○米沢
委員 時間もありませんので、簡単に御質問いたしたいと思います。
先般
政府は、今後の経済対策として、金融政策の機動的な運営、公共事業等の前倒し執行など八つの当面する課題と、世界経済活性化のための国際協力に対する応分の貢献など三つの今後取り組むべき課題を決定されました。伝えられますところ、今回の経済対策のねらいは、足踏み状態にある景気情勢に回復のきっかけを与えて、今
年度経済成長見通しである実質成長率三・四%を確実なものにするということでありますけれ
ども、その対策の内容を見ますと、財政事情の許す
範囲内での対策という足かせがあるせいもありましょうが、実際に景気刺激効果がありそうなのは公共事業の上期集中契約ぐらいでありまして、これも
年度後半の公共事業追加がむずかしいということになれば問題なしとしない。過去の公共事業の上期の前倒しについて検証してみましても、たとえば五十六
年度の公共事業の上期前倒しは目標七〇%以上として実績は七〇・五%に終わりましたが、このような前倒しをしたにもかかわりませず、下期には積極的な追加を行わなかった。このため、五十六年の十月−十二月期の公的な固定資本形成は前期に比べましてマイナス三・二%、五十七年の一−三月期はマイナス四・三%となりまして、結局五十六
年度の低成長をもたらし、ひいては大幅な
税収不足を招く大きな要因となった、こういう経緯もあります。
五十七
年度につきましても、上期の前倒しは目標七七・三%、実質七七・二%でありましたけれ
ども、下期に御
承知のとおり二兆七百億円の総合経済対策を講じましたけれ
ども、これには四千億円の債務負担行為あるいは五千億円の地方単独事業が含まれておりまして、きわめて不十分だったと私
たちは
考えております。同時に、総裁選挙等でその実施時期がかなりおくれたということもありまして、現在の経済指標が悪いのもそのあたりに大きな要因があるのではないか、こういうふうに
考えます。
同時に、五十八
年度につきましては、
一般会計における公共事業費は六兆六千五百五十四億円でありまして、これは五十五年以来、当初
予算では四年連続横ばい、五十四
年度も六兆五千四百六十八億円でありましたから、ここ五年連続横ばい、これに物価上昇分を考慮しますと実質はかなりのマイナス、さらに五十八
年度は、五十七
年度補正によって先取りされた分がありましたために
予算額としてもマイナス、実質ではそれ以上にマイナスになっておる、こういう実態でございます。これを反映いたしまして
政府の五十八
年度経済見通しでも、公的固定資本形成は名目でも一・六%のマイナス、実質では二%程度のマイナス、また
政府支出は名目で〇・四%増でありますが、実質では〇・七%のマイナス、これは実質経済成長率を〇・一%引き下げるもの、こう
考えられております。
このように、公共事業を上期に集中しましても後ほどのフォローがなければ結局景気対策になってないという実績があるわけでありまして、今後の問題として大変重要な課題ではないかという感じがしてなりません。
同時にまた、金融政策の機動的運営につきましても、公定歩合の引き下げにつきましては御
承知のとおり日銀の専管事項ということもありまして、いまのままでいきますと機動的な運営というものは文字どおり絵にかいたもちになる
可能性すらあるとわれわれは
考えます。私は、この公定歩合の引き下げの実施につきましては、昨年末から何回かタイミングを失っておるという感じを持っておるわけであります。もし日本が利下げをして円安が進行すれば、原油値下げの効果も吹っ飛んでしまって、かえって景気に悪い影響が及びかねないという論も十分わかりますけれ
ども、しかし、現在のように円相場の動向に過度に神経質であればあるほど、機動的な運営の実施と効果については大変大きな疑問があると言わざるを得ないと思います。
また、総理がみずから力説されておりますいわゆる規制緩和による民間投資促進等についても、その効果は大変疑問があるという多くの指摘がございます。その他の対策を見ましても、すでにある制度を円滑に実施したり周知徹底を図るというものが目立っておりますし、課題によっては一体いつまでにどのように具体化されるものかわからないという問題も多いと
考えます。実質的にも中長期対策的なものが多過ぎる、当面の効果がないという感じでこの前の経済対策を見たわけであります。
そこで、総理にお尋ねしたいことは、今回の経済対策は
政府としてどのような景況感に立って立案されたのか。この前、日銀の景気の底入れ宣言がありましたが、実際そういう情勢にあるのかどうかという点と、今日の日本経済にとりまして、今回の経済対策というものはどのような役割りを担って出てきたものか、この二点について、まず概括的に、簡単で結構でありますから、御答弁いただきたいと思います。