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1983-05-24 第98回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月二十四日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 武藤 山治君    理事 愛野興一郎君 理事 岡田 利春君    理事 中西 績介君 理事 斎藤  実君    理事 小渕 正義君       北口  博君    北村 義和君       倉成  正君    古賀  誠君       三枝 三郎君    藤田 義光君       三原 朝雄君    塚田 庄平君       細谷 治嘉君    稲富 稜人君       小沢 和秋君    石原健太郎君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   弓削田英一君  委員外出席者         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     有吉 新吾君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     野呂  潔君         参  考  人         (夕張市長)  中田 鉄治君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     伊木 正二君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ───────────── 三月三十日  夕張炭鉱早期開発に関する陳情書(第一七六号) 四月二十八日  夕張炭鉱早期開発実現に関する陳情書外二件(第二二九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件(北炭夕張炭鉱株式会社の再建問題)      ────◇─────
  2. 武藤山治

    武藤委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、北炭夕張炭鉱株式会社の再建問題について調査を進めてまいりたいと存じます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本問題について、本日、参考人として日本石炭協会会長有吉新吾君、日本炭鉱労働組合中央執行委員長野呂潔君、夕張市長中田鉄治君及び東京大学名誉教授伊木正二君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武藤山治

    武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 武藤山治

    武藤委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、本問題につきまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、各参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得て御発言願います。  それでは、まず有吉参考人にお願いいたします。
  5. 有吉新吾

    有吉参考人 私は、ただいま御指名をいただきました日本石炭協会会長有吉でございます。  石炭政策につきましては、かねてから本委員会の諸先生方並び関係当局の格別の御配慮をいただいておりますが、本日は特に夕張問題につきまして本委員会の御審議をいただき、また、夕張開発に関し私ども石炭業界において検討いたしました内容について発言する機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げる次第でございます。  御高承のとおり、北炭夕張炭鉱株式会社夕張炭鉱は、昭和五十七年十月九日をもって閉山いたしましたが、これに先立って同年九月十三日、当時の安倍通商産業大臣殿より、夕張区域十尺層の開発可能性検討してほしいとの御要請があり、石炭協会といたしましては、同年九月二十日、夕張区域十尺層開発検討委員会を組織し、検討着手いたしました。  検討に当たりましては、三井、三菱、住友、太平洋、松島の石炭大手五社及び石炭協会の代表により構成いたしました検討委員会専門分野につきましては各分野ごとの小委員会を設け、慎重な検討を重ねるとともに、大手五社社長をもって構成いたしました参与会に逐次その検討結果を諮るという形で検討を進めてまいりました。  最終的な検討結論につきましては、去る五月二十日山中通商産業大臣殿に提出いたしました答申書に詳細に申し述べているとおりでございますが、その要点を申し述べたいと存じます。  技術面検討について申し述べますと、まず採掘対象実収炭量でございますが、開発対象としての炭量は単なる埋蔵炭量ではなく、あくまで採掘計画に基づいて採掘範囲を設定し、炭層傾斜と稼行丈中の炭丈及びその区域広域実収率等により綿密に計算いたしました実際に採掘可能と思われる炭量でございます。  検討委員会結論といたしましては、夕張区域十尺層の採掘対象実収炭量は千二百七十六万二千トンとなり、これに夕張炭鉱の旧採掘区域残炭を含めまして総量千三百五十三万七千七百トンとなりました。  次に、基本となります開発計画でございますが、本来、石炭鉱業一般産業と異なりまして、各炭鉱それぞれ固有の厳しい自然条件に対処する必要がございます。特に夕張地区地質構造はむずかしく、その特性として、稼行炭層を含む夕張層は、上下を緻密な泥岩層に挟まれ、炭層内にメタンガスが封じ込まれている状態にあり、かつ、この地区東西方向横圧力を受け、断層、褶曲が多いという地質特性を持っております。  さらに、今回検討対象となりました夕張十尺層区域は、既採掘区域から離れており、しかも地表下メーターから千三百メーターないし千四百メーター深部賦存をしているというむずかしい条件にございます。  一般炭鉱におきましては、地表露頭あるいは浅い区域から逐次深部へと採掘移行しておりますので、その場合にはガスも逐次去勢され、岩盤内の応力も漸次解放されますが、この夕張区域におきましては露頭もなく、これだけの深度の処女区域を採掘するというむずかしい条件にあります。したがいまして、技術面検討に当たりましては、何を申しましてもまず保安確保することと長期に安定した出炭確保することを前提として立案されております。  御高承のとおり、昭和五十六年十日十六日、夕張炭鉱で発生いたしましたガス突出災害規模は、実に突出物四千立方メーター突出ガス量六十万立方メーターという、わが国炭鉱史上未曾有の大きな規模でございました。この以前にも、その前年に発生いたしました自然発火等多くの事故を起こしております。  また、夕張炭鉱実績は、通気、運搬、坑道維持等のトラブルにより慢性的な生産不振を続け、すでに災害以前において経営破綻に近い状態であったことは御承知のとおりであります。  このようなことから、いま申し上げました保安確保長期的な安定出炭確保をいかにして達成するかということが技術面立案大前提であります。今回、検討委員会検討結果として答申いたしました開発計画は、骨格構造にいたしましても、採炭計画出炭規模その他すべてこの大前提にのっとって検討検討を重ねた結論でございまして、業界といたしましては、これが最終的なものと考えております。  その結論を要約いたしますと、出炭規模は三払い稼働、一払い予備で掘進炭を含め日産二千三百三十三トン、年産七十万トン、この出炭規模完成するまでの所要期間は四年八カ月、完成時における人員役職員二百七十二名、鉱員等千百八十八名、完成までの基本設備投資は二百三十六億円となりました。  次に、経理面検討につきましては、ただいま申し上げました技術面検討を基礎といたしまして計算いたしましたが、その前提として、答申書に記載してありますような幾つかの前提を置いて計算をいたしました。  特に、政府の助成につきましては、現行制度坑道補助金保安補助金安定補助金の適用及び近代化資金鉱害防止資金融資は受けられるものとして計算し、また不足資金市中金融により調達できるものと仮定いたしまして、金利は仮に長期短期一律九%をもって計算をいたしております。  なお、先ほど年産七十万トンの出炭規模と申し上げましたが、年間フル出炭になりますのは着手から第六年度でございまして、それまでの五年間の総原価から開発期間中の政府補助金及び炭代収入を差し引きましたいわゆる開発費は、その間の金利六十八億円を含めまして百七十億円となります。  さきに申し述べました基本設備投資二百三十六億円と合算いたしますと、出炭規模完成までの初期投資の総額は四百六億円に達することになります。  なお、現在、北炭夕張社が維持している立て坑斜坑等資産については、この収支計算の結果によって評価が生まれてくるという考え方から仮に評価をゼロとして計算をいたしておりますので、この四百六億円の初期投資には含まれておりません。  また、この収支計算におきましては、終掘の際の資産償却残高閉山時における在籍者退職金及び終掘閉山の際に発生するもろもろの閉山費用は当然負担しなければなりませんので、期間中の損失として算入いたしました。  このような経理計算を綿密に行いました結果、開発着手から終堀までの総合収支は八百八十八億円の赤字となり、とうてい経済ベースにおける採算には乗り得ないという結論になりました。  さらに申し上げますと、技術面検討の中で、実際の操業に当たっては、むずかしい自然条件を克服して確実に保安確保するためには、幹部技術者管理能力を初め第一線保安技術職員技術力判断力並び作業員の技能等相当高度の能力が必要でありますが、本計画におきましては、これら一連の保安管理体制が確立されているものとして計画されております。しかしながら、このような保安管理体制は短時日にでき上がるものではなく、日常たゆみない教育訓練の積み重ねによりまして初めてでき上がるものであることを考えますと問題でございます。  また、並行して行った労務面検討において問題点として挙げております初年度よりの保安技術職員及び坑内員の一部職種の不足、さらには坑内員先行き不足の問題、さらには坑内員出勤率の問題は、いずれも大きな問題であります。なかんずく、保安確保する上で絶対に必要な保安技術職員の充足がきわめて困難であるということは重大な問題であり、現在稼働している各炭鉱保安技術職員をこの計画に割愛するだけの余裕はないのが実情であります。  いろいろな前提条件が満たされ、かつ開発着手から終掘まで事故もなく順調にいっての総合収支が八百八十八億円の赤字であり、しかもこのような不安要素があるということは、実施面においてこの収支はさらに悪化する危険性こそあれ、よくなる可能性はないと申し上げざるを得ません。  以上、るる申し述べましたが、まことに遺憾ながら検討委員会結論といたしましては、夕張区域十尺層の開発可能性は見出しがたいという結論になった次第でございます。  しかしながら、二十日、山中通商産業大臣殿にこの答申をいたしましたところ、大臣より、この答申書はいわば一時預かりの形にして新しい提案を示されました。  その新提案は、御承知のとおり、夕張問題は地域問題であり、北海道として経営に当たられてはいかがか、その際石炭協会としてはこれに参加して協力してもらいたいので、ぜひこのことを検討してほしいという内容でございました。  参加してという言葉はいろいろに受け取れますが、その際私が大臣に申し上げましたのは、北海道がどのような新しい条件を出してこられるかわかりませんが、私ども業界といたしましては、このプロジェクトが先ほど申し上げましたとおりとても採算に乗らないと判断をいたしておりますので、政府資金を初め資金調達に当たっての債務保証には一切応じかねますし、まして赤字の負担はいたしかねるということを申し上げた次第であります。  次に、政府及び北海道資金所要資金を全額賄えるならばともかくといたしまして、不足資金を生ずる場合、市中金融機関からの資金調達はきわめて困難ではないかと存じます。  さらにつけ加えて申し上げましたのは、先ほども申し述べましたとおり、資格を持った保安技術職員確保がきわめて困難であり、この保安技術職員がいなければ炭鉱の仕事はできないのであります。  このような問題を北海道がいかがお考えになるかでございますが、私ども業界といたしましては、大臣の御提案を真剣に受けとめ、業界のあらゆるノーハウは提供いたしまして協力申し上げるということで対応いたしたいと考えております。  以上申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手
  6. 武藤山治

    武藤委員長 ありがとうございました。  次に、野呂参考人にお願いをいたします。
  7. 野呂潔

    野呂参考人 ただいま紹介にあずかりました炭労中央執行委員長野呂であります。常日ごろ石炭産業の発展のために御尽力をくださっております石炭対策特別委員皆さま方に対し、労働者と家族を代表して厚くお礼を申し上げます。なお、本日は本委員会意見を述べる機会を与えてくださいましたことを感謝をいたします。  さて、山中通産大臣は五月二十日、石炭協会検討委員会答申に先駆けて独自の構想を明らかにいたしました。これは、検討委員会の「開発可能性は見出し難い。」とする結論に機先を制する形で提起されただけに、私たちといたしましても重大な関心を持って今後の成り行きを見守っているところであります。  結論的に言って、大臣構想の細部については、新聞報道で伝えられた範囲でしか承知いたしておりません。現地夕張で約千名の労働者がその結論を見守り、どうなるかと心配をいたしています。その当事者であるわれわれに対し、何らこれに対して大臣が会見もせず、あるいは説明すらも拒否をするという態度に対して、大きな不満と批判を持っていることを申し上げておきます。しかし、それはそれといたしまして、何とかして山を持続させたいという大臣姿勢は十分読み取れるものであり、前向きの提起であると受けとめている次第であります。  私たちといたしましては、山中通産大臣提起によって何が何でも夕張炭鉱再開して、労働者雇用確保地域社会のこれ以上の荒廃をストップさせる、さらに国内エネルギー資源の有効な開発と利用を進めることを切に期待してやみません。  同時に、政府国会審議やその他の場を通じて、この具体的な構想、たとえば再開に当たっての国の役割り、仮に第三セクターでするとするならば、どのような団体とか会社を参加させるのか、開発資金調達をどうするのか等々について早急に明示し、政策化していくことを期待するものであります。  また、この事業体の主力である北海道石炭業界に対して、必要な対策や手続を早急に円滑に進めるよう、政府としても特段の指導を行うことをお願いしたいと思います。  私があえてこのことを主張いたしますのは、これらのことについては道並びに石炭業界の受けとめ方に非常に問題がある、そのように理解をしていないというように考えておりますので、非常に言葉が過ぎるかもしれませんが、そのことを申し上げておきたいと思います。  次に、石炭業界検討委員会答申内容について触れますと、私たちとしては答申内容については全く反対であり、とうてい容認しがたいところでありますが、労働組合立場から二、三の考え方を述べたいと思います。  その第一は、開発計画のあり方に関する問題であります。  夕張区域十尺層の開発は、事実上新鉱開発に匹敵する事業であります。このため、国からの補助金融資金を含む膨大な開発投資が必要となります。検討委員会答申でも、営業段階に入るまでに要する費用が四百六億円にも達することが明らかにされています。このような膨大な資金を必要とする事業である以上、十分に投資効果を上げ、できるだけの多くの石炭を掘り出していくという考え方に立つことが至当であると考えます。答申では、この点について新北部区域開発だけに限定をし、採掘対象炭量も千三百五十四万トンにとどまっているのが実態です。  しかし、この新北部区域の隣には、五十五年四月に閉山をしました旧清水沢炭鉱東部区域が続いており、これには推定約六百万トンほどの石炭が眠っております。したがって、夕張炭鉱開発に当たっては旧清水沢東部の再開発を想定した総合的な開発計画を確立していくことが重要であると考えるのであります。このことによって稼行年数は八年ほど延長されるわけであり、膨大な開発投資を償却していく上でも有効な方法であり、八百八十八億という膨大な赤字が出るようなことはないと判断をするのであります。  その第二は、採掘可能な炭量をどう見積もるのかという問題であります。  答申では、さきに述べたように千三百五十四万トンとされておりますが、これはきわめて過小な数量であると言わざるを得ません。答申では、たとえばマイナス五百五十からマイナス七百レベル間の浅部に二百九十万トン程度石炭賦存することを明らかにしていますが、炭層の厚さが薄化する、炭層傾斜が二十五度から三十五度とやや急傾斜になる等の理由で採掘対象から除外されております。このほか、南部区域ではマイナス七百レベル以深でも炭層の厚さが一・五メートル以下に薄くなるとして、相当量石炭が放棄されるとなっています。しかし、貴重な国内エネルギー資源であるという考えに立つならば、薄層機械採炭技術開発して極力採掘していくという姿勢に立つべきであり、またその可能性は十分あると考える次第であります。  その第三は、技術管理に関する問題であります。  答申では、五年目以降、稼働払い体制で推移することになっておりますが、うち一払い鉄柱カッペ払い、二払いは自走枠払いということになっております。そして、採炭はすべてドラムカッターによることも明らかにされています。しかし出炭量は、自走枠で日産七百四十トン、鉄柱カッペ払いで五百十トンと異常に低く見積もられております。これは、あの大災害の苦い経験を踏まえ、先行ガス抜きに力を入れ、この上に立って沿層坑道の掘進を行うという考えに立っているからだと判断をいたします。つまり、切り羽の進行速度が沿層掘進のスピードに制約されているわけであります。私たちとしても、これに反対する何物もないわけでありますが、閉山前の夕張炭鉱における生産不振の原因として、技術面における管理が不備だったことが指摘されるところであります。したがって、今後の開発に当たっては、このような事態を二度と繰り返さないよう、万全を期していくことが重要であると考えます。  その第四は、労働者再開への意欲をどう引き出していくかという問題であります。  答申では、人員計画策定に当たって、出勤率大手五社平均の八四・五%と推定しています。しかし、夕張炭鉱における過去の実績七四・二%から見て、計画未達のおそれなしとしないと危惧しているのが実態でありますし、先ほど有吉協会長がそう述べました。しかし、この七四・二%という出勤率は、いわゆる萩原体制のもとで、深刻な不安と動揺、その中で労働者苦難に満ちた企業再建あるいは災害復旧に当たっていた、その当時の実績であります。要は、労働者一人一人の働く意欲を十分に引き出していける経営体制を確立することであります。そのことは、幌内あるいは南大夕張に移行している労働者実態から見ても明らかであります。どのような企業形態にせよ、再開発のスタートが切られれば、労働者は全力を挙げてこれに取り組んでいく決意であります。その意味で、答申に述べられた点は全く杞憂にすぎないことを最後に明確にしておきたいと思います。  御承知のことと思いますが、現在千名近い労働者が、大沢再建構想あるいは安倍通産大臣との約束、石炭協会との交渉経過を信頼して部分閉山に同意をして、そして現地へとどまって、夕張炭鉱再開をひたすら念願し、期待して待機をしています。石炭対策特別委員会先生方におかれましても、また政府におかれましても、再開を待ちわびる現地労働者地域住民の心情を御賢察の上、早期再開方向最大限の御尽力を賜るようお願いする次第であります。  以上をもって終わります。(拍手
  8. 武藤山治

    武藤委員長 ありがとうございました。  次に、中田参考人にお願いいたします。
  9. 中田鉄治

    中田参考人 夕張市長でございます。この委員会陳述機会をお与えいただきましたことを、まずもってお礼を申し上げたいと思います。  さらにまた、一昨年十月十六日、災害発生以来、通産当局を初め諸先生関係機関、大変いろいろと御配慮をいただきましたことを、まずもってお礼を申し上げたいと思う次第でございます。  しかしながら、昨年の十月九日には、下請を含めて二千七百人の全員解雇閉山になったわけでございまして、この間、今日まで約一年半有余自治体は大変な苦衷苦難の足取りをたどってまいりました。実に社会不安の連続であったわけでございます。  そしてまた、この十月九日には、いま炭労委員長からもお話のありましたように、安倍通産大臣の、四月末をめどに新会社の設立に最大限の努力をする、地域経済に及ぼす影響を考えてそれなりの援助をする、そして市の財政の援助をするという三項目の談話がありまして、その談話に期待を寄せて今日まで、四月の末日をめど心待ち夕張市民三万七千人は待っておったわけであります。  しかし残念ながら、石炭協会検討委員会で約九カ月にわたって検討をされまして、まことに御苦労をかけましたことをお礼を申し上げたいと思うわけでございますが、最終的には、先ほど有吉石炭協会会長さんからお話のありましたように、検討委員会としては、十九年くらい掘り出す実収炭量しかない、そして八百八十八億になる赤字が予想されるから採算上これを手がけることはできないという断念の結論が出されたわけであります。  私ども夕張市民にとりましては、この一年半有余、期待して期待して待っておりまして、このことは、五十六年十月十六日のあの災害のどん底にまた再び逆戻りしたような感じがしてなりません。いま再び夕張市民は非常な苦衷の中に生活をしているところであります。  しかし、石炭協会検討委員会結論は、一番むずかしかった保安問題、技術問題、これについては、何とか資金さえかければ、たとえ十九年であろうと二十年であろうと再開はできる、しかし、人員計画そして投資の関連において採算上これを再開することができない、こう言われておるわけであります。一番心配されておった保安問題、技術問題は、保安の問題は無限大である、いつどんな災害が起きるかわからない、しかし、それを乗り越えても、採算性の問題さえすれば、まずまず二十年間は何とか労働者を働かせることができるという報告がされておるわけでございます。だとすれば私は、夕張市民の首長として、今日まで政府通産大臣が、夕張市の社会不安を取り除くために、自治体の崩壊を防ぐために、働いている者の生活を守るために何とか助けてやろうとしたその経過を踏まえて、資金的援助をどんな形でもいいからやってもらえないものだろうか、これが祈りに似た願いでございます。  いま離職者の状況は、閉山時、下請を含めて二千七百九十名、そして解雇者二千四百六十五名、これは、下請はそのまま下請従業員になっておりますので、若干の違いがございます。そのうち、他の炭鉱就職したのが六百三十名、一般企業就職したのが九十四名、残務要員が百八名、市に移管を余儀なくされた市立病院百四十三名、この合計九百七十五名が他に就職をいたしました。そのほか移転したのが二百一名、未就職者が千二百八十九名であります。すなわち千三百名くらいが、いま夕張で、この再開心待ちにして期待して待っておるところでございます。  しかも雇用保険が、ことしの一月には六十三名、四月には三百七名、六月には六百十一名、八月には百八十七名、合計千百六十八名が五十八年の八月までに切れるわけでございます。その日からまことに生活が苦しくなっていく。雇用保険は最高が六千六百七十円、最低が二千百四十円であります。さらにまた、市内の商工業者、商店会、関連企業ほとんどが、この四月をめどに期待をして何とかやりくり算段で営業してまいりました。今回のこの報道によって、これからわれわれ商工業者はどうして生活をしていったらいいのか、商工会議所で全員の集会を開いてこのことを話し合っております。  そしてまた、従業員心待ちにしている千三百名の福利厚生施設問題であります。四月末までは住宅使用料、住宅の入居、浴場、電気、水道、従来どおり福利厚生施設として大沢管財人が責任を持ってくれています。しかし四月で切れますので、いまのところ五月いっぱい、今月いっぱいこれを延長しております。だとすれば、六月一日から一体どうなるのでしょうか。市民の生活を守る首長として、当面まずこれが大変問題化しております。  私は、こういう夕張市民生活を守っていくために、いやそればかりではありません、夕張の将来展望を開くために、石炭産業は掘ればなくなる有限産業であるということを心にきちっと決めています。だから、石炭があるうちに、石炭に活力があるうちに夕張市の産業構造、経済基盤をつくり直して新しい夕張の復興再建の道を開かなければなりません。そう心に決めて市民にこれを訴え、閉山という言葉がタブー化されておった産炭地の住民に、自分の町は何年間石炭で生きることができるかということを明らかにして、地域住民が力を合わせて新しい町づくりのためにがんばり抜かなければならない、そういうことを訴えるのも首長の責任であると考え、一昨年来市民にはそう訴えてまいりました。しかし、新炭鉱は必ず再建できなければならない、そうしなければその瞬間から夕張市は地域崩壊である、だから石炭が活力のあるうちに夕張の将来展望を開こうとしても、いまから石炭がなくなれば展望を開く道がない、人口は三万七千から一万五千台に落ちる可能性を秘めている、そう考えて私は、日本のエネルギー政策上、石炭政策上から考えましても、どうしても新鉱の再開だけはしてほしい。祈りであります。お願いであります。どうかひとつこれまで寄せられました御配慮に重ねて、この点についての特段の御配慮を、この席をかりましてお願いを申し上げたいと思うのでございます。  先般、北海道炭鉱市町村、赤平市長、上砂川町長、芦別市長、歌志内市長、三笠市長、私を加えまして五市一町集まって、産炭地の石炭問題に対する現状の意見交換をいたしました。どの町もどの市も、いまのままでは必ず近い将来全山が閉山する、言うなれば掘れば掘るほど赤字がふえる、そういう石炭企業の現状である。しかし、それは採算炭鉱がなくなるということであり、ここ数年にして一億二千万トンも日本国内で石炭が必要であるということが出されている現在、そういうことであっていいものだろうか。やはり何といっても国内炭を維持するという考えがあるとするならば、今回のこの新鉱の閉山は、災害があれば閉山になる、そういう前例をつくることになる。石炭があっても掘り出せない、そういう前提があれば、石炭企業の皆さんも、これからの石炭企業としての意欲をだんだんと失っていき、労働者もその家族もその意欲を失うのではないでしょうか。この五市一町の首長とともに、現地の現状をこれから訴え、何とか第七次石炭政策の具体化の中でもう少し石炭を掘り出すことに対する財政援助政策を前進させてほしい、このことをお願いしよう、そう協議し合ったところでございます。  二十日の日に、山中通産大臣から新しい提案がされました。いろいろ報道機関の報道がされております。この提案は、いま夕張市民として、わらをもつかむ思いで再開を祈っている立場として、石炭協会検討委員会から報告された結論が断念である。だとすれば、その瞬間からこの希望は、ともしびは消えてしまう。そこに通産大臣がもう一つの提案をして、まずまずその瞬間からそれが消え去ることが一応とめられた。北海道が参画をする。北海道が主体になる。知事がどうお考えになるかは、これからの問題だと思います。しかし、そういうことでも政府機関が援助をできる体制は、北海道も、ともすれば夕張市ということもあるかもしれませんが、そういう提案がされたらその問題にやはり真剣に前向きに取り組んで、そういう第三セクターでしょうかどうでしょうか、特殊法人でしょうか、そういう運営をする場合に可能性はどうなのか、新たな角度からやはりお願いをしていかなければならないと思うわけであります。いろいろお願いするばかりが能でない。夕張市も夕張市民も一緒になってこの問題に取り組んで、そういった組織機構が果たして今日までの石炭企業のあり方にあって適切であるかどうか、保安上の問題、技術上の問題、先ほど会長さんからお話がありましたたくさんな問題を抱えていると思いますが、今日のこの自治体崩壊、社会不安、市民生活、これを考えれば、やはり問題の提起に対して積極的に取り組んで成功させてもらうことを願ってやまないところであります。  ある大学の教授から、これからの日本の石炭は、また世界も、だんだんだんだん深部採炭になっていく傾向にある、したがって、一昨年のあの夕張炭鉱災害で、十五名の災害を受けた労働者が中で生存していることがわかっていても、それを日本の採炭技術で助けることができなかった事実、人命尊重、そういう意味からも、これから深部採炭とは何か、深部採炭の諸条件の試験研究をする必要がある、だから、石炭技術研究機関を設けて試験探鉱すべきであるという意見提案がされております。私はそのことのよしあしは、技術屋でもなければ何でもありませんが、実際に現地災害に遭い、九十三名のみたまを亡くした経験者として、まことに当を得た提案であると思うのでございます。したがって、そういう意味も含めて、これからの日本の国内炭維持のためにも、またひいて言えば世界のこれからの石炭技術向上の上からも、どうしてもそれらの問題も取り上げていただきまして、夕張炭鉱再開の道あけにしていただければ幸いだと思う次第でございます。  大変意見がましいことも申し上げましたけれども、ひとえに私は夕張市民三万七千人の首長といたしまして、毎日毎日苦衷の中から祈りに似た思いをしておるわけでございます。何とぞ今後の再開についての御配慮をお願い申し上げまして、私の陳述にかえたいと思う次第でございます。(拍手
  10. 武藤山治

    武藤委員長 ありがとうございました。  次に、伊木参考人にお願いいたします。
  11. 伊木正二

    伊木参考人 ただいま御紹介いただきました伊木でございます。  夕張炭鉱におきまして、五十六年十月十六日、わが国で最大規模ガス突出が発生いたしまして、続いて二次災害としてガス爆発を引き起こしました。九十三名のとうとい犠牲者を出しましたことはまことに遺憾なことで、私にとりまして本当に忘れることのできない重大事であったと思っております。  災害後、私は事故調査委員会委員長を仰せつかりまして、多くの委員の方々とともに事故原因の究明と今後の技術対策検討したのでございます。  この大災害の発生を最初にテレビニュースで知ったときに私は、夕張炭鉱はこれでつぶれるというような大きなショックを受けたのでございます。これは、もちろんそれまでの政府初め各方面の多大な援助を受けながら常に夕張炭鉱の生産計画が未達であったということにあるのであります。  事故調査の結果では、本地域が地質的に見ても褶曲地帯で断層も多く、またガスも多く、地層の温度も非常に高く、ガス突出や自然発火に対してその予防策を慎重にやらなければならないところであるということを痛感いたした次第でございます。  一方、九十三名の死亡者の霊を弔うためには、一日も早く遺体の収容に努めて、再開できるものならば再開させることが死者に報いるものであるというふうに考えておった次第でございます。しかし、今後このような災害を繰り返さぬためには、長期にわたりまして根本的な研究を実施しなければならない問題もたくさんございまして、調査委員会といたしましては、今後の研究事項を指摘し、当面の保安対策検討したわけでございます。その結果を昭和五十七年七月二日に夕張炭鉱事故調査委員会報告書として提出いたしたのでございます。  今回の夕張区域十尺層開発検討委員会計画書の中には、これらの問題点に関する対策を十分考慮して計画を立てられたことと思っております。  さて、一般炭鉱開発計画を立てる場合には、まず石炭の需要の見通しが第一であります。これはその山の石炭価格いかんによるということは言うまでもございません。その他、炭鉱では坑内の自然条件に支配されることが多いので、これに対応するため、埋蔵炭量、坑道維持、運搬能力、通気能力などにつきまして常に安全率を考慮して余裕のある生産計画を立てる必要がございます。また、労働力の確保もきわめて重要な問題でございます。  次に、今回出されました検討委員会の報告書に対しまして、私の意見を一、二申し上げてみたいと思います。  本計画は、保安確保長期安定出炭開発計画前提として、新しい骨格構造の展開による対偶式通気の確立とパネル採掘の実現を図っておりまして、現段階の技術としては適当なものと考えております。  次に、埋蔵炭量について申し上げます。  地質的には地層の褶曲地帯でありまして、炭層の厚さにも非常に変化がございます。かつ、すでに採掘された区域の状況から見ましても断層も数多く存在することが想定されます。実収炭量として計算する場合には、採算性検討するため、最も自然条件がよくて能率のよい採掘のできる地域についてまず計画を立て、その他の区域炭量については、これは仮に採掘するといたしましても当然採算性が悪くなる傾向にございますので、実際の採算性検討する場合の炭量計算としては、今回のようにある区域を限り一番採掘しやすい場所、採算性のとれそうな場所を選んで計算したのは妥当な方法であろうというふうに考えております。  次に、出炭規模について申し上げます。  一般に一炭鉱出炭規模埋蔵炭量から見れば最低限二十年以上の鉱命が保てるように定めるべきであります。ただ、夕張の本地域の開発マイナス七百メートル以下の深部に直接到達して採掘するため、仮に現在の立て坑、斜坑を利用するといたしましても、別に立て坑の開削が必要となるのであります。初期投資額が非常に高くなっております。生産規模を小さくして鉱命を延ばすということになりますと、トン当たりの初期投資額が著しく高くなり、採算性は一層困難になります。また一方、生産規模を大きくすることは、鉱命を短くすると同時に、現在計画されておるパネル数を増すとかあるいは一パネル内に二切り羽を稼働させるなどの方法をとらざるを得ないので、この地域のようにガスの多いところでは保安上大きな問題がありまして操業はできなくなるのではないかという感じもいたします。したがって、年産は七十万トンということになっておりますが、出炭規模はおおむね妥当なものではないかというふうに考えられます。  以上、技術的な観点から意見を一、二申し上げた次第でございますが、実際に操業計画が順調に推移するかどうかは、労働者の資質、技術者の作業管理能力など、高度の技能者が確保されて初めて達成されるものでありまして、本計画は、所要の人材が確保できるという前提で十分検討された計画というふうに見るべきでありますが、実施に際しましてはこれだけの人材が確保できるかどうかということは大きな問題であろうかと思います。  細かいことにつきましては先ほど有吉会長からもお話があり、また野呂委員長からもお話がありましたので、私はざっと技術的な面につきまして感想を申し上げて、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  12. 武藤山治

    武藤委員長 ありがとうございました。     ─────────────
  13. 武藤山治

    武藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三枝三郎君。
  14. 三枝三郎

    ○三枝委員 ただいまは、参考人の皆さんからそれぞれのお立場から御意見を伺いましてありがとうございました。  私はこれから幾つかの質問をさせていただきますが、九十三名のとうとい命を失われた方々の御冥福を祈りつつ、お伺いいたしたいと思います。最初にちょっと申し上げますが、持ち時間が何分少ないものでございますから、お答えは要点のみ簡単にお願いできれば幸いでございます。  最初に、有吉参考人にお伺いいたします。  先ほど、八カ月精力を尽くして検討されました結果について御報告がありまして、大変厳しい内容になっております。この中で、まず一つだけお伺いいたしたいのでございますが、有吉さんも御承知のとおり、大沢管財人がすでに夕張新鉱の開発について構想を述べられております。その中で、採算性の問題について大沢構想は、この収支の見通しについて「本格採炭開始時以降は、単年度収支は黒字の見込みなので、最終的には収支は黒字に転換する可能性あり。但し、採掘終了時点の設備の未償却残高退職金の支払い等を勘案すれば、収支はせいぜいトントン程度。」というぐあいに出ておりますが、その点につきましてどのようにお考えになるか、ちょっとそれを伺いたいと思います。
  15. 有吉新吾

    有吉参考人 大沢管財人の案は非常に短時日に検討をせざるを得なかった状況にございまして、いろいろな面におきまして協会が八カ月かけまして検討いたしました点と違っておりまして、その点で結果として片っ方はとんとんで、片っ方は八百何十億、こういうことになったのでございます。  大沢管財人案よりもよくなりました点は、フル出炭になります時期というものが一年ぐらい今度の案は繰り上がっておるわけです。  それから炭量にいたしましても、約百三十万トンばかり大沢管財人案よりもふえておる、こういうことでございます。  収支が悪くなりましたその大きな原因は、先ほどもちょっと申し上げました初期投資と申しますか、これが管財人案よりも相当大きくなっておりまして、その償却金利の負担というものがかぶさってきたというのが一つでございます。  それからもう一つは、人員面におきまして詳細に張りつけ計画をつくってみますと、管財人案よりも、ことに職員、従業員におきまして百数名の増加を必要とする、こういうふうなことが大きな原因でございます。  それから、採炭の方式にいたしましても、全払いを自走枠で払っていくというような、こういう管財人案でございますけれども、今度の案では、やはり上段の払いというものは褶曲、断層が多うございますので、応用のききます鉄柱カッペ払いでやらざるを得ない。中段、下段だけは自走枠でやる。こういうふうなことが大きな原因ということでございます。
  16. 三枝三郎

    ○三枝委員 次に、もう一度有吉参考人に伺います。  先ほどのお話にもございましたように、山中大臣より協力の要請があったわけですが、その際、参加してもらいたい、どういう意味かということについては、これからであろうかと思います。いずれ午後、大臣にはその辺を明らかにしていただこうと思っておりますが、先ほどのお話の中で、石炭協会北海道と協力して参加してほしいというような趣旨でございますが、有吉さんといたしましては北海道庁の方に、知事の方にどのように働きかけていかれますか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  17. 有吉新吾

    有吉参考人 先ほど陳述におきまして申し上げましたように、大臣から、石炭協会においてもひとつ協力をしてほしい、こういうことがございました。これに対しまして私どもとしましては、基本的にはこの山は採算的にとても問題にならないという考え方をいたしておりますので、大臣に、私どもは債務保証をしたり赤字を分担したり、そういうことはできません、これははっきり申し上げました。ただ、開発となれば技術的な問題等、業界が協力しない限りできませんので、それは道から御要請があればもちろん協力するにやぶさかではございません、こういうことを申し上げた次第でございます。  それで、道から何らかのお話があるのかと思いますけれども、われわれの検討いたしました内容を道にもよく理解していただく必要もあるのではないかと思いまして、私どもの方から道に詳細に計画内容というものはひとつ近々のうちにお話し申し上げたい、こういうふうに思っております。
  18. 三枝三郎

    ○三枝委員 次に、伊木参考人にお伺いいたします。  先ほど、このたびの災害を基礎にしていろいろと検討されて御意見を述べられたわけでございますが、このたびの協会の答申の中の「技術面検討について」という中で、炭量を千三百五十万トンというぐあいに出しております。後で野呂参考人にもお伺いいたしますが、先ほどの野呂参考人お話ではこれを非常に上回る三千万トンという数字が出ているようでございますけれども、この食い違いをどのようにお考えになるでしょうか。
  19. 伊木正二

    伊木参考人 いまの御質問の中で野呂委員長の方が言われました三千万トンの根拠につきましては私よく存じませんので、その点はあれですが、いまの検討委員会の方からお出しになりました実収炭量と申しますのは、私も実際にその計算を一緒にやったわけではございませんので詳しいことはわかりませんけれども、お話を伺った範囲では、まず基幹坑道の開削位置を七百二十メーターレベルにとっておりまして、それ以上の浅い部分につきましてはまた改めて坑道を掘らなければならないということと、それから炭層傾斜も厳しくなるということから、その部分を外してあるということ。それからもう一つは、一番深い部分にあります千メーター以下の部分につきましては、鉱区境にも接しておりますし傾斜の急なところでもありますので、その部分が外されておるということ。あとは、炭層自体につきまして上層、中層あるいは上段、中段、下段というように、厚層の部分は三段に分けて採掘する予定にもなっております。それで、一番上はいまお話のありましたように鉄柱カッペ採掘、中段、下段が自走仕様ということで、炭層の厚さも上段の方が二・二メーター、中段、下段が二・七メーターという形で、炭層の厚さを採掘上から決めておられます。それによって採掘の範囲を決めていかれたわけでありますが、特に一・五メーターというところで採掘の限界を南北で決めておられまして、それだけの範囲内の実収炭量ということで計算されたのが千三百万トンということに伺っております。もちろんそれ以外に炭のあることは事実でございますが、それ以外のものを入れまして採掘計画を立てますと、現在の採算性から申しますとそれ以上に悪くなるということは当然だろうと思います。炭層条件が悪くなりますから当然採算性が悪くなるというふうに考えられて、まず一番いい部分で採掘計画を立ててみようということでおやりになったと思います。それだけでも採算性におきましてもマイナスになるのだというふうに伺っております。  以上でございます。
  20. 三枝三郎

    ○三枝委員 次に、野呂参考人にお伺いいたします。  先ほどの参考人お話の中に、このたびの山中大臣提案につきまして、山中大臣が、新聞報道にありますとおり一%の開発可能性があればそれを追求していくべきである、そういった姿勢を出されたわけでございますが、それを率直にお認めになって、前向きな姿勢であるというぐあいに評価されているのではないかと思います。しかし、これから先、道なりあるいは協会あるいは地元の組合の皆さん、それぞれ相協力してこれに取り組んでいかなければならない、これは参考人も御同様だろうと思います。  そこで、それを前提にしまして、このたびの協会から出ました検討の結果について、この答申には全く反対であるというお話でございましたが、たとえば「労務面検討について」という項目で、先ほど有吉さんから、このたびの再開発についての一つの大きな柱は保安体制を確立することであるというお話がございましたが、検討結果を見ますと、保安技術職員が非常に少ない、散らばっている、その確保が非常にむずかしいというぐあいに書いておられます。それから、坑内員確保について、残留者の年齢構成からいって、これから先、いよいよ採炭になる何年か先になるとだんだん高齢化していく、この高齢化していくことについて検討結果は非常に不安があるというぐあいに言っておられます。そして三番目に、先ほど野呂さんはお触れになりましたが、勤労意欲の点、これは平均出勤率で出ておりますが、八四・五%の平均出勤率大手の五社が持っているのに対しまして、北炭のいわゆる萩原体制下においては残念ながら七四・二%の平均出勤率であった。しかし、これは勤労意欲が周りの置かれている環境から低下したのであって、今後山中大臣構想が実現化される方向でいったならば、この辺の勤労意欲も上がるであろうというぐあいに受けとめてよろしいのかどうか。この三点について御意見を伺いたいと思います。
  21. 野呂潔

    野呂参考人 ただいまの三点のことでありますが、まず労働者の勤労意欲の問題であります。これは先生も御承知だと思いますが、萩原体制のもとで賃金も昭和五十年以降、他の労働者に比べてずっと上げないできている、あるいはまたボーナスも半分である、さらに退職金すら払わないでずっと凍結をしている、こういう実態の中で、一生懸命働き、やってもどうなるのかという不安というのがございまして、やはり他の炭鉱の方に流動していった。そして常に、新陳代謝じゃありませんが、そういう形で行われていたという実態も御承知だと思うのであります。そういう点からいきまして、その七四・何%という数字は、いま現実に南大夕張炭鉱や幌内炭鉱、そちらの方に移行していった人たち出勤率は私の記憶では九〇%以上というふうに聞いておりまして、それらのことを考えてみますと、これは体制の問題さらにまた管理の問題で完全に確保できる、こういうふうに考えるわけであります。  さらに、技術職員とかあるいは労働者確保の問題でありますが、技術職員のことにつきましては、現状そこにいる人たちだけを対象考えますと確かに不足をしているかもしれないのであります。しかし、石炭業界全体で取り組むというようなことと、そこにおる人たちをも含め、それからいますぐ大量の技術労働者が必要なのかどうかというようなことになるとそうではないのでありまして、いま一遍に千人の炭鉱をつくるのでないのであります。そうすると、これは今後の問題の中でもすべて解決ができていける。  さらに、労働者確保の問題につきましても、千人全部を確保するようなことには全然なっていないわけでありまして、私たちはできれば千人全部を確保していただきたいのでありますが、現実無理とするならば、何としても形を残してもらいたいということになれば、それなりにわれわれとしても妥協せざるを得ない点も出てくるであろう。とするならば、労働力の確保について、質的な問題あるいはまた労働年齢の問題については優に解決できるというように私たち考えているわけであります。特に、私も先ほど申し上げましたけれども、大沢管財人のときの構想で、三枝先生も先ほど有吉協会長に述べられましたように、収支とんとんと言われていたのが、なぜあの八百八十八億というびっくりするような赤になるのかということについては、私は石炭協会の取り組む姿勢検討内容について問題があるだろうというように考える次第であります。したがって、詳細に私たちもこれを詰めていかなければならないし、なぜそうなるのかということについて検討してみたいと思うのです。しかし、その大半が金利の問題だけでというようなことになれば、これは政治的なことも含めて政策的なことの中で解決ができるのではないかとは考えています。  私、この席をかりてお願いするのでありますが、一日も早い解決を現地労働者は望んでいるのであります。それは、長引けば長引くほど不安、動揺が参りまして、新炭鉱をつくろうといったときにも、その労働力の確保に質、量とも事欠くというような問題が起きるでありましょう。いま一つは、保坑しているのでありますが、その点から資金的にも問題が起こる懸念があるのであります。これは私は詳細にはわかりませんが、大沢管財人の方から今後とも問題提起をされるかとも思いますけれども、長引けばそういう面から最悪の事態に陥ることも予測をされますので、それらのことをも行政の面あるいはこの石炭対策特別委員会の中で十分配慮をしながら、一 日も早い解決を心から望んでいるということを、この席をかりてお願いを申し上げる次第であります。  以上であります。
  22. 三枝三郎

    ○三枝委員 時間が参りましたので、中田参考人にお伺いする予定でおりましたが、先ほど地元夕張市を預かる市長として切々と苦悩を訴えられまして、私も伺っていて胸の痛む思いをしたのでございます。確かに私も地元でございますが、千人を超える山の人たちが、いわゆるおぼれる者はわらでもつかむような気持ちでこの再開発を待っておりますし、また、この人たちを取り囲む商店街を初め夕張の町の人たちも、一日千秋の思いでこの問題が解決されることを待望しているわけでございます。そういった点で、先ほどもお話があったわけですが、山中大臣提案があったのでございます。先ほども申し上げましたように、少しでも開発可能性があればそれを追求していくのだ、その前向きな姿勢については市長さんもひとつ十分に受けとめていただいて、今後ともせっかく御精進、御努力をお願いしたい、そう思います。  なお、終わりに臨みまして、参考人の皆さんにおかれましては、本問題については深刻な地元の地域問題でもございますし、社会問題も絡んでおります。そういう点で、私どもも皆さんとともどもに手を携えて前向きな姿勢で取り組んでまいりたいと思いますので、どうか皆さんにおかれましても、今後ともよろしく御協力のほどをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  23. 武藤山治

    武藤委員長 岡田利春君。
  24. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 参考人の皆さん、大変御苦労さまです。限られた時間でありますので端的に参考への皆さんに御質問をいたしたいと思います。  まず初めに有吉参考人にお尋ねをいたしますけれども、先ほど大沢構想石炭協会答申のいわば比較について触れられたわけであります。炭量にしても、協会の答申は七十万トンふえている。骨格構造については同じである。採炭についても年間の出炭で五万トン違う。開発工程については大体一年間短縮された。これは向かい掘りによる工法をとって短縮されたものと判断します。保安対策についてはそう違いはないのではないか、こう思います。  そうしますと、問題は経理の問題と、それから技術職員の問題でありますが、技術職員の問題はさておいて、経理の面では、大沢構想は設備投資は百六十二億五千万円、協会の方は基本投資の面で二百三十六億円で、七十三億五千万ここで違うのであります。  なお、大沢構想では、完成年度前年までの資金収支については約二百三十八億円の赤字である、こう示されておるわけです。協会の試算によっては完成年度は一年間繰り上がっておるのでありますけれども、資金収支については、この二百三十八億に対してどの程度の数字が試算されたのでありましょうか。
  25. 有吉新吾

    有吉参考人 大沢構想との関係でございますが、先ほど三枝先生からの御質問にございましたのに、私一つだけ落としておったのでございますが、大沢構想におきましては露天掘りによる収益というものを相当大きく見込んでおったのでございます。ところが、実際に露天掘りをやってみますと炭量は半分ぐらいしかない、その採掘条件も必ずしもよくない、こういうことでございますので、これがやはり積もりに積もりまして相当大きな影響を及ぼしておる、これを一つつけ加えさせてもらいたいと思っております。  それから、経理関係基本投資が七十三億ばかり違うということでございますが、この一番大きなものは、管財人構想におきましては、使用いたします自走枠をいままで使っておりましたのを使う、こういうことでございましたが、御承知のようにこれは閉山のときに密閉をいたしまして使用不能になっております。これは四十数億かかるのですが、これを新規に調達をした。これが四十二億ぐらいでございます。そのほか、骨格構造を今度はきちんとしてやりますので、坑道の掘進メーターが管財人案よりも十キロメーター以上ふえておる、こういうことが大きな原因でございます。資金収支はどうなるかという御質問だと思うのでございますが、損益即資金とお考えくださって差し支えございません。  以上でございます。
  26. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 協会の答申は、現行制度を一応フルに活用するという前提において組まれて、閉山収支を含み八百八十八億円の赤字だ、こういう答申内容だと思うわけです。そうしますと、現行制度の新鉱開発資金を導入した場合の収支は一体どうなるのか、またこの場合閉山収支はどの程度見込んだのか、承りたいと思います。
  27. 有吉新吾

    有吉参考人 協会の計算は、現在認められております補助金並びに制度融資を基礎にして計算をいたしております。でございますが、いまおっしゃいますように、前に一遍出して二度出すというのは非常にむずかしいのじゃないかと思うのでございますけれども、新鉱開発というような考え方に立ちまして設備、坑道全般にわたり開発資金というものを新たにもう一回出したといたしました場合に一体どうなるか、こういうこともあらまし協会で計算をいたしておりますが、この八百八十八億が大体三百億くらいの赤字に減少するのではないか、こういうふうな結論になっております。
  28. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 閉山収支はどのくらいの見込みですか。
  29. 有吉新吾

    有吉参考人 閉山収支は、閉山の加給金とか、そういったものは清水沢とか平和における実績をそのまま一般退職金に加算をいたしまして、閉山のときにそういう費用がかかりますので、これを終掘までに負担をする、そういうものを残さない、こういうことで計算をしたのが八百八十八億でございます。
  30. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、協会の計算方式に基づいて閉山収支を含めて収支のバランスがとれるという場合には一体どういう前提が必要なのか。協会の資料によれば、たとえば金利に対して見合い分の借入金が九百五十五億あるわけですね。九百五十五億の金利見合い分がなければ、これは八百八十八億だから簡単に言えば収支は黒になる、ちょっと乱暴な質問ですけれども。ですから、収支がとれる前提考えた場合にはどういう前提が必要とお思いになりましたか。
  31. 有吉新吾

    有吉参考人 すべての所要資金を全部無利子で借りられる、調達できる、こういうふうなことを考えますと利息負担というものがなくなるわけでございますので、この収支はあるいはプラスに転ずるということかもしれません。けれども、そういうことは恐らく考えられないということで、開発資金は七年据え置きの十三年ということでございますから、期限が来ましたときに市中銀行にまた肩がわりしていただかなければなりません。金利もつきます。これも相当緩和されるわけであります。先ほど申しました三百億ぐらいに減るというのは、それをアプライいたしますと五百億ぐらいの赤字が減る、こういうことを申し上げたので、すべて金利がゼロの金が使えるというのは、そういうことが実際にできますならばともかくといたしまして、非常にそれは問題じゃないかと思っております。  それから、私どもが心配をいたしておりますのは、いま申しました市中金融がつくということを前提にしてやっておりますけれども、果たして市中の金融がつくのかという問題が一つあります。  それから保安技術職員確保が事実上は非常にむずかしい。したがって、損益のことばかり問題にしても始まらないのじゃないかというのが一つございます。  それから出稼率にいたしましても、五社平均の八四・五という、そういう出稼率をもとにしてはじいておるわけでございますが、いま夕張に残っておられます九百何十人の人たちの過去一年半ばかりの出稼率というのは七四%ぐらいしかないわけでございまして、今度は骨格構造等をきちんと整備をいたしまして、坑内条件を相当整備いたしますから、出稼率もある程度上がってくることが期待できるかと思いますけれども、そういう具体的な条件考えますと、この八百八十八億というのは相当下方修正と申しますか、さらに悪化する可能性があるのじゃないか、こういうふうに思っております。
  32. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も時間がありませんから詳しくは検討しておりませんけれども、内容的にはいろいろまだお聞きいたしたい点がたくさんあるわけです。いま協会長が述べられた技術職員の確保という問題は私も頭の中にちゃんとあるわけです。いまそれを除いて経営上の問題でお聞きいたしているわけです。もちろん大沢構想の場合でも協会の場合でも、人員等についてすでに数字がはっきり出ているわけです。協会案では大沢構想よりも百六十九名ふえるわけです。これはもう保安対策あるいは出勤率を加味した結果であろうと思うのでありますけれども、普通一般炭鉱で安定性があり、しかも保安体制がぴしっとしかれた場合には出稼率はいいというのが常識ですね。ですから、もし実施に移した場合には従来の実績よりも上がるというのが普通一般の常識だということが言えるのではないかと私は思います。その議論は別にしておいて、確かに技術職員の確保について問題があるという認識は持っておるということだけ申し添えておきたいと思います。  そこで、この協会案では、八百八十八億でこれは掘れませんと言っておるわけですね。五社の皆さんが集まって、とにかくこれは採算がとれません、やれません、こう言っているわけです。そうしますと、この一千二百万トンを超える石炭は永久に掘れないということを協会は断定したと受け取っていいですか。いかがですか。
  33. 有吉新吾

    有吉参考人 この私どもの計算は、現在におきまする政府石炭政策に基づきます石炭対策でございますが、それと現在の石炭の価格、これを前提として計算をいたしておるわけでございまして、将来石炭の価格というものが数千円高くなるとか、こういうことになってまいりますればもちろん条件は変わるのじゃないかと思うのでございます。ただ、現実におきましては、一ころ油が急激に高くなりまして、それに伴って国内の石炭も一息つくかと思ったのでありますが、今回五ドルからの石油の値下がりになりまして外国炭は下がるということで、私どもがユーザーにお願いいたします炭価値上げというものも、これは今後の交渉でございますが、非常に難航するのじゃないかと思われるのでございます。将来のバラ色の構想を描いて計算をすればいかようにもなるわけでございますけれども、現実に与えられた条件をもとにして計算をすればこういうことでございます。
  34. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 石炭は、資源は有限であることは間違いがないわけですね。もう十年もたった場合、日本の単位炭鉱の状況はどうであるかということは大体想像にかたくないわけです。現有炭鉱が掘り得る最大のフィールドを設定をして、そしてその施設と労働力とを活用して掘ることが一番経済的かつ合理的であるというのが私の持論であるわけです。夕張市には御承知のように真谷地と南大夕張があるわけですね。現在二つの炭鉱が存在しているわけです。この地域にはこの二つの炭鉱があるわけですから、それも含めて検討して考えてみなければならぬという命題が必ずあるというのが、われわれ石炭人の常識ではなかろうか。そういう意味で、これは封鎖してもう掘れないというぐあいに断定したのかどうか。少なくとも五社の人が集まって検討しているのですから、そこまでは討議しなかったのかどうか承りたいのです。
  35. 有吉新吾

    有吉参考人 確かに北炭新夕張炭鉱の同じ炭層でございますが、両側に、三菱鉱業さんの南大夕張がございますし、一方には北炭さんの真谷地炭鉱があるわけでございますが、この新夕張炭鉱というものは、その両方の中間の断層によって区画をされまして、冒頭に申しましたような泥岩に包まれたガスを密封した形になっておるわけでございますので、もしこの千二、三百万トンの炭の開発というものを将来考えるといたしますと、いま申しました両方の炭鉱から行く可能性、これしかないのじゃないかと考えるわけでございます。しかし現在は、これはまだ相当先のことになるわけでございますので、具体的なそういう構想検討したことはございません。しかし、考えられるのはそれ以外にちょっとないのじゃないか、こう思っております。
  36. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もちろん、たとえばお隣の南夕でもいまマイナス六百メートルレベルですね。三年たつと七百メートルレベルになるでしょう。もちろん、三キロ離れている、こういう地理的な条件もあるでしょう。ただ、私はいろいろな点で、この山をどうするかという点についてはあらゆる角度から検討する必要があるという意味でお尋ねをしたということを御留意願いたい、かように思うわけです。  実は西ドイツの政策とわが国の石炭政策はある程度相互に作用しながら進められてきたという歴史的な経過があるわけですね。御承知のように、西ドイツのルールのコーレ社は六千二百六十五万トン出して一社化になったわけであります。だがしかし、西ドイツでさえもザールベルグベルケ社という会社があって、これは連邦政府と州政府が出資をして九百二十六万トンの出炭規模を誇っているわけですね。いわば国有国営の炭鉱も西ドイツにはあるわけです。ですから、山中提案というのはまだわれわれもわからぬのでありますけれども、今度の提案北海道庁というものを一応対象にして、石炭協会も参加をしなさい。しかし、一番体制的に持っているのは政府機関であるわけです。これは、鉱害事業団もあれば、NEDOもあれば、いろいろな機関があるし、また保安関係の機関も存在しているわけです。NEDOなどというのは、これは鉱業権者でしょう。かつての鉱業権を買い上げて鉱業権を持っていて、鉱害を持っているわけですから。出資条項をつくれば法律をつくらなくても出資ができる、あるいは国と協会という三者の第三セクターができる、そういう条件はあるわけですね。ですから、西ドイツの場合の状況の中でもそういう例があるのですから、これからの石炭考える場合にはもう一歩踏み出してそういう新しい構想というものを考えざるを得ないのではないか。そういう時期にずんずん日本の石炭産業は個別炭鉱検討すれば追い込められてきている、こういう認識を私は持っているのですけれども、協会長はどういう認識でしょうか。
  37. 有吉新吾

    有吉参考人 その体制問題でございますけれども、これは協会におきましても過去たびたび問題として検討対象になったのでございます。一社化と申しますか、こういうふうなこともいろいろ検討対象になったのでありますが、新会社をつくりましても、これには最終的に連帯保証というような問題がひっかかるわけでございまして、こういうふうなところでなかなか意見の調整がつかないわけでございます。  それからもう一つは、そういうふうに形を整えれば問題がすべて解決するかというと、実態そのものは何も変わらないのでございますから、やはり私企業体制におきまして各企業が一〇〇%の努力をやりながら、そしていま相当の額の政府補助金というものをもらっておるわけでございますが、その辺をひとつ格差配分で相当傾斜を立てまして、自然条件的に不利な立場にあります炭鉱というものをすくい取っていく、こういうふうなことが最も効率的な方法ではないかと考えておるわけでございます。そういう体制ができて、その赤字をまるまるひとつ見てもらって国内炭を維持していくというようなことが実現すれば、それは一つの考え方かもしれませんけれども、実質的な日本の国民経済としまして果たしてそれがプラスなのかどうかというのは非常に問題ではないか、私はこういうふうに思っております。
  38. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 石炭には原料炭と一般炭がありますけれども、油が五ドル下がっても石炭の方が安いわけですね。高い油をたいて、なぜ油より安い国内の炭鉱をつぶさなければならぬのか、私は素直に、素朴に考えるわけです。しかも、それぞれの国がエネルギー資源を確保するという国際的共同行為のもとに世界のエネルギーを確保しなければならぬ、わが国は高いから全部やめてしまう、こう簡単には言えない問題である、こう私は認識をしておるわけです。  伊木先生に、日本の炭鉱をそれぞれよく御存じだと思うのですが、私は私なりに十年後を考えて、その後一体どう持っていくのか、いまからそういうことを実は心配いたしておるわけです。たとえば幌内だってはっきりしているわけですね。あと二片下がったって六年しかないわけですから、あと西部の方に展開しなければ、この山の寿命、ライフは切れるわけです。一方、赤平では今日三百三十一名の人員を削減する合理化提案がなされて四苦八苦なわけですね。三井さんの場合には三つあって相互補完的に体制を維持している、あるいは三菱の場合は高島の場合も南夕と相互補完的に維持しておる。あとは松島、太平洋が一社一山だ、こういう構造になっているわけです。そういう面から見ますと、われわれは一応第七次政策を打ち出しているけれども、この問題を契機にして、本当の意味で、もう一度十年後を展望した政策というものをいまから考えなければ、常にいろいろな問題が起きていくのではないのか。一つの町、一つの市に、いま一炭鉱ですよ。いま二つの炭鉱があるのは夕張だけですね。あとは皆一つ一つなんです。それが地域経済に壊滅的な打撃を与えるということなんですから、われわれは何らかの手だてをしておかなければ、こういう問題は次々にずっと起きていくのだということにならざるを得ないと思うのです。そういう点について先生の御見解を承りたいと思うのです。
  39. 伊木正二

    伊木参考人 どうも私の権限外で、政策のことはひとつ皆様方お考えいただく方が適当だと思うのでございますが、私から申し上げますと、日本の炭田は非常に小そうございまして、各炭鉱がもう現在はほとんど一炭鉱一炭田という程度になっておりますので、これが将来どういうふうに進んでいくかということは、必ずしもいまここで、たとえば大きな構想でまとめるのがいい、ドイツのようにまとめるのがいいということも言えないのじゃないかという感じがいたしております。  それからもう一つは、現在やっております炭鉱自体、当然掘っていけば炭がなくなっていく。将来どの程度まで寿命を延ばすかということにつきましては、現在は採算的にも稼行できないような炭層が残っているところがまだたくさんございます。これらについては石炭の価格が上がればまた稼行できるものもありますし、あるいは技術が進歩すれば稼行できるものもあるかと思いますので、技術の方のことについてはわれわれも十分責任を持って今後研究していかなければなりませんし、石炭価格の方が石油等との関連でどういうふうになっていくかということもございますので、私にも全然見当がつきませんですから、この辺で終わらしていただきます。
  40. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日本の炭鉱は、私はフランスに似て非常に条件が悪いと思っているんです。イギリスやドイツに比べて劣悪な条件にある、あらゆる面を総合的に検討してそういう認識を持っているわけです。また、夕張の十尺層というのは原料炭で弱粘結とはいいますけれども、工業分析等から判断すれば総合的な価値というのは強粘結の価値があるというのが大体常識ではなかろうかと私は理解をしているんですが、先生はどういう御理解でしょうか。
  41. 伊木正二

    伊木参考人 夕張の十尺層は非常にいい炭だということはそのとおりでございます。これはお隣の三菱の南大夕張炭鉱と匹敵するようなりっぱな炭であろうということは、炭質的にはそういうふうに考えております。
  42. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もう一度有吉参考人にお聞きいたしたいと思うのですが、問題はここの開発計画を分析すると、当初六千万トン近くの埋蔵量があって、そして大々的な鳴り物入りの宣伝で着工されて、残っている炭鉱で一番新しい炭鉱なんですよ。それが今日こういう事態を実は迎えているわけです。今回石炭協会がこの案を検討して答申するに当たって、いままでの基本設計が誤りであった、こういう認識を持たれたかどうか。坑道の展開から、あらゆる面を検討して今度の答申をされたと思うのです。そういう角度からいえば、この開発計画基本的に誤りがあったという御認識でしょうか。
  43. 有吉新吾

    有吉参考人 今度の協会の開発計画は、一昨年の事故にかんがみまして、その調査委員会結論を参考にいたしまして新たに万全の策を講じなければならぬ、こういうことで組んだわけでございまして、最初の計画は根本的に誤りだとか、その時点におきましては未然にそういうことはなかなか推測もむずかしかったんじゃないか、こういう気がいたします。ただ、ガスが多いだろうということは当然考えられたことでございまして、対偶式通気とか独立分流とか、こういうことは当然考えてしかるべきじゃなかったかという気はいたします。
  44. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 伊木参考人災害があったときの団長としてこの山に参られたときに、この炭鉱基本設計としての立て坑の配置は誤りであったと言われたということが新聞で報道されたことがあるのですね。先生は長い間石炭関係に関与されておるんですが、先生としてはどういう御意見でしょうか。
  45. 伊木正二

    伊木参考人 いまのお話の、新聞に載っていたかどうかは存じませんけれども、私は誤りであったということは一言も申しておりません。当時、最初の計画のときに、確かにあそこに立て坑を掘るあるいは斜抗を掘るということにつきまして、石炭鉱業審議会の小委員会か何かのメンバーとして参りまして、その御意見を伺ったことがございまして、当時の計画を伺ったときに、非常に深い場所であり、新しい場所に直接入るのであって、果たしてここがいいかどうかということは慎重にお考えいただかないと問題がありますよということは申し上げましたけれども、当時としては炭層の状況の判断等におきましてあそこが最善だろうというお考えでおやりになったのだと思います。そういう意味では、炭層の把握といいますか調査と申しますか、その辺が非常にむずかしい問題ではございますが、まだ幾らか足りなかった点はあるんじゃないかと思いますけれども、立て坑の設計が悪かったかどうかというのは、当時としてはやむを得なかったのじゃないかという感じは私はしております。
  46. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 伊木先生としては、協会の答申案をお読みになられて、この炭量が永久に放棄されていい、こうお考えでしょうか。それとも、いますぐできなくても、ある程度の労働力を温存しながら一定の地域の展望を立てて開発をされることが望ましいとお考えでしょうか。
  47. 伊木正二

    伊木参考人 前々からここの炭は非常にいい炭であり、炭量が非常に豊富だと伺っておりましたので、そういう点ではこれは捨てることはもったいないという感じはしております。先ほども、事故の後にこの炭鉱はつぶれるのじゃないかと感じたということを申し上げましたけれども、そのときもできれば何とか再建したいという気持ちは持っておったわけでございます。しかし、調査の当時いろいろ見ていきますと、非常に複雑なむずかしい炭鉱であるということもわかってまいりました。今回検討委員会の方でお出しになったのは、もっぱら経済性の面からの検討を深く突っ込んでおられますので、現在の段階では採算がとれないからやれないという結論になっております。したがって、現在この状態ですぐやることはとうてい不可能なんだろうというふうに私は考えております。  それじゃ将来は捨てた方がいいのかということになりますと、ああいう資源はいつの日にかは何とか日の目を見るときが来ることを私は期待しております。それには、現在何とか続けてやっていった方がいいか、あるいはいまは捨てておいて先の時期にやったらいいかということになりますと、あそこの状態というよりも日本の資源として考えた場合には、いま無理して掘る必要はないのじゃないか、むしろ先で必要なときが当然出てくる、そのときになって掘るか、あるいは地下ガス化もできるかもしれませんが、そういった方面で改めて考える時期もあってもいいのじゃないかと私は考えております。
  48. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど有吉参考人から山中提案について触れられた御意見があったわけであります。山中提案は、実はまだ私ども正式には承知してないのです。報道関係で間接的にいろいろお聞きしているということなんです。そういう意味ではあれなんですけれども、先ほど言いましたように、ドイツの場合でも一千万トン近い国営炭鉱が存在しているわけです。そういう例から見て、たとえばNEDOが出資して三者で第三セクターでやる、しかもそれが収支がとれるという前提であるならば協会としてはこれを忌避する理由は何もないのではないか、もちろん労働力の問題、技術力の問題は解明しなければなりませんけれども、そう逃げる必要はないのではないか、むしろその構想に乗ってこの地域の開発をもう少し短、中、長期的に考え石炭協会としては対応する方がいいのではないか。なぜかなれば、開発資金も出そうと言われているわけでしょう。結構なことです。ですから、余り忌避をしないで、もう少し接近してよく話も聞いて、協会としてももう一度そういう提案の趣旨に基づいて検討するものは検討する、こういう姿勢があって当然ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。これはたとえば将来のためにも大事じゃないかと思うのですが。
  49. 有吉新吾

    有吉参考人 私ども石炭業界といたしましても石炭政策でいろいろお世話になっておりますし、山がつぶれるということは私どもとしても非常に好ましくない問題でございまして、積極的につぶした方がいいという考え方をしているわけではございません。ただ現状におきまして、現在ある炭鉱そのものが、ほんの一、二の炭鉱は別といたしまして平均いたしますとトン当たり四、五百円近い赤字であるわけでございます。そういうのが四百六億円、出炭トン当たりにしまして四万八千円もかかる、こういう開発をやって引き合うはずはない。しかもガスに対しては万全の対策を講じないといけない。そうなるとどうしても能率も制限をされるということでございますので、そこで私どもはこれは無理だという結論を出しておるわけでございます。仮定の上に立ちまして、もし採算が合うならばどうだとかということを言われましても、もちろん採算に合うものを私どもは拒否するわけにはいかないだろうと思うのでございますが、果たしてそういう条件が整えられるのかどうか、これは非常に問題だと思うのです。それから、先ほども申しましたように私どもの計算以上に悪化する可能性は多分にあるわけでございますので、そういう点からも私どもは仮定に立った計算をしても意味ないのではないかと考えておる次第でございます。
  50. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 通産大臣の発言をずっと調べてみると、いろいろ聞いた人もたくさんおるわけですが、協会と道庁が第三セクターでやりなさいと言っているらしいですね。主体は協会と道庁でやりなさい。それから新鉱開発資金は政治決断で出しましょう。なお、しかし自治体は債務を背負っても大変な問題でありますから、水俣方式を示唆されておるわけですね。水俣方式というのは、大蔵省と自治省と通産省が裏書きして、いまも二百億を超える金をチッソに出しておるわけです。払えぬ場合には政府が引き受けます、これが水俣方式です。もしこの三つが連結しますと一つの案ですね。私はそう受けとめているのですが、協会長は直接聞かれてそういう提案だとは受けとめておられませんか。
  51. 有吉新吾

    有吉参考人 お話の中で水俣方式の話もちょっと参考に引き合いに出されました。しかし、具体的にどういうことを考えておられるかはわかりません。道でひとつやってくれぬかということを言った、協会として協力してほしい、私どもにはそういうことでございます。そういう体制ができるならばウルトラCで開発資金もひとつ考えてみようと思う、それから道に対しては水俣対策みたいなこともというような話がちょっとあったわけでございまして、それ以上のことはわからないわけでございます。  私は、協力とはどういう形の協力であるかはわかりませんが、協会としての基本的な考え方はこういうことでございますよ、それだけはひとつ申し上げておきますということで話したわけでございます。
  52. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 中田参考人にちょっとお尋ねしますけれども、現在石特予算の中で労働省関係の予算、緊就と開就特会の予算が毎年百八十億円組まれているわけです。緊就のときは二十何年か前になるわけです。開就だって十年以上の歴史があるわけですね。今年の予算にも百八十億組んであるわけです。これは市長もよく御存じだと思うのですね。そういう状況の中で夕張新鉱の再建問題が論議されているわけです。これは北海道にはないわけですよ。北海道というのは鉱害の適用除外でしょう。それから労働省関係というのはないわけですよ。政策がないわけです。それから産炭地振興はありますけれども、あとは前向きの関係。予算の対象は、北海道に対してはそういう状況なんです。北海道の場合は一番安い石炭を掘っているということになるわけですね。鉱害はないし、後始末の方も産炭地振興の部面はあるけれども、労働関係の救済も全然行われずにきた。こういう点について、われわれ北海道の選出議員でもありますけれども、しばしば問題にしているのですが、道庁ではそういう政策は要らぬということで労働省は予算をつけないのだ。これで終始をしてきたのが今日までの本当の経過なんですよ。そういう点について、先ほど意見を述べられたのでありますけれども、そういうことを含めて今度の再建問題につき率直な御意見を承りたいと思うのです。
  53. 中田鉄治

    中田参考人 私も産炭地域振興審議会の委員でもありますし、石鉱審の委員でもありまして、第七次石炭政策の延長問題でいろいろと話し合いをいたしました。北海道の産炭地を代表して率直に意見を申し上げました。石特予算の分捕り合いとかなんとかいうことではなくて、いまある予算を削ってどうということではなくて、少なくとも第七次政策で二千万トン体制をつくるということであれば、生産コストに見合う石炭予算を出してもらわなければ石炭産業が壊滅するという実際の現状である。加えて産炭地振興臨時措置法を十年間延長しましたけれども、それは従来の補助基準をそのまま踏襲して十年間、そして十年間でもう終わり、十年間で再建できない自治体はもう見放されるといっても過言でない状況の中で延長が決定されておるわけで、石炭を産出している首長として、どうしても国内炭を維持するというならばもっともっと手厚い石炭予算を組んでもらわなければ先ほど申し上げましたように掘れば掘るほど赤字になるという石炭政策では日本の国内炭企業は壊滅すると言っても過言でないと私は思っていますので、何とかひとつ石炭特別会計の中で石炭の前向きの産出をする予算について手厚い措置をしてほしいものだと考えているわけでございます。  もちろん緊就の問題もありますけれども、私は夕張の現状の中で新鉱再建をしてほしいということをやっておるわけでありまして、失業対策の前にまず再開をしてほしい。そういうことですから、これを見据えた上でそれらの問題とは取り組まなければなりません。  産炭地振興のことも、北海道の場合にはこれから本当の産炭地振興。夕張は、新鉱の災害の前の年に清水沢炭鉱という大きな炭鉱閉山し、今度新鉱。したがって、九州のように十数年前にもう閉山問題は終わって、産炭地振興をずっと手がけてきたところと違って、北海道はこれから改めて産炭地振興だということでございますので、何とか石特会計に占める産炭地振興の資金等についてもぜひ見直しをしてもらいたいという痛切な考えを持っておる次第でございます。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 伊木先生にもう一つ伺っておきたいのですが、ソ連を含めていまのヨーロッパの炭鉱、ポーランド、ドイツ、イギリス、フランスで最近は深部化がどんどん進んでいるわけですね。したがって、薄層採炭ということがいまは最大の課題で、技術革新に取り組んでおるというのが実態だと思うのです。そう考えますと、二十数年間のスパンがあって、たとえ多少傾斜があっても一メートル五十の薄層が掘れない。ヨーロッパではこれに挑戦して実績の上がっているところもあるわけですね。これからますます薄層も掘ってライフを延ばそう、こういう状況下にあるのがヨーロッパの現状ではないかと私は理解をいたしておるわけです。したがって、今回の場合に一メートル五十程度炭層対象区域にしない。なるほど採算性もあるかもしれません。しかし、基本投資は行われているわけですから、そういう面から見ると、機械化をすればある程度可能ではないかという気もするわけですね。ですから、これを採算に合わないと断定するのはどうか。いまの既存の国内炭鉱だって一メートル二十に挑戦する炭鉱が次々に出てきているわけですね。そういう状況の中で、これは初めから対象外ですというのはどうもきれいさっぱりに切り過ぎるのではないかという意見を私は持っているのですが、いかがでしょうか。
  55. 伊木正二

    伊木参考人 確かにいまの計画では一メートル五十のところを採掘限界、限界と申しますか、そこまでを炭量の中に入れて計算して、それ以外は除外しておられます。それから、先ほどちょっと申し落としましたけれども、埋蔵量の計算野呂委員長の方からお出しになった三千万トンというのは恐らくいわゆる埋蔵炭量であって、協会の方で出しておられるのはそれに採掘実収率というものを掛けたいわゆる実収炭量という形で出しておられるので、この炭量が千三百万トンということでございまして、これを採掘するのが一番有効な、有効と申しますか、能率も上がり採算性も上がるという範囲計算されたのが今度の報告書であろうと思います。したがって、これがもし本当に採算性があって黒字だということであれば、もう少し先の方までも、先の方と申しますのは一メートル五十以下の部分も計算に入れて計画を立てることができるのではないかという感じはいたしております。  ただ、ヨーロッパと比較してみますと、ヨーロッパは確かにもっと薄い炭層も採掘しておりますし、日本でも昔は一メートルない八十センチぐらいの炭も掘ったことがございます。これは、ただ当時と現在とでは機械化の状態が変わっております。機械がうんと進みまして、機械採掘でないとなかなか採掘ができなくなる、重労働はできるだけしないようにしなければいかぬということで、機械採炭のできる範囲をとるようにしておりますので、現在の状況では、あそこの部分は一メートル五十というのはそう無理のない採掘のできる範囲だ。特に天井が余りよくないのがあそこの炭鉱でございますので、その辺で一メートル五十をカッペ採炭でいこうという計画をされたのだということで、もちろんいま申し上げたように、将来技術が進み、採算性が合うということになれば、炭量はそれに応じてまたその後にふえていくものだというふうに考えております。
  56. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 野呂参考人にちょっとお聞きしたいと思うのですが、第六次政策の場合には、大規模の新鉱開発については地方公共団体と石炭業界等のいわば共同事業体でやることが望ましいという政策が出て、これが確認をされているわけですね。このことは鉱業審議会でも確認をされているわけです。したがって、これをわれわれは第三セクターと称したわけです。第七次政策ではこれが消えて、炭鉱は私企業を基本にして炭鉱をやるということに変わっておるわけですね。今度の通産大臣の一応の構想といいますか提案を見ますと、やはり第三セクターということが出てくるわけです。いみじくも第六次政策の表現と同じ、ぴたっと合うわけですよ。私はそう受けとめておるわけですが、そういう意味では炭労の場合でもいろいろ議論があろうかと思いますけれども、そういう兼ね合いについてどう受けとめておられるかという問題が一つであります。  それから第二の問題としては、労働力は確かにいま九百名程度おるわけです。しかし、炭鉱は職種別に構成されなければならないという問題も厳然たる事実であります。特に保安技術員の職員の確保がきわめて重要課題であることも事実であります。そういう面から考えて、この地域の経済の発展、安定あるいはまた雇用の面を少しでも拡大していくという意味で、短期的、中期的、長期的にそういう一つの中で考えていくということも一応考えてみる、こういう弾力的な態度も必要ではなかろうか、私はこういう気がするのですけれども、そういう点については議論されているかどうか。また、何か意見があれば承っておきたいと思います。
  57. 野呂潔

    野呂参考人 まず雇用面のことを申し上げますと、先ほど三枝先生からも御質問がありましたし、私も答えておきましたが、雇用面のことについては、いま千人の人たちを一遍にというようには、それは第一の希望でありますが、現実にむずかしいことがよくわかっておりますので、その点は妥協する用意はあるということを明言をいたしておりますから、弾力的に考えていることだけは明らかであります。  次に第三セクターの問題でありますが、われわれとしては、いかなる形にせよ夕張炭鉱開発されることを心から願っております。したがって、そこに北海道庁であるとか、あるいはまた夕張市も入るとか、そうは言っていないようでありますけれども、そういうのとか、石炭業界とかあるいはNEDOというものが入りつくられる、あるいはユーザーの方も入ってくれるならば入るという形でつくるようなことについては、われわれとしては新炭鉱が芽の出ることを望んでおりますので、形態にはこだわりません。したがって、そういう弾力的な考え方でわれわれとしては対処していくという考え方に立っております。
  58. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、最後に協会長有吉さんにちょっとお聞きいたしておきたいと思うのです。  このままでは日本の石炭産業は安定しないということは協会自身も認識は同じじゃないかと思うのです。特に最近は炭鉱間の格差が非常に顕著になってきた。第七次政策で初めて安定補給金の格差配分をしたわけですね。炭鉱間格差を認めたのは第六次政策で認めたわけです。何にもなかったわけですね。裏づけがなかった。それが受け継がれて、第七次政策で初めて安定補給金の格差配分がされた。政策上非常に画期的なことであったと私は思うのです。しかし、なおかつ資源が有限である炭鉱でありますから、そういう点を考えますと、この二十年近くの石炭政策の歩みを振り返ってみて、今度通産大臣が一応提案された内容、そこから導き出されるものが幾つかあるのではないか。たとえば深部になって飛んでいるところに千メートル以上の坑道を切って新区域を展開するという場合でも、いまの政策では無理でしょう。これは新鉱開発に準ずるような形式でいけばやれる炭鉱は、私が知っているところでもずいぶんあるわけです。ですから、そういう意味で今度の通産大臣提案というものは、もう少し大きな次元でとらまえて物事を発想したい、こういう姿勢が私は非常に大切ではないかという気がしてならないわけであります。  そういう意味で今度の通産大臣提案は、単にこの炭鉱だけに限定することなく、日本の石炭産業のこれからの政策のあり方はどうあったらいいのかという面からでも考えてみる必要があるのではないか。もう事務当局と協会との談合では新しい発想の政策は生まれないという気がしてならないわけであります。率直に歯に衣を着せないで申し上げたのですが、御感想を承って終わりたいと思います。
  59. 有吉新吾

    有吉参考人 冒頭に申し上げましたように、今度の夕張炭鉱開発についての検討は、現在与えられております政府の助成、制度融資、こういったもの、要するに現在の条件前提にいたしまして考えますとこうなる、こういうことでございまして、おっしゃいますように、現状におきまして、さっきも申しましたように、平均的には石炭業界というのはまだ相当の赤字でございまして、万年赤字を続けて徐々に石炭業界の借金はふえておるというのが現状でございます。したがいまして、ある意味では、この炭鉱の再開発以前の、国内の石炭は維持していくんだという基本的な考え方が政策の根幹をなしておるわけでございますけれども、現実にはなかなかそれが達成されていない。結局最近のように、鉄鋼にしましてもセメントにいたしましても、景気が悪くなりますと、私どものぎりぎりのコストアップを、政府の助成もここまでやってもらっているので、ひとつ炭価で、とにかく業界平均とんとんになるぐらいまでカバーしてもらえないかという、そういう石炭業界の要請そのものがなかなか実現をしないというのが現状でございます。  私どもの申しておりますのは、過去においてもたびたび同じことを繰り返しておりますが、業界平均でとにかく一応ペイするような姿に持ってきてもらいたい。そういたしますと、政府の助成というのも相当あるわけでございますから、これをやはり傾斜を立てて格差配分することによりまして、自然条件のハンディキャップをそれで克服をして、既存炭鉱が一応全部生きていくように、われわれとしては業界内でひとつ調整を図りたい、こういうのが基本でございますが、その前提になります姿というものが実現をしないものですから、なかなかそこまでいかない。しかし、そうはいっても格差というものは非常に大きくなっておりますので、平均的に赤字であっても、乏しきを分かつという意味で、ある程度の格差是正を補助金を中心にやらざるを得ないということで、まずは安定補給金、最近は保安補助金とか骨格坑道関係につきまして、そういう格差是正の方向にひとつ施策をお願いをしている、こういうことでございます。でございますので、夕張炭鉱開発という問題以前にやはりまだ問題がある、こういうふうに私どもも認識をいたしておるわけでございます。
  60. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  61. 武藤山治

    武藤委員長 塚田庄平君。
  62. 塚田庄平

    ○塚田委員 どうも時間超過して申しわけございません。  四人の方にそれぞれ発言を願いたいと思います。質問は一つです。  山中通産大臣が二十一日に示した案につきましては、巷間、第三セクター、あるいはまた国は逃げたんじゃないか、協会と道に全部押しつけたんじゃないかというような、悪意は持ってないだろうがちょっと見たところそういうふうにも見えるということで、いろいろな議論が出ております。先ほど岡田君からいろいろ話がありましたが、私は夕張炭鉱というのは、いろいろな経緯を考えて、文字どおり超法規的な、あるいはかつてないような形態をとらなければ再開発は無理だ、こう思います。したがって、国、道あるいは市、そして協会、これらが一体となった再開発についての協力が必要だ、こう思っております。  それで、その協力の仕方でございますが、伊木さん、先ほどいろいろと御意見の中で、特に中田市長からの発言の中でありましたが、日本には深部についての実験炭鉱といいますか試験炭鉱といいますか、そういうのがない。これは西ドイツとかあるいはポーランドあるいは最近アメリカでも手がけてきております、だんだん深くなりますからね。そういう試験炭鉱を兼ねて国がこういう問題について大きく責任を負う。  それから有吉さん、制度的にはこれは開発資金はもちろんのこと、たとえば水俣に見られるとおり、結局この間の閣議では全額たしか国が持つことだったですね。あれは三、四百億になるのじゃないかと思うのです。そうなりますと、先ほど言いました有吉さんの赤字が、国がそういう態度を持つならば大体埋まってくると思います。しかもあの炭鉱は良質の炭質で、明るい希望があるということでございます。  野呂さん、そういう状態になった場合に、先ほど言った七五%程度の出稼率ではなになので、そういうことは完全に解消できると希望を持って、とにかくあそこにいるというような状態になる、このように思っております。  それから夕張市長さん、そこまでには若干の時間がかかると思うのですね。石炭部から来た文書では「両者とも、これを検討する旨約束した」と言いますが、一日、二日の検討じゃ終わらぬと思うのです。そこで、いま露頭炭を掘って大体それを資金にしながら保坑をやっております。この露頭炭の開発について、もう少しこれを伸ばしていくような方策を林野庁その他とよく相談して市もやらなければならぬし、大変財政困難なときでありますけれども、こういった四者の協同体制の中で初めて夕張炭鉱は蘇生していく、このように考えておりますが、それぞれの御意見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 有吉新吾

    有吉参考人 試験炭鉱という話が出たのでございますが、炭鉱条件というものは山によってそれぞれ違うのでございます。したがいまして、ある特定の個所ですべての山にアプライできるような試験をやるということは、これはもうできないわけでございまして、基本的な問題とかそういうものだけは研究所とか大学とかそういうところでやりまして、そして実証的な試験は、現在稼業いたしております稼業炭鉱におきまして、それぞれの条件に応じた、それにどう対応するかということを研究していかなければ意味がないんじゃないか、私はこういうふうに考えておるわけでございます。試験炭鉱につきましてはそういうふうな意見でございます。  それで現在、石炭技術研究所、石炭技研を通じまして、過去にもそういう小規模の実証はやってきたのでありますが、問題の深部の応力解放という問題につきまして今年度、いま予算がついておりまして、住友赤平炭鉱においてそういう実証試験をやることになっておりますが、そういった稼働しておる各炭鉱に応じまして、それぞれのテーマを与えて研究していくというのが現実的ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから国が山中大臣の発言のようにすべての資金的なめんどうを見て負担をかけないということになれば収支の問題は片づくのじゃないか、こういうことでございますが、あるいはすべてのお金を無利子で一切合財を賄うということになればそういうことになるかもしれませんが、私どもの心配いたしておりますのは、そういう収支計算のもとになるのが、資金の問題だけでなしに、労働の質の問題とか保安技術職員の問題とかいう問題がありまして、そういう問題をあわせて果たしてこの山というものは開発可能であるかどうか、こう考えていくべきじゃないかと考えております。  それから露頭炭の開発でございます。これは先ほどの陳述におきましてもちょっと触れたのでございますが、北炭さんからこのくらいの炭量があるということで管財人が引き継いだのでございますけれども、実際にやってみますと非常に少ない、その半分ぐらいしかないということでございまして、新たに申請をいたしております地区にいたしましてもこの炭量はそう大したものはないわけで、これに望みをかけてある程度の収益を期待するということはむずかしいのではないか、こういうふうに私は考えております。
  64. 野呂潔

    野呂参考人 出勤率のことについてのお尋ねでございますので、それにお答えをいたします。  石炭協会の試算を眺めてみますと、出勤率というのは現状、山に残っている千人の人たち実績をもって計算しているわけですね。そういたしますと、いま残っている人たちの年齢構成の問題もありますし、さらにまたいろいろな構成もあるのでございますが、大部分のといいますか相当数の人たちは、病院にかかっておって健康を害している。他の会社に転職もなかなかできないという人たちがたくさんいるわけであります。そういう人たちを中心にして出勤率を調べられてこれではできないというのは、私たちの方から言うと、何かあえて問題をわざと問題化しているのではないかという感じがするわけであります。  したがって、当初、計画初年度からいう二、三百人ということであれば、たとえばそこで新会社ができたときに必要とする人たち出勤率を想定してみると、それはそんな低いものではないし、八五%以上をはるかに上回ることは可能である。さらに新炭鉱としてこれから二十五年、最低でも二十五年であるし三十年、四十年ということで、先ほど申し上げましたように鉱区調整あるいは炭量計算等によってふえていけば、そういうような形になれば若年労働力の確保もまだまだ可能でありますし、そして出勤率が大きく変化してくるということはここでは言い得ると思います。それをそのようにさせることは可能であるというように私自身は考えております。  なお、時間の問題でありますけれども、一日も早いことを望むというように言いましたのは、きょうこの石炭対策特別委員会でこうやって参考人として意見を述べる機会を得たのは非常にうれしいのでありますが、石炭協会結論が出たのは半年でありまして、新たな提起がありましたのでこれからまた半年という時間がかかりますと、現実問題として現地労働者や家族はどうなっていくのか。さらに、いま有吉協会長が言ったように露頭の炭をもって保坑しているというようなことを考えてみると、現実問題としてそこから話は壊れていくということになってきますので、時間的なことはいろいろとございましょうが、われわれとしては一日も早く解決をするようにしていただきたいということを心から念願をしていることを、くどいのでありますが、この席をかりてあえて申し上げておきます。  以上であります。
  65. 中田鉄治

    中田参考人 地域が協力してやるということは先ほど申し上げたように当然でございまして、いまの露頭炭問題につきましては、いま有吉さんからお話のあったように当初の計画からずいぶん炭量がないということで、ことしの十月で全部切れてしまいます。そこで、新たにいま市に申請をしてきておりますのは市の上水道水源地の上でございまして、重要治山事業を昨年から進めている事業地なものですから、根本的に市民に対して回復が間違いますと泥水を飲ませることになる。大変な問題を抱えています。しかし、保坑要員に賃金を払えなくなるようなことになれば新鉱の再開がまずそこでつまづきが始まるというようなことですから、それぞれの復旧について上水道に影響のない対策ということがどういうふうに技術的に可能性があるか、可能性があるかでなくて可能性ができるようにいま検討しておりますので、私としてはそういう意味でやりたいと思っております。
  66. 伊木正二

    伊木参考人 先ほど試験炭鉱の是非についてということでお話がありましたけれども、これは現在、別のある委員会で試験炭鉱の問題を取り上げて議論する機会がございまして、してはおりますけれども、私は根本的には反対でございます。と申しますのは、試験の種別等いろいろな状態から申しますと、一つの炭鉱でやってもなかなかそれが思うようにはいかない。この点につきましては先ほど有吉会長が言われましたけれども、これを一つの試験炭鉱として構成した場合、たとえばいまの新炭鉱を試験炭鉱としてした場合には、当然研究者、技術者が多数必要になります。そしてやりますこと自体、成果としては、そこの山での成果は上がるかもしれませんけれども、果たしてそれがほかの山に応用できるかどうかということになりますと、決してそう簡単にいくものではございません。したがって、これを国の方針でやられるということは国費のむだ遣いになるのじゃないかという感じが私はいたします。それよりもむしろ、そういう深部採掘の問題等につきましての研究は、もうすでに日本の炭鉱どこの山も深部に移っておりますので、各炭鉱でそれぞれの問題を取り上げてやっております。またそれを石炭技研が連絡をとりながら指導して、また石炭技研自身でいろいろな研究をしておりますので、それぞれの炭鉱に合った対策がとられている。これがまた将来、仮に海外のいろいろな炭鉱をやる場合にそれぞれの炭鉱の総合的なもので初めて深部採掘の対策ができるんじゃないかと思う。単に深部採掘の研究をやるための試験炭鉱というものについては国費のむだ遣いになるのじゃないかという感じが私はしております。
  67. 武藤山治

    武藤委員長 斎藤実君。
  68. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、最初に有吉参考人にお伺いをいたしたいと思うのです。  先般、山中通産大臣から、検討をし協力をしてくれという要請があったわけでございますね。そのときに、新聞報道でございますから私もよく真意がわからなかったのですが、有吉さんが、八百八十八億の赤字を予想されることについて開発可能性は見出しがたいという答申を出されたわけですが、山中さんにこの件と、それから技術者が非常に問題だということを話をしたというふうに報道されているのですが、大臣から協力してくれ、検討してくれという以上は、特に何か話はございませんでしたか。
  69. 有吉新吾

    有吉参考人 私どもの基本的な対応の仕方というものは、先ほどから申し上げましたような、このプロジェクトはとても採算の見込みがありませんし、私どもとしては債務保証とか赤字を負担するというような協力はできませんという話を申し上げましたのに対しまして、それは企業としてはそうでしょう、こういうお話があったのです。  それから、その資金につきましては、一度出しておるのだから非常にむずかしいのだけれども、そういった新しい体制というものができるならば、もう一度開発資金というようなものをひとつ考えてみようか、こういう気持ちも、考えもしておるのだ、こういうふうな話はそのときに出ました。  それから技術職員につきましては、大臣は余りそういう御認識を持っておられなかったようでございまして、なるほどそういう問題があるのか、それは問題だな、こういうふうな感想を漏らされました。  以上でございます。
  70. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 有吉さん、そのときに石炭協会としては、大臣から協力してくれということは出資をしてくれというふうに受けとめて、債務負担行為等は断わるとおっしゃったというふうにとってよろしいですか。
  71. 有吉新吾

    有吉参考人 協力の態様と申しますかそれは言われませんでしたので、私どもわからないのです。わかりませんが、私どもは出資をして云々という考え方はしておりませんので、そういうお考えかどうかわかりませんけれども、先に私どもの考えだけを申し述べておこうということで、いま申しましたようなことをなにしたわけでございます。後、記者会見あたりでもそういうことをおっしゃったそうですけれども、私どものときにはそういう具体的な話はなかったのでございます。
  72. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の夕張問題について、これは各関係者とも非常に戸惑って釈然としない発言でございます。  それで、四人の各参考人に私はお伺いをしたいのですが、石炭政策は国が責任を持って進めていくという、これはどこの国でも一貫した方針でございまして、実は現在の石炭政策は私企業体制を維持することが適切であるという基本的な考えのもとで現在まで行われてきたわけでございます。しかし、山中提案石炭協会北海道知事に対して協力をしてくれ、こういうお話でございまして、この発言どおり受けとめますと、地方自治体石炭経営に参加するいわゆる第三セクター、いわば公社公団化ということになるのではないか、山中提案は私企業体制で臨むという石炭鉱業審議会第七次答申石炭政策の変更になるというふうに思わざるを得ない、こう私は考えるのです。第三セクターあるいは公社公団化ということになれば、いままでの私企業体制という石炭政策の変史につながるというふうに私は考えるのですが、各参考人からひとつ御意見を伺いたいと思います。有吉さんからひとつ……。
  73. 有吉新吾

    有吉参考人 具体的な内容はよくわかりませんけれども、いまおっしゃいますような形でございますと、第七次答申とちょっと違ったことになるのじゃないか、こういう気がいたします。
  74. 野呂潔

    野呂参考人 炭労はもともと体制問題で、私企業体制では石炭産業の維持とか発展というのは今後むずかしいという立場に立っておりましたので、七次政策の策定の段階でも体制問題については考慮せよという主張を繰り返し繰り返し述べております。そういう点で今回の内容判断してみますと、大臣の言っている中身は、知事に対してあるいはまた石炭業界に対して一回、一回違ったように言っている模様であります。しかし第三セクターということで問題提起をいたして残したいということでありますから、私たちとしてはそれは積極的に受けとめております。したがって、七次の政策の変更、そういうようにかた苦しくは考えていないのでありまして、積極面を大いに買って、そういう中であっても私企業という石炭業界というものがあるわけでありますから、完全な公社、公団だというようには理解はいたしておりませんので、その変形だというように受けとめて、問題が解決されることを望んでいるわけであります。  以上でございます。
  75. 中田鉄治

    中田参考人 私は大臣に直接、夕張市民会議として十七名でお会いしましてお話を伺って、これはやはり大臣の言うように真剣に取り組まなければならぬ、こういうふうに考えました。しかし、いま石炭政策のかかわりでは、問題はその運営のあり方によって政策を変更するかしないかということはあろうかと思いますが、第三セクターとて民間企業でありますから、そういうことでこれは私企業とみなすかみなさないかということもありますけれども、決して変更しなければこれができないものではないというふうに私は考えます。  ただ、先ほど有吉会長さんから、石炭政策が変われば条件が違う、こういう御発言がされました。私、全くそのとおりだと思っています。八百八十八億の赤字というのは、現在の石炭政策の制度資金ではこれだけの赤字になる、したがって、これが先ほどのように開発資金が出ると一遍に六百億から違って三百億の赤字になるということになってまいるわけでございますから、やはりそういう手当てをしていただけばやることができる、この三百億がまたさらに百億になるかゼロになるかという、これは練り方によってはできるものではないだろうか。私も市の財政を賄って、額は少ないですけれども、すでに相当の赤字が出そうなのを苦労してやるということの前向きの姿勢さえあれば、これは決して不可能な問題ではないと思う、まことに失礼でありますが。そういう点ではむしろ今度の断念の結論を、もし石炭政策制度資金がこうであればこうできるという御答申をいただきたかったなという気持ちがいっぱいでございます。そういう意味でひとつ……。
  76. 伊木正二

    伊木参考人 私は、新聞で拝見しただけでございまして、何もその内容を存じません。恐らく大臣はそれほど深く突っ込んで考えておられないんじゃないかという感じがいたしております。
  77. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 中田参考人にお尋ねをいたします。  あれだけ大きな災害が起きてそれから閉山ということで、現地の市長さんですからいろいろな要望や意見やもうたくさん抱えていらっしゃるので、確かに一日も早く再開をしたいという気持ちは私も本当に全くそのとおりだと思うわけですが、私直接伺ったわけじゃないのですけれども、マスコミのコメントの中で市長さんの第三セクター方式でもやむを得ないという新聞記事を見たのです。これだけの赤字が予想される中で、そこに地方自治体が加われば、その負担をどこに求めるかという問題が出てくるわけです。  そこで、いまこの山を再開するために、この赤字を埋めるために、市長さん、具体的にこうしてもらいたいという、地元の市長さんですから、何も私はここで大臣に質問するわけじゃないのですけれども、中田参考人がこうしてもらいたいという財政的な裏づけ、こういうものをお考えになっていれば、この際お伺いしたいと思います。
  78. 中田鉄治

    中田参考人 財政問題は非常に自治省、道に御配慮いただきまして、五十七年決算は実は七億円の赤字が出る見込みでございました。それはひとえに、新鉱の税が、更生債権が十二億四千万円、利子が入っていますから本税では九億円が凍結をされたということになってきたわけですけれども、おかげさまで特別交付税二年続いてかさ上げをしていただきまして、さらにいろんな事業費の起債、これのかさ上げ、補助金のかさ上げ、道の振興基金の貸し出し、こういうことをやっていただいたおかげで、いまのところ五十七年度決算は三千万円の黒字決算をすることができる。これはつじつまのことでありまして、黒字だから非常に財政が豊かになったとは私は考えません。すべて借金政策で、国の予算と同じでありまして、借金をしてつじつまを合わせたということであります。五十六年決算では二億八千万円の赤字、それも解消して約三千万円のつじつまを合わせることができました。五十八年以降、十二億四千万の債権が入ってこなければ大変な問題を抱えております。財政は非常に苦しいので、一昨年来夕張市の自治体従業員、いわゆる労働組合にも深い理解をいただきまして、不本意ながらいろいろな合理化問題を提案いたしまして、十数項目にわたって全部組合に理解をしていただいて、人件費の大幅な削減、そういうことを初めとして切り詰めるところは徹底して切り詰める、しかし、市民に対する都市施設や何かの整備は後ろを向いてはいけない、これからの夕張再建のためにはそうしなければならぬということで取り組んでいるわけでございますので、それに対する補助金や起債、そういうことのお認めをいただくことが大事であります。  それからさらに、北炭の用地がありまして、その用地が非常に荒廃しているために、それが都市建設、再開発に非常に大きな影響を及ぼしている。この土地は固定資産評価額にして十五億円、この金をひとつ何とか過疎債等でお認めをいただいて、そして市の所有地にしてこれからの再開発に前向きに取り組みたいという課題を抱えておりますし、今後も特別交付税や補助金のかさ上げ、起債のかさ上げ等さらに特段のお願いをしたいというのが本当の趣旨でございます。
  79. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 有吉参考人にお尋ねいたします。  答申では、国の制度融資百九十一億、補助金四百億、これを受けてもなおかつ八百八十八億の赤字だということが出ております。それでこれはとてもじゃないけれども協力できぬという答申があったわけですが、有吉さん、国の補助金あるいは制度融資に協力するためにはこういうことをしてくれ、こうすれば石炭協会としてもこれは考えようという何かお考えがもしあれば、この席上で伺っておきたいと思います。
  80. 有吉新吾

    有吉参考人 現行の制度のもとでやりますとそういう結果になるということでございますが、協会としましてもさらに一段と政策助成を強化した場合はどうなるだろうかということも参考にいろいろ試算をしているわけであります。先ほどから話の出ておりますようにウルトラCで仮に二回、開発資金をもう一遍出す、こういうことになりました場合でも、その八百八十八億が約三百億くらいの赤字に減る、そういう程度にとどまるのではないか、これがいま考えられる一番最高のなにじゃないかと思うのでございますが、そういう試算はいたしております。
  81. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で私の質問を終わります。
  82. 武藤山治

    武藤委員長 小渕正義君。
  83. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 夕張新鉱の再開発の問題は、昨年九月のああいう経緯の中で大沢管財人から一つの考え方といいますか試案が示されまして、そういうものが唯一の足がかりになりながら関係者の皆さんは今回の業界検討結果について実は重大な関心を持ちながら注視していたわけでありますが、ただいままでのいろいろなやりとりをお聞きいたしまして、まさに企業性といいますか採算性からいってとても再開発考えられないというような、絶望的にならざるを得ないような説明になっているわけであります。  したがいまして、私も、業界関係者の皆さん方が長い間専門的な立場から検討された結果でございますので、大変御苦労であったろうと思いますし、それなりに尊重している次第でありましたが、先ほどの有吉さんのお話をお聞きしておりますと、根本的に、現在既存のそれぞれの炭鉱経営をやられておる業界においてさえ出炭トン当たりまだマイナスという状況に置かれておる。そういう現在のそれぞれの炭鉱経営さえ赤字を出しておるような状況の中で、新鉱開発夕張が再開発採算ベースに乗るなんてとても考えられないということが、まず根本的なべースにあるのではないか、実は大変申しわけございませんけれどもそういう疑念といいますか感じを、先ほどのいろいろなお話を承っておりまして持った次第であります。  そういう意味では、初めからどのようないろいろなやりくりの検討をいたしましても、現行のこういう枠組みの中における石炭政策の中ではすべて結論は初めからわかっている。後は、そういう結論をどう出していくかということで、より客観的に、また何といいますか納得性をつくるためにやられたのじゃないかなという、第三者的な見解で大変申しわけございませんが、そういう感なきにしもあらずというふうに実は率直に申し上げるわけであります。  したがいまして、そういう点で、今日まで検討された基本的な業界の皆さん方の考え方はどこらあたりにあったのか。本当に何とか再開発できないかという立場から問題を詰めていくならば、もちろん限られた条件の中ですからいろいろありましょうけれども、この問題をこのように解決していくならば何とか開発可能とか、この問題をこういうような方向で解決していくと何とかこれは開発可能だとか、そういうふうな一案、二案、三案なりの考え方が出されてよかったのではないか、私は非常にそういう気がしてならないわけであります。そういう意味の裏返しとして、先ほどからの御答弁を聞いておりまして、まず基本のベース自体が最初からそういうふうな感覚の中でこの問題に取り組まれたのではないかという気がしてならないわけでありますが、その点に対する有吉さんの御見解をお示しいただきたいと思います。
  84. 有吉新吾

    有吉参考人 ただいま、ある先入観を持ちまして、ある意図のもとにこの答申作業をやったのじゃないか、こういうふうな気もするがどうかということでございます。現存の炭鉱すら平均的にまだ赤字であるときにいわんやこういう投資を必要とする新鉱をやというのは、これは側面的に御理解をいただくためにそういうお話を申し上げたわけでございまして、この新夕張開発計画検討に当たりましては、私どもは何らの意図的なものを持たずに、きわめて客観的に、五社のスタッフを動員いたしまして、いままでの業界が持っておる経験と衆知を集めまして、まずこのくらいのものが妥当じゃないか、こういう線を、技術的骨格を積み上げまして、その上に北炭夕張の過去の実績とか、ほかの炭鉱経理計算実績とか、こういうものをもとにして積み上げたわけでございます。  それで、参考に申し上げますけれども、実収率にいたしましても、区域実収率というのは五〇%見ておりますが、ほかの炭鉱に比べますとこの五〇%というのはむしろ高いのです。それから職員、鉱員の比率、一人の職員が何人の鉱員を使うか、これは四・四人でありますが、これもほかの近隣の炭鉱に比べますとむしろ能率的に見ておるわけです。能率におきましても隣の南大夕張よりも高い。こういう計算の上に立って、ここまではやろう、やれるんじゃないか、こういうことで計算をした結果でございまして、そういう意図的なものは全然ございません。そういうことでございます。
  85. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 先ほどから有吉参考人お話の中で、現在の石炭業界に対する政府施策の非常に不十分な点が強く言われておった面もありました。いろいろそういった先ほどからの一連の御答弁を通じまして、私なりの率直な感じをお尋ねした次第であります。そういう点でひとつあしからず御了承いただきたいと思います。  先ほどからお話があっておりますが、問題は、資金的な対策を何とか解決しなくてもいいのかなということでお話を承っておったら、今度それに対してどうかということになりますと、いや、それだけじゃないんだ、労働の質の問題がこれまた大きな問題としてあるんだ、こういうお話でございました。  それからあと一つは、答申書の中でも触れられておりますが、労働力確保という問題、特に技術者を含めたこれが非常に重大な問題だ。そういうことで、私は、現行の枠組みを越えて新しい発想のもとに何らかの資金対策を講ずるならば再建可能だという感じをお話の中で伺っておったのでありますが、そういうことだけしても必ずしも再開可能というわけにいかない。労働の質の問題が大きく横たわっておって、そういう意味からいっても大きな障害がかかるんだという御指摘のようでございます。労働の質の問題になりますと、これはいろいろ諸対策をしようとしてもまた違った次元の問題になりますので、そういう点では非常にまた困るわけでありますが、先ほどの御質問の中でも出ました、政府開発資金の触資等を入れて、なおそれによって三百億程度赤字が減少するということでございましたが、現在置かれている夕張開発の問題は、前提条件を抜きにして、そういう資金的な対策を何とか解決できたとしてもやはり再開発は困難、こういうふうにお考えなのかどうか、その点率直にお尋ねいたします。
  86. 有吉新吾

    有吉参考人 まず第一は、そういう資金的な問題の解決ができなければもちろん問題にならないと思うのでございますが、私どもが開発可能性を見出しがたいという結論を出しましたのは、そういう収支だけの問題ではなしに、保安技術職員でない従業員につきましてはいろいろ対策考えられるかなという気もいたしますけれども、保安技術職員の充足という問題につきましては、これは非常にむずかしいという気持ちを持っておるわけでございます。その意味から、保安を非常に重大なテーマとしておりますこの山、そして保安管理者、上級保安職員と第一線の保安技術職員と、それから働く作業員の人たち、この間に十分な教育訓練と申しますか、それなしにはこういうガス山というものはむずかしいのですね。そういう体制をつくり上げていくというのはなかなかむずかしいのじゃないか、そういうことを資金問題のほかに一番心配をしておるわけでございます。
  87. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 お話を承っておりますと、特に夕張新鉱はほかの炭鉱と違ってそういういろいろむずかしい条件といいますか、炭層の特殊な状況に置かれておるだけに、そういった問題がほかの炭鉱よりもより重要視されるであろうという意味で理解いたしますが、その点は逆に野呂さんの方から見るとまた違った見解があろうかと思います。  あと一つお尋ねいたしますが、採炭可能な炭層といいますか、どの程度可能かということでの見方でございまして、先ほどからの野呂さんのお話によりますと、もう少し違った角度からもっとこの問題を見ていいのじゃないかというような積極的な御意見等が出されておりました。そういうことをお聞きしますと、とにかく皆さん方、今回検討された中には、慎重に慎重に慎重を期して、できるだけすべての材料を詰められて、そこらあたりの条件をもっとほかの、もう少し違った見方で見ていいのじゃないかと見られるような中身さえ何かしらそういう形の中ででき上がったのではないかという感じが率直に言っていたしたわけでありますが、そういった専門的なことは私はわかりません。したがって、個々の検討経過の中におけるそれぞれの材料についてのよしあし、これは何もわれわれが議論することはできませんからその点は省きますが、ただ一つ残炭炭量といいますか採掘可能な炭量を、片一方の働く人の立場から見るともう少し積極的な、こういうものもあるのじゃないかという見方をされておるのでありますが、その点については業界の方としてはどのようにお考えなのかお尋ねいたします。
  88. 有吉新吾

    有吉参考人 炭量につきましては、一番最初に申し上げましたように管財人の一千二百万トンに対しまして千三百五十三万七千トンでございますか、そういうことでむしろ可採炭量実収炭量はふやしておるわけでございます。ただ七百メーター以浅の区域、これは大体一・五メーターぐらいの限界線になりまして、それから以浅の浅いところはずっと薄層になっていくわけでございますが、そこでとにかく掘ろうとすれば掘れなくはないという炭量はどのくらいあるかという計算をしております。これは大体百九十七万一千トンという数字が出ておるわけでございます。大体その程度のものでございます。  これを掘ったらどうなるかということでございまして、これを七十万トンの年産計画の一部として掘りましたら収支はさらに悪化することはもうはっきりしているわけです。条件が悪い。したがいまして、七十万トンにプラスをして、間接費は全部七十万トンを負担をして、そしてプラスのものとしてこの百九十七万トンというものを掘っていったら一体どうなるかという計算もしてみたのでありますが、七百以上というのはまた新しく別の坑道を掘っていかなければなりませんので、設備投資は正確な数字は覚えておりませんが、たしか百八十億ぐらいかかるのではないかと思いますし、もう二百億円台のべらぼうな赤字になる、こういうふうなことでございます。
  89. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 業界の特に専門家の立場からの慎重な中での結論でございますから、それはすべて非常に重要な意味を持ちますし、またそれなりに尊重されなければならないと思うわけであります。そういう意味で私なりに考えますならば、今日の第七次石炭政策の中でこの夕張新鉱を再開発しようとしても、企業採算ベースという一つのベースで見るならばとてもこれは無理だ、こういうふうな率直な実感がわくわけであります。したがいまして、そういう中で考えますならば、企業採算ベースということだけでこの問題を考えるならばとても再開発考えられない。社会的にまた別の角度からこの問題は提起されておるわけでありますが、そういう点で考えますと、現在の石炭政策の枠組みより一歩踏み込んだ何らかの新しい考え方の中でないとこの再開発はできないのじゃないかという感を非常に強くしているわけでございます。  そういう点で、仮定の話で非常に恐縮でございますが、今回この夕張新鉱再開発について、そういう新しい何らかのいままでの石炭政策の枠組みを超えた一つの考え方をとりまして、そういう中で何とか再開発をやろうとした場合に、石炭業界全体としてはそれは夕張新鉱だけの問題だとして切り離して考えられるものかどうか。その考え方、すべてすぐまたそれが現在のそれぞれの石炭業界のところに何らかの形でそういうものがはね返るということはないでしょうけれども、関連していろいろな問題が付随して出てくるというふうにお考えなのかどうか。ちょっと奥歯に物の挟まったような物の言い方で大変恐縮でございますけれども、言わんとするところはわかったと思いますが、その点に対する有吉参考人の御見微を承りたいと思います。
  90. 有吉新吾

    有吉参考人 いまのベースではとてもやれないという結論でございますし、特別の助成、何か特別のことをやろうといたしますと、違った体制か何か考えない限り私はできないのじゃないか、こういう気がいたしております。  それから私は、しかしより根本的に炭価、炭の値段でございますね、炭価ベース、この辺がもう少し変わってまいりませんと開発の曙光というのはなかなか見出しがたいのではないか、根本的にそういう気がいたしております。  それからもう一つ、石炭業界にはね返ってくるのかどうかというようなお話でございますが、石炭業界というものは損益を負担したり債務保証はとてもできませんということを言っておりますが、何らかの形でやろうとすれば、技術にいたしましても協力申し上げない限りできない問題だと思います。そういう意味で、当然業界に関連はございますが、さらに資金という問題を考えますと、膨大な資金というものをこの山につぎ込む、その金は一体どこから出てくるのか、こういう問題、これは現在生きている炭鉱に大きな影響はあるでしょう、そういう気がいたしております。
  91. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  92. 武藤山治

    武藤委員長 小沢和秋君。
  93. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 最初に有吉参考人にお尋ねをしたいと思います。  いわゆる大沢提案が出されましたときに、現地の人たち閉山をするということに大きなショックを受けながらも、これで一たん区切りをつけてやがて何とか再建をできるならばということで希望も持ったと思うのです。ところが今回、その大沢提案をさらに細かく石炭協会の方で検討し直してみたらということで、八百八十億の赤字が出るからとうていやれないというような結果になると、これは結果論だと言われるかもしれないけれども、現地の人たちにしてみれば、大沢提案に非常に希望をつないで、それならしようがない、一たん閉山を認めたということは、もういまになれば本当にペテンに乗せられたようなかっこうになるじゃないか。非常にこれは、私は腹の中では憤りを持っておられるんじゃないかと思うのです。あの大沢提案についても、石炭協会は実質的には関与をしてやっておったんじゃないかと私は思うのですよ。だから、これは責任なしと言えないのじゃないかと思うのですけれども、こういうような事態について石炭協会会長としてはどうお考えでしょうか。
  94. 有吉新吾

    有吉参考人 大沢管財人の再建構想と今回の答申が大きな開きが出ておりますその内容につきましては、最初の御質問のときに申し上げたとおりでございますので繰り返しません。ただ、大沢管財人の案というのに協会としてタッチしておったんじゃないか、こういうことでございますが、確かに大沢管財人は協会の副会長という形で管財人になってもらいました。その前は三井石炭の監査役をやってもらっておりまして、特定の会社ということではいろいろ差しさわりもあるだろうということで、管財人就任につきましてわざわざこれをやめてもらった。それで無党派の協会という籍に一応したらどうか、こういうことでございます。それで急遽管財人としての構想をひとつまとめなければならぬということで、二、三の特定会社から専門の技術者あたりをつけまして大急ぎで管財人構想というものを一つつくったわけでございます。これは協会として作業をしたわけではございません。特定の会社の二、三のスタッフをつけて応援をした、こういうことでございます。
  95. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いま若干の弁解はされたけれども、しかし私は、こういう結果になったということについては、協会も重大な政治的な責任があるということは繰り返して言っておきたいと思うのです。  それから今回の答申内容についてですけれども、先ほどからの議論を聞いていて、やはり協会自身が何とかして北炭夕張という山を立て直したいという前向きの立場に立っているというふうにはどうも考えられぬわけです。現在エネルギー情勢というのは、石油が値下がりをしたとか、なかなか厳しい。そしてまた国内の石炭会社赤字がちだ。だから、こういう山が無理して動くようにすることは要らぬのだといったような気持ちがどうもにじみ出ているように思うのです。だから、条件というのはこのように厳しいというのをいろいろ前提に置かれて、それから保安などは当然うんと徹底的にやらなければいけない、そこのところはいいとしても、全体としてそういう非常に悪い前提をいっぱい置いて計算をしてみた場合にこうなるじゃないか、八百八十億というのはどうもそういうようなものの集積ではないかというふうに先ほどからの議論を聞いて感ずるのですが、いかがですか。
  96. 有吉新吾

    有吉参考人 これも前の方の御質問にすでに答えておるのでございますが、私どもはそういう一つの前提と申しますか、そういう一つの意図を持って計算をしたということは全然ございません。私どもといたしましても、石炭政策といたしまして、現在ある炭鉱はつぶしてもらいたくない、こういうことで来ておるわけでございますので、ここで友山が姿を消すというようなこと、消えた方がいいんだ、こんな気持ちでこの作業に取り組むはずはございません。それにもかかわらずこういう結果になったのでございますけれども、もう一度繰り返して申しますが、たとえば私どもの今度の計画における能率でございます。これを隣の南大夕張と比べても、今度の計画の方が高いのです。それから職員と鉱員、先ほど申しましたように職員が一人当たり何人の鉱員を指揮していくか。これもこの山では一人に対して四・四人ということでございますけれども、近隣の炭鉱では一対三・幾ら、こういう台のところが多い。ここまではいくのじゃないかということで私どもは計算をしておるのでございます。したがいまして、一番大きな影響を及ぼしておりますのは、設備投資がどうしても高くつくということでございます。保安対策として根本的な骨格構造をひとつつくらなければいかぬ、それから保安上のいろんな設備もひとつ十分にやらなければならぬ、こういうようなところで初度投資というものが非常に高くつく。それが金利償却にはね返ってくる、こういうところが一番大きな問題でございまして、その参考として、先ほど申しましたように既存の炭鉱だと出炭トン当たり五十円から高いところでは一万七千円ぐらいしかないのだけれども、この炭鉱はトン当たり四万八千円からの投資を必要とする、そういうところを補うものになっている、こういうことでございまして、内容、その能率とかそういう点では、新しくつくるのでございますから、むしろ少し高いところを計算のベースにしておる、こういうことでございます。
  97. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私がさっき言ったような印象を受けるという点で、もう一、二申し上げてみると、山中大臣はこの前の石炭特別委員会の席上で、いわゆる新鉱開発ということでその資金を出すということは自分も考えてみたいという答弁を私の質問のときにもしておられるのです。だから、もう大臣自身がそういう見解を当時から表明しておられるわけですから、私は何とか少しでも赤字が出ないように、有利ないろんな条件があれば運用してでも何とか日の目を見るようにしてみたいというのだったら、新鉱開発だということでお金を入れてくれるという前提計算をするというようなことだって、当然あなた方の方から積極的に試算として出してもよかったのじゃないかと思う。さっき質問をされて、そうすれば三百億だというふうに言われましたけれども、私は、そういうようなところにも消極性を感ずるわけです。  それから炭量、これについては大沢管財人の案よりはむしろ若干多いというようになっているようです。しかし、先ほど炭労野呂委員長も言われましたけれども、近隣清水沢などで六百万トンから残存している炭がある、こういうようなものもやりようによっては掘ることができるのじゃないかという御指摘もありましたけれども、私は、そういうような近隣の全体の状況も考えて総合的に再建の可能性を探るという努力がもっとあっていいんじゃないかと思うのです。これについて先ほど、そうするためにはまた設備投資も要るというお話もありましたけれども、しかし、あの基本的な設備投資というのがあれば、そういう若干不利なところまで手を伸ばすための設備投資というのは、私は総体的にはこれは金額としてはうんと安く済むはずじゃないかと思うのですよ。初めからゼロからやるわけじゃないのですから、付加的にやるわけですから、だから、そういうようなこともいろいろと私なんか素人なりに考えるわけです。そういうようなことについての可能性をどう探ったのかということも、先ほどからのお話では納得できない点なんです。そういう点についてもう少し伺いたいと思うのです。もうちょっと簡単に答弁してください。
  98. 有吉新吾

    有吉参考人 開発資金を出したらこうなるから積極的にこういうことも考えてくれというような案を出したらどうかということでございますが、協会といたしましては、現在の制度のもとでやればこう、やはりこうしか考えられないわけでございます。そして、いまの制度で開発資金を二度出すなんというようなことはおおよそちょっと考えられないことでございまして、たまたま山中大臣に会ったらいきなりそういう話が出たということでございますので、私どもこれは不可能だ、いまの制度では二回、一遍出してもう一遍出せということは恐らくできない、こういうことで、これは常識ではないかと思っておるわけでございます。 それから炭量の問題、野呂参考人から清水沢に六百万トンあるとかいう、これは私は初耳でございまして、ここは夕張炭鉱の鉱区外でございます。そういうのがあるかどうか知りませんし、それがどういう状況であるか、清水沢がどうしてそれを取り残したのか、これは調べてみませんとどういうものであるかわかりません。したがって、鉱区外でございますので、これは検討対象にはちょっと考えもしていなかった、こういうふうなことでございます。
  99. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 次に野呂参考人に若干お尋ねしたいのですが、一つは、いまの私の質問に関連をして、先ほどから野呂さんはこの山の再建は可能ではないかという主張をされていると思うのですが、さらに補足してお話があれば伺いたいと思うのです。  それから新しい質問も一つ申し上げたいのですが、私どもとしては、かねがね国内にある唯一のエネルギー資源であるこの石炭を大事にしなくちゃいけない、それでまた雇用とかあるいは現地の経済というような点から考えてみても、この北炭夕張は何としても掘るべきだというふうに考えている。その点では、国の責任を大いに強調したいところであります。だから、山中大臣が今度、北海道石炭協会でどうだやらぬかというふうに声をかけたというのは、では国の責任はどうなるかという点で私たちは大いに不満なんですけれども、とにかくつぶすという話をするよりは、何らかの意味でこういうふうにやってみないかという提案をしたことは、それはそれで検討しなければいけないと思うのですね。そういう提案があったとなりますと、恐らく炭労などとしても早速北海道当局などとも接触したりなさっておるのではなかろうかというふうにも思うのですが、もしそういうような感触なり意見なりがあれば、この際伺っておきたいと思うのです。
  100. 野呂潔

    野呂参考人 まず北海道庁とかあるいはまた石炭協会の方ですが、まだ正確にそれらのことを公式的にはやっておりません。しかし、非公式に確かめてみているのであります。石炭業界にも、球は投げられたのだからこれは石炭業界もはっきりしてほしい、こういうふうに私どもが言ったら、いえそんなことを大臣から言われた覚えがないので北海道庁が何か言ってくるまで待ちの姿勢でございます、ですから大臣がもしもそう言うのでしたら、新たに出資をしてくれとかなんとかで新たな提案をしてきたら考え直しましょう、それまでは何も考えることはありませんということを明言しているわけです。したがって、有吉協会長も先ほど言ったように、北海道庁に対して自分たち検討したものは十分に説明はしたい、こういうことを言っておるわけですが、それは善意の立場で言っているのであって、当事者は自分だとはいささかも認識をしていないわけですね。  それから、北海道庁の方にもそう言って聞きましたら、一枚かんでくれと言われたというのです。一枚かんでくれというのは何枚かあるわけですね。初めからないところにこうやってくれというのは一枚とは言わないのです。そういうことで、主体は北海道庁でという認識はいささかもしていないということですから、これからの大臣との接触の中でいろいろと解明をされていって明らかになるのではないか、こう期待をいたしているわけであります。  私たち立場から言いますと、何でもかんでも国におんぶに抱っこという甘えの構造でこういう問題を言っているというようなことはわれわれとしてはいささかもとられたくはないし、そうは思っていないのであります。したがって、労働者としても厳しくこれを受けとめて、やはり夕張炭鉱をつくっていくからには自分たち最大限の努力をして、出勤の問題であろうとあるいは管理の問題であろうと、それらのことについて最大限の協力や努力をして、そして金をできる限り少ない形で、国の助成とか援助というものをそういうような形で問題の解決をしていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。  感想を申し上げますと、昨年の十月七日、八日にかけてわれわれ炭労としては閉山に同意をいたしまして、そのときには部分的には閉山に同意して、それがやっていけるという大沢管財人の構想というものが一つあったわけであります。有吉協会長の方から話がありましたが、それにはそれぞれの各社のスタッフを、石炭協会としてではありませんが、管財人団としてそれぞれ技術のエキスパートを全部網羅し、資料を十分点検して、短い期間でありますが、そういうふうにつくったわけであります。それが八百八十八億という赤字、こうなるものですから、百億か二百億というのは驚かないのでありますが、余りにも天文学的な数字なのでびっくりしているわけであります。  石炭協会検討の中身について一々批判をするということはこの場では適当ではないと思って、言葉を抑えながらもついほとばしるわけでありますが、炭量計算のことにいたしましてもやはりそれぞれございましょうし、あるいは人的な問題のことにつきましても解決できるというように私たち考えておりますし、そういう点から言って、この委員会の場を通じて問題が解決されて、夕張炭鉱再開されることを心からお願いをする次第であります。
  101. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ぼつぼつ時間が来ましたので、最後に中田参考人に一つお尋ねをしたいと思うのです。  先ほどから、現地でこの再開を待ちわびている人たちが、こういうような答申が出されるとみんな非常に不安になって、就職などを考えてみんなよそに散っていく、浮き足立ってしまうのじゃないか、そうなると労働者なしでは山の再建なんということは全く問題になりませんから致命的になる。私も、その点はそう思いますし、この人たち生活が成り立っていくようにという点では、自治体の方としても何らかの意味でいろいろ策などについてまたお考えじゃなかろうかと思うのです。それで、前に中田市長から地元でいわゆる公共事業をいろいろ地域の振興のために考えているというようなお話があったのですが、失業保険などが切れてしまって生活が非常に困っているような人たち現地生活が成り立っていくようにしていくためにも、何らかの意味でそういうような対策も含めてこの際考えなければならないのじゃないかと私は思うのですが、何かその辺で御意見があれば一言お聞かせを願いたいと思います。
  102. 中田鉄治

    中田参考人 実は閉山の際に、失業される人方に、再開されるまでの間に、いま財政的に苦しくてやっていない公共事業、公園づくりであるとか道路づくりであるとか約十七項目を出して、ひとつそういうものを労働省サイドで何とか措置を願えないかということで陳情をいたしました。しかし、いま労働省の制度ではそういうことに事業を興してやることはでき得ないので、各省庁にある制度を利用して、そこにその人方が働いてもらうというようなことはできるものはしていこうということの措置をいただいて、若干やっておりますが、とても二千人からの人を消化できる事業ではございません。ございませんし、もう一つは、やはり再開問題がどうなるかということを心待ちに待っているものですから、雇用保険、黒手帳、これらのかかわり合いで、安い賃金をもらうことによって、それらとの関連がまた出てくる。したがって、この再開問題がどうなるかということによって、その問題はまた一つ新たな段階を迎えて措置をしなければなりません。いまいちずに再開を願っているわけでございまして、生活保護基準ぎりぎりのいろいろな問題がございますから、これは個々のケース、ケースで対策を練っている次第でございます。
  103. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 終わります。
  104. 武藤山治

    武藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明二十五日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十九分散会