が提起されていることは御指摘のとおりでございます。このため、昭和五十五年八月に科学技術会議にございますライフサイエンス部会が、「ライフサイエンスの推進に関する意見」を取りまとめまして、「ライフサイエンスに係る科学技術は、それが病気の治療に向けられるにせよ、また、広く自然環境の保全に向けられるにせよ、人間が自然そのものと調和ある関係を維持するための技術という性格をもつべき」旨指摘しているところでございます。さらに、ライフサイエンスに係る研究方法の中には、生物学の歴史全体から見てきわめて革新的なものがございます。生命に関する知識が今日なおきわめて不十分なものであることを考慮いたしますと、その適用に当たってきわめて慎重を要するものでございます。研究の推進に当たっては、常にその面からの省察が重要である旨の指摘が、同時にこのライフサイエンスに関する意見の中でも述べられているところでございます。科学技術庁といたしましては、今後ともこの科学技術会議の提言の趣旨を踏まえ、ライフサイエンスを推進してまいりたいと考えているところでございます。  この関係の一連の法制化の問題でございますが、昭和四十八年ごろから世界の多くの学者がこの組みかえDNA実験を行ってきております。これまでの間に、当初予想されておりました潜在的な危険性は現在においてもなお推測の域にとどまっていると考えられているために、現時点ではこれに法律による規制を加えることは適当ではないと考えております。このような状況のもとでの法律による規制は、研究の不必要な抑制をもたらすおそれがございますし、適切な措置ではないと考える、このような意見もございまして、今後の長期的な安全確保の問題につきましては、研究の進展、諸情勢の変化などを考慮しつつ、今後とも関係省庁と相談していきたいと考えております。  以上でございます。
  96. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 このような時期では法的規制は適当でないというお答えですが、それは一つの限られた植物だけのバイオテクノロジーであるならばそういうことは言えるかもしれませんが、しかしライフサイエンスという範疇の中で全体を見るならば、そこにはやはり微生物というものの分野も入ってくると思うのです。そうすると、微生物が入ってきた場合に、微生物と遺伝子の問題の中で相当有毒なあるいは有害なものが作成される一つの可能性はあると私は思うのです。しかも、いま日本はバイオテクノロジーの分野では欧米には若干おくれをとっているという評価でございます。ただし、微生物の研究の点では世界の最高水準をいくので、そのうちバイオテクノロジーでも欧米に追いつくだろう、こういう見通しの中でなされておるようですが、私は、大体植物と動物とを分けること自体にも問題があるのではないかと思うのです。問題は、生命という、つまりDNAというものにおいてこれが動物でこれが植物だという画然とした分け方は困難だと思うのです。そういう点では、やはりこれなんかは科学技術庁あたりが全体を統括したそういうものの中で、いまの段階においてこれだけはひとつ規制していこう、これだけは監視していこう、これだけは監督しようというものを把握しておかなければ、問題が起きてからでは遅いのですよ。この間の心臓手術でもそうですが、問題が起きてから初めて日本は取り組むようになる。問題が起きるまでは黙ってそれを研究しているのか何か知らぬけれども、大体そういう傾向なんですね。だから問題が起きてからどうしようかではなくて、いまあらゆる分野で想像できる問題を出し合って、とにかくそこでこれだけはというポイントだけはまずつかむ。細かなものは徐々につくってもらってもいいのですから、そういう一つの姿勢と考え方があってしかるべきではないか、こういうふうに私は思いますが、どうでしょうか。
  97. 高橋透

    ○高橋説明員 御説明申し上げます。  最初に御質問のございました動物、植物あるいは微生物、大きく分けてこの三つに分けられるのでございますが、ライフサイエンスで取り扱います場合には、これを植物だけとか動物だけとかいう形で取り上げているのではなくて、包括的に取り上げているところでございます。  そこで、法制化の問題について改めての御質問であったと思いますが、先ほどのような理由もございまして、科学技術庁といたしましては、現在、内閣総理大臣が決定いたしました組換えDNA実験指針、いわゆるガイドラインと言っておりますが、そういったものを各実際に実施しているところに示しまして、そして安全性等を確保しているところでございます。この中では、安全確保のために実験の安全評価に応じて物理的封じ込めあるいは生物学的封じ込めを適宜組み合わせて実施しなさい、あるいは実験従事者の責務についても、「安全確保について十分に自覚し、必要な配慮をするとともに、あらかじめ、病原微生物に係る標準実験法並びに実験に特有な操作方法及び関連する技術に精通し、習熟していなければならない。」このようなことを書いておりまして、また安全委員会設置もここで述べているわけでございます。  こういったことで当面、法律というところはなかなかむずかしい問題がございますが、このガイドラインの趣旨が徹底するように努力しているところでございますし、また、現在このガイドラインで定めております宿主―ベクター系というのはきわめて限られているわけでございます。こういった中で、これによらないものについてはすべて科学技術会議で審査をして許可をするという形をとっております。そういうことで、今後とも安全性確保するという観点から、十分にこのガイドラインの趣旨に沿って進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  98. 岸國平

    岸政府委員 ただいま科学技術庁の方からお答え申し上げましたようなことでございますが、農林水産省におきまして実際に研究を進める立場から、関連して私どもの方からも一言お答え申し上げたいと思います。  現在も若干ではございますが、DNAの組みかえに関する研究あるいは細胞融合研究といったようなものを進めておるわけでございますが、その際に、いま御説明のありました組換えDNA実験指針をしっかりと守りまして進めております。それから、今回設立予定しております農業生物資源研究所におきましても、この組換えDNA実験指針というものを一番基本的な守るべき綱領として取り扱いまして、組みかえDNAによって、たとえその相手が植物でありましても、ただいま先生から御指摘のありましたような心配のないように今後も進めてまいりたい、そのように考えております。
  99. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これはこういうガイドラインでやって法規制はいまのところ考えていないということになると、そういう中で一番大事なのは研究者の倫理観だと私は思うのです。結局科学者というものはいろいろな危険を冒して新しいものに挑戦する、本能的というか、そういう心理があると思うのです。そういう際に、たとえばサルの頭を犬につけてみたいとか、人間の体と頭をほかの人間と取りかえてみたいとか、そういう問題に挑戦するというのは科学者の一つの心理として私は十分わかりますが、その際、これだけはしてならないというものがあるはずなんです。それではそれを何で見分けるか、何で区別していくかというと、最後は研究者、科学者の倫理観に頼るしかないのではないか。その際に、そういう倫理観をどこで養成し、そしてそれをどこで社会的な倫理観に形成していくか、こういうものが一方において指導としてない限り、ただガイドラインとかそういうものだけに頼ってしまっては問題解決にならぬのではないか、こんなふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  100. 岸國平

    岸政府委員 新しい研究所でやってまいります研究関連いたしまして、ただいまの先生の御指摘の点についてお答え申し上げたいと思いますが、確かにDNA組みかえのような研究を進めてまいります場合には、たとえ内閣総理大臣の定めたガイドラインがありましても、それを守っていくという科学者あるいは研究者の倫理観がなければ十分でないということは御指摘のとおりだと思います。そこで私どもは、この新しい研究所におきまして遺伝子組みかえあるいは細胞融合といったような先端技術を内容といたしますバイオテクノロジーの活用を考えておりますが、その際に、ただいま先生が御指摘になりましたような点を十分に頭に置きまして、基本的にはこれらの研究に携わる研究者に対しましてそういった点について常に注意を喚起する、そういった意味で研修を行うとかあるいは特に倫理観を養成、確立するような日常の努力をする、そういったことで対処をしてまいりたいというふうに考えております。  ただ、今回の私ども農業生物資源研究所におきます研究におきましては、対象といたしますものが主として植物であるということ、また道具といたしまして微生物を活用する場合も当然あるわけでございますが、そういう場合にも明確に農業上活用をすることを目的といたします研究ということにしておりますので、実際に御指摘いただいたような危険なことということは万々生じないというふうには考えておりますが、そのことを実行する上におきましては先ほど申し上げましたような努力を常に重ねてまいりたい、そういうふうに考えております。
  101. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、科学技術庁にお伺いしますが、今度できるこの農業生物資源研究所農業環境技術研究所というのは、科学という全体の中の一部ということ、つまりライフサイエンスの一部としてのバイオテクノロジー、こういうことで科学技術庁との関連を持つものなのか。それとも、この新しい研究所は科学技術庁とは全く独立した農林水産省独自の機関としてやっていくのか。その辺についてひとつお伺いいたします。
  102. 高橋透

    ○高橋説明員 御説明いたします。  科学技術庁におきましては、従来から、各省庁の試験研究機関におきまして推進されておりますライフサイエンス関係研究につきまして重複を避け効率的に研究を推進するために、各年度における各省庁の科学技術関係費の見積もり方針の調整、科学技術振興調整費の運用等により、わが国全体のライフサイエンスの効率的な推進が図れるよう努めてきたところでございます。今後とも、以上のような施策に加えて、農林水産省を含め関係省庁と密接な連絡をとる等により、ライフサイエンスの分野における各省庁間の連携の一層の強化を図っていきたいと考えております。  以上でございます。
  103. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 連携をとる、こういうことでございますから、その点は了解いたします。  科学というものは、常に一つの分野というか、専門的な部分の深い掘り下げというものが絶えずなされる一方で、その成果を常に全体的な立場で総括するという問題が並行して進まなければ本当の成果はおさめられないのではないか、こんなふうに考えますので、その部分部分に出てきた成果を全体的に総括する場というのは、どこでそれをやるのでしょうか。
  104. 高橋透

    ○高橋説明員 御説明申し上げます。  先ほども若干触れさせていただきましたが、わが国におきますライフサイエンスにつきましては、昭和五十五年八月に科学技術会議から内閣総理大臣に「ライフサイエンスの推進に関する意見」が上申されております。この意見は科学技術会議における審議の過程で各省庁の意見を十分聴取したものでございまして、各省庁の関係試験研究機関においては、この意見に示された統一的考え方のもとに真理の探求を目指した基礎的研究から工業生産、農業生産及び保健医療に係る研究までの多岐にわたる分野でライフサイエンス関係研究が進められているところでございます。このような形で科学技術会議がライフサイエンス関係の総括をしているということでございます。  以上でございます。
  105. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、日本の科学技術研究費というもの、その予算を国際的に比較してみるとどういうふうになっておりますか、ひとつお聞かせください。
  106. 笹谷勇

    ○笹谷説明員 御説明いたします。  わが国の研究費は、昭和五十六年度は五兆三千六百億円となっております。これを外国と比較いたしますと、米国が十五兆二千三百億円、ソ連が七兆三千二百億円、わが国は米国、ソ連に次いで研究費の面では三位になっております。  一方、研究費を国民所得費で比べてみますと、同じく昭和五十六年について見ますと、わが国は二・六五%になっております。この水準は米国と同じ水準でございますが、西ドイツ、ソ連よりは低い水準になっております。  以上でございます。
  107. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、こういう研究の推進を進める上で万全を期すためにはどういう問題があるのかということを考えてみますと、まず今度の場合、生物資源の確保ということが非常に重要であると思います。その原資源と申しますか、そういうのの確保をしていく一つ方法と申しますか手段というのはどういうふうに考えておられるのか、これが第一点であります。これは何か、アメリカ、ソ連等と比べて非常に資源が少ないということを聞いておりますので、その辺の国際交流というものは可能なのか不可能なのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。  第二番目は、この研究施設整備、こういう観点から見た場合、現在の施設で十分なのかどうか。  第三点は、研究員人材確保、こういう点から見ては一体どうなっているのか。  第四番目には、現実に今日まで研究を進めてきた中で、これは先ほどの問題ばかりでなくて、全体として法的対策を必要とするのかどうか。  あるいは五番目は、監視、管理、監督の万全を期する上でどういうことが要請されるか、こういうものについて、そのお考えあるいは対策がありましたら対策をお示し願いたいと思います。
  108. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  第一点の遺伝資源収集の問題でございますが、この点につきましては、私ども、今回農業生物資源研究所研究のまず最初に来る非常に大きな柱と考えておりまして、現在も進めておりますけれども、今後この新しい研究所ができましたときには、さらにそれを積極的に進めていくことを考えております。現在でも研究者海外へ二、三カ月の期間駐在させまして遺伝資源の探索、導入を図るというようなこともいたしておりますし、五十八年度からは新たに作物遺伝資源育種情報の総合的管理利用システムの確立といったような名前で予算を獲得いたしまして、事業を始めようといたしております。  それから、この問題について国際的な連携はどうかというお話でございますが、遺伝資源収集ということからいいますと、これはわが国だけでできることではございませんで、御指摘のように国際的な連携が大変大事でございますので、国際的な機関としてもありますIBPGRというようなものを連携の場といたしまして、今後とも十分な連携をとりながらこのことを進めてまいりたいと考えております。  それから二番目の研究施設整備のことでございますが、今回の新研究所設立に対しましては、すでにでき上がっております筑波の研究施設を最高限に有効利用をするということを基本といたしておりまして、今後も、すでにできております筑波の施設を一層有効に活用しながら研究を進めていくように考えてまいりたいと思います。  それから第三点の人材の養成と確保という問題でございますが、新しい研究分野に進んでいこうとする場合にまず必要なのは人材でございまして、その点では御指摘のとおりかと思っておりますので、現在農業技術研究所植物ウイルス研究所あるいは蚕糸試験場におります研究者を今後の新しい機関に活用いたしますとともに、それらの研究者の新しい研究分野への適応が十分にできるように、国内での研修はもちろんでございますが、国外への留学でありますとか研究者の招聘でありますとかいうようなことも進めてまいりたい、それからまた、人材を省外からもできるだけ集めていくように努力していきたいと考えております。  それから、先ほどの御質問とも関連のあるバイオテクノロジー研究を進めていく上で法的な対策あるいは監督、監視の必要性はどうかということでございますが、この点につきましては、私どもは、先ほど科学技術庁の方からお答えをいただきましたような国としての方針がございますので、その方針にのっとりまして、そこで定められましたガイドラインを十分に守るということを基本にして進んでまいりたいと思います。なお、御指摘のような点につきましては、問題があるときにはそういう対策がとられるということも考えられますので、それに従って私ども研究も推進していくようにいたしたいと考えております。
  109. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、今度この法改正がなされますと第十八条の二の3「農林水産大臣は、農業生物資源研究所の事務を分掌させるため、所要の地に農業生物資源研究所の支所を設けることができる。」こういうふうに書かれているのですが、この「所要の地」というものはどことどこか、決まったのか、決まらないとすれば何カ所くらいにこの支所を設けようと考えておられるのか、支所の規模はどの程度のものを考えておられるのか、その辺についてお伺いします。
  110. 岸國平

    岸政府委員 御指摘農業生物資源研究所の支所につきましては、現在農業技術研究所の一部になっております放射線育種場農業生物資源研究所に移しまして、農業生物資源研究所放射線育種場ということで、支所の扱いでやってまいりたいと考えております。そのほかのことにつきましては、現在のところ、農業生物資源研究所につきましてすぐに支所を置くということは特に考えておりません。
  111. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 バイオテクノロジーに関する質問はこのくらいにいたしまして、今度は、先ほど最初に若干申し上げましたが、現在の日本農業というものを国際的な視野で見た場合、その最も重大な問題は一体何なのか。たとえば生産コストであるとか品質の問題とか、営農形態や農業技術、また土地の所有形態にあるのか、あるいは流通機構が問題になっているのか、この中で最も重要な問題と思われるのはどういうことか、お聞かせ願いたいと思います。
  112. 角道謙一

    角道政府委員 いまいろいろ御指摘がございましたが、わが農業は、欧米諸国に比べました場合、農地面積が一戸当たり非常に狭小である、また全体としても一人当たりの農用地面積として狭小であるという点がございますし、また農地価格も、国土面積に対しまして非常に人口が多い、また工場用地に非常に使われている、あるいは農地の耕地率といいますか平地率も非常に低いというようなことから高いということもございますし、また土地所有の形態から見ましても分散錯圃性というものが支配的でございますので、こういう制約条件から見まして生産コストが非常に高い、生産性が低いという点に一番の問題があろうかと思っております。また、近年におきましては、地価の高騰によりまして農地の資産的保有という傾向も強まっている、また兼業化、混住化ということも進展しているということがございまして、農業の中で特に土地利用型の農業、特に穀類等におきまして非常に生産性が低い。反面養鶏、畜産、養豚等の施設利用を行っております農業部門におきましては主として欧州の諸国に比肩し得る程度の生産性向上が実現されているわけでございますが、土地利用型の農業部門におきまして生産性が低いという点が一番大きな問題ではないかと考えております。
  113. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 生産コストが一番問題になっているようでもございますが、日本の農業と世界で一番大きなアメリカとを比較してみましても、日本の場合は一人当たりの農地が、これは一戸当たりだと思いますけれども、一応一人当たりとなっていますからそのまま読みますと、一九七九年度の統計ですが、一・一ヘクタール、アメリカは百九十七・九ヘクタール、日本の約二百倍あるわけです。そうなると、ここから生産される物を今度就農人口で割っても物すごい差が出てきて、これは、いまの条件を変えない限りこのままではコストの競争はできないではないか。  しかし、コスト、コストと言うけれども、果たしてコストが安ければそれが商品として価値あるものか、競争力を持つものかというのにも私は疑問を持っているのです。なぜならば、キュウリは非常に安いけれども、メロンは高い。しかし、その高いメロンが、それじゃ売れないかというと、これはどんどん売れているのです。そうすると、やはりここに考え方の転換が必要じゃないか。売れる物をどうつくるか、人間が好む物をどうつくるかということを相当研究対象にすべきじゃないだろうか。米にしても、ササニシキやコシヒカリは本当におかずなしでも食べられるけれども、北海道や千葉県の米なんかはとてもじゃないが食えたものじゃない。こういうものを一緒くたに考えているところに農政の問題があるんじゃなかろうか、こんなふうに思えてならないのです。  したがって、バイオテクノロジーの時代に入っているのですから、そういう点での人間の好む品質改良というものがやはり相当優先してこなければ、これからの農業というものを日本的なものに育てることはできないじゃないだろうか。それじゃ、アメリカ並みに日本の農民を片っ端から首切っていって、約二百ヘクタールに一人の農民を置いて競争しろと言っても、これはできる相談じゃないでしょう。だから、いま農林省が生産性向上と地域農業ということを結びつけて考えているようですが、これも後から議論しますけれども、その辺に私は何かすっきりしないものを非常に感じているのですが、その点はいかがなものでしょうか。
  114. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、日本とアメリカの場合、これは農家一戸当たりの農地面積だと思いますけれども、非常に大きな差のあることは事実でございます。したがいまして、私ども、いかに生産性を向上した場合におきましてもアメリカ並みの生産性を上げるということはきわめて困難だと考えております。ただ反面、世界貿易がこれだけ自由化を叫ばれ、また農産物につきましても市場開放を一般工業製品と同じように要望されている時期でもございますし、また国内におきましては消費者ができるだけ安い安定した価格で物を買いたいという希望もありますので、やはりできるだけ国際価格の水準に近づける努力は必要であろうと考えておりまして、私どもは欧州並みの水準というものを当面の目標にしているわけでございます。  また同時に、農産物の中身につきましても、先生指摘のように、品質等につきまして消費者の選好というのが非常に多様化し、高級化してきております。したがいまして、それに応ずるような農産物、需要に対応するような農業生産を導いていくということは当面の一番の課題かと思いますし、また研究技術の面におきましても、消費者が選好するような、そういう品質の物にだんだん生産を誘導していくということが必要だろうと考えております。
  115. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、コストを低めるために規模だけでアメリカと対抗できないということがわかれば、別な方面で考えるということが必要になってくると思うのですよ。それで私は、日本の農業というのに非常にむだが多過ぎるのじゃないか、そういう点のコスト高も考えられるわけであります。  たとえば農機具にいたしましても、日本の農機具というのは面積当たり非常に多いわけですよ。そして大概の家に、自分の耕地面積とかそういう農業規模に対する適性というものを考えずに、隣の人がコンバインを買ったから私も買うというような式でどんどん大型の農機具を入れて、いまや非常に農機具自体が大型化している。ところが経営は非常に小規模である。ここに私は経済性を無視した非常な矛盾が出てきておると思うのです。そういう点に対して、大体この型のコンバインならば経済稼働率は何ヘクタール以上だとか、そういう一つのものをデータにして農民の具体的な指導に当たるべきじゃないか、そういうふうに考えられるのですが、その点が一つ。  それからもう一つは、結局、安い物に対抗するには品質をよくしなければならない。その品質をよくするためには、いま言ったバイオテクノロジーとかそういう一つの科学的な手法を一方に置きながら、他方に、だれもが安心して食べられる健康食品ということが必要になってくると思うのです。現在はそういう点では全く危険なものばかりがあると言っても過言ではないと思いますよ。農薬を使っているのも日本の農業が世界一なんです。それから化学肥料もそうなんです。こんなことでやっていったら土地はやせる一方であって、ますます病虫害がどんどん発生して、それが悪循環になっておる。これではもう土地が死んでしまいます。この間筑波に行ったら、結局バイオテクノロジーというものは農業に関する限り最終的には土地なんだというお話を私、ちょっと聞いたのですけれども、どんなりっぱな品種を持ってきて遺伝子交換をやったところで、土地にそれを受け付ける地力がなければどうにもならない、こういう話も聞いたのです。現在の農業の中でそういう地力増進の指導というものが果たしてなされているだろうか。私はいま有機農業を研究しているのですが、有機農業を幾ら叫んでも、農民は忙しさに紛れてそれをやろうとしない。化学肥料を振りまいた方が手っ取り早い、こういう心理になって、実はもっとりっぱな作物をとれるのに、これこそ人為的にとらないような結果になっている。この点はどういうふうにお考えでしょう。
  116. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 まず、農業機械が大変大型化してまいりまして、使用効率の面におきまして大変ロスがあるのではないか、また、そのことが農業経営費を増高させておるのではないか、こういうお尋ねでございますが、私どももその点は全く同様に考えておるわけでございます。ただ、農業機械そのものがだんだん大型化の傾向に向かってまいりますのは、農家の側にも一つの理屈がございまして、傾向として兼業化が進んでおる、その中で農作業をできるだけ短期間に済ましたい、こういう農家側の需要がございますし、また、同じ作業をいたしますにも、小型のものよりは大型の機械の方が機械の運転上労働が楽である、こういった事情もございますので、一概に機械の大型化というのは非難できない性格がございます。  そこで、お尋ねのように、私どもも農業機械化促進法に基づきまして大型機械の導入基本方針というのを定めておりまして、その中におきましてどれくらいの利用面積に対してこの種の機械を使えば合理的であるかというガイドラインを示しておるわけでございます。  一例を挙げて申し上げますならば、大型のトラクター、そのうちの大体三十馬力なら三十馬力というトラクターにつきましては十ヘクタールというのを下限面積というふうに設定をいたしております。この考え方は、機械自体の能力という点から言いますと、十六ヘクタールくらいのものを通常の作業適期にこなし得るだけの能力があるわけでございます。反面また、その機械を使う方の側の要請から申しますと、先ほど申し上げましたように、ある適期の幅でできるだけ早く作業を終わらしたい、こういう需要もあるわけでございますので、仮にその仕事を、ただいま行われております作業委託というふうな形で外注した場合の費用に比べて、自分が機械を持った場合にその方が得であるという下限値は幾らであろうかということになりますと、三十馬力のトラクターの場合には、大体六ヘクタールくらいあれば自分で機械を持った方が外に作業を頼むよりは得だ、こういう計算もあるわけでございますので、両者の中間をとりまして、十ヘクタール程度がまずまず望ましい下限値であろう、こういうふうなことを機械の規模別に、コンバインはコンバイン、田植え機は田植え機なりに定めて指導いたしておるわけでございます。  ただ、そういう指導がございましても、個別の経営においてそれだけの作業の規模を確保するということは、ただいまの日本の農業の経営規模から言いますとこれとても容易ではないわけでございますので、機械を使うためのその受け皿づくりということを並行して行っておるわけでございまして、きわめてソフトな組織で申しますと、さまざまな農業の生産組織がございます。簡単なものは機械の共同利用組織というふうなものから、組織の中において作業者の分担を決めて行うというふうな組織のもの、さらには農協あたりが中心になりまして、機械銀行というふうな、機械を持っている人と機械に作業をやってもらう人の仲介をするというふうな、そういう組織づくりも進めておるわけでございます。  それから、後段お尋ねの土づくりの問題でございますが、俗に言われております有機農業が、農薬や化学肥料を全く使わないというふうなものが有機農業ということで言われておるケースがございますが、私どもは今日の農業の実態からいたしますと、農薬なり化学肥料なりの効用を全く無視するということは適切でないと考えております。農薬につきましても、かつてかなり危険なものが使われた時期もございますが、今日使われております農薬は、非常に毒性の低い、残留性の低いものが圧倒的でございまして、使われました後の作物に対する残留値なども厚生省などとともに非常に厳しく規制をいたしておりますので、農薬を使った作物が人間の健康に有害であるというふうなものは全くないという状況に相なってきておるわけでございます。  しかしながら、そのような化学物質だけに依存をして農業を営むということは、それ自体一つの脆弱性があるわけでございまして、農業の本質がやはり土の持っている生産力にあるという点については御指摘のとおりでございます。近年、東北を中心といたしまして三年続きの冷害というふうなことを反省のきっかけといたしまして、やはり農業は土をよくしなければならぬ、こういう機運が次第次第に見直されてきているような感じもいたしております。私どもといたしましても、関係団体あるいは地方公共団体と提携をいたしまして、また普及の組織も動員をいたしまして、この土づくり運動に取り組んでおる次第でございます。
  117. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、いま農機具の問題についてお答えありましたが、農機具はなぜ値段が表示されていないのでしょうか。どこに行っても農機具の値段の表示は見たことがないのです。そのことは、一つは、日本の土地改良制度というものを見てみると、農機具の発達の段階によって土地改良の政策が変わってきているんじゃないか、つまり、農機具が日本農業のあり方というものをある程度決定してきているような感じがするのです。それは、農機具会社、メーカーが独占的な一つの地位を確立して、それを守ろうとするあらわれがあのような価格の未表示ということになって出ているんじゃなかろうか。それから、話によると、メーカーと農協との間に販売協定がある、こういう話もあるのですが、その辺はどのようにつかんでおりますか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  118. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農業機械につきまして、長いこと値段の表示がなされていなかったというには、一つの根深い理由がございます。一つは、この農業機械の代金というのが、一体何々の代金であるのかにつきまして小売段階での内容が違っておる。通常ですと機械本体の値段ということになるわけでございますが、それにかなり多くの附属的な部品がついておりますし、またそのほかに、たとえば作業着でございますとか、そういうサービス的なものもついておるわけでございます。また、その機械が壊れた場合の後の修理的なサービスというものはどこまで無料であり、どこまでが有料であるかということについても、統一的な扱いが決まってはおりません。そこで、そういう機械の代金につきましては、個別の商店においても買い手側との相談によりましてかなりまちまちの値段、それによって内容も違うわけでございますが、そういう取引が長年行われてまいったわけでございます。また、これと並行いたしまして、たとえば温泉地などにおける招待などという、いわゆる過剰なサービス合戦というふうな弊害もございました。  そのようなことが長年続いておりましたので、十年ほど前だったと記憶いたしますが、私どもの役所の方から農業機械の取引の正常化について通達を発しまして、それがきっかけになりまして、今日では農業機械メーカーとそれから農業機械の販売店を中心にして公正取引協議会、こういうものが発足をいたしております。それによりまして、一つには、そういう景品販売の自粛、同時に、機械の販売代金の対象になりますものの内容の明示と価格の明示ということを最近ようやく行わせつつあるわけでございます。お目にまだとまっておらないかも存じませんが、そのような販売の仕組みをとっております商店がふえてきておるはずでございます。  それから農協とメーカーとの関係でございますが、これは農業機械に限りませず肥料、農薬もそうでございますが、農協、特に総合農協につきましては、全農を頂点とする三段階制の購買事業があるわけでございます。そこで全農がメーカーと個別に、あるいは肥料のようにメーカーの連合体と協議をいたしましてその年の全農扱いの価格を決める、こういうふうなことをいたしておるわけでございます。御承知のように、全農の配下にございます農協は大変数も多うございますし、扱っている種類も多いわけでございますので、その一つ一つの末端との取引につきまして異なる値段を用いるということは、系統内の不満も当然出てまいりますし、また、あれだけ大世帯でありますと小回りのきいた商売もできないわけでございますので、メーカーの製造コストを基準といたしまして大変厳しい価格折衝を行いまして、その結果、今後一年間あるいは半年間の扱うべき資材の価格を決める、こういうことを行っておるわけでございます。  大体従来の例でございますと、肥料、農薬等につきましては、全農の決めましたいわゆる建て値というものが商系においても右へならえという形で踏襲されておるというふうな傾向にございますので、この事柄自体は決して農家の利益に反するということではないと思っております。私どもといたしましても、全農を通じまして、またメーカーとも折衝いたしまして、この価格が適正に決定されるように指導いたしておるところでございます。
  119. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 部品とかいろいろあってなかなか価格決定がむずかしいと言われましたが、そういう部品をやるのはほかにもいっぱいありますよ。たとえばカメラだって、本体とそこにつけるいろいろな部品があるわけで、それはそれぞれに皆値段をつけたらいいじゃないですか、この部品は幾ら、この部品は幾ら、本体は幾らと。基準価格というものを示すことが大事だと思うのですよ。私は最終の売り値がどうなろうと、それは店のいろいろな販売方針があるのでしょうからそこまでは文句は言わないけれども、ある程度これはこれだけの品物なんだ、これだけの価値があるんだという基準価格というか標準価格というか、そういうものを一応表示して、そうして余り農民をばかにされないようにしていただきたいのですよね。結局出血販売なんてあり得ないのですから、みんな東南アジアに招待したの、台湾に招待したのと言っておりますけれども、それはみんな自分が招待されたと思っているだけで、結局自分が支払っているのですよ。そういうごまかしで農民に高い農機具を買わせるということはやめさせるべきだ。また、そういう状態の中では近代農業なんて言えないんじゃないか、そういうふうに考えますので、その点ひとつ、今後さらに強い御指導をお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
  120. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 先ほど申し上げました公正取引協議会におきましては、その種の招待販売というのを一切自粛するという申し合わせがすでにでき上がっておりまして、現実にも行われておらないはずでございます。  また、標準価格の明示ということにつきましても、追い追い徹底を見てくるはずでございます。もちろんそれを末端のいわゆる拘束性を持った小売価格とするという意味ではございませんで、値引きをして売るということについてはもちろん小売店の自由な判断に任されるわけでございます。御指摘の点についてはさらに努力をいたしたいと思っております。
  121. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 では次に移りますが、水田利用再編対策として、昭和五十八年度は三年続きの冷害に遭ったわけでございます。去年は二年続きの災害に対して配慮されて、目標面積を下回った五十六年度面積に戻していただいたわけですが、本年は三年続きですから、転作目標面積を軽減していただくわけにはいかないか。その問題についてどういうふうにお考えですか。これは大臣にお願いします。
  122. 金子岩三

    ○金子国務大臣 第三次の水田利用対策は当然五十九年度の予算を編成するまでには決定をしなければなりません。ただいま減反面積を減らすべきではないかという御指摘のようでございますが、三年続きの不作、それと需給動向の実態をよく把握しながら、そして農家の方々が今後この減反を不安定なものに感じ取らないように、一応理解ができるような仕組みに、この数字を決めるときに五十九年度に向かっては慎重にひとつ検討を続けてまいりたいと思います。
  123. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、五十八年度の転作奨励補助金というのは従来どおりに支払われるお考えですか、その点もひとつよろしくお願いします。
  124. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 五十八年度の転作奨励金につきましては、補助の単価及び仕組みとも、前年度のものをそのまま踏襲するつもりでございます。
  125. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 繰り返しますけれども、いまの大臣のお答えでは、考えるのか、ただ検討する、不作と需給動向を見て考える、こういうことの御答弁のようですが、もう事実は明らかなんですね。事実は明らかなんですから、ここである程度農民に対して示唆を与える意味でも、方向をひとつある程度はっきりしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  126. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 水田利用再編対策は五十三年度からおおむね十年間実施する、こういうことでスタートいたしておりまして、ただいま第二期目の最終年度に入ったところでございます。したがいまして、先ほど私が申し上げました五十八年度の奨励金というのは、これは第二期の期中にあるわけでございますから、その意味でこれまでのものを踏襲すると申し上げたわけでございます。  五十九年度以降をどうするかというのは、まさにただいま検討中の問題でございまして、いろいろ検討すべき問題が多いわけでございます。たとえて申しますと、いま御指摘のようなこれからの米の需給、これは五十九年度単年度ではございませんで、五十九年度以降の米の需給というものをどのように見ていくのか、それには消費の動向もございますし、米の生産力の今後の水準がどのように移行するのか、こういう問題もあるわけでございます。それから、五十九年度以降の転作奨励金の枠組みをどのように決めていくのか。これには単価の問題ももちろんございますけれども、転作の定着化を促進するためにどのような仕組みをとったら一番合理的か、こういう問題も含まれておるわけでございます。さらに、しばしば国会等で指摘をいただいておりますが、米の備蓄等の問題をどのように取り入れていくのか、そういった問題を含めまして、ただいま省内で検討チームをつくりまして検討中でございますので、大臣が先ほどお答え申し上げましたように、五十九年度予算編成期までにはその全貌を明らかにいたしたい、かように考えております。
  127. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 減反面積について。
  128. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 面積は、米の需給を見通しまして、米の潜在的な供給力、それから現実の消費量、需要量というもののギャップを埋めるために行うものでございますから、その面積をいかようにするかということも、ただいま申し上げました検討の作業の中の一項目になるわけでございます。
  129. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それから、地域農業集団育成というので予算がとられておりますが、この中身はどういうことなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  130. 森実孝郎

    森実政府委員 地域農業集団の育成という考え方は、いわば各集落において地権者同士の話し合いを促進して、土地利用型農業に焦点を合わせながら規模拡大を図るための、利用権の設定なりあるいは作業受委託による経営規模の拡大ということを実現しようとするものでございます。したがって、その予算の内容につきましては、地域農業集団の育成費自体につきましては、農地法の改正なり農用地利用増進法の制定を通じて利用権の設定というものもようやく全国で十万ヘクタールを超える段階になった、また、全面的な水稲等の作業受委託もかなりな規模で定着してきているという現実を頭に置きまして、全国的な規模で何とか話し合いを促進していきたい、そこで農振地域内の全国の集落のうちの約半分、六万集落を当面の対象にして、初年度はその約半分の三万集落においてこういった地権者が話し合いを進める団体を約一万七千育成したいということで、一団体当たり二十万円の補助金をいわば話し合いのための経費というものを予定しているわけでございます。  しかし、この地域農業集団の話し合いによる規模拡大政策の推進というものは、いわば話し合いの経費の予算だけで終わるわけではございませんで、従来からも実施しておりました農用地高度利用促進事業による賃貸奨励措置等をこの措置に直接リンクすると同時に、また、高能率生産組織の育成に出資しておりましたいわゆるソフトの助成等もリンクしてその事業効果の発揚を図ると同時に、圃場整備事業とかあるいは第三次の構造改善の後期対策も、この地域農業集団の話し合いと結びつけて対処を考えたいと思っています。
  131. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この一農業団体当たりというのは、一農協単位なのか、土地改良区なのか、あるいは部落なのか、その辺はどういうふうな団体を考えておられるのか、それが一つ。  それから、いわゆる会話の費用だ、まあお茶菓子代と場所代ということでしょうが、これが全国全部に平等に配布されるのかどうか、その辺と、その効果についてはどういうものを期待しているのか、その点についてお伺いします。     〔委員長退席田名部委員長代理着席
  132. 森実孝郎

    森実政府委員 三点御質問がございました。  まず第一に、部落の範囲、いわゆる地域農業集団の範囲でございますね。この範囲につきましては、私どもも、過去においていわゆる農用地利用増進法により農用地利用改善団体というものの育成を進めてきたわけでございます。全国で大体三千団体ぐらい育成ができた。これは大体、集落基準でございますが、やはり平場等においては集落を超えて話し合いをした方がはるかに流動化の促進に役立つ実態もございまして、そういう意味で、従来の実績の数字をとりまして約三万集落を対象にして一万七千団体ということでございまして、一集落または二、三集落というふうにお考えいただくのが適当だろうと思います。  それから、いわゆる地域農業集団の育成対策事業に対する直接のソフトウエアの助成でございますが、これは利用改善リーダーの研修費とか、それからいまお話がございましたような地域農業集団活動の業務運営費ということで話し合いに要する経費的なもの、それから集落の農用地利用調整費ということで具体的な利用調整のための話し合いの経費、それからさらに、農作業受委託あっせん調整経費といって、こういった作業受委託の話し合いの経費等でございます。  これにつきましては、一団体当たり二十万円で、二分の一補助ということで十万円を出すことを考えておりますが、これ以外に、実は集落型の構造改善事業が新しく本年度の予算から発足させることにいたしておりまして、こういった集落単位の構造改善事業にリンクして、密度の高い流動化の話し合いを進めるところにつきましては特に高い単価で助成を行うことを考えております。  さて、その効果という問題でございます。私、先ほどの答弁でも冒頭申し上げましたように、利用権の集積というのが大体二年半の間に十万ヘクタールを全国で超えるような状況になってきた、農作業の受委託も、水稲作等を中心にいたしましてかなり全面的な作業受委託が進んできた、こういう現実の上に立って、全国的な規模でやはり利用権の集積なり作業受委託の話し合いができる条件をつくっていきたいというための助成で、したがって賃貸奨励措置や作業受委託に伴ういわゆる高能率生産組織の育成対策の助成もこれにリンクして出していきたいということを申し上げたわけでございます。その意味では、効果はどんなものであるかということを定量的に示しているわけではございませんが、少なくとも、まず最初に全国の農振地域の約半数の集落については、この地権者の話し合いによる規模拡大への活動が現実に軌道に乗るようにいたしたい、このように考えているわけでございます。
  133. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次に移りますが、食糧管理費の国内米管理勘定が五十八年度は減額されているようですが、これは五十八年産米の生産者米価は据え置くという考え方からこういう予算措置をされたのかどうか。
  134. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  国内産米勘定なりの毎年度の予算編成におきましては、米の買い入れ価格は前年産の価格をもって算定いたしておりますから、これが例年の例でございますので、五十八年度について申しますならば、五十七年産米の買い入れ価格をもっていたしております。国内産米勘定が減額されているというのは、これは国内産米勘定の歳出入規模なりが四兆一千億から三兆七千億円になってきておりますのは、過剰米の処理の進展とか五十七年産米が不作というような、全体の取り扱い規模が変わってきているために減額されておりますので、直ちに米価とつながるものではございませんが、生産者米価の扱いは、従来から前年産の買い入れ価格といたしておるところでございます。
  135. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、結局農林省から諮問案が米審に出されるわけですから、いまから大体、腹ができているのじゃないですか。どういう諮問を出すつもりなのか。
  136. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 本年の生産者米価の取り扱いについてはこれから検討する段階でございますので、まだ何も決めていないという状況でございます。御存じのように、先ほどお話がありましたような大幅な生産調整を実施しているような状況、あるいは売買逆ざやを解消しなければならないというような状況から、大変厳しいものがございますが、いずれにいたしましても、例年どおり、食管法の規定に基づきまして米価審議会の意見を聞いて適正に決定いたしたい、このように考えております。
  137. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 米審の意見を聞いて決定することは、それはそのとおりですが、一応米審の意見を聞く原案となる諮問案というもの、それには据え置きでいきたいのか若干上げていきたいのか、その辺の考え方はあるわけでしょう。その諮問案に出すお考えを教えていただきたいということです。決定はもう米審の後でなされるのは当然であるから、そのことは聞いてもおりませんから。
  138. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 生産者米価の諮問案なりの作成に当たりましては、前年産の生産費の状況等各種の最新のデータを用いまして算定いたすわけでございます。まだ、そうした資料も全部そろってもおりません。したがいまして現在の段階では、先ほど申しましたように、これについてはまだ決めていないという状況でございますので、そのように御了承いただきたいと存じます。
  139. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、農政の基本目標というのは、農民の生活を他産業に従事する人たちの生活並みに維持する、こういうことに力点があるのか、ただ食糧の安定確保のために農業というものの位置づけがされているのか、その辺についてはどうでしょうか。
  140. 角道謙一

    角道政府委員 農政の基本目標といたしましては、現在の世界の食糧需給事情、これが中長期的に楽観を許さないという状況もございますし、昨年八月あるいは昭和五十五年の十月に出されました農政審議会の「八〇年代の農政の基本方向」あるいはその基本方向の推進についてというような報告に即しまして、総合的な食糧自給力の維持強化を基本とする各般の施策の展開によりまして、国民生活にとりまして不可欠であり最も基礎的な物質であります食糧というものの安定供給の確保につとめることが第一と考えております。  それから、御指摘のように、農業生産を支えるにおきましては、やはり農業生産の担い手としての農家の生活を維持するということは非常に重要でございます。現在の農家の生活水準を総体として見ました場合、農家の世帯一人当たりの家計費は大体勤労者世帯のそれを上回っておりますけれども、これは農外所得が相当多いという点にございまして、農業所得の面におきましてはまだまだ至らない点がございますので、今後農業所得の確保を図る。特に今後の農業生産を担います中核農家というものにつきましての農業所得の確保ということは重要な課題でありますし、また、生産性の向上というものを通じまして農業所得の確保に努めたいというように考えております。
  141. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは私、非常に問題視しているのですが、大体一方では農地の流動化、集積化ということを唱えておりますけれども、他方ではかえって第二種兼業がふえてきて、そして農地は食べるくらいにしてあとは農外所得の方がいい。また、そういう第二種兼業の方がむしろ生活のレベルが上になっているところが多いのですよ。そうして専業農家がいま一番困っている。もちろん特例の人たちはおりますけれども、一般に二、三ヘクタールですか、その程度のところでは専業をして、専業をせざるを得ないかわりに生活が非常に困ってきている。したがって、現在、一体日本の土地の集積というものが果たしてすっきりといけるだろうか。私は、その第二種兼業がむしろ農地を手放さない、そして、しかもそれは農外所得を重視しますから生産性は非常に悪くなる、もう余り手入れもしない、そういうような傾向が出てきて、農業が何かずたずたに裂かれていくような気がするのですが、その辺についてはいかがなものでしょうか。
  142. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘のように、現在、農地につきましては農家が財産保有的に見る趣向が非常に強くなっております。また、一たん第三者に貸した場合に、それが自分が必要なときに返ってくるかどうかというような不安もございまして、この流動化を妨げていることは御指摘のとおりでございまして、ただ、私ども現在の農村の事情、いま御指摘のようなことを考えたり、また一昨々年に制定されました農用地利用増進法というものによりまして、所有権の移転ではなしに利用権の設定という簡便な方法によりまして、できるだけ農業生産の担い手になります中核農家というものに兼業の方々が農地を集積していく、そういうことを私ども期待をしているわけでございますし、先ほど御指摘あるいは御質問のございました地域営農集団につきましても、こういう地域全体として中核農家を中心として規模拡大を行っていくということは期待している施策の一つでございます。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことによりまして私ども今後、たとえば農政審の報告におきましては五十五年から六十五年の間に約九十万ヘクタール程度の流動化というものを期待しておるわけでございますし、そういう方向に施策の重点を据えていきたいと考えておるわけでございます。
  143. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、私は今度の地方選挙であちらこちら歩いて非常に驚いたのですが、いま農家の農協からの借金というのが物すごいのですね。大体二町前後の農家で二千万円以上も借りておる農家がたくさんあります。こういうことを見てみますと、しかも農協の利息というものは市中銀行よりも高いわけで、自分の積んだ金に自分が利息を払って、そうして返済できないで倒産寸前の状態にある農家がたくさんあるというこの事実ですね。  それから各災害時にいろいろな補助金なり融資なりを国は出していきますが、それは現実には農民の手に直接入らないのですよ。全部借金の肩がわりにされていって、せっかくの温情ある制度が温情になっていない。そうして農民はどんどんと借金が雪だるま式にふくらむばかりであるわけですが、そういう実態はつかんでいるでしょうか。いま農家一戸当たりの借金はどのくらいに把握しておりますか。  なおついでに、高い農協の利息と安い農協の利息、それから市中銀行の利息と比べてその数字をお出しください。
  144. 大坪敏男

    ○大坪政府委員 ただいまお尋ねの、まず農家の農協等からの借金の状況についてでございますが、農家経済調査によりまして全国農家の一戸当たりの平均の借入残高を見ますと、五十六年度末でございますが、百七十五万円となっております。このうち農協からの借り入れでございますが、これは八十九万円、率で申しますと約五一%ということになっておるわけでございます。さらにその内訳を見ますと、いわゆる農業近代化資金等の制度資金が一部ございますので、これを除きましていわゆる農協プロパー資金を見ますと五十九万円でございまして、全体の約三四%、こういう数字になっているわけでございます。  そこで、農協の貸出金利の問題でございますが、ただいま先生おっしゃいました農協単位でどういう状況であるかにつきましては手元にデータはございませんが、農協の貸出金利と他の金融機関の貸出金利につきましては若干データがございますので、御紹介させていただきます。ただ、これは技術的にいろいろな面で問題がございますので、かなり大胆な試算であるというふうに御理解いただきたいと思います。  農協の貸出金利でございますが、最近時点で長短合わせまして約九%となっております。これに対しまして、地銀でございますと七・四%程度、信用金庫でございますと八・五%程度、こういう水準になっておるわけでございます。結論的に申しますと、やはり市中の他の金融機関に比べますと農協の貸出金利は割り高になっておるという実態にあるわけでございます。  この理由につきまして若干御説明させていただきますと、まず、銀行等の一般の金融機関に比べまして農協につきましては貯金金利を〇・一%高めに決め得るというようなことになっておるわけでございまして、現に〇・一%高いという実態がございます。また農家の預金の仕方でございますが、銀行と比べた場合、定期性貯金の比率が非常に高うございます。そういうことから、どうしても調達コストが高くなっておるという点が一つございます。また、貸し付けに関して見ますと、どうしても市中銀行に比べますと小口でございまして、かつまた件数も多いということから、貸し出しに関する事務のコストが高いというふうなことが挙げられるわけでございまして、こういった面がコストの高い理由ではなかろうかと考えておるわけでございます。  ただ、農協の貸出金利を営農資金、生活資金、員外貸し付け等に分けてみますと、やはり何と申しましても営農資金を一番低目に決めておりますし、次いで生活資金、員外貸し付けというふうに、貸し出す資金の種類に応じまして一般に金利に高低の差をつけておるというのが実態のようでございます。
  145. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは全国的な数字ですからそういうふうに低いでしょうが、私の方のある地域なんかは、ある農協の平均が一戸当たり五百万を突破している。そういうふうに非常にアンバランスがあるわけですね。ですから、全国平均で見ないで、これを段階的に見て、要注意のところにはある特定の指導をしていく必要があるのではないだろうか。営農指導員もいるわけですから、あるいは農協だって農家の借りる状況、資産の状況、全部知っているわけですから、これ以上貸せばあなたの農業は立っていかない、返済も不可能だというそのぎりぎりの限界をきちっと教えてやって指導することが非常に大切じゃないだろうか、こんなふうに考えられるわけですが、その辺の御指導はいかがなものなんでしょうか。
  146. 大坪敏男

    ○大坪政府委員 農家が借ります借入金につきまして限度を設けるかどうかという点でございますが、何と申しましても、経営をしている作目なり規模、あるいはその経営が存立しております立地条件等々個別経営によりましてかなり様相が違ってまいりますので、限度につきまして一概に線は引きがたいのじゃないだろうかと考えるわけでございます。ただ先生指摘のように、昨今の農家の経営状況を見まして、極力借入金に依存しない体質が望ましいことは申すまでもございません。  そこで、私どもといたしましても、たとえば農林漁業金融公庫資金等の貸し付けにつきましては、これはまたやりようによっては手続が煩瑣になるという御批判もいただくわけでございますが、煩瑣にならないように留意しながらも、たとえば経営計画等をつくっていただきまして極力過剰な借り入れは避けていただくというふうな配慮はしているつもりでございます。また、災害時におきます資金の融通という面もございますが、この際にも、被災しました農家等が自作農資金なり天災資金を借りる前に、まず既存の借入金の償還の条件を緩和する、つまり償還期間を延長する、そういった面の対応がまず必要でございますので、これにつきましては農協と金融機関等の協力も仰ぎながら、極力借金を増すのではなくて、既存の借入金の償還期間を延ばすという方向で対応しているわけでございます。昨今の厳しい農家の経営状況でございますので、今後とも過剰な借り入れが生じないよう極力配慮してまいりたいと考えております。
  147. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 特に構造改善事業とかその他制度資金を借りておる人たちに対しては、その返済期間の延長なり利子補給、そういうことを考えていただきたいと思います。  それから、そうでない農協の独自資金を借りる場合は、どうすれば農業として、農家として立ち直っていけるのか、そういう指導をある程度していただきたいと思うのです。案外無造作に貸すから借りるんだ、そういう式のものもないわけではない。ですから、営農指導員なりを通して、あるいは農協全体の農家に対する指導として、金融面と営農面をどう結びつければ最も合理的であるか、こういうような点についてきめ細かな御指導をいただければありがたいと思うのです。
  148. 大坪敏男

    ○大坪政府委員 先生指摘の問題は、昨今のように三年連続の災害という事態で特に緊要な課題になっていると考えているわけでございます。たとえば昨年の場合でございますと、特に東北を中心に三年連続の災害ということもございましたので、関係県の担当課長会議を開催いたしまして、現在の資金面での制度の概要、かつまた被災しました農家の負債に対する対応の仕方等々について概要を説明しながら、先生指摘のように極力改良普及組織あるいは農協の営農指導組織等々とも連携を保ちながら円滑な資金面での対応措置をするように指導した次第でございまして、今後ともそういう姿勢でもって対処してまいりたいと考えております。
  149. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、次に移りますが、後継者育成の問題です。後継者育成資金などいろいろ対策は講じておられますが、現実にはそれが効果を上げていない、こう言って過言でなかろうと私は思うのです。  この間ずっと私の選挙区内を歩いてみましたら、四十を超えて独身の男がたくさんいるんですよ。もう驚いてしまいました。こういう状態では監獄に行った方がましだくらいな感じが私しますね。もう四十を超えて人生の楽しみもわからないでいるような状態を放置できますか。何とかお嫁さんを見つけてくださいという、本当に深刻な農家のお父さんやお母さんの言う言葉に、私はどうしたらいいのかと自分自身でも途方に暮れるような状況なんです。これはやはり農業そのものに対する魅力がないから、人の娘は嫁にもらいたいが自分の娘はくれたくないというのが現実の心境です。こういう心理を農村につくり上げた責任は、私は政府にあると思うのです。この農政にあると思うのです。そういうものについては、大臣、どういうふうにお考えですか。
  150. 金子岩三

    ○金子国務大臣 最後の、いまの後継者の問題でいろいろ御意見がありましたが、大変な問題でございます。いまの農村の実態をいろいろと考えますと、後継者が将来果たしてどのような姿になるだろうかということは憂慮にたえません。大変適切な御指摘でございます。農村に魅力を持たせるような農政を推進しなければならない、大変むずかしい問題ばかりでございますけれども、そういう意味でひとつ、若い人が自分の郷土、自分の農協に魅力を持たれるような仕組みに向かって農政を推進していきたいと思います。
  151. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最後に、時間もそろそろ来ますから、農業白書の「むすび」の中で五つの問題を指摘して、当面この五つの問題について対策を講じなければならない、こういうふうに言われております。  読んでみますと、「一つは、稲作等土地利用型農業では、経営規模の拡大が十分に進まず、生産性向上が相対的に立ち遅れていることである。二つは、農業生産が食料需要の動向に必ずしも十分に対応し得ず、多くの農産物が供給過剰ないし需給緩和基調にあることである。三つは、国際的な経済摩擦の激化を背景に、農産物の市場開放の要請が一層強まっていることである。四つは、農産物の全般的な需給緩和基調等を反映して農産物の価格上昇が困難になっているなかで、農業の交易条件の悪化や気象災害等から農業所得が伸び悩んでいることである。五つは、農村社会における混住化、兼業化、高齢化の進行」云々とあるわけですが、これらの問題を抱えておる中で今後どういうふうに対策を講じようとしておられるのか、本当にこの問題の解決に向かった実効ある対策というのはどういうものなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  152. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  農業白書におきましては、いま御指摘の五つの問題を挙げまして、将来の方向、施策の方向といたしまして四つの重点課題を挙げてあるわけでございます。  第一が農業生産性の向上の一層の推進であり、第二が農業生産の再編成、第三が農産物価格の安定であり、所得確保あるいは健康的で豊かな食生活の保障、第四といたしましては、活力ある農村社会の建設と緑資源の維持培養という問題を今後の施策の重点として掲げてあるわけでございます。  私ども、今後の施策の方向といたしましては、農業生産性向上の一層の推進につきましては、農用地利用増進法あるいは地域営農集団等を中心といたしまして中核農家の育成なりその経営規模の拡大を進めていく、また高能率な生産組織の育成を図っていく、また、第三次土地改良長期計画等がございますが、これによりまして農業基盤の整備を図っていくこと、また農業技術開発、普及等を総合的に実施をしていくことを考えております。  第二の農業生産の再編成につきましては、先ほど来いろいろ御議論のございました水田利用再編対策というものを中心にいたしまして、水田の汎用化、あるいは転作田の集団化あるいは団地化、あるいは転作の定着あるいは転作営農の生産性向上というものを中心に施策を展開してまいりまして、需要の動向に即応した農業生産構造の確立を図るということをやってまいりたいと考えております。  第三番目の価格、所得政策等につきましては、農産物価格政策を適正に運用すること、また生産者団体等の自主的な需給調整なり計画生産、計画出荷というものの促進を図るということとともに、生産性の向上あるいは生産資材の効率的な利用というものを基本といたしまして、農業所得の確保を図るということと同時に、食生活におきましても食料需要に対応した安定的な供給を図る、また日本型食生活というものを定着を図る、また食料につきましても、安全性確保、また品質の向上ということを総合的に確保してまいりたいと考えております。  最後の、農村社会の建設あるいは緑資源の維持培養につきましては、村の共同活用を図る、また安定した就業機会を確保するとか、あるいは農村の環境というものが都市に比べて非常におくれておりますので、こういう農村環境というものの整備を図っていく。また森林につきましては、森林の適正管理ということ、あるいは緑資源の管理、利用技術開発、あるいは計画管理を一層推進していくということを通じまして、農村社会の活力ある社会を建設するとかあるいは緑資源の培養に努めたいというように考えておるわけでございます。
  153. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 非常に言葉はきれいでございますが、私たちは言葉や文章ではなくて、実体を大事にしておるわけでございます。先ほども言ったように、農業を継ぐ後継者がいなくなったり、あるいは自給率を高めると言いながら実際には年々減ってきておる、こういう現実。それから、いま盛んにアメリカから圧力がかかっておる貿易の自由化や農産物の輸入枠拡大、こういうものがあって非常に環境の厳しさというのはわかりますが、よほど農林大臣は腹をくくって、日本農民の立場で日本の独立というものを守っていくのだ、そして日本農民とともにあるのだ、こういう覚悟でひとつ今後の農政をやっていただきたいと思いますが、最後に所信のほどをお聞かせ願って、私の質問を終わります。
  154. 金子岩三

    ○金子国務大臣 二時間にわたって質疑を交わした中で、大変貴重な御意見を拝聴いたしました。いろいろむずかしい問題ばかりでございますけれども、農林省は全力を挙げてひとつ御期待に沿うように努力を続けてまいります。
  155. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうもありがとうございました。
  156. 橋口隆

    橋口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  157. 橋口隆

    橋口委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中路雅弘君。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 日本共産党を代表して、議題となっています農林水産省設置法改正案に対し、反対の討論を行います。  わが党は、日本農業の再建と発展に資する観点からの新たな技術研究と、これに伴う研究機関の強化の必要を認めるものです。  しかし、今回の法案に盛り込まれた研究機関の再編は、こうした方向と逆行するものとなっています。  本法案に反対する第一の理由は、今回の研究機関再編が、農業のスクラップ化を基本とする産業政策と独占資本奉仕の科学技術政策の枠組みの中で進められようとしていることであります。  第二に、そのため現状の研究体制を解体し、新たな研究課題と研究システムを導入した研究機構を創出し、これに伴い、植物ウイルス病が蔓延し、農水省としても植物ウイルス研究の重要性を強調せざるを得ない状況にもかかわらず、当該研究所を廃止しようとしていることであります。  しかも、今回の再編は、法案審査を通じて明らかになったように、日本農業つぶしの臨調の農政改革路線上のものだということであります。  以上、反対する理由を述べ、討論を終わります。
  159. 橋口隆

    橋口委員長 これにて討論は終局をいたしました。     ─────────────
  160. 橋口隆

    橋口委員長 これより採決に入ります。  農林水産省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  161. 橋口隆

    橋口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  162. 橋口隆

    橋口委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、愛野興一郎君外四名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。渡部行雄君。
  163. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合の各派共同提案に係る農林水産省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農林水産省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、今後農業関係試験研究を一層推進するため、先の衆参両議院における「食糧自給力の強化に関する決議」の趣旨を踏まえ、農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所の発足を契機に基礎研究を一層充実するとともに、時代の要請に応えた試験研究体制の整備研究条件の改善を図って、開かれた研究機関として農業の振興及び農業者の要請に応えるよう努めるべきである。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じてすでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  164. 橋口隆

    橋口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  165. 橋口隆

    橋口委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  166. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  167. 橋口隆

    橋口委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 橋口隆

    橋口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  169. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、来る十九日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会