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1983-02-23 第98回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十三日(水曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 森   清君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君 理事 中野 寛成君      天野 公義君    稻村佐近四郎君       植竹 繁雄君    浦野 烋興君       越智 通雄君    奥田 幹生君       梶山 静六君    島村 宜伸君       田原  隆君    泰道 三八君       野中 英二君    鳩山 邦夫君       宮下 創平君    上田  哲君       上坂  昇君    清水  勇君       渡辺 三郎君    岡本 富夫君       北側 義一君    小林 政子君       渡辺  貢君    石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         通商産業政務次         官       渡辺 秀央君         通商産業大臣官         房長      柴田 益男君         通商産業大臣官         房審議官    野々内 隆君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省立地         公害局長    福原 元一君         通商産業管基礎         産業局長    植田 守昭君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君  委員外出席者         参  考  人         (金属鉱業事業         団理事長)   西家 正起君         参  考  人         (金属鉱業事業         団理事)    保阪 勘次君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案内閣提出第一四号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野寛成君。
  3. 中野寛成

    中野(寛)委員 まず、経済財政政策中心に、経企庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  わが国の経済成長の推移を見ますと、第一次石油危機が起こった昭和四十八年までの十年間、年率で約一〇%の高い成長を記録いたしました。昭和四十九年はマイナス成長に陥ったわけでありますが、それでも、その後第二次石油危機が起こる昭和五十四年までは、毎年平均実質で約五%の成長を達成してきたわけであります。ところが、その後は、五十五年度が四・五%、五十六年度は三・三%、そして五十七年度も三%前後に陥っているわけであります。五十八年度も、政府見通しが達成されたとしても三・四%、こういうことであります。  そして、財政はこれに並行するように国債依存度がどんどん高くなっていく、そして税収伸び率も不振を続ける、むしろ歳入欠陥を生じ、赤字国債の解消は進まない、こういう状態が続いているわけでありますが、その原因をやはり明確にしなければならないと思うわけであります。  政府の方は、第二次石油危機影響世界経済の停滞、そこに一番原因があるんだ、こうおっしゃっているわけでありますが、それだけではやはり済まない。政府経済政策失敗失敗という言葉をお認めになることはしにくいかもしれませんけれども、しかしながら、率直に考えて思いますことは、第一に、政府自身がきわめて楽観的な経済見通しをやってきたのではないのか。これは経企庁中心になると思うのですが、五十六年度の成長率を五・三%、五十七年度を五・二%と見込んだけれども、実績は二%以上も下回っているわけであります。  それともう一つ、第二番目には、そういう楽観的な見通しを立てながら、具体的にそれを実現するための対策というものは果たして十分に講じられたのかどうか。私ども、このことにやはり大きな疑問を持たざるを得ない。後ほど、その事例については一つ一つ申し上げていきたいと思います。むしろ、対策を講じるというよりも、所得税減税はやらない、逆に二年の間に約一兆七千億円の増税をやって、それが結果として内需の抑制を図ってしまった、こういうことの方が指摘されるのではないか。  それから第三点目の問題は、歳入欠陥その他のことが言われますけれども、むしろ過大な税収見積もりを行ったということの方が正しいのではないのか、こういうふうに思うわけであります。そういう意味で、われわれは的確な見通しを立てる、そしてその上に立ってそれを実現するために内閣を挙げて努力をしていく。これは内閣だけに限りません。すべて国民内閣のリーダーシップのもとに協力をしていく、その姿勢が必要だと思うのです。しかし、国民協力をしていくその気持ちを起こさせる政策は、やはり内閣がつくる以外にないと思うのです。こういう今日までの経緯について、まず長官に所信をお聞きしたいと思うのです。
  4. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま中野委員の、ここ数年の経済の動き、成長率等から見まして、御指摘の点があったことは事実でございます。  しかしながら、最近の第二次石油ショック影響、さらにまた世界経済予想外低迷、このようなことで経済成長率が大幅に低下をした。これは多分に循環的な要因もあるかと思いますけれども、もう少し、やはり低成長時代に入った一つの証左ということも言えるかと思います。まだまだ世界経済恐慌がまた来るのではないかというような論説が見られるように、この点も私ども大変心配要素ではありますけれども、私どもの見るところは、やはり循環的な第二次石油ショックを完全に克服できないところが大きな原因となって今日の経済低迷を招いていると思うわけでございます。  そして、世界経済がさらにまた、日本のようにインフレ対策あるいは失業率失業対策、このような問題にうまく対応ができなかったことが今日の低迷を招いているということが言えるかと思います。日本だけが間違ったら大変申しわけないのでございまするけれども経済見通しの間違いは、一九八二年にはOECDが平均二・五%と見ておりましたのが、結局二回の修正で、最初は一・二五ですか、そういうような修正が行われ、それは昨年の七月でございましたが、年末にはマイナス修正が行われた。このことがあらわしますように、世界全体が予想できなかったことが、大変申しわけないことでございまするけれども、予測を大幅に下方修正せざるを得なかった。いばることはできません。大変残念なことでございますが、その対応がいま問題であると言われたわけでございます。私ども、そのとおりだと思います。  しかし、その対応が、いま減税も実行されず、いろいろな面において非常に政策が少ないじゃないか、こんなお話も、私も大変傾聴しているところでございますが、ともかくも五十三年、四年にドイツと並んで、世界機関車論財政赤字を通じて五%台の成長を図ってきた。しかし、そのとがめがいま出てまいりまして、財政危機が顕在化し、これを克服することがより景気対策になるのだというような考え方が出てきておるために、思い切った財政面からの政策がとれない、金融面円安という非難を恐れての関係から思い切った政策がとれないというようなことで、焦点は財政再建に向けられている感じがございます。それでも昨年は十二兆七百億円の公共投資中心とする経済対策補正予算の形で成立させていただきました。  大蔵省方面にはそうだと言われるのでございまするけれどもケインズ流有効需要拡大減税を含めてそんなに景気刺激としては効果がないんだ、それだけの乗数効果波及効果は乏しくなった経済構造だというようなことから、この点が消極的になった原因一つとも言われるような状況でございますけれども、私どもは必ずしもそうは考えていない。やはり有効需要拡大という方向は、日本では常に需要不足だと考えておりますので、今後とも財政の許す限り、また金融政策の許す限り努力していくべきである、こんなふうに考えております。
  5. 中野寛成

    中野(寛)委員 こういうふうに思うのです。  財政再建の問題や国民生活の問題、たくさんの課題を抱えているわけですけれども、それを克服するのは一にかかって積極的な経済運営を図っていく、これしかこの困難を脱却する道はないと思うのです。最近の政府のやっております態度を一言で言いますと、一歩前進二歩後退お金がないから積極財政はとれない、お金がないから減税はできない、結局何か慎重にやっているように見えながら、出てくる結果はますます悪い結果を招いている。むしろ勇気をふるい起こして、一歩後退二歩前進という政策こそ必要ではないんだろうか、私はこのように思うわけです。たとえば減税の問題もそう言えると思います。財政事情から言えば一歩後退ということになるかもしれません。しかし、そのことが二歩前進を生むならば、そういう方向をとっていくべきだろう、こういうふうに思うわけであります。  もう一つは、いま長官もおっしゃいましたけれども世界的な景気低迷の中で、日本はまだましだ、しかしもっと積極的な施策をと言われれば十分それが果たし得なかったことは事実だ、こうおっしゃる。と同時に、しかしそれをお認めになるよりも、意地でも長官が、積極的にやっていくよ、野党の指摘は当たってないと言って、むしろがんばってくださることの方が、われわれにとっては望ましいとさえ思うのです。今日までやってきた五・二%、五・五%、そして二%も差がついた見通しの狂い、そういう状態の中で、ついにことしはその見通しさえも下げてしまった、これが実態ではないのでしょうか。こういう見通しは、三・何%なんというものじゃなくて四%、五%の見通しを立て、見通しというよりもそれは目標を立てる、そしてその実現のために政府挙げて努力をしていく、そういう前向きの姿勢が必要なんではないんでしょうか。  たとえば三%台の低成長を今後とも続けるとしたらどういうことが起こるかと考えれば、一番目に失業率の問題ですね。もうすでに二・四八%と、二十六年ぶりの高水準に達してしまっているわけであります。ますます事態は悪化するだろう、そう心配をされております。二番目に、賃上げが抑制をされるということです。生活の向上がいよいよ見込めなくなって、国民暗たんたる気持ちになっていくでしょう。三番目は、その結果税収伸び率が低くなって、財政再建がますます困難になる、こういうことになるでしょう。四番目は、社会保障中心とした今後の財政需要の増大に対応できなくなる。そして五番目には、素材産業等不況産業の再活性化がおくれていく。七番目は、大企業中小企業賃金格差が再び拡大するでしょう。そして最後に、輸入がふえず輸出圧力は強まり、欧米諸国日本に対する批判はますます強まるということになっていくでしょう。  結局、経済見通しといいましょうか、目標といいましょうか、それを低く慎重に構えるということがどういう弊害を生んでいくか、このことを考えれば、私は、経企庁はもっともっとがんばっていただきたい、こういう気持ちになるわけであります。いかがですか。
  6. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 積極的な政策をとるべきであるという御指摘につきましては、昨日も申し上げました。確かに財政であるいは金融政策で、高度成長を通じて最も成功してまいりましたのはこの日本でございます。有効需要拡大のために財政政策を活用し、そしてまた金融政策を低金利という形で活用してきた、そうしてブームのときにはむしろ逆にケインズ流の学で財政政策を抑え、さらにまた金利を、公定歩合を調節することによってブームを冷やしてきて、そうしてここまでの成長を遂げてきたことは、私どもの過去の経験から当然わかっておりますし、できたら私どももそのようにやっていくべきだという考え方を持つわけであります。  しかし、御案内のように、いま確かに財政政策ではでなことをしていない。経済企画庁長官は全く無力、無能のように見えるわけです。  しかしながら、過去の経済政策限界が、二つの天井があった。一つは、国際収支赤字になる、そこが限界である。もう一つ物価消費者物価がここまで上がったのならば積極政策限界に来た、こう言われておりましたが、現在では私は財政赤字一つ限界であり、金利の高騰が一つ限界、こんなふうに考えているわけであります。  これの二つをどのように考え、そしてその中でどのように積極的な政策をとっていくか、これを考えなければいかぬと思うのでございますけれども、この二つの面から大変制約があって、政策選択の幅に限界がある。これがいま公共投資でも前年同額であって、皆様方から、だめじゃないか、あるいは所得税減税赤字公債を出してでもやるべきであるというようなお話があっても、財政赤字弊害を恐れてやれないというふうに私どもは考えているわけでございます。  このような財政金融政策観点からのほかに、もう一つ昨今の経済的な風潮と申しますか、もうケインズ経済学退潮したんだ、有効需要拡大財政面から図っても金融面から図っても、もうそれで単に初発的な効果しかなくて誘導効果は全くないんだ、かつては民間企業設備を一兆円投下すれば、そのもの自体が一兆円の政策効果を生んだというような時代があったが、いまは過剰生産過剰設備のもとでそんなことをやっても全く意味がないんだ、公共投資を一兆ふやしても設備投資がふえることはないんだというようなアメリカ流——アメリカでもケインズ経済学退潮であると言われて、サプライサイド・エコノミックスというのですか、あるいはフリードマンの通貨説が力を強く得たことが大体また日本にうつってきて、そのような企画庁長官が考えておるような古い過去の時代政策では経済効果はないんだというような説もありまして、私もこのあたりについての論議がまだまだ必要だと考えているわけでございます。  そして、いま中野委員がおっしゃいましたように、現実の数字が、公共投資が三年間横ばいで、かつて四兆五千億も生じておった自然増収が、五十五年からは三兆円になり二兆一千億になり一兆五千億になってきておる。このような趨勢から見て、どこにその限界があるかということは、これからひとつ皆さん方にも御検討を煩わせながら本当に真剣に考えていかなければ、もう手詰まりだ、手詰まりだ、しかし、何にもやらないことがいいんだというシュルツ国務長官のような話もありまして、財政再建さえやればいいんだというような考え方もございますが、そんなような考え方との間の大いな、何と申しますか討論、調和、考え方の交換を図っていかなければならぬ、こんなふうに考えております。
  7. 中野寛成

    中野(寛)委員 これから、何か夏になるそうですけれども、新経済計画を改めて見直すんだそうでございますけれども、いまたまたまケインズ政策の話が出てきた。ケインズ理論の話をお話しになったのですけれども、この前新聞を見ておりますと皮肉なことが書いてありましたね。  中曽根総理の登場によって経企庁に対する風当たりが急速に強まったんではないか。総理が言うには、企画庁ケインジアンの城だ、経済計画という言葉社会主義経済を連想させるから計画という言葉をやめて目標とか指針にしろとか、そういうふうなことを言っているかのように、新聞に皮肉まじりに書かれているわけですね。そして、いまの長官の御答弁を聞きながら、ケインズ理論はもはや時代おくれだ。私も、別にケインズ理論が万能だとも思わないし、確かに時代おくれだとそう言える面の方がむしろ強いとさえ思います。思いますが、今日までの財政仕組み経済運営仕組みの中で、やはり公共投資一つ役割りを果たしてきたという事実だけは、これはやはり認めなければいけないと思います。そして、何か長官の御答弁を聞いておりますと、そのケインズ理論時代おくれで、そして経済企画庁はところがまだそれにこり固まっていて、そしてだめだみたいな形になってくると、何か新聞に書かれていることが本当かいなという印象さえむしろ持つのですね。  経企庁長官がひとつ経企庁のメンツにかけて、ここはひとつ日本がこの苦難の時期にあるからこそ、国際的な厳しい状態にあるからこそ、日本経企庁経済企画庁の真価をいまこそ発揮するんだという気持ちでの積極的な御努力が必要だと私は思うのです。何かいまは全く受け身のような印象を持ってしようがない。そして、いまの御答弁を聞いておりますと、今日の事態にあって政策選択の幅は狭いけれども、これからいろいろ検討するんだという印象にいまの御答弁を受けとめました。私は、もっとこの際、長官のハッスルした姿勢とそして具体的な、これからこういうことをやっていこうという内容の御答弁を期待したいわけです。
  8. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 大変御激励いただきまして、御礼を申し上げたいと思います。  私がケインズ学派退潮と申し上げましたのも先ほどまでの話で、また、アメリカではやはりサプライサイド・エコノミックスというものが現実、レーガン・エコノミックスの中で余り効果を発揮していないために、やはりケインズの方がいいんだというような説がまた言われかかりまして、だんだんとまたアメリカからこちらへ逆流してくるんじゃないでしょうか。大体三月くらいおくれてアメリカ経済思潮が入ってくるようでございますから、私はそこにケインズ学派、だめだとは思わないのです。日本では過去の貴重な経験がございますから、やはり人間は経験が最も頼りになる一つの根拠だと私は思いますので、その経験を頼りにやっていくべきだと思います。しかし、私は企画庁ケインジアンのかたまりとは思いません。ケインズ学をも考え、消化し、ギルダーのサプライサイド・エコノミックスも消化しているのが企画庁だと思いますし、そんなような観点から幅広く——大変選択の幅は狭いのでございまするけれども、これはもちろんどういうことが積極的か。金額が大きいのが積極的か。なかなかそこはむずかしいのですけれども、意欲においてはきわめて積極的に三・四%の成長はぜひとも達成するようなことをどんな場合でも考えていきたい。  先ほどおっしゃいましたように、ゼロサム社会になって失業率がふえ、あるいはいまおっしゃったように、ベースアップができない、若年労働者の吸収ができないというようなことは、経済政策目標としてはこれはもう落第だと思いますので、三・四%の成長、もう少しまた自然増収が生ずるような高い成長を考えなければならぬ。あの低成長に入ったアメリカが、一九八四年からは四%になると言っているのですから、考えてみますと、日本が三から四というようなことでいいのかどうか。これはやはり中期計画目標としても考えるべき大きな要素ではないか、こんなふうに私は考えております。
  9. 中野寛成

    中野(寛)委員 余り目下の状態で具体的なことが出てこないけれども、これは恐らく経済計画の中へ出てくるんでしょう。  ところで、経済運営指針をつくる、この経企庁長官経済演説の中から一部ちょっと読みますと、「中長期展望指針を明らかにし、企業家計先行きについての不透明感を払拭することは、現下の景気回復のためにも欠くことのできない条件であります。」こういうふうにおっしゃられたですね。そのまま原稿をお読みしたのです。  さて、その場合、中曽根総理の御意思もあって、長期的な計画を改めてお考えになるようですけれども、問題は、ここにも書かれていますが、「企業家計先行きについての不透明感」、これはいま国民の中で大変大きな精神的圧迫感、そしてまたある意味では心理的に——経済というのは国民の心理で動くわけですから、心理的に経済を冷え込ませるもとになっている、こういうふうに長官自身もおっしゃっておられるわけですね。  ところが、国民意識の中で、長期見通しを幾ら言われてもぴんとこないんですよ。むしろわれわれに対する国民皆さんからの質問は、私は大阪ですから大阪弁で言うと、景気はことしはどないなりまっしゃろ、こういうふうに聞かれるんですよ。ことしはどないなりまっしゃろ。結局、短期中期見通し、これが最大の関心事なんですよ。しかし、それを決めるためにも長期的な展望が必要でしょう。それを否定はいたしません。しかしながら、先ほどおっしゃられた、この長官経済演説でも、最初に「中長期展望」とおっしゃりながら、後は「長期的な視野に立って」としか出てこないんですよ。中期はどこにもないんですよ。それこそ短期中期についての明確な見通し展望、そしてそれを一番端的にあらわすのがことしの経済成長見通し三・四%。しかし、これは今日の国際情勢、たとえば原油の値下がり等々を含めまして新たな事態を分析しながら、もう一度今度は——いままではいつも見通しを立てて下方修正ですな、一回ぐらい上の方に修正してみたらいかがでしょう。その積極的な施策をむしろ経企庁としてお立てになったらどうでしょう。そして通産省や建設省、それぞれ御協力いただいたらどうなんですか。いまのままでは、本当に国民意識はますます暗たんたるものになるばかりです。いかがでしょう。
  10. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 中野委員のおっしゃるように、短期も本当に庶民の方々が心配されるほど大事な目標でございます。結局、長期中期短期、いずれも企画庁としてはこれを重視していくべきことは当然でございます。そして、いま申されましたように、私は下方修正ということは大変残念なことだと思っております。しかも、私の前任者につくっていただいた成長率見通し下方修正するというようなことは、本当に申しわけない残念なことでございますので、私は局長皆さん方に、私の在任中に一遍上方修正をするような大臣にしてくれ、それでなきゃやめられぬというようなことを申し上げているわけでございます。  ひとつそのような方向はぜひとも——今度の世界経済回復アメリカですら四%の成長率を立てておる。私どもは、とにかく世界よりも少なくとも倍くらいの速さで高度成長時代は走ってきたのです。いまでも二、三%のより高目成長率で走ってきているのだから、このあたりを考えて経済運営をやっていくことができないであろうか、こんなふうに考えているところでございます。それには財政政策金融政策、さらに産業政策、これらの政策を総合的に活用していかなければ、なかなか厳しい状況だと私は思っておりますけれども、その努力をすべきことはもう当然だと思っております。
  11. 中野寛成

    中野(寛)委員 もう少し経企庁長官にお尋ねいたしますが、「昭和五十八年度の経済見通し経済運営基本的態度」、一月二十二日に閣議決定をされています。この段階での為替相場、大体見通しを出す一カ月前の平均で計算の基礎を出されるようですが、そうなりますと、この見通しの想定の基礎となるものは一ドル二百五十五円で見たということになりますが、これは間違いありませんか。
  12. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 経済見通しの数値は、いま申されましたように、最近利用できるところの数値でいたします。各種の資料はそのような構成になっておりますが、その中に円レートがございまして、それはどんな計算になっているかと見ますと二百五十五円になっている、こういうことだと思います。
  13. 中野寛成

    中野(寛)委員 ところが、実際はいま一ドル約二百三十円そこそこで推移をしていると思います。そして、これは原油の値下げ等々相まって、むしろここらあたりで安定する、もしくはもう少し円が高くなっていく、どう見てもことし二百五十五円で推移するなんということは考えられない、そしてこの差というのは実に大きいですね。二百五十五円か二百三十円か、この差は実に大きい。そして、その差が経済動向に与える影響というものも、これは決して無視できない。きわめて大きい。そうすると、この見通しについては改めてお考え直しになる必要もあると思いますが、いかがでしょうか。
  14. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 円レートの面からだけ見ますればそのようなことが言われますし、またそういったことは望ましいことだと思っております。しかしながら、まだ円レートが安定した状況にもございません。それから、円レートが実質成長率あるいは名目成長率にどのような過程でどの期間かかって影響するかということは、またなかなかいろいろなケースがありまして、そう直ちに影響するということも言えないかと思います。第三に、確かに円レート、石油価格の引き下げ、私はプラスの影響だと思っておりますけれども、ほかにたとえば鉱工業生産とか民間設備投資等についてはまだまだ不透明な面がございますし、これらは総合的に、一定の期間を経過して自信を持って成長率を見直す時期に見直すべきではないか。そのときこそ私のお願いの上方修正見通しができればいい、こんなふうに、とらぬタヌキの皮算用と申しますか、一つの希望を持っているようなところでございます。
  15. 中野寛成

    中野(寛)委員 いま長官のおっしゃった希望というのは、現段階ではかなりいい方に行っているな、そしてできるだけ近い将来にそうしたいなと、かなり現実性のある希望なのか、単なる仮定の話なのか。私は、たとえば少しでも好材料があれば、それを最大限に活用して経済運営に反映させていく、そういう季節にいまあると思うのですね。ですから、私が先ほど来申し上げている、経企庁がもっと積極的に取り組んでくださいということは、確かに円レート、また原油の価格の問題、不安定かもしれませんね、しかし、たとえそれでも、やはりある程度の情勢分析をすれば、これは比較的長く続くなとか、これは一時的なものだとかという判断はおおよそつくものだと思うのです。これは今日の状態は比較的長く続く状況ではないのか、そうすると、それをいっときも早く吸収をして、そして積極的な経済運営に対する材料としてお使いになるのが必要なのではないのか、こう思うのです。  ですから、さっきおっしゃった希望というのは単なる仮定の話ではなくて、近々そういうふうにしたい、そういう検討を進めていく、こういうお考えが私は必要だと思うのですが、いかがですか。
  16. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 もうおっしゃるとおり、私もいまの好要素と申しますか、円レート、原油の引き下げ、あるいはまたこれから生じますところの金利の低下といったような問題は、これは政策的に活用すべきだ、これが企画庁のような政策当局の大きな義務だと、いまおっしゃったように考えております。したがいまして、これが企業の収益に好影響をいたしますれば、これをひとつ省エネの設備投資あるいは合理化投資といったような投資に回していただくようなことも、各省を通じてでもぜひともお願いしたいと思いますし、そんなような予測と申しますか私どもの期待、これは自由主義経済でございますからなかなか強制はできませんけれども、そういった政策を通じての期待、こんな方向を打ち出していって、いま申しましたような、私は期待と言った方が——またおまえできなかったじゃないかと必ず後でおとがめがきて、腹を切れとかいうような話になったりするものですから、それは腹を切ってもいいかもしれませんが、とにかくまだいまのところは大きな期待、希望を持って、政策当局として、企画庁としてやっていきたいと思います。
  17. 中野寛成

    中野(寛)委員 最大の努力をして、その結果万一外れて腹を切る、しかしそのときの腹の切り方は、塩崎長官、さすがにりっぱな腹の切り方だったと言って後世にむしろほめていただけるのじゃないですか。いまそういう勇気というか勇断というか、それが望まれているのではないでしょうか。  さて、公共事業関係でこの際ちょっとお確かめしておきたいと思うのですが、五十六年度、五十七年度、公共事業の上期の前倒しをやっているのですね。そして去年の春には、私は前の経企庁長官に、下期の対策大丈夫ですかと何回も質問いたしました。そしたら、下期は下期で必要であればちゃんと考えます。前倒しをする場合にも、やはり下期に対する裏づけなり保証がちゃんとないと、国民の方は幾らこれを前倒しされても一年間にわたって食いつないでいくように、今度は国民サイドの方でおしなべてしまうのですね。また効果を発揮しない。むしろ逆に下期に残っていないことが、結局年末にいろいろな形で景気上昇の足を引っ張ってしまう、悪影響の方が今日まで出ている、こう申し上げたいと思います。  ことしの公共事業、公共投資中心にした経済運営についてはどうお考えですか。
  18. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、健全ではありませんけれども公共投資景気の刺激、経済回復に大きく貢献すると見ていることは政府考え方でございまして、昨年の十月七日の総合経済対策公共投資二兆七百億円が中心でございました。この二兆七百億円が、恐らく河本前大臣の考えておりました下期の手当てであったかと思います。  過去の公共投資の実際を見ておりますと、常に当初予算におきましては六兆六千五百五十四億円の予算をずっと横ばいで計上いたしておりますけれども、実際の予算になりますと、補正を通じあるいは予算の施行を通じ、特に災害復旧事業等を通じて、必ずそれより上回るような公共投資を施行してまいりましたのが、これまでの実績でございます。五十八年度にこれがあるという意味じゃありません。しかしながら、このような実績、これはもうずっと長年続いた実績でございますから、このようなことを頭に置くことは悪いことではない、間違ったことではないと私は考えておるところでございます。  そこで、五十八年度におきましてはまだ予算が成立しておりませんから、これをどうするとかいうようなことは言うべきじゃないと思います。それは、五十七年度で行われました二兆七百億円の公共投資の施行の結果を十分見守っていくことが第一だと思います。  第二には、三・四%という成長率が果たしてどのように動いていくか、そしてまた、民間の経済が最近の経済をどのように感じていくか、また果たして不況感が強くて、あるいは失業者がふえていってどうにもならないというようなことになるのかならないか、こんなような点は、来ることは好ましくないと私は思います。好ましくないと思いまするけれども、そのような経済情勢を見ながらこの公共投資の施行についてあるいは今後の取り扱いについては慎重に検討していくべきであり、経済の趨勢を見守っていくべきである、こういうふうに考えております。
  19. 中野寛成

    中野(寛)委員 通産大臣もお見えでございますから話を広げていきたいと思うのですが、経済運営、これは通産省もきわめて大きな分野を占めていると思うわけであります。  先般来経済影響を与えるような幾つかのことが起こっています。原油の値下げもそうでありますし、それからまた通産大臣大阪中小企業サミットでいらしたときに、「景気回復には所得税減税が必要。公定歩合の引き下げは円相場の行方を慎重に見極めてから」と語ったと報道されているわけですね。大体こういうふうに新聞記事で言いますと、それは記者が勝手に書いたのだという話になるのだけれども、しかし、私は必ずしもそうではない。やはり大臣大臣の積極的な政治姿勢というものをお持ちになっておられ、その中で——ましてや税調を長くやっておられたわけですから、税務についてはよほどの専門家でもいらっしゃるわけです。そうすると、やはり通産大臣のおっしゃられたことはかなり大きな影響力といいますか、国民サイドから言えば期待も持たされる、こういうことになると思うのですね。そういう意味で、この会見の真意もお聞きしたいと思いますが、あわせて公定歩合の引き下げ、これは、円相場が大分好転してきていると思うのですね。そしてまた、先ほども申し上げた原油の値下げのことなど好条件もプラスされていると思うわけです。これらの一連のことを含めまして、経済運営に絡めて所信をお聞きしたいと思います。
  20. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、大阪経済界との会合の際に、公開ですか非公開ですかということをまずお聞きしまして、報道関係の了解も得て、この会合は非公開でございます、漏れる心配はございませんので本音を聞かせてくださいということでしゃべったわけでありますが、まああなた地元だし、入っていた人の直接の話も聞ける立場にありますから、これは漏らしたとか漏らさなかったとかいう次元を超えての話でございますから……。そのような話を財界の方々に、ことに大阪は、東京を政治の首都とするならば、経済の首都、しかも中小企業ががっちりとした底辺を形づくっている象徴的な町という意味で、少し気を緩めて話をしたとがめがいま来たわけでありますが、国会の委員会はそれ以上に、言ったことについてどうかということについては責任を負わなければなりません。  そこで、まず塩崎長官の援護射撃、ちょっと皮肉も入るかもしれませんが、どうも政府全体が国民大衆、一般国民の行き先どうなるといまあなたがおっしゃいました、私は大阪弁はよくできませんが、ことしはどうなりますねんという——表現が間違っていたらごめんなさい。そういうような確かに庶民の切実な声に対してこたえるのに、政府景気見通し経済見通しというのはやはり指標になりますから、裏では相当いろいろな議論があったことも事実ですが、私がその議論をずっと聞きながら考えたことは、政府全体がどうも、大平さんがよく使っていらっしゃったシャイになってしまっているのじゃないか。無理もないことですが、大蔵省の立場から言えばこう歳入、ことに税収見通しが狂いっ放しでは、今度の見通しまで狂うかもしれないことを前提に見通しを立てるわけにはいかぬという、これは切実な声がありましょうが、しかし若干そこに腰を引いた感じがあったように思います。公共事業でもいろいろありますが、住宅建設で、建設省としては百三十万戸と言っていながら何だ、あるいは百十五万戸と言っていたがこのざまは何だ、百十万戸も達成できないじゃないかとかという声に、若干また及び腰になって、余りそう住宅着工率といいますかそういうものをよけい見られても当省としてはどうもという感じがしているような気がしてならなかったのです。一方、経企庁自体にすれば、これは援護射撃にならぬのですが、どうも過去見通しを何回も下方修正するようなことでは経企庁のこけんにかかわるといいますか、だから今回はそういうことのないようにという慎重な受けとめ方をしていたことも事実であります。  このようなことを考えてみますと、私どもは、国民にせめて明るい未来を少しでも示したいという気持ちになること、ことに産業界というのは、最初おっしゃいました最終消費支出に関係のある国民の所得、ふところぐあいの問題ですね。これが末端では消費というものに直接影響いたしますから、統計上出てくる百貨店売り上げ等の状況を見ても、どうも国民心理もそのような同じような心理がある。だから、買いたいと思っているものもまあ先行きどうも心配だから延ばすかとか、買いかえの時期に来たなと思っているものも買いかえをもう少ししんぼうして使おうかという心理に次第になっていってしまうのですね。  これは、政府も民間も下うつむいてとぼとぼと歩いていく一年であってはならぬ。したがって通産省としては、せめて産業経済の面では前途に一点の光明を見つつ、やはり自分たちが世界に先駆けた技術の開発、あるいはまた一方においては新しい産業の登場というようなものに意欲を持つようにというようなことで、税制で無理に財源のない大蔵省にお願いをしまして、中小企業投資促進税制とか、直接景気には関係ありませんが、精神的に、心理的に影響のあるであろう代がわりの時代に来た承継税制とか、あるいは地方にも活力を与える糸口になるならばということでテクノポリス構想とか、あるいは企業は小規模でないにしても、世界の情勢から、このままほっておくといまに民間企業としての存立が危うくなるというようなことで基礎素材産業に対する配慮とか、あるいは地域城下町の法案も、このまま切れたのでは、基礎素材産業とも関連のある町も多うございますし、やはりこれも延長をしてさらに未来を、ことに関連する中小企業展望できるようにしたい、いろんな配慮はいたしました。  しかしながら、果たしてこのままの出発点の見通しだけでいいのかといいますと、いま申し上げましたように、そのときもまだ口にはできない立場にありましたけれども、本当は公定歩合をそろそろ引き上げてもらいたいという気持ちはありました。しかし、これはレートの変動その他が大変激しかった背景がありまして、日銀の慎重な前川総裁の運営というものをしばらくは願望を込めながらも見守って今日に至っているということがございます。  中小企業投資促進税制なんというものは、もう小さい規模になってしまって役に立つのかということでありますが、それでも成長率への寄与度は〇・〇四以下であることはないということを、経企庁からもはっきりと公的な場で説明も受けておりまして、貢献度がゼロではないということを考えておるわけでありますが、このように石油の情勢が急変いたしまして、OPECの輸出カルテルの崩壊が近い現状がどういうことになるのか、これは連日報道されておりますが。アメリカシュルツ国務長官は大変大胆な前提を置いて、バレル二十ドルになったときということを議会で説明しておられまして、そのときに一番恩恵を受けるのはわがアメリカ日本であろうということを、わざわざ名指ししてくれております。  私はきのうまで、二十五ドルということが最も望ましい限界になるであろうということは、最初出発したときの石油価格に対する国民考え方は、安くて無尽蔵に手に入るという考え方時代から一転して、産油国の戦略、政策によって一次、二次と、現在は三十四・五ドルという前提の中で経済が何とか二次ショックを切り抜けようとしている、そのときの値下がりでありますから、したがって単純に、もともと三十四・五ドルであったものが五ドル下がるとか六ドル下がるとかという、万歳、万歳というような受けとめ方は、ここらでひとつ慎重に構えて分析をしようと言っておりました。  しかし、シュルツ長官の二十ドルという前提はどこから来たのか、私まだわかりませんが、アメリカにおいてはすでにそのような大胆な予測をしているところを見ると、何らかの国際的な情報その他によって根拠があるかもしれません。しかし、そのシュルツ長官でも、同じ産油国であってもメキシコとかベネズエラについては債権の累増ということでそう簡単に喜ぶことではないということも言っておるようでありますが、わが日本も大なり小なりそれと同じだと思います。  しかしながら、わが国の石油の輸入エネルギーへの依存度、それからその石油のうちの中東、ことに湾岸諸国の会議はまだ結論を出していないようですが、そちらに対する依存度のきわめて大きいことを考えますと、これは恐らく値下げの発表になると思っています、いますが、その際にわれわれはずいぶん多くの配慮をしなければならぬ。考える要素がいっぱいある。長期的に見て、日本にとってこれが長続きをするならば、私たちは経済政策全体も組みかえるほどの大きな、現時点における場合とは違った利潤、現時点よりか違ったいい点をたくさん与えられることになる。その意味では、燃料コストのうちの大宗を占める石油の値下がりが及ぼす影響はずいぶん大きいものがあると思います。これは根っこの値下がりでありますから、レートの変動によって幾らというものよりか、もっと大きな推定値も出るわけでありますから、これらをもとにして、それらをエネルギーにしている諸産業についての配慮、こういうものをまずどのように対処すべきであるか。まだ幾分、一両日かかると思いますが、私たちは省を挙げてこれについて日本の産業界に指針を示す。この石油価格の状態が当分の間続くとすれば、どのような産業政策をどのような未来を展望しつつ現時点において新たに躍動していくべきかという問題を提起したい、あるいは国民に御説明をしたりするようなことをやってみたい、またそれが産業の実務を負担している主務省の通産省の責任である、そのように考えておるわけであります。  あと細かくは、連日のように申し上げておりますから申し上げませんが、わが国においてプラスの面と、それから一説に伝えられておる、事実そうであると言われておるオイルダラーの日本市場との関連ですが、これで金融界はどうなるか、証券業界はどうなるのか、あるいはまた、わが国も債権国家となっている、先ほど挙げましたような国々やブラジル等に対して、日本は金融機関が対応できるのかという問題、これらの状態を全部点検して並べてみて、そして為替レートの現状はさらにこのことによって、円に関する限り、日本の産業の諸構成要素、よく言われているファンダメンタルズでありますか、そういうものは急速に改善されるわけでありますから、円もまだもっともっと戻していくであろう。そういうことを考えますと、それらの点を静かに踏まえながら、日本産業政策現実と未来への展望とその方向というものを早く示したい、そのように考えております。
  21. 中野寛成

    中野(寛)委員 大臣の御答弁を大分長くちょうだいしましたので時間がなくなってしまいましたけれども、私はこう思っておったのですよ。  通産大臣は税調が長いものですから、まさか大蔵ペースになるとは思わないけれども、しかし税制面を中心にお考えになって、通産大臣、通産省としての積極面がもしかして乏しくなるようなことはないかという心配をしておりましたけれども、持ち前の御性格でもございますから、ひとつ大いにがんばっていただきたい、こういうふうに思います。最近は中曽根さん、大分上を向いて歩いておられた感じが、だんだんちょっと下に向きかけたスタイルに変わったような印象を持ちます。いま上を向いているのはただ一人、山中貞則だけじゃないかという感じもしますが、ひとつぜひ積極的な、いまだからこそ積極的な施策というものが必要だと思います。このことを申し上げておきたいと思います。  時間が来たのですが、ちょっと二点だけ簡単に御答弁いただけませんか。  一つは、アラスカ石油の問題です。こういうふうに原油価格が下がっているとき、また石油が比較的だぶついているとき、いわゆる日本にとって緊迫感がないとき、こういうときにこそ逆にアメリカに対して、どうですかという話をするときではないかと思うのです。因っているときに言ったら足元を見られてどうにもならない。このアラスカ原油の日本への輸入、これは日米両国にとってメリットがある問題だと私も思うのです。これはアメリカでは輸出管理法によって規制されているわけですね。ところが、本年九月にはこの時限立法である輸出管理法の改正が行われると聞いているわけです。私は、いまからその対策を講じて、将来へのいわゆるエネルギーの安全保障という見地からやっておく必要があるのではないかという気がいたします。  もう一つは、オートバイについて、この前アメリカでITCがクロの判決を出したわけです。自動車のときにはシロの判決、しかし、これだけ自主規制をさせられているわけですね。ところが、このアメリカの国際貿易委員会、いわゆるITCがオートバイについてはクロの判決を出したとなると、自動車のときよりももう一つ厳しいわけです。こういう状態に対して、果たして今後の見通しをどう考えておられるのか。  そこで、これらのこととアラスカ石油と並べましたけれども、結局、これは貿易摩擦だとか国際収支だとかを無視して考えることはできない。  この対アメリカ二つの問題について端的にお答えをいただければと思います。
  22. 山中貞則

    ○山中国務大臣 なるべく簡潔にお答えいたします。  おっしゃったとおり、アメリカには国内法がございます。それを大統領は検討するのにやぶさかでないと言っております。実は、私の方はちょっと当惑があるのです。というのは、いまおっしゃったように、現状で一応、まあだぶつきというのは言い過ぎですけれども、余裕がある。そして、アラスカ原油を引き取ることになりますと、日本側から、しかも過去に何回もお願いをしておいたくせに、さて、ありがとうございますと言えるかというと、民間の方は、それは条件にもよるが、たとえばアメリカの国内では、輸出するならばそれに対して、太平洋を下ってパナマを通って大西洋に出た国内の海運業者とか海運組合員とかそういう人たちが、その船は全部アメリカの船で運ばせろというようなことを出したときに、日本の方はのめるのか。あるいはまた、それを持ってきた数量いかんによっては、日本の現在の状態では価格等もあって、それを素直に引き取りたいという民間の石油関連会社がなかなか出てこないという厄介な問題を抱えておりまして、そこで、これは大変。しかし、長い目で見ると決してマイナスの話ではないので、リスクを分散させ、そしてなるべく近いところに、しかも巨大なる国からの約束をもらって、いただくということはいいことでありますから……。  ただ問題は、大統領が、その法律を改正しても、恐らくアメリカの安全保障上必要と認めるときは直ちにその輸出をとめることができるという条項が必ずつくのではないか、過去の論争から見て、あるいは現在の法律のただし書き、議会のそれに対する念押し、そういうもの等から見て、それをくっつけられる。これは話は別になりますが、ソ連圏から全エネルギー量を供給してもらって、一遍バルブを締められたらとまってしまうのだという、それとほぼ似たようなことが、アメリカ自身の安全保障上、日本にやれないということを宣言されたその日から、アラスカ原油は一滴も来ないということになっては大変ですから、最終的にそういう留保条項がつくのかどうか、そこらも一応、これは受け身の形で私はいま検討しております。余り早々と乗り出していくと、そんな話ではなかったかということで、アメリカにかえって——大統領の決断による法律改正までやったのにと。これは長年のアメリカの伝統で、アメリカの石油は外国には売らないということになっているのを変えるわけですから、相当な決断だと思うのです。そこらのところは慎重にやってみたいと思います。  オートバイの件については、クロと認定された日本のオートバイ関連の輸出産業の人たちが反論をし得ない。したがって、この手段としては、むしろアメリカに工場を持っていって現地生産するしか手段はなかろうというふうに受けとめているような感じがいたします。もちろん、当省としては所管の産業の一つでありますから無視しておるわけではありませんけれども、関係業界からも、ひとつ何とかアメリカと話をしてくれという話は、目下のところ私のところに上がってきていない。そこらのところは、いま進出して現地で生産しているオートバイ産業と完成車のみを輸出しているオートバイ産業との間の差というものが、はっきりとそこで明暗を分けるわけでありますから、産業政策上も無視はいたしませんが、目下のところ、国と国との交渉に持っていくのには、どうも日本側の方の背景が少し弱いという感じがしております。  以上です。
  23. 中野寛成

    中野(寛)委員 時間が来ました。終わります。
  24. 登坂重次郎

  25. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 両大臣の所信をお伺いいたしまして、お二方とも第一の柱として、内需拡大による経済成長ということを挙げられておるわけであります。時期が時期ですと必ずしも成長しなくてもいいと思うのですけれども、国の財政状況などを見ますときに、健全な財政の姿を取り戻すためには、どうしても経済を大きくして赤字の国債などを償還していくほかないのじゃないか、こう私も考えております。  そういう観点から今年度の施策を見ますときに、通産省の方では相変わらず石油の備蓄ということで、新たに購入する原油代金などを六千六百億、それから増強対策として千三百億、合計八千億円近い国の予算を石油の備蓄に回す、こういうことでありますけれども、きのう、きょう石油が安くなったから備蓄しなくたっていいと申し上げるわけではありませんが、ここ二、三年の世界の石油の需給状況、それから今後の見通しなどを考えますときに、ことしあたりは、この困難な財政状況の中で、こういった予算はむしろ内需を拡大する方向に向けていくべきではないのか、あるいはまた減税の方の財源として見直していくべきではないか、かように考えますけれども、通産大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  26. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは、第一次石油ショックの後のトイレットペーパーの買い占め騒ぎ等に発展したような心理状態の裏返しだと思うのですよね。あの教訓を私たちは生かさなければならないのです。今回はその裏の現象が出た。そのときに、手の舞い足の踏むところを知らずというようなことでやっていいかどうかは、累次話をしてきておりますが、問題は、私たちがいま検討している中で、このような備蓄も取り崩しておるような状況のときに、やはり依然として備蓄計画、あるいは新たなる将来への計画の中に入っている場所もあります。そういうものを引き続きやっていくかどうか。  あるいは一方において、いま安くなったのだからと言って、スポット物をどんどん買いあさって日本に持ってきた方がいいという考え方を持っている人もおると思うのです。あるいはそういう行動をするおそれのある商社といいますか、そういうおそれを抱きましたので、私の考え方としては、こういうときに産油国側も実は困っているのだ、その困っているときにつけ込んで、しかし売らざるを得ないからスポット物を出さざるを得ない、それを大量に世界的に買いまくった国は日本であるということになりますと、あの白いきれをかぶって頭に輪をつけた人たちが集まって、またOPECのカルテルの機能が復活したとしますね。そのときに、どうだ、おれたちがあの困ったときに、それにつけ込んでスポット物をどんどん買いまくって備蓄していった国はどこだったかというと、日本だ、大変ずるいやつだなというようなことで、日本を目のかたきにするような新しいカルテルが復活をしたとしますと——可能性あるわけですから、だからそういう、人が弱ったときに足元を見透かしてどんどん持ってきてという考え方をとらないようにしなさいというのも指示してあります。  ここらのところでおわかりと思いますが、短兵急に、いま下がったから予算を振りかえろという話はちょっとこれは無理なんですが、そういう姿勢を変えるということ、そのことも私はもっと検討すべきである。いわゆる日本——ここで私はたくさんの国内政策について考えなければならぬと言いました中で、意識的に一ついまの御質問の、これからの石油の民間備蓄、国家備蓄等の通産省のこれまでの計画はどうするのだということに触れませんでした。しかし、そのことに気がつかれて言われたのでしょうが、そのところはまさにどうすべきか、現状をそのままずっと進めるべきか、あるいはまた、ここらで既存のタンクを満杯にしたならば、それはここで一応打ちどめとすべきなのか。それには、先ほどの御質問にありましたアラスカ原油等の新たな要素等も出てきておりますから、ここら、全体がいま通産省の検討の——まさに通産省自体はどうするのだという問題の典型的なものですから、これもどうするかをみんなで英知を結集してやろうということで、私の決断の前に、いろいろな様相を分析しながら、じゃあこういう方針でいこうということを最終的に決めるための積み上げをいまやっているところでございます。
  27. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 冷静に、慎重にいろいろ御検討いただくのも結構だと思いますけれども、一方また、経済は生き物ということも言われておりますし、機動的に対処する、機動的に対処すると、こうしばしば口にされる政府の関係者もいらっしゃるわけですから、この辺、ある程度機動的に対処していっていただければ、こう思います。  それで、こういう状況になってきて、世界じゅうの国々が高い値段で仕入れた原油を、先を競っていま放出しているというようなことを聞いておりますけれども、わが国ではいままでのすでに備蓄した、五十七年末現在で百二十日間ですか、この備蓄したものについてはどのようにしておられるのか、エネルギー庁の方にお伺いいたします。
  28. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは各社の考え方によって違いますが、現象として言えば、輸入をもって備蓄しながら出していく、そういう状態から、少し輸入量を、タンカーをゆっくり走らせるとかなんとかしながら、減らすということは言えませんが、確保しつつも備蓄を取り崩して当座の用に出している感じ。これは社によって濃淡の違いはありますが、その意味では、若干日本の国内の総輸入量の減少と、代替エネ、新エネ等が庶民生活まで、ちょっと不要の電気は消しておくとか、瞬間で映るテレビの常夜灯みたいな赤いぽつんとしたのを最後には押して寝るとか、そういうのが累積して非常に需要も堅調になってきたわけですから、したがって、いまのところは積み増しを急ぐ形でもない。かといって、全面的に備蓄を取り崩しているわけでもない。これは各社ごとのニュアンスの違いがありますから、細かい数字が御必要ならば事務当局に答弁させます。
  29. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、念のためにこれはお伺いしておくのですけれども、今後安くなっていったとしまして、高い値段で仕入れた原油はだんだんその安い物に切りかえていく、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  30. 豊島格

    ○豊島政府委員 実際の経理の問題になろうかと思いますが、大体法的に九十日以上の備蓄ということを義務づけられておりまして、それは法律に従って守っておるわけですが、実際、在庫と比べまして安い石油が入ってくる、その場合はいま移動平均法ということでまぜまして、だんだんそれがコストに反映していく、こういう経理処理を行っております。したがって、在庫の評価というのはそれに従って変わってくる、こういうことで、一挙に全部変わるということではございませんが、そういう経理方法によると思います。
  31. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それから、備蓄の基地についてなんですけれども、国家備蓄基地は全国で六カ所ですか、日本海側に四カ所、太平洋側に二カ所予定されておるようです。ところが、中曽根総理大臣の御発言などを伺いますと、私はそうは必ずしも思いませんけれども、三海峡を封鎖してソ連の艦船を日本海に閉じ込める、あるいはバックファイアとかバジャーに日本を過ぎさせない、こういういかにもソ連を敵国視したような御発言が続いておる。そういったところで、この国民生活に欠くことのできない石油を、秋田とか福井とか一番攻撃されやすいような地点につくって、しかもこの完成予想図を見ますと、海の中に突き出したようなところにタンクが露出して並んでいる。何か総理大臣が言われていることと通産省が実際にやろうとしていることとは、大変大きな矛盾があるのではないかと思います。この備蓄基地は見直さなくてはならないのじゃないかなとも思うのですけれども、この辺はいかがにお考えでしょうか。
  32. 山中貞則

    ○山中国務大臣 備蓄基地について、それこそ私たちは、国際紛争解決の手段としての武力行使をしないという厳然たる憲法というものを高く掲げているのですから、そういうことを予想して立地するといっても、それは必要がないと私は思うのです。  ということは、たとえば、ちょっとそんな話していいかどうかわかりませんが、SS20というものがカバーする範囲を考えただけでも、日本の裏とか表とかなんというのは目じゃないのですよ。問題じゃない、グアムまで届いてしまうのですから。ですから、そういう狭い島国日本の表と裏というような次元では考えておりませんし、また、日本は国際紛争解決の手段としての武力の行使はしないと憲法によって誓っておる国、その国から戦争というものを始めるわけはありませんし、したがって、戦争のことを念頭に置いてCTSなり、いままでの常識とは違う将来の地下備蓄なり、そういうものについてはその要素は考えないでやっていいんじゃなかろうかと思いますし、考える必要はないと私は思います。
  33. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そういう仮定がないということであれば、防衛力なんというものも一切必要ないという考えにもつながってくるんじゃないかと思うのです。やはりせっかく備蓄するからには、なるべく安全性というものも大きく考慮に入れてやっていくべきじゃないか、私はこんなふうに考えております。  それから、大型の商店の進出ということでいろいろいままでに施策が行われてきたようですけれども、いま現在まだ多くの紛争地域があり、非常にたくさんの零細商店の方々が非常に不安な状況に置かれている。こういった問題について大臣はどういうふうに取り組んでいかれるお考えか、お聞かせください。
  34. 山中貞則

    ○山中国務大臣 当委員会でもすでに答弁しておることに関連がありますが、私は、自由主義経済の一番の底辺は商店街にある、商店街が倒産を始めたらもう自由主義経済は壊滅する、そういうことを申し上げました。  というのは、田舎の方に行きますと、企業城下町がさらに小さくなって、役場のある周辺一本か一本半くらいの商店街しか、役場を中心の地域社会としては商店街が存在しないようなところがいっぱいあるわけですね。じゃ、そこらでももう消費者のニーズもあるじゃないか、大量仕入れあるいは大量生産もありますかもしれませんが、スケールメリットでもって、全国津々浦々に大店舗でもって安く提供するから、それに任してしまえよというのは、私は、その地域の精神的な連帯感、役場を中心にした住民の連結意識、そういうものが、商店街が壊滅したところに役場と農協がぽつんと建っておるような町にすることは、絶対に同じ条件下で、消費者のニーズだけで議論してはならない。そういう商店街はそういう商店街なりに生きていく道を考えてあげなければいけない。それは村を形成し、町を形成するために必要である。したがって、たとえば過疎地域対策緊急措置法とか過疎地域振興特別措置法とかいうのを議員立法でやりましたのも、そういう小さな商店街等であっても生きていけるように、共同駐車場をつくったり、あるいは村営のスキー場をつくったり、民宿をやったり、村営釣り場をつくったり、村営乗馬クラブをつくったり、いろいろなことを町村でがんばって、そして、過疎は過疎なりに耐えて生きていきなさいということを法律で言っておるわけでありますが、それとこれとは全く同じ考えでありまして、私の考えが全国民の理解を得るとは思いません。私は田舎の生まれの者でありますから、村落の崩壊ということは、地方自治体の最小単位である市町村というものを危機に瀕せしめる。その意味において、資本主義の底辺が商店街であることと、そして小さい地域の商店も、それを大きな力で一方的に、消費者が味方だということで押しつぶしていくということは、まず精神論としてそのことには私はきわめて強い抵抗を感じます。しかし、法で一応規制されておりますから、それはどこまでその法が生かされるのか。出店方式なら抜けられるのか。いずれにしても、強者は強者の慎みがあるべきである、また弱者は弱者、受け身一方であっても、自分たちの対抗するための努力に対して国は力をかすべきである、そのように私は考えております。  具体論になりませんが、そういう考えでおることをお答え申し上げます。
  35. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 次に、経済企画庁長官にお伺いしたいのですけれども、去年もことしも内需拡大の中で、また住宅建設ということを大きな柱にしておられます。いろいろ、所得の伸び悩みとか、地価も最近は落ちついているようですけれども、住宅取得の能力がだんだんなくなっていって建てられないんだということも聞いておりますけれども長官はどういう姿で家がどんどん建っていく青写真を描いておられるのか、その辺お伺いいたします。
  36. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 建設大臣でもございませんので、私は住宅政策の知識は乏しい方でございますけれども、ともかくも内需拡大成長を図っていくということが中心でございます。その中で、ことしもまた民間住宅投資に二・六%のウエートを置いているわけでございまして、私どもは、やはり住宅というものが国民側から見ればまだまだ満たされない最大の欲望の一つ、こういうふうに考えているのでございます。  一方、また、産業的に見ましても、住宅産業ほどすそ野の広い、雇用効果の高いものはない、こういうふうな考え方で、やはり住宅政策は内需拡大中心的な面に置いていかなければなるまい、こういうふうに企画庁としては考えているところでございます。  そこで、おっしゃるように、実は総住宅戸数は総世帯数に比べて二百万以上も余っているということがございます。しかしながら、ECの方の評ではありませんけれども、ウサギ小屋のような日本の住宅、しかも働き中毒がいるというようなことが言われておりますように、住宅に対する不満、狭過ぎる、庭がない、さらにまたプライバシーが守れないというような方がまだまだ国民の半分以上いることを考えますれば、やはり住宅の質的な改良を含めても、私どもは住宅建設あるいは増改築を進めていくべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。  では、その手段としまして何をやるんだということでございますが、昨年の実績を見ましたら、石原委員御案内のように、確かに純粋民間資金によるところの住宅はうんと減りました。七・四%減りましたが、住宅金融公庫を中心とする公的資金の援助による住宅は、逆に前年に比べて七・四%伸びた。しかも公庫の貸し付け分は前年に比べて一五・二%伸びているということを考えますれば、国民の需要、国民の期待というものはこういうところにあるのじゃないか。こういった意味で、まず第一に住宅金融公庫の貸し付け条件の緩和を行っていく。さらにまた住宅取得控除の引き上げをやっていく。  それから、昨年の土地税制の根本的な改革、これは山中大臣が一番力を入れられた点でございますが、これをてこにして地価の安定が図られつつある。ここに着目して、住宅を内需拡大の柱にしていきたいというのが私ども考え方でございます。
  37. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それで、要望は大変強いというようなお話もありましたし、いまマンションなんかが売れ残っているのも、遠くて値段が高くて小さいからだ、こんなことも聞いております。  私、ちょっとよけいなお世話かもしれませんけれども、御提言申し上げたいのです。いつも汽車や電車に乗って通って、田町の電車区とか品川の電車区あるいは尾久の電車区、こういうのを見ますときに、人間が生活するのは八階や九階で生活しているのに、空っぽの電車は地面にただごろっと平面的にしか利用されていない。あるいは田端なんかにも相当広大な操車場があるようですけれども、都市の再開発の一環としても、ああいう電車の待機場は二階建て、三階建てにできるのではないか。三階建てにすれば土地は三分の一で済んで、あとの三分の二は住宅地として回せるのではないか。そうすれば、駅にも近いし、通勤時間も短いし、生活するのにも便利じゃないか。そうして、また赤字の国鉄も、そういう土地を提供することによって幾らかなりとも赤字を埋めることができる。こういうことを経済企画庁あたりで関係機関の方にちょっとお話ししてみていただけないものか、こう、考えておるのですが、いかがでしょうか。
  38. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 貴重な御意見でございますので、十分参考にさせていただきたいと思います。
  39. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 どうもありがとうございました。      ────◇─────
  40. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、内閣提出金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。山中通商産業大臣。     ─────────────  金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  41. 山中貞則

    ○山中国務大臣 金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  金属鉱業事業団は、金属鉱産物の安定的な供給を目的に、昭和三十八年に金属鉱物探鉱融資事業団として設立されて以来七次にわたって改組拡充され、現在では、国の内外における金属鉱物の探鉱を促進するための業務、金属鉱産物の備蓄に必要な資金の融資業務及び金属鉱業等による鉱害を防止するための業務を行っております。  わが国は、金属鉱物資源について国内賦存量に大きな制約を有することから、その大部分を海外に依存せざるを得ない現状にあります。  また、金属鉱物資源の中でも、ニッケル、クロム等の希少金属は、鉄鋼業、機械工業、電子工業等における原材料としてわが国の産業活動及び国民生活にとって必須の重要資源であり、近時その重要性はますます増大してきております。しかし、わが国は、他の鉱物資源にも増して希少金属のほとんどを輸入に依存しており、その輸入先も政情不安定な国を含め少数の国に限られている等供給構造はきわめて脆弱なものとなっています。  このような状況から、希少金属の安定供給を確保することは、わが国の経済安全保障を確保する上で喫緊の課題となっており、供給障害等の緊急事態に備えて希少金属の備蓄を推進することは、探鉱の促進と並んで資源政策の重要な柱となるべきものであります。  希少金属備蓄については、現在民間を主体とした備蓄が進められておりますが、対策の重要性に照らして、政府としては、昭和五十八年度から、新たに国が主体となって推進する等の本格的な備蓄対策を講ずることといたしました。  このため、金属鉱業事業団を活用することとし、同事業団の業務として、従来から行っている備蓄に必要な資金の貸し付け業務に加え、新たに金属鉱産物の備蓄業務を追加しようとするものであります。これが、この法律案を提出した理由であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  改正の要点は、金属鉱業事業団の業務として、金属鉱産物の備蓄業務を加えることであります。  このほか、新業務追加に伴う法律の目的の一部改正、その他所要の規定の整備等を行うことといたします。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
  42. 登坂重次郎

    登坂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  43. 登坂重次郎

    登坂委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査中、金属鉱業事業団から参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ────◇─────     午後一時三十一分開議
  45. 登坂重次郎

    登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤茂君。
  46. 後藤茂

    ○後藤委員 きょうは、具体的な法案の中身についてお聞きをする前に、全般的な非鉄金属関係を取り巻く諸情勢についての基本認識をどう統一させておくかという観点で、まず最初大臣にお伺いをしてみたいと思います。  最近は、世界的な景気低迷で実需が非常に減退をいたしております。そのために、金属価格というのは国際商品でありますから非常に乱高下をするわけでありますけれども、にもかかわらず長期低迷を続けておりますために、海外鉱山等でも、仄聞するところによると、大分休山あるいは閉山の現象を見ておる。国内においても同様であります。単に鉱山だけではなくて、製錬関係におきましても非常に操業率が低くなってきているわけであります。  それで、大臣も御承知のように、この地下資源というのは大変大切な、有用な資源でありますし、また一度休山する、あるいは閉山をすると、今度再開発に対しては大変なコストが必要になるわけであります。ぜひこの鉱山という有用な地下資源を掘り出していく産業に対しましては、あらゆる手だてが必要だと思います。  最近の世界同時不況の中で、とりわけ金属鉱業が受けております現状、それからまた、これからの見通し等について大臣はどのように把握をされておりますか。全般的な問題につきましてまず最初にお伺いをして、具体的な中身に入ってみたいと思います。
  47. 山中貞則

    ○山中国務大臣 きょう審議をお願いしているのは、希少金属の国家備蓄、共同備蓄、進めてまいりました民間備蓄等についての一部法改正でございますが、いまの質問は、こういう金属鉱山全体についての衰退というものについてどういうふうに見ているかというお話でございます。  今回備蓄する対象は、わが国内では資源として大体存在していないものが主でございますが、たとえば金などの鉱山を見ておりますと、国際投機対象の一つとも言われる金の国際価格が、八百ドルをつけたかと思えば一トロイオンス三百五十ドル、そういうような急激な外からの問題に振り回されて、たとえば五百ドルになったら、あるいは四百ドルになったら金の鉱山を再開発、ということは前はクローズ同然にしておる、こういうことですね。採算の合う点に来たら急に採鉱をまた開始してにぎやかになる。国際相場が一遍冷え込むと、またそれが、直接の採鉱要員も含めて、企業全体として金の鉱山に対しては熱が一遍に冷めるというようなあり方というものが正常なんだろうか。本来、金というものはそういうものなんだろうか。南アとソ連に握られている市場であるだけに、日本に採算の合うときだけそれを掘るということがあるいは正常なのかなということにおいて、私は余りよく評価を下し得ないのですが、ただ、それらに依存する市町村、存在する市町村と言っていいかもしれませんし、あるいはまた、その際に企業が意欲を示せば雇用者となる労働者の人々、それが企業の意欲が冷えたら、一時解雇というよりもむしろ見通しのない失業者になってしまう。そういうようなことなんかは、やはり見落とせない問題ではないかと考えております。  その他の金属物質等についても、金ほどの国際性はないとしても、似たような現象があるとすれば、もう少しこれに対して全体的に評価をしなければ、企業はしょせん採算に合わない仕事はしないわけでありますから、そういう意味で、一概に私がここで申し上げるにはある意味でまだ知識不足と申しますか、研究不足という点がございますので、できればずっと専門でいらっしゃる先生の方からお教えを願いたいという気持ちもございます。
  48. 後藤茂

    ○後藤委員 金属鉱業を取り巻く基本的な環境につきましては、いま大臣が御指摘になったところだと思うのです。  その中で、今度の法律というのはレアメタルでありますから、これは日本の賦存条件が非常に悪い、あるいはほとんどないというものである。ただしかし、ついこの間、二月十九日に閉山になりました北海道の下川鉱山、ここは銅だけの鉱山なんです。銅単味鉱山と言っておりますけれども、私も数年前にここへ行きました。そうすると、コバルトが随伴はするのです。ところがコバルトが随伴をいたしましても、今日の技術では、銅の鉱石の中からコバルトを分離してこれを使うという技術が、まあ研究は相当通産省の方も指導され、あるいは民間の研究機関も相当投資をしたわけですけれども、現在の段階では抽出が困難である。したがって、泣く泣くこれは閉山をしてしまった。その前に、日立鉱山も閉山になりました。  私は、この委員会でも御指摘を申し上げたのですけれども、それでは銅だけを産出する鉱石、銅鉱石が非常に品位が悪いのか。非常に品位が悪ければ、これは掘り出しても鉱石を出すのではなしに岩石を出すようなものでありますから、これはもうコストをかけることはむだなんです。しかし、日本の下川鉱山にいたしましても、あるいは日立鉱山にいたしましても、国際的に見て品位がそんなに悪くない。ただ、たとえば金だとか銀だとかそういう有用な随伴鉱を伴っていないために、今日のコストから考えていきまして閉山をしていかなければならない、こういう状況になるわけです。もし、これを許しますと、まあ大臣のところの鹿児島におきましては最近金の大変いい鉱床が見つかっておりますけれども、結局、金、銀もしくは銅にいたしましても、他の金属にいたしましても、金、銀等を相当多く含んでいる鉱石だけが残る。恐らくいまのままの状況でいきますと、日本の場合は金と銀の鉱石、その鉱山より残らないということになりはしないかという心配を実はしているわけであります。  そこで、この低品位鉱もそうでありますけれども、いま言いました単味鉱山ですね。銅だけをやっている、品位はそんなに低くはない、しかし国際価格の乱高下のために閉山をしていかなければならない、こういった単味鉱山に対する対策というものは、もうこれでなくなってしまうわけですけれども、これからまた探鉱いたしまして、仮に銅鉱石としてはりっぱだ、しかし金、銀を含んでいない、そのために市場に出したといたしましてもペイしないというような鉱石も、これからの三段階探鉱によりましては見つかってくる場合があるだろうと私は思う。みすみす、これは見つかっても掘り出すことができないというようなことになるわけであります。  これは長官にお伺いをしたいのですけれども、こうした単味鉱山、鉱石、これからも恐らく発見されるでありましょうけれども、そういうものに対するこれからの対策というものをぜひひとつ検討しておいていただきたいということを、前の委員会におきましても私は御指摘を申し上げておきましたが、こうした鉱石の、あるいは鉱山の対策というものをどういうように長官はお考えになっておられるか、お伺いしたい。
  49. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま先生の御指摘になりました国際的な価格の乱高下の問題につきましては、御承知のように、経営安定化資金の貸し付け、非常に有利な利子補給をした貸し付けをいたしておりまして、たとえば四十三万円より下がったときにはやるとか、そういうことで銅、亜鉛をやっておるわけですが、問題は、いま先生御指摘の非常に品位の低い単味鉱山ということでございますが、銅の鉱山が採算に合うかということでございますが、たとえば現在銅ですと値段が倍以上にならなくちゃいけない、四十二、三万のところが百万円にならなくちゃいけない。これを、国内資源は非常に大事だからといって、そこまでいろいろ補助してやるということは非常にむずかしいと私は思います。したがって、国のいたしておる政策としては、いわゆる三段階調査というところでいろいろな国の助成をしております。特に、探鉱ということによって品位の高い鉱山を見つけていくことがやはり将来に向かっては基本であろうか、このように考えるわけでございます。  もちろん、その探鉱の仕方につきましても、いわゆる大企業だけではなくて、特に中小の鉱山におきましては経営が非常に厳しいということでございまして、これに対しましては、五十八年度から特に特別の施策を講じて、いわゆる経営指導、技術指導等を行うということによってこの探鉱活動を助成していくということを考えておるわけでございます。
  50. 後藤茂

    ○後藤委員 企業努力なり、そこで働く労働者が大変一生懸命努力したといたしましても、悲しいかな、価格が暴落をしていくということになりますと経営が立ち行かなくなってくる。その対策よろしきを得ないために、たくさんの日本の鉱山が閉められてしまっている。鉱石がなくなって閉められるというのは、これはやむを得ませんけれども、鉱石がなお残っておるのにかかわらず閉めていかなきゃならぬという事態をたくさん迎えているわけです。  この間、先ほど申しました北海道の下川鉱山が二月の十九日に閉山式を迎えたわけであります。私も幾つかの鉱山の閉山式に行ったことがあります。非常に陰うつといいますか、大変悲しい感じがする。しかも、単に企業が倒れるというだけではなくて、もうその地域が灯が消えたようになる。商店から、あるいはその自治体におきましても、あらゆる点がもう大変な事態になるわけです。こういうことはなるべくしないように、鉱石がある限りにおいてはこれを開発していく努力を国としてもしていくべきであろうということをいつも考えさせられるわけです。  こういう話を私は聞いたのですけれども、二月の十九日に閉山式をやる前の日に札幌の鉱山保安監督局長が保安視察、これは最後の保安視察をやるわけですけれども、その保安視察をして坑内に入った。そうすると、その坑内に「五十八年二月十八日午前九時二十六分、さようなら」坑道の中にこの言葉が書かれておった。そのことを局長が閉山式の席で言った。みんなは涙を流して泣いて山への愛情を訴えておったという話を聞いた。先ほど言いましたようにコバルトを随伴している、品位も比較的高い、まだまだ稼働できるであろうと思っておったところが閉山してしまった。国の政策なり探鉱が進んでいってその付近に出てくれば恐らくまたわれわれも帰ってこれるのだ、こういう話をしながら山を去っていった、こういうことであります。  こうしたことをさせていかないように、低品位鉱にいたしましても単味鉱にいたしましても、また中小鉱山にしても、長い開発の歴史を持っているわけでございますから、先ほど長官から御答弁いただきましたけれども、ぜひひとつきめ細かな対策を立てていただきたい。後ほどまた指摘をしたいと思いますけれども、新しく城下町法案をつくってやるとか、あるいは地域産業の振興策をとるとかいうことも大切ですけれども、これまで大きく社会に貢献をしてきた山をどこまでも守っていくという、その取り組みの強化をぜひ要望しておきたいと思うわけであります。  そこで、大臣にもう一点お伺いをしておきたいのですが、全国的な貨物取扱駅の廃止という方向が出ております。その前にはローカル線の廃止等も出てきている。これは非常に大きな政治的な問題でありますけれども、特に貨物取り扱いの廃止の中で、栃木県に足尾線というのがあるわけでありますけれども、この足尾線もその対象になっている。足尾に製錬所があるわけでありますけれども、この足尾の製錬所というのは、原料を海外鉱に依存しているわけなんです。その銅鉱石の入荷が八七・七%、それから硫酸の出荷が九六・九%、これが鉄道に依存をしているわけでございます。トラックにすればいいじゃないか、こういう意見もありますけれども、鉱石等の鉄道です。特に硫酸のトラック輸送ということになりますと、その沿線住民に対して大変危険な不安感を与えていくという内容を含んでいるわけであります。事は国鉄なり運輸省の所管ではありましょうけれども産業政策観点からいきますと、こういうような鉱石輸送の役割りを果たしてきている鉄道あるいは貨物駅、これをにわかに廃止していくということをやりますと、先ほどの閉山と同じように、鉄道なり貨物駅が廃止されることによってその製錬所が立ち行かなくなっていくということにもなるわけでありますから、この点、関係省庁に対して、大臣、地方線あるいは貨物駅の廃止ということに対しては、にわかにそれをやっていかないように、ぜひひとつ機会あるごとに強く要請をしておいていただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  51. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その点については、広瀬秀吉先生から詳しく承りました。私は、実は、そういう鉱石を海外から運んできて、内陸部でそういう製錬をやって硫酸その他を輸送しているという事実があることを初めて知ったわけであります。私の不勉強のせいでもありますが、ふだんほとんどやっていない分野なものですから。  広瀬先生から詳しく話を聞きまして、なるほど、これは道路輸送といったって、その道路の形状もきわめてりっぱな道路があるわけでもないし、おっしゃるように輸送するその品物、あるいはその周辺への危険もさることながら、輸送する車両の腐敗が硫酸の場合はことに心配されるわけですから、そういうことでかえられない問題であって、ローカル線とか貨物駅廃止とかを言う次元を超えて、政策として考えてほしいという話がありました。  ほかにも北海道で、幌内線と歌志内線でございますか、そのところも——歌志内等についても、これは炭鉱があって、そして後に歌志内市ができた。したがって、人口も五万余りからいま一万幾らに減っておるという。市長さんやあるいは労働組合の方まで全メンバー、山の関係者も商工会の関係者も来られまして、切実な事情を聞かされました。また、幌内線についても同様のことでございましょう。  そこで、これらの点については、先般岡田副議長ともお話をいたしまして、せっかく国会の方の意思というものが法律の制定には確かに示されたものの、そのような一地方、一産業のみならず、地方都市が壊滅してしまうというような問題については、公的な国会の意思の表明が必要ではなかろうか。ということは、通産大臣から行く場合、運輸大臣に参ります。運輸大臣は国鉄に言う。国鉄は、もう既定の方針ですから、ということで恐らくおしまいなんじゃないかと思うのですね。そこで、まあそういう仕掛け話をしてもおかしいのですが、特別委員会が幸いあることだし、そこらのところの国会の意思というようなものの御表明をいただいて、私が動き、運輸省も対応を何とか国会に対してもしなければならぬというようなやり方はどうでしょうねと言ったら、それはいい知恵だ、ひとつ……というお話でしたから、あとは、では副議長、お任せしますよと言ってこの間別れてきたわけです。内輪話をして恐縮でありますが、通産大臣自体が動くにはどうも限界があるような気がして、いまのところ私、戸惑っておりますので、率直にその点をお答え申し上げた次第でございます。
  52. 後藤茂

    ○後藤委員 代替の輸送手段を持っている場合には、コストなり全体的な情勢を見ていきながら、どちらの選択をするかということが必要だろうと思うのです。しかし、先ほど大臣も触れられましたように、やはり硫酸なり鉱石なりということになっていきますと、代替輸送がそう簡単ではない。しかも、ああやって内陸部に長い歴史を持って製錬を営んできているし、そこでは地域の産業なり地域社会の大きな核になっているわけですから、所管が違うからということを超えてこれは国の政策として、いわゆるアクセスをどう確保してやるかという観点で取り上げていただきたいということを、これは強く要望を申し上げておきたいと思います。  それと同じような問題が、これはいわゆる非鉄金属というのは電力多消費産業でありますし、とりわけ亜鉛というのは電力の価格によって大きくその存立の基盤を奪われることになるわけであります。今日でもその操業率は六〇%台というような状況。しかも、深夜余剰電力等を使っていきながら、工夫に工夫を重ねて今日まで維持をしている。  たとえば、あそこの神岡鉱山等は、一度ぜひ大臣、坑内にも入っていただきたいと思うのですけれども、それはもう、これが鉱山だろうかと思うほど大変りっぱな鉱山であります。坑内におきましても、ジープと言ってもそんな小さなジープではなしに、大型のジープが自由に通ることができるようなりっぱな鉱山です。しかし、この亜鉛の電力料金が上がったということで、もう何回も合理化の犠牲に遭ってきているわけです。  そこで、昨日も大臣に、最近の原油価格の下落といいますか、引き下げということについて御質問を申し上げました。ぜひひとつ、通産省でも検討を始めているようでありますけれども、非鉄金属関係に対して、この料金について一体どういうような対策が講じられていくかということについて、大臣からお答えをいただきたいのであります。  そのことは、実は企業努力をどれだけやりましても、徐々に価格が上がっていく場合は、それをいろいろな点で合理化努力によって吸収することができるわけです。ところが、上がり方が非常に大きい第一次、第二次石油ショックという状況の中で立ち行かなくなってしまうということが、ほかの素材産業もそうでありますけれども、とりわけメタルマインの方はそういう点が非常に大きいわけであります。それを何とか解消できないだろうか。確かに総合原価主義で政策料金をとるということは、制度的には非常にむずかしいということはわかります。わかりますけれども、幸い価格が下がることによって、昨日も申し上げましたが、電力業界全体で、仮に一ドル下がれば千百億ぐらいの収益改善になるというようなことを言われる。その幾らかでも政策的に配慮ができるということになりますと、もっともっと国内の製錬あるいは鉱山というものが生き返っていくところがたくさん出てくるだろうと思うのです。大臣、いかがでしょう。
  53. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先般来申し上げておりますように、いま検討しておりますのは、すべての要件を検討して、そして最終的には料金体系、そして産業の体質ということを検討いたしますので、いま御指摘になりました電力面の高価格からする希少金属鉱山というものを検討の対象に入れることをお約束申し上げます。
  54. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの言明を実現していただくためにぜひ努力をしていただきたい、かように考えております。  そこで、きょうは金属鉱業事業団の方もお見えになっておられますので、ちょっとお伺いをしておきたいのでありますが、最近、探鉱に大変努力されて、その結果各地で大変いい鉱床が見つかってきておるようでありますが、最近の事業団の活動の中で、国内の資源開発についてどういうような現状になっておるか。また、これからの問題として、これは海外も含めてどういうような問題があるかという点につきまして、概況を御説明いただきたいと思います。
  55. 西家正起

    ○西家参考人 私ども金属鉱業事業団の業務につきましては、かねがね商工委員の先生方に大変御指導、御支援をいただいておりまして、まことにありがとうございます。この機会に一言お礼を申し上げます。  お答えをいたします。  私どもの事業団で日本の国内におきまして調査をやっておりますのは、広域調査と精密調査がございますが、これはつきましては大体現在でもう十数年になります。しかし、成果が上がり出したのは比較的最近でございまして、この数年間、各地で非常に成果が上がってまいりました。  具体的に申しますと、北海道の西南部の久遠地区、これは広域調査で鉛、亜鉛の高品位のもの。それから北秋田の北鹿北、十和田湖の西の方で、やはり銅でございますが、いいのが出た。それから宮城県の北の方で栗原地区、ここでも鉛、亜鉛のいいものに当たっております。それから、そのほかでは飛騨地区、岐阜県の高山の西の方でございますが、このあたりにも鉛、亜鉛のいいものが当たっております。それから山口県には、タングステンの小さな鉱床でございますが、やはり広域調査で当てております。それから、もう一つは九州の北薩でございますが、ここでは金鉱床の非常に高品位のものに当たっております。  ちょっと申し上げましただけでも、ただいま申し上げましたような程度当たっておりまして、これらは必ず将来わが国の有力な金属資源になるであろうと私は確信いたしております。  国内につきましてはそういうことでございますので、今後とも広域、精密の予算をつけていただきますならば、私どもも誠心誠意努力いたしまして、もっと効果を上げるようにいたしたいと思っております。  問題点を申しますと、海外に若干問題点はございますが、海外でも最近では同じように効果は大分上がっておりますので、今後とも努力をいたしたいと考えております。
  56. 後藤茂

    ○後藤委員 三段階の予算措置、探鉱のための予算措置が講じられているために、先ほど理事長からお話がございましたような成果を上げているわけです。大臣のところはどうもまだないようでありますけれども、しかし鹿児島の方はもう金のしとねではないかと言われるほど探鉱によって鉱山が見つかっているわけでありますから、ぜひこの探鉱のための予算措置といいますか、助成措置はこれからも強化していただきたいのですが、ただ、今年度の予算を見ましても、少し先細りになり始めてくる心配が実はあるわけであります。これからの鉱山ということになりますと、特に大蔵省等との折衝では、そんな高い鉱石を一生懸命努力して掘り出すよりも、海外の鉱石を買ってきた方が安いのじゃないかということをすぐ短絡的にとらえがちでありますけれども、探鉱に対しましての資金確保というものは、これからもぜひ努力をしていただきたいということを強く要望申し上げたいと思うわけであります。  そこで、これは長官にお伺いしたいのですが、今度の予算の中で、特定中小鉱山振興指導対策費が新規予算措置として四億五千万円計上された。非常に結構だと思うわけでありますけれども、これはどういうように指導対策費として使われていくのか、この点をお伺いしたいと思います。
  57. 豊島格

    ○豊島政府委員 従来から、中小企業につきましては補助金二分の一ということで探鉱補助、助成をしておったわけでございますが、特に今回は、従業員百人未満の零細企業等につきましては、資金的にも技術的にも非常に基盤が脆弱であるということで、探鉱だけじゃなくて、長期的な開発計画に基づいた、開発の基礎となるような鉱床周辺の調査、それから坑道掘進の実施が行われていないということでございますので、その辺について積極的に助言指導を行う、そういうことで別に七百万円くらいの予算を特別に追加して計上したわけでございます。  また、この場合、鉱山技術基盤の確立のためには、いわゆる資源開発大学校という、財団法人でございますが、これを活用して、技能向上の研修事業も実施するということで、これを補助していきたい、このように考えております。
  58. 後藤茂

    ○後藤委員 以上、金属、非鉄金属関係を取り巻く情勢につきまして、特に政策を進めていただく上においてぜひ留意をしていただきたい幾つかの問題点を指摘させていただいたわけでありますが、次に、法案の中身の問題に入っていってみたいと思います。  そこで、特にレアメタルというのは確かに大変有用な金属であります。世界各国とも、これの確保について大変努力をされているようであります。ただ、私どもは、このレアメタルの使用の方向を見ておりますと、やはり戦略的な意図がいろいろ背後に見え隠れをいたします。戦略的といいますのは、特に軍需産業との絡みというものが見えるわけであります。昨年十一月に開催されました日米希少金属問題シンポジウムでも、やはりそういうような意見が見え隠れをしているわけであります。このレアメタルというのは、軍需産業、あるいはこの国会でも大変問題になっております武器技術、先端技術にもかかわっていくことでありますけれども、こうした軍事的な背景が持たれるための国家備蓄、それがいわゆる今回の備蓄であってはならないと私は考えるわけでありますが、これからの国家備蓄を進めていく上において、このレアメタルがそうした方向に使われていかないように、通産政策としてもぜひひとつ努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。大臣に御所見をお伺いしておきたいと思います。
  59. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この問題を議論いたしました際も、そのようなことは全く議論の対象になりませんでした。というのは、反対にアメリカでは、チタニウムに象徴されるように、明確に軍事備蓄としての国家購入をやっておりますね。私たちはそういうことは全く念頭に、知っておって念頭にない議論をしたわけですから、もちろん現時点においても将来も、軍需産業のために不足するから国家備蓄をするということは考えておりませんし、大蔵省との議論でも——大蔵省は非常な反対をしました。それは、石油の国家備蓄はわからぬでもありませんし、わかりました。わかってやっておりますが、なぜ希少金属まで広げなければならないのですか。必要ならば民間備蓄、最大限譲っても官と民の官民共同備蓄ぐらいのところでやっておかれたらどうですかという、これはきわめて厳しい抵抗があったわけです。しかし、やはり官自身もみずからが、総合安全保障といういわゆる軍事面でない方の安全保障の一環として、いざ必要なときに国の力でなければ持ってこれない場合、民間ではとてもできないカントリーリスクその他の国であった場合に、国家がある部分については備蓄をする構想そのものを認めてくれということで、したがって今回は国家備蓄の構想を認めたものの、その構成比はきわめて少ない認められ方をしております。私たちとしては、希少金属の国家備蓄が認められたということでもって一つの目的を達成したんだと思っておりまして、今後これをどう進めていくかは、業界自体の考えもございましょうし、国がいざという場合に備えておいてあげる体制も整えたという意味で、今回御提案申し上げたわけでございます。
  60. 後藤茂

    ○後藤委員 備蓄の鉱種でございますけれどもアメリカ等は大変多いわけであります。わが国でも、この法律案をつくる過程で、一体どのくらいの鉱種を設定したらいいかということは相当議論がされたように仄聞しております。当初は十三鉱種ぐらいが挙げられておった。いずれも経済安全保障の観点からいって大変大切なレアメタルであるというような方向で論議をされたと聞いているわけであります。  今回、七鉱種になっておりますが、その七鉱種にしぼられた過程と、それから今後この鉱種を拡充していく考えがおありになるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、最初、レアメタルとはどんなものかわからなかった。たとえばストロンチウムというものが入っておるのですけれども、私は、ストロンチウムは消えるまで九十年の有害物質を持つ鉱物だという頭しかなかったものですから、どんなものかというので金属ごとにサンプルの箱に入れてもらいまして、なるほどこんな形状なのかということを初めて知って、私は大臣室に飾っておりますが、そういう程度のところから議論を始めたものですから、絶対的に、どの業種のどの部門あるいは共通のどの部門に、これが一たんとぎれるとどのような影響が起こるのだということで議論しまして、その鉱種の選択については、大蔵省も要求鉱種全部を認め姿勢もありませんでしたし、長官の方の折衝に任せましたので、どうしていまの鉱種にしぼられたかについての経過等を長官から答弁させます。
  62. 豊島格

    ○豊島政府委員 希少金属というのは非常に大きく言えるわけですが、特にその中でも対策の必要な希少金属というのは、先生おっしゃいましたように十三品目ということであったわけです。  ただ、その中でタンタルとか白金というのはそれぞれ代替が可能である。たとえばタンタルにつきましてはニオブとの代替が可能、白金につきましてはパラジウムとの代替が可能ということで十一品目にしぼられたわけでございます。それで、その十一品目全部ということであったのですが、これは予算の関係もございまして、その中で緊急を要するものということにしぼるときに、従来、五十七年度から民間の希少金属十日分の備蓄五鉱種を選んでおりまして、それに助成をしておるわけです。これに加えて、最低限南アフリカに非常に依存度の高いものとしてマンガンとバナジウムを選んだということでございまして、必要性からいいますと今回除かれましたものもあるわけでございますが、この辺のところにつきましてはさらに今後事態の推移を見ましていろいろ検討していきたい、このように考えております。
  63. 後藤茂

    ○後藤委員 先ほど大臣がストロンチウムの話をされて、私も別にレアメタルを全部よく知っているわけじゃないのですが、ただあちこちの鉱山に入ってみまして、そして随伴鉱の中に、たとえば明延なんかに行きましてタングステンの鉱石なんかを見まして、小さな切り羽で鉱石をいただいて部屋に置いていたり、あるいはこれはもう鉱山としては閉山してしまいましたが、岐阜県の何という鉱山でしたか、そこのモリブデン鉱、りっぱな結晶ですけれども、これもいただいて置いているわけであります。そういうものもながめていきながら、決して日本は無資源国ではないのだ、確かに南アのように大きな鉱石、鉱脈は持っていないにいたしましても、たくさんまだ賦存をしているのだ、だからこれを開発をし、有用に供するための努力というものがまだまだ足りないんじゃないかということを、小さな鉱石を見ながら実は私は考えるわけであります。  その点で、鉱種につきましても予算との関連もありますし、一遍に、アメリカのような戦略的な配慮があればともかくとして、そうはできないと思いますけれども、まだまだ鉱種は恐らく拡充していかなければならない背景を持っているだろうと思います。今回は第一段階でありますから七鉱種にしぼられた経緯はわかりますけれども、これからも鉱種を拡充していくという努力がぜひ必要ではないかということを御指摘申し上げておきたいと思います。  そこで、備蓄の運用方針でありますが、民間と共同と国家の三段階方式で備蓄をしていく。それぞれが、短いので一カ月、中期的なもので六カ月、長期では一年というような、供給の障害に対応するというようにされているわけですけれども、この供給障害の程度あるいは判断基準というようなものを一体どのように決めているのでしょうか、ある程度のガイドラインができ上がっているのでしょうか、いかがでしょう。
  64. 豊島格

    ○豊島政府委員 一応民間備蓄、それから共同備蓄、国家備蓄ということでございまして、考え方としては、たとえば一カ月ぐらい途絶するようなときには、それでも若干起こるだろう。そういうことで、そんな場合は民間備蓄をひとつ崩す機会になるのじゃないか、こういう感じもいたします。それから、共同備蓄のときは半年ぐらいとか、これは半年続いてからということでなくて、そのくらい続くおそれがあるというと相当混乱いたします。それから、国家備蓄については一年くらい続くおそれがあるときとか、そういう大体の考え方を持っておりますが、この点は鉱種によってもいろいろ違うと思いますし、実態に応じて今後その辺の運用はいろいろと議論をして決めていきたいと思っております。  ただ、国家備蓄につきましては、たとえば中小企業のように個別企業のレベルといいますか、純粋な民間備蓄ということでは負担にたえかねる、あるいは共同備蓄というようなものの資金負担をすることもむずかしいというようなものにつきましては、国家備蓄の中からそこまで長期にわたって障害がない場合にも考えていく、こういう弾力的な運用が必要かと思いまして、その辺をいろいろとさらに研究していきたいということで、一応のめどはそんなことも頭に置きながらやっておるということでございます。
  65. 後藤茂

    ○後藤委員 この供給障害でない場合がこれまた起こるわけでしょう。たとえば供給障害の場合ということになると、ストライキであるとかその地域における政争等を含む紛争であるとか、いろんな問題が予見されるわけでありますけれども、そういう供給障害ではない、先ほど申しましたように、国際商品でありますから価格の乱高下というものが激しいわけですね。あるいは投機対象にもなっていくわけでありますから、こういう価格変動もこれは想定しておかなければならぬ。こういう場合の対応策は一体どうなるのでしょうか。
  66. 豊島格

    ○豊島政府委員 この備蓄の趣旨は、基本的には、先ほど申しましたような供給途絶があるというようなときに非常に混乱するということを前提として備蓄をしておる、そういうときに役立てるために備蓄をしておるということでございますので、いわゆるスズなんかで国際的にございましたようなバッファーストック、いわゆる価格の安定を前提として生産者を保護するとかユーザーを保護する、そういうようないわゆるバッファーストック的なものではない。したがって、逆に非常に不況になって余ったらそれを買い上げて、備蓄して経営の立て直しを図る、こういう筋合いのものではないと思います。  ただ、供給途絶なのか何かよくわからない、要するに物が非常に上がるというときはいろいろな要因があるわけでして、供給途絶といいますか供給が非常に悪くなるという原因についてはいろいろあるわけで、その辺は実情に合わせて判断していかなくちゃいけない場合もあるのではないか、このように考えております。
  67. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの点ですけれども、そうするとバッファーストック的な、価格が非常に乱高下していく、この場合は異常に高くなっている、その原因は確かに供給障害も若干あるにしても、投機的なものその他も出てくる。それは今度の対象ではないのだということではない形で弾力的運用を迫られるのじゃないだろうかという気がするのですがね。そのために私は先ほど御指摘を申し上げたわけですけれども、そういう心配といいますか、これからそういう運営を迫られてくるであろうということは考えなくていいですか。
  68. 豊島格

    ○豊島政府委員 実際の経済の問題でございますので、いろいろな要求は出ようかと思います。しかし、基本はやはり単なる価格の乱高下をストックによって調整するというものではないわけでございます。そのような運用をいたしますと、たとえば業界対策のためにこの国家備蓄でもっと買い上げろ、こういう議論もあるかと思います。もちろん、それぞれの業界対策としての備蓄、従来もアルミとかその他ございますけれども、それとは別に対策は考えなければいかぬと思いますが、このような備蓄というのは、そういう緊急事態に対する価格の安定化ということに、限定と言うのは言い過ぎかもわかりませんが、そういうことを目標としてやるべきだ。ただし、物の値段がべらぼうに上がるという背景には、いろいろとその供給上の問題があるということは言えるのじゃないかと思いますが、その辺につきましては十分実態を見てやるということになるのじゃないかと思います。
  69. 後藤茂

    ○後藤委員 これは要望でありますけれども、価格調整機能の面も恐らくこれからまた出てくるのではないか、老婆心ですけれども、そういうように思うものですから、そういった検討作業はひとつぜひ進めておいておかれた方がいいのではないかということを要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、放出する場合、放出時の価格というのは、石油なんかの場合は時価で放出という形になるのでしょうか。レアメタルの場合は、これは輸入は自由だし、どこからでも買えるわけであります。しかし、その場合に、備蓄が長期に及んだ場合、当然備蓄コストというのはかかってくるわけでしょう。そうすると、そのコストがかぶさってくるということになりますと、その放出時の価格というのは一体どういうようになっていくのか、その価格設定についての考え方は立てておられるのでしょうか。
  70. 豊島格

    ○豊島政府委員 放出価格につきましては、それぞれの備蓄の性格によって違うと思いますが、いわゆる純粋民間備蓄、第一段階は十日ぐらいですが、それにつきましては、いわゆる各企業の持っているものを、特備協会といいますか、その備蓄協会に預託するといいますか、寄託する、預けるということでございますので、放出するときにはその物を持って帰るというので、価格の問題にはならないということだと思います。  それから共同備蓄の場合には、その備蓄費用の、特に金利の三分の一を民間が負担するということでございますので、当然そういう買い上げ価格プラス、何といいますか、それまでかかった費用というのが基準になろうかというふうに考えております。  それから国家備蓄のときには、原則そのときの時価ということになろうかと思うのですが、そこでいろいろ問題があると思うのですけれども、どういうときに放出するかということになりますと、相当需給が詰まってきて、供給途絶等によってなかなか物が調達できないということでございますので、たとえば共同備蓄のような場合には、そのときまでにかかったコストよりもどちらかというと高い時価が恐らくついておるのじゃないかと思います。したがって、一概には言えませんが、時価よりも高く放出ということにはならないのが実態だと思います。それから、国家備蓄の場合は時価ということでございますけれども、べらぼうに上がったのを、また、外であさって買うのと同じ値段ということになりますと、これは何のために国家備蓄してもらったのかわかりませんから、その辺のところはその時価を考えながら適正な価格で放出する、こういうことになるのではないか。いわゆる買いあさって、どんどんつり上げた価格でという意味の時価ではないということだと思います。
  71. 後藤茂

    ○後藤委員 くどいようでありますけれども、この供給障害に対応する今回の備蓄ということは、安定供給を確保していくための制度でありますから、その安定供給というのは当然これは価格は幾ら高かろうと別に構わないのだということではないと思う。やはり価格というものも安定供給の非常に大きな要素であろうと思いますから、したがって、私は、いま二点ばかりその問題を御指摘を申し上げたわけです。まだまだこれは検討していかなければならぬ問題がたくさんあろうと思いますから、ぜひひとつその点も進めていただきたいと思います。  そこで、備蓄していく対象というのは日本に賦存していないレアメタルが非常に多いわけでありますけれども、ただ、これが使いっ放しになっていく、つまり消費して消えてしまうというような金属の場合の性格からいきまして、もちろん消えてしまうものもありますけれども、いわゆるリサイクルということに対しましても、備蓄以上にこれから努力をしていかなければならないだろうと思うのです。  このリサイクルについては必ずしもこれまでの対策というものは十分ではない、これは企業の面におきましてもそれほど重視をしていないようであります。このリサイクルシステムがいまどういうようになっているのか、あるいはその中で、こういう鉱種についてはやっている、あるいはこういう実績があるということがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  72. 豊島格

    ○豊島政府委員 リサイクルの非常に代表的なものは、いわゆる非鉄金属の中では銅でございまして、これは新しく製錬されるもの以外に非常に大量のリサイクルのものを持っておるわけでございます。ただ、希少金属につきましてはリサイクルというのがない、非常にむずかしいということが特徴でございまして、したがって、われわれもいわゆる備蓄対策その他を考えなくてはいけないという発想は、それがもとにあるわけでございます。ただ、全くないかといえば、たとえば触媒用として用いられているものとか、あるいは一部の合金等につきましては回収されるということもございます。ただ、これは量的には非常に微々たるものでございます。  ただ、将来技術開発によって、一たん合金その他になったものを分離するということも考えられるわけで、現在のところはコストが非常に高くなって、そういうことが非常にむずかしい現状でございますが、その辺は将来の問題としては考えていかなくてはいけないんじゃないか、このように考えております。
  73. 後藤茂

    ○後藤委員 長官、外国の例は少ないんでしょうか。  それから、先ほどの質問の中でも私触れましたが、これは大臣、ぜひひとつ念頭に置いていただきたいのですけれども、先ほどの下川鉱山の閉山の過程で、銅単味鉱山がコバルトを随伴しておった。しかし、どうしてもこれは分離技術が開発されていないために、みすみすこれをもう岩石として捨ててしまっておったということを申し上げました。何とか工業技術院なりあるいは民間の研究機関、大学の研究機関等でこれができないかということを指摘しておったわけでありますけれども、いまだにその点は開発可能になっていない。先ほど長官の御答弁の中におきましても、レアメタルというものはどうも分離がしにくい、これをもう一回リサイクルとして活用していくのが非常に困難だということは御答弁をいただきましたけれども、技術が大変な日進月歩をしているわけでありますから、ひとつリサイクルのための分離、抽出、これからの研究はそれをぜひ念頭に置いていただいて、通産行政の中におきましても、これをひとつ重視をしておいていただきたい。きょう、あすすぐにこれが可能ということは大変むずかしゅうございます。しかし、これからの課題として、ぜひひとつ努力をしていただきたいと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  74. 山中貞則

    ○山中国務大臣 資源が乏しい、あるいはほとんどないに等しいというものを、国家備蓄までやって確保するわけですから、それが技術的に可能な限りは追求をして、そして分離ということがむずかしいという話でしたけれども、それは、一遍溶鉱炉でまた溶かして別なかたまりにしたものの中から化学的な分解その他を行っていくというような、いろいろな問題等も全部検討し尽くした上の問題ではなくて、ただ形状的に分離がむずかしいという答弁をしたんだと思いますから、そういうように手に入れがたいものが一遍手に入って使われた後、それが鉱滓あるいは鉱物のくずというような形で埋もれないように、何らかの、そこに百分の一の回収率であっても挑んでみるというようなことは、工業技術院もございますし、科学技術庁もございますし、やはりそういうことには、せっかくこれだけの備蓄に対する努力をするんだから、それが一遍使われて終わったらもうそれでおしまいという感じでない行政はやはり必要だ。おっしゃることはよくわかりますから、できる、できないは僕は素人だからわかりませんよ、研究対象にしたいと思います。
  75. 後藤茂

    ○後藤委員 ぜひこの点は情熱を傾けていただきたいと思うのです。つまり、レアメタルの備蓄、それからリサイクル、それにもう一つは今度代替、他材料に置きかえていくということ、この三つがあるだろうと思うのですね。  レアメタルにかわるものを開発していく、この点について、長官対策といいますか、これからの考え方はどういうようにされておられるのか。最近はセラミック等の開発も相当進んで、これはもう実用化をどんどん進められているわけであります。たくさんそれがあるだろうと思うのです。かわるもの、新しい素材、新材料というものをつくり上げていく、こういった研究、開発、それから対策、そういったことはどの程度までお考えになっておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  76. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいま長官からもお答えになったわけでございますが、この有効利用についての技術開発につきましては、考えられる方向といたしましては、一つは、製造技術の改善等によりまして使用原単位を低減していく、あるいは代替品を開発していく、あるいはまた、ただいまお話の出ました再利用の推進というふうなことがあるわけでございます。この物質そのものが原素そのものの特性に着目した利用のされ方をしているだけに、なかなか再利用あるいは代替品の開発がむずかしいわけでございますが、最近までの技術の経緯から見ますと、原単位を非常に減らしていくという方向ではかなりの技術の進歩が見られております。物によりましては、たとえば特殊鋼におきまして原単位が半分程度に減っているというふうなものがございます。  御指摘のように、何か代替品を求めていくということは大変望ましいわけでございますが、率直に申しまして現在の段階では見るべき成果は必ずしも上がっていないというのが状況でございます。再利用とあわせまして、今後の検討課題にしなければいけないというふうに考えております。
  77. 後藤茂

    ○後藤委員 レアメタルの問題でもう一つお願いをしておきたいのは、先ほど言いましたように、備蓄それからリサイクル、さらには新しい素材に置きかえていくということと、あわせて海外のレアメタル探鉱あるいは開発、これが四番目の問題として大きな課題であろうと思うわけです。  事業団もいらっしゃるわけでありますけれども、事業団の事業計画の中でこのレアメタルの問題、あるいはエネ庁の方で海外の探鉱開発に対する取り組みはどのようにお考えになっているか。御両所からでもいいですし、代表していただいても結構です。
  78. 豊島格

    ○豊島政府委員 海外での探鉱開発につきましては、金属鉱業事業団が全般的にいたしておるわけでございますが、特にいわゆる広域調査といいますか基礎的な調査につきましては、従来の五鉱種に加えまして五十八年度からレアメタル三鉱種をふやすということにいたしております。  それから、探鉱のための融資ということでもレアメタルをその対象として、海外における鉱物開発の、レアメタルを含めた開発の促進ということに既存の制度を使い、それを逐次拡大しつつ努めておるということでございます。
  79. 後藤茂

    ○後藤委員 レアメタルの備蓄にかかわる諸点につきましては以上のようなところで終わりたいと思いますが、せっかく立地公害局長もお見えになっておられますので、立地公害局にかかわる問題点について二、三お伺いをしておきたいと思います。  一つは、鉱害防止事業、今度の予算でも、五十七年度に対して五十八年度の鉱害防止の工事費が相当落ち込んできております。なお、お聞きをいたしますと、百八十五億円相当の残鉱事業がある、これを十年程度かけて計画的に処理をしていきたい、こういうようにお聞きをするわけでありますけれども、この対策はどのように考えておられるのか、お伺いしたい。
  80. 福原元一

    ○福原政府委員 使用済み鉱山におきます使用済みの特定施設にかかわります鉱害防止事業につきましては、四十八年に御承知のように金属鉱業等鉱害対策特別措置法、いわゆる特措法が制定されまして、その基本方針に基づきまして計画的に鉱害復旧工事を実施してまいったわけでございますが、今日までのところ、まだ工事の残りは非常に大きいということでございまして、基本方針はことしの三月で切れるわけでございますが、さらに十年間延長いたしまして、残っております工事を続けてまいりたい、このように考えております。  予算が今年度減ったという御指摘でございますが、今日まで十年間で、対象鉱山といたしまして約三百の鉱山に対して手当てをしてまいったわけでございますが、なお今後十年間の工事の予定といたしまして、完全にこれを実施いたしますのに対象鉱山として約百余の鉱山があるわけでございます。五十七年度価格にいたしまして二百二十億円程度必要とするわけでございますが、これを十年間で若干早目に前倒しいたしまして、五十八年度十六億計上いたしたわけでございます。
  81. 後藤茂

    ○後藤委員 この鉱害防止事業につきましてはぜひ特段の努力をしていただきたいと思うのですが、それとあわせて、本委員会でも超党派でその実現に努力した経緯があります休廃止鉱山の坑廃水の処理事業であります。  これは、あの当時を思い起こすのですが、いわゆる鉱山を開発いたしまして、そしてその企業体が出した坑廃水の処理、これは当然義務者が存在をいたしておるわけでありますから、これが負担をしていかなければならぬ。ただ、日本の鉱山というものは非常に長い歴史を持っている。だから、他人汚染をした坑廃水というものも、実はその古い歴史の中であるわけであります。それからもう一つは自然汚染というものがあるわけです。  この自然汚染、他人汚染、それから事業者が鉱山を開発している過程における汚染、これを分離できないかということでいろいろ御検討いただいて、最終的には分離がある程度可能であるということから、義務者が存在をしているのに対しては当然それを進めていくわけでありますけれども、ただ他人汚染なりあるいは自然汚染というところに対する国の坑廃水処理に対する責任といいますか対策というものを、分離なりあるいは対策費を計上していくのは大変困難でありましょうけれども、現行の支援体制をもう少し強化をしていくということが私は考えられなければいけないのじゃないかという気がしてなりません。この点について、立地公害局長、どういうようなお考えを持っておられますか。
  82. 福原元一

    ○福原政府委員 休廃止鉱山の坑廃水処理問題につきましては、先生御案内のとおり、従来補助金あるいは融資をもって対処してまいっておるわけでございますが、鉱害防止の義務者が不存在、あるいはいても無資力であるという鉱山に対しましては地方公共団体がこれを実施するということで、これに対して国が四分の三の補助をもって行っておるわけでございまして、地方公共団体が四分の一、国が四分の三ということで、全額地方公共団体並びに国で実施をしておるわけでございます。  有資力の鉱害防止義務者が存在する場合につきましては、これは当然ながら義務者が一部負担をするということでございまして、これに対しまして長期低利の融資を行っておるわけでございます。  さらに、先生がおっしゃいましたように他者汚染あるいは自然汚染というようなものにつきまして、これは当然現在の鉱害防止責任者の責任ではないということでありまして、これにつきましては別途また、原因行為のない部分に対して補助制度を現在実施しておるところでございまして、現在のところ、この制度を維持してまいりたい、このように考えております。
  83. 後藤茂

    ○後藤委員 時間が参りましたので、最後に大臣、ひとつ私から御指摘を申し上げたい点があるわけです。  私も実は驚いたわけですけれども、日刊工業新聞に、昨年の十二月三日の新聞でありますけれども、「銅の値段はいわし並み」こういう見出しで記事が出ているわけです。これはどういうことかといいますと、「銅地金は塩いわしの価格と同じ、高いといわれるニッケル地金でもぶりと同じ—。」こういうリード記事で、「魚価の資料は五十六年の東京都中央卸売市場年報。」それから「非鉄金属価格は五十七年六月の地金の建値と市中価格。いずれも一キログラム当たりの価格を比べてみた。それによると、当時の銅は建値が三百六十八円、市中価格が三百五十円で、これに相当する魚は塩いわしの三百四十八円。鉛はそれぞれ百六十七円、百六十円だが、安すぎて生ものでは比較するものがなく、ほしさめの百七十六円が見つかる程度。」こういう記事がある。  私もこれを見て改めて、大変だな、こう思いました。たばこだとか酒だとか、あるいは生鮮食料品等とメタルを比較していくということは必ずしも正しくはないわけですけれども、片一方は、先ほども事業団にもお伺いをいたしましたが、三段階探鉱をし、たくさんの国家資金やあるいは自己資金を投下して、まず鉱脈を見つけ、そしてそれを掘り出していき、製錬をし、そして市場に出していくわけですね。片一方にももちろん労力は要ります。魚をとるにはそれなりのコストがかかるわけでありますけれども、こうした魚とそれからメタル、非鉄金属とを比較しているわけです。大変だな、こう思う。そういう大変な過程を経ながら今日の日本経済を支えてきているわけであります。  それだけに、冒頭私が申し上げましたけれども、今日のレアメタルに対する備蓄も大切でありますが、これからの鉱業政策を進めていく上におきましても、こうした長い苦労を重ねていきながら、そして支える制度なりあるいは政策よろしきを得ないために鉱山が閉山をしていく、あるいは製錬所がつぶれていくということのないように、ぜひひとつ通産政策の中で対策を強化していただきたい。  最後に大臣の所見をお聞きをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  84. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その比較の仕方については、確かに疑問を呈しながらの、値段だけの比較ということでしょうが、漁業者の場合は、油をたいて海に出てとって帰ってきて、魚が売れるときに油代がコストになって転嫁できないという、いわゆる漁業とは何ぞや、海に出て魚をとって帰ってきて売る仕事です。それで生活できますか、いや、出たら欠損です、なぜですか、油代金が乗せられません、そういう背景が一方にあることを私は頭に描きまして、一方の方では、そのような精いっぱい買ってもらいたい値段の価格がその魚の価格であろう。一方においては、いまおっしゃったようなそういう金属について、採算の非常に苦しい中で半製品としても出してくる。その価格が魚と比較されるべきものであるかどうかは別にして、恐らくその記事の言わんとするところは、こういう価格ではとても企業として存続するのは無理だということの記述だったろうと想像いたします。そういうふうに比較されること、そのこと自体が、やはり大変苦しい現在の日本の鉱山の現象を示しておるということでありますから、先ほど来のいろいろの御意見を拝聴いたしながら、参考にしてまいりたいと思います。
  85. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、長田武士君。
  86. 長田武士

    ○長田委員 まず初めに、エネルギー庁長官にお尋ねをいたします。  今回、ようやく金属鉱業事業団法の一部の改正によりまして、五カ年計画で二カ月間の備蓄をやろうということで、私は大変評価するわけであります。  しかし、先日、米国務次官のシュナイダー氏がシンポジウムに参りまして、その席で、希少金属の供給が一たび断たれた場合、日本経済は消費量それから率から言うと、いまの努力では数日間しかもたないだろう、こういう警告をしておるわけであります。そういう点を考えますと、私は、お金もかかりますし大変な備蓄だろうとは思いますけれども、この六十日分で終わりじゃなくて、六十三年以降どういうふうな計画を持っていらっしゃるか、まずお尋ねをいたします。
  87. 豊島格

    ○豊島政府委員 今回六十日分の備蓄ということで、民間備蓄、共同備蓄、国家備蓄合わせて考えたわけでございますが、アメリカあたりは三年持っている、特にこれは戦略的な目的でございますが、一応そのほかの国々、たとえば現在民間備蓄を行っておりますスウェーデン、フランス等を考えますと、六十日ぐらいでございまして、最低このくらいということでございます。  それで、それ以降の問題につきましては、まあわれわれその間いろいろ勉強する機会もあるわけでございます。鉱種の問題を含めまして、一体それだけで足りるであろうかということは十分考えていかなくてはいけない。われわれとしては、六十日というのは一応最低のものである、こういうふうに考えておりますが、その後具体的にどのくらいに持っていくかということは、今後の検討課題にいたしたいと思っております。
  88. 長田武士

    ○長田委員 アメリカあたりは三年ということで、非常に力を入れていますわね。ヨーロッパ各国でもこの点は相当力を入れておるようであります。日本アメリカで五〇%くらい使っておる、そういう点を考えますと、私は、そのような後ろ向きの姿勢ではちょっと心もとないなという感じがするのですが、どうでしょう。
  89. 豊島格

    ○豊島政府委員 備蓄は、一たん緊急事態が起きたときには多ければ多いほどよろしいわけですけれども、その場合の社会的コストということも考えなくてはいけないわけで、決して六十日で私ども満足しているわけではございませんが、全体を考えてとりあえず六十日、その後のことにつきましては、必要があると私は思っておりますが、これは今後いろいろと国民のコンセンサスを得て、皆さんの理解を得てふやしていく、こういうことにせざるを得ないのではないかと思っておりますし、決して後ろ向きではないと思います。  それから、三年ということにつきましては、私もこの前シンポジウムに来ましたアメリカの識者といいますか、枢要なポストにある人に聞いたのですが、大体その三年ということを考えております根拠は、わりと軍事的な問題もあるようでございまして、三年かかれば代替物の開発ができるのではないか、こういうことでございまして、その場合のコストというのはある程度無視できるのではないかと思うのですが、われわれとしてはあくまでも経済安全保障ということでございまして、多々ますます弁ずでありますが、それと同時に、国民経済的な負担ということを考えていく必要があるのではないか。まあ三年、アメリカと同じということにはならないのではないか。私、これは若干私見でございますが、そのように感じております。
  90. 山中貞則

    ○山中国務大臣 資源エネルギー庁長官が私見ということを申し述べましたが、ちょっと役所としては、私見を述べるには長官としては少し出過ぎておりますので、その上に上げて、私の私見を上にかぶせておきたいと思うのです。  というのは、アメリカは石油も含めて明確なる戦略目標を持った戦時対戦、戦争に対処する意味の対戦ですね、対戦用のアメリカの備蓄の最低必要量を国家として絶対に確保するという強い裏づけがあるように思います。それに比べてわが国の場合は、いわゆる防衛庁の、急迫不正の侵害に対処するためにこのレアメタルを確保してもらいたいからと通産省が依頼を受けて備蓄したものではもちろんなく、それは、あるとするならば本来防衛予算でもって確保されるべきもので、私たちは民需の、しかも、なかなか民間でも手に入れがたいものについて国も腰を上げて力をおかししてあげましょうという、いわゆる民間の総合安全保障の立場の区別がはっきりとしておるということを申し添えておきたいと思うのです。
  91. 長田武士

    ○長田委員 たしかアメリカなんかは、第一次大戦から九十三品目について備蓄を始めておる。そういう点では歴史が違うことも事実であります。  その備蓄なんでございますけれども、非常に景気低迷しておりまして、民間、それから共同備蓄、さらには国家備蓄と、この三本柱で進めていくわけでありますけれども、この三本柱がスムーズに作動するかどうかということを非常に、私は民間備蓄の場合を申し上げるわけでありますけれども基礎素材産業が非常に不況でございますし、そういう力に利子補給だけで耐えられるかどうかということが非常に心配されるわけであります。この点はいかがでございましょうか。
  92. 豊島格

    ○豊島政府委員 確かに民間にとって備蓄ということは負担になるわけでございますが、それと同時に、やはり自分の仕事といいますか事業を遂行するために、レアメタルのように非常に供給が不安定のものにつきましてある程度の蓄えを持つということは、それ自身の利益にもなるわけでございまして、この点については非常に理解を示しておられるわけです。したがいまして、民間備蓄の十日分あるいは共同備蓄におきます将来二十五日分でございますが、その場合の三分の一負担ということにつきましては、私どもが従来いろいろと折衝した経緯で十分御理解を得ている、このように感じております。  ただ、いわゆる中小企業といいますか、そういうところにつきましては、民間備蓄をお願いするということでも、まあその日の経営が非常に苦しいのでなかなか無理だということで、この辺のところにつきましては、国家備蓄の中でその辺の負担といいますか、期待にはこたえたい、このように考えております。
  93. 長田武士

    ○長田委員 現実問題といたしまして、このレアメタルは、過去の経緯を見ますと、先ほどちょっと論議がございましたけれども、価格の変動が非常に激しいものであります。そういう意味で、一部ではこの国家備蓄を価格の安定だとか、需給が逼迫するとか、そういう事態においてこれを取り崩すという方法で価格の安定を図ったらどうだろうかとか、あるいは需給の逼迫にこたえていく、そういう要望が非常に強いようでありますが、その点はどうですか。
  94. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほどの後藤先生の御質問にもございましたのでお答え申し上げたわけでございますが、確かに民間の企業としては、価格の不安定是正のためにこれを利用できればそれにこしたことはないと思うわけですが、ただ、価格が若干上がったからといってこれを放出する、それでその価格が維持されている間は別に買い上げてもらわなくてもいいということで、そういうときに、備蓄が底をはたいているという状態になりますと、そういう状態で仮に部分的な戦争、あるいはストライキとか災害とかが起きて途絶すると、そこでまた一挙に値段が上がっちゃうということでございまして、私どもとしましては、基本としては、あくまでもこのレアメタルの特性に基づきましてその緊急な供給の障害というものに備えるという、もう少し大きな意味での対策ということに基本をしぼらざるを得ない。そうしませんと、その目的を達成できないわけでございます。  ただ、放出の時期につきましては、先ほど来の御質問にもございましたけれども、なぜ高くなるかということになりますと、それは需要がふえることもありましょうけれども、供給上いろいろな問題というのがそこにはあるんじゃないか。たとえば、ある特定の国が買い占めるというようなことが過去にあったような例もございまして、必ずしもそういうストライキとか戦争とかいうことじゃない、いろいろな国際的な情勢というものがございまして、その辺につきましては実態に即して考えていくという気持ちは十分持っております。そのようでなければならないと考えております。
  95. 長田武士

    ○長田委員 民間の買い付けは来月から始めるようですね。五十七年度はまだ買い付けはやっていないということでございますが、その点はどうですか。
  96. 豊島格

    ○豊島政府委員 五十七年度五鉱種十日分のうち、三品目はすでに買い付けを終了しておりますが、二品目だけまだおくれておりますので、それにつきまして買い付けるということでございまして、三分の二は終わっておるということでございます。
  97. 長田武士

    ○長田委員 日本がこのような備蓄をやるということになりますと、ある程度価格の押し上げにも作用するような感じを私は持つのです。買い付け方法というのは、民間とか共同備蓄あるいは国家備蓄と三者あるわけですけれども、一本で買い付けるのですか、それとも個々にやるのですか、あるいは鉱種の別はどうなんでしょうか。
  98. 豊島格

    ○豊島政府委員 買い付けの方法でございますが、民間備蓄につきましてはこれは民間自身が、企業が買い付けるといいますか、持っておるものを特殊金属備蓄協会に預託といいますか寄託いたしまして、それで備蓄協会の管理に入るわけでございます。したがって、そのこと自身は特別な買い付けというのは、買い付けがあるとすれば個々の企業、備蓄協会の会員たる企業になろうかと思います。  それから、共同備蓄と国家備蓄につきましては、当然のことながら金属鉱業事業団の責任でみずからの手で買うわけでございますが、その場合にも当然、買い方によって市況が高騰するというようなことがあってはならないわけでございまして、そういう買い付けの時期、買い付けの方法等につきましては、従来、経験のございます特殊金属備蓄協会等の知識経験あるいは業界のいろいろな方々の経験を参考にし、金属鉱業事業団の中に設けられます委員会において十分検討をした上でやる、こういうことになっております。
  99. 長田武士

    ○長田委員 国家備蓄を進める一方で、世界消費の、先ほどもちょっと申し上げましたけれどもアメリカ日本は五〇%ぐらいの消費をしておるのですね。そうなりますと、日米両国の協調がどうしても必要じゃなかろうか、そういうことで緊急時対策を検討されておるやに伺っておるのですが、その点どうでしょうか。
  100. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生御指摘のように、日本アメリカで五割ぐらいというのですが、この中で日本の方が大分少ないわけでございますが、いわゆる備蓄をするに当たりまして、あるいは放出をするに当たりまして、両者の行為がちぐはぐといいますか、逆の方向に働きますと非常に問題がある場合もあるんじゃないか。そういうことで世界的な情勢、そういうものにつきましては、情報交換を十分して効率的にいくように考えなくてはいけない、このように考えております。  ただ、備蓄の目的が、先ほど大臣も御指摘になりましたように、向こうの備蓄の中には軍事的なものも入っておるかと思います。したがって、アメリカ態度と同じ態度日本がやるという、そういう部門もあるかと思いますが、そうじゃない目的のものもございますので、その辺につきましては完全一体ということよりは、情報を交換し、その中において相互に利益になり、日本の自主的な態度ということが望まれるのじゃないか、そうしなければならないんじゃないか、このように考えております。
  101. 長田武士

    ○長田委員 次に、通産大臣にお尋ねします。  日米の協調体制の問題でございますけれども、これは日本アメリカが五分五分の立場で話を進めなくてはならないと私は考えるのです。しかし、アメリカは資本とか技術そして人間的なつながりを通しましてレアメタル生産国との関係をさらに強化する、そして備蓄計画を進めておる関係上、日本との協調体制といいますか、この体制が向こうは三年ですし、こちらは六十日でございますから、そういう点でうまくいくのかなという感じが私はするのですが、その点どうでしょうか。
  102. 山中貞則

    ○山中国務大臣 表向きは、文章と言葉では、うまくやりましょうということになると思うのです。しかし、実際にどうするかになると、私は、なかなか協調はできないんじゃないかな、大変むずかしいことだろうと思っています。
  103. 長田武士

    ○長田委員 次に、備蓄目標でございますけれどもアメリカ、フランス、スウェーデン、すでに国民経済を守る観点から、レアメタルを中心といたしまして大規模な国家備蓄を進めておるようでございます。また、西ドイツやイギリスにおきましても同様の備蓄を検討中である、このように報道されております。これらの国々に比べまして、供給構造というのは日本は非常に脆弱であると言わなくてはなりません。そういう意味で、さらに強力な備蓄の増強といいますか、これを進める必要があるんじゃないか。先ほどの質問と関連いたしますけれども、そういう点はどうお考えですか。
  104. 豊島格

    ○豊島政府委員 アメリカの三年は特別な事情でございますが、その他スウェーデン、フランス等は大体六十日ということでございます。ドイツは一年ぐらいの備蓄をやるという計画がございますが、これはまだ全然手についておらないというのが実情でございまして、私どもとしては、やはり六十日備蓄達成ということは何が何でも進めていかなくちゃいけないということでございますし、これは最低限であるという考えではございますが、これをどういうテンポで、それ以上どのように鉱種を広げていくかということにつきましてはさらに前向きに検討していきたい、このように考えております。
  105. 長田武士

    ○長田委員 次は、鉱種の選定の問題でございますけれども、産構審は、構想といたしましては初め十三鉱種、それがさらに十一になりまして、最終的には政府部内におけるところの調整で七鉱種に設定をされております。  しかし、対象から除かれたものはいずれも産業活動上どうしても必要なものも含まれておる、私はそういう感じがいたしております。加えて供給構造に不安要因があることでは、この対象鉱種とほとんど同様な問題を持っておる、そのように考えております。したがいまして、私は、鉱種についても七鉱種じゃなくて、もっと拡大しておいた方がいいのじゃないかという感じがいたしますけれども、どうでしょうか。
  106. 豊島格

    ○豊島政府委員 十三鉱種から十一鉱種に、要対策レアメタルは十三鉱種だとわれわれは考えておりますが、その中でタンタル、白金というのは一応ニオブとかパラジウムというものと代替が可能であるというような状況でございます。価格の問題が残りますが、そういうことで、特に緊急性から言うと若干薄いのじゃないかということで十一鉱種にしたわけでございます。  それでは十一鉱種からなぜ七鉱種に落ちたかということでございますが、これにつきましては、やはり緊急性もございますが、予算的な問題もございまして、一応特にその中でも七という、政情不安定といいますか、問題の地点に依存しておりますマンガン、バナジウムを、現在いたしております五鉱種、これは民間でいたしております五鉱種に加えたということでございます。私ども考え方としては、ニオブ、パラジウム、ストロンチウム、アンチモンという今回除かれましたものにつきましては、いろいろと財政的な問題もございまして、大蔵省とも話していかなければいけない問題ではございますが、これは機会を見て加えなければならないというふうには考えておるわけでございます。
  107. 長田武士

    ○長田委員 次に、去年から通産省が進めておりますところの深海底の熱水鉱床の問題でありますが、いま状況はどうなっておりましょうか。
  108. 豊島格

    ○豊島政府委員 熱水鉱床につきましては、将来の非鉄金属資源ということで非常に有望であるということでございますが、その賦存状況というのは、どこにあるかということにつきましてもまだ調査が十分行われてないということもございまして、そういう意味では、世界的にもまだ始まったばかりだということでございます。  通産省としましては、本年度からその開発の可能性を探るための予備調査に着手しておるということでございます。
  109. 長田武士

    ○長田委員 また、希少金属の中でも特に注目を集めておりますのにレアアースがありますね。ライターの石とかあるいはキドカラーのテレビあるいは蛍光灯等々に、非常に広い範囲で使われておるわけであります。本格的な用途開発がまだ始まったばかりでございますけれども、今後の用途開発、精製技術の開発についてはどう考えていらっしゃいますか。
  110. 植田守昭

    ○植田政府委員 お尋ねのレアアースは、ランタンとかスカンジウム等十七の元素の総称でございまして、希土類元素とも呼ばれているものでございます。一般的に、化学的あるいは電磁気的には活性を有しておりまして、光学ガラスとか特殊鋼等への添加物ということで使われておりますし、あるいはまた触媒等々の用途、あるいは最近では先端分野の材料としても使われておるということで、用途は非常に広がりつつあるわけでございます。  一方、製錬技術につきましては、この二十年来ぐらいから工業化されているわけでございますが、最近需要が多様化してきておりまして、あるいはまた高精度あるいは安価な製品が要求されておりまして、これに対応した製錬技術が要請されている、こういう状況にあるわけでございます。  現在、レアメタル企業は、これらにつきまして積極的に技術開発を行っているところでございますが、私どもといたしましても今後の重要な問題の一つといたしまして、必要なものにつきましては、たとえば研究助成等もしていかなければいけないだろうと考えております。すでに一部には工業技術院の助成制度によりまして、研究開発に入っているところもあるわけでございます。
  111. 長田武士

    ○長田委員 これは原産地は中国が多いようでございますが、どうですか。
  112. 植田守昭

    ○植田政府委員 中国も相当量産出いたします。
  113. 長田武士

    ○長田委員 それでは、最後に通産大臣にお尋ねをいたします。  レアメタルの確保については、国際的な協調体制といいますか、これが不可欠だろうと私は思います。現在、日米欧を中軸といたしまして、発展途上国も含めた全般的な協調の必要性について言われておりますが、この点については通産大臣、どうお考えでしょうか。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これらの鉱物を有する国は、どちらかというと先進工業国に余りない。私は、アフリカのジンバブエの独立式典に特派大使で参りましたが、ああいうアフリカの南の方、ジンバブエは出口のない内陸国でもありますけれども、ニッケル等相当優秀なものを持ってはいる。しかし、それを開発し、探鉱し、あるいは製錬するところまではとてもむずかしい、どこか買ってくれる国はないかなというような相談を受けたこともありますが、そういうふうに広く、ある意味においてはこちらの方の希望による買い付けであっても、発展途上国ないしアフリカ大陸のような国々等にとっては、そのこと自体が国の再建への一つの石となるというような受けとめ方をしてくれる国もある。  そういうことを考えますと、やはり、ただいま中国の例も出ましたが、それぞれのレアメタルの性質によって埋蔵国がばらばらだと思うのですけれども、やはり日本は欲しいからといって武力で持ってくる国ではなくなっているわけでありますから、平和的な交渉、そして日本が必要とし、相手の国もまたそれを売ることによって自分たちのものになる、国家発展のための計画にも組み入れられるというような構想で、やはり広い目と多角的な交渉手段と実情の把握に対する対応というものが今後求められていくのではないかという実感を持っております。
  115. 長田武士

    ○長田委員 終わります。
  116. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、中野寛成君。
  117. 中野寛成

    中野(寛)委員 先ほど来繰り返して質問が行われておりますが、この備蓄対象鉱種を七品目とした理由等はそれなりにわかりました。  今後の非鉄金属も含めた備蓄品目の展望について、もう一度お聞きをしたいと思います。
  118. 豊島格

    ○豊島政府委員 いわゆるレアメタルの備蓄という点につきましては、要対策鉱種十三のうち十一ということで予算要求したわけでございますが、その中で特に、予算上財源もございまして、今回は七品目で出発したということでございます。したがいまして、鉱種につきましては、今回削られた四鉱種につきまして拡大していくという必要性はわれわれとして感じておるわけでございます。  それ以外のものについてどうなるかといいますと、希少金属というのは、まだよく用途もわからないようなものがございまして、しかも供給構造が脆弱というのがございまして、そういう意味で将来ふえていくということは当然考えられますが、いま現に利用されているものの中では十一品目ぐらい最低限やるということじゃないかと思います。  そこで、鉱種を広げまして、レアメタルじゃなくて非鉄金属一般というただいまの御質問であったかと思いますが、この問題につきましては、たとえばアメリカあたりでは銅、鉛、それから先ほど議論になりましたチタンというのもございますが、いわゆる産業用あるいは民生安定用ということを念頭に置き、かつリサイクルの問題、たとえば銅でありますとリサイクルする、あるいは量の問題、あるいは今後の技術開発で解決できる問題等々を考えますと、当面の問題としては、レアメタルの十一鉱種というのが一つ目標ではなかろうか、このように感じております。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  119. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、備蓄物資の購入、そして放出、これをどのような判断で行っていくのか。  また、放出する際には需給のバランスというものが十分考慮されなければいけないと思うわけでありますけれども、この辺の判断基準について、また方針についてお聞きしたいと思います。
  120. 豊島格

    ○豊島政府委員 今回の備蓄の目的は、緊急的な供給障害に備えるということでございます。したがいまして、備蓄のための購入というのは計画的に五カ年で六十日分を積み立てる、いわゆる計画的に着実にやっていかなければいけない、こういうことでございます。ただ、市況もございまして、どういう時期に、どういう方法で買うかということにつきましては、このための特別な委員会といいますか、そういうものを通じて、学識経験者その他関連者の意向も十分参考にして決めていくということになろうかと思います。したがって、個々の具体的な買い付け方法についてはいろいろ弾力的でありますが、計画的に買い上げていく、こういうことになると思います。  それから、放出でございますが、放出につきましては、供給に障害が起こったということによって経済的ないろいろな混乱が起こる、これを避けるために放出するわけでございます。したがいまして、三段階に分けて申しますと、民間備蓄のときには非常に短期事態が起こるというときにそれを解除するといいますか、備蓄したものを解除する。それから、共同備蓄のときは中期的な問題ということを考えております。それから、国家備蓄の場合には、たとえば一年とまるというわけじゃございませんが、そういうふうに長期にわたってとまる可能性があるということでございまして、そういう状態対応して放出していく、こういうことになろうかと思います。  したがいまして、備蓄する場合に、いま非常に余っているからどんどん積む、それからちょっと足らなくなったらこれを放出して市場価格を冷やす、そういういわゆる価格安定のためのバッファーストックという運用はいたさないというのがこの制度の趣旨に沿ったものであろうかと思います。
  121. 中野寛成

    中野(寛)委員 その放出するという事態が生じたときに配慮しなければいけないのは、中小企業の問題ですね。大きいところは大きいところで、当然国家的な意味での影響というものを考えて配慮しなければいけませんけれども中小企業は自力ではどうしようもないということになってくる、これは一番忘れてはならない分野だと思うのですね。これについてはどうお考えですか。
  122. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほど申しました備蓄については三段階ございまして、民間の備蓄十日分というのは民間の負担でやるわけでございます。それから、共同備蓄の二十五日分というのは民間が利子の三分の一を負担するということでございまして、そういうものにつきましてはそれぞれの情勢に応じて、その費用を負担しお方が受益になるというような放出のされ方になろうかと思うわけでございますが、中小企業の場合におきましては、そういうみずから民間負担で備蓄するあるいはその費用の一部を負担して共同備蓄するということはなかなか実情に合わないということでございます。したがいまして、国家備蓄を放出する場合の条件というのは相当長期にわたるということでございますが、先ほど申しました純粋民間備蓄あるいは共同備蓄の備えのない中小企業に対しましては、それぞれ民間備蓄あるいは共同備蓄している場合に、大企業が放出の恩恵を受けるというような場合であっても国家備蓄を使って中小企業に役立てる、このような運用をしたいと考えております。
  123. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、マンガンとかタングステンというのは国内でも結構生産をされるわけであります。国家備蓄との絡みで国内中小鉱山の存続についてどういうふうにお考えになっておられるか。輸入した方が安い、国内生産のものは高い、いろいろなことがありますけれども、これは総合的な安全保障の見地から、たとえばそれだけではない、輸入するものの価格についての駆け引き上の問題も含めまして、やはり国内生産というのも大事にしなければいけないわけですね。そういう方針についてお聞きしたいのと、それから国内生産されたこれらマンガン、タングステン等を優先的に買い上げていくというふうなことについてのお考えもお持ちかどうか、お聞きしたいと思います。
  124. 豊島格

    ○豊島政府委員 レアメタルはほとんど国内の生産はないわけでございますが、物によってはあるパーセンテージを持っておるものもございまして、備蓄をするというのは外国からの供給途絶に対処する措置でございますので、当然国内にある資源は大事にしなくちゃいけない、こういうふうに考えております。したがいまして、国の税金を使ってやるわけでございますので、どんなに高くても国内を優先するというわけにはいかないと思いますが、一定の基準のもとにおいて国内鉱山のことは非常に配慮するということは当然のことかと思います。どんなに高くてもということになりますといろいろ問題があると思いますが、国内鉱山が大事だということはわれわれとして十分認識しておるつもりでございます。  それから、いわゆる海外鉱石を買いまして国内で製錬するということがその次の問題かと思いますが、先般、緊急輸入対策として行われた希少金属五品目の備蓄に当たりましても、一応鉱石は海外から買うけれども、これは原則国内製錬したものを中心に買っておるということでございまして、そういう意味で国内製錬業の立場も十分配慮してこの制度は運用されるべきであると思っております。ただ、経済性の問題というのは全く無視するわけにはいかないことは当然だと思います。
  125. 中野寛成

    中野(寛)委員 それから、事業団の方で大変積極的に取り組んでおられると思うのですが、備蓄とあわせてレアメタルの自主開発、これをやはり今後とも積極的に進めていかなければならぬと思うのです。今後の見通しも含めて、この自主開発について事業団の方からお聞きをしたいと思います。
  126. 西家正起

    ○西家参考人 いままでもレアメタルにつきまして海外で地質構造調査を若干やってまいりましたが、残念ながらまだ成果が上がっておりません。しかし、今後とも、その点につきましては一段と努力をしてまいりたいと考えております。
  127. 中野寛成

    中野(寛)委員 最近のこの開発状況と将来の展望、これは当たり外れがあったりいろいろ大変でございますけれども、現在の展望というか見通し、そういうものを若干お聞かせください。
  128. 西家正起

    ○西家参考人 世界的に見ますと、やはり日本から大変、どう言いますか、皮肉にも一番遠い南アフリカとかあるいはブラジルのようなところにたくさんございまして、開発も行われております。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、私たち事業団でいま私が、これはまだ私の頭の中にあるわけでございますけれども、考えておりますのは、やはり環太平洋地域にもかなり調査をすればあるのじゃないか。私たちの事業団のやるのは、実際は企業の探鉱とは違いまして、その以前の段階の調査でございますので、ぜひともそういう調査をして、いいのがあれば企業の方に引き継ぐ、こういうスタイルでございますので、私といたしましては環太平洋地域にいま頭は相当あるわけでございますが、しかし、それに限らず全世界の情報を集めまして、やるべきところにはやりたいというふうに考えております。
  129. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、特定中小鉱山振興総合対策というのが実施されようとしているわけであります。これについては私も評価をしたいと思うわけでありますけれども、しかし、実際上「特定」と名がつくわけです。日本の鉱山というのは特定をつけなくても、まあ、まずみんな中小だと言っても過言でないと思うのですね。そして、この対象になっているのが百人未満の鉱山、こういうことになっているのですが、この重要性等々から考えますと、特定とかなんとかというように一々限定する必要はないのではないか。むしろ、現在の鉱山の経営実態を十分把握された上で、これに現実的に運営の充実や強化を図っていくという発展的な考え方が必要ではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。何かやり方が、大阪流に言うとみみっちいような気がするのですが、いかがでございましょうか。
  130. 豊島格

    ○豊島政府委員 中小鉱山と言いまして、中小企業につきましては従来から二分の一の補助で探鉱を助成してきたわけでございまして、これは幅広くやっておったわけでございます。大企業につきましては、御承知のいわゆる融資制度ということで、ここで助成の差をつけておるわけですが、特に小さい鉱山におきましては、いわゆる経営面あるいは技術面で、なかなか今後進んでいくのには不十分である、いわゆる基盤が脆弱であるということで、さらに特別の配慮をして、そういう面での経営指導、技術指導を充実させていこうということでございまして、名前として「特定」ということで、あの企業とこの企業ということではございませんで、山の経営の性格に応じてそのような仕分けをしたわけでございます。予算上の名前としまして、いま先生御指摘のように、何か特定というのはおかしいんじゃないかということでございますが、予算の性格としてそういう百人未満の特に脆弱なものに力を入れた、こういう趣旨でございますので、御理解いただきたいと思います。
  131. 中野寛成

    中野(寛)委員 ひとつその運用面において一層拡大強化を図っていく、そういう形で御努力をいただきたいと思います。  次に進みますが、鉱業審議会から通産大臣あてに「今後の蓄積鉱害対策のあり方について」ということで建議が出されているわけであります。今後の具体的な対応についてお聞かせをいただきたいと思います。
  132. 福原元一

    ○福原政府委員 昨年の八月二十七日でございますが、鉱業審議会から建議という形で、蓄積鉱害の残存工事に対して御建議をいただきました。  その内容は、蓄積問題にかかわる現行の対策の体系を維持するということ、二番目が、特措法に基づきます基本方針、これが十年間、今年度で切れますので、さらにこれを延長するということ、三番目が、技術開発をさらに強化せよという三点であったと存じます。  通産省といたしましては、この建議を踏まえまして、基本方針をさらに十年間改正、延長するということで現在作業中でございますが、十年間延長いたしまして、事業の計画的解消を図るとともに、坑廃水処理負荷軽減等のための鉱害防止技術開発、この面につきましても、金属鉱業事業団等を通じまして強化させてまいりたい、このように考えております。
  133. 中野寛成

    中野(寛)委員 この休廃止鉱山の坑廃水処理費補助金というのがあるんですが、この休廃止鉱山の坑廃水の処理というのはなかなか大変で、この処理義務についても期間はむしろもう永久に、半永久的にということもございますし、ひとつこの補助金の補助率のアップ、それからまた処理義務を一定の期間にある程度もう決めていくというふうなことが必要なのではないだろうかという感じがしているわけです。そう簡単に決めることについては問題も残るかと思うわけでありますけれども、しかし、現在の処理義務の内容が鉱業権者に課せられているわけです。これはやはり新たな鉱山開発の意欲を失わしめるというふうなこともあるのではないだろうか。そう考えますときに、ここにやはり、たとえば備蓄について国家が関与していくということもありますが、これらの坑廃水の処理についての国の関与といいますか、あり方、こういうものについてもっと内容を充実させていく、こういうことも必要ではないだろうか。単に営業としてやっているんだから後の処理もやりなさい、これでは済まない感じがするんですが、いかがでしょうか。
  134. 福原元一

    ○福原政府委員 休廃止鉱山の坑廃水処理の補助金につきましては補助率をさらに引き上げられないかという御質問でございますが、現在、坑廃水処理につきましては、鉱害防止義務者が存在する鉱山としない鉱山とに分けまして、義務者が存在しない鉱山につきましては地方公共団体が四分の一負担いたしまして、残り四分の三を国が補助をするという形で実施しておるわけでございます。さらに、有資力の鉱害防止義務者が存在する場合には、これにつきましては原則的に長期の低利融資をもって鉱業権者が実施しておるわけでございます。さらに、五十六年に、義務者が存在いたしましても、汚染された坑廃水の中で自然に汚染されたもの、それからその鉱業権者が受け継ぐ以前の鉱業権者が汚染させたもの、これを現在の鉱業権者に負担させるのは酷ではないかという議論がございまして、これにつきましては地方公共団体四分の一、国が四分の三補助をするというふうに改正した経緯がございます。残りの、現在の鉱業権者が自分の採掘によって汚染された分につきましては、申し上げましたように、長期低利の融資をもって行っておるわけでございます。  なお、鉱害防止義務者が不存在の場合の坑廃水処理につきましては、昭和五十年から、それまでは三分の一が地方公共団体の負担で国が三分の二でございましたが、申し上げましたように、地方公共団体が四分の一、国が四分の三ということで補助率を上げた経緯がございます。  それから、さらに、休廃止鉱山の坑廃水処理を現在の鉱業権者に未来永劫にやらせるのは酷ではないかという二番目の御質問かと思いますが、これにつきましては、鉱害を発生するおそれのある坑廃水が流れてくる間は処理をせざるを得ないというふうに私どもは考えます。本来は、このために恒久的な工事をすることによって水が出ないようにするということが一番いいわけでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、技術開発の面におきまして努力をしておるわけでございますが、なおその技術が完成するまでの間は、PPPの原則というものもございます。現在の有資格者である鉱害防止責任者にやっていただかざるを得ないというのが現状でございます。本件につきましては鉱業審議会でも、期間を限るという問題については非常にむずかしい問題である、さらに慎重な検討を必要とするという御建議をいただいております。私ども、さらに慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  135. 中野寛成

    中野(寛)委員 最後に、ちょっと本論と外れるかもしれませんが、大臣にお聞きしたいと思います。  原油値下げによる利益還元、これについていろいろ言われているわけですけれども、たとえば新聞報道でも、通産省資源エネルギー庁内に、電力業界に対し、原油価格が下がった場合に生じる利益をエネルギーコストで苦しむアルミ、非鉄など電力多消費型産業に何らかの形で還元するというふうなことを要請する声が強まってきた、こういう感じで書かれているわけであります。素材産業への還元、実はこれは本来大変強く望まれていることではありますけれども、いろいろ条件として厳しい内容がある、こういうふうに言われているわけであります。この素材産業もいまのレアメタルの備蓄等々と同じように、大変日本にとって条件は厳しい、しかしこれをおろそかにはできないという、同じ立場にあると言っても過言ではないと思うのです。これらのことについてどのようにお考えでしょうか、お願いします。
  136. 山中貞則

    ○山中国務大臣 通産省のどこで、どの段階で、どの程度の議論をしているのか知りませんが、議論の過程が出たんだと思います。  私としては、きのう来申し上げておりますように、全体の諸指標を全部並べまして、そして政策としてどのような展開をしていくかという結論を出そうと思っていますが、やはり国民生活全体にその恩典が及ぶような考え方が第一義的であるべきこと。それから第二義的には、石油価格高騰のゆえに苦しんでおり、石油価格が仮に下落した場合においては、その恩典を受けることによって再活性化するというものに新しい未来を展望させるように対処すべきもの。たとえば、いまおっしゃいました基礎素材産業の中で、電力の比べようもない割り高によってこうなってしまっておるものについては、別途法律は出す予定でございますが、それに対して電力を特別にやることまで、業種別に電力料金を変えるかどうか、そこらのところも前例が全くないわけじゃありませんが、全体の検討の中でそういうことも可能であるならば取り上げてもいい一つ要素と思っていますが、いまのところ通産省としての石油の値下がりに伴う諸施策について、ぽつぽつとやっていますが、それが外に出ましても、通産省全体がそう決まったということを私が責任持って御発表申し上げるまではしばらく時間をいただきたいと思います。
  137. 中野寛成

    中野(寛)委員 終わります。
  138. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、小林政子君。
  139. 小林政子

    ○小林(政)委員 エネルギー庁長官にまずお伺いをいたしたいと思いますけれども、今回、鉱業事業団法の一部を改正する法律案の目的は、ここにも書かれておりますように、ニッケルだとかクロム、タングステン、コバルトといったようないわゆる希少金属、これを七種類対象として、民間備蓄、共同備蓄、国家備蓄、こういったことをあわせて五十八年度から毎年十二日分の備蓄を行い、六十二年度には六十日分の備蓄をしようとしているものでございますし、また御説明の中には、希少金属というものは鉄鋼あるいはまた機械工具、そして電子製品など幅広い製品に使われておりますと述べています。したがって、わが国の産業活動、国民生活にとってこれは大変必要度の高いものである、このようなことも言われておりますけれども、しかし、実際に希少金属の需給の逼迫度あるいはまた価格の乱高下というようなことも、私ども調べてみますと、予想されていないのですね。こうした時期に何で備蓄をやらなければならないのか、この点についてまず長官の御見解を伺いたいと思います。
  140. 豊島格

    ○豊島政府委員 希少金属につきましては、先生御引用なさいましたところにもございますが、要するに非常に幅広く国民生活あるいは産業のためのいわばビタミンといいますか、そういうものに相当するもので、なくてはならないものである、しかもそれがほとんど海外に依存しておって、しかもその供給先は非常にいろいろな意味で不安定なものがある。過去においても長いものは一年からとまったものがある、こういう情勢でございます。一方、現在希少金属の市況といいますか需給関係はどうかというと、世界的な不況もございまして、たまたま緩んでおるわけでございます。したがって、価格もわりと低いところにあるという現実はそのとおりだと思います。  しかし、こういう状況というのは、何にもない、いわゆる突然緊急事態の生じない中における状況でございまして、いつ何どき、いわゆる辺地に戦争が起こる、あるいは災害が起こる、あるいは政変が起こるということになりますと、いつでもとまってしまう、そういう危険性は非常にはらんでおるわけでございまして、現在たまたま世界的な景気が悪いということで需要が少しスローダウンしているということで、安心をしておれる実態では全然ない。実際そういう事態が生じてから備蓄しようとしても、そういうのでは遅過ぎるわけでございますから、そういう全体の世界の情勢の中においても万一の場合に備えるということで、着実にできるだけ早く備蓄を達成しなければいけない、このように考えております。
  141. 小林政子

    ○小林(政)委員 今回の備蓄の対象として挙げられております七鉱種のうち、たとえばコバルトで見てみますと、五十六年度の消費量は千五百三十七トン、在庫量は七百九十三トンですから、これは実に百八十八日分も在庫があるということになっております。価格も五十四年から五十七年の十二月までの比較をしてみますと、千三百六十四万円が六百七十五万円に値下がりをしているのです。ニッケル、クロムも、約百日から百六十日分も在庫を抱えているという状況です。  私は、こうした実態を見たときに、備蓄の中身は、不況下で過剰在庫を抱えている製錬、製鋼、こうした大きな企業の負担を結局は肩がわりをするようなものではないだろうか、このように思うわけでございますけれども、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  142. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま御指摘の在庫でございますが、企業として通常二カ月分くらいは持っているということがランニングストックとして必要でございます。しかし、現在こういう経済情勢の悪い状況でございますから、意図せざる在庫というのがそれに積み増しをしている。いま御指摘の数字と引き比べて現状どうかという細かいことは別としまして、そういう意図せざる在庫が若干上乗せされているということはそのとおりでございます。  しからば、そういう状態において備蓄をしても、企業の過剰な在庫を肩がわりするだけではないか、こういう御指摘かと存じますが、この辺のところは、六十日を五年かかってやっていくわけでございまして、そのうちに需要が出てくれば当然民間の在庫も減るということもございますし、それから国の在庫、国家備蓄、共同備蓄あるいは民間備蓄という場合にも、その取り崩しにつきましては自由がきかないわけでございまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、供給途絶のときに初めてその備蓄が放出される。これは短期中期長期と分かれて需要が違うわけでございます。したがって、本来民間が持っておるべき備蓄を、国家備蓄あるいは共同備蓄あるいは民間備蓄で預けてしまいますと、それを自分の都合で必要なときに出すというわけにはまいらない、そういう制度になっておりますので、民間の企業としてはそういう必要な在庫を国家備蓄あるいは共同備蓄の方へ回してしまう、あるいは民間備蓄を含めまして、そちらへ回してしまうということは、現実として起こらないというふうにわれわれは考えております。
  143. 小林政子

    ○小林(政)委員 これは大臣にお答えいただきたいと思いますけれども政府保証の枠が結局今回は六十日の備蓄ということになっておりますが、これだけで経費がどのくらいかかるかということは予算書を見ればおわかりいただけると思いますけれども、六百億円ですね。いま財政が大変緊迫をしている。福祉だとか教育だとか、こういったものが次から次へと大幅な切り下げが行われている。こういうときに、幾ら企業が負担が苦しいとか、あるいはまた備蓄の負担が困難であるというようなことが言われても、こうしたものについては当然、企業にある程度負担をしてもらうということはやはり原則じゃないだろうか、私はこのように思うわけですけれども大臣の見解を伺いたいと思います。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 経済原則から言えば、自由主義経済では当然そうだと思います。もうけも追求するがリスクも自分で負担をするという原則だと思うのですが、その前例を破ったのが石油国家備蓄だと思うのです。石油についてはもう説明いたしませんが、これは全国民の日常生活の末端まで石油の中に入ってしまった生活になっておりますから、石油なしの生活時代に戻れといっても戻れない社会生活構造の仕組みになってしまっておる。そこで、いろいろ議論はありましたものの、これも国家備蓄というものが優先して認められました。  そこで、今回は何鉱種が七鉱種になったとかなんとかという問題の前に、大蔵省としては予算編成権があるわけでありますから、国策に絶対にかなう金でなければ出しません。したがって、いまおっしゃったようなことも含めて、なぜ国家備蓄までしなければならないのですか、民間備蓄についてやっているのだし、それをめんどうを見ていけばいいじゃないですかという話があったのですが、この希少金属の分布状況あるいはそれの入手状況等、さらにまた、それがなければ今度は国民生活の、石油と別な面において相当組み込まれておるいろいろな産業の製品というものが一斉に心臓麻痺状態になって事ではないかという、いろいろと大蔵省とのやりとりの中で、鉱種もさしあたり、ではこの程度でというようなこともありましたが、まずは国家備蓄までする必要があるかどうかというのが一番の議論でありました。  しかし、最終的には、やはり何もないときにこそ備えておくべきものであろう。しかし、何もないときだと民間はそれを備蓄しようとしない。したがって、何もないときに何かあった場合に備えるのが国家の総合安全保障に対する責任の一環なんだからということで、最終的に合意を得て、しかもそれを全部国家備蓄で認めるのではなくして、まあひとつ試みに国家備蓄でこの程度やってみてくださいよと言われたのがいまの程度のものでございまして、これは金額の比べ方はいろいろあると思います。それだったら住宅が幾ら建つとか、教科書無償なんか問題外じゃないかとか、比べようはあると思うのですが、やはりわが国の高度な産業国家になってしまっている、よくも悪くもなっている現状では、私どもは、レアメタルについてやはり国家備蓄がある程度必要である。大蔵省もそれを最終的に認めて、政府としてはそれを含めた予算にゴーサインを出して、そして皆様方に審議をお願いしている次第でございます。
  145. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、特殊金属の備蓄というものについて、中小業者の関係についてひとつ伺っておきたいと思います。  この特殊金属備蓄協会の会員名簿というのがここにありまして、これを見てみますと、非常に大きな企業が会員になっているのですね。たとえば、新日鉄だとか、あるいはまた日本鋼管だとか、あるいはまた住友金属鉱山株式会社だとか、これは製錬会社ですけれども、こういった比較的大きな企業、大口需要者と申しますか、製錬会社で備蓄協会がつくられております。そうすると、民間備蓄とか共同備蓄を通じて中小企業のユーザーの供給の確保ということを考える場合、これがどうなるのだろうか、保障がされるのかどうか、協会に加盟している大手がやはり優先することになってしまうのではないだろうか、このように思いますし、国家備蓄の分について中小ユーザーに優先的に放出をされることになっているのかどうなのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ですから、備蓄の一番長いものは中小、零細と言うのは失礼でありますが、中小企業等で企業負担のできにくいもの、こういう人たちの方を国家備蓄でということも、長官から説明いたしておりますとおり、その配慮はいたしてございます。  ただ、私は累次、ずっと質問と答えを聞いておりますと、長官の説明は終始一貫しておるのでございますから、やはり国家備蓄を取り崩す際の基準と申しますか、客観的な、こういう場合に、こういう形で、こういう取り崩しをする、また、備蓄の仕方についてもいま説明しておりますが、そういう構想に対する基準を明らかにした方がいいと私もちょっと感じましたので、そこらのことを部内で少し検討してみます。
  147. 小林政子

    ○小林(政)委員 次に、事業団の理事長さんにお伺いをいたします。  やはり金属鉱業の分野で実際にお仕事をされていらっしゃる方ですから、非常にお詳しいだろうというふうに思っておりますけれども、この備蓄される希少金属を実際に放出するとき、緊急の場合とか、あるいはどのような条件のときに、たとえば、具体的に言いますと、価格が非常に安いときに備蓄をしたものがそのまま安い価格で放出をされるのか。そういう点も含めて、一体どんな条件で、どのような場合に緊急に放出するということになるのでしょうか、この点についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  148. 西家正起

    ○西家参考人 具体的なやり方につきましては、大臣長官のおっしゃいました方針に従いまして、事業団の中でただいま国家備蓄実施委員会というものをつくりまして、二月一日に第一回を開催いたしました。そこで、購入方法とか購入時期とか、あるいは保管の方法とか、あるいは、ただいま先生おっしゃいました放出の時期とか方法ということにつきまして、具体的なスキームはそこで検討することにいたしております。  方針といたしましては、先ほど来、大臣長官おっしゃっている方針にのっとってやるわけでございます。  ただ、これは私の経験から申しまして、先生おっしゃいました放出というのは、これは国家備蓄の場合そう簡単には放出しないだろうと思いますが、放出するときは非常に逼迫しているときでございますので、恐らく購入するときよりは相当値段が上がっているだろうと思います。そこで、先ほど豊島長官もおっしゃいましたように、そういう時価を基準として、それを勘案した線で値段が決まるのじゃなかろうか、そういうように私は個人的には考えております。
  149. 小林政子

    ○小林(政)委員 具体的にはまだおわかりにならないということでしょうか。検討してみるということなんですか。
  150. 西家正起

    ○西家参考人 ただいま私、個人的な私見を申し上げて恐縮でございましたが、実際には委員会で検討いたしまして、実際に始めますのはこの九月以降になりますので、それまでには成案を得たいと思っております。
  151. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、結局最終の製品となって国民の手にこれが届く場合に、値段が暴騰したときは、そのまま高い値段で放出されてしまうのではないだろうか、このようにも思われるわけですし、本当に零細の中小企業に国家備蓄というものがメリットがあるのかないのか、こういうことについても私は大臣からお答えいただきたいと思うのです。その点について非常に心配でございますので、お伺いいたしておきたいと思います。
  152. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先ほど私が申しましたのも、そのようなことが明確でなくて、いわゆる国家備蓄という国民の税金で備蓄をさせてもらうわけでございますから、どのような形で備蓄をし、どのようなときに、どのような方法でもって、どのような価格で出すのだというような、いま理事長はスキームと言ったようでありますが、これは私のところまでぜひ上げさせまして、そして、これは関係者が広く知ればいいのでしょうが、資料として公のものにするということが必要だろうと思います。  それと、まだ私はそこまで得心はしておりませんが、現象として述べていますけれども、そういう必要な場合には多分市価が高くなっているときであろうから、高いものになると思うということになりますと、この国家備蓄の仕組みは、売り渡すときには必ず国がもうけるという結果になる仕組みを前提にしておるということにもとられかねませんし、その理屈だったらそうなるわけですね。それは、国家備蓄の場合には価格安定操作のそういう仕組みはとらないと言いましたけれども、しかし、そこにしかるべき配慮というものが働いて産業活動がスムーズにいくという、いわゆる外国で起こったことによって国際市況が高くなっているから、したがってそれに見合った金額で出すのだという単純な計算は、この際、国家備蓄でございますから、民間備蓄なら別として、思想の統一も要るようであります。そこらのところで、私の手元で公にするスキームづくりならスキームづくりをしたい、そう思います。
  153. 小林政子

    ○小林(政)委員 最後に、備蓄の大義名分である経済安全保障について一言お伺いをいたしておきたいと思います。  この考え方については、資源のない国、日本、この日本が今後やはり国際的にも多くの国々から信頼され、そして対等平等の貿易によって、必要なものを、必要なときに、必要なだけ獲得することができるというようなことが大原則になるんじゃないだろうか、私はこのように思っております。  そこで、この前私は渡部委員長と御一緒にOPECへ行ってまいりました。そのときOPECの本部で、日本の備蓄戦略というものは本当にOPEC全体を敵視しておるんじゃないかという意味の発言があったわけです。私は、このことをいましみじみと思い出しているのですけれども、備蓄というのは、やはり西側諸国がIEAか何かの中で強制されて九十日備蓄だとか、先ほど大臣もおっしゃったけれども日本はこういった中でやっておるわけですね。ですから、こういったやり方ではなくて、やはり国際的に開かれた、対等平等の貿易を通じてやっていくのが原則ではなかろうか、このように思うわけです。したがって、こういった方向に沿ってこれからも資源外交を進めていかれるのかどうなのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  154. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先ほども私は油の問題で、経済外交は、私たちは平和的な手段でしか原料入手はできないのだから、したがって、いま考えたら、相手の産油国の人々は、OPECという立場の国際カルテルが事実上崩壊の危機に瀕しておることによっていま困っておるのだ、その困っておる相手方の心情も理解してあげて、いまここでスポット物、安物あさりをどんどん日本がやるようなことは慎みなさいということを私は言っているということでおわかりのように、相手国の立場、日本にとってそれは大変すばらしいと思うことでも、相手方にとってはそれはどういうことなのかということは、これから経済外交を平和でやらなければならない日本としては絶えず念頭に置いてやらなければならないことである、しみじみそう思います。
  155. 小林政子

    ○小林(政)委員 以上で終わります。
  156. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、石原健太郎君。
  157. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 備蓄をするということは、放出をすることがあるからこそされることだと思うのです。その放出ということの具体的な方法とかスキームというものはこれから検討するということでは、何かせっかく審議しても半分の審議、中途半端な審議しかできないと思うのです。しかも、この法案を改正するに際しては、何もきのう、おとといあたり急に思いついたことではなくて、適当な期間はあったかと思うのです。どうしてこの法案の改正を提案するまでにそういったところまで煮詰められていなかったのか、その辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  158. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この法案は早い方でございまして、ほかの常任委員会でもいっぱいある法律案が、所管大臣がつい先日まで予算委員会の総括までくぎづけにされておるわけでありますから、一番不満を言っているのは大蔵委員会なんかで、毎晩夜審議をしているわけです。ですから、私どもの方はこれで提案は遅くはなかったと思うのです。  それから、スキーム等については、先ほど来、このままの口頭だけの速記録だけじゃいけないので、私の手元まで上げてきちんとしたものにして、国民お金で国家備蓄をさせていただきましたものの仕組みはこういうことでやりますということを明らかにしたものにしようということを申し上げているわけでございまして、おくれたというのは、法律案を提案しないで、国会の御意向もいろいろあるわけですから、聞かないで勝手に一方的につくって、これでやるのだというやり方は、かえって政府としては権力的な姿ではないかと考えております。
  159. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 私がおくれたと言うのは、スキームづくりがなぜできていなかったかということ、そっちの方がなぜおくれたかということを申し上げたのです。
  160. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは答弁しているわけです、理事長も長官も。ただ、言葉と速記録だけでは、ここにおられる方だけがおわかりいただいたということになりかねない。そこで、私どもで、そういうものは国のお金を使って国家備蓄をさせていただくのだから、いま申しましたことを整理して、たとえば、必ず買った値段よりか高くなる仕組みと言うと、この備蓄は金がもうかるのかということにもなりますから、そこには国家備蓄だから政策が働かなければいかぬという新しい私の考え方をまた入れながら、そういうスキームをつくっていくことで一応はやっているわけです。しかし、公のものとしてオーソライズされたものではないのだ、これから具体的に最終案を詰めますということを言っているわけです。
  161. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、きょうのいままでいろいろあった発言、そういう中身も十分反映させてつくっていく、そういう趣旨でおくれたというふうに解釈してよろしいのですか。
  162. 山中貞則

    ○山中国務大臣 趣旨でおくれたのではないのですね。皆様方の、各党代表の御意見を聞きながら、なるほどなと思う点は新しい考え方として、与党、野党の別なしに、国民お金ですから取り上げて、客観、公正そして妥当な内容にしなければならない。それぐらいの謙虚さはこの私でも持っております。
  163. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、民間、共同、国家、三つの形態で備蓄が行われて、先ほどの御答弁では、放出する際の価格にも多少の変動が出てくるだろうというようなことを言われておりましたけれども、じゃまず一番安く放出できるものから放出していってほしい、そういったことを私としては御要望申し上げますけれども……。
  164. 豊島格

    ○豊島政府委員 民間備蓄、共同備蓄それから国家備蓄とございまして、民間備蓄につきましては、これは民間が自分の負担でやっておるわけで、ただそれを使う時期について特殊金属備蓄協会が管理をしておるということでございます。したがって、備蓄の放出価格というものは一応ないわけでございます。自分の所有権のあるものを預けておいて、ただそのときに取り戻して使うということでございますので、これは放出価格はない。だから、それは一番軽い供給障害のときだと思います。  それから、共同備蓄につきましては、やはり利子の三分の一を負担しているということでございますので、そういう意味での受益者との立場というのを放出のときには当然考えなくちゃいけないだろうということでございます。  それから国家備蓄は、いろいろ御議論もございましたし、大臣からいま答弁ございましたが、基本的には適正な価格でやるということでございまして、これはいろいろな要素を判断して、コストが幾らかかっているかということと別に適正な価格ということでございまして、備蓄の目的が達せられるように適正な価格でやるということが原則であろうかと思います。
  165. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 備蓄が進んだ後、そういったものを日本が輸入している相手国というのはこれはいろいろあるわけですけれども、ある程度備蓄があるからというようなことで気を緩めることなく、引き続きそういった国々とはできる限りの友好を保つように心を配るということも努力してもらいたいと思います。
  166. 山中貞則

    ○山中国務大臣 資源獲得のための武力行使も含めて、一切恫喝とか力で何かを持ってくることのできない日本は、おっしゃるように、当然のことながら友好、相互依存、あるいは日本がもし進んでいるならば、援助その他を通じながら日本にも必要なものを売っていただくという姿勢でなければもう通用しないということはきわめて明白になっているわけでありますから、おっしゃるとおり、きちっとしたスタンスをもって経済外交に当たるというのは、日本の現在とるべきただ一つの道であると思います。
  167. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 終わります。
  168. 登坂重次郎

    登坂委員長 次回は、来る二十五日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時八分散会