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中田参考人 夕張市長でございます。この
委員会に
陳述の
機会をお与えいただきましたことを、まずもって
お礼を申し上げたいと思います。
さらにまた、一昨年十月十六日、
災害発生以来、
通産当局を初め諸
先生、
関係機関、大変いろいろと御
配慮をいただきましたことを、まずもって
お礼を申し上げたいと思う次第でございます。
しかしながら、昨年の十月九日には、
下請を含めて二千七百人の
全員解雇、
閉山になったわけでございまして、この間、今日まで約一年半
有余、
自治体は大変な
苦衷、
苦難の足取りをたどってまいりました。実に社会不安の連続であったわけでございます。
そしてまた、この十月九日には、いま
炭労の
委員長からも
お話のありましたように、
安倍前
通産大臣の、四月末を
めどに新
会社の設立に
最大限の努力をする、
地域経済に及ぼす影響を
考えてそれなりの
援助をする、そして市の財政の
援助をするという三項目の
談話がありまして、その
談話に期待を寄せて今日まで、四月の末日を
めどに
心待ちに
夕張市民三万七千人は待っておったわけであります。
しかし残念ながら、
石炭協会の
検討を
委員会で約九カ月にわたって
検討をされまして、まことに御苦労をかけましたことを
お礼を申し上げたいと思うわけでございますが、最終的には、先ほど
有吉石炭協会会長さんから
お話のありましたように、
検討委員会としては、十九年くらい掘り出す
実収炭量しかない、そして八百八十八億になる
赤字が予想されるから
採算上これを手がけることはできないという断念の
結論が出されたわけであります。
私
ども夕張市民にとりましては、この一年半
有余、期待して期待して待っておりまして、このことは、五十六年十月十六日のあの
災害のどん底にまた再び逆戻りしたような感じがしてなりません。いま再び
夕張市民は非常な
苦衷の中に
生活をしているところであります。
しかし、
石炭協会の
検討委員会の
結論は、一番むずかしかった
保安問題、
技術問題、これについては、何とか
資金さえかければ、たとえ十九年であろうと二十年であろうと
再開はできる、しかし、
人員計画そして
投資の関連において
採算上これを
再開することができない、こう言われておるわけであります。一番心配されておった
保安問題、
技術問題は、
保安の問題は
無限大である、いつどんな
災害が起きるかわからない、しかし、それを乗り越えても、
採算性の問題さえすれば、まずまず二十年間は何とか
労働者を働かせることができるという報告がされておるわけでございます。だとすれば私は、
夕張市民の首長として、今日まで
政府、
通産大臣が、
夕張市の社会不安を取り除くために、
自治体の崩壊を防ぐために、働いている者の
生活を守るために何とか助けてやろうとしたその
経過を踏まえて、
資金的援助をどんな形でもいいからやってもらえないものだろうか、これが祈りに似た願いでございます。
いま
離職者の状況は、
閉山時、
下請を含めて二千七百九十名、そして
解雇者二千四百六十五名、これは、
下請はそのまま
下請の
従業員になっておりますので、若干の違いがございます。そのうち、他の
炭鉱に
就職したのが六百三十名、
一般企業に
就職したのが九十四名、
残務要員が百八名、市に移管を余儀なくされた
市立病院百四十三名、この合計九百七十五名が他に
就職をいたしました。そのほか移転したのが二百一名、未
就職者が千二百八十九名であります。すなわち千三百名くらいが、いま
夕張で、この
再開を
心待ちにして期待して待っておるところでございます。
しかも
雇用保険が、ことしの一月には六十三名、四月には三百七名、六月には六百十一名、八月には百八十七名、合計千百六十八名が五十八年の八月までに切れるわけでございます。その日からまことに
生活が苦しくなっていく。
雇用保険は最高が六千六百七十円、最低が二千百四十円であります。さらにまた、市内の商工業者、商店会、関連企業ほとんどが、この四月を
めどに期待をして何とかやりくり算段で営業してまいりました。今回のこの報道によって、これからわれわれ商工業者はどうして
生活をしていったらいいのか、商工
会議所で全員の集会を開いてこのことを話し合っております。
そしてまた、
従業員が
心待ちにしている千三百名の福利厚生施設問題であります。四月末までは住宅使用料、住宅の入居、浴場、電気、水道、従来どおり福利厚生施設として大沢管財人が責任を持ってくれています。しかし四月で切れますので、いまのところ五月いっぱい、今月いっぱいこれを延長しております。だとすれば、六月一日から一体どうなるのでしょうか。市民の
生活を守る首長として、当面まずこれが大変問題化しております。
私は、こういう
夕張市民の
生活を守っていくために、いやそればかりではありません、
夕張の将来展望を開くために、
石炭産業は掘ればなくなる有限
産業であるということを心にきちっと決めています。だから、
石炭があるうちに、
石炭に活力があるうちに
夕張市の
産業構造、経済基盤をつくり直して新しい
夕張の復興再建の道を開かなければなりません。そう心に決めて市民にこれを訴え、
閉山という
言葉がタブー化されておった産炭地の住民に、自分の町は何年間
石炭で生きることができるかということを明らかにして、
地域住民が力を合わせて新しい町づくりのためにがんばり抜かなければならない、そういうことを訴えるのも首長の責任であると
考え、一昨年来市民にはそう訴えてまいりました。しかし、新
炭鉱は必ず再建できなければならない、そうしなければその瞬間から
夕張市は地域崩壊である、だから
石炭が活力のあるうちに
夕張の将来展望を開こうとしても、いまから
石炭がなくなれば展望を開く道がない、人口は三万七千から一万五千台に落ちる
可能性を秘めている、そう
考えて私は、日本のエネルギー政策上、
石炭政策上から
考えましても、どうしても新鉱の
再開だけはしてほしい。祈りであります。お願いであります。どうかひとつこれまで寄せられました御
配慮に重ねて、この点についての特段の御
配慮を、この席をかりましてお願いを申し上げたいと思うのでございます。
先般、
北海道の
炭鉱市町村、赤平市長、上砂川町長、芦別市長、歌志内市長、三笠市長、私を加えまして五市一町集まって、産炭地の
石炭問題に対する現状の
意見交換をいたしました。どの町もどの市も、いまのままでは必ず近い将来全山が
閉山する、言うなれば掘れば掘るほど
赤字がふえる、そういう
石炭企業の現状である。しかし、それは
採算上
炭鉱がなくなるということであり、ここ数年にして一億二千万トンも日本国内で
石炭が必要であるということが出されている現在、そういうことであっていいものだろうか。やはり何といっても国内炭を維持するという
考えがあるとするならば、今回のこの新鉱の
閉山は、
災害があれば
閉山になる、そういう前例をつくることになる。
石炭があっても掘り出せない、そういう
前提があれば、
石炭企業の皆さんも、これからの
石炭企業としての
意欲をだんだんと失っていき、
労働者もその家族もその
意欲を失うのではないでしょうか。この五市一町の首長とともに、
現地の現状をこれから訴え、何とか第七次
石炭政策の具体化の中でもう少し
石炭を掘り出すことに対する財政
援助政策を前進させてほしい、このことをお願いしよう、そう協議し合ったところでございます。
二十日の日に、
山中通産大臣から新しい
提案がされました。いろいろ報道機関の報道がされております。この
提案は、いま
夕張市民として、わらをもつかむ思いで
再開を祈っている
立場として、
石炭協会の
検討委員会から報告された
結論が断念である。だとすれば、その瞬間からこの希望は、ともしびは消えてしまう。そこに
通産大臣がもう一つの
提案をして、まずまずその瞬間からそれが消え去ることが一応とめられた。
北海道が参画をする。
北海道が主体になる。知事がどうお
考えになるかは、これからの問題だと思います。しかし、そういうことでも
政府機関が
援助をできる体制は、
北海道も、ともすれば
夕張市ということもあるかもしれませんが、そういう
提案がされたらその問題にやはり真剣に前向きに取り組んで、そういう第三セクターでしょうかどうでしょうか、特殊法人でしょうか、そういう運営をする場合に
可能性はどうなのか、新たな角度からやはりお願いをしていかなければならないと思うわけであります。いろいろお願いするばかりが能でない。
夕張市も
夕張市民も一緒になってこの問題に取り組んで、そういった組織機構が果たして今日までの
石炭企業のあり方にあって適切であるかどうか、
保安上の問題、
技術上の問題、先ほど
会長さんから
お話がありましたたくさんな問題を抱えていると思いますが、今日のこの
自治体崩壊、社会不安、市民
生活、これを
考えれば、やはり問題の
提起に対して積極的に取り組んで成功させてもらうことを願ってやまないところであります。
ある大学の
教授から、これからの日本の
石炭は、また世界も、だんだんだんだん
深部採炭になっていく傾向にある、したがって、一昨年のあの
夕張新
炭鉱の
災害で、十五名の
災害を受けた
労働者が中で生存していることがわかっていても、それを日本の
採炭技術で助けることができなかった事実、人命尊重、そういう意味からも、これから
深部採炭とは何か、
深部採炭の諸
条件の試験研究をする必要がある、だから、
石炭技術研究機関を設けて試験探鉱すべきであるという
意見の
提案がされております。私はそのことのよしあしは、
技術屋でもなければ何でもありませんが、実際に
現地で
災害に遭い、九十三名のみたまを亡くした経験者として、まことに当を得た
提案であると思うのでございます。したがって、そういう意味も含めて、これからの日本の国内炭維持のためにも、またひいて言えば世界のこれからの
石炭技術向上の上からも、どうしてもそれらの問題も取り上げていただきまして、
夕張新
炭鉱再開の道あけにしていただければ幸いだと思う次第でございます。
大変
意見がましいことも申し上げましたけれども、ひとえに私は
夕張市民三万七千人の首長といたしまして、毎日毎日
苦衷の中から祈りに似た思いをしておるわけでございます。何とぞ今後の
再開についての御
配慮をお願い申し上げまして、私の
陳述にかえたいと思う次第でございます。(
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