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工藤参考人 冒頭に、本
委員会で
公団家賃値上げ問題が
集中審議の
運びとなり、特に
前回改定時の
審議にもございませんでした
参考人発言の
機会が与えられましたことにつきまして、
委員長初め
各党理事、
委員の諸
先生方の各段の御尽力のたまものと存じております。改めて深い敬意を表するものでございます。
私は、
全国公団住宅自治会協議会、約三十五万
世帯、三百五十
団地が加盟しておりますが、並びに
全国団地居住者の意向を体しまして、今回の
公団家賃再
値上げに反対する
立場から
意見を述べさせていただきたいと思います。
第一は、
公団家賃の
値上げについての
不当性、つまり
居住者から見て納得できない点について、
一つは
基本的な問題、さらに具体的な問題というふうに分けて申し述べさせていただきます。
基本的な
問題点でありますが、三点御
指摘を申し上げたいと思います。
第一に、今日の
国民生活を取り巻く情勢は非常に厳しく、戦後最大、
長期にわたる
不況下にあり、その中で百四十万人にも及ぶ
完全失業者、続出する
企業倒産、公務員の賃上げの凍結とその民間への
連鎖的影響、
所得税減税の六年連続見送り、こういった問題、中でも教育費の
値上げや
社会保障費の切り下げなどによって受益者
負担が非常に強化されておるのでございまして、この点は
前回改定時を上回る
社会情勢の厳しさと受け取っております。
こうした中での公共的な料金である
公団家賃の大幅な
値上げというのは、ほかに例を見ないわけでございまして、
団地居住者の暮らしを非常に厳しくするものであります。現に
家賃滞納者が
前回改定以降急激にふえて、五十六年度には九万六千二百件、全
世帯の一五・三%に上っているというようなことをあわせ考えましても非常に大変である。わけても、大幅
値上げになりますと、高齢化しておる
世帯、年金生活
世帯にとっては耐えがたいものでございます。
二つ目には、
前回改定時に衆参両院の
建設委員会で御
審議をいただき、大臣あての要望事項が出されたのでございますが、この要望事項が十分守られていないのではないか、こういう点でございます。わけてもこの中で、後に、五十六年八月六日に
住宅宅地
審議会が「現行
家賃制度の改善について」という御答申を出されましたが、その中でこの
ルールづくりの問題が言われておるのでございますけれども、これが実現できていない。
三つ目には、
前回改定時において不幸にしてこの問題が十分な解決を見ませんで、現在なお裁判係属中でございます。こうした中で
値上げをするというのはいかがなものだろうか。民間借家事件などでも余り例を見ないということを伺っておりますし、こういうことを強行されますと、必要以上に
団地居住者が不信感を増さなければならぬ、こういうことでございます。
次に、具体的な
問題点でございますが、
一つは、
先ほども申し上げましたように、
入居者の生活実態について
公団の認識が本当に正しいのだろうかと思っております。昨年十二月に発表されました行政管理庁の
調査では、
公団の方は、
団地の
居住者というのは、所得分位の第三分位の中位の方にお入りいただいているというふうに位置づけておりますが、現実には第一分位、第二分位、つまり低所得の方が四六・五%を占めておるというのが実態のようでございます。
この点、私たち協議会で調べたものによりましても、年収三百五十万円以下の人が四〇・一%、特に古い
住宅では高齢化、年金生活者が四五・三%もいる。これは三十年代の
建設団地が中心でございますが、こういうことで
団地にお入りになっている方は、
公団が今回の
値上げで言っておりますように、
値上げ後の
平均家賃は二万四千円で、古い
団地の住民の
家賃負担率は三%
程度だというふうに言われておりますことは、机上の数字ではないだろうか。実態はそういうものよりももっとひどい状況にある。高齢化した年金生活者の場合、仮に年金が月額十二万円だといたしますと、
家賃負担率は二〇%に達するわけでございますから、この点は
現状をよく御理解いただきたい、このように思っております。
次に、この
値上げの
理由の問題でございますが、今回は不
均衡是正をするということでございます。不
均衡是正という言葉は非常に耳ざわりのよい言葉でございまして、私たちも
基本的にこれに反対するものではございません。
しかし、第一は、現在とられております
家賃決定原則、つまり
建設年度による
団地ごとの個別原価主義というものがとられております以上、これは古い
団地と新しい
団地の間に不
均衡が生ずるのは理の当然であると言わなければなりません。
また、不
均衡を言うのなら、勤労者が応募もできないような新設
団地の高
家賃こそ下げるべきである。これは
本吉先生もおっしゃったとおりであります。
不
均衡が発生した原因は多々ありますが、第一には、いま申し上げました決定原則からくる問題。第二には、政策問題としての土地価格の野放し策や道路、学校、鉄道
建設費、通勤バス購入費まで含めた関連
公共施設費の
家賃への算入、こういったものがある限りは高
家賃は続く。あるいはまた今日
長期未利用地あるいは空き家の問題がありますが、こういったもののつけ回しがもしやられるとするならば、これも高
家賃の原因になるだろう。総じて言うならば、
公共賃貸住宅軽視の
住宅政策にこそ問題があると御
指摘を申し上げたいと思います。三つ目には、
公団が人為的につくり出しておりますのが空き家割り増し
家賃制度でございます。これをつくっておりますと不
均衡はどんどんつくられていくわけでございまして、これらの点を直さなければ、不
均衡の是正には
値上げを繰り返してもならないということを強く
指摘したいと思います。
また、不
均衡是正をと言うならば、
住宅の質の問題を抜きにした不
均衡是正は合理性がありません。
住宅の質的な不
均衡是正ということをぜひともお考えをいただきたいと思っております。
また、今後の
住宅の一層の高
家賃化に歯どめをかけなければ不
均衡はますます出てくる。そうして
値上げをしても不
均衡は直らない。際限のない繰り返し
値上げが続くだろう、このように思います。
また、不
均衡是正論の背景には、全体として民間
家賃との比較論もあるように思います。法文上から言いますと、
公団住宅、
賃貸住宅の相互の不
均衡ということに限定されておるわけでありますから、この点はいたずらに拡大解釈をしていきますと、
公団住宅の存在意義そのものが失われてくるのではないか、このように思います。
次に、
値上げ時期、
内容の問題でございますが、
先ほど申し上げましたように、現下の情勢は非常に
国民生活が厳しい状況にあるわけでありますから、政府は
国民にがまんということをおっしゃっておりますが、ぜひ
公団にも一定のがまんはなさっていただくようにお願いをしたいわけでございます。
また、
値上げ金額は、上限については一万円あるいは九千円、八千円と
面積ごとに違ってはおりますが、こういう大幅なものは、いまの情勢の中では公共的な料金に例がないわけであります。また
前回五十三年時の
値上げが、上限が七千円でございましたから、
前回七千円やられて、また今回一万円ということになりますと、
居住者によっては一挙に四倍近く、つまり民間
家賃でも五年間に四倍になるというような例は余り聞かないわけでございまして、いかがなものかと思っております。これまた
前回の国会要望事項でございます
激変緩和措置という精神にも反するのではないか、このように考えております。
また、
値上げの
算定方式でございますが、
公営限度額方式に準ずるとされております。しかし、これは本来福祉政策とセットのものでございまして、しかも、これは
団地居住者の
代表の
意見や地方議会の議決を経て本来成り立つものでございまして、これをそのまま性質の違う
公団家賃の
算定方式に準用とはいえ持ってくるのはいかがなものかと思っております。
それから、
敷金の追加徴収でございますが、これは民間
家賃の常識にもございませんし、
前回の国会要望事項でも、これはやめてくれるようになっておるわけでございまして、今回上限の一万円というのを計算してみますと、
前回の七千円掛ける三カ月分、また今回の一万円掛ける三カ月ということで、合わせて一挙に五万一千円も
居住者の
負担がふえるわけでありますから大変であります。
次に、四番目に
増収分の使途でございますが、二つ申し上げます。
一つは、
修繕費の
内容があいまいであります。
団地ごとの住民要望に基づく話し合いがなければ納得できないという点であります。
二つ目には、高
家賃抑制の財源に回すということにつきましては、
さきに言いましたように、不
均衡論という点から見ますと
不当性があるわけであります。しかも、具体的な引き下げ
団地、その内訳と効果が明示されていないという点で、これはサンケイ
新聞等の主張にもございますが、非常に納得できないわけでございます。
最後に、以上申し上げましたような点から御要望申し上げたいと思います。
一つは、こういう情勢の
もとでの、しかも
公団家賃改定の民主的な
ルールなしの再
値上げについては反対していただきたいわけであります。また住民
代表参加による民主的な
ルールの早期
策定の実現をお願いいたしたいと思います。
また、万一再
値上げが実施されるという場合には、次の点をお願いを申し上げたいと思います。
一つは、
値上げ幅の縮小。二つ、
値上げ実施時期の延期。三番目、前例のない
敷金の追加徴収をやめていただきたい。四つ、低収入者などへの
家賃減額
措置の拡充をしていただきたいし、できれば制度化を図っていただきたい。五つ目は、
値上げ増収分の使途の明示と、お使いになる場合には、
修繕、環境整備など、
団地居住者の居住性の向上のために使っていただきたい。また今後の
修繕や環境整備計画を明らかにしていただきたい。六つ目は、
住宅の狭さや老朽化の改善など、
住宅の質、水準の向上を図っていただき、また
前回実績をいただきました特別
団地環境整備の実現などもぜひともお願いをいたしたい。七つ目は、
値上げの
理由、根拠などの
団地居住者への十分な説明。
建設大臣がお約束いただきました、
居住者と
公団との間の納得のいく話し合いの実現。こういう点をぜひお願いいたしたいと思っております。
また、
長期未利用地や未入居
住宅など、
公団経営を
国民の
立場に立って早期に解決していただきますとともに、これらから発生する金利などが現在の
団地居住者へはね返らないよう適切な
措置をお願いしたいわけであります。
次は、
公団の管理の円滑化を図るという問題は大切でございまして、私どもも
公団住宅は
国民共有の財産として保全しなければならない。そのためには、各
団地自治会、
公団自治協というのが
公団との間で日常的に共同協力の関係をつくらなければならないというふうに考えております。
最後に、私たち全国の
公団居住者は、
住宅を人権、福祉の課題としてとらえております。政府に
国民本位の
住宅、
家賃政策の確立、開かれた
公団の経営を要求しております。また
公団住宅を
社会資産として大切にし、その大量
建設と住みよい
団地づくり、
公団と
居住者との信頼関係に立った
家賃問題を含む日常的な協議、話し合いによる
団地の円滑な管理
運営が進むことを切望して自治会活動を続けているわけでございます。
以上の点、諸
先生方の賢明な御判断の上、十分な御
審議を重ねてお願い申し上げまして、発言を終わります。(
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