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澄田参考人 ただいま御質問の、今回の経済対策の中に含まれております金融
政策の機動的運営ということに対するわれわれの
理解でございますが、金融
政策の運営につきましては、元来、内外の経済情勢全般の総合的な判断の上に立って、そしていわば金融の特質とも言うべき機動性というものを常に持っているべきである、こういうふうなのが基本的立場でございます。
ただ、今回の経済対策の中に改めてそのことがうたわれているということは、現在の
景気情勢の中でどうかということがあるわけでございますが、最近の
景気が停滞状況を依然として続けているということは紛れもない事実でございます。その情勢判断についてもお尋ねでございますが、その点は後で申し上げることにいたしまして、そういう
状態で
物価は一層安定の度を強めているという状況のもとでは、可能な限り
景気に配慮した金融
政策の運営を図っていくということが望ましいことである、これは私
どもの基本的立場でもありますし、そうして今回の経済対策の中にもそのことがうたわれている、こういうふうに
理解をいたしております。ただ、金融
政策の運営に当たりましては種々考慮すべき要件がございまして、そういう要件について十分慎重に情勢判断をしていく、そうして
政策運営の影響についても十分
考えてやっていかなければならない、こういうふうに
考えているわけであります。
そこで、これはお尋ねのことになるわけでございますが、その条件あるいは要素という点は、しばしば申し上げておりますように円相場の動向でございます。最近の円相場につきましては、
一つの不透明な要素でありました
原油価格は一体どうなっていくのかということにつきましては、とりあえず情勢が一応決まって落ちついてきつつある。それからまた、ヨーロッパの通貨が非常に動揺したもとになりましたEMSの中におきます通貨調整ということがございました。これもやはり国際通貨動揺の
原因でございましたが、これも先般セットをいたしました。
ところが、そういった問題につきましては一応情勢が落ちついたものではございますが、米国金利の先行き見通し難というのが再び強まってきているというような
状態でございます。米国金利につきましては、いろいろ
世界じゅうが注目しているわけでございますが、金利そのものは一進一退、むしろ若干反騰する場面も多いというようなことでございまして、こういう中で円相場の安定を図ってまいりますことはぜひ必要である、われわれとしてはこういうふうに
考えるわけであります。
円相場の安定ということは、円滑な
企業活動を維持する上に、また、今後とも
物価の安定を
確保していく上に必須の条件でございますし、今回の
原油価格の引き下げの効果を国内経済に及ぼしていくための不可欠な条件であります。為替相場の方が円安になってしまえば、石油
価格の引き下げの効果は完全に相殺されてしまうわけでございます。また、対外的に見ましても、
日本経済の
世界の中に置かれております重要性から見ても、あるいは貿易摩擦にあらわれますような
わが国の経済と海外の経済が低滞を続けていればいるほど、その点の関係は複雑微妙なものになっておりますので、こういう
状態においては、やはり円高の方向での安定に努めるということが重要な要件で、こういう条件を考慮しつつ内外の経済情勢、金利情勢、こういったものを
考えて円相場を
考えていく、それが公定歩合の引き下げの前提である、こういうふうに
考えて注視しているわけでございます。
もう
一つの前提でございます
景気情勢の判断につきましては、先ほど来いろいろお話がございましたが、私
どもは、全般的には依然として停滞色を続けている、こういうふうに
考えております。輸出が現地在庫調整が進展をしている、あるいは一部の海外需要が持ち直している、こういうようなところで、低
水準ではございますが、下げ渋ってきたと申しますか下げどまってきた、こういうような変化もございますが、国内需要の方は総じて伸び悩み、一進一退、こういう状況でございます。ただ、私
どもの
調査、短期経済観測といって各
企業に広く
調査をいたしております
調査によりましても、低
成長への適応が
企業サイドにおいては進んでいる、したがって
企業収益とか
企業の業績、業況感、こういうものは過去の
景気後退期ほどの落ち込みというようなことは幸いにして見られておりません。
そういう
意味で、
景気回復の
基盤というものは今後の条件次第であるのではないかというふうに思いますし、先ほど来お話しのように、
原油の
価格の低落でございますとか輸出の下げどまりでございますとか、こういうようなところから、今後、海外情勢とあわせて
景気動向については決して楽観はできない、そういう点については十分慎重に見守っていく、その中で公定歩合引き下げというような金融
政策を
考えていく、こういうようなことではないかというふうに思っております。