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1983-03-17 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十七日(木曜日)     午前九時二分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 大原 一三君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 伊藤  茂君    理事 野口 幸一君 理事 鳥居 一雄君    理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    越智 伊平君       木村武千代君    小泉純一郎君       椎名 素夫君    塩川正十郎君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       森  喜朗君    森田  一君       与謝野 馨君    阿部 助哉君       戸田 菊雄君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (日本大学法学         部教授)    北野 弘久君         参  考  人         (日本大学経済         学部教授)   名東 孝二君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   毛利 松平君     越智 伊平君     ───────────── 三月十六日  税制改革に関する請願上田卓三紹介)(第一四九二号)  同(小川国彦紹介)(第一四九三号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一四九四号)  同(村山喜一紹介)(第一四九五号)  同(米田東吾紹介)(第一四九六号)  同(五十嵐広三紹介)(第一五四一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一五四二号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一五四三号)  同(湯山勇紹介)(第一五四四号)  同(長谷川正三紹介)(第一五六四号)  同(松沢俊昭紹介)(第一五九三号)  同(吉原米治紹介)(第一五九四号)  同(有島重武君紹介)(第一六三九号)  同(上原康助紹介)(第一六四〇号)  同(鈴切康雄紹介)(第一六四一号)  一兆円の減税等に関する請願阿部未喜男君紹介)(第一五一五号)  同外一件(井岡大治紹介)(第一五一六号)  同(伊賀定盛紹介)(第一五一七号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一五一八号)  同(上田卓三紹介)(第一五一九号)  同(小野信一紹介)(第一五二〇号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第一五二一号)  同(川本敏美紹介)(第一五二二号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一五二三号)  同(串原義直紹介)(第一五二四号)  同(小林進紹介)(第一五二五号)  同外一件(小林恒人紹介)(第一五二六号)  同(沢田広紹介)(第一五二七号)  同(島田琢郎紹介)(第一五二八号)  同(鈴木強紹介)(第一五二九号)  同(田口一男紹介)(第一五三〇号)  同(田邊誠紹介)(第一五三一号)  同(高沢寅男紹介)(第一五三二号)  同(野口幸一紹介)(第一五三三号)  同(野坂浩賢紹介)(第一五三四号)  同(馬場昇紹介)(第一五三五号)  同外一件(堀昌雄紹介)(第一五三六号)  同(前川旦紹介)(第一五三七号)  同外一件(村山喜一紹介)(第一五三八号)  同(森井忠良紹介)(第一五三九号)  同(五十嵐広三紹介)(第一五七〇号)  同外一件(小川国彦紹介)(第一五七一号)  同(岡田利春紹介)(第一五七二号)  同(串原義直紹介)(第一五七三号)  同(小林恒人紹介)(第一五七四号)  同(長谷川正三紹介)(第一五七五号)  同外六件(矢山有作紹介)(第一五七六号)  同外十三件(井岡大治紹介)(第一五九七号)  同(上田卓三紹介)(第一五九八号)  同(小林恒人紹介)(第一五九九号)  同(後藤茂紹介)(第一六〇〇号)  同(新村勝雄紹介)(第一六〇一号)  同(長谷川正三紹介)(第一六〇二号)  同外一件(堀昌雄紹介)(第一六〇三号)  同外三件(矢山有作紹介)(第一六〇四号)  同(山田耻目君紹介)(第一六〇五号)  同(吉原米治紹介)(第一六〇六号)  同外十一件(井岡大治紹介)(第一六四四号)  同(上田卓三紹介)(第一六四五号)  同(上原康助紹介)(第一六四六号)  同(川本敏美紹介)(第一六四七号)  同(北山愛郎紹介)(第一六四八号)  同(後藤茂紹介)(第一六四九号)  同(城地豊司紹介)(第一六五〇号)  同(永井孝信紹介)(第一六五一号)  同外一件(福岡義登紹介)(第一六五二号)  同(堀昌雄紹介)(第一六五三号)  みなし法人課税制度期限延長に関する請願野中英二紹介)(第一五四〇号)  一兆円減税等に関する請願小川省吾紹介)(第一五四五号)  同(勝間田清一紹介)(第一五四六号)  同外一件(加藤万吉紹介)(第一五四七号)  同(上田卓三紹介)(第一五六六号)  同(勝間田清一紹介)(第一五六七号)  同(嶋崎譲紹介)(第一五六八号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第一五六九号)  同(小林恒人紹介)(第一五九五号)  同(八木昇紹介)(第一五九六号)  同(伊藤茂紹介)(第一六四二号)  同(上原康助紹介)(第一六四三号)  一兆円所得減税に関する請願外一件(伊藤茂紹介)(第一五六三号)  同(渡辺貢紹介)(第一五九二号)  大企業優遇税制是正等に関する請願上田卓三紹介)(第一五六五号)  増税反対所得税減税等に関する請願浦井洋紹介)(第一五九一号)  所得税減税及び大型間接税導入反対に関する請願外四件(草川昭三紹介)(第一六三七号)  同外五件(草野威紹介)(第一六三八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  ただいまより、本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただいております参考人は、税制調査会会長小倉武一君、日本大学法学部教授北野弘久君、日本大学経済学部教授名東孝二君の各位であります。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  なお、議事の進め方は、初めに参考人各位からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。  それでは、小倉参考人にお願いいたします。
  3. 小倉武一

    小倉参考人 昭和五十八年度の税制改正につきまして所見を述べよというお話でございますので、昨年十二月に税制調査会の五十八年度の税制改正に関する答申というものがございますので、もうすでに御承知かと思いますが、それに即して、改正考え方について若干御説明を申し上げたいと思います。  まず、昭和五十八年度税制改正に関する答申背景になっております基本的な考え方について申し述べたいと思います。  御承知のとおり、わが国の財政は、歳出歳入両面にわたる努力にもかかわらず、環境予想外の急激な変化によりまして、ますます深刻さを増しております。このような財政を再建するためには、まず何よりも、経費の徹底した節減合理化によって歳出規模の思い切った抑制が図られるべきである、こういう努力が行われることを背景にいたしまして、今後の税制あり方検討していくのが妥当である、こういうのが基本的な考え方であります。この点につきましては、税制調査会では、すでに五十五年の十一月のいわゆる中期答申におきまして、税負担及び税体系あり方について幅広く検討する必要があるということを申しておるのであります。  ただ、五十八年度は歳出削減中心として予算編成を行うという政府の方針でありましたし、また、五十六年度に現行税制の枠内において徹底した見直しを行って、しかるべき増収措置も講じたということもございます。さらには、税負担あるいは税体系を根本的に検討するための環境が、昨年の秋から暮れにかけましてまだ十分熟していないという私どもの認識がございました。したがいまして、税制の基本的な変更、改正というような根本的見直しの作業は見送るということにいたさざるを得なかったわけであります。  そこで、五十八年度におきましては、従前からの課題でございますが、税負担公平化適正化ということを一層推進するという観点から、租税特別措置につきまして、できるだけ厳しく見直しをするというようなことを中心にいたしまして、必要な税制上の措置をとることにいたした次第であります。  そこで、五十八年度の税制改正の主要な内容について申し述べたいと思います。これも、すでに政府の方で法案が提出されておりまして重複する点が多いかと思いますが、まず第一に、租税特別措置整理合理化でございます。  租税特別措置につきましては、税負担公平化という観点から、昭和五十一年以来毎年非常に精力的にその整理合理化を図ってきたところであることは御承知のとおりだと思います。税制調査会におきましては、そういう租税特別措置整理合理化を大きな重点として今日までまいった次第であります。ところで、最近の財政状況は一段と厳しくなっておりますので、税負担公平化ということが一層強く要望されておるという事情もございます。したがいまして、準備金でありますとか特別償却など企業関係特別措置につきまして、さらに見直しを行った次第であります。  第二は、金融保険業の貸倒引当金経過措置見直しを行いました。貸倒引当金につきましては、昭和五十七年度に行われました金融保険業以外の業種の法定繰入率の引き下げに際しましてとられた経過措置というようなこととのバランスも考えまして、現に適用されている金融保険業についての経過措置見直しを行った次第であります。  第三に、住宅建設促進という観点から、住宅取得控除制度につきまして、定額控除を廃止するとともに、他方住宅ローン控除控除率それから控除限度をそれぞれ引き上げて、住宅建設促進に資するように配慮いたしました。  第四は、相続税のことでございますが、小規模会社株式評価の改定を行ったわけであります。この小規模株式会社株式評価は、現在、いわゆる純資産価額方式によって評価されておるのでありますが、類似業種の比準方式をも併用いたしまして評価いたしまして、評価合理化を図るということにいたしたわけであります。  また、これとともに、小会社個人企業とのバランスをとるという趣旨も含めまして、個人の事業の用あるいは住居の用に供する小規模の宅地につきましても、必要な措置を講ずるということにいたしました。  なお、以上のほか、揮発油税自動車重量税暫定税率適用期限が参りますので、その期限延長、それから電源開発促進税税率引き上げによりまして、電源開発の便宜を図るというようなことをいたすことを答申に記してございます。  なお最後に、所得税減税のことについて一言申し上げたいと思います。  御承知のとおり、税制調査会におきましても、所得税減税の問題は一つの大きな課題として討議されたのでございます。そこで、討議の内容を集約いたしまして、どういう議論がございましたか、まず御紹介をいたしたいと思います。議論と申しましても、その要約、結論的な部分でございます。  まず、減税をすべきであるという観点からの御議論でございますが、御承知のとおり、課税最低限が五十三年以来五年間も据え置かれておる、その間名目所得は上昇しておる、したがって平均的な所得税負担率は上昇しておる、したがって当然に検討を要すべき問題が生じておるので、この際、課税最低限引き上げを図るということが大事であるという御意見、これが一つでございます。次は、本格的な所得税減税というようなことが今日の財政事情で非常に困難ではあろうけれども、しかし、財源が見出される限りにおいて、限定的でも減税を行うべきであるという御意見。第三番目は、もう少し大がかりに、景気回復促進するというような観点から所得税減税を図るべきである、こういうような御意見。おおよそこの三つに要約できるかと思います。  こういう所得税減税論に対しまして、他方、これと異なる御意見もございましたので、それを御紹介いたしますと、まず、所得税制を長期に固定するということは好ましくない、したがって、今後課税最低限税率構造を根本的に見直す必要があるだろうということでございますが、現在の深刻な財政状況を考えると、必要性はあるけれども、どうも所得税減税を行う余地はない、こういうお考え方。次には、所得税負担水準というものを国際的に比較してみますと、課税最低限は諸国と比べると、どちらかというと高い、また、平均的な所得税負担率主要先進国と比べると低い水準にある、したがいまして、五十八年度においてはやむなく所得税減税は見送りをするということもやむを得ないのではないかという御意見。次は、財源のある限りあるいは財源の許す範囲においては、限定的な減税でもやったらどうかという意見があるけれども、しかし、どうもそういう財源はなさそうである、また、仮にそういう財源がありましても、小規模調整措置という程度では余り意味がないと言っては語弊がございますが、どうも余り効果がない、一般の要請にこたえることができない、こういう意味での消極的な意見もございました。  さらに、ちょうどこれとうらはらに、景気対策というような効果もねらうような所得税減税を行うということであれば、相当大規模所得税減税を行う必要があるだろう。ところが、財源事情を考えますと、そういう大規模所得税減税をするには、どうもそれだけ公債を増発しなければならぬのではなかろうかというようなこともございまして、こういう公債の増発ということは好ましくない、こういうようなこと、また仮に公債を増発するということであれば、いろいろ金融市場影響を与えて好ましくない影響も起こるだろう、そういうような消極的な意見もございました。  以上のような意見を交換しました結果、大勢といたしましては、五十八年度においては、所得税それから住民税も含めまして、減税は見合わせざるを得ないのではないかというのが、税制調査会意見の集約ということであったわけであります。  ただ、そうは申しましても、五十九年度以降できるだけ早い機会税制全体について見直しを行い、その中で課税最低限度税率構造について根本的な検討を行うということをできるだけ早くやる必要がある、こういうようなことが所得税減税についての税制調査会意見であった次第であります。  最後に、言葉は熟しませんけれども、納税環境整備ということについて、一言申し上げたいと思います。  これは、主として所得税についてでございますが、所得税につきましては、税制のたてまえとして、あるいは理論的には非常に好ましい、税の根幹として最も望ましい税制であるということは、どうやら衆目の一致するところでございますが、執行面のことをあわせて考えますと、どうも実質的な公平を確保するという点においては欠くるところがあるのではないかという批判がずいぶんございます。そこで、制度上のこともございますけれども、所得税法執行上について公正を確保するというような措置税制上できないかどうかということが重要な課題になっておることは御承知のとおりでございます。  そこで、税制調査会は、昨年六月に申告納税制度特別部会というものを設けまして、広く納税につきまして、環境整備といいますか、たとえば記帳の関係をどうするとかといったようなことにつきまして研究を行い、まだ結論は得ておりませんが、でき得るだけこの申告納税制度に関連する諸問題について幅広く検討し、この問題についてできるだけ早い機会結論を得たい、かように存じておる次第であります。  簡単でございますが、以上をもって冒頭の御説明にかえる次第でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 森美秀

    森委員長 ありがとうございました。  次に、北野参考人にお願いいたします。
  5. 北野弘久

    北野参考人 日本大学北野であります。  後ほど名東参考人から経済観点からのお話がございますので、私は、主として法理論観点から所見を申し上げたいと思います。  第一点としまして、御承知のように、昭和五十八年度におきましても、所得税につきまして物価調整減税すらが全く予定されていないのであります。昭和五十二年度のサラリーマン課税最低限は、夫婦子供二人で、政府説明によりますと二百一万五千円であるということになっておりますが、私は、この数字自体が誤りであると考えております。この数字は、給与所得控除額であるとか社会保険料控除額を含めた数字でありまして、実際の課税最低限は百十六万円であるということになるのであります。これは生活扶助基準の百七十万余りよりも大きく下回る数字であります。  この課税最低限は六年間据え置かれることになるわけでありますけれども、この間、大蔵省の最近の試算によりましても、物価は約三六%、実質ベースでは二八・九%上昇しておるということが報道されております。所得税だけで、この間の累計で四兆八千四百億円の隠れた増税が行われておるということが報道されております。大蔵省も、物価調整のために五十八年度だけで数年前の状態に戻すためには、最低二兆円の所得税減税が必要であるということを発表しておるようであります。  現代におきましては、物価上昇の多くは現代資本主義メカニズムからくるものでありますが、そういう現代における物価上昇というものは、実質的には現代的な増税でありまして、これは不公平税制の拡大を意味するということになるのであります。物価調整減税は本来の減税ではないのでありまして、物価上昇によって拡大するところの不公平税制を、少しでももとに戻すための措置にすぎません。  憲法理論から申しますと、この隠れた増税というのは、憲法八十三条以下の財政議会主義に反するのであります。また、憲法十四条、二十五条等からくるところの応能負担原則にも反するのであります。その意味におきまして、この隠れた増税というのは、一種の脱法的な現象ということが言えるのであります。  そこで、多くの先進国におきましては、物価上昇にスライドしまして調整減税を自動的に行うという、自動物価調整税制というものを現代税法の中に組み込んでおるのでありまして、日本先進国でありますから、当然こういった措置を導入すべきである、こういうことになってくるのでありますが、私としましては、法の観点から申しますと、これは納税者権利として十分に認識すべきであろうと考えております。この点で日本は、法の文化の観点から申しますと、恐るべき後進国であるということになるのでありまして、ぜひ御検討願いたいと思います。  第二番目に、今回の法案におきまして新しく租税特別措置が出ております。たとえば、特定基礎素材産業対策促進税制というものが登場しております。これは、やはり不公平税制という観点から見まして好ましくないということになりますし、さらに、税調及び政府におきまして努力はされておりますけれども、今回の租税特別措置整理につきましても、私としては非常に不十分であると考えております。所得税における配当控除であるとか、法人税における受取配当金益金算入制度であるとか、あるいは法人税における配当課税率等も全廃すべきであると考えております。それから、貸倒引当金制度につきましても、理論上の評価性引当金考え方に従いまして合理化整理すべきである。つまり、アメリカと同じように、各企業の個別の貸し倒れ実績に基づきまして、引当金の計上を行うという制度に改めるべきであると考えております。  また、退職給与引当金につきましても、税法独自の公平の観点から再検討すべきであると考えておりまして、大企業につきましては、全従業員自己都合によって退職するということを仮定すること自体が、学問的には非現実的でありまして、そのような非現実的な仮定のもとに期末退職金の要支給額の四〇%までを引当金に計上するということを課税上認めることは、余りにも不合理であると考えます。企業会計理論上は、退職給与引当金というのは、退職給与規定に基づきまして潜在的に発生する債務をあらかじめ計上するのだ、そういう意味では、負債性引当金として合理性があるのだという説明が行われておりますけれども、しかし、だからといって、課税の上でそれを損金に算入しなければならないという論理は出てこないのであります。さきに申しました特殊税法理論税法特有負担公平理論からいきますと、大企業退職給与引当金の多くは、私に言わせますと、利益留保的なものであると言わざるを得ないと考えております。  なお、この種の引当金、これは貸方勘定の問題でありますが、この引当金を計上したからといって、借方の特定資産勘定が用意されなければ、現実的には労働者サラリーマン退職金の保障にはならないのでありまして、この点を区別して議論願いたいと思います。  それから、政府筋におきましては、株式発行差金、プレミアムでありますけれども、これは資本取引から生ずる資本であるという考え方に従いまして、これは租税特別措置ではないということで、現在課税されていないのであります。企業会計理論におきましては、御承知のように、株式発行差金資本剰余金とされておりますし、商法におきましても、基本的には資本準備金とされておるのであります。これは、資本取引損益取引を区別するという伝統的な会計理論に立っておるのでありまして、私は、この伝統的な会計理論自身現代において再検討されるべきであると考えております。  現代資本主義メカニズムのもとにおきましては、何が資本であるか、何が利潤であるかという区別が非常にあいまいになってきております。大企業は、直接間接さまざまな形で政府の保護を受けております。これは皆さん御承知のとおりでありますけれども、しかも、大企業株主等とは別個の社会的な独自の存在であります。株式発行差金というのは、そういう大企業利潤一つの投影、反映であるというふうに考えられますし、一つの変形であります。今日、従来の企業会計理論は、先ほど申しましたように妥当な尺度にならないのでありまして、再検討すべきである。私としましては、株式発行差金の多くは、特殊税法理論から申しますと、租税優遇措置であると考えております。これについては相当巨額の税収が期待できるのでありまして、後ほど御質問あれば、その試算などについても申し上げます。  第三点としまして、もう時間がだんだんやってきましたが、企業政治献金の問題にちょっと触れておきたいと思います。  現行法では、法人所得計算上、一般寄附金と同じように、一定の限度まで企業政治献金損金に算入しておるのであります。政治意思形成過程というものに参与し得るのは、憲法理論上は、主権者である国民だけであるはずであります。参政権というのは主権的な権利でありまして、企業参政権を持っていないのであります。それゆえ、企業政治献金は、憲法理論から申しますと、まさに参政権の侵害でありまして、また、憲法で保障されておりますところの議会制民主主義の形骸化をもたらすものであります。企業政治献金のこういった構造は、わが国をして、国民主権の国家ではなくて、まさに企業主権の国家をもたらしておるという、そういう側面がございます。  第四点としまして、不公平税制の最も大きな問題は、実は個別の租税優遇措置だけではないのでありまして、法人企業課税の基本的な仕組み自体にあるということを申し上げておきたいと思います。  大法人というのは、所有と経営が分離しておりまして、それは株主等とは別個な、社会的な経済的な実体を有する独自の存在である。大法人は、現代資本主義のもとでは、先ほど申しましたように、さまざまな公の保護を受けておるのでありまして、中小法人と全く違った存在である、こういうことになりまして、現実的にもゴーイングコンサーンである、継続企業であるという実体を持っております。こういった実体を直視しまして、税法理論観点から申しますと、大法人は独自の担税力の主体である、独自の課税単位を構成する主体である、こういうふうに考えざるを得ないのでありまして、したがって、ここに現在の比例税制自身は不公平税制である、こういうことになってきますので、憲法応能負担原則にマッチするためにも、大法人税制につきましては緩やかな超過累進税制を導入すべきである。そうしなければ、不公平税制の是正はできないと私は考えております。  それから、現代資本主義のもとでは、現代的な担税力というのは、必ずしもインカム、所得に表現されないのでありまして、所得に表現されないさまざまな担税力があります。これをキャッチするためには、法人税の補完税としまして、法人の財産税、現代的な担税力というのは法人の財産に投影してきますので、さしあたり土地であるとか土地の権利、有価証券等を課税対象にいたしまして、法人財産税というものを国税として導入すべきである。そこまでしなければ、企業課税の不公平是正はできないというのが私の年来の主張であります。  第五点でありますが、今回、グリーンカード制度の適用が延期されることになりました。私としましては、このグリーカード制度を適用しなくても利子配当の総合課税はできると考えておりまして、所定どおり実施すべきであります。分離課税をやめまして、即刻総合課税を実施すべきである。  どうしてかと申しますと、所得税の源泉徴収を徹底すればよろしいのでありまして、そうしますと、課税庁は利子配当に関する一切の情報をキャッチできるのであります。金融機関等は、法的に申しますと、税法上は源泉徴収義務者として徴税行政を分担するのでありまして、当然貯金者である納税者の身元を何らかの方法で確認しまして、したがいまして金融機関におきましては、法の理論から申しますと、仮名口座であるとか匿名口座などはあってはいけないことになります。そういう氏名をきちっと確認しまして万全を期すればよろしいのでありまして、そうしますと、先ほど申しましたように、課税庁に全部情報が集まりますから、情報が集まっておるということになりますと、納税者の心理といたしまして、利子配当についてきちっと申告するしかないという状態に追い込まれますので、私は、グリーンカード制度の延期とは別に、利子配当の総合課税を即刻実施すべきである、このように考えております。  このほかに、いろいろ申し上げたいことがありますが、時間が来ましたので、特に、みなし法人課税であるとか中小企業承継税制等について意見を述べたかったのですが、時間がありません。私といたしましては、歳出の抜本的な合理化、これは軍事費を含めましてですが、行いまして、それから真の学問的な意味での不公平な税制を是正する。そうすると数兆円の税収は可能でありますので、財政の再建も赤字財政の脱却も可能である。大型間接税は、いかなる場合においても導入すべきではないと考えております。そして、日本の運命を決定するものとして、この大型間接税の導入は避けるべきである。非常に恐ろしい運命をもたらすであろうと考えておりますので、大型間接税導入を避ける形で財政の再建と赤字財政の脱却を考えるべきである、このように考えております。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 森美秀

    森委員長 ありがとうございました。  次に、名東参考人にお願いいたします。
  7. 名東孝二

    名東参考人 いま問題になっております租税特別措置は、タックスエロージョン、税の侵食、税の虫食いの典型的なものではないかと思うのであります。  いわゆる殖産興業方式によって税の虫食いが起こることによって不公平が出てくるわけでございますから、したがって、こういうものをまず正すということ、これが先決ではないかと思うのであります。しかし、過渡期の混乱期でございますから、やむを得ない場合にだけ最小限度設けるべきじゃないか。しかし、その場合でも、サンセット方式などで洗い直していくということが必要であります。  現在、国家の支出、援助策に大きな限界がある。たとえば公共投資、公共事業費の投入というようなものは大きな限界のあることは、もうすでに専門家の間で明らかであります。国家の過剰介入ほど危険なものはないと私は考えております。その一例が、このグリーンカード制の実施とかマル優制の廃止とかいうものでありまして、抱き合わせ選挙に備えて一兆円程度所得税減税を抱き合わせでやるという可能性はあるのじゃないか。その場合に、マル優を廃止してやる可能性があるわけであります。  その場合を簡単に申し上げると、マル優の総額が二百兆円ございます。これの利子七%に二〇%の課税をするということをしますと二兆八千億円、ただし低所得者への還元、還付を考えますと一兆円くらいの増収になるわけであります。しかし、初年度一兆円の減税増税をやっても、次年度からまるまるもうかるから、そろばんに合うわけであります。  それで最多階層、最も世帯の多い階層を見ますと、サラリーマンでは年収三百万、それに預貯金三百万くらいが大体平均的じゃないか。それで計算してみますと、プラス・マイナス大体ゼロくらいになるのであります。したがって、所得の高い階層からほぼ減税効果が及ぶわけでございます。したがって、マル優課税によって増税負担が、たとえば一兆円もあるわけでありますから、いただけるというそろばんを大蔵省を初めとしてはじいておられるようでありますが、残念ながらそうはまいらぬというふうに私は申し上げたい。  なぜかというと、実際には、裏金が匿名と利殖を求めて戦略的に動いているからです。ここに、たとえば私、数百万円しか預貯金がないけれども、もし一億円の隠し金を方々に持っておったときに、いまからマル優を廃止すると言われたときに、黙って、はあ、じゃ取っつかまえてくださいと待っておるでしょうかね。そういうことを待っておると考えるのは貧乏人の発想なんであって、金持ちは逃げるに決まっています。  それで、逃げる場所は幾らでもあるということを申し上げたい。株式など無税かつ高利回りのものにくらがえしていくわけでありますが、いまマル優二百兆円のうち一〇%か一五%、すなわち二十兆円から三十兆円というのがいかがわしい金であるというふうに推定できる。これは、私だけの本に書いてあるだけじゃない。最近アングラ、地下経済の本が何冊も出ていますが、大体私と同じような結論になっているわけであります。  それで、逃げ場に困らないという一例を申し上げますと、マル優以外の個人金融資産が百七十兆円、それにプラス法人の金融資産が五十六年末に二百九十兆円ある。政府のこれはわずかに四十兆円。個人金融資産三百七十兆円を足しますと七百兆円ある。これはいわゆる金融資産だけですよ。それから、御存じの名ばかりな法人があるわけです。百五十万社とか百七十万社と言われていますが、これの九〇%が中小企業、そのまたほとんどが零細で、個人と法人との間をうろちょろしているようなものです。こういったような実態で、もぐり込める法人の流動資産が約四百兆円ある。これは五十六年の末であります。それから土地資産。土地資産は登記簿でつかまえられると思っているかもしれませんが、最近は登記しない売買が幾らでもある。それで五十七年の末、公示価格で七百五十兆円。  これだけ足しましても千三百兆円ある。それ以外に、金とか書画骨とうとか宝石類がある。これは国内でありまして、国外の場合は御存じのような海外流出がある。外貨債などは規制できるかもわかりません。たとえば、ゼロクーポン債は大蔵省が抑えた。ということはできるかもしれませんが、ユーロ円。ユーロ円というのは、いま大体七兆円あるわけですが、これがいまふえているわけです。こういうものを取っつかまえるわけにはまいらないわけであります。  そういうわけでありまして、結論的に言えば、グリーンカード制を実施したと仮定しまして、これは日銀の秘密資料というふうに私理解しておりますが、約三十兆円の移動があるというふうに、きちっとした数字が上がっております。そういうわけで、約三十兆円も動いていくわけであります。だから、結局、まじめで逃げる金もなければ逃げ場も知らないといったような雑魚ばかりがつかまるということを私ははっきり申し上げたい。もともと利子配当問題は、不公平税制の最たるものではないのですね。インフレの時代を考えたら、こんなものは微々たるものですよ。こういうところよりは、もっと問題にすべきところがたくさんあると私は思うのです。  一番問題になるのは、たとえば、年間所得二千万を超えたら財産調書を出さなければいけない。財産調書を出すべき人はわずか十万人ですよ。その二〇%の人が財産調書を出さないのです。なぜそれを徹底的に調べないのか。そうすると、罰則がないとか、いろいろなことを言いわけなさっておられるようでありますが、そういうことこそ問題じゃないかと思うのですね。なぜ罰則がないのか、おかしいと思うのです。  それから、最大の不公平税制は何かと言えば、これは当然土地問題です。土地問題を避けていけないということは常識じゃないでしょうか。庶民が買いたくても、もう土地は手が出ないということ、これは明らかであります。そういう庶民の問題だけじゃないので、農業問題が行き詰まっているのも土地問題。それから、現在のような不況になりますと、大企業ですら土地をちょろっと一部売って、何か特別利益を出して営業損益を消していくというような広い意味の粉飾をやっている。それから有価証券を期末に、三月末に売ったような形にして特別利益を出して営業損益をカバーするというような操作に土地問題が使われているということ、こういうことがいつまでも続くわけはないのであります。  それから、これは日本不動産研究所が調べた数字を申し上げますと、戦前の昭和十一年九月を一といたしますと、住宅地が大体一万二千二百倍になっている。住宅地以外の土地をなべても、平均的に大体一万倍くらいになっている。そうすると、サラリーマンの給与は二千倍、消費者物価は千五百倍、卸売物価が七百倍ですね。こういうことを見たら、いかに土地問題が重大な問題かということはすぐわかるわけですね。  御存じのように、現在の初任給と社長さんの給与を比べてみると、八対一くらいなのです。いま申し上げた戦前の昭和十年ごろを調べてみると百対一、百分の一なのですね。いまは八対一なのです。ということは、所得、フローの方は公平になったのです。公平化されてきたのです。ところが、公平化されていないのは土地問題、資産問題、特に土地問題です。だから、フローばかりつかまえようとなさっても、公平を期することはできないのです。問題は、ストックの土地問題にメスを入れなければいけないのです。これを私は前から叫ぶのだけれども、政府税調なり大蔵省なりが取り上げようとしないのです。どういうわけか私よくわからない。大蔵省に私の方から質問したい、なぜそれをやらぬのかと。巷間伝えられるところによると、いろいろな圧力団体があると聞いているのだけれども、まさかそれに負けておると私は思いたくないので、そういう意味で、土地問題にぜひともメスを入れていただきたい。  それから、いま小倉先生が大型間接税をにおわされたので、私も一言申し上げさしていただきます。  これは、いまさら述べるまでもないのであって、重大な麻薬だと私は考えているのです。こういったような麻薬にかぶれましたら最後、もう日本の重税国家は自滅の方向へ進まざるを得ない、こういうことを私は申し上げたいと思う。これは、いまやっているEC、ヨーロッパ諸国なりお隣の韓国をよくお調べになったら、いかに困っているかということがわかるわけですよ。それからアメリカでも、あのウルマン委員長が抱き合わせてやろうとした。千三百億ドルですから、日本の金にして三十兆ぐらいの抱き合わせ、減税増税をやろうとしたのですが、このウルマン委員長は落選に落選ですね。こういうわけで、非常に不人気な税金であります。しかも、これはヨーロッパを調べてみると、大体戦争の前に導入するという形になっているわけですね。  こういうような一般消費税のごときものをやるというのならば、なぜ、その前に資産課税をやらないか。西ドイツもやっているわけですよ。そういう順序というものを踏まないで、取りやすいところから取るという発想の仕方。税金というものは常に取りやすいところから取るべきだとかいう原則があるみたいですね。その原則を余りおやりになっていると、革命というものを少しお調べになったらいいと思うのだけれども、アメリカの独立にしろフランスの革命にしろ、すべて税金問題なんですよ。日本人が幾ら羊のような哀れな人間だといったところで、限度がありますよ、限度が。そういうわけで、余りサラリーマン、国民というものをばかにし切ったような形に持っていくことは、私は、日本のために非常に不幸だと考えるわけであります。  財源は、これはない、ないということばかり私新聞で拝見するのだけれども、勉強不足じゃないかと思う。たとえば土地問題をいま私申し上げたわけですが、これは不動産研究所の発表でありますが、この二十三年間に三十七・五倍になっている。したがって、公示価格で土地の増価分、値打ちがどのくらい上がったかというと、七百三十兆円に上っている。したがって、大口に限定する。大口に限定するという意味は、東京、大阪、名古屋、三大都市圏の大地主を調べてみた。そうすると、仮に全部それを売って譲渡所得があると仮定すると、十億円以上の人は一万人から一万五千人しかいないのですよ。したがって、農地の宅地並み課税のような、百五十万人なりそういった大勢の農民の方やら農家の方を敵にすることなんかないのではないですか。ああいう拙劣なことをやめて、わずかなところ、大口のところにぱっとおかけになったらいいと思う。そのかわり、失礼だけれども、こういうお金持ちには勲一等を与えていただく。はっきり申し上げて、皆さん方が勲一等いただいたってしようがないのじゃないかと思う。勲一等というのは、私はこういう方に差し上げてもらいたい。これはぜひそうしてもらいたい。  そういうわけで、私計算いたしますと三百六十五兆円。しかし課税標準というものは低くて、公示価格の半分以下でありますから、自治省の発表しておる課税標準によりますと約百兆円という数字が出ているわけです。これをいただきますと、百兆円に一〇%を掛けると十兆円。したがって、現在いただいております土地の三兆円を引きましても、七兆円ぐらいになるわけであります。  したがって、この問題はどうしても避けて通れない問題であるということと、このままの状態でいけば、かなり激しいデフレ、不況なり、さらに最悪の場合は恐慌も起こり得る可能性はあると思うのです。したがってそれを打ち消す。  たとえば、いま発展途上国の対外債務は六千億ドルを超えているわけでありまして、日本の金で百五十兆円もあるわけであります。それの大体四分の一を日本が持っておる。また、その半分ぐらいを民間が持っておる。こうなりますと、もしそこにモラトリアムでもしかれましたら、これは一つの信用恐慌になりかねませんので、したがって、必ずや金の救済があるでしょう。そうすると、大インフレーションの可能性がまたあるというわけでありまして、そういったような不況と長期停滞の可能性とインフレーションの可能性があるということ、さらにその上に重税です。重税国家になる。トリプルバードンのような形でどうして日本がやっていけるのか。私は、幸いにして国会議員でもなかったし、いわんや大蔵大臣でも何でもないので、本当に助かったと思って喜んでいるわけです。  どうも失礼しました。(拍手)
  8. 森美秀

    森委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  9. 森美秀

    森委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  10. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵委員会に四年ぶりで戻りまして、税の方の問題は大変勝手が違って、質問するのに何からどう展開するか、ちょっと迷っているのでありますが、きょうは参考人に対する質疑でございますから、非礼にわたらないように丁重な質問をしたいと思っております。  まず最初に、小倉会長に御意見を伺いたいのでありますが、税制調査会というのは、本当に国家、国民のために機能しているのだろうか。いまも両先生から、もっと先にやるべき問題がたくさんあるということを指摘をされたのであります。私も、そういう感じがしてならないのであります。優先順位を誤らずに、もっと国民的要望や期待というものにメスを入れる、そういうことが本当は税調の任務であり、機能であるべきなんじゃないのかな。どうも税制調査会の権威というか、そういうものが最近大変薄くなってしまったのじゃないか。  私も、昭和三十五年国会に初めて出た当時、中山伊知郎先生が会長の時代、いろいろな御意見を聞かせていただいたのでありますが、あのころから見ると、だんだん税調というのは力が弱くなってきて、正論は吐かなくなってきたのじゃないのかな、そんな感じがしてならぬのであります。蔵相は、おととい参議院で、権威ある税調でこれから検討を願う、権威ある税調という言葉を使ったのですが、会長さんは二年有半、もっとやりましたか、会長の任務をお務めになりながら、権威ある税調と言えるだろうか、この辺ひとつ見解をちょっとお聞かせ願いたいのであります。
  11. 小倉武一

    小倉参考人 私みずから、権威あるとかないとかと申し上げにくいので、これは、もう諸先生方の御批判によって自戒する以外にはない、こう思います。中山伊知郎先生が会長をされておられたころにも、私は税制調査会委員だったことがございまして、お話しのように、あのころは大変税制調査会も権威があったと思います。それに比べると、最近はどうかという多少疑念がないこともございません。
  12. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 というのは、昭和五十五年十一月の中期答申の中でいろいろなことを決めているのですね。総合課税化もきちっとやる、あるいは記帳上の問題についてもクロヨンとかトーゴーサンと言われるような現象を、きちっと所得課税執行面での把握差をなくすために記帳水準を高めるとか、いろいろなことをいいことも言っているのですよ。  ところが、それがほとんど実行されないのですね。五十五年十一月の中期答申が表に出てこないのですよ。どこに欠陥があるとお考えでしょうか。
  13. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ねの申告納税制度の適正な運用ということにつきましては、その後税制調査会に特別部会を設けまして検討を重ねておるのであります。検討を重ねておりますが、どうも問題が非常にむずかしいということがだんだんわかってまいっております。もし容易であれば、申告納税制度が導入されたときに、恐らくもう少し完全な申告納税制度が発足したはずなんです。しかし、どうやらそうでなかったというのを、いまになって直そうというのですから、これは各方面にいろいろの御意見が出てまいります。無論利害関係からの御意見もございまするし、また、記帳ということに大変なじまない業種、業態もどうもあるようでございまするし、それからまた、法律問題としても大変むずかしい問題を含んでおるようでございます。  まだ、そこまで詳しくは検討が進んでおりませんが、そこで申告納税制度の原点に戻って考えまする場合には、その後の経過は少し捨象しまして、申告納税制が本当にうまく実行されるということを担保するためには、どういう補強策が必要であるかということをどうしても検討しなければならぬということで、申告納税制度について整備をするという基本的な考え方は、もうすでに一、二年前にはっきり税制調査会としてほぼ認識されておるわけでありますが、具体的にそれをどう進めるかということについては、もう少し具体的に検討を進めてまいりたい。ただいまその検討の途中でございます。
  14. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 中期答申の中で実現できたのは時効の問題が手をつけられた。従来賦課権の除斥期間が五年だったのが七年になった、そのくらいなことなんですね、根本的なことでこの中期答申の中で実現を見ているのは。総合課税化も、グリーンカード実施、またこれも延期になってしまいましたね。  そうすると、せっかく税調で答申をして、総合課税化が税の公平化の前提であるという角度から総合課税をやるべしという見解が、せっかく実行しようというやさきに、これまた延期になってしまった。延期になったことについて、会長として何か特に感じませんか。あのときに会長が毅然とした態度をとって、税調答申で総合課税化のためにグリーンカードが必要なんだということをわれわれは意思確認したのだから、そういうことを数の暴力で、数によっていとも簡単に変更するようでは、私は税調会長をやらぬぞと国家国民に向かって責任をとるぐらいな、そういう会長であってほしかったのですね。まだおそくないのでありますが、御心境はどうでしょうか。
  15. 小倉武一

    小倉参考人 グリーンカード問題につきましては、これは、延期になって今後どうするかという問題にいまなっておりますが、そういったことについては私自身も大変残念に思っておりまするし、また、いま申されましたように、多少責任と申しますかのようなことも感じていないわけではございません。  ただ、グリーンカード制度が実施されるという直前に至るまでの間におきまして、いろいろの各方面からの意見が、恐らく先生方のところにも寄せられておるでございましょうが、税制調査会の各委員の方にも寄せられてまいっております。その中には、やはり傾聴に値するような御意見もないことはないのであります。したがいまして、政府あるいは政府与党の考え方いかんにかかわらず、税制調査会としましても、あの制度をそのまま強行するということについては、多少考えてみる必要があるのではないかということが、やはり多少ずつあったということも事実でございます。  したがいまして、この三年間延期法案がどうなるか、これはわかりませんが、仮に延期になりますとすれば、できるだけ早い機会に当初の趣旨ができるだけ実現されるように、そしてまた、各般の御疑問なりあるいは御不満なりに対して、どういうふうにそこを調整できるかということを考慮して、できるだけ早い機会に、当初の趣旨ができるだけ通りますような形に持っていくということが、どうも税制調査会としての責任ではないか、こう思います。もっとも、この法案が通ってからのことになりますけれども、あるいは法案の帰趨がはっきりしてからになりますけれども、場合によっては、できるだけ早い機会に今後の対策を考えてまいりたい、こういうふうに存じております。
  16. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 小倉先生、税調というのは事務局体制も大変貧弱であり、資料の収集能力もない。結局、大蔵官僚の提出するものを基礎に物を判断する、そして政治情勢の動向も大蔵省の進言に基づいていまのような、グリーンカードはまずかったような意見もあり、傾聴すべき点があったなんということをいま言ったらおかしいですよ。法律になってちゃんとできて、税調もそれを承認しておって、大蔵省もやろうということに全部決まっていたものが。実力の政治、理念の政治、のりを越えない政治というのがあるようでありますが、何でも構わない、実力さえあれば数でもって何をやってもいいということになったら、一体税制調査会は必要なんでしょうか。税制調査会というのは何のためにあるのでしょうか。そこなんですね、私が最初に権威の問題を持ち出したのは。  そうなりますと、いま言った総合課税すら足を踏み入れないでおきながら、この中期答申の物の考え方は全部崩壊ですよ。なぜなら、この考え方は、そういう公平化をきちっとやれば、結局幅の広い、これは「課税ベースの広い税目に着目せざるを得ない」ということを何カ所も言っているんですよ。ということは、これは頭の中にあることは大型間接税なんですね、課税ベースの広い税目という意味は。そのためには総合課税化をきちっとやり、租税特別措置法見直しをきちっとやりなさいということを言っているのです。中期答申はいいことを言っているんですよ。しかし、いまのような会長先生の御意見では、中期答申は全部死文になります。いいですか、それで。税調の権威はありますか。
  17. 小倉武一

    小倉参考人 死文になるかどうかということはちょっとむずかしい話になりますけれども、税制調査会答申というのは、国会の決議とか法令と違いまして、いつまで有効であるかどうかということはそもそも明瞭でございませんのです。したがって、先生御指摘のように、死文になっているに近いような部分もあるかと思います。  したがいまして、そういうこともございますので、この五十八年度の税制改正が国会での御審議を経たという段階において、たてまえのような御意見もひとつ組み入れて、できるだけ早い機会に次の中期税制あり方についてひとつ検討しようじゃないかというようなことが、別に政府からそういう指示があったとか、税制調査会でそういう決議をしたというわけではございませんが、従来の例もありますし、いまもお話しのように、五十五年度の中期税制あり方自体がなおかつ全面的に生きているという前提で今後税制改正を進めていくというわけにもどうもまいらないというような事情もございますので、新しい中期税制あり方検討するというのが現在のところは適当でないか、こういうように考えております。
  18. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私ども社会党は、土地増価税法案、すなわち土地再評価税制を提案したり、あるいはいまの資産課税応能原則をもっと貫く税制体系に直せとか、あるいは課税最低限が、外国と比較して云々とすぐ大蔵省は言うけれども、六年間もほっておいていまの状況を見たら、これはどうしても減税をせざるを得ないぞとか、いろんな法案を提案いたしているわけであります。  そういうことをきちっと、まず資産課税の問題について、なるほどこれは直さねばならぬ点がある、総合課税化の問題をきちっとしなければならぬ。そういう不公平なり不公正なり応能原則なり公正原則に反するようなことは徹底的に、右顧左べんしないで税調としては優先順位をぴちっと決めて、そういうものが処理されたら、課税ベースの広いものに着目をしない限り、五年先、十年先の日本財政はどうにもならぬのですと言うのなら、私は、話はまだわかるのですよ。そういうことをしないで、ただ課税ベースの広い税目に着目すべきだと言ったって、それはなかなか納得いかぬですね。そこのところはやはり税調として、もう少し深くしかも中期的に検討ができないのか。もしできないとすると、私は、税制調査会委員そのものの資質と経験と能力に問題があるような気がするのですよ。そういう感じがしてならぬのであります。  というのは、この税制調査会委員の臨時小委員会に所属した特別委員はマルがついているのですね、議論に参加する人。このマルのついている人をずっと分類をしてみると、小倉会長が教授で学者ですが、学者が六名、それから新聞記者OBが六名、官僚OBが三名、経済評論家二名、作家が一名、こういう構成なんですね。この先生方を、私は、この先生方が全くだめだとかいかぬとか言っているのじゃないのですが、こういう比率で、内閣が任命するのでしょうが、本当に日本税制構造なり日本財政再建なりをこれらの人たちが託されているんだという意識を持って、本気で日本の税法問題にメスを入れてくれる人たちなんでしょうか。  個々の名前は申し上げませんが、これを見ると、どうもこの選考の仕方にもちょっと問題があるんじゃないかな。小倉先生が幾ら一人りっぱでも、やはりそれを補佐し協力し議論をする人たちが、大所高所から物を論じてくれる人がいなければ、みんなそれが何かの圧力団体と結びついていたとしたら、それはいいものは出てこないですよ。これは危い、これはつぶされると思えば引っ込んじゃうのです。どうもここらが、この委員になると皆勲一等になるんだそうでありますが、勲一等にするには、これはちょっと僕は考え物な点があるような感じがするのです。  これは、会長に答弁しろというのは酷ですから答弁は求めませんけれども、会長は、大体ことしが任期でございますか、またあと三年おやりになるのですか、ちょっとお聞かせください。
  19. 小倉武一

    小倉参考人 まず、任期の方からお答えしますが、たしか委員の任期は三年でございまして、この秋で全部任期が来るのであります。  したがいまして、政府でその後その後任というと変ですが、新しい委員を任命されるということになります。もっとも、近ごろどういうわけか、余り長く一人の人が同じ委員会に所属するということは何か自粛されておられるようでありまして、長くても三期、したがって九年、九年になる人は自動的に交代するというのが恐らく政府としての方針のようでございまするので、そうなるだろうと思います。  それから、臨時小委員会の構成でございますが、これはちょっと申しにくいのですが、会長が委嘱することになっておるのです。したがって、人選が悪ければ私の責任ということになりまして、政府ではないのでございます。  御承知のとおり、税制調査会委員は、やはりそれぞれの税を納める大口といいますか、関係の方面の方も入っておられます。むしろ数としてはそちらの方が半分以上になるかと思いますが、臨時小委員会というのは、最終的に答申の起草をお願いするということに結局はなるわけでございまするので、余り利害関係が明瞭な方に入っていただくと、とても議長として収拾がつかなくなる。議長は私がなるわけでもございませんが、そういうことで、できるだけ第三者的な学識経験者、みんな学識経験者でございますが、学者出身の方、それから主要な新聞関係の論説等を経験した方、そういった方を中心にお願いをしているのでございまして、余り特定の業界、特定の利害関係に深いような方はなっていただかないように従来そうなっておるわけです。しかしながら、果たしてそれがいいのかどうかということについては、いろいろ御議論がございまするし、また税制調査会の中でも、お話しのように、臨時小委員会の構成についてはときどき疑問が発せられることもございます。
  20. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、小倉先生はことしで大体任期いっぱいで退任なされる、いまこう聞き及んだのでありますが、先生の長い識見、博学そして勇気、これは、私は常日ごろから小倉先生個人については大変な敬意と敬服を抱いていた一人なのであります。退任される前に、最も基本的な問題点をきちっと中期答申でお出しになってやめる、そういう気持ちになっていただけるものなのか。それとも、もうこの秋任期が来たらわしはさよならなんだ、そんな御心境ですか。国家国民の財政再建、経済の動向、国難と言われるほど大変な時代だと言われているこの昨今、税制調査会長の任たるやまことに重いと私は感じているのでありますが、その辺の信念とこれから対処する姿勢について、ひとつお伺いをしておきたいと思うのです。
  21. 小倉武一

    小倉参考人 釈迦に説法でございまするけれども、税制問題だけを取り上げましても、数年以前とは状況が非常に違っておりまして、自由にいろいろのことを考える余地がほとんどなくなってきた。  たとえば、早い話が、言葉の意味の理解の仕方は人によって違いますでしょうが、増税なき財政再建ということを言われておるわけであります。それから他方、こういうような財政の危機とまで言われる困難なときに、大幅な所得税減税という主張もございまするし、これは、ある程度必要性もあるということも考えなければならぬ。しかも、一般的には財政が非常に困難である。歳出削減で道を開けばいいではないかというふうなことも当然考えなければなりませんが、果たして、財政再建もでき、必要な減税もできるほどに歳出削減されることができるというふうなことは、これはできないと言っては語弊がございますが、はなはだこれまた至難なことではないかと思います。一般消費税というのは、国会でそれによらないで財政再建をすべきだという御決議もございます。  したがって、税制上とるべき方途というのは、もうはなはだ限られて非常に至難な状況になっておりますので、先生方の御意見もひとつ十分拝承した上で、この秋にでももし考えられれば考えられる中期答申には、そういう困難の中でどうしたらいいかということにつきましては、これは大変むずかしい問題でございまして、行政サービスといいますか公共サービスが低減してもよろしいという、そういう国民的な世論が起こってくるのか。それなら、それも一つの選択の方法かと思いますが、しかし、行政サービスその他がそんなに削れないということでありますれば、やはり何とか財源を確保しなければならぬ。しかも、その財源公債には依存しないということであれば、これは消費税であろうと、あるいは資産税であろうと、あるいは法人税であろうと、しかるべき増税措置を講じなければならぬ、そういう選択に迫られておるときでありまして、私ども、そちらでいまやるべきだという結論は得ておりませんし、また早急に結論は出ませんけれども、特に昨今の国会での御審議あるいは世論の動向等も考えて、できるだけ善処してまいりたい、こう思っております。
  22. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 会長は、読売新聞とのインタビューで、今月九日にかなりはっきり物を言っているのですね。この報道が間違いなら別でありますが、これは一問一答形式になっていますから、中身については間違っていないのですか。大体記事は会長の御意見をそのまま報道していると受けとめてよろしゅうございますか。
  23. 小倉武一

    小倉参考人 実は私、その記事を精読しておりませんのですが、読売新聞ですから、そう私の申したことと違ったようなことを適当に書いておるということではなかろう。言葉の一つ一つの端は別としまして、およそは私の申し上げたことが載っておるのだろうと思っております。
  24. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この中で、会長さんの御意見に賛成する点が多々あるのであります。  これは、非常にいいことも言っているのであります。たとえば、グリーンカードの三年凍結問題についての会長の御意見は、マル優あるいは利子非課税制度を全廃をするというのはどうだろうか、これは賛成できないという意味のことを言っている。何をきちっとすべきかということは、非課税限度の管理をルーズにしたままで云々するのは、存続しろとかしないとかという議論はおかしい、こう言っているのですね。だから、管理がルーズならけしからぬということを言っているわけですよ。だから、管理をきちっとしようというのがグリーンカード制だったわけですね。そうすると、グリーンカードを三年凍結するのはやはりいかぬ、こういう意味にも解せるのですよ。管理をルーズにしない法について、それともそれ以外に会長さん、何か別な名案をお持ちだったら教えてください。
  25. 小倉武一

    小倉参考人 これは、個人的な見解になってはなはだ恐縮でございますけれども、グリーンカードは、御承知のとおり二つ意味がありまして、一つは、郵貯なりマル優なりの限度管理をきちっとする。もう一つは、利子等の総合課税に移行する。  この二つが目的であったのでありますが、いまのマル優の廃止云々という問題に関連して申し上げますれば、せめて郵貯とマル優の限度管理にグリーンカード的なものを生かすということは最小限度必要である。同時に、全体としての総合課税に移行するにはどうしたらいいかという二段に分けて考えたらよろしいのじゃないか。この後の方が若干私見というわけでございます。
  26. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 会長も御存じだと思うのでありますが、大蔵省の発表ということで新聞報道がありますように、マル優貯金が二百兆円を突破した。個人貯金の五四%が非課税を利用している。これは大蔵省の発表ですね。しかも口座数が五億一千九百六十二万口。五億一千万口非課税貯蓄口座があるのですね。人口は一億一千九百万でしょう。オギャーと産まれた赤ちゃんから全部含めたって一億一千九百万になるべきなんですね、口座は。それが五億一千九百六十二万。これは目に余るんじゃないでしょうか。これが一億五千万口くらいならまだしも、五億一千九百万も郵便局と銀行だけである。それ以外にまだあるんですよ、国債の方とか財形貯蓄とか。  こういうことをほうっておいて、課税ベースの広い税目に着目して新しい税制をなんてことを考えられる時期なんでしょうか。まず、こういうことをきちっとしない限り先へ行けないんじゃないでしょうか。そこのところはどうでしょうか、大ざっぱな意見で。ある程度こういうものを公平化をしました、だから、次、それでも財政がこれから五年先、十年先はこうなるんで、ひとつ国民の皆さんよと呼びかけるならまだ話はわかりますね。私も、全然将来のことがわかっていないわけじゃないんです、いまここで論じているのは。  大蔵省が出したこれからの要償還額というのを調べてみると、四条国債は六分の五を借りかえして六分の一だけは元金償還をするというのがたてまえになっていますから、仮にこの四条公債の六分の一の償還と特例公債の十年期限が来たものを返すと計算して利子まで計算すると、昭和六十年度には十三兆三千七百億円、元利で償還しなければならないのですね。六十年度になると十三兆三千、十年後の昭和六十八年を計算してみると十九兆六千三百億円になる。  そうなると、いまのまま一体日本財政がどうなっていくかということを、税制調査会委員なら、これを一つ目標値に置いて、いま何から何をどうしていかなかったら三年先はこうなるぞ、五年先はこうなるぞということは、やや立論の根拠はきちっとできると思うのですね。それをどう解決するかということの手だてをきちっと立てないと、その場だけ圧力が来ればやめてしまう。つくった法律は朝令暮改で、その法律をつくったときの大蔵大臣がまた延期するときの大蔵大臣だなんて言って全く責任を感じない。こういうことでは税調会長としてがまんならぬのが筋じゃないかと私は思うのですね。  ですから、このマル優の管理がルーズになっているところに問題があるという点では、会長先生もきちっと着目しているわけですから、その管理をきちっとやらせるというのが国民のための税調会長じゃないでしょうか。それとも、政治の圧力というのは、多数党というのは、女を男にし、男を女にする以外何でもできるのだからしようがないや、こうなっちゃったら、一体本当の理性の政治とか道理とかというものはどうなるんでしょうか。日本の未来を考えたときに大変寒けがするのでありますが、会長は、あれやこれや、最近の動きを見てそんなことを感じませんか。
  27. 小倉武一

    小倉参考人 大変激励をいただいたようで恐縮するわけであります。  税制調査会全体としてどう考えておるかということについて申し上げるわけにもまいりませんけれども、私といたしましては、たとえばグリーンカードの延期に象徴されるような、またマル優なり郵貯の限度管理についてルーズなままにしておくような状態が続くという前提では、根本的な税制改正はできないという認識をしております。
  28. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、会長さん、この新聞報道で大変また重要なことをいろいろ述べているのでありますが、申告納税制度あり方について「これまで税調でも申告納税制見直しを最大の課題一つとして取り上げてきた。ところがいろんな方面から反対意見が出てきた。自営業者の人たちは自己申告による納税が民主的だと思い込んでしまっている。いわゆる見積もり課税はけしからんとの考えが強い。また、記帳を義務化すると、税務署が自分のふところに手を突っ込んだように思うらしい。しかし、」ここがいいんですね。「しかし、本来は記帳に基づいて納税するのが建前だ。」ここのところはぴしっと決めているんですよ、反対意見は前段にあるけれども。  そこで、「本来は記帳に基づいて課税するのが建前だ。」というこの見解を、この哲学をやはり物にしなければいかぬですね。物にしないで言うだけでは、これは税調会長というものの権威にかかわると私は思うのですね。ですから、これを物にしてもらいたいのですよ。  いま、減税する財源ないと言うけれども、いまの申告制度そのものをきちっと整理すれば、一兆円や一兆五千億円の税金は出てくるんじゃないでしょうか。たとえば、いまの日本所得税法百二十条は、所得が出たと自分が認識したら申告しなさいということでしょう。自分が認識しなければ、課税所得が出たと思わなければ申告しなくもいいわけでしょう。罰則も何もないですね。これはヨーロッパでは、アメリカやイギリスやドイツでは罰則がありますね。日本は罰則がないですよ。ですから、全く税金のことを知らない、たとえばあるバーのママが年間一億収入があったけれども、私、何も貯金ないわよ、残りがないから所得なかったと思った。したがって税務署に用紙ももらいに行かぬし、申告しなかった。それは許されるわけですよ、いまは。  国税庁の調査によると、個人事業者は農業を除いて約七百万件ある。そのうち税務申告しているのは二百万ですよ。あと五百万の業者は申告していないのですよ。所得がないと思ったからでしょう。税務署にたまたまつかまったら七年間さかのぼって取れるという法律にはなっているけれども。  したがって、そのいまの申告制度あり方というものにやはりメスを入れる必要があるんじゃないでしょうか。アメリカは一応収入基準で申告させていますね。ドイツもそうですね。ドイツの場合は、農家の場合は一年間三百五十マルクでしたかね、去年あたりの税法では。それ以上の収入のあったものは全部申告しなさい、個人事業の場合で、一人親方の大工の場合は年二千万なら二千万円以上の収入があったら申告しなさい、それが赤字であろうが所得があろうがなかろうが申告しなさい、そういう収入基準なんですね。そういう仕組みにすることによって、クロヨンという非難がなくなり、トーゴーサンという非難もなくなってくるんじゃないでしょうか。  そういうことを本気で検討し、国民の前に明らかにしていくのが税調の仕事なんじゃないのかなという感じがしてならぬのでありますが、これらの問題については、所得税法百二十条の問題についてかなり突っ込んだ議論をしていらっしゃるんでしょうか。それと、会長自身の、いまの所得基準申告か総収入基準申告か、その議論について、どのようにいままで検討してきたんでしょうか、会長の見解を聞かしてください。
  29. 小倉武一

    小倉参考人 申告納税制につきましては、どうもいろいろ誤解があるんではないかと思うのです。スタートがどうもまずかったんじゃないかという気がするわけです。スタートしてからずいぶん長い間年月がありますから、いまの申告納税制度が正しくて、それが民主主義であるというように思い込んでしまっている、どうもそういうことがあるのじゃないかという気がいたします。  したがって、ただいまの武藤先生がお話しになりました申告納税制度に関連する検討項目につきまして、税制調査会の特別部会でもいろいろ検討いたしております。記帳の義務化の問題、これはなかなかむずかしいですけれども、記帳の義務という問題についても検討の項目になっておりまするし、あるいは推計課税ということも一つ検討項目でございまするし、あるいは総収入の申告制というのも検討項目でございます。そういったいろいろのことを検討してまいっておりますが、まだ結論を得ておりません。できればこの秋までぐらいにはひとつ結論を得て、申告納税制度を本来の姿に持っていきたい、こういうふうに思っております。ただ、どうしても記帳がしにくい、記帳になじまないような業態もあるようでございますから、そういう方に納得していただくということが一番大事でございまするので、そういう点もあわせてひとつ考えてまいりたい、こう思っております。
  30. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 質問項目がたくさんあって、とても時間内に終わりそうもありませんので、北野先生と名東先生もせっかくおいでいただいて、一言も質問しないのでは非礼になりますので、ちょっとお尋ねをいたします。  名東先生、租税特別措置は不公平を生む源泉であるから、虫食いを起こすわけだから、これはできれば全部やめるべきだ、それからその中で、国家の過剰介入は危険であると。この国家の過剰介入の限界ですね。いまの現代資本主義国家というのはレッセフェールで、すべてアダム・スミス的発想に戻れというのがいまレーガンやサッチャーのはやり言葉ですが、私は、その道を選ぶべきでないという発想で、アダム・スミスからマルクスへ来てケインズに来た現今の経済政策の手法というのは、新しい経済学が生まれない限り、やはりケインズ的手法以外目下のところ名案はなかなかないのじゃないか。したがって、国家の介入というのはある程度認めざるを得ないのが当然のいまの現状じゃないかなという感じがするので、先生のおっしゃった、国家の過剰介入は危険だという、この過剰という限界がどういう考え方でいらっしゃるのか、ちょっとお聞きをしておきたいと思うのであります。  それから、資産課税、法人に対する課税あるいは土地問題に対する課税、これはわが党も政策の中に掲げているのでありますが、いまのような世界長期不況の中に突入してしまった現時点で、そういうことを本当に行ったら、経済に対してどういうマイナス効果があるのかということの計算が非常にむずかしい。私たちも、そういう点が非常に心配のために、そういう法人課税なり資産課税なりの膨大な金額を一挙に取ろうということについては、大変心配をいたすわけであります。したがって、その辺の限界をどこへ求めるかが大変むずかしいと思うのでありますが、名東教授はどのようなことをお考えになっておるか、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。  それから北野先生は、グリーンカードを延期されたのなら、グリーンカードなんかなくとも総合課税はできるはずだから、ある程度脱漏、不備な点があっても総合課税化を直ちに行うべきだという見解のようでありますが、何らかの手だてをしないと、総合課税化というのは非常に厄介なんでしょうね。郵便局の非課税貯金という制度を一方に放置しておいて、ここのところは一切名寄せが出てこないで、総合課税化をほかだけやれということになると、これもまた不公平を生むという議論が出てきたりして、やるとすれば両方同時にばしっとやらざるを得ないということからグリーンカードは出てきたんだと思うのでありますが、その辺、先生の名案があったら御教示をいただきたい。  両教授からちょっと意見を聞きたいと思います。
  31. 名東孝二

    名東参考人 非常に重大で、かつなかなかむずかしい問題でございまして、国家介入の限界点については、ノーベル賞をもらったスティグラーあたりでもいろいろな論文を書いているわけでありますが、どちらかというとスティグラーは消極的、やはりマイナス面の方を重視しているんじゃないか。その前にノーベル賞をもらったフリードマンあたりは、さらに消極的になってくるわけですね。ただ、トービン、これはかなりケインジアンなんでありまして、積極論者だと考えていいと思うのですよ。だから、ノーベル賞受賞者ですら意見が分かれている状態でありまして、そこに、現在の経済学なり経営学が完全に破綻したと私も思っているわけでありますから、諸説が分かれてくるのは当然だと思います。  ここで、私の私見になるわけでありますが、大体十九世紀までは古典派の力が強かったと思うのですね、リカード的な考え方が。もちろんそれにマルクスも入ってくるわけでありますが、それ以後は、特に戦後は決定的にケインジアンですね。ケインジアンに新しい古典派が加わってきたというか、アメリカのいまの学界を支配しているのは、大体新古典派にケインジアンが乗っているわけですね。だから、もちろんマル経なんというのはほとんど問題にされていませんし、一部の考え方それぞれありますけれども、アメリカの学界を支配しているのはそういう考え方だと思うのですが、最近はケインジアンの考え方ではもうやっていけないのではないか。たとえば、ケインジアンは哲人政治を考えています。哲人なんてあり得ない。失礼かもしれませんが、これは悪く言えば、圧力団体に弱くて金をばらまいていく、そういうような衆愚政治になりかねないということが言われているわけでありますね。そういうわけで、ケインズ的な考え方を修正するという考え方はもうやむを得ないという考え方が出ているというふうに私は見ているんですよ。  それかといって、古典的なものに返っていく、フリードマン的な完全競争という形になると、これは南の国々あたりに言わせると、赤子と大人が自由競争したら勝てるはずないじゃないかというのが、南の方の言い分だろうと思うのですよ。だから、フリードマン的な完全自由競争の原理というものはおかしいと思わざるを得ないんですよ。そうかといって、マル経が正しいかというと、ソ連なり中国の現状を見たら、マル経が必ずしも正しいとは言い切れないわけですね。  そうすると、そこに非常な混迷があるわけでありますが、私の見解では、余りいまのような形でナショナリズムになっていくと、どうしても頭の方がケインジアン的にふくれ上がってくる可能性があるわけで、これは、ひっくり返ってしまうという危険の方が大きいのじゃないか。したがって、下の庶民階層、これは私、生活者と呼んでいるんだけれども、単なる資本の操り人形ではいけないのであって、それを脱皮していく、生活者の目覚めといいますか、そういう一つの基盤ができてこなければ本物にならぬのじゃないか。だから、余り国家の方で過保護で至れり尽くせりのことをやっていると、転倒するという危険が非常にある。  これは、はっきり申し上げると、たとえば私、いま論争している伊東光晴教授と違うところはどこかというと、彼は、福祉税ならば大型間接税でいいじゃないかということを唱道しているわけでありまして、この辺が私と食い違う根本のところでありまして、福祉税というものは、単に税金で金を取って、そしてそれをばらまくということが一体福祉なのかという根本の疑問を私持っているわけです。現在の福祉国家、イギリスなりスウェーデンなり北欧を見たら、税金の半分以上も取って成功していると思えないわけですよ。  そうすると、やはり日本人というのは非常に働き者でありますから、職場とかボランティアを含めたいろいろな働く場を確保するということを考えたら、大増税によって民間の力をそいでいくとか活力をだめにしてしまう、そういう大増税政策を容認できないというのが私の結論なんです。それは古典的だという御批判を受けるかもしれませんが、古典的なアダム・スミスの見えざる手なんというものに頼っているわけにいきませんけれども、あえて言うならば、シューマッハーの言っているスモール・イズ・ビューティフルの、小さいことはすばらしいという哲学がいまないんじゃないか。ビッグ・イズ・ベターで、大きければいい。失礼ですが、大きければいいというのが国会を支配している原理じゃないかと思うんですけれども、そういう考え方で果たして乗り切れるだろうかという危惧を、はっきり言って私持っているわけです。  そういう、大きければ大きいほどいいという原理がこれから通用しなくなるんじゃないかという危惧を私は持っているわけでありまして、そういう意味じゃ一つの哲学かもわかりませんが、はっきり言えば庶民の目覚め、そういうところにまで問題を掘り下げ、日本人の勤勉とか節約だとかいうところをもう一回掘り起こしてくる、そういうものでないと、本当に立ち直ってこないんじゃないか。失礼ですけれども、政治家とか政府が、特に政府大蔵省が逆立ちして自分の権限ばかり広げようと思って、いろいろな税金を考えているらしいけれども、そんなことで国が救えるなんて私は思えないんですよ。重税国家になれば、ろくなことないと思っているわけですよ。そういうわけで、先生方は庶民の味方だから、庶民の生活防衛のための活力を何とか伸ばすようにしていただきたい、こういうように考えるわけであります。  それから、資産課税は、これはもちろんショック死するということがあり得るわけであります。私が申し上げたのは、ストックのところを探っていくということは賛成でありますが、隠し金のようなものは確かにいかがわしい金でありますが、こういうものがアメリカの場合はキャッシュの形で流れているわけですね。日本の場合はアメリカと違って、それが堂々として表の経済に寄与しているわけであります。ところが、そこにもしメスを入れたら、さっと二、三十兆の金が、たとえば株から引き揚げるとか国債から引き揚げたりした場合一体どういうことになるか。せっかくいま正常に循環しているものが大きなショックを受けるわけですね。そういうことがマイナスになるわけでありますから、先生おっしゃったように、資産課税といえども、こういう危機的な経済状態のもとにおいてショックを与えることは非常にまずいと私は思うんです。したがって、そこのところは徐々にそういう庶民の力を培養しながら、しかし大きいところの、たとえば土地を眠らせておくだけでは意味がありませんから、それは物納の形で納めていただくとか、ショックをできるだけやわらげる形でやっていくのがいいんじゃないかと考えております。  それから、結論的に申し上げると、大蔵省は、日本の租税負担率は欧米に比べたら非常に低いんだということを盛んにおっしゃるけれども、しかし、模範になるべき欧米がどういう状態かということは、いま明らかじゃないでしょうか。欧米は決して模範にならぬじゃないですか。それから、日本の社会保障料なんというものを入れたら大体三五、六%になる。三五、六%といえば、パーキンソンの法則によったら、これはイギリスみたいに平時としては破滅的状態が三六%の数字なんです。だから、決して日本の現状が低いと思えない。  それから、これは一般に言われてないことでありますが、一般会計、特別会計、政府関係予算、それに公共自治体の予算、これを含めたら五十七年度がたしか百二十九兆円で、GNPと言われておる国民総生産の、われわれの経済活動の総決算の半ばを占めておる。われわれの経済活動の成果の半分近くは何らかのお役人の手を通ってつくられているということは重大なことではないかと思うのです。  私は、これ以上そういうお役人の干渉だとかなんとかを許しては危ないと思っているのですよ。だから、私も現在が課税の大体限度であって、これから先ははっきり言って重税国家と名づけていい。しかも、その重税国家はいまのような形で、特に福祉税のような形で金をばらまけば、ますますぜい肉と甘えと癒着を深めていくということ、それから活力を減退していくということ、そういう意味で、私は、大体現状程度課税で、あとはいかに工夫をしてぜい肉を落とすか、問題はやはりぜい肉を落とす。それは、こういう時代ですから、もちろん失業を出すような形でなくて、働く時間を分ける、ワークシェアリングをやる。八時間でなくて、四時間とか三時間働いて失業を最小限で出さないようにしていく、これが大事でありますが、基本的にはぜい肉を落としていかないと危ない。このままの形で甘えと癒着が膨張していけばいくほど日本の国の活力は減退する、私はこう見ているわけです。  どうも失礼しました。
  32. 北野弘久

    北野参考人 武藤先生にお答えしますけれども、私、むずかしい問題だと思っていないのです。非常に簡単な問題であると考えております。  一つは、税務行政庁内部で名寄せをどうするかという問題があります。これは、現在原稿料等の支払い調書の名寄せもやっておりますが、重点的に各税務署でこれと思う大物をチェックするだけで結構でありまして、全部やる必要はありません。大物だけを重点的に焦点を当てて名寄せすれば可能である。  第二点は、現行法上も郵政当局に対する税務調査は可能であります。所得税法二百三十四条の税務調査権の対象になりますので、郵政当局に対しても、どんどん国税庁が調査権を発動することが必要であります。また、郵政当局内部におきましても、公務員として当然の公務からきちっとした名寄せをやる。そのためにも、仮名だとか名義の分散などをできるだけチェックする。そして、郵政当局の中央で名寄せをきちっとやることが必要であります。  それから、銀行業界におきましても、銀行は単に私的な仕事をやっているのではなくて、国家の徴税行政を分担しているわけですから、銀行の預金者は同時に納税者でありますから、そういう意味では公的な、公法的な仕事をやっておるわけであります。ですから、匿名預金口座をつくらせてはいけない、あるいは仮名預金口座をつくらせてはいけないという形で、銀行自身が自浄自律作用できちっと自粛されるということで相当程度可能になってくる。  それでも、なおだめであるというのでありましたら、この際、経済学者が言っておりますように、戦後の貯蓄増強政策について税制は応援する必要がない。税制を使って貯蓄増強を行うことはもはや合理性がなくなった、銀行などは金が余ってどうしようもないのだということが言われております。余っておるから悪いことをやっておるのだということを指摘する経済学者もおりますから、私としては、法理論上からも、もしそうであれば、少額貯蓄非課税制度であるとか郵便貯金非課税制度を採用することについて合理性がない、憲法上も合理性がなくなってくる、こういうふうに考えておりますので、もしや政府当局であるいは金融機関であるいは郵政当局で、グリーンカード的なものを導入しなければ名寄せはできない、限度管理はできないのだとおっしゃるのでしたら、この際、私も勤労国民の一人でありますけれども、少額貯蓄非課税制度であるとか郵便貯金非課税制度を廃止してもよろしいというふうに考えておりますので、可能であるということですね。そうむずかしい問題ではないと考えております。
  33. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 学者先生それぞれ御意見があり、大いに論争したいところでありますが、時間がございません。  いまのマル優を一回全部廃止して、所得五百万以下の者は年末調整で返すということをやれば、かなりのことはきちっと整理できるし、それをやっただけでも二兆円くらいの税金が取れそうですね。ですから、議長裁定で、与野党一致で所得税減税をやろうと決めたのだから、その財源が見当たらない、どうにもならぬということではなくて、あるいはまた、大型間接税と抱き合わせでなければ所得税減税は認められないという結論を出すのじゃなくて、いまの総合課税化とかあるいは総収入基準申告制度とか、あるいは記帳の義務をすべての納税者がきちっと履行するとか、いろいろなことが考えられると私は思うのですね。  大蔵大臣は、立法府の満場一致の議長裁定、決定を尊重して減税をやりたいと答えたわけですが、それも税調に諮ってということで、だんだん枠がはめられてきたわけですね。税調の意見を聞いてということなのです。ですから、恐らく予算が通ると間もなく小倉会長のところへ減税についての諮問が出るのだと思うのですが、さて、国会で決まった所得税減税、大規模で景気にもいい影響を与える減税と二階堂幹事長もおっしゃっているわけですね。この所得税減税について、会長としてのこれからの取り組む決意のほどをひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。
  34. 小倉武一

    小倉参考人 最近の国会での減税問題についてはいろいろ承知をいたしておりますが、それを踏まえて税制調査会議論したことはまだございません。  したがいまして、税制調査会でどう対応するかということについて、予断を持って申し上げるわけにはまいりませんが、とにかく昨年の暮れに五十八年度の税制改正について御答申申し上げた後の新しい事態でございまするので、そういう事態を踏まえて、政府の御意向もございましょうから、できるだけ早い機会に、いまお示しのようないろいろな税源措置なども考えた上で、できるだけ御期待に沿うような結論を得たい、また、こういうふうに税制調査会にお願いをして審議をしてまいりたいと思っております。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
  35. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 われわれは、いま租税特別措置法法案を審議しているわけでございますので、租税特別措置法の五十八年度改正について、税制調査会長として満足のいく改正なのか、それともまだ切り込みが足らぬと考えているのか。  ざっと拾ってみると、整理合理化で縮減をするもの、これをずっと見ると、特別償却制度十項目の中にも、私から見れば、もう要らぬじゃないかと思うものがかなりある。それから、準備金の積立率の引き下げ六項目、これも引き下げよりもやめていいのじゃないかと思われるものがある。  今回の法案の中で、租税特別措置の廃止は四項目しかないですね。重要複合機械装置の特別償却、中小企業事業転換の施設の償却の特例、協業のために現物出資した場合の特例、森林組合合併の登録税の軽減、この四つだけが租税特別措置の廃止なんです。あとのは全部申しわけ程度に、積立率をちょっと引き下げる、あるいは償却制度もちょっぴり率を落とす、登録免許税の軽減問題については六項目とも全部存置、廃止はない。それに加えて改善、新設、これが税調で答申をしていない投資促進のための投資減税特定基礎素材産業対策促進のための税制。自動車関係税は期限延長でありますからよしとしますが、もう一つが少額貯蓄等利用者カード、グリーンカードの延期。こういうのを見ると、税調の意思なんというのは全く無視されているのじゃないか。  「その他」のところには十四項目、十四項目の中でさらに細分化すると十三項目ごちゃごちゃいっぱい租税特別措置を認めて、二十六項目もその他の項目の中で許される。税調の方でも、租税特別措置については徹底的な見直しをするということが、ことしの答申にもあるいはまた中期答申にも書かれているのでありますが、しかし、このようなやり方で本当に租税特別措置整理しよう、廃止をしていこうという意思があるのかどうか疑問なんですね。  まさに釈迦に説法でありますが、租税特別措置法は、「この法律は、当分の間、特例を設けることについて規定するものとする。」ということで昭和三十二年三月三十一日にできた法律で、「当分の間」なんですね。当分の間がいつまでもだらだらとずっと続いていること自体に大変な疑問を持つ。どうしても恒久法にした方がいいと思うなら、ちゃんと国会で恒久法にすべきなのであって、「当分の間、特例を設ける」という暫定的な法律の精神からいっても、この程度の切り込みでは大変不満であり、足らぬと思うのでありますが、会長の見解はいかがですか。
  36. 小倉武一

    小倉参考人 租税特別措置法のいろいろの特別措置につきましては、毎年毎年ずいぶんと努力しておりまして、整理できるような項目がだんだんと減ってまいったわけであります。  したがって、近年の実績をお調べいただくと、整理合理化されている項目が減っておるということで、はなはだ御不満のことかと思うのでありますけれども、実は、大きな整理は一応済んだようなかっこうと思ったこともございます。しかし、いろいろの御意見もございますし、また期限の到来する特別措置もございまして、そういう都度整理をしてくるという状態でありますから、一年一年をとっていただくと余り華々しい整理になっていないということでございますが、これは、いまも申しましたような経過の上に立っておりますので、その点ひとつ御了承願いたいと思います。  なお、投資関係減税であるとかあるいは基礎素材産業の特別措置につきましては、こういう景況のときでございますので、やむを得ざる措置として、特に中小企業についての投資の促進につきまして特別償却を認める、あるいは基礎素材産業についての設備の廃棄あるいは集約化等について税制上の最小限度措置を講ずるということは、見方にもよりますけれども、こういう時代でございますので、やむを得ない措置として政府でお考えになったというふうに承知しております。
  37. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 参考人の先生方に余りしつこい質問をするのもいかがかと思いながら、すでに持ち時間が到来してしまいましたので、最後に会長さんから、いまの世界の経済情勢、長期不況と言われる中で、しかも、これだけの国債を抱えてしまった日本が、大ざっぱな話ですが、何年くらいをめどに、こういうことを手だてしていけば財政再建は可能だ、そういうマクロ的な指針というか、そういうものを小倉会長として頭の中に描いているのじゃないかと思うのでありますが、どんな青写真を頭の中に描いているか。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕 最後の締めくくりとして、財政再建の展望について、ひとつ参考のために税の専門家、経済の専門家の立場で御意見を披瀝願いたい、こう思います。それで私の質問はちょうど時間になると思いますので、よろしくお願いします。
  38. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ねのような基本的な大きな問題について、余り専門的にといいますか大局に立ちまして勉強したことはございませんので、お答え申し上げるようなことはございませんけれども、まず第一は、当面は歳出削減、歳出の合理化適正化ということに第一の努力が傾倒されるべきであろう。  その次は、歳入の方につきましては、税制の公平を確保する。公平の確保というのは、これは結果的には増収措置にもなるということもございますので、あるいは、そうでなくても納税環境整備して、国民全体が税金は公正に納めておるのだというような気持ちになっていただくというのが第二段である。  そして、さらにその上に立って、なお財政再建の見通しがつかないということであれば、これは行政サービスをどの程度さらに削減するかあるいは増税をがまんしていただくかということについて世論に問うて、その帰趨を見きわめた上で措置を講ずるということだと思います。  税金だけで考えてみますと、どうも税金は取る、取られるという関係一般に理解されておりますので、そうではなくて、納税者意識といいますか、しかるべき公共サービスについてはしかるべき税金を払うのは国民の義務であるという観念がもっともっと国民の間に徹底をするというようなことになるにはどうしたらいいか。これは別に宣伝とか説法だけでできるわけではありませんが、国家公務員なり地方公務員全体がそういうふうな国民の公僕であるということに徹して仕事をし、なるほどそれならばしかるべき税金は納めるのは当然であるというふうに、国民ないし市町村民が自覚していただくということが背景として非常に重大になってきておる、こういうふうに思っております。
  39. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私の持ち時間がちょうど終わりになりました。  小倉会長には、ぜひ公平、公正な税制、そしてなるほど国民が税調として毅然としてよくやったと思われるような答申を速やかにまた検討していただきますことを期待を申し上げ、お願いをして質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  40. 森美秀

    森委員長 鳥居一雄君。
  41. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 きょうは御苦労さまでございます。引き続きまして御質問申し上げたいと思います。  一番最初に、ただいまもさまざま議論の俎上にのったグリーンカード制度の今回の延期措置、具体的に法案として現在審議中でありますが、税調の五十五年の年度答申の中で明確にこの制度の位置づけがなされ、そして、その後法案が成立いたしまして今日までの経過がございました。それで、いよいよ五十八年一月一日からカード交付、こういう事態でずっと推移してきたわけでありますけれども、税調会長個人のお立場で、この今回の三年延期ということについて、どんなような所感を持っていらっしゃいますでしょうか。
  42. 小倉武一

    小倉参考人 グリーンカード制度の三年延期という問題は、私個人としてのみならず税制調査会全体としても、全体と言ってはちょっと語弊がございますが、大勢としても、はなはだ遺憾であるという気持ちでございます。  しかしながら、諸般の事情でそういうふうに政府がお決めになって、国会に法案を提出されるということになるについては、いろいろの政治情勢、政治のこともございましょうし、また、国民各層から寄せられているいろいろな御意見もございますので、あるいはやむを得なかった事情もあるかと思うのであります。  したがいまして、税制調査会としても、この法案の提出はやむを得ない、残念ながらやむを得ないという気持ちであったように思います。私も、個人としてもさように思いますが、それにしてもはなはだ残念である、こういう感じをいたしております。
  43. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 このグリーンカード制度制度化しようという背景に、二つの大きな理由がありましたね。  一つは総合課税、税の不公平が言われる中で、利子配当所得に対する課税を公平にするために、何よりもまず総合課税に移行しなければならない。それからもう一つは、少額貯蓄、いわゆる非課税の貯蓄その他この限度額管理を厳格に行う。  それで、グリーンカード制度に落ちついた背景には、何通りかの新しく導入しようという制度の長短の論議がなされてきたはずであります。まず、その論議の中の一つは仮称高率源泉徴収方式、この方法による。しかし、これは税務行政上非常に還付が大きいことなどから、どうもそぐわない。それから、二つ目の納税者番号制度、これはいわゆる国民総背番号制でありますから、完璧ではあってもコストと効果との上からいって問題がある。それから、国民の合意が得られるかという点で非常に問題が残る。ですから、三つの中のよりベターだというのがグリーンカード制度であったはずであります。  今後、もしこの法案が成立をし、グリーンカードが三年延期あるいは廃止を含めた延期であるとするならば、当初の課題の二つ、総合課税化それから限度額の管理、この二つの条件を満足させるような新しい方法を考え出さなければならないと思うのですけれども、税調会長のいま考えていらっしゃるさまざまな条件をお聞かせいただきたいと思うのです。
  44. 小倉武一

    小倉参考人 グリーンカードの三年延期の間に当然考えるべきことでございますが、どういう対案があるかということについては、まだ十分整理ができておりません。  グリーンカード制の延期なり廃止がいろいろ議論されてまいりました間に、各方面から各種の考え方が出てまいっていることは承知しておりますが、その中で、限度管理を行い、そしてまた総合課税に移行していくのだというたてまえにのっとった御意見余りなさそうでございます。したがって、これまで出ている御意見には、私個人といたしましても、こういう考え方はなるほどもっともだ、こういう考え方に即応してやってみようじゃないかというふうにはまだどうも余りまいっておりません。限度管理をし、また総合課税に移行する、そして、いろいろグリーンカードに寄せられた非難もある程度解消できるというような方途というものについて今後模索していきたい、こういう段階でございます。
  45. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ただいまのグリーンカードの問題で北野参考人名東参考人に伺いたいのですが、この三つの方法を考えてみますと、やはりグリーンカード制度以外にないのではないだろうか。一の場合、二の場合、これを考えますと、とても実現の可能性はない。このほかに一体方法があるのかと私は思うのですけれども、率直な御意見を伺えればと思います。
  46. 北野弘久

    北野参考人 先ほどお答えしましたように、私としましては、源泉徴収制度を徹底すればよろしいという考え方です。  つまり、源泉徴収制度の一番大きなねらいは、だれに幾らの収入があったかということを課税庁がキャッチできるということを保証する、源泉徴収制度それ自体によって税金を取るというよりも、その制度を通じまして課税庁がデータの入手ができるというのが源泉徴収制度の一番大きなメリットでありますから、それを生かすということですね。ただ、私などはいろいろな週刊誌などにも談話を発表しておりますけれども、千円、二千円の談話料などももらっておりますけれども、全部税務署に申告しております。これは、いずれチェックされたらわかりますから、やはり申告せざるを得ないのですね。そういうことで、支払い調書の金額以下のものであっても私は申告しておりますけれども、恐らく利子配当につきましても、分離課税をやめまして総合課税を徹底するということになれば、良識ある国民は総合課税を行うであろうと思いますので、国税庁は悪質なものだけ、また大物のものだけを重点的に各税務署でチェックしまして税務調査をやればよろしい、そこで相当程度総合課税は徹底できると私は思っております。  それから、もう一つの方法として、どうしてもだめだというのだったら、私が先ほどちょっと申しましたように、貯蓄増強のためには可処分所得をふやすことが先決であります。税制上の特定の優遇措置よりも可処分所得の増大を図ることが貯蓄増強につながっていくということは、税調で従来から言ってきたことでありまして、またその論証があるわけであります。ですから、一般減税を行う。総合課税を徹底することによって基礎控除を上げるとか給与所得控除を上げるという形の一般減税をまずやります。そうすると、人々の可処分所得がふえますね。ふえますと、全体として貯蓄増強になる。  ですから、そのためにも、もうそろそろ戦後の過渡期に導入されました貯蓄増強施策としての少額貯蓄非課税制度とか郵便貯金の非課税制度をやめてしまう。わずかばかりの利子の税金を安くしてもらうために大変なことが行われることになりますと意味ないわけでありますから、この際もう願い下げする。そのかわり、基礎控除とか給与所得控除を上げてほしいという一般減税を勤労国民は要求していく、そういう時期に来ているのではないかと思います。  私は、税制上少額貯蓄非課税であるとかあるいは郵便貯金非課税という形で貯蓄増強をしなければならない合理的な理由はなくなっていると考えておりますので、最悪の場合はそういったこともやってもいいのじゃないか。そうしますと、限度管理の問題もなくなりますし、あとは国税庁の手腕の問題にすぎない。国税庁がいかにして効率的にやるかどうか。まさに科学的な調査手法を使ってきちっとした課税を行うための努力をすればよろしいのであって、努力をするための前提条件はそろっているわけです。支払い調書が全部税務署へ来る。銀行だとか郵便局におきましても仮名を一切認めないということにしますと、簡単にできるわけであります。ちょうど、われわれが原稿料であるとか講演料の申告を全部していると同じでありまして、そういうふうにすべきである。私は、それほどむずかしい問題ではないと考えております。
  47. 名東孝二

    名東参考人 おっしゃるように、ストックの追求をやめるということは、これは確かに私の持論からしても非常に残念であります。  ただ、私が申し上げたことは、現在の非常にむずかしい情勢の中で、裏金、隠し金といえども正常に日本の社会の中で動いて機能しているわけです。これをやった場合に、三十兆円という推定があるわけです。これは日本銀行の資料であります。私は、二、三十兆の金は動くと思う。二、三十兆という金がもし移動すれば大変な事態じゃないかと思います。だから、日本銀行がおそれている事態というのは、正当に評価しなければいかぬと私は見ております。そういう意味で、そういう経済効果というよりは影響ですね。これはそれとの公平化のどっちにウエートをかけるかの問題なんです。したがって、従来私が一応これに反対を申し上げてきたのは、そういうような含みを持っておったわけです。  ただし、ではそういったような裏金なり隠し金を逃していいということは言えないので、これは先生おっしゃったように総合課税をされたらいいのじゃないかと私は考えております。それで税率を高めていき、低い方には還付する。裏金とか隠し金は、これは匿名というのが一番大事なんです。したがって私の見るところは、還付を請求しないと思う。だから、還付しなければそれでいいじゃないですか。還付を要求するものだけ還付すればいい。大口のものまで金を返してやる必要はない。だから小口のものは、まともな人間は必ず申告して還付してもらうのじゃないですか。それでいいのじゃないか、私はこういうふうに考えます。  この間も、私は竹内宏さんと討論をやったのだけれども、二人が一致した点は、そう言っては失礼だけれども、日本経済ぐらいになって、一割や二割と言うとちょっと大げさだが、多少そのくらいのゆとりがあったからといって、ぎゃあぎゃあ目くじらを立てるのもちょっとおかしいのじゃないか。韓国なんかは三〇%、ソ連なんかは三〇%オーバーしていると言われているのです。アメリカですらもう一四%という数字がある。世界的にやみ経済、特に社会主義経済は横行していると言われているわけです。私の推定では、これは大体GNPの一三%くらいですか、資産としても大体一五%からせいぜい二〇%とまりです。そのくらいのことは余りぎゃあぎゃあ言うこともないのじゃないかという感じ、一つのゆとりですね。  しかし、そういうことは道義的に許されぬとおっしゃるのだったら、デノミをやったらどうですか。デノミをやったら金融資産はがくっといく。百分の一になるのです。デノミをやったら完全に百分の一です。ただ、そのかわり株式や土地に逃げる可能性があります。これは、成功したフランスの例を見ても、やってから株式が大体六〇%ぐらい上がっていますから、これは逃げる余地は十分あると思います。したがって、財界の言っているように、償却資産だけ再評価をやってくれ。それでは困るので、やはり土地とかそういう有価証券、株式についても再評価益を出して、それできちっと税金を納めてもらうということが必要じゃないでしょうか。デノミ論議といいますか、私は、どこかでやらざるを得ないと見ているわけです。これは一つのショックを与えることによって切りかえていくわけです。ぜい肉を落とす一つの契機になるのじゃないか、こう思います。
  48. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで税調会長、税制の年度答申におきましては、所得減税見送りはやむを得ないという答えが出ておりますね。  それで、現に国会におきましては、与野党の幹事長・書記長会談におきまして、相当規模減税をやるんだ。そうなってまいりますと、減税の時期、減税規模あるいは財源、こういう具体的な話に移ってくるわけでありますが、ことしの十一月、任期前に、税調会長としては卒業論文を提出されますね。この卒業論文で、減税はやる、しかし、一方において大型間接税の導入はやむを得ない、こういうような議論が出てきやしまいかという心配を実はしているわけです。いま念頭にこれはありませんか。
  49. 小倉武一

    小倉参考人 よく巷間、所得税減税と大型間接税と抱き合わせて考えるということが伝えられております。これは確かに一つ考え方でありまして、その考え方、いまからだめだと言うわけにはまいらないと思うのです。  ただし、どうも所得税減税と大型間接税とをすぐ一つのセットにしまして税制改正をするということに機が熟しているのかどうかということになると、これは、ちょっと私は疑問があると思います。というのは、所得税減税が五十九年度というような先の話なら、これはまた、その間いろいろ要素も変わってくるという可能性もありますけれども、承るところによると、五十八年度ということになっておりますので、ことしの問題、本年度の問題でございますので、本年度中に一般消費税的な――一般消費税自体は国会で御否認になっているような形になっておりますけれども、言葉をもっと広く言えば、広く消費に着目した、すなわち消費を対象とした間接税というようなものを幅広く考える場合には、国会の御決議に必ずしも反していないということでありますれば、考え方としてはそれは考えられると思うのですけれども、本年度中にそういうようなシステムというものができて、国民なり国会の御了承を得るということになるのかどうかとなると、私どもは、そこまで判断する必要がないのかもしれませんけれども、なかなかこれはむずかしいんじゃないか。  したがいまして、何かほかにもう一つ、どちらかというようなことを考えて、そういう所得税減税一般消費税とを抱き合わせるということ以外に何か方法も考えるということでないと、やはりむずかしいんじゃないか。どちらにするかということについては、政府なり国会の御判断にまつことになると思いますが、一般消費税じゃちょっとぐあいが悪いのですから、国会で否定されておるのですから、昔から一般消費税という言葉になれておるのですけれども、幅の広い消費に着目した間接税という表現でお許し願えれば、そういうことは確かに一つ考え方であるけれども、早急の問題として、それ一点張りでいくのかどうか、若干疑念を持っております。
  50. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 確かに、直間比率のバランスが崩れているという議論、そんなところから大型間接税の導入は全く消えたという状況にないわけですね。ダブル選挙が想定され、そのダブル選挙の後に大型増税がやってくるだろう、これがもっぱらの風評であるわけです。大型間接税の導入につきましては、諸外国でさまざま禍根を残している。  もうちょっと詳しく伺いたいのですが、韓国における大型消費税、大型間接税、アメリカの場合、ヨーロッパで、名東先生のお説がありましたが、どんな状況になっているのか、最後に伺っておきたいと思うのです。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
  51. 名東孝二

    名東参考人 まずヨーロッパでは、これは各国がECに入るという加盟の条件になっていまして、たとえばイギリスが入ってくるという場合にやはりやったわけですね。  ただ、イギリスの場合は良心的に、いわゆる非課税と言われているものじゃなく、本当の無税になるやり方ですね。こういったようなゼロレーティングというのをやりまして、これは非常に珍しい例なんでありますが、それ以外では輸出だけなんですよ、本当の無税は。したがって物価が高騰するわけですね。それから失業が襲ってくるというような形で、いまでも税収に苦しんでいるのですよ。率がどんどん上がっていくわりには税収が入ってこないというようなことで、これはかなりいまでも苦しんでいる。  それから韓国の場合は、七七年七月一日に導入したわけですが、前年の七六年のときには一五・六%という実質成長率、日本といえども実現しなかった世界最高の成長率を実現したのですよ。ところが、その翌年七月一日から導入しましたら、そうしたら物価上昇ですね。卸売から消費者物価も公式には大体一〇%と言われているのですが、しかし、民間の感覚物価と言われているのは、その大体倍だと言われています。大体二〇%くらいの上昇があったわけですね。そして、それを契機にまた長期停滞、オイルショックもありましたけれども、もう長期停滞でがっくりで、今日に及んでいるわけです。  そういうようなわけで、これは実施した国々を調べてみると、非常によくないということが言える。アメリカの場合は、これはもう御存じのように、小売段階では州によってやっておりますけれども、一般消費税の形はないわけです。  それから、一般消費税と大型間接税を区別する、私に言わせると、これは詭弁というかごまかしじゃないかとしか言わざるを得ないので、そういうことを言っていると、これは別物だなんて言っていると、税金の無知識じゃないか。全くそれはおかしいと断ぜざるを得ないのですね。そんなことを区別している国は、どこに行ったってないですからね。したがって、これはもう同じだと考えた方がいいと思う。一番古典的というか伝統的に考えやすいのは、やはりEC型付加価値税でありますから、これを具体的には一般消費税の典型と見ることが常識だと思います。  したがって、これをやっていった場合に、たとえば日本は、最初は五%でもどんどんエスカレートし、日本人がのめり込んでいくことは、これは国債の発行は御存じのように昭和四十九年から五十年でしょう。わずか八年間の間に国債発行が百十兆円、こんなのめり込んだ国は、先進国の間にないじゃないですか。同じことがエスカレートして、大型間接税という甘き汁が出てきたら、圧力団体がそれをほっておくはずなんかないじゃないですか。いまでも赤字になっているのに、私に言わせると、大型間接税を導入して赤字をなくするなんてナンセンスだ。なぜならば、甘き汁が出てきたら、圧力団体がよけいに獲得しようと思って一生懸命になって、赤字がふえこそすれ、赤字なんかなくなることないですよ。  それから、税収欠陥が起こってくると私は思う。それで五%で大体四兆円の税収があるというようなお考えらしいけれども、私は、相当な税収欠陥ががくっとくると思う。そうすると、その穴埋めをするためにまた赤字国債を出す。要するに麻薬ですよ。そんなものに手を染めたら、もうそれは逃れられませんよ、麻薬性は。したがって、不公平を正すとか――何が不公平を正すだ。現在の直接税課税のゆがみなり虫食いを直しもしないで放置したままで、さらに悪い間接税を上塗りして何が不公平を正すことになりますか。まず現在の現行税法をきちっと正すべきだというのが持論なんであります。どうも失礼しました。
  52. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ありがとうございました。
  53. 大原一三

    ○大原(一)委員長代理 米沢隆君。
  54. 米沢隆

    ○米沢委員 本日は大変御苦労さんです。私に与えられた時間はわずか二十分でございますから、大きく分けて三つだけ御質問したいと思うのでございます。  第一の問題は、所得減税の問題です。  御案内のとおり、昨年も大変苦労しまして、ことしやっと二階堂幹事長等が景気浮揚に役立つ相当規模のものをやろう、そこまで政治的に決着をして、いまからまた財源探しが大きな問題になるわけです。われわれとしても、今度また衆参同時選挙等があったら、選挙の前はよろしくおっしゃっているけれども、終わってしまったらまたおためごかしに財源がないという理由でオシャカになるのじゃないかとか、いろいろ心配しているわけでありますが、各党とも、そういう意味では財源探しという問題については頭の痛い問題であることは率直に言って事実だと思うのです。先ほど北野先生、名東先生の方から、いろいろと増収策というのですか、そういう面について御示唆をいただいたのでありますけれども、かなり抜本的な税制改正をまたねばそう簡単にやれるものじゃない。税制改正というのは、よきにつけあしきにつけ国民各層の合意なしにはそう簡単にやれないわけでありますから、やはり時間のかかる問題だという一面も私はあるような気がするのですね。  したがって、現実的な問題として、当面五十八年度の財源措置には大体間に合わない部分がかなりあるように私は聞いたのですが、五十八年度に間に合う財源として、たとえば一兆円ぐらいを調達するとすれば、もし皆さんが大蔵大臣だったら、どういう措置をされるのか、特に税源等について優先順位をつけて御教示いただければ、三人の参考人の方に聞かせてもらいたいと思うのでございます。  小倉会長の方は、実際に税調の会長をされていまして、税制改革がそう右から左に簡単にさっさとできるものではないというのは実感としてお持ちだろうと思うのでございますが、そういう意味では、小倉会長に答えていただければ五十八年度はまあ無理だろうという話の方が先に出そうでありますが、五十八年度に一兆円ぐらいの減税をやるという前提に立てば、小倉会長としてどういう措置をされるのか。  参考までに、三人の参考人の先生に御教示いただきたいと思います。
  55. 小倉武一

    小倉参考人 ただいま御質問の中にございましたように、いま五十八年度中に一兆円の増税を図るという措置は、私ども思い浮かびません。  それから、もう一つつけ加えますと、五十八年度の税制改正に当たりまして税調で審議いたした場合に、大型増税はしないという前提で審議を進めた関係もございまして、そういったたぐいの数千億以上の増税になるようなことについては全く討議をいたさなかったということもありまして、そうでなければ、そのような討議の中からこういう意見もあったという御披露もできるのでございますが、残念ながらそういうこともございませんでした。いままた考え直しても、とっさに名案は浮かばないので、はなはだ申しわけございません。
  56. 北野弘久

    北野参考人 お答えします。  これは非常にむずかしい問題ですが、私は、赤字公債は絶対に発行してはいけないと考えております。一たん発行しますと、それが既成事実になりますので、それを下回る財政規模をつくることはむずかしくなってくるということで、一九三〇年代の高橋是淸財政に照らしまして、赤字財政はぜひ避けていただきたいということです。  あと、歳出の合理化が残っておりますが、もう五十八年度予算が出て恐らく通過しますので、すぐには間に合いませんので一兆円のあれに間に合いませんが、私としては、税制改正ですぐできると思っております。これは税調会長の勇断をもって、日本の非常時であるということを考えていただきまして、中曽根さんとは違った意味日本の運命を決定する年であるということを考えていただきまして、五月にでも早急に答申を出してもらう。それは簡単にできます。  一つは、現在の資本金十億円以上の大法人に限定しまして軽い累進税率を採用する。これは、法律の一部改正をすれば簡単にできまして、六月一日からでも実施すれば可能であります。五月に答申を出して、すぐ法律案を国会に提出してもらう、そうすると六月一日から実施できるということですね。それを見込んだ上で、来年度末までの間に政府としましては財源確保が可能であります。  それからもう一つは、法人土地財産税を早急に法律案を、これは新規制定ですけれども、導入する。それで、税務署の相続税評価額は決まっておりますから、それは税務行政上もすぐわかるわけでありまして、各税務署の相続税評価額を基礎にして、土地を中心とした法人財産税を応急措置として導入する。資本金十億円以上の法人につきまして土地財産税、税率を一%ないし二%くらいでも、控え目に見積もって三兆円や四兆円の税収が入るという試算がいろいろな団体で発表されております。ですから、それを実行することは可能であります。これは簡単な条文二、三カ条あればできることでありまして、税務行政上も簡単にできる、一々財産価額を調べたりすることは必要ありません。土地の権利に限定しますと台帳に全部載っかっておりますから、表現された財産でありますので簡単にできるし、場合によっては、有価証券も表現された財産でありますので加える。資本金十億円以上の法人はそう数多くありません。  これを二つ早急に実施することによって年度内の一兆円減税は可能である、こういうふうに考えております。
  57. 名東孝二

    名東参考人 いま北野先生がおっしゃったのは、北野先生が属している国民税調というのがありまして、これは俗称かもわかりませんが、そこでいろいろな試算がありまして、何兆円というものが出るということを私もよく知っております。ショックを与えないという形にすれば一兆円くらいは優に出てくるのじゃないか、こういうように思います。  その前に大事なことは歳出のカット、特に今度の第二臨調が失敗した補助金、ここのところを、一般会計だけで十五兆もあるわけですから。今度、全民懇ですか前の政策推進労組会議という組合があるわけですが、ここの良心的な調査でも、約三分の一はむだ遣いだということを指摘しているわけですよ。かなり詳細な項目を挙げて指摘しているわけです。だから、そういうぜい肉を落としていく方が大事なんで、甘やかすばかりが能じゃないと思うのです。  ただ、いま御質問のように税収はどうかということになれば、これは、まず私が挙げたいのはやはりキャピタルゲインですね。土地問題を含めまして放置されてきたキャピタルゲイン、具体的には所得税法第九条でたとえば株で幾らもうけても原則としては無税ですね、こういったようなことがキャピタルゲインとしてあるわけで、土地問題もキャピタルゲインとして入っているわけであります。そういったようなところ。  それから、私再三申し上げたように、現在のところ、年間所得が二千万円を超えたら財産調書を出さなければいけませんね。財産調書は御存じのようにかなり詳細なものなんです。二〇%もあれを出さない人間がおるのを放置してはいかぬです。まずこれを中心に追求すべきだと私は思うのだ。現在、出さない人も含めまして、少なくとも十万人と言われている。そうすると、年間所得二千万もあるような人だと、ストックは、財産は大体五億円ぐらい持っているのが平均じゃないでしょうか。そうすると、それに十万人掛けると五十兆円ですよ。その中で、私の推定では、まあどう見ても五兆から七兆五千億円ぐらいはいかがわしい金じゃないかと思う。ここにメスを入れることが先決じゃないかと私は思うんですよ。そうすれば、一兆やそこらぐらいは出てくることは、そう問題じゃないじゃないか。  もちろん、そういうあたりは政治的な権力と結びついているから抵抗はあるかもしれませんがね。しかし、数から言えば、これはごくわずかな人間ですよ。一握りの人間じゃないですか。だから、広く残くなんて、そういうのがかっこ悪いんだな。そういうことはおかしいですよ。広く浅く、それで召し上げるというような考えじゃなくて、やはり雑魚をつかまえるよりは大魚をつかまえなければいけませんよ。雑魚を幾らいじめたって、それはもう苛斂誅求になるので、大魚は少しくらい削ったって、まだ残った方が多いんですから。私の申し上げているのは、二〇%取ったと言ったって、まだ八〇%は残っているんだから。そうでしょう。それで勲一等もらえたら、かえって感謝されるんじゃないでしょうか。だから、そういうことは余り遠慮なさることはないんじゃないかと思うのです。これは、非常に責任のある政権党である自民党さんに特にお願いしたいと思うのです。
  58. 米沢隆

    ○米沢委員 所得減税のための財源について、当面間に合うものとしていま御教示いただいたわけでありますが、北野先生の方は、資本金十億円以上の法人に軽い累進税をかけるあるいはまた土地財産税を創設する、こういうお話でしたね。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕 いま名東先生の方は、も少しキャピタルゲインに着目をして税の充実を図るというのですが、そういうことと財産調査をもう少し徹底的にやれ、こういうお話だったのですが、小倉会長、いずれは所得税減税について税調に諮問がなされると思うのでありますが、いまの両先生のお話等について、何か会長として所感ございますか。
  59. 小倉武一

    小倉参考人 両先生のお話に傾聴しておりましたけれども、内輪同士と言うと変ですけれども、余りここで参考人同士の議論になったのではかえって御迷惑でございますし、また私、議論するほどの能力もございませんが、いまここで所得税減税のために企業課税を強化するということは一つ考え方でございますけれども、これは、もういまの企業課税がなかなか重くてこれ以上の企業課税はむずかしいというのが、これまでの最近の様子でございます。  そして、たとえば土地の問題、まあ資本金十億程度以上のものに限られているようでございますけれども、土地について課税をするということは、まだ所得になっていない、売って所得になるのは法人税の対象になるわけですけれども、まだ未実現のものにつきまして、帳簿価額かもしれませんけれども税を取るというのは日本では全く例のないことで、恐らく急速にそういうことについて討議をし結論を出すということはなかなか容易ではない。考え方としては、これは党の方でも、社会党その他の党でも恐らく土地の増価税というようなお考え方がありまして、承知はしておりますが、これはなかなか採用しにくい税制ではないかというふうな感じがいたしております。そういうわけで、なかなかむずかしい問題があるかと思います。  また、キャピタルゲインにつきましても、これまた多年懸案の問題でありまして、いまのキャピタルゲインについての税制が公正であるというふうには言い切りませんけれども、まあここですぐ所得税減税の身がわりにそういう税制を考えるということも、なかなかそう急には結論が出ない問題ではないかというふうな感じがいたしております。
  60. 米沢隆

    ○米沢委員 またことしの所得税減税もかなり難航するような感じでございます。  それで、第二の問題としてお尋ねしたいのは、例のアングラマネーの問題です。名東先生の書かれた本も買ったばかりでまだ読んでおりませんが、アングラマネーをどう掌握するか、あるいはどう管理するかという問題は、これから大変重要な問題になるような気がするのです。  そういう意味で、特に税源等の関係ではフローだけではなくストックにメスを入れよということで、資産課税を強化しろという議論に発展しておるのですが、このアングラマネーを掌握する方法として、アングラマネーに課税するという方式は、資産課税を強化すればある程度掌握できるものでございましょうか。
  61. 名東孝二

    名東参考人 それは理屈としては、確かに資産課税を追求していけば、まあある程度は掌握できるだろうと思うのですよ。しかし、アングラマネーなり地下経済というものがなぜ発生したかという、その理由を考えたら一番わかるわけです。  これは、はっきり言うたら政府に対する、特に重税国家に対する不信感なんですよ。たとえば、イタリアが非常に盛んだと言われていますが、イタリアはもう政権が一年もしないうちにどんどん倒れていくというわけでしょう。それからソ連がそうでしょう。ソ連は、まあ安定政府か何か知らないけれども、もうがんじがらめになっているでしょう。そうすると、やみ経済が潤滑油になっているわけでしょう。要するに政府の無能力、統制の厳しさ、不信感、重税感。これはアメリカでもそういう統計が上がっているわけです、きょう私、資料を持ってまいっていませんけれども。そういう明らかな調査がなされているわけですよ。したがって、強化し追求していけばいくほど、たとえばはっきり申し上げたら、アメリカみたいに全部背番号にしたら地下経済はなくなるかとおっしゃるかもわからぬけれども、アメリカがどうです、ちゃんと背番号制になっているでしょう。それにもかかわらず、キャッシュを中心にして日本よりも少し多いくらいの地下経済が繁栄しているじゃないですか、マフィア産業が堂々として。  ああいうことを考えたら、幾ら政府が逆立ちしたって、私はそんなにつかまるとは思えない。なぜなら、独裁の韓国ですら実名登録制、日本のグリーンカード制ですよ、それが見送りという状況になっているでしょう。韓国みたいにとっつかまったら死刑になるかもしれぬような国ですら見送りになっているのですから、それをどうして国税庁がつかまえ切るのですか。私聞いてみたいものだ。断固地下経済を撲滅できるというんだったら、私は撲滅してもらいたいんです。できるものですか。韓国でできないことが何でできる。もしやれるというんだったら、やってもらいたい。  だから、それはある程度はつかまえることはできるけれども、その場合に下手をすると、ここでも、地下経済の中でもどちらかというと小物だったりまじめな方がつかまって、本当の大物は逃げたりして、そういうことが起こるのじゃないですか。本当のつかまえたいやつは逃げてしまって、やみ経済の中でも小物がつかまる、こういうことになりかねないというふうに考えるわけです。
  62. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、社会主義国のやみ経済資本主義国のやみ経済はちょっとニュアンスが違うのじゃないか、こう思うのですが、結局、やみ経済いわゆるアングラマネーの存在が国民の目から見てよくわかるのですね、うまくやっておるという。私は、それがやはり税の不公平感の温床だという、そんな気がするのです。そういうものを放置しながら、グリーンカードだとか総合課税だといっても、税制会長、何かむなしい感じがするのですね。  そういう意味で、おっしゃったようにむずかしい問題かもしれませんけれども、事実このアングラ経済が国民の目に見えて、うまくやっておる、そしてあの連中はうまく徴税を逃れておる、あるいはわからぬままに肥え太っておる、そういうものを放置しておりますと、少々の税制度を変えたところで、国民の不公平感みたいなものは、ますます未来永劫に続くのではないか、そういう感じがするのでございまして、税調としても、このあたりに重大な関心を持っていただいて、やはり所得の把握等について何かいい方法を考えていく、そういう研究をなさる必要があるのではないか、それが第一点でございます。  それからもう一つは、御案内のとおり、産業のソフト化などと言われまして、第三次産業がどんどんはやっていきますと、所得の把握みたいなものが従来の方式ではどうもつかまえ切れない、いわゆる経済の実態と徴税体制とが、そごがどんどん大きくなりつつあるのじゃないか、そういう感じがするのでございまして、そういう意味では、経済の実態を詳細につかまえ得る徴税体制といいますか、そのあたりの御研究もぜひ御一考をいただかねばならぬ問題ではないか、こう思うのですが、税制会長、いかがですか。
  63. 小倉武一

    小倉参考人 アングラマネーの問題は私よく存じませんけれども、どうやらグリーンカード制度一つの契機になってあれが論議されるようになったということで、思わざる副効果がグリーンカード制度から生まれたような感じがいたします。  無論、アングラマネーがそのままでいいというふうには思っておりませんし、税制の面からも、そういう問題について適切な措置を講じていくということは、非常に重要なことだと思っております。といって、余りにもいろいろと国民の人権が阻害されるようなことになるというようなことも避けなければなりませんので、両方を考えて善処していくという必要があると思います。  それから、第三次産業と申しますか、従前の第三次産業とは違った新しい第三次産業が非常にウエートが高くなってきておる。税制上から見ても、この辺の第三次産業というか、むしろ第四次産業と言った方がいいのかもしれませんが、どうもこれについての実態の把握ができていない。これは、税制上うまく所得が把握されていないとか法人税の問題がうまく処理されていないという問題のほかに、国民経済としても、その実態がうまく把握されていないという傾きがどうもあるのじゃないかと思います。したがいまして、その辺の新しい第三次産業についての実態の究明あるいは把握ということは、国全体として取り組んでいただいて、税制上も公正な税の実現に努力してまいるということは現下非常に必要な課題になっている、こう思っております。
  64. 名東孝二

    名東参考人 一言。いまのサービス経済化、これは確かにおっしゃるとおり重大な問題だろうと思うのです。  それともう一つは、やはり金融資産が世界的に非常に多様化してきましたね。これが特にGNPをしのいで、個人金融資産がいま大体一・四倍くらいになっています。これが原因ではないかと思うのです。  それから、日本の地下経済の特徴は、これは世界的にも共通なのはやはり権力と結んでいるのですね。ソ連ではKGBと結んでいるわけです。日本の場合でも、そう言っては失礼ですけれども、やはり権力と結んでいるのですよ。しかも、日本の場合は公然と法律で優遇されている。そういう法律で優遇されている者ほど脱税しているという疑いがあるわけです。  たとえば、具体的に例を挙げると、お医者さんのごとき場合です。非常に優遇されているわけでしょう。そうすると、そういう人たちほど合法的に優遇されていると思うと、また陰でも――だからはっきり言えば、節税と逃税と脱税が区別がつかないのですよ。だから摘発となった場合、恐らくその境界線が非常にむずかしいのじゃないですか、もう堂々としてやっているのだから。しかも日本の場合は時効があるでしょう。だからソフィア・ローレンなんか、あれは時効だったらとうに完全につかまらないのだけれど、イタリアだからつかまる。日本だったらつかまらない、時効で逃げているわけですよ。  だから、日本の地下経済というのは、失礼だけれども、政治権力特に法律と結びついた合法的なものとの間がうまく渾然一体になっているのです。その点でも、失礼ですけれども、政治資金が一〇〇%無税でしょう。これもやはり問題になっているわけです。なぜ政治資金が一〇〇%無税なのか。そこにも一つの温床があるのじゃないかとか言われているわけでありまして、ひとつお考え願いたい、こう思います。
  65. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  66. 森美秀

    森委員長 蓑輪幸代君。
  67. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 どうも御苦労さまでございます。  小倉会長にお伺いしますけれども、今回の租税特別措置税制改正は、最初に予想されていた以上にしぼんでいるという感じがするわけです。退職給与引当金とかあるいは印紙税の見直しとか、いろいろ報道されていましたけれども、そういうのは見送りになってしまって、それで大企業は大変喜んでいるのではないかと思うわけですが、財界にとってのいろいろな都合はもちろんあろうかと思いますけれども、税調としては、そういうのにとらわれずに公平に適正に課税するという立場で、この租税特別措置の厳格な見直しというのが課題だったはずだと思うのです。それをやらなければ、真に財政危機を克服することもできないし、国民の税の不公平感というのもなくならない、こう思うわけです。  そういう点から見ますと、こんなに小規模になってしまったのは、増税なき財政再建という意味が、財界側から見ますと、こういう租税特別措置を廃止することも増税になり、いかなる形でも増税はまかりならぬという姿勢があって、そしてそれが税調にも反映したのではなかろうかと思いますけれども、その辺での税調の受けとめ方は、どういうふうだったでしょうか。
  68. 小倉武一

    小倉参考人 御指摘のように、確かに、増税なき財政再建というのが、新しい税目を起こして増税をするということのほかに、租税特別措置改正によって増税になるというのもやはり増税の範囲であるということで、租税特別措置見直しが必ずしも十分でなかったという点は、結果としては否定できないと思います。  ただ、税調としては、だからといってあきらめておるわけではございませんので、たとえば退職給与引当金などについてはなお懸案として、ペンディングの問題として、今後さらに検討して圧縮を図っていくというような方針には変わりございません。  まあちょっと、臨調の答申なり臨調の討議を批判するわけでもございませんが、増税なき財政再建ということになれば、それぞれの利害関係者がそれぞれに増税なきというふうに理解されますので、税調としては大変迷惑しているとむしろ言ってもいいのじゃないかという気が実はいたします。まあ解釈はいろいろできるわけでありまして、政府政府なりに、臨調は臨調なりに理解しておるのでしょうが、国民各位にとりますと、国民各位がそれぞれに増税なきというふうに理解されるおそれがありまして、こうなると、税制としては、減税以外にあるいは現状以外に考えようがないということになるので、あのスローガンは、税調としては大変迷惑なスローガンだというふうに感じております。
  69. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 増税なきという理解が、それぞれに自分にとっての増税が困るというふうに理解されるのは困るというお話ですけれども、結果を見てみますと、財界側から困ると思ったその増税は見送られて、それで国民にとっての実質増税と言われる所得減税はこれも見送るとなっているというふうになると、何のことはない、財界の要望は実現されて、庶民は増税をひっかぶっているというふうに私どもは思わざるを得ないわけですね。そうした中で、今後の税調のあり方としても、やはりそういう国民の世論を踏まえた緻密な論議をしていただく必要があろうかというふうに思います。  そして、これに関連して、減税を求める国民の世論ということで、国会でも、景気浮揚に役立つ相当規模減税という話がされましたけれども、規模財源も時期も方法も明らかになってないという中で、すでに論議がありましたように、これがてこになって、選挙明けに一大増税が、大型間接税の導入というのがおっかぶさってくるのではないかというふうに大変心配をせざるを得ません。  これに絡んで、昭和五十四年の十二月、国会の決議ですね。いわゆる一般消費税(仮称)という方法によって財政再建は行わないという決議がされております。私どもは、この決議というのは、一般消費税(仮称)というふうに厳密に限定されたものという意味ではなくて、一般消費税を否定するというその国会の意思というのは、一般消費税タイプの、付加価値税であろうとも、それに似たり寄ったりの税制について、それが物価引き上げたり、あるいは税の逆進性を強化したり、あるいは税務実務の繁雑化、国民にとっての大変な負担ということで、こういう税制をとらないというふうに国会の意思が明らかにされたと理解をしているわけです。  ところが、最近の大蔵委員会の論議などでも、大蔵大臣が、一般消費税(仮称)、これだけが国会が否定したものであって、それ以外のものであれば、EC型の付加価値税なども検討すべき対象として考える、それを税調に検討してもらうという姿勢を明らかにしているわけですね。私は、こういう国会決議の受けとめ方はいかがかというふうに思いますし、先ほども先生からお話がありましたように、こんなものはEC型付加価値税であろうと一般消費税であろうと、いわゆる大型間接税というのは同じだというふうな御意見もお聞きしましたけれども、税調の会長として、国会決議というのはどのように受けとめておられて、税調の審議の中でこれに関する議論というのはどうされたのでしょうか。
  70. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会におきましては、昭和五十四年の暮れでございましたが、国会の決議を受けまして、一般消費税というのは国会の決議の次第もあり、これによらないで、別途の課税ベースの広い間接税についてなお今後検討したらどうか、こういう趣旨であったわけであります。したがいまして、字句にとらわれた一般消費税(仮称)というのによらなければ、ほかの、幅の広い、課税ベースの広い間接税、消費に着目した間接税は検討してもよろしいのではないか、こういうのが税制調査会考え方です。この点は御質問にございましたとおりです。  ただ、私自身考えますのに、一般消費税(仮称)がいけないと単純に国会の決議では言っておられるのじゃないのですね。その前に、一般消費税についてまだ理解が得られてない、問題がある、そういう理由のもとに一般消費税によるべきではないというふうに申されておるわけです。したがって、一般消費税であろうと他の付加価値税であろうと、あるいは別途のものであろうと、国民の了解が得られ、そして問題がある程度解消するというふうなうまい仕組みができますれば、これは国会の御決議には違反していないのじゃないかというふうに実は思うのです。これは私、個人的な見解で、政府の見解でもないし、税調の見解でもないですけれども、あの決議によっていわゆる――一般消費税というのは、本当は名前がよくなかったわけですね。固有名詞にすればよかったわけです。一般的に幅の広い、消費に着目した税ということで、あれは普通名詞であったはずなんです。税制調査会でも、初めの審議のころは、あれは普通名詞であって、いざ答申をするときには固有名詞をつけようというはずだったのですが、余り一般消費税、一般消費税と言いならしたものですから、名前を別にするわけにいかなくなったという経緯がありまして、はなはだうまくなくなって、考えようによっては、お話しのように、一般消費税(仮称)のみならず、課税ベースの広い間接税、消費に着目した間接税一般がいけないというふうに理解されるようになりますと、今後の税制問題としても、これはなかなか困難なことになると思うのです。  と申しますのは、税制の根幹は、所得に着目した法人税所得税、この二つでございます。したがって、逆に、所得税減税じゃなくて、増税が必要であれば、所得税増税をしなければどうにもならないといったようなことになりかねない。もし、財政再建のためにあるいは行政サービスの充実のために増税が必要である、増税やむないということが、行政整理といいますか、行政改革の後になおかつそういう事態になった場合に非常に困る事態になってくる。もう少し、そこは弾力的にお考えになっていただくということがどうも必要じゃないかという感じが率直にいたしております。
  71. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 会長個人の御意見ということで伺いましたけれども、それはちょっと私どもは納得できないわけですね。  それで、一般消費税という名称をたまたま使ったけれども、大型間接税を含めて、EC型付加価値税を含めて、一般消費税全体について理解されては困るのだというふうに言われますけれども、むしろ国民的にはそういうふうじゃなしに、大企業に対する優遇税制はいつまでも放置しておきながら、こういうふうに、広く消費に着目した課税ベースの広い大型間接税というようなものをどっと国民にかけてくること、そのことに国民はやはり異論を差し挟み、反対をしているわけです。私は、今後の税調の中でやはりもう一度その辺のところを、会長は、いま、たまたま理解が得られてない、国民の中に理解が得られれば、そういう税の実施ということもあり得るというふうに理解してもらわなければいけないのだとおっしゃいましたけれども、理解をすればするほど、私は、やはり反対が広まるものだというふうに思っておるわけで、国民の理解を深めていただいて導入をやめていただきたいということを強くお願いをしておきたいと思っております。  それで、北野先生と名東先生にもちょっとお伺いしたいのですけれども、いま税調会長の御答弁をお聞きになっていらして、先生方はちょっといかがかというふうにお思いになると思いますけれども、その辺についての御感想をそれぞれお聞きしたいと思います。
  72. 北野弘久

    北野参考人 私、大変微力ではありますけれども、税金の学問を三十年間やっておりますが、先ほどから聞いていて、非常に驚くことばかりが国会で論議されている。  たとえば、先ほどの土地増価税だとか土地財産税の問題につきまして、所得時に実現してないから、未実現であるから課税しちゃいけないという議論があるのだということを小倉会長がおっしゃったのですが、この点は誤りじゃないですか。財産税を論じているわけでありまして、課税客体、課税対象は財産でありますから、財産の価値に課税するのですからね、所得の未実現など論ずる必要はないのであります。別にインカムタックスを論じているわけではありませんから、その点では会長の考え方は全く誤りである。  それから、いまの一般消費税ですね。この一般消費税というのは、個別消費税に対する概念なんですね。学問上の租税分類の一つでありまして、物品税だとか酒税だとかという個別の消費税に対する一般消費税ですね。租税分類の一つの方法なんですね。これは学問上の概念です。理論上の概念でありまして、その一般消費税にはいろいろなパターンがあるのですね、いろいろなスタイルがあるのです。現実の税制で採用されます一般消費税にはいろいろなスタイルがある。  政府が目下考えておりますような大型間接税は、もちろん、だれが見たって、どの専門家に聞いても一般消費税でありまして、要するに、消費支出行為に対して個別に選別をして課税するかどうかという問題なんです。物品税は、たとえばテレビというものは高級品である、なくても生活できる、そういう認識に立って、テレビを買うだけの力がある人は、また物品税を納めることができるだろう、ピアノでも同じですが、そういう、個別に課税物品を選定しまして、個別に消費行為を選定しまして課税の対象にしているのですね。これが個別消費税です。  ところが、一般消費税は、それを個別に選定しないで、広く支出一般課税対象にしていこうという、ですから、一般消費税法をもしつくるとしますと、課税物品を特定できないのですから、税法の条文は一条で終わってしまうのですね。そうすると、納税者が、国民がこれこれこういうふうな支出をした場合全部課税するという、そういう条文でいいわけですよ。  そういうことになりますから、一般消費税の概念は、もともとは租税の分類上の概念であって、いろいろなパターンがある。EC型付加価値税もありますし、一般売上税形式のものもありますし、それから大型間接税と呼ばれるようなものもあるわけです。ですから、国会で決議されたものは、大型間接税的なものも含めまして、すべて禁止されたと見ていいんじゃないか。そうしないことには余りにも論理的におかしい、詭弁である、こういうふうに思います。
  73. 名東孝二

    名東参考人 小倉先生の、というより小倉先生を支えている既得権益の階層と言ったらいいのか、この既得権益を支えている階層に対して一言申し上げますと、安定成長というか平穏無事なる時代には、そういう発想の仕方でいいのです。ところが、いまは波乱で、日本財政中心に国がひっくり返るかもわからぬという波乱万丈のときに、既得権益をいかに守るかなんということを言っておると危ないのですよ。自分の脚下が崩れるのですよ。  それから、最初に私は申し上げたのだけれども、余り頭でっかちで、それで何か過保護に国民を手とり足とり縛るわけなんだけれども、手とり足とりしなければ、自分がパワーエリートとして国民をかわいがってやらなければ、金をやらなければ気の済まぬようなお考えかもしらぬけれども、それが間違っておるんじゃないかと思う。波乱万丈のときに生き抜いていく力は、生活する国民みずからが持っていますよ。要らぬことしない方がいいのです。だから、余り差し出がましいような国家干渉はやめてもらいたいと私は思う。そういうわけで、既得権益の上に乗っかっていけばどでんとひっくり返る、そういうことを申し上げたい。
  74. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 大型間接税を導入するに当たって直間比率を是正しなければならないというような理論を持ち出してきまして、何か非常に大型間接税導入に合理性があるかのような言い回しを政府当局は折に触れてやろうとしているわけですけれども、私は、あるべき直間比率などというものが存在すること自体がおかしいというふうに思っておるわけですね。税制を考える上において適正公平にやっていこうといろいろ努力してきた結果、統計をとってみたら間接税と直接税はこういう数値であったというにすぎないのであって、あるべき直間比率というものを想定して、そしてそこに近づけるということは、まさに詭弁だと私は言わざるを得ないと思いますけれども、この点に関するお三方の御意見をお聞きして、終わりたいと思います。
  75. 小倉武一

    小倉参考人 巷間と言うと変ですけれども、臨調あたりでも直間比率の見直しというのが何か非常に言いならわされた言葉になっておって、世の中に通用しておるようでございますから、世の中に通用しておる言葉を私は否認するわけにまいりません。しかしながら、お話しのように、先生の御指摘に非常に同感する点もあります。これは、結果的にそうなるということで、個々の税制を積み上げていって、全体として公正であって、結果として分けてみれば直接税はどうで、間接税はどういうふうになっておる、この割合はこうだというのが素直な見方だと思うのです。  ただ、巷間と言うと変ですけれども、直間比率の見直し、こう言われているものは、現在の直接税、特に所得税法人税、それから相続税も一種の補完税でございますが、そういったものは理想的な税制であるにしても、なお徴税上その他いろいろ欠陥がある、そこでそれを補うために間接税でもって補完をすることがいいというのが現在の日本税制の体系になっておるようでございますが、そういう体系で一体よろしいのだろうか。もう少し所得税の徴税上の公正を確保するとか、法人税が現在のようなことでいいのだろうかとかいうこともあわせて考えることがよろしいのじゃないか。したがって、直間比率の見直しというよりは、税体系全体の見直しという言葉に置きかえた方がよろしいんじゃないかという感じが私はいたしております。
  76. 北野弘久

    北野参考人 四十三年の税調の長期答申時代から、四十三年から四十六年の段階で、まだ赤字財政が起こっていなかった時代に、税調ではEC型付加価値税の導入を真剣に検討しまして、大蔵省ではすでに法律案をつくったということが当時一部で伝えられておったのでありますけれども、そのときの理由も直間比率でございまして、高福祉高負担と直間比率の問題が論議になっておりますけれども、直間比率自身は何の根拠もない、学問上の根拠は何もありません。  直接税のほうが、税金の学問の世界ではいままでのところ最も理論的には合理的である、民主的である。つまり、能力に応じて課税できるという応能負担の原則に合致する。税痛をきちっとタックスペイヤーに教える。この二つの点だけをとりましても、直接税は理論的には理想である。だから、直接税が一〇〇%になっても一向差し支えないのです。  もし日本先進国として直接税一〇〇%になっても、日本の政治、社会あるいは経済が十分たえ得るのだったら、一〇〇%でもいいと私は思っておるのです。アメリカでは現に九〇%ですからね。ですから、日本はいま七〇%でありますけれども、理論的には直接税が一〇〇%になってもよろしいということでありますので、七〇%は多過ぎる、だから間接税の導入を検討すべきだという議論は、学問上出てこないということを申し上げておきたいと思います。
  77. 名東孝二

    名東参考人 直間比率をよく言われていますが、直接税のかわりに間接税中心の国、たとえばフランスとかイタリア、あの国がそんなにりっぱな国ですか、脱税王国じゃないですか。中には、ひどい評論家になると、大型間接税をやったら地下経済がなくなるなんということを堂々と言っておる人がおる。フランスやイタリアに行ってごらんなさいよ、脱税ばかりやっておるじゃないですか。  間接税がそんなにいいものかどうか。税金というのは、税痛、痛みがあるからいいんですよ。痛みがもしなかったら、われわれが転んでも痛みがなかったら、どこまでも行って、しまいには自動車にはねられてしまうわけですよ。だから、税金の痛みというのは一番大事なんです。そういう意味では、源泉徴収なんてナンセンスなんだな。源泉徴収なんかやめなければいかぬ。税金は、痛みのある直接税とか資産課税が正しいですよ。間接税なんかだめなんですよ。あれは麻薬なんだ。
  78. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 どうもありがとうございました。終わります。
  79. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  80. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、九分間の持ち時間ですから、一問ぐらいしかできないと思いますが、まず小倉税調会長に伺いたいのです。  グリーンカードが三年間凍結されたという現時点に立って、これにどう対応していくか、税調としてどう対応していくかという点について、しぼってお伺いしたいと思います。  いままでの税調の経過というものをたどってみますと、昭和五十二年度の税制改正答申で、完全総合課税を実現するための方策について検討すべきだということが言われまして、それ以来ずっと毎年毎年税調の答申ではそういった方向でやってまいりまして、昭和五十五年度の答申でグリーンカード制度というものがはっきりと提起をされたわけですね。そこで大蔵省としても予算措置もして、朝霞には相当のお金をつぎ込んで建物まで建てた。それから、これは役所だけじゃなくて、民間の金融機関も、このグリーンカード制の国民に対するPRのいろいろな準備も相当の労力とお金をつぎ込んでやってきた。それが、昨年突如として、これは自民党また民社党の一部にも反対論が出てきて、いろいろな経過をたどって、ついに八月の段階で、議員提案という形で五年凍結ということが出されてきたわけです。そこで、大蔵省としても、それ以降は準備をストップしてしまったわけですね。本来ならば昨年の十二月からカードの交付を始めなければいけなかったわけですが、それをストップしてしまった、そういう経過をたどって今日に来ているわけです。  私は、先ほど来の小倉会長の御答弁を聞いていましても、グリーンカードが延期になったからといって、いままで税調が指摘をしてきた総合課税という理念まで、理想までこれを放棄したわけじゃないわけですから、いま延期ということがはっきりした段階で、税調としては、やはりそれに対応する一つの方策をいろいろ提起して議論する必要があると思うのですよ。私は、昨年暮れの、十二月の税調の答申の中にもグリーンカードについて、先ほどの御答弁ではいろいろな議論があったということですが、その段階で何らかのグリーンカードに対する見解を税調としても述べてほしかったなと思うわけなんですが、これは一言もなくて今日に来ているわけです。  たとえば名寄せというのが、先ほど来北野先生とか名東先生の方からはできないことはない、できるのだということを指摘されておりますが、大蔵省の方は、名寄せというのはどうも非常にむずかしい、だから、いままで名寄せができないいまの現状では、なかなか把握ができないからグリーンカードなんだという説明で終始一貫してこられたわけですよ。しかし、やはり凍結という厳粛なる事実を踏まえて、いままでのように、ただできないからやらないということじゃなくて、税調としても、何らかの対応策、何らかの責任ある一つの回答というか検討を私はすべきだと思うのですよ。そうでなければ、税調がいままでずっと五十二年以来言い続けてきたのが一瞬にして弊履のごとく葬られた段階で、ここで一言なかるべからずだと思うのですよ。  先ほど来、武藤さんとか鳥居さんからも御指摘ありましたように、税制調査会が権威を持って、国民が本当に税制調査会の言うことを信用するというあり方をこれからも続けていきたいということであるならば、やはり一言なかるべからずで、ひとつこれからの税調の審議の中で、グリーンカードが凍結をされたという時点における、現在における対応策というものを、ただずっと三年後までに考えるという悠長なことではなくて、即刻できるものはもっと現実的に対応すべきだというような政府に対する注文といいますか答申をまとめるべきだと思うのですが、その点についての税調会長のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  81. 小倉武一

    小倉参考人 グリーンカードの三年延期というのはいろいろ経緯がございまして、結論としては、残念だけれどもやむを得ない、こう思っておりますが、お話しのように、即刻対応策を考えるという必要性に迫られていると思います。  これは、政府もそうでございましょうが、税制調査会としては、お話しのように長年の経緯のある問題でございまするので、できるだけ早い機会に、三年という期間があるから悠長に構えればよろしいのだということでは毛頭なくて、その期間内に総合課税に移行する方途につきまして至急検討を進めて政府に申し上げるという必要性は十分痛感している次第であります。
  82. 小杉隆

    ○小杉委員 第二の問題は、臨調の増税なき財政再建に対する税調としての対応、これを伺いたいと思うのです。  先ほど、増税なきというのは非常に迷惑だ、これは国民各層がそれぞれ自分なりの受けとめ方をするのだというお話がありましたが、税調としては、増税なき財政再建ということをどのように受けとめているのかということを伺いたいわけでございます。  臨調の答申も、ずっと読んでみますと、決して増税すべてを否定するということではなくて、いまの税制の不合理を是正するとかあるいは直間比率の見直しとかいろいろなことを言って、大体文脈をたどって総合的に考えてみますと、国民の負担、租税負担率とそれから社会保険料の負担率が、いま日本の場合は三五%、ヨーロッパ諸国は五〇%を超えてしまっている、この全体としての国民の負担がこれ以上だんだんふえていかないように、それでなくても高齢化社会がどんどん進んでいって医療とか年金、この支出がふえていくし、また国際社会の中でいろいろな分担がふえていくということで、ほうっておけば日本はこれからどんどん国民の経済負担がふえていくから、それに歯どめをかけるべきだという趣旨で増税なきというふうに言ったのだろうと私は思うのです。  そこで、税調会長としては、この増税なき財政再建というのをどのように受けとめておられるのか、伺っておきたいと思います。
  83. 小倉武一

    小倉参考人 臨調のいろいろの書面あるいは最終的な結論、これは非常に簡単になっておりますが、よく読めば、お話しのように、あらゆる場合に増税はいけないということを言っているわけじゃないわけです。  それはそのとおりでございますが、何しろ表面に出てくるのがスローガンの増税なき財政再建というものですから、一般の方は恐らく、答申をよくお読みになっても、とにかくスローガンでもって言われれば、めいめい都合のいいように理解するというのがどうもならわしじゃないかと思いますので、なかなか増税ということは、そうでなくてもむずかしいわけです、個々の増税についてはそれぞれの関係の団体その他に御了解を願って、がまん願って増税を願うということができないことはございませんが、一般には、幅の広い所得税であろうと法人税であろうとあるいは間接税であろうと、増税ということは大変、そうでなくてもむずかしい時代になっております。そういう時代の中に増税なきと言われますと、もう増税はほとんどできないという事態になるのじゃないかと思うのです。私は、それを非常に必配しておるわけです。  したがって、臨調の言われるごとく行政改革を進めてまいった、しかし、なかなか財政再建というのは思うようにはいかない、どうもそういう公算が大きいのじゃないかというおそれが私個人としてはいたしております。そういう際に、どうしても現在のあるいはさらに増大するかもしれない行政需要を賄うためには、どうも増税をお願いしなければならぬというようなことが起こり得ると思うのでありますが、そういう増税ということであれば、いまから、どういう増税がいいのか、また減税と結び合わせて増税をどう考えるのか、あるいは先ほどの直間比率の問題ではございませんが、どういう税目を起こすなりして増税をお願いするのかということの検討というのは非常にむずかしいことでございます。  したがいまして、実行はいつになるかということは別にしましても、できるだけ早い機会に全体の税の体系を見直して、よく吟味いたしまして、弾力的に対応できるという姿勢は、姿勢と申しますか税制の今後のあり方についての骨格は早い機会に固めておく必要性があるのじゃないか、こういう気がいたしております。
  84. 小杉隆

    ○小杉委員 税調会長は柔軟に対応したいというお話ですが、この第二臨調というのは、いまの中曽根内閣、また前の鈴木内閣が一つの政治生命をかけてつくったものですね。しかも、いまの中曽根内閣は行政改革を最大の柱としてやっているわけですから、この臨調答申というものの重みというのは、政府は相当受けとめておると思うのです。  その政府の、しかも総理大臣の諮問機関である税調の会長としては、ちょっといまの答弁ですと、何か増税なき財政再建は迷惑で、これは余りこだわっていないで、もっと柔軟に対応したいんだというお話ですと、ちょっとわれわれとしては聞き流すわけにはいかないので、やはり増税なき財政再建特に増税なきということに対して相当の、臨調はそう言っているけれどもわれわれとしてはこう受けとめているんだ、その辺は理解してもらいたいという程度の、もうちょっと明確なお答えがあってしかるべきじゃないかなと私は思うのですけれども、再度御答弁いただきたい。
  85. 小倉武一

    小倉参考人 先ほど私が申しましたのは、御質問の趣旨とそう違っているとは思わないのです。  とにかく、当面臨調のお示しになった行政の改革ということは、もう第一段に進めていただく。その改革も、恐らく歳出の整理あるいは適正化合理化ということでございます。したがって、私どもはできるだけそれに期待いたしまして、増税は考えなくてよろしい、結局増税はしなくてよかったということになるのが、あるいは最も国民にとっても望ましい方向かとは思いますが、しかし、そういうことだけに期待をいたしまして、何らの措置を、将来のあり得べき措置について考えないというのは、これまた、税制調査会としては無責任のそしりを免れないことに結果としてはなるのじゃないか、そういう点を恐れているわけです。
  86. 小杉隆

    ○小杉委員 これ以上論争しようと思いませんが、もう一問いいですか。  次の問題、時間少々お許しをいただければ、せっかく参考人で学者の先生が二人見えているので、お一人、北野先生にちょっとお話を伺いたいのですが、先生の著書を読んでおりましたら、先ほど来政治資金に対する課税とか土地財産税というような新しい発想も出されたわけですが、そのほかに、宗教法人に対する課税ということを盛んに言われているわけですね。  最近、宗教法人についていろいろ報道されているところでは、土地転がしとか温泉地における一流ホテル並みの研修所をつくったり、また会長がその宗教法人の財産を私物化していたり、また巨額の寄付金を集めてどうのこうのというふうな、いろいろな問題が出されているわけですが、この宗教法人というのは、他の公益法人、つまり学校とか社会福祉法人などに比べて優遇されているわけです。無税であるというようなことが果たしてどうなのだろうかということ、それから、そういった宗教法人に対する課税というのは、やはり一般国民が非常に不審に思うところなので、これは時間が制約されておりますから、もし具体的な構想があれば、また次の機会にでもお聞かせいただきたいのですが、特にその宗教法人に対する課税という問題についてはどうお考えでしょうか、簡単で結構ですが。
  87. 北野弘久

    北野参考人 これは、私の論文に出てきますが、非常にむずかしい問題です。  まず最初に、いまちょっと小倉会長の答弁を聞いておりまして、ぜひこの機会に国会の皆さんにも申し上げたいことが一つありますので、それを申し上げます。  つまり、いまは科学時代なのですね。宇宙時代であるとかコンピューター時代とか、非常に科学時代なのです。警察の方も、科学警察という形できわめて合理的に科学的に事案の処理を行っている。ところが、私の三十年間の税務行政に関する研究の結論を申しますと、基本的には三十年前とほとんど変わっていない。ですから、税務行政の資質の向上、税務官吏の資質の向上を抜本的にやってほしいということです。それから、科学時代にふさわしいような科学的な調査手法を開拓する、それによって課税漏れをなくするあるいはアングラ経済をなくする、そういう努力をする必要がありますので、税制だけじゃなくて税務行政面での抜本的な改革を小倉会長としましても国税庁当局に提言していただきたい。税務行政は非常に怠慢といいますか、弱い者いじめばかりやっておりまして、本当の大物をつかまえていない、そういう体制になっていない。いまの若い人の気持ちもあるのでしょうけれども、われわれの年代と違ってがむしゃらに働くという空気はないのでしょうから、もう少し科学的に効率的にさまざまのデータを駆使しまして、きちっとした課税を行うための努力をすべきである、税務行政の組織そのものもこの際抜本的に変える必要があるということです。  二番目に、いまの宗教法人の課税の問題ですが、現行法のもとでも相当程度国税庁は努力する余地がある。もちろん、地方税につきましては自治省及び府県、市町村の税務当局が努力する余地があります。たとえば、収益事業につきましては現行法でも課税することになっておりますし、それから固定資産税の非課税というのは、あくまで宗教用財産として必要なものに限定されております。ですから、現在の段階でも税務調査をきちっとやることによって、巨大宗教法人の課税漏れが相当あると思いますので、ぜひこれをやっていただきたい。  それから立法論ですけれども、やはり宗教法人と学校法人であるとかあるいは社会福祉法人だとかというものとは根本的に違う、労働組合なんかの法人とも違うということであります。これは、特に日本のような国では欧米のような宗教に対する感覚は一般化しておりませんので、仮に欧米的な形があるとしましても、やはり本質的には宗教法人の持つ公益性というものと学校法人だとか社会福祉法人だとか労働組合が持つ普遍的な公益性とはちょっと違うと僕は思います。  もし、宗教法人の公益性を理由に非課税にするのでしたら、国民、納税者が納得するような体制を前提とする必要がある。そのためには、たとえば町だとか田舎の小さなお寺さんですね、こういうものはやはり一つの信仰の対象になっておりますし、そう悪いことをしません。ですから、一つの尊敬の対象になっているこういう弱小の宗教法人については非課税にしてもいいと思います。制度的に現在の非課税のたてまえをとっていいと私は思います。しかし、巨大宗教法人あるいは新興の巨大宗教法人ですね、そういうものは宗教法人じゃなくなっておりまして、ある意味では実態は政治団体になっている。憲法は政教分離原則を強調しておりますし、信仰の自由を強調しています。取るべき税金を取らないということは、隠れた補助金、税金をつぎ込んでいることになります。まさに政教分離原則に反することになりまして、これは大変な憲法問題であります。  そのためには、もし仮に巨大宗教法人について非課税をとるとするならば、相当程度納税者として覚悟する必要があるということであります。一般納税者の犠牲の上に立って何兆円、何十兆円の税収をなくしているわけですから、納得できるようなことにしないといけない。そのためには、巨大宗教法人に限定して、たとえば大法人と中小法人が違うように社会的な意味が違いますから、巨大宗教法人、本山系の宗教法人はもちろんですけれども、その他の宗教法人の規模をどうやって判断するか、人数だとかいろいろな財産だとか、そういったことによって判断できると思いますが、いわゆる巨大宗教法人と呼ばれるものにつきましては財務の公開を義務づける、公認会計士の監査を強制する、納税者についても閲覧を要求した場合には財務の情報をいつでもチェックできる、最初にそういう前提をとった上で、宗教法人を本来の公益的なものに限定して非課税にする。  アメリカなどでは、課税特権を与える場合にはいろいろな条件をつけておりまして、向こうは個別にチェックするのですね。たとえば、政治的なことをやった場合には宗教法人の免税特権を剥奪してしまう。つまり、宗教法人が政治的な行為を行った場合には、税法上、個別に課税特権を剥奪する、そういうことまでやっております。  アメリカのように、宗教が国民生活と社会に非常に影響を与えるような国においてもそうですから、日本は、宗教というのは単なる儀式みたいなものでありまして、葬式だとかあるいは何かのときにやるという程度のものが多いわけですから、そういう国にふさわしい形で、納税者、国民の合意を得られる形で宗教法人非課税あり方を根本的に考える必要がある、そういうことを申し上げておきたいと思います。
  88. 小杉隆

    ○小杉委員 ありがとうございました。
  89. 森美秀

    森委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明十八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十一分散会