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1983-04-26 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十六日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       狩野 明男君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       椎名 素夫君    白川 勝彦君       谷  洋一君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       毛利 松平君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    正木 良明君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         経済企画庁調整         局審議官    横溝 雅夫君         経済企画庁総合         計画局審議官  及川 昭伍君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房審         議官      岩崎  隆君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁次長   酒井 健三君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         資源エネルギー         庁次長     川崎  弘君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君  委員外出席者         経済企画庁調整         局財政金融課長 宮島 壯太君         経済企画庁調査         局審議官    海野 恒男君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社経理局長   岩下  健君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人        (日本銀行総裁) 前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     毛利 松平君   笹山 登生君     谷  洋一君   塩川正十郎君     狩野 明男君 同日  辞任         補欠選任   狩野 明男君     塩川正十郎君   谷  洋一君     笹山 登生君   毛利 松平君     粕谷  茂君     ───────────── 四月二十日  貸金業規制等に関する法律案(第九十六回国会衆法第三一号)(参議院送付)  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案(第九十六回国会衆法第三二号)(参議院送付) 同月十五日  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願池端清一紹介)(第二三三七号)  同(伊賀定盛紹介)(第二三六三号)  同外一件(山本幸一紹介)(第二三六四号)  同(塚田庄平紹介)(第二四七九号)  税制改革に関する請願阿部喜男紹介)(第二三三八号)  同(池端清一紹介)(第二三三九号)  同(菅直人紹介)(第二三四〇号)  同(小杉隆紹介)(第二三四一号)  同(中馬弘毅紹介)(第二三四二号)  同(依田実紹介)(第二三四三号)  同(米田東吾紹介)(第二三四四号)  同(渡部行雄紹介)(第二三四五号)  同(伊賀定盛紹介)(第二三六五号)  同外一件(井岡大治紹介)(第二三六六号)  同外一件(勝間田清一紹介)(第二三六七号)  同(木島喜兵衞紹介)(第二三六八号)  同外一件(久保等紹介)(第二三六九号)  同(山田耻目君紹介)(第二三七〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二四八〇号)  同外一件(上原康助紹介)(第二四八一号)  同外五件(川俣健二郎紹介)(第二四八二号)  同外一件(河上民雄紹介)(第二四八三号)  同外二件(後藤茂紹介)(第二四八四号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願新村勝雄紹介)(第二三七一号)  同(山下徳夫紹介)(第二三七二号)  一兆円所得減税等に関する請願勝間田清一紹介)(第二四七八号) 同月二十二日  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請願中西績介紹介)(第二四九八号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二五二八号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願嶋崎譲紹介)(第二四九九号)  同(中西績介紹介)(第二五〇〇号)  同(馬場昇紹介)(第二五〇一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二五二九号)  同(小川省吾紹介)(第二五三〇号)  同(大原亨紹介)(第二五五〇号)  同外二件(鳥居一雄紹介)(第二五五一号)  同(湯山勇紹介)(第二五五二号)  同(佐藤誼紹介)(第二六二三号)  同(長谷川正三紹介)(第二六二四号)  同(田口一男紹介)(第二六四四号)  同(楯兼次郎君紹介)(第二六四五号)  同(栂野泰二紹介)(第二六四六号)  税制改革に関する請願井上一成紹介)(第二五〇二号)  同(串原義直紹介)(第二五〇三号)  同(村山喜一紹介)(第二五〇四号)  同(山花貞夫紹介)(第二五〇五号)  同(横山利秋紹介)(第二五〇六号)  同(小川省吾紹介)(第二五三一号)  同外一件(加藤万吉紹介)(第二五三二号)  同(稲葉誠一紹介)(第二五五三号)  同(金子みつ紹介)(第二五五四号)  同外一件(八木昇紹介)(第二五五五号)  同(大島弘紹介)(第二六〇五号)  同(森井忠良紹介)(第二六〇六号)  同(伊藤茂紹介)(第二六二五号)  同(小川国彦紹介)(第二六二六号)  同(川本敏美紹介)(第二六二七号)  同(湯山勇紹介)(第二六二八号)  一兆円所得減税等に関する請願岡田利春紹介)(第二五〇七号)  同(八木昇紹介)(第二五〇八号)  同(山本幸一紹介)(第二五〇九号)  同(大原亨紹介)(第二五五七号)  同(松沢俊昭紹介)(第二五五八号)  同(湯山勇紹介)(第二五五九号)  一兆円の減税等に関する請願田中恒利紹介)(第二五三三号)  所得税等減税に関する請願逢沢英雄紹介)(第二五四九号)  所得税減税及び大型間接税導入反対に関する請願土井たか子紹介)(第二五五六号)  大型消費税阻止不公平税制是正に関する請願(辻第一君紹介)(第二六三九号)  同(野間友一紹介)(第二六四〇号)  同(不破哲三紹介)(第二六四一号)  同(蓑輪幸代紹介)(第二六四二号)  同(渡辺貢紹介)(第二六四三号) 同月二十五日  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願阿部喜男紹介)(第二六六七号)  同(小林進紹介)(第二六六八号)  同(村山喜一紹介)(第二六六九号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二七七八号)  同(北山愛郎者紹介)(第二七七九号)  同(山本政弘紹介)(第二七八〇号)  中小企業事業承継税制実現に関する請願外百十四件(小沢貞孝紹介)(第二六七〇号)  税制改革に関する請願五十嵐広三紹介)(第二六七一号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二七八一号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二七八二号)  同(小野信一紹介)(第二七八三号)  同(北山愛郎紹介)(第二七八四号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願池端清一紹介)(第二六七二号)  同(石田博英紹介)(第二六七三号)  同(熊川次男紹介)(第二六七四号)  自動車関係諸税の減免に関する請願阿部哉君紹介)(第二七七七号)  一兆円所得減税等に関する請願日野市朗紹介)(第二七八五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出第一号)  国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案内閣提出第三七号)  電源開発促進税法の一部を改正する法律案内閣提出第三八号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案について、本日、参考人として税制調査会会長小倉武一君及び日本銀行総裁前川春雄君の両君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 森美秀

    森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正木良明君。
  5. 正木良明

    正木委員 きょうは、いま一番大きな焦点になっている所得税減税の問題について、大蔵大臣にいろいろとお尋ねしたいと思います。  この減税の問題については、御承知のように、五十七年度においては衆議院議長見解が出され、そして減税方向ということは明確になったわけでありますが、結果的には、五十七年度減税ということはうまくいかないということになってしまいまして、非常に残念に思っているわけでございます。  さて、五十八年の減税については、さきに国会において自民党野党の間に幹事長書記長会談が開かれて、五十八年中に景気浮揚に役立つ相当規模大幅減税をやるということが合意されているわけですね。私は、これで自民党は五十八年中に減税をやるという意思をはっきり内外に宣明したものと受け取っているわけで、これをやらないということは考えていないのです。ところが、どうも大蔵大臣考え方等マスコミを通じてわれわれの耳に入ってくるのは、たとえば五十九年の一月に実施する、こういうことが伝わってまいっておりますが、これは大蔵大臣、どうなんですか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 減税に関するいわゆる二階堂幹事長を初めとする各党合意、それに基づく議長見解、さらには後藤田官房長官発言、一連したことについては、まさに尊重すべきものであるという考え方には基本的に変わりはございません。  そこで、昨年を振り返ってみますと、三月の五日でございましたか、いわゆる小委員会構想というものがこれまた各党合意の線でまとまって、いろいろ御議論をいただいた。私は、その議論の経過なり、評価すべきものであると思っております。しかし、残念ながら財源問題で議まとまらず、こういうことに終わったわけであります。したがって、その小委員会議論というものをフォローをいたして、一つは見てもみました。そうして、それらの中で合意された問題、たとえば赤字国債財源としないとか恒久税制考えるべきだとか、そういう問題と、また今度の合意そのもの考えてみましても、いわゆる本格的な減税ということと理解をすべきである。  したがいまして、昨日、本年度初めての税制調査会総会をお開きいただきましたので、政府側から、国会における減税に関する議論等をまさにつまびらかに報告をいたしますとともに、十分な御審議をお願いしまして、そして、税制調査会におきましても所得税住民税に関する部会を設置するというところまで決まったというふうに報告も受けておりますので、従来からお答えいたしておりますとおり、税調に対しては、いわば正確に国会等での出来事を報告をいたしますことによって御判断をいただけるものと期待をして、政府として、特に予見を持ってこれに意見を述べるという立場をとらないで対応していこうということでございますので、時期、規模というものを直ちに確定する段階にはないというのが現実でございます。したがって、本委員会においても五十九年一月一日からやるべきだというふうな発言もありましたが、いま、そのことも含めてそれを確定的なことを申し上げる状態にはないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  7. 正木良明

    正木委員 これはきわめておかしい議論でしてね。  あなたは大蔵大臣でありますから、自民党野党との間の話し合いということについてはまさに当事者ではありませんけれども幹事長書記長会談の中でいろいろ議論された中身は、要するに五十八年度中とは言っていないのでね。五十八年度中と言えば、五十九年の三月三十一日まで五十八年度でありますけれども、この与野党幹事長書記長会談におけるところの合意というものは、あくまでもそういう会計年度で話をするのではなくて暦年でこれを詰めていこうという合意が完全に成り立っているわけです。そのためにわざわざ、五十八年度という言葉があったのを、その度を外して五十八年中ということにこの会談の中では話がなされている。それはなぜかと言えば、暦年の五十八年中、要するに五十八年の十二月三十一日までに減税するんだということの合意ということになるわけですから、これはやはり尊重してもらわぬといかぬと私は思うのですよ。同時にまた、このことについて予算委員会において、これは三月二日でありますが、後藤田官房長官は明確にそう言っている。「与野党代表者会議において、自民党幹事長から、財政事情困難な時期ではあるが、国民世論の動向にこたえ、景気浮揚に役立つ相当規模減税を実施するための財源確保し、所得税及び住民税減税についての法律案を、五十八年中に国会提出するとの確約があったことは承知をいたしております。」ここでもわざわざ度を使っていない。  したがって、大蔵大臣は、いま時期は明確ではないと言うけれども、もし仮にこの与野党代表者会議におけるところの合意を尊重するという気が政府並びにそれを構成する大蔵大臣にあるというならば、これは当然遅くとも五十八年十二月三十一日までの間にこの減税を実施するんだということを明確に言ってもらわなければいかぬと思うのですが、どうでしょうか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 これは確かに「五十八年中に国会提出するとの確約があったことは承知をいたしております。政府としても、これを尊重いたします。」こう申しておりますので、私も、その線に沿った努力をしなければならない問題だというふうに理解をいたしております。  そこのところで、またこれからいろいろ御議論いただく問題だと思うのでございますが、私は、これは税調任期がちょうど十一月に参りますので、その辺がある意味において答申をいただける一つ期待のできるところではないかということを考えますと、この文書に書いてあります「五十八年中に国会提出する」ということに対して「尊重いたします」と申しておるのでありますから、これも期待可能性範囲内にある問題ではないかなという理解をいたしております。
  9. 正木良明

    正木委員 いや、だからどうなんですか。五十八年中に減税を実施するという気持ちはあるのですか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに五十八年中に国会減税についての法律案提出をいたす確約があったことを承知しておるわけでございますから、今後どういう答申が出ますかがその期待範囲内に存在しておるというふうに考えております。
  11. 正木良明

    正木委員 これは、僕は本来的におかしいと思うのですよ。  たとえば、この減税の問題は与野党代表者会議において合意をなされた。あの合意をなされるときに、規模であるとか時期であるとかということを明確にしようという話があったけれども自民党二階堂幹事長は、現在五十八年度予算審議中であるので、ここで時期と規模を明確にするということは、要するに予算の修正ということに直ちに結びつくおそれがあるので、かえって大蔵大臣立場を困らせるようなことがあるであろうから、この辺は明確にはしておかないでもらいたいということで、そう言っているわけですね。だから、確かにそれも一理があるというふうに私たちは思ったからそれを承知したわけなんですが、しかし、予算が成立してもその点については全然詰まっていこうという形がない。これが一つの大きな疑問点です。  もう一つは、そういう与野党の間で政治的決着をつけなければならぬような問題を、与野党の間で具体的に詰めをしないでその前に、私たちの目から見れば減税の回避というかそういう問題も含めて税調諮問をしているということすら私はおかしいと思うのだな。これも行き方としては全くおかしい。これは、独自で政府提案するという問題ではなくて、その前提にはいわゆる与野党合意というものがあるのですから、それを全然やらないで政府がみずからの意思を明確にもしないで税調へ逃げ込もうとしている点に私たちは重大な不信感を持つ。どうでしょう。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 そこのところがなかなかむずかしい問題でございまして、今国会におきます与野党合意に基づく所得税減税は、去年の減税小委員会の経過から見ますと、特別減税いわゆる戻し税のような一回限りの減税とは異なる。したがって、五十八年度答申で指摘されるような課税最低限税率構造の見直しを含む恒久的な税制改正というものをまず想定をいたしたわけであります。  そうして、このような本格的な税制改正政府として検討作業を開始する以上は、やはり税制に関する基本的事項を調査審議する税制調査会にお諮りをしなければならないというのが筋ではないか。したがって、まず税制調査会においては、各党合意を含め国会議論されたもろもろの問題を念査して報告すれば、おのずから国会の模様はそれなりに反映した議論がしていただけるであろうという前提の上に立っておるわけでございます。いわば本格減税とでも申しましょうか、そういうことになりますと、やはり税制調査会を全くネグって結論を出すということはできないだろう。  そうすると、その税制調査会審議というものを原則どおりきちんといただいて、その土台として国会議論される問題を、国会はまだ会期半ばではございますが、いままでの問題を念査してこれを報告するというところから始めていっていただければ、国会におけるいろいろな議論各党合意の問題を含めて税制調査会議論をしていただけるということになりますので、政府としての対応としては、先般幹事長が私をお呼びになりまして、税制調査会総会を御都合を聞いた上で可及的速やかに開いて、まずこの問題を御検討していただくように開始をしろということに基づいて昨日税制調査会総会を開いていただいた。  したがって、私は、これからの進み方というのはどうなるかと申しますと、国会議論されたのをその都度税調報告して、それはやはり正確に伝えて御議論の御参考に供する。と同時に、政府としては各党の、これは決まっているわけじゃございませんが、やはり相談窓口とでも申しましょうか、いささか私見にわたりますが、そういうものが存在しておって、そこで意見を聞きながら、そのことも税制調査会へ逐一報告してまとめる方向で進めていきたい。だから、私どもとしては、昨年の減税小委員会のような存在というのは本当は各党合意でなされたものであるだけに大変願わしいものであると思いますが、終局的には政府の責任でやりますということをお約束しておるわけでありますから、その間において相談相手にはなっていただけないものかなという考え方を持っておるわけであります。
  13. 正木良明

    正木委員 国会におけるところの論議、特に与野党間の代表者会議におけるところの議論というものをつぶさに税調報告しているというけれども、これからの問題も逐一報告するというふうに大蔵大臣おっしゃいましたけれども与野党代表者会議合意というのは、五十八年中に景気浮揚に役立つ相当規模大幅減税をやるということが合意されたのであって、その後また代表者会議においてもっと具体的な問題について詰めをしようという機会自民党の延期によって延ばされてきているわけです。ですから、本当を言えば、そういう与野党合意というものがまだまだ未成熟なままで税調諮問をしておるというかっこうになっているわけですね、それはその後起こってきたことはすぐ税調の方へ報告をするとはおっしゃっておるけれども。  そういう点では、どうも私たちの目から見ると、何か税調へ預けて五十八年中の減税という問題を逃げようとしているとしか思えないわけですね。ですから、この点については大蔵省からも大蔵大臣からも二階堂幹事長をせっついてもらって、できるだけ早い機会に、予算が成立した後にはすぐやると言っているのだから、与野党代表者会議で具体的な案を詰めてくださいということを言うべきじゃないでしょうか。これが一つ。  もう一つは、窓口をつくって、これは恐らく政審会長がねらわれていると思うのだけれども、また例の減税小委員会みたいな形でああいうものをつくって、そして減税小委員会結論待ち結論待ちというような形で逃げようとしておる、こうとしか考えられませんから、これは熟考して御返事しなければいかぬ問題で、それは結構でございますなどとはいますぐ言えません。いずれにせよ、いまの大蔵大臣のお考えでは政府税調答申を待って法案づくりをやる。税調委員任期は十一月十二日であるから、恐らくそれまでに答申が出てくるでありましょうからそれからやる、こういうお考えですか。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的には、中間報告の形になりますか答申という形になりますか、それを待ってという考え方であります。  いま、これは熟考してから返事しなければならぬとおっしゃいましたが、それと並行するという表現が適切かどうか、しかし、昨年の減税小委員会を三月五日でしたか六日でしたか、私が幹事長代理でございまして、私どもとしてはあれに物すごい期待感を持っておったと思うのであります。しかし、結果的にそのときは予測しなかった六兆を超す税収不足というようなこともありましたが、少なくともあの議論中身を見る限りにおいて、大変に合意をされる努力は続けられてきた。私は、あらかじめあの小委員会ができれば合意に達しないだろうという期待を持ってあれをつくった、事ほどさように人は悪くもございませんので、大変あれに期待をかけておったわけでございますから、そうしたものが政府として税調国会論議の間に介在するものとしてあってほしいものだなという希望は持っておるわけでございます。いずれにしても、税調では部会をおつくりいただくことまでは進んだわけでございますから、いわばオーソドックスな、政府の責任においてやる場合の環境の整備の第一歩は踏み出したというふうに御理解をいただきたいところであります。
  15. 正木良明

    正木委員 さて、こういうことをごたごた水かけ論みたいなことを言っておってもしようがありませんので、ずばり結論をお聞きいたしますが、大幅減税五十八年中という約束があるわけでありますから、大蔵大臣は、ことしのいわゆる年末調整の時期に間に合わせるという考え方で進まれているのか、どうですか。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 当初、議論の中に年末調整云々の議論もあったことは事実でございます。が、それも税調にお諮りする場合はそういう議論があったということを正確に報告するべきもので、私の予見としてそれに間に合わすようにということはいけないのじゃないかと思っております。  それといま一つは、年末調整という問題になりますと、言ってみれば各企業等でかなりの作業を要する問題でございますので、時期的に間に合うか合わぬかというような議論も、そういう結論が出た場合にはやはりやってみなければならぬ議論一つだと思います。が、いま仮にそれが念頭にあったとしても、年末調整云々ということを国会議論としてお伝えすることは十分可能でありますが、それを一つの時限として限って諮問するという姿勢はとるべきではないじゃないかという考え方であります。
  17. 正木良明

    正木委員 ちょっと奥歯に物の挟まったようなお話で全然明確になっていない。もうちょっと具体的に聞きましょう。  もし五十八年中に年末調整に間に合わすという形で減税をやろうとすれば、その前に、御承知のとおり法律案を議決しなければいけませんね。そうすると、どう考えても三回しかチャンスがないですね。一つは、この通常国会で五月二十六日までにやる。もう一つは、参議院選の済んだ後の特別国会、参議院の場合は臨時国会というのですか。もう一つは、その後秋に召集されるであろうと予想される臨時国会、この三つ目のはどうなるかわかりませんが、これをあえて入れてもこの三回しかチャンスがない。この国会で出すという気はありますか。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 今国会の会期は五月二十六日で終わるということから考えますと、かねがね申し上げているように、本格論議の土台となる五十七年度の税収の決算が確定するのが七月であるとするならば、それまでに議論が間に合って今国会に出し得るという環境にはないというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  19. 正木良明

    正木委員 じゃ、参議院選挙の済んだ後の院の構成のための臨時国会がどうせ開かれますね。これでどうですか。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 参議院選挙というのは公職選挙法に基づいて任期前三十日、そして国会が存在した場合にはそれが終わって三十一日から三十五日の間でございますか、だから、仮に十二月まで延長になれば別として、一般論としてことしの十二月まで延長することもできぬでございましょう、もっとも半数あっても参議院は成立するということにはなっておりますが、その仮定の事実をどけて、一般的に任期が来ますのがたしか七月の九日でございますか、それを前提に置いて考えた場合に、院の構成とはいえ、あれは何日以内に開かなければいかぬのだったかちょっと忘れましたけれども、いわば税調審議がどん詰まり間に合うという時期ではない。九日というものがおおむねの予測を立てた任期という前提の上に立って、そのときに直ちに出せるというように審議の状態が進むとは思えないと思います。
  21. 正木良明

    正木委員 じゃ、あともう一回しか残りませんね。これでやりますか。これでやらないと年末調整に間に合いませんよ。秋の臨時国会が召集されるかどうかわからないけれども、あえて召集をして減税法案、所得税法の改正案を提出するかどうか。どうですか。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 そこのところは、そのときの政治判断ではなかろうかなと思います。  政権交代も当然のこと議会制民主主義にはあり得るわけでございますから、必ずしもいまからそれを予測するわけにはまいりませんが、秋の臨時国会、常識的に九月とか十月とかいろいろありますが、召集権者でない私から秋の臨時国会を明確に申し上げるということはちょっと適当でないかと思いますが、仮に、十一月十二日に税調任期が終了して、そしてその後国会が存在しておってというようなことを予測すれば、いろいろなことが考えられないわけではないというふうに思います。
  23. 正木良明

    正木委員 ここでやるよりほかに年末調整は間に合わないのですよ。ですから、そういうことは恐らく大蔵大臣がそのときまで大蔵大臣であるならば頭の中にあると私は見ていいだろうと考えております。  そこで、この前の減税小委員会財源の問題で大変行き詰まったわけです。それが結論を導き出すのに非常に苦労があって、結果的には小委員会を打ち切りにするよりほかに道がないという状況に立ち至ったわけなんです。そのときの状況といまの状況とは大分違うと思うのです。これは世間でも大きな話題になっている、要するに原油の価格が一バレル五ドル下がった、このことによって景気浮揚のためには非常にいい条件だ、こう言われているのです。  そこで、ちょっと経企庁、この原油価格が引き下げられたということで日本の経済に与える五十八年度ないしはそれ以降の状況というのは、もしわかったらお答えいただきたい。
  24. 宮島壯太

    ○宮島説明員 お答え申し上げます。  石油価格の低下に伴いまして、わが国経済が産油国に支払う石油代金が減少することになります。そういたしますと、まず企業部門におきましては、原料コストの低下から全体としては収益の改善となりまして、設備投資等にも好影響を与えるものと考えられます。また、家計部門でございますけれども、雇用者所得の増加や物価水準の低下を通じまして実質購買力を増加させ、個人消費や住宅投資にもよい影響をもたらすものと考えております。さらに、物価が下がりますのでデフレーターが低下いたします。それを通じまして政府支出等その他の需要項目の実質値を高めるという効果がございます。輸出につきましては、産油国向けの輸出にはマイナスの影響を与えることは避けられませんけれども、米国景気の回復がより一層確実になる点等を考慮いたしますと、わが国の輸出環境にも総じて良好な影響を与えるものと考えられます。  したがいまして、石油価格の低下は、わが国経済成長及び貿易収支に総じて良好な影響を与えるものと考えております。
  25. 正木良明

    正木委員 宮島課長、そのことはGNPに対してはどんな関係になりますか。
  26. 宮島壯太

    ○宮島説明員 お答えを申し上げます。  経済企画庁の世界経済モデルで計算をいたしますと、石油価格五ドルの低下が実質GNPを〇・三五引き上げるという数字が出ております。ただ、これは実質GNPは引き上げることになりますけれども、物価が下がりますのでGNPデフレーターも当然低下することが考えられますので、名目GNPにつきましては、恐らく横ばいかあるいはむしろ下がる方向に働くのではないか、このように考えます。
  27. 正木良明

    正木委員 物価が安定するということに関連して、名目GNPが実質GNPがふえるようなわけにはふえてはいかない、横ばいないしは低下する。しかし、先ほどの日本経済に対する影響の中でおっしゃったように、企業収益には相当大きなプラスになるとお考えですか。
  28. 宮島壯太

    ○宮島説明員 先生おっしゃるとおり、原油価格の引き下げは、一般的には企業の生産コストの低減や国内需要の増加を通じて企業収益の改善につながると考えております。
  29. 正木良明

    正木委員 大臣、いまお聞きのとおりです。企業収益がよくなったら税収はふえますか。
  30. 竹下登

    竹下国務大臣 これは主として法人決算でございますから、年度間を通じてのそれぞれの決算時期等の問題がございますので、どれほどの影響があるかということについて、その見通しを立てるのはなかなか困難な問題がある。一方また、石油プロパーの業界そのものは、ある意味において在庫評価損とかいう問題もございますので、いわば企業収益をプラスの方へ引っ張るためにはかなりのタイムラグがある。しかし、一般論として企業収益がふえれば税収はふえるかという単純な図式は私も否定いたしません。
  31. 正木良明

    正木委員 主税局長、こんなことは全然計算してないですか。予測を立ててないですか。
  32. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 原油の値下がりが実体経済に好影響をもたらす、一般論としてそれは否定できないと思うのでございまして、それが実体経済にいつの時点でどういう形であらわれてくるかということは、これはマクロ的にはいろいろな議論が行われていることは事実でございますけれども、実際に原油の値下がりがございまして、その後各種の価格の展開いかんによってそれが企業の収益にどれだけ反映されるか、あるいは家計の実質的なプラスにどれだけ分配されるのか、いろいろな対応が考えられるわけでございます。したがって、現時点で計量的に税収にどれだけの影響がいつごろからあらわれるかということを一義的にはじき出すのは非常に困難でございます。  これは、かねがね申し上げているところでございますが、恐らく原油の値下がりによって先ほど御議論がございましたように企業収益が向上する、それは法人税収にはね返るということで税収に好影響をもたらすことは事実でございますが、ここで御注意願いたいのは、税収面では、かつての一次オイルショック、二次オイルショック、これはいまとは逆の現象であったわけでございますが、そういう事態が起きて税収に反映するまで、かなりのタイムラグがあるわけでございます。  特に、最近時点ではほとんどの法人が一月決算に移行しておりますから、実体経済にそういういい影響が出てそれが税収面に反映いたしますのは、恐らく理屈から考えて十二カ月以上かかるということになりますれば、現実問題として原油の値下がりによる税収動向を具体的に私ども議論できるのは、やはり現時点から見まして五十九年度以降の問題かなということもございますので、現在計数的に内部でそういう作業はいたしていないのが現状でございます。
  33. 正木良明

    正木委員 しかし、石油の輸入価格が値下がりをすることによって、少なくともマクロで見て実質経済成長では〇・三五押し上げるということは、これは経企庁がそういうふうな判断をしているわけですね。ただ、デフレーターの問題が、先ほどお話しがあったように修正しなければいかぬから、名目成長率というものについては、これと同じように伸びるとはちょっと考えにくいということですね。  そういう条件が片方にありながら、片方では確かに企業収益というものがふえてくる。企業収益がふえてくるということになって、それが一月決算にはもう間に合わぬとかなんとかというふうにあなたはお考えだろう、非常に慎重にお考えになっているけれども、税収に穴をあけてはいかぬという気持ちはわかるけれども、これは、僕はやはり好影響は出てくるだろうと思うのです。そうすると税収増になる。そうすると、いままでのような計算の方法ではなくて、要するに、名目成長率に弾性値を掛けるという形で税収を判断するということができなくなるから、それで弾性値の問題が変わってきて、五十八年度はこの一・〇五がふえてくるという形になるのじゃないでしょうか。  いずれにせよ、私は、五十八年中に石油価格の値下がりによるところのプラス条件というものが企業収益にはね返って、そしてこの企業収益からの法人税収入というものがふえてくる。これはタイムラグの問題もあるかもわからないけれども、しかし決算は来年の一月ですからね。タイムラグがあって、それがどうしようもないということになってくると、これはもう全然お話しにならなくなってくる。僕は、やはり五十八年中に企業収益が伸びて、税収が増加するであろうということは容易に想像できると思うのですが、どうですか。
  34. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 マクロの議論といたしまして、実体経済に好影響が出るということは税収面にも何らかの好影響が出るということは御指摘のとおりでございます。  同時にまた、マクロの議論といたしまして、現在租税弾性値が一をやや上回る程度までに回復してきているわけでございますけれども、これは、現在の税体系から考えましてもやや低きに失すると私ども考えておるわけでございまして、それは基本的には、企業収益によって代表されます法人税収の伸びが非常に弱いということでございますので、恐らく企業収益が好転してくれば弾性値は今後一を上回る水準を期待してもいいのではないか、これも御指摘のとおりでございます。  先ほど来申し上げておりますように、私ども年度の税収見積もりをいたします場合には、税目ごとの積み上げをするわけでございまして、たとえば中期試算のようにかなり中長期のマクロの税収展望をお示しする場合には、一定の名目GNPに租税弾性値を乗ずるという方法で、きわめてラフな展望を示しているわけでございますが、実際の年度年度の税収というのは、やはり税目ごとに積み上げるわけでございます。  そういたしますと、先ほどの議論にまた戻って恐縮でございますけれども、原油の値下がりというかっこうで税収に反映する場合、基本的には所得税、つまり家計の可処分所得と申しますか、収入なり所得にどういうふうに反映してくるか、企業の収益にどう反映してくるか、同時にまた、家計から支出される消費に対して課せられる消費税がどうなるかということで、結局、企業なり家計の具体的な経済展開を想定いたしませんと、マクロの議論というのはなかなかなじまないわけでございます。  それから、先ほど来タイムラグと申し上げておりますのは、第一次オイルショック、第二次オイルショックのときも、あのときは原油の値上がりでございますが、その事態が起きまして実体経済に何らかのタイムラグでそれが影響を及ぼしまして、結局、税収に反映いたしましたときには十数カ月から二十カ月ぐらいかかっているわけでございますね。それは、先ほど来申し上げておりますように、やはり法人の収益に反映するといたしましても、現実に税金として国庫に納付されます場合は、決算を終わりましてさらに二カ月後、全部即納する場合ですね。そういたしますと、理屈から考えますと十二カ月プラスアルファかかるわけでございます。  そういうことでのタイムラグということを申し上げているわけで、そういたしますと、五十八年にかなり企業の収益にいい影響が出始まったとしましても、五十八年度税収に全面的にそれが顕在化するということは、なかなかいままでの経験からいって考えにくいということを申し上げているわけでございます。
  35. 正木良明

    正木委員 非常に慎重論が主税局長の頭を占めているようでありますけれども、私は、やはりこれは直ちに影響は収益の方にはね返ってくるように思えて仕方がないのですよ、それをまだ数字でどうだと予測を示すわけにまいりませんけれども。  そこで、問題を別なところに移します。  大蔵大臣、おいでになるのかどうかわからないけれども、サミットですね、向こうでやはり日本の内需拡大という問題については、そのほか貿易条件の問題等もあるでしょうが、内需拡大のための日本の国内政策というものについての先進諸国からの要求が相当強く出てくるだろうと思うのです。そういうものに対して、何かみやげというか回答を用意しているのですか。
  36. 竹下登

    竹下国務大臣 五月末にサミットがあるわけです。現存する内閣が、私が死んだりいろいろなことがない限りは、大蔵大臣と外務大臣のシートがありますので参加することになります。その前に、院の御許可を先般ちょうだいいたしまして、きょう決定いたしましたので、あさってたちましてIMF・世銀の開発合同委員会、これは各国の大蔵大臣が参ります。それから引き続いてアジア開発銀行というふうな一連した会合がずっと続いていくわけです。  私は、いまのところの感じでは、言ってみれば、世界全体が財政赤字を縮小するとかあるいはインフレなき持続的な成長をそれぞれの国の自助努力で一生懸命やろうとかいう環境が非常に強くて、一部、全く皆無じゃございませんが、日本に対して世界経済の牽引車の役割りを果たすべきだとする主張、あるいはそれに伴う日本の経済運営政策についての注文というものは、それが非常なプレッシャーとしてかかってくるという環境にはいまないではないか、甘いといえば甘いわけですが、むしろそういう認識をいたしておるわけです。  各国の財政運営の指導者も訪日されましたり、あるいは私もヨーロッパへ参りましたりしておる間のいまの印象としては、むしろ、日本の財政赤字あるいは各国が共通して持つ財政赤字、それを克服するような努力というものがまず最初にあって、先進国共通しての、世界経済に好影響を与えるためのある種の牽引車的役割りというものは、その後の議論になりはしないだろうかというような感じがいたしております。まだ全く感じのままでございます。
  37. 正木良明

    正木委員 だけれども大臣、日本がまた輸出ドライブをかけるんじゃないかという——というのは、経済摩擦問題というのは、関税の引き下げだとか非関税障壁の解消だとか自動車などの輸出の抑制、こういうことで経済摩擦の解消に日本は一生懸命努力しているのです。しかし、日米関係だけを言ったって、アメリカではオートバイの輸入規制の問題であるとか、それに対して日本の大使が反論するとか、摩擦はますます激しくなっていると見なければいけません。それは、もうそういうことはいたしませんということを口で約束したって、なかなか信用してもらえないだろうと思う。  そうすると、どうしても政策として、日本は国内経済において国内需要を拡大する政策をこのようにとっているのだということを証明しなければいかぬだろう。ところが、所得税減税もやらない、公定歩合の引き下げもやらないというようなことで、果たしてサミットで説得力を持ち得るのかどうか。私は、そのことについて非常に大きな危惧を感じているわけです。そのためにこそやはり、公定歩合の引き下げは大蔵大臣の権限ではありませんけれども、少なくとも消費の拡大のために、可処分所得を増加させるための大型減税を実施するんだということを、この際内需拡大の一つの大きなてことして、政策として用意しておく必要があるのではないか、こういう面から、この減税の問題を考えているのです。こういう側面もあると思うのですが、どうでしょうか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、かつてのように日本の経済政策がいわば牽引車になるというようなことに対して否定的な見解を申し述べておりましたが、そうでなくて、先進国の間で若干でも景気の底離れというようなものが言われれば、それが自然的に日本の輸出というものが振興されたとしても、受け取る側では輸出ドライブをかけた、こういうことに受け取られるだけに、少なくとも、この内需の拡大のための施策の中の柱として所得税減税考えておるということの主張、これは一般論として正しいと思っております。だから、政府の責任で減税をやるということは、これは発言の許容の可能の中に入ると私は思っております。しかし、いま一つ、おかげさまでといいますか、三・一%の実質成長は五十七年度はおおむね確実になった。そして、インフレなき持続的な景気の回復というようなことで、これが結果として三・四%ということを五十八年度は申し上げておるわけでございますが、それをより確実にするための内需を中心としたもろもろの施策が、五日でございましたか、先般の経済対策閣僚会議で決まった当面の施策でございますので、これらを着実に実行し、そしてそれをかどあるごとに会合等で主張することによって、内需拡大のじみちな努力というものは評価をされなければならない問題ではないかというふうに考えております。
  39. 正木良明

    正木委員 私も拝見しましたけれども、ようあんないいかげんなことをしたなと思います。減税の問題なんか、これから検討すると書いてあるだけじゃないですか。それで、ほかの方は全部民間の活力を期待するということ。  それは、民間の活力を期待するということは決して間違った考え方じゃありません。いま、政府が主導してやっていくほど財政力が強いわけじゃありませんから、民間の活力を期待するということは決して悪いことはないけれども、どうして民間の活力を引き出すかということの問題については、具体的な方策は何ら触れられていない。  これは一例ですが、たとえば公務員宿舎というのは、三大都市圏で四百五十万坪もあるのだそうですね。これは大抵四階建てらしい。これを建てかえるというのを民間デベロッパーに任せて、そして四階部分までは従来どおり使って、それ以上を他に使わせるということだったら、民間デベロッパーは喜んで仕事をするらしいが、これの建設事業というものはもう何兆円となるらしい。こういう具体的な方策というものを提示して民間の活力を期待するというのならばまだ話はわかるけれども、ただ、政府じゃ手も足も出ませんから民間の方で活力を期待いたしますというそれだけでは、このことは十分ではないと私は思うのです。  だから、どうサミットでこの減税の問題を言われようと、「今後、減税の具体的方法、規模財源措置等について検討を進める。」ということだけしか書いてないこういう景気浮揚策なら、これはどうしようもないと思うのですよ。しかも、あなたは規模と時期をはっきりとなさらないわけですけれども、それは税調の方へお任せしますというようなかっこうになっているのですが、これでサミットで、説得力を持った内需拡大策という日本の政策を説明できますか。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 これはお読みいただいたとおり、「当面の課題」と「今後取組むべき課題」と二つに取り組んでおるわけでございますが、まず所得税減税問題については、きょう議論をしておる問題がベースになって、それなりの経過等についての発言機会があれば、これはできる課題であるというふうに私は考えております。  それから、民間活力の導入の中の公務員宿舎の問題ですが、確かに、議論され耳に入っておる問題の一つでございます。必ずしも所管ではございませんが、その場合、公務員ばかりまたりっぱなところへ住んで民間はどうや、こういう別の意味における官民感情というものもありはしないかというような話も、まだ話の段階でございますが聞いておりますが、一つ検討事項として、これは将来にわたってということでなく、急いで検討をされるべき課題ではなかろうかというふうに考えております。  基本的には、財政が対応するその力を失った今日でございますから、これは民間活力に期待するわけでございますが、その民間活力を引き出す方途として、金融の問題は別といたしまして、公共事業の前倒しの問題でございますとか、あるいは住宅建設の問題につきましても、募集開始を速やかに行うとか、親子二世代住宅ローンとか、これも五月十六日が受け付けで五月二十三日から実行されるということに決定を見たようでございますので、それなりに民間活力に期待するということは可能なものが数々あるではないか。  さらにまた、今度、いわば形としては五十七年度分になるわけでございますが、ASEAN諸国等に対する経済協力問題の中にも、プラントバージの問題とかいうことは、早急に効果を上げる課題の一つではないかというふうな理解の仕方をいたしておりますので、民間活力の方へ期待をするいわば決め手という問題よりも、積もり積もった効果というものに対してはねちっこく議論があれば発言をするのも当を得た発言ではないかなというふうに思っておるところであります。
  41. 正木良明

    正木委員 そこで、もうそろそろ時間が迫ってきましたから、まだまだ聞きたいことはあるのだけれども大蔵大臣、正直申し上げて減税をやるということについての腹は決まっているのですか。
  42. 竹下登

    竹下国務大臣 減税は、各党合意、それを受けた議長見解というものの背景を踏まえれば、政府の責任でやりますというお答えはすべきであるというふうに、私どももしかと認識をいたしております。
  43. 正木良明

    正木委員 その合意の中にある景気浮揚に役立つ相当規模大幅減税というのは、どれぐらいのことを考えているのですか。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 そこが、一般論としてどれほどの減税規模になればどれだけのいわば消費が刺激されるという数値は出ますものの、さてそれの財源を一体どうするか、こういうことになりますと、たとえば赤字公債ということを考えれば、それが金融市場全体に与える影響からしてむしろ景気の足を引っ張ることになったとすれば、それの数値の達成にむしろ逆効果をもたらしてはならぬという問題もございますので、したがって、景気浮揚に役立つというものは一体どれくらいかということになると、これをにわかに断言する状態にはない。それから、書かれてありますように、景気浮揚に役立つ相当規模減税を行うための財源ということも書かれてありますので、そこらあたりが今後の諸般の情勢をにらんだ大きなポイントになりはしないかなと思っております。
  45. 正木良明

    正木委員 財源というのは、財源政府の方で確保いたしますということをおっしゃっているのであって、ですから、幹事長書記長会談の中でも、千億や二千億なんというのは景気浮揚に役立つような金額じゃないということを二階堂幹事長は明確におっしゃっているわけです。それなら三千億ならというふうに、すぐそういうふうに考えられるけれども、われわれが希望していることは、やはり国税においては一兆円の減税ということをぜひやってもらいたいというふうに考えているわけです。一兆円についてはどうですか。
  46. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、いま正木委員の御議論にもあったように、そういう意見与野党を通じて存在しておるということも、正確に税調の中へお伝えすべきポイントとなる議論一つじゃないかというふうに考えております。  ただ、いまおっしゃった財源政府で調達する、これは最終的に政府の責任においてやるのは事実ですけれども、長い歴史的経過の中で、仮に一つのスキームができたとして、それは財源としてとるべき施策でないとかいろいろな議論も出てもなりませんので、やはり知恵をかしてちょうだい、こういう姿勢は与野党合意が円滑に実施されていくためにも持ち続けるべき姿勢ではないかなと思っております。
  47. 正木良明

    正木委員 姿勢は結構です。応じるか応じないかはまた別の問題ですから。  小倉税調会長あたりの意見をいろいろ漏れ承っておりますが、どうも大型間接税との抱き合わせということが非常に有力な意見のようにわれわれには察知できるのだけれども、大型間接税との抱き合わせでこの所得減税をやるのだというふうな考え方大蔵大臣の頭の中にあるのですか。
  48. 竹下登

    竹下国務大臣 税調に御審議いただくに当たって予見を申し上げる立場はとらないつもりでございますけれども、いわゆる大型、中型、小型、基準はなかなかむずかしい問題でございましょうが、そういうものを安易に念頭に置くべきものではないというふうには考えております。
  49. 正木良明

    正木委員 そこで、ちょっとこの際、竹入委員長が北海道で記者会見したときに、新聞の方が取り違ったのか、赤字国債財源にしろという報道がなされまして、あれは真意を十分に伝えていないので申し上げておきますが、先ほど、石油の輸入価格の引き下げによって企業収益がふえて税収増になると言われているのに大分タイムラグがある、大体一年くらいあるというふうな主税局長の話だった。  大蔵大臣、日本経済新聞がこの問題で上場の主要五十社に調査しているわけですね。それによると、五十八年度の下期つまり五十九年の三月の決算では、五十八年度の上期に比べて二〇・九%の増益が見込まれるというふうに調査の計数が出ているわけです。これは、どうなんですか、直ちに税収増につながるのでしょう。
  50. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 そういう収益動向の調査があるようでございますけれども、一般論として申しますと、上期、下期という場合はあくまで年度なりあるいは暦年でいろいろの場合があるかと思いますけれども、下期の決算期でも見ているわけではございませんので、先ほど私が申し上げましたのは、法人は、三月決算とか九月決算がかなりウエートが高いことは事実でございますけれども、それぞれ各月決算期に分散をいたしております。したがいまして、下期にたとえばいまおっしゃいましたように上期に比べまして仮に二〇%増益になるという基本的な傾向がございましても、それが直ちに法人税収が二〇%ふえるということにはならないわけでございます。
  51. 正木良明

    正木委員 それは、細かいことは私にもようわからぬけれども、結局増益があるから増収があるという、こういう図式になるのですよ。  そこで、そういう見込みがあるならばそれを見込んだ形で所得税法の改正並びに補正予算を組め、そのときに、まだ確定的なことがわからぬであろうから、確定的なことが大体第一次的にわかるのは五十九年の五月にならぬとわかりませんね。正確には七月じゃないとわからない。したがって、その場合、確定的に予算の計上ということが歳入増という形でできなければ、一時赤字国債財源にしておきなさい、そうして増収があったときにはその赤字国債の発行を停止すればよろしい、そういう意味のことを竹入委員長は言っているのです。だから、全面的に赤字国債財源にして減税しようというような言い方ではないということはわかってもらわなければいけませんよ。そういう形で一時赤字国債で立てかえるという形で五十八年中の所得税減税というものを実行すべきである、こういう考え方を述べているわけです。  ですから、そういう意味では、われわれとしては、石油の値下げによってそれの波及効果が非常に大きくて、五十八年中には一・〇五の租税弾性値が、収支見通しでは十年間平均で一・一になっておるけれども、これが一・二にも一・三にもなるんじゃないだろうかというような考え方があるわけですから、とりあえずそれを赤字国債で立てかえて、そして五十八年中の減税を実行すべきである、こういうことを竹入委員長が提案をしているんだということをひとつ御理解をいただきたいと思うのです。  それで、もうこれで最後ですから、大蔵大臣減税はやらなければいかぬということははっきりわかっておるということですね。それと同時に、規模と時期だけが非常に問題がぼけてきているわけです。与野党合意の問題は大蔵大臣を幾ら責めたってしようがないのかもわかりませんけれども、少なくとも大蔵大臣は党でも主要な立場にいらっしゃる方でありますから、与野党代表者会議予算が成立したら後すぐやって、その規模だとか時期というものについては具体的に詰めようという話のままになっているわけですから、あなたから、これを早急に合意ができるように二階堂幹事長にも申し入れておいてもらいたいと思うのです。その御回答を聞いて、私はこれで質問を終わります。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 そもそもが、昨日税制調査会総会を開きましたのも、私も考えました、一応は国会が終わってから、その国会中にいろいろあった問題を念査して総会へかけるべきかなとオーソドックスにも考えてみたのですが、迷っておりましたら、幹事長の方から、中間的とはいえ、きょうの正木さんとの御議論などはまだ報告をしてないわけですから、あの時点で整理できるものだけはきちんと整理して報告しろということの要請が強くございましたので、これは、税制調査会というのは総理大臣の諮問機関でございますから、大蔵大臣だけでうんと言うわけにもいかぬので、すぐ内閣へ連絡しまして、官房長官のオーケーもとって、それできのうということになったわけです。きのう報告したものと、かなり分厚いものでございますが、それとその間の御議論、これをきょうにでも正確に、あらましのペーパー一枚だけは届けておきましたけれども幹事長に御報告しなければならぬ。承りますところによると、幹事長はそれに基づいて近く幹事長書記長会談を開くというお考えのように承っておるところであります。
  53. 正木良明

    正木委員 したがって、結論だけを申し上げておきます。  一つは、われわれの重大な関心と希望は、所得税減税をぜひやる、規模は国税において約一兆円、地方税で約四千億円、そうしてその時期は五十八年の末まで、年末調整に間に合うようにやること、そうしてさらに、その財源として大型間接税との抱き合わせはしないこと、これらがわれわれの希望でありますから、正確に税調の方にも伝えてもらいたいと思います。  ありがとうございました。
  54. 森美秀

    森委員長 武藤山治君。
  55. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 竹下大蔵大臣、二度目の大蔵大臣に就任されて、前回昭和五十四年十一月九日ですか大蔵大臣になられて、今回は二度目であります。したがって、国家財政の状況なりあるいは経済の変貌なり、いろいろ感じたことは多いのだと思うのであります。しかし、二度目の大蔵大臣でありますから、今度大蔵大臣に就任したらこれだけはぜひやってみよう、大臣になるのがすばらしいことではなくて、大臣になったら何を国家国民のために残すか、何をやったか、これが竹下蔵相が後世の史家に評価される最大の問題点だと私は思うのであります。  そこで、二度目の大蔵大臣に就任をしたあなたが、何をここで手がけて、後世に竹下大蔵大臣はすばらしくやった、こう思われる業績を残すつもりなのか、ただ便々と大蔵大臣の期間が過ぎればいいと考えるのか、ひとつあなたの心境のほどを伺っておきたい。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 武藤委員おっしゃいますとおり、確かに二度目でございますが、考えようによれば希望者がなかったからということかなという感じもしないでもございません。  そこで、強いて感想とおっしゃいますと、五十四年の経済運営、五十五年度予算編成、これが前回の私の仕事でございました。そのときに、まず公債依存度が四〇%にも達しておるということで、そこで五十五年度予算はまずは初めに一兆円の減額ありきということで取り組んでみよう、しかし、自分で自己採点して、財政再建元年というようなことにはほど遠かったな、前の晩ぐらいまでしか来なかったなという自己採点をしたわけです。ただ、その後から振り返ってみますと、結果として五十四年度というのはいわば公債発行政策というのがある程度果実を生んだ最終年度ではなかったかな、したがって、自然増収に恵まれまして結果として一兆八千億ぐらい出さなくて済んだということは、考えようによれば五十五年度予算はまだ史上最高の公債発行であって、一兆円の減額というのは、結果として見るとまだ前年の方が八千億少ない、こういうことになりました。  しかしながら、そのときは物価問題等もございましたので、累次にわたって国会開会中に公定歩合の引き上げをやらせてもらって、そして公共事業の繰り延べをやらせてもらって、それでやはり五十五年度はその下支えがあって最終的に四百八十四億という剰余金が出て、ラーメン減税、評判がよかったか悪かったかは別といたしましてやれたということが、私の一つの反省あるいは自己評価としてある。  とすれば、今度来てみると様変わりだなと思いました。剰余金どころか莫大な歳入欠陥を抱えておる。そうすると、今度はよほど自分で、まあ前の晩ぐらいまでやればいいというふうな感じであってはいけないというので、財政改革ということの第一歩を印したかなと言えるならば、たとえ五億円であろうといわば一般歳出を前年度以下にした、それが一つの財政改革の一歩かなというふうに思っておるわけであります。  したがって、いま考えておりますのは、あのときはやはり五十九年、実現はできなかったものの、赤字国債の脱却という一つのめどをわりにわかりやすく国民にお示しすることができた。それがお示しできる段階にいまない。だから、何とかやはり短期的にはその数値をお示しできるだけの作業、勉強を続けていかなければならぬのが一つの私の当面の責任ではないかなと思う。  それからいま一つは、三・一%は確実になったとはいえ、三・四%というもの、三・四という数字からくる印象というものが、高度経済成長になれたわれわれとしては、決して景気が上向いたとかいう数値ではないと思いますだけに、安定成長に置かれた今日は、三・四などというものもこれは大変努力しなければできないものだという認識を国民の皆様方と一緒に持てる、そういう環境をつくってみたいなというのが偽らざる今日の心境であります。あとは、余り大それたことは元来考えませんので、そういうことでございます。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 前回のとき竹下大蔵大臣をすばらしく評価した問題が私は一つあります。それは、グリーンカード制の法制であります。  竹下大蔵大臣が再度就任をしたいま、あれを延期しないで実行するという強い決意を貫けたとしたら、これは後世に名が残った大蔵大臣になると思うのですね。あれをやっておけば五十九年度から総合課税になるのですから、総合課税化したときの税の公平感、犠牲の平等、租税正義の実現、そういう観念が国民の中に定着するのですよ。これは大変大きな仕事だったのですね。それを、竹下さんが大蔵大臣のときに法律をつくっておきながら、政治家の理性なき妄動によってとうとう竹下さんは強姦されてしまった。これは、一竹下さんの責任として責めるのはちょっと気の毒でありますけれども、やはり日本の長い政治史を将来ひもとくときに、これは大変な失政をしてしまったと思うのですね。これは与党自民党の責任でありますけれども。  そういう、グリーンカード制もだめになり、総合課税化の見通しもちょっとつかなくなってしまった現在、財政再建を本気に、どういう手だてで何をどういう順序で、いつごろこの百十兆円の日本の累積国債を抱えた財政から本当に安定的なものに切りかえていくのか。本当に気が遠くなるようなむずかしい状況にあるのであります。  そこで、税制調査会会長をこの間ここへお呼びして私が質問をした際に、彼は、グリーンカード制はだめになっても総合課税だけは五十九年度からできればやらせてみたいという意見を言っているのですね。また、二、三日前の新聞にも、税調会長の新聞記者との会談の中で、彼は、大型間接税も検討したいが、一方グリーンカード制の延期という問題が大変残念だ、そこで五十九年度から別な方法で総合課税化の道はまだ閉ざされていない、そういう意味のことを言っているのです。  そういうことをあれこれ勘案してみると、グリーンカード制を与党のごり押しで延期をしたというこの状況というものを、大蔵大臣としてどのように受けとめ反省の弁があるのか、事の当然と思うのか。政治というものは、黒が白でもあるいは悪を善としても、多数決で決めれば何を決めてもいいというものなのか。そこには道理と正義というものが根底になければいかぬと私は考えるが、大蔵大臣のその辺の政治認識というのは一体どうなのか。その辺をちょっとお聞かせいただきたいのであります。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 グリーンカード制の問題につきましては、法の安定性という表現をしておりますが、あの法律が通った後、必ずしもそれと因果関係があると断定できないにしても、各方面から問題が提起された、その事実を見通せなかったということは、やはり提案者たる私の深く反省すべき政治的責任であるというふうに認識しております。したがって、これを延期する法律をみずから提出する際に私なりに種々考えましたが、それを見通せなかった責任はやはりみずからとるべきであるという考え方から提出してお願いして、すでに衆参両院議了、成立させていただいたということになります。したがって、この点については政治責任そのものは、政府・与党一体と言えば、それは原則的にそのとおりでございますが、なかんずく大蔵大臣たる私自身に帰すべき責任であるというふうに認識をいたしております。  そこで、また税調の話になりますが、昨日も、この問題については可及的速やかにということを国会でも答弁しておりましたので、税調国会での御議論等も正確に報告しましたところ、小委員会等で御検討をいただけるという経過をたどったというのが今日の実態であります。
  59. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 主税局長税制調査会長は、グリーンカードは三年間延期となったけれども、五十九年度に利子配当課税の適正化のための暫定措置を講じて総合課税化を図る考えを持っておる、こういうことを彼は表明しています。税を担当する最高の責任者として、主税局長は、この税制調査会長の見解に対して賛意を表するのか、時期尚早と考えるのか、与党の圧力がこわいから私は何も言わぬと言うのか、あなたの態度を聞かせてください。
  60. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子配当課税の今後の問題につきましては、ただいま大蔵大臣から御答弁があったところでございますが、若干私から補足させていただきます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案が閣議決定されましたことしの二月四日に大蔵大臣から閣議で御発言がございまして、税制調査会からの御指摘もあったところであるが、今回の措置、つまりグリーンカードの三年凍結の措置でございますが、これによって適正公平な利子配当課税の実現という政府の基本方針はいささかも変わるものでないことは申すまでもない、今後も適正公平なる利子配当課税のあり方については早い機会税制調査会で検討をしていただくこととしたいという御発言がございまして、先ほど大臣がお述べになりましたような経緯をたどりまして、昨日の税制調査会総会で利子配当課税に関する小委員会の設置が決められたわけでございます。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕 税制当局といたしまして、きのうの総会でも申し上げたところでございますが、三年間延期あるいは凍結ということは、三年間手をこまねいているということではございませんで、これは制度の仕組み方によりましては、国税庁執行当局の準備期間に一年以上かかるわけでございます。つまり、グリーンカードを提案いたしましたときにも実施までに三年間の期間を設けたというのは、そういうこともあるわけでございます。したがいまして、今後の利子配当課税のあり方について、税制調査会で御結論をいただくにいたしましても、三年間の凍結期間を経て円滑に新しい制度なら制度に移行するためには、ことしの秋にでも結論をいただかなければならないというお願いをしてございます。  そこで、今後税制調査会でどういう方向で御議論になるかということでございますが、これは、私どもといたしましては税制調査会の今後の御議論を待つばかりであるわけでございますけれども、従来、税制調査会は、この利子配当課説につきましては四十年代以降総合課税の方向で検討を進めてこられたわけでございます。したがって、今後も従来の総合課税を目指すという税制調査会の経緯も踏まえて、当然その延長上で作業が行われるものと私ども考えておるわけでございますが、具体的にどういう結論をいただけるのか、いましばらく税制調査会の今後の小委員会での御議論を私どもは注目してまいりたいと考えておるわけでございます。
  61. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、税というのは国民にとっては犠牲であります。したがって、その犠牲はあくまでも公平、平等でなきゃいけませんね、税というのは。ところが、まだ日本の税制というのは、国際的に比較してみると非常にでこぼこで不公平で犠牲が平等化されていない、そういう面が多々あるわけであります。  そういうものを、たとえばいまの総合課税の問題もそうであります、これから論じようとする申告制度のあり方の問題もそうでありますが、そういう問題をきちっと整理しないで大衆課税、大型間接税、そんなことを持ち出しても、国民はこれは納得しませんよ。やはり犠牲の平等化というものを先にだあっとやっておいてからでなければ、新たな大増税なんということを合意されるはずがないのであります。  そういう意味で、私は、いま正木さんが当面の減税与野党合意の問題を取り上げたから、大臣の頭の中もそれがまだ新鮮ですから、少し質問順序を変えて、その税の問題に先に入ってみたいと思うのであります。きょうは、財政再建の大きなグローバルな問題だけを政治家として竹下先輩とやろうと思ったのでありますが、たまたまいま正木さんが税の問題で、所得税減税どうしてくれるのかということの議論を聞いておりまして隔靴掻痒の感がするので、これはやはりもうちょっと話を詰めなきゃいかぬな、こう感じたわけなのであります。  そこで、税の問題にちょっと入ってみたいのでありますが、そのあらゆる不公平やあるいは不備な点、先進国家としてあるべき税制になっていない点、そういう点を徹底的に速やかに直すべきだ。それをいまこの国会で直すことすらできる項目は、私はたくさんあると思うのですよ。だから、一兆円の所得減税財源を本気で官僚群と大蔵大臣の腹合わせが本当にできて、これは政治的な決定だから何が何でもやらねばならぬのだ、この大臣の号令を官僚が抵抗しないで受け入れるのなら、やろうと思えば私は減税なんというのはへのかっぱだと思うのですよ。問題は、主税局長以下主税局の諸君が、減税なんかいまやる時期でない、こんなに借金抱えて赤字公債発行しているときに減税どころか、こういう気持ちが主税局長以下の気持ちの中にあるから先へ進まぬのですよ。  そこのところを、大臣がやはりそれらの官僚のトップレベルの諸君とひざを交えてじっくりやって、この政治的決定を踏みにじったらどういうことになるか、政治に対する不信あるいはサラリーマンはもう減税があるものという前提で物を考え、賃上げも四%そこそこでがまんしている。政府の雇用者所得の見通しは、閣議決定で大蔵大臣も参加して決めた五十八年の経済見通しと経済運営の基本的態度では、雇用者所得はことし六・六%伸びるという見通しなんですよ。それが五%そこそこで大労働組合ががまんをしているというのは、一兆円減税があるという与党・政府の譲歩というものを労働組合の幹部が高く評価しているから、賃上げもこの辺でうまくまとまったと私は思うのですよ。心理的にそういう作業がかなり働いているのですよ。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕 それを、財源が見当たらなかったから、財源を見つける努力が時期的に間に合わなかったから与野党合意は実行できませんでは、政治に対する不信はますますつのり、政治家は一体何をしているのか、官僚政治なのか本当の民主政治なのか。議会の決定は最高の決定であります。これは、アメリカを見ても、ドイツを見ても、イギリスを見ても、議会の決定に対して官僚がとやかくいってそれを踏みにじるなんという議会制民主主義の国はありませんよ。私は、そこが大変重要だと思うのです。労働四団体があれだけ希望して、そうして政府もそれに、よし、応じてやろうという決断をしたら、がむしゃらにことし間に合うような方策を考えるのが先決だと思うのですよ。  方策はありますよ。そんなに基本的な法律を直さなくも一兆円の金を出すことはそうむずかしくないのであります。たとえば、具体的に、いま日本の所得税法百二十条第一項は、所得があったと思ったら申告しなさいとなっているんでしょう。所得がないものは申告しなくともいいんでしょう。体刑もなければ罰金もないでしょう。主税局長、それ確認してください。
  62. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員が御指摘になりました点は基本的にはそのとおりでございまして、わが国の所得税におきましては、確定申告の時期に納税義務者が所得計算をいたしまして、その結果、所得税法に照らし合わせて納めるべき税額がある人が申告義務を負うということになっております。
  63. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、いまのように所得税法百二十条は、自分で所得計算して、私は所得がなかったと思えば、申告しなくもいい制度なんですね。収入じゃないのです。だから、収入が仮に一億あった、たとえば夜の商売で年間一億収入があった、しかし私はみんなそれは毛皮のコートを買っちゃったり車を買っちゃったり、いろいろ使っちゃって、貯金なんかないわ、だから税務署へ行かなくもいいんだろうと思ったから申告しなかったと言えば、それでいいわけでしょう。そういう人が相当いるのですよ。  きょうは国税庁来ていますか。——来ていない。いま個人事業者の数が、ちょっと資料が古いけれど、二年ぐらい前の私が質問したときの資料では、個人事業をやっている人が七百万件ぐらいある。いまもっと上かもしれない。そのうち税務署へ申告書を提出している人は、農業を除いて、二百万ぐらいしかなかった、二年前に。いまも大体その辺の数字じゃないかと思うのですね。主税局長、わかったらちょっと答えてみてください。
  64. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いま手元に五十六年分の実績の資料があるわけでございますが、農業所得者が、所得者数が百四十一万人、そのうち納税している人が十七万人、それから農業以外の事業所得者、これはいわゆる営業とその他の事業所得者全部含まれますが、所得者の数が六百九十八万人、納税者の数が二百六十四万人でございます。
  65. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、いまの数字で御案内のように、農業を除いて六百九十万件、そのうち二百六十万件しか申告してない。というのは半分は申告してないわけですね。  では、本当に半分の人はみんな所得がなくて申告してないのでしょうか。所得と収入の色分けができない人もいっぱいいると思うのですね。普通の素人は所得と収入というのをわからない。貯金でもあって、もうかったら所得だ、貯金がなくて金が残ってなければ所得はなかったと思うという素人がいっぱいいるわけですね。そういう人は申告しなくもいいのですよ、たまたまつかまったときに重加算税、延滞金を取られるだけで、罰則は何もないのであります。ところが、アメリカやイギリスやドイツは収入によって申告する義務になっているのですね。どういう事業は一年間何千万円以上あるいは何百万円以上収入があったら、それはもうけがあろうがなかろうが税務署へ申告するという法律になっている。そこが日本と大変違う。  税制の面では、日本は先進国の足並みにそろえてないんだよ。これは、私は大変な法治国家として不備な税法だと思うのです、この百二十条一項は。これをもし収入基準に直して一応申告させたら、どこにどういう商売があるというのは税務署は全部わかる。皆それが赤字で出ていても調査しやすい。恐らく赤字でなくて申告が出てくる金額が相当ある。  国税庁をやめた元国税審判所の審判官が本を出したね。その本を読むと、これを直しただけで、これはちょっと大げさかもしらぬが二兆二千億円ぐらいの税収になると書いているんですよ。話半分にしても一兆円は出るね。これは一条変えればいいんだ。そんなに大議論して、そんなに徹夜で時間かかる話じゃないんじゃないでしょうか。そういうことをなぜやろうとしないのか。そういうことをきちっとやれば、一兆円の所得税減税与野党合意やりましょうと簡単に答えが出せるんじゃないですか。総合課税にはまるまる一年半か二年の準備が必要かもしれないが、しかし、これだって支払い調書を全部書いて出すようにさせれば、脱漏が少々あったにしたってかなり捕捉できますよ。あるいはまた、政令で直すことのできるものもかなりまだありますね、洗いざらい全部一応検討すれば。そういうようなことを政府自身やろうとしないで大型間接税に飛んでいってしまうというような発想はいただけない。とにかく犠牲の平等を徹底的にやってもらいたい。  大臣、サラリーマンは一〇〇%全部わかっちゃっているんですよ。全く一円のごまかしもできないのですよ、サラリーマンは。それと比較してくださいよ。私が租税正義の実現と言うのはそれなんですよ。ですから、この百二十条の検討は速やかにしてもらいたいのですが、大臣の御見解いかがでございましょうか。
  66. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど来委員が御指摘になっておりますとおり、わが国の現在の所得税の申告義務の制度は、非常に厳格な所得基準によっているわけでございまして、先ほど御指摘になりましたように、たとえばアメリカでございますと、グロスインカムと申しますか、委員が御指摘になりました総収入に近い基準で申告をする義務がございます。ただ、ヨーロッパはすべて総収入申告じゃございませんで、ドイツも実は所得基準でございますが、これは控除前でございますので、わが国ほど厳格ではない。かなり義務の範囲が広いことは事実でございます。フランスの場合は、これは所得基準でございますが、そのほかに外形基準といいますか、たとえば別荘を持っている人とか召使を何人以上持っている人とか、そういう外形基準で、所得があろうとなかろうと必ず税務当局に申告しなければならないというふうに義務の範囲を広げております。  この点につきましては、従前もこの委員会で御報告申し上げておりますように、昨年税制調査会の中に申告納税制度の特別部会を設置していただきまして、現在、東京大学の金子教授が部会長として、この作業を進めていただいております。この作業も、私どもの希望といたしましてはことしの秋あたりにぜひ御結論をいただいて、申告水準の向上のために所得税制度、法人税の制度、見直すべき点は見直すというふうな御結論をいただきたいと思っておるわけでございますが、現在その検討作業の中で、いま委員が御指摘になりました総収入申告制も含めまして、そういう申告義務基準のような問題についても検討いただき、御結論をいただけるものと考えておるわけでございます。  ただ、若干補足して申し上げたいわけでございますけれども、私どもは、この問題につきましては、先ほど来御指摘になりますように、特に給与所得者との関連での税負担の公平という観点から、制度面でこれを補強するという観点からこの作業を進めておるわけでございます。また、現実に国税の執行の実態を見ましても、調査の結果、本来申告すべき人が申告漏れがあるという実態もあるわけでございます。したがって、制度面でこれを補強し、可及的に制度を公平なものにしたいということで鋭意作業を進めておるわけでございますが、ただ、これが具体的にどれだけの増収効果が生ずるのか、これはまた別問題でございまして、そういう増収効果を期待しつつこの制度を検討して、それが、いまも議論になっております各種の財源問題と直ちに結びつけられるかどうかについては、私どもは余り確信が持てないわけでございます。
  67. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 主税局長がそんな答弁しているようでは日本の財政再建なんかできない。そういうことをきちっと踏まえない限り大型間接税なんというのは絶対通らぬという認識がないから、そういうことを答えている。早く安易に取れる消費税をやろうという頭があるからだ、主税局長。あなた、この制度を、アメリカは最も租税正義を実現している国ですよ、していない国を例にするんじゃなくて、より正義の実現する正しい税法の国をまねする方がいいじゃないですか。どうなんですか、もう一回。
  68. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまの答弁舌足らずでございまして、私は、委員がおっしゃることをそのまま受け取って、その方向で作業を進めておる、租税正義を実現し税負担の公平を実現するために、なるべくきちんとした制度を早くつくるという方向努力をしておるということは申し上げておるわけでございます。
  69. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それなら了解です。大いに奮闘努力してください。  それから、先ほど竹下大蔵大臣、いまの三・四という政府の経済成長見通し程度は、もう高度成長のときと違うんだから、これでも世界的に比較するといい成長なんだ。そこで、そういう安定低成長路線というもので税収をはじくとどういうことになるのか。その場合に、どうしても要調整額、不足額がこれだけ出るんだ、そういう見通しを、今回一月に出された大蔵省のこの試算では、成長率はまだ三%内外の成長率じゃない見通しでこれをやっているのかどうか。これよりちょっと高いと思うのですね。  企画庁来ていますか。OECDが、昨日新聞報道によると、ことしのOECDの平均成長率は二%だ。アメリカが非常に下期はいい。アメリカは五%ぐらいの成長率になるかもしらぬ。そういう見通しの中で日本の見通しを三・二五、来年度は三・五、アメリカは来年度四・二五、西独が一・七五、ヨーロッパが一・七五、そうしてOECD全体としては来年は三、ことしが二、この程度の成長が見込まれると、従来の見通しよりかなり上方修正をしておりますね。こういう世界経済全体の見通しについて、日本の政府、企画庁としては、これは当たらずとも遠からずの見通しと受けとめているのか、少し甘いと見ているのか。  それから第二点目は、福田黄門がときどき世界恐慌論の昭和初期の話をあちこちで演説をするのでありますが、この福田元総理がよく主張していたような世界恐慌的な現象はもはや到来しないで済む、そういう軌道に世界資本主義は乗ったと考えるのか、その辺、企画庁としてはどういう分析に立っているのか、ちょっと見解を聞かしてください。
  70. 海野恒男

    ○海野説明員 第一問でございますが、OECDの見通し、これまで第二次石油ショック後、OECDの見通しは毎年十二月と七月に行われますが、その都度下方修正をするという経緯をたどってきておりましたが、今回に限りまして初めて——七月が正式な発表でございまして、現在ちょうど短期経済専門家会議というのをOECDの事務局内でやっておりまして、これが来月行われます閣僚理事会に上がっていくわけでございますので、まだ最終的な見通しではございませんけれども、先生先ほど御指摘のような上方修正をするという形になっておるわけでございまして、いわば第二次石油ショック後初めてと言っていいほど見通しの上方修正をしておるということでございます。  私どもは、もともと昨年の十二月段階では、かつて何回となく下方修正をされてきておりましたので、OECDの事務局の見通しに対して多少懸念を持っておりましたけれども、その後一月以降の世界経済の動向を見てみますと、アメリカの経済がかなりのテンポで回復局面に入っておる、それから西ドイツが、少し回復がおくれるのではないかというふうに思っておりましたのが、意外に早く回復局面に入っておるというふうなことで、世界の中で日本を除きまして二大経済国が意外に早目に回復に入っておるということで、三%程度という来年度の見通し、それから今年は二%弱というふうに私どもは聞いておりますけれども、一応上方修正ということは実現の可能性としてはあり得るというふうに思っておりますし、それから、アメリカ政府自身も私ども考えておる以上に強気になってきておるということでありますので、私どもは非常に明るい材料として受け取っておるということで、この実現の可能性については意外に明るいのではないかというふうに思っております。  それから、第二問でございますけれども、そういうことで結論的に申し上げますと、もはや恐慌状態に陥ることはないであろうというふうに思っております。と申しますのは、いま申し上げましたように、上方修正を各国がし始めておるということ、それから、オイルショックを受けた後三年後に至りまして逆に石油価格が低下してきておるということで、これまで石油ショックによって受けた痛手を逆に石油価格が低下することによっていやすことができるというような状況、それから世界各国が、何と申しましても、サミットを初めOECD、IMFその他の国際会議の場におきまして、それぞれ世界経済活性化のためにお互いの自我を捨てて協力し合うという体制ができ上がってきておりますので、かつてのようないわば経済のブロック化を通じて各国が孤立していくというふうなことにはならないということで、そういう意味では、昭和初期のような恐慌状態は起こらないというふうに考えております。  ただ、御存じのように、アメリカという国が世界経済において非常に大きな影響力を持っておりますが、この国が、いろいろな財政赤字の問題あるいは新しい金融調節方式といったようなやり方の結果として高金利が続いておるということで、ヨーロッパの国々あるいは日本がその影響を受けておるということは否定できないことでありまして、この高金利の問題については、もっと国際会議の場で議論さるべきであるというふうに考えております。
  71. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ、経済審議会がいよいよ長期経済展望の作成に入る。今度の場合は、中曽根総理の希望もあって六十五年まで八年間、かなり長い期間を想定して長期経済計画を出そうと。中曽根さんは計画という言葉は余り好きじゃないというので長期経済展望という言葉になるようでありますが、これの柱が大体新聞に報道されております。  これによると、成長率を、この八年間を平均して大体四%程度という数字で押さえていこう。これでいきますと、これからの八年間の成長率を四%と仮定いたしますと、いままで大蔵省が出したA、B、C案の試算、これの積算の根拠とはかなり違いがあるのかどうか、主税局長
  72. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今国会に中期の試算として提出いたしまして、そのときに税収を推計しておるわけでございます。そのときには、この一月に出されました経済審議会の審議経過報告では、経済成長率、実質で平均三%ないし四%、名目が五%ないし七%という数字が示されておりまして、税収の見積もりに当たりましては名目成長率を採用いたすものでございますから、この五ないし七の中央値六%をとりまして試算を示しておるわけでございます。  実質成長率を一体何%と想定するのかということと、その場合のデフレーターをどうするか。先ほど申しましたように、税収の見積もりに当たりましては名目成長率が問題でございますので、この経過報告で示されております実質の上の方四%をとりまして、それに見合う名目成長率が七%であると仮に置きまして、つまり名目成長率が前回お示ししました中期試算よりも一%ポイント上がるという想定に立って計算をいたしますと、税収で、五十九年度で約三千五百億円、六十年度で約七十六百億円、六十一年度で約一兆二千三百億の増収と申しますか、六%の試算よりも大きい数字が出てまいるということでございます。
  73. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 わかりました。  そこで、いずれにしても、時間がないので論争ができないのでありますが、大蔵大臣大蔵省の出したこのA、B、Cの三つの試算ですね、これを私がいま昭和六十五年までざっと計算をしてみて、六十五年に仮に赤字公債がゼロになる、こういう試算で計算をしても、昭和六十五年の公債累増残が百七十五兆一千億円、利息だけで十兆円を超えるわけです。赤字公債を仮に六十五年にゼロにすると、一年間一兆円ずつ減らしたとしても百七十五兆円たまってしまう。その後百七十五兆にまた建設公債が六兆三千七百億円オンされていくわけですね。ですから、建設国債をいつごろゼロにするか、それによって国債累積のトータルが出るわけでありますが、大蔵大臣の感触としては、建設国債というのはどういう条件でどうなったらゼロにできる、あるいはこれはゼロにしないで、やはり財政運営上建設公債というのはずっと続けていいんだ、六十年間で償還するんだから、六十年間ずっと続けて後の六十年間、百二十年間はずっと公債政策を続けるのだと考えるのか。建設公債について、仮に昭和六十五年にゼロにした場合、その後の建設公債についての取り扱いはどういう考え方を持つのが大体至当だと考えるのか、これはほんの感じでありますね、まだきちっとしたことは言えないが、大臣はどう考えますか。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 いま、いみじくも御質問の中でも大体の感じ、こうおっしゃっていただいたわけでありますが、赤字国債脱却のめど、これが一つの期を画する時期となって、そして総体的には、これは赤字国債、建設国債に限らず公債依存度を引き下げていかなければならぬ。それにつきましては、財政審等では一〇%というような数値が一応示されておるわけでございますけれども、それの目標にどういうふうな状態の中において達成できるかということは、これからいましばらく検討の時間をいただかなきゃならないのかな、こう思っております。率直に言って歯切れの悪い話でありますが、まあ仮に一〇%というものを目標値として置いても、それにどれぐらいの期間を要するかということについては、直ちにお答えするだけの準備が今日ございません。
  75. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 企画庁は、大体年成長率実質四%ぐらい、物価は三%から二・五%ぐらいのところを目安にしてこれから経済審議会でやろうというのですね。そういう数字がちらついてまいりますと、財政再建の大体のターゲットもある程度考えられる。  そこで、「大蔵省は、二十二日、財政改革プログラムの柱となる赤字国債脱却の目標年次を昭和六十五年度に設定」と、こういう新聞記事が出ました。そうすると、六十五年度で赤字公債脱却というのは、大蔵試案では試算Cですね。試算Cでいくという方針は大蔵大臣として腹固めしたのですか。これは、一官僚のしゃべったのが新聞に報道されたのですか。この三案ありますよという、国会にはどれということをいつも腹を決めないで、さあ皆さん勝手にこれで議論しろという資料しかなってなかったのですが、C案でいく、こういう方針を大蔵大臣は腹固めできたのですか。その辺をひとつお聞かせ願いたい。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 いままで国会でお答えしておることは、いま武藤委員御指摘のとおり七、五、三をお示ししましたが、三と言えばいささか短過ぎる。ある意味において五年ないし十年という表現も、本会議でしたか総理も使われたこともございましたが、一応先進諸国の例を見れば大体七年計画ぐらいがおおむねリミットだというようなことから、七と五と三を出したわけであります。  それと、もう一つお答えしておりますのは、経済審議会の一つの目標年次というものが、その中に果たす財政の役割りというものを考えれば、やはり大いに念頭にあるべき数値であるという意味においては、この間来私も報道を見ながら、そういうことでこれから本当に検討を加えていかなきゃいかぬなと思っておるところでありまして、大蔵省として、その年度を確定したという段階にまではまだ至っておらないというのが実情でございます。
  77. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、まだ六十五年度を脱却のめどにするという腹構えは全然できていない。では、もっと早くできるという確信、見通しがおありなんですか。そこらはどうなんですか。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 一応私は五、七年ということもまあ言ってみたことがあるわけでございますけれども、この六十五年という数値が経済審議会の今後の議論の中で大いに念頭に置いて議論されるべきものであるという前提に立てば、その中で果たすべき財政の役割り等を検討した中で、おのずから出るような努力をしていかなきゃならぬ。だから、それよりも極端に縮まるだけの自信があるかと言われれば、その自信は残念ながら持っておりませんと言わざるを得ないのかなと思っております。
  79. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 前に堀先輩と財政法のあり方を、単年度主義といういまの制約の中で、一体適切な対応ができるのか、こういう議論をしたことがあるのですね。  あれは福田さんが大蔵大臣のときですかね、ドイツの例を少し勉強して、いまの単年度主義というのは、歳入が、ばんと自然増収があったときにその金をしまっておけない、それを全部使ってしまえという発想になる、だから、その年その年の収支をとにかく合わせていこうという発想になる。いまはちょっと必要ないけれども、いまみたいなときに考えておかなければいかぬのじゃないか。  たとえば、いまの国債総額の一・六%を国債整理基金に入れるとか、あるいは剰余金の二分の一を償還財源にためておくとか、そういう規定はあるけれども、いまの単年度主義という制度の中で、こんなにできた借金を将来とにかく返済していく場合に、いまの財政制度だけで一体処理し切れるのだろうか。かつてのような高度経済成長はないにしても、当然、出た自然増収というものを国債減額に充てていく。将来は、たくさん出たときには積み立てしておいて、それを五年なら五年の間にならして活用ができるというような制度、そういうものまで同時にいま検討しておいた方が財政運営がうまくいく時期にぶつかってくるだろう、そういう感じがあるのでありますが、その辺については、専門家の方は、そういう検討は一切していない、いまのまま、その場その場で、年間年間その場限りやっていけばいいのだ、足りなければ借金、そういうことでやりくりだな、その日暮らしだな、こういう財政でいいのですか。そこらをちょっと聞かしてください。
  80. 窪田弘

    ○窪田政府委員 戦後、国債発行に踏み切りました初期に、財政制度審議会で今後の財政の運営のあり方を答申をいただいております。私は、その答申がいまも生きていると思うのでございますが、財政法の健全財政の原則はりっぱな原則で、一日も早くこの原則に返りたいと思っております。  しかし、その答申にもありますように、国債発行下においては、国債の伸縮と申しますか、景気の悪いときには若干ふやす、いいときには税収でなるべく国債を返していくということによって、年度間の調整をまずやるべきだということが指摘されております。過去の十何年の財政政策を反省してみまして、若干、そういう経済成長のトレンドからはみ出したような伸び率の国債発行をしたために、現在のような状況になっておりまして、この状況下では、御指摘のようなやりくりもせざるを得ないのが実情でございますが、しかし、これは本来の姿ではございませんで、こういうやりくりをしながら一日も早くもとの姿に返るべきだ、御指摘のような原則に返りたいというふうに考えているわけでございます。
  81. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いや、窪田さん、いま私はそういうことを聞いたのじゃないですよ。  単年度主義という制約の中で、これからずっと長期の将来まで考えると、何か制度的なものを法的にきちっとしておいた方がいいのじゃないのか。たとえば西ドイツの場合は、あれは経済安定法だったかな、財政安定法だったかな、そういうもので、五年ぐらいのサイトでいろいろやりくりできる仕組みができているわけですね。だから、景気がばっとよくなったときの自然増があったときにはちゃんとためておけるとか、ところが、単年度主義だと入るをはかって出るを制する、とにかくつじつまを合わせればいいという発想ですから、そこらをいまから幾らか検討しておかぬといかぬのではないのかな、こういう提言をしているわけなんです。だから、そういう必要はない、いまの制度で十分やれますよという意見なのかどうかを聞いているわけです。
  82. 窪田弘

    ○窪田政府委員 理論的には、おっしゃるような仕組みを考えなければならないと思うのでございますが、ただ、財政の現状からいたしますと、ちょっと余りにもそれは当面の必要から遠いと言ってはあれですが、いま、とにかく赤字国債を減らして財政法の原則に戻るという努力をしているわけでございます。制度論としての御指摘でございますと、そういう仕組みをつくり、単年度年度で財政を考えるのではなくて、やや長期的に考える、それを仕組み的にもそういう仕組みができているということが理想であろうと思います。
  83. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その議論はさておいて、先へ進みましょう。最後ですね、もうあと十分です。  大蔵大臣、結局、来年度の要調整額が、C案で仮にいった場合、六十五年度脱却という案で考えた場合四兆一千六百億円、その翌年が六兆三千七百億円、その次が七兆六千四百億円、いまの考え方で延ばしていくとそういうことになるというのがこのC案ですね。  この四兆一千六百億円、まず来年度予算ですね、どういうやりくりでこの四兆一千六百億円がうまいぐあいにつじつまを合わせられるか。たとえば歳出の削減で増税なき財政再建という土光天皇の一喝があるわけですから、恐らくもう一年ぐらいは増税しないでやるのでしょうね。そうなると、この四兆一千六百億円をどうやって埋めるのかの名案をちょっとここで説明してください。これはだれですか、大蔵大臣ですか。
  84. 窪田弘

    ○窪田政府委員 いまここですでにお話しできる状況ならばそう苦労はしないわけでございまして、四月四日に予算を成立させていただいて、すぐ翌日に私ども主計官会議を開きまして、もうこのまま、いまの仕組みのままでやっていてもほぼ限界に近づいているから、今度はその仕組みそのものにメスを入れていこう、それには要求があってからでは遅過ぎるので、もうきょうから勉強をし始めよう、こういう申し合わせをしたわけでございまして、まだ勉強し始めたところでございますので、現在の段階で、こういうふうにやりたいというところまでちょっと申し上げられない状況でございます。
  85. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし窪田さん、とにかく四兆一千六百億円の要調整額のうち、行政改革で減らせる限界というのはおのずから本職ならわかるわね。一兆五千億円の歳出削減は無理でしょうね。ことしの予算よりも一兆五千億円、現予算をむだを省けるかどうか、どのくらいなら省けるという、ややの感じを本職として持ちますか。これをうまく答えれば、あなた、主計局長になれる。
  86. 窪田弘

    ○窪田政府委員 節約とおっしゃいましたけれども、節約対象経費は一兆円ぐらいしかございませんから、五十七年度年度途中の節約一〇%というかつてない高い率でやりましても、七百五十億にとどまったわけでございます。  ですから、既存の方法の節約ということではやはりむずかしいと思います。そこで、どうしてもいまの補助金制度とか負担制度あるいは国と地方の関係をどうするかとか、そういった大きな仕組みそのものを見直していけば、これはできないと断定することはできないのではないかと思っております。
  87. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、補助金をばたばた切るということになった場合でも、がまんの経済だ、がまんの哲学だと言うけれども、がまんさせられる順序、優先度、だれからがまんするのかという問題、これが大変なんですね。まず七十歳以上のお年寄りが医療を有料化され、学校給食の牛乳補助金がことしぶった切られた。来年は教科書もぶった切る。そうすると、切られていくやつと切られないやつのアンバランスが大変目につくのですね。産業補助金、商工会議所の補助金、利子補給、産業界にずいぶんいろいろいっている。ことしは、中央電力研究所の補助金とか自動車研究所の補助金なんというのはぶった切ったのかな、もし切ってなければそういうのをどうするとか、どうも補助金を切るところが均衡がとれていないのだよ。それをだれが決めるかというと、いまのところ財界が決めているわけですよ、土光さんのところが、あれを切れこれを切れ。それに抵抗すれば出世できないから、官僚はびびっちゃうわけですよ。いまのやり方が、それが国民の目に余りにも歴然と見えているのですよ。  そこのところをどう公平、公正にやるかということは、やはり何かきちっとした機関がないとなかなかできないのじゃないかなと思うのですよ。これは窪田さんだってあるいは主税局長だって、やがて出世したいわな。やめた後、輸出入銀行の総裁になれるか、日銀の副総裁になれるか、いろいろ考えると、役人も、やはり多数党権力に気がねしちゃって、国の財政をおれが間違いなく運営するんだという毅然とした、腰の据わった魂はなかなか持てないんだな。それを持ってもらいたいんですよ。みずからの将来の出世なんというのはどうでもいい、国家国民のためにはおれは命がけでこの線は譲らぬぞと、そして公正、公平な、ぶった切るところを決めてくれるなら、私は窪田さんに任せてもいいのだけれども、どうも、いまの役人は腰抜けが多くて、少し圧力が加わるとふらふらっともとへ戻ってだめになっちゃうんだな。これではだめだね。  だから、そういう点をもう少し、国民から信頼できる削り方をやらぬといかぬな。まあ、やや削れるのが一兆円だ。それでまた三兆円足らない。もう競馬会ももらってきた。電電公社なんかはこれ以上だめですよ。持ってくるところというのは大体もうなくなっちゃう。そうかといって、財界の円高差益を税金で取ろうとか、石油の値下げの分を税金でいただこうと言ったって、これは財界がうんと言わない。あるいは、いまの財界に出ているいろいろな特別措置の問題だって、あるいは特別措置法にない問題だって、八百五十万以上所得があれば四二%の中小企業と、百億、五百億、一千億の利益のある会社も四二%の法人税なんというのは、どう見たって公平じゃないよ。ただ、そういう制度でこうなっているし、大会社がうんともうけているのは資本が大きいからもうかるのはあたりまえなんで、それに税金をよけい取れば働く意思はなくなっちゃうとか生産性が上がらぬとかと、へ理屈をすぐ言い出すけれども中小企業は八百五十万以上利益が出れば四二%で、五百億も一千億も四二%という同じ税率なんというのはおかしいですよ。  これは、やはり担税能力のあるところから税金を取るという趣旨からいったっておかしい。公平、公正という立場から見てもおかしい。しかし、それをいじれないんだ、いま財界の圧力が強くて。日本をいま動かしているのは財界なんだよ。国民じゃないんだよ。民主主義というのは名ばかりなんだよ。ここのところをもうちょっときちっとしてもらわぬと、この足らない三兆円を大型間接税で埋めようとか、その次の六兆三千億円も大型間接税で埋めようなんて言ったって、それはだめだよ。それはやはり、さっき言ったように犠牲の平等ということをきちっとやってからでないと先へ進まぬね。  そういう公平、平等にいま指摘されている税制がきちっと直るなら、私たちは、それはこういうわけだと国民に訴えれば、いまの情報化の社会で、国民だってわかってくれると思うよ。そのかわり、国民が納得してくれるような前段階をきちっとしなければだめ。それはどうですか。やる意思がありますか。それを不退転の努力をもってやってみようと決意するかね。これはだれですか。大蔵大臣ですか。大蔵大臣が決意しないことには、役人はどうにもならぬね。早稲田の大先輩、大変失礼なことを聞いて申しわけないけれども、ひとつきちっと答えてください。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 まあ御意見を変えての御質問でございますが、政策選択の問題というのは、よって立つ政党政治である限りにおいて、その政党の考え方の基盤、いろいろな問題があろうかと思うのであります。しかしながら、その政策選択自体も、国民の大方の納得を得られるようなものであらねばならぬ。したがって、いわゆる機構としての大蔵省というような、機構の中の仕事というものは、私は多数党の権力におもねるなどということはないと思っております。だって、いつでも政権交代があり得るわけでございますから、議会制民主主義の本来の姿から言えば。したがって、そういうことは厳然と貫く一つの官僚機構の伝統とでも言えるものかな、役人をしたことはございませんので、そんな感じを持っております。  それから、いわゆる負担の公平という問題でございますが、国民全体の納税意識というようなものに対して、これはわが国は他の諸国に比べて決して低いと思っておりません。むしろ、税に対する義務意識というものはそれなりにかなり高い国民である。しかしながら、個々の場合においては不公平感というものがその意識そのものを阻害しておるという大きな要因になっておりますだけに、その不公平感等をぬぐい去るための努力というのは、これは毎日眺めていなければならぬ問題であるというふうに私も理解をいたしておるところであります。  したがいまして、いろいろな政策選択の問題についていろいろな財源が必要の場合、まず国民の納得を得るためには、個々の立場からしてある種の不公平感というものがなくなる、そういう努力があって、初めて新しい負担というものも許容できるものであるという基本認識は私も全く一致しておりますので、そのような議論を拳々服膺して財政運営の衝に当たらなければならないという自覚を持っております。
  89. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間でありますからやめますが、きょうの質疑を通じて感じました。結局、われわれ野党は要求の表明、不満の表明にとどまって、官僚の発想を変えることができない、問題は議会制民主主義だから政権をとってこい、武藤山治がとってくれば何でもやれるじゃないかという大蔵大臣のいまのあれを私の肝に銘じて、社会党も強大になり、やがて野党連合で政権をとって公平な税制をつくる以外にないのかな、そんな感じもきょうは抱きました。  わずか一時間の質問でありますが、これから大いに政権交代のできる勢力結集のために奮闘しようという決意を新たにして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  90. 森美秀

    森委員長 午後一時二十分より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ────◇─────     午後一時二十九分開議
  91. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 財源確保法の最終的な質問に入るわけでありますけれども、このような法律というものは、私も長年大蔵委員会法律案審議をしてまいりましたけれども、かつて例を見ない法案だと思うわけであります。  それは、私は、大蔵省という役所は少なくともいろんな点で合理性をベースにしておる役所だというふうに思ってきたのですけれども、その合理性があるからそれなりの権威が認められてきておった、こう私は思うのでありますが、この財確法という法律を見ますと、合理性もなければ一つの哲学もなければ、言うなれば、何かもう本当に困ったので、そこらにあるものは手当たり次第集めて財源にするという、そういう意味では、大蔵省の歴史上にも、将来から振り返ってみて大変な汚点を残す法案だな、私はこういう感じがしてならないのでありますけれども大蔵大臣は、この財源確保法というのはどういうふうな法律だとお考えになりますか。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる財源確保法、これにつきましては種々な議論がございました。  一つ一つを正確に一本一本の法律として国会で御審議をすべきものではないかとか、あるいは従来とも、法律そのものが千五百五十一でございますか、大変にございますので、むしろある種の、軌を一にしたり質を同じくするものを一緒に出すべきだ、こういう議論もございました。したがって、今回は、言ってみれば後者の議論に基きまして、いわばまとめて提出して御審議をいただく、こういう手法をとったわけでございます。大筋で申しますならば、まさに読んで字のごとく、財源を今年度年度についてこれを調達するための手段として御審議をお願いしておるということであろうかと思います。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、法律を一本にしたからおかしいとか、実はそういうことを伺っているつもりはないのです。  この法案の中には、いまの財政状況から見て特例債を出さなければやっていけない、特例債を出しましょう、これは私はそれなりに評価をしておるわけです。本来、安易にいけば、一回特例債を出して後は政令の範囲でやるとかいろいろなことが考えられるのでありますけれども大蔵省も特例債については歯どめをかけようという気持ちでこういう法律を毎年出すということは、私はそれなりに評価はしております。要するに、一・六%の繰り入れは、これは政策選択の問題でありますからそれはそれなりに、私どもは私ども立場があるけれども大蔵省大蔵省立場があるだろうということで、この二つは私はそれなりに理解をするのですが、後のそこらじゅうから寄せ集めてくる物の考え方を伺っておるわけです。  特に、いまの自賠責保険というものは、大体これは自賠責に入っておる人たちがみずから集めたものの運用益でありますから、そこから借りるのは、それはそれで仕方がない場合もあるでしょう。しかし、どうもはっきりしていないのは、そういう国民がある一つの目的のためにリザーブをされておるものを政府が横から持っていってしまって、そうして保有の会計の方に赤字が出たら、それは値上げをしますよということもあり得るような答弁が行われておるように私は聞いておるのでありますけれども、こういうことは全く合理性がないことで、だから借りるのはよろしい、返せばよろしい。この前の決算調整資金で二兆二千五百億借りた、これは返す。返すことはいいのです。その返し方の中身がちょっと常軌を逸しておるなという感じがするものですから、それが合理性がないという意味でお尋ねをしておるわけです。  だから、その意味で、一体この法律というものは、まあ背に腹はかえられないと言えばそれまでかもしれませんが、不十分ながらももう少し合理性をどこかに立てなければいかぬことではないか、こう思うのですが、大臣はいかがでしょうか。
  95. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、それぞれを見ますと、単年度財源調達のための手法としてとらしていただいたわけでありますが、重ねての御質問にもいろいろございましたように、この自賠責の問題につきましては、私どもは種々検討して、やはりこれは大蔵省と運輸省という事務当局間の折衝だけにゆだねるべきものでないということから、率直に言いまして総理のお言葉もおかりいたしまして、私と運輸大臣との話し合いに持ち込んで調達をさしていただいた、まさに異例の措置だなという認識は私も持っております。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、異例な措置の方は私はまだ理解すると言うのですよ、借りるのは。  ただ、そうやって、要するに自賠責の保険の加入者が集めた金で、それの運用益がある、それを借りる、国の方が返さないために自賠責保険としては値上げをしなければいかぬ、そういう国が借りたことによって自賠責の加入者に負担をストレートにかけるなどということは不合理だと私考えているわけですよ。  だから、私はここでお答えをいただきたいのは、返せない間は値上げをしません、値上げをしないが、赤字が出た処理については別途一般会計で対応します、全部返し切ったら、その後はもうそれは値上げしたっていいですよ。しかし、本来そういう性格のものでないものを一般会計政府が借りておいて、その結果赤字が出たらこれは加入者の責任で負担をふやすなんということは、もう財政の原則からいって考えられないことだ、私、こう思うのですね。だから、そこのところをひとつお答えいただければ、この問題については私なりの了解をいたします。事務当局はいいです、こんなことは政治問題だから。
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、当面確かに単年度赤字が出ておるが、まだ余裕がございますので、いわば値上げということそのものは直ちにこれを検討の素材に挙げなくてもいいという環境にはあると思っております。  したがって、私どもいささか保険数理を手がけた者としては、この問題についてはいわゆる運用益が生ずるということが前提に保険数理そのものは打ち立てられていないという一つ立場からお願いをしたわけでございますので、やはり筋といたしましては、私は、堀委員の御指摘のとおり、安易にこの運用益というものを借りたがために財政そのものに不都合を来して、それが直接の原因になって値上げしなければならない状態になっていくということは極力避けなければならぬ問題である、保険数理の問題からいえば元来運用益を期待しない金だということが言えないわけではないにしても、精神的にはそのような基本的考え方に立たなければならないではなかろうかな、このように思っております。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、政治というものが国民に信頼されるかどうかは、少なくともそういういま私が申し上げておるような合理性の問題がベースにあれば、多少考えの相違はあっても、それはそれなりに理解はされ得るものだと思うのですが、ともかくもいわゆる税の問題で私はいつも申し上げるように、税の仕組みが上から取り上げるという仕組みになっておるという発想で、ともかく政府は何でもそこらにあるものは自由にできるという発想が、私は民主主義の政治ではない、こう思うのです。だから、もし何かをやれば、それはそこに加入しておる人たちもその説明を聞いてそれなりに理解ができる、多少意見の違いはあってもそれなりに理解ができる範囲というものがなければならないのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。  税制調査会長が次の会合がおありですから、この問題はここまでにいたしまして、小倉税制調査会長、時間がないのに御出席をいただきましてありがとうございました。  最初に、昨日税制調査会総会が開かれたようでございます。恐らく予期せざる課題がこの税制調査会期待をされておるのではないかと思いまして、会長を含め税制調査会の皆さんは大変御苦労をいただくことになるだろうと私考えておりますけれども、この昨日開かれた税制調査会を皮切りに、いま政府期待をいたしております問題についてどういう対応をやられるか、あらましなお考えだけをまず最初にお答えをいただきたいと思います。
  99. 小倉武一

    小倉参考人 お尋ねのございましたように、昨日久方ぶりで税制調査会総会を開きまして、国会税制に関していろいろ御論議のありましたところ、あるいは法案の審議の様子などについて詳細な報告を受けまして、その上で税制調査会としての対応を相談したわけであります。その中で一番大きな問題は、所得税住民税減税の問題でございました。  御承知のとおり、所得税住民税減税につきましては、昨年暮れの税制調査会の最終段階におきまして、この際所得税住民税減税は必要ではないかという意見もございましたけれども、こういう財政の状況で五十八年度は見送りをせざるを得ないのではないかという結論になったのでありますが、今回、国会での政府・与党と野党のお話し合いとかあるいは与党と政府の話し合いというような詳細な御報告を受けまして、税制調査会としては一応結論が出ておるというとおかしいですけれども、本年度については結論が出ている問題でありますけれども、そういう政治情勢を踏まえて、改めて所得税住民税について検討は進める必要があるのではないかというのが大体の意向と察知いたしまして、とりあえず所得税住民税の細目に関する調査審議を進めるために部会を設置することにいたしました。  もう一つ、グリーンカード制度の延期の問題に関連しまして、これも余り好ましくないとは思いますけれども税制調査会の従来の審議からいいまして、この延期の期間も二、三年という比較的短い期間でございますので、その期間中どうするかあるいは期間の後にどうするかということは、やはり早急に税制調査会としても検討を必要とするという、これもほとんど全員の御意見でございまして、それを踏まえまして、利子配当所得についての小委員会を設けてできるだけ早い機会に検討を始めるということで総会の御了承を得た、こういう次第であります。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 税制調査会として、昨年の暮れに五十八年度減税を行わないということは十分御審議の上で決定をなさったことでございましょうから、五十七年の暮れと現在と、財政の問題については変わりはないのじゃないかというふうに私は判断をいたします。  ですから、会として一遍お決めになったことを政治的な要請でなさるわけですけれども、その場合にちょっとお尋ねをしたいのは、最終的に皆さんの御意見がやはりどうにもならぬという場合には、これは政府なり自民党立場とは別に、税制調査会というのは独立した一つの機関でございましょうから、税制調査会としてはこれはどうにもできませんという御答申もあり得るわけでございましょうか。
  101. 小倉武一

    小倉参考人 なかなか微妙なお尋ねでございましてお答えしにくいのですけれども、形の上では無論そういうことはあり得ると考えざるを得ないと思うのです。  もう一つ、形の上でなくて実質の問題としても、所得税減税については与野党合意の中にも財源の問題に触れておられるわけです。この財源をどういうふうに考えるかということが非常にむずかしい問題で、これは先生も昨年当委員会減税問題についていろいろ御苦労なさったことがおありと聞いておりますけれども、なかなかむずかしい問題でございます。しかも、その財源を仮に増税に求めるというふうに——税制調査会ですから、歳出を削ったらいいだろうとか、あるいは赤字公債を出したらいいだろうというわけには形の上でもいかない、実質上の問題は無論非常にむずかしい問題がありますけれども税制調査会としては、財源という問題になれば、これは増税ということにならざるを得ないわけであります、いろいろな増税がありますけれども。  そうしますと、増税ということになれば、増税なき財政再建というふうなこととどういうふうに調和し得るのかというようなことも考えざるを得ませんので、それらについてまだ審議をいたしておりませんので、大方の委員の方がどういう御意見を持っておられるか、ちょっと察知しにくいのであります。昨日の総会などでは、税制調査会としては五十八年度は見送るという結論になっておるのだ、したがって、改めて審議する必要はないのではないかという意見すらございましたのです。したがいまして、これはなかなかむずかしい問題であって、減税の主張をされておる方々の御満足のいくような結論が必ず出るというふうにはちょっと申し上げにくい。しかし、政治的な御要請のあるところでありますから、できるだけその趣旨に沿うた審議ができるように会長としては努力してまいりたい、かように存じております。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 いま会長がお話しになりましたように、私は昨年、半年余りでありますが減税の小委員をやっておりまして、減税問題は非常にむずかしいということがよくわかっております。ポイントは一つしかないのですね。何かといいますと、与党がその気になってやろうと思わない限りできないということを、私はこの小委員会ではっきり経験をしたわけでございます。  ですから、そういう意味で私は、税制調査会の皆さんはある意味ではお気の毒といいますか、これは与党の二階堂幹事長が御提案になったことでありますから、本来与党の税制調査会で御検討になって方針をお出しになって、政府が処理をされるというのが筋だろうと思うのでありますね。ところが、そういうコースを通らないで、もうすでに一回皆さんの方では五十八年度減税をやらないと決められておることを承知の上で、ひとつ減税について検討してくれという話は、いまの政党政治のあり方からしまして、どうも与党にも問題があるし、政府にも問題がある。裏返せば、税制調査会という機関を自分たちの便宜に使おうという、これは与党・政府はいずれも税制調査会の権威を低からしめる対応ではないのか、こういう意味で私はいまお伺いをしておるわけであります。  ですから、いま会長が最後におっしゃいましたように、政治的な要請があるから会長としてはできるだけ努力をするとおっしゃるお気持ちはよくわかりますけれども、この問題の一番のポイントはどうもそこにあるのではないか。与党が本気に、税制調査会でこういうふうにしていただいたらそれを必ずやりますという何か白紙委任状でもあるのならよろしゅうございますけれども、もし何か税制調査会でお決めになっても、それをそのまま政府が取り上げるのかどうかについては大変疑問もあるのではなかろうか。昨年の半年の経過の中から、せっかくお骨折りをいただく限りはもう政府は尊重しなきゃいかぬと思うのであります。大臣どうでしょうか。
  103. 竹下登

    竹下国務大臣 与野党折衝の中におきまして、政府の責任においてやれ、こういうことでありますと、政府としては、本来の行政の筋に立って考えるならば、政府税調の方でいろいろ御議論をいただくというのが筋であろうと思っております。なかんずく、これがいわゆる戻し税とかそういう性格のものでありませんだけに、そのような手段をとるべきであろうという判断でもってお願いをした。  したがって、お願いした私の立場から言いますならば、堀委員もその立場に立っての御意見を交えての御質問でありますが、税調の方で、これはおれたちはもう一遍結論を出したことだから、大蔵省で党と相談してやれというようなことを言われたら大変だなと思って、恐る恐る、表現は必ずしも適切ではありませんが、きわめて謙虚にそして慎重にお願いをした、こういう姿勢でございます。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 あと十分で退席をしていただくようにいたしますが、私は、税の問題というものが非常にいま安易に政治的な調整の手段に使われるというのは大変困ることだと思っているわけであります。  何か予算委員会がうまくいかない、そこで、こちらはもちろん要求するのは当然でありますが、できるかできないかもわからないで政党の幹部の方が引き受けるというような話、それは非常に余裕のある財源で何かやるという話ならいいのでありますが、現状の厳しさは議員すべてがよく承知をしていることの中で、そういう問題が起きてきて、そのしりを税制調査会に持っていくということは、筋としては政府がやる以上は政府税調にということのようですが、これは私は筋だと思わないのですね。  いま大蔵大臣は、それが筋だとおっしゃいますが、率直に言うと、私が会長でございましたらお断りします。なぜなら、客観情勢も違わないのに、ある意味で一事不再議で、一回決めたことをもう一遍やり直せというのは、政府として税制調査会の権威を無視しておることではないのか、こういうふうに私は感じられてなりませんが、私は、減税をするしないの話ではなくて、政府税制調査会に対しての対応が余りにも見識を欠いておるという感じがいたしますが、会長いかがでございましょうか。
  105. 小倉武一

    小倉参考人 お尋ねのございましたように、税制調査会というのは、できるだけ政府立場とは必要によっては違った姿勢で審議するということが当然予想されておるところでございます。  したがいまして、政府の附属の調査機関とは言いながら、何事にも政府べったりというわけにはいかない。また、そうあった方がいいとも思いません。仮にそうあった方がいいのなら、党の税調だけで足りるのですね。民間の人を入れた税調というものの意味も余りなくなるというわけでございまするから、そういう御趣旨はよく私も了解できるわけであります。  ただ、政府税調は余り政治的な面についての考慮というのは足りないところがございます。しかも、税制の問題が大きな問題になりますというと、どうしても政治の問題が不可分なことになりますので、政治的な動き、これによって税制調査会に対していろいろの御注文がございますれば、ものによりますけれども、これはやはり受けて立つということも当然あり得ていいのではないか。  しかも、この所得税減税につきましては、特に一昨年あたりから強い要望がございまして、それを見送り、またさらに見送りという事態が続いておりますので、政治的にどうするべきかという判断の問題でもあるように思います。今国会において、政治的に減税という方向与野党合意ができたといたしますれば、そういう趣旨を受けて税制調査会でも検討するということは、そう税制調査会のあり方として非難を受けなければならぬことでもなかろう。特に、昨年の調査会の結論におきまして、所得税住民税減税の要求があって、本年度は見送るけれども、五十九年度を控えて、できるだけ早い機会に、税体系全体の中で所得税住民税等をどう位置づけるか、減税をどう考えるかということについては至急検討の必要があるというふうなことが答申にも出ておりますので。  ただ、それを受けますれば、多少、いま検討を始めるというのは時期が少し早いという御批判を受けるかもしれませんけれども、五十九年度ということでありましても、そろそろ検討を始めてしかるべき機会でもございまするので、税制調査会の従来の考え方をそう著しく変更したということでないというふうに私は考えております。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 あと伺いたいことが多いのですが、この問題だけにしぼって最後にお伺いをいたしますが、財源は、私どもも税の小委員会の中で、赤字国債財源にしない、要するに川を渡って橋を焼いて前へ行こうというつもりで、そういう考え方を決めました。税制調査会もそういうふうに何かお決めになったように新聞で出ておりますが、赤字国債財源にしないというお話のように新聞で見ておりますが、そのとおりでございましょうか。
  107. 小倉武一

    小倉参考人 赤字公債によって減税をすべきでないということは、昨年の五十八年度税制改正のあり方の審議の際に、そういう答申もいたしております。  今度、新しいいわば所得税住民税減税の問題について、赤字公債云々の問題はまだ十分審議はしておりませんけれども、昨日も実はそういう問題が出まして、赤字公債によって減税するということについて、多くの方の意見があったわけでございませんが、大体はやはり否定的な見解であった、こういうふうに私は見てとっております。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、減税をやっていただくための財源は増税しかない、さっき会長おっしゃったように、歳出削減といってもこれは税制調査会になじまない、それからいまの赤字国債は一応遮断をする、そうすると、私ども常識的には、何らかの増税によって減税分の財源を生み出すということになるわけでございましょうか。
  109. 小倉武一

    小倉参考人 大筋はそうだと思いますけれども、五十七年度の決算というのがまだこれからの話でございまするし、また五十八年度の税収がどうなるかということも、まだこれからの今後の見通しの問題でございます。あるいは歳出を大幅に削るということは、無論いま考えることはできませんけれども、節約というような問題も年度途中についてはこれは当然あり得ることでございますので、税制改正以外に全く財源というのがないというふうにいまから断じてしまうのも、これはどうかと思います。  ただ、承るところによりますというと、減税の額というものはわかりませんが、伝えられるところによると相当大きな額だ、こういうことでありますから、そういうもろもろの税源をあさる、増税以外の税源をあさるというだけでは、そう大きな減税というのはむずかしいというようなことは当然予想できるわけでございますから、増税の問題も減税に付随して検討を避けるわけにはいくまい、かように存じます。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一問で終わらせていただきます。  いま、かなり大きなものというふうにおっしゃったわけで、表現では景気を浮揚させるに足るといいますか、そういう抽象的表現でありますから、私もこれが一体どの程度の大きさかはよくわかりませんが、千億とか二千億とかというものではこれは常識的に景気に影響がございませんから、最低五千億以上ということではないかというふうに私は推測しておりますが、これは個人的見解で結構でございますが、会長も大体その程度にはお考えでございましょうか。
  111. 小倉武一

    小倉参考人 金額の問題は、これは全く税制調査会では出ておりませんのです。  五十八年度税制改正の際に所得税減税という御主張もございましたけれども、要請書等には金額もあるいは出ておったかと思いますけれども税制調査会の場でどの程度の金額が所得税減税として妥当であるかというような話は行われなかったものですし、また今回お聞きしている所得税減税についても、景気浮揚に役立つというようなところで、何かある種の金額というものを暗示されておるやに思いますけれども、それを具体的に金額としてどういうふうに見るのかということは、これはむずかしいと思います。  特に、ちょっと私見めきますけれども景気浮揚に役立つということを所得税減税で本気に考えるということが一体できるのかどうか、これも問題でございまして、仮に景気浮揚ということを考えるというと、これは大変な大幅な減税ということにならざるを得ないのじゃないかと思います。財源の調達をどこで求めるか別にしまして、そのある財源をどこの歳出に充てるかあるいは減税に充てるか、どちらが景気浮揚に役立つかということになりますと、これは、どうも所得税減税に充てた方がより景気浮揚に役立つというふうにはちょっと言いにくいのじゃないかと思います。  そういうことを考えますと、景気浮揚ということのついている、形容詞のついている減税は非常に大きな金額にならざるを得ないというふうにも考えざるを得ないということになりまして、ちょっとこれは、だからしたがって、あるいはちょっとした修飾語で、あれは余り考えないでいいんだということになれば気は楽なんですけれども、そうでないとすると、これはいよいよもって金額というのは、いまの税源との関係の見合いがございますので、私の個人的な見解としてもちょっと申しにくいというわけであります。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 小倉会長どうもありがとうございました。大変むずかしい役割りをお引き受けいただいておりますが、しかし、勤労国民が何とか減税をしてほしい、それが与野党一致で方針が決まりまして税制調査会に、私は筋ではないと思いますが、政府がお願いをしておりますので、何とかひとつ国民の期待にこたえていただきますようにお願いをいたしまして、小倉会長に対する質問は一応終わりにいたしますので、御退席いただきまして結構でございます。ありがとうございました。  ちょっと企画庁長官が何か商工委員会があって後の方には出られない、こういうお話であります。しかし、実はこの経済計画の問題というのは総理が問題提起された問題ですから、ちょっと企画庁長官なしでやるのは非常にやりにくいのですが、しかしやむを得ませんので、基本的な企画庁長官のお考えだけを先にちょっとここで伺っておきたいと思います。  いま財政が非常に厳しい情勢にある中で、新しい指針ですか展望ですか、何か総理は大変言葉遣いに神経質になっておられるようでありまして、長官もそれにこたえて配慮しておられるのでありましょうが、ちょっと先に新聞に出ておりますものを見ますと、「新長期経済計画 五十八年度から八年間 経審総合部会で一致」こう書いてあります。これは、名前はどういう名前になるのでしょうか。ちょっと先にそれからお答えいただきたいのですが。
  113. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 名前はこれから御検討していただいて決めていただくつもりでございます。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 総理は、どういうわけか計画という言葉がお嫌いなようです。計画というのは、しかしどこでも、会社だって、やはり多少二、三年先までにどういうふうな売り上げで、どういうふうに販売して、どういう研究開発をやってというようなことは恐らく皆計画をしてやっていると思うのですね。どうして総理が計画という言葉を避けようとされておられるのか、そこを長官はどう理解して、いまの、名前をこれから決めるなどというあいまいな話になるのか、ちょっと伺いたいのです。
  115. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私の理解が不十分かもしれませんけれども、これまでの計画という名称を使ってまいりました、企画庁が常に作成いたしておりますところの、何と申しますか、将来の展望と同時にまた経済運営の指針といったものだと思いますが、計画という言葉が、これまで往々にいたしまして拘束的、固定的にとらえたような点もあった。二百四十兆円の公共投資計画が決まりますれば、これはもう絶対に動かないようなものだというような観点からいろいろ予算上の要求ができたり、経済事情が変わりましてもこれを基礎にいろいろの判断を下したりするようなことがあったと思うのでございます。  私は、おっしゃるように、経済計画といってもこれまでの社会主義計画経済国と違いまして、十本自由民主党の内閣でつくってまいりましたが、九本までは耐用年数が三年しかもたなかった。しかし、三年間いろいろ修正をされましたけれども、計画という言葉ならば社会主義経済国なら、あるいは責任追及とかノルマの違反とかいうようなことで言われたかもしれませんけれども、だれも責任を追及された者もいないところから見れば、計画という社会主義国で用いられているような言葉では理解されてはいなかったと私は思うのでございますけれども、多分に誤解を持たれ、これしかないというような判断で経済計画の中に数字あるいは目標等が出ておった。この欠陥を総理は言われたものだ、こういうふうに理解いたしましたし、言葉で誤解を招くのは大変残念なことでございます。ひとつ検討してみようじゃないかということで、いま経済審議会でお願いしているところでございます。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いますけれども、私は、その計画という言葉に問題があるんじゃなくて、でき上がっておる本体の問題だろうと思うのですね。  そこで、大体資本主義経済でありますから、一つの計画を立てたらそのように行くはずは初めからないのですよ。初めからないのに、なぜそれじゃ計画をつくるのか。一応のいまのお話の指針といいますか見通しを少し立てなければ、何も持ってなくて行き当たりばったりで行くというわけにはいきません、これだけの国ですから。おまけに生産もあるし貿易もあるし、財政から金融からいろいろありますからね。どこかでやはり整合性のあるプログラムが必要だ。これは当然だと思うのですね。  私はかねてから、経済企画庁が毎年出します経済見通しについても、いまおやめになりましたが、宮崎さんが調整局長のときにこういう提案をしたことがあるのですよ。要するに、経済見通しは一年間でも大変これはむずかしいというんですね。それは、大体客観的に見たらこうだろうけれども政策的にはこうしたい、こういう要望もあるものでありますから。そこで、昔は台風の進路というのは線で出ていたわけです。大体何時間後にこういうふうに来る。このごろはこうして円をかいて、そうして扇形で大体この範囲に動くだろう、この方が科学的です。間違いなく科学的。一番振れたらこっち、一番振れたらこっち、この範囲に入りますと。私がそれを提起をしましたら、そのときの課長さんは、それは大変参考になる御意見ですという話でしたが、宮崎調整局長は、それでは政府の見通しになりません、こういうことだったわけですね。  それはそれでいいのですけれども、要するに計画と言われておるものは、三年もつとかもたないと言うのがおかしいのであって、毎年見直して調整していかなくて、一回つくったものが何年か通用するなどという判断の方に問題があるのじゃないか。だから、どうも言葉が責任を負わされておるようですけれども、責任があるのは言葉ではなくて運用の方なんですね。そういう計画をつくったら、一年たてば情勢は変わっていますから、新しい情勢ではこれはどういうふうになるのかと調整をしてみる、また一年たてばまた当然調整をする、毎年調整をしながらやるべきものだろうというのが第一点ですね。  それと同時に、もう一つよくわからないのは、きわめて弾力的にやれというお話でありながら長期にしようというのは、これはどういうわけだろうと思うのです。弾力的にやればやるほど長期の先は、振れは大きくなるわけですからね。そんなものをつくったって意味がないという感じが私はしておりまして、もしこれまでのお話のように三年はもつと言うのなら、三年間ぐらいで、それもいまのローリングシステムでやり直しながらやる、次々三年ずついくという話の方がより現実的ではないか。ただ、それじゃ長期の目標が何もない。それは、目標だけを大体はこうじゃないかと。整合性とかなんとかを全部はじこうといったって無理でしょうから、一つの、北に行くには北極星という程度のものがあるというなら意味がわかりますが、どうも私、今度のこの問題を見ながら、全く経済がわからない人が何か主観的に期待感を持ってこういうものをやろうとしておられるような気がして仕方がない。後で総理にやりますが、あなたは経済の御専門の出身でございますので、私のいまの認識に対して、あなたのこの経済計画というものの御認識はどうか。  これは、もう全然社会主義の話ではないのです。資本主義の話なんです。そして、その資本主義の中でやはり一つの計画というものがあっていいだろう。それは扱いの問題であって、計画そのものがそんな——今度は八年というのがここに出ています。八年になるんでしょうね、新聞に書いてありますから。八年先を見通せる人がここの中にいたら、ちょっと手を挙げてほしいのだけれども、どうですか。だれかいますか、八年先の日本経済は大体こうなるだろうということが予測できる人が。私は、もう八年どころか、せいぜい来年が予測できたら上できだと思っているのです、自分では。どうでしょう。
  117. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま堀委員から二つの問題を御提起いただきました。  一つは、とにかく自由主義経済、資本主義経済は市場メカニズムに支配される経済社会だから、見通しを立ててもそれが必ずしも正確に的中するはずはないじゃないか、常にフォローアップあるいはローリングプラン、こういった形で修正すべきだ、こういう御意見でございました。私も全く同感でございます。  しかし、これまでの実績を見ますと、修正があるいはおくれたり、日本人というものは数字ができますとそれにこだわりまして、修正がなかなかむずかしくなったり、もう少し様子を見ようとかいうようなことになったりして、ここにいろいろ問題があったことも私は存じているわけでございます。したがいまして、幅を少し認めたらどうかというお話も、物によって、そのような考え方を今度は大きく取り入れるべきだ。成長率などは、おっしゃるように、それは名目と実質についても認めるべきだということで、ことしの一月十三日でございましたが、審議経過では、実質は三%から四%、名目は五%から七%というふうに、堀委員の御提案のような方向で将来の弾力的な柔軟な見通しも出したつもりでございます。しかし、物によっては、そのような幅があり過ぎると目標にならぬではないかという意見も大変強いわけであります。ひとつ、物によってそういった点を考えながら目標を示してくれというのが、政府だけではありません、民間企業もそのような将来の目標は欲しいなと言う方が多いわけで、そのような点を加味して柔軟な弾力的な一つの御指針をつくることは必要なことだと私は思っているところでございます。  もう一つは期間の問題でございます。計画という言葉はともかくといたしまして、せっかく期間を設定して将来の、民間経済ならば誘導すべき目標、あるいは財政ならば公共投資の目標等をつくるわけでございます。私は、やはり財政計画を、財政なら計画という言葉を使っても、政府のやることでございますから、民間経済と違って適当なように外国も使っておるようでございますが、これもすべてこの中に盛り込めるような、五年では少し短いような感じと申しますか、感じと申しましては失礼でございますが、短いという意見が多分に強いようでございます。やはり一つの整合性を持った、特に大事な財政問題というような政府の計画、見通し、これはやはり織り込んでいきたい。そして、不透明と言われるようなことのないように、民間経済、民間の企業がよりどころにするようにしていきたい。  そういった意味で考えましたのが八年、それは同時にまた、これは大変非合理的なように聞こえるかもしれませんけれども、一九八〇年代という区切りのいい年代でいろいろの経済的な特徴をつかむような習慣もございますので、それを採用したということでございます。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 前段の方は、私それで結構だと思うのですけれども、そういうふうに幅がありますと、先へ行くほど幅が広がるのじゃないですか。短いところでは幅は狭いけれども、八年も先へ行ったら幅が広がっちゃって、そういうもので整合性なんというものがとれるのだろうか。  いま長官おっしゃったように、財政は国がやりますから、そのように決めたら、やろうと思ってやれないこともないでしょう。しかし、それがいかにやれないかということが、この財確法などというとんでもない法案が出るもとですから。だから、これはやはりいまの資本主義社会というのは非常にむずかしい段階に来ておりまして、見通しは非常にむずかしいのだということです。ですから、いまのお話のフレキシブルなもので、わりに動かさなくていいようなものにしたいと言えば言うほど、短くなければ論理的ではないわけだ。延ばせば延ばすほど、それでフレキシブルなものにしたらないに等しいような、整合性なんかとてもとれっこないものになりはしないか、私はこう思いまして、それは私に言わせると、そういう問題を現実に御経験のない総理がどうも思いつきでいろいろおっしゃっておるのでは大変困る。  それは、なぜ私がきょうここでこれを伺っているかというと、この財確法のような問題は、いまの、大蔵省がここにA案、B案、C案という中期財政試算とかいろいろ出しておりますが、試算であったってなかなかそのようにいかないという現状でありますから、ましてそれは長期のもので、単に大蔵省一般会計の問題だけがむずかしいにもかかわらず、産業一般、貿易、金融を含めて、これは今日では世界全体の問題なんです。その世界全体の問題を八年先までプログラムしようというのは、私は率直に言うと何もしないということと同じになりはしないか。それでは、いろいろな方に非常に努力をしていただくにしては、むだな努力になりはしないか。  主管は長官ですから、そこらは率直に総理におっしゃらないと、総理が言われたら何でもそのとおりにやればいいということでは、補佐をする閣僚としては必ずしも十分ではないのではないか。無理なことはこうですよと、やはり経済企画庁には優秀な官僚の皆さんがいるわけですから、その皆さんの意見も十分聞いていただかないと、いまのこの問題は、昭和三十五年に大蔵委員会に来てからこれまで二十三年間、大蔵委員会以外にも商工や予算にも行きましたが、経済を専門にやっておる私の立場から見ますと、何かどうも大変なむだな努力がこれから行われて、実際日本の財政とか経済とかに本当に役に立つようなものができるのかという心配があるものですから、長官にちょっとお越しをいただいたわけです。
  119. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 大変専門家でございます堀委員から、ありがたい御激励の言葉をいただいたような気がするわけでございます。  私どもは、何としても将来の見通しを政府のみならず民間に与えるような、まあ経済計画という言葉を使ってまいりましたけれども、そのようなものはぜひとも必要だと考えておるわけでございます。八年にいたしましても、その間いろいろの濃淡を、近いところ遠いところつけながら、さらにまた、将来に対しては希望を入れながらいろいろの工夫が、いま堀委員のおっしゃった幅の中でもまた考えられはしないかということを、素人ながらに考えておるところでございます。  それから、計画という言葉、確かに御指摘のように内容の問題ではないかということもございますけれども、やはり言葉というものは大変大事なもので、何といいますか、日本人は特に言葉にとらわれる、聖書にありますように、「初めに言葉ありき、言葉は神なりき」という言葉があるぐらい言葉にとらわれる民族でございますので、やはりいままでの経過から見て、ひとつそのような弾力的な意図を十分発揮できるようなタイトルにしたい、こういうふうに考えております。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いまのように八年で何かそういうものができるようですね。これはやはり、いまの日本経済というのは、確かに民間も非常に重要でありますけれども、財政が占めておる役割りというのは日本経済では大変大きなものがございますね。大蔵大臣は、いまの財政計画についてどういうふうに、いまの新しいガイドラインですか何だかよくわからないのですが、ちょっと計画と言わしてもらわないと話がやりにくいから、仮称計画と言いますが、いまの八年計画、大蔵省はこれに対応できるのでしょうか、八年に対する財政のそういう整合性を持たせるような何らかの処置というのは。大蔵大臣いかがですか。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもも、いわゆる財政改革を進めるに当たっての考え方をお示ししたわけでございますが、いずれにいたしましても、まず短期的には、赤字国債からの脱却年度等は今後鋭意検討をしながらお示ししなければならない問題だ、そういうことを念頭に置きました場合に、いま経済企画庁長官からもお答えがありました日本経済全体の一つの指針とでも申しますか、そういうものの中における財政の果たすべき役割りというようなものも整合性を持ちながら検討していかなきゃならぬなという考え方を持っておりますので、これから経済審議会等での議論が進んでいきますことを十分、横目でにらみながらという表現は必ずしも適切ではございませんが、それと整合性をできるだけあらしめる形で財政の占める役割りと財政改革の一つのプランニングというものを考えていかなければならない課題だなと、こういう認識でおります。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大蔵省が、今後の財政計画といいますかそれの中で出しておるのは、実は財政の中期試算というのは五十七年から六十一年までになっておりますね。これは最近出たものですから、いまはもう五十八年ですから、さっき私が言ったように、大体三、四年のものがいま出ているわけですね。ちょっと事務当局、これは答えられるかな。要するに、これから八年の財政計画なんというものは過去にはつくったことないだろうと私は思うのだけれども、事務当局どうですか。
  123. 窪田弘

    ○窪田政府委員 いまおっしゃいましたのは、三年のケースをおっしゃったと思うのでございますが、私どもが一月にお出しいたしました中期試算は、三年、五年、七年と、私どもで言う七年は五十九年から六十五年までに特例公債をゼロにするという計算でございますから、いま御指摘の六十五年というのは、私どもの試算のCに当たるものであろうと思います。計算をしたらそうなりますが、しかし、それをどうやっていくかということは、仕組みの再検討を含めてこれから検討してまいりたいということでございます。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 塩崎長官、結構でございます。ありがとうございました。  時間があと十五分ありますが、今度は電電公社にちょっとお伺いをいたします。  電電公社は今度の財確法で、前倒しで二千四百億円一般会計に納付をされることになっておるわけでありますけれども、最近の電電公社の収益状況という点を、事務当局からで結構でありますから、収支差額の面で、真藤総裁がおいでになってから非常に目覚ましく収支差額がふえてきておる、それは民間からおいでになって、公社も官の役所のようなものでありますから、そういうところに対して、民間的発想でいろいろと効率的な運営をなすった結果、そういうふうな収支差額が生まれてきておると思うのですが、公社の方からちょっと簡単に説明してください。
  125. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。電電公社の最近の財務状況につきまして、これを収支差額の面から端的にお答えしたいと思います。  五十六年度につきましては、予算では九百三十八億円に対しまして、決算ではこれが三千五百五十八億円、二千六百二十億円予定を上回る収支差額を上げることができました。また五十七年度、これはまだ決算が出ておりませんけれども予算では一千七十六億円でございますが、収入につきましては、いまのところ、はっきりしているものだけで予算を一千百億円上回る、また経費につきましては、逆に予算を一千億円余り下回るという見通しがございます。したがって、予算に対しまして、二千億余り収支差額の多い、つまり、少なくとも三千二百億円程度の収支差額を上げ得るものというふうに現在見ております。予算を上回る収入あるいは予算を下回る支出、これはいずれも現場職員の努力によります販売活動あるいはまた、かなり細々した仕事に至るまでの仕事の内容見直しによります経費の節減あるいはまた金融費用の節減、こういったものから、こういった成果がもたらされたと考えております。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 電電公社は、最近電話料の値下げをやり、いろいろとサービスを高めてもらっておるわけでありますが、そういう情勢にもかかわらず、収支差額という表現はちょっとわかりにくいのでありますが、一種の利益と見てもいいのでありましょう、企業利益が出てきておる。  収入面の企業利益の問題はひとつ横に置きまして、支出面で過去の状態に比べると節約が相当大きくなっておるように思うのですが、もう一遍、支出面の節約の状態をもう少し古いところから言ってください。
  127. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  たとえば五年前、昭和五十三年度来の状況を簡単に申し上げますと、五十三年度来五年間いずれも収入は、多少の差がございますが、予算を上回り、支出は予算を下回っておったわけでございますが、五十三年度支出面で予算に対するいわゆる節約、これは約百五十億円余りでございます。これが五十四年、五十五年と二百億ないし三百億でございますが、五十六年度におきましては約八百四十五億円、五十七年度につきましては、予算を下回る節約が、さっき申し上げました少なくとも一千億円、こういうふうに考えております。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまの節約の中でちょっと伺いたいのは、いろいろなものがありましょうけれども、旅費と備品費ですね、こういうものの節約の状態を、いまの五十三年から五十七年の見込みまで、ちょっと説明をしてもらいたいと思います。
  129. 岩下健

    ○岩下説明員 まず旅費でございますが、これは管理部門におけるいわゆる一般旅費について見ますと、五十三年度数字を申し上げますと、以降五年間でございますが、五十三億円、五十五億円ときまして、五十七年度ではこれが四十五億円。ですから、四年前に比べますと、約十億円減少をしております。同じく管理部門における備品費、これは机とかあるいは簡単な事務機械、ロッカーのたぐいでございますが、備品費につきましては、五十三年度が六十九億円に対しまして、五十七年度の見込みは約五十億円でございます。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 竹下大蔵大臣、電電公社が、真藤総裁が来られてから月次別決算その他で大変経営の効率化を進めておられる。しかし、経営の効率化の中には、いま行政改革で求められておるところの、要するに努力によって経費を削るということが、ここではいまお聞きのように具体的に実は出ておるわけですね。  ですから、要するに五十三年の五十三億がその次の年五十五億までなっていますが、それから五十四年の五十五億が、今日四十五億で十億。十億というのは、これは二〇%に近い旅費の節約が実は行われておるわけですね。備品費の方は、一番高いところ六十九、これが五十ですから、十九、二十ということは、七十ですから二五、六%ですか、これは実は大変節約が行われておる、こういう状態なんですね。一生懸命職員が努力をして節約をして、そうして利益を上げておる。その利益を上げておるところを大蔵省はぱあっと納付金で取り上げる。  大蔵省の旅費をちょっと主計局で説明してください。細かいのはいいです。本省だけの旅費の最近の状態はどうなっているのか。こういうふうに一〇%ぐらい減っているのかどうか。
  131. 窪田弘

    ○窪田政府委員 決算ベースといいますか使ったベースで見ますと、五十七年度が十一億一千五百万円でございまして、これは前年度の十一億七百万円からふえております。ただ、これは五十七年度非常に国際会議が多うございまして、九百万円ほど外国旅費を流用した結果ふえているわけでございまして、予算ベースで見ますと、五十七年度十一億六千百万円でございましたが、五十八年度はこれを十一億二千七百万円というふうに削減をいたしております。一〇%というふうなあれではございませんが、ここずっと据え置きで来ておりますので、金融検査旅費でございますとかいろいろな実務的な旅費は非常に苦しい状況でございます。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、私がちょっとこういう問題を取り上げておるのは、いろいろ費用は要るのでしょう、ですけれども、一般的に官庁の旅費というのは毎年毎年ほぼ同じ額になっているのですよ。要するに、これだけやかましく歳出を削れ削れと言われておりながら、これは大蔵省だけではありません、各省庁の場合、旅費などみんなそうなっている。いまはどうか知りませんが、かつては、ともかく年度末になるとかなり出張が多くなるというような例が、日本の場合、官庁の仕組みのためにそうなっておるのじゃないかという気がするのですけれども。  ですから、私は大蔵省を何も目のかたきにしているわけではないのですが、大蔵省がみずから模範を示して各省を指導しなければならぬ立場にあるときに、必ずしも十分に節減が行われていない。そうして一生懸命節約をしておるところからともかく金を取り上げる。これは物の道理から見て、大蔵大臣、どんなものでしょうかね。私は、大蔵省の皆さんがほぼ横ばいというのは、物価も上がっているからという話かもしれませんが、旅費を少なくとも毎年、そんなにたくさんできなくても、三%なら三%ずつでも減らしていくというぐらいな意気込みで、そのために財務局があったり、いま財務部があるのじゃないですかね。いろいろと全国にこうやっておいて、なおかつそんなに旅費が要るのかどうか。電話で済むことは電話でやればいい。  ちょっと総裁にお伺いしますけれども、総裁は御出張なさるときは、私が聞いておるところでは大体その日に必ずお帰りになるように聞いておりますが、総裁いかがですか。
  133. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答えします。物理的に帰れるときには、その日に帰るように努めております。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、官庁の出張を大蔵省もみずからそういうことにして、物理的に帰れる範囲、いま新幹線がずいぶん広がっているわけですから、その夜のうちに帰れるなら、宿泊費をとって明くる日帰らなくても、旅費は節約になるのじゃないでしょうか。片一方では、そうやって旅費を、何もこれは自然に減っているのじゃないのですね。何とか経費を減らそうと思って一生懸命みんなで減らしておるところから、造作もなく納付金を取り上げる。これは、大蔵省としては大いに反省してもらわなければいかぬと私は思うのですが、大蔵大臣いかがでしょうか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  135. 竹下登

    竹下国務大臣 私も実は、旅費の削減合理化、これは、運賃等が上がっておる中でそれなりに努力しておるものというふうに理解しております。率直に申しまして、詳細余り詳しいことはございません。すべて、まず隗より始めよという言葉がございますように、行政改革にしろあるいは行財政改革、なかんずく節減、これらは、隗より始めよという精神の上に立脚すべきものであるというふうに私も認識をいたしております。  そこで、一生懸命努力しておる電電公社から納付金をちょうだいするという問題になるわけでございますが、まさに臨時国庫納付金をことしは繰り上げてお願いをする、こういうことでございます。まさに国の財政の危機的状況、そして税外収入の確保ということで、もとよりその必要性からお願いをしたわけでございますけれども、そういう基本的な姿勢というものは持ちながら、やはりそういうお願いはすべきものであるというふうに理解をいたしております。したがって、あるところからとにかくふんだくれというほどイージーに考えてやったものではもちろんございません。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、ないからしようがないという話かもしれませんけれども、それならやはりもう少し、いまの旅費のようなものは、いまや電話もあるしテレックスもあるし、一々どうしても行かなければいかぬという問題はかなり節約ができるのではないか、私はこう思っておりますので、大蔵大臣、これは五十九年度予算においてはひとつそういう処理をしっかりやっていただきたいなと思うわけです。  それと、この間から、今後の電電納付金について大蔵大臣の御答弁は大変あいまいでございますので、私は先のことを伺う気はないのですけれども、この前の法律に基づいて、電電公社は年間千二百億ずつ四年間、四千八百億円納付金を納める、こういうことに実はなっております。しかし、五十九年度分はことし前倒しで五十八年にもうすでに取り切ったわけですね。ですから、先のことは申しません、五十九年度にまたダブらして、さっき申し上げましたような背景で努力をしておる職員の、そういう一生懸命努力をしてつくり出しておるものを安易にともかくダブってまで取ろうというようなことは、最初に申し上げておる合理性の問題から見て、これは断じて行うべきでない、私はこう思っておるわけです。六十年以後の話はまた別でありますが、五十九年については一体どういう処理をされるのか、大蔵大臣の明確な御答弁をいただきたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、御指摘のように、電電公社の経営は各般にわたる経営努力、その結果によって順調に推移しておることは事実でございます。したがって、五十六年度に臨時国庫納付金を設けまして、そしてそれを前倒しをして五十九年度分を今日ちょうだいする、こういうことになっておるわけでございますので、電電公社そのものが労使の協調努力によりまして健全に推移しておるという事実を十分に踏まえながら、私どもとしても今後まず隗より始めよ、自粛自戒をしなければならぬ問題であるというふうに考えております。  そこで、今後の問題につきましては、国の財政状況とか公社の財務状況というようなものはいまのところ明確であるわけではございませんが、いまおっしゃいましたように、このような趣旨のものをイージーに考えるべきものではないというふうに理解をしております。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、大蔵大臣に対する質問はこれで、引き続き……
  139. 森美秀

    森委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。堀昌雄君。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうは、中曽根総理に初めて私は質問をさせていただくわけでありますが、いま日本経済は、どうやらここへ来て少し底入れをしたのか、明るさがややほの見えるといいますか、そういう情勢になってきたようでありますが、実は四月五日に「今後の経済対策について」という方針を内閣でお決めになっておりますね。  そこで、この中できょうは二つの問題だけをちょっと伺いたいと思っておるのですが、最初に「当面の課題」として、一番に「金融政策の機動的運営」こういうふうに記されておりまして、「(1)内外経済動向を注視しつつ、金融政策の機動的運営を図る。(2)設備投資資金等各般の資金需要に対処して、所要の資金供給の円滑化に配慮する。」こういうふうに実は述べられておるわけであります。  大蔵大臣、これは大体どういう意味なのかをちょっと最初に大蔵大臣の方から、所管大臣でありますからお答えをいただきたいと思います。
  141. 竹下登

    竹下国務大臣 先般の今後の経済対策の問題につきましては「最近の経済情勢」とそれから「経済運営の基本方向」そして「当面の課題」として、いまおっしゃいましたように「金融政策の機動的運営」ということを、いま朗読になりました(1)、(2)で決定を見たわけでございます。  このいわゆる金融政策の機動的運営という問題は、これは、景気とか金融動向のほかに為替相場とか内外金利関係など見守りながら適時適切な運営を図っていく必要があるという趣旨を表現をしたものであるというふうに私ども理解しております。  それから、設備投資資金等の各般の資金需要に対する所要の資金供給の円滑化の問題につきましては、総体的にいま金融は緩んでおるとでも申しましょうか、そういう環境にあるわけでございますけれども、産業政策の立場から、いつでもこれに呼応できるような環境を絶えず整備しておこうという趣旨であると理解しております。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣は、この前前川日銀総裁をお呼びになりまして、こういう問題についていろいろなお話があったように新聞で拝見をしておりますけれども、その新聞の記事では、公定歩合の問題は日銀総裁に任せます、こういうふうにおっしゃったというふうに拝見しておりますが、そのようでございましょうか。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この点につきましては、一貫してはっきりしております。  私、内閣総理大臣に就任いたしましたときに、日銀総裁が最初にお見えになったときに、物価の安定とそれから為替の安定、よく御注意ください、それで公定歩合の問題はあなたの仕事であるからあなたにお任せいたします、いまのような二つの点を頭に置いてどうぞお考えなすっておやりください、そういうことを申し上げまして、自来一貫している態度でございます。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、この前鈴木内閣のときに、どうも閣僚の皆さんが公定歩合についていろいろと御意見があり過ぎるものですから、何かどうも、本来公定歩合の操作というのは日本銀行の所管のものでありますのに、いろいろな意見が出ますと大変日銀の処理がむずかしくなる、私はこう判断して、鈴木総理に、関係閣僚がこの問題について発言をしないようにひとつ総理もお考えを願いたい、こう申し上げて、総理は、それはもっともである、こうおっしゃっていただいたのでありますが、そういう意味で、こういう金融政策の問題というのは日本銀行が責任を持ってやってもらうというのが筋でありまして、そういう点で、総理がそういうふうな対応をとっておられることを高く評価をいたしたい、こう私は思っておるわけであります。  そこで、今度はそれだけ日銀総裁としては責任がおありになるわけでございますから、いろいろと新聞や雑誌等を見ておりますと、いろいろな意見がたくさん出ております。しかし私は、前川総裁がいま総理のおっしゃった物価と為替の問題を十分考えながら政策の処理をしてもらいたいとおっしゃることを十分踏まえておやりになっておると思うのでありますが、今日的に現在のアメリカの情勢、ちょっと私新聞で見ておるところでは、アメリカの上院で防衛予算を、いま一〇%で出しておるのを七・五%にレーガン大統領が妥協したけれども、上院はそれを五%まで切ったとか、いろいろと八四年財政についていい方向でアメリカ議会も対応しておられるというふうに見ておるわけでありますが、そういう問題も含めて、ひとつ現在の金融に対処するための客観的な諸情勢をちょっと御説明をいただきたいと思います。
  145. 前川春雄

    前川参考人 いまお話がございましたように、金融政策は日本銀行にお任せ願っておるわけでございまして、それだけ責任が重いということは当然でございます。十分その点につきましては責任の重さを自覚して対処してまいらなければいけないというふうに思っております。  いまのような景気の状況であり、かつまた物価も安定しておるわけでございまするので、金融政策の面でも景気にいい影響のある施策をとることは当然であろうというふうに思っております。そういう意味で、金融政策は機動的に運用できるところが特色でございまするから、今後も機動的に運用してまいりたいというふうに思います。  当面の景気あるいは物価ということから考えますると、金融政策全体は緩和基調ではございまするけれども、金利をまだ下げる余地があるというふうに私どもは判断しております。ただ、そういう金利を下げることによって全体の景気にはいい影響がございますけれども、一方、いまお話のございました為替の面にどういう影響が出るか、この辺はいまのように円相場が不安定のときは十分慎重に対処しないといけないというふうに思います。国内で為替相場を見ております見方と海外からのいまの円相場に対する判断あるいは見方は非常に違うわけでございまして、いまの相場水準は明らかに円の過小評価であるというふうに私どもも思います。海外でもそういうことを非常に感じておるわけでございますので、いやしくも金利政策をとることによりまして相場が円安の方にさらに振れるということは絶対避けなければいけないというふうに考えておるわけでございます。  そういう面におきまして、いま御質問のございました客観的にどういうふうな環境にあるのかということでございますが、問題は、円相場がとかく円安の方に振れますことの基本的な背景には海外の金利水準が高い、日本の金利水準は海外の水準に比べますれば低いわけでございます。そういう意味で、内外の金利差はかなり大きいものでございますから、それをさらに広げるということが円を安くする方向に働きはしないかという懸念があるわけでございます。そういう面から申しまして、アメリカの金利がもう少し下がってくれることが一番早道でございますが、アメリカもインフレ率、消費者物価の上昇率はいま三・六まで下がってまいりました。日本の二・五と余り違わない、一%くらいまだ高いわけでございますが、そういうことから申しますれば、アメリカの金利がもう少し下がることは当然であろうと思います。  ただ、これには、マネーサプライがなかなか落ちつかないということのほかに、いまお話のございましたアメリカの財政の赤字がなかなか減らないというところがございます。この財政の赤字を縮減するために、目下アメリカの議会とホワイトハウスとの間でいろいろの折衝が行われておるわけでございますが、この赤字の削減というのはどこの国でもなかなかむずかしいわけでございまして、なかなか思ったような成果がいまのところは出ておらないというのが現状でございます。マネーサプライの方は少しずつ落ちついてきておるわけでございまして、この調子が続きますれば、マネーサプライの面からさらに金利が上がるというような懸念はだんだん少なくなるかと思いますけれども、いまのようなアメリカの財政の赤字が減らないということになりますと、将来の財政インフレ懸念がなかなか払拭できないということもございまして、金利水準は下がらないということであろうかと思います。そういう意味から申しますと、アメリカの金利が下がりますためには、アメリカの財政赤字削減について何らかの進展が見られることがどうしても必要であろうというふうに思っております。  そういう意味におきまして、全体としてはかなりいい方向には進んでおるというふうに思いますけれども、アメリカの金利が下げ渋っておるということが、私どもの金融政策を遂行する上におきまして円相場にどういうふうに影響するかということにつきまして、慎重に対処しなければいけないというふうに考えております。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 いま新聞その他では、与党では、できれば公定歩合を一%、少なくとも〇・七五%くらいは引き下げたらどうかという意見があるというふうに私は聞いておるのでありますが、そういう大幅な公定歩合の引き下げというのは、客観情勢が熟したとしても、ちょっといまの為替の問題から見て問題があるのではなかろうか。大体〇・五%くらいを行って、情勢がよければまたさらに行うということが適切ではないか、こう判断をしておるわけであります。  そこで、金融操作というのはどうも全部公定歩合のところにだけ中心があるように理解をされておるようでありますが、私は、ちょっとそれはいかがかなという感じがするわけであります。  私は社会党でありますけれども昭和三十八年に金融の勉強をしております中で、日本では窓口規制と公定歩合操作、ところが外国には窓口規制というものはなくて、公定歩合操作とオープン・マーケット・オペレーションと準備率、この三つが外国の金融調節手段であって、日本とは著しく違う。じゃ、どうして日本ではそういう準備率なりオープン・マーケット・オペレーションができないのかと勉強してみますと、どうやらこれは硬直金利で、ある意味で人為的な低金利政策、これで高度成長をドライブしたわけでありますから、それなりの評価があっていいわけでありますが、そういうことが下敷きになっている。それでオープン・マーケット・オペレーションというきわめて適切な金融対処ができないというふうになっていると思いまして、これはやはり資本主義経済、市場メカニズムであるならば金利が自由化されるのが当然だと、それ以来一貫して金利自由化論というのを推進して今日に至っておるわけであります。  昭和四十年に佐藤総理が御就任になりましたときに、最初の総括質問で私は最後に、佐藤さんは、池田さんの高度成長政策に対してはもうちょっと低目の成長でいいのではないか、こういう御議論ですが、それには金利を自由化なさらないと、かえってあなたの時代は池田さんのときよりももっと高い成長の時代が続くようになると思います、こういうふうに最後の締めくくりで申し上げたら、大変いいサゼスチョンをいただいてありがとう、考えてみますというお話でしたが、何も行われなかったわけです。結果的には佐藤内閣の時期がもっと高い成長になった。  私は、自分が出身が医者でありますから、人間の体というのは大変うまく実はできているわけでありまして、これがうまく機能しておるのは自律神経系統という神経支配によっていろいろな対応が自動的にオートマチックに行われる。温度がこう上がってきますと、体温を一定に保つためには汗が出て、汗が蒸発することによって体温を下げるような努力をする。もし寒いところへ行けば、血液が周辺にずっと流れていたのでは体温が奪われますから、そのときは表面の血管を収縮をして、おなかのところへ全部血液を集めて体温が外へ放散するのを防ぐようになっている。まさに血液を上手にオートマチックに機能させるようになっております。  私は、金融政策というのはまさに人間の体の血液の流れと見ていいのじゃないだろうか、こういう考えでありますから、その血液の流れが順調にいかなければ必ずどこかで障害が起こるということになるのだ。だから、これは自由化すべきである。本来市場経済というものはそういう市場で価格が決まる性格のものを、他のところで決めて押しつけるというのは市場経済の本則にもとるのではないか。ですから、私は、社会党でマルクス主義の勉強をして資本主義とは何ぞやということを理解しておる上で、しかし経済はいかにあるべきか、こういう立場なのであります。  そこで、総理にはずっとお聞きいただいて恐縮ですが、後で総括的に伺うのでありますが、いまの金利自由化について金融制度調査会も中間報告でありますか何かをしていらっしゃいますけれども、総裁は、この点についてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  147. 前川春雄

    前川参考人 金融政策の効率性を確保いたしますためには、どうしても金利が機動的に動く、金利機能の活用ということが必要であることはおっしゃるとおりであろうと思います。  そういう意味におきまして、いまのように金融資産が非常にふえてくる、しかも対外的には資本の移動が自由になってくるという場合には、金利を国内だけで規制してまいるということはなかなか困難であり、またすべきではないというふうに思っております。そういう意味におきまして、市場機能が十分に発揮できるということが金利機能も発揮できることになるわけでございますから、どうしても市場機能全体を高めていく。その中で金利も規制金利ではなくて、金利の自由化を進めてまいらなければいけないというふうに考えております。  すでに、金利の自由化につきましてはできるところはかなり進めてまいったつもりでございます。短期金利につきましては、短期市場の金利についてはほとんど自由化してまいりました。長期金利につきましても、これは御案内のように債券市場で利回りが決まりますので、長期の債券市場、必ずしも完全に自由ではございませんけれども、かなり自由化してまいっておるというふうに思います。こういう自由化を進めてまいります上で、さらにわれわれのこれからの展望として持つべきものは、やはり預金金利の自由化であろうかというふうに考えます。  預金金利につきましては、今度の金融制度調査会の中間答申でも触れておられますが、この預金金利の自由化はいろいろの問題がございます。特に小口の預金金利につきましては、郵貯の問題との関連がありますとか、あるいは中小金融機関の経営上の問題ということもございますので、なかなか一挙に自由化というところまではまいらないわけでございますが、しかし将来の姿といたしましては、だんだん自由化の方に近づいていくべきものだろうと思います。  当面、預金金利につきまして自由化を考えてまいります場合には、機関投資家であるとかあるいは企業のように規制金利以外の金融資産の保有に非常に慣熟しておるところがございますので、そういうところが主として持っております大口預金の金利の自由化ということから始めるか、あるいは、そういうことに関連いたしまして、すでにCDというのは金利が自由化されておりますので、こういうCDは、またどちらかと申しますと小口ではなくて大口でございますから、そういうものを中心に自由化をもう少し進めてまいるということが必要なのではないかというふうに思います。私どもも、そういう方向でこれからも考えてまいらなければいけないと思います。  もう一つ、長期金利の問題。長期金利は債券市場の中で決まりますからかなり自由化しておるわけでございますが、ただ長期金利の相互間、たとえば国債とそれ以外の債券との間の金利というものは、まだ必ずしも完全に自由というわけではございません。いわゆる四畳半金利ということがよく新聞等で言われますけれども、国債の条件を基準にしてほかの債券の条件が決まるというような慣行と申しますか、そういう扱いが行われてきておりますが、国債の需要供給とそれ以外の債券の需要供給とは関係は非常に違うものでございますから、なかなかいままでのような一定の格差で決めるということが困難で、いままでのような国債とそれ以外の債券との格差を維持しようと思いますと、どうしてもそこに需給関係に不合理が出てくるということでございますので、この点につきましても今後の自由化の大きな課題といたしまして、そういう格差の是正ということ、資金需給の実態に合わせた条件の設定ということが必要ではないかというふうに考えております。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 総理にひとついまの経過で伺いたいのでありますが、総理にも後で経済計画等の話も伺うのでありますけれども、市場経済論だと拝見しておりますので。  いま前川総裁がお話しになりました預金の自由化、これは一つ大きな問題がありますのは、日本では郵便貯金が相当大きなウエートを占めておりまして、こことの関連でこれは相当時間がかかる政治的な問題だと私は理解をしております。経済問題だけならば処理は簡単でありますけれども、歴史的な問題もありますから必ずしもそうはいきません。しかし、いまの前川総裁がおっしゃったCDは、いま五億円というのが単位でございます。けれども、これはできまして数年たっておりまして、CDの市場もちゃんとできてきておることでありますから、これは徐々に五億から三億にとか、また三億でしばらくやって、さらにそれで問題がなければ次は一億にと、徐々にそういう資金が自由になるということは、私は、やはり市場経済という立場から見て、また前段で私が申し上げましたような金融というものが経済に果たしております役割りから見ても必要ではないか、こう思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 金利の自由化について御意見を承りましたが、預貯金間の問題につきましても、原則的にはこれが洞通するということが望ましいと思います。しかし、郵便貯金についてはいままでの歴史もありますし、また、いまやっておる現実の機能というものもございまして、そう簡単に単純論で割り切るわけにいかぬ事情もあると思います。  臨調では、ある特定の答申をしておるように思いますが、この間の実行に当たる政府側としましては、関係者の中でよく調整をして、その上でいく必要がある。金利の問題などは非常にデリケートな問題でございますから、まさに神経系に当たるような問題で、神経を逆なでするようなことは避けるがいいと関係者間で十分調整してやってもらうようにいたしたい。ただ、臨調答申がそういうことを示しているという点は頭に置いてやらないといかぬというふうに思います。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 それはいいのですけれども、CDの小型化といいますか、金額を五億から三億へ、また三億からやがては一億へという問題については、総理はどういうふうにお考えになりますか。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは非常に専門的な問題でございますから、大蔵大臣から御答弁申し上げます。
  152. 竹下登

    竹下国務大臣 CDというのもだんだんなじんできておると思っております。私、まだこれに関して詳しく検討しておるというわけではございませんが、方向は私も同じような方向を志向しております。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ、総裁に伺いたいのでありますけれども、いまはちょうど財政散超期でありまして、そこで、この間から日本銀行はTBのオペレーションをおやりになっておるようでありますね。私は、この前も一回総裁にお越しをいただきまして、このTBの問題に触れておるのでありますけれども、いま銀行が三人委員会という、何か大蔵省の先輩の方や日銀の佐々木さんたち委員会をつくっていらっしゃって、その課題の中に、やがてディーリングも認めたいというようなことが新聞で報道されておるのは承知しておるわけであります。  私は、五十四年十二月の年末に金融小委員会を開いていただきまして、金融制の佐々木さんにお越しをいただいてこの議論をいたしまして、銀行法でこれまで銀行を健全化しようという中に銀行のディーリングというのが入っておるけれども、そのときちょうど原価法、低価法という決算上の処理を統一経理基準をめぐって大蔵省がやるということが新聞で報道されておりましたから、そういう決算上の処理をしなければいけないような商品を、要するに銀行の健全性を求める銀行法の中へ安易に書き込むことは、サウンドバンキングの見地からして問題があるように思うということをお尋ねをしたことがあるわけであります。それは要するに、十年の長期債でございますから問題があるのであって、TBのようにサイト九十日ぐらいであれば、ディスカウントしても持っておれば必ず九十日には戻るのでありますから、これは金融機関がディーリングをなすっても不測のことが起きるおそれはない、TBのディーリングについては私は別に反対ではありません、その席でこう申し上げたことがあるのでありますが、新聞で見ておりますと、何だか今度は長期債のディーリングのお話が具体化するのでございましょう。  しかし、これは銀行としても対応できる銀行だけにライセンスを与えるということでないと、免許の金融機関に皆そんなことをやらせるなどということになったら大変な混乱が起こるおそれがある、こう私は考えております。しかし、特定の銀行だけはディーリングは認められるけれども、それ以外のところは認められないとなると、これは受ける金融機関の側とすれば大変格差が出て望ましくない。  そうすると、それならばTB市場というものがうまくできてきて、そしてそのTB市場にそういう他の金融機関も参加ができるような道を開けば、長期についてはライセンスですけれども、短期については参加してもいいですよということになれば、このディーリング問題というのは公平な対応になるんではないかな、私はこういう気がしておるわけであります。  そこで、今後のTBの発行についての日本銀行としての御要望といいますか、これは大蔵省のことでありますが、私はそういう長期展望を持っておりますが、日本銀行はどういうふうにお考えになっておるかをちょっと伺いたいと思います。
  154. 前川春雄

    前川参考人 いろいろ問題がございまするが、一つ、短期の金融市場はかなり自由化してまいっておるわけでございます。ただ、その中でもいわゆる金融市場、コールあるいは手形市場、こういうものから短期の金融市場というのは発達してまいったわけでございまするが、これは歴史的にもそういう形で発展してまいりましたので、これは金融機関の余資の運用あるいは不足資金の一時的な調達ということから始まったわけでございます。その性格はいまでも持っておるわけでございまするが、だんだん全体のマネーフローと申しまするか資金の流れが変わってまいりまして、企業あるいは機関投資家というものの余裕資金というのが非常にふえてまいりましたものでございまするから、そういうところも短期の金融資産を持てることになりまして、また現に持っておるわけでございます。ところが、そういうところは、いまのコールあるいは手形市場というものには入れない。そういうところは、いまでは現先であるとかあるいはCD、こういうものに運用しておるわけでございます。  しかし、短期の金融市場という点から申しますれば、この両者は当然一つになってしかるべきでございまするので、私ども、将来の展望といたしましては、両者を統合いたしましたいわゆるオープンマーケットという言葉をよく使いまするけれども、金融機関ばかりでなしに一般企業、機関投資家、こういうものも参加できる市場が、そこでまた取引される金融資産ができてくることが、一番短期金融市場が効率的に運用されるゆえんであろうというふうに思っております。そういう動きは現にある程度起きてきておるわけでございまして、CDというものが取引されているのはそのゆえんでございます。  また、私どもがTB、短期政府証券を今度のように売却いたしますると、それが金融機関ばかりでなしに、一般の企業もこれに投資するということになりまして、一つのマーケットがそこにできてくるということでございます。そういうふうな将来の展望から考えましても、オープンマーケットというものがだんだん発達していくことがどうしても必要である。  そういうふうにオープンマーケットということを考えてまいりますると、いまのコールあるいは手形市場にそのまま企業が入ってくることはあるいは問題があるかもしれない。そういうオープンマーケットに一番適した金融資産というものが望ましいわけでございまするが、CDももちろんございますけれども、先ほど来お話しのありまするとおり、いろいろ金額、期間等に条件がございます。そういう意味で、信用力から申しましても、一番適当なのは実はTBであろうというふうに考えております。現に今度も、TBの市中売却オペレーションはもう何回もやっておりまするが、やりますればTBに対する需要はかなり強いわけでございます。そういうことによって短期の金融市場がだんだん育成されていくということは、全体の金融政策の効率化の点から申しましても非常に望ましいことであろうというふうに思います。  このTBの発行方法をどういうふうにするかということでございますが、いまはTBを私どもは市場に売りまするが、これは金融調節の手段としてやっておるわけでございまして、TBマーケットをつくるということを実は目的にしておらないわけでございます。しかし、だんだんいまのような動きが発展してまいりますれば、この金融調節ということだけでなくて、TBのマーケットができるということは、将来の姿としては非常に望ましいことではないかというふうに考えております。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 総理、いまのお話を聞いていただいて、要するに、私はいまこの問題を取り上げていますのは、今度の「今後の経済対策について」という項目の中で「金融政策の機動的運営」こういうことがございますね。  これは、どうも一般的に公定歩合の操作だけが何か機動的運営だと認識をされているのじゃないかと、こう思うのですが、いまちょっと総裁がずっとお答えをいただいたように、オープンマーケットが政府のTBの発行によってできますと、日銀はそこに対してオープン・マーケット・オペレーションが、私が昭和三十八年に、要するに諸外国でやっていることが実はできるようになるわけです。そうしますと、そこで、もっと金利を低くしようと思えば、現在日本銀行はコールについてはコントロールができる仕組みになっておりますけれども、いまの現先だとかCD市場というのは、これには日本銀行は全然タッチができません。  しかし、いまの政府短期証券というものは、すでに相当大きな額を政府が発行して日本銀行が持っておるわけでありまして、これがそういうふうにマーケットの商品として使われるようになれば、日本銀行はそこでもって、単に金融機関だけではなしに、企業に対しても機関投資家に対しても実は金利の操作ができる。公定歩合だけが金利操作の手段ではない。ですから、さっき申し上げたように、結局外国ではオープン・マーケット・オペレーションという手だてを通じてもやれるし幾つかのそういう金融政策の手段を持っておる。ところがいま大蔵省は、さっきお話のありましたように、金融調節、払い超になっているからそれを吸い上げる、通貨の調整のためにだけは使わせるけれども、それ以上のところはだめですよと、こういうふうにリジッドな処理をしているわけです。  総理は、大体経済計画でも大いにフレキシブルにやれというお考えのようですから、その点、私はそれなりに評価をしておるわけですが、市場経済、自由経済ですからね、自由経済とすれば、要するに経済全体にとってプラスになることを、一官庁である大蔵省がコントロールをしてその流れをせきとめているというやり方は、私は、どうも大局的見地から見て適切でないのではないか。世界はよそはみんなオープンマーケットがあるわけでして、ないのは日本だけなんですね。ですから、ようやく証券界の人の知恵によって現先というものができ、その次に金融機関の要望でCDができてきましたけれども、なおかつこれは不完全なんですね。  ですから、いま財政がこういう状態ですから、短期証券をたくさん出さなければいかぬという問題がありますので、私は、単に金融の揚げ超、散超の調節手段としてしか認めないなどということは、どうも経済政策上適切でないのではないかと、こう思うのです。これは主計局が関係ございますので、私はそういう考えだけれども、主計局は主計局の考えがあるでしょうから、ちょっと山口主計局長から答弁してください。その後で総理にお伺いいたしましょう。
  156. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 御質問の趣旨は多分私の所管外ではないかと思うわけでございます。したがって、答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、それはあるいは理財局ですかね。これはだれか答弁できる者はいないの、いま。
  158. 竹下登

    竹下国務大臣 いまのTBの問題は、ある意味においては古くて新しい問題でもあろうかと思うのであります。しかも、最近財政状態がこういう状態でございますので、いわゆる発行限度額というものを予算総則で御決定いただいておりますが、だんだん大きくなっておりますから、そこになおかつそういう議論が追加されて出てくると申しましょうか、増進する議論であるというふうに理解しております。  いま、オペレーションは金融調節の手段として行われておるわけでございますが、一つには、やはり政府の資金繰りのために発行するわけでございますから、必要なときに必要なだけ確実に消化できるということと、それからいま一つは、政府としてはできるだけコストが安い方が好ましいというような基本的な考え方に立って今日までこの議論が、非常にある意味において高度な議論としてなされながら慎重に対処して今日に至っておるわけです。  したがって、日銀総裁からもいろいろ御議論がございましたが、わが国の金融市場というものがこれからどこまで成熟していくか、その成熟度と合わせながらやはり踏み切るときには踏み切る問題ではないか。したがって、いまのところ非常に慎重にこれに対処しておるというのが実態でございます。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵省は財政が厳しいから金利ができるだけ安い方がいい、日本銀行にそれで安い金利で全部買い取らせるという処理もそれはあるかもしれません。  しかし、ここにこうやっていま片一方の公定歩合はなかなか為替の関係でさわれない。しかし手段はあるのだ。その手段は、しかし大蔵省の負担になるからやらせない。それは、自由経済というものを一体皆さんどう考えておられるのか。私が皆さんに説教する話をするとおかしいのですよ。だから、やはり自由経済というものの基本に立ち返って、私は皆さんがお考えにならなければいけないと思う。  ただし、この問題は、渡辺大蔵大臣のときに、私は新しい構想を出してあるのです。総理は初めてお聞きになると思うのですけれども、いま国債の発行、長期のお話が先ほど出ておりましたけれども、長期の国債発行でも、実はいまの仕組みでは売る方が弱いのですね。買う方が強い立場にあるのです。そうしますと、どうしても国債は大蔵省は高く売りたい、しかし金融機関は安く買いたい、こういうふうになりますね。そこのところの対応が私はやはりフィフティー・フィフティーでなければ公正な価格はできない、こう思っておるものですから、長期国債なり中期国債なりすべての国債を含めて市場公募ということで市場で出されておりますけれども、これが本当の市場の価格かどうかについては、私は多少大蔵省に同情する立場にあるわけです。  そこで、要するにバーゲニングパワーをひとつ大蔵省にも持たせたい、対等に市場で国債の発行について、市場公募について対応できるようにするというためには、いまのシステムを変えるべきだというのをすでに提案がしてございます。  銀行局長はそこにおりますが、銀行局長が当時理財局の次長をしておりますときに、私がどうしてもっと市場価格でやれないのだという話をしましたら、私は技術的なことはわかりませんから、宮本理財局次長が私に、いまのシステムではそれは対等ではございません。ああそうか、そいつはまずい。そこでひとつ対等にするために国債特別会計論というものを大蔵委員会で、すでにもう三年くらいになりますか、渡辺さんが就任早々だったと思いますが提案をしてあるわけです。  要するに、国が必要とする財政資金については全部国債特別会計で自由な対応で処理ができる。一般会計はその国債特別会計から必要な金額をこれだけ一般会計に繰り入れてくれということだけを決めれば、国債特別会計は自由に対応、処理ができるようなものにしましょう。そうしますと、そのときの情勢で、もう中期国債が幾らとかなんとかでなくて、込みでいまの市場判断に基づいて、ここのところはTBでつないでおいた方がいいというときにはTBを出して処理する、長期国債を出した方がいいというときには長期国債を出す。要するに、いろいろと対応して市場で政府も処理ができるということにする道が開けないと、いま大蔵大臣が言われたように高い金利となるでしょう。しかし、高いか安いかというのは市場が決める。本当に公正な市場が決まるのなら、それを高いとかどうとかというのは、私はいまの市場経済で考えるとおかしいと思うのです。  その意味では、そういうボールが投げてあるのですけれども、実は大蔵省は今日まで遅々としてこの問題に対応しないわけです。そのうちにやらざるを得ません。六十一年ぐらいからもう借りかえや何かでこんなこんなになってきますと、やらなければいけないのですけれども大蔵省というところは、保守党の下にいるからしょうがないかもしれませんが、非常にリジッドで保守的なところなんですね。だから私は、もっと先見性を持ってやれということですでに三年前にそういう提案をしてありますけれども大蔵省の中にも私の考えに同調してくれる方もあるのですが、どうも大勢になってない。  ここはひとつ総理、総理の政治的判断で、竹下大蔵大臣もそれに参加をしてもらって、ともかく経済計画で八年のビジョンをやろうなどという総理ですから、もうちょっと先を見てそういう対応をして、いまのオープンマーケットをつくる。そうして、そこに日本銀行がいまのオープン・マーケット・オペレーションで参加してくれば、公定歩合だけを下げるのではなくて、安い金利で企業やその他がその資金を調達してそこから処理ができるという道が開けるわけでございますので、私は、ここの金融調節手段というのは単に公定歩合だけではないということをひとつ総理に御認識をいただきたい。国際経済の中でやってないのは日本だけだと思うのです。  前川総裁、どうでしょうか、小さな国は別ですが、主要先進国でこういう問題はどういうかっこうになっているのでございましょうか。
  160. 前川春雄

    前川参考人 イギリスとアメリカでは、少なくとも政府短期証券というのは最も信用のあり取引対象としても適当なものだというので、これが短期金融市場の大きな部分を占めておるわけであります。ドイツはちょっとやり方が違います。もう長期国債をどんどん入札発行してしまいますものですから、これは、わりあいそのときの市場金利というものに順応するというやり方をとっております。フランスもちょっとやり方が違いまするので、TBというのは余り出ておりませんが、イギリス、アメリカ、ああいうふうな金融市場そのものとして一番発展しているところはTBが使われることが大部分でございます。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 総理、日本経済が一番近いのはやはりアメリカでございますね。ですから、いろいろな点で、アメリカでそういうふうに長くやられていて問題がない制度でもあるししますので、自由経済を標榜しておられる中曽根総理としては、やはりぜひひとつ関係者を呼んでいただいて、大蔵大臣とも御協議の上で踏み切ってもらいたいという気が私はしますが、総理、どうでしょうか。
  162. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、やはり証券市場とか債券市場はできるだけ広くして、自由化して深度を深めていく、ボリュームを大きくする、そういうことが望ましいのだろうと思います。  そういう点において、堀さんと基本的観念においては同じではないかと思いますが、いまの特別会計を設けるとか、そういう問題についてはいろいろ技術的な問題もあると思います。また、特に膨大な国債を抱えてこれを消化するという点で使命感を持っている大蔵省は非常に大事をとっているというような面もあるのではないかと思います。そういう具体的な問題をよく見きわめてみる必要があると思いますので、勉強させていただきたいと思います。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、あなたも二回目の大蔵大臣ですからもうあれですが、ひとついま一番大切なことは何かという観点で、そこにポイントを置いてからそれを周辺に広げていくということでないと、いまあることだけを固定して、固定した物の考え方の中で物を見ていけばこれはだめだ、こういう発想は今後の日本のとるべき道ではないだろうと私は思っているのです。  この間からNHKのテレビで、技術大国日本というので大変興味のある特別番組がありまして、私はそれをずっと見ていました。その中で、出ている人が言っていますのは、どうも日本人というのはオリジナルにはものをやらない、日本でいまいろいろな技術が使われているけれども、オリジナリティーはみんな外国からもらってきている、それを応用し、アレンジし実用化する技術だけはすぐれているけれども、冷静に考えてみると、日本本来の、このオリジナルでというものは余りないのだという言い方をしておられます。  私もそういう感じがするのです。東北大学の研究所の西沢教授がいま特許庁で特許論争をやっておられるようです。これは、そのテレビで私が見たところでは、世界で初めて光ファイバーの論理を特許でお出しになったようです。ところがこれがうまくいってない。そのうちに、アメリカの方で実は光ファイバーの特許をとってしまったという問題があります。幸いにして炭素繊維の方は日本で開発したもので、いま日本が非常にウエートを持っているというようなことでありますが、そういう意味で、もう少し物をオリジナルに考えて対応するのでないと、既成の条件の中だけで物を見ていて対応するというのでは、今後の政治も、要するに他の国との関係で、特に経済の問題についてはよそでやられていることがどうして日本でできないのか、そこのネックは何だろうか、それを考えていけばおのずから答えが出ると私は思うのですね。  だから、これは所管が大蔵大臣ですから、この問題は避けて通れないのですよ。これは単に私一人が言っているのじゃなくて、大蔵省の中にも同調者はいるわけです。ただ、やはりどっちかというとお役人の皆さんは事なかれ主義でいった方が間違いがない。しかし、間違いがないだけで、いざばあんと来たら困ってしまうわけですから、ちゃんとそれを見通して、これからの大量国債借りかえという、これはもう日本が経験したことのない異常な事態がこれから起こることははっきりしておるわけですから、それに対応するために大蔵大臣も関係者からよくお話を聞いていただいて、総理とも御相談をいただきながらこういう問題をやってもらいたい、こう思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  164. 竹下登

    竹下国務大臣 政府短期証券、これをちゃんと金融市場に出して、日本としてもその発行額からしてもそれの対象として十分魅力あるものではないか、こういう御議論、それに基づいて私どもにも勉強しろ、事実この議論を部内でしたこともございます。結局、今日金融市場の成熟度がどこまでいけば高いか低いか別問題として、ふなれであるとかというような問題も考えれば、勢い慎重にならざるを得ないというのが現段階ですが、慎重ながらも、だんだんふえていく今日でございますので、十分勉強させていただきます。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ前川総裁に伺いたいのですが、後半の方で長期金利の問題にお触れになりました。どうも最近の実情を見ておりますと、長期プライムというものが有名無実のようなかっこうになっていて、長期プライムはあるけれども、しかし銀行によっては短期と長期を抱き合わせにしたり、いろいろな操作で現実には長期プライムは名前だけのように私は見ておるのであります。  そうすると、これも日本固有の問題ではないか。よその国にはそういうことはないのじゃないか。私もそんなによそのことはわかりませんので、この長期プライムといいますか長期金利の関係、特に国債が一番信用があるからこれがともかく一番金利が低いのだ。しかし、幾ら信用があっても、これだけ大量に出るものが、需給の関係で見れば事業債や金融債に比べて果たして信用力があるかどうかという点では、これも疑問のあるとことでありまして、西洋の言葉にすべては疑い得るという言葉がありますが、このすべては疑い得るから進歩発展があるのだ、こう私は見ておりますもので、どうもここがいろいろな点で疑問が多いのでありますが、総裁はどうお考えになっておりましょうか。
  166. 前川春雄

    前川参考人 基本的に金利は、コストということも大きな要素でございまするが、やはり需給で決まるべきものでございます。先ほどから、市場で決まるべきものだという市場機能のお話がいろいろございましたけれども、と申しますることは、市場における需給によって価格が決まるということであろうと思います。  いまの長期金利の問題につきまして、いろいろの問題が指摘されておりますその中の一つの四畳半金利と申しますか、一つの格差でずっと決まっている考え方は、そのコストの問題と同時に需給関係が余り働いていない、需給関係というものが働くのがやはり必要であろうというふうに考えております。これは長期金利だけではございません。短期のプライムレートにつきましても、御案内のように、アメリカでは公定歩合が変わりませんでもプライムレートはどんどん変わります。それは、そのときのコストあるいは需給関係によって変わるわけでございまして、公定歩合とは関係ない。関係ないこともないのですけれども、直接には関係ない。そういうふうに、短期のプライムでも日本では公定歩合と連動するという仕方でございまするが、これからは、やはりそこにコストであるとかあるいは需給というものが反映していくということが金利機能、金利の弾力性ということを確保できることであり、金利機能が十分に働くということであろうかというふうに思っております。  そういう意味におきまして、長期金利につきましてもいまはなかなか長期プライムで借りない、むしろもうちょっと短いもので借りて泳いでおるところがいいというようなことにもなっております。これは全部ではございませんけれども、そういう傾向も出ておりますということは、やはり需給がなかなかそこへ反映しないといういまの仕組みに若干の問題があるのではないかというふうに私も考えております。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 総理、いまお聞きいただいたように、だから公定歩合だけが問題なんではなくて、金利がいまの需給で決まる、これが市場経済ですから、需給で価格が決まるというのが市場経済なんですから、皆さん自由民主党なんだから、市場経済の持つ特性、これを大いに助長して、そのことによって安い金利も公定歩合だけにこだわらないでできるという方法、手段がありますので、私はちょっときょう特にこの問題にこだわっておりますのは、どうも一般的に金融政策の機動的運営というのは公定歩合だけがすべてのような理解をされておりますが、私はそう思っておりません。  どうか、そういう意味で、幅広く金利を自由化をする過程でいまの需給で決まる、いまは需給で決まるということになれば金利は下がると私は思うのです。ともかく借りる方はいないのですから。国債は別ですけれども、それ以外のところは、いまはまだ設備投資その他も非常に低調なんですから、金利が下がってしかるべきなのに、それを下げない仕組みをつくっておいて公定歩合だけ下げろ下げろというのはおかしいのじゃないか。公定歩合を下げても長期金利はまた別になりまして、国債を中心に物が決まる、国債は大量発行だ、こういうことでは、皆さんが考えておられるここで経済をうまく少しでも浮揚さすためには、システムを変えていくことを通じて問題を発展させるのでなければ、いまのように非常にむずかしい為替の状態の中で、何だか日本銀行に公定歩合、公定歩合とやり一筋でやっているのではうまい経済運営はできない、私はこう思いますので、その点どういうふうにお考えになるか、総理、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  168. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 金利をできるだけ自由化して経済的効率、需要と供給によって物が動いていく、経済原則を効率的に適用させる、そういう方向は自由経済の道であり、日本経済がこれからたどるべき方向を明確に示していると思います。私はそういう方向を歓迎いたします。したがいまして、できるだけそういう方向に接近するように今後とも行政あるいは法律面において考慮すべきであると考えます。
  169. 堀昌雄

    ○堀委員 日銀総裁、どうもありがとうございました。いま総理がそういうふうにお約束いただきましたから、大蔵省もいろいろ意見がありましょうが、大きな流れとしては長期金利も短期金利もTBの問題を含めて自由化にシステムが変われば、私は、いまのような公定歩合を下げろ下げろという話はずいぶん変わってくるのじゃないかという気がいたしますので、ありがとうございました。  その次に、公共事業の前倒し執行というのが出ております。「昭和五十八年度の公共事業等については、上半期における契約済額の割合の目標を七〇%以上として可能な限り執行を促進するとともに、今後とも内外の経済動向を注視しつつ適時適切な対策を講ずるものとする。」あと地方公共団体とかいろいろあるのですが、そこで、今度の公共事業の前倒しは七二・五%ですか。大蔵大臣、そうですね。(竹下国務大臣「はい」と呼ぶ)昨年に比べますと、たしか五%ぐらい低いのですね。大変前倒しが低いのですが、一体この前倒しの効果というのが本当にあるのかどうかという点で、企画庁入ってもらっていますね。これは計画局長しか入ってないのかな。調整局は入ってない。計画局でいいですか、いまの答弁。
  170. 及川昭伍

    ○及川政府委員 ちょっと所管が違いますので……。
  171. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃ主計局に答えてもらいましょうか。
  172. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十七年の例で申しますと、上半期の契約率は七七・二%でございまして、ただ、その場合の上期の支出率は三〇・二%、つまり三割でございましたが、私どもが五十二年に、ちょっと前になりますが三百件ほど実態調査をいたしました。その結果によりますと、契約をしてから一月未満に着工するというのが七五・七%でございます。また、契約してから四カ月目には六三%のものが資材の手当てをしております、賃金は平均して払われておりますが。そういうことで、契約を早くすれば着工も早まり、資材の手当て等も早まるので、効果はあるものと考えております。
  173. 堀昌雄

    ○堀委員 効果があるというのはわかるのですが、昨年と比べて五%低いというのは、そうすると、それだけ昨年に比べれば効果が低いということになるのじゃないですか、どうでしょう。
  174. 窪田弘

    ○窪田政府委員 年度間の効果から申しますと、五十七年度の上期の契約見込み額は十兆六千億でございますし、ことしは九兆六千億でございますから、金額にすればおっしゃるように低いわけでございますが、ただ、これは経済全体の見通しの中で三・四%を確実に実施するために公共事業の着実な執行を図っていこうという趣旨でございますから、経済見通し全体の中にビルトインをされておりますので、これが確実に実行されれば経済見通しのとおりの経済成長が達成できる、こういうふうに考えているわけでございます。
  175. 堀昌雄

    ○堀委員 総理、いまのあの答弁ですね、官僚の皆さんというのは、経済見通しで三・四%というのをつくったら三・四%になればいい。  私は、経済というのは何か目標を置いてその目標に達したらいいというのじゃなくて、三・四%が三・六%になればますますいいのではないか、そのためにマイナスが起きてはいけませんけれども、要するに、全体の中でそれが処理できればいいのではないかと思うのですが、いまの答弁を聞いておりますと、ともかく三・四%になるのにはこれで十分です。それなら景気対策などというのは必要のない項目じゃないのか。景気対策というのは、いまの状態がよくないからこれを何とか引き上げるために何らかのインセンティブを与えようというのが経済の今度の問題であって、いまのような目標値に達するだけでいいのだというなら特別のことをしなくてもいいのじゃないかと思うのです。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕  今後の経済対策についていろいろたくさん書いてありますけれども、その点、私はもう一つ納得がいかない。一部には、去年のやつの債務負担行為ですか、少し繰越分もあるからというような説明も役所はしているようでありますけれども、別にたくさん前倒しをした方がいいと言っているわけではないのですが、このぐらいなら特に経済対策というほどのことはないのじゃないか。  ですから、あとたくさんありますが、もう時間がありませんから触れませんけれども、この二つを見ましても、どうやらこれは経済対策という名の宣伝用のものでしかなくて、実態的には景気浮揚に余りプラスになるものはない。住宅問題その他もいろいろあるのですが、時間がありませんからきょうは触れませんけれども、総理は、これをどうお考えでございましょうか。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 財政が出動することがいま非常に困難な状況にございますから、財政をできるだけ出動させない形で景気を回復するにはどうしたらいいか、そういう点で各省で知恵をしぼって、いま御説明申し上げたような考えでやっておるわけであります。  その中でわれわれが非常に重視しているのは、新しい型の成長というものを考えたらどうか。いままでの成長とこれからの成長というのは質が大分変わってきつつある。たとえば一トンについて、自動車なら百万円、鉄なら九万円、しかしICなら五億とか六億、ちっぽけなものでも値打ちは高い。そういうようなものでこれからの経済の質というものを考えてみると、成長という概念もまた変わってくるという可能性があると思うのです。  そういう意味で、いままで、ややもすると財政出動あるいは公定歩合あるいは公共事業費の増額、そういうパターンでいつもずっときておりました。それも一つ有効な方法でもありますが、それ以上に長期的な安定的な景気回復ということを考えてみますと、日本の国の体系を見ると、法律や達しや政令で相当縛りつけているものが余りにも多いと思うのです。これを開放して民間の活動を自由にやらせるようにしたら、かなりの需要が民間から起きてくる。それは長期的安定的な需要を引き起こすもとになるだろう。  そういう例が、この間うち私が申し上げました環状線の中を一種住専から開放して五階まで自由に建てさせたらどうかとか、親と子の二代で返すように、いままでの一代だけという小さな観念じゃなくて、人生七十五年になったんだから二代で返せるように三十年にしたらどうかとか、そのほか、国鉄ががんじがらめで自分のものだと思っているような土地やその他についても思い切って民間の参入を認めて、そして一緒にやるか民間にやらしてショバ代を取ったらどうかとか、そういうデレギュレーションという面でやればかなりの需要が民間主軸で起きてくる。この方が制度を外してやることでありますから長期的安定的であり、東京で行われれば大阪でも福岡でも札幌でも行われるようになるだろう。そういう発想がございまして、私はその点は非常に重要視していきたい、そう思っておるわけであります。
  177. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお考えは、一番端的にさっきのTBやなんかの問題につながっているんじゃないでしょうかね。  要するに、大蔵省が枠組みを決めて、参入したい者がいっぱいいても参入させない。だから、それは枠を外してやれば、あなたのおっしゃるように広く参入してきて効率的な金融機能が働いてくる、こうなるわけです。だから、その点は私も同感です。しかし日本の役所というのはなかなか強いですからね。一遍決めたら、なかなかこれを動かさないということですから簡単じゃないと思いますよ。総理がお考えになること大変いいことでありますけれども、なかなか簡単でないと思うのですが、この経済対策というのは余り当面の景気には関係がない、私はこう見ておるのであります。  そこで、その次に、時間がありませんから二つばかりやらせてもらいますが、さっき塩崎企画庁長官が商工委員会の関係で御出席できないというので長官との間では議論をしたのですが、総理は、経済計画の計画という字に大変こだわりを持っていらっしゃって指針とか展望とかという言葉で置きかえたい、こういうお話のようです。  私は、問題はその計画という言葉の問題ではなくて、その計画というものがどういうもので、どういうふうに運用されているかということから総理がいろいろ問題にしておられるのじゃないかという議論をさっき塩崎さんとちょっとしたわけでありますけれども、今度は総理は弾力的なものでこれまでよりは長期のものをやりたい、こういうお考えのようでありますね。  私が心配していますのは、弾力的なことは大変結構なんです。私もそういうものはフレキシブルであるべきだという方向でありますから弾力的でいいのですが、弾力的にやりますと、距離が延びるにつれて先の振れは実は大きくなるのです。だから、聞くところによると八〇年代でちょうどだ。これも私は、たまたま一九八〇年代というのがあってそうなるだけで、余り説得力のある問題じゃないと思っているのですが、そういう計画というものは常に見直していって、見直していくということがフレキシブルを保証することであって、一遍決めたら動かさないということじゃ、どんなものをつくったって、指針であろうと展望であろうと私はだめだと思っているのです。常に見直していく。  資本主義経済というのは情勢で変わるわけですし、いまようやく世界的に、OECDもどうやら二%ぐらいになると言っているのは、資本主義経済というのは循環がありますから、長くはコンドラチェフの五十年周期もありますが、短い周期で見てもそろそろ循環の上昇局面に世界的に乗る時期でもあるわけでして、そういうふうに局面が上がったり下がったりする以上、一つの計画でこうやったらうまくいかないのはあたりまえのことです。  ですから、資本主義経済の中における計画というもののあり方は、私は、総理の言っておられることが間違っていると思わないのですけれども、余り言葉にこだわるというのはいかがかなというふうに思うのと、長期に物をやるというのも、どうもせっかくの総理のこういうふうにしたいということがかえってうまくいかないのではないかというような気がするのですが、総理は、その点どうお考えでございましょうか。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いままでの日本の経済計画というものがありまして、これはかなり日本の経済発展に貢献した点があると思います。特に、高度成長したときの一種のはずみをつけた力もございました。しかし、石油危機以降の世界経済の停滞の中で、いままでのような考えにのっとって膠着し過ぎると失敗が出てくる。やはり、計画という言葉がありまして、それがひとり歩きした習いがあって、ローリング性というのが非常に失われたと思うのです。  そういうわけで、ある長期計画というものができますと、それに、やれ空港五カ年計画だ、やれ港湾五カ年計画だ、やれ道路五カ年計画だと風鈴のようにくっついて、それが幾ら、二百四十兆と、これを動かせないような形になる。そうなるというと、やはり成長率を高目に見ないと財政上つじつまが合わぬ、そういう弊害があるのではないかということを憂えておったわけです。  そういう意味においては、やはり数字がひとり歩きしたり、計画という言葉がひとり歩きし過ぎて弊害があるのではないか。そういうことを、ないとは思いますけれども将来起こさせない必要もある。そういう意味で、ローリング性というのを非常に強くとろう。だから、より長く、よりやわらかく、より何回も、そういう考えに立った考え方を新しく示す、そういう意味で、見通しとかあるいは見積もりとかというような感じを出したい、そう思ったわけであります。
  179. 堀昌雄

    ○堀委員 日本経済の今後の問題、特に政府が関与しますのは財政の問題ですね。いまの日本経済の中では、財政の占める役割りは非常に大きいわけであります。ですから、この財政が一体今後どうなるかということも、いまの見通しですか見積もりか何かの中に入れていかなければなりませんね。  そこで、鈴木総理は、五十九年までに赤字国債は脱却する、こういうお約束であったけれども、総理がかわられましたから、中曽根総理は、赤字国債の問題はどういうふうに処理をしたいというふうにお考えかをちょっと承っておきたいと思います。
  180. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 経済審議会を中心に企画庁におきまして、大体八カ年計画で経済展望をつくっていただくことになって、いま研究が始まっていると思います。それに相応じて財政計画というものができるだろうと思います。     〔大原(一)委員長代理退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕  ここで一番問題になるのは、昭和六十年以降、特に六十三年、六十五年ぐらいの膨大な国債費というものがあります。そういうような先の大きな山等も考えてみますと、経済展望にしても、いままでのような安易な考えで好ましきものばかりでつくられては困るということがあると思うのです。そういう面も考えながら、企画庁、大蔵省等が中心になって、両者が吻合するような考えで計画をつくっていただきたい、そういう発想が私にありまして、いまのような措置になったわけであります。したがいまして、ではいつまでに赤字国債を脱却するかというようなことは、いまその勉強と作業をやっておる最中でございますから、時期を限ってお答えすることはむずかしいということであります。
  181. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、何も時期を限ってお答えをいただくつもりではないのですが、しかしそれにしても、いまお話しのように、国債費がどんどんふえるということは、財政が硬直化をして、本来財政の、総理のお好きな機動的弾力的な運営をだんだんできなくするわけですね。  そうすると、国債費が多少ふえるのはいまの情勢で仕方がありませんけれども、このふえることをどうやって抑えるかということが、財政の機動的弾力的運営に非常に役立つことになるので、それについては何か方法をお考えでしょうか。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、それらの問題についていろいろな議論がございます。が、要は、いま総理からもお答えがございましたように、私どもといたしましては、経済審議会の御議論と相呼応して、それと整合性を持った財政運営の指針、展望というものをつまびらかにしていかなければならぬ。それは、経済展望の中で財政の占める役割りがより大きい国でございますから、もとよりそうしなければならぬわけでございます。  そうすると、やはりそこに、赤字国債脱却の時期というのが、これからの検討を終えた結果として出てまいります。そうしてさらには、財政制度審議会等では、公債依存率を赤字国債、建設国債によらず一〇%以下に抑えるべきだという一つの御提言もなされておる。そういうことを長期に見ながら、これからの財政運営全体を考えていかなければならぬわけでございますが、当面の施策としては、まずはこの公債依存度を下げるために、その端緒としては、やはり赤字国債というものを減していくということだと思うのであります。  したがって、五十五年度予算編成の場合には前年の当初に比べて一兆円の減額、今度は補正後に比べて一兆円の減額ですから、それは胸を張って言えるほどのものではないと思いますが、何はさておいて赤字国債というものを減していくということに、歳出歳入両面から、これから五十九年度予算というものを目指して部内で十分な検討をしながら、各省にも協力を得て進んでいかなければならぬ。やはり何はさておいて、この発行額が多いからもろもろの金融市場に与える影響も起きますし、まずは赤字国債脱却のめどというものを定めて、それに対する手法を考えていくというのが取っかかりではないだろうかというふうに理解しております。
  183. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、歳入歳出にわたって、こういうお話がありましたが、これは、赤字国債を本気で減らそうと思ったら、歳入面で対策をしなければ減らせないのじゃないですか。どうでしょう、大蔵大臣
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 これはたびたび議論のあるところでございますし、また、各種審議会、調査会等においても、まずは歳出削減から当たって、その後国民の皆様方との問答の中で、いわば現行の施策水準を維持するためにどうでも必要な場合に、初めて歳入ということに対しての理解と協力を求めていかなければならぬという大筋に立ちまして、まずは歳出構造の見直し。いわば、中曽根内閣ができまして総理の口から、財政再建から財政改革という言葉が使われて、それの基本的考え方というものをお示し申し上げて今日に至っておるわけでございますから、まさに歳出構造そのものにメスを入れていくという姿勢で、これに対応していくべき課題であるというふうに考えております。
  185. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、歳出の方でちょっと先に伺うのですが、この間新聞で見ますと、大蔵省は主計官会議をやって、主計局長はそこで、今後歳出を切り詰めるためには財政の仕組みや制度にメスを入れなければならない、こういうふうに出ていました。主計局長、これはどういう意味かをちょっと答えてください。
  186. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 ただいま大蔵大臣がお述べになったとおりでございますが、四月四日に五十八年度予算が成立いたしました。  四月五日に、早速でございますけれども大蔵大臣は閣議でことしの財政運営の話とそれから今後の問題について発言なさったわけでありますが、その中で、この国会にお出しいたしました「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」にございますように、歳出歳入構造の合理化案を基本として財政の立て直しを図る必要がある。そのためには、まず歳出の一層の削減合理化を進めなければならないが、この五十八年度予算は確かに大変厳しい、いわば超緊縮予算であったという意味で画期的であったかと思うのでございます。しかし、単年度のそういう措置でこの財政が立ち直るという話ではございませんで、これはあくまで財政改革に向けての一歩にすぎない。今後さらに腰を据えて取り組む必要がある。このために、歳出の基礎になっております——日本の歳出構造というのは、その基礎に法律でございますとかあるいは計画でございますとか、場合によりますと約束事でありますとか、そういうのがありまして、いまのままほうっておきますと、そういういろいろな法律その他の約束事を自然な姿で伸ばしてまいりますと、これは私の感じでございますから正確な数字ではございませんが、一般歳出において二兆から三兆ぐらい普通の経済成長の場合に伸びていくような増加圧力を持っている歳出構造でございます。  御承知のように、これから再建を進めていくというときには、大蔵大臣がいまお述べになりましたように、公債を減らしていくということでございますから、まずこの歳出面につきましては相当厳しい抑制を図っていかなければいけない、これは大変なことでございます。  二兆とか三兆とかという歳出増加圧力を抑制していくのは、先ほど御議論のありましたように、単に効率化というだけではだめなのでございまして、守備範囲を見直す、制度を変えていくということを含んでやらなければいけない。それには時間がかかるし、それから広範な検討が必要でございますので、実は臨調が一つのお考えをお出しになりました。私ども大変ありがたいお考えだと思っておりますが、あれだけでもとてもできないのではないか。もっとあれに加えてさらに一工夫も二工夫も要るのではないかということで、前広に各省にもお願いして研究を進めていく。もちろん数字的なめどというのがいまあるわけではございません。まだ五十七年度の決算もはっきりしないような状況でございますので、数字的な見当があるわけではございませんが、そういう状況でございますので、私どもそれから大臣にも各省の事務当局に検討させていただきたいということを申し上げたわけでございます。
  187. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話しのように、主計局長も、制度や仕組みを変えていかないと大変だ、第二臨調には大変いい答申をしてもらった、こういうふうに話がございました。  ちょっと私、総理がおいでになる前から大蔵省、隗より始めよというのでやっておりまして、第二臨調の第五次答申、最終答申で、これは百三ページですけれども、時間がありませんから大蔵省のところだけやりますが、「大蔵省の財務部を廃止し、国有財産管理及び理財関係経由業務を中心とする現地的事務処理機関を配置する。」こういうふうに実は第二臨調が答申をしておられるわけであります。  私は、第二臨調の答申より前に、この委員会でこの問題の提起をいたしました。それはどういう意味かと言いますと、現在財務部の職員が約二千人いまして、府県におおむね一つずつ、少し数は減っているようでありますが、あります。そこで私は、この財務部の中でいまここに書かれておりますようなことだけを残して、そしてこれを単なる事務所としてその機能は残して、そこで二千人のうち千五百人ぐらいは余裕ができてくると思いますから、この人たちをひとつ国税職員として配置転換をしてもらって、そしてひとつ税金を取る方向で協力をしてもらったらどうだろう。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしますと、要するに財務部の土地や建物も処分ができますから、その意味では収入の方にも役立ちますし、同時に、今度は歳入の面で税金を取ってもらうということに役立ってくるということで、まさに私は、いま主計局長が答弁しましたことを第二臨調の答申がいみじくもここで指摘をしておるわけでありまして、決して財務部の職員の皆さんをやめてくださいとかそんなことではないのでして、少し研修期間を置いてひとつ国税の方にシフトをしてもらって、それはすぐ外へ出るわけにはいかぬでしょうから、内部の処理をしていただきながら国税の職員の人が外へ出て税金をさらに取れば、さらに収益はふえるというふうに思うのですね。  国税庁にちょっと伺いますけれども、そういうことで人員が一人ふえたら、大体どのぐらい税収がふえますか。
  188. 酒井健三

    ○酒井政府委員 私どもの税務調査というのは、過少申告等の疑いの濃い人を優先的に選抜して対象にして実施しているわけでございますので、増員によって調査件数がふえたからといって、正比例的に増差税額が出るとは言えませんが、これまでの調査結果から見ますと、仮に高額悪質な納税者を対象として一人の職員が一年間実地調査だけに従事すると仮定しますと、限界的に税務職員が一人加えられますと一年間でおおよそ五千万円の増収が図られるという計算をしたことはございます。
  189. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、こういう財政の状況ですから、国税職員をふやしてくれといいますけれども、ふやせないですね。ふやせないとするならば、より効率的な処理をするために、ここで第二臨調の答申がありますように、ひとつこういう方向で配置転換をして、それぞれの職員がすぐ外には出られませんが、税務職員は五万からいるわけですから、その人たちが千五百人ほどこっちへ入ってくれば、その中で千五百人はいまの調査に出られる。そうすれば、一人五千万円で千五百人だったら七百五十億ですね、七百五十億収入がふえる。私は、まさにいまの行政改革というのは、それは国鉄やその他の公社の問題もいいですけれども、やはり行政そのものに対してもう少し積極的にやるべきだ、こう思うのですが、総理、この点いかがでございましょうか。
  190. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 堀さんのそのお考えに私も賛成であります。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 私も行管長官のときに、国税庁の皆さん、大蔵省の皆さんから、どうも人手が不足で、ふやしてくれふやしてくれという御注文がございまして、できるだけごめんどうは見たつもりですが、十分でありません。  そういう面から見ると、同じ大蔵省の中にあって、しかも財務部の皆さんは優秀な皆さんでありますから、研修をすれば相当程度役立つのではないか、そう思っております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味におきまして、臨調答申大蔵省の財務部に関するところ及び府県の地方行政監察局に関するところ、これは実行したい、そう思っております。
  191. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  192. 森美秀

    森委員長 柴田弘君。
  193. 柴田弘

    ○柴田委員 総理にまず最初に解散、総選挙のことについてちょっとお尋ねしますが、昨夜の会合で総理は、受けて立つ、こういう御発言をなさったと報道されておりますが、この真意は一体何か。それから、マスコミが一斉に衆参ダブル選挙、こういうふうに報道されておりますが、果たしてそういうお考えがあるのかないのか、はっきりとひとつお聞かせいただきたいと思います。
  194. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ゆうべの会談の件が新聞にけさ出て、私驚いたのでありますが、私の記憶では、受けて立つという言葉は言わなかったつもりです。その点は、参議院議長の新聞紙面における発言の方がより近いのじゃないかという気がいたしました。  しかし、のんびりした話し合いをみんなでしたのですから、あるいは私の記憶違いがあるかもしれませんが、私の記憶に残っているのは、解散というようなものは挑んで政府がやるものではない、解散につきましては前から一貫して申し上げているように考えは変わっておりません、そういう趣旨のことを申し上げたように思います。ですから、挑んでやるものでないということを言ったので、じゃあ挑まれたらやるのかという反対解釈で、そういうニュアンスがあるいは出たのかもしれませんが、その点は、前から一貫している解散はしないという私の考えに変化はございません。  私、いま一番関心を持っているのは、行革を中心にする重要法案をどうしても会期末までに成立させたいということでありまして、ここに全力を注ぐべきものである、解散というようなことを考える必要はない、法案を成立させれば内閣としては今議会の目的は相当程度達するのではないか、そう考えておりまして、法案成立に非常な関心を持って、鋭意それに努力している。野党の皆さんにも御協力願いたい。きょう総理官邸に自民党の代議士さんが二、三名おいでになりましたが、大体むだ遣いはしない方がいいよ、そう言っておいたのであります。
  195. 柴田弘

    ○柴田委員 受けて立つということについてですが、いま総理がくしくもおっしゃったが、挑まれたらやるのかというお話がありましたね。挑まれたらというのは、野党側が内閣不信任案を提出したら、それが挑まれたらだ、こういう解釈でいいですか。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういう先の先まで考えたことはないのです。私は解散するという考えを持っておらぬのですから、ともかく重要法案成立ということが自民党の当面の最大使命である。そういう意味においてほかのことは考えません。どうぞ御心配なきようにお願いいたします。
  197. 柴田弘

    ○柴田委員 じゃ、財確法に関連をしていろいろお聞きをしてまいりたいと思います。  所得税減税住民税減税、合わせて減税問題でありますが、どうも最近の政府の姿勢あるいは本委員会等の議論を見てまいりましても、減税実施について後退をしつつあるのじゃないかという感がしております。  というのは、一つは、今後の経済対策の中でも、この減税の問題は「当面の課題」ではなくて「今後取組むべき課題」であると後退している。それからいま一つは、先ほど来議論がありましたように政府税調諮問をしていらっしゃる。そして、いまも小倉会長からも、税調で一生懸命努力はするが、その答申減税なしという答申もあり得る、こういうような御発言もありました。  私は、そういう点で非常に心配をしておりますが、もしやるとすれば本当に五十八年中に実施するのか、所得税住民税の地方税の減税実施についての法案を提出するのかどうか。これも、朝方わが党の正木委員が質問したわけでありますが、あと法案提出は三回しかない。今国会、それから参議院選後の院の構成の臨時国会、それから秋になりますか、要するに臨時国会、これは総理が召集される、こういうように思うのですが、この三回しかない。本当にやる気があるのかないのか、やるとすれば、いつその法案を提出して、いつからやるのか、その辺はどうでしょうか。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、私から最初お答えした方が総理がお答えになるのに幾らか参考になると思いますので……。  与野党合意がございます。そうして、それの裏づけをした議長見解というものがあります。そして、さらにその上につけ加えるならば、参議院の予算委員会予算を議了する際の委員長見解というものがあります。それに対する政府のお答え、こういうようなものが一連してあるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、各党合意の底意には、とにかく最終的には政府の責任でこれを行え、こういうことになるわけです。  そうなれば、政府としては、オーソドックスな考え方に立てば、当然税制調査会というものにお諮りをいたさなければならぬ。その税制調査会にお諮りするに際して、一般的には国会終了後ということになりますが、各党の意を受けて幹事長から私に対して、税制調査会をできるだけ早く開くべきだという御要請があった。税制調査会内閣総理大臣諮問機関でございますから、内閣官房の方へ連絡をとってそのような御趣旨に沿うようにやれ、こういう御指示をいただいて昨日税制調査会を開いた。そうして税制調査会に対しては、まことにつまびらかに今日まで国会議論をいただきました問題、そして各党合意の背景等々を御報告申し上げて、特別部会を設けてこの議論詰めよう、こういう合意に達していただいたという段階でございますので、いつ、そしてどの規模でということを申し上げる段階には今日まだありません。  ただ、きょうも税制調査会長もお答えになっておりましたように、五十八年は所得税減税は見送る、そして五十九年度以降抜本的に考える、こういうことを一度決定したものの、私どもとしては政治的な動きにこたえて、抜本的な検討を言っておったのだから、それを早めてやることに対しては税制調査会としては対応すべきではないかという結論に達して部会を設けるに至った、こういうお答えがありましたとおりの経緯をたどっているわけでございますので、私どもとしては、予見を持って税制調査会にこのようにしてください、あのようにしてくださいと諮問申し上げておるわけではございませんが、正確に今日までの国会を中心とした背景について御報告申し上げているところでございますから、それについて適切な御検討がなされるであろうということを心から期待をしておるというのが現状であります。
  199. 柴田弘

    ○柴田委員 期待はいいんです、大蔵大臣。いまも税調会長から御発言があったじゃないですか。要するに、審議の結果、減税はできないという答申もあり得る、形の上ではあるかもわからぬ、だけれども、まあ政治的な要請があるので努力しましょう、たしかこういう発言がありました。  それで、この政府税調というのは総理の諮問機関である。私が心配しているのはそういうことなんですね。信頼して諮問されるのも結構です。だけれども、たとえば五十八年度は見送られたわけですね。それをあえてこういった与野党合意政府見解を踏まえて諮問を要請されたわけでありますね。ところが、その結果どうなるかということは、信頼をすることは大事なことかもしれませんが、結果的にもしもそういう減税はすべきでないという答申が出たときに、総理としてはやられるのかどうか、私は、この点をぜひ総理にお聞きをしたいわけなんです。どうでしょう。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょっと事前に申し上げておかなければなりませんのは、小倉税調会長が申されたのは、いわば従来まで今年度は見送ると言っておったではないか、したがって、理論的にそれと同じ結論が出ることもあり得るかという質問に対して、それは理論的にはそういうこともあり得るかもしれませんが、私どもとしては政治的流れの背景を踏まえて鋭意期待に沿うように審議をいたします、こういう答弁をなすっておるわけでございまして、理論的にあり得るというのは、たとえばいま私がここにおりまして急に死ぬることだって理論的にはあり得るわけでございますから、あのお答えは、理論的にはありましょうがそういうことはいたしません、こういう御趣旨と受けとめていいのではなかろうか。  ただ、仮に万一そういうものが出たらどうするかという御質問があるわけでございますが、その場合、万一を予定するわけにはまいりませんけれども、まずはその前に政府の責任においてやりますということがございますので、それを御信用いただくしかないではないかと思います。
  201. 柴田弘

    ○柴田委員 万一の場合どうですか、総理。いまの大蔵大臣がされた後段の答弁ですね。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 政府税調は、政府税調の構成員の見識と権威において独自の案をお出しになるだろうと思っております。それをいただきましたら、われわれよく検討したいと思います。また一面において、自民党国会におきまして各党との間で話し合いと申し合わせをしております。これにつきましては誠実に守りますということを約束しておるのでありまして、その約束は守らなければならぬと思います。政府税調結論がどう出るかまだわかりませんが、いまから憶測してあれこれ言うことは差し控えたいと思います。
  203. 柴田弘

    ○柴田委員 大蔵大臣は、正木委員の質問に対して、とにかく秋の臨時国会減税法案の提出考えられないわけではないと御答弁になられた。だから、私どもは、やはり年内に、年末調整という形で実施をしていただきたい。この間も私から言いました遅くとも五十九年一月一日実施、これについても大蔵大臣としては肯定をされておったわけであります。  そこで、同じ質問でありますが、総理はどうでしょうか。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いまの御質問の趣旨がよくわからなかったのですが、恐縮ですが、もう一回お願いいたします。
  205. 柴田弘

    ○柴田委員 減税法案の提出、これは大蔵大臣は、秋の臨時国会に提案されることも考えられないわけじゃない、あり得るであろう、けれども政権交代もあるので云々とおっしゃった。それから私が召集する権限はありませんから云々という話がありましたが、総理ですから、そのとき総理をやっておみえになれば当然召集の権限があるわけですから。それが一つ。  それから、実施は年末までに年末調整という形でお願いしたいが、遅くとも五十九年一月一日実施、これは先回の大蔵委員会大蔵大臣はそのように御答弁いただいたと私は記憶をいたしておるわけでありますが、その二つのお答えです。
  206. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ことしの七月、五十七年度全般の結果が出るまでは五十八年度の予測がなかなか的確にはしにくい。予算上はいろいろな数字を並べてありますが、実際の運営につきまして的確な計数を考えるという場合にはやはり七月以降でないとできない。そういう意味におきまして、いまいつどうするかということは、はなはだ恐縮ですが申し上げにくいと思います。ただ、与野党のあの幹事長、書記長の申し合わせは自民党としては誠実に守ります、このことは申し上げなければならぬと思っております。
  207. 柴田弘

    ○柴田委員 そうしますと、自民党幹事長与野党代表者会議におきまして、「景気浮揚に役立つ相当規模減税を実施するための財源確保し、所得税及び住民税減税についての法律案を、五十八年中に国会提出するとの確約があったことは承知をいたしております。政府としても、これを尊重いたします。」与野党合意を受けて後藤田官房長官予算委員会理事会で、あるいはまた予算委員会においてこれを読み上げられました。これはいいのですね。大丈夫ですね。  そうすれば、いま私が言ったように、年内の国会において、五十八年じゅうの国会において減税法案は提出することになると私は思っておるのですがね。先のことがどうのこうのとおっしゃったのですが、どうですか。そうでないと——これは大事なことですから。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、七月以降の計数等をよく見まして、そして的確な考えをまとめていきたいと思うのでございまして、いつどうするかということはいま御容赦願いたいと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、与野党間の申し合わせは政府としては誠実に実行いたしたいと思っております。
  209. 柴田弘

    ○柴田委員 政府として誠実に実行するというのは、いま私が言ったことなんですよ。では、そういう理解でいいですか。こんなことばかりやっていると時間がなくなる。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 誠実に実行いたします。
  211. 柴田弘

    ○柴田委員 では、そういうふうに理解をいたします。  次の問題は財政改革の問題、われわれは財政再建と言っておるのですが、総理は財政改革。中曽根総理の財政改革という考え方は、一つは歳出削減と同時に歳入構造を見直す。二つには、具体的な計画は政府の経済計画と絡めて検討を開始する、つまり経済計画という言葉がお嫌なら経済展望でもいいわけです。それと絡めて財政改革案つまり財政計画というものも提出をする、こういうことだと私は思います。  それで、いよいよ五十九年度予算編成がスタートをするわけでありますが、まず一つ私が望んでおきたいのは、やはり財政の見通しを明確にしていただきたいということです。それから二つ目には、先ほど来議論がありましたが、新しい経済展望というものを早期に策定をしていただきたい。そして、それを土台にして新しい財政計画、中期展望でも結構ですが、とにかく財政計画というものを打ち出して、歳出と歳入のギャップを埋める方途を明らかにしていただきたい。つまり、財政改革の手順と方策について国民に明確にわかりやすくしていただきたい。これなくしては国民からの財政改革、財政再建に対する真の理解と協力は得られない、私はこういうように思っております。その辺はどうでしょうか。
  212. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まず、中長期にわたる経済指針あるいは経済展望をつくっていただきます。それに相応する財政計画というものをつくっていただいて、その両者の間で吻合、斉一ならしむるように措置をいたします。そういうことで、日本の経済政策の今後の大綱というものは基礎づくりができると思っております。いま、その作業を開始したところでございますので、われわれはこれを見守っておるというところでございます。
  213. 柴田弘

    ○柴田委員 経済展望は、経企庁としては八年間、昭和五十八年から六十五年までですか、策定は一応夏ごろまでにというふうに考えているようでありますが、その辺はそういうように理解してよろしゅうございますか。
  214. 及川昭伍

    ○及川政府委員 展望、指針の期間につきましては、二十二日の総合部会で八年間ということが決められたわけですが、策定のスケジュールにつきましては、内外経済情勢がなお不透明なところもありますし、いま審議を再開したばかりでありますので、なお時間を要するかと思いますけれども、できるだけ早期につくりたいという心づもりで、事務当局の一応の目途として夏ごろということを考えておりますが、いずれにしても、その時期についてはなお情勢の推移なり審議の状況等を見ながら弾力的に考えていくことが必要だと思っているわけでございます。
  215. 柴田弘

    ○柴田委員 総理、経済展望八年間でできるだけ早く、夏ごろまで、これは多少おくれるかもしれませんが、一つの目途というものがあります。  私は、再三本委員会においても要望し、議論を積み上げてまいったわけでありますが、財政計画というのは、これはもう財政の中期展望でも結構ですが、とにかく提出をして財政の姿を明確にして、どんなような形で具体的なプロセスをもって財政再建をしていくんだ、財政改革を行っていくかということは、これはもう提出が必要である、こういうふうに思っております。ですから、総理の理論でいけば、経済の展望が出て、それが一つの下敷きになって財政計画というものが作成される、私はこう思います。大蔵大臣も、後年度負担推計という形で五十九年度予算審議一つのめどとしてできるだけ間に合うように提出をしようということを過日の本委員会において明言になっておるわけであります。私はぜひそうしていただきたい。そして、本当に国民の前に財政の姿というものをきちっと提示をしていただきたい。私どもも、こういった審議の過程において参考としていきたい。いままでのような、いままでといいますか、ことしのようないわゆる中期試算的なA、B、C、七五三に分けたそういった試算的なものではなくて、やはり一つの明確な指針を持った展望というもの、つまり手順と方策というものを持ったものをひとつ計画としてまとめて提出していただきたい、こういうふうに私は考えておるわけでありますが、先ほど出されるでしょうというふうないわゆる第三者的な御発言があったわけでありますが、総理の政治姿勢としてはそういったものを御提出いただけるかどうか、この辺をひとつしっかりと御答弁いただきたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 御期待に沿うように努力していきたいと思っております。  ただ、財政計画の方はかなり厳しい、むずかしい問題がございます。六十年から六十五年、それ以降にわたる膨大な国債費というものを考えてみますと、その処理をどうするかという問題とも絡みまして、さまざまなバリエーションが考えられる。そういう意味におきまして、一義的にこれだというふうに決められない面もかなりあると思うのです。そういう意味におきましては、ぴしっとしたものはなかなかできにくいと思いますが、経済展望に沿いましてできる限り見通しができるようなものをつくってみたいと考えておる次第であります。
  217. 柴田弘

    ○柴田委員 ぜひそれは要望してまいりたいと思います。  それで、財政改革のプログラムというものがなければいけないと思うのですね。  先ほど堀先生からもお話があったように、一つは、それは完璧なものでないにしても、せっかくつくるからにはその財政改革の目標をどこに置くか。いままでは五十九年度赤字国債脱却というものがありました。それから増税なき財政再建、これは臨調の基本理念であるわけでありますが、そういった一つの基本的な柱、私はこういうものがなければならないと思います。ただ、いつ赤字国債を脱却するか、そういうことはいま私はここで議論をいたしませんが、せっかくそういう財政計画というものを策定して私どもの前に提示をしていただくならば、やはりそういったものもきちっと柱として検討されてしかるべきである、私はこういうふうな考え方を持っておるわけでございますが、その辺はいかがでしょうか。
  218. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、これから先の数年間の山坂を考えますと、ぴしつとしたものはなかなかできにくいと思いますが、できるだけ展望力を持ったものをつくるように一生懸命努力してみたいと思っておる次第でございます。それ以上のことは、いまのところちょっと申し上げにくい立場でございます。
  219. 柴田弘

    ○柴田委員 それでは大蔵大臣、いま言いましたが、こういうふうに質問を変えます。  せっかく経済計画が出てそして財政計画が出されるのであれは、その中で一つの柱になるものは何であるか。赤字国債の脱却というのをどこに置くか。それから本当に増税なき財政再建というのは貫くかどうか。やはりしんが入っていなければいけない、私はこう思います。どうですか、そういう点は全然考えないですか。ただ、完璧なものでないが、まあまあ出せと言われたから出しますよ、そんな程度のものでしょうか。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 今年度予算を御審議いただきます足がかりといたしまして中期試算というものをお出しした。これは、いま御指摘なさったように、七年、五年、三年、こういうことで一つの仮定計算を置いて御提示申し上げたわけであります。  総理からお答えがございましたように、いわば経済展望というようなものの作業がこれから進むわけです。その中に果たす財政の役割りというものも当然ございます。と同時に、財政の展望についても、少なくとも五十九年の予算審議をいただくに当たっては、その手がかりとなるようなものとしてできるだけ御要請に沿ったものを提示するような努力をしなければならぬ。その場合、いわば赤字国債脱却というものも一つのめどとしてこれから鋭意検討していかなければならぬでございましょう。そうして増税なき財政再建という問題については、これはたびたび申し上げておりますように、いわば理念として私どもが絶えず念頭に置いておかなければならぬ問題であるという理解の上に立っております。
  221. 柴田弘

    ○柴田委員 時間がなくなってきましたので、最後に総理に、郵便貯金事業に関する臨調答申、これは最大限尊重する、こういう答申に対しての閣議決定もなされたわけでございます。答申が言っているのは、一つは郵便貯金事業のあり方の見直しの必要性、二つ目には改善方策ということを言っております。改善方策には何点かありますが、主だった三点を言いますと、第一点は、郵便貯金の定額貯金の商品性の見直しということを言っております。それからもう一つは、預貯金金利の決定が一元的に行われるように制度化すべきである。それから三つ目には、これは郵政省の予算要求のときにありますような資金の自主運用の主張、この三点について言っております。  三点目はいいのですが、この定額貯金の商品性の見直しあるいは預貯金金利決定の一元化、これの制度化ということになりますと、これは臨調答申を最大限に尊重してこれを実施するということになれば、当然郵便貯金法の改正あるいは政省令の改正という問題にも波及してくるのではないか、こういうふうに私は思います。先ほどの堀先生への答弁では調整を図っていく、こう言われたのですが、総理としては、最大限にこの臨調答申を尊重されていく、それは閣議決定されたということであれば、この郵便貯金事業の見直しにつきましては、一体政府部内で今後どのような具体的なスケジュールで調整を図り実施していくのか、この辺はひとつ総理としての見識をお伺いしたいと私は思います。
  222. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その件に関しましても臨調答申を尊重しつつ、各省、関係団体間におきまして調整を図っていく、その調整を私としてはしばらく見守ってまいりたい、こう考えております。
  223. 柴田弘

    ○柴田委員 調整を見守って臨調答申を実施していかれる、そういうことなんですね。そうですね。  それじゃ、最後にサミットの対応について、要するに、世界経済の活性化という問題それから国際通貨の安定という問題、こういった問題が議題になるだろうと私は思います。  世界経済の活性化については、わが国のいわゆる内需拡大という問題が一つ出てくるかもしれませんが、それはそれといたしまして、二つ目の国際通貨の安定という問題、これは、アメリカがたとえば為替市場に対する協調介入の問題にいたしましても余り賛成をしていないというふうに言われているわけですね。為替安定というのは、経済政策の中であるいは金融政策の中でやはり非常に大事な問題であると私は思います。だから、せっかくのサミットがあるわけですが、この為替安定あるいは国際通貨の安定という問題について、どういった考え方で各国首脳と話し合っていかれるのか、対応されるのか、それだけをお聞きして、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。どうでしょう。
  224. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点につきましては、世界経済の活性化及び安定性を確保していくために各国首脳間においてよく話し合うべき対象であると思っております。  特に日本のような場合におきましては、為替の乱高下は国民経済に影響するところ非常に大でございます。それについては、しかし、各国国民経済運営の整合性といいますか経済政策自体をお互いが協調し合うという面がないと、実体がないところで形式だけ合わせようとしてもなかなか合わさるものではございません。そういう意味におきまして、各国がとる経済政策の協調性という問題から始めて、為替の安定という問題について、どの程度各国が協力し合えるかよく話し合ってみたい。日本としては、できるだけ長期的に為替を安定させるということは望ましいと考えて、各国が協力することが望ましいと考えておるわけであります。
  225. 柴田弘

    ○柴田委員 終わります。
  226. 森美秀

    森委員長 米沢隆君。
  227. 米沢隆

    ○米沢委員 時間もありませんので、簡単に御質問いたしたいと思います。  先般政府は、今後の経済対策として、金融政策の機動的な運営、公共事業等の前倒し執行など八つの当面する課題と、世界経済活性化のための国際協力に対する応分の貢献など三つの今後取り組むべき課題を決定されました。伝えられますところ、今回の経済対策のねらいは、足踏み状態にある景気情勢に回復のきっかけを与えて、今年度経済成長見通しである実質成長率三・四%を確実なものにするということでありますけれども、その対策の内容を見ますと、財政事情の許す範囲内での対策という足かせがあるせいもありましょうが、実際に景気刺激効果がありそうなのは公共事業の上期集中契約ぐらいでありまして、これも年度後半の公共事業追加がむずかしいということになれば問題なしとしない。過去の公共事業の上期の前倒しについて検証してみましても、たとえば五十六年度の公共事業の上期前倒しは目標七〇%以上として実績は七〇・五%に終わりましたが、このような前倒しをしたにもかかわりませず、下期には積極的な追加を行わなかった。このため、五十六年の十月−十二月期の公的な固定資本形成は前期に比べましてマイナス三・二%、五十七年の一−三月期はマイナス四・三%となりまして、結局五十六年度の低成長をもたらし、ひいては大幅な税収不足を招く大きな要因となった、こういう経緯もあります。  五十七年度につきましても、上期の前倒しは目標七七・三%、実質七七・二%でありましたけれども、下期に御承知のとおり二兆七百億円の総合経済対策を講じましたけれども、これには四千億円の債務負担行為あるいは五千億円の地方単独事業が含まれておりまして、きわめて不十分だったと私たち考えております。同時に、総裁選挙等でその実施時期がかなりおくれたということもありまして、現在の経済指標が悪いのもそのあたりに大きな要因があるのではないか、こういうふうに考えます。  同時に、五十八年度につきましては、一般会計における公共事業費は六兆六千五百五十四億円でありまして、これは五十五年以来、当初予算では四年連続横ばい、五十四年度も六兆五千四百六十八億円でありましたから、ここ五年連続横ばい、これに物価上昇分を考慮しますと実質はかなりのマイナス、さらに五十八年度は、五十七年度補正によって先取りされた分がありましたために予算額としてもマイナス、実質ではそれ以上にマイナスになっておる、こういう実態でございます。これを反映いたしまして政府の五十八年度経済見通しでも、公的固定資本形成は名目でも一・六%のマイナス、実質では二%程度のマイナス、また政府支出は名目で〇・四%増でありますが、実質では〇・七%のマイナス、これは実質経済成長率を〇・一%引き下げるもの、こう考えられております。  このように、公共事業を上期に集中しましても後ほどのフォローがなければ結局景気対策になってないという実績があるわけでありまして、今後の問題として大変重要な課題ではないかという感じがしてなりません。  同時にまた、金融政策の機動的運営につきましても、公定歩合の引き下げにつきましては御承知のとおり日銀の専管事項ということもありまして、いまのままでいきますと機動的な運営というものは文字どおり絵にかいたもちになる可能性すらあるとわれわれは考えます。私は、この公定歩合の引き下げの実施につきましては、昨年末から何回かタイミングを失っておるという感じを持っておるわけであります。もし日本が利下げをして円安が進行すれば、原油値下げの効果も吹っ飛んでしまって、かえって景気に悪い影響が及びかねないという論も十分わかりますけれども、しかし、現在のように円相場の動向に過度に神経質であればあるほど、機動的な運営の実施と効果については大変大きな疑問があると言わざるを得ないと思います。  また、総理がみずから力説されておりますいわゆる規制緩和による民間投資促進等についても、その効果は大変疑問があるという多くの指摘がございます。その他の対策を見ましても、すでにある制度を円滑に実施したり周知徹底を図るというものが目立っておりますし、課題によっては一体いつまでにどのように具体化されるものかわからないという問題も多いと考えます。実質的にも中長期対策的なものが多過ぎる、当面の効果がないという感じでこの前の経済対策を見たわけであります。  そこで、総理にお尋ねしたいことは、今回の経済対策は政府としてどのような景況感に立って立案されたのか。この前、日銀の景気の底入れ宣言がありましたが、実際そういう情勢にあるのかどうかという点と、今日の日本経済にとりまして、今回の経済対策というものはどのような役割りを担って出てきたものか、この二点について、まず概括的に、簡単で結構でありますから、御答弁いただきたいと思います。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本経済の情勢は、二回にわたる石油危機等の影響から長期的に低迷しておりました世界経済の影響を著しく受けまして、同じように停滞を続けてきたと思います。  しかし日本経済の場合は、やはり潜在的な底力というものがかなりありますために、ほかの外国から比べれば、ファンダメンタルズは非常に良好であったと思っております。それに物価が非常に安定いたしました。それから為替がおかげさまで次第に強くなってまいりました。こういうことに支えられ、それに石油の値段がぐっとここで下がりましたので、こういういい要因を最大限に活用しながら景気回復のバネにしよう、そういう考えに立ちまして、先般来、経済の新しい対策を掲げて明らかにしたところでございます。  景気につきましては、アメリカ景気が確実に上昇ラインに転じ、ヨーロッパも大体薄日が差すという情勢になってきまして、日本の経済も、いろいろな指標を見ますと、この秋にかけて薄日が差す、回復期に向かう、そういう徴候がかなり出てきておるように思います。景気ということですから、結局は気でありまして、人気の気、その気分にならないといかぬ、こういうこともあります。  そういういろいろな面から考えまして、今回政府がつくりました経済政策はいろいろなものを盛り合わせたものになっておりまして、そっちの面の気の方も非常に重要視した。デレギュレーションというのは、そういう気を持たせるというような要因もあると思います。そういう意味におきまして、この環境である程度バネの力をつくりまして景気を上昇に向けようと思ってやったことでございまして、これからの努力によりまして、それは可能であると考えております。
  229. 米沢隆

    ○米沢委員 そこで、今回の経済対策の効果についてでありますが、特に三点だけ総理の御所見を伺いたいことは、一つは、金融政策の機動的な運営いわゆる公定歩合の引き下げは、現在のような円の相場にかなり神経質な感覚を持っておられる情勢を見ましたときに、本当に絵にかいたもちにならないかという心配が一つあります。その点について所見を伺いたい。  それから、年度後半の公共事業が追加されない限り、先ほど申しましたように、過去の実績から見ましても、経済成長要因あるいは景気対策になっていないという点に関して、総理はどういうようなお考えを持っておられるか。  それから、規制緩和による民間投資の促進とか公共事業についての民間活力導入という、民間の活力を引き出すことにかなりの重点を置かれており、同時に、総理も大変熱心であるように考えておりますけれども、たとえば、公共事業の分野への民間投資機会の一層の拡大等々も掲げてはありますけれども、具体策が示されておりません。したがって、民間活力の活用というのは具体的にどういう感じで展開されていくのか。特に言葉がきれいであるだけに過度の期待あるいは何か錯覚があるのではないかという感じもするのでございますが、この三点について具体的に御答弁いただきたい。
  230. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まず、公定歩合と為替の関係でございますが、この問題は日銀の専管事項にしてありまして、政府が言葉を差し挟むことは差し控えたいと思っております。ただ、日銀総裁がここで参考人として述べた言葉の中を見ますと、やはり為替が必ずしも影響を受けないとは言えないということを心配しておられるようであったように伺っております。しかし政府としては、これは日銀総裁が判断すべきことで、われわれがとやかく言うということは差し控えて、一貫してまいりたいと思っております。  それから、今度の効果でございますが、下期の前倒しの影響ということを御心配していただきましたが、確かにいままで停滞時代においてはそういう現象もあり得たと思います。しかし、ようやくアメリカ景気がこれだけ台頭してまいりまして、輸出面においても明るさが少し出てきたり、いろいろな面で、ここで政府が行いました経済政策が効を奏すれば景気は上昇に転ずる見込みは秋にはかなりあると私は読んでおります。そういう点も考えてみますと、下期の公共事業費をどうするかということをいま論ずるには余りにも早過ぎる、こういうように考えております。  それから、デレギュレーションによる民間需要の誘発という点につきましては、これは新しい型の成長等も考えてやろうと思っておる点でございまして、これはひとつ思い切って実行してみたいと思っております。いろいろ、一種住専とか二種住専とかという問題や、あるいは公共用地の活用の問題、国鉄用地の活用の問題等も含めまして、これらは市町村に非常に影響するところがございまして、東京都の場合におきましても同じことでございまして、大阪においても同じであります。だから、区会議員の選挙とか区長さんの選挙、市町村長の選挙が済むまでは、なかなかこの問題はさわることが適当でないという状況でもございました。先日の四月二十四日で終了いたしましたので、この問題につきましても、本格的に市町村等とも連携をとりながら、やり得ることを着々実行していきたいと考えております。
  231. 米沢隆

    ○米沢委員 民間の活力を引き出すというその前提は、たとえば民間の経済主体がその経済活動の方向を決める際に、政府の見通しを信頼して、あるいはそれを指針として行動することが、まず政策目標実現のための最大の手段であると私は考えます。  そういう意味では、政府見通しに対する信頼を確保することが、政府見通しが有効にあるいはまた適切に機能するための不可欠な条件でありまして、現在のように、ここ数年来経済見通しはすべて狂う、税収もかなり狂う、財政再建も将来定かでない、こういう情勢をそのままに放置して、そして民間だけ何とかおれたちを信じてついてこいという議論は逆立ちした議論ではないか、そういう感じがするのでございますが、そういう意味で、民間の活力を何しろ引き出すという決意があればあるほど、御案内のとおり新経済社会五カ年計画等ももっと早急に決めてもらわねばなりませんし、この国会で、いわゆる財政の中期展望だとか中期試算だとか、あるいはまた国債消化がどうなっていくとかいういろいろな試案は出されましたけれども、それをどうするという道筋がほとんど示されていない。そういうことにしながら民間活力だけおれについてこいという議論はちょっと、意欲はよくわかりますけれども、実際の民間の経済主体というものは総理のおっしゃるようなことについてこないという一面が出てくるのではありませんか。その点いかがですか。
  232. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点は、御指摘の要素もあると考えております。  ただ、去年の秋新しい内閣ができまして、新しい内閣のもとに経済政策を再検討いたしまして、その結果、いままで申し上げましたようなラインで作業を開始しつつあるところでございます。この作業を的確に行いまして、そして経済、財政ともにある程度御納得のいくような線をつくり出しまして、長期的な息の長く続く政策を続けていきたい、こう考えておりますので、なるほど民間側からは、政府がろくに指針も出さぬで民間だけに頼っているのはけしからぬというお考えがあるかもしれませんが、いままで民間に対して力を開放させる、自由化を行って民間に思う存分力を出していただくという発想もわりあい少かったので、それを新しくここで開放して力を出していただくという政策に出てきたものでございますから、その部分はもう自分で自由にやっていいという世界に近づいているわけでございますから、民間の方も喜んでいただけるのではないかと思っております。
  233. 米沢隆

    ○米沢委員 そこで、一般的な議論ですけれども、御承知のとおり五十八年度予算は、公共事業費は実質的にはマイナスでございましたし、所得減税を見送ったという観念からは実質増税でありますから、やはり有効需要を縮小する政策をとっておると言っても言い過ぎではないと思います。御案内のとおり、財政出動がきわめてむずかしい情勢であることはよくわかりますけれども、景気の判断あるいは景気対策の観念から問題にするならば、やはりちょっとこの経済対策は楽観論に過ぎるのではないかという感じを私たちは持っております。  特に、先ほどおっしゃいましたように、アメリカ景気の回復、原油価格の値下がりのいい影響が日本経済に及ぶのだから、この際余り無理することはないという感じが政府の共通した考え方になっておるような感じがしてなりません。すなわち、われわれの立場からするならば、あなた任せの経済政策という感じが強過ぎるのではないかという疑念を持っております。このような姿勢というものが内外の経済の現実の中で本当に通用していくのだろうかという疑念が一つございます。たとえば、国内経済の自律回復を期待するというならば、今回の対策は余りにもお粗末、逆に自律回復までのロスを大きくするのじゃないかという感じでこの経済対策を私たちは見ておりますが、その点、一般論としてお答えいただきたい。  それから、国際的にいま日本のとっておる経済政策が本当に通用するのだろうかという観点から考えてみますと、世界経済が少しずつよくなりつつあることは、これは喜ぶべきことではありますけれども、外国の立場から見ますと、国内市場が回復あるいは拡大するに伴って輸入はどんどんふえていくけれども、それに相伴う形で輸出が進んでいくかということになりますと、どうもそのような気配にない。したがって、たとえば日米関係だけをとってみましても、本年度の日本の貿易収支の黒字の規模は全体でかなり大幅に上回って大体三百三十億ドル前後を記録するのではないか、こう言われておりますし、アメリカの対日赤字は百五十億ドルくらいになるのではないか、こういう予測がなされておるわけでございまして、おもむくところは、結果的には日本経済にとって重大な制約要件になっておりました通商経済摩擦が景気がよくなることによってこれからも逆に一層激化をしていくのではないか。アメリカ景気が緩やかに回復過程に入ったとしても、高失業という情勢はそう簡単に変わり得ないということでありますから、対日反発というのはますますまた大きくなっていく。同様に、欧州諸国そのものも、アメリカと同じように、景気や世界の経済がよくなるに従って輸入はふえるけれども、輸出は余りそれに伴ってふえていかない。  結果的には、余りにも黒字をつくり過ぎる日本に対してけしからぬという、いろいろな意味で誤解もあれば因縁をつけるというようなものもありますけれども、逆に日本の黒字がどんどん大きくなるという黒字国の責任を追及されるという、そういう情勢がますます強化されていくのではないかという心配をいたします。今回またサミット等が開かれますけれども、そういう意味で、日本の黒字が大幅になるということイコールまた新たな経済摩擦あるいはまた対日批判を大きくしていくのではないか、そういうものに対して総理はどういう弁解をされるのか、その点をお聞かせいただきたい。
  234. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自律回復の問題でございますが、なるほど春闘におけるアップ率が少ないとかあるいは減税が行われないとかという点は、需要につきましてはマイナスの影響を持つかもしれませんが、全般的に見ると、物価が非常に落ちついておりまして下がってきている。これは、実質賃金をここ数ヵ月の間上げていることにもなります。それから、石油の値段が非常に低落してきている。これも、数ヵ月経過する必要があると思いますが、やはり企業の力を非常に強くしつつあるわけであります。そういうような面から、たとえば電力等におきましてもガス等におきましても、それで得た蓄積をもって補修をやるとか、そのほかで中小企業あるいは下請に対する需要増を行うというようなことも片方で出てまいりまして、そういう意味において、総合的に考えてみますと、やはり原油価格やあるいは輸入物資の価格の低落というものが原価を相当下げておりまして、企業の収益率を非常に強くしつつある、こういう状況ではないかと思っております。  それから、国際経済から日本が見られる目という点は、これは非常に考えなければならぬ点であると思っております。しかし、日本の国際収支における黒字というものは、大体輸入減から来ておるあるいは輸入価格の低落という面からかなり来ておるように思うのでございます。そういう点につきましても国際的にもよく説明をいたしまして、構造的な問題についての理解をもらうように今後とも努力してまいらなければならぬ。また、それと同時に、いわゆる経済摩擦、通商摩擦と称せられるものを再び起こさないようにあらゆる面で努力を傾注していかなければならない、そのように考えております。
  235. 米沢隆

    ○米沢委員 いま総理は、輸入減あるいは輸入価格の低落、そういうものが日本の貿易黒字を大きくしておるという要因の一つだ、こうおっしゃいましたけれども、そうであればあるほど、日本の経済がもっと経済対策等を強化して輸入をふやしていくという方向をとらない限り、その国際的な対日批判というものはそう簡単になくなっていかないのではないか、そう私は思うのです。  そういうことを考えれば考えるほど、たとえば新聞の記事によりますと三十人委員会というのが二十四日まで開会されたとありますが、その中でも、もっと日本は財政支出をふやして景気刺激策をとるべきである、そういう意見もあったというふうに伝えられておりますし、あるいはまた、日本は円高方向に持っていくための措置を何一つ行っていないという、そういう議論まで誘発していく、こういうつながりになっていくわけでありまして、そういうものに対して、どう先進国の連中に説明できるのかということを尋ねておるわけです。
  236. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 輸入の価格の低落あるいは輸入の数量の減少ということから来る黒字につきましては、これはよく関係国にも説明する必要があります。それと同時に、発展途上国、原料の輸出国に対しましても適切な調整工作を行って良好な関係を維持していく必要があると考えます。  それから、関係各国との間におきましては、わりあいに日本は国際的協調の線は誠実にやっておる国ではないかと思います。発展途上国のリスケジュールをやるような国につきましても、日本はアメリカ等と協調しましてかなりの貢献もしておりますし、あるいはそのほかのOECD内部における協調的行動等につきましても、日本は率先して努力し協力もしておる。そういう点においては、最近は評価は昔とは大分変わってきたのではないかと思います。  それから、円の相場につきましても、一時は政府が介入して安くしているのではないかというような誤解がございましたけれども、最近はそういう誤解はほとんど一掃されまして、円というものの実体について認識が強まってきているように思うのであります。しかし、われわれから考えますと、円はもっと強くなっていいはずだ、こう考えております。そういう点につきましては、もう少しよく国際的理解も求めるように努力してまいりたいと思っております。
  237. 米沢隆

    ○米沢委員 最後に、サミットに関連しまして一つ総理の見解を伺っておきたいことは、先ほどから話がありますように、いま世界経済もある程度回復過程に入ったということでありますが、まだしかし、依然として大量失業というものが残っておりますし、国際金融不安あるいは財政破綻というようにあえいでおると言っても過言ではないと思います。こうした世界の経済危機の諸悪の根源は何か、いろいろな議論の中で共通していまや国際常識と言っていいのは米ソの軍拡競争、これが経済危機の諸悪の根源ではないかという議論が大変大きくなっております。  そういう意味では、経済再生を図っていくためには、何よりも軍拡をやめること以外に出発点はないという認識、いろいろと各国の事情等もあって、あるいは外交方針等もあって、一概に軍拡競争イコール経済の危機をつくっておるという議論にはなり得ない部分もあるかもしれませんけれども、私は、総じて軍拡競争の出費というものが経済危機に大きな悪い影響を与えておるというのはいまや国際常識ではないか、こういう感じがしております。  そういう意味で、軍拡競争をやめて、できればそういうものに使うお金を世界的な公共事業に回す、緑を確保するあるいはまた飢を追放するというようなものに回したらどうかという国際世論が大変高まりつつあるわけでありますが、私は、今度のサミット等において、ぜひ中曽根総理あたりにそのあたりのリーダーシップをとっていただいて、軍拡競争をやる限り経済の危機はそう簡単に克服できないんだというその主張を大きな声でやってもらいたいという希望があります。そういう点について総理の見解を示してください。
  238. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 結論的に申し上げますと、いまおっしゃいました方向は正しい方向であり、われわれも考えなければいかぬと思っております。ただ、現実の問題になりますと、米ソの間においてできるだけ早く軍備競争をやめて、双方合理的な線でレベルダウンを繰り返していくということが望ましい姿であると思います。  ただ、いまソ連の中におきまして、いまの政権がどの程度の強靭性を持っておるか、政権の性格、支援勢力と申しますか、そういうようなもの等につきましてもいろいろな説がございます。また、レーガン政権の内部におきましても、議会との関係やらいろいろな問題もあるようでございます。両方が、ある意味において軍備関係、軍備管理に関するゲームをやっておるとも考えられます。あれだけの超弩級兵器を持っておる双方になると、ある意味においてはポーカーフェイスでやっているという点もなきにしもあらずだろうと思います。そういう点もよく理解しつつ、実質的に両方の軍備拡充というものがレベルダウンをして、双方が納得する形で一日も早くおさまるように私たちも側面から努力していきたいと考えております。
  239. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  240. 森美秀

  241. 簑輪幸代

    蓑輪委員 総理にお尋ねいたします。  減税問題なんですけれども大蔵大臣には再三にわたってお伺いしておりますので、きょうは直接総理からお答えをいただきたいというふうに思っています。  国民の所得税減税に対する期待は非常に強いものがありますし、特に家計簿をいろいろつけていらっしゃる方のお話を聞きますと、特にこの減税を絶対にやってもらわないと暮らしはよくならない、家計簿をつけていない家庭に比べて一層減税の要求が強くなっているというのが実態でございます。ぜひ一兆円以上の大型の減税を早期にやってもらいたいというわけですが、いままで、なかなか時期、規模財源が明確になっておりません。私は、できるだけ早く大型の一兆円以上の減税をぜひ総理の指導的な力でもってやっていただきたいというふうに思っております。  ところが、減税財源問題については五十八年度予算に一円も組まれていないわけで、どうやって減税財源確保するかということが重大な問題になっていますが、政府税調にこれをお任せしていろいろと検討してもらうという考え方大蔵省の方はとっておるようですけれども、これまで税調会長のお話も直接伺いましたけれども、その中で特に大型間接税の導入という問題が大変心配される事態が起こっているわけです。一般消費税という問題につきましては国民の大きな反対があって、昭和五十四年に国会決議が行われていますけれども大蔵大臣との質疑の中で、EC型付加価値税というものについては、これは一般消費税(仮称)とは別のものであるというようなお考えも示されまして、税調の検討に託するというふうになっているわけです。  そこで、去る四月八日付でもって自由民主党財政再建議員研究会というところから手紙をいただきまして、ここでは「いかなる型態の大型間接税にも反対!!四月八日自由民主党財政再建議員研究会は総会を開き、「いかなる型態の大型間接税導入に対しても反対する」決議を行い、ただちに中曽根総理に別紙の通り申し入れを行ないました。」ということで提言があるわけです。  これによりますと、「いかなる型態の大型間接税にも反対する 付加価値税が一般消費税にあらずんば白馬は馬にあらず」ということで、自由民主党財政再建議員研究会、二百七十六名になっておりますけれども、ここの大型間接税導入の絶対反対の理由の第一に、「E・C・型付加価値税は、一般消費税(仮称)と実質的に同じ仕組みの税制であって、その上売上げの都度、仕送状(インボイス)の発行及び受領を義務ずける煩雑な手続きが加わる悪税である。中国の古いたとえに「白馬は、馬にあらず」という詭弁を弄するたとえがあるが、E・C・型の付加価値税は、正に一般消費税(仮称)そのものであり、これを別物とするのは、詭弁に過ぎない。」こう書いてあるわけですね。  これは、中曽根総理のところにも申し入れがされているようですけれども、私は、これをも踏まえて大型間接税の導入について総理のお考えをお尋ねしたいと思います。
  242. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大型間接税につきましては、これを取り入れるというようなことについて指示したこともなければ検討したこともございません。
  243. 簑輪幸代

    蓑輪委員 大型間接税をやってはならないというような国民の世論について、どのようにお考えですか。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 耳を澄まして聞いております。
  245. 簑輪幸代

    蓑輪委員 耳を澄まして聞いておると、どういう声が聞こえてきますか。もう一度お答えください。
  246. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 蓑輪さんがおっしゃるような声が聞こえてきます。
  247. 簑輪幸代

    蓑輪委員 つまり、大型間接税導入に反対という意向が自民党をも含めて非常に強くなってきているという中で、税調でこれが論議されて導入が心配される。その中で、すべての責任を持っておられる総理大臣が、御心配なく、大型間接税導入はいたしませんというような、そんなお約束がいただけまいかと思っておりますが、いかがですか。
  248. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 考えておりません。
  249. 簑輪幸代

    蓑輪委員 そうしますと、国民の世論があるにもかかわらずそういうふうには約束をしないということで、余り世論に耳を傾けないということになると私は思い、これではとても心配です。私は、ぜひいまここで強く総理に、大型間接税の導入は念頭に置かずに減税をやるという、そういう方向をお考えいただきたいと思いますので、もう一度その点だけ。
  250. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大型間接税の導入は考えておりません。
  251. 簑輪幸代

    蓑輪委員 減税のために大型間接税の導入を考えていないというふうに伺いましたが、よろしいですね。もう一遍。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ともかくこの議会中一貫して、大型間接税の導入は考えていない、検討もしてなければ指示もしておりませんと申し上げてきておるのであります。
  253. 簑輪幸代

    蓑輪委員 これからもまたこの論議はずっと続くと思いますけれども、大型間接税の導入については断固反対という意向をぜひ踏まえていただいて所得税減税を実施していただきたいと思います。  ところで、次に、軍事費の問題に関連してお聞きしたいと思いますけれども、GNP一%の歯どめという問題について、先日竹下大蔵大臣に、五十九年度予算編成に関して、この歯どめの問題はぜひ守るようにということで私はお尋ねをいたしましたが、竹下大蔵大臣は、かかる考えは内閣としてないというふうに御答弁をいただきました。それは、五十九年度予算で軍事費が一%を超えることはないというのが内閣の意思であると私は伺いましたけれども、それでよろしいのかどうか、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  254. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 あれはたしか昭和五十三年の三木内閣のときに決めたのではないかと……(蓑輪委員「五十一年」と呼ぶ)五十一年ですか。その線は守っていくつもりでおります。
  255. 簑輪幸代

    蓑輪委員 五十九年度予算においてこの一%の歯どめを守るということでお聞きしてよろしいですね。
  256. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 守るために全力を尽くしたいと思っております。
  257. 簑輪幸代

    蓑輪委員 ちょっとトーンが違ってきましたけれども、五十九年度予算で一%の歯どめを守るということと、守るための努力をするということとはちょっと違うように思うのですが、もう一回。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 五十九年度予算についてコミットしたことは一回もないのです。いかなる経費につきましても、まだ具体的には申しておらないのです。防衛費についても同じでありまして、ただし、防衛費については内閣の前のそういう決定がございますから、その線を守る、引き続いて守っていくということであります。
  259. 簑輪幸代

    蓑輪委員 ぜひ、そういう軍事費がますます増大して福祉や教育に被害が及んでくるという状態に一層ならないよう、私どもは強くそのことを申し上げておきたいと思います。  それで、実はこの問題に関連して、三重県の菅島で去る十九日自衛隊機墜落事件が起きました。十四名の自衛隊員の方が亡くなられましたが、このニュースを私は聞いて、一つ昭和四十六年七月の雫石での空中衝突事件、それから今月の七日に岐阜の上空で起きた自衛隊機と全日空機のニアミス事件というのがすぐ頭に浮かんだわけですけれども、雫石事件では当時の佐藤総理大臣が「このたびの事故が自衛隊機の訓練中に発生したことにかんがみ、今後、訓練の過程でいやしくも国民生活に不安を与えることのないように、厳に措置していく」というふうに談話を発表されまして、その後、航空交通安全緊急対策要綱というのが定められました。それで再びこのような事故が起きないようにという姿勢が示されたわけですけれども、そこでは、民間優先という柱、それから自衛隊機の訓練空域及び試験空域の分離というものや、訓練空域外での雲上有視界飛行の禁止というようなものが打ち出されてきたわけですね。  ところが今回の事件は、雲の中で、しかも超低空百八十メートルの有視界飛行ということで、これは、この要綱はもちろんのこと、この要綱のもとになっているICAOの飛行の勧告にも反する危険な飛行法ではないかと思われますが、最近では、こういう要綱及びその要綱のもとになっている勧告というようなものを無視している非常に危険な状態があるのではないかと心配されますが、どうなのでしょうか。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自衛隊機の最近の遭難事件はまことに痛ましい事件でございまして、御遺族の皆様方に心から哀悼の意を表したいと思います。報告を聞いてみますと、訓練にかなり無理があったような気がいたしまして、ああいうことが起こらないように今後とも自衛隊を引き締めてまいりたいと思っております。
  261. 簑輪幸代

    蓑輪委員 事故が起こった直後というのは、何かにつけて身を引き締めてということになるわけですけれども、それが日にちがたつにつれて緩んでくる。まして、私どもの頭上で絶えず危険があるわけですけれども、それを私どもは目にすることがないだけに、だんだんとそういうふうに緩んできているという心配があると思います。  ことしの四月七日の岐阜県美濃市上空のニアミスというのは、自衛隊側の方は、これはニアミスと考えていないとお聞きしております。全日空機の方は約五百メートルの異常接近と判断して報告しているわけですから、仮に自衛隊側がニアミスでないと考えたとしても、実は非常に危険な状態であったのではないか、大問題だと私は思います。異常接近についてはパイロットの視認を前提にしているために、危険があるほどに接近したかどうかというのはパイロットの主観で違ってくる。視角によっては相手方に見えない場合もあり得る。その場合も両者の報告に差異がある、そういう場合は異常接近にならないというような基準があるようで、この基準自体が一つはまことにおかしいのではないかと思っております。それから雲中飛行をしている場合は、レーダーで見ますと二つの機影がぴったり重なって、あわや接触、翼の端を両機がかすめていくという、そんな危険な状態でもパイロットが視認するということがないために、ニアミスの報告がないということもあるわけですね。しかし、事実は異常接近である。そうしますと、こういうニアミスの判定基準というものも非常におかしいのではないか、これを改める必要があるのではないかというふうにここで一つ思われます。  それからまた、航空機の安全に対する感覚が民間機の場合と軍用機の場合と大きなずれがあるということが指摘されるわけです。一方では危険と思い、一方では危険と思わないということは、安全に対する感覚に違いがあるのではないか。民間機がニアミスと報告しても、自衛隊機などがニアミスと報告しないということは、軍用機の方からニアミスであるという報告はほとんどない、むしろ衝突するまで安全であって、衝突したときは異常接近であったということになったとすれば、これは何のためにニアミスの基準を設けたのかということになるわけです。そこで、航空機の安全に対する感覚というものを、民間機の場合も自衛隊機の場合も認識を一致させる必要があるのではないかと私は思います。  そこで、雫石のあの事故を思い起こす必要があるわけですが、当時と比べますと、いまジェット化が非常に進みまして、ジェット機が主流になっている。航空交通量が増加し航空交通が錯綜して、そして空の過密が非常に進んでいる。飛行機の種類もふえ、スピードも上がり、多様化し、進入方法、高度や経路もさまざまになっている。私どもが住んでおります名古屋空港エリアでは、特にこの名古屋空港が軍民共用空港ということで、有視界飛行機と計器飛行機のニアミスは五五・三%で、平均の三六・五%より多く報告されているわけです。こうなりますと、この軍民共用空港というのが一つ大きな問題じゃないか。那覇空港ではこれがもっと異常にニアミスが多い。だから、いまここでは軍民分離ということを考えるべきときではないかというのが一つあります。  それから、いま事故がいろいろ調査されておりますけれども、さらにもっとよく調査をして、航空交通量が非常に過密で、必要ならば交通量の規制というのも考えるべき時期に来ているのではないかと思われます。そして、主要空港の周辺のターミナル管制空域、進入管制区では有視界飛行機も管制官の指示を受けるべき法的規制を明確にすべきではないかというふうな指摘が全運輸省労働組合の調査によってあらわれております。  米国では特別管制区(PCA)での有視界飛行機の飛行は絶対禁止とし、そのかわり有視界飛行機が多く飛行し、かつ計器飛行機との交錯が発生する空港周辺においては、TCA(ターミナルコントロールエリア)を設定し、そこでは有視界飛行機も管制官の指示を受けるという規制を行っている。 このアメリカの教訓に学んで  日本においても、名古屋等、計器飛行機と有視界飛行機の交錯、ニアミスが著しく多発している空港では、空港周辺の一定空域(現行の管制圏や特別管制区といった小さな空域ではなく、たとえば告示された進入管制区内におけるすべての空域)においては、有視界飛行機も管制官の指示を受けて飛行するという法的規制を明確にし、そのための管制方式、要員配置等の措置を緊急に講ずるべきである。 というふうな指摘がされております。  岐阜は、名古屋空港のターミナル管制空域に入っておりまして、さらに自衛隊の各務原基地も抱えておりまして、非常に不安が増しております。  そこで、いま雫石事故を再び思い起こして、そしてその後の変化を踏まえて問題点を洗いざらい明らかにしていただき、現場の管制官の声などにも十分耳を傾けた安全対策をこの際抜本的にとっていただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  262. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の事故にかんがみまして、もう一回あり方について点検を行い、また、運輸省の民間航空等の関係におきましても心配のないようによく打ち合わせをして検討させたいと思っております。
  263. 簑輪幸代

    蓑輪委員 それでは、このような危険なことが再び起こらないように、ぜひ十分な対策をとっていただきたいと思います。  次に、社会的な弱者救済という問題に絡んで、消費者信用の問題について一、二お尋ねをしたいと思います。  最初に、サラ金の規制法に関する問題ですけれども、利息制限法に関する昭和三十九年十一月と四十三年十一月の最高裁判例について、これはそれぞれ、利息制限法で定めた金利を超える金利の支払いについて超過分は元本に充当できる、元本充当を超えた支払い分については返還請求ができるという判断を示しております。  この判例によって、実にたくさんのサラ金被害者があるいはその家族が死の危険から救い出されている、そういうことは十分御承知のことと思います。いまサラ金地獄が一層ひどくなってきているというふうに言われておりまして、とにかくこのサラ金地獄を何とかしなければならないということで規制法問題が起こってきております。実は、今回の自民党と新自連提案の法案では、サラ金問題の解決のための重要な道である最高裁判例を外してしまうという問題点があります。  そこで、総理大臣は、このサラ金問題に関する二法案について、四月四日の参議院の予算委員会においてその成立を期待しているというふうに答弁されておりますけれども、いまでもこのようなお考えでしょうか。
  264. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 現状から考えてみますと、やはり一歩前進になると思います。一〇〇%満足すべき内容ではございませんけれども、登録制度を設けるとか、いろいろな形でいまよりも厳しい規制のもとに漸進的にこの問題の解決を図ろうとしている態度でございまして、ある意味においては最高善ではないけれども次善にとどまる、そういうことではないかと思います。
  265. 簑輪幸代

    蓑輪委員 私は昨日「悪夢のとき」という本をお届けしておきました。「サラ金地獄からの訴え!」という本でございますが、これをざっと読んでいただいて御感想をお聞かせいただきたいということですが、いかがでしょうか。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いろいろ悲惨と感ずるようなケースが多うございまして、心が痛む気がいたしました。
  267. 簑輪幸代

    蓑輪委員 その悲惨な例がどうやって救い出されたかというところを読んでいただきたかったのですけれども、それは、利息制限法によって先ほど申し上げた元本充当あるいは返還請求等、そういう手だてによって立ち直っているという問題点がここで幾つか指摘されているわけです。  そこで、いまの、被害者が本当に命を守り、再び立ち直っていくための救済の道、それを閉ざしてしまうのが今回の二法案ということで、今回の参議院の質疑等を通じて問題点も明らかになり、そこで新聞やテレビなどでも業界擁護、悲劇増大の天下の悪法ではないかという指摘もされております。そういう中で、こういう実情を踏まえながら、なお成立させようということは許されないというふうに私は思います。そして、本来ならば、最高裁の判例はもうすでに十年も前に出されておりますので、この最高裁判例にかなった立法をすることこそ肝心なのに、その手だては少しもとられずに、今回のような高金利を容認しサラ金悲劇を一層増大するような法案を通すことは、一歩前進とはとうてい言えないものだ。被害がますます拡大して悲劇がますますふえるばかりだと私は思います。それを強く指摘したいと思います。  さらに、今回の二法案が政府提案ではなくて自民党から出されたというのは、行政府が最高裁の判例を真っ向から否定するような法案を出すことはいかにも問題があるということで、出すことができないというふうに前にも答弁があったわけです。そういう問題点があるのに、それを放置したまま行政府の最高責任者である総理が、大問題を無視して、別の点で一歩前進があるからということでこれの成立を期待するというようなことになれば、最高裁判例を行政府の長としての総理大臣が無視することになると私は思います。  そこで、こういうことは三権分立の立場からいっても問題だし、本来政府がもっと早く提案しなければならなかったことをやらずにおいてそういう問題点になるということについては、最高裁の判例について総理大臣がどのようにお考えかをもう一度お聞きしたいと思います。
  268. 竹下登

    竹下国務大臣 この法律案は長い時間かかりました。各党の専門家にお出かけいただきまして、いろいろ協議をされて、まさに総理からお答えがありましたように、現状で次善のものとして、今後の推移の中でより完全なものに近づけていこうということから提出されて、いま御指摘になりましたが、参議院でも議了されて、施行日等が修正されて本院へ回付されておる、こういう現状認識でございます。  そこで、結論的に申し上げますと、この規定は結果的には利息制限法超過分の支払いに関する最高裁の判例を否定することになりますが、この案によっても、債権者が法律の規定を遵守して、かつ債務者が任意に支払った利息のみが有効とみなされるのでありまして、依然として利息制限法の限度を超える金利の支払いを強制されるものではない。刑罰上限金利の引き下げ、そして業務規制等とあわせて、全体としてこれを見れば一つ考え方である、議員立法でありますが、そのように思われるわけでございます。
  269. 簑輪幸代

    蓑輪委員 一歩前進というなら被害者が喜ぶはずなんですけれども、現実には、被害者あるいはそれを救うためにがんばっている弁護士等がこれは悪法であると言い、業界の方が非常に歓迎していることから見ましても、この法案の本質は明らかではないかと思います。  そして私は、銀行が直接間接にサラ金に融資をしている、それをこれからますます増大するということがゆゆしい問題であると思います。昨年、私が当委員会で武富士の社長にお尋ねした際にも、武富士は資金の八〇%を外部調達、そして半分は外銀、相銀からのものであり、残り半分の多くは大手都銀系列のリース会社、ファクタリング会社からのものだという事実を認めております。武富士の社長は、こうやって銀行がどんどんと貸してくださるということになれば、将来は経常利益で大手都銀を上回ることも可能であるというふうに言われており、まさにサラ金規制法はサラ金育成法とさえ思えてくるという週刊誌の指摘もあります。  そこで、金融機関のあり方、銀行の公共性ということから見て、こうした問題でサラ金の悲劇を一層増大させるような、銀行がサラ金に融資をどんどんしていくということについては自粛をさせることが肝心だと思いますが、その点について総理のお考えをお尋ねしたいと思います。
  270. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる消費者金融という問題は、本来でありますならば、銀行等金融機関の一つの分野として、これがますます育成されていくことが好ましいことだと思っております。  しかし、元来日本の銀行法というものを見ますと、まさに預金者保護というような点ではこれは世界一しっかりした法律だと私は思うのであります。しかしながら、これが運用の問題につきましては自主性にゆだねられておるわけでございますだけに、中には、卸売的なある意味における庶民金融への間接金融というようなものを否定するものではございません。現実ございます。  しかしながら、これは、五十三年でしたかいわゆる通達等を出して指導をして、やはり金融機関そのものが庶民金融の分野でもその効力を大いに発揮するように、これからも行政指導等に努めていかなければならない課題だというふうに理解をいたしております。
  271. 簑輪幸代

    蓑輪委員 時間がありませんので、もっとお尋ねしたいし申し上げたいことも多々ありますけれども、利息制限法最高判例が取っ払われるということについては、これは悔い、禍根を残す重大な問題だということを強く指摘しておきまして、終わります。
  272. 森美秀

  273. 小杉隆

    小杉委員 それでは、所得税減税にしぼって質問をしたいと思います。  いままでの所得税減税をめぐる動きを経過をたどってみますと、昨年来、減税小委員会ができまして、この減税財源について相当突っ込んだ前向きの議論がなされてきたわけですが、途中で自民党の内閣改造などがあって山中小委員長が交代したりなんかして、結局財源問題で各党合意が得られずにこれは解散をしてしまったわけです。  そのときに、自民党減税の必要性というものは認めたわけですが、その後ことしの予算委員会に入りまして、一応政治的な合意として与野党合意として所得税減税をやる、二階堂さんも発言されて今日に至っているわけですが、当然もういまごろは減税規模とか時期とか内容というのを示すべき時期じゃないかと思うのですけれども、中曽根さんは本気でやる気があるのかどうか。それから、いままで再三にわたって質問がありましたけれども、その規模とか時期とか内容についても、もうこの辺でやはり明らかにされるべきだと思うのですが、まず、その点から伺いたいと思います。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この問題に関する各党間の申し合わせは誠実に守ってまいる考えでおります。  なお、その具体的な内容、時期等につきましては、やはり七月の五十七年度の結末の状態等もよく見た上でないと申し上げることはむずかしい状態にあります。
  275. 小杉隆

    小杉委員 昨日、政府は、税制調査会所得税減税年度内実施の検討を要請したわけですね。そして、特別部会を設置するということを決めたわけですけれども、どうも税調そのものは、この前の会議では五十八年度減税は一応断念をしておるわけです。そして、しかも政府税調小倉会長は、三月十七日の当委員会参考人質問で、臨調の増税なき財政再建というスローガンは迷惑であるという発言を行って、小倉会長自身は増税志向というような感じでいるわけですが、こういう税調諮問をされますと、減税財源として当然これは増税ということを抱き合わせで出してくるという可能性があるわけですけれども、私は、こうした政治的な合意を経た今日、こういった政府税調答申にゆだねるとか政府税調審議に逃げ込んでしまうというのはちょっとおかしいのじゃないか、やはり政府の責任において、七月の税収の見通しなどを見た上でと言いますけれども、これはやはり政治的決断といいますか、やるべきだと思うのです。  ということは、たとえば今年度の見通しを見ましても、原油価格の五ドルの引き下げとか、あるいは円レートもことしの予算では二百四十七円と見込んでいましたけれども、これはいま二百三十円台になっておりますし、こういった材料を考えれば、私は、あれこれ具体的な財源対策を税調考えてもらうというような姿勢ではなくて、やはり中曽根さんが勇断を持って政治的決断としてやるんだ、そしてその方法とか具体的な内容は、それは税調でやってもらっても結構だと思うのですが、これは政策の選択の問題だと思うのです。  たとえば防衛予算をふやした、では防衛予算をことしふやしたその財源はどこにあるのかと言われれば、それは財源というのは確たる財源はないわけで、これはやはり日米安保条約とかあるいは国際的な緊張という事態を踏まえた判断の上で防衛費を増額しているわけですから、この増税という問題もやはり、財源があるからやる、ないからやらないというような、あるいは税調でもっと具体的な事務的な内容を審議してもらうという姿勢ではなくて、政治決断としてこの際やるということをもっと明確に出さなければいけないのじゃないでしょうか。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 お話しの趣旨はわかりますが、一方においては臨時行政調査会の答申もいただいておりまして、しかも非常に計数にわたる技術的な問題が多いので、単に政治的決断というような抽象論だけではカバーできない面があると思っております。
  277. 小杉隆

    小杉委員 そこで、一番問題になるのは減税財源ということですけれども、私は、財源としてはまあ幾つか方法はあると思うのですね。増税によるのか、あるいは行政改革によるのか、あるいは増収、先ほど申した原油の引き下げとか円レートの問題ということで増収を期待するのか、あるいは赤字国債によるのか、こういういろんな方法があるわけですけれども、そのうち、どういうことを考えておられるか、お答えいただきます。
  278. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに、あらゆる予見を持たないで、正確に本委員会国会全体で議論されたことを報告をいたしまして、その上で政府の責任においてやるわけですから、政府税調の議を得る、こういう筋道を通っていくわけでございます。したがって、今日の時点でこれは何になるでありましょうということは言えないわけでありますが、きのうの税調におかれます議論の中にも、赤字国債でもってこれを充当すべき課題ではないではないか、こういう意見もあっておったということは、きょうの小倉税調会長のお話にもあったところでございます。  したがいまして、自然増収という問題につきましても、これは当然タイムラグのある問題でございますし、各般まさに広範な立場から御検討していただく課題であるというふうに理解をいたしておるところであります。
  279. 小杉隆

    小杉委員 税調審議をするにしても、やはり政治決断というか、きちっとした線を出さなければ、審議のしようがないと思うのです。  それと、私はちょっと勘ぐるのに、総理は、解散を前提としてこの減税という問題をひとつ有利に使おうというふうに考えているのではないか。なるべく減税問題をおくらせて、不信任案を出させる一つのきっかけにして、自分は不信任案が出されればそれは一つの解散の大義名分になるということをたびたびおっしゃっているわけですが、そして解散、総選挙ということになって、選挙中に減税をPRして有利にその選挙を闘おうとするような、そういういわば選挙の道具というか、そういうふうなものに使おうとしているんじゃないかというふうな勘ぐりも出てくるわけでございます。  私としては、いまたとえば民間の賃上げの状況を見ましても大体四・五%程度で落ちつきそうな感じですね。四・五%ということになると、可処分所得は横ばいもしくはマイナスになりまして、いま政府が景気対策に役立つ相当大幅なと言っている減税のそういう性格から考えますと、やはり景気対策という面からも、いま先ほど来貿易摩擦の問題が出ていましたけれども、世界の経済の停滞とかいうことで貿易、外需に依存することはできないので、内需を振興する立場からも、これはやはりどうしても政策的には必要性があるわけですので早急にやるべきだと思いますが、そのおくらせている理由と、総選挙絡みのそういう意向があるんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけですが、御意向を承りたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、私は一番関心を持っているのは、行革法案以下この重要法案を成立させるということでございまして、これらの法案を成立さしていただければ、この議会の相当程度の目的は達して意義深いものであるとわれわれは考えておる。したがって解散は考えていない。  きょうも官邸に来ました自民党の議員さんに、余りむだ遣いをしない方がいいよ、そう言っているのは念のために言っておるのでありまして、私はうそを言う男じゃないのでありますから、どうぞそのようにお聞き願いたい。減税という問題をそういう解散問題にひっ絡めてやろうなんというさもしい考えはありません。
  281. 小杉隆

    小杉委員 最後に、私は、中曽根さんが行管庁長官をやり行政改革に非常に熱心に取り組んでこられた姿は非常に評価しておりますし、また、今度の中曽根内閣というものは行革内閣と言ってもいい基本的性格を持っているわけですから、私は、税調云々の前に、行革では財源ができないというのが大蔵当局のいままでの説明ですけれども、やはり中曽根内閣としては行革で、たとえば医療にしたってまた国鉄にしたって、思い切った手を講ずれば一兆円、二兆円の財源が生まれないということはないと思うのですね。だから私は、中曽根内閣が本当にセールスポイントを生かすならば、むしろ財源問題云々でちゅうちょしていないで、行革でやるんだという積極姿勢をやはり示した方が中曽根さんも人気がもっと上がるんじゃないかというふうに思うのですけれども、行革で減税を断行するという姿勢をひとつ示してもらいたいと思うのです。
  282. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 別に人気を気にしているものではございません。しかし、行革で減税を断行するという発想は、これは非常に貴重ないい考えであると思っております。
  283. 小杉隆

    小杉委員 終わります。
  284. 森美秀

    森委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  285. 森美秀

    森委員長 この際、本案に対し、自由民主党を代表して中村正三郎君外三名より修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。中村正三郎君。     ─────────────  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  286. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ただいま議題となりました昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「昭和五十八年四月一日」と定められておりますが、すでにその期日を経過いたしておりますので、本修正案は、施行期日を「公布の日」に改めることとしようとするものであります。  何とぞ、御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  287. 森美秀

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  288. 森美秀

    森委員長 これより原案及び修正案を一括して討論を行います。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。森田一君。
  289. 森田一

    ○森田委員 私は、自由民主党を代表し、昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  本法律案は、先般成立いたしました昭和五十八年度予算と一体不可分の重要な財源法案でありまして、現今の国の財政状況等から考えて、いずれも必要かつやむを得ない措置であると思います。  すなわち、第一に、特例公債の発行でありますが、五十八年度予算においては、歳出歳入両面の厳しい見直し等の政府努力にもかかわらず、なお相当額の特例公債に依存せざるを得ないものであります。  第二に、国債費定率繰り入れ等の停止でありますが、この措置をとることにより、さらに特例公債が増発されることを避けようとするものであります。また、このような措置をとっても公債の償還には支障は生じないものと見込まれ、やむを得ない措置であると考えます。  第三に、自賠責再保険、あへん、造幣局の各特別会計及び電電公社、中央競馬会からの一般会計への納付であります。  五十八年度においては、きわめて厳しい財源事情に加え、国債整理基金への繰り戻しという臨時的な支出に対処する必要があることから、税外収入において特段の増収措置が講じられておりますが、本法律案に盛り込まれている一般会計への納付措置はその一環であり、いずれも五十八年度限りの特別措置であります。これらの措置は、各特別会計等の事業の遂行や経営に支障が生じない範囲で、かつ利用者等への配慮も加えてとられるものであり、やむを得ないものと考えます。  また、修正案につきましては、事の性質上当然の措置と考えるものであります。  以上、私は、政府は国民のコンセンサスを得て今後一層財政改革を推進されることを切に希望いたしまして、本案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  290. 森美秀

    森委員長 野口幸一君。
  291. 野口幸一

    ○野口委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同修正案につきまして、反対の討論を行います。  この法案は、現下の財政事情のもとで昭和五十八年度財政運営に必要な財源を獲得するため、特例公債の発行、国債費の定率繰り入れ等の停止、特別会計、特殊法人からの一般会計への納付等を図り、税外収入の増収を求めようとするものであります。  まず第一点は、公債発行について申し上げます。特例公債の発行を本年度も計画され、五十九年度赤字国債依存体質からの脱却については、その実現は不可能としながらもその脱却の目標年度も明示されず、経済七カ年計画も空中分解のまま放置されております。国民に何の指標も示さないままに、ただ歳入不足を機械的に公債発行によって切り抜けようという安易な考えは、法案の提出に至るプロセスを拝見しても明らかであります。  本年度発行予定の特例公債六兆九千八百億円を含め、公債発行額は十三兆三千四百五十億円という巨額に上り、予算における国債依存度は二六・五%となり、四十一年公債発行以来六番目に高い依存度を示し、まさに財政危機そのものを示しているのであります。本年度末における公債残高は百九兆七千億円となり、特例公債の分だけでも四十七兆六千億円と、国民一人当たり百万円に近い大きな借財となるのであります。また、本年度の償還のための国債費は八兆一千九百二十五億円でありまして、差し引き実質有効額は五兆一千五百二十五億円となり、まさに借金の返済に借金をするといういわゆるサラ金地獄に陥っていると言わざるを得ないのであります。  政府は、この事態に対し、将来の見通しも十分に立てないままにその日暮らしのような提案をなさることは、全く無責任だと指摘せざるを得ないのであります。  建設国債の場合は、まだ社会資本充実という命題もあり、その耐用年数から考えれば一部の借りかえもやむを得ないものとも言えなくもありませんが、しかし、その場合においても、国民の要望に従い、生活に密接に関連性のあるものを優先させるなど、その選択は重要であります。建設公債の多発は経済活動面においても大きな作用があり、一面、政府投資の先行は民間活力の充実活用を後退させることにつながるのではないかとも考えられるのであります。いよいよ借りかえの本格化するときでもあり、慎重な対応が必要であります。  いずれにいたしましても、今日の公債依存体質の脱却は必須の国策であることは間違いのないものでありまして、財政的にきわめて憂慮すべき事態になっているときでありますだけに、一段と慢性化、惰性化している今日の状況を速やかに脱却できる方途を示し、機敏な対応を求めるものでありまして、強く警告いたしたいと考えているものであります。  第二点は、特別会計からの繰り入れ措置でありますが、これは全く安易な対応と言わざるを得ません。各特別会計は、それぞれの分野において本来の目的に照らし活用すべき余剰資金を、政府の一方的な申し入れによってその犠牲にならされているのであります。  自動車損害賠償責任再保険特別会計の運用益にいたしましても、本来保険契約者のために使用されるべきものでありまして、転用は本質的に避けるべきであります。日本電信電話公社の臨時国庫納付金にいたしましても、その利益剰余金は建設資金に繰り入れ国民に還元すべきものを削減し、つくり出したものでありまして、用途外支出はまさに公社法に違反するものであります。電気通信事業は、高度情報化時代を迎え、いよいよ一層の効率化を求められているときでもありまして、これらの停滞を来すような措置はとるべきものではありません。しかも、五十九年度分の前倒し後の再納付についても明確にされていないのであります。このことは、本来国民に対し還元されるものを取り上げるということでありまして、ある意味では増税に値するものと言えるのであります。  以上、私は数点の憂慮すべき事態について申し上げましたが、きわめて重要な問題であります。  今日の政治は、あくまでも平和国家としての立場を堅持しての選択的政策を推進することを第一にすることはもちろんでありますが、同時に、その財源対策においても、その前提たるべき財政再建大綱を早期に国民に示すべきであることを重ねて提言し、反省を求めるとともに、本法律案に反対の討論といたします。(拍手)
  292. 森美秀

  293. 鳥居一雄

    鳥居委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  反対する理由の第一は、政府が公約していた五十九年度赤字国債からの脱却を、完全に破綻させたことであります。  政府は、増税なしに五十九年度赤字国債から脱却することを公約し、そのための具体的方法として、マイナスシーリング等で歳出の削減を進めております。とりわけ、文教、社会保障関係では、防衛費等に比べ削減幅が大きく、福祉の後退を押しつけられております。同時に、所得税減税の見送りによる実質増税で大幅な負担増も強いられております。  それにもかかわらず、財政再建に関する政府公約を破綻させたことはきわめて遺憾であります。  加えて、政府は、破綻した財政再建策にかわる今後の財政再建に関する手順と方策などを全く示さず、民間経済や国民生活に先行きの不透明感を増長させていることも、とうてい容認できないのであります。  反対する理由の第二は、政府が不公平税制の温存、防衛費の異常突出など、歳入歳出面にわたる不合理を是正せずに、赤字国債の増発を計画していることであります。  政府は、五十九年度赤字国債を六兆九千八百億円も発行しようとしておりますが、これは、政府の中期財政展望で予定した額から見ても、はるかに巨額なものであります。  しかも、政府は、赤字国債を発行する前に、当然是正すべき不公平税制を温存しているのであります。すなわち、不公平是正の観点から政府が提案し成立させたグリーンカード制度を、みずからの手で延長させ、事実上の廃止に追い込んでおります。  歳出面においても、政府は、五十八年度の一般歳出をマイナス三・一%に抑え込み、特に、福祉関係を大幅に後退させながら、防衛費のみ、その増加額、率ともに他の主要経費に比べて、圧倒的に伸ばす異常突出をさせております。  こうした政府の歳入歳出面における反国民的姿勢は、断じて納得できないのであります。  反対する理由の第三は、政府が財政の健全化などの問題を先送りにして、つじつま合わせの財源あさりに奔走していることであります。  その一つは、国債の元金償還に充てるべき国債整理基金特別会計への繰り入れを停止しながら、特例公債については償還のための起債、つまり、借りかえを行わないことを明記しております。  政府提出の財政の中期試算によりますと、今後、大幅な増税か極端な歳出削減を強行しない限り、わが国の財政は、六十一年ごろには、国債整理基金特別会計の償還財源の枯渇によって、赤字国債の借りかえに追い込まれることが明白であります。この自己矛盾とも言うべき内容を含んだ法案には疑問を抱かざるを得ません。  また、自動車損害賠償責任再保険特別会計からの一般会計への繰り入れを初め、特別会計や特殊法人などからの一般会計の納付も、特別会計や特殊法人のこれまでの経緯、国民生活への還元を考慮せずに、単に財政の御都合主義のみを押しつけたものであり、認めがたいのであります。  以上を申し上げまして、私の反対討論といたします。(拍手)
  294. 森美秀

    森委員長 玉置一弥君。
  295. 玉置一弥

    ○玉置委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案本案並びに修正案に対し、反対の討論を行うものであります。  わが国経済は、不況感が一掃されないままに、実質成長率は年々低下の一途をたどっています。  これは、世界同時不況の余波による側面もあるとはいえ、五十九年度赤字国債脱却方針に固執し、財政が持つ景気調整機能を全く無視した経済運営をとり続けたこと、すなわち、所得減税や公共投資の拡大などの積極的な景気対策を講じなかったのみならず、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことにより大きく起因するものであり、まさに政府の政策不況と言わなければなりません。  同時に、今日の景気低迷は、経企庁自身が認めるように、政府が今後の経済運営や財政再建をいかに進めていくかについての方向性を何ら示さず、国民が抱く将来に対する不安感、不透明感をいささかも除去しようと努力しないため、民間の経済活動が必要以上に萎縮することによって、ますます深刻の度合いを深めていくばかりであります。  このような見地から、わが党は、政府がわが国経済、財政の中期的展望を早急に提示するとともに、五十八年度において政府が、国民の最大の要望である所得減税の実施や公共事業の拡充などの積極的財政運営を行うように強く主張してまいりました。  しかるに、政府が五十八年度所得減税の実施を明確にしないということは、給与所得者に対する実質増税や、現行税制の不公正な実態を全く無視するだけでなく、景気回復の大きな柱である個人消費拡大に水を差すことになります。  また公共事業において、当初予算では五年連続の横ばいであり、五十八年度は、五十七年度補正によって先取りされた部分を考慮すると実質的なマイナスとなって、政府部門が完全に景気の足を引っ張る形となり、政府の政策方針の誤りをとうてい容認できるものではありません。  不況のときこそ政府支出の拡大を行い、また減税を行い、内需の拡大に努めることが、わが国の経済の安定的発展のためにも国際経済摩擦の緩和のためにも必要であることを深く認識し、政府がいまからでも積極的な経済運営への転換を図るよう、強く求めるものであります。  わが国の財政は、大量の国債発行残高を抱え、憂慮すべき状況に立ち至っているにもかかわらず、政府は五十八年度において、臨調第二部会報告及び最終答申の指摘のごとく、徹底的な歳出構造の見直しに十分手をつけないままに国債費の定率繰り入れ等の停止、住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べ、自賠責特会からの一般会計への繰り入れ等財政技術的操作や電電公社の納付金等の臨時調達など、財政の実態を国民の目から覆い隠すだけで、制度の根本的改革につながらない実質赤字国債の発行は断じて容認できません。  特に、自賠責特会からの一般会計への繰り入れについてでありますが、自賠責保険の単年度収支は、昭和五十三年以降毎年赤字を続け、その幅も拡大傾向にあります。運用益が保険財政維持に大きな役割りをしている現在、十年間無利子で貸し付ける余裕など全くないと言わなければなりません。一般会計からの自賠責特会への繰り戻しについては、速やかな実施を図るとともに、繰り戻し完了前における保険料の引き上げは決して行わないように政府に強く求め、私の討論を終わります。(拍手)
  296. 森美秀

  297. 簑輪幸代

    蓑輪委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び修正案に対し、反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案が政府みずからが引き起こした巨額の税収欠陥、財政破綻のツケを国民に肩がわりさせるものであることです。  政府自民党が五十九年度までに財政再建を図るとして進めてきた諸施策は、アメリカや財界が要求する大軍拡や大企業奉仕を進める一方で、国民には大増税と福祉切り捨てを押しつけるという臨調路線の実行でした。この国民犠牲の路線が深刻な消費不況を長引かせ、さらに過大な税収見込みの粉飾がそれに輪をかけ、五十六、五十七両年度にわたる巨額の税収不足を生ぜしめ、わが国の財政は再建どころか破綻のきわみに達しているのです。  本法案は、このような深刻な歳入欠陥、財政破綻を招いたみずからの責任は棚上げし、そのしわ寄せを国民の財産の食いつぶしや、いずれ国民負担になる赤字国債の増発など、もっぱら国民に肩がわりさせることで乗り切ろうとするもので、断じて容認できません。  第二の理由は、本法案が軍拡と大企業奉仕の反国民的な五十八年度予算財源対策であるからです。  国民にはいまや見放されつつある臨調行革路線をあくまで推進しようとする中曽根内閣のもとで、五十八年度予算は福祉、教育など国民生活関連予算がマイナスシーリングで冷遇された反面、軍事費など総合安保に関連する財界戦略に沿った予算は大幅に伸ばされています。このような反国民的な予算、施策のための財源策としての本法案にはとうてい賛成することはできません。  反対の第三の理由は、本法案が国民的な財政再建の方途に背を向け、当面を糊塗する安易な財源かき集め策であり、今後の財政危機を一層強めるからです。  まず、約七兆円にも及ぶ赤字国債の増発は、今後の財政危機をますます深刻化する根本原因であります。八兆円以上の国債費が予算を先取りし、財政硬直化を強めています。これが、福祉切り捨てと大型間接税の導入など、大増税へのてことなることは必至です。さらに、金融市場を圧迫し、インフレ要因を拡大するとともに、国債保有を通じて財政の所得再配分機能を阻害することも重大です。  二年連続の国債費定率繰り入れの停止は、国債整理基金の枯渇を早め、減債制度を崩壊に導くものです。減債制度の財源の基本である定率繰り入れの停止は、大正九年から十一年に軍費調達のためにとられたことがあるのみの異常な措置です。これでは、国債の円滑な償還はもとより、国債政策への国民の信頼の確保、財政負担の平準化、財政膨張や国債増発に対する歯どめ、公債の市価維持という基金本来の役割りが果たせないばかりか、いわば減債制度の存在の基盤を掘り崩すに等しい暴挙と言わざるを得ません。  自賠責特会の積立金は保険契約者の掛金から生じたものであり、その使途は契約者の利益として還元されるべきものです。全くかけ離れた目的のために、無利子で流用しようとする今回の措置は、とうてい納得できないものです。  あへん特会、造幣局特会からの繰り入れは、その動機と使途に問題があり、賛成ができません。  電電公社の積立金は、本来利用者に還元すべきもので、国庫納付を前倒しする措置には反対です。  中央競馬会は、退職給与引当金を全職員が一時にやめるとの想定で過大に積み立てるなど、利益隠しとも言うべき方法がとられているなど、内部留保の増大は歴然としています。制度、運営の全面的な見直しこそ検討されるべきであり、今回の措置は、かえってゆがみを助長するものとならざるを得ません。  最後に、私は、軍拡、大企業本位の無責任で節操のない財政運営をやめ、国民生活優先の真の財政再建、民主的行革を目指すために、いまこそ財政、経済政策の根本的な転換が必要となっていることを強く指摘して、反対討論を終わります。(拍手)
  298. 森美秀

  299. 小杉隆

    小杉委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について、反対の立場から討論いたします。  まず、五十八年度は五十七年補正予算に引き続き、国債整理基金への定率繰り入れを停止する旨が盛り込まれておりますが、二年続きの繰り入れ停止は、国債整理基金の残高を減少させ、大蔵省予算委員会提出資料にある「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」によれば、償還財源昭和六十一年度には底をつくことになります。当然のことながら、償還の確たる裏づけのない国債発行は国債市況の悪化を招き、国民の国債に対する深刻な不安を増大させる結果とならざるを得ません。  定率繰り入れの本来の目的である、償還財源確保、財政負担の平準化、国債市況の安定のすべての点において、大変な悪影響を及ぼすことが確実であります。しかも、当委員会審議を通じて、この先、昭和五十九年度以降定率繰り入れが再開できるかどうか、見通しすら政府は示すことができませんでした。  さきに申し上げた仮定計算に基づけば、予算繰り入れ、剰余金繰り入れを六十一年度から始めることで計算していますが、これも財政の見通し等が困難であるので、上記の予算繰り入れ等が可能かどうかなどの検証は行っていないとするばかりで、試算Aを例にとれば、六十二年度三兆八千億、六十三年度二兆六千九百億、六十四年度五兆四千三百億と予測されている予算繰り入れは絶望視されている始末です。  こうした行き当たりばったりの施策ではますます財政は硬直化し、いずれは現在に倍する赤字国債を増発して基金への繰り入れをせざるを得ない事態を迎えることは明白であります。節度のない政府財政運営を如実にあらわしている点で、まず賛成できかねるのであります。  次に、特例公債の発行六兆九千八百億円については、政府公約であった五十九年度赤字国債脱却を実質上放棄するものであり、財政の硬直化を助長する以外の何物でもなく、反対理由を繰り返すむだを省きます。  さらに、税外収入の確保についても納得できません。たとえば、今回、昭和五十六年度の国債整理基金への繰り戻し金二兆二千五百二十五億円を調達するため、自賠責特会からの借り入れや、あへん特別会計、造幣局特別会計、さらには日本電信電話公社からの臨時特例納付、中央競馬会からの積立金の国庫納付などを充てようとするわけですが、これは特殊法人の経営の独立性を侵し、国民への還元よりも財政を優先させたものであります。こうしたやり方は、いわばその場しのぎの財源対策であり、国民の共有財産の使い込みとしか言いようのない、将来展望を欠いた政府財政運営のあらわれであります。  私ども、新自由クラブ・民主連合は、逼迫した財政の立て直しには、徹底した行政改革、歳出の大幅削減をもって当たるべきであると主張し、常に建設的な立場から提言を続けてまいりました。政府、財政当局が真剣に血肉を削る行革を断行し、なおかつ財源が不足するならば、今回のような臨時的措置もやむを得ないものとして、賛成するにやぶさかではありません。しかし、国民のだれもがとうてい納得できない現在の行政のあり方をそのままにして、国民の負担にすがり、場当たり的な財政運営を続けることは見過ごしにできません。  政府のいま一度の誠意ある反省と一層の努力を強く要望し、本法案に対する討論を終わります。(拍手)
  300. 森美秀

    森委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  301. 森美秀

    森委員長 これより採決に入ります。  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について採決いたします。  まず、中村正三郎君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  302. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  303. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。     ─────────────
  304. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大原一三君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。
  305. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、昭和五十八年度予算は、一般歳出について、全体として前年度同額以下に抑制し、この結果、一般会計予算の伸び率を五十七年度当初予算額に対して一・四%増にとどめるとともに、五十六年度の決算不足の補てんに伴う繰り戻しも行うことといたしております。また、公債発行額は、前年度補正後発行予定額から一兆円減額いたしております。  しかしながら、わが国財政を取り巻く環境の変化は大きく、五十九年度に特例公債依存の体質から脱却することは断念せざるを得ない状況となり、また、公債残高も百兆円を超えんとしているなど、財政事情は一段と厳しさを増しております。  したがいまして、財政の再建を強力に推進し、その対応力を回復することが、わが国経済の着実な発展と国民生活の安定、向上を図る基盤として、一層緊急かつ重要な政策課題となっております。  本附帯決議案は、このような状況に顧み、財政再建の進め方、予算編成に当たっての歳出歳入両面にわたる一層の見直しと合理化、本格化する公債の償還、借りかえに対処するための減債基金制度や国債管理制度のあり方等について、特段の配慮を政府に要請するものでありまして、案文の朗読により、内容の説明にかえさせていただきます。     昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 今後における経済運営の指針の検討とともに、昭和五十九年度予算編成に合わせて、財政再建に対する具体的な方策等についての考え方を明らかにし国民の理解と協力の確保に努めること。  二 財政改革の推進に当たつては、歳出・歳入構造の合理化、適正化に全力をつくし、特例公債依存の財政からできるだけ速やかに脱却するよう努めるとともに、建設公債についても慎重に対処し、更に、公債発行額や公債依存度等についての簡明な指標により公債発行に歯止めを掛けるよう検討すること。  三 財源対策としては、中長期にわたる展望に基づく対応を図り、税外の臨時的な財源に安易に依存することのないよう留意するとともに、負担の公平化に一層努力すること。  四 予算編成に当たつては、施策の優先順位を厳しく判断し、財政支出の削減・抑制、補助金等の洗い直しを進めるとともに、いたずらに後年度負担の累増を招くことのないよう財政改革の方針に沿つて、厳正に対処すること。  五 今後とも現行の減債基金制度を堅持するよう努めるとともに、満期到来の公債が、保有者に対して支障なく償還されるよう所要の償還財源確保し、公債に対する国民の信頼の保持に万全を期すること。  六 今後、建設公債の借換えも本格化することに備え、金融・資本市場の動向を踏まえた市中消化の原則、発行条件の弾力化等適切な国債管理政策に関する方針を確立するよう努めること。  七 自動車損害賠償責任再保険特別会計に滞留している運用益について、保険契約者の利益のために活用するための具体的方策の検討を速やかに進めること。    また、今回の繰入金相当額の一般会計から同特別会計への繰戻しについては、国の財政事情、同特別会計の収支状況を踏まえ、できる限り早期にかつ適切に行うよう努めるとともに、今回の繰入れを理由として安易な保険料の引上げは行わないよう努めること。  八 高度情報化社会における電気通信事業の重要性に顧み、日本電信電話公社の適切な事業運営に支障をきたすことのないよう留意すること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  306. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  307. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  308. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。     ─────────────
  309. 森美秀

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  310. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  311. 森美秀

    森委員長 国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案及び電源開発促進税法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  両案について、政府より提案理由の説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ─────────────  国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案  電源開発促進税法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  312. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案及び電源開発促進税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案につきまして、御説明申し上げます。  国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れにつきましては、その額が多額に上っておりますが、老齢福祉年金及び拠出制国民年金の受給者数の推移等から、昭和六十四年度までは減少し、その後は増加することが見込まれています。  この法律案は、このような状況にかんがみ、拠出制国民年金及び福祉年金を合わせた全体としての国民年金特別会計への一般会計からする国庫負担金の繰り入れの平準化を図るため、昭和五十八年度から昭和七十二年度までの間における当該繰り入れの特例に関する措置その他これに伴う必要な措置について定めるものであります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度から昭和七十二年度までの各年度における拠出制国民年金及び福祉年金に係る国庫負担につきましては、昭和五十八年度から昭和六十三年度までの各年度にあっては、当該各年度に係る国庫負担金の額から所定の金額を控除した金額を、昭和六十四年度から昭和七十二年度までの各年度にあっては、当該各年度に係る国庫負担金の額に所定の金額を加算した金額を、一般会計から国民年金特別会計に繰り入れることといたしております。  次に、昭和五十八年度から昭和六十三年度までの問において国民年金法による年金たる給付の額を改定する措置が講ぜられた場合には、当該措置に応じ、昭和五十八年度から昭和七十二年度までの国庫負担金の繰り入れの特例に係る所定の控除額及び加算額を、政令で、改定することといたしております。  さらに、国庫負担金の繰り入れの特例に関する措置がとられたことにより国民年金特別会計において減少する運用収入に相当する金額を、昭和七十二年度以降において、平準化の趣旨にのっとり、予算の定めるところにより、一般会計から同特別会計に繰り入れることといたしております。  次に、電源開発促進税法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、電源立地対策及び電源多様化対策に要する費用に充てる財源確保するため、今次の税制改正の一環として、電源開発促進税の税率を引き上げることとし、本法律案提出した次第であります。  この法律案は、電源開発促進税の税率につきまして、千キロワット時につき現行の三百円を四百四十五円に引き上げることといたしております。  以上が、国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案及び電源開発促進税法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  313. 森美秀

    森委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、明二十七日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会