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1983-03-03 第98回国会 衆議院 逓信委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 左藤  恵君    理事 加藤常太郎君 理事 畑 英次郎君    理事 水平 豊彦君 理事 阿部未喜男君    理事 鈴木  強君 理事 竹内 勝彦君    理事 西村 章三君       秋田 大助君    亀岡 高夫君       近藤 鉄雄君    佐藤 守良君       長谷川四郎君    福永 健司君       水野  清君    武部  文君       大橋 敏雄君    中井  洽君       藤原ひろ子君    村上  弘君       依田  実君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君  出席政府委員         郵政政務次官  戸井田三郎君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      藤井  威君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     川原 正人君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    田中 武志君         参  考  人         (日本放送協会         技師長専務理         事)      矢橋 幸一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   坂倉 孝一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   海林澣一郎君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   渡辺 伸一君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     川口 幹夫君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     荒井 治郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     横井  昭君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     林  乙也君         参  考  人         (日本放送協会         経営総務室室         長)      片岡 俊夫君         参  考  人         (国際電信電話         株式会社常務取         締役)     高仲  優君         逓信委員会調査         室長      芦田 茂男君     ───────────── 委員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     大久保直彦君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出承認第一号)      ────◇─────
  2. 左藤恵

    左藤委員長 これより会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑英次郎君。
  3. 畑英次郎

    畑委員 まず、きょうは参考人とされましてNHK川原会長ほか御出席をいただいておりますことを感謝を申し上げる次第でございます。  まず、NHK関係につきましていろいろお尋ねをしたいわけでございますが、当面何かと話題になっております、国際放送の問題につきまして、まず第一番にお伺いをしたいと思うわけでございます。  最近、何といっても行革の問題が国民的な大きな問題としまして種々論議を呼んでおるわけでございますが、この行革一つの大きなねらいは、目的といたしますところは、何といってもむだ遣いをしない、効率的な仕事をやっていく、そういうような一語に尽きるのではなかろうかというように私は考えるわけでございますが、私の認識では、この国際放送が、せっかくNHKさんのお立場それなりのお取り組みがされておるわけでございますが、ここ数年来、ほとんど国際放送が実際には聞きづらいといいますか、その用を足していないのではなかろうかというような話さえ出るぐらい論議を呼んでおるわけでございます。  そういう中で、五十八年度NHKさんの予算内容を見ますと、大体四十一億円程度事業予算国際放送関係に組まれておるようでございますが、私は、ある意味では、その四十一億円投資をしながら、それがむだ遣いかなりの分野で数字がなっておるというような実態ではなかろうかというように考えるわけでございまして、そういうような姿の中で、しかも、ことしの五十八年度予算案を見ますと、かなり財政基盤がピンチに陥りつつある、そういう姿の中にございまして、四十一億円という数字は決して小さい数字ではないというようにも私は考えるわけでございまして、この辺につきまして、私は、まず、国際放送そのものがいささか、大変失礼な言い方かもしれませんけれどもむだ遣いというようなかっこうになっておるのではなかろうかというように考えますし、反面、国際放送重要性、こういった貿易、経済摩擦の中にございましては、従来とは比較にならない国際放送に対する期待、要請というものが求められておる今日の姿ではなかろうかというように考えるわけでございまして、この辺につきまして、まず基本的な考え方としまして、郵政省におかれましても、NHKにおかれましても、国際放送の現状、置かれております姿がどういうような御認識をお持ちかどうか、まずお伺いを申し上げたいわけでございます。
  4. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ただいま先生が、国際放送はその十分な費用に比べまして効果を上げていないのではないかという御質問でございますが、短波が主に使われるわけでございますけれども、その特性上、また諸外国も非常に力を入れてきておるというようなことでございまして、率直に申しまして、日本に比較的近い東南アジア等はまあまあと言えるかと思いますけれども、非常に関係の深い中南米、あるいはヨーロッパアフリカあるいは中近東というところにつきましては、残念ながら受信状況かなりよろしくない。そして、近年、諸外国の増力に比べまして見劣りが目立ってきておると言わざるを得ないかと思っております。
  5. 川原正人

    川原参考人 国際放送重要性につきましては、特に昨今のいろいろな国際的な情勢、その中におけるわが国立場等考えました場合に一層重要であるという認識は強く持っております。  現在、私ども予算を四十億円、そのうち交付金は十億円ちょうだいしておりますけれども、これを投じまして、その番組制作、送出に当たっておりますが、少なくともこの番組内容につきましては、私ども多年の経験と取材網を動員いたしまして相当評価を得ておる。特に、私ども公共放送立場から、できるだけ公正、客観的な報道に努めておりまして、それの評価を得ておりますし、その点では私ども決してむだ遣いはしていないという確信は持っておりますが、いま郵政省電波監理局長から申し上げましたように、残念ながら電波の伝わり方が、中国大陸から東南アジアあるいはアメリカ太平洋岸に関しましてはかなり感度で聞こえております、私自身も若干の体験をもって、それはしかるべき方途を講ずればかなり明瞭に聞こえる、これは確信を持っておりますけれども、それを越えまして中近東ヨーロッパアフリカあるいは中南米アメリカ東岸に対しましては、非常に感度が悪いということは事実でございまして、この辺を何とかして聞こえるようにすることがこれからの国際放送の最大の眼目かと思っております。その点ではさらに一層の努力が必要であろうというふうに考えております。
  6. 畑英次郎

    畑委員 いわゆる国際放送に対します重要性といいますか、そういうものに対する御認識それなりにいただいておるというふうに承知したわけでございますが、私は率直に申し上げまして、国際放送は、現在、放送法の第九条の二でございますか、それによって国の方から十億程度のものはNHKの方に回しておるという姿にはなっておりますが、こういうように受信料との絡み合い、あるいは財政基盤が非常に厳しい中にございまして、現在のような、ほとんど受信料をいただいてそれを支出するというような姿の中で、引き続き国際放送をやっていくということには無理がきておる時期ではなかろうかというように私は考えますし、先ほども申し上げましたように、国際放送がきわめて重要な時期でございますから、私は、この辺で抜本的な対応策をとらなければ、従来の枠組みの中では国際放送の果たすべき使命をなし遂げることができない、そういうように考えるわけでございます。  たとえば、これは現在、事業主体KDDさんの設備あるいは運用のもとに、NHKさんがやっていらっしゃる。しかし、この辺で国際放送事業主体を別の角度から、あるいはまた通信放送衛星機構のような姿のもの、いわゆる第三セクターの方式をおとり願って、そこに思い切った金を入れるというような姿の方が、より本当意味国際放送がなし得るのではなかろうかというように私は考えるわけでございますが、私の伺ったところでは、KDDさんの方のいわゆる運用といいますか、あるいは維持管理といいますか、そういうこともそれなりに御熱心にお取り組みをいただいておるようでございますが、実際のKDDさんの負担額は十五、六億円ある。それに対しまして、NHKさんの方からお支払いになっていらっしゃいますのは六億円くらいではあるまいかというようにも聞いておるわけでございます。そういったあらゆる面で無理の積み重ねの中で国際放送が行われておる。私はこの辺で、やはりNHKさんも意地があるかもしれませんけれども、虚心坦懐、この事業主体あり方、そういうことにひとつ割り切ってお取り組みを願った方がいいのではなかろうかというように考えますし、そしてまた、郵政省の方におかれましても、ただいま申し上げましたような角度から国際放送に対するお取り組みのお気持ちがあるかないか、この辺について御答弁を願いたいと思います。
  7. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 ただいま御質問のありました国際放送強化のことでございますが、先ほどNHK会長もそれから局長も申しましたように、いわば国際放送というのには非常に貧弱で、むしろ周辺放送のような感じがいたすわけです。でありますから、いまの日本の置かれている立場というものを考えれば、各国の期待も大きいし、また日本人が海外にも非常に多く出ておりますし、そういう中でまた経済的にもいろいろな関係が深いわけでありますから、より強化をすることによって日本の国際的な立場が十分に鮮明にされるであろう、こういう考えからすれば、ここでその効果あるいはいろいろな面から考えれば、外務省とかNHKさんのいままでやってこられた問題とか、いろいろな角度から検討をして、さらに有効な対策をとっていくべきであろうというふうに考えるわけであります。
  8. 川原正人

    川原参考人 いまの国際放送あり方をこの際抜本的に考え直してはどうかという御指摘でございますけれども、私もある意味で全くそのとおりだと思っております。  ただ、一点私の気持ちをここで明確に申し上げておきたいのは、いま事業主体あり方というお言葉がございましたけれども、やはり国際放送というのはNHKの本来の任務でございますし、かつまた、国際的に流しますこの放送の中身は、やはりNHKのような公共的性格を持った機関が公正な立場で客観的な立場でその報道を流さなければ、それは国際的にも信用を得られない。その意味では、受信料から相当の額をこれに充てることについては視聴者の方も十分御理解いただけるだろう、そう思います。ですから、その意味で、事業主体といいますか、事業の一番の中心になる番組制作編集についてはあくまで私どもの責任においてやらせていただきたい。これは決して意地で申し上げるのではなくて、放送というものはそういうものであろうという確信を持っております。  ただ、御指摘のように、設備関係につきましては、これは確かに、受信料でどこまで賄えるかというのはおのずから限度もございます。いま当面しておる事態は、かなりの規模の投資をいたしませんと、世界じゅうに国際放送が完全に伝わるという状況にはならないかと思いますが、こういう設備をどのような形で充実していき、どのような資金をもってこれを建設し運営していくかということについては、単に受信料だけでなくて、もっと思い切った抜本的な考え方を私ども研究したいと思っておりますし、そういう点では全く御指摘のとおりかと思っております。
  9. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ただいまの先生の御質問にちょっと出ました周辺のことでちょっと補足させていただきます。  ただいま、送信所の所有、運用主体などについて第三者機関などを考えたらどうかというようなお話もあったように伺えたわけですけれども、これだけとりますと、送信所施設保守運営のみを行う機関というものをKDD以外に考える、現在以外に考えるということだといたしますと、本質的な問題は解決しない。買収費その他もかかるということではないか。あるいは先生の御質問がちょっと違っているかもしれませんけれども、ちょっとそのように考えました。  それから、国際放送充実のために多額の経費を要する、これは一体どうあるべきか、現在の状態をどう考えているのかというようなことについて、先ほど政務次官の方からお答えしたかと思いますけれども、やはり近年非常に重要視されております国際放送というものの役目を考えてみますと、私が申すのもなんでございますけれどもわが国の地位あるいは役割りの増大に伴いまして、日本としての立場あるいは物の考え方というものを諸外国に理解してもらうことはきわめて重要である。それから、国際紛争等がございました場合に、海外におります邦人等人命財産を守るための早く正確な情報を伝える情報手段の確保が大切になっておるというようなことからして、やはり政府としても国際放送充実強化に取り組むべき役割りは、大きくこそなれ小さくはなっていない。現在のところ、NHKの自主的な放送に加えまして、政府命令放送分の一部を負担しておるという形になっておるわけですが、申すまでもなくNHKは従来その責務につきまして十分果たしてまいったと考えておりますし、その評価も高い。また、放送法によりましても本来業務というような形でなっておりますので、国も努力すると同時にNHK自体にも一層がんばっていただくという形態であろう。  それから、まだ補足いたしますと、現在、先生御高承のとおり、国際放送をどうするのかというようなことで研究委員会というようなものを設けまして、この三月中にはその報告書も出るということを聞いておりますけれども、一応ただいまの私ども考え方はそういうことでございます。
  10. 畑英次郎

    畑委員 私は、国際放送の問題はもう十年来の問題として今日まで残念ながら遅々として解決をしていない。たまたまことしは世界コミュニケーション年というような年でもあるわけでございますので、先ほど指摘申し上げましたように、郵政省の方でそれなりの抜本的な対応策を、NHKさんあたり等ともよくお打ち合わせを願いながら、一つのたたき台を速やかにつくっていただくことが、問題を進める一つの要因になりはしないかというようにも考えるわけでございます。私の承知をいたしておる範囲では、抜本的な対応をする予算としましては大体百五十億から二百億というようなことを伺っておるわけでございます。この機会にそういうような数字郵政省中心となって政府として取り上げて、これは今日の日本の置かれております立場あるいは経済問題、そしてまた国際放送重要性、こういうものを考えました場合には、本当意味で速やかに年内に具体的な対応策を出し解決を図る、こういう取り組みをやっていくべきではなかろうかというように私は考えますし、ただいま田中局長さんからもお話がございましたように調査費が計上されておる。そうなりますと、これはよく通弊としてあるわけでございますが、調査費を計上することによって、調査をしておりますからということで問題が先送りされるということも多いわけでございますから、この辺で調査はもういいのではなかろうかというようにも私は考えます。やはり調査をする段階を過ぎて実行する段階決断をする段階ではなかろうかというように考えますし、決断をし得る素材といいますか考え方、具体的な対応策をこの際速やかに出していただきますように特にお願いを申し上げたいわけでございます。これは御返事は要りません。この点を私の立場から強く、これは速やかに具体的な対応策をつくっていただきまして具体的に前進ができますような一つの材料の提供を、この機会お願いを申し上げておきたいと考えるわけでございます。  そういう中で、NHKの問題は、先ほども御指摘申し上げましたように、五十五年でございましたか二四%の受信料改定が行われた。そういうことによりまして三カ年間は持ちこたえてきたわけでございますが、本年度数字を見ますと、実際には約百七十億円の赤字というのが実態ではなかろうかというふうに私は考えております。そういたしました場合に、そろそろまた受信料の値上げの問題をお考えになっていらっしゃるのかなというようにも考えますし、そういう中にございまして、NHK会長とされましては、五十九年度以降の見通しあるいは物の考え方受信料との絡み合いを踏まえましての御見解を伺いたいと思います。
  11. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、いま御審議いただいております五十八年度NHK予算は、単年度で見ますれば実質的に百七十億円の赤字ということでございます。私どもとして過去三年の間に鋭意節約等に努めまして蓄えがかなりございましたので、一応表面は六十四億円の債務償還の借りかえということになっておりますけれども実質は御指摘のとおりでございます。私としましては、五十九年度以降につきましては、いまのままの経営やり方では、とてもこのままでは健全な経営に進むことはできない、何らかの対策が必要であるというふうに考えておりますが、まず料金の問題を考えます前に、私どもとしましては、現在与えられております任務を遂行するのに、いままでのようなやり方しかないものかどうか、もっと仕事やり方あるいは組織、業務体制あり方も抜本的にもう一度考え直すべき時期ではないか、かつまた、ニューメディアと称されるような仕事も幾つか目前に迫っているわけでございますけれども、これに対する対処の仕方もいろいろなやり方があり得るではないか。まずそこのところを十分に議論をして、そして少し先の経営計画を立てて、その中で私どもとしてやり得ることはここまでやります、しかし、ここから先はどうしても料金の問題もあわせて考えさせていただきたいということを至急考えて、そういう計画を立てなければいけないといま考えているところでございます。
  12. 畑英次郎

    畑委員 私は、このNHK財政基盤の確立の問題、これまた先刻の国際放送と同じように、ここ数年来再三論議をされてきたところじゃないかというように考えます。そういう中で、前回受信料改定の際に、少なくともこういった問題は長期的な展望に立ちまして問題を考えて処理していかなくてはならない。そういう中で、長期ビジョン審議会でございますか、そういうものがスタートを見、昨年の一月でございましたか、その報告もなされた。これを踏まえて、NHKさんにおかれましては、内部的にこれを具体的に計画に移し実行に移していく、そういうようなことが私どもの方に対する御説明も従来からあったところでございます。特に坂本会長さんは、五十七年の夏ごろまでにはそういった内部の検討それなりに終えて具体的な計画を立てます、実行に入りますというようなお話もあったように考え期待もいたしておるわけでございますが、ただいまの川原新会長さんのお話伺いますと、まだそれが継続中であるというような印象を受けるわけでございますが、この辺は、やはりもう少しテンポを急いでいただきまして、はっきりした見通しなり——この問題は少なくともここ数年来論議を呼び、はっきり計画を立てなければならない時期というようにも思うわけでございますが、この辺につきまして、再度お考えなり見通しをお伺いしたいと思います。
  13. 川原正人

    川原参考人 長期ビジョンの問題につきましては、もう三年ほど前から外部の有識者等にお集まりいただきまして答申等もちょうだいしておりますし、前の坂本会長のときからこれを受けて部内的な検討を急いでまいりました。ちょうど昨年半ばに私が交代するという事態もあったために多少作業がおくれていて、これは申しわけないと思っております。  ただ、この長期ビジョンにつきましては、何分十年ぐらい先を展望して協会あるいは放送事業体に課せられた問題をいろいろ御提言いただいたわけでございまして、これを具体的な計画にまとめるとなりますと、やはりかなりむずかしい問題が出まして、いまここで具体的にかくかくしかじかというふうにお示しするまでに作業が至ってないことは、まことに申しわけないのですけれども、そのとおりでございます。ただ、私どもは、先ほどの御質問にありましたように、さればといって、十年先の問題をいつまで議論していても、これは話がなかなか煮詰まらない点もございますので、御提言いただきましたビジョン、十年ぐらいのビジョンでございますけれども、少なくともその前段に相当する数年のところは具体的な経営計画を早急に取りまとめたい。そういう中で、先ほどございましたように、新しい問題に対する対処の仕方なり、NHKのいままでの業務体制のありようなり、それから料金問題も至急答えを出したいというふうに考えておる次第でございます。
  14. 畑英次郎

    畑委員 NHKさんの場合は、従来の慣行と申し上げていいのかどうか知りませんけれども、三年サイクルぐらいで受信料改定の問題が論議される、そういうような形でございますから、ことし百七十億の実質赤字、そうしますと、五十八、五十九、六十というような中で大体どの程度赤字がこの姿の中におきましては予想されるものであるかどうか。大体の数字は、私は予想されておる中でいろいろ検討されておるのではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、その辺、もう少し具体的な数字を挙げての御返事をいただきたいと思います。
  15. 坂倉孝一

    坂倉参考人 ただいま会長から申し上げましたように、鋭意長期経営計画に取り組んでいるわけでございますけれども先ほど先生から御指摘のございましたように、収支不足が五十八年度でも百七十億ということでございますので、その先につきましては、いろいろ効率的な経営をこれから努力を重ねたといたしましても、やはり収支の不均衡が拡大するということは避けられないわけでございます。  ただ、いまの時点でこれからの見通しを取りまとめるに当たりましては、いろいろ基礎的な条件となります国の経済見通しといったようなところが非常に不透明なところもあるわけでございまして、そういった予測の困難な部分もございますし、先ほど会長が申し上げましたように、これから衛星放送を初めニューメディアにも取り組んでいくという中で、徹底的な業務やり方を、効率的な施策というものを取り入れながらやっていくといったような点についてもまだ詰まっていない部分がございますので、未解決部分が多いわけでございますけれども、そういった状況現行料金をもとにして試算をいたしますと、今後各年度の伸びはどうしても一%台しか考えられませんので、支出面でできるだけの効率的な節減といったような形のものを取り入れた上でも、この収支の不足というものは、三カ年で、数といたしましては累計で千八百億ぐらいというふうに現時点では試算いたしているわけでございます。
  16. 畑英次郎

    畑委員 ただいま、これから先の三カ年間で大体千八百億円程度の、現在の姿の中で計算をすれば、赤字が予想されるということであるわけでございますが、三年ごとに安易に受信料改定期待されての経営をなさるということは、これはあり得べき姿ではない。また、会長さん方におかれましても、そういうお考えで従来からお取り組みをいただいておるというふうに考えるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますとおり、長期ビジョンというものを受けましても、なかなか流動的な要素も多いからむずかしい、これは私もそれなりに理解いたします。そういう中で、三カ年の一つ見通しあるいは中期的な物のとらえ方、最近はニューメディアその他の関係もございましてなかなかむずかしいと思いますが、この辺で、たとえば新しい財源確保の問題等々、こういうものを含めてさらにひとつ前向きに御検討賜りたいというふうに考えるわけでございます。  そういう意味合いの中で、先般、いわゆるNHKの出資条項といいますか、そういうものの改正が放送法の中でなされまして、今度の予算を拝見しますと四千万円の数字が出ておるわけでございますが、この四千万円という数字、率直に申し上げれば、私は出資金額としても少ないなというふうに考えるわけでございますが、これの配分先、物の考え方、この辺を具体的にお答えを願いたいと思います。
  17. 渡辺伸一

    ○渡辺参考人 お答えいたします。  いま先生おっしゃいますように、四千万円を出資として考えてございますが、これは二つございまして、一つ放送法の改正によりまして新しく出資が可能になりました新しい会社に出資をするのが二千万円、それからあとの半分の二千万円は、既存のいわゆる外部団体でございますが、これが新しく放送法の改正により可能になりました三団体というふうに考えているわけでございます。  具体的に申しますと、新しい会社は、テレビジョンの文字多重放送を始めますので、これの字幕を製作する会社、こういうことを予定をしているわけでございます。これが二千万円。それから既存の外部団体につきましては、株式会社日本放送出版協会、それから株式会社NHK美術センター、それから全日本テレビサービス株式会社、この三団体に二千万というふうに考えているわけでございます。
  18. 畑英次郎

    畑委員 ことしはいわゆるこの出資関係の初年度といいますか、そういうような意味合いでは、どういった基本的な考え方の中でということもお尋ねをしながら、しからばこれから先さらに出資対象の数をふやす、あるいはまた積極的にこれを活用していく、そういうようなお気持ちがあるのかどうか。先ほどお話が出ましたように、かなりNHKさんが赤字が出る、そういう中で、私ども立場から言わせてもらいますと、NHKの外郭団体、こういうようなお立場の姿の中で、かなり利益が上がっておる。NHKのサービスセンター、これはいささか資料が古いわけでございますが、五十五年度でございますが三億三千万、あるいは株式会社日本放送出版協会七億四千百万円、全日本テレビサービス株式会社一億九千万円、こういうような外郭団体の方が何となく景気がいいというように数字の中でうかがい知ることができるわけでございますが、何となく割り切れない。場合によっては、私も従来申し上げておりますとおり、全額出資をして、何かそういうものが放送事業の質的な向上にも、あるいはまた受信料関係にも、いい意味でプラスになるような取り組みの方法はないものだろうかというように私は考えるわけでございまして、この辺に対するこれからのNHK考え方、お取り組みの姿勢、こういうものを再度お伺いをしたいわけでございます。
  19. 川原正人

    川原参考人 私ども、せっかく放送法も改正されまして、協会側の必要とする、まあいろいろな条件がございますけれども、会社等に出資がある一定の範囲で許されましたので、これはぜひ積極的に活用してまいりたい。特に私ども業務の中に、外部団体等に委託をして推進している仕事もございますし、恐らくこれから先はもっと委託をしてやるべき仕事がさらに拡大できるのではないか。特にまた新しいニューメディア等の仕事もふえてまいりますし、あるいは既存の私ども仕事の中でも、そういう協力会社との緊密な連携のもとに業務を成長させることができるのではないか。その辺はぜひ積極的に研究してまいりたい。  そして、出資等につきましても、全額ということが果たしてよいかどうか、これはまたもう少し研究をさせていただきます。私ども、性格もございますし、それから株式会社等の株を全額を持つことが果たしてよろしいのかどうかはもう少し研究いたしたいと思いますけれども、ぜひこれは積極的にそういう方向で取り組んでまいりたい、かように考えております。
  20. 畑英次郎

    畑委員 NHKに対しましては、従来からそういった財政基盤の確立の問題、そしてまた一つには労使関係等々、いろいろ論議がございます中で、私は、新会長とされましても、一つの新たな意欲をお持ちになりまして御就任をいただいておるものというふうに理解をするわけでございますが、特に昨年あたり問題になりました、たとえば労使関係におきましても、いわゆる最高経営協議会あるいは最高人事委員会、こういうような姿に相なっておるわけでございますが、これをやはり誤解のないような姿に改定をやっていくというように承っておったわけでございますが、新会長のお立場におきまして、この辺の問題の御認識あるいは考え方をお伺いしたいと思います。
  21. 川原正人

    川原参考人 従来の労使関係の中で、一部その言葉遣い等について協定の文言が、何分労使間のその種の協定がかなり早い段階、昭和二十年代に結ばれた協定ということもございまして一部にあるいは誤解があったかと思いますけれども、これはすでに前の会長の時代からその点については労使間でお話が進みまして、私の就任直後に、いま御指摘のありました最高経営云々というような若干誤解を招きやすい文言につきましては、中央協議会あるいは中央の人事委員会というような形に、これは組合の方の了解、理解を得られまして、そういうふうに変えております。また、その他の公職等に就職する場合の扱いにつきましても、労使間の協議が整いましてすでに新しいやり方でもって実際に移っております。NHKの労使関係は、十分お互いの信頼の中で新しい方向をいま目指して動いているということでございます。
  22. 畑英次郎

    畑委員 ここ二、三年来そういったことがいろいろ論議を呼びまして、経営側におかれましても御努力をされた点に関しまして私なりに認識をいたしておるつもりでございますが、さらにまたそういった姿が本当意味で定着をし、関係筋あるいはまた私ども立場におきましても納得のいきます姿を、さらにまた堅実な姿をつくり出していただくように、引き続き新会長におかれましても御努力賜りたいと考えるわけでございます。  そういう中で、先ほどお話もございましたように、NHKさんはいわゆる受信料だけでもって従来ずっとやってきた、これからもやっていく、そういうような中において公共放送の使命を果たしていく、こういうような非常にむずかしい一つの課題を与えられている中にございまして、最近は人工衛星を初めとします、そういったことを伴いますニューメディア、これの中でNHK一つの大きな課題であります難視解消の問題、これに対します最近はいわゆるCS2の問題あるいはまたBS2の問題、こういうものが具体的にもう目の前に出てきておるわけでございますが、これの全体の利用計画といいますか、これの受けとめ方、たとえばBS2につきましては難視聴解消に使うということでございましたけれども、その全体の経費の総額、あるいはNHKさんのお立場における分担しております金額、こういうものはそれなりに伺っておりますが、それから考えますと、ただ単に灘視解消のみではきわめて不経済ではなかろうかというようにも考えますし、こういうようなニューメディアのチャンスを生かして国民生活の放送文化的な向上を目指すあるいは生活に潤いを与える、こういうことも必要ではなかろうかと私は考えますが、かなり目前に具体化されつつある問題でございますから、NHKとされましての基本的な受けとめ方あるいは対応、これをお知らせ願いたいと思うわけでございます。
  23. 川原正人

    川原参考人 御指摘のようにニューメディア、特に放送衛星というのは大変可能性としては無限の可能性を秘めている放送の手段でございますし、もちろん、一番それが有効に使われるのは、いままで地上の設備を増強しながらNHKの最大の任務である全国普及、難視の解消は地上で進めてまいりましたものが、この衛星を使えば、ほとんどの山村地区あるいは従来地上の設備ではどうしても不可能であった離島等にも完全に放送のサービス、テレビのサービスができるという能力を持っておりますので、私どもとしてはまず第一に難視の解消にこれを十分に役立てたい。しかし、この放送衛星の能力といいますか機能はそれだけにとどまらないもっと多くの可能性を秘めておりますし、いま御指摘のように、日本放送文化の中でこの衛星が果たすべき役割りはまだまだあり得る。かつまた、国会あるいは今回の郵政大臣の意見書の中にもその活用施策をもっといろいろ研究してはどうかというような示唆もちょうだいしておりますので、私どもとしてはさらにこれを、難視解消だけでなくて、もっと有効な使い方はないものかどうか、その弾力的な活用施策についてさらに努力をしてまいりたいと考えております。
  24. 畑英次郎

    畑委員 この問題につきましては、いま申し上げましたように、いわゆる全体の必要経費といいますか投資額といいますか、そういうものの数字を明示願いたいと思いますし、そういう中におけるNHKの分担といいますか、なおまた、先般来、たとえばこれの打ち上げロケットの費用の負担比率、こういうことがいろいろ予算編成時期にも問題になったわけでございますが、この辺につきましてのこれからの受けとめ方、そしてまたNHKのお立場における物の考え方、これを具体的にお答え願いたいと思います。
  25. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  来年二月に予定しております放送衛星BS2の開発経費関係でございますけれども、総額約六百十億というふうに予測されております。  その経費の分担関係でございますけれども、このBS2の場合、NHKがまず難視解消ということで使うということで、利用者としてNHKが六割、また開発すべき国が補助すべき面もあるということで国が四割を負担するということになっております。  それで、先ほどCSにつきましての分担割合というような話も出ましたけれども、BSにつきましては今後の問題であるというふうに考えて、関係機関と十分別個の問題として検討すべきだというふうに考えております。  ちょっと前後いたしますが、BS2は六百十億と申し上げましたけれども、衛星関係、そのミッションをやります機械関係が二百五十九億、それを打ち上げますロケットの関係が二百三十八億、その他追跡等にかかる費用が百十三億、合わせて六百十億、こういうかっこうになっております。
  26. 畑英次郎

    畑委員 こういった計画に当たりまして、いま郵政省の方でもあるいはNHKさんの方でもそういった割合での負担はやむを得ないというような受けとめ方かもしれませんけれども、こういった関係につきましても一つの国策というような要素が非常に強いわけでございますから、これは郵政省におかれましてもNHKにおかれましても、国の方が費用負担の度合いといいますものはさらに、はっきり申し上げれば一〇〇%持ってもらうというぐらいのお気持ちで、これから事務段階におきましてもNHKにおかれましても対応願った方が、私は将来いいのじゃないかというように考えますし、あるいはまた、スペースシャトルの問題等々考えますと、実際にまだ安い手だてがある。そういう中で、一つ日本の技術開発というような意味合いでのおつき合いをせざるを得ないという要素も私はそこにあるのではないかというように考えますので、この辺は十分御理解をいただいておるというようには考えるわけでございますが、この辺につきましてもひとつ十分御留意を賜りたいというように考えるわけでございます。  そこで、従来から指摘をされておりました、いわゆる財政の厳しい中にございまして、NHKにおかれましても、人員の配置の問題あるいはまた総枠を抑える問題等々、具体的に五カ年で千二百名でございましたか、あるいは三カ年間で六百名でございましたか、そういうような具体的な御計画があったわけでございますが、現在の進捗状況、そしてまたこれからの見通し、この辺につきましてこの機会にお知らせを願いたいと思います。
  27. 横井昭

    ○横井参考人 お答え申し上げます。  申し上げるまでもなく、協会の効率的な経営並びに業務の効率的な運営というものは、NHK公共放送の使命を達成する上において、国民、受信者の皆さん方の理解と信頼を得るという点で基本の課題である、こういうふうに考えております。なおかつ、先ほど先生指摘ありました将来の文字放送とか衛星放送とか、そういうニューメディアに対する対応考えますときに、将来のNHKの基盤整備という意味におきましてもこれは重要な基本課題である、こういう認識でわれわれは対処してまいっております。  御指摘のように、五十五年度以降五カ年間の計画で千二百人の目標を立て、五十五—五十七の三カ年経営計画の中では六百人、三%という効率化目標を立てました。現在五十七年度を終わろうとしておりまして、二十数項目にわたる効率化項目を実施してまいりまして、五十七年度末はほぼ六百人の効率化というものを実現し得る、こういう見通しに立っております。また、各年度事業計画予算におきましてお認めいただきました事業につきましての増員が約二百六十ございまして、この三カ年間で純減が三百四十、約二%の純減が五十七年度末にはほぼ達成できる、こういう見通しに立っております。
  28. 畑英次郎

    畑委員 私どもは、受けとめ方としましては、六百あるいは千二百といったような数字は、逆に言いますと、純減といいますかそういうように受けとめあるいは期待をする。そういう中で、いまお話がございましたように、新規事業その他の関係で人をふやさざるを得ない。そうなりますと、何となくこの辺があいまいもことしてしまうのではないかというふうなことを私は思うわけでございます。いわゆる千二百名に対しまして、従来、いろいろ取材活動等の中から、いささかNHKさんにおかれましてはその辺の厳しさが足らないのではないかというようなことも言われておったわけでございますが、そういう中で、千二百名に対します純減というものは、これはしからばどういう数字に相なるわけでございましょうか。
  29. 横井昭

    ○横井参考人 お答え申し上げます。  五十八、五十九年度、両年度で効率化目標としては六百プラスしまして合計千二百になるわけでございますけれども、単年度の要員増につきましては、各年度事業計画の中で御審議いただくとしましても、われわれとしては過去の実績の上に立ってほぼ同程度の純減を実施していきたい、そういうふうに考えております。
  30. 畑英次郎

    畑委員 私は、いたずらにただ人を減らすのがいいということではなくして、先ほど来申し上げておりますとおり、NHKさんの場合におきます受信料にすべてを依存しておるというような実態の中で、しかも、五十八年度予算を拝見しますと、先ほどお話がございましたように受信料の伸びは一%、そしてまた実際の支出の方におきましては五%台というような数字が出てくるわけでございますから、これはもう何遍も論議をされた問題でございますが、この辺で、本当意味で具体的に、NHKさんの立場におきましても、あるいは郵政省の方の行政指導の中におきましても、速やかに中期的な一つ計画財政基盤の確立、そういうものを明示していただくことが、私はそういうものがなければ、逆に申し上げれば、これから先の受信料の問題もなかなか国民の皆様方が御理解ができないのではなかろうかというようにも考えるわけでございまして、この辺の会長のお考え、あるいはまたその時期的な問題、これを再度お答え願いたいと思います。
  31. 川原正人

    川原参考人 現在のNHK状況、これは大きく基本的に考えますと、やはり経営の一番の基盤になっております収入は、どうしてもこれは受信料に依存せざるを得ない。国民の視聴者の方々によって支えられなければNHKは成り立ちませんし、その受信料の伸びがどう見ても一%ちょっとということは、これはもしいまの料額で考える限りもうそれしか考えられない。いま御指摘のように、新しい仕事は幾らでもまたかかわってきておりますので、基本的にはある段階でどうしてもこの受信料改定、値上げを視聴者の方々に要請せざるを得ない、それは基本的にはそうだ、これはここでなまじ隠し立てしてもしようがないので、そういうことが実態だというふうに私は思っております。  しかしながら、ただこれだけの仕事でこれだけの経費が要るからそれをそのまま料額の改定お願いしたいと言ったのでは受信者の納得が得られないことはよくわかっておりますし、いままでの仕事あり方等を十分再検討して、さらに財源等につきましても、受信料以外のものは何が考え得るかということは徹底的に議論をして、そして経営長期の、中期といいますか、三年なり四年なりの経営見通しをはっきり持って、その中でこれだけのことを受信者にお願いしたいという経営計画をきちんと立てなければいけない。その過程においては、いま御指摘のあった要員の効率化の問題も業務あり方も全部抜本的に検討して、それから協会がやっております過去の業務もこの際洗い直して、新しい業務との総合的な関連の中で、本来のNHKあり方はいかにあるべきかということを皆様方にお示ししなければいけない、それは早急にしなければいけないというふうに考えております。その決意でございます。
  32. 畑英次郎

    畑委員 私は、新会長というお立場ではございますけれども、従来からNHK業務に精通されました会長のお立場でございますので、あえて申し上げるわけでございますが、従来私ども立場では、さらにまた御指摘を申し上げましたもう一点は、いわゆる受信料の不払いといいますか、これがやはり一時期かなり数も多くなった、これに対しまして受信料の義務制ということもこの委員会でも論議をされまして、それはそれなりにまたいま棚上げされておるというようなかっこうに相なっております。問題はやはり、この受信料が公平な姿の中でテレビをごらんになる方々からいただいておるというような姿でなくちゃならぬというように考えておりますが、これは特に法人、事業所等が受信料払いがきわめて悪いというようなことも伺っておるわけでございますが、この辺の実態をお答えを願いたいと思います。
  33. 林乙也

    ○林参考人 事業所等の世帯の契約の関係でございますけれども、確かに推定の事業所数と申しますのは全国で六百七十四万程度事業所があるわけでございまして、その限りにおきましてはもっともっと世帯関係についての契約があってもよろしいのではなかろうかというような点が御指摘の点ではなかろうかというふうに思うわけでございます。ただ、六百七十四万の事業所の中には、個人業種というような形で世帯契約と一緒になっておる非常に小規模な事業所が非常に数多くございまして、そういったものを差っ引きますと、対象となります事業所数というのは百七十五万程度ではなかろうかというふうに私ども推計をいたしておるところでございます。そういった中での事業所のテレビの設置状況と申しますのは、おおむね百六万台ぐらいが設置されておるのではなかろうかと考えるわけでございます。この推計につきましては、NHKの推計でございますので、確かに他の資料等と突合いたしました場合に若干のそごがございます。その点は私ども認めざるを得ないわけでございますけれども、それはやはりNHKの立入調査権のない現在の状況の中におけるNHKからの照会に対する回答でございますので、私どもといたしましてはそれを根拠にせざるを得ないというような状況でございまして、結果におきまして九十五万の契約が現在ございますので、平均いたしますならば約九〇%の契約になっておるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。ただ、やはり私どもといたしましては、世帯関係の契約のみならず非世帯関係の契約の増進につきましては今後さらに力を入れていかなければならない部門と考えておりまして、本部の中におきましてもそういった担当のセクションも設けるなどして対処いたしておるわけでございますけれども、今後さらに一層の努力を重ねてまいりたいというように考えております。
  34. 畑英次郎

    畑委員 私は、新会長に特に申し上げたいことは、やはりNHKの場合におきましては、その受信料の金額、現在の八百八十円、これが高いか安いかという議論がいろいろあるわけでございますが、問題は、提供されます、放映されます内容の質、質をまず一番重視しなければならない、そしてまた、中立性といいますか、そういうものを大切にしなければならない、そういうようなNHKのお立場ではなかろうかというふうに私は考えます。そういう視点、観点からいたしました場合には、最近はなかなかいい番組も、そしてまた国際関係をめぐります大型番組をときどき拝見をし、それなりの感銘を受けておるわけでございますが、私は、いささか誤解を招くかもしれませんけれども、さらに質の向上ということをやっていただくことによって、場合によりましては受信料の値上げということも国民の皆様方の御理解がいただけるのではなかろうかというふうに考えますし、当然その前段には、先ほど指摘申し上げました従来からの懸案のいわゆる中長期計画の問題、あるいはまた受信料の問題、そしてまた効率的な経営の問題、こういうことを十二分にやった上で、さらにまた質的に充実されたものが放映されるということによって初めて受信料改定という問題が論議の対象になり得る、こういうように私は認識をいたしておるわけでございまして、会長におかれましても、郵政省におかれましても、その辺もひとつ御検討を賜りたいがというように考えるわけでございます。  最後に、重ねて、くどいようでございますが、NHK受信料にすべて依存をしておるそういう中におきます経営は、ただいま御指摘申し上げましたような意味合いで非常にむずかしい、それを踏まえた上でさらにひとつ懸命な御努力を賜りたいと私は思いますし、特に国際放送につきましては、私は、くどいようではございますけれども、ぜひこの機会に、郵政省におかれましてもNHKサイドにおきましても、従来のこういったほとんど聞けない、そういう姿の中における毎年四十億程度の金を使うということは、やはり今日の行革の精神に大きく反する、むだ遣い、いままではむだ遣いでなかったかもしれませんけれども、こういう姿を続けるということは私はむだ遣いと言ってもやむを得ないのではないかというように考えますので、この機会に、先ほど申し上げました新たな一つの機構といいますか、それに対する金が出しやすい、そういう受け皿をつくっていただく、こういう方向での、しかもここ一年以内にやはりきちっとしたものを出していただけるような対応を願いたいというように心から念願をいたしておるわけでございますので、この辺に対するお考えを大物政務次官の戸井田先生並びに新会長にお伺いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  35. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 ただいま御指摘の問題は、まずその必要性というものが客観的に存在をしておって、そしてそれを満たすためにどういう努力をするかという問題だろうと思うのです。そして、それが満たされるものでない限りは、いま先生指摘のように一種のむだ遣いになってくるだろう。そうするならば、現在の置かれている状況をどのような形で克服するかとすれば、やはり設備という問題等にも絡んでくるだろう。そのことによって、いま日本の置かれている国際的な立場、またそういう状況の中で有効な国際放送が展開されるのだろうと思いますので、早急にこの問題については関係各方面と検討をしていかなければならない問題であると深く認識をいたしております。
  36. 川原正人

    川原参考人 番組の質を高めなければならないという点は、全く御指摘のとおりだと思います。私どもは、何といいましても放送機関でございまして、放送事業者でございます。やはりNHK放送が国民にとってなくてはならないすぐれた内容を持っていなければ、とても国民の支持を得られるものではございませんし、受信料もちょうだいできないわけでございます。その点、私から言うのはなんですが、現在NHKの職員は大変その意欲も高まっておりますし、すぐれた番組が出ていると思いますし、それは世間の評価からもありがたい評価をちょうだいしている。このような職員の気持ちをさらに一層ふるい立たせるのが私の仕事でもあろうと思いますので、その点さらに努力を重ねたいというふうに考えております。もちろん、国際放送につきましても、これは聞こえないのではいかに私どもがすぐれた番組をつくりましても効果がないわけでございまして、その点については一層の努力を重ね、また、郵政省あるいは政府の御助力もちょうだいしたいというふうに考えております。
  37. 畑英次郎

    畑委員 終わります。どうもありがとうございました。
  38. 左藤恵

    左藤委員長 次に、武部文君。
  39. 武部文

    ○武部委員 私は、NHK予算の具体的な問題に入る前に、一つだけNHK会長からお聞きをしておきたいことがございます。  元池田総理の秘書官であります伊藤昌哉さんという人が、御存じだと思いますが、「自民党戦国史」という大変分厚い本を発行されました。会長はお読みになったでございましょうか。ちょっとそれをお聞きしたいと思います。
  40. 川原正人

    川原参考人 残念ながら全文をちょっと読む時間がございませんでしたけれども、前半の方は私も読みました。
  41. 武部文

    ○武部委員 これは大変な売れ行きでございまして、昨年の八月発売されてわずか三、四カ月のうちに十六版、なかなか私も手に入りませんでしたが、幸い手に入れて、これを、大変分厚いものですが、全部目を通してみました。詳細に記録をした日記と覚書を資料として、登場人物すべて実名でございます。政界の裏面を知る本として私どもは大変興味深くこれを読んだのであります。  きょうここでなぜこの問題を申し上げるかといいますと、この中に実在人物が全部書いてあるわけでありますが、全国紙などのマスコミの政治部記者の名前が出てまいります。われわれは、政治部の記者の皆さんが毎日大変な苦労をされておるということはわれわれの立場からもよくわかりますし、マスコミの取材合戦というものがいかに織烈なものであるか、そういうものがこの中を通してうかがえますし、同時に、政治部記者というのは並みの神経じゃとても勤まらぬということもよくわかるのであります。相手のふところに飛び込まなければよい取材ができぬ、それも事実でございましょうし、あるいはまた国民に真実を伝えたりあるいは政治部の記者が早くそういうものを伝えるために努力をされる、これも当然のことだろうと思うのですが、密着が癒着になり、ふところに飛び込んでいくという、いわゆるミイラ取りがミイラになってしまうようなことがあってはならぬと思うのであります。  きょう私が指摘したいのは、この本の中に出てまいりますマスコミの方々の中で一番たくさん名前が出てくるのは、実はNHKの政治部の記者の方なのであります。これは会長もお読みになっておわかりだろうと私は思うのです。私もずっと読んでちょっとチェックをしてみました。大変この人だけが突出してこの本の中に出てくるわけであります。しかも、この内容を見ますと、この記事の中では、自民党の総裁選挙に当たってある特定の派閥の文字どおり一員になってしまっておる、こういうふうにうかがえるのであります。そうして、自分の党内の議員の票読みにまで参加をしておる。これがもう赤裸々にここに書いてあるのであります。もしこれが事実であるとするならば、私は、きのう会長がこの席でお述べになった、NHK公共放送の使命に徹し、公正な報道の提供に努める、こういう発言をきのう会長はここでおやりになりました。いま申し上げましたようなことが事実とするならば、NHKの職員としていささか逸脱した行為ではないだろうか、このように思うのであります。  かつて、この委員会で、ロッキード特別番組に三木元総理のインタビューを削除したとかしないとか、いろいろなことが問題になりました。私はよく承知をいたしております。  また、去年の三月、ここにNHK放送世論調査所の資料がございますが、これ四十一項目の調査をやっておるようであります。大変結構なことでありますが、この四十一項目の中に、初め政治倫理項目が五項目あった。これが最終的に出てきたときには、これはどこで消えたのか、いつの間にやら消えてしまってなくなっておる、こういうことが問題になったということを私は承知をいたしております。  さらに、七月二十九日、衆参七会派五十二人、この人たちが参加をいたしました衆参両院政治倫理確立懇談会、こういうものがございまして、これが主催で、たしか憲政記念館だったと思いますが、超党派糾弾演説会が行われたようであります。私は、この事実は翌日の新聞、夕刊あるいは民放のニュースで知りました。ところが、奇妙なことにNHKだけはこの報道は全然行っておらないのであります。どうしたことかよくわかりません。  いま私は三つのことを申し上げましたが、こういうことを考えましたときに、一体、たまたまこれに出てくる方、この方が本当にこれは事実なのかどうかについてはいろいろ問題はあるだろうと思います。なぜならば、この書いた人は、この中に奇妙なことに神様のお告げなんという言葉が出てくるのであります。私は、これは何のことかと思って調べてみたら、これは何か宗教の信者のようでございますね。それは余り他人のことですからどんな宗教を信じようが構いませんが、神様のお告げなんという言葉が出てくるというのはちょっと理解に苦しむこともございますけれども、しかし実名でありますね。しかも、この人の経歴は、御存じのとおり大変長い間総理の秘書官を務められた方でありますから、普通一般の人がこれを読み、私どもがこれを読むと、ほう、そういうことがあったのか、えらいことがあったものだ、全く知らなかったということで、大変参考になることが多いのであります。  私がこれを取り上げた理由は、この記者の方は今日NHKの役員に昇進をされておりますね。大変りっぱな方で評価される方ですから役員におなりになったと思います。そうして、この方は今日役員として報道の担務を持っておられるように聞いておるのであります。そういたしますと、こういうような経過をたどってきた人がこういう役につかれておる。そうして、いま申し上げたようなことが続いて二、三回起きておる。視聴者NHKの姿勢を一体どのように見るだろうか、私はそれを心配しておるのであります。  ほかのことは何も申し上げることはございません。そういう点で、昨年七月新発足をされた新しい会長のもとにおける体制、この中で、あなたがきのうおっしゃったようなNHKの基本的な姿勢、そういうものは何としても貫いてもらわなければならぬわけでありますが、このことについて会長はどういうお考えをお持ちだろうか、それを最初に聞いてから、次の質問に入りたいと思います。
  42. 川原正人

    川原参考人 NHK番組、特に報道について公正な立場、姿勢を貫かなければならないということは御指摘のとおりでございますし、私自身そのことを就任以来折に触れて内外に申しましたし、また、提案理由の補足の説明の中でも私はそのことを大事なこととして申し上げております。  そして、いま御指摘のその本に書かれました問題、私も先ほど申しましたように全文は残念ながら読み切れなかったのでございますけれども、前半の部分は読みまして、確かに私どもの記者の名前が何カ所かに出てきたことは承知しております。そのことにつきましては直ちにその記者にも、記者といいますか、現在役員をやっておりますけれども、その者に聞きましたけれども、それは全く事実に相違しております。事実ではございません。そういうことで、また、その自由民主党のある派閥と申しますかグループの事務局の責任者からも、これは事実ではないという釈明の言葉を私はちょうだいしております。そういう意味ではそれは全く事実ではございません。  それから、私が一般論として申し上げますと、先生も御指摘のように、記者というもののあり方としましては、通り一遍のことを伺っていたのではそれはなかなか真実には接し切れない。政治であれ、経済であれ、社会部の問題であれ、その取材の対象になられた事件なりその当事者についてはかなり深く取材に入り込んで、その方との間に相当の信頼関係を持って取材をしなければ、実際の本当の姿はなかなか取材はできない。私自身も記者をやっておりましたので、そういう体験を十分に持っております。その意味で、いま御指摘の記者が当該の記者活動の中では非常に有能であるということは、私もかつて報道局長時代にともに仕事をしてもおりましたし、よく承知しております。しかし、その取材活動の中では深くは入りますけれども、一切いわゆる相手のとりこになるといいますか、自分の立場を忘れてということはかつてございませんでした。それは私は一〇〇%信頼をしております。したがいまして、私が会長になりましたときにも、最も信頼できる人間の一人として役員の中に加わってもらって、私と運命をともにしていただくという形で選んだわけでございまして、私はその人間を十分に信頼しておりますし、そこに書かれたような事実はないという確信を持っております。  したがいまして、いま御指摘の、そのほかの世論調査あるいはニュースの扱い等についての御指摘もございましたけれども、この世論調査等については、これは部内でいろんな議論があるわけでございます。まず最初の企画の段階ではいろんな幅広い企画がありまして、それをいろんな角度から議論をしてまいりまして、最終的にこういう範囲でこういうねらいでやろうではないかということが決まるわけでございまして、その過程においてはいろんなことが常に毎回の世論調査についてあるわけでございまして、御指摘のときにどういう経緯であったか、部内の議論の段階は、私もその当時のこと詳細知りませんけれども、あるいは何かの部内の討論の経緯の中で、幾つかの問題がつけ加わったりあるいは落とされたりということは始終あるわけでございまして、特に意図的なものではございません。  それから、ニュースの判断につきましては、先ほど申しましたように、私もニュース部門でかなり長い間仕事をしておりましたけれども、その日その日あるいはそのときどきのニュースはかなり大量のものが集まってまいりまして、ニュース判断というものは私どもの判断のもとにやらしていただきます。それはそのときの担当の責任者、デスクなり整理部長なりが、毎日数百、数千にわたるニュースを選択しながら選んでまいりますので、そのときの判断で、あるものが入り、あるものが落ちるということは始終あることでございまして、少なくともいままでの経緯の中で意図的なニュースの判断が行われたということは私は承知しておりませんし、絶対にそれはあってはならないことでございます。過去もございませんでしたし、今後ともそういうようなことは間違ってもいたしませんし、いたさないように私は指導しております。その点は、ぜひ御信頼をいただきたいというふうに思います。
  43. 武部文

    ○武部委員 会長も政治部記者の出身であることを私も承知いたしております。この本の問題は、これでおきます。  いま最後に申し上げました七月二十九日の問題は、あなたの方に何か抗議があったように私どもは聞いておるのであります。これは報道はあなた方に決定権があるわけですから、それをいまここでとやかく申しませんが、いずれにしても、いま国民が注目のああいう問題についてどういうわけかNHKだけが報道しなかったということは、国民の目から見ればいささかおかしいというふうに映ると思うのです。それはあなたの方で、放送のいろいろな御都合があってやらなかったと言えばそれだけのことかもしれません。しかし、事はそういう簡単なものではない。少なくともわれわれの承知しておるところでは、衆参の七会派の五十二人の国会議員が党派を超えてこういう懇談会を持ち、しかも公開の席でそういう演説会をやるということはいままでかつてなかったことであります。そういうことがNHK報道の中に全く一片もないということは、国民の目から見るならば、これは奇異に感ずることは当然だと私は思うのです。それがどのような理由でこういうことが行われたのかということについて、いささかいまの会長の御答弁では私は理解ができないのであります。ほかのことは結構ですから、この点だけもう一遍、あなたの方に抗議があったということは私は聞いておりますが、どのようにお答えになったでしょうか。     〔委員長退席、水平委員長代理着席〕
  44. 川原正人

    川原参考人 たしか政治倫理懇談会の問題につきましては、関係の方から、なぜこれがNHKのニュースで報道されなかったのかというお問い合わせがございました。私自身もお目にかかっております。ただ、それは特に意図的なものではなくて、その前後にその種の会合については私ども幾つか報道はしております。したがって、この種の会合、懇談会について一切私どもは取り上げないというようなことで処理しているのではなくて、全くその日のニュース判断という中で、そのニュースが入ってはおりましたけれども、他のニュースとの振り合いの関係でたまたま放送しなかったということにすぎないのでございまして、その点は関係の方にも十分御説明をいたしております。意図的にある種のニュースを外すとか入れるとか、そういうことは私ども絶対にいたしておりませんし、今後ともそのようなことは一切考えてもおりません。あくまで公正な立場で客観的な報道に努めてまいる、そういう決意でございます。
  45. 武部文

    ○武部委員 御答弁がございましたけれども、私はこの点についてはちょっと理解ができませんが、これで進めます。  先ほど質疑を聞いておりましたところ、向こう三年間の予想されるNHK赤字は、このまま推移すれば約千八百億ぐらいになるだろう、こういうことをおっしゃったわけであります。確かに、いままでの経緯からすれば、大体そういう金額になるだろうと予想されます。問題は、これからの放送あり方というのはいままでとがらりと変わって、御承知のように通信衛星が上がり放送衛星がこれから相次いで上がるわけであります。したがって、この放送の体系というのは、質、量ともいままでとは全くがらりと変わる、こういうふうに見なければならぬ。それも遠い将来ではなくて、まさに目の前に、来年の二月には放送衛星が打ち上げられるわけであります。  そうなってくると、先ほどからいろいろお話を聞いておりますと、ニューメディアの問題とかいろいろございますが、そうなれば当然、次の料金の体系の問題はそのことを抜きにして考えることはできないと思うのです。ただいま五十八年度予算を審議しておるわけですが、たまたまこれは三年間という私どもと皆さんとの予想が、もう一年皆さんの御努力で伸びることになった。結構なことです。来年はどうか。もうこの予算を一目見れば、来年はこれはだめだ、何とかしなければならぬということはだれの目にも明らかであります。では、来年だけのことを考えていいか。来年は放送衛星が上がるわけであります。難視聴の四十二万の世帯に三百六十億円もNHKが出して、そうしてNHKがこの放送衛星を上げた。それは四十二万の世帯をカバーするためだ、これは通らぬことはもう皆さんの御承知のとおり。わが国のようにカバーが非常に高いところでは、四十二万のために放送衛星を打ち上げるなんということはナンセンスであります。そういうときに、放送衛星の持つ役割りはもっと多様であるということはだれの目にも明らかである。皆さんもそうお考えになっている、郵政省もそう考えている。そうなれば、来年、再来年、その次ぐらいの三年間のこれからの経営実態、そして放送の質、量、そういうものを考えて、次の料金体系はいかにあるべきかという、それを前提にした中期計画というものが当然この委員会に提起されてしかるべきだと思うのです。  なるほどこれはなかなかむずかしいことかもしれません。しかし、ことし一年の料金は据え置いたが予算はこれでひとつ審議してくれ、来年はまた来年のことだというようなことでは、今日の時代に全くそぐわぬ、NHKとして怠慢のそしりを免れぬと思うのです。放送衛星が上がる、これを目前にして、一体これから先の中期計画はいかにあるべきか。少なくとも、前に皆さんお出しになったような三年計画はいつごろどういう形でわれわれの前にお示しになるのか。その一つのものを、今回五十八年度はこれでいくが五十九年から以降はこういう構想でいくんだということをなぜこの席にお出しできなかったのか、それをちょっと聞かせてください。
  46. 川原正人

    川原参考人 確かに、経営を実際に運営する者として、その一年度だけの経営ということは本来あり得ないことでありまして、先の見通しを持って経営に当たるべきだということは御指摘のとおりだと思います。私もその決意でもっていま経営に当たっておりますが、大変申しわけないのですけれども、現在NHKが当面しておりますニューメディアに対する対応、これにつきましてはいろいろ複雑な要素がいま絡んでおりますし、また、その他の料金とか経営あり方につきましても、経済情勢が非常に変動の要素を含んでおりますので、いま直ちにこれをある一つ経営計画の形として御審議に供するという段階には、残念ながらそこまで議論が進みませんでした。しかし、もちろんこれでいいということはございませんので、私ども試算はいろいろ重ねておりますけれども、正確な整った形での経営計画となりますと、いましばらく若干の時間をちょうだいしなければこれはまとめられないのではないか。もちろん、ある種の将来のビジョンというようなものは、これはいつまでたっても最終的な形というものはできるはずはないので、どの段階かでその時点でのビジョンなり見通しはまとめなければなりませんので、そのことはよく承知しております。私どもとしては、少なくとも本年の秋という時点を目指しまして、部内的には、将来の放送あり方、それから経営内部の業務体制あり方、あるいは料金についての考え方も、その時点において考え得る限りの経営計画はまとめて、その中で先々の収支の問題、料金の問題もお諮りしたい。ただ、秋という点は国会との関係から言えばそれはどのような状況になっているかわかりませんけれども、私ども経営としては、その時点を一つの目標に置いて、部内的に経営委員会等との審議にもたえ得るようなものを十分に用意したい、かように考えております。
  47. 武部文

    ○武部委員 先ほど質疑を聞いておりましてもそうでございますし、恐らくこれから同僚からもいろいろな放送衛星の話が出るだろうと思うのです。確かにことしはテレビ開始三十周年、一つの区切りでありますね。そうして、申し上げるように放送衛星がこれから上がっていくという新しい時代を迎えるわけです。ところが、わが国通信政策や電波政策を見ますと、技術だけが先に進んでおって、政策や行政というのは後からついていくようなかっこうになっておる。私は素人ですからよくわかりませんが、そんな感じがするわけです。確かに技術の方はどんどん進歩をして衛星が上がっていくが、それを何に使うか、どういうふうにしようかというようなことを全く考えないで、そっちばかりがどんどん行って後の方はおろおろついていっているようなことで、聞いてみたって何のことやらわからぬ。これから検討します、金だけはかかっていく、これは畑委員からもお話のあったとおりです。そういう面で非常に技術先行型の感じがいたしますね。したがって、郵政省としてはこの新しく変わっていく時代に対応して早く方針を示すべきではないか、こういうふうに思うのですが、ひとつ郵政省考え方を述べてください。何に使うのか。
  48. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  非常に多額の経費を必要とする放送衛星についてのはっきりとした使い方はどうなるのかという御質問かと思います。御承知のように、この放送衛星は五年計画でやってまいったわけでございますが、四十二万世帯と言われております難視聴解消が第一の目的であることは先生も御承知のとおりかと思いますけれども、それだけでは魅力に乏しいと申しますか、衛星放送受信用の受像機の開発も必要とする、また、関心のある人にとりましては、辺地難視の方だけでもございませんので、放送衛星でなければできないような使い方、こういうような意味NHKの方から御提言なりお申し出があれば、たとえば高品位放送に使うとか、あるいはファクシミリ放送、静止画放送などという使い方があろうかと思いますが、ちょっと私技術屋でございますので、先生いまおっしゃいました技術先行型で物の考え方が後からついていっているのではないか、この面は私もつくづく感じております。最近非常にニューメディアなどがありまして、需要よりも先に何でもできますよ、こういう技術が、技術先行型と申しますか、一体それは何に使うんだというようなことがあるかと思いますけれども、やはり技術開発で諸外国におくれをとってはならぬというようなことからいたしますと、昔は「必要は発明の母」ということで必要が先行したわけでございますけれども、最近は余りに特にLSI等の進歩で、要らぬことでございますけれども、何でもできるといいますか、ハードと申しますか、それが先行しているなという感じはちょっといたしております。要らぬことかもしれませんけれども……。
  49. 武部文

    ○武部委員 最初の質問に時間をとってしまって時間がなくなってしまいましたので、放送衛星のことはまた時間があればさせていただきますが、私は予算の審議のときにいつもローカル放送のことを取り上げてきた者の一人でありますが、このローカル放送の問題について二点ばかりひとつ質問をしたいのであります。  附帯決議で、「ローカル放送強化など放送番組の充実刷新を図り、視聴者の多様な意向を積極的に吸収しその反映に努めること。」これが決議の一項目に加わったのであります。  そこでお伺いをしたいのですが、ローカル放送の時間と量の問題であります。テレビは一時間三十分、ラジオは二時間、FMは一時間五十分、ほとんど前年と同じような時間と量になっておるようでありますが、今度四月からNHK改定することに決めたローカルのいわゆる目玉的な存在である朝の「ニュースワイド」その中のローカルアワー、このことについてちょっとお尋ねをしたいのであります。  ニュースはNHKの目玉です。現在七時二十五分から七時四十五分まで二十分間、これをなぜ七時五十五分から八時十分まで繰り下げられるのか。三十分も繰り下げておるわけですが、繰り下げた上に、今度は時間も短縮しておる、これは一体どういう理由なのか。  少なくともわれわれの承知するところでは、勤労者が自分の家におる率というのは、大体地方都市においては七時台というのが七〇%、八時台は四〇%に落ちるという数が発表されておるのであります。七時に地方で勤労者が家におる在宅率が七〇、八時になったら四〇に低下をする。したがって、いま申し上げたようなニュースの時間を何でこんなふうに繰り下げるのか。これは全く在宅率と逆な時間帯になっていくのであります。これは全くローカル無視だ、このように言えるのではないだろうかと私は思います。六時三十分のニュースがございますが、これはちょっと早過ぎるという意見もございます。  それからもう一つローカルの目玉でありますが、夕方の六時三十分のローカルのニュース、これも勤労者が家に帰る時間にしてはちょっと早過ぎる。大都市では特に、六時三十分に勤労者が勤めをしまって家に帰るなんということはとても不可能です。したがって、この二つの番組は主として主婦と子供が見ておる。主婦、子供向けのニュース番組になってしまうということに現実になるように思うのですが、なぜこういうふうに変えられたのか、この真意は何なのか、これをひとつ聞かしてください。
  50. 川口幹夫

    ○川口参考人 朝のニュースの改定につきましては、実はこれはローカルの軽視あるいは無視と全く違いまして、ローカル重視のことでやったことでございます。ニュースといいますと、いままでのやり方は七時二十五分からまず五分間のニュースがあって、その後十五分間のいわゆる情報番組があったわけです。この前半の五分のニュースを、今回の改定では七時三分から二分間、それから七時二十六分から四分間ということで、回数を二回、それから時間は一分増ということでふやしております。それからその後に続きます十五分の情報番組がつまり五十五分から後に参りました。これは、「ニュースワイド」という番組の全体の構成から、このようにした方がいいのじゃないかというふうに思うわけでございます。  それならば、いまの七時の時間帯の情報番組を五十五分からにしたのは軽視じゃないかということについては、私どもはこう考えております。いまローカルでの見られ方というのは、だんだん違ってまいりました。ローカルである大きなことが起こりますと、それは十五分とかあるいは十分とかいう短い時間で解明するにはいささか時間が短いということがございます。それから、いまおっしゃいましたように、六時半では時間が早過ぎるということもございます。したがって、私どもは、地元に最も必要な重大な情報というのは時間をたっぷりとるべきだ、それから視聴好適時間というところに編成をすべきである、こういうふうに考えます。したがって、四月以降は大胆に番組の編成を局長の判断で切りかえることをさらに推進をいたします。これまでももちろんやっておりまして、過般の二月十七日と二十四日でございますが、仙台でスパイクタイヤの公害問題を取り上げました。これは七時半からの八十分番組でございます。二回ありまして、地元住民からこ回で大体千百ぐらいの電話が参り、非常に反響を呼んで、またもっとこの問題については後追いをしてくれというふうな声もございます。それから、先週は広島で、日曜日の午前十時の時間を使いまして少年非行問題を十一時五十五分までやった。このような形で、ローカル放送がその時期に起こった大きな問題を取り上げるというふうな形でやることがローカルの重視ではなかろうか、そういう意味で今回の改定に至ったわけでございます。
  51. 武部文

    ○武部委員 何かもっともらしい理由を言っておられるのですけれども、時間帯から見ると私は疑問に思うのです。それから、いま細切れのことを言われましたね。何か三分やって、また一分半やる。そんな細切れなんというのはニュースのあれに私はならぬような気がするのですよ。しかし、あなた方は専門家だし、いろんなことを考えておやりになったと思うのですよ。しかし、一たんやってみて、調査したところがそうではない、やはり視聴者の側から見ると時間を繰り下げたことは間違いだというような声がもしありとするならば、これこそまさに大胆率直にまたもとに戻して変更するぐらいな考え方を持ってほしいと思うのです。これは大変重要なことなのですから、ニュースですから、皆さんが見なければ何にもならないわけですから、皆さんの考え方が果たして国民の側に受け入れられるのか、それとも全く逆なのか。それならば、おやりになってみて、その結果でまた御判断願いたい、こう思いますが、いかがですか。
  52. 川口幹夫

    ○川口参考人 当然のことながら、放送は時代とともに動くあるいは国民とともに動くというふうに言ってよいかと思います。私どもは、視聴者がどのような形で放送に接していらっしゃるか、どのような御要望があるかということを敏感に受けとめて、絶えずそれを反映する努力をしていきたいと思います。
  53. 武部文

    ○武部委員 もう一つローカルの問題でお聞きをいたしますが、私は、ローカル放送というのを非常に高く評価をしております。地方ではそれぞれ工夫をこらして地方なりに合ったような番組をつくって大変評判が高いのです。ちょうどこちらへ私が来る二、三日前に、私の郷里で非常におもしろい番組が出て大変好評でございました。昔話をローカルの中に取り入れたことは初めてだったように思いますが、イラストを使ったり、いまの場を映したり、それをミックスして大変興味のある、その土地の昔話をもとにしたローカル番組、これは大変評判がよかったのであります。それぞれ地方では工夫をしてやっているようですから、われわれは、ローカル番組強化をさらにやってもらいたいという気持ちを持っておるわけです。あなた方はローカル番組をふやす、したがって、全中放送を脱して大いに現在のNHKはローカル放送を出しますというようなことを何遍も私どもは聞いておるわけですが、一体、要員や機材の面で大丈夫なのか、この点を大変私は疑問に思うのです。  そこで、お尋ねをしたいのでありますが、この機材の面で民放との間に非常に大きな差がある。これをどのようにあなた方は理解しておられるか。この差をどのように縮めようと考えておられるのか。これは地方のローカル放送を担当しておる職員にとっては重大問題なんであります。  たとえば、ここに信越放送の機材の一覧表がございますが、支局も合わせてでしょうか、信越放送は十九台の例のミニハンディを持っておるようでありますね。NHKは、この地域では長野放送局、松本放送局でミニハンディは一台ずつしかないじゃないですか。相手は十九台、二十台近くある。こういう大きな差があります。  私の出身のところは山陰で、二県三波方式をとっておるのです。したがって、民放は山陰放送日本海テレビと山陰中央、この三つが二県にまたがって相互乗り入れをやっております。この機材の一覧表を見ても、松江と米子のNHKにミニハンディがあって、それから今度米子に配備をしてもらって、三台でございます。ところが、この同じ地域に同居をして、しかも私の町には山陰放送の本社がありますが、それと日本海テレビと山陰中央テレビと三つ民放がおって、これの持っておる機材は五台ないし六台、NHKは一台、これでは、ローカルを重視する、重視すると言ったって、こんな機材で太刀打ちできるはずがない、どうしても報道がおくれる、そういうことになるわけですが、こういう点をどういうふうに理解しておられるでしょうか。
  54. 川口幹夫

    ○川口参考人 おっしゃるとおり、米子のミニハンディというのは一台でございます。ただ、この米子地区の情報のカバーというのは、単に鳥取県の問題だけではなくて島根を一緒にしたいわゆる広域放送というものを前提にして、それでまた鳥取、島根がそれぞれの県域の放送を行うという形で実施をしております。いま鳥取と松江と米子、この三つの放送局が山陰にはありますけれども、この全体では九台のミニハンディを持っております。この九台が必ずしも十分な量かどうか、それは私どももさらに努力をしてふやさなければいけないというふうに思っておりますけれども、現状ではそういう三局での相互にカバーをする体制ということを前提にして考えているところでございます。  またさらに、これは広島の管内でございますけれども、広島からの援軍をもらうとか、あるいはNHKは全国ネットでございますから、全国的な意味での応援体制も機に応じては実施をするというふうなことで、いまの資材の不足はそういう一種の協力体制で補いたい。ただ、協力体制だけではとても満足できるものではございませんので、さらに機材の増強については精力的に検討してまいりたいと思っております。
  55. 武部文

    ○武部委員 いまの山陰のことはそれでいいです。別に山陰のことを取り上げたわけではありませんが、信越地方はどうですか。いま私は松本と長野のことを言いましたが、向こうは信越放送との差が特に極端なんですね。これはどういうふうに理解していますか。
  56. 川口幹夫

    ○川口参考人 確かにおっしゃるとおりの実情がございます。これはその土地の民間放送会社とNHKとの関係というかっこうで言いますと、確かに非常に差異のある大きな例でございます。私どもは、長野県が持っておる現状からして、さらに機材をふやして何とか信越放送、民間放送の資材には絶対負けないというふうな体制をつくるように努力をいたします。現在はそのようでございます。
  57. 武部文

    ○武部委員 お認めになったようですが、それでは、もう一つ新潟の例でございます。新潟は御承知のように日本海に面しておりまして、私どもの郷里も日本海で、海難事故が非常に多いのです。遭難が非常に多いのです。これの取材で、このローカルの機材の問題があるのです。新潟では持ち回り協定で、民放とNHKがそれぞれ事故が発生したときには取材をして、それを民放が撮った場合はNHKに、NHKが撮った場合には民放に、こういうことでやっておる。ところが、NHKは悲しいかな機材が不足をしてこれに参加できない。したがって、民放が持って帰ったものをビデオでつくってもらってNHK放送する。いわゆる焼き増しをしてもらってNHKが放映をしておる。まことにどうも、こんなことはさみしい限りですね。本来ならばNHKが先になってやらなければいかぬことが、民放からビデオを借りてきてそれをNHKが出すなんというのは、ましてや海難事故ですよ、これじゃ天下のNHKはどこに行ったのですか。恥ずかしい。私はこれを聞いてびっくり仰天いたしました、こんなことがあっていいだろうかと。これは事実ですか。
  58. 川口幹夫

    ○川口参考人 新潟に限らず海難事故の報道というのは非常に取材がむずかしい。もちろん、海の上でございますから、そこにどうやって近づいていくのか、それをどう取材するのか、非常にむずかしい問題がございます。いまやっております一つの形は、海上保安庁が撮影しました映像をいただきましてそれを放送に流すというふうな形の海難事故の報道というのがやはりメインにならざるを得ないという事情がございます。  今回新潟で協定いたしましたのは、第九管区、海上保安庁が撮影したビデオテープの提供を受けて、各社と協定を結ぶ、それで当番社をつくって、そしてその当番社が各社に分配をする、そういう取材の形でございます。
  59. 武部文

    ○武部委員 いずれにしても、新潟のNHK放送局にそういう面で民放よりも機材が不足、ここに新潟のもありますが、民放と比べて不足しておることはお認めになるでしょう、どうですか。
  60. 川口幹夫

    ○川口参考人 不足というふうに申し上げてよいか、とにかく現状ではもっと機材を充実させるべきだということははっきりと認めます。当然のことながら、単に人間の力だけではなくて、機材の充実ということは報道体制には欠くべからざるものでございます。そういう機材の増強と、それから体制の整備というようなことを続けてまいるのは私どもの責任でございます。
  61. 武部文

    ○武部委員 一々申し上げませんが、私はこの一覧表を見て、これは民放と大変な差があるなということを感じました。いま長野の例もお認めになりましたから、いずれにしても、報道NHKにとっては一番の仕事なんですよ。そういう点がこの機材の不足のためにおくれるというようなことがあっては大変です。  それから、いつか同僚の阿部委員が日航の羽田の事故のことを言いましたね。あれは問題になりました。このときも機材だったのでしょう。こういうことが現実問題としてあるのですから、やはりローカルを重視すると言うならば、この機材面でもっと充実したやり方をとってもらわなければならぬ。確かに予算上なかなか困難でしょう。むずかしい点はよくわかりますよ。しかし、ローカルを重視する、重視すると言ったって、現実に機材がなければ、これは民放と競争しておるのですからね。同じところにおって競争をやっておるのですから、そういう意味で、私はいま例を三点ばかり申し上げましたけれども、ぜひ機材の充実という面で再検討をしていただきたい、こういう点を強く要請をしておきたいと思います。  もう時間がございませんが、この機会一つお聞きをいたしたいと思います。先般、NHK海外助け合いの運動をおやりになりました。大変結構な催しだったと思います。われわれも協力を国会でさせていただいたわけですが、これは今後も続けていってもらいたいという要望が非常に強いのですが、このNHK海外助け合い、これは日本赤十字社に協力されたわけですね。この成果と、それから集まった金をどのように使われるのか、これをちょっとお伺いしたい。
  62. 荒井治郎

    ○荒井参考人 お答えいたします。  海外助け合いにつきましては評価をいただいておりますので、まことにありがとうございます。  今回の募金につきましては、お年寄りからお子様まで全国津々浦々の方々から大変心の込もったお志をいただきまして、本当に感激しているわけでございます。また、先生方からも義援金をちょうだいいたしまして、この席をかりてお礼を申し上げたいと思います。  この海外の助け合いは、二月の一日から十五日まで半月ほどの募金でございますが、おととい、三月の一日でございますが、これで最終の集計が一応まとまりました。件数にいたしまして十五万件でございます。それから金額にいたしますと十億四千四百万円でございます。私ども想像以上にこれが集まったので実は驚いているわけでございます。  日赤が予定しておりますこれに関連した救援計画でございますけれども、主としてアジアの発展途上国を中心に、飢えと病気に悩む人たちに救援しようということでございまして、飲み水とかそれから医療品だとか血液を送ろうというようなことが一つございます。それからまた、一部でございますけれども、これはアフリカの自然災害でございますが、いわゆる干ばつその他で飢えに悩む人のところにも送ろう、そういう計画も実は立てて進めてきたわけでございます。目下のところでございますけれども、日赤では、現地の赤十字社といろいろ詰めたり、それから国際赤十字ともいろいろ詰めまして、どういうプロジェクトが実際に効果が上がるのかということを最後の詰めに入っておるわけでございます。  具体的な例を申し上げますと、一つは、たとえばバングラデシュでございます。バングラデシュでは子供たちが大変つらい生活をしておるわけでございますけれども、この子供たちの医療の援助とか、それから栄養の補給とか、衛生環境の整備、こういったプロジェクトを考えておるわけでございます。また、ネパールでございますけれども、これは飲み水の悪いところでございまして、良質な飲料水を確保するために井戸を掘る、こういうプロジェクトを一つ考えております。また、インドだとか、それからインドネシア、それからアフリカでございますけれども、これは大変な大干ばつもあるわけでございまして、所によりましては餓死しておるような所も出ておりますので、こういう所の救援計画についてもそのプロジェクトを立てて、現在具体的に詰めているというのが現状でございます。  先ほどの御指摘、今後どうするかということでございますけれども、私どもは、このキャンペーンをやる場合には、実はテレビ放送の開始三十周年ということを一つ記念をしておるわけでございます。それからもう一つは、赤十字の方でございますが、これが国際赤十字創設百二十周年、この二つのことを一つの記念といたしまして実は始めたキャンペーンでございまして、言ってみれば単年度事業計画と言っていいのじゃないかと私ども考えておりますので、現在の時点では今後どうするかということについては考えておらないというのが現状でございます。
  63. 武部文

    ○武部委員 それでは、もう一つ伺いいたしますが、経営の合理化に関連をしてお聞きしたいのですが、皆さんの専門語の県複局、これは十三ございますね。通信部は全国に百七十あるそうでございますが、この県複局及び通信部を今後どのように扱おうとしておるのか。これは大変大きな問題でありまして、われわれは何遍も言うようにローカルを重視しておるということから、この県複局なり通信部が今日地域の住民と密着をしておる、結びついておる、その中からNHKのニュースというものが、いわゆる中央だけではなくて地方の生のニュースというものが放映されていくというふうに理解をしておるわけです。いまのローカルのニュースというのは主として県庁ネタだ、こういう声があるのですが、少なくとも市町村段階のニュースというものはそういう県複局なりあるいは通信部を通じて集中してくるというように理解をしておるわけですが、これを将来何か合理化というようなことを中央の方ではお考えになっておるようなことを耳にするのですが、どういうお考えでしょうか。
  64. 横井昭

    ○横井参考人 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、効率的な経営業務の効率的な運用というものは、協会公共放送としての基本的な課題でございますし、また将来の基盤整備のために必要欠くべからざる課題だ、こういうふうに考えておりまして、五十五年度以降、新たな効率化計画で現在効率化を推進している過程にございます。その効率化計画の中に地方放送体制の見直しというのがあるわけでございます。  その地方放送体制の見直しの一環として、先生が御指摘になりますいわゆる県複局、これはNHK用語でなかなかわかりにくい言葉でございますけれども、県庁所在地外にある放送局のことを県内複数局と呼んでおります。この県複局の見直しもあわせて効率化の一環としてやっていこう、こういう考えでございます。もちろん、御承知のように、一県一局の場合と比べまして、一県二局、一県三局がある場合には、何といっても後者の方がいろいろな面で手厚い、行き届いたことが行われているわけで、この事実は否めない事実であろうかと思います。そういう点で、全体の効率化をやるときにやはりそこは見直していかなければならぬ、こういう考え方でございます。  しかしながら、これらの県複局は、その歴史的、地理的あるいは文化的特性から見ましても、その地域の経済圏、文化圏という観点からするならば、県庁所在地局に比べて劣らないほどのいろいろな要素を持っております。そういう点も十分われわれとしては検討をしながら、今後の地方局体制の見直しを進めていきたい。ただ、具体的な計画がまだ煮詰まっていないというのが実情でございます。  それから、通信部につきましては、御指摘のように現在百七十、約二百名の通信部記者を配置してございます。この通信部につきましては、過去もずっと道路網とか交通網の整備による地域事情の変化に従いまして逐次配置の見直しをやっているわけでございまして、何もいま始まったことでもございませんし、今後の情勢の変化を見ながら検討を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  65. 武部文

    ○武部委員 いまの問題はそう簡単に考えてもらっては困るというのが私の意見であります。県複局の持ついまおっしゃったような特殊性、それから歴史もありますし、民放との関係もありますし、簡単に、県複局はもう要らぬとか、通信部はどうだとかいうようなことであってはならぬ、こう思っています。それはそれぞれの特殊性がある。さっき言ったように、地方のローカルのニュースがえてして県庁ネタになっておる。それをカバーしておるのは県複局なり通信部だというふうに私は理解しておるわけでして、そういう面も十分考えてこの問題には対処していただきたい。  最後に、NHK番組の視聴率が近ごろ非常に高くなっておるということを聞いておるわけです。これは大変いいことだと思いますが、今日、NHK番組の中で一番高い視聴率は何%で、それはどの番組なのか。それから一番低い視聴率の番組は何なのか。それから民放とNHKとの視聴率の動き、いままではたとえばドラマがどうだったとか、いろいろなことがあるけれども、その動き方はどうだろうか。ちょっと簡単には言えないかもしれませんが、私はこのことは非常に興味を持っておるので、わかればちょっとお知らせしていただいて、終わりたいと思います。
  66. 川口幹夫

    ○川口参考人 視聴率につきましては、先生指摘のとおり、このごろ非常に変わった現象が見られております。特にNHKにおきましては、数の高さからいきますと、たとえば朝のテレビ小説とか日曜の夜の大河ドラマとか、それから去年から七時二十分に持っていきました「クイズ面白ゼミナール」とか、こういうところが高率の番組でございますけれども、いま私どもが非常に視聴者の英知というものを感じますのは、たとえば「NHK特集」でございますね。この番組は、四、五年前の例でいきますと、ビデオリサーチで平均が大体七%でございます。最近は平均でいうと大体一二、三%というところでございまして、時には「NHK特集」が二〇%を超えるというときもございます。これはいわゆるかたいものあるいはむずかしいもの、そういうものをゴーデンアワーに放送しましても、非常にたくさんの方が興味と関心を持って見ていただけるというふうな証拠であろうかと思います。  それからもう一つは、非常に心強く思っておりますのは、教育テレビの視聴率でございます。昔は教育テレビの場合は〇・〇一とかあるいは全くその数字に出てこない〇・〇〇というようなパーセンテージの番組もたくさんあったわけです。このごろは、いわゆる生涯教育というふうな形で私ども放送しております幾つかの番組が、大体二%から多いときは四%というふうな視聴率をとっております。これは、国民にとって教育テレビというものが非常に利用しやすいあるいは利用して非常に効果のあるいいチャンネルだというふうにお認めいただいた証拠ではなかろうか。  視聴率については、以上の大きな変化というものが視聴者の側に起こってきているというふうな現状で、公共放送NHKとしてはこれは非常にうれしい現象でございます。私ども、さらに、そういう国民が要望する番組というものをきちんとした形で出していきたいというぐあいに考えております。
  67. 武部文

    ○武部委員 終わります。     ─────────────
  68. 水平豊彦

    ○水平委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、本日、国際電信電話株式会社高仲優君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 水平豊彦

    ○水平委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     午後一時四十八分開議
  70. 左藤恵

    左藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。阿部未喜男君。
  71. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 NHKの皆さんは、御多忙の中を御出席をいただきまして大変御苦労に存じます。  委員長、すでに二人の皆さんから質問もございましたので、なるべく重複は避けますけれども、同じ議題について質問をする場合もございますけれども、しかし、質問のニュアンス等若干の違いもあろうと思いますので、あらかじめお許しをいただいておきたいと思います。  昨日、郵政大臣より昭和五十八年度NHK予算について承認を求める提案理由の説明を承り、NHK会長より補足説明を承りました。したがって、私は、主としてNHKの昭和五十八年度予算案中心にしながら、今後の財政運営等について質問をしたいと思います。  すでにお話がありましたとおり、NHKが昭和五十五年度受信料の値上げから三カ年間並み並みならぬ経営努力によって百六億一千万円の繰越金をお残しになりました。これは高く評価さるべきだと思っております。しかし、その努力にもかかわらず、昭和五十八年度予算の編成に当たってはこの百六億一千万円を充当しても、なお債務償還に六十三億六千万円の不足を生じております。長期借入金をもって措置せざるを得ないという状況になっておりますが、これは五十八年度年度で見れば明らかに百七十億円の赤字収支となっておるわけでございます。この赤字収支の原因について、いわゆる昭和五十八年度年度で百七十億の赤字が出てくる、これは一過性のものだろうか、それとも構造的なものなのだろうか、その点について郵政大臣とNHK会長から所見を承りたいと思います。
  72. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 いま御質問にございましたように、五十八年度予算についてすでに赤字の状態に陥っておるわけでございますが、いまのNHKをめぐります財政環境は、新規加入等による聴視料の上昇が一%程度、物価その他の経費の上昇が数パーセントということでございますから、私は率直に言って、現在の料金体制のもとでは構造的なものがあるというふうに理解をいたしております。
  73. 川原正人

    川原参考人 五十八年度NHKの財政の状況は、私も率直に申し上げましてこれは一過性のものではございません。現在のNHKの収入の大宗を占めております受信料の伸びの状況と、一方、支出の方ではどうしても番組の充実を初め、いろいろな要請にこたえていかなければならないという状況の中での支出の増加でございますので、これは根本的な財政の歳入の不足ということになろうかと思います。
  74. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 実は私も、お話のありましたように、受信料の伸びが非常に低いのに歳出を極力抑えてみてもしょせんこういう数字になってくる、まさに構造的に赤字である、そういうふうに理解をいたしますので、その意味では、大臣、会長、われわれの認識が全く一致するわけですけれども、それだけに、構造的な赤字であれば、どうこれを克服していくかという点について抜本的な対策を立てなければならない、これは先ほどからお話があったところと全く一致するわけでございます。したがって、現行の受信料金のもとでは今後引き続き大幅な赤字ができていく、こう私は思うのですが、ちょっと先ほど具体的な数字のお示しもあったようですけれども、三年間で千八百億とか、そういう言葉も出ておりましたが、この三年間というのは、五十九年度以降三年間というのか、五十八年度を含めて三年になるのですか。各年ごとにどのくらい赤字が想定されるのか。これは事務当局で結構ですが、少し詳細に述べていただきたい。
  75. 坂倉孝一

    坂倉参考人 先ほど御答弁申し上げました千八百億というのは、五十九年度からの三カ年の合計でございます。この数字につきましては、先ほども申し上げましたけれども、非常に基礎となるいろいろな状況がなかなか見通しをつけにくい部分もございますので、きわめて試算的な数字であるわけでございますけれども、今後のNHK公共放送としてやらなければならぬ、公共放送としての使命におこたえし得る業務、それから来年度から始まります放送衛星といったような要素等を含めまして、支出というものを最大限抑えました数字の上で、この千八百億という数字になっているわけでございます。
  76. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私がニュアンスが若干違うところがあると申し上げたのは、五十九年、六十年、六十一年の各年ごとの基礎の数字がなければ千八百億という積算は出てこないわけですから、各年度でどういう数字をはじいておられますかと、それをお伺いしたのです。
  77. 坂倉孝一

    坂倉参考人 大体五十八年度が、先ほど御説明申し上げましたように百七十億でございますけれども、大体年度ごとに二百億程度ずつ赤字が累積していくというふうに試算いたしているわけでございます。五十九年度が三百七十億程度、さらに六十年度が五百八十億程度、六十一年度が八百億程度というような数字でございます。
  78. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大体その数字はわかりましたが、こういう一応の数字の積算が出てきておるということは、実はそれなりにある程度検討されていなければこういう数字は出てこないわけでございます。もっと詳しく後ほど伺いますけれども、そうなってきますと、昭和五十九年度には三百七十億という赤字が想定される。大体私も三百五十から四百ではないかと思うのですけれども、これは受信料の値上げ以外に、先ほどからニューメディアがどうだこうだと言っていますけれどもニューメディアについても後ほど議論いたしますが、こんな膨大な赤字受信料値上げ以外に財政上処理できるとお考えでしょうか。これは会長、どうですか。
  79. 川原正人

    川原参考人 現在のNHKの財政の大宗を占めているのは率直に申して受信料でございまして、それ以外いろいろ努力いたしましても、受信料の収入に比べれば数字的には非常に小さいものでございますので、結論的に申し上げれば、やはり受信料を何らかの方法で改定させていただきませんと、この赤字の解消は実際問題としてむずかしいと思います。
  80. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私も実はそれ以外に、さしむきというとあれですが、若干赤字の幅を減らすことはでき得ても、大筋としてこの膨大な赤字受信料値上げ以外で賄うことは困難ではないかと思うのです。提案されております五十八年度予算については、率直に言ってどうすることもできないほど厳しい内容になっていると私は思うのです。これは当たってみても、決して大きな数字が動いてくることはあり得ないほどNHKの財政は厳しい、そう考えておるのです。  そこで、私が伺いたいのは、この五十八年度の厳しい予算を踏まえて、先ほど来皆さんがお伺いになっておる、五十九年度以降の中長期の展望がなぜ出ないのか。中長期の展望なくして、五十八年度年度だけで予算の審議をせよということは、われわれに対してはきわめて無責任な投げかけである。少なくとも視聴者を代表する国会で、将来こういうことになりますという展望がなくて、ことしとりあえず百七十億の赤字ですが、料金値上げはしませんから結構でしょうという考え方は少しおかしいのではないか、率直に言うならば無責任ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
  81. 坂倉孝一

    坂倉参考人 先ほども申し上げましたけれども、昨年から一年かかりまして長期ビジョン検討会議というようなことで検討を続けてまいったわけでございますけれども、さらにこれを経営計画としてその数字をつけた形で詰めてまいりますには、まだまだ詰めていかなければならない点が多々あるわけでございまして、その辺、いまの時点で経営計画として取りまとめできなかったことはまことに申しわけないと存じますけれども、この衛星放送初め、こういった新しい時代に対処するためのわれわれの仕事というものをどう抜本的に切りかえて詰めていくかといったような問題等もまだ詰め切らないといった状況で、先ほど申し上げましたように、ことしの秋に向けてこの経営計画の策定というものを詰めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  82. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 さっきから、今回は間に合わないけれども秋ごろには何とかしたいのだ、これがNHKの方の一致した意見のようですけれども、秋にまとまるものならばいまでもまとまっておっていいのです。経済の変動が激しいからなかなかまとめにくいというなら、いつまでたってもまとまらないのですよ。秋にまとめ得るものならば、いままとまっておってもおかしくない。なぜこの時期にまとめられなかったのか。たとえば、会長、あなたに責任はないのですが、一番大事な時期に会長がどうだとか副会長がどうだとか、その方にうつつを抜かして、大事な経営の方に目が向いていなかったのではないか。あなたは責任がないのですから、どうですか、あなたは新しい会長に就任されてみて確かにそうだという気がしませんか。
  83. 川原正人

    川原参考人 別にそういうことではなかったと思います。私自身もすでに就任いたして半年以上経過しておりますものですから、私にも責任のあることだと重々そこのところは責任を痛感しております。  ただ、いろいろな事情で、私も就任直後から、先々の展望を早く明らかにしなければいけないということで、鋭意部内では検討を進めてまいってきたわけでございますけれども、幾つかの要素の中で、もちろん経済的な見通し、条件というものもございます。しかし、それだけでなくて、私ども自身がやっております仕事の中でも、たとえば衛星放送についてのハードの面でどのくらいの経費がかかるかということは、もちろんこれは計算はすでにできているわけでございます。それではその内容を一体どのような番組の編成にしていくかという点につきましては、私ども自身でもいまのところ決めかねるような若干の客観情勢もございますので、その辺の詰めを急いだのでございますけれども、残念ながらこれがうまく詰まらなかった。それから、一つの個別的な条件でございますけれども、たとえばオリンピックの問題を取り上げましても、実はついせんだってまで非常に交渉が長引いて、かつ、一たんこれは正式調印は相手国とは済ましてあるわけでございますけれども日本の国内における分担等でまだ意見が十分に詰め切ってないというような要素がございます。それから、一番最大のものは、何といいましても、NHKの中で、それではそういうふうな構造的な収支の不均衡の状況の中で私どもが従来やっておりました業務をどの程度まで引き続き進めていくのか、その業務あり方をこの際抜本的に見直すことによって構造的な矛盾を幾らかでも解消できるのではないか。その辺の検討もみずからもっと進めなければいけないというところで、その点の詰めのないままで、単に一応の試算のような形で積み上げました数字でもって経営計画をつくるのは、むしろ私の責任としてかえって責任を十分果たせない結果になるのではないか。その点いましばらく時間をちょうだいしたいということで、この席で正式に経営計画を御提案できなかったといういきさつでございます。決して人事その他のことで協会の内部のことが手間取った——正直言って手間取らなかったことはないのですけれども、それが原因ではございません。
  84. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 よその話に移って恐縮ですが、日本電信電話公社が昭和七十年代の後半にINSの時代を迎えようとして、すでに今日からきわめて迫力のある検討が続けられております。私は、その内容あるいは経営形態、そういうものに触れる気はありません。ただ、公社が昭和七十年代の後半におけるINSの時代に向かって非常に迫力のある検討が続けられて、たとえばその場合に供給できるINSのサービスについて可処分所得の中で何とか処理をしなければならない、そのときの経営の陣容はこうなっていくのではなかろうか。これは率直に言ってまだ二十年先です。二十年先の電電公社の新しいあり方についてきわめて熱心に迫力のある検討が続けられ、われわれになるほどと思うような材料を提供してくれております。いま放送衛星一つ取り上げてみても、これは五年前から計画があったもので、突如として昭和五十九年の二月に放送衛星が上がるわけではございません。五年間もの年月を費やしながら、これを何に使うか、どうなるかということを、私は率直に言いますけれどもNHK検討するよりもこれは郵政省仕事だと思っておるのです。これは後で畑先生と同じ意見を私は述べますが、こういうものを上げるならば、何にどう利用していくかというのは大体郵政省の責任でして、どうも最近の模様を見ておると、放送衛星をNHKが上げるような錯覚を起こしておるようですけれども、これはやはり郵政省の責任で、上げた以上はNHKがその中のどの部門をどう利用するかというのは、それは出てきます。出てきますけれども放送衛星を上げるそれ自体がNHKの責任で上げるとするならば、いまからでも中止してもらいたい。まことにばかげた計画です。ですから、それ一つとってもそうでありますように、今日まで昭和五十九年度以降の見通しも立ちません、これはまことにNHKの手落ちであった、そのことを率直に視聴者の皆さんにおわびをしなければならないのではないか、そう私は思うのですが、どうでしょうかね。
  85. 川原正人

    川原参考人 確かに、一つの新しいメディアを開発して推進する場合に、単に技術的なハードの面だけでなくて、その中に盛り込むべきサービスの内容、あるいはそれに必要な資金の手当、要員を一体どのように賄っていくかということは、経営計画としては総体としてできるだけ完結した形のもとに推進しなければならないということはそのとおりだと思います。その意味で、これまでのNHK経営といたしましても、この衛星を上げる問題につきましては、NHKみずからも主として難視解消に使う、そのことに利用することによってこれは非常に効果を発揮するという前提のもとに一応の経費の試算もいたしまして、少なくとも難視を全面的に解消するためには、この衛星を活用した方がより合理的であるという見通しのもとに進めてきたわけでございます。  ただ、この衛星の機能といたしましては、さらにその後の研究の進展に伴いまして非常に多面的な機能を持っている、そういうことも次々に明らかになってまいりまして、それの機能をどのように活用するかという点につきましては、やはり技術の進歩とともにいろいろな新しい事態が生じてきているわけでございますので、それをどのように、活用していくかという点につきましては、なお現時点でも次々と新しい進展が見られる状況でございますので、その点を含めてより完全な姿の経営計画にして、私ども一つの企業の計画をお諮りしたい、かように考えているわけでございます。やはり時代と、かつ技術の進展に応じて新しい内容を盛り込んでいきたい、かように考えているわけでございます。
  86. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 また、支出の方から先にいきますが、中期的にちょっと眺めてみましても、一般的な経費、いわゆる経常費のほかに、さしむき当面放送衛星の設備整備等に三百六十億から四百億はかかると見なければならぬでしょう。そのほかにオリンピックがあるのです。これも私の指摘に間違いがあれば訂正してもらいたいのですが、放送権益のほかに人を派遣したり線を借りたりするから、これも百億ぐらいは従来の普通の年よりも別な金のかかる年が向こう三年のうち出てくる、こう見なければならぬでしょう。それから、先ほども出ていましたが、国際放送でいま国際電電から借りておる八俣の送信所、これは本来的な任務からすればNHKも逃れることのできないものだと私は思いますが、そういうものをずっと勘定してみても、いま放送衛星で四十二万世帯をカバーして受信料をいただいても、それを償う勘定には恐らくならないでしょう。この赤字がさっき申し上げたように、何とか解消できるというようなものになりません。幾ら会長検討されてみても、放送衛星を利用して五十九年度以降は赤字の出ないようなNHKを現行体制でつくりますなんか言っても、初めからつくれっこないのです。してみれば、放送衛星、ニューメディアなどというのはつくらなかった言い逃れにすぎない。中長期計画をつくらなかった言い逃れの一つとしてこういう新しいものが出てきて、これはもう十分検討しなければならないという理屈をくっつけただけであって、本気でそうであったならば、五年の間になぜそれができなかったのか。しかも、秋にはつくるというと、あと六カ月でできるものならこの国会に間に合うように提案できたはずだ、そう思うのです。それができなかったのはやはりNHKとして手落ちがあった。まあそれは会長が去年の夏、そういうことをやらなければならない一番大事な時期に私はおりませんでした、そこでその方に目が向かなかったとは言いにくいかもわかりませんが、そこに一番大きい原因があった、僕はこう思っているのです。  監督官庁はこれをどう見ていますか。これはどうしても局長でしょう。
  87. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 どうも申しわけございません。  衛星放送にかかる費用あるいはニューメディア等にかかる費用、いろいろ御指摘あったわけでございますけれども衛星放送につきましては、その本来の業務でございます難視聴解消、これは四十二万世帯ということですが、一つの試算でございますけれども、これを従来方式によりまして解消するならば千三百億かかるという試算も出ておるわけでございます。ただ、それに対しましてNHK負担分だけで申しますと三百六十億、そういう形でございますが、やはりこれはそれだけで十分と考えておるわけではございませんで、先ほどNHK会長もおっしゃいましたように、これを今後、衛星でなければできないような新しい技術の開発によりまして、たとえば高精細度テレビとかそうしたものも提供いたしますし、また、近ごろ問題になっておりまして、すでに四十二万の地域難視に比べまして五十数万というような都市難視の問題も出ておるわけでございますけれども、これも無視できないわけでございまして、先生特に御高承のとおり、この都市難視にも衛星はきわめて有効であるということでございます。受け入れる受信機の問題もございますけれども、そうしたことで、ただ経費的に申しましてこういうものをやりましたためにNHKとして赤字にならざるを得ないということではございませんで、苦しい中にもこうした新しいメディアも、NHKのいままで行ってきました仕事ないし世間的なといいますか国民的な評価におきましても、苦しいながらもやらざるを得ないというのが実情ではないかというふうに考えております。
  88. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 電波監理局長は非常に頭がいいものですから、都合の悪いところは僕の質問に答えないようにしてほかの方にするっと逃げていくのですけれども、僕が聞いたのは、なぜ六カ月先にできる中長期計画が今日段階では出せなかったのだろうか、その点について監督官庁はどうお考えですか、それを聞いたのです。
  89. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 どうも申しわけございません。  ただ、いま五十八年度予算審議をいただいておるわけですけれども、これは五十五年、五十六年、五十七年の延長線上での予算編成を行っている、それなりにいままでの努力はしたわけですけれども、あくまでもその線上の努力である。しかしながら、それでは五十九年度以降、先ほど大臣も答弁いたしましたように当然に赤字にならざるを得ない。それで、私どももその辺をつとに感知いたしまして、大臣の予算書につけました意見書におきましても、長期的な見通しあるいは長期ビジョンもさることながら、それを実現していくための具体的な経営計画を策定していただきたいということで、意見書の一番に掲げましたのも、そういうことでございます。
  90. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そういうことはわかっておるのですけれども、こういう原因について僕はやはり監督官庁として十分な意見は述べてもらいたかったのですが、これは会長、もしこれが予算委員会であるならば恐らく審議はとまりますよ、こんなもので審議ができるかと。ことし単年度でも百七十億の赤字になるNHK予算で、来年度以降の見通しも説明が願えなくてこれで予算の審議ができますかと言って、一遍ですよ。ただ逓信委員会はみんな人柄がいいですから、まして日切れ法案だと言われれば、ああそうですかと言って、無理をして審議をすることになっていますが、私はこれはまことに不親切だという気がいたします。(「阿部先生お願いします」と呼ぶ者あり)とめませんから心配なく。  私は、申し上げたように、もう今日の段階ではこの予算の審議には間に合わないことは明らかですけれども、やはりこの中長期の展望を明らかにして、いかに対応していくべきかということを広く受信者から意見を求める必要がある。率直に言って秋ではもう相当遅いような気がします。恐らく再来年度予算、昭和五十九年度予算で絶対に値上げをしません、受信料を上げませんというような約束をされるなら、まだいいかもわかりません。しかし、もし五十九年度予算で値上げが想定をされるものであるならば、秋では実は遅過ぎる。この予算の審議の中で五十九年以降の分について訴えておくべきであった。結論は出ないでしょうが訴えておくべきであった。その世論を、意見を結集して、来年度予算の審議で値上げの問題がわれわれも自信を持ってできただろう。しかしこれは間に合いません。しかも、申し上げたように、皆人がいいわけですから、これはもうこれ以上追及しませんが、怠慢であったということだけは私ははっきりと申し上げておきます。  そこで、先ほど来問題になっております、そして早目に局長からも御答弁をいただきましたが、昭和五十九年度からいわゆる衛星放送を開始する、そのために五十八年度中に放送衛星を打ち上げる、こう示されておるわけですけれども、議論しておるところなんですけれども、まずNHKにとってこの放送衛星が財政上どれだけのメリットがあるだろうか、この点は何度も繰り返すようですけれども、もう一遍明確にしておいてもらいたい。
  91. 坂倉孝一

    坂倉参考人 今度最初に上げます放送衛星は、やはり何と申しましても難視聴の解消ということが一番大きな目的でございます。この難視聴の現在の数というものが四十二万といったような世帯でございますので、これを従来どおりの地上施設による解消策というものを進めてまいりますれば大体千三百億程度はかかるというのがいままでの数字でございます。そういった意味で、また数年かかるものを来年度上げますれば一挙にその難視解消が図り得るということで、そういった面から申しましても経済的なメリットはあるというふうに考えているわけでございます。
  92. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いまのお話によりますと、財政的には現行の共同受信装置等によって難視聴の解消を行えば千三百億ぐらいかかるであろう、こっちならば三百六十億から四百億ぐらいで片がつくのだ、だからメリットがあるというお話のようでございますけれども放送衛星というのは、BS2を打ち上げておけば未来永劫に利用できるものでございますか。
  93. 坂倉孝一

    坂倉参考人 先生御承知のとおり、寿命は五年でございます。
  94. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 共同受信装置なんかの場合には、大体十年ぐらいはいまはいけると私は思っておるのですが、そう勘定してみると、財政的には何のメリットもないじゃないですか。千三百億かけてもこれが十年間利用できていくとすれば、次にBS3を打ち上げなければならぬとすればまた次の予算がかかっていく、その次またかかっていく、十年間には千三百億はおろかもっと高くなっていくでしょうから、むしろ財政的な面では難視解消にそれほどのメリットはないというのが本当じゃないですか。だまさぬでくださいよ。
  95. 川原正人

    川原参考人 四十二万といういま残っております難視の世帯を全部解消していくとしますと、先ほど申し上げたような数字が一応出ます。  それからいま一つ、これは数の上では少数かもしれませんけれども、地上のいままでやっているような対策ではどうしてもテレビジョンを享受できない、たとえば小笠原とか南大東のような離島につきましては、この衛星放送というのは直ちにテレビジョンのサービスができる、そういういわば計算外のメリットもあるということで、難視解消であってもなおこれの有用な使い方はあるわけでございます。  それから、先ほど電波監理局長も申しましたように、現在一番私どもの胸を痛めているといいますか、問題解決の方法がむずかしくなっておりますのが都市におけるテレビジョンの障害でございまして、これに対しましても、この衛星放送というのはかなり有効な対策になり得るということも考え合わせますと、これは数字では確かになかなか計算はむずかしいのでございますけれどもかなりのメリットはあり得るのではないか。  それから、財政上の計算だけからこの衛星放送の有用性といいますか、この方がより経済的であるということは、率直に申しまして、大変立証はむずかしいところでございます。しかし、衛星放送にはそれを上回るさらに有効な使い方があるはずだということも含めて、私どもはいまこの放送衛星の打ち上げに踏み切っているわけでございますから、その点はひとつ御了解いただきたいと思います。
  96. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 実はそれを聞きたかったのですよ。財政的にそれほど大きいメリットは私はないと思っておるのです。それを聞きたかったのです。しかし、やらざるを得ぬだろうというその気持ちはわかります。  そこで、少し具体的に内容に触れていきますが、財政的にそれほど大きいメリットはないだろうということになれば、現在支障なく受信をしておる人、これは絶対多数です。ほとんどの方々は現在の放送の中で支障なく受信ができておる。この人たちには、この放送衛星が財政的に何のメリットもなければ、ほかに何がそのメリットがあることになりますか。どういうことが考えられるのでしょうか。
  97. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 まず最初に、先ほど先生の御質問を取り違えまして、経費的に頭にありました三百六十億とか千三百億とかいう数字を申し上げたわけですが、これは先生指摘なさいましたように、打ち上げるあるいは建設するというときの費用でございまして、当然、寿命等々経済的にということになると、そういう比較を申し上げなければいけなかったわけでございます。最初におわびいたしておきます。  次に、そうした遠隔地あるいは離島ないしは都市難視の人以外の人にこの放送衛星はメリットがあるのかということでございますけれども、まず、この放送衛星には非常に広い幅のとれる周波数帯、高い十二ギガとか十四ギガとか、従来なかった周波数を使用するわけでございまして、地上放送では期待ができないような放送サービス、たとえば先ほどもちょっと申し上げましたけれども、高精細度テレビとか静止画放送、あるいはファクシミリの放送など、これらはまだ技術開発の段階でございますけれども、そういう可能性を有しておるわけでございまして、その他の利用面につきましても、新しい技術の開発によりましてマスメディアの新しいフィールドを見つけていくということにおきましても有効であるというように考えておる次第でございます。
  98. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 確かにそういうことが想定はされるでしょうし、技術的に可能であるという議論については私は反対するつもりはございません。しかし、現実に視聴者にとっては、これは昭和五十八年度以降大変な負担になってくるわけです。負担をさせる以上は、これだけのメリットがあるという、こういうこともやります、これもやりますということがあって初めて、負担についてお願いをすることができるのであって、可能性があるから先に金を出してくれ、それは投資家のすることであって、あなた方がおやりになる仕事ではないはずです。ですから、放送衛星を打ち上げるならば、NHKの難視聴の解消を初めとして、そのほか、これもやります、こういうこともやります、だから皆さんひとつ一緒に負担をしてください、こうならなければ、幅が広いのだからこういうものもできるだろう、さしむきNHKに金を出さしておけ、そういう無責任な打ち上げ方というのはないと私は思うのです。  そこで、少し詳しく聞きますが、いま局長がおっしゃいましたように高層ビルのビル陰の難視解消は完全にできますか。私が知っておる限りでは、ビル陰難視はなかなかこれだけでは解消できぬはずですよ。できますか。
  99. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先生とくに御承知のように、衛星は空から降ってまいるわけでございますけれども、全国的に真上から降ってくるわけでございますが、全国的にカバーは一応できる。それで、日本の場合かなり北にございますし、北海道の端から東京付近、それから南の端になります。南の方になりますとかなり角度をとれるわけですけれども、北海道の方になりますとかなり斜めにおりてくると言った方がよろしいかと思いますが、衛星は非常にシャープにおりてまいりまして、ビルの幅等があるわけですけれども、少し高いビルの場合、ただおわんを衛星の方に向ければそのまま入るというわけにはまいりません。角度関係でございます。ただ、その場合に、ほんの少し受信アンテナを個別のときにはずらす、あるいは共同受信をするというような形で、非常にきれいな画が受かるというふうに私は存じております。ほんのわずかの工夫によりまして都市難視は完全に解消するというふうに私は理解しております。ただ、周辺電波の弱いところにつきましては少し大きなアンテナを必要といる。いわゆる都市難視につきましては、できると言えると思っております。
  100. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これはパラボラアンテナを使うのですから、電波の受かるところまでアンテナを上げれば、それは必ず受かるのですよ。ただ、現行のままビル陰で受かるかというならば、物に陰ができるのと一緒で、衛星が静止しておるわけですから、その陰になるところが必ずあるはずです。それはあなたがおっしゃるように、パラボラアンテナを受かるところまで持っていけばどこだって受かるのです。そんなものは決まっておるのです。現行のまま受かるかというならば、これはかなり困難な分野が出てくると私は聞いておるのです。これはやってみなければわかりません。あなたも私ももうやめておるかもわからぬけれども、私はその方が正しいと思っておるのです。おっしゃるように受かるというのは、その電波が受かるところまでパラボラアンテナを持っていってやれば受かるのであって、いまのままの状態で受かるかどうかとなれば、これはかなりむずかしいのだと思うし、また、これはかなり金もかかってくるだろうと思いますが、とにかく私は、この点については、まだ現実にできていないのですから、あなたはきれいに受かるとおっしゃるし、私は無理だろうと言う以外にないのです。  二点目に、大地震、雪ですね、豪雪、豪雨、強風。大体このS波の電波というのは、これはさしむきS波ですが、非常にこれに弱いはずですけれども、これは何の支障もございませんか。
  101. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 地震、強風等に耐え得るかということでございますけれども、パラボラの大きさにもよろうかと思いますが、通常、日本の本土の場合、一メートル程度の小型のパラボラアンテナでよろしいということで、これはNHKの開発だそうでございますけれども、きわめて小型、簡易な、また、いま申しましたような外力と申しますか、地震、強風等にも十分耐えられるものができており、世界的にも評価が高いというふうに考えておる次第でございます。当然それなりの予想をいたしまして、くっつけ方等を考えなくてはいけませんけれども、屋根の上等におきましても、屋根にくっつけたような形で装着の工夫等も要るかとは当然思います。  それから、先ほどちょっと、お言葉を返すようでございますけれども、ビル陰障害を避けるために共同アンテナと申しましたけれども、通常の地上電波によります場合ですと、そこのタワーが見えるところまで上げなければいけないわけですけれども、衛星を受けます場合には、すき間を通って日が落ちてくるというようなところが、高いところまで行きませんでも横へちょっと日の差すところへ避けるというようなことで、地上のタワーの電波をつかまえるよりは衛星の場合きわめてシャープにおりますので容易な面があるということを申したつもりでございます。
  102. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それは電波もやはり角度がありますから、それはおっしゃるとおりです。上からおりてくるのと横から行くのじゃ、それは違いがなければ全く意味がないのですけれども、しかし、それは完全にやれるというのは少し思い過ごしだ。やはり電波の受かるところまではパラボラアンテナを出さなければこれは受からないのです。  それから、地震というのは揺れるのです。局長は家にくっつけると言うけれども、地震は家も揺れるのです。パラボラアンテナだけ揺れぬのなら家にくっつけておけばいいのですけれども、建物にくっつけてみても地震は一緒に揺れるのです。揺れたら受からないのです。電波というのは。そういうものじゃないのですか。幾ら揺れたって電波は受かるのですか。よく僕は船に乗ってみたりいろいろするのですが、どんなに揺れたって、多少地震があったって間違いありませんということになりますか。ならぬでしょう。それは。どうですか。
  103. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先生のおっしゃるように、地震の場合、ともに揺れます。それで受からなくなります。当然つぶれるわけでございますけれども放送受信の場合、そういう形のアンテナが装着されることはないわけでございますけれども、最近のマリサットというような——船はかなり台風の場合でもあるいは大洋を航海しておる場合でも通信が必要なわけでございますけれども、ちょっと横道へそれたようで失礼でございますけれども先生御存じのとおり、かなり台風の真っただ中だというようなときでも、KDDのオープニングのときもちょうどございましたけれども、そういうような技術も発達しておるわけでございます。これは、ただし放送受信とは関係がございません。
  104. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 こんなことを言っておると時間がなくなりますからもうやめますが、そのほかに、NHKとしては、仮にこの放送衛星を利用したとしてもローカル放送をどうするかという問題もまた残ってくると思うのです。  それで、これはちょっと電波監理局長さん、アメリカあたりに頼んで衛星を打ち上げてもらう場合と、いわゆる自前で打ち上げる場合、かなり所要経費に差があるというふうに聞いておるのですが、どのくらいの違いがあるものでございましょうか。
  105. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 私も宇宙の関係に携わる前からそういうことをよく聞いておりましたけれども、最近、スペースシャトル等で実際に商売として打ち上げるとなると、いままではかなりお客さんをとれるようにという価格であるので、それほど大きな差は、差は縮まってきたという話はございますが、私の持っております資料はCS3についてでございます。と申しますのは、BS3はまだ来年の要求でございまして、経費比較までいっておりません。そのCS3の経費につきまして、いま六百三十億円というふうにCS3の経費を見込んでおるわけでございますけれども、ここに持っておるCS3の設計に当たりましたときの計算ですと、追跡管制等の経費を除いて六百三十億と申しましたが、これに対する国際価格は三百五十億という数字を持っております。
  106. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 余り詳しくはわかりませんけれども、大体半額ぐらいで上がるということになってきます。それを自前で打ち上げるというのは、これはある意味では国家目的、国策というものが下にある。それをNHKがかぶらなければならぬだろうかというと、私は疑問が出てくるのですよ。国が政策として自前でやる。したがって、倍もたくさんの経費をかけなければならない。その六〇%、将来七〇%という意見もあるようですけれども、それをNHKの受信者の負担にさせるというのが妥当なのかどうか。これを私は聞きたいためにいままでずっと言ってきたのです。  これは会長、あなたはどうお考えになりますか。どうしても要るならばアメリカに頼めばいいじゃないですか。
  107. 川原正人

    川原参考人 私ども事業体の経営として考えた場合は、これは大事な受信者からの受信料経営しておるわけでございますから、最も経済的な手段で衛星が必要な場合上げたいと考えております。したがいまして、その総体にかかる経費の中で全額をNHKが持つということには、いままでの検討段階でもかなり疑問があり、かつ、その点をお話し申し上げた結果、じゃNHKは六〇%持つ、そのかわり四〇%は国の方で負担をする、その辺が妥当なところかということで、そういう話し合いの経緯のもとに、現在六、四という割合でNHKが六〇%の負担をするということになっておるわけでございます。
  108. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうしますと、将来にわたってそういう経費の負担によって、国家的目的があり国策として打ち上げるから高いものを上げるけれども、六〇%しかNHKは負担しないでよろしい。ということは、未来永却この衛星についてはNHK以外は使わないということですね。どうなんですか。
  109. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 BS2の費用分担につきましては、いま会長が言いましたように六、四ということですけれども、この考え方は、ユーザーであるNHKに六割を負担していただく、こういうことになっておりますけれども、実際にこのBS2に限りましてはNHKしか使わない、実利用をするユーザーはNHKである、その利用しますNHKに実利用分としての分を負担していただく、あと国の開発分要素については開発相当分が四割だというようなことで、来年二月に打ち上げを予定しておるBS2につきましては、六、四という数字が出たものというふうに考えております。
  110. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 けさの新聞によると電波監理局長の、またある新聞によると放送部長の私的諮問機関というのがCATVについて何かまとめておりましたね。あれも放送衛星、通信衛星を利用することによって大規模なネットをつくることができる、こういうものが出ておりました。そうすると、BS2については、そんなものができたって絶対使わせませんよということになるのですか。国家目的で打ち上げる以上、もっと広範囲にわたって利用ができるように計画さるべきである。それをあなたの方では、NHK以外には使わせませんといまおっしゃっていますけれども、そのけさの報道がうそでなければ、あなたですか、放送部長ですかの諮問機関——新聞の名前を言いますと、毎日が放送部長の諮問機関である、その他の新聞は電波監理局長の諮問機関、こう出ておるのですよ。どっちか私は知りませんが、その答申の中には、CATVを広範に広げていく、その場合に通信衛星、放送衛星を利用するのがいいんだ、こう出ておるのですが、そういうものは絶対使わせないということになるのですか。
  111. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先ほどNHKがBS2の場合ユーザーであるというふうに申しましたけれども放送する事業者としての送信側としての負担分はNHKが行うということでございまして、いま先生の御指摘になりましたのは、CATV業者というものが出てきて、これが放送衛星を受信してする場合にはどういうことになるんだということかと思いますけれども、打ち上げに当たりましての送信所経費の分担に当たっての送信者としてのユーザーということで、先生とっくにおわかりのことだと思いますけれども、そういうことでございます。  実は、都市大規模CATV開発調査研究会議というのがございまして、いわゆるニューメディア論に乗りまして、アメリカには非常にCATVが発達しているけれども日本にはなぜそんなに発達しないんだというような御指摘もございますし、また、CATVが出発いたしましてから十数年、あるいは有線テレビジョン法等ができましてからも十数年たっておるわけですけれども、それもほとんどが既設放送事業者の再放送ということで、非常に盛んに……(阿部(未)委員「CATVは別にやろう、きょうはCATVはいい」と呼ぶ)はい。  先生のおっしゃいましたのは、放送部長とか電波監理局長とかいうお話がございましたけれども、このCATV開発調査研究会議報告によるものかと思いますけれども、それにつきましては、私の諮問機関だ、きのう会長の方からいただいた、このように思っております。
  112. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、もう結論を急ぎますが、私が申し上げたいのは、明らかに、打ち上げられる放送衛星は、その目的から見ても、基本的には大きい国策、国家目的を持って打ち上げられるものであるから、当然その費用は全部国が負担をして、NHKがこれを利用するならばその利用する部分についてNHKが使用料を払って使う、こうやってもらいたい。これはいまここで結論は出ないでしょうから、政府としてそのことを、ひとつそういう意見があったということについて確認をしておいてもらいたい。国がすべて打ち上げて、利用についてNHKが利用料を払ってその衛星を使う。それがどうなるか、後で御検討願いたいと思います。  もう一つ重要な問題がありますから、先を急ぎます。  次は、さっき畑先生からもお話がありましたが、国際放送関係ですけれども、これは私は電波監理局の「国際放送交付金について」という資料を出していただいております。非常にりっぱな資料であります。特にこの中に国際放送交付金の性格というものも明確にうたわれておるし、これは放送法上間違いのないところだと私は思います。  問題は、こうなっていないところにまず問題があるのです。一体、国際放送の中でNHKの自主放送というものと郵政大臣の命令分というものはどこで分けられておるのだろうか。これにも書いてあるように、一体として運用しておる、こう書いてある。運用は一体でいいです。運用は一体でいいが、放送法三十五条には明らかに、必要な経費は国が交付しなければならぬと書かれておるのですよ。その必要な経費とは何ぼかといったら、これが郵政省の方でもNHKの方でも、自主放送がどれだけで命令分がこれだけであるという区切りがないのですよ。だから、いつも郵政省は大蔵省に頭を下げて、ことし三千万ふやしてやるとか、ことしは一億ふやしたからもういいだろうと言われると、郵政省はありがとうございますと言って帰ってこなければならぬ。こういうばかげたことはないですよ。明らかに放送法上、国が命令した分は国が負担するということになっておるのですから。ただ、予算上の制約はある。これは国家予算ですから、ありますよ。そのときにはやむを得ないと私は思うのです。放送の時間帯を減らしても、これはやむを得ないと私は思う、予算には勝てないですから。  したがって、私はこの機会に——亡くなられた大平さんがかつて大蔵大臣のときにこの委員会で、そういう必要な予算については大蔵省は出しますとここで約束されておるのです。出てこないのは一体何か。はっきりしておらぬから出てこないのです。まずこの点については、たとえば今年度は約四十一億ですかの国際放送予算の中で、国が負担する部分は五〇%なら五〇%、NHKの自主放送が五〇%なら五〇%、これをはっきりしておけば、今後いろいろ心配することなく予算要求ができる、それが財政の中で認められればそのままいける、そういうことになってくるわけなんです。かねてから私は郵政大臣にこれを主張してきておるのです。五〇、五〇が適当なのか、五五と四五が適当なのか、そのパーセンテージはわかりません。わかりませんが、とにかくそれをはっきりすることが大事だ。これだけは国の命令分としてはっきりさせましょう、割合としてですよ。これだけはNHKの自主放送としていきましょう、これがはっきりしておらぬために、いま四十一億の中の十億程度しか命令分がないことになっておるのですけれども、これは内容として截然と区別しようとしてもむずかしいかもしれません。しかし、経費の負担ぐらいは、これは区別することができるはずなんですよ、話し合いによって。なぜこれをやらないのか。もう何年も私は同じことを言ってきておる。  まず第一点は、そうなれば大蔵省としては、かねての大蔵大臣の御意見もあり、その意見には従ってもらえると思うのですが、大蔵省も御出席をいただいておりますので、大蔵省から答えてください。
  113. 藤井威

    ○藤井説明員 お答えいたします。  先生御存じのとおり、国際放送に対する政府の分担金は、法律のたてまえといたしまして、政府の命令放送の分について行う。その命令放送は郵政大臣から出されるわけでございますが、それに際して予算の範囲内で行うというのが一応の法のたてまえでございます。  ただ、われわれももちろん国際放送重要性ということについては、先生御存じのとおりかなり痛切に感じておるわけでございまして、毎年度、もちろん財政事情がございます、財政事情の許す範囲内でできるだけの充実努力をして命令放送の充実を図っていく、こういうことで、元の大平大臣の御答弁におこたえしていくということでやってまいったわけでございます。
  114. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大蔵省の方は大臣でないから、そうしますとは言えないでしょうけれども、大平さんがそうおっしゃっていただいて、これは会議録に明確に残っておるわけですから。  大臣、あなたの在任中に大蔵大臣と話し合って、この命令放送と自主放送の経費の負担をどうするかという割合を決めようではないか、そのことを明確にしていただければと思う。年度によってどうしても予算上無理な場合が出るかもわかりません。しかし、私は、二十億か三十億の財政の中で、まずそういうことが決まればあり得ないと思いますけれども、出たとすれば放送法の三十五条のただし書きが適用される、こういうことになるわけですから、それは心配要りませんから、あなたの在任中にこれをやるということを約束してください。
  115. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 命令放送と自主放送の費用の分担比率、そういうものを明確にすべきでないかということをかねて阿部委員からしばしば御主張があったということは事務当局からの説明を聞いております。ただ、私もちょっと疑問がございますのは、費用分担というのはある事業量に対して一種の負担金とかあるいは補助金とかいう場合のときに比率というのがあるのでございますが、やや理屈倒れの議論かもしれませんけれども、命令放送というのは出した金の範囲でやれということが本質じゃないかというふうに思われます。毎年の国際放送事業量をどの程度にし、そのうちどのぐらいを命令放送とし、どのぐらいを自主放送にするかという話し合いとしての比率はあるのではないかというふうに思いますので、これはちょっと簡単にいかないのじゃないかという素人の感じが私はするわけでございます。でございますので、約束しろと大変厳しい御命令があったわけでございますが、この御命令に直ちに服しますというわけにはまいりかねるという感じを率直にして持っておるわけでございます。
  116. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣ちょっと不勉強でして、そうではないのです。この法律は予算の範囲内でやれという趣旨ではないのです。命令をした分については金を払いなさいとなっているのです。ただ、国家予算がこれを認めなかった場合には国家予算の範囲内でやらざるを得ませんよ。それはさっき僕が言ったように国家予算というのはそれだけ大事なものですから。しかし、予算が先にあって命令するのではなくて、命令した分については交付金を出すというのが原則になっておるのです。ですから、私はそこは截然としないからどれだけが命令分か——これはおたくが出したのに書いてあるのです。全世界十八地域、一日三十七時間、使用言語は二十一カ国語、これでやりなさいとあなたのところははっきり命令しておるのです。したがって、三十五条によってそれに要した経費は負担しなければならぬ、こうなるのです。ただ、国会が決議した場合にはその範囲内ですよ、こうなっておるのですから、やった以上は出す。あと出さぬか出すかを決めるのは国会しかないのです、予算を議決した場合、こうなっておるのですから。ですから、当然あなたが命令するのですから、これだけ実は要っておる、しかしなかなか分けにくいから割合をこうしようではないかという話し合いをしてください。話し合いできませんか。
  117. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 私も、いま阿部委員の仰せのとおり、放送命令をした限りはそれは国費をもって負担するのが当然であるというふうに思います。これは補助でもなければ分担金でもないわけでありますから。ただ、現実の放送の中でどこまでが命令放送でどこまでが自主放送かというのは大変むずかしいということでございますので、現在四十数億という経費を使ってやっておるうちでどの程度は国費の分担にするかということを協議するということは、私はそれは何もできないことではないというふうに思いますから、検討をさせていただきたいというふうに思います。
  118. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 結構です。その方向で協議、検討していただきたいと思います。  時間がなくなりましたが、もう一つ、一番基本になりますのは、国際放送というものがいまからいよいよ八俣の送信所をどうするかという問題も含めて、施設をNHKが提供せんならぬ義務があるか、諸般の問題を考え合わせて、この際、国際放送については、これもちょうど放送衛星と同じように、国策、国家目的として、これは明らかにこれにも示されておりますが、「国際放送重要性、国家的性格、」いろいろうたわれておりますけれども、そういうものから考えて、いままでかなり受信者におんぶしてきた、言葉をかえて言うならば、NHKに国がおんぶしてきたということが非常に強く国際放送については言えると思います。したがって、八俣の送信所設備をどうするか、そういう問題を含めて、国際放送全般について、さっき畑先生からも質問がありましたが、この際、抜本的に——ただ私が違うのは、放送主体がNHKであってはいけないなんというのではないのです。放送主体は、屋上屋を重ねてまたつくる必要はないと思いますから、それはNHKであってもいいが、国際放送そのものについての認識を改めて、基本的に国際放送はやはり国の経費の負担でやるべきものだ。もちろんこれはNHKの自主放送を妨げるものではない。そういう視点に立って、国際放送については、大臣これもひとつ閣議の場なりで十分議論していただきたい。与野党を問わず、いま国際放送が余りにもNHKにおんぶしておるし、それだけでなく、この先、申し上げた八俣の送信所設備の改修の問題等を含めて膨大な金を食うことになってくる。そこである人は、与党さんの方でございますけれども、この際二百億ぐらい政府が金を出して国際放送を抜本的にやり直すべきではないか。ただ、私は、放送主体はNHK、屋上屋を重ねる必要はないけれども、その経費の負担については、送信の設備その他を含めて思い切って国が金を出さなければ国際放送任務を果たせないだろう、そういう懸念がありますから、ひとつこの点について大臣の所信を聞かしてください。
  119. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 私も国際放送の現状を就任直後に承りまして、こんなことではどうもならぬのじゃないかということを申したのでございます。郵政省としてもすでに国際放送に関する調査研究委員会を発足させて検討中でありますので、事務当局からその結論が出るのをお待ち願いたいという話でございまして、そこはそれで今月中に出るそうでございますから、その結論を待ちたいと思うのでございます。  ただ、関係方面に対しましては、私は率直に、一般会計二百四十二億のわが郵政省予算の中で、この厳しい予算編成条件という中ではこなしようがない、これはもっと広い国家的な事業として取り上げて、政府の中で言えば各省共通の大課題として処理していただきたいということを、実はもうすでに主張を始めておるところでございます。私の在任中にできればそうしていただきたいと思いますが、一生懸命この問題に取り組んでみたいというふうに思っております。
  120. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣もおっしゃるように、これは外務省等とも十分連携をとりながら、外地におられる皆さん、あるいはまた国際的ないろいろな外国に対する放送、そういうものがあるわけでございますから、せっかく御努力をいただいておるようでございますから、いわゆる百尺竿頭さらに叫歩を進めてがんばっていただくようにお願いして、私の質問を終わります。
  121. 左藤恵

    左藤委員長 次に、竹内勝彦君。
  122. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 最初に、NHK並びに郵政省にお伺いしておきたいのですが、現在中国残留孤児四十五人がこちらに来ておりまして、いま感激的な対面が行われておる。その報道を私自身も見させていただきましたし、本当NHKとしてもいろいろといま努力をされ、あるいは民放としても努力をされて一生懸命この問題に取り組んでおられる面に敬意を表します。  まず、この前、昨年でございますが六十人が見えて、そしてそのうちの七〇%の人が肉親がわかった、これは非常に大きな成果であり、またそれに対するNHK並びに各報道関係のバックアップ、これはもう大きなものがあったと思います。  そこで、いま行われておる状況、簡単で結構でございますからNHKからまず最初に御説明ください。
  123. 川口幹夫

    ○川口参考人 今回の中国残留孤児の放送につきましては、二月十六日にテレビとラジオで氏名を発表いたしました。それから、二十五日に帰国が始まったわけですけれども、北京に孤児たちが集合されましてから北京の特派員のレポート、それから成田に着きましてからは国内の取材陣を動員いたしまして動静をずっと追いかけております。それから、二月二十八日、三月一日、二日、この三日間にわたりましては、総合テレビ午前八時四十分から特別番組「肉親の手がかりを求めて」、同じく二十二時から二十二時四十五分まで再放送ということで、四十五人を一人残らず御紹介申し上げました。それから、これからあとの放送でございますが、三月九日、十日には、テレビジョンの「おはよう広場」で「まだ会えぬ肉親に訴える」というふうな特番を組みまして、さらに協力申し上げるつもりでございます。  それから、ラジオは「午後のロータリー」の枠の中で特番を組みましたけれども、そのほかに、定時ニュース並びに「ニュースワイド」「ニュースセンター9時」という報道番組を使いまして、できる限りの協力をいたすつもりでございます。
  124. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 昨年の本委員会におきまして私が質問をしたときに、前郵政大臣の答弁の中で、この衆議院逓信委員会でいろいろと検討なされた中で、大臣は、NHKを初め民放五社、そういった人たちの協力の要請をして、そしてその協力が得られる、そういうようなものがございました。NHK会長さん初め民放各社の社長さん方も、それはいいことだ、人道的にもぜひとも御協力申し上げたいという趣旨のお話があった、こういうことで非常に意欲的にやっていこうということで一年たったわけですが、まさか今回わずか四十五人だけが来て、そしてやっていくというような結果になるとは思いもよりませんでした。あのときにも、郵政大臣も、あるいは報道関係といたしましても、ぜひこれは、まあ一般の説には中国残留孤児の数が六千人とか八千人とかいう大臣からの話がございました。しかし、いまわかっておるのは、先ほど委員会におきましても厚生省の方からもお話がございましたが、約千人、そういった人たちの申請があるわけですね。そうすると、年間四十五人ぐらいやっておったのでは、何年かかってもこれはちょっと終わらないというような事態になっていってしまいます。ましてや、いまでも報道されておるとおり、肉親の関係はわかった、しかしもう両親は亡くなっていたという人たちも数多くあるわけですよね。そういう意味から考えて、これは時が大事でございます。そういう意味で、いままでその経緯はどう推進されていったのか。それと今後どうするのか。郵政省、お答えください。
  125. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先生からただいま、中国残留孤児の問題につきましては、まさにそのとおりでございまして、郵政大臣が、閣議の席だそうでございますけれども、その際にテレビを利用するということがいかに有効であるか、それからまた、昭和二十年以来三十数年過ぎておる、時が非常に問題だ、刻々みんなお年寄りになっているというようなことで、先生御承知のように、すぐさま郵政省関係のありますNHK会長を初め民放五社の社長にお集まりいただいて協力をお願いしたわけでございまして、私の理解する限りにおきましては、いろいろ放送事業者の方からも協力の申し出があったように聞いております。ただ、放送事業者が現地へ行きまして取材をするというところまで提案もいたしたわけでございますけれども、この辺になりますと、中国側の事情もあるやに聞いております。  そういうことで、今回の報道を見ましても、私どもの直接担当しております放送を使うということについてはいろいろやっていただいておるように伺っておりますけれども、一応その際につくられました中国残留孤児問題懇談会というのは、やはり厚生省を中心とすべきであるというようなことで、厚生大臣の諮問機関としてつくられたわけでございまして、肉親捜しの重要性は十分言われたわけでございますけれども、養父母の問題、いままで育てていただいた養父母をどうするのかという問題と、その他厚生関係あるいは外務関係等々の問題もあったかと思いますが、そういう形で現在のところ先生指摘のような状態といいますか、われわれここ何日か見ておるわけですけれども、そういう実態になっておるということで、なお早期解決の方策について昨年八月の二十六日に報告書が出されたわけでございますけれども、厚生省としてはこの報告書に基づいて中国側と話を進めており、現在孤児が来ておるという話になっておる、このように理解しておるわけでございます。
  126. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 NHKにお伺いしておきますが、そのときに坂本会長が、この問題に関しては田中放送局長を責任者として、民放とも話し合って体制を整えたい、こういうようにございましたけれども田中さん、その後どんなふうに経過が流れたのでしょうか。
  127. 田中武志

    田中参考人 昨年のこの席で、先生の御質問に答えまして、われわれの中でも、NHKの中にも中国孤児の引き揚げの問題をいろいろ取り扱うプロジェクトをつくって、いろいろ研究を進めてまいったわけでございます。  いま電波監理局長が申しましたように、その後いろいろ中国側の事情があったようでございまして、われわれとしましては、昨年この席でお答えしましたように、外交上あるいはそういったところも、ルートさえつけば向こうでいろいろ取材することも、いろいろ部内的には検討したわけでございますけれども、なかなかそこまで現状としてはいかなかった。そして今回の四十五人の来日になったというような次第でございます。
  128. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この問題は、大臣、前郵政大臣が相当いろいろな発言をして、閣議でも提案をし、記者会見もし、いろいろと前回そういう形で、先ほどもこの委員会で私も申し上げましたように、現地へ機材を持ち込んでVTRをとってきて日本放送しなければ間に合わない。一々こっちへ来ていただいて、それからやるというのではもう間に合わない。むしろこっちから行って、そしてビデオにとってきて、そしていつでも放送できるような体制、あるいはもういよいよ放送衛星が打ち上がっていくのですし、お互いに二元放送でやっていくまでに持っていって、そしてこの問題を解決していきたい、こういうお話でございました。  前郵政大臣からの引き継ぎはどんなふうに受けておるのか、同時に、大臣として今後どういうような決意でこの問題に取り組んでいくのかお述べください。
  129. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 前箕輪大臣からの直接引き継ぎの中には、残留孤児問題は私の記憶ではございませんでした。ただ、所管事項の説明の聴取をいたしますときに、前大臣が大変人道的立場にお立ちになって熱心にこの問題について奔走されてきたということは事務当局から説明を聞いております。  私も、箕輪大臣のこの残留孤児問題に対する姿勢はまことにりっぱであり、またそうあるべきであろうというふうに思っておりますので、前大臣の方針を受け継いで対処してまいりたい。政府内部におきましても、厚生省、外務省等と連絡をいたし、私ども関係をいたします各業界の協力を求めつつ前進をするような努力を続けていきたい、かように思っております。
  130. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 先ほど田中局長から養父母の補償問題についてそういったいろいろネックがあった話がございました。これに関しては、さきの委員会で私も厚生省の方に来ていただいて答弁をいただいた中で、中国の外交部の副局長との合意を見て補償問題に関しては解決をした。それがあるゆえに今回四十五人来たのですよ。これがなければ四十五人来るわけがないですし、そういう意味では前進していっているのです。だから、この問題もやはり、郵政大臣が機材まで持ち込んでやろう、NHKもそれを受けてやりましょうと言っているのだから、あとは郵政省の決意の問題じゃないですか、熱意の問題じゃないですか。どうするのですか。
  131. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 機材持ち込みの問題につきましては、放送事業者としての準備というものについては、ここにNHKもおられるわけですし、直接聞いていただきたいと思いますけれども、私の聞いている範囲内では前向きであるというふうに受けとめておるわけでございますが、機材を持ち込んでいろいろ取材をします場合に、中国側の事情が何となくあるやに伺っておるのです。そのように承知いたしておる次第でございます。
  132. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ちょっとよくわからない。  ではNHK、その経過、何が問題なのか。NHKとしてはやりましょうと言っているのですから、郵政省は何か事情があるのでしょうというような非常に消極的なものに感じられます。NHK、答えてください。
  133. 川口幹夫

    ○川口参考人 今回の残留孤児の放送につきましては、NHKとしては前からの計画といいますかがありましたので、東京に来る前に一部の取材をすることができないかということを、私の名前で中国当局に依頼をしたというケースがございます。これにつきましては、たしかことしになってからであったと思いますけれども、それはできないということで、中国での取材は北京を出発するときからというふうに当方に対して中国側の返事がありました。そういう経過でございます。
  134. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この前、厚生大臣の私的諮問機関として中国残留日本人孤児問題懇談会というのをつくって、これに前向きに厚生省として取り組んでおります。では今度は郵政省として、そういう報道面、そういった面でのものがこの問題では一番大事なんですよ。したがいまして、厚生省もそういうようにがんばっておりますけれども、むしろ郵政省がこういうような懇談会なり対策委員会なり何らかのものを今後設置するなり、そういう前向きな体制で、では何が一体問題なのか。この前厚生省とのあれでは養父母の補償問題というものがございました。それを乗り越えてがんばってきているのですから、一体いま何が問題なのか。そういったものをキャッチできるような、そしてまたそれを乗り越えていけるような体制をつくっていくことが大事でございますから、今後そういう考え方があるかどうか伺いたい。
  135. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ただいまNHKの川口さんの方からお話もございましたように、直接アプローチもしたようでございますけれども、それからまた大臣は、ともかく現地へ行きまして取材をし、あるいはまた先生先ほどもおっしゃいましたように衛星を使っての二元中継をやるなどフルに利用すべきじゃないかというふうな御提言もなさったように私も記憶しておりますけれども、ただ、そうした気持ちに対しまして中国側としては、その取材の目的の一つでございますが、中国のそうした孤児自身によく周知されておるか、また日本側がこういうような気持ちも持っているということ等についてはすでに中国側にも十分行き渡っておるはずで、そういうことを知らない何人かが残っているというふうには思わない。その辺の意図を周知させるという点にしぼってみましても、その辺は中国側としては十分周知きせているというやの返事が、郵政省に直接ではございませんけれども、届いておるというふうに聞いております。
  136. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 郵政大臣、これは大臣がかわるごとに同じようなことを何回も言うてまた新しくやり直してやっていくなんというのじゃ世の中はよくなっていかないわけですから、当然、箕輪前大臣が全力でやろう、こういう決意でもってきたものに対して、郵政大臣からこの前の委員会で私にも御答弁いただきましたけれども、いまの局長NHKのお考え等も踏まえて、郵政大臣としての所見をお伺いしておきたいと思います。
  137. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 残留孤児問題はいろいろな問題を含んでおるわけでございまして、政府としては残留孤児問題の行政的な対応は一元的になければいけない。ことに外国の問題にかかわるわけでございますから一元的に処理をされるということが必要である。  私ども郵政省としては、テレビ等の報道関係の協力を得られる立場にございますから、残留孤児問題についてのテレビ等の報道体制を整え、またいつでもそれに対応できるという体制は私はやはりとっておく必要があるだろうというふうに思うわけでございますので、私も前大臣のスタンスを私のスタンスとして、今後厚生省あるいは外務省と密接な連携のもとで、郵政省が果たすべき役割りは全面的に果たしていくという努力をいたしたいというふうに思っております。
  138. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 NHKにお伺いしておきますが、五十八年度の中国残留孤児問題に関しての計画、これはどんなふうになっていますか。
  139. 川原正人

    川原参考人 五十八年度について、いま中国残留孤児問題についてこうするああするという具体的な計画はございません。むしろ、私どもとして事態の進展に応じまして、事は人道問題でございますから、いま大臣からもお話がありましたように、いかなる対応もできるような体制は常にとっております。その上で、中国の国内における取材につきましては、やはり相手国の立場もございますし、政府間レベルでの話の進展に応じて対処してまいりたい、こう考えております。
  140. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 次の問題に移らしてもらいます。  難視聴解消、同時に放送衛星が打ち上がっていくという問題で、今後残ってくるのが、先ほどからの論議がございますようにビル難視等非常に複雑な乱反射のそういうものの難視、これは果たして放送衛星で解決できるかどうかというものはまだ疑問である、私自身もそう考えておりますし、そういう中で難視解消の実態、まず大まかなもので結構でございます、御説明いただきたいと思います。
  141. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答え申し上げます。  現在の辺地難視の実態でございますけれども、五十七年度には建設費十六億をかけまして、置局を九十地区、それから共聴を二百十地区、合わせて三百地区難視解消対策を行いました。その解消世帯数は二万七千世帯を見込んでおります。新たな難視世帯の増加というものがございますので、五十七年度末におきます全国の残存難視の世帯数は四十三万を予想しております。  五十八年度でございますけれども、いまこれから御審議願う来年度計画でございますけれども、五十八年度におきましては、世帯が比較的まとまりました、また視聴者の要望の十分強い地区を対象にいたしまして、置局を六十地区、それから共聴を二百十地区、合わせて二百七十地区の設置を計画しております。それに要する建設費は十六億を予定しております。これによりまして五十八年度難視の解消の世帯数は二万四千世帯でございます。これも新たな難視世帯の増加というものがございますので、五十八年度末におきます全国の残存難視の世帯数は約四十二万になるということでございます。  以上でございます。
  142. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、私前年度も聞いておきましたが、全部聞くと大変でございますから、私の住んでおるところをどんなふうに難視解消のためにがんばってきたのか、まず京都、滋賀、これの五十七年度どんなふうに解消した、それから五十八年度計画、これを具体的に述べてください。
  143. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 やや細かくなりますけれども、いま御指摘がございました京都におきます五十七年度の難視解消の計画でございますけれども、まず置局の面でございますけれども、舞鶴朝来中、亀岡西山、伏見桃山及び亀岡と四地区の置局で約千三百世帯の難視を解消いたしました。  さらに、辺地共聴でございますけれども、辺地共聴施設につきましては、宮津市田原、福知山市小牧など大体十三地区の共同受信施設を行いまして、約六百世帯の解消を五十七年度末に図り得るという予定でございます。  それから京都の五十八年度につきましては、舞鶴東地区の置局で百四十世帯、また舞鶴市瀬崎、夜久野町小倉等十三地区でございますけれども、その名前につきまして申し上げますと、これはいずれも共聴施設でございますけれども、舞鶴市瀬崎、これが加入世帯が三十世帯でございます。それから夜久野町小倉、これが四十世帯、京都市左京区大布施が四十五世帯、宮津市波見谷が五十世帯、久美浜町馬地谷が五十世帯、福知山市大門三十世帯、亀岡市の曽我部が百二十世帯、舞鶴市の小原が三十五世帯、舞鶴市の下安久が八十世帯、以上でございます。そのほか、いま申し上げた九つの共聴施設のほかにまだ地名が決まっておりませんところが四地区ございまして、合計十三地区の共聴施設を五十八年度やりたいというふうに思っております。  それから、滋賀県についてですけれども、滋賀県は五十七年度は甲賀町の隠岐、それから彦根市の芹中の二地区に共聴施設を増設いたしまして五十世帯の解消を図りました。  それから滋賀県の五十八年度につきましては、朽木村雲洞谷というところで四十世帯の解消を計画しております。  これによりまして、京都における残存難視の世帯は八千四百世帯になります。それから滋賀県につきましては、五十八年度末の残存世帯の世帯数は三千八百世帯という見込みでございます。  以上でございます。
  144. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 NHKとしまして、五十八年度建設計画の中でさらに難視解消に取り組んでいこうということで約十五億円を投入していく計画を伺っておりますが、いよいよ五十八年度の終わりに放送衛星が打ち上がり、そして五十九年の五月か六月ごろにはいよいよそれがもう実用の段階へ入っていくのではないか、こういうように考えられるわけですけれども、難視解消のために相当のお金をいままでつぎ込んできていますね。これは累計でいきますと莫大なものですよ。今回放送衛星を打ち上げていくわけですけれども、これを両方やっていったら、これはむだ遣いと言ったらちょっと語弊があるかもしれませんけれども本当に大変な金額ですよ。  そこで、この難視解消に絡んで放送衛星との問題で一体今後どういうふうに考えておるのか、このまままだどんどんやっていくのか、あるいは放送衛星の方に百億以上も使うわけですから、これを難視解消問題への予算という面で今後の計画を明らかにしてください。
  145. 坂倉孝一

    坂倉参考人 放送衛星が上がりましてからの難視地域におけるその地上施設につきましては、これはいま先生指摘のとおり、やはり上と並行してやるということはむだなわけでございますし、やはりこの衛星を上げるという大きな目的が難視解消のためということでございますので、放送衛星を上げました後は、地上における従来までとってまいりました難視解消策というものは、これは原則として実施をしないという形で進めていくという計画でございます。しかしながら、いろいろそれぞれの地域における地域の住宅地の改造とか地形が変わったといったようなこともなきにしもあらずということで、そういった点につきましてはやはり何らかの配慮はしていかなければならないかというふうに考えているわけでございます。
  146. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そうすると、もちろんまだビル難視等の問題は今後またいろいろ出てくる問題でございますから、これはいま専務理事が言われたとおりだと思います。ただ、辺地難視に関してはあるいは離島とかそういう問題は、先ほどからも論議されておるように、これで解消していく、したがって、これに対しての難視解消のための費用、予算というものはこの五十八年度で打ち切り、こういうふうに考えていいでしょうか。
  147. 坂倉孝一

    坂倉参考人 原則としてそういう方向で現時点では考えているわけでございます。
  148. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 さて、そこで問題になるのが放送衛星、何しろ上から来るわけですので、先ほどからも論議があったローカル性というものを生かしていくには非常に困難になりますね。そこで、この四十二万、まあ本年度でもうちょっとよくなるでしょうけれども、その約四十万の人たちというものは永久にローカル放送というものにめぐり会うことがこれは困難になるように思いますが、その辺のお考えはどうでしょうか。
  149. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答えします。  放送衛星で難視解消された後のローカル難視の問題だと思いますけれども衛星放送におきましても、現在やっておりますきめ細かいローカル放送、これは無理だと思います。しかし、たとえば各管内担当局あたりのレベルから、ローカルリレーニュースという程度のローカルの放送は出せるかと思います。しかし、いま申し上げましたように、きめ細かいローカル放送というのはこれは無理だろうと思います。そのほかこれは将来の技術の発展によりまして多重放送を使ったことも技術的には可能であろうと思います。しかし、それも現在のようなきめ細かいローカルの放送というわけにはいきません。そういうことで、ローカル難視地域に対しましては五十八年度は、来年度でございますけれども、九地区これを行う、それで一万七千世帯の解消を予定しております。
  150. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ざっくばらんに言って、私が言ったように、これはもうローカルにめぐり会うことはだめなんですよ。これで難視解消を打ち切るならば無理です。それはリレー式のいままでやっているようなのはできますよ。それを言っているんじゃないのです。  たとえば、隣の町でこういうことがございました。周辺でこういうことがございました。ローカルニュースをやっていますよ。京都におきましてもやっています。そういうものももうできませんし、また、本当に郷土色豊かなそういったものをその地域で取り上げていく、そういったものもできない。  そうすると、これはぜひ郵政省もよくここで考えていただかなければならないのは莫大な金を使います。そして放送衛星も限りがあるわけですから、永久じゃないのですから、また打ち上げなければならない。これは維持費は大変なものだ。そこへきて、この約四十万の人たちは不満を感じながら、しかもパラボラアンテナをくっつけて、そうするとまた費用がかかる。そうなってきて、なおかつ、いままでは見えなかったからもちろんそこからは受信料をもらっていないでしょう。今度は見えるのですからこれは受信料をもらうんだ。これは公平でしょうか。こういう受信料の取り方は公平でしょうか。パラボラアンテナはつけなければならない、ローカルニュースは見れない、ローカルのものは見れない、これで果たして公平でしょうかね。これはどう思いますか。
  151. 林乙也

    ○林参考人 お答え申し上げます。  衛星放送に関します料金問題につきましては、先ほど来から今後の衛星利用の面につきましてのお話、御説明を申し上げておるとおりでございまして、辺地難視解消という目的を不可欠のものとするわけでありますけれども、それと同時に、新たな今後の放送面での利用等もいろいろ考えられておるわけでございまして、それらの今後の利用の面、さらには受信機の普及の面、さらには衛星放送の維持運用放送に必要な経費の面等々を総合的に勘案しながら、今後の料金問題について検討していかなければならないというように考えております。  また、その点につきましては、五十九年の二月に衛星が打ち上がるわけでございますので、先ほど来から御説明申し上げておりますような今後の経営計画の中に、そういったことも含めて早急に確立してまいりたいというように考えておる次第であります。
  152. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 一つ確認しておきます。放送衛星が打ち上がって放送衛星からキャッチする人は、現在の受信料の人たちとそこに格差が出る、こう解釈していいんですね。  それともう一つは、現在この地上の電波を受けておる人たちが、同じくもう一つそれに重複して放送衛星の電波をもらう、パラボラアンテナをつけてね。要するに、一家で両方からできるようなものにしようという人は、この辺の受信料の問題も今度は影響が出てくるのかどうか、そこまで含めて答弁してください。
  153. 林乙也

    ○林参考人 お答え申し上げます。  衛星放送に関します料金問題につきましては、端的に申しまして、地域的あるいは部分的には現在でもいろいろな、何と申しますか、若干の格差があるところであります。例を挙げますと、音声多重放送放送がなされておる区域あるいはなされておらない区域というようなことなどにつきましても、部分的には若干の差異はございますけれども、現在のNHK受信料制度は、いわばNHKのテレビ、ラジオ、FM等を維持運営するための経費を総合的に受信者の方々に賄っていただくというような形になっておりますので、やはり基本的なところにおいて大体合致するならば、それは現在の受信料の中で同じように扱っていかざるを得ないのではなかろうかというふうに考えられるところでありますけれども、また、新しく出てまいります衛星放送が、たとえば現在の放送の補完、充実をするような性格のものが非常に強い場合、すなわち、文字多重の場合でも聴力障害者向けの放送に重点が置かれる場合などでございますならば、やはりそれについては現在の受信料の中で賄っていくということにつきましても御理解いただけるところではなかろうかというように思うわけであります。  しかし、一方におきまして、その放送が新たな放送機能を持つような、いわば独立して受益感をもたらすような放送ということになりますならば、やはりそれにつきましての料金につきましては別途のものとして考えていくこともできるのではなかろうかというようなことも考えられるわけでございますが、それらにつきましては、先ほど来からも申しておりますように、今後の放送内容、質、性格、そういったものとの関連におきまして、今後の問題として検討していかなければならないのではなかろうかというように考えておる次第でございます。
  154. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 郵政省にお伺いいたしますが、放送衛星の夜間の利用方法、どんなふうに考えていますか。
  155. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 さしあたって今度の放送衛星の利用はNHKの難視解消ということでございますので、現在、地上では夜間は、夜間といいますか深夜は放送していないんだが、それをどうするのかという御質問かと思いますけれども、やはり放送衛星の持ちます特殊な機能と申しますか、能力と申しますか、そういうものを最大限に利用し、それによりまして放送用受信機の普及が図られる、したがいまして、また量産ができたならばコストも下がるというようなことであれば、夜間利用につきまして需要者の方からいろいろ御提案がありますれば、その本来の衛星の趣旨に反しない範囲内でできる限り利用していただくというのが、送信、衛星側にとりましては特にいいんではないか。と申しますのは、衛星の場合、春秋の特定の期間を除きましては、太陽から電源をもらっておりますので、送信側にとっては省エネ等の問題はない、このように考えておるわけでございます。
  156. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一点お伺いして終わりたいと思います。郵政省、もう一点お願いします。  パラボラアンテナ、これはコストはこの前も聞きました。いろいろ共同で利用するものと、あるいは各家庭で利用するものとまた違ってくるでしょうし、それから量産がどこまでできていくかによってまた違ってくるでしょうけれども、そのコストの状況をどう見ておるか。並びにそれだけの費用が余分にかかってくるわけですね、それへの補助をどう考えておるか、御答弁ください。
  157. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 まず、パラボラアンテナと申しますか、衛星放送の受信設備についてどのくらいコストがかかるのか。一応受信の態様として二つあろうかと思いますが、本土等におきまして直接受信するいわゆる個別受信用といたしましては直径一メートル、もう少し電波の強いところではもう少し小さい小型なパラボラで、それとアダプター、それから少し電波の弱いところ、あるいは五、六世帯の共同受信用の少し大型のパラボラアンテナとアダプター、こういうことを二つ考えられると思います。  その価格についてでございますが、現時点での試算によりますと、普及の初期段階、年産十万台程度という意味での試算でございますが、先に申しました個別受信用は六ないし八万円、共同受信用のものは一世帯当たり四ないし七万円、このような試算をいたしておるわけでございます。  つきまして、それだけの付加費用を要するわけでございまして、この辺についてどう考えるかという御質問かと思いますけれども、いま言いましたような価格の追加支出が必要なわけでございますけれども、やはり量産等によりまして価格の低廉化をできるだけ図るというのが正面の対策と申しますか、そのように考えておるわけでございまして、先生おっしゃいませんでしたかと思いますが、個別に補助等は無理ではないだろうか、このように考えておる次第でございます。
  158. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 終わります。
  159. 左藤恵

    左藤委員長 次に、西村章三君。
  160. 西村章三

    ○西村委員 参考人の皆さん、大変にお忙しい中御苦労さまでございます。  本日の委員会は、昨年の夏にNHKの新会長に就任をされました川原新会長初めての委員会でございますので、私は、まず最初に、NHKが当面をするいろんな諸課題を踏まえ、さらにNHKがいま置かれております立場、取り巻く情勢、こういったものの現状についての新会長としての御認識、さらには抱負というものについてお聞かせをいただきたいと思います。
  161. 川原正人

    川原参考人 現在NHKが置かれております環境については、私は、大変大きな課題を抱えている、非常に厳しい状況のもとにあるという認識を持っております。具体的に申し上げれば、まず何よりもNHKの財政的な基盤が、その主たる支えであります受信料の収入が毎年一%程度の増加しか期待できないという状況の中で、一方ではNHKに対する視聴者の非常に大きな期待がある。それから、私どものやっております番組仕事放送、ラジオにいたしましてもテレビにいたしましても、これは日進月歩の世界でございまして、また世の中の情勢が目まぐるしく動いている中で、私どもが社会の動きを的確に視聴者に伝えていく、そういう情報機関としての使命がますます重くなっているし、番組のつくり方についてもますます複雑な形態をとってきている。つまりそれはとりもなおさず、同じ番組をつくるにいたしましても、人手なり経費なりがよけいかかる、またかけなければ十分な番組ができないという状況に置かれておりまして、その面からも支出は増加を避けられない。しかも加えまして、本日の会議でもしばしば御質問いただいておりますように、放送衛星を初めとする新しい放送メディアというものが急速に展開していく。これに対しましても私どもは間違いのない対応をしていかなければならない。決してこれを消極的に受けるのではなくて、積極的にこれらのメディアを国民のための文化施設として、財産として活用を図らなければならないという面でもって、片一方では財政の収入が非常に限界に来ている中で、業務としてはいろんなことが要請されてきている。これをどのようにして打開していくかというのがいまの私の最大の責任であろうと考えております。  一方、社内的には、何分すでに半世紀以上の歴史を持つ企業でございますので、その時点時点で必要な仕事を次々とこなしてはきておりますけれども、いままでのずっと続けてまいりました業務なり業務の進め方についても、長年の習慣にとらわれたものもなしといたしませんので、その辺も抜本的に考え直していかなければいけないという幾つかの大きな課題を持っております。それらを私の責任においてどのように解決していくか、非常に重大な責任だと思っております。しかし、これは私が一人でできることでございませんので、協会のいまの全職員が一丸となってこれに当たらなければならない。その意味では、幸いにしていま職員の士気は非常に上がっておりますし、番組の面でも成果として評価していただけるものが幾つも出ていると思いますので、全職員一丸となり、いま課せられました問題を着実に解決してまいりたい、かように考えております。
  162. 西村章三

    ○西村委員 非常に力強い抱負の御開陳があったわけでございますが、昨年夏の役員任期の改選のときに、特に私どもが承っておりますのは、経営委員会の意向といたしまして、会長の選任に当たってはいわゆるNHKの体質改善を断行し得る人物、これを第一条件として掲げた、かようにも伝えられておるわけでございます。また、川原新会長会長を引き受けるに当たりましては、副会長以下の人事については自分の判断に一任してほしい、こういう条件もつけられたやに伺っておるのであります。  ただいま会長の方からいろいろと伺いまして、まず、対外的には受信料の頭打ちに伴ういわゆる慢性的な財政赤字といいますか、財政の硬直化をどう打開するのか、迫りくる料金改定にどう対応していくのか、新しい放送メディアにいかなる対応をするのか、さらには、社内的な問題として、いま長きにわたるいわゆる慣習といいますか、いい面もありまた悪い面もある、これらをどう改善していくかということも言われたわけでございます。そのほかにも、従来から、いわゆる副次収入をどう増大せしめていくのか、さらには、いろいろと風当たりの強い外郭団体、これらの整理といいますか、あるいは改善をどう図っていくのか、いろいろあると思うのでありますが、特に新会長として、当面一番重点に何をなさっていこうとされるのか。当然のことながら、本年度末でいわゆる赤字にさらに転落をするという情勢の中では料金改定、しかしこれだけの繰り返しでは何にもならないわけでございまして、長期ビジョン審議会その他でいろいろな提案がなされておりますが、これらを踏まえてどうされるのかということだろうと思うのでありますけれども、重ねて、新会長としていま当面一番大事なものは何だということをお聞かせいただきたいと思います。
  163. 川原正人

    川原参考人 現在置かれております財政的な構造的な収支の不均衡の問題を何としても改善していかなければいけないということでございます。率直に申し上げまして、NHKの財政収入のほとんど九八%を支えておりますのは受信料でございます。しかも、この受信料はほとんど毎年の伸びが一%程度という状況でございまして、この単価を据え置いていく限り協会の財政収入は一%くらいしかふえない。もちろん副次収入等の増加を図ることも喫緊の問題だとは思いますけれども、これは受信料の収納額に比べれば数としてごくわずかなものでございますので、どうしても根本の問題は、この受信料料金問題をいずれの日にか、しかもかなり早い時期に改定をしなければならないと私は思っております。しかし、それはこれだけの支出がふえるから、仕事があるから受信料改定したいというだけの問題ではないと思います。そのためには、まずNHKが現在やっております仕事あるいは仕事の進め方、組織、そういうものをこの際抜本から検討し直しまして、いま御指摘のありましたように、NHKには外部団体と申しますか協力会社も幾つかございますので、その協力会社との間で仕事の分担ももう一度見直しまして、もしそういう協力会社を通じてやっていただける仕事があるならば、思い切ってそこの非常に自発的な仕事にまちたいし、あるいは私どもがやるべき業務の範囲も一体どこまでなのかということも、根本にさかのぼって検討し直してみたい。それから、先ほども申しましたけれども、新しいメディアに対してどう対応するか、また、この新しいメディアから果たしてこれが収益につなげ得るものかどうか、その点も含めて検討した上で、最終的に現行の料金も含めた新しい計画を立てて、それで視聴者の方々に応分の負担をお願いしなければならないとするならばその負担をお願いしたい、かように考えております。
  164. 西村章三

    ○西村委員 体質の改善という問題は一朝一夕にまいるものではございません。私もよく承知をいたしております。時間をかけて、しかも勇断をもって対処していただいて、任期中に何とか川原流の新しいNHKあり方を確立していただくようにお願いをし、期待をしておきたいと思うのです。  時間の関係で早速次に移らせていただきますが、けさほど来、畑先生からもあるいは午後から阿部先生からも国際放送についての問題が出てまいりました。私も実は国際放送についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、朝から四人の先生質問をされましたうち二人までこの問題に触れられた。これはわが国国際放送が諸外国に比べて余りにも立ちおくれが著しい、もうどうにもならぬところまで来ておるのではないかという切迫した気持ちから今日の発言につながったと思うのであります。私もそのような視点から国際放送についてのお尋ねをしたいと思うわけであります。  川原会長は、国際放送につきまして、就任直後の記者会見の中で、これはNHKが責任を持って実施すべきである、経費の許す範囲内でできるだけ努力をしていく、こう申されておるわけであります。しかし、それと同時に、受信料負担で国際放送を実施しているために国内ではそのままそれが還元をされない、したがって、NHKの経費を必要以上に国際放送に投入していくことには問題がある。さらにつけ加えて、それならば政府あるいはそれ以外のひもつきでない資金というもの、これの拠出で賄うべきが適当だと思う、こういうこともおっしゃっておるわけでございます。  そこでお尋ねをいたすのですが、現状の経費分担、先ほどいわゆる命令放送と自主放送との区分の問題も出てまいりましたけれども、現状の経費分担についてNHKとしてはどのように考えておられるのですか。
  165. 川原正人

    川原参考人 現状の経費の分担につきましては、私どもとしては、もちろん経営立場におきましてはできるだけ政府交付金をふやしていただきたいという立場で折衝し、お願いもして、その一つお話の結果でございますので、これはこれとして、しかし、でき得べくんば、なお政府の方の御協力をちょうだいできれば幸いだという気持ちでおります。
  166. 西村章三

    ○西村委員 さらに、政府以外にひもつきでない資金ということを会長はおっしゃっておるわけですが、これは具体的にはどういうものを指すのでございましょうか。
  167. 川原正人

    川原参考人 就任直後の会見のことで、私もその当時どのような表現を使ったかいま記憶は定かではないのですが、私ども国際放送の問題につきましては、これはやはりNHKの本来の仕事でございますから、受信料の中で相当の経費はこれに充てて賄っていかなければいけないということは承知しておりますし、それは受信者の方も視聴者の方も御納得いただけると思うのです。ただ、何分にもこれは視聴者の方にそのまま戻ってこない放送でございまして、その必要度は仮に御理解いただくとしても、それにはおのずから限界があるであろうということで、さりとていまの放送設備等の老朽の程度を見ますと、とても受信料だけでこれを賄い、新たな設備をできるものではございませんので、それについてはいろいろな形での協力をいただきたい。一つ政府からの応援ということも私としては期待したいところでございますけれども、いろいろな方の御意見の中に、たとえばスポンサーをつけて広告ということも考え得るのではないか、あるいは寄附金といいますか、そういう形で資金の協力をいろいろなところから求めるやり方もありはしないかという示唆も現実にございます。ただ、私として考えますのは、いろいろな立場でお金を出すにいたしましても、出す側になりますと、ある一定の額を超えての資金の援助をする場合には、やはりその使い道について何がしかの意見は言いたくなるというのがいまの社会の通例でございますので、そのような形で危険を冒してまでNHK国際放送にいろいろな形の助力、応援を求めることが果たしてよろしいのであろうか、その点はよほど慎重に考えたい。  と同時に、もう一つ、私ども仕事番組制作し編集するという仕事と、これははっきり分けるわけにもいかない面もありますけれども、もう一つは、そのつくりました番組一つ設備に通しまして電波に変えて送信をするという仕事と、大別すればその二つに分かれ得るかと思います。この番組の編集につきましては、これはあくまでNHKの責任において、公正なNHK立場において番組は編集すべきであるし、それが国際的な信用を得る道であろう、これは非常に確信をしておりますし、その信念を持っておりますので、この面についてはあくまで私どもにお任せいただきたい。ただ、設備をつくりそれを増強していくという面につきましては、先ほど来申し上げておりますように、私どもの力にも限界がございますし、かなり多額の金を必要としますので、その面についてはあるいは政府等の協力がもう少しちょうだいできる可能性はあるのではないかというふうに考えまして、その辺の問題については、なおいろいろな形で各方面の協力を得られるものならばいい方法を考えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  168. 西村章三

    ○西村委員 NHK公共放送としての性格上、いわゆるスポンサーつきの広告でありますとか、あるいは他の団体、個人からの寄附といいましても、なかなかこの道は開けてこない。したがって、現実性がきわめて乏しいということに相なるわけでございます。そうすると、勢い、いま会長がおっしゃられたように、国の金をどこまで出してもらえるのか、これに尽きるわけでございます。昨年出されましたいわゆる長期ビジョン審議会の答申の中でもこのことが触れられておりまして、番組の方は、編成あるいは内容制作NHKの方でやるけれども、いわゆる送信の設備ですね、こういったものにつきましては全額国の負担でやってもらわなければならぬということがこの調査報告書の中でも明言をされておるわけでございます。  そこで、NHKとしては当然この提言を支持されるものだと思うのでありますが、いまでもその気持ちはお変わりはないですか。それとも、従来からこの国の分担についてのいろいろな折衝をやってこられた中でどこまで協力願えたのか、われわれは、逆に郵政省から押し切られてNHKの方の分担が多くなってきたのではないか、こういう感じも持つわけでございますが、従来からどの程度積極的にやってこられたか、これは会長でなくてよろしいですから、担当者の方ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  169. 渡辺伸一

    ○渡辺参考人 国際放送交付金につきましては、筋立てとしましては、事項を指定してしかも交付金の額を限定いたしまして、その中でやるようにという命令ではございますけれども、現実に行っております実態についての御認識をいただくという意味で、機会を得て御説明をするということは何とかやっておるわけでございます。
  170. 西村章三

    ○西村委員 郵政省にお尋ねをいたしますが、いわゆる国際放送に対する政府交付金というのはここ数年ほとんど横ばいでございます。伸びがほとんどない。そのために国際放送全体の中で経費中に占める政府交付金の比率というものはいわば年々減少の方向にあるわけでございます。総体的な金額は別にして、経費中に占める交付金の比率というものは減少いたしておるということでございます。  昭和五十五年以降のこの交付金についての郵政省予算編成段階での大蔵省に対する要求額と決定額、これをひとつ示していただきたいと思います。
  171. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 昭和五十五年度以降の国際放送交付金の要求額と決定額について年次別に申し上げますと、五十五年度、要求額九億六千二百五十五万八千円、決定額が九億四千三百四十七万八千円となっております。五十六年度が、要求額十億百八十六万一千円に対しまして、決定額は九億九千七百六十万九千円。五十七年度は、要求額九億七千二百二十万五千円に対しまして、決定額は十億三百八十三万七千円と、要求額に対して少しふえております。五十八年度は、要求額十億四百六十三万二千円に対しまして、ただいま案の段階でございますが、予算案は十億五百五十三万三千円ということで、これも要求額より少しふえております。
  172. 西村章三

    ○西村委員 局長、ついでに五十三年度もちょっと手元に資料があれば教えてください。
  173. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 五十三年度、五十四年度につきまして、要求額は実は手元にないので申しわけございませんけれども政府交付金といたしましては、五十三年度六億八千九百八十八万三千円でございます。五十四年度が八億三千三百五十九万四千円、このような数字が載っております。
  174. 西村章三

    ○西村委員 五十三年度予算の要求額がわからぬということですが、私の持っておる手元の資料では、八億六百万円予算を要求いたしておりまして、決定額がおよそ六億八千九百万円、こういう数字でございます。さらに、その年度なりにかなり意欲を持って予算折衝をやっておったということであろうと思うのでありますが、最近に至りましては、五十七年度、いま数字が示されましたように九億七千二百二十万五千ですか、これに対して決定額の方が十億四百万円と上回っておる。さらに五十八年度につきましても、十億四百六十三万円の要求額でおよそ十億五百万円ぐらい、こういうことでございます。  けさからも同僚の委員から指摘をされましたように、いわゆる郵政省予算、その中の電波監理局の予算の中ではおのずと限界があるということがもう明白なんですね。しかも、それはここ数年来ほとんど変わっておらない、毎年似たような形でいわば惰性的に要求をいたしておる。これはいわゆる郵政省電波監理局としては国際放送を改善する意思が余りない、こう言われてもやむを得ないような予算要求の内容になってきておるわけでございます。もちろん国家財政が厳しいし、ゼロシーリング、マイナスシーリングと言われておりますから、それなりにわかりますけれども、この枠の中ではもうとうてい現状を打開することは不可能なんです。そのことにつきましてはひとつ明確に認識をしていただきたいと思うわけです。  そこで、議論を前に進めてまいりますが、そうした中で経費負担は、先ほどNHKの方は、送信設備あるいは中継地点につきましては国が当然これは負担をしてもらいたい、こういう意向なのですが、郵政省の方はどういう考え方ですか。
  175. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 その前に一言補足さしていただきたいのでございますが、先ほどの五十七年、八年について、要求額、決定額が逆ざやになっておるわけでありますけれども、要求枠自体に、交付金は補助金の一部だというようなやりとりがございまして、要求自体でどうしても一割少ない範囲内で要求をせざるを得なかった。いわゆるゼロシーリングあるいは補助金の一割削減という形で最終的な計数整理でこのような結果になったわけでございます。  ところで、国際放送の経費負担をどう考えているかということでございますが、特に送信施設と中継基地にかかる経費についてはどうか。先ほども申しましたように、私ども、最近の特に国際放送重要性、諸外国に国の姿を正しく理解してもらいたいということで理解を深め、立場を理解していただくということで非常に重要である、また、在外邦人に対しまして、人命、財産の保全の立場からも正確な情報手段の確保が大切であるということで、政府がこの国際放送につきまして充実強化に積極的に格段にもっと努力を払うべきであると考えておりますけれどもNHKにつきましても、従来の歴史、経緯、あるいは現在の放送法にもNHKの本来業務だということで、NHKとしてもその拡充に一層の努力をしてもらいたいし、また実績も積んできておられる。また、会長さんが先ほどおっしゃいましたような形もあるわけでございまして、私どもとしましては、NHK政府がともどもその立場に立って積極的な格段の努力を払うべきだ、このように考えておるわけでございます。そして、中継局ないし国内送信施設の分担をどうするか、どちらが持ったことにするかということは、次に来る問題だというふうに考えております。  ただ、シネス中継局につきましては、この中継局の借料と、そこへ届けます回線の借料というのは、計数的にでございますが、政府が出した分担金の中から出ているように理解しております。
  176. 西村章三

    ○西村委員 その辺のところがあいまいなものですから、どうも前へ進まないと思うのですよ。私がいま具体的にお尋ねをしているのは、いわゆる送信施設あるいは中継基地というものは、これはNHKの本来業務であるから全部押しつけよう、その次に来る問題だといま局長はおっしゃいますけれども、そうではなしに、少なくとも送信施設と中継基地というのは莫大な金が要るわけですから、これは国が一般会計の中で別枠でできれば一番結構なことですが、特別会計をつくってでもやるべき内容だ、こう私は確信をしておるわけです。その辺のところがあいまいなものですから、ついついお互いに依存関係が深まってそれが前に進まない、こういうことになっているわけです。もう一度答えてください。
  177. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 その辺につきまして、ちょっと口が滑りましたというか、なんですけれども、やはり中継施設、そこに送る分、あるいは国際電電に払います施設料等につきましては、国の経費の中から出ているというふうに理解しております。
  178. 西村章三

    ○西村委員 KDDにおいでをいただいておると思うのですが、いま、わが国国際放送はほとんどおたくの八俣送信所を専用さしていただいておるわけであります。現在、この施設の利用料金を幾らいただいておられますか。ここ数年の利用料金と合わせて示していただければ結構でございます。
  179. 高仲優

    ○高仲参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、当社の八俣送信所は現在もっぱらNHK国際放送のために利用されております。この料金でございますが、料金立ては、機械別に基本料と時間料、それからNHK—八俣送信所間の連絡線料というものをいただいておるのでございまして、たとえば百キロワットの送信設備による放送の場合には、例を申し上げますと、基本料は送信機一台につき月額七十七万九千円、空中線一面につき月額五万七千円、それから時間料といたしましては、一日三十分当たり月額二十一万三千円、こうした立て方になっております。連絡線料は実費をいただくというたてまえです。  収支状況ということでございますが、これは概数でございますけれども、昭和五十五年度では、収入が約六億九千万円に対して支出が約十六億七千万円、五十六年度は、収入が同じく六億九千万円に対して支出が約十八億円という形に相なっておりまして、いずれにおきましても約十億円程度赤字が出ている、これが実情でございます。
  180. 西村章三

    ○西村委員 この利用料金というのは、だれが決めるのですか。
  181. 小山森也

    ○小山政府委員 国際電電株式会社法の第二条によりまして、この送信業務は附帯業務となっておりまして、認可となっております。その認可の業務の中において、料金というものは非常に重要な問題であるということで郵政省の認可料金となっております。
  182. 西村章三

    ○西村委員 いまお聞きのとおりでございます。KDDとしては利用料金が年額およそ六億八千八百万弱でございますね。これに対して、これの維持管理をするためのすべての経費は約十六億から十八億かかっておる。その差額が十億円近くあるわけでございます。ということは、これはKDDの犠牲の上に現在国際放送が行われておるということになるわけでございまして、きわめて遺憾なことでございます。  KDDにもう一度お尋ねいたしますが、この八俣送信所NHKの専用になってから過去の累績のそうした赤字というのは一体どれくらいになるのですか。
  183. 高仲優

    ○高仲参考人 概数で約七十億円程度と推定いたしております。
  184. 西村章三

    ○西村委員 いまお聞きのとおりでございます。本当にあいた口がふさがらぬといいますか、きわめて政府も無責任でございますし、NHKにも一半の責任はあるというぐあいに考えます。しかも、これがいわゆる政府の認可料金だということでございまして、累積赤字が七十億、年間十億というのは、政府交付金と同じぐらいじゃございませんか。こんな料金を認可しておる郵政省、この料金そのものについて一体どう考えられますか。
  185. 小山森也

    ○小山政府委員 形式的には認可でございますので、KDDの方からの認可申請、これを認可したということでございます。しかし、これは形式的でございます。実質的な物の考え方といたしましては、これは料金でございますけれども、非常に費用回収の一つの、何といいますか、附帯業務を伴いますところの手数料的性格を持っているのではないかと思っております。したがいまして、本来的にはやはりそれに要した経費は繰り入れていただく、それはNHKの方からいただくということを本来の考え方として持っております。  ただ、しかしながら、先生御存じのように、この八俣の送信所というのは、国有財産をそのままKDDの方に移しまして使っているものでございます。したがいまして、そういった歴史的な流れがありますと同時に、KDDそのものもやはり国際通信を扱う非常に公共的な使命も持っている、こういったこともございます。片方、NHKの方にいたしましても、これに対して非常に犠牲を払っているわけでございますけれども、それでは料金がこれでもって調和できないということになりましても、一つの国策として海外放送をやっているわけでございます。したがいまして、現状におきましては、本来、考えて決定すべきものと非常にかけ離れていて、あるべき姿だとは思ってはおりませんけれども、現状の国際放送を維持していくためのいろいろな設備というところから、このようなことの申請を認可しているということでございます。
  186. 西村章三

    ○西村委員 うまい答弁だと思うのですが、KDDはよく黙っておられるな、こう私は思うのです。政府並びにNHKは確かに公共的な機関でございます。KDDもその側面は持っておりまするけれども、やはり民間の株式会社でございます。そこに大きな負担を、最大の負担をしわ寄せをしておるということは順当ではございません。やはり是正すべきところは是正をしなければならぬと思うのですが、この料金改定の期間というものがあるはずでございますね。料金の見直しといいますか、これは大体どういう時期にやっておるのですか。
  187. 高仲優

    ○高仲参考人 この料金につきまして、別に所定の改定期というものがあるわけではございません。しかしながら、当社といたしましても、現在の姿が望ましいと思っておるわけではございません。このため昭和五十五年ごろにおきまして、NHKに対して、五十九年度までの五カ年間に設備の整備や保全の合理化を図り、また投資に見合うような料金改定するという計画を提示申し上げて協議を行ったのでございますが、諸般の情勢からまだ改定には至っておらないわけでございます。しかしながら、実際問題といたしまして、国際放送重要性にかんがみまして、たとえば必要な予備機についてはKDDにおいて調達するということもやっておるわけでございます。現実の料金は昭和五十一年、五十二年、五十四年の三回にわたりまして一〇%ないし三〇%の料金値上げを認めていただいたのでございますが、しかしながら、先ほど申し上げたように、現在におきましてもやはり収支状況は必ずしもよろしくないのが実情でございます。
  188. 西村章三

    ○西村委員 時間がございませんので余り多く申し上げられませんが、大臣、私は答えてもらおうと思ったのですが、時間がございませんので私の方から申し述べます。  現在の八俣の送信所はそういう形の中でいま細々と運営をされておるわけでございます。  加えまして、問題点といたしましては、送信機が製造されてから約二十年以上経過しておるということの中で、もう保守物品の入手が非常に困難になっておるという実情もございます。加えて、五十六年度中に障害が発生をいたしました件数は四百七十二件、そのうち停波、いわゆる波長がとまったということですね。それから電力障害は三十七件、八時間五十九分、約九時間とまっておるということであります。五十五年三月にも水漏れによってそういう事故が起こっておるということでありまして、送信機による代替の発射というものは五百十二件、延べ四百八十九時間あったということでございます。これから考えましても、わが国国際放送というものが本当に大事になるにつれまして、逆に送信機その他は後退をいたしておる。財政的なことも全く裏づけがないということであります。放送規模にいたしましても、昭和四十五年の放送時間が今日なおそのままでございます。この間にわが国のGNPはおよそ五倍以上にふくれ上がっているのですよ。しかも、国際化が進み相互依存が進む中で、国際放送重要性、これは私からもうぜい言するまでもございません。にもかかわらず、依然として旧態依然。しかもその原因は、NHKの方はやはり受信料制度に支えられておる。業務一つであるけれどもそこには金を出さない、こういう財政事情にある、そういうことを理由にされておる。また、郵政省の方も同じようなことで、これは本当NHKが本来負担すべきものだということの中でこれが立ち往生しておるというのが今日の現状ではないかと思うのです。  けさほどからも提案がございました。現行の枠組みの中ではとうていこの問題は解決をいたしません。したがって、別枠の形の中で新しい事業主体をどう考えるのか、あるいは特別会計として何らかの会計措置をとろうとするのか、この辺のことがない限りはこの問題は解決がなし得ないわけでございます。  昨年、私もたまたま院の派遣団の一員といたしましてヨーロッパに参らせていただきました。逓信委員のほかの先生方と御一緒に、ヨーロッパはイギリスのBBCあるいはドイツのドイッチェ・ベレ、それぞれ見聞をさせていただきまして、本当に立ちおくれを肌でもって痛感をしたわけでございます。このままでは大変なことになるなという危機感を持って帰ってまいりました。私は、その期間はできるだけ早い方がいいと思います。けさほども一年以内でひとつ検討せよという御提言もございましたが、最後に大臣のこの問題に対する取り組みの決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 いままで御質問の側また答える側も、いずれも国際放送というものの重要性を確認し合つてきた次第でございまして、私も全く同様に思っておるわけでございます。  着任以後、国際放送の現状を聞きまして、率直に言って大変心配をいたしておるところでございます。特に八俣の送信所の老朽化の問題、また今後設置を必要とされる海外中継基地の問題等を考え、しかもNHKの財政事情の現状、また国際電電の法人としての性格を考え合わせますと、率直に言って、これは政府において何らかの思い切った対応をしなければ解決しないという判断を私はいたしておるところでございます。ただ、残念なことに、郵政省の一般会計規模は御案内のような大変小さいものでございまして、その中でこれらの財政対応をするということはほとんど不可能であるというふうに思いますので、実は関係方面に対しましても、全政府の問題として、国際放送は、何も郵政事業ではない、それを超えた問題だと私は思っておるわけでございます。政府全体としてこの問題の解決に当たるということで、ぜひお知恵も拝借し、また力もかしていただきたいということを申し上げてきておるわけでございます。大変これは大きな課題でございます。私のようなやせ腕で果たしてどうかという疑念もあるわけでございますが、逓信委員会の皆様のアドバイス、また御尽力を煩わして、この問題の解決にぜひ取り組んでいきたいというふうに思っておる次第でございます。
  190. 西村章三

    ○西村委員 終わります。
  191. 左藤恵

    左藤委員長 次に、藤原ひろ子君。
  192. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 NHKの五十八年度予算審議に当たりまして、私は、NHKがことし秋ごろから開始予定をしております文字多重放送の字幕入り番組につきまして、初めに質問をしたいと思います。  NHKは、この文字多重放送ですが、本放送としておやりになるのか、それとも実用化試験局ということで始められるのか、どちらでこの免許申請をなさるというおつもりでございましょうか。NHKにお尋ねします。
  193. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答え申し上げます。  局の種類でございますので、これから郵政省NHKが相談いたしましてこれを決めていきたいというふうに考えております。
  194. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 ですから、相談もされるでしょうが、本放送としてですか、あるいは実用化試験局としてこの話し合いをし免許申請をなさるのですか、どちらですかと聞いておるわけです。
  195. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 現在では実用化試験局として申請しようという意向でございます。
  196. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 昨年の三月十八日のNHK予算審議におきまして、私は、この方式についての技術問題、こういうものを含めまして、放送関係者の意見が一致をしていないということや、受信機を購入する視聴者が不利益にならないためにも、この放送法改正を急がずに、実用化試験局として開始をしてもおそくないのではありませんかということを主張いたしました。その後、そういう方向にいま進んでいるわけですね。  そこで、郵政省にお尋ねをいたしますが、郵政省はいまでも、この法改正をしなければ文字多重というこの放送の字幕入り番組というものは流せないんだというふうにお考えでしょうか。
  197. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 昨年の法改正の際に、そういう種類のと申しますか、たしか実験局だったですか、実用局でない形でスタートすることについてはどうかという御質問があったように私は記憶いたしておりますけれども、私は、その場合に法改正を御提案申し上げておりまして、その場合に第三者による文字多重放送というような形も受け皿として考えておりますので、この御提案申し上げておる法改正と申しますか、文字多重放送の受け皿をつくるという意味で、法改正はぜひともお願い申し上げたい、このように言ったつもりでございます。
  198. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、郵政省の見解は昨年の三月十八日から全くごまかしだというふうに思うのですね。議事録にはっきりと出ているわけなんです。いま私自身は実用化試験局ということをはっきり言っているわけですから、それが証拠に、そのときはどうこうだというだけでなくて、その以降の動き方ですね。今日までの経過から見ましても明らかだというふうに思うわけです。ですから、私は、そのような答弁でごまかされるわけにはいかないというふうに思います。  そういう点で、それでごたごたやっておると時間がたちますが、NHKにお聞きいたしますが、ことしの秋ごろから開始予定という字幕入りの文字多重番組というのは、どんな番組にどのような時間帯で放送するというふうな準備をしていらっしゃるのでしょうか。
  199. 川口幹夫

    ○川口参考人 現在考えております五十八年度のテレビジョン文字多重放送計画について申し上げます。  実施の考え方といたしましては、まず、社会的要望の非常に強い聴力障害者向けのサービスということに限って実施をしたいということでございます。あわせて、字幕番組の表現手法などソフト面については多くの開発をしなければいけません。そういう開発、検証も行うということでございます。  対象地域は、東京、大阪地区を対象にしたいということでございます。目途は五十八年十月ということでございますが、放送内容については、ただいま考えておりますサービスイメージとしましては、字幕番組、いわゆるテレビ小説という番組がありますけれども、あの番組を聴力障害者の方がごらんになってもわかるように、同時に字幕をダブらしていくという放送をまず大きなサービスとして実施をいたしたい。そのほか、ニュース、それから要約ニュース、それに天気予報、それから聴力障害者向けのお知らせ、これは福祉番組、それから聴力障害者のための催し、そういうものについてのお知らせでございます。それから、連続テレビ小説の粗筋などを予定しております。放送時間量としては、大体一週間に三時間程度ということでございます。  それから、何時から何時までやるのかということにつきましては、テレビ小説は、その番組が出ております八時十五分と、それから午後の零時四十五分ですね、あの時間に同時に実施をする。そのほかは、いわゆる天気予報、お知らせ等は午前六時から放送が終わるまで、それからニュース等は午後から二十二時ぐらいまでというぐあいに、いま一応の予定をしております。  なお、私どもが調べたところでは、聴力障害の手帳の保持者という方は全国に大体四十五万人いらっしゃる。その中で、東京と大阪地域に対しては十三万七千人くらいではなかろうかというぐあいに判断しております。  以上がただいま計画している文字多重放送計画でございます。
  200. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、昨年のNHK予算の審議に当たりまして、字幕入り文字多重放送番組制作する重要なポイントというのは、番組に挿入いたします字幕の要約文ではないかということを主張をさせていただきました。いま実際に放送開始に当たりまして、私は大切なことが二つあるというふうにとらえているわけです。  その第一は、よりよい番組制作するというためにはどうしたらいいのかということだと思うのですね。  それから二つ目は、いま全国で四十五万、さしあたって文字多重放送をいたします東京、大阪で十三万七千人とおっしゃったわけですが、このように十三万七千人であろうとも、この方たちがいま文字多重放送を必要としていらっしゃるわけですね。こういう難聴者の方々にどれだけ受像機が普及するのかという点が二つ目に重要な点だと思うのですね。  そこで、NHKの方にお聞きいたしますが、現在、テレビ、ラジオの番組向上のために視聴者会議などおやりになって努力していらっしゃるわけですね。これはどんな役割りを果たしているのか。また、どのようなやり方でおやりになっているのか。これは聴力障害者向けでなくて一般の視聴者会議の意義ですね。簡単で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  201. 荒井治郎

    ○荒井参考人 それでは、視聴者会議の運営その他についてちょっと簡単に御説明させていただきます。  視聴者会議は全国五十三カ所で実施しておりまして、大体放送局のある県単位でそれを実施しております。委員の方は十一のジャンルから出ておられまして、聴力障害者や何かの方の社会福祉関係の方、そういう方々も、大体二十人足らずのメンバーでございますが、その中に二、三人入っている、そういうかっこうになつてございます。そういうことでございますので、当然、年三回の中でそういう福祉関係の方の番組につきましてはいろいろ発言がございます。ただ、できることとできないことがいろいろございますので、お金だとか人だとか物、そういうようなことを考えまして、できることでしたらばそれはそれなりの現場に移しましてそれを実行していくというようなことはやっているわけでございます。この視聴者会議の場合には、そのときそのときの意見を集約するばかりじゃなくて、さらにそれぞれのブロックでブロック会議というのもやってございますし、そういったものの中から必ず意向を吸収しまして業務に反映をさしているわけでございます。
  202. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 今回補完放送を始めるにつきましては、NHKといたしましてもいろいろ検討していらっしゃるというふうにお聞きをしております。それから、いまもおっしゃっていました難聴者の方々、全体の福祉の関係からも意向を聞かれたということですね。  それから、私も実際にその調査をされたNHKの担当者の方からお話を聞いたわけですけれども、私はこれは大変りっぱな活動だし、頭が下がる思いがしたわけです。といいますのは、この方は、北は北海道の旭川から南は福岡まで、全国をみずからの足で歩いて難聴者の方々に直接会って要望を聞いてきたというふうにおっしゃっておりました。なぜ足で歩いていかれたのかというと、難聴者の方ですからもちろん電話で聞くわけにはいかない。そこで直接面談して、手話などを通してこの調査をしたというふうにおっしゃっていたわけです。私はこの苦労話を聞いて、これは本当にりっぱだな、この熱意といいますか、始めるに当たっての基本姿勢というのは、ぜひともこういう基本姿勢でやっていただきたいというふうに思ったわけです。しかし、健常者の方々に対する調査、集まってくださいと言って視聴者会議をするとか電話をかけるとか、そういう調査の何倍、何十倍というエネルギーが必要だというふうに私は思うのです。いままでこのような苦労をされて、この放送開始までもう一歩だというところへいまこぎつけてきたわけです。  ところで、せっかく放送開始されたということになっても、いままでやってこられた難聴者の方とのコミュニケーション、これをやめてしまうということになれば発展は望めないし、健常者からの意向の吸収の何倍ものエネルギーは要るけれども、どうしてもこれは確保していただかなければならないというふうに思うのです。こういうNHKと難聴者の方々とのコミュニケーションの場を今後NHKの中で、これは意図を持っている、情熱を持っている人が奉仕的にやるというだけでなくて、NHKとしても、そういう制度といいますか、するんだということの取り決めをしておくということが大変大切じゃないかというふうに思うのですが、何か具体的なお考えなり御検討が進んでいるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  203. 川口幹夫

    ○川口参考人 放送番組を出す上で視聴者の方の意向を集約し、その御要望にできるだけこたえていきたいというのが私どもの姿勢でございます。文字放送を実施する上でも当然のように、これまでもその実施に至るまでの間に、どのような形が一番いいのか、あるいは現実に実験をしてみたらどういう結果が起こったのかというふうなことは、何回も実証を続けてきております。十月以降も、実際の放送が見られる段階でそういう御要望の集約みたいなことはぜひやっていきたいというぐあいに思います。  ただ、いまのところ具体的に、たとえばそれはモニター制度にした方がいいのか、あるいは視聴者会議のような形で実施をするのがいいのか、そういうことについてはまだ実ははっきりと具体的な形は決まっておりません。いま先生から大変貴重な御意見をいただきましたので、私どももこれからの形の中でそのようなことは十分考えていきたいというふうに思います。
  204. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、先ほど指摘いたしました第二点につきましては郵政省の方にお尋ねをしたいというふうに思います。  それは受像機の普及の問題ですね。いままでも申し上げておりますように、今回NHKが始めます文字多重放送というのは難聴者の方々を対象にやるわけですね。ですから、難聴者の方が生活をしていらっしゃるところにその受像機がなかったら何にもならないわけです。意味がないわけですね。ところが、どうでしょうか、一般的には障害者の方は健常者と比べましてやはり収入も少ない、いろいろな条件は不利であるというふうな状況の中に置かれているのが当然のようないまの世の中ですね。そういう人たちが、現在のテレビよりも五、六万円は高いというふうな受像機を買わなければ文字多重放送を見ることができないわけです。そういうことで、郵政省としてもこれはぜひお考えいただきたいわけですけれども、より多くの難聴者の方々にこの受像機が普及をされる、このための方策、郵政省としての方策が必要だというふうに思うのですね。いろいろ私とは意見が違いましたが、一生懸命とにかく放送法を通して受け皿をつくるんだ、難聴者が強い要求を持っているんです、その御答弁の繰り返しであったわけですから、いよいよ難聴者に見ていただくことができるという状態になれば、すべてのところに配置ができる、受像機が置かれるというための方策を郵政省としてはどう立てていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  205. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  まず、聴力障害者が文字多重放送、字幕放送が開始することしの秋までに十分供給が間に合うのかということでございますけれども、メーカー側の方からは製造体制が整いますというふうに聞いております。なお、付加的な経費を必要とするわけでございますけれども、その経費の価格につきましてもできる限り工業会の方を指導してまいりたいと思っております。  実は、昨年御審議いただきまして通していただきましたときに、私、工業会の方の人間を呼びまして、業界も業界の振興策と申しますか販売先を広げるということでこういう改正をしてほしいという要望はあったけれども、私どもはこれについては難聴者の福利ということを重点的に考えたのである、それなりに業界としても対応していただきたい。たとえば、多重のために百億のマーケットがふえたとするならば、その二割ぐらいはこうした福祉のものに還元するというようなことも考えていただきたいと私は考えているということを事実申し上げたわけでございます。いま聞きますと、そういう形ではございませんけれども、たとえば、こういう字幕放送のコマーシャルのスポンサーに進んでなるというようなのも一つのあらわし方ではないだろうかというようなこともお話もしたわけですけれども、ごく最近に得た工業会の具体的な動きといたしましては、NHKのこの秋の字幕放送の実施に備えまして、聾学校あるいは聾唖者厚生施設に対しましてこうした受像機の寄贈についても検討しておるというような話も受けておる次第でございます。
  206. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いま電波監理局長の御言い分ですと、いろいろメーカーなんかに働きかけているという状態はあるわけですね。  大臣にもう一度確認をしていただきたいのですが、先ほどから申しておりますように、難聴者の方々のために放送法の改正が必要なんだよということが非常に強調されてこの法律をつくられたわけですね。そして、いよいよ文字多重放送が行われるという段階に来て、受像機が自分のもとになかったらだめだ、仏つくって魂入れずというふうな状態になるということを申し上げているわけですから、ぜひとも何とかする必要があるというふうに思うのですが、そういった方策を御検討をいただけるでしょうか。いかがでしょう。
  207. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お話しのように、文字多重放送が行われるようになりましても、難聴者の手元に受像機がなければ何にもならぬわけでございますから、いま局長言いましたように、メーカーに対してはできる限り低い価格で提供ができるような努力を要請をいたしたいと思いますし、また、何らかの機関が導入について工夫をするということであれば、郵政省としてできる協力はしてまいりたい、それらの点もこれから検討いたしてまいりたいと思います。
  208. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それではよろしくお願いいたします。  次に、出資の問題で郵政省にお尋ねしたいと思うのですが、五十八年度NHK予算の特徴の一つは、従来は出資できないことになっていた民間会社にも出資をすることができるということだと思うのです。郵政省はこの法改正を受けてNHKが出資をしてもよいという民間会社を政令で決める、この政令に基づいてNHKは新たに民間会社に出資をするということになったわけですね。このことについてちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  従来、主としてNHK自身が行っていた事業で今度は民間会社をつくって業務を委託してもよいということになったものに、一つ放送番組制作業務、それからもう一つ受信料の徴収、受信料の徴収ということは集金の業務ですね、これを民間に委託してもよろしい、こういうことになったわけなんです。そのとき、いろいろどういうふうにそれを位置づけて民間会社に委託したらよろしいという状況をつくり出されたのか、郵政省の御見解を、簡単で結構ですから、ちょっとお話しいただきたいと思います。
  209. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 改正の趣旨は、先生御高承のとおり、まずNHKの持っておりますいろいろなノーハウ、技術、番組素材の有効活用を図るというようなこととと、二番目としましては、NHK自身の業務の円滑な運用に資するかどうか、そういう見地からやったらどうか、こういうことでございまして、放送番組制作する事業につきましては、文字多重放送用の番組制作、あるいは理科教育番組の特殊な撮影、あるいはアニメーションフィルムの制作などへの出資も予想されるわけで、いずれにいたしましても、NHKが持ちます高度に専門的な経験、制作技術を要するものがいいのではないか。  それから、受信料の徴収に関する事業につきましては、受信契約者の移動状況の管理、あるいは集金の巡回路コードの準備とかあるいは口座へ勧奨する業務など、現在のNHKみずからの体制ではいささかやりにくいといいますか、そういう業務が、外部へ委託した方が円滑にいくというふうな判断で、こうしたものをNHKとしては来年度予算で四千万だったかと思いますが、そういう経費を計上しておるようですけれども、いま申しましたような観点からNHKの申し出を受けて判断してまいりたい、このように考えております。
  210. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私はいまの御説明ではちょっと物足らないなと思うのです。といいますのは、放送局というのは、やはりよい番組を国民に提供していくということが使命だと思うのです。先ほど会長が御答弁しておられたとおりだと思うのですね。じゃ、よい番組をつくるためには、一つには視聴者の意向を多く吸収して番組づくりに反映させていくということが大事だと思うのです。そうすると、その意向を収集するときに、集金業務というのは視聴者NHKとを結ぶパイプの役割りを果たすものだというふうに思うのです。前にも私はそのことを委員会で主張したこともございましたが、その考えは変わらないわけです。単なるお金集めじゃない。NHKの耳でもあるし口でもあるのだ。だから、その業務に携わる人にはぜひともNHK受信料で賄われているのはなぜだというふうな教育もしてくださいということまで言ったわけです。そういう主張は、いま申しましたようにNHKの口となり耳となり手となり足となりというこの集金業務が民間に移されたならば、それがそのままできるのかどうかという心配があるわけなんです。NHK視聴者とのパイプ、これは普通細くなるであろうというふうに思われるのですが、郵政省としては、それがそういうふうになってもいいというところからこの業務の民間委託というようなことになってきたわけですか。
  211. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ただいまの受信料は、NHK仕事を理解していただいた方から契約していただいていただく、収納するという形で、NHK事業運営にとりまして受信料そのものも不可欠でございますし、そうした仕事をする上での理解の上に立たないとだめたということは非常に大切な問題である、NHK自身がNHKが国民に理解していただく直接の窓口であるというふうには理解しておるわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、非常に範囲が多いわけでございまして、移動状況の管理とか、あるいは集金用巡回路コードの整備とか、あるいは口座勧奨業務、これらは一応すでにNHKの理解は得た方々についての業務であろうかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、こうした収納を外部委託するのか、あるいはみずから行うかにつきましては、いまのような面もございますけれども、コストあるいは効率性というものを総合的に勘案し、かつNHKの理解をなお得られるようなというような観点から、NHK自身が判断して行うものだ、このように考えておる次第でございます。
  212. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いま集金の外務員さんに受信料を支払っているという人が全国に千四百二十八万人、全体の五〇・六%いるというふうなことをよくよくお考えいただいた上でNHKも決めていただきたいというふうに思うのです。  効率化ということは大変大切だ。しかし、効率化が必要だということで、それだけで考えると、経験豊かな方とかいろいろ言われましたけれども、経験豊かであってもいままでもうまくいってない部分もあるのですね。教育もぜひしなければいかぬというような部分もあった。そういう状態でこういうことをやった場合にどうなるのかという心配が一つあるので、よく御検討いただきたいというのが一つです。  それから同時に、幾ら効率化されたからといっても、そのために文化性豊かな番組が放映されないというふうなことになれば、事は大変だというふうに思います。  私はここに重たい本を持ってまいりましたが、これはNHKが昭和四十年一月十五日に発行された「日本放送史」なんです。ここにはこういうふうに書いてございます。   このように、戦争下の芸能番組の基調は、八月十五日の終戦に至るまで、終始、国民の戦意高揚と戦力増強に資することに置かれた。そのため慰安放送の本来的な意義はゆがめられ、軍需品の製造と同じような規格と統制のもとに追いこまれてしまって、人びとに感動を与え、文化的に貢献するような作品を放送期待することはほとんどできなかったのである。 というふうにあるのですね。私は、決してむだ遣いを奨励しているわけでも、不要経費を使えなどと言っているのでは絶対にないわけです。しかし、文化水準の向上ということとの関係で、番組制作の下請化ということは好ましいのかどうかという点なんです。  昨年四月十六日でした、当委員会の電波放送委員会に参考人として出席された女優の藤村志保さんがこう言われました。この議事録を読み上げてみますと、   NHKの場合は下請ということはございませんけれども、民放の場合にはいまほとんどが民放じきじきのドラマの制作というものはなくなっておりまして、下請会社さらにその下請会社に行っているというのが現実だと思います。そういたしますと、一番経済的にも時間的にも厳しい条件に置かれますのはその制作現場でございまして、幾らゆとりを持った良心的なテレビ番組をつくりたいと思っても、時間もない、お金もないというような現場で、流れ作業にならざるを得ない。 こう言っていられるわけなんですね。  こういうことが形を変えて、いま行政改革、効率化ということが最優先で、よい番組がなかなかつくれないというふうなことにならないだろうかということを私は大変危惧しているわけです。よい番組といいますのは当然お金もかかるわけですね。しかし、文化というものはそういうものではないのかなというふうにも思いますし、よい文化はやはり人間生活になくてはならないものだ、こう思いますと、この殺伐としたような状態というふうなことが起こり得るという条件も感じられ、私自身もあの戦時中に軍艦マーチをラジオで流されるという現実を何度か経験しております。いま下請化に足を踏み出すというようなことがあれば、良心的な番組をつくろうと思ってもそれはできないというふうな方向に走るのではないか。私はもちろん民放の中にもよい番組はあるというふうに思っております。しかし、下請化されている結果、どうしても雑にならざるを得ないのだというふうに藤村さんもその日言っておられたわけなんですね。私もそれはそうであろうなというふうに思うわけです。  最後に、会長さんそれから郵政大臣に、よい番組を国民に提供するというのがやはりNHKの使命ではないのか、こういう点と、それと今度の放送法改正によって下請に回すか回さぬかはお決めになるのですが、そのときの判断ですね。まあいま検討中ということかもわかりませんが、そういう私が主張している点をよくよく御論議の上この決定をしていただけるのかどうか、こういう点についてお答えをいただきたいと思うのですね。  それから大臣には、技術革新とかニューメディア、これを真に国民の利益のために役立つようにしなければならないんじゃないか、NHKもこの技術革新という問題を日本文化の向上と社会進歩のために役立たさなければならない。そういう観点を大臣としてもお持ちになっているのかどうか、こういう点と、その後のNHKに対する御所信、これをお述べいただいて終わりたいと思います。
  213. 川原正人

    川原参考人 私どもは、番組を通じて視聴者の方に、そして国民の方にすぐれた情報あるいは文化を提供するのが最大の使命でございます。ラジオにしてもテレビにしても、すぐれた番組をつくる、いわば文化を創造する仕事というものは大変時間もかかりますし人手もかかります。そしてすぐれた才能が要請されるわけでございまして、私どもは長年にわたってそういうすぐれた番組を創造できる職員を養成してまいったつもりでございますし、今後ともみずからの手でそういうすぐれた番組をつくってまいりたいと考えております。  ただ、私ども仕事の中には、私どもがみずから企画し編集し、その責任において創造しなければならないものと、一部は私どもの企画あるいは責任のもとに他の協力者を求めて、その手でもって作業が可能なものもございます。その点は私どもはよく選択をいたしまして、私ども仕事をより能率的にできる方法があるならば、ある種の仕事は外の会社に委託することも十分考えてまいりたい。しかし、本質的なもの、すぐれた文化をつくり、すぐれた情報を提供する一番大事なところは、あくまで私どもみずからの手で、みずからの力で仕事を進めてまいりたい、このように考えております。
  214. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 最近のエレクトロニクスの急速な発達、開発、また放送技術の新しい発達というものの中で、いわゆるニューメディアあるいは新技術というものが実用化の段階にだんだんと近づいてきたわけでございますが、これらの放送通信の世界での採用あるいは活用の問題は、あくまでも国民の利便あるいは国民の利益のために奉仕するというたてまえで私は臨むべきであるというふうに思っておるわけでございまして、また、そのことなくしてニューメディアの定着ということはあり得ないと私は思っておるわけでございます。  なお、いまNHK川原会長からもお話がございましたように、放送法の改正によって、NHK番組制作等の会社に出資をし、一部業務の委託ができるという道を開いたのは、NHKの本来の使命を害することのない範囲内で考えてほしいという趣旨でございます。申し上げるまでもなく、NHK公共放送として、わが国の文化水準の向上を図る等を通じて公共の福祉に貢献するという社会的使命を持っておるわけでございますから、そのことを犠牲にした委託というような問題は、私はNHKの方でもおとりになるはずがないと思っておりますし、私どもも指導監督の立場としては十分心していきたいと思っております。
  215. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 終わります。
  216. 左藤恵

    左藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会