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1983-03-24 第98回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十四日(木曜日)     午後二時十二分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 田名部匡省君    理事 堀之内久男君 理事 矢山 有作君    理事 渡部 行雄君 理事 市川 雄一君    理事 和田 一仁君       池田 行彦君    小渡 三郎君       狩野 明男君    亀井 善之君       始関 伊平君    谷  洋一君       吹田  愰君    保利 耕輔君       堀内 光雄君    牧野 隆守君       宮崎 茂一君    上原 康助君       嶋崎  譲君    日野 市朗君       山花 貞夫君    鈴切 康雄君       木下敬之助君    榊  利夫君       中路 雅弘君    小杉  隆君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省中南米局         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     藤井 一夫君         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       近藤 孝治君         防衛施設庁労務         部労務調査官  山崎 博司君         法務省入国管理         局登録課長   亀井 靖嘉君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     木野 晴夫君   上草 義輝君     石田 博英君   狩野 明男君     羽田  孜君   上原 康助君     枝村 要作君 同日  辞任         補欠選任   石田 博英君     上草 義輝君   木野 晴夫君     池田 行彦君   羽田  孜君     狩野 明男君   枝村 要作君     上原 康助君 同月二十四日  辞任         補欠選任   石井  一君     保利 耕輔君   上草 義輝君     牧野 隆守君   堀内 光雄君     谷  洋一君   山花 貞夫君     日野 市朗君   楢崎弥之助君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   谷  洋一君     堀内 光雄君   保利 耕輔君     石井  一君   牧野 隆守君     上草 義輝君   日野 市朗君     山花 貞夫君   小杉  隆君     楢崎弥之助君     ───────────── 三月二十二日  旧軍人恩給改定に関する請願江藤隆美紹介)(第一六六五号)  同(米田東吾紹介)(第一七〇一号)  旧樺太住民に対する補償に関する請願山口鶴男紹介)(第一七〇〇号)  非核原則法制定に関する請願栗田翠紹介)(第一七八二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二号)      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  3. 矢山有作

    矢山委員 まず最初にお伺いしたいと思いますのは、シーレーン防衛共同研究が先般開始されたというふうに承っておりますので、まずシーレーン防衛概念というものについて明確にしていただきたいと存じます。
  4. 北村汎

    北村(汎)政府委員 シーレーン防衛と申しますのは、一口に言えば海上交通の安全を確保するということでございますが、日米共同研究を先般から開始したわけでございますけれども、これは、わが国武力攻撃を受けた場合、いわゆる安保条約上の五条事態でございますが、そのときにわが国海上交通の安全を確保するために、自衛隊とそれから米軍の効果的な共同対処行動の具体的なあり方というものについて研究を行うものでございます。
  5. 矢山有作

    矢山委員 私が聞きたかったのは、一口海上交通安全確保、こうおっしゃるのですが、その海上交通安全確保ということの中身は一体どういうふうに理解しておるのか。私どもは、従来の国会のやりとりを見ておりますと、大体わが国の基本的な考え方というのは、食糧だとか資源だとか、わが国にとって必要な物資を輸送するその航路帯確保ということが中心になるというような点に重点がかかって説明をされておったのじゃないか。ただしその場合に、細い帯のようなところを守るんじゃありません、かなりの幅があるんだというようなことも言われておりますが、そういう点を明確にしていただきたいということです。
  6. 藤井一夫

    藤井説明員 シーレーン防衛定義のお話でございますが、シーレーン防衛というものに確たる定義というものはないわけでございますけれども、私どもが現在シーレーン防衛と称しておりますのは、いま先生がおっしゃいましたようないわゆる航路帯哨戒というものだけではございませんで、たとえば広域哨戒あるいは船団護衛海峡防備あるいは港湾防備、こうした各種作戦の積み重ねによりましてわが国に対します海上交通路全体を防衛する、こういう考え方で進めております。
  7. 矢山有作

    矢山委員 時間がありませんから、経過余り詳しいことをいろいろ言いませんが、私どもがいままでのやりとりの中で承知しているのは、大体、海上輸送路確保といえば南東南西航路帯がある、それを、一千海里にわたってその安全を確保して商船の輸送が阻害されないようにするんだ、こういうふうに言っておられたと思うのです。それから見るとただいまの考え方というのは大分飛躍をいたしまして、アメリカがよく言っておることでありますが、グアム以西フィリピン以北の一千海里の海域防衛、こういうことに大分近づいてきたような受け取り方を私はしておるわけです。  そこで、要するにシーレーンというのは一体どういうことなのかということで私もいろいろ調べてみたのですが、国防用語辞典によりますと、シーレーンというのをSLOCと言っておるわけです。シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション、こう言っておるのですが、それについてこういうふうに説明しておりますね。「有事において国が生存上または戦争遂行確保しなければならない海上連絡交通路。本来、海洋のラインズ・オブ・コミュニケーション、つまり戦線の作戦部隊根拠地を結ぶ兵站連絡海上交通路の意。根拠地から遠く離れて海洋作戦渡洋作戦を実施するには、海上補給輸送支援確保することが必須であり、このため味方のSLOCを防護する必要がある。」こういうようなことを言っている。  これから見ると、要するに海上交通路防衛というのは、民間の防衛ルートだとかなんだとかいうのでなしに、まさに軍事的な戦略ルートを守るというところがいわゆるシーレーン防衛概念ではないか。またアメリカ側は大体そういうふうなことを言い続けてきたと思うのです。その点で、最初シーレーン防衛というものに対する日本側概念アメリカ概念かなりかけ隔たっておった。そこで、それでは今後の共同作戦計画なんかを練っていくのにきわめて不都合だというので、防衛庁考え方が大分変わってきて、いまおっしゃったようなことになった。いまおっしゃったような解釈で言うなら、まさにアメリカが考えておる海上戦略ルート確保という意味と私は大差はない、こう思っておりますが、いかがですか。
  8. 藤井一夫

    藤井説明員 私どもシーレーン防衛防衛能力を考えます場合に、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里、その他の場合わが国周辺数百海里、これを防衛するということを防衛力整備目標としてやっておるということをかねがね申し上げておったわけでございます。その航路帯を設ける場合につきましては、いま先生おっしゃいましたように、まさに南東航路南西航路二本の航路念頭に置きまして約一千海里を防衛したい、このように申してきたわけでございます。  それで、その防衛方法でございますけれども、これにつきましては、実際に航路帯哨戒したり船団護衛をしたりして守る方法もございましょうし、あるいは海峡防備だとか港湾防備あるいは広域哨戒、そういうものを積み重ねて、これを全体として海上交通路を守るという方法もあろう。そういう組み合わせでやるということについては私どもかねがね申し上げておりまして、特に今回研究を始めるに当たりまして何か日米間に認識のそごがあって、それを調整するために研究を始めるという趣旨のものではない、このように解しております。
  9. 矢山有作

    矢山委員 それを調整するために研究を始めると言ったんじゃないんで、シーレーン防衛共同研究を始める必要上、アメリカシーレーンに対する考え方日本シーレーンに対する考え方とが土俵の上で大体一致するような方向にだんだん防衛庁の方では修正をされてきたといいますか、言い直されてきたといいますか、そういう方向になってきたというふうに私は理解して質問したわけです。  要するに問題は、いまおっしゃったようなことで言うなら、海上一千海里、よく言われるグアム以西フィリピン以北海域防衛だ、それは要するに戦略ルートを守るんだというふうに言ってしまったらいいわけでしょう、簡単に言えば。余りむずかしいことを次々重ねないで……。
  10. 藤井一夫

    藤井説明員 私どもシーレーン防衛を考えます場合には、航路帯を設けます場合にはおおむね一千海里程度のところを念頭に置きまして、あくまでもわが国防衛のために必要な限度において防衛をするというものでございます。いま先生ちょっとおっしゃいましたような海域わが国分担をいたしまして、その中に入ってくる船につきましては、わが国船舶のみならず米国、第三国の船も全部これを守るというような意味海域分担ということは従来からも考えておりませんし、今回ももちろん考えておらないところでございます。
  11. 矢山有作

    矢山委員 余り先取りして先々へ言わぬ方がいいです。そんなことを言うと、自分がそれを考えておるから先回りして答弁するように私はとりますのでね。私は何も海域分担の話も出したことはないし、アメリカの軍艦を守るのか守らぬのか、そんなことを質問の中に言った覚えもないわけですから。要するに海上一千海里の航路帯を守るということだというふうに理解しますよ、こう言っただけの話ですから、こんなところでやりとりしておると先へ進みませんから、次へ入っていきます。  シーレーン防衛日米共同研究をやるに当たっては、日本側としてどういう基本的な態度で研究をしたいということははっきりさせておかなければ、現在のアメリカの考えておる対ソ世界戦略との絡みでとんでもない方向に行くおそれがあると思うのですが、そういう点は明確にして共同研究に入るわけですか。
  12. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほど私が御答弁申し上げましたように、今回の日米シーレーンに関する共同研究というのは、日本に対する武力攻撃があったいわゆる五条事態における研究であるということ、これが一番大きな枠でございます。  それから、そういう五条事態共同研究というものにつきましては、これは委員よく御承知の「日米防衛協力のための指針」というものが昭和五十三年に作成されております。その指針の中で、この指針をつくりますには防衛協力小委員会というのができてそれが作成したわけでございますけれども、この指針をつくるに当たりまして一つの大きな枠組みというものをつくったわけでございます。それは歯どめといいますか、第一には、わが国の憲法上の諸制約、非核原則、それから事前協議、この三つの問題には触れないということでございます。それから二つ目には、この共同研究協議結論というものは、両国政府の立法、予算あるいは行政上の措置を義務づけるものではないということが二つ目の歯どめ。それから三つ目には、これは日米安保条約及びその関連取り決めの範囲内の協力に限る、この三つの歯どめをかけて指針をつくったわけでございます。そのつくられた指針の枠の中で今回の共同研究というものが行われるということでございます。
  13. 矢山有作

    矢山委員 そこでお尋ねしたいのですが、シーレーン防衛共同研究に入るというのは、昨年の八月末から九月の初めにかけての日米安保事務レベル協議ハワイ協議の場で、これは日本側から出して共同研究をやりましょうということで合意をして今度発足した、こういう経過を踏まえておると思うのですが、そのハワイ協議の場でアメリカ側の方から具体的にアメリカシーレーン防衛に対する考え方というものが示されたということが、その当時、各報道機関に一斉に報道されたわけです。残念ながらわれわれはその中身がどうなのだということをお聞きしてもなかなか私どもには言ってもらえなくて、結局われわれはいろいろな新聞報道を通じてそれを承知せざるを得なかった、こういうことになっておるのですが、今日の時点はその当時から見ると大分どんどん報道されておりますので、お隠しになるほどのことはないと思いますから、その当時アメリカからどういうふうに具体的に問題が提起をされておったのかということを御説明いただきたいのです。
  14. 藤井一夫

    藤井説明員 このシーレーン防衛研究につきましては、先生いま御指摘ありましたように昨年のハワイ協議の場で出たわけでございますが、この経緯について申し上げますと、討議の二日目でございますけれども米側から、これはビグレー中将という方でございますが、シーレーンについて発言がございまして、その要旨は、わが国シーレーン防衛というものについて日米共同してこれに当たる必要がある、その場合、日本は一千海里以内のシーレーン防衛を第一義的に行うために一層の防衛努力を行う必要があるということを申されまして、さらに米国日本立場に立って行った分析によれば、日本のこの分野の防衛能力は現在のレベルではもとより、五六中業達成されてもなお弱点を有するというような発言があったわけでございます。  これに対しまして日本側からは、わが国としても五六中業シーレーン防衛能力改善につきまして特段の努力を払っておる、五六中業達成すればかなりの程度向上するということを説明いたしました。それで、米側にその分析がある、それによればわが国シーレーン防衛能力がなお不足するという指摘があったわけでございますけれども、これにつきましてはその分析前提となっている諸条件、こういうものを日米間で認識を統一しませんとこれは話が進まないということを考えまして、日本側から、その前提となる諸条件あるいは認識、これを統一するために研究を始めようではないか、その研究を先ほど来申し上げておりますガイドラインに基づきます日本有事の場合の共同作戦計画研究、この場で行おうではないかということを提案をいたしまして、米側もこれを了承した、こういう経緯でございます。  この間におきまして、米側からいま申し上げました以上に特段にそのシーレーン防衛防衛構態だとかそういうものが示されたという事実はございません。
  15. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、一千海里までは第一義的に日本防衛分担しろ、そうする立場からいっても現在の日本防衛能力は不足しておるし、五六中業達成してもなお十分とは言えない、こういう指摘があった、こういうことですね。  ところが、その際にさらにもっと立ち入って、その日本が受け持つべき具体的な作戦というものが述べられておるのじゃないのですか。これは述べられておりませんか。それをもとにして、さらに報道されるところによると、護衛艦を何ぼだとか、あるいは潜水艦を何ぼだとか、P3Cを何ぼだとか、そのものが必要であるぞというような要求まで数字を挙げて出されたというのは、これは一紙や二紙の報道ではなくて全紙再三再四にわたって報道しておるところだから、その点どうなんですか。
  16. 藤井一夫

    藤井説明員 昨年のハワイ協議におきましては、いま私御説明しました以上に米側からその詳しい、こういう作戦がいいんではないかといったような作戦態様あるいはいま先生おっしゃいましたようなわが国防衛力艦艇航空機数字等を挙げての説明、こうしたものは一切ございませんでした。
  17. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、参考に言っておきますと、日本側の受け持つ具体的な作戦としては、海峡封鎖によって西側シーレーンを脅かすソ連潜水艦太平洋に出るのを阻止する、F15大量配備によって日本列島上空に強力な防空網を張りめぐらし、バックファイア太平洋上への進出を阻止する、こういうようなことも言われ、さらに硫黄島に自衛隊F15前進基地を置いてシーレン防衛のかなめにするとか、そして引き続いて具体的な数字まで挙げて、護衛艦七十隻、潜水艦二十五隻、P3C百二十五、要撃戦闘機部隊十四個飛行隊その他いろいろと出たと言われて、これは一、二の新聞報道ではありません、すべての報道機関がそういうふうに報道をしておりますし、その後のいろいろな日本防衛をめぐる議論というものも、絶えずこのハワイでの協議で出されたアメリカ側要求が常に素材になって論議をされてきておりますが、そういったことは一切なかった、したがってすべての報道は大うそであるということに結論的にはなるわけですね。
  18. 藤井一夫

    藤井説明員 私は報道の一々についていま記憶しておらないわけでございますが、少なくとも昨年のハワイ協議におきましては、そういう艦艇航空機数字あるいは作戦具体的態様、これについては一切米側から説明なり提案なりはございませんでした。
  19. 矢山有作

    矢山委員 ないというものをあったと言ってこっちが押し返して議論したって話にならぬことですから、すべてのその当時から今日にかけてのマスコミ報道は根拠のないマスコミが捏造したものであると防衛庁は理解しておる、こういうふうに私としては集約をしておかざるを得ない、こういうことになると思います。  そこでさらに質問を進めてまいりますが、そのハワイ協議アミテージ国防次官補代理が、当時の国防次官補代理ですが、五六中業大綱達成に向け努力したことは評価をするが、率直に言って八〇年代のソ連の脅威を考えると兵力水準は十分でない、共同研究の結果、日本防衛努力をもう少ししてもらうことになると思うと言っておるようであります。さらに、五六中業の繰り上げ達成防衛計画大綱見直しを盛んにアメリカ側から言われておるということも、これはわれわれがたびたび伝え聞いておるところであります。  そうなると、防衛研究の結果として、これがたとえばそれぞれの国の予算編成に対して影響を及ぼすものではないという前提に立って研究を始めておるのだと言われますけれども、絶対にこの研究結果が日本防衛計画影響を及ぼすことはないと理解してよろしいか。五六中業達成を早めてやるとか、あるいは防衛大綱見直しにつながるとか、そういうことは絶対あり得ないと理解していいのでしょうか。
  20. 藤井一夫

    藤井説明員 このシーレーン防衛研究は、先ほど外務省からも御説明がありましたように、あくまでも研究趣旨わが国有事の場合に日米共同でどのように対処するかということを研究する、いわゆるオペレーションプラン研究でございます。したがいまして、五六中業あるいは毎年の予算といった防衛力整備目標研究するものとは全く異質のものでございます。  ただ、こういうオペレーションプラン研究してまいりますとその過程において、これはオペレーションプランでございますのでもちろん現有兵力基礎としてやるわけでございますが、その現有兵力基礎とする研究をやっておりますと、どうしても兵力構成不備な点とか改善点というようなものが示唆されることはあるかもしれません。しかし、その不備改善点をどのように他の施策に反映していくかということは、全く日米両国政府が独自で判断すべき性質のものでございますので、この研究をやりましたからといって直ちに五六中業あるいは大綱というものの改正等につながるものではその性格的にない、このように解釈しております。
  21. 矢山有作

    矢山委員 研究をやった結果、不備な点、改善すべき点が出る、そうするとそれをどうするかというのはそれぞれの政府の判断であるから、それの結論が出たからといっても必ずしも拘束されない、こうおっしゃるのだろうと思うのですが、しかし、これだけの研究をやって不備な点、改善すべき点が出た場合に、それをそのまま放置をしておくということで済むとは私はどうも考えられない。やはりその不備な点、改善すべき点を早急に改善しろ、充実しろという要求になるだろう。あるいは要求が来なくても、共同研究をやっているたてまえからして、そういう欠陥が明らかになったものをほおかぶりでやるわけにはいかなくなってくるのじゃなかろうか。そうすれば、それを改善充実させていくなら、その過程において、アメリカがすでに指摘しておるように、五六中業では間に合わぬ、「防衛計画大綱」を見直しせざるを得ぬじゃないか、そこに結びついていかないと絶対的に言うことはできぬでしょう。そういう可能性はやはり残されてくるわけでしょう。その残された場合にどうするか、あくまでもこの研究とは切り離して、そういうことはやれません、あくまでも現在の日本が判断した状況の中でおさめていくことができるのですか。
  22. 藤井一夫

    藤井説明員 防衛庁といたしましては、このシーレーン防衛の関係の防衛能力を含めまして現在の防衛力ではまだ不十分だ、不備改善すべき点が多々残っておる、こういう認識に立っております。したがいまして、ただいま「防衛計画大綱」の水準になるべく早く達成するという意図をもちまして五六中業というものをつくって、毎年の予算防衛力整備をお願いしている、こういう状況でございます。したがいまして、現有兵力基礎にしてオペレーションプラン研究いたしますといろいろなところに不備改善点が出てまいるかもわかりませんが、その多くの部分は五六中業なり何なりで改善できる、私どもはこのように考えております。  ただ、果たしてどういう不備改善点が出るかということにつきましてはまだこれから研究をする段階でございますので、どういうものが出る、その結果がどうなるということはいまなかなか申し上げにくい、こういう状況でございます。
  23. 矢山有作

    矢山委員 そこでもう一つお聞きしたいのは、こういうことになるのじゃないですか。アメリカは御承知のように同時多発戦略をとっておると言われておりますね。だからよく言っているでしょう。中東紛争が起こるとそれが直ちにアジア太平洋地域に波及していく。これを最近の国防報告軍事情勢報告でははっきり言っておりますね。そうするとこの共同研究が進む中で、たとえば中東米ソ紛争が起こった、アジア太平洋でこの研究の結果として共同防衛の中に踏み込んでいく、つまり集団自衛権の行使に踏み込んでいくという結果につながっていくのじゃなかろうかという危惧の念を私どもは持っておるのですが、その点どうなんでしょう。
  24. 藤井一夫

    藤井説明員 今回行いますシーレーン防衛研究は、再三申し上げておりますようにわが国有事の場合でございますので、わが国武力攻撃がすでに行われておる、こういうことを前提研究をするわけでございます。したがいまして、たとえば中東有事とかそういうような事態でまだわが国攻撃が起きてないという状況の問題につきましては、一切これを取り上げないというのが日米間で確認をされております。  それからもう一つ、ではわが国有事の場合、それがわが国だけがやられておるのか、あるいは中東もやられておってそれが波及してわが国有事になるのか、こういうことであるとすれば、それはこの研究でどういうシナリオをつくって、どういう背景でわが国有事が来たかということをシナリオの問題として検討することになるのだろうと思いますが、これは今後研究が進む段階におきまして、どういうシナリオから手がけていこうかということを日米間で協議する問題だと思っております。  いずれにせよ今回の研究は、わが国有事の場合、わが国攻撃を受け、わが国シーレーン防衛しなければならない、このときに日米がどのように守るかということを研究をする、これが目的でございます。
  25. 矢山有作

    矢山委員 いま抽象的な議論ばかりやっておるわけですが、そういった共同防衛集団自衛権の行使とも絡んでくる問題でありますので、少し具体的な例を挙げてお尋ねしておいた方がむしろいいのじゃないかと思うのです。  たとえば極東有事事態が起こった、そしてアメリカ軍が日本の船舶を徴用して、その船舶に日本で調達した物資を積んで、たとえば韓国なら韓国にどんどん輸送を始めたようなとき、その船が攻撃されるという事態になったと想定して、その場合日本防衛に出るのですか、どうなんです。
  26. 藤井一夫

    藤井説明員 いまのお尋ねは、わが国の自衛権がどういう場合に発動できるかというお尋ねだと思います。これにつきましては、いま仮定の問題として一つの例を挙げられたわけでございますが、実際それが自衛権の発動のいわゆる三要件に該当するかどうかといいますのは一にそのときの状況にかかってまいる問題でございますので、いま申し上げられますことは、その事態が自衛権発動の三要件に該当するならば自衛隊は出動することができますが、そうでない限りにおいては自衛隊は出動できない、こういうお答えになろうかと思います。
  27. 矢山有作

    矢山委員 それは答えにならぬ、せっかくこっちが具体的な例を引いて言っておるのだから……。  日本アメリカが船舶を徴用して、日本で調達した物資を積んで朝鮮半島有事に際して朝鮮半島にどんどん輸送するということは当然ありますよ。かつての朝鮮戦争のときにそれをどんどんやっていたんじゃないですか。そのときにその船舶が攻撃される事態がどんどん起こったらどうするのですか。自衛権を発動するのですか、せぬのですか。
  28. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 純粋に法律的な問題としてお答えしたいと思いますが、まず二つの側面があろうかと思います。  一つは、いま御質問のような非常に仮定上の事態というものが安保条約との関連でどうなるかという点につきまして申し上げれば、これは委員よく御承知のとおりに、安保条約の五条の事態というのはわが国の領域に対する武力攻撃があった場合ということでございますから、いま御指摘のようなケースというのは明らかにそういう事態には該当しないということであろうと思います。したがいまして、いまの御設問はあくまでも安保条約の枠外の事態というふうに観念されると思います。  したがいまして、次のポイントは、それでは安保条約の枠外の問題として、わが国の個別的自衛権というものがいま御質問の中にありましたような船舶というものを防衛するということとの関連で発動できるか、こういう問題だろうと思います。その点につきましては、先ほど防衛庁の方から御答弁がありましたように、非常に仮定の事態でございますから一概にあらゆる例外なしに申し上げるというわけにはまいらないと思いますが、一応法律的な考え方として申し上げれば、従来から政府が申し上げておりますように、わが国の個別的自衛権というものはあくまでも自衛権の三要件、すなわちわが国自身の防衛のために必要最小限度の範囲内ということでございますから、一般的に申し上げれば、いま御設問にありました事態というものが、要するにわが国自身の防衛のためにどうしても必要である、不可欠であるというような意味におきまして自衛権の要件を充足するというような事態ではおよそないのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  29. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、いま言ったようなケースにおいては、船が幾ら攻撃をされて沈められようと日本の個別的自衛権の発動対象ではない、こういうふうにはっきり言っていいわけですね。
  30. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど私から申し上げましたように非常に仮定の事態でございまして、その周囲、それに付随しますもろもろの状況がどういうものかということをすべて総合的に判断しないと断定的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、単純にほかの与件というものを一切捨象いたしまして、米軍が徴発して米軍が自分の目的のために使う船舶が仮に船籍がわが国の船である、そもそもそういう事態が発生するかどうかということが非常に仮定的な問題でございまして、現実の問題としてどこまであり得るかということでございますが、仮にそういう事態がございましたといたしましても、そのこと自体ではわが国の個別的自衛権を行使する、そのために必要な要件というものは充足されておらないというふうに考えます。
  31. 矢山有作

    矢山委員 それでは次に、この間の衆議院でしたか参議院でしたかの議論の中で、米ソ紛争が発生したときに日本の対潜哨戒機が対潜情報をアメリカ側に渡すことがある、それは構わぬのだというような議論がたしかなされておったと記憶しておりますが、そういうことはありましたか。
  32. 藤井一夫

    藤井説明員 私、先ごろのやりとりを詳細に承知しておりませんが、先般御質問防衛庁がいただきましたのは、平時においてたとえば日本海上自衛隊のP3Cあたりが収集した潜水艦の情報を米側に提供することがあるのか、こういう御質問であったかと思います。それに対しまして、私ども日米間でいろいろな情報を平時から交換しているということはあるわけでございますが、何を交換している何を交換してないということは申し上げられないということをお断りした上で、少なくとも平時におきましてはタクテイカルな、要するに潜水艦攻撃に直接結びつくようなタクティカルな情報というものは交換はしていないということを御答弁申し上げたというふうに記憶しております。
  33. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ、それが平時のときの答弁であるとするなら、米ソ紛争のときに日本の対潜硝戒機がたとえば収集した情報をアメリカに渡す、こういうことはあるのですか。
  34. 藤井一夫

    藤井説明員 いまの御質問趣旨がたとえばソ連潜水艦攻撃するために必要なタクティカルな情報というような意味で申し上げれば、そういうような情報を交換し合って共同対処できる状態というのは日本攻撃を受けた場合でございますので、日本攻撃を受けていないような状況におきましてそういうタクティカルな情報の交換というものはあり得ない、このように考えております。
  35. 矢山有作

    矢山委員 しかし、P3Cで対潜哨戒の情報を収集しますね。それは日本で全部処理できるのですか、全部。
  36. 藤井一夫

    藤井説明員 P3C、P2J、その他艦艇等によりまして収集した情報は、日本で処理できるようになっております。
  37. 矢山有作

    矢山委員 日本で処理できるというのは、その情報を収集して全部日本がそれで読み取りができるのかということですよ。処理というのは、たとえば処理をおかしな方向に考えて、アメリカに渡すのも処理のうちだということで言われたんじゃ困るので、全部その情報を読んでいくことができるのかということを言っているのですよ。
  38. 藤井一夫

    藤井説明員 いまの御質問は、どの程度海上自衛隊がそういう情報の処理ができるかということだと思いますが、これにつきましては、私どもは完全に十分できるという状況にあるとは思っておりませんけれども、そのためにはかなりの情報の蓄積とかそういうものが要ると思いますが、ただその程度がどの程度であるということはちょっと申し上げにくい問題であるということを御理解いただきたいと思います。
  39. 矢山有作

    矢山委員 一番肝心なところで答弁をはぐらかされたんじゃ議論にならぬのですよ。全部が全部私は日本では処理できないと思っているのです、読み取りができない。そうすると、集めた情報を全部分析してどうなんだということを知るためにはアメリカに渡さざるを得ぬ。そうすると、米ソが紛争を起こしているときに日本の対潜哨戒機が広域哨戒をやって、出てきたデータをアメリカに通報する、そういうことができるのかできぬのか。つまりもっと掘り下げて言うなら、そのことによってソ連潜水艦はあそこにおる、ここにおるということがわかるわけだ。そうすれば、それに従ってアメリカソ連潜水艦の所在がわかるわけだから、それに対する対潜攻撃をかけられる、こういうことになるわけですよ。だからその前に、戦時情報の提供というのは非常に問題があるから、聞いているわけです。
  40. 藤井一夫

    藤井説明員 相手国の潜水艦の情報をどのようにアメリカ側に提供するかという問題でございますが、再三申し上げておりますように、わが国が実際に攻撃を受けておる共同対処の場合でありますればさまざまなケースが考えられるわけでありますが、わが国攻撃を受けていない、共同対処以外の場合でありますれば、少なくとも潜水艦攻撃に直接結びつくようなタクティカルな情報の提供なり交換はできないというふうに考えております。
  41. 矢山有作

    矢山委員 何遍聞いても一つことのやりとりだけれども、じゃ平時にはすべての情報交換をやり得るが、戦時になって米ソ紛争が起こった、日本は直接攻撃されてない、その時点では情報提供をはっきり規制するというのですか。規制して、敵、ソ連潜水艦の所在を明らかにするような情報は日本の判断によって提供しない、こう言うのですか。そこのところはっきりしてください。
  42. 藤井一夫

    藤井説明員 繰り返して申し上げますが、平時どのような情報交換しておるかということは、日米双方において外部に公開しないというたてまえをとっておるわけでございますけれども、いま御質問いただいておりますようないわゆるタクティカルな情報につきましては、平時、それから日本有事でない場合の戦時でございますか、そういう場合に米国に提供するということはございません。
  43. 矢山有作

    矢山委員 ちょっとそこがよくわからぬのだ。そうするとこういうことなんですか。平時に提供しておる状況でも――平時に情報交換やっておる。しかし、日本攻撃されていないが、米ソ紛争有事ですね、米ソの有事のときには、平時に情報をどういうようなのをしているかということは言っていないが、交換しておる情報を規制をして、ソ連潜水艦の所在を明らかにするようなものは提供せぬというのですか。そういうことじゃないのでしょう。
  44. 藤井一夫

    藤井説明員 同じ説明を繰り返して恐縮でございますが、私の申し上げたいことは、いわゆるタクティカルな情報につきましては、何がタクティカルかというのはいろいろ議論のあるところでございますが、タクティカルな戦術に直結した情報につきましては、平時も交換はしておりませんし、それから有事――有事といいますか、日本有事でない場合のたとえば米ソ戦のような場合にも提供することはございません、これを申し上げておるわけでございます。
  45. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ、P3Cが対潜哨戒をやった結果を、全部日本で解析できない部分がある、アメリカに渡さなければ解析できない部分がある、そのときにもこれは渡してないということですか、渡さないということですか。
  46. 藤井一夫

    藤井説明員 平時におきましてわが国自衛隊海上自衛隊航空機艦艇等が収集しました情報につきましては、これの分析はすべて海上自衛隊が行っております。
  47. 矢山有作

    矢山委員 一つところでやりとりばかりやっているんだが、結局こういうことなんですよ。私が言いたいのは、米ソ紛争のときに日本が収集した情報、一番わかりやすいのは対潜哨戒ですね、対潜哨戒をやって、その情報がアメリカに流れる。ソ連潜水艦の所在がそれによって一々明らかになる。アメリカは当然その潜水艦攻撃をやるでしょう。そうなると、哨戒攻撃、撃沈、これは全く一つのパターンの中で行われるわけです。そうなると、これはまさに戦時情報の提供というのは集団自衛権の行使になっていくんじゃないか、こういうことを私は思っているわけです。もしそれがあるとするならば、それは集団自衛権の行使ですよ。そうでしょう。もうあなたはやらぬというのだから、やらないのならやらぬでいい、やらぬということを私もそのままに受けておこう。  それはそれで置いておいて、もし戦時情報の交換をやってそういったような情報までが提供されるなら、ならですよ、仮定、これは集団自衛権の行使に踏み込むことになる、この点だけは間違いないでしょう。
  48. 藤井一夫

    藤井説明員 仮定の問題でございますのでなかなかお答えしにくいわけでございますが、集団的自衛権というものに対します私どもの理解は、これはあくまでもわが国の実力行使ということを伴うものであるというふうに理解をしております。要するに、いま先生設例をされました例が果たして集団的自衛権に該当するのかどうか、ちょっと一概にいまこの場でお答えができないということでございます。
  49. 矢山有作

    矢山委員 つまり、直接武力行使をやらぬ限りは集団自衛権の問題にはならぬ、こういう解釈なんだな。  それだからこういう問題が出てくるわけでしょう。この間の国会の議論で、たとえば津軽海峡を封鎖する。津軽海峡米軍が単独で封鎖をするとするなら、日本の領海部分まで封鎖しなければ意味はないわけだから、その場合にその封鎖を、米軍の単独封鎖を認める、こういう答弁が出ておるわな。これは集団自衛権の行使じゃない、こう言っているわけだ。  私は、日本の領海を米軍が単独封鎖をすることを認めることは、日本領海の封鎖をしない以上は海峡封鎖意味をなさぬのだから、これはまさに米軍の戦闘行動に直接関与しているわけだ。ソ連から見たら、そう見る。日本でこれが共同行動になるのか、これが集団自衛権の行使になるのか、これが個別自衛権の行使になるのか、そんなことを一々区分けをして、これは日本の直接武力行使でないから日本アメリカ集団自衛権の発動には至ってない、だからそこを攻撃しないのだ、そんなことにはならぬ。海峡封鎖をやれば、それを日本が了解をする。ソ連にとってみれば、海峡封鎖について日本が了解を与えた。了解を与えたというのは、積極的にアメリカの対ソ戦争の中に踏み込んだということにソ連から見ればなる。当然攻撃になってくるわけです。だから私は、個別自衛権と集団自衛権とを区別しているのがどうもよくわからない。個別自衛権にしても集団自衛権にしても、いままであなた方が言われてきたことによれば、国の主権なんだ、だから個別的自衛権、集団自衛権双方ともある、こう言ってきたわけだ。ただその場合に、集団自衛権の発動はできない、何となれば、平和憲法の平和主義の原則からしてこれができないのだ、こう言ってきたわけです。ところが、最近のこの個別自衛権と集団自衛権の議論をずっとたどって見ておると、だんだん個別自衛権の枠を拡大していって、集団自衛権に触れる部分をぐんぐん縮小していっているわけだ。どうもそんな感じがする。  たとえば、アメリカ艦艇を擁護する、こういうことが公海上でできる、これは集団自衛権の行使ではない、こういうようなことを統一見解か何かで出したというのでしょう。こういった議論をずっと見ていると、どうも個別自衛権を拡大して集団自衛権を縮小する。境目がいまはわからなくなってしまっている。  そこで私はどうしてもこの際申し上げておかなければいかぬのは、防衛白書の中にもあなた方が言っておられる。「わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場に立っている」そこでそういうふうな立場に立っておるのはなぜかという説明がずっとあって、肝心なところを読んでみると、「平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置として、はじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどめるべきものである。そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」こういうふうに防衛白書自体に説明をしておられる。  であるとするなら、私は、集団自衛権になるからいけないとか個別自衛権の発動だからどうだとかいうような議論を繰り返す中で個別自衛権の発動の場合をどんどん拡大をしていって、集団自衛権の範囲をどんと狭めてしまうような行き方をしてこれが正しいのだというような主張をするのでなしに、まさに平和憲法の原則に沿うて自衛権の発動を考えるなら、その自衛権の発動自体が、個別自衛権であろうと集団自衛権であろうと、要するに急迫、不正の侵害に備えるためのいわゆる最小限度のものであるという抑制を十分きかせる方向で物を考えていかなければならぬのじゃないか、こう思うわけです。この平和主義の憲法に基づいておる自衛権行使の抑制というものを、その抑制をきかした部分を重視しないで論議をやっておるというと、いま言ったような個別自衛権の枠を拡大していくことによって集団自衛権の枠を狭め、日米共同作戦体制の強化の方向に行かざるを得ない、そういう状況がいまの状況だと私は思うのです。そのところを私どもは十分考えてあなた方に対処をしてもらいたい、こう思うのですが、御見解はいかがでしょうか。これは余り具体的なことを言っているわけではないのだから、大臣に御答弁願います。
  50. 藤井一夫

    藤井説明員 では、とりあえず私から申し上げますが、われわれ平和憲法のもとにおきまして、自衛権の行使というものが厳格に解釈されなければいけないといういまの先生の御指摘は、全くそのとおりだというふうに理解をしております。したがいまして、いかなる場合におきましてもわれわれは、自衛権を発動いたします場合にはいわゆる自衛権の発動のための三要件、これを厳守して、これに該当する場合にのみ自衛権の行使が可能である、このように考えております。
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 わが国は個別的自衛権しか憲法によって発動できないわけでありまして、いまお話しのように個別的自衛権の解釈を拡大しているというふうな御見解もあるわけですが、そういうことは一切できないし、考えてもいない、こういうことであります。
  52. 矢山有作

    矢山委員 考えておるとおっしゃっては大変なことだろうから、そんなことをおっしゃるとは思っていませんが、大臣も一国の安全を預かる重要なお立場にあるわけですから、個別的自衛権、集団的自衛権の論議がどういうふうな経過をたどってきたかということをお考えになれば、自衛権の発動の範囲を拡大していくという背景があって、個別的自衛権の中に集団的自衛権の分野までも取り込んでいくようなそういう解釈がどんどんなされておるという実態にお気づきになると思いますから、特にこの点は今後の問題として十分お考えをいただきたい、そういうふうに私は思うわけです。  そこで、シーレーン防衛の問題は海峡封鎖の問題に絡んでくる面がありますのでこのくらいにして、あと海峡封鎖の方に移って、ちょっと私がわからないと思っておる点を二、三お伺いしたいと思います。  この海峡封鎖というのは、米ソ有事の際にアメリカ日本周辺の海峡を封鎖することによって、たとえば中東紛争が起こっておるとするならソ連太平洋艦隊がその方向に増援をするというような事態が起こらぬように、あるいはアジア太平洋地域中東紛争に備えてのアメリカ戦略ルートを妨害することのないようにという、戦略ルート防衛上この海峡封鎖というものを非常に重要視しておると思うのです。したがって、これまでにも三海峡封鎖をやってくれというような話はアメリカ側から出されておるということを承知しておりますし、またF15を大量に発注してソ連バックファイア爆撃機が太平洋の方に飛び出さぬようにやってくれというふうな話もたびたび出されたということが、われわれの方にはマスコミを通じて伝えられております。そのマスコミ報道をまるでうそだと言ってしまえば身もふたもない話ですが、私はそうは思いませんので、であるとするなら、中曽根さんがワシントン・ポストの社主とのインタビューで不沈空母の発言をやったとか海峡防衛についての発言をやったとかいうのは、まさにアメリカとしては大変喜んだのであろうと思うのです。自分が対ソ世界戦略上打ち出しておるアジア太平洋地域における重要なその作戦行動に対して、積極的に踏み込んで協力してくれる態勢を中曽根総理がみずから表明してくれたというので喜んだのだろうと私は思うのです。  それはそれとして、三海峡封鎖あるいは四海峡封鎖ということが盛んに言われるのですが、その海峡封鎖ということを日本がやる事態というのは一体どういう事態なんだろうかと思うのです。いや、それはわかったことじゃないか、日本有事のときにしか日本が自分で海峡封鎖をやることはない、こうなるのだろうというふうに思いますが、その点、そうなんですね。
  53. 藤井一夫

    藤井説明員 自衛隊が考えております海峡防備につきましては、あくまでもわが国有事の場合に、わが国防衛にとって必要最小限の範囲内におきましてわが国攻撃している相手国の艦船が海峡を通過するのを制約するという作戦がとれる、こういう趣旨でやっておるものでございまして、わが国有事以外のときに海峡防備作戦を行うということは全く考えておりません。
  54. 矢山有作

    矢山委員 わが国有事というのは、米ソ紛争を離れて、わが国だけが単独でたとえば海峡封鎖をしなければならぬようなソ連攻撃を受けるということを想定されておるわけですか。
  55. 藤井一夫

    藤井説明員 わが国有事がどのような場合に起きるかという御質問でございますが、これはいろいろのケースが考えられるわけでございまして、わが国単独でやられる場合もあるかもしれませんし、あるいは他の紛争が波及してくるという場合もあるかもしれません。しかし、いずれにせよ自衛隊が行います海峡防備のための作戦は、わが国がやられておる、わが国有事ということが前提となっておるということを申し上げておるわけでございます。
  56. 矢山有作

    矢山委員 そこまで言わぬでもいいのかもしれませんが、私どもがいままでいろいろ承知をしているところでは、日米防衛担当者の間では日本だけがソ連の単独の攻撃を受けるような事態はないというふうに考えておられるようですね。日本有事に巻き込まれるのは米ソ紛争のときであるというふうに日米防衛首脳ともに考えておるというようなことを私どもはたびたび聞かされておりますが、それはそれとして、日本有事のときに海峡封鎖をすることがどういう意味があるのですかね。たとえばソ連ならソ連日本攻撃するときに、海峡封鎖をやっても、それがどういう意味があるのですかね、私にはよくわからぬです。ソ連日本攻撃するときは、何も海峡にとらわれてどうだこうだというのでなしに、シベリアからこっちに向けてドーンとやってくるだろうと思うのですが、海峡なんか別に問題にならぬのじゃないですか。
  57. 藤井一夫

    藤井説明員 わが国有事にどのような攻撃を相手国から受けるかということでございますが、これにはいろいろなケースがあると思います。いきなりわが国の国土に着上陸侵攻が行われるという場合もあろうかと思いますが、また着上陸侵攻と並行して、あるいは着上陸侵攻はせずにわが国海上交通路を破壊するという作戦をとることも考えられるわけでございます。仮に相手の国がそのような海上交通の破壊という作戦をとった場合におきましては、いま申し上げております海峡防備作戦というのは、それを防衛する手段としてきわめて有効なものの一つであるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  58. 矢山有作

    矢山委員 これは言葉のやりとりだからそんなことが言っておられるので、それはなるほど日本攻撃の態様には、分けて考えればいろいろあります。直接着上陸をやって秋田から新潟のあの海岸にどっと上がってくる、北海道に上がってくるということもあるかもしれぬ。あるいは日本海上輸送路を遮断しようと思ってソ連太平洋艦隊がその方へ出ていくということもあるかもしれぬ。しかし戦争というのはそんなように一つ一つのものを切り離して物を考えることにはならぬので、ソ連が本気で日本を侵攻しようとするんなら、着上陸をほったらかしにしておいて海上輸送路だけつぶしに出ればいいのだというような、そんな戦術はとらないと思う。そういう戦術をとることはむしろソ連にとっては危険なんです。本当に日本をやっつける気なら全面的に侵攻してきますよ。そんなときには海峡封鎖なんというのはおよそ意味がないのです。だから私は、いままでの防衛論議を見ておって、どうも局限された言葉の遊戯になって、ああでもない、こうでもないと言っているような気がするのですね。日本が置かれておる立場日米の関係を考えながら、アメリカの世界戦略の中で一体日本はどう位置づけられておるのか、そこのところをぴしっととらえての論議がなされずに、いま言ったような議論ばかりになっているわけですよ。  話が横道にいきまずけれども、いま一番日本にとって大切なのは、たとえばアメリカの軍艦を日本有事のときに日本が守るのか守らぬのか、海上輸送路がどの範囲なのかとか、そこでどういう行動がとれるのかとか、そんな議論じゃないと思うのです。アメリカははっきりと、どこかの海域米ソ紛争が起こるならその紛争はその海域にとどまらない、全世界の海域に及ぶんだ、こう言っているわけですよ。中東紛争が起こるならソ連アジアで戦端を開くであろうという言い方もする。逆に言うなら、中東紛争が起こるなら、ソ連をやっつけるためにはアメリカアジアでむしろ積極的に攻勢に出るということも言っているわけです。そういうような観点で考えると、米ソ紛争というのはまさに世界的な規模において考えられておるわけです。その中での日本の軍事的な位置づけ、役割りというものがいまの日米の間の最大の焦点であり、それがまた日本アメリカとの間においての非常に重要な問題なんでしょう。そこのところを十分考えなければいかぬと私は思う。国会論議とあなた方がアメリカの世界戦略の中で日米がどういう関係にあるべきかということを考えておるのと、どうも乖離をされたところで議論されておる、こういうふうに私はこのごろ痛感しておるのです。しかし、そういう議論を本格的にやっていくためには、残念ながら日本政府余りにもわれわれ国会の審議に資するための資料を出さない、特に防衛、外交関係の資料については、これも出さぬあれも出さぬ、あらゆる資料を与えない。そして、たまたまマスコミから漏れてくるものをもとにしてわれわれが議論をしようとするなら、そんなことはありません、そんなことはやっておりません、すべてマスコミ報道がうそであるかのような、偽りであるかのような発言をなさる。これじゃ本当の意味日本の安全保障論議をするということはできない。私はこれがきわめて残念だ。残念ついでに、いま言ったことを私は最近特に痛感しておりますので、申し上げておきます。  だから、もし国会における論議を国民みんなが日本の安全のために真剣に論議をして、日本の安全保障はいかにあるべきかということをやろうというのなら、われわれにもどんどん資料を提供して、そして真っ向からの議論をすべきだと思うのです。一方には情報ゼロ、一方は全部の情報を握り込んで、しかも何をやっておるかということについては一切黙して語らず、危ないところへ話がいけば逃げちゃう。これじゃ、日本防衛政策というものは国民的な認知を受けることは未来永劫にできぬだろうと思います。このことについては私ども政府に厳重な反省を迫りたい、こういうふうに思います。  それはそれとして、次の質問に移ってまいります。  米軍による海峡封鎖の問題でこの間統一見解が出されましたね。海峡封鎖の統一見解でいろいろ言っておりますが、大事なところを読んでみると、「我が国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等」「武力攻撃が非常に緊迫性をもっている場合において、」云々、こうなっている。私はこれはとんでもない話だと思うのですよ。  なぜとんでもないかというと、「国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等」「武力攻撃が非常に緊迫性をもっている場合」こう言うのでしょう。たとえば、日本の周辺海域海峡封鎖というのは一体どこを対象にして考えるか。これもいろいろな言い方があるでしょう。しかしながら問題は、海峡封鎖という事態が起こってくるのは、私は米ソ紛争との関連において起こってくる以外にはないと思うのです。その海峡封鎖米軍に単独で認める場合に、国籍不明の艦船によって甚大な被害をわが国の船舶が受けている、それを直ちにこれはソ連だというふうに考えるから米軍単独の海峡封鎖を認めるわけでしょう。私はこんなべらぼうな話はないと思いますよ。その国籍不明の船がソ連の船なのかどこの船か、確認できるのですか。確認できないまま、国籍不明の艦船攻撃を口実にしてアメリカの単独の海峡封鎖を認めるなんて、こんな無責任なことで日本の安全保障を図れるのか、このことを聞きたいのです。
  59. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま御質問の点は他の委員会におきましても御質問がありまして、私から御答弁申し上げました経緯がありますので、改めて御説明させていただきたいと思いますが、この統一見解の二の(二)で申し上げておることのポイントは、あくまでも「我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性をもっている場合」そういう場合には、きわめて例外的なケースとしてアメリカが単独で海峡において実力の行使をすることをわが国として容認する場合があり得るであろう。そういうわが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合ということの一つの例示として総理がおっしゃられたケースというのが、ここに挙がっております「我が国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合」ということでございます。  そこで、いま委員から御質問がありましたように、国籍不明ということであれば、それがどうしてわが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合ということに結びつくのかという趣旨の御質問がございました。私どもがここで申し上げたかったことは、別に、国籍不明の艦船により非常に単発的な攻撃日本の船舶に対して行われれば直ちにアメリカのそういう行動を日本としては認めるのであるということを申し上げておるわけでは毛頭ございませんので、やはりいろんな周囲の状況というものから判断いたしまして、その国籍不明――一応国籍が確認はされておりませんけれども、そういう日本の船舶を現実に攻撃しておる艦船というものがアメリカの自衛権行使の対象になっておる国と同一の国であるという蓋然性が非常に高い場合には、そういうアメリカの自衛権の行使を容認する場合もあるであろう。これがこの統一見解の二の(二)で申し上げておる趣旨でございます。
  60. 矢山有作

    矢山委員 だから私はとんでもないことだと言うのです。たとえば、いまおっしゃったでしょう、武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合、その緊迫性を持ったという判断をする代表的なものとして国籍不明艦船による攻撃が挙げられておるのですよ。そうすると、武力攻撃が緊迫性を持ったというときに、一番の判断基準になっておるのは国籍不明の艦船による攻撃だという。これが一番の判断基準になっておる。文章の中にはっきり出ておる。しかも、その国籍不明の艦船というものとソ連ならソ連というものとの結びつきが蓋然性によって推定をされて、海峡封鎖を認める。日本の安全を守るということはそんなでたらめなものでしょうか、いいかげんなものでしょうか。  私は、物事の蓋然性で――つまり日本の艦船が国籍不明の船によって五隻、六隻、十隻沈められてきた、どうもどこの船やらわからぬ。米ソが戦争をやっておる、ああやっぱりこれはソ連じゃろう。蓋然性ですわね。そう思って、海峡封鎖アメリカがやることを認める。認めたらどうなるか。ソ連にとっては、日本の領海を使ってアメリカ海峡封鎖をやることを認めたのであるから日本ソ連に宣戦布告をしたのと全く同様である、そういうふうに考えていくんじゃありませんか。そんな蓋然性や国籍不明の艦船の行動によって海峡封鎖アメリカに認めるというような、そんなことで責任を持って日本の安全を守ると言えるのですか。私は、この統一見解はどうにも承服できない。
  61. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 二、三の点について、委員の御質問前提の問題との関連で補足して御答弁申し上げたいと思います。  まず委員の御質問の中に、日本の領海云々という御指摘がございましたが、これは衆議院の予算委員会の方でも実は御説明したところでございますが、ここに申し上げております三月八日に衆議院の予算委員会の方に提出いたしました統一見解は、あくまでも海峡の公海部分におきますアメリカの実力の行使というものについて申し上げたことでございまして、日本の領海の問題は、これはまた全く別の問題であると私どもは考えております。  それから第二の点でございますが、先ほど申し上げたことの繰り返しになるわけでございますが、事実の問題といたしましては、現実に日本の船舶に対する攻撃が行われておるというのがこの例示のケースにおける前提でございます。そこで、それがどこから攻撃を受けておるかということが最終的に確認はされないにしても、しかし周囲の状況から判断してわが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合、すなわち放置しておけばわが国に対する武力攻撃が起こってくる、いわば安保五条の事態というものに結びついていく、そういうような事態というものを未然に防止するために、アメリカが公海上においてとろうとしておる自衛権行使の一環としての軍事行動というものを、日本として非常に局限的な状況における例外的なケースだとは思いますが、そういう場合における日本アメリカのそういう行動を容認するという場合も完全には排除されない、こういうことで申し上げているわけでございまして、統一見解の最後の方にもございますように、日本の国益、日本自身の安全の確保という国益の観点から十分慎重に対処するということは政府が申し上げているところでございます。
  62. 矢山有作

    矢山委員 公海部分だけの海峡封鎖というのがあるのかないのか、私はよくわかりませんが、言葉の上としてはあるんでしょうね。領海部分は素通りにさせておいて公海部分だけ封鎖をする、その想定に立って物を言われたわけです。  では、もう一つ言えるのは、その公海部分の封鎖をやる。恐らく在日米軍が出動してやるだろうと思うのですね。そうすると、在日米軍の出動ということになれば、恐らく戦闘作戦行動ということになるから事前協議になる。事前協議になって、アメリカ軍による公海部分の海峡封鎖を認めるとするなら、そのことはソ連にとってどうなるのか。海峡封鎖を認めた、海峡封鎖というのは戦時でしかやりませんからね、それを日本事前協議に応じて在日米軍が出動して封鎖することを認めた、これは直接的にソ連との間の紛争日本が踏み込んでいくことになるんじゃないですか。いずれにしても、領海部分が含まれようと含まれまいと、公海部分だけに限定をされても、それを在日米軍が出動してやるということになれば結論は同じなんです。米軍単独の海峡封鎖を許したことによって、日本ソ連に対して敵対的な関係に立ち、宣戦布告をしたと同じことになるんだ。そういうような事態になれば、日本ソ連の直接攻撃を受けざるを得ない。  そういうような重大な問題をはらんでおる決断を下すのに、先ほど来言っておりますが、国籍不明なんです。三隻沈められようと十隻沈められようと、四囲の状況からソ連の船だろう、こう思ったところで、確認できたわけではない。それに基づいてこういう重大な結果を日本にもたらすような海峡封鎖を認める、それが政府統一見解として出る、このことが問題だと私は言うのです。統一見解の中の後についておる文章、わが国自身の国益という観点から自主的判断に基づいて慎重に――慎重にと言われてみても、こういうことをやれるんだということが統一見解として示されてくることが問題なんです。だから、私はこれ以上言いませんが、こういうような重大な問題を蓋然的なものに基づいてやるというようなことを軽々に言わぬことです。もし総理が知識がなくて、勇ましい一方の意気込みでしゃべったとするなら、それが重大な意味を含んでおるなら、むしろそれを是正していくのがあなた方の務めじゃないか。総理がしゃべったんだから、総理のしゃべったことを是正するようなことをするとぐあいが悪いから、その総理のしゃべったことにつじつまを合わせてこちらの解釈を出していこうという、これは基本的に誤っております。そういうような態度は私は今後厳に慎んでもらいたい。そうせぬと、総理が無知で言うにしても知っておって言うにしても、総理の突出した発言がどんどんあなた方によって政府統一見解として権威づけられていってとんでもないことになってしまう。これは厳重に私は注意を喚起しておきたいと思います。  その次の問題でありますが、八二年六月十六日にハロウェー前海軍作戦部長が上院の外交委員会で証言をしております。どういうことを言っているかというと、NATOに限らず、中東を初めいかなる地域で米ソ紛争が発生しようと、それは太平洋方面に同時に波及し、米ソ戦争となることは必至であると言っておるわけです。そしてその場合は即座に三海峡を封鎖することを明らかにして、その三海峡封鎖については日本の現在の能力からして日本単独での実施は不可能である、したがって日米共同作戦になる、こういうふうに証言をしております。これは一体どういうことなのか。  要するに、わが国の方では自分の国に直接攻撃が加えられぬ以上は個別自衛権の発動はないんだとか、この場合は集団自衛権の行使でないんだからどうだとか、いろいろな議論をしておりますが、このハロウェー作戦部長の議会証言を見ると、アメリカ側は要するにNATOだろうが中東だろうが、米ソの戦争が起こればそれは世界に波及する、そのときには直ちにソ連太平洋艦隊の行動を抑制するために海峡封鎖をやるんだ、その海峡封鎖日本のいまの能力では単独ではできぬから日米共同作戦になるんだ、こう断言をしておるのです。これをどう考えているのですか。恐らく私はその方向防衛庁当局はやっておるだろうと思うのです。やっておらぬのなら、断じてそういうことはないと、そのことをはっきりしておいてもらいたいと思います。
  63. 藤井一夫

    藤井説明員 ハロウェー前作戦部長の証言につきましては私ども承知をしておりますが、それはわが国の置かれた地理的状況がきわめて戦略的に重要なものであるということに言及したものであると理解しております。  それで、いずれにせよ、再三申し上げておりますように、私ども海峡防備のための作戦を実施するのはあくまでも日本防衛のため、日本攻撃を受けた場合でございまして、日本攻撃を受けていないような状況でたとえ米側からそういう要請がありましても、これは政府の方針として断固お断りをするというのが従来からの政府の方針でございます。
  64. 矢山有作

    矢山委員 断固お断りをするというまともな発言を私もこの段階ではまともなものとして受けまして、そしてその発言がそのとおりに守られるように努力を願いたいと思います。  重ねて同じような意味のことを申し上げるようですが、この間の二月十七日に、下院の軍事委員会の公聴会でワトキンズ海軍作戦部長が言っております。これは私が先ほどいろいろしゃべるときにも引いた言葉だと思いますが、東西両陣営での海域での衝突はもはや一つだけの海洋に限定された限定的海戦にとどまることはあり得ない、海峡封鎖に当たり日本に機雷作戦を求めておると、この問題については協議を具体的に進めておるような発言をしておるわけでありますが、これが事実とすると、いまあなたのおっしゃったのとは大分食い違ってくるのですが、これは事実ございませんね。ありますか。
  65. 藤井一夫

    藤井説明員 現在までに米側から日本政府に対しまして、海峡封鎖につきまして具体的な要請あるいは研究協議というものを行いたいというような申し出は一切ございません。
  66. 矢山有作

    矢山委員 そういうような話があればもちろん拒否なさるということになろうと思うのです、御答弁は。そこで、それが果たして拒否できるような日米安保の仕組みになっておるのかどうか、そこのところが実は私もよくわからないのです。こは率直に言いまして、私はきょう外務省の御見解を承って、私の方が実は教えてもらいたいという立場で申し上げたいのです。  実は私はこの間、八三年の二月号の「世界」を読んでおりました。それの第二部の「条約の構造」という部分があるのです。その中で百三十一ページに書いてあるのですが、これは中身余り詳しく言いますと時間が足りませんから、後でごらんいただけばいいと思うのですが、また、恐らく研究されておるでしょうから御答弁はいただけると思います。百三十一ページに「無言の威圧?―第七条」として、「この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」という安保条約七条と、国連憲章の第百七条、同じく第五十三条を関連させ総合して解釈をした結果として、そういうような中東有事、世界有事に対して日本に対して共同作戦行動をアメリカが求めた場合にそれは拒否できぬのではなかろうか、こういう解説がしてあるのですが、もしそういうことでいままで問題になったようなことがありましたら、お答えいただきたいと思いますし、私も十分わかりませんので、きょうその点について、いままで出されておらないし、すぐ答弁ができないということでしたら、研究をした結果外務省の御見解を承りたいと思いますが、いかがでしょう。
  67. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私も委員指摘の論文はたまたま少し前に読ましていただきましたが、いまの安保条約七条の規定というものを国連憲章のいわゆる敵国条項と何らかの関連性を持つ規定であるというふうに読むことは、これは基本的に非常に間違いであろうと考えます。  二つの点を申し上げたいと思います。  安保条約の第七条と申しますのは、もちろん国連憲章の優先を確認するものでございまして、これはいわば念のための規定でございます。これは恐らく委員も御承知かと思いますが、アメリカが結んでおります相互防衛条約あるいは安全保障条約、具体的にはたとえばNATO条約でございますとかANZUSの条約でございますとか、あるいはフィリピンとの相互防衛条約とか、こういう条約にはすべて入っております。別に日米安保条約に特有の規定ではございませんで、先ほど申し上げましたように、アメリカが友好国との間に結んでおる相互防衛援助条約のほとんどすべてにこの規定が入っております。  その趣旨と申しますのは、先ほど申し上げましたいわば当然の憲章優先規定、これを念のために確認するという趣旨のものであるということは、過去においても政府が御説明したことがあると思います。  それから他方、委員の御質問の中に御言及がございました国連憲章のいわゆる敵国条項と称されております規定でございますが、これについては従来から政府が御答弁申し上げておりますように、これらのいわゆる敵国条項の規定は、わが国が国連に加盟をいたしまして、平和愛好国としてほかの加盟国と全く平等の立場を国連憲章のもとにおいて加盟国として取得した以上、わが国に対しては適用がないのである、こういうことは従来から政府の見解として申し上げているとおりでございます。したがいまして、いずれの点から見ましても、この安保の七条というものがいま委員が御指摘になりました論文の中に書いてあるような意味合いを持つということは、全くあり得ないことであるというふうに私どもは考えております。
  68. 矢山有作

    矢山委員 この点、私は、国連憲章に百七条というものが厳然として存在をしている以上、やはり問題が起こってくる可能性は否定をできない。というのは、それぞれ国連憲章あるいは安保条約を解釈するのは、アメリカアメリカ立場で解釈するでしょうし、日本日本立場で解釈するわけだから、そうすると最終的にはその条文が厳然として残っておるということ自体に問題があるわけで、もしその条文の効果をなくしてしまうというのなら、国連決議で明確な決議がなされておるとかなんとかいうことによって百七条が日本に適用されないということが明確になっておるなら別です。しかしながら、そういう措置もなしに、厳然として条文が存在をしておるということは、将来問題が全然ないというふうに言い切ってしまうことはできない重大な問題を含んでおると私は思っております。しかし、これは先ほど最初に申し上げましたように私ももう少し勉強してみたいと思いますので、この点に対する質疑はきょうはこれで打ち切っておきたいと思います。  それから、少し飛ばしまして、ちょっと気にかかることがありますのでお伺いしておきたいのです。対馬西水道の海峡封鎖との関連においてこれまでも衆議院等でもいろいろ議論をなされておるようでありますが、それはそれとしてきょうはさておきまして、実はその関連で気にかかる記事を新聞で見ましたので、この点お伺いしておきたいのです。  それは、韓日議員連盟が三月五日に発表しているのですが、五月初め東京で韓日、日韓議員連盟の外交安保委員会を開いて、日韓安保協力態勢の具体的な協議を行う方針を明らかにした。そこでどういうものが協議されるかということについては、一つは、朝鮮半島有事の際の協力態勢、二番目に防空に関する情報交換、三に海峡封鎖の具体案、四に軍事訓練の相互参観、五番目に海軍士官学校、日本の場合は防衛大学校の生徒の交歓及び両国の港への寄港問題など幅広い安保協力が話し合われる予定だ、こういうふうに伝えておるというのですが、これに対して政府はどういうふうにお考えになっておるでしょうか。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま、日韓議員連盟、韓日議員連盟、これは御承知のように、わが国の国会議員、それから韓国の国会議員、超党派で組織をされておる議員組織でありますが、いろいろの問題がここでは論議されておることは御承知のとおりであります。五月に総会があって、そしてその総会で日韓の安保問題についての委員会を設けるとか、そういうテーマでもって論議をするとか、そういうことについては私はまだ何も聞いておりませんけれども、しかしこれは政府政府の機関ではありませんし、議員の皆さん方が集まられて、朝鮮半島の情勢とかあるいは日韓の今後の問題とかいうものについて自由に論議をされることは、これは議員連盟のことでございますから、政府としてこれに対して関知すべきことではないのじゃないか、こういうふうに私としては存じております。
  70. 矢山有作

    矢山委員 ところが、私はちょっとその点で非常に疑問を持っておりますのは、ただ単に関知するところでないということで済ませるものだろうか。  日韓の共同声明を読んでおったのです。そうしたら、共同声明の第七項にこういうことが書いてある。「両国首脳は、政府、国会及び民間の次元における両国間の各種経路を通ずる幅広い対話と交流を活発に促進させることにより、諸分野にわたる両国間の協力が円滑に成し遂げられるよう互いに努力することにした。」こうあるのですね。そうなってみると、議員サイドの交流でこういうことを話し合うのだからということだけで片づかない問題を含んでおるのじゃなかろうか。むしろ議員サイドの中からこういうきわめて重要な問題を積み上げていって、そして両方の意見が一致をしてくればこれが具体化されていく、そういうような危険を日韓共同声明第七項のただいま読み上げた部分との関連で私は感じておるわけですが、いかがでしょう。
  71. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  日韓共同声明の第七項の御指摘の部分は、総理が訪韓されました際に、今後日韓の両国の広い国民各層の間での対話を活発にしていこうという趣旨から盛られたものでございまして、したがいまして、その中にはもちろん議員の交流も含まれますし、いろいろな国民各層の交流が含まれるわけでございます。したがいまして、それは政府同士の意見の交換あるいは政府の交渉というような趣旨のものとは別のものでございまして、国民各層の幅広い交流を促進していこうという一般的な日韓両政府の意図を表明したものというふうに了解しております。したがいまして、先ほど御指摘になりました具体的な点につきましては、先ほど大臣が御答弁になりましたように、超党派で構成されております日韓議連がどのような活動を今後していくかということについて、現段階では政府は十分に状況を把握しておらないという状況でございます。
  72. 矢山有作

    矢山委員 超党派といいましても、われわれ社会党はこれには入っておりませんので、超党派というのはちょっと訂正をしてもらわなければいかぬと思うのです。  それから、いまの説明ですが、私は疑い深いわけじゃないのですが、「諸分野にわたる両国間の協力」、これは諸分野ですから、経済も入っておる、軍事も入っておる、文化も入っておるでしょう。いろいろな分野にわたる両国間の協力ですよ。軍事の分野であるなら軍事協力、これが円滑になし遂げられるように互いに努力する。国会議員の次元における幅広い対話と交流をやって、軍事の分野での両国間の協力が円滑になし遂げられるよう、両国首脳、内閣総理大臣、韓国大統領の間で努力する。これはそんなに軽々しく、外務大臣がそうおっしゃったから、はあそうですが、大して関係ありませんなと言って済ませられない重要な問題があるということを私は指摘しておきます。  それから、もう時間、時間といってえらいいろいろしているようだから、後の質問も省いて、もう一つだけ。これも深い関心を持って見ましたので、お伺いしておきたい。  一月末日本にシュルツ国務長官が来ましたね。あの国務長官が来たときに、その筋からという新聞の発表なんですが、アメリカ政府は、自国に核抑止力を備えないままソ連に核ミサイル撤去を求めているわが国の姿勢を非現実的であるとして、こうした見方を非公式に政府に伝えてきているというふうに言われておりますが、政府はそういうことを伝えられたのが事実なのかどうか、事実とするなら、これに対してどういうふうにお考えになるか、承りたいと思います。
  73. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御質問につきましては、SS20の極東配備の問題に関連するものじゃないかと考えておるわけでありますが、この問題につきましては、一月下旬のシュルツ米国務長官の訪日の際、総理及び私との会談において取り上げられたわけでございますが、米側が御指摘のような発言をした事実はありません。こういうような会談におきまして総理また私よりそれぞれ、最近のソ連がこれまで極東に配備済みの分に加えてさらに欧州地域配備のSS20を極東へ追加的に配備すると言及している事実を指摘しながら、欧州における中距離核戦力制限交渉に当たっては、米国としてはわが国を含むアジアの安全保障に対しても十分配慮をするように要望したわけです。これに対してシュルツ長官は、わが国立場に十分理解を示すとともに、今後とも本件中距離核戦力制限交渉の動向については緊密に連絡、協議を行う意向である旨を述べたわけでありまして、私もシュルツ国務長官とは何回も会っておりますが、あの人は非常に慎重な人でありまして、また日本立場というものを非常に理解しておる人であります。ですから、日本立場を損ねるといいますか、害する、こういうふうな発言については非常に慎重でございますし、いまおっしゃったようなことは全くないわけでございます。これははっきりと申し上げておきます。
  74. 矢山有作

    矢山委員 安倍外務大臣が直接お聞きになっておらぬとしても、外務省の方にもそういう話は一切なかったというふうに理解したらいいのですね。
  75. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま外務大臣から御答弁がありましたように、シュルツ国務長官が東京におりました間、私どもいろいろな場合にアメリカ側とも話をいたしましたけれども、そういうような発言は一切ございませんでした。
  76. 矢山有作

    矢山委員 私は、もしこういう発言があったとすると、これまたアメリカは嫌なことを考えてきたなと感じたのですよ。というのは、アメリカの核に頼るというならアメリカの核の持ち込みぐらい正面から認めなさい、核を備えずにソ連の核を撤去しろったってできる話じゃないじゃないか、こういうふうに言ってぽんと一発かまされたのじゃなかろうか、こう思いまして、アメリカというのはなかなか手練手管を弄するな、最近はエンタープライズが来たし、もう少しすれば戦艦ニュージャージーが、非核、核両用の巡航ミサイルを積んだのが来るとか来ぬとか言われておるし、カール・ビンソンも来ると言っておるし、そろそろこの辺で核持ち込みを認めさせようというような底意でこんなことを言い出したのじゃないかと思ったのです。しかし言っていないというなら言っていないで結構ですし、それから核の問題、あなた方は絶対に持ち込ませないと言っておるので、きょうは時間がありませんから、その問題についてのやりとりはこれでやめておきます。  最後にもう一つだけお伺いしたい。  御存じのように限定核戦略戦争というものがいまは論議をされておりますね。限定核戦略戦争、これが論議をされておりまして、そういうときに、昨年六月の衆議院の安保特別委員会かな、ソ連の通常兵力による日本への攻撃に対してもアメリカの第一核使用も認める、こういう答弁が政府からなされたと思うのです。そうすると、いま限定核戦争の可能性が現実味を帯びて語られておる、そういうときに、ソ連の通常兵力による攻撃に対してアメリカの核の第一使用を認めるということは、これはまさに日本をみずから好んで限定核戦争の戦場にするものじゃなかろうか。これはまたきわめて危険な話でありますし、私どもはそういうことをやるべきではないというふうに思うわけです。このことは、「防衛計画大綱」で核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存すると言っておることとの矛盾も起きますし、私はアメリカの第一核攻撃を認めるべきじゃないという立場に立っておりますが、それに対するお尋ねなりお答えは別といたしまして、そういうことがあるということを前提にしながら、SS20の極東配備の問題に関連してお聞きしたいのです。  グロムイコ外相が、ソ連アジア地域の周辺諸国や海上にも西側の核が配備されておって、これらについては現在条約もなければ制限交渉も行われていない、こういうようなことを西独外相との会談の席で言っておるということが伝えられております。また、事実指摘したんだろうと私は思います。事実指摘した。そのとおり、アジア太平洋地域で核配備の問題について制限しなければならないというような話し合いがあったわけでもないし、これに対してどうこうという議論は国際間で一遍も行われていない。それは事実ですから、事実を事実として述べていると思うのです。そういうような状況を考え、しかももう一つは、アルバトフ、彼が、アジア太平洋地域でも中国を含めて核軍縮について話し合いをしなければいかぬのじゃないか、こういう話を打ち出してきているわけですよ。  そうすると、限定核戦争が予想されておる中で、通常兵力による日本攻撃に対してアメリカの第一核使用を認めて日本を戦場にするというような危険なことを考えるのでなしに、アルバトフの言っておるように、核の問題については何の話し合いもなければ規制もないアジア太平洋地域において、世界最初の被爆国として、そしてしかも平和憲法を持っており非核原則を踏まえておる日本が率先してそういったようなアジア太平洋地域における核軍縮の問題について役割りをいまこそ果たすべきではないかと私は思うのですが、この点いかがでしょうか。
  77. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  まずSS20に関してでございますが、この中距離核ミサイルは移動式でございます。したがいまして、INF交渉におきましてアメリカは、この問題は全世界的な観点から対応すべきであるということで、いわゆるゼロ・ゼロ・オプションということでソ連全土からのSS20というものを念頭に置いているのでございます。  私どもといたしましては、このようなアメリカのINF交渉に臨む姿勢を全面的に支持しておりまして、INF交渉の結果、SS20がヨーロッパ正面のみならず、アジア正面からも撤去されるようにということで、注意深く見守っておるということでございます。
  78. 矢山有作

    矢山委員 だから、日本を限定核戦略の戦場にするようなことをしないで、そういった提案ソ連側からなされており、指摘もなされておるときですから、むしろこちらからこそ能動的に動くべきではないのか、それが本当に日本の安全を守ることになるんではないかということを聞いておるわけです。  それで、ゼロオプションを全面的に支持しておるとおっしゃるけれども、このゼロオプションだって結果的にそれが守られるのかどうなるのかわからないような情勢が生まれているわけでしょう。そういう中ですから、いまこそアジア太平洋地域についての核軍縮についての主導的な役割りを日本が果たす絶好のときではないかと言っておるのですよ。これは事務当局ではだめだ。大臣、あなたに。
  79. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本としても、ああいう原爆の惨禍を受けたわけでありますし、核の軍縮については最も積極的な熱意を持ってこれに取り組まなければならぬ課題であると思いますから、主導権が持てるなら持ってやりたいところなんです。しかし、御承知のようにINF交渉というのはアメリカソ連だけでやっているわけでありますし、STARTだって米ソ間だけでこれが行われているわけで、ヨーロッパの諸国もいろいろと自分のところにパーシングIIとか巡航ミサイルとか置かなければならぬという情勢に迫られながら、交渉の正面の相手でないわけですからこれに対してなかなか決定的な役割りを果たしていない、そういうような気持ちを持っておるのじゃないかと思います。極東に配備をされるということになれば、日本にとっては潜在的脅威が増大するわけですから、日本としても、そういう核の交渉に全体的に現実的にバランスのとれた軍縮が実現できるというための主体的な、主導的な役割りというものを果たしていきたいわけですが、いまの軍縮交渉においてはなかなかそういう立場が与えられていない。しかし、やるだけのことはやらなければならぬ。  そこで、われわれは当の交渉相手であるところのアメリカに対しましては、首脳会談においてもそうでありますが、私も何度かシュルツさんに会って、とにかく軍縮交渉、特にINF交渉等はソ連全土的といいますかグローバルな立場でやってもらわなければ困る、ヨーロッパのために日本が犠牲になるというようなINF交渉であっては困るということを口を酸っぱくするほど言っておるわけで、これに対してはアメリカも十分理解して、そういう立場、そういう考え方でこれに臨もうということを言っております。  またソ連に対しては、パブロフ大使を外務省にも呼びまして、ああしたSS20を移すというようなことがグロムイコさんの口から出たというふうなことで、日本としてもソ連に対して強硬な抗議を申し入れております。同時に、私もできればグロムイコ外相に日本に来てもらって、これは外務大臣がちょうど来る番になっておりますから来てもらって、そうした軍縮問題について日ソで直接話し合う機会をぜひとも持ちたいものだ、こういうふうに考えておりまして、四月の初めには日ソの事務レベル会議がありますから、そういうところで外相会談等についても話し合いをさしたい、こういうふうに思っております。
  80. 矢山有作

    矢山委員 これでやめますが、やりたいと思ってもなかなか場がないような御発言ですが、これはやろうと思えばやれるのです。核の問題は何も米ソだけの問題じゃないんです、全世界的な問題ですから。したがって、むしろソ連がそういうことを言っておるときこそ、こちらが能動的に出る道を探る、そういう努力をお願いいたします。日ソ問題等についての関連で聞かなければならぬわけですが、約束の時間が参りましたから、これできょうは終わりますが、またのときにお願いしたいと思います。
  81. 橋口隆

  82. 上原康助

    上原委員 別の委員会の関係もあって、先ほど御質問した矢山先生やりとりも聞いていませんで、若干重複する面もあろうかと思うのですが、せっかく外務省設置法の審議をし、外務大臣おいでですので、時間の範囲内でお尋ねをいたしますから、ひとつ誠意ある御答弁を賜りたいと思います。  本題に入る前に、本題というか聞きたいことをお尋ねする前に、ちょっと法案の件で一、二点だけ、お尋ねというか要望をしておきたいわけですが、例年、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務をする職員の給与の改定といいますか、勤務条件改善等の法案が提出をされ、あるいはまた新たに大使館、総領事館、領事館その他在外公館の設置を今日までやってきているわけですが、逐年在外勤務をするわが国の公館の皆さんの勤務条件なり相手国との友好関係、親善等についても前進、改善をされてきていると思います。その点はそれなりに評価をいたしたいと思います。  これまで私もほとんど内閣委員会に属してまいりましたが、一つ在外公館の場合の治安の問題ですね、一時期大変問題になった時期がございました。特に発展途上国とかあるいは国際紛争が局地的に起こっているところでの治安問題。いま一つは、在外に出張している、あるいはお仕事の都合で行っている、外務省職員のみならず日本人が相当行っておられる。そういう方々の子女子の、出先、現地における教育問題ですね。同時にまた、一遍帰国をなさったときの本邦における教育システムというか、そういった制度に編入なさる場合のいろいろな進学等々で大変問題があるということも今日まで指摘をされてまいりました。  そういう事柄については現在はどういう状況になっておって、それぞれの在外に勤務をする、これは政府関係、民間人を含めて、そういう方々の要望におおむね沿える段階に来ていると理解をしていいのかどうか。まだ改善をすべきであるとすると、どのような面を今後改善あるいは解決をしていく方針をお持ちなのか、そこいらの点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  83. 枝村純郎

    枝村政府委員 いま大変温かい御激励の言葉をいただいたわけでございます。過去十年ぐらい私ども、瘴癘地対策と申しますか、不健康地対策ということで諸般の施策を講じてまいりまして、そういう面でかなりの前進が見られたと思っております。また、この法案を審議いたします都度に内閣委員会で決議をちょうだいいたしておりまして、そういう決議の趣旨を踏まえまして一層の努力をしてまいりたいと思います。  現在、まだ私どもとして、正直に申し上げて、不健康地対策というのは完全に満足すべきところまで来ておるとは思いません。何と申しましても環境の厳しいところでは、基礎的な生活条件でございますたとえば電圧というようなものが一定しないとかそういったこと、あるいは電気の供給、上水の供給、そういったものさえ不十分という状況でございますので、これは大変努力しておりますし、御支援も得ておりますが、まだこれからやるべきことは多々あるというふうに考えておりますので、今後ともひとつ御支援をお願いいたします。  特に警備の問題は、正直申し上げて私ども大変心配でございます。むしろ一般治安というものは、地域は申しませんが、かえって悪くなる、特に現在の経済情勢が悪くなっておりますことを反映いたしまして悪くなっております。私どももいろいろ警備員を館員が雇いますときに補助をするとか、あるいは在留邦人の保護についても御相談に乗って万全を期したいと思っておりますけれども、まだまだこれからだというふうに思っております。  子女教育の方につきましても、幸いにして今日まで七十二校でございますか、全日制の日本人学校が在外で設置されておりまして、全体で申しますと在外子女三万三千名のうち、大体四五%がこれによってカバーされておりますし、あとその補習授業校に通学しております者が一万一千三百名というようなことで、これは三四%でございます。かなりの程度に達しております。その他の人々はおおむね日本人学校以外の形で教育を受けられるということであろうと思いますが、まだこの努力を緩めるというわけにはいかないと思います。  と申しますのは、今後とも日本の国際的な関係が深まりますにつれて在外で活動される人々もふえるわけでございますから、今後とも努力をする必要はあると思っております。しかし、おかげさまで少なくともそういった状況に適応し、かなりの程度に改善しつつあるということはそのとおりでございます。今後ともよろしくお願いいたします。
  84. 上原康助

    上原委員 かなり改善されてきている向きの御答弁ですが、なお一層努力をしていただきたいと思います。  私はいろいろ議論を聞いておって感ずることは、在外公館の職員の労働条件というか、一般的に言う待遇問題、あるいはほかの国と比較をして大使館の職員が少ないとかどうとかいうこともよく言われます。それはそれなりに理解をしないわけでもありません。ただ、そういう比較論だけで、在外公館の問題なり外務省の果たしている役割りというものが十分機能しているかというと、必ずしもそう受け取れない向きもあるわけですね。したがって、改善すべきところは誠意を持って改善をしていただきたいし、特に海外に行って大使館などから要望があることは、一定限度わが国として取得をすべき大使館の土地の購入とか、そういう面が非常に問題だということが一時期ありましたね。安いうちに買っておったらむしろ経済的にも予算面でもよかったのだが、なかなかむずかしいとか、そういうことなどもよく聞かされた面もあったわけですが、そういう点は一般論としてはかなり改善されてきたのかどうか、その点だけは確かめておきたいと思います。
  85. 枝村純郎

    枝村政府委員 御指摘のとおりでございまして、在外公館の建物、これは国有化していくことがいろいろな警備対策上も、先ほど御指摘もございましたが、望ましいわけでございますし、また長い目で見て国費の節約にもなるわけでございます。  そういうことで現在までのところ、公邸につきましては六二%まで国有化を達成いたしております。これは在外公館の数がふえていることを考えますと、従来、十年ぐらい前でございましたか、せいぜい五〇%であったのがとにかくそこまで来たということはかなりの成果であったと思っております。他方、事務所の方は二六%にとどまっております。これは、事務所というのはどうしても館員がふえたりしますと機動的に運営するといいますか、スペースをふやす必要があったりいたしまして、事務所よりも公邸の方を国有化では優先するというのが原則でございますのでそういう数字が出ておりますが、今後とも両方の国有化の促進については努めてまいりたいと思っております。
  86. 上原康助

    上原委員 なかなかこういう行革絡みといいますか、財政窮迫の状況ですから思うようにはかどらない面もあろうかと思うのですが、そういうことにつきましてはやはり中長期にお考えになって、取得、国有化した方がいいということについては逐次お進めになっていただいた方がそれぞれの関係者の要望に沿うようになるんじゃないかという点だけ申し上げておきたいと思います。  そこで、きょうはできるだけ時間も節約してもらいたいという御要望もあるようですから、そうしたいわけで、端的にお尋ねをさせていただきたいと思います。  最初に核問題についてお聞きしたいのですが、この件は予算委員会あるいは内閣委員会、安保特、外務委員会などですでに多くの委員の方々がお尋ねになっておりまして、何回聞いても非核原則は守りますとか、あるいは非核原則についてはアメリカ側も理解を示しているとか、安保条約、地位協定の取り決めに基づいてわが国への核の持ち込みについては原則ノーだとか、そういうお答えしか出てこないわけですね。しかし、これでは国民は納得しないと私は思うのです。  そういう立場で、特にエンタープライズの寄港もありましたし、このエンタープライズは御承知のように六八年の一月以来実に十五年ぶりの寄港になっておるわけですね。しかもこのエンタープライズというものが七万五千七百トンという原子力空母であるという点、なぜ十五年ぶりに寄港してきたかということを私たちはきわめて重視をしなければならないと思いますね。米側からの寄港要請は一体正式にはいつあったのかという点が一つ。きのうの参議院での論議を見ても、三沢へのF16の配備等とあわせて考えた場合には、恐らく今後は反復寄港をしてくるのじゃなかろうか、さらには母港化をなし崩しにねらっているアメリカの新たな極東戦略ではなかろうかというふうに見ているわけですが、まずここいらの点について、政府としてはどのように御認識をしておられるのか、御見解を賜りたいと思います。
  87. 北村汎

    北村(汎)政府委員 まず事実関係を申し上げますが、三月九日の夜にアメリカ側から、エンタープライズ号が三月二十一日から二十五日までの間乗組員の休養とレクリエーションのために佐世保に寄港する予定であるという内報がございました。そうして同時に、このことを十一日に発表するということを通報してまいりました。  それから、反復して佐世保に寄港するのではないかという御質問でございますけれども、こういう点につきましては私ども一切アメリカから聞いておりません。また、母港化の要請があるのではないかという御質問もございましたけれども、まず母港という意味も、これはいろいろな場合に使われるわけでございまして、ある場合には活動の拠点であるとか、ある場合にはその船の船籍の場所であるとか、ある場合には乗組員の家族の居住地であるとか、いろいろな場合がございますけれども、いかなる意味においても母港化を要求しておるというようなことは、いまのところアメリカから何ら話はございません。
  88. 上原康助

    上原委員 そうしますと、母港化はアメリカ側から要請がない。仮に佐世保を母港化したい――たとえばミッドウェーの横須賀も、母港じゃないということを言ってまいりましたね。しかし現実として、実態としてはこれはミッドウェーの明らかな母港ですね。アメリカ側も議会筋でしたか、そういう発言をやった。それは一般論として言っているのだといって打ち消したりいろいろやっておりますが、実際、実態としてはミッドウェーは横須賀を母港にしている。母港化を拒否しますか。
  89. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ミッドウェーが横須賀を母港としておるかどうかということにつきましては、私どもは、ミッドウェーの乗組員の家族の居住地が横須賀にあるということ、それをもって母港と言う場合には、これは母港であると言うことは一向差し支えないわけでございますけれども、私どもはあくまでもミッドウェーの活動の根拠地というものが横須賀にあるというふうに考えておりませんし、ミッドウェーが横須賀に配置されておるというふうにも考えておりません。そういう意味では母港ではないわけでございます。  それから、さらにエンタープライズについて母港化を要請された場合どうするかというような御質問でございますけれども、そういう話はいま一切アメリカからございませんし、まあ仮にそういう話がありましても、それは乗組員の家族の居住地をどうするかとかいろいろな問題を持っておるわけでありますから、当然われわれの方に要請が十分事前になければならぬと思いますけれども、いままでのところ一切そういうことはございません。
  90. 上原康助

    上原委員 あなたの御答弁にはいささか納得しかねる面があるのですが、それはそれでまた具体的にお聞きします。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕 あなたはミッドウェーが横須賀を母港にしてないと言うけれども、拠点にしてないと言うけれども、拠点であるかどうか、それは軍事上の問題で、航空母艦がしょっちゅう港におったんじゃ役目を果たさぬですよ、これは。あなた、そんな答弁でごまかしてはいけないですよ。  別の角度から言いますと、そうしますとたとえばミッドウェーが横須賀にしばしば入港してきている、母港的基地になっている。エンタープライズが将来長崎、佐世保をそういうふうに使用していく可能性というのはあり得ると見られますね、いまのあなたの御答弁からしても。
  91. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私の答弁は決してそういう可能性があるというふうに申し上げたのではございませんで、アメリカ側の考えというものがどういうふうになるのか、それは私どもとしては全く想像もいたしておりませんし、また、アメリカ側からも一切そういうことを示唆するような話はございません。
  92. 上原康助

    上原委員 そこで、北米局長アメリカ側からそういう話はない。問題は、日本の主体の問題ですね。わが国としてどう対応するかということを私はお尋ねしているわけですよ。ミッドウェーの問題が起きたときにも政府はそういう御答弁をしてまいりました。だから、ミッドウェーの活動の根拠地が横須賀と思っているのは常識です。あたりまえです。航空母艦ですから、港におったんじゃ戦にならぬよ。あくまで洋上ですよ。問題は、乗組員のそういった生活のローテーションであろうがあるいは艦船の定期点検であろうがどの港を使うかということが、ホームポートにしているのかどうかという議論であって、そのことがアメリカ側がまさにミッドウェーの母港は横須賀なんだと言っていることだと私は理解しているのです。そういう認識に立たないと、アメリカ側からエンタープライズはその要請がない、今後もそういう可能性はないと言っているんだが、しばしば頻繁に入ってくるという段階においては、なし崩しに母港的使用になっていくのではないですか。そういう使用はさせないという主体的なお立場外務省はお持ちですか、どうなんですか。その点はっきりさせてください。それは大臣からお聞かせください。
  93. 北村汎

    北村(汎)政府委員 まず事実関係を申し上げますが、ミッドウェーが横須賀に寄港をいたします。これはわりあい頻繁にいたしますのは、先ほども申し上げましたとおり、その乗組員の家族の居住地が横須賀にあるからでございます。これを母港というふうに言っても差し支えございません。しかし、エンタープライズが今回佐世保に寄港いたしますのは、先ほども申し上げましたように、エンタープライズの乗組員の休養とレクリエーションのために五日間寄港するということでございます。そういうことで、ミッドウェーの寄港とエンタープライズの寄港とは性質が違うわけでございます。
  94. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 エンタープライズが今回入るに当たりまして事前に通告があったわけでありまして、今後入る場合にももちろん日本政府に対して事前に通告をして入ってくるわけでしょうが、その場合はもちろん安保条約あるいは関連取り決めによって対処していかなければならぬことは当然でありますけれども、これから何回入るかということはアメリカの問題でありますが、わが国としては安保条約のたてまえからこれに対して対処していく、安保条約からいけば何回入ろうが、それはアメリカの権利であるということが言えるのではないかと思います。
  95. 上原康助

    上原委員 外務大臣としてはいささかいかがと思う御答弁ですが、やはり母港的港にされるということに対してはなお問題があるということと、エンタープライズの寄港そのものにも私たちは非常な疑惑を持っているということを改めて指摘をしておきたいと思います。  そこで、今回のエンプラの寄港は、これはエンタープライズだけじゃないですね。どういう艦船がこれに随行してきたのか。そういう全体を明らかにしていただきたいと思います。
  96. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私ども承知しておりますのは、エンタープライズと一緒に入っておりますのはベインブリッジ、これは巡洋艦でございます。それからハリー・ヒル、これは駆逐艦でご、ざいます。それからウォーデル、これはミサイル駆逐艦でございます。そのほかフリゲート艦、駆逐艦六隻ぐらいが入っておるように聞いております。
  97. 上原康助

    上原委員 六隻ぐらいというのもいささか問題ですが、そういう御答弁ではいかないと思います。  確かにエンタープライズ、原子力空母七万五千七百トン、これは乗組員は五千三百二十八人ですかね、時間の都合もありますから。おっしゃるベインブリッジ、これはたしか原子力巡洋艦ですね。七千六百トン、これは乗組員は五百四十一人ですか、五十人くらい。ワデル、ミサイル駆逐艦三千三百七十トン。ハリー・W・ヒル、駆逐艦五千八百三十トン。ヘプバーン、フリゲート艦三千十一トン。そのほかにもあるわけでしょう。いま大きな艦船だけ六つ挙げましたが、あなたが言う六隻、全体で乗組員は何名ですか。そしてそれぞれの艦船はどういう装備がなされているのですか。
  98. 北村汎

    北村(汎)政府委員 エンタープライズにつきましては乗組員の数その他装備の点など明らかにしておりますが、その他の艦船につきましては、私いまここに詳細な資料を持ち合わしておりません。
  99. 上原康助

    上原委員 装備は。
  100. 北村汎

    北村(汎)政府委員 その他の艦船の装備についても、詳細をここに持ち合わしておりません。
  101. 上原康助

    上原委員 あなた方、それはおかしいのじゃないですか。それも何も確認というか、せめて一般的な常識の範囲で調べられる程度もやってないで……。また後ほどお尋ねします。  防衛庁来ていらっしゃると思うのですが、いま艦船名を私が挙げましたね。防衛庁防衛立場から見て、こういう艦船はどういう装備が一般的になされていると思われるのか、大体どのぐらいの乗組員がいるのか、専門家ならわかるでしょう。それをはっきりさしてくださいよ。
  102. 藤井一夫

    藤井説明員 今回佐世保に入港しました艦艇が具体的にどういう装備をして、あるいはどういう人間を乗せているかというのは把握しておりませんが、一般的に申し上げれば、たとえばエンタープライズにつきましては、排水量は先ほど先生おっしゃいましたように七万五千七百トン、艦載機が八十六機、それから兵装といたしましてはシースパロー、これは対空ミサイルでございます。それからCIWSという高性能の二十ミリ機関砲、こういうものを搭載しております。それから人員は大体五千五百名というふうに承知しております。  それからベインブリッジでございますが、これはミサイル搭載の巡洋艦でございまして、これはハープーンという対艦ミサイルを八発、そのほかスタンダードミサイルといいます対空ミサイル、アスロック魚雷発射管、こういうものを装備しておるというふうに承知しております。
  103. 上原康助

    上原委員 いまの五千五百名というのは、エンタープライズは抜いてですね。五千五百という人員は、エンタープライズの人員のほかですか。
  104. 藤井一夫

    藤井説明員 今回エンタープライズが具体的に何人乗せてきたか承知しておりませんが、エンタープライズの搭載人員、乗員といたしましては五千五百名という資料がございます。
  105. 上原康助

    上原委員 私がお尋ねしているのは、エンタープライズはさっき私が言ったでしょう。そのほかの艦船の人員はどのぐらいおるかということがわかれば答弁していただきたいと言っているのです。
  106. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま調査をいたしておりますので、わかり次第答弁させていただきたいと思います。
  107. 上原康助

    上原委員 外務大臣、こういう実情なんですね。これだけいろいろ疑問が持たれておりながら、エンタープライズに乗っているのは大体五千五百名ぐらいだ、あとの原子力巡洋艦、ミサイル駆逐艦その他の駆逐艦、フリゲート艦というものの人員さえもわからない。恐らくまたこれも、防衛秘密だからそういうことは明らかにしないと逃げるでしょうがね。皆さんちょっとお粗末じゃありませんか、正直申し上げて。私はなぜこの点を明らかにしていただきたいと要望しているかということは、外務大臣、これは明らかに事前協議の問題と密接な関係があるからなんですよ、核の問題とも。その人員はぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。  そこで、時間の都合もありますから私の方からお尋ねしますが、要するに簡単に言うと、エンタープライズの入港というものは、事前協議の「配置における重要な変更」に、ある意味じゃミッドウェーもしかりだと思うのですが、それよりもなお問題があると言えばある。ここを皆さんはごまかそうとしているわけですね。これにも配置における重要な変更の中身はどうだとか、「海軍の場合は一機動部隊程度の配置」となっているとか、いろいろな理屈はつけている。実際問題としてこれだけの艦隊が一緒に寄港してきても、それは一時的だから、一時寄港というようなことは配置の重要な変更にならぬということ自体が、事前協議一つのいわゆる落とし穴というか、問題だと私は思うのですね。  外務大臣、その点については納得できませんよ。どうなんですか。人員にしても少なくとも一万名近くになるはずなんだ。どんなに軽く見積もっても七、八千人にはなるでありましょう。八千ないしその前後であるとすると、これは大体一個師団にならないとは言えませんね、陸の場合の。それもまたいろいろ基準は皆さんなりに定めるかもしれませんがね。だから、事前協議で言う核の問題あるいは渋々認めたわが国の国是という非核原則の問題とわれわれが具体的にこう指摘をすると、何とか論議をすりかえようとする。この点についての明確な答弁をこの際求めておきたいと思うのです。
  108. 北村汎

    北村(汎)政府委員 まず第一に申し上げたいことは、艦船が、たとえばミッドウェーの場合も横須賀にその乗組員の家族を置いておるということで寄港するとか、あるいは今回のようにエンタープライズが乗組員のレクリエーションと休養のために五日間寄港する、こういうことは事前協議に言う配置という概念には当たらないわけでございます。配置というのは、あくまでもその活動の根拠地というものがそこに存在するというふうに考えておるわけでございまして、まず配置に当たらないということを申し上げたいと思います。  それからただいま、こういうようなたくさんの船が入っておることは配置における重要な変更であって、事前協議の対象になるんではないかというような御指摘もございましたが、私はまず配置ではないということを申し上げた上で、その規模におきましても、先ほど先生も御指摘になりましたように、配置における重要な変更というのは海の場合には一機動部隊、タスクフォースと申しますが、これは二ないし三のタスクグループから成り、それぞれのタスクグループというのは空母一隻に三ないし四隻の駆逐艦より構成されるということでございますから、エンタープライズ一隻その他数隻の船が入った場合、これはまず配置ではございませんけれども、その配置の規模という点から申しましてもこれは事前協議の対象となるものではないということ、この二点を申し上げたいと思います。
  109. 上原康助

    上原委員 それもこれまで議論されたことでいつもすれ違いになっているわけですが、あなた、一タスクフォースとか、私もその程度は調べてあるのですよ。こういう量的問題や量的基準を決めたのは三十五年でしょう、一九六〇年。その後、アメリカの第七艦隊にしても第三艦隊にしても、編成規模も縮小しているのですよ、質がよくなっているから。そういう理屈だってわれわれの方から成り立つわけよね、外務大臣。あなた、ちゃんと駆逐艦二隻ついているんでしょう、三ないし四と言うんだもの。それは物のとりようの問題だというのですよ。確かに今月の三月二十一日から二十五日のわずかの期間だから、これは配置というふうに見れないかもしれぬ。しかし、アメリカがねらっているのは何かということになると、私が指摘していることは当たらずとも遠からずと思いますよ、これは後で言いますけれどもね。そういう疑問点には政府は一切答えていないということをこの際改めて指摘をし、次に進みたいと思います。  そこで、このエンプラ寄港に当たって、これが入港するということもあったからかと思うのですが、外務大臣、去る十七日にマンスフィールド在日米大使にお会いをして、いろいろ核持ち込み問題をお話しなさったようですね。予算委員会その他における議論もマスコミを通してある程度知っているつもりですが、大臣の熱意は一応評価をしたいと思うのです。改めて非核原則米側に遵守せしめようという、まあ本意であればなお結構だと思うのですが、一応問題が非常に大きくなっているからそういうふうになったかと思うのです。しかし、あの会っている写真なり話し合いの内容をいろいろ見てみると、全くこれも形式か儀式かですね。外務省の皆さんだって、こちらの言うことはもう決まっているし米側の言うことも聞かなくてもわかっている、この程度のものでしょう、非核原則の確認とか事前協議問題というのは、これでは国民は納得しないわけです。どういうお話し合いをマンスフィールドさんとなさいましたか。
  110. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは前国会でしたか、F16が三沢に配置されるということがあって、たしか社会党議員の方から、核の持ち込みの疑問があるから米側にただすべきである、こういうふうな質問が出て、近いうちに米側に核持ち込みの問題について日本政府立場説明して、米側のこれまでの態度、考え方を再確認しましょう、こういう答弁をしております。その後、エンプラも入ってくるというようなことになりましたので、私からもやはり大使と直接会ってこの点については再確認しなきゃならぬ、そういうふうに考えまして、実はマンスフィールド大使にお目にかかりまして、F16の三沢配備あるいはまたエンプラの佐世保入港ということを含めて、いろいろと国民の中にも疑念を持つ方々もおるので、この際日本非核原則立場を明快に、いまさら伝えるまでもないことかもしれぬけれども明確にお伝えをいたして、アメリカ側のそれに対する態度、考え方をはっきり聞きたい、こういうことを申しました。これに対してマンスフィールド大使は、核の問題については日本国民が非常にセンシティブであるということを自分もよく承知いたしておるし、また日本政府非核原則を持っておるということも十分承知しておる、さらにまた日本アメリカとの問には日米安保条約があって、さらにそれの関連取り決めがある、そのもとで事前協議というものがある、したがってアメリカ政府としては、核の存否についてはアメリカの政策として内外に明らかにすることはできない、これはアメリカの政策であるけれども、しかしわれわれは日本政府アメリカ政府との間に結ばれた日米安保条約関連取り決め、そのもとにおける事前協議条項というものは誠実に遵守をいたします、条約は守ります、約束は履行します、こういうことをはっきり言っているわけでございますから、日本国民の中でそれでも疑問を持つ人もあるかもしれないけれども、これでもってきわめて明快になったと私は思っております。
  111. 上原康助

    上原委員 明快になっているということは、アメリカが原子力法を盾に核の持ち込みをしているということだけじゃないですか、外務大臣。それでは納得できませんよ。  そうしますと、これも何回かいろいろ問題になってきていることですが、この領海通過とか一時寄港を含めて核の持ち込みはなされていませんね、アメリカはやりませんねということは外務大臣の方から念を押しましたか。言うところのイントロダクション。そういう話し合いをしたかどうかをまず聞きましょう。
  112. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私からは、大使もいま日本の国会で論議していることはよく御承知でしょう、また国会で日本政府が答弁していることもよく御承知でしょう、いまエンプラの問題あるいはF16の問題もあります、そういうことを含めて日本はいま三原則という立場を堅持しているんだ、こういうことを説明いたしておりまして、いまお話しのような寄港であるとか領海通過であるとか、そういう具体的な点まで詳細に私から国会論議の内容を説明しているわけではないのですけれども、しかし私から国会の論議はよく御承知だろうと言っておりますし、アメリカもまた、日本の国会でどういう論議がなされて、日本政府がどういうことを答弁しているかということはもう知っているわけでございますから、それはわれわれの間では前提の問題である、こういうふうに思っております。したがって、そういう具体的な案件、問題について私は触れてはおりません。しかし、アメリカとしても安保条約を守る、事前協議の条項は遵守するということを言っておるわけですから、私はこれで十分じゃないか、こういうふうに考えております。
  113. 上原康助

    上原委員 まあ細かい点、これまでの経緯についてはもう申し上げませんが、それでは納得できないじゃないですか、核持ち込みというのは。  先ほど挙げましたね、エンタープライズ、駆逐艦、いろいろ六隻の艦船の名前を。エンタープライズを含めていまの米海軍の装備の実情とか能力からして、大臣、これは政府の専門の皆さんが、あれだけの艦船に全然核弾頭が積載されていない、核装備されていないとは、常識からするとだれもそうは思っていないはずですよ。三十五年から三十年近くもずっとでしょう。一遍も事前協議をしようというアメリカ側からの相談がないわけ、でしょう。そうすると、沖縄基地、横須賀、あるいは岩国、三沢、横田、佐世保、こういうところを含めて、アメリカが核装備とか核弾頭を含めて一遍も持ち込まないでこれまでのいろいろな紛争とかそういった国際情勢の緊張下に対応できたと思いますか。できないでしょう、常識論からいうとこれは。そのごまかしをわれわれは絶対了解できないと言っているんですよ、外務大臣。日本非核原則を、いわゆるつくらず、持たず、持ち込ませずを一つの国是、政策として持っている。アメリカは原子力法、マクマホン法で核の存否については明らかにしない。だから、ミッドウェーであろうが同様艦船であろうが、それに核が搭載されているかあるいは装備されているかについては、突き詰めて話そうとすると、核の存否についてはわが方は言わないことが国策であります。かみ合わないのじゃないですか。これでどうして核が持ち込まれているか持ち込まれていないかという確認ができますか。艦船に何名乗っているかさえもあなた方は明らかにできない。どういう装備をしているかも確かめてない。いつまでも、まあ言葉は悪いかもしらぬが、インチキ答弁では納得できませんよ、外務大臣。一時通過の問題とか一時寄港、領海通過についてはやはりすでに黙認をされてきているんじゃないですか。もうその点は、少し良識ある外務大臣ならはっきりして事を言ってみたらどうですか、将来のニューリーダーとしても。どうですか。
  114. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私はごまかしも何も言っているのじゃなくて、明快に答弁をしているわけです。さっきお話しのように、わが国はもう非核原則がある。そして核の持ち込みについては事前協議の対象になる。事前協議になったときはすべてノーだということは、長い間政府が答弁をしてまいりました基本方針であります。そこでアメリカもこの事前協議条項については誠実に遵守するというわけですから、日米安保条約というのは両国の信頼関係がなければとうてい成り立たないわけでありますし、したがって、アメリカが核持ち込みという場合には当然事前協議の対象になるわけですから、アメリカ事前協議なしに核の持ち込みはしないということでございますから、これまで確かに事前協議がなかったことは事実でありますが、安保条約のたてまえ、お互いに約束、義務を誠実に遵守するという立場から見ましてそういうことはあり得ない、なかったということをはっきり申し上げるわけでございます。
  115. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほど上原委員から御指摘のございましたアメリカの原子力法、マクマホン法との関連で答弁をさしていただきますが、確かにアメリカには原子力法によって核の所在を確認することも否定することもできないということは、これはそういう立場アメリカはとっておるわけでございますけれども昭和四十九日十一月七日にアメリカの国務省から私どもが回答を得ておりますアメリカの公式見解は次のとおりでございます。核の所在について確認することも否定することもできないという立場を明らかにした後、しかし、「合衆国の原子力法又はその他の如何なる国内法も、正当に権限を付与された合衆国政府の官吏が事前協議に関する約束を履行することを禁止し又はこれを妨げるものではない。」これがアメリカ合衆国政府からわれわれが得ておる公式の見解でございます。したがいまして、原子力法の存在によってアメリカが核の持ち込みについて事前協議を行うことができないということではございません。  それから、先ほどからのエンタープライズと一緒に入っております六隻の艦船の人数を調べましたのでお答えいたします。これはいずれも出典はジェーン年鑑でございます。エンタープライズは先ほどからも答弁をいたしておりますように五千五百名ということになっておりますが、ベインベリッジは五百四十一名、ハリー・ヒルが二百九十六名、ウォーデルが三百五十四名、ヘプバーンが二百四十五名、それからハルが二百九十二名、サクラメントが六百名でございます。合計いたしますと七千八百二十八、約八千名ということになります。
  116. 上原康助

    上原委員 約八千名でしょう。八千名なら一個師団にやがてなりませんか、人数においては、基準は。それはいろいろあるでしょう。そこで、いまあなたがおっしゃったように確かに原子力法との関係ではそういう答弁が国会で、予算委員会でなされて、私もそれは調べました。そうであれば外務大臣、逆に、では本当に核が積載されていないかあるいは核装備されていないのか、核弾頭を積載していないか、日本側は確認できるわけでしょう、それを盾に。なぜやらないのですか。原子力法によって、マクマホン法によって核の存否について明らかにしないが、そういう見解だということであるならば、これだけ国民が疑問を持っているのだから、日本側の主体によって、エンプラが核を積んでいるのかどうか、単なる信頼関係と言わず調査する必要があるのじゃないか。点検、検証する必要があるのじゃないか。それをやらぬでおって、それは積んでいません、持ち込まれていないと言うから問題なんです。  僕は入れていいと言っているわけじゃない。そういう答弁では通らない事態になっている。では外務大臣、少なくとも逆にそれを利用してください、いま北村さんがおっしゃったことを。そうであると、改めてわが方から領海通過あるいは一時寄港についても非核原則アメリカは遵守しているという確認をとれますか、政府として。
  117. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカはとにかく核の存否については明らかにしない、世界のどこへ行っても内外で明らかにしないというわけですから、われわれが幾ら言ったところでこれはアメリカとしては明らかにできないわけです。ただ、アメリカは逆にまた、日米安保条約は遵守します、事前協議条項は誠実にこれを履行しますということも言っておるわけですから、核の持ち込みについては事前協議の対象になるわけですから、核を持ち込むという場合においては日本に対して事前協議を求める、その事前協議がないという以上は核の持ち込みはない、こういうことになるわけであります。  なお、寄港であるとかあるいは領海通過についても日本政府はしばしばこれは核持ち込みだということを、はっきり国会においても政府として言明をいたしておるわけでございますし、その点についてはアメリカ政府としても十分これを承知しておると存ずるわけです。
  118. 上原康助

    上原委員 そこいらになると突然歯切れが悪くなる。ですから、一時寄港であっても領海通過であっても核持ち込みに該当するのだということを改めて米側に申し入れますかということを聞いているわけです。
  119. 北村汎

    北村(汎)政府委員 寄港、通過の問題につきましては、もう政府が何度も国会で申し上げておりますとおり、核搭載艦のわが国への寄港、通過という問題は事前協議の対象になるということは、これはもう合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象といたしました交換公文、岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解の文脈からしてきわめて明らかでございますので、日米の間にこの点については何ら違った見解はないとわれわれは考えておりますので、いまさら確認をとる必要はないと考えております。
  120. 上原康助

    上原委員 そういうことではちょっと納得しかねますが、そこが非常に、疑惑をますます深めるだけですね。  なぜこういうことを強調するかといいますと、これまでもやはり核持ち込みの疑惑についてはいろいろあるわけですよね。これは沖縄国会からずっと続いてきている、現在でも。むしろ情勢はシビアになってきているのじゃないですか。これはライシャワーさんでしたか、日本政府が国会答弁で核兵器積載艦の通過も許さないということについては米国の了解と違うということを、亡くなられた大平さんが外相時代に申し入れたという発言も実はあったわけです。これについては口頭了解があった。アメリカ政府にはメモもあるはずだ。これも国会でも議論されましたが、アメリカ側のかつての高官もこういうことを実際言っているのです。公言しているのです。こういうことについて確かめもしないで、岸・ハーター交換公文とか口頭了解とか、あるいは何回も確かめたが核は積んでいません、核持ち込みは一切なかったものと思うと言うが、本当にそれを信じている人はだれもいないはずですよ。こういう防衛問題なりいまのアメリカの海軍力というもの、あるいは海軍だけじゃなくして海兵隊だって、空軍でもみんなそうですね。これでは外務大臣、国会の議論も無じゃないですか、幾らやろうとしたって。予算委員会ならストップだが、しようがない、きょうは進みましょう。しかも通過も、要するにイントロダクションについてはアメリカ側の見解は違うということは実際にアメリカ側は言っているわけでしょう。その点については、もう一遍確かめる熱意も誠意もないのですか、外務大臣。改めて聞いておきましょう。
  121. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど北米局長から御答弁申し上げたことと重複いたしますが、念のために補足して申し上げますと、イントロダクションという言葉自体は必ずしも本質的な問題ではないと思うわけです。従来から政府が御答弁申し上げておりますとおりに、委員よく御承知の岸・ハーター交換公文に書いてありますことは合衆国軍隊の装備における重要な変更で、合衆国軍隊におけるというその合衆国軍隊というのは、何も日本に配置されている合衆国軍隊ではないということはその文脈上からはきわめて明瞭なわけでございまして、およそ日本国に配置された軍隊のみならず施設区域を一時的に使用するアメリカ軍、すなわち飛行場であるとか港にその都度出入りするアメリカ軍、日本に常駐しているとは限らないアメリカ軍ですが、そういう米軍、それから安保条約の適用を受けるその他の米軍、すなわち日本の領域内に入ってくる米軍というものはすべてそこに言うところの合衆国軍隊である。したがいまして、その交換公文の規定ぶりからいっても、およそ陸上に常駐する在日米軍、いわゆる在日米軍というもののみならず、港や飛行場に一時的に出入りする米軍、それから領海を一時通過と申しますか一時的に日本の領域内を通過していく米軍もそこに言うところの合衆国軍隊に当然該当するであろう。そういう意味から言いまして、交換公文の文脈からいってその点はきわめて明白であるということは、従来から御説明申し上げているところでございます。
  122. 上原康助

    上原委員 何をおっしゃったのかさっぱりわからぬ、条約局長が言うことは。せっかく話がやがてかみ合いそうになったのに、あなたが出てきてよけいわからなくなったじゃないですか。問題は、国民が聞いて納得できるような答えをしてくださいよ、あなた。非核原則ということは、いま正直に言って日本側の片思いになってしまっているのだよ。大臣、これは少なくとも確かめてみなければいかぬじゃないですか。一時寄港や通過の問題はこれからどんどん出てきますよ。次に聞く戦艦ニュージャージーなんかどうしますか、トマホークが装備された段階ではどういたしますか。だんだん逃げられなくなりますよ、外務大臣。それまで外務大臣であるか首相になられるかわからぬけれども。いまの条約局長の御答弁は、後で会議録を調べて、またどこかで議論しましょう。私はこの核問題というのは、いまのような政府の御答弁ではやはり国民は理解しないと思うし、納得しないと思いますね。  もう一点、これとの関係でお尋ねしますが、さっきの矢山先生の話とも関連するのですが、ソ連がSS20の極東配備ということを言い出しているのは、一体その背景はどう見ているのですか。一方が構えると、一方だってそれに対抗措置をとりますよ。自民党の派閥だってやっているのでしょう。こっちの方がこうしようと言うと、いやこっちの方はこうだよと言って。それが戦争ですよ。(「均衡がとれているのだ」と呼ぶ者あり)均衡がとれないでしょう。均衡がとれていない。
  123. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 こっちに向いて質問してください。
  124. 上原康助

    上原委員 SS20の極東配備をやろうとしていることは、こういったエンプラが入ってくるでしょう、いまのように三沢にF16を配備しようとしているわけでしょう、沖縄に新たに特殊部隊を配備しようとしているでしょう、そういう在日米軍基地の強化に基づいてソ連側としてもその対抗手段をとらざるを得ないということは、常識一般論として成り立つのじゃないですか。それで、このニュージャージーの佐世保寄港ということが、また新たな問題として出てきていると思うのです。  このニュージャージーの能力というか概要というものは、どういうふうに皆さんは認識をしておられますか。
  125. 藤井一夫

    藤井説明員 ニュージャージーにつきましては、これは第二次世界大戦中にできた戦艦でございますが、一九八三年一月に再就役ということに相なるものというふうに聞いております。排水量といたしましては、基準排水量が約四万五千トン、速力三十三ノット、それから装備といたしましては、トマホークの発射機を八、ハープーンというこれは対艦ミサイルでございますけれども、これを四、十六インチ砲を九、五インチ砲を十二、二十ミリのCIWSと言っております対空機関砲を四、こういうものを装備しているというふうに承知しております。
  126. 上原康助

    上原委員 それは現在でしょう、これからはその艦はどうしようとしているのか。
  127. 藤井一夫

    藤井説明員 いま私が申し上げましたのは再就役後の装備でございまして、トマホークとかハープーンとかいうミサイルは以前は積んでいなかったものを、ミサイルを装備化して再就役をする、そういう意味でございます。
  128. 上原康助

    上原委員 ミサイルトマホークは三十二基じゃないですか。艦対艦ミサイル、言うところのハープーンが十六基、新装備をしようとしているわけでしょう。これまでの国会答弁を見ますと、中長距離ミサイルというものは核弾頭を装備している、これが常識、常態だということを言っていますね。それは違いますか。
  129. 藤井一夫

    藤井説明員 いま私がトマホークを八と申し上げましたのは、発射機の数が八でございまして、一発射機が四ランチャー持っておりますので、四、八、三十二発ということに相なります。それから、同じくハープーンも一発射機四でございますので、それが四でございますので、四、四、十六、こういう計算に相なります。
  130. 上原康助

    上原委員 これは防衛白書もそんなもので、なるべく数を落とそうとしている、何でも小さく見せようとして。だから一々確かめなければ。  だから、ソ連の能力はずっと高いとか言うけれども、実際はそうじゃないのだ。アメリカの国防白書だってみんな三割以上は水増しですよ。予算を多く取りたいとか、これは軍人の本質なんです。だから、防衛庁というのはちょっと油断をすると八機になるし、八かける四は三十二基でした、こうなる。  そこで、これもまたするすると答えをごまかす、と言うのは失礼ですが、トマホークの概要というものは、確かに非核、核専用の両方だということになろうと思うのです。問題は、三十二基八四年以降、八三年から対地と対艦攻撃型の装備をいたしますね。トマホークです。今年でしょう。もう八三年だ。これが最終的にはいまおっしゃったように三十二基になる。そうしますと、このニュージャージーの寄港ということも、長崎かあるいは――恐らく長崎になると思うのですが、これは認めるのですか認めないのですか。まずそこから聞きましょう。
  131. 北村汎

    北村(汎)政府委員 いままでのところ、ニュージャージーの寄港については何らアメリカ側から話はございません。もしそういう寄港の要請がございましたら、その際は、安保条約及び関連取り決めを踏まえてわれわれとしては対処するつもりでございます。
  132. 上原康助

    上原委員 トマホークが装備をされた段階でも、いまの見解、立場は変わらないということですか。
  133. 北村汎

    北村(汎)政府委員 上原委員が御指摘なさいましたように、トマホークは海上発射の巡航ミサイルでございまして、核、非核両用でございます。したがいまして、非核のトマホークを積載しておるニュージャージーが入ってくる場合には、これは何ら安保条約上の事前協議の対象ではございませんし、また核を積んでおる場合には、当然事前協議の対象になるはずでございますから、事前協議があるというふうにわれわれは考えております。
  134. 上原康助

    上原委員 そういう答弁をされると、もう質問する方が本当に欲出ないですね。幾ら何でも、軍艦が大洋で、おれは核を積んでいるから、長崎、佐世保、横須賀に行くから、そこで日本非核原則があるからそれはどこにおろすのか、そんな、常識でどう考えてもかみ合わない議論、答えだけするから、後はテーブルのたたき合いになるのだ。本当に三十二基積んでいる、もちろんそのうちの半分は非核かもしれぬよ。半分は核専用であるかもしれない。であると思うよ。むしろ私は全部そうかもしれないと思う。そうすると、それを全然点検もしないで、いや、これは非核のトマホークしか装備してありませんと言ったら、ああそうですが、わかりました、どうぞ、こう言いたいというわけでしょう。これじゃ納得できないのじゃないですか。北村さん、あなたも良識があって、恐らくこういう公式のところだから、本当は胸の内ではこんな答弁では上原君だって納得はしないだろうが、しようがないやという気持ちでやっていると思うけれども、僕も良心的だから、こういうことではいかぬ。  では、なぜアメリカはこの軍艦を、ニュージャージーをわざわざ改修したのか。わざわざ多額の予算を投じてトマホークを装備する、それはあくまでも核専用を目的とした戦闘艦ですよ。それが入ろうというのに、安保条約に基づいて入れる、入港をただ認めるというだけでは、大臣、こんな答弁ではもう納得できませんよ。もう少し誠意ある答弁をしてみてください。恐らくだれが考えても納得しないはずですよ、こんな答弁では。もうできないですよ。
  135. 北村汎

    北村(汎)政府委員 安保条約に基づく事前協議制度と申しますのは、その根底には日米間の信頼関係というものがございます。これなくして安保条約というものは運用されないわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、事前協議にかかる事項としてアメリカが条約上の義務として持っておるこの問題につきましては、そういうケースの場合には必ずアメリカ側から事前協議があるというふうに考えております。これは日米間の信頼関係でございます。
  136. 上原康助

    上原委員 もうそうなると、核がどこかで爆発するか事故を起こさない限り、あったかどうかわからない。外務大臣、これでは本当に納得できませんよ。ぼくはもうちょっと誠意があれば一時間半くらいでやめようと思っていたが、やはり六時くらいまでやってやるよ。そういう答弁じゃちょっとお粗末ですよ。  いま具体的にやって、核専用だということはあなた方も認めた。三十二基、ハープーン十六、これも核を装備できる、可能性としてはある。あなた方点検もしないで、アメリカが装備していませんあるいは積んでいませんと言ったのを、それを認めます、信頼関係です、これじゃ長崎の人も国民も納得しないじゃないですか。あなた、いつまでそういう答弁でこの核問題でも非核原則の問題とか事前協議というものを――アメリカに笑われますよ。ぼくはもうアメリカは腹の底では笑っていると思う。日本政府って何ていい政府だろうと、われわれがないと言えばそうですかと歓迎して。わざわざ向こうまで行って手をたたく人もいらっしゃるからね。これもいいかもしらぬけれども、民主主義だから。外務大臣どうですか、いまの点は。  ニュージャージー入港問題というのは、エンタープライズと関連する、あるいはF16配備の問題、さっき言った一方のソ連側のSS20の極東配備等と。むしろわが国の緊張を高める、そういった情勢をつくり上げていく要因になりますよ、これは。だから私はこれだけ、くどいようですがお尋ねをしているのですよ。本当に非核原則を守り、事前協議制度というものを実効あらしめるということを政府が考えておられるとするならば、この際、エンタープライズの問題あるいはミッドウェー、ニュージャージー、こういった新たなアメリカの極東戦略というか、第七艦隊あるいは第三艦隊の編成がえをしようとするいわゆる柔軟戦略というものとの対応において、日本側もそれに対応していく姿勢というものを確立をしていかなければいけないと思うのですね。ただ何のあれもなくして言っているのじゃないですよ、外務大臣。その点、おやりになりますね。
  137. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず極東情勢に対する認識ですが、これは上原さんと私とでは違いますね。といいますのは、極東における軍事力の強化というのは、この数年来ソ連が非常に行ってきているわけです。SS20も百基すでに極東に配備済みになっておりますし、それから北方四島にミグ21を配備しているということも御承知のとおりです。海軍力あるいはバックファイアを含む空軍力も大変な強化をしている。そういう中でアメリカアメリカの軍事力のプレゼンスというものを発揮させる、平和というものが残念ながら軍事力の均衡の上に成り立っている以上は、そういうことが必要になるわけでございます。ソ連のそうした軍事力増強というものがそうした極東におけるアメリカの軍備の充実ということにもつながっていくわけでございますし、これがまたすなわち戦争の抑止力ということにもつながっていくわけでございますから、現実の軍事力のバランスという上に成り立っている平和というものを考えれば、これはやむを得ないことじゃないか。しかしわれわれとしては、日本としては、これは世界においてもそうですが、米ソのたとえばINF交渉等が真剣に行われて、そしてそれが具体的に実効ある成果が得られる、そして東西両陣営の核の軍縮がバランスをもって行われるということを期待しておりますし、そのために日本日本なりの外交的な努力はいとってはならない、やらなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、いまニュージャージーの問題が出ましたが、これはどこからそういううわさが出たのか、いまのところ全くうわさで、外務省として何らの情報も得てないわけです。大体エンタープライズが入るときはある程度われわれも感触を得ますけれども、全くそういう感触を得てないですから、これはいま入るとか入らぬとかいうことを前提に議論をしても少し先走った話になるんじゃないかと思うわけでございます。仮に万々一入るということになったとしても、いま政府委員から答弁いたしましたように、トマホークにしても核のある場合もあるしあるいは非核の場合もあるわけでございますし、日米関係においてはもうずっと政府の一貫した答弁で、私のときになって答弁を変えているわけじゃないんです。一貫した答弁を続けているわけですが、核の場合はすべて持ち込みはノーだ、そしてその核の持ち込みには領海通過もあるいは寄港もあるんだ、それはアメリカとの間の交換公文であるとかあるいは口頭了解ではっきりしているということであります。しかし、その点について、国民の疑惑も一部にあるんですから、私も今回マンスフィールド大使にお目にかかって、そうした日本立場というものを明らかにいたしました。アメリカとしては核の存否というものは明らかにできない、アメリカの基本政策ですから。日本だけじゃなくて、世界どこの国に対しても明らかにしていないわけでありますから、これはできない。しかし、日米安保条約、その関連取り決めはちゃんと守ります、事前協議は誠実に遵守しますということを言っておるわけです。先ほどからしばしば申し上げましたように、日米の信頼関係、特に条約というのはお互いに義務を果たさなければ条約にならぬわけですから、そうした条約を守るという日米のこの立場からいけば、いまのアメリカの、はっきり事前協議を守るんだ、事前協議は誠実に遵守するということはわれわれとして信頼をして、その確信の上に立ってこういう問題に対して対処するのは当然だと思いますし、それ以上のものというのはちょっと考えられない、そういうふうに考えておるわけです。
  138. 上原康助

    上原委員 もうそれ以上の答弁ができないわけでしょうね。しかし、これは聞いている方々に御判断いただく、国民の判断に任せる以外にないかもしれませんが、極東情勢に対する考えも違うということで片づけられる問題じゃないと思うのですよ。私は何も、ソ連の軍事能力というものを過小に評価しようあるいは過大に評価しようとも思いません。また、ソ連が仕掛けておるとも私は思います。しかし皆さんは、何かと言えばソ連の海軍力とかあるいは北方領土への軍隊の配備とか、いろいろおっしゃいます。わが国固有の領土にそういった軍事展開をするということは、私も反対ですよ。しかし同時に、日本側も本当にこれだけ平和憲法を守って反核、軍縮の立場で外交をやり、防衛を考える、安全保障というものを考えるというのであるならば、ソ連に対してもアメリカに対しても軍拡競争をやめさせるということが基本でなければいかぬでしょう。日本自体は、ニュージャージーもいらっしゃい、ミッドウェーもオーケー、エンプラ賛成、トマホークが装備されて核装備であっても、これは日米間の信頼関係ですと。F16だってアメリカの主力戦闘機ですよ。米空軍の主力戦闘機というのは歴代核装備をしているんですよ。きょうは時間がありませんからいつかやりますが、そうなると、どう見たって緊張を激化せしめる要因は日米間にもあると見るのが常識でしょう。こっちはどんどん軍拡をやっておって防衛費は突出させてやっておきながら、ソ連だけけしからぬと言ったって、それはソ連だって黙っていませんよ。そういう軍拡競争やいわゆる核戦争に巻き込まれるおそれがあるから、この際政府としてもここいらについてはもう一度考え直していただけないかということを私は言っているわけで、それを、あなたは社会党だからあるいは安保に反対だから考え方が違うということだけではいけませんよ。大物外相としてはちょっといまの御見解はいかがかと思うのですが、私はそういう見解を持っているということをこの際明確にしておきたいと思うのですね。  そこで、このニュージャージーのことでもう一遍確かめておきたいのですが、在日米海軍司令部の見解によりますと、佐世保を選びたい。ということは、ソ連に近いところを母港化したい。横須賀は空母機動隊にする。佐世保はSAG、いわゆる巡洋艦艇あるいは駆逐艦、要するに戦闘艦でしょうね、戦闘力を出す。横須賀は航空母艦。エンプラもどちらかというと戦闘活動をより強化しているあれですね。そういうものをねらっている。一方また、佐世保は艦艇修理能力がいいということと、横須賀よりも二日以上早く南シナ海等々に洋上展開できる、もう一つはトマホークを利用すれば沿岸からの攻撃が可能だ、こういうことで将来佐世保を母港化したいというのが在日米海軍の意向だとわれわれはある筋から承っているわけです。  こういうことについては、外務省なり日本政府としてはどういうふうに情報を得ているのか、あるいはどう見ているのか。先ほど外務大臣は、エンプラの入港前には外務省もそれなりのささやきがあったと言うのですが、三月九日とおっしゃいましたが、僕はあのときに議論するのを落としたのですけれども、実際にはこのエンプラを佐世保に入港させたい、日本に入港させたいということは、アメリカ筋からは昨年の六月ごろから防衛庁なりその他の面に対して出ているのでしょう。一年以上前から打診されているわけでしょう、実際問題として。恐らく外務省はそれを知らぬわけじゃないと思うのだ。だから、いま外務大臣がおっしゃるのだが、ニュージャージーの問題にしたって、これだけ情報が出るとアメリカがそういう意思を持っているというのは間違いないと思うのですね。私たちは、それはこの際あくまできっぱり断ってもらいたいと思う。いま申し上げたこと等について外務省はどういう情報、見解を持っているか、お聞かせいただきたいと思う。
  139. 北村汎

    北村(汎)政府委員 まずエンタープライズの佐世保寄港について、私が先ほど三月九日の夜に至って通報がありましたと申しましたのは、はっきりとした日時と場所を指定した通報が三月の九日に内報があったということでございます。エンタープライズが日本に寄港するような計画が一般的にあるというような話が昨年の暮れぐらいからあったことは事実でございます。  それからもう一つ、ニュージャージーのことにつきましては、そういう一般的な話も含めまして一切そういう話は聞いておりません。
  140. 上原康助

    上原委員 それが現実にならないようにひとつ御配慮をいただきたいし、少なくともトマホーク、いろいろこの問題が具体化したときには、政府は先ほどの答弁だけではつじつま合わせはできない状況が来るであろうということも指摘をして、次に進みたいと思います。  次は、こういうことで在日米軍基地が非常に強化をされつつあるわけです。これは沖縄基地との関係でも少し核問題に触れたかったのですが、きょうはもう時間がありませんので割愛して、次に譲ります。  もう一点確かめておきたいことは、特殊部隊の件です。御承知のように、復帰前に沖縄に配備されていた米軍の中でいわゆる特殊部隊と言われていたものが、第三海兵水陸両用部隊、第七心理作戦部隊、第一特殊部隊などがあって――SR71もそうでしょうね。第一特殊部隊はいわゆるグリーンベレーと呼ばれておったのですね。これはベトナム戦争で大変なゲリラ残虐活動をやったいわくつきの特殊部隊だったと思うのです。この第一特殊部隊はいつごろ沖縄から撤収したのか、この部隊の人員はどのくらいだったのか、古い話だがまずお答えいただきたいと思います。
  141. 北村汎

    北村(汎)政府委員 いま手持ちの資料がございませんので、調べて返答いたしたいと思います。
  142. 上原康助

    上原委員 たしか復帰後、七四年に撤収というか撤退をしていると思うのです。これは沖縄国会で問題になって、できるだけそういう物騒なものは引き揚げさせるということだった。これはいまの外務大臣の親分の福田さんが外務大臣のころおっしゃった、失礼な言い方かもしれませんが。  この部隊の人員は、たしか四十六年ごろの外務省の資料だったと思うのですが、千二百五十名ぐらいだというふうに当時答弁をなさっていると思います。しかし、私がこれからお尋ねしたいことは、この特殊部隊がまた、沖縄というか在日米軍基地に配備をされるということが言われておりますね。これは一九八四会計年度中の例ですよ。予算で特殊部隊を千二百人増員し、二個大隊に編成して沖縄などに配属、太平洋地域作戦、訓練に充てる計画であると報じられております。この千二百名という人員が、奇しくも復帰当時沖縄に駐留しておった第一特殊部隊の人員と一致していることに注目したいわけです。したがって、先ほど来申し上げておりますように、この種の一種のゲリラ戦争あるいは心理作戦的な防諜まがいの作戦展開をする特殊部隊が新たに配備をされることは、私は非常に問題だと思うのですね。皆さんは安保条約があるからと、これもまたおっしゃるかもしれませんが、そのことについては米側から日本側に話し合いがあったのかどうか。再配備はお断りをすべきであると思うし、米側にそういった照会をする御意思があるかどうか、まとめてお答えをいただきたいと思います。
  143. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま委員指摘報道承知しておりますけれどもアメリカ側からわれわれの方に通報ないしそういう話は一切ございません。
  144. 上原康助

    上原委員 なければ、さっき私申し上げたでしょう。米側が一九八四会計年度でそういうことをやるということを言っているわけだ。反乱鎮圧、民事工作などを任務とした米陸軍特殊部隊を在日米軍基地いわゆる沖縄、あるいはフィリピン等々に配備するということを言っているわけだ。一切照会ないと言うのだけれども、そういうことをなさると、またあんなやつが来るのかと沖縄の人や関係者が心配するのじゃないですか。断ってもらいたいということと、それじゃ照会されますか。
  145. 北村汎

    北村(汎)政府委員 八四年の国防報告の原文によりますと、沖縄に配備するというようなことは書いてございません。
  146. 上原康助

    上原委員 そうしますと八四国防報告でそういうことを言っていない。しかし、そういう報道がなされると、関係者というのはやはり注目をする、関心を持つのですよ。その種の特殊部隊というのは復帰時点も問題になったわけですよ。問題だから撤収したわけでしょう。では、新たにそういう部隊を配置しなければいかないという何か米側作戦、任務が変わったのですか。日本側もそういうものはまたウエルカムと言うのですか。その点も私は確かめているのです。
  147. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、アメリカとしてそういう部隊を沖縄に配備するという計画があるとは言っておりませんし、また私どもはそういう話を一切聞いておりません。そういうことで、アメリカがそういうことを考えておるとは考えておりません。
  148. 上原康助

    上原委員 あった場合はどうなさいますか。
  149. 北村汎

    北村(汎)政府委員 これは全く仮定の話でございますのでなかなか答弁はいたしにくいわけでございますけれども、まずそういう場合には、そういう部隊が一体どういう部隊で実際どういうことをするかということをよく米側にただして、しかるべく対処をしなければならぬと考えております。
  150. 上原康助

    上原委員 私の見解といいますか、立場というか考え方についてはいま申し上げたとおりでありますので、そういうことはよくノートをしておいていただいて、この種の特殊部隊というものの配備は容認しないということを十分やっていただきたいことを強く求めておきたいと思います。  次に、これも何回かこれまで聞いてきたことなんですが、那覇軍港の問題です。  最近沖縄へ行かれた方はわかると思うのですが、那覇軍港というのは、御承知のようにたしか九年前の第十五回日米安保協でしたかね、七四年一月三十日で全面返還するという、まあ条件はついていますが日米間で合意を見ているのですね。いま八三年ですから、もう九年近くなるのですか。しかも、一時期遊休化しておりましたが、八一年の二月以来米軍の事前集積船が那覇軍港に頻繁に入港してきているわけですね。これも私は前の局長の淺尾さんの場合もお尋ねしたのですが、この事前集積船の根拠地はどこですか。まずこれから聞いてみよう、あなたがさっき根拠地と言ったから。
  151. 北村汎

    北村(汎)政府委員 事前集積船は第七艦隊に所属しておりますけれども、通常ジエゴガルシア近辺に所在しておると聞いております。
  152. 上原康助

    上原委員 失礼なお尋ねかもしれませんが、ジエゴガルシアはどこにあるのですか。
  153. 北村汎

    北村(汎)政府委員 インド洋でございます。
  154. 上原康助

    上原委員 おっしゃるとおりですね。インド洋のジエゴガルシアに配備をされている。これは当初は何隻で、現在はどのくらいの船団になっているか、おわかりでしたらお答えいただきたいと思います。
  155. 北村汎

    北村(汎)政府委員 当初はたしか七隻ぐらいで、現在は十二、三隻程度になっておると聞いております。
  156. 上原康助

    上原委員 おっしゃるとおり当初は七隻で、私の情報では十七隻に急増しているわけです。  そこで問題は、那覇軍港というのは、この使用目的は、御承知のように港ですから、米艦船の一つの施設として使われてきているわけです。いま一点は那覇港湾施設という、いわゆる言うところのPOL、油関係ですね。港湾地区とPOL地区から成っている。POL地区は、陸軍所有タンク施設にいま移転が進められている。これは七四年に安保協で合意を見て、さっき申し上げた八一年の二月段階まではほとんど遊休化しておったのです。返還可能だということであったのです。だが、那覇へ行かれた方はわかると思うのですが、ベトナム戦争時代はみんなグリーンの、青色の迷採色ですね。ベトナム枯れ葉作戦、いろいろやって、最近はどうかというと、戦車にしても船にしてもトラックにしても、全部今度は砂漠地帯を対象にしたいわゆる灰色をまぜた迷彩色になっているわけです。要するに中近東、中東を対象にした装備類がこの事前集積船に積まれて、ジエゴガルシアあたりから那覇港まで引っ張られてきている。細かく言えばというか、これも正論で言うと、一応安保の目的からしても、極東の範囲を逸脱した使用目的になっているわけです。しかし私がその点を指摘したら、前の淺尾局長は、いやこれは確かにインド洋上まで行って、いろいろ中東との関係もあるけれども、一方韓国とのチームスピリットにも展開しているから、中東を目的にした使用じゃないのだから地位協定には抵触しません、こう来たのです。言葉は使いようのもので、どうにも理屈は成り立つのだなと思ったのです。  まさしくこの事前集積船というものはあなたがおっしゃったようにインド洋上に展開をする、ジエゴガルシアを拠点とした第七艦隊の船団なんです。こういうことをやっても、安保条約には抵触しません、関係ありませんでは、これも納得できない。あなた、ひどいですよ。昭和六十二年には国体もやろうといって、いま空港から道も整備をしつつある。しかし那覇の港から那覇の町、チョークポイントに入ろうとしたら、ああいった物騒なものが山と積まれて、まさに那覇市一帯は戦場ですよ。これも大きな変化なんですね。中東をにらんだところの在日米軍基地というふうにいま使用目的というものが変化されてきている。このことについてもやはり考えてもらわなければいかぬですよ。だから、安保条約があればアメリカがやりたいことは何でもできる、まさに基地の自由使用。これはもう全部基地化ですよ。どう思いますか。この点について改めて御見解があれば聞いて、次の話に移りたいと思うのですが。
  157. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま私の前任の淺尾局長の答弁のお話がございましたけれども、私も全く淺尾局長と同じことを申し上げざるを得ないわけでございまして、事前集積船は第七艦隊に所属して前方展開をしておるわけでございまして、現在はインド洋に展開をしておることは先ほど申し上げたわけでございます。しかし、このことは何も事前集積船がもっぱらインド洋とか中東地域の平和と安全に寄与するという役割りしか果たさないということを意味するものではございませんで、事前集積船というのは必要がある場合には極東の平和と安全に寄与するために使用されるものである、そしてまた、日本の安全及び極東の平和と安全に寄与する役割りを果たしているというふうに考えております。また、淺尾局長が答弁されたように、チームスピリットなどにも参加をいたしたこともございます。そういう実態がございます以上、こういう事前集積船がわが国における施設、区域を使用しておるということは、安保条約第六条の施設、区域の使用目的に合致したものであると考えております。
  158. 上原康助

    上原委員 もう何を聞いても結論はそういうことにされたんじゃ、質問する方が正直申し上げて本当にばからしくなってしまいますね。確かにそれはそうでしょう。第七艦隊に属しているからといって、中東だけじゃない、極東でもどこでもそれは使用されるでありましょう。主たる目的はどうなっているかということ、遠くインド洋からまでそういう装備品を那覇軍港に持ってきて、修理をしたりまた積み荷をしたりしていること自体が問題だと言うんですよ。そういう御答弁では納得できませんよ。  そこで、さっき申し上げましたように、これは市民感情としても県民感情としても、そういう米軍の戦時品、装備品でしょうね、戦車とかトラックとか、あるいは大砲を含めて那覇の玄関に集積をするということにはどうしても納得いきがたい。しかもさっき言いましたように、日米安保協でここは返還をするということを皆さんは約束してきている。これまで約束違反ですよ。約束を果たしていない。速やかに返還をする対策を新たに日米間で話し合うべきであり、那覇市からそのものは移すべきというか、なくすべきであるこう思うのですが、この那覇軍港の今後の返還見通し、あるいは日米間でどういうふうに話し合いをしているかということが一つ。  本当に考えてみてください。あんなものを見たら沖縄へ行く人はおったまげますよ。いつまでああいう物騒なものを那覇の玄関に山積みしておくのですか。そういうことだけは、外務大臣、アメリカにも強く申し入れて解決をしていただきたいと思うのです。この件については事務当局と外務大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  159. 近藤孝治

    ○近藤説明員 那覇港湾施設は、先生おっしゃるとおり安全保障協議委員会の第十五回会合で、移設措置とその速やかな実施にかかる合意が成立しました後、返還されるということに了承をされておるところであります。現在、県、それから関係市町村等の意向をも勘案しながら、この施設、区域の機能や性格に見合った移設の適地の選定につきまして検討中でありますが、現在、まだ具体的な成案を得るに至っておりません。  今後のことでございますが、この施設、区域の返還は地元から大変強い要望が出されております。これは私どもよく承知いたしておりますので、今後とも県や関係市町村の意向をも十分勘案しながら、引き続き検討を努力してまいりたいというように考えております。
  160. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 事前集積船につきましては、いま北米局長から答弁したとおりでありまして、われわれとしてもこれを安保条約の効果的運用という面から認めざるを得ない、こういうふうに存じております。
  161. 上原康助

    上原委員 那覇軍港の返還問題ですよ、外務大臣、私が言っているのは。あなた沖縄にたまに行かれる。見たことないですかね。ぜひ一遍見てくださいよ、あれが来たときに。これは事務当局に、防衛施設庁や外務省の一局長か部長くらいに任せていい問題ではないですよ。日米安保協というのは外務大臣でしょう、外務大臣がやっている。それはあなたの責任でやらなければいかぬ。那覇市は沖縄の県都ですよ。ぜひこの際、もう一遍原点に返って、沖縄の基地の整理縮小問題について政府は本腰を入れていただきたい。その決意のほどを伺っておきたいと思います、この件と関連をして。
  162. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるように日米安保協におきまして返還が決まったわけでございますし、これはぜひとも早く実現をしなければならぬ。ただ問題は代替地でございます。これの移設先につきましては、地元の問題もあると思いますが、早く地元の理解も得ながら、早く選定をして実施できるように政府として努力をしたいと考えます。
  163. 上原康助

    上原委員 ぜひ実現できるように――これは読谷のパラシュート降下訓練機能移転の問題等もありますね。そこで、もし移設をするとなると幾らぐらい予算がかかるんですか。そういう積算とか試算とか計画は立てたことがあるんですか、外務省や施設庁は。あればお聞かせいただきたいと思います。
  164. 近藤孝治

    ○近藤説明員 那覇港湾施設は御承知のとおり大変大きな施設でございまして、移設先について現在選定の検討をいたしておりますが、何分これの移設経費となりますと、移設先の地形、それから海の深さ、そういったもろもろの条件に絡みまして経費が大変違ってまいりますので、現在のところどれくらいの金額になるかということにつきましてはまだ出せるような段階に至っておりません。
  165. 上原康助

    上原委員 もういかに怠慢であるかということがわかるんだな。日米間で移すという約束はしておって、移設先が決まらぬからと。もちろんそれは相手もあるし、いろいろ――私はそういうのをなくしなさいという立場なんだが、やっぱり県都から、那覇市からは移さなければいかぬよ、皆さん。やる熱意があれば、どのくらいかかるから、じゃあどういう年次計画でこうしようというプランがないとだめでしょう。やる意思がないから、いままで九年間もほったらかし。何が沖縄の基地の整理縮小ですか。さっき言ったように、いろんな特殊部隊とかそういうものを強化をしておきながら、日米間で約束したことさえやらないという政府の怠慢については納得しがたい。冗談じゃないぞ。さっさとそういうものは計画を立てて、そうじゃないと県側も市側も相手側も説得できぬじゃないですか、話し合いできぬじゃないですか。やりますね、そういうこと。これは、いま外務大臣がいないから、北米局長と施設庁答えてください。九年間何をしておった。
  166. 近藤孝治

    ○近藤説明員 先ほども申し上げましたとおり、この港湾の移設につきましては、移設先の問題で大変むずかしい問題がございます。したがいまして、これに関する地元調整等の問題、それから地元の要望等そういったような問題を勘案しながら速やかに努力をしてまいりたい、かように考えております。
  167. 北村汎

    北村(汎)政府委員 沖縄県におきまして米軍施設、区域の密度が非常に高いということ、そしてその整理統合については現地において非常に強い要望があるということは、私ども十分承知いたしております。これまでも、現地における要望あるいは開発計画、民生の安定等ということを配慮することが必要であるということは私ども十分感じております。他方また、日米安保条約の目的達成というものとの調和も図らなければならないことも事実でございます。そこで、昨年の一月八日の第十八回安保協議委員会におきましてもその一層の推進方、意向を表明した次第でございまして、今後もさらに、安保協議委員会で了承されたこの整理統合計画のうち、残っておるもののプロジェクトの早期の実現に努力していく所存でございます。
  168. 上原康助

    上原委員 そういう抽象的なお答えでは、それは進みませんよ。  そこで外務大臣、いま席を外しておられましたが、約束の時間内で終わりますから。  私は、一つ考え方として、この移転問題というのは、先ほども申し上げましたが読谷の補助飛行場の移転問題、現在も大変問題になっている、きょうはこれに触れませんが、そのときもその機能を移転するにはどうしたらいいかという一つのプロジェクトの案を立てて、専門家なりそういう面で調査をさせてやっているんですね。それを受けて施設庁なり外務省なりで検討をしていくということになっている。だからこの那覇軍港のことについても、あれだけの膨大な軍港、港湾を移設するにはどういう方法があるのか。皆さん日米間で約束したんだからね。約束はしたが、安保の目的も何やかんや言ったって、約束を守ることがまず日本政府としては先決なんだ。そういう面で、せめてそういう具体的なアクションはとるべきじゃないですか。それは外務大臣の方からそういうことを事務当局に検討させてみたいという答弁でもいいですから、ひとつ御見解を聞いておきましょう。
  169. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは方針は決めているわけですから、何とか移設ができるような方向で移設先を物色をして、これに対する予算措置等も講じなければならぬと思うのですが、ただ本当に具体的な問題ですから、もちろん地元の理解もなければならないと思います。一方的に政府で決めてというわけにもいかぬでしょうから、やはり地元の理解を求めて、それに伴っていろいろな措置、予算措置等も講じていかなければならないと思いますが、施設庁とも相談をしながらこの問題に対してはこれから対応してまいりたい、こういうふうに思います。
  170. 上原康助

    上原委員 ぜひ早急に、これは日米間の合意でありますので、推進をしていただきたいことを改めて強く要望しておきます。  そこで、きょうは海峡封鎖の問題もお尋ねするつもりでしたが、その点は後日にまた譲りたいと思います。  もう一つは、アルゼンチンにおける日本人の失踪事件について、これは簡単にでいいですから、これまで中南米局長に私お会いをして強く要望も申し入れましたが、在外公館、もちろんアルゼンチンの国情なりいろいろなこともあるでしょうが、日本人関係者がもう失跡して七、八年ないし十年近くもなるというこのことについては、これは人権問題。もう少し政府も誠意を持って、これについては関係者や身元の存否さえわからない皆さんの心中というものを御理解をいただいて、相手国の立場も尊重というか理解をしながらこの問題の解決に熱意を示していただきたい。これはもう大きな外交問題だと思いますので、できれば、もう時間の都合がありますから、この件については外務大臣の御意見を聞きたいのですが。
  171. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 本件につきましては、一番最近では二月の下旬に、わが方大使館からアルゼンチン政府に対しまして、行方不明になっている日系人の行方を調査してもらいたいということを申し入れました。これに対しましてアルゼンチン側は、従来からいろいろ関係当局に照会しているけれども依然何らの手がかりもっかめていない、しかし、今回改めて日本側から要請もあったのでさらに調査してみたい、その結果はできるだけ早く回答したいということを約束しております。それで、わが方といたしましては、先生おっしゃいますとおりにこれは大変重要な人権問題でございますので、今後も引き続き解明に努力したい、このように考えております。
  172. 上原康助

    上原委員 これで終えますが、外務大臣、そのことについては元園田外務大臣もいろいろアルゼンチン側と話し合いをした、あるいはまた元外務大臣に対しても要望が行っているわけですね。これはやはり外交問題ですよ。よく最近あっちこっち外国に行かれる、それは結構です。大いに行って交流を深めて日本側立場もやっていただきたいのですが、少なくともこの種の問題の起きている国に対しても、強く外務大臣の方からも問い合わせなりあるいは相手の立場を聞くなり解決をしていただきたいと思うのですが、一言御見解を聞いておきたいと思います。
  173. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この問題につきましては、私としましても今後引き続いてアルゼンチン政府あるいは外務当局と折衝をして調査を進めるように努力をしてまいりたいと思います。
  174. 上原康助

    上原委員 これで終えますが、あと東西センター問題についても若干お尋ねしたかったんです。よくいろいろなことをおっしゃいますが、ハワイの東西センターへの人の派遣とかあるいは予算の問題とか、なかなか日本政府は少ないという批判を国際的に浴びているという面もありますね、報道も。東西センターがあるんだから、本当に平和外交をやろうと思えば、あるいはいろいろな各国との全方位外交というものを目指すならば、南北問題も大事なんですね。南北センターというのがあってもいいんじゃないですか。そういう面も含めて沖縄の国際センターの今後の問題等、南北センターの設置ということも外務省で考えていただいて、この東西センターにおける日本側に対する不満も、不満というか批判についてもぜひ解決をしていただきたいということを申し上げておきたいと思うのですが、これにもし御回答があればいただいて、質問を終わりたいと思います。
  175. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに南北問題非常に大事ですし、そういう方向に進めば大変結構だと思いますが、財政的な問題もありますし、今後の大きな課題としてわれわれ相談はしてみたいと思います。
  176. 上原康助

    上原委員 終わります。
  177. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 榊利夫君。
  178. 榊利夫

    ○榊委員 早速ですが、アメリカの核空母エンタープライズがこの三月二十一日以来佐世保に寄港中でありますが、このアメリカの核艦載の艦艇がわざわざ核兵器を港の外でおろして入港することはあり得ないというのが大原則であります。     〔愛野委員長代理退席、田名部委員長代理着席〕 ラロック提督などもそのことを明言しております。核空母の寄港中に突然、日本の港に寄港しているときにアメリカの方が突然有事になる、そういうふうになりますと、当然日本の港内から核兵器使用の危険性もあるわけであります。こういう事態が起こったらどうなるか、あるいは日本政府はどうするつもりなのかをお聞かせ願います。
  179. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま委員の想定なさいました事態というのは、米艦船によって核が日本の港あるいは日本の領海に持ち込まれておるということを想定された御質問であると思いますが、私どもは何度も国会で申し上げておりますように、いかなる核の持ち込みというものも事前協議の対象でございますし、事前協議を受けた場合は日本政府は必ずノーと言うわけでございますので、そういう事態を想定することはできないと思います。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、事前通告はない、核はない、したがってそのことは全然考えておらぬ、言うなれば無為無策、こういうことであります。しかし、実際にそういう事態が起こり得ないということは言えないわけでありまして、核を積んでいることは、言うなれば常識であります。そしてまた、実際に積んでいた、そうすれば、そこから有事の際に核使用を行えば、当然第三国間の戦争の中で日本列島そのものが核戦争の戦場にされかねない、こういう危険性をはらんでいるということだけ、私ここではっきり述べさせていただきたいと思うのであります。  あわせて、この寄港中に核事故が起こるという危険性もあるわけでありますけれども、そういう点についてどういう対策をお持ちでございますか。
  181. 北村汎

    北村(汎)政府委員 全く前回の答弁と同じことを申し上げるわけでございますけれども、核を搭載した艦船が日本の領域内に入っておるというそういう事態を私どもとしては想定することはできませんので、核事故という想定についても考えられないところでございます。
  182. 榊利夫

    ○榊委員 核という場合に、核兵器の事故もあるし、いま佐世保に入港中のエンプラの場合には原子力推進力を持っているわけですから、それが事故を起こすということもあり得ますね。そういう幾つかの核の事故についての、起こり得る危険性に対する対策は当然お考えでしょう。それさえ考えてないのですか。
  183. 北村汎

    北村(汎)政府委員 御質問が核兵器の持ち込みではなくて、いわゆる原子力推進による艦船のその推進力についての事故であるという場合は、これは関係当局においてもいろいろ検討をしておるところと思います。
  184. 榊利夫

    ○榊委員 いわゆる核の問題につきましては、仮定の問題ではなくて、これまでも直接の核事故ということもあれこれの形で起こっているわけですね。  たとえば、現に日本におきましても、四年前の一九七九年八月九日、核空母ミッドウェーが横須賀基地で火災事故を起こしました。米兵と日本人作業員が十九名負傷した、うち日本人一名は死亡であります。これとちょうど同じ日に、やはり入港中のミサイル巡洋艦ウォーデンというのが格納庫事故を起こしまして、海水が浸入して核ミサイル八十基がだめになった。これは艦対空のテリア型ミサイルだと害われておりますけれども、それで新しいのと取りかえた、こういう事実があるわけであります。これらの事実について、政府はいつの時点で知られたんでしょうか。
  185. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ミッドウェーの事故につきましては、外務省としては防衛施設庁を通じて第一報を得たと承知しておりますが、事件の性格上、米側からも当然しかるべき連絡を受けたと思っております。ただ、いま具体的な記録を持ち合わせておりません。  それからウォーデンにつきましては、御指摘のような事故の発生につきましては承知をいたしておりません。  いずれにいたしましても、安保条約上いかなる核兵器のわが国への持ち込みも事前協議の対象でございますし、事前協議に関する米国の約束が履行されているということについては政府としては何ら疑いを有していないところでございますので、御指摘のように核ミサイルが水浸しになるというようなことは私どもとしてはあり得ないことであると考えております。
  186. 榊利夫

    ○榊委員 あり得ないことじゃなくて現実にあっているわけで、いま御指摘のウォーデンのことにつきましても、すでに一九八一年六月十五日に米政府も認めているわけであります。そうすれば、これが核事故による日本人の核被災という危険をやはりはらんでいるわけであります。ところが、いま聞きますと全く知らなかった、こうおっしゃいますけれども、これは新聞でも報道されたわけですが、それまで知らなかったという意味ですか、それともいまでも知らないという意味ですか。
  187. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ウォーデンについて私ども米側からの通報を受けておりませんし、先ほども申し上げましたように、核ミサイルが水浸しになったというようなことはあり得ないことと考えております。
  188. 榊利夫

    ○榊委員 全く観念論ですね。あり得ないのじゃなくて、あり得ないことが起こっているのが現実なんだ。しかも、それは米政府も発表しているし、新聞でも報道されたところであります。  私いま一連の二つ、三つ質問をしましたけれども、それを通じていまきわめてはっきりしているのは、アメリカの核の問題、核兵器の問題あるいは核兵器のついた艦船の問題については一切あっちの方で、全く責任ある態度がとられていない。言うなればアメリカ任せという態度だなということだけは、そこからも明確に浮かび上がってくるわけであります。しかし、それじゃ日本政府として一億一千万国民に責任ある態度とは言えないと私は思うのです。この問題であれこれ詳しく詰めるつもりはございませんけれども、そういう無責任な態度で本来核兵器を搭載している艦船の入港や寄港、そういった問題に対処してもらっては困る。あくまでも日本の安全、日本人の命、これは大事にする、これを立脚点にしてこういう問題には真剣に対処してもらいたいと思うのですよ。そういう点では非核原則は貫徹する必要がありますし、事前協議の申し入れがないから核兵器は積んでいない、いわば今日の神話です。そういう神話はいいかげんに通用しないようにすべきだと思うのですよ。その点で、私は非核原則の法制化が必要だと思うのであります。  お尋ねいたしますが、さしあたりアメリカ側非核通告を義務づける、核は積んでいないということを通告したら入港を許すけれども、通告しなかったら入港は認めないというくらいの見識ある態度を日本政府としてとるべきではないかと思うのです。インド洋の小国でセーシェルというのがありますけれども、あそこだってそういう態度をとっているのですから、この点についてはいかがでございましょうか。検討するつもりはございませんか。
  189. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 核については事前協議の条項がありますから、核を積んでいる場合は事前協議の対象になるわけでありますし、その場合は日本はノーと言うことをはっきり言っておるわけですから、私はこれで十分である、核を積んでいる場合は事前協議にかけるわけですから、私はこれで十分ではないかと思います。
  190. 榊利夫

    ○榊委員 核を積んでいる、積んでいない、正直に通告していればそれは十分でございましょうけれども、そのことについてはイエスもノーも言わないというのがたてまえなんですから、それは十分どころか、全く不十分ということだと思うのですよ。そういう点ではここで論議をしましてもすれ違いですから、これ以上この問題は触れません。いずれにいたしましても、私は、三原則の厳守、とりわけ非核通告制、これは政府としてもぜひ研究してもらいたいということを要望いたしまして、次に移ってまいります。  先ほども出ておりましたが、アメリカの第七艦隊、これはハワイ以西の太平洋からインド洋、それから中東、アフリカ沖合いあるいは南極洋までも行動範囲とした前線部隊でございます。昨年五月、米下院報告で、米第七艦隊の日本の軍事技術協力についてこう述べているのです。「日本の請負業者が横須賀海軍基地でミッドウェー艦載機の精巧なシステムの整備、修理を行っている。横須賀艦船修理廠は、約千人の民間日本人を擁して、原子炉修理以外のいかなる艦船修理も行うことができる。」言うなれば、この点では日本が空母の空母になっているわけですね。そして、「こうした整備、修理は、実際は日本防衛整備、つまり軍事技術、その輸出と同じだ」こう述べているのだけれども、この米下院報告については外務省御存じでしょうか。
  191. 北村汎

    北村(汎)政府委員 いま御指摘の点につきましては、私ども承知いたしておりません。ただ、地位協定十二条によりまして、米軍日本において労務を調達することができるということは明白でございます。
  192. 榊利夫

    ○榊委員 いまの答弁は全くいいかげんだと思うのですよ。いま私が読み上げたのは、外務省からいただいた資料を翻訳したものですよ。北村さん、最近局長になったからかもしれないけれども余りにも不勉強です。それは訂正してください。
  193. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま手元にその資料を持っておりませんので、その点について、内容については答弁いたしかねる次第でございます。
  194. 榊利夫

    ○榊委員 もう少し勉強してもらいたいと思いますよ。  ところで、そういう非常に重要な役割りを果たしている。艦船修理廠では、何でもかんでも原子炉以外はみんな修理しておる、軍事技術の輸出と同じだ、こういうようにアメリカの国会でも認めているわけであります。私は先般、この米艦船修理廠を見たいということを外務省を通じて申し入れましたけれども、拒否されました。日本の国会議員に見られたら困るものがあるようであります。  それはともかくとしてお尋ねいたしますが、在日米軍基地で働いている日本人、技術者を含む従業員、これは現在、横須賀、佐世保それぞれ何人か、それから全国では何人おられるか、お答えいただきます。これは防衛施設庁で結構です。
  195. 山崎博司

    ○山崎説明員 お答え申し上げます。  五十七年度時点の駐留軍従業員の総数は二万五百三十八名でございます。横須賀につきましては三千八百九十三名、佐世保については三百七十四名でございます。
  196. 榊利夫

    ○榊委員 条約局長にお尋ねいたします。  基地従業員を日本側が在日米軍に提供するその法的な根拠は何でございましょうか。
  197. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは地位協定の十二条でございます。
  198. 榊利夫

    ○榊委員 十二条の4、これはどういうように書いてありますか。
  199. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは委員承知のいわゆる間接雇用に関する規定でございまして、規定をそのまま読み上げますと、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」と書いてございます。
  200. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、現地の労務需要、これを提供する、そういうこと。大変明快でございますけれども、その地位協定に基づいて日本政府と米政府が取り交わしました基本労務契約等々では、日本人基地従業員の法律上の雇用主は日本政府だ、在日米軍は間接雇用の言うなれば使用主だ、こういうふうになっていると思います。そして基本労務契約でも、日本人従業員の仕事の地理的範囲、これはいまおっしゃいましたように日本国内、日本の領域内というふうに規定されていると思うのですけれども、これはそういう理解でよろしゅうございますね。
  201. 山崎博司

    ○山崎説明員 ただいま御指摘のように、確かに基本労務契約によりますと「日本国内において使用するため」とございます。この「日本国内において使用するため」をどのように読むかという問題であろうと思います。  確かに条理上は、日本国において提供する従業員の勤務する場所としては日本国内を予定しておることは疑いを入れませんけれども、一方では、そういった国内での業務に従事するために必要な各種の技能なり練度なりを維持向上するために海外において各種の研修を受ける、あるいは日本の国内において作業を実施するための各種の打ち合わせを海外において実施するというようなことは、必ずしもこの基本労務契約を逸脱するものではない、このように考えております。
  202. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、研修や打ち合わせはあり得る。だけれども、その基本労務というものは日本国内に限定されるということですね。そうしますと、日本人従業員の労務の範囲が日本国外に及んだ場合は、日米安保条約による地位協定あるいはいま申し上げました基本労務契約、こういった政府間取り決めを侵犯することになりますけれども、これらの公的な取り決めが米政府によってきちんと守られている、そういうふうに政府としては確言できるでしょうか。
  203. 山崎博司

    ○山崎説明員 私ども、駐留軍従業員の海外出張につきましては、これは労務管理事務所でいわゆる旅費の支給を実施いたしております。その段階で私どもは旅行許可証というものでその出張目的を見るわけでございまして、いま申し上げたような各種の研修あるいは講習への参加あるいは訓練、会議出席ということで、それ以外の出張目的はございません。
  204. 榊利夫

    ○榊委員 いま聞きますと、国外へ出る場合も研修その他だけだ、こうおっしゃいますけれども、実際はそうじゃないのです。実際は、アメリカ日米間の取り決めさえ守っておりませんよ。在日米軍基地の日本人技術者が海外まで米軍と行動をともにしている、つまり従軍させられているという事実があるのです。そういう事実を御存じありませんか。
  205. 山崎博司

    ○山崎説明員 最近、百名あるいは二百名余の駐留軍従業員が海外出張していることは承知しております。
  206. 榊利夫

    ○榊委員 百名から二百名くらいの日本人従業員が出張している、このことはお認めになりました。問題は、その出張と称していることの中身でしょう。具体的な事例で大変ショッキングな事実ですけれども、具体的な点についてお尋ねいたします。  一九八〇年七月十四日、横須賀港から出国した日本人は何人おりますか、その出国先はどこでございますか。
  207. 亀井靖嘉

    亀井説明員 一九八〇年七月十四日に横須賀港において出国手続をいたしました日本人は、十五名ということになっております。  その渡航先でございますが、出入国管理をいたします入国審査官の立場で、日本の外に出ましてどこへ行くかということについては確認ができませんので、その渡航先がどこであるかということをここで申し上げるのはいかがかと考えております。
  208. 榊利夫

    ○榊委員 パスポートに書いてあるでしょう、どこどこに行くというのは。ちゃんとそれはチェックしてあるでしょう。
  209. 亀井靖嘉

    亀井説明員 パスポートには渡航先、目的というのは書いてあります。それは審査官も一応は見ますけれども、審査事項というものではございませんで、私どもの統計をとりますときに、むしろ旅券申請の渡航先と目的というのを旅券申請の方からデータをもらいまして出入国管理の統計をとっているということでございまして、審査のときに渡航先がどこであるかということにつきまして確認ができないというのが審査の実情であろうと思います。
  210. 榊利夫

    ○榊委員 それでは、外務省にお尋ねしますが、この横須賀港から出国した日本人十五名、これは出入国の法的な手続というのはやはりちゃんとやって出国したのでしょうか、どうなんでしょうか。
  211. 亀井靖嘉

    亀井説明員 出入国の手続は、十五名については完全に行っております。
  212. 榊利夫

    ○榊委員 手続が行われていたら、どこの国へ出て行ったということはわかるでしょう。
  213. 亀井靖嘉

    亀井説明員 先ほど申しましたように、審査官はその旅券を見てどこの国であるということは見ますし、それから手続のときにそういう出国のカードを出すわけでございますが、そのカードの中にもちろん書きます。書きますけれども、いま私が申し上げましたのは、審査官としてはその渡航先につきまして確認できない事項であろうというふうに申し上げたわけでございます。
  214. 榊利夫

    ○榊委員 そういうふうに逃げられるなら、私の方から申し上げます。フィリピンですよ。フィリピンに向けて、横須賀港から出国したのだ。横浜じゃありませんね、横須賀ですよ。成田からでもありません、横須賀です。  そこでお尋ねいたしますが、当時、一九八〇年七月と申しますとどういう時期か、中東危機の真っ最中です。あのアメリカの駐イラン大使館の人質奪還作戦がありましたね、あれが四月二十五日です。その直後です。七月十四日に、実はアメリカの核空母ミッドウェーで横須賀を出国したのです。これはミッドウェーです。このミッドウェーに乗り込んで日本人は出国したのです。十五名といま言われましたけれども、私たちが確認しているところでは、十五人のうちの十三人まではミッドウェーに乗り込んだ。あとの二人は、わからない。この核空母のミッドウェーは、イランに近いペルシャ湾に面したインド洋作戦に出て行った。そして、このミッドウェーに横須賀米軍基地の艦船修理廠の日本人十三名が同乗していた。このことについて外務省は報告を受けておられますか。
  215. 北村汎

    北村(汎)政府委員 受けておりません。
  216. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、日本政府にも通告しないで、勝手に日本人をアメリカの航空母艦に乗り込ませて連れていったということです。この日本人従業員、技術者、これは七月十四日にミッドウェーで横須賀を立って出国して、七月二十一日にフィリピンのスビック米軍港に到着しております。その道すがらの艦内の宿泊、ベッド、食事、全部アメリカ兵と一緒。まさに米軍人並みですよ。かつて従軍看護婦とか従軍技師とか従軍カメラマンとかいろいろありましたけれども、それと同じことがやられている。  しかも、この十三人の仕事の中身を言いますと、一部は機関、船の機関、昔、機関学校というのがありましたけれども、機関被覆あるいは索具、製缶、れんが積み、こういったほとんどボイラー関係の技術者であります。そして、二十一日から二十七日、スビック軍港でも作業している。ミッドウェーの艦内でも作業したけれども、向こうのフィリピンの基地内でも作業している。そして、七月二十七日にスビックから、今度は米軍機で横田に帰国した。日本人が米軍機で帰国する、そういうケース。もっと正確に言いますと、横田に着いたのは夜の十時ごろであります。横須賀などの自宅に着いたのは二十八日未明。この間、前後十四日間、これらの日本人技術者は米軍に従軍させられていたわけです。  こんなアメリカの軍事行動に日本人を直接加担協力させる行為というのは許されないのじゃないかと思うのですけれども、これはいかがでございましょう。
  217. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま御指摘の具体的な労務者の行為につきましては、具体的にどういう目的でどういう作業をしてどういうことをしたのかということがわかりませんと確定的なことを申し上げられませんが、先ほど委員が御質問になられたときにおっしゃられた、地位協定の十二条四項を引用されて「現地の労務に対する合衆国軍隊」云々ということは、日本政府が雇用をして米軍に提供しました労務者が現実に仕事をする、安保条約に従いまして日本に駐留しておる米軍のためにする仕事が日本の領域内でなければならないというふうに解釈しておられるように、委員おっしゃられたかのように思いますが、それは必ずしもそういうことではないと思います。現にかつて、私の記憶で申し上げれば、これは間接雇用じゃなかった、かと思いますが、直接雇用で米軍がいわゆるLSTと申しますアメリカの船舶に乗せていろいろ仕事をさせるために労務者を雇用して、これはやはり地位協定に基づいてでございますが、日本人労務者がそういう日本の領域外で米軍のための労務に従事したということがございますが、いずれにいたしましても、日本の領域内で米軍が労務者を使用しなければならないということは十二条四項からは出てこないというふうに考えます。  ただ、先ほどのいろいろ委員質問になりました労務者の具体的な仕事がどういう性格のものであったかということが判明いたしませんので、その限りにおいて、そういう仕事に従事させたということが地位協定に果たして合致するものであるか違反するものであるかということをいまこの場で私から御答弁申し上げることは、ちょっとできないと思います。
  218. 榊利夫

    ○榊委員 いまのは全く説明になってないと思うのです。日本人の労務提供というのは在日米軍に対して行われたものであって、どこかハワイ米軍だとかあるいはフィリピンの米軍に対して提供されておるものじゃないわけです。そうですよね。当然のことでありまして、先ほど、訓練とか研修のために外国に出て行くことはあるとおっしゃった。なるほどいま申し述べた人たち、ボイラー訓練だということで、米軍から日銀、防衛施設庁、神奈川県、こういうルートで手当を支払っておられます。これ自体が中身から言いますと全く違う。従軍した技術者たちは修理その他の作業をした。研修を受けに行ったわけじゃない。研修や訓練は一切ありませんでした、こう言っている。それもかっこうだけ、訓練のためだ、つまり研修だ、こういったかっこうをつけて出しておるわけですから、これ自体が公文書偽造の疑いでしょう。  私が申し上げたいことは、いずれにしてもそういう形で日本人技術者をアメリカの航空母艦に乗せて前後二週間も従軍させるということ、これがもし地位協定で許されるとするならば、しかも先ほどLSTのことを出されましたけれども、私の理解する限り、ベトナム戦争のときのLST乗組員というのは、先ほどちょっとおっしゃいましたように米軍が直接雇用したのです。朝鮮戦争のときもいわゆるPD工場、米軍世理工場の人たちがいろいろ死体処理だとかなんとかということで運用されたことはありますけれども、そのときは全面占領時代。今度の場合は、米軍の直接雇用じゃないのですよ。これらの人たちは日本政府が雇用したのです。日本政府法律上の雇用主です。在日米軍はその使用主。だから、言うなれば準公務員みたいなものです。日本政府法律上の雇用主として全面的に責任を負わなければならぬ人たち、その人たちが、政府も知らぬうちに、日本政府に通告もなしにアメリカの航空母艦に集団的に乗せられて、修理その他の作業をやる。しかも、外国でまでそれをやっておる。フィリピンの基地でまでそれをやっておる。一体こういうことが許されるだろうか、私は許されないと思うのです。それは地位協定にしたって、どこから見ましても合いませんよ。この点について明確な御答弁を願います。つまり、これは合っているというふうに断言されるのですか、それとも疑問があるから調べてみたいという態度なのか。
  219. 山崎博司

    ○山崎説明員 ただいまの先生指摘の八〇年七月の事案についてはいま現在手元に資料がございませんけれども、少なくとも先ほど申し上げましたように、いわゆる出張の手続の一環として労務管理事務所ではそういった一々の事案については承知しているはずでございます。
  220. 榊利夫

    ○榊委員 私は外務大臣にお尋ねしたいのです。日本政府が雇用、それから給与支払いなどの面で関与する日本人、その日本人技術者が他国の軍隊に従軍させられるということは、原理的に言いましても、憲法の平和主義、武力による紛争解決を禁止した憲法第九条を真っ向から侵犯する行為でありますし、許されないと思うのです。この点について、かつていわゆる義勇兵問題にふれまして、一九七〇年三月三日の参議院予算委員会で、「国家の意思がそれに加われば、憲法第九条の精神に反する。」そういう当時の高辻法制局長官の答弁もあります。こういう点では違憲性を持った行為だと思うのでありますが、外務大臣にお尋ねしたいことは、そういう政府が直接雇用に関係関与している日本人が外国の航空母艦に乗り組んで一定期間従軍することは許されるだろうかどうだろうか、そのことについてだけ御答弁願います。
  221. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは私もいま初めて聞くわけですから、事実関係を調べてみなければ何とも言えません。
  222. 榊利夫

    ○榊委員 事実関係はいま言ったとおりです。しかし、実際は外務省防衛施設庁もこの事実をちゃんと知って、それを黙認されてきているのじゃないでしょうか。私はそういう点では、日本人技術者の米軍従軍の実際上の共犯者になっているのじゃないかという点で、大変そのことを恐れるものであります。  だって、先ほども法務省の御答弁ございましたね。横須賀から出たということは、もうちゃんと乗っているのですから、そのことについて、どういうあれで――横浜から出たのなら疑問はないでしょう、成田から出たのだったら疑問ないでしょう。だけれども横須賀から出ていった。しかも一回じゃないです。そのことに何か疑問を感じて調べてみるという、それくらいの真剣さというものがあって当然だと思うのです。私は、それは当然やられているのじゃないか、知らないはずはない、こう思うのですけれども、全く御存じなかったのでしょうか。
  223. 山崎博司

    ○山崎説明員 ただいま御説明申し上げたように、この具体的な事案についての詳細は承知しておりませんけれども、一般的に、たとえば横須賀の造修所で修理を終えた船につきまして、実際にその船に搭乗して、その修理、整備のぐあいが適正かどうかということをチェックする、艦状をチェックする、こういった形のものはいろいろあると聞いております。また、あるいは艦上のいわゆる訓練、整備に関連して、まさに生きた教材を使って練度を向上するあるいは新しい機材についての知識を得る、こういうことは間々あると承知しております。
  224. 榊利夫

    ○榊委員 いまはしなくも、いろいろ修理をして船に乗って出かけることは間々あるということをおっしゃいましたけれども、その間々ある事実、たまたま港の中でやるとか日本の領海内でやるのだったらそれは法的には許されるでしょう。だけれども、領海はるか何日もかけて外国まで行って、もうどの条約、どの協定を見てもそれは結構でございますという条項はありませんよ。(「それくらいいいじゃないか」「修理の点検だ」と呼ぶ者あり)とんでもないことですよ、とんでもない。航空母艦というのは兵器ですよ。列車に乗っていくのと違いますよ。これはいつでも軍事作戦として行動するものであるし、いつ有事になってドンパチ始めるかわからないのですよ。現在だって準戦時態勢です。  そこで、ちょっとお尋ねいたしますが、空母ミッドウェーへの同乗、海外従軍と同じようなことが、いま申し上げましたと同じようなことがいま佐世保に入港している、そしてあす出港予定になっている空母エンタープライズについてもあり得るのじゃないですか。さらには、ことしの夏西太平洋に配備される第七艦隊の戦艦ニュージャージー、あるいは早ければ秋にも西太平洋に配備される新鋭原子力空母のカール・ビンソンといった船についてもあり得るのじゃないか、こういう心配があるのですけれども、この点について、これは過去の話じゃありませんから、現在、未来、絶対そういうことはあり得ないと約束していただけますか。――外務大臣。
  225. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員長のお許しを得ましたので、私から地位協定のたてまえを申し上げたいと思います。  先ほど私が申し上げましたことの繰り返しでございますが、確かに、米軍はいかなる目的のためにも地位協定に基づいて日本人の労務者を日本政府から提供してもらって使用することができる、それは何ら無制限にできるということではございません。しかし、他方におきまして、そういう労務者がたとえばアメリカの艦船に乗りましてその仕事の関連の必要上日本の領海の外に出る、すなわち日本の領域の外において先ほど施設庁から申し上げましたような訓練あるいは技術の向上、あるいはまた現実の問題として、私は専門家でないからわかりませんが、たとえば洋上において修理活動をするというようなことが、地位協定に反する、あるいは条約に反するというふうなことにはならないというふうに私は思います。
  226. 榊利夫

    ○榊委員 大体あなたにそのことを質問してはいないのですよ。外務大臣に質問しているのです。つまり、ほかの船についてそういうことが今後ないと約束できますかと私は聞いているのです。
  227. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ニュージャージーとかカール・ビンソンというのはまだ何も連絡がありませんし、これは全くこれから先のことですから何とも言えませんし、それから、いま条約局長が言いましたように、地位協定の範囲内においては、許される中ではいろいろの在日米軍における雇用された日本人の活動はできるわけですから、私はその実態というのがどういう状況なのか、いままでのことも調べてみますけれども、しかし、いまのお話を聞いた、さらにまた条約局長の答弁した中において、地位協定にもとるというふうには即断はできない。こういうふうに思います。
  228. 榊利夫

    ○榊委員 では具体的にお聞きしますけれども、地位協定の範囲内じゃなくてあなたは答弁されているのです。私が聞いているのはそうじゃなくて、米空母ミッドウェーに乗り込んで洋上に出ていって、しかもその修理作業その他をフィリピンの軍事基地でやることは、これは地位協定に合っていますか。
  229. 山崎博司

    ○山崎説明員 確かに訓練にはいろいろな態様があると思います。外見的に一見修理作業に従事するような形をとっても、具体的にそのこと自体がいわゆる駐留軍従業員としての職場の技能向上のための訓練であるということであれば、これは必ずしも協定なり基本労務契約の問題には触れない、このように考えております。
  230. 榊利夫

    ○榊委員 私は具体的に聞いているのです。何もそんな研修や何かはなかったと言っているのです。実際に修理やその他の作業をやっているのですよ。何も勉強のために行ったのじゃないのですよ。だとすればこれは合わないでしょう。研修、その場合あなたはいいかもしれないとおっしゃっていますけれども、実際やっていることはそうじゃないのですよ。まさに空母に乗り込んで、実際上従軍行為になっているのですよ。修理、点検その他仕事をやっておるのです。勉強しに行ったのじゃないのです。そういうふうに事実をきちっと押さえて、いずれにいたしましても私が申し上げたいことは、こういうふうに米艦船に乗り込んでいく、そういう事例は例外現象じゃないのです。  お尋ねいたしますけれども日本人技術者のミッドウェー従軍が起こりました一九八〇年の例で聞きますけれども、この一年間に、海外派遣した在日米軍基地の日本人従業員の総数、その国別の人数はどうなっておりますか。
  231. 山崎博司

    ○山崎説明員 五十五年度に海外出張した駐留軍従業員の総数は二百二十九名でございます。その内訳は米国が百二十五名、韓国が三十五名、フィリピンが六十七名、その他が二名でございます。
  232. 榊利夫

    ○榊委員 その中にはさっきの十三人も含まれておると解してよろしゅうございますね。
  233. 山崎博司

    ○山崎説明員 ただいま先生が申されたことが事実であれば、当然この数に入っておると思います。
  234. 榊利夫

    ○榊委員 それでは、最近五年間に海外派遣された日本人従業員の数を、年度別に、また国別にちょっと教えていただけますか。
  235. 山崎博司

    ○山崎説明員 申し上げます。  五十二年度が総計百四十八名でございます。内訳は米国が百五名、韓国が二十一名、フィリピン十五名、その他七名でございます。五十三年度は総計百五名でございまして、米国が六十九名、韓国が二十五名、フィリピンが七名、その他が四名。同じく五十四年度が二百二十三名でございまして、米国が九十九名、韓国が二十五名、フィリピンが八十八名、その他が十一名。それから五十五年度はいま申し上げました。それから五十六年度でございますが、総計二百七十二名でございまして、内訳は米国が百八十一名、韓国が五十三名、フィリピンが三十一名、その他七名ということでございます。
  236. 榊利夫

    ○榊委員 いまの数字を見ますと、アメリカはもちろん、アメリカと軍事同盟関係にある韓国、フィリピン、オーストラリアなど、多くの太平洋諸国に派遣されておることがわかります。数が増加しておるのです。一九七七年百四十八名だったのが八一年度には二百七十二名というふうに一けた上がっておりますけれども、それは大変危険な方向だと私は思います。  しかも、いまのことに関して申し述べさせていただきますと、海外米軍日本人がかなりの数、恒常的に従軍させられている疑いが強い。出発地は横須賀の場合もある。横田の場合、佐世保の場合、嘉手納の場合があります。空母ミッドウェーの場合をとってみましても、この十年間に七十七回横須賀を出港している。その際しばしば日本人技術者が秘密のうちに同乗、従軍させられている。ミッドウェーでフィリピンまで行って、別のアメリカの軍艦に乗りかえて横須賀に帰ってきたとか、あるいは米軍機で横田に帰ってきたとか、あるいはもう何回もアメリカの軍艦でフィリピンに行ってきたとか、そういう技術者はたくさんいる。緊急な場合にはいつもそういうふうにして日本人技術者が海外に出動させられているわけでございます。先ほど申し上げましたように、準公務員です。それが集団的な軍事行動、言うなれば集団的自衛権に明らかに踏み込まされている。これは真剣に考えなければいけないことです。どこかでアメリカが、太平洋とかインド洋で戦争状態に入った、その後も、ミッドウェーあるいはその他の米艦船に乗り込んでいた日本人は一緒に自動的に戦禍に巻き込まれていくじゃありませんか。いや、おれだけおろしてくれと言ったって間に合いません、もう乗り込んでいるのですから。日本人、さらに日本がそういうふうにして戦禍に巻き込まれていく、そういう非常に深刻な重大な危険をはらんだ問題であります。  私はこういう事態について外務大臣にお尋ねいたしますけれども、こういう事態を放置できるかどうか考えなければいかぬのじゃないか。総点検をしてもらいたいと思うのです。この点いかがでしょう。
  237. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いろいろと日本人の駐留軍の労務者が出国している。これは別に密出国しているわけではなくて、常々と出国しているわけですし、地位協定というのがありますから、地位協定において許容されるならば、それはそれだけの法律的な根拠がありますから差し支えないことだ、私はこういうふうに思います。ただ、いまおっしゃるようなことがすべて事実であるかどうかということは、もう少し調べてみないと、いまここではわかりません。
  238. 榊利夫

    ○榊委員 ひとつしっかと調べていただきたいと思います。  それで、余り時間がありませんが、もう二、三問質問いたします。  安倍さんが通産大臣のときに、これは去年の二月の衆議院予算委員会ですけれども、武器技術は、米軍を通じて外に出るときには外為法上の許可を必要とする、こういうふうに答弁されておりますが、日本人技術者がフィリピンで対米提供した技術労務の対価は、米軍からドルで日銀に払い込まれるわけですね。そのドルによって、日本政府つまり防衛施設庁が円で従業員に支払っていた分が補てんされるわけです。そうしますと、当然法律上の雇用主である日本政府、直接的には防衛施設庁は外為法上の許可申請、許可手続をとるべきではないかと思うのですけれども、いかがでございましょう。
  239. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ちょっと御質問趣旨が必ずしも明確ではないのですが、貿管令は通産省所管の法令でございますので、私から必ずしも有権的に御説明できないのでございますが、いずれにしても外為法上、役務提供につきまして通産大臣の許可の対象になっておりますのは非居住者に対する役務提供でございまして、いまの御質問のケースというのは、その日本人労務者を役務として米軍に提供しておるというケースではないかと思いますが、そういう役務契約に基づく対価というものについて、外為法上の許可を必要とするというふうにはちょっと私は理解できなかったのでございますけれども……。
  240. 榊利夫

    ○榊委員 これは恐らく外務省条約局としても初めてのケースかもしれません、恐らくその問題としましては。だから、いま即答は私、求めませんけれども、私の理解では、これはやはり外国で、フィリピンで米軍のため作業したわけですね。その支払いをドルでやられる。それがいま言ったような経過で来るわけで、これは当然技術供与ですから外為法上の手続をとるべきだ。その点で私は、防衛施設庁は脱法行為をやっておると思うのですよ。
  241. 山崎博司

    ○山崎説明員 ただいまの御質問趣旨が、たとえば先生指摘のような形で海外に出た者のいわゆる労働の対価の問題であるならば――これは駐留軍従業員でございますので、日本政府が円で支払っております。これは米側から円で償還される、こういうことになっております。
  242. 榊利夫

    ○榊委員 その筋は、私よく存じ上げているのです。外国で、フィリピンでやっているのですから。そうでしょう、そこの労務提供なんですから。私はこれはもう明らかに外為法上の手続をとるべきだ。それをとってない。これはひとつ大きな問題だということを指摘して、最後の質問に移りたいのです。  アメリカの空母ミッドウェーの仕事をさせるため、法律にはいま申し上げましたように雇用主というのは日本政府だ。その日本人技術者のフィリピン集団派遣について、外務省にお尋ねいたしますけれども、フィリピン政府に通報ないしは了解を得たとは思われませんけれども、どうだったでしょうか。
  243. 北村汎

    北村(汎)政府委員 そういう事実を私どもは存じておりません。
  244. 榊利夫

    ○榊委員 私の知る限り、通報、了解を得ていないと思います。また、そういう行為を日本政府としてやっていない。それで、御存じのようにアメリカとフィリピンの間には相互防衛条約だとかあるいは軍事基地協定がございます。しかし、日本とフィリピンの間にはそういう協定はないはずであります。ところが、日本政府が責任を負っているはずの日本人技術者が、米軍の手でフィリピン政府にも秘密でフィリピン国内に運ばれていっている。そこで対米軍事技術協力をやっている。そうしますと、これ自体が、知っていようと知っていまいと、日本がフィリピンに対して重大な主権侵害をやっている、日本とフィリピンの間の国際関係で大変複雑な紛争の種をまきかねない、こういう外交上の重要な問題もはらんでいるということなんですよ。この点、どういう御認識でしょう。
  245. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほどからも政府側が御答弁しておりますように、事実関係というものは、私どももきょう初めて伺います問題で十分承知いたしておりませんが、米軍とフィリピンとの間のいろいろなアレンジメントというものがやはりあるわけでございまして、その範囲の中でどういうふうになっておるのか、それもやはり事実関係を調べてみないと何とも言えない問題でございます。
  246. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、いままでの質疑を通じて私は非常に痛切に感じるのは、日本政府も信ずるならば知らないうちにとんでもないことが進んでいる。秘密のうちに軍事技術協力もやられているし、航空母艦に日本人が乗り込んで従軍するような事態さえ進んでいる。こういうことは、憲法の禁止した集団的自衛権に日本を事実上引き込み、日本のいわば国是としております武器輸出三原則の問題につきましても非常に重大な相克を持った問題だと思うのでありますが、最後に私、政府にお願いしたいのは、先ほど外務大臣は調査をするとおっしゃいました。ぜひひとつ、こういう類似の無法行為をこの機会に総点検をして、絶対にこのような海外従軍を繰り返さないように、私は、調べた上で事実であったならば米政府にも強く申し入れてもらいたいと思うのですよ。私はこのことを要請したいのです。いかがでございましょう。
  247. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま出された問題が地位協定の範囲内であるかどうかということは、事実関係を見ないとちょっとわかりませんから、事実関係を調べた上で、これはアメリカとの間で適切な対処をしてまいりたいと存じます。
  248. 榊利夫

    ○榊委員 非常に真剣な、日本の主権にかかわる問題であり、平和、安全、日本人の命にかかわる問題でありますから、ひとつこの問題については真剣な調査と対応をお願いして、質問を終わります。
  249. 橋口隆

    橋口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  250. 橋口隆

    橋口委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中路雅弘君。
  251. 中路雅弘

    ○中路委員 在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  周知のように、わが党はこれまで、国交開設に伴う大使館の設置等や在勤基本手当の物価、為替の変動にスライドした改定などを内容とする在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の改正案に賛成の態度をとってきました。  それにもかかわらず、今回、本法案にあえて反対するのは、在勤基本手当の基準額の改定に当たって、物価、為替変動にスライドした法律に基づく当然の義務的改定を行わず、しかも、その論拠として、人事院勧告凍結の痛みなどという在勤基本手当とは制度的に何ら関係のないものを掲げ、改定額を減額するなどという不当な措置をとったためであります。  以上、本法案に反対する理由を述べ、討論を終わります。
  252. 橋口隆

    橋口委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  253. 橋口隆

    橋口委員長 これより採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  254. 橋口隆

    橋口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  255. 橋口隆

    橋口委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、愛野興一郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。渡部行雄君。
  256. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について引き続き検討の上、適切な措置を講ずべきである。  一 激動する国際情勢の中にあって、我が国が自国の安全を確保し、その国際的責務を遂行するため、従来にも増して積極的な平和外交を展開しうるよう、情報機能の強化等外交実施体制の一層の整備・強化に努めること。  一 在外職員が職務と責任に応じて能力を十分発揮しうるよう必要な措置を講ずること。特に生活及び勤務の環境の厳しい地域に在勤する職員の勤務環境の整備・処遇の改善等に努めるとともに、小規模公館に在勤する職員の勤務体制等の改善に努めること。  一 在外公館の事務所及び公邸の国有化を推進するとともに、在外職員宿舎の整備に努めること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため、在外日本人学校及び補習授業校の拡充強化、子女教育費の負担軽減、帰国子女教育の制度の改善及び施設の整備等の対策を総合的に推進すること。  一 海外に在留する邦人の選挙権行使ができるよう、早急に適切な措置を講ずること。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の質疑等を通じまして明らかなことと存じますので、よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  257. 橋口隆

    橋口委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  258. 橋口隆

    橋口委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安倍外務大臣。
  259. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。  また、本法案の御審議の過程においては、外交活動の基盤強化につき深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対し、厚く御礼を申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。まことにありがとうございました。     ─────────────
  260. 橋口隆

    橋口委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 橋口隆

    橋口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  262. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、来る三十一日木曜日、午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時七分散会