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山中国務大臣 私はずっと前から、無資源国家、敗戦国家
日本が
世界のリーダーになり得るかどうかということに対して
考えてきた一人でありますが、その一端をそういう表現でやったわけであります。
要するに、
世界の歴史で、武力を背景にした国家でない国が
世界の指導国になった歴史はかつてない、あるいは安保
理事会の常任
理事国でも全部核保有国ばかりである。そういうようなことを念頭に置きながら、しからば
わが国が
世界の指導者たり得る、指導国の一員たり得る道は全くないのかと言えば、それは
日本人が英知あるいは努力、勤勉、あらゆる要素を結集し、ここに単一民族の強さも背景にありますけれども、そういうものが生み出していく新しい未来への展開が、
世界の
国々から
日本に対して尊敬のまなざしが集まる道の一つである、そう思ったのですが、現象は、私たちの方でそこまで進んでいきますと、今度は、
アメリカもそうですがヨーロッパ
あたりも、
日本に対して、ある
意味の追い抜かれたあるいは
日本に追いつけないというようなことから、
日本製品に特別の関税をかけたりいろいろなことを排除しようとしたりするわけでありますが、しかし、これはある
意味においては、その道程において当然起こり得る必然性のあるものだと私は見ております。
したがって、その点はその点で突き破る努力をしながら、大事なことは、われわれは
アメリカやECから指導者、指導国という目で見られる必要もなければ——それは軍事力を持たない限りはその目を持ってくれないだろうと思うのですね。中東、イスラエル問題に
日本がどのように情熱を傾けても、何の武力の行使もできない国は相手にされませんし、
サミットをやっても、後NATO関係の国だけがまた別に
会合をやることを
日本は何にも
非難もできない。ということは、その力の枠組みの中に
日本は及び得ないからであります。私は、それはそれでいいと思うのです。
たとえば、最近
感じたことですが、ブラジルで豊富な、無尽と言っていい天然のシュガーケーンとかあるいはマンジョカイモというものからアルコールをつくって、それを
自動車の一〇〇%燃料に使っているわけなんです。また、ベンツその他一〇〇%アルコールで走る車を提供しているようです。
日本のホンダもそういうふうにやっているようです。ところが、残念なことにガソリンよりか二割コストが高いらしいのですね。それで、ブラジルの
大臣が来ましたので、そのコストをむしろガソリンよりか二割安くしたら、ブラジルの
国内の燃料ばかりでなくて、
日本もその一つになるであろうが、それを今度は
輸出できる
産業にできるかもしれませんね、それについてわが
通産省には最近までアルコール専売というものがありましたので、そこに長年の技術の蓄積があります、これを私どもは提供して、アルコール燃料の方がガソリンよりも安いとなったら、ブラジルは一転して大変なエネルギー
輸出大国になるのじゃないでしょうかということを申しましたら、それは
自分たちの方もその余地があるかどうか、もし
日本の指導というものがそういう夢を果たしてくれるならばそれはまことにうれしいという話があって、
通産省の中で、どうだ、そういうことは可能性があるのかと言ったら、アルコール製造工程でコストを二割下げるというのはそう複雑なむずかしい問題じゃありませんからどうでしょうかと言っておりましたけれども、しかし、せめて技術指導員を派遣をして、現地ではどういう状態でやっておるか、やはり
日本のアルコール製造技術の方がすぐれていると私は思いますから、そういうことなどでやっていくこと。
あるいは、つい行ったばかりのことで、みやげ話みたいに受け取らないでいただきたいのですが、アラブ諸国の人たちは羊の腹にぱさぱさした長形の米を一緒に煮て、手で——いまはホテルなどではナイフでやるようですが、とてもおいしい料理ですけれども、羊は全然いないのですね。それで私は最初、やはり塩水から飲める水にし、あるいはまた緑も育てていますから牧草までいったらどうですかと言ったら、とてもそんな広い砂漠を緑に変えることは不可能だ、どうしているのですかと聞いたら、豪州、ニュージーランドから船で送ってもらっているのです、クウェートの例では年間十八万頭食べますという話でした。そうすると、じゃその間、船からおろしてどこでどうして養っていらっしゃるのですか、いや、船からおろしません、ずっと船の中に置きまして、穀物のある国ですから持ってきた国が食わしておるのでしょう。そして、必要なだけおろしてはその日に殺して料理に使うのだそうです。それで、一船が食い終わるころに次の船がまた積んできてくれますから不便はないという話でした。そこで、それは金がある国の発想であって、どうですか、それをなめし革などというのはどうしていらっしゃいますかと言ったら、それは売っています、どこにですかと言ったら、なめしじゃなくて生皮を買う国があるのでその都度売っているという話で、じゃ
日本の方でそれをなめす技術、それからそれを加工する技術などを提供したらやってごらんになりますか——われわれは革は自由化で責められているわけですから、せめて技術でそういう国に御加勢をできないかと思ったのですが、何しろ金なら不自由はしてないという国だものですから、そういうこともあるのかなという
程度の顔しかされませんでしたが、そういうことを含めて、私たちの技術立国による
世界の指導者たらんとする意欲というものは、発展途上国あるいは周辺の東南アジア、あるいは地域で言えば南米、アフリカ、そういうところにも
日本はどんどん、買い付けだけではなくて
日本の知恵や技術を向こうにも与えて向こうも発展していただくと言えば、そういうことが可能になれば、それらの人々は
日本という国をまた違った目で見るようになるのじゃないでしょうか。
それは夢みたいなことを言っているようでありますが、私どもは、やはり次の世代の
日本は、そして民族はどういう姿にしてあげたらいいのか、それを残さなければならない責任を私たちのゼネレーションは持っているわけでありますから、ついついそういう話をしたわけであります。