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1983-03-16 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十六日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 大原 一三君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 伊藤  茂君    理事 野口 幸一君 理事 鳥居 一雄君    理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       椎名 素夫君    塩川正十郎君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       森  喜朗君    森田  一君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       武藤 山治君    柴田  弘君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省証券局長 水野  繁君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         大蔵省国際金融         局次長     長岡 聰夫君         国税庁長官   福田 幸弘君         国税庁税部長 角 晨一郎君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君  委員外出席者         厚生省公衆衛生         局結核難病課長 松田  朗君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      藤原武平太君         中小企業庁計画         部金融課長   庄野 敏臣君         中小企業庁計画         部振興課長   桑原 茂樹君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本専売公社総         務理事     岡島 和男君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号)  災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。
  3. 玉置一弥

    玉置委員 大変早朝からでございまして、まだ頭も余り覚めていないので、ぼつぼつとやっていきたいと思います。  特に、最近逆オイルショックという言葉が聞かれます。それでなくとも発展途上国、特に先進に近い発展途上国、それぞれの国の経済状態が大変よろしくないということで、昨年も大変な危機説が流れておりましたけれども、特にことしになってから、具体的に支払い繰り延べとかいろいろな問題が提起をされるようになりました。日本の場合でも、いまはまだ商社段階でございますけれどもイランあたりから支払い繰り延べというような話が出始めておりまして、昨年、国際金融の流通の中で大体六千億ドルから七千億ドルの間くらいがそういう地域を中心にして出回っている、そしてそのうち焦げつきそうな、危険のありそうなのが二千数百億ドルというようなお話がございました。  先日、三月十日の朝日新聞でございますけれども、「大蔵省は九日、海外融資有税貸し倒れ引当金制度の設置を銀行業界に通達したのに続いて、元本回収可能性がない海外融資については無税の引き当てができるよう、現在の基準改正することを検討し始めた。」というような新聞報道がございます。国税庁の方は、これに続いて、これまでなかったカントリーリスク基準を加えて、無税ということで五十九年度以降の改定を予定をしているという報道があるわけです。     〔委員長退席中村正三郎委員長代理着席〕  私たちがまず知りたいのは、いまの国際金融が本当にどの程度行き詰まってきているのかということが一つと、それから、その影響日本商社なり銀行がどういうふうに受けて、危険度がどのぐらいのものかということについて知りたいわけでございまして、その辺について、まずお答えをいただきたいと思います。大枠ですね、いまどうなっているという状態です。
  4. 大場智満

    大場政府委員 お答えいたします。  いま先生指摘のとおりの状況開発途上国に対して見られるわけでございます。ただ、私どもは、心配はしておりますけれども国際金融資本市場を巻き込んだような大きな問題にはなるまいということで対応しております。  御承知のように、国際金融不安というものは、借り続けられるかという不安と、貸し続けられるかという不安の二つから成り立っていると思うのです。借り続けられるかという債務国の問題、これは御指摘のように、今回の石油価格下落によりまして、メキシコとかあるいはベネズエラとか、ある程度の困難が加わることは事実でございますけれどもIMFの指導のもとに何とか乗り切っていけるのではないだろうか。それから、貸し続けられるかという不安ですけれども、今回の石油価格下落によりましても、ユーロ市場全体としては七千億ドル前後の規模でこれは伸びていくのではないか、したがって、量的にも貸し続ける方の問題はないのではないか。しかしながら、個々の国の問題、これは、私どもとしても十分考えておかなければいけないと思います。  ただ、個々の国の問題と申しますのが、あるいは一部の国は支払い能力に問題がある、ソルベンシーに問題があると言っておりますけれども、それ以外の国は流動性に問題がある国である、リクイディティーの問題、つまり金さえつけばやっていける国。この二つに分けられるとは思うのですけれども、前者の支払い能力に問題があるということは、相手が国であるだけに、私どももなかなか軽々に言えない。したがって、私は、どちらかといいますれば流動性の問題ということで対応していく方がよろしいのではないか、こんな感じでおります。全体として、特別大きな問題にはならないというふうに見ております。
  5. 玉置一弥

    玉置委員 では、日本金融機関、特に銀行あたりがそういう国々に貸し付けている全容はわかりますか。
  6. 大場智満

    大場政府委員 昨年の六月末で見まして、日本銀行貸し付け、これは円建て、ドル建てを合わせた一年超の貸し付けでございますけれども、約五百五十億ドルに達しております。もちろんこれは、日本銀行と申しましても、大部分がロンドンの支店からの貸し付けになっております。それから、同じ時期で見まして、短期の貸し付けが約三百七十億ドルに達しております。
  7. 玉置一弥

    玉置委員 そのうち、ことし十二月末に決済期限が来るものが幾らで、繰り延べあるいは回収不能と見受けられる予測はどのぐらいですか。
  8. 大場智満

    大場政府委員 最近時点で見まして、金利遅延とかあるいはリスケジュールリファイナンスということはありますけれども支払い能力に問題がある、つまり、とれない可能性があるという国は、私どもはないと見ております。  ですけれどもかなりの国が金利支払い遅延、たとえばメキシコブラジルのように、期限が来ましてもそれはすべてリスケジュール支払い期限を先に延ばしてくれとか、あるいはリファイナンス、新たにまた貸し付けた形にするわけですけれども、そういう形での対応が迫られる例がふえていることは事実でございます。中南米を中心にしまして、多くの国がそういうふうにはなっておりますけれども、全体としての金額はそれほど大きくはございません。
  9. 玉置一弥

    玉置委員 それほどというのは、具体的に金額でどれぐらいなんですか。
  10. 大場智満

    大場政府委員 メキシコ一カ国で百億ドルぐらいの貸し付けがございますし、ブラジルも七十億ドルぐらいあります。ですから、この二カ国が断然多いわけでございまして、したがって、二、三百億ドルぐらいはそういうリスケジュールとか金利遅延が生じている国の日本銀行債権の全体ということかなと思っております。     〔中村正三郎委員長代理退席中西(啓)委員長代理着席
  11. 玉置一弥

    玉置委員 IMFでは、これらに対応するために、手持ちの金を売却したり、いろいろな資金手当てをいま考えているということでもございますし、また先進諸国が寄って、IMFの基金の増強をやろうというような話もあるというふうに聞いておりますけれども、具体的には、いつごろそういう動きが始まるのですか。
  12. 大場智満

    大場政府委員 まず、御質問の第一点でございますが、IMFが金を売るかという問題でございますが、これは、いまIMFにはその考え方は全くないようでございます。私どもも、そういうことを要請しておりません。  それから第二に、IMF資金基盤強化ということにつきましては、いま二つのことが大体決まっております。  一つは、これは大蔵大臣がおやりいただいたことでございますけれどもGABといいますか、一般取り決めというのがございまして、これはIMFかなり大量の貸し付けをする場合に資金が不足するものですから、その資金不足先進十カ国、今回はスイスが入りまして先進十一カ国になりますが、それがバックアップしてやる、こういうシステムでございますが、このGABについて各国間の分担がすでに決まっているわけでございます。アメリカが二五%、日本はその半分の一二・五%、こういうようなことなのですけれども、全体のシェアが決まっておりまして、総額として百七十億SDRの規模で、これはIMF資金基盤強化に役に立っているというふうに思っております。これが第一でございます。  それから第二は、IMF増資の問題でございます。これも先般のIMF暫定委員会でまとまりまして、現在六百十億SDRが資金規模でございますけれども、これが約五割増資されまして九百億SDRになるということでございます。これは今月中に各国の賛成あるいは反対の投票に付することになっております。     〔中西(啓)委員長代理退席大原(一)委員長代理着席〕 したがいまして、IMF資金基盤かなり強化されつつあるというふうに私は考えております。あとは、速やかにこういった増資なりGABの増額が動き得るような体制に持っていくということが肝要かと思っております。
  13. 玉置一弥

    玉置委員 状況はわかりましたけれども、まだ、これからかなりの金融不安というものは続くわけですね。  今回、有税で貸倒引当金の割り増しというか、普通は千分の三か何かだと思いますけれども、それ以上に積むということでございますが、有税でというのは、いま少なくとも流動性が若干安定してしまっているというか、こういうときに銀行収益かなり厳しくなってきているのではないか、資金需要も余り芳しくない、そういうようなときに有税覚悟で積むということは、赤字でもいいじゃないかということになるわけですけれども、逆に、その程度しか積めないということになりますと、何かあったときに大変な問題が出てくるのではないか。  先日、新聞報道によりますと、一社で二百五十億とか大変な金額を抱えているというところもあるわけでございまして、そういう面から考えますと、いま現在準備段階において少なくとも半額無税とか全額無税とかある一定額までは無税とか、そういう措置をとらなければ、いわゆる経営体質に響いてくるのではないかということが一つ。  それから、有事の際に、これは余り考えてはいけないことなのですけれども、それだけではとても資金手当てができないということで、ある程度国としても対応していかなければいけないのではないか。やはり外交上の問題がありまして、融資をいままでは逆にこちらが進んでやってきた。ところが、逆転すると逃げ始めるわけですけれども、しかし、ある程度おつき合いということでやっている場合もあるわけです。そういうことを考えると、有事の際にはやはり思い切った措置が必要ではないかと思います。  先ほどの新聞報道お話ですと、五十九年度からというお話があったようでございますけれども、五十八年くらいからぼつぼつそういう体制をとっておかないと、ちょっと何か大変な事態が出るのではないかというような気がするわけですけれども、それについてはいかがですか。     〔大原(一)委員長代理退席委員長着席
  14. 梅澤節男

    梅澤政府委員 御質問の、特定海外債権貸し倒れに備えまして引き当てた場合に、課税所得計算損金に扱うかどうかという問題になるかと思いますが、御承知のとおり、いま金融保険業につきましては、一般的に貸倒引当金というものがございまして、これで法定の概算繰入率で損金に算入し、それで引き当てておるわけでございまして、いま問題になっておりますこの海外特定債権について、現行の貸倒引当金で対処できるのかどうかという一つの問題がございます。そういう検討もしてみなければなりません。  それから、あくまで特定海外債権ということになりますと、通常の考え方としてはそういう概算の、これはあくまで課税所得計算上の話で申し上げておるわけでございますけれども、これは実際の貸し倒れが起こりましたときには、債権償却課税所得上も当然のこととして損金に扱われるわけでございますので、一般的に、そういう特定海外債権につきまして、概算引当金というものを税法上認めるかどうかということにつきましては、現段階では、具体的にそういう方向で対処すべきものと私どもは考えておりませんが、いろいろ問題にもなっておりますし、海外諸国でもいろいろな取り扱いをやっているようでございますので、今後の勉強の課題一つとして考えておくということでございます。
  15. 大場智満

    大場政府委員 先生お尋ね有事の際という問題ですが、相手が国である場合には、非常にむずかしい問題が出るだろうと思います。国というのは存続し続けているわけでございますので、なかなか会社の場合と同じように扱いかねるという問題があるかと思います。  ですから、先ほどもちょっと申し上げましたが、支払い能力に問題がある国もないわけではないと思うのですけれども、おまえの国は支払い能力に問題があるとか、おまえの国あて債権は回収できないとか、そういうことはなかなかむずかしいだろうと思います。ヨーロッパでは、支払い能力に問題のある国は償却の対象だ、流動性に問題のある国は引当金対応していくという考え方はあるのですけれども支払い能力に問題のある国というのをきわめて限って、しかも、相手国にわからないように処理しているというような状況かと思います。ですから私どもも、流動性の問題としてできるだけ対応していきたいというふうに考えているわけでございます。
  16. 玉置一弥

    玉置委員 時間の都合もございますので、早く大臣に聞かないと向こうに行ってしまいますから、違う話に移ります。  いまのお話でございますけれども、国と国との話で、国が滅びると言うと変ですけれども支払い不能になるということは非常にその判断がむずかしいということで、たとえばイラン石化の問題でもずるずる来ているわけですね。そういう面から見て、やはりある程度見切りをつけた段階で国が肩がわりをするということも考えていかなければ、逆に民間の金融機関なりあるいは商社、そういう面に大変な負担をかけるということになって、いまでもしり込みをし始めているところはかなりありますけれども、これからの日本としての対応が非常にむずかしくなるかと思うのですけれども、その辺について大臣一言だけ、もしお考えがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるカントリーリスクの問題です。  いままで、あるいは投資保険でございますとかそういうこと、あるいは輸銀の保証でございますか、そういう問題がありましたが、そういう事態ではなく、カントリーリスクの問題がもっと国際的に見ても大きなウエートを占めるようになった。そこで、諸外国においても、それなりのいろいろな対応をしていらっしゃる。わが方で見れば、先ほど来申し上げておるように、有税倒引当金制度、これは、いわゆる通達改正法律改正でないわけでございますね。そういうようなことで、それに対応する準備を進めていこう。基本的には、カントリーリスク問題というのは、やはりただ今日の措置だけでなく、もっと広範な立場からいろいろ今後検討されていくべき課題だ、そして政府としても適切な対応をしなければいかぬ課題だという意味においては、玉置さんと私と認識は一致しております。
  18. 玉置一弥

    玉置委員 まだまだ流動的ですから、これからの対応で機敏な、影響力の少ないような動きをお願いしたいと思います。  それでは、ちょっと次に、中小企業承継税制の件につきましてお伺いをいたしたいと思います。  中小企業承継税制で、いままで大変要望の強かった取引相場のない株式評価とかあるいは個人事業者土地の件につきまして、今回の租税特別措置で一部改定がされました。最近大変土地評価が上がってきておりまして、これが逆に中小企業者相続のときに大変な大きな障害となっているというお話かなり出てきております。いま日本経済の中で、中小企業者というのは、事業所で九九・四%ございまして、従業員では八一・一%、製造業の中で約半分の五二・七%が出荷の分担をしているというような状況でございます。  相続税というのは、そもそも富の一部の社会的還元というような理念があって、また、その際富の配分をやろうということでございます。自然人の場合にはそれでいいわけでございますけれども、いわゆる企業が富の配分をやりますと、相続ごとに小さくなり小さくなりということで細分化をされてしまう。いままでの企業というのは、やはり体力をつけて大きくならないと競争力がつかないということもありましたし、安定してこないということで、できるだけ大きくなるための援助といいますか、こういうことを政府としてもやってこられたと思うのです。ところが、事業相続だけにつきましては、いわゆる清算方式というのですか、企業を一度解散するというたてまえでいままでこられた。  そういう形で、今回の改正においても、その点ではいまなお全く変わっていない。いわゆる純資産評価をして、それによって企業清算時の価値がどれだけあるかというような方式でございますけれども、これが大変企業競争力を低下させ、なおかつ、場合によってはその存続さえあやしくなるというような方向にだんだんとなってきているということで、雇用者の安定というものも考え、そして特に地場産業の育成という面から、その辺に何とか手を加えていかなければならないというふうに考えているわけです。  大臣も、もうぼつぼつ行かれることでございますから、一言だけ、これからの中小企業承継、いま承継税制をとらえてみた場合のあり方について、もし何か御意見がございましたら、お伺いしたいと思います。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますように、従来の政府の施策としては、いわゆる零細が中小に、中小中堅に、中堅が大企業にというふうに成長していくことを、側面的にあるいはもろもろの環境整備等で促進していくという方向ではなかったか、まさにそのとおりだと思うのです。ところが、それが中小企業継承立場から見た場合においては、相続税としてそれをとらえた場合は、もう一遍後戻りをさす結果になりはしないか、こういう議論でございます。  それは、絶えずその議論は続けられておるところであって、したがって、円滑な事業承継観点からの税制調査会の答申に沿って今度手をつけたわけです。しかし、そうすれば、宅地の問題等についてまた一般納税者との問題も起こるじゃないか。二百平米までそのことをも勘案されておりますことは、そういう意味においては、全体に及ぼす意味でよかったかなとも思っております。  ただ、農地と同じような形でということになると、農業基本法の問題から来る問題とはおのずから異なっておるし、したがって、いま御審議いただいておるのが、今日の時点において玉置委員の御指摘幾らかでも沿うための一つ政策税制だったかな、こういう印象を持っておりますが、今後とも勉強していかなければいかぬ課題であるという認識は私も一致しております。
  20. 玉置一弥

    玉置委員 いま大臣お話がございましたように、まだまだやはり十分な対応ではないような気がするわけです。  そこで、いままで中小企業庁大蔵省が十分に論議をされてきたというふうに聞いておりますけれども、まず、中小企業庁の方からお伺いしたいと思います。当初の目的から言って、今回の改正をどのように感じておられるか。大体最終的にはどの程度までのことをやりたいと思っておられるのか、その辺についてお伺いします。
  21. 桑原茂樹

    桑原説明員 中小企業庁としては、ただいま先生指摘のような考え方のもとに、中小企業承継が円滑に実施することができるように、いろいろな税制上の措置について大蔵省に働きかけてきたわけでございます。  私どもがお願いいたしましたのは、企業というのが承継するに際しまして、その企業収益性を十分考慮した相続税評価方式というものをやっていただきたいということでお願いしたわけでございますが、今回五十八年度から実施したいと思っておるやり方につきましては、やや異なっておるわけでございます。しかしながら、今回のやり方におきましても、個々企業収益性というものが加味された方式となっておりますし、先生指摘のとおり、従来中小企業承継で問題となりましたのは、やはり土地が非常に高くなるということで株式評価が非常に高くなる、あるいは個人企業でも相続税評価が非常に高くなるというケースでございますけれども、そういうケースにおきましては、今回の措置によりまして、相当程度の効果が出てくるだろうというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、今回の措置によりまして、新しい相続税評価というのが行われていくわけでございますので、実際に中小企業がいろいろな形で承継するに際しまして、今回の措置でどのようなことになるかということを今後十分見きわめた上で、またいろいろ考えていきたいと思うわけでございます。
  22. 玉置一弥

    玉置委員 大蔵省はどうですか。いままでの中小企業庁との打ち合わせの中で、大体今回の改正については大筋終局だとか、あるいは改正までの途中の過程である、その辺の評価も入れてお伺いしたい。
  23. 梅澤節男

    梅澤政府委員 中小企業承継税制という問題で当面問題になりましたのは、小会社、つまり年商で言いますと八千万以下の小会社の非上場の株式評価が、いままで純資産価額方式でやっておったのを、いま委員の御指摘になりましたように、企業継続性と申しますか、そういうものを加味した評価にすべきではないか、事業継続性という観点から。  中小企業庁の方がここ一、二年勉強されまして、ただいま中小企業庁の方から説明ありましたように、一つ考え方として、収益性を加味するという観点から収益還元、たとえばその会社の利益とか配当で還元するという方式を提案されたわけでございますが、私どもの方は、税制調査会の中に特別の小委員会をつくっていただきまして、税法のほか会計の専門家等にも集まっていただいて、いろいろ議論していただいたわけでございますが、事柄が小会社の場合に、果たして収益還元というような考え方で客観的な評価が得られるかというと、これはなかなか問題があるということでございます。かといって、従前の純資産価額方式というのは若干無理があるのかもしれないということで、結局、結論といたしまして、同業種の株式で客観的に時価相場が立っておる株があるわけでございますから、それと純資産価額を併用しながら、いずれか低い額でやる。当面、これは国税庁の通達、取り扱いの改正という形でやらせていただくわけでございますが、私どもは、これが非常に妥当な結論ではないかというふうに考えております。  ただ、これから執行の段階に入りますので、引き続き課税の実態をしばらくの期間見ていかなければならぬということがあると思いますけれども、当面私どもは、これが妥当な結論であると考えております。
  24. 玉置一弥

    玉置委員 先ほど中小企業庁の方からもお話ございましたように、現在の純資産評価方式がこれから収益還元制を中心にしたところに変えていかない限り、あくまでも事業を継続することじゃなくて清算を前提に相続を考えるということになるわけですけれども会社、要するに法人組織で株式に全部変えて、類似企業のいわゆる評価純資産と両方の安い方をとればいいじゃないかという話もあるわけですけれども、なかなか法人化できないところもございます。  また、本来の趣旨から言いますと、株式にしても、上場されてないということは市場に出回ってないということで、実際に処分をする場合に売れるかどうかという問題があるわけですね。それと、要するに、有名な会社評価としては幾らという値段がついていますけれども、実際非上場でそんなに有名でもない、無名だというような場合に、果たして値段がつくのかどうかというのがあるわけです。  それと、事業を継続していくときに、株を人に売るということは、いままでの中小企業の例からしまして、まず考えられない。そういう面から考えて、財産にしても土地にしても事業用資産にしても、事業を継続していく限り、担保には入りこそすれ、売却をするということはまずあり得ない。売却をするほどの土地だと、今回対象にならないことになるわけですから、ある程度拘束された財産だ。拘束をされている財産を継承するということは、ないものを、要するに、私物として扱えないものを継承するということになるわけですから、あくまでも純資産方式を柱として考えているいまの税制は間違いではないかというふうに思うわけです。  承継税制の研究会の答申にも、たしかそういうような意見が載っていたかと思いますけれども、そういう面から考えまして、大変いろいろな答申を尊重される大蔵省としては、もっと方向を考えていくべきではないかというふうに思うわけですけれども、いかがですか。
  25. 梅澤節男

    梅澤政府委員 相続税の基本的な考え方につきましては、先ほど大臣がお述べになったとおりでございますが、その基本的な考え方の中で、中小企業事業承継という観点から、なるべく税制がゆがんだ形で邪魔にならないようにどうしたらいいのかということで、いろいろ議論があるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、当面、非同族会社株式評価については一つの結論を出していただく。個人の場合は、これはやはり個々の財産の集積体でございますので、これは評価の方法論の話になるわけでございますが、いわゆる事業継続性という観点から、個々の財産を評価するというのは非常にむずかしい問題でもございますし、果たしてそういうことが妥当かという基本論があるわけでございます。  個人の事業者につきましては、今回、同族株式について評価の方法を変えたこととのバランスをとるという観点から、これも税制調査会の御指摘をいただきまして、当面問題になりますのは、これは先ほど来委員がおっしゃっておりますけれども土地の問題があるわけでございますね、宅地の評価の問題が。したがって、小規模の二百平米ぐらいの土地の部分につきましては、事業の用に供する場合、特に処分が非常に制約されるということもございますので、従来、通達で二割減額するという措置をとっておったのですけれども事業に供する部分については四割の減額をやる。ただ、これだけのことになりますと、やはり課税価格の特例ということで、この際、租税特別措置法の中に織り込ませていただいて、国会の御承認を得るというようなきちっとした制度にすべきであろうということで、今回、租税特別措置法で御提案申し上げておるということでございます。
  26. 玉置一弥

    玉置委員 今回は、われわれとして受けとめておりますのは、もっと要求は高いところにあるけれども、よく早くそういう方にむしろ大蔵省が変わってきたということで、ちょっとびっくりをしながら見ているわけですけれども、しかし、一部には、いまの土地評価が異常に低過ぎるのではないかという話もちらほら出始めておりまして、せっかく下げていただいて、またそっちの方で上げられたんじゃ何もならないわけですから、その辺について、これはどうなんですか、国税庁ですかね。そういう話が出ているということで、それにどう対応されるかということをお伺いしたいと思います。
  27. 角晨一郎

    ○角政府委員 土地評価についてのお尋ねでごさいますけれども、これはいわゆる時価、時価と申しましてもいろいろなとり方があるわけでございますが、私どもの場合には、国土庁の地価公示価格の大体七割程度を目途に評価をするということでございます。したがいまして、一般の売り値と比べますと相当中庸の評価を心がけている、そういうことでございます。
  28. 玉置一弥

    玉置委員 国土庁が実態に合った数字を把握して、それが大幅に違わない限り、大体いまの基準とそう変わらないというふうに理解をしたいと思います。  時間の関係で、次に移りたいと思います。  いま、同じ引当金の中で退職給与引当金というのがございまして、これが年々引当金の率を低減されております。われわれの方から見ますと、いまの退職金は、企業が倒産をしたりあるいは清算をするという時点に、果たして現物というか現金というか資産というか、そういうものが労働者の、雇用者の手に入るのかということなんです。  そういう面から考えて、いまの制度では、退職給与引当金というのはあってもなくても関係ないというような感じがするわけでございますけれども、逆の面から考えますと、じゃ、いまの制度を是として考えてみた場合に、退職金の確保という面から見て、何らかの保全措置がとれないかということなんです。その辺で大蔵省、いまの制度に対して、たとえば退職給与引当金の率をいまどんどん低減されておりますけれども、これを最終的にはどうするのか、そして退職金保全のために、これはどちらかというと労働省になるかと思いますけれども、労働省を多分呼んでいないので、大蔵省としてはどういうふうに考えるのか、御見解をお願いしたいと思います。
  29. 梅澤節男

    梅澤政府委員 退職給与引当金は、言うまでもございませんけれども企業課税所得計算する上で、企業が労働協約等で従業員に退職した場合の退職金債務を現実に負っているわけでございますから、収益費用の対応考え方からすれば、当期の適切な部分は現価として当然カウントされなければならないという観点から、一定の方式でもって引当金を認めておる。これは政策税制でも何でもないわけで、企業課税所得をきちんと計算する上での制度であるというふうに考えておるわけでございますが、ただ、この引当率につきましては、企業の雇用の実態——これの現在の考え方は、将来の発生する債務を現在価値に還元するという考え方で引当率を認めるという考え方に立っておりますので、たとえば利子率の動向とかそういうもので、繰入率そのものは適切な水準に見直すということで従来から作業を続けてまいっておりますし、今後とも、そういう方向で臨まなければならないと考えているわけでございますが、ただいま委員が御指摘になりましたその問題と、現実の退職金の支払い債務の保全の問題とは、一応切り離して考えるべきだろう、あくまでも引当金の問題は課税所得計算上の問題と私どもは考えているわけでございます。  ただ、この支払い保全の問題は従前から当委員会でも議論になっておりますし、かつては引当金特定の資産運用にひもつきに結びつけた時代もございました。いろいろな変遷を経て、現在は会社の中で自由に、企業の自由なやり方で引き当てるというかっこうになっているわけでございますが、従来からも、この議論をやりますときに、余りひもつきにいたしますと、資金繰りの非常に苦しい企業等は経営を非常に圧迫するというかっこうになりますと、回り回って退職金の支払い水準そのものが後退するのではないか、これは労働側も同じような危惧を持っておられるということがございます。現実に五十二年に、賃金の支払い確保の法律でございますか、あれが制定されたときにもそういう御議論があって、結局、退職金については努力規定にとどまっているという経緯もございます。  私ども、もちろん、この問題は基本的には民事法の問題とか労働法規の問題でございまして、一応税制上の問題とは切り離して御議論をいただきたいとは考えておりますけれども委員の御指摘になりましたような方向で将来ともいろいろ議論されてしかるべき問題であるし、検討されてしかるべき問題であるというふうには考えております。
  30. 玉置一弥

    玉置委員 労働省の方とタイアップして考えていかなければならない問題だと思うのですけれども、保全が考えられないならば、別にどこまで切り下げられても問題ないというふうに思いますし、保全をする方法が見つかれば、その保全のために税制面でも考えていかなければいけないと思いますので、十分な連携をお願いしたいと思います。  次に、今回の特別措置の中で、設備投資関連で若干の改善が行われております。いま特に、設備投資の関係がある程度回復すれば、景気が若干戻ってくるのではないかというような期待感があるわけでございまして、今回の改正によって、どの程度の効果があるかということ、そして日経やその他の調査で、五十八年の設備投資というのは先行き余り芳しくないというように出ておりますし、それについてどう思われるか、それについて簡単にお答えをいただきたいと思います。
  31. 桑原茂樹

    桑原説明員 今回の中小企業に対する設備投資促進のための税制上の措置によりまして、設備投資がどの程度ふえるかというのは、正確に計算するのは非常にむずかしいわけでございます。  現在の状況は、御承知のとおり、五十七年度、五年ぶりぐらいに前年度比で中小企業の設備投資がマイナスに落ち込むというのが種々の調査に出ているわけでございますけれども、われわれとしては、五十八年度におきまして、この新しい措置を利用いたしまして、一人でも多くの中小企業の方々が設備投資をふやそうということで行動されることを大いに期待し、そういうふうに宣伝をいたしておるわけでございます。  非常にラフな試算によりますと、大体こういうことで千億円余りの新しい設備投資が出るかという試算もあるわけでございますが、この辺につきましては、そういうことでわれわれとしてはなるべく効果を上げていきたいと思うわけでございます。
  32. 藤原武平太

    ○藤原説明員 民間設備投資の円滑な推進、この必要性につきましては、通産省としても十分認識をしておるところでございます。このため、当省といたしましては、民間設備投資の現状、たとえば主要産業における設備の老朽度とか陳腐度、それからその果たすべき役割り、それから、民間設備投資を促進するためにどういう点がネックになっておるのか、そのネックを解消するためにどういう政策的対応があるのかという点につきまして、諸外国の事情も参考にしながら、幅広い観点から現在検討を続けているところでございます。
  33. 玉置一弥

    玉置委員 中小企業が特にそうなんですけれども、設備投資をやるというのは、先ほどの話と関連するわけですけれども、いかに継続的に安定的に伸ばしていくかというタイミングと、それから、場合によっては、いままで一つの業種に限られてやっておりましたことを多角的にやっていこうというようないろいろな要素があるわけですけれども、いままでの日本中小企業全体を見てみますと、中小企業に限らず、設備投資のやり方よりも、逆に、やるための体力というものが非常に衰退をしてきているのではないか。企業は伸びておりますけれども、それは見かけの売り上げが伸びたということが非常にあるわけでございまして、実質的には体力がついたという形で伸びてない。その一つの原因に、いまの償却制度が、次の償却をするためにある程度体力を蓄えるという形になってない。いままでの設備に対して実質的に逓減をして、ある程度の残存価値で残してしまうわけですけれども、その辺が永続的に設備更新をやるような税制度になってないのではないかと感じるわけです。  時間があと十一分しかございませんので、割り振りながらいきたいと思いますので、考え方だけをなるべく明快に短くお願いしたいと思うのです。  そういうことで、いまの償却制度が現在の時代に合っているかどうか、その辺からお伺いしたいと思います。
  34. 梅澤節男

    梅澤政府委員 現在の償却制度、これは、課税所得計算上の償却制度の議論をされておると思うのでございますけれども、御承知のとおり、償却制度の償却の水準が妥当かどうかというのは、一つは耐用年数の問題だと思うのですね。それからもう一つは、租税特別措置法の中に数多く織り込まれております特別の政策的な観点から加速度償却を認める制度が幾つかございます。  先ほど来議論になっておりますように、今回措置法をお願いしております中小企業の設備投資につきまして、一定金額以上の機械、装置について、二年間三〇%の特別償却を一定の要件で認めるというのも一つの制度でございますが、一般論として、その償却水準がいいかどうかというのは、耐用年数の議論になると私は思うのですが、耐用年数につきましては、最近では、昭和三十年代に、技術革新とかあるいは経済の国際的な自由化というような背景から、かなり大幅な短縮の作業をいたしております。それから四十年代に入りましても、個々の項目につきまして、物理的な寿命のほかに、経済的陳腐化という観点からの見直しを含めまして、短縮の方向で常時作業をしてきておるわけでございまして、現在の耐用年数の水準というのは、一応妥当な水準にあるんだろう。それは、マクロ的に見まして、各国償却率とわが国の償却率の水準を見ました場合に、少なくとも先進国の中でわが国の償却率の水準というのは、マクロ的にはかなり平均的ないい地位にあるということが一つでございます。  それからもう一つは、先ほど委員がおっしゃいましたように、更新が円滑にできるような償却になっているかどうかというのは、確かに重要な判断の要素になるわけでございますが、それの一つの判断といたしまして、トータルとしての日本の設備投資が一体どういう水準にあるかといいますと、これはもう指摘するまでもなく、GNPに対する設備投資の水準というのは、先進国の中で日本は群を抜いて高いわけでございます。そういうことになると、いまのわが国の税法上の償却の制度が、適正な更新投資も含めた設備投資の足を引っ張っているということは言えないのじゃないか。  その意味で、個々の問題はいろいろあると思います。政策上、個々の問題について特別償却あるいは加速度償却を認めるかどうかという政策上の判断はありますけれども一般論といたしまして、現在の日本償却水準は、妥当な水準にあると見ていいのではないかというように考えております。
  35. 玉置一弥

    玉置委員 いまの償却制度は、昭和四十年に一斉に改正されたというお話ですけれども、たとえば昭和四十年といまと見比べてみますと、マスプロ生産の分野がどの程度拡大されたか、それもございますし、たとえば金型、樹脂型とか金属プレスとかいろいろありますけれども、こういうのでもショット数によって決まってくる。昔の量といまの量と比べますと、少なくとも五倍程度は開きがある。場合によっては、もっとある場合がありまして、この型治工具についても、いわゆる二年というような限定をされております。  機械、装置については一応七年ということでありますけれども、いまの実態から考えますと、たとえば七年前の機械を、七年というのは昔より大分よくなったのですけれども、七年前の機械をいま更新をするということを考えますと、当然同じ値段ではできない。いろんな装置もつくというのがありますけれども、いわゆる合理化を目指したよりいい機械をということで、同じ額だけ償却をしていますと、とてもじゃないけれども新しいものが買えない。これをやはりある程度設備投資のための準備金というような形で総資産のうちの何%か残せるように、そういう形をとっていかないと、逆に、日本企業は、大体設備投資というのは長期資金で借りてやりくりしていますけれども、その辺がかなり設備投資の冷え込みにつながってきているのではないか。いままで伸びているうちは、伸びている部分が内部留保になり、それである程度やりくりをしてきたわけですけれども、横ばいなりあるいは若干下降ぎみの経済になってきますと、いまの税制では、それほどの余地を残してくれないということもありまして、逆に、大変投資の面での負担の大きい、特に製造業中心にしまして、その辺の何らかの対策を考えていかなければいけないのではないか、そういうふうに思うわけです。  まず一つは、具体的に申し上げますと、いまの量産に合った償却、型治工具が中心でございますけれども、その辺について本当に二年でいいのかどうか、その辺についてお伺いしたいということと、いまの横ばいあるいは若干下降ぎみの経済の中で、これからの設備投資を喚起しようと思えば、もっと思い切った手を打たなければいけないのではないか。先ほど申し上げましたように、全体の一部を積み立てていくとかいうことも必要ではないかというように思いますけれども、それについての大蔵省考え方をお伺いしたいと思います。
  36. 梅澤節男

    梅澤政府委員 償却の現行の水準に対する私ども考え方は、先ほど申し上げたとおりでございます。  申すまでもございませんけれども個々の資産で耐用年数が実態にそぐわない場合には、個別に国税局長の承認を経て、耐用年数を短縮するという制度も開かれておることは委員御案内のとおりでございますし、一般論といたしまして、先ほど申し上げましたように、三十年、四十年ずっと通じまして、個々の資産ごとに絶えず妥当な耐用年数の見直しを行うということは、今後とも続けてまいりたいと思っております。  ただ、いま御指摘になりました点は、ちょっと私ども材料の持ち合わせがございませんので、きょう御議論申し上げることは差し控えたいと思いますが、現在の法定耐用年数というのは、私どもは妥当な水準にあるという基本的な考え方を持っているということはつけ加えさせていただきたいと思います。
  37. 玉置一弥

    玉置委員 時間がないので、また個別にお話をいたします。  次に、これらの、特に中小企業の場合には、今回の特別措置によって特別の割り増し償却ができるということでございますけれども、逆に、設備投資等の中小企業のいまの政府金融機関の制度を見ますと、先ほど大蔵大臣が言っておられたように、次の段階次の段階と徐々に大きくなってきた企業がたくさんありまして、そのそれぞれの段階で、もう自分のところじゃないということで追いやられてしまう、要するに、必要なときに、伸びているときに借りられないというような状況になっているわけでございます。  特に今回、設備投資という面で考えていきますと、いまの金融機関、いろんな制度が政府金融機関にございますけれども中小企業の伸び、規模の拡大につれての対応が果たしてできているかというような疑問をよく聞くわけでございまして、それについて中小企業庁大蔵省と順番にお伺いしたいと思います。
  38. 庄野敏臣

    ○庄野説明員 お答えいたします。  中小企業政府関係金融機関の対象といたします中小企業者の範囲につきましては、御案内のとおりだと存じますけれども中小企業基本法の定義に準拠して行っております。すなわち、たとえば製造業などでございますと、資本金一億円以下または従業員三百人以下でございますので、たとえば、資本金一億円超でございましても従業員がその範囲内であれば、政府金融機関貸し付けを実行いたしております。ちなみに、五十六年度でございますと、貸付件数で一%程度、貸付金額ベースで二%程度融資を実行いたしております。ただ、それで十分であるかどうかにつきましては、私どもも、先生指摘のような問題意識を持っております。  そこで、昭和五十五年の十月に、中小企業政策審議会の場で意見の指摘を受けました。そこで、定義改定問題小委員会を設置いたしまして、一昨年十二月に意見の指摘を受けてございます。  たとえば、中小企業者の範囲を拡大しても、逆に施策の効果が上位企業にシフトするのではないかという施策の上位シフト論、あるいは下請規制でございますとか分野調整でございますとか、規制、調整分野では逆に保護を受けていたものが今度は規制を受けるというおそれがあるのではないかという、いろいろな問題を指摘を受けてございます。私ども中小企業庁といたしましては、そういう問題を一つ一つ詰めながら、再度中小企業政策審議会に御検討いただいて、早急に結論を得たいと考えております。  以上でございます。
  39. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 政府系の金融機関につきましては、一定の政策目的を持った機関として設立されているわけでございますので、私どもといたしましては、中小企業を対象にいたしました融資という一つの限度があるわけでございます。  ただ、時代の流れに沿いまして中小企業というものをどういう範囲のものにすべきかというのは、通産省中小企業庁の方でお考えいただきまして、その範囲におきまして、できるだけ中小企業の定義というものを時代に沿って改正していただくということは必要かと思いますけれども、やはり与えられました、中小企業というのは何だ、いまの時代におきます中小企業というのは何だという定義ができますれば、その範囲内でしか融資ができない、これはもう政策金融機関としてはやむを得ないことだと思っております。  ただ、政策の範囲といたしましても、中小企業を卒業いたしましたものにつきましては、開発銀行とかあるいは北海道東北開発公庫とか別の機関がございますので、そこで対応いたすというふうな制度になっておるわけでございます。
  40. 玉置一弥

    玉置委員 時間もありませんので、次に移りますけれども、実際にその具体的な話を聞いているから言っているわけでございまして、特に枠からはみ出て大きくなった企業、それについて漏れがないかどうか、もう一回よく十分お調べをいただきたいと思います。  最後に、自動車重量税についてあと一、二分だけ。  今回、税調の答申を読みますと、財政状態が悪いからやむを得ず揮発油税、自動車重量税の税率を二年間延長するということですね。読み方によりますと、やむを得ずかさ上げ部分を延長するということで、本来であれば下げたいような意向も若干見受けられるのですけれども、その辺についてどう考えているのかという話と、それから、今回三年一括払いということで事前に納付をするということでございますけれども、一年ごとに納付がなぜできないのか。自動車税その他のいろいろな税金は全部分割でやっておりまして、まとめて納付をするというのは全くない。それから、二年分を三年分にして利息分は少なくとも安くなるはずだということですね。これは、そもそも一年分を二年にしているのですから、一年分を基礎に考えていくと、もっと安くなるということで、二年分、三年分の金額の見直しがやられなければ理屈に合わない。  それから今回、災害時には還付をするということを取り入れていただきましたけれども、自動車がユーザーに渡るまでを考えていいのかどうか、そして災害とはどういう範囲までを言うのか、その辺について、一括してお答えをいただきたいと思います。
  41. 梅澤節男

    梅澤政府委員 まず揮発油税、自動車重量税が期限が参りますので、今回租税特別措置法で暫定税率で二年間期限の延長をお願いしておるわけでございます。  そのときに、税調答申にも、いま御指摘がありましたように、困難な財政事情等を考慮してとございますが、そういうことは、財政状態がよくなればもとの税率に戻すのかという御指摘かと思いますが、そういうことではございません。「財政事情等」と書いてございますように、二年間延長するということは、現在の石油事情が非常に流動的でございます。それから御案内のとおり、いまの自動車関係諸税は大部分が道路財源に使われておりますけれども、いま道路の第九次計画でございますか、これも非常に流動的な状況でございますので、そういう観点から見ますと、当面二年間を限定して暫定税率のままで延長をお願いしておるわけでございますが、その場合の税負担等も考えまして、今後、では二年先には税率を引き下げるのか、そういう含意といいますかインプリケーションは一切ございません。  それから、自動車重量税の物の考え方でございますが、これも当委員会でしばしば御議論になるのでございますが、私どものこの税の性格に対する考え方、つまり、自動車を走行する地位を得るという意味での権利創設税という考え方は、考え方として一切変えていないわけでございます。したがいまして、今回、新車の車検が行革との関連で二年から三年に延長されました。その場合に税率を、したがって従来の二年物の一・五倍にさせていただいておるわけでございますけれども、いま委員がおっしゃいましたように、二年の一・五倍というのはおかしいではないか、あるいは少し割引すべきであるというお考え方は、自動車重量税が三年なら三年、二年なら二年の前払いであるという前提に立ちますと、そういう期間計算のような考え方が出てまいりますし、途中の廃車の場合に還付しなければならぬという議論につながるわけでございますけれども、私どもは、権利創設税という考え方でございますので、前払いの思想もないわけでございますから、一切割引は考えていないということでございます。  もう一つ、災害減免法の災害の範囲でございますが、災害減免法では、条文を読みますと「震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害」ということでございまして、解釈上は、この「これらに類する災害」というのは、いわゆる天災のほか、自己の意思によらない火災または自己の責めに帰することができない人為的災害も含まれるというふうに解釈されておりますし、こういうかっこうで執行当局が運用してくれるものと考えております。
  42. 玉置一弥

    玉置委員 きょうは時間が参りましたので余り言いませんけれども、別にこの租税特別措置法の間に時間をとっていただきまして、いまの問題を十分詰めたいと思うのです。これで納得できないとちょっと——いままでの自動車重量税自身のできた経過から見て、本来通行税的な要素でなかったわけですね。当初は、道路財源が足りないから応援してくれというようなところから発想しまして創設をされた、そういう経過を、いきなり通行手形のようなことに変えてきているということ自体、非常に許せない問題ですし、また、では歩行者はどうなんだ、鉄道はどうなんだ、ほかのところまで持っているわけですね。では、ほかの、たとえば人が歩く分、そして鉄道が通る分、そういう分を全部自動車に返してくれるのか。自動車というけれども、これは自動車ではなくて一般のごく普通の国民が乗っているわけですね。四千何百万といいますけれども、そういう人たちが乗っているわけですから、こういう人たちが歩くのに何でそういう許可をもらわなければいけないのかということになるわけです。  大蔵省は、最初に出してくるときには大変都合のいいことばかり言って、出てきたら自分たちの権利のようにやっていますけれども、あなたたちの権利ではなくて、国民全体のことを考えてやらないといけないわけですから、いまの答えはどうも納得できない。私は、また後で時間をいただいてゆっくりやります。
  43. 森美秀

    森委員長 正午から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時三十九分休憩      ────◇─────     午後零時二分開会
  44. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。蓑輪幸代君。
  45. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 きょうは、租税特別措置改正案とそれから製造たばこ定価法改正案ということですけれども、最初に、たばこの問題についてお尋ねしたいと思います。  たばこが健康に有害であることは広く知られておりまして、喫煙者本人に有害であることはもちろんのこと、最近では、自分はたばこを吸わないのに、たばこの煙で汚れた空気の中にいると、吸わない人までも健康障害を受けるといういわゆるパッシブスモーキング、受動的喫煙の害についても広く問題提起されて、世論も高まってきております。  そこで、このたばこの問題についてはWHOが、健康問題のみならず生命にもかかわる重要な問題として、何度も勧告を重ねてまいりました。ところが、わが国では、その勧告を真っ正面から受けとめて、全面的にそれを実行してくるという姿勢ではなくて、きわめて不十分だったと言わざるを得ないと思います。  現在、わが国の国民死亡原因の第一位はがんになりました。胃がんとか子宮がんは減少傾向をたどっていると言われますけれども、肺がんが着実に増加をしております。たばこと言えば肺がんというほどですけれども、これは、紙巻きたばこの消費量の増加にほぼ比例して肺がんが増加しているというふうに報告されているわけです。そして、このWHOの報告によりますと、肺がんのみならず気管支炎、肺気腫、虚血性心臓病その他の循環器疾患、それから口唇、舌、口腔、喉頭、咽頭、食道、膀胱のがんもたばこにかかわりがある、それから胃や十二指腸潰瘍についても、非喫煙者と比べて喫煙者の方に二倍も高いという問題が提起されております。たばこには発がん物質を含め有害物質がたくさんある、数え方によっては四千もあるといういろいろな化学物質が含まれておりますけれども、ことに、喫煙者本人の中に入る主流煙というものよりも、灰皿の上に置いているときに紫の煙がくゆらせられるあの副流煙の方が、有害物質が何倍も多いというふうに言われております。  国立がんセンターの疫学部長をしておられる平山先生は、現在国民死亡の第一原因にがんがなったということは、がんが公衆衛生の課題の中で最も重要になったというふうに指摘しておられるわけです。そして中曽根内閣ということを見ましても、がん対策十カ年計画を推進するための関係閣僚会議を発足させ、具体策を検討すると昨日の新聞にも報道されております。  この平山先生によりますと、がん対策については、従来重点を置いてきた胃がんとか子宮がんというのが減少傾向にあるのに、その他のがんがふえているのは、これまでの対策の不備を物語っているとして、次のように述べられております。   反省してみると、早期発見対策ばかりが強調され、原因対策である第一次予防を怠ってきた事実を素直に認めなければならない。水災対策にたとえると、ぼやのうちに発見して全焼を防ぐ対策は推進されてきたが、火元の点検や防火建築や設備を無視していたのに、まさに相当する。タバコの煙の中にガン原物質が存在していることは明らかなのに、その源である紙巻きタバコの販売促進が年とともに強化されているということは、一方で放火をして回って火災の頻発を嘆くのに似ている。というふうに述べておられるわけです。  こういうたばこをめぐる状況を踏まえまして、国民の健康を守る厚生省、来ていただいていると思いますけれども、これまでのWHOの勧告を受け、さらにいろいろな研究を積み重ねた中で、厚生省として、一体何をこれまでやってき、今後どうするつもりかをお尋ねしたいと思います。
  46. 松田朗

    ○松田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のように、WHOが喫煙は健康問題について非常に影響が大きいということで指摘をし、昭和四十五年にはWHOが世界に勧告を出しました。WHOに加盟している国々は、それを守ろうということで、それぞれの努力をしているわけでございます。  わが国におきましては、厚生省が関係省庁の中心になりまして、ちょうど昭和五十五年に世界保健デーがありましたときに、このたばこの害が世界保健デーのテーマに取り上げられました。「喫煙か健康か 選ぶのはあなた」こういうのが、実は五十五年の保康デーのスローガンになりました。これを機会に厚生省が主体になりまして、関係省庁にいろいろ協力をいただきまして、そして対策を図ってきたということでございます。それ以後、わが国におきましては、喫煙対策といいますか、健康とたばこの問題を非常に取り上げまして、厚生省といたしましても、いろいろ具体的な策をとってきたわけでございます。  まずその第一は、調査研究の推進でございます。  確かに、いま先生から御指摘いただきました平山先生の論文、これは世界的にも非常に知られておるわけでございますが、片や、あの研究は疫学的な研究でございまして、基礎的な、病理学的な方面から研究している先生方には、まだ、たとえば動物実験でガンの発現が証明されてないとか、幾つか反論のあるのも事実でございます。しかし、厚生省としましては、疫学的に害があるというその先生方の意見には、やはり十分な重みがあると感じまして、いろいろなことをやってきました。  たとえば保健所においてでございますが、保健所は、地域の住民の健康のためにいろいろな衛生教育活動をするわけでございます。その衛生教育活動の一環として、たばこの害を取り上げるように、これは公衆衛生局長の通知で都道府県にお願いしてあります。また、国が所管しております医療機関につきましても、喫煙の場所を制限する等の通知、指導も出しております。というようなことで、調査研究以外にも、喫煙の場所の制限ということにつきましても可能な限りのことをやってきておる。  それからまた、これ以外にも、いろいろなPR活動が大事でございます。PR活動につきましては、映画、スライドあるいはパンフレット、ポスター、そういうものを皆さんにわかりやすい形でつくりまして、これを都道府県あるいは関係の皆様方にお配りしまして、そのPRに努めている、こういうようなことをやってきたわけでございます。  また、特に最近は、先生先ほど御指摘になりましたように、たばこを直接吸う人以外の周囲の人にも影響があるのだということ、これは、単なる迷惑という観点じゃなくて、医学的にも非常に害があるのだという研究が最近なされてきておりまして、それについては、たばこを吸っている本人に対する影響との因果関係ほどはまだ学者の一致した意見になっておりませんけれども、そういう方面の研究につきましても、やはり関係の先生にはお願いをして進めていただいているところでございます。
  47. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 厚生省も、それなりの努力をしていただいていると思いますけれども、まだまだきわめて不十分だというふうに私どもは思います。  たとえば、こういう問題とかかわり合いを持っている関係省庁が、文部省とか、それこそ国鉄あるいは運輸省とか、あるいは大蔵省とか、いろいろそういう関係省庁が連絡体制をとって、国民の健康を守るために喫煙が健康に有害であるということをもっともっと徹底させる、そのために十分なPRができるような予算を獲得してがんばってもらいたいというふうに思っているところです。ぜひ今後とも厚生省に御努力をお願いするとともに、次に、専売公社にお聞きしますけれども、専売公社としても、このWHOの勧告というのは十分御承知と思います。  ところが、たばこには「健康のため吸いすぎに注意しましょう」というふうに表示しているだけで、ほかに特別の手だてがとられているとは思えないわけです。たばこの販売を促進したいという気持ちもあるかと思いますけれども、みずからの商品が有害であるということをそのまま表示したくないという気持ちもあるだろうと思いますけれども、事は国民全体の健康にかかわる、生命にかかわるということでございますので、ありのまま真実を表示する、それこそが専売公社の責任ではないかというふうに思います。  WHOの勧告は、単に厚生省に出されたものではなくて、各国政府に出されておりまして、それぞれの省庁において全部受けとめなければならないというふうに思うわけです。勧告には、特に、立法者の協力を得るための特別の努力という項目の中で、たばこに関するあらゆる形式の広告、販売促進の制限ないし禁止とか、紙巻きたばこの包装及び広告には、紙巻きたばこ一本当たりのタール、一酸化炭素、ニコチンの平均含有量を表示すべきことを可及的速やかに要求するとか、それから、紙巻きたばこ包装及び広告には、喫煙が健康にとって危険であることを示す有効な警告文を掲示することを要求すること、この場合、伝える情報や語法は時とともに変化させ、文面が使い古した陳腐なものとならないように配慮されなければならない、というふうに指摘しているわけです。  そこで、現在のたばこを見てみますと、ニコチン、タール、一酸化炭素の含有量というものが包装に表示されてはおりませんし、健康に危険であるという文言についてもきわめて緩やかなもので、とうてい警告というふうには受けとめられない。ましてや、私は、きょう特に強調したいのは、周りの非喫煙者の健康をも害する点について喫煙者が自覚するよう、それを表示すべきではないかというふうにも思うわけです。そこで、これらの点について専売公社としてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  48. 長岡實

    長岡説明員 喫煙と健康の問題につきましては、私どもも十分に関心を持って対処していく所存でございます。  現在までにもいろいろやってまいりましたが、ただいま御質問の点についてお答え申し上げますと、たとえばニコチン、タールの量の表示でございますけれども、これは蓑輪委員も御承知かと存じますが、毎年ニコチン、タールの量を測定いたしまして、その測定値を販売店の店頭にステッカーのような形で表示をいたしております。  個々のたばこの箱にそれぞれ表示してはどうかという御意見だと存じますけれども、国民全体の嗜好が低ニコチン、低タールのたばこの方向に向かっていることは事実でございますけれども、その場合、やはりお買いになる方は、ほかのたばこと比較いたしまして、どのたばこがどのたばこよりもどの程度含有量が少ないかという、その比較の上においてお買いになっていらっしゃると思うのでございまして、個別の表示よりは、私どもがやっておりますいろいろのたばこの量が一覧で見ることができまして、それによって比較ができる方法の方が、私どもとしてはよろしいのではないかというふうに考えておる次第でございます。  それから、注意表示の点につきまして、これは各国ばらばらでございまして、御指摘のようにもっともっと表現の強い国もあれば、そうでない国もあるわけでございます。注意表示の文言につきまして、いろいろと御意見が寄せられておることは、私どもも十分承知いたしておりますけれども、きわめて短い文章でわかりやすい表現ということになりますと、いまの表示は喫煙者の念頭にも常に定着していることなども考え合わせまして、結局いまの表示が妥当ではないかというふうに考えておる次第でございます。  それから、喫煙者自身よりも周囲にいる非喫煙者に対する迷惑の問題あるいは健康に与える影響問題等でございますが、この点につきましても、私ども、いまたばこの箱に何か表示するということは考えておりませんけれども、公社といたしましては、喫煙のマナーの向上についての広報活動といったようなことにつきましては十分に力を入れておるつもりでございますし、今後とも力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  49. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 まだ健康に危険であるという認識すらもきわめて不十分だというふうに思いますし、たとえば店頭にステッカーが表示してあるというふうにいまお答えがあったわけですけれども、喫煙者の方々に聞いてみても、見たこともないというか意識にとまらないぐらいだというふうで、余り注目されていないという実情もあります。やはりWHOの勧告に従って、そういう方向をぜひ検討していただきたいと思います。  と同時に、公共交通機関とか会議室とか、当委員会もそうですけれども、職場とか、一定の場所において、そこに閉じ込められるという場合において、非喫煙者の健康侵害というのがだんだん問題になっておるということですし、喫煙者が非喫煙者に対して加害者意識が全くないという現状にありまして、やはりたばこを見るたびにそういうことも注意しなければいけないなと自覚しつつ喫煙をする、心がけるという点を促す意味でも、たばこの包装に表示していただくことがぜひ必要ではないかと思いますが、その点、もう一回だけお答えいただきたいと思います。
  50. 岡島和男

    ○岡島説明員 お答えいたします。  いま最初の方で、公共の場所における喫煙規制の問題のお話が出たわけでございますが、劇場とかデパートなどにつきましては、法令によりまして喫煙が禁止されているということは御存じだと思います。公共輸送機関におきます禁煙席という問題も、国鉄の中でどういうふうにするかということもいろいろ議論されているわけでございます。公共の場所での喫煙の規制の問題につきましては、防災とか環境衛生とか、その場所の本来的な性格から法令により禁止されているものがございますけれども、そういう場所を別にいたしますと、一般的には、喫煙者のマナーの問題とか社会的関心の動向とか、そういうものもよく見ながら判断されるべきものだと私どもとしては思っております。  ただいまのところ、そうした公共の場所におきます喫煙規制の問題につきましては、それぞれの施設の管理者が、社会的良識に基づいて、吸う方と吸わない方の双方の立場に配慮しながら、施設の利用目的とか利用実態とか、そういうものを見ながら自主的に措置されることを期待しているわけでございますが、嫌煙権という言葉が大分前から言われておりまして、その嫌煙権という考え方が出て以来、吸う人も、そういう立場の方に配慮しなければならないという意識がだんだん浸透してきているのではないかと思っておる次第でございます。公社としては、喫煙マナーの普及向上という中でいろいろなキャンペーンをいたしまして、そういう意識を喫煙者の方にもっと持ってもらうようにしたい、こういうふうに心がけているということでございます。
  51. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 満足はできませんけれども、引き続き、また今後質疑をしていきたいと思っております。  そして、マナーの問題というふうに言われておりますけれども、いままで申し上げました点を含めて、大臣の御感想を一言だけ聞いて、次に移りたいと思います。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 蓑輪委員からそういう御意見を交えた御質問がありますと、私も、ポケットにたばこを入れながら、ちょっとその回数が減るな、こう思いました。  従来からも議論されているように、吸い過ぎに注意しましょう、それをデインジャラスと書いたらいいじゃないかとか、あるいはもっと、そんなに天国に早く行きたいのですか、こう書いたらいいのではないかと、まあいろいろな議論がいままでもありましたが、それとは別に、いまおっしゃいます、今度はわれわれ喫煙者の加害者意識とでも申しますか、そういうものについての認識も新たにいたしました。
  53. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 時間の関係で次に移ります。  今回の五十八年度の税制改正では、厳しい財政事情にかんがみ、税負担の公平化、適正化を一層推進する観点から、租税特別措置の整理合理化を行う、こういう方針が掲げられているわけですけれども企業関係租税特別措置の整理合理化状況というのが例年税制調査会への提出資料に掲げられているようです。そして、五十七年度には七十項目までこの特別措置が減ってまいりましたけれども、五十八年度では一体どうなっているのでしょうか。廃止、創設、そして結局現在幾つになっているのかという点を明らかにしていただきたいと思います。
  54. 梅澤節男

    梅澤政府委員 お答え申し上げます。  企業関係の租税特別措置の項目数でございますが、五十八年度の改正前の項目数が七十件でございます。五十八年度の税制改正でただいまお願いしておりますのが、廃止いたしますものが二件、縮減合理化を図りますものが三十二件、合計三十四件、整理合理化の割合が四八・六%、創設いたします項目が五項目、したがいまして、改正後の項目数は七十三項目でございます。
  55. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 整理合理化を行うということで減るのかなと思っておりましたら、結果的には七十三項目と昨年よりふえているということで、特別措置をだんだん減らしていくという方向とは逆行するというふうに思うわけですね。  こういう税制改正というのは、最初に出された方針と全く矛盾すると私は思います。中には中小企業承継税制の創設など、かねてから私ども何度も要求していたものがようやく実現されるという点もありますけれども、大体においては、大企業を助けるための施策の拡大というふうに思わざるを得ません。  昨年来いろいろ検討されていた中で、厳しく見直すというので、たとえば退職給与引当金とか印紙税の適用範囲の問題とか、中小企業の交際費とか金融保険業の貸倒引当金など対象に挙げられていたようです。ところが財界の方で、企業増税は増税なき財政再建に反するのだ、一切の増税まかりならぬという形で反発が起こり、結果は、いま御報告いただいたように特別措置が逆にふえている。素材産業対策というようなものが財界から要望が出されて、そしてそれが実施されてきているということで、何か財界の要望に沿った税制改正だという感を強くせざるを得ないわけです。私どもは、こういうような税制のあり方では、とても国民が納得できないのではないかと思います。  そこで、たくさんありますうちの何点かをお聞きしたいと思いますけれども、最初に、核燃料再処理準備金制度の問題です。この準備金制度が認められるようになったのは、一昨年の昭和五十六年十二月二日に電気事業審議会料金制度部会の中間報告「原子力バックエンド費用の料金原価上の取扱いについて」ということによって認められるようになり、従来は費用とせず資産として計上していた原子力バックエンド費用のうちの高レベル放射性廃棄物の再処理費用を「炉内で燃焼している時点引当金を積立てる方式により、料金原価に算入することが適当である。」というふうにされたことによって、大蔵省として税制措置するということになったわけですね。なぜ、いま税制上この核燃料再処理準備金制度の創設が必要なのか、その理由をお答えください。
  56. 梅澤節男

    梅澤政府委員 核燃料再処理準備金が創設に至りますまでの経緯は、ただいま蓑輪委員がお触れになったような経緯をたどっております。  税制上、五十八年度でどうしてそういう措置をとったかということでございますが、御案内のとおり、核燃料再処理というのは、一つは、原子力発電の場合に当然使用済みの核燃料が出てまいりますけれども、これを安全に廃棄しなければならないという一つの要請がございます。それともう一つは、再処理いたしました結果、ウランでまだ使える部分が出てくる、これは資源の有効利用という観点がございます。  そういう政策上の背景があるわけでございますが、税制プロパーの議論として考えますと、原子力発電時、つまり核燃料を燃やしているときに再処理費用というのは発生しているわけでございます。再処理の技術が開発されてまいりまして、かなりこの技術が安定してまいった、したがって、再処理費用単価を予見し得るぐらいの精度にまで技術が安定してきたわけでございます。したがいまして、今回、その再処理費用の単価から、大ざっぱに申し上げますと、回収されますウランの単価を差っ引きましたネットの費用単価を算出いたしまして、それを発電時の核燃料燃焼量に乗じまして準備金を積み立てる、現実に再処理費用を支出いたします段階で、それに対応する準備金を取り崩す。  したがいまして、租税特別措置法でお願いはいたしておりますけれども、基本的には、この準備金は、ただいま申しましたように核燃料の発電時に確実に発生しておるものでございますから、費用収益対応という考え方から見て、企業課税所得計算上も非常に合理性を持った準備金であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、そういう背景でございますので、税制上の仕組みといたしましては、電気事業法に基づきまして通商産業大臣が指定する事業年度から、その考え方は、ただいま蓑輪委員もお触れになりましたように、その再処理費用が料金算定上の原価に算入される、つまり、企業の業務上の計算上も原価として計算するという時点で、税制上もそれを受けとめるという仕組みにしてあるわけでございます。
  57. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 いままで、すでに各電力業界が積み立てているわけですけれども、それがすぐ免税になるとかというようなことではないように聞いておりますけれども、いずれにしても、準備金制度を設けて原発政策を推進していくという形になるというふうに私は思うのです。  従来はコストで計上されてなかったものを、これからコストとして計上していくということで、それがまた多額なものになるという状況では、これが電力料金の値上げということに非常に密接なつながりを持ってくると思うのですね。核燃料再処理費用というのが、当初の予想と全く違ってべらぼうな額がかかるんだということが最近になって明らかになってきております。昭和三十九年にトン当たり八百九十五万円というふうに言われた再処理費用、それが今日では一億五千万ぐらいだというふうに言われてます。これはもう十六倍にもなっているわけで、予想をはるかに上回るものだと思うのです。  再処理技術そのものが確立されてないという状況のもとで、わが国でたった一つの東海村の動燃事業団の再処理工場では、先月十九日から事故で全面休止という事態に立ち至っております。世界的にも、こういう状況のもとで、原発の見直しというのが強まってきていますし、昨年計画されたもののうち、五十基が中止になっているという状況もあります。  この改正法のもとでは、具体的には政令でいろいろなことを決めるというふうにされていますけれども、やはり電力業界に恩典を与えるというものであることは間違いない。完全な再処理ができない上に、見込みが恐ろしく狂うような非常に未開発、未完成な技術のもとで、ずさんな計画のもとで原発をどんどんと進めてきた。そのしりぬぐいを税制上ではこういう形で処置していく。それでは国民にとっては、免税にしてやるということと料金値上げを押し上げることで二重の問題が起こってくるというふうに私は思います。  電力業界は、すでにこれまで東京が四十億円、中部が五十億円、関西が百五十三億円、中国が十六億円、四国が二十四億円、九州が三十六億円、合計六社で三百二十億円も引当金を計上しているという状態です。いままでは有税ですけれども、今後これが無税の部分が出てくるということになりますが、実際にこれからもっと引当金を計上する電力もふえてくるということになれば、積立額もふえてきてますし、それが再処理費用の非常な値上がりのもとで、税金の面で一体どれだけ減収になるのだろうかということは、ある程度見込みを持たなければならないと思うのですけれども大蔵省としては、大体どれくらい減税になるのかというふうに踏んでおられるでしょうか。
  58. 梅澤節男

    梅澤政府委員 先ほど申し上げましたように、この準備金を積み立てますのは、通商産業大臣事業年度を指定されるわけでございまして、五十八年度中につきましては、まだその動向が明らかでございませんので、減収額は計上いたしておりません。  今後どうなるかということでございますが、これは、むしろ通産省の方から御説明した方がいいのかと思いますけれども、私どもが通産省からいただいております資料では、先ほど委員の御指摘のありました五十七年の三月期決算、現在有税で積み立てている額が九電力約三百二十億円でございます。五十八年の三月期に、間もなく決算期が到来するわけでございますが、引き続き有税の積み立てが行われるということになるかと思います。  したがいまして、今後通産大臣がいつ事業年度を御指定になるかということでございますけれども、当面年間の使用済み核燃料の発生量見込みは五百トン程度、先ほど再処理単価一トン当たり一億五千万とおっしゃったわけですが、私ども聞いておりますのは平均一億円程度、ということにいたしますと、平年度で当面五百億円前後となるということになろうかと思いますが、減収額は、もちろんこれに税率を掛けなければなりませんので、五百億円が減収になるわけじゃございません。
  59. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 いま主税局長がおっしゃった一億円というのは、再処理費用ではないと思うのですね。  これは、回収されるプルトニウムなどを差し引いた損失額といいますか、そういうようなものになるというふうに思うので、ちょっとその辺は違うのじゃないかと思いますけれども、いずれにしても、これにとどまらずに、この考え方を推し進めていきますと、高レベルの放射性廃棄物だけではなくて、低中レベルの放射性廃棄物の処理や廃炉のための費用とか、今後原発を進めていくに当たってかかるであろうもろもろのものがコスト計算されて、それが税制上は措置されていくというふうになるとすれば、これは大変なことになるのじゃないか。  四十五年以来、使用済み核燃料の再処理費用というのがずっとたまっているわけですけれども、そういう問題もどうするのかということにもなりますし、それらが全部積もり積もって電力の消費者のところにかかってくるということになれば、もともと原子力というのは、すごく安くて安全だというふうに宣伝されていますけれども、安全どころか大変危険なものであり、なおかつ高価なものである。どんどんと廃棄物は出しながら、その処理については、東海村でも本当に故障ばかりしている、イギリスやフランスに頼んだりもしているけれども、本来そこで当初の計画では回収されるプルトニウムやウランの方が高いはずだという計算だったのが、とんでもない計算違いになってきている。始末もできない。実態はトイレのないマンションのようなもので、非常に不完全だというふうに言わなければならないと思うのですね。  こういう危険なしろものに対して税制措置するというのは、私は、やはり不公平を一層拡大するものになるということで、こういう措置はやめて、むしろ、もともと原発政策そのものを見直していくという、そういう方向に立たなければならないというように思います。この点についての大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  60. 梅澤節男

    梅澤政府委員 原子力発電の問題は、むしろ、これも通産省の方から御説明した方がいいかと思いますけれども、いずれにしても、わが国の今後のエネルギー政策あるいは石油代替エネルギー対策をどの方向へ持っていくかという大施策に関係する問題でございますので、あるいは後ほど大臣の方からお答えがあるかと思いますが、税制上の議論としては、先ほども申し上げましたように、確実に費用として発生しているものでございますから、私ども、これによって電力業界に不当な恩典を与えているとか、そういうふうな税制上の性格でないということだけは、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 いまお答えいたしましたように、税制上の理論としては、いまお答えしたとおりだと私も思っております。  これを、いわゆる電力行政なかんずくその中に占める原子力行政、こういうことについての批判は、それなりに、よって立つ基盤、立場の相違からしてあり得ると思いますが、私どもといたしましては、今日まで考えてきておる原子力のいわゆる安全利用という立場から、原子力行政というものはきわめて大事なことであって、そして、それが発電という平和利用に供された場合、それがまさにまた電気事業そのものの中で必要な措置として、結果としてこういう制度が生まれていったというふうに理解をしております。
  62. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 原発政策そのものをここで大議論するというのは適切でないかと思います。また別の場所でそれはやりたいと思いますけれども、私は、従来税制上そういう措置をとってなかったのに、今回改めてやっていくというあたりは、その推進役を果たすということはどうしても避けられないことだというふうに思うのですね。  そこで、大臣がおられるうちに、また何点かお聞きしておきたいと思いますが、特に所得税減税の問題で再三議論がありますけれども、「景気浮揚に役立つ相当規模の減税」というものが約束されて、それの実現の見通しということが重大な関心になっております。大蔵省としては、これは政府として約束したわけですから責任があると私は思いますけれども、どういう見通しでこの実現を果たされるのか。前にも大変明確でない答弁ばかりでしたので、できるだけ明確にお答えをいただきたいと思います。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、ある意味において明確でないことが非常に明確なことであるというふうにも言えるかと思うのでございます。  私どもといたしましては、与野党の合意を尊重して、財政改革の基本的考えを踏まえながら、減税実施のための真剣な検討を進めてまいる、これに尽きるわけでございますが、与野党の合意の中で、必要な財源を確保してそして減税をしろ、こういうことになっております。したがって、財源ということになると、直ちに安易に、それは特例公債をもって充てるなどということになれば、これが金融市場に与える影響からいたしまして、景気の足を引っ張る要因ともなりかねないし、また財政改革の基本にも触れることでございますので、そのことを考えるわけにはいかぬ。  そういうことになると、やはり今後の税収の動向を見きわめながら、そして国会の論議を踏まえて、それから小委員会においていろいろな説諭がなされておりました事実も承知いたしておりますので、場合によっては、参加された小委員先生方を追っかけてでも意見を聞きながら、精力的に努力をしなければならぬ課題であるというふうに受けとめております。
  64. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 財源問題について全く何の保証もない、これから何とかして探してこよう、そんな感じがしてならないわけですけれども、探すにしたって、それらしいものはすでに予算の中で精いっぱいかき集めてきたという状況のもとで、今後どうなるのかということについては、逆に、一体本当に減税はやられるのだろうか、全く見通しがないというふうに断ぜざるを得ないわけですね。  本来、減税を実施するというその意思があるならば、それは、やはりきちっと五十八年度予算の中で明確に位置づけておかなければならないと私は思います。私どもの党は、予算の組み替え提案で、税額控除方式などを中心にして課税最低限を二百八十万円まで、その程度まで引き上げる、それでサラリーマンはもちろんのこと、パートや内職や業者婦人などにもその影響がいくような、全体として減税の影響が及さ一兆円規模の所得税減税を行うように要求してまいりましたけれども、本格的に減税を実施するということならば、やはりそれに見合う予算措置がきちっと講じられなければならないと思うのです。そういうやり方を今後なさるお気持ちは全くありませんか。
  65. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、いろいろ各方面の意見を聞きつつも政府の責任でやれ、こう仰せられておるわけでございますから、そういう措置をとらなければならぬということを念頭に置きながら、これから検討を進めていく課題である。  いずれにいたしましても、五十七年度の決算が確定いたします時期というのが、一つのこの本格的検討を始める機会にもなろうかな、こう思っておりますので、いろんな御意見を体しながら、これに真剣に対処していきたいという考え方であります。
  66. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 どうも確実に減税が実施されるという感触をつかむことがどうしてもできないわけですね。むしろ減税の雰囲気のもとで期待感のみで推移しながら、先のことは先に考えるというような感じに受けとめられます。それではいけないんです。  そして同時にまた、将来減税財源がどうにもこうにも見つからないという場合に、やはり大型間接税の導入というようなことが大変心配されておりますけれども、この問題については、何度も大臣の御答弁も伺っておりますけれども、私どもは、どのような名前をつけようとも、EC型付加価値税という名前をつけようとも、あるいはその他の名前をつけようとも、国民が導入に反対している大型間接税というものを全体としてやってもらっては困るという立場なわけで、従来、国会の決議があった一般消費税(仮称)、これでなければ何でも国会決議には違反しないのだという立場をとられるようでは、こそくな手段だと言わなければならないと思うわけです。やはり私どもは、どうしても物価の上昇ということが大変心配ですし、税金問題について本来減税を求めてみたところ、逆に大型間接税の導入によって税の逆進性が推進されるということになったんじゃ、何にもならないというふうな不安を持つわけです。税制調査会における検討の対象については枠を設けないというふうに、大臣は再三申されておりますけれども、私は、国民の実情からいって、このような大型間接税の導入についての検討は一切やめるという方針を大臣がすぱっととっていただくことが必要じゃないかと思います。それについての大臣の御見解を伺いたい。
  67. 竹下登

    竹下国務大臣 五十四年に行われましたこの国会決議、これはやはり基本に置くべきであるし、税制調査会等に広範な御諮問を申し上げても、税制調査会の方々は、そういう経緯はわれわれも報告をしておりますし、十分認識の上で御検討をいただくわけでございます。  何分にも、臨調の最終答申をちょうだいいたしましたが、「増税なき財政再建」をやれ、「すなわち、予算編成において、いわば糧道を断ちつつ、歳出の削減によって財政再建を図る限り、おのずから既存の制度や政策の見直しが不可避となり、そのことが本格的な行政改革の推進につながっていくと期待されるからである。」という文章になっておりますので、安易な増税というようなものを念頭に置いてはならぬということは十分承知しております。
  68. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 どうも大臣の決断をお聞きすることはできないようでございますけれども、再三繰り返して申し上げておりますように、私どもは、減税と増税の抱き合わせは御免であるということを強く申し上げておきたいと思います。  続いて租税特別措置についてお聞きしますけれども、先ほどちょっと御質問もございましたように、海外債権損失引当金というものがまた出てきております。この問題について、どういうふうに大蔵省が今後措置していくのか。核燃料再処理準備金みたいに、最初は有税でやっておいて、後になったら無税にするというようなやり方で、結局のところ銀行の要望を実現していくという方向で考えておられるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  69. 梅澤節男

    梅澤政府委員 午前中の御質問にもお答えしたのでございますけれども特定海外債権についての引当金、いま有税積み立てというかっこうで各金融機関対応しようということは私ども承知しておりますけれども税制上の課税所得計算上、たとえば引当金損金として認めるというふうなことを具体的に税制当局として考えておるわけではございません。  この問題については、現時点では一切予断を持っておりません。ただ、現行の貸倒引当金との関係をどう考えるのか、それから特定債権ということになりますと、本来の議論としては、債権償却の問題だろうと私は思うわけでございますけれども、諸外国でもいろいろな対応をしておるということでもございますので、そういうことともにらみ合わせながら、一つの研究の課題にはなるのかなということでございます。現時点で、これを無税引当金にするというふうなことを決めておるわけでもございませんし、そういう考え方も持っておりません。
  70. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 現在幾ら積み立てているということで御承知でしょうか。
  71. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 特定海外債権引当金につきましては、この三月期の決算でやることになっておりまして、その三月期の数字が確定いたしておりませんので、現在のところまだゼロでございます。
  72. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 新聞では何百億というような話もあるのですけれども、今後これが、さっき申し上げたように、当初は有税でそれから無税でという方向になるのじゃないかという心配がありますので、そういうことのないように、私は、大臣にもぜひ安易な特別措置を次から次へとつくることのないようにしていただきたい、そのことについて大臣の御見解をお聞かせください。
  73. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる租税特別措置というのは、そのときのまさに経済的必要性等に基づいてやられるものであって、そして一応の目的を達したらそれが廃止されていく、だから峻厳な態度で臨むべきであるという基本的な考え方であります。
  74. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 大臣、時間もありませんので、もう一点だけお聞かせください。  私は、かねて、大蔵委員会に所属して一番最初の質問のときから、パートタイマーの課税最低限を引き上げるようにということを強く要求してまいりましたけれども、今回の税制改正の中でもそういう配慮がされておりません。しかし、そういう要望も非常に強くなっておりますので、この点で、ぜひパートの課税最低限の引き上げということを強く求めておきたいと思いますが、お聞かせください。
  75. 竹下登

    竹下国務大臣 これは現行の二十九万というのはやはりぎりぎりの問題でございまして、現行税制そのままの中でこれだけ特別扱いをするというのは、これは問題が多いということであります。
  76. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 おっしゃるように、税制全体にかかわる部分もございますので、やはり全体の課税最低限の引き上げという措置をしていただかなければならない。それが緊急の課題であり、所得税減税の重要な内容であるというふうに思いますので、強く要望したいと思います。  次に、かねてから質問しております譲渡性預金、CDの問題ですけれども、CDについての有価証券取引税の課税、これは、昨年二月二十四日に私が本委員会質問しましたときに、当時の福田主税局長からは、CDが有価証券化するかどうか見きわめて答えを出したい、見守っているというような答弁でございましたけれども、その後、見守った結果どのような御見解でしょうか。
  77. 梅澤節男

    梅澤政府委員 CDを有価証券取引税の課税対象にしろという御指摘が従来からあることは承知いたしておりますが、申すまでもございませんけれども、現在、有価証券取引税の課税対象にいたしておりますものは、証券取引法に言う有価証券ということになっております。  前回も御答弁申し上げたと思いますけれども、CDを有価証券取引税の対象にするかどうかということにつきましては、本来、現在の有価証券取引法というのは、個人あるいは法人が投資もしくは投機の対象として保有する有価証券という考え方で、いわば投資者保護のような観点から法律がつくられておるわけでございまして、現在、CDの法的性格につきましては、むしろ指名債権と申しますか、譲渡性は持っているけれども指名債権であるというふうに位置づけられておるわけでございます。したがいまして、税法上は、有価証券取引税の課税対象としないかわりに、譲渡が起こりました場合には所得税が課税される、所得税法上も移転が起こりますと金融機関を通じて税務署に調書が参るという仕掛けになっておるわけでございますが、引き続き、この問題については、今後のCDのわが国金融市場における定着化の状況等を見ながら判断すべき問題であると考えます。さしあたり五十八年度で有価証券の課税対象にするという結論は見出せなかったということでございます。
  78. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 五十八年度の税制改正の中で、CDについて有価証券として課税をする、そういう問題について検討はされたのでしょうか。
  79. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは、前回も御説明申し上げておりますように、私ども内部では、この問題に限らず、いろいろな経済社会の進展の状況に応じて絶えず対応ができるように勉強はいたしておるわけでございます。
  80. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 CDについては有価証券取引税がかからないということで、税制上不公平であるという指摘が前からされてまいりました。証券業界からは現先取引に対する免税ができないのなら債券現先とCD現先を課税上公平にせよ、そういうような意見も出ているわけです。当然のことだと思います。  このCDについては、五十三年十二月二十七日の金融制度調査会におけるCDの具体案に関する検討結果というところで、将来、証取法上の有価証券に指定される場合には、金融機関等、証券会社とも取り扱えるようにすることが望ましいというふうに指摘しているわけで、金融制度調査会としても、CDが有価証券に指定されるという可能性について十分承知した上で、こういう結論を出していると思うのです。  特に、この四月から海外物のCDやCP、いわゆるコマーシャルペーパーも販売されるというふうにも言われてますけれども、こういう状況のもとで税を適正に課税する、公平に課税するという観点から見て、このCDやCPについて真剣な対処が必要ではないか。前から指摘されていて、見守っているというのがいつまでも続いていくというのは適切でないと思いますので、もうこの辺で判断をしていただかなければならぬのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
  81. 梅澤節男

    梅澤政府委員 海外物のCDやコマーシャルペーパー、これはまだわが国に販売されておりませんので、この問題については、それこそ今後の市場の状況を見なければならないということでございます。  国内のCDの問題につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、必要な対応ができるように、引き続き検討しながら情勢を見守っていくということでございます。
  82. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 企業が要求するような特別措置については、きわめて敏速に特別措置が認められながら、こういう税の不公平を是正するためにかねてから指摘されている問題については、なかなか実現しないという点について、非常に問題があろうかと私は思います。  税の問題については、財源を確保するという意味と同時に、やはり適正、公平ということが、単に言葉だけではなく、具体的に税制改正の中であらわれてこないと、これらは本当に国民にとって納得できないということを強く指摘をしまして、質問を終わりたいと思います。
  83. 森美秀

    森委員長 この際、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ────◇─────     午後六時五十八分開講
  84. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部助哉君。
  85. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、大変御苦労さんです。  まず、大臣にお伺いいたしますが、課税の公平が税制の根本原則だ、公正なる社会実現の保障であるというふうにいままでおっしゃってきたと思うのですが、この立場から租税特別措置の整理を進めるという、こういう考えには変わりないのでしょうね。
  86. 竹下登

    竹下国務大臣 基本認識は一緒でございます。
  87. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 主税局長にお伺いしますけれども大蔵省は行政当局として、今日なお、利子所得、配当所得の総合課税を行うべきとお考えになっておられるのかどうか、お伺いします。
  88. 梅澤節男

    梅澤政府委員 利子配当の適正な課税のあり方の理想的な姿としては、総合課税であるべきだというふうに考えております。
  89. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 国税庁長官にお伺いしますけれども国税庁では、五十七年の八月に預貯金をお調べになったというのが新聞に出ておるのですが、そのときに調査した件数百六十七件の簿外預金を調べた結果、これは新聞に詳しく書いてありますけれども、相当多くの部面でマル優制度が脱税に使われておった、ひどいのは、仮名口座を設ける際に、通りを歩いておって目についた表札を片っ端からメモをして住所、氏名を無断で借用していた、百七十六個も印鑑が見つかったなんという皆さんのあれが出ておるのですが、やったことはありますね。
  90. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 ございます。
  91. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、政府は、課税の公平が大切だ、こうおっしゃっておる。主税局は、利子配当の総合課税はやるべきものだ、こうおっしゃっておる。国税庁に聞き忘れたので、もう一つ念を押して聞きたいのですが、そこで国税庁としては、グリーンカードは十二月政令で一応とめたけれども、それまでは法律が生きておるわけですな。そうすると、一月一日に要求があればカードを出すことになっておった。その態勢は完璧とは私は言わないけれども、大体整えておられたのでしょうな。
  92. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 お答えします。  グリーンカードの準備は五十五年から進めておりまして、五十六年度、五十七年度にかけまして、建物の方も朝霞にセンターが完成する段取りに至ったわけで、一方、システムの開発を進めるということで約二億八千万使っております。カードの準備までは正直言って用意いたしておりません。というのは、昨年の八月ごろ延期法案という動きがございました。これは政治の問題ではあろうと思いますが、その辺で相当膨大な経費をかけていいかという問題がございまして、非常に迷ったわけでございます。しかし、一方いろんなシステムの開発等につきましても、いままでやってきたものをどうするかということ、まあそれはやりましたので、それはそれなりとして、今後そこで凍結するというか準備をどこでとめるかという問題、これは行政の方、執行の問題ですから、国会の動きというものにどうしても関心を持つわけですが、やはり法律があるということをどう考えたらいいかということで、正直言って秋口から準備は進めておりません。そして十二月二十八日の政令が出ましてからは、その政令にのっとって準備はストップしたということでございます。  そういうことで、執行当局としては、第一線の混乱がないようにということを注意しながら、一方、その法律があるということを受けて予算も要求はいたしておりました。予算の要求はいたしておりましたが、これは予算編成段階のところで政令が二十八日に出ましたし、予算としてはこれが計上されないという査定でございましたので、それ以降ははっきりとこれを準備しない形でいるわけでございます。
  93. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 政令が出てからは、それはわかります。しかし法律があるのですから、やっておらないとすれば怠慢なんだな。法律があるのでしょう。その政令が出るまでは準備をしなければいかぬ。しかし、その準備を八月末からやめたとおっしゃれば、八月末から五カ月ぐらいだから、やろうと思えばそう長い準備期間は必要がないのでしょう。
  94. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 準備は着々と進めておったわけで、私自身、正直言って法律を守るという立場を再三答弁申し上げたわけです。そして、法律を受けて執行がそれを推進するというのが行政の立場であるということは当然です。しかし、一方において政治の方での法案提出という事態、これはやはり重大に受けとめるということも常識的な行政の態度であろうと思います。  これが、われわれ執行にとっては非常に悩む点でございますし、特に私はその点、主税局長としての立場があった時点と、その後執行に移ってからの時点、執行としては混乱がないようにということを頭に置かざるを得ない。そして、これが議員立法ではありますが提案があるという事態はやはり受けとめて、その間検討をどうしたらいいかということで、従来の建物の関係それからソフトウエアの開発をあるところで、八月の出た時点では、正直言って私の責任でこれはとめたということです。そして、それが予算及び政令で明確に定まった一月以降は、やらないということしか行政としてはやりようがないということであったわけであります。
  95. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 政府は課税の公平が大切だと言い、主税局は利子配当の総合課税はやりたいと言う。国税庁はとめたと言うけれども、八月にとめて十二月まで何カ月もない、やれば準備にそう時間がかかるはずがない。にもかかわらず、政府は三年間の延期を提案しておいでになった。  一度法律として成立したものを訂正するというのは、これは、大臣一体どういうことなんです。重大な事情の変更の政治的理由がはっきりしなければならぬと私は思うのだけれども、まず、なぜこれを三年延期するのかという理由、もう一つは、なぜ三年にしたのかということを大臣からお答え願いたいのです。
  96. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、全くもって私にとっては正直なところ苦しい答弁とでも申しましょうか、そういうことであります。  それで、私が大蔵大臣でありました昭和五十五年の第九十一国会、政府提案として私が提案理由を申し述べて御審議をいただいて成立させていただいたものであります。その後、現在までの事態の推移を見ますと、従来の利子配当課税制度に大変革をもたらすというものでありますだけに、いろいろな議論が起きてまいりました。そうして、それこそ郵貯あるいは金、ゼロクーポン、中には金庫が売れ出したとか、いろいろな議論が出てまいりまして、必ずしもこの制度の責めに帰することが適当ではないと思われるものでも、そういう議論が出てきたことは事実であります。  そこへ持ってきて昨年八月、さすがに私は提案者ではございませんでしたが、多数の議員の賛同のもとにグリーンカード制度の五年延長案というものが議員提案をされた。その後、私はまた大蔵大臣を拝命をした。まさにはからずもでございます。希望者がなかったからとでも申しましょう。  それで、一体どうするか、本当に考えました。が、現実問題として、しかし国会というものが存続しておる限りにおいては、その可能性に対する期待権というものが存在するということになれば、その法律の決着がつくまでは、どうしても新しい方針を発表するとかいうような行為は差し控えなければならぬ。それで、十二月二十五日にまさに参議院でこの最終的な法律案等の決着を見る直前に、廃案ということが決定したという通知を受けたわけであります。  したがって、いかなる法律も、いわゆる国民の理解と協力あるいは制度への信頼が得られないことには、これはその効果を上げることはできない。初めからそのことはわかっているのじゃないかと言われれば、まさにそれまでのことでございます。したがって、法的案安定性という観点から、とにかく一定期間ひとつ凍結しよう、こういう考えにあったわけであります。しかしながら、これは長い間政府税調でも御議論いただいた問題でもございますだけに、お諮りをして、この際グリーンカード制度自体を三年間凍結するということにしたわけでございまして、まことに、これは異例の措置であるというべきであると私も思っております。  したがって、部内の議論というよりも、政治家の議論の中には、従来も議員提案というものが存在しておったのだから、議員提案で決着をつけるべきだという意見もございましたが、やはり政府提案として御審議いただき、大方の御賛成をいただいて成立をしたものでありますから、政府提案で真っ正面から御批判を受けながら提案するのが妥当である。特に、出した者が私でございますから、筋としては、その方が政治家としてもよかろうという判断をいたしまして、提案をしたわけであります。  三年、あるいは議員提案は五年になっておったということもいろいろ議論をいたしましたが、これは専門家からお答えした方が適切であると思いますが、少なくとも本法律案が成立しましたならば、適正、公平な利子配当課税の実現という政府の基本方針には変わりはございませんので、できるだけ早い機会に、国会での御論議を踏まえながら、改めて税制調査会で検討していただく、こういう筋にしたわけでありまして、まあくどくど申し上げましたが、わかった、おまえの措置はりっぱだと言っていただけるとは私も思いません、率直に言って。だから、やはりすべての、ある意味において私なりに考える政治生命とでも申しましょうか、そういうことの判断基準の中に、かくすべきであるという決定をして御審議をお願いしておる、こういうことであります。
  97. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣の答弁は私にはよくわからぬのですよ。国民の理解だ、信頼だ、こう言う。また自分が出したのだから自分が引っ込めるのだと言う。それはそれで筋が通っておるつもりかしらぬけれども、私にはわからない。  というのは、大臣、国民にこれだけ大きな権利義務を与える問題を、あなたはこれをおつくりになった。それで、これは五十五年の速記録、これだけあるのだな。私は全部読ませてもらいました。大臣、大変りっぱな答弁をいっぱいしてありますよ。総合課税には早くしなければいかぬ、そのためにどうしてもこれが必要なんだなどという、私は、これを一々読み上げたらあしたまでかかってしまいますから読み上げませんが、それだけ国民の重大な権利義務に関する法律をおつくりになるというのは、私は、大臣はそれなりの政治信念を持ってこれをおつくりになったのだと思うのだな。そうでなしに、何か官僚がつくったからそこへめくら判を押したとは思えない。竹下さんともあろうものが、そんないいかげんなことをするはずがないと私は思う。自分で信念を持って、これだけ国民に大きな権利義務の変更をする問題をあなたが信念を持っておつくりになった。それが、反対があるから、国民の理解と信頼性と言うが、何でこれをはかるのです。何であなたはそれをおはかりになったのです。  それならば、私はもう一言言いたいけれども、じゃ、われわれが反対をしたら、これから新しい税法はおつくりにならない、こうおっしゃるなら、それはわかります。何がしかの反対があるのはあたりまえであります。税法なんというものは、大臣、モグラたたきみたいなものだ。こっちをたたけば、こっちが出てくるものなんです。全部完璧だなんという税法があったら見せてもらいたい。そんなものはあり得ないですよ。それを何がっしかやりつつ、よりいい方向へ持っていくというのが当然過ぎるほど当然だし、いままでの税法だってみんなそうでしょう。一つつくったら、それが完璧にうまくいくなんということはない。みんな抜け道やいろんなものが出てくる。まさにモグラたたきみたいなものだと私は思う。何がしかの反対があるから私は変更しますなんと言うなら、われわれがこれから租税特別措置、みんな反対しますから、みんなやめますか。私はあなたのその理論はいただけないのです。国民の理解と信頼とおっしゃるけれども、つくったとき、一体あなたはどういう信念を持ってこの法律をつくられたのか。それで、わずかの期間でこれだけまた変更する。私がつくったんだから、私がやめるのがあたりまえだなんというのは、政治家として、国民の大きな権利義務に関するものを扱う政治家としては、私は、その言葉はいただけないのです。もう一遍御答弁願いたい。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 これは一番言いたくないことでございますが、一番大きな事実というものは、多数の議員によって提案をされたというのは、ある意味においては、国会のマジョリティーを持った政党に所属される方々というものはまさにマジョリティーでありますから、多数であるわけでありますが、それが大きな判断になったことは事実であります。しかし、少なくともそういう信念を持って提出したものであるならば、それらのマジョリティーの動きとはいえ、これに対する説得の努力、これは確かに必要であると思います。その説得の努力というものが功を奏するに至らなかった、こういうことがやはり一つの大きなゆえんであると思っております。  自分が出したから自分がまた凍結するということについては、これは最終までこの見解というものは批判されてしかるべきものであると自分でも思っておりますが、だからといって、また、そういう引き続いたマジョリティーを持つ提案というものに期待をかけたあり方というものよりは、自分自身の提案というのが自分の心の中で消化し得る一つの論理体系であった、こういうことであります。
  99. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま大蔵大臣からるる御答弁があったわけでございますが、実は、私も御提案申しましたときの担当の審議官でございますので、行政官の立場から、一言お答えする機会をお許し願いたいと思うわけでございます。  五十五年の所得税法改正で、利子配当課税の総合課税について少額貯蓄等利用者カードでやらせていただくということを提案したわけでございますが、これは、それまで約一年間、足かけ二年税制調査会でいろいろ御議論をいただきまして、利子配当の総合課税をする場合の一番の問題点は、利子配当の受取人の本人確認の問題と、大量の名寄せの仕事を確実に行う技術的なシステムをどうするかという点でございました。いろいろな議論が行われたわけでございまして、その経過はすでに世の中に公表されておりますが、その時点で、現実的なあり方として、利子配当に限定したカード制度が一番適当な方法であろうという結論を得たわけでございます。  ただ、その場合にも、これはその当時からも申し上げておったわけでございますけれども、わが国の近代における利子配当の課税制度を見ますと、明治三十二年に所得税法ができまして以来ほとんどの期間、特に利子課税につきましては非課税もしくは分離課税で四分の三世紀以上来たわけでございます。したがいまして、これを一挙に総合課税に転換することは、まさに画期的なことでございます。  その意味で、日本の場合、何千万という人が金融資産を持ち利子を受け取っているわけでございますから、この人たちの慣熟といいますか制度の理解、これが当然前提になるということで、もちろん執行当局の準備も要るわけでございますけれども、本格実施については三年間という準備期間をもって提案したわけでございます。  ところが、その準備期間の進行の過程で、先ほど大臣がるるお述べになりましたように、客観的な事象として、いろいろな議論が巻き起こってまいりました。同時に、制度に対する信頼感と申しますか法的安定性という点から見ますと、このまま直ちに本格実施に移る場合に、やはり混乱は避けられないのではないか、これも客観的事象として私はあったと思うわけでございます。  したがいまして、大変異例のことではございましたけれども、五十八年度の年度の税制調査会の御審議が終わりました後、年が明けまして急遽税制調査会にお諮りいたしまして、結局、法的安定性という観点から、混乱回避という点も含めまして、ただいま御提案申し上げているような措置は当面やむを得ないだろう。ただし、その場合においても、政府においては、この提案をする機会に、内外に利子配当の適正課税に対する政府の方針はいささかも変更ないということを宣明すべきである、その旨を、法案が決められました閣議におきまして大蔵大臣から御発言いただき、記者会見で官房長官からも、政府の態度として正式に表明されておるわけでございます。  ところで、三年間凍結という措置をどうしてとったかということでございますが、ただいま御提案申し上げておりますように、五十五年の所得税法本法でお決めいただきましたカード制度を中心とする総合課税の制度は、法的には一応そのままの姿とさせていただきまして、とりあえず租税特別措置法で三年間適用しない、いわば俗語で言えば凍結するという措置をとっておるわけでございます。  これは、ただいま申しましたそういう客観的な事象を背景といたしまして、現時点政府としては、今後の利子配当課税に対するあり方について一切予断を加えることなく凍結する、もし国会で法案をお認めいただければ、先ほど大蔵大臣からもお話がございましたように、税制調査会で早急に利子配当課税の今後のあり方について御結論をいただきたいということでございますが、もちろんその場合に、法的安定性という観点から申しますと、議員提案のように五年という期間は長過ぎる。なぜ三年かということでございますが、仮にもう一度御議論を願って、たとえばカード制度を全部あるいは部分的に行うという場合でも、先ほど国税庁の方からも御説明がありましたけれども、少なくとも、いまからまたグリーンカード制度を行うという結論が出た場合に、執行当局としては、一年以上の準備期間を必要とするわけでございます。したがって、早い機会に、たとえばこの秋に結論が得られたとしても、所得税の暦年課税というような観点から見れば、最低限度三年間の凍結期間は必要とする、それ以上延引することは法的安定性という観点からも望ましくないということで、三年間の凍結という措置をとらせていただいたわけでございます。  五十五年の所得税法改正審議に当たりましては、当委員会で野党も含めて大変いろいろな角度から御審議いただき、御支援をいただいたわけでございまして、そういう経緯にかんがみますときに、ある意味では大変申しわけないような結果になったわけでございますけれども、そういう事情を十分御賢察いただきまして、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたしたいと思うわけでございます。
  100. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 混乱があるとあなたはおっしゃるけれども、どういう混乱があるのですか。先ほど国税庁の方では、いろいろな情勢を見ながら八月からこの作業をとめた、こうおっしゃっておる。八月から十二月まで何カ月もない。それをなぜ三年というあれをしたのかというのは問題がある。  一つは、これを審議する五十五年のこれをごらんになってごらんなさい。三年では長過ぎる、もっと早くやれという意見、もう一つこの中にあるのは、総合課税はそれより前にも進めろという意見が野党に圧倒的なのだ。それを高橋局長だとか伊豫田次長は、何だかんだと言いながら、この準備にこう要ります、ああ要りますということで、三年たったらやりますというふうに言っておるわけですよ。この質問の大半の委員の一致しておるのは、三年では長過ぎる、不公平税制を是正するという点でもっとこれを急ぐべきだ、こういう意見が圧倒的なのです。  けれども、あなたは、これをやれば何か混乱が起きる、こうおっしゃる。どの程度、どういう混乱が起きるのか。皆さん、やってもみないでそんなにわかるのですか。それならば私は聞きたいけれども、混乱を起こさないようなことをこの時点で少しも考えなかったのですか。何がしか金に逃げるとか、どこかへどう動くとかいうのは、さっき言ったように、モグラたたきみたいなものですから、何がしかの預金の移動というものは、これはだれが見たってある程度想定する。それを混乱だとおっしゃるならば、これは制定したこと自体問題があるのですよ。その混乱というのはどんな混乱なのか、これが一つ。  もう一つ、税調に相談して、税調に相談してとおっしゃるけれども、私は、税調というのは余り好きじゃないのだ。今度小倉さんがこういうことを言っておるのだな。この減税の問題、所得減税の問題なんかについては高度な政治問題となってしまう。税調としても、政府から話があれば、前の答申に余りとらわれずに、いい知恵を出していくことになろう。これは新聞だから、本人がどうおっしゃったか私確かめたわけじゃないが、この新聞で見る限り、税調には一貫性もなければ何もない。大変嫌な言葉を使えば、これは政府の隠れみのだ。税調の人は一人一人私たちと反対のような、政府の御意見を聞く人たちを皆さんが人選をしておる。われわれに人選をさせれば、ああいう人は皆委員にしないですよ。皆さんが都合のいい人を人選して税調をつくっておる。その税調の会長たる者が、全然一貫性もなければ、政府から言われれば、いままでの行きがかりを捨てて知恵を出しますなんということを言われたんじゃ、税調なんというものを皆さんがここでおっしゃるのには、もう徹底的に私は反論をしたいのです。  ある意味で言えば、税調はなるほど総理の諮問機関ということになっておるけれども、国会こそが最高の議決機関であり、審議をする場だ。それを、国会の審議をやっていけばすぐ税調に逃げ込むなんということは、もうおやめになった方がいいですよ。余りそれをおっしゃるなら、私は何時間でも、税調一人一人の名前を挙げて、失礼だけれども、これはどういうあれで、どういうことを言ったというのを全部挙げて棚卸しをしますよ。大体みんな皆さんが選んだ、失礼だけれども、御用学者と言いたいような人あるいは役所のOBみたいな者ばかり選んでおって、あんなものが国民の代表とは私はどうしても考えられない。そんなものは余り税調、税調とはおっしゃらない方がいいですよ。言えば、私はそれを言わなければいかぬ。  もう一遍、混乱というのはどういう混乱があるのか、私はそれをお聞きしたい。
  101. 梅澤節男

    梅澤政府委員 御質問、御指摘の点、二つあるかと思います。  まず前段の、混乱とは一体具体的に何を意味するかということでございますが、これは、先ほども私が申し上げましたように、制度を提案いたしました時点で、わが国では四分の三世紀以上続いた分離もしくは非課税の制度を総合課税に切りかえるものですから、大変な制度の変革である。したがって、委員が御指摘のように、あの法案の審議の段階で、もう少し実施の時期を早めろという御議論もあったわけですけれども、少なくとも三年間は、執行当局の準備ということのほかに、大多数の人が、この新しい課税制度に移行していただくわけですから、この制度をよく理解され、気持ちの変化と申しますか、慣熟していただくという期間で最小限三年は要るということを、当時も御説明申し上げたかと思うわけでございます。  その後、先ほど申しましたように、客観的事象として、いま直ちにこれを実施することについては、やはり三年という期間の経過ではやや不十分であるということでございますが、その場合の混乱とは何を指しているのか、これは、私は二つの側面があると思います。  一つは、これも先ほど大臣が御指摘になった点でございますけれども、法案が成立後、四月以降の時点でございましたが、郵便貯金へのシフトの問題が論じられました。それからほどなく、金へのシフトの問題あるいはゼロクーポン債へのシフト、いろいろな議論が行われたわけでございますが、あの現象がすべてグリーンカードに端を発し、グリーンカードの原因で起こったというふうに私どもは考えてないわけでございます。しかし、世上そういうものと絡めて議論をされたということは事実でございますし、そういたしますと、金融資産の運用をする皆様方の中に、心理的にいろいろな危惧あるいは不安というものが生じてまいるということは否定できないという側面が一つでございます。  もう一つは、これはいろいろ御批判があるかと思いますけれども、八月の時点で与党である自由民主党の議員提案が行われたということは、制度の行方について何がしかの、何がしかというよりも、かなり強いインパクトをもって一般国民それから金融機関等に大きな心理的な影響なり制度の先行きに対する不安感を生んだということは、私は否定できないと思うわけでございます。  そういう事態をそのままに放置して、この制度を実施するということには非常に問題があるということと、八月の時点国税庁がほどなく準備をややスローダウンしたという経緯につきましては、これは単に国税庁の判断だけにとどまりませず、当時大蔵省といたしまして、あの議員提案が行われた時点で、これが与党の提案であるだけに、事の内容の是非にかかわらず重大に受けとめざるを得ないということを内外に表明したわけでございます。  そういう客観的事実として、金融面あるいは金融資産の運用面での心理的な不安あるいは動揺のほかに、制度の先行きに対する不安、動揺、このようなものを含めまして、これをそのまま実施するとすれば混乱が起こるのではないかということを私どもは申し上げておるわけでございます。  もう一つは、税制調査会に対する御議論でございますが、私ども税制調査会について、この問題の局面でいろいろコメントすることは適当ではないと存じますが、ただ、一月十三日の総会で、このグリーンカード問題の三年凍結に関連して小倉税制調査会長が集約された発言がございますので、それをそのまま読ませていただきます。  税制調査会としては、政府がグリーンカード制度を三年間凍結することとし、そのための法案を政府提案することについては、混乱回避の必要性、法的安定性等諸般の事情を考慮すれば、やむを得ないものと考える。ただし、これはまさにやむを得ないということであり、このような事態に立ち至ったことについては、多数の委員から遺憾であるとの意見が表明された。当調査会としては、税負担の公平化を推進することは現下の急務であると考えており、今回の処置がこうした方針の後退を意味するものでないことを、政府においてこれを提案する際に内外に表明する必要があると考える云々、こういうことでございますので、もちろん税制調査会に対する御評価はいろいろあるかと思いますが、御参考までに御紹介申し上げたわけでございます。
  102. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 税調の意見は参考に聞いておきますが、こういうこともあり、大体私は税調というのは余り尊敬をしないです。それはいいけれども、どうも、四分の三世紀云々と言うけれども、税の公平の問題はイギリスの時代からですよね。もっと長いのですよ。だから、それは理屈にならぬのです。税を取るということ、新しい税金を取るということをやれば、それなりに、取られる方は嫌な思いをするのは当然のことです。それは当然過ぎるほど当然なんだな。一体、それだけ皆さんが見通しなしにこの問題をやるのか。それならば、私は後でお伺いしようと思ったのだけれども聞きますが、税の根本原則である公平の問題はどうされるのです。  私は、これは大臣にお伺いしたいのだが、税の不公平というものがいろいろ問題になっておるし、税の公平をどう図っていくかというのは税法が決まったときからの問題点であって、これはもう四分の三世紀なんというものじゃないんですよ。そうすれば、この速記録の中にも、るる皆さんが、グリーンカードは三年にしても利子配当の名寄せや総合課税の努力をしろということをくどくおっしゃっておるんだが、皆さん、グリーンカードをやめにした、これ幸いというと失礼なのかしらぬが、これ幸いと言っていいほど、総合課税の方も三年間やらない、こういう方針なんでしょう。それとも、総合課税の方は進めていくということなのか。私はどうも、前段に申し上げたように、これはまあ、グリーンカードをやめにした、これ幸いに総合課税の方もそれまでぶん投げておく。もっと勘ぐって言えば、三年たったら、これは安楽死をさせるつもりじゃないだろうかという気がするのですよ。  グリーンカードは、私は本当は余り好きじゃないのだ。本当は好きじゃないですよ。総合課税にできるならば、こんな背番号に通じるみたいなものを私はやらない方がいいと思うのですよ。そういう点では、私は基本的にはグリーンカード、グリーンカードと言いたくないのだけれども、総合課税をやるというほどの皆さんが努力するのかしないのか、その努力をされるのですか、大臣。あなたの方は事務当局なんだから。
  103. 梅澤節男

    梅澤政府委員 まず技術論を申し上げまして、あと大臣の御答弁があるかと存じますが、委員が御指摘のように、税の基本的な第一義的な原則はやはり公平でございます。これは仰せのとおりだと思います。  そしてしかも、利子配当に限定して公平な課税のあり方は何かということになりますれば、長年の税制調査会の御議論の過程でも、理想的なあり方は総合課税である。ただし、先ほども申し上げましたけれども、名寄せとそれから本人確認のきちんとしたシステムが整わないままに総合課税をいたしますと、かえって不公平を招く。つまり、見つかる人と見つからない人がランダムに出てくるというような税制では、かえって不公平を招く。したがって、税制調査会の従来の議論の過程では、そういうきちんとしたシステムが整うまでの間は、むしろ分離選択税率を段階的に引き上げることによって対処すべきである、こういう文脈でいままで作業が進められてまいりまして、五十五年の所得税法改正の際には、その手段としてカード制度というものが現実的な方策であるという結論に到達して、あの法案を提案したわけでございます。  今後の課税問題について、私どもは、その利子配当の課税の公平という観点を後退させる、あるいはおろそかにするということではございませんけれども、今後どういうふうにするかということになりますと、やはり本人確認なり名寄せの技術的なシステムというものを一体どう考えるかという、そこの点から議論をいたしませんと、非常に抽象的な公平論に終わってしまうということだと感じております。
  104. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんが参議院の予算委員会へ出したこの資料によると、詳しく言いませんが、銀行にマル優が二億件以上あるんだな。郵便局に三億一千八百万口ある。やろうと思えば何ぼかできるんですよ。だけれども、これだけ不公平なんです。冒頭に読み上げたあの新聞じゃないが、百七十幾つも判こを持って、各銀行にみんなやっておるなんというのが出てくる。何か公平というのがたてまえだけであって、実際は皆さんおやりになる気がない。が、そういう姿勢から見ると、三年たったら安楽死をさせるんじゃないだろうか。税調がどうのこうの、参考にしてくれと言うけれども、この税調の会長の発言から言えば、まあ皆さんから頼まれればいい知恵を出しますなんというのじゃ、ちっとも一貫性がないだけに、私は、いまのあれは信用ができない。  ということになると、税の公平というものは一体どうやってやるんだ。本当は、この三年間グリ—ンカード延期をお出しになるときは、総合課税はこうやってやりますぐらいのものを、私はつけて出すべきだと思うのですよ。それもやらないで、グリーンカードやめた、総合課税も全部やめたというのじゃ、これは、税務当局としてはもう問題にならぬじゃないですか。私は怠慢過ぎると思うのだな。  しかも、税の公平の問題は、私がこの大蔵委員になった当初から、前の先輩もずいぶんやったようですが、私もやった。私は、一番最初に質問したのだけは覚えておるけれども、私は、税の公平とは何だと聞いたら、塩崎君、大分困っていたけれども、税の公平という問題は、いままでもう耳にたこができるほどやられておる。しかも、こういう形で、皆さんのこの資料によれば、マル優のあれを利用しておる金額が二百兆、しかも人口をはるかに上回る二億件も銀行にあり、郵便局には三億一千万件もあるなんというのは、これは、大変残念だけれども阿部助哉の家庭は一日も持たないのに、これだけあるなんというのは、私はどうも合点がいかぬのだな。これだけ皆さんやっておるのだから、何か代案を出してくるべきじゃないですか。これだけやれば、皆さんがそれをやれば、また金は何がしかどこかへ移りますよ。  それで、昨年の予算委員会で私はあなたに、分離課税の税率を三五%、地方税はかかりませんと言う、地方税はかからない、ただの三五%で全部終わりだなんというやり方は、本当は地方税法にも問題があると思うんだ。交付税の決まりから言うと、三五%、国だけが取りました、地方税はやりませんというやり方は、私は問題があると思うのですよ。だけれども、それはきょうは触れませんけれども、三五%で地方税はなしで終わりということは、私はいかにも安過ぎると思う。それはあなた方では、この三五%に引き上げてそう年数がたっていないからというのが一つ。もう一つは、この税率を引き上げれば金が移動しますということが一点。この二つがこの前の御答弁だったんですよ。何がしか移動するだろうということは、私はさっきから申し上げるように、モグラたたきみたいなものだから多少移動します。しかし、税率を引き上げるぐらいのことは当然考えるべきだし、二百兆もある、このことにもう少し大蔵当局は、これは執行する国税庁の方かもわからぬけれども、もう少し何とか考えてもいいのじゃないか。  私は、余り税金を取れ取れという話は嫌なんだけれども、うんと金持ちからはやはり少し取っていただかないと、財政はどうしようもないでしょう。それで片一方では、財政は火の車でございます、サラ金財政でございますなんとやっておいて、片一方では、二百兆もあります、人口よりはるかに多く、倍もありますなんというのが皆さんのこの資料から出てきておって、それに手を触れようとしないというのは一体どういうことなのか。どういうふうにしてこれに対応しようとするのです。三年間は手をこまねいてこれは見送る、こういうことなんですか。これは、大臣だな。大臣の政策を聞いておる。あなたには、説明を聞くよ。
  105. 梅澤節男

    梅澤政府委員 その前に、若干の説明を申し上げる機会をお許し願いたいわけでございますけれども、三年間凍結する、何の代案もなしに凍結するのは無責任ではないかという御指摘でございます。  私どもは、その御指摘は甘んじて受けなければならない面もあるかと思いますが、冒頭に申し上げましたように、今回三年間凍結をお願いしておりますけれども、三年間何もしないということではございませんで、なるだけ早く結論を出していただく。ただし、秋ごろに結論をいただきましても、結論いかんによっては、実施するのにあと一、二年くらいかかるということを申し上げているわけでございます。  それから、マル優並びに郵便貯金の件数の問題を挙げられました。従来から、口座数なり枚数が人口に比べて多いじゃないかという御指摘があります。委員御案内のように、その二億口あるといって、したがって乱用であるということは直ちには言えないわけでございまして、これは非課税申告一件ごとにカウントをいたしておりますので、一人の人が少額ずつ、いろいろな金融機関に非課税枠を設定されますと、複数で出てまいるという問題もございますし、郵便貯金の三億枚というのは、実は定額預金証書一枚もその三億枚の一枚に入っております。  そういうことはございますけれども、現在のマル優なり郵便貯金の非課税制度の乱用があるということは、これは否定できないと思うわけでございます。さればこそ、グリーンカード制度のようなものを提案申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、具体的に現実味のある公平総合課税というものを議論いたします場合には、どうしても名寄せと本人確認の技術のシステムが整いませんと、非常に抽象的な公平課税論、場合によっては、先ほども申しましたように、実質的には不公平になってしまう。この辺がこの問題の一番むずかしいところでございまして、技術論をこれから詰めさせていただいてどういう結論が出るか、いましばらく時間をおかしいただきたいということを申し上げておるわけでございます。
  106. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それはいつごろまでに出すのです。
  107. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは、法案をお認め願えますれば直ちに税制調査会の作業に入っていただきまして、私たちの希望としては、年内にでも御結論をいただきたいと考えております。
  108. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それはどういう方向で税調に諮問するのです。大体、皆さんが諮問すれば税調はオーケーを出すのだから大したことはない。どういうあれで出すのですか。
  109. 梅澤節男

    梅澤政府委員 御案内のとおり、税制調査会というのは、個々の案件について諮問申し上げるという形をとっておりませんで、適宜、当面問題になりました問題につきまして、税制調査会の中で随時作業をしていただくわけでございますが、本件につきましては、たとえば、私どもの希望から申しますれば、この問題の処理のための御検討のための特別部会なり専門委員会のようなものを税制調査会の場でおつくり願いまして、かなりの頻度でもって検討していただく。その場合に、どういう方法でということを大蔵省税制当局の方からあらかじめ税制調査会にお示しするというかっこうではなくて、従来の経緯を踏まえまして税制調査会では、従来とも利子配当課税の理想的なあり方は総合課税である、そのための現実的な方策いかんということを模索されてこられたわけでございますから、そういう経緯の延長上の中で当面どういう御結論をいただくか、自由な御審議を賜りたいと考えておるわけでございます。
  110. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 税調でも、いままでは不公平税制の是正だとか租税特別措置は随時見直していけとか、いろいろといいことも言っておりました。     〔委員長退席大原(一)委員長代理着席〕 しかし先ほど言ったように、相談があれば会長はいい知恵を出すなどと言っておるのだから、皆さんの方がある程度サジェスチョンをすれば、大体それは出てくるのじゃないの。私は、税調の経緯を余り関知しないものだから、そういう言い方をするのだけれども、私はそう思う。ただ、いまのような程度では出てきませんよ。税金を取られるのが嫌な金持ちの連中はいっぱいいるんだから。自民党さんは、大ぜいいると見て議員提案までおやりになるくらいだから。そんなことでは知恵は出てきません。私は、そういう具体的な問題はあれしませんけれども、どう考えてみても、この不公平税制の是正については政府は熱心ではないということと、竹下さんには大変失礼だけれども竹下さん、もう少し責任を感じてくれなければ困る。それが一番言いたくて私は質問を希望したのです。  というのは、どうも話を前に戻して恐縮なんだけれども、これから総理にまでなろうとする竹下さんとしては、やはりこの辺で政治家として信念を持って当たってもらわぬと、国民は政治に信頼を失いますよ。自分で言ったことには自分で責任をとるぐらいのことをおやりにならぬとね。私は、尊敬する竹下さんだからあえて申し上げるのだけれども、大変な知恵者だそうでありますけれども、私はそれだから言うのだけれども、政治家というものは責任のけじめだけはきちんとしてもらいたい。どうも民主主義というのは無責任時代になるんじゃないだろうか。幾ら失敗したって公約を破ってみたって、責任をとろうとしないのじゃ困るのであって、私たちも野党といえども、やはり責任問題だけは明確にせにゃいかぬと思う。それ以上に重要なのは、政府を担当する大臣の皆さんが責任の所在をきちんとしてもらわにゃいかぬ。どうも前に言ったことと一年もたつとすぐ話が違ってみたりやるということには、私はどうしても納得ができない。それが今日、社会のいろいろな混乱を起こすもとなんじゃないだろうか。  私は、大変おこがましい言い方だけれども、やはり一番責任のあるのは政治家なんだ。政治家が責任を持ち、身を正していったら、社会の混乱とかこういう不正問題というものは、そう出てこないのじゃないだろうか。私たち自身、みんなで政治家が一番身を正し、責任をとるということがなければ、政治の信頼はなくなり社会は混乱するのが当然なんだ。     〔大原(一)委員長代理退席委員長着席〕 民主主義になってから、どうもその責任が明確でない。私は、いまあなたにやめろとかやめるななんということは申し上げないけれども、あなたが法律をつくられてこれをまた延期するなんというのは、私はどうしてもいただけない。それならば、いま申し上げるように、あなたは知恵者なんだから、その間こういう形で総合課税は進めていきます、グリーンカードは三年延ばすけれども、総合課税についてはこういう形でやってみますというぐらいのことを、なぜあなたは提案してこないのです。一つの案としては、さっき局長が言ったような分離課税三五%は低過ぎます。もう少しこれを引き上げてみたって、これは何もおかしくありません。そういう点で、もう少し具体的な案を持ってこの延期の提案に臨むべきだ、私はこう思うのですが、大臣いかがですか。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 大変私にとっては責められるべきごもっともな指摘だと思います。が、私なりに、やはりいわゆる分離選択三五%問題というのは、これが非課税貯蓄あるいは二〇%、そういうところへまた新たなるシフトを起こすということになると、これもまた不公平を助長することにもなる。  税調に対する評価は別といたしまして、私は権威ある税制調査会と思っておりますので、そこでいままで御議論いただいた経緯はもちろんお踏まえなさっての御議論でございましょうし、そして、国会で出た御議論というものは正確に御報告申し上げて御議論をしてもらうわけでもありますので、そこへお願いして可及的速やかにこの結論をお出しいただく、こういうのが至当な姿ではなかろうかと思っております。  ただ、責任問題につきましては、これはいささか見解を異にするところもございますが、私は、責任はいかに追及されても、それに対して、いやおれの判断が正しかったと言おうなどという気持ちは全くありません。むしろ責任を持って延期の法律案を通してもらって、そして、税制調査会で今後のあり方について御審議をいただくということがまた責任のとり方である、こういうふうに考えております。なかなかこれは人にわからぬだろうなと思って、私ひとりの心の中で消化をしておるという責任論であります。
  112. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 こればかりやっておると、次の大事な問題、もう時間がなくなるから急ぎますが、前の渡辺大臣がマル優の廃止だなんという話をしてみたり、あなたも何かやめるような話をしてみたり、またそれを取り消してみたりというような形で私は記憶をしておるのでありますが、マル優そのものについては、ある意味で庶民の将来の生活の問題等も考えておられるのだが、大臣、これは廃止するというお考えはお持ちなのですか、それともそうじゃないのですか。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私が一度、予算委員会でございましたか、これは廃止すべきものであるとか、これは残すべきものであるとか、あらゆる予見を税制調査会で御審議いただく前に与えるべきでないという意味において申し上げたことでありますので、いまマル優を廃止するというような検討をしたこともなければ、また指示をしたこともないというのが現実の姿であります。
  114. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも皆さん、大蔵省には非常に影響力を持っておられると思う桜田さんがたしか会長をやっておる産業計画懇談会、この中にはこういう文章があるんだな。「”およそ「預貯金」と名の付くものは、銀行預金・信託預金・郵便貯金等々のすべてを通じて、極めて低率(例えば五%)の「源泉分離の所得税とを一率に課す。その一方、「マル優」は全廃する”」こういう提案をなさっておる。  これはしかし、桜田さんは大蔵省の財政制度審議会の会長をやっておられるし影響力があるんだが、皆さんの方では、検討もしないしマル優は残すというお考えなのかどうか、大臣の御答弁をいただきたい。
  115. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり、税制調査会に対しての諮問を読んでみますと「貴会に下記の事項を諮問します。記 国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」これは昭和五十五年十一月十八日内閣総理大臣鈴木善幸、それから五十二年、これは三年ごとに任期が来るからでございますが、「内閣総理大臣福田赳夫 貴会に下記の事項を諮問します。国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」こういう、言ってみれば大変、広範な御諮問を申し上げておるというのが、税制調査会に対する政府としての対応の仕方でございます。  したがって、幅広く税制のあり方について調査、審議することとされておりますので、この問題につきましても、自由な立場において、あらゆる角度から幅広く議論をしていただくべきものであるという基本的な考えに立つわけであります。したがって政府として、マル優をいままでどおりするか、手直しするか、廃止するかなどについては、目下具体的な考えを持ち合わせておるわけでもなければ検討もしていないという姿勢でやはり臨むべきものだと考えております。
  116. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この問題をやっておると切りがないから、次に移ります。  租税特別措置ということで大蔵省は一本で出してくるけれども租税特別措置という点では一つだけれども、中身は原子力の問題もあり、中小企業の問題もあり、素材産業の問題もありというわけで、本当を言うと、これは一本一本重大なんだから、別々に出してきて御審議なさるのが最高議決機関として私たちの義務もそれで果たすことになると思うんだが、どうも束にして出してこられて、一緒くたにやってくれというのはちょっと困るんですな。まあ、これはいいですが。  産業構造改善臨時措置法について御質問をしたいと思うのであります。  通産省が作成した「特定産業構造改善臨時措置法案の概要」というパンフレットを見ると、石油化学、アルミ等のいわゆる構造不況業種について「将来とも回復改善の見込みのない部分をできるだけ迅速かつ円滑に縮小する」こう述べておる。そして雇用については「雇用や地域経済に急激な影響を与えることのないよう、計画性をもって過剰設備が縮小されるよう配慮」する、あるいはまた「なだらかな雇用調整」をするとか、こう書いてある。一方、特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法案の提案理由には「今後とも一時に多数の離職者が発生することが見込まれる」こう書いてある。  片方は、何か労働者のことや地域経済のことも考えておるようで、企業はできるだけ早く要らない部面を切り捨てる、当然これは労働者に急速に失業が出るわけなんだ。その点では、この提案理由の方の言い方が私は本当だと思うけれども、何か片方を見ると、企業の方は急速に縮小するけれども、労働者の首切りの方はなだらかにやるなんということが書いてあるけれども、一体どっちがどうなのか、さっぱりわけがわからない。私は、やはりこの提案理由にある「今後とも一時に多数の離職者が発生することが見込まれる」ということが本当だと思う。  要するに、この法案は、独禁法に風穴をあけ、国の手厚い保護のもとに資本については集中、これをてこにして大規模な合理化さらには産業の転換による救済を図りながら、労働者についてはかつての石炭合理化と同様に残酷に首を切るものであると私は考える。一体、どの程度の人数の労働者が解雇される見込みなのか、そしてその対策はどのようにされるのか、これは通産省にお伺いしたい。
  117. 小長啓一

    ○小長政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、基礎素材産業というのは日本経済において大変重要な位置づけになっておる産業分野でございまして、出荷額で見まして、製造業のうちで約三二・八%等々の重要な位置づけになっておるわけでございます。そこで、私どもは、この基礎素材産業が急激な変化にならないように、なだらかな調整をしていくためにということで、この法律を用意しておるわけでございます。  先ほどの提案理由のところで先生おっしゃいましたけれども、そこの点はこういうことでございます。もし、この法律措置をとらなくて放置しておくならば、一時にたくさんの離職者、失業者が出るような事態になるおそれがあるということでございまして、そういう事態を回避するために、法律的な措置によりましてなだらかな雇用の調整をやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、雇用の調整の点でございますが、この法律では、雇用の調整に関しましては重要な配慮事項ということにしておるわけでございまして、具体的に構造改善基本計画をつくる際には、関係労働組合の意見を審議会を通じて聴取をするということになっておるわけでございます。そしてまた、構造改善基本計画そのものの中にも、その他の事項ということの中で、雇用の安定に関する事項も取り上げられるということになっておりまして、法律の中では、雇用の安定の確保につきましては、いろいろな面でいろいろな配慮をしておるということでございます。特に、実際の運用において私どもが考えてまいりたいと思っておりますのは、私どもが、これから構造改善を具体的に進めていく過程におきましては、企業の中において余剰人員が存在をしておる過程におきまして、次の職業転換のための教育訓練であるとか、あるいは企業内における配置転換というようなことを進めるように企業に慫慂いたしまして、具体的に離職者という形になるべくならないような配慮をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。しかし、万が一失業のやむなきに至ったというようなことになりました場合には、今度労働省の方で、従来の雇用関係二法を統合いたしまして新たな雇用立法が準備されておるようでございますが、その雇用二法と十分な連携を保ちながら、失業者につきましても万全の対策を講じてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  118. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなた、これは労働者、労働組合の意見を聞くのですよ。同意を得るんじゃないんですよ。何でこんなものが保証になりますか。皆さんの方の文章は幾つかそういう点で矛盾があるんですよ。片方では、急激に出ると、こう言っておる。片方では、何とかなだらかにやるみたいな話をしておる。それで失業が出ないように努力をする、それは努力はするでしょう。問題は、それじゃ労働者にとって一つも歯どめも安全感もないんですよ。大量の労働者が首を切られる。そして、企業としては当然のこととして中高年層の労働者がスクラップになっていく。新しく採用するとすれば、企業としては若い人を採用していくということは当然のことなんです。この不況下で、これは労働省の関係がやるんだというお話で、後は労働省任せということになるのでしょうけれども、私の調べたところでは、実際に給付金だ、職業訓練だ、再就職のあっせんだということのようですが、しかし、中高年層がちょっと職業訓練を受けたからというて、いま就職がそんなにスムーズにできるような世の中だとあなたたちは考えておるんですか。そんなに甘くはない。労働組会の意見を聞くのじゃなしに、同意を求めるというなら、これはまた、私はある程度わかるんですよ。意見を聞いたって、その意見は聞きっ放しじゃないですか。そんなものは保証になりません。時間がないからはしょります。  皆さんの「特定産業構造改善臨時措置法案の概要」というのを拝見をいたしました。二ページ目をちょっと読んでみます。「仮にわが国経済・産業に不可欠の基礎素材の大半を海外からの輸入に依存することになれば、石油と同様に相手国の供給制限や一方的値上げなどに対して対抗力がなくなり、供給が不安定になるのみならず、国際資本から不利な取引条件を強制される可能性が大きくなる。」こう言っておる。なるほどそのとおりですな。もう一つその下にあるんだけれども、時間がないから、同じようなことですからやめます。  大臣、これはちょっとあなたのところと関係がないのですが、これを、素材産業を日本農業と置きかえたらどうなんです。大体わかったでしょう。安全保障の問題に、時間がないからはしょるけれども、素材産業を農業と置きかえたってこの文章そのままなんですよ。  私は、そういう点で、大企業の方はこのように補助金を出し、税金はまけてやる。印紙税はまけてやる。その税金のまけ方も、これからやりますけれども、大変なやり方をするわけだ。それで、土地を新しく求めればその土地の税金はまたまけてやるという形で、まあ企業にはおんぶにだっこだ。ところが、農業はだんだん自由化の方向をとっておるじゃないですか。これは農業と置きかえてごらんなさい。政府やり方は少し過保護過ぎるんじゃないだろうか。もう一つは、ある意味で低開発国に追い上げられてくるものを余り保護しないようにというのは、これはOECDなんかの決まりでもそうなんです。こういう形で保護することは一体どうなんだろうか。そうして片方では、国民には社会福祉や何か、第二臨調は自助努力、自助努力と言って社会福祉をみんな切っていく。そうしながら、これについては大変過保護過ぎる。これはある意味で国益論なんですな。それはわからぬではない。それならば、私は、お年寄りの福祉の問題だ、また農業に対しても同じようなことが言えるんじゃないだろうかという感じがするんですが、大臣、どうお考えになりますか。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、大企業中小企業を問わず、いわゆる企業というものは、これはマネジメントをする者あるいは単純労働をする者、そういう多くの国民の一つの職場としてこれを考えた場合、そこにやはり大企業だからだめだとかいう議論はとらない立場に立っておるわけであります。そうしてまた、通商産業行政というものは、素人ながら、言ってみれば自由濶達な国民の創意というものが生きるために、いろいろな法律を見てもある種のガイドラインを設定して、その中においては、企業なりそこに働く方々の自助努力というものが生きる環境を整備していく、こういうものであろうと思います。  そうしてまた、私は、このいわゆる素材産業というものをこのまま放置しておいた場合を考えるとき、あながちいわゆる開発途上国からの追い上げによって国際的分業の外枠に出ていく性格のものではないではないか、こういう感じを持っております。  そこで農業、こういうことになりますが、農は国のもとであるとか、そういう農本主義的思想は、私が農村出身者でありますから残っておりますが、何としても、安全保障というものから考えた場合に一刻もないがしろにすることはできないものである。そういう考え方に立った場合に、事実私も純財政的角度でとらえますと、およそ自主申告に基づく農家所得が大体百五、六十億だと思います。それに源泉を含めて三百五、六十億、農業予算そのものが大体三兆数千億円、こういうことになるわけですから、それはやはり政策選択の課題として国民のニーズがそこにあるからこそ、そういう比率からすれば巨大な支出となって、それが現存をしておるというふうに思っております。  なかんずく、たとえばアメリカと比べてみましても、面積こそ二十六分の一でありますが、農業用地で計算すれば七十九分の一、そして、それは国民一人当たりにすれば、向こうには約四十倍の面積があり、こちらには四十分の一の面積しかない。しかし、それだから非効率であっても農業そのものを、いわゆる安全保障の立場から言えば国際分業の枠内で議論すべきものではないというふうに私も基本的には考えております。  したがって、社会保障ということの問題もございました。しかし、やはりこういう阿部先輩のような方がいらっしゃるから、そこで見ますと、私も永年勤続二十五年になりまして、ちょうど二十五年前と比べてみましたら、福祉などという予算は、総じての予算がまさに三十八・四倍であります。ところが社会保障関係費は実に七十倍、防衛費は十八倍、これはいま言わぬでもいいことですが、事ほどさように、こういう国会の問答の中でそういう政策志向がなされておる、こういうことになると思います。
  120. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はよくわからぬ、あなたの話は。これは、一つは独禁法に風穴をあける、そして資本の集中を進める。それに加えて、政府はそのために大規模な援助をする。第九条では、政府が「資金の確保に努める」としておる。補助金、財政投融資資金の支出を行い、第十条では租税特別措置による減免をうたっている。この租税特別措置も国の保護政策の一部ですよ。その中の中心は、租税特別措置のあれによると、関連する措置として除却損を計上できる期間を十年に延ばしておる。特別償却はつける。現物出資に対する圧縮記帳は、これは認める。合併に対する登録免許税は軽減をする。その上に土地税制までいじくる。これじゃ本当に僕はおんぶにだっこだと思うんだな。  これだけめんどうを見て、私は、最後に言おうと思ったけれども、時間が余りないから言うけれども、これじゃ、国際摩擦が云々されるときに外国の非難を受けないという保証はありませんよ。そして設備投資の廃棄が進み企業の合併や新設が行われる、大規模な投資が進めば進むほど、多額に減税措置が大きくなる。今年度及び平年度の両方でこの減税の規模は大体どの程度になるのか、私、皆さんの資料を拝見した限りでは、減税額が出てきていないのですが、それは私は見つけられなかったのか、皆さん出していないのか、幾らぐらいです、これは局長でいいです。
  121. 梅澤節男

    梅澤政府委員 今国、租税特別措置で基礎素材産業関係の税の軽減措置、いま御指摘のように、国税では四項目あるわけでございます。  その中で、いわゆる減収額としてカウントすべき項目は、規模からいいまして、構造基本計画でございましたか改善計画でございましたか、それから事業提携計画で承認を受けました場合に、省エネルギー等のいわゆる合理化の機械装置に対する特別償却、これは一八%の初年度特別償却でございますが、それから建物については八%。通商産業省のこの特別措置による五十八年度中の合理化計画の資料から推算いたしますと、初年度で約十億円、平年度で約二十億円と推計されますが、いわゆる租税特別措置の減収額としては特掲はいたしておりません。仮に計画どおり運用されるとすればこの規模ぐらいになるであろう、そういうことでございます。
  122. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この内容を見ると、アルミだとか石油関係だとかいうのは大体大企業なんですよ。だから、措置法の四十三条に特別償却を新設することになっている、大体企業は大きいから。たとえば一千億の設備投資を行った、こうすると、定率法で耐用年数は大体八年が多いようですから、八年の設備をとってみると、初年度で四百億、これは償却できることになる。特別償却というのは、これは企業にとって大変ありがたいことです。私は、戦後のいろいろなあれで、日本企業が今日内部蓄積をした一番大きなものは特別償却だったろうと思っている。そういう点からいくと、一千億の設備投資をやったときには、四百億というものがまず特別償却で初年度で行われる。これは企業にとっては大変な恩恵ですよ。しかも特別措置は、大体もうからなければ意味をなさないのだから、税金を納めるときにこれは助かることであって、税金を納めない企業にとっては、これは何もありがたみがないということは私はわかるけれども、こんな高率な償却ができるのは特別な場合ですよ。なぜ、こんなにまで特別償却を認めなければいかぬのか、私には理解ができない。結局これは、共同出資による新会社を設立し、新規投資をしたときに生じてくるものだ、こう思う。そうして現物出資をすれば登録免許税が軽減される。  だから私は、もう時間がないから結論を出しますけれども企業は大きくして集中をして残るけれども、労働者は首になる。企業には大変な保護政策であるけれども、労働者には何の恩恵もなくなってしまう。それを安全保障の名のもとにやっていく。私は、余りにも企業本位のやり方じゃないか。こういうやり方が行われておる。不況業種、素材産業の不況の一つの大きな原因は、私は、電力料金の値上がりというか、高過ぎるからだと思う。私は、これは通産省に大臣か次官と要求したのだけれども、次官の方は国会よりもパーティーの方が大事だと見えて、堪忍してくれと言うからやめたのですけれどもね。今度油が下がると新聞に毎回のように出ているけれども、何ですか、一ドル下がると一千億もうかるなんという、これは電力料金を下げることが今日の日本経済を活性化する、素材産業をある程度生かす道だと私は思うのだが、この電力料金の問題について、通産省はどういうお考えなのですか。
  123. 小川邦夫

    ○小川政府委員 お答え申し上げます。  原油価格の引き下げ、御案内のように五ドル下げということになりまして、それが電力収支にどう影響するかということがまず問題になるわけでございますが、実際には、その原油価格がどの期間、仮に下がった場合にそれが維持されるか、また、実際の電力会社がいつからその安い原油を、またあるいはC重油という形で購入する場合には石油業界を経ての取引になりますが、それがどういうふうに反映されるかということもございます。もう一つは、電力会社そのものの経理でございますが、資本費、修繕費、人件費等のコスト増高要因というものがございまして、それがどういうことになっていくかということ。それから、為替の変動が非常に大きく収支に影響します。出水率も同様、こういう非常に不確定な要素がございますので、いまそれが具体的にどう電力の収支にあらわれるかというものを慎重に見きわめませんと、電力料金の問題について云々することは非常にむずかしいという状況にございます。  しかしながら、その問題との関連で、基礎素材に何らかの措置がとれないかということに関連しての御質問だと理解いたしますけれども、基礎素材産業につきまして、ただ政策的にまけるということになりますと、他の需要家との公平論という問題がございます。しかし、何かしなければいけないという観点で私どもも検討してまいったわけでございますが、制度としては雲要調整契約というものがございまして、これは、コストの高い昼間のピークの電力を使わないで、むしろコストの安い夜間料金を使うというようなことをすれば、コストの安いものを使う者は当然電力料金は安くしてもらえるという意味で、そういう制度の適用は可能でございます。  幸い、基礎素材産業の多くはそういうものの活用が可能でございますので、そういう需給調整契約の活用ということをこれまでも利用していただいておりますが、さらに今後一層活用していただくことによって、できる限り電力料金コスト低減に努める、これを私どもも促進してまいることにいたしたいと考えております。
  124. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 料金体系を何ぼか検討しておるということですね。だけれども、電力会社は、油が上がったといえばすぐ電気料金を上げる。上げるときはすぐ泣きついて上げてくる、下げるときは下げない。それは不確定要素はいっぱいありますよ。大体、為替が変動相場制なんだから、いつまでたったって安定なんてしませんよ。その上に、高い油の備蓄があることも承知しておる。この油の備蓄の問題の処理、これはまたこれで問題が出る、これもわかっておる。だけれども、これだけ油が下がって新聞にはもう連日、 一ドル下がると一千億もうかるなんということがこうやって毎日出ておる。通産省も、企業のことばかり考えないで、少しは国民のことも考えて対策を立てるべきだと思う。今度は電力料金や何かあって上げるときは、それだったら、私たちはもう徹底的に反対しますよ。その辺を考えて、早急に対策をとられること。  もう一つは、私は、この法案がこういう形で保護した場合、これは国際的な貿易摩擦の非難を受けないだろうか。それでなくても弱体な日本の緩い独禁法にまた風穴をあけるなんということについては、私たちはちょっと納得できませんということを申し上げて、時間のようですから終わります。
  125. 森美秀

    森委員長 次回は、明十七日木曜日午前九時委員会、午後零時十分理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十四分散会