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○稲村
委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、医療法の一部を
改正する法律案、第九十六回国会、
森井忠良君外一名提出、医療法の一部を
改正する法律案及び
森井忠良君外五名提出、
原子爆弾被爆者等援護法案の各案を議題といたします。
なお、
森井忠良君外一名提出、医療法の一部を
改正する法律案につきましては、第九十六回国会においてすでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、この際、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○稲村
委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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医療法の一部を
改正する法律案
(第九十六回国会、
森井忠良君外一名提出)
〔本号末尾に掲載〕
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○稲村
委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。白川勝彦君。
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○白川委員
森井忠良君外五名提出の
原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、質問をいたしたいと思います。
昭和二十年八月六日、続いて九日、広島、長崎に投下された原子爆弾は、一瞬にして三十万余の生命を奪い、いまなお三十七万余の被爆者に対し、肉体的、精神的苦痛を与えております。この一事をとらえただけでも、戦争はまさに悲惨であり、残酷であります。
私は、わが日本国憲法が、「政府の行爲によって再び戦争の慘禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と、あえて前文で宣言しておりますことに深い感銘を持っております。わが日本国憲法は、内外に多数の戦争犠牲者を出したことに対し、深く反省をし、新しく出発する日本国は、平和に徹することをかたく決意をして、戦後の再建を始めたと了解しているものであります。
戦争は、国家と国家との間の戦闘行為であります。国家には国民があります。いかなる国家であれ、国民の意思を無視して戦争を行うことはできません。ですから、戦争をこの世から放逐するためには、諸国民との間に友好と連帯のきずなを深く、かつ、強く結ぶことに、わが日本国としては努力をしていかなければならないと改めて思っておる次第でございます。
いささか外務委員会の質問のようになりましたが、このように感じましたのは、このたびの質問を準備している過程で、
今井委員と
森井委員との五十六年四月二十三日の白熱した議論、また、昨年四月二十二日の丹羽雄哉委員と
森井委員との心のこもった応答などを議事録において拝読いたして、改めてこのことを感じたのでございます。
そこで質問をしたいのでありますが、戦争は確かに国家が決断をし、遂行する行為であります。しかし、国民の意思を全く抜きにして、国家は戦争を始めることを決断し、遂行することはやはりできないのではないかと思っております。もし、国民の大多数が政府の行おうとする戦争に反対しているのに、無理やり政府が戦争を始めることを決断してみても、その結果は好ましからざるものになるからであります。
原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見報告において、戦争による一般の犠牲は、「すべての国民がひとしく受忍しなければならないものである。」と述べてありますが、それは、戦争を決断し、遂行した政府に対し、国民は無責任ではあり得ないとの考え方があるからこそ、このように述べているのではないかと思っておるのであります。すなわち、戦争を行う国家の国民は、他国にも損害を与えるのはもちろんでございますが、自国民も損害を受けることは予見し、予想しなければならぬ。したがって、よしんばみずからに損害が及んできたとしても、それは国民がひとしく耐え忍ばなければならない、こういう考え方が前提にあると思いますし、これは多分に人類社会においての共通した物の考え方ではないかと思います。であるからこそ戦争を回避しなければならないということは、国民が常に考え、そのために努力をしなければならないと思います。
日本が、第二次世界大戦を一当事国として戦争を遂行した。その当時の日本にも、国民の代表たる衆議院も存在いたしました。この衆議院は、いまこうしてわれわれが在職している衆議院と名称も同じでありますし、同じ議場を使っておりますし、あらかた同じ言葉でやりとりをしている衆議院でございます。選出の過程にも、女子には選挙権はなかったのでありますが、二十五歳以上の男子にはすべからく選挙権が与えられておりました。こういう国民の代表たる衆議院が存在したにもかかわらず、戦争が開始され、筆舌にたえない戦争の惨禍が国の内外において発生いたしました。
戦争を開始し、戦争を遂行する国家と国民との関係がいま私が述べたようなものであるとしたならば、戦争によって惹起された損害に対し、その戦争開始もしくは戦争の遂行当時、損害の補償に関する法規があったとしたら別でありますけれども、そのような法規がないとしたならば、国民は国家に対し、すなわち自国の政府に対し、戦争によって受けた損害を賠償せよという権利は法理論的にはないのではないだろうか、こう私は思っておるわけでございますが、
森井議員はこの辺についてどのようなお考えなのか。一般論で結構でございますが、まずお聞かせをいただきたいと存じます。
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○
森井議員 お答えをいたします。
まず、白川委員前段の平和憲法等に関します認識の問題については、特に憲法の平和主義等にお触れになりましたけれども、私も同感でございます。
しかし御質問の中で、戦争というのは政府の統治行為であって政府の責任において起こすものである、それもそうだろうと思うわけでございますが、そのためには国民の合意が必要ではないか、事実、第二次世界大戦もしくは太平洋戦争は国民の合意に基づいて行われたのではないか、こういう御趣旨と承りましたけれども、私はそうは思いません。それこそ一握りの軍国主義者が仕掛けて起こした戦争でございまして、国民は合意をするどころか、全く相談も受けていないし、言葉が適当ではないかもしれませんが、ごまかされて戦争へ戦争へと追いやられたと私は思っております。八紘一宇の精神でありますとかいろいろ言われておりますが、要するに侵略戦争であったという認識を私はしております。それは、戦争を起こしたわが国もでありますが、そのつめ跡にかかっていまなお被害を受けておりますアジアの諸国を見れば、歴然としておるわけでございまして、明らかに侵略戦争でございましたし、国民は少なくとも相談を受けた覚えは全くない。その当時の日本というのは言論の自由は全くございませんでした。
それから、衆議院というものがあったではないか。なるほど、戦争中も含めて衆議院もありましたし、貴族院というのも御案内のとおりございました。貴族院は論外といたしまして、衆議院という名前はございましたけれども、これも、大政翼賛会等歴史的な一つの事実を申し上げましても、すでに国の何と申しますか国策に反対をするようなことはほとんどできなかった。また理論的にも、御存じのとおり、たとえば天皇機関説というのを美濃部達吉さんがお出しになりまして、これだけでも弾圧を受けたというふうなことがございました大変な時代であったわけでございまして、不肖私も、まだ小学生もしくは中学生でございましたけれども、日本の戦争は正しいと信じておりました。そして、私どもの仲間は次から次へと軍隊に入っていきました。そして、不幸にして散華をした諸君もたくさんございました。
しかし、いま振り返ってみますと、あの日本の国が起こした戦争というのは明らかに侵略戦争であり、全世界に迷惑をかけたことは間違いないわけでございまして、私はやはり、わが国といたしましては、深刻な反省の上に立って平和憲法をつくったものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
したがいまして、私は、そういった国の不法な戦争行為によっていろいろ国民が被害を受けた、しかも白川委員に御理解をいただいておきたいのは、確かに国が戦争を起こしますと大なり小なり、程度の差こそあれ、全国民が被害を受けたと申し上げて差し支えないと思うわけでございます。
しかし、いろいろな被害はありますが、その中で、私どもが今度出しております被爆者
援護法案は、特に命とそれから健康の被害に限って被爆者
援護法案を提案しておるわけでございまして、一昨年私は
今井議員と議論をしたわけでございますけれども、たとえば昭和四十三年にやはり判決が出ております。これは在外資産に対します損害賠償を求めたものでございまして、これが却下をされておるわけでございます。私どもが言っておりますのは、なるほど、いろんな被害を受けましたけれども、その中でも、亡くなられた人でありますとか、いまなお障害に苦しんでいらっしゃる、健康被害を持っておられる方、そういった方に限って今度提案をしておるわけでございまして、戦争の被害をもう一円の違いもなく全部支払え、国は賠償せよということではないのでございまして、その点御理解をいただいておきたいと思います。
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○白川委員 ただいまの御答弁、まことにそのとおりなんでございますが、私が申したいのは、多分、これから戦争をするぞ、いや大戦争だというケースというのは、むしろ歴史上もまれなのではないだろうかと思うのでございます。むしろ、たとえば政府が一つの戦争をしたいというふうに思っても大義名分がない。それほどまでの大きな犠牲を他国に与える必要もないし、場合によっては自国もこうむるかもしれない戦争行為は待てというようなケースで、多分、国民と戦争との関係を見ますと、進める側についてオーケーという場合はなくて、どちらかというと戦争を抑止する場合に国民の意向というものが出てくるのではないだろうか、私はそう思うわけでございます。
昭和の初期から二十年までの民主政治のあり方というのは、明治憲法が当初想定した、もしくは大正デモクラシーと言われた時代にある程度進展をした当時の民権、あるいは民の政治に対する力よりもはるかに後退をしていた段階の中で、初めて戦争というのも遂行できたのではないかと私は思っておるわけでございます。
しかしそれはそれとして、当時はそうであったということで、だから政府は一方的に国民に迷惑を与えたんだということが言えるのであろうかということだと思うのです。いかなる弾圧であるとか、暴力であるとか、あるいは民主政治を抑えようという政府の意向があったとしても、賢明な国民は、だから私たちは物が言えなかったんだとは言えない。やはり日本国民として、政府がやったそういうものを抑止し得なかったということに対しては、みずからに対しても、いわんや諸外国に対しても、これは常に責任というものを感じていなければならない、私はそう思うのでございます。
でありますから、国家と国民との間の戦争被害に対する権利義務関係というのは、第三者と被害者という形で同一に論じられるのだろうかという、ここに困難な問題があり、立法上もこれまでもいろいろと議論があったのではないか、私はこう思っておるわけでございます。
ただ、これについては、これ以上議論することが果たして本問題に実益のある議論であるかどうかは別でございますので、このくらいにしておきたいと思うのでございます。ただ、いずれにしろ、戦争という行為と国民との関係は密接不可分である、こう思うのでございます。
そこで本問題に入ってまいりたいと思うのでございますが、戦争というものが起きます。戦争というのは、結局個々の戦闘行為の集積が一口に戦争と呼ばれるのではないかと思うのでございます。その個々の戦闘行為におきましては、殺人、放火、建造物破壊もしくは器物損壊、逮捕、拘留というのも、刑法典に並んである相当いろんなものに対して抵触する行為が、その戦闘行為の中では行われると思います。私は、こういう行為というのを、国家という形ではなくて、理性を持った人類という立場から見ると、これがどうして適法にして好ましい行為なのかということを理屈づけることは、非常にむずかしいと存じております。しかし、正当である、やっていいという、あるいは進められるべき行為だというふうに言えないとしても、違法性はないと言われる場合もあるのではないかと思うのでございます。それはやはり他国からあるいは他国の軍隊から攻撃を受けた、領土を侵犯された、こういう場合に、これに抵抗する行為というのは、かろうじて正当防衛的な行為として違法性が阻却される場合も理屈上は考えられるが、それもなければない方がいい。でありますから、ガンジーのように無抵抗主義というようなものもあり得るわけでございますし、西欧においても良心的兵役拒否、こういうものもあると思うのでございます。私は、個人個人がフリーに話したときはそんな考え方が出てくるのではないかなと思う一方では、俗に戦時国際法と言われているものもございます。戦争をしてもいいという国際条約はないと思うのですが、戦争をやった場合はせめてこのくらいは理性を持ってやろうじゃないかという、非常に理性からは出てこないような国際条約でございますが、あることはある。そういう国際条約がどういうものがあるかというのは、私は余り戦争をやろうと思っておりませんので、では、どういうのが許されるかというのを余りしさいに検討した機会というのはないのでございますが、先ほど話した両先輩の議論を見ると、いろいろなかなり細かな規定があるというふうに聞いております。
そこで、私、不明にして知らないのでお聞きをしたいのですが、戦時国際法に違反された戦闘行為があった、あるいは兵器が使われたということは、世界の歴史上、この原子爆弾は、
森井委員の言われるとおり直接は書いてないようでございますが、常識を持った人間なら当然これは違反すると思うのです。しかし原子爆弾は二つしか落とされていないので、それ以外にも戦時国際法に違反する兵器の使用があったというようなケースは、そういう戦時国際法というものができてからあったのか、なかったのか、少しくお聞きしたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
-
○
森井議員 御質問が長うございましたので、あるいは落ちがあるかと思いますけれども、私なりに整理をいたしましてお答えをいたしたいと思いますや。
第一点は明治憲法、いわゆる帝国憲法のことについてお触れになりました。帝国憲法下でも大正デモクラシー等があったではないか、したがって国民が目覚めておればそういった侵略的な戦争は起き得なかったのではないかという御指摘がございました。
これは白川委員、私どもが体験をいたしましたことを一つ二つ申し上げますとわかるわけでございますが、私の家にわずかな田畑がありました。それを軍隊が何とか使いたいということになりました。当然のことでありますが、私のおやじは抵抗いたしました。そうしましたら、ある日憲兵隊が参りまして、そして東方遙拝をさせまして、東方遙拝というのは昔は皇居に向かって礼をするわけでございますが、東方遙拝をした上で、四の五の言わずに判こをつけということでつかされまして、そのままとられました。
私どもは小学校時代を通じまして、すべての学校だったと思うのでありますが、ちゃんと教室の正面には天皇、皇后両陛下の写真がございまして、そして毎日拝まされておりました。いまの憲法と違いまして、要するに天皇は神様という発想でございました。実はこの天皇を利用して軍国主義が台頭したわけでございますけれども、このこと一つを例に申し上げれば御理解がいただけると思いますように、少なくとも明治憲法の時代にデモクラシーがあったということは、残念ながら私は全く考えられないというふうに理解をいたしておるわけでございます。したがって、あくまでも一握りの軍国主義者によって起こされた戦争であるというふうに私は認識をいたしておるわけでございます。
それから二点目といたしまして、同じ戦争をやるにしてもいろいろあるじゃないか。なるほど、通常の戦闘ということもありますし、原爆を投下する、あるいは毒ガスや生物化学兵器を使うというふうな、悪質で、卑劣で、悲惨なやり方をする場合もございました。御指摘がありましたように、戦時国際法というのは、国際紛争が起きた場合は少なくともいまおっしゃったように理性に基づいてこういうことをしようじゃないかという一定のルールでございまして、わが国も批准したものがたくさんございます。したがいまして、戦時国際法というのはいまなお生きておるわけでございます。
なるほど、たとえば相手の軍隊を通常兵器による攻撃をするというふうなことは、やむを得ないで戦争を起こした以上はやはり相手を倒さなければならないというようなこともございましたのでしょうか、いずれにしても通常兵器による戦闘というのは、戦闘員同士なら戦時国際法から言うならば認められておったと思うわけでございます。しかし、原爆は明確に戦時国際法に違反をする。なるほど、明文化されたものあるいは慣習化されたものは、毒ガスあるいは生物化学兵器、そういったものについては禁止をされておりました。しかし、もう白川委員、御案内のとおりでありまして、原爆はそれ以上の悲惨な兵器であります。したがいまして、これは明確に違反をするということで、あえて広島、長崎に原爆を投下された、特に長崎に投下された明くる日、昭和二十年の八月十日に日本政府はわざわざ、これは戦時国際法の精神に違反をするということで、アメリカ政府を糾弾するという政府声明を出しておるわけであります。これは政府声明でございます。そういうふうな状況から見ますと、明らかにこれは、いま白川委員もお認めになりましたように、原爆は戦時国際法に違反をするという点については全くあなたと認識が同じでございます。
そこで、そういった戦時国際法に違反をする原爆投下を一体だれがしたのか。最高裁判所の判決等によりますと、直接的にはアメリカが投下をいたしましたから、したがってアメリカが戦時国際法に違反をしているということになる。しかし、その背景には日本政府が起こした戦争が原因でございますから、したがって日本政府もその責めを負うべきだ。法律に違反すれば当然損害賠償というのは出てくるわけでございますが、昭和二十七年のサンフランシスコ条約によりまして、対米請求権というものは日本は一切放棄をいたしました。しかし、広島や長崎の被爆者や
遺族が放棄をよろしいと同意をしたものでも全くないわけでございます。政府の責任において損害賠償の請求権を放棄した以上は、政府がそういった被爆者等に対して損害賠償すべきである、こういうふうに私どもは認識をしておるわけでございます。
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○白川委員 私が質問しようということまで先走って御答弁をいただきましたので、質問が何かむしろ後ろになってしまったみたいでございますが、私がお聞きをしたいのは、あるいはこういうことが現実の問題としてはあり得るだろうかということなんでございますが、戦争の勝ち負けとは別に、戦時国際法に違反をする行為があった。これは戦争一般の平和条約もしくは講和条約の際取り決める損害賠償額などの決めとは別に、勝敗とは別に、しかしこれはあなたの方が戦時国際法に違反をしたのだから、これだけは差っ引くよとか、これだけは別個に被害者に渡してくださいよというようなことが、およそ戦時国際法というようなものが人類の中に出てきてからあったのだろうかということを、もし御承知であればお聞かせを願いたいということなのでございます。私は、抽象論としてはそういうことはあり得るだろうけれども、戦争という異常事態、そして、その異常事態を終結するときも結局は異常事態の中での終結だろうと思うのでございます。そういたしますと、その異常事態の中において理性的な終戦処理というのはなかなか実際は行われないのではないかな、こう私は思っているわけでございます。
たとえば、私が若干関係をいたしております、ソ連国によります、満州国に在留をした日本軍人及び日本国民を、数もまだ定かではございませんが、六十万から八十万ぐらい抑留をして数年間強制労務に服させた、これなんかも国際法上、いかなる意味でも正当化する法規というのはないのではないかと思っています。これは単に日本国民だけではなくて、西ドイツの軍人あたりもこのような目に遭っておるわけであります。しかし、これについてソ連が賠償したという話は寡聞にして聞いておりません。そういう形で言いますと、人類はかなり利口のようでございますけれども、そんなに利口ではない、理性的ではない。いろいろな法律はつくっておるけれども、戦争しなかったならばりっぱなものでございますが、戦争したというのは、結局本来理性的であるべき人類が理性を失ったときという気がいたすわけでございます。
そんな意味で、私がただ一点だけお聞きをしたいのは、原爆を投下するというきわめて違法、不当不法な行為ではございますけれども、広島市民、長崎市民が受けた損害を、国と国とを窓口にしてやるのかあるいはハーグ国際司法裁判所あたりでやるかは別として、秩序ある国内法でやるような損害賠償というのが果たして可能なのであろうかどうか。まだあと二、三質問したいことがありますが、時間ですので、その点重複になるかもわかりませんが、改めて
森井議員の御見解を賜りたいと思います。
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○
森井議員 一般的に、戦争を起こした後、終戦の処理の問題につきましては、私も専門外でございまして明確にはお答えできないと思うのでございますが、白川委員お話しになりましたように、勝った者が負けた者に対して賠償を払うということはないんじゃないかということですが、私も一般的にはそうだと思うのでございますが、しかし戦時国際法に違反をしておるという側面だけから見れば、なるほど一般の敗戦国が払う賠償と違って、別の計算は成り立つのではなかろうか。だからこそ対米請求権を放棄するということがサンフランシスコ条約の中に入っておるところを見ますと、理論的にはあり得るんじゃないかと私は思っておるわけでございます。
それから、ソ連に抑留をされた皆さんのことについてお触れになりました。これはいま御指摘のように、ソ連に抑留された皆さんの運動というのは私どもも十分理解をしておるわけでございまして、あの人たちが抑留をされたために、事実上の過酷な労働を強いられまして、その労賃が損害賠償にある程度すりかえられたのじゃないかというお気持ちがあります。したがって、国を相手にいたしまして、この人たちのあたら青春を失ったときの賠償を国に払ってくれと言われる運動も、私は十分理解ができるところだと思っておるわけでございまして、いずれにいたしましても、損害賠償の問題と、国民が受けた被害をどう償っていくかということとは切り離していかざるを得ないのではないか。国と国との問題もありましょうけれども、今回私どもが提起をしておりますのは、国が一番悲惨な目に遭ったまず原爆被爆者並びにその
遺族の皆さんに補償を始めなさいということでございまして、戦争被害、戦争犠牲はまだたくさんございますが、私は、優先順序をつければ被爆者
援護法が最優先ではなかろうかと理解をいたしておるわけでございます。
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○白川委員 質問を終わります。
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-
○大原(亨)委員 いま白川委員から非常に興味のある質問がありました。この議論をいたしますと、いままで二十年間も議論したことをもう一回やることになりますし、この問題をやりますと時間がかかりますが、簡潔に触れておきます。
いま戦時国際法の話が出ましたが、私も本当の専門家ではないのですが、戦時国際法は勝者だけに適用するのではないのであります。負けた人の立場も考えて国際法はあるわけであります。それが戦時国際法であります。
たとえばソビエトが北方領土を占拠いたしまして、これは表面に出ておりませんが、ヤルタ協定、大国の太平洋戦争後の領土分割の話し合いが背景にあることは御承知のとおりですが、日本は歴史的に国際法上それを承認していない、こういうことが平和条約締結の条件としておるわけですから、これは国際法の言うなれば人道に基づく摂理、道理を決めたもの、合意したものでありますから、全部の国民や全部の国に適用される、こういうふうに考えるのが当然であります。
そこで、私は大臣にお聞きしたいのですが、いままで国家補償の精神という中で議論いたしました中で、私が関係したものだけ一つ申し上げてみますと、外務省の条約局おりませんが、昭和三十四年に藤山さんが外務大臣でありましたときに、こういう質疑応答をいたしました。私どもの主張は、いま
森井さんも話をいたしましたが、つまり毒ガスとか生物化学兵器などというのは、国際法上ハーグの陸戦法規その他実定法で禁止をしておるわけであります。私は藤山さんに質問をいたしまして、原爆の熱線や爆風や放射能の傷害は、毒ガスや化学兵器以上に非人道的な兵器であると思うがどうか。そのとおりであります。であるならば、いま白川委員の話がありましたように、実定法で国際法上原爆を禁止していないからといっても、それ以上の非人道的な兵器を使ってもよろしいということにはならない。というのは、ヘーグの陸戦法規や一般国際法規で、害敵手段について無制限の許容をするものではない、こういうルールがあるわけでありまして、特に非戦闘員を無差別・大量に殺すということは、国際法が兵器を特定していなくても原則的、一般的に禁止しておるのですから、これは国際法に違反するのではないか。こういう主張に対しましては、藤山外務大臣は、条約
局長も答弁いたしましたが、御指摘のように実定法ではないが国際法の精神に違反する、こういうことは言ったわけであります。これはその後の質疑応答の中でずっと出てくるわけであります。基本懇の答申の中の広い意味の国家補償の精神によってなすべきであるという議論も、その議論を踏まえておるわけであります。それが一つあるわけであります。
それからもう一つは、命令服従の関係にあるかないかということ、つまり特別権力関係なんですが、それが言うなれば国家補償の問題の背景にあるわけですが、これも議論はいたしません。いたしませんけれども、昭和二十年の終戦段階におきまして、最終的には六月の当院におきまして、臨時帝国議会を開きまして国民義勇兵役法をつくりまして、これについては論争をして法制局との間においてかみ合ってはおりませんけれども、その法律は、男は六十五歳以下、女性は四十五歳以下ですが、十四歳以上の日本国民は全部戦闘に参加する、個別的、包括的に参加する。これは、個別の命令がなくても、愛国婦人会とか町内会とか職場の警防団とか、そういうものに対しまして包括的にやりましたならば、名簿を出させておいて、敵前上陸があったり落下傘降下がありましたら、全部戦闘に参加するというのを臨時帝国議会で決定いたしておるわけです。その問題をめぐりまして、それに至るまでのずっとの経過の中で、現行
援護法の問題等について、準軍属その他の解釈についてあったわけであります。しかし、そういう終戦のときの状況からいいましても、一人一人には戦争に参加しない理由はないわけですから、そういう命令服従関係にあった中で、原爆という非人道的な兵器によって大量の被害を受けたのであるから、特別権力関係の議論からいっても、これは国家補償の問題として当然国は責任がないということは言えないという議論をいたしたわけです。歴代の厚生大臣も、その趣旨は理解できます、こういう答弁であります。
それで、これは新しい国際法の分野の問題とかあるいは戦争中の権力関係について掘り下げる議論、戦後の国家補償の法律、恩給法、軍人恩給法というのは自衛隊をつくるための準備行動であったわけですから、戦闘に参加いたしました当時の国民に線引きをしたわけです。戦闘員と非戦闘員と分けたのです。これは大体政策的な意図から生まれたものでありまして、そういう中におきまして戦争があったということであります。これは八月の原爆投下であります。
それから、白川君の話の中で私も共鳴する点もあり、
森井代議士も共鳴をされたわけでありますが、日本の平和憲法というのが太平洋戦争、侵略戦争に対する反省と、原爆といういまだかつてない非人道的な大量殺戮兵器の被害を受けたという体験の上に立ってできたということは当然のことであって、これは否定なさらぬと思うわけであります。平和憲法、戦争放棄の憲法はそこから生まれておるわけであります。ですから、アメリカへ行ってはタカ派になった中曽根総理大臣も、東南アジアへ行きますとハトになりまして、日本には平和憲法があります、専守防衛でございまして、この方までは出てきません、決して軍事大国にはなりません。あの人は風見鶏と言いますから、こう言ってあちらこちらへ行って調子を合わせてきたということであります。しかし、言うことはいいことである。平和憲法ということについては、そういう反省の上に立って、教科書問題一つとってもそうですが、それができておるわけです。その一つが原爆の体験であります。
非人道的ないまだかってないそういうふうな戦争、あるいは人類の終末を告げるようなそういう兵器の被害ということがもとになって、平和憲法九条ができておるわけであります。ですから、いままでの議論で、一々やると時間がかかるから申し上げるのですが、指摘しました点について、厚生大臣は厚生大臣として、国務大臣としていかなる所見を有するか、お聞かせをいただきたい。
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○林国務大臣 大原先生はこの問題、長年国会でも御議論をしておられるところでありますし、恐らく二十年にわたってこの問題に対して御議論をしておられるのじゃないかと思うわけでございます。長い歴史の上に立っての御議論は、私も傾聴をしておったところでございます。
最初の毒ガス、生物化学的兵器、こういうふうなお話しで、国際法上どうなのか、こういうふうなお話しでございますが、私は、国際法というのは実定法的なものもありますし、自然法的なものもある、世界人類が理性に基づいていろいろなことを行動していかなければならないところをやはり示しているものだろう、こう思います。
原爆の問題につきましては、先生御指摘のとおり実定法がないわけでございます。そこで、どういうふうにこれを解するかということでございましょう。先ほどお話しもございましたように、精神的に考えていかなければならない問題だろうという答弁があったというお話しでございますが、私もそれはそういうふうに考えていいものだろうと思うのです。
ただ、国際法というものをいかなる形で実施していくかというのは、ハーグの国際司法裁判所に持っていく話であるとか、その実現に当たりましては、それぞれの国がどういうふうな形で国内法としてやっていくかという話にもなることでございましょうし、われわれもそういったようなことを踏まえていろいろな法律を国内で実施をしているというのが現在の立場ではないだろうか、こういうふうに思うものでございます。
それから第二番目の問題は、戦争中におきまして国家総動員法等々ありまして、命令服従の関係があったではないか、こういうふうなお話しでございますが、これはその法律、そういったことが適法なりや否やということは、旧帝国憲法時代の話でございますから、旧帝国憲法に対してこれが違憲であるかどうかという話になってくるものだろうと思います。しかし、そういったいわゆる法律論を離れまして戦争ということを考えましたならば、多くの日本国民が大変な被害を受けておる、多かれ少なかれいろいろな被害または損害を受けておるわけでございますから、そういったことにつきまして戦後の日本国憲法、旧帝国憲法と申すならば新憲法という形でもって、そのもとにおきましてあるべき姿を探っていくというのがいいやり方ではないかと私は思うわけでございます。
それから第三番目の戦争放棄・憲法問題、こういうことでありますが、確かに日本国憲法というのは、戦後の時代におきまして、戦争の被害というものを反省したという上に立って行われているものであることは否定をしない事実であります。憲法の前文にもそういったことが書いてあるわけでありますから、正しい話でありますが、だからといってすぐに立法についてどうだこうだというところまでは言及をしていないのではないか。むしろ、立法というものにつきましては現在の民主的に選ばれたところの衆議院及び参議院において議論をすべきものだろうと考えておるところでございます。
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○大原(亨)委員 それ以上の議論は私は時間がありませんのでしませんが、昭和五十五年十二月十一日の基本懇の被爆者
援護の基本理念について、意見の報告がございました。その中で、これは非常に議論になっておる点でありますが、しかし、いま白川委員の話のような、一般戦争の被害に対する通念的な常識的な議論の表現もあるわけです。しかし、文章には「広い意味における国家補償の見地に立って」こういうことを述べておるわけです。またその中には、特別の犠牲を余儀なくされた者として「その被爆による放射線障害の実態に即し、「必要の原則」に従って適切妥当な救済措置を講ずべきである。」というふうな結論的な文章があるわけです。
ですから、議論は蒸し返しませんが、ハーグの陸戦法規には違法兵器の特定をしておるのではないのです。特定しておるのではなしに、攻撃の目標とか害敵の手段について一般的に規制しておるわけです。その規制にも違反するのではないかという実定法の議論があるわけです。というのは、別の条約で害敵手段に対する制限の条項があって、たとえば非戦闘員を大量に殺戮するとか、目標としてやるとか、それから列挙して、非人道的な兵器を使うとか、これまでの常識を超えたものを使うとか、こういうことを制限する別の条約がありまして、そういうところからの議論になるわけです。
それは議論いたしませんが、しかし、この被害が非常に非人道的で深刻なものであることは、基本懇も認めているところであります。ですから、日本国の議会が、平和憲法の精神に基づいて、再びこのような原爆を繰り返さない、させないという決意で、そういう国家補償の理念をここに確立するということは、私はこれは何もむちゃな議論ではないと思う。このことは、議会では理解が進んでしばしば決議になっておったのですが、なまはんかな、なまはんかなとは言いませんが、亡くなられました田中先生などは公法の専門家でありますから、そういういろいろな部面で検討してこういう結論が出たことについては、なお議会としては一つの権威を持って受けとめて、受けとめるべき点は受けとめるけれども、さらに議論を発展させる点は議論を発展させなければならぬ、こういうふうに私は思う。
そこで、第一番目に質問いたしたいのは、そういうことから言いまして、そういう精神から言いまして、五十五年十二月に基本懇の答申がありまして、被爆者対策をこのような点において是正し、
改善すべきであるというふうな一定の意見が出ておるわけでありますが、その後、五十六年、七年、八年でありますが、これに基づいて政府としてはどのような措置をとったかという点を、政府委員からでもいいから簡単にひとつ答弁してください。
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○三浦政府委員 基本懇答中の後に政府の取り組みがどうなったかという御質問でございますが、基本懇の意見書というのはこれからの原爆被爆者対策のあり方を示したものであるわけでございまして、特にその中で、近距離被爆者に対する処遇の向上、あるいは原爆放射線の研究体制の整備充実、あるいは被爆者相談事業の拡充、こういうことを指摘されておるわけでございます。
政府といたしましては、これらを受けまして五十六年以降、医療特別手当あるいは原爆小頭症手当の創設、これに伴います所得制限の撤廃をいたしました。また、保健手当の増額あるいは原爆放射線影響に関する共同研究の実施、それから被爆者相談事業の増員、こういうことをやってきたわけでございます。
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○大原(亨)委員 答申を受けまして、昭和五十六年度に原子爆弾被爆者状況調査要綱というものを設定いたしまして、その年、昭和五十六年度だけで千二百万円の予算を計上して調査をした。これもその一つであると思うのですが、その調査の経過と現状を御答弁いただきたい。
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○三浦政府委員 被爆者状況調査につきましては、被爆者の健康状況あるいは生活の状況といった、被爆者の置かれています状況を把握いたしまして、これからの被爆者行政に活用するということで調査を行ったわけでございます。
これは広島、長崎の両市がいままで行ってまいりました復元調査、あるいは被災調査等の被爆の実態を明らかにするための調査にも役立てていただこうというものでございまして、その中の項目といたしましては、医療保険の加入状況とか職業あるいは収入、健康状況、また健康診断の受診の状況、それから手当の受給状況、日常生活の状況、これは六十歳以上の人だけでございますけれども、被爆時の同居家族の状況、こういうものを調査しておるわけでございます。
これにつきましては五十七年度で集計することになっておるわけでございますが、若干この集計がおくれておりまして、もう近く結果が出る、こういうふうに聞いております。
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○大原(亨)委員 五十六年度の予算に計上して五十六年度、五十七年度とやったわけですから、当然に五十七年度中にはこれは出ておるはずですね。全国にわたってやったわけではないでしょう。広島、長崎を中心に抽出でやったわけでしょうから出ておるはずでありますが、その内容についてどういう傾向であるか。これは六十歳以上の高齢被爆者の生活その他の実態調査というお話しでありますが、出ました結果の内容のあらかたのポイントがありましたらお答えいただきたい。
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○三浦政府委員 この調査結果につきましては、広島、長崎の両市に集計をお願いしたわけでございまして、それぞれの集計結果を合わせて解析作業を行ったわけでございます。この結果の取りまとめがいろいろおくれてまいりまして、特にいままでの調査との整合性その他の問題もございまして、若干作業がおくれてしまいました。したがいまして、私、まだこの結果を聞いておりません。近く出るということを聞いておりますので、結果が出次第、また先生の方には御報告申し上げたいと思います。
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○大原(亨)委員 わしにも報告してもらいたいのですが、公表してもらわなければならない。というのは、それは大体いつをめどにやっているのですか。つまりめどがなければいつまでも出てきませんよ。これは千二百万円余り、かなりの金を使ってやったわけですから、調査の仕方がむずかしいと思いますから、かなり大部のものであることは承知をいたしております。しかし、大体いつごろを目標にやってもらいたいとか、そういうことがあってしかるべきじゃないですか。いつまでもエンドレスということじゃないでしょう。そうしないと、調査のために金を使い、行政を割いてやった、そしてこれに対する調査に基づく対策を立てようという場合に、どんどんおくれるということは怠慢である。いつごろを目標にやるのですか。
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○三浦政府委員 私どもといたしましては、五十七年度末までにという希望を持っておりました。しかし、非常にむずかしい調査でございまして、いままでの調査との整合性その他もございます。また解析作業がおくれたということもございまして、おくれたことはまことに申しわけなく思っておりますが、間もなく結果が出てくるということでございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
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○大原(亨)委員 間もなくというのはいつですか。
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○三浦政府委員 間もなくということでございまして、いつとは聞いておりませんが、なるべく早くいただけるように私ども督促をしたいと思います。
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○大原(亨)委員 間もなくといったらあしたでもいいということじゃないですか。非常に不熱心じゃないの。厚生大臣、いかがですか。たくさん金を使って、基本懇であれほど議論になったのを受けて、実態調査を詳細にしてそして科学的なデータに基づいて政策をやろう、こういう大切な調査がおくれるということは私は非常に遺憾だ。大臣、いかがですか。全然聞いてないのですか。聞かないうちに大臣をやめてはだめですよ。
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○林国務大臣 お答え申し上げます。
いま
局長から答弁したとおりでありますし、私もまだ聞いてはないわけでありますが、何か最終的な段階に来ている、こういうことですから、そう遠くないときに報告がいただけるものだ、こう考えておるところでございます。おくれたことは私も大変残念だと思います。五十七年度にはやらなくてはいかぬということでございますから、できるだけ早くやるように督促をいたしたいと思っております。
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○大原(亨)委員 私は大体国会中には出るだろうと思っておったけれども、出ないですね。国会中に出ますか。
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○三浦政府委員 間もなくまとまりまして、あと印刷の期間くらいは先生いただきたい、こういうことでございますので、ひとつ……。
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○大原(亨)委員 大臣、ここが大切なところですが、これに関連いたしまして、大臣の見解をひとつ聞きたい、これは政府委員はいいですから。
つまり、日本は唯一の被爆国であると言って、総理大臣も外務大臣も外国で演説するわけですよ。その被爆の熱線とか爆風とか放射能とかいう傷害の実態、急性症状による原爆の直後に起きた死亡あるいは慢性的な疾患ですね。これは加齢現象、こう言っている。慢性的な疾患というのは加齢現象で老化が非常に早まる。全体の機能が低下する。あなた二人は医者だけれども、私は医者じゃないけれども。つまり加齢現象と言われている、原爆症の一つとして、機能が低下して老化現象が早まるということでありまして、それで、健康管理手当の対象の疾病なんかにいたしましても、そういうふうに並んでおるわけです。高血圧とか糖尿病に至るまであるわけです。
ですから、そういうことと一緒に、原爆というのは一遍にぱっと落ちて十万、それにプラス二十万、三十万と次から次へと亡くなるし、病気になるわけです。ですから加齢現象が進んでいく上に、家族関係とか社会関係が破壊される、家も破壊される、そういうことであって、高齢化社会の問題としては、ひとり暮らしとか寝たきり老人とか、そういうような問題があるわけですね。そういう現象が深刻に社会的にも進んでおるのではないか。進んでおるということが常識的に言われる。そのことを調査の結果裏づけることができれば、政策を立てる上においては非常によろしいのではないかと私は思う。
そういう点で、この調査はやはり分析の仕方も大切でありますが、これからの対策の上に重要であるというふうに思うわけでありますが、そういう方向で結論を意図的に導くということではありませんが、調査分析の結果というものを生かしていくという可能性のある、方向性のある調査である、私はそういうふうに理解をしておりますが、いかがでしょう。
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○林国務大臣 御指摘のように、原爆というのは確かにわが国しか被害を受けてないところでありますし、一遍でぱっと原爆が落ちて被害を受けたわけでありますね。その後、それが加齢現象と先生おっしゃいましたけれども、そういったものをもたらすということは、私も医者ではありませんけれども、常識的には私は考えられる話だろうと思います。
戦後三十八年たちましてから、その当時受けた人もみんなそれから三十八歳はとっているわけでありますから、いま老齢化になってきているときにどんな状況になっているかということを調べるということは、やはり大変有意義なことだろうと思いますし、調査でございますから余り予断を持って、こういうふうなことになるとか、あるいはこういうふうな形の調査をしてもらいたいなどということは言うべきではないことだろうと思いますが、その調査の結果を見まして、どういうふうな形になるか。その調査というのは相当金もかけてやったわけでございますから、今後の原爆対策、原爆の被害者対策を進めていく上で大変有益な資料になってくれるものだ、こういうふうに期待をしておるところでございます。
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○大原(亨)委員 それで大臣、もう一つ質問したいのですが、この調査の中で、五年ごとに国勢調査をやるわけですね。今度は昭和六十年です。そのときに、なかなかむずかしいのですが、いままでも占領軍その他がいろいろな形でやったこともあるわけですが、やはり唯一の被爆国というのだから、主として熱線とか爆風とか放射能のいわゆる瞬間傷害、急性の影響、急性症状、それと慢性症状、こうある。そういう死没者の状況というものをやはり的確に把握をしなければいけない。
これはいろんな方面からアプローチする方法があるのですが、国勢調査というものが一番確実であるということが言われておる。しかし、そのためには総理府がかなり勉強しなければいかぬ。というのは、すべてのケースワーカーがこのことを理解しておいて全部の人に当たらないと、調査がダブってしまうわけですよ。――大臣、そこに書いてある答弁書だけ見て答弁してはだめですよ。私の言うことを聞いてください。大臣としては、唯一の被爆国だから、瞬間なりそれに近い死没者についての実態調査を、国勢調査の中で頭を働かせてやるべきじゃないかと思います。これは昭和六十年の話ですが、準備期間を含めましての話ですが、大臣としてはどう思いますか。
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○林国務大臣 昭和六十年の国勢調査の中で原爆被害についてのいろんな調査をしたらどうだ、こういうふうなお話はいろんな方面から私も伺っております。
確かにおっしゃるとおり唯一の原爆被爆国である、こういうことから、調査その他をやはりやっていかなければならないということも私はよくわかるわけでありますが、国勢調査というものは、人口であるとか年齢であるとかその他一般的な調査をするものだというふうに考えておりますので、その中でそこまでやっていくことが、果たして調査として具体的にやれるかどうかという問題はさらに検討してみる必要があると思うのです。
先生も御指摘のように、もしもそれをやるならば、いろいろな点で特別の、また専門的な知識が要る、こういうことでございます。そういったものも踏まえて、果たしてうまくいくのかどうか、調査をする人が、自分の余りわからないことについて、よくわからないままで調査をして、調査に間違った結果をもたらすことになっても、かえっておかしなことになるということも危惧されるところでありますし、その問題を含めて考えてみなければならないことだろうと私は思います。
いずれにいたしましても、昭和六十年にやる調査でございますから、いろんな問題点もあるでしょう、あるでしょうが、せっかくのお話しでございますから、どういうふうな形でやれるのか、またやったときにどういうことになるだろうかということのある程度までの見通しをつける必要もあるだろうと思いますし、そういったことも含めまして少し検討さしてもらいたい、こういうふうに思っております。
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○大原(亨)委員 五十五年十二月の基本懇の意見報告等を踏まえまして、被爆者の高齢者の生活調査が、印刷の段階を含めてもう近い、こういう話であります。
そこで、これを受けて政策を立てる場合に、いままでもわれわれも議論してきたわけですが、また社会党の提案でいま質疑応答がありました案の中にもあるわけでありますが、そういう趣旨でありますが、いま原爆二法、医療法と特別措置法がありますね。私はそれ以外に、たとえば検査とか、健康管理とか、特別養護老人ホームとか、原爆病院とか、あるいは検査センターとか、放影研とか、あるいはある場合には縦割りですけれども、広島、長崎の大学の原爆医学研究所とか、さらに広げて言えば、稲毛にある科学技術庁の放医研とか、たくさんあるわけですね。それを全部一括するわけにはいかないけれども、ホームヘルパーについても特別の措置をとっているわけですから、在宅から中間施設、ナーシングホームでもないが、特別養護老人ホームから病院から、それから
治療から研究から、そして諸手当で所得保障的なものから、そういうものがあるわけですが、それらを総合立法にしていく。総合立法にして、そして被爆の特殊性を踏まえて、言うなれば一歩を踏み出して、国家補償という精神を明確にすることが必要ですが、そういうことの議論は後にいたしましても、二段階にいたしましても、総合立法をやって、そしていまの縦割り行政で――かなりここで議論いたしますから横断的な連絡もとれているわけですけれども、しかし、政府の高齢化対策にいたしましても、いろいろな福祉政策にいたしましても、各省各局の縦割り行政ということが、非常に大きなむだとかあるいは目標を達成しない結果になっておるというふうに思うわけですよ。ですから、これをインテグレーションといいますか、政策を総合して、被爆者の立場を中心にして総合的にどう考えるかということを自治体から積み上げていって、国が方針を出すというふうなやり方を漸進的にとっていくために、法体系についても、調査を踏まえて、調査について私も予断しておりませんけれども、いままで議論されていることはそういうことですから、それを踏まえて私は総合的な被爆者の立法をつくるべきではないか。ということは、これは本院はいままで熱心に議論してきたわけですから当然のことではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
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○林国務大臣 被爆者対策につきましては先生もたびたび当委員会で御議論をされておりますし、そのほかたくさんの方々が当委員会で御議論をいただいておるところでありますし、現在の原爆二法におきまして、御指摘の健康診断であるとか医療、各種手当の支給、さらには人体影響への研究、家庭奉仕員の派遣、原爆養護ホームの設置等々、たくさんのことをいままで総合的に推進を図ってきているところでございます。
御指摘のように、官僚組織が縦割りであってなかなか横の連絡がうまくいかないという御指摘は、一般論としてはそのとおりだろうと私は思いますが、やはりそれは官庁内部のことでございますから、官庁相互間におきまして、各局各課におきまして、いろいろな連携をとってやっていかなければなりませんし、原爆問題につきましては、私は率直に申しまして、わりとよく連絡調整をしてやっているところだろう、こう思っておるところであります。
そういった意味で、総合立法をやるということの意義が果たしてどこまであるだろうか、私はどうもその必要性というのは余り感じていないところでございますが、総合的に物事をやっていかなければならない。一つ一つ縦割りで、おれはこのことは知らぬよ、そのことは知らぬよなどということではなくて、やはり被爆者対策につきましては、その充実を図るために総合的、横断的にやっていくということは当然のことでございますから、今後ともそういった方向で努力をしてまいりたいと考えております。
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○大原(亨)委員 たとえば広大や長崎医大の原爆医療研究所は――これは私どもも、何もABCCだけで、アメリカ人が日本人をモルモットにしてやって、資料を持って帰ったら軍事利用もするじゃないか、それは平和利用もするのだけれども、そうじゃないか。そういうことで、放影研の組織再編で、これがフィフティー・フィフティーになってやっているわけですね、協力をして。それで厚生省もタッチしているわけですが、しかし広大にしろ、科学技術庁、これは当初は別だったか余り関係ないようだけれども、いまは後遺症研究その他について余りやっておらぬようですけれども、広大とか長崎医大という文部省の関係というのはやっているわけですよ。原爆症とは何かということと、その科学的な分析と
治療方法をやっているわけです。ですからそれぞれの症状による対応の仕方があるわけですが、そういう深刻な被害に対する対策を被爆者の立場に立ってやるということになれば、私は、そういう点についても協力の義務を法律で課するとか、あるいはまた、たとえば他の法人でやっておる特別養護老人ホームにいたしましても、これは病院との関係で非常に大切な役割りですから、在宅との関係で大切な役割りですから、総合的に考える必要があるわけです。これもかなり連絡がとれておりますね。ですけれども、医療と所得保障については――に
年金とか弔慰金の問題はありますよ、ありますけれども、そういう問題は次の段階にいたしましても、やはりそういう所得保障的なものも、生活ということを医療と一緒に考えることも必要ですから、そういう点では総合的な立法が
援護法をつくる際には必要である、こういうふうに私は思っておりますが、
援護法という実体を備えた、意見報告にいたしましても広い意味の国家補償ですから、そういう意味の被爆者の立場に立った総合的な立法が必要である、こういう点を私は強調しておきます。
第三の問題は、国家補償の精神の議論でありますが、広島県、長崎県、広島市、長崎市、これは政令都市になりましたが、二県二市の四県市の老人保健法実施に伴う自治体負担の問題、昭和五十八年度は大まかに言いましてどうなっているか、御答弁いただきたい。
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○三浦政府委員 五十八年度におきます長崎、広島県市の老人医療費の負担額の予算は、総額で八十九億五千万円というふうに私ども聞いております。
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○大原(亨)委員 それは、七十歳以上の老人、高齢者被爆者の医療費ですか。医療費の五%分ですか。
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○三浦政府委員 老人医療費の負担額でございます。その五%分でございます。
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○大原(亨)委員 つまり問題になっておるのは、老人保健法ができて七割については現在の保険の制度から財源を出す、二〇%は国が負担する、それから五%を県が負担して、五%は市町村が負担する、こういうときに、五%分の二県二市の被爆者に関する負担分が八十九億円ですか。そんなことはないんじゃないか。違うでしょう。
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○三浦政府委員 八十九億五千万円というのは、一般分と含めてでございます。原爆の医療費の老人分と一般分を含めて八十九億、要するに老人医療費の負担分、その五%分が八十九億五千万ということでございます。
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○大原(亨)委員 その八十九億分は、四県市については原爆の臨時調整交付金で負担しておりますか。
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○三浦政府委員 約三%分を老人保健の臨時調整補助金で負担をしております。
ただいま申し上げましたように、これは老人医療費の負担額の予算の総額でございます。したがいまして、一般分と原爆の老人分を含めて、その五%分が八十九億五千万円ということになるわけでございます。
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○大原(亨)委員 それで、その四県市の負担に対して原爆関係の臨時調整交付金で、五十八年度に政府が、厚生省が四県市に対して交付している予算額をもう一回答弁してください。
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○三浦政府委員 十三億四千万でございます。
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○大原(亨)委員 そうすると、八十九億と十三億四千万円の差を自治体は被爆者の医療費として負担しているのですか。
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○三浦政府委員 原爆の老人分の五%と申しますのは、二十二億になります。その中の約三%分ですから十三億四千万、これを国の老人保健の臨時調整補助金で認める、こういうことでございます。
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○大原(亨)委員 つまり大臣、整理をしていまの答弁を言うと、七十歳以上の被爆者の老人医療費の五%分が二十二億円。二十二億円で、その中の五%分の中の三%分が十三億四千万円、それを措置をしております、こういうことですね。
そこで、そういう措置の仕方はいままでの措置の仕方よりも少ないわけですよ、政府の措置は。いままではシステムが違うから、
国民健康保険や家族負担の七割とか八割の残りを原爆医療法で負担していたのでしょう。老人福祉法でなしに、特別法の原爆医療法で負担していたわけなんです。その場合には、原爆医療法優先の原則、特別法優先の原則、今度は老人保健法という一般法があって、そして自治体の負担分があるんだけれども、いままでの原爆医療法による特別法優先の原則で負担をしたことから言うならば、後退ではないかという議論がいま依然としてあるわけですよ。それは、国家補償の精神に基づくいわゆる国が医療費については負担をするという原則からは後退するのではないかというのです。特別法優先の原則から言えば、いままで私はずっと議論してやってきたけれども、これは被爆者については根っこから負担してもよろしいのです。認定被爆者その他と同じように根っこから医療費を負担しても、特別法優先の原則であるから、一般住民、自治体の住民が負担するよりも国全体の国民が負担するということの方がいいのです、趣旨から言いますと、国家補償の精神から言えば。たとえば、現行
援護法とかそういうものはすべて医療費については全額国が負担するのですよ。しかし政策的に、それでは施策は拡大できぬからということで三割について、自己負担分について医療法で負担をして、そして老人福祉法の適用があって、負担があってもなおかつ優先しておったわけですから、国家補償の精神で、自治体の住民だけに医療費の負担をさせるというのでなしに、被爆者については
治療費がたくさんかかるのだから、健康管理を要するんだから、これについては国家補償的な精神で、やはり特別法優先の原則をできるだけ通すということでやるべきではないか、こういう議論です。
この議論から言いますと、五十八年度の予算措置は、これは努力の跡は見えますよ。皆さん方努力したことは認めますけれども、しかしこれはなお検討が必要ではないかということでありますが、大臣は非常によく勉強されますから理解をされていると思いますので、答弁してください。
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○林国務大臣 お答えを申し上げます。
一般の保健法その他に対しまして、原爆二法、原爆の法律が特別法である、これは全くそのとおりだと思います。したがって、特別法と一般法との関係でやるならば、特別法の趣旨を考えてやらなければならないというのが法律の一般原則だろうと私は思います。
ただ、この問題は、今度老人保健法というのがその間に入ってきたわけです。老人保健法と原爆法とを、いずれを特別法としいずれを一般法とするかというのは、いろいろと問題があるところだろうと私は思います。老人についての特別法であるし、一方は原爆という病気についての一般法でございますから、原爆については若い人についての適用もあるわけでありますから、私はその関係がどちらかということでなく、一歩譲って原爆法が特別法だといたしましても、実は法律の中にはっきりと規定がございまして、老人保健法の中で原爆
援護法の規定を修正しているわけですね。
改正している。私もその条文を読みましたけれども、これだけ条文的にはっきりしておると、これはなかなか金を出せないのじゃないか、はっきり申し上げて。そういった
改正をしないで、一般法と特別法の関係で言うならばあるいは先生の御指摘のような話ができるかもしれませんが、法律の中ではっきり書いてあるならばむしろこれは逆に解すべきである。そういったものについてはわざわざ法律をつくってはっきりと原爆法の
改正をしているわけでありますから、そこをやるのはおかしいのじゃないかという議論もむしろ議論としてはあり得るわけですね。
だから、そういったことを言ったところで、原爆の問題についてはいろいろ考えなければならない。特に原爆というものは、先ほど来先生のお話しがありましたように、国が非常に責任を感じなければならないような事態でありますから、そういった法律があってできない、こう書いてあるけれども、そこは予算措置でめんどうを見たらどうだというのが、昨年の暮れに予算折衝いたしましたり、またその後に国会でお願いしましたときの話でございまして、そういった意味で、先ほど申しましたように、まあ三%程度のものはこれはほかとのバランスも考えて認めていくことが必要ではないか、そういったことで措置をしたところでございます。
私は、お話しの趣旨というかお気持ちはわからぬではありませんが、法律にあそこまではっきり書かれていると、それで全部一般法、特別法の関係だけで律せよと言われると、これは法律違反を来すような問題さえ出てくる可能性のある問題だと私は思いましたので、いまのような形、予算措置という形で十分なことをしたつもりでございます。(「法律を直しましょう」と呼ぶ者あり)
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○大原(亨)委員 老人保健法の審議のときに念のために議事録に残してあるのですが、附帯決議の十二項目目に「多数の原爆被爆者を抱えているため新たに相当の医療費負担が発生する地方公共団体については、政府はその負担について従前の実績を踏まえ、今後とも別途適切かつ十分な財政措置を講ずること。」、ただ問題は、いま御指摘のように法律を直さなければだめだということですね。あれは非常に長い間かかってやったことですから、この問題を含めましてぜひ直していくことが国家補償の精神を生かすことになると思いますので、この場では
理事は皆賛成のようでありますから、大臣も、この問題は法
改正を含めてやってもらいたいというふうに要望しておきます。よろしいですか。
-
○林国務大臣 私が先ほど申しましたのは、全く法律の原則の話、法律の解釈の話を申し上げたわけであります。
もう一つ申し上げますならば、その老人保健法が通りますときに、いま先生御指摘のような附帯決議がついておる。附帯決議と法律の本則に書いてあるものとの比較というものを考えるならば、やはり法律の解釈というものは厳重にやらなければならない、こういうふうなことを私は申し上げたわけでありまして、原爆の問題につきましてはいろいろな問題があるということは先生御指摘のとおりでありますし、また、そういった御指摘のような問題はいろいろな方面とも折衝をいたしまして話をしていかなければならない問題であろうか、こういうふうに考えているところでございます。
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○大原(亨)委員 それから、もう一つ進んで、激変緩和の言うなれば当面の措置だ、こういうことで臨時調整補助金を出すという議論が当時予算編成期にあったわけです。しかし、これは当分の間と言って二、三年でやめるのですか。
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○林国務大臣 激変緩和措置というのは、市と県の負担が一遍にふえる、こういうことになるとやはり非常な変更になりますから、それで考えていかなければならないということでありまして、それをいつまでにやめるとかどうだというような話はしていないところであります。そういった一遍に負担の増になりますから、とりあえず十三億だけ出しましょう、こういうことでやったわけでありますから、これからどうしますかというのはまさにこれからの話だろう、こう思っております。
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○大原(亨)委員 つまり、これは予算上の措置でやっておるわけですね。予算上の措置でやっているのですが、それは不安定ですから法的な裏づけをやはり本院で考える必要がある、政府も考える必要がある、これは問題点といたしましてはだれも異議はない。国家補償の精神が後退することになるのですから。
それからもう一つは、広島県、長崎県は五%、市町村は五%ずつですが、広島市と長崎市だけでは不公平じゃないか。その周辺に何千名も被爆者を抱えている自治体があるじゃないか、広島、長崎には。それについてもやはりそういう原爆医療法の精神に基づく措置をとってもらいたい、こういうのがあるわけですよ。何千名、何万名もおるところがあるわけですから。いかがですか。
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○林国務大臣 これも解釈の話になりますが、申しわけないのですが、「多数の原爆被爆者を抱えているため新たに相当の医療費負担が発生する地方公共団体」と、こう書いてある。ですから、ここをすらりと解釈いたしますと、二県二市、こういう解釈の方が私はすらりとした解釈だろうと思うのです。そういうことでいまのような措置になっていると私は思うのです。
先生のおっしゃるように、そのほかにもたくさんおるじゃないか、それはたくさんおられるでしょう。しかし、ここに多数の何とかというのは、やはり住民の中で多数の者が原爆被爆者だったということで、そういう文章だと思うのです。この附帯決議の中にあります趣旨は、単に数が多いからという話ではないと思うのですね。私は、事務当局はそういうふうに解してやったわけであると思います。
いまのような話をやりますと、それじゃどこまでやっていくかという話もあるでしょう。だから、それは立法府の御当局でいろいろと御議論をしていただかなければならない話でありますし、また、私たちの方もそういった問題はさらに検討していかなければならない問題であるという御指摘は、私はそのとおりだと思う。全くそのとおりだと思う。しかし、それだからといって、これをことしどうする、こうするという話ではない。私は、将来の課題ではないだろうかというふうに考えているところでございます。
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○大原(亨)委員 たとえば広島の中にある府中町は人口が五万人としますか、それから海田町は三万人としますか、それから五日市というのは最大の町で、最近の五日市は九万人から十方人になりますね。その隣は五万人。こういうふうな町がそれぞれ何万、何千という被爆者を抱えているのです、被爆者健康手帳を持っている人を。そうすると、その自治体にとりましては、自治体の財政規模から言いましたら、そういうものを負担するのはやはり広島市、あるいは長崎市の負担と同じようなウエートがあるわけです。だから、それはとことんまで全国的にやるということはむずかしい議論でありますけれども、かなりのところまで細かにやることが公平ではないですか、税金の使い方について。いかがですか。
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○林国務大臣 先生御地元でもありますし、
森井先生も地元だから、私、地元の先生方がどんなふうになっているかというのは一番よく御承知だと思うのです。やはり多いところについては市町村の負担が多いというのは当然のことなんですね。だから、それをどう考えていくかということはやはりこれから考えていかなければならない問題だろう、私はそう思っておるのです。
ただ、いまの段階で申し上げるならば、あるいは大変三百代言的なお話しとおっしゃるかもしれないけれども、いまのこれだけを読むと、そこまでは読めないのではないかという解釈を事務当局はとって、やったわけであります。いまのようなお話しであれば、それはその問題としてやはりこれから考えていかなければならない問題である、こういうふうに私は申し上げているところでございます。
-
○大原(亨)委員 時間がいよいよ通り過ぎたのですが、ぜひ議論をしてもらいたい。
それで、国家補償の政策の議論のバランスの問題で、私はその次に、金子委員あるいは公明党の皆さん方がずっと内閣委員会等でやりました旧陸海軍の従軍看護婦の問題、これは長い質問をいたしませんが、聞いてみたい。それから、予算措置でやっておるのはこれだけではありませんで、たとえば大久野島の毒ガスの問題があります。私は、
森井委員とも一緒にやりましたが、旧逓信病院の雇傭員も予算措置でやっておるわけだ。しかし、そういう措置でたくさんやっておりますといろいろな不公平が出てくる。あるいは法律でやっておりませんと、総理府へ任せておけということになったり、ちょっとどこかのところへやっておくということになりまして、非常に公平さを欠く。
〔
委員長退席、丹羽(雄)
委員長代理着席〕
そこで、私は一般的に質問をするわけですが、従軍看護婦の場合、内地の陸軍病院で看護婦の場合は、判任官でなくても当時の陸軍共済組合令の適用があった。そして戦地へ出てまいりますと、そうすると、退職いたしまして掛金を掛けないという理由でこれがとぎれておる。帰ってまいりますと共済につながる。厚生
年金に行きましたら切れる。所得保障に関係いたしましてもこういう問題が出ておるわけですね。しかし、その空白の従軍期間中の看護婦さんの処遇というものは、戦傷病者戦没者
遺族等
援護法での準軍属等から推定をいたしますと、これは明らかに総動員業務以上に命令服従の権力関係にある問題だ。これは掛金を掛けておる、掛けてないの問題ではない。戦傷病者戦没者
遺族等
援護法等から考えてみますと、その空白期間を放置するのはおかしい。
それから、大久野島の毒ガスの問題でありますが、これは数千名使ったわけであります。イペリットその他の、いまの国際法の議論と同じだ、国際法で明らかに禁止された毒ガスをあの島でつくったわけだ。使用しなかったけれども、つくることは準備行為であるから国際法も禁止をいたしておるところですが、地図を抹殺いたしましてやったわけです。陸軍の方は共済です。軍属は共済。調べてみると徴用工も十六歳、十七歳の若いのを連れてきたわけです。すべて徴用工で総動員法で連れてきたわけですが、軍属の任命をした者も多数ある。その他、その職場には動員学徒とか女子挺身隊その他をずっと連れてまいりまして、そして毒ガスの製造、管理に当たらせた。それを予算上の措置でやったわけです。これは毒ガスだから法律にするというのは国際的にもなにだということがあったと思いますね。やったわけであります。
しかし、それをやっていきますと、いろいろな点で不公平が発生しておる。
改正すべき点がたくさんあるわけです。ですから戦傷病者戦没者
遺族等
援護法は、軍人は恩給の方へ逃げていったわけですが、軍属や準軍属は次から次へとやって、私もやった関係では、昭和四十九年には警防団医療従事者もやった。国民義勇兵役法で全部やるべきじゃないかという議論もある。私はそう言いました。線引きをしたのは政府の再軍備政策である。これは歴史的にまさにそうだったわけです。外国では、恩給とかこういう
援護法のものは軍事予算の中に入れるのですよ、NATO方式というのは。沿岸警備隊、海上保安庁と一緒に軍事予算の中に入れるのです。だから、これは歴史的に、予備隊から自衛隊をつくろうと思った、朝鮮戦争に間に合わなかったけれども、つくろうと思ったものだから恩給を復活したわけです。恩給は軍事予算の中へ広義には入れるわけです、国際常識は。
援護法もそうです。
そういうことで、その接点にあるところで問題が非常にたくさんあるのがあって、たとえば日赤もそうでありますが、従軍看護婦にいたしましても、医療給付金というものを毎年一定条件でもらうのですが、それは金額は固定しておってベース改定はしないのです。貨幣価値がどんどん低下しておるわけです。これは予算措置でやっておるものだから、
改善するという法律上の根拠がないものだからほっておくわけであります。毒ガスと原爆の障害は後遺症その他がよく似ておるのですが、しかし、毒ガスをたくさん浴びまして治癒能力の劣っている人に対しての医療をどうするかという問題では、毒ガスは非常に狭いわけであります。きょうは、それだけをやると医療法へ一言も入れぬようになりますが、ですから、こういう問題については総理府とかどこかの行政府がちょこっとやるのではなしに、私は社会党が政権をとりましたらこれは法律をつくる。法律をつくって公平にやる。しかし一応の妥協線でこういうことになっていますよ。予算上の措置になっていますよ。ですから、他の社会保障がずっと上がっていきますと、この問題はまた下がってくるということもありますよ、時代が変われば。そういうことですから、予算上の措置でやっておる問題について矛盾がある問題は、関係者が協議をいたしまして是正措置をとるべきであると思うが、厚生大臣であり国務大臣である林大臣はいかなる見解をお持ちか、ひとつお聞かせいただきたい。
-
○林国務大臣 先生のお話しにありました、戦争中に総動員令で行ったとかあるいは学徒動員で行ったというような話というのは、実態的な差は私は正直言って非常にむずかしい話だろうと思います。だからそれを、そのときのステータスがどうだった、こうだったという形でやると非常にむずかしい議論があるということも私は承知をしておるところでございますが、いまになって考えるならば、そのときにどのぐらいのことを受けた、特に毒ガスの問題ですね。これは先生御指摘ありまして、余り表に出すのがどうだから、こうだからとかということでやっておるという話でありますが、これの問題につきましては、たとえばあそこで従業員として働いた人は旧共済組合令の規定の適用があるわけでありまして、それと学徒動員で行った人との間には差が、いままだ同じだということにはなっていない。それはやはり、いまから考えると、毒ガスにおけるところの被害を受けた、あるいはそれの後遺症がどうであったかということに着目をして温かい手を差し伸べるべきだろう、私はこう思っておるところでありまして、毒ガスの問題につきましては、広島病院等におきまして綿密な検査をいたしました、いろんな手当てをしたりするという体制をとっておるところでございまして、私はそういった形でいまやっていくということがきわめて現実的な方向ではないか。
先生、社会党になったならばおれの方はりっぱな大法律をつくる、これをやります……(大原(亨)委員「大法律ではない、小さい法律だ」と呼ぶ)それは大法律になります。大法律になりますが、大法律をつくって果たしてうまくワークするか、こういうことも考えてみなければならない。現実的にどうしてやったならばこれらの方々の対策がうまくいくかということを常に考えてやる必要があると私は思いますし、毒ガスの問題につきましても、先ほど申しましたような形でいろんな対策はやっているところでございます。
-
○大原(亨)委員 私は一言だけ言っておきますが、
援護局長、大久野島の毒ガス島で、徴用工とか動員学徒とか挺身隊などというふうに、準軍属として現行
援護法上取り扱われているそういう人が、そこに強制的に働かされますね。働かされまして、そういう傷病被害を受けたことについては現行
援護法を適用すべきだと私は思いますが、いかがですか。
-
○
山本(純)政府委員 御指摘の大久野島で毒ガス製造という業務に携わっておられた方々、そういう方々の中に動員学徒、女子挺身隊員、国家総動員法に基づいて動員された方々がおられたわけでございまして、こういう方々は
援護法上は準軍属というものに該当するわけでございまして、その業務の結果、障害でございますと第五款症以上の障害になる、それから死亡の方ですと、そういう業務に起因して死亡されたという場合にはそれぞれの給付の対象にいたしております。ただ、実際には該当者がきわめて少ないのはまた御承知のとおりでございます。
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○大原(亨)委員 してないんじゃないのか。何人ぐらいおるのか。事実上適用してないんだろう。
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○
山本(純)政府委員 適用してないわけではございません。たとえば四十七年度には七件ほどの障害
年金の請求があったというふうに私は聞いておりまして、これは障害程度が軽いために該当しなかったということでございます。
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○大原(亨)委員 しかし、起因をして肺をやられたのじゃないのですか。毒ガスだから、肺を中心にやられるのですよ。循環器をやられて死んだ人がいままでたくさんおるじゃないの。そんな五名、六名ということはないですよ。そういう法律が適用されるべきなのです、差別なしに。総動員法業務ですから、準軍属ですから。国際法に違反した犯罪的な行為に従事させられて、大きな被害を受けたんですから、そうすべきなのです。だけれども、法律の趣旨が徹底してないのですよ。全体としましてこれが適用の盲点になっている。それから医療給付金でも、総理府も見えておりますが、これは言わない、もう質問しませんが、それだってほっておくというのはここだけですよ。
ですから、これらを総合的に見て、あなた、林さんは
年金担当大臣だし、全体を見て、こういうところで
年金回復などをするときに、所得保障の問題については十分気をつけてもらいたいということを申し上げておきます。
最後に医療法です。時間がなくなりましたが、医療法は会期末になっていろいろな経過があって提出をされましたが、これは通すつもりで出しておられるのですか。いかがですか。
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○林国務大臣 もちろん、ぜひこの国会で成立させて、可決させていただきたいという気持ちで出していることには間違いございません。
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○大原(亨)委員 このまま通してもよろしいのですか。
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○林国務大臣 いろいろと御議論があるところでございましょうから、御議論も踏まえましてやらなければならない問題だと思います。
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○大原(亨)委員 これは二十六日以降会期延長しないことを前提として答弁しているから、あなたは安心して答弁しているけれども、この医療法の問題は、こんなに長い間、社会保障制度審議会を昭和五十六年ごろやったが、そのときにも議論をいろいろしたわけですよ。今度はかけなかったらしいけれども、突然こういうときに出した理由は何ですか。
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○林国務大臣 前々から国会でも、私に対しても医療法の
改正案をぜひ出せというお話しがございまして、私も一生懸命努力をいたしまして御提案を申し上げたところでございます。
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○大原(亨)委員 当然に日本の医療制度は、医師や医療機関の偏在している点、あるいは過剰医時代の処理の問題とか、医療供給体制全体の高齢化社会に対応するそういう計画の必要性からいっても、われわれは老人保健法をやるときに、そういう体制の整備なしに、一部負担の問題とかあるいは病院の区分けの問題とか特例外病院とか、いろいろな問題を通じまして診療報酬の議論をするときに、そういう受け皿というか地域医療計画がなければいけないじゃないかという議論をして、当然出すべきであるということを主張したわけですね。そういう趣旨は私どもは変わらないわけですが、それに対応する法律であるかどうかという点はかなり問題があります。
たとえば医療審議会の構成にいたしましても専門家だけに限定したりしておりますが、これは自民党が医師会と話をしてやったのかな。あるいはそういうことなどというのは、審議会の性質から言いまして、地域医療計画というものとしますとこれは補強しなければならぬということであります。ですから、そういう問題があるわけですけれども、医療法を制定をするということは必要なわけですが、これをなぜ急いで出すということになったのか。国会でも要請したから急いで出すという条件で、たとえば富士見病院とか十全会病院のような例がありますね。医療法人がでたらめなことをやったという例があるから、それが一つは動機になっているのですか。
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○林国務大臣 医療法の
改正を国会でいろいろ御議論されましたのは、まさに大原先生御指摘のように、老人保健法の制定に伴いまして、可決していただくときに、ぜひその地域医療体制をやらなければならないということがございました。また、いまも御指摘の富士見病院その他の不正病院に対しまして、医療法に基づくところの監督規定等が不十分ではないかという御指摘もございました等々を踏まえまして、国会に医療法の
改正というものを申し上げておるところでございます。
医療法というのは私は医療の基本法だろうと思います。基本法の提出をするということは、政府としてもよほど腹をくくってお願いをしているわけでございまして、この基本法をどうするかというのは、ぜひ国会でも十分な御議論を賜り、いい医療体制ができるように私たちは念願をしているところでございますし、そういった意味で、できるだけ早く御可決あらんことを心から期待をしているところでございます。
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○大原(亨)委員 新聞にもどこにもみんなそう書いてあるわけです、そういう動機からだということを。私は去年だったか予算委員会でやったことがあるのですが、一番悪徳の富士見病院と当時の齋藤厚生大臣の関係、どういうことをしてきたということは知っているでしょう。それが行政管理庁長官でしょう。それで医療改革ですか。私は、政府はやる気がないのじゃないかと思っておるのだ。いかがですか。あなた、国務大臣としてそういうところを粛正していきなさいよ。
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○林国務大臣 人の話になりますと、私も個人的な話を申し上げるつもりはございませんが、やはりそういったことが、富士見病院というような医療法人として好ましくないようなことをやっていることに対して、政府の監督権がなかなかうまく及ばないというような法律ではやはり困るだろう、こういうことで法律案をお願いをしているところでございます。
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○大原(亨)委員 そういう法律をちょっとつくりましても、大体根本が間違っておるわけだから。そうでしょう。私も指摘したのだけれども、あの人は一回も総選挙の洗礼を受けておりませんよ。ちょっとやめたというだけであって、今度また出てきている。副総理であるの。行政管理庁長官であるの。もってのほかじゃないですか。厚生省に対して大きな影響があるのでしょう。あなたは一々行って聞くわけでしょう。そんなことありませんか。大体きちっと整理をしておいてやらなければ、幾ら監督規定を入れたってできぬじゃないですか。
確かに奥さんが病院長をしているでしょう。医療法人の
理事長でしょう。ああいうふうなことをやるために医者を
理事長にするという、言うなればそれが医療法の政府案の背景でしょう。奥さんが病院長ですよ。その主人から、
理事長から五百万、五百万、五百万というふうな政治献金をもらっている。大臣室でもらっている。そんなことを見ておいて、医療法を
改正して何をしようと考えるのだと、国民は、関係者は思いますよ。みんな言っているのじゃないですか。私は、そういう点を国務大臣として正して、本当にりっぱな医療法をつくるということで出してくれなければいかぬ、こう思いますよ。いかがですか。私の言うとおりでしょう。
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○林国務大臣 いろいろと問題があったことは私も承知しておりますが、いろいろな不正がないような形で法律というものは考えていかなければならないというのが、私は法律のたてまえであろうと思います。だから、齋藤先生はそのことでどうだとかいうことじゃなくて、いろんなことを考えられまして、そのときに厚生大臣をやめられたのだろうと思います。依然として残っているからどうなんだというような話ということと、その責任の話と医療法の話というのを一緒にしますと、立法というものは一体何であるか、こういうふうな話にも相なってくるだろうと思いますし、私は、立法は立法としてやらなければいかぬし、もしも法律が制定されるならば、それを厳正に執行していくというのは私は行政府の責任であろう、こういうふうに思っておりますし、私は行政府の長として、もしも法律が可決されましたならば厳正に執行していく決心でございます。
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○大原(亨)委員 これ以上は議論しませんが、私の方が正しいことはわかっておるから。
そういう富士見病院とかが出るでしょう。みんな出る。富士見病院とか十全会病院で、不動産を買ったり、むちゃくちゃをやる。お年寄りを入れてきて点滴漬けにして、オートメーションでふろに入れて、全く非人間的な扱いをしているという経営形態について、十分監督ができるようにするというのはいいわけですよ。そういうことをあえて言いながらやるという政府の局、課の諸君のその行動はよろしいわけです。しかしながら、よろしいけれども、実際にそういうことをやろうとしても、こういう私が言ったようなことを議論しておかないと、本当に正しく前に進まないと私は思っている。そういうことは個人齋藤君と私の関係じゃない。彼は個人的に親しい人です。親しい人ですが、しかし、やはり行政として考え、立法として考えた場合には、そういうことの議論抜きでやられたのでは、こういう法律の議論は正しくできない。
そこで、医療計画と公法人に対する監督という問題であると思います。この問題については、私は、医療計画の策定というのは、いまのアナーキーの無政府的なあの医療の供給体制を順次誘導しながら、医療圏の設定もその一つでありますが、誘導しながら、この医療供給体制の受けざらをつくりながら、花岡医師会長も自浄作用ということを言っておるのですから、老人医療その他を逆用いたしまして悪徳医師のはびこらないような、そういうきちっとしたけじめをつける、そういうものでなければいけない。これは医者であったら直るという問題じゃない。医者が
理事長であったならばいいという問題ではない。あのときだれかそういうことを言いましたけれども。あれは医者でなかったからああいう悪いことをしたのだと。そうじゃない。奥さんが
理事長になったって、主人がそのほかの常務
理事か何かやっておりましても、同じような問題が起きるわけです。ですから、そういう問題で本当の意味で医療を改革するというか、医療の姿勢を正す、高齢化社会に対応するということでこの問題が真剣に論議をされるように期待をいたしまして、私の時間が参りましたので、終わりたいと思います。
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○平石委員 きわめて簡単に質問をいたします。わずか持ち時間が十分間でございますので、いま質疑の中でも出ておりましたが、今回の提案の理由、
改正に至る理由についていろいろ論議がありました。バックグラウンド的ないろいろなことも質疑の中に出てまいりましたが、その中で大臣は、国会からも要請がございますのでというようなお話しがあったわけです。そして大臣の答弁の中に、医療の基本法である。そういう大事な基本法が、ただ国会に言われたから出しましたというような、そういう安易な考え方では私はいけないのではないか。
この医療法ができたのが昭和二十三年、その間もう相当な時間もたって、三十年も余った時間がたっている。そういう中で日本の医療というものは大きく転換、いわゆる変わってきた。そういったようなことを踏まえながら、私は基本法としての位置づけ、その意味から考えたときに、どうも今回の提案されておるものを見たときに、果たして何が
改正の理由として出てきたのか。そういった基本法に対応したものであるのかどうなのか。この点一言。
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○林国務大臣 基本法を国会の要請があってということでじゃないのでございまして、私は、医療法というのは基本法であるし、大変大切な法律でございますから、政府として提出するのは慎重に考えなければならないというのが私は基本原則だと思いますし、たまたま国会でいろいろ御議論がありましたし、その基本法の
改正を出すというのは、今回の医療法の
改正でお願いしますところの特に地域医療計画というものは、今後の医療政策を進めていく上においてきわめて重要なものである。これは相当長期にわたりましても、やはりはっきりした、画然とした体系づくりをしていかなければならない、こういうことで考えまして、同時に、医者に対するところの国民的な不信をぬぐうためには、医者に対するところの監督等をやはり厳重にしていって、本当に国民の信頼されるところの医療にしていかなければならない。こういった二点につきまして私たちは考えて、お願いをしたところでございます。
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○平石委員 いまの答弁の中にありましたが、日本の医療のまさに基本法である、そしてそれは、慎重にじっくり、これからの医療の将来を展望しながら、そしてこれから先の日本の医療のあるべき姿、こういったものをも展望をしながら
改正案を出し、基本法をつくるべきである、こういうように私は考えるわけでありまして、この点は指摘だけにとどめておきとす。
次に、提案理由を見てみますと、いま答弁にありました地域計画。私は、これは国の計画が出ていない、これは地域だけで処理のつくものだろうか、こういう感じがします。したがって、この三ページのところにありますが、題名は「医療計画について」であります。この一番末尾のところに「この医療計画の策定を通じて、地域における各種医療機関の役割りを明確にし、その機能の連係強化を図ることによって、地域の医療需要に沿った医療体制の確立を目指していきたい」、こう書いてある。
そこで私は、これからの展望を考えたときに、いま難病とか奇病とか、こういったようなわからない病気が多発をしておるということ、そしてこれからの医療を考えてみますと、やはり老人保健法にも取り入れられましたように、いま日本の医療というのは本当にいわゆる世界でも先端を行くぐらいに充実している。そして、医学医術も本当に進歩をしてきた。そういう中でこういったような難病、奇病が発生をしている。さらに、これから先を考えたときに、やはり予防というものに相当力を入れていかなければいかぬ。そういったようなことを考えたときに、これは具体的な例です、質問ではありません、例として申し上げますと、国がいま国立病院を二百何カ所持っておる。これはその当時陸海軍の病院を引き取って、日本の医療が荒廃したときに、日本の医療を支えるために一生懸命やってきた。だが、三十年たってもう時代は変わってきました。そして、いま一般の病院と競合した形で、いわば競争原理のもとで同じような診療科をやっていていいのかどうなのか。この医療計画については、この中で出ておるものを見ると平面的な計画です。私はむしろ、質的な面も含めて医療計画というもののこれからの展望を描いていかなければいかぬのじゃないか。そうすると、国立病院というものを一体どうするか。いま私が申し上げたように、予防医学とか、先駆的な医療とか、
研究開発をしていくとか、そういったような方向を指向しながら、そして一般病院としてやらねばならぬところはやっていく。日赤あり、市民病院あり、県立病院あり、あるいは各地に大学病院ができました。そういったように非常にいわゆる飽和状態となった中で、同じようなことをやっていいのかどうか。ここにある「医療機関の役割りを明確にし、」ということはどういうことなのか、お答えをいただきたい。
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○林国務大臣 先生御指摘のとおり、日本の医療水準というのは世界の中でも相当高いところに来ておりますし、日本の医療というものは、私は、いまお話しのありました難病、奇病であるとか、予防というようなものを中心にしてこれからは考えていかなければならないし、さらには、医療を維持するための医学についての
研究開発を積極的に進めていかなければならないことも事実であります。全く御指摘のとおりでございます。
そういった中で、各種医療機関の機能というものを明らかにし、医療従事者の適正配分を含めて医療制度の見直しが必要でありまして、今回の
改正はその第一歩といたしまして、御指摘の点を踏まえまして時代に即応した医療制度を確立したい、これが基本的に考えているところでございます。
また、全国的に何か一つのガイドラインをつくったらどうかというお話もございますが、この法律の中では、各府県で当然いろいろ計画をつくってもらうわけでございますが、じゃあ各県ばらばらに勝手にやれという話でもないと思います。やはり国全体としての医療がこれだけになってきているわけでありますから、やはり国としてもある程度のガイドラインをやっていく。しかし、ガイドラインはあくまでも各県がそれぞれの地域でやられるところについてのガイドラインでありまして、それで国がどうしろこうしろと言う話ではないと思いますし、まさに地方の時代と申すときにふさわしいような地域医療計画というものを立てていくことが必要である、そのことこそ法律に書いておかなければいかぬ話ではないか、私はこういうふうに考えておるところでございます。
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○平石委員
局長もお見えになっておるから、ちょっと
局長にお聞きしておきます。
いま大臣から大まかな話はありましたけれども、どうも腹が張りません。そこで私は、ここにもありますが、「病院、診療所のあり方等を含め、医療制度について見直しを行い、」、こういうことが提案説明の中にあるわけです。私はやはり、いまの地域計画だけでは非常に視野が狭くなると思うのです。たとえば病院の偏在なんかにつきましても、圏内だけのことになる。それから、これからの医師の養成が一体どうなるのか、医療従事者の養成がどうなるのか、これからの日本の医療の姿がどんなものなのかということを頭に描きながら地域計画を立てないとぐあいが悪い。そうすると、ここの提案説明に出ている「病院、診療所のあり方」、私が先ほど大臣に質問したことを含めて、どんなことを
局長は考えておるのか。
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○大谷政府委員 確かに先生御指摘のように、現在の病院、診療所のあり方でよいのかという点はございます。この問題につきましては、非常に長期的、多面的な検討を要する問題でございまして、私どもといたしましてはこの問題に取り組みたいというふうに考えておりますが、先ほど大臣も申されましたように、地域医療計画によりまして現在の地域医療の姿勢を正す新しいシステムを図る、こういうことにいたしますが、当面、当然のこととして、先生御指摘のようなそういったマンパワーも含めまして、医療制度のあり方を見直すという方向に私どもとしては努力をいたしたいと考えております。
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○平石委員 腹は張りませんけれども、これはまた次の機会に譲らせていただいて、本日は質問を終わります。
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○塩田委員 医療法の
改正につきまして、厚生大臣並びに関係の
局長に御質問申し上げます。
国民に安定的な医療供給の確保を図るため、都道府県医療計画の策定とか、医療法人に対する指導監督の規定を整備することを柱にいたしております今回の
改正につきましては、了解できるものもあるのでございますが、なお疑問の点、不足している個所等も多く残されていると思われますので、質問を通じまして明らかにして、必要なものにつきましては法律の修正も考えていきたい、このように思っておりますので、簡単明瞭に御答弁をお願いしたいと思います。
まず第一に、医療計画についてでございます。医療圏の設定とか必要病床数を定めるとかございます。これは増床、ベッドをふやすということをやたらにやられては困るという点から、これを抑制する意図もあるやに聞いておるわけでございますが、これは法律の規定はどうなっておりますか。
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○大谷政府委員 病床の規制につきましては、地域医療計画の中で基本的に都道府県が決めることになっているわけでございますが、国といたしましては、国におきます医療審議会の御論議をいただきまして、それの基本となるべき標準値を示すという考え方をいたしているわけでございます。
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○塩田委員 増床を抑制する規定はどこにございますか。
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○大谷政府委員 第三十条の七で「都道府県知事は、医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合には、病院を開設しようとする者又は病院の開設者若しくは管理者に対し、都道府県医療審議会の意見を聴いて、病院の開設その他必要な事項に関して勧告することができる。」こういうふうになっております。
それから、公的病院につきましては、従来の公的病院病床規制の条文をそのまま残す、こういうことにしているわけでございます。
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○塩田委員 増床抑制というような文言は、法律上はないわけですね。その他必要な措置、勧告という線ですね。これは、運用上省令なり通達でやられるのですか。
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○大谷政府委員 これは、先ほど申しましたように、都道府県知事が都道府県医療審議会の意見を聞いて勧告することになるわけでございますが、勧告に従わない場合にはどうするかというお話しかと思います。国といたしましては、融資あるいはその他のいろいろな病床の指導を通じまして、この勧告に従ってもらうようにするという考え方でいるわけでございます。
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○塩田委員 法律の文言にも出ていないものを、どの段階でどういう形でやられるかをお尋ねしているのです。通達なのか、政省令なのかということです。
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○大谷政府委員 都道府県は、この法律に基づきまして医療計画を策定いたしまして、それに従ってその地域の医療を指導するというふうになっているわけでございます。新しい病院の開設とか、たとえば病床を増床するということになりますれば、それはその医療計画にのっとっているかどうかということが医療審議会で議せられるわけでございまして、そこでその地域におきましてはすでに相当過剰であるという見解になりますれば、これはそれ以上の増床はやらないというふうに都道府県知事が勧告する、こういうことになるわけでございます。
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○塩田委員 私は手続のことを言っておるのでございまして、恐らく運用、通達でいま言われたようなことをやるように指示されると思うのです。
そこで、むやみやたらに増床をされることは困るからこれは抑えるという趣旨はわかるのですが、片や、従来医師会等でやっておられたことについて独禁法上の問題があり、公取からいろいろ問題が出されたことがございますが、この辺の割り切り方はどうしておられますか。
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○大谷政府委員 わが国の病院病床はたとえばアメリカの病床をすでに上回っておりまして、ヨーロッパ諸国の中でもトップレベルの国と同じ水準に達しております。しかし、これはトータルとしての話でございまして、私どもとしてはトータルとしてはこれ以上ふやすべきではないのではないかと考えておりますが、この問題につきましては、正確には国の医療審議会で御議論いただいてその標準値を決めることにいたしております。
実際はもう少し御議論いただくことになるわけでございますが、仮にいまのままのトータル値で抑えるといたしましても、たとえば小児のNICUというものでありますとかあるいはCCUというものでありますとか、いろいろな医学の進歩に応じた高度の医療機能を必要とする病院病床で、現在わが国が世界の水準から見たらおくれている部分につきましてはまた別途その問題について考える、こういうことで弾力的に運用しようということで、必ずしもすべての病院病床を抑え込むという考え方はとっておりません。むしろ、わが国の北海道から沖縄に至りますまで、すべての地域で日進月歩の高度医療が重点的に、しかもまんべんなく全国の地域に配置されるような配慮をした、病院病床の配置を考えているわけでございます。単に規制というだけではないわけでございます。
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○塩田委員 これは恐らく、憲法上の営業の自由の問題等から、規制をするとしても法的に規制することはできないということで、知事が計画に基づいて勧告するということになったと思うのです。むやみやたらな増床を抑える必要はもちろん認めるわけですけれども、これを知事に権限を任せてやるとして、いろいろ別の政治的な配慮等を入れて、知事が恣意的にそういった開設、増設についての勧告を行うことができないように、そんなことがないように、これは運用上非常に重要な問題ですから、厚生大臣として指導監督を都道府県によほどしていただきたい。運用上の問題でございます。御注意を願いたいと思います。
それから、これがともすれば既存の医院、病院の擁護に傾きがちにならないか。新しく参入してくるものをシャットアウトすることに動くと、医療を受ける側から言うと時には非常な不利益を招くこともあるわけでございますから、これは単なる法律上の文言だけであとは運用、通達その他に任せられているということは、非常に心配なところが多いわけです。この辺よほど運用について慎重に、きめ細かく指導していただきたい。そのような運用方針を厚生省として確立をしていただきたい、こういうことを要望いたします。
〔丹羽(雄)
委員長代理退席、大石
委員長代理着席〕
-
○林国務大臣 いま先生のお話しを聞きますと、独禁法との関係でどうだというお話しでございますが、その方が一点だと思います。
もう一つは、知事がこの権限を乱用するのではないかというお話しでございますが、都道府県で地域医療計画を立てる、それに基づいて必要ならば、その医療計画の達成を図るため、というのは公共の利益に反しないことでございますから、法律論として申しますならば、制限するということを書いたところで独禁法にすぐ触れるという問題にならないと私は思います。ただ、そこまでやるのはどうだろうかということで、特にこの場合におきましては「病院の開設その他必要な事項に関して勧告する」と規定をいたしまして、一般の診療所であるとかなんとかいうものは外れているわけですね。そういうバランスを考えますと、勧告してみたらどうだろうか、こういうことでございます。省令ということではなく、これは知事が勧告するわけですから、恐らく知事からその当該管理者に対しまして文書でお話しをする、こういうことに相なるのだろうと思います。
しかし、今度それを知事がやるときに、乱用をしたら非常に困るではないかというお話し、それはもっともなことでございまして、法律の中には「医療計画の達成の推進のため」これが一つです。そして「特に必要がある場合には、」とこう書いてあるわけですから、医療計画の達成の推進ということが一つの要件になります。そしてそのために特に必要がある、こういうふうな場合でありますから、私は、この法律の規定としてはきわめて限定的にその勧告を発動する場合が規定してある、こう解すべきものだろうと思っておりますし、そうした場合には勧告をするということであります。
したがって、それじゃこんな抽象的な話でどうだ、こういうことがあるだろうと思いますが、その辺につきましては、やはり自由開業制というのが日本の医療のたてまえでございますから、そういったものの個人の持っているところの営業権というか、医業を行う権利というものを不当に侵害することのないように十分配慮をした上で、しかもなおかつ、「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合」という場合に限ってこの勧告を行うというふうに考えていただいていいと思いますし、政治的に、おれの方にしなかったとかなんとかなどという形でやるということは厳に慎むべきであることは申すまでもないことだろうと考えております。
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○塩田委員 要は、いい医療計画をつくっていただき、そしてその運用についてはきわめて慎重に、かつ緻密にこの運用状況がいい方向に行くように指導監督、運用を図っていただきたい。このことを特に最初に要望しておきます。
次に、老人保健法の成立の際に附帯決議等がつけられておりまして、地域医療計画の
法制化という言葉まで使ってあるわけです。これは老人保健部長にお伺いしますが、デーケアとかナーシングホームその他の老人保健関係の保健施設等についてどうして医療法の
改正の際に法律上の位置づけを、あるいは必要なものについては
法制化を図らなかったかということについてお伺いします。
-
○大谷政府委員 これは私どもの関係でございますので私から御答弁をさせていただきますが、確かに先生おっしゃいますように、ナーシングホームの問題あるいはデーケアの問題等、こういった問題についてどういうふうに位置づけるかということは非常に重要な問題でございます。また国会でもしばしば御論議いただいているところでございまして、私どもといたしましては、医療、保健、福祉というようなものを統合するという観点から、どうしてもこの点の機能の明確化、位置づけというふうなものにつきましていたしたいと考えておりまして、いま検討をいたしております。しかし、これは非常に専門的な検討が要ると同時に、各方面のコンセンサスが要るというふうな点がございます。
たとえば、それは単に施設を定義するだけではありませんで、運営をどうするか、経営の費用をだれが持つか、どういうふうな形態で行うか等、関係方面にいろいろかかわりがございますので、この点につきましては今回の医療法
改正の中に盛り込んではおりませんが、先ほど平石先生の御質問のときにも申し上げましたように、私どもといたしましては、この問題については前向きに検討いたしてまいりたいというふうに考えているわけでございまして、いずれ将来、この問題には取り組まなければならないというふうに考えているわけでございます。
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○塩田委員 この問題についてはそういった方向で早急に結論を出して、必要な措置をしていただきたいと思います。
次に、国、公共団体は病院、診療所の整備に必要な措置を講ずる、こういう規定がございますが、この「必要な措置」というのは予算的な措置をするということでございますか。その不足地域についてはそういった予算をつけて開設を図っていく、こういうことでございますか。
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○林国務大臣 「必要な措置」と申しますのは、税制、金融、融資その他いろいろな手段があるだろうと私は思いますし、そのときにおきましていろいろなことを考えていかなければならない。地方公共団体もいろいろと金も持っておるわけでありますから、その地方公共団体に対して勧告をするとか、いろいろなことが考えられるだろうと私は思いますし、広い意味でそういったいろいろな措置をやっていこう、こういうふうに御理解いただければありがたいと思います。
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○塩田委員 次に、最近病院の倒産がふえているということが言われております。また、老人病院から追い出しが行われているということも報道されております。点滴もできなくなったとか、苦情がいろいろ出ておるようでございます。これは報酬の引き下げ、単価の引き下げの問題等も絡んでいると思うのですが、こういった事態についてどのように対処しようとしておられますか。
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○吉原政府委員 老人の新しい診療報酬によりまして、老人を多く入院させていた病院が老人を追い出しているというような状況があるという報道が一部にございまして、私ども心配をして、都道府県等を通じて調べてみたわけでございますけれども、入院が必要な老人の方が老人の診療報酬がこう決まったからという理由で退院を強制されているといった事例は、都道府県を通じてないというふうに私ども聞いております。恐らく診療報酬についての誤解もあって病院が大変心配をしたのではないかと思いますが、この診療報酬は二月に施行されたわけですけれども、施行されましてすでに数カ月たっておりますので、この新しい考え方というものも関係者、医療機関には徹底されてきております。
そういったことで、老人の方がいまお尋ねのような追い出しを受けるというようなことは、これからも起きるようなことはないだろうというふうに思っておりますが、なお十分注意をしてまいりたいと思います。(塩田委員「倒産問題」と呼ぶ)
医療機関全体の倒産の問題につきましては、私が直接所管をしておりませんのでお答えしにくいわけでございますけれども、老人の診療報酬の関係で医療機関が倒産に追い込まれるというふうなことはないと思っております。
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○塩田委員 ちょっと楽観的な情報ばかりを入れておられるようで、これは今後の状況把握をしながらなお指摘をしていきたいと思います。また乱療等の問題も、一部の団体からの圧力でそういった傾向に走っているということもありますので、そういった問題を含めまして、これはまた改めて問題にしたいと思います。
次に、医師の一部では過剰、一部では不足ということが言われております。そこで、医師の需給の見通しはどうなっているかということであります。
これは六年間の大学の教育期間が必要であるし、そして今後二十年間の長期の見通し、二十年後にどうなるかといったことも考えながら養成計画を立てなければいかぬ。そういった面から、ことしの三月七日の予算第四分科会で、私どもの塚本三郎書記長からかなり追及をして、行革とも絡めまして、少なくとも国公立の大学の定数を減らすべきである、そういう時期に来ているのじゃないか、来ているとすれば早く手を打たぬと間に合わぬじゃないか、いずれ過剰で困る時期が来る可能性がある、アメリカの水準まで超えてしまう事態が西暦二〇〇〇年を超えると起こり得る、こういうことも考えられるわけで、早目に手を打つべきだと思うのですね。そういった需給の長期の見通しをどうしているのか。私立大学の入学定員のオーバー、水増しの問題も指摘されて、これは規制します。だんだん直ってきておるようですけれども、国公立については国の予算あるいは県の予算でできることですから、こういった問題を明らかにしますというふうに、塚本議員の話によりますと、前の厚生大臣は二年前に約束されたということも言われるのですけれども、あるいは三月七日の分科会でもそういった文言が、議事録が残っておりますけれども、これについていつ明らかにされるか。研究班をつくっていろいろ検討ももう二年やられているようですけれども、もうそろそろ明らかにして手を打つべきじゃないか。早急に結論を出してもらいたいわけですけれども、文部省との関係もあると思うのですが、十分に連絡をとって、ひとつ医療の関係、医師の需給の見通しの上に立ってはっきり文部省に申し入れをしてもらいたい、早く決めてもらいたい、こういうことでございます。
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○大谷政府委員 確かに三月の予算分科会におきまして御指摘を受けまして、そのときに私どもの方では、研究班を二つ組織して御検討をいただいていること、また文部省とその点に関しまして協議を進めていること、できるだけ早く結論を得たいということを申し上げたわけでございます。
その後、私どもといたしましても文部省との間で協議を詰めております。確かにそこの点をどのように考えるかという問題は非常にむずかしい問題でございますが、しかし現状といたしましては、なお地域偏在の問題、あるいは救急の問題、あるいは予防、健康づくり等に対する医師不足の問題等、さまざまな矛盾点を抱えております。アメリカにおきましても、医師を抑制すべきか、それともこのまま増加を続けるべきかということについては大変な議論がございまして、なかなか決着がつかないというふうなこともございます。
そういうふうなことも踏まえながら、私どもとしては、できる限り早くこの問題につきまして文部省と結論を出したいというふうに考えております。
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○塩田委員 都道府県で医療計画をつくり、必要ベッド数の勧告等の、先ほど話がありましたように、そういった問題をやる基礎は、やはり国が医師についての長期の需給の見通しをはっきり持って養成計画をちゃんといまから整備をしていかないと、計画自体は短期のものとはいえ基本になるものを、早く国から示す必要があると思いますね。これを要望しておきます。早急に結論を出して御回答いただきたいと思います。
最後に、医療法人についてですが、立入検査あるいは役員の解任についての勧告、こういった規定が相当強力なものが入ってきましたね。これは富士見病院あるいはその他の悪徳病院と言われるようなケースから、非常に善良な、善意でやっておられる医師に非常に迷惑をかけているということであり、そこから出てきた監督指導の強化という措置だと思うのですが、これにつきましては、やはり官僚統制にならないかということの危惧が非常に医師側にありますね。こういったことのないように運営を慎重にしていただきたい、このことを要望しておきます。
それとともに、この際、長年要望のある一人法人化の規定をなぜ盛り込まなかったかということをお伺いいたします。
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○林国務大臣 先生御指摘の立入検査その他の規定を強化したという問題は、先ほど来御説明申し上げましたように、いままで非常に悪徳な医療法人がある、こういうことに対しては、やはり法律の規定が欠けておるならばそこは補って、やるべきときには断固たる措置をとる、こういうことでございます。
ただし、御指摘のように官僚統制になるということになればこれは大変なことでございますから、言うならばこれは伝家の宝刀でございまして、めったに抜いてどうだこうだする話ではない、本当に悪徳である、だれが見てもおかしいというようなときに抜くべきものだろうと私は思って、この運用については、この乱用は厳に慎むべきようにこれからも配慮してまいりたいと考えておるところでございます。
次に、一人法人の問題でございますが、いまの法律は御承知のとおり、三人医者がいなければ法人にならない、こういうことになっている。いろいろとその当時の事情を調べてみたのですが、よくわからない。わかりませんが、どうもやっぱり、戦後の時代に医療というものを早急にしくための自己資本蓄積という形があったのではないか、こう思っておるところであります。
いまや医療が国際的にも相当高い水準になってきたし、医療の過剰と言われるような時代になりましたときに考えるべきことは、やはり医者がいろいろと社会的に批判を受けるということは、家計と経営とが分離してないところにあるのだろうと思います。そうした意味で家計と経営とを分離する、こういうふうな形でやるならば、経営の方だけを法人的なものにしてやるということは一つの考え方だろう、こう思うわけでございまして、医療経営、医療を経営として見たときの近代化というものには役に立つのだろう、こう私は思います。
ただ、その問題をやりますといろいろな問題も出てまいりますから、そういった点につきましても各方面でいろいろと御意見のあるところでございますし、その辺を鋭意検討しているというのが現在の状況でございます。
-
○塩田委員 一人法人につきまして厚生大臣から前向きの御答弁をいただきました。これを期待して、われわれも対処していきたいと思います。
優遇税制等も
改正されたことでもあるし、一般法人と平等に医療につきましても一人法人ができるように、ぜひともこれを実現するように御努力をお願いしたいと思います。
これに関連しまして、承継税制の問題、それから緊急医療の際の特別控除の問題、減税につきましてのいろいろな要望が前からあることは御存じのとおりでございまして、特に承継税制につきましては、中小企業につきましては、先般相続税の関係等で運用上新しい方式が出まして、選択ができるようになりましたですね。ところが、医療法人はまだそれが適用されない、こういう状況でございます。なぜそのように一般の中小企業がとられている承継税制についての
改善、これを医療法人はできないのか、この辺について御答弁いただき、前向きでこれもひとつ取り組んでいただきたいと思います。
-
○林国務大臣 いわゆる承継税制の話でございますが、私は、これは確かに塚本さんと一遍御議論いたしました。そのときにも申し上げたのですが、医療法人と一般の営利法人とやっぱり性格が違う、そういったところもありますから、果たして税法上同じ取り扱いにしてよろしいかどうかという点は、やっぱり税の問題としては議論があるところだろうと私は思うのです。その辺を詰めていかなければならないと思いますが、中小企業の一般の承継税制ができましたのは、戦後の時代に中小企業が皆でき上がった、おやじさんが有限会社をつくり、小さな株式会社をつくったところが、いまやその跡継ぎに渡すときの段階になってきている、ちょうどそういったいまの時期でありますから、そういったようなことを考えるのが、お互いやっぱり政治家として考えていくべきことではないかということだと思うのですね、あれは。
そうしますと、医療法人だって同じような状況にあることは私は事実だろうと思うのです。だから、医療法人の性格、それから医療法のあり方というようなことをもう少し詰めていかなければならない。資産評価の話でございますから、これは中小企業と医療法人と資産評価その他の問題で問題が違うというような話ではない。むしろ法人の性格論に帰着する話ではないだろうか、こう私は思いますし、いま事務当局に鋭意詰めさせておるところでございまして、できるだけ御要望に沿うような形にまとめていかなければならないものだろう、こう思っているところでございます。
それからもう一つ、前段の救急医療の税制の話もございましたが、こういったものにつきましても、これからの医療体制をどうするかということにも絡んできますし、言うなれば、いろいろなそのほかの税制の問題も含めまして議論をしていかなければならない問題点ではないだろうかというふうに受けとめておるところでございます。
-
○塩田委員 承継税制の問題につきましては、国民の医療の安定的な供給を確保するという観点から、大臣、いま前向きに取り組んでいただいておりますが、ぜひともこれは実現を図っていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
-
-
○浦井委員 まず最初に、
森井委員にお尋ねをしたいのです。
私も社労になって足かけ八年になるのですが、原爆二法が通常国会に提出をされなかったというのは、少なくとも私が社労になってから今回が初めてであります。今回は、きょうのような異例の形で、野党が共同して提案しております被爆者
援護法の審議を通じて、被爆者の皆さんの御意見を国会に反映せざるを得ない。なぜこうなったのかという点について、筆頭提案者でございます
森井議員に一言お尋ねしたい。
-
○
森井議員 御指摘のとおり、昭和四十八年に
年金の
スライド制が確立いたしまして、自来昨年まで、
年金に連動いたしまして毎年毎年原爆特別措置法の
改正案が出されてきたわけであります。ことしは御存じのとおり、中曽根内閣が人事院勧告を凍結いたしました。関連をして
年金の凍結、さらに原爆諸手当の凍結という形になったわけでありまして、私はきわめて遺憾だと思っております。したがいまして、全野党によります被爆者
援護法案を提案いたしまして、きょう、部分的ではございますけれども、与党からの質問、それから政府に対して野党からの質問もございまして、事実上の審議の場をどうしても持ちたかったと考えておるわけでございます。
-
○浦井委員 そういう御意見を大臣も肝に銘じておいていただきたい。
それから、
森井議員に一つ提案でございますが、きょうは被爆者の皆さん方も傍聴に来ておられるようでございますし、年来の宿願である被爆者
援護法を、場合によったらここで採決なんかしてもいいのではないかと思うのですが、どうでしょう。
-
○
森井議員 私もぜひそうしていただきたいと思っております。従来は政府の特別措置法の
改正案が出まして、その対案という位置づけで被爆者
援護法案を出してきたわけでございますが、今回は政府が提出しておりませんので、全野党によります被爆者
援護法案だけでございます。したがって、国会の会期もあとわずかでございますから、きょう採決していただくことを希望しておきます。
-
○浦井委員 そういうことでございまして、大臣も覚悟しておいていただきたいと思うのですが、
森井議員、どうもありがとうございました。
そこで、今度は現行被爆者
援護制度に対する各論を質問したいのですが、時間が十分間しかございませんので、全部列挙したいので、後で
局長なり大臣にお答え願いたいと思うのです。
一つは、現在医療特別手当は所得制限がない、ところが他のものには所得制限がある。われわれは基本懇の考え方には反対でありますけれども、この思想の中にも国家補償という考え方は盛られておる。最高裁の判例もそういうことになっておる。だから、そういう点で、国家補償ということになれば手当に所得制限がつくのはおかしいではないか。健康管理手当、保健手当、こういうものの所得制限を撤廃するのが当然ではないか、こういう要望が被爆者の中から出てきておるわけで、これは私もそう思います。これは撤廃せよという質問であります。
第二点は、野党共同の被爆者
援護法の中に弔慰金の問題が出ておりますけれども、現行法では被爆者に対する葬祭料というような形で、ある意味でごまかしておるわけでありますが、これは弔慰金を出すべきだと思うわけであります。少なくとも、その弔慰金を出す際の突破口という意味で、原爆認定患者の皆さんが不幸にして死亡された場合に、その遺家族の方に弔慰金を出すというようなことからでも始めたらどうか。これはもちろん被爆者の皆さん方の要望でありますし、私もそれを要求したいと思います。
第三点は、いままで国勢調査の年に、昭和四十年、五十年と被爆者の実態を把握するためにいろいろ調査をやってこられたわけでありますが、六十年になりますと国勢調査があるわけで、六十年という節を定めて、被爆者
援護法をいずれは制定するのだと政府も考えておられるだろうと私は思うので、それをやっていく上にも実態を把握することが不可欠でありますので、ぜひやっていただきたい。毎年の原爆二法の附帯決議にもそのことは盛られておるわけでありますから、ぜひ六十年を中心にして被爆者の実態調査をやっていただきたい。
第四点は、先ほども少し出ましたけれども、老人保健法が施行されて、外来四百円、入院三百円の自己負担が出てきた。被爆者の場合にはそれが予算措置で現物給付ということになっておるのですが、現実には広島市、長崎市を除きまして、全国的には償還制になっておるわけなのです。これは国家補償という精神に基づいた被爆者
援護という趣旨に反すると思いますので、早急に現物給付に改めるように政府としても努力していただきたい。
以上、四点であります。
-
○林国務大臣 私から概括的な御答弁を申し上げまして、もし足りないところがあれば政府委員から答弁させることでお許しいただきたいと思います。
まず第一の、原爆諸手当の所得制限の問題でございますが、現に放射線による健康障害を有する被爆者に支給する医療特別手当、原爆小頭症手当につきましては、放射線障害の実態に即した対策を重点的に実施すべきであるというのが基本懇の基本的な考え方でありますし、そういった答申を踏まえまして所得制限を設けていないことは、先生御指摘のとおりであります。しかし、放射線との関連が明らかでない、または放射線障害が現存していない場合においても支給される特別手当、健康管理手当、保健手当につきましては、他の社会福祉、社会保障制度との均衡を考慮して所得制限を設けているところで、ほかとのバランスということでございます。放射線障害の程度を考慮しないで、これらの手当の所得制限を撤廃するということはちょっとむずかしいのではないかというふうに思っているところでございます。
第二に、医療特別手当を受給している方が亡くなった場合等に限って、弔慰金等を支給することにしたらどうか……(浦井委員「特別手当じゃなしに認定患者です」と呼ぶ)認定患者ですか。認定患者の問題は政府委員の方から御答弁させましよう。
それから三番目の問題として、被爆者の実態調査を昭和四十年、五十年の二回実施したからまたさらに六十年にもやったら、こういうふうなお話しでございますが、被爆者対策を実施するために必要な資料というのはこの二回の調査で私たちの方は大体得られている、こう考えておりますので、六十年にさらに重ねて実態調査を行う必要性というのは余りないのではないかというのがいまの感じでございます。
ただ、いろいろと問題もあるでしょうから、いろいろなことがあればそのときに考えていかなければならない問題だろうと思っているところでございます。
それから、老人保健法の施行に伴いまして、被爆者の便宜を考えまして広島、長崎の両県におきましては現物給付化の措置を講じてきたところでございますが、それ以外のところの都道府県をどうするか、こういうふうな御指摘だと思います。これは正直に申しまして事務的な体制の整備の問題もございます。多いところもありますけれども、全国に散らばっている、こういうことでございますから、事務処理体制の整備を急いでできるだけ速やかにやりたい。事務的に非常に繁雑になる、またなかなかむずかしいという問題もあるでしょうから……(浦井委員「老人保健法をつくるからいかぬ」と呼ぶ)いや、そういったことを踏まえまして私の方ではやっていきたいと思っているところでございますが、事務の問題でございますからどちらがどうかなという感じも実はしているところでございます。
あとは政府委員から答弁させます。
-
○三浦政府委員 まず第二の御質問でございますが、先生が御指摘のような形で仮に弔慰金制度を創設するといたしましても、その場合に、一つは、原爆死没者を区別して弔慰の気持ちをあらわす人とまたあらわさない人と二つ出てくるわけでございまして、被爆者の方を初め国民一般の人たちが納得するかどうか、非常に問題があるのではないかというふうに考えておりますし、またその区別の線を何を基準にしていくかという問題点があるのではないかと思いますので、現実には非常にむずかしいのではないかというふうに思います。
-
○浦井委員 詭弁あり、弁解あり、言いわけありで、きわめて不本意な答えでありますが、時間が来ましたのでこれで終わります。
-
○大石
委員長代理 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時五十三分休憩
────◇─────
午後一時三十二分
開議
-
○稲村
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川本敏美君。
-
○川本委員 私はこの間、四月二十七日に商工委員会で、一連の型式承認の法律のときに質問をいたしました。その際、薬の問題から食品添加物の問題について質問をして、藤井食品化学課長から御答弁をいただいておるわけですが、その答弁について私は若干疑義を持っておったのですけれども、大臣も
局長もおられませんから、これはひとつ
社会労働委員会で明らかにしていきたい、こういうことで、きょうはその続きをやらしていただきたい、こう思っておるわけです。
そこで、実は簡単に申し上げますと、この間私が質問した際、藤井食品化学課長は、ここの会議録にも出ておるのですが、「四月の十一日に食品衛生調査会に、十三品目の食品添加物の可否について意見を求めております。その結果、八品目について、必要性並びに有用性があると認めて、指定して差し支えないという意見具申がなされている状況でございます。」こう言っている。これは食品衛生調査会に諮問したのはいつですか。
-
○
竹中政府委員 食品衛生調査会に諮問をいたしましたのは五月になってからでございます。
-
○川本委員 そうすると、私のこの質問に対する課長の答弁は誤りですよね。
-
○
竹中政府委員 四月十一日に、食品衛生調査会の毒性部会と添加物部会の合同会議が行われたわけでございます。その際に、私ども通例よくこういうことをやるわけでございますが、専門の部会にあらかじめ御検討をいただきます。それで、そのときは十三品目について指定して差し支えないかどうか、ひとつ御議論をいただきたいということでお願いをいたしまして、そのうち九品目につきまして指定しても差し支えないという御議論がまとまりまして、その意見報告といたしまして、両部会長が調査会長あてに意見報告を出されたということでございます。
意見具申と申しますと、いかにも何か両部会から厚生省の方に意見具申があったような表現でございますが、そこはちょっと、まことに申しわけないと思いますが、事実はその意見報告が調査会長に出されたということでございます。
-
○川本委員 わかりましたよ。全くけしからぬ話だと思うんですよ。意見具申じゃないでしょう。私もここに原本を持っていますよ。食品衛生調査会の会長あてに出した意見報告じゃないですか。そうでしょう。それで、四月十一日には大臣の諮問もなければ、調査会の
委員長からのあれも何もないわけですよね。役人が勝手にやっておるんですよ。厚生省は、この毒性部会とか添加物部会に出ていって、あなた方が勝手に言うて、そしてそれに対してこの意見報告が出されたのを、あたかも課長は、ここでは「四月の十一日に食品衛生調査会に、」こうはっきり、食品衛生調査会で論議をしたがごとく言って、最後のところでも、大臣に出たように、意見具申がなされております、こう言っておるじゃないですか。食品化学課長、これは事実ないことをあたかもあるかのごとく見せかけて正当化して、これを国会で答弁したのですか、どうですか。これはあなたに聞いているのじゃない。大臣、こんなことが許されると思いますか。こういうすりかえは許されると思いますか。
-
○林国務大臣 川本議員の御指摘の問題は、商工委員会での先生の御質問に対しまして、当方の説明員から御答弁を申し上げたことに関連しているわけでございますが、四月十一日には私も出まして、毒性部会、添加物合同部会というものを開いてもらったわけでございまして、そこで、近年の食生活の変化等を踏まえた、食品添加物の指定における当面の対応について取りまとめを、その部会にお願いをしたわけでありますし、引き続き十三品目の添加物について検討し、九品目については、安全性、有用性及び必要性が認められるところから、指定して差し支えない、残りの四品目は資料不足等の理由から保留とされたところでございまして、実は、これらの合同部会での審議結果を、同日付で食品衛生調査会
委員長あてに意見報告をしたわけでございます。一昨日、食品衛生調査会を開いていただきまして御議論をいただき、正式に答申をいただいたところでございます。
先生の御指摘のように、私がもらったのはそういった段階でございますし、言葉として「意見具申」と言うと、何か大臣に出した、こういうふうなニュアンスがあります。ありますから、その辺は表現としては適切ではなかったというふうに私、思いますし、そういった点で誤解を受けた点がありましたとすればまことに遺憾でありますし、今後とも誤解を受けることのないように十分注意をさせたい、こう考えておるところでございます。
-
○川本委員 これは私に対する答弁だけじゃなしに、食品化学課長は新聞記者にも、この毒性部会とそして添加物部会の意見報告を、あたかも大臣に対する意見具申のごとくすりかえて新聞発表しておるじゃないですか。新聞にも皆そう書いていますよ。私はこんなことは許されないと思うわけです。今後とも大臣、そのようなことがあったら、そのようなことについては、担当
局長とか課長の責任を私は問うて、これは国会軽視につながることだと私は思うのです。
委員長、どうですか。この商工委員会で事実と違うことを答弁しておるわけです。そんなことを許されていいのですか。私は、これは断じて許されぬと思うわけです。
-
○林国務大臣
委員長への御指名でございますが、私から御答弁を申し上げますが、言葉として「意見具申」という言葉を使ったのは、私は確かに適切な使い方ではなかったと思いますが、そういった点で誤解を招いたということは、私も重々おわびを申し上げる次第でございますし、役所のいろいろな審議会、特にこの問題につきましては、大変に大きな資料を配付いたしまして、ダンボール箱二つと言ったら、そうじゃない、四十キロあった、こう言われたのです。そのぐらい資料をお願いをして、相当にぎすぎす、朝の十時から晩の相当遅くまで議論をいただいたわけでありますから、担当者の気持ちとしては本当にやったという気持ちだったのだろうと思います。その気持ちがつい思い余ってそういう言葉を使ったということでございますが、確かにそういう言葉を使って誤解を招いたということはまことに残念なことでございますし、今後こういったことがないように重々にこれからも注意をいたしたい、私もその責任にある者として今後もこういったことがないように努めたい、こういうふうに考えているところでございます。
-
○川本委員 私は、食品添加物行政については基本的にそのように国民をごまかして、だまして、そしてあたかも厚生省のやっておる行政が正しいように見せかけようという意図が、今度のこの一連の中で感じられるわけです。なぜそのような意図を露骨に出してまでいま十三品目の食品添加物を強引に承認をしていく、認めていく、こういうことをしなければいかぬのかということについて、私どもとしては納得できないところであります。食品添加物の指定の基本姿勢というものが今度このことによって変わってきたのじゃないかと思うわけですが、私はこの間、質問の中では、その規制基準とかあるいは国会決議の問題を持ち出して藤井課長に対して質問したところが、「食品添加物の規制の緩和という意味は、決して安全性の緩和ではございません。したがいまして、それぞれ従来と全く基本姿勢は変わらずに、食品添加物の一つ一つについてわが国の食生活を反映させながら審査をやっている次第でございます。」こういうことで、基本姿勢は変わらないと言っておるわけですが、私は今度は基本姿勢は変わったと思うわけですが、その点について基本姿勢は変わっていませんか。
-
○林国務大臣 食品添加物をどう認めていくかということにつきましては、各品目ごとに安全性と有用性、また必要性等を、食品衛生調査会で学問的な見地から御審議をいただいた上で認めるということにしておりますし、いままでの方針と変わるところはありません。国民の健康を最優先にして考えていかなければならないという基本的な考え方につきましては、従来と同様でございます。
-
○川本委員 「食品衛生調査会において調査審議を行う際の基準」というのがありますが、この基準によって食品添加物の審査をやっておるのですか、どうですか。
-
○
竹中政府委員 いま先生お示しのものは、昭和四十年の七月につくられました食品調査会の基準でございます。
基本的な考え方は、現在もこの基準に基づきまして安全性なり有用性なりを確認の上、可否を決めていくということでございますが、ただ、四十年から現在まで、いろいろと各種の毒性についての検査が非常に進んでまいっております。したがいまして、調査会におきましては、現実問題といたしましては、この基準の考え方を根っこに置きながら、たとえば発がん性でございますとかあるいは催奇形性でございますとか、そういったものについての実験の確認をした上で可否を決めておるというのが実情でございます。
-
○川本委員 この基準の食品添加物の指定に関する考え方の一は、「食品添加物は、安全性が実証されるかまたは確認されるものでなければならない。」二番目には、「食品添加物は、その使用が食品の消費者に何らかの意味の利点を与えるものでなければならない。そのため次の条項が考慮されることとする。」ということで、ずっと書かれておる。ところが、いまおっしゃいましたが、それならお聞きしますけれども、まず一日一人当たりの食品添加物の総摂取量というのは大体何ぼというふうに、食品衛生調査会では思っているのですか。
-
○
竹中政府委員 きわめて精密な摂取量調査というのは必ずしもないわけでございますが、たとえば一日数グラムとか、そういった単位で言われておると思っております。
-
○川本委員 食品添加物を一人一日平均何グラムとっておるかということについては全然わかっていないのでしょう。数グラムと言われておると言うけれども、数グラムとはだれが言っておるのですか。
-
○
竹中政府委員 食品添加物の、天然添加物もいろいろございまして、一日摂取量の計算というのは非常にむずかしゅうございますが、大体化学製品、化学物質としての添加物、食品添加物は一日一ないし一・五グラムというふうに承知をいたしております。
-
○川本委員 承知をしておるだけではいかぬですよ。だれがそう言うたのか。どこにそういうことが明示されておるのか。あなた一人承知したって、国民は承知しませんからね。
-
○
竹中政府委員 食品添加物の一日摂取量の調査については、実は厚生省といたしまして二年前から実施をいたしておりますが、現在のところ、重要な添加物について少しずつその量の把握ができておるというような段階でございます。
-
○川本委員 先ほどお話しのように、発がん性とか催奇形性とかいうようなものについてもまだはっきりわかっていないのでしょう。
-
○
竹中政府委員 これまで過去に指定をいたしました添加物につきましては、四十九年以来順次、発がん性等も含めまして再評価をしてまいっておるところでございます。
-
○川本委員 この間、私の質問に対する藤井課長の答弁は、「FAO、WHOが、二十六年前から国際的に使用されている食品添加物について安全性の評価を行ってきております。現在、その中において、安全性が十分に評価し得る、資料も十分あるという形で列挙をしております品目が三百三十九品目リストにアップされております。」これがいわゆるA1と言われる品目ですね。そして、「今回の九品目は、いずれもこのA1のリストに挙げられている品目について、特に緊急に審査といいますか審議をお願いしたいという要請がアメリカ側からございまして、わが方としてもその要請を、A1リストのものでございますし、その資料を十分に整えて食品衛生調査会の議に諮った次第でございます。ここではっきり言っておるのですね。
というのは、FAOとかWHOのA1リストに登載されておる品目であるということが一つ。そして、緊急に審議をお願いしたいということで要請がアメリカからされたということもある。ところが、今度の十三品目の中には、アメリカから要請されたものもあるし、国内の企業から要請されたものもありますね。だからすべてがアメリカのものではないと思いますが、アメリカから出された資料というのを添付してきたのはどれとどれとで、厚生省が独自に資料を収集したのがどれとどれとで、日本の企業がいわゆる要請してきたのが、資料を整えてきたのがどれとどれかということをまずお聞きしたいと思います。
-
○
竹中政府委員 総数で十三品目ございまして、そのうち、国内から要望がございましたのは四品目でございます。それから、米国から要請のございましたのは十品目でございまして、たまたま米国要請と国内要望と重なったのが一品目ございますので、合計で十三品目ということでございます。
-
○川本委員 いままでの食品衛生調査会における食品添加物のいわゆる指定基準、この中には、A1リストに入っておればいいんだということはどこにも書いてないわけですね。今度初めてA1リストという問題が出てきておるわけですね。A1リストに入っておればいいんだということは、だれがどこで決めたんですか。
-
○
竹中政府委員 A1リストは、御承知のようにFAOとWHOが専門家を集めましてその安全性を確認をしてランクづけをした、安全であるということで確認をしたのがA1ということでございます。したがいまして、各国とも、食品添加物の指定に当たりましては、このランクがどうなっておるか、A1であるかどうかということを参考にしながら、指定するかしないかを決めるということでございます。
なお、わが国におきましても、A1リストに載っておる、しかもA1リストの中でも古くA1リストに載ったものについては、現代の目でもう一遍見直す必要がある。したがって、A1だからといって必ずしも安心はできない。そしてまた、現在の目で見てA1だというものが最低の条件である、その上で、実際のデータに当たりまして、安全性をもう一遍確認するという作業が食品衛生調査会で行われておるわけでございます。
-
○川本委員 これは「食品添加物の安全使用基準」FAO/WHO食品規格委員会編ということで、国際食糧農業協会が発行しているものですけれども、この四ページを読みますと「Aリストを完全なもの又は最終的なものと考えてはならない」と書いてあるのです。A1じゃないですよ。Aリストに載っておるものでも、これは完全なものであり最終的なものであると考えてはならぬと、これはもうWHO自身が言っておる。にもかかわらず、日本の厚生省が、A1リストに載っておるからということを理由にして十三品目を追加するというのは、私はこの指定基準の緩和につながっておるんじゃないか、このように考えるわけですが、いつそのようないわゆる変更がなされたのか、だれがしたのか、だれの許可を得てやったのか、大臣御存じですか。
-
○
竹中政府委員 A1リストは、先ほども申し上げましたように、A1リストに載せられたものの中には、大分前に検討してA1リストに載ったものもある。いまお読みになりましたFAO/WHOの考え方は、一度A1になったものでも、科学の進歩によって常に見直しと申しますか、検討しなきゃならぬということを言っておるわけでございまして、したがいまして、私どもも、A1リストに載っておるからすべてセーフということではございませんで、A1リストに載っているものについて現在の目でもう一遍データをチェックをし直しまして、それでいいというものに限って指定してもいいというふうに決めていくというルールにいたしておるわけでございます。
-
○川本委員 それなら、今度この指定品目の中に入っておるアスパルテームという甘味料の問題について少しお聞きいたしますが、このアスパルテームについて、毒性部会と添加物部会がこの間、四月の十一日に出した調査会の
委員長あての報告書の中に、「なお本品はフェニルアラニンを含む化合物であるところから、これが表示についても配慮すること。」このように書いてあります。これはどういう意味ですか。
-
○
竹中政府委員 このアスパルテームは、体の中に入りますと分解をいたしまして二つのアミノ酸になるわけでございますが、そのうちの一つがフェニルアラニンでございます。外国でもこのフェニルアラニンにつきまして、フェニルケトン尿症という赤ん坊の病気がございます。そのフェニルケトン尿症の赤ちゃんはフェニルアラニンをとっちゃいかぬ、こういうことでございますので、各国とも、アスパルテームにつきましては、そういうフェニルアラニンができるんだ、したがってフェニルケトン尿症の赤ちゃんは摂取しては困るんだというような趣旨の表示をしておるということでございます。
-
○川本委員 私の調べたところでは、このフェニルアラニン、この物質は結局、妊娠中のラットで実験をしたら、生まれてきた赤ちゃんがあるいは体重が軽かったり、あるいは開眼が不全であったり、あるいは角質、目のいろいろな副作用が出てきておる。あるいはこのラットの離乳時期で体重を比較してみたら、正常なえさ群の雄四十七・九グラム、アスパルテーム群は雄四十・六グラムで七グラムも軽い。雌も四十七・八グラムと三十八グラム、その差は十グラム近い開きがある。別の実験でも同様な結果になっておる。そして、ほかに神経膠星状細胞腫や乏突起神経膠腫という珍しい脳腫瘍が投与群に発生をしておる、こういうことも明らかだということが言われておる。
こういうような、妊娠中のお母さんが仮にアスパルテームを摂取して、それでお腹の中の赤ちゃんがほかの子供より二〇%近くも小さい子供しか生まれない、あるいは生まれてきた子が目が悪い、あるいは脳の中にこういう腫瘍ができる、こういうようなことが報告されているにもかかわらず、先ほど来のお話しのように、A1リストに載っておるからということだけの理由でこれを告示して食品添加物として認めていくということは、厚生大臣、これは国民は大きな不安を持ちますよね。私は、この規制緩和措置に対していま国民は大きな不安におびえておると思うわけです。
そこで、このA1リストだけじゃなく、今度の食品調査会でこのアスパルテームを審査するに当たって、安全性、毒性に使った資料は大体どういうものを使っておるのですか。私が厚生省に要求して、こういう「第Ⅲ部 安全性に関する資料」という目録みたいなものですけれども、これによって審査をしたのですか。
-
-
○川本委員 これを見てみますと、実はこれはサ―ルという会社がつくった資料、それから味の素中央研究所生物科学研究所がつくったデータ、これも未発表のものがほとんどで、一つか二つだけしか公的に確認されたものはない。ところが最近、これは薬でも御承知のように大鵬薬品でもそうだったし、日本ケミファでもそうだったし、この間の明治製菓でもそうでしょう。いわゆる臨床実験とかデータ隠しとかその他のことがいま公然と行われておる。薬でもそうなんですから、それを薬事審議会が見抜けないという状況の中で、こういう企業がみずからの企業の中の研究所でつくったデータなるものにどれだけの信憑性があるのか、このようなものを信用して国民にこれで安全でございますと言えるのかどうか、この点についてどう考えておるのですか。
-
○
竹中政府委員 今回使用いたしましたアスパルテームにつきましての実験データでございますが、お話しのように米国のサール社あるいは味の素株式会社の附属試験所のものがかなりの部分を占めておるわけでございますが、これらの試験施設はいずれもいわゆるGLPの適合施設でございます。医薬品の場合でもそうでございますが、食品添加物の審査の際にも、そういうGLPに適合した施設で行われた実験データにつきましては、それを十分活用してまいるということで進めておるわけでございます。
-
○川本委員 それはけしからぬ話ですよ。これは昭和五十年六月二十六日付の官報ですが、この官報に、六月二十四日に内閣から次の答弁書を受領したということで、衆議院議員の瀬野栄次郎さんが「サッカリンの規制緩和に関する質問主意書」を出しておられる。この質問主意書の八項目目に「今回のサッカリンの審議において外国文献を資料として
採用しているが、外国文献を
採用する際の基準はなにか。」こういう問いがある。これに対して閣議をもって、これは時の三木総理の名前で答弁書が出されている。この閣議決定によると、「
採用する文献は、政府機関の研究所、大学その他権威ある研究機関で実施され、かつ、原則として公表されたものを用いることとしている。」ここで答弁書で出ておるじゃないですか。あなたがいまおっしゃったことはこれと違うじゃないですか。そんな一企業の未発表の論文をここで――食品衛生調査会で
採用する文献はこうだと明示しておるわけです、閣議決定で。これとあなたがいま言うたこととまるっきり違う。そんなことを勝手にだれが決めたの。もしいまあなたの言うたとおりだ、厚生省の態度がそうだとするならば、これはこの答弁書と違いますよね。大臣、どうですか。ここにちゃんと書いてますよ。
-
○
竹中政府委員 先生御承知のように、最近の数年間に、これは各国とも国際的にそうでございますが、GLPの制度がだんだんと定着をいたしてまいりまして、したがって私ども、医薬品でも私どもの方でも、原則はできるだけ公的機関ということでありましょうけれども、それと……
-
○川本委員 できるだけじゃない。そこにはそんなこと書いてないよ。そんなもの、あなた、公的機関と国の研究所でしたもの以外は
採用しないとはっきり書いてあるじゃないの。できるだけというようなことは書いてないよ。
-
○
竹中政府委員 それに準ずるものといたしまして……(川本委員「それは準ずるものとか書いてないよ」と呼ぶ)GLPの適合施設のデータを活用していくというふうに、これは国際的にそういう進め方をしておりますし、私どもも最近はそういう考え方で進んでおるわけでございます。
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○川本委員 そこに今度の規制緩和の問題点がある。前に、昭和五十年の六月二十四日には、瀬野栄次郎衆議院議員の質問主意書に対する答弁の中ではっきり言っておる言葉が、いまそれに準ずるものならいいとか、あるいはもっと後退をして、情勢が変化しておるとか、そんなことは一役人の恣意に任されておると思いますか、あなた。食品添加物行政は、そんなに役人と企業の思うようになるような形のものじゃないと思うのです。これは国民の命や健康に関係がある問題なんですよ。いっぱし国会に対してそういう答弁をした以上、それから外れておるのは違法だと私は思うのです。今回のこの十三品目の指定に当たって、いまおっしゃった答弁のとおりであれば、これはさきの質問主意書に対する閣議決定の答弁とも食い違うし、そうなれば、これは違法の決定と言わなければいかぬと思うわけですよ。大臣、どう思いますか。
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○林国務大臣 いま先生から、五十年六月二十四日、瀬野栄次郎さんの御質問に対する答弁書というのを見せていただきました。これは、私もこれだけ見て、ちょっとまだ全容をよくわかりませんから言えませんが、いまの先生の、この色がつけてあるところがありますね。これを見まして私、思いますのに、「今回のサッカリンの審議において外国文献を資料として
採用しているが、外国文献を
採用する際の基準はなにか。」こういうふうな話でありまして、答えとしては「
採用する文献は、政府機関の研究所、大学その他権威ある研究機関で実施され、かつ、原則として公表されたものを用いることとしている。」こういうふうに書いてありますね。
先ほど
局長から答弁を申し上げましたのは、GLP、こういうことを申しました。GLPというのは、グット・ラボラトリー・プラクティスというものです。よき研究所として当たる、こういうことでございますから、私は、あえて言いますならば、大学その他権威ある研究機関で実施されたものだろう。グッド・ラボラトリー・プラクティスというのは、まさにそういった権威のある研究機関だ、こういうことで政府が認めておるわけでございますから、そういったところでやったものである。それをいま食品衛生調査会でいろいろと御審議をしていただくときに、このグッド・ラボラトリー・プラクティスでやりましたものでありますから、これを出して御審議を願った。
繰り返しになるかもしれませんけれども、私どもはWHOでA1リストということで認められたということのみをもってすぐに、それでは日本では何も審議しないでやるということではありません。全部そういったデータを用いまして、WHOでやりましたのもありますが、それは古い歴史もある。また日本では、日本独自の健康という観点からいろいろ審査をしなければならないので、食品衛生調査会にお願いをし、毒性・添加物合同部会ということで大変な御審議をお願いしておるところであります。先ほど申しましたように、四十キログラムにわたるような資料も、私は馬に食わせるような資料ではないか、こう申しましたけれども、その資料も事前に各専門の先生方にお願いをして十分に御検討をしていただいた。それぞれの先生方は日本の大変な権威でありますから、そういった権威ある学者の先生方に御審議をいただいたものであるから、これは日本のものとして間違いがないものだ、私はこういうふうに考えておるところでございます。
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○川本委員 私は、そういう外圧とかいわゆる政治とか経済が、食品添加物行政の国民の命や健康よりも優先する、こういう基本姿勢に対しては国民は納得しないと思うわけです。だから、先ほどGLPで消化、ろ過されたものだとおっしゃいますけれども、そのGLPでろ過されたものがいいというのはだれが決めるのですか。それは厚生大臣が決めるのですか。
-
○
竹中政府委員 繰り返しになりますが、GLPの基準に適合しておるかどうかというのは、それぞれの試験研究所個別に十分検討した上、行われるものでございます。
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○川本委員 ところが、いまのこの毒性部会に出された味の素のアスパルテームに関する二十一の資料というものは、全部GLPでろ過されたものなの。そうじゃないでしょう。これは味の素だとかこういうものが全部、仮に向こうでろ過されておったとしても、未発表のものが多いじゃないですか。公表されたものではないじゃないですか。公的な機関で認証されたものでないということは一目瞭然わかるでしょう。
先ほど言ったように、日本ケミファとか大鵬薬品とか、もっとあなた、日本ケーファの場合は学会で報告された論文にすら全くうそのデータが載っておった。私たち国民はそういうことを知っておりますよ。だから、ここで味の素の研究所が結果はこうだったと言っても、皆さん、それをうのみにできると思いますか。かりそめにもそういうことで催奇形性がある、そういうおそれがある、そういう疑いがあるというのであれば、大臣はこれを、仮に食品衛生調査会から答申があっても、国民の命や健康を守る立場から、告示を延ばしてでも独自の毒性検査をやるべきじゃないか、私はこのように思うのですが、その点大臣、どう思いますか。
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○林国務大臣 川本先生のせっかくのお言葉でございますが、厚生省といたしましては、厚生省にありますところの食品衛生調査会に慎重な御審議をお願いし、いろんなデータを出してお願いをしたところであります。
この食品衛生調査会におけるところの先生方は、私たちはわが国第一級の学者の方々のお集まりだ、こういうふうに考えておるわけでございまして、そこの先生方が言われたことをまたそういった形でいろんな御審議をいただくというのは――恐らく、いま先生のお話しのような点につきましても、いろんな点でその審議があったと私は思います。審議の内容については、私は出ておりませんが、そういった点で第一級の先生方が十分な御審議をされた上での御結論だ、こういうふうに思っておるところでございまして、この結論の答申を十分尊重してまいるというのが私の立場でございます。
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○川本委員 毒性部会の報告書にも出ておるように、その表示に対して条件をつけておるわけですけれども、妊産婦がこれを使うときは気をつけなさいぐらいの条件じゃ、これは大変な問題を起こすおそれがある。もしそういうおそれがあったときは、その責任はだれがとるのか。これで、一人でも事故ができた場合の責任はだれがとるのか。そのときはもう
局長も課長もやめて、おらぬでしょう。大臣もかわって、おらぬでしょう。そういう無責任体制のもとにおいてこういう重大な決定がなされることについては、私は断じて反対だ。だから、その点だけは重ねて申し上げておきたいと思うわけです。
もう一度申し上げますけれども、アスパルテームについては、私はまだあと銅塩、亜鉛塩類の問題もありますけれども、これもわずか百五、六十人のいわゆる銅、亜鉛塩の欠乏児のためにミルクにこれをまぜる。それによって全部の子を持つお母さんがそのミルクを使って、毎年百五十万人も生まれてくる赤ちゃんがそれを使うということについては、これは、医療用の目的を食品添加物の中で果たしてはならぬという基準からも外れると思うので、そういう問題についても問題点があると思いますので、慎重な対処を再度大臣に要求しておきたいと思うわけです。
それでは、もう時間がなくなりましたが、ちょっと腎疾患の総合対策についてお聞きをしたいと思います。
現在人工透析患者の数は何ぼになっていますか。八一年末と八二年末。
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○吉村政府委員 昭和五十六年末の調査が一番新しいわけでございますが、患者数が四万二千二百二十三人でございます。
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○川本委員 八一年末ですか。
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○吉村政府委員 五十六年末でございます。
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○川本委員 それなら、八二年末はどうですか。
-
○吉村政府委員 五十七年末はまだ調査をしておりません。患者数を把握しておりません。
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○川本委員 私の聞いておるのでは、八一年末が、いわゆる五十六年末ですよね、五十六年末が四万二千二百二十三名、八二年末、五十七年末が四万七千九百七十八名と聞いておる。これはわかっておるでしょう、厚生省で。
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○吉村政府委員 人工透析研究会の調べによりますと、五十七年の十二月には四万七千九百七十八人、こういうことになっておりますが、これはまだ外に公表されてない数字だと承っております。
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○川本委員 そこで、人工透析患者というのは一年間にざっと五千人から六千人ほどふえてきておる現状にあるわけですよね。ところが一方で、人工透析の診療報酬がいままで二回引き続いて引き下げられましたから、人工透析のできる病院の数は、ベッド数といいますか、だんだん減ってきておるのじゃないかと思うのですが、その点について、人工透析の患者の方々は将来に対して、どんどん患者はふえていくし、人工透析とか夜間透析とかそういうようなことについてもなかなか前進はしないし、一体これは最後にどうなるんだろう、こういうことで大変な不安を持っておられると思うのですが、それについて厚生省はどのように考えておられますか。
-
○吉村政府委員 私ども、五十三年から五十六年に至る人工透析の設置数等を調べておりますが、五十三年末におきまして台数が一万四千三百十二でございました。で、これを利用しておる患者数が二万七千四十八人でございましたが、五十六年末におきましては人工透析の台数が二万一千四百七十九台、そして患者数は先ほど申し上げました四万二千二百二十三人になっておるわけでありますが、台数にいたしましても約五〇%ばかり三年間でふえております。そしてなお台数がふえておるというように私どもは考えておりますが、したがって、点数の
改正というのはダイアライザーの実勢価格が下がったことに伴う引き下げでございまして、点数の引き下げをやったことによって人工透析ができにくくなったという状態になっているというようには考えておりません。
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○川本委員 時間がありませんので簡単に言いますが、将来にわたって人工透析の患者がふえてもいわゆる心配は要らない、公的病院等でもっと施設をふやさなければいけないんじゃないかと僕は思うのですが、厚生省は断じて心配は要らぬと保証できますか。
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○大谷政府委員 五十六年現在で、全国で千八百二十二カ所の施設が透析を行っておりますが、確かに人口割りで見ますと若干の地域偏在も認められますし、そういった患者の動向を見ながら、私どもといたしましては、整備が不十分と考えられる地域につきましては国としてその整備を図っていきたいというふうに考えております。
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○川本委員 私はやはり、これからはそういう形で公的病院でもあるいは公立病院でも人工透析ができて、全国どこでも、いつでも、みんなが利用できるような、安心して行けるような施設を完備してもらいたいことが一つ。
もう一つは、やはり腎臓移植ですよね。移植をふやしていく。そのためには腎バンクももっとふやしていかなければいけない。現在、四国の高知、徳島とか、北陸の新潟、富山、福井とか、九州の南部とか、長野、山梨等は登録しようという人がおっても、登録できるような賢臓バンクが現在まだないという現況にあるわけです。私はそういう点についてももう一度努力をいただきたい。
それから腎臓の移植手術についてですけれども、これももっともつと腎臓の提供者がふえてくるような努力をしていかなければいけない、このように考えるわけです。
私自身も腎臓バンクに登録してもいいなと思って考えておったのですが、まだ総理大臣も厚生大臣も腎バンクに登録しておられないんじゃないか。やはりこれはまず隗より始めよで、総理大臣から各閣僚がこぞってひとつ、人工透析、腎臓対策としても、全部腎バンクに登録しましょうということで登録して、全国民に呼びかけていくというような形になったら、われわれも進んでやらなければいかぬな、こう考えておるのですが、大臣、ひとつ閣議あたりでそういう提案をする気はありませんか。そういうこともひとつやっていただきたい……。
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○川本委員 あと質問したいことがありますが、時間がありませんので、大臣のその決意を聞いて終わりたいと思うのです。
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○林国務大臣 川本先生の御質問にお答え申し上げますが、腎バンクというのは、確かにお互いの持っているところの腎を亡くなったときに人に提供する、こういう話であります。
私も厚生大臣になりまして、たしか川本先生からこの前お話しがありましたから、私もこれはやろうかな、こう考えてみて聞いてみたんです。そうすると、どうも五十五歳過ぎたような腎ではどうも使いものにならぬ、こういうふうな話がある。それから受ける方も、何か四十歳代ぐらいまでで、私たちからもらっても、私がもしもいよいよ腎が悪くなって、悪くなるかもしれませんが、そうなるとだめなんだそうでございまして、そんなことをやって、使いものにならない腎だといって宣伝するのもいいのかもしれぬけれども、まあ余り見え透いた宣伝をするのもどうかね、こんな気持ちもしているわけでございまして、私も思いあぐねているところでございます。先生も恐らくそんなことは御存じでしょうが、総理も、七十になったような人の腎をもらって、果たして若い人が生きていけるか、どうも余り、また腎がおかしいぞという話になっても困る話でもございますから、その辺は少し医学的な観点も加えて、私も、もしもそんなことがなければ、死んだときには差し上げるという気持ちはあります。ありますが、あっても、さあどうかな、役に立たぬものを上げても、いただいてもどうにもならぬなというのが、私の偽らざる実感でございます。
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○川本委員 文部省と労働省からおいでいただきまして、時間が足りませんで申しわけない結果になりました。お許しいただきたいと思います。
これで終わります。
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○金子(み)委員 私はきょうは障害者の問題について少しお尋ね申し上げ、御所見を伺いたいと思っております。
御存じのように、一九八一年、昭和五十六年ですが、これは国連が定めた国際障害者年でございました。この国際障害者年に当たりましては、障害者と一口に申しましても、非常にいろいろな問題を多岐にわたって持っておられる方たちのことでありますので、政府も、単独の省庁がこれを担当するのでは十分なことはできないので、総合的な対策を立てなければいけないということが言われまして、総理府の中に担当の事務局も設けられた、そして、政府も障害者年には非常に意欲的に政策を立ててみたり、あるいは予算も設けたり、いろいろされたのを記憶いたしております。物によりましては大変に華々しくお祭り行事のようなこともたくさんありました。スポーツの問題もありましたし、いろいろ運動もございましたけれども、それはそれなりにいいと思います。別にそれがどうこうというわけじゃありませんが、問題は、障害者年が終わりましたら花火の火が消えたみたいになってしまったという感じが非常にするわけでございます。これは大変に遺憾だなというふうに思っているわけでございまして、国連の定めた何々年というのは幾つかございますけれども、たとえば一九七五年に実施されました国際婦人年の場合などは、婦人の十年ということでその後十年間世界行動計画に基づいて各国が努力を続けて、あと二年、八五年までその問題に取り組むという姿勢をとり続けているわけですが、障害者年の場合もやはり一年こっきりの問題ではなくて、少なくとも十年間これと取り組んでいくのであるという考え方が、国連では出されていたと私は記憶いたしております。
ところが、日本政府の場合は十年間障害者の問題について積極的に取り組むという姿勢は余り見られないみたいに思います。後でまた話も出てくると思うのでございますけれども、
雇用の問題にいたしましても、前の年の一九八〇年、昭和五十五年までは余り大して
雇用もなかったのが、五十六年にぐっと増加したというような実例もございます。ところが、五十七年になったらばそのような形はもう見られなくなったというようなことがありますので、これは一年だけの国際障害者年ではなかったはずなのにということを私は申し上げたいわけでございます。
もともと国際障害者年の目標というのは、障害者の独立と自由あるいは人間の尊厳の確立ということにあったのは御承知のとおりだと思うのですけれども、同時に障害者の方たちにとっては屈辱からの解放でもあったわけでございまして、非常に期待が大きかったということもございます。そこで、その目的達成に向かっては、政府も障害者の方々もともに努力をすることが望まれていたということでございますから、その後も引き続いて、双方が努力を続けられるべきものだと理解をしているわけでございます。
そこで、まず大臣にお尋ねしたいのですが、障害者年の年には林現厚生大臣は大臣ではいらっしゃいませんでした。ですから、私の責任じゃないというふうにお考えかどうかわかりませんけれども、しかしそのときはそうでしたけれども、障害者年を経過しまして今日、あのときのやり方は果たして満足すべき成果が後に残っているのであろうかどうかということを、率直にどうお考えになるかということが一つです。前の大臣のことに対していろいろ言うようで言いにくいとおっしゃるかもしれませんけれども、こういうことは感情的な問題ではなくて、政府の責任者としての立場でお答えいただければいいことだと思いますので、そのことを一つ。
それから、障害者年は一年限りの対策ではないのじゃないかと私は思うわけでございますけれども、そのことをどのようにお考えかということもあわせて御所見をいただきたいと思います。
要するに、障害者の方たちが独立して、自由を得て、社会参加ということが、この障害者年のスローガンでございました。障害者の方たちが社会参加することが実現されることによって活力ある福祉社会が行われるということで、それを指向する上から考えてもこの問題は一年で限られるものではないと思いますが、林厚生大臣はいまの時点でどのようにお考えになりますか、まずお尋ねしたいと思います。
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○林国務大臣 私は、一昨年に国際障害者年がありまして、政府がいろいろなことをやったのはきわめて意義深いことだったと思いますし、特に五十七年の三月に閣議決定をいたしまして障害者対策推進本部を設置して、内閣総理大臣を本部長として、副本部長に私と総理府総務長官が命ぜられ、本部員に各省の事務次官がずらりと並んだことは、形をつくったという以上に、わが国の障害者対策への政府の取り組みの姿勢を示したものと思って評価をしているところでございますし、こうした推進本部を通じまして、これから着実な方策を講じていかなければならないと思っているところでございます。「障害者対策に関する長期計画」がこの本部において決定されました。これは長期計画でございまして、国連でも障害者年で十カ年の行動計画をつくったわけでございますが、わが国といたしましても、こういった長期計画に基づきまして、十カ年の長きにわたってこれからいろいろなことをやっていこう、こういうふうに考えているところでございます。
先生御指摘のように、障害者につきましてはいろいろな問題がある。障害者年のスローガンでありました「完全参加と平等」の精神に立ちまして、私たちも一生懸命努力をしていきたいと考えているところでございます。
-
○金子(み)委員 どうかその考えを進めていただきたいと思いますが、それについて具体的に少しお尋ねをさせていただきたいと思います。
申し上げるまでもないのですが、障害者の方たちは二つのグループと申しますか、種類があります。その一つは、幼いときから障害を持っている人たち、これは生まれながらの場合もありましょうし、あるいは公式の文書では二十歳前から障害のある人たちというふうに区分しております。そういうグループと、もう一つは健常者で社会人として働いていた人が、途中で病気をしたりあるいはけがをした結果障害者になった、いわゆる中途障害者という、この二つのグループになっていると思うわけでございます。
そこで、この障害者の方たちが、障害者年の目的でもある独立、自由、そして人間尊厳の確立、このことを実現させていくためには、その基本的な問題は何と申しましても所得保障の問題だろうと考えられます。その所得保障がしっかりしておれば独立もできるし、自由に社会参加ができて、目的が達成されるところまでいけるというふうに考えるわけでありまして、その所得保障の問題について少しお尋ねをしたいと思います。
日本の社会保障制度というのは、申し上げるまでもありませんが、社会保険原理に基づく
年金体系であります。それが、その都度その都度さまざまに発展し拡充されて今日まで来ておりますし、さらにこの先
改善をされようとしている段階にあると思うのでございますが、この問題と絡めて考えてみたいと思います。
そこで、いま申し上げました二種類の障害者の問題でありますが、中途障害者の方たちにつきましては、障害者になった時点から障害者としての保障というものと、それからそれ以前健康で仕事に従事していた時代の保障、この二つの保障がございますので一応形は整えられているというふうに――満足すべき形と言えるかどうかわかりませんが、一応生活の保障として考えてもいいというふうに考えられるのですけれども、いま一つの方の幼いときからの障害、この人たちに対しましては大変に気の毒な状態になっているというふうに考えられます。気の毒という言葉は適当でないかもしれませんが、公平でないと申しますか、あとの中途障害者の人たちに比べれば公平を欠いている状態に置かれているということが言えるというふうに思うのでございます。
たとえば小児麻痺の人たちとかあるいは視聴覚障害の人たちとかいろいろございますが、幼いときから障害を持っている人たちというのは、稼得や貯蓄による蓄積の機会がなかったにもかかわらず、先ほど申し上げた日本の社会保障の原理である保険の体系から離されて、その中にははまることができませんから、その枠の外に外されておりまして、結局何かと言えば、この人たちのために政府が考えておりますのは福祉
年金ということでございますね。ですから、障害福祉
年金を支給されているということになるわけです。福祉
年金は拠出制ではありませんから、支給額が少なくても文句は言えないじゃないかということを、私はかつて老人福祉
年金の問題で審議をいたしましたときに、そういう言葉を政府から聞いて慄然としたのでございますけれども、同じような考え方が、この幼いときから障害になっている人たちは働くこともできないし、それから貯蓄もありませんから拠出ができないということで福祉
年金になっていますがいあたりまえだという考え方があるとすれば、非常に恐ろしいと私は思うのです。その考えはいまお尋ねしているわけではありませんが、前のときと考え合わせていま申し上げたわけです。
いずれにいたしましても、福祉
年金であります。その福祉
年金は金額的には非常に少ないということもおわかりいただけると思います。福祉
年金は現在一級で月三万七千七百円でございますね。それに福祉手当が一万五百五十円つきますから、合わせて四万八千二百五十円ということになりますか。いずれにいたしましても、これだけで一カ月大人が生活しなければならないということは大変にきついということは、もうだれが考えてもわかるわけでございます。こういうような状態に置かれているという問題が非常に出てまいります。あるいはそれのほかに、いま大変に就職がむずかしいのでございますが、かろうじて職を得て働いている障害者の方がおりますが、それで拠出制
年金の掛金だけは毎月毎月きちんきちんと納めておりましても、働けなくなったときに
年金が受けられないという状態になる人がおります。あるいは無
年金になってしまうという人がおります。それはなぜかと申しましたら、受給資格を決定する等級基準が大変不合理だと私は思うわけです。そのためにそういう人が出てきてしまうということがありますので、こういう問題について厚生省はどういうふうに考えていらっしゃるのだろうかということをまずひとつお返事をいただきたいというふうに考えているわけでございます。そういう場合、そういうことが起こり得るということがあるということに対してどういうふうにお考えになるかということでございます。
-
○
小林政府委員 ただいまお話しがありましたように、確かに現在はいわゆる社会保険システムと申しますか、
年金システムを利用しまして障害者保障をやっておるわけでございます。そのために、
年金システムに伴ういろいろな問題といいますか、
年金システムでは救えない面が出てくることは事実でございます。
そこで、後の話にもつながるかもしれませんが、そういった問題、特に二十歳前に障害が発生された方の成人後の所得保障、こういったものは非常に重要であるというふうに考えまして、先刻来十分御案内のとおり、現在厚生省におきましては、障害者生活保障問題専門家会議というものをつくりまして、そこでいろいろ検討を願っておる、そういう問題意識は十分持って対応しているということでございます。
-
○金子(み)委員 それでは、もう一つ同じような問題になるかもしれません。具体例を一つ申し上げてみたいと思います。
厚生
年金の場合、これは幼いときからというのでなくて中途障害者の問題です。両方あるわけですから、どっちにも問題があるわけです。その中途障害者の方の問題として厚生
年金の問題があります。この厚生
年金で、私もこれはどう考えてもむずかしくてなかなかわからなかったのですが、厚生
年金では、初診日の前の月までの被保険者期間が六カ月なければ受給資格がないというのです。たとえば四カ月――厚生
年金初診日の前月までの被保険者期間が六カ月、だから就職してそして病気になる、あるいはけがをする、障害者としての診断がつけられる、そのときが被保険者になってから四カ月だったらばだめだというのです。六カ月にならなければ効力は発揮しないからだめなんだということがあるわけなんですが、それは事実ですかどうですかということが一つ。
私の考えは、なぜ六カ月でなければいけないか、区切っているのかという問題、そんなものを期限を切る必要はないじゃないか。たとえばそうでなかったら――六カ月と仮に切るのなら、どういう理由があって切ったか知りませんが、その理由も聞かせていただきたいのですが、仮に切るのならば、四カ月でだめな人、その後続けて仕事に従事するわけですから、従事できるような人であれば、続けて仕事に従事して六カ月を超える、通算して六カ月を超えていけば対象にしてもいいのじゃないだろうか、そういうことを思うのですけれども、その辺はどうでしょう。
-
○山口(新)政府委員 厚生
年金の障害
年金の資格期間の問題でございますが、いま御指摘のございましたように、現在の制度は初診日前六カ月ということになっております。
そもそも厚生
年金ができました当座は三年であったわけでございます。
年金の
改正問題が起こりますたびに、この資格期間の問題というのは、
遺族年金も含めまして常に問題になってきたわけでございます。それで六カ月になりましたのが昭和二十二年でございますか、社会保険の仕組みをとっているからには、保険のシステムという考え方で何がしかの資格期間は必要ではないかという立場から資格期間を設けているわけでございますが、その場合に三年にならなければならない、あるいは一年でなければならない、半年でなければならないという絶対的な理由は、私のいままでいろいろ勉強した結果でもちょっとないようでございます。そのために、国内でも共済組合は一年でございます、国民
年金も一年でございます、そういうふうに国内の制度でも差がございます。外国の制度を見ましても、一年ないしそれ以上というものが大半でございます。その意味では、厚生
年金は一番短い期間になっております。ただ、皆
年金の体制になった状態でなおかつその資格期間にいろいろ差があっていいかどうかというのはまず問題がございますし、さらに、どうしても必要なのかという問題をもう一回根本に立ち返って考えてみる必要があろうかと思います。
そういう意味で、先ほど総
務審議官の方からお答えを申し上げましたけれども、障害者の専門家会議で全面的に検討していただいておりますが、私どももその検討結果を踏まえて、この問題をもう一回根本から再検討してみたい、かように考えている段階でございます。
-
○金子(み)委員 わかりました。絶対的理由はないのですね。そういう考え方で進めてこられたとすれば、三年が二年になり一年半になり半年になり、バナナのたたき売りみたいにだんだんゼロになってもちっとも不思議はないですね。私はこんなものに期限を限るなんということは考えないでいいのじゃないか、考えるべきではないと思いますが、大臣、どうお思いになります。
-
○林国務大臣 福祉
年金というかっこうでやるということになれば、確かに期限というのはないわけです。しかし、いわゆる厚生
年金その他でやりますと、それは一つの保険である。保険ということになると普通の、たとえば自動車の保険とかで入ってすぐに事故を起こしてしまった――自動車の保険は強制保険でありますが、こういうような、病気になっておってそれを隠して入ってすぐにもらうというような話というのは、保険としては余りよろしくないということもまた一つの理屈だろうと思います。
ただし、国民皆
年金というような考え方をこれから進めていく場合に、果たして一般のプライベートの保険と同じ考え方でいいかどうかというのも問題があるだろうと思いますから、そういった点は、今度五十九年に大
改正をやろうと考えていますから、その
改正の中でどうしていったらいいかというのは議論してみたい、検討してみたい、こういうふうに私は考えております。
-
○金子(み)委員 もう一つあるのです。考えていただくのは幾つもありますから考えていただきたいと思いますが、いま一つの問題は、やはり厚生
年金なんですが、これもいまの現行法で期限が切られているのですね。
初診日から五年たった後に――五年です。今度は長いです。五年たった後に障害が重度化したとき、これもまたむずかしい話で、障害がある人なんです。初めから障害があることはわかっているのですが、働いていて五年たって、その後に障害が重度化したとき、だめなんですね。五年以内ならいいのです。五年を超えてはいかぬというのです。私はこれまた不思議でしようがないのですが、何で五年と決めたのか。
私が医療関係で五年という数字で頭にぴんとくるのは、カルテの保存期間五年というのがございます。だから、カルテの保存期間が五年だけれども、これもそれと合わせて五年にするのだろうかとふっと思いました。しかし、それはもう理屈としては成立しないと思いましたから、なぜだろうかということがわかりません。もしも四年半ぐらいで重症になったときにはよろしいが、五年を超えて五年半になったときにはもうだめですというその理由はどうしてもわからないのですが、これはどういう理由だったのでしょうか。そして、なぜ五年と切ったかということですね。そうすると、早いうちに発見すればいいのかということなんです。重度になったということですが、これは障害等級基準で重度とか軽度とかいうふうに決めるのだと思いますけれども、それがどうしても腑に落ちませんが、なぜ五年と切ったのかということです。カルテの保存期間と関係があるのかないのかわかりませんが、それは先ほどの六カ月と同じようにやはり必要ないのじゃないか。それが私には腑に落ちませんので説明していただきたいと思いますし、お考えを聞かせていただきたいと思います。
-
○山口(新)政府委員 いわゆる事後重症の問題だと思いますが、これも五十二年の
改正で新しく取り入れた仕組みでございます。障害
年金の場合には、外部障害等で比較的短期間に一応症状が固定してしまうケースと、内科的疾患で長く症状が続いているケースと両方あるわけでございますが、主としては内科的疾患のために実は二十九年の
改正で三級の障害
年金をつくりまして、一、二級だけであったものをやや軽症まで広げたわけでございます。三級になっておればその後の変動に対して一級あるいは二級の
年金の改定が可能になったわけでございますが、さらにその後、三級にもならない方で、廃疾認定日が五十一年には一年半になりましたから、その後症状が悪化した場合に該当しないというようなケースがございますので、五年というものをつくったわけでございます。
これは先ほど御指摘もありましたが、一つはカルテの保存期間の五という数字、もう一つは共済組合の方で退職後五年という期間を設けておりまして、その両方の五という数字が
採用されたというふうに聞いておりますけれども、ただ、これも内科的な疾患で
治療が続いているわけでございますから、
治療が続いている限りはカルテは保存されているはずでございますから、単純に初診から五年というところでこだわる必然性が本当にあるのかというところは問題だと思います。特に最近では難性の疾患あるいは慢性の疾患がふえてきておりますから、そういう意味でも、この問題も来年の
改正の際に障害
年金の関係で再検討いたしたいと考えております。
-
○金子(み)委員
年金改正に際してはいろいろの問題を考えていただかなければならないと思います。いまの御答弁ですから、いま厚生省でやっていらっしゃる障害者生活保障問題専門家会議、ここで先ほどの六カ月の問題とあわせてぜひ考えて、こういう理屈にならないような理由をつけた制度のあり方はぜひ改めてほしいと強く要望しておきたいと思います。
いま専門家会議の話が出ましたので、私は、その専門家会議について先ほど出ました二つの問題を考えていただくのと、あわせてさらに考えていただきたいと思うことが幾つかありますので、この際申し上げておきたいと思いますので、検討していただきたいと考えております。
その一つは、厚生省は御存じだと思いますけれども、五十七年、昨年に、障害者の方たちの組織である全国所得保障確立連絡会議というのがありますが、ここから専門家会議に対して申し入れと申しますか要請が行われているはずでございます。それは所得保障に関する問題でございまして、具体的に申し上げますと障害者の生活保障をするための所得保障としての要求ですが、この人たちの要求というのは、基本的な要求は、生活保護基準が定めている基本生活費というのがありますが、この基本生活費に障害加算を合わせたものが本来の基本要求として求めているものなんですけれども、そのことを考えていただきたいのが一つなんです。そのことがすぐにできない場合には、段階的に引き上げる一つの手段として、障害福祉
年金を国民
年金の拠出制障害
年金へ統合させるということを考えてもらったらいいのではないだろうか。これは障害者の方たちの要求でもありますし、そこへもっていくことによって生活保障が一応生活していくだけのものができるのではないかということが考えられておりますので、そこへ持っていくということが考えられないだろうかということが一つです。
それから、時間の関係もありますので、同じ専門家会議への検討事項ですので続けて申し上げたいと思いますが、もう一つは、現在使われています障害等級の認定基準というものを見直すおつもりはないかなということなのです。と申しますのは、これは大変に画一的であり過ぎると思うのです。障害者の方たちは非常に千差万別だと思います。ケース・バイ・ケースでやっていくのが一番正しいと私は思いますし、最も的確で、障害者の人たちに対する保障としてはふさわしいやり方だと思うのですけれでも、それがそういうふうな形にならないで大変画一的であり過ぎると考えられますことと、それから全体的な障害の状況をつかみ取っていないというマイナス面があると私は思います。たとえば手なら手、足なら足、目なら目、耳なら耳というふうに、あるいは手も指が一本あるとか二本あるとかないとかというふうなぐあいに、大変にどっちかというと解剖的な所見だけで、それ全体を合わせたら健康な人に対して何%ぐらいしか能力がないかということを考えていないわけですね。手なら手で、たとえば指の小児麻痺の方たちなんか思うように物がつかめないということはあります。だけれども、時間をかけて努力をしてやれば持てないことはない。だから目的であるところの物を持つということはできることはできる。だけれどもそれに対する時間、そこへ行くまでの時間とか労力とかというものは大変なものがある。そういうようなことが全然考えの中に入っておりませんから、結局普通の人だったらば十ある能力の中で、手だけ考えればその人の能力は八ぐらいあるのかもしれませんけれども、全身を合わせて考えてみると、総合的に見ると半分、二分の一しかないというような状態だってあると思うんですね。そういうことが一つも考えられていなくて、基準の決め方が、これは大変むずかしいことだと思いますけれども、しかしやってみようという努力をなさっておられるのかいないのか。初めからそれはとてもじゃないけれども大変だから、そんなことまでしていられないというようなことで話されているのかどうかということもございますが、そういう点を、この専門家会議でそこまで考えておられるのかどうかということを、御意見を開かせていただきたいと思います。
-
○
小林政府委員 専門家会議は現在鋭意検討を進めていただいておりまして、大変御熱心な審議をいただいております。
それで、私どもの予定としましては、七月には専門家会議としての御意見がいただけるという予定でおりまして、いま大詰めに来ておる段階でございます。したがって、専門家会議で意見が出ましたら、もちろんそれを尊重して制度の仕組みを考えたいと思っておりますが、いま先生御指摘のような水準の問題、所得保障の水準をどこら辺に置くべきかという問題、あるいは障害者の範囲をどうするか、つまり認定基準ももちろんその中に入りますが、そういった問題もいまいろいろ議論していただいておりますし、この内容についていまここでどうこうという話はお答えできませんが、専門家会議では、幾つか項目を挙げまして逐一審議をしていただいておりますその中に入っております。したがいまして、もうちょっと専門家会議の推移と申しますか審議経過をお待ちいただきたいと思います。いずれにしろ、もうすぐ意見書をまとめますので、私どもの方も出次第対応したいと思っておりますので、もうしばらくお時間をいただきたいと思います。
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○金子(み)委員 七月に意見書が出るということは、いままでの御審議の結果の意見が出るわけでしょう。いま私が要請を申し上げた問題なんかが、果たして入っているのかどうかというのがちょっと心配ですね。
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○
小林政府委員 いろいろな議論が行われておりまして、最初におっしゃいました水準の問題、どこら辺に水準を合わすか、これは非常に大きな問題でして、最大の重要事項として議論されています。
認定基準は、専門家会議の性格にもよりますが、細かなどういう等級づけをするとかという、そこら辺まで具体的な審議はもちろん専門家会議では行われておりませんが、これは引き受けまして、事務局の方で意見書が出た後で対応しなければならぬ一つの問題であるというふうに認識しております。
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○金子(み)委員 いままでの問題をまとめてみますと、要するに専門家会議でいろいろ考えて新しい線が出ることになるというふうに理解していいのではないかと思いますけれども、
年金制度の改革が、先ほどお話しもありましたが、五十九年にありますね。その五十九年に臨調答申に基づいて、
年金の統合ですとかあるいは一元化ですとかということが考えられているのだと思うのですけれども、そういう基本的な
年金制度のあり方を考えるに際して、障害者の人たちの
年金はどんなふうに位置づけようと思っていらっしゃるのか、一言お聞かせ願いたい。
-
○
小林政府委員 所得保障の問題でございますから、どうしても
年金と密接な関係を持つわけでありますが、ただ、いま専門家会議で議論が行われています一つの項目としまして、新しい所得保障制度をつくる場合に、たとえば
年金システムでやる手法もございます。別途また手当システムといいますか、福祉施策の一環としての手当システム、こういう方式も考えられないことはないわけでございます。そこを、新しい制度の手法をどういうかっこうでつくるかということ自体がいま問題になっておりまして、いろいろな御意見はございます。必ずしもまだ集約できるところまで行っておりませんけれども、そこはまず一番の大きな問題であろうと考えておりますし、意見書には当然そういう集約した意見が盛り込まれることであろうというふうに思っております。
-
○金子(み)委員 そういう段階だということもわかりました。
大臣、ずっと聞いていてくださいまして、大臣がいらっしゃる間にこの問題は結論が出されるのだろうと思いますから、その問題についてどんなふうに専門家会議が結論を出すかよく見ていていただいて、そして大臣のお考えが達成できるような結果が――それはでき上がった結果を今度は厚生省の政策として打ち出されることになるのだと思いますから、責任は大臣のところに戻ってくるというふうに思いますから、ぜひその点についてはよく注意して御意見等も入れてくださって、満足のいくような形に位置づけをしてもらいたいというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
-
○林国務大臣 いま先生とのやりとりを聞いておりまして、障害者の所得保障の問題につきまして、大変いろいろな問題がある、一般的な所得保障制度をつくることと同時に、先ほどの初めの方と後の方というような問題もございますし、そういったものもやはりいろいろと御議論いただいていることだろうと思います。そういったものを含めまして、障害者がほんとうに完全参加と平等の精神に立ったようなことができるように、私どもとしても最大の努力を傾けたい、こういうふうに考えております。
-
○金子(み)委員 それでは、同じ障害者の問題でございますが、
雇用の問題をちょっと労働省の方にお願いいたします。
時間もありませんので簡単にさせていただきますが、先ほどちょっと冒頭申し上げましたように、障害者の
雇用問題につきましては、国際障害者年の年は大変に増大しました。大変いいことだと思って喜んでいたのですが、その後余り進んでいないわけですね。あそこでぐっと山が出てきてそれきりになっているのですけれども、五十七年に入ったら下がったところもありますが、そういうようなことは、障害者年というものを意識をしたということは決してマイナスの面ではありませんけれども、そのことが先へ続いていっていないという点で大変に残念だというふうに思っておるわけでございます。
しかしその点は一応おくといたしまして、現在では国公立、国の機関あるいは地方公共団体等では、障害者
雇用状態がいわゆる規定されているパーセンテージ、一・八とか一・九とかいう
雇用率がありますが、この
雇用率をほぼこれに近いところまで一応行っています。たとえば国、地方公共団体の非現業の場合は一・九%を適用されることになっておりますのが一・八七ですから、もう一足、それから現業の場合は一・八が一・九というふうにかなり努力して
雇用しているということが、この労働省からいただいた数字でわかるわけでございますけれども、民間はこういうふうに行っていないのです。大変むずかしいと思いますけれども、一般の民間企業の未達成というのは四六・二%というのですから、半分ですね。民間企業に対して達成されるためにいままでいろいろ努力していらっしゃることも知っております。たとえば奨励金を出したりあるいは助成金を用意したり、いろいろ努力しておられることもわかりますが、民間に対する一層の督励と申しますか、指導をぜひ進めていただきたいと思いますことが一つです。
それから、あと一つは具体的な問題になりますが、視覚障害者の人たちの問題なんです。視覚障害者の人たちの
採用試験に点字を使ってもらいたいということをお願いしたいと私も思います。これは東京都と神奈川県とは現在点字を使っております。ところが、そのほかのところは使っていないように思いますが、もし使っておるところがあれば教えていただきたいと思います。いずれにいたしましても、点字を使うようにという行政指導をぜひやってもらいたいと思います。
なぜかと申しますと、受験の条件に「活字印刷に対応できる者」という条件がついているのですね。活字印刷に対応できる者ということになりますと、弱視あるいはどの程度までの人が対応できるかわかりませんけれども、全く対応できない人がたくさんあると思うわけです。こういう条件をつけられますと、初めから疎外しているというふうに考えられて、これは大変に差別的な取り扱いを
雇用に対してしているのではないかと、別の意味から非常に問題になるというふうに考えますので、この点をあわせてぜひ考えてほしいと思います。
それから、いま一つは
雇用の拡大という問題。
雇用の拡大で、日本では視覚障害の人たちの問題は障害者の中でも一番古いグループだと思いますけれども、しかし、そのわりに対策が一番立ちおくれているのです。それで、視覚障害者の仕事といったらば、二言目には三療と、こういうことになるのですね。はり、きゅう、マッサージ、何もこれだけが視覚障害者の仕事ではないはずなんで、外国の例なんかを皆さん御存じだと思いますけれども、さまざまなことをやっています。学校の教師もやっていますし、あるいはタイプライターも打っておりますし、電話交換もやっていますし、いろいろ幅広く仕事につけるのですが、日本はそういう体制をとってないのです。ですから、なかなかやってもらえない。かろうじて、デパートだとかあるいは銀行なんかで保健室というのがありますでしょう。ああいうところにマッサージ師を
雇用して、そして社員や従業員の昼休みなどにマッサージをして健康を保持するというのですか、ということをやっているところはございます。
治療の目的ではなく健康保持が目的です。そこで、こういった保健室のようなものがあるところには必ずマッサージ師の人を
採用して、そして職員の健康を保持増進ということのために協力をしてもらうような体制を、行政指導としてできないものだろうか。日本だったらせいぜいそれぐらいのことならできるのじゃないだろうか。もっと幅広く拡大した職域が欲しいと思いますけれども、なかなか体制としては受けとめられておりませんが、せめてこの保健室あたりでの仕事はできるのじゃないかと思いますので、そういう方面に働きかけるということをぜひ進めてほしいと思いますが、その点について労働省の御意見、いかがでしょうか。
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○藤原説明員 第一点の、民間の
雇用の状況が余り思わしくないのじゃないかというお尋ねでございますけれども、実は五十六年の国際障害者年で前年度より〇・〇五ポイント上昇いたしまして、一・一三%から一・一八%というふうに上昇したわけでございます。翌年の五十七年が一・二二%ということで、国際障害者年の好調さをそのまま持続するような形で、一応民間の場合は
雇用率が伸びております。御承知のとおり経済情勢が余り思わしくない状態の中で、民間がある程度がんばってくれたわけでございます。中でも、全体的には大企業が
雇用率の達成が非常に低いわけでございますけれども、ここのところの大企業の伸びが非常に高い、こういうような現状になっております。
次に、具体的なお話しでございます、点字によるところの地方公共団体の受験制度の関係でございますけれども、基本的には、試験を点字によってやる、やらないというのは地方公共団体の自主的な判断に任されているところでございます。
そこで、先生、具体的に東京、神奈川ではというお話しがございました。そのほかにも、私どもの把握いたしておるところでは、たとえば長野県とか和歌山県、それから学校の先生の関係で同じく福井県、大阪、それから市町村で長岡といったようなところが点字によるところの
採用試験を実施いたしております。まだなかなか一般化するところまで行っておりませんけれども、少しずつでございますが、順次、点字による
採用試験が行われるようになってきておりますし、私どもも、できるだけそういう形で視覚障害者の方が就職できるように、その機会が与えられるように、点字による試験制度を普及するように努力をしているところでございます。
それから、
雇用の拡大の関係でございますけれども、御指摘のとおり、視覚障害者の職業といたしましては従来からいわゆる三療が圧倒的でございます。しかし、最近におきましては、視覚障害者の職域は、いわゆる伝統的な三療から、電話の交換手とかコンピューターのプログラマー、それからピアノの調律師とか翻訳の関係、かなタイピスト等いろいろな広がりを見せてきているわけでございます。特に、これらの職域にある程度拡大を可能にした理由といたしましては、障害者自身の努力はもちろんでございますけれども、最近におきますところの一般的な技術革新と申しますか、機械等の普及が非常に影響するところがあるわけでございます。御存じのとおり、最近はワープロ等が非常に普及しておりまして、私ども労働省の方でもこの四月一日に一般職員を
採用したところでございますけれども、今後はこういう機械等を最大限に活用しまして、できるだけその職域の拡大等につきましても私ども努力をしていきたいというふうに考えております。
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○金子(み)委員 時間になりましたのでこれで終わらせますが、厚生大臣にお願いがあります。
先ほどお話しの出ました総理府での指導というのがなくなりましたから、問題は厚生省に来ると思います。厚生省が障害者に対する政策の総括的な責任者と言ってもいいのじゃないでしょうか。いろいろ各省にまたがっているとはいうものの、私は基本的には厚生省の問題だと思いますので、今後、障害者の問題については、よその省に関係のあるものにつきましても、やはり厚生省が総括的な立場でこれをながめていらして、そして遺漏のないように、障害者の生活が全うされるように、その基本的な生活が守られるようにということを、ぜひ厚生大臣の手で進めていただきたいということを強く御要望申し上げておきたいと思います。
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○林国務大臣 障害者対策は、福祉のみならず、
雇用、教育その他各般にわたる問題もございますし、政府が一体となってこれをやっていかなければならないのは先生御指摘のとおりでございまして、総理府に内閣総理大臣を本部長とする障害者対策推進本部が設置されて、総合的かつ効果的な推進を図ってと、先ほど御答弁したとおりでございますから、私もそこの副本部長でございますし、やはり一番中心は厚生省だと思いますから、私も、先ほど御答弁申し上げましたように、長期的な計画に沿いまして目的が達成されるように、関係省庁とも十分連絡をしながら最大限の努力を傾けてまいりたい、こういうふうに考えております。
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○金子(み)委員 ありがとうございました。終わります。
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○平石委員 まず私は、五十六年の二月二十一日、予算委員会におきまして、
身体障害者福祉法の見直しをすべきではないか、そしてそのときに、提言を含めまして時の園田大臣その他に御質問を申し上げたわけですが、いまの
身体障害者福祉法というのは、やはり限定的なものでの身体機能に対する福祉ということでございます。そして、その流れておる思想はやはり自立更生ということが基本の法律でありますが、現在、植物人間だとか脳性麻痺だとか全身障害だとかいったような、全く自立できないような方がたくさん出ておるじゃないか、こういうものが障害者の範疇から抜けておるということはちょっとおかしいじゃないか、したがってそういったことをも含めながら見直しをしてはいかがか、こういうことを申し上げたわけでございますが、そのときに大臣の答弁の中で、「福祉法の
改正及びその中に盛られておる等級の変更、決定、こういうものは御承知のとおりいま審議会で各部会に分かれて検討してもらっておりまするから、その結果も待って早急に努力をする考えでございます。」こういう御答弁をいただいておるわけです。これの作業がどのように進んでいらっしゃるのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
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○金田政府委員 ただいま先生言われました
身体障害者福祉法の全般的な検討の問題でございますが、一応
身体障害者福祉審議会の検討が終わりまして、昨年三月、広範的な答申が提出されたわけでございます。
ただいま申しましたように、この内容が非常に多岐にわたっておりますので、その具体化に当たりましては多角的な検討が必要であると考えまして、昨年十月以来
身体障害者福祉基本問題検討委員会というものを設けまして、今後の対応をただいま検討中でございます。
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○平石委員 そこで、基本問題検討委員会ができて現在検討中だというお話しをいただいたわけでして、私、また本日取り上げさせていただきたいと思って準備をいたしましたのは、オストメートの問題でございます。
これは御案内かとは思いますけれども、いわゆる直腸がんだとかあるいは潰瘍性の大腸炎だとか、こういったようながん性のものから膀胱等の切除あるいは肛門の切除、こういったような患者さんがいまたくさんおるわけです。したがって、この方々が結局切除してしまっていわゆる人工肛門をつくる、それから人工膀胱をつくる、こういったもので、現在そういう方々がたくさんいらっしゃるわけです。この名称として一応オストメート、こうおっしゃるようでございます。私もこういった方々のお話しを聞いてみまして、大変な日常生活をしていらっしゃるのだなということを初めて勉強させてもらったわけですが、こういった方々もやはり障害者の対象の中に入れるべきではないかというように考えるわけです。
ここに写真がございますが、大臣、ひとつごらんいただきたいと思うわけです。――いま大臣にお示ししましたように、そういう形で、こういう方々はそういう病気のために肛門がなくなった。切除なんです。したがって、機能が減退というよりも、もう機能がなくなった、ゼロの状態に陥ったわけです。したがって、普通の外科手術の場合でございましたら、これはまた治ったといったようなことで、それぞれ自然治癒といったようなこともできましょうが、この方々のはもう切除してなくなってしまった、こういう形になりますので、手術が終わり病気が完治した、こうされましても、後へ後遺症が残って後遺者になってしまう。そういたしますと、肛門がございませんから、写真にもございますように、体のわき腹のところにいわゆる開口、穴をあける、そしてここから排便をする、こういう形になるわけです。そういたしますと、この方々はもう一生の間これでいかねばならぬ。それから膀胱の場合は、膀胱が切除されておりますから、腎臓で尿ができる、それが尿管を通って膀胱にたまる、そうすると、膀胱がないのでございますから、膀胱にかわるいわゆる尿をためるものをここへつらねばならぬ、装着せねばならぬ。括約筋もありませんので、尿がいつもぼちぼち出てくる。それから便も、括約筋がない関係上、そのまま装着物にたまる、こういう状態になるわけです。したがって、この人たちが毎日少なくとも五、六回はこれをかえねばならぬ、取りかえねばならぬ。それから、体が不調になって下痢をするというようなときは、七回も八回もこれをかえねばならぬ。こういった精神的、肉体的なハンディを現在負っていらっしゃるわけです。そして、このことは余り職場でも言えないことでございますから、秘密にしておる。そして仕事も、そういうものを装着しておるから十分なことにならない。これが明らかになると解雇されるおそれがある。それから、昇給その他に関係が出てくる。こういったような状況で、この人たちは非常な苦労をしていらっしゃるわけです。この方々が現在身障者の対象に入っておりません。したがって、これを身障者の中に、いま検討委員会で検討していらっしゃるようですが、私はここでひとつ取り上げてほしいな、こういう気でおるわけです。
そこで、身障者のこの法律では、これがいわゆる内部疾患なのか、内部はなくなってしまった。内部なのか、外部のものなのか。出るところがなくなっておるのですから、外部なのやら内部なのやら私はわかりませんが、いずれにしましても身障者の中に繰り入れるべきである、私はこういうように思われるわけですが、ひとつ御返事をいただきたいと思うわけです。
-
○林国務大臣 平石先生のお話しでございますが、人工肛門、人工膀胱を造設しているところを写真で見せていただきました。先生のお話しを聞きまして本当によくわかったのですが、実は私も、たしかこの一月ごろに、こういった方々から御陳情がありまして大臣室でお話しを聞いたわけです。そのときも、確かに医学によってそういった人工肛門であるとか人工膀胱という形でやっておるけれども、いろいろな点でやはり問題が出てくる。働いておっても余り人に見られたくないという話であるし、いろいろと大変な問題もある。やはりそういった意味では十分考えていかなければならない問題だろうと私も思いますし、
身体障害者福祉審議会の答申におきましても、人工臓器の使用者は法の対象とする方向で検討されてよいということになっておりますし、先生のお話しもございますので、専門家の意見を聞きながらそういった方向で検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
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○平石委員 いま大臣から非常に前向きの御答弁をいただきました。したがって、こういった方々が長年苦労していらっしゃることがいわば日の目を見てくる、こういうことが期待される一言であったと思うわけです。したがって、いまそういった身障者のせっかくの見直し作業中でございますから、私もぜひひとつこの点についてのお取り上げをいただきたい、こう思うわけです。
それから、この方々はいずれにしろ機能障害がある、いま大臣のお言葉にありました、人工臓器の使用も法の対象にすべきだという答申がなされておりますが、これは私から心配する必要はないかとは思いますけれども、装着をするこの物が臓器に入るのかどうなのか。それから人工肛門、人工膀胱、これは人工臓器と認定していらっしゃるのかどうなのか。ここもひとつ明らかにしておきたいと思うわけです。
-
○金田政府委員 ただいま先生おっしゃいました人工臓器とは、生体臓器組織の代用品としてつくられた人工的な製品を言うわけでございますが、人工的な組織もこれに含むこととされております。典型的なものといたしましては心臓ペースメーカー、人工腎臓、代用血管等の人工内臓がございます。人工骨や義肢等も人工臓器に含まれるのが通例と言われております。人工肛門や人工膀胱につきましても、人工臓器として解釈されておるわけでございます。
-
○平石委員 人工臓器として解釈をいただいておるということで安心をいたしました。
そういたしますと、やはり内部のいわゆる機能障害である、こういうように理解ができるわけでございますが、いま内部疾患、いわゆる内部機能障害というものにつきましては心臓、腎臓、呼吸器、こういうように制限列挙でなっておるわけですが、内部のいわゆる機能障害としてここへはめる可能性がある、こういうことに相なるわけですね。そのことをもあわせてひとつお言葉をいただきたいと思います。
-
○金田政府委員 人工肛門や人工膀胱を造設した人は消化器や泌尿器といった内臓の機能に障害を持つ人でありますので、いわゆる内部障害に相当しているわけでございます。
現在、
身体障害者福祉法におきましては、別表において障害の内容を詳しく列記いたしております。そういったことで、法律
改正をしなければこれは
身体障害者福祉法の対象にならないということに現になっておるわけでございます。
〔
委員長退席、大石
委員長代理着席〕
-
○平石委員 いま
局長の御答弁、大臣の御答弁で大体厚生省のお考えもわかりました。そして、このことが十分身障者の見直しの作業の中で前向きに検討いただくということも理解をしたわけでございます。
そこで次に、いま私は、身障者の等級とかいったようなことを論ずる段階ではありませんけれども、この人たちが毎日の生活の中で装着物を五、六回も取りかえる、それから体の不調のときは七、八回も取りかえなければならぬ、こういうことになりますと、当然そこには費用の問題がかかってくるわけです。それで、お聞きをしてみますと、人によっては違いますけれども、月に大体一万円から三万円ぐらいはかかっておるというようなお話しも承っております。
そこで、そういったような費用負担その他につきましても非常に困るというようなことで、東京都の方では、すでに御案内だとは思うのですけれども、このいわゆる装具の支給ということから、受術者、いわゆるオストメートについて月一万円の支給をするべく準備が整えられて、今年の四月からこれが実施に移された、こういうことがございます。したがって私は、等級によってそこにそれなりのものが、
厚生年金等にあるものはそこでいてもいいのですが、少なくとも他法におけるところの障害の当該等級、
身体障害者法がそういったものの一つの母法になっている、もとになるということであれば、これに入れていただいて、そしてできればお金が出るような一つの方法をとっていただければいいがな、こういうように考えるわけです。そこらあたり、東京都は法外
援護という形でなされておるようですが、法の対象に入るということになりますと、いわゆる法の中での実施ということになるわけですから、ひとつそういう面についても御配慮を賜りたいと思うわけですが、お考えをお聞かせいただきたいと思うわけです。
-
○金田政府委員 ただいま先生がおっしゃいました、こういったものをたとえば現に東京都その他で実施されておりますような公費負担の対象等にできるかどうかということにつきましては、これが補装具であると考えるか、あるいは
身体障害者につきましては日常生活用具の交付ということも行われておりますので、そちらの方と考えるか、そこらあたりにつきましてはいまのところまだ詰めておりません。これらは、先ほど申し上げました検討委員会の検討結果が出ました段階で、私ども同時並行いたしまして十分検討してまいりたいと思っているわけでございます。
それから、
年金との関係というようなことでお尋ねがございましたが、これは御承知のとおり、
身体障害者福祉法の等級表と国民
年金あるいは
厚生年金等の各等級とは、必ずしも一致したものではございません。したがいまして、これらについては
年金制度の上でどのように取り上げるか、たとえば国民
年金と厚生
年金につきましても若干の差があることは御承知のとおりでございますので、あるいは共済等もございますので、そういったものにつきましてどのようにこれから考えていただくかは、またこれが取り上げられました暁に、
年金制度の問題として十分検討していかれることになろうかと思っているわけでございます。
-
○平石委員 非常にありがたい答弁をいただきましたので、もう言うことはのうなりました。したがって、時間もたっぷりいただいておったわけですが、あと時間が相当余りましたけれども、大体はもうこれで終わらしてもらいたい、こう思うわけです。
ただ、私はもう一言、「療養のしおり」というのがございます。これを見てみますと、この方々が非常に苦労しておられる。お医者さんが手術はなるほどして肛門をつけていただきます、膀胱も、尿がとれるようにしてもらう。ところが、それから後のケアがないわけですね。それから後どう処置してどのようにしたらいいのか。それから、初心者は漏らすわけです。それから、おしっこも漏らすわけです。これが漏れないように体に装着をする。そして、漏れないように装着をしますと、今度はここの皮膚が、穴の周りの皮膚がかぶれてくる、こういった問題が出てくる。そうすると、これから雑菌が入ってくるといったように、また合併症、ほかの病気が出てくる。こんなことに悩まされておるわけですよ。そうすると結局、どなたに相談をしていいかわからぬ。それから、だれも経験のないことですから、お医者さんにどうしたらいいですかといって聞いても、お医者も、ここの出口まではやったけれども、それから先は知りませんぞ。ここに非常に困る点が出てくるわけですよ。そうすると、みんなが秘密にしておりますから、どこへ行って聞いていいかわからぬ。
いま互療会という全国組織の会がようやくできたわけです。そしてこの本を私、見させていただきますと、非常な体験が載っておるわけです。もう人さんに言えない体験が載っておるわけですね。そして、それにはお医者さんなりあるいは先輩の方々に来ていただいて講習をする。こうしたらいい、ああしたらいいという、この人たちみずからの経験から、この方法がいいですよ、これがいいですよ、こういうことでやっておるわけですよ。だから、こういったことで全国から問い合わせが来る、聞き合わせが来る。それへ出張をして、集まっていただいて指導する。大体全国で十万くらいいらっしゃるだろうというのですね。そして、これへどんどん入り出した。そういう関係で、この互療会という会はいま任意ですけれども、できれば法人化したいという気持ちを持っておるわけです。この法人化についても、厚生省の方のひとつお力をもいただきたい、こういうことです。
それからなお、この人たちがどのようにして個々のケアができるのか、どんなにしたらいいのか、これをやはり厚生省なりあるいは各市町村、各市町村というほども患者はいらっしゃらないと思いますが、各県単位くらいであるいは社協なら社協とか、そういった一つのところでお医者さんを含めて講習会をし、それからケアもできるような一つのリハビリというか、そういったようなことも考えていただければ、非常にこの人たちが助かるんじゃないだろうか、こういう気がするわけです。これには相当な費用がかかっています。こうして全国へ配って、いろいろな図面で、装着の方法やら、どうした方が有効適切だとか、あるいはかぶれないとか、かぶれたときには何をつけなさいとか、こういったことをみずから指導しておるわけです。そういうことをもひとつ十分御理解を賜って、この互療会が会員さんの福音になっておるわけですが、組織の法人化、さらには厚生省の方でこの方々のリハビリあるいは指導、ケアのあり方、こういったものの指導等、講習会等をも、できれば先生を雇ってひとつ開いていただいて、幹部講習会をする、幹部さんがまたそれぞれの地域に帰ってそういう講習をする、こういうようなことでもできれば、非常にこの人たちがいま困っておられることがよくなるんじゃないか、こういうような気がするわけですが、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
-
○金田政府委員 ただいま先生から、私どもよく知らないことをいろいろ承ったわけでございますが、どのような方法がございますか、たとえば私どもの方で
身体障害者の更生相談所といったようなところもございます、そういったところで
身体障害者の相談を受け付けたりもいたしております。私ども関係各局にもまたがりますので、他の部局とも相談いたしまして、先生の御趣旨に沿うようなことができないかどうか、いろいろ検討してみたいと思っておるわけでございます。
-
○平石委員 それで、最後に大臣に一言。
いま、大変いい御答弁をいただきましたので、もう大臣にいろいろと申し上げる筋はありませんが、身障者の見直しについては、やはりこれからも、これを含めて後へ後へと新しい難病奇病が起きて、そのためにいろいろな機能に障害が出てきております。そういう面から考えたときに、もっといままでの考え方を拡大をして、そして、努めてそういうものをこの網の目の中に吸収していく、こういった形で拡大するように早く御検討を賜りたいということ、その御決意と、それから、いつごろできるだろうか、この見通しについてもあわせてお聞かせをいただいて、終わらせていただきます。
-
○林国務大臣 いまお話しがありましたような人工肛門、人工膀胱というようなものを
身体障害者の中に入れてやらなければならない、こういうふうなお話、私も、そういう形でいませっかく基本問題検討委員会で検討していただいておるところでございますから、そういった中でやっていきたい。御指摘のように、やはり
身体障害者として取り上げて、ちょっと本を見せてもらったのですが、いろいろな問題もあるようでございますから、そういったことに対しましても温かい待遇をしていかなければならないのだろうと思います。
いつごろできるか、こういうふうなお話しでございますが、鋭意いまやっているところでございまして、私が聞いていますところでは、大体八月ごろには何らかのめどが立てられるのではないかということでございます。
-
○平石委員 もう一つ、ちょっと申しおくれましたが、この人工肛門とか人工膀胱というものは、本人初め他の人たちに非常な不快感といいますか、嫌悪を催す、そういうような意識がありますので、会の方々は、オストメートというのを公用語にしていただきたい、これは万国共通だそうです。外国では、アメリカもヨーロッパ諸国も全部オストメート、こういう形で呼称されておるようですので、ひとつ日本でも公用語としてはオストメートということにしていただきたい、こういう要望でございます。それで、女の方も若い方もいらっしゃいますが、そういう方々が、人工膀胱のところはどこへ行ったらいいですかなんて、そんなことはよう聞けぬですから、オストメートと言うたらぱっとわかるように、ひとつお願いしたいと思うわけです。
以上で、終わらしてもらいます。
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○塩田委員 中国残留日本人孤児の肉親捜しの問題でございますが、二月、三月にお尋ねしましたその後どのような対策をし、どのような状況で推移をしているか、お伺いいたします。
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○
山本(純)政府委員 この件につきましては、三月の段階に申し上げました状況から見まして、一つは孤児捜しの問題でございますが、これは正直申しまして実は思わしい進捗がございません。
これはどういうことかと申しますと、せんだって、二月から三月にかけて孤児捜しを実施したわけでございますが、これは一月に日中両国政府の間で事務レベルの協議をいたしまして、そこでとりあえずの合意ができ上がったことに基づいて急遽実施の運びになったわけでございますが、そのときから、その事務レベルの内容につきましてこれを再度確認をいたし、公館経由できちんとまとめをする、その次の段階でそれのまた細部の取り決めを進めながら、あわせて次回以降の肉親捜しの日程をまた協議する、こういう約束になっておるわけなんでございますが、その前回の原則合意を見ました事柄の具体的な詰めが、細かく申しますと、これを書面に一応いたす作業でございますが、これが意外と時間がかかっておりまして、これは内容についてその後意見がずれたとかいうことで長引いておるのではございませんが、やはり表現の形式その他につきましては両国それぞれにたてまえ、立場というものがあるところから、幾度かやりとりが行われている、これにちょっと時間を要しておりまして、その後の具体的な日程の詰めに入れない状況になっているのがおくれた原因でございます。
ただ、この点につきましては、ごく最近、厚生事務次官が訪中いたしました際に、この点をやはりサウンドいたした次第でございますが、そのときにも回答としては大変友好的な応答があったわけでございますので、今後その具体的な作業が進み次第、また解きほぐれていくということを期待しているわけでございます。
これ以外では、孤児対策の関係では、一つには、四月に入りまして法人の設立を具体化いたしまして、ここで現在募金をこれから始めるという段階になっておりまして、募金が進むに従いまして財団としてのいろいろな活動を進めてもらいたいと考えております。
もう一点は、この財団にまた委託をする予定でおります定着促進センターというものでございますが、これの建設は、予算上は半年分の運営費が計上されております関係から、私どもとしてはぜひ十月に発足させたいと考えておりますが、その間に土地の取得、建物の建設という物理的な所要時間がありますので、十月に間に合うかどうか若干心配はございますが、なるべくおくれないように進めたいというのが現在の状況でございます。
-
○塩田委員 昨年、肉親捜しのために帰国をする日本人孤児のための予算は百二十名とってあったと思うのですね。ところが実績は、この二月になってやっと一回限りで四十五名だったですね。それだけ予算を盛りながらなかなか実施ができない、こういう事態になったそのいきさつについてはいまお話しございましたけれども、今年度の予算定員は百八十人になっておるわけですが、この調子でいきますと一体いつまでかかるか。日本政府と中国政府が名簿をはっきり確定している者だけでも八百数十人ありますね。それがいまのような状況で進んでいきますと、これはもう本当に二十年までかかるんではないかという感じですね。こういったことについてどのように考えておられるか、今年度の百八十人は実施できるのかどうか、その辺をお伺いいたします。
-
○
山本(純)政府委員 一つは、残る人数の点でございます。八百数十名とおっしゃいましたが、その中には実は、すでに一度訪日調査で来日されまして、その際肉親が判明しなかったという方が五十八名含まれておられるわけでございますから、実質まだ日本の土も踏んだことがないという方が七百七十人というふうに一応私どもは考えているわけでございます。
今年度の百八十人の予算が消化できるのかどうかという点は、私どもも現在大変心配しながら交渉の促進を願っている段階でございまして、従来の例で言いますと、具体的な人員と訪日日時が合意ができましてから、それから名簿の交換、あるいはその名簿に登載される方々についての相互の意見の調整、こういうものがのんびりやっておりますと三カ月ぐらいかかる状況がございました。ただ、前回、この春いたしましたときには、御承知のとおり約束ができましたのが二月にかかっておるという非常に厳しい状況の中ではございましたが、一月足らずの間で来日の手続を進めることができたわけでございますが、そのかわり人数が四十五名という少数にしぼられてしまったというようなことがございました。
今度も、六十人・三回というのが私どものもともとの希望でございましたけれども、いま申し上げましたとおり、当面その具体的な訪日調査の日程交渉が始まるのが六月の深まらぬころと期待しておる状況でございますので、これはどう急ぎましても具体的な来日は早くて七月ということになってまいりまして、七月という時期はなかなかむずかしい時期でございまして、中国側では何か農村が忙しい時期に当たるということを聞いておりますし、私どもとしては、実はああいう作業をいたしますには文部省から大変な御協力をいただきまして、代々木のオリンピックセンターを拝借しておるのですが、ここが、七月というのはやはり若い方々が大変利用の多い時期に当たるということから、日にちが決まって会場が確保できるかどうかも一つの問題がある。そこらがございまして、希望としては七、八月に行い、あとは年末押し詰まらぬうちに秋に二回目を行い、さらに春に第三回という希望を持っておるのですが、このとおりいくかどうかはまだめどが立っておりません。その際は、もし二回になるなら果たして九十人が来られるのかどうかというあたりも考えなければいけないわけでございますが、いずれにいたしましても、今月中にも再開される具体的な協議の中で、中国側の意見も聞きながら私どもの希望を十分述べて調整を図っていきたい。従来からも百八十人を合意しますという話は一度もないのでございまして、原則として十分に協力するというのが中国側の意見でございますので、百八十人というものはこれからの交渉ということなので、できるだけの努力をいたしてまいりたいと考えております。
そういうことで、二十年なんというのはとてもそんなわけにまいりませんが、問題は、来年以降になりますと、これはことしのうちにかなりまたルールができてくるわけでございまして、たとえば扶養費の支払いにつきましても細目の取り決めはこの年度末までにやるということでございますから、その細目が詰まる、その他ルールができ上がってまいりますと、訪日調査の協議の点も、いままでのように長々待たされるということなく、速やかに協議が調うような体制になっていくことを期待しておりまして、五十九年度以降は今回よりはさらに円滑になるという期待を私どもとしては持っております。
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○塩田委員 厚生省の担当関係者の皆さん方は大変努力をして一生懸命やっておられることはわかるのでございますが、わずか六十名あるいは九十名という来年以降のお話しもありますけれども、わずかというとあれですが、一回六十名、九十名ぐらいを受け入れることが非常にむずかしいということはないと私は思うのです。何なら民間のボランティアの中国語がしゃべれる人、一生懸命やって実情をつかんでいる人たちにも応援をお願いして、受け入れ体制は、百人になろうと二百人になろうと一挙にやれるような体制を組んでいただきたいと思うのです。こちらの受け入れ体制ができないから六十名とか九十名だということでは、これは百人だったって七百七十名なら七年でしょう。もう七年や十年やと言っておれない状況で、毎年一つずつ年をとっていくわけですから、いま四十歳前後、もうあと五十歳になりますね。そうすると、親を捜しにいくったって、親自体がおられないということもだんだん多くなってくるので、これは本当に急がないと、もうすでに日本人孤児だとしてはっきりと中国社会では認められ、そのように待遇されている人たちは、非常な不安を持って毎日を送っているのです。日本の、祖国の空を望みながら、またかすかに聞こえてくる日本の国内放送用のラジオでも、近いところは九州あたりのは放送が入っていますね。それらを聞きながら、一生懸命毎日毎日を、いまかいまかと待っているわけです。この日本人孤児の気持ちを察して早く手を打ってもらいたい。そして、オリンピックセンターが使えないなら、六十人や百人がオリンピックセンターが使えないからできませんというようなことでなく、国家事業として本当に早く取り組んで、一刻も早く帰すべきだと思います。この点につきまして、ひとつ最大の努力を払っていただきたい。いままでも払ってきておられると思いますけれども、なお一層何倍かの努力をしていただきたい。お役所だけでなしに、広範に各地でボランティアの人たちは動いておりますし、いつでも協力をしようという動きはありますからお願いしたいわけです。
それから、このセンターですね。今年度予算がついておるわけです。まだ土地探しをしているということでございますけれども、予算編成はもう昨年の夏ごろからかかったわけでしょう。そして予算の政府案が決まったのは十二月ですから、そのあたりから、土地探しはもとよりどういう設計にするかぐらいは組んでいって、もう五月、六月の段階では基本設計ができておるというぐらいでないと、運営費が十月からついているわけですから、開設十月とすれば九月にはもう竣工しないといけない。そういうテンポで予定されたと思うのですけれども、それがいまだに土地を探しておるというようなことでは、大分事務的にもおくれがひどいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
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○
山本(純)政府委員 実は土地自体は国有地を使わせていただくということで、昨年の暮れ以降私自身も具体的に数カ所見せてもらったりいたしてやってきたわけでございます。そのいままで拝見した中では、広さも四千平米ほどのかなりのスペースが必要でございましたり、いろいろな状況から、所沢のあたりの国有地というのが大変この目的にうまくいくのではないかということで、関係当局には協力をお願いしてきたところでございまして、近く内定することは私ども聞いておるのですが、そういう国の財産である以上は一定の手続があるということから、なかなか終わったということにはならぬわけなんですが、そう遠からぬ時期に決まるように私どもは聞いております。
そういう関係で、設計の方は、決まらぬうちから設計というのは問題かもしれませんけれども、やはり建設省関係の地方建設局でございますか、ここで大変好意的に相談に乗ってくださっておりますので、内々ではございますが、私どももいろいろ意見を申し上げて、決まり次第一日も早く設計ができ上がるようにかねがね協力をお願いしているところでございます。十月ぴったり間に合うかどうかはちょっといまのところは何とも申し上げかねますが、決して何カ月もずれ込むというようなことにはならないと期待しております。
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○塩田委員 これは予算もできておることだし、土地も大体見当がついたということですから、早急に着手をして、十月に間に合うようにひとつ最大の努力をしていただきたいと思います。これはできてからその後が問題なんですからね。ひとつ早急に、やっていただきたいと思います。
それから、パンフレットをつくって各人の特徴あるいは写真等、これは全国各所に配られたわけですね。どういうふうにどういうところへ行っておりますか、そのパンフレットは。相当膨大なものだそうですけれども。
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○
山本(純)政府委員 三分冊、たしか三つの省がございますが、省ごとにまとめまして三冊、このぐらいの厚さのB5というのですか、資料をまとめました。大体一ページに三名程度の方の写真と、手に入っております場合には幼いころの写真、それから肉親捜しの手がかりとなるということでいままで私どもが把握しておりますもろもろの事実関係のメモ、そういうものをそれぞれまとめまして印刷いたしたわけです。これは大体数万部たしか刷ったと記憶いたしておりますが、全国の県、市町村に若干部ずつお送りいたしました。また、民間の団体で御熱意のあるところには、また協力いただけるところには若干部差し上げて御協力をお願いするということで、配付いたしました。
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○塩田委員 民間のボランティア団体等がそういった資料を欲しいと言った場合は、もらえるようになっていますか。
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○
山本(純)政府委員 まだかなり残部がございますので、御要望になるべくこたえるようにいたしたいと思います。
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○塩田委員 そういった動きは活発にやっていただきたい。これは有効だと思うのです。
あわせまして、前の計画で、特に中国の東北地方に行って本人に会ってビデオを撮って、あるいはインタビューしたその状況を持って帰って、各都道府県、市町村の窓口に配付するという計画があったと思うのです。これもテレビの効果が非常にあるのと同じく非常に有効だと思うのですが、これはその後実施されたのか、されようとしているのか、できるのかどうか。まだできてないと思うのですが、この間、この間と言ってもつい今月、山下事務次官が中国を訪問されたときに、それは折衝はどうだったか、お聞かせ願いたいと思います。
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○
山本(純)政府委員 ただいまの点は、昨年の十月でしたか、私どもの職員が北京に参りまして交渉した折にも、交渉の項目に重要事項として挙げておきましたし、また、この一月に中国側から両名の方が見えたときにも、私どもからこの議題として協議をいたしたところでございます。
いずれにつきましても、その点については、東北地方に主として残留しておられる日本の孤児の方々の身元については、中国における身元でございますが、これは中国の関係当局の非常に入念な調査がすでに済んでおって、現在私どもと中国政府との間で千四百名ほどということで業務をしておるわけでございますが、これ以外にはほぼ該当がいない。それの内親捜しには協力をするけれども、中国のサイドにおけるもろもろの調査はひとつ、日本の政府が手を出すのではなく、全部中国側に任せてもらいたいという意見が表明されまして、私どもとしてはそれは当然のことではございますけれども、それに訪日調査の結果も、かなりの方が身元不明のままお帰りになるという状況が片方にあるものですから、できれば私どもお手伝いをいたしたいという形で協議事項に挙げたのでございますが、現在の段階ではそういう形で、ある意味ではお断りをされているというのが実情でございます。
今回、事務次官訪中に当たりましても、事前に若干サウンドをいたしたのですが、やはりその空気はいまも変わっていないということでございまして、そういうレベルで具体的な協議事項に挙げて不調に終わるというのは、これはちょっととげとげしい成り行きにもなりかねませんので、今回はその点は議題にするようにはいたしませんでした。
そのかわりというのはなんでございますが、やはり私どもといたしましても、すべてを北京経由でやっておりますとなかなか現地の事情に通じかねる点がございまして、一例を挙げますと、訪日された方々が持ち帰られるもろもろのおみやげその他について、現地でいろいろ波紋が呼ばれておるというような話もございます。これも、お聞きする方々が、北京の方々から伺う話、あるいは具体的に訪中された民間の方からお伺いする話、幾通りもの話がいろいろあって、なかなか隔靴掻痒という感があるものですから、何とかもう少し、具体的に東北地方と私どもとの間の理解を深めるということはぜひ進めてまいりたいというところから、今回、事務次官の訪中に当たりましては、地方政府の本件を担当する方々若干名の方に、日本のそういう孤児捜しあるいは定着促進施策というものを御視察いただくのはどうだろうかということで、そういう申し入れをしてもらいました。これにつきましては、まだ確答はできないけれども、反応としてはなかなか円滑な反応があったようでございますから、遠からぬ将来に前向きの方向でこれが合意できることを私どもとしては期待しております。
そういう形で、少しずつ実情を相互に理解を深めながら、その中で私ども、できればただいま御指摘のように、事実、現地での調査事項、私どもから見ましてまだまだもう少しかゆいところに手が届くような調査が欲しいと思う実情がございますので、これからそういうことをしていくプロセスの中で、できれば御指摘の点も前向きに進めてまいりたいと希望しております。
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○塩田委員 いま言われましたように、東北地域はかなり地方の独立性が強いようです。瀋陽軍管区関係ですね、そういうことも聞かされておりますけれども、ぜひとも有効な手で、北京政府とともに、やはり地方の政府との折衝を進められる方が早いのではないかと思うのです。
それからもう一つ、前から問題になっております養父母の養育費の問題ですね。これについてはもう大体解決しましたか。
それと、これとの関係で、財団をつくって募金をしておられますね。この募金が、新聞報道によると余り集まらない、金額が少ないような話を聞く。五十万か幾らしか集まっていないというんですね。それは一体どういうことなのか、お伺いしたいと思います。
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○
山本(純)政府委員 扶養費の問題は、二点ほど申し上げたいと存じます。
一点は、具体的な合意の内容いかんということでございますが、これは現在の段階ではきわめて次元の高い総論だけが合意できておりまして、第一点は、扶養費は孤児本人が中国の法律、慣習、制度に基づいて負担をする。第二点は、そのうち二分の一に相当するものは日本政府が給費として孤児に給付をする。第三点は、残る部分については民間の寄附その他好意のある方にお願いいたしまして、孤児御本人の経済的、精神的な負担にならないよう努力するという点。それから第四点は、金額と具体的方法でございますが、おおむね扶養家族一人について一月二十五元というものを標準にする。しかしながら、これは居住する地域あるいは扶養義務を負った実子の方がおられるかどうかとか、そういう家族状況その他に応じて具体的に細目を今後取り決める。また、送金については両国が指定する機関同士の間で事務をとり行わせて、孤児の方、親族の方にはそういう送金のめんどうをおかけしないということ。そういうことが大体総論として決まっておりますが、いま途中で申し上げましたような細部についてはこれから、具体的な支払いは今年度分については年度末にまいるわけでございますから、来年の年度末に向かって細目取り決めを鋭意進めたいと考えております。
次に財団の募金でございますが、実は寄附と申しますのは、寄附金が所得税法、法人税法に基づく免税措置がございませんと、なかなか御好意のある方でも寄附なさりにくい状況がございまして、その免税手続を現在政府部内で調整して進めておるところでございます。これが来月早々にも完了する予定でございますから、いまのところは、そういう税金がかかっても構わないからぜひこの金を寄附したいとおっしゃる、大変御好意のある方の金をありがたくお預かりしておるわけでございまして、これはまだ金額は少のうございますが、具体的に免税手続が終わりますと本式の募金を開始いたしますので、その段階で決して困るようなことはないという見通しでやっております。
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○塩田委員 最後に一つだけ。
一時帰国して肉親捜しをされて見つからないで帰られた方、この人たちが日本に永住をしたいという希望者につきましては、これを受け入れるということを前に答弁をいただいておりますね。これは年間予算が大体四十名ぐらいという話も聞いておるのですが、昨年はできなかったわけですね。ことしにつきまして、いつごろから具体的に手続がどのように進んでいくのか、このお考えをお聞きしたいわけです。これはセンターができないとできないのか。その前でもできる方法がちゃんとできれば、受け入れ体制さえできれば、やってあげていいのではないか。それを期待して、一日千秋の思いで待っておられる方が大分ありますので、これはひとつ早急に進めていただきたいと思うのです。
以上です。
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○
山本(純)政府委員 ただいまの点は、センターができなければということではございません。しかしながら、これまた具体的な細目について両国間でやはり公館経由で取り決めをするのが先決でございまして、これが御承知のとおりなかなか、国と国との間でございますから、原則はすでにこの一月で両国政府ともそれを実施する、中国政府はそういう人を快く送り出す、私どもはそれを受け入れてできるだけの
援護をする、これはもう合意ができておりますが、具体的にどういう手続をとるかということについて、これもこれから詰めるわけでございまして、その状況は、センターのでき上がる時期とたまたま一致するぐらいにぜひ持っていきたい。センターはできたけれども、そちらの受け入れの交渉がまだまとまらぬということにならないように、急ぎたいと考えておるわけでございます。
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○塩田委員 早急に措置をしていただきたいと思います。
終わります。
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○浦井委員 まず最初は、少し障害者などの問題についてお尋ねをしたいと思うのです。
公衆衛生
局長、行革大綱ができる、そして公衆衛生局と医務局を合わせてがらがらぽんというような話が出ておりますが、それはそのときまた議論をするとして、きょうぜひ尋ねておきたいのは、結核難病課が廃止されるのじゃないかというような患者同盟の皆さん方の御心配があるわけです。これは絶対にそういうことをしたらいかぬと思うのです。確かに結核患者は少なくはなっているけれども、これからますます高齢者社会を迎えてそして結核に免疫のない人がどんどんできてくるわけで、下手をしたら大量発生するかもわからぬということで、伝統のある課でもあるし、これが廃止されるようなことがあるのかないのか、それに対して大臣なり公衆衛生
局長はどう考えておられるか、お尋ねします。
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○三浦政府委員 臨調の答申で厚生省の内部部局の再編成問題、この提言が行われておるわけです。
ただいま先生御指摘の結核、難病、これはいずれも、結核は少なくなったとはいえまだ最大の伝染病であるわけでありますし、難病につきましてもいま非常に大きな問題になっておるところでございますので、必要な予算、人員につきましては十分確保していきたいと考えておるわけでございますけれども、課の名称の話につきましては現在検討中でございまして、関係団体からの御意見を私も承っておりますが、慎重に検討してまいりたいと思っております。
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○林国務大臣 臨調で、厚生省の内部部局の改編をやれ、こういうふうな答申が出ておりますことは御指摘のとおりでございます。
やはり時代に即応して、行政の内部組織はそのときどきの事態に応じていい制度にしていかなければならない、適切な対応を行政としてやらなければならないということは当然のことでございますから、いろいろなことを考えていかなければならないと思います。
お話しの結核難病課の話でございますが、せっかくの先生の御指摘でもございますし、また、いま
局長も答弁いたしましたように、結核、難病というものはぜひ名前をというような御意見でございますから、そのことは十分に心にとめてこれからの措置をしてまいりたい、こういうふうに思います。
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○浦井委員 それから障害者問題で、これもいろいろな団体からの要望をぜひかなえてあげたいと思うのでありますが、一つは、先ほども出ておりました視覚障害者の職域拡大の問題であります。
先ほど金子委員の方からもお話しがございまして、私もこれをもらったのですが、どんどん職域が狭小になっていっておる。そういう中で、必死になって職域拡大に自主的な努力をされておるわけなんです。これは大臣、見られたと思うのですが、こういうのを出されてがんばっておられるわけなんです。そこに書いてあるように、企業内の理療士として今後職域拡大をしていきたい。そこで、盲学校であるとかあるいはPTAなどが金を出し合ってそういうパンフレットをつくっておるわけで、行政としてもぜひ協力をしてあげなければならぬと思うわけなんです。
たとえば一つの提案ですが、先ほども出ておりましたけれども、率先垂範という意味からも、厚生省の中に理療室をつくってみるつもりはなかろうか。
それからもう一つは、所沢のリハビリセンターの、電話交換手は全盲の方でもできるわけでありますから、視覚障害者に交換手をやってもらうというようなことがやれないものかどうかということを。
それからもう一つの問題は、これは医務
局長の方だろうと思うのですが、晴眼者を中心に教育をしておるところの民間の理療専門学校、ここでかなり定員をオーバーしてどんどん資格を取らしておるという話を聞くわけで、これはやはり定員を厳守する指導が必要ではないか、こういうふうに思うのです。
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○金田政府委員 まずお尋ねの第一点の、厚生省の中で理療室を設けてはどうかというお尋ねでございますが、先生御承知かと存じますが、厚生省全体といたしましては、視覚障害を含めまして
身体障害者の
雇用につきましては、適材適所主義に立っていろいろ努力しているわけでございます。五十七年六月現在でもその
雇用率は二・三六%でございまして、法定
雇用率の一・九%を大きく上回っておるという状況でございます。
現在、厚生省の中におきましては、職員の最小限度の健康管理や応急診療の観点から診療室を設けておるわけでございますが、企業内理療士ということで専任のマッサージ師等を置くということにつきましては、私どもも一部企業でそういうケースがあるように聞いております。たとえば伊勢丹等でそういうことがあるというようなことは聞いておりますが、デパートで一日じゅう立っている場合とかあるいは運転手の場合等そういう需要があると聞いておりますが、厚生省一般のようなデスクワークの場合にどの程度その需要がありますか、そこらあたりにつきまして今後とも検討してみたいと思っております。
第二点の所沢リハビリセンターの電話交換手でございますが、実は先生御存じかどうか知りませんが、この所沢リハビリセンターの電話交換手は定員内の職員ではございませんで、その業務を民間業者に委託いたしております。したがいまして、委託業者の意向とかあるいは契約条件等も含めまして今後検討してみたいと思っておるわけでございますが、なお、国立視力障害センター全体といたしましては、現に八十二名の視覚障害者が在職いたしておりまして、私どもとしましても、適材適所の観点から視覚障害者の
雇用については努力しているつもりでございます。
-
○大谷政府委員 あんま、マッサージ、指圧師、はり師及びきゅう師の養成施設には、中学卒業を入学資格とするものと高卒を入学資格とするものと二つがございますが、中卒を入学資格とするものにつきましてはいずれも定員以下となっておるわけでございますが、高卒の方は一部定員が守られていないというのが見られているのは、まことに遺憾なことでございます。
この学校が養成施設の認定をされるための要件といたしまして、定員を遵守するということが教育上の観点からも非常に大事なことでございます。従来から定員を厳守するように設置者を指導し
改善をしてきたところでございますが、今後ともこの問題につきましては十分厳守するように指導をいたしたいというふうに考えます。
-
○浦井委員 いま私が一括して質問申し上げたのは、国立視力障害センター自治会の要望であるわけなんです。だから、もっともな要求でもあるし、それなりというか後ろ向きの答えもあったわけですけれども、ひとつ努力をしてあげてほしいということを要望しておきたいと思います。
次に、小規模共同作業所の要望を申し上げたいと思うのですが、それは二つあります。
一つは、前から問題になっております、これは数年前に社労委員会でももう少しで
請願が採択されるところまでいったわけでありますけれども、小規模作業所というものが非常に苦労をして運営をされているので、それへの助成をしてほしい「制度化してほしい、こういう問題であります。
それから二番目は、授産施設をもっと拡充してほしいし、そこで障害の異なった者の利用を認めてほしい、こういうことであります。これについては、昨年出ました身障者福祉審議会の答申によっても「働く意思と能力をもつ障害者は、地域的には少数である場合が多く、作業施設は小規模化の方向にあるが、保健、安全性等に配慮するためには、ある程度の規模を確保する必要がある。一定規模を確保するためには、他の障害者等との共同利用についても検討されてよい。」という答申が出ておるので、こういう答申の意義も踏まえた上で要望をかなえてあげてほしい、こういうふうに私も思うわけであります。
この二点について。
-
○金田政府委員 まず第一点の共同作業所の問題でございますが、障害者のための作業施設につきましては、従来から働く障害者の健康と安全、施設運営の安定性等の面から、一定の構造設備、専門職員の配置等が必要であるとの考え方に立ちまして、精神薄弱者福祉法及び
身体障害者福祉法に基づき、定員二十人以上の通所授産施設を制度化し、整備費、運営費の助成を行っているところでございます。また、先生も御承知のように、現在社会福祉事業法におきましても一定の基準が設けられているところでございます。
そういったことで、現に法律上のいわゆる社会福祉事業施設以下のものにつきましてどうするかということでございますが、私どもとしましては、基準に合致しない小規模の施設につきましては、認可基準に合致する施設への切りかえの促進をこれからも指導してまいりたいと考えておるところでございます。
それから、第二点の共同利用の問題でございますが、
身体障害者福祉審議会の答申では、こういったことについて検討してみてはどうかという答申が出ております。それで、この審議会の答申の内容は広範にわたっておりまして、その具体化に当たっては多角的な検討が必要なことから、昨年十月以来学識経験者等から成る
身体障害者福祉基本問題検討委員会を設けまして、種々検討しているところでございます。その一環といたしまして、
身体障害者更生
援護施設のあり方についてもただいま検討がなされているところでございますので、その結果も踏まえて検討してまいりたいと考えております。
-
○浦井委員 そこで、保険局の方にお尋ねしたいのですが、吉村保険
局長はあっちこっちでいろいろなことをしゃべっておられるようであります。鬼にも蛇にもなるということだそうであります。最近のこういう雑誌なんかに、ある程度あなたの考え方が集大成されたような形で出ておるようであります。それを私なりにダイジェストしてみますと、たとえばここなんかは「医療費適正化の方向と対応策」という題で、一番新しいのに出ておるわけですね。そこで、医療費を考えるメルクマールとして、一つは「医療費亡国論」、二番目が「医療費の効率逓減論」、三番目が「医療費需給過剰論」と、こういうふうに、それなりに理論立ててきておられる。こういうものを踏まえた上で、今後の対応の基本的な方向はということであなたが言っておられるのは、重点は「公共医療費を抑制して医療費に対する国民負担(公共負担)が増大しないようにする」
〔大石
委員長代理退席、
委員長着席〕
そして、良質医療へ転換させる、こういうことは非常に耳ざわりよく、すっすっと入ってくるわけなんです。ここで「公共医療費」というのはあなたがつくられた言葉なんでしょうけれども、公が責任を持って支払い負担する医療費だということは、結局自由診療に使う医療費は幾らかかっても結構だということを言っておられるようであります。大体そういうことでしょうか、簡単にコメントしていただきますと。
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○吉村政府委員 大体そういうことでございます。
-
○浦井委員 そこで、たとえばその中であなたが書かれておるのは、国会でもずっと私なんかも問題にしてきたし、予算委員会でもかなり問題になったのですが、私立大学附属病院の差額ベッド、この差額ベッド全体については厚生省は文部省と協力をしてやはり廃止をしていくような方向、これが基本精神で漸次こうやっていこうということで具体的に行政指導をされておられる。われわれが要求すれば達成率はこれだけですというように、ある程度定期的に報告をもらっているわけなんです。ところが保険
局長のしゃべっておられる中には、部屋代差額などももう一度考え直してみる必要があるということで、もちろんこれは保険
局長個人として書いておられるのでしょうけれども、そういうことで、やはり行政府も立法府も一致をして廃止していこう、患者のために廃止していこう、そしてだれでもが高いレベルの医療を受けられるようにということで努力しているのに、水をかけるようなことを言っておられるわけなんですが、これは一体どういうことなのか、こういうことなんです。
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○吉村政府委員 部屋代の差額徴収につきましては、従来から私どもある一定の方針に従って解消に努めてまいっております。いまは大体私どもの行政指導の方針の方向に参っておりますが、私立医科大学あたりでなかなか完全な私どもの指導の線に乗ってないというのが実情でございます。ただ、私が申し上げておりますのは、差額ベッドだけではなしに、現在保険でやっておりますのは歯科の補綴における材料、それから差額ベッド代、この二つでありますが、その歯科の補綴の材料、これらも含めましてもう一遍差額徴収というのはどうあるべきかということを考えてみようではないか、こういうことでございます。
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○浦井委員 理屈としては一見通るように思うのですけれども、しかし、たとえば私大の附属病院などは、必ずしも差額ベッドをなくすということについて十分に納得をしないわけです。だから厚生省、文部省の間での話し合いも難航しておるというふうに聞いておる。そういう事態の中で、厚生省の保険
局長がこの差額ベッドのあり方も見直すというようなことになれば、これは社会的にかなり大きな問題になるわけです。いますぐではないかもわからぬ、これは検討しますと、国の施策としてそういう方向に行っておるのに、それに水をかけるというような形はどうなんでしょうか。大臣にひとつ。
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○林国務大臣 病院に入りまして、保険でもっていろいろ診療をしてもらうのですから、それ以外のものを取られるということは余り好ましいことではない。一般的なスタンダードなものといたしましては、当然にそういった形でありますし、いままでありましたのは差額徴収という形で、言うならばやみ的な考え方で取っていたというのがやはり非難をされてきたのだろうと思います。そうしたようなことで、私たちもいままでの方針は進めていかなければならないと思いますが、もう少し広い観点に立ってみると、果たしていまのようなことですべてのものが満足されるのだろうかどうだろうかというのが、私も問題に考えているところでありまして、自由診療体制というようなことからするとそこをどう考えていくのかというのは、やはり一つの問題として考えていかなければならないことであろう、こういうふうに素直に私は思っているところでございます。
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○浦井委員 大臣のお答えはそれはそれとして聞いておきますけれども、そこでもう一つ、私がきょう取り上げたいのは、老人保健法が施行されて診療報酬が改定をされて、そして特例許可病院、特例許可外病院ができたわけですね。特例許可外病院がどれくらいか、厚生省ではいまだに集計ができていないそうですが、やはり百ぐらいなものですか。
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○吉原政府委員 特例許可外病院の数でございますが、まだ最終的に集計ができておりませんが……
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○浦井委員 ごめんなさい。許可病院と許可外病院です。
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○吉原政府委員 まず特例許可病院について申し上げますと、まだ最終的に集計ができておりませんが、全国で大体五百五、六十程度になるのではないかと思っておりますし、特例許可外の老人病院はおおむね八十ないし九十程度になるのではないかというふうに思っております。
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○浦井委員 そこで、こういう現象が起こっておる。私、この間は吉原さんをつかまえて老人の入院拒否や老人の追い出しが起こっているのではないかと申し上げた。これは事実なんですけれども、きょう取り上げたいのは、いわゆる老人病院で今度特例許可病院なり特例許可外病院になったところで、いままでは、差額ベッド代と同じような形になるのですけれども、お世話料みたいなものがある。それが老人保健法施行以来ほぼ倍になっておるわけなんです。
私が数字を集めてみましたら、新越谷病院というところがいままで月額一万五千円から三万円であったのが四万五千円になっておる。それから、これも埼玉県下の病院ですが、三万五千円から四万五千円取っておったのが六万円、あるいは家政婦さんのつく部屋なんかは普通の付添看護料と同じように月にべたっと三十万円ぐらい取る。富士見市のある病院は三万五千円から四万円ぐらいであったのが現在は六万六千円。それから、埼玉県大井町のある病院は三万円であったのが六万円。横浜市のある病院なんかは四万六千五百円であったのが十三万円というかっこうで、老人病院、括弧つきの老人病院であったところでルーチンに取られておったお世話料というものがほぼ倍になっておる、こういう現象が出ておるわけです。
これは私は前に申し上げたのですけれども、核家族化してお年寄りが病気になる、在宅ケアの体制がないので特養を希望するけれども特養がない、そこでやむを得ず老人病院に行っていた、そこで老人病院の方では一定のお世話料を徴収してというかっこうで、何か三方一両損みたいな奇妙なバランスがとれておったわけです。それが、老人保健法が施行されて、この前言いましたように一般病院は入院拒否、追い出しが起こる。それなら在宅ケアは保健事業で充実したのかというと、それはできてない、特養の不足は依然として同じだ、それでお世話料は特例許可病院などでは倍になるということになると、これはまさに老人なりあるいは老人を抱えた家族なりは踏んだりけったりであるわけなんです。
そこで、私が冒頭に申し上げたように、吉村保険
局長は、差額の部屋代のやり方も見直すというようなことであれば、吉村さんの御意見でいけば、こういうお世話料というのは公共医療費ではないのだから減ろうがふえようがそれは勝手だ、需給のバランスがとれておればよいのだというようなことになるわけですか。
-
○吉村政府委員 いま先生御指摘のお世話代あるいはおむつ代みたいなものも取られているようでありますが、そういうものが何の費用なんだ、これは重要であろうと私は思うのです。いま負担と給付の関係ということでいろいろ私どもは検討しておりますが、医療保険というのは医療というものを対象として保険料を取りそして給付を行う、基本的にこういうことなんだろうと私は思うのです。そういたしますと、ある行為が医療かどうかというのは何によって判断をするかというと、医療界における常識みたいなものによって判断をせざるを得ないのではないか、私はこういうように思うわけでございます。したがって、たとえば洗濯代だとかあるいはお茶を沸かすためのガス代だとかそういうものも取られておるというようなこともございますが、それは入院して生活費的な身の回りのための金でございますから保険で見る必要はないのではないか、こういうような考えを持っております。
それではおむつ代はどうだ、こういう議論になるのですが、これは私どももいろいろ検討しておりますが、赤ちゃんの場合のおむつの扱いあるいは老人の場合のおむつの扱いというものをいろいろ総合的に考えてみますと、これは一種の下着みたいなものではないか。そうだとすれば保険の対象にするのがいいのかどうかということは考えてみる価値はある問題ではないか、こういうようなことでいろいろ私どもは考えておるわけでございまして、少なくとも、保険料を払っておるから病院へ入れば一切合財全部その費用を保険で持つんだというのはどうも常識に反するのではないか。そこまでは私ども一応考え方として決めておるわけでございますが、それでは具体的に何をどうしていくかというのは、いまいろいろ事務ベースで検討をしておるというのが実情でございます。
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○浦井委員 医療保険の抜本的な改革のためには鬼にでも蛇にでもなるというふうに豪語しておられる吉村さんのお話だけのことはあると私は思います。しかしそうなれば、あなたの言われることでいけば、かなり長いこと生きてきていま寝たきりになって、やむを得ず病院に入っておむつもかえてもらわなければならぬ、こういうお世話料も、結局公共医療費ではないのだから高くなろうが安くなろうが仕方がないのだという、非常に無慈悲なかっこうにならざるを得ないと私は思うわけです。――やや短絡した理解かもわかりません。あなたはそれはそれで後でまたいろいろなにがあるでしょうけれども、私はそれはちょっと冷たいと思うわけです。
だから、幸か不幸か、今度特例許可病院で特例で介護人が必要だということになりまして、そして介護人は患者八人につき一人ということで、あれは何という名前でしたか、点数が出てきましたね。それとは直接結びつかないとしても、特定患者収容管理料、一日二十点というものが新設をされたわけなので、そういうものがある以上は、やはり本来であれば、この間の老人医療に関する診療報酬の改定のときに、介護人の点数を何らかの形で診療報酬に反映さすべきではなかったかと私は思うわけなのですが、それでまた、そういういまの実情からいって、これは多少政治の問題になるでしょうけれども、やはり今度の診療報酬改定のときにはこの辺のてこ入れをすべきではないかと私は思うのですが、これは答弁はどなたですか。
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○吉原政府委員 老人病院におきましては、やはり医療と密接不可分なものとして介護が相当重要であるという考え方に立ちまして、もう先生御案内のように、特例許可病院というものの中には、従来の医師や看護婦の数というものを多少減らすことができる、そのかわり介護人を置けるようにするという考え方で、こういった特例許可病院の制度を設けまして、さらにそういった病院につきましては、寝たきりの状態にある患者さん一人について一日二十点という特別の点数を設定をしたわけでございます。したがいまして、老人保健の考え方におきましては、できるだけ介護の点にも配慮をしていきたいという考え方を持っているわけでございますが、ただ、先ほど来のお話しにございますように、そうかといってそこでの一切合財のお世話というものが、保険の中であるいは老人保健の中で見るべきかどうかについては、よほど慎重に考えていかなければならないというふうに思っているわけでございます。
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○浦井委員 重要なことがいろいろあるので吉村さんにお聞きしたいのですが、たとえばあなたの書いておられる、しゃべったのをまとめられたのでしょうけれども、それと同じような意味で、傷病手当金であるとかあるいは出産手当金あるいは分娩費というようなものは、こういう現金給付は別の体系でやるべきではないか。
健康保険というのは医療給付に徹すべきではないかというような、これは確かにちょっと次元の違う議論の立て方ですから私もびっくりするのですが、こういうことも言っておられる。
それからもう一つは、「医療機関の種別ごとの診療報酬を考えてみる必要があるかもしれない。たとえば、大学病院と開業医とでは診療報酬は違っていいと私は思う。それから総合病院と単科の病院とは診療報酬の中身が変わってもいいではないか。」僻地にある国保診療所などはめんどうくさい点数単価方式で計算せずに、たとえば一年間三億円なら三億円予算配分をすればよいではないか。こういういまの医療保険の根本を揺るがすようなことをかなり言っておられる。
それから、これはかなり有名になりましたけれども、ビタミン剤やら総合感冒剤を薬価基準から削除する。ある週刊誌などによりますと、これは厚生省内でかなり具体的に検討されておる。たとえば健胃消化剤であるとか、水溶性ビタミン剤であるとか、抗ヒスタミン剤、外用ハップ剤、漢方製剤はしばらく置いておかなければしようがないだろう。しかし総合ビタミン剤、総合感冒剤、これはもう次の薬価改定のときに削除される可能性が大きいとか、いろいろな見てきたような話が書いてあるわけですが、これはみんな事実なのですか。
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○吉村政府委員 先生いまいろいろ御指摘の点は、私ども事務ベースで検討しておることは事実であります。ただ、私ども今後の高齢化社会を考えましたときに、やはり医療費というものは非常にふえていくのではないか、それに伴って負担もふえる、こういうことでございますので、現在の医療そのものにつきまして、需要、供給、両面から検討するために、推進本部もつくって総合的に検討しておるというのが現在の状況であります。
私どもはそこで、従来から医療保険に関して指摘された事項あるいは提案をされた事項をすべて拾い上げまして、網羅的に一応検討をしておるわけであります。したがって、検討していることは事実でございますが、それではそういうようにするという方針を決めたということではございません。したがって、どうも厚生省がするらしいとかいうのは、やはり現在の段階では憶測だとお考えになるのがしかるべき現状だと私は思うのでありますが、検討していることは事実でございます。したがって、いま御指摘のいろいろな点は検討課題になっていることは、これは否定はいたしません。
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○浦井委員 大臣、どう思われますか。時間がないから、大臣の所見を聞いて終わりたいと思うのですが……。
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○林国務大臣 百花繚乱、千紫万紅という言葉がある。私は、厚生省の中でいろんな活発な議論をしていただくことは非常に大切なことであるし、若い諸君がいろいろな議論をして、日本のこれからの医療制度をどうしていくかということについて活発な議論をしてもらうことは大歓迎であります。ただ、それは議論はしていただくのですが、厚生省としてどうやっていくかということはお互いがまだ決めてない話で、いろんなことが議論があって、その上で積み重ねていかなければ行政の進歩というものもあり得ないだろうと思いますし、大いに議論してもらったらいいと思う。ただ、依然としてこれはまだ議論の段階でございますから、どうしていくかというのは、いずれ法律事項その他のところで出てくる問題もあるでしょう。そうした意味で、また国会の諸先生方の御意見も十分拝聴しながら、行政というものは筋道を立てて進めていくということが必要であろうと思っているところでございます。
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○浦井委員 それは議論するのは自由であって、最近の厚生省のある外郭団体の研究所のシンポジウムなんかでは、憲法二十五条に基づく社会保障に対する国の責務、これも一遍考え直さなければいかぬのと違うか、というような議論までも出てきているというふうに私は聞いておるわけなんです。だから議論は議論で、それは自由にしたらよいわけなんです。しかし国民の健康と生活を守っていくことを任務とする厚生省というのは、やはり越えてはならぬ一線というものがあるわけなんで、そこのところを、厚生省を主宰する大臣としてはきちんとした自覚を持って、これから、その百家争鳴ですか百花繚乱ですか、それが本当に国民の望まないものがぴょこんと具体化する、たとえば老人保健法の後の診療報酬改定みたいなものが突然出てきたり、こういうようなことのないようなことを、少なくとも私は望んでおきたいと思うわけです。
以上であります。
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○菅委員 私の前の浦井委員からも、いまの保険のあり方等についていろいろな議論が交わされておりましたけれども、最初に一つだけ、私もその点について保険
局長にお伺いをしたいのですが、医療費の適正化という問題については、私なども積極的に進めるべきだということを主張してきた一人です。それはまさにむだな、たとえばむだな薬なんかを少なくしていくというようなことは重要だと思っていたのですが、最近の傾向を見ておりますと、医療費の適正化という言葉の中で、ちょっと本来の筋から外れたことも出かねないような空気もありまして、若干心配をしている一人です。
先ほどの議論にもありましたけれども、たとえば保険点数などがいま甲表、乙表というふうになっているわけですけれども、さらにそういったことの変更というか、診療機関によってそういうものを変えていこうというふうな議論が聞こえてくるのですが、そういうことを考えておられるのかどうか、ひとつお聞きしておきたいと思います。
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○吉村政府委員 先ほども申し上げたのでありますが、私どもはいろいろな観点から議論をし、検討しておることは事実でございます。その中で、今後の診療報酬のあり方というものはどうすべきかというのも、一つの重要な議論の項目であることは事実であります。そして、従来その診療報酬についてはいろいろなことが言われてまいっております。その一つの問題として、たとえば大学病院と普通の開業医さんの診療報酬というのが本当に同じ診療報酬体系であっていいのかどうか、あるいは額にいたしましても少し違うかっこうの診療報酬であってもいいのではないか、こういう議論が従来からあったことも事実なんです。したがって、私どもそれを一つ取り上げて検討しておる。そういたしますと、その大学病院と開業医だけでいいのかどうか、こういう議論が必ず出てまいりまして、たとえば開業医にいたしましても、有床診療所と無床診療所というのは違いますし、また普通の病院と総合病院というようなものも違いますし、また専門病院というようなものも少しずつ性格が変わり、機能が変わっておるのではないか。そういうことから、そういう各医療機関の機能に応じた診療報酬というものが考えられないのかどうか、こういうようなことで検討をしておるわけでございます。
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○菅委員 この点は大変大きな問題ですので、きょうは保険
局長のそういう意見を聞くにとどめておきたいと思いますけれども、これまでも甲表、乙表という制度そのものもかなり批判があったわけですから、これは相当慎重に、国民的な声を聞いての問題の対応を望んでおきたいと思います。
もう一つ、個別的な問題ですが、昨年来薬の問題がいろいろあったわけですけれども、薬務局の方に一つお聞きします。
ダニロンという薬の認可をめぐって、現在ダニロンは製造中止になって、厚生省の方で追加試験を指示しているというふうに聞いておりますけれども、まず事実関係、それでよろしいですか。
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○持永政府委員 御指摘のとおり、ダニロンにつきましては追加試験の指示をいたしております。発がん性試験の指示をいたしております。
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○菅委員 その場合に、かなり発がん性のデータを隠したということで、第三者機関でやれというふうに指示されたと聞いていますが、そうですか。
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○持永政府委員 それは公式には言っておりません。口頭ではそういうふうに、公平性を保つために第三者機関で実施するようにという指示をいたしております。
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○菅委員 現在、それを公平性を保つために第三者機関でやれというふうに言われて依頼をされたところが、私が調べたところでは安評センターというところでやっているというふうに聞いていますけれども、そのとおりですか。
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○持永政府委員 御指摘のとおりでございます。
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○菅委員 その中で、安評センターの何という先生がやっておられますか。
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○持永政府委員 今回の大鵬薬品から依頼の安評センターの試験の責任者は、小島建一という先生になっております。
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○菅委員 小島建一先生以外に、榎本眞という先生も入っておられますか。
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○持永政府委員 いろいろな部類がございますが、病理検査の部類に榎本眞さんという方がおられます。
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○菅委員 この人は、ダニロンのもともとの認可のときの申請データをつくられた中のメンバーじゃありませんか。
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○持永政府委員 ラットの発がん性試験につきまして、この先生は直接のメンバーではございません。直接のメンバーではございませんが、この発がん性試験の研究報告によりますと、最後の「謝辞」という段階で、「病理組織学的所見において終始ご指導ご校閲を賜った財団法人食品農医薬品安全性評価センター技術顧問榎本眞博士に深謝いたします。」というくだりの文章が入っております。
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○菅委員 ラットの亜急性毒性試験の、ここに学術論文があるのですけれども、このメンバーに榎本先生は入っておられるわけですが、これが申請データに入っておるのではないですか。――「応用薬理」の一九八〇年の十九。
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○持永政府委員 亜急性の方はちょっとわかりませんが、発がん性試験についてはいま私が申し上げたような資料になっております。
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○菅委員 今回は時間が短いので指摘にとどめておきたいと思いますけれども、大臣、お聞きいただいたように、この国会でも日本ケミファの問題とかいろいろな問題があったわけですが、大臣が就任される前にダニロンが大分大きな問題になって、そういう一種の不祥事があったために、現在製造中止と追加試験を指示している。しかし、先ほど薬務
局長は、公平さを担保するために第三者機関でやれと口頭で指図したと言われているけれども、実際にやっている人はもともとの認可のときの申請データの中でも非常に深いかかわりを持った人だ。発がん性では云々というようなことも言われておりましたけれども、私が入手しておる限りでは他の分野での明らかなデータをつくっておられる一人ですし、そういう点でどうも薬務局は、長年やられていることを何となく、公平性だと言いながら結局また同じことをやっているのではないかという疑問が従来からずっとあるわけです。大臣、ぜひこの点を次の段階までにはっきりさせていただきたい、そのことを約束をいただけませんか。
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○林国務大臣 薬務局でやりました話で、公平性を欠いてはならない、こういうことでやった話でございますし、その先生がどういう先生か、突然のお話しでございますから私もよくわかりませんし、調査しましてお答えをいたしたいと思います。
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○菅委員 調査をお約束いただきましたので、この点は次の段階までに、その調査結果を踏まえてまた必要なことがあれば続けたいと思います。
もう一つ、きょうの朝、川本先生の方からも幾つかの御質問がありましたけれども、せんだって五月十七日に、食品添加物の十一品目が承認をされたということですね。大臣も御承知のように、まず四十七年に国会決議もあって、極力使用を制限する方向での措置をしていこうということが決まっているわけです。今回の認可が、こうしたこれまでの食品添加物行政の方向転換ではないかと各方面から言われているわけですけれども、そういうふうにとらえてよろしいかどうか、一言でお答えいただきたいと思います。
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○林国務大臣 私は、いままでの厚生省の姿勢を転換したとは考えておりません。一言で申し上げればそういうことでございます。
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○菅委員 それではもう一つ、これは三月二十六日ですが、経済対策閣僚会議で「基準・認証制度の
改善について」という方針を出されていますけれども、今回の認可がこの基準・認証制度の
改善という政府の方針に沿って行われたと理解してよろしいですか、大臣。
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○林国務大臣 閣議決定での基準認証制度の
改善等がございましたが、私は今回の五月に、この前行いました指定は、あくまでもわが国の食生活を前提にして、各品目ごとに食品衛生調査会におきまして十分な審議をしていただき、安全性、有用性、必要性を御審議いただいた上で審議会から答申をいただいたものでございます。
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○菅委員 大臣はもともと通産省の出身の方で、三つ子の魂何とやらとかいろいろ言われていますけれども、そうすると、もう一遍同じことですが、この基準・認証制度の
改善とは関係ないということですね。一言で。
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○林国務大臣 先ほど申しましたように、食品衛生調査会で検討いただき、国民の健康を守っていくというのが厚生省の基本的な立場でありますから、そういった観点に立ちまして御審議をお願いし、その御審議の結果答申をいただいた、こういうことでございます。
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○菅委員 それでは食品衛生調査会の審議過程をちょっと確認をとりたいのですが、まず、この添加物部会と毒性部会の委員の方に資料が届いたのはいつですか。また、その分量はどの程度でしたか。
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○
竹中政府委員 合同部会を開催する前にお届けしようということで、委員の先生の住所等によって違いますが、おおよそ一週間ぐらい前に行っておるのではないかと思っております。
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○菅委員 私の資料ですと、四月三日に一回、四月六日に一回、資料を発送されたと聞いていますが、違いますか。
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○菅委員 先ほど大臣も言われたように、分量が、馬に食わせるという言葉がいいかどうかは別として、段ボール箱二杯、六千ページに及ぶ文書だったと聞いていますが、そのとおりですか。
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○菅委員 これは全部日本語ですか。
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○
竹中政府委員 英語のものもかなり入っておると思います。
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○菅委員 いいですか、大臣。四月三日と四月六日、これは大体半々ぐらいと考えていいのですか。
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○
竹中政府委員 三日の方が七割ぐらいだと思います。
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○菅委員 それにしても、四月三日に発送して、次は六日に発送した。早くて、宅急便で届けられたと聞いていますけれども、非常に近くて翌日ぐらいでしょう、四月の七日。それで合同部会はいつやったのですか。
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○菅委員 これは一週間前ですか。七日から十一日だと言えば、前の方でぎりぎり一週間、後の資料が届いたのが七日として、七日に届いて七、八、九、十、その日まで入れて五日、入れなければ間が三日しかないのです。段ボール箱に二杯の資料をばんと届けられて、そのうちの三割が後だったとしても、大ざっぱに言って、数千ページのものが三日しかない。これで慎重に審議をしたということになるのですか。
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○
竹中政府委員 各委員はそれぞれ御専門がございます。たとえば病理でございますとかがんの関係の方でございますとか、そういうそれぞれの御専門がございまして、私ども知っている範囲では、先生方は自分の専門の分野をごらんになるということで、十分御審議をいただけるものと考えております。
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○菅委員 この日に十三品目審議されたわけですね。ということは、一品目について約二十分、たしか九項目についてチェックされていますね。それはいい。それはそのとおりですか。
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○
竹中政府委員 十三品目の御審議を予定をしたのでございますが、資料等の不足がございまして、実際に御審議をいただいたのは九品目でございます。
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○菅委員 大臣、これを聞かれても、きょう朝から自信を持って答弁をされていましたけれども、そう慎重に審議をされたという経緯は客観的に見てないのじゃないか。
時間が短いですから、その次の問題もあわせてあれしたいのですけれども、これがWHOのA1リストに載っているからスピード認可したのじゃないかということを言われているのですけれども、そう理解していいのですか。
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○林国務大臣 私は、WHOのA1リストに載っているからどうかという話ではないと思います。もちろんWHOでA1リストに出ておりますものは、WHOがそれぞれ検討した結果でありますから、私はそれはそれなりに評価をすべきものだろうと思います。しかし、と同時に日本は日本の立場で、先ほど申しました安全性、有用性、必要性を日本独自の立場で審議をしていただかなければならない。それで、食品衛生調査会にお願いをしたところなのであります。それだけのたくさんな資料を急速にやったからと、こういうふうなお話しでありますが、私は、専門家の先生が見れば、少々たくさんの資料があったところで、大体ポイントはわかると思うのです。われわれだって、正直申しまして、法律案を見れば、法律案を見るときに、さっと見てやりますよ。私ら閣議で毎回出るが、全部資料を見ているから、さっと見れば大体どんなことが書いてあるかというのは大体わかるわけですから、専門家が見れば、私はそうおかしな話ではない。たくさんあったからどうだこうだという話とは私は違うのじゃないかというふうに思っています。
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○菅委員 そうしますと、大臣は、この食品衛生調査会の専門の先生方の答申が大変に重い、それを全面的に受け入れた、そういうことですね。
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○林国務大臣 そのとおりでございます。
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○菅委員 それではこのBHA、つまりこれはWHOではA1リストに入っているけれども、調べてみたら発がん性物質があるとして、その同じ大臣が、大変尊重される食品衛生調査会がこれは危ないといって、日にちで言えば昨年八月に、食品衛生調査会の正式な答申として二月一日から禁止を決めていた、それを執行猶予というか、使用禁止の延期をしたというのはどういうことなんですか。
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○
竹中政府委員 BHAの問題につきましては、いま先生お話しのように昨年の五月に答申がございまして、八月に告示をいたしたわけでございます。その後、BHA問題については国際的に大変関心がございまして、それで四カ国でいろいろ議論をしておったということでございますが、なお、その五月に出ました意見書でございますけれども、一定の猶予期間を置いて禁止の措置をとれということでございまして、一定の猶予期間は政府の方でよく考えて必要な期間、猶予期間を置け。私ども、その五月の意見書の範囲内で現在猶予期間を若干延ばしておるというふうに理解をいたしております。
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○菅委員 これは大臣、ぜひ答えてください。つまり大臣、先ほどこういう専門家の先生の言われることは大変尊重したい。そういう人たちの意見を認めて、一たん二月一日からのBHAの禁止を決めた。それを若干何か今度は別の理由で、何か外国の四つの国がどうのこうのという別の理由で延期する。どうもいままで言われていることと矛盾していませんか、大臣。
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○林国務大臣 昨年の五月に食品衛生調査会で御審議をいただいて、若干の猶予期間を置いてやれ、こういうふうな話があった。その後やはり国際的に、外国の政治的な圧力とかあるいはいろいろな行政的な圧力とかそういったことではなくて、やはり学者間でいろいろと御議論があったわけでありますし、日本の学者でも、それだけ議論があるならば、やはりそれに相応するところのものは備えておかなければならないという御意見もあるだろうと思うのです。私は、そういった意味で、科学というものはある程度国際的に共通のルールがあるだろうと思いますので、日本だけ、日本の学者だけがこうだと言って、外国の学者、国際的に学問の世界において認められないことを日本がやるのはどうかなと思っているところであります。
そうした意味で、先ほど
局長から御答弁しましたように、国際的な場において学問的な議論がされた、そういったところとやはり彼此融通し合っていくというのは非常に大切なことでありますし、ことしの四月にWHOでそういった会議が行われたわけであります。日本の学者も出ていろいろと議論したわけでございまして、その議論を踏まえてこちらの日本の食品衛生調査会でまた議論しましてやったというのが、いままでの経緯でございます。
学問的な問題というのは、学者が権威にかけてやっていただかなければならない話でありますし、また、永遠の真理などというものが科学にあるとは思わない。ガリレオ・ガリレイについてローマ法王が謝罪をするという話にもなったわけですから、私は、そういったことはやはり謙虚に受けとめるべきが科学者の姿勢ではなかろうか、こう思っているところであります。
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○菅委員 だれが聞いても大変苦しい答弁ですけれども、それでは一つだけ大臣に、A1で指定されてない、つまりWHOもA1で言うほど安全とは言っていない品目で、日本で認可をされているものがあると聞いていますけれども、どうですか。
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○
竹中政府委員 わが国で現在指定をしておりますのは三百三十六品目でございますが、その中にはA1に該当するものが百二十六品目でございまして、その他わが国特有の添加物がかなりございます。
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○菅委員 時間もないので申し上げたいのですけれども、大臣、きょう朝からこの問題では、食品衛生調査会という専門機関を大変に尊重したい、また外圧ではない、それから、私が最初に言ったように、経済閣僚会議のその問題についても明言は避けられたようですけれども、少なくとも国内の学者の皆さんがそういう調査会の中で言われたことを尊重してやったんだ、十一品目認可したんだ、それが五分もたたないうちに、学問に国境はないから云々という言い逃れで、今度は外国の例が出てくる。
それから、もう一つ申し上げますと、今回の食品衛生調査会の招集通知の中に、議事の内容として「市場開放問題等食品添加物について」という報告説明事項がありまして、こういうものが食品衛生調査会の中で議論されている。どうですか、それだけちょっと確認をとりたい。
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○
竹中政府委員 三月二十六日の閣議決定の中に若干食品添加物に触れたところがございましたので、それを御説明いたしたわけでございます。
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○菅委員 明らかに、この食品衛生調査会では、この問題が項目の中に、私が入手している中で言えば、二つの報告事項の中の一つに入っているのです。BHAと、もう一つ市場開放問題の報告が入って、それから具体的な審議に入っているのですよ。だから、幾ら関係ないと言ったって、関係があるわけです。
私が大臣にぜひ申し上げたいのは、国際貿易摩擦は国際貿易摩擦として、日本のこれからの外交の問題で重要な問題だと思います。ただ、そのことと、この国会決議まで経てきている――食品添加物でどんどん奇形児がふえているのではないかということを、いまたくさんの母親の人が非常に心配しています。そういう問題と全然次元の違う問題ですから、その次元の違う問題を、三月何日かの閣議決定ですいすいとやっていくという姿勢を続けられていれば、これは厚生大臣ではなくて通産省の厚生部会といいましょうか、そういうことになってしまうのではないか。そういう点で、最後にぜひ大臣に、この食品添加物の問題を含めてその安全性について最大限の尊重をするんだという立場を、もう一回反省を含めて御意見をお願いしたいと思います。
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○林国務大臣 国際的にいろいろな要望があったことは私は事実だと思います。そういう要望がなければ、あるいは国内から要望がなければ、こういったことは出てこない話でありますから。要望があるということは私は一つもおかしな話ではないと思います。しかも厚生省としては、国民の健康を最大限に考えていかなければならないということは当然のことであります。
実は、先般ジュネーブにWHOで参りましたときも、わざわざガットのダンケルという事務
局長のところに行きまして、おれの方はこういうふうにしてやる、健康の問題は私の方は最重点に考えているのだから、こういう話はダンケルにもはっきり言っておいた。それは向こうも当然の話だ、だからそれはそれでやっていかなければならぬだろう、こういうふうな話をしたわけであります。外圧に屈したとかなんとかと言われるのは私は非常に心外である、こういうふうに考えておりますし、厚生省の立場に立ちまして毅然としてこれはやっていかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
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○菅委員 時間で終わりますけれども、どうか健康、安全を軽視しないように重ねてお願いをして、私の質問を終わります。
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○稲村
委員長 次回は、来る二十四日火曜日午前十時から
理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時十七分散会