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1983-03-23 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    木村武千代君       北村 義和君    熊川 次男君       小泉純一郎君    椎名 素夫君       津島 雄二君    浜田卓二郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       上田 卓三君    戸田 菊雄君       中村  茂君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       鍛冶  清君    武田 一夫君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      佐藤 光夫君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 松尾 直良君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         大蔵省国際金融         局次長     長岡 聰夫君         国税庁調査査察         部長      大山 綱明君         農林水産政務次         官       楢橋  進君  委員外出席者         農林水産省経済         局国際部長   塚田  実君         農林水産省農蚕         園芸局畑作振興         課長      吉田 茂政君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       海野 研一君         農林水産省畜産         局食肉鶏卵課長 鶴岡 俊彦君         農林水産省食品         流通局食品油脂         課長      慶田 拓二君         通商産業省通商         政策局米州大洋         州課長     堤  富男君         資源エネルギー         庁石油部精製課         長       田中 久泰君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     北村 義和君   粕谷  茂君     津島 雄二君   白川 勝彦君     浜田卓二郎君   武藤 山治君     中村  茂君   柴田  弘君     鍛冶  清君   正木 良明君     武田 一夫君 同日  辞任         補欠選任   北村 義和君     今枝 敬雄君   津島 雄二君     粕谷  茂君   浜田卓二郎君     白川 勝彦君   中村  茂君     武藤 山治君   鍛冶  清君     柴田  弘君   武田 一夫君     正木 良明君     ───────────── 三月二十二日  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請願市川雄一紹介)(第一六六七号)  同外二件(大久保直彦紹介)(第一六六八号)  同外一件(大野潔紹介)(第一六六九号)  同(長田武士紹介)(第一六七〇号)  同外二件(竹入義勝君紹介)(第一六七一号)  同外二件(伏木和雄紹介)(第一六七二号)  同(矢野絢也君紹介)(第一六七三号)  同(正木良明紹介)(第一七〇三号)  同(上田卓三紹介)(第一七八五号)  税制改革に関する請願大島弘紹介)(第一六七四号)  同(中村重光紹介)(第一六七五号)  同(日野市朗紹介)(第一六七六号)  同(武藤山治紹介)(第一六七七号)  同(山田太郎紹介)(第一六七八号)  同(阿部哉君紹介)(第一七七〇号)  同外六件(土井たか子紹介)(第一七七一号)  一兆円減税実現に関する請願外二件(武田一夫紹介)(第一六七九号)  一兆円の減税等に関する請願外一件(井岡大治紹介)(第一六八〇号)  同(大島弘紹介)(第一六八一号)  同(武部文紹介)(第一六八二号)  同外一件(日野市朗紹介)(第一六八三号)  同(福岡義登紹介)(第一六八四号)  同(山花貞夫紹介)(第一六八五号)  同(横山利秋紹介)(第一六八六号)  同(竹内猛紹介)(第一七〇五号)  同(塚田庄平紹介)(第一七〇六号)  同(佐藤誼紹介)(第一七七三号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一七八七号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一七八八号)  所得税減税及び大型間接税導入反対に関する請願外二件(石田幸四郎紹介)(第一六八七号)  同外五件(渡部一郎紹介)(第一六八八号)  同(小渕正義紹介)(第一七八九号)  同(玉置一弥紹介)(第一七九〇号)  同外一件(三浦隆紹介)(第一七九一号)  円(米沢隆紹介)(第一七九二号)  医業税制の確立に関する請願嶋崎譲紹介)(第一七〇二号)  一兆円減税等に関する請願清水勇紹介)(第一七〇四号)  同(阿部哉君紹介)(第一七七二号)  同(上田卓三紹介)(第一七八六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三六号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ─────────────  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  この法律案は、最近における内外の経済情勢変化に対応し、関税率減免税還付制度について所要改正を行おうとするものであります。  以下、この法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。  第一は、関税率改正であります。  まず、わが国の市場の一層の開放を図る等のため、カットダイヤモンド金属加工機械農業用トラクター等百十一品目関税率を撤廃するとともに、チョコレート菓子紙巻きたばこ電子式ディジタル自動データ処理機械等二百十二品目関税率を引き下げることとしており、この結果、三百二十三品目関税率改正することといたしております。  また、以上の改正等に伴い旅行者携帯輸入物品に課される簡易税率につきまして所要の引き下げを図ることといたしております。  第二は、減税還付制度改正であります。  減税還付制度につきましては、今後予想される灯油等中間留分石油製品供給不足に備えるため、新たに、特定の装置により中間留分石油製品等増産した場合、関税を還付する制度を設けるとともに、設置の目的を達成した低硫黄燃料油製造用原油等減税制度を廃止することといたしております。  以上のほか、昭和五十八年三月三十一日に適用期限の到来する暫定関税率につきまして、その適用期限を一年延長するとともに、昭和五十八年三月三十一日に適用期限の到来する原油関連減税還付制度、アルミニウムの塊の免税制度等につきまして、それぞれ適用期限を延長することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 森美秀

    森委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ─────────────
  5. 森美秀

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  6. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣がいらっしゃるうちに、幾つかお伺いしておきます。  一つ関税関係ないのですが、ちょっと気になりますので伺いたいのですが、三、四日前でしたか、NHKのニュースなどで報道されました減税問題ですが、その報道によりますと、大蔵省は、いま問題となっている五十八年度所得減税について、財源が非常に困難なので五十九年一月から実施をするということで準備を始めたという報道がされております。言うならば、五十八年度中は三カ月だけという話の報道でありまして、さらに恒久財源が必要でありますから、大型消費税必要性考えているというふうな報道が一部なされておりまして、私は非常に気になったのですが、悪く言えば、これはペテンじゃないか。たとえば一兆円でも四で割って二千五百億、もし五千億なんということになったら一千億ちょっとくらい。三カ月やって、それで後は大型増税、言うならば議長見解与野党の話、国会の了承、その他政府責任含めてこの国会で最大の目玉として焦点として取り扱われてきた。あるいはまたその内容は、まだ与野党間では書記長幹事長レベルで報告を聞く、検討をするということになっているんだろうと思うのですが、もしそういうことであれば、ほんのちょっぴりした減税増税の引き金にするというようなことになるわけでありまして、何かそういう検討を開始をしたという報道がございましたが、そういうことが本当にあるのでしょうか。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 まだ国会開会中でもございますし、衆議院は通過させていただきましたものの、参議院で審議中の五十八年度予算でございますので、そういう検討などはしたことはありません。
  8. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういう検討じゃなくて、文字どおり景気の浮揚に役立つ大幅な減税措置検討をしていただきたいと思います。  次に、法案に関係をいたしまして、いま大臣が一生懸命読まれましたことで一つ伺いますが、これは関税局長、今度新設されます中間留分石油製品等増産にかかわる関税還付制度創設、これに関連してなんですが、前にも取り上げたことがありますが、低硫黄燃料油製造用原油等減税制度というのがありました。  あれと関連をして思うのですが、あの制度もたしか五年間という話でスタートをして十年以上続いていたと思います。そうすると、これは既得権固定化をするあるいは恩恵措置になっていく、租税特別措置扱い整理合理化という扱いとも似たような形で問題視され廃止になったわけでありますが、今回新設をされるという内容を私見てみますと、一つ心配なのは、まあ一年ごとというわけでありますが、またこういうものが創設をされる、それから、石油種類別需要その他構造の変化にも今後よると思いますが、また既得権化をして、それで三年も五年も十年も続くみたいなことがあってはならぬと思うわけでありまして、こういうものを新設するのも、僕は、いまの石油事情からすればどうかという気がいたしますが、きちんとけじめをつけて取り扱うということが当然必要であろうというふうにも思いますし、それからキロリットル当たり三百五十円または三百円、どういう根拠でこういう数字ができているのかちょっと気になるものですから、具体的なことで一言だけけじめをお聞かせください。
  9. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 まず、今回創設をいたします中間留分石油製品にかかわる関税還付制度でございますが、ただいま先生指摘のとおり、これは暫定的な制度として、形式といたしましては一年ということでお願いをいたしておるわけでございます。  今回廃止することになりますいわゆる重油脱硫制度、これにつきましては、御指摘のとおり、当初は五年程度という考え方もあったわけでございますが、これは、公害対策の見地から亜硫酸分の除去ということを助成するという制度でございまして、公害状況あるいは設備状況等を勘案いたしまして、当初予定したよりも長くその必要性があった。しかし、すでに目的を達したので今回廃止することにいたしているわけでございまして、考え方といたしましては、先生指摘のとおり、私ども、これを恒久的な既得権化するという考えはないわけでございます。  今回この制度創設いたしました一番大きな理由は、最近の輸入原油が非常に重質化してきておるわけでございます。かつてはアラビアン・ライトというような、わりあい軽い方の原油が多かったわけでございます。たとえばアラビアン・ライトというのは重油分が四九%ぐらいでございますが、最近輸入されております中国の大慶の原油であるとかあるいはメキシコのマヤの原油であるとか、こういうものは、重油分が七四%とかあるいは六〇%以上というように非常に重質化してきている。他方国内石油製品需要というのは、省エネルギーの進展あるいは景気の後退といったようなことで重油分需要が非常に減っておりまして、他方灯油のような民生用の、いわゆる中間留分に当たるものの需要が強いわけでございまして、こうした供給面需要面変化に対応してこれを助成しよう、こういうことでございます。  それから還付率でございますが、三百五十円と三百円と二通りにいたしておりますが、これは、製造設備あるいは製造方法等によります差でございますが、いわゆる中間留分増産分と申しまして、直接に灯油、軽油といった中間留分をよけいつくれるような設備につきましては、A重油が現在負担しております関税負担、これが一キロリットル当たり六百四十七円と考えられるわけでございます。現在、もとになります原油には御案内のとおりキロリットル当たり六百四十円の税率がかかっておりますが、このうち、いわゆる百十円分を控除いたしまして、この六百四十七円に六百四十分の五百三十、その全額をということでなくて、さらにその三分の二を助成するということで三百五十円にいたしております。  それから三百円の方は、製法が中間留分を直接に増産するということではございませんで、いわゆる中間留分節約型と申しますか、中間留分を新たに加えることなくこういったものをつくるということでございまして、これは、重油関税負担率キロリットル当たり五百三十一円というのをもとに同じような計算をいたしまして、キロリットル当たり三百円、こういうことになっております。
  10. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これらの制度についてのきちんとした取り扱いをしていただきたいと思います。  次に、大臣に二つ伺いたいのですが、このところ、原油値下がりなどを含めて、あるいはその前から途上国債務の急増など、国際経済国際金融に関する問題が実は相次いでいるわけでありますが、そういう中で、わが日本世界GNPの一〇%を超した。言うならば、世界経済全体の中における平取締役から常務クラス役割り、責任、見識が求められているというふうなことであろうと思います。そういう中で、当面のこととして、たとえば原油値下がりということに関連をしてどうお考えになりますか。  一つは、逆オイルショックとか新たな金融不安ということも言われているわけでありまして、報道を見ておりますと、イラクが一千億円の預金を突然引き揚げたとか、あるいはどこかの国が工事費支払い猶予を求める動きがあるとか、あるいは国債の引き受け、国債を買っていただく、それらの方のテンポがどうなるであろうかとかいうふうなことも言われているわけでありますが、言うならば、OPECの側が収入が減ることによってわが国に及ぼす影響の側面ですね、その辺は大まかに言って不安はないというのか、慎重に考えなければならないというのか、不安があるというのか、その辺の考え一つ。  それからもう一つは、この前も当委員会でも議論があったのですが、日本メリットの方ですね。それで、そのメリットをどのように生かすのかということはさまざまな見解があるわけであります。たとえば消費者還元という意見も当然あるわけであります。そうかといって、この前のように一家庭当たり平均二百円台のあれがいいのか、中長期的に、たとえば電力でも安定料金のシステムを確立するということの方がいいのか。あるいはまた、石油税従価税でありますから値下がりに従って減収となる、エネルギー対策をどうするのかという問題もありますし、あるいはまた、さっきも申し上げた減税財源としてという面も含めて石油税取り扱い考え直すという御意見もありますし、それも目的税を他の財源に使うのはどうかという意見もあるようであります。  さまざまな選択が問われるというのが今日の状況でございますが、そういう中で、これは大蔵大臣だけではない、通産大臣その他いろいろと関係をしてまいるわけでありますけれども、税制に関することは大蔵大臣の所管というわけであります。その辺の政策選択の物の考え方というものを一体どう持ったらいいのだろうか、今日の不況脱却のためにこの条件をどう経済活性化に生かすのかという観点から大切なことではないかと思いますが、どういうお考えをお持ちでございましょうか。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、整理してみますと二問ございますが、一つは、いずれにしても産油国に対して富が大きく移転をいたしましたのが、第一次、第二次石油ショックで、今度はまた逆に産油国から富が移転してくる、こういうことになるわけでございますので、そこにいろいろな問題が生じてくるわけでございますが、一般論として、債務累積国などに対しての問題が一つあります。これは長い間かかりましたが、二月中旬のIMF暫定委員会出資総額を六百十億SDRから九百億SDR、四七%増資、これが決まったということ、それから、私どもも参加いたしました一月の十カ国蔵相会議では、一般借り入れ取り決め規模が六十四億SDRから百七十億SDRに二・七倍に増額。そうしますとともに、開発途上国資金が利用できるような取り決めを、改組をするということが合意されたわけです。  このような国際的な合意によりまして、IMF国際金融情勢の安定に向けてその役割りを果たしていくための基盤は整った、こういうことが言えると思います。IMF融資は、借入国の全体としての資金需要から見ればまさにその一部を賄うものにすぎません。しかし、IMF融資に際しては、借入国経済再建を促すために一定の政策目標の達成を義務づけたりします。そして、この融資条件の順守が借入国経済信認回復につながります結果、IMF融資借入国への民間資金流入のための、言ってみれば呼び水としての機能を果たしておるというのが大変重要であると思います。  そういうことからいたしまして、私は、この問題については絶えず慎重に配慮していなければなりませんけれども、大きな問題を提起することはない。慎重に対応しておればいい。それで国内市中銀行融資につきましても、その都度適切な指導をいたすことによって対応して不安がないようにということに気をつけております。  それから、一方今度は、値下げに伴うところのメリットの方でございます。これは、一般的にはおっしゃるとおり原料コストの低下を通じまして企業収益に役立ちますし、それが設備投資にも影響を与えることとなりましょう。そして、物価水準の安定にも寄与して個人消費等にいい影響を与えるということが言えます。しかし、石油値下げわが国経済に与える影響につきましては、まだ依然として流動的な点もございます。税制の面というふうな角度からの御意見もございましたが、実際問題、いま現に備蓄したり、現に船で運ばれたりしておるのは高いときの油でございますので、それが石油会社によりましては、いわば備蓄、在庫の評価がえもしなければなりませんでございましょうから、直ちに増収とは逆の方向へ出る面も、それは短期的には考えられると私は思うわけでございます。だから、その点は十分配慮してかからなければならぬことであります。  そして、一方今度は、石油税そのものは御指摘のように従価税でございますから、そのものが減っていく。そうなると、政策目的のための代替エネルギー開発とかそういうことに影響するから、短い視野でそれだけを眺めれば、この際それについて税率を上げたらどうだという議論も出るでございましょう。しかし、それらも総合的に考えなければいかぬ問題でございますので、にわかに石油税そのものに手をつけようという勉強を開始しておるという事実もございません。  とにかく、いまおっしゃいますように、これだけの差益が出る。現に、私が前回大蔵大臣でありましたときの電力料金値上げの際は二百四十二円でございました。が、私が大蔵大臣をやめますときにはたしか二百十九円二十銭ぐらいでやめましたから、途中には確かに電力会社は大きな利益が出たということが言えるわけでございますけれども、そういう問題につきましてもいま少し状況を見ないと、消費者に還元すべきものかあるいは設備投資等によって景気回復に役立たせるべきものであるかというような選択の問題は、今後こういう議論を通じながら一生懸命やっていかなければ、正確な判断に基づいて対応していかなければならぬ問題であると思っております。
  12. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、時間のようですから、簡単にもう一つだけ伺っておきたいのですが、先般衆議院予算委員会で、中曽根総理とわが党議員との間に世界経済活性化、ワールド・インフラストラクチュア・ファンド、ある意味ではワールド・ニューディールというふうな気宇雄大な構想議論がありまして、中曽根総理も、これは非常にユニークな話なので前向きにとらえて、サミットでも話題になるようにしたいというようなわけであります。  さっき申し上げたような世界経済常務としての日本、その中の大蔵大臣、いろいろと国際金融面その他でも国際的な視野からの構想が求められるというわけでありますが、また五月のサミットもだんだん近づくわけでありますから、そういう問題もあると思いますが、それらについて、さらに総理が答弁をされたようなことをどう積極的に構想するか、大臣としてはどうお考えですか、一言
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるグローバル・インフラストラクチュア・ファンドという、いろいろな御提案があっております。要するに、全世界的な規模公共投資を実施すべきである、これは大変傾聴に値する議論だということは、そのとおり思っております。そうなると、今度は公共投資内容、効果、資金調達、そしてさらには実現可能性というような問題がございますので、これは大いに勉強させていただく課題であるというふうに理解しております。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 どうぞ大臣、大いに勉強してください。  幾つか実務的な観点からお伺いをいたしてまいりたいと思いますが、一つは、途上国債務あるいはまたレポートを見ますと、ことしじゅうに六千億ドルに達するであろうというふうに言われておりますし、その中でも、大臣からお話がございましたが、先般のIMF暫定委員会で四七・三%の増資というものが決まりました。私は、結構なことだろうと思ってちょっと調べてみましたら、どうもそれだけでいいのかという問題点が実は幾つかあるわけであります。  途上国に対する国際機関からの融資、それから先進国政府機関からの公的資金融資というオフィシャルかパブリックかの部面のものと、それから民間銀行、コマーシャルベースでの途上国への融資、それを調べてみましたら、途上国の対外債務残高のうち公的資金の分、民間資金の分、七三年には公的資金の分が六五・七%、八〇年は五三・一%、民間資金の方が七三年は三四・三%、いま八〇年末が四六・九%というような数字を読みました。こういうことを見ますと、途上国の側が、さらにコマーシャルベースでのあるいは金利も上がってくる、返済期間もオフィシャルなものよりは短い、さらにアメリカの高金利も加わっている、そういうふうな構造変化が顕著なようであります。  それで、このIMFの暫定委員会の結論に関連してお伺いしたいのですが、この四七二三%増資、年末目標ということのようでありますが、これらにどう対応をされるのか。それから、いま申し上げましたような状況、OECDや世銀などのレポートによりましても、それだけではとてもいまの構造的な解決はほど遠いというふうな意見も強いようでありますが、それらについて、どう対応していくのかという問題ですね。
  15. 大場智満

    ○大場政府委員 まずお尋ねの第一点、IMF増資問題でございますけれども、先ほど大臣からお答え申し上げましたが、今回IMF増資六百十億SDRから約九百億SDRになったわけでございます。もちろん、この金額で開発途上国に対する貸し付けをすべて賄うというには足りないわけでございまして、私どもは、IMFというのは小さな金を出して大きな声を出す機関ではないかというふうに理解しているわけでございます。大きな声を出すと申しますのは、先生指摘のとおり、融資条件を厳しくいたしましてその国が立ち直ることを助けるわけでございます。そのようになりますと、民間銀行の金がひとりでに流れていくということかと思います。ですから、IMFの小さな金と大きな声、それに民間銀行からの高額の貸し付け、これが相まって開発途上国の債務累積問題を解決していくのではないかというふうに考えているわけでございます。  なお、公的債務、民間債務につきましての御指摘でございますけれども、確かに民間債務が大きいという現状でございます。私どもは、今後ともたとえば世銀あるいはアジ銀等々の開発金融機関あるいは各国からの政府援助というものが継続していかなければいけない、そういうことが相まちまして債務累積国の問題が解決されていくのではないかというふうに考えているわけでございます。
  16. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ、これは国際金融局の方ですか、ODAについて伺いたいのですが、五十八年度予算編成に兼ね合って、さまざまの調査あるいは報道など見ておりますと、いわゆる閣議決定の新中期目標の達成は、さまざまな条件から非常にむずかしいのではないか。それから、協力基金の状況とか運営とか、さまざまな評論がなされておりますが、日本はやはり東西南北の接点にある国ですから、いろいろと財政事情も厳しい。しかし、わが国経済がもつためにもやはりほかの国以上に努力をしなければならないというシチュエーションに置かれている、それら現実の見通しをどうお考えになっているのか。  それから、ODAの執行に関して、アメリカそれからヨーロッパの場合、若干調べてみたいのですが、国によっては海外経済協力省というような省を持っている。それからアメリカなんかの場合でも、独立した固定機関が設けられていて対応している。具体的な援助の執行に見ましても、たとえばプロジェクトの選定の段階からコンサルタントのような形でしょうか、相手国のそのプロジェクトの計画の段階からさまざま参加をしてアドバイスをする、その計画の執行中もそうでありますし、終わった後もアフターケアのさまざまの手配なりアドバイスをしていく、協力をしていくというふうな仕組みがいろいろな国で行われている。  これは、いつもこういう国際関係のときに、わが国の場合には幾つかの省庁にまたがって分化をしたシステムの一元化が必要ではないかということが指摘をされておりますし、前に何かの法律のときにもそういう附帯決議をつけた覚えもありますが、こういうことは、いま置かれている日本経済途上国の状態からいっても、やはり早急に解決をされるべき問題であろうというふうに思うわけであります。ODAについて伺います。
  17. 大場智満

    ○大場政府委員 まず、質問の第一点でございますが、御指摘のODAの問題でございます。  今年度、五十八年度予算につきましてODAを見ますと、一般会計予算で八・九%の伸び率となっております。これは、他の費目に比べまして格段の大きな伸びとなっていることは御高承のとおりでございます。ただ、ODAのGNP比が若干伸び悩んでおりますことも事実でございまして、私は、これは多国間援助と申しますか、国際機関を通じる援助が伸び悩んでいることに起因するものだと考えております。二国間援助につきましては、かなり大きな伸びを見せているわけでございますが、多国間つまり国際金融機関を通じます援助になりますと、なかなか、各国間の増資に対する考え方の調整それからその配分についての意見調整等時間がかかりまして、このために国際開発金融機関向けの援助のペースが鈍っているということが、ODAのGNPに対する比率を落としているということかと思います。もちろん、今後ともこういう国際金融機関に対する協力問題を含めまして、さらに努力を重ねまして政府の目標に向かって進みたいというふうに考えているわけでございます。  それから、第二の執行機関といいますか、経済協力の体制の問題でございますが、御高承のとおり、わが国では、外務省、経済企画庁、通産省そしてわれわれ大蔵省と四省庁で経済協力を進めているわけでございます。  経済協力と申しましても、いろいろな側面があることは事実でございまして、たとえば外交政策の観点も重要でございますし、あるいは金の面、物の面、金の面と申しますのは、財政金融に関係する部分もあるわけでございますし、また、物の動きの面としてこれをとらえなければいけないということで、わが国では、四省庁の体制で援助問題に取り組んでいるわけでございます。これを一元化するということになりますと、またその観点から各省庁との調整が必要になるのではないかということもありまして、私どもとしては現体制で続けていきたい。ただ、御指摘のとおり、いろいろ非効率な面も過去にはあったかと思います。ですから、この四省庁体制でできるだけ効率的な対応を進めていきたい、このように考えておるわけでございます。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 局長さんではそれ以上の答弁は無理でしょうから、政務次官もいらっしゃいますから、ぜひお伝え願いたいと思いますが、少なくともそういうものの担当大臣ぐらい持って、強力な姿勢をもって日本政府は努力をしているんだということぐらいはやる段階じゃないだろうかと思うわけであります。  次に、農水省に、貿易摩擦問題それから関税政策に関連をしてひとつ伺いたいのです。後ほど同僚議員からも集中してお話があると思いますが、たばこの問題はたばこの関連法案で審議がなされましたから、それは省きますが、たとえば牛肉とかオレンジとかハワイ交渉で話がまとまらないで、引き続いているということになるわけであります。  私は、具体的なことは抜きにいたしまして、物の考え方から、基本的視点のことについての考えを伺いたいわけであります。なお、私は、日本が置かれている状況からいいまして、国際的な協調がきわめて重要であることは言うまでもありません。同時に、国内には生産者、消費者両面があるわけでありまして、国民経済的な視野から、これらの問題を国民的なコンセンサスが得られるような対応をしていくということも非常に大切なことであろうと思います。  そういう基本的な視点をどう政策化していくのかということを考えますと、対外的にも、関税が下がったら農家の皆さんが困るというだけでは戦略、戦術にはなりませんで、やはりさまざまな折り入った対応をしなければならないということだろうと思います。あるいはまた、国内における両面からいっても、コンセンサスが得られるような努力をしなければならない。一面では、国内の農家の立場を守らなければならない、あるいは体質強化の具体策をとらなければならない。消費者は安い牛肉を要求するということになるわけです。私は、そういうのを含めて中期のターゲットを設定をして、それが完全に達成されるかどうかは別にして、その方向に向けての努力を多面的にやっていく、内外含めた努力をやっていく。そういう視点がないと、政策的な対応にはならないのじゃないだろうかという気がいたします。  そういう気持ちで、一つの例として、畜産振興事業団の経過など見ておりますと、いつも問題となっている差益金の使い方の問題、あるいは安定基準価格それから安定上位価格がいいのかどうかという問題です。さらに、それらの問題については、先般の臨調部会報告の中でも、「牛肉の行政価格については、速やかにEC水準を達成し、内外価格差を縮小することを目標に、毎年度の水準を見直す。」これは三月にやるそうですが、それから「差益金の運用に当たっては、消費者対策を含め流通対策を充実する。」臨調でもそういう部会報告が出ておりました。行管庁の勧告を見てみますと、事業団についての問題点がいろいろと指摘をされております。御承知のことですから私どもからは取り上げませんが、高値助長、あるいは助成についても実効の薄い総花的になってはならぬとか、畜産物は日本農業の将来にとって目玉となる重要な柱というわけでありますから、そこに向けての対応をどうしていくのかということが必要であるというふうなことが行管庁の勧告あるいは臨調の側からも指摘をされているわけであります。  最初に申し上げましたような視点から、中期のターゲットをきちんと持つ。いままで相当な額を使ってどれだけ効果があったのか知りませんが、政策的な視点をきちんとする。そして国内的には、生産者、消費者の体質をどう変えていくのか、あるいは、より良質で安いものをどう供給していくのか、国際的には、こういう視点でやっているから理解してもらいたいというふうな合意をするのか、そういう視点がないと、摩擦を解消するベースができないのじゃないだろうかというふうな気がいたしますが、具体的な運用状況は抜きにして、その辺の基本的な考え方をどういうふうにして運用されているのか。
  19. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡説明員 ただいま先生からお話がありましたように、牛肉につきましては、農業生産上きわめて重要であることは申すまでもありませんけれども、また、国民食生活の上でもきわめて重要であります。  私どもとしましては、農家経営の安定と国民に安定した価格で牛肉を供給するという立場に立って行政を推進しているわけでございます。また、農業基本法に基づきまして、牛肉につきましては六十五年の需要あるいは生産についての長期見通しを持って計画的にやっているわけでございますけれども、最近の内外の情勢、対外的な問題、あるいは国内におきましても、いま御指摘のありましたような臨調あるいは行管庁の答申とか勧告ということもございまして、私どもとしましても、そういう勧告を踏まえて、これから行政的な対応を十分していくことが必要であろうかというようなことで、今国会に酪農振興法の改正提案しております。題名も酪農と肉用牛の振興に関する法律ということにいたしまして、所要の、計画的な生産の推進でありますとか合理的な経営のあり方についての基本を明示しまして、また、その中で将来の需給展望あるいは生産展望を作成いたしまして、そういうことを踏まえて、経営の安定あるいは牛肉供給の安定的な拡大ということを推進いたしているわけでございます。  もちろん、そういうことに基づきまして、一般会計の予算あるいは先ほど御指摘のありましたような、事業団でせっかく生じます差益につきましても、長期的に生産の合理化を図って安定的な価格で供給していくということを基本にいたしまして、必要な流通あるいは消費に関する行政施策の充実を図るということでやってまいる考えでございます。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私からはこれだけにしておきます。とにかく、一日安売りデーをやればかっこうがついたということではない、きちんとした政策的対応を勉強していただきたいと思います。  次に、関税局長関税行政に関連して二、三点伺いたいのですが、行管庁から「地方支分部局等総合実態調査」というのが出されておりまして、税関関係の分を読んでみたのですが、その中で、さまざまの提言その他が出されております。さまざまな合理化あるいは適正配置などをしなければならない。私は、それが、事務もふえるあるいは複雑化する、専門性も必要だという分野を担当している税関職員の労働過重あるいは労働条件が厳しくなるということになってはならぬと思っておるわけでありますが、全体的対応を一言。  それから、この中で要員配置の適正化の問題がございますが、各税関ごとの一人当たりの業務量のアンバランスということも書いてございます。地元だから言うわけではありませんが、わが横浜税関の場合には、一人当たり長崎税関の十倍の仕事をしているというふうな数字も出されております。全体的には適正配置の努力もしているのだろうと思いますが、第三者の行管庁が細かくチェックをすればこういう問題も指摘されるわけでありまして、この間も聞いてみましたら、成田の事務が込んだときにはしょっちゅう横浜から派遣をする、ばりばり事務をさばいてくるそうですね。、評判がいいそうですが、場合によっては仙台空港まで出張して事務をさばいてくるというふうな状況があるようであります。友だちの横浜市の港湾局長に聞いてみましたら、いや、とにかく横浜の税関の方々は随一の仕事をする能力があると自慢しておりましたが、仕事を一人でたくさんこなすことを自慢してもしょうがないので、適正配置の趣旨にも沿うようにこれらのことをやっていくことが必要ではないだろうか。  それからもう一つ、これは地元の新聞で読んだのですが、違反、検挙される件数。これも横浜税関の問題でありますが、昨年一年間の密輸事犯の概要いわゆる密輸白書が発表された。覚せい剤とか拳銃とかさまざまな問題があるわけでありますが、件数は大分減っているようでありますから、これはいいと思うのですけれども、ちょっと気になったのは、米軍の軍事郵便を利用して米軍のノースピア、全国でただ一つ、東京湾でもただ一つ米軍が占有しているドックがございまして、非常に残念で、早く返せと言っているわけですが、そこから来るルートが相変わらず多くて、後を絶たない状態である。それで、ピストルとかピストルの弾とか大麻とかあるようであります。これらのことは、幾ら日米安保条約があるにしろ、日本の法律を守ってもらわなくてはならぬわけでありますから、外務省を通じてか直接か知りませんが、たとえば日米合同委員会などを通じて米軍側にも日本の法律を厳重に守ってもらう。ノースピアに送られてくるルートから、米軍の軍事郵便物を利用した拳銃とかそういう違反行為が後を絶たない、手口もさらに巧妙になっているということは困るわけでありますから、その措置をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  21. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 まず第一点は、今回の行政管理庁の税関行政に対する監察結果についての問題でございます。  私ども、税関行政を進める上で一番悩みと申しますか頭を痛めておりますのは、税関の仕事が年々ふえてくるわけでございまして、これは貿易量の拡大ということに必然的に伴うわけでございますが、単に量的にふえるということではなくて、質的にも、物流の制度、体制というものがいろいろ変わってまいりますと、ある一カ所に急速に仕事が集中してくる、あるいはいままで全く税関の事務所を置かないで済んだようなところが新しく通関拠点になってくる、そういうところへ人員を配置し対応していかなければならないという、非常に受け身に近い形でこの増大する事務量を処理していかなければならないということでございますが、限られた人員、機構の中でこれを適確に執行していくために、従来から、機構の改廃あるいは電算機の導入によります通関システムを始める、あるいは空港におきます旅具通関体制の見直し等いろいろな措置を講じてまいりましたし、また四十年代の後半から、比較的仕事の伸びの少ない地方の税関から大都市の税関へかなりの人数を移動させるというような措置もとってきたところでございます。  今回行管からいろいろ御指摘をいただきました点につきましては、私どもはこれを十分深刻に受けとめまして、今後とも税関業務を一層効率化、簡素化していくという見地から是正すべき点は是正してまいりたいと思っております。  また、先生指摘の、職員の労働過重にならないようにという点につきましては、同じように仕事のやり方の効率化、簡素化ということを通じまして配慮していきたいと考えておるわけでございます。  それから、横浜税関と長崎税関で一人当たりの仕事量が十倍というお話がございました。これは、行管の報告にそのように指摘されているわけでございますが、一言弁解をさせていただきますと、大きな税関では仕事が非常に分化しておりまして、一人で輸出なら輸出、輸入なら輸入の審査をいたしておりますが、地方の税関に参りますと、そういう輸出入申告の処理のほかに一人でいろいろな仕事をしておるという面もございますし、単純に絶対的な仕事の量が十倍ということではないというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。  したがいまして、できる限り大都市に職員を集中することを過去からいろいろいたしております。ただ、これは現実問題といたしまして住居の移転を伴うということで、なかなか職員個々にとって困難な事情もございまして、労働組合とのいろいろな話し合いも必要かと思っておりますけれども、そうした点も考慮しながら効率的な配置ということに私ども組合にも御協力を願っておるわけでございます。  それから、密輸に関連をいたしまして、米軍の軍事郵便路線を通ずる密輸の問題でございますが、郵便物を通じます密輸は、軍事郵便に限らず最近いろいろ見られるわけでございますが、軍事郵便を通じます輸入に関しましては、米軍当局の協力を得まして、実際には通常の日本の一般の郵便物よりは若干高い検査率になっております。その意味で、なお決して少ない額ではないという御指摘でございますけれども、具体的な数字を見ますと若干年々減少してきております。しかし、まさに御指摘のようにまだ後を断たないということは大変遺憾でございまして、私ども、従来から米軍当局に対しまして協力要請を強くいたしてきておるわけでございまして、また、いままで比較的協力を得ていると思っておりますが、今後とも引き続き協力要請を行いまして、軍事郵便物を通ずるこうしたピストルであるとか麻薬であるとかいうものの密輸入を一層根絶していくように努力をいたしたいと思っております。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 最後に、税関業務に関連をいたしまして、検数問題について質問をさせていただきたいと思います。  御承知のとおりに、港の状況は急激に変わっておりまして、コンテナ化、技術革新というさまざまな変化の中で、非常にたくさんの港に働く労働者が職を離れていくというふうな状態が顕著にあらわれているわけであります。さまざまな雇用不安の問題も深刻化しているというふうな状態があるわけでございまして、そういう中で検数人の問題、資格を持っておられる検数人の皆さんの問題が深刻な問題になっているわけであります。  いろいろと実態を伺いますと、最近検数省略の動きがあって、検数人の皆さんが自分の職域が減少するという危機感を非常に持っておられる。特に最近の業務の中では木材、原木の問題が大きな焦点となって、大蔵大臣への要望書が出されたりしているわけであります。私の方も運輸委員会の皆さんとも協力をして関係者と話をさしていただいておりますが、そういう状況、それから事実関係というものを一体どういうふうに受けとめられているのかということが一つであります。  それからもう一つは、税関行政の基本的視点として、これは関税法からいっても当然のことだと思いますけれども、たとえば関税法第六十七条の中にも数量、価格、必要な事項をきちんと申告しなければならないという項目があるわけであります。通関行政の重要なプリンシプルの一つは、正確な輸出入の数量把握であるわけであります。当然のことでありますが、私は、そういう面からしますと、関税法の条文と比べて、それに対応する行政措置、基本通達、さまざまの省令とかいう方が対応していないのじゃないかというふうな気もいたしますが、通関行政の重要なプリンシプルとしての正確な数量把握ということについて、これを緩めてもいいとかいうふうなお考えがあるのかどうか、最初に伺います。
  23. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 検数あるいは検量業務というものが港湾の流通のいろいろな近代化に伴って若干ずつ仕事が減ってきておるというのは、ある程度事実であると私どもも受けとめております。特に木材について言及されたわけでございますが、木材の場合には、輸入が最近減ってきたということも大きな要因の一つではないかと思っておるのでございます。  税関といたしまして、この数量の把握というものは、一つには、課税標準が数量で決定されている場合には決定的に重要な意味を持つわけでございます。さらにまた、先生指摘のように正確な統計という見地からいいましても、統計単位となる数量というものは非常に重要なわけでございまして、そのために、ただいま御指摘ありました関税法の諸法規ができ上がっておる。そういう意味で、数量の的確な把握ということが私どもにとって重要な要素であるということは今後とも変わらないと思っておりますし、また、統計の正確性を期する、あるいは課税標準という意味から、税関としては十分その数量の問題にも注意を向けていきたい、こう思っております。
  24. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ところが、局長、こういう事実なんです。  これは、一九八一年にフィリピンからの輸入の原木でありますが、大蔵省の貿易月報には、南洋材のフィリピンからの輸入、一九八一年百四十六万立米という数字が載っております。フィリピン側の方でどういう統計を挙げているのかと見ましたら六十万立米になっているわけです。二倍以上違う。フィリピンの港を出るときから日本の港に着くまでの間に、何でこう二倍以上に水ぶくれするのか。海の上を引っ張ってくるのではなくて船に積んでくるのだと思うのですが、何でこういう違いが出るのか。これから見ても検数、検量をきちんとするということが必要ではないだろうか。こういう状態があちこち起こりますと、国際的にもおかしなことになってくるということじゃないかと思いますが、局長がさっきおっしゃったプリンシプルからして、ちょっと違うのじゃないでしょうか。
  25. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 フィリピンからの丸太の輸出、日本側から見ました輸入の数字でございますが、一九八一年についてただいま先生指摘のとおりの数字でございます。  これは、どうしてその違いができるのかということを私どももいろいろ調べてみたのでございますが、問題は、丸太というものの範囲、どういう範囲を丸太と考えるかということについて、日本とフィリピンとで差があるのではなかろうか。わが国は、この丸太というものの中にはいわゆる荒削りとか太鼓おとしと言われますものが含まれておるわけでございますが、フィリピンにおきましては、こういうものが含まれてないのではないか。わが国関税協力理事会の分類を採用いたしておりますが、フィリピンは関税協力理事会加盟国ではございますが、この分類を採用してないわけでございます。したがいまして、この丸太というものの概念、範囲が統計上違うということが一番大きな理由ではなかろうかというふうに推測をいたしておるわけでございますが、先ほど先生指摘のように、税関として数量把握をおろそかにしてはならないという点は今後とも留意をしていきたいと存じております。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 関係者から聞いてみますと、木材の船おろしの場合に無検数の場合が非常にふえているようであります。いろいろと各港の検数をしている場合、それから無検数でやっている場合という資料も調べてみましたが、検数なしならばそこでは検数人の仕事はなくなる、そういう状態があるように聞くわけでありますが、これらを一体どうするのか。  さっきもちょっと申し上げましたが、関税法六十七条などの趣旨からすれば数量把握はきちんとしなければならない。これは関税行政のベースである。ところが、基本通達などを見ますと、必ずしもそれがきちんとした態様にならない仕組みになっている。何か私は矛盾ではないかという思いがするわけであります。  それから、皆様の方から前に伺いますと、検数員を必ず立ち会わせるかどうかというのも、これは荷主が決めることで税関が要求するというたてまえのことではない。要するに、ボートノートとか一定の書式の書類が出ればそれで通関業務は進行する。そういう現実に起こっておる状態。それから、関税法と規則との関係、現実にこれは荷主同士で買う方と売る方と両方で合意すれば、トラブルがなければいいではないかという取り扱いになってくる。そうなりますと、売る方、買う方でトラブルがない場合はいいということになりますと、場合によっては、正確な検数とは違った場合も往々発生しても仕方がないということになるのじゃないだろうかという気がするわけであります。  この辺のところを、諸外国の例もいろいろあるようでありますから、ぜひひとつ研究、勉強していただいて、長期にわたる関税行政のベースがおかしくならないように勉強していただきたいという気がするわけでありますが、それがいかがかということ。  それから、時間ですから恐縮ですがもう一つだけ。  こういう状態の中で一万人に上る全国での検数人の皆さんの問題、そして急速に職を失うという問題が出てくる、こういうことでありますと、最初に申し上げたこの五年、十年の間の港に働く人々の状況の急激な変化ということから見ましても大きな社会問題という意味ではないだろうか。これは運輸省の監督や行政指導にまたがる面もございますけれども、大蔵省としても、そういう不幸な社会問題が起こらないように関心を持って対応すべきではないだろうかと思いますが、二つ一緒で済みませんが、お答えください。
  27. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 物流の近代化に伴いまして、諸外国でもいろいろな変化をしているのかと存じますが、先生指摘のとおり、港湾に働く人の立場というものも大事でございますし、また一方において、物流というものはできるだけ効率的に合理的にという要請もあるわけでございますし、諸外国の制度等も十分勉強いたしたいと思っております。  御指摘のとおり、私ども税関の立場から申しますと、制度としては積数というものに私ども直接かかわる立場にございませんで、船側と荷主側との受け渡しの書類というものを抜け荷防止という観点から税関がチェックをしておるということでございまして、荷主なり船側が検数人をその場合に使うか使わないか、これは前から使わないという例もあったようでございまして、最近特に荷主側がこの検数人の立ち会いを拒否しておるというようなことでもないのではなかろうかという気もいたしますが、いずれにいたしましても、いろいろ勉強してまいりたいと思っております。  私ども、税関の手続を変えたことによって検数業務に最近変化が起きたということではないと理解をいたしておりますが、冒頭申し上げましたように、港湾というもの、税関も港湾の一環を担っておるわけでございますので、この検数、検量業界の動向というものは、その意味では税関としても常に十分注意をして見守っておるという立場であろうかと存じますので、きょうの御指摘の点も踏まえて、今後なおいろいろ勉強させていただきたいと存じます。
  28. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。ちょっと長くなりまして恐縮でございます。
  29. 森美秀

    森委員長 戸田菊雄君。
  30. 戸田菊雄

    ○戸田委員 順序を変えて、最初に総裁に、一点だけですから質問をしてお帰り願いたいと思います。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  今回の関税改正の中で、関税改正の答申内容によりますと、農産品の中に紙巻きたばこ、それから葉巻きたばこ、それからパイプたばこといったものが、三五%が二〇%、葉巻きたばこも同じで、それからパイプは六〇%が三五%とそれぞれ関税率が下がる、その分やはり輸入の枠が拡大されるような状況になるのじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけです。  それで問題は、この前お伺いしましたように流通体制の問題で、いま二十五万店小売指定店がある、最終的には漸次四万店にふやしていこう、こういうことですね。それは聞きますと、賛成した業者、小売店、これを全部指定していくんだ、二十五万店あるのですから、そうすると四万店で果たしておさまるのかどうかという疑問が一つあります。その場合の選定基準というものをどういうふうに指定していくのか。それから、どのくらいのシェアの拡大が図られるのか。いままでの実績ですと大体一・五%の増ということになっているという状況であります。この関税定率の引き下げによって若干シェアの拡大が伴ってくるのじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけです。その点に対する見通し。  もう一つは、いままでの総裁の答弁でも在庫が一年分くらいあります、こういうことですね。私の希望としては、少なくとも現行の外葉の輸入率三三%ないし三四%を二七、八%まででき得れば引き下げてもらいたい。そうしますと、葉たばこ耕作者の面積その他にも私は影響を与えないで済むのではないだろうかというふうに考えますし、国内の農業の葉たばこ耕作等を考えますると、そういう措置をやることが一番いいのじゃないかという気がします。また、在庫を減らしていきたい、こういう御希望のようですから当然のことだと思うのですが、減らすにしても三三から二七、八%に抑えれば、その分だけ計画的に在庫の減量を図っていくのにいいのじゃないか等々の問題が考えられるので、この問題について、三点ほど御答弁を願いたいと思うのです。
  31. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  第一点の、輸入品取扱小売店の問題でございますが、御承知のように、全国二十五万店、沖縄を入れますと約二十六万店でございますが、現在二万店扱っておりますものをこの三月末までに四万店にふやす。それから、大体ことしの十月を目途にさらに三万店ふやします。これは準備の手続等の関係でおくれておりました東京、大阪のような大都会がむしろ秋までの方に入るわけでございますが、十月には三万店ふやして七万店になります。残るものにつきましては、これはどちらかというと郡部になると思いますが、それでもぜひ輸入品を扱いたいと希望する店全店に結局は及ぼすわけでございますが、これも受け入れの準備等がございまして、現在のところは、六十年度中には希望する全店に及ぼすという方針になっておりますが、そのうちの一部は、できれば五十九年度末までに繰り上げるというようなことを、アメリカとの間である程度約束をいたしております。  次に、第二点の、輸入品のシェアが関税率の引き下げ並びに小売店数の拡大によって一体どの程度までふえるであろうかという問題でございますが、これは前にもお答え申し上げたと思いますけれども、率直に申しまして、現在一・五%ぐらいのシェアのものが何%ぐらいにまでふえるかという見通しが大変立てにくいわけでございます。  と申しますのは、一つは、この関税率の引き下げが行われましても、その他の要素と関連して輸入品の国内における小売価格が決まるわけでございまして、その他の要素がまだ未確定でございますので、いまのところ、主要な内外製品の価格差がどのくらいになるかという点がまだ未確定でございます。  それからもう一点は、たばこというのはやはり嗜好品でございまして、価格差だけでどのくらい伸びるかということが決まるわけではないという点もございまして、一体一・五%が何%のシェアになるかというところまでお答えいたしかねますが、いずれにいたしましても、私は、相当程度輸入品のシェアが高まっていくであろうということは予想いたしております。  その場合、やはり一番問題になりますのは、国内で葉たばこをつくっておられる耕作者に一体どんな影響を与えるかという問題でございますが、私どもといたしましては、まず、外国品特にアメリカの製品との競争が激化していくことを考えますと、国産の葉たばこにつきましても、できるだけ構造改善あるいは品種改良その他あらゆる施策を講じて、できるだけ安いコストで、できるだけ質のいい葉をつくっていただかないと、なかなかアメリカとの競争は厳しいと存じます。  そういう点について、私どもは全力を挙げて、葉たばこ耕作農家、その団体等と相談をしながら指導に努めてまいりたいと考えておりますが、それにいたしましても、品質の面、コストの面、両方から考えまして、ただいま戸田委員のおっしゃいましたように、外葉率三三%を二七・八%まで下げるというのは私は無理ではなかろうかと考えております。ほっておけば外葉率が上がりがちのものを何とか三三%の現在の率で維持いたしまして、一方において、国産葉多使用銘柄の開発あるいは息の長い話でございますが輸出の促進等に全力を傾けて、そのしわが国内の葉たばこ生産農家に及ばないように努力いたしたいと考えております。
  32. 戸田菊雄

    ○戸田委員 総裁ありがとうございました。結構です。  それから、農水省の次官が参っておると思いますが、いま農村の皆さんから、貿易の自由化あるいは拡大はやめてくれという大変強い要望がありますね。きょうは時間が余りありませんから、端的にお伺いをしていきますが、そういう中で、ことに穀物等の主要な食品については、その自給度が非常に低いでしょう。総体自給率が三三%と記憶していますが、カロリー計算で五三%です。この程度ですから、先進資本主義各国の中では最低ですね。イギリスが最低六七%見当と記憶しますが、これの半分ですから、これ以上農作物も、ことに穀物等については引き下げると言えば、農家経営はもちろん、農業そのものの破壊に通じてくるのではないだろうかというような気がいたします。  こういった問題について、次官としてはどういうお考えを持っていますか。
  33. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 わが国の農政の展開につきましては、食糧自給力の向上を極力図るという国会決議に基づきまして、わが国の生産力を極力上げていくと同時に、国内で生産できるものは極力自給していくということを行いまして、総合的な自給力の向上を図っていかなければならない。そういった観点から、需要に応じた農業の再編成あるいは中核農家の育成、また農業基盤の拡充といった施策を講じまして競争力をつけていくということで農政を進めていきたい、かように思っております。
  34. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今回の答申で、さらに改定案を見ますると、七面鳥の肉を初めとしてアヒルの肉その他農産品が四十七品目今回税率引き下げ、中には無税のものもありますね。  こういうことになりますと、たとえば七面鳥は主としてアメリカからだそうですが、額にしては大体五億見当だというのです。そのうち四・五億見当はアメリカ。それからアヒルの肉は十一億だそうですが、そのうちアメリカが四・五億、大体半分程度アメリカから入ってくる。こういう状況で、以下四十七品目それぞれあるわけですが、こういうものを大量に定率を引き下げてやっていますと、日本の市場は相当荒らされるのじゃないかという気がします。この影響度についてどういうふうにお考えなのか、それが一つであります。  それからもう一つは、七年かけてようやく第七回目の東京ラウンドが確定した。一九七九年にようやく最終終結宣言を見るに至ったわけです。過去六回の各種関税定率引き下げその他をやってきた、通商交渉をやったわけですが、その場合に、いままでの六回までの各種会議は主として関税定率の引き下げが焦点だった。ところが、第七回の東京ラウンドに限って農作物、たとえば東京宣言ではわざわざ「工業品及び農産物双方の関税、非関税措置等を対象とする」こういうことをあえて宣言の中にもうたっていますね。もちろん、このほかにも開発途上国に対するところの特恵関税の問題がありますが、だから、全般的な視野に立って今後の貿易自由化あるいは日本で言うなら均衡拡大といいますか、こういう方向で保護貿易というものを遮断していこうということでこれはやられたわけですね。そういう中にこれはあるわけですから、これだけにおさまらず、今後も恐らく農産物の枠拡大なり自由化というものは必要に迫られてくると思いますね。  だから、聞くところによると、アメリカは、すでにカリフォルニア米約四百万トン生産ができる、日本食に応じていかような米でもつくりますよ、そして四分の一程度の低コストでもって輸出してやりますよ、こう言っておるというのですから、恐らくいまアメリカとしては、日本の政治状況、六月に参議院選挙がありますから、衆議院はどうなるかわかりませんが、そういう国政選挙が終わったら直ちに本問題に取り組みたいという意向を持っておる、こういうことです。  こういう問題について、一体農水省としてはどういう態度で臨んでいくのか、その辺に対するぴちっとした態度をお伺いしたい。
  35. 塚田実

    塚田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、今回の関税引き下げについて、ただいま御審議をお願いしております農林省所管物資、税目数でかなりございますが、これに対しましては、私どもは、諸外国からの強い市場開放要請に対処して、いわゆる御案内のような貿易摩擦の緩和に資するということで行っているわけでございますけれども、その品目の選定に当たりましては、生産担当部局の意見を十分尊重しまして、それぞれの品目の需給動向や国内産業の市場について十分慎重に検討して行ったものでございます。国内の農業への影響についても十分配慮したつもりでございます。また、引き下げの幅につきましても、東京ラウンドで段階的引き下げを約束している品目については、原則といたしまして段階的引き下げの最終税率に、その他の品目については、それぞれの品目の実情に応じ、可能な幅で引き下げることとしたわけでございます。  そのようなことでございますので、米国を初め諸外国からの関税引き下げの要求は百数十品目、非常に多数に上りましたけれども、私ども、そのような国内農業を守るという見地から、しぼりにしぼって御審議をお願いしているわけでございます。  それから第二点として、ただいま戸田委員お話がありましたように、東京ラウンドから、ただ単に関税にとどまらず非関税措置についても論議の対象になっているわけでございます。これからの貿易交渉において、関税のみならず非関税措置についても、そうした諸外国からの要求がますます強まるであろうというふうに、私どもも覚悟しているわけでございます。  そこで、農林水産省といたしましては、農産物の輸入につきましては、まずもって国内農産物の需給動向を十分踏まえまして、わが国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本であるというふうに考えております。そのような意味で、現在米国などから、牛肉、柑橘の自由化問題について非常に強い要求を受けておりますけれども、私どもは、これに対しましてはわが国の農業の実情を、これまでも繰り返し説明しましたけれども、今後とも十分説明し、またその理解を得ながら、自由化要求には応ずることなく慎重に対処してまいりたい、このように考えております。
  36. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いまの答弁を聞いていますと、私、非常に疑問を持つのですよ。  それは、五十六年の改定でも牛肉の枠の一定の拡大をやったのですね、定率を下げて。今回も成育牛については一定の定率改定をやって、そういった受け入れ体制をつくっている。それは、やはり東京ラウンドにおける各種協定によってやられていると私は思うのですね。たとえば国際食肉取り決めあるいは国際酪農品取り決め等々が、きょうは時間がありませんから読み上げませんけれども、これを見ますと、やはり無条件で市場開放ということにいきましょうとなっているのです。だから、いま回答されたように、何としてもそういう点の枠はこれ以上ふやさない、応じないということは当たっていないと私は思うのです。この東京ラウンドでちゃんと全部決めてあるんじゃないですか。その辺の見解はどうですか。
  37. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  東京ラウンドの交渉の結果、牛肉につきましてもオレンジにつきましても一定の取り決めができ上がったわけでございます。その最後の枠、特に輸入枠を中心とした取り決めがあるわけでございますが、その輸入枠を漸増させていくという取り決めでございますけれども、その取り決めに従いまして、農林水産省としてはそれを誠実に実行しているというわけでございます。  そこで、その取り決めは来年の三月末で切れるわけでございます。いま米国などから要求を受けております牛肉、オレンジの問題は八四年、来年の四月一日以降完全自由化すべしという要求でございます。枠の拡大ではなくて、自由化をやってもらいたい。そこで私どもとしては、それに対して、自由化には応じないということで現在交渉を継続中、こういう状況でございます。
  38. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がありませんから、これは要望です。  とにかく肉と称するものはすべて今後アメリカに全面開放してしまう、こういうことになりますよ、これでいきますと。そういうことになれば、日本の酪農家なんというものは全く崩壊じゃないでしょうか。それはもうEC体制でもあるいはアメリカでも、自国保有の問題については徹底した保護政策をとっているじゃないですか。やはり少しこの辺については再検討を願いたい、私はこういうように考えます。  それで、時間がありませんから、三点ほど一応質問を並べまして回答をいただきたいと思います。  その第一点は、中間留分を多く含む原油を調達するような努力を会社がやるように通産省は指導すべきだと思いますが、この点についてどう考えるか。というのは、一応、今回の還付制度創設について、該当会社をちょっと資料としていただきました。これを見ますと二十三社、大部分の会社は資本が、アジア石油七十六億、アジア共石は九十六億、出光興産は十億、沖縄石油が十八億、鹿島二百億、九州石油六十三億等々の相当大きな会社ですね。  こういうものに対して、片方廃止をして、そうして新増設をやって、これに対して総額五十億とにかく還付をしていく、こういうことですね。いまのオイル状況は、ことに軽油その他あるいは灯油、こういったものの需給状況を見ますと、六十一年度までいって枯渇状態になる。だから、そういうものを確保する上において、まあコストダウンといいますか、そういうものを長期需給調整を図るためにやられているということでありますが、それにしても私は、この会社なら自活方式があるのじゃないかという気がしますが、その辺どう考えておるか、これが一点です。  それからもう一つは、今回のこの関税引き下げ品目、いろいろと見てみますと、政務次官、アメリカと対二国間対策のように考えられますね、この答申その他を見ましても。改定案を見ましても。だから、少なくとも東京ラウンド、開発途上国を含めて、特恵関税等を含めて全面的に検討しようじゃないかということを言っているわけですから、いま全国際的な、ことにこの開発途上国は百二十有余国あるわけですが、単にサミットに出席をする先進資本主義国の八カ国くらいでやっているものは、開発途上国から見れば金持ちクラブだ、こう言っているわけですよ。だから、そういうものの対象だけでは、今後日本が貿易立国として生き抜いていくためには全く不足なんではないだろうか。東京ラウンドでそういう総体的な確認をやっているのですから、そういう面に焦点を当てて今回の改定をやるべきではなかったのか、こういう気がいたしますが、中身を見ると全く対米対策に終始しているのが今回の状況じゃないか。それは、いろいろ経済摩擦その他のことでわかりますけれども、改定のチャンスの時期ですから、そういう点も全面的に視野を広げて踏み込んでいくべきではないだろうかと考えますが、その辺に対する見解をひとつお伺いしたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  39. 田中久泰

    ○田中説明員 先生指摘のとおり、ただいま御審議をお願いしております中間留分の生産のための関税還付制度の対象となります企業、石油会社は、いずれも相当な資本金を持つところの大企業でございます。  しかしながら、わが国石油会社は、全体的に共通している点でございますけれども、いずれもきわめて脆弱な経営基盤の上に立っております。なるほど資本金の額は巨額でございますし、特に売上金額に至っては日本の製造業の中でもトップクラスを占めております。しかしながら、自己資本比率というような経営指標で見ますと、三%程度というぐあいにきわめて脆弱な資本体質、さらに加えて、ここ数年の石油需要の急激な減退あるいは原油の値上がり、こういったいろいろな面から巨額の赤字を抱えておりまして、昭和五十六年度で言いますと、石油産業全体で三千五百億程度の赤字、企業の中には、現在すでに債務超過に陥っている会社も何社かございます。  そういった中で、産業用あるいは国民生活に必要な石油製品の安定供給を確保していくという使命を一面では持っているわけでございますが、その石油製品の需要構造が最近急激に変わってきておりまして、従来、日本石油需要は主として重油を中心とした構成であったのが、重油が他の燃料に転換されていきました結果、急激にその需要が落ち込んでおります。一方、中間留分民生用石油製品が主となりますが、中間留分が増加してくる。  そういった中で、それでは原油で対応できないだろうかという御指摘、まことにごもっともな点だと思います。しかし、世界的に見ますと、中間留分のたくさんとれます軽質原油は埋蔵量が限られておりまして、最近発見されますのはどうしても重質原油が多くなってまいります。それに加えまして、産油国は自国でも精製業に進出しょうというふうにいま進めておりまして、その結果、輸出にできるだけ重質原油を回そうという傾向がございます。日本石油会社は、必死になって軽質原油を確保しょうと努力しておるのでございますが、そういった中でも、日本に輸入されます原油が年々重質化されてきておるわけでございます。そこで、もうやむを得ず設備的な対応をせざるを得ない。設備的な対応をいたしますと、さらにまたコストを押し上げる要因になりますので、関税還付という形でそのコスト増の一部を政策的にこの推進のために使わしていただきたい、このような趣旨でごございます。
  40. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 ただいまの開発途上国に関する御質問でございますけれども、自由貿易体制の維持強化が開発途上国につきましても大変必要であるということで、今回のわが国関税引き下げ措置はこの目的に資するためにとられたわけでございますが、細かくは関税局長の方から御答弁いたします。
  41. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 グローバルに物を考えなければならないという先生の御指摘、まことにそのとおりだと思うのでございます。自由貿易体制を維持強化するということは、日本にとりましてもまた発展途上国にとっても大事なことであるわけでございます。  したがいまして、今回の改正をごらんいただきまして、なるほど個々をとりますとアメリカの関心品目が多く入っておることは事実でございますが、こうした関税引き下げ措置というものが自由貿易体制の維持強化につながる。また、物によりましては発展途上国関係のある物もございますし、全体として自由貿易体制の維持強化に資するという意味では発展途上国にもプラスになるのではなかろうか。  なお、付言させていただきますと、今回の措置に先立ちまして、五十六年度改正におきまして特恵関税制度の十年延長というような特恵の改善措置を御承認をいただきまして、すでに実施をしているわけでございます。現実問題といたしまして、発展途上国の関心品目というのは、農産品であるとか軽工業品であるとか、わが国の農林水産業あるいは中小企業に非常に影響の大きいものもいろいろございますので、そうした点について慎重に配意をしながら、今後とも特恵関税制度の改善を中心に考えていきたいと考えております。
  42. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がありませんから、最後に二点だけお伺いをして終わりたいと思います。  農水省が近く月内に畜産価格を確定すると思うのです。いま、いろいろと農村の皆さんから要求がある、たとえば原料乳保証価格の算定値はどのようになっていくのか、あるいは豚肉、牛肉、各畜産価格が一斉に決定されていくわけですが、こういう問題はどうお考えになっているか、ちょっとお伺いしたい。  それと、関税業務がいま非常に膨大にふえているのだろうと思うのです。ところが今年度の要員査定を見ますと、昨年度と比較しまして五十八年一月で四十八名減員ですね。これで果たして完全な業務遂行ができるのかどうか、関税局長なり政務次官の方からお伺いしたい。  それで終わります。
  43. 海野研一

    ○海野説明員 お答え申し上げます。  畜産物の価格につきましては、本月の二十八日、二十九日と畜産振興審議会の食肉部会、酪農部会を開くことになっておりまして、現在鋭意いろいろな数字を取り集め中でございます。それまでに政府として数字を全部集めまして試算をいたしまして、畜産振興審議会の意見を十分に伺いまして、その上で月末までに決定いたしたいと考えております。そういう意味で、まだ現在数字を収集中でございます。
  44. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 御指摘のとおり、私ども税関職員の増員を各方面にお願いをいたしましたが、大変残念ながら、五十八年度は四十八名の純減ということになったわけでございまして、この限られた人員でいかに税関行政を効率的に行うかという点につきましてはいろいろな工夫をしていきたい、そういう中で、職員の労働過重にならないように配意をしていきたいと思っておりますが、今後関係方面の御理解を得まして、できるだけ税関職員の増員をお認めいただきたいというのが私どもの率直な願いでございます。
  45. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ありがとうございました。
  46. 森美秀

  47. 武田一夫

    武田委員 私は、まず最初に農林水産省にお尋ねいたします。  中曽根総理が訪米して以来、農産物の自由化あるいは輸入の枠拡大という話がしばらく小康状態というか、余り騒がしくなくなって静かでございます。これはどういう事情によるのかわかりませんが、今後どういう動きが予想されるものか、四月以降のスケジュール等々で特に御存じのところがございましたら、ひとつお知らせいただいて、状況などを聞かしてほしいと思うのですが、どうですか。
  48. 塚田実

    塚田説明員 お答え申します。  日米間で懸案となっております牛肉、柑橘の問題につきましては、さきの一月の総理訪米に伴います日米首脳会談におきまして、日本側から牛肉、柑橘の自由化が困難であるという事情を説明するとともに、この問題は双方が冷静になって専門家同士の話し合いにゆだねた方がよいという発言をしたと私ども農林水産省としては理解しております。  そこで、その際、米側から特段のコメントがなかったというふうにも聞いておりますが、その後二月に訪日いたしました米国のブロック通商代表は、日米のこの農産物の交渉開始についてはなるべく早くやった方がいいのではないかというような感想を漏らしたということも聞いております。  そこで、米側の要求は、振り返りますと、去年の秋ごろまでは、来年の四月以降の即時完全自由化ということでございまして、その後、十二月に開かれました貿易小委員会ではややニュアンスが変わって、自由化時期の明示を少なくともしてもらいたいというような感じになってきております。しかしながら、農林水産省としては、即時完全自由化はもとより、自由化時期の明示も困難であるということで対処してきているわけでございます。  そのような米側の動きの中で、今後どうするかという御質問でございますが、私どもは、いずれ専門家レベルの協議を行うということになろうかと思いますけれども、米側の状況も見守りながら、また双方非常にむずかしい事情に御案内のようにございますので、そういうような事情も十分踏まえながら、協議の具体的段取りについて、今後外交ルートを通じて調整していく考えでございます。
  49. 武田一夫

    武田委員 政務次官にお尋ねします。  大蔵省としまして、関税率の引き下げということになると、正直言って入るべき収入が入ってこないということでございまして、非常に財政難の折にいろいろと御苦労はあると思うのですが、国際的な協調と経済摩擦を解消するといういろんな努力の一つの結果として、こういう一つの対応をされておるわけですが、今後、いま塚田部長から話がありましたような市場開放とかあるいは農産物の自由化というものの問題というのは、どのように展開していくというふうにお考えでありますか。そしてまた、今回のような一連の関税率の引き下げが果たして貿易摩擦の解消等にどのような効果をもたらすものかというような点についての御所見を、ひとつお聞かせ願いたい、こういうふうに思うのです。
  50. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 日本は、いまいろいろな面で大変に貿易が強い国になりまして、そのことによって、非常に何かにつけて外交交渉がしにくい状況になっております。そういう中におきまして、日本国内は財政再建をしなければいけない、何とか収入源を探さなければいけないというようなときに、先生のただいま御指摘のような状況があるわけでございます。  ただ、これは国際的な視野に立ちましたときには、私ども、世界の中の日本ということでございますから、でき得る限り世界のすべての国がそのことによって御納得いただけるような措置をとるとともに、国内産業というものにはでき得る限りというか、ほとんど影響を及ぼさないような形のものをこれからも考えていかなければいけないというふうに理解をいたしております。  細かな見通し等につきましては、関税局長の方から御答弁をさせていただきたいと思います。
  51. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 今後大蔵省として対外問題をどのように見ておるかというお尋ねでございますが、一月十三日に当面の対外経済対策という包括的な対策を決定をいたしまして、御案内のとおり、中曽根総理大臣がこれをもとに米国へ行かれ、レーガン大統領を初め日本のこうした努力に非常に高い評価を受けたところでございます。  先生の御発言にもございましたように、さしあたりは、一ころに比べますと鎮静化しておるということが言えるのではなかろうかとも存じておりますが、最近におきまして内外から注目を集めておりますのは、関税面の措置は一段落をいたしまして、非関税措置についての改善、特にいろいろな基準、認証制度というものにつきまして、これの改善を現在内閣官房を中心に各省が一体となって検討を進めておるところでございまして、諸外国もこの行方に非常な関心を持っておるというのが現状ではなかろうかと存じております。
  52. 武田一夫

    武田委員 次に、関税引き下げの影響ですね。特に農林水産業あるいはまた中小企業等々の影響もございますが、どういうふうにその影響を見ているか。それから、日本関税率というのは、国際的に見ましてどういう水準にあるのか、高いものか、低いものか、妥当なものか、そういう点についての御見解をひとつ聞かしていただきたい、こういうふうに思います。
  53. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 関税引き下げと申しますか、関税率を決定するときの考え方というものは、関税の本来の機能というものは、いわゆる国内産業保護でございますから、国内産業の保護に足りるだけの関税率を張るというのが一つの基本であろうかと思うのでございますが、今日の関税政策はそれにとどまらず、国民経済全般の視野あるいは国際社会における日本の地位というものを勘案いたしまして、一方におきましては消費者の利益ということも考えなければならないかと存じますし、非常に広範な視野から関税というものが決められておるというふうに理解をいたしております。  そういう中で、農産品であるとか中小企業に関連をする物品というものは、やはり国内的な影響というものに十分配慮しながら、その引き下げ幅というものを決めていく。その過程におきまして、私ども関係各省、特にその物資を所管しておられます省庁を中心に御検討願っておるわけでございます。したがいまして、今回の引き下げによって国内の農林水産業とか中小企業に直ちに深刻な影響が出るというようなことはないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  次に、日本関税水準が国際的に見てどうかということでございますが、関税水準の国際比較というのはなかなか技術的にむずかしい問題でございますが、東京ラウンドの過程におきまして、各国の関税水準の比較というもの、これはガットの事務局におきまして非常に膨大な作業で検討したわけでございます。そのときの検討の数字、これは一九七六年の数字がベースになっておるかなり古いものでございますが、東京ラウンドの最終、つまり一九八七年に東京ラウンドの状況を各国がそれぞれ完全にやった後の関税水準がどうなるかという作業がございまして、その結果によりますと、これは農産品、鉱工業品全部を含めまして、日本が三・四%、アメリカが三%、ECが四・八%、こういった水準であるという作業結果が一つあるわけでございますが、もう少し単純に、最近の水準ということでよく使われますのが関税負担率という考え方でございます。  これは、輸入総額を分母にして関税収入額を分子にした数字でございますが、一九八〇年の水準で申し上げますと、日本が二・五%、アメリカが三・一、ECが二・八ということで、それほど大きな違いはございませんが、わが国関税水準は、やはり先進諸国に比べて遜色ないというか最も低いということが言えるのではないかと思っております。
  54. 武田一夫

    武田委員 この関税率の引き下げによる影響は余りない、こう関税局長は話されています。  農林水産省にちょっとお尋ねしますが、そういう発言があったとしても、今後、今回対象にならなかった農産物に対して、諸外国からのいろいろな圧力等に屈した形で、あるいはまた話し合い等いろいろあるでしょうけれども、じわじわと同じような引き下げというような、あるいはまた今回やるような前倒しというような、そういう形で枠拡大、そしてこれが自由化へというふうな、なし崩しにいつの間にか外堀を埋められまして本陣を攻められるのではないかという心配をしている人が多いわけですね。  ある方々は、いまは静かだけれども時の問題だ、自由化あるいは市場開放というのはいずれ必ずされるのだ、そういうことをはっきり言う人も出ているわけでありますが、これは非常に問題なことだと思うのですが、そういう懸念というものはないものか、そして、もしたとえば制度的に外国産品が多くなってしまった場合、どういうふうにして国内産業特に農林水産業を保護するという立場で日本の国益を守る、そういう対応をしていくのかという問題があるのですが、この点についてはどういうふうに対応していくつもりですか。
  55. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  今回、関税率の引き下げを検討するに当たりまして、農林水産省としての一つの基本方針は、輸入制限物資、先生御案内のとおり二十二品目ございますが、それに関連する関税は引き下げないということ。それから差額関税のあるもの、これは御案内のように豚肉がそうでございますけれども、そういうものも引き下げない。それから、東京ラウンドの交渉においてそれなりにそれ相当にすでに譲歩をしたもの、これも引き下げない。その他、国内産業、農林水産業への悪影響があるおそれのあるものも取りやめる。そういうことで、そうしたものを除いたものを引き下げの対象にしたつもりでございます。  したがいまして、そうした今回下げなかったもの、対象とならなかった品目について今後のスケジュールはどうかという御質問でございますが、私ども、そのような角度で検討いたしましたので、引き下げのスケジュールは持っておりません。しかし、このような関税引き下げ問題というのは、今後ともいろいろ御説のように出てくると思いますけれども、私どもは、国内農林水産業に不測な悪影響を及ぼさないようという従来の方針を堅持してまいりたいというふうに考えております。  そこで、なし崩しになるのではないかというおそれがある、私もそういう声をずいぶん聞きますけれども、農林水産省として見ますと、農産物に対する関税、非関税上の保護というのは、いずれの先進国もそれなりに相当程度とっているわけでございまして、わが国のみが突出しているわけでもございません。御案内のように、米国といえども、農業の面では最大の輸出国でございますが、その米国といえども輸入制限物資、ガット上ウエーバーをとって自由化義務免除を得ているとはいうものの、十三品目についてやっておりますし、それからその他三品目、合計十六品目の農産物について輸入制限をやっている状況でございます。それからECは、御案内のように高率の課徴金をかけて農業を保護しているということでございまして、私どもは、そうしたわが国のとっております農業保護が、国際的に見てもわが国だけが非難されるというようなものでもないと確信しておりますので、今後ともなし崩しというようなことがないように、それはもう当然のことでございますけれども、国内農林水産業に不測の悪影響を及ぼさないというような角度で、外圧の問題に対しては対処してまいりたい、このように考えております。
  56. 武田一夫

    武田委員 日本以外の国で関税率の引き下げ、いわゆる前倒しなどというのは行われているものでしょうかね。どうでしょうか。
  57. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 そのような事実は承知いたしておりません。
  58. 武田一夫

    武田委員 とすれば、やはり日本としてはかなり前向きな姿勢で対応しているということで、これは市場開放に非常に積極的に取り組んでいるのだということを高く評価されてもいいはずであって、それをまたいろいろと無理難題を言ってくるということは、そういうものに対してやはり断固として対応していく姿勢というのは、各省庁特に農林水産省は持っていかなくてはいかぬ、こういうふうに思うわけです。  ところで、ブドウとかクルミあるいは桃、ナシ、それから混合野菜ジュースですか、いま言った産品、これはどうですか、余り影響ありませんか。国内市場におけるあるいは生産農家に対する影響というのはどうでしょうか。
  59. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  今回、関税引き下げについて検討の対象とし、ただいま御審議願っております品目につきましては、先ほど申しましたような角度を踏まえて、生産原局の意見を十分聞いて対処したつもりでございます。御指摘品目につきましても、引き下げ幅が非常に小さいというようなことから、私ども、当面悪影響はないものというふうに考えております。
  60. 武田一夫

    武田委員 桃とかナシとかというのはどこでもつくっているというわけではないのですね。大体指定された地域があるわけですから、そういう地域というのはドル箱的な、大変地域農業の支えになっているところが多いようですから、そういう影響があるというようなことがあれば大変だということでお尋ねしたわけであります。ないということであれば安心しておりますが、重々、地域等のそういう状況は丹念に事情を調べながら、今後の対応は十分な御配慮をいただきたいというふうに思います。  それから、先ほども話に出た紙巻きたばこの問題とビスケット、チョコレート、特にこれは引き下げ率が大きいわけです。そこで、たばこの場合は、その結果耕作者いわゆる生産農家への影響がないものかという心配を私は非常にしているのです。というのは、農家はいま生産調整をしながら、非常に苦労しながら生産しているわけでありまして、これは、外国のたばこがどんどん入ってくるとなると、いまの嗜好としましては、私は、私の経験というか見た範囲で申し上げるのですから妥当かどうかわかりませんが、どうもやはり外国製のたばこを吸う方はふえています。間違いなくふえている。われわれの周りを見ましても、ちょっと値段が高くても、あのスマートな長いたばこをくゆらしている方が多く見えております。この調子でいくと、何かたばこというのは、初めて一つのたばこを吸ったときはいろいろなたばこを吸っても、最初の原点に戻って、最初吸ったたばこを吸うんだそうです、聞くところによりますと。ですから、たばこを吸わなかった方が、たまたまそういう方が吸い始めていろいろやってみても、最後は、外国たばこがよかったとなると、その嗜好が一定してくるということも聞いていますし、そういうことになったときに国内のたばこ耕作者への影響というものはないかという点、その点の心配を私しているのですが、そういう心配はございませんでしょうか。
  61. 吉田茂政

    吉田説明員 ただいま御質問の、たばこの関税率の引き下げが生産農家にどのような影響を及ぼすかという御質問でございますが、先ほども専売公社の総裁がお答えになっておりましたけれども、現時点でどの程度の影響が具体的にあらわれるかということについては、なかなか予測が困難だということでございますけれども、私ども農業者の立場から考えますと、葉たばこは地域特産農作物として、また農家の経営にとりましてきわめて重要な作物でございますので、生産農家への影響はきわめて最小限にとどめるように配慮する必要があるというふうに考えております。  そのためには、生産の合理化、近代化ということが非常に大切でございますので、これからもいろいろな生産奨励対策を講じてまいりたいと考えておりますが、具体的には、新地域農業生産総合対策事業あるいは新農業構造改善事業等のいわゆる補助事業、それから農業近代化資金ですとか農業改良資金といった制度融資を十分活用いたしまして、葉たばこの品質の向上と生産コストの低減に努めまして、そういった生産農家への影響を最小限に食いとめるというふうに努力してまいりたいと考えております。
  62. 武田一夫

    武田委員 いまも課長が言われた近代化あるいは合理化、とれは当然推進しなければならない。安いコスト、質のいい品物、これは当然のことだと思います。それに対していろいろ対応していると思うのですが、その効果というのは、いま少しでもあるいはかなり出ていますか、どうでしょうか。
  63. 吉田茂政

    吉田説明員 葉たばこは非常に労働集約的な作物でございまして、現在十アール当たりの労働時間が三百七十時間程度になっております。これは、ほかの作物と比べますと非常に労働時間がかかっておりますが、その反面、粗収益なりあるいは反当たりの所得が非常に高い作物でございます。私どものこれからの生産性の向上の一つの目標といたしましては、この労働時間を現在の三分の一程度を節約するといいますか、三分の一程度引き下げる方向で、育苗施設から乾燥調製に至りますまでのいろいろな一貫的な作業体系の充実を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  64. 武田一夫

    武田委員 ひとつ耕作者の心配を取り除いてやるような努力も、総合的な対応を十分やっていただきたいとお願い申し上げます。  最後に、時間が来ましたので、ビスケット、チョコレート、これの問題で業界もかなり苦しいようです。いろいろ対応しているようです、消費者にとっては非常にいいことですが。これがもう一つ心配なのは、その下の段階のキャンディーですね。キャンディー、こういうところまでいきますと、この業界というのは中小、わりと小さな規模の方が多いのですね。そちらの方まで及ぶのではないかという心配がある。ですから、こういうものにかなりの思い切った引き下げというものはいかがなものかという私の懸念があるのですが、これを導火線にしてキャンディーあたりに食い込まれたら、えらく業界としても苦労すると思うのですが、この点は大丈夫でしょうかね。
  65. 慶田拓二

    ○慶田説明員 お答えいたします。  ビスケット、チョコレートにつきましては、先生おっしゃいましたように、砂糖消費税の引き下げという措置を講ずることにいたしまして、いま国会で御審議いただいているわけでございますが、キャンディーにつきましては、東京ラウンドの際も譲許をいたしませんでした。これはどういうことかと言いますと、御指摘のように非常に中小零細企業が多いということがございまして、東京ラウンドの際も譲許をいたしませんでした。現在でも、いろいろECその他からビスケット、チョコレートに含めましてキャンディーも関税を引き下げようという要請がございますが、いまのところ、これを私どもとしては引き下げるスケジュールはないと申し上げておきたいと思います。
  66. 武田一夫

    武田委員 時間でございますので、今後、この関税率の引き下げに当たりましては、国内産業特に農林水産というのは一番の風当たりが強いところでございますから、そういう産業への影響というものを十分に留意した対応をしなければならぬ、こういうことで国が総力を挙げてこの問題に取り組んでいかなければならない、このことを各省庁、各担当者は心に銘じてひとつ今後の対応に当たってほしいということを申し上げまして、私の質問の時間が来ましたので終わります。
  67. 森美秀

  68. 米沢隆

    米沢委員 私は、本法案に関連いたしまして、特に日米間の貿易通商をめぐる問題につき、政府見解をただしたいと思います。  まず初めに、一般的な問題でありますが、御案内のとおり、欧米を初めとする諸外国の日本に対する市場開放の各般の要請に対しまして、政府は、五十六年以降さまざまな市場開放の諸施策を決定し、今回も本法案によりましてわが国の自主的措置として合計三百二十三品目にわたる関税の撤廃または引き下げを行うことになっているわけでありますが、東京ラウンドの後、わが国の市場開放度はかなり前進したと記憶いたしておりますが、先ほどの答弁にもありましたように、先進国に比べましてかなりの水準になったと理解していいと思うのです。  ところで、その非関税障壁みたいなもので国際比較ができるかどうか、その点を一点お伺いしたいし、同時にまた、今回のこの措置によりまして、政府は欧米諸国からの対日批判がどれくらいグレードダウンすると思っておられるのか、概括的な御答弁をいただきたい。
  69. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  まず最初に御質問のございました非関税障壁の国際比較ということでございますが、結論としては、非常にはっきりとした数字であらわすということのむずかしい作業だろうと思います。関税の場合ですと数字で比較することができますが、若干そういうことになじむものがあるとすれば、数量輸入制限の品目数を比べるとかということでございますが、これも、その実態はいろいろございますので、品目だけを比べても完全な比較にはならないと思います。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 それ以外のいわゆる非関税障壁というものになりますと、各国の習慣とかあるいは国柄といったことにまで関連してき得るわけでございますので、非常に比較しにくいと思います。ただ、たとえば現在精力的に審議が進められております基準、認証制度といったものは、少なくとも部分的には相当程度まで比較可能な分野かと存じます。  その次に御質問ございました、主たる御指摘の点だと思いますが、政府のとってきている措置が諸外国によってどう評価されているかという点についてでございます。私どもといたしましては、これまで政府がとってきた施策は、日本としてずいぶん努力を積み重ねてきた結果であり、かつ、相当程度主要関係国によって評価されていると言って差し支えないと存じます。また、これらの施策は、その都度施策の内容、趣旨、意義等につきまして、先方の政府関係者は言うまでもなく、主要な議会関係者あるいはマスコミ関係者、有識者等にいろいろな形で説明もしてきておりますので、そういうところの反応を見るわけでございます。あるいは、もっと公式なかっこうで出てくる声明なども見るわけでございますが、そういうものを通しまして、たとえばアメリカの場合ですと、大統領みずから評価しあるいは通商関係の閣僚が評価する声明を出すというようなことを行っておりますし、全般に評価されていると言って差し支えないと思います。その点は、言い方は違いますが、ヨーロッパについてもそういうことが言えると思います。  ただ、問題があるとすれば、これまでの施策はそれなりに政治的な努力の結果であるというものとして評価しつつも、日米にせよ日欧にせよ、貿易上の問題と先方が考える問題すべてが早急に解決するわけではないというところから、いろいろな議論が依然として残る、あるいはまた新しい議論が出てくるという事実がございますので、その点についてあわせて考えていく必要があると考えております。
  70. 米沢隆

    米沢委員 日米間の問題の第一点ですが、わが国のいまおっしゃったような市場開放努力にもかかわりませず、アメリカにおける保護主義ムードは高まる一方であるという事態をどう見るかという問題であります。  新聞報道等によりますと、ことし一月からスタートを切ったアメリカの新議会は、保護貿易主義への傾斜を昨年以上に強めている、こう言われておりまして、昨年廃案となりました御案内の自動車部品国内調達法案、いわゆるローカルコンテント法案が再提出され、ことしは上院にも同趣旨の法案が提出されておるということを初めとして、ダンフォース法案と言われる相互貿易投資法案も再び提出されているのは御案内のとおりであります。このほか、日本、ECの米国農産物輸入規制に対抗するための農産物貿易相互主義法案、農産物市場拡大法案、農業輸出拡大法案等々、あるいはまたアメリカの高度技術製品に対して市場開放するよう各国に働きかけるための交渉権限を大統領に与えるという高度技術貿易法案も提出済みであります。これは日本を名指しはしていないものの、高度技術分野で対外貿易障壁を設けている国として日本を意識しているのは明らかだ、こう言われております。このほか、日本市場の開放あるいは日本製品のアメリカ市場からの締め出しをねらった法案が、今後相次いで年内百件以上にも上るだろう、こう予測されておる、こういうような報道がございます。  議会に提出される一連の対日法案がどれもこれも成立するとは言いがたいわけでありますが、注目すべきことは、新しい議会にはこれまで以上に対日法案が提出され、これがレーガン政権の対日策に大きな影響を与えるのではないか、こういう懸念でございます。現に、各地の相互主義法案なるものには、例のブロック米通商代表等も、相互主義は、注意深く読めば保護主義ではなく、貿易を両側通行にしようとする試みであり、われわれは反対ではない。相手国の市場開放を進めるてこだと高く評価して、相互主義に行政の方も同調するような姿勢をとっている、こういうふうに伝えられております。  そこで、政府は、このようなアメリカ議会の保護主義傾斜への動きをどのように把握されておるのか、また、今後どのような対応をされていこうとするのか、これが一点。  第二点は、さまざまな相互主義法案、いろいろな名前で出てきておりますから訳し方によっては同じ法律があるかもしれませんが、かなりの相互主義法案が出されておることは事実でありまして、こういう各種の対日法案が成立する可能性について、どういうふうに読んでおられるのか、この二点だけお聞かせいただきたい。
  71. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答えいたします。  これらの法案についての評価と対応、それから見通しということでございますが、私どもといたしましても、米沢先生指摘のような懸念はずっと抱いているわけでございまして、米国議会それから政府が、適切な対応をしてくれることを期待しているということが実情についての評価に尽きると思います。  法案は、いろいろ御指摘ございましたが、法案によって内容あるいは評価も変わってき得ると思うわけでございますが、たとえば相互主義法案は新九十八議会にダンフォース議員が改めて提出したわけでございますが、この法案とたとえばローカルコンテスト法案を比較いたしますと、対外的影響あるいは日本における影響というものはずいぶん違うのではないかというふうに考えるわけでございます。どう評価するかというのは、そういうことで法案にもよるわけでございますが、保護主義的色彩の強い法案がアメリカで成立するということは、私どもとしても、そういうことがないことを期待しているわけでございますが、その辺のところは今後の米議会における審議状況を見ていくしかないと思います。  この背景には、第一に、アメリカの最近の景気といいますか経済状況が悪くて失業率が非常に高い。最近、次第に改善の方向に向かっていると言われており、私どもも恐らくそうであろうと考え、そう希望しているものでございますが、そういうアメリカの経済情勢、それから日米貿易の状況に対する米側の受けとめ方といったものがその背景にございますので、対応ぶりといたしましては、やはりわが国として決めた市場開放策を初めとする、これは貿易に限らず広く日米経済関係を改善する施策を進めていく、この中には投資というような問題もあると思いますし、それ以外の分野における努力ということもあると考えますが、そういうことを一つ一つ積み上げていく、そして問題が起これば静かに話し合ってきちっと解決していくように努力する、これを基本としまして日米関係の一般的な雰囲気の改善に努めるということがございます。それから、米側でいろいろと誤解があることにつきましては、いろいろな機会をとらえて誤解を解くように努力するということもございます。  それから、その法案の議会における審議の進みぐあいにつきましては、いまのところ、これらの法案はいずれもまだ本格的な審議に入っておりませんので、今後の米国議会での取り上げ方を見ながら、必要であれば政府として申し入れるべき点は申し入れるということで、できる限り遺漏なく対処したいと考えているわけでございます。
  72. 米沢隆

    米沢委員 このローカルコンテスト法案は、御案内のとおり、昨年は審議未了で廃案になりました。今度また再提案されて、レーガン大統領の方は反対を表明されておる、こう聞いておりますけれども、問題は民主党の方ですね。モンデール前副大統領、グレン、クランストン両上院議員等は積極的にこれを支持するという立場で、八四年の選挙に向けてかなり活発に動いておられる。  こういう背景を見ておりますと、いまおっしゃったような対応だけで本当にいいものだろうかという気がするのですね。もし八四年の選挙で民主党あたりが通った場合には、選挙公約ですから、ローカルコンテント法案的な姿勢をかなり強く打ち出す、そのときになってあわててもしようがないのでございまして、政治的に外交的にもっと大きな動きをしてもらわないと、大変なことになるのじゃないかという危惧があるのですが、いかがですか。
  73. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 御指摘の点でございますが、モンデール候補については確かにそういう姿勢であると私ども考えております。ほかの候補者については必ずしもそう言い切れるか、あるいはそうでないのではないかというような情報もございます。いずれにいたしましても、大統領選挙絡みの問題ということで、私どもも非常に大きな問題であると考えております。  ローカルコンテント法案の先行きでございますが、背景にアメリカの不況、特にその中における自動車産業の不況、高失業率ということがあるわけでございまして、一般的にアメリカの景気がこれから回復に向かうとすれば、それが好影響を与えないか。それから、自動車の売れ行きが御承知のとおり改善しているわけでございまして、住宅と並んで現在のアメリカの景気回復の牽引車のようなかっこうになっております。自動車の市況がこれからどんどん改善していくかどうか、こういったことによっても、ローカルコンテント法案の先行きというものはいろいろ変わり得ると考えます。  それから、先般通産大臣が発表されました対米自動車の輸出規制についての日本政府の態度の表明、それから自動車業界における日米提携の動き、こういうものも当然ローカルコンテント法案の審議影響、それもいい影響を及ぼすと私どもは考えているわけでございます。従来、これが去年アメリカの下院で問題になったときは、いろいろな機会をとらえまして、かつ非常にハイレベルを含めて政府及び関係者に対して日本側の懸念は表明してきております。今度の議会でこれから同じような問題が起こってくれば当然適切な手を打っていかなければならないと考えていることは、先生指摘のとおりでございます。
  74. 米沢隆

    米沢委員 さて、そこで、一連の日本あるいはECをねらった農業産品に関する相互主義法案の行方を聞きたいのでございますが、新聞報道等によりますと、たとえばECが農産物輸出に補助金を出し安値輸出をしているため、アメリカは第三国市場で打撃を受けているとECを非難してきたアメリカが、ついにエジプト向け小麦粉輸出に政府補助を与えて、ECの得意先に突撃した。これに怒ったECは、今月初めのアメリカ・EC間での関税貿易一般協定非公式協議で、エジプトでの損失分三千万ドルを支払えとアメリカ側に要求した。  こういう動きを見ておりますと、他人ごとではないという感じがするわけでございます。特に、最近のブロック農務長官あたりの、日本の農産物残存輸入制限を撤廃させるため、可能な限りの最も強力な姿勢で引き続き日本との交渉に当たっていく、日本がこの問題で何か措置をとろうと努めている若干の徴候が見られ、どれだけの措置がとれるか注視しているという発言にも見られますように、農産物の自由化あるいは粋拡大等については相当な気合いで日本にかかろうとしておる、こういうふうに見てとらねばならないと思うのですね。  そういう意味で、一つは、農業に関する相互主義法案等の成立の可能性、そのあたりを外務省はどう見ておるのか。  それから、農水省に聞きたいのでありますが、日本がこの問題で何か措置をとろうと努めている若干の徴候が見られるというのは、どうも枠拡大で妥結をしようという動きじゃないかと思うのですが、予算委員会等での農林大臣等の御答弁は自由化の枠拡大もだめだ、こういう姿勢に聞いているのでありますが、一方では、枠拡大で妥協しようという動きが実際はあるのじゃありませんか。その点を農水省に聞きたい。
  75. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 第一点についてお答え申し上げますが、この法案につきましては、いまのところ具体的な動きが全然ございませんで、私どもとしても、もっと情報を集める必要があると考えておりますが、法案の趣旨からしますと、日本も念頭に置かれていると思いますが、むしろECとの間の問題が非常に大きな問題として提案者の御提案の背景にあるのではないかと考えられるわけでございます。  そういう意味では、これはアメリカとECの間の農業問題が今後どういうふうな展開を見せていくかということとも無関係ではない、そういうことによって左右されるということもあるのではないかと考えられるわけで、今後さらに情報を集めまして適切に評価し、対処していきたいと考えます。
  76. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  この農産物の日米間の問題につきましては、御案内のように、昨年の十月にホノルルにおいて行われました日米協議が決裂したままになって今日に至っております。  そこで、御質問のような、ブロック農務長官が具体的にどのように言ったか私存じませんけれども、日本側の方で若干の徴候が見られるという発言があったというお話でございましたけれども、中断したままでございまして、現在交渉の再開についての具体的なめどは私ども持っておりません。確かに、一月に総理が訪米された際に、この問題については専門家同士で冷静に話し合った方がいいというようなことを日本側から申したと聞いておりますけれども、私どもは、この再開の問題につきましては、今後外交ルートを通じて米側といろいろ調整していきたいと考えております。  そこで、私ども農林水産省といたしましては、衆参両院の農林水産委員会で決議もいただいておりますように、わが国農業に重大な悪影響を及ぼすような自由化なり枠の拡大はできないわけでございますし、また、する気もございません。一方米側は、米国の上院で対日農産物自由化要求決議が去年の九月にございます。このようなことで、農産物問題は政治問題にも発展していると私ども考えておりますけれども、農林水産省として、即時輸入自由化はもとより自由化時期の明示も困難であるというふうに私どもは考えております。  そこで、御指摘の輸入枠の問題でございますけれども、輸入枠は、本来需要と供給との事情を見て必要なものについて輸入枠を設定するというのが基本でございます。したがいまして、そういうような角度から輸入枠については今後とも検討するわけでございますが、厳しい国内事情等いろいろ考えて、私どもは、この問題につきましては慎重に対処していく所存でございます。
  77. 米沢隆

    米沢委員 さて、次は先端技術に関する問題でございます。  自動車に続いて日米貿易摩擦の焦点となったのは、御案内のとおり先端産業、IC半導体でございます。このICの貿易摩擦は、世界市場をアメリカと日本が二分するという立場の中で、先発アメリカに後発日本が追いつき追い越せでかなりの状況にまで来ておる。これが摩擦の発端だと私は思うのです。将来のICに関する開発あるいは市場の争奪戦が大きな焦点であるとするならば、いまのところ、アメリカが比較優位に立っているのがIC産業ですから、日本の追い上げに対してかなり神経をとがらせるのではないかということが懸念されるわけであります。  そういう意味では、今後アメリカと日本のIC半導体等に関する調整等は非常にむずかしい。言葉を変えれば泥沼の状況になるのではないか、こういうことを私自身懸念いたしております。  特に、日本のlC生産の伸びがかなりの急テンポでふえておりまして、この二年間で全世界で五〇・二%も伸びた中で、アメリカは三九・二%伸びておりますが、日本は九五・八%伸びるという驚異的な生産の急上昇を示しておるわけです。そういう意味で、アメリカの比較優位性が侵されつつあるところに例の日立事件等も発生したのではないかということを考えるわけでありまして、いまのところ、アメリカのIC市場における日本ICのシェアはわずか五%だと伝えられておりますが、物によりましては、たとえば十六キロビットラムというものについては、もうすでに四〇%ぐらいのシェアを占めている。今後ICをめぐる日米摩擦みたいなものは相当の勢いで急発展するのではないか、こういう感じがするのでありますが、その点について、通産省はどういうような御見解を持っておられますか。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 堤富男

    ○堤説明員 ハイテク産業をめぐる日米間の問題は、いま先生指摘のとおり、ほかの分野とやや様相を異にした面があると思います。  そのまず第一点は、非常にこの分野は急速な進歩と拡大をしている分野でございまして、製品のライフサイクルをとりましても非常に短いという特異な分野でございますし、一方、拡大しているということはお互いにまだ余地のあるという夢のある分野でもあるわけでございます。さらに、この分野におきましては、ほかの分野と違いまして非常に日米間に相互で投資が進んでおりまして、単純なる輸出、輸入という様相と違っております。日本からもかなりの会社が投資をしておりますし、アメリカからも日本に対してかなりの投資が進んでいる分野でございます。したがいまして、夢のある分野であり、かつ競争の激しい分野ということで、われわれは、この分野に対しての原則といたしましては、競争と協調というのが非常に重要な要素であるというふうに考えております。  この観点に立ちまして、昨年の七月以来日米間で日米ハイテク作業部会というのを開いておりまして、この部会の中で、どういうふうに協調が図れるか、どういうふうに協力ができるかという分野も追求しておりますし、あわせて、それぞれの市場を自由にする、自由な市場を維持するということを一つのねらいとしております。その結果、ことしの二月には日米間で一つの原則についての合意がございまして、この分野の重要性、政府役割りの重要性、それから第三点としましては自由貿易と投資の原則の維持、第四点としましては国際協力の発展という四点が確認されたわけでございまして、今後は、この原則にのっとって日米間で、二大勢力でございますが、協調と競争という観点で発展さしていくべき分野だと考えております。
  79. 米沢隆

    米沢委員 時間もなくなりましたが、最後に、わが国の特定産業の安定化のための諸産業政策、これは純粋に国内政策だと私たちは考えておりますが、にもかかわらず、アメリカの方が、貿易をゆがめる行為だとして是正を迫る方針だ、こういうことが伝えられております。  特に、国際経済担当であるオルマー米商務次官が下院の歳入委員会の貿易小委員会で、補助金つきの不当な安値で輸出する場合に発動する相殺関税制度に触れまして、法律ができた当時は規定されなかった新しくしかも複雑な貿易をゆがめる行為を海外諸国は編み出しておると指摘して、日本の特定産業育成政策を例に挙げた。そして、このような産業政策というものを是正させるんだというような発言をしておるのですね。これは前々から、特に今度提案されております特定不況産業安定臨時措置法、新特安法の立法過程においてくすぶっていた問題だと思っておりますが、私どもは、特安法そのものは完全に市場をオープンにして産業対策をとろうというわけでありますから、全然彼らの言うようなものではないと認識しております。  しかし、アメリカの目から見ますと、このような特定の産業対策というものが貿易をゆがめるものだ、こんな議論に発展して、今後われわれが日本で産業政策等を議論すれば、いつもこんな形でアメリカの連中から横やりが入る。断じてこういう理屈は許してはならないと思うのでありますが、その点について政府はどういうように考えて、また、アメリカのこういう動きに対してどう対応するのかという点について御答弁いただきたい。
  80. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答えいたします。  オルマー商務次官の発言、ただいま御指摘のとおりでございまして、日本を明示的に指摘はしておりませんけれども、一般的な形で産業政策の問題を取り上げた証言を行っているわけでございます。ただいま先生指摘のとおり、私どもといたしましては、日本の産業政策の実態というものについて、アメリカの正しい理解を促して無用の誤解を防ぐということが重要であると考えているわけでございます。この産業政策の問題というのは、一昨年来の日米の貿易摩擦の動きの中で比較的最近出てきた問題でございまして、これは日本側の動きとも関係あるのかもしれませんが、新しい問題と申しますか、それがいろいろなところで米側関係者によって取り上げられるようになってきております。  私どもといたしましても、こういうことでまた日米経済関係が紛糾するというのは大変望ましくないことと考えております。これは先生指摘のとおりでございまして、米側の誤解を正して、正しく理解してもらうように積極的に広報活動を進めていく必要があると考えております。産業政策は、正しくやれば世界経済の再活性化そのものに役立つわけでございます。米側の誤解があれば解いて、やるべきことをやっていくようにしたいと考えております。
  81. 米沢隆

    米沢委員 日本の正当な産業政策まで貿易をゆがめるものだという非難をしながら、一方では、例の日米オートバイ戦争に見られるように、みずからの努力をしなくて衰退した産業を支えるために日本に対して輸出規制を求めるなんという、こんな矛盾した話は私はないと思うのです。今後この種の問題が特に日米問題の間にかなり続発するのじゃないか、こういう危惧の念を持っておりますので、どうか政府も腰を据えてがんばっていただきたい。  以上申し添えまして、質問を終わります。
  82. 森美秀

    森委員長 正森成二君。
  83. 正森成二

    ○正森委員 関税について質問させていただきます。  すでにわが国は、東京ラウンドをめぐって関税の二割カット措置を四十七年にとり、前倒し引き下げ措置を五十三年にとり、早期実施措置、二年前倒し措置を五十七年にとるなど、東京ラウンドの合意を上回る関税引き下げ措置をとってきたことは御承知のとおりであります。今回の改正は、東京ラウンドの最終税率を飛び越えて一気にゼロにする品目がたしか百十品目、ゼロにはならないが東京ラウンド最終税率以下に下げるものが五十五品目、ちょうど東京ラウンド最終税率まで引き下げるもの、四年繰り上げ、これが百十七品目、東京ラウンドで譲許していないものも十八品目含まれており、ほとんどの品目が東京ラウンドの国際的合意を無視して、これを大幅に上回る引き下げになっているはずであります。  このような一方的な引き下げは、多角的な関税引き下げ交渉による自由な国際貿易の発展というガットの理念にすら反するものであります。このような相次ぐ前倒し引き下げの結果、わが国の平均関税の負担率は二・五%となり、アメリカ三・一%、EC二・八%と比較しても最も低くなっており、関税率に関しては先進国の中で最も市場開放度が高い国となっているはずであります。こういうようになぜ譲歩に譲歩を重ねるのか、その理由を伺いたいと思います。
  84. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 わが国が東京ラウンドの合意以上の引き下げを行ってきておることは事実でございます。過去の関税交渉というものは、東京ラウンドまで、バランスをとりながら相互に下げるというルールで行ってきたところでありまして、東京ラウンド妥結以後、わが国だけが独自に引き下げているというのは最近の新しいことであることは御指摘のとおりでございます。  それはなぜかというお尋ねでございますが、関税というものは、各国それぞれの国内産業の事情等によって関税水準は元来必ずしも同一でない。そういう中で、交渉を通じて相互に引き下げという努力が行われてきたところでありますが、関税引き下げの意味するところは、究極のところ、やはり世界貿易というものをできるだけ自由にしてこれを拡大をしようという考えがあるから、そのような関税引き下げを相互に行ってきたということであろうかと思うのであります。  最近の状況を見ますと、御案内のとおり、わが国の貿易の黒字が非常に大きい。他の先進諸国においては、失業問題等が大きな問題になっておる。そういう状況の中で、関税というものは政府の行う措置であるために一つの象徴的な意味も持っておりますし、日本の貿易の黒字が非常に大きくて、他の先進諸国が失業を初めいろいろな経済的な困難に直面しておる。そういう状況の中で、各国から保護主義的な動きが相当強く起きておるわけでございます。第一次大戦後の苦い経験ということもあるわけでございまして、こうした保護主義に歯どめをかけて自由貿易を活性化していくためには、やはり日本が率先してある程度踏み込んで引き下げていくということも必要ではなかろうか、こういう考え方に基づいておるわけでございます。
  85. 正森成二

    ○正森委員 関税局長の言われることもわからないでもありませんが、世界貿易が非常に困難であるとか、アメリカやECとの黒字の関係というのは、それはわが方にも問題があり得るかもしれませんが、先方の努力というのが非常に大きなウエートを占めているので、それであるのに、なぜわが国だけが東京ラウンドをはるかに超えて一方的に関税の引き下げという譲歩に譲歩を重ねなければならぬのかということをお聞きしているわけで、十分には納得できない答弁だと思うのです。  それに加えて、最近の報道を見ますと、これは二月九日の日経ですが、非関税障壁に関係する法律の改正について、アメリカも作業に参加して協力したいということを言うてきたという報道がありますね。これは、よほど注意しないと完全な主権侵害にもなるのですね。そういう点については、日本側は、アメリカがいろいろ関心を持ってきてくれているのは悪いことではないんで、意見を聞くことは聞いてやりたいというようなことを言うて余り問題にしていないようですけれども、アメリカの法律にわが方が参考助言したいとかいって改正作業に加わらせてほしいなんということはめったに言わぬと思うのです。そういう点はどう理解していますか。
  86. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 まず、先ほどの答弁を若干補足させていただきたいと思います。  御指摘のとおり、現在の貿易バランスというものが先方の努力不足によるというところも多々あるわけでございまして、そういう点については、われわれつとに指摘をし、先方の努力は要請しておるわけでございますので、ちょっと補足させていただきます。  それから、非関税障壁の点について現在内閣官房を中心として検討を進めておることは御案内のとおりでございますが、ただいま御引用されました日経新聞の記事、私よく読んでおりませんでしたが、外国がこの作業に加わるということはあり得ないことでございまして、また、現実にそのようなことは全くございません。わが国の諸制度についての改善の希望を外国から聞くということは当然のことであろうかと思いますが、作業はあくまでも日本政府として作業をいたしておるわけでございます。
  87. 正森成二

    ○正森委員 それはそうでありますが、それには、アメリカ側が余り言い過ぎて内政干渉のようにとられたらいかぬので、米側の意見を聞いてもらうという形にしよう、こういうことになったのだということで、初めのそもそもの出どころは、やはり非関税障壁をなくすためには米側も作業に参加したいというのがそもそもの出発点にあった、こういうのですね。  それで、政務次官、おられますから伺いますけれども、同時に私どもがいま非常に心配しておりますのは、牛肉やオレンジにつきまして金子・ブロック会談が流れたというのは御承知のとおりですが、そのときに、どうもいまやっても、向こうは自由化しろと言う、こっちは枠を広げることもなかなかむずかしいと言う、だから、日本というところは農民の票が非常に問題になるので、参議院選挙もしくは同時選挙も言われているいまごろやったのではぐあいが悪いので、六月以降でないと無理であるということで、報道によりますと、首脳会談で中曽根総理が大統領に対して、選挙の後大幅に譲歩するからしばらく待ってほしいというように言ったからこうなったのだというのが、いろいろな新聞に出ているのですね。  総理のことを政務次官にお聞きするのは非常に悪いのですけれども、そういう報道が流れておりますので、しかも、それは非常に確度の高い情報として農水省なんかでは受けとられているということですから、そうだとすると、これはけしからぬことになるというように思うのですが、感想だけでもお伺いしたい。
  88. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 中曽根総理がどのようなことを申したとか、この新聞報道のコピーをいま見ているのでございますけれども、そのような事実について私は全く承知をいたしておりません。  ただ、このような状態というのはあり得ないことであろうとは思いますけれども、私どももやはり農村から票をいただいて出ている議員でございますが、大変に不安感というものが強いのは事実でございます。これは、きょうの関税の御審議等でも、そのような不安はないのだということで一生懸命各省が御答弁しているわけでございますけれども、不安感というのが多分に生産意欲を失うということに、現実にないものにも不安を持ってということもあると思います。そのようなものは払拭するように努力をしてまいりたいと思っております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 そういう努力をぜひしていただいて、いやしくも選挙が済んだら、その後で牛肉、オレンジについては米側に都合のいいように変えるのだというようなことのないように、いずれ選挙が済んだ後の結果を見てみればはっきりするわけですが、希望しておきたいというように思います。  次の質問に移らせていただきます。  それでは、そもそも日本市場はそんなに閉鎖的なのかという点を考えますと、マッキンゼー社報告書といいますか、あるいは私の手元にあるのではTSG、トレード・スタディー・グループから出したというような文章がございますね。一九八三年二月十五日付ですね。マッキンゼー社が一年くらいかかっていろいろ調査した、日本側も協力したようですが、それを拝見しますと、この調査の結論として言えることは、日本は参入が難しく競争も激しい市場であるが、一般に考えられているほど管理された市場ではない。また、一部の西側の国ほど市場は閉鎖的でなく、管理の度合いも弱いことが判った。」とか、あるいは「日米両国の相対的な相手国市場への輸出浸透状況を見れば次のような結果となっている。米国の国民総生産(GNP)に占める日本からの輸入比率は一・三%で日本のGNP総額に占める米国からの輸入比率は一・九%である。」というようになっている。  ですから、五十八年二月十六日の朝日の報道なんかによりますと「日本市場における米国製品の浸透度の方が高い」とか、「日本の対米貿易収支黒字幅のみに焦点を当てるのは不公平で、両国間のサービス貿易の流れ、それぞれの企業の相手国における直接生産規模などを勘案すると、日米経済関係は一般に認識されているほど不均衡ではない」とか、あるいは「法的規制面からみても、他の西側諸国に比べ、閉鎖的、規制的とはいえない」とか、そういうような見解が色濃く出ているようであります。  そういう点から見ると、ますます一方的譲歩というのは理由に乏しいのではないかと思うのですが、こういう認識、つまり、いろいろな角度から見ると、それほど日本の市場というものは閉鎖的ではないという認識についてはどう思っていますか。
  90. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 マッキンゼー報告が発表されましたのは、御指摘のとおり二月十五日でございます。  市場の開放度をはかる物差しというものは一体何かというのは、これはなかなか数字的な物差しがございませんので、非常にむずかしい問題であろうかと思うのでございますけれども、たとえば数字的に一番はっきりするのは関税であります。関税負担率の比較ということはよく行われるわけでございまして、昨年ガットの閣僚会議がございましたが、そのときに日本政府代表として櫻内外務大臣が演説をされましたが、その演説の中で、日本関税負担率はいまや世界で一番低い、つまり、世界で最も開放された市場であるという演説をされたわけでございまして、数字的にあらわれる関税以外のものは非常に比較がむずかしいわけでございますけれども、私どもも、日本の市場が言われるほど開放的でないというふうには決して考えておりません。
  91. 正森成二

    ○正森委員 質問の流れから言うとちょっと変わるのですが、大臣のおられるお時間が少のうございますので、関西新空港の問題をちょっと途中で聞かせていただきます。  時間を節約する意味で議事録を引用いたしますが、この問題については、予算の分科会等で各党議員から質問されております。  その中で、三月七日に予算委員会第二分科会で藤田スミ議員が質問をされておりますが、その中で、ここで答弁された平澤政府委員が、空港の着工準備調査費という新しい目といいますか、名称が出てまいりましたについての質問に対して、「これにつきましては、いわゆる実施設計調査費というようなものがございますが、そういう実施設計調査費に相当する内容も含まれております。しかし、今回が直ちにその結果着工につながるものではないということでございます。なぜかと申しますと、なおその事業主体なり採算性あるいは負担のあり方、それからアクセス等の問題、いわゆる地域整備の問題等、なお多くの問題が検討される必要があるということでございます。」こう答えておりますが、そういう見解については依然間違いがございませんか。
  92. 窪田弘

    ○窪田政府委員 そのとおりでございます。
  93. 正森成二

    ○正森委員 ここで出てまいりますフィージビリティー、採算性という中には、伊丹の空港が存続するのか存続しないのかで飛行機の便数もうんと違ってきますから、フィージビリティーも当然変わってくるのですね。そういう点について結論がまだ出されていないという状況があれば、なかなかそういう点は確定しがたいことであるというように思うのですが、いかがですか。
  94. 窪田弘

    ○窪田政府委員 御指摘のようないろいろな問題がまだ詰まっておりませんゆえに、いまおっしゃった関西国際空港着工準備調査費三十二億円を計上いたしまして、これから慎重に研究していこう、こういうことでございます。
  95. 正森成二

    ○正森委員 さらに議事録を拝見しますと、一月二十日に宍倉次長が参議院の決算委の答弁で「厳しい財政状況で」「大規模プロジェクトを国費をもって実行していく力というのがほとんどないに等しい」という評価をしておられます。そうしますと、仮に関西新空港にゴーサインを出すとしても、国費のみをもって実行していくということはほとんどできない。  したがって、そうなりますと、あとは借入金か、あるいは地方自治体、第三セクター方式に事業主体をするかどうかは別として、そういうものを考えなければ無理である、こういう御見解でしょうか。
  96. 窪田弘

    ○窪田政府委員 宍倉の申しましたのは、ビッグプロジェクト一般の問題であろうかと思います。必ずしも関西空港のことを言っていないと思いますが、ただ、御承知のようないまのような財政状況考えますと、関西空港についても容易なことではない、私どもこういう認識を持っております。  なお、資金面の負担については、いま地方負担というふうなお話もございましたが、これはまだ全く決まっておりませんで、これからこの調査の中で研究していこうという問題でございますけれども、しかし、いまの厳しい財政事情から見て、全額国の負担でやるということは現実的でない、こう考えております。
  97. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、おいでになってすぐでございますが、いま次長がお答えになったようなことですが、竹下大蔵大臣自身もそのときの答弁の中で「今後、運輸省との相談の中身につきましては、事業費のうち国がどの程度を負担するかとか、いろいろな検討が行われるべき課題であると思います。そしてまた、これまでのように第一種空港同様、国が全額を負担するというような財政状態にはないということも承知しております」という意味の答弁をされておりますが、そうすると、いまの主計局次長の御答弁と基本的には大きな認識の変わりはないというように理解してよろしゅうございますか。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 私と運輸大臣との合意を正確に申し上げますと、五十八年度予算において新設することとした関西国際空港着工準備調査費は、運輸省の計画に基づく泉州沖関西国際空港の着工を前提としたものである。二、着工準備調査費は、従来の実施設計調査費に相当する内容を含み、工事費に直接移行できるものであるが、なお事業主体のあり方等、残されている諸問題についてもこの調査費の中で調査検討の対象とする。  そこで、まさにその残されておる問題といたしまして、先ほど私が答弁を申し上げましたことについての速記録等の朗読がございましたが、その一つとしての資金負担をどうするかは今後の重要な問題の一つとして考えておるので、この点についても、まさに着工準備調査費の中で検討することになっておる、そして全額国の負担によって国際空港を建設することは現実的ではない、いろいろな問題がまさに着工準備調査費の中で検討される問題である、こういうふうに整理をして申し上げます。
  99. 正森成二

    ○正森委員 それでは、従然の質問の流れに変わらせていただきます。  必ずしも日本の市場が閉鎖的ではないように認識するという点については、私とも認識が一致したわけですが、しかし、それにもかかわらず、アメリカその他ECの認識というのは非常に一方的な点があるというように言わざるを得ないのですね。  これはキョウサイと読むのですか。「境際政策・境際行政研究会」、ケイサイですか、キョウサイですか。——キョウですね。これは、たしかこの文書を見ますと、大蔵省関税局の委託研究に基づいて発足し、関税局の首脳部が大体において出席してやっておるという形になっておりますね。この序文を見ると、そういうぐあいに書いてありますよ。いいですか。
  100. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 境際研究会というのは、私の前代の関税局長のときに、関税局長の私的な諮問と申しますか勉強のグループとして、そういう学者の方を中心に、適宜、大蔵省のみならず関係各省の人も参加をしていろいろ勉強をしたというものでございます。
  101. 正森成二

    ○正森委員 私的な諮問機関ですけれども、関税局の首脳も入っているのですが、その報告書を見ますと、こういうことが書いてございますね。  私が読んだのでは、百四十七ページには「例えば先日の米リーガン財務長官の「日本人は、人なつっこいが興奮しやすく反応の鈍い牧羊犬のようなもので、新聞紙をまるめて頭を強く打たないと行動しない」というような感情的な発言や、一方的で不合理ないたずらに強圧的姿勢のみが目立つ要求がみられる」云々というように、あなた方が入った報告書の中でも書いているのですね。あるいは六十六ページには、こういうぐあいに書いているのですね。「ある名古屋の財界人がフランスを訪れた際、「日本とソ連がこの地球上から消えてなくなれば、我々は幸せな生活ができる」と発言したと伝えられるフランスのジョベール貿易相の、共存を図るために自らも努力しようとおよそしない傲岸(ごうがん)としか言いようのない尊大な態度となって現われている。彼らは、世界中の人が洋服を着て靴を履いて英語かフランス語を話すのは当り前だと思い込んでいる。だから、日本人も洋服を着て靴を履いているのは結構だが、日本語を使っているのは気にいらない、というのが彼らの発想である。これは私が言っているのじゃないのですよ。ここで言っている。この間、大来佐武郎さんがイギリスに行っていろんな話をされたとき、先方が「日本のマーケットは非常にクローズだ。とくに流通段階がひどい。流通段階における契約書ぐらい英語にしたらどうか」と言うので、大来さんが笑いながら「では、ロンドンでは契約書を日本語にしますか」と言ったら、ハッと気がついて、これは失礼したと謝ったという。」こういうあれですね。  私は、去年の質問で、外務省の中で、米側の言う最後の非関税障壁は恐らく日本語の使用であろうというジョークがまかり通っておるとか、もう読みませんが、垣水さんの時代の「貿易と関税」という本に、もう理性を失っておるとか、しばしば日本語が非関税障壁だというようなことを言うということがありましたが、大体そういう考えで、関税の問題にしろ貿易摩擦でも考えているんじゃないか。そういうようなことをわれわれが問題にしなければ、何ぼでも、何やらを丸めて頭をガチンとたたいてやれとかいうようなことを言う。だから、私はあえて国会の議事録に、日本国内にもそういうことは、余りにも米側やECが思い上がっているんじゃないか、日本には日本の民族性があり、文化があり、長年培ってきた日本語があり、そういうことを忘れてやっているというようなことでは話にならないということを記録にとどめなければならぬというように思って、あえて質問をしているのです。  だから、皆さん方も、こういう点についてはやはりよほどしっかり考えて、安易に西側の友好の基軸であるとか運命共同体であるとかいうようなことで関税権の自主性を失うということは絶対にないようにしていただきたいですね。われわれの先輩は、関税権の自主性を回復するために苦闘して、やっとそれを取り戻したのがたしか明治四十四年でしょう。ところが今度は、われわれの方から自主的に、東京ラウンドを超えてどんどん下げていく。下げてもまだ満足しないで、頭をぶん殴ってやれとか、日本語が非関税障壁であるとか、そういうことを一方的に言うということは、国権の最高機関である国会としても黙っておることはできないですね。そういうことはやはり指摘をしておかなければならぬと思いますが、いかがです。
  102. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 冒頭に一つ申し上げますが、境際研究会の報告自体は学者先生方だけの報告でございまして、私が参加してと申し上げましたのは、その討議の過程に参加したことがあるという意味でございまして、報告自体は学者先生方の報告でございます。  いま御引用になりましたいろいろな発言、そのほかにも類似の発言はいろいろな場でわれわれも聞いておりまして、世界じゅういろいろな人がいろいろなことを言うその口を閉ざすわけにはまいりませんが、大事なことは、やはり日本に対するそういう誤解を解くということでございまして、日本とアメリカあるいは日本とヨーロッパの物理的な距離以上に日本に対する認識が低いというのは事実であろうかと思います。そういう無用の誤解から無用の紛争が生じないように、誤解を解く努力が必要であろうかと思うのでありますが、一方において、日本のことをわかっておられる識者もいるということもまあ事実であろうかと思うのであります。  私ども、今回の関税改正が、やれたものをただ黙ってやったというものでは絶対ございませんで、これはあくまでも自主的に日本として判断をしてやったわけでございまして、先方の要求にあったものでも、必ずしも全部やったというわけではございませんで、決して自主権を失っておるとは思っておりません。
  103. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたので、あと一問だけ質問して終わらしていただきます。  たばこの関税の問題でも、五十六年の四月に九〇%から三五%に大幅な引き下げをしたのですね。時間がございませんからこちらで言いますが、たしか、たばこの輸入量は五十六年度は対前年度で二二・七%ぐらいふえているはずであります。販売実績も対前年同期比で四〇、五十七年の四月から八月期を見ますと一二・三%増で、この間国産は〇・一%しかふえていないというような状況ですね。それなのに、今度また突如二〇%に引き下げを決めた。これについては、いわゆるローカルコンテント、部品調達法案を通すぞとか、それからマンスフィールド氏が関税、たばこを下げないとえらいことになると言ったとか、アメリカの大統領から親書が来たとかいうようなことで、結局不当な圧力に屈して不合理な譲歩をしたのではないか。  報道によりますと、これは十二月二十五日の日経ですが、「外務省でさえ「いまだに信じられない」というようなことを言うておるのですね。それから、五十八年一月八日の読売では、普通非常にアメリカに協力的な大河原駐米大使も「理屈を超えた状態」であるというようなことを貿易摩擦について言うておる。あるいは、松永外務審議官は「米経済が回復し、余裕を取り戻さない限り解決しない」これはもはや理屈の問題でも何でもなくて、また、わが方に非関税障壁やらその他の障害があるということじゃなしに、アメリカ側が、経済が回復しなければ全部スケープゴートのように日本の方へ持ちかけてくるというようなことになっているのじゃないか。そして、特に自動車などの輸出のために、それ以外の農産物やらあるいはたばこ、結局はたばこ耕作農家、専売の労働者にもかぶってくるわけですが、そういうところへ犠牲を転嫁していくという政策にならざるを得ないのではないかというように思うのですが、そういう点について大臣もしくは関税局長から御感想を承って、私の質問を終わります。
  104. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 最近の輸入たばこの伸び率につきましては先生指摘のとおりでございますが、二二%伸びたと申しましても、日本におけるマーケットシェアが一・四%。一%台というのは先進国の中でも非常に低いということから、三五%の関税というのがなお相当障害になっているんではないかということが言われるわけでございまして、そういう観点から、いろいろな点を総合勘案して、大局的見地から米国並みの二〇に下げたということであろうかと思うのでありますが、自動車の輸出の犠牲云々ということとは私ども必ずしも考えておりませんで、日本経済全体として、自動車の輸出も伸びなければ農村の方も困るという全体的な関係があろうかと思うのであります。そういう自由貿易体制維持という非常に広い観点からの総合的な判断としての自主的な決定であるというふうに私ども考えております。
  105. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  106. 小杉隆

    ○小杉委員 まず関税局長に伺いますが、今回の関税引き下げの根拠となりましたのはやはり貿易摩擦が原因でございます。そこで、関税局長としては、貿易摩擦の解消策としては関税だけじゃなくてほかにどんな手段が考えられるか、お答えをいただきたいと思います。
  107. 松尾直良

    松尾(直)政府委員 貿易摩擦というものがなぜ起こってくるかというのは、いろいろな要因があろうかと思うのであります。  非常に短期的に考えますと、一つは、日本経済の運営が比較的うまくいっているのに比べて、他の先進諸国においては非常に高い失業率その他物価高であるとかいろいろな問題を抱えておる、そういった中で日本との貿易収支が日本の非常に大幅な出超になっておるというようなことから、何とか日本が、まあ助けてくれと申しますか、そういう声が貿易摩擦の背後にあるということが言えようかと思うのであります。  したがいまして、根本は諸外国の景気回復が貿易摩擦をやわらげていく一番大きな要因ではないかという気もいたしますし、また貿易の面におきましても、日本の一方的な出超が多少はやわらいでいくということも必要であろうかと思います。また、そういう実態以外に、先ほど来御議論ございましたように、日本の実情に対する認識の誤りからの摩擦というものもあろうかと思うのであります。そういう点については、日本の実情を正確に理解してもらう努力も必要であろうかと存じます。関税はそういう中での一つの手段ではないか、かように考えております。
  108. 小杉隆

    ○小杉委員 いま局長からお答えがあったとおり、この貿易摩擦の原因にはいろいろあるわけでありまして、関税だけで貿易摩擦解消を図るというのは、私はこそくなやり方ではないかと思うのです。先ほど来の質疑の中でありますように、わが国関税は、関税負担率でも先進国の中で、米国の三・一、ヨーロッパの二・八に比べて、二・五と最低のところに来ているわけで、私は、昨年のこの場所でも、もうこれ以上の関税引き下げは必要ないじゃないか、むしろもっとほかの部分で、関税の引き下げ以外の手段によって貿易摩擦解消を図るべきじゃないかということを申し上げたわけです。  そこで、大蔵大臣に伺いますが、たとえば今度の関税引き下げの中で、ヨーロッパ諸国が熱望していたチョコレートとかビスケット、これなんかは貿易量全体としては金額的にはわずかでありまして、この関税を引き下げたからといって、決して貿易の額が急激にふえるというものでもない。むしろエアバスというような、彼らが非常に関心を持っていて、しかも金額が物すごく張るようなものを積極的に輸入することで貿易摩擦の解消を図るのが本筋であって、政府のやっている関税の引き下げは的を少し矮小化しているのではないか。もっと本筋で貿易摩擦解消をやれば、こういう関税引き下げは必要ないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  109. 竹下登

    竹下国務大臣 小杉委員のおっしゃっていることは、本質的に間違いではないと私も思います。  ただ、ヨーロッパで例をおたとえになりましたビスケット、チョコレートなんというのは、むしろ今日までシンボリックな問題としてあげつらわれておった、それがそれなりの措置が行われて、わが方にも競争力もできておりますし、それによって金額が大変張るものだとは私も思いません。が、そういうシンボリックな問題等を一つ一つ解決することもまた貿易摩擦あるいは通商摩擦の芽を摘んでいくことの一つである、こういうふうに理解しております。
  110. 小杉隆

    ○小杉委員 それから、先ほど局長が挙げられたいわゆる認識の差、パーセプションギャップということがよく言われるわけです。  先ほど米沢議員から、アメリカの上院、下院においていわゆる相互主義法案が出されたということの懸念が表明されたわけですが、私は、アメリカの議会と日本の議会のあり方は違うと思うのです。アメリカの場合は、議会でいろいろな法案を出すのは、それぞれの議員が選挙区の実情を踏まえて一つのアドバルーン的に法案を出すのが慣習化しておりますし、特に昨年の十一月の中間選挙とか八四年の大統領選挙をにらんでこういう法案がどんどん出されたということでございまして、私もよくアメリカの国会議員と話をするのですが、日本は少し過剰反応ではないかというのが知日派の国会議員の発言なんです。ちょっとしたことにすぐ反応してやるということですから、逆にアメリカから言わせると、いま正森議員が指摘したように、日本はたたかないと動かない、圧力をかけなければやらないというふうなことも言われるのであって、私たちは、もう少し冷静にアメリカの議会の動きというものをとらえていかなければいけないと思うわけです。  そこで、外務省を中心としていろいろPR活動をやっておられると思うのですが、本当に理解をしている国会議員もたくさんいるわけなんですよね。ですから、モンデール前副大統領を初め関係のセクションの国会議員に対しては、これはもちろん日本の国会議員も働きかける必要がありますけれども、政府も各省を通じて一つのこうしたパーセプションギャップを埋めるためのPR活動をもっと積極的に行うべきだと思うのですが、ひとつ大蔵省としてもその見解を明らかにしていただきたいと思います。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 これも御説のとおりでございまして、小杉委員もお感じになっているとおり、向こうは一つは小選挙区制もございますね。日本は中選挙区だから、ある意味において地域エゴが少ないから、中選挙区とはどういうものか教えてくれ、私が選挙の講義に行きましたときに、そういう質問を受けたことがあって、ちょっと答弁に困ったことがあります。向こうで見れば、恐らくカリフォルニア一州ぐらいがみんな選挙区だ。島根県とカリフォルニアと同じぐらいに思っていたんじゃないかなと思ったわけであります。が、ある意味において、小選挙区の持つ弊害というものも出ておりますところへ、議員提出権というものが非常に規制が楽であるということ。たった二人解雇されたことに対する反対のための法律案も、提出することだけに意義を持って、そういうことが行われるということもございます。  したがって、私は、議員外交の問題でございますとか、あるいはそれぞれが姉妹都市関係とか姉妹州県関係とか、そういうものを結んでいかないと、何分ユナイテッドステーツでございますから、マンツーマンでやらぬと、全米を代表するワシントンだけでは話のつかない問題もある。そういう意味において、これからの日本外交、なかんずく経済摩擦等につきましては、地域の問題が多いだけにそうした展開が必要ではないかというふうに思っております。
  112. 小杉隆

    ○小杉委員 いままで市場開放策として第一弾、第二弾、第三弾とやってきたわけですが、これはほとんど先進諸国に向けてでありますが、私はむしろ、関税に関しては、日本が防衛負担が少ないとかいろいろ言われるわけですが、これはGNPに対して日本が負担している防衛費にしてもあるいは対外経済援助、こういうものが少ないということが一つやり玉に上がっているわけですから、私は、むしろこういう先進諸国よりも開発途上国、特にその中でも一番貧しい国々に対する関税の引き下げというものをもっと積極的に行うべきじゃないかと思うのです。  たとえばスリランカ、かつてはセイロンと言いましたけれども、スリランカという国は、日本の所得の数十分の一というような貧しい国でありまして、その国の輸出額の大体六〇%を紅茶に頼っている国なんですね。彼らは、紅茶の葉っぱをイギリスに輸出をして、あるいは日本に輸出してやっているわけですが、たとえば、関税局のお話を私は個人的に聞きましたけれども、紅茶の関税については、いまイギリスからたとえばリプトンとかそういうものを輸入しますと、二〇%の関税がかかる。それから、葉っぱだけの場合は五%だと言いますが、スリランカから輸入する場合には、最恵国待遇で特恵関税ですか、これで製品で一四%、それから葉っぱで二・五%ということで、相当先進国よりも優遇をしていますけれども、この場合もちょっと不思議に思うのは、葉っぱの場合には確かに先進国の半分の関税になっていますけれども、製品の輸入の場合には七割の関税になっているわけでして、やはりこういう途上国はできるだけ付加価値をつけて輸出額をふやしたいというわけですから、製品の輸入に対しても、たとえば葉っぱと同じように先進国の半分くらいまで引き下げてもいいんじゃないか。  これは、ほんの一つの例ですけれども、そういう点において、開発途上国特に最貧国という国々に対しては、もっときめ細かな配慮をやってしかるべきじゃないか。こうやって先進国に対しては第一弾、第二弾、第三弾と手厚いほど、むしろ過剰なほどに関税引き下げをやっているのに、途上国に対しては比較的鈍いんじゃないか。言われなければやらないという姿勢はいかぬじゃないかと思うのですけれども、そういう点に関して、私はもっと積極的にやっていただきたいと思うのです。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる後発開発途上国、LLDCに対しては、昭和五十五年度から特恵対象物品について、原則として特恵関税率を無税とするなどの特恵特別措置を講じておるわけでございます。だから、LLDCに対する対策について、今後とも国内関連産業の影響に十分配慮しながらも、それはただODAの予算をふやすだけが能じゃないと私も思っております。  ただ、スリランカの紅茶の問題というのは、あれは日本スリランカ協会でございましたか、五島昇さんと瀬島さんでございますが、結局、嗜好に合わないので、こちらから日本向けの嗜好に合うようなプラント技術等と協調してその打開が図られるような努力がされておるというように、これは最近承った話でございます。
  114. 小杉隆

    ○小杉委員 時間が来たからやめますが、いまの大蔵大臣の御答弁ですが、そういうプラント輸出をして、日本人の好みに合ったようにして製品として輸入をするという方法は、私は大変結構だと思うのです。ただ、その関税のことですね、やはり葉っぱと同じように半分ぐらいまで考えてもしかるべきじゃないか。そのことによってもっと輸入量をふやしてあげられるんじゃないかということを申し添えまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  115. 森美秀

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  116. 森美秀

    森委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  117. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、法案は原案のとおり可決いたしました。     ─────────────
  118. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大原一三君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。
  119. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  本附帯決議案は、政府に対し、関税率の引き下げに伴い影響を受ける農林水産業等の国内産業への配慮、発展途上国に対する国際金融協力への対応及び経済技術協力の充実並びに通関制度等の見直しによる税関業務の効率化等について特段の努力を要請するものであります。  個々の事項の趣旨につきましては、法案審査の過程において明らかにされておりますので、その説明は案文の朗読によりかえさせていただきます。     関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配慮すべきである。  一 関税率の引下げに当たつては、国内産業への影響を十分考慮し、特に農林水産業、中小企業の体質改善を図るとともに、国民経済観点にたつて国民生活の安定に寄与するよう努めること。  一 最近における発展途上国の累積債務の増大にかんがみ、これらの国の経済再建のための国際金融協力への対応に十分配慮すること。  一 政府開発援助に関する新中期目標のもとに、発展途上国への経済・技術協力の一層の充実を図るよう特に配慮すること。  一 税関業務の増大、複雑化にかんがみ、不断に通関制度等の見直しを行うことにより、その効率的、重点的運用に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  120. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  121. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。塚原政務次官。
  122. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。     ─────────────
  123. 森美秀

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  125. 森美秀

    森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時一分散会