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1983-03-03 第98回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月十日(木曜日)委員長の指名で 、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  恩給等に関する小委員       愛野興一郎君    狩野 明男君       佐藤 信二君    田名部匡省君       吹田  愰君    堀之内久男君       宮崎 茂一君    矢山 有作君       渡部 行雄君    鈴切 康雄君       和田 一仁君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  恩給等に関する小委員長    堀之内久男君 ────────────────────── 昭和五十八年三月三日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 堀之内久男君 理事 矢山 有作君    理事 渡部 行雄君 理事 市川 雄一君    理事 和田 一仁君       有馬 元治君    池田 行彦君       上草 義輝君    狩野 明男君       亀井 善之君    宮崎 茂一君       上原 康助君    嶋崎  譲君       鈴切 康雄君    木下敬之助君       榊  利夫君    中路 雅弘君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府人事局次         長       廣瀬  勝君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省中南米局         長       羽澄 光彦君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房総務審議官  関谷 俊作君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君  委員外出席者         警察庁刑事局国         際刑事課長   金田 雅喬君         防衛庁長官官房         法制調査官   古川 定昭君         防衛庁防衛局防         衛課長     藤井 一夫君         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         外務大臣官房審         議官      恩田  宗君         外務大臣官房領         事移住部長   藤本 芳男君         文部省学術国際         局国際教育文化         課長      草場 宗春君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         自治省行政局選         挙部選挙課長  小笠原臣也君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ───────────── 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     藤本 孝雄君   上草 義輝君     武藤 嘉文君   狩野 明男君     金子 一平君   亀井 善之君     正示啓次郎君 同日  辞任         補欠選任   金子 一平君     狩野 明男君   正示啓次郎君     亀井 善之君   藤本 孝雄君     池田 行彦君   武藤 嘉文君     上草 義輝君 同月二十二日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     金子満広君 同月二十四日  辞任         補欠選任   金子 満広君     中路 雅弘君     ───────────── 二月十六日  人事院勧告完全実施に関する請願岡田利春紹介)(第五二七号)  同外二件(川俣健二郎紹介)(第五二八号)  同(楯兼次郎紹介)(第五二九号)  同(伊賀定盛紹介)(第五四二号)  同外一件(大出俊紹介)(第五四三号)  同(川俣健二郎紹介)(第五四四号)  同外一件(新村勝雄紹介)(第五四五号)  同(鈴木強紹介)(第五四六号)  同(武部文紹介)(第五四七号)  同外五件(野坂浩賢紹介)(第五四八号)  同(武藤山治紹介)(第五四九号)  同(伊賀定盛紹介)(第五八六号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第五八七号)  同外六件(野坂浩賢紹介)(第五八八号)  国民のための行政改革に関する請願下平正一紹介)(第五三〇号)  同外一件(下平正一紹介)(第五九〇号)  財界・大企業優遇行政改革反対等に関する請願高沢寅男紹介)(第五三一号)  同(楯兼次郎紹介)(第五三二号)  同(中村重光紹介)(第五五〇号)  旧樺太住民に対する補償に関する請願竹中修一紹介)(第五五一号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関として指定に関する請願山崎平八郎紹介)(第五五二号)  軍事費削減等に関する請願安藤巖紹介)(第五八三号)  人事院勧告凍結撤回に関する請願野坂浩賢紹介)(第五八四号)  憲法改悪反対等に関する請願野間友一紹介)(第五八五号)  国家公務員労働基本権確立及びスト権回復に関する請願河上民雄紹介)(第五八九号) 同月十八日  信越郵政局信越電波監理局等存置に関する請願井出一太郎紹介)(第六八五号)  同(小川平二紹介)(第六八六号)  同(小沢貞孝紹介)(第六八七号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第六八八号)  同(串原義直紹介)(第六八九号)  同(倉石忠雄紹介)(第六九〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第六九一号)  同(清水勇紹介)(第六九二号)  同(下平正一紹介)(第六九三号)  同(中村茂紹介)(第六九四号)  同(羽田孜紹介)(第六九五号)  同(宮下創平紹介)(第六九六号)  長野営林局存置に関する請願井出一太郎紹介)(第六九七号)  同(小川平二紹介)(第六九八号)  同(小沢貞孝紹介)(第六九九号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第七〇〇号)  同(串原義直紹介)(第七〇一号)  同(倉石忠雄紹介)(第七〇二号)  同(小坂善太郎紹介)(第七〇三号)  同(清水勇紹介)(第七〇四号)  同(下平正一紹介)(第七〇五号)  同(中村茂紹介)(第七〇六号)  同(羽田孜紹介)(第七〇七号)  同(宮下創平紹介)(第七〇八号)  人事院勧告完全実施に関する請願福岡義登紹介)(第八二一号) 同月二十一日  人事院勧告完全実施に関する請願阿部哉君紹介)(第八四七号)  同(伊賀定盛紹介)(第八四八号)  同(石橋政嗣君紹介)(第八四九号)  同外三件(大出俊紹介)(第八五〇号)  同(稲葉誠一紹介)(第八九七号)  同(大出俊紹介)(第八九八号)  同外二件(大原亨紹介)(第八九九号)  同(城地豊司紹介)(第九二八号)  同(大出俊紹介)(第九六一号)  同(北山愛郎紹介)(第九六二号)  同外一件(井上一成紹介)(第九七八号)  同外四件(河上民雄紹介)(第九七九号)  同外一件(串原義直紹介)(第九八〇号)  同外一件(佐藤敬治紹介)(第九八一号)  同(福岡義登紹介)(第九八二号)  同(矢山有作紹介)(第九八三号)  同(横山利秋紹介)(第九八四号)  国家公務員労働基本権確立及びスト権回復に関する請願阿部哉君紹介)(第八五一号)  同(五十嵐広三紹介)(第九二九号)  長野営林局存置に関する請願(林百郎君紹介)(第八五二号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願有馬元治紹介)(第九〇〇号)  同(枝村要作紹介)(第九三〇号)  旧樺太住民に対する補償に関する請願三枝三郎紹介)(第九〇一号)  第二次臨時行政調査会答申実施反対に関する請願木島喜兵衛紹介)(第九三一号)  国民のための行政改革に関する請願串原義直紹介)(第九八五号) 同月二十八日  人事院勧告完全実施の実現に関する請願土井たか子紹介)(第一〇〇三号)  人事院勧告完全実施に関する請願外一件(伊藤茂紹介)(第一〇〇四号)  同(勝間田清一紹介)(第一〇〇五号)  同外一件(角屋堅次郎紹介)(第一〇〇六号)  同(河上民雄紹介)(第一〇〇七号)  同外一件(沢田広紹介)(第一〇〇八号)  同(竹内猛紹介)(第一〇〇九号)  同(野口幸一紹介)(第一〇一〇号)  同(山口鶴男紹介)(第一〇一一号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一〇一二号)  同(井上一成紹介)(第一〇三三号)  同(伊藤茂紹介)(第一〇三四号)  同(勝間田清一紹介)(第一〇三五号)  同外一件(沢田広紹介)(第一〇三六号)  同(新村勝雄紹介)(第一〇三七号)  同(関晴正紹介)(第一〇三八号)  同(土井たか子紹介)(第一〇三九号)  同(山口鶴男紹介)(第一〇四〇号)  同(河上民雄紹介)(第一〇七〇号)  同(北山愛郎紹介)(第一〇七一号)  同(後藤茂紹介)(第一〇七二号)  同外四件(佐藤敬治紹介)(第一〇七三号)  同(嶋崎譲紹介)(第一〇七四号)  同(田口一男紹介)(第一〇七五号)  同外二件(竹内猛紹介)(第一〇七六号)  同(水田稔紹介)(第一〇七七号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一〇九四号)  同(小川国彦紹介)(第一〇九五号)  同(河上民雄紹介)(第一〇九六号)  同外二件(北山愛郎紹介)(第一〇九七号)  同(串原義直紹介)(第一〇九八号)  同(嶋崎譲紹介)(第一〇九九号)  同外二件(塚田庄平紹介)(第一一〇〇号)  同(土井たか子紹介)(第一一〇一号)  同(中村茂紹介)(第一一〇二号)  同外一件(野口幸一紹介)(第一一〇三号)  同(山口鶴男紹介)(第一一〇四号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第一一二五号)  同(佐藤敬治紹介)(第一一二六号)  同(塚田庄平紹介)(第一一二七号)  同(水田稔紹介)(第一一二八号)  同外一件(飛鳥田一雄紹介)(第一一四四号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二四五号)  同(大島弘紹介)(第一一四六号)  同(大原亨紹介)(第一一四七号)  同(勝間田清一紹介)(第一一四八号)  同(金子みつ紹介)(第一一四九号)  同外一件(後藤茂紹介)(第一一五〇号)  同(竹内猛紹介)(第一一五一号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一一五二号)  同(山本幸一紹介)(第二五三号)  信越郵政局信越電波監理局等存置に関する請願(林百郎君紹介)(第一〇一三号)  旧樺太住民に対する補償に関する請願粕谷茂紹介)(第一〇四一号)  同(泰道三八君紹介)(第一一〇六号)  同外一件(北村義和紹介)(第一一三〇号)  同外四件(地崎宇三郎紹介)(第一一三一号)  同(森田一紹介)(第一一五五号)  国民のための行政改革に関する請願清水勇紹介)(第一〇七八号)  財界・大企業優遇行政改革反対等に関する請願土井たか子紹介)(第一〇七九号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願市川雄一紹介)(第一一〇五号)  国民本位行財政改革等に関する請願伊藤茂紹介)(第一一二九号)  国家公務員労働基本権確立及びスト権回復に関する請願佐藤敬治紹介)(第一一五四号) 三月三日  人事院勧告完全実施に関する請願飛鳥田一雄紹介)(第一一七四号)  同(伊藤茂紹介)(第一一七五号)  同(大原亨紹介)(第一一七六号)  同(北山愛郎紹介)(第一一七七号)  同(塚田庄平紹介)(第一一七八号)  同(矢山有作紹介)(第一一七九号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一二〇一号)  同(佐藤誼紹介)(第一二〇二号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一二〇三号)  同外一件(飛鳥田一雄紹介)(第一二五一号)  同(伊藤茂紹介)(第一二五二号)  同(大原亨紹介)(第一二五三号)  同外一件(串原義直紹介)(第一二五四号)  同(松本善明紹介)(第一二五五号)  同(土井たか子紹介)(第一二五六号)  同(中西績介紹介)(第一二五七号)  同(福岡義登紹介)(第一二五八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 二月十七日  靖国神社公式参拝に関する陳情書外二件(第一号)  戦後ソ連強制抑留者に対する補償に関する陳情書(第二号)  旧軍人・軍属恩給欠格者処遇改善に関する陳情書外六十八件(第三号)  国民本位行財政改革等に関する陳情書外二件(第四号)  大東亜戦争呼称実現に関する陳情書(第五号)  長野営林局存続に関する陳情書(第六号)  名古屋営林局等存置に関する陳情書外一件(第七号)  中小企業庁の存続強化充実に関する陳情書(第八号)  大阪防衛施設局存続に関する陳情書外一件(第九号)  国の出先機関統廃合に関する陳情書外一件(第一〇号)  人事院勧告完全実施に関する陳情書外七十七件(第一一号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  農林水産省設置法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度アンティグア・バーブーダ及びベリーズ大使館設置され、さらにサウジアラビアのジェッダに総領事館が設置されることになるわけですが、このアンティグア・バーブーダ及びベリーズとは、外交上実態としてどのような経緯があったのか、それからまた、こういう大使館設置については設置基準というようなものがあるのかどうか、そういうものについてまずお伺いしたいと思います。
  4. 枝村純郎

    枝村政府委員 お答え申し上げます。  アンティグア・バーブーダにつきましては、昭和五十六年十一月一日に独立いたしまして、私ども独立承認を同月の六日付で行ったわけでございます。その後、外交関係設定につきましての交渉を鋭意進めてまいりまして、五十七年一月に外交関係設定に至ったということでございます。  それから、ベリーズにつきましては、これはグアテマラの東にございます前の英領ホンジュラスと言われておった地域でございますけれども、五十六年九月二十一日に独立いたしまして、同日付で独立承認をいたしました。外交関係の開設については鋭意交渉をしてまいりまして、昨年の十一月に交渉が達したわけでございます。  外交関係設定ができますと、原則として大使館設置をするというのが私ども方針でございます。両国ともカリブ・中米地域におきましてそれなりの地歩を占める国でございますし、国連にも加盟いたしておりますので、また、たとえば国際捕鯨委員会というようなところにも加盟するということでございまして、外交関係を持ちました以上大使館設置して密接な関係を持つように努めるというのが私ども方針でございます。  大使館設置基準ということでございますけれども、ただいま申し上げましたようにわれわれといたしましては、外交関係設定いたしました以上は、兼轄にせよ法令上はとにかく大使館設置するということで、それを原則といたしております。ただ、実際に大使を置き事務所を構え大使館をいわゆる実館として置くかということになりますと、これは政治、経済文化、その他の分野においてわが国とどれぐらい緊密な関係を有しておるか、あるいはそれらの国が国際社会においてどの程度重要な国であるか、あるいはわが国からの在留邦人数がどれぐらいであるとか、あるいは向こうの国が東京に在外公館を実際に開設しておるか、そういうような外交上のバランス、そういったことも考慮いたしまして実館を置くかどうかというようなことを決めておるわけでございます。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 各国の在外公館設置状況を見ますと、これは昭和五十七年十月現在ですが、日本が百六十三、アメリカが二百八十七、イギリスが二百十八、フランスが二百九十五、西ドイツが二百八、イタリアが二百六十四、こういうふうになって、日本は非常に少ないのですが、これはどういう理由に基づくものですか。
  6. 枝村純郎

    枝村政府委員 御指摘のとおり、わが国在外公館設置数というものは他の主要国に比べてまだ見劣りするというのが実情でございます。これは私どもとしましてもいろいろ新しく設置してまいりたい国あるいは地域というものがあるわけでございますけれども、何よりも先立つものは定員でございまして、現在置かれている公館であっても、私ども俗に小規模公館と称しておりますが、五人あるいは六人、ひどいところになりますと三人、四人というようなことで公館を設けておるということでございまして、もとより先ほど申し上げましたようないろいろな考慮からどうしても在外公館を開かないといけないというところでは開いてまいるわけでございますけれども、当面はどちらかといいますと、そういう小規模公館充実、あるいは既設の大規模、中規模でございましても、そのあたりの充実を図っていくということが先決であろうか、方針としてはそういうふうに考えております。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 非常に見劣りするということでございますが、七名以下の在外公館というのが非常に多いわけです。七名以下では本当の仕事はできないのではないでしょうか。約半数近くが館員七名以下という体制ですが、これについてはどうでしょうか。
  8. 枝村純郎

    枝村政府委員 その点はまさに御指摘のとおりでございまして、私どもとしては最低公館規模は八名でなければならぬ。館長、それから館長補佐、これは政務を担当いたします。それから経済協力あるいは広報文化領事事務、また、これも重要な業務でございます電信文書、さらには会計、それに警備の担当官もぜひつけたい、こういうことでございまして、八名を最低基準に考えて何とか充実していきたい。そのためにも、先ほど申し上げましたように定員増強という点が望まれるわけでございます。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 定員増強を望まれておるようでございます。また、ことしも若干ふえたようでございますが、この定員状況というのは、外務省独自に昭和六十年までに五千十名の体制をつくる六カ年計画があったはずです。しかし、この六カ年計画外務省の増員の状況を見ますと、これはまさに天と地の差があって、こんなことをやっていたのでは百年河清を待つような状態だと思うのですよ。  それで、大臣はこの状態をどういうふうに御認識されておられるのか。本当に日本外交に力を入れてやろうとするならば、まず日本玄関口ともいうべき在外公館充実しないで外交というものを一流国家としてやっていくことができるでしょうか。その辺に対する大臣の御見解をお伺いします。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまわが国世界における立場が非常に大きくなっております。それだけに、外交のウエートというのも非常に高くなっておるわけでございますが、それと比較をいたしますと、確かにいまの日本外交陣容というのは貧弱であると言わざるを得ません。インドなんかが五千人と言われておりますが、インドに比べても日本は三千数百人ということで、定員の面からとってみても、これで果たしていまお話しのようにこれからの国際社会における日本役割りというものを果たしていけるか、情報収集等をできるか、外交活動が十分できるかということになりますと、大変問題があるわけでございます。  したがって、外務省としてはせめて五千人体制には持っていきたい。これは外務省の長い間の悲願でございますが、ちょうど財政再建の時期にぶつかりまして、その計画が遅々として進行しない。しかし、そういう中で、この数年間定員を抑えるという一般的な状況の中で、外務省だけはいろいろと配慮をいただきまして、ほんのわずかではありますが定員は伸ばしてきておるわけでございますが、このままでいっても五千人体制にいくには相当ほど遠いわけでございます。したがって、われわれとしては、これからも何としてもこの五千人体制を一日も早く充足させるためにあらゆる努力をしていかなければならない。私自身も外務大臣になって見ておりまして、やはり定員不足ということがいろいろな面で支障を起こしておる。情報収集にしても、諸外国との在外公館比較を見ていただいてもわかるのですが、そうした外交活動をとってみてもいまは大変な問題が生じておる。これでは十分なことはできないということを痛感いたしておるだけに、われわれは、財政再建行政改革という時代ではありますけれども外務省外交陣容につきましては、これからの日本の将来というものを考えて特に配慮していただきたいということで、臨調あるいは財政当局あるいは国会、さらに国民の皆さんにも世論の喚起等お願いいたしまして、これからまた力を尽くして充実には努めてまいりたい、また、まいらなければならない、こういうふうに決意をいたしておるわけであります。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それが、定員だけじゃないのですよ。先ほど言った七名以下の公館、実は七名以下のところではほとんど休暇もとれない状態であるということを大臣は知っておるのかどうか。休暇もとれない。しかも、七名以下の公館があるところは、環境もあらゆる条件が悪いと思うのですよ。そういうものに対してやはりもっと積極的な愛の手を差し伸べるべきではないか、こういうふうに私は考えますが、その点が第一点。  それから、外交予算にいたしましても日本は非常に見劣りするわけでございます。大体アメリカの五分の一、そして西ドイツ日本の二・五倍、イギリスは二・二倍、フランスは一・七倍と、日本の人口以下のところでそういうふうにすぐれた外交予算をつけておる。しかも、総予算に占める外交予算の割合は発展途上国よりも低いわけでございます。日本より高いところがまだたくさんある。こういうことを考えると、日本防衛にばかり力を入れ過ぎて外交がおろそかにされているのではないか、私はこんな感じがしてならないのです。これでは、日本立国条件は何かということを政府は本当に踏まえているのだろうか。日本立国条件は、まず貿易と技術外交である。この三つが一緒になって、束になって進まないことには、本当に世界の平和に寄与する平和国家としての日本の姿というものは出てこないのじゃないか。最近、特に軍事面が優先して本当に必要な部分が犠牲にされている。こういう事実については大臣はどういうふうにお考えですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど定員のことを中心に申し上げましたが、確かに予算の面についても、各国、特に先進諸国等と比べると大変見劣りがしておることは事実であります。外務省予算も、そのうちの三分の二は経済協力予算でありまして、純粋な外交活動というものには三分の一しかない、こういう状況でありますし、また、お話がございましたような在外公館、特に不健康地なんかに対する手当が十分でない。五十八年度予算では多少の改善はしていただいたわけでありますけれども、まだまだ十分でない。こんなことでは外交官が本当に国を背負って命がけで働くという気概も生まれてこないわけですが、幸いにいたしまして、そういう非常に貧弱な定員予算の中ではありますけれども日本外交官は各地におきまして大変努力を続けておる、そして成果も上げておることは事実であります。  しかし、やはりこれから将来のことを考えますとこのまま放置はできない、こういうふうに考えます。これまでの長い戦後の歴史の中で積み重ねられてきた予算でございますから、一挙にこうしたものを変えていくことはなかなか困難な面もあります。しかしだんだんと、国民各界各層、国会、あるいはまた政府の中におきましても、この外交予算あるいはいまの定員状況に対する同情といいますか、何とかしなければならぬというふうな声も出てきておりますので、こうした機会を通じまして、これからもさらにひとつ努力を重ねていって、そしてもっと名実ともに本当に日本外交世界に伍してひけをとらないような体制になっていくようにわれわれは努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 答弁を聞いていると非常に一生懸命やりますという御答弁ですが、しかしそれは確かに一つの流れというものはあるでしょうが、たとえば定員の問題にしても、本当ならば計画どおり持っていくには、いままでのは別として、その計画の中で五十八年度の増員数はどうなっているかというと二百八十名必要になっているわけですね。ところが予算要求で要求したのが百十六名ですよ。なぜ自分たちのつくった計画を持っていながら計画の数字も要求しないで、どうしてこの計画を達成することができるのですか。
  14. 枝村純郎

    枝村政府委員 まことに御指摘のとおりでございまして、私どもとしては大いにそういう五千名増員計画に沿った要求をいたしたいわけでございます。ただ、先ほど大臣の御答弁の中でも申し上げましたように、こういう行財政改革、緊縮の時代でございますので、閣議了解によりまして定員の要求は前年度の要求の半分にとどめるという了解がたしか五十七年度の要求からかぶせられておりまして、前年度の要求が二百三十二名でございましたので、その年は百十六名にとどまったわけでございます。  それから、実は昭和五十八年度分の要求につきましては各省一律に前年度の要求より五%さらに枠を下げるという決定がなされたわけでございますけれども、先ほどの大臣の御答弁でもございましたように、外務省につきましては格別の御配慮をいただきまして、この五%削減ということは御容赦を願って百十六名の要求ということになったわけでございます。そういう背景がございますので、その点は御了解いただきたいと思います。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この六カ年計画というのはもう事実上全然実行に移されていないわけですから、本当に先進国の一流国家並みにやっていくには計画の練り直しをしなければならぬじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。  またもう一つは、いろいろな事務量のふえ方とそれから定員のふえ方を見ますと、昭和四十六年から五十六年までの十カ年に定員はわずか三割弱しかふえていないのですよ。ところが、国連及び専門機関関係拠出額というようなものは十二倍にもふえておる、あるいは電信料だけでも十一倍にふえておる。その他ずっとありますが、皆相当数ふえておるのです。それに人員の方は全然対応されていない。私はこういうようなことでは困ると思うのですが、その二点についてお伺いします。
  16. 枝村純郎

    枝村政府委員 御指摘のとおり、先ほどから申し上げておりますような事情で、残念ながら当初打ち出しました時点におきまして六カ年のうちに達成するという五千名、イタリアあるいはインド並みの定員増強ということは、現実には実現不可能な状況に陥っているということは事実でございます。  ただ、私どもとしましては、こういう計画を打ち出したことによりまして外交陣容の強化の必要ということにつきまして、先ほど来の先生の御質問の中にもにじみ出しておりますように、御認識というものは大変深まったように思っております。それなりの意義はあったというふうに考えております。現在のこの苦しい状況下におきまして新しい計画をつくりますと、どうしてもみみっちいと申しますか、私どもとしてどうしても腹いっぱいのことは申せないような計画になろうかと思いますので、とりあえずこの五千名の目標は下げずに掲げておくというのが私どもの考えでございまして、より状況が好転いたしました段階で定員につきましてもさらに思い切った計画というものを改定して出したいというふうに思っております。  それから、外務省の事務量が非常にふえておるじゃないかということにつきましては、もう御指摘のとおりでございます。これに対応するためには私ども、先ほどの環境の悪い地域における在外職員の問題、大変温かいお言葉をいただいたのでございますけれども、たとえば広域担当官というようなものを置くことによりまして拠点公館から随時応援に行きますとか、あるいは事務の機械化、能率化の促進とか、そういったことによって当面は対応していく。  それからさらに、定員の足りないところを補う意味で、私ども外交周辺要員ということを申しておりますけれども、たとえば専門調査員、部外からのあるいは学者でありますとか報道関係の御出身の方でありますとか、そういう方に在外公館に行っていただいて、在外公館の特定の調査業務を委嘱いたしまして、在外公館の足らざるところを補うというようなこともいたしております。  それから、あるいは派遣員制度というのを十年くらい前から発足させておりまして、これは国際交流サーヴィス協会というところに委嘱して補助的な業務につく人を募集いたしまして、在外公館のそういう、何と申しますか、周辺的な業務でございますね、いわゆる便宜供与でございますとか、領事事務の補佐でありますとか、そういうことに当たらせる。そういういろいろな工夫をもって当面対処していきたいというふうに思っております。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それから明年、サウジアラビア外務省がジッダから首都リヤドに移転されるに伴って日本大使館も移転すると言われておりますが、これは新館を日本の国有財産としてつくっていくのか、それども賃貸借で借りていくのか、その辺はどういうことになるのですか。
  18. 枝村純郎

    枝村政府委員 御指摘のとおり、サウジアラビアの外務省が首都リヤドに移転いたしますので、各国の在外公館もリヤドへ移転するということになっておりまして、サウジアラビア政府から各国に土地が割り当てられております。したがいまして、私どもとしてはこれからその割り当てられました土地に公邸及び事務所を新営する計画でございまして、現在準備を進めております。昭和五十九年度には建設を終わりたいと思っておりますが、その間はリヤドで借家と申しますか、借料を払って公邸、事務所を開設せざるを得ない。しかし、これは臨時のことでございまして、本来的にはわが国独自の建物を新営して充てたいと思っております。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この在外公館のあり方ですが、大変高い金で賃借しておるところもあれば、あるいはモスクワにある日本大使館のように、いま新築をやっているんだがさっぱり進まない。それで館員はむしろいらいらして非常に仕事に支障を来しているということを私はこの目で見たり聞いたりしてきたのですが、そういう状態外務省としてはどういうふうに考えているのですか。何とかこれを早急に促進する方法はないのでしょうか。その辺の整理についてひとつ御見解を承りたいと思います。
  20. 枝村純郎

    枝村政府委員 御指摘のとおり、何といってもわが方の大使館の公邸、事務所は国有化するということが望ましいわけでございまして、これは戦後乏しい予算を差し繰りながら逐次進めてきたところでございます。同時に公館の新設ということも並行してあるものでございますから、比率から申しますとなかなか進みませんが、それでも今日までに公邸の国有化の方は六二%に達しております。事務所の方は、よほど先を見きわめて国有化いたしませんと、人員の増加などがあったときにうまくいかないということがございます。したがって公邸の国有化の方を優先しておりますが、事務所の方でも実は二六%に達しておるわけでございます。  ただいまモスクワの大使館の建設のことについて御下問がございましたけれども、ああいう土地の割り当てを得るまでも大変なことでございまして、なかなか先方との話し合いというものが思うように進まないというところがございまして、御指摘のように遅々として進まない。そのために館員のかなりの部分の勢力が食われておるというのが現状でございます。モスクワの公邸、なかんずく現在の事務所は大変不備でございますので、一日も早く新しい建物を完成して館員が安んじて業務に当たれるようにということでございますが、何分にも相手側とのいろいろむずかしい折衝の問題があるわけでございます。ただ、ああいうのはどちらかというと例外でございまして、新営する場合には国有化というのはもう少し順調にいくのが普通でございます。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大体財政が苦しいというのが理由になって、このような状態のまま推移しておるようでございます。しかし他方では軍事予算はどんどんふやして、そうしてこういう実際に必要な国の威信にもかかわるような問題をそういう理由で放置するというのは、私はどうしても納得できないのです。むしろこっちを先にして、軍事予算は抑えていって、しかもこれは軍縮に結びつけていくという方向でなければならないと思うのです。大川大使は国連の軍縮総会ではっきりと縮小均衡で軍縮をしようということを言っているのですよ。ところが日本では拡大して、一体どう軍縮に結びつけていくのかという非常に矛盾したやり方をやっているわけです。こういうものに対して、外務大臣は今後日本外交体制を一体どういうふうにしていこうと考えておるのか、それから外交の重みというものをどういう位置づけをしておるのか、その辺に対する御見解、決意のほどをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今日の世界の情勢安全保障という立場から見れば、軍縮が絶対に必要であるということはもちろん言うまでもないわけでありますが、この軍縮に関しては、米ソを初め国連等におきましても協議がされております。いまお話しのように軍縮によって余った予算世界の平和のために使うべきである、私はそのとおりだと思います。  軍縮はしかし全体的なレベルを落としていくということで、やはりこれはもちろん大前提としては実効あるところの措置でなければならぬわけで、ただいたずらに軍縮を叫んで一方的にそれぞれの国が軍縮をしても、それでは世界の平和というものにつながらないし、安全保障を確保するということにもならないわけでありますから、真の軍縮にはならない。全体の世界の軍備のレベルを抑えていくということが大事であって、この点はやはり日本の基本的な外交の方策としてこれからも取り組んでまいりまして努力を続けていきます。  同時にまた、日本外交の基本というものはあくまでも平和外交であると私は思います。日本の憲法、さらにまたああした敗戦、そういうものを踏まえて、これからの世界の恒久的な平和に向かって日本自体が努力するとともに、世界に対しても積極的に働きかけていくというのが中心でなければならぬわけでございます。したがって、そうした平和外交というものを中心にいたしましてこれからの外交政策というものは展開をしていくということで鋭意努力を重ねておるわけでございますが、同時にまた日本の場合は、戦後日本における自由主義といいますか民主主義といいますか、そういうものが育って定着をいたしております。世界の中のいわゆる自由主義国家群の一員としての発展を遂げたわけでございます。またそれなりの自由主義国家の一員としての責任というものも生じてまいるわけで、この自由主義国家群の一員としての外交をこれから進めていく。さらにまた、日米関係というのは戦後の歴史の中でもって最も大きな関係になっておるわけでございます。安保条約もあるわけですから、こうした日米外交というものが日本外交の大きな基軸でなければならぬ。同時にまた、日本がアジアの一国であるということも、いまさら申し上げるまでもないわけでございます。そうしたアジアの一員であるという自覚も踏まえながら外交を進めていく。こういうことがこれからも日本としての基本的な外交の姿勢、あるいはまた外交のプリンシプルである、私はそういうふうに確信をいたしておるわけであります。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大臣は今国会の外交演説の中で、「相互依存関係の深まった今日の国際社会においては、世界の平和と繁栄なくしてはわが国の平和と繁栄もあり得ません」とはっきりと明言しております。  そこで世界の平和ということを考えた場合に、いまの国際情勢は米ソを中心として対立をしておるというのは、これもその情勢分析の中に出ておるわけです。この二つの超大国が対立している中で、日本がこの現在の均衡した状態をいつまでもそういう形で守っていくには、守るというか、どういう日本の作用によってそういう均衡状態を継続させていくかということを考えた場合、西側一辺倒でいっては、私は均衡状態に対して日本の有利な立場を確保することは困難だと思うのです。  ちょうどいま日本はてんびんを担いでいるようなもので、両方の一応中心に日本がおって、アメリカとソ連が均衡しておる、つり合っておる。ところが、アメリカの方が強く来た場合には、てんびんを今度は動かしながらつり合いを図っていかなくちゃならぬのが日本の立場だと思うんですよ。だから、いまアメリカからいろいろな要求が出ておる、こういう際には、今度ソ連の方に逆に近寄って、アメリカさん、そんな無理なことを言うなら私たちはこっちのお客さんに乗りかえますよというようなかっこうを見せなさいよ、たまには。そうアメリカにべったりしていたんじや、これはソ連は怒るばかりであって、ますます激高するばかりです。  そうして、いまや日本とソ連の国際環境というのは非常に悪くなってきておる。この間、貿易経済代表団が行きましたけれども、あれによって若干緩和されたかなという印象を受けましたけれども、しかし国際間の公式ルートでは本当に冷え切っておる、こういう状態でいいんでしょうか。また、こういう状態で本当に平和が保てるでしょうか。その辺に対する外務大臣の所信をひとつ承りたいと思います。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、日本外交というのは、先ほど申し上げましたように、あくまでも平和外交というのが基本的な姿勢であります。しかし、その外交の政策としては、日本が自由主義国家の一員であるという立場から日本は西側陣営に属しておるわけであります。日本は西側陣営の一員としての役割りと責任を果たしていかなければならぬ。  現在、世界が非常に厳しい状況にあるわけでありまして、米ソ間においての対立も現在深まっておるといいますか、いまの状況ではデタントの方向へ行くとはとうてい考えられないような状況にあるわけでございますが、残念ながら、いまの世界の安全保障といいますか、平和がいかにして保たれているかということを考えますと、やはり東西の力の均衡である、こういうふうに私は思います。これが辛うじて世界の平和を今日まで支えてきた、こういうことでございまして、この均衡が崩れたときにはやはり世界は非常に危なくなるのじゃないかというふうに私は存ずるわけでございます。  そういう中で、いまソ連においても軍事力の増強が見られ、またアメリカも軍備の増強を図っておるわけでございます。ヨーロッパなんかにおけるいわゆる中距離核ミサイルの配置問題一つをとってみてもそういうことが言えるわけでございますが、われわれは西側陣営の一員でありますが、心配をしているのは、やはり米ソがそれぞれ軍拡の方向に進んで、軍事力のバランスを保つためにどんどん軍拡が進む、特に核戦力の軍拡が進むということになれば、これまた大変な事態に世界は追い込まれるわけでございますから、何とかわれわれとしては、米ソの話し合いの中で軍拡というものがストップをして、さらに軍縮の方向へ両国が進んでいくということが望ましいわけで、そういうことによって、いまの世界経済のいろいろな不況という問題も、また回復の道がそういう面からも生まれてくるのではないか。  ですから日本としては、力の均衡というのが世界の平和を保っておる、そうして日本は西側陣営の一員としてその中においての役割りを果たしていかなければならない、しかし同時にまた、世界の軍縮が米ソともに平均してダウンをしていくということに対しては、日本はああした核爆弾の洗礼を受けた国でありますだけに、特に世界の平和を念願するだけに、これに対しても非常な努力を重ねておりますし、今後ともその点については積極的に努力を続けてまいりたい、いかなければならない。また、そういう意味での日本役割りというものはあるのじゃないか、こういうふうに思います。  同時にまた、先ほど日ソの関係にも触れられたわけでありますが、日ソ間につきましても、領土問題あるいはまたソ連のアフガニスタン侵略であるとかあるいはポーランド介入であるとか、そういう問題をめぐって日ソ間にも対立があることは、これはもうそのとおりでありますが、しかし私たちは、ソ連と日本との関係についても、体制が違うからといって、また領土問題の解決がいますぐできないというだけで対立関係をこれからますます高めていこうというような考えは持っていないので、やはり大いに両国間で懸案の問題については解決するための努力——論争、交渉等もしなければならぬと思うわけでございますが、反面、やはり日本とソ連間の対話というものも、これは積極的に進めていかなければならぬ。そういう意味では、私は永野ミッションのソ連への訪問というのは一つの成果があったと思うわけですが、しかしこれでもって根本的に何か日ソ間が緩和をするとか、そういう方向へ大きく踏み出したとは私は思っておりません。依然として日ソ間には解決困難な問題が大きく横たわっておるということは事実であります。そうした認識はやはりちゃんと持ってこれから対応していかなければならないのじゃないだろうか、こういうふうに存じておるわけであります。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、いまお話を聞いて非常に矛盾を感じているのですが、一方において平和を叫んで、しかも米ソ間がますます険悪になってきておる。デタントの方向とはおよそ別な方向に走ってきておる。しかも、この米国とソ連の谷間に日本はあるわけですよ。谷間というか最先端というか、どっちから見ても最前線の接触点に日本はあるわけなのです。アメリカがいまのようにどんどんと軍備を拡大して、あのレーガン流のワンマン外交を進めた場合に、その余波を日本が受けて、かえって日本の立場が不利になるということを私は考えるわけです。  それは現実に不利になっているのじゃありませんか。いま、アフガニスタンの問題でソ連を制裁するということで、アメリカの言うなりに日本は制裁措置を講じました。ところが、西ドイツフランス、ああいうところでは一応従ったようなふりはしたものの、実際にはそういう制裁措置を講じないと同様の、それ以上の、今度逆に日本の対ソ離反というものを利用してソ連の市場に相当強く食い込んでおるのは事実でございます。そればかりではありません。さらにいろいろな、これからシベリアの開発なりあるいは十二次五カ年計画の実施なりについて、日本が仲よくさえしておればどんどんとこれに参画できる、そういう条件にあるにもかかわらず、いまだにその制裁措置を解こうとしない。そして、口先ではソ連とも仲よくしよう、そういうことでは私は実態として外交が進むものではないと思うのです。一体こういう事態をどういうふうに考えているのか。  いま北方領土問題を出されましたけれども日本社会党では全千島を要求しているわけですが、皆さんは四島しか要求していない。しかもこれは、いまのような国際条件の中で不可能だと私は思うのです。不可能ならば、なぜ可能な条件をつくろうとしないのか。それは軍事的対立がアメリカとソ連は非常に激しい状況にあるから、その前進基地となっている日本にソ連の基地を提供するようなかっこうでの領土返還ということは恐らく考えられないと思うのです。これはソ連の世界戦略の中で北方領土が位置づけられているからなんです。日本とソ連だけの問題じゃない。だとすれば、そういう中で日本はもっと米ソ対立の緩和に乗り出して、みずから制裁措置などというものはこれを破棄して、そして正常な外交を打ち立てるように努力する。しかもそれは、一遍に平和条約を結べというものではないのです。経済交流、人事交流、文化交流、そういうものを通してお互いの国に横たわっておる不信感を取り除いていく、こういう努力が外務大臣からなされなければこれはどうしようもないじゃないでしょうか。その点についてお伺いします。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまソ連に対する経済制裁措置に対する批判をされたわけでありますが、その前に、やはり問題はソ連のアフガニスタンに対する侵略だと私は思うのです。とにかくソ連が全く違う国家体制の国に対してあえて軍事的に介入をする、侵入をするということは、今日の世界の情勢の中にあって、あるいは国際的なルールから見て許されないことだと私は思うのです。ですから、経済制裁措置を非難する前に、まずやはりソ連のアフガニスタン侵略というものに対して世界が厳重に抗議をし、そして歯どめをそれなりにかけていくということが大前提だと思うわけでございます。そういう意味で、アメリカを初め西側諸国はソ連の反省を求めてアフガニスタンからの撤兵を何とか実現をさせるための努力をいましておるわけでございますから、私はやはり、アフガニスタンの侵略が続いている以上はソ連に対する厳重な抗議とそれなりの対応措置というものは行っていかなければならない。そうしなければ、またそうした方向が、既成事実というものがアフガニスタンだけでなくてその他の国にまで及んでいくおそれがある、世界の平和な秩序が完全に崩壊をする、こういうふうに私は恐れるものであります。  それから北方四島の問題については、渡部さんと私の見解も違うわけですが、私たちはいま現実的に不可能だとか可能であるとかという前に、やはり北方四島というのは歴史的にわが国の固有の領土である。固有の領土である原点の中で私たちはソ連に対してこれを強く返還を主張しておるわけでありまして、これはやはり日本の悲願といいますか、日本の主張というものはどういう情勢になっても曲げることはできない。何といいましても固有の領土ですから、これが回復のためには、今後とも、時間はかかってもソ連に対して粘り強く要求をしていかなければならない問題であろう、こういうふうに思うわけであります。  同時にまた、日本アメリカとソ連の谷間であるというふうなお話もありましたが、日本のいまの外交の立場というのは、西側陣営の一員、そしてアメリカとの間においては日米安保条約を結んでおる、いわば同盟の関係にあるわけでございます。そうした意味で、われわれはやはり日米を基軸とした外交を進めておる。それがまた今日の日本の平和をもたらした大きなゆえんである、私はこういうふうにかたく信じております。この路線は変えるべきでないという信念を持っておるわけでございますが、同時にまた、先ほどから言いましたように、日本としてはああした敗戦、そうして新しい憲法、そういう中で日本で生まれたこの平和外交というものを積極的に進めていくことは当然のことでありまして、日米外交基軸であるとは言っても、ソ連に対してもただ対立を好むだけではなくて、ソ連との間でも何とか対話を進めていきたい、体制の国といえども積極的につき合っていかなければならぬというのがこれまた日本方針でございますから、そういう日本外交方針の中で日本世界の平和に貢献できる、あるいはまた世界の軍縮に寄与できるという面も私は大いにあると思っております。  日本経済的には世界の中で非常に大きな力を持ってまいりましたので、そうした力も背景にして、私はむしろそれを軍縮であるとか世界の平和のための貢献であるとかいうものに積極的に生かしていかなければならないし、その道は大きく開かれておる、私はそういうふうに考えて、今後とも努力をしてまいりたい、こういうふうに存ずるわけであります。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ソ連に対する制裁はアフガニスタン侵略によると言っておりますが、実はこれはアメリカからそうしてくれと頼まれてやったんじゃないでしょうか。もしそうでなければ、なぜイスラエルがレバノンに侵攻したときにイスラエルに同様の措置をしなかったのか、あるいはベトナムがカンボジアに侵攻したときになぜしなかったのか、その辺のかかわりをお聞きしたいと思います。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはただアメリカから頼まれてしたということじゃなくて、日本としてはいち早くソ連のアフガニスタンに対する侵入に対してはこれを批判し弾劾をする声明を出しておりますし、国連の場等におきましてもこれは強く主張いたしておりますし、同時にまた、アメリカその他西側諸国と相提携をして経済措置に踏み出したわけでございます。カンボジアについても同じことが言えるわけで、とにかくカンボジアに対するベトナム軍の侵入は世界の平和な秩序を乱すということで、日本もベトナムに対しては経済援助等についてもこれをストップしておるというのが今日の状況であります。その他イスラエルのレバノンに対する侵入に対しては当時の外務大臣から強硬な声明を出しておることも事実でありまして、われわれは、いずれにしてもそうした他国に対して侵入とか侵略とかが行われる場合に対しては断固としてこれに反対をするというのが日本外交の基本方針であることはいまさら申し上げるまでもありませんし、それを踏まえた措置をそれぞれとっておるということも明らかでございます。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、私は侵略を是認せよとは言っていないんですよ。それはやはり侵略に対しては、国際世論を盛り上げることによってそういうことは一切なくしていかなければならぬし、しかも、そういう問題は国際的にもなかなか複雑微妙な問題として私は慎重にやるべきじゃないか。ただ侵略があったから、即座にそれじゃこれを制裁しようというような短絡的な考え方でやっていくことは非常に危険ではなかろうかと思うわけです。  そして、しかもこのソ連に対する制裁措置をやっているとはいうものの、実態としては全然効力を発揮していない。全然とは言いませんけれども、それほどの効力は発揮していない。なぜならば、通商関係を見ましてもかえってふえているんですよ。毎年毎年ふえてきているんです。これは一体どういうことなのか。しかも日本に制裁措置で協力してくれと言ったアメリカでは、穀物を禁輸すると言いながら裏の方からどんどん流したじゃありませんか。そうしていつもばか正直みたいに日本は損ばかりしておる。こういう状況をやはり自分の頭で考えてもらいたいのです。アメリカの頭を通さないで、自分の頭で日本のために考えてもらいたい。そうすれば、ばかの一つ覚えみたいに北方領土だけ一番先頭に出して交渉したらどんな交渉でもだめになるのはあたりまえでしょう。北方領土の要求は要求でどんどんとやっていけばいいですよ。しかし、それを条件にあとは進まないというのでは、これはとてもじゃないが、だんだんと険悪になって危険な道に入らざるを得なくなると私は思う。だから今度の貿易経済代表団の役割りというものは、そういう意味で、ぎくしゃくした国家間に対して民間外交がある意味では非常に有効な働きをしたと私は思うのです。  そこで、まず第一点は、いまやっておるソ連に対する制裁措置、ソ連はこれを認めていないと言っております。相手が認めてもいない、それほど実効も上がらないものならば、こういうものを早く取り外して、そして今度行った代表団のいわゆるあの話が実るように、そしてまた国家間の対立関係が緩和するように、そういう働きかけが必要じゃないだろうか。そしてアメリカに対しても、いまのようなレーガン政権の外交のやり方というものにはむしろ日本は批判をしていくべきではないでしょうか。  レーガンはもはや国民の半分の支持を失っているのです。半分以上の支持を失っている。この次、大統領になれるかなれないかもわからない。それほどレーガンは孤立してきておる。国際的にも孤立してきておる。ECあたりではレーガンについては余り信用していない。そしてどんどんソ連と交易を結んでおる。こういう現実を見た際に、まず日本がいまやる仕事は、アメリカに安保条約でべったりすることではなくて、逆に平和憲法を高々と掲げながら全世界日本の平和外交を進めることだと私は思うのです。その第一歩がソ連に対する一つの働きかけ。いま民間がやったから、これから国家間においてもよほどやりやすくなってきておると思います。また、そういう一つの土壌というか、温床というか、そういうものができ上がりつつあるんじゃないか。このチャンスを逃さないで、この条件日本のためにどういうふうに活用するかということが外務大臣の仕事ではなかろうか、こういうふうに私は思います。どうでしょうか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 対ソ経済制裁措置というのは日本だけがやっているわけではありませんで、西側がそろってそういう措置を協議の上とっているわけでありますから、今後ともこの問題については西側陣営で話し合って、そして対処をしていくべき課題である。日本だけがこれに対してどうするこうする、それは西側諸国で話し合う中で日本の意見を言うことは当然でありますし、日本の主張を通すこともそれなりに大事なことでありますが、しかしやはり日本だけが一方的にそういう話し合いから抜けて独自の道を歩くというわけにはまいりませんし、その基本というのはやはりアフガニスタンに対するソ連の侵入、そういうものに対して反省をソ連に求めたいというのが基本でありまして、この考えは日本としては変えるわけにはいかない、こういうふうに私は存じております。  それから日ソ間につきましては、確かに領土問題あるいはアフガニスタンに対する侵入の問題等について対立があることは事実でございますが、反面また貿易の面については、民間貿易等については日本の場合においては自由でありますから、そういう意味で今回の永野ミッションが行かれて、そして民間貿易を拡大するということについては、われわれはこれに対して何ら異議を差し挟むものではないわけでございます。同時にまた、われわれは、日ソ間のパイプというものがもちろんあるわけでありますから、そのパイプを通じまして四月には日ソ間の事務レベルの会談も行われるわけでございますから、こうしたパイプを通じながらの対話というものも進めていく必要がある。  私は、できればソ連のグロムイコ外務大臣と会いたいと思っております。グロムイコ外務大臣と会って、いまのソ連の日本に対する考え方、その中にはずいぶん誤解もあるんじゃないかと私は思います。あるいは日本の主張もさらに述べなければならないし、誤解も解かなければならない。そして日ソ間の対話が一歩でも前進することについては私はこれを積極的に進めていきたい、こういう考えでございますから、いまおっしゃるように、何か対立を激化するという方向に日本が動くとか、そういう考えは毛頭ないわけでございます。けじめはきちっとしながら、やはり話し合いは続けていく、そういうのが私の考えでございまして、そういう立場で今後とも日ソ外交を進めてまいりたい、こういうふうに考えます。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 グロムイコ外相とお会いして話し合いたいということは非常に結構です。そうなると、これは外務大臣は訪ソを考えているということになるのか、あるいは日本にグロムイコ外相をお招きするということになるのか、その辺一つと、あとは、そういう民間外交に圧力は加えないと言っておりますけれども、実際加藤欧亜局長が永野代表団が行くときに大分圧力をかけて、政経不分離ということでやってもらわないと困るという趣旨のお話がされて、新聞等にもそこで永野さんが非常に立腹されたということまで書いてあったようでございますが、そういう事実はなかったのですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 後で欧亜局長がお答えいたしますが、その前に、グロムイコ外相との会談について申し上げます。  この前カメンツェフというソ連の漁業大臣がやってまいりました。その際私から、ぜひともグロムイコ外務大臣に会いたい。日本外務大臣はこれまでしょっちゅうモスクワには行っておるわけです。そして今度はグロムイコ外務大臣日本に来る番ですから、今度は日本にお迎えをしてぜひともひとつ会談をしたいということを申し入れまして、カメンツェフ漁業大臣も、これはグロムイコ外相に伝えよう、こういうことでございます。グロムイコ外相が日本に来られることをわれわれは非常に期待いたしておりますが、そういうことができない場合には、あるいは第三国ということも考えられるわけでございます。  いずれにしても、こうした日ソ間が外交の面では確かに大変ぎすぎすしているというか、むしろ私から言わせると、日本に対するソ連の考え方に相当誤解がある。たとえば、いま日本が軍国主義の方向へ向かっておるなんというようなことは、私はとんでもないことだと思います。また私からグロムイコ外相に強く求めたいことは、グロムイコ外相はヨーロッパに配置しているSS20を一部極東に回すのだというようなことも言っておるわけでありますから、SS20が極東に回って日本に向けられるということになれば大変なことでございますから、そうした問題等についてもいまグロムイコ外相と会って篤と談判をしなければならない問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  33. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 二月の十六日でございましたが、訪ソ貿易経済使節団、いわゆる永野ミッションの結団式に当たりまして、事務局側からソ連の政治、経済及び日ソ関係について講話を願いたいという要望がございました。それを受けまして、私から大体二十分ないし二十五分、ソ連の内政、経済及び日ソ関係について御説明を申し上げました。その中で、日ソの現在の関係につきまして、先ほど来大臣からも御指摘がございましたとおり領土問題が未解決のままに残されているということ、それからアフガニスタン、ポーランドについてソ連の軍事介入、特にアフガニスタンについてソ連の軍事介入、こういう情勢があるもとでやはり西側の一員としてソ連との経済関係を考えていかなければならない。日本のような国の場合には政府が民間を統制するとか政府経済活動に命令を下すとかそういうことができないような仕組みになっている、これは自由経済でございますから当然でございます。したがって、政経不分離というようなことは恐らく不可能かと思うけれども、しかしこれは私どもの希望の表明として、政府の政策は無原則な政経分離を排すということであるから、その点に御理解を願いたいということを申しました。  それから、対ソのいわゆる制裁、私どもは措置と呼んでおりますが、その内容に触れまして、西側全体の協調の一環といたしましてソ連に対する公的信用供与につきましてはケース・バイ・ケースで判断をして進めるということになっておる、これはもちろん政府の資金でございます。そういうものについては出さないとかとめるとかいうことではないけれども、ケース・バイ・ケースに慎重にこれを判断することになっておる、この点についても御理解願いたいということを御説明申し上げたわけでございます。  以上が事実関係の御説明でございます。
  34. 渡部行雄

    渡部(行)委員 政府には政府の政策があり、民間は幾ら自由といってもまさか国策に違反してまでの自由は許されないということはわかります。ただ、いま民間団体が何をしに行くのかという場合に、その目的が十分かなえられるようなアドバイス、むしろそういうものが必要じゃないかと私は思うのです。何か説教じみた、お役人が人民に物申すみたいな言い方は、何といいますか、私はすとんと落ちないんですよ。やはり政府というのは上手にアドバイスをしながら自分の国策の上に乗っけていくというなら話がわかるけれども、これをしてならない、あれをしてならない、こういう状況であるぞというようなことはちょっと問題があるんじゃないか。  それから、この公的信用供与についてはケース・バイ・ケースだと言うが、そうするとこれは、いまいわゆるソ連に対する措置と言われましたが、俗に言う制裁措置とは無関係であると解釈していいでしょうか。
  35. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 正式な文書の表現等では制裁という言葉は使っておりません。ソ連に対する措置、その目的はソ連の行動に自制を促すことであろうと認識しております。
  36. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いや、いまの公的信用供与とその問題は関係はないのか。
  37. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ソ連に対するそういう自制を促す措置の中心をなすのが公的信用供与のケース・バイ・ケースによる慎重な判断による供与ということでございます。したがって、御質問に端的にお答えすれば、いわゆる制裁措置というものの最も大きな内容は、いま申し上げた公的信用供与の抑制と申しますか、ケース・バイ・ケースによる判断に基づく供与、こういうことであろうかと思います。
  38. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、今度の代表団が行って、あの共同声明や会談の中で日ソ経済合同委員会を早急に開催してもらいたいというソ連側の要請、そこで来年の四月後半にとにかくソ連代表団と日本財界との話し合いが行われる、こういう状況になってきたわけですが、この日ソ経済合同委員会の再開はしないということになりますか。
  39. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ただいま御指摘の共同声明は、今回の訪ソ貿易経済使節団とソ連側との間で取り決められた共同声明でございまして、私ども政府としては直接あるいは間接に関与しておりません。したがって、その内容について私から御説明ないし解説する立場にはないと考えております。  ただ、この共同声明を私が拝見いたしましたところ、来年の四月後半にこの会議を東京において開催しよう、こういうように書かれております。恐らく、これまで八回行われておりましたけれども、従来の日ソ、ソ日の経済合同委員会とは別の、今回の訪ソ使節団の会合の裏返しというような形の今回できた新しい会合が、来年その第二回を迎える、こういう認識のもとに書かれた表現である、かように私は解釈しております。
  40. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私の言っているのは、その代表団と日本財界との話し合いを言っているのじゃないのですよ。日ソ経済合同委員会を開催するつもりはないのかということなんです。向こうがこれを開催してもらいたいという要望があるんですから、それにどうこたえるんだということです。もっと私の質問をよく聞いてくださいよ。
  41. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 日ソ経済合同委員会につきましても基本的には民間の組織であると考えております。したがいまして、それについて政府がとやかく口を差し挟む立場にはない、かように理解しております。
  42. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、日ソ経済合同委員会というのは、いわゆる公的な信用供与がここにかかわっていると新聞等では出ておりますが、そのことはどうなんですか。
  43. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 日ソ合同委員会あるいはその他の今般の訪ソ使節団、そういうところで具体的な商談を進められて、その商談の内容として公的な信用供与を伴うということになったときには、政府としてそれを慎重にケース・バイ・ケースに判断して決める、こういう仕組みになっております。したがいまして、経済合同委員会の問題と信用供与の問題とは直接に関係のある問題ではないというふうに了解しております。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  44. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題はこれ以上突っ込んでも仕方ないと思いますので、次に移ります。  そこで、いまソ連は、一九八六年から一九九〇年までの第十二次五カ年計画が策定されようとしておるわけです。また、シベリアに対する開発等も無限の可能性を持っているわけで、こういうものに対する日本政府としての通商戦略と申しますか、一つの考え方というものが当然あってしかるべきだと思いますが、その点についてあったら御説明願いたいと思います。
  45. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 繰り返しになりますけれども、日ソ間には未解決の領土問題がございます。それから、アフガニスタン、ポーランド等に対するソ連の行動が国際的な非難を浴びております。こういうものに対して西側全体として協調を保ちつつ対処していこう、こういう考え方があるわけでございます。  こういう原則を踏まえて日本としてはソ連との関係も進めていきたいと考えますが、別の表現で申しますれば、日ソ間の経済関係は、平等互恵という原則、それからいま申し上げたアフガン、ポーランドあるいは北方領土の問題を踏まえて、無原則な政経分離を行わない、政経を一体とした形で進めていきたいというのが私どもの政策でありかつ願望でございます。
  46. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、これからソ連の方では日ソ間に長期経済協定でも結びたい、欧州並みに結んでいこうじゃないか、こういうことを言っているようですが、そういうことは領土問題やアフガニスタン問題が解決しない限り一切考えない、こういうふうに解釈していいでしょうか。
  47. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御指摘のとおり、西ヨーロッパの諸国は、アフガニスタン、ポーランドの前でございますが、かなり長期にわたる経済協力協定をソ連との間には結んでおります。同じようなものを日本との間にも結びたいというのがソ連側の要望でございますが、これに対して私どもは、そういう長期の協定がなくても日ソの経済関係は順調に進んでいるではないか、別にそういう長期な協定を結ぶ必要はないということを申しております。西ヨーロッパとソ連との間には懸案の領土問題というのはございません。しかも先ほど申し上げましたとおり、こういう一連の長期協定はアフガン、ポーランドの前にできたということがございます。こういう点を考えますれば、物事には絶対ということはありませんけれども、少なくとも当面日本政府としては、ソ連との間にかような長期経済協力協定を結ぶ可能性は考えられないのではないかというふうに考えております。
  48. 渡部行雄

    渡部(行)委員 こうやって議論をしていると、日本からソ連に対立をつくっているとしか思えないのですね。向こうではいろいろな面で経済交流をしたい、こうしたい、ああしたいと言っているが、ただそれが北方領土とアフガニスタン問題だけで、それじゃ日本が制裁を加えておればアフガニスタンは解決するのかというと、現実は全然動いてないじゃないですか。その制裁が実効を伴っていない。そういうもので日本の発展を阻害するということは、私はどうしても考えられないのですよ。しかも北方領土なんか、だれが考えたっていますぐ返すなんという見込みはないでしょう。それはそれとして、懸案事項として、長い歴史的なこれは一つの積み重ねをする以外に道はないと思うのですよ。そういう一方に長期の歴史的な仕事といま短期の目の前の仕事を結びつけて考えることは、私は国益を損なうもとであると思います。そういう、何というか、余りにも前段にとらわれ過ぎて日本国民というものを忘れてはならないと思うのです。  私たちはいま、どうして世界の平和をつくり、日本の安全をどうして守るかということに真剣なんですよ。それを、ソ連とますます対立するような方向で日本外交が動いていったら、私は大変な事態になると思う。また、そういう期間のうちにどんどんと西側に入られて、日本が今度ソ連を必要としたときに入ることができない。この問題はどちらが困っているかというと、私は日本が困っていると思うのですよ。いま、どんどんと一方においては貿易摩擦が出てきて、ますますアメリカ、EC等に対する輸入は規制されてきておる。そういう中で、その規制された分をどんどんとソ連の方に売るような努力をしたらいいんじゃないですか。品物には国境はないですよ。そういう一つの思考方法をいま転換する必要があるのじゃないか、私はこういうふうに考えますが、その点はいかがでしょうか。
  49. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ソ連との対立の要因を日本側がつくっているという御指摘でございますが、北方領土の問題というものは、もう少ししさいに見ていただきたいと思います。北方領土問題が未解決で残されているということのみならず、さらにそれに加えて、われわれの固有の領土であります北方領土におけるソ連軍の軍備構築という事実がございます。しかもこれが年々増強の傾向を見せているということ、それから極東方面におけるソ連の軍備力の増強という問題、SS20とかそういうものが話題に出ておりますが、こういう行動を考えて対処しなければならないということもまた真実ではないかと思います。  先般来外務大臣の方から繰り返し御説明しておりますとおり、われわれとしては、あえてことさらにソ連と敵対関係をつくろうとか、ソ連を仮想敵国にして事を構えようとか、そういう意向は毛頭ございません。しかしながら、日ソ関係の緊張の原因をつくっているのは日本側ではなくてソ連側の行動である、このように結論せざるを得ないと思いますし、これがまた客観的な判断の当然の帰結であるというふうに考えております。
  50. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大臣にお伺いしますが、それじゃ日本には全然日ソ関係の対立の要因はないのだ、向こうが悪いのだ、こういうことなんでしょうか。  今度中曽根総理がアメリカに行って、三海峡封鎖あるいは日本列島を不沈空母にする、バックファイアやミグ戦闘機は水際でこれをはね返す、あるいは同心円だとか、いろいろとそのほかソ連を刺激するような言葉をぽんぽんと吐いておられるようですが、私は、最も下手な外交だと思うのです。どういう意図でこういうことを言わなくてはならないのか。いまそういう事態が来ているなら別ですよ。何ら事態としてはそういう進展がない中で、わざわざ相手の心を爪でひっかくような言葉を吐かなければならないというのは、どういう意図なんでしょうか。三海峡封鎖というこの軍事的意味は、どういうふうに思っておられるのですか。  アメリカの戦略、世界戦略から考えれば、三海峡封鎖というのはもう世界大戦を想定しての話なんですよ。ここを封鎖すれば、必ず世界大戦になるのです。それは軍事専門家が異口同音に語っているところでございます。それほど重大な問題を、その事態が進展しないいまの時点でなぜ言わなくちゃならぬのか。しかも、日米は運命共同体である、日本国民アメリカと一緒に死ぬなどということは考えていませんよ。そういうことをぬけぬけと総理に言わせておいて、一体外務大臣外交をやりやすくなったのですか。いつから全方位外交というものを捨てたのです。あなたの親分の福田元総理は全方位外交ということで世界に大変人気をとろうとしたやさきにやめてしまいましたけれども、その方針はいまでも私は正しいと思いますが、あなたは間違ったと思っておりますか、いつからその全方位外交の方向転換をしたのですか、お伺いします。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連との関係は、先ほど欧亜局長も述べましたけれども、厄介な北方領土の問題があります。これを、未解決だとか懸案だとかと言うなら、双方の認識がそういうことなら日ソ関係というのはもっと進んでいくだろうと私は思うのですが、ソ連に言わせるともう解決済みだ、こういうことですね。これは田中・ブレジネフ共同宣言にも未解決だというふうに言っておるにもかかわらず、その後ずっと解決済みだと言っておるところにどうしても大きな問題があるので、われわれは何としてもこれは未解決の問題、懸案の問題として今後ともソ連と交渉を進めていかなければならない。ソ連もそこまで、田中・ブレジネフ会談の線までソ連が内外に宣言しているわけですから、そこまで領土問題についても考えなければ、もう日ソ関係というのは本当にこれから前へ進むということはあり得ないのじゃないか、こういうふうに私は思っております。そういう問題については、これからも粘り強くわれわれは主張して交渉を進めたいと思うのですが、ソ連との関係はそうした大きな問題があります。しかし、先ほどからしばしば申し上げておりますように、何とか対話は進めたい。また、これは現在にも行われておるわけで、永野ミッションなんかもその一つでございますが、そういう努力は今後続けていきます。  しかし、ソ連のいまの日本に対する認識、特に日本の現状に対する認識というものは、先ほどからお話がありましたように、最近相当厳しくなったことは事実です。日本のいまの行き方が軍国主義的であるとか、あるいは中曽根総理の不沈空母発言あるいは三海峡封鎖発言をめぐって、ソ連の日本に対する批判というものはさらに痛烈になってきたことも事実であると思うわけでございますが、こうした発言なんかは、これは中曽根総理も国会でしばしば説明しておりますように、不沈空母というのはいわば日本の国を守らなければならぬという気概を示すための一つの比喩的な発言である、こういうことも言っておるわけですし、あるいは三海峡の問題についても、日本が有事の際に三海峡をコントロールする、日本が攻撃を受けたとき、日本の領海、三海峡に対して日本がコントロールの努力をすることは、これまた当然のことではないかと私は思っておるわけであります。そうした日本のいままでの積み重ねてきた防衛政策というもの、あるいは日本外交の基本的な方針というものからいまの中曽根総理の発言というのは飛び出ているわけじゃないわけですね。ですから、それがいかにも飛び出ておる印象をソ連が持っているとすれば、私は誤解であると思うのですね。ですから、これはよく説明をして解かなければならない。  私がグロムイコ外相に会いたいというのもそうした意味もあるわけでございまして、二階堂特使に中国に行っていただいた、こういうことも、日本の立場というものを明確に伝えて、日本のこれまでとってきた外交政策あるいは防衛の基本というものは変わってないのだ、こういうことをはっきりと伝えて、それなりの評価を中国から得たわけでありますから、ソ連も日本のそうした考えというものがはっきりわかれば、いまあれほど厳しく日本に臨んでおりますが、これもまた理解が出てくるのじゃないか。そうしてもらわなければ私は困る。架空あるいは誤解の発言の認識の上でいたずらに対日姿勢を強化してもらっては私は困るのだ、こういうふうにいま思っております。この辺の努力はひとつ何とかやりたい、私はこういうふうに考えておるわけであります。
  52. 渡部行雄

    渡部(行)委員 全方位外交についてはお答えがなかったようですが。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は福田内閣の官房長官もしておりまして、全方位外交というのは福田総理も主張してこられた。全方位外交というのは、私が申し上げるまでもありませんが、等距離外交ということではないわけですね。日米関係というものを一つの基軸にして、あらゆる国、体制が違う国とも仲よくつき合っていく、いわゆる日本の平和外交というものを象徴的に言った言葉であろうと思いますが、この方針といいますか、この基本精神というものを日本は失ってはならない。先ほどから私が申し上げました平和外交という趣旨もそこに存するところでございまして、そういう立場は私自身も貫きながら今後も外交を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  54. 渡部行雄

    渡部(行)委員 しかし大臣は、西側外交、西側西側と、日本の西側に対する位置づけを強調し過ぎると思うのですね。どういう場合にどういうことを言ったらいいのかということを十分慎重に判断していただかないと、要らない摩擦を起こす結果になりかねないと思います。  そこで、日米安保条約があったから日本はいままで平和でこれたのか、平和憲法があったから日本は平和でこれたのか、こういうことをどう考えておられるか、この点が第一点でございます。  それから、最近アメリカからいろいろな要請がされてきておる。シーレーンの防衛であり、あるいは日本の軍備については、まるでふところに手を突っ込むようなかっこうで日本予算の中身にまでくちばしを入れてきておる。そうして今度はアメリカの議会では、アメリカが太平洋に回す武器の一部負担をさせよう、こういうようなことまで議論されておるわけですよ。こういうものに対して一体日本は本当に独立国なのかどうかということは、私は疑わしいと思うのです。そういう点で、あなたは本当に毅然たる態度でこの問題をどう処理されるおつもりか、お伺いいたします。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は言うまでもなく独立国家であることは世界がこれを認めておるわけでございますし、日本人も独立国家であるという信念のもとに国家の経営を進め、これに参画していることは間違いはないわけでございます。  憲法、それから平和条約、そういうものによって日本の今日の平和と安定をもたらしたのかとおっしゃるわけでありますが、私はそのとおりだと思います。憲法の平和主義であるとか、あるいは自由主義であるとか民主主義であるとか基本的人権の尊重であるとか国際協調であるとか、そういうものが一つの基盤となって今日の日本をもたらしたわけであります。同時にまた、日本アメリカとの安保条約の締結によって、これがいわゆる戦争への抑止力というものとなって今日までの日本の平和と安定というものが続けられてきておる、こういうふうに私はこれまた確信をいたしておりまして、これはぜひとも存続をしていかなければならない、こういうふうに考えます。  そういう中で、日米関係は安保条約があるものですから、そして安保条約というのは、日本アメリカに対して基地を提供し、あるいはまたアメリカの駐留もこれを認めておる、かわりに日本が攻撃を受けたときはアメリカ軍が血を流して日本を守る、こういう約束でございます。これが戦争の抑止力になっておるわけですから、私は、この安保体制というものを効果的に運用していく、機能強化をしていくということは日本の平和のために必要ではないか、日本の平和というだけでなくてアジアの平和、世界の平和に寄与するものである、こういうふうに考えております。そういう意味で安保条約、安保体制の効果的運用を図っていこう、こういうことが政府の立場でございます。  そういう観点から、いわゆる武器技術の交流というものも今回これを認めることにいたしたわけでございます。もちろんMDAという協定のもとに、いろいろと日本は武器輸出三原則というものがあるわけでございますから、同時にまた日本の現在とっている国家の平和理念というものも踏まえていろいろな歯どめをつけながら、しかし同時に相互交流というものは、安保条約の効果的な運用というものを図って、安保条約はやはり機能させなければならないという立場でこれを認めるということにしたわけでございますから、これはただアメリカから言われてやったんじゃない。日本日本の自主的な判断でそれを認めた、こういうことでございまして、あくまでもこれによっていわゆる紛争の助長であるとかあるいは日本の平和への理念というものを損なうものではないというふうに私は確信をいたしておるわけであります。
  56. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いまのお話ですが、安保条約の効果的運用というのは、具体的にはどういうことでしょうか。  それから、武器輸出の技術供与の問題については、アメリカから言われてやったのではない、日本からやったとなれば、これはますます問題になると私は思うのですよ。それは説明のときには相互援助協定に基づいてやるんだと言って、アメリカからそういう要請があったからやるんだ、そしてこれは武器輸出三原則によらないものとする、こういういいかげんなものをつけてやったわけですね。その武器輸出三原則によらないものとするということは、これは違法だから、国会決議に違反するからよらないものとすると言って国会決議をわきの方に寄せてしまった議論であって、そういったこと自体が違反だということを認めているわけですよ。そのくらいはおわかりいただけると思います。  そこで、外務省は近くアメリカに対して非核三原則の遵守についてひとつ改めてその方針を伝えると言われておりますが、これはいつごろどういう形でやるおつもりか、明らかにしていただきたいです。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 安保条約の効果的運用というのは、日米間の安保条約を結んでいるそういう立場に立っての信頼感をこれによってますます高めていく、同時にまた、いわゆる安保条約の持っている抑止力というもの、これを強化していくというのが安保条約の効果的運用、こういうことになっていくのではないか、私はこういうふうに考えておるわけでございます。  それから、武器技術の輸出といいますか相互交流につきましては、これはもちろんアメリカから要請があったことは事実です。しばしばにわたってアメリカから強い要請がありました。それを踏まえて、決定したのは日本が独自の立場で、安保条約の効果的運用という立場を踏まえて、これを効果的に運用するためにはこれは相互交流に持っていくべきである、こういうことで、これは日本政府の独自な立場で認めたということを申し上げたわけでございます。  しかし、武器技術の輸出につきましてはMDAのもとで細目協定を結んでこれからやっていくわけでございますが、その際にはMDAの持っておるいわゆる国連憲章を遵守しなければならないとか、あるいは第三国への供与等についてはこれは同意がなければできないとか、いろいろと歯どめもあるわけでございますし、またアメリカに対する武器技術については三原則によらないということにしたわけでありますが、一般的にはやはりわれわれは武器三原則というものを持っておるわけでございますから、そうした精神等も踏まえながらこれに対しては慎重に取り組んでいかなければならないというのが私たちの考えでございます。  それから非核三原則については、中曽根総理も国会で発言をしておりますように、国是だと私たちは考えております。したがって、これは今後とも守り続けていかなければならない日本の大原則でございます。そういう中でアメリカとの関係につきましては、日本の非核三原則を遵守するということはアメリカも十分承知をいたしておりますし、また国会等で政府がしばしば答弁をいたしますように、たとえば核の持ち込みということについては事前協議の対象になる、事前協議の対象になった場合は日本はこれをノーと言うことは、アメリカとしても十分承知しておる。日米関係でございますから、信頼関係が基礎でございますから、日本政府が国会に対してこれだけはっきりと説明したことについてはアメリカ側も十分承知していることは当然であるわけでございます。したがって、いまさらアメリカに対してこれを確認する必要もないわけでございます。  しかしこの問題は大事でございますから、最近しばしば国会の議論等でも出ておりますから、日本の非核三原則の立場というものをアメリカにははっきりと伝えなければならない。そうしてアメリカもしばしば言っておりますように、事前協議の条項はこれを遵守するというアメリカ政府の再確認は得なければならないのじゃないか、こういうふうに実は考えておりますが、その時期等につきましてはまだいま検討しておるわけでございますが、これは一度アメリカ政府との間でこれまでのアメリカ政府の立場の再確認を得たい、こういうふうに実は思っております。
  58. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時期等については検討しておると言われましたが、三月二十一日には原子力空母のエンタープライズが佐世保に入港すると言われておりますし、そのほか巡航ミサイルトマホークを搭載した戦艦ニュージャージーあるいは最新鋭と言われる原子力空母カール・ビンソン、こういうのが最近次々と来ると言われておるのですが、それらについてはどういうふうにお考えですか。  なお、そのほか一応こういうクラスの艦船が入ってくる予定がありましたら、明らかにしていただきたいと思います。
  59. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま御指摘のエンタープライズの寄港につきましては、アメリカ側からその可能性について一般的な通報を得ておりますけれども、具体的にいつ、どこへ、どういう目的でというようなことはまだ通報を受けておりません。それからさらに、ただいま御指摘のございましたカール・ビンソンであるとかその他の艦船の寄港、入港その他については、一切何らの一般的な通報も受けておりません。  しかし、こういうような艦船がわが国に寄港いたします場合には、これは日米安保条約及びその関連取り決めに基づいて、その都度私どもは取り扱う所存でございます。
  60. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それで、いまどんどんとそういう戦艦や原子力空母あるいは原子力潜水艦、こういうのが日本の港に立ち寄るということになると、これらは常識的に言っても皆核搭載艦だと思うのです。何も日本に観光に来るわけじゃなし、一つの作戦展開の中で立ち寄るわけですから、それらが核弾頭なり核を積んでいないという、これをどうして調べる方法があるのでしょうか。その点について、ただ向こうが積んでおると言わないから積んでいないだろうというようなこういうことでは、私はせっかく非核三原則を通告したところでこれは何の薬にもならない、こういうふうに思いますが、大臣どうでしょうか。
  61. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほども外務大臣から御答弁いたしましたように、いかなる核の持ち込み、艦船による通過であろうとあるいは寄港であろうと、いかなる形においての核の持ち込みも、これは事前協議の対象でございます。その場合、アメリカは事前協議をするという条約上の義務を持っておるわけでございまして、日米間の信頼関係に基づきまして、必ずやそういう場合はアメリカ側からの事前協議があるというふうに私どもは信じております。また、アメリカは核の所在を明らかにしないというマクマホン法等のあれはございますけれども、しかし、アメリカの権限ある官憲というものは核の持ち込みの際の事前協議というものをする権限というものは与えられておるということでございますので、私どもとしては必ずそういう場合には事前協議があるというふうに信じております。
  62. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはわかっていて言っている話ですから、もうこれ以上突っ込みません。  それでは、いまアメリカでは、いわゆるAWACS、E3Aという飛行機を日本に六機ほど売りつけなければならないということを言っておるのですが、この安保条約の効果的運用の中でこういうものをやはり買わなければならぬのでしょうか。その辺はいかがでしょう。
  63. 北村汎

    北村(汎)政府委員 軍事的な面については後から防衛庁の方から御説明いただくと思いますが、先ほどおっしゃいました飛行機を日本に買わせろというような議論というのは、アメリカの議会の予算局の中で出てきたわけでございますが、これは決してアメリカ政府の考えでもございません。私どもといたしまして、そういうものを買う予定もないというふうに承知しておりますが、その点につきましては、また防衛庁の方から御答弁があると思います。
  64. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ただいまのAWACSの購入の件につきましては、ただいま外務省の北米局長から御答弁がありましたように、米国議会の予算局が米国の財政赤字の解消のための一つの示唆としてそういう報告を出したということは私ども承知しておりますが、現在私どもはAWACSを購入する計画は持っておりません。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、時間も参りましたから最後に、三沢に米軍のF16が配備される、そうしてそこの哨戒には日本の自衛隊のE2Cが当たっている、こういうことで作戦が展開されておると言われておりますが、そうすると、このE2CとF16というのは常に関連して行動することになるのではないかと思います。そうした際に、この作戦の一体化ということになりますと、どうしても私は指令の一つの系統化ということが必要になってくるのではないか。その場合、その指令の系統化が進められていけば、これは当然個別自衛ではなくて集団防衛になるのではないだろうかと思いますが、そういう点が第一点。  それから第二点は、いまシーレーン防衛を言われております。しかし、シーレーン防衛というのはどういうことかと申しますと、一定の海域を一定の時間支配する、コントロールするという、そういう機能が出なければシーレーン防衛にはならない。そうなると、公海上でそういうことが日本の海上自衛隊なり航空自衛隊なりによってなされるとなれば、当然これは私はこの専守防衛というものに反していくのではないだろうか。その辺の考え方についてお伺いしたいと思います。
  66. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、E2Cと三沢に配備を予定されていますF16との関係につきましては、御承知のとおりE2Cというのは、現在私ども自衛隊が持っております二十八個の地上のレーダーサイトがございます。こういったレーダーサイトでは、いわゆる低空域で侵入してくる航空機の発見が非常にむずかしいというふうなことから、このレーダーを空中に上げまして、相当遠くから侵入機を捕捉するということが目的でございまして、いわばレーダーサイト機能の一部を空中に上げるというものがねらいでございます。それから三沢に配備されるF16の運用というのは、これは昭和六十年ごろから約四十ないし五十機のF16が配備される予定でございますが、これがどのように運用されるかについてはまだ私ども十分認識しておりませんし、またE2Cの運用もこれからまた一、二年先の話になる。そういったことで、いずれにせよ、E2Cはわが方のレーダー機能の補完であるということから見まして、それが即三沢のF16と直結するかどうかということは一概に言えない。  それからもう一つは、指揮系統について言及されましたが、あくまでも米軍と自衛隊は別個の指揮系統で、それぞれの指揮系統で調整をしながらやるということになっておりまして、決して日米いずれかの単一指揮に両方の部隊が入るというようなことは全く考えておらないということが結論でございます。  それからもう一つ、シーレーンの問題につきましては、御承知のようにシーレーンというのはわが国の海上交通の保護を行うことが目的でございまして、そのためには、通峡阻止の問題から海洋の広域捜索あるいは船団護衛、いろいろな作戦のいわゆる累積相乗効果によってその目的を達しようというものでございまして、いま先生御懸念のような、海域を分担してそれを支配し、それに対してどうこうということではなくて、結論は、わが方の航行する船舶の安全を確保することを目的として行動するものであって、そのことが直ちに集団的自衛権であるとかそういったものに伸びていくような心配は全くないというふうに思っております。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  68. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 この際、関連質問の申し出がありますので、これを許します。上原康助君。
  69. 上原康助

    ○上原委員 せっかく外務大臣がおいででありますし、どうしてもお尋ねしておかなければいけない案件がありますので、若干の時間をおかりして関連質問をさせていただきたいと思います。  いま渡部先生のお尋ねに対しても、日米安保条約というものはわが国の平和に寄与しているのだ、あるいは戦争の抑止的効果を果たしている、その基礎は日米間の信頼関係が大事なのだというお話がありました。しかし、安保条約に基づいて膨大な基地があるがゆえに多くの被害や不安や、ときによっては人間の生命さえも失うという事件もまた続発していることを忘れてはならないと思うのですね。まさに日米間の信頼関係ということを強調なさるならば、私がこれから取り上げる問題については、日米間の信頼、友好を損ねない立場からも、政府は毅然たる態度をとらなければいけない問題だと私は認識をしているのです。  せんだっても北米局長に申し上げましたし、きのう沖特の委員会のときに外務大臣にも少し耳打ちをいたしましたが、実は去る二月二十三日午後十一時四十分ないし四十五分ごろ、金武町のキャンプ・ハンセン基地内でタクシー運転手目取真興栄さんが米兵に刺殺されました。まさに残忍な手口なんですね。考えてみてください。四十歳の働き盛りの男が家族に送られて仕事に出かけた。こういうことが平和な社会で一体予想されるでしょうか。この家族のことを考えた場合に、この問題というものは、私たちとしてはどうしても早急に日本側が犯人を拘束すると同時に十分な裁きをしなければいけない問題だと思うのです。  時間がありませんから多くは申し上げませんが、まず、この凶悪犯罪を政府としてはどう見るのか、そして米側にどのような善処策といいますか、申し入れを行ったのか、その点からお尋ねしておきたいと思います。
  70. 北村汎

    北村(汎)政府委員 まず事実関係から私の方で御説明させていただきます。  ただいま先生がおっしゃいましたように、本事件はまことに遺憾な事件であると受けとめております。私ども外務省といたしましては、事件が発生いたしましてその通知を受けた翌日、直ちに在京米大使館並びに在日米軍司令部、それから日米の合同委員会の事務局に対しまして、本件捜査が順調にかつ早急に進行するように米側の協力を得るよう申し入れをいたしました。そのとき米側は、この事件を重視いたしまして、できるだけ協力を行うという約束を私どもにいたしました。  追って、この被疑者二名の米軍による拘禁と捜査の進展がございましたので、三月一日、私、北米局長から在日大使館のクラーク公使に対しまして、本件事件について遺憾の意を表明いたしました。類似事件の再発防止のために米側が適切な措置をとるよう求めましたところ、先方から、アメリカ政府を代表いたしまして深甚なる遺憾の意の表明がございました。同時に、米国政府及び米軍としては本件の解決のために最大限の協力を行う旨、また、将来このような事件の再発を防止するために特別の努力をするということが述べられました。また、先方は同日、西銘沖縄県知事に対しましても、米国政府にかわり衷心より遺憾の意を表明したと述べておりました。  私どもが捜査当局からただいま聞いておりますところでは、捜査は米国の協力を得て順調に進められているというふうに聞いております。
  71. 上原康助

    ○上原委員 しかし、政府も恐らく私たちの申し入れにこたえる立場でおやりになったと思うのですが、米側に申し入れをしてそういう意向が政府に伝えられた、いきさつはそういう経過だとおっしゃるのですが、問題は、二月二十八日段階で米側は地位協定を盾に犯人引き渡しを拒否したという、この事実ですね。  確かに地位協定十七条五項の(c)においてはそういう取り決めがなされているかもしらない。しかし、これだけ無残に人を刺し殺しておきながら、日本側が犯人を拘束できないでおいて十分な取り調べができますか。そこに県民の非常な怒りがある。沖縄人なら、日本人なら虫けらみたいに殺していいのですか。犯行を自供している以上はやはり犯人を日本側に引き渡して捜査をさせ、取り調べを行うのが順当でしょう。警察庁、法務省おいでと思うのですが、果たして犯人不拘束のまま十分な調査ができますか、また起訴のめどはどうなっているのか、それぞれお答えいただきたいと思います。
  72. 飛田清弘

    ○飛田説明員 問題は、私どもは地位協定の枠内でできる限りの捜査をするということになるわけでございますが、御承知のように地位協定では、米軍の手中にその身柄がある場合には、特に米軍側が日本側においてする公訴提起までの間その拘束を継続するという規定になっておりまして、これは軍が身柄を拘束し、被疑者をその統制下に置いている以上軍の拘束を尊重するという国際的な慣例に従ったものというふうに考えられておりまして、いわゆるNATO協定においても同様の取り決めとなっているようでございます。そういう意味で、日本だけがそういう不利な協定ということではないのではないかというふうに思っております。  しかし、おっしゃるように、身柄が拘束されていないよりは身柄が拘束されていた方が取り調べはしやすいわけでございますけれども、一方、地位協定におきましては米軍が日本側の捜査に協力することも定めておりまして、その協力を得てできるだけ能率的に捜査を行う、こういうふうな仕組みのもとで、捜査当局は現在鋭意捜査を行っているということでございます。  検察庁にはまだ事件の送致がございませんけれども、いま警察の方におきまして米軍の協力を得て十分捜査を円滑に遂行しているようでございまして、検察当局におきましては、事件の送致を受けましてさらに十分調べをいたしまして、しかるべき処分をすることになろう、こういうふうに考えております。
  73. 金田雅喬

    ○金田説明員 本件につきましては、米軍側から被疑者、参考人の出頭、全面的に協力を得ておりまして、現在のところは捜査に支障はございません。三月一日から連日被疑者、参考人の取り調べを続行しておりまして、警察当局といたしましては、早急に事件を処理したいということで連日がんばっております。
  74. 上原康助

    ○上原委員 めどはいつごろですか。
  75. 金田雅喬

    ○金田説明員 捜査でございますので、いま直ちにめどを申し上げることはできませんけれども、早急に事件を処理して起訴をしていただいて、身柄を日本側にもらい受けたいと思っております。
  76. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣、きょうは時間ありません。地位協定を盾に言われるとそういうことになるかもしれません。しかし、これは県民感情、国民感情というのがありますね。その前例もあるわけですよ。昨年も八月でしたか基地外で起きた殺人事件で、そのときは三日目に沖縄県警に犯人の引き渡しをやったのですね。同じように地位協定あるわけでしょう。今回に限ってなぜそういう態度をとるかというところにも問題がある。  そこで、北米局長の方でいろいろ米側に申し入れをしたようですが、私はやはりこのことに対しては、外務大臣の立場で、いわゆる日本政府という立場で改めて次のことを少なくとも米側に厳重に抗議をすると同時に申し入れていただきたい。  第一点は、協定上の取り決めがあろうが、犯人の身柄を即刻日本側に引き渡すこと。そうでないと、これは日米間の信頼関係といったって政府間だけの信頼関係じゃいかぬですよ。国民を含めての信頼関係じゃないといかぬですよ。  二点目に、日本側の取り調べに支障がないよう米軍捜査当局に全面的に協力させること。すでに犯人が着服しておった衣服等については洗濯されているとか、いろいろな証拠の押収については問題があるということは県警も言っているわけでしょう。そういうことがないように。そして米軍の綱紀の粛正を厳重にさせること。被害者への補償に万全を期すこと。  このことについては、やはり外務大臣という立場で米側に改めて申し入れをしていただきたい。どうですか。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの上原さんの御要請につきましては十分承っておきます。  私も、今回のこの事件というのはまことに遺憾千万な事件であると思っております。ただ、いま捜査当局の話を聞きますと、捜査は十分行われておるということでございます。いずれにいたしましても、いまおっしゃるような十分な裁判が行われるということは当然至極のことでありまして、私たちはそういう立場で今後とも米当局と連絡は緊密にとってまいりたい。そして、同時にまた、こうした事件が再び起こらないように米側に対しても強く善処を求める考えであります。
  78. 上原康助

    ○上原委員 いつもこういう事件が起こるたびに、綱紀の粛正あるいは米側に再発防止を申し入れるということを言っておりますが、若干時間をいただいて、たとえば金武町の議会においても「金武キャンプハンセン基地内におけるタクシー運転手殺害事件に関する意見書」というものが二月二十六日に町議会で決議、採択されているのですね。この中にも、こういう表現がありますよ。「国は、かかる問題について、毅然たる態度を示し、今後、絶対事故を起こさないよう万全な対策を期す」、このことをやってもらいたい。しかも、「国は安保条約をたてに沖縄の米軍基地を容認しているにも拘らず、県民の生命財産さえも守れない。このことは国の対米姿勢の弱さに問題がある。」金武町議会もこういうことを指摘しているのですね。  そして、米軍がどういうことをやっているかということも書いてありますが、     基地外での米軍の行動について   凶悪犯罪は勿論のことであるが、次にかかげることは日常茶飯事のことで、町民は多大の迷惑を被っている状況で、基地内外の軍紀粛正を強く要求する。       記  1 窃盗事件が功妙な手口で、頻繁に起っている。  2 ワイセツ行為。  3 無銭飲食。  4 子供あそび場の占拠。  5 上半身裸体で歩く。  6 道路上で集団で踊ったり、交通の妨害をする。  7 交通信号無視、標識をこわす。  8 駐車中の車をこわす。  9 塵芥袋を破り道路に散らす。  10 道路及び歩道、空地等でのウイスキー、ビール、コーラ等のラッパ飲み。  11 店内の落書、器物の毀損。  12 言葉使いが下品である。  13 同僚とのけんか。  14 車の暴走運転。  15 道路でカセットテープレコーダーの騒音。  16 屋根から屋根への渡り歩き。  17 空家に侵入不良行為。  18 酒類に市販されている薬品を混入して飲む。  19 ビーチ等で全裸になる。  こういうことを日常茶飯事のように米軍軍属、軍人はやっているわけですよ。だから、環境においてもあるいは子供の教育の面から見てもいかに問題であるかということがわかるわけでしょう。これは軍事面だけでなくして軍隊というものの本質なんだと私は思うのだね。しかも一線部隊でしょう、海兵隊、マリーンというのは。  これだけの問題を指摘された以上は、外務大臣、単なる注意を喚起するとかいうことでなくして、やはりこのことは政府レベルの問題としてアメリカ側に強く綱紀の粛正、軍紀の粛正というものを徹底せしめてもらわないと、沖縄の県民の生命、財産あるいは生活環境というものは健全でないです。改めて大臣の所感と決意を伺っておきたいと思います。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米間の信頼関係というのは非常に大事なことでございますから、沖縄においてそうした日米間の信頼を損なうような事件あるいは事象が起こるということは大変残念なことでありますし、そういうことが起こらないように日米間で緊密な連絡をとって、場合によってはアメリカ軍に対して反省を求めていかなければならないことである、私はそう思います。  同時に、犯罪行為は、これはもう厳しく罰せられなければならないわけでございます。地位協定等、いろいろ手続上の問題はあるわけでございますが、最終的には裁判で公正に裁かれることは、これまた当然のことである、そういうふうに考えるわけでございます。  こうした事件が頻発するというようなことになったら大変でございますから、この事件を契機に、おっしゃるようなことも踏まえて、改めて米政府を通じまして米軍当局に対して厳しく注意を喚起したい、こういうふうに考えます。
  80. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  81. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ────◇─────     午後二時三分開議
  82. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  83. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在外公館に勤務する公務員及び外国における邦人の生活面における最大の問題は、何といっても教育と医療にしぼられるのではないかと思うわけであります。また、そのことの基盤が整ってこそ、外国における生活に耐え得る安心感が出てくるわけでございます。  そういうことから言いまして、海外子女の教育の現状、これが現在どうなっているのか、また問題点としてはどういうふうにつかんでおられるのか、その点についてお伺いいたします。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 藤本芳男

    藤本説明員 ただいま義務教育就学相当の年齢にあります子供で海外におります者は、三万三千人ございます。このうち四五%に当たります一万五千人余りが全日制の日本人学校に通っております。全日制日本人学校は全部で七十二校ございます。また、さらにこの三四%に当たります一万一千三百人余りの子供が補習授業校に通っておりまして、補習授業校は全部で九十校ございます。  海外子女の教育は海外に駐在いたします邦人の緊急の関心事でございますので、私どもはこの拡充に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  85. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本人学校となれば国内と同様の授業が行われていくわけでありますけれども日本人学校の設立の条件にはどういうものがございましょうか。
  86. 藤本芳男

    藤本説明員 設立の基準といたしましては大体三つございまして、まず第一が現地におります法人の数、すなわち就学相当の子供が何人おるかということが一応の基準でございまして、三十人以上いる場合、かつまた将来その数がふえるという見込みの場合にこれを認める一つの要件であろうか、私どもこういうふうに考えております。  第二の基準といたしましては、現地に受け入れ教育施設がないか、あるいはまた、ありましても日本人の子女を受け入れることができないというふうな状態の場合に考えなければいけない、これが第二のポイントでございます。  第三点といたしましては、現地の日本人会あるいは日本人のコミュニティーにおきましてそういう日本人学校をつくってくれという希望が強く、かつまたこの日本人学校を運営していく能力がある、つまり受け入れの態勢及び学校を運営していく体制がきちんと整っておる、この三つの条件、基準がございますが、それらを総合的に判断いたしまして優先度を決めて新設する、こういうことでございます。
  87. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 医療については、巡回医師団を編成して医療の過疎地帯を年一、二回回っているように聞いておりますが、現状はどうであるか、また、予算面については大変に厳しいということですけれども予算についてはどういうふうにお考えになっておりましょうか。
  88. 藤本芳男

    藤本説明員 現在、外務省予算といたしまして巡回医師団の派遣ということがございます。一年間に十二ないし十三チームを派遣いたしておりますが、年間の予算が六千八百万円余りでございます。  各大学にお願いいたしまして、各チーム二ないし三名の医師で構成するチームが開発途上国に参りまして、健康相談でありますとか病気の早期発見ということに努めておるわけでございます。
  89. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 話は変わりますけれども、中国の残留日本人孤児の問題について、若干外務大臣にお伺いしたいと思います。  昨日からテレビ、新聞等をにぎわしております残留孤児の肉親捜しの問題については、すでに五十六年度から始まって今回三回目ということになっております。この問題を推進する窓口になっているのは外務省であり、その点については大変に御苦労だと申し上げなくてはならないと思いますが、中国政府の協力を得るためにいろいろ努力をされているわけでありますけれども外務省としてはこの問題に対する基本的な考え方をどうお持ちになっているか、その点についてまず外務大臣にお伺いします。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中国における日本人の残留孤児につきましては、あの大戦の結果、中国に残されまして、中国人の養父母に育てられたわけでございます。これに対しては、やはりわれわれとしては、中国の養父母、さらにこれに対していろいろと配慮をしていただきました政府並びに関係者に対して心から感謝を申し上げておるわけでありますが、その孤児たちが長ずるに及んで、故国日本に帰りたい、こういう気持ちを持ちまして、その切々たる要望というものに対して日本としてもこれにこたえていかなければならぬ、こういう観点から、中国の残留孤児を日本に迎えて、いわゆる両親捜しということについて外務省あるいは厚生省その他の関係各機関、民間の方が大変な協力をいただいておるわけであります。これでもって親子の対面、あるいはまたそれによって日本に残って、非常に幸福を得ているという方々もずいぶんあるわけでございまして、大変喜ばしい限りでございますが、こうした問題について中国政府としても日中友好あるいはまた人道的な立場からこれを支援をするということでいろいろと配慮をしていただいておるということに対しては、日本政府としても心から感謝をいたしておるわけでございます。
  91. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま外務大臣が、人道的な立場を通じてこの問題に取り組んでいると。私どもテレビで見さしていただきながら、本当に三十数年という間の御苦労、確かに胸の迫るような思いがいたしてなりません。  北京の日本大使館を通じて、孤児対策の協力とか理解を求める努力をされているわけでありますが、一方、今日までそういう孤児を養育されてきました養父母の問題があります。すでに養父母の場合においても相当の年齢になっておりまして、そういう孤児の方々が肉親にお会いして今度日本の方へ戻ってくるということになりますと、やはり養父母の養育という問題が非常に大きな問題になってまいります。日本への帰国希望者の問題等いろいろの問題があると思いますけれども、こういうふうないろいろな問題について外務省としてはどのようにお取り組みになっているのでしょうか。
  92. 恩田宗

    ○恩田説明員 中国残留日本人孤児の問題につきましては、先生のおっしゃったとおり、中国人養父母の扶養の問題であるとか、それから身元が確認されない孤児を日本に引き取れるかどうかというふうな問題がございますが、まず前者の問題につきましては、すでに昨年来、日中両国政府の間で協議が行われてまいりまして、特に本年一月、中国政府の代表団が日本に参りまして交渉した結果、日本側による扶養費の支払いについて基本的な合意に達しまして、その結果、今回訪日孤児の身元調査が始まったわけでございますが、基本的な考え方としては、養育費の半分は日本の国が見る、半分は寄付金等で賄おう、こういうことになっておるわけでございます。その他、どういう人間を対象として等々の詳しい問題については、今後中国側とさらに交渉していくことになっております。  それから、身元の判明しない孤児の引き取りの問題につきましては、今回の交渉により、身元未判明の孤児は中国から日本に帰国を認めるということで解決をいたしております。
  93. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 問題は、たとえば孤児が肉親にお会いをして、それじゃ日本にということになった場合、やはり語学ができないということがいままで社会問題としてクローズアップされ、また、そのことがもとで非常に不幸な事態も起こしているわけでございます。そういうことを考えますと、やはり何らかの施設、あるいはまた語学を教えるとか日本に早くなじむための諸施策というものがいま現在必要じゃないかと思うのですけれども、そういう意味から言いまして、どういうふうな施設によってこういう問題を解決しようとされていますか。
  94. 森山喜久雄

    ○森山説明員 孤児が日本に帰ってまいりまして、まず一番困るのはその言葉の問題でございます。厚生省といたしましては、五十八年度においてこういう帰国された孤児のセンター、定着促進センターと申しますか、そういうようなものを新しく建設して、秋ごろにでも発足させたいというふうに考えております。  この施設におきましては、いま先生がおっしゃいました日本語の日常会話ができる程度まで日本語教育をやる。それから、中国と日本では生活習慣も大分違いますので、そういう生活指導もやる。現在の考え方では、帰った直後から四カ月ぐらいこの施設に収容いたしましてそういう教育を集中的にやるということで、本年度そういう施設を設立するということにしております。
  95. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は五十七年の三月にやはりこの問題を取り上げたわけでありますけれども、中国孤児と年金との関係について、ちょうど五十六年の国連難民条約の加入に伴って、日本に住居を有しておる者については国籍の有無に関係なく国民年金に加入できるようになっておるわけでありますけれども、現行制度は、六十歳までに二十五年間の保険料納入期間がなければ老齢年金の受給資格を得ることはできない。このために、中国孤児の場合はすでに三十八歳を超えているわけでありますから、日本に帰国しても全員が国民年金の対象から外される、無年金者になってしまう。こういう問題で、帰国した中国孤児等に対して特例納付なりあるいは特別な経過措置を講ずるような救済措置が必要ではないだろうかということを問題提起をしたわけでありますけれども、これについてその当時御答弁をいただきまして、前向きな方法で何らか考えてみよう、こういうことでございまして、検討課題としておったわけでありますけれども、この問題についてはどのようになっておりましょうか。
  96. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 中国孤児の方々の年金問題につきましては、先生いま御指摘がございましたように、昨年私どもに御指摘をいただきました。私どもも問題点として十分認識をしておるところでございます。  そのときにも御答弁申し上げましたように、わが国の皆年金体制のもとで制度的に年金制度から漏れてしまわれる方が、中国孤児の方々以外にも、たとえば海外に長く居住をしておられてお戻りになられる方あるいは難民条約発効の前からわが国に居住をしております外国人の方々の取り扱いをどうするかというような、年金制度としては大変大きな問題でございますが、幾つかそういうケースがございます。そういう問題に対しまして、私ども国民皆年金体制を実のあるものにするためには何らかの制度的な手だてが必要ではないかという認識のもとに、現在鋭意検討を続けておるところでございます。  ただ、この問題は、拠出制を原則にしておりますわが国の年金制度の基本に触れる大変むずかしい問題でございますので、現在厚生年金、国民年金全体にわたりまして基本的な見直しをちょうどしている段階でございますので、五十九年には大きな改正をしたいということでいま作業をしている最中でございますし、また、審議会等でも御議論をいただいている最中でございます。その大きな制度改正の一つの重要な検討課題ということで、現在取り組んでおるところでございます。
  97. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、中国孤児の問題並びにいまあなたがおっしゃるようないろいろなケースがあるけれども、それについては五十九年度に抜本的な改正をする、こういう形で国民皆年金の問題には何らか措置がされる、そういうふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  98. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 現段階で具体的な方向については申し上げられませんけれども、私どもの気持ちといたしましては、何らかの対策をとる必要があるという認識のもとに検討いたしております。
  99. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、何らかの対策を必要とするわけでありますけれども、いろいろなケースがあるのでしょうが、どういうケースがこの問題については考えられましょうか。
  100. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 先ほど申し上げましたように、中国孤児の方々のほかに、海外に長い間居住をされてお戻りになられる方、あるいは長く日本に居住をしておられる外国人の方々、それから海外とよく行き来をされるというような方々、わが国の現在の皆年金体制のもとで制度的に漏れてしまわれる方、いろいろなケースがございます。したがいまして、これを拠出制の原則を貫きながら特例を設けるということは大変むずかしい問題でございまして、具体的にどういうふうな工夫をすればこの拠出制の原則を堅持しながらこういった無年金になってしまわれる方の救済ができるかということについては、現段階ではまだこういう方法でということは申し上げられませんけれども、何とか知恵をしぼって、すべてのケースが救済できないにしても、少しでも現在の制度的な欠陥を補っていけるような工夫をぜひしたいということで取り組んでまいりたいと思っております。
  101. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 残留孤児の招聘も今回三回目になるわけでありますけれども、この三回目になる成果ですね、成果はどうなっているのか。また、実際に残留孤児というのは大変に数がつかみにくいという問題がありますけれども、しかしどういう形でこれを掌握をしておられるかという問題について御報告願いたいと思います。
  102. 森山喜久雄

    ○森山説明員 厚生省の方に孤児の方々から肉身捜しの依頼のありました件数でございますが、現在まで千四百五十一件でございます。このうち、これまでに身元が判明したという方が六百八名ございます。したがいまして、現在なお調査中というのが八百四十三でございます。この身元が判明した六百八の中に訪日調査、孤児を日本に招きまして直接調査をするというのを過去二回やりまして、七十二名判明しております。  それで、この八百四十三のうち今回四十五名訪日したわけでございますが、一体この調査はいつまでにけりをつけるのかという問題があるわけでございます。厚生省としましても、この問題は、関係者がだんだん老齢化してまいりますので、なるべく早い時期に遂行したいということで、来年度は百八十名の孤児の方々を日本にお呼びするという計画をいたしております。こういうかっこうで数年間ぐらいでこの調査を完了させたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、一体孤児は今後もまだふえてくるのかどうかということでございますけれども、ただ、この調査というのは、これは日本じゃできませんので、実は中国政府に、日本政府としても計画的にこういう調査をやりたいので、一体どのぐらいいるのか調査できないものだろうかというお話を申し上げましたところ、日本政府がそういう孤児の肉身捜しをやっているということはもう全国的に周知されておる、したがって現在厚生省が把握されておる数よりそうふえることはないのじゃないか、今後特に改まった調査をする必要もないだろうというお話でございます。したがいまして、われわれとしては、現在つかんでおります数が若干増減はあるかもしれませんけれども、そう大きく動いてくるということはないというふうに考えています。
  103. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 問題は、これから年を経るごとに実は残留孤児自体も年をとってまいりますし、また、日本におりますところの生みの親もあるいは亡くなられてしまったり、会おうと思っても実際にはできなかったり、あるいは養父母の問題についても、養父母の方々もお年寄りになっていくわけでありますけれども、そういうことを考えますと、やはりそんなに余裕のある問題ではないだろう。相当馬力をかけてやらなければならないと思っておりますけれども、大体何年をめどにこの問題の終結を目指しておやりになるのか、あるいは年次計画としてはどういう形をとっておられるのか。毎年毎年、今度三回目の方々が日本に来られて、大変感激的なシーンが展開されるわけでありますけれども、人数的にはまだまだ限られた人数でございます。こういう形についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  104. 森山喜久雄

    ○森山説明員 実はこの問題につきましては、厚生大臣の私的な諮問機関でございます中国残留日本人孤児問題懇談会というのがございまして、その先生方から御提言をいただいておるわけでございます。それで、この肉身捜しは昭和六十年ぐらいまでに終了するようにがんばれというお言葉をいただいておるわけでございますが、実は今年度百二十人を呼ぶという計画がいろいろな関係で年度末ぎりぎりに四十五名というかっこうで実現したわけでございまして、一年ずれ込んだというようなかっこうがございます。したがいまして、われわれとしては昭和六十年ないし六十一年ぐらいまでには何とか終了させるようなかっこうでがんばりたいというふうに考えておるわけでございます。
  105. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六十一年に全部終わるということにはならぬでしょうけれども、少なくとも六十一年にめどをつけるということになれば、いまの計画が果たしていいかどうかという問題について、これは実は非常に問題があるだろうと私は思うのです。その点は、やはりもう少し年次計画をふやす必要があるのじゃないでしょうか。
  106. 森山喜久雄

    ○森山説明員 この調査自体は、訪日調査だけじゃなくて日常的な調査をコンスタントにやっておるわけでございまして、そういう面からも判明するものもあるわけでございます。  それから、もちろん訪日の孤児の数をふやすという問題もあるわけでございますが、そういう点今後十分検討いたしまして、そういうめどで大半終了するというようなかっこうで検討してまいりたいというふうに考えております。
  107. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中国残留孤児の問題について、いまいろいろ御答弁ありました。そのほか、テレビとかそういうものを通じて孤児を捜すとかという問題等もございましょう。  しかし、ともあれ外務大臣としては、この中国の残留孤児について前向きに取り組んでおられると思いますけれども、いま一つ実際に六十一年までにこの問題にめどをつけようというには余りにもテンポが遅過ぎるような感じがするのですけれども、そういう点について外務大臣はどうお考えでしょう。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと準備とかこちらの受け入れ体制また中国側のいろいろな配慮とか、そういうものも時間のかかる面もありますが、これはせっかく中国が人道的立場で協力してくれておるわけですし、やはり中国に残した孤児を迎えるということは日本人にとりましても一つの責任でもある、こういうふうに思いますので、いろいろと相談をしながら、これはひとつ前向きに取り組んでいきたい、こういうふうに考えます。
  109. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度は課題が変わりますけれども、二月二十二日に実は私の同僚議員である市川君の方からいろいろと取り上げた問題でございます。  憲法が集団的自衛権の行使を認めていないという政府の立場は単なる憲法解釈だけかというような質問をしたときに、角田法制局長官は、憲法第九条の解釈として集団的自衛権の行使は認められていないと答弁をされた上で、一つは、この解釈はきわめて厳正な解釈であり、改めるつもりは全くないということ、それから二番目には、仮に集団的自衛権の行使を明確にしたいとする場合は憲法を改正しない限りできないというふうに答えられました。  そこで、この集団的自衛権はそういうことで憲法改正をしない限りはできないというわけでございますけれども、徴兵制度とかあるいはまた海外派兵というような問題については、これもやはり集団的自衛権の行使を禁じた憲法と同じ解釈に立っておられるのか、この点についてはいかがでしょうか。
  110. 味村治

    ○味村政府委員 お答え申し上げます。  徴兵制の問題はもうすでにたびたび国会で御論議になりまして答弁申し上げているとおりでございまして、徴兵制は現行憲法の解釈といたしましてとることができないというように考えている次第でございます。  それから海外派兵の問題でございますが、海外派兵と申しますと、一般に海外において武力を行使する目的で実力の部隊を派遣するというようなことでございます。そのような海外派兵は一般的には個別的自衛権の範囲を超えるものでございまして許されない、このような解釈が、これも憲法の解釈といたしましてすでにたびたび政府が答弁しているところでございまして、現在そのとおりに考えております。
  111. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、徴兵制度並びに海外派兵というのは憲法を改正しない限りはできない、こういうふうにとってよろしゅうございますね。
  112. 味村治

    ○味村政府委員 この問題につきましては、憲法の厳正な解釈を行いまして政府が従来から答弁を積み重ねてきたところでございまして、政府といたしましては、この解釈を変更するということは考えられないというように考えております。
  113. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、解釈を積み重ねてきたわけでありますけれども、しょせんはいまの憲法解釈の中から、結局憲法を改正しなければできないかという問題についてはお答えいただいてないわけですね。その点どうでしょうか。
  114. 味村治

    ○味村政府委員 これは市川議員に対する法制局長官の答弁の際にも、政府としては憲法改正ということは全く考えていないということを申し上げている次第でございます。ただそれを、あえての御質問でございましたので、あのように集団的自衛権について申し上げたわけでございますが、徴兵制等につきまして、ただいま御質問の問題につきましても同様なことになろうかと存じます。
  115. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり憲法を改正しなければこの問題についてはできない、こういうふうに私受け取ったわけでありますけれども、それでは、日本有事の場合においては、有事法制による、いわゆる国家総動員法を適用しそれに充てるということは憲法に抵触するのじゃないかと思うのですけれども、その点についてはどうなんでしょうか。
  116. 味村治

    ○味村政府委員 日本有事の際にどのような法制をとる必要があるかということにつきましては、ただいま防衛庁で御検討になっているところでございまして、日本の有事の際にわが国を他国の侵略から守りますために、これはいわば公共の福祉でございますから、そのために個人の権利につきまして何らかの規制を行うということはあり得ることでありまして、現行憲法もそれを禁止しているとは思いません。  しかしながら、国家総動員法、昭和十六年でございましたか、いわゆる太平洋戦争のころに制定されました国家総動員法、これは非常に国民の権利を無視するものであり、しかも非常に大部の、非常に広範な委任を行政府に与えているようなものでございまして、こういったような国家総動員法と同様の規制が、法律が現行憲法のもとでできるとは考えておりません。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国家総動員法に基づく徴用制度はいけない、また国家総動員法のようなことは許されないんだ、しかし公共の福祉のためには基本的人権の制限はいま許される。となると、公共の福祉のためという理由づけで、有事のときは結果として国家総動員法的な有事法制にまで広がっていくおそれがあるんじゃないか。その点、憲法の枠内でどこまでそれが許され、どこまで許されないのか、その基準を明確にしていただきたい。
  118. 味村治

    ○味村政府委員 先ほど国家総動員法の制定年月日を昭和十六年と申し上げましたが、昭和十三年でございましたので訂正させていただきます。  それから、ただいま御質問にございました点は、何といいますか、現実に具体的な問題が起こりませんと具体的に議論をすることができないわけでございます。非常に抽象的に申し上げますれば、公共の福祉を達成するために必要があれば、それを達成するのに合理的な範囲内で個人の人権を規制することもできるであろう、制限することもできるであろうという程度しか現段階では申し上げかねる次第でございます。
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、具体的な問題でなければなかなか詰めることはできないということでお逃げになったわけでありますけれども、法制局でこの問題が明確になりませんと、実際にそれをやろうとするところの防衛庁の方では言うならば全く仕事が進まないということになろうかと思うのですけれども、その点について防衛庁としては、有事法制の中にあってこの問題はどこまで研究され、具体的に詰められているか。確かに、有事法制の中にあって第一類の陸の点についてはある程度詰められたわけでありますけれども、空と海についてはまだほとんど手つかず。そして第二類、第三類という形でまだ残っているわけでありますが、この問題についてはどういうふうな具体的な研究結果が出たのでしょうか。
  120. 古川定昭

    ○古川説明員 お答えいたします。  防衛庁におきます有事法制の研究につきましては、先生御承知のとおり五十六年四月に中間報告を申し上げたわけでございますが、その際の報告の内容としまして、第一分類として区分しました防衛庁所管法令の問題点を中心としまして当時中間報告をいたしまして、引き続きその細部検討を行っておるわけでございますが、現在、ただいま先生おっしゃいましたように、第二分類の他省庁所管の法令につきまして、防衛庁としての立場から問題点を拾い出して検討を進めております。  現在防衛庁として、その立場から拾い出した法令のいろいろな解釈とか有事の際の適用関係関係省庁にいろいろ照会をするなどしてやっておりますけれども、なかなか多岐にわたります法令であり、またそれぞれの省庁の法令が必ずしも有事を念頭に置いてできておる法令ではございませんので、非常にその進捗状況ははかばかしくないというのが現状でございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十六年の四月に中間報告されて、いまだかつて何も検討されていないというのはどういうことなんですか。いつ出されるつもりなんですか。
  122. 古川定昭

    ○古川説明員 現在鋭意検討を進めておりまして、主管法令につきましてそれぞれの省庁においていろいろ検討をお願いしておりますけれども、部分的にはある程度の御返事もいただいておりますが、御説明申し上げる段階にまで至らないというのが現状でございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まだ御説明できる状況ではないというのですけれども、どこが問題なんですか。各省庁でいろいろ煮詰めているけれども、なかなか集まらない、五十六年の四月にはもう中間報告を出したけれどもその後なかなかまとまらない。まとまらないという状態でずっと続いてきたけれども、どこに問題があるのですか。
  124. 古川定昭

    ○古川説明員 関係法令の数が大変多いということが、十分進まない大きな原因かと思います。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そんな答弁では納得しませんよ。中間報告を五十六年の四月に出していながら、いまだかつて何にも煮詰まらないというような状態では怠慢じゃないですか。この問題が煮詰まらないというのは、防衛庁が中心になって第一分類並びに第二、第三という形でまとめます、こういうふうに国会にはお約束したわけでしょう、にもかかわらず、いまだにまとまらないというのはどういうことですか。いつまとまるのですか、まとめる気はないのですか。それとも、先ほど法制局の方から話があった、その問題がむずかしくてなかなか国民の前に発表できない、こういうことなんですか。
  126. 古川定昭

    ○古川説明員 防衛庁におきまして検討しております有事法制の検討は、現行憲法の範囲内におきます検討でございますので、先ほどの問題とは少し異なろうかと思いますが、私どもとしましては一生懸命検討し、また関係省庁にそれぞれ法令の解釈、適用等につきまして御協力いただいておりますけれども、遺憾ながら現在の段階では十分な進捗に至っていない、こういうことでございます。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その問題については納得しかねますね。  それではほかの問題に移ります。  日本が有事ではないことを前提として、たとえばアメリカが、極東有事あるいはNATOとか中東有事のときに日本に三海峡封鎖を求めてきた場合、日本国内の施設及び区域の使用については事前協議の対象というふうになりますけれども、その場合、日本の安全に直接密接な関係があればこれを認めるというようなことでありますが、日本有事の場合以外に米軍による三海峡封鎖を認めるということには問題があるんじゃないかというふうに思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  128. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いわゆる三海峡の通峡阻止の問題につきましては、予算委員会において総理より御答弁がありまして、中東有事であるとかそういうような場合に、そういうことはあり得ないということでございますが、理論的な問題としてお答えすれば、日本アメリカのそういう要請があってもこれはお断りするということを総理は御答弁しておられると記憶しております。  私が予算委員会において御答弁申し上げましたのは、あくまでも安保条約の枠内におきまして、極東の平和と安全という安保条約の目的の範囲内で日本の施設、区域を米軍が使用する、そういう一環として通峡阻止のために日本の施設、区域を使用するということがあれば、これは実力の行使を目的として日本の基地を使用するのである限り事前協議の対象になるであろう。その場合のイエス、ノーの基準は、従来から政府が一貫して申し上げておりますとおり、わが国の安全というものに直接密接にかかわりがあるかどうかということを判断の基準としてイエス、ノーの返事をする、こういうことを御答弁申し上げた次第でございます。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 事前協議については、御存じのとおり配置における重要な変更の場合、あるいは装備における重要な変更の場合、あるいはわが国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設、区域の使用、こういう三つの問題があるわけでありますけれども、これについては政府は一貫してイエスもありノーもある。もしイエスというふうなことを言ったら戦争に組み込まれるおそれが非常にあるから、危険であるからということで私どもはそういうふうな判断には立っていないわけでありますけれども、この三つの言うならば事前協議の問題については、実は対象が非常に抽象的であるわけであります。しかし、いま私が申し上げたいわゆる三海峡封鎖の問題は全く具体的な問題であるにもかかわらず、これに対してイエスもありノーもあるんだという判断にお立ちになっているんでしょうか。
  130. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 通峡阻止の問題につきましては、鈴切委員よく御承知のとおりに、先般の予算委員会における総理の御答弁があります。仮にアメリカから、米軍自身によって通峡阻止を行う、一方的に行うということについて日本の了解を求めるというようなことがあったとしても、これは原則としてノーであるということを総理は御答弁になっておられて、ただしかし、日本に対して武力攻撃の可能性が非常に緊迫性を持ってあるというような場合にはそういう事態を考慮に入れなければならないであろう、その限りにおいて留保をする必要があるであろうということを総理が御答弁なされておられるわけでございますが、私が申し上げました戦闘作戦行動のための施設、区域の使用についての判断の基準というようなものも、これは歴代政府が申し上げておることでございまして、通峡阻止との関連で申し上げれば、総理が御答弁になられておることと、それから事前協議のイエス、ノーの判断基準として政府が従来から申し上げておることと実質的には何ら変わらないというふうに私は承知しております。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが国がいわゆる有事でないときに、米軍の要請によって、アメリカが海峡封鎖するためにわが国として領海部分を提供するということがあながち集団自衛権の行使にはつながらないという御答弁をあなたはされましたね。それはそのとおりですか。
  132. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ちょっといま委員の御質問の趣旨を私、理解いたしかねましたが、わが国の領海部分を通峡阻止のために米軍に提供するというようなことを私は御答弁申し上げた記憶はございません。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、わが国が有事でない場合にアメリカが海峡封鎖を求めてきた場合に、わが国としては少なくとも領海部分と、それからもう一つは公海部分とこうあるわけですね。それに対して、まず、アメリカはこの問題についてはわが国に何の相談なくしてできるのかどうかの問題はどうでしょうか。
  134. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど私が御答弁申し上げたことは、あくまでも全く理論的な可能性の問題として御答弁申し上げておるわけでございますが、海峡との関連で申し上げれば、公海の部分についての措置であるというふうに理解いたしております。  領海の部分につきましては、もちろん法的に申し上げましてわが国の同意なくしてそのような行動をアメリカがとることは許されませんし、また実際問題といたしましても、領海部分につきましては当然のことながらわが国自身が領域保全の一環として責任を持ち、また国際法的に見れば権能を持っておるわけでございますから、わが国自身の問題であろうというふうに理解いたします。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、まず公海部分ですね、少なくとも海峡封鎖ということになれば、わが国の主権の領海部分につながる公海、アメリカはこれについては何ら日本の国に相談なくしてもできるというふうにお考えになっていましょうか。
  136. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 公海でございましても、国際海峡であるという、いわば公海ではございますが非常に特殊な水域でございまして、わが国自身と申しますか、わが国の領海と申しますか、そういうものに隣接しております非常に狭い水域でございますので、当然沿岸国としてわが国はそういう海峡における一般的な通航の確保というものについては重大な関心があるわけでございますから、そういう沿岸国でありますところのわが国の利害、利益というものを無視して第三国がそういう水域でもって一方的な実力行使のための行動をとるということは、国際法的に見てもあり得ないことであろうということで、予算委員会におきます総理の御答弁もそういうことを前提としておっしゃっておられるものであろうというふうに理解いたしております。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、わが国に密接ないわゆる領海部分につながる公海については、それを封鎖するときはアメリカ日本の国に了解を求めてくる、こういうふうに判断していいですね。
  138. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そういうことを前提として従来から政府も御答弁申し上げておりますし、予算委員会におきます総理の御答弁もそういう考え方でございます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その場合に、いわゆる公海部分について了解を求めてきた場合においてもイエスもありノーもあるのだ、こういうことですか。
  140. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員御承知のとおり、本件につきましては改めて予算委員会におきまして政府の統一見解を出せという御要請がございまして、政府側といたしましてはそういう見解をお出しするということをお約束しておるわけでございますが、基本的には総理が予算委員会で申されましたとおりに、全くの仮定の問題でございますが、アメリカ側がそういうことをやりたいということで要請をしてきても原則はノーである、しかし日本に対する武力攻撃というものが非常な緊迫性を持っておるとき等におきましては、そこの原則というものについての例外を留保しておく必要があるであろうということを総理が御答弁になっておられます。そういうことが政府の考え方であろうというように承知いたしております。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 となりますと、海峡封鎖という行為は少なくとも交戦権の一部に該当する行為だというように私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  142. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 すべて前提を置きませんと非常に議論が混乱いたすと思いますが、いずれにいたしましても、委員よく御承知のとおりに、国連憲章のもとにおきまして、およそいかなるところであろうと武力を行使することは原則として禁止されておる、唯一武力行使が認められる場合は、自衛権の行使として認められる場合においてのみ武力の行使が適法なものとして認められる、こういうことでございますので、ただいま御議論になっております通峡阻止の問題も、あくまでも武力攻撃がありましてそれを排除するための国際法上の自衛権の行使の一環ということが大前提でございまして、そういう前提から逸脱した武力の行使、実力の行使というものは、海峡であれその他公海であれ、認められないということは当然のことでございます。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 武力の行使があって初めていわゆる海峡封鎖があるんだ、武力の行使があってこそ初めて海峡封鎖がある、日本の有事の場合にはそういう場合があるんだ、いまあなたは明確におっしゃったわけですね。ところが、日本有事でないときにアメリカがその問題について相談をしてきたときに、イエスもありノーもあるということは、これは交戦権の一部を構成するところの海峡封鎖という重大な問題でしょう。それにイエスもありノーもあるということはどういうことなんでしょうか。答弁になっていませんよ。
  144. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私の言葉が足りなかったかもしれませんが、私が申し上げたのは、あくまでも実力を行使する主体がその実力を行使する場合は自衛権でなければ認められないということでございまして、全くの仮定の問題といたしまして、アメリカがそのような行動をとりたいという場合であっても大前提は、アメリカがいずれかの国からの武力攻撃に対しましてそれを排除するための必要最小限度の実力の行使としての自衛権を行使する、それが大前提であるということを申し上げたわけでございます。そういう自衛権の行使の一環としての何らかの形での通峡の阻止というものを日本として認める場合があるかどうかというのが予算委員会において御議論になりました問題だろうというふうに私は理解しておりますし、ただいま鈴切委員の御質問もそういう性質のものであろうかと思います。  したがいまして、そういう場合にわが国の安全というものに非常に直接密接に関係があるということで施設、区域の使用を米軍に対して認める場合があり得る、これは全く仮定の理論上の問題でございますが、あり得るということを申し上げたわけでございまして、これは特に国際法上交戦権とか、そういうことになるという問題であるというふうには私は理解いたしません。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は抽象的にお伺いしているわけでないのですね。すなわち、交戦権の一部である海峡封鎖を認めるということは、共同して防衛に当たるということと同じではないだろうかと私は申し上げたいのです。そういうことをアメリカに、言うならばイエスもあるという留保を残すということは、日本の国が有事でないにもかかわらず、言うならば少なくとも交戦権の一部を構成しているところの三海峡封鎖にイエスを与えるということについては、これは日本アメリカと共同して防衛に当たるということ以外にないじゃないですか。
  146. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 海峡の問題に限りませんで、安保条約におきましては御承知のように五条におきまして、わが国自身の領域に対する武力攻撃、この場合には日米で共同対処をする。他方、六条におきまして、委員よく御承知のとおりに極東の平和と安全のために米軍の施設、区域の使用を認めておる。その米軍の施設、区域の使用の中で、戦闘作戦行動のために日本の基地を使用する場合には事前協議という制約のもとにこれを置いておる、事前協議においてイエスもノーもあり得るということは従来から政府が一貫して申し上げていることでございまして、わが国の安全と直接密接にかかわり合いがある場合には、戦闘作戦行動のために日本の施設、区域の使用を米軍に許すことがあり得る。これは従来から政府が一貫して申し上げていることでございまして、たまたま通峡阻止というものとの関連での御質問でございましたけれども、基本的な安保条約の枠組みというものはいま私が申し上げたとおりでございます。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法制局にお伺いいたしますけれども、三海峡封鎖というのは交戦権の一部であるというふうに御判断なさっているか、全くそんなものは別問題だというふうにお考えになっていますか。その点についてはどうなのですか。
  148. 味村治

    ○味村政府委員 この問題につきましては、先ほどから条約局長がおっしゃっておられますように、国連憲章上自衛権の行使でない限り武力に訴えることはできないということになっているわけでございます。したがいまして、米国が仮に理論的な問題として海峡を封鎖するという場合にも、それは自衛権の行使としてするわけでございまして、それが交戦権として国際法上認められるかどうか。交戦権というのは、伝統的な国際法におきましていわば戦争をしている国、交戦国としての権利を総称したものだと私どもは考えておりますが、そのようなものの有無を問いませんで、要するに自衛権の行使として米国が海峡を封鎖するということが現在の国連憲章下においては考えられるにすぎない、このように存じております。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本が有事でない、いわゆる自衛権行使をするという状態でない、そういうことを仮定として私はいまお話を申し上げているのですよ。となると、これは一般の話になりますけれども、国際海峡を、言うならば海峡封鎖するということは、これは交戦権の一部を構成するというふうにお考えになっておられるでしょうか。それとも、全くそれは別なんだというふうにお考えでしょうか。
  150. 味村治

    ○味村政府委員 これは憲法の解釈から申し上げるわけでございますけれども、憲法の九条二項では、わが国につきましては交戦権は否認されておりますが、われわれは、自衛のために必要な行動をする権利、自衛行動権というのは持っているのだというふうに理解をいたしておるわけでございます。その場合の自衛行動権というのは、やはり武力の行使を中心とする概念でございます。そしてその武力の行使というのは、もちろんわが国による武力の行使でございます。わが国が武力を行使するということ、これが自衛の範囲にとどまるのだというのが憲法の九条の要請しているところである、このように考えているところでございます。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、少し問題を整理いたしましょうか。  日本有事でないとき、三海峡封鎖についてアメリカの要請があったとき、日本は単独でおやりになりますか。その点はどうなんでしょう。
  152. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いまの御質問は、日本が有事でないときに日本が通峡阻止のための何らかの措置をとるかという御質問だろうと思いますが、これは従来から政府が明確に申し上げておりますとおりに、通峡阻止、実力の行使を伴う通峡阻止というものは、当然個別自衛権の限度内でしか認められないことでございますから、わが国自身に対する武力攻撃が行われていない事態におきましてそのようなことはあり得ないということは、従来からたびたび防衛庁その他政府が一貫して申し上げているところでございます。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま私が申し上げましたのは、日本有事でないときに三海峡封鎖についてアメリカの要請があったとき、日本は単独でやるのかということを申し上げたのです。それはそのとおりでいいですか。
  154. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカの要請があろうとなかろうと、やる主体は日本というのが御質問の御趣旨であろうと思いますので、ただいま申し上げましたように、わが国自身が武力攻撃を受けていない場合におきましてはわが国は自衛権を行使する立場にないわけでございますから、そのような行動はあり得ない、アメリカの要請の有無にかかわりませずあり得ない、こういうことでございます。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカがもし単独でやりたいということで、少なくとも沿岸国である日本承認なくして三海峡の封鎖ができるかという問題については、どうお考えでしょうか。
  156. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まず前提を申し上げたいと思うのですけれども、国際海峡における武力行使、いわゆる海峡封鎖とか通峡阻止とかいう名前で呼ばれておる実力の行使につきまして、国際法で非常に明確な規則が存在しておるということではございません。しかしながら、先ほど私が申し上げましたようなことで、そういう国際交通の要衝である国際海峡というところにおきまして第三国が沿岸国の利益というものを無視して一方的に実力の行使を伴うような行動をとるということは、これは国際法の一般的な理論としてあり得ないことであろう。それから日本アメリカとの関係につきまして申し上げれば、安保条約というものが存在して非常に緊密な協力関係にあるわけでございますから、そういう関係から申し上げましても、アメリカが一方的にわが国の意向を無視していわゆる三海峡というような特殊な水域におきまして実力の行使を伴うような行動をとるということは、これはあり得ないであろうということを従来から申し上げておるわけでございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、端的に申し上げますと、公海についての三海峡封鎖については日本承認を求めてくる、また領海部分については日本の主権であるから同意を求める、こういうことでいいわけですね。
  158. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、アメリカが、日本有事でない場合、日本が武力攻撃を受けていないような場合に、日本の領海部分につきましてそのようなことを言ってくることはそもそもあり得ないことだろうというふうに私どもは考えます。いずれにいたしましても、日本の領海でございますから、これはアメリカであろうとどこであろうと、外国が勝手に日本の同意を得ずにそういう軍事行動をとるということは理論的にも実際的にも全くあり得ないことであろうというふうに考えます。  公海の部分につきましては、先ほど来私が累次申し上げているとおり、予算委員会におきまして総理が御答弁になられておるとおりでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 領海部分について日本に同意を求めてくることはあり得ないだろう。あり得ないならノーにしてしまったらいいんじゃないですか、ノーと。領海部分についてこういう場合においては少なくともあり得ないとおっしゃったでしょう。そういうのはあり得ないということであれば、もうあなたははっきりノーと言ってしまった方がいいじゃないですか。
  160. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほども申し上げましたように、したがいまして従来行われております御質疑の内容というものは、一般的に海峡における通峡阻止ということで言われておりますが、私の理解は、これはいずれにしても海峡における海峡の公海部分についてどういうことだということのいわばケーススタディーとしての御質問に対してお答えしておる、こういうことであろうと思います。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、領海部分についてはいまあなたはそんなことはあり得ないだろうというようなことをおっしゃったわけですから、あり得ないものについてイエスもありノーもあるというよりも、むしろノーにされた方が明確じゃないでしょうかと私は言っているのです。
  162. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 領海部分については全くノーであるということを申し上げてもいいわけでございますけれども、いずれにしても、いままでの御議論の対象外の問題であろう。常識的に考えましても、理論的に考えましても、そういうことはあり得ない。したがって、余り議論をする意味のない問題ではないかというふうに私は考えます。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは、日本有事でない場合にアメリカがどうしても海峡封鎖をしたいということで日本に同意を求めてきたときに、公海部分についてはもちろん承認をこちらに求めてくる、領海部分については全くそういうことはあり得ないだろうとおっしゃるので、そうであるならばそれはもはやノーにはっきりと明確にされておった方がいいのじゃないか。事前協議については対象がはっきりしないわけですから、だからイエスもありノーもあるということで皆さん方は解釈されておりますけれども、三海峡封鎖という問題になりますと具体的な問題でしょう。ですから、もし領海についてイエスということを言った場合においては、日本の国が明らかにアメリカにイエスと言うということは、これはまさしく三海峡封鎖というものはもう日本の国も同じ意思において防衛を担うということになるのですよ、しかも交戦権の一部を構成している以上。だから自民党の外交部会がまさしく、海峡封鎖の問題についてはイエスを言うということになればこれは宣戦布告だと言っているんじゃないですか。宣戦布告だ。日本が有事でないにもかかわらずそういう形にイエスを与えるということは、これはもう明らかに宣戦布告と同じじゃないですか。
  164. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まず領海の部分につきましては、私はアメリカがそういうばかげたことを言ってくるはずはないというふうに考えます。  公海部分につきましては、先ほどから累次お答え申し上げておりますが、もちろんそういう国際交通の要衝、三海峡に限りません、三海峡という具体的な水域との関連で申し上げるのもいかがかと思いますので、多少一般化して申し上げることについて御理解いただきたいのですが、いずれにいたしましてもそういう国際交通の要衝である特別な水域というものにおいて、第三国がたとえ自衛権のためであろうと実力を行使をするということについては、そこはそういう特別な水域であることに伴う制約というものが当然国際法上あろうというふうに考えるわけでございます。したがいまして、そこは公海でございますけれども、通常の広い公海において軍事力、武力というものを使う場合よりも、一般的に申し上げれば、当然より厳しい制約のもとに置かれざるを得ない、これが一般的な国際法上の考え方だろうと思うわけでございます。したがいまして、わが国の周辺におきます海峡におきましても、そういう第三国であるアメリカが仮に自衛権行使のためにそういう軍事力を行使する行動を行うという場合におきましても、わが国の利害、わが国の意思というものを無視して一方的に行うということは当然できないということを申し上げておるわけでございます。  そこで、全くの仮定の問題として、アメリカがどうしても自衛権行使の一環としてそういうことをやるについて、日本の了解を求めてきた場合はどうかという非常に仮定のケースについての御質問でございましたので、総理が先般予算委員会で御答弁になられたようなことが政府の考えであるということを申し上げておるわけでございます。逆に申し上げれば、これは日本の安全というものを守っていくためにどうしても必要だ、武力攻撃が非常に緊迫性を持っている、そういう状況のもとであれば、アメリカが自衛権の行使のために海峡において何らかの軍事行動をとるということを日本として認める場合を留保しておく必要があるであろう、こういうことを総理が申し上げたわけでございまして、そういう海峡におきます第三国の軍事行動というものを日本わが国自身の国益というものを無視して積極的に容認していくというような考えを総理が御答弁申し上げたわけでもございませんし、私が申し上げているわけでもございません。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本の有事でない状態の中にあっていわゆる海峡封鎖というものにイエスを与えるということは、もうその時点から、言うならば戦争状態に入るおそれが多分にあるというふうに私どもは思うわけです。すなわち、日本の領海並びに公海部分について、アメリカが極東有事あるいはまたNATO、中東有事においてどうしても三海峡封鎖をしたいということについて、少なくとも沿岸国である日本の国にそのことを求めてきた場合、公海部分についての承認、領海部分についての同意、こういう問題が言われたときに、イエスもありノーもあるというような、そういう中途半端なことを残していくということは、イエスの場合においてはまさしくそれをもって日本の国も完全に集団的自衛権という形に入ってくる、こういうふうに言っても何ら差し支えないんじゃないですか。
  166. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど来申し上げていることの繰り返しになろうかと思いますが、中東有事その他、極東の平和と安全あるいはわが国の安全というものと直接にかかわりがない場合において、海峡においての第三国であるアメリカの行動、実力行使あるいは通峡阻止と称される軍事行動というものを認めることはない、これは総理が明確に予算委員会で御答弁申し上げておるところでございます。私どもも総理のおっしゃられているとおりであろうというふうに当然考えるわけでございます。  次に、原則ノーであるけれども留保をしておく必要がある場合があろう、それはどういう場合かということでございますが、総理のお言葉では、わが国に対する武力攻撃が非常な緊迫性を持っておるような事態という表現を使われましたが、まさにもっと俗な表現で申し上げれば、火の粉が日本自身にかかってくるような事態というふうに申し上げてもよいかと思いますが、そのような場合であれば、米軍がそういう日本の近海の特殊な水域において武力を使うということを日本として認める場合もそれはあるかもしれない、わが国自身の安全を確保しておくために必要な、そういう限られた事態においては例外的な事態があるかもしれないということを総理が御答弁になられたというふうに私どもは理解しておるわけでございまして、事前協議でイエス、ノーと言う場合も同じような判断の基準で従来から政府は申し上げておるところでございます。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本の国に火の粉がかかってくる、そういう状況下にある。しかし、それでも日本としては実は有事でないわけでしょう。有事でない。火の粉がかかってくるという状況の中にあっても、日本としては言うならば有事ではない。それに対して日本が打って出るということは、交戦権を否認した日本の国にとってはできるはずがない。そういう中にあって、火の粉がかかってきて日本の国がというような状態でイエスの保留を残すということは、これは私は大変に問題を実は後まで残すと同時に、完全にこれはアメリカとの集団的自衛権という問題にもうすべて符合していく。集団的自衛権ということについてはもうすでに御承知のとおり、集団的自衛権とは、密接な関係にある国、すなわちアメリカアメリカが武力攻撃を受けた場合、武力攻撃を受けるということは、アメリカ自体はどこで武力攻撃を受けるか紛争をするかわからないわけでありますけれども日本が攻撃されていなくとも共同して防衛に当たる権利をこれを集団的自衛権だということで、わが国としてはそういう立場にあるわけですから、そういう問題についてイエスと言う範疇を残すということは、もうイエスと言ったそれ自体がすでに宣戦布告に近い。あるいはまた、交戦権の一部を構成する三海峡封鎖にイエスを与えるということになれば、これはもう完全に相手方としては日本に対して武力攻撃をしかけてくるに決まっているんじゃないですか。そう思いませんか。外務大臣、この点についてどう思いますか。
  168. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど法制局の方からも御答弁申し上げましたが、累次申し上げているとおり、憲法上禁止されております集団的自衛権の行使というのはあくまでもわが国自身による武力の行使ということでございまして、第三国であるアメリカの武力の行使というものを日本の近辺で行うことについて、日本自身が同意をするとか容認するとかいうこと自体が憲法で禁止されておる集団的自衛権の行使になるというふうには私はどうしても理解しないわけでございます。  それから、他方実態的な問題といたしまして、宣戦布告に等しいとかそういう御議論があるということを御指摘になりましたけれども、私どもが申し上げていることは、むしろ日本自身の安全を確保するためにどうしてもやむを得ないというふうに国が判断する場合においてアメリカがそういう実力の行使をすることについて日本が同意を与えるあるいは容認する、こういうことでございますので、その結果さらに日本に対する危険が増大するというような事態になるというふうには私どもは考えないわけでございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その点は大変に問題を残しているわけでして、これ以上言っても——また後にいろいろと論議はしたいと思いますけれども。  国際法によると封鎖する場合は封鎖を公示しなければならないわけですね。封鎖する海域の範囲、日時を明示するということ、中立国に知らせることを義務づけられているわけですが、日本としては、たとえば三海峡封鎖としてはどういうふうにこの問題に対処されるのか、また手続の仕方というのはどういうふうになるのか。
  170. 藤井一夫

    ○藤井説明員 日本有事の場合に海峡防備の作戦を行うことはあり得るわけでございますが、その場合、先生御指摘になりましたように、第三国あるいは沿岸国の利益というものを十分守る措置をとらなければならないと考えております。ただ、どういう措置ということにつきましては、事態、様相によりましていろいろ変わるものでございますので、あらかじめこういう措置というふうなことは申し上げられない、このように考えております。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三海峡封鎖の中で、問題は、宗谷海峡の封鎖というものは、日本の領海三海里と、公海部分というものはソ連の領海につながっているわけでありますけれども、これについて本当に封鎖が現実にできるんでしょうかね。封鎖が現実にできるものであるかどうか。確かに机上においては封鎖ということもできるかもしれませんけれども、現実の問題として、ソビエトの領海、公海部分のところをずっとやるということは現実にできるかどうか、それについて防衛庁としてはどういうふうな海峡封鎖のやり方があるとお思いになっていましょうか。
  172. 藤井一夫

    ○藤井説明員 わが国が有事に行います海峡防備の範囲でございますけれども、私どもは一般的にはわが国領海及び公海部分において作戦を行うというふうに考えております。他国の領海に入って作戦を行うことは一般的にはできないというふうに考えております。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなると、宗谷海峡においても、言うなればソビエトの領海を残す公海部分を全部おやりになる、それだけできる能力もある、そうお考えになっているのですか。
  174. 藤井一夫

    ○藤井説明員 宗谷海峡の場合も、したがいまして一般的にはソ連の領海にまで入って作戦を行うことはあり得ないというふうに考えております。  その場合に、公海部分までの作戦で有効な海峡防備ができるかという御質問かと思いますけれども、私どもは海峡防備あるいは海峡封鎖と言いますときに、これは一〇〇%相手の国の艦船の通峡を阻止するということは考えておりません。ある程度の海域におきまして相手の国の艦船の行動を制約できれば、ほかの広域哨戒とかあるいは船舶の護衛とか、こういう作戦等の累積効果によりまして有効な海上交通保護のための作戦ができる、このように考えております。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、この間中曽根さんが、海峡封鎖については一〇〇%にならなくても、それに高める努力をしていきたいというお話がありましたけれども、海峡封鎖について前田海幕長は、三〇%できれば上できであるというふうなお話をされたわけです。余りに一〇〇%と三〇%ではけたが違っているわけですが、防衛庁としては、海峡封鎖について現実の問題としてできる能力、あるいはそういうことに成功したというのは大体何%を目標とされているのか。
  176. 藤井一夫

    ○藤井説明員 私、寡聞にしまして総理が一〇〇%というお言葉をお使いになったかどうか承知しておりませんが、前田海幕長が記者会見のときに三〇%程度ということを申しております。これは過去の戦史等を見まして、大体相手の国が目的を断念する、すなわちその作戦が成功したと言われますケースにおきましては、大体三〇%ないしはそれ以上ぐらいの阻止率というようなものに当たります機雷を敷設している。こういう経緯から、軍事専門家としての立場からそういう御説明をされたというふうに私ども理解しております。  一方、私ども防衛力整備におきまして何%の阻止率を目標にしておるかということにつきましては、これもやはり事態によりまして、阻止また海峡防備そのものは機雷だけではございませんで、ほかの艦艇、航空機との組み合わせ等がございますので、一概に何%というものを目標に機雷の整備をしておるというわけではございません。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、三海峡封鎖に対していろいろ多角的な封鎖の効果をあらわすにしても、機雷による封鎖としては何千発と要るのではないだろうかと言われているのですが、三海峡封鎖については推定どれくらいの機雷が必要だと思っているのですか。
  178. 藤井一夫

    ○藤井説明員 三海峡封鎖のためにわれわれが防衛力整備上目標にしております機雷の数でございますけれども、先生おっしゃるように相当の数のものを目標としておるわけでございますが、現在持っておる機雷の数あるいは防衛力整備上目標としております数を公表いたしますことは、自衛隊の作戦能力そのものを公表することにも相なりますので、従来から申し上げられないという立場をとっておりますことを御了解いただきたいと思います。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後に外務大臣に伺いますけれども日本の国が有事でない、しかしアメリカはいろいろな世界核戦略の一環として戦略を持っているわけですが、その場合にどうしてもソビエトの艦艇を南におろしてはならないというような判断を立てたときに、日本が有事でないにもかかわらずアメリカは三海峡封鎖について日本の国に要請をしてくるだろう。日本の国は有事でないわけですから直接手を下さないにしても、アメリカ日本の領海あるいはまた公海につながるところの三海峡封鎖についてその同意を求めてくるわけですね。となると、それにイエスを与える余裕を中曽根総理は非常に意欲的にお話しになっているわけでありますけれども、それに基づいて外務省の方も追認をするような形で論理をずっと構成されているわけであります。  そういうことから言いますと、これは安保条約第六条に基づく普通の事前協議の抽象的な問題に対してイエス、ノーを与えるのと違って、三海峡封鎖という現実的な問題についてそういう余地を残すということになると非常に問題になるであろうし、日本の国が戦争に組み込まれてしまう。イエスを言った途端にアメリカと少なくとも共同防衛体制に入るということになると、これは非常に重大な問題を抱えているのではないかと私は思うのです。この問題については、日本の国が戦争に巻き込まれるかどうかの問題等も踏まえて、本当に重要な問題であろうと私は思う。言うならば五条によりますアメリカ日本との共同対処ということになれば、これはもう有事になるわけですけれども、有事の前の、有事でない日本の国としてとるそういうふうな問題については慎重の上にも慎重でなくてはならない、そういうふうに思うのですが、外務大臣はこの問題についてどういうふうにお考えでしょうか。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 有事でない場合にアメリカ日本に対して三海峡封鎖についての同意を求める、こういうことが現実的にあり得るだろうかということについて私は非常に疑問に思っておりますが、しかし観念的、理論的に言えば、そういう場合が出てこないわけではないわけですね。  そういう場合にどうするかということですが、これは中曽根総理もはっきり言っておりますように、これはあくまでも原則的にはノーであるということでございます。ところが、その際に日本に対して非常に急迫した事態が迫っておる、緊迫した状況が迫りつつあるというふうな状況のもとにどうするかということについては、これは確かに慎重の上にも慎重は期さなければならないことは当然至極のことでございますが、そうした状況になったときには、やはりこれについては日本の立場を留保するということもあり得ないことではない、全然ないこともないと私は思うわけでございます。  ですから、基本的にはこれはノーという方に大きなウエートがかかっていると私は思うわけであります。しかし、そうした非常な急迫不正の事態が迫っておるというようなときについてはある程度一つの留保をつけておくということは、これは日本の安全と平和を守っていく上においても一つの筋ではないだろうか、こういうふうに思うわけでございますが、日本の場合は、あくまでも日本が攻撃をされた場合の日米安保条約における共同対処ということはもう当然のことでございまして、いかなる場合においても日本は集団的自衛権というものは憲法で放棄しているわけですから、あくまでも個別的自衛権の範囲内においてのみ日本が行動できることは当然至極のことでございます。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後ですが、日本が有事でないときにアメリカがそういうことを言ってこないだろうという推定のもとにイエスもありノーもあるということを残すことは、これは大変重大な問題だろうと私は思う。まあ、火の粉をかぶるということは有事だということなんですよ。だから、日本が有事でないときはどこまでもノーと言うのが、原則でなくして、もうそう言うんだということですべてそういう形にならないとこれは問題を残すだろう、また言うなら、そのことによって日本の国が戦争へと入っていかなければならないという宿命を持つということを申し上げて、質問を終わります。
  182. 橋口隆

  183. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する問題、こういうことで、在外地にいらっしゃる外務公務員の御苦労が多かろう、最近では為替の変動率と申しますか、円安円高、また任地における物価高、そういうことで在外手当の改正というものを求めているのがこの法律の趣旨だろうと思います。  そこで、冒頭お聞きいたしたいのは、いま世界じゅうに多くの日本人が行っていることは御案内のとおりであります。一説には、永住権を取得している者が二十五万人、また長期の滞在者が二十万人、合わせて四十五万人、こう言われておるわけでございます。それをお世話するのも外交官の一つのお役目じゃないかと思いますが、まず、この中における外務公務員の任務というものを簡単に教えていただきたいのです。
  184. 枝村純郎

    枝村政府委員 外務公務員の任務としては、何と申しましてもわが国を代表いたしまして、相手国との関係でいろんな側面で代表する、あるいはそういう代表という資格において相手国と各種の問題について折衝、交渉を行う。さらに相手国の政情あるいは経済の事情について本国政府に報告をいたす。それからまた、日本国の実情を相手国の官民によく知らせますように、広報、文化の活動をする。さらには領事査証事務、これもただいま御指摘のように海外におきます邦人の数が大変ふえておりますので、重要な任務になっておるわけでございます。それから、これをいわば支援する意味において、会計、電信あるいは警備というふうな専門官、それが外務公務員を構成しておるということでございます。
  185. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 もちろん、それに従事している外務公務員は、それらしい使命感に燃えて仕事をなさると思いますが、一般的にどのような使命感をお持ちでしょうか。
  186. 枝村純郎

    枝村政府委員 まず、私どもいつも言っておることでございますけれども、在外勤務にあっては常に二十四時間勤務である。事務所において勤務している時間だけが勤務でないのであって、それを離れても、日常茶飯、常に日本国を代表しているという矜持を持って、かつ、何らかの非常の事態があった場合には直ちにこれに対応できるような、常時警戒態勢といいますか、そういった気持ちを持って当たるべきである。この点が一つでございます。  また、常に日本の国益を考え、かつ在留邦人の皆さん方の便益を考え、よき公務員として対処すべきことは、これは日本においても外国においても同様であろうと存じております。
  187. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 大変りっぱな使命感で従事されておりますが、特に私は、先ほど申したように、外国に行っている多くの日本人たち、大変不安な面もあるだろうし、そうしたお世話は親身になってやっていただきたい。在外公館の評判というのは、民間ではどうもよろしくない。サービスが悪い、不親切だ、そういう声をよく聞きますので、ひとつそういうことがないようにお願いをしたいと思います。  そこで、今回の手当の問題でございますが、いま、御存じのように国内の公務員は人事院勧告の凍結ということで、一般職の公務員は給与の改定がなされない。これは大変な問題だろうと思います。先日から国会の審議がおくれているのも、そうしたことに起因している。しかし、いま国を挙げての行政改革財政再建というときに、何といっても国民の模範となるべき公務員がみずから律していく、そうした観点から政府としてはこの見送りを決定されたと思います。そして外務公務員の場合でも、国内にあってはもちろん公務員法の規定に従っているのだと思います。そういうことで、今回の在勤手当を上げるということ、一般の国内にいる公務員は給与の凍結という中において、外国にいる外務公務員だけの手当が上がるということ、これはやはり国民感情からしてはぴんと来ない面があるのじゃないだろうか、かように思います。  そこで、総理府の人事局の方にお聞きいたしたいと思うのですが、こうしたことに関して、給与を所管する人事局としてどういうふうな考え方を持っているか、お聞かせ願いたいと思います。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  188. 廣瀬勝

    ○廣瀬政府委員 お答え申し上げます。  いま議論になっております在勤手当には特殊な点がございます。まず法律に基づきましても、「在外職員がその体面を維持し、且つ、その職務と責任に応じて能率を充分発揮することができるように在外公館の所在地における物価、為替相場及び生活水準を勘案して定めなければならない。」というような規定がございまして、こういった特殊な性格を有しておりますために、外務省が独自で検討されておるところでございます。  その外務省には、人事院の給与局長及び部外の学識経験者で構成されております外務人事審議会が設置されておりまして、在勤手当の重要事項についてその審議会で御審議があったものと伺っております。その審議に当たりましては、先ほど先生御指摘がございました厳しい一般情勢、一般職公務員の人勧実施の見送りなど、目下におきます危機的な財政事情も考慮されたものと存じております。
  189. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 要するに、国家公務員一般職員の場合には人事院制度によって給与体系が決まるが、外務公務員の場合はそれと別に、外務省設置法によるところの外務人事審議会、こういうところによって決めるのだという、いまのお答えだろうと思います。  私も少し私なりに勉強させてもらいまして、この外務人事審議会の勧告という五十七年十月十二日に出されたものを読ましてもらいましたが、この中に前段として、そうしたいまの「公務員給与の凍結決定等現下の未曽有の危機的な財政事情も考慮し」と、こうしたうたい文句がありますが、その後では「他方、諸外国における在外公館職員の勤務条件については特別の事情があると考えるので、次のとおり勧告する。」ということで、勧告が一、二、三、四とありますが、要するに、従来どおり上げなさいというふうな文面だろうと私は読んだわけであります。  そこで、具体的にお聞きしたいのですが、外務公務員で在外職員、外国に勤める場合、そして一般職の国家公務員、すなわち、この中で外務省のお役人でも国内で従事する場合との給与比較みたいなものを私なりにしたので、これについて若干質問したいと思うのです。  確認の意味ですが、まず人事局の方にお聞きしたいのですが、国家公務員で一般職員の場合には俸給というのがある。それに対して手当としては、扶養手当、通勤手当、住居手当、期末手当、勤勉手当、これは両方あわせていわゆる俗に言うボーナスだと思いますが、そして調整手当、それから超過勤務手当とか、俸給の特別調整額、俸給の調整額、初任給調整手当、こういうものがあると思いますが、そのとおりでしょうか。そしてまた、指定職職員の人たちの場合には、俸給と期末手当と調整手当、これが国内にいる国家公務員給与体系、かように私はまず考えていますが、間違いはないでしょうか。そして、すべてこれが人事院勧告によって上下、まあ下の方はまずないでしょうから、改正される、四囲の情勢によって上がっていく、こうした考え方でいいでしょうか。この点を人事局、まず確認してもらいたいと思います。
  190. 廣瀬勝

    ○廣瀬政府委員 内容につきましても、その変動要素につきましても、先生御指摘のとおりでございます。
  191. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 そこで、官房長にお聞きしたいのですが、外務公務員、在外勤務の場合には、在外職員という方は、国内でもらっている俸給、同じものをもらわれる。そのほかに手当としては、国内と同じように扶養手当と期末手当、勤勉手当、これはいま申したようにいわゆるあわせてボーナスであります。そのほかに在勤手当というもの、こういうふうな分類、後からまた在勤手当の中は申しますが、大ざっぱに言ってこれだけだろうと思います。そして、大使、公使の場合には俸給、それと期末手当と在勤手当、こうした分類でいいのでしょうか。
  192. 枝村純郎

    枝村政府委員 おおよそのところはただいま御指摘のとおりでございますけれども、在外勤務になりますと、本省勤務者に比べて受けられない手当が幾つかあるわけでございまして、たとえば扶養手当のうち配偶者分、これは受けられない。通勤手当、住居手当、調整手当、さらには超過勤務手当というものは受けられないわけでございます。それから、期末手当と勤勉手当につきましても、計算の基礎が違ってまいりますので若干減額になるわけでございますが、そういう幾つかの手当がなくなった形におきまして本俸というものは受け取る、それにただいま御指摘のような各種の在勤手当を受ける、こういう形でございます。
  193. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 いまの一般公務員と外務公務員比較は、表をつくっていただくように実はお願いしたのですが、なかなかつくっていただけない。私の方でつくってありますので、後から提示してお話をしたいと思いますが、いまのお話の中で、国内で受ける扶養手当が一部欠落して、それが在勤手当というものでもってカバーされているんだ、こんな趣旨のお話があったと思うのです。  そこで、お聞きしたいのは、在勤手当の中には在勤基本手当があります。それに住居手当、配偶者手当、子女教育手当、館長代理手当、兼勤手当、特殊語学手当、研修員手当、かようにあるわけです。確かにおっしゃるように、一般職員の場合に比して、扶養手当は両方にあります。しかし通勤手当がないとか、いまおっしゃるように住居手当がなくなってこうなっている、こういうことなんですが、これは後から細かくお話ししますが、やはりその額というものは大変違いがあるだろうと思うのです。  それで、一つの例をとってみれば、いま国内の場合には、扶養手当という中に奥さんだとかお子さんの教育費が皆含まれて扶養手当になっている。それが外国の場合には、扶養手当プラスの在勤手当の中に配偶者手当として基本手当の四〇%をもらう。また子女教育手当としてお子さんの教育費は別と、こうなっている。この点を指摘したいと思うのです。  そこで、私がお聞きして先ほど申されたように、一応人事院の勧告制度というものとは別に自分たちの方には外務人事審議会というものがあるんだ、そこの勧告に基づいて今回も改定の法律をお願いしている、こうおっしゃったわけでございますが、確かに外務省設置法の中にそうした審議会の設置という条項がございますが、いま外務人事審議会の委員さんというのはどんな方がなられていますか。
  194. 枝村純郎

    枝村政府委員 先ほど御説明がございましたように、三人の学識経験者、それから外務公務員たる者一名、それから人事院の内局の局長ということでございまして、具体的に申し上げますと、佐々木同友会代表幹事、それから緒方上智大学教授、これは前の国連の公使をしておった方でございます。それと中山賀博元駐仏大使、現在は新潟鉄工の顧問をしておられます。この方が学識経験者でございまして、人事院の方からは斧給与局長委員として御参加になっております。外務省の所属の公務員といたしましては私、官房長がなっておるわけでございます。なお、会長は佐々木委員にお願いしております。
  195. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 いまおっしゃったとおりでございますが、確かに設置法の中には、第十四条の二として、「委員は、外務公務員である者のうちから一人、」これは官房長だろうと思います、枝村さん。そして「人事院職員である者のうちから一人」これが人事院の給与局長の斧さんである。そして「及び学識経験のある者のうちから三人を、外務大臣が任命する。」こうなっている。  いまおっしゃるとおりと思いますが、私が指摘したいのは、緒方さん、中山さん、いずれもりっぱな方で学識経験者ではあります。しかし、中山賀博さんはきっすいの外交官である。緒方さんもアメリカの公使をなさった。いわば外務省の身内の方である。だから、四人の委員のうち三人が外務省の身内である。一人だけが人事院の給与局長さん、こうした中でやると、どうしても私はお手盛りではないだろうかという批判があってもやむを得ないんじゃないだろうか、かように思います。その点がやはり国民的課題というか、特に海外にいる日本人の中にそうした声があること、大変残念に思いまして、この点を指摘しておきたいと思います。  そこで、次にお伺いしたいのは、先ほどお聞きしたように、在勤手当、これをお決めになる基準というものは一体どうやってお決めになったんだろうか。私の質問の仕方が悪いかもしれませんが、この法律に別表がございます。これから在勤手当を幾ら幾らに上げたいとずっとございますが、やはりこの表をつくるには一つの基準があっておつくりになったと思いますが、それを御説明願いたいと思います。
  196. 枝村純郎

    枝村政府委員 先ほど総理府人事局の方から御答弁がございましたように、法律に定められております基準と申しますと、外交官としての対面を維持し、能率を維持するために必要な額を支給する、こういうふうなことが今回御審議願っております法律の第五条に決めてあるわけでございます。これを具体的に御説明せよとの御趣旨と思いますが、その場合には私どもまず、その標準的な基本になります公務員といたしまして、ワシントンの大使館に在勤し三号の在勤手当を受けておる者を定めるわけでございまして、その場合に二つ方法があろうかと思うわけでございます。  そういった公務員の現実の生活の必要経費というものをはじいて積み上げ方式によってこれをやる。こういうことは必要なときにやることにいたしておりまして、過去最近の例でございますと、ワシントンの三号というものを基準に定めました昭和五十一年でございましたかにそれをやっております。  その後はむしろ為替の変動とか物価の変動が激しいものでございますので、その時点からの為替の変動あるいは物価の変動というものを逐次計算してまいりまして、ときには減額し、ときには増額するというふうなことでございますが、そういうことで一定の計算式をもちまして計算いたしておるわけでございます。  なお、任国における為替の変動、物価の変動、これはワシントンの場合でございますと、全体の生計費の部分の八割はワシントンにおけるそういった要素の変化というものを考慮いたしておりますが、残りの二割につきましてはワシントンにおりましても実際上日本からいろいろ物資を調達したり、日本における生活の根拠がそれなりに残っておるということで、二割につきましては日本における物価の変動の要素というものを考慮して計算いたしておるわけでございます。
  197. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 五十一年にこのワシントン三号というものを決めて、その前はこうした在勤手当というものが、いつでしたか、大分前にできたと思うのですが、そのときはワシントン三号ではなく、ワシントン七号か九号かそういうものでしょうが、それをどうしてワシントン三号に変えたわけですか。
  198. 枝村純郎

    枝村政府委員 昭和二十七年にこの法律が制定されました当時におきまして、額を計算する基準といたしましては、ただいま御指摘のワシントンの在勤基本手当九号の受給者というもの、つまりこれは最下級の職員であるということで、たしか二百三十ドルでございましたかと定めまして、そこから上下倍率に従って上を定めていったということでございますけれども昭和五十一年にワシントンの三号の方にいたしましたのは、むしろ初級の駆け出しの職員でございますと必ずしも標準として適当ではなかろうじゃないか。つまり家庭もまだ形成していない独身者の場合も多うございますし、むしろワシントンの中堅職員を構成いたします、本省で言えばちょうど課長補佐の、課長一歩手前と申しますか、中堅からかなり上ぐらいのクラスに当たるわけでございますけれども、こういった職員をモデルにとる方が適当じゃなかろうかということで、そちらの基準に変えたというふうに理解いたしております。
  199. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 いまのお話の中で、二十七年当時のワシントン九号というのはアメリカの生活における下級というような表現がございましたが、この五十一年の改正のときのワシントン三号というのは、アメリカにおける米国民の生活水準ではどの程度のものだったんですか。
  200. 枝村純郎

    枝村政府委員 先ほど申し上げましたのは、ワシントンの大使館における最下級、実際上十一号まで決めてございますけれども、普通そういう在外勤務をするような職員であれば九号というのがほぼ最低、最初の駆け出しの給与であろう、そういう意味で下級と申し上げたわけでございまして、ワシントンの社会階層の中において当時の二百三十ドルが下層に当たるとは必ずしも考えておりません。  ところで、現在の三号がワシントンにおける社会階層においてどれくらいの給与所得を標準にしておるかということでございますけれども、これは率直に申し上げて、日本外務公務員としての体面を維持し、能率を維持するために必要な給与という計算でございまして、必ずしもワシントンにおける一般市民との厳密な比較ということでは考えておりませんが、私どもとしては、そういったものが恐らく中流の上くらいのところには当たっていればいいがなというふうに思っております。
  201. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 外務省の方とお話しすると、外勤地へいらっしゃる公務員、非常に体面という言葉を使われるわけですけれども、その体面を維持するためにはアメリカにおいて中の上くらいの生活でいいわけなんですか。その点はどうなんですか。
  202. 枝村純郎

    枝村政府委員 体面という言葉はいささか古めかしいところもあろうと思いますし、内容は必ずしもはっきりしないとお考えかと思いますが、要は、在外公館の職員として恥ずかしくない、かつまた、そういうことを維持することが、たとえば任国の官民とおつき合いをし、あるいは外交団とおつき合いをし、そういうものを通じて情報の交換をするあるいは日本国というものを誤解なく正しく理解させるよすがとする、そういったことを含めて必要な活動ができるようなという趣旨に私ども受け取っておるわけでございます。
  203. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 私、大変体面という言葉にひっかかりを実は感ずるものなんです。外務公務員法とかそういうものの中によく体面というのは出てくるように思うのですが、国家公務員法、また国内における一般公務員の場合には余り体面は言わない。先ほど言ったように、公務員というものはやはり国民の模範であるべきだということが、これは内外を問わず言わなくてもわかっておることじゃないだろうか、かように思うのです。  そこで、私なりに解釈すると、体面というのは、当然同じ任地において各国の大使館設置されている、各国の外交官とのつき合いがある、その場合に日本だけ見劣りしてはいけない、こんな中から来ている問題だと思いますが、こうした給与の算定というときには、当然その任地における外国大使館員、外国公務員というものと比較なさっているだろうと思いますが、その実態はいかがでございますか。
  204. 枝村純郎

    枝村政府委員 体面という言葉、確かに私どもも場合によっては誤解をもって受け取られる可能性があるというふうに恐れるものでございますが、これは法律に書いてあります趣旨は、先ほど申し上げ、またただいま佐藤委員が御指摘になりましたように、実際にその外交活動を遜色なくやれるようなことを考慮しろ、こういう趣旨に受け取っております。  そういう前提でほかの国との比較というお尋ねでございますが、各国ともこういう給与の中身というのは必ずしも直に比較できないところがございます。つまり、住居手当の立て方でございますとか子女教育手当の立て方でありますとか、大分違っております。しかし、一応概念的にあえて比較をいたしますと、たとえば私ども手元の資料では、日本と西独のほぼ同資格の外交官がワシントンに在勤した場合の給与比較いたしますと、日本を一〇〇といたしました場合に、西独の外交官につきましては入省後五年は一一九と向こうの方がよろしいようでございます。入省後十年たちますと一〇一、入省後十五年たちますと九八、入省後二十年ですと八四というふうに上下倍率は日本の方が高いという形になっております。  また、パリをとってみますと、日本を一〇〇といたしました場合にいまの西独の外交官は、先ほど申し上げました順序で申し上げますと、入省後五年で一一五、入省後十年で九五、入省後十五年で九三、入省後二十年で八二というふうになっております。これは西独の場合は、欧州、パリという本国に近いということも勘案された数字であろうかと思います。  米国の場合、パリにおります外交官は、入省後比較いたしますと、五年で一四五、十年で一一〇、十五年で一一三、二十年で九八というふうに一応数字を持っております。
  205. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 いまの官房長がおっしゃったのは、一口に言うと、ほかの国と比べた場合に、日本の場合には下の方は外国の方がいいが、上の方になると日本の方がいいという意味なんですか。そこをちょっとはっきりしてもらいたいのですが……。
  206. 枝村純郎

    枝村政府委員 いずれも日本を一〇〇といたしました場合の比較でございますので、むしろ申し上げました趣旨は、下の方でありますと西独あるいはアメリカ外交官の方がよろしいわけでございますけれども、上級になるに従いまして比較的に日本の方がよくなる、あるいは遜色なく大体同じくらいになる、数字の上でそういうふうになっているということでございます。
  207. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 もう一つ大きな要素というのは、やはりその土地にいる日本人の会社員、この人たちとの給与比較も当然なさるだろうと思うのですが、それはどうなっておりますか。
  208. 枝村純郎

    枝村政府委員 日本の民間の企業の現地における代表者の方々あるいは駐在員の方々との比較の問題でございますけれども、私どもも、たとえば代表的な商社の人事部長で構成されております五社会というふうな組織がございますけれども、いろいろな面で在外給与についての意見交換を行っております。ただ、結論といたしまして、どうも在外給与に与えている性格といいますか役割りといいますか、これは外務省の場合と民間の企業の場合とは大分違うのではなかろうかということでございまして、なかなか直な比較はできないと私ども考えております。ただ、金額で支給されるものだけをとりますと、私どもの印象でございます、これは確認をするのは大変むずかしいわけでございますけれども、在外公務員の給与というのは決してそういう商社員あるいは一般の駐在員の方々には劣っていないというふうに感じております。  ただ先ほども申し上げましたように、これはなかなか真っすぐな比較はむずかしいわけでございまして、先日も私、日本の代表的な建設関係の企業の海外担当の常務さんとお話しする機会があったのでございますけれども、そのお話によりますと、外に出た場合にはとにかく社宅は原則として家具つきですべて提供する、あるいは運転手つきの車を提供いたしまして、これは私用であろうと自由に使わせる。わりにそういう枠組みはすべてきちんと会社の方でつくって、まさに海外に駐在する方は自分の衣食を賄うに足る範囲の出費をすればいいという形にしておるというふうなお話も承ったわけでございます。これは一例で大変恐縮でございますけれども、五社会を通じましても、給与というものに対する考え方がかなり違うなということが私ども感じておることでございます。
  209. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 いま官房長指摘のように、確かに在留邦人で民間会社とはシステムが違うという御指摘だろうと思うのです。そしていまのように、在勤手当の基本を決めるときにはやはりあらゆるものを勘案している、こうおっしゃりたかったのだろうと思うのです。だからワシントン三号を決める際でも、やはりアメリカにおける生活、いわゆるアメリカ人の生活とも比較しておる、また、そういうところでもって在留邦人の商社、また他国の外交官、こんなあらゆるものを比較して言っているんだ、こういうことをおっしゃりたかった。事実そうだと思います。  私は一つの提案みたいなことを申し上げますが、やはり民間商社がもらっている、いま五社会と言われたいわゆるこのテーブルは、実はここにもあるのですけれども、大変簡単にできている。わかりやすい。なぜ外務省のはあんなにややこしいのだろうか、そんな気がするのです。いま官房長指摘のように、確かに五社会の方では、ニューヨークにおいては家賃が入って給与をもらう。そしてまた一説には、やはり民間の場合には行った人がそこでもって住居をローンで買う。家具もローンで買う。二、三年勤める。そうすると、必ず土地が上がっているからそれを売却して、そして国に帰ってくる。外交官の場合には体面があるからそういうまねはできません、こうおっしゃる。ある意味ではりっぱかもしれないが、やはり外務省としてお考えになることがあるんじゃないだろうか。  それは、一つは住居に関しても、大使館なら大使館でそうしたものは公費でもって決めておけばどうなんだろうか。公邸というか官邸というか、公務員宿舎というものを決められて、そこに入ってもらう。そうすれば、少なくとも什器類は前任者の物を後の人が受け継いでいけばいいのだ。それを五年に一遍、十年に一遍買いかえる。この方がよほど経済的じゃないだろうか。また、国の予算の支出ということでどうなんだろうか。また、ほかの国の人たちはそうしたやり方をやっているんじゃないだろうか。かような疑問を感ずるのですが、いかがお感じでございますか。
  210. 枝村純郎

    枝村政府委員 先生御指摘の点は、確かにそういう側面が非常にあるわけでございまして、私どもも将来の在外給与のあり方としましては、なるべく実費で、あるいは実物で給与できるもの、そういったものは官費で賄っていく、そういうことが、継続的、かつ、ただいまおっしゃいましたように家具、什器などを譲っていくということもできやすくなるわけでございます。ただ、そのためにはそれなりの体制をつくる必要があるわけでございます。  また例を申し上げて恐縮でございますけれども、私、インドネシアに十年ほど前に在勤いたしました。そのころ大変住居事情が苦しゅうございまして、特に三年、二年の家賃の前払いというようなことを要求されまして、当時の金でも三万ドルぐらいの借金をしないといけないというようなことでございまして、アメリカは、そういうことに対しましてはもう完全に宿舎を館員のために整備をいたしております。したがって、そういう住居の心配なしに館員が勤務をしておったわけでございます。  ただ、ああいう土地におきまして、それなりの、百以上の数の宿舎を経営していくということ自身、これを修理しメンテナンスを保っていく、また熱帯地でございますので、いろいろ、クーラー、冷蔵庫その他の設備も必要でございます。そういうものを維持していくためだけでもかなり大きなセクションをアメリカ大使館は抱えておったわけでございます。けさほども定員の問題でいろいろ御質問がございましたけれども、いろいろな条件が整いませんとなかなか私どもとしてそういう方向へ踏み切れない。したがいまして、現在の給与体系では結局個人がそういった負担をしておるというのが実情でございます。  参考のために、私、共済組合の貸付制度とか、あるいは東京銀行との特別な契約によっていろいろ貸付制度をやっておりますが、在外職員に対する貸付制度を見てみますと、一件百八十万円の限度いっぱいまで借りておる、あるいは東銀からは一万五千ドルあるいはそれ以上借りておるケースが六百件近くあるわけでございまして、そういったことから見ましても、できればそういう初度設備費というようなものがなくなるようなより柔軟な方法でということ、あるいはより継続的に政府の方でめんどう見られる方式というものがあるいは合理的であろうかと思うわけでございますけれども、その辺は予算の制約もございますし、また、私どもとして公私のけじめということをきちんとしていくという上から申しますと、線の引き方は非常にむずかしいところもあるわけでございます。ただ、先生御指摘の点の問題意識は、私どもも十二分に持っているつもりでございます。
  211. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 私がいま提案したのは、確かにおっしゃるように、商社の五社会の方では地域によって住居の場合違いますね。いまおっしゃったジャカルタ、これは大変住居のことがあるのでしょう。商社はみんな社宅をつくって、それに入れている。先ほどのニューヨークの場合には家賃込みの給与を払う。だから臨機応変というか、その土地土地に合わせているわけですけれども、その点が民間の方が柔軟性があるのじゃないだろうか、どうも外務省の方は硬直しているのじゃないだろうか、かように私は思って指摘したわけであります。  そこで、次のことをお聞きしたいのです。  話がダブるようですが、在勤手当というのは、二十七年にできてから今回の改正が十一回目ですか十二回目ですかになるわけですが、ここのところは五十五年からずっと四年間連続してあります。これは、外務省の方としては、為替変動、インフレ、こういうことをおっしゃると思うのですが、何かこれに対する対応策のようなものはお考えですか。
  212. 枝村純郎

    枝村政府委員 毎年のようにこういう改定をお願いしているのはどういうことかという御質問でございます。  確かに、かつてのように固定為替相場でなくなりますと、為替の変動というものは特に厳しく在外勤務者の給与に響いてくるわけでございます。  そういうこともございまして、昭和四十九年でございましたか、法律では基準額を定めて、実際の支給額は政令に委任する、ただ、その範囲は基準額の百分の七十五と百分の百二十五の間にする、つまり上下二五%の範囲であれば支給額を臨機応変に変えてよろしいという改正をしていただきまして、その後、それによって得られました弾力性を利用いたしまして政令による改定を何度かしたわけでございます。特に昭和五十四年、この当時は大変な円高でございまして、一ドル百九十五円というような時期でございました。このときには多数の公館について政令によって減額も行った。そういうことでございまして、その法律の改正によって与えられました弾力性というものはそれなりに私ども活用いたしまして、なるべく在外職員の受け取ります給与の実質的な額というものが変更をこうむらないように努力してきたわけでございます。  しかし、最近の四年間、何分にも為替の変動も大変厳しゅうございますが、また御承知のようにアメリカですら二けたインフレというようなこともございまして、世界的な第二次オイルショック後のインフレというようなことも勘案いたしまして、毎年基準額の改定ということをお願いしているような状況でございます。
  213. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 この在勤手当法ができたときは外貨建てで支払われた。それが変動相場に移行してから円建てになったように聞いておりますが、今日のように非常に不安定というか円が強くなったりまた安くなったりするこういうときは、やはりそのときそのときの外貨建てにするというのも一法じゃないだろうか。また、それが現地の人たちとの比較もしやすいと私は思うのです。先ほど申した民間企業の場合は、五社協定によって外貨建てになっている。これもぜひとも御研究願いたい、かように思います。  先を急ぐようですが、私がこの問題に関してもう一つお聞きしたいと思うのは、先ほども申したように、いろいろなことでもって在勤基本手当というものが設定されている。ワシントン三号というものを基準として上下倍率、そして各国の比較表、全部つくって細かに計算されていると思うのです。冒頭に申したように国家公務員人事院勧告凍結によるそれとの比較においても、一つの見方が手っ取り早くできるんじゃないだろうか。  それはどういうことかといったら、同じ方で日本にいられる方が大使になった、公使になった、そういうときに、先ほどちょっと申したように大分手取りが上がることになると思うのですが、これは大体どれぐらい上がりますか。例を言って悪うございますが、枝村房長が先ほどおっしゃったジャカルタにいられた。行かれる前は本省だと思いますけれども、行かれたときに大分上がっていると思いますが、どれぐらい上がりましたか。一般的な例でも結構でございます。
  214. 枝村純郎

    枝村政府委員 私、当時の記憶が定かでございませんが、たしかあのころでございますと、本俸の在外で受け取ります比率、これは先ほどちょっと御説明申し上げましたように、かなり目減りをしているわけでございます。それから、配偶者手当も入れまして、諸手当を入れました受取額との比率が一対二・五ぐらいであったろうかと思っております。つまり、日本において受け取ります額よりは三倍ないし三・五倍くらいであったろうかと思っております。  なお、ワシントンに三等級六号俸の者が参った場合の数字でございますけれども、月収の単位で申し上げますと、本省勤務の場合は三十一万二千九百二十円になるわけでございますけれども、在外勤務でございますとこれが九十万七千六十円になる。これは先ほど申し上げましたワシントンの三号俸を受け取るという計算でございます。これで見ますと、いま申し上げましたような三倍弱になるわけでございます。ただ、年収の単位で申し上げますと、先ほど申し上げましたような目減り、あるいはいわゆるボーナスでございますが、期末・勤勉手当の相違というようなことから、二・三倍ないし二・四倍になる。つまり、年収でございますと、五百十二万円本省において受け取っているといたしますと、在外におきましては千二百八万円ということになる、こういうことでございました。
  215. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 一般から見ると、外国に行くと二倍、三倍に上がっている。それだけの仕事をしてもらおうというのが国民の願いであろうと思います。先ほど申したようにそれだけの仕事をしてもらって、そして在外邦人の支持というか支援をいただきたい、かように思いますが、ついでに申しますが、外国にいて、たとえばアメリカの場合などというのは、企業においてはボーナスというものはないのでしょう。クリスマスのときにやっていく。だから、そういうところでどうもすっきりしない面が、都合のいいところは日本流で取っている、悪いところは何か向こうに合わせている、そんな気がしてならないわけでございますが、この問題はこのくらいにしておきます。  そこで、時間がございませんから、いま文部省の方にお見え願っていると思いますので、ちょっと子女教育についてお聞きしたいと思います。  それは、先ほども前の方から質問があったと思いますが、先ほどの実は鈴切先生の質問の中で関連してお聞きするような立場になりますが、設置基準は一カ所で三十名以上の子女がいた場合になるのだ、こういうお話があったと思います。しかし、そのほかに潜在的海外子女数というのがあるだろうと思うのです。学校があれば子供を連れていくのだが、学校がないから学校の適齢期の子供が連れていけない、こういうのは一体どのくらいだと把握されていますか。
  216. 藤本芳男

    藤本説明員 現在の義務教育相当年齢の子供が三万三千人ということを先ほど申し上げたわけでございますけれども、これは中学校三年までということでございます。ただ実質的には、それより上の年齢になりますと内地に残している場合が非常に多いというのが実態でございます。正確な数字は邦人の方の統計として一応把握はしておりますけれども、現在ちょっと数字そのものは持っておりませんが、特に男の子の場合にかなり国内に残しておるというケースが多いと思います。  ただし、中学校、義務教育課程までですと、もちろん御指摘のとおりにその地に日本人学校がございますれば子供を連れてくる、こういうケースがふえることは当然予想されることでございまして、その場合に、それでは三十人という基準なるものがどうかという御指摘だと思いますけれども……
  217. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 時間がありませんから……。  私が申し上げたいのは、三万三千人いるというのは、いま行っている方が三万三千人である。私が言っているのは、父兄が子供を連れていきたいけれども行けない。その理由は二つある。一つは向こうに学校がないということがありますが、もう一つは、やはり日本人だから帰ってこなければいけない。そのときに、学校に、同じような学校というか、中学校から高等学校、小学校から中学校に受験がなかなかできない。そうしたことでもって行かれる方が少なくなっているのじゃないのだろうか。また片一方では、やはり予算上なかなか外国に学校もつくれない。そういうことはあると思います。  私がお願いしたいのは、そうした面でもって文部省の方、外務省協力して、親子が別れ別れになって暮らすということはよくない、これが今日の不良化にもつながっているわけですから、なるべく子供が連れていけるような環境づくりをしてもらいたいし、また学校の転校というのも自由にできる、こういうことに、真剣に御検討とは思いますが、その点をお願いするわけであります。  そして次にお願いしたいのは、外国人学校に行っているお子さんをお持ちの父兄に聞くと、授業料が高いという話を聞きます。これは日本にいる場合と、小学校の場合どれくらい違いますか。言葉をかえれば、外国に行っている場合に平均してどれくらい父兄が負担しなければ日本人学校に行けないか、補習校に行けないか、それを教えていただきたいと思います。
  218. 草場宗春

    ○草場説明員 現在、日本人学校における授業料だけを平均でとりました場合、月額一万九千八百九十七円になっております。年額で申しますと、二十三万八千七百六十四円になっております。それが国内におきましては授業料は無償になっておりますけれども、この平均金額が、たとえば外国アメリカンスクール等に在学した場合は月額十万円程度になっておりますので、日本人学校が特に高いというふうな認識はいたしておりません。  しかしながら、外務省と協力いたしまして、できる限り父兄負担の軽減ができるよう、政府からの諸施策を一層充実していくよう努めたいと思います。
  219. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 いまのアメリカンスクールと比較して高いとか安いとかいう感覚を持っているのが私は困ると思うのです。日本にそのお子さんがいた場合には、かからないんでしょう。外国に行っているから二十三万かかるのだ。そこが私は問題だと言うわけなんですよ。それは一般の外務公務員の場合、手当をもらっているし、それ相当の使命感があって行かれるのでしょう。しかし、往々にして民間会社の場合には会社の命令一本で行かざるを得ない。日本にいたら当然公立の学校、小学校、中学校に行かせる家庭が、外国に行ったばかりに私立並みの授業料を負担しなければいけない。ここに矛盾があり、そしてほかと比較して安い高いという認識をお持ちのところに問題がある、私はかように言うわけなんです。  そこでもう一つお聞きしたいのは、アメリカなんかの場合で、アメリカ外国の現地学校に行った場合には、授業料というのが取られるのですか、取られないのですか。
  220. 草場宗春

    ○草場説明員 アメリカの場合は世界各地にアメリカンスクールというものを設置して、アメリカの在外勤務者がそこに通学させているわけでございますが、その場合、授業料をそれぞれの父兄が負担する場合が通常の形態と聞いております。
  221. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 外国の場合の方が、アメリカなんかの場合には安いようですね。  その一つの例として、五十六年の九月一日現在で北米には約一万八百九十人の子供が行っておりますが、現地校に行っているのが二千三百六十七人、日本人学校に行っているのが五百四十四人、補習授業を受けているのが七千九百七十九人、こういう数字になっているのです。  私が指摘したいのは、日本人の子弟であれば、日本語、日本の社会、日本の歴史、そういうものを子供のときから学ばす必要があろう、かように思うのです。アメリカなんかにおいてよく聞く話は、韓国の人、中国の人、イスラエルの人、こういう人たちは、二世、三世になっても母国語というものを知っている。日本人で、日本の二世、三世に会って、日本語をしゃべる二世、三世というのは余りいないでしょう。顔は同じだと思って話しても、全部英語だ。母国を忘れている。こういうことでいいだろうかという気がするのです。  いまの人たち、私が指摘している人たちは、当然日本に帰ってくるわけですが、それが子供のときから授業料その他のことで外国人の学校に行って帰ってくる。日本の教育の根幹はそこにあるのじゃないだろうか。だから、ぜひとも日本人は日本人らしい教育を受ける日本人学校というものを多くつくってもらって、そしてその授業料は、ただにしてやれとは言わないが、なるべく父兄負担を少なくしてもらいたい、こういう実はお願いをするわけであります。  そしてさらに、できればそうした外国人学校、外国の現地学校があるところにも日本人学校をつくってもらって、父兄の選択、これも自由にさせてもらいたい、こうしたお願いをいたしまして、ちょうど時間になりましたから質問を終わります。ありがとうございました。
  222. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 和田一仁君。
  223. 和田一仁

    和田(一)委員 大臣がおりませんので、関係のないような質問からさせていただきます。  前回もいま提案されております法案と同じような趣旨の法案が出ましたけれども、そのときに附帯決議の中にございました在外邦人の選挙権の行使について、若干お尋ねしたいと思います。  これは前から私ども民社党は、ぜひ在外邦人にも憲法で保障するところの選挙権を行使できるような方法を講ずべきである、こういう主張をしてまいりまして、その結果、前回は附帯決議でこれを実現するようにしていただくことをつけたわけでございますけれども、その後、外務省といたしまして、この在外邦人の選挙権の付与の問題についてどういうふうな準備を進めておられるかをまずお聞きしたいと思います。
  224. 藤本芳男

    藤本説明員 これは昨年御指摘がございまして以降、自治省及び自民党の方と御相談いたしまして研究してまいりました。長年の懸案でございますし、また技術的にむずかしいこともございますけれども、何とかこれを克服して実現する方向で研究をしてまいったわけでございまして、現在、自治省においてこの法律案について作業しておられるというふうに理解しております。
  225. 和田一仁

    和田(一)委員 それでは、自治省との間で御相談して法案の作業をなさっておるということでございますので、その作業の中身、どの辺まで進行しておるのか、いつごろそれが提案されるのか、そういった点についてひとつお知らせをいただきたいと思います。
  226. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 お答え申し上げます。  先ほど外務省の方から御説明がありましたように、附帯決議の趣旨に沿いまして、また選挙権が基本的な権利であるということを考えまして、実は昨年来、自民党の選挙制度調査会の方で精力的に検討が続けられておったのでございますけれども、その自民党の選挙制度調査会の方で大筋の方向が出ました段階で自治省の事務当局だけで素案をつくりまして、二月十日の調査会に御説明をしたわけでございます。それが新聞等で大綱ということで出たわけでございますけれども、その大綱を自民党の選挙制度調査会で御説明しまして、いろいろ論議はさらにございましたけれども、了解をされまして、できるだけ早く成案を得て国会に提出するように努力せよというお話がございましたので、いまその作業を続けておるところでございます。  先ほども御説明がありましたように、何しろいろいろ国情の違う外国での選挙権の行使のことでございますので、いろいろ問題点がございます。関係各省といま精力的に詰めておりますが、提出の時期についてはちょっとまだ申し上げる段階ではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  227. 和田一仁

    和田(一)委員 詰めている、作業中ということでございますけれども、これはなるべく早くにやってもらいたい、こういうことで要望しておったわけでございますけれども、作業的にどういう点に問題があるのか、ひとつお教えをいただきたいと思います。
  228. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 私どもがいま考えておりますシステムといいますか方式は、この在外邦人の選挙権の行使は国の選挙、衆参の選挙に限って認める、そして外国に三カ月以上住所を持っておられる方で将来日本に帰国する意思のある方に限って認めるというようなことにいたしております。それから、どこの選挙区で投票するのかということについては、実は住所地と本籍地、両方の議論がいろいろございまして、そのいずれも認めるような方向で検討しておるわけでございます。具体的な投票行為は、それぞれの在外公館において投票していただきまして、それを外務省のルートを経由いたしまして日本の方に送っていただきまして、それを選挙人名簿の所属する市町村に送ってそこで開票する、こういうようなちょっと手間のかかるやり方でございますけれども、それを考えておるわけでございます。  どういう問題点があるかと申しますと、これは実は法制局あたりから、どういう考え方なのかメモを出してくれと言われておるわけでありますが、一つは、対象者の範囲を、先ほど申し上げましたように将来帰国する意思のない者は除く、将来帰国する意思のある人に限って認めるということにいたしておりますけれども、そこのところをなぜそういう区分をするのかということが一つ問題になっております。それから、国の選挙に限って認める、地方選挙は認めないということになっております。地方選挙は、その地域の住民でもありませんし、いろいろ選挙期間が異なります、非常に短いのもありますので、これはむずかしいということで認めないことにいたしておりますけれども、実は総選挙と同時に行われる国民審査はどうして認めないのか、認めるべきではないかという御議論もございます。それから、国の選挙に限って見ました場合でも、総選挙、通常選挙は当然ですけれども、再選挙とかあるいは補欠選挙が年に四、五件ございます。そういうようなものまで含めてやるのか、あるいはそういうものを除外するのかという問題がございます。除外するとすれば、どういう理屈で補欠選挙や再選挙を除くのかということが問題になっておるわけでございます。  それから、どこの選挙区に属するということで投票するのかということで、先ほども言いましたように住所地と本籍地を選択できるような方向で考えておると申し上げましたけれども、やはりそこのところが両方、どちらの選挙区に属してもいいのだ、本人の意思でどちらでもいいのだというのは問題ではないか。本籍地なら本籍地、あるいは最終住所地なら最終住所地というふうに限定すべきではないかということも、実務的にもあるいは法律的にも言われておる問題点の一つでございます。  さらに申し上げますならば、外国におけることでございますので、選挙違反の取り締まりとか、そういうことで果たして十分に公正を確保することができるかということ、あるいは罰則の一部については、一部といいますのは非常に悪質な犯罪については、国外犯の規定を置いて日本に帰ってきた場合は処罰できるようにしなければならないかと思っておりますけれども、その範囲をどうするかというような問題もございます。  それから、非常に全世界にまたがって、どの選挙区でだれが立候補したというようなことについて十分な資料なり判断の材料を提供できるかどうかというような問題も、これは実務的な実施面の問題点としてあるわけでございます。  そういうようなことがいろいろ問題になっておりまして、精力的に関係各省と詰めておるわけでございます。
  229. 和田一仁

    和田(一)委員 大体お話を伺っておると、考えられる問題点が指摘されているようでございました。しかし、そういったことであるならばこれは対応の仕方が十分あるのではないかと思うので、ぜひひとつこれは早くに法案として出していただいて審議を進めていただきたいな、こう思うわけでございます。どうぞひとつ、これはいまのお話ですといつごろ出るかちょっと見当がつかないようでございますけれども、ひとつなるべく早目に具体的に選挙権が与えられるような方向で進めていただきたい、こんな感じです。  大臣、お見えになりました。  新しく在外公館を設けられるわけでございますけれども、従来、在外公館の一つの大きな仕事であります情報収集こういう問題について、どうもともすると出向している各省別の国内における縦割りと同じようなものが、外国に行ってまでそういった縦割りの習慣というか、そういうものがあって、大事な情報収集についても大使を経ずして直接自分の出身省庁にその情報が打電されるというようなこともよく耳にするわけでございますけれども、そういうことがあってはならない、こういうふうに私は思うのでございまして、少なくも出先で監督をしている立場の大使あるいは領事、こういった身分の人がそういう情報は全部コントロールするように、そういうことをきちっとこの際確立をしていただかなければならぬな、こう思うわけです。  その一つに、外務省の方の任期が二年ぐらいで比較的早く任地が変わる、ほかの省庁からの人はもっと長いというために、情報の確度が違うのだよ、外務省の連中よりはわれわれの方がよっぽどその土地に通じていて細かい情報網を持っているのだというようなことも聞かされるわけでございますけれども、そういう点がないようにぜひひとつしていただかなければならぬと思うのでございます。  大臣、こういう意味で、新しい在外公館が置かれる、そこにある情報、そういうことで情報の一元化ということについて、ともすればそういううわさを聞いておるだけに、この情報というものが本当にいま一元化されて大臣のもとに来ているかどうか、その辺の確信をお聞かせいただきたいと思います。
  230. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 在外公館からの情報というのは一元化されなければならぬのは当然でありますし、また外交が一元化して初めてその国の外交が強力に展開されるわけでございます。したがって、各省庁からもそれぞれ在外公館にアタッシェ等を派遣しておるわけでございますが、出ればもちろん外交官でございますし、在外公館の責任者のもとに統一して行動しなければならぬわけでございまして、いまおっしゃるようなことが全然ないとは私は申し上げませんが、しかし全体的に見ると、こうした一元化のもとに情報等につきましても私のところへ集中してまいってきておるというふうに考えております。特に最近は情報量が非常に膨大になりまして、電報も非常に多くなったわけでございます。こういう情報外務省において集中的に管理をして、それぞれの役所でその情報に基づいてこれをまた行政の上に生かしていくということが大事だと思っております。  これからも、いまおっしゃるようなことがこれからふえてきては大変ですから、あくまでも外交の一元化、そして情報の一元化ということで私自身も努めてまいりたいと思いますし、また、在外公館に対してもそうした趣旨を徹底をして外交の活発化を図ってまいりたい、こういうふうに思います。
  231. 和田一仁

    和田(一)委員 大臣率直に、かつては必ずしも一元化ではなかったこともある、こういうふうにお認めになったわけですけれども、ちょうど大臣が鈴木内閣の通産大臣のときに、これはかつて外務委員会でも一遍質問が出た問題ではございますけれども、ブロック書簡問題というのがございました。これは昨年の五月にブロック米通商代表がパリで櫻内外務大臣に対して手渡したブロック書簡、この書簡の添付文書に「日本の総理大臣日本市場開放宣言案」なるものが添付されていた。ところが、これは実は外務省が何も知らないつんぼ桟敷の中でこういうものが逆に向こうから手渡された。こういうことがあったというので、外務委員会でも質問が出たことがある問題でございますけれども、ちょうど当時の通産大臣であるあなたが今回は外務大臣という立場になられまして、過去にこういったことが事実あったかどうかをちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  232. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ブロック書簡の問題は、私は当時通産大臣をしておりましたのでよく承知をいたしておるわけですが、日本から通産省がUSTRに初めから相談するとかあるいは案文を手渡したというふうなことはないわけでありまして、この点についてはずいぶん誤解もあります。ただ、政府としてこの方針を決めて、これはやはり貿易摩擦を解消するということが一番大事でございますから、ブロック氏等に対して発表の前に、こういうことを考えておるんだということは言ったことは事実でございますが、しかし、その間にあって通産省と外務省との間に打ち合わせとか情報の交換といったもので多少はやはり手抜かりがあったんじゃないかというふうには私は感じております。  したがって私たちとしては、これは通産大臣のときからそう思ったのですが、外交というのはやはり一元化でなければならぬ、対外的には一本でなければならぬわけで、国内においては各省庁が十分相談をして、そして対外的には一本の形で外務省を通じて外交を進めていくということが必要である。しかし、実務的な問題はそれぞれ各省の立場がありますから、そういう調整等はもちろん十分行わなければならぬことは当然でありますし、また、そういう各省の立場というものを外務省も踏まえて外交を進めていかなければならぬということは私は当然であると思いますが、いずれにしても、過去の経験に照らして、外交の一元化、情報の一元化ということは、これからますます日本世界の中で大きい立場に立つわけでございますから、ますます重要になってまいった。少なくとも国の足並みが外交の面で乱れておるというふうなことになれば、強力な外交というのは展開できないということを私は強く感じております。そういう点では今後とも十分注意をしてまいりたいと考えております。
  233. 和田一仁

    和田(一)委員 当時の通産大臣としてああいう交渉事の中で事前にいろいろな根回しが行われたことはあっただろうというふうに認められたわけです。しかし、あのとき大変問題になりましたのは、そういったことが外務省の全然知らない中で、文章としてまでそっくりそのまま、何か向こうにこういうものでどうかというようなものが出て、それが逆にブロックさんの手から日本の総理大臣の声明の案文としてどうでしょうかというふうに出されたというのは、これは外交的に大変な問題があるだけでなく、日本主権の問題だ。日本の出先の外務官僚というのは一体何をやっているんだろうという大変な驚きをすら感ずるわけなんです。私は事実としてそういうことはなかったんではないかというふうに信じたいのですけれども、いまの大臣のお話では、若干のネゴシエーションはあったんだというお話でございますと、やはりそうかなという感じを持たざるを得ないですね。そういうことになると、やはりこれは日本外交の信頼の問題にもなってくるので、今後こういうことは絶対にやってはならないことだと、私は強くそういうふうに感ずるわけですが、大臣いかがですか。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が言ったことが誤解をされるといけませんからちょっと申し上げますが、別に、総理大臣の談話ですか、それを事前に手渡したとかそういうことはないわけでありまして、私もそういう指示をした覚えはありません。ただ、いよいよ最後の大詰めの段階で、これはブロック書簡が出てきた段階だと思いますが、私からUSTRのブロックさんに、総理大臣の談話を考えておるんだあるいは関税の引き下げについてはこういうことをいま考えているんだということは申した覚えがあるわけでありますが、総理書簡なるものが向こうから示されたということですが、私はこれは内容的には決して日本で考えておったような内容のものではなかったと思いますし、また、われわれ通産省がその全文を出すとかなんとか、そういうことはあり得なかったわけであります。  ただ、総理書簡を出すに至るまでの経緯について、やはり通産省と外務省、それぞれの関係各省がもっと十分相談をしておくということは、後から考えてみますと、こうした問題が起きて誤解が出てきておりますから、そういう誤解を生じないためにも必要であった、こういうふうに実は考えておるわけでございます。
  235. 和田一仁

    和田(一)委員 この問題は大変大事な問題でございますが、私も大臣の答弁のとおりであってほしい、こう願っております。ただ、事ほどさように外交というものは一元化されていなければいけないし、また、交渉事の中で情報収集というものが大変大事である、こういうふうに思うわけでございます。  私は、そういった出先の在外公館のいろいろな情報の中で、最近SS20が極東に配備される、こういうことを新聞等で見ておるわけでございますけれども、これはわが国を取り巻く国際情勢にとって大変大きな変化ではないか、こう思うわけです。日本を取り巻く国際環境を、ふだんからできるだけ安定的、平和的なものを維持していくということがきわめて大事である、これは申すまでもないことです。そして、相互依存の度合いが深まっているこういう時期ですから、世界のどこかで騒乱があってもそれが直接響いてくる。こういうようなことを考えますと、いま日本外交の幾つかある使命の中で最も大きな使命は、やはり世界の中で、特に日本を取り巻く環境の中でそういう危機的なものが起きないようにする、これが非常に大きな外交の責務ではないか、こう思うわけです。  そういう点について、最近のINF交渉ですか、そういうものを踏まえて、SS20が極東に回ってくるというようなことを日本外務省としていつごろから、どのようにとらえておったかを知りたいと思います。
  236. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 政府といたしましてつかんでおります情報によりますと、現在、極東方面には約百基のSS20が配備されております。核弾頭をおのおの三個備えておりますので、弾頭数では三百発というふうにとらえております。  ただいま先生が御指摘になりましたように、最近、ソ連の指導者の若干の発言の中で、SS20をさらにウラル以東あるいはアジア方面に移転、追加配備するという話も出ております。こういう事態は、あまつさえ極東に百基に及ぶSS20が存在するのに加えてさらにこれが追加されるという、非常に深刻でかつ重大な事態と認識しておりまして、そのため政府といたしましても、去る一月二十五日、当地におきまして在京ソ連大使を招致し、この点に関し日本側の強い遺憾の念を表明した次第でございます。
  237. 和田一仁

    和田(一)委員 いま御答弁では、最近、ヨーロッパのSS20をこちらの極東の方へ回してくるという発言があった、それに対して二十五日に駐日大使を呼びつけて口頭で抗議をした、こういう御答弁のようでございますが、私は一連の動きを見ておりますと、中曽根総理が訪米をされたその直後からそういうことが大変はっきりとしてきたのとあわせて、大変ソビエトの姿勢も変わってきたような感じがするわけです。  それはなぜかと言えば、ミサイルの極東移転があるんだという構想は出ておりましたけれども、それがSS20であるというようなことは余りはっきりしていなかった。けれども、グロムイコ外相が西ドイツを訪問したその後あたりから、どうもそれがSS20の極東移転であるというふうに考えられまして、さらに中曽根総理が訪米をされた後、例の不沈空母であるとかあるいは日米運命共同体であるとか、こういった勇ましい発言が出るや否や大変過敏な反応が出てきて、このSS20の極東配備がまさに日本に向けられた配備である、そういう印象を強く受けたわけでございまして、それだからこそ私は、いま御答弁のように一月二十五日に外務省としてはソ連に抗議をされたんだ、こう思うわけなんです。  私は、前からこういう情報があると承知していたならば、極東移転というものがあるんだということがわかっていたとするならば、それを踏まえて外務当局としては、総理大臣になぜさらに刺激するような、不沈空母であるとかあるいは運命共同体であるとかいうような発言をさせてしまったのか。このことのために、もうSS20ははっきり極東の中でも日本に向けられて移転されるんだというふうに国民としては受け取らざるを得ないのです。そういう点について、私は先ほどから、いつごろからどういうふうに把握されておりましたかという点も聞きたかったのは、そういうことは全然情報としてないものだから刺激的なことも言ってしまったんだというようなことも承知していたけれども、総理が勝手に言ってしまったのか、その辺をひとつ大臣お答えいただきたいと思います。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  238. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連の中距離核ミサイルいわゆるSS20の配置問題については、INF交渉が続けられておるということで世界も注目しておりまして、われわれも非常に注目しておったわけでございます。  そういう状況で、実は私もことしの初めにヨーロッパに参りましたときも、ヨーロッパの首脳に対しても、INF交渉に当たってはとにかくグローバルな立場でこのSS20の問題も含めた方針というものをとってもらわなければ困る、ヨーロッパの首脳もただヨーロッパだけの安全保障ということじゃなくて、やはり世界全体の安全保障という立場から認識をしてほしいということは強く申したわけでございますし、これは常々アメリカに対しても、私たちはそういう点についても申し入れを行っておるわけでございますから、全体的にはそういう一つの動きがわれわれとしても心配な面もあったわけであります。  そういう中で、われわれが心配しておったように、ソ連の首脳から極東にSS20の削減分を移動するとかあるいはまた日本に向けるのだというふうな発言が出まして、私たちは非常に驚いたような次第でございます。同時にまた、ソ連に対しても強く反省を求めたわけでございますが、私は、今回の日米首脳会談については、これはいろいろと総理大臣の発言というものが確かにソ連を刺激したという一面も事実としてあることは間違いないと思うわけでございます。ただ、それによってソ連のそうした極東に配置がえをするとかあるいは日本に向けるとか、そういう首脳の発言に直ちに結びついたとは思っておらないわけですが、ソ連の態度が日本に対して硬化したことは事実ではあると思います。  しかし反面、今回の日米首脳会談によって日米間の信頼関係というものも非常に強くなったわけでございますし、またソ連と日本との関係は、これはなかなかむずかしい間柄にあるわけですから、領土問題とかポーランドあるいはアフガニスタンとの問題もあるわけでございますから、これは一概にいまここでよくなるとか悪くなるとかそういうふうにはとらえておらないわけで、私たちはソ連に対して言うべきことはちゃんと言わなければならぬと思います。同時にまた、対話も進めていかなければならぬ。こういうことで、今回の永野ミッションの訪ソ等についても、いわゆる民間側と対話が始まったということについては歓迎をしておるわけでございます。しかし、ただそのときそのときで一々日ソ関係について驚いたり憂えたりするということはとるべきじゃない。やはり腰を据えて対ソ関係には臨んでいかなければならないのじゃないか、私はこういうふうに考えております。
  239. 和田一仁

    和田(一)委員 それは日米首脳会談によって日米の関係がきちっと修復して、さらに強化されたという点はいいんですけれども、そのことが、そしてそのこと以上にアメリカの戦略の中に日本の立場がだんだん組み込まれていっているのではないかという懸念です。そのために、ソビエトも日米首脳会談を契機にして大変硬化してきているのではないか。そんなすぐにそれが反応してない、こう大臣はおっしゃいましたけれども、そんなことないと思うのです。  私は、不沈空母の発言だとか三海峡封鎖だとか、こういう発言が出たればこそ、永野ミッションに向かってもああいう日本不沈空母は二十分で沈めてみせるとか、あるいは十九日ですか、中曽根総理がワシントン・ポストで言ったその直後に、タス通信ははっきりとこの不沈空母という発言をとらえて、三十七年前の日本のあの核の悲劇を引き合いに出して日本は大変な惨禍に遭うであろうという強い声明を出している。これは明らかに、こういった突出した発言がアメリカの大きな防衛戦略の中に組み込まれていくということを懸念したればこそそういう発言になっているのではないか、こう思うわけなんで、私はそういう点では、やはりこれは非常に大事な、重要な発言であったと思うわけであります。こういうことがこれからも起こりますと、大変冷たくなってしまっている関係がどうにも修復しようがないだろう、さらに危機が増大するだけだ、こういうふうに感じておるわけなんです。  そこで、いま永野ミッションについて大臣は評価をされたかの発言がございました。だとするならば、永野ミッションが出発する前に外務省として政経分離というものをチェックされた、これは大変強硬な姿勢であると私は思っておるのですが、対ソ外交強硬路線との関係で、この永野ミッションの評価というのはどういう点を評価されているんですか。
  240. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちはソ連に臨む場合において、ソ連がどうしたこうしたということでいたずらに一憂一喜すべきじゃない、こういうふうに思います。同時にまた、日本の基本的な外交政策であるとかあるいは防衛政策であるとか、そういうものが変わったということならいざ知らず、基本的にこれまでの政策を現内閣も踏襲しているわけでございまして、ただ総理大臣の発言の中の一面をとらえてこれにソ連が非常に攻撃を加えてきているということで、この点については、私たちから見るとソ連も相当な誤解があるんじゃないか。  私はやはり、ソ連に対しては率直に日本の立場を表明する機会を持たなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、全体的に日本の政策が大きく変化する、あるいはアメリカのいわゆる世界戦略の中に巻き込まれてソ連が言っておるような軍事大国の道を歩む、こういうことなら別ですけれども、そういう方向では決してないわけですから、私たちはソ連に対しては、領土問題については今後とも返還を力強く訴えていかなければならぬと思うし、あるいはソ連のやっておるところのアフガニスタンに対する侵入あるいはポーランドに対する介入、ああした国際的な間違った措置というものに対しては厳しく批判をしていくことは当然至極のことではないかと思うのです。  ただ、一面ソ連は日本の隣国でもあるわけであります。体制は違うといっても言うべきことは言わなければなりませんが、反面、日ソ間には貿易関係も存在しておりますし、外交関係もあるわけでありますし、人的な交流もあるわけでありますし、漁業関係もあるわけでありますから、そうしたソ連との対話は進めていくということが必要じゃないか。いまこうしたちょっと冷えた関係にあるだけに、永野ミッションの訪ソというものは、そういう中で日ソ関係を少し温めるという意味においては非常に意義があったのじゃないかと思うわけでございます。  しかし、永野さんのミッションが行かれるに当たりまして、われわれが会っていろいろとお話をしたのですが、そこで私たちが永野さん一行にお話ししたのは、民間でこれから対ソ関係を進めていく、対ソの対話を進めていくということはわれわれも賛成だ、大いにやってほしい、ただ、日本がいま直面している領土問題あるいはポーランドに対するあるいはまたアフガニスタンに対するソ連の措置に対する日本の批判、そういうものはやはり踏まえてこれからのソビエトとの話し合いには臨んでいただかないと、ただ経済経済、政治は別だということでは通らないと思います、ソ連も政経一体でありますし、日本としてもそういう面ではただ経済のみ先行するというわけにはいかない、やはり政経一体という形の中で対ソの対話というものは進めていただかなければならぬということを私たちは言っておるわけでございます。永野ミッションに対して非常に厳しい態度であるとかあるいは冷たい態度をとったということでは決してないわけで、永野団長も帰られて会ったわけでございますが、そういう点については日本の対ソ外交の立場というものを踏まえて領土問題にも言及し、あるいは墓参問題等にも言及して日本のいまの立場を十分説明をしてきたということで、われわれもこれを非常に評価をした次第であります。
  241. 和田一仁

    和田(一)委員 私も対ソ関係は一日も早く修復してもらわなければならないと思うのですが、もちろん領土問題を外してはならない、これは当然のことでございます。しかしながら、いままで見ておりますと、何といっても隣国、近隣の国でございます。こういった国々と早く国交がきちっとしなければなりませんのに、どうも少しも窓口がないという感じがしてならない。  私は、永野ミッションを評価されるという一つの中に、いままで出先でいた高島さんが、赴任以来正規の外交ルートで向こうの要人と全然接触もできないでいた、こういう状態の中で日ソ関係の窓口というのは一体どうなっているんだろうかという感じすら持っておった。今度永野ミッションが行ったことによって、どうやらそういったところにも糸口がついてきたというようなことで評価をされているのかなとも思うわけでございますけれども、いずれにしても、冒頭申し上げたように、何としても日本を取り巻く環境はもとより、世界の平和を維持していくということが外交の一番の責務である、私はこう思うだけに、ぜひこれは推進をしていただかなければならぬと思うのです。  そこで、私、先ほど来SS20の問題を話しておりますけれども、先ほどの話ではすでに百基極東に配備があって、さらにそれがふえる、こういうことです。これは日本に向いているのではないとか韓国の各基地に向かっているんだとか、いろいろな言いわけもあるようでございますけれども、しかし、それだけのものが日本全土が射程内にすっぽりおさまるという位置に現にある、百基以上のものがさらに来るかもしれない。こういう中で、こういった情勢に対して大臣は脅威を感じておられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  242. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SS20というあれだけの破壊力を持った中距離ミサイルがいま百基この極東に存在をしておる、さらにこれがふえるということになれば、われわれとしても非常な脅威を感ぜざるを得ないわけでございまして、何とか米ソのINF交渉が実って、そして中距離核ミサイルが極東からも欧州からも全廃をされるという事態に至ることをわれわれはこいねがっておるわけであります。
  243. 和田一仁

    和田(一)委員 脅威であるからこそ全廃、核は廃絶したい、こういうことだと思います。INFの交渉についても、おっしゃるとおりグローバルな見地で考えてもらわなければならぬ、そういうことについてアメリカに、本当にゼロオプションでやってくれ、そういう強い要請をされておりますでしょうか。
  244. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは首脳会談においても、また私がシュルツ長官とお目にかかったときにおいてもしばしば日本の、中距離核兵器廃絶に対するいわゆるゼロオプション、これをぜひとも実行してほしいということを強く申し入れておるわけであります。
  245. 和田一仁

    和田(一)委員 それでは、いまNATOはこのINFの交渉について、少しでも減ればいいのだ、ゼロオプションなどということよりも、ソ連もいまの力で均衡するならば減らそう、特にパーシングIIであるとか巡航ミサイルをこの八三年の末までに配備するということを撤回するならばそういうことで折れていこう、ヨーロッパもまた減ることが大事だということで、必ずしもゼロオプションにはとらわれずにむしろ削減の方向ならいい、こういう動きもあるようでございますが、そしてアメリカも何か、この間副大統領ですか、回っている中にどうもそういう気配も見える。ヨーロッパに対して日本外交はどういう動きをされておるのでしょうか。特にあした、あさってぐらいに西ドイツでは選挙が行われます。そういうことと関連してソビエトもしきりに働きかけをしている。そういう中で日本の、大変な脅威とおっしゃったその脅威がふえるか削減されるか、こういった大事な問題について、外交はいまどういう展開をしているかをお聞かせいただきたいと私は思います。
  246. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ヨーロッパの西側諸国も、このSS20が少なくともヨーロッパにいま二百四十基はあるというふうに考えております。そしてこの脅威に対してどうしたらいいか、いままでの平和は力の均衡によって生じておるわけでございますから、こうした脅威に対して力の均衡によって平和を保っていくためには、この秋までにはいわゆるパーシングIIであるとかあるいはまた巡航ミサイルを配置しなければならぬ、こういう決意を持っておるわけでございますが、同時に、こうしていたずらに東西が核についての軍拡競争を続けていくということについても非常な不安を持っておるわけであります。何とか軍縮交渉、特にINFの交渉を通じて中距離核ミサイルについての廃絶措置ということが実行されることを期待をいたしておりまして、ブッシュ副大統領がヨーロッパを回られたときもヨーロッパの首脳と会われたわけでございますが、その際の電報等を拝見をしますと、ヨーロッパの首脳との話し合いの中で、やはり何としてもゼロオプションというものを基本的に支持していきたいというのがヨーロッパ諸国の考えであったわけでございまして、私たち日本としてもゼロオプションというのが最も理想的な姿であろう、こういうふうに思っておるわけでございますが、しかし、その間に選挙の問題もある、あるいは反核勢力もやはり西側諸国で生じておる、こういうふうな関係もあって、INF交渉を成功させるためには中間的な方向もないものかということを模索する動きがあることも事実でございます。しかし、基本的にはゼロオプションというのが首脳の方向であることは間違いない、私はこういうふうに思っております。  われわれは、中間的なそういうINF交渉による合意がなされるとしても、その中間的な合意によってヨーロッパのSS20の一部が極東に回されるということだけはこれはもう絶対に反対だということでございまして、あくまでもこのINF交渉というのはグローバルな立場でやってもらわなければならない。また、ヨーロッパの首脳もいろいろと話し合いの中で、やはりこのINF交渉はグローバルでいこう、やはり日本の立場というものも十分配慮しなければならぬということをしばしば論じておるわけでございます。われわれはさらに外交的に強く働きかけをいたしまして、このゼロオプションの実行、実現、さらにまたソ連全土的のいわゆる核の軍縮といいますか、そういうものを積極的に進めていくべく努力を続けてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  247. 和田一仁

    和田(一)委員 まさにこのINF交渉によって西の核の縮小が東の核の拡大ということになったのでは、これは全くただ世界の脅威が西から東へ移ったというにすぎないことになってしまう。これでは外交としてまさに負けである、こういうふうにすら思うわけでございまして、ぜひひとつゼロオプションで核の縮小、最終的には核廃絶というわが国の大きな平和への願いが、世界の中で日本が働くことによって実現されるような外交努力をしていただきたいと思うわけです。  この間シュルツさんが極東を歴訪されました。わが国にも寄られました。これは恐らくアメリカの大統領選挙を前にして、レーガン再選を期しての外交の一つの手を打ちつつあるのではないかと思うのですね。これは終局的には、大統領のこの極東訪問、もちろん日本あるいは韓国、時と場合によっては中国、こういうところを歴訪して、そしてさらに米ソの首脳会談を計画しているのではないかというふうに思うのですが、大臣、このシュルツさんとお会いになって、帰りがけにもお寄りになったようですけれども、そういった感触はどうでしょう。
  248. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 直接シュルツさんからは米ソの首脳会談の話は聞いておりませんが、しかし、これまでのレーガン大統領の発言等から推測をすれば、軍縮等について実質的なソ連との合意が見られるということならば米ソ首脳会談を開きたいということは、私は、レーガン大統領の本音ではないか、こういうふうに考えております。
  249. 和田一仁

    和田(一)委員 そういう動きが察せられるとするならば、日本も中曽根総理が出かけていってでも日ソ間の関係の改善のために努力をすべきときではないかというふうにも思うのですけれども、何としてもいまそういった糸口もまだ十分でない、こういう感じがするわけなんです。これはもうぜひひとつ、外交ルートを通してそういった日が早く来るように、日ソ間の問題が解決されるということがわが国にとっては非常に大事だ、こう思うわけです。  時間がございません。最後に、一日からですか中ソの次官レベルでの会談が再開をされているようでございますけれども、この中ソの再接近、和解というところまでいくのかどうかわかりませんけれども、いろいろな困難の中で中ソはしきりに努力をしている。この中ソの再接近についてどういうふうにお考えになっているか。胡総書記のお話ではそうむずかしいというような判断には私は賛成できないという、大変希望のある発言もあるようでございますけれども、むずかしくはあってもやるんだという何か意欲が見えるような気がいたしますが、これがどういうふうに展開していくとお考えでしょうか、これをぜひ聞かしていただきます。
  250. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中ソが和解の努力を続けておるということは事実でありますし、次官会談等においても、私は両国の和解のための話し合いが積極的に行われると思うわけでございます。しかし、何といいましても中ソ間には長い間の非常に厳しい対立があったわけでありまして、そしてなお今日に至るまでも解決しておらない重要な課題が横たわっております。特に中国は、アフガニスタンへのソ連の介入はやめるべきである、あるいはカンボジアからベトナムは兵を引くべきである、あるいはまた中ソ国境に張りつけておるソ連の大軍を撤兵すべきである、こういうことを主張しておりまして、そういう大きな問題についてはソ連の合意を得ることはなかなか困難であるというふうに、外から見るとそういう感じがせざるを得ないわけです。これは私だけの判断ではなくて、アメリカもそういう判断をしておりますし、あるいは、二階堂特使が行かれましたけれども、二階堂特使もそういうふうな判断を持って帰られました。  したがって、非常に大きな解決困難な問題が横たわっておるので、話し合いが続いて何とか努力は続けられるとしても大きな展開というものはちょっと考えられないのじゃないだろうか。そして同時にまた、昔の一枚岩に返るような、中ソ同盟時代に返るような、そういう状況には目下のところないというふうに私たちは見ておるわけであります。
  251. 和田一仁

    和田(一)委員 時間が参りました。ありがとうございました。終わります。
  252. 橋口隆

  253. 中路雅弘

    中路委員 本来、法案を初めとした審議は大臣の出席のところで行うということが委員会のたてまえになっていますから、それを崩すわけではありませんが、きょう私、一番最後でありますし、途中で大臣が抜けられたところで休憩するのも皆さんにも御迷惑をかけます。予算委員会への出席のことですから、途中で中座された後も一応時間の範囲で質問を続けさせていただきたいと思います。  時間が短いので、御連絡した中で飛ばしまして、法案について二、三問と、あとは、巡航ミサイルの中で、海の方は抜きまして空中発射の巡航ミサイルの問題だけ関連して御質問し、もう一つは厚木海軍航空基地の航空機騒音の問題、三つの問題について御質問したいと思います。  在勤基本手当の基準額ですが、法の五条でも、任地の物価変動と為替変動、生活水準の要素を勘案して改定をされるわけですが、法律に基づく当然の義務的な勧告、これが今度は行われていない。現行ワシントン三号の場合で三十九万二千百円が四十四万七千六百円に実際の改定額はなっていますが、これまでどおりのこの法律に基づいた改定が行われますと、同じワシントン三号の場合、金額は幾らになりますか。
  254. 枝村純郎

    枝村政府委員 ただいま御指摘の点は、ワシントンの三号、つまりこの在勤手当の体系の基準になっております職員の在外手当につきまして、必ずしもワシントンにおける物価の変動あるいは為替の変動が完全に反映されていないのじゃないかという御質問だと思います。  その点は確かにそういう面はございますが、前回の改定から物価と為替の相場の変動、あるいは私どもやりますように、そのうちの二割ぐらいは日本にまだ生活の根拠もあるだろう、いろいろ日本からの物資も調達するであろうということで、これは日本における物価の変動の方にむしろ重点を置いて連動させておるわけでございますけれども、そういう点を勘案いたしまして今回四十四万七千六百円という数字を出しておりますが、仮にワシントンの為替の変動と物価とをそのまま反映させたといたしました場合には四十六万二千円程度と、約二%強の差が出たはずでございます。
  255. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったように、従来のスライドで行いますと、私も計算してみましたが、ほぼそれと変わらないのです。四十六万二千三百円になりますね、一七・九%のアップ。実際に提出されているのは一四・二%のアップですが、簡潔にこの根拠、論拠を一言で言いますと、どういう問題が影響しているわけですか。
  256. 枝村純郎

    枝村政府委員 これはいろいろ検討します過程におきまして、この人事院勧告の凍結というような事態もあり、現在の厳しい財政状況というようなことも勘案いたしまして、在外職員であっても同じ公務員として痛みを分かち合うべきじゃなかろうか、その方が国民の御支持と理解を得るゆえんであろうということで、日本の物価の上昇分ということは勘案しない、むしろ差し引くということでやった結果でございます。  なお、私どもといたしましては、在外給与の決め方というものは必ずしもその物価、為替相場にそのままスライドしないといけないということとは考えておりません。ほかに現地の生活水準でありますとか、あるいは、在外職員がその体面を維持し、その職務と責任に応じて能率を十分発揮することができるように決めるということでございますので、必ずしも自動的にスライドするものとは考えておりませんが、ただいま御指摘の二%何がしの差というものはいま申し上げたとおりの背景でございます。
  257. 中路雅弘

    中路委員 いまお話しのように、この差が出たのは、人事院勧告の凍結による、いわば痛みを分けるといいますか、そういうことで公務員給与の凍結分、それから国内の物価上昇分、これをワシントンの上昇分から引いているわけですね。大きく言ってこの二つの要因が入っているわけです。  人事院勧告の凍結問題というのは、まだ決着がついていないのですよ。前国会から継続して協議する、これは国会に対する勧告でもあるわけですから、国会の中ではいま与野党の間で協議をしている問題ですね。最終的に政府の見解は出ていますけれども、いろいろ協議をしている問題です。しかも、この法案を出す際に、この在勤基本手当と国内の公務員給与の問題が制度的には全く関係がない、その問題に影響を与える。まだ決着がついていない。私たちは大変不当であると思っている。  この人事院勧告の凍結をこうした在勤基本手当の中に入れていくということは、給与の制度そのものについての論議じゃなくて、いまある制度でやってきたわけですね、これまではスライドを。それを、人事院勧告の凍結の影響をこの中に入れてその分を抑制するという点は、国会でこの問題についてまだ決着がついていないだけに、なおさらやり方としては不当なやり方だ。これは政治の問題ですから、大臣、いかがですか。制度が全く違う問題で、しかもまだ結論も出ていない。
  258. 枝村純郎

    枝村政府委員 ただいま御指摘のような事情はあろうかと思われますけれども、この在勤手当を定めますもとになります統計その他、どうしてもおくれがちでございまして、現に物価水準などは、ワシントンはもっと新しいことがわかっておりますけれども、各国に横並びで開いていきますときにどうしても六月時点ということをとるわけでございまして、そういう時点における一つの判断として定めたものというふうに御理解いただきたいと思います。今後の成り行きによりましては、この問題はまた別途救済されることもあり得るというふうに私ども考えております。
  259. 中路雅弘

    中路委員 私は不当な処置だと思いますけれども、今後の成り行きによっては別途救済ということも考えられるという発言もありましたので、改めてこの問題は、それと関連してその際に論議をしたいと思います。  もう一点だけお聞きをしておきたいのは、いつも外務人事審議会で幾つか勧告を出されます。昨年の十月十二日にも四項目ですか勧告が出ておりますが、その中でいつも問題になります子女教育手当の問題ですが、世界的に教育費が非常に高騰していることを認めておられるわけで、この中で「子女教育に伴う負担の衡平と教育の実質水準を保つための改定を行うことを検討する。」ということが言われております。今回もこの法案の中では子女教育手当の引き上げが見送られておりますが、この点は、世界的な教育費の高騰を認めながらなぜ法改正を行わなかったのか、見送るとすると、今後この問題について改善をするつもりなのかどうか、もう一点お聞きしておきたいと思います。
  260. 枝村純郎

    枝村政府委員 子女教育にかかります経費というものが、任地によりまして現在の一カ月一人一万八千円という定額ではカバーできないというところが大変多いことは御指摘のとおりでございまして、そのために、六十数公館を指定いたしまして、別枠によりまして実費またはその地において標準的と外務大臣が認めます金額までは加算できるという制度を設けているわけでございます。私どもといたしましては、子女教育手当というものの性格からいたしまして、なるべくその任地に適合した限度額というものが定められることを希望しておるわけでございまして、そういうラインで鋭意努力しております。  また、外務人事審議会の勧告もそれなりの重みを持って受けとめておるわけでございますけれども、何分にもそういう土地におきます子女教育の実態というものはなかなか態様が複雑でございまして、今度人事審議会の勧告をいただいてから早速検討を開始はいたしておるのでございますけれども、いまだ結論を得るに至っておりません。ただ、御指摘のような方角で今後とも努力をし、在外職員間の負担の公平を期していきたいと考えております。
  261. 中路雅弘

    中路委員 法案の質問の終わりに大臣に一言お願いしておきたいのですが、一つは、いまのこの法案が、制度の別なやつに人事院勧告の凍結分を影響させるのは不当だとは思いますけれども、いまの御答弁で、勧告の問題の成り行きでは別途救済ということも考える、検討もしなければいけないという意味のことを御答弁になっています。その点と、子女教育の問題、さらに、今度法改正になっていませんけれども今後改善のために努力をするという御答弁がありますが、一言大臣に。
  262. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま官房長が答弁をいたしましたように私も考えて、これから努力をしてまいりたいと思います。
  263. 中路雅弘

    中路委員 次に、連絡した中で、巡航ミサイルの問題でお尋ねしたいのですが、三月二日、昨日の予算委員会で栗山条約局長が、トマホークは核、非核両用と核専用のものがあると聞いているという答弁をされていますが、トマホークですね、巡航ミサイルで。どういうものと理解されていますか。
  264. 北村汎

    北村(汎)政府委員 巡航ミサイルには海上あるいは水中発射のもの、それから空中発射のもの、それから地上発射のものとございます。海上あるいは水中発射のものは核、非核両用でございまして、空中発射のもの並びに地上発射のものは、現在の運用におきましては核専用であると承知いたしております。
  265. 中路雅弘

    中路委員 B52Gですね、これに八二年末から空中発射巡航ミサイルが搭載されたわけですけれども、いまお話しのように、これは核専用ミサイルですね。
  266. 北村汎

    北村(汎)政府委員 昨年の十二月十六日にグリフィス空軍基地に所在いたしますB52Gの飛行隊の十六機に対しまして、それぞれ十二発のALCMが装備されたというふうに聞いておりますが、米空軍はこの空中発射の巡航ミサイルを米本土以外には配備する計画は現在持っていないというふうに承知いたしております。
  267. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったようにグリフィスのB52Gの搭載巡航ミサイルは核専用だということは明らかであるわけですが、今後しかしアメリカの方は、すべてのB52G及びHに核専用ミサイルを搭載するという計画が言われていますが、この点と、この射程ですね、これは幾らになりますか。
  268. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私どもが知っております限りのことでは、今後の計画といたしましては八五年度末までに百五機のB52GにALCMを搭載可能にするということ、それからまた、八五年度から九十六機のB52HについてALCMを機体の内部及び機体外部に搭載するための改修を開始する、こういうように聞いております。  それから射程については、約二千五百キロのものであると承知しております。
  269. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったように射程二千五百キロといいますと、いわゆる中長距離ミサイルという中に入るわけですね。このB52が沖縄に飛来してきているわけですけれども、これは核専用ですから、巡航ミサイル搭載のB52の場合は、核弾頭を持っていなくてもこれは事前協議の対象になるわけですね、その場合は。
  270. 北村汎

    北村(汎)政府委員 もし核専用の空中発射のミサイルを搭載したB52が沖縄に飛来いたしますときには、これは現在のALCMの運用が核専用であるということでございますから、これは事前協議の対象になります。
  271. 中路雅弘

    中路委員 いまグアムにいるB52、これは何型ですか。
  272. 新井弘一

    ○新井政府委員 D型でございます。全部で十四機と承知しております。
  273. 中路雅弘

    中路委員 D型というのは漸次なくなるわけですね。かわっていきますね。
  274. 新井弘一

    ○新井政府委員 そのとおりでございます。
  275. 中路雅弘

    中路委員 いずれにしましても、グアムのB52Dというのは、アメリカの方はいまおっしゃったようにG型、H型にかえていく、そしてそれにはすべて巡航ミサイルを配備するという計画ですから、いま御答弁のように、これは藤山・マッカーサーの口頭了解から言っても、「核弾頭及び中・距離ミサイル」ということを言われているわけですから、巡航ミサイル搭載可能なB52、すなわち発射台をつけたB52が飛来してくる、言うなれば、いまおっしゃったように核弾頭がなくても事前協議の対象になる。その際はノーと言われますね。
  276. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま委員の御指摘なさいました点で、二つだけちょっと気づきの点を申し上げますが、一つは、私どもが承知いたしております限り、アメリカ側はすべてのB52に核専用のALCMを装備するとは言ってはおりません。私どもはそういうことを聞いてはおりません。  それから、第二点といたしましては、ALCMのランチャーを装備しておるB52が飛来いたしましたといたしましても、それがALCMというものを必ず搭載しておるとは限らないわけでございまして、そういうB52の飛来があったといたしましても、ALCMを装備していない限りは事前協議の対象ではないと了解いたします。
  277. 中路雅弘

    中路委員 いずれにしてもかわっていって、しかもローテーションで飛ぶわけでしょう。どれがどの型かという問題がその中に含まれてきますね。その問題が一点。  それから、この藤山・マッカーサー口頭了解の当事者の藤山さんも言っておられるのですが、核弾頭あるいは核兵器を用いる運搬の用具、これは中距離ミサイルですね、これは当然事前協議の対象になる。また、核弾頭と中距離ミサイルの両方をあわせ持ったものじゃないとこれは山崎さんが国会で答弁されていますけれども、運搬用としての中距離ミサイルは事前協議の対象になるということも国会で答弁されていますね。そうしますと、これは核専用ですから、いずれにしてもこれの発射誘導装置を持っている航空機は事前協議の対象になるんじゃないのですか。
  278. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど北米局長の方から御答弁を申し上げましたことと基本的に変わりませんが、従来御答弁申し上げ、B52との関係でも申し上げておりますが、藤山・マッカーサー口頭了解の内容から申しましても、事前協議の対象になるのはあくまでも核専用の中長距離ミサイルそのものでございまして、それを搭載可能なB52がそのミサイルと別途に事前協議の対象になるということはございません。
  279. 中路雅弘

    中路委員 それでは、さっきおっしゃったいわゆる巡航ミサイルですね、核弾頭をつけてなくても巡航ミサイル搭載のB52は、もう一回確認しますが、これは事前協議の対象になりますね。
  280. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 搭載しておるミサイルが核専用のミサイルであれば、そういうことはないと思いますけれども仮定の問題として申し上げれば、核弾頭がついていようといまいと事前協議の対象になります。
  281. 中路雅弘

    中路委員 話を戻しちゃだめなんだよ。空中発射の巡航ミサイルは核専用だと答弁されたでしょう、核専用ですから、空中発射の巡航ミサイルは。B52が巡航ミサイルを積むのはこれですからね。空中発射の巡航ミサイルですから、その際には、いままで皆さんが藤山・マッカーサー口頭了解から言っておられたように、核弾頭がつかなくてもそれは核専用のミサイルですから、それを装備する、B52が装備していれば、それは核弾頭を持っていなくても事前協議の対象になりますねということを聞いている。あればと言ったって、それは専用だと言っているじゃないですか。
  282. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私が御答弁申し上げたことは、いま中路委員がおっしゃったことと同じだろうと思います。私が申し上げましたのも、核専用のミサイルであれば、核弾頭がついていようといまいとそれは事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  283. 中路雅弘

    中路委員 もう一度念を押しておきます。  あればというんじゃなくて、私が言っていますのは、さっきおっしゃったように空中発射のB52に装備される巡航ミサイルは核専用なわけですから、あればじゃなくて——専用だということがはっきりしているわけですから、一番最初に答弁されたように。だから、空中発射の巡航ミサイルを装備している、これは中距離のミサイルだし核専用ですから、核弾頭をつけてなくても事前協議の対象になり、したがって、これはその場合はノーという答弁になりますねということを念を押しておるのです。あればじゃなくて、それが専用ということは明確なんですから、もう一度はっきりしておいてください。
  284. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 現在のアメリカのトマホークミサイルの私どもが承知している運用計画から言えば、空中発射の巡航ミサイルは核専用というふうに理解いたしておりますので、その限りにおきまして中路委員のおっしゃったとおりでございます。
  285. 中路雅弘

    中路委員 巡航ミサイルの問題は、海上発射を含めて改めて時間をとって御質問したいと思います。  きょうここで確認していただいたのは、B52GあるいはHに搭載される空中発射の巡航ミサイルは、核専用の中長距離ミサイルだということを確認されて、これは事前協議になるということですね。事前協議の場合は当然、藤山・マッカーサー口頭了解以来の御答弁でも、これはノーという御答弁になりますね。
  286. 北村汎

    北村(汎)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  287. 中路雅弘

    中路委員 それでは、あとの時間で、大臣があと五分ぐらいですから、最初に一言御見解を聞いておきたいのですが、厚木海軍飛行場の航空機騒音問題です。  昭和四十八年の特にアメリカ空母のミッドウェーの横須賀母港化によって大変な激化をして、さらに昨年四月以降は異常な状態にあります。外務大臣、それから防衛庁長官、施設庁長官に、神奈川県初め周辺市町村だけではなくて、町田市、横浜市ですね、私、人口で調べましたら約二百万に上る人口を抱えた周辺の市町村から、繰り返し外務大臣にもこの数年来要請が行っている問題です。大臣出かけられますので、一言この問題についてどう認識されているのかお聞きしておきたいと思います。
  288. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 厚木施設区域の米軍機騒音問題につきましては、外務省としましても、これが周辺住民に与える影響、十分に理解もいたしておるわけでありますが、同時にまた、その解決を心から私も望んでおります。また、他方におきましては、パイロットの訓練が、その練度の維持向上、ひいては日米安保条約の効果的運用のためにも必要欠くべからざるものであるということについても理解を得たいと考えておりますが、いろいろと知事さんの要望書等も出ておるわけでございまして、これらの問題につきましては周辺整備、周辺の住民への影響を最小限にとどめるべく、米軍機の訓練との間にできるだけ調和を図っていくように努力を続けていきたい、こういうふうに思っております。
  289. 中路雅弘

    中路委員 いまなおこの周辺の住民の苦情、長年にわたるものなんですが、この厚木の周辺では昭和三十八年に全国に先がけて日米合同委員会で航空機騒音の軽減措置の合意を見ているわけですけれども、この合意による軽減措置も最近はほとんど守られない、しばしば守られないという実情にあるわけです。  後で具体的に施設庁その他へお聞きしますけれども、この点だけは大臣にお尋ねしておかなければいけないのですが、日米合同委員会で合意されたこの軽減措置、これは要請にもありますが、これが最近破られているわけですから、合同委員会で合意したことまで破られていくということになったら大変なわけです。この合意そのものの改定をさらに地元は要求していますが、大臣には一言、合意ですからね、この合意は守らせるということを徹底させてほしい。大臣が出かけられますからまず最初に一言それだけ……。
  290. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米合同委員会の合意事項につきましてはいま私も聞いておるわけでありますが、いまおっしゃるようにそういう合意事項がそう破られておるということはないというふうに聞いてもおるわけでございますが、いずれにいたしましても合意しているわけでございますから、アメリカ当局とも十分連絡をとりながら、これを守っていくという方向で今後とも努力を続けていきたいと思います。
  291. 中路雅弘

    中路委員 あと、大臣出かけられますから……。  若干私の方でも状況をお話ししますと、周辺自治体の要請を無視して、いま大変な状態なんですが、特にジェット艦載機による夜間の連続離発着訓練ですね、タッチ・アンド・ゴー、これがすさまじいわけです。しかも、前はミッドウェーが入港しているときにやられたのですが、最近は空母が出た後も十数機残して訓練飛行をやる。だから回数も大変ひどくなっているわけです。特にそれが夜の六時から十時ごろに集中しますから、御存じのようにこの時間帯は一家団らんといいますか、テレビ等も見る時間です。ここに集中しているということで、これは神奈川県の騒音実態調査の結果を見ましても、昨年五十七年二月以降、最高で百二十ホンです。七十ホン以上の騒音発生回数が、多い月は月間三千回になっています。一日最高三百六十八回、いま言いました夜間の時間帯で言いますと一分三十秒に一回、周辺の何十万という住民にこのすさまじい騒音がばらまかれているということですから、異常とも言うべき騒音をいま記録しています。周辺の住民も忍耐の限度を超えるということが訴えの中にもあるわけです。  もう一つは、航空機騒音に対する苦情、抗議です。施設庁がおられても全部大和の市役所に抗議が行くわけですから。施設庁に行くわけじゃないのですよ。大和市役所の抗議を統計で見ますと、たとえば五十四年の一カ年間で八十九件だったのが、五十七年一カ年間では千七十六件、十倍になっている。市役所に聞きますと、電話が集中するために通話ができないというのがあって途中で切れるものが多いですから、恐らくこの件数の倍近くの抗議が殺到しているだろうというのが市役所の意見です。周辺自治体にも爆音が広がっていますから、相模原市、町田、藤沢、大和、海老名、座間、綾瀬、そして横浜の一部を入れますと、人口にして約二百万で問題になっている。この問題をこのままほっておいて、二百万の人たちにこれだけの異常な騒音を出す。  これは日本医大が「厚木基地周辺におけるジェット機騒音の身体的影響に関する調査研究報告」というのを出していますが、時間がないから御紹介できませんけれども、これを見ても、高血圧、難聴、未熟児の出生率の高いこと、それから子供の情緒不安定といったことが物すごい高い比率で出てくる。特にいまのような受験勉強時は大変なんですね。  二、三問具体的に聞いていきますけれども、一つは、施設庁のやっておられる第一種区域の防音工事、これは対象がどのぐらいあって、いまどのぐらいまでいっているのですか。それから見通しはどうですか。
  292. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  現在、第一種区域として指定されておりますのは八十WECPNL以上の区域でございますが、これをまた二つに分けますと、八十五WECPNL以上の区域につきましては住宅防音工事を希望する世帯が約三千三百世帯ございます。これについては現在のところもうすべて実施しております。残る八十五から八十WECPNL以上の間にあります住宅、これは現在のところ約一万七千世帯が希望されておりますが、これについては今年度で約四〇%ができるであろうと思っております。残りについてはここ一両年ですべて終わるようにしたいと考えております。
  293. 中路雅弘

    中路委員 いま四〇%と言われましたが、私の統計でも三十数%、三八%ぐらいなんですよ。これでいま一、二年とおっしゃいましたけれども、いままでのテンポでは何年かかるかわからないですね。確約したいのですが、ではもう一度、いまおっしゃったのはいつまでにやるか。
  294. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま申し上げましたのは現在指定されております第一種区域について申し上げましたので、これについては一両年、五十九年度早いうちに完了させるというふうに理解しております。
  295. 中路雅弘

    中路委員 施設庁で、騒音の軽減対策として訓練の基地を分散させるとか海上浮揚訓練施設をつくるというようなことを問題にして、そのための調査費がことしついていますが、調査費は幾らですか。
  296. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま先生御指摘の調査費、昭和五十八年度予算としまして約九百万円を計上しております。これでこの厚木飛行場における米軍艦載機の着陸訓練に伴う騒音の緩和を図るということで、ほかにも訓練の実施ができるような施設を見出す、あるいはその方策を調査検討するということで予算の計上を行っております。
  297. 中路雅弘

    中路委員 いずれにしても近くが必要なわけですから、首都圏を中心に対象を考えられるわけですが、対象として考えられる基地はどこどこがありますか。
  298. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  私どもが現在考えておりますのは、関東周辺に所在します飛行場について、着艦訓練の可能性とかその飛行場の所在する周辺の環境ということを調査検討したいと考えておりまして、この飛行場がどこどこかというのは今後これの調査を進める上にまたいろいろ支障がありますので、具体的飛行場名は御勘弁をいただきたいと思います。
  299. 中路雅弘

    中路委員 いや、どこを対象にしぼっているとか決めるということではもちろんないのです。関東周辺といえばわかりますからね、どこに飛行場があるかということ。その地名を挙げてもらえばわかるわけだから、一応挙げてみてください。逆にどこだけは絶対対象にしないというならあれだけれども、漠然とまだ対象に挙げているのだったら、その個所だけはきちっと挙げてください。
  300. 千秋健

    ○千秋政府委員 現在のところ関東周辺にあります飛行場ということで、どこにしぼるとか、またどこどこに限定するとか、そういうことは現在考えておりません。
  301. 中路雅弘

    中路委員 じゃ、関東周辺の飛行場はどういうところがありますか、訓練がこういうところは可能だと思われる飛行場。そこを対象にするとかしないとかいう意味じゃなくて、いわゆるいまおっしゃった関東周辺の飛行場名ですね。
  302. 千秋健

    ○千秋政府委員 本当に申しわけありません。ここで私がそれを申し上げると、またそれが対象になっているという誤解を生むかもしれませんので、そういう意味ではなく、本当に先生が関東にある飛行場というお尋ねでございますが、これとしましては、たとえば横田の飛行場とか百里の飛行場とかがございますが、そのほか石川県の小松の飛行場、岐阜県の岐阜飛行場、東北では宮城県の松島飛行場とか、この関東周辺、それから千葉にも飛行場はございます。下総飛行場というのがございますが、これはあくまでそこにあるという意味で申し上げておるわけでございます。静岡にも静浜飛行場とか浜松飛行場がございます。
  303. 中路雅弘

    中路委員 それではこの海上浮揚体、これも調査の中の一つですね。五十八年度九百万の中で、いまの問題も含めて浮揚体のことでは何をやるのですか。
  304. 千秋健

    ○千秋政府委員 海上浮体につきましては、神奈川県知事から先ほどの御要望の中にも御提案ございまして、この五十八年度の予算でそれらの資料を収集する予定にしております。
  305. 中路雅弘

    中路委員 私が聞いたのでは、まだ外国の文献をちょっと取り寄せて見てみる程度だというお話なんですね。予算からいってもそうでしょう。いまの基地の分散ということになれば、これは騒音の拡散ですからね、対象をそこへ持っていくとなれば。いまの異常なこういう状況をさらに関東地域の基地に広げるということにならざるを得ないわけなんですよ。しかも浮揚体の問題も、地元ではこれが何か実現できるような期待を持っている向きも一部ありますけれども、この予算の中だって、外国の文献をちょっと見てみるというだけですから、これがどうなるかということはまだ全く海のものとも何ともわからない。私は、いまこの異常な騒音を規制していくのは、いまの現地で、それぞれの自治体から要望されているこの具体的な軽減措置を、規制をやるかどうかという問題にかかっているわけです。  時間がそうありませんから、いまの要望の中の代表的なもので、神奈川県知事から出ている「厚木海軍飛行場の航空機騒音に関する要請書」の中の、とりあえず「緊急要請事項」というのが六項目あります。ちょっと読んでみますけれども、最初は大臣がお答えになった「日米合同委員会において合意された「厚木海軍飛行場周辺における航空機騒音の軽減措置」を徹底する」、二番目が「タッチ・アンド・ゴーを禁止する」連続離着陸訓練ですね。それから「夜間の訓練飛行を禁止する」、四番目が「飛行場周辺に航空機騒音オンライン監視装置を設置し、過大な騒音の発生が測定された場合には、国の責任において米軍に警告を発する体制を確立する」、五番目が「エンジンテスト、ランアップ等航空機騒音防止のための消音器、遮音壁、防音林を整備する」、六番目がいまの「防音工事の施工件数を大幅に増加し、全室防音化の促進に努める」という六項目ですが、一項目ずつ聞いているとあれなので、それぞれ担当のところで、二、三項目ずつあれば一緒にして、この六項目について具体的にいまどういう対応を考えられておるか、御答弁いただきたい。
  306. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま委員が御指摘になりました六項目のうち最初の三項目、すなわち日米合同委員会において合意されました厚木の海軍飛行場周辺における航空機騒音の軽減措置の徹底、それから連続離着陸訓練すなわちタッチ・アンド・ゴーの禁止、それから夜間すなわち六時以降の訓練飛行の禁止ということにつきましては、外務省として、現在行われております米軍機の訓練というものの実態が、これは先ほど委員が御指摘になりました合同委員会の合意の範囲内で行われていると承知いたしております。そこで、そのパイロットの練度の維持向上というものは、これはやはり安保条約の効果的な運用というものから見ましても必要欠くべからざる問題でございますので、そういう意味から見まして、米軍機の訓練というものに現状におきましては合同委員会の合意以上の制約を加えていくことは困難であろうと思います。  しかしながら、先ほどからも施設庁の方からいろいろ御答弁がありましたように、周辺住民の騒音の御迷惑を何とかしなければならないということでわれわれ非常に心を痛めておりますけれども、いずれにいたしましても施設庁と密接に連絡をとって、外務省といたしましてはこの問題をできるだけ早く解決したいと考えておる次第でございます。
  307. 千秋健

    ○千秋政府委員 私どもとしましては、いま知事が御要望されました六項目の特に後段の四、五、六に関しましてでございますが、特に航空機騒音のオンライン監視装置を常設してほしいという御要望もございますので、これにつきましては現在二カ所で定点常時測定をやっておりますが、さらに五十八年度からは新しい機器を入れましてこれを十二カ所にふやすということで、騒音の常時測定を強化したいというふうに考えております。  それから消音器、遮音壁、防音林等の御要望もございますが、現在、厚木飛行場には米軍がつくりました消音器が機体用、エンジン用それぞれ一基ずつございます。それに加えまして、現在わが国の経費負担におきまして機体用のサイレンサーを一基建設しておりまして、これは今年三月に完成しまして来年度からは使用が可能になるというふうになっております。さらに植林等につきましても、私どもの方で四十九年度からこれを実施しておりますが、今後ともこれを継続していきたいということ。  それから住宅防音につきましては、先ほどお答え申したような実情でございますが、特に来年度五十八年度におきましては今年度の約二倍近い数にふやしまして、これも大幅に強化して実施していきたいというふうに考えております。
  308. 中路雅弘

    中路委員 要望の中では、あと「暫定的要請事項」というものを含めて具体的に提起されています。一つ一つ御質問でやりませんけれども、いまのは神奈川県知事の要望ですが、周辺自治体市町村からも繰り返し要望が出されています。この問題についてはさらに積極的に現地でやはり騒音の規制措置を具体化していかないと、この問題はどこかほかに騒音を拡散するとか、あるいは見通しもない浮揚体のことで何か期待を持たす、こういうことでは絶対解決しないです。その点を私は重ねて要望しておきたいと思うのです。  終わりにもう一問だけお聞きしておきたいのですが、北米局長がおられる機会に一、二お聞きしたいのです。  横須賀のミッドウェーの母港というのは、四十八年母港化になったときに、地元の市長にも市にも両三年ということで最初入ってきたのですね。それが今日まで居座っているわけですけれども、いずれミッドウェーは交代をせざるを得ないでしょう、艦のできから言っても。こういう見通しだとか、ミッドウェーが新しい新鋭空母にかわる、そういう点の今後の見通し、そうした点はいかがということもまとめて御質問しましょう。  もう一つは、第二空母ということが問題になっています。たとえばアメリカは太平洋に新しい母港ということでいま探しています。佐世保に今度エンタープライズが入港しますけれども、佐世保ということも、報道ではそういう話も出ておりますけれども、そういう要請があった場合にお受けになるのかどうかという問題ですね。この空母の問題、母港の問題について、一、二問お聞きしておきたいと思います。
  309. 北村汎

    北村(汎)政府委員 第一点の横須賀におけるミッドウェーの母港の問題でございますが、ただいま委員が御指摘になりましたようなミッドウェーがいずれ古くなって交代するとか、そういうような話は一切私どもは聞いておりません。  それから第二の母港として佐世保を考えておるのじゃないかという御指摘がございましたけれども、私どもは、いまのところそういう話は一切アメリカからも聞いておりません。それから、もしそういうようなことがアメリカから要請がございましたらというようなことの御質問でございますけれども、これは全く仮定の問題でございますので、いまこの時点で御答弁するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  310. 中路雅弘

    中路委員 終わりますが、かつてこの委員会で、アメリカの艦艇は有事の際は当然核武装するだろうということは丸山さんも答弁をされているのです。そして、私がそのときに母港の問題と関連してお尋ねしたのですけれども、核武装したということになれば母港を犠牲にせざるを得ない、母港を犠牲にして有事の際は核武装するだろうという趣旨の答弁をされておりますが、これは非核三原則の立場から言っても当然のことだと思います。  もう一度確認しておきたいのですが、この丸山さんの答弁の、有事の際は、そうしますと事実上母港を犠牲にするということになりますね。いかがですか。
  311. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私、いま御指摘の当時の丸山防衛局長の御答弁、定かに覚えてはおりませんけれども、いずれにいたしましても私どもは非核三原則というものを遵守いたす立場をとっておりますので、いかなる場合においても核の持ち込みというものに対しては、これを拒否するということでございます。
  312. 中路雅弘

    中路委員 では、質問を終わります。      ────◇─────
  313. 橋口隆

    橋口委員長 次に、内閣提出農林水産省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を求めます。金子農林水産大臣。     ─────────────  農林水産省設置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  314. 金子みつ

    金子国務大臣 ただいま議題となりました農林水産省設置法の一部を改正する法律案の提案の理由と改正の内容を御説明申し上げます。  わが国農業は、経済の安定成長、資源エネルギーの制約等最近の経済社会情勢の変化の中で、米を初めとする農産物需給の不均衡、資源多消費型農業からの転換、海外からの市場開放要求等多くの困難な問題に直面いたしております。これに対応して、各般の施策が講じられているところでありますが、長期的にわが国農業の発展を期するためには、その基礎となる農業技術の開発を強力に推進する必要があります。  他方、昨今、バイオテクノロジーを初めとする革新的技術開発手法の発達は著しいものがあります。これらの手法を農業分野に導入、活用し、すぐれた形質を有する農作物の作出、自然の生態系と調和のとれた農作物等の生育環境の総合的な管理技術の開発等農業技術の革新を図ることが期待されるところであります。  農林水産省の農業関係試験研究機関につきましては、従来から、農業をめぐる情勢の変化等に対応して、昭和五十六年の農業研究センターの設置等その体制の整備を図ってきたところであります。しかしながら、農業の技術革新を強力に推進するためには現行の体制では必ずしも十分とは言えず、農業に関する技術上の基礎的調査研究体制の整備が緊要な課題となっております。  このような観点から農業関係試験研究体制の再編を図ることとし、今回、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、農林水産省の本省の附属機関として農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所を設置することであります。  農業生物資源研究所においては、生物資源の農業上の開発及び利用に関する技術上の基礎的調査研究を行うとともに、農作物及び林木の品種改良のための放射線の利用に関する試験研究をあわせ行うこととしております。  農業環境技術研究所においては、農作物等農業生産の対象となる生物の生育環境に関する技術上の基礎的調査研究を行うこととしております。  第二は、農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所の設置に伴い農業技術研究所及び植物ウイルス研究所を廃止することであります。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
  315. 橋口隆

    橋口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十八分散会