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名東参考人 いま問題になっております
租税特別措置は、タックスエロージョン、税の侵食、税の虫食いの典型的なものではないかと思うのであります。
いわゆる殖産興業
方式によって税の虫食いが起こることによって不公平が出てくるわけでございますから、したがって、こういうものをまず正すということ、これが先決ではないかと思うのであります。しかし、過渡期の混乱期でございますから、やむを得ない場合にだけ最小
限度設けるべきじゃないか。しかし、その場合でも、サンセット
方式などで洗い直していくということが必要であります。
現在、国家の支出、援助策に大きな限界がある。たとえば公共投資、公共事業費の投入というようなものは大きな限界のあることは、もうすでに専門家の間で明らかであります。国家の過剰介入ほど危険なものはないと私は考えております。その一例が、このグリーンカード制の実施とかマル優制の廃止とかいうものでありまして、抱き合わせ選挙に備えて一兆円
程度の
所得税減税を抱き合わせでやるという可能性はあるのじゃないか。その場合に、マル優を廃止してやる可能性があるわけであります。
その場合を簡単に申し上げると、マル優の総額が二百兆円ございます。これの利子七%に二〇%の
課税をするということをしますと二兆八千億円、ただし低所得者への還元、還付を考えますと一兆円くらいの増収になるわけであります。しかし、初年度一兆円の
減税と
増税をやっても、次年度からまるまるもうかるから、そろばんに合うわけであります。
それで最多階層、最も世帯の多い階層を見ますと、
サラリーマンでは年収三百万、それに預貯金三百万くらいが大体平均的じゃないか。それで計算してみますと、プラス・マイナス大体ゼロくらいになるのであります。したがって、所得の高い階層からほぼ
減税の
効果が及ぶわけでございます。したがって、マル優
課税によって増
税負担が、たとえば一兆円もあるわけでありますから、いただけるというそろばんを
大蔵省を初めとしてはじいておられるようでありますが、残念ながらそうはまいらぬというふうに私は申し上げたい。
なぜかというと、実際には、裏金が匿名と利殖を求めて戦略的に動いているからです。ここに、たとえば私、数百万円しか預貯金がないけれども、もし一億円の隠し金を方々に持っておったときに、いまからマル優を廃止すると言われたときに、黙って、はあ、じゃ取っつかまえてくださいと待っておるでしょうかね。そういうことを待っておると考えるのは貧乏人の発想なんであって、金持ちは逃げるに決まっています。
それで、逃げる場所は幾らでもあるということを申し上げたい。
株式など無税かつ高利回りのものにくらがえしていくわけでありますが、いまマル優二百兆円のうち一〇%か一五%、すなわち二十兆円から三十兆円というのがいかがわしい金であるというふうに推定できる。これは、私だけの本に書いてあるだけじゃない。最近アングラ、地下
経済の本が何冊も出ていますが、大体私と同じような
結論になっているわけであります。
それで、逃げ場に困らないという一例を申し上げますと、マル優以外の
個人金融資産が百七十兆円、それにプラス法人の金融資産が五十六年末に二百九十兆円ある。
政府のこれはわずかに四十兆円。
個人金融資産三百七十兆円を足しますと七百兆円ある。これはいわゆる金融資産だけですよ。それから、御存じの名ばかりな法人があるわけです。百五十万社とか百七十万社と言われていますが、これの九〇%が中小
企業、そのまたほとんどが零細で、
個人と法人との間をうろちょろしているようなものです。こういったような実態で、もぐり込める法人の流動資産が約四百兆円ある。これは五十六年の末であります。それから土地資産。土地資産は登記簿でつかまえられると思っているかもしれませんが、最近は登記しない売買が幾らでもある。それで五十七年の末、公示価格で七百五十兆円。
これだけ足しましても千三百兆円ある。それ以外に、金とか書画骨とうとか宝石類がある。これは国内でありまして、国外の場合は御存じのような海外流出がある。外貨債などは規制できるかもわかりません。たとえば、ゼロクーポン債は
大蔵省が抑えた。ということはできるかもしれませんが、ユーロ円。ユーロ円というのは、いま大体七兆円あるわけですが、これがいまふえているわけです。こういうものを取っつかまえるわけにはまいらないわけであります。
そういうわけでありまして、
結論的に言えば、グリーンカード制を実施したと仮定しまして、これは日銀の秘密資料というふうに私理解しておりますが、約三十兆円の移動があるというふうに、きちっとした
数字が上がっております。そういうわけで、約三十兆円も動いていくわけであります。だから、結局、まじめで逃げる金もなければ逃げ場も知らないといったような雑魚ばかりがつかまるということを私ははっきり申し上げたい。もともと利子
配当問題は、
不公平税制の最たるものではないのですね。インフレの時代を考えたら、こんなものは微々たるものですよ。こういうところよりは、もっと問題にすべきところがたくさんあると私は思うのです。
一番問題になるのは、たとえば、年間所得二千万を超えたら財産調書を出さなければいけない。財産調書を出すべき人はわずか十万人ですよ。その二〇%の人が財産調書を出さないのです。なぜそれを徹底的に調べないのか。そうすると、罰則がないとか、いろいろなことを言いわけなさっておられるようでありますが、そういうことこそ問題じゃないかと思うのですね。なぜ罰則がないのか、おかしいと思うのです。
それから、最大の
不公平税制は何かと言えば、これは当然土地問題です。土地問題を避けていけないということは常識じゃないでしょうか。庶民が買いたくても、もう土地は手が出ないということ、これは明らかであります。そういう庶民の問題だけじゃないので、農業問題が行き詰まっているのも土地問題。それから、現在のような不況になりますと、大
企業ですら土地をちょろっと一部売って、何か特別利益を出して営業損益を消していくというような広い
意味の粉飾をやっている。それから有価証券を期末に、三月末に売ったような形にして特別利益を出して営業損益をカバーするというような操作に土地問題が使われているということ、こういうことがいつまでも続くわけはないのであります。
それから、これは
日本不動産研究所が調べた
数字を申し上げますと、戦前の
昭和十一年九月を一といたしますと、住宅地が大体一万二千二百倍になっている。住宅地以外の土地をなべても、平均的に大体一万倍くらいになっている。そうすると、
サラリーマンの給与は二千倍、消費者
物価は千五百倍、卸売
物価が七百倍ですね。こういうことを見たら、いかに土地問題が重大な問題かということはすぐわかるわけですね。
御存じのように、現在の初任給と社長さんの給与を比べてみると、八対一くらいなのです。いま申し上げた戦前の
昭和十年ごろを調べてみると百対一、百分の一なのですね。いまは八対一なのです。ということは、所得、フローの方は公平になったのです。
公平化されてきたのです。ところが、
公平化されていないのは土地問題、資産問題、特に土地問題です。だから、フローばかりつかまえようとなさっても、公平を期することはできないのです。問題は、ストックの土地問題にメスを入れなければいけないのです。これを私は前から叫ぶのだけれども、
政府税調なり
大蔵省なりが取り上げようとしないのです。どういうわけか私よくわからない。
大蔵省に私の方から質問したい、なぜそれをやらぬのかと。巷間伝えられるところによると、いろいろな圧力団体があると聞いているのだけれども、まさかそれに負けておると私は思いたくないので、そういう
意味で、土地問題にぜひともメスを入れていただきたい。
それから、いま
小倉先生が大型間接税をにおわされたので、私も一言申し上げさしていただきます。
これは、いまさら述べるまでもないのであって、重大な麻薬だと私は考えているのです。こういったような麻薬にかぶれましたら
最後、もう
日本の重税国家は自滅の方向へ進まざるを得ない、こういうことを私は申し上げたいと思う。これは、いまやっているEC、ヨーロッパ諸国なりお隣の韓国をよくお調べになったら、いかに困っているかということがわかるわけですよ。それからアメリカでも、あのウルマン
委員長が抱き合わせてやろうとした。千三百億ドルですから、
日本の金にして三十兆ぐらいの抱き合わせ、
減税と
増税をやろうとしたのですが、このウルマン
委員長は落選に落選ですね。こういうわけで、非常に不人気な税金であります。しかも、これはヨーロッパを調べてみると、大体戦争の前に導入するという形になっているわけですね。
こういうような
一般消費税のごときものをやるというのならば、なぜ、その前に資産
課税をやらないか。西ドイツもやっているわけですよ。そういう順序というものを踏まないで、取りやすいところから取るという発想の仕方。税金というものは常に取りやすいところから取るべきだとかいう原則があるみたいですね。その原則を
余りおやりになっていると、革命というものを少しお調べになったらいいと思うのだけれども、アメリカの独立にしろフランスの革命にしろ、すべて税金問題なんですよ。
日本人が幾ら羊のような哀れな人間だといったところで、
限度がありますよ、
限度が。そういうわけで、
余りサラリーマン、国民というものをばかにし切ったような形に持っていくことは、私は、
日本のために非常に不幸だと考えるわけであります。
財源は、これはない、ないということばかり私新聞で拝見するのだけれども、勉強不足じゃないかと思う。たとえば土地問題をいま私申し上げたわけですが、これは不動産研究所の発表でありますが、この二十三年間に三十七・五倍になっている。したがって、公示価格で土地の増価分、値打ちがどのくらい上がったかというと、七百三十兆円に上っている。したがって、大口に限定する。大口に限定するという
意味は、東京、大阪、名古屋、三大都市圏の大地主を調べてみた。そうすると、仮に全部それを売って譲渡所得があると仮定すると、十億円以上の人は一万人から一万五千人しかいないのですよ。したがって、農地の宅地並み
課税のような、百五十万人なりそういった大勢の農民の方やら農家の方を敵にすることなんかないのではないですか。ああいう拙劣なことをやめて、わずかなところ、大口のところにぱっとおかけになったらいいと思う。そのかわり、失礼だけれども、こういうお金持ちには勲一等を与えていただく。はっきり申し上げて、皆さん方が勲一等いただいたってしようがないのじゃないかと思う。勲一等というのは、私はこういう方に差し上げてもらいたい。これはぜひそうしてもらいたい。
そういうわけで、私計算いたしますと三百六十五兆円。しかし
課税標準というものは低くて、公示価格の半分以下でありますから、自治省の発表しておる
課税標準によりますと約百兆円という
数字が出ているわけです。これをいただきますと、百兆円に一〇%を掛けると十兆円。したがって、現在いただいております土地の三兆円を引きましても、七兆円ぐらいになるわけであります。
したがって、この問題はどうしても避けて通れない問題であるということと、このままの状態でいけば、かなり激しいデフレ、不況なり、さらに最悪の場合は恐慌も起こり得る可能性はあると思うのです。したがってそれを打ち消す。
たとえば、いま発展途上国の対外債務は六千億ドルを超えているわけでありまして、
日本の金で百五十兆円もあるわけであります。それの大体四分の一を
日本が持っておる。また、その半分ぐらいを民間が持っておる。こうなりますと、もしそこにモラトリアムでもしかれましたら、これは
一つの信用恐慌になりかねませんので、したがって、必ずや金の救済があるでしょう。そうすると、大インフレーションの可能性がまたあるというわけでありまして、そういったような不況と長期停滞の可能性とインフレーションの可能性があるということ、さらにその上に重税です。重税国家になる。トリプルバードンのような形でどうして
日本がやっていけるのか。私は、幸いにして国
会議員でもなかったし、いわんや大蔵大臣でも何でもないので、本当に助かったと思って喜んでいるわけです。
どうも失礼しました。(拍手)