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梅澤政府委員 ただいま
大蔵大臣からるる御答弁があったわけでございますが、実は、私も御提案申しましたときの担当の審議官でございますので、行政官の
立場から、
一言お答えする機会をお許し願いたいと思うわけでございます。
五十五年の所得
税法改正で、利子配当課税の総合課税について少額貯蓄等利用者カードでやらせていただくということを提案したわけでございますが、これは、それまで約一年間、足かけ二年
税制調査会でいろいろ御
議論をいただきまして、利子配当の総合課税をする場合の一番の問題点は、利子配当の受取人の本人確認の問題と、大量の名寄せの仕事を確実に行う技術的なシステムをどうするかという点でございました。いろいろな
議論が行われたわけでございまして、その経過はすでに世の中に公表されておりますが、その
時点で、現実的なあり方として、利子配当に限定したカード制度が一番適当な方法であろうという結論を得たわけでございます。
ただ、その場合にも、これはその当時からも申し上げておったわけでございますけれ
ども、わが国の近代における利子配当の課
税制度を見ますと、明治三十二年に所得
税法ができまして以来ほとんどの期間、特に利子課税につきましては非課税もしくは分離課税で四分の三世紀以上来たわけでございます。したがいまして、これを一挙に総合課税に転換することは、まさに画期的なことでございます。
その
意味で、
日本の場合、何千万という人が金
融資産を持ち利子を受け取っているわけでございますから、この人たちの慣熟といいますか制度の理解、これが当然前提になるということで、もちろん執行当局の
準備も要るわけでございますけれ
ども、本格実施については三年間という
準備期間をもって提案したわけでございます。
ところが、その
準備期間の進行の過程で、先ほど
大臣がるるお述べになりましたように、客観的な事象として、いろいろな
議論が巻き起こってまいりました。同時に、制度に対する信頼感と申しますか法的安定性という点から見ますと、このまま直ちに本格実施に移る場合に、やはり混乱は避けられないのではないか、これも客観的事象として私はあったと思うわけでございます。
したがいまして、大変異例のことではございましたけれ
ども、五十八年度の年度の
税制調査会の御審議が終わりました後、年が明けまして急遽
税制調査会にお諮りいたしまして、結局、法的安定性という
観点から、混乱回避という点も含めまして、ただいま御提案申し上げているような
措置は当面やむを得ないだろう。ただし、その場合においても、
政府においては、この提案をする機会に、内外に利子配当の適正課税に対する
政府の方針はいささかも変更ないということを宣明すべきである、その旨を、法案が決められました閣議におきまして
大蔵大臣から御発言いただき、記者会見で官房長官からも、
政府の態度として正式に表明されておるわけでございます。
ところで、三年間凍結という
措置をどうしてとったかということでございますが、ただいま御提案申し上げておりますように、五十五年の所得
税法本法でお決めいただきましたカード制度を
中心とする総合課税の制度は、法的には一応そのままの姿とさせていただきまして、とりあえず
租税特別措置法で三年間適用しない、いわば俗語で言えば凍結するという
措置をとっておるわけでございます。
これは、ただいま申しましたそういう客観的な事象を背景といたしまして、現
時点で
政府としては、今後の利子配当課税に対するあり方について一切予断を加えることなく凍結する、もし国会で法案をお認めいただければ、先ほど
大蔵大臣からも
お話がございましたように、
税制調査会で早急に利子配当課税の今後のあり方について御結論をいただきたいということでございますが、もちろんその場合に、法的安定性という
観点から申しますと、議員提案のように五年という期間は長過ぎる。なぜ三年かということでございますが、仮にもう一度御
議論を願って、たとえばカード制度を全部あるいは部分的に行うという場合でも、先ほど
国税庁の方からも御説明がありましたけれ
ども、少なくとも、いまからまたグリーンカード制度を行うという結論が出た場合に、執行当局としては、一年以上の
準備期間を必要とするわけでございます。したがって、早い機会に、たとえばこの秋に結論が得られたとしても、所得税の暦年課税というような
観点から見れば、最低限度三年間の凍結期間は必要とする、それ以上延引することは法的安定性という
観点からも望ましくないということで、三年間の凍結という
措置をとらせていただいたわけでございます。
五十五年の所得
税法の
改正審議に当たりましては、当
委員会で野党も含めて大変いろいろな角度から御審議いただき、御支援をいただいたわけでございまして、そういう経緯にかんがみますときに、ある
意味では大変申しわけないような結果になったわけでございますけれ
ども、そういう事情を十分御賢察いただきまして、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたしたいと思うわけでございます。