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1983-03-03 第98回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三日(木曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 稲村 利幸君    理事 今井  勇君 理事 大石 千八君    理事 丹羽 雄哉君 理事 牧野 隆守君    理事 金子 みつ君 理事 田口 一男君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       逢沢 英雄君    木野 晴夫君       古賀  誠君    白川 勝彦君       津島 雄二君    戸沢 政方君       中野 四郎君    長野 祐也君       浜田卓二郎君    船田  元君       池端 清一君    大原  亨君       川本 敏美君    永井 孝信君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       浦井  洋君    菅  直人君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 林  義郎君  出席政府委員         臨時行政調査会         事務局首席調査         員       山本 貞雄君         厚生政務次官  稲垣 実男君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 吉原 健二君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         厚生省援護局長 山本 純男君         社会保険庁長官         官房審議官   入江  慧君  委員外出席者         大蔵省主計局共         済課長     野尻 栄典君         文部省大学局医         学教育課長   前畑 安宏君         日本電信電話公         社厚生局長   中原 道朗君         参  考  人         (国家公務員共         済組合連合会理         事長)     大田 満男君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ───────────── 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     矢野 絢也君 同月二十四日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     大橋 敏雄君     ───────────── 二月二十八日  民間保育事業振興に関する請願外一件(奥田幹生紹介)(第一〇一八号)  同(楢橋進紹介)(第一一三五号)  優生保護法改正反対に関する請願蓑輪幸代紹介)(第一〇一九号)  同(土井たか子紹介)(第一〇八七号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一一六五号)  保育所振興対策確立に関する請願梶山静六紹介)(第一〇二〇号)  同(登坂重次郎紹介)(第一〇五〇号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願藤尾正行紹介)(第一〇二一号)  同(粕谷茂紹介)(第一〇五一号)  同外四件(工藤巖紹介)(第一〇八八号)  同(伊東正義紹介)(第一一一五号)  同外九件(石原慎太郎紹介)(第一一一六号)  同外一件(椎名素夫紹介)(第一一一七号)  同(津島雄二紹介)(第一一一八号)  同外一件(永田亮一紹介)(第一一三六号)  同外二件(木下敬之助紹介)(第一一六六号)  公衆浴場法の一部改正に関する請願河野洋平紹介)(第一〇四八号)  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願外三十件(河野洋平紹介)(第一〇四九号)  同外十一件(楢橋進紹介)(第一一三四号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願小野信一紹介)(第一〇五二号)  同(北山愛郎紹介)(第一〇五三号)  同(加藤常太郎紹介)(第一〇八九号)  同(戸田菊雄紹介)(第一〇九〇号)  同(津島雄二紹介)(第一一一九号)  同(三塚博紹介)(第一一二〇号)  同(江藤隆美紹介)(第一一六七号)  沖縄県内国立療養所職員定数増員に関する請願國場幸昌紹介)(第一一一三号)  カイロプラクティックに関する法律制定等に関する請願三塚博紹介)(第一一一四号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願岡本富夫紹介)(第一一二一号)  同(永田亮一紹介)(第一一三七号)  療術制度化阻止に関する請願岡本富夫紹介)(第一一二二号)  同(永田亮一紹介)(第一一三八号)  優生保護法改正反対に関する請願藤原ひろ子紹介)(第一一六八号) 三月三日  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願外六件(佐藤信二紹介)(第一一八八号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第一三〇七号)  同(竹内黎一君紹介)(第一三〇八号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願熊川次男紹介)(第一一八九号)  同(西中清紹介)(第一二四五号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願後藤茂紹介)(第一一九〇号)  同(戸井田三郎紹介)(第一一九一号)  療術制度化阻止に関する請願後藤茂紹介)(第一一九二号)  同(戸井田三郎紹介)(第一一九三号)  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願矢野絢也君紹介)(第一二四三号)  民間保育事業振興に関する請願外一件(西中清紹介)(第一二四四号)  優生保護法改悪反対に関する請願安藤巖紹介)(第一二七五号)  同(岩佐恵美紹介)(第一二七六号)  同(浦井洋紹介)(第一二七七号)  同(小沢和秋紹介)(第一二七八号)  同(金子満広紹介)(第一二七九号)  同(栗田翠紹介)(第一二八〇号)  同(小林政子紹介)(第一二八一号)  同(榊利夫紹介)(第一二八二号)  同(瀬崎博義紹介)(第一二八三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一二八四号)  同(辻第一君紹介)(第一二八五号)  同(寺前巖紹介)(第一二八六号)  同(中路雅弘紹介)(第一二八七号)  同(中島武敏紹介)(第一二八八号)  同(野間友一紹介)(第一二八九号)  同(林百郎君紹介)(第一二九〇号)  同(東中光雄紹介)(第一二九一号)  同(不破哲三紹介)(第一二九二号)  同(藤田スミ紹介)(第一二九三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一二九四号)  同(正森成二君紹介)(第一二九五号)  同(松本善明紹介)(第一二九六号)  同(三浦久紹介)(第一二九七号)  同(三谷秀治紹介)(第一二九八号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一二九九号)  同(村上弘紹介)(第一三〇〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一三〇一号)  同(四ッ谷光子紹介)(第一三〇二号)  同(渡辺貢紹介)(第一三〇三号)  年金制度改善等に関する請願外一件(伊藤茂紹介)(第一三〇四号)  優生保護法第十四条の改正反対に関する請願柴田弘紹介)(第一三〇五号)  優生保護法改正反対に関する請願蓑輪幸代紹介)(第一三〇六号)  優生保護法改正反対に関する請願藤原ひろ子紹介)(第一三〇九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)  厚生関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 稲村利幸

    稲村委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として国家公務員共済組合連合会理事長大田満男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稲村利幸

    稲村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  4. 稲村利幸

    稲村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長野祐也君。
  5. 長野祐也

    長野委員 第一に、鹿児島湾水銀規制魚問題について伺いたいと思います。初めから地元の問題で恐縮なんですが、大臣の御出席関係もありますので、御了承いただきたいと思います。  さて、第三水俣病問題に端を発しまして、昭和四十八年七月、魚介類水銀に関する暫定的規制値が定められ、これに基づいて全国総点検が実施されました結果、鹿児島湾奥水銀汚染魚発見をされまして、ことしでちょうど十年目を迎えておりますところから、この問題に県民の非常に強い関心が寄せられております。  現在、鹿児島湾奥タチウオ、マアナゴ、キアマダイ等魚種は、魚介類水銀に関する暫定的規制値を超える魚介類として漁獲規制をされておりまして、そのため漁民は、豊饒の海を目の前にしながら、高級魚漁獲をできない経済的損失と、長年にわたって規制解除を訴え続けながら解決のめどのつかない精神的不安にあえいでおります。  御承知のとおり、水銀汚染魚発見以来、鹿児島県においては、環境庁文部省の協力のもとに水銀汚染魚原因解明に努め、その結果、「鹿児島湾人為的汚染源はなく、桜島の火山活動に由来する天然汚染である。」との結論を出しております。  昭和四十八年十一月水銀汚染魚発見されるまでは、漁民を初め地域住民は、相当長期間にわたってこの当該汚染魚を何の不安もなく食膳に供していたものでありますが、地元医師会等調査結果においても、関係住民の間に水俣病に類似した疾病の存在が確認された事実はないと聞いております。  このような天然汚染魚の問題については、一部学者の間においても、人為的な汚染と異なり、人体に与える影響は弱いものがあり、その多食による発症報告例はないという学説を発表していることを聞いております。したがって、地元漁民が、同じ天然汚染であるマグロ等規制から除外をされているにもかかわらず、湾奥タチウオ等のみが規制をされていることに対して強い不満を持っていることも事実であり、理解できるところであります。  現在、鹿児島県においては、昭和五十二年度から水産庁の委託を受けて水銀蓄積機構調査研究が進められておりますが、これとは別個に、地域住民魚介類摂取量調査などの疫学的手法によって検討を行いながら、規制解除可能性についての調査計画しており、十年目の節目を迎えて、何らかの解決を目指して真剣に努力をしております。  そこで、次の三点についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一は、国内における水銀汚染による漁獲規制海域規制魚等状況がどのようになっているのか。また、現在実施をされている漁獲自主規制はいつごろまで続けられるのか。御所見を承りたいと思います。
  6. 竹中浩治

    竹中政府委員 水銀に関します漁獲自主規制でございますが、四十八年十月三日付でございますが、御承知のような「水銀に係る環境調査の取扱いについて」という表題の環境庁、農林省、通産省の事務次官通達が出ておりまして、これに基づきまして漁獲自主規制を各都道府県実施しておるということでございます。  現在、鹿児島湾のほか三海域において自主規制を行っておりますが、具体的に申し上げますと、まず新潟県の直江津の地先でございますが、魚種といたしましてはイシモチの規制をいたしております。それから、山口県の新南陽市先はクロダイの規制をいたしております。それから熊本県の水俣湾でございますが、これは全魚種規制をいたしております。それから鹿児島県の鹿児島湾湾口部でございますが、アカカマス、ヤガタイサキの自主規制をいたしております。鹿児島湾湾奥部につきましては、タチウオその他十種類ばかりの魚種自主規制をしておるという状況でございます。  それから、漁獲自主規制がいつごろまで続けられるのかという御質問でございますが、同一魚種の全検体の平均値暫定的規制値を下回った場合に、都道府県判断に基づいて自主規制解除を行うというふうに承知をいたしております。
  7. 長野祐也

    長野委員 マグロ類河川産の魚介類メヌケ等深海性魚介類につきましては、その暫定規制値適用除外措置がとられておりますが、その理由は何か。また、鹿児島湾水銀汚染魚に対しては適用除外措置はとれないのか。この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 竹中浩治

    竹中政府委員 水銀暫定的規制値でございますが、これは、魚介類水銀に関する専門家会議というのがございまして、そこで、国立衛試等におきますサルの実験の結果などを踏まえまして、メチル水銀の成人に対する無作用レベルを一週間当たり〇・一七ミリグラム、それから、当時の国民栄養調査によります魚介類の一日平均最大摂食量、こういったものを勘案いたしまして、暫定規制値といたしましてトータル水銀で〇・四ppm、メチル水銀で〇・三ppmと、こういうふうに定められておるわけでございます。  マグロ、それから深海性魚介類でございますが、これらの魚介類につきましては国民摂取量が明らかでございますし、これによるメチル水銀摂取量も少ない、したがいまして通常食生活を続ける限りにおきましてはメチル水銀として一週間に〇・一七ミリグラムを超えて摂取することはなく、したがって健康被害を生ずるおそれはないということで、暫定的規制値適用除外をしておるわけでございます。それから河川魚につきましては、市場流通性が少ないということで、適用除外をいたしておるわけでございます。  なお、適用除外されました魚を多食をするおそれのある者に対しましては、食生活の適切な指導を行うよう各都道府県知事に指示をしております。  鹿児島湾産の水銀汚染魚でございますが、先生お話しのように天然水銀蓄積によるものと言われておるわけでございますけれども、天然由来のものと人工汚染によるメチル水銀毒性に相違があるかどうかという点については、確たる実験報告はございませんので、現在の段階では、天然由来というだけで暫定的規制値適用除外をするのは困難だというふうに考えております。
  9. 長野祐也

    長野委員 確かに、いま御答弁にありましたように、天然由来人工汚染によるメチル水銀毒性の差を科学的に立証することは大変むずかしいと言われております。しかし、それが立証されなければ適用除外措置がとれないのだということになりますと、これは半永久的に——それを科学的に立証することはむずかしいのではないかということを考えると、この問題は半永久的に放置をされかねない。  そこで私は、厚生省に一歩踏み込んだ対処をぜひしていただきたいと思うのです。それは、鹿児島県においては湾奥汚染魚暫定的規制値適用除外とするための検討をいろいろ計画をしておるわけでございますが、その鹿児島県の調査手法等について厚生省が積極的に鹿児島県に対して指導助言をするお考えはないか。積極的な所見を承りたいと思います。
  10. 竹中浩治

    竹中政府委員 鹿児島県が行おうとしておられる調査でございますが、要は、通常食生活を続ける限りにおいて健康被害を生ずるおそれがあるかどうかというそこがポイントでございますので、鹿児島県に対しまして、その調査の中で、鹿児島湾魚介類流通実態でございますとか、あるいは地域住民水銀汚染魚推定摂取量でございますとか、メチル水銀の総摂取量、そういったものを総合的に調査をしていただきまして、先ほど申しましたような通常食生活を続ける限りにおいて健康被害が生ずるおそれがあるかどうか、その点が明らかになるような調査方式をとるように、鹿児島県に対しまして適切な指導を行ってまいりたいと思っております。
  11. 長野祐也

    長野委員 ただいま非常に積極的な御答弁をいただいて、県が実施をする調査計画について、健康被害が生ずるおそれがあるかどうかが明らかになるような調査方式について、厚生省の御指導をいただくという御理解のある御答弁をいただきました。これは、十年間の関係住民の苦悩を思いますときに、長年の懸案が大きく前進をしたものとして大変明るいニュースでありまして、関係者にかわりまして厚く御礼を申し上げたいと思います。  そこで、あわせて厚生省にお願いをしたいことは、調査方式を御指導いただくとともに、その調査結果の解析評価等についても御指導をお願いし、同時に、強く要請をしておきたいことは、県の調査結果においていまお話しがあったように通常食生活を続ける限り健康被害を生ずるおそれがないという判断ができる場合、そういう結果が出た場合に、厚生省は、深海性魚介類の場合と同様に、魚介類水銀に関する専門家会議を開いて、この暫定的な規制値適用除外問題を検討していただくように、強く要望しておきたいと思います。  最後に、御参考までに三人の学者見解を御披露申し上げて、厚生省の今後の一層の積極的な取り組みに参考にしていただきたいと思います。  まず、厚生省魚介類水銀に関する専門家会議のメンバーでありました秋田大学医学部公衆衛生学滝沢教授は、「天然水銀による汚染魚と工場からタレ流しにしたメチル水銀を摂取した人為汚染魚とは違うようだ。人為汚染魚を食べた場合あのように水俣病になるが、天然汚染魚を高濃度に食べても水俣病は発生していない。私は世界的に資料や文献を集め魚介類多食人種ケースレポートを調べているが、天然水銀汚染水俣病が発生したという報告は一件もない。現実にマグロ深海魚は、こういうことも根拠にして解除している」と述べられております。また「鹿児島湾奥の十魚種海底火山による天然水銀汚染だし、地元漁民の方々がマグロ深海魚なみ解除してもらいたいと訴えるのはもっともなこと。しかも水銀暫定規制値は十倍の安全率をかけており、極端な多食をしない限り問題ない」と言われております。  また、臨床学者の方では、長年水俣病研究を続けておられる鹿児島大学医学部の第三内科の医師グループは、「人為汚染魚とくらべて天然汚染魚の方が水俣病発症が起こりにくいことは言えるようだ。しかし、なぜそうなのかはまだ医学的に解明されておらず、百パーセント安全とは言い切れない」「だが、国はマグロ深海魚については水銀規制値を上回っているのに、国民一人当たり摂取量が少ないとの理由適用除外した。湾奥魚天然汚染だし、マグロとどこが違うと追及されると反論の余地はない。そうした意味から規制解除は医学の問題ではなく、もはや行政の問題」と言われております。  鹿児島湾海洋環境研究されておられる鹿大水産学部高橋教授も、「湾奥水銀濃度が高くなるのは海底火山噴気が異常なときだが、その海水は対流により湾外水と入れ替わる。湾奥水銀がずっと蓄積されるわけではない」「水銀汚染魚が出現するのも、海底火山活動により海水中の水銀濃度が高くなったときで、食物連鎖を経て出てくる。火山活動が弱まると水銀濃度が低下、海水も入れ替わり汚染魚もいなくなる。海底火山監視は常時続けるべきだが、魚の出荷規制は五十年か百年に一回の異常噴気の時期だけでよいのではないか」と指摘をされております。  こういう学者見解についても、十分御参考にしていただくように御指導を賜りたいと思います。  次に、健康食品の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  いまや健康食品ブームと言われておりますけれども、私は、この健康食品が必ずしも国民にとってよいとは言えない要素もあるということを、きょうは問題提起をしたいと思います。  ここに、五十七年度の警察庁の「保健衛生事犯実態調査」という報告書があります。これを見ますと、薬事法違反が過去五年で、五十七年が最高になっております。そして、その中で健康食品関係事犯が相当数あるわけであります。その中で、「検挙を通じて見られる特徴点」というまとめの中に「健康食品ブームを反映していわゆる健康食品等を医薬品として販売していたにせ薬事犯が相変らず多い。」「にせ薬や医療用具販売方法として計画的、組織的な詐欺まがい催眠商法が多い。」ということ等が指摘をされております。まとめとして「薬事法違反は、国民健康等に寄与するという姿勢よりも、営利のためには手段を選ばぬという極めて悪質な計画的、組織的事犯が見られる。中には警察検挙を当初から予想し、子会社を数社作り、その子会社検挙されるまで違法を承知で大々的に販売させ、違法責任が親会社まで及ばないように計画されたものがあるなど、この種事犯はますます悪質かつ巧妙化傾向が見られ、国民保健衛生に多大な影響を与えている。警察としては、国民の生命、身体、健康等を侵害し、又は侵害するおそれのあるこの種事犯について、今後とも積極的な取締りを実施し、国民の負託に対応していく所存である。」と、この実態報告で述べております。  国民の健康を直接的に第一義的に守らなければならない厚生省として、このような健康食品薬事法違反による国民被害増加をしている原因をどういうふうに考えておられるのか、その対処を含めてお答えをいただきたい。
  12. 新田進治

    新田政府委員 先生指摘のように、警察庁の統計によりますと、薬事法違反検挙件数は五十五年を境といたしまして大変伸びてきております。昭和五十七年の検挙状況につきましては、いま先生指摘のとおり、健康食品関係の事案が相当数含まれていることも事実でございます。  この背景といたしましては、健康に対します国民関心、それから、栄養のバランス問題に関します一般消費者の強い意識の向上が最近非常に目立ってまいりました。俗に申します健康食品種類、それから量、ともに増加していることも事実でございます。こういうことが背景として考えられるわけでございます。こういう傾向に伴いまして、医薬品的な効能効果を期待させるような販売など、薬事法に抵触する事例が非常に増加をしてきたわけであります。  こういう事態にかんがみまして、今後とも適切な監視指導の一層の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  13. 長野祐也

    長野委員 ただいま適切な監視指導に一層努力すると言われたのですが、一体何人の人が現在この件について専従しておられるのか、伺いたいと思います。
  14. 新田進治

    新田政府委員 これは五十六年四月現在の薬事監視員の数でございますが、総数が二千五百十四名でございまして、そのうち専任者は五百八十八名でございます。
  15. 長野祐也

    長野委員 専従者が五百八十八名ということなんですが、訪問販売実態を見ますと、大変な何万という人たちがそういうことをやっているわけで、実際上は監視指導をするといってもなかなかむずかしいのではないかという疑問を持たざるを得ないのですが、具体的に十分なる対応をしていただきたいと思います。  そこで、きょうは時間の関係で、健康食品の中でビタミンEにしぼってお尋ねをしたいと思うのです。  環境衛生局長お尋ねをしますが、ビタミンE過重摂取による健康被害が多く出ているのではないかと思うのですが、どのように承知をされておりますか。
  16. 竹中浩治

    竹中政府委員 ビタミンEを含みます食品を摂取したことによって健康被害が起こったかどうか、こういうことでございますが、この健康被害につきまして都道府県からの直接の報告は受けておりません。ただ、国民生活センターでやっておられます危害情報によりますと、ビタミンEを含む食品を摂取いたしまして下痢をしたというような報告があるということを聞いておりますが、この場合、その因果関係はもう一つ明らかでない点があろうかと思います。
  17. 長野祐也

    長野委員 薬務局の方に伺いますが、医薬品のビタミンEの副作用モニターで、この副作用報告はどのようになっていますか。
  18. 新田進治

    新田政府委員 御指摘のように、薬局のモニター制度というのが昭和五十三年に発足いたしておりまして、全国の二千四百余の薬局で取り扱われております一般用医薬品の安全性を確保いたしますために、これらの薬局からそれぞれの医薬品の副作用等にかかわります情報の収集を行っておりますが、その中で、昭和五十六年度の薬局モニター報告によりますと、一般用医薬品のビタミンEに関しまして、副作用と疑われた事例が三十四件報告されております。その主な症状といたしましては、皮膚の発疹等の症状、便秘、胃部不快感等の胃腸症状等が報告をされております。
  19. 長野祐也

    長野委員 そこで両局に伺いますが、医薬品のビタミンEは「医薬品製造指針」というものによっていわゆる使用量を制限されております。栄養剤として配合するときは一日十ミリグラム、Eの薬効をうたう場合は一日百ミリグラム。ところが健康食品ビタミンEは——委員長にちょっとこの物品の提示を御許可いただきたいのですが、よろしいですか。
  20. 稲村利幸

    稲村委員長 はい、どうぞ。
  21. 長野祐也

    長野委員 ここに持ってきておりますが、このトコEゴールドというのは百八十七ミリグラム、ビテスEというのは何と四百ミリグラム、それからジョルノEは百三十三ミリグラムというふうに、いずれも医薬品の一日量を超えて、しかも用量の書いてない食品ということでありますから、一日何カプセルも飲むおそれがあるわけですね。先ほど審議官がお答えのとおり、薬でさえ副作用報告があるのに、先ほどの環境衛生局のお答えでは、医薬品の何倍も含有されているのに、食品の方で副作用が出てないというのは、これはだれが考えてもおかしなことだと思うのです。  そこで、まず薬務局の方に伺いたいのは、医薬品の使用量を超えた健康食品で副作用はないと思われるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  22. 新田進治

    新田政府委員 健康食品を飲みましてそういう副作用がどういう形で報告をされるかについては、私ども十分その情報を得ておりませんけれども、先ほどの環境衛生局の方の御報告のように、都道府県でも、消費生活センター等に、そういう明らかに健康食品によって起きたような副作用であれば御報告がなされるものと思います。  ただ、先ほど薬務局の薬局モニターの報告にありました副作用の情報でございますが、これにつきましては非常に多くの情報の中で選び出されたわけでございますが、どれも、いずれの副作用につきましてもかなり軽度な、余り重篤ではないということが注釈としてついておりました。
  23. 長野祐也

    長野委員 質問に素直に答えてもらいたいのですが、医薬品で決められた量を超えたものが健康食品に含まれていることについて、副作用があると思いますか、ないと思うのですか。
  24. 新田進治

    新田政府委員 御指摘のとおり、薬務局で、一般医薬の承認基準に従いまして、ビタミンEアルファトコフェロールといたしましては、十ないし百ミリグラムの量を規定しておりまして、医療用といたしましては百ミリグラムないし三百ミリグラムの常用量を規定しておるわけでございますが、御指摘のように非常に高用量、高含量のものにつきましては、当然副作用の心配もあろうかと思います。したがいまして、その点も含めまして、昭和四十六年に薬務局長通知で医薬品の定義が示されておりますが、それらの見直しを今後総合的にやっていく必要があろうかと思います。
  25. 長野祐也

    長野委員 同じ質問を環境衛生局の方にお尋ねをしますが、副作用があると思われますか、どうですか。  もう一つは、先ほど報告は受けてないという答弁をされたのですが、その報告がないということはイコール安全であるということとは私は全く別な問題だと思うのです。報告がないということはそれぞれの県のチェック態勢に問題があるのではないか。その辺についてどういうふうに考えておられますか。
  26. 竹中浩治

    竹中政府委員 ビタミンEが大変多量に含まれておるということでございますと、先生おっしゃいますように副作用の可能性はあるというふうに思います。  それから、先ほど都道府県の、私ども衛生担当部局側の問題でございますが、報告がないということを申し上げたわけでございます。確かに先生おっしゃいますように、報告がないということと事故がないということとは必ずしもイコールではない、私どももそのように思っております。
  27. 長野祐也

    長野委員 いまの答弁だと、したがってその県のチェック態勢というものをもう少し強化する必要があるのではないかと思います。その点はどうですか。
  28. 竹中浩治

    竹中政府委員 健康食品、いまのビタミンEを中心にいたしますとおっしゃるような点がございますので、私どももこれから大いに努力をいたしてまいりたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、いわゆる健康食品というようなことで健康被害を生ずるおそれが明らかであるというようなことになりますれば、従来もそういう例もございますので、必要に応じまして食品衛生上の規制をしてまいりたいというふうに考えております。
  29. 長野祐也

    長野委員 ところで、先ほど述べましたように、医薬品としてはビタミンEは一日十ミリグラムから最大百ミリグラム、これは薬学、医学の見地からそのように制限をされております。しかるに、食品行政はその何倍もの飲用がなされております。  ビタミンEの医薬品上の使用上の注意事項というものが日本製薬団体連合会の安全性懇談会から出されておりまして、それを読みますと、「医療用医薬品のビタミンE剤に、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきではない」と記載をされております。両局へ伺いますが、健康食品のEの含有量についてどう考えておられるか、使用量がないことによる過量摂取だと私は思いますが、このようなことは好ましいことなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  30. 新田進治

    新田政府委員 先ほども御指摘がございましたように、一般用の医薬品というものは、やはりセルフメディケーションと申しましょうか、患者自身が自分の健康を守るために予防的にそれを飲まれる場合が多いわけでございます。こういう観点から考えますと、御指摘のように高用量のビタミンEを無制限に服用するということにおいては、非常にそういう副作用の発生の可能性があろうか、かように考えます。
  31. 竹中浩治

    竹中政府委員 お話がございましたように、ビタミンEを非常に多量に摂取するということでございますと、健康被害を生ずるおそれがございますので、もしそういうことが明らかになりました場合には食品衛生上の規制をしていきたいと思っております。  なお、いわゆる健康食品を含めまして化学的に合成されたもの、あるいは微生物を用いまして従来存在しなかった方法で食品を製造するというようなことが最近出てまいっておるわけでございますが、そういった全く新しい食品、いわゆる健康食品も含めましてその安全性が明らかでないと思われるようなものにつきましては、その安全性の評価あるいは規格基準の設定などのために、現在、新開発食品安全性評価研究会というものを設けて、そこで検討することにいたしておりますので、いわゆる健康食品の一部につきましてはこの研究会の場でいろいろ検討してもらいたいと思っております。
  32. 長野祐也

    長野委員 後段の答弁は納得できるのですが、前段の答弁でどうも率直に言って私、納得がいかないのは、学問的にビタミンEを高濃度に含有する食品を大量に摂取すれば問題があるということなのに、先ほど私が安全性懇談会の医薬品の使用上の注意を読みましたが、そういう注意が具体的にあるにもかかわらず、もし健康被害を生ずるおそれが明らかになった場合は規制をしてまいりたいというのは、どうも私、よくわからないのですね。もっと実態を把握する態勢をつくっていただいて、問題が起きてからあわてて後追いするような行政にならないように注意を喚起しておきたいと思います。  そこで薬務局に伺いますが、先ほど四十六年の薬務局長通知を見直すということを言われたのですが、それは、医薬品に決められているビタミンEの含有量よりも健康食品は下回るようにするということも含めてというふうに、一つは理解をしてよろしいか。  もう一つは、非常にこういう問題が起きてくるのは、健康食品に医薬品と同じような錠剤とかカプセルとかというような、一般消費者から見れば薬と間違われるようなものをつくっていることに、一番の問題点があると私は思うのです。健康食品においては、錠剤やカプセルや顆粒等の医薬品類似の形態の加工品を禁じるべきだと私は思うのです。  その二点について伺います。
  33. 新田進治

    新田政府委員 まず最初の御指摘の点でございますが、医薬品よりも高含量のものにつきましては、やはり御指摘のようないろいろ健康被害の問題もあろうかと考えておりますので、その点も含めまして四十六年の薬務局長通知の総合的な見直しを行いたいと思います。  それから、健康食品が今日こういうふうに、一般消費者が混同と申しましょうか薬と見間違うというようなことも、一つは大きなこういう健康食品の普及につながったわけでございますが、特に錠剤とかカプセルのようなこういう医薬品的な形態のものにつきましては、やはりどうしても一般消費者に医薬品と誤認されるような可能性がないとは言えないわけでございます。  しかしながら、一方で、食品の保存等の必要がございまして、このような形態をとる場合も最近は非常に多くなってまいりました。また一方、食品である旨が明示されまして、効能効果等の表示がない場合など、直ちに医薬品と判断するということは困難な場合もございます。  したがいまして、医薬品に該当するかどうかという判定につきましては、成分とか本質、形状、用法、用量等を総合的に判断いたしまして、実態に応じた適切な基準をつくってまいりたい、かように考えております。
  34. 長野祐也

    長野委員 私、ここに国民生活センターの「国民活動調査結果の要約」という資料を持ってきておりますが、その中で「健康食品販売方法」という問いに対して、「健康食品を購入した時、店員はどのような説明をしましたか。」というのを見ていきますと、店員が病気によいと言ったのが三〇%ありますね。それから、販売員が訪問販売のときにどのような説明をしたのかということについて聞くと、五〇%が病気によいという形で説明をして売っているわけですね。  ここに「セールスマエニアル対話法アラカルト」「セールスをいかに成功させるか?」という販売員のテキストがあるのですが、これを見ますと、「うちは健康食品はいりませんと言われた場合」はこんなふうに答えろと書いてあるのですね。「いま流行の健康食品と違って、この何々は……と、ビタミンEの効用を端的に説明し、相手の出方を見ましょう。」、それから「副作用が心配だねと言われた場合」は、「何々はコールドプレス方式ですから、副作用はありません。」と答えなさい。「健康食品は値段が高いねと言われた場合」は、「ビタミンEの効用は心臓病の治療だけでなく、糖尿病・不妊病・脳卒中・動脈硬化・高血圧・老化病の抑制作用など、いろいろな効果がありますので、決して高くはないと思いますがと、効用論で資料を示しながらホコ先をかわします。」と書いてあるのですね。  こういうのを見ますと、どうもいまの審議官の御答弁は、最初の方は医薬品、錠剤とかカプセルのような形態のものは医薬品と誤認する可能性がないとは言えないということで、それはそのとおりだと思うのです。しかし、後半の答弁になりますと、私がいま具体的に指摘したように、販売のこのやり方でいきますと、効能効果を表示しなくても、実質的には口頭で効能効果をPRして売り込んでいるわけですから、要は一般消費者の薬と思うような形になっているものを規制しない限り、こういう巧妙な販売のやり方に完全に裏をかかれてしまうのではないかと私は思うのです。  いま御答弁にありました、総合的にいろいろ成分、形状を判断してと言うのですが、その総合判断が甘過ぎるのではないか、この点についてはどうですか。
  35. 新田進治

    新田政府委員 先ほど医薬品の形態的な面だけから私はお答えを申し上げましたが、当然こういうふうな、医薬品まがいの食品についての販売時にこういう口頭でPRをしたりそういうことについても、やはり薬事監視員が厳重に監視することになっておりまして、それに違反があれば取り締まりの対象になろうかと思います。
  36. 長野祐也

    長野委員 もう一つ伺いたいのは、さっきの四十六年の薬務局長通知を見直すということを言われたわけですが、当時はビタミン類ということであって、この時点ではビタミンEがこんなブームになるだろうということは予想されなかったわけですが、たとえば例としてビタミンEというようにそういう成分品目も追加するのかどうか。また同時に、成分名だけでなくて、先ほどから指摘をしておるように、医薬品を超えるものが健康食品の中に入っているというのはおかしいわけで、そういうものは、規定以上というか、医薬品で決められている以上のものが含有されているものは医薬品とみなすというように、含有量の規制も私は入れるべきだと思うのですが、その点についてはどうですか。
  37. 新田進治

    新田政府委員 薬務局長通知は、御存じのようにもうすでに十年以上経過しておりまして、食生活とか、それから食品形態、国民の意識も大いにその時代とは変わってきているのではないかと思うわけでございます。そういう点から見ましても、通知の中身の見直しは総合的にやる必要があろうかと思いますし、先ほど御指摘のビタミンについても、当時といまの時点では使用量がずいぶん変化をしてきております。そういう点からも、専門家も交えまして抜本的な検討を行いたい、かように考えております。
  38. 長野祐也

    長野委員 そこで一つだけ御要望をしておきたいのは、前にこの見直しをするという答弁を園田大臣が言っておられる質疑のやりとりの議事録を見ましたが、見直しといってもいろいろな方向があるわけで、間違っても食品の方にいくサイドの見直しにはならないように、きょう私が指摘をしたような方向で、国民に被害が出ないように、きっちりした形での規制をしていただくことを強く要望をしておきたいと思います。  ここで最終的に、大臣のこの問題に取り組む姿勢を伺いたいのですが、まだお見えでないので、政務次官に医療法の改正の問題で一つだけお尋ねをしたいと思います。  政府は本国会に医療法の改正案を提出するとしておりますが、改正法案作成のための準備作業の進捗状態はどういうことなのか。また、今国会に必ず提出できるのかどうか。その点を政務次官からお答えをいただきたいと思います。
  39. 稲垣実男

    ○稲垣政府委員 長野先生から御指摘のとおり、ただいま、医療法改正につきましては、関係方面との調整を含めていわば改正内容をどういうふうにするか、そういうことで検討をしておる最中でございますが、今国会にはぜひその改正法案を提出したい、こういう考え方を持っております。
  40. 長野祐也

    長野委員 今国会に提出をするというお答えですので、目下作業中のことでありますから各論に踏み込んだ質問は遠慮をして、この医療法の改正案に対する要望を三点申し上げておきたいと思います。  一つは、都道府県における地域医療計画が医療法改正の一つの眼目であると了解をしておりますが、計画実施に移す段階では、当然法的規制が私は必要になってくると思います。この法的規制が民主的に実施をされるためには、計画の策定段階における民主的な合議がぜひ必要であって、この点については十分時間をかけて各方面の意見を取り入れ、賛同を得る手続が私は必要だと思いますので、十分御配慮をいただきたいと思います。  第二に、地域医療計画の中では中核的高次機能病院が重要でありますが、プライマリーケアを担当する私的診療所の役割りも私は無視できないと思います。そこで、医療費適正化対策の遂行が良心的な開業医の経営までも追い詰めることがないように留意をすることを強く望むものでありますが、医療法の中でも、このような私的医療機関の活力を十分に引き出し、地域医療における積極的な協力が得られるように、一人法人など法制上の整備を期待いたしたいと思います。  第三に、国及び都道府県の設置する医療審議会の委員に、やはり地域医療の一部を担っている薬剤師を任命されるように御配慮をいただきたい。  以上の点を、改正作業に当たって御要望を申し上げておきたいと思います。  そこで最後に、医療費の適正化対策について六点伺いますが、大臣に伺うのを後に回して、まず、どなたになるのですかお尋ねをしますが、この数年間、厚生省は全省を挙げて、医療費支出の適正化にきわめて積極的に取り組んでおられます。このことに関しては深甚の敬意を表したいと思います。しかしながら、この医療費支出の適正化の実施は、わが国経済の成長の鈍化による財政窮迫化と軌を一にしており、これは必ずしも偶然の一致とは言いがたいところから、医療費の適正化の財政対策としての側面のみが浮き彫りにされて、生命の尊重や医療に対する哲学が欠けているのではないかと私は思うのでありますが、このような批判に対してどのように受けとめておられますか。
  41. 小林功典

    小林政府委員 これからの医療費というものを考えます場合に、よく言われますけれども、どうしても人口の老齢化あるいは医学医術の進歩ということを反映いたしまして、医療費の増高傾向はこれからも続くというふうに見ざるを得ないと思います。ただ、医療費につきましての国民の負担というものをやはり適正な範囲にとどめなければならないという要請も片方にあるわけでありまして、そういうようなことを考えまして、私どもいま御指摘のように医療費適正化対策を進めているわけでありますが、この対策の主眼といいますか基本的な考え方は、あくまで医療費のむだを排除するとともに、医学医術の進歩に応じた真に必要な国民医療を確保する、こういった観点でこの対策を検討、推進しているところでございます。したがいまして、御指摘のように、単なる財政対策としてのみの対策ではないということははっきり申し上げたいと思います。
  42. 長野祐也

    長野委員 いまの御答弁ですと、もうちょっとストレートにお答えをいただきたいのですが、ともすると財政上の効果だけを期待している面が強いという印象はやはり否めないわけで、それはそれ自体として必要なことであって、私はそれを否定するものじゃないのです。  ただ、一方において、事が国民の生命を預かっている問題、医療という問題であるだけに、そちらの財政的な問題だけがクローズアップされて、生命の尊重とか厚生省が医療というものをどんなふうにとらえているのかという哲学的な部分が欠けているという批判そのものについては、どういうふうにお受けとめになりますか。
  43. 小林功典

    小林政府委員 ただいまもお答え申しましたように、確かにおっしゃるように、生命の尊厳あるいは医療に対する哲学といったものを基調にしまして本当に必要な医療は確保していく、そのための対策を講じたい、こういう考え方でございます。
  44. 長野祐也

    長野委員 私は、そういう批判についても十分謙虚に耳を傾けていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  それから、医療費の適正化と言う限り、現在の医療費支出状況が不適切であるという認識を厚生省は持っておられるはずであります。そういうような見解が正しいものだとすれば、医療の超過供給と超過需要がつくり出された原因がどこにあるというふうに考えておられるか、お答えをいただきたい。
  45. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  医療費のうちのどこが不適正な部分か、またその原因はどういうことか、こういうことだと思いますが、私どもは、不適正な医療費支出の第一といたしましては、不正というものを考えております。このティピカルな例は不正請求でございまして、その原因と申しますのはやはり倫理の問題であろうと思っております。  それから第二番目は、やはり過剰部分があると思うわけでありますが、たとえばお医者さんのはしごをするとかあるいは病院がサロン化しておるとか、そういうような現象が指摘されておりますし、また厚生白書でも申し上げておるわけでありますが、受診回数だとかあるいは薬剤の使用量だとかあるいは検査の量だとかあるいは入院の場合の在院日数、こういうようなものが多いことが通常指摘されておるところでありまして、これらの原因といたしましては、やはり診療報酬体系の問題あるいは薬価基準の問題あるいは一部負担の問題、それから医療の供給量と申しますか供給体制というようなところに一つ原因があるのではないか、こういうように思うわけであります。  それから第三番目に、非効率部門というのがあると思うのでありますが、これはやはり病院と診療所のネットワークがうまくいってない、こういうような点は医療法の改正で今後対処すべき問題であろう、こう思っておるわけでございます。  また、予防あるいは生活管理というようなものが余り重視をされないで、治療面にウエートが非常にかかっておる、こういうようなことも一つ非効率な部分ではないか、こういうように考えておる次第でございます。
  46. 長野祐也

    長野委員 そこで医務局長に、医療供給の現状についてどういうふうに認識をされ、またどういうふうに対応されていかれるおつもりか、伺いたいと思います。
  47. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 わが国の医療供給の体制につきましては、トータルで見ますと大体欧米先進諸国の水準に達しているというふうに考えられるわけでございます。施設につきましても、マンパワーにつきましてもそういうふうに考えられるわけでございます。しかしながら、地域の問題あるいは診療機能等の問題その他、部分的な問題につきましては、過剰の部分もあれば不足の部分もあるというふうに、実態に即しますと必ずしも十分国民の皆様方の期待にこたえられていない部分もある、こういうふうに考えるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、そういった医療資源というものをできるだけ効率的に全国民の皆様に普遍的に均てんさせていただくように、あるいは医学の進歩、医療の高度化等に対応できるようにやっていかなければならない。また予防や健康づくり、リハビリテーションといった部分につきましても十分な力を入れなければいけない。こういうふうなことで全体の地域医療の計画的な整備を図るということも考えまして、現在、先ほど政務次官から申し上げましたように、医療法改正案の中にできるだけそういった趣旨を盛り込んだものにいたしたいというような考えで検討をいたしているところでございます。
  48. 長野祐也

    長野委員 医療費の国民の健康づくりに果たしてきた役割りをどういうふうに評価をされているか、また医療費そのものをどのように理解をし、位置づけておられるか、伺いたいと思います。
  49. 吉村仁

    ○吉村政府委員 わが国の医療費が、医学医術の進歩あるいは医療施設の整備、医療保険制度の普及、それからその内容の充実に伴いまして、国民の医療を受ける機会も増加しております。  そこで、そういう医療費の支出がどういう役割りを果たしておるか、こういうことでございますが、非常に顕著な役割りを果たしておるわけでありまして、たとえば平均寿命の大幅な伸び、新生児あるいは乳児死亡率の著しい低下、医療の受けやすさの増加、それから医療供給体制の方もかなりの伸びを示しておるわけでありまして、医療費の伸びあるいはわが国の医療の普及が、国民の健康の維持増進、向上に対しまして相当な役割りを果たしたものと評価をしている次第であります。
  50. 長野祐也

    長野委員 ただいま保険局長から、医療費は相当な役割りを果たしているという御指摘でありましたが、私は、医療費というものをぜひ消費という形でとらえる見方をやめて、いま御指摘のように国民の健康を守るための必要経費であるという考え方を確立していただいて、そして、医療費が伸びたのは医師のみの責任であるというような警察行政的な医療費削減方策を行うことではなくて、医療を育てるという姿勢が何よりも大事であるということを強調して、今後の厚生省の医療費適正化対策を見守っていきたいと思います。  そこで、大臣がお見えになりましたので、まず医療費の適正化の問題に関連をしまして、この適正化対策を進めるためには国民各層、医療の担当者の理解を求めるための努力が必要だと私は思うのですが、そのためには、先ほどから御指摘を申し上げているように、財政上からの単なる抑制ではなくて、あるべき国民医療の理想像というものを国民や医師に示して、だから医療関係者もこういう協力をしてほしいという説得が必要だと思うのですが、その辺の大臣のビジョンをまずお示しいただきたいと思います。
  51. 林義郎

    ○林国務大臣 長野議員の御質問にお答えを申し上げます。  医療についてのビジョンを、こういうふうなお話でございますが、人口が非常に高齢化を進めております。また、医学医術というものが非常に進歩をしてきておることも事実であります。一方、経済は低成長というものを余儀なくされておる。こういう場合におきまして、どういうふうな国民医療をやっていくかということを本当に考えていかなければならないという御提言は全くそのとおりだ、こう思います。  そこで、あるべき国民医療の理想像につきまして、私一人が私の考え方を申し上げるのもどうかと思いますし、医療関係者国民一人一人の医療に寄せる御期待を十分に酌み取りながら、国民的な合意が形成されていくということが一番必要なことではないだろうか、私はこう考えております。  長野議員もその方は大変お詳しい方でございますし、昨今も何か著書を物されるというふうなお話も聞いておりますから、そういったいろいろな形での御提言を拝聴しながら、いまもお話しのありましたようなビジョンづくりに努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  52. 長野祐也

    長野委員 大臣の大変謙虚な御答弁で好感を持って伺ったのですが、国民的な合意も確かに大事ですが、抑制をお願いしていく以上は、ある程度国民に示すべきものもまた必要だという点はぜひ御理解をいただいて、なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、適正化対策というものをずっと見ていきますと、いろいろなものが挙げられているのですが、全体としての脈絡がない、そして、個別の事項は全部財政対策の一環であって、言ってみると対症療法でしかないのではないだろうかという疑問をいま私は持っているのです。そういう中で理想像を示してもらいたいというのは、こういう個別の財政対策としての適正化対策をずっと全体として総合したならば、どのようなトータルとしての医療が国民に保障されるのかという危惧を持つから、こういうことを伺ったわけでありまして、ぜひそういうような方向づけについて勉強をさらに進めていただきたいと思います。  医療費適正化の最後として、医療担当者の協力のもとに本当の——財政効果だけを期待する、早急な成果を上げようとすると、どうしても保険行政、医務行政が強権的にならざるを得ないので、そういうことがないように、適正化の実を上げるためにも、医療関係者と十分時間をかけて話し合いを重ねていかれるべきだと思いますが、大臣の御所信を承りたいと思います。
  53. 林義郎

    ○林国務大臣 私は、あるべき国民医療ということになりましたならば、厚生省は医療行政を担当しておりますが、実際に医療を担当していただく方は医師でありますし、また病院の関係者でもあると思います。また、それにつながるところの製薬会社の方、また薬を売られる方、薬剤師その他、いろいろなたくさんの方々がこれに関与しておられると思いますし、かつて言われましたような厚生省対医師会とかがどうだというような話でなくて、先ほど申しましたような広い国民的なコンセンサスを得るためには、常に対話と協調が必要であろう、そういった気持ちで取り組んでいるところでございまして、関係者と率直に意見の交換をし、相互理解と協力を得ながら対策を進めていくことが一番必要なことではないかと思っております。
  54. 長野祐也

    長野委員 いま御答弁のように、ぜひ対話と協調で適正化の実を上げるようにがんばっていただきたいと思います。  時間がありませんので最後に、先ほど残しておりました健康食品の問題でありますが、お聞きになってないのでいきなり結論的な話で申しわけないのですが、まず健康食品行政に対して、大臣の所管事項の中で医薬品は学問的な規制をびっしりやっているわけですが、一方の健康食品は全く野放しで、健康食品によって健康を脅かされているという実態について先ほど指摘をしたわけで、その大臣の所管の両局が整合性のある行政をやってもらわなければ被害が今後ふえていくだろうと思いますので、この点を含めて健康食品に対する大臣所見を伺いたいことが第一点。  第二点は、もう時間がありませんので一緒にやりますが、食品行政においてすべての健康食品調査、見直し、総点検を行って、副作用の調査などをやるべきではないかと考えておりますが、大臣の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  55. 林義郎

    ○林国務大臣 恐らく、前に御質問があったのだとこう思いますが、医薬品というのははっきりした基準でもって医薬としての取り扱いをされておる、健康食品というのは、健康健康と言いますが、どこが健康かというのはよくわからない、こういう話でございますが、これは厚生省健康食品という名をつけているわけでも何でもないわけでございまして、そういった食品が売られるときには、健康食品であるとか自然食品であるとか、いろいろな名前をつけてお売りになるわけであります。だから、それをいかぬぞと言って——薬と同じだということになればこれは当然薬事法にひっかかりますけれども、健康になるからこれをお上がりなさいというものについて、私も実は、健康になるからと言われていろいろもらうから、せっかくいただいたものを捨てるわけにもいかぬからいただく、こういうことでやっておりますが、これについて特別の対策を講ずるということはいかがなものだろうか、こういうふうな感じを持っております。  ただ、健康食品ということで売られているような食品がやはり衛生上の危害を及ぼすというようなことがないように、関係法令、いろいろ法令がございますから、単に薬事法ということではなくて、食品衛生法であるとかその他の法律関係を通じまして、そういった法令の適切な運用によってこれは対処すべきものではないか、こういうふうに考えております。
  56. 長野祐也

    長野委員 もう時間が来ましたので、質問ではなくて最後に要望したいのは、健康食品の定義とか範囲が明確でないということなんですが、それはそのとおりだと思うのです。定義、範囲が明確でないのに健康食品という名前を使わせてしまいますと、健康にいい食品だというふうに国民の方は誤認をするわけであって、私はやはり健康食品という名称を、そういう定義、範囲が明確になる間は使わせない方がいいのではないか。それから、ともかく大臣の所管の環境衛生局と薬務局の間でこの問題が非常に矛盾した行政が行われているということは確かに事実でありますので、一つの宿題として、大臣のリーダーシップでこの問題を、国民に健康の被害が及ばないように適切な対処をお願いをして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  57. 稲村利幸

    稲村委員長 川本敏美君。
  58. 川本敏美

    ○川本委員 それでは厚生大臣に、まず一番最初に、いま予算委員会で審議中の五十八年度予算について若干お聞きしたいと思うわけであります。  五十八年度の社会保障関係の予算は、御承知のように九兆一千三百九十八億円、前年度に比べますと大体〇・六%くらいの増でありまして、全予算が平均伸び率一・四%というのから見ますと、社会保障関係の予算の伸び率というのはこれは遠く及ばない、非常に低いと思うわけであります。この社会保障関係の予算の中でも、いわゆる労働省関係のものを引きますと、厚生省所管の予算だけで見ますと九兆六百十五億で、伸び率は〇・五%程度だと思うのです。この中には老齢福祉年金の給付費のうちの三千百八十億ですね、これが国民年金特別会計から借り入れるわけですから、これを含めるとすると、厚生省関係予算は前年度に比べて〇・四%の伸び率にしかならない。さらにその上、逆に、五十七年の国保関係の予算が十一カ月分、五十八年度はその復元分の千八百億を計上せざるを得ないで計上しておるわけですから、これを差し引いて計算しますと伸び率というのはほとんどないのじゃないかと私は思う。一方で防衛費が六・五%ふえておる。これと比較すると、厚生省関係の社会保障関係予算というものは、全くいま国民が思っておるように福祉切り捨て、軍備拡大の予算だと言われるゆえんはここにあると私は思うわけです。これについて厚生大臣の実感としてあなたはどう思っておるのか、まず所感をお聞きしたいと思うのです。責任を感じておるかどうか。
  59. 林義郎

    ○林国務大臣 川本先生の御質問にお答えを申し上げます。  予算の数字は大体いまのお話しのようなことだと考えておりますが、大変厳しい財政事情の中でいろいろと私の方も悪戦苦闘したことは事実でございますが、でき上がりといたしましては、先ほど先生から御指摘のありましたように国民年金、老齢福祉年金の平準化その他のものがありまして予算を編成いたしましたり、また御指摘のありましたような十一カ月分の千八百億というようなこともありましてやったわけでございますが、トータルの数字としては、私は、伸び率としてはこの厳しい財政事情の中ではまあこんなものかな、こう考えておるわけであります。  と申しますのは、いろいろな施策をやっていかなければならない。在宅の施策であるとか、あるいは老人保健法の関係であるとか、ちょうどいま問題になっていますところの中国孤児の問題であるとか等々、いろんな必要な施策は中に織り込むことができたわけでございまして、物事というものは百点満点ということはないわけでございますが、まあ落第しないところのものは私はやっている、この厳しい財政事情のもとで福祉を本当に効率的にこれから考えていく上において必要なものは私は確保できた、こういうふうに考えているところでございます。
  60. 川本敏美

    ○川本委員 厚生大臣は厳しい財政事情のもとで必要な最低限のものは確保されたと申しますけれども、私どもから見ますとこれはもう全く福祉切り捨て以外の何物でもない。防衛庁の予算が六・五%もふえているのに厚生省の社会保障関係の予算がほんのわずかしかふえていない。パーセンテージにもならない。こんな程度じゃ国民が今後の福祉に対して大きな不安を持つのは私は当然だと思うわけです。これはひとつ、大臣も閣僚の一人ですから、今後社会保障拡充のために閣議等で格段の御努力、新たな決意を持ってがんばっていただかなければいかぬと思うのです。これで満足してもらったら困ると思うのですがね。その点もう一度決意のほどをお聞きしたいと思う。
  61. 林義郎

    ○林国務大臣 先ほどの答弁で申し足らなかったのだろうと思いますが、やはり社会保障というものの充実は私どもの責任でありますし、たくましい文化と福祉の国日本、こういうことを中曽根内閣としてもうたい文句にしているわけでございますから、福祉社会こそわれわれが目指すべきものである、そういった意味で社会保障その他の充実にはこれからも一生懸命努力をしてまいりたい。  ただ、先ほど申し上げましたのは、予算がどうだったとかというふうな話でございますからそういった中ではやってきたのだと申しましたが、言うならば単に予算だけの話ではない、福祉についてはいろいろな点のことを考えていかなければならないことも事実でありましょうから、そうした形で予算を効率的に使って、本当に国民の納得していただける、国民の安心していただけるところの福祉行政、福祉国家の実現に私は邁進をしてまいりたい、そういう決意であることを改めて申し上げておきたいと思います。
  62. 川本敏美

    ○川本委員 ちょっと私の期待しておる答弁と違いますので、もう一度念を押したいのですけれども、大臣、軍備拡大、いわゆる大砲かバターかと言われるのですが、軍備拡大に賛成ですか、社会保障の拡大に賛成ですか。あなたは二つのうちのどちらかをとれと言われたらどちらをとりますか。
  63. 林義郎

    ○林国務大臣 安全で安定した安心のいける社会というのをわれわれはつくっていかなければならない、こう思うわけでございます。ですから私は、やはり必要な防衛というものも必要であろうし、またそれとともに、安心のいける社会、お互いの相互扶助の精神、自立精神に基づいて生きがいを感じながらやっていく社会をつくるためには社会保障の充実こそは必要なことでございますから、そういったことも十分にやっていかなければならない、こういうふうに考えておるものでございます。
  64. 川本敏美

    ○川本委員 どうもはっきりしないのですが、こればかりやっておっても時間がたちますから前へ進みますが、社会保障関係予算の内訳を前年度と対比してみますと、生活保護費が三・八%の増、社会福祉が一一・五%の増、社会保険が三・四%の減ですね、保健衛生対策が〇・三%増、こういうことになっておるのですが、社会保険というのは金額では全体の中の六〇%ほどを占めるわけですから、だから社会保険費を削減するというのは今度の予算の中の大きな一つの柱だったと私は思う。社会保険費を削減して、それを生活保護とか社会福祉とか保健衛生に回したというような形になっておるわけですが、五十八年度におきましては、御承知のように公務員の給与に関する人事院勧告が凍結されるということになりました。そのあおりを食ったのかどうかわかりませんけれども、厚生年金あるいは国民年金、この両年金の物価スライドを今度の予算の中ではこれまた凍結をしてきておる。それだけじゃないわけですね。老齢福祉年金とか障害福祉年金とか児童扶養手当とか、あるいは原爆被爆者健康管理手当まで凍結をしておる。これを弱い者いじめと言わなくて何を弱い者いじめと言うのかと私は思う。こんなことは断じて許せないと思う。  そこで、大臣にもう一つお聞きしたいのですが、五十八年度のいわゆるこの間からの予算委員会の議論の中で、議長見解が出されました。一兆円規模の減税といいますか、一兆円とは言っていないけれども、景気浮揚に役立つような大幅な減税ということで、官房長官もきのうの予算委員会かで、七月ごろにはめどはつけますと答弁をなさっている。もし仮に所得減税が行われるということになれば、私は、国民年金や厚生年金も含めて、もちろんこれはもう福祉年金とか福祉年金に連動するいわゆる手当、こういうものは課税最低限以下の人ですから、そういう人に対する配慮といいますかそういう面から、当然所得税減税に見合う分を福祉年金の引き上げ、手当の引き上げという形で措置しなければ公平を欠くのじゃないかと思うのですが、それについて大臣、どのように考えていますか。
  65. 林義郎

    ○林国務大臣 御指摘の問題でございますけれども、御承知のとおり、私も承知しておりますが、議長見解が示されまして、相当程度の減税をする、こういうことになっております。お話が決まったばかりでございまして、所得税減税をどうするかというのが国会の中心議論であることも事実でございます。その幅、金額、どういった形でやるかというのはこれから詰めるわけでございますから、その詰め方に従いまして、どういうふうなことを考えなければならないかということをわれわれとしても考えていかなければならない問題だろうと思います。  ただ、一律にスライドとかなんとかということではなくて、国民年金、厚生年金にはそれぞれスライド条項がついていることは先生承知のとおりでございまして、この法律の規定は厳正に実施していくべきものだろう。法律の中には、消費者物価指数が五%以上上がった場合、五%以上下がった場合にはこれを修正をしなければならない、こういうふうなことが書いてございますから、そういった規定も参考にいたしながら私は施策を進めていくべきものだろう、こういうふうに考えているわけでございます。
  66. 川本敏美

    ○川本委員 福祉年金とかそれに連動する手当については、所得減税が行われれば、その金額とか規模とか時期等を見て考えなければならぬ課題の一つだといま大臣はお答えになりました。ところが、厚生年金と国民年金については、これは法律の規定に従って物価スライドの制度があるわけだから、厳密にそれによって運用すべきだという趣旨の御答弁だったと私は思うのですが、人事院勧告でも二年続きの凍結はしない、こう言っているわけですね。公務員の人事院勧告について二年続きの凍結はいたしませんという答弁。そうすると、仮に五十八年度に前年度の人事院勧告が凍結された分も含めて勧告をされる、そういうようなことがあった場合に、やはり国民年金や厚生年金も、——共済年金はいわば人勧との連動ですよね、賃金スライド制ですから、共済の退職者の年金は。ところが、国民年金は物価スライドですよね。若干違うと思うのです。だから人勧には余り関係ないと思うのですけれども、物価が五%を超えなくても、必要なときにはスライドをするというのが従来の取り扱いであったと思うわけです。だから、五十八年度についてここで大臣が、当初予算に組み込まれていないから断じてそれはやれないという意味ではなしに、もう少し弾力的なお答えだったのじゃないかと私はいま思うわけなんですが、その点、やはり諸情勢を勘案しながら、年金生活者というのは年金だけを頼りに生活をしておる国民もたくさんおるわけですから、そういう弱い者いじめを何とかしてなくしていく、財源さえ見つかれば何とかして実現をしていくという前向きのファイトが厚生大臣になかったら、国民は安心していけないと思うわけです。もちろん福祉年金とかそれに連動する手当については、これは大臣、所得減税が行われたら公正になるように、ひとつそれについては十分善処します、引き上げますということを答弁してもらわなければ国民は納得しませんよ。その辺大臣、もう一度ひとつ……。
  67. 林義郎

    ○林国務大臣 せっかくのお話でもございますが、減税の規模、やり方、いろいろなやり方があるだろうと思います。そうしたものをいろいろと考えて、どういうふうな形でやっていくかということはこれから考えていかなければならない問題だろうと思うのです。だから、いま軽々に、それと連動してバランスをとってという話ではなくて、どういうふうにした形でやるかというのは、所得税減税というものが議長裁定で出てきたということの重みを踏まえて私たちはこれを検討していかなければならない話ではないか。現在予算審議中でもございますし、私は、五十八年度予算はぜひ原案でやっていただきたい、こういうことでお願いする立場でございますし、所得税減税などというのが七月ごろにいろいろな案を出す、こうふうな話でありましたならば、そのときに一体どうするかということはいろいろな角度から検討していくべきものだろうと私は考えております。
  68. 川本敏美

    ○川本委員 私は、所得税を課税されておる、住民税を課税されておる人だけが恩典をこうむって、それ以下の方々が所得税減税の恩典にあずかれない、これじゃ公正じゃないと思いますので、福祉年金あるいはそれに連動する手当については、所得税減税とあわせて厚生大臣実施できるようにがんばっていただくように、要望しておきたいと思うわけです。  次に、いま中国から帰ってきて親捜しをしておられる中国残留孤児問題について、ちょっとお聞きをしたいと思うのです。  私は、きょうは朝からオリンピックセンターへ、中国孤児を激励しに社会党代表で行ってまいりました。考えてみますと、戦後今日まで三十八年という長い間、この子供をこのままで置いておいたら殺してしまう、死なしてしまう、何とかして生き長らえさせたいという親の願いで、中国の親切な人々に預けて帰ってこられた。それがまた、中国の親切な養父母の方々のおかげでりっぱに育って、今日親捜しに帰ってきておられて、新聞やテレビでお聞きしますと、厚生省も大変御苦労いただいておる。また、ボランテイアの方も大変御苦労いただいておりますが、すでに九人の方が父母にめぐり会えたというような実情でございまして、大変これは涙なしには聞けないようなことだと思うわけです。  私は、この問題が終わらなければ日本の戦後は終わらないと思うのですが、そういう意味において少し厚生省の考え方を聞きたいと思うのですが、中国残留孤児と言われる人の数は現在どのぐらいおりますか。
  69. 山本純男

    山本(純)政府委員 私どものところに身元の調査を依頼してこられました孤児の方が千四百名おられました。その中でなお身元の判明しない方が八百四十五人おられましたが、今回四十五人見えましたので、その中でいま現在九人、御指摘のとおりですが、あと若干名は身元がわかるのではないかと思っておりまして、恐らく八百二、三十名が身元不明としてまだ今後の課題に残るというふうに思います。
  70. 川本敏美

    ○川本委員 五十七年度の予算では当初、いま帰ってきておられる、オリンピックセンターに帰ってきておられる孤児の方みたいに、厚生省がお世話して親捜しに日本へ帰ってこられるあれに、たしか予算上は百二十名ぐらい組んであったはずだと思います。それが現在四十五人になっておるわけですから、かなりおくれたということは認めますね。
  71. 山本純男

    山本(純)政府委員 予定がおくれておるのは御指摘のとおりでございまして、これにつきましては、この問題の取り進め方につきまして、従来は非常に当事者ベースと申しますか、孤児の方々と肉親の方々のやりとりにややお任せをする傾向が強かった。また私どもの立場も、どちらかと申しますと日本の国内に居住しておられる親族の方々の立場にちょっと偏っておったという点がございまして、この点中国政府から強い指摘を受けまして、この問題は、孤児の方はもとより中心でございますが、日本に住んでおられる肉親の方々と同様に、中国現地に住んでおられる養父母その他の中国サイドの親族の方々も、同じように関心を持って非常に重視しておられる問題である、その点についての私どもの対応にいささか足りない点があったというところが指摘をされまして、これはまことにごもっともな御指摘でございますので、昨年の春からこの一月にかけまして、時間をかけまして両国政府の間で十分に協議をいたしまして、その結果、将来に向かいましては、そういう足らざる点を補いまして円滑にこれを進める方向で、基本的な合意ができた次第でございます。この合意ができましたのが一月の下旬になりましたので、準備の時間その他が不足いたしたために、予定の百二十人の訪日調査実施困難になりまして、四十五名ということにとどめざるを得なかったわけでございます。
  72. 川本敏美

    ○川本委員 ところが、先ほどお聞きすると、まだ未調査の方が八百人以上おられる。こんな状態でいけば、仮に百二十人やってもまだ六年も七年もかかる計算になります。しかし、孤児孤児と言っているけれども、当時は孤児だったけれども、もう現在は全部四十歳過ぎておるんですから、私はこの孤児という言葉をいつまでも使うということについてはやっぱり抵抗を感じておるのです。何かもっといい表現の方法がないのだろうかと思っておるのですがね。現実に向こうの養父母の方々も年老いていると同時に、国内で捜すべきお父さん、お母さんも年々年老いていって、中には亡くなってしまわれる。ようやく身元はわかったけれども親は亡くなっておられるという、かわいそうな事態が起こる可能性が十分あると私は思う。だから一日も早くこれを、希望されておる八百何十人全員についてやはり調査だけは終えられるような措置をとるのが、これは人道的な立場から考えても当然だと思う。ところが、いまの予算規模でいくとこれは六年も七年もかかるわけですが、私は少なくとも向こう三年ぐらいでこれを終わってしまう、全員の調査をして親捜しができるように措置するという、やはり厚生省としての毅然たる基本的な態度が必要だと思うのですがね。大臣、その点どうでしょうか。
  73. 林義郎

    ○林国務大臣 川本議員にはわざわざセンターを御訪問いただいたそうでございまして、心からお礼を申し上げます。  私も今週の月曜日に参りまして、お話しを申し上げたんです。涙流して聞いておられるわけですね。私も本当に胸の詰まるような思いがいたしました。三十七年、八年という長い間おられて、肉親を求めているという気持ちは察するに余りあるものがあると思いますし、いままでいろんなことでできなかったということにつきまして、私たちも一層の努力を傾けなければならない、こういう決心を新たにしたところでございます。  五十八年度は百八十人の孤児をということで予算上はやっておりますが、中国側との話し合いもございますし、中国政府の協力を得まして、これの増員というものはやっていって、できるだけ御趣旨にありましたように早期にこの人たち調査が完了いたしますように、われわれとしても努力をする決心でございます。
  74. 川本敏美

    ○川本委員 五十八年度百八十人といまおっしゃいましたが、仮に百八十人にいったって、これはやっぱり五年ぐらいかかりますよね。これは三年ぐらいで終わるということを大臣、ひとつがんばってもらわなければ、これは人道問題ですよ。ひとつ大臣、三年ぐらいで全部終われるようにがんばりますということを一言言ってほしいと思うのです。
  75. 山本純男

    山本(純)政府委員 中国政府との間でも意見は原則一致いたしておりまして、やはり中国政府のサイドも、中国におられる養父母その他の方々もかなりな高齢であるので、やはり方向としては急ぐべきであるという御意見は共通しておるのです。ただ、やはり国境を隔てておりましていろいろ手続その他もございますので、これを本当に三年で済ませられるかどうかわからぬのですが、まあひとつ五年かかるというのを少しでも前に倒してまいりまして促進するということについては、全力で努力をいたします。
  76. 川本敏美

    ○川本委員 中国残留孤児センターといいましたか、私、孤児というのは余り好きじゃないのですが、この前も予算化されたように聞いておる。これは一昨年ですか、私がこの社労委員会で、帰国した中国の孤児やその他の帰国者に対して、日本語を教育したり職業訓練をやったりするような施設を政府がつくって、一定期間してから故郷に帰すということでなければいけないんじゃないかということを質問して、園田厚生大臣のときだったと思いますが、やりますという御答弁をいただいた。それが今日予算化されてきたと私は思っておるんですが、これは大体どのくらいの人たちをどのような形で職業訓練をしたり日本語の教育をしたりしようとするのですか、その孤児センターというのは。
  77. 山本純男

    山本(純)政府委員 現在建設費予算三億五千万の要求を予算案に盛ってございまして、また運営費につきましては、十月からの半年分八千三百万円、平年度にいたしますと一億三千万円ほどになるかと思いますが、そういう運営経費を予算にお願いしている段階でございまして、内容は、三十三世帯を年間四カ月ずつ三回回転するという予定で、延べ百世帯の方を受け入れたいというふうに考えております。そのために、二千平方メートルほどの規模の建物を建てるということで作業を進めております。  事業の内容といたしましては、一番重要なものは申すまでもなく基礎的な日本語をある程度習得していただくことでございますが、それと同時に、日本の社会と中国とではいろいろな生活の習慣が大きく異なっておりますので、そういう生活についてのトレーニングのようなこともぜひ覚えていただく。そのほか、できることならば職業の訓練その他のこともできるだけのことをやってまいりたいというふうに考えております。
  78. 川本敏美

    ○川本委員 三十三世帯を四カ月で三回、大体百世帯。その間の生活費の問題は全部国が負担するわけですか。
  79. 山本純男

    山本(純)政府委員 さようでございます。
  80. 川本敏美

    ○川本委員 それは生活保護以下ということはないと思いますが、その点については、やはり健康で文化的な生活をして、なおかつ日本に住むのに適応するだけのいろいろな基本的なものを身につけなければいかぬ、そういうことの経費も含めて十分なものを措置していただきたいと思うわけです。  それから、この前外交ルートでいろいろ御苦労いただいた中で、中国に残される養父母とか配偶者に対する扶養費の問題がいろいろ問題になったようであります。これも新聞の報道でわれわれは理解をしておるわけですが、大体国が二分の一を負担して、残りの二分の一は中国残留孤児基金といいますかそういうものを民間の寄附金で募って、それによって運営をして養父母に対する仕送りをしていこう、こういうことらしいのですけれども、これについては、中国との話し合いに基づいて早期に国内の体制は整備できる見通しですか。
  81. 山本純男

    山本(純)政府委員 扶養費の問題につきましては、ただいま先生が仰せになりましたとおりで、原則的合意ができております。しかしながら、実際に扶養費を算定いたしまして当事者に支払うという段階までには、まだ、たとえば都会地の場合と農村の場合でどういうふうに考えるかとか、あるいは扶養親族に対しまして扶養義務を負う人間が、当事者である孤児以外にも実子が別途おられるとか、それぞれ事情が異なる方々が大ぜいおられるわけですから、そういうものを具体的にどういうふうに取り進めるかは、これから外交ルートを通じまして両国政府の間で細部を詰めてまいるということにいたしておりますが、これは私ども、春早々にもこの作業に取りかかりまして、早い時期に詰めたいと考えております。これは五十八年度以降永住帰国される方に適用することにいたしておりますので、四月以降帰ってみえる方の場合にはこれが間に合うように準備を進めます。その際、支払いは恐らく年度末に行うことになりますので、時間的ゆとりは十分ございますので、私どもは対応できると思っております。
  82. 川本敏美

    ○川本委員 いまお聞きして、五十八年度以降帰国された方だけに適用される。いま帰ってくるのは五十八年度になると思うのですが、五十七年度以前に里帰りじゃなしに日本へ帰国された方には、さかのぼって適用されるということはないのですか。それでなければ私はまた問題として残るのじゃないかと思います。
  83. 山本純男

    山本(純)政府委員 私どもが現在承知しておりますところでは、これまで帰国された方々の中には、そういう扶養を要する親族を残してみえた方は比較的少ないわけでございますが、若干おられることは承知をしております。これは私ども、これから新しい話し合いに基づいて予算を計上いたして対応いたします関係から、国の施策としてこれをさかのぼって適用することは大変むずかしゅうございます。しかしながら、今後帰ってみえる方につきましても、残る半額をぜひ民間の御好意を期待いたしまして御本人に負担がいかないようにいたしたいというふうに考えておりますので、そういう事業の中で、すでに帰ってこられた方は、今後中国における扶養親族との間で話し合いができまして扶養費を負担するということになりました場合には、私どもとしてはできるだけの御援助をいたしまして、先生指摘のように、帰ってきた日が前後することで不公平が起こるということは極力避けるように努力をしてまいりたいと思っております。
  84. 川本敏美

    ○川本委員 この問題の最後に一つ。けさテレビを見ていましたら、前橋市が市の単独予算で、市の単独経費でもって予算を組んで、日本へ帰国された中国の人たちを、今度また中国の養父母のところへ里帰りをする旅費を援助しよう、こういう予算措置が五十八年度にとられておるようです。私は、これから全国的にこういう市町村がふえてくるのじゃないかと思うのです。また、中国へ残してきた養父母を一遍日本へ連れてきて、恩返しというか呼び寄せて一遍日本を案内したいということもあると思うわけです。私は、四十年近く育てていただいた人たちに、ただ扶養費を払うというだけではなしに、一度は自分の育てた子供がいまどうしておるかを見てもらえるというような、養父母を日本に招待するようなことはやはり政府としても考えるべきじゃないか、これが人間の道じゃないかと思うわけです。その点について厚生大臣、ぜひこの問題が実現できるように御努力いただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  85. 林義郎

    ○林国務大臣 御趣旨はよく理解をするところでありますが、先ほど来お話がありましたように、まだ日本に帰国をしてない、しかし自分はどうも日本人だというような方もまだおられるわけでもございまして、私はまず先にやることは、中国におる日本人の方々、言葉はなかなか問題でしょうけれども、孤児という方々に帰っていただくことが先決問題ではないかと考えております。  現在、民間の各方面に私もお願いをしましていろいろな御寄附をいただいておるところでありますし、きめ細かな対策をやらなければならないということも考えておりますので、御提案の趣旨は今後民間資金との関連で研究をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  86. 川本敏美

    ○川本委員 それでは、残留孤児の問題は一応これで終わりまして、あとは老人保健法の問題について若干お聞きしたいと思うわけです。  きょうは時間を詰められてきましたので、予定しておった質問だけ全部終わらないので、残る部分についてはもう一度大臣に質問したい、続きをもう一回やらしてもらいたいと思っております。  二月一日からいよいよ老人保健法が実施をされました。国民が期待しておった老人保健法という姿とは大分に変わった形で、国民もいま戸惑っておると私は思うわけです。  そこで、まず六十九歳以下のいわゆる上乗せ医療といいますか、上乗せ医療費無料、上乗せ福祉とか言われておるのですが、自治体が単独事業で老人医療費無料制度をいままでやってきた、これはいま全国的にどうなっておりますか。現状を把握されていますか。
  87. 吉原健二

    ○吉原政府委員 老人保健法ができまして、地方の単独事業につきましては、この老人保健法の考え方を十分御理解の上で適切な見直しをお願いしてきたわけでございますけれども、その地方自治体の単独事業の状況でございますが、都道府県におきましては、従来から約二十五の都道府県におきまして年齢を引き下げて無料化するというような事業を行ってきたわけでございますが、すべての県におきまして原則的に、年齢は引き下げたままではございますけれども、老人保健法と同様の一部負担を導入をするということにしております。ただ、そういった都道府県におきましても、障害者でありますとかあるいは寝たきり老人につきましては、従来と同様無料のままにしておくということのようでございます。  それから市町村でございますが、三千幾つかの市町村の状況を正確に把握するということがなかなかむずかしいわけでございますけれども、現時点で私どもが掌握をしておりますのは、千葉県の習志野市でありますとかあるいは山梨県の甲府市、北海道の赤平市、そういったところを初めとする二十六の市町村で、七十歳以上の者についても従来どおり無料でやっていくというような方針を決めているというふうに掌握をいたしております。
  88. 川本敏美

    ○川本委員 厚生省は、昨年のこの老人保健法制定以来今日まで、自治体の単独事業を老人保健法に右へならえしなさいと、こういう大変厳しい行政指導をしてこられたと思うわけです。  これは、昨年の七月八日に参議院で連合審査があったときに、わが党の佐藤三吾議員が、この問題について厚生大臣、自治大臣に質問をしたときに、厚生大臣は、そういう自治体の地方自治というものを尊重するためには、国に右へならえしなさい、老人保健法に右へならえしなさいというような行政指導はいたしませんと、こう言っておったにもかかわらず、私の手元に、昭和五十七年十月八日付で、厚生省公衆衛生局老人保健部長都道府県知事や市長あてに通達文書を出しておる。その文書の中に「また、本法の医療の対象者に対する一部負担金を老人医療に関するいわゆる単独事業として地方公共団体が肩代わりすることは、本法の趣旨に反し厳に慎しまれたいこと。」こういう通達を出しておるわけです。本法の趣旨に反するというのは一体どういうことですか。地方自治体が単独上乗せをやることが老人保健法の趣旨に反するのですか。その点について、参議院における大臣答弁と全く違うことを平気でやっておる。私は、こんな状態なら国会でまじめに質問できないと思うわけですよ。幾ら国会で答弁しておいても、すぐに答弁したことと全く違うことを平気でやるような厚生省というものを、私たちは信用できないと思うのです。だから、きょうの問題については明確な答弁をいただきたいと思います。
  89. 林義郎

    ○林国務大臣 厚生省が勝手なことをやっているじゃないかと、こういうおしかりのようでございますが、老人保健法の法律にも、第四条、地方公共団体の責務として「地方公共団体は、この法律の趣旨を尊重し、住民の老後における健康の保持を図るため、保健事業が健全かつ円滑に実施されるよう適切な施策を実施しなければならない。」と、こう書いてございます。そういったことを書いてございますし、厚生省といたしましては、法案成立後も、この趣旨について地方公共団体に十分御理解を求め、国の施策との整合性を考慮して、適切な対応をお願いをするという考え方に立って、地方公共団体に要請をしておるところでございまして、これは森下前厚生大臣答弁した考え方と変わってはいないと私は思います。干渉とか介入とかということではないと私は考えておりますし、せっかく世界にユニークな老人保健法をやったわけですから、これは国会だけの場ではない、全国民の方々にこの趣旨は理解していただきたい、こういうことでございます。  もう一つ申し上げますならば、私の方としては、地方の自治権をこれによって侵害するとかなんとかいうことは考えてないことは申すまでもないところでございます。
  90. 川本敏美

    ○川本委員 ことしの一月二十七日に、厚生省の講堂で全国衛生部局長会議を開催しておりますね。厚生大臣出席しております。そのときにも、吉原部長がやはりあいさつの中で言っておるじゃないですか。市町村では新制度になっても七十歳以上の医療を無料で続けるところがあるようである、これは法律の趣旨にも反するし、他の市町村に対しても迷惑をかけることになるので、ぜひ指導していただくようお願いいたしたい、部長、あなたはこう言っていますよ。これは先ほど言った参議院の答弁の趣旨とは全然違うと私は思う。これは地方自治を侵すものだと私は思うわけです。今後このようなことを厚生省は続けるとしたならば、全く地方自治に対する介入だと私は思うのですが、その点について大臣も、今後はいたしませんということをひとつ明確に言ってもらわなければ困りますよ。
  91. 林義郎

    ○林国務大臣 私は弁護するわけではありませんが、いまのお話、法律の趣旨からすれば、厚生省としては当然にそういうことを言わなければならない。国会で決められた法律でありますから、それで地方公共団体もやってくれとこう書いているのですから、それは厚生省の立場としては当然言わざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えているところでございます。
  92. 川本敏美

    ○川本委員 大臣は、国会で決まった法律だからそれを守れと言うのはあたりまえだ、こう言うのですが、国会で審議をしたときには、地方自治体がやっておる単独事業に対しては、厚生省は、老人保健法どおりにやれということは強制しません、指導しませんと約束をしておきながら、やっておるというところに問題があると私は言っておるわけです。だから、その点については厳に慎んでもらいたい、このことを重ねて申し上げておきたいと思う。  そこで、もう時間が余りありませんが、簡単にちょっと一つだけ申し上げたいと思うのです。  老人保健法の診療報酬が定められました。適切な老人医療を確保しつつ老人医療費の効率化を図り、人口の高齢化に伴う老人医療費の増加を最小限に抑制する、これがいわゆる老人保健法の診療報酬を定める一つのねらいであったと思うのですが、それが中医協の答申に基づいて決定されました。  ところが、私は不勉強で詳しくはわからないわけですけれども、二月十四日の朝日新聞に、横須賀市の社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院長の山本さんという方が投稿されております。これを読みますと、七十歳になると点滴注射は二百円になる、六十九歳十一カ月二十九日まで点滴注射は七百五十円である、一日違いで一遍に二百円に下がる。注射についても静脈注射、皮下注射、点滴などどれをどれだけやっても、いわゆる指定された老人病院ですけれども、そこでは一カ月千円。検査料はこれまたどれをどれだけやっても一カ月千五百円。これは六十九歳以下の一般臨床検査は三十一項目あるわけですが、これをやると一カ月で大体一万二千円になるのが千五百円になるのだ。処置料については目、耳、鼻、のどの処置がどれを何回やっても月三百円になる。心電図とか内臓の超音波検査等は月一回分しか認めない。これは老人の症状の重い軽い、あるいは緊急度あるいは必要性、こういうことに一切お構いなしにこのように丸められた。  こういうことになりますと、老人にはもう十分な治療はせぬでもよろしい、このぐらいで早く死んでもらった方がよろしいというふうにとれますよ。一カ月に何回どれだけ注射をやっても千円、検査はどれだけやっても月千五百円、処置は何遍やっても月三百円、心電図や内臓の超音波検査を何回やっても月一回分の請求しか認めません、これでは何もするなということです。危篤状態でもういま手当てをしなければいかぬというときでも、お医者さんは、一カ月何ぼやっても、注射、点滴を何ぼやっても月千円だからまあこのぐらいでやめておこうか、こういうことになるわけですから、これは全く老人というものを差別しておると思うわけです。この点について厚生省はどのように考えておられますか。
  93. 稲村利幸

    稲村委員長 厚生大臣、ちゃんと答弁してくださいよ。
  94. 林義郎

    ○林国務大臣 委員長から御指摘も受けましたからちゃんと答弁をさせていただきます。  朝日新聞に出ておりました山本さんといいましたか、山本さんの記事が「論壇」というところに出ておりました。私も拝見をいたしまして、早速に私は、それに対して反論を朝日新聞に出してもらいたいということで手続をいたしまして、吉原君の名前で出しております。  それで、いまのお話もありましたし、実はここに参りますすぐ前に、予算委員会でも社会党の先生の方から同じような御質問がありました。私たちは、老人保健法というものは決してうば捨て山をつくったりなんかすることをねらってやったわけでは毫もない。やはり適正な医療というものをやっていかなければならないし、老人の心身の特殊性を踏まえましていろいろなことを考えていかなければならない。不必要な長期入院を是して、できるだけ入院医療から地域及び家庭における医療への転換をやることが御本人のためにも必要なことではないかというのが第一点でありますし、それから、むやみな投薬であるとか注射とか点滴等をするよりは、日常生活についての指導を重視したような医療を確立した方がいいではないか。主として老人のみを収容している病院について、それにふさわしい診療報酬を設定して、医療の適正化を図っていくということを基本的な考え方にして設定したわけでございまして、いまお話しがございました注射がどうだとか、耳だ、目だ、どうだというようなお話は、担当の部長の方から詳細にお答えをさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
  95. 川本敏美

    ○川本委員 時間がないので、明確に答弁してください。
  96. 吉原健二

    ○吉原政府委員 老人保健法を国会で御審議いただいているときに、現在の健康保険の診療報酬には大変問題が多い、特に薬漬け、検査漬けになりやすい、これを何としてでも是正をするようにということが附帯決議にも盛り込まれたわけでございますけれども、基本的な見直しというものが強く私どもに対して宿題として課せられていた、こういうふうに思います。そういったことを十分念頭に置きまして、老人の診療報酬のあり方というものを中医協で十分審議をしていただいて、その結果決定をさせていただいたわけでございますけれども、いま御質問のありました幾つかの点について、端的に御答弁をさせていただきたいと思います。  まず、点滴につきましては七百五十円が二百円になってしまったではないかということでございますが、いままで点滴の七百五十円というのは、点滴をする際の注射を刺す料金と、それから点滴をしている間に患者を看視、医学的な管理をする料金とに分かれていたわけでございます。医学的に管理をする料金と針を刺すその料金というものを分けまして、医学的に管理する料金は、入院時医学管理料というものがございましてその中に包括をした、その中に含めたということでございまして、単に七百五十点の点滴料というものを二百点に切り下げたわけではございません。その五十点分、五百円分を入院時医学管理料の中に包括した、こういうことでございまして、入院時医学管理料の方がそれだけ健康保険の人と違いまして老人の方については引き上げられている、こういうことでございます。  なぜそういうことをしたかといいますと、何といいましても薬漬け、検査漬けで一番大きな問題があると言われておりましたのが点滴でございます。点滴がむちゃくちゃに多いではないかということを前提に置きまして、医療関係者とも十分お話し合いの上でこういう措置をとらせていただいたわけでございます。従来必要な点滴がこれによって行われなくなることは全くないというふうに私どもとしては思っております。  それから検査料の問題でございますけれども、検査料とか処置料のお話が出ました。これは月千五百円しか検査料がもらえないというようなお話でございますけれども、まずこういった検査料の料金が適用されるのは、ごく一部の老人だけを集めている、ごく一部の医師や看護婦なども不十分な病院についてそういう適用をする、こういうことでございまして、一般の病院についてはこういった点数の適用はございません。基本的に私どもが考えておりますのは、これからは一般の患者を扱う病院と、それから老人だけの慢性疾患を集めて治療される病院というものを少し分けて考えたい、こういう前提に立っておりまして、老人だけを集めて治療される病院につきましては医療法で特例許可の道を開きまして、従来よりも医師や看護婦の数を少なくしていい、そのかわり手厚い介護ができるような道を開いたわけでございます。そういったことによって一応医療法上の老人病院としての許可を受けた場合には、いまおっしゃいましたような検査料が月に千五百円というような制限は全くございません。従来のような点数設定ができるわけでございます。ところが、もしそういった特例許可も受けないで老人だけを集めているような病院、これからやろうとするところについては、実は検査料にいたしましても処置料にしても、ある意味ではかなり厳しい点数設定にしているわけでございます。  私どもは、これからはできるだけ老人病院については特例許可を受けていただいて、医療法上の許可を受けていただいて、いい治療が行われるようにしたい、こういうことでございます。  それから、もう一つ大変誤解がございますのは、あらゆる検査を一月全部千五百円の範囲内でやれということでは決してございませんで、検査の中でも非常に簡易な検査といいますか、血液でありますとかあるいは尿の検査でありますとか、ごく一般的な、いまで言うとたとえば血球計算などの点数は従来十五点でございました。それからアルブミンの検査なんというのは四十点でございましたけれども、そういった血液に関するごく細かい検査を集めまして、そういう一般的な簡易な検査だけにつきまして包括をして一月百五十点、千五百円、こういうことにしたわけでございまして、あらゆる検査をその範囲内でやれということではございませんし、ほかに検査といたしましては、いろいろなたとえば心臓カテーテルの検査なんというのもあるわけでございますけれども、それは全然別でございます。そういったことでございますので、あらゆる検査を千五百円の範囲内にしたわけではないということは、また御理解をいただきたいと思います。  それから、いまもお話のございましたたとえば心電図の検査も月一回じゃないかということでございますが、症状が急変したり、それから入院したばかりのいろいろな検査が必要なときには当然、心電図検査であろうとあるいは脳波の検査であろうとCTの検査であろうと、それはやっていただいて結構なんでございます。ただ、長期入院でもう症状が安定した場合には、大体平均して月一回ということで実際もやっているようでございますので、原則的に月一回ということにしたわけでございまして、本当に症状が変わって必要な場合には、そういった点数の設定、計算、算定というものは従来どおり認められるわけでございます。  どうか、そういった点につきまして誤解のないように私どもお願いをしたいと思いますし、決して制限をするということではなしに、むだを省いて適正な医療が行われるようにする、そういう気持ちでやったわけでございます。
  97. 川本敏美

    ○川本委員 時間が超過しておるのですが、答弁で超過してしまったわけですから、もう一回だけ。  一部のいわゆる老人病院とか精神病院が、非常に誠意のない悪徳病院として有名なのが新聞にたくさん出るわけですけれども、そういうことを何とかということでこういう制度をとられたという趣旨は、私たちも理解ができないわけでありませんし、私たちの調査でも、老人病院や精神病院の中には全く悪質なのがたくさんあります。しかし、一方で私は、こういう老人の終末医療のあり方についても一つはやはり問題があると思うのですけれども、しかしながら、老人が本当に今度は七十超えたらもうこんな医療しか受けられないのかということで老後に不安を持つようなことでは、私は老人保健法をつくった趣旨とは違うと思うわけです。いまは時間がありませんので、できれば何とか質問する機会を与えていただいて、この続きはまだちょっとたくさんあるのですが質問したいと思いますので、ひとつ慎重な今後の行政と、それからやはり私たちの意見に耳を傾けて必要なところは今後どんどんと改めていく、実情に沿わしていくということをぜひやっていただきたいことを要望して、私の質問を終わります。(拍手)      ────◇─────
  98. 稲村利幸

    稲村委員長 内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。林厚生大臣。     ─────────────  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  99. 林義郎

    ○林国務大臣 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、平病死に係る遺族年金及び遺族給与金の改善を行うとともに、国債の最終償還を終えた戦没者の妻及び父母等に対し改めて特別給付金を支給するなど、所要の改善を行うこととし、関係法律改正しようとするものであります。  以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、恩給法の傷病者遺族特別年金に遺族加算を行うことに伴い、同様の給付である平病死に係る遺族年金、遺族給与金についても、これと同様の加算を行うものであります。  第二は、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、継続分の国債の最終償還を終えた戦没者等の妻に対し、特別給付金として、百二十万円、十年償還の無利子の国債を改めて支給すること等の改善を行うものであります。  第三は、戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、再継続分の国債の最終償還を終えた戦没者の父母等に対し、特別給付金として、六十万円、五年償還の無利子の国債を改めて支給すること等の改善を行うものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
  100. 稲村利幸

    稲村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  午後二時二十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ────◇─────     午後二時二十一分開議
  101. 稲村利幸

    稲村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。大原亨君。
  102. 大原亨

    ○大原(亨)委員 五十分間ですから、時間を有効に使って質問いたしますので、答弁もひとつ簡潔にお願いします。  第一は、最近国会の外、自治体等におきまして優生保護法改正をめぐりましてかなり議論をされておるわけでありますが、しかしこの問題は、昭和四十七年当時あるいは昭和二十三、四年当時の法律改正状況を見てみましても、あるいは国際的ないろいろな国々におきましての人工妊娠中絶の問題についての議論を見ましても、非常に大きな政治問題になる可能性があります。ですから、国会においても日ごろから十分こういう問題については議論をすべきでありますが、しかし、これはあくまでも慎重かつ冷静に議論をすべき問題であるというふうに思います。  厚生大臣は、この改正案が提起をされまして以来この問題についていろいろと発言をされておりますが、私はこの問題は軽率に結論を急ぐべきではない、こういうふうに思いますが、基本的にどういうようにお考えでありますか。
  103. 林義郎

    ○林国務大臣 大原議員の御質問にお答え申し上げますが、先生指摘のように、優生保護法改正をめぐりまして各方面でいろいろな御議論が起こっていることは事実でありますし、この問題は、単に優生保護法の十四条の改正をしてそれで片づくような問題ではないと私は考えております。戦後の時代を通じますところの日本の社会風潮、社会倫理というものも考えてまいらなければなりませんし、性の問題というのは人間の基本的な問題の一つでありますから、この問題をどう取り上げていくかということにつきましては、宗教、倫理のような点まで入って私は考えなければならないと思いますし、母体の健康の問題から、また住宅が一体どうであるかとかいうような、いろいろな各方面からの検討をしていかなければならないと考えておるところでございまして、また、広く国民のコンセンサスが得られるような形でやはり検討していかなければならない。ちょっと変なたとえになるかもしれませんけれども、国会で乱闘騒ぎを起こして法案を通すようなことではないであろう、広く国民の御理解が得られるような形でもってやっていくことが必要ではないだろうかというふうに考えているところでございます。
  104. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私ども自治体等で議論になっていることを聞くわけでありますが、自治体や国民の中における関係団体の賛否に対する状況。そして第二は、賛成意見の根拠、反対の根拠。そういう問題について簡潔にお答えいただきたいと思います。
  105. 三浦大助

    三浦政府委員 優生保護法改正問題につきましては、昨年の九月ごろから地方自治体の方からいろいろ賛成反対の議決が厚生大臣あてにまいっておりまして、現在、賛成九十九市町村、反対が五十市町村、審議中が六百五十三市町村、不採択というのが八十七市町村、まだ審議の動きがないというのがあとの残りの二千三百六十七市町村でございます。  それから賛成の御意見でございますが、優生保護法の第十四条の一項四号に経済条項がございますが、これが安易に妊娠中絶ができるような風潮をもたらしているのではないか、したがってこれを削りなさいということ、それからまた、やはり胎児といえどもその生命は尊重さるべきである、こういうのが賛成の主な理由でございます。それから反対の主な理由につきましては、この経済条項を削除いたしますとやみ中絶がふえるのではないか、あるいはまた、産む産まぬというのは婦人の権利なんだ、こういうことを中心に賛成反対の論議が起こっておるわけでございます。
  106. 大原亨

    ○大原(亨)委員 聞くところによりますと、自治体でも、優生保護法改正に賛成の決議をいたした自治体がまた反対の決議をする、こういうふうなこともあるようでありますが、そういう事実がありますか。
  107. 三浦大助

    三浦政府委員 私ども集計をしておる段階におきまして一カ所出てまいりまして、千葉県の松戸市の議会から、昨年の九月二十四日に賛成という御意見をいただいておりますが、十二月二十四日に今度は反対の意見書が出てまいっておりまして、どういうことか一度問い合わせなければいかぬというふうに考えております。
  108. 大原亨

    ○大原(亨)委員 そういうのは、最初は賛成しておいて、議論しておりましたら反対になったと思うのです。しかし、一つの議会が、松戸市という市議会が二つの決議を出すというのはおかしいとおもいます。しかし、これはそこだけではなしに、たとえば自民党の議員さんでも、賛成の方へも署名しておいてこっちの反対に署名する、こういうのがあるらしいですが、それは御承知ですか。知っておっても知っているとは言えぬだろうが。
  109. 林義郎

    ○林国務大臣 実は党のことでございますから私からお答え申し上げますが、生命尊重議員連盟と申しますかそういうのがございまして、それにも相当の数の方が入っておられるということは承知しておりますが、後の方の団体はないのだろうと思いますが、ときどきそういったことがほかの例であったということは事実でございます。
  110. 大原亨

    ○大原(亨)委員 時間がないので私の一つの結論的な意見ですけれども、日本のいまの合計特殊出生率は一・七四ですね。これが一・七を割るかもしれません。そういたしますと、女性の一生に産む子供の数でありますけれども、夫婦ということにいたします。これはスウェーデンやヨーロッパではそうでない場合もあるのですが、しかし夫婦ということにいたします。そうすると、二・一児が置きかえ水準といいますか一・七ですから、二名ないし一名の子供が多いわけであります。しかしながら、実際に適齢期の人のアンケートをとって調べてみるとよくわかりますが、二人ないし三名子供が欲しい、こういう希望であります。実際にはそれをどんどん下っておるわけであります。ですから、高齢化社会に対応して民族を継続的に、あるいは社会保障の問題でも経済の問題でも維持するためには、必要な出生率の問題があるわけであります。しかし、これを考えてそして経済条項をカットして人工妊娠中絶を法律で堕胎罪として取り締まる、そういうふうなことは、政治や法律の制度として考える場合、制度といたしましては余りにも短絡的であって軽率ではないかという……(「そのとおり」と呼ぶ者あり)こちらも御意見があるとおりで、これは政党政派ではなしに、普通常識的に私はそのことが正しいと思いますが、慎重に対処するという厚生大臣の御答弁でありますが、こういう見解に対しましてどういうお考えでありましょう。
  111. 林義郎

    ○林国務大臣 人口問題として、いまの出生率が一・七という形になっているのは御指摘のとおりでございまして、二・〇九だったと思いますけれどもこれがいまの人口をそのまま維持していくために必要なところだ、それより下がっているわけであります。この問題は、それでは人為的に大いに子供を産めというようなことをいまやるべきかということについては私は若干消極に考えておりますし、さらに減らしていけなどということもまた考えるべきことでもないだろうと思います。現在の状態でやっていけばいずれは適正な出生率に返ってくるものだろうというふうに考えておるわけでございまして、この問題と人口全体の問題という規制方法の問題をひっ絡めてやるということは、いささか議論が飛躍をしているのではないかと思っておるところでございまして、そういった問題ではなくて、いまの中絶をするとか堕胎をするとかというようなものの社会的な影響をもっと考えていくというのが、いま問題になっていますところの優生保護法改正問題の焦点ではないだろうかというふうに私は思うものでございます。
  112. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは国立病院医療センターの産婦人科の医長さんの論文でありますが、小さな論文でありますけれども、たとえば医師会とか婦人科のお医者さんの考えと私どもはそのまま全く同じだという場合は最近はいろいろな問題では少ないのですが、しかし、この問題ではある点では私どもも非常に理解できる点があります。その人は「中絶を減らすためには、これを取り締まる法律を厳しくするという考え方もあるが、これは最も拙劣な方策であって、世界いずれの国でも法律で取り締まることにより中絶を減らし得た例はない。なぜなら、希望しない妊娠はどのように規制しようとも結局はヤミの堕胎によって処理される。その場合の最大の被害者は女性である。ヤミの中絶は極めて危険で、女性の健康が障害され、しばしば生命まで犠牲にされることは諸外国の実例によっても、明らかである。」こういうふうに言っております。ですから、禁止することによって堕胎罪ということになりますと、やみの中絶をやりますから時期をおくらせる、あるいはじんぜんと日を過ごしておくれて手術をする、あるいは医者の方もこっそりやるというふうなこと等でそれに対応できないということで、いままで議論をしてきたことを一遍にひっくり返すようなことになる可能性がある。そういう点については私は厚生大臣も同じ意見だと思いますが、いかがですか。
  113. 林義郎

    ○林国務大臣 いたずらに罪人をつくるということは私は望まないところであるし、人間の生命の根源にかかわる話でありますから、それは社会倫理なり社会風潮なり一般の社会が規制をする、抑えていくというようなことを考えていかなければならないのだろう、私はこう思うわけでございます。したがって私は、この法律一条を直すことによって非常な変動を与えるような話ではない、やはり広く社会全体の風潮の中でやっていく、教育の問題もありますでしょうし、母体の健康の問題もあるし、いろいろなことを付帯してこの問題は考えていかなければ解決ができないことではないか、こう思っておりまして、いまの大原委員の御趣旨には私も非常に同感の意を覚えるところでございます。
  114. 大原亨

    ○大原(亨)委員 厚生大臣と私の意見がほとんど一致するのです。やはり性教育とか避妊の技術といいますか、受胎調節の方法が日本はかなりおくれているのじゃないか。これを改善する余地があるのではないか。きょうは文部省が来ておりませんけれども、やはりそれをやるということが必要ではないか。  そこで、その問題と一緒に、政府委員でよろしいのですが、受胎調節の日本で一番行われている例、これはどんなのがございますか。
  115. 林義郎

    ○林国務大臣 いまお話のありました受胎調節なり性教育の問題、実は昨日、私は文部省の担当局長——文部省もいろいろ課が分かれておるようでありまして、担当いろいろありますが、担当の局長さんを呼びましてその辺を聞いてみたわけであります。性教育というのは一応はやっている。高等学校の保健体育か何かの本を見ますと、やはり一応のことは書いてあるのですね。それから純潔教育はやれと、こういうことも一応指導するという指導要領にはなっているようであります。ただ、果たしてそれがどの程度までやられているのかということは、これは現場の教師の判断の話でありますからよくわかりませんが、一体そういったモラルというものをどうやっていくかということについては、やはりもう一つ教科書の中には欠けているのじゃないかという私は率直な印象を持ったのです。  というのは、私などは古い教育を受けておりますから、男女七歳にして席を同じうせずであるとか、貞操であるとかというものは非常にやかましく教えられた時代に育っておりますからなんですが、どうもそういうような教育というのはやってないようであります。ただ、そこまで入ってやることが必要なのか、いまのどちらかというと物理的というか医学的な話だけでいいのかどうかというようなことも、やはりこの際思いを新たにして考えていく必要があるのじゃないだろうかな、私はこんなふうな印象を持ってきのう話を聞いておったところでございます。  どんなことが一番行われているかということにつきましては、事務当局から答弁させることをお許しいただきたいと思います。
  116. 正木馨

    ○正木政府委員 安全な避妊方法等につきます性教育、家族計画の問題につきましては、保健所、市町村等を通じましていろいろ指導を行っておるわけでございますが、先生御質問の実際どういうことでやっておるのか、これにつきましては、昭和五十六年に毎日新聞社の人口問題調査会で世論調査をやったのがございます。  調査対象約三千人でございますが、回収率八三%ということで、無回答の方が非常に多いわけです。主に使っている、あるいは使った方法でどういうのがあるか、無回答が六四%でございますので回答は三六%でございますが、コンドーム、これが三六%のうちの二五・八%、ほぼ大部分といいますか相当部分を占めておるというような調査結果が出ております。
  117. 大原亨

    ○大原(亨)委員 外国の資料によりますと、第一がピルで、ピルをだんだん改善して副作用がないように低い程度のものにするとか、それから第二は子宮内の、昔で言えばリングとかいう、そういう器具を入れるものである、それから第三がコンドームとか日本の荻野式とか、こういうふうに言われておるのです。日本はコンドームが一番のようですが。  そこで、避妊方法、避妊技術等についても研究開発をして、やはり婦人なりあるいは夫婦なり関係者が安心して選択できる、そういう措置をすれば人工中絶はうんと減ってくるのじゃないですか。日本の厚生省はそういうことについては少し不熱心じゃないのかと思いますが、いかがですか。
  118. 持永和見

    ○持永政府委員 いま先生お話しのございましたピルの問題でございますけれども、ピルというのは、現在日本では月経困難症の効果として承認いたしておりますけれども、避妊目的というようなことにつきましては承認をいたしておりませんが、その理由としましては、妊娠可能年齢の御婦人が非常に長い間これを連用するというようなことがございまして、そのために重篤な副作用、たとえば肝機能障害とか血栓性静脈炎とかそういったことが調査されておりまして、そういった副作用があることが一つでございます。それから次に、次世代に対する影響についてもまだ十分な解明が行われておりませんし、御案内のとおり、日本の場合には非常に医薬品の安全性について国民の意識が高い国でございます。そういう意味合いで、現在のピルについてはまだ承認をいたしておりませんが、いまちょっとお話しのありました新しいミニピルというようなものが最近海外では承認を受けているようでございますけれども、この点につきましては、確かに従来の製剤と比較して安全性の面でいろいろと言われておりますが、そういった面について、私どもとしても今後、いまのところまだ詳細なデータを持っておりませんので、外国の状況なり、あるいは副作用の問題について調査をしていきたいと考えております。
  119. 大原亨

    ○大原(亨)委員 議論はしませんが、いまのような厚生省の固定観念がピルならピルの改善を妨げている、あるいは使用を妨げているということがあるのではないかというふうに私は率直に思うのです。というのは、二十数年も使っているわけですから、それについてはかなり外国では追跡しまして安全性をやっているわけですから、人工中絶などというよりもこの方がよほどいいという比較論も、公然と私ども聞くわけですから。  それから器具の問題等もございますし、ちょっと聞いてみますが、コンドームを使って、これで一〇〇%趣旨が貫徹するということからいうと、コンドームを使った場合に大体何%ぐらい避妊の確率があるのですか。厚生大臣なんかも使ったでしょう。(笑声)失敗して子供が産まれた、そういういろいろなことがあるわけですけれども、大体どのくらい統計的に確率があるのですか。
  120. 林義郎

    ○林国務大臣 私から御答弁することではなくて、きわめて専門的、技術的な話でございますから、事務当局の方から御答弁できるかどうかですが、ちょっと私も確認をしておりませんが……。
  121. 三浦大助

    三浦政府委員 成功率というのがよくわかりませんが、一つのデータといたしまして、いろいろな避妊方法がございますけれども、コンドームによる避妊率と申しますのは、全体を一〇〇にして大体八六%ぐらいだというふうに言われております。
  122. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは、もうこの質問に割り当てられている時間が大分迫りましたから、結論ですが、たとえば一人一人の結婚適齢期の人を調べてみると、二児ないし三児は欲しいと希望する。これは合計特殊出生率の置きかえ水準からいいましても、二・一でかなり合理的です。しかし、それができないで一・七とか二人。一人でずっとやると、一人になればたとえば社会に出ると非行とかあるいは自制心がなくなって、これはいろいろなバランスのとれない子供が産まれる、きょうだいげんかもしないから。それでいろいろなことが、社会問題が起きるわけですが、そのときにその原因を調べてみると、なぜ特殊出生率が下がるかということを調べてみると、住宅がないとか、住宅ローンが負担が大きいとか、教育費が負担が多い。これは学歴社会、受験戦争、こういう問題が多いとか、自動車の方がいいとかそういうことで、また経済的な条項では生活保護云々、ボーダーラインというような議論があるのですけれども、実際には共稼ぎがどんどんふえておる。あるいは高学歴から共稼ぎがふえるということもあるのだが、生活上の共稼ぎがふえているわけです。そういうことで出生率が下がっておるわけですから、母性の保障とか児童の福祉とか児童手当だとか、そういうものを総合的に国としては社会的な問題としてとらえて、そして自分が選択できるような、希望する子供を産めるような条件を政治的につくることによって、適当な出生率を維持して、そして長期の高齢化社会に対応する。  その根本は、一つはたとえば住宅政策、住宅ローンの問題や住宅の広さの問題、おじいさんやひいおじいさんがおるような時代に、部屋がないということになったら子供は産まない、産めない。そういう環境条件をやっていくことが必要であろう。そういうことを総合的に考えながら、この問題の、出生率がどのようなことが健全であるかということについて議論を尽くして、そして中長期の展望を持ってこういう法律案を審議すべきである。これは慎重に審議すべきであるという私どもの考えは、厚生大臣の意見と一致すると思いますが、いかがでありますか。  そして、最後には、優生保護法改正案を強引に出すというふうな話がありますが、提出時間が迫っておりますけれども、私はそういうことはよもやないと確信をいたしますが、いかがでしょうか。
  123. 林義郎

    ○林国務大臣 優生保護法検討問題は、単に産まれ出てくる子供をどうするかという話の問題だけでなくて、母体の保健の問題もありますし、いま御指摘のありました人口問題がある。さらには家族計画というような問題もありますし、その中には恐らく住宅の問題も入るのでありましょう。そういったようなことを広く総合的に考えて政策は進めていかなければならないものだろうと考えておりますし、この辺につきましては、大原委員の考えと私の考えとは趣旨においてほとんど変わるところはないと考えておるところでございます。  ただ、この問題は、昨年、私の前任者であります森下厚生大臣が国会におきまして、とにかく優生保護法改正は次期通常国会に提出する、こう申し上げておりますから、行政の一貫性ということから、私もその点は一生懸命通じていかなければならないという立場にあるわけでございまして、その点は御理解を賜りたいと思いますし、私は決して、だから、急いでやるべきことではない、先ほど来お話がありましたように、私もたびたび御答弁申し上げておりますように、この辺は非常に深い問題がある。私は、単にいまの人口問題とかなんとかでなく、非常に深い日本人の倫理あるいは人類の倫理というところを考えて、そこからどうするかという議論を尽くしていかなければならない問題ではないかと思っておりますので、慎重にこの問題の提出については考えておるところであります。先ほどちょっと申しましたが、余り意見があって、おまえ何だという話になるようなことでこの問題はやるようなことではない。この問題は、皆さん方がそうかなと御納得が大多数のところでいただけるようなものでなければ、国会の権威においてもやる話ではないのではないか、私はこういうふうに考えておるものでございます。
  124. 大原亨

    ○大原(亨)委員 大体大臣の気持ちはわかりましたが、自民党は多数を取ったからといって、大きな声を出したからそれがすぐ通っていくような、そんな危険なことをやる政党であってはならぬわけです。特にこういうふうな問題は非常に及ぼすところが大きいわけですから、慎重の上にも慎重を期してもらいたい。そういう意味においては私は大臣の意見と一致はすると確信をいたしまして、次の問題に移ります。  第二は、年金をどうするかということについての基本問題を、わずかしかありませんけれども、二、三点質問をいたします。  日本の年金制度は八つの制度がありまして、そしてばらばらに分かれておりますから問題が多いわけですから、政府は、年金を低成長と高齢化社会に対応して確固たるものにするためにはどうしたらいいかという基本的な視点を持って機構をつくる必要があるだろう。ましてや、行革デフレというように言いますけれども、いままでの行革特例法案などというような形で、言うなれば国庫負担を四分の一カットして、そして昭和六十年以降返すとか、そういう小手先のことだけを重ねておったのではいけない。年金に対する先行きの非常な不信や不安があるということになりますと、これは現在の生活自体に影響を及ぼすし、あるいはそういうことだけをやっておりますと、つまり行革デフレと言われている問題にも逢着をいたしまして、縮小均衡に経済が進んでいく、こういう一つの大きな心理的な要因、経済も心理的なものでありますから、そういう心理的な要因をつくるということですから、生活の上からいいましても国民経済からいいましても、年金についてはやはり政府としては確固たる中長期の展望を持って当たるような体制をつくることが必要である。いまの中曽根内閣はそれに対してどういう体制をつくっておられるか。年金担当大臣の厚生大臣から伺います。
  125. 林義郎

    ○林国務大臣 御指摘のとおり、年金につきましては総合的な見地からこれを改革を図っていかなければならないのは事実でございますし、私も全く同感でございます。  政府といたしましては、昨年の九月にいわゆる行革大綱を決定し、昭和五十八年度末までに制度全体の改革の具体的内容、手順等につきまして成案を得るという形にしております。  全体のマップをそのときまでにつくる、マップをつくるだけでも私は大変な作業が要るんだろうと思いますが、そういったことを五十八年度までにやるということにしております。そのために私が年金担当大臣として指名されておるところでありまして、総合的な見地に立ってこれを進めてまいりたいと思っております。  以上であります。
  126. 大原亨

    ○大原(亨)委員 そういう観点でありますと、昭和五十八年度中にそういう年金の全体像をつくる、こういう御答弁であります。  そうすると、今度出すというふうに予定法案になっておる国家公務員と三公社の統合法案にいたしましても、地方公務員共済の法案にいたしましても、またいま政府がアンケート調査その他をやっておりますあるいは審議会の答申、社会保険審議会の厚年部会その他の答申を待っております厚生年金、国民年金にいたしましても、それらを総合して五十八年度いっぱいのうちにそれらを含む全体像をつくり上げていく、こういうふうに厚生大臣はお考えですか。
  127. 林義郎

    ○林国務大臣 具体的なお話が出ましたから申し上げますが、当面国家公務員共済組合法と公共企業体職員等共済組合法との一本化に関する法律案を今通常国会に提出すべく、現在大蔵省を中心として政府部内において調整中であります。また、地方公務員等共済組合につきましては、長期給付に係る財政単位の一元化を図るための法律案を同じく今通常国会に提出すべく、自治省において現在鋭意作業中でございます。さらに、公的年金制度の大宗を占める厚生年金保険及び国民年金については、次期通常国会、この次の通常国会に改正法案を提出することを目標にしまして、厚生省において現在鋭意検討中であります。  こうしたことを、これらの状況を踏まえながら、全体の先ほど申しました改革の具体的内容、手順について検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  128. 大原亨

    ○大原(亨)委員 厚生大臣、年金担当大臣として、いま大蔵省がやっている共済年金の統合案について、あなたは一定の事実上あるいは設置法上の権限があるのですか、これをどうつくるかという問題について。
  129. 林義郎

    ○林国務大臣 私は、厚生大臣に任命されましたときに、年金担当大臣として各省の調整をやる、こういうふうなことでの辞令をいただいております。  設置法を直してどうだというような話ではないわけでございまして、法律に基づく権限ではありません。ただし、各省の調整を図っていくためには、いま内閣審議室にも年金担当の方々を任命をいたし、それからまた、大蔵省及び厚生省の職員にその年金担当の仕事をやってもらうという特別の辞令を出しておりまして、そういった形で話を進めていく、こういうことでございます。  御承知のとおりに、年金問題は、それぞれの年金にそれぞれの歴史がある、沿革がある、いろいろその違いがあります。そういった違いを調整していくときには、単に法律的な権限でもって、おまえ権限があるからどうだこうだという話でなく、やはりここは話し合いをして十分話を煮詰めていくという手法が必要だろう、こう私は考えておりますし、そういった意味で私も、与えられましたところの、年金制度の改革及び年金行政の一元化を円滑に推進するため行政各部の所掌する事務の調整を私に担当させることに決定いたしましたと、こういうことの辞令をいただいておるわけでございます。  そういった形で全力を挙げてこれに努力をしてまいりたい、こういうふうな決心でございます。
  130. 大原亨

    ○大原(亨)委員 具体的にはたとえば、ここへは大蔵省の共済課長が見えていますが、共済課長が中心でやっているでしょう。それをあなたの方へ一々連絡をとりながら意見を聞きますか。調整しているのですか。だれが調整しているのですか。
  131. 林義郎

    ○林国務大臣 共済課長そのほか内閣の審議室の方から、しばしば私のところへ報告に参っていただきまして、こういうふうな形でいま話が進んでおります、こういうふうになっておりますという話もございますし、たとえば地方公務員の話も、党でこういうふうな話がありました、こういった点がありますが、というようなお話は逐次私のところで聞いておりまして、全体としていま申し上げましたようなスケジュールに動いていくように、私としても鋭意努力をしているところでございます。
  132. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは、たとえば臨調の答申によりますと、あるいは共済の基本問題研究会の答申によりますと、あるいは厚生省もしばしばそういうことを言っておりますが、二十一世紀高齢化社会を乗り切る年金の改革の方向として、大体三つ上げていますね。  というのは、年金水準を、現在の水準を三割ぐらい切り下げる。たとえば今度の統合法案でしたら、国鉄の場合には三カ年間ほどオールドボーイは、国鉄共済年金をもらっている人はスライドを足踏みします。そういたしますと二割ぐらいはもう水準が下がります。水準を下げる方法はそこにも出ております。水準を下げる。それから保険料の負担を上げる。これは、このままで年金が成熟して高齢化するとやはり財政が行き詰まるから上げる。保険料負担を上げる。それから、年金の開始年齢を下げるというのは、いままで共済は二十年で六十歳でありますが、昭和七十四、五年ごろが六十歳でありますが、そのスピードを速めて開始年齢を六十五歳に引き下げるように近づける。  大体こういうふうな構想が出ておりますね。それから厚生省の例の試案の中にもそういう傾向があるわけですが、それが全体像ですか。
  133. 林義郎

    ○林国務大臣 御指摘のようなことがいろいろと言われているところでございますが、それぞれに皆やはり問題があるわけであります。それぞれに問題がある。簡単に言えばそういうお話になるかもしれませんけれども、それぞれの年金の特殊性、それぞれにおきましていろんな問題がありますから、そうしたものをやはり総合化して考えていかなければならない、こういうふうなことでございますし、それからまた、厚生年金と国民年金の統合ということになりましたときに、御婦人の年金問題というのはやはり一つの大きな取り上げていかなければならない問題ではないだろうかと私は思っているところであります。  それでは、年金水準を切り下げるといってどのぐらい下げるんだ、それから保険料を上げるのはどのぐらい上げるのだ、すぐこういうふうな話になりますし、それから開始年齢は六十五歳にという話、それぞれの問題がありますから、私は、それらを総合的に勘案してうまく年金というものがやれるようなことを考えていかなければならない。  たとえば開始年齢を六十五歳に近づけると言いましたところで、いまは五十五歳であるとか六十歳であるとかいろいろなものになっているわけでありますね。それを下げていくためには、単にそれを下げただけで問題が解決する話ではないので、そのときの人が今度は定年をどういうふうに考えていくかとか、そういったお年寄りの方々の働く場所をどう考えていくかとか、そういったような対策も同時にやっていかなければ、私はそこだけをやったのでは片手落ちになると思いますし、そういったことをやはり総合的に考えてやる、それを五十八年度中に大ざっぱなところでも出して方向づけをしていくというのがこの仕事ではないか、私の仕事ではないだろうかというふうに考えております。
  134. 大原亨

    ○大原(亨)委員 限られた時間ですが、たとえばいまの年金の制度で、国民年金の場合は、国民年金を厚生年金と合体いたしまして妻の年金権の問題は解決するというのも一つの側面ですが、しかし、いまの国民年金は、この点はひとつ五十八年度予算についてその問題に関係して質問するのですが、たとえば国民年金は一本の保険料ですよ。いま五千二百二十円。そして新年度からは五千八百三十円でしょう。それで、国民年金や厚生年金のスライドは五十八年度はストップしておいて、それで保険料だけは三百五十円プラスアルファをさっさと上げちゃう。五千二百二十円から五千八百三十円に上げちゃう。そういうことは国民から見て納得できないのではないかと思うのです。もちろん、そこには制度の一つの欠陥がある。というのは、国民年金は保険料を一本にしたわけですよ。そして、三万数千円の給付を昭和六十五年ぐらいから保障しているわけですよ。実際の給付が始まるのはそうでしょう。ですから、一本の保険料ということになると、所得の多い少ないにかかわらず一本ですから、所得の再配分機能から言いましたら非常に——初めの小さいころはいいですけれども、だんだんとやりましたら、妻の負担分ということになりますと、同じ会計から出るのですから、そういたしますと、パートの問題その他はあるにいたしましても、これは非常に大きな負担になるということがあるわけですよ。ところが、社会保障というのは所得の再配分で国民生活を安定させるんですから、それがけしからぬから福祉切り下げだという議論もあるのですが、しかし、その原則はいままでの歴史の進歩の中で到達した基準なんだから、だから所得の再配分を公平にやって年金の水準を維持するということから言いますと、その欠陥というものが制度上出てくるわけですね。五十八年度の予算案では、年金の給付の方についてはスライドをストップしておきながら、保険料だけはどんどん上げていく、既定方針どおりに。そういうふうなことは私はおかしいんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。国民から見たら問題があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。どこでもいいから切って捨てるという考えじゃないですか。
  135. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 国民年金の保険料の問題でございますが、先生指摘のとおり、五十五年改正におきまして、毎年三百五十円ずつ六十年までは上げるということで法定化をされたわけでございますが、それがさらに、前年度の給付の物価スライド分に応じて上がるという仕組みになっているわけでございます。したがいまして、五十八年度につきましては先生仰せのとおり物価スライドを行わないことにしておりますけれども、五十七年度において四%の物価スライドをいたしておりますから、その五十七年度の四%が保険料の面では五十八年度の保険料にかぶさってくるという仕組みになっているわけでございます。そういうことでございますから、仮に五十八年度このまま物価スライドなしでいけば、五十九年度の保険料につきましては三百五十円アップをするというそれだけの上乗せということになる仕組みになっております。
  136. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いまの点、よくわかります。この三百五十円プラスアルファの物価上昇分については来年度はストップする、三百五十円だけ保険料を上げる、こういう仕組みになるということです。しかしそれにいたしましても、国民年金は実際上は積立方式ですが、九十数%は賦課方式にもうなっているわけですから。そこで、結局は妻の任意加入の財源で十年年金、五年年金の財源に充てておるわけですから、これは年金計算からいいましたら、平準保険料の議論がありましても、いろいろ途中でインフレ等があって計算は狂うているわけです。ですからこの問題については、制度上の欠陥も含めて議論をしなければならぬ。  もう一つの問題は、時間もたくさんありません、あと五分ですから、私は積立金の運用について根本的に考える必要がある。林厚生大臣のときにやってもらいたい。というのは、積立方式をとっている場合に積立金の運用の利回りをきちっと確保することが必要である。たとえば資金運用部へ持っていきまして、厚生年金、国民年金は全部持っていくわけですが、そうして運用する。運用の実態に即して、理財局は運用上の利子を厚生年金、国民年金の財政に投入をするわけですね。そういうことになっているわけでありますが、しかしその運用の仕方については、共済年金との間においてあるいは各共済との間においてばらばらである。きょうは一応資料は全部、電電も国鉄も専売も国家公務員共済も出してもらっているわけでありますが、私は、その運用については一定の原則を決めて、たとえば公共企業体についてもしばしば言うのですが、公共企業体は公経済だから国庫負担分と追加費用の国庫負担分を公経済が負担するというのは、私は一貫しないと思う。たとえば日銀とかあるいは道路公団、住宅公団等は、厚生年金の二割の国庫負担は全部国が負担するわけですから、公経済だといって。しかし、日銀の経済が余剰ができた場合には戻入するわけですが、国庫負担の年金の制度としては同じようにやっているわけです。ですから、そういうことについて私はぴしっとそろえるべきではないか。それが年金改革の大きな目標ではないか。しかし、今回の国家公務員と三公社の統合案にはそれが出てきていない。  きょうは国家公務員共済年金の方がせっかく御出席ですから、質問をしないと失礼ですから質問するんだが、国家公務員共済年金は、いろんな共済組合を統合いたしまして資金を一元的に運用しているらしい。それから電電、国鉄その他はそれぞれ別々に運用をしておりますね、これを見てみますと。運用する方面も違うわけです。自分の公社で運用したりあるいは国債で運用したり有価証券を持ったり、いろいろある。将来やっぱり、そういう国の負担の問題と、国の負担に相当する公経済が負担している問題と、それから資金の運用については、やっぱり自主運用、有利運用を基礎としながら、保険財政に被害を及ぼさないような補給措置等をとっていくべきことが当然ではないか。というのは、電電などはそういうふうにやっておるらしいんですけれども、厚生年金などは、住宅なんかに融資いたしますと五分とか六分とかいうことで、その場合にはそれをそのまま利子補給しないで使っている。それで全体のトータルの平均の運用利子を計上している。そういうことについては、やはり共済なら共済をそろえるといたしまして、厚年やその他の方も自主運用ということをやりますと、一%やりましたら厚生年金などは何千億円というように違うわけです。保険料にすぐ響くようになっていきます。ですから非常にばらばらで、大蔵省理財局がきょう来ているんだが、答弁を求める時間はないけれども、理財局主導型でそして公団、公社にそういういろいろな人事の交流や天下りをする条件ができておるということですから、そういうことではなしに、でたらめに自主運用するということではないが、一定の基準を設けて自主運用はしながらやっていかないと、積立方式をとる限りは年金財政は計算どおりいかないし、これ以上インフレができますと大ごとになるということになります。  ですからその点について、積立金の運用あるいは国庫負担の原則、そういうものをいまの改革のときにそろえないと、出発でそろえないと将来どんな改革をしようと思ったってできないのではないか。こういう問題について年金担当大臣の意見と、せっかくですから国家公務員共済組合連合会理事長の意見を聞きます。
  137. 林義郎

    ○林国務大臣 年金積立金の運用の問題につきましては、いま先生指摘のように私は大問題があると思います。  国家公務員共済その他の方は後からそれぞれの担当の方から御答弁いたしますが、年金というものは先ほどお話がありましたように社会的な所得再配分、こういうふうな話でありますから、負担をする方ともらう方と両方があるわけですね。それを世代間でやる、こういうふうな話でありますが、いまの積立方式云々ということになれば、要するにたまったものをどうするか、こういうことは一番考えなければならない問題でありまして、ざっと見まして、給付水準はどうもいままでどおりにはなかなかいかないであろう、それから、保険料というのは上げていくというようなことになれば当然に、一体いまあるところの金はどうなっているのかな、これは有利に運用しているのかね、というような話になってはとても国民的な御納得はいただけないだろう、こう思いますし、年金の問題として、年金財政が健全であるというのはまさに有利運用というような形でやっていかなければ国民の御納得もいただけないものだろう、私はこう思っております。  そういう意味で、この問題は年金制度改正の中でも非常に大きなテーマでありますから、今後社会保険審議会などの御意見もいただいて、本年八月ごろまでに取りまとめる予定の年金制度全体の改正案の中で厚生省としての結論をまとめたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  138. 大田満男

    大田参考人 私、連合会の理事長を務めておりますが、実は私の方は制度の主管をいたしておりませんので、制度の問題についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、連合会の実態といたしましては、年金の積立金の運用といたしまして、年金自体の元本をふやすための運用と、それから、組合員の強い要望によります福祉事業関係につきまして年金資金を活用させていただく、この二つの面がございます。この両面をうまく調和しながら現在運用いたしておるところでございますが、少なくとも、連合会に自主的に運営を任されております運用の利回りといたしましては、私の目から申し上げるのはおかしゅうございますが、大変いい利回りで回っておるのではなかろうか、こう思っております。(大原(亨)委員「何%」と呼ぶ)自主的に運営しておりますのでは、有価証券では九%近くで回っておりますし、その他では七%以上で回っております。全体といたしましては、福祉事業関係で低利に組合員に貸し付け等をやっておりますので、総合いたしますと六・八%強という利回りになっております。
  139. 大原亨

    ○大原(亨)委員 議論はありますが、これで終わりまして、後で別の機会にやりますので、きょうは答弁をしていただかなかったたくさんの方がおられますが、失礼いたしましたが、以上で終わります。
  140. 稲村利幸

    稲村委員長 金子みつ君。
  141. 金子みつ

    金子(み)委員 私はきょうは三十二分しか時間をいただいておりませんので、余り十分いろいろとお話し合いもできませんが、問題をしぼりまして、大臣のお考えを少し聞かせていただきたいことがございます。  その一つは、この間大臣の所信表明を聞かせていただきましたが、この所信表明に基づいてお尋ねをするという形をきょうはとったわけでございます。  そこで、まずこの総論部分のところでお尋ねしたいことがございます。この総論部分を拝見してみまして私が一番気になりましたことがあるのです。それは一ページにも二ページにも出てくるのですけれども「活力ある福祉社会の建設」というのがございます。「活力ある福祉社会の建設」ということで中身がはっきりいたしませんけれども、続けてここに書いてあるのは、二ページに「活力ある福祉社会の建設という見地からその見直しを行う必要があることを私は率直に申し上げたい」こういうふうにおっしゃっておられます。見直しの問題も非常に気になるわけでございます。  そこで「活力ある福祉社会」という言葉ですが、これは臨調の答申の中にも出てきておる言葉でございますね。それで臨調答申の方を少し見てみましたならば、臨調は基本答申の中に二つ柱を立てて答申しておられますが、「国際社会に対する積極的貢献」というのがその一つの柱、それから二つ目の柱が「活力ある福祉社会の建設」、この二つになっているわけです。初めの方の「国際社会に対する積極的貢献」というのは、中身は言葉をかえれば日米同盟強化の外交であるとかあるいは軍事費拡大であるとかということで、ことに、日米軍事同盟は鈴木前総理のときに決めてこられたことだったのですけれども、中曽根総理が今回レーガン大統領にお会いになった結果は、日米軍事同盟がさらに日米運命共同体に発展しているという心配があります。それから海峡封鎖その他云々ということで、これには非常にエスカレートした感じを私たち受け取ることができます。  それで、この第一の理念、この答申の基本理念を実現させるために第二の答申が出てきたというふうに解釈できるのですね。つながるわけです。「活力ある福祉社会の建設」ということでその中身が何かと思って調べてみましたならば、これは、社会保障など国民生活保障の分野は国の守備範囲ではない、だからこれはもっと減少しなさい、内容はこういうふうに意味がとられているようでございます。それで私は、なるほどそれだからこそ、ここのところ毎年厚生省予算はがたがたとへずられていって減少されているのかなと単純につなげることができる。三年前に厚生省予算が、言葉をかえれば社会保障予算が防衛費よりもわずかながら下回った。〇・〇二%でしたか下回った。これが戦後初めて社会保障予算が防衛予算よりも少なくなったという大変危機的な時期で、大変だとそのとき思いましたが、その後続けて五十七年度、五十八年度、数字は申し上げませんけれどもがたがたと落ちましたね。  こういうふうに社会保障関係予算が大変落とされてきてしまったということは、活力ある福祉社会を建設するために、国の守備範囲ではないから、自分たちでやりなさい、自助自立というその精神を生かし、あるいは地域社会の助け合いでもってそのことをやっていくというところに重点がかかっていて、そして、国の守備範囲でないから予算をたくさん見る必要はないんだ、めんどうはそんなに見なくてもいいんだ、本当に必要な最小限度だけ見ればいいということで、明治時代のあの救貧事業のような社会事業的な考え方で進められていくのではないだろうかということが、非常に不安と申しますか、国民としても不安ですし、私たち自身もそのことを大変心配しているわけです。その一つの端的なあらわれと言っていいかどうか、私は端的なあらわれの一つだなと思いましたのが、老人保健法の制定だというふうに考えることができると思うのです。  こういうふうに考えてみますと非常に心配になるのですけれども、それは臨調が言ったことであるというふうに言ってしまえばいいのかもしれませんが、中曽根内閣は臨調答申を金科玉条のように大事にされて、そしてそれに従って進め進めといけば、自分の責任ではない、臨調が言ったんだということでなぎ倒して進むことができるというような風潮が見えるようにも思われます。  そこで、私が大変心配ですし、気にもなりますので、社会保障担当大臣でいらっしゃる厚生大臣に、厚生大臣もやはりこういうふうに、社会保障など国民生活保障の分野は国の守備範囲ではないとお考えになっていらっしゃるのかどうか、その辺を聞かせていただきたいし、社会保障は救貧事業のようなものであっていいのかどうか。今日で言う社会保障はどういうものだとお考えになっていらっしゃるのか。私はこれは基本問題だと思いますので、まず聞かせていただきたいと思います。
  142. 林義郎

    ○林国務大臣 金子議員の御質問にお答えを申し上げます。  いまお話を聞いておりますと、福祉社会をかつての救貧法の時代に返すのではないかというようなお話でございますが、われわれは夢にもそれは考えていないところでございまして、総理もたびたび言っておりますように、たくましい文化と福祉の国日本をつくり上げていく、こういうことでございまして、この日本というものを安全で安定した安心のいける社会につくり上げていきたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。  臨調答申というのは、確かに行政改革をやっていかなければならない、私もそうでありますが、肥満体になったところを少し減量してやった方が健康のためによろしいのではないかという考え方でございますし、私はそういったことでぜい肉を落とすべきところは落としていかなければならないと考えております。この福祉、社会保障の問題というものは私は決してぜい肉ではないと考えておりますし、社会の中にはっきりと定着したところのものだと考えておりますし、社会保障というのは国民生活の基盤としていままでも非常に有効に働いてきたところでありますし、さらにこれを有効に機能するように各般の施策を推進していくということが必要だというふうに考えております。  基本的に社会保障制度はどうあるべきかということでございますが、国民がお年寄りになったときであるとか体が不自由になったときであるとか母子家庭になったときの場合など、生涯のどの段階においても不安を持たずに生活できるような基礎的条件を整備することが社会保障制度の役割りではないかというふうに私は考えておるところでございます。
  143. 金子みつ

    金子(み)委員 続けて同じようなことになりますけれども、たとえば社会保障国として世界的に有名な北欧の国々とか、あるいは早く出発したイギリスですとかニュージーランドですとかそういった国々、それからまた、日本がお手本にしているのでしょうか優等生扱いをしている西ドイツの実態でございますとか、そういうのを見ておりますと、その結果を見てこういう批判があるわけですね。社会保障は結構だけれども、社会保障をやり過ぎるとあの国々のように国民が怠惰になってしまう、一生懸命仕事をしなくなるような傾向を生み出すじゃないか、だから社会保障はほどほどにしておくのがいいんだというふうな考え方が、専門家と称されるりっぱな学者先生の間でも間々話がなされているということを私も聞き及んでいるわけなんですけれども、社会保障は果たして国民を怠惰にすると厚生大臣はお考えかどうか、伺いたいと思います。
  144. 林義郎

    ○林国務大臣 金子議員の御質問にお答え申し上げますが、私はかつて二十年ほど前に、ヨーロッパに三年ほど住んでおりました。そのときはまだ日本はいろいろな年金とかなんとかいうものはできてなかった時代でありまして、お年寄りが公園でベンチに座って一日じっとしておられることとか、皆さん集まってトランプに打ち興じておるという姿を見て、実はうらやましいと思ったことは率直に言ってございます。まだまだその当時はヨ—ロッパの中は非常に活気があったと私は思いますし、私がヨーロッパに行ったときは、日本からの輸出を大いに振興しようということで行ったわけであります。ヨーロッパの社会というのは日本が見ならうべきものがたくさんあるのではないかということでやってきたわけでありますが、いまの時代になってきますと、先ほどお話がありましたような問題がヨーロッパの中にいろいろ出てきている。それは社会保障の行き過ぎであるとかいろいろなことを言われておりますが、私は、そうでなくて、いま国民が怠惰になっている、不況によって失業者がたくさん出てきておるというのはヨーロッパの国の経済政策の一つの大きな問題だろう、こう思うのです。と同時に、ヨーロッパの中で言われておりますのは、租税負担率というか公的負担の率が非常にふえてきている、こういうことでございます。公的負担がふえてくる、そうすると、自分で一生懸命稼いでもたくさんの負担を取られる、稼がなくても同じというようなことになってしまったら問題だ、こういうふうな話でございますから、私は、そこはヨーロッパの諸国でも考えていかなければならない問題点が出てきているのだろうと思うのです。だからこそいまのお話のようにいろいろな御議論があるのだろうと思います。  私は、そういったことにならないような日本の福祉社会をつくっていくということが本当に必要なことだろうと思いますし、それではどうしてやっていくかというのは、これは恐らく経験のない話でありまして、これはお互いが議論をしていかなければできない社会だと思いますので、私は、現在の体制をずっと維持しながら、そうした形で本当に活力あるところの福祉社会を目指してこれからがんばっていかなければならないと思っているところであります。  実は総論を書きましたのもそういった願いを込めまして私は考えておりますし、福祉の問題、社会保障の問題というのは、私はいろいろなものが考えられるだろうと思いますし、謙虚にこの問題には取り組んでまいりたい。社会労働委員会には、金子先生もこの方面におきまして大変御経験の深い方でございますし、皆さん方それぞれいろいろな御意見なり貴重な御体験を持っておられる方が非常に多いわけでございますから、こういった先生方の御意見を十分に拝聴しながら、本当に活力のある日本的な福祉社会の建設に努力してまいりたい、こういうふうに考えておるものでございます。
  145. 金子みつ

    金子(み)委員 そういうお考え、先ほどお述べになりましたような大臣のお考えで厚生行政を進めていこうというお気持ちなんだというふうに承ることはできました。  いま大臣は、具体的にそれではどうしていくかということをこれから検討するというふうにおっしゃいましたが、そのことがいま目の前にある、日本の国民のためということで、三ページ以下の具体的な政策が出ているのだろうというふうに理解することができると思います。  そこで、この具体的な政策の中の一つ、二つを時間の範囲内でお尋ねしたいのですが、事務的な問題になります場合には事務局の方の御答弁をいただけば結構だと思いますけれども、ちょっと事務的なことになりますが、お尋ねしたいと思います。  その一つは、三ページの「社会福祉対策につきましては、」云々という中に出てくる問題が二つあるわけなんですが、一つは、「生きがいを持って生活できるよう、家庭奉仕員の大幅な増員、デーサービス事業の拡充など在宅福祉対策」云々に「重点を置くとともに、」こういうふうに書かれているところがございます。生きがいを持って生活できるということのために家庭奉仕員がいたり、デーサービス事業の拡大があったりするというふうに直接結びつけていいのかなと思ったりいたしますが、この辺の結びつきがはっきりいたしませんことと、時間が短いですから質問を続けていたしますが、それならば、そういうふうに考えるのだったならば、この家庭奉仕員は一体どういうふうに仕事をさせようと考えておられるのか。たとえば目標としてはどれくらいの人数を、しかもその事業の中身としてはどのような仕事をさせれば、生きがいのある生活がみんなできるようになるための家庭奉仕員の仕事ということになるのかなと思ったりいたしますので、その辺を教えていただきたいのが一つです。  それからいま一つは、生活保護の問題がここに載っているわけです。生活保護の問題につきましては私は一つだけお尋ねしたいので聞かせていただきたいのですが、生活保護法の二条に基づいて国民はだれでも、公平に生活保護を受ける権利があるという意味の条文がありますね。ですから、生活保護はだれにでも平等に格差なく行われるべきものだと大上段に規定されているわけです。ところが、実際問題としてはそうじゃなくて、生活保護基準というものが別にできておりまして、その生活保護基準によって行われるものですから格差が出てきてしまうわけですね。そこで、きょう私が初めて申し上げるのではなくて、いままで何年も前から問題になっております生活保護基準の中の男女格差の問題、大臣はこの男女格差なんかをどう考えていらっしゃるのか私は実は後で伺いたいのですけれども、男性と女性と生活保護基準が違っているということなんですね。それはなぜかというのと、それをどう考えるかということを伺いたいのが一つと、それから、格差を縮めるようにということはいつも言っているわけですね。その格差の縮み方がことしはどれくらい縮まったのか実は知りたいと思っておりますけれども、ゼ口にするために計画としてはどれくらい時間をかけるつもりなのかを知りたいということが一つあります。  それからもう一つ、逆に申し上げたいのは、男女格差というのは男の人に有利で女の人に不利になっているわけなんです。格差で女が有利で男が不利というのはまずありませんね。ですから女性が不利になっているわけなんで、日本は婦人に対するあらゆる差別撤廃条約を批准するためにサインしてきていますから、これを批准しなければなりません。それから、国際婦人年の行動計画もサインしていますから、これも批准しなければならない。どれも婦人の十年で一応計画されていますから、あと二年ありますね。一九八五年までに仕上げなければならない。世界の各国でも一生懸命になってそれはいまやっている最中だと思いますが、日本の場合も東洋の第一人者をもって立っているのならば、それくらいのことはやらなかったらほかの国々に対して顔向けができないということはあると思います。そこで、これを八五年までにぴちっと格差のないようになさる御計画がおありになるのかどうか、それもあわせて伺いたいと思います。
  146. 林義郎

    ○林国務大臣 まず最初に、「生きがいを持って生活できるよう」云々とこういうふうな話がございますが、これは家庭奉仕員の増員であるとかデーサービスという事業を通じまして、ずっと入院しているお年寄りの患者だけでなくて、あるいは特別養護老人ホームに入っている方でも、やはり家庭におられる方がお年寄りだって生きがいを感じられる、お孫さんもそうですが、家庭で遊んだり何かする方が生きがいを感じられるだろう、こういうふうな気持ちでございますが、それと同時に、ここに書いてなかったのですけれども、老人クラブの活動を推進しますとか、生きがいと創造の事業、瀬戸物をつくりましたりお互い一緒に集まって物をつくっていくというような施策もやっておりますから、そういったものを含めまして生きがいを持って生活できるようにということで非常にきめ細かな対策をやっておりまして、それらを総合してやっていくということが必要ではないかと思っております。  それから男女格差の話でございますが、私は基本的に申しまして、やはり男と女というのは体格、背その他の点におきまして違うところがある。だから、男女の格差を是正するということはいろいろな点で考えていかなければならない。実質的にそういうふうに上げていくということが一番大切なことでありまして、単に形式的に就業機会を与えるとかいう話だけではない、やはり実質的に婦人の地位向上というものを図っていくことが必要なことではないかと私は思いますし、また国際婦人年でいろいろな話がありますから、そういった点につきましては、私も一生懸命いろいろな点につきまして格差是正にはこれからも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  あと細かな問題につきましては事務当局の方から答弁することをお許しいただきたいと思います。
  147. 金田一郎

    ○金田政府委員 まず家庭奉仕員でございますが、家庭奉仕員の業務につきましては、寝たきり老人等の家庭を訪問いたしまして、家事、食事、洗濯、介護等日常生活上のお世話をするだけではなく、場合によってはいろいろ相談にまで応ずることができるような人をと私どもは考えているわけでございます。大体週二、三回程度家庭訪問をしていただくように考えておりますが、これは家庭の状況によっていろいろ弾力的に考えております。  御承知のとおり五十七年度から家庭奉仕員の派遣対象の拡大を図りまして、これに伴いまして五十七年度は三千二百九十八人、五十八年度は千六百六十人の大幅な増員を行いました結果、全国で一万八千二百七十八人になっております。これは、人口の高齢化や核家族化の進行に伴いましてこの家庭奉仕員に対するニーズは非常に増大してまいると思いますので、今後とも増員には努力いたしたいと思っております。  また、先ほど申しましたように、家庭奉仕員の事業はいろいろございますので、資質の向上が大事でございます。そういう意味におきまして、家庭奉仕員は採用時においてまず研修をいたしております。受講時間約七十時間でございます。また定期的な現任訓練も行いまして、その資質の向上を図ることとしているわけでございます。  それから、次に男女格差でございますが、これにつきましては、中央社会福祉審議会からもかつて御意見をちょうだいいたしました。そこで五十七年度におきましては、男女の消費実態に応じまして、男女格差の四分の一程度を縮小したところでございますが、五十八年度におきましては、さらにその三分の一程度を縮小することといたしたわけでございます。法律の上でも男女別あるいは年齢別というふうに書かれておりますので、これは実態によりまして、場合によりまして女性の方の支出が多ければ女性の方が額が多くなるということもあり得るわけでございます。
  148. 金子みつ

    金子(み)委員 たとえば家庭奉仕員の場合だったら、いまちょっとお話を伺いましたので一応実情はわかったのですけれども、週二、三回というのが目標だというお話ですね。週二、三回でいいかどうかという問題は非常に問題が大きいと思います。これはケース・バイ・ケースですから毎日行かなければならないこともあろうし、あるいは週一回でいい場合もあるかもしれません。対象によって違うと思いますし、家庭の場合とそれからひとり暮らしの場合と家族と一緒にいる場合とは違うし、いろいろ細かい問題があると思いますけれども、いずれにいたしましても全体の人数がこの数ではちょっと心もとないですね。これだけだったら、いま老人を対象に考えておっしゃっているんじゃないかと思うが、それにしても足りない。だから、私が考えるのは、家庭奉仕員というのは何もお年寄りだけを対象にするのではなくて、家庭にいるお年寄りもそうですし、それから病人の人のことも考えなければならないし、障害者の人のことも考えなければならない、そういうとにかく非常に家族の人たちの時間と手間と労力というようなものがそのためにとられて、非常に本人にも気の毒だし、家族も大変というのを何とかカバーして、生きがいある生活をということになるんだと思いますから、もう少し思い切ってこの数をきちっとふやしていただくように考えていただけないかというふうに要望しておきたいと私は思います。いまは御意見を聞いたり議論する時間がございませんので、それは要望しておきたいと考えるわけでございます。  それから、いまの生活保護基準の格差の問題ですが、私がお尋ねしたのに一つお答えいただいていませんので、それをお答えいただきたいのは、一九八五年までに仕上げてしまうということができるかどうかということです。
  149. 金田一郎

    ○金田政府委員 先ほど申し上げました中央社会福祉審議会からの意見具申におきましても、いつまでにということは言われておりません。  ちょっと細かくなるかもしれませんが一言申し上げてみますと、ここで言われておりますのは、食料費については男性の支出が上回っているわけでございますが、その食料費の割合というのは、全体に占める割合は年々低下いたしております。食料費以外につきましては、女性の社会的進出や生活実態の変化によりまして、被服費とかあるいは理容衛生費等で大幅に男性を上回っております。その結果、その格差が逐年縮小してきたわけでございますが、審議会におきましても、今後ともこの格差は縮小するであろうと言われておりますので、私どもとしては実態を十分調査いたしましてこれに対応してまいりたいと思います。
  150. 金子みつ

    金子(み)委員 対応していただくのは結構なんですけれども、条約批准等のお約束事がありますから、一九八五年までに格差のないように努力していただきたい。これも要望として申し上げておきたいと思います。  あと持ち時間は五分になりました。五分間で何ができるかということなんですけれども、一つどうしても伺っておきたいと思うことがありますので、それを聞かせてください。  それは四ページになりますが、国民医療の確保の問題でございます。国民医療の確保というのは国民の生活を守るために大事なことには間違いないことなんですが、この中で、いろいろ申し上げると時間がかかりますから端的に質問させていただきます。これは、地域の医療需要に沿った診療機能のネットワークをつくっていく必要があるということで、その一環として、そのことを内容とする医療法改正案も今度提案していくんだというふうに書かれているわけでございます。そういうことはもう当然のことなんですけれども、そうすると、現在無医地域がまだ何千カ所かありますし、それから無医地区で医者が手に入らないために無理をして医師を手に入れますね、村の診療所などが。その場合に、日本の先生方は行ってくださらなくて、韓国の先生だの台湾の先生だのが行ってくださって、それで済ませているというところもずいぶんあるようでございます。だけれども、日本ではそういう地域を解消するために自治医科大学というものができたんじゃなかったんでしょうか。自治医科大学の卒業生が僻地へ行くというのは一つの目的になっていたと私は理解していましたが、それは間違いだったのかどうかというのを確かめさせていただきたいのと、自治医科大学の卒業生がちゃんと目的どおり僻地へ行って勤務をして、そして無医地域を減らすことのために効果を上げているのかどうか。そのことがなくて地域の医療需要に沿った診療機能のネットワークなんてできっこないと思いますが、その診療ネットワークはどんなふうにつくろうと思っていらっしゃるのか、聞かせていただきたいと思います。
  151. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 まず無医地区について申し上げますが、これは自治医科大学はもちろんそういうことを一つの目的といたしておりますが、自治医科大学だけではなく、その他、修学資金の貸与でありますとか僻地勤務医師の紹介あっせん事業でありますとか、あるいは無医地区を単に点としてとらえるのではなしに広域圏としてとらえまして、いわゆる僻地中核病院としてこの無医地区をカバーしようというふうな考え方でありますとか、いろいろな総合的な施策の上に立ちまして、こういった無医地区の解消策を図っていくということでやってきているわけでございます。  確かに先生指摘のように十分成果を上げているとは申せませんが、私どもとしてはこういった長年にわたるいろいろな施策がだんだんと効果を上げてきているというふうに考えるわけでございます。  それから、ネットワークづくりということにつきましては、単に無医地区だけではなしに、地域における医療の諸施設あるいは医療のマンパワーというふうなものをできるだけ機能的に連携して、これはもちろん先生は専門家でございますから私どもよりもお詳しいわけでございますが、そういったものをできるだけ機能的にやっていこうというふうな考え方で、このネットワークづくりにつきましても、大変むずかしい問題でございますが、私どもとしてはこれに全力を傾けていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  152. 金子みつ

    金子(み)委員 時間がなくなりましたので議論することができませんけれども、きょうは何となく落ちつかない、はしょった形になりましたけれども、また別の機会を準備していただきましてこの続きをやりたいと思いますし、きょうお願いをしておきました、御要請申し上げた点については、今年度あるいは来年度から始めてぜひ完成させられるように準備を進めていただきたいと思います。ありがとうございました。
  153. 稲村利幸

    稲村委員長 平石磨作太郎君。     〔委員長退席、牧野委員長代理着席〕
  154. 平石磨作太郎

    ○平石委員 わが国の社会保障制度というのは、そのときどきの社会情勢、そして社会のニーズに応じまして、各制度が他制度との整合性といったことには余り考えることなく、いわば総論のない各論としての制度が発展をしてきた、こう言っても過言ではないと思うわけであります。  そこで、いま焦点になっております年金でございます。この年金制度もまさにその一つだ。そして、今日まで八つの制度がそれぞれの経緯と背景を持ちながら発展してきたわけでありますが、そういう年金制度が将来高齢化社会に入るに当たって、老後の保障としてのいわゆる年金制度の機能が果たし得るかどうか、こういったまことに長期にわたっての差し迫った問題としていま政治の課題に上がってきたわけです。そういったことが臨調におきましても取り上げられ、そしてそのことが閣議の決定にまでなってきたわけであります。言ったところで、厚生大臣は、そういった大きな問題を抱え、課題として日程に上がった年金担当大臣として任命を受けておるわけです。  そこでお伺いをしてまいりたいわけでありますが、過日の新聞等の報道によりますと、この閣議決定の中の文書にございますが、「当面、公的年金制度全体の再編・統合の第一段階として、国家公務員共済組合と公共企業体職員等共済組合の長期給付制度の統合に関する法律案を次期通常国会に提出する」、今国会に提出ということが昨年の九月二十四日に決められたわけです。それに基づいて現在準備が進められておる、こういうことを新聞その他でお伺いするわけですが、特にこれを所管としてやっておられる大蔵省あるいは自治省といったようなところが、当面の問題として第一段階としてやっておるわけですが、大臣はこのことを御存じかどうか、そしてどのようなお話を承っておるか、お伺いをしたいと思います。
  155. 林義郎

    ○林国務大臣 私は厚生大臣に任命されますときに、年金問題を担当しろ、こういうことで、先ほどお話を申し上げました辞令、年金制度の改革及び年金行政の一元化を円滑に推進するため行政各部の所掌する事務の調整を担当させる、という辞令をいただいたわけでございまして、厚生省の所管事項以外にこの仕事をやっているわけでございます。  事務は内閣審議室を中心にいたしまして、各省の担当の方々に併任をいただきまして、チームをつくっておるわけでございまして、現在の国家公務員共済組合と公共企業体職員等共済組合の法案につきましては、逐一その審議状況につきまして報告を受けておるところでございます。  なかなか進まないからとこういうふうな話もございまして、先般行革を推進する立場にあられる行政管理庁長官、それから当面この法案の主管大臣である大蔵大臣、それから内閣の元締めであるところの官房長官と私と四人で集まりまして、もう少しこの法案の推進方をやっていこう、いろいろと問題点があるがこの法案につきましてはさらに一層推進をしていこう、もしも必要であるならばまた集まってやっていこうではないかというふうな話し合いもしたところでございます。
  156. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣のお言葉にございましたように、種々の問題もありましてとこういうことなんですが、そこで大蔵省にお伺いをいたします。  いま法律案が出されるということで準備をしておられるようでございますが、いつまでに出されるのか、そのことを簡単に日だけおっしゃっていただきたい。
  157. 林義郎

    ○林国務大臣 大蔵省提出でございますから、本来大蔵大臣なり大蔵省から御答弁いただくのが筋かと思いますが、年金担当といたしましては、この法律は今国会でも非常に大きな法案でございますし、中曽根内閣といたしましては行革推進というものを旗印にして出てきた内閣でもありますから、できるだけ三月十一日に閣議決定ができるようにいま鋭意努力をしているところでございます。できるだけ早い機会に国会の方にお願いをしたい、こういうふうに考えているところでございます。
  158. 平石磨作太郎

    ○平石委員 新聞で見ますと、これはなかなか非常に問題が多いということがどの新聞を見ても出ておるわけです。したがって、お聞きしております大体タイムリミットとしては三月の十一日、これをめどにやっておられるようなんですが、それまでに果たしてできるのかどうかと私は心配をしておる。したがって、これがいろいろな問題点がある中で、特に国鉄共済に対していわゆる他の三共済において救援をするというところに大変な問題があるやに、新聞報道はなされておるわけです。こういったことが短時日のうちに間に合うということはとてもむずかしいんじゃないか、こういうような心配をするわけですが、電電公社もおいでいただいておるようでございますので、どういう点に問題があるのか、そしてこの法案に対しては電電公社はどういう態度で臨まれるのか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  159. 中原道朗

    ○中原説明員 お答えいたします。  私ども電電公社及び電電公社共済組合といたしましては、ただいま御提起されておられます国家公務員並びに三公社の共済組合の統合という問題につきましては、これによりましても、実は共済年金財政の長期的な安定というものがこのままだったらまだ期待できるというような内容では必ずしもないというような点、それから、公社職員あるいは共済組合員にとりまして、いまのところ直接かかわりがないというような理由による負担増あるいは給付水準の見直し等を必ず招来するということなど、幾つかの点がございまして、職員の納得を得る上でまだ多くの困難がこのままだったらある、そのように理解せざるを得ない状態でありますので、職員の納得を得られるような諸条件を早急に整備するということがまずは大事でなかろうかと考えております。  しかしながら、私どもといたしましても、将来的にすべての公的年金制度を統合して年金財政の安定化を図るということはきわめて重要な国家的な課題であるということについては十二分に理解しておるところでありまして、この方向に対しては最大限協力していきたい、いかなければならないと思っておるところであります。  先ほど申し上げましたように、諸条件いろいろございますものですから、これを何とか早急に整備していただき、まずはもって公的年金制度全体の統合一元化についての明確でかつ説得力のある、具体的なスケジュールを政府の御方針としてお決めいただくというところからスタートしていただければ、われわれ自身納得へ向けての端緒が開けるというふうに思っておりますし、協力もさらに積極的になし得るものだというふうに考えておるところでございます。
  160. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大変明快にお答えをいただきました。いまお話をお伺いした限りにおいても、とてもこれは短時日のうちに調整がつくとはちょっと考えられない。こういうことはもうすでに前々からわかっておったことだと私は思うのです。昨年の当初予算における予算委員会におきまして、私もこの点の心配がございましたので、時の渡辺大蔵大臣にこのことについては御提言も申し上げておったわけです。  そこで、いま御答弁にありましたように、いわゆる全体像、そして将来どんなになるんだといったようなことが見えないので、これについては組合員の説得ということが大変困難だというようなお話でございました。この新聞にもありますが、「救援側は一方的負担増に怒り」こう書いております。それから「年金改革の全体像示せぬ政府」こういうことがタイトルに出ておりますので、いままさに皆さん方からそれぞれお答えいただいたことが、この新聞に出ておるとおりのことなんです。  そこで担当大臣として、「全体像示せぬ政府」、私は、この全体像を示さない政府の態度が、この人たちを説得ができないというか、まず第一段階のこの国鉄等三公共と国共、いわゆる四共済における統合が第一段階において行き詰まる、足並みがそろわない原因である、こういうように思うわけですが、大臣はどのようにお考えか。
  161. 林義郎

    ○林国務大臣 いま御指摘のように、国家公務員共済組合法と公共企業体職員等共済組合法との一本化につきましては、大蔵省を中心に所要の調整を進めておるところでございますが、御指摘のように、年金制度の一元化の全体のスケジュールがおよその姿でも示されなければならないという要請が、関係者の間に強いことは私も承知しておりますし、またこの辺はごもっともなお話だろうと思います。  現在、公的年金制度調整連絡会議というのがございますから、その場におきまして事務的に折衝を進めさせておるところでございますが、今国会にこの一本化法案を円満に提出ができるように、年金問題担当大臣としても最善の努力をいたしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  162. 平石磨作太郎

    ○平石委員 努力はそれはせねばいかぬ、大臣努力はもう最初から、大臣がおっしゃるとおりです。問題はどこへ努力していくかという全体像なんです。どこへ努力していくかという全体像がないと、皆さん方が足並みをそろえることができないのだ、ここが問題なんです。したがって、私はここのいま読み上げたところの統合の第一段階としての閣議決定、しかもこれは「今後における行政改革の具体化方策について」という閣議決定なんですね。このことから年金統合というものが出てくる。私はそういう第一段階で、いまそれぞれお答えをいただいた——これは専売公社にも聞いてみたい、いろいろ聞いてみたいのですが、時間の都合で代表と言ったら悪いのですけれども電電に来ていただいておるわけですが、いまここでお話をお伺いするだけでもそういう問題が出てくるわけですから、大臣、全体像を示さないとこれはなかなか出発がむずかしいのじゃないですか、こうお聞きしておるわけです。その全体像は示せるのですか、示せないのですか。
  163. 林義郎

    ○林国務大臣 先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、現在事務当局で公的年金制度調整連絡会議の場においてずっと話を詰めさせておるところでございますので、せっかくいろいろな問題がございますから、この場におきまして、いろいろな各年金の御担当の方々に集まって話を詰めていただくということが一番いいことではないか、そういったことで事務的な折衝を見守っているというのが私のいまの立場でございます。
  164. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういう協議会で全体像の煮詰めをしておる、そして大臣は、それに基づいてのことになるので見守っておる、こういうお話しでございますが、これはさっきからお話しをしておりますように、第一段階の法案に間に合うかどうか。連絡協議会においてそれができない限り電電公社はどういう態度をとられるのか。そして、大蔵省の方が進めておる準備、これはそれまでに片がつくのかどうか。見通しについて電電公社からお答えをいただきたい。
  165. 中原道朗

    ○中原説明員 お答えいたします。  まだ必ずしも日にちがないわけでもございませんので、私どもといたしましては、できる限り明確な形で、それがどういう形であるということは、必ずしもこれでなければ困るとかなんとかということはございませんけれども、私どもが決断を下すに十分な形で何らか決定の方向に向けてサゼストといいますかアドバイス、あるいは時日をいただければ非常にありがたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  166. 平石磨作太郎

    ○平石委員 最後の詰めというようなわけにはいかぬと思います。これは大変むずかしい問題でありますし、一刀両断的に片のつく問題でもありません。それぞれの経緯等もありますし、それから、制度が発足以来いろいろな背景と沿革を持ってきております。そういう中のものを直ちに否定をしてしまうということもどうかと思う。そういうこと等を考えてみますと、一概に一刀両断、先ほどの大臣答弁にもありましたが、権限でもって抑さえつけて云々ということもなじまない一つの仕事であろう。だが、それかといって、これはただ話し合い話し合いというようなことだけでもなかなか仕事が進まないというようなことにも相なろうかと思うわけでして、実際的な一つの考え方、事の進め方、そういういろいろなものを考え配慮しながら実際的に仕事を進めるためには、担当大臣としては責任だけを負う、そうしてそこにはいわゆる調整権限すらないのだというようなことで果たして進むかどうか、これまた心配だと私は思うのですね。したがって私は、担当大臣として、そういったむずかしい問題を権限事項でもってどうのこうの両断的にはできないけれども、話を進める一方には調整権限的なものを持たないと、それぞれ所管担当大臣がおるわけですから、そこでいろいろな話が出たとき、ああ、そうですかそうですかと言うて持ち回りで話を聞いて回るだけでは、私はこの大きな仕事はできないと思いますよ。そういう意味で大臣はどうですか。自分が責任だけ負うて、そしてそれを調整する権限すら与えられていないということで果たしてできるかどうか、お答えをいただきたい。
  167. 林義郎

    ○林国務大臣 調整権限を持たないからできない、こういうふうな話では私はないと思いますし、先ほど来電電公社の方からも御答弁がございましたが、基本的な考え方で一元化をしていかなければならないということについては全く共通の認識を持っていただいておるわけでありますから、その共通の認識の中でいろいろなことをやっていかなければならないと思うのであります。  平石議員御指摘のとおり、各年金にはそれぞれの年金の歴史がある、またやり方、細かなことになりましたら大変ないろいろな差別もあることでございますから、そこを権限でもってばしっとやるとか調整というような形でやるような話よりは、むしろ私は、そういった形で、話し合いを通じてできるだけ納得をしていただいた上でやっていくという形の方が望ましいのではないだろうかぐらいにも思っているところでございまして、今後とも、先ほど来申し上げましたような当面の目標に対しまして、年金担当大臣として精いっぱいの努力を傾ける決心でございます。
  168. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大臣のそのお話しはそのお話しとして承っておきます。  そこで、こういう政府の行う公的年金というものについては、これからは一つの整合性を求めながら、財政の安定、それからいろいろな格差の解消といったようなことが、これからの統合の一つの考えていかねばならぬ条件だと思うのです。そういうものを条件として一応整理をしながらそして統合に持っていく。これにはいろいろと成熟度の違いもありますし、また財政状況の強弱の問題もあります。いろいろの問題がありますが、いま第一段階でやっておるような形で、そういうそれぞれの保険が持つ財政事情の強弱の問題等を一切のけて、ただ集まりなさい、統合いたしましょう、これでできますか。また話がもとへ戻るのですが、私はこれを一つに合わすには、いま言ったような成熟度の問題や財政事情の問題等もあるから、積立金等のあるところとないところとあるから、統合の条件を整えてその条件の上に集まっていただきたい、こういうことを考えないと、努力します努力しますということだけではとても話が前向きにならない、私はこういう感じがするわけです。集まる一つのとまり木、土俵というのをつくる必要があると思うが、いかがですか。
  169. 林義郎

    ○林国務大臣 平石議員の御質問にお答え申し上げますが、土俵をつくる、まあ申し上げますならば、やっといろいろなところの方々がいま土俵に上がってやっていただいておるのが公的年金制度調整連絡会議の場だろう、こう思うわけでございまして、そこで皆さん方が——私も先生も全く同じで、いまの年金についてはそれぞれの財政基盤の違いもございます、また制度間の格差もございます、それからその他いろいろな問題がございますから、そういったものを腹蔵なく話し合いをしてやっていただくことが私は一番大切なことだろうと思っていますし、そういったものを通じまして、とにかく一つの方向にまとめていただくということでいまお願いをしておるところでございますし、何とかまとめなければならぬというお気持ちは皆さん持っておられるようでございますから、そういったお気持ちの上に立ってこれからも努力をしていただきたい、こういったことを私も考えておるところでございます。
  170. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私ども公明党が、党のことを言って申しわけありませんがお許しをいただいて言いますが、五十一年に福祉のトータルプランを出しました。その中で、年金については一応二階建て年金、基本年金というものを下につくって、その上に現在の八つの保険がそれぞれ上に上がっていただく、こういう二階建て年金構想を発表したわけです。その後、社会保障制度審議会におきましても、そういった方向性が総理大臣に対する建議として出てきました。完全に一致はしておりませんけれども、あちこちのそういった研究団体あるいは政党等におきましても、いま言ったような下に一つの土俵をつくるということについては、ある程度もう国民的なコンセンサスができたのではないかというような気がするわけです。したがって、全体像をつくる一つのよすがとして、私は大臣にいま申し上げておるわけなんです。  それはどういうことを考えたかと申しますと、一応いままでの歴史がありますから、これをただ壊してしまって一つにして、そして一本化してしまう、これでは余りにもいままでの経過というものをも否定をしてしまうことになりますから、そういう手荒なことはしなくて、基本年金をつくり、その上に二階建てとして存続をさせていく、こういうことを構想として発表したわけです。私は、こういったことが一つの集まる条件ではなかろうか、こういう気がするわけです。そういうようなことをそれぞれの機関等でも出しておりますが、ここに臨調の出した基本答申の中にも、年金制度の改革として出ております。「全国民を基礎とする統一的制度により、基礎的年金を公平に国民に保障することを目標としながら、次のような方向で改革を進める。」「公的年金について、その公平化を図るとともに、長期的制度運営の安定強化を確保するため、被用者年金の統合を図る等により、段階的に統合する。」こういう臨調のいわゆる基本答申があるわけです。この臨調の基本答申も、これは一つの二階建て年金を構想しておるのではないかというような気がするわけです。その基本答申を受けての今後における行政改革の具体化方策について、これは抜粋ですが、その閣議決定が五十七年九月二十四日に出てきておるわけです。そして年金担当大臣をつくった。  したがって私は、この経過から考えたときに、全体像としての一つの絵柄というのはいわゆる二階建て年金じゃないだろうか、こういう気がするわけです。大臣、どうですか。お答えができるかどうか、できる範囲でひとつお願いしたいと思います。
  171. 林義郎

    ○林国務大臣 平石議員の御質問にお答え申し上げますが、私も公明党の方で年金制度の将来構想について発表をしておられることは承知しております。こんな厚い本で出しておられましたから、私もその当時に参議院の方からいただきまして、読ませていただきました。大変おもしろいと申し上げたら——大変勉強された御提案でございますし、こうした物の考え方というのは、先ほど来お話がございましたようなところでも、二段階にするとかいうようなお話は、あるいは共通したものかとも思うところでございます。  ただ、現在、社会保障制度審議会の中の厚生年金保険部会にお願いいたしまして、いろいろな角度から御議論を賜るという形にして、いま鋭意検討をしているところでございますので、そういった場におきましても、当然にこういった物の考え方というのは御議論をしていただいているものだというふうに考えておりますし、そういった形で、政府の方の部会の審議を待って、厚生省案として八月ごろにはまとめてまいりたい、こういうふうなのがいまの私の立場でございます。
  172. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私どもの考えました、この基本年金をまずつくって、その上に、現在ある保険はいわゆる所得保障、こういう考え方になるわけでございまして、いわゆる被用者年金のものはそのまま上へ乗っていただいて、基本年金と所得保障、こういったものをプラスしたものによって国民に老後の保障をしていく。そして、当然老後については自分で考えねばなりませんから、それぞれの強弱のものが上へ上がっていただいて、そして自分の老後というものに、会社におる方は企業年金があればさらにその上へ自分で接いだらいい、個人年金があるならまたその上へ接いだらいい、こういう形においてみずから老後の設計もしていくのだ。そして、基本的な面においては基本的な年金として国が最低、ミニマムとして保障してあげる。その上は所得比例になる被用者年金が座る、企業年金が座る、個人年金が座る。全体像としてこういう形に行くべきではないか。そうすれば、いま何もかにもぶち壊して一本になりなさい、そして財政、強弱もプールいたしましょう、こういうことのみに走るような進め方は反対が出てきます。そういう財政調整も必要なことは私にはわかりますが、それのみに走るような拙速的な行き方をしてはできることもできない、私はこういう気がするので申し上げておるわけです。  そこで、さらにお伺いをしておきますが、年金全体像をつくるときに、まず、私たちの老後というのは、どんな時代が来るかはわかりませんけれども、一応老後だけは安心をして生活したいというのが人情です。そのためにこそ保険を掛けていっておるわけです。そのためにこそみんなで苦労しておると私は思うのです。そういたしますと、老後の年金というものは、一応生活のできる年金かどうか、どういうことを考えておるかを一言。
  173. 林義郎

    ○林国務大臣 平石議員の御質問にお答え申し上げますが、いま先生、公明党の案についてお話がありましたですね。私は聞いておりまして、大変リーズナブルなお話だと思うのです。考え方としてそうならざるを得ないのかな、こうも思うのですが、いろんな考え方がありますし、それから、総論はそうであるけれども各論は反対だというところもまた出てくるかもしれませんから、私はその辺は、先ほど申しましたように、審議会にお諮りをし十分な各方面の意見を聞いてやらなければならない。また、アンケート調査などということをやりまして広く有識者の御意見を求めたのも、いろんな意見が国民各層の中にありますから、そういった意見を十分に参酌しながらやらなければならないと私は考えておるところでございます。  それから、御質問の点に入りますけれども、年金というのは何でやるんだといえば、やはり老後の生活の安定が必要であるということでございましょう。だから私は、そういった老後の生活の安定を図るためにはどの程度のものがいいだろうかということも考えていかなければなりませんし、それからその方の貯蓄もあるでしょうし、資産もあるでしょうし、いろんなものがありますから、そういったものをどういうふうに位置づけていくのか、やはりその辺を考えながらこれから問題点の煮詰めをしていく段階ではないだろうか、こういうふうに思っているところでございます。
  174. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの大臣のお話の中に、資産のある方もおりますし、いろいろの面を考えねばならぬということも当然だと思う。  そこで、生活とは一体何が生活なのかという問題になります。非常に金のかかる生活をする人もおれば、あるいはもう非常につましい生活をしていく人もおります。だから、生活ができる年金といっても、何が生活なのかがわからぬ。そして資産のある方もおるんだから。  そこで、私は申し上げておきたいことは、一つの社会的な生活水準、やはりこういったものとのバランスをとったものにしておかないと、社会的な生活水準とのバランスのとれるそういう生活保障のできる年金にすべきではないか、私はこう考えるわけです。したがって、その点については大臣、全体像をつくるに当たっての条件を私はいま大臣にお聞きをしておるわけですから、そういった面でいかがお考えか。
  175. 林義郎

    ○林国務大臣 私は老後の生活の不安ということを申し上げたのでございますが、老後の生活というものはどういうふうな形で年金で見ていくかというのは、これは年金というのはやはり世代間の所得移転だろう、こう思うのですね。そうしたことからいたしますと、まあ非常に簡単に申し上げますならば、おじいちゃん、おばあちゃんと若い夫婦と子と孫と、こう一緒に住んでおる。そのときに、それじゃおじいちゃん、おばあちゃんだけ非常にいいもの食べてというような話にはならないと思うわけでございまして、社会平均としてやはり同じ程度の住宅の中におって一緒にやれる、ただしそれは若い方は交際費も要るでしょう、いろいろな形で活動されるからその費用もかかるでしょう。まあしかし、お年寄りになれば食べる物も少なくなるだろうと思います。それから、そのほかのいろんな社会的な出費というものもありますでしょうから、そういったこともいろいろ考えながらやっていかなければならないと私は思うのであります。  ただ、問題になりますのは、各個人個人の家庭で言いますとそうでありますが、同時にもう一つは、これから高齢化社会になっていきますと、お年寄りの数が非常にふえていくということもやはり考えておかなければならない問題ではないだろうか、こういうふうに思っているところであります。
  176. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間が非常に切迫しましたのであわてていきます。  そこで、年金は一応現在物価、いわゆるインフレ保障ですね。将来の年金についてもやはり物価、インフレについてはスライドをしていくんだ、これをやはり堅持しなかったら生活が保障できないと思うのですが、どうですか。簡単に言ってください。
  177. 林義郎

    ○林国務大臣 私は、インフレ条項というのはやはり年金問題については考えておかなければならないと思います。いまの制度をそのままやるかどうかというような問題もあるでしょう。あるでしょうが、やはりお互いの持っている資本主義社会というのは、長期的に見れば、やはり物価上昇の形でもって進んでいくというのは戦後の時代を通して一般的な傾向でございますし、そういった物価が非常に変動いたしましてそれによっていままで考えておったところの生活ができなくなるというのは、私は非常に老後に対する不安になるだろうと思いますから、これは老後の生活に対する不安を解消する意味におきましても一つの大きなポイントではないだろうか、私はこういうふうに考えております。
  178. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで四番目に申し上げておきたいのは、いままでの勤労者、いわゆる被保険者の期待権、既得権、こういったものを大きく阻害するような、破壊するようなことがあってはならぬと思うのです。私は、この期待権といわゆる既得権といったものについては尊重すべきであると考えるが、大臣、いかがでしょう。
  179. 林義郎

    ○林国務大臣 いまお話しがありましたように、既得権を尊重すべきだ、こういうふうなお話ですが、それぞれの年金に先ほど来お話しも申し上げました歴史がある、性格がある、いろんな特殊な事情がございます。その中で、それをそのまま全部既得権だということになりますと、これまたなかなか統合という話は現実問題としてむずかしいんだろう、こう思います。  しかし、全体の考え方から申しますならば、やはり既得権は原則として極力尊重するというのがたてまえではないだろうか。そういった考え方で調整をしていかなければ物事というのは進まない。全部ひっくり返してやれなどというようなことになったら、これはどうにもならぬことになるのじゃないか、まとまる話もまとまらないんではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  180. 平石磨作太郎

    ○平石委員 最後に、五つ目ですが、この公的年金というのは、さっきの大臣のお答えの中にありましたように、私的年金とは違った世代間の相互扶助であって、したがって、若い者が掛金を掛けていただいて、そして老後にいただくんだ、こういう世代間扶養ということが公的年金の一つの方式である、こういうことだと思うのですが、大臣のお言葉にもありましたが、いまなぜこんなことを申し上げるかといいますと、私的年金的な考え方で公的年金を眺めようとする機運が何かあるような気もしますので、それは明らかに違うんだ、そして将来像としてつくるこの二階建て年金、これもやはり世代間扶養であるということをはっきり認識をしておく必要があると私は思うわけです。これはさっき大臣もおっしゃったから、お答えは求めません。  そこで、こういったことを一つの条件というか、これからの全体像をつくる一つの考え方として、私は早く全体像をつくって、そして皆さん方が安心をして新しい年金制度に移行できるような、そして老後の生活が安心ができるように早く整えていかねばならぬ。それで、スケジュール等につきましても本日の質問で聞いてみようと思っておったのですが、スケジュールが抜かりましてもう時間がありません。  いずれにしましても、この基本年金というものをまず下に敷いて、これは国の責任においてひとつすべての国民に対して保障するのだ、そしてその上に、現行の被用者年金の期待権、既得権といったものを尊重をして所得比例年金として接ぎ足す、こういう形での全体像をつくっていくならばおおむね皆さんの同意を得られるのではないか、いろいろな問題はありますけれども、おおむねそれによって進むのではないかということを考えるわけです。したがってそういう立場で御質問を申し上げたわけですが、ひとつ大臣の決意と、これからのスケジュールをよく聞かなかったけれども、そういうことがあればそれも含めて決意のほどをいただいて、終わりたいと思います。     〔牧野委員長代理退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
  181. 林義郎

    ○林国務大臣 平石議員の御質問で、いまいろいろとお話を承りました。私も聞いておりまして本当にそうだろうなというところもずいぶんございましたし、そこまでいま言えるのかなという議論も実はあったわけでございまして、大変いい御提案でございますから、十分に尊重して私もこれから一生懸命努力をいたしたい、こう思っておるところであります。  年金という問題は老後の不安をなくすための一番大きな問題でありまして、それを単に私的な年金、私的な貯蓄であるとかそういう形でなくて、世代間の所得移転というようなかっこうでやるわけでございますから、多くの国民の方々の御理解と御納得をいただけるように、また、いま掛けておられる方の既得権をみだりに侵害するような話をしてもこれはなかなか御納得のいただけない話でございますから、そういった点には十分留意して、ぜひとも国民的な合意のできるいい年金制度をつくり上げるために一生懸命やりたいと考えております。  年金制度の一元化のスケジュールについて話せということでございますが、昨年九月にいわゆる行革大綱を決定し、五十八年度までに制度全体の改革の具体的内容、手順について成案を得ることにしておりまして、そのために私が年金担当大臣として指名されております。  もう一つ具体的に当面することを申し上げますと、国家公務員共済組合法と公共企業体職員等共済組合法との一本化の法律案を今通常国会に提出すべく、現在大蔵省を中心として政府部内において調整中でございますし、また、地方公務員等共済組合については、長期給付に係る財政単位の一元化を図るための法律案を今通常国会に提出すべく、自治省において作業中でございます。公的年金制度の大宗を占める厚生年金保険及び国民年金については次期通常国会、来年の国会でございますが、これに改正法案を提出することを目標に、厚生省におきまして鋭意検討中でございます。  これらの状況を踏まえつつ、全体の改革の具体的内容、手順について検討を進めてまいるというのが現在決まっているところのスケジュールでございます。
  182. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わります。(拍手)     〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 稲村利幸

    稲村委員長 塩田晋君。
  184. 塩田晋

    ○塩田委員 林厚生大臣に対しまして、厚生行政に対する基本的姿勢についてお伺いいたします。  国民の絶えざる努力によりまして、わが国の社会保障、社会福祉を行う厚生行政は毎年充実をされ、また発展をしてきておるところでございます。安心して老後が暮らせる、そして安定した生活、安全な生活、これを目指して福祉の充実が図られているということにつきましては非常に同慶にたえないところでございますが、御承知のとおり高齢化社会というものがもう進んでおります。そして、福祉の中におきましても、年金の関係、また医療の関係にもたくさんの問題が噴出をしてきているという中におきまして、社会福祉につきまして不退転の決意で厚生行政に臨んでいただかなければならない時期が来たかと思います。  中曽根総理の施政方針演説等を聞いておりますと、たくましい日本的福祉というような言葉が飛び出してまいりましたし、あるいは在宅福祉、これは従来からも言われているところでございますが、そういったことによってあるいは福祉が後退するのではないかという危惧も一部に持たれております。そうあってはならないのでございます。  福祉というものは後退は許されない、したがって前進あるのみだ。ですから、福祉は行き過ぎれば、ばらまきなりバラ色のいいことだけでは後退せざるを得ない時期が来るといけませんから、計画的に充実をしていくことが必要だと思うのです。後退をさせてはならない、前進あるのみだという中におきまして、その実現のためには計画的な充実が必要であると思います。  アメリカにおきましても、御承知のとおり、レーガン政権になりまして財政の思い切った改革方針が出ております。強いアメリカを目指しての軍事力の増強等の中で、共和党は福祉予算を切るべし、民主党がむしろ軍備拡張を抑えるべきだ、こういう論争が行われておることは御承知のとおりでございます。また、ヨーロッパの福祉の先進国におきましてもいろいろな問題が起こって、弱い病める社会というものも出ておることが指摘されております。そういったことをいろいろ考えますと、非常に複雑かつ困難な問題が山積をしているというのが今日の福祉の問題ではなかろうかと思います。  その中におきまして、林厚生大臣は通産省の御出身で、非常に合理的な物の考え方をされ、また非常に明晰な頭脳で、通産省におきましても敏腕をふるってこられた実績があるわけでございます。また、日本の今日の経済の発展は通産省が大きな役割りを果たしているという世界的評価もあるようでございますが、その中で働いてこられた林大臣、しかもその後政治家として、実力者として大臣になられたわけでありまして、こうい社会保障、厚生行政の大きな難関時局に際しまして、敏腕を期待しておるところでございます。  ところで、合理的そしてクールな考え方で問題を一気に処理されることを期待する反面、やはり不安があるわけでございます。人の命を預かるなり老後の生活なり、これは心の問題が相当あるわけですね。同じお医者さんでも、がんの宣告を受けた患者に対してお医者さんが冷たい手で診察をし、はい、次と言って、次から次へと送っていくお医者さんもあれば、がんを宣告されている人に対して、温かい心のお医者さんは、手を温め、やわらかい手で、温かい言葉をかけて、そして、またいらっしゃいというやさしい言葉をかける。そうなると、そのがんの同じ患者でも、前のお医者さんには絶対死ぬときの脈はとってもらいたくないという気持ちになります。後のお医者さんですと、この人こそ自分の命の最期までをめんどう見てもらいたい、脈をとってもらって死にたい、こういう気持ちになるものだそうでございます。  そこを林厚生大臣、温かい心で厚生行政、近代資本主義の合理性ばかりでない、やはり人間に対する尊厳、そしていたわり、やさしい心、温かい心で対していただくということが絶対に厚生行政を担当していただく際に必要だと思うのです。こういったことにつきまして、林大臣のお考えをお聞きします。
  185. 林義郎

    ○林国務大臣 塩田議員の御質問にお答え申し上げます。  御質問にお答えする前に、いまお話しを聞いていますと、私の分に過ぎたお話しを賜りまして、まことに恐縮に存じているところでございますし、塩田先生も大変優秀な、また大変勉強していられる先生でございまして、私もかねがね御尊敬申し上げていることをこの機会に申し上げておきたいと思います。  冷徹な合理的な話というものは、行政をやっていく上において、やはりその中で筋を通していかなければならないという点におきましては、私は必要なことだろうと思いますし、特にこの厳しい財政事情の中におきましては、やっぱり筋が通ったところでやらなければ、金の確保もなかなかむずかしいというのが事実であります。  しかし、厚生行政というのは、お話しがございましたように、やっぱり温かい心でやっていかなければならない。特にお話しに来られる方は本当に困っておられる方が非常に多いわけでございまして、私もそういった方々にはできるだけ温かくお迎えして、お話しも十分に聞き、そしてまた、できることなら何とかしてあげたいという気持ちで常に接するのが厚生行政の本旨ではないだろうか、こう思っているところでございます。  ちょっと余分なことになるかもしれませんが、実は私は大臣室に——この前大阪の循環器センターに行きましたときに、額が掛かっておりました。緒方洪庵先生の適塾というところに掛けてある、医者はおのずからの身を犠牲にしてもっぱら患者のためのことを考えて患者に対しては貴賤の別なくこれが十分仕えることをもって本義とすべし、という言葉がある。私は、これは医者だけではない、政治家としても、特に行政官としてはやはりこういった気持ちを持って当たっていくのが主旨ではないか、私はこういうふうに思って、大臣室にもこれを掛けているものでございます。
  186. 塩田晋

    ○塩田委員 林厚生大臣の、温かい心で厚生行政に当たるというお話を聞きまして、安心をするわけでございます。ぜひとも厚生行政、社会保障、福祉の問題につきましては、その心を首座に据えてひとつ当たっていただきますことを御期待申し上げます。  公的年金の関係でございますが、臨調の基本答申にございます「年金制度の改革」、これは「当面、国鉄共済年金について類似共済制度との統合を図る。」ということが出ております。もちろん不公平をなくしていくという点、これも書いてございますが、特に政府は「年金問題担当大臣を置き」という、これは林大臣になっていただいておるわけですが、「改革の内容、タイムスケジュール等について、早急に検討に着手し、昭和五十八年度末までに成案を得て、速やかに実施に移す」こういうふうになっております。これはもう御承知のとおり、昨年の七月三十日に出されました答申でございます。これを現在どのように検討し、進めようとしておられるか、お伺いいたします。
  187. 林義郎

    ○林国務大臣 塩田議員の御質問にお答え申し上げます。  御指摘がございましたように、昨年の七月に臨時行政調査会の方で答申が出まして、政府としましては、昨年の九月にいわゆる行革大綱を決定いたし、昭和五十八年度末までに制度全体の改革の具体的内容、手順等について成案を得るということにしておるところでございます。そのために年金担当大臣として私が指名されております。  具体的に申しますと、当面、国家公務員共済組合法と公共企業体職員等共済組合法との一本化に関する法律案を今通常国会に提出すべく、現在大蔵省を中心として政府部内において調整中でございます。また、地方公務員等共済組合については、長期給付に係る財政単位の一元化を図るための法律案を今通常国会に提出すべく、自治省において作業中でございます。次に、公的年金制度の大宗を占める厚生年金保険及び国民年金については次期通常国会、来年ということでございますが、来年の国会に改正法案を提出することを目標に、厚生省において鋭意検討中でございます。  これらの状況を踏まえつつ、全体の改革の具体的内容、手順等について検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  188. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、地方事務官制度についてお伺いします。  政府は、過去数年間何回も閣議決定をいたしまして、特に五十二年の十二月二十三日の閣議決定によりますと、厚生省の社会保険関係の地方事務官については、二年以内に廃止するということを閣議決定しております。その後もこれは五十四年十二月ですが、五十五年六月末をめどに結論を得る、事務官制度をなくする具体的な取り扱いをですね。その後も何回か了解、決定をやっております。これがいまだに地方事務官が廃止されていない。これはいかなる理由によるものか、どういう事情がございますか。
  189. 入江慧

    ○入江政府委員 社会保険関係の地方事務官の経過につきましては、いまお話しのありましたとおりでございますが、その後、政府部内で関係省庁で調整をいたしました結果、結局調整がつきませんで、今度の第二臨時行政調査会で御審議願っているところでございます。
  190. 塩田晋

    ○塩田委員 大体閣議決定は、一回やればこれはもう必ずやらなければいかぬことだと思うのですが、たびたび何回もやって、しかも行われていないということですね。それなら公務員の人事院勧告の閣議決定なんかもあれは撤回してもらいたいのですけれども、それはそれといたしまして、どうして閣議決定が実行されないで、なお今回の臨時行政調査会の中でも問題になってもたもたしているのか。行管はいらしてますか。
  191. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 先生御案内のとおり、昨年九月の臨調の基本答申におきまして、一般の機関委任事務につきましては新たな審議機関を設けて検討する、ただし、地方事務官という特殊な機関委任事務の問題につきましては、臨調において検討の上結論を出す、このように答申をいたしております。  臨調におきましては、一昨年の九月から部会で検討いたしておりまして、特に地方事務官の問題につきましては二部会、三部会の合同分科会を設けて結論を出し、昨年の十二月二十八日に両部会全会一致の結論を出したわけでございます。  基本的な考え方といたしましては、基本答申で出しました国、地方の機能分担の考え方に基づきまして、地方事務官を廃止した後、その事務を国の直轄でやるか、機関委任事務でやるか、事務の性格、実態に即して判断をする、その場合にできるだけ地方に移せるものは移す、こういった考え方で部会は取り組んでまいったわけでございます。  そういたしまして、特に社会保険関係の事務につきましては、社会保険事業の性格というものが、厚生年金、国民年金、政管健保等の事業は、全国の被保険者を一つの保険集団といたしまして、全国一律の基準によって保険料を強制徴収してこれを財源として給付する、いずれも国が経営主体の特別会計の国営保険でございます。したがいまして、経営責任は国が一元的に処理すべき事業である。地域性を加味する要素のない事務である。また、実際の事務処理につきましても、本庁と末端機関がコンピューターシステムでオンラインで直結されておる。ただし、全国一律の基準で処理されるべき事務であっても、地方公共団体限りで処理し得る事務は都道府県にゆだねる。したがいまして、無拠出の福祉年金裁定事務は地方にゆだねる。  さらに、先生指摘の年金行政一元化という点を基本答申で答申し、ただいま厚生大臣が取り組んでいらっしゃるわけでございまして、こういった観点からも、今後中長期的に年金行政一元化を円滑に推進するためにも、厚生所管の年金について、第一線業務の処理を都道府県に委任して事務処理主体を多元化することは適当ではない、こういうことで部会では明確な結論を出したわけでございます。ただいま調査会で審議中であるという段階でございます。
  192. 塩田晋

    ○塩田委員 いま臨時行政調査会から御説明がございました第二、第三部会の合同報告厚生省はどのように受けとめておられますか。
  193. 入江慧

    ○入江政府委員 厚生省といたしましては、今月中旬に予定されております臨時行政調査会の最終答申が出ました段階で、その趣旨に沿って対処いたしたいというふうに考えております。
  194. 塩田晋

    ○塩田委員 職員の組合はどのような態度でおりますか。これは自治労の中に入っている方と自治労以外の別の組合組織に入っておられる方とありますね。これがどういうふうになっているのか、今後どうなっていく見通しなのか、その主張はどうなのか、お伺いします。
  195. 入江慧

    ○入江政府委員 いまお話しのありましたように、職員の九割が組合を組織しておりまして、その九割の組合を組織している職員の中の九割がいわゆる自治労に加入しております。残りの一割が全厚生というのに加入しておりまして、前者の自治労は、身分を地方に移管しろという主張をしております。後者の全厚生は、国家公務員になるべきだという主張をしております。(塩田委員「見通しは」と呼ぶ)それは、今後とも組合の主張というのは変わらないのではないかというふうに考えます。
  196. 塩田晋

    ○塩田委員 組合の主張をよく聞いて、そういう方針であるならばよく話し合いをする必要があると思います。よくわかってもらわないと、強制的に九割の人が嫌々ながらやるようなことでは困りますからね。考え方としては、厚生省は、部会報告をそのまま受けとめて、そのようにしたいということでございますね。
  197. 入江慧

    ○入江政府委員 先ほど申し上げましたように、最終答申が出た段階で、最終答申の趣旨に沿って対処していきたいというふうに考えております。
  198. 塩田晋

    ○塩田委員 一般の会社、商社にいたしましても、いま各都道府県別に支店を置いているというよりも、各県各地にある支店のうち、九州なら九州の福岡にある支店を統括支店といいますか総合支店といいますか、そういう形にして九州全体を見ている、こういう例もあり、民間では各ブロックごとにあって県単位ではやってないことが多いと思うのです。やっているものもありますけれども、大体ブロック的になってきているという中で、ここでも統合社会保険事務所という構想を持っておられるようですが、これはブロック的にあるいは都道府県別に事務所を統合される、総括して見ていかれるということですか。
  199. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 ただいま都道府県別に統括社会保険事務所にするのかという先生の御指摘でございますが、確かに民間会社はあるいはブロックごとかもわかりませんが、とにかく先生御案内のように厚年、国年、政管健保合わせて年間約十一兆の保険料を徴収しておるわけでございまして、これは非常に膨大でございます。その他船員保険あるいは日雇い健保等々あるわけであります。したがいまして、このような膨大複雑な事務でございますから、管理のあり方として、都道府県単位に中央の統括社会保険事務所というものを指定いたしまして、そこで、ただいま知事部局でやっているものはそこへ移す、これが実際的なことではないか。検討の結果、そのような部会結論に達したわけでございます。
  200. 塩田晋

    ○塩田委員 私は都道府県制度自体に現状においては問題があると思うのです。明治維新で廃藩置県のときにできた都道府県というものはほとんど二百万以下で、東京も新潟も一番大きい県だったわけです。そうして少ないところも五十万くらい、鳥取だったわけですね。平均化しておる。しかも、大体交通事情とか通信とかそういった事情で都道府県を置かれたと思うのです。鳥取県の方には悪いですけれども、いまや東京の一つの区に当たるようなところの県になって、格差ができているわけです。そういった現状からいって、せっかく全国統一的にやりながら各県ごとにまたというのはどうかと思いますので、これは意見としてその点の御検討を申し上げておきます。  そして、県に残るものも出るものもまだあるわけですね。そうすると、従来は県でもって一体化してやっておった行政がまた離れますから、労働関係においては連絡協議会を置くということをはっきりうたってありますけれども、厚生の場合は緊密な連携措置をとるというだけで、はっきりしたそういった連絡協議体制、機関というものも言っておりませんけれども、これはどういうことですか。
  201. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますが、社会保険関係は大部分が国の方へいくわけでございますが、国と県との間で具体的に事務が問題になりますのは、国保の医療機関に関する指導監督及び行政処分、それから健保に関する医療機関の指導監督及び行政処分、この点でございます。したがいまして、指導監督する場合、また行政処分する場合は相互に一緒になって、あるいは一つの計画のもとによく連絡をとり合いながらやればできる事務である。労働省関係はかなり連絡協議会というものを設けてやらなければならない関係にあるかと思いますが、厚生の関係は比較的そのような連絡だけでいくのではないか、このように実態判断いたしました。
  202. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、この厚生省関係の地方事務官につきましては、過去長い歴史がありまして、廃止が決まり、閣議決定もし、また臨調でやらなければならないと、臨調ははっきり廃止、厚生事務官とすると書いてあるのですね。いまいろいろな問題がありますが、これは処理しながら早速に解決するというお考えかどうか、お伺いします。
  203. 林義郎

    ○林国務大臣 いま塩田さんの質疑を聞いておりまして、この地方事務官制度というのは、戦後の新憲法ができて地方自治法ができたときに最初にできた制度でございまして、もう長いこと問題になっておった制度でございます。  今回のこの臨調答申が、いま第二部会第三部会の合同報告という形できわめて明確に割り切ったお話が出ておりますし、本答申という形で御答申をいただきますならば、私もその趣旨に沿って最大限の尊重をしてやらなければならない。と同時に、先ほど塩田先生からお話がありましたように、いろいろな問題がございますから、そういった点につきましても万遺漏なきを期したい、こういうふうに考えております。
  204. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、厚生省関係予算の中に盛られております保健センターについてお伺いします。  これの設置の目的。そして、どんな役割りを地域で果たすのか。これは老人保健の関係あるいは医療保険の関係がありますね。それから、大体どれくらいの規模で設置をしていっているか。それから予算補助。それから既設、すでにつくった数はどれくらいか。それから各地域に配置しておりますが、その配置の基準とか方針、そういうものはどうか。大体どれくらいまで数をつくっていくか、そういう目標。それから保健所というものとの関係はどういうふうに考えておられるか、保健所との連携をどう考えておるか。これらを簡単に言ってください。
  205. 三浦大助

    三浦政府委員 市町村保健センターと申しますのは、市町村が対人保健サービスをする際の活動の場とお考えいただければ結構だと思います。したがって一つの箱でございまして、その中で健康教育、健康相談あるいは健診を行う場所というふうに御理解いただければいいと思います。  それから、市町村保健センターにつきましては、これは地域の人口に応じまして三百平米から八百平米、九十坪から二百四十坪くらいのものを私ども考えておるわけでございまして、これは補助率は三分の一でいま補助をしておるわけでございます。  この設置の方針でございますが、当面昭和五十六年の時点で三百九十カ所できておりますが、これを毎年百二十カ所ずつふやしてまいりまして、六十一年で約千カ所つくっていこうということでございまして、将来行く行くは全市町村に置きたいと考えておるわけでございます。したがってまだ数が少のうございますから、老人福祉センターとかそれに似たもののあるところは、最初の一、二年は避けて、なるべくないところに最初は設置していこう、やがて行く行くは全市町村に持っていこう、こういう方針であるわけでございます。  それから保健所との連携の問題でございますが、これはもう当然保健所、市町村が有機的な連携を保って対人保健サービスをしていかなければならないわけでございまして、市町村保健センターという場所で有機的な連携を保ってやっていきたいということは、常々私ども都道府県の方にも申し上げているとおりでございます。
  206. 塩田晋

    ○塩田委員 老人保健法が成立して、地域医療体制あるいは病気の予防、保健、四十歳以上の者の健診、こういったものを面の広がりでやっていっていただくためにも、これは早期に計画的に設置をしていっていただきたい。しかも、すでにある保健所との連携を密にして進めていっていただきたいと思います。  次に保険医療費の問題でございますが、不正請求の徹底的排除、これは当然のことでございます。その適正化のために行われたと思うのですが、先般のこの改定の影響、病院に対してあるいは個人開業医等に対してどういう影響が出ていると厚生省は把握をしておられるか、このことにつきまして簡単に概略お答えください。
  207. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えを申し上げます。  私ども五十六年六月と五十八年の一月、二月、これで薬価基準の改正と診療報酬の改定をやってきたわけでございますが、この改定の影響率は、全体としては私どもとらえておりますが、個々の医療機関について、あるいは病院、診療所ごとに影響率ははじいておりません。  ただ、私どもいろいろな自後の統計によりまして見てみますと、上がったところもございますし、また下がったところもございまして、各医療機関の薬剤の使用比率によってもこれは異なってまいりますし、また診療のパターン等によっても異なってくるものでございまして、一概には論じられない、こういうように思っております。  なお、五十七年六月の支払基金統計によりますと、病院に対する支払い額は前年と比べまして七・五%伸びております。それから診療所に対しましては五・八%、対前年同月比でございますが伸びておるところでございます。それから、公的病院につきましては病院経営収支調査というのを毎月やっておるわけでありますが、最近の公的医療機関の収支状況は落ちついておるというように私どもは統計上見ております。公的医療機関側におかれましてもいろいろな経営合理化対策をやっておられるのだろう、こういうように思っております。
  208. 塩田晋

    ○塩田委員 この問題、時間があればもう少しやりたいのですが、先に進みたいと思います。  いまの問題は個人病院で倒産しているところが出ている。これは放漫経営もあるというような答弁をこの前本会議等でいただいたわけですが、そればかりじゃないと思いますけれども、公的病院におきましても赤字が薬価等の改定で非常にふえて、地方公共団体が穴埋めをしている額がふえているということをよく聞くのですけれども、この辺の実態を、わからぬということですけれども、もう少しよく見ておいていただきたいと思います。  次に、あと五分しかありませんが、二問だけお願いします。ひとつ、簡単ですから回答していただきたいと思います。  医師の過剰問題です。現在の医師の数、人口当たりどれぐらいになっているか。それから今後どういう見通し、これは学校へ入っていっているわけですから、どれぐらいになっていく見込みか。過剰になるんじゃないかという、したがって医師の失業時代が来るんじゃないか。そのためには収入が減るか、収入を減らさないようにすると、医療費が医者がふえた分だけふえていく、そうでなかったら失業が出る、こういうことになりますね。こういう事態が予想されるがどうかという問題。それから、そういった状況の中で大量に出てくるものですから、粗製乱造じゃないかという一部の批判もあり、質的な問題がありますね。国家試験の状況はどうなっているか。ドロップした人たちはどういうふうになっていくのか。国家試験にいままで九〇%以上通っておったのがいまは七〇ぐらいですか、大分落ちていますね。落ちた人たちは、浪人もあるでしょうけれども、どうしていっているのか。それから卒業した後の問題、いろいろ医学が変わっていっていますね。変化し発展する中で、生涯教育というものをどういうふうに考えておられるのか。これは厚生省文部省とあわせてお答えいただきたいと思います。
  209. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 五十六年末で医師数は十七万人、人口十万対百四十五という数字でございますが、私どもの推計では、二十一世紀には十方対二百十になるというふうに考えております。しかし現在、私どもはかつて人口十万対百五十ということを目途に整備を進めてまいったのでございますが、現在において必ずしもこれが過剰であるというふうには考えられないと思っております。しかし、先ほど申しましたように二十一世紀に二百十になるといたしますれば、これはやはり、欧米等の状況を見ましても、これは少し多くなるのではないかというふうにも思うわけでございます。そういうわけで、これから私どもとしては、現在そういうふうに思っておりますが、毎々国会でも御答弁申し上げておりますように、研究班等でも御研究いただいておりますし、私どもといたしましても、文部省ともども、この点については非常に重要な問題でございますから、検討をいたしているところでございます。  それからもう一つは、医師国家試験の合格率が従来九〇何%が七〇%に下がっておるではないか、粗製乱造ではないか、またその後の研修等についてはどういうふうに考えておるかというお尋ねでございますが、医師国家試験につきましては、私どもは、医師試験の部会というところで非常にいろいろ御討議いただいておりまして、年々その試験の改善を図っているところでございますが、特に昨年から医師国家試験の改善委員会というのを新たに設けまして、斯界の権威者に集まっていただきまして、現在鋭意国家試験の方法につきまして御審議をいただいておりまして、近く中間報告もいただこうというふうになっているわけでございます。  また、臨床研修あるいは生涯教育等につきましては、すでに臨床研修につきましては二年の研修、また生涯研修につきましては国立で四カ所、公立で二カ所の地域医療研修センターというのを実験的に設けておりますが、これを拡大していきましてできる限り医師の生涯研修ということを図ってまいりまして、医師の資質の向上を図りたいというふうに考えているわけでございます。
  210. 塩田晋

    ○塩田委員 文部省、一言。
  211. 前畑安宏

    ○前畑説明員 お答えをいたします。  ただいま厚生省の方から御答弁ございましたように、私どもの方も、将来の医師の養成規模につきましては厚生省と十分御相談をさせていただきながら対処していきたい、このように考えております。  教育の問題につきましては、先生指摘のように次第に充足の時代に入るわけでございますので、私どもといたしましては、いろいろなたとえば人口の老齢化であるとか医療水準の高度化であるとか、こういった社会的な要請にこたえ得るすぐれた医師の養成という観点からなお充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  212. 塩田晋

    ○塩田委員 最後に一問だけお願いします。  中国残留日本人孤児の問題でございます。これは、遅きに失したためにいろいろなむずかしい問題が起こっております。しかし、日中国交回復後、日中永遠の友好平和の達成の中で最大の努力をして、早くこれは帰さないといけないと思います。これは日本人です。いまや孤児と言っても四十歳前後で、孤児と言うのはどうかと思われるぐらいな関係になっておりますが、いずれにいたしましても日本人です。しかし四十歳にもなればもう、思想も生活習慣もあらゆる面で中国人になり切ってしまっているという方ですね。私も昨年、中国東北地方へ行きまして孤児の人たちに会いました。一刻も早く帰りたいという、すごく日本を毎日夢を見て、日本人と見たらみんな跳んで集まってくるのですね。政治的な社会体制の問題でそう一挙にいかない問題がありますけれども、非常に深刻な問題です。非常に苦労しているのですよ、ある段階におきましては。中国も過去にはいろいろありましたからね。この時期に早く帰してもらいたいという切なる願いです。これを何とか早く達成してあげたいんです。もう向こうの養父母も亡くなっておりますし、こちらの実父母も亡くなっていくという中で、いまのような百二十人、また来年度予算で百八十人といったようなことでは、八百四十五人と言われましたけれども、これは実際はもっと多いんですね。中国と政府ではっきりと認めたのはそれだけですが、これは早く帰してもらいたい。こちらの受け入れ体制の問題だと思うのです。一刻も早く帰して、二、三年のうちにはこれを早く解決していただきたい。そして、いま申し上げましたようにセンターをつくられる。これも先ほどお話しがございまして、内容は聞きましたからお聞きいたしませんが、これはもっと充実していただきたい。四カ月ではなしに、私は半年なり一年は必要じゃないかと思うのですが、そういう内容を充実していただきたい。ボランティアの人たちもこういうふうにして世話しておられます。こういった人たちの意見もよく聞いて、定着対策を十分にとっていただきたい。  もう一つ最後に、これはお願いでございますが、永住帰国者、これは親捜しに来て、捜した人は帰ってきますが、捜せなくて、見つからないでまた帰っている人が多いわけですね。この人たちでも、肉親がいなくても日本人ですから、帰りたいという人は帰してあげてほしい。そして、永住を希望する人は帰してあげたい。その配偶者、子供、場合によっては養父母をこちらに帰すことですね、それも考えていただきたい。それから肉親のいない場合、けれども日本人であることは中国の社会でははっきりしているわけですね。そういうふうに認めて処置していますからね、中国政府は。この肉親がいない場合でも、親捜しに来て帰った人だけではなしに、どんどんそういう人を、東南アジアの難民も受け入れる状況ですから、これは日本人ですから、肉親がいない場合でもこれはもう帰してもらいたい、このことをお願いします。これは旅費等もつけ、生活も、そして教育、職業訓練、言語等も十分に対策をしていただきたいということを要望いたします。
  213. 林義郎

    ○林国務大臣 中国残留日本人孤児の問題は、実は先生、いまも向こうからやってこられてやっているところでございまして、わが省といたしましても、一生懸命お手伝いというかをやっているところでございます。  中国国内で三十七年という時間を経過されたわけでありまして、私も今週の月曜日にごあいさつに参りましたが、私がごあいさつをしている間、涙を流して聞いておられるわけであります。私も、ごあいさつをしながら本当に胸の詰まるような思いがいたしたわけであります。  このような境遇の中の孤児の問題、さらにはこの御両親というのはだんだん老齢化していかれるわけでありますし、また亡くなられる方も出てくるわけでございまして、在日親族の心情や立場を十分に酌み取って諸般の対策は進めていかなければならないと考えておりますし、先生から御指摘のありましたような諸問題についても鋭意検討を続けていきたい、こういうふうに思います。  ただ、この問題は中国側の全体のこともやはり考えていかなければならないわけでございまして、日中友好という基本的な枠組みの中で、一九七二年九月に田中元総理大臣が行って共同声明をされた中に、一衣帯水にあって永遠の関係があるのだ、こういうふうな精神をうたってきたし、中国に対し心からおわびをする、こういうふうなことも言っておられるわけでありますから、そういった精神を体しまして最大の努力をするのがわれわれの務めであろう、こういうふうに私は考えているところでございます。
  214. 塩田晋

    ○塩田委員 よろしくお願いします。  どうもありがとうございました。
  215. 稲村利幸

  216. 浦井洋

    浦井委員 単刀直入にお聞きをしたいのですが、二月一日から老人保健法が実施をされて、その直前に診療報酬改定、特に老人特掲診療料というものが設けられて、そこでここ数日間新聞をにぎわわせておるのですが、入院中の老人の患者の追い出し現象であるとか、あるいはお年寄りの患者の入院を拒否するという現象が各地で起こっておる。     〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕 そういう現象の中で、老人の患者と医療機関の中に一種のパニックのような状態が起こっておるということは、大臣もいろいろなところから聞いておられると思うのです。  私はその問題を論議する前にお断りをしておきたいのは、いま大臣委員長にお渡ししたメモですね、これは厚生省が十二月十日に中医協全員懇談会に提出をされた「老人病院に関する検討メモ」ということで、そこに書かれておる病院の分類の仕方が比較的使いやすいので、これをたとえばAランク病院と言えば基準看護病院、それからB、Cは略しまして、Dランク病院と言えば老人収容比率六割未満病院、基準看護病院を除く。E、Fというのは両方とも老人収容比率六割以上病院。Eがいわゆる許可病院であり、Fは許可外病院であるということで、一々言いおると舌をかむので、Aランク病院とかEランク病院というふうに言わせていただきたいと思います。  そこで、私がいろいろ聞き取り調査をやったりして注目しておるのは、E、Fランク病院でもそういう現象が起こっておるわけでありますが、Dランク病院でかなりな患者の追い出しとかあるいは拒否とかいうようなことが起こっておるわけであります。  そこで、私が調べたのですけれども、東京の足立区の柳原病院、これは訪問看護では全国的に非常に有名な病院でありまして、この委員会に設けられた高齢者対策小委員会参考人として出席をしてもらった増子医師という人が所属をしている病院でありますが、そこで調べたのであります。そこでは、ことしの二月中の外から持ち込まれた入院に関する相談件数が十五件ある。これは例月二、三件であるわけです。二件ないし三件なんです。その十五件の中で、どこから依頼されたのかあるいはどういう病院に入院しておって柳原病院に相談に来たのかという内訳を調べますと、Aランク病院からは二件であります。Dランク病院が十二件、E、Fランク病院が一件、こういうことであります。  たとえばその一件だけについて言うと、これはわれわれ医者の側から見ますと、ごく普通のケースでありますけれども、かなり困難なケースであります。七十七歳の男の人で寝たきり、脳卒中の後遺症があり、多少痴呆がある。食事の介助は必要だし、尿の失禁もある。家族は七十二歳の奥さんだけだ。いままでは六十床ぐらいの多少リハビリのできる病院に入っていたが、一月にその病院当局から余り治る見込みのない人は退院してほしいと言われて、奥さんが柳原病院に相談に来られた、こういう話がある。  それから、私の住んでおります阪神間のある病院の院長さんの話でありますが、ここは百四十床の内科系の病院で、大体Dランク病院に相当する。老人保健法が実施をされて、老人収容比率を何とか六〇%以下にしたいと院長は考えて、二十人余りの比較的長期にわたって入院してしかも退院しても何とか日常生活が足せるような人を見つくろって退院をお願いしたところ、十五、六人が退院をした。ほとんどが通院になったけれども、かえってまた病気が悪くなってUターンしてきた人も二、三人おる。そのかわり、おかげで老人収容比率は七〇%から四十数%になったということであります。  それから、東京の豊島区のある病院の話でありますが、九十床の、これはもう初めからEランク、許可病院を目指しておるところであります。ここでは一月以来、東京にはこういう言葉があるのでしょうけれども、生涯ベッドを幾ら持っておるか、生涯ベッドというのはいわゆる老人病院に入ってそのままそこに亡くなられるまで預かってほしいという意味ですね、そういう生涯ベッドを幾ら持っておるか、あるいは入院できないかというような他の病院からの問い合わせが殺到しておる。  それから、区として言いますと東京の北区では、老人のたらい回しが起こっておるという話であります。二十五病院ある中で、A病院は四カ所で、その他二十一病院あって、平均すると五七から五八ぐらいの老人収容比率である。そこで、六〇%を超えそうな病院は老人をほかの病院に回す。ところが回された病院も引き取れない。特養もない、家もない、あっても介護者がいないということで、区役所は救急車で強引に病院に運び込んで、行政の方は知らぬ顔をするし、病院の方は引き取らざるを得ないとか引き取らないとかいうような、さまざまな悲劇が起こっておる。東京の中野の区長さんでありますけれども、中野の区長に交渉しますと、そういうことは初めて聞いたとびっくりして、これから二十三区の区長会に申し入れをして、相談して都に申し入れるというような話があるわけであります。  それで、私がE、FあるいはDランクに相当しそうなところに電話をかけたり訪問したりしますと、私が電話をかけるだけで、あるいは行っただけで、向こうの方から先に、私の方は老人の追い出しはやっておりませんと言うて先手を打ってくるというような現象も、私自身が経験をしておるわけであります。  要するにD、E、F、特にDランク病院というのは六〇%の比率を下回らせることにいま躍起になっておる。  ところがよく考えていただきたいのは、このDランク病院というのは厚生省のデータによりますと三千七百あるそうですけれども、その大部分は大体内科系の民間中小病院です。そういうところはそれなりに地域の医療センターとして住民と密着をしながら、またときには行政の無理も聞いて、行政と協力をしながら何とかプライマリーケアにいそしんでおる、こういうところが大部分であります。そして、若い人あるいは急性の病気の人は大体大学附属病院であるとか少なくともAランク病院に行くということで、Dランク病院というのは技量が高くてもあるいは一定の評価を受けておっても自然に高齢者が集まる、特に大都会ではそういうことになっておるわけであります。だから、こういういわば日本の医療の第一線を支えておるようなところで、三千七百全部でこんなことが起こっておるとは言いませんけれども、かなり大きな混乱が起こっておるというのが私の結論であります。  それでは、基準看護病院であるAランク病院は平静かというとそうでもない。先ほどもそういう話があったけれども、点滴注射料金は下がるとか、あるいは長期入院の逓減方式が四区分から六区分になるとかいうようなことで、患者さんを収容しておいてもこれからは余りメリットがないというふうに短絡するわけですよ。それでその前に、D、E、Fのそういう病院から老人が押し寄せるのではないかというふうないわば恐怖におびえて、もう防衛態勢をとっておる。そしてD、E、F、特にD、Eというような病院から入院を依頼すると、病状を聞く前にその患者さんの歳は幾つですかというふうに聞いて、七十歳以上ですということになると断られるという現象がある。これは基準看護病院というだけでなしに、文字どおり最高峰の私立の大学附属病院でもそういう現象が起こっておる。  それから養護、特養老人ホーム、こういうところも困っておる。病人が発生して、これはもう特養でも置いておけないので医療機関に頼むということをやると、いままで引き取ってくれておった医療機関が断るという現象が老人ホームにも起こっておる。  まだある。今度は許可病院にしなければならないという一部分の病院がある。そうなると、そこではいままでよりも多少とも看護婦さんの手をそろえなければならぬということで、D、Eという中小病院のクラスのところでは看護婦さんの引き抜き合戦が行われる。こういうことも起こっておる。  きのう電話で連絡を受けたのですが、富山県では、これは私もよくわからないのですけれども、新庄病院というのがある。そこでは付添婦が七十二人おったのですけれども、三十二人がやめてくれということで首切りです。それから、これも電話連絡でありますけれども、流杉病院というところで付添婦が百五人おったのが、これも三十五人やめてくれ。ここは老人病院で老人ベッドが二百五十あるそうです。そこは基準看護なし病院ですからDあるいはEというようなところだろうと思うのですが、今回この許可病院になるために看護婦を八人に一人の割りで雇用した、そういう現象がある。それでやめてくれという理由は、老人保健法施行で許可病院になるので付き添いをつけるのが厳しくなるのでやめてほしい、こういう言い方であります。私もよくわからぬ理由でありますけれども、とにかくやめさせられておるのが現実の現象であります。  こういうような状態が連日新聞をにぎわしておりますけれども、一体これをどうするのか、一体どこが責任をとるのか、それを私はまず最初に聞きたい。  吉原さん、政策効果が早くもあらわれてきたのだというようなことで笑って済ませるような問題ではなかろうと私は思う。それはE、Fで多少の混乱が起こるのは皆さん方も予期されておったかもしらぬけれども、もう一つ上のランクのDランク病院で連鎖反応的に大きな混乱がかなり起こっておる。あなた方が予期しないような混乱が起こっておる。この責任は一体どうするのですか。
  217. 吉原健二

    ○吉原政府委員 けさほどもお答えしたわけですけれども、今度の新しい診療報酬について大変誤解がある。もちろん私どものPRといいますか、周知徹底についての努力の不足ということもあろうかと思いますけれども、大変な誤解があるというふうに私は思っているわけでございます。  まず第一に、基本的な考え方として、今度の老人の診療報酬につきましては、なるべく老人の方に症状に応じた適切な医療をやっていく、しかも入院の必要がなくなった場合にはできるだけ家庭で療養を続けていただく、そのことが老人御自身のためにもよいのではないかという考え方で、そういった方向に医療が進むようなことで診療報酬というものをつくったわけでございます。  先ほどから、老人の追い出し現象が大変大きくいろいろなところで起きているというお話しでございますけれども、私どもの聞いている範囲によりますと、追い出しというような現象が起きているとは私ども決して考えておりません。必要な入院は今度の新しい診療報酬でも十分やっていけるし、続けていくことができるわけでございます。ただ、病院にいることが家庭にとって楽であるからとか、費用がかからないというような理由で、ただ漫然と入院医療が続けられているようなケースが間々あったというふうに私どもは聞いております。そういった患者さんについては、やはりこういう時期でございますから、病院ではなしにできるだけ家庭で、あるいは場合によっては老人ホームで生活をしていただくということは十分あり得るかと思いますけれども、この老人の診療報酬制度によって必要な老人の入院医療が妨げられるとか、あるいは追い出しが始まっているというふうには私は全く考えていないわけでございます。  それからもう一つ、いま御指摘のA、B、C、D、E、Fという病院のうち、E病院ということになりますと診療報酬の面で何か非常に不利になるといいますか、下がるというふうな誤解があるようですけれども、決してそうではございませんで、老人を多く特に慢性疾患患者の方を中心に集めておられる病院は、こういった許可を受けられますとむしろ老人病院の経営の上でもやりやすくなる。それから診療報酬の面でも、ほかの普通の病院とは違った点数設定が認められておりますから、点数設定の面でも有利になる。老人を中心に、ほとんど老人だけを集めて病院を経営されている以上はこれからは許可を受けてやっていただきたいということで、そういうE病院という新しい病院の類型を設けまして、そこで医師や看護婦さんなりの基準というものも普通の病院と違った基準をつくり、許可をする、またそれに見合った介護職員といいますか、看護の補助者といいますか、そういった人も置けるようにする。寝たきり老人が多ければ、そういった寝たきり老人のための特別な点数設定も認めているわけですから、その病院の入院患者の方々の症状なり実態に応じた診療報酬を設定するということで、このE病院という考え方を導入したわけでございます。何か六〇%以上になるといきなり診療報酬で非常に不利になるというふうに医療機関にとられているとすれば、それはごく一部の医療機関で、私は必ずしもいい医療機関ではないような気がいたします。ですから、そういった点は十分調べまして、またこの新しい診療報酬の考え方というものを医療機関に十分徹底させまして、そういったことのないように、しわ寄せが老人の方に行くようなことにならないように十分注意をしてまいりたいというふうに思っております。
  218. 浦井洋

    浦井委員 誤解がある、誤解する方が悪いんだとか、何か混乱を起こしているのは悪い病院であって、いい医療機関は混乱を起こしておらぬ、老人を集めてやればE病院であれば経営がよくなる。議事録に残りますから、これは後世に残る発言だと私は思うのです。私は責任は明らかに政府にあると思うのですよ。医療も含めた老人保健、すべてがいままで医療にかかり、医療保険にかかっておったわけですよ。それを何も手を打たぬ。その間に、いま私が言ったようなDランク病院を中心にして市中の民間病院には確かに老人が殺到しますよ。病気があるわけですから殺到する。老人も多いし、高齢化しておるし。確かに一部には、そういう現象に目をつけて、花岡日医会長が言われるようなシルバー産業みたいなものができたことは私も否定しません。こういうのは感心しないと思います。しかし、今回のやり方というのは、こういうシルバー産業退治を名目にして、少なくとも非基準看護の民間病院を対象にして、善玉も悪玉もばさっと切るというような暴挙だと私は思うわけなのです。  もう一つ例をとってみますと、私のおります神戸の山手に昭生病院というのがあります。これは昭和初年に循環器専門の病院として生まれて、現在二代目が院長をやっている。専門の病院として技術水準も比較的高くて、市内でも一定の評価と尊敬を集めておる。しかし基準看護をとる余裕はない。ところが、循環器専門だから当然高齢者が多く集まる。だから、いままでの実績をずっとカウントしていくと大体六〇%すれすれだ。さっきも言いましたように、こういうところではかなり広い範囲にわたって地域の医療センターとして自治体のさまざまな依頼にもこたえる、言うならば福祉行政や医療行政の補完をやっている、そういう役目を果たしてきた。民間の中小病院として非常にユニークな役割りを果たしておる。ところが今回の措置で、これは大変だというふうな、それは吉原さんに言わせたら誤解かもしらぬけれども、そういうことで病院じゅうてんやわんやだ。  私は、悪徳病院を弁護する気はさらさらないわけですけれども、突然で、しかもドラスチックで、これは雑誌もそんなふうに書いてあるのですよ。病院関係者、患者、自治体、こういうところでは、むちゃだという声が圧倒的だということを私は強調しておきたいわけであります。  そこで、それならそれを一体どうするのですか。あなたはないと言われるのだけれども、その前に、大臣は一体どんな御所見ですか。
  219. 林義郎

    ○林国務大臣 浦井議員の御質問にお答え申し上げます。  今回設定いたしました老人の診療報酬は、基本的な考え方として、不必要な長期入院を是正していかなければならない。入院医療から地域及び家庭における医療への転換をできるだけ促進することが望ましいことではないか。お年寄りでも家庭で健康に過ごしていただくことが一番大切なことであるし、病院に行かないで、できるだけ通院でやれるところはやっていただいて、家族と一緒に住んでいただく方が望ましい姿であろう、そういったことで考えておりますし、老人保健法で言えば、その前に保健、いろいろなことを事前にチェックしていくとかいろいろなことをやっていこう、こういうことでやったわけでございます。これは、老人の必要な入院医療を制限したりむやみに退院を強いるという趣旨のものではないということは言うまでもないことでございます。  浦井先生の方は、何か大分御不満がある、こういうふうな話でございますが、朝日新聞なり毎日新聞なり、いろいろと投書が出ております。これはそれぞれの問題に親切にお答えを申し上げることが必要であろう。投書があったけれども、新聞に投書だけだということでなくて、投書がありましたものにはそれぞれ丁寧にお答えを申し上げる、そして御理解を賜る、こういうふうに私も言っておりますし、担当の方といたしましても、各方面に対しましていま申し上げました基本的な考え方に立って指導をしていく、こういう形でやっておるところでございます。
  220. 浦井洋

    浦井委員 大臣も通院であるのが望ましいと言われるのですけれども、その続きを申し上げましょうか。  たとえば先ほど申し上げた柳原病院の十五件のケース、一体どうなったかということをさらに追跡してみました。そうすると、十五件のうち、相談に来て一回来たきりでそのまま中断したケースが四件、家に帰ったのが五件、柳原病院に入院したのが一件、それからいわゆる老人病院待ち——待ちですよ、老人病院に入ったのでなしに。老人病院もなかなか入れないわけですから。老人病院待ちが五件。二、三カ月待ってくれ。特養に入れたのはゼロです。先ほど申し上げた阪神間の某病院の院長が、療養担当基準が出ておるので十条を見たら、自治体の長に通知せいということで、困ってその病院の存在する自治体に連絡したけれども、そんなことは知らぬ。東京の豊島区の某病院でも、区役所と交渉したけれども、いや、そんな人を家に帰したら大変だし、介護力はないし、われわれの方でもよう引き受けませんと言うてお手上げだ、こういうことだ。こういうような状態が起こるということは、専門紙の中ではかなり指摘されておったことなのです。だから予測されておるわけです。ところが、診療報酬改定だけは突っ走ってしまう、受け皿づくりは後回し、きわめて不十分だということで、当然社会局としても、公衆衛生局老人保健部などと事前に十分打ち合わせをして意見を中医協に反映しなければいけないわけでしょう。ある雑誌の座談会風の記事によりますと、この間、十一月から十二月の間、社会局は受け皿を押しつけられたらかなわぬので逃げ回っていた、そんな文章もあるわけです。社会局長、どうですか。
  221. 金田一郎

    ○金田政府委員 最初に、最後に先生のおっしゃった部分からお答え申し上げますと、社会局が逃げ回っていたという文章があるとおっしゃったわけでございますが、後ほど拝見いたしまして出所等を私もせんさくしてみたいと思いますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今回の措置が行われましてから、先般行われました全国の課長会議におきましても、老人保健法の実施に伴いまして老人病院を退院し、または退院することになる老人で、家庭でも適当な介護者がいない方が出てくることも予想されますので、そのような場合には、御承知のような老人保健事業あるいは家庭奉仕員の派遣事業等の在宅福祉対策を活用いたしますとともに、必要な場合には特別養護老人ホームへの入所措置を講ずる等、各地の実態に応じた適切な措置を講ずるよう指示いたしているところでございます。
  222. 浦井洋

    浦井委員 全くお役人の答弁でありまして、たとえば今度の老人特掲料なんかを見ましても、訪問看護が初めて顔を出したわけですけれども、三カ月間にわたって月二回限度で百点でしょう。だから、先ほど申した柳原病院では、区の単独事業として数年前から一回六千円で月二回か三回でしたか、それに都の単独事業としてホームヘルパー的な制度があるわけですが、それを上手に組み合わせてやっているわけなので、いまの今度できた訪問看護制度というのですか、その百点ではとても間に合わぬわけですよ。できぬわけですよ。大臣、わかりますか。だから、社会局長が在宅ケアあるいは特養ホームへ回しますと言われる限りは、その在宅ケアの体制を完備して、それから特養もベッドを十分に持って、その上で今度のようなドラスチックなことをやるべきなのだ。順序が間違っておると思う。だから私は大臣に、吉原さんはそういう追い出された老人はおらぬというわけですけれども、それなら本当におるのかおらぬのか、厚生省調査していただきたいと思う。そうして、それは調査した結果ですけれども、もしおればやはり緊急の措置をとるべきだと思うのです。確かに誤解に基づく部分があるかもわかりません。  私は兵庫県の県庁へ行って聞いてみた。国からは、この老人保健法に関して厚生省のいろいろなところからどんどん紙切れは来る。それを理解するだけで大変で、とてもE、F病院に対応する力はまだございません、もう三月一日からEランク病院の受付が始まっているのに、その申請の用紙さえもまだそろっておらぬ、きょうはもう三日ですけれども。こういう状況ですよ。だから早急にいま起こっている現象を調査していただいて、そうして緊急の措置をとるのと同時に、やはり行政は少なくとも本当の姿を、D、E、Fというようなランクの病院、できたらAランクの病院、こういうところにきちんと伝達をして指導をすべきではないかと思うのですが、大臣、どうですか。
  223. 吉原健二

    ○吉原政府委員 本当に追い出しというような現象があるのかどうかということにつきましては、私も、一部の都道府県、兵庫県も入っているわけでございますけれども、照会をしてみましたが、そういったようなことで入院が必要な老人が追い出されているような例は全くないと、都道府県はそういう返事でございます。私は都道府県のその返事を信用したいと思っておりますが、ただ、先ほどから申し上げておりますように、やはり医療機関の中には、この新しい制度の趣旨というものを十分理解しないまま、老人の収容比率が高くなったら大変なことになると思い込んで、老人の入院を何といいますか、拒否をしたりあるいは退院を強いるというようなことがあってはいけませんので、その点については今後とも十分よく見守っていき、また医療機関に対する指導というものを十分気をつけてやってまいりたいというふうに思います。
  224. 浦井洋

    浦井委員 県から報告を求めただけではわからぬですよ。初めからわかっておるのです。だから、私はわざわざ大臣に、ひとつこの問題について緊急の調査をやってほしいということを要請をしておるわけなんですよ。大臣、どうですか。
  225. 林義郎

    ○林国務大臣 浦井委員の御質問にお答えを申し上げます。  先ほど申し上げましたように、老人の健康というものを考えましたならば、家庭で病院に行かずにやるのがよろしいし、通院で片づくものならばそれで片づけてもらった方がよろしいし、またどうしても必要な方は病院に行かなければならない。いろいろな問題があるところにつきましては、特別養護老人ホーム等の組織もあるわけでございまして、私は、そういったことを素直に考えておるならば、たとえば特別養護老人ホームにいたしても、一年に百カ所というのですから、三日に一カ所ずつくらいはできておるわけでございまして、そんなに不足をしておるような状況だというふうには判断をいたしておりません。  二月一日から老人保健法の施行をいたしまして、たまたまその趣旨がよく徹底をしてなかったりなんかしているようなこともございますし、県なんかに聞きましても、そういったような話はないということでございますから、浦井先生の御指摘もありますが、私はもうちょっと事態を見てやってもいいんではないか、こう思っているところでございますが、さらに検討してみたい、こう思う次第でございます。
  226. 浦井洋

    浦井委員 老人保健部長がそばにおって、そんなあかんあかんと手を振るから、大臣は答えられへんわけですよ。特養にというようなことを大臣は言われますけれども、数字がここにあるんですよ。特養に入りたくても入れずに待機しておる者が東京都で千三十七人、私の住んでおります神戸市で約百人、きょう日経新聞に出ておりましたけれども埼玉県で三百四十人。入れぬですよ。先ほどの柳原病院で特養に入れた人はゼロだというふうに申し上げたのですけれども、家へ帰るか、あるいはいわゆる老人病院に入らぬとしようがない。  それで、ここに「日本医事新報」という雑誌がある。これの五十七年十一月六日号に、ちょっと読み上げてみますとこういうふうに書いてある。今度の点数による老人病院の囲い込み問題について論評しておる。   しかし、点数上の”老人病院対策”の進め方によってはまじめな老人病院をも巻き込む可能性が少なくなく、老人収容病院、或いは”水漬け”の老人病院との区分が難しい。また、核家族化の進行のなかでいわゆる老人病院は社会的な必要悪だ——という指摘もあり、シルバー産業を医療費増高の原因としていわば魔女狩り的に批判するだけでは、問題解決は遠い。   山口県医報十月一日号で「いわゆる老人病院と医の倫理」をテーマに座談会をしているが、このなかに「老人病院はどんどん増えて来た。これに対して医師会はどうすることも出来ないままに、一方老人病院はむしろ地域医療をいろいろ批判されても担って来た……」と、自省をこめた発言がある。   老人病院の問題点を認めた上での発言だが、地域単位でこの社会的必要悪を不用のものとする体制を築かなければならないだろう。   老人診療報酬の制定において、老人病院対策を財政的視点から進めるだけでは一般医療機関を巻込む惧れもあり、入院期間を短縮させうる在宅ケアを充実させ、病院・診療所と保健活動を連携させる方向への誘導が期待されよう。  ちゃんと書いてあるわけです。十一月六日号ですよ。  ところが、こういうここに書いてあるような在宅ケアだとか老人ホームの充実は、まだないわけですよ。それで、一方では確かに魔女狩り的にずっとやってしまう。私は別にシルバー産業なんかを擁護するつもりはさらさらない。その点は、恐らくF病院というかっこうである程度浮き彫りにされるであろうと私も思いますよ。しかし、D病院とかEランク病院のところでここへ巻き込まれてしまうということを非常に危惧をする。むしろ私は、政策選択の誤りというかずれみたいなものさえ感じるわけであります。  だから、そういう点で私の考えを申し上げますと、今度の病院の区分での問題点というのは、病院を輪切りした、わかりやすく言えば、たとえば老人が何も知らされずに一定の病気で入院をする。そうすると、その病院の区分によって、同じ病気でも医療の質が違ってくる。いつでも、どこでも、だれでも最高の医療を受けられるというのが医療の原則なんです。そういう原則がこの点数をさわることによって、あるいはそういう病院のランクづけによって破られてしまっているわけです。特に、老人保健部長はそれはE病院、特例許可病院というのは将来、どう言うたかな、これは経営的にもうまいこといって老人が集まってもろうたら、非常にカンファタブルだというような趣旨のことをさっき言われたんですけれども、特例許可病院、E病院というようなランクづけを行って、そこで質の低い老人医療が行われるのではないか。雑誌なんかによると、これは将来は中間施設になるのだというようなことも発言しておられる厚生省の役人もおられる、手が少のうなるわけですから。だから、この間の投書に出ていたように、寝たきりのお年寄りを一日に十回体位変換させたら床ずれにならへんのに、手が足らぬために三回しかやれなんだら、医学的にこれは床ずれになりますよ。そういうことが起こってくる可能性があるんですよ、Eランク病院では。もうFはこれは論外にしましょう。  だから、繰り返しになりますけれども、特例というのは医療法の特例ですから、結核、精神でしょう。結核、精神はこれは特例があってもしかるべきだと思う、過去のいきさつもあるし、病気の性質から言うて。しかし、老人慢性疾患というようなかっこうでそれを特例にするというようなやり方は、これは医務局のサイドかもわからぬけれども、これは間違っておると思う。しかも、先ほどから言うておるように、慢性老人疾患というかっこうでくくって、それで医療法の特例でランクづけをやって、点数で——点数でということは財政的な、あるいは言うたら医療費抑制的な方向で輪切りをするというようなことは私は許されぬと思うわけなんです。だから、そういう点で私は、もう時間がなくなって対策を言う時間がないわけですけれども、先ほど大臣に要望いたしました一つは、そういう受け皿をまずつくらなければいかぬ、これは根本ですよね。中間施設なり在宅ケアの体制なりあるいは東京都なんかがつくっている老人総合研究所みたいなものをやはり国がつくってもいいと思うのですよね。これは学術会議の五十五年十一月一日の勧告にあります。そして、いまの診療報酬改定を撤回して、いま実施されているものをもう一遍もっと時間をかけて、もっと多方面の意見を聞いて——まず受け皿をつくってですよ、それからできたら診療報酬、もうこの案は撤回して、それで多方面の意見を聞いて、時間をかけてこれの結論を出す。このまま突っ走ったら悔いを千載に残すというふうに私は思うわけなんです。だからそういう点で、この人はもう悪に染まっていますから、大臣、ひとつ。
  227. 林義郎

    ○林国務大臣 お話しがございましたが、いろいろなことを新しくやるわけでありますから、新しくやるときに制度の御理解が十分でないというようなところもあるんだろうと私は思うのです。そういったことはあるんだろうと私は率直に思いますし、それから、いままで薬漬けの医療であるとか云々というようなお話しがございました。そういったことについてのやはり素直な是正を図っていくということが、今回の措置の大きな目的ではないかと私は思うのです。病気でもないのに病院に入って寝ておったらというような形の方は、やはり病院から出て通院にしていただく方が本当はいいのではないだろうかと思っているところでございまして、そういったことを踏まえて、これからまたいろいろな点で問題が出てくるかもしれません、出てくるかもしれませんが、それはそのときにやはり考えていかなければならない話でありますし、今回の診療報酬におきましても、中医協で相当長い間かかりまして御議論いただいたものでございますから、その答申というものは私の方としてもそれは尊重していくべきものだろうと考えておるところでございます。
  228. 浦井洋

    浦井委員 終わります。
  229. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 次に、菅直人君。
  230. 菅直人

    ○菅委員 きょうは、林新大臣に初めてこの社会労働委員会で質問をさせていただきますけれども、きょうの私の質問は、薬漬け医療という言い方が長年されておりますけれども、そういった薬の問題にしぼって質問をさせていただきたいと思います。  現在四兆円を超す薬が日本では毎年使われている。一方ではサリドマイド、スモン、クロロキン網膜症といった薬害が後を絶たない。また、きょう朝以来いろいろ議論がされておりますが、日本ケミファ事件といったような事件も次々に起きてくる。こういう意味では、いまの薬事行政というのが一体国民の健康とか安全という立場を考えてやっているんだろうか、こういう疑問を率直なところ持たざるを得ないわけです。  まず大臣に、薬事行政のあり方として当然国民の健康と安全という立場であるべきだと思いますけれども、その点についてまず所見を伺いたいと思います。
  231. 林義郎

    ○林国務大臣 菅議員の御質問に対しましてお答えを申し上げます。  厚生省というのはやはり国民の健康を最重点に置いて、広く社会福祉の問題、社会保障の問題を取り上げるところでございますし、薬事行政というのはとりわけ、やはり国民の健康を回復するための薬品をどう生産してもらい、どういうふうな形で使ってもらうかということをやるところでございますから、特に薬事行政におきましては薬の国民における信頼性というものは非常に大切なものだろう、こう思いまして、薬の有効性、安全性を確保するためにも中央薬事審議会において厳正、公正な審議をお願いしているところでございます。それがやはり、国民厚生省の認めた薬品は安心して使っていただけるという信頼のもとになるものではないかと考えるところでございます。
  232. 菅直人

    ○菅委員 大臣、これをちょっとごらんいただきたいと思うのです。これは「ごめんね 寿子ちゃん」という、母親が自分の亡くなった子供についてつくった詩集なんですね。ちょっとこれも見てください。いま、後でお渡ししたのは、最終ページの一ページだけなんですけれども、この寿子ちゃんの飲んだ薬というのが最終ページの中に出て、それはコピーを重ねてお渡ししたわけです。ついでにこれも。いま最後にお渡ししたのは、実は死亡診断書なんですね。  これは、簡単な経緯を申しますと、二歳六カ月になる本畝寿子ちゃんという女の子が昨年の昭和五十七年二月十九日に亡くなった。その原因が、かぜを引いたときにいろいろな薬を飲んだわけですが、死亡診断書にも書いてありますように、ライ症候群という病名といいましょうか、死因で亡くなっているわけです。このライ症候群というのは、アメリカでは、この原因の一つの可能性としていわゆるアスピリン、サリチル酸製剤というサリチル酸系の薬というものがどうも危ないのじゃないかということで、アメリカの厚生省はアメリカのFDAに対して、注意書きをつけるようにというふうな指示をしているわけです。こういった問題で、果たして日本では、このライ症候群という病名は決まってきているわけですが、これらの原因についてどのようなことを対応しているのか。一部にはいろいろな研究班をつくってやっておられると聞いておりますけれども、そういうことの中で、薬害である可能性の高いこれに対する現在の対応の仕方についてお伺いしたいと思います。
  233. 持永和見

    ○持永政府委員 ライ症候群とアスピリンとの関係につきましては、いまお話しのございましたように、アメリカにおきまして五十三年から五十六年にかけて調査をいたしております。五十七年二月に両者の関連性を示唆する調査結果が発表されておりますけれども、その後、この疫学調査の結果では因果関係を結論づけるものではないとされております。  しかし、こういった情報が日本にも入りましたので、私どもといたしましては、五十七年三月に中央薬事審議会の副作用調査会において検討をしていただきまして、今後の内外の情報に十分注目していくことが必要だろうというようなことでの意見をいただいております。  そういったことで、ライ症候群というのはきわめて重篤な症状でございます。そういう意味で重要な副作用情報を提起するということでございますので、厚生省としては五十七年の二月と十一月に「医薬品副作用情報」等によりまして、医師などに対しましてその情報を伝達いたしました。  一方、いまお話しがございましたように、ライ症候群患者の使用薬物について調査することが望ましいというふうに考えまして、五十七年から二カ年計画で、久留米大学の山下先生という方でございますが、この方を班長といたしまして研究班をつくってもらいまして、ライ症候群とアスピリンなどいわゆるサリチル酸系製剤の因果関係を解明するための調査研究を進めているところでございます。  またさらに、この問題が先ほど申し上げましたように大変重篤な症状の問題でございます。そういった意味合いもございますので、国内における調査研究の推進を図る、あわせて外国における調査研究なり外国の行政措置の動向につきまして必要な情報の収集を進めてまいりたいというふうに考えております。
  234. 菅直人

    ○菅委員 少なくとも子供のインフルエンザ等において発生の率がかなり高いと言われているわけですから、子供へのこの薬の使用について注意するということをたとえば薬に表示するとか、単に情報伝達としてだけではなくて、そういう注意義務を薬メーカーに課するとか、そういうことをやるということをお約束いただけますか。
  235. 持永和見

    ○持永政府委員 先生も御承知と思いますけれども、アスピリンなどにつきましては、従来から非常に長い間の使用経験を持つ薬でございます。先はど申し上げました中央薬事審議会の副作用調査会の検討の結果におきましても、今後の内外の情勢に注目していくことが必要だろう、しかし現時点で緊急な措置をとる必要はないというような意見をいただいておりますので、現在の段階では、先ほど申し上げましたように研究を推進する、さらには内外の情報を十分とっていくというようなことはやっていきたいと考えておりますが、現在の段階では、そういった副作用調査会の報告をいただいておりますので、従来どおりの使用で差し支えないというふうに考えているところでございます。
  236. 菅直人

    ○菅委員 大臣、結局日本の場合、こういう返答によって、たとえばサリドマイドが生まれてきたり、たとえばスモン病という問題が生まれてきたり、いろいろしてきているわけです。ですからこういう場合は、疑義のあるものについて、もちろんそれ以外に使う薬がないというのであればそれはある程度仕方がない場合もあるかもしれませんが、解熱剤で、かぜの場合に解熱剤が果たして子供に必要かどうかということも医学界では議論がされていて、大体三日くらい寝かせておけば引くものは引くというふうにも言われているわけですね。ですからそういう意味では、アメリカではすでにそうしたものに対するいわゆる注意義務の指示をするようにということが言われているわけですから、これについてはぜひ大臣にも御検討いただきたい。薬務局の行政を含めてそういう方向でリードしていただきたいとお願いをしておきます。  きょうは、この問題を含めて次の問題につなげていきたいと思うのですけれども、つまりスモン病の反省に立って、いまから三年前ですか、昭和五十四年の十月に医薬品副作用被害救済基金というのが生まれたことは、新大臣も聞いておられると思います。この基金は、いわゆる薬害による被害を、裁判という大変な長い労力をかけて救済をしていくということが、それがなくてもやれるようにという趣旨で生まれてきたわけですけれども、この本畝寿子ちゃんのケースについても、この救済のいわゆる請求というのでしょうか申請が出されていると思いますが、その点についてまず確認をしたいと思います。
  237. 持永和見

    ○持永政府委員 この寿子ちゃんのケースについても、薬害救済基金に申請が出ております。
  238. 菅直人

    ○菅委員 その申請の書式が、これをつくるに当たっていろいろ使用法とかなんとかかんとか様式集がありますけれども、その様式集に沿って出ていますか。その点を確認したいと思います。
  239. 持永和見

    ○持永政府委員 診断書など、所定の必要な書類はついて出されております。
  240. 菅直人

    ○菅委員 そうしますと、この被疑薬という欄がこの様式集にありますけれども、この被疑薬という欄にアスピリンならアスピリンということが書かれているということですか。
  241. 持永和見

    ○持永政府委員 それは特に書いてないようです。
  242. 菅直人

    ○菅委員 つまり、なぜ私はこういうことを質問するかといいますと、ここに「診療に当たられる先生方へ」という、その基金が出されたパンフレットがあるわけです。これを見ますと、請求する場合にはこういうふうに書けということがかなり書いてあるわけです。それで「副作用の原因とみられる医薬品の名称、使用量、使用方法、使用理由など」、こちらにまた様式集がありますが、こういう様式で書けと書いてあるわけです。そうして、こんなことを果たしてお医者さんが書いてくれるのかということで、実際にこの間、救済基金に請求のあった件数というのはスタートしてから二百十八件あったと聞いておりますけれども、こういうことが非常に煩瑣という以上に、入り口がない状態になっているということが各方面で指摘されているわけです。この点について、薬務局の方は、また基金の側は、果たしてこういうやり方で本当に救済の窓口を大きく開いていることになっていると考えているのかどうかですね。お聞かせいただきたいと思います。
  243. 持永和見

    ○持永政府委員 現在、この医薬品副作用被害救済基金ができまして、実はその後、救済給付の申請件数がきわめて少ないというのは事実でございます。五十八年二月末現在で百二十七件の受理をいたしておりますけれども、当初予想したよりはかなり少ないことは事実でございます。これは、一つにはやはり救済基金のPRがまだ十分じゃないのじゃないかというような反省もありまして、都道府県あるいは医療機関あるいは関係専門誌、そういったところを通じましてのPRに努力したいということを考えております。  また、基金におきまして相談の窓口を設置いたしまして、そういった救済給付の申請をされたい、あるいは薬の被害に遭われたというような方につきましての相談を親切に受け付けて、そういったことで、薬の被害に遭われた方については申請が行えるようなことをできるだけやりたいというふうに考えております。  また、いま御指摘のように診断書その他の問題がございます。確かに、これは薬の被害によって事故に遭われた方に救済をするわけでございますから、その被害と症状との因果関係というものが必要であることはこれは当然でございまして、そういう意味合いでお医者さんの診断書というのが必要なことは当然でございますけれども、この診断書の作成に当たって、医療機関に対しましても、私ども、できるだけ協力をしていただく、あるいはそういった問題でいろいろお困りの節は十分相談に乗ってあげたいというようなことで、現在鋭意努力しているところでございます。ただ実際に、なかなか素人の方も多いわけでございますから、そういう意味合いでいろいろ手続その他の面で煩雑とお思いの方もあるかと思いますけれども、そういった問題につきましては、基金なりあるいは関係都道府県、そういったところで御相談をいただければというふうに考えております。
  244. 菅直人

    ○菅委員 大臣に申し上げたいのですけれども、実は局長はああいうふうにおっしゃいますけれども、私、ここに本畝さんのお母さんから手紙をいただいているのです。実際にどうやって申請をしたか。子供が亡くなられたのが昨年の二月の十九日。それから、こういう基金があることを知らなくて、何かのときに書いたら、手紙が来て、それでこれを知った。それで診断書を求めて、最終的に亡くなった呉共済病院に行った。それが四月の五日だそうです、だけれども、三人ほどお医者さんがやってきて、いや、こんなものはなかなか書けませんと言って、三時間も粘ったけれども結局追い返された。四月の二十九日には手紙を出した。そうしたらそれも突き返された。四月の三十日には、今度は御主人の方に電話がかかった。また行ったけれども、まただめだった。それで六月十五日には今度は弁護士さんを連れて二時間にわたってやったら、基金の用紙には書けない、しかし診断書は出しましょうという約束は得たけれども、その場ではくれなかった。さらに六月二十一日に厚生省と基金に足を運んだ。そうしたら、基金の方からせめてその病院の方に電話でも入れてください、指導してくださいと言ったけれども、なかなか言を左右にしてやらなかった。やっと一本電話を入れてくれることだけ約束をした。そうして八月の十二日になって、これも様式をちゃんと添えてこれに書いてほしいと言ったけれども、それも書いてもらえないで、いわゆる様式にのっとらない形の診断書なら出しましょうと言って出した。それを基金に持っていったら、まあこういう形でも一応受け付けましょうと言って一応受け付けてもらった。  つまり、最初にその診断書といいましょうかその申請書の様式を書いてくれと言ってから、死亡診断書にはそこに書いてあるようにライ症候群ということがちゃんと書いてあるのに、その一言を書いてもらうために何と四カ月以上かかっているのです。この方はここまでがんばったからこうやって出てきたかもしれない。じゃあこれが一カ月か二カ月でやめてしまえば——いや、あなたのところは何かお金でも欲しいのですかとか、いろいろなことを言われたと言われています。そういうことで何かごね得でもやるのですかとか、何かそういういろいろなことを言われる。いや、そうじゃない、子供が亡くなって、そういうことをもっともっと注意を喚起したいし、またそういうことを知らせる上でも必要だと思ってがんばったから、この方についてはやれたのです。少なくとも申請まで受け付けてもらった。この点どうですか。先ほどの局長の話だと、いまのままで結構です結構ですとありますけれども、反省する余地が大いにあるんじゃないですか。どうですか。
  245. 持永和見

    ○持永政府委員 先ほども私、いまのままで結構ですと申し上げたわけではございませんので、私どもとしても、被害者救済基金におけるいまの対象というのが予想した以上に少ないわけでございますから、そういった点については十分反省もし、窓口の問題あるいは制度の問題、そういった点について何か障壁と申しますか、手続の煩瑣な点あるいは親切さの足りない点、そういう点がないかということでいろいろ反省を重ねているところでございます。  御指摘の本畝寿子ちゃんのケースでございますけれども、この寿子ちゃんのケースは、実は死亡の原因なり死亡の経過についての医学的な判断が非常にむずかしいというような面もあったようでございます。しかし、いずれにいたしましても、そういうふうに長い間おかかりになったということは、私どもとして大変申しわけないというふうに思っておるわけでございまして、今後そういうことがないように、事務態勢についてできるだけ国民に親切な事務態勢を開くようにしていきたいというふうに努力したいと思っております。
  246. 菅直人

    ○菅委員 事務態勢を、またPRを大いに進めていただくことは大変結構だと思うのです。ただ一つだけ問題を指摘をしておきたいのは、副作用の原因と見られる医薬品の名称というのを書くことが、先ほどの局長の話でも、いわゆるそういう因果関係をお医者さんに書かせようというのですよ。通常お医者さんは自分が投与している可能性が高いわけです。その投与をしたのが原因で、薬害でたとえば何かおかしな症状が出た、亡くなった。これを自分で書くということを必要要件にしているわけですよ。ですから、先ほどいろいろ言われた予測をしたより少なかった、事務が煩瑣だとかなんとかじゃ実はないのです。つまり、これをつくるときにはいろいろな薬害のモニターをされて、いわゆる医療機関からもいろいろな調査を聞いたら、このぐらいの件数はあると言った。しかしそれはあくまで医療機関から聞いている話です。医療機関は、どうもこのケースは薬の副作用で亡くなられたらしい、何とかしたらしいと言っても、大部分患者さんには伝えてないのです。だから患者さんは知らない。または知っていても、そういう制度があることまではもちろん知らない。今回もこういうものを出されているけれども、これをどこに出したか。お医者さんに出しているんです。つまり、まさに一番救われなければいけない患者さんの方には、そんなことを言ったってまず情報がない。それを持って行けば、自分で自分が治療したお医者さんがそう簡単に書いてくれない。一生懸命逃げるわけです。ここに私は、この基金を今後本当に生きた形で運用していくには、果たして医者の診断書の中で被疑薬という形で、その薬が原因と見られる薬をお医者さんに書いてもらうということを条件とするということ自体が、ちょっと無理なんじゃないか。ある意味じゃ、患者さんが、どうもあのあたりでかぜでいろいろな薬を飲んだ、そのことが原因のような感じがする、こう出してみる。そしたら厚生省の方で、どういう薬をやったんですかとやる、またはそのカルテを出させる。そういうことからやらないと、この制度は、一生懸命三十何億集めてやっていても全然生きてこない。いかがですか。これは大臣にぜひお聞きしたいと思います。
  247. 林義郎

    ○林国務大臣 被害者救済基金というのは、菅先生指摘のように、キノホルムでスモン病というようなことを契機にして出てきたわけであります。かつては、キノホルムの害であるかないかというような話もありました。やはりそれも投与したということが裁判で確定したわけでありますが、キノホルムがスモンの原因であるということになるならば、その投与した人についてもやはり責任が出てくるであろうということは法律論としては容易に考えられるところでありますから、いまのような問題につきましては、きょう御指摘がございましたから、私も少し検討してみたいと思っております。  ただ、どういうふうな形にするか。これは、その因果関係というのはやはりはっきりわからなくてはいけませんから、亡くなったから何でもという話ですぐに被害者救済基金を出すのもまた、救済基金の趣旨には合ってないんだろうと思いますね。だからそこをどうやっていくかというのは、いま御提言のありましたような形でやるか、そのときにはやはり医師の方にそこまでの検査がやれるものかどうかというふうな問題もあるでありましょうし、いろいろな点がありますから、少なくとも被害者救済基金ができた制度の趣旨にかんがみまして、私も一遍検討させていただきたい、こう考えております。
  248. 菅直人

    ○菅委員 大臣から検討するということですので、あえてこれ以上追及をしませんけれども、少なくとも、申請を出すのに大変に障壁があったのでは申請そのものが出せないわけです。それで、申請したものをまさに先ほど言われた中央薬事審議会にかけて判定をすることになっているわけですから、専門家の中でも判定をすることになっているわけですから、そういう意味では、少なくとも申請が患者の立場でやれるような制度にぜひ、このあたりは運営上の問題で十分こなせるところだと思いますから、やっていただきたいということを重ねて申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  同じく薬の問題で、きょうの審議または他の審議の中でも出ておりますけれども、昨年日本ケミファ事件という大変な事件が起きたわけです。この事件に対して厚生省も、実は内部告発があった、しかし一度目の内部告発のときには、調べてみたけれどもそういう事実はないと言って、そして、認可をまだされる前の薬について内部告発があったにもかかわらず認可をしてしまったわけですね。そうして、その後になってさらに詳しい内部告発があって、調査をしてみたらまさにデータがインチキだった、それでいろいろな行政的な処分をされたということなわけです。  それで私は、この行政処分をされたことそれ自体は一つの大きな、何といいましょうか当然のことだと思いますけれども、これだけで行政としての責任を果たしたことになるのかどうか。  先日、私は、質問主意書の中でこの問題について政府に質問をしたわけですけれども、その中でも、たとえば私文書偽造をやったということが一般的に見ればインチキな文書を出して厚生省の認可をとったわけですから、これは明らかにどこかにインチキがあるわけです。どこかに不法があるわけですね。そういう問題について告発をするとかそういうことについてやるのかと聞いたら、その段階では、いま検討しているという話でした。そういうことを含めてこれでもう終わったという考えなのか。いや、まだまだそういう検討すべきことがあるということなのか。その点をまず伺いたいと思います。
  249. 持永和見

    ○持永政府委員 まず先生指摘の私文書偽造の問題ですが、私どもとしても、私文書偽造に該当するかどうかいろいろと調べたわけでございます。刑法の百五十九条に私文書偽造罪というのがございまして、その三項に、事実証明に関する文書を偽造した場合には罰則が科せられるわけでございますけれども、実はこのデータをでっち上げた申請資料に添付されたデータというのがいわゆる研究論文に類するものでございます。そういう意味合いで、研究論文というのは確かに臨床試験のいろいろな事実も記載してございますけれども、それを総合的に評価したりあるいは判断をしたりというような文章でございまして、いわゆる刑法に言う私文書というのは「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画」こういうことになっております。代表的な例としていろいろ判例を調べてみますと、議員候補者の推薦状だとか寄附金の賛助員名簿とかそういったものは明らかに私文書になるようでございますけれども、研究論文といったようなたぐいのものがこの私文書偽造に該当するかどうか、解説書なり判例あるいは専門家にも意見を聞きましたけれども、どうも該当しそうにもないというようなことでございますので、現在の段階でいわゆる私文書偽造罪としての告発というのはちょっと適当でないような感じがいたします。  しかしながら、こういうことが二度と起きてはいけないというのは御指摘のとおりでございまして、そういう意味合いで、われわれの方の審査体制についても見直しをしたいと思っております。  その一つの中に、これからの臨床データについては実施者の確認の印を押させるということをいたしておりまして、あわせまして、みずからが実施した試験に基づき作成した論文であるということを陳述させ、かつ、それに署名押印させるというようなことをこれからやりたいというふうに考えております。  そういたしますと、いま申し上げましたみずからが実施した試験に基づき作成した論文である旨の試験の実施者等による陳述がございますと、これは明らかに私文書偽造罪ということで、仮にこれをまたでたらめというかインチキした場合には、そういう該当ということでわれわれとしても告発もできるというようなことで考えておりまして、そういう意味で、これから臨床データにつきましてはそういう形で運用していきたいというふうに考えておるところでございます。
  250. 菅直人

    ○菅委員 大臣もそばで聞かれていて一見なるほどと思われたかもしれませんけれども、私も法律の刑法の解釈論争をやる気はないのです。ただ、以前から、中央薬事審議会に出されるいろいろな申請データのことについてこの委員会でもよく議論があるわけですが、その中で、一番重要な申請データの中身は何ですかと聞いたら、常に厚生省が答えられたのは、大部分はすでに学術雑誌なんかに出されたそういう文献を申請データとして出してもらうようにしていますという答えをされているわけです。まさに申請データの主要な部分なんですね。関係のない端っこの参考じゃないのですよ、主要な部分なんです。まさに権利を獲得するための事実を証明する一番主要な部分なんですよ。それを、判例集かなんかを引っ張ってこられたかもしれませんけれども、最後に判例を決めるのは厚生省が決められるわけじゃないですから、厚生省として、自分のところに出されたデータがインチキだった、おかしいじゃないか、少なくともこれは私文書偽造の疑いがある、またそういう疑いに対しては正さなければいけないとなれば、しかるべき法的処分をとって当然じゃないでしょうか。大臣にちょっとこの点についてだけお伺いしておきたいと思います。
  251. 林義郎

    ○林国務大臣 菅議員の御質問にお答え申し上げます。  私もここで刑法の論争をやるつもりはございませんが、先ほど薬務局長からお話し申し上げましたように、普通に考えると、これは明らかにわれわれはごまかされた、こういうことなんですね。偽造じゃないかというのは当然のことだと思います。  ただ、刑法の条文を見ますといまのような話になりまして、やはりそういうことだったら、私も刑法をもう一遍勉強し直さなければいかぬなというような感じがしたわけでございまして、いろいろなところを聞きますと、刑法の条文にあればなかなか告発するのもむずかしいというふうな結論になっているということを承知しているところでございます。
  252. 菅直人

    ○菅委員 大変後ろ向きな発言で失望を禁じ得ないのですが、少なくとも当事者として厚生省は、自分の責任があったとしても、インチキにだまされたのだというのだったらだまされた立場としてちゃんとした処置をしなければ、国民の立場から言えば、やはり何か後ろの方であったのではないかと言われたってこれは仕方がない。  それから、告発とか告訴というものは疑いがあればやるわけですから、最後の判断をするのは検察が実際に告訴を取り上げるかどうかを判断すればいいわけですから、それは重ねて申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、では、果たしてこれで日本ケミファは本当に反省したのだろうかということなんです。私のところに、ある話が伝わってきたのです。二月二十一日といいますから、ちょうどまだ業務停止の期間中です。この業務停止の期間中に、日本ケミファの中で倫理教育というのを行ったそうです。そうしてその講師が大野邦一郎さんという取締役、これは元厚生省の薬務局におられた人だそうです。この人がいろいろな話をした。聞いた人の話によると、何かいろいろうそを言ったことは確かだけれども、余り迷惑をかけたわけじゃないから、それほど果たして悪かったのかなみたいな言い方をした。それで私は、そんなことおかしいじゃないですかと言って、きょう薬務局の人に聞いたら、御本人が、いや、こういう趣旨の話だったのですということのメモを、御本人のメモとして私のところへ届けてくださった。これを読んでみると全体ではいろいろあります。しかし確かにそうなっているのですね。たとえば、うそが悪いのはうそをついたことによって他人に不利益や迷惑などをかけるのが悪いのだと「ウソの心理学」という本には書かれている。下の方になりますと、日本ケミファの事件では、薬の内容が悪いとか副作用があるとかそういう意味でそういうことを言われているわけではない、だからそういう意味では不利益な事実が起こってはいない。あといろいろなことを言われています。しかし、もちろん最後の方には、やはり有効性とかなんとかは絶対守らなければいけない、そういうことも言われています。しかし、ここの主要なところは、世の中にはいろいろなうそがあるけれども、うそで悪いのは不利益や迷惑をかけたときで、今回のケースは不利益や迷惑をかけてはいないじゃないか、まさにそういうのを倫理教育の場で言われた。これは御本人がメモを書かれたわけです、もちろん前後にはいろいろありますけれども。  また、ついでに言えば、山口元社長はいまも社長室を使っているそうですね。何か少し小さくなったとか大きくなったとか聞きましたけれども、少なくとも社長室を使っておるそうです。株はたくさん持っておられますし。果たしてこれで、本当に日本ケミファの中の反省が得られたのだろうかどうだろうか。この点について厚生省は相当厳しい指導をされているわけですけれども、厚生省の立場としてどう見られていますか。
  253. 持永和見

    ○持永政府委員 いま先生指摘のように、大野さんが倫理教育の場でいろいろなことをおっしゃっているのは事実でございます。その中で、個々につかまえてみますと先生のおっしゃったようないろいろなことも言われておりますけれども、全体としては、最後におっしゃったように、やはり医薬品については有効性、安全性、品質の確保は絶対に守らなければならないということであって、それが締めくくりになっておるわけでございまして、そういう意味合いで、決して別にいいかげんにしてもいいのだというようなことをおっしゃっているというふうには私ども理解してはおりません。ただ、個々の内容につきまして見てみると、確かにやや穏当を欠くなという言葉もございます。そういう点については、今後そういうことのないように私どもとしても注意してまいりたいと思います。  また、前社長の問題でございますけれども、私どもとしては、あくまで新しい体制のもとで前社長とは明らかに一線を画す、新しい社長もそういう言明のもとに社長に就任したわけでございますから、これからの新しい体制のもとでのきちんとした行き方を見守っていきたいというふうに考えております。
  254. 菅直人

    ○菅委員 この点はまさにこれからの問題ですから、この問題もあわせて見守っていくということで、時間も少なくなったので、あと一、二点御質問しておきたいと思います。  一つは、これは大臣には新しい大臣ですから初めてですけれども、いろいろな薬の問題が出たときに、薬の認可をしたときには、少なくとも認可をしたときに使ったデータは公開したらどうですか。そうすれば、後になってほかの人がそれを見て、これはちょっとおかしいじゃないかとかこれは私がやったデータじゃないかとかそういうこともわかるし、また丸山ワクチンの審査のケースなんかで言いますと、ほかによく似た薬との審査とこちらの薬の審査が一体どういうふうな見方でこちらはオーケー、こちらはノーと言われているのか、そういうことも中身がわからなければ議論ができないわけですね。そういう意味で、私は、認可のときに使った申請データを公開したらどうですかということを、実は先ほど申し上げた質問主意書の中でも出したわけです。それに対しては一部前向きな答弁をいただきまして、先ほどのような、すでに公開をした、その公表された文献については、ではそれをくっつけて、少なくともどういうものかをつけてあげましょう、しかしそれ以外については、臨調の答申を待ってとかなんとかで逃げているわけですね。  私、二つだけ聞きたいと思うのです。  一つは、これから認可になる薬についてはここで約束をいただいて、すでに公表された文献については、どれを参考にしたか、中に入っていたかを出すというのは中曽根総理大臣の名前で了解をいただいていますが、それはいいのですが、過去に認可をされた薬についても同じような扱いをしていただきたい、それがいただけるかどうかが第一点。  それからもう一点は、いま申し上げたように、データ全体を認可後には少なくとも公開をしてほしい。つまりそれは公表された文献以外の生のデータもです。  その二点についてお伺いしたいと思います。
  255. 持永和見

    ○持永政府委員 まず第一点目の過去の公表文献リストの問題でございますけれども、御承知のとおり、過去の文献リストということになりますと、承認いたしました医薬品の数が非常に膨大でございますために、事務的に非常に大変だということは御理解いただけると思うのですが、私どもといたしましては、せっかくそういうお話でございますので、事務的に対応できるかどうか、これから検討していきたいというふうに考えております。  それから二番目の全体としての公表の問題でございますけれども、これは全体の情報公開の問題とも絡む問題でございます。そういう意味合いで、先ほど先生が御指摘になりました言葉をそのままお返しするような形で恐縮でございますけれども、政府としていま臨時行政調査会で政府全体の情報公開のあり方を検討いたしておりますから、そういった中の一環といたしまして私どもも対処していきたいというふうに考えております。
  256. 菅直人

    ○菅委員 時間もほぼ終わったようですので、この問題についてだけ最後にもう一度、大臣御自身にお伺いしたいのです。  というのは、私、きょうの質問の一番最初に、薬事行政というのが国民の健康と安全という立場であるべきじゃないかということに関して、大臣もほぼそのとおりだということをおっしゃったと思うのです。しかし、きょうは細かい議論はできませんでしたけれども、情報の公開ということを言うと、これまですぐ企業の秘密とか、薬メーカーの企業秘密があるとか、プライバシーの問題だとか、プライバシーというのは名前を消せばいいわけですからそれは幾らでもやれるわけですね。それをそういう形でいつも逃げられてきたわけです。この質問に対しても逃げられておるわけです。そういう意味で、私は、まさに国民の健康と安全にかかわる薬の認可という、ある意味ではそれが重要な、一番そういう面の強いところで積極的に国民的信頼を回復するためにも、ここは極端に言えば、全体がそういう方向でなくても、薬の認可についてはこれだけいろいろな問題が出たわけですから、せめてデータは公開する。局長はああいう言い方をされましたけれども、公開というのは別に初めから全部コピーして渡してくれと言っているのではなくて、要請があったときにその件について公開するという原則を決めていただけばいいわけです。多少手間暇かかって時間がかかるのはそれは仕方がないです。そういう意味で、先ほど言われた中央薬事審議会を含めて薬の審査の信頼性を確保する意味で、ぜひ積極的にその点やっていただきたいと思いますが、その点についての大臣所見を伺いたいと思います。
  257. 林義郎

    ○林国務大臣 行政庁の持っておりますところの情報をどう公開するかというのはずいぶん議論をされてきたところでありますし、現在臨時行政調査会におきましていろいろ御議論しておりますから、その結論を待って対処したいというのが公的な答弁だろうと思います。  ただ、私は、いま先生がおっしゃったように、なぜ情報公開するかといえば、やはり行政の公正さ、妥当さというものを確保するために公開するわけでありまして、特に医薬行政というものが国民の信頼を受けるということであるならば、やはり必要な範囲において私はそういった方向をとるのが望ましい方向ではないかというふうに考えております。  ただ、その場合に、もう私からくどくど申し上げる前に先生がよく御承知のとおり、企業の持っておるところの企業機密というものをどうするかというのは、これは常に情報公開の大原則に入るわけでありますが、そこは企業機密の問題と同時に、やはり一種のその持っているところの製品の信頼性、さらには薬品全体に対する信頼性の比較考量の問題だろうと思いますので、そういった観点で、私はこれは答申が出ましてからも検討していかなければならない話だろうと思います。  もう一つ申し上げるならば、これは臨調がどういう答申を出そうとも、私は、医薬行政の医薬というものが国民の信頼を得る、こういうふうな話でありますならば、特に医薬についてはそういった問題があるわけでありますから、やはりそういった問題については何らか考えていかなければならない問題ではないかというふうに考えているところでございます。
  258. 菅直人

    ○菅委員 大変積極的な答弁をいただきまして、ありがとうございました。私の時間は終わりましたので、これで終わります。
  259. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十七分散会