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1983-04-13 第98回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十三日(水曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 田村 良平君    理事 工藤  巖君 理事 中山 利生君    理事 宮下 創平君 理事 佐藤 敬治君    理事 青山  丘君       池田  淳君    小澤  潔君       片岡 清一君    北川 石松君       染谷  誠君    竹中 修一君       中村 弘海君    加藤 万吉君       細谷 治嘉君    草野  威君       部谷 孝之君    岩佐 恵美君       三谷 秀治君    田島  衞君  委員外出席者         参  考  人         (名古屋学院大         学教授)    西村 暠夫君         参  考  人         (千葉県知事) 沼田  武君         参  考  人         (横浜市立大学         助教授)    林  正寿君         参  考  人         (神奈川大学教         授)      渡辺 精一君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ───────────── 四月十二日  留置施設法案の廃案に関する請願安藤巖紹介)(第二二〇一号)  同(浦井洋紹介)(第二二〇二号)  同(寺前巖紹介)(第二二〇三号)  同(中路雅弘紹介)(第二二〇四号)  同(不破哲三紹介)(第二二〇五号)  同(中村重光紹介)(第二二三七号)  同(八木昇紹介)(第二三二二号)  高校増設のため地方税財政制度改善に関する請願大野潔紹介)(第二三二一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二三号)      ────◇─────
  2. 田村良平

    田村委員長 これにより会議を開きます。  内閣提出地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することといたしております。  御出席参考人は、名古屋学院大学教授西村暠夫君千葉県知事沼田武君、横浜市立大学助教授林正寿君及び神奈川大学教授渡辺精一君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人方々から十五分程度意見をお述べいただき、次に、委員諸君からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず、西村参考人にお願いいたします。
  3. 西村暠夫

    西村参考人 西村暠夫でございます。  地方財政は、昭和五十七年度においては、当初、収支の均衡が見込まれましたが、景気停滞のために財源不足が生じました。昭和五十八年度も、昭和五十年度以降とられた地方債増発交付税特別会計借り入れによる臨時応急的な措置が講じられますが、地方債増発に伴う償還金がふえ、財政負担は大きいわけでございます。昭和五十七年度末での交付税特別会計借入金残高は九兆六千二百六十一億円であり、財源対策債を含めた地方債残高も三十五兆五千二百九億円でございます。その合計は四十五兆一千四百七十億円になりまして、昭和五十七年度歳出総額四十七兆五百四十二億円の九五・九%と、ほぼ匹敵する額に近づいているわけでございます。五十八年度は五十七兆一千九百二十六億円と見込まれ、歳出四十七兆四千八百六十億円を上回ります。地方財政収支の見通しでは、今年度地方財政不足額は二兆九千九百億円であります。そこで、恒久的かつ安定的な財政運営のために、地方財政制度充実改善が必要であると思われます。  次に、地方財政地方交付税をめぐる問題について触れたいと思います。  一、昭和五十八年度地方債伸び率は前年比三一・三%という高さであり、歳入に占める比率は、昭和五十七年度の八・一%から一〇・五%に達します。昭和四十年代前半では地方財政計画に占める地方債の比重はほぼ五%でございましたが、財源不足補てん景気浮揚策のための公共投資拡大のために、それまで地方交付税算定を通じて措置していた投資的経費を起債に振りかえる措置、つまり財源対策債発行がとられました。その結果、地方債依存率は一〇%台になったわけであります。  このような傾向が続きますと、一、地方財政の圧迫と硬直化をもたらし、二、普通建設事業財源として地方債を活用する幅を狭め、三、景気対策への貢献度または機能を低下させ、四、財政規模が小さい行政ほど地方債への依存度を高めることになります。  さらに、地方債の大幅な伸びによりまして、民間資金によるもの、特に縁故債が大幅に増加いたします。縁故債発行額は二兆四千九百億円で、前年度より七〇・五%ふえます。地方債発行額の三三%、前年度は二二%でございますが、三三%に達するわけであります。こうした流れを見ていきますと、民間資金への依存度の増大が生じますから、その円滑な消化をめぐって幾つかの問題が出てくると思われます。  二、昭和五十八年度地方財政計画を見ますと、中長期的対応策に欠け、緊急避難的で一時しのぎの感が強いわけであります。当面何とかしのいでいるうちに経済が好転するかもしれないといった将来に望みを託す対策では、地方財政安定化健全化は望み薄であると思われます。  たとえば、財源不足額補てん策として地方交付税増額を図っておりますが、その内容に問題があると思われます。増額分地方交付税特例加算額一千百三十五億円は、昭和五十七年度において地方交付税総額から減額留保し、昭和五十九年度から六十一年度までの各年度において一般会計が繰り入れ加算することになっておりましたが、地方財政の悪化に対応するために昭和五十八年度に繰り上げて一括加算することになります。減額留保につきましては、前年議論されたところでありますが、その留保分の前倒しをその翌年に早速やるのは、やむを得ない事態といいながらも、びほう策に過ぎるのではないかと思われます。  三、交付税本来の機能を満たすために地方財政収入不足分交付税特別会計から借りておりますが、この借金が昭和五十三年度来恒常化しております。交付税特別会計は暫定的な制度であるのに、これが恒常的なものに移行しております。そこで、地方財政収入不足分は、当初から交付税率を引き上げることなどによって対処すべきではなかろうかと思います。たとえば、交通安全対策特別交付金地方交付税基準財政収入額に算入することの考え方の流れを見ますと、交付税特別会計交付税率を引き上げることですっきりさせるのも、飛躍した考えではないと思うわけであります。  四、地方財政の主体性を生かし、それに活力を与えるために、交付税制度の理念や機能を再検討する時期に来ていると思います。  次に、よりよい地方財政地方交付税制度の実現のために一言申し上げたいと思います。  一、地方財政健全化のための中長期的なビジョンの策定必要性があります。今年度地方財政計画は、超緊縮型もやむを得ないとしておりますが、本来の健全さを取り戻すための方策の検討が必要であります。  二、地方交付税総額算定基礎見直しをすべきであると思います。行政需要は今後一層高度化し、かつ多様化いたします。さらに、急速な環境変化に、柔軟に対応し得る行政機構も要求されます。これらをそのまま満たそうとしますと、財政需要が肥大化するおそれがあります。そこで、地方行政住民行政需要を満たすのに最適な財政規模算定し、それを全国的に総計して必要な交付税を計算するという算定基礎見直し作業考えたらよいのではないかと思う次第でございます。  もとよりこれには、一、昭和二十五年のシャウプ勧告に基づく地方財政平衡交付金制度がもたらした弊害を避ける必要もございます。しかし、二としまして、地方交付税法第六条の三第二項には、地方交付税総額財源不足額が今後も継続して著しく異なることになったときは制度改正または地方交付税の率の変更を行うとあるのを考慮すべきであると存じます。  三、地方財政健全化するために地方財政基盤の確立が急がれますし、税制と財政の両面の制度的な改正が望ましいと思われます。  地方税源充実のために、地方機能分担に応じた財源確保を図るのがよいと思います。たとえば法人所得課税市町村への配分比の増加なども考えられますし、また、地方交付税はその実態からいって地方自治体に帰属するものと言えるからであります。そこで、交付税必要額地方自治体によって確保すべきだという考えも出てまいります。  四、国庫支出金の効率的な運用について述べたいと存じます。  国庫支出金は、国において積極的な整理統合がなされ、かつ、老人保健医療事業分市町村特別会計化公共事業関係費が抑制されたので、総額は十兆三千九百七十二億円、前年度比四千八百九十九億円、四・五%減となりました。  国庫支出金は減りましても、その運用効率化の策を講じることによって地方財政に益するところが大きくなると思われます。つまり、国庫支出金としての基本的な機能である特定の施策の普及奨励を行いながら、地域実情に合った弾力性を与えるために、一、細分化された国庫支出金をより広範囲な行政項目ごとに分けて、その範囲内での事業目的のものであれば、地方自治体自主的運用を任せる包括性を与えるものとか、二、補助金使途を複数のものにして、地方はその中から地域実情に応じた使途のものを選ぶいわゆるメニュー方式を導入することも考えられます。これによりまして、地方財政調整制度機能を果たすことにもなるわけであります。  私は、地域総合計画とかあるいは地方計画策定のお手伝いをする機会があったわけでございますが、そういった作業を進めていく過程において、わずかな経験ではございますが、いま申し上げましたような国庫支出金の効率的な運用を図ることによってより大きな効果が期待できるのではないかと感じておる次第でございます。  五、昭和五十八年度単位費用の改定に係る件について申し上げます。  道府県分市町村分土木費産業経済費などの投資的経費単位費用の大幅な減少は、地方生活関連施設への投資を制約し、現実に投資効果が期待できないのではないかと心配をしております。  六、地方財政健全化への地方努力と成果に対し、デメリットをもたらさぬような制度的配慮が必要であると思います。  地方交付税交付団体に対し、義務教育教職員給与費国庫負担金地方道路譲与税について財源調整が行われておりますが、これは本来、当該地方公共団体収入となるべき財源減額措置ではないかと感じます。私は愛知県から来たわけでございますが、愛知県の場合、地方道路譲与税は三分の二が減じられております。地方譲与税国庫補助金と違いまして、譲与を受けた団体がみずからの判断で自主的に工事個所工事内容などを決定し、使用し得るところに意義があると存じます。それだけに、こうした減額措置は不交付団体の士気に影響します。  基準財政収入額算定に当たって、都道府県で八〇%、市町村で七五%を収入見込み額に掛けることによって、地方公共団体自主性財源涵養努力を阻害しない配慮があるのと対照いたしますと、この点は改正されてしかるべきではないかと思います。  最後に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、複雑化した地方交付税法附則整理簡素化を行い、法律効率的実施を行うという趣旨に対しては、評価すべきであると考えております。  以上でございます。(拍手
  4. 田村良平

    田村委員長 ありがとうございました。  次に、沼田参考人にお願いいたします。
  5. 沼田武

    沼田参考人 ただいま御紹介にあずかりました千葉県知事沼田でございます。  衆議院地方行政委員会の諸先生方には、地方行財政の諸問題につきまして日ごろ格別の御理解と御高配を賜っておりますことを、衷心より感謝申し上げます。  本日は、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして地方団体としての意見を申し述べる機会をお与えいただきましたので、若干の意見を申し上げさせていただきます。  最近の地方財政につきましては、すでに諸先生方も十分御承知のとおり、昭和五十年度以来毎年度巨額財源不足を生じておりまして、これを地方交付税借り入れ地方債増発という臨時応急措置によって当面をしのいできているところであります。  たまたま昨年度当初におきましては、地方税地方交付税の大幅な増収が期待できるとして、数年ぶりに単年度収支は均衡するものと見込まれていたのでありますが、予想外景気回復のおくれから三兆円に近い財源不足を生じ、結局は、例年と同様に地方交付税借り入れ減収補てん債発行を余儀なくされましたことは、記憶に新しいところでございます。  本年度地方財政につきましても事態の好転は見られず、先ごろ策定されました昭和五十八年度地方財政計画によりますと、国と同一基調に立って経費の徹底した節減合理化に努め、歳出規模を極力圧縮するものとされており、その規模はほとんど前年同額に近く、わずかに四千三百億円強、〇・九%程度の微増にとどまっております。  さらに、その内訳を見ますと、公債費は一一・六%、給与関係経費が一・九%等義務的経費の増が中心でございまして、投資的経費は、補助事業で〇・七%の減、単独事業では前年同額という厳しいものでございまして、歳出硬直化が一段と進んだものとなっております。  一方、歳入につきましては、地方税が二百五十億円程度昨年より減収するものと見込まれるのに加えて、地方交付税におきましては、国税三税が大幅に減少する上に、昭和五十六年度減収に伴う八千五百億円余の減額精算が行われるため、前年当初比二兆一千億円を上回る巨額減収が見込まれますことから、ただいま御審議をいただいております地方交付税法等の一部を改正する法律案によりまして、一兆六千六百六十七億円の増額措置を講ずることとされているのであります。しかしながら、このような措置を講じた後において、なお前年当初比四千六百十五億円、四・九%の減となっております。  このように、昭和五十八年度地方財政は、厳しい歳出の抑制にもかかわらず、これに対応すべき地方税地方交付税について必要額を充足することができず、多額の借り入れを行ってもなお前年度を下回るという、交付税制度創設以来その前例を見ないまことに厳しい情勢にあるのでありまして、結局は、これを補うために一兆三千二百四十六億円に上る財源対策債増発を余儀なくされる事態となっているわけであります。  いまさら申し上げるまでもなく、わが国地方財政制度は、地方税及び地方交付税制度を通じて、標準的な地方行政の水準を維持していくための経費は国の責任において確保するたてまえをとっております。したがいまして、地方団体のみの立場から申しますと、地方所要財源確保すべき地方交付税が前年度より減額されるということ、さらに加えて、昭和五十八年度に支払いを要する交付税特別会計借入金の利息につきまして、その元金償還負担割合に応じて地方側も一部の負担をするものとされておりますことは、従来の経緯に照らせば直ちには納得いたしかねるところでございますけれどもわが国経済の現況、特に危機的な様相を呈している国の財政事情にかんがみますれば、その再建に協力しつつ、とりあえず当面の地方財政運営支障を生じないこととする今回の措置は、やむを得ないものとして受け入れざるを得ないのではないかというのが、私の率直な感じでございます。  私ども地方団体は、かつて昭和二十年代から三十年代前半にかけまして厳しい財政再建の時代を経験いたしておりますことから、地方財政が苦境に陥りました昭和五十年以降みずからの手で可能な限りの事務事業見直し組織機構簡素合理化給与定数管理適正化等財政運営改善に努めるとともに、年度間の調整財源の積み立てを行う等財政緊急事態に対する積極的な対応措置を進めてまいっておりますので、大方の地方団体においては、昭和五十八年度は、今回の地方財政対策によって当面の危機はしのげるのではないかと考えております。  しかしながら、地方団体限りの対応努力にはおのずから限度があります。加えて、昭和五十九年度からは、過去数年にわたって累積いたしてまいりました交付税特別会計借入金元金償還が始まりますし、財源対策債等償還費のピークを迎えることともなりますので、今後の地方財政の円滑な運営確保について、引き続き諸先生方の格段の御援助、御尽力をお願い申し上げる次第であります。  次に、行政改革について一言申し上げます。  すでに御案内のとおり、臨時行政調査会答申も行われ、国、地方を通ずる行政改革は、今後、実行の段階へと進んでまいっております。  行政改革に関します私ども要望につきましては、今日まであらゆる機会を通じて諸先生方にもお聞き取りを願っておりますので、すでに十分御理解を得ていることと存じますけれども、基本的には地方分権の尊重という立場に立って、この際思い切った事務財源の再配分を行い、国も地方も効率的な行政を行うことが肝要かと考えている次第であります。  過日の臨調答申におきましても、「住民に身近な行政は、できる限り地域住民に身近な地方公共団体において処理することとすべきである」との改革基本方針を明らかにしておりますし、このためには、国と地方との機能分担については、事務の性格に即した見直しを進めるとともに、機関委任事務整理合理化並びに国の関与及び必置規制整理合理化を計画的、積極的に行うべきこと、あるいは国庫補助金について、対象事務事業見直し一般財源化統合メニュー化の促進、総合的運用推進等を図るべきことの提言を行っておりますことは、正鵠を得たものとして歓迎するところであります。  今後は、政府によるこれらの具体化を待つわけでありますが、諸先生方におかれましても、この点、格別の御尽力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。  以上、地方団体立場から今後の地方行財政運営に関します要望を申し上げた次第でございます。  最初にも申し述べましたとおり、五十八年度地方財政において、歳出伸びがないにもかかわらず三兆円に近い財源不足を生じ、また、地方交付税が前年度に比し減額されたということは、まさに未曾有の事態であります。しかしながら、現下の経済情勢「国の財政事情等諸般状況に照らせば、昭和五十八年度地方財政対策はやむを得ない措置考えておりますので、この上は、速やかに改正法を成立させていただくことによって、当面の地方財政運営支障の生じないようお取り計らい願いたいと存ずるところであります。  なお、今後の問題といたしまして、地方自主税源強化のため、国、地方を通ずる税体系見直し交付税率の適正な引き上げなど地方財政充実強化につきまして、諸先生方の一層の御理解と御尽力をあわせてお願いする次第であります。  何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  6. 田村良平

    田村委員長 ありがとうございました。  次に、林参考人にお願いいたします。
  7. 林正寿

    林参考人 ただいま紹介いただきました横浜市大の林と申します。  一般経済学者といたしまして、また財政学を専攻するものといたしまして、最近の日本経済、またその中における財政、そしてそのコンテクストの中で地方財政現状及び将来のあるべき姿につきまして、ふだん考えていることを多少申し上げさせていただきたいと思います。  最近、私わりあい頻繁にヨーロッパに参りまして、外から日本財政経済、また日本の将来のあるべき社会についていろいろと考えているわけでありますが、端的に申しまして、真剣に考えれば考えるほど、一種の悪夢のようなと言ったら言い過ぎになるかもしれませんが、非常に深刻な状況であります。この間OECDのデータを使って簡単な実証分析をしてみたのでありますが、これはOECD諸国どの国もそうでありますし、特にスウェーデンなんか、一般政府比率国民所得に対して六五%ぐらいにもなっているような状況でありまして、この間までの優等生と言われた西ドイツさえも非常に苦しい状況に陥っている。そして、イタリアとかイギリスは、イタリア病イギリス病ということでよく知られていたのでありますが、むしろこういうところはそろそろ底を打って、実は上がってくるのではないかというような感触を持っているわけであります。そういうヨーロッパ状況ヨーロッパといいますのはいろいろな意味で日本の先を走っていてくれる諸国であり、いい面についても悪い面についても、われわれ大いに参考にできる先輩だと思います。そういう諸国状況を見て、それから将来の日本社会考えていくという広い枠組みから地方財政、それから地方交付税というものを考えているわけであります。  一つは、そういう非常に急速な公共部門拡大でありまして、これは日本も六〇年代ぐらいは非常に安定していた、むしろ下がりぎみであったくらいなのでありますが、七〇年代になってからの急上昇ぶりは、まさに目をみはるような状況であります。それから、特に恐るべき衝撃として、御存じの高齢化社会が生じてくるわけでありまして、ヨーロッパなんかに行きますと、全然そういう数字を知らなくても老人が多いということが目につくのでありますが、それが次第に世紀末には大体そのレベルになりまして、その後は二十数%まで老齢化比率が高まっていく、そういうような将来も決して遠い将来ではないわけでありまして、その辺に対して果たして現在の制度が備えがあるかという点で、実は非常に大きな憂慮を抱いているわけであります。  去年の国際財政学会、コペンハーゲンで開いたのでありますが、そのときのテーマが公共部門効率性というものでありまして、その一つの部会の中で、財政担当実務家も交えましてシンポジウムがあったのであります。とにかくどこの国も、日本も全く同じでありますが、公共部門の絶えざる拡大と、それからどうしても税収の伸び伸び悩んで、大幅な赤字が拡大していくというのが一般的でありまして、最後結論も非常にペシミスティックであって、残念ながらわれわれは、大衆民主主義社会においてはそういう一方的に増大する支出伸びを抑えるメカニズムをまだ発見していないんだというような、非常にわびしい結論に達したわけであります。  日本財政現状を見ていると、地方の場合も国の場合も、まさにそういう大きな問題を抱えている。すなわち、もし本当に意識的に合理的に選択して公共部門拡大していっているのか、あるいはそうではなくて、一種のコントロールのきかないような妖怪のような形で一方的に拡大していっているのかという、非常に深刻な一方的な傾向が見られるわけであります。  経済におきましてまずわれわれ最初に勉強させられることは、何しろ資源の希少性ということでありますが、これは私的財なんかの場合には、いわゆる自分の金を使って支出する場合には、非常に効果的にその負担と便益というものが対応してまいります。すなわち、だれもが海外旅行を何遍もしたくても、あるいはダイヤの指輪を持ちたくても、その辺は負担という面から非常に有効にチェックされるわけであります。したがいまして、需要と供給という面から希少性がコストの方に反映されて、そして値段を見て人々はどこまで消費するかがわかるので、一般的に言うならば、最近多少サラ金なんかのようなものも出ておりますが、非常に多い世帯の数、大きさから比べれば、むしろ驚くべきくらいに健全財政が家計においては一般的である。  ところが、公共部門を見ますと、なぜほとんど軒並みに赤字になっているのかといいますと、私の考え方では、公共部門というのは、費用と便益という非常に重要な資源の希少性を反映するようなメカニズムをぶった切っているわけでありまして、一体だれが負担して、どこまで負担しているのかよくわからない。そしてまた、ニーズというのも、最近はとにかくニーズの多様化、それからニーズがどんどん今後も拡大するという言い方が一般的でありますが、しかし、そのニーズというものが、実は制度として負担と十分に結びついていないという面がありまして、基本的に言うならば、このメカニズムが今後も継続するならば、これはもういつまでいっても、常に財源の不足というのは恒常的になるというふうに考えられます。  そこで、交付税の場合も同じような考え方から申し上げたいわけでありますが、まず、とにかく経済全体といたしまして、われわれは一体どういうような公共部門と民間部門との分担をしようとしているのかを明白にする必要があるわけでありまして、賛成、反対は別にいたしまして、今回の臨調の提起なんか、まさにそういうことだと思います。そしてその中で、今度は公共部門の中で国と地方との間の事務配分というものが明白になってくるわけでありまして、そして、おのおののサービスを一体どこまで供給すべきかというのは、さっきから申し上げたようなあくまでも負担との関係で決めていかなければ、これはもう一方的に支出拡大していく。そして負担の方は、私的財のように直接一対一で対応しないために、どうしてもおくれをとっていくということになってまいります。  地方自治というのは、民主主義の重要な一環としてわれわれは今後も堅持しなければならないのでありますが、しかし、自治というものは一体どういうものなのかという点をよく考えてみると、実は恐るべきくらいに厳しい内容を持っている。よく学生にも言うのでありますが、エーリッヒ・フロムの「自由からの逃亡」という名著がありますが、自由というのは確かに非常に貴重な価値であるけれども、しかし同時に、そこから逃げたくなるくらいに厳しい内容を持っているということであります。  地方自治の場合も全く同じでありまして、国と地方との間に事務配分が明確になった暁には、実は負担に関しても、とにかく原則としては非常に住民には不人気な形での財源を、住民への負担という形で調達していかざるを得ない。そして、初めてそこでちょうど私的財におけると同じように、住民の得る便益とそれから彼らが負担する便益とが対応する。このメカニズムを極力強めていかない限りは、将来もどのような糊塗策をしたとしても、基本的には常に赤字赤字というような傾向は消えていかないということだと思います。  地方自治というのは、一つは民主主義ということでありまして、これはもう十分に論じ尽くされておりますように、とにかく住民の手でできるようなものは、極力自分たちで処理するようにさせるということだと思いますが、そしてもう一方で、とにかく財政学者として強調したいのは、その負担も含めてということであります。  税源をどれだけ国と地方との間で分けるかというのは、あくまでも事務配分との関係、それから今度は地方公共団体の間の格差をどのくらいまで調整する必要があるかということで決まってくると思います。それから、さっき申し上げたような地方自治というのは、その調整を受けた後は、極力とにかく負担と便益との関係で選択をしていくということが必要でありまして、そのためには、基本的には現在のような形で、交付税財源は国税の税収のある一定割合にぴしゃっと決められているということが非常に有益なのでありまして、それに基づいて国の場合も地方の場合も、もし足りない部分があったならば、それはもちろん公債という形での調整も可能なんでありますが、自前の税負担とそれから財政調整制度としての交付税、そしてあとは公債その他の財源でやっていくということであります。  まず、そういうような形で費用と便益との結びつきを明確にするという立場から考えますと、まず第一点として、さっき申し上げたように、交付税はあんまりそのときの情勢によって変えられてはまずいわけでありまして、非常に明確に地方の方からもどれだけ入るかということもわかる。そしてまた、それがいわゆるオープンエンドではなくて、切りのないような形ではなくて、明確に上限を持っているという形が必要だと思います。  そして、そういう基本的な形での財源の調整を受けた後は、できる限り地方税の方の調整を地方自治体に自由に任せる。これはイギリス地方税のレイトなんかは、税率は自治体が全く自由に決めているわけでありまして、そういう意味で非常に明確に便益と負担というものが住民にもわかって、その前提のもとで選択がなされることになります。  日本の場合は、確かに制限税率というような形である程度の限定はあるのでありますけれども、しかし、標準税率と制限税率の間には、かなり一割とか二割くらいのまだ幅があるわけでありまして、もし地方が本当にさっき申し上げたような意味での自治の厳しさを貫徹するならば、まだ地方税という形での税収の拡大はかなり余裕が残っているということだと思います。  一方的にとかく法人だけが超過課税の対象になったりするわけでありますが、実はそういう法人というものは、言ってみればだれが負担しているかわからない。私も法人税転嫁論というのを長い間やっていたのでありますが、だれが負担しているかわからないという意味では、さっき申し上げた負担と便益との対応という面では非常にまずい税金だと思います。  そういう法人に対する課税だけではなくして、もっと住民に直接負担がわかるような形での負担と便益との対応を求めていって、そしてそこでその負担と便益との比較考量の上で選択がなされて、本当の意味での自治が生ずるし、それからまた、その制約、いわゆる負担という制約がありますから、一方的に支出拡大していくという点に対して明白な歯どめが生ずるわけであります。  赤字財政についてはブキャナン、ワグナーなどという人たちが、昔に返ったような議論でありますが、非常に極端な提案さえもしている。すなわち、憲法の中に均衡財政という要請を入れろというくらいに言っているのでありますが、そのくらいに支出を抑えるということは大変でありまして、そしてもう一方では、住民負担を要請するというのが、非常に政治家にとっても行政官にとっても苦しいことであります。  それで、どうしても公債という形で逃げるのでありますが、もちろん公債が全面的に否定されるわけではなくて、これはもう有効に使えば非常に柔軟性に富んだ財源を与えてくれる道具でありますけれども、しかし、たとえば建設公債の場合にしても、確かに便益と負担とが将来に生ずるのでありますから、建設公債の場合には、これは経済学的に言っても正当化される。しかし、どうも一般の傾向を見ておりますと、発行するときだけにはその議論を使うのでありますが、しかし、民間の企業でしたら、たとえば設備投資をすれば、必ずその利子も含めて将来償却するだけの収入を計上していくのでありますが、そういう点で将来におけるその負担の分の取り立てという面でどうしても甘くなってしまう。したがいまして、出したときだけは公債で、取るときにおきましては便益に対応する増税をしていかない限りは、これは赤字になるのが当然のことであります。  こういうような考え方からいきますと、交付税特別会計という形で借り入れをしていくという点も、さっきも非常に短期的な糊塗策であるというような参考人意見もございましたが、私も全く賛成でありまして、実は問題を将来にただ引き延ばしているだけにすぎない。もし明確に六〇年代のような高度成長が近い将来生ずるというような予測があれば、これは一時的な策として非常に賢明でありますが、しかし、どうも世界の情勢また日本の将来を考えてみると、むしろこの不況と言われている現状をこれからも続く常態として考えないと、期待が裏切られるのではないかというような感じが非常に強くするわけであります。  そういたしますと、言ってみれば、民間部門では、第一次、第二次石油ショックの苦しい中から、とにかく血の出るような努力をして何とか立ち直った。これは、ヨーロッパ諸国に行きますと、すばらしい称賛を日本経済は常に受けるわけでありますが、しかし、まだ残念ながら、公共部門では、その点で将来に対してちょっと甘い期待を抱き過ぎているのではないかという感じが非常に強いわけであります。  そういうわけで、確かに目前に生じた税収不足というものは何らかの形で埋めなくてはならないわけでありますが、とにかく極力その借り入れという形は抑える。国税三税の三二%を交付税として配付する。その後は、確かに地方にとっては非常に嫌なことでありましょうが、ただ地方自治という面からいうならば、それはさっき申し上げたような形で、自主財源として地方税の税収をふやす余地は制度的にはまだ残っているし、そういう形で対応していくのが非常に厳しい地方自治のあり方でありましょうし、今後まさにそういう形でやっていかない限りは、本当の意味での地方自治というのは伸びていかないのじゃないかというふうに考えます。  それから、国と地方を比べた場合も、国の方がずっと豊かであるならば全然別でありますが、この間ちょっと私も実証研究をやってみたのでありますが、地方の場合には、まだまだ経常収入の方が経常支出を上回るという形で、健全財政であります。ところが、国の場合には、もうはるかに大幅な、経常支出さえも公債で賄うというような状態でありますから、そういう中で、国が一方的にといいますか、地方に対して非常によく資金をめんどう見るということは、もちろん重要なことでありますが、しかし、むしろ長期的に見るならば、真の意味での地方自治という点から見れば、マイナスではないかと思います。  それから、今度の地方財政計画なんかでありますが、伸び率も非常に低く抑えてあります。これは、公共部門などというものは、財源がある限りは基本的には節約をするメカニズム、動機はないものだと私は思っておりますので、そういう意味では、むしろ金がないということは、実は非常にすばらしい僥幸であるというふうに言えるわけでありまして、この苦しいけれども金がないという災いをむしろ転じて、来るべき二十一世紀の恐るべき高齢化社会などに対して、ぜい肉をそぎ落として準備態勢を整えるという点では、ある意味ではきわめて幸せな時期であるというふうに信じております。  どうもありがとうございました。(拍手
  8. 田村良平

    田村委員長 ありがとうございました。  次に、渡辺参考人にお願いいたします。
  9. 渡辺精一

    渡辺参考人 渡辺でございます。  昭和五十年度補正予算以降財源不足補てん対策、いわゆる地方財政対策というのが毎年度講じられてきて今日に至っております。きょうは、五十八年度地方財政対策を中心に据えて、私の意見を三点ばかりに整理をして申し上げさせていただきたいと思います。恐らく、結果的に上程されております改正法案に苦言を呈するというようなことになろうかと思いますが、思っておりますことを率直に申し上げてみたいと考えます。  まず第一点でありますが、地方財政対策による財源不足補てんは不完全であり、五十八年度にはそれが一段とあらわになってきているということであります。  幾つかの例を申し上げてみます。  その一は、資金運用部資金からの地方交付税特別会計借入金に係る例でございます。  ここには二つばかり例を引くことができるわけでありまして、一つは、元金の半分は償還時に国が負担する、残る半分は同じく地方負担する。この地方負担するということが、補てんが不完全であるということの一つの例であります。もっとも、これは従来からずっと引き続いて行われてきていることであります。  二つ目は、今度は利子でありますが、利子は、これまでは国の一般会計負担をしてきていた。しかし、五十八年度では、そのほぼ半分を地方負担するという新しい措置が導入された。これは不完全補てんが五十八年度に一段と強められた一つの例でございます。  例の二番目その二の例を申し上げますと、いわゆる利差補給にかかわる問題がございます。  地方債の引受資金に占める政府資金の割合が、これまでは六〇%に至る分までの民間資金との間の利差を国が補給するということでございました。これが実は昨年度すなわち五十七年度に、資金構成の改善が図られた等によりという理由のもとでこの利差補給が見送られました。ところが、五十八年度になりますと、これがかつての六〇%という水準が明確に五〇%に引き下げられまして、五〇%に至る分までの利差を補給するという形に変わったわけであります。これが五十八年度財源不足補てんが不完全になったという形で改めて登場した一つの例だということが言えます。  その三の例を申し上げます。いわゆる増発地方債にかかわる例がそれであります。  増発地方債は、財源対策債と性格づけられております。すなわち、元利償還金であるところの公債費の一定部分が地方交付税算定の基準財政需要額へ算入されるという扱いがなされることになっております。この措置の中に二つの問題を見出すわけであります。一つは、一定部分の残りの部分は地方負担をするということであります。これが不完全補てんの例でありますが、もっとも、これは従来からずっと続けられてきている問題でございます。増発地方債との関連でもう一つ見出せる問題は、五十八年度にこの一定部分という基準財政需要額への算入率が引き下げられる措置が講じられることとなったということであります。これが五十八年度に新たに登場した不完全補てん措置であると考えることができます。  以上、交付税特会借入金、利差補給、増発地方債、三つの例を引き合いに出しまして、財源不足補てんは不完全であると申し上げたわけであります。しかし、それがなぜ不完全であるととらえなければならないのかという疑問が恐らく残るだろうと思います。答えは簡単でございまして、地方交付税法六条の三の二項に基づいた地方行財政制度改正もしくは交付税率の引き上げが行われていたとすれば、いま申し上げたような地方負担は生じなくて済んだはずだからであります。したがって、以上の不完全は、国の負担地方へ転嫁するというふうにとらえることができる。それは国の都合、主としては国家財政の都合に基づく、そういう意味では一方的な転嫁でありまして、地方の側から見ればそれは不当な転嫁であると考えざるを得ないと思います。  さて、申し上げたい第二番目の問題に移りたいと思います。地方財政構造にかかわる問題でございます。すなわち、地方財政構造が時代の要請に沿って改善されようとしていないばかりか、むしろ望ましくない方向へゆがめられつつあるというのが第二番目の問題の中心であります。  ここでもまた、幾つかの例を引き合いに出してみたい。  その一は、地方交付税法六条の三の二項にかかわる例でありまして、先ほど申し上げましたように、ここでは、国は行財政制度改正もしくは交付税率の変更を行わなければならないと規定されております。  まず前者、すなわち行財政制度改正に注目したいわけでありますが、ここで言う行財政制度改正ということの中身は何であるか。一般には、国、地方間の事務配分見直しをする、地方税制度改正をする、あるいは国庫負担金の対象経費の範囲あるいは負担率を変更するなどというようなことだと理解されているようであります。私もその理解に賛成でありまして、これらは、一括して申し上げれば、地方財政構造の変革ないしは改革ということになるだろうと思われます。つまり、行財政制度改正と規定されているとおりに措置が行われないできているということは、地方財政構造の改革が行われずにきているということを意味いたします。  先ほど申し上げた後者、すなわち交付税率の変更についても、もしもこれが行われていたのであれば、地方財政財源のうち一般財源がかなりふえることが期待できるはずであります。ふえるとすれば、これも財源構造のそれなりの変更をもたらすことになるわけであります。にもかかわらず、この措置も見送られたまま今日に至っておる。  その二の例を引きますと、この例は、財源の面に注目した場合に出てくる例でありますが、先ほども申し上げました増発地方債の問題が一つはございます。増発地方債は、建設地方債と性格づけられました。つまり、地方債発行した結果得られる財源は、建設事業にのみ充用することができるということとされたわけでございます。言いかえれば、一般財源の増加ではない。これもまた一つ財源の面に見る構造上の問題だと考えられます。  財源面でもう一つの例を申し上げますと、冒頭申し上げましたように、財源不足補てんが不完全であった、その結果財源の欲しい自治体は、超過課税や法定外普通税やあるいはいわゆる受益者負担など、いろいろなルートを通して税以外の住民負担を新設もしくは加重しようと努力せざるを得ないだろうと思います。こういった財源財源構成の上で比重を高めるとすれば、それは自主財源なのであるから望ましいのではないかと一見見てとれそうであります。しかし、それは形式的な見方にとどまるわけでありまして、実質的に見るならば、これは自治体の自主的な意思に基づいてもたらされる構造変革ではございませんで、いわば財源不足補てんが不十分である、不完全であるという国の側の事情によって、いやおうなしにもたらされる財源構造の変革であるというところに、見逃すことのできない問題が包み込まれていると考えられます。  ところで、超過課税とか法定外普通税とかいわゆる受益者負担とかによってもなお財源に不足を生ずるときには、自治体は、最後の手段として各種の基金を取り崩すという道を選ばざるを得なくなる。御承知のように、五十八年度予算ではすでに全国各地の自治体が行っております。基金を取り崩すということは、財政健全化に逆行する問題を含みます。そういう問題を含んでの基金取り崩し、ひいては財源構造の変革ということになるわけでありますから、これもまた望ましくない動きであると考えるわけであります。  さて、財政構造のその三番目の例として、経費面に注目をしてみたいと思います。  五十八年度地方財政対策を受けて作成されました地方財政計画を拝見いたしますと、投資的経費の補助直轄分が前年度に比べて〇・七%減少をしたという特徴に気がつきます。そこで、最近何年間かにおける地方財政計画の推移を、前年度対比の伸び率とそれから構成比などによってたどってみますと、そこに一つの際立った特徴を見出します。すなわち、農業基盤整備、治山治水、港湾、道路といった経費傾向的に優遇をされてきている。反面、文教施設、厚生労働施設、生活環境施設といった経費が冷遇されてきているという特徴がそれであります。特に、冷遇されてきている後者に注目をしてみたい。これは住民の日常生活に密着した投資が相対的に冷遇されてきているということでありまして、これに対して国民が納得できる説明が加えられない限りは、これもまた経費面における望ましくない構造変革であろうかと考えるわけであります。  経費面でもう一つの例を引き合いに出してみたい。それは地方債の元利償還金、すなわち公債費経費に占める相対的地位が、四十年代から五十年前後ごろにかけまして数%で推移してきておりましたのが、その後次第に高まってまいりまして、五十八年度にはついに一〇・〇%、二けた台に乗せたわけであります。目に見えてここ数年は比重を高めてきている。その理由に、すでにほかの参考人からもお話がございましたが、元金の一部は地方負担であるという傾向がこれまで続いてき、さらに五十八年度には、利子のほぼ半分も地方負担に切りかえられたといったような事情を抱えた増発地方債が、その主因の一つとして考えられることは明らかでございます。それはともかくとしまして、その結果として、公債費の地位が上昇してきているということは、言うまでもなく、自治体の財政運用硬直化をもたらしているということでありまして、そういう点から見て、こうした経費構造に見る変化は、やはり望ましくない変化であると考えざるを得ないわけであります。  さて、第三番目の問題に目を移します。  いまは、構造面での問題を整理してみたわけでありますが、今度は運用面についての問題を見てみたいと思います。すなわち、地方財政運用が自治体の自主裁量度を拘束してきているという問題がそれであります。もともと地方財政計画は、国家予算にほとんどすべて連動してつくられてきているというのが実態でありますから、拘束されるのは当然の結果であるという考え方は申すことができます。それは承知の上で、しかし、特に最近気になる幾つかの点をあえてつけ加えて申し上げてみたい。  まず、財源面でございますが、この財源面につきましても、地方税は自主財源などと言われているけれども、実質的には自主財源ではないということが、もともとからの問題として一つはございます。かみ砕いて申し上げるならば、税目、税率、課税対象、課税標準などといったような税の内容に関する細かいことは、地方税法によって全国一律的に決められている。もっとも多少の例外はございますが、全体としては一律的に決められていると言ってもよいだろうと思います。つまり、そこでは自治体の自主裁量度は働いていないという意味で、地方税をまず問題にしたわけであります。  しかし、これは従来からの問題でありまして、財源面で最近気になる問題をそのほかに一つ、二つ拾ってみますと、先ほど例に出しました超過課税、法定外普通税あるいはいわゆる受益者負担などとの問題に絡みまして、不完全な財源不足補てんのために、いわばいやおうなしに自治体はそれらの住民負担強化していかざるを得ない。このいやおうなしにというところに、自主裁量度が拘束されてきている一面を見ることができます。  ついでに、もう一つ財源面で例を引き合いに出しますと、増発地方債は、先ほど申しましたように建設地方債として性格づけられた。これは一般財源ではない、自治体にとって使い道が自由な一般財源ではないというところに、すでに自主裁量度を拘束しているという問題を見受けることができます。のみならず、この増発地方債は、財源対策債としての性格をもあわせ持たされています。つまり、先ほど申しましたように、一定部分は基準財政需要額に算入されるという扱いがなされておりますが、そういう財源対策債を許可するに当たって、起債許可制度運用がほかの地方債に比べて一段と厳しくなるであろうということが予想されるわけであります。もしそうなるとすれば、ここにもまた自主性が拘束されるようになったという一面を見ることができるわけであります。  目を転じて、経費面について見てみますと、五十八年度地方財政計画投資的経費一つの特徴を見出します。  そのうち、まず単独分についてでありますが、前年度に対する伸び率が、五十七年度の場合には八・五%であった。にもかかわらず、五十八年度は〇%に抑えられた。五十七年度になぜ伸び率が高められたのか。これはもう申し上げるまでもなく、景気対策のためでございました。ところが、それから一年、五十七年度日本経済の成長率はきわめて低い状態で推移してまいりました。五十八年度政府見通しによる経済成長率は、さらに五十七年度のそれを下回って予測されております。にもかかわらず、なぜ五十八年度伸び率がゼロと抑えられたかということが、ここで問題になるわけであります。私は、地方財政景気対策にどの程度関与すべきであるかという点については、論じなければならない問題が少なからずあると考えております。ここではその問題に触れません。ここで注目したいことは、そのときどきの政府考え方によって自治体の経費が思うままに動かされるという、そういう問題をここに見るということについてであります。  いまのは投資的経費の単独分についての話でございましたが、同じ投資的経費の補助分につきましては、先ほど申し上げましたように、住民の日常生活に密着した公共投資地方財政計画によって冷遇されてきているという問題がある。地方財政計画に示された国の方針は、かなりの程度自治体の予算編成を拘束いたします。  以上、投資的経費の単独分、補助分両方見たことを一言で申し上げるならば、いずれも自治体の自主的な財政運用を一段と拘束してきているというふうにまとめることができるだろうと思われます。  さらに、目を転じまして、財源面と経費面両方にかかわる問題の一つとして、先ほどもちょっと触れましたが、自治体による各種基金の取り崩しという問題にここでもまた注目せざるを得ません。  基金の取り崩しは、財政運用の健全性を損なうだけでなく、運用弾力性をも損なうという重要な問題を抱えております。弾力性を損なうと言えば、地方債の元利償還金、すなわち公債費が増高傾向をたどっているということも、また同じ範疇に属する問題かと思われます。この弾力性を失うということは、言うまでもなく、それなりに自治体の財政運用から自主性を奪ってしまうという結果をもたらすわけであります。  以上、三つの問題について、気がつくことを申し上げました。  全体を通しまして、私は、今後地方財源不足補てん対策、すなわち地方財政対策と言われてきております措置は、今後も恐らくはかなりの期間にわたって継続を続け、かつ深刻化していくだろうと考えざるを得ません。  なぜ継続し、深刻化していくのか、理由はいろいろ挙げられます。  たとえば、日本経済の成長率が、これも先ほど別の参考人からお話ございましたように、近い将来高く推移するだろうということはほとんど期待できない。だとすれば、自治体の自主財源はふえない。当然国からの地方交付税交付金もふえることが期待できない。財源の面では、そのように抑えられた状況が続くはずであります。  他方、需要面ではどうか。自治体の仕事は、住民の日常生活に密着したものがほとんどであります。したがって、簡単に削るということができにくいという特性を持っている。のみならず、最近著しくあらわれてきております社会経済的な諸変化、たとえば高齢化、情報化、高学歴化、自由時間の増大、技術革新、家計の支出構造の変化、さては経済のサービス化といったもろもろの条件変化を総合的に考えてみますと、自治体の仕事は、単にふえていくであろうというにとどまらず、これからは従来の仕事とは違った質的転換をあわせ遂げていくであろうということが予測されます。その質的転換の中に、当然の結果として需要量もまた増大していくということを、私は予測せざるを得ないと考えるわけであります。  以上のようにして、需要はなかなか簡単には削れない。財源が抑えられ、需要が削れないということでございますから、地方財源不足補てん対策は継続されていかざるを得ないということになるだろうと思われます。  もう一つの事情も見過ごすわけにはいかない。これもまた別の参考人からお話ございましたように、資金運用部資金からの地方交付税特別会計の借入金の元利償還が、近い将来全体としての地方自治体にとってかなりの重荷になっていくということが予測される。現在の時点で、すでに昭和六十年代半ばごろにはそのピークに達するであろうと考えられております。それまでの間に、私が申し上げましたように地方財政対策が継続して措置され続けていくということになりますと、六十年代中ごろに予測されているピークの時期というのは、もっと後方へずれていく可能性もまたあるだろう。だとするならば、これもまた地方財源不足補てん対策は、将来にかけて継続し、かつ深刻化していくだろうという予想を支える見逃せない根拠の一つになろうかと思われるわけであります。  さて、それにいたしましても、昭和五十年度補正以降講じられてまいりました地方財源不足補てん対策は、余りにも展望を持たない対策の継続であり過ぎました。毎年度十二月ごろ、自治、大蔵両省のやりとりの中で、突き詰められた状況の中でその対策が講じられてきていたというのが毎年度の例になっております。いわば展望のない、つまり羅針盤も海図もない漂流が地方財政という船を荒海の中へ押し流してしまおうとしている、そういう状況に現在置かれているだろうと思うわけであります。地方自治というのはどこかへ吹き飛ばされてしまったのではないかという感じが昨今ではいたします。憲法九十二条は、もしかするとすでに形骸化の階段をかなり上っているのではないだろうかと思われて仕方がないわけであります。  以上のことをあれやこれや考え合わせますと、たどりつく道筋はもとの道筋でありまして、地方交付税法六条の三の第二項の規定に沿った措置が講じられなければならないということであります。この規定が、日本経済が軟着陸するまではがまんしろという大きな声のもとで無視されて、九年間経過してきているわけであります。一昨年本席に呼ばれましたときにも、私はその状況を指して、行政権による立法権の侵害が続いてきていると申し上げたわけでありますが、今日は一段と声を高めてそれを申し上げたいというふうに考えるわけであります。  失礼いたしました。(拍手
  10. 田村良平

    田村委員長 ありがとうございました。  これにて参考人からの御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 田村良平

    田村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬治君。
  12. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 大変貴重な御意見参考人の皆さんからいただいてありがとうございました。  詳しいことを私から申し上げるまでもありませんで、すでに諸先生方の方がこの問題について非常に詳しく勉強をされております。したがって、細かいことは申し上げませんけれども、いまもいろいろ参考人方々からお話がありました。本来ならば六条の三の二項、これに基づいてしっかりと運営されるべきものが、国の財政の都合だというので、不足額を五十年から急速に借金という形でもって全部これを埋めてきた。しかも、六条の三の二項の前段、足りないときは制度改革をすべきだ、これを、借金というものも制度改革だ、こういうふうに強弁というか詭弁というか、こういうことでどこまでも通してきた。それが次々と変貌いたしまして、いまになってみれば、一体何をやっているのかわからない、収拾のつかないような状態になっております。  特に、ことしの交付税特別会計の元金の利息、政府が全部持っておりましたのを、今度は半分地方負担しろ、それだけでもこれは大変ばかばかしいことでありますけれども、それもなおこのばかばかしさに輪をかけているのは、その足りない額をさらに不足額に積み重ねて、そうしてそれの利息をまた半分負担しろ、こういうような何とも言えない、だれが聞いてもおかしい、無軌道だと私は言うのですが、まさに無軌道な状態できている。混乱もここまでくれば、何とも収拾のつかない状態です。  先生方にちょっとお伺いしたいのですけれども、一体いまの状態が六条の三の二項の前段の制度改革というものに当たる、改正というものに当たるかどうか、このことを全部の先生方にお伺いします。
  13. 西村暠夫

    西村参考人 いまの御発言の趣旨から考えまして、趣旨としてはそのとおりだと思います。(佐藤(敬)委員「当たるか当たらないか、制度改革であるかないか」と呼ぶ)やはり改革をすべきだと思います。
  14. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 六条の三の二項の前段のところに、金が継続して足りないときは制度改革すべきだ。政府はこれを、借金のいわゆる二分の一方式というやつを改革だと言っています。しかし、それが大混乱して、収拾のつかないような状態になっている。したがって、これが六条の三の二項に言うところの制度改革政府が言っているのは、先生方はこれを改革だと思いますかということです。
  15. 西村暠夫

    西村参考人 大変微妙な問題を含んでいると思いますが、制度改革であるとは必ずしも言えないと思います。かなり強弁であると思います。
  16. 沼田武

    沼田参考人 制度改革と言うことは、ちょっと無理ではないかというふうに考えております。
  17. 林正寿

    林参考人 交付税の性格については、私、恐らく別の見解を持っていると思いますが、ただ、そのような問題が生じたものに対する対応策としては、非常に糊塗策的であるという面では、制度改革として十分ではないということは賛成いたします。
  18. 渡辺精一

    渡辺参考人 私、先ほども申し上げましたように、地方行財政制度改正ということの中身は構造的な改革である、言いかえれば、財源不足が生じてきているというその構造を改革することであるということであります。したがって、現在行われている措置は、そういう改革には当たらないというふうに考えます。
  19. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私もまさにそのとおり考えて、五十年以来そのとおり主張してきましたが、政府は、どうしてもこれは制度改革だ、それでせっぱ詰まって、五十三年には法制化してきた、こういうようなことでありますが、それが破綻を来した。  こういうふうになれば、当然いまの六条の三の二項によって後段の交付税率を上げる、これが登場してくるわけでありまして、五十年の当時、政府は三・六%の交付税率のアップに相当するというような形でもって借金政策をとったわけなんです。それが破れた以上、私は、当然交付税率をアップすべきだ、こういうふうに考えますが、その点はいかがでございますか。
  20. 沼田武

    沼田参考人 私も基本的には、先ほど公述申し上げましたように、交付税率等の引き上げが行われるべきだというふうに考えております。ただ、現状財政事情の中でそれをはっきりいま言える状況があるのかどうか、国の財政の面がちょっと心配になっておりますので、そこまで申し上げておりませんけれども、当然基本的な方向として、交付税率の引き上げによって処理すべき問題じゃないかというふうに考えております。
  21. 林正寿

    林参考人 さっきも申し上げましたように、地方も苦しいけれども国の財政事情はもっと悪いというのが現実でありまして、しょせんは、もしこういう状況の中で苦しい財政事情を緩和するためには、これは非常に厳しい選択、すなわち経常的な収入である増税によるかあるいは公共サービスをカットするかのいずれかしかない、これが経済の厳しいトレードオフの現状だと思います。  ただ、交付税率を上げることに絶対反対かというと、必ずしもそうではないのでありまして、私が賛成するとするならば、非常にいま問題になっております特定補助金国庫支出金の方で特に非常にむだな面あるいは非常に総花的なものであるとか、そういうものを一般財源として交付税の方に繰り入れるという形でならば、これはきわめて合理的な政策変更であると思います。
  22. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 現在の地方財政の状態というものは、これはもう先生方は百も御承知のとおりでありまして、五十八年度地方財政計画における先ほどお話がありました公債費、これは四兆七千五百七十四億でありまして、一方、五十八年度地方債発行高は約五兆円であります。全く借金を払うために借金をしている、こういうような状態でありまして、しかもまた、一方からいいますと、五十八年の公債費というものは地方税収入の四分の一に当たる。住民から徴収したその非常に大きな部分が借金払いに費やされている。先ほど皆さんからお話が出ましたように、この状態というものは恐らく恒常的な状態で、これから直ることはないだろう、こういうふうな皆さんのお話でございますが、私もまさにそのとおりに思います。  そうしますと、現在の制度のままこれを続けていきますと、この公債費比率等がどんどん大きくなっていきまして、地方債発行高よりも公債費の支払い高の方が大きくなってしまうという可能性が近い将来に出てくる。あるいはまた、税金を取った全部がみんな借金払いだ、こういう状態が出てくると思うのです。これはいまの趨勢でいけば、非常に近い将来に出てくる。こうなってきますと、これはこのままずるずるといくわけにはいかない。いま林先生がおっしゃられたように、補助金をぶった切るとかあるいはいろいろな行政改革をして、そしてそれを交付税の方に入れて総体として交付税総額確保する、そういう方法でもいい、とにかく何とかしてこれを確保していかなければいけない。いままでの借金財政では、いかなる方法をもってしても早晩これは破綻するということは明らかである。  これに対しては皆さん何も異存がないと思いますので、やはり現状どうしてもそれを片方でやっていくと同時に、この借金財政をできるだけ切り詰めるためにも、交付税のアップというものを、六条の三の二項の前段の行政改革というごまかしじゃなくて、一応交付税のアップという形で、もってこの借金の急速な進行というものをとめていかなければいけない、こういうふうに思いますけれども、いかがでございますか。
  23. 西村暠夫

    西村参考人 そのとおりでございまして、何らかの形で地方財政収入確保し安定させ、そして健全化した方向に持っていくためには、やはり交付税率を引き上げるということが、きわめて平凡でありますけれども最も効果的な策である、そういうふうに思います。
  24. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 沼田知事さんにお伺いしたいのですが、知事さんは先ほど、この方法はよくないけれどもまあ五十八年度はやむを得ない、早く法案を通してくれ、こういうようなお話だったんです。それと同じ議論を、私がこの地方行政委員会に入ってからもう十年になるのですが、毎年聞かされているのです。私どもが審議しておりますと、地方団体の代表が来まして、そうして何とか交付税を早く通してくれ、一日おくれれば六千万円、まあいまは七千万円か八千万円になっているかもしれませんが、六千万円の利息がかかる、それをどうしてくれるのだといって開き直って、私どもはしょっちゅう怒られているのです。  ところがその前に、交付税を上げてくれといって、机の上に置き切れないくらいたくさんの交付税アップの陳情が来ているのです。私どもは、与党の人は余り言いたくないだろうから、それを受けまして一生懸命交付税アップのために大奮闘してがんばっております。一生懸命やっておるところに来まして、今度はいま言ったように、何をぐずぐずしているか、早く上げないと六千万の利息がかかるじゃないか、こう言っていつもとめられてしまうのですよ。それで三二%でいつも通っている。ことしはあれだけれども来年は何とかする、これはことしはやむを得ない、こういうように、上げてもらいたいけれどもことしはやむを得ないという形で、いつでもこうして推移してきているのです。  私は、いまこんなことを言いたくないけれども、知事さんのお話として、ことしはやむを得ないから早く法案を通せというのを聞いて、全く同じことだなんて聞いておりました。やはり強い地方自治体の確信ある行動というものがなければ、交付税を上げろと言っても、この財政窮迫しているときにはなかなか上がらないと思うのですよ。だから、やはり陳情していただくときは、われわれも歯を食いしばってがんばるからおまえらもがんばれと言って、そういうようなしりをたたくような陳情をしてもらうと、私は非常に確固たる信念でもって財政改革に取り組むことができる。  何かいまの状態だと、皆さんから陳情を受けて、それを一生懸命やっておると、今度は何しているかというと、二階へ上がってはしごを外されたような、ピエロとして踊らされているような、余りおもしろくない感じを私どもは野党として持っておるのです。私どもは野党でありますけれども地方の味方という形では、本当に一生懸命、何とか地方をよくしたい、そういう意味で、地方要望をかなえてやりたいと一生懸命がんばっておるのですが、どうもそういうところで知事会なんかと余りかみ合っていないのじゃないか、こういう感じがします。  それから、時間がありませんので、もう一つ知事さんにお伺いしますが、機関委任事務ということがあります。これは、いわば私は行政改革の目玉だと思っておるのですけれども、どうもいまの第二臨調の答申は、七百あると言われあるいは千と言われる機関委任事務を、一割を二年間で何とかしろと、非常になまぬるいものなんです。私は、知事会の機関委任事務なりああいう改革案というのは非常にりっぱなもので、あれが一番すばらしいものだと思っているんです。あのとおりできたら大変りっぱだと思っていますけれども、知事会としてこの機関委任事務整理その他行政改革につきまして、いわば国と地方の関係につきまして、もっと強力に行動するというようなことが必要ではないかと思いますけれども、知事さんの御意見をお伺いいたします。
  25. 沼田武

    沼田参考人 最初地方財政計画に関連する問題でございますけれども、基本的には、先ほども申し上げましたように、財政制度とすれば交付税率の引き上げによってこの財源不足というものをカバーすべきだ、それも、ここ数年来そういう財源不足の状態が続いているわけですから、交付税の趣旨からいっても、交付税率の引き上げによってやることが望ましいというふうには理解しているわけですけれども、ただ最近の国の経済状況を見ましても、かなり低い、低成長でございまして、国自体も非常にお困りになっているということも理解できないわけではないわけでございます。  そういう中で、地方団体だけが交付税率を引き上げて財政的な措置をしていただくということについても、それだけを申し上げるということについても、若干遠慮ぎみな気持ちがございまして、そういうことがやはり知事会の中でもいろいろな議論の中で出ておりまして、もうすでに国の予算も通りましたし、それから地方財政計画も決まっておりまして、そういう中で県なり市町村財政の予算がもう全部でき上がっておるわけでございます。  そういうことですから、そういう形の中で、もう財政運営の方針を、地方団体としては方向が決められているわけでございますので、そういういまの国の財政措置はもちろん十分だというふうにはわれわれ考えないわけですけれども、もうすでに国なり県なり市町村の予算も決定しておりますので、そういうものが円滑に遂行できるように御支援を賜りたいという意味で申し上げておるわけでございますが、基本的にはいま申し上げたとおり、今後十分そういった点についての配慮をしていただきたいということをお願いしたいと思うわけでございます。  それから、機関委任事務につきましても、形式的に機関委任事務ということを言っておりましても、もう地方団体の固有事務になっているような機関委任事務はたくさんあるわけでございます。それを機関委任事務と称して、かなりいろいろな意味の規制をされているのが現状でございますので、これは本当に実態に合ったように、ただ形式的な審査じゃなくて、実態に合った姿の中で機関委任事務を思い切って整理をしていただきたいという気持ちを持っておりまして、そういう形の中で知事会の中でも相談をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  26. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 終わります。
  27. 田村良平

    田村委員長 草野威君。
  28. 草野威

    ○草野委員 参考人先生方には大変御苦労さまでございます。時間もございませんので、一、二簡単にお尋ねしたいと思います。  ただいままで地方交付税のあるべき姿、また地方行政の本来の姿、こういう問題についていろいろと貴重な御意見をいただいたわけでございます。地方交付税の税率の引き上げ問題いろいろお話が出ておりますけれども、現在は借り入れに頼っている、まあ一種の緊急避難的な措置このように言われているわけでございますけれども、やはりこれは国の財政再建との関連があるからだ、このように言われているわけでございます。しかしながら、国の財政再建これが昭和五十九年度から六十年代の中ごろまで延びるだろう、現在このように言われているわけですね。また、国の長期経済見通し、これもこの夏にはできる見通しである、こういうことになっておるわけでございます。  そこで、いままで議論ありましたように、ここ九年間続いたこの地方交付税制度を初めとする地方財政制度のもろもろの混乱、こういうものについて、やはり五十九年度にはこれを整理をして、そうして安定的な地方財政制度をつくるべきではないか、このように私は思うわけでございますが、まず、この点についての御見解を各先生方にお願いしたいと思います。
  29. 西村暠夫

    西村参考人 でき得ることなら、昭和五十九年から地方財政の整備、安定化を図りたい、いま先生が御発言になったわけでございます。まさにそのとおりであると思います。  しかし、その前提といたしまして、先ほど私も少し述べさせていただきましたように、地方財政計画全体についてのビジョンを中長期的な観点からまずつくり上げる、これは時間とエネルギーがかかって、一見迂遠のように見えますが、はっきりした方法論及び価値観というものに立って、そうして全体的なイメージのようなものをつくり上げる、その線に沿ってやることが一番大事なことであると思います。そうでなければ、やむを得ないこととはいいながら、先ほど私も触れましたように、絶えずそのときそのときの急場しのぎのつじつま合わせということになるおそれがあるというふうに思うわけでございます。  他の参考人の方もおしゃいましたように、確かに各国とも財政事情についてはきわめて窮迫した状況にありますし、日本の場合においても非常に深刻な状況に置かれておると思います。しかし、それを深刻な状況だからやむを得ないという形で放置しておくことは許されないわけでございますから、私たちとしてはいろいろな衆知を集めることによって対応策を直ちに立てる、それしかないだろう。ただ、そのためには基本的な中長期ビジョンというものの策定というところからスタートするのが本筋ではないかというふうに思います。
  30. 沼田武

    沼田参考人 お話しになりましたような趣旨については、基本的には賛成でございますが、やはり地方財政対策、現実の問題としては、国の財政なり地方財政状況を見きわめながら対応していくことが大事かと思います。そういう意味におきまして、なるべく早い時点におきまして御趣旨のようなことが地方財政においても実現できるように、ひとつわれわれも努力をしたいし、また先生方の御支援もいただきたいというふうに考えている次第でございます。
  31. 林正寿

    林参考人 国の財政もまたは地方財政現状のままではきわめて遺憾な状態にあるということは、もう全く賛成ですが、しかし、さっきも申し上げましたように、まず地方財政考えるときには、実は地方財政というのは、国も地方も含めた全体の財政制度のサブシステムにしかすぎない、さらにまた、その国、地方財政も含めた両方は、経済全体の中のサブシステムにしかすぎないということでありまして、私も経済学を出発点として財政をやっているわけでありまして、どうしても経済全体の中における位置づけということを考えざるを得ないわけであります。  さっきも申し上げましたように、日本が将来福祉国家というときに、本当にたとえばスウェーデンのようなあれほどの租税負担率また社会保険の負担率までも覚悟して持っていくつもりなのか、あるいはそういう負担が嫌で、もっと安上がりの政府あるいはスモールガバメントを志向するのか、実はその辺の選択こそ最も重要な選択でありまして、それさえ決まってしまえば、あとは全部解決すると言ってもいいくらい基本的な選択であります。ところが、さっきも申し上げましたように、公共支出の方の選択と負担の方の選択とが実は完全に結びついていなくては困るのでありますが、それがぶった切れているということでありまして、そのバッファーとなって、両者の間の乖離となっているのが実は公債という借り入れというものであります。  そういうことで、私も財政のメカニズム、特に政治的な要因また国民、住民、納税者の心理状態というものの現実を考えてみると、どうしても負担の方は嫌で――財政学においても租税とは何ぞやと言うときに、負担というふうに規定する。実はちょうど私的財のリンゴに対して払う百円と変わらない公共サービスの便益が対応しているはずでありますが、しかし、納税者の心理においては、その両者の対応が余り明確でないために、どうしても負担として感じるということで、政治家もなかなか増税というのは言い出しにくい。  ところが、さっき陳情、それは交付税改正に対する陳情でありましたが、一般的に公共財サービスに対する拡大の要求は絶えざる形で生じてくるということでありまして、たとえば将来の年金制度に対しましても、これは私は財政学者として将来を展望してみると、時限爆弾を抱えている以外の何物でもないということでありまして、さっきも政府資金と民間資金との間の金利差があるということで、その利子の負担をどちらでやるべきであるというのがちょっと問題になっておりましたが、しかし、実際なぜ政府資金の方が安いかということを考えてみると、何も政府のたとえば郵便局の方が必ずしも銀行よりも能率がいいということではないと思いますし、むしろ実際には、将来の年金の給付などを考えれば最高の利回りで運用すべきものを、実は庶民から集めた金だということで、余り利回りとは関係ないような形で運用していく。したがって、そのツケはどこに回ってくるかといいますと、将来の年金はまず積立金からはとても払い切れないということで、いわば将来の賦課方式を前提として、その租税負担を先取りしているから安いだけのことであります。  だから、本当にこれからすさまじい高齢化社会を前提といたしまして、余り臭い物にふたをするようなことではとてもコンセンサスづくりが間に合わないということでありまして、この交付税率の引き上げということも、実はそういう広いコンテクストの中での選択になってまいります。  全体としての国、地方両方を含めての税負担を上げないで交付税率だけを上げるということは、もしほかのたとえば国庫支出金などは以前と同じでそれだけ上げるならば、何のことはない公共部門内の国から地方への財源の移行があるだけのことでありまして、そうではなくて、国庫支出金は前よりも減る、そしてその分を一般財源としての交付税でもらいたいのだということならば、これはもう公共部門全体としては以前と同じであって、また国から地方への資金の移転、額も同じですが、ただ性格が違ってくるというだけのことであります。  だから、そういうことで交付税引き上げを要求するときに、そこから生ずるコンシクエンス、結果に対して、本当に一体どういうようなことを考えているのかというのが、どうしてもわれわれ財政学者としては非常に気になるわけでありまして、では国の場合はその分だけなくなるわけですが、どうするのだ、よし、では国庫支出金は減らすぞ、それでもいいというならば、これは整合性のある代案になります。あるいはその減った分だけ今度は一般消費税か何かを国税として導入して、その減った財源は国はちゃんと補てんするということならば、国は全体として使える額は一定になるでしょう。ただ、経済全体あるいは公共部門全体としては、以前よりも税負担率は高まってくるということになります。  したがって、とにかくこのままではだめだというのは全く明らかでありますが、しかし、その改革の前提として部分的な、いわゆるピースミールな解決策であると、結局一カ所を閉じるとほかのところに漏れが出てくるということになるわけでありまして、国、地方全体を通じて、要するに日本はこれからどういう社会をつくっていくのだという意味での全く率直な問題点の指摘、それから解決策、それからどういう解決策をとったらどういう結果が出てくるとか、その面に関してもっと実は率直に世論に訴えていかないと、どうも下手をすると間に合わない、時限爆弾が爆発してしまうのではないかというような憂慮、ヨーロッパなんかに行ってあの辺の状況を見ていて、非常に憂慮するわけであります。
  32. 渡辺精一

    渡辺参考人 簡単に申し上げます。  構造面では、地方行財政制度改正をする。そのときのポイントは、国から地方流れ財政資金の量を、目に見える形で少なくすることだろうと思います。  それから、運用面で言えば、先ほど申し上げましたが、自治体の自主裁量度をあらゆる方法を使って高めるということが必要かと思います。
  33. 草野威

    ○草野委員 いままで厳しい地方財政また国の厳しい財政、こういう問題につきましてどうあるべきか、いろいろな議論があったわけでございますが、そういう問題と同時に、いま、本年度の私ども国民にとって最大の課題、これが一つは減税問題であろうかと思います。  この減税問題について諸先生の御意見を伺いたいと思いますが、景気回復また国民の税負担の軽減、このためにはどうしてもわれわれは一兆円の所得税減税はやらなければならない、また、それに加えて住民税の減税も行うべきである、このように考えております。  そこで、減税を実行する場合、まず財源の問題にぶち当たろうと思いますが、税収が確定するのが来年の五月末くらいまではかかると思います。そういう中で、現在原油が大変値下がりをしている。これがわが国経済にどのような影響を与えるか。法人税収の伸びにどのような影響を与えるか。またさらに、いま景気対策の早期実施、こういう話も出ておりますけれども、これらによる税収の確保だとか、またさらに既定経費の節減であるとか、また予備費の圧縮であるとか不公平税制の是正だとか、いろいろな問題が出てくると思いますが、これらをあわせて考えますと、減税は財源についてもかなり明るい見通しが立つのではないか、このように思われるわけでございます。  そこで、五十八年中に減税を行うとすれば、たとえばことしの十二月、年末調整における減税の実施こういうことがもし行われるとする場合、この財源としてたとえば国債の発行措置、こういうものを含めて考えてみたらどうか。しかし、あくまでもそれは一時立てかえというような性質の特例公債、こういうような考え方もいろいろあるわけでございますけれども、こういうことを含めましてお尋ねしたいことは、減税の必要性、それから財源の問題、そしてもう一つはこれからの日本経済の動向、これらのことをあわせて御意見を伺えれば幸いだと思います。よろしくお願いいたします。
  34. 西村暠夫

    西村参考人 減税に対する国民全体の要望というのはきわめて根強く、かつ強いものであると思いますし、国民の一人としては、減税ということは実現されることを心から期待するものでございます。しかしながら、いま先生の御発言の中にもございましたように、すぐにその財源があるかどうかということ、それから、減税をすることによってどれだけの経済効果が期待できるかということにつきましては、その人その人の考え方あるいは価値観などによって見通しに大きな違いがあると思います。したがいまして、減税ということは基本的には好ましいことであるが、しかし、それが根本的な対応策として十分有効に機能をし得るかどうかということを見きわめた上での減税でないと、かえってまた不安定な状況をもたらすかもしれないというふうに思うわけでございます。  それから、その時期でございますけれども、これはできるだけ早い方が、だれにとってもそれは望ましいことであります。しかしながら、それをいますぐに実行できるかどうかということについてかなり多角的な詰めをした上でないと、踏み切れないのではないかというふうに私は考えます。  以上でございます。
  35. 沼田武

    沼田参考人 減税については国民の強い要望があることは十分承知しておりますけれども地方団体の側から申し上げますと、先ほども参考人の中からもお話ございましたけれども、たとえば一つの県なり市町村にとって一番中心になる税にいたしましても、その基本は地方税法という法律によって国が決めているわけでございまして、そういった財源措置については、言ってみますと、減税による穴埋め措置というものは、地方団体が全く力を持っていないというのが現状でございます。  したがいまして、減税をやるならやるで結構でございますけれども、その穴埋め措置については、地方税法の改正なりいろいろな形を含めましてやはり国によって措置をしていただかないと、地方団体としてはいかんともしがたいという状況でございますので、そういったことを兼ね合わせて、ひとつこの問題について対処していただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。
  36. 林正寿

    林参考人 それに賛成かどうかというのは、実はそれに対応した措置がどういう形でなされるかに依存いたしますが、もちろん減税ということは、さっきも申し上げましたように、租税というのは負担という形でとられておりますので、その面だけ見ればだれもが願うことで、ヨーロッパに行きましても、一番不平の多いのは税金の問題であります。  そして、さっきも申し上げましたように、減税をするのは、それによって公共部門と民間部門との分業の中でより小さな政府を選ぶんだという形での明確な選択ならば、大賛成であります。しかし、そうではなくて、減税して財源がなくなる、その分たとえば別の税金で埋めるとすれば、たとえば一般消費税で入れた場合には果たしてどちらがいいのかというのは、この辺は財政学で言ういわゆる差別税の問題でありまして、どちらがいいのかな。  そうではなくて、さらに税源がなくて、またまた公債に依存するという場合には、一体どっちがいいのかなということになりますと、私は非常に減税に反対でありまして、要するに、租税の場合には少なくとも負担という形で一つの歯どめになってくる。ところが、公債も実は将来の負担なんですけれども、現時点におきましてはその負担感が非常に少ないということで、さっき申し上げた便益と負担との関係で公共部門のサービスの大きさあるいはサービスの量を選択するという、その真の意味での選択がなくなってくるわけであります。したがいまして、そういうことならば大反対です。  ただ、こういう累進所得税は、長期にわたって放置しておきますと、非常にひずみが大きくなるというのは全くそのとおりでありまして、その場合には、減税というよりはむしろ制度自体を、課税最低所得あるいは累進の程度などを見直すということは賛成です。
  37. 渡辺精一

    渡辺参考人 何年にもわたって物価調整減税が見送られてきている、特に勤労者の可処分所得が抑え込まれてきているという点から考えて、減税は行った方が望ましいと思います。  財源でありますが、おっしゃいましたように、不公平税制の是正及び社会的に適正な意義を持っていないと考えられる補助金整理、この二つが第一に優先して考えられるべきであると思います。増税するべきかするべきでないか、あるいは赤字国債を財源にするべきでないかどうかということは、すべてその後の議論とするべきであると考えます。  前提としての条件をすべて行った上で、なおかつ財源が少ないというときには、恐らく増税ということが俎上に上ってくるだろうと思いますが、その場合には、国民全体の合意を得る手法があくまで貫かれて行われる必要がある。とりわけ、取りざたされておりますような一般的な消費税は、政府がその気になりさえすれば、税率をほんのちょっといじっただけで増収が期待できるということから税率を高くされやすい、したがって、物価がその都度引き上げられがちであるという問題を持っておるし、あるいは不公平を助長するという問題も抱え込んでおります。その点について特に国民の合意を得る手続を経ることが絶対的に必要だろう、そういうふうに考えます。
  38. 草野威

    ○草野委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  39. 田村良平

    田村委員長 部谷孝之君。
  40. 部谷孝之

    部谷委員 きょうは四人の参考人先生方、わざわざありがとうございます。  まず、四人の先生方にお尋ねをしてまいりたいと思います。  昭和五十年以降、財源不足対策といたしまして、地方債増発交付税特会借り入れという、いわば臨時応急的な措置が講ぜられてまいったわけであります。そして、地交法の六条の三の二項の点に関しまして、これはもう先ほど詳細な御意見をちょうだいいたしましたので、この点につきまして重ねての御意見をいただくということはいたしませんが、そのような状況の中で交付税会計の借入金についての国の二分の一負担のルール化につきましては、恒久的な制度改正ではないけれども、当分の間、地方財政に不足が生じた場合に対処し得る制度改正である、こういうふうに政府は統一的な見解を示し、その見解は現在も続けられておるわけです。  そして、さらに今年度新しく導入されました利子の二分の一負担、この点につきましても、実はきのうの自治省に対する私の質問に対して、自治省は、これは今年限りだ、こういうふうに答弁をいたしておるわけでありますけれども、同席しておりました大蔵省の方は、いや、必ずしも今年限りということは言い切れないというふうな答弁をしておるわけであります。  沼田知事は先ほど、この二分の一の利子負担については今年度やむを得ざる措置である、こういうふうな御意見もちょうだいしたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、そのように政府のこうした財源不足に対する対策というものがきわめてあいまいな中で、その場しのぎのそうした対策を今日までとってきたということについては、参考人先生方は皆さん御同感だろう、こういうふうに思うわけであります。  そこで、国と地方団体との間の財政関係につきましては、地方団体地方団体であるというそういう性格からいたしまして、恒久的、安定的でなければならないと思うわけであります。このための柱は、やはり地方税充実強化ということが中心に進められるべきであって、現行のいわば国税に片寄った税源配分、これを大幅に改めて地方税への配分強化を図っていかなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、この点につきましての先生方の御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  41. 西村暠夫

    西村参考人 何事についてもそうでございますが、一つの国が本当の意味で独立するということのためには、経済的な自立ということが必要になるわけでございます。ここで南北問題について触れる気持ちはございませんけれども、南の国々のずっと絶えず抱え続けてきておる問題は、経済的な自立能力が弱いという点にかかわると思います。と同じことが地方財政においても言えるわけでございまして、やはり恒久的、安定的な健全化を図るためには、何らかの形で地方財政改善を図らざるを得ないということになります。  いま御発言の中に、昭和五十八年から利子の二分の一の負担ということについて、国の側も償還において意見が必ずしも一致していないというような印象を受けたという御発言がございましたけれども、こういうことも、当初私の発言にございましたように、やはり国の地方財政に対する取り組み方の基本的な姿勢があいまいなままで来ておる結果ではないか。いや、あいまいなのではない、きちんとした姿勢あるいは方向づけを持ってやっていきたいんだけれども、窮迫化した財政状況がそれを許さないんだということかもわかりませんけれども、であるならば根本的な地方財政制度見直しをやるということが必要であるし、そのことが最終的に、先生御指摘になりました恒久的安定化ということにつながるというふうに思っております。  少なくとも、地方が本当の意味での地方の時代を迎えるためには、その経済的あるいは財政的なバックグラウンドがしっかりしたものでなくてはいけない。それをどうすれば実現できるかということをわれわれは常に考え、そして実現するための努力を払っていくべきであるというふうに思っております。
  42. 沼田武

    沼田参考人 地方税充実強化の問題でございますが、地方自治というものを支えるものは、一番中心になっております自主財源地方税がどれだけ充実しているかということによって決定的に左右されるわけでございますので、当然地方団体といたしましては、地方税充実強化をお願い申し上げたい。やはり国と地方との間の税体系見直しをしていただきまして、そういう中で国の税と地方の税をもっと合理的な税源の配分をしていただくということが、非常に大事じゃないかというふうに考えておる次第でございます。  現状の問題につきましては先ほどお答えしたとおりでございますけれども、将来の展望としてそういうことをぜひお願い申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  43. 林正寿

    林参考人 地方財政の安定のために自主財源、特に地方税充実するというのは、これは非常によく主張される議論でありますが、この点について、二点ほど日ごろ考えていることを申し上げたいのであります。  まず第一点は、税収とは一体何によって規定されるかといいますと、一つは課税標準でありまして、もう一つは税率です。そうして、私がイギリスにいたときに、イギリス地方財政、レーフィールド報告なんか勉強していたんですが、その委員会が各国にヒヤリングなんかに行ったときに、その感想として述べていることは、たとえば、スウェーデンには地方税として所得税がある、何とうらやましいことであるかということでありまして、イギリスには御存知のように一種の固定資産税であるレイト一本しかないわけであります。  そこで、そういう観点から日本地方税を見ると、課税標準に関して言うならば、あらゆる課税標準がカバーされているわけでありまして、あとは税率さえ高めれば税収は十分確保できるわけであります。そこでさっき申し上げた点に帰るわけでありますが、税率についても、確かに法人企業なんかに関するものについては、標準税率を超えて、ときには制限税率いっばい、ときには不均一課税という形でさえも取っているわけでありますが、ほかの税もちゃんと標準税率を超えて制限税率があるにもかかわらず、その辺は不人気だと思いますが、やっていないということでありまして、そういう事実を前提にしたときに、これから地方税充実しろということは一体何を要求しているんだろうというふうに考えるわけでありまして、もし標準税率を超えて取るというのは非常にやりにくいんだとするならば、それは標準税率の引き上げを要求するだけで、地方税は十分に充実できるということが第一点です。  それからもう一つは、もし本当の意味での地方自治、すなわち各自治体が自分のところで資金を調達してやりたいことをやるならば、全くいいんでありますが、御存じのように非常に大きな財政格差がありまして、もう一方ではナショナルミニマムという要請が、こういう近代国家、単一国家では不可欠の要請となっているわけでありまして、この辺、私もまだ自分でやったことがないのですが、そのうちやってみたいと思っているのですけれども、たとえば五〇対五〇にした場合に、果たしてあと、もちろんその場合でも恐らく交付税のような財政調整制度が必要だと思いますが、とにかく地方の税収の割合が高まれば高まるほど、税の偏在ということから団体間の格差が生じてくるということになると思いますが、その辺についてどういうような措置をしていくかという点が、もう一つ重要な眼目になると思います。  したがって、一応原則としてはその趣旨は大賛成でありますが、しかし、それは何もそれほど大げさに制度を全部ひっくり返すようなことをやらなくても、現在のままで比較的簡単にできるんではないかという感じがいたします。
  44. 渡辺精一

    渡辺参考人 お尋ねの趣旨は、地方税配分強化は必要かということだったと記憶いたします。お言葉から察すると、国税の一部を地方税に移譲しろというふうに受けとめられそうですが、そうだとすれば、私はそれは賛成だと申し上げたい。この場合、国家財政は苦しいのにそんな余裕はないという反論が直ちに予想されるところでございます。これに対しては、国家財政もいわゆる行政改革のもとで編まれた新年度予算でありながら、しかし、そこには全体としての国民の目から見てむだだと思われる合意が取りつけられそうな支出がまだまだ少なからず残されているということは、一つどうしても指摘したいことだと考えます。  それから、もう一つの予想される反論は、国家財政に比べて地方財政にはゆとりがあるということだろうと思います。しかし、何をもってゆとりと考えるのかというところについては多くの議論がございます。あわせて、ゆとりの有無で必要性を議論するのは筋違いでありまして、私は、地方自治体の仕事が新しい時代の要請に対応し切れる財源を持っているかどうかという点から議論をスタートさせるべきではなかろうかと思っております。
  45. 部谷孝之

    部谷委員 次に、現在は、本来一般会計負担すべき地方交付税財源につきまして、先ほどいろいろ議論がありましたいわゆる税率の引き上げ措置がとれないので、特別会計での借入金で賄っておる、こういうことになっておるわけでありますが、これは特別会計のあり方といたしましても不健全であると私は思います。むしろ一般会計借り入れをいたしまして、これを特別会計に繰り出す方が制度のたてまえとしては適切だ、このように思うわけでございますが、この点につきましても四人の先生方から御意見をいただきたいと思います。
  46. 西村暠夫

    西村参考人 結論だけを言えば、いま先生がおっしゃったとおりだと思います。要するに、物の考え方の筋道をすっきりさせ、しかも効率的に運営するという点で、改善された一つ考え方になるというふうに評価できると思います。
  47. 沼田武

    沼田参考人 特別会計で借り入れすべきか、一般会計借り入れすべきかということでございますが、いずれにしましても国会の審議をして決定することでございますので、当然その財政措置については責任を持った処置だというふうに理解しておりますが、受ける側としますと中身は全く同じでございますので、特に意見はございません。
  48. 林正寿

    林参考人 まず、その前提条件といたしまして、地方交付税の税率引き上げができないといういわば次善の策としては、責任のよくわからない特別会計よりも一般会計の方がいいという点までは賛成できるのでありますが、しかし、補助金をやるときに常に問題になる一つの問題は、一体どこに歯どめをつけるかということでありまして、これはイギリスなんかでも必ず補助金論のときに、オープンエンディッドな、いわば切りのない形でどんどん要求が出てきたとき一体どこで歯どめをつけるのだということで、実際にシャウプ勧告なんかの後で財源保障という性格を与えた場合には、国と地方との間で毎年けんかになったということも聞きますが、そういうどうせ財源が限られていて、まあ言ってみれば、国も地方もいわば同じ大きな船の中に一緒にいるようなものでありまして、むだな争いを避けるために、そしてまた、おのおのの団体が責任を明確にするためには、一定の比率でぴしゃっと、いわばシェアードタックスのような形になりますが、そういう制度が望ましい。  そういう意味では、この三二%が適当かどうかというのは別にいたしまして、明確に地方の分がどれだけであるということがわかって、それを前提にして、地方財政需要とほかの財源との関係で行政を行っていくのが責任ある地方自治体財政運営の姿であるというふうに考えます。
  49. 渡辺精一

    渡辺参考人 御処置に賛成です。なぜなら、それが全く筋であると思われるからでありますし、あわせて、財政の本当の実態を国民の前にわかりやすい形で明らかにすることのできる道であるからでございます。
  50. 部谷孝之

    部谷委員 いませっかく林先生の方から補助金のお話もありましたので、補助金に関しましてお尋ねをしてみたいと思います。  国庫補助金の手続の簡素化につきましていろいろと言われておるわけであります。去る四月五日の経済対策閣僚会議におきましても「今後の経済対策」を決定いたしまして、その中で、七〇%以上の前倒し執行を決定いたしまして、そして、補助金の交付及び地方債の許可についても事務処理の促進を図るという一項を実は入れて、特に指摘をしておるところであります。申し上げるまでもなく、臨調の基本答申の中でもそうした指摘が強くされておるところであります。ですから、政府景気対策につきまして公共事業の前倒しをいたしましても、補助金の早期交付というものがなされなければ、資金面からいってその効果が減殺されてしまう、こういうふうに思うわけであります。こうした点について先生方のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  51. 西村暠夫

    西村参考人 国庫補助の場合の手続の簡素化などにつきましては、実は私は愛知県の小さな市に住んでおりますが、人口五万四千足らずでございます。そこでも国庫補助金を受けておるわけでございますが、一つの例で申し上げますと、道路工事を実施する場合に、前年度要望を出し、内示を受け、設計書を添付して交付申請をする、そして決定通知を受ける、工事施行が行われる、工事完了報告をする、補助請求をして補助が完了する。私は、手続としてはこれは当然のことだと思われます。しかしながら、その過程におきまして補助を受ける金額に対してかかる経費も相当額に上り、そのことが果たしてどれだけ早急でしかも効率的な結果をもたらすかどうか疑問に思うということを、こういった小さな市の担当者自身がときどき口にするわけでございます。その意味におきまして、補助金を早期交付するということが、当初のねらいとする前倒し効果が有効に生きてくるということにつながるわけでございます。  ただし、これに関連しましては、従来のいきさつとかあるいは国のお金を使うということについてのきちんとした制度的な手続、処理の問題とか、そのほかそれをめぐる法的な詰めを十分にしなくてはいけないかと思います。  しかしながら、いま私たちが置かれている状況というのは、膨大な財政需要に対して財政収入が圧倒的に足らないというのが事実でございますから、そういった不足する部分を何らかの形で埋め合わすということについては、いま先生が御指摘になったような形で、国からの補助金をより早急に効率的たらしめるということをわれわれはもっと真剣に検討すべきであるし、それをすぐに実現できるような方策を探るべきであるというふうに思います。
  52. 沼田武

    沼田参考人 御指摘の点につきましては従来も要望してきたところでございますが、建設省とか農林省などの補助金内容を見てみますと、そういった手続についてかなり簡素化が行われてきている、それなりの努力はされているというふうに理解しているわけでございます。しかし、まだ十分ではないというふうに考えておりますので、可能な限りさらに簡素化努力をしていただきたい。特に予算が成立した四、五月ごろは、補助金流れてきませんためにいろいろな事業にブランクが生じてしまうというのが現状でございますので、そういった対応もひとつ考えていただく必要があるのではないかというふうに考えております。
  53. 林正寿

    林参考人 必要以上に繁雑な手続を要するとか、あるいはもらう補助金額に比して不当に高い費用がかかるというような補助金は、整理するという点については一〇〇%賛成です。  それから、交付の時期なんかについて、私も事実存じませんが、もちろんそういう七〇%前倒しをするならば、それに対応した措置をとるべきなのは言うまでもないと思います。  ただ、いわゆる国庫支出金、特定補助金というものを全面的になくすべきかというと、私は必ずしもそれには賛成ではないわけでありまして、場合によりましては、サービスの中で必ずしも地方のものと国のものと明確でないようなものがある、そのような場合には、費用の分担という点でこういう特定補助金というものも存在価値がありますし、それからさっき申し上げましたように、自治といっても、実は限定つきの自治というのが現実でありまして、一国内で均一社会、それから単一国家、ナショナルミニマムのようなものが必要だとすれば、やはりある程度個別のサービスについても国が責任を持ち、かつある程度の水準を達成するためのコントロールの手段というのは不可欠でありまして、そのためには、単なる法令のようなものよりも、こういう補助金がついた方がむしろ自由社会になじむ。これは一種の価格メカニズムの利用でありまして、単なる命令よりも潤滑油のような役割りを果たしているのじゃないかと思います。
  54. 渡辺精一

    渡辺参考人 手続を簡素化し、交付時期を早めよということだけについて言えば、御趣旨に賛成でございます。ただ、交付時期を早めよということに前倒し効果を高めるためという条件がつくとすれば、やや異論がございます。なぜならば、自治体の仕事は、地域住民のニーズに適応させながら年間を通してコンスタントに行われるというのが最も望ましいあり方だからでございます。そのあり方と景気対策考える国の方針との間の調整をすることが、少なくも、残された課題であると考えるからであります。
  55. 部谷孝之

    部谷委員 いろいろ御意見を伺ったわけでありますが、沼田知事さん、実はきのう私、自治省その他に対する質疑の中で――地方自治確立対策協議会という知事会等を中心とする地方団体の協議会がございまして、そこから「国庫補助負担金の改善合理化方策」、こうした要望書を出しておられます。昨年も、申し上げるまでもなく、七七%の前倒しをいたしました。そのときにも大体同じような要望書が出されたということです。  私は、五十七年七月に出されたその要望書を拝見いたしまして、それに基づいて政府に対していろいろ質問をしたわけでありますけれども政府の方で、いや、五十六年のときにかなり簡素化をやっておるんだ、特に手続、書類等の簡素化については具体的なテーブルを持ってまいりまして、かくかくやっているのだという少し不満のような顔色でありました。それで、知事会の方でももう少し正確な要請をしてもらわなければ困るというふうなことを言っておりましたけれども、いま知事さん、そのメンバーであるかどうかわかりませんので、具体的なお尋ねをするのが適当であるかどうかわかりませんけれども、その辺、なお地方団体として合理化、簡素化等についてかなり強い要望を持っておられるのかどうか、お答えをいただければ、ひとつお答えいただきたいと思います。
  56. 沼田武

    沼田参考人 補助金の交付手続の問題でございますが、確かにわれわれ現実に見ておりましても、かなり簡素化されてきておるというふうに理解しておるわけでございます。しかし、具体的に事務に携わる者にとりましては、こういう点をもう少し簡素化してもらいたいというような要望も具体的にはあるわけでございますので、そういった点についても、さらに国の御努力を賜りたいというふうに考えております。
  57. 部谷孝之

    部谷委員 それでは、時間が来たようですから、以上で終わります。ありがとうございました。
  58. 田村良平

    田村委員長 岩佐恵美君。
  59. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 本日は、参考人の皆さん、お忙しい中を御苦労さまでございます。  まず、西村参考人にお伺いしたいと思いますが、先生は、地方財政経費は今後とも肥大化する傾向があると述べられ、そのために地方交付税総額を決定する算定基礎見直しが必要であると言われました。この点では、臨調の基本答申においても、国が地方交付税の基準財政需要額で措置しているいわゆる標準行政について国が財源保障をするとの考えを示しているわけでありますが、先生の御主張は、この標準行政の水準をさらに見直すということになるのかどうか、その辺、もう少し立ち入って御説明を伺いたいと思います。
  60. 西村暠夫

    西村参考人 私は、算定基礎見直しをするということに関連しまして、これはかくあるべきだという答えをいますぐにここでお答えするということは、まだできないと思います。ただ、基本的な姿勢としまして、従来とは違った発想あるいは考え方によって見直すべきであるというふうに思うわけです。しかもそれについて、これこそ算定の一番いい方法であるというような方式はまだないと思います。したがいまして、その流れといたしましては、トライアル・アンド・エラーというような形でやってみて、過ちがあれば直していかざるを得ないというふうに思うわけでございます。しかし、私が考えておる一つの姿といたしましては、いま御指摘のかなり包括的な広い範囲での見直しをやってみるべきではなかろうか。そのことについての具体的な問題というのは、この後に出てくる事柄であって、まず基本的にそういうことに取り組むという姿勢をわれわれは持つべきではなかろうかということを申し上げた次第でございます。
  61. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 さらに西村参考人に伺いたいと思いますけれども自主性を持った地方財政運営のための改革意見として、先ほど、より広範囲の行政項目に分けた包括的な補助金制度改革する必要があるというふうに言われましたけれども、現実の問題として超過負担の問題などもあってむずかしいとの意見もあるわけですが、具体的にはどの程度の姿を想像すればよろしいとお考えになっておられるのか、この点、補足的に御説明をいただきたいと思います。
  62. 西村暠夫

    西村参考人 先生の最初の御質問に対する答えと同じでございまして、私としてはまず基本的な姿勢がいかにあるべきかということに重点を置いて申し上げておる次第でございます。他の参考人方々がいままでにも申されましたように、かなりの改善が行われており、その補助金を出す場合に包括的な形で補助金を出すとか、あるいはたまたま私が表現しましたメニュー方式というような形もだんだんとられるようになりつつあるということも事実と思っておりますけれども、しかし、これがやや形式的な面が残っておるのではないか。つまり、もっと地方地方自治という精神を生かして国から出された補助金地方のペースで有効に活用できる、そういうシステムを今後確立していく必要があるのではないかという、その基本的な姿勢についてまず主張したかった次第でございます。
  63. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 もう一点伺いたいのですが、地方財政の恒久的、安定的な充実改善が必要との御発言があったわけですが、その内容として、法人所得税の地方への移譲などを挙げられましたが、地方交付税の税率を幾らとしたらいいのか、あるいは地方税の面での改善はほかにどんなものが挙げられるかなど、交付税地方税についてもし具体的なお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 西村暠夫

    西村参考人 これにつきましても、前二つの問題と同じでございまして、詰めをしていく過程において数多くの解決すべき技術的な問題があると思われますので、私は、たとえば三二%を三五%にすべきであるとかどうとかということより、むしろこの問題についての抜本的な考え方の改革、そういうものをぜひともここで皆様方にお考えいただきたいと思っておる次第でございます。改革というのは、ときには肉を切り血を流すという、そこまで思い切った覚悟が必要でございますが、いまやそういう時期に来ているのではないかということを申し上げたい、そういうことでございます。
  65. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 林参考人に伺いたいと思いますが、先ほど便益と負担の関係についていろいろと御主張がありましたけれども、私は、憲法上の国の義務など福祉国家としての基本的な枠組みがわが国に存在する以上、簡単にこの考え方に同意をすることができないというふうに思っているわけですけれども、先生の御主張のように便益と負担の関係がストレートにあらわれている諸外国の事例が何かございましたら、その事例を通して、その考え方あるいはメカニズム等についてお示しをいただきたいと思います。
  66. 林正寿

    林参考人 確かに、総論としての福祉国家の建設、あるいは本当に社会の弱者である人たちに対して連帯に基づいてお互いに助け合っていく、こういう理想自体は全く私も賛成です。  ただ、現在の西欧諸国、いわゆる福祉国家と言われるスウェーデンを初めとしてイギリスだとか、ドイツも非常にそういう色彩が強いのですが、大体西側福祉国家を見ておりますと、非常に行き詰まりを感ずるということであります。現に、野党であったときには最も強烈に反対していたミッテランさえも、公務員の賃金の凍結さえもせざるを得ないというような、そのくらい緊迫しているのが現状でありまして、それでむしろ流れは逆になってきている。これはイギリスのサッチャーがそうだし、アメリカのレーガンがそうだし、今度はドイツのコールが、まさに幾ら何でもちょっと行き過ぎじゃないかというような形で、どこまで成功するかわかりませんが、歯どめをかけてきている。そして日本の場合には、私は幸いにしてと申し上げたいのでありますが、そこまで行っていない。これはもうとにかく行った道を帰るということは血みどろの苦しみでありますが、行かない前に方向転換をするのははるかに簡単であります。  そういう意味で、ではどういう形で便益と費用とが対応していくかといいますと、まず一番端的には、便益が個人に分割して帰属するようなものは極力受益者負担に持っていくということでありまして、それから今度は、そうではなくて、いわゆる公共財と言われる一般税でやるような場合でありましても、たとえばイギリスなんかでは、さっきレイトの例を挙げましたが、国から幾ら補助金が入ってくるかということがわかれば、あとはその地方公共団体がどれだけ支出するかということを前提としてそのレイトの税率を調整していって、その負担と便益との比較考量がなされるというようなメカニズムが一つの例だと思います。  それから、ほかの例といいますと、ただこれは物の考え方の違いが非常にあるのでありますが、国と言うときに、実はわれわれ財政学者としては、僕は授業中にも生徒に言っているのでありますけれども、確かに国という一つの実在を考えるのは便利な場合が非常に多いことは多いのでありますが、しかし、負担の面から考えるときには、国とは何ぞやというと、実は自分自身か隣のだれかということであります。したがって、国の負担ということを言わないで、自分が直接の料金の形で、たとえば教育でも授業料の形で負担するかあるいは税金の形で負担するか、もし自分がいずれの形でも負担しないとするならば、隣のだれかにいかなる理由で負担させるかということを考えるべきで、とかく国とか社会というのが非常に便利な架空の――架空といったら負担の面で架空という意味でありますが、何か国の責任というと自分が負担しないで済むような錯覚を非常に与えている、これが現在の最も憂うべき徴候であるというふうに私は考えております。
  67. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 渡辺参考人にお伺いしたいのですが、五十八年度八千五百二億円という巨額な精算措置、これは交付税の一〇・五%に当たるわけですが、こういう措置がとられました。これについて参考人はどう思われるか、伺いたいと思います。
  68. 渡辺精一

    渡辺参考人 その八千五百億円というのは、五十七年度との関連で行われた措置のことでございますね。
  69. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 五十六年度です。
  70. 渡辺精一

    渡辺参考人 失礼しました。五十六年度の関連ですね。  私は、そこにどんな政治的な配慮があってのことかよくわかりません。わからない立場考えを申し上げるとすれば、やむを得ないのではないかと申し上げざるを得ません。
  71. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私どもの党は、やむを得ないのではなくて、これは補正予算を組むべきであるということを言ったわけでありますけれども……。  最後に、沼田参考人にお伺いをしたいと思います。  第二臨調の最終答申でございますが、これには道州制こそ盛られなかったわけでありますが、「都道府県の広域化による地方圏の行政機構についても、長期的・総合的な観点から検討を行うべきである」というふうに言っているわけであります。こうした臨調の答申について御意見を伺いたいと思います。  それから行革一般、先ほどちょっと触れておられましたが、機関委任事務あるいは地方事務官、こうした問題について御意見を伺いたいと思います。
  72. 沼田武

    沼田参考人 第二臨調の答申の中にいろいろなものが盛り込まれているわけでございますが、私も地方団体の側で出ているものですから言葉についていろいろ制約がありますけれども、やはりいまの都道府県制度また市町村制度、そういうものでいいのじゃないかというふうな考え方を持っておるわけでございまして、もっと広域的な処理をする場合には、たとえば法律上にもそういった都道府県同士が連合するいろいろな制度がございますので、広域処理についてはそういうようなことをうまく運用しながらやっていけばいいのじゃないか。道州制とかそういうものにいままでも何回か議論がありましたけれども、そういうことによることによって、むしろ地方自治というのは非常な後退をしてしまうのではないかということを考えているわけでございます。  それから、行革の問題に関連いたしましての御意見でございますが、機関委任事務については先ほど申し上げたとおりでございますが、機関委任事務ということを言っておりながら、実質的には地方団体の固有事務になっておるものがかなりあるわけでございますので、これはやはり実態に合ったようなかっこうで直していただきたいというふうに考えるわけでございます。  それから、地方事務官の問題につきましても、長い間いろいろ地方団体側としても御意見を申し上げてきたわけでございますけれども、基本的には、地方事務官のいろいろな仕事の内容を見て、国に属した方がいいとか地方に属した方がいいというような議論がされておりますけれども、大勢は国の事務に非常に重点が置かれて結論が出されているということについては、余り賛意を表しかねるというふうに考えておるわけでございます。  いずれにしましても、地方事務官が国の事務官になるか、都道府県の職員になるかというようなことについての際には、十分全般的な状況配慮しながら、そのために混乱が起こらないような措置をしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  73. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  74. 田村良平

    田村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多忙中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る二十五日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十二分散会