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1983-03-23 第98回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 古屋  亨君    理事 津島 雄二君 理事 東家 嘉幸君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 神田  厚君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       小坂徳三郎君    桜井  新君       近岡理一郎君    森下 元晴君       高田 富之君    宮田 早苗君       東中 光雄君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君  出席政府委員         防衛政務次官  林  大幹君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 森山  武君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君  委員外出席者         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全課防災環境         対策室長    岡崎 俊雄君         外務省北米局安         全保障課長   加藤 良三君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         会計検査院事務         総局第二局長  竹尾  勉君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ───────────── 委員異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   津島 雄二君     近藤 元次君   三浦  久君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     三浦  久君 同日  理事近藤元次君同月二十二日委員辞任につき、  その補欠として津島雄二君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十四年度政府関係機関決算書  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十五年度政府関係機関決算書  昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管防衛庁)〕      ────◇─────
  2. 古屋亨

    古屋委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古屋亨

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、津島雄二君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 古屋亨

    古屋委員長 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管防衛庁について審査を行います。  まず、昭和五十五年度決算外二件について防衛庁長官から概要説明を求めます。谷川防衛庁長官
  5. 谷川和穗

    谷川国務大臣 昭和五十五年度における防衛庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、(組織防衛本庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一兆九千七百四億五千八百万円余でありまして、これに政府職員昭和五十五年四月以降の給与を改善するため等の予算補正追加額三百八十九億八千七百万円余、高空における放射能塵調査研究等のため、科学技術庁から移しかえを受けた額八百万円余、震災対策総合訓練調査のため、国土庁から移しかえを受けた額五百万円余、科学的財務管理調査のため、大蔵省所管大蔵本省から移しかえを受けた額二百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額八十億五千九百万円余、前年度からの繰越額六十九億六千二百万円余を加え、既定予算節約による予算補正修正減少額二十五億六千百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は二兆二百十九億二千三百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は二兆七十六億四千万円余、翌年度へ繰り越した額は九十九億八千百万円余でありまして、差し引き不用額は四十三億二百万円余であります。  昭和五十五年度予算の執行に当たっては、「防衛計画の大綱」に従って計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下、陸海空各自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  陸上自衛隊につきましては、七四式戦車四十八両、七三式装甲車六両を取得し、新たに昭和五十六年度取得予定の七四式戦車六十両、七三式装甲車九両の購入契約をいたしました。  また、航空機は、連絡偵察機三機、観測ヘリコプター十二機、多用途ヘリコプター三機、輸送ヘリコプター一機、対戦車ヘリコプター一機合わせて二十機を取得し、新たに昭和五十六年度取得予定連絡偵察機二機、練習機二機、観測ヘリコプター十機、多用途ヘリコプター五機、輸送ヘリコプター一機合わせて二十機の購入契約をいたしました。  海上自衛隊につきましては、昭和五十一年度計画護衛艦一隻、昭和五十二年度計画護衛艦一隻、潜水艦一隻、昭和五十三年度計画中型掃海艇二隻、昭和五十四年度計画輸送艦二隻、昭和五十五年度計画調達に係る支援船三隻合わせて十隻を取得し、新たに昭和五十六年度以降に竣工予定護衛艦三隻、潜水艦一隻、中型掃海艇二隻合わせて六隻の建造契約をいたしました。  また、航空機は、救難飛行艇二機、練習機三機、計器飛行練習機二機、対潜ヘリコプター四機合わせて十一機を取得し、新たに昭和五十六年度以降取得予定の対潜哨戒機十機、救難飛行艇一機、計器飛行練習機二機、対潜ヘリコプター二機合わせて十五機の購入契約をいたしました。  航空自衛隊につきましては、要撃戦闘機十二機、支援戦闘機十八機、初等練習機十四機、救難捜索機一機、救難ヘリコプター二機合わせて四十七機を取得し、新たに昭和五十六年度以降取得予定要撃戦闘機三十四機、支援戦闘機三機、高等練習機四機、初等練習機六機、救難捜索機一機、救難ヘリコプター二機合わせて五十機の購入契約をいたしました。  昭和五十五年度防衛本庁職員定員は、自衛官二十七万百八十四人、自衛官以外の職員二万四千百四十六人、計二十九万四千三百三十人でありまして、これを前年度職員定員に比べますと、自衛官については二千三百三十一人の増員であり、自衛官以外の職員において七十人の減員となっております。  また、予備自衛官員数は、四万一千六百人でありまして、これを前年度員数に比べますと二千人の増員となっております。  次に、翌年度への繰越額九十九億八千百万円余は、計画または設計に関する諸条件等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額四十三億二百万円余は、職員欠員があったので、職員基本給を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて、(組織防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は二千五百三十二億一千四百万円余でありまして、これに政府職員昭和五十五年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額三億八千三百万円余、前年度からの繰越額二百四十八億二千三百万円余を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額五億一千七百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ五億七百万円余、建設省所管建設本省へ十二億八千百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は二千七百六十一億一千五百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は二千四百十六億九千六百万円余、翌年度へ繰り越した額は三百三十億五千八百万円余でありまして、差し引き不用額は十三億五千九百万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍従業員労務管理離職者対策福祉対策等に要した経費百六十二億六千九百万円余、施設運営等関連諸費につきましては、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律等に基づき、自衛隊施設及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定に基づく提供施設維持運営等関連し必要な土地の購入及び借り上げ、施設整備、各種の補償、障害及び騒音の防止措置飛行場周辺安全措置民生安定施設助成措置等に要した経費一千八百九十二億二千七百万円余、提供施設移設整備費につきましては、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域の返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費百七十三億六千万円余等であります。  昭和五十五年度防衛施設庁職員定員は、三千四百九十五人でありまして、これを前年度職員定員に比べますと、十三人の減員となっております。  次に、翌年度への繰越額三百三十億五千八百万円余は、計画または設計に関する諸条件、用地の関係アメリカ合衆国軍隊等事情等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額十三億五千九百万円余は、駐留軍等労務者退職者が少なかったこと等により駐留軍等労務者格差給等給与を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、昭和五十五年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  6. 古屋亨

    古屋委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。竹尾会計検査院第二局長
  7. 竹尾勉

    竹尾会計検査院説明員 昭和五十五年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 古屋亨

    古屋委員長 これにて説明の聴取を終わります。    ─────────────
  9. 古屋亨

    古屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 中曽根内閣が誕生して、いち早く中曽根総理は韓国を訪問し、引き続いてアメリカ訪問と、いわゆる一連の外交日程の消化、あるいはまた予算委員会等での答弁等国民の多くはいま中曽根内閣の持つタカ派的、軍事的なきな臭さに非常に敏感になりつつある。いままさに戦争か平和か、大砲かバターか、こんな言葉を吐いても何か違和感が感じられないほど、憲法を中心に据えた国民的合意が踏み外されている、このことに非常に危惧の念を持つわけであります。  そこで、私は防衛庁長官にお尋ねをしたいのでありますが、現在の国際情勢の中で、米ソの対決のこのエスカレートを前提として、日本安全保障のために軍備費増強をすることのみが最善の選択だとお考えでいらっしゃるのかどうか。
  11. 谷川和穗

    谷川国務大臣 国の独立を確保し安全を守るということは、これはすぐれて崇高な国家としての最高の課題だ、私はこう考えております。そして、その守り方、確保の仕方につきましては、何も軍事力といいますか、それだけによるものではもちろんなくて、挙げて外交その他すべての施策をもって行うべきものであろうかと存じております。  ただ、私は現在防衛庁長官として、特にその中でも防衛角度からわが国独立を守り国の安全を確保するということを仰せつかっておるわけでございますが、この面からだけ考えれば、現在の国際環境というのはきわめて厳しいものがある、こう考えております。そして特に近年において、西側東側というような二つの分け方で言うならば、西側防衛努力というものがどちらかといえば低位にあった間にも、東側、特にソ連は、国内にいろいろな問題を抱えておったと思いますが、一貫して軍事力増強を図ってきた。したがって、西側基本的な平和戦略といいますか、そういう言葉を使わしていただければ、平和戦略であるところの抑止力の効果というものが、最近に至って、このまま推移するならばあるいはその信頼性を回復しなければならぬことが起こるかもしれぬという形で、現在西側挙げて抑止力信頼性の回復という努力を続けておるのが現況であろうかと存じております。  わが国に関してだけ申し上げるならば、わが国防衛力整備というのは、わが国自衛のために、わが国が他の国内施策とともに、これとのバランスを図りながら、基本的な幾つかの考え方の上に立ってわが国独自の判断で行ってきておるものである、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 昨年の軍縮特別総会で、鈴木総理は、軍縮こそが世界恒久平和への道であるということを強く呼びかけているのですね。私は、いま東西陣営の限りない軍備拡大の今日こそ、わが国は、防衛庁長官をしてもやはり軍縮への道を提起していくべきであるという考えなんです。  この鈴木総理軍縮特別総会における発言は、少なくとも日本政府の意思だと受けとめているわけですが、これは今日変わったのか、変わらないのか。中曽根内閣になって変わったのか、あるいは軍縮を強く世界に呼びかけていくというその姿勢はいまも日本政府見解なのか、ひとつその点について防衛庁長官から聞いておきます。
  13. 谷川和穗

    谷川国務大臣 あるいは軍縮といい、あるいは軍備管理といい、いずれも、特に大量破壊兵器制限交渉はすぐれて超大国間の大きなテーマだ、こういうふうに私は考えておりますが、その間にあって、わが国としては一貫して、特に核軍縮を含めてその他の通常兵器軍縮に至るまで、国際世論の醸成に努力して、あらゆる機会をとらえて、世界平和の確立のために軍備をできるだけ低いレベルで安定させる、こういう基本的な姿勢から、国際場裏においても軍縮が達成可能の国際環境をつくり上げていくという努力を引き続いて行っているものであって、このことは中曽根内閣になりましても歴代の内閣といささかも違うものではない、私はこういうふうに理解をいたしております。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 さらにお聞きをいたします。  二月一日、ワインバーガー米国防長官上院軍事公聴会で、戦争放棄規定した日本憲法は、第二次大戦後の米国の軍事的絶対優位の環境があったからこそ成り立ち得た、こういうふうな証言をしているわけであります。このワインバーガー発言に対して、防衛庁長官はどう受けとめ、どうお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  15. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ワインバーガー長官発言については私はつまびらかにはいたしませんが、新聞報道理解している限りについて申し上げさしていただきたいと思います。  その前に一つだけ申し上げたいと存じますけれども、私自身は、二つの大きな戦争を経験した人類がつくり上げてきた基本的な考え方は、戦争違法性という考え方だ、こう考えておるわけでございます。したがって、日本国憲法を貫くその思想も、これはちょうど国連憲章前文において表明されておるのと全く同じ考え方に立っているのだ、こういうふうに考えております。  したがって、ワインバーガー長官がどういう角度からどういう発言をされたのか、私は新聞報道で伝え聞くところ程度しかつまびらかではございませんけれども、私自身は、現在の日本の国の憲法がとった姿勢というものは決して事珍しい姿勢ではない、こういうふうに考えておるわけでございます。すなわち、国連憲章前文に明らかなごとく、世界すべての、つまり人類は、戦争というものをもう永久に――これは戦争そのものは違法である。国家固有の主権をみずから制限して、その中に初めて核として残ってきた自衛権というものだけを宣言しておる。私は、ワインバーガー長官とその点についてまだ話し合いをしてみたことはございませんけれども基本的には私の現在認識しておる認識点ワインバーガー長官認識というものはいささかも違っておるまい、こういうふうに確信をしておるところでございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、さらにワインバーガー長官はこの証言の中で、ベトナム戦争後の一九七〇年代に米国世論対外介入を回避するムードとなり、政府世界平和の守り手としての軍事力優位を確保する考えを捨ててしまい、一九五〇年代の軍事的優位が失われていると述べていると報道されているわけですが、日本憲法九条は、現在の環境では成り立ち得ないことを意味しているわけですね。  戦争放棄規定は、米軍事力の優位が失われれば維持ができないのだというふうに長官はお考えではないでしょうね。
  17. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ただいまの御質問の要点が必ずしも私にはっきりつかみ取れておりませんけれども、私ども基本姿勢というものは、あくまで紛争未然に防止する、別の言葉を使わしていただければ、抑止力信頼性を常に確保しておく、こういうことであって、現在私どもがやらしていただいておりますわが国における自衛力整備も、まさにその中の一環として存在しておるのだ、こう思っております。  それから、わが国自身憲法九条に関連をいたしまして、わが国必要最小限度の実力を持つということ自体は、私は、憲法九条の基本からしていささかもこれに相反するものではない、こういうふうに考えております。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 私がいま指摘をしているのは、報道されたワインバーガー国防長官発言内容について、防衛庁長官はどう受けとめていらっしゃるのか。そして、戦争放棄したわが国の戦後平和憲法というものは、アメリカ軍事的優位の中でつくられて、軍事的優位が失われるならばそれは維持できないのだというようなお考えではないでしょうねということをお尋ねしているのです。
  19. 新井弘一

    新井政府委員 お答えいたします。  ワインバーガー長官発言基本的な考え方というのは、すでに先生も御質問の中で若干触れておられますけれども、一九五〇年代、それから六〇年代の特に中葉ごろまで、アメリカソ連との関係においても圧倒的な軍事力を、すなわち核、通常戦力両面において持っていた、それが一九七〇年代、さらに八〇年代に入りまして、東西間、米ソ間のバランスが逆転するというような状況が出てきた、そういう背景の中にあって、アメリカとしては、かつては、たとえば日本防衛について、あるいは極東の防衛についてもアメリカがその大半を負担することができたけれども、いまやアメリカ一国だけでは十分な抑止力信頼性というものを確保できない、そういうことで、現在アメリカ日本に期待しているのは、少なくも日本憲法の範囲内でやれる自国防衛のための努力はやってほしい、その一点に尽きるというように理解しております。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、さらに重ねて伺います。  いま、日本憲法の枠内での日本に対する期待度だ、アメリカはそうだというふうに担当の事務レベルで答えられたのだけれども、報じられるところによると、ワインバーガー発言は、裏を返せば、アメリカ軍事力優位の状況の中でこそわが国戦争放棄規定維持されるのだ、私はそういうふうに受けとめているわけなんです。これはとんでもないことだと思っているのですよ。アメリカ軍事力が優位だから日本平和憲法が生まれ、日本の平和が生まれたのではなく、やはり第二次大戦の強い反省の中からわが国国民合意平和憲法をつくり出したのだ、そのことをいま前段で、私なりの意見も踏まえて、ワインバーガー国防長官発言がどうも私には理解ができない、われわれ日本国民考えとはどうも違っている、それで、防衛庁長官のこの発言に対する見解を聞かしてほしい。  さらに、アメリカ軍事力優位が失われたらわが国憲法維持できないんだという考えは持っていらっしゃらないでしょうねと言っているのです。持っているのか、持ってないのか。持っておりませんというお答えがあるのか。いや、それはまだ考え直さなければいけないんだ。いま憲法の問題はタブー視されてない、しちゃいけないんだ、憲法論議もすべきだと中曽根さんが言っていらっしゃるのです。堂々とやろうじゃありませんか。私は、この憲法に触れてのワインバーガー国防長官発言をひとつとらえてみたい。防衛庁長官見解を聞かしてください。
  21. 谷川和穗

    谷川国務大臣 二つに分けて、そのうちの一つは私はここで確実にお答えすることはできないような感じがいたします。というのは、ワインバーガー長官発言について私はそれほどつまびらかにいたしておりませんので、一つ目についてはお答えできないかもしれませんが、もう一点の平和の維持という基本的な考え方につきまして、私はワインバーガー長官の持っておる考え方と同じ考え方でございます。  というのは、少しく申し上げさせていただきますと、あくまでその抑止力というものは常に信頼性が確実でなければ戦略としては成り立たないと私は思っております。したがって、今日いずれの国も、独力をもってみずからを守り切るという国は、ある意味では超大国においてすらあり得ないのかもしれませんが、その他の国々において全くないわけでございまして、それぞれ自国を守るのに共同して守っておる、こういうことが基本だと思います。それから考えますと、私ども西側にみずからの身を入れると申しますか、西側陣営の側に入っておるという選択をいたしたわけでございまして、この選択基本的に間違っていなかった選択だと私は今日でも思っておりますし、言うならば、その西側防衛力抑止力基本になるのは、何といってもアメリカの持っておる現在の力だと思っております。  それから、最後に一言つけ加えさせていただきますと、私は、個人で成り立っておる国内社会においてもやはりいろいろな形の紛争というのは起こるのであって、その紛争が起こらないようにさせていくためにはいろいろ手だてがありますが、国際社会の中においては、特にその場合にそういう紛争未然に防止するためには、やはりある程度の抑止力というのは必要なものだ、基本的にそう考えておるわけでございます。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 ワインバーガー国防長官と、平和を維持するためには同じ考えだと言うが、私はとんでもないと思うのですよ。それじゃ、最近のアメリカ国防報告軍事情勢報告等では――いま若干、抑止力という言葉を使いながら共同でのという防衛論議防衛庁長官は答えられたわけです。西側同盟国としてわが国を、アメリカのそういう報告等によりますと、常に西側陣営の一員として戦略的位置づけをしている、こういうふうに私も理解をするし、事実そう位置づけられているわけなんですね。ところが、そういう戦略的位置づけに位置づけられている、アメリカはそう期待しているわけなんですが、その位置づけに目をつぶって、むしろシーレーン防衛をいかに守るかといった本質すりかえ、いわゆる戦術的なレベルわが国防衛を論じている。防衛庁長官、ここが私は聞きたいところです。  だから、もし、さっき言われるように、西側の一員としての共同的役割り、防衛庁長官抑止力ということを前段に入れられましたけれどもアメリカと共同的な役割りということは後にまたそれはそれなりに論じますが、アメリカの持っているような、考えているような、期待しているような位置づけにわが国は置かれているのだ、そういう位置づけをしているのだ、そういうことなんでしょうか。それとも、そうじゃない、わが国わが国なりの、よく使われる言葉としては、シーレーン防衛をいかに守っていくかということで、アメリカとともにわが国なりの防衛考えていくのだ、こういうことなのか。いまの答弁でちらっと本質的なものものぞかれると思うのです。だから、どうも本質をすりかえられて議論がされているように思うので、この点ははっきりと聞いておきたいと思います。
  23. 谷川和穗

    谷川国務大臣 日本日米安保条約を締結いたしております一方の国であるアメリカが、日本防衛努力について関心を持ち、またいろいろな期待を表明することは、私は当然過ぎるほど当然のことであろう、こう思っております。  それから、第二点といたしまして、わが国としては、有事の際に安保条約第五条が働くことを期待をいたして、米側と共同対処をとることあり得べしということを基本考え方として防衛力整備を続けておるわけでございますが、わが国防衛力は、わが国をみずから守るため、わが国が自主的な判断を持って今日整備を続けておるわけでございまして、この問題については、また後ほどシーレーンの問題その他についてお問い合わせがあるんではなかろうかと思いますので、基本的な要点だけを御報告させていただきますが、私どもが現在続けておりますわが国防衛力整備は、あくまでわが国をみずから守るための必要最小限度の範囲の中において行われておる防衛力整備であります。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、アメリカの期待は期待、わが国わが国の制約された防衛、そういうことなんでしょうか。
  25. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほども申し上げさせていただきましたように、わが国日米安保条約を締結しておる締約国の片方でありますアメリカが、わが国に対して防衛力整備について期待をし、あるいは希望を述べるということは当然あり得る、こう考えております。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 そこなんですね。アメリカアメリカ世界戦略の中での西側陣営の一員として日本を位置づけしている。しかし、わが国政府は、常に本質をすりかえて、アメリカのそういう戦略的な要請にこたえながら、専守防衛だとか航路帯、シーレーン防衛だとかいうようなことですりかえているということを私は指摘したのです。  それじゃ、さらに長官に、日米運命共同体だなどと中曽根総理は一連の発言をして、アメリカに対して期待度を持たせているわけですね。アメリカの期待にこたえますよ、今度は日本はお返しをいたしますよというようなことを中曽根さんは暗にほのめかしているわけなんです。日本列島をソ連の脅威から西側陣営を守る戦略的なとりでにしよう、そういうことはアメリカの意図として読み切れると私は思うのです。いまの答弁だと、そういうアメリカの意図を十二分に理解し承知しながら、一連の発言なり取り組みをしている。ところが、国内向けのいわゆる国民に対する国会での答弁とどうも使い分けているような気がするわけなんですね。国会での答弁とアメリカ側に対する話し合いでの話とはどうも使い分けている。  そういう点について防衛庁長官、本当にあなたはみずからの良心に恥じないように、わが国の安全のために、平和のためにやはり堂々とアメリカと話をし、国会においても国民に対しても堂々と議論、見解を展開していかなければならない。どうもそういう意味で議論がすりかえられているような気がするのですが、重ねて長官の所見を聞いておきたいと思います。
  27. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は、日米間に基本的にわが国防衛に関する考え方の差異はない、こう考えております。もしそこに差があるとすれば、それはアメリカの期待が、わが国防衛力整備についてのペース、速さ、スピードの問題で期待感としてあらわれてきていると思います。  しかし、わが国わが国として防衛力整備に当たっては基本的な原則を確立しておるわけでございまして、その中において、そのときどきの国の財政あるいは経済事情、あるいは国民の御支援、御理解をいただきながら、他の国内施策とのバランスを図りながら整備を続けておるのでありまして、どうしてもそのときには、国際情勢の変化あるいは防衛以外の分野、たとえば貿易摩擦とかそういった問題によって生じるいわば両国間の、どういう言葉を使いますか、あえてアメリカ国内のいらいらというような言葉を使わしていただければ感覚的に私は自分で一番理解しやすいものですから、そういう感じを持っているのですが、そういうものが防衛問題に投影して、そのためにもっとペースアップをしろというような要望がアメリカからえてして来ることはあり得る。しかし、あっても、わが方としてはわが方のみずから信ずるところによって行動をするのであって、そのことは常にアメリカ側に対して機会あるたびに私どもは伝えておる。こういう形で日米の間の基本的な共通の理解は成り立ってきておる、こういうふうに考えております。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカが期待するものはわが国防衛力の十分な整備だ、そしてその速さの問題だ、これはいろいろ問題はあります。財政的なという表現でカムフラージュされていますけれども、GNPの問題、しかしそのことよりも、やはりわが国の持つ平和憲法の中身なんですね。  それでは防衛庁長官にお聞きしますが、アメリカわが国に、西側陣営、いわゆるアメリカ戦略的な位置づけをし、共同の役割りを果たしてほしい、役割り分担をしてほしいという期待を持っていると私は思うのです。ところが、そこは集団的自衛権云々という形になって、わが国としてはどうもアメリカとの考えあるいはアメリカとのすり合わせがむずかしい。いわゆるわが国の個別的自衛権さえ守っていればアメリカは納得してくれるんだ、そういうふうに防衛庁長官考えていらっしゃいますか。
  29. 谷川和穗

    谷川国務大臣 もちろんアメリカの議会に代表されます国民の対日世論というものは、これはまた違った角度日米間の関係においていろいろな伝わり方があると存じますけれども、少なくともわが国政府アメリカ政府との間におきます防衛問題については、基本的に何らその間に解決しなければならぬ問題が横たわっているとは私は思っておりません。  具体的に申し上げますと、いま御指摘のございましたような形で、わが国憲法内容につきましてはアメリカの政策担当者はすべてこれを理解し、そして日米間の各種の協議にその理解基本にして携わっておるものだ、私はそういうように理解をしております。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 あなた方が理解をしている、あるいはアメリカ側と何らのわだかまりもない、それはまさにアメリカ世界戦略の一環としての位置づけにわが国が組み込まれているということなんです。そしてそのことを国会の中で明らかにしていくと、やはり憲法に抵触していく、だから集団的自衛権の問題に入っていく、こういうことになるわけなんですね。しかし、アメリカ世界戦略的要請にはこたえたくとも、わが国憲法上、集団的自衛権はないんだ、だからこたえられない。ところがあなた方は、その集団的自衛権を国会の答弁等によって、いまの答弁も含めて、一つ一つなし崩しに形骸化していこう、こういうところが問題なんですね。アメリカと一線を引いて、アメリカ考える、アメリカの期待する世界戦略の一環に、西側陣営として集団的な防衛の役割り分担はできないんだということを明確にアメリカ側に伝え、そして毅然たるわが国の対応をしていかなければならない。あなた方政府のいまの対応は、まさに集団的自衛権に抵触のおそれがあるんだ。もう抵触しているんだ。あるいは、その解釈によって形骸化をしている。これは連日の予算委員会等を見ても、報道関係すべてが戒めも含めて強くアピールしているわけです。  私はそういうことから、集団的自衛権等の問題について長官にさらに尋ねていきます。  その前に、国連憲章五十一条で言う個別的自衛権、これは国家であればどこの国家でも持つ権利だと私は思うのですが、防衛庁長官はいかがでしょうか。
  31. 谷川和穗

    谷川国務大臣 さように考えております。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃさらに、わが国の持つ個別的自衛権と韓国あるいはフィリピン、中国、ソ連アメリカ、イギリス等の国が持っている個別的自衛権とは同じ権利であるのか、あるいはそうでないのか。
  33. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は他国の持っておりまする権利についてまでここで答弁を申し上げる立場にございませんが、しかしながら、わが国が持っております個別的自衛権というのは主権国家として当然持つべき権利、かように考えております。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 あなた何を言っているんですか。防衛は主権にかかわる問題だし、防衛というものは国家の主権なんです。だからこそ先ほどから、アメリカの言いなりに防衛を進めてもらったら困るということなんです。わが国の主権を明確にしていかなければいけない。わが国の持つ個別的自衛権というのは制限的な自衛権なんですね。普通は、個別的自衛権というのは先制的自衛権防衛も持つわけなんですよ。  防衛庁長官防衛庁長官わが国と韓国あるいはその他のアメリカ、イギリス等々の持つ個別的自衛権の中身を十分認識されないと、わが国防衛論議はできないじゃないですか。よその国の自衛権については云々できない、国連憲章五十一条で言う個別的自衛権ですよ。何を言っているんですか。もう一度答えてください。
  35. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私が答弁をさしていただいておりますのは、わが国国家固有の権利としての自衛権は持っておって、これはごく自然の姿であるということをここで再三答弁させていただいてきたわけでございます。ただ、それから先のことについては私は触れておらなかったわけでございますが、自衛権の発動、自衛権の行使については、わが国憲法の定めるところによりまして行使の態様について幾つかの基本的な考えが確立している国家であります。そのうちの一つは、もちろん当然のことでございますが、自衛権の行使は必要最小限度の行使に限る、こういうことを土台といたしまして、その他自衛権の行使については、わが国はみずから憲法の定めるところによりまして一つ理解を確立しておる国家であろうかと存じます。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、それじゃわが国の個別的自衛権の行使について、どのようなときにわが国は行使できるのですか。どのような要因のときにいわゆる個別的自衛権が行使できるのですか。
  37. 谷川和穗

    谷川国務大臣 独立国として独立を確保するために、まず侵略を未然に防止する行使は当然とり得ると存じまするし、一たび侵略が生起した場合には、それを排除する自衛のための行為も当然独立国家で行える、こう考えます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 自衛権発動の三要件というのがすでに国会でもいろいろ論じられました。急迫不正の侵害があるとき、あるいは適当な手段のないこと及び必要最小限度の実力行使にとどめること、自衛権発動の三要件に該当する場合にのみ限られる、こういう一つ見解が表明されているのです。個別的自衛権といっても、日本憲法上、専守防衛という言葉を使って、専守防衛自衛権しか認められていない。当然他の国の個別的自衛権とは異なるのですよ。先制的攻撃はできないわけです、いまのお答えにもあったように。日本は国際法上認められている集団的自衛権憲法上持つことができず、個別的な自衛権も制限的な自衛権しかない。  だから、そういう個別的自衛権しか持たないわが国アメリカ世界戦略の中での役割りなどを持つことはできないのだと私は思っておるわけなんです。できないのです。アメリカの期待する世界戦略の中での役割りなどは当然持てない。防衛庁長官はどうお考えになりますか。
  39. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国アメリカ日米安保条約を締結いたしておりますのは、「防衛計画の大綱」にもございますように、わが国わが国として限定的小規模侵略に対しては自力をもってこれに立ち向かうことをまず第一の原則といたしておりますが、それ以上の侵略行為が行われるというようなことに対してはアメリカ抑止力を期待する、安保条約第五条が作動するということを前提に、日米安保条約体制を維持し、その円滑な運営を図ってきておるところでございます。そして私は、基本的にはこの選択わが国の今日の繁栄を導き出しておる非常に重要な防衛上の骨格である、こういうふうに理解をいたしておる次第であります。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 私は先ほどから、アメリカとの防衛分担の役割りをわが国は負うことはできないんだ、それは集団自衛権に抵触していくのだ。いろいろと議論をしている中で、あるいはいままで予算委員会等で議論をされてその答弁を聞かせてもらっても、個別的自衛権、専守防衛わが国の許される自衛権の枠内だと言いながら、その枠をどんどんと拡大をしていっている、そして逆に集団自衛権の解釈を狭くしていく、こういうことが今日の状況だと思うのです。幾ら私が問題を提起して、アメリカ世界戦略の中に位置づけられていくということは集団的自衛権に組み込まれていくことであり、集団自衛権を禁じたわが国憲法に抵触していくんだということを指摘しても、そうではない、政府自身は一貫してそういう答えをして、どんどんと個別的自衛権の解釈を拡大していく。  それじゃ、もっとわかりやすく防衛庁長官に答えてほしい。いままでの議論では、いや、そういうことは個別的自衛権だ、わが国防衛の枠の中でありますという答えがずっとされてきたわけです。それじゃ、こういう事態、こういうことは集団的自衛権である、こういう例は集団的自衛権に入るのだというのはどういう事態を指すのか、もっと国民にわかりやすく、平易な言葉で事例を挙げて答えてください。
  41. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、いま委員長の御指名がありましたので、国際法上……(井上(一)委員防衛庁長官に事例を出して答えなさいと言っているんだ」と呼ぶ)大臣からお答えする前に、一つだけお答えさせていただきたいと思いますが、国際法上集団的自衛権というのは、すなわち、わが国が攻撃されていないにもかかわらず、わが国と密接な関係のある国に対する攻撃をわが国に対する攻撃とみなしてこれに対応手段をとるというようなことが、一般的に集団的自衛権というふうに言われております。これは、国連憲章五十一条なり、平和条約、安保条約、それぞれにおいて国際法上国家に認められた権利であろう、こういうふうに理解しております。  しかし、わが国は、先ほど来御論議がありましたように、憲法の制約もありまして、こうした集団的自衛権の行使というものは認められていない、あくまでも個別的自衛権の行使に限られる、こういうことでございます。  そういう制限、制約の中にわが国は置かれております以上、集団的自衛権の行使にわたるようなことを一切考えたことがございませんので、こういったものの例示を挙げると言われても、なかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。
  42. 谷川和穗

    谷川国務大臣 国際法上は、わが国といえども個別的、集団的自衛権を有しておる国家でございますが、憲法の定めるところによりまして、その行使においてはおのずから必要最小限の自衛権を発動する、こういうことから、わが国は個別的自衛権をもってみずからを守っておる国家ということは、今日まで累次政府が答弁をいたしてきたことでございます。  したがいまして、ただいま政府委員が答弁させていただきましたごとく、私どもといたしましては、集団的自衛権の例示ということになりましても、これを挙げて、わが国の場合には、こういう場合にはというような例示を申し上げるような立場にございません。それを申し上げて、答弁とさせていただきたいと思います。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 あなた方は、集団的自衛権も個別的自衛権だと言葉でごまかしながら、先ほどから指摘するように、すでにそういう集団的自衛権の解釈を小さくして個別的自衛権の枠の中に入れてしまっている、こういうことを指摘しているわけなんです。  だから、集団的自衛権とは攻撃を受けてない場合の云々という局長の答弁がさっきあったのですけれども、さらにもっと具体的に、集団的自衛権というのは、たとえばある国とある国とある国に加担をしてある国に対して共同してその役割りを分担することが集団的自衛権なのかどうか、具体的な事例を出して防衛庁長官説明してください、どうもわかりにくいから、こういうことで防衛庁長官質問しているのですよ。防衛庁長官、あなたの考えている集団的自衛権とはこんなものです、こういうことですと言ってください、集団的自衛権とはどんなものですかと聞いているのですから。わが国は集団的自衛権を持っていないということ、憲法で持たないということ、わが国憲法のそのことはもう十分お互いに理解しておるわけですね。だから集団的自衛権、持たない集団的自衛権とはどういう事例なのか。
  44. 谷川和穗

    谷川国務大臣 重ねて御答弁を申し上げるようで恐縮でございますが、わが国が攻撃を受けていない、わが国に対する武力攻撃が行われていないにもかかわらず、わが国がみずからの武力をもってわが国関係のある国を守る、これが集団的自衛権の発動である、先ほどそういう趣旨の答弁を政府委員からさせていただいたわけでございますが、先ほどから答弁させていただいておりますように、わが国の自衛のための行為、実力行使は、あくまでわが国がみずから自分の国を守るために、自分の国が攻撃を受けたとき、つまりこれを個別的自衛権の行使、こう呼んでおるわけでございますが、そういうような行使の仕方をいたしておる。これは憲法九条がそう定めておるから、私どもそういうふうに、わが国の自衛についてはあくまで個別的自衛権の行使に限る、必要最小限の実力の行使を行う、こういう理解で今日まで至っておりまして、それを先ほど来答弁をさせていただいているわけでございます。  したがって、わが国を中心に考えて、集団的自衛権の場合にはどういう場合が集団的自衛権かという例示をしろとおっしゃられましても、私ども、もともと先ほど申し上げましたように個別的自衛権をもって行動をいたすということでおりますので、お答えを申し上げるわけにはいかない、こういうふうに申し上げてきたところでございます。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、アメリカが対ソ戦略の一環として日本軍事力に期待をしているということは、もう先ほどから指摘をしてきましたが、その期待をしている主たるものは何なのか。中東、極東有事の際のソ連の極東艦隊の外洋進出を阻止すること、千海里内でのソ連潜水艦を制圧することである、私はアメリカ日本に対する期待というものはそれであると思うのですが、防衛庁長官はどうお考えですか。
  46. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国が武力侵攻を受けた場合、わが国に対する武力攻撃が発生をいたしましたときには、自衛隊の実力行使ということが始まりますが、わが国が武力攻撃を受けていない時点で、わが国が実力行使、武力行動に出るということはあり得ません。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 それでは念のために聞いておきたいのです。軍事的に見て、わが国の、いわゆる日本の三海峡の海峡封鎖をすること、これにはどんなメリットがあるのか、念のために聞かせてください、防衛庁長官
  48. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 三海峡封鎖というふうなお尋ねでございましたが、私ども海峡防備あるいは通峡阻止というふうな言い方をさせていただいておりますが、この海峡防備なり通峡阻止というものの一番のメリットは、わが国に対する武力攻撃があった国の艦艇の通峡を阻止する。あくまでもこれは日本に対しての攻撃があった時点、すなわち日本の有事において、わが国に対して武力攻撃を行っている国の艦船の通峡を阻止するということでございまして、こういった作戦が、ひいては海上交通の安全確保、すなわちシーレーンの防衛にも寄与し得る作戦の一環であるというふうに認識しております。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 十八日のアメリカの軍事委員会公聴会で、海軍長官が、日本周辺の海峡防衛は米戦略の一環であると言った。海峡封鎖は日本有事の際わが国独自の判断で行うものであり、米戦略に組み込まれるものではないといういまの基本的なお答えで、防衛庁はこの十八日の証言録を取り寄せて分析をするという報道がなされていたのですが、取り寄せて分析をされたのかどうか。
  50. 新井弘一

    新井政府委員 証言の大要は承知しているつもりでございますけれども証言それ自体のテキストはいまだ入手しておりません。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、これこそすぐに入手をして、アメリカとの見解に相違はないとさっき答えられたのですけれども、こういう点はきちっとしなければいけないし、私が指摘しているのは、アメリカはこの海峡封鎖一つをとらえても、米戦略の一環として位置づけている。わが国は列島防衛の一環だ、こういうことなんです。攻撃されなければ封鎖はしないのだ。むしろ軍事戦略上のメリット、日本がするとかしないとかは別にして、三海峡の封鎖についてはどんなメリットがあるのか。防衛庁長官、教えてください。
  52. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま先生の御質問の趣旨が、封鎖をしない場合にどういうメリットがあるか、こういうお尋ねでございましょうか。ちょっといま質問を取り違えておるかもしれませんが、もしそういう意味であるとするとなかなかお答えしにくい問題でございまして、私ども必要があるときしかそういうことを考えておりません。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 わが国わが国の有事の際に通峡阻止をもくろんだ海峡封鎖をする、さっきそれを答えられたわけなんです。わが国が海峡封鎖をするとかしない、そのことは別にして、論じられている三海峡を封鎖することは軍事戦略上どのようなメリットがあるのかということを防衛庁長官に聞かせてほしい、私はこう言っているのです。
  54. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 通峡阻止がどういうメリットがあるかということでございますが、わが国に対する武力攻撃の態様というのはまさに千差万別でございまして、いろいろな状況が想定されると思います。  その一番典型的な例として挙げられるのは、すなわちわが国に対する海上交通の破壊であろう。そして、その一番の脅威というものは対象国、相手国の潜水艦であろうというふうに思われるわけでございます。その潜水艦の行動というものを制約するためには、各般の作戦の組み合わせによる累積効果が必要である。すなわち海峡防備、通峡阻止による相手国潜水艦の通峡を制約することが第一。  第二は、いわゆる広い海洋における洋上の監視あるいは対潜作戦の実施ということ、あるいは航路帯を設けてその航路帯をクリーンにしておいてそこを船団なり船舶を通す、必要があれば船舶の直接護衛というふうなことも考えられるかもしれません。あるいはまた港湾における港湾防備といいますか、わが国の重要港湾の防備といったものもあるでしょう。  そうしたあらゆる作戦を総合して海上交通の安全を確保するということでございまして、この通峡阻止あるいは海峡を防備するということは、この海上交通の安全を確保するためにきわめて重要な作戦の分野である、要素であるというふうに認識しております。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 外洋への進出をさせないために大きなメリットがある。いまの答弁の中では固有の国名は挙げられなかったけれども、いわゆる極東、中東有事の際に、この三海峡封鎖はソ連艦隊を外洋に進出させない、そういう大きなメリットがある、防衛庁長官、そういうことでしょう。
  56. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国は四面海に取り囲まれている国でもございまするし、また有事の場合を想定いたしましても、わが国に搬入されてまいりまする物資は、ことごとくとは申しませんが、その大半は海の上を通過してくる。したがって、海上交通路の安全確保というものはわが国防衛上非常に重要な意味合いを持っているものである、こう考えております。  その海上交通路の安全をどこの国が脅かすか、これはいまここでどこの国がそれをやりますというような答弁を申し上げるわけにいきませんが、私どもといたしましてはいかなる侵略の態様にも的確に対処できるような体制を整えておくということが必要である、こう考えておるわけでございます。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、私は日本有事の場合の、日本の有事でない場合は別として、さっき海峡封鎖の軍事的メリットを聞いたわけです。外洋進出を阻止できる。日本側の考えている海峡封鎖は、ソ連船を目的として当然考えている、ソ連艦隊の阻止を目的として当然考えている、私はこういうふうに思うのです。私はそう思うのですが、防衛庁長官はいかがでしょうか。
  58. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず第一に、海峡の防備というのは、先ほどから申し上げておりますように、わが国にとっては非常に重要な作戦でございます。  そして、その対象となる対象国がいずれの国であるかということについて、いまソ連という国名をお挙げになられましたけれども、私どもといたしましては、わが国に対して攻撃をしかける国があれば、仮にその国に所属している艦艇がわが国周辺の海峡を通峡する、それを阻止しなければならぬということになれば、それは別にその国がどこの国であるからこういう作戦をとるというような判断でその作戦を行うものではございませんで、わが国の自衛のためにどうしてもそういう作戦をとらなければならないという必要があればそのときにおいて判断をする、海峡の通峡阻止をするという作戦をとる、あるいはそれをとるかとらないかというような判断をいたす、こういうことでございます。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 それではもう少し具体的に伺いましょう。  私は先ほどから、アメリカわが国への軍事的期待にこたえていくということは集団的自衛権に抵触するということを強く指摘しました。そこで、それでは次の場合はどうなのかちょっと聞いてみましょう。  中東または極東有事の際に、ソ連艦隊またはソ連潜水艦が外洋に進出し南下を企ててその紛争海域に向かおうとする場合、中東あるいは極東有事の際のソ連艦隊の南下に対して、西側の一員でありアメリカと運命共同体にあるわが国西側陣営の一員であるわが国世界的な対ソ戦略の一環としてそのソ連艦隊を阻止する、これは海峡封鎖も含みます、阻止することはできるのでしょうか。
  60. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国に対する武力攻撃が行われておらないような時点で自衛隊が武力行動に出るということはあり得ません。(井上(一)委員「できないですね」と呼ぶ)できません。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 それで、わが国の近海でアメリカ側が海峡封鎖を含めて阻止することはできる、もちろんわが国が攻撃を受けていない、こういう場合ですよ。その場合にアメリカ側に、たとえば気象状況、波の高さだとかいろいろな情報をわが国提供することができるのでしょうか、できないのでしょうか。
  62. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一般論として申し上げれば、わが国アメリカの間には、日米安保体制によって結ばれている国でございますから、そういう意味合いからして、平素から情報の交換というものがあり得ると思います。ただ、どういう情報をどういう形でやっているかということについては答弁を差し控えさせていただきますが、各種の情報交換ということは平素からやっております。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 いま私が具体的に指摘したように、わが国が有事でない場合、わが国の近海でアメリカ側が海峡封鎖をする、その折に気象条件等の情報を提供する、そういうことが防衛庁長官できるのでしょうか、できないのでしょうか。これは防衛庁長官考えを聞かしてください。
  64. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず、情報を提供するかしないかとか、できるかできないかという問題の前に、わが国紛争に巻き込まれておらない時点に、わが国と同盟関係にあります米側が、日本の近海の海峡でとおっしゃられましたが、近海の海峡というのは、先生の頭の中では恐らく三海里の日本の領海を除いた公海部分のことを想定されて御発言があったのだろうと思いますけれども、私は一般論として、そういう日本戦争に巻き込まれておらない、どういう状態でどうなのか存じませんが、態様がまさに千差万別ですから、ちょっと私の頭の中でどういう事態を先生が御想定になられているのかわかりませんが、何かアメリカがそういうような状態についていかにも日本近海の海峡を封鎖に出るというような行為があるような御発言でございましたが、私はそういうことはあり得ないだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 日本が情報を提供できるのかできないのか。
  66. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、日本の安全が確保されておって日本に何ら危機がないような時点において、日米安保条約の締結国の一方国であるアメリカが、日本の近海とおっしゃられたのは先ほどのようなところだと思いますけれども、きわめて国際的にも大きな影響があるようなそういう海峡の封鎖という行為を行ってくること自体が考えられないことだと思います。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 行ってくることは考えられない、そういうことでなく――それはそれなりに聞いておきましょう。アメリカはそういうことであろう。  しかし、アメリカに情報を提供することはできるのかできないのか。局長は答弁がなかったので大臣から。
  68. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど政府委員から答弁させていただきましたように、日米安保条約の締結国間でございます。したがって、常に情報はいろいろと交換をいたしておりますが、どの種の情報がどういう形態、形をもって交換されているかということについてはこの場では御答弁を差し控えさせていただきたい、こういうふうに政府委員が御答弁をいたしたところでございます。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 それではさらに、わが国が有事でない場合にアメリカは海峡封鎖はしないであろうというような含みの中での答弁だと思うのですが、アメリカのみで阻止している、いわゆる海峡封鎖をしていることによってソ連に反撃をされる、そういう場合、それでは日本アメリカを援護することはできるのでしょうか。援護するのでしょうか、しないのですか。
  70. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカアメリカ自衛権発動の一つの行使の形態としてそういうことがあり得るかどうか、なかなか考えにくいのではないかということを大臣から再三御答弁申し上げておりますが、確かに理論的な問題としては全くそういうこともないわけではないということも、これまた予算委員会でも御答弁申し上げているところでございます。  その際、ソ連がどう対応してくるかということは必ずしも明確でございませんで、そのときの事態によって、これこそまさにソ連の出方というものは一概に予測することは困難であろうというふうに考えております。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 そんなもの、ソ連がじっとしていると考えているのですか、ソ連がそういうことをされた場合に、ただ単にじっとして見ていると。やはりソ連が一定の反撃に出るということは想定しているのでしょう。そういうことを想定してアメリカ防衛庁とがいろいろと研究をしているのでしょう。  さらに、それじゃもう一つつけ加えますけれども、そういう場合に日本の基地から発進して阻止をすることも可能なのか。これは恐らく事前協議でイエスと言えばできるのだとあなた方は答弁するでしょう。どうなんですか。
  72. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  日本施設区域の使用目的ということは、日本を含む極東の平和と安全の維持のためということになっておりますが、仮に日本施設区域を使用いたしまして米国が直接戦闘作戦行動を行うという場合には事前協議の対象になることは累次明らかにしてきておるとおりでございます。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、私は、いろいろ具体的に質問をしてもすかっとした答えがはね返らないというところがまた非常に疑問なのですが、日本側から軍事的情報を提供しその作戦を助ける、日本の基地からも発進する、事前協議があってイエス、そういう一定の手続をし、あるいは先ほども指摘をした気象条件等の情報も提供をしていく、こういうことがすべて集団的自衛権の範疇に入ると私は思うのです。いわゆるアメリカの作戦を手助けしていくことにかかわることはすべて集団的自衛権の範疇に入る、こういうふうに思うのです。長官考えはどうなんですか。
  74. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国紛争に巻き込まれておらないときに、わが国わが国関係のある第三国、この場合にはアメリカでございましょうが、その行動に手をかすということになれば、これは集団的自衛権の範疇の中に踏み込むことになろうかと思います。  しかし、先ほど来御説明申し上げさせていただいておりますように、ただいまは三海峡封鎖ということを限定して御議論がございますが、私どもは海峡封鎖という言葉でなくて、通峡の阻止という言葉を使わせていただいておりますが、通峡の阻止というようなわが国が実力行使に出るのは、あくまでもわが国が有事の場合であること。  それから、仮に通峡阻止というその作戦行動に出るにいたしましても、実はまだお尋ねがございませんでしたのでそこまで答弁させていただいておりませんでしたが、わが国としては、この作戦の与える影響を考えながら、わが国の自衛のために最小限の問題として取り上げるわけでございますが、慎重の上にも慎重を期してこの作戦は行うということは累次答弁をさせていただいているところでございます。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、対ソ戦略から見て、エンタープライズの佐世保寄港が海からのやりだ、さらにはF16戦闘機の三沢配備は空からのやりと見るべきであろう。それで、F16の問題については、鈴木総理が退陣表明の日に私はこの委員会で指摘をしたわけです。アメリカ側に核搭載の問題についての確認をする、求めるということ、さらには目的は何かということについて、経緯はどうなったのか、ごく簡単にまず報告を受けましょう。
  76. 加藤良三

    加藤(良)説明員 簡単にお答え申し上げます。  昨年の十月十二日の井上先生の国会での御議論等を踏まえまして、それらを含めまして、三月十七日に安倍外務大臣がマンスフィールド大使を招致いたしまして、アジアのこの地域におきますところの米軍の種々の活動ということとの関連、F16も含めまして、またエンタープライズの寄港ということも含めまして、それら米軍の種々の活動との関連日本に核兵器が持ち込まれるかもしれないというわが国における最近の懸念を伝達いたしました。  さらに大臣から、政府としては非核三原則を引き続き堅持するんだということを申し伝えまして、政府が国会における答弁を含めまして多くの場で、米国政府が安保条約のもとにおける事前協議の枠組みの中で核兵器の持ち込みについて許可を求めてきた場合には、政府としては非核三原則に従って対処いたしますということを明確にしてきているということを伝えたわけでございます。  これに対して、マンスフィールド大使の方から、米国政府は核兵器に対する日本国民の特別の感情を十分理解しておりますということを答えて、一九八一年五月二十日のマンスフィールド大使と当時の園田外務大臣との会談の際に明らかにされました米国政府見解を引きまして、米国政府の立場には何らの変更もない旨を述べました。  さらに大使から、米国政府としては、安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き誠実に履行してまいります旨を保証いたします、こういう発言があった次第でございます。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 配備の目的は。
  78. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 F16の配備の目的につきましては、米側の言明によれば、まず第一点は、最近の極東における米ソの軍事バランスの改善を図るということが第一点。第二点が、日米安保体制によるところのアメリカの、極東とわが国の平和に対するコミットメントの確認。第三番目としては、日米安保体制の抑止力の向上ということを目的としてF16を配備したいというふうな申し入れが、昨年の六月、在日米軍を通しましてわが国に対して行われたわけでございます。  私ども、そうした米側の要請というものが、わが国の平和と安全にとってきわめて望ましいことであり、抑止力の向上に寄与し得るものであるという判断をいたしまして、基本的にこれに協力をするということを申し伝えた次第であります。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、マッコイ米空軍次官補が歳出委員会の公聴会で、日米双方で総額三億七千三百万ドル、約八百六十億円、このうち日本側が二億七千五百万ドル、六百三十億円を負担することを期待している、そういうことを発言をしている。これが事実なのかどうか。このことは、こういう数字が具体的に挙がっているのですが、総経費の七四%を負担せよということになるわけです。これは当然地位協定二十四条から見てできないことだと思うのですけれども、どういう受けとめ方をされておるのか。
  80. 塩田章

    ○塩田政府委員 F16の三沢配備に伴います施設整備に要する経費につきまして、米議会におきまして御指摘のような証言がなされたということは承知しております。  F16の配備に伴います施設整備につきましては、現在、在日米軍とわれわれとの間で調整をしておりますが、まだ全体的な規模、金額等について米側から要請を受けていないという段階でございます。今後、正式に米側から要請があったにいたしましても、本計画に要する経費につきまして、われわれといたしましてはこれを別途扱いで処理するということはできませんので、基本的には各年度提供施設整備の中で処理してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  81. 井上一成

    井上(一)委員 もちろん別途扱いでというわけにはまいりませんし、地位協定二十四条から見て、私はこれは非常にむちゃな話だ、こういうふうに思っております。  時間がありませんので、さらに私は、四十三年以来十五年ぶりに佐世保に入港したエンタープライズ、このことについて若干聞きます。  今回の佐世保港への寄港はどんな目的だと政府は受けとめているのでしょうか。
  82. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  今回のエンタープライズの佐世保寄港の目的は、乗組員の休養及びレクリエーションであるというふうに承知いたしております。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているんですかね。  防衛庁長官、いまのエンタープライズの寄港は単なる乗組員の休養とレクリエーションのためだという認識、そんなばかな認識でいいのかどうか。わが国の外務大臣でもあった自民党の木村先生は、エンプラ寄港は、米ソ対立、アメリカ世界戦略の中でとらえるべきであり、カール・ビンソン、ニュージャージーの寄港と一連の問題としてとらえるべきである、こういうふうに述べていらっしゃるんですよ。僕もそうだと思うのです。防衛庁長官、こういうとらえ方は間違いなのかどうか。ただ単なるレクリエーション、休養、そんなとらえ方をしていらっしゃるのか、防衛庁長官に尋ねます。
  84. 谷川和穗

    谷川国務大臣 米側から外務省を通じてわが方へ伝達されました寄港目的はRアンドRで、レスト・アンド・レクリエーション、こういうふうに了解をいたしております。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、あなた、ただ報告が――そういう報告は確かにあったんでしょう。そういうふうに報告があった。それで、はい、そうですか、そのとおりです。まあ防衛庁長官としてはそうは思っていないと私は思うのですよ。思っていないけれども、木村元大臣が言われているような一連のものであるという受けとめ方をされても、全く当て外れの見当違いな発想だということは、そこまでは思わぬでしょうね。防衛庁長官
  86. 谷川和穗

    谷川国務大臣 米韓の共同演習というのは、すでに過去七年ほど前から毎年行われてきております。  それから、議会に提出されました米側の八三国防白書にも明らかなごとく、最近の米側は、いわば一種の柔軟作戦と呼ばれる新しい作戦というのでしょうか、その検討に入っておることも事実でありまして、そういう意味で、先ほど御指摘のありました、幾つかの艦艇の名前をお挙げになりましたが、西太平洋にこれら艦艇のプレゼンスが見られる、これも事実であろうかと存じます。  それからなお、佐世保寄港については、佐世保の地理的な環境から申しましても、米側が、佐世保に寄港して、そして乗員の休養とレクリエーションを図りたいということをわが国に言ってくることも、これは外務省の事柄でございますが、私は別に奇異に感じておりません。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 中曽根総理は、今国会でも武器輸出三原則を、政府の勝手な解釈で例外をつくり出してきたわけなんです、アメリカだけは例外だと。私はここで非核三原則は、中曽根さんはひょっとしたらアメリカだけはまた例外にしようというような考えを持っていらっしゃるかもわかりませんが、防衛庁長官は、そういう武器輸出三原則と同じように、非核三原則もアメリカに例外をつくるというようなことは毛頭考えてないと思いますが、どのようなことがあっても守っていくという強い決意を持っていらっしゃるかどうか、念のために聞いておきたいと思います。
  88. 谷川和穗

    谷川国務大臣 中曽根内閣といたしましても、特にこの問題について、最近にはF伍の三沢配備、さらに幾つかの米側艦船の寄港問題などにも関連をいたしまして、特に先ほど外務省政府委員の方から御答弁いただきましたように、外務大臣が直接この問題を担当されて、最近、さらに新しく念を入れて米側とこの点について確認をし合ったということでございます。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 さらに防衛庁長官、ここでひとつ聞いておきたいのですが、武器輸出三原則は政策の変更で変えられる、変更しようとしているわけですね、いま政府は。私は国是である非核三原則は、そんな政策の変更だというようなことで変えられないものだという考えです。防衛庁長官も、この非核三原則については絶対に変えられない、そういうふうに考えていらっしゃるのか、その点も念のために聞いておきましょう。
  90. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は、わが国のとっておりまする非核三原則という原則、これはまことに大事な大原則だ、こういうふうに判断をいたしております。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 変えられない、こういうことですね。エンプラは核を保持をしているのが常識とされているのです。政府はそのように思っているのですね。
  92. 加藤良三

    加藤(良)説明員 エンタープライズの件についてお答え申し上げます。  艦船によるものであれ何であれ、およそ米国が核兵器を日本に持ち込みます場合には、事前協議をしてまいりますのが、御案内のとおり米国の条約上の義務でございます。今回のエンタープライズの寄港につきましてはそのような事前協議というものは置かれておりません。私どもといたしましては、エンタープライズには核がないというふうに確信しているわけでございます。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 私は、いま佐世保に寄港している現状に核があるとかないとかいうことを聞いているのじゃなく、その以前に、エンタープライズはもちろん核を保持している、それは常識になっているわけです。ただ事前協議をしてこないから持ってきてないんだ、こういう答弁ですけれども、むしろ、持ってきても、積んでいるんだけれども、事前協議をしないでくれ、そういう意思を政府アメリカに示しているのじゃないだろうか、こういう疑いを持つわけです。そうじゃないんですか。
  94. 加藤良三

    加藤(良)説明員 繰り返しになりますが、核を持ち込みまする場合には、艦船による場合であれ何であれ、日本側に事前協議をしてくるということが米国の条約上の義務でございます。条約上の義務でございますので、米国が今回エンタープライズについて事前協議をしてこなかったということは、核がないということであると私どもは受け取っております。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、もし公式にエンプラが核を持っているということが明らかになったら断るということですね。
  96. 谷川和穗

    谷川国務大臣 外務大臣が再々御答弁をなさっておるのでございますが、わが国は核の持ち込みに対してはこれをお断りを申し上げるということでございます。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 そこで防衛庁長官、私は聞きたいのですが、さっきから、抑止力に依存していくというわが国防衛アメリカ抑止力に依存をして日米安保体制の中でわが国の安全が保たれているのだという理解なんですね。そういう体制の中での佐世保寄港であるわけです。これを断ることができると本当に本気で防衛庁長官は思っているのですか。本気に考えていらっしゃるのですか。
  98. 谷川和穗

    谷川国務大臣 数年前のことでございますが、当時アメリカの国防長官シュレジンジャーが訪日をいたしましたときに、記者会見で同種の質問がございました。これに対してシュレジンジャーの答弁は、アメリカはグローバルな勢力として常に核の抑止力考えておる。したがって、いまどこにどういう核があるということは明らかにはしないという原則があるのでここで明らかにはしないが、アメリカとしては核の抑止力が有効に作動しておるということははっきり申し上げられるということを、日本において会見で申し述べられたことがございます。その後アメリカの国防長官はかわってはおられますけれども、かつてシュレジンジャー長官時代に日本の国においてアメリカの行った核抑止力の有効性というのは日米関係においても作動しておるもの、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 私は、本当に核持ち込みを許さないんだということの強い姿勢を示すならば、むしろもっともっと積極的にエンタープライズの核持ち込みの事実を明らかにしていく、このことがいま大事だ。むしろ、灰色のままでおいておく、そのことの方がよいのだ、そういう考え方政府自身は対応しているのではないか、そういうことに強い不満を持つわけであります。  その点について、防衛庁長官あるいは外務省も含めてお答えをいただきたい。核持ち込み、エンタープライズの寄港、この事実についての政府姿勢をここで尋ねておきます。
  100. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、米国が条約上の義務というものを誠実に履行してきていること及び今後も履行していくであろうこと、これは先ほど申し上げましたマンスフィールド大使の言を引くまでもなく、そのとおりであるだろうというふうに確信をいたしております。
  101. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私自身は、わが国の持っておりまする非核三原則は、総理が国是と答弁されましたけれども、まさにそのとおりだと考えておりまして、この非核三原則を今後とも持ち続けるということはきわめて大切な事柄というふうに判断をいたしております。
  102. 井上一成

    井上(一)委員 いま非常に危険な道に入りつつあるわが国外交あるいは中曽根内閣の政治姿勢を私は危惧するわけです。いまこそ平和を守るための最大の努力が必要である、私はこういうふうに思います。この問題については、さらにまた折を見て、次回の委員会でも議論をしていきたいと思います。  少し具体的な問題について尋ねたいと思います。  秋田空港周辺地域整備等で、四次空整でいろいろと整備をされた秋田空港について、自衛隊の使用を考えていらっしゃるようなことはおありなのでしょうか。
  103. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国航空自衛隊の訓練環境、要するに訓練空域というのが海上に設けられておるということは御案内のとおりでございます。そういった意味合いから、日本海における航空機の訓練等の救難のために秋田に航空救難隊というものを設けられればということで、ここ二、三年来検討し、地元との話し合いをしてきたということは事実でございます。
  104. 井上一成

    井上(一)委員 私がきょう指摘をしたいのは、民間空港地域対策、地域振興の名目で予算を計上し整備をした空港も、やがては自衛隊がそれを使用し軍事的な役割りに変化していく、そのことを恐れているわけです。だから、このことについては、日本海側におけるわが国の空港整備の持つ意味が非常に多面的な意味をはらんできた。いま自衛隊が使いたいという意思がありましたが、この問題もまた次の機会にさらに深く質問を続けます。  もう一点、南極観測船の「しらせ」について尋ねます。  南極関連予算は、観測事業費で見ると半分以上が防衛庁の所管分であるわけです。そこで、防衛庁としては南極観測の位置づけをどう見ているのか、まず聞いておきましょう。
  105. 西廣整輝

    西廣政府委員 南極観測につきましては、閣議決定によりまして、南極観測の準備あるいは実施の総合的な推進は文部省が担当いたすことになっておりますけれども、輸送業務は防衛庁が担当するということになっておりまして、防衛庁が、法律等を改正いたしましてその支援を行っておるということでございます。
  106. 井上一成

    井上(一)委員 その建造費は、観測事業費とは別枠になっているわけですが、五十五年度を例にとると、六十七・二億円がやはり防衛庁の所管分となっておるわけなんです。南極予算全体の実に八七%近くを占めている。そのことは、防衛庁が中心的な役割りを果たしている。ただ単に防衛庁が中心的な役割りを果たしていることが軍事的なプロジェクトときめつけるわけにはもちろんいかない。しかし、数字を見る限りでは純粋に輸送のみの役割りに見えないのではないだろうか。この点についての認識防衛庁長官に聞いておきたいと思います。
  107. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在輸送に使用しております観測艦「ふじ」、これがそろそろ耐用年数が参りますので、現在次の世代の観測艦を建造中でありまして、そのための予算が比較的多額にわたっておるということでございます。
  108. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、「ふじ」と「しらせ」の性能のデータ等を、建造費を含めて明示してくれますか。
  109. 西廣整輝

    西廣政府委員 主要な性能だけ申し上げます。  まず「ふじ」から申し上げますけれども、「ふじ」は全長が百メートル、最大幅が二十二メートル、深さ十一・八メートルでございます。なお、基準排水量は五千二百五十トン、速力十六ノット、乗組員が約百八十名、観測隊員等が五十名ぐらいでございます。積載するものとして航空機、S61というヘリコプターが二機と、ベルという小さなへリコプターでございますが、これを一機積めるようになっております。貨物は約四百トンぐらい積めるというものであります。  なお、今回建造しようとしております「しらせ」は、全長が百三十四メートル、最大幅が二十八メートル、深さ十四・五メートルということでございまして、排水量は一万一千六百トン、速力十九ノットであります。航空機等の搭載はほぼ同じでありますが、乗組員が百七十名と十名ぐらい少なくなる。そのかわりに観測隊員等が六十名乗れるということであります。なお、貨物の積載能力は一千トン。  申し忘れましたが、「ふじ」の連続砕氷能力ですが、これは三ノットで氷の厚さ約〇・八メートルというものでありましたが、今回建造いたします「しらせ」は三ノットで氷厚約一・五メートルの砕氷能力があるということであります。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁自衛官はこの「しらせ」には何人ほど乗るのですか。
  111. 西廣整輝

    西廣政府委員 ちょっと御質問がよく聞き取れなかったのですが、先ほど申し上げましたように、乗組員、いわゆる船を運航するための乗員ですが「「ふじ」の場合百八十名、「しらせ」の場合は百七十名でございます。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 この百八十名、百七十名はすべて防衛庁所管の職員ですか。
  113. 西廣整輝

    西廣政府委員 さようでございます。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 もともと海上保安庁の「宗谷」が輸送の役目を担っていたわけです。中断したり復活したり、あるいは文部省の所管の中で努力があったわけです。私は、輸送担当が防衛庁に変更された、このことにうがった見方をするわけではありませんけれども、学界の一部などから自衛官がその役割りを担うことに反対が強くあった。ところがそのときに、いまの中曽根総理も含めた与党有力議員の強力な後押しがあってこれが実現できたのだというように聞き及んでいるのです。まあこういう質問をしてそのとおりですとは答弁はもらえないと思いますけれども、そういううわさを聞き及んでいる。防衛庁はそんなことないと答えるでしょうけれども、事実なのかどうか。
  115. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  その間の事情は私つまびらかにしておりませんけれども、私どもが知っておりますのは、「ふじ」を建造する段階からヘリコプター搭載の砕氷艦、観測艦をつくるというようなことで、そういったヘリコプターの要員あるいは外洋を航行する乗組員の人事管理、確保という面を含めまして、自衛隊が担当するのが一番よろしいということになったやに伺っております。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 運輸大臣の諮問機関である運輸政策審議会総合安全保障部会が二月にまとめた「総合安全保障に係る運輸政策のあり方」についての報告の中でも、海上通航路の確保の問題の重要性が強く指摘されている。世界に誇る能力を持つ今回の「しらせ」もこの流れと無縁ではないように思われるのですが、どうなんですか。
  117. 西廣整輝

    西廣政府委員 どうも御質問の趣旨を正確にとらえているかどうかわかりませんが、「しらせ」の南極観測艦、砕氷艦としての能力というのは世界の砕氷艦の中の第一級のものかと申しますと、そこまでいかないということであろうかと思います。
  118. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆる大蔵省の方針で、さっき言った海外派兵非難を配慮しながら大型巡視船は認めないんだというやはり諮問機関での議論がある。最高のものでない、その大型船に入らないんだということなんですが、私は、南極観測それ自体については非常に結構なことであり、推進をしていくべき問題であると思う。ただ、有事の場合における、いままでの政府の答弁を含めた対応の中で、どうも有事を前提にしてすべてそちらに向けて走りつつある。まさに「しらせ」もその方向の中で建造がされ、あるいはそういう中で泳がされているとするならば、本来の学術的な分野から非常に逸脱をしていく、そういうことのないように十分な配慮が必要であるということなんです。防衛庁長官にそういう意味で……。  もっと極端なことを言えば、何か有事の場合にこの「しらせ」は兵器を搭載して、オホーツク海やベーリング海や北極海など、そこへ向かう艦隊のためにも警備や先導の役割りはやろうと思えばできるわけなんです、果たそうとすれば。そこまでは非常に取り越し苦労の心配事であるというふうに指摘をされるかもわかりませんが、それほどの装備が十分な艦船である。そういうことで、特に防衛庁の所管になり、自衛隊員のその枠の中での取り組みというのに私は少し心配をしているということなんですが、防衛庁長官いかがですか。
  119. 西廣整輝

    西廣政府委員 長官がお答えになります前に若干御説明させていただきますが、御案内のように南極観測艦、「しらせ」も「ふじ」もそうでございますが、全く武装はいたしておりません。さらに、将来武装をするといったような余地もないような船でございまして、本来の砕氷艦あるいは観測艦としての性能を備えたものでありますので、これを軍事的に利用するということはなかなかむずかしい話であろうと思っております。
  120. 井上一成

    井上(一)委員 本来、海外派兵の禁止は戦後日本の平和政策の重要な柱の一つだったわけです。政府自身はもっぱら、一般的に武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するという海外派兵の定義に当たらないという名目を立てて、南極観測のための自衛官勤務は許されるのだ、こういうように説明をしてきているわけです。通常は、アメリカを初めとした諸外国では、軍事面を第一の目的として南極任務に軍隊を従事させている。わが国の自衛隊の自衛官の勤務も、その諸外国からは、しょせん海外派兵と何ら変わりがない、そのように受けとめられているのではないかというふうに思うのですが、防衛庁長官はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  121. 西廣整輝

    西廣政府委員 南極観測につきましては、各国とも軍隊の人員がその輸送に従事をしているということが多うございまして、南極条約におきましても、ここに軍備を持ち込むことはできないわけでございますけれども、軍の備品を使う、たとえば、観測艦というのは自衛隊の船籍になるわけですが、よその国も軍隊の船、しかしながらそれは軍の備品であるということで、軍艦は使えないのですが軍の備品は使えるということで、各国ともそのような形で輸送業務等に従事をしておるということであります。
  122. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど先生が読み上げられました定義が、私ども政府が一貫して海外派遣にとっております定義でございます。いやしくも敵地を占領するとかいうようなことは、それこそまさに海外派兵というそのものに当たるかと思いますけれども、「しらせ」の任務というのは全くそういうような紛争時における事柄を考えているわけではございません。私どもは、「しらせ」の南極派遣は、まさに閣議で決定をされました南極観測隊員並びに物資の輸送に対して、閣議決定の線に基づいて防衛庁がこれを命ぜられてやる、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  123. 井上一成

    井上(一)委員 私も、本来物資輸送のために海上保安庁が果たしていたそういう役割りが防衛庁にいつの間にかかわった、そして自衛艦がお手伝いをしている。現状でどうということじゃなく、一たん有事の際には北極圏を含めてこの役割りをあなた方は想定をしているのではないか、そういうことのないようにということを指摘をしたわけです。  さらに、時間がありませんので、防衛庁長官、これはあなたが御承知なのかどうか。航空機購入の場合に、債務負担行為をやるわけです。これは決算上の問題ですけれども、これは国会での議決をもらった金額、その枠内でしか買えないわけです。ところが、為替相場が変動することによって、円安、円高等によって当初の契約額と債務負担額と差異が生ずるわけです。そういう場合に、たとえば、当初予定をしていた本体は買って、部品等については為替相場の関係で買えない場合がある。私が要求したのだけれども防衛庁から十分な資料が届いてないから、防衛庁長官、そういう事実は御承知なのかどうかということだけ伺いたい。そんなことがあるのです。  たとえば、E2C四機を購入した。予算成立時は、航空機本体で二百五十一億、初度部品で九十二億、合わせて三百四十三億、ところが契約時では、本体で二百六十九億、初度部品で七十四億と、いわゆる十八億の初度部品が買えていないわけです。これは後年度でまた追加をして買うわけですけれども、こういう事実がそれぞれあるわけです。E2C四機分だけ私はいま数字を挙げたのですけれども、こういうことは防衛庁長官は御存じですか。
  124. 谷川和穗

    谷川国務大臣 航空機の調達に限らず、国内調達外調達につきましては、そのときの為替レートの変動によって、あるときには必要以下の金額で購入が終わることもございますし、あるときには、逆に円安の状況が生じた場合には、その年度においては何か別途考慮しなければならないことが起こることも事実でございまして、これについては予算処理に関連のある事柄でございますので、必要があれば詳しくはまたお答えをいたしますが、少なくとも、ただいまの航空機の中の御指摘部分につきましては、私は内部で報告を受けております。
  125. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、報告を受けられたということですから、こういうことに対して今後どうしていかなければいけないと長官はお考えですか。
  126. 谷川和穗

    谷川国務大臣 実は円・ドル関係関係なくても、航空機購入は初度部品を一緒に購入する場合とそうでない場合と、いろいろございますが、今後、円・ドル関係に限って申し上げますと、私どもは、基本としては国会で御承認をいただきました日本円建ての金額の中ですべて作業をしていく、こういうことが原則だと考えておるわけでございます。
  127. 井上一成

    井上(一)委員 このことについてはさらにまた時間を改めますけれども、当初計画をしていた部品も、為替相場の変動で当初の国会で議決をもらった額の中では買えない。このE2Cもそうだったのですけれども、後で買うわけなんです。それなら、どちらかといえばつけなくてもいい部品を最初に予算編成のときには中に入れておいたのか。そして予算の金額がその枠内だから、一年送り二年送りにして後でまた追加をしていく。それなら当初からその部品はそんなに急いで必要ではなかったのではないか。  私は、これはさらに委員長にお願いをして、すべての防衛庁のそういう航空機を含めた契約を、予算決算を含めて資料を提出してほしい。これは理事会で諮ってもらいたいと思うのです。その上でまた改めてこれは質問をいたします。
  128. 木下博生

    ○木下政府委員 御指摘のように、為替相場の変動というのは全く私どもとは関係のない要因によって決まってまいりますので、円が安くなったというような場合に買えないことがございます。そのようなときには、いまE2Cの例をお挙げになりましたが、買えなくなった分を翌年度予算で調達いたしまして、それで運用に入りますときには支障がないような形で部品の調達を図っているというようなことでございます。  資料につきましては、一部すでに差し上げたものもございますが、作業でできるものがありましたら、またそのものにつきましては御説明申し上げたいと思います。
  129. 古屋亨

    古屋委員長 この際、零時四十五分まで休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ────◇─────     午後零時四十七分開議
  130. 古屋亨

    古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  131. 新村勝雄

    ○新村委員 最初に、大臣から日本防衛政策の基本について伺いたいと思います。  戦後の日本防衛政策をずっと見てみますと、日米安保条約から出発をして、現在でも安保体制は続いておるわけであります。最初は、安保は片務的であると一口に言われておりました。日本が完全にアメリカの戦力の傘の下に入って、日本の安全を確保しよう、こういうことであったと思うのです。それが最近の安保体制は、同じ安保体制であっても、アメリカの強い要請もあってかなり双務的になってきたということが言えると思います。いわゆる防衛分担を日本がこれから積極的にしなければならない、また日本もしよう、こういうような方向になっておるわけであります。それらを踏まえながら、現在の日本政府防衛政策の基本についてまず伺いたいと思います。
  132. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私どもは、「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く到達させるよう防衛力整備を現在図っておるところでございます。そしてその基本的な考え方は、すでに御案内のごとく、わが国に対して限定的小規模の侵略の場合には、わが国が自力をもって独力でこれを排除する、しかし、もしそれ以上の侵攻が行われるというような場合には日米安保条約の作動を期待する、こういう姿勢でおります。  それから、第二点といたしまして御指摘ございましたが、アメリカを中心といたしました現在の西側基本的な戦略と申しますか、この平和戦略そのものはあくまで抑止の戦略だ、こういうふうに私ども考えておりますが、抑止の戦略というものは、抑止力信頼性が確立しておらないとこれは戦略にはならない。  そういう面から考えますと、ここ数年来、特にソ連軍事力増強というものは、これはソ連国内に相当経済的な問題だとか食糧不足という事態があったにもかかわらず、一貫して相当に大きいものであった。したがって、これをこのまま放置しておくと均衡がいろいろな面において崩れてくる可能性があるということで、特にアメリカは、自国だけではなかなか力が及ばないところも出てきておるという意味も含めまして、同盟諸国に対して、それぞれの地域においてのそれぞれの自衛力の増強防衛力増強というものを要請をしておる。そういう一環において、わが国に対しても近年来、特に極東ソ連軍の配備その他の関係も十分あると存じますが、わが国に対する防衛力増強を期待してきておるところでございます。  これに対して、わが国といたしましては、先ほど申し上げましたような「防衛計画の大綱」の水準に近づけるというわが国努力をいたしておるわけでございまして、わが国わが国の判断として、わが国の経済情勢、あるいは財政の許す範囲、あるいは他の諸施策とのバランス考えながら、逐年、その年々の予算という形で国会に提案をさせていただきながら防衛力整備に努めておる、こういうことでございます。
  133. 新村勝雄

    ○新村委員 抑止力に対する信頼、もちろんこれは必要でありましょう。そしてまた、国連憲章を中心とする現在の世界安全保障考え方も、もちろんこれは抑止力ということに基礎を置いておるわけで、国連憲章戦争を最初から否定をしておるわけですから、そういう点ではそれでいいと思うのですけれども、ただ、日本防衛政策が徐々に変わってきておるということです。  出発の当初は、同じ抑止力ではあっても、安保の傘の下に、アメリカの傘の下に全面的に安住というか依存しようという日本姿勢が、最近は大分日本の独自性を防衛の面でも主張しつつある。そして安保そのものも、片務的ではなくて双務的になってきておるということが言えると思うのですね。そういう面での安保、それから日本防衛政策の変質、それから政策の変更、こういった面を大臣はどう見ていらっしゃるのか。もちろんこれはお認めになると思いますけれども、その辺はどうですか。
  134. 谷川和穗

    谷川国務大臣 防衛力整備基本的な幾つかの問題点につきましては、私はその変更が行われつつあるとは考えておりません。しかしながら、先ほども申し上げましたような厳しい国際環境がいま生起いたしておりまして、わが国国際社会の一員としての責務を果たせというような声が防衛の分野においても高まりつつあることは、これは事実でございます。  これに対しましては、私どもは、先ほど申し上げさせていただきましたように、基本として「防衛計画の大綱」の水準に近づけたいということで目下努力をいたしておるわけでございまして、具体的には、五十八年度国家予算におきましても、五十八年度を初年度といたします五六中業を二年かかってつくり上げまして、それで国防会議、閣議の了解などをいただいて、予算を編成して、ただいまこれを国会で御審議をいただいておる、こういう状態になっておるわけでございます。
  135. 新村勝雄

    ○新村委員 これは後でも伺いますけれども、たとえば昨年の鈴木・レーガン会談においても、これは明らかに防衛分担という考え方が出てきておりますね。そういうことからして、明らかに日本防衛政策が変わったと断ぜざるを得ないと思うのです。  それで、大臣は先ほど日本を独力で守ることを目指しておる、そうおっしゃいましたけれども、これはどういう意味なんでしょうか。
  136. 谷川和穗

    谷川国務大臣 幸いなことにいたしまして、わが国は四面環海、海に囲まれた島国でございます。したがって、いずれの国も、わが国を侵攻しようとすれば、もし大規模にわが国を侵攻する意図を持てば、相当の部隊をいずれかの地点に集結をさせねばならない。現在の進んだ戦時情報、衛星その他を使いました情報からいたしますと、恐らくそういう集結が行われた場合には、わが国に対する侵略の意図あるいは危険度というものは、直ちにはかり知り得ると思います。  したがいまして、そういう事態があるいは直ちに起こる、これは起こらないとは断定し得ないわけでもございますけれども、しかし、現在私ども整備いたしておりまする「防衛計画の大綱」に基づく整備計画は、そういう形でないような形の侵略の方があり得る機会が多いかもしれぬ、つまり小規模限定的な侵略行為でございます。これはわが国としては、直ちにこれに対して反撃を加えて、まあ未然に防止することが第一義的でございますが、仮に万が一侵攻が行われてもこれを水際で阻止する、つまり着上陸阻止の作戦、もし万が一上陸してきても、これに対しては、わが国の自衛隊をもっていち早く排除する努力をする。しかしながら、にもかかわらず、さらに巻き込まれていくような状態になってまいりました場合には、日米安保条約第五条がございますからそれを期待する、こういうような構えで防衛計画を立てておるところでございます。
  137. 新村勝雄

    ○新村委員 この防衛白書にも書いてありますように、政府のお考えは、局地的な侵略に対しては自衛隊で対処する、そして全面戦になった場合には米戦力に依存する、こういうことだと思いますが、現在の防衛政策がどういう方向を向いておるかということですね。こういう状況をいつまでも続けていくというお考えであるのか、それとも、先ほど大臣は日本を独力で守ることを目指しておるというように言われたと思うのですけれども、そうしますと、局地対処能力を現在自衛隊は持っておるわけでしょうけれども、さらにそれを超えて、全面的な対決になった場合でも対処し得るような防衛力を将来は持とうとするのかということですね。その点はどうでしょうか。
  138. 谷川和穗

    谷川国務大臣 あくまでも、現在私ども整備を心がけておりますのは、先ほど来申し上げておりますような限定的小規模侵略に対する対処でございまして、現在御審議をいただいておりまする本年度予算を初年度といたしまする計画も、実はそういう整備を心がけつつ行っておるわけでございます。正確に申し上げますれば、「防衛計画の大綱」でお示しをさせていただきました水準にできるだけ早く到達をいたしたい、これが現在行っておりまする防衛力整備でございます。
  139. 新村勝雄

    ○新村委員 大綱の目指すところあるいは大綱が示しておる戦力というのは、局地戦を対象としているわけですか。
  140. 谷川和穗

    谷川国務大臣 必要があれば後で政府委員から答弁をいたさせますが、私が先ほど来答弁申し上げておるのは、限定的小規模侵略ということでございます。いま局地戦というお言葉をお使いになられましたが、先生がどういう意図を持って局地戦と言われましたか私ちょっとはかりかねるわけでございますが、いずれにしましても、わが国といたしましてはいかなる形の侵略に対しても有効に対処できる防衛力整備を図らなければならぬわけでございますけれども、しかし、いま私どもがさせていただいておりますのは、先ほど来申し上げさせていただきましたように、国防会議その他で御決定をいただいておりまする「防衛計画の大綱」の水準、この大綱というのは実は別表において正面装備につきましてはある程度の一覧表をつけておるわけでございますけれども、その水準にできるだけ早く到達をいたしたい、こういう考え方で現在防衛力整備を続けております。
  141. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、大綱で予測しておる戦力、あるいは大綱で対処のできる侵略の規模なりその具体的な態様はどういうことなんですか。
  142. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先ほど来大臣からも御答弁申し上げておりますとおり、現在私ども防衛力整備の目標として考えているのは「防衛計画の大綱」である。この「防衛計画の大綱」というのは一般的に基盤的防衛力というふうに理解されておりますが、これは五つばかり項目が挙げられると思います。まず第一は、各種の機能において欠落のないこと。第二番目は、正面、後方ともにバランスがとれていなければならないだろう。そして、そういった能力を持って十分な監視体制がとられることが必要である。四番目には、こうした能力を持って限定小規模侵略には原則として独力で対処し得るもの、こういうふうなことでございます。なお、情勢に重大な変更があった場合には、またこれを新しい防衛体制に移行し得るような基盤というものを持っておる、これが基盤的防衛力構想の骨子でございますが、私ども考えておりますところの限定小規模侵略というのは、あくまでもわが国に対して奇襲的に、大規模な戦争準備ということを行うことなしに加えられるであろうという規模でございまして、その規模がどの程度かということを定量的に御説明するのはなかなかむずかしいと思いますが、いずれにしても、日米安保体制というものの虚隙をねらった奇襲的なものが中心になろうかというふうに思っております。  なお、それを超えるようなものについては日米安保体制によって抑止することは再三御答弁申し上げているとおりでございます。
  143. 新村勝雄

    ○新村委員 次の問題に移りまして、すでに議論がありました個別的自衛権と集団的自衛権でありますけれども政府見解によりますと、日本は両方持っているけれども、個別的自衛権は行使ができるのだ、集団的自衛権は持ってはいるけれども行使をしないというような形で表現をされておると思いますけれども、個別的自衛権はあるけれども集団的自衛権は行使できないというのは、これは憲法のどこからこういう解釈が出てくるのか、これをお伺いいたします。
  144. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず、集団的自衛権の方も含めて述べさせていただきますが、国際法上は、それは独立国でございますから、他の独立国と同じような、独立国としての固有の権利は持っておるんだ。しかしながら、憲法九条においてわが国自衛権の行使についてみずから制限を加えておる、こういうことでございまして、その場合に、個別的自衛権に限って自衛権を行使するというのは、憲法全体の趣旨もそうでございますが、わが国としては、わが国をみずから守るための必要最小限度の自衛力行使はいたすけれども、それを超えての自衛力行使はいたさない、これを決意している国家である、こういうことで累次いままで政府はずっと答弁をしてまいってきておるわけでございます。
  145. 新村勝雄

    ○新村委員 憲法自衛権を否定していないということは言えると思いますね。ただ、憲法は武力による戦力を保持しない、交戦権も否定するということなのであって、自衛というのは必ずしも武力だけが自衛ではありませんから、包括的な、原則的な自衛権はある、これは独立国家であるからあるわけですけれども、戦力を行使するという形での自衛はやらないということが憲法に決められておるのだと思うのです。  そういうことからして、九条から個別的な武力を行使する自衛権があるというふうに読めるのかどうか、これはいろいろ議論があると思いますけれども、個別的な自衛権は武力を行使しても発動することができる、集団的な自衛権はできないのだ、こういう使い分けがこの九条から理論的には出てこないと思うのですね。政府の解釈というのは、憲法解釈というよりはむしろ政策論的に政治論的な次元から出てきた解釈だと思うのですけれども、そこらはどうなんでしょうか。
  146. 谷川和穗

    谷川国務大臣 自衛権についての御議論はずいぶんこの国会を通じて稠密に、しかも再々行われてきておるところでございますが、憲法九条により、戦争を放棄し、いわゆる戦力の不保持の原則、戦力を保持しない、保持を禁止しているということによって、それによってわが国が主権国として持っている固有の自衛権までは否定されているものではない。したがって、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限の防衛力を保持することは憲法九条の禁止するところではない、これが政府が一貫して答弁をしてきておるところでございます。  それから、集団的自衛権につきましては午前中の当委員会においても政府委員から答弁をさせていただきましたけれどもわが国が攻撃を受けていないにもかかわらず、わが国関係ある第三の国を守るということになれば、これは集団的自衛権でございますが、あくまでも、ここでただいま申し上げましたように、個別的自衛権の範囲というものは必要最小限の、しかもこれには自衛権の行使について、俗に自衛権行使の三原則と呼ばれますが、その原則もございまして、そういう範囲の中でわが国は自衛の行為を行う、これが憲法九条に言うところの個別的自衛権に限定されたわが国自衛権の本質である、こういう答弁が行われてきておるところでございます。
  147. 新村勝雄

    ○新村委員 自衛というのは必ずしも武力だけではないと思いますね。外交、経済も含みますか。――そうしますと、そういうふうに広く解釈をしますと、かつての外交の経過、外交だけではなくて経済政策等を見ますと、わが国がその国から攻撃をされていないけれども、別の国の立場に立ってその国に対して日本が不利益を与えた政策をやっておる、こういうことはありましたよね。そうすると、それは広い意味では集団的な自衛権というか、集団的な行動と言えないでしょうか。
  148. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は防衛庁長官として自衛隊を統括する責任を負っておりますが、その自衛隊が出動命令が下令されて自衛隊として行動する範囲の中において答弁をさせていただいてきておるわけでございます。したがいまして、自衛隊が行動を行うにいたしましてもそれは法律に基づいて行う行動でございまして、具体的には、ただいまここで御論議いただきました問題については、自衛隊法七十六条に基づく防衛出動命令が下令されたときの問題点について御答弁をさせてきていただきました。
  149. 新村勝雄

    ○新村委員 それでは別の問題を伺います。  防衛庁日本基本的な国是に基づいてやっておられるわけですね。ところが最近のいろいろな政府の言動、これが平和国家にはふさわしくないような言動がかなり目立つわけですよ。というのは、日本には果たして仮想敵国というものがあるのかどうか、これをまず伺います。
  150. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これも歴代の政府が答弁をいたしてまいっておりまするし、中曽根内閣においても中曽根総理からも、他の委員会ではございますが、御答弁を申し上げたわけでございますが、わが国は、社会的な制度その他が違った国を含め仮想敵国を持ってはおりません。
  151. 新村勝雄

    ○新村委員 平和国家を自認しているわけですから、これは当然そうだと思うのです。しかし、具体的に名前は挙げないまでも、これは先ほどもお話がありましたけれども、通峡阻止というような考え方、そういう戦略といいますか、それは名前を挙げないだけであって、あの海峡を封鎖することによってどの国が利益を受けるか、不利をこうむるかということは、これはもう明らかなわけですね。そういう特定の国に対して脅威を与える、あるいは名前を挙げないまでも特定の国を公然と戦略の中に組み込んでいくということは、やはり仮想敵国を想定して議論をしているということと全く同じだと思うのですが、そこらはどうなんでしょうか。北方領土の問題等もあるし、いろいろな歴史上の経過はあるにしても、隣国との善隣友好ということをやはり考えなければ、平和国家としての、あるいは長期的な外交姿勢として大変疑問が持たれるわけですけれども、その点についてはどうですか。
  152. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これは私の考えでございますけれども、私は国際社会というものは平和を維持するため、あるいは国際紛争未然に防止するためには、どうしてもそれを担保する何らかの実力というものは必要である。わが国が平和国家として立っておっても、しからばわが国がみずからを守るという自衛の努力を怠ってよろしいということにはならない、むしろわが国が侵略を未然に防止する力を持つことが平和を永続し得るもとだ、こう考えております。  それから海峡通峡阻止の問題についてお触れになられましたけれども、二点ございまして、一点は、わが国が自衛のために必要というときに、わが国有事の場合にわが国は海峡通峡阻止という作戦をとることもあり得るということを申し上げてきておるわけでございます。  それから第二点としましては、しかしながら、海峡の通峡阻止というのはその通峡阻止のやり方いかんによっては沿岸国あるいはその海峡を通峡する第三国に対する影響がきわめて大でございますので、したがって、もし仮にそういう作戦をとるにしても、そういう作戦をとるときには慎重の上にも慎重を期す必要があるということは、これは毎々答弁をさせてきていただいておるところでございます。
  153. 新村勝雄

    ○新村委員 いや私の言っているのは、力の保持、戦力の保持がいい悪いはしばらくおくとしても、それを言っているんじゃなくて、仮におっしゃるように一定の実力を保持することが必要だとしても、国の基本的な外交姿勢として、名前は挙げないまでも、挙げたと同じような、そういう特定の国を想定したところの論議なり政策なりが公然と行われるということは、これはやはり考えるべきではないか。そういう戦略があり得るし、そういう戦略がもし有事の場合には考えられるとしても、その取り上げ方なり論議の仕方、あるいは政府のこの問題に対処する姿勢の問題として疑問があるということを申し上げたわけですけれども、こういう姿勢なり政府の方針なりがエスカレートしますと、これは本当に平地に波乱を起こすというようなことにもなりかねないと思うのですよ。そういう点で申し上げておるわけですけれども、もう一回大臣のお考えを伺いたい。
  154. 谷川和穗

    谷川国務大臣 憲法第九条の第一項にもございますように、国際紛争を武力で解決してしまうということは断じてするべきではない。したがって、わが国としてはもっぱらわが国の自衛のために実力を持っておるんだ、こういうことであろうと思います。したがって、先生御指摘のように、常に外交努力をもって紛争未然に防ぐための努力は行っていかなければならない。先ほど私が、実力を行使するにも三つの原則がございますと言ううちの一つにもそれがあるわけでもございます。  それから、いま先生は固有名詞を挙げられることを避けられましたけれども、すでに他の委員会においても御答弁申し上げたこともございますので、ソ連の極東における軍事力増強について一点触れさせていただきますと、私どもは、ソ連の極東における軍事力増強わが国にとっては潜在的な脅威ではある、こう考えております。  ただし、その潜在的な脅威が顕在化するには、当然何らかの意図が働かなければ顕在化することはない。したがって、現在のソ連がそういう意図を持っているかというお尋ねなら、それはそういう意図を持っておらない。したがって、日ソの間においても、これも総理が毎々答弁をさせていただいておるわけでございますが、北方領土の平和的な解決まで含めまして、ありとあらゆる外交チャンスをとらえて協議が行われていくということはまことに大事なことだと考えております。
  155. 新村勝雄

    ○新村委員 これは、対ソ外交として日本が卑屈になる必要は絶対ありません。それはいけないと思いますけれども、同時にまた、ある程度は客観的な立場から世界情勢を見るということもこれは必要だと思うのです。ソ連の方からすれば、日本を敵視しているのじゃなくて、日本を含んだ極東のアメリカ世界戦略に対決をしているんだと言うかもしれませんよね。ですから、そこらはやはり、日本に対する潜在的な脅威だと、これは一つ日本の解釈であって、果たして客観的に脅威であるのかどうか、これはまた別の問題だと思うのです。  そういう点で、やはり防衛庁さんとしても仮想敵国あるいはそれに準ずるような考え方は、もちろん防衛庁は国を武力で守るという立場ですから、そういう場合には、可能性としてどの方面からどこの国が侵略してくるだろう、侵略というか何というか、まあ侵略でしょうね、攻めてくるということは想定をしなければならないと思いますけれども、それはあくまでも戦術的な想定であって、国の方向として、外交姿勢として、対外的な国の姿勢としてやはり仮想敵国という態度はとってはならないのではないかと思うわけです。  そういった点で、日ソ間には懸案も多いししますので、防衛庁さんの立場からそれは毅然たる姿勢は必要であると思いますけれども、同時に、やはり隣邦としてのおつき合いという姿勢も忘れないようにすべきだと思います。  別の問題に移ります。  先ほどちょっと申し上げたように、安保体制が双務的な方向に向いているということ、これは大臣もお認めになっておるわけですね。特に、一昨年五月の鈴木・レーガン会談において、これは白書に書いてあるのですけれども、「日本防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割の分担が望ましいことを認めた。」認めたとありますね。この役割りの分担とは具体的にどういうものであるのか、まず伺います。
  156. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  安保体制が双務的な方向に向かっているという先生の御指摘でございますけれども、安保体制というものは、米国が対日防衛義務を負う、それに対して日本日本を含む極東の平和及び安全の維持のために施設区域提供を行う、そのほか一種の経費の分担等も行うという形で全体としてのつり合いがとれるという枠組になっておるものでございまして、この枠組の基本的な性格というのは変わっていないというのが私ども認識でございます。  ちなみに、米国日本に対して何を求めているかということでございますけれども、これも午前中の質疑の過程ですでに明らかにされましたように、米国日本に求めているものは、決して憲法の制約を超えた行動や重要基本政策の枠の外にはみ出たことではございませんで、むしろ憲法及び基本的な日本防衛政策の枠内でできるだけのことをしていただきたい、これが米国の期待であるというふうにとらえております。
  157. 新村勝雄

    ○新村委員 そういう抽象的な言い方ではなくて、鈴木・レーガン会談、その後の両防衛首脳の会談の中で具体的なことが出ているというふうにわれわれは聞いておるわけです。たとえばシーレーンの防衛の問題であるとか、あるいは細かいことになるかもしれませんけれども、ミッドウェーの艦載機の訓練基地を提供するとか、そういう具体的なことが出ていますよね。鈴木・レーガン会談及びその後の防衛首脳会談における具体的な日米間の約束なりアメリカの要請なり、それを伺っておるわけです。
  158. 加藤良三

    加藤(良)説明員 繰り返しになりますが、いま先生が御指摘になられましたようなケースというものは、私が先ほど申し上げましたような意味での枠組みの日米安保体制というものの効果的な運用のために行われている物事ということになるんだろうと思います。  日本アメリカとの役割りの分担ということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、米国日本に期待しておりますものは、これは日本がいまの憲法、それから重要政策、基本政策の枠内においてできるだけの努力をするようにしてほしい、そういう努力日本が行うことによって、米国としても一層西側全般の安全のために寄与することができるようになる、こういうことでございます。
  159. 新村勝雄

    ○新村委員 ですから、そういう趣旨のもとにアメリカからどういうことを要請されたかということを伺っておるのです。
  160. 加藤良三

    加藤(良)説明員 米側から私どもに対してありますものは、先ほど申し上げましたような中での一般的な日本側の自衛努力というもの、そのペースをなるべく早くやってもらいたいということ、そういう一般的な期待感の表明でございます。
  161. 新村勝雄

    ○新村委員 期待感の表明ですけれども、ただ期待感の表明というだけではないでしょう。こういうことをやってくれという具体的なことがあるんでしょう。
  162. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカが、最近における米ソの軍事バランスの回復に努めるというふうな立場から、みずからも相当な困難な国内事情を抱えながら努力をしているということですが、一方またそれに並行して、同盟諸国にもそれぞれの地域において憲法その他の制約の中で努力をしてほしいという一般的な期待表明というものが再三されているということは、御承知のとおりだと思います。  具体的な防衛力整備について言えば、アメリカわが国憲法上の制約、非核三原則その他の諸原則というものを十分認識した上で、もう少し防衛力整備というものを速やかにやってほしいという、これはあくまでも申し入れとかいうことでなくて、一般的な期待表明がある。一方わが国は、そういったアメリカの期待というものはもちろん念頭にございますし、アメリカが期待することも日米安保体制という立場からして理解はできますけれどもわが国防衛力整備というのは、あくまでわが国が自主的にわが国自身の判断によって整備を進めていくということをアメリカ側にも通報しており、この点について約束であるとかいうふうなことは一切ないわけでございます。
  163. 新村勝雄

    ○新村委員 少なくとも両国の首脳がこういう基本的な合意をしておるわけですから、それから出てくる具体的な政策というものがあるわけでしょう。どういうことをするとかしないとかという問題、その問題を知りたいわけです。
  164. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 あるいは先生の御質問を取り違えているかもしれませんが、私どもはあくまでも、先ほど御答弁申し上げたとおりわが国の判断によって努力をする。すなわち、現状について言うならば、「防衛計画の大綱」の水準というものをできるだけ早く達成するために五六中業をつくったわけでございます。現在その五六中業の初年度としての五十八年度予算を御審議いただいているわけですが、この五六中業というものを十分に達成するようにいたしたい、こういうふうなわが国考え方については説明をしております。
  165. 新村勝雄

    ○新村委員 これはアメリカから強制をされたとかなんとかということを言っているんじゃなくて、この両首脳の合意に基づいて日本政府が具体的な政策をやはり進めるわけでしょう。具体的にどういうことをおやりになるのかということですよ。
  166. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 鈴木・レーガン会談の共同声明における適切な役割り分担というのは、先ほど来外務省からも御答弁がありましたが、これは決して約束とかそれに基づいてどうということでなくて、わが国自身が自分の判断でもって防衛力整備しているというようなことは事実でございます。また、そうした努力アメリカからある種の期待を持って見られる、これもまた向こうから見た場合に事実だろうというふうに思います。
  167. 新村勝雄

    ○新村委員 アメリカから強制されているということは、私は言っていませんよ。そうじゃなくて、やはりこの両首脳の合意に基づいて、ここに書いてありますね、鈴木総理が、「日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善し、並びに在日米軍の財政的負担をさらに軽減するため、なお一層の努力を行うよう努める旨」述べていると思いますけれども、これは基本的な日本の政策の一部の変更になりますよね。これに基づいて、具体的にはどういう政策があるのか。具体的なものは何もないですか。何もないけれども防衛庁予算あるいは施策のすべての中にこういう考え方が入っておるということですか。
  168. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先刻来、政府委員から御答弁申し上げさせていただきましたように、わが国といたしましては、今日に至るまでわが国の自衛のための防衛力整備計画というものを持ち続けておるわけでございますが、いま先生がそこで鈴木・レーガン・コミュニケにお触れになった後に、何かこれは政策の変更になるという御指摘がございましたが、そのところはもうちょっと詳しく先生のお聞きになるところをお尋ねいただきませんと、私どもは別段政策の変更が述べられているものではない、こう判断をいたしておりますので、的確に御答弁がいたしかねますので、まことに恐れ入りますが、もう一度その点に触れてみていただきたいと存じます。
  169. 新村勝雄

    ○新村委員 これは明らかだと思うのですけれども日米間の適切な役割りの分担が望ましい、これは安保条約の初期あるいは中期にはこういうことはなかったわけです。最近になってこういう問題が出てきて、そうして鈴木・レーガン会談で一層これが確認をされてきた、はっきりとしてきた、こういうことでしょう。ですから、これに基づく新しい施策なり措置が当然されるべきだ、それはお考えになっていると思いますよね。たとえば、シーレーン防衛とか、あるいはミッドウェーの艦載機、この問題については後で伺いますけれども、艦載機の訓練場を提供するというふうなことがこれと密接な関連があると思いますし、ここからそういうものも出てきているというふうに思うのですが、それはどうなんでしょうか。
  170. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ミッドウェーの艦載機の夜間訓練の問題につきましてはまた後ほどお触れになるということでございますので、その問題は別にいたしまして、いまシーレーン防衛のことにお触れになりましたが、実はシーレーン防衛の構想というものはすでに十数年前、昭和四十年代の中ごろにかけての三次防の時点からすでにわが国防衛整備の中の基本的な構想としてはございました。ただ、シーレーンという言葉が登場いたしましたのは、これはごく最近のことでございます。国際的にそういう言葉が定着しつつあるため、わが国でもシーレーン防衛という言葉を便宜使用いたしております。  そういう言葉は別にいたしまして、概念といたしまして、わが国は四面環海、海に囲まれた国であって、海上の交通路の安全確保というものはきわめて重要な問題である、こう考えて今日まで整備を続けてきておるところでございます。
  171. 新村勝雄

    ○新村委員 時間がありませんので、次に空母ミッドウェーの艦載機の訓練場の点ですけれども、この問題について政府は、長期的には浮体構造で適当なところに施設をつくる、それまでの暫定的な措置として、関東の余り遠くないところに飛行場を選定をして訓練場を提供する、こういうようなことを前に聞いておりますけれども、その辺の事情はいかがですか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 この点につきましては、去年の十月にも新村委員の御質問にお答えしたことがあったと思いますが、アメリカ側が現在の厚木飛行場で集中的にやっておることにつきまして、私の方もそうですけれどもアメリカの方も大変苦慮いたしておりまして、関東並びにその周辺地区で代替的な訓練場の提供をしてもらえないかという申し入れがあったことは事実でございます。それを受けまして、私ども現在御審議いただいております五十八年度予算の中に約九百万円ばかりの調査費を組みまして、これに対してどう対処するか調査をいたしたいということで現在考えております。  その際にもお答えいたしましたが、三つの方法が方法としては考えられる。一つは新しい飛行場を建設するということが一体できるかできないか、二つ目は、現在ある関東並びに関東周辺地区の飛行場で代替機能を果たせるところがあるかないか、三つ目には、これは地元の方からの御要望でございますけれども、海の上に浮かぶ浮体飛行場といったようなものの建設が考えられないか、いずれにいたしましても、この三つの案が現在のところ出ておるといいますか、考えられる案としてはあるわけでございますが、そういったものを含めて、私どもは五十八年度予算におきまして調査をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  173. 新村勝雄

    ○新村委員 五十八年度予算で九百万の予算化をされておるということは聞いておりますが、構想、考え方としては、新設、代替、それから浮体構造と三つがあるということですけれども、この三つを含めて検討するのか、それとも、代替飛行場を急速に選定をして、後、新設あるいは浮体構造のものをつくるということについては一定の時間をかけてやろうとするのか、どっちなんですか。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 三つの方策自体を検討することについては、全く平等といいますか、三つの方策に対してどれが優先ということじゃなしに臨みたいわけですが、現実の問題として、新設飛行場をつくるとかあるいは浮体飛行場をつくるとかという話になれば、もしそういう話になったとしても、でき上がるまでに相当期間がかかるということはこれは事実でございますから、その間どうするかという問題はまた別途あり得ると思います。
  175. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、これが結論が出て、それで本格的に施設をつくるまでの間は現状でやっていくということですか。
  176. 塩田章

    ○塩田政府委員 その辺をまさにどうするかということも含めまして検討してみたいと思っております。
  177. 新村勝雄

    ○新村委員 現在の実際に使われておる飛行場のうちのどこかを選定をしてそこを使用する場合に、そういったことも可能性は大いにあるわけですから、する場合に、地域はどの辺に限られるのか、それからその地域の中に何カ所くらいそういう候補地があるのですか。
  178. 塩田章

    ○塩田政府委員 地域は、関東地区は当然全部入るわけでございますが、関東並びにその周辺という場合に、周辺というのはどこまで入るのか、こういうことも実はまだ具体的にここまでだというふうに決めてかかっておるわけではございません。いずれにしても、アメリカ側の要望の趣旨は、母港が横須賀でございますからそんなに遠くないところというような意味での要望だと思いますから、そんなに遠くはならないと思いますけれども、具体的に関東並びにその周辺というところ以上に現在どこまでというふうに申し上げられる段階ではございません。  その中に現在飛行場が一体幾つあるのかということでございますが、いまちょっと具体的に数字を覚えておりませんが、約十近くあったのではないかと思いますが、いま申し上げました関東並びに周辺をどこまでとるかにもよりますから、具体的にいま幾つだと申し上げる段階にございませんけれども、大体そのくらいのところを調査の対象にしてみたいというふうに考えているわけでございます。
  179. 新村勝雄

    ○新村委員 その候補地の条件、こういうところならば使用できるという条件はどういう条件になりますか。
  180. 塩田章

    ○塩田政府委員 端的に申しますと、現在厚木で行っておるような訓練ができるようなところ、こういうことに条件と言えばなるわけでございますけれども、現在厚木でやっております訓練は、御承知のように航空母艦の着艦の訓練でございますので、そういった観点から、たとえば、滑走路でありますとか、駐機場でありますとか、航空機整備施設でありますとか、周辺地域における集落の状況でありますとか、その地区の都市計画状況でありますとか、そういったようなことは当然調査の対象になろうかと思います。
  181. 新村勝雄

    ○新村委員 現在は厚木でやっているというふうに聞いておりますけれども、将来場所が決まった場合には、厚木からそこに移ることになりますか。
  182. 塩田章

    ○塩田政府委員 そういったようなことも今後の検討課題でございますけれども、最前申し上げましたように、全く新設の飛行場でもできるとか浮体飛行場でもできるという話になりますとあるいはそういうことも考えられるかと思いますが、現在の飛行場を使うというようなことになりますと、それじゃ厚木を全部やめてしまってそちらに全部移るのか、半分ぐらい移るのか、あるいは幾つか、たとえば現在厚木で年間五回ぐらいやっておりますが、その五回のうち一回ぐらいをどこかでやってもらうとか、二回ぐらい引き受けてもらうとか、そういうようなことも含めまして検討いたしたいということでございます。  いまの時点でそっくり厚木をやめてどこかに行くというようなことを決めているわけではございませんで、それは今後、いま申し上げましたような条件を検討した上、地元とのお話し合いというようなこともいろいろあろうかと思いますので、そういうことをいたしながら、そういった観点も含めて検討いたしたいと思っております。
  183. 新村勝雄

    ○新村委員 この問題については、大臣にお伺いしますが、いまお聞きのように、これは恐らく鈴木・レーガン会談から出てきたアメリカの要請ではないかと思うのです。直接ではないにしても関連があると思います。この要請というのは、アメリカの極東戦略の一環から出てきておるというふうにわれわれは見ておるわけです。通峡阻止とかシーレーン防衛ということにも戦術的には関係があるのじゃないかと思います。こういうことからしまして、それがいい悪いということとは別に、いま関東近県の中に新しく空母の艦載機の訓練場を国は選定しておるわけです。  ところが御承知のように、最終的にどこを選定されるかわかりませんけれども、どこにしたって人家稠密の真ん中にあるわけです。特にその中で最有力と言われておる海上自衛隊下総基地がありますが、あの基地を見ましても、周辺は全面的に都市化をしておるわけです。仮にそれが行われた場合、騒音及び万一の場合の事故の危険を考えた場合には、周辺に対して大変な不安を与えるわけなんです。ですから、そういう施設を貸与することの是非についてはいま論じませんけれども、それは別の問題としても、少なくとも関東周辺にそういう新しい混乱なり、あるいは住民に不安を与えるようなことは絶対にやめるべきであるというふうに考えるわけです。大臣のこの問題についてのお考えを伺いたいと思います。
  184. 塩田章

    ○塩田政府委員 大臣のお答えの前に一言申し上げさせていただきたいと思いますが、これは鈴木・レーガン会談とは関係ございませんで、従前から三沢を主として、ある一部岩国を使って同じような訓練をしておったわけでございまして、現在でも一部やっておりますが、それが米側のいろいろな事情、たとえば燃料費が高い、あるいは遠い、天候が悪い、いろいろな事情で昨年から厚木に集中するようになったというようなところから問題が出てまいりまして、地元の方から非常に要望が強いということから、むしろ現地レベルでこういう代替を探してもらえないかという話が出てまいったことでございまして、直接御指摘のような鈴木・レーガン会談というようなこととは関係がない、そのように御理解いただきたい。  ただ、それじゃそもそも訓練をすることの意味とかということになりますと、それは在日米軍が軍事的な抑止力として平素から十分な訓練を積んでおかなければいけないというような一般的な議論は当然あるかと思いますが、直接厚木の代替という問題につきましては、いま私が申し上げたような経緯でございますことをつけ加えさせていただきたいと思います。
  185. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私といたしましては、日米安保条約の効果的な運用というのは常に心いたしていかなければならない問題でございまして、日本の国の防衛のためにはどうしても欠くべからざる一番大きな基本原則の一つだ、こう判断をいたしております。  しかしながら反面、わが国は決して国土が広大な国柄でもございません。したがって、日米安保条約に基づく、先ほどの外務省からの御答弁にもございましたわが国の側の各般の義務が生じておるわけでございますが、何も米軍施設のみならず自衛隊施設もそうでございますが、その周辺整備につきましては、基地のある地方自治体あるいはそこに住んでおられる住民の方々、この方々には、その意味では狭い国土であるために恐らく他の国に見られないような大きないろいろな御迷惑もかけてきておることだと思っております。  しかしながら、この問題について、わが方としてはできるだけの周辺整備の対策なども並行して努力はいたしてまいりますが、周辺の方々にはお話し合いをさせていただきながら、必要なことはどうしてもやはりやらしていただかなければならない、こういう立場にあることもぜひ国民の皆様方には御理解を賜りたい。そのようなわが方の努力につきましては、その都度地元の市町村その他を通じて、住んでおられる方々にわかっていただくような努力も続けてまいりますので、そういう意味で御理解をちょうだいいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  186. 新村勝雄

    ○新村委員 時間も参りましたが、この問題は、防衛庁がおやりになるからどうこう、あるいは戦力の問題あるいは安保条約の問題ということでなくて、どこがおやりになろうがやはり周辺の住民の立場を十分考えてやっていただかなければいけませんし、いままでやってきたのですから、できる限り現状でアメリカさんにはがまんしてもらうように、それから仮にどうしてもそういう必要があるとすれば、これは周辺に迷惑の及ばないところを政府の責任において探していただいて、あるいはまた別の施設を、まあこれは金がかかるでしょうけれどもつくるなりして、平地に波乱を起こすようなことはひとつ絶対に避けていただきたい。それからまた、こういうことをやる場合にも住民及び地元自治体と十分話し合いをされて進めていただきたいということを強くお願いをいたします。  終わります。
  187. 古屋亨

    古屋委員長 春田重昭君。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 何点かお尋ねします。  まず最初に、アメリカの原子力空母エンタープライズが十五年ぶりに佐世保に入港したわけでございますけれども、この入港の目的、それから十五年前の昭和四十三年当時の入港と今回の入港では大きなさま変わりをしているのではないかということが言われているわけでございますけれども、そうしたことについて、まず外務省の方からお答えいただきたいと思うのです。
  189. 加藤良三

    加藤(良)説明員 今般のエンタープライズの佐世保寄港の目的につきましては、私どもは乗組員の休養とレクリエーションであるというふうに承知いたしております。  なお、さま変わり云々ということでございますけれども、米側によりますと、今回のエンタープライズの寄港ということの背景でございますが、これは、中東及びペルシャ湾での事態によって米海軍のインド洋への配備増強が必要となった一九七九年以前の通常の状態に戻ってきているということである、こういう認識であるということを承知いたしております。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 米側の見解じゃないのですよ。わが国のいわゆる政府として、外務省としての認識、これを聞きたいのです。
  191. 加藤良三

    加藤(良)説明員 一般的に申しまして、ソ連の一貫した軍拡等によってこの地域の状況というものが厳しさを増しておるということを考えました場合、わが国といたしましては、着実な自衛力の増強と相並んで安保体制の効果的な運用というものに心がけるべきところかと存じます。  その観点から見ました場合、この地域における米海軍のいわゆるプレゼンスというものが増強されますということは、これは抑止力というものがそれだけ向上するという観点から、基本的には歓迎すべきことであるだろうと考えております。
  192. 春田重昭

    ○春田委員 国民の間に意識の変化があったと外務省は見ておりますか。
  193. 加藤良三

    加藤(良)説明員 国民の間に認識の変化があったかどうか、これは外務省の私がお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども日本防衛論議というものが次第に現実化をしてきているということは恐らくあるだろうと存じます。  ただ、いずれにいたしましてもエンタープライズの寄港ということ自体は、条約の関係から見ますと、これは安保条約の六条及び地位協定の五条から見まして米国が持っている権利であるということでございます。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 それでは長官にお尋ねしますけれども、いま外務省からいろいろお話があったわけでございますけれども長官としては率直にこのエンタープライズの入港、十五年前と受け入れ側も相当変わっているような報道がされておりますけれども、これについてどう認識なさっているか。
  195. 谷川和穗

    谷川国務大臣 アメリカの八三年国防白書にも明らかなごとく、アメリカ自体、事極東に限って申し上げましても、ソ連の一貫して行われてきました軍事力増強に対して軍事バランスをここで回復をしていきたいという形で、幾つかの新し――まあ新しいとまで言い切れないのかもしれませんが、戦略をとりつつあるような感じがいたします。  そして、今回のエンタープライズの佐世保寄港は、もう六、七年前から毎年続けられておる米韓演習の帰途日本に立ち寄っているわけでございますが、私は、エンタープライズの佐世保寄港ということを別に考えましても、先ほど外務省の政府委員から答弁がございましたように、その他艦船を含めまして西太平洋におけるアメリカの艦艇のプレゼンスが強化されつつあるということは、極東の平和の維持のため、抑止力信頼性の回復のためむしろ歓迎されるべき事柄である、こういうふうに判断をいたしております。
  196. 春田重昭

    ○春田委員 防衛庁長官としてはそう認識なさっているわけでございますけれども国民の間ではそれがどう受けとめられているか、長官、どうお考えになりますか。
  197. 谷川和穗

    谷川国務大臣 エンタープライズの寄港に関してだけ申し上げさせていただきますと、確かに十五年前はベトナム戦争という問題もあったと思います。それから一つには、いずれにしましてもその当時の最新鋭艦であって、まことに巨大な航空母艦という印象もあったかと存じます。そういうこともあったと思いますが、あの当時、あえて不幸なという言葉を使わせていただきますけれども、流血騒ぎまで出たわけでございます。しかし、今日現在、少なくとも佐世保市周辺だけを見ておりますと、あとまだ二、三日エンタープライズの乗組員の休養期間が佐世保で続くわけでございますけれども、私は一日、二日の様子を見ながら実は何となくほっとしておるわけでございまして、もうあと数日の間そういうかつてのような事故が起こらないことを心から願っておるわけでございます。
  198. 春田重昭

    ○春田委員 今回の寄港というものは、外務省から言わせれば乗組員の休養とレクリエーションのためであるという御説明をなさっておるわけでございますけれども、そう国民は見ていないし、私もそう思うのです。表面上はそうであったとしても、本質というものはいわゆる米国の対ソ戦略の一環の延長線上に今回のエンタープライズの佐世保入港があるのじゃないか、一里塚である。たとえば、このエンプラの佐世保入港とともに、昭和六十年からは御案内のように三沢にF比が配備されるわけでございまして、このように日本海における空の守りが三沢であり、海の守りといいますか拠点といいますか、そうしたものが佐世保になってくるという不安がやはりあるわけであって、そうした極東戦略の一環として今回の入港は見るべきでないか、こう私は思うわけでございますけれども長官どうですか。
  199. 谷川和穗

    谷川国務大臣 今回の寄港そのものは、先ほど申し上げさせていただいたようなたまたま演習の帰途ということであろうかと思いますが、その問題と三沢のF16の配備の問題との間でつながりがあるという御指摘もございましたけれども、先ほど答弁させていただきましたように、西太平洋における米艦のプレゼンスが強化されているということは、あくまで極東における米ソの軍事バランスの回復という問題にも関連があるわけでございます。その意味から申しますと、F16の三沢基地配備は、やはり米軍が日本の方へ申し入れてまいりました三つの条件といいますか、目的のうちの一つ米ソ軍事バランスの回復を図りたいというのがございまして、その意味では全く平仄は合っていることだ、こう考えております。
  200. 春田重昭

    ○春田委員 まあ報道等でも、今後最新空母のカール・ビンソンや戦艦のニュージャージー等も頻繁に寄港するだろう、このエンタープライズも反復寄港するだろう、こういうことでおのずとその答えが出てくるわけでございます。  そこで、反復寄港ということで、今回は一時寄港でございますけれども、休養、レクリエーションという名目でございますが、そうしたことを考えれば、ミッドウェーの横須賀の母港化に次いで、佐世保が将来母港になるのではないかというおそれは十分あるのではないかと思うのです。この点どうですか。
  201. 加藤良三

    加藤(良)説明員 佐世保がエンタープライズの母港になるというような計画があるとは全く承知いたしておりません。
  202. 春田重昭

    ○春田委員 長官はどうですか。
  203. 谷川和穗

    谷川国務大臣 少なくとも、今日に至るまで私が同席をさせていただきました委員会における外務大臣の答弁は、ただいま外務省の政府委員から答弁をさしていただいた事柄でございまして、私も、アメリカが佐世保をエンタープライズの母港にしようと考えているということはあり得ない。外務大臣の御答弁は、そういうことは聞いておりません、こう言っておられましたが、そのとおりであろうかと存じております。
  204. 春田重昭

    ○春田委員 今時点ではそうかもしれませんけれども、将来とも全くそういうことがないと言えるのか、断言できるのか。また、米側から今後要請が出てくるおそれがないと言えるのか、この点再度お尋ねしたいと思います。
  205. 加藤良三

    加藤(良)説明員 先ほど申し上げましたとおり、現時点で日本における追加的母港化の計画というものはないというふうに承知いたしております。  将来のことということでございますが、いずれにいたしましても、このような種類の決定というものは当然に日本政府の同意にかからしめられるものである、そうでなければ進められない筋合いのものでございますから、その点だけははっきり申し上げられると存じます。
  206. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、問題は非核三原則でございますけれども、核を持たず、つくらず、持ち込ませずというのが三原則でございますが、今回のエンタープライズについてはこれに抵触する心配はないと言えるか。
  207. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  艦船によるものであれ何であれ、核の持ち込みはすべて事前協議の対象でございます。核を持ち込みます場合には事前協議をいたしますのが米国の条約上の義務でございます。今回の場合、エンタープライズの寄港に際しそのような事前協議はないということでございますので、私どもとしては核はないというふうに確信いたしております。
  208. 春田重昭

    ○春田委員 たしか五十六年五月のライシャワー発言にありますように、一時寄港や通過は事前協議の対象に含まれないという発言がかつてあったわけでございますけれども、安倍外相がマンスフィールド大使との会談でこの点については明確に確認されたかどうか。これは外務省の見解を聞きたいと思います。
  209. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  若干御説明させていただきますと、御承知のとおり、三月十七日に安倍大臣がマンスフィールド大使を招致いたしまして、F16、エンタープライズの寄港、こういったもろもろのことを含めて、今後予想される米軍のこの地域における種々の活動との関連日本に核兵器が持ち込まれるかもしれないというわが国における最近の懸念を伝えたわけでございます。  なお、その際、安倍大臣より、政府としては非核三原則というものを堅持しているわけであって、政府が国会における答弁を含めまして多くの場で、米国政府が安保条約のもとにおける事前協議の枠組みの中で核兵器の持ち込みについて許可を求めてきた場合には、政府としては非核三原則に従って対処するということを明確にしてきているということを米側に明らかにしたわけでございます。  これに対して、マンスフィールド大使の方から、米国政府は核兵器に対する日本国民の特別の感情というものを十分理解しておりますということをまず言って、さらに続けまして、八一年五月二十日でございますか、マンスフィールド大使と当時の園田外務大臣との会談の際に明らかにされました米国政府見解というものに触れまして、米国政府の立場には何らの変更もないということを確言したわけでございます。  最後に、マンスフィールド大使の方から大臣に対しまして、核の存否というものについてはこれは否定も肯定もしないというのが一貫した米国政府の政策であるということは言いつつも、米国政府としては、安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対するその義務を誠実に履行してきておりますし、今後とも引き続き誠実に履行してまいります、このことを保証いたしますということを述べたわけでございます。  私どもとしては、ここで確認すべき点については確認を十分取りつけたというふうに考えておるわけでございます。
  210. 春田重昭

    ○春田委員 まあ十分取りつけたとおっしゃいますけれども、要するに非常に灰色のままで今日まで来ているわけです。核兵器積載可能なエンタープライズが日本に寄港して、どこにおろしてきたかというのは従来からも再三国会で論議されてきたわけです。だから、日本は非核三原則があるのだという表明だけで、エンタープライズに本当に核兵器がないかどうかという一歩踏み出した論議がなされていないわけですね。お互い触れてはならないところに触れていったら問題が出るものですから、ただ表面だけあさって、形式上だけやって、そして事前協議がないからこれは核兵器は積んでいないのだ、こういう外務省の見解というのは、何か恐る恐るそういう交渉をしているように見えてならないわけです。  そういった面で、エンタープライズに本当に核兵器が積んでないかどうか明確に迫る必要がある。従来の域から一歩踏み込んでやるべきではないか、これが国民に対する政府姿勢ではないかと思うのですよ。どうなんですか。
  211. 加藤良三

    加藤(良)説明員 核を持ち込みます場合、それがいかなる態様のものであれ事前協議をしなければならない。事前協議をするということ、これは米国にとっての条約上の義務でございます。条約上の義務という、非常に重いものであると思われるものでございまして、これは日米の信頼関係基本の上に立つものであるという認識を私どもは持っているわけでございます。  今回、エンタープライズの寄港に際しまして、その条約上の義務ということである事前協議がなかったということは、すなわち、これは核の持ち込みはなかったということであると私どもは確信いたしておるわけでございます。
  212. 春田重昭

    ○春田委員 それだけ日米間に信頼があるのだったら、なお一歩突っ込んで論議してもいいのではないかと思うのです。それがいまの形でいけば、ただ表面にさわっているだけでお互い信頼している、こう言って、言葉だけにすぎないのですよ。だから国民の間には不安が残っているわけです。  ところで、この一時寄港と通過の問題でございますけれども、一部の意見の中には、有事の際には一時寄港や通過については認めるべきであるという意見もあるわけでございますが、長官としてはどうお考えになっていますか。
  213. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  累次国会答弁で明らかにしておりますとおり、いかなる場合であれ核の持ち込みについて事前協議があった場合は、三原則を踏まえて日本政府はノーと言う、これが確立された政策でございます。
  214. 春田重昭

    ○春田委員 国を守るべき防衛庁長官に、いまと同じような質問ですが、お答えをいただきたいと思います。
  215. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ただいま外務省から答弁をいたしたとおりでございます。  なお、つけ加えて申し上げさせていただきますが、いま政府委員から答弁いたしましたが、実は他の委員会で恐縮でございますが、内閣総理大臣、外務大臣、それから防衛庁長官その他各大臣がおる席で外務大臣が答弁をいたしましたのも全く同じ答弁でございます。
  216. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、このエンタープライズ及びベインブリッジの周辺の海水の採取を科技庁が行っているようでございますけれども、放射能の有無の結果が現時点でわかっているかどうか、お答えいただきたいと思います。
  217. 岡崎俊雄

    ○岡崎説明員 お答えいたします。  原子力を推進機関といたしますいわゆる原子力軍艦のわが国への寄港に関しまして、その放射能調査につきましては、科学技術庁が定めました原子力軍艦放射能調査指針大綱というのがございますが、これに基づきまして、関係地方公共団体、関係行政機関との緊密な連携のもとに、常時空中及び海中の放射能レベルを監視、測定するとともに、寄港時には、これに加えまして海水及び海底土を採取し、さらにこれに加えまして、もちろん年四回、定期的に海水、海底土あるいは海産生物等を採取し、その中に含まれます放射性核種の分析を行っております。  御指摘のございました今回の原子力空母エンタープライズ及びベインブリッジの佐世保港寄港に伴う放射能調査につきましても、本調査指針大綱に基づきまして、科学技術庁は佐世保海上保安部及び佐世保市との緊密な協力のもとに放射能調査班というものを設けまして、入港前日、すなわち三月二十日から港内等に設置されております四カ所のモニタリングポストによりまして、空中及び海水中の放射能レベルの常時監視を行っております。また、放射能調査船「さいかい」というものがございますが、これによりましても、港内を巡回いたしまして港内の空中及び海水中の放射能レベルの監視を行ってきております。もちろん、入港時につきましては、調査船はエンタープライズ及びベインブリッジの追跡調査を行ったわけでございますが、いずれにしましても、これらを含めまして本日午前中までに得られました結果は全く平常値と変わらない値でございました。もちろん、今後ともこれらの艦船の出港まで万全な放射能調査体制をとってまいりたいと考えております。
  218. 春田重昭

    ○春田委員 続いて、三沢の問題でございます。  その前に長官にお伺いしますけれども、最近のソ連のいろいろな動きにつきまして、いろいろな形で政府首脳からの発言があるわけでございますけれども長官は、ソ連について認識をどう持っておられますか、まずお答えいただきたいと思います。
  219. 谷川和穗

    谷川国務大臣 十八年間続きましたブレジネフ体制が今日変わった現時点で、ソビエトロシアとしても、外交政策を含めて新しい政策を目下模索はいたしておることだとは思いますが、少なくともブレジネフ体制後半に至って、具体的にはベトナム戦争後、西側防衛力自助努力というものは比較的低位だったと思いますけれども、その間ソビエトロシアは一貫して軍事力の強化に努めてきておったということは言い得る、こう考えておるわけでございます。
  220. 春田重昭

    ○春田委員 今国会の政府首脳の答弁の中で、ソ連認識につきまして、特に総理また安倍外務大臣の発言は、従来わが国がとっておりました潜在的脅威というソ連認識から一歩踏み出しているような見方もあるわけです。総理の日米運命共同体とか三海峡封鎖とか不沈空母等の発言は、従来の潜在的脅威から出た発言ではなくして、むしろソ連脅威論から出た発言ではなかろうかという見方もあるわけです。また外務大臣は、この国会でも、潜在的脅威という従来の認識から潜在的という言葉を取って、ソ連は脅威である、こういう答弁もなされているみたいでございます。これらは従来のわが国がとってまいりましたいわゆる潜在的脅威から事実上の脅威に変わってきたのではないかという見方もされているわけでございますけれども、この点、長官はどうお考えになっておりますか。
  221. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず、潜在的脅威が顕在化するのには、総理も答弁しておいでになられますが、やはり意図というものが働かなければならぬと思いますが、私は、現在のソ連がそういう意図を持っておる、つまり日本侵略の意図を持っておるというようなことは毛頭考えておりません。  それから、総理の、特に訪米されましてからの御発言などでございますが、再々総理が国会答弁で申し上げておりますように、総理としては、みずからの国はみずから守ることがまず大事だということを強調したかったということを言っておいでになるわけでございます。  安倍外務大臣の御発言は、たまたま私その席におったのでございますが、その次に私が質問を受けまして、立ちまして答弁をいたしまして、ソ連の現状についてどう思うかということに対して、潜在的な脅威であるとは考えておりますということを答弁いたしましたら、安倍外務大臣は、すぐその後指されて立たれたときに潜在的脅威ということを使っておいでになられたので、私は、安倍外務大臣の最初の、ソ連は脅威と考えておるというのは、恐らく安倍外務大臣は頭の中で潜在的な脅威と考えておられたことだったのだろうなと、こう判断をいたした次第でございます。
  222. 春田重昭

    ○春田委員 意図ということを二回も長官は繰り返されたわけでございますけれども、意図はないけれども能力はある、こういうことですね。だから、能力と意思が一致して初めて事実上脅威といいますか、そういう形になってくるのじゃないかと思うのですけれども、この点、どうなんですか。能力はあると見ているのですか。
  223. 谷川和穗

    谷川国務大臣 能力のあるなしは別にいたしまして、現実の問題として、極東におきますソ連軍の増強というのはまことに目覚ましいものがございます。また、それによってわが国周辺におきますソ連軍の活動も非常に活発化しておることも事実でございます。しかしながら、そういう極東におけるわが国周辺の状況であるから、直ちにソ連日本に対する侵略の意図、いま先生は意思ということも使われましたが、意図ないしは意思を持っておるかということになれば、私は、現在のソ連がそういう意図ないしは意思を持っているとは毛頭考えられません。
  224. 春田重昭

    ○春田委員 総理も、仮想敵国のわが党の質問の中で、ソ連は能力はあるけれども、意図といいますか意思はないのだ、したがって、いまは仮想敵国とは見ないのだということを国会答弁でなさっているわけでございますけれども、同じような意味だと思うのですが、ということは、五十八年度防衛白書がいまつくられておりますけれども、この防衛白書の中でも、ソ連認識は従来どおり潜在的脅威という形で表現される、こう見ていいわけですか。
  225. 谷川和穗

    谷川国務大臣 防衛白書の作成につきましては、防衛庁といたしましては、年に一回、国防に関する最も重要な広報活動の一つと、こう考えておりますので、実は防衛庁内部に白書を作成するチームをつくっておるわけでございまして、そのチームが白書の編集についてこれから鋭意努力を開始するところでございます。  しかし、基本的な路線といいますか筋として、ソ連の極東における軍事力増強というものは極東の安全と平和にとって、もし仮にソ連がいまのような増強を続けていく、あるいは、一時報道されたようなSS20の極東配備というようなことが行われていくことになれば、これはやはり相当極東の平和とか安定とかいう問題には大きな問題を呼び起こすことであろうと思いますし、同時に、わが国にとりましては、従来からずっと申し上げさせていただいておりますようなソ連軍事力の強化、増強というものは潜在的な脅威であるという姿勢でおるわけでございます。
  226. 春田重昭

    ○春田委員 ということで、五十八年度防衛白書も変わらないという認識でいいわけですか。もう一回確認します。
  227. 新井弘一

    新井政府委員 お答えいたします。  基本的な認識としてはただいま先生がお述べになられたようなことで結構でございます。
  228. 春田重昭

    ○春田委員 基本的にはということは例外もあり得るということで、勘ぐるわけでございますけれども防衛白書が大体夏ごろ出てくるわけでございますが、その辺でさらに極東のソ連の軍事体制が変わってくれば、この潜在的脅威というものも変わり得る、こう思ってもいいのですか。
  229. 新井弘一

    新井政府委員 お答えいたします。  もちろん、ソ連の過去半世紀にわたる質量とも一貫した軍事力増強というような状況が大幅に変わるという時点では、わが方のそれに伴う認識は当然のことながら異なることになるであろうというふうに思います。ただ、一言申し上げますと、先ほど以来の御議論がございますけれどもソ連のこういう軍事力の実態、これは客観的な事実であるという認識でございます。
  230. 春田重昭

    ○春田委員 時間がないので先へ急ぎます。  そこで、F16が昭和六十年から四年間かかって大体四十機ないし五十機配備されるという構想が打ち出されたわけでございますけれども、午前中の同僚議員の質問にもございましたけれども、三沢にはかつてF4ファントムが配備されていたわけでございます。撤去されたのが昭和四十六年だったと聞いておるわけでございますけれども、もう十年以上たつわけですね。いまなぜF16なのかという率直な疑問が出てくるわけでございますけれども、F16配備の目的について簡単に御説明いただきたいと思います。
  231. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 FM配備の目的は、極東における軍事バランスの改善に努めることによって米国のコミットメントの意思を確認する、それがひいては日米安保体制の有効性、信頼性というか、抑止力の向上につながるものであるというふうに承知しております。
  232. 春田重昭

    ○春田委員 そうしたいわゆるマクロ的なといいますか、全体的な目的というのはわかるわけでございますけれども、なぜF16が配備されるのかという、この直接的な役目というのはどこに主眼が置かれているのですか。
  233. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 このF16がF16でなければいけないのかどうかという具体的なことについては必ずしもつまびらかにいたしませんが、このF16という航空機は、空対空の任務とともに空対地にも非常にすぐれた性能を持ったいわば多目的戦闘機であるということから、最近におけるソ連軍の軍事力増強というものを踏まえて、そういったバランスの改善に努めるのに、アメリカが生産しつつある新鋭機の一つであるF16を持ってきたのであろうというふうに想像しております。
  234. 春田重昭

    ○春田委員 米ソの軍事バランスが崩れているからこのF16を配備したんだということでございますけれども、そうしたら、どういう面でソ連アメリカより優勢な面があるのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  235. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず第一点は、アメリカがF16を配備するというのは、ソ連にF16を配備することの直接対象になるものが来たからということでは必ずしもないのだろうと思います。極東における米ソの軍事バランスというのは、いわゆる同種の兵力の対峙ということでなくて、異なった兵種、機能を持った部隊のバランスであろう。したがって、それがどういうふうな意味合いを持つかというのは総合的に判断されるべき問題であろうと思います。  個々の問題について、何がアメリカはすぐれ、何がソ連はすぐれておるかというのは、一つ一つの兵器の性能についてまで議論が波及するものでありますから、一概には言えないであろうというふうに思っております。
  236. 春田重昭

    ○春田委員 極東における最近のソ連の戦力について、具体的に説明いただきたいと思うのです。
  237. 新井弘一

    新井政府委員 お答えいたします。  通常及び核戦力全体を大づかみにとらえまして、極東地域にはソ連は約三分の一から四分の一配備している。核においてもそうであります。SS20、バックファイア、これについても同様でございます。  それから、通常兵力につきましては、大体そのような比率でございますけれども、多少具体的に申し上げますと、まず陸は、極東地域に三十九個師団、三十六万人、それから海軍兵力は、約六百隻、百数十万トンでございます。  それから他方、ただいま三沢との関連航空機について先生御質問がございましたけれども航空機は全体として二千百二十機というふうに理解しております。内訳を簡単に言いますと、そのうち爆撃機が四百二十機前後、それから戦闘機が千五百五十機、残りが偵察機になっております。  それから、前の質問との関連でちょっと述べますと、アメリカの三沢配備でございますけれども、十年前、一九七〇年代の初めまでは、アメリカはファントムを七十二機三沢に置いていたわけであります。その当時の米ソの極東における航空機の数を大ざっぱに言いますと、たとえば一九七〇年で、ソ連は約千八百七十機、それが現在二千百二十機でございます。これに対してアメリカはどうであったかといいますと、当時ベトナム戦争がございましたけれどもアメリカは約二千三百機置いていたわけでございます。それが現在極東では八百機に減っている。要するに、ニクソン・ドクトリン等々の政策の結果であるというふうに理解しております。  以上でございます。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 北方領土におけるソ連の兵隊ですね。それから、ミグ21が配備されておると聞いておりますけれども、大体何機ぐらいいるのか。また、ソ連領土内におけるバックファイアの数。また、SS20の極東へ向けての配置数。この四点について数字を挙げてください。
  239. 新井弘一

    新井政府委員 最初に、お答えに入る前に、私の前回の答弁の中で、極東ソ連の軍艦の数、約六百と述べましたけれども、八百十隻というふうに理解いただきたいと思います。  ただいまの御質問でございますけれども、北方領土に配備されたミグ21の数は十一機でございます。SS20についてはソ連は全部で三百数十基持っておりますが、極東地域には約百基配備しております。それからバックファイア、これも二百数十機でございますけれども、極東地域には約七十機配備しております。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 それから、北方領土にソ連兵士はどれくらいいるか。
  241. 新井弘一

    新井政府委員 北方領土におけるソ連の軍隊の配備状況でございますが、陸につきましては約一個師団相当規模というふうに理解しております。  その他、具体的な装備につきましては、戦車、火砲、装甲兵員輸送車、あるいは対空ミサイル、さらには百三十ミリカノン砲、またヘリコプター、これは攻撃ヘリでございますけれども、新鋭のミル24ハインドが配備されております。それに加えまして、国境警備隊が約三千、他方、ヘリコプターあるいは警護船等が同じく配備されておる。  以上でございます。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 アメリカ側とすれば、今日の極東の軍事バランスのためにF16を三沢に六十年から四十ないし五十機置くんだ、こういう形で言うわけでございますけれどもソ連から言わせれば、要するにかなり対ソむき出しの戦略であるからということで、さらにバックファイアまたはSS20等を北方領土等に強化していっているわけですね。もうお互いが縮小じゃなくて軍拡に走っていっているわけですよ。そういった面で、このF16の配備というものは確かにソ連を刺激していることは間違いない、こう私は思います。  そこで、SS20でございますけれども、これは欧州に配置されていたのを撤去して極東にかなり移動してきたということが言われているわけでございますけれども、先ほどの説明では百基という話がございましたが、今後これがもっとふえるおそれがあると見られるのですか。
  243. 新井弘一

    新井政府委員 少なくとも、最近、特に一月以来のソ連政府要人の言明によりますと、御承知のとおりジュネーブで行われているINF交渉との関連で欧州地域で削減するSS20は、その分を極東地域に持っていくことを考えているというふうに言明しております。
  244. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんから、先へ進みたいと思います。  この三沢基地には将来P3CやE2C等の軍用機が来るとも言われているわけでございます。ところが、現在、三沢基地には民間航空機、いわゆる全日空の民間機が飛んでいるわけでございます。そうしてF16やP3CやE2C等がどんどん来れば、民間の航空機が飛ぶのにかなり支障が出てくるのじゃないかと思うのですが、この点、どうお考えになっておられますか。
  245. 塩田章

    ○塩田政府委員 昨年、アメリカ側からF16の三沢配備についての申し入れがありました時点で、御指摘のように、現在自衛隊も使っておりますし米海軍も使っております。それに民航も使っております。そういったことも踏まえて、そういった運航に支障がないという前提かどうかということが一つの議論になりまして、そういった点は十分検討した上で、原則として運航に支障がないということを前提にした計画であるということで申し入れがあったわけでございます。今後さらに私どもとしては詰めてまいりますけれども、民航関係あるいは自衛隊関係には支障を来さないという上でのF16の配備であるというふうに私ども理解をしておるところでございます。
  246. 春田重昭

    ○春田委員 外務省にお聞きしますけれどもわが国が直接武力攻撃を受けなくて、米軍が単独で世界戦略または極東戦略の一環として戦闘作戦行動をとった場合に、これは事前協議の対象になると思いますけれども、どうですか。
  247. 加藤良三

    加藤(良)説明員 いまの御質問、正確に把握し得たかどうかちょっと自信がないのですけれども、米軍のとろうとしている行動が、わが国にある施設区域を利用しての直接戦闘作戦行動への発進だ、そういうための基地使用だということになれば、当然事前協議の対象となります。
  248. 春田重昭

    ○春田委員 たとえばこの三沢から米軍の軍用機が飛び立つ。ところが、飛び立つけれども、第三国で戦闘行動をとった場合はどうなるのか。
  249. 加藤良三

    加藤(良)説明員 いまのような事態でどういう事態を具体的に想定しておられるか、必ずしも十分私に把握できませんので、繰り返しになって恐縮でございますけれども、それが戦闘作戦行動への直接の発進だ、そのための基地の使用だという実態があります場合には事前協議の対象となるわけでございます。
  250. 春田重昭

    ○春田委員 いわゆる戦闘作戦行動でなかった場合においては事前協議の対象にならないと見ていいわけですね。
  251. 加藤良三

    加藤(良)説明員 直接戦闘作戦行動への発進のための基地の使用でないその他の基地の使用ということは、必ずしも事前協議の対象にはならないと思います。
  252. 春田重昭

    ○春田委員 その辺の判断が非常にむずかしくなってくると思いますけれども、あと問題がちょっとありますので、この問題はこれで打ち切りたいと思います。  いずれにいたしましても、わが国は、日本国憲法の遵守、非核三原則、専守防衛また個別的自衛権といった従来の政府方針なり国是があるわけでありまして、防衛庁としては、国際情勢の変化に対応しなければならないということもあると思いますけれども、私は、この三沢問題を初めとして佐世保の寄港の問題等、厳然として守るべきものは守っていく、それを主張しておきたいと思います。  それからGNPの一%の問題、これは国会でも何回も論議されてきているわけでございますけれども昭和五十一年の閣議方針、いわゆる政府方針というものについて、来年ないしそれ以降GNPの一%を防衛費が突破せざるを得ないのではないかということで、かなり見直し論といいますか、方針変更の報道等がさまざまな形でなされているわけでございますけれども長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  253. 谷川和穗

    谷川国務大臣 きわめて原則論から申し上げるようで恐縮でございますが、わが国の経済の状況、これはどういうような状態になっていくのかがいまこの時点でつかみ切れません。それから、防衛庁が概算要求をいたしますいわゆる防衛庁予算というものも、実はまだ五十八年度予算をただいま参議院において御審議をいただいている状態でございまして、五十九年度以降をどういうふうにしていくか、これについて考えが固まっておる時点でもございません。したがいまして、今後どういうふうになっていくか、いまこの時点では何とも申し上げられないのではございますが、当面、現在この時点で一%の枠を外さなければならぬというようなことは私は考えておらないわけでございます。  ただ、しかしながら、いま先生も御指摘ございましたように、わが国の経済の状態がそう一気にわれわれが期待するほど活気づいてくれるかどうかという問題も一つございますし、五十八年度予算でただいま御審議をいただいております防衛費は、すでに〇・九八というところまで来ております。したがいまして、確かに天井が低くなり、こちらの背丈がございまして、それで差がだんだん詰まってきているという現実は御指摘のとおりであろうかと存じております。
  254. 春田重昭

    ○春田委員 この防衛費GNP一%問題につきましては、防衛庁初め、総理もそうでございますけれども、必ず注釈がつくわけでございまして、「現在は」というのがいつも言われるんですね。この「現在は」に力点を置かれているということは、将来といいますか、近いうちにGNP一%を突破することは目に見えて明らかである、こういうことから「現在は」ということに力点を置かれているわけでございまして、これは客観的に見ても五十九年度以降はかなり厳しい。それは確かに、成長率はどれくらいに置くか、物価上昇はどれくらいか、まだわからないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、五十九年度防衛費は、たとえば後年度負担やいろいろな人件費等を大体はじき出していけば、五十八年度に比べてどれぐらいになるのかということは防衛庁としては御試算なさっていると思うのです。GNPは別として、五十八年度に比べて五十九年度防衛費は最低これだけ上がるという大体の目安というのはあるわけでしょう。それはもう試算をなさっていると思うのです。数字を挙げて説明してください。
  255. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五十九年度防衛関係費が一体どういう姿になるかといいますことは、やはり五十九年度予算編成全体の中で、そのときの経済財政事情等をよく考え、それからまた他の諸施策とのバランスを考慮しながら決められていくというプロセスをたどるわけでございます。そういった意味におきまして、現時点で五十九年度防衛関係費がどのようになるかということをここで具体的に申し上げるというのは大変むずかしいというふうに考えておる次第でございます。
  256. 春田重昭

    ○春田委員 その数字を出したら、必ずGNP対比の問題で指摘されるからあなたのところはあえて出さないわけですよね。  素人の私でも大体試算してみれば、五十八年度に比較して五十九年度防衛費が当然これだけはふえるという数字、正確じゃないとしても、たとえば後年度負担として約二兆円があるわけでございますけれども、五十九年度につきましては九千九百億でしょう。したがって、五十八年度に比較すれば一千三百五十億円がふえる。その他人件費として、人勧の実施、五十七年度四・五八%は凍結されておりますけれども、五十八年度は実施するというのが政府の方針でございますから、これが完全実施されたとすれば五百五十億円、退職金が三百億円、定昇分として百二十億円、その他五十八年度人勧がさらに五十七年度にプラスされたならばもっとふえるわけです。こうした人件費だけでも九百七十億円ということで二千三百二十億円となるわけです。これ以外にも五六中業による諸経費が増加しておりますし、またF16の三沢配備による予算化がもう五十九年度からされていくわけです。この問題につきましても時間があれば塩田長官質問する予定でございましたけれども、時間がないから飛ばしましたけれども、この住宅が約二百五十戸必要であるとすれば六十数億円かかるわけでございまして、そうした経費が当然プラスされていくわけでございます。そういった面で、どんなに低く見積もっても大体二千四、五百億円は素人の私でも計算できるわけです。  そこで、この経費について、大体合っているかどうか、全く見当違いかどうか、時間がないので簡単に言ってください。
  257. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のいろいろな問題点につきまして若干申し上げてみますと、まず後年度負担の問題につきましては、五十八年度予算におきます後年度負担約一兆九千五百億円、その中の五十九年度への歳出化分というのが約九千九百億円ございますから、後年度負担の歳出化分による増加要因といたしましては約千三百五十億円ぐらいあるだろうということは現時点でもほぼ推定ができる数字であろうと思っております。  しかしながら、人件費の問題あるいはその他の経費の問題につきましては、いろいろな要素、増要因もあれば減要因もあり得るわけでございまして、そういったものすべてを総合判断をいたしましてどういった姿で予算を調整していくかということは、まさに今後の五十九年度予算の編成過程において判断されるべき問題と承知いたしておりますので、この時点で具体的に計数をもってこうなるであろうということを申し上げることは困難であることを御理解いただきたいと思う次第でございます。
  258. 春田重昭

    ○春田委員 若干の変動があるとしても、人件費はこれぐらい必要なのだということは間違いないわけです。  そこで、分母となる方のGNPの問題でございます。確かにいま五十八年度の経済成長がどれぐらいかわからないわけでございまして、五十九年度も果たしてどれぐらいの成長率かわからないけれども、五十八年度のGNPが二百八十一兆七千億と見られているわけです。これは原油の値下げとか世界情勢の復活等を考えるとかなりいいところまでいくのじゃないか。今後原油等も相当下がってくるという見方がされておりますから、五十八年度はこの二百八十一兆七千億でいったとすれば、五十九年度の名目成長率は、経済社会七カ年計画の経済指標でございます平均五・一%成長とすれば、五十九年度のGNPは二百九十六兆円となるわけです。したがってGNP一%は二兆九千六百億円でございまして、五十八年度防衛費は二兆七千五百四十二億円でございますから、その差は二千五十八億円になるわけです。おわかりでしょう。名目成長率を六%とした場合にはGNPが二百九十八兆六千億、一%が二兆九千八百六十億で、五十八年度との差は二千三百十八億円ということで、先ほどの数字からいったら間違いなく一%は超える。こうなっちゃうわけですね。そういう点で、確かに経済の動向というのはわかりませんけれども、五十九年そして六十年、一%を超えるのは間違いないわけですよ。  そういった面で長官がいろいろ御検討なさっていると思いますけれども、要するに長官姿勢として、たとえ分母がどんな額になろうとわが国防衛費はGNP一%を守っていくのだということになれば、やはり全体を整合性を持って縮小していって分母に合わすべきである。分母が小さくなったから一%はやむを得ないとか、アメリカから言われておるから防衛費は上げざるを得ないのだという論理ではなくして、姿勢としてGNP一%は厳然として守っていくのだとなれば、どんな操作もできるわけですよ。その基本的な姿勢について私は長官に言いたいわけです。だから、いろいろな経済の変化、物価の変化、もろもろの変化があろうとも一%だけは絶対に守りますという強い確信といいますか姿勢が大事じゃないかと私は思うのですが、長官どうですか。簡単に。
  259. 谷川和穗

    谷川国務大臣 逆の方の答弁をさせていただくような形になって恐縮なんですが、私はできるだけこの一%というメルクマールは持ち続けていきたい、こう考えておるのです。なぜかと申しますと、一つのめどとしてでき上がってきておるものでありますけれども、やはりわが国はこれだけ経済の大きな国でございます。それでなくても周辺諸国がわが国に対して必要以上に警戒心を持つようなこと、特に隣接しておりまする地域の国々でありますが、これは全体から見てわが国にとっては外交施策としても必ずしも得策ではないという感じもございます。したがいまして私は、防衛力にはおのずから一つのつくり上げられてきた国民的コンセンサスというものがあっていいんだ、こういう考え方を持っておりますものですから、五十一年に閣議決定されておるメルクマールでありますけれども、できるだけこれは持ち続けていきたい、こう思っておるところでございます。
  260. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、五六中業の問題についてお尋ねします。  五六中葉は、五十八年度を初年度として六十二年までですか、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を達成することを基本として、長官指示なり国防会議にかかっておるわけでございますけれども、五十八年度、初年度からしていわゆる装備の調達等かなり削減されているわけでございます。五年平均でいったら大体二〇%いかざるを得ないところが、P3CやF15等でも相当削減されてきておるわけでございますから二〇%を割っておるわけです。後年度にそれだけ負担がかかってくるわけでございます。  アメリカに五六中業期間中に「防衛計画の大綱」水準に達成しますと一応約束なさっておりますけれども、現実の厳しい財政のもとで初年度からつまずいておるわけでございます。そういった面でこの五六中業の期間内達成は非常にむずかしいのではないかということで、見直し論も出ているわけでございますけれども、この問題について長官の御意見を聞いて、質問を終わりたいと思います。
  261. 谷川和穗

    谷川国務大臣 五六中業を完成するまでほぼ二年かかっておるわけでございますが、これを概算要求いたしまして、初年度が五十八年、本年ただいま御審議をいただいておりまする予算でございますが、ちょうどそのときにわが国は、前総理の言葉をおかりすれば、財政の危機的な状態のようなものが訪れてまいっておりまして、確かに五六中業初年度の五十八年度予算においては、私どもが当初考えた、満足のいくような数値には必ずしもなっておりません。しかしながら、さらばといって、やっとスタートしておりまするこの五六中業を、現在ただいまこれは達成不可能でありますと言い切るわけにはまいりませんで、私どもとしては、あと残された期間に何とかしてその達成水準にいきたい、こう考えておるところでございます。
  262. 春田重昭

    ○春田委員 時間が参りましたから、終わります。
  263. 古屋亨

    古屋委員長 神田厚君。
  264. 神田厚

    ○神田委員 防衛関係全般につきまして、防衛庁長官並びに防衛庁、外務省に御質問を申し上げます。  まず最初に、アメリカの国防総省報告に関しまして御質問を申し上げますが、去る九日、米国国防省は、米国によりますソ連軍の軍事力の評価をまとめまして「ソ連軍事力」一九八三年版というのを公表しました。この中で、大変いろいろと極東情勢につきまして厳しい情勢分析が行われているわけでありますが、最初に、アメリカのこの国防総省報告の全体を見まして、防衛庁長官といたしましてどういう御感想をお持ちになりましたか、お聞かせをいただきたいのであります。
  265. 谷川和穗

    谷川国務大臣 今回発表されました「ソ連軍事力」に関して申し上げさせていただきますと、相当豊富な情報に基づいて、多方面、多角度から具体的に記述しておりまして、現下のまことに厳しい国際軍事情勢を理解する上で大変意義のあるものだ、私はこう評価をいたしております。  私、全部読み上げたわけでもございませんので、正確なコメントは申し上げられませんが、印象といたしましては、いままでどちらかというと欧州方面を中心に記述されておったわけでございますが、今回は、わが国北方領土への地上軍の配備等に関する言及も見られまするし、特段目新しい点はないとも言えますが、しかし、極東方面についても比較的詳細に説明いたしておりまして、わが国周辺の軍事情勢を的確に判断をする上では参考になるものだ、こう考えておる次第でございます。     〔委員長退席、東家委員長代理着席〕
  266. 神田厚

    ○神田委員 細かい問題につきましては後ほど個々に御質問を申し上げますが、その中で、特に極東ソ連軍の増強、それから北方領土におけるソ連軍の軍備配備の問題、それからまた、核問題ではSS20の極東配備の問題、そしてさらには、KGBの工作員による日本における工作の状況、こういうようなことが言われております。  それぞれにつきましてやや詳しく御答弁をいただきたいのでありますが、まず最初に、極東ソ連軍の増強がきわめて顕著であるということで、具体的に大変詳しく報告がなされております。これにつきまして、防衛庁としてはどういうふうにこの報告を読んで見解をお持ちになっておりますのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  267. 新井弘一

    新井政府委員 まず結論から申し上げまして、今回の「ソ連軍事力」に述べられているアメリカ側の情勢認識及び判断、これはわが方の見解基本的に相違がございません。  御質問でございますので、簡単に、極東部地域においてどういうような記述をしているかといいますと、戦域核戦力については、全ソ連のSS20のうちおおむね三分の一が極東に配備されておる、これは私が先ほど答弁したとおりでございます。  それから陸軍戦力は、中ソ国境付近に五十個師団以上ということになっております。この点は二年前には四十五個師団以上ということでございますので、ふえた数が出ております。それから加えまして、近代的地対空ミサイル、自走兵器及び百五十二ミリカノン砲等の装備により質的に強化されている。  それから空軍戦力につきましては、戦術航空機が約千二百機へと増強されており、ミグ23あるいは27、それからSU24、そういう新しい世代の新兵器の配備が続けられている。また、空軍所属のバックファイアが約四十機ということを言っております。他方において海軍については約三十機ということを言っておりますので、合わせて七十機、これも私ども認識と同一でございます。  それから海軍力につきましては、この点も着実な努力が払われており、現在八十隻以上の主要な水上艦艇が配備されている。そして八〇年代にはキエフ級空母がもう一隻配備される可能性があるということを言っております。それから潜水艦増強も活発である。現在三十隻以上の弾道ミサイル潜水艦と九十隻以上の攻撃型潜水艦が配備されている。  以上でございます。
  268. 神田厚

    ○神田委員 アメリカの報告書も同様な形でその分析をしておりますが、特に北方領土につきましては、一つは、北方領土における具体的な戦力は軍隊で一万人だというふうなことを言っております。  ここで、先ほども質問があったようでありますが、北方領土におけるソ連軍備配備の現況の中で特に特徴的なことはどういうことなのか。以前、滑走路の拡張問題等あったかという質問をしたのですが、滑走路等については、これの拡張等はないというような答弁であったし、同時に新たな軍事施設の構築はあったかという質問に対しましても、顕著な形での軍事施設は見当たらないという答弁がありましたが、その後、北方四島におきますソ連軍備配備、装備及び施設の中で特徴的なものはあるのかどうか。  さらには、その進駐範囲は北方四島の中で特に国後、択捉島に拠点が置かれているけれども、その前進的な基地というか、情報基地といいますか、そういう形で色丹島、歯舞諸島におけるソ連の軍事展開はあるのかないのか、その辺のところを明らかにしていただきたいと思います。
  269. 新井弘一

    新井政府委員 北方領土につきましては地上兵力約一個師団規模が一九七八年に再配備になった、これは先生御承知のとおりでございます。その後も引き続き装備等につきまして増強努力が払われている。具体的には戦車とか火砲、対空ミサイル、さらには通常師団規模にはない百三十ミリのカノン砲とか攻撃ヘリコプターミル24ハインド、これはアフガニスタンでもソ連は使っておりますけれども、そういうものが配備されている。さらに国境警備隊、またヘリコプター、それから警備艦等がある。  最近最も注目いたしますのは、一昨年の春ごろに、ソ連が従来配備していたミグ17が飛び立って帰ってこない。撤去されたというふうに私ども判断して、その後これにかわる新しい航空機の配備というものがあるのかないのか、この点非常に注目しておりましたところが、昨年の十二月に至りましてミグ21が飛来した。この点につきまして、二つの点、第一点は何機か、第二はこれが一時的な飛来かあるいはミグ17にかわる常駐配備か、この二点につきまして現在までのところ明確になりましたのは、第一の点は全部で十一機、それからさらに常駐配備かということにつきましては、先般、二月の後半でございますけれども、わが方の自衛隊の航空機に対しましてスクランブルをかけてくるというような事件が数回発生したということから判断いたしまして、まずこのミグ21十一機は常駐配備でなかろうか、そういうふうに結論づけてほぼ間違いないのではなかろうか、そういうふうに私どもは判断しております。  それから、ソ連の工作は――この点は特に御質問なかったと理解しておりますが、特に答えなくてよろしゅうございますね。(神田委員「何ですか」と呼ぶ)ソ連の例の工作でございますけれども、アクチブメジャーズという……(神田委員「特別な形では……」と呼ぶ)よろしゅうございますね。
  270. 神田厚

    ○神田委員 特に施設その他のもので特徴的に増設をされたとか新設をされたとか新たに構築されたとか、そういう事実はあるのかないのかということなんです。軍事施設がもちろん中心でありますけれども、それと同時に、その進駐の範囲が軍事拠点としては国後、択捉に集中していたわけでありますが、日本にごく近い色丹、歯舞諸島に対しても何らかの形で分遣進駐とかいうふうな徴候があるのかないのか、これらについてお答えいただきたいと思います。
  271. 新井弘一

    新井政府委員 まず、択捉島につきましては、特に過去一、二年、隊舎の建設、これに加えまして滑走路の強化についての具体的な動きというものは見られていたわけでございます。それを基礎にミグ21十一機の配備ということになったものと論理的に考えている次第でございます。  他方、択捉を除く国後・択捉はどうかといいますと、この点については、詳細を全般について述べるということは今後の情報収集活動等との関連もございますので明確な回答は遺憾ながらなし得ないわけでございますけれども、一般的に隊舎の増強というような動きはあるというふうに考えております。  それから、歯舞、色丹について若干御言及ございましたけれども、歯舞にはソ連は具体的に兵力を置いておりません。色丹島には若干の地上兵力を置いておる、そういう状況でございます。
  272. 神田厚

    ○神田委員 全体的にやはり増強されているということだと思うのでありますが、アメリカの報告で一万名と言っておりますね。防衛庁では一個師団と言っておりますが、その一個師団もどの程度の人数なのか、完全充足された一個師団なのか、この辺のところで数字がちょっと違うようであります。
  273. 新井弘一

    新井政府委員 私の理解では、アメリカの発表したソ連軍事力は国境警備隊を含め一万人というふうな記述であったろうと思います。他方、私どもといたしましては、いままで一個師団規模ということで表現しておりまして、具体的な数字は明らかにしておりません。ただ、国境警備隊は約三千ということは先ほどお答えしたとおりでございます。  一つ追加的に御説明いたしますと、この師団というのは、何分にもわが方の北方領土は島から成っているということから、島の特性というものを念頭に置いて特別に編成された師団であるというふうに考えております。ただ、全体的な数字としては、常識的に、アメリカ側が今回発表した数字というものとわが方の認識は大同小異でございます。
  274. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、先ほどスクランブルの話がありましたが、この北方領土に進駐しているソ連の軍隊から日本に対しましての具体的な軍事行動というのはどの程度あるのか、この辺はいかがでありますか。
  275. 新井弘一

    新井政府委員 ミグ21が飛来しまして約三カ月以上たったわけでございますけれども、その間その種の行動としてはスクランブル以外は特に認められません。
  276. 神田厚

    ○神田委員 過去においてもスクランブルをかけられたということがあるということでありますが、ミグが来てスクランブルをデモンストレーション的にかけてきた、こういうふうな報道もされておりますが、考え方としまして、それでは北方四島に配備をされているソ連軍というのはどういう性格を持った軍隊なのか。日本航空機にスクランブルをかけてくるというような具体的な行動もあるわけであります。防衛庁は以前、この北方四島に進駐しているソ連軍につきましては島嶼防衛的なものだというような答弁もしておったわけでありますが、われわれとしましては、日本航空機に対しましてスクランブルをかけたりいろいろしてくるというような状況を見ますと、ただ単に島嶼防衛というような考え方に立ってそれを分析していていいのかどうか、これは先ほどの意図と能力の問題とも関連するわけでありますが、防衛庁長官はこの北方四島に配備されているソ連の軍隊の性格をどういうふうにお考えになっておりますか。
  277. 新井弘一

    新井政府委員 北方領土に配備されたソ連軍が防衛的か攻撃的なものかといった点についての先生のただいま述べました御見解はきわめてもっともな点があるかと思います。ただ、防衛的かどうかは、実態的には、単に北方領土におけるソ連軍の状況、活動のみならず、他の地域にあるソ連部隊との関係等々、そういった点を総合的に判断しませんと必ずしもこれは防衛的か攻撃的かということは断じがたい、そういう側面があるといった点を御理解いただきたいというふうに思います。
  278. 神田厚

    ○神田委員 前に防衛庁に御質問したときに、この北方四島に進駐している軍隊は言ってみれば性格不明だ、こういうふうな御答弁が、言葉がそうだったかどうかちょっとあれですが、いわば性格不明だというようなニュアンスでの御答弁があったかと思うのです。  それで、いま参事官の方からは、極東の全体のソ連戦略から考えなければ、北方四島に進駐している軍隊だけを取り上げてどうこう言うことはできない、こういうことでありますが、これはごもっともであります。  そうであるならば、極東ソ連軍の戦略というのは一体どういうことであって、さらにその極東ソ連軍の戦略の一環として北方四島に配備をされている軍隊はどういうふうな性格の軍隊なのか、その辺についてお聞かせを願いたいと思います。
  279. 新井弘一

    新井政府委員 大変具体的な、あるいはある意味で答弁がむずかしい御質問でございますが、まず最初に一言、ソ連軍事力というものをどういうふうに理解するか、具体的にはこれについてもまさにすぐれて攻撃的なのか防衛的なのかということですが、御承知のとおりソ連はマルクス・レーニン主義に立脚した国家でございます。これを国是としている国家でございます。その意味におきまして、マルクス・レーニン主義というのはいわゆる唯物弁証法、矛盾論に立脚している。したがいまして、防衛もあるいは攻撃も矛盾論という枠内で統一的にとらえられているといった点、これは国是でございますし、同時にこれが軍事戦略の面においてもしかりであるということで、したがいまして、一概に防衛か攻撃かということは大変むずかしいということが言えるかと思います。  ただ、にもかかわらず過去二十年間ソ連軍備的な増強、特に最近十年間比重が極東地域にかなりかかってきている。端的な例で言いますと、いまから二十年ちょっと前のフルシチョフ時代には、極東のソ連軍というのは全体としてトータルな兵力の約八分の一程度であった。それがいまや三分の一ないし四分の一というふうに大きく増強された。そしてさらに、この点アメリカどもつとに申しているわけですけれども、かつては欧州第一主義をとっていたソ連が、いまや複数の戦線で同時に攻撃し得る能力を身につけてきた。さらに、その核兵器、たとえばSS20等を考えましても、およそソ連の現在の核、通常兵力を含めてその規模というのは、能力の点から見ての議論でございますけれども、単なる防衛だけであるということでは律し切れない、そのような性格のものではないか、これが実は西側の非常な警戒するところとなっているというのが実態でございます。
  280. 神田厚

    ○神田委員 そういうことになりますと、これは「防衛計画の大綱」の問題にまで話が及んでいく問題になると思うのです。  御案内のように、「防衛計画の大綱」ができましたときの世界情勢、極東情勢と、いま防衛庁の方で見解を明らかにした現時点における世界情勢あるいは極東情勢とは大変かけ離れてきている。したがって、そういう御認識をお持ちであるならば、やはりこの「防衛計画の大綱」の問題についても防衛庁はもう少しはっきりした態度でこれを打ち出していくべきではないか、私はこういうふうに思うわけであります。  その辺のところは、たとえば脅威の問題一つとりましても、先ほど防衛庁長官は潜在的脅威だと言った。じゃ潜在的脅威と顕在的脅威というのはどういうふうに違うのか。脅威が顕在化すればこれはもう戦争であります。したがって、潜在的脅威が増大しているということは、同時にその中に、たとえばソ連ならソ連の意図が明らかに攻撃的な意図を持つということを含めて当然考えていかなければならない問題である。能力は、先ほど答弁があったように日本に対しまして十二分に脅威を感じさせるものである。そしてまた意図として、いわゆる日本航空機に対するスクランブルや、あるいは北方配備の軍隊を年々増強しているということは、やはり日本政府としては、防衛庁としてはもっと真剣に受けとめて、これに対する対応を図らなければならないと思いますが、防衛庁長官、どうでございますか。
  281. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ただいま来話題になりました「ソ連軍事力」の中に、実は日本の北方領土について触れておるのでございますが、その中に「日本の北方領土におけるソ連軍事力増強は、政治的威圧のためにモスクワが軍事力を使用した生々しい証拠である。」こういうくだりがございます。  私は防衛庁長官といたしまして、わが国有事のときにどうやって独立を確保するか、あるいはわが国が侵略を受けないようにどうやって未然に防止するかというようなことについて責任を持たされておるわけでございますけれども、しかしながら、軍事力というものが平時にいろいろな形で使われ得るということは、これは否めない事実だと思います。  特にわが国は周辺を海に囲まれておりますから、ヨーロッパのように国境を接しておらないから、その意味で国民にとってはそれほど威圧には感じない問題も実はあると思いますけれども、しかし逆に言えば、たとえば海の問題一つ考えてみましても、仮にそこが全然抑止する力も存在しない海ということを考えてみますと、その海はまことに大きな紛争の基となる可能性すらある場所と言い得るのだろうと思います。その意味で、私はある意味では海に関してはプレゼンス・イン・ピースタイムという、平時におけるプレゼンスというものは非常に重要な意味を持っているんだという判断もいたしております。  ただ反面、仮にソ連の極東における軍事力増強が続けられておるにせよ、そしてそのことはわが国に対する潜在的な脅威であることは事実であるにせよ、わが国ソ連に対して行い得るわが国ソ連との間のまだ未解決のいろいろな問題の解決は、これは私はやはりすぐれて外交的手段をもって行われるべきである、こう考えておる次第でございます。
  282. 神田厚

    ○神田委員 それは同時に、こういう時代ですから平和戦略は進めなければなりません。これはもう当然であります。ただ、大臣御指摘でありますが、日本に対するいわゆる政治的な威嚇だということで、あたかも軍事力関係のないような御答弁でありますが、政治的でない軍事の行使なんということは世界国家の中でないわけでありますから、政治的に威嚇をしているということは同時に軍事的に威嚇をしていることである、こういう認識をきちんと持ちまして、政治と軍事が別だというような形でソ連という国を見て、政治的な威嚇だからこれは心配ないんだ、政治的な意図だというような考え方であってはこれは非常に問題だと私は思います。  ですから私は、われわれ自身は極東ソ連軍の異常な増強というのはまさに脅威だ、しかも能力はもう十二分にあるし、意図としてもかなり攻撃的な意図を持っているということで、政治的な威嚇がそれに裏づけされておれば、これは防衛庁長官としてやはり脅威だという認識をお持ちになるのが当然なのではないでしょうか。
  283. 谷川和穗

    谷川国務大臣 潜在的な脅威が顕在化しないためには、どうしてもわれわれとしては抑止力信頼性の回復ということは、もし抑止力が崩れておるということになれば絶対に必要なことだ、こう考えております。それについては、わが国は実はアメリカの持つ抑止力というものに期待をいたすわけでございます。  ただ、極東についてのみ申せば、確かに先ほど来政府委員から答弁をさせていただきましたように、特にここ十年を区切って言いますと、ソ連軍の軍事的増強というのはまことに目覚ましいものがあることは事実でございます。したがって、われわれとしては、本委員会で午前中からいろいろ質疑がございました中で再々述べさせていただきましたように、アメリカソ連との軍事バランスを回復したいというので諸種の手だてをとりつつあるということにつきましては、むしろ抑止力信頼性の回復ということで大いにこれを歓迎をいたしておるわけでございます。
  284. 神田厚

    ○神田委員 ですから、アメリカ抑止力に期待をしなければならない、より期待をしなければならないほど脅威を感じているわけでしょう。
  285. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ソ連増強された軍事力というのはわが国にとって確かにこれは潜在的な脅威でございます。ただし、これまた先ほど来答弁させていただいておりますように、現実の問題として、今日ただいまソ連がその潜在的脅威を顕在化させるような何らかの意図を持っているかということになりますと、私は、現在のソ連がそういう日本に対して侵略を開始するというような意図を持っているとは毛頭考えられません。
  286. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、大臣の答弁を聞いておりますと、大臣が脅威だというふうにソ連を認める場合は、ソ連がもう侵略を始めるときだ、そういうことになりますね。侵略が始まってしまえば、そんなものは脅威とかなんとかという事前防衛の話じゃないわけですから、その辺のところはちょっと御認識が違うのじゃないでしょうか。
  287. 谷川和穗

    谷川国務大臣 大変に大事なところを御指摘になられたわけでございますが、私どもは、脅威というものは、一瞬にして何もない無から突如として生ずるものだとは思っておりません。潜在的な脅威が顕在化するためには、潜在的な脅威が何らかの形で蓄積されてきておる事態がある、そういう場合に、どういうときにそれが崩れるかと言えば、西側平和戦略はすべてこれ抑止の戦略でございますから、抑止が破綻をした、抑止が崩れた、抑止のバランスが崩れておるところからそういう潜在的な脅威が顕在化する可能性はある、そういうふうに考えておるわけでございます。
  288. 神田厚

    ○神田委員 時間が過ぎましたので、それでは関連しましてSS20の問題でありますが、先ほどSS20の配備基数やその他は御報告をいただきました。  それで、日本の対応としては一体これをどうするのかという問題が一つあるわけであります。この核の問題についてはアメリカの核に頼るという基本方針は何回も答弁をされておりますが、いま欧州中距離核戦力制限交渉、INFと言っておりますが、これが進められておりまして、そちらで削減をされたSS20が極東に配備をされる、増加配備をされる、こういう状況だと言われております。  まずこれにつきまして、外務省としては外務大臣とマンスフィールド大使との話の中でもこの問題について日本側の要望をしたというふうに聞いておりますが、具体的に、それではこの制限交渉の問題について、日本として外務省が積極的にこれについてどういうふうな対応をなさるおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  289. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ソ連の中距離ミサイルの削減問題につきましては、二つの側面があると考えております。  一つは、すでに極東方面に配備されている現存の核兵器をいかにして削減し、また撤廃に持ち込んでいくかという側面、もう一つは、ただいま先生の御指摘のありました米ソ間の中距離核戦力削減交渉の対象とされております西ヨーロッパに向けられているソ連の中型核兵器、これが極東方面に移動されないように、俗な言葉で申しますれば、しわ寄せを防止するという、この二つの側面があると考えております。  第一の、現存の核兵器の削減につきましては、従来から日ソ間において日本側から繰り返しその削減方を要望しております。具体的には、昨年の一月に行われました日ソ事務レベル協議、さらには昨年の十月に国連において行われました当時の櫻内大臣とグロムイコ外相との会談、こういう機会をとらえまして、現存のソ連の核兵器、特にSS20をもって代表される中距離核兵器の削減方を強く要請しております。  次に、INF交渉との関連につきましては、先般ソ連の要人が、ヨーロッパのINF交渉の結果合意された数以上の中距離核兵器は、これをアジア方面に移動するというような発言をしております。これはとりもなおさずヨーロッパからその中距離核兵器、SS20等を極東、アジア方面に向ける、こういうことになるわけで、もしこのような事態になれば、これは極東の安全と平和にとってゆゆしき大事でございます。何とかしてこれを阻止したいというような考え方から、一月二十五日外務省からパブロフ大使を通じまして、本件に対する日本政府の深い憂慮と、このような事態が決して起こらないようにとの要請を加えているわけでございます。  INF交渉は、ただいま先生御指摘のとおり米ソ間の交渉でございますので、ソ連側にそういう申し入れをするのとあわせて、アメリカ側にもアジアの問題、日本の安全、こういうものを犠牲にするような形で中距離核戦力削減交渉が妥結されることのないようにということを繰り返して申し伝えております。本年一月にシュルツ国務長官が訪日いたしましたときにも、安倍大臣からこの点は繰り返し申しております。また先々週になりますか、安倍大臣が当地におきましてマンスフィールド大使と会談いたした際にも繰り返し日本側の意のあるところを伝え、あくまでゼロオプション、つまりソ連全土における核兵器の撤廃ということを目標として交渉を続けてほしい、グローバルな形での削減交渉、アジアを犠牲にしないような交渉を進めてほしいということは繰り返し申し入れており、アメリカ側もこの点を十分理解している、かように認識しております。
  290. 神田厚

    ○神田委員 ヨーロッパの問題はそれで強力に進めてもらうわけでありますが、日中の外交事務レベル協議が現在北京で行われておりますね。この日本と中国の外交事務レベル協議の中で、これは定期協議でありますが、当然のこととして、日本といたしましても極東に配備されておりますSS20の問題、これは話題として出しているんだろうと思うのでありますが、中国との協議の中で、SS20に対する対応というのはどういうふうな形で協議事項の中に入れるか、その詰めが行われておりますか。
  291. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 日中間の事務レベル協議は現在進行中でございまして、その議事録等はいまだ報告を受けておりません。しかしながら、このSS20を含む極東の核戦力の問題については、これは当初から当然議題に上り、議論されるものと私どもは承知いたしております。  本問題に関する中国のお立場は、やはり欧州において削減されるミサイルのアジアへの移転というのは世界の平和と安全にとって有害であるという立場でございまして、基本的な考え方においてはわが国と軌を一にするものと考えております。
  292. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この問題については中国側と同一歩調をとる、場合によりましては、両国で協議をして、あるいはアメリカに要請し、ソ連に対してその移転配備反対の要請をする、こういうふうな具体的な外交の、これからの過程といいますか、そういうものはどういうふうになっておりましょうか。
  293. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ただいま御説明申し上げましたとおり、現在、日中事務レベル協議が進行中でございますので、中島外務審議官を長としますわが代表団が帰国した上で、代表団の感触等も織りまぜて対処方針を練ろうかと思っております。現段階においては中国とこの面について共同歩調をとるというようなところまでは考えておりません。
  294. 神田厚

    ○神田委員 このSS20の極東配備あるいは増加配備の問題は日本にとりましてきわめて重大な問題でございます。特に、われわれが非核三原則を堅持をし、そしてアメリカの核の傘に頼った防衛の中におきましては、SS20の極東配備の問題というのは非常に対応のむずかしい問題であるわけでありますが、これはひとつ外務省が精力的に友好諸国あるいは関係諸国に対しまして働きかけをいただきまして、これらについての配備をやめさせると同時に、追加配備などは全くこれをさせないという強力な外交を展開していただきたいと重ねて要望しておきたいと思います。  続きまして、この問題で、新たにアメリカの国防総省が指摘をしましたのは、ソ連が宇宙の軍備管理に積極的に乗り出して、そして宇宙の軍事兵器の開発、配備問題で米国をかなり上回った展開をしているということで懸念を持っています。この問題につきましても、これらの問題は当然にして米ソ両国に任せておくわけではなくて、日本といたしましても何らかの具体的な活動をしなければならないと思うのでありますが、その点はどういうふうに考えておりますか。これは外務省でしょうか。
  295. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 先生御指摘の問題につきましては、国連その他多数国間の会議でもいろいろ議論が進められていると承知しております。米ソだけに任せておけないという点については、多くの国の共感もございましょう。この問題は世界的な軍縮の問題、そういう枠組みの中で今後進められていくもの、かように考えております。
  296. 神田厚

    ○神田委員 この問題の最後でありますが、この報告書の中で、日本という国がソ連のいろんな工作に対しまして非常に無防備だ、あるいは考え方が足らないということで、種々指摘をされているようであります。その中で、KGBの工作員によります暴露という形で、日本国ソ連の政治的な宣伝といいますか、そういうものに大変惑わされている、あるいは政治的な宣伝の場となっているというふうなこともあるようでありますが、各国のいわゆる諜報工作の問題につきましては、外務省としてはどの程度この実態を把握をし、これに対する対応をしようとしているのか。これは外務省だけでは答弁できないわけでありますが、防衛庁としては、防衛庁にかかわる問題についてはどういうふうな対応をこれから行おうとしているのか、現在行っているのか、その点はいかがでありますか。
  297. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ただいま先生御指摘の点は、恐らく先般来問題になっております元KGB在日工作員レフチェンコの証言というようなものも頭に置いての御質問かと考えます。  レフチェンコは、アメリカ下院情報特別委員会における証言におきまして日本における積極工作の目的として幾つか挙げておりますが、その中には、日米間の政治及び軍事協力の一層の深まりを防止すること、政界、財界及び軍事筋の間に日米間の不信感を呼び起こすこと、さらには、先ほど来御議論がございました北方領土に関連いたしまして、クリール諸島に軍部隊を派遣し、北方領土に新たな住宅をつくることなどにより、ソ連の意図について日本国民の誤解あらしめないように工作すること、このようなことを挙げております。このような積極工作は事きわめて重大でございまして、外務省としてもそれなりの重みを持って受けとめている次第でございます。  ただし、こういう積極工作あるいは謀略、こういった問題にいかに対処するかという点につきましては、どこまでが外交になじむ問題であるか、どこから先が外交以外の問題であるかというけじめも考えながら慎重に対処いたしたいと思っております。もちろん、事柄の機微な性格にもよりまして外務省だけでは当然できない、ほかの諸官庁の御協力も得て、あるいはほかの諸官庁の主管のもとに私どもが御協力するという形で何らか防諜体制あるいは公安体制というようなものを確保してまいりたいと考えております。
  298. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ただいま外務省から御答弁のありました中に、日米間の軍事的協力を裂くという趣旨の答弁もございましたが、私どもといたしましては、直接日米間の軍事協力の間を裂くとかいう問題とはまた別個に、わが国の軍事情報が外へ流れたという意味では大変に残念な事件でございます。数年前にも宮永事件というのがございました。したがいまして、私どもとしては今後二度と再びああいう事件が起こらないように庁内を戒めておるところでございます。  いずれにいたしましても、防衛庁としてみれば、その事柄がどうであろうと、庁内からそういう形で諜報のほしいままにされていくような状態が起こるようでは、これはとても国の防衛を全うすることはできない、こう考えて戒心をいたしておるところでございます。
  299. 神田厚

    ○神田委員 次に、エンタープライズの問題ですが、各党触れておりますが、一番心配なのは、非核三原則がなし崩しにされるのではないだろうか、あるいは佐世保がエンタープライズの母港になってしまうのではないか、これから先、反復寄港といいますか、そういう形で何回もこの佐世保に寄港してくるのではないか、こういうことが国民にとって一番心配、不安というかそういうことだろうと思うのであります。この点につきまして、まずお聞かせいただきたいと思います。
  300. 加藤良三

    加藤(良)説明員 お答え申し上げます。  核の持ち込みの点につきましては、先生御案内のとおり、艦船による持ち込みであれ何であれ事前協議の対象である、日本に事前協議をしてくるのが米国の条約上の義務であるということでございます。米国は、この条約上の義務というものをこれまでも誠実に遵守してまいりましたし、また今後も必ずや誠実に遵守することは、三月十七日に安倍大臣がマンスフィールド大使を招致いたしまして話し合いをいたしました際、マンスフィールド大使から改めて保証があったということでございます。今回のエンタープライズの佐世保寄港に当たりましては、事前協議というものがなかった以上、私どもといたしましては核の持ち込みはないというふうに確信いたしておるわけでございます。  それから第二に、佐世保の第二の母港化という点についてでございますけれども、現時点におきましてそのような計画があるとは全く承知いたしておりません。いずれにいたしましても、母港化というようなことは、わが国の同意というものがなければもとより進められるはずのものではございません。この点ははっきりしておるということだと思います。  今後エンタープライズがまた反復寄港してくるのではないかという御懸念でございますけれども、この点につきましては、実は将来エンタープライズがどのような運用をされるのかというのは私ども現在知り得るところではございませんが、すぐにまた佐世保にやってくるというような示唆が米国からあったかと申しますと、そのようなものは現在ございません。ただ、一般的に申しまして、先ほど来この御論議の席でも出ましたように、ソ連の軍拡という客観的事実があって、この地域における情勢というものが厳しさを増している折から、エンタープライズ等米軍艦船、海軍力のプレゼンスというものがこの地域において増強されるということ自体は、基本的に抑止力の向上という観点から歓迎すべきものであると私どもといたしましては思っております。
  301. 神田厚

    ○神田委員 このエンタープライズは、米韓の演習、チームスピリット83というやつでしょうか、これで来ていたわけであります。  この問題につきましてちょっと防衛庁にお聞きしたいのでありますが、現在、二月から行われております米韓の軍事演習が展開されております。これに関しまして日本の自衛隊はどういうふうな態度をとっておるのか。つまり、この米韓の軍事演習に自衛隊として隊員を派遣する、あるいは視察、見学等の名目その他の名目で派遣をさせているというようなことはありましょうか。
  302. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  チームスピリットは、御存じのように韓国防衛ということをはっきりと目的とした演習でございますので、自衛隊から参加をしておる、あるいは視察、見学をいたしておる者は一人もございません。
  303. 神田厚

    ○神田委員 それでは、韓国に駐在しております日本の自衛隊の武官がおりますね。この韓国駐在の武官はこの米韓演習に何らかの形で、見学、視察等かかわっておりましょうか。
  304. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 本年のチームスピリットに防衛駐在官は、参加というか視察というか、見学その他の形で参加したことはございません。
  305. 神田厚

    ○神田委員 今年度のということは、以前には何かそういうような形で参加をしたことがあるのですか。
  306. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 このチームスピリットというのは毎年行われているわけですが、韓国の防衛駐在官がその他の国々の武官団と一緒に、韓国国防部から招待を受けて見学したということはあるようでございます。
  307. 神田厚

    ○神田委員 あり得ないということですか、あったのですか。
  308. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いわゆるソウル駐在の武官団の一行の一員として見学をしたということは、過去においてはあったようでございます。
  309. 神田厚

    ○神田委員 これはやはり日本は現在特殊な状況で、いわゆる個別的自衛権憲法論議の中でありますから、そういう形で各国武官と一緒に米韓の軍事演習に参加をしているということは大変問題ではないかと思います。この件につきましては、防衛庁長官、どうでございますか。特に今回は反省をして参加をしなかった、あるいは招待がなかった、どういうケースで今回はこういうことになったのでありましょうか。
  310. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 防衛駐在官というのは、御承知のように在外公館において大使の指揮を受けるいわば外務省の職員になるわけですが、そういった防衛駐在官について防衛庁から答えるのが適当であるかどうかということはございますけれども、韓国国防部の招待によってその他の国々、たしか十数カ国と聞いておりますが、そういった国々の武官団と一緒に参観するということは自然なことであって、これは自衛隊がこの演習に参加するとか、こちらから演習に組み込まれるということとは全く無関係の、いわゆる外交団の一員としての行動であるというふうに認識しております。
  311. 神田厚

    ○神田委員 今回参加をしなかったのは、それでは何か特別な理由がありますか。
  312. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 たしか、今年のチームスピリットにはそのような招待がなかったというふうに聞いております。
  313. 神田厚

    ○神田委員 これはきわめて微妙な問題だと思うのであります。駐在武官の任務なりあるいは資格なりというのはあるわけですね。そういうことでありますれば、やはり防衛庁の代表としてそちらに行っているわけでありますから、これがどの程度そういうことが許されるのか明らかでありませんけれども、しかし、特に米韓の軍事演習という日本できわめて論議の多いものに対しまして、これに参列をしているということについてはいろいろと問題があるんではないかというふうに思っております。この点は防衛庁長官どうでしょうか。米韓の演習に防衛庁の出先が見学なり視察なり、あるいは外交団と一緒の形での出席というのはどういうふうにお考えになりますか。
  314. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ヨーロッパにおきましても、NATO軍の演習その他に招待を受けて、外務省の職員の一員として参観をするということもあり得るかと思いますし、韓国に関しましてはわが国に隣接した友好国でもございます。したがって、招待があればこれに外務省の一員として、いわゆるアタッシェの形で大使館におる者がお招きをいただいて、ほかの国の同じような立場の方々と一緒に参観をすること自体は、防衛庁から演習のために部隊を派遣するというような、共同演習のような概念と全く違う概念だ、こう考えておるわけでございます。  ただし、また別の面で申しますと、そうは申しましても日本と韓国の間では、先ほども先生が御指摘になられましたが、とかく余りにも近過ぎるという理由も一つあって、一つ間違えると何かそれは集団的自衛権の中へ日本が立ち入っている、中へ入り込んでいるという感じもなきにしもあらずということもあって、特に十分慎重に行動しなければならない地域のうちの一つである、私はそう考えております。
  315. 神田厚

    ○神田委員 特に、自衛隊に対する国民の感情というのが近年きわめていい傾向で推移をしてきておるわけでありますから、やはりそのいろいろな行動について慎重に対応してもらわなければならないのではないか、このようなことを思っております。  それでは最後にお聞きしますが、このチームスピリット83に自衛隊員が休暇をとって個人の資格で参加をしている、こういうことはありませんか。
  316. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛隊員が休暇をとってこの演習に参加するというのは私どもの常識としてなかなか考えにくいのでございますが、休暇をとって韓国に行って、たまたまその演習をやっているところを見た人間がいるかいないか、そこまで私、把握しておりません。いずれにしても、休暇をとって演習に参加するというようなことはあり得ないと思っています。
  317. 神田厚

    ○神田委員 演習に参加するということは、これは休暇をとってということはあり得ない。よくわかりました。  それでは、休暇をとって個人的にこのチームスピリットを見学に行くというケースは考えられますか。
  318. 上野隆史

    ○上野政府委員 チームスピリットというその演習におきまして、外国人をどういう形で招待しておるかという点につきましてはつまびらかにいたしておりませんけれども、少なくとも自衛隊員につきまして、休暇をとって、そして韓国へ行ってチームスピリットに参加するということはあり得ないと思います。  と申しますのは、外国へ行きます場合には、公務員でありますれば、自衛隊も同じでありますけれども、上司の許可をとらなければなりません。その際に、そういう休暇という形でチームスピリットの演習に参加する、見学するということは適当とは思いませんので、そういう休暇、外国旅行の許可につきましては、許可することは考えておりません。
  319. 神田厚

    ○神田委員 仮定の問題で御質問して大変恐縮でありますが、やはりこういう問題がいまいろいろ騒がれておりますシビリアンコントロール、文民統制の基本でもあるわけでありまして、きょうお見えであります大臣以下が――もしも仮に自衛隊員が休暇をとって、演習に参加をするということはもちろんないでしょうけれども、見学やあるいは視察に上司の許可がなくて行っている、そういうことをしているということがあれば大変大きな問題ですね。そういうことでちょっと心配でありましたし、現在いろいろと文民統制の問題が厳しく言われるときでありますから、ひとつその事実についてなお調査をしていただければと思っております。いかがでしょうか。
  320. 上野隆史

    ○上野政府委員 お言葉を返すようで恐縮でございますが、そういう事例はないと確信しておりますので、調査につきましては御容赦願いたいと存じます。
  321. 神田厚

    ○神田委員 人事教育局長が責任を持って国会の場でないというようなことを言っておるわけでありますから、私もないことを祈りたいというふうに思っております。  それでは、時間が参ってきましたので、最後に、日米の共同研究の問題につきまして御質問をさせていただきます。  この日米共同研究では共同行動のいろいろな問題について研究がされるわけでありますが、具体的にテーマといいますか、現時点で早急にこれに対応していくのはどういう問題なのか、この辺をお教えをいただきたいのです。
  322. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま委員御指摘の共同研究というのはシーレーン防衛についての共同研究だと思いますが、このシーレーン防衛の共同研究というのは、御承知のとおりガイドラインの枠内でわが国の海上交通の安全を確保するために日米が共同で対処するというふうなことについての研究でございまして、この研究の範囲というのは、シーレーン防衛という枠の中に入ります各種作戦、すなわち港湾防備、海峡防備、航路帯の防衛、船団護衛、広域哨戒、対潜作戦といったもろもろの作戦が入るわけでございまして、特にこの中のどれということでなくて、こうしたいろいろの作戦全般を通じてシーレーン防衛についての研究を行うというものでございまして、いわばテーマと申し上げれば海上交通の安全確保、シーレーン防衛そのもの全体がこの研究のテーマになっている、こういうことでございます。
  323. 神田厚

    ○神田委員 この点で一番心配されておりますのは、日本アメリカとの考え方の違い、思惑の違い、これをどういうふうに調整をしていくかということだというふうに言われております。防衛庁や外務省の努力で、この研究が日本の有事に限ってこれを行うというふうな基本的な姿勢は確立されているようでありますけれども、しかしながら、アメリカの報告を見ましても、現在ソ連世界で同時多発的な戦争を起こす可能性がある。こういった場合に、中東有事に際しましてたとえば海峡封鎖等の問題が出てきた場合にはどういうふうにする、中東有事であっても日本は海峡封鎖の要請があればやはりそれにこたえていくのかどうか、こういう問題等も大変心配をされる問題になっておりますが、その辺はどうでありますか。
  324. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 この研究はあくまでもわが国に対する武力攻撃があったとき、すなわち日本有事といいますか、安保条約の第五条が発令された時点での日米共同対処の研究をするわけでございまして、わが国に対する武力攻撃がない、いわゆる極東有事であるとか中東有事であるとかいうものを前提にした研究ではない。あくまでもわが国に対する武力攻撃があった際に、それに対して日米が共同で対処する作戦計画、オペレーションプランの一環として研究をする、こういうことでございます。
  325. 神田厚

    ○神田委員 直接御答弁になっていないようでありますが、中東有事あるいは極東有事の際の対応の仕方というのはこの研究の中でまた非常に大事なポイントになると思うのでありまして、研究の成果といいますか結果を見ていきたいと思っております。  問題は、この研究が、いろいろな事情がありますけれども、公表されない部分が多いということでありますが、その点防衛局長はすべてこれを知り得る立場にあるということであるわけでありますので、文民統制の中の一番のかなめになるわけでありますから、その辺のところはひとつしっかりとやっていただきたい、こういうふうに考えております。  最後に、この国会の間じゅうに、あるいは国会が終了してからになりましょうか、日米防衛首脳の定期協議の時期が来るかと思うのでありますが、その時期をいつごろに選んで、防衛庁長官自身が訪米をするような日程の調整も行われているというふうに聞いておりますが、その点はどういうふうになっておりますか。
  326. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ただいまの問題にお答えさしていただく前に、シーレーンの共同研究につきましては、実は防衛庁長官の責任において行うことになってございます。したがって、私の責任においてその都度必要な報告は私が直接受けることにいたしますし、必要があれば適宜総理にも御報告を上げていくつもりでございます。  それから、私は、日米防衛担当、特にそのトップが常に話し合いを続けておくということは非常に大事なことである、こう考えております。すでにアメリカ側からは私の訪米を要請されてはおりますが、私といたしましては、場所とか時間とかいうことを限定せずに、話し合いができればいついかなる場所においても話し合いはいたしたいと思っております。ただ、私が訪米するには、現在国会の開会中でもございまするし、こちらの日程がいまのところなかなか詰まりませんので、いま現実にいつそれでは訪米するかとか、訪米をしなくても、仮にワインバーガー長官日本を含めてこの近辺に来られるというようなことがあって、それでお話ができることがあればまたそういう時期でも話し合いはしていきたいと思っていますが、具体的にはまだ別にワインバーガー長官の極東方面、特に訪日という問題は聞き及んでおりませんので、まだまだ日程につきましてはもう少し詰めていかなければならぬ問題がある、こう考えているわけでございます。
  327. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  328. 東家嘉幸

    ○東家委員長代理 東中光雄君。
  329. 東中光雄

    東中委員 シーレーンの共同研究についてお聞きしたいと思うのです。  いま防衛局長はガイドラインの枠内でやるということを言われましたが、結局、日米共同作戦計画のためのシーレーン関係の共同研究をやるということですね。
  330. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国に対して武力攻撃が行われたとき、すなわち、日米安保条約の第五条が発令された事態における日米共同対処のためのオペレーションプランの研究の一環、こういうことでございます。
  331. 東中光雄

    東中委員 昨年の九月段階で、これは参議院の安保特でありますが、防衛局長は、ハワイ事務レベル協議の二日目に、アメリカ側からわが方のシーレーン防衛について、「アメリカ側の勉強によれば能力的にきわめて不足であるというようなことの説明がるるあった」、それに対して、「そういうことを踏まえまして、私どもとしてはアメリカ側の言っていることの前提条件あるいは脅威の内容、あるいは侵攻の対応、シナリオの設定等についていろいろただすべき点があるのではないかということを考えまして、一方またこのシーレーン防衛についても日米共同作戦をするというふうなたてまえから言って、基本的な認識についてはできるだけ日米間にそごのないように一致したことが望ましいということを総合的に考えて、そういうものをひとつガイドラインの場でもって研究しようじゃないかということを提案した」、こっちから提案したのだということを答弁されているわけです。  そうすると結局、シーレーン防衛についてアメリカ側との間で認識上の違い、そごが大分ある。だから前提条件、脅威の内容、侵攻の対応、シナリオの設定、こういうような点で詰めるのだということだったわけですね。どういう点に基本的なそごがあって、どういうふうに詰めようということなのか。それを今度は制服レベルでやられるということになると、ちょっと変わってきているような気もするので、そこらの点を明らかにしてほしいのです。
  332. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 もちろん、アメリカ側との間においてこのシーレーン防衛について、たとえばシーレーン防衛の概念的な認識の差があるかということであれば、そういうものはないと思いますし、またアメリカ側は、日本が周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイルをめどとして防衛力整備を進めているということも承知しておりますし、また、日本がこのシーレーン防衛についてあくまでも個別的自衛権の枠内でしか行動できないということも十分認識した上でのことでございますから、そういう基本的な問題についての認識の乖離というのはそんなにないのであろうというふうに私は思っております。  ただ、先般のハワイ協議におけるアメリカ側の言い分によると、わが方の海上防衛力というのは、現状はおろか五六中業が達成されても必ずしも十分なものではない、こういうふうなお話がありましたので、そういうふうな認定をする以上は、たとえば脅威の評価というものをどういうふうにしているのか、そしてその脅威がどういうふうな形でわが方に侵攻してくるのかというふうな点についての細かな点を詰めなければ、一概にアメリカの主張どおりであるということもわれわれ納得できない点がありますので、この点については、ガイドラインに基づく共同作戦計画の研究として進めていくことによって、そういった認識も一致し得るのではないかというふうに考えたわけです。
  333. 東中光雄

    東中委員 アメリカ側が、シーレーンの防衛について日本軍備では非常に不十分だというふうに言っておる。五六中業を達成しても不十分だ、大綱を達成しても不十分だと言っておる。それで今度はシーレーン防衛というものの概念的なことについて言えば、基本的に一致をしておる。言葉では一致しておるけれども実態的に違うから、アメリカ側はきわめて不十分だ、もっと多くのことをやれということを言っているというふうに私には聞こえてならないのであります。  それで、ガイドラインの枠内で共同研究をやるということは、結局、憲法上の制約に関する諸問題には触れない、それから非核三原則等々、ということなんですが、実際上の協議をするとき、憲法上の制約に関する問題に触れない、要するに憲法の制約の範囲内でということの、その範囲外にわたっているのか範囲内なのかということの判断を一体だれがやるのですか、出ていった制服自身がやるのですか。
  334. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これからこの研究が開始されるわけでございますから、仮定の問題としてお答えするのは必ずしも適切であるかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、きわめて軍事的、技術的な問題が中心になりますので、いわゆるミニタリー・ソー・ミニタリーの研究になる。したがって、第一義的には、そうした制服の人たちがそういう判断をすることがまずあり得ると思います。また、そこでもし疑問がわくようなことであれば、当然私どもも必要に応じて報告を求め、会議に参画することも必ずしもあり得ないわけではございませんので、そういういろいろなレベルにおけるチェックがあろうと思います。また、最終的には、防衛庁長官にも適時報告し、総理にも報告するということでございますので、このシビリアンコントロール、個別的自衛権の範囲内であるかどうかということのチェックはいろいろなレベルで行われるというふうに思います。
  335. 東中光雄

    東中委員 憲法上の制約というのは、一体何ですか。
  336. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 端的に言って、一番問題なのは、個別的自衛権の枠を超すか超さないか、こういうことだろうと思います。
  337. 東中光雄

    東中委員 研究協議の対象にするかしないかという点で、個別的自衛権を超すことは研究協議の対象にしないということですね。  そのほかに、単に集団的自衛権、個別的自衛権の問題だけではなしに、海外派兵の問題もありましょうし、それから指揮一元化問題もありましょうし、いろいろあると思うのですが、その範囲を決めるのはなかなかむずかしいですね。政府が、やかましく言うて、統一見解を出して、それがどうなのかまだわからない。たとえば米艦護衛の問題は、今国会でも大問題になったことでしょう。いまだにはっきりしていないと私たちは思っておるわけです。そういう範囲を協議研究の対象にしないということになると、あの統一見解の――なかなかわからぬ統一見解ですが、それの解釈を制服がやるのですか。
  338. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先ほど憲法の枠内ということを端的に申し上げましたが、当然、いま先生御指摘のとおり海外派兵とかいろいろな問題があろうかと思いますが、比較的そういう議論になり得る余地のあることを申し上げたわけでございます。  ただ、今回の研究というのは、個々の戦闘場面にまで立ち至った研究になるということは私ども考えておりませんので、たとえば、いま御議論になりましたような米艦護衛の問題についても、こういう場合に一体日本は守るのか守らないのかというふうな議論をこの共同研究の場でされるとは想定しておりません。
  339. 東中光雄

    東中委員 海峡防備、港湾防備あるいは広域哨戒あるいは船団護衛、先ほど防衛局長がずいぶんずらずらと挙げられましたが、こういう問題全部がシーレーン防衛の問題なんでしょう。それは、個別の戦闘場面と言うけれども、協議し研究する対象にするのは、船団護衛の問題もあれば、通峡阻止といいますか、海峡封鎖といいますか、海峡防衛というか、そういう問題もあるわけでしょう。そうじゃないのですか。
  340. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 もちろん、そういった各種の作戦についての研究が行われることは当然だろうと思います。  ただ、その場合に、あくまでもわが国憲法の枠内、個別的自衛権の範囲内ということで、おのずから、これは私ども憲法についての判断を全く持っていないわけではございませんで、そういった判断、良識というものを持ちながら、従来の国会の答弁あるいは政府の政策というものを十分わきまえながら研究を進める、こういうことでございます。したがって、何をしでかすかわからない、こういうことには必ずしもならないのではないかというふうに思っております。
  341. 東中光雄

    東中委員 事は憲法にかかわる問題で、研究協議の対象とするのは憲法の制約の範囲内のことだけなんだということが大前提になっているわけです。ところが、憲法のこの制約というのが、アメリカ側から見ればなかなか認めない、われわれから見れば、政府も個別的自衛権だと言いながら、実は集団的自衛権の中へ踏み込んでいっている。言葉だけは個別的自衛権だけれども内容的には踏み込んでいっているということで、国会でもえらい問題になっているわけでしょう。それで政府が統一見解を出しておる。こういう関係になっているのですから、それを研究協議の対象にするかしないかということで、その枠がかかっていると言うのですから、それを統幕事務局あるいは在日米軍という制服レベルへぽっと持っていくということは、どうしてそういうことをするのかなと、外務省なりもっと広範に入ってやるべき性質のものじゃないかということを思うから聞いているわけなんです。
  342. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 制服は憲法の何たるかを全く知らないで、憲法をじゅうりんして全く顧みないような前提で御議論をされればそういう御心配は無理からぬことと思いますが、そういうことはまずございませんし、私どもも、必要に応じて報告を求め、大臣、総理にも御報告するということは先ほど申し上げました。  また、今回のシーレーンの共同研究を開始するに当たっていわゆるSDCというものを開きましたが、これはお互いの考え方というもの、認識を統一してこの研究に取りかかろうということでございまして、そういう意味合いから、このSDCも必要に応じて将来開かれることもあり得る、こういうことでございまして、まあいろいろな意味から、いわゆるコントロールのたてまえ、制度というものも必ずしもできていないということではない。私どもとしては、十分そういったことを考えた仕方で研究ができるようになっているというふうに考えております。
  343. 東中光雄

    東中委員 私たちは、個々の制服の人たちあるいは担当の制服の人たちが憲法を全く無視してやるというようなことを、ここでやっておるというふうなことを、そんなことを言っているのじゃないのです。そういうふうな言い方をするのは、局長、はなはだ、いわばちょっと曲げた言い方なんですね。私が言っているのは、制服の人たちは戦闘行動をするのが本来の任務の人でしょう。そういう人たちが、今度は、戦闘行動を効果的にやるということを中心に物事を考える、そういうことが法則的にあるわけですね、憲法を無視するとかせぬとかいうことじゃなくて。そういう立場の人にそういう問題を任すべきではないのじゃないかということを言っているのであって、そういう言い方をするのは、私は非常に心外だと思う。制服の人たちといえども守らなければいけないのです。それにもかかわらずそういう方向に行くということなんですね。国会でチェックするというのも、政府がめちゃめちゃやるから国会がチェックするのじゃなくて、政府がちゃんとやろうと思っておっても、それでも国民から選出された国会でチェックをし監督をしていくというものなんでしょう。そういうことを言っているのだから、ちょっと私ひっかかりましたので、一言だけ言っておきます。  それで、この協議に入るについて、防衛庁長官は、その責任でということを言われているのですが、何かもう方針なり必要な指示はされたのですか。
  344. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ガイドラインに基づくシーレーン防衛日米共同研究はもうすでにスタートいたしております。御案内のとおりでございます。これを始めるに当たりましては、私の方から、私の責任におきまして幾つかの点を特に強調いたしまして指示をいたしたところでございます。
  345. 東中光雄

    東中委員 その幾つかの点をおっしゃってください。
  346. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど来防衛局長が答弁をさしていただいておりますところがその幾つかの点に当たるところでございます。  というのは、防衛局長も、そのスタートをいたすに当たりまして、その席におきまして防衛局長としての立場からコメントいたしておりますが、そのときに発言をいたしました要旨は、実は先ほど来ここで論議されております幾つかの点に当たるものでございます。
  347. 東中光雄

    東中委員 三月十二日の日米防衛協力小委員会へ防衛局長も出られ、北米局長も出られたということについては報道されておる範囲で承知をしておるわけでありますが、前のガイドラインができたとき、七八年の十一月二十八日にガイドラインが閣議で了承された、それから後、実際に共同作戦計画についての日米制服レベルでの協議が始まったのが明くる年の七月なんですが、何でそんなにおくれたのかといえば、左近允元統幕事務局長の話によると、防衛庁長官からの必要な指示が出されたり、統幕議長と在日米軍司令官の間で作業の進め方についていろいろ話し合ったり、そういうことをしておって、結局具体的な作業に入りましたのは半年以上おくれたのであります、ということを言っておられるのですね。そういうことがあるので、いま具体的に入っているとおっしゃったのですが、それでは制服間で、定期的に、あるいはどういう形でどういうふうに進められているのですか。
  348. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 このシーレーン共同研究につきましては、去る三月十二日にいわゆるSDC、日米防衛協力小委員会が開かれまして、ここで従来のガイドラインで決められた枠組みを、当然この枠内で行われるわけですが、そういったものを再確認したということでございまして、これによって今後、わが方は統幕事務局が中心になり、米側は在日米軍が中心になって研究協議を進めていこうということで、その直後、在日米軍と統幕事務局で今後どういう段取りで研究を進めていくかという具体的な相談に入ったということで、まだ何がということを申し上げる材料の持ち合わせはございません。
  349. 東中光雄

    東中委員 そうすると、シーレーンの共同研究の内容もまだはっきりしないわけですけれども、先ほども言われておりましたが、たとえば、海峡封鎖で日米が共同対処の作戦行動をとるということについての日米間の協議研究、それでは作戦計画をつくっていくということも入るのでしょうね。
  350. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これはガイドラインの中にすでに海峡防備というのはわが海上自衛隊が主体をもって行う、アメリカはそれに対して必要な支援を行うというふうな原則がうたわれておるわけでございますが、そういった前提、原則に基づいて今後具体的な研究に入っていく、こういうことでございます。
  351. 東中光雄

    東中委員 具体的な研究というふうになりますと、結局、海峡封鎖を海上自衛隊が主体的にやるということになるわけですが、三海峡封鎖といいましても、宗谷海峡とそれから対馬の西水道は状況が違うわけですね。  まず、宗谷についてお聞きしたいのですけれども、これは日米が共同対処するとしても、海上自衛隊が主体的にやるといっても、ソ連の領海内に対するコントロールということは一切できない、そういう前提での協議になるんでしょうね。この点はどうでしょう。
  352. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、共同研究において三海峡の封鎖をどういうふうに研究するかというのは、まだ具体的な考え方が全くあるわけではございませんので、これについてお答えする材料はありませんけれども、この共同研究というものを離れて考えた場合に、わが国は、あくまでもわが国の領海と公海において、いまの宗谷海峡あるいは対馬の西水道について申し上げれば、わが国の領海部分と公海部分について、わが方は必要がある場合に通峡阻止、海峡封鎖ということもあり得る、こういうことでございまして、対岸の領海にわたってそういうことを行うということは考えておりません。
  353. 東中光雄

    東中委員 わが国の自衛隊としてはわが国の領海及び公海部分に限るということでありますが、共同対処行動をとる米軍は、日本有事ということを前提にしての議論に一応なっておるわけですけれども、米軍はそうでない。ソ連の領海部分についても封鎖作戦行動をとるということはあり得るわけでしょう。
  354. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 仮定の話をここで申し上げるということは必ずしも適切でないと私は思いますが……(東中委員「理論的には」と呼ぶ)理論的に申し上げるならば、米国がやる部分についてわが方がとやかく言うべき筋合いのものではないし、法律的に問題はないのではないか。ただ、そういうことをいまここでもってお答えするということは、あたかも共同研究の中で日米が共同して相手方の領海部分まで機雷を敷設するかのような印象を与えますので、答弁を差し控えさせていただきます。
  355. 東中光雄

    東中委員 それじゃ、わが国はなぜ日本の領海部分と公海部分だけに限られるのですか。
  356. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国自衛権行使の範囲というのは、わが国の領土、領海のみならず、必要に応じて、自衛の範囲内で公海、公空に及ぶということを申し上げておるわけでございまして、よその国の領海、領空は、この公海、公空に入らない、こういうことでございます。
  357. 東中光雄

    東中委員 それは、わが国の領土、領空、領海を守り、そこから必要に応じて公海、公空に及ぶことがある、それ以上にならないということは、単なる防衛政策なんですか、あるいはさっき言われておる日本国憲法上の制約としてそうなんですか。どちらなんですか。
  358. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一般的に申し上げれば、わが国紛争当事国、いわゆる相手国の領海であれば海外派兵の問題も生ずるのではないかと思います。ただ、私、憲法の専門家でございませんので、私はそういうふうに感じております。
  359. 東中光雄

    東中委員 これは防衛庁の本ではないのですが、「防衛ハンドブック」五十七年版によりますと、海外派兵の項で、「「いわゆる海外派兵とは、一般的にいえば、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することである」と定義づけて説明されているが、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。」  いまあなたのおっしゃったのは、憲法上の制約の範囲外のものは今度の研究の対象にならないということでしょう。ところが、防衛局長ともあろう人が、それは憲法上の制約の範囲内に入るのか入らぬのか、私は専門家じゃないからようわからぬ、こういうことをいまここであなたは答弁しているのですよ。いわんや制服の人はどうですか。ガイドラインによる枠ということを言われている憲法上の制約というものは、非常に厳重に言われているようでありながら、実は実際的な問題になると、いまあなた、防衛局長でさえ、国会における答弁でさえそう言うのでしょう。それを現場でやり出したらどうなりますか。  だから長官、この憲法上の制約というのは非常に重要な問題でしょう。そういう点について防衛庁長官はちゃんと指示をされたようでありますから、いまのような問題について、現実に三海峡封鎖がシーレーン防衛の重要な研究対象の課題になっているんだ、そこでいまこういう問題が起こってきているというのですから、ひとつ防衛庁長官として考えをはっきりしていただきたい。
  360. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私は私といたしまして防衛庁内部の内局に指示を与えましたし、外務大臣は外務大臣として外務省の担当局長それぞれに指示を与えておることであるわけでございますが、その上で特に防衛局長から、三月十二日、シーレーン防衛の共同研究を日米間においてスタートするに当たりまして、一つは、憲法並びに日本の法律、それからさらにわが国の国是として持っております非核三原則、こういったものに触れるものを研究の対象にしないとか、あるいは予算その他の拘束をいたさないとか、研究をした後にこれが直ちにそれぞれの国の制度の改革に結びつくものではないとか、そういうことについて、特に確認の意味をも含めまして、当日発言を求めて発言をしたところでございます。そして、日米間でこれを確認した上でいよいよスタートということになったわけでございますが、特に憲法の問題につきましては、シーレーン共同研究そのものが私の責任においてこれを行うということになっておりまして、私といたしましては、常に心いたしまして、研究の進行のさなかにもその問題については十分心を配ってまいりたいと思います。  シーレーン研究は、先ほど申し上げましたような形でシビリアンも含めました日米両方の出席のもとにスタートしておりますが、事柄が何せ純軍事的な事柄でございますので、当分の間、先ほど政府委員から答弁をさせていただきましたように、ミリタリーとミリタリーで恐らく進んでいくだろうと思いますが、その間におきましても、ただいま答弁をさせていただいたような姿勢を持ちまして、私の責任においてこれを十分しんしゃくしながら進めさせていきたい、こう考えております。
  361. 東中光雄

    東中委員 その海峡封鎖のことについて特にお聞きしておきたいのですが、たとえば機雷敷設については、また左近允元統幕事務局長の安保調査会における発言ですが、こういうふうにも言っていますね。「潜水艦の通峡を阻止するのに最も有効な武器は、潜水艦であります。これはアメリカの攻撃潜水艦、それからもちろんディーゼル艦でありますけれども日本海上自衛隊潜水艦――これは現在一四隻であります――こういった潜水艦は通峡阻止に極めて有効な武器でありまして、そういった場面では、やはり日米の緊密な調整といったものが必要になってまいりましょう。」「津軽と対馬海峡には所謂水中固定機器が入っておりまして潜水艦の通峡を探知いたします。」要するに、機雷敷設についても両方ともやれる。だから日米とも調整が必要なんだ、純軍事的な問題としてですね。  そこで私は聞きたいのですが、宗谷の場合は、日本の自衛隊は憲法上の制約としてソ連の領海まで入っていくことはできない。日本有事の場合といえどもできない。それじゃ、米軍はそういうことはお構いなしに、米軍はやりだ、日本は盾だと総理大臣言っていましたから、それ式で、通峡阻止という点で言うならば、米軍はその部分を担当する、そういう調整をやるということだって、これは起こり得るのじゃないですか。そういう研究をやるのと違うのかということを聞いておるのです。それだったら非常に重要な問題が起こってきますね。そういう研究はしないんだというふうに言われるのか、それも協議研究の対象になっておるということなのか。そこらの点はどうなんでしょう。
  362. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いずれにしましても、今回のシーレーン共同研究の中でいわゆる通峡阻止の作戦についての研究も当然すべきであろう、またするであろうというふうに思っております。  ただ、この通峡阻止、海峡防備の話は、先ほど来御答弁申し上げたように、主体的にはわが海上自衛隊が中心になって行うべきものでありまして、米側は必要に応じてこれを支援する。したがって、米軍の支援のあり方についても研究の対象になることはこれまた当然であろうというふうに思っております。
  363. 東中光雄

    東中委員 米軍、アメリカ側にとって日本海へ封じ込める作戦はきわめて重要であるということは、これはブラウン国防報告以来ずっと続いているわけですね。それで、わが国もその海峡防備というのは非常に重要なんだということで、その研究が具体的に始まった。そうしたら、日本の自衛隊のやれぬことは米軍がやるんだということになっていかざるを得ないじゃないか。宗谷の場合はそういう問題になりますし、それから西水道の場合は、韓国の領海部分は、それは日本はやれないというたてまえですね。しかし、この前の海峡封鎖の論議で、米軍が単独で日本の海峡を公海部分といえども封鎖しようと思えば日本の同意がなければできない、こういうことを言われていますね。そうすると、西水道で公海部分を日本が通峡阻止をやるというときには韓国の同意が要らないんですか、要るんですか。その点はどうでしょうか。
  364. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いずれにしましても、自衛隊としては、韓国の領海部分についてもしそういうふうな必要がある場合においても、韓国の領海についてやることは考えておりません。
  365. 東中光雄

    東中委員 そういうことを言っているんじゃないんですよ。公海部分について日本がやるについては――これは防衛庁長官答えてくださいよ。公海部分について、西水道で日本が通峡阻止をやる。日本有事ですよ。そのときには、その一方の側は韓国ですからね。韓国の了解なしに日本アメリカとだけ相談してやっていくということができるのかできないのかということを聞いているのですから。
  366. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 恐縮でございます。  わが国が対馬の西水道を封鎖するようなことがもしあり得る場合には、韓国の意向というものを配慮しないでやれるとは考えておりません。
  367. 東中光雄

    東中委員 韓国の意向を配慮するというような一方的なものじゃなくて、向こう側の同意が要るというたてまえに立たないのですか。その点はどうなんですか。日本のときには、日本の同意なしにはやらせないと言ったじゃないですか。
  368. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 仮定の話でございますので、わが国がそういう場合にどういうふうな対処ぶりをするかについてのことをお答えすることはまだ必ずしも適当ではないのではないか、いずれにしましても韓国の意向というものを無視してやることはないだろう、こういうことでございます。
  369. 東中光雄

    東中委員 これは仮定の問題じゃないですよ。理論上の問題を聞いているんですよ。三海峡あるいは四海峡と言った。要するに西水道も含めてという意味ですね。その通峡阻止作戦というのは海峡防備上非常に重要な問題なんだということを総理大臣は三つの基本方針、目標のうちの一つにまで挙げて言ったわけですからね。そういう問題について、それを実際上憲法上やれるのか、国際法上やれるのかということをいま理論上問うているわけですから、仮定の問題じゃないのですよ。理論上の問題は全部仮定の問題だと言えば仮定の問題ですけれどもね。そのことを聞いているのですから、どうなんです。それはもう同意なしでやるのですか。
  370. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 あくまでも仮定の話でございますから、そういう問題についてお答えするのは適当でないかと思いますが、純粋に理論的な話として申し上げれば、アメリカわが国関連の海峡について通峡阻止を行う場合にわが国に同意を求めてくる云々というお話がございましたが、アメリカわが国の周辺の三海峡に有している関係と、わが国があるいはわが国と韓国が対馬海峡に有している関係というのは必ずしも一緒ではない。もっと簡単にわかりやすく申し上げれば、日本と韓国との対馬西水道についての関係というのは対等の立場にあるということが言えるのだろうと思います。そういったいろいろな問題がありますので、いま仮定の問題についてはお答えできない、こういうふうに申し上げたわけです。
  371. 東中光雄

    東中委員 理論上の問題が仮定の問題だと言ったら、理論上の問題は一切なくなってしまうということになるわけで、それは対等の関係にあるのはわかっています。だから、アメリカとの関係と同じだとも私は一つも言ってないわけです。  そういう場合に、対等の関係にある一方が相手方の領海に面した海峡の公海部分を一方的にやるというようなことはできやせぬじゃないですか、同意が要るんじゃないですか、やろうと思えば協議もしなければいかぬじゃないか、こういうことを言っているわけですよ。素直に答えたらどうなんですか。何でそんなに答えにくいのですか。長官どうですか。長官がわからぬはずがないですよ。
  372. 谷川和穗

    谷川国務大臣 従来から答弁申し上げさせていただいておりますように、仮にわが国が自衛のために、わが国有事の場合にわが国周辺のいずれかの海峡の通峡を阻止するというような作戦行動に出る場合におきましても、沿岸国並びに通峡する第三国の艦船に対する影響がきわめて甚大なために、慎重の上にも慎重に配慮しなければならないということを答弁させていただいてきておるわけでございます。  対馬西水道に対してそういう実力行使をわが国が行うという場合に、沿岸国でありまする韓国あるいはその地域を通峡する第三国に対してどういうような行為をわが国がとるかというのは、これはそのときの状態でございまして何とも申し上げられませんが、少なくともわが国の領海並びに公海部分に対する合計二十マイル近くの海域につきましては、わが国としては通峡阻止という行為をとることは不可能ではない、とり得ることは事実でございますが、それをとるときにどういうふうなことをするということはいまこの時点ではちょっとお答えできません。  それから、米軍が求めてきて、そのことについて云々というお話がございましたが、これは日本有事でないときに、米軍が米軍の自衛の行為において日本の周辺の海峡について米軍独自で行動するときにどうするかという御質問がございましたものですから、これはまず第一に黙ってそういうことをやるかどうかということについては、日米安保条約を持っておる当事国のアメリカが、それは余りにも与える影響が大き過ぎて日本に対する配慮から何らかの日本に対する了解行為があるであろう、そのときにどうするかというお話が実は東中先生からあってお答えしたことでございまして、先ほど防衛局長から答弁させていただきましたように日本アメリカとの関係日本と韓国との関係はまた違った関係にあるということ、こういうことでございます。
  373. 東中光雄

    東中委員 非常に総理大臣答弁に配慮をされているのじゃないかと思うくらいに慎重な答弁をされておるわけですね。総理大臣は、その問題について言えば、公海で演習をやる場合にも関係国に通知するのと同じように韓国に対しても通知するということを言いましたがね、予算委員会の総括質問で。それで、あと外務省の答弁では通知だけじゃなくて協議というような趣旨のことも入った。その両方を踏まえていま慎重にとかなんとか言ってはっきりしない。  私は、そういうことで配慮すべき問題じゃないと思うのです。一片の通知だけでやっていくというようなことはあり得ぬじゃないですか。しかも米軍との共同対処行動というのでしょう。その米軍は米韓軍事同盟を、軍事同盟と言うと語弊があるかもしれませんけれども、結んでいるという状態で、米日韓軍事同盟と言われるのを嫌ってか何か知りませんけれども、答えが、そのことになるとその事態でなきゃわからぬとかとなる。どういう方法で、どういう形で、どういうクラスでというふうなことはそのときの状況によるでしょう。しかし、協議するとか同意を得るとかいうことがそのときでなきゃわからぬ、そんなものじゃないですよ。もしそんなものだとすれば、全く一方的にやることもあり得るのだと言っているようにもとれるわけですね。与える影響が大きいから慎重にやった。慎重に検討して厳粛にやって、そして対米武器技術供与は決定した、外してしまった、それ式になってしまいますよ、言葉だけになるから。だから、やはり向こうの同意が要るという考えでいるのか、あるいは協議をして両者で決定するという考えでいるのか、そこらの点は了承を得なければやらないというのか、そういうことはきちっと言わなきゃ、そんなもの、制服レベルで西水道の通峡阻止作戦についての共同研究もやると言って、できやせぬじゃないですか。どうでしょう。
  374. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 対馬西水道においてそういうことを行う場合に、あくまでも慎重に行うべきことは大臣からも御答弁申し上げたとおりでございまして、われわれそういった韓国の意向というものを無視してやるということは考えられないことは先ほど来るる申し上げております。  また、このことが決まらなければこの共同研究ができないじゃないかということにつきましては、必ずしもそこまできちんとしたプロシーデュアが決まっていなければこの研究ができないものとも思っておりません。
  375. 東中光雄

    東中委員 要するに、事実上の答弁拒否だと私は理解せざるを得ないのです。  もう一点聞きますが、広域哨戒もシーレーン防衛について協議の対象になっていくわけですが、日本のP3Cと米軍のP3Cが広域哨戒を担当することに当然なるわけです。そういう点について、これは同じP3Cですので一層共同作戦はとりやすいわけですが、広域哨戒の分担も話し合うことになるのか、そういう研究協議の対象になるのかならないのかということをお伺いしたい。
  376. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ちょっと先生の御質問の趣旨をとりかねたわけですが、わが方のP3Cと米側のP3Cの分担のあり方について研究をするのか、こういうような御質問の趣旨だったと思いますが、もしそういう御質問であれば、これから広域哨戒の問題について当然研究の対象にはなると思いますが、いまの先生の分担ということはどういうことを意味しておるのかちょっとわかりませんので、もし御必要であれば、もう一度御質問をいただいてお答えしたいというふうに思います。
  377. 東中光雄

    東中委員 どういう意味でもいいのです。要するに、どういう分担にするかということを協議するのかしないのか。隔日にやるようになるのか、あるいは地域を分担するのか、それは知りませんよ。しかし米軍もおるんだし、日本の自衛隊もP3Cを持っている。広域哨戒ということについての共同作戦についての協議研究をやるというんだから、何かの意味の分担なんかをやるんだろうな。おまえのところは勝手にやれ、こっちは勝手にやりますということでないようにするための研究協議なんでしょう。そういうことを聞いているのです。
  378. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いずれにしましても、広域哨戒を含めて、シーレーン防衛についての研究というのはいま着手したばかりでございまして、これから始めるわけでございますから、具体的に何が研究対象になるかというのを一つ一つ御披露するようなまだ段階ではないというふうに思っております。
  379. 東中光雄

    東中委員 何を研究するのかということも決まっていない共同研究ですかな。研究対象は憲法に反しない限りやるのでしょう。シーレーン防衛なんでしょう。シーレーン防衛には広域哨戒もあるし、海峡防備もあるし、港湾防備もあるし、船団護衛もある、こう言っているのですから、そうしたら当然そういうことになるじゃないですか。その対象もまだ決まっていない、しかしもう始まっておるんだ、どうもこれはわけがわからぬですね。もっと率直に言われたらどうなんでしょうかね。やっぱりわからぬですか。
  380. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず大前提を申し上げますと、わが方は周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイルということを前提にして防衛力整備をしている。したがって、わが方の能力というものはおのずから御理解をいただけると思います。  また、シーレーンの防衛につきましては、あくまでも日米共同対処ということが前提でございますから、どういう場面で日米が共同で対処することになるのか、日米がどういう形で共同作戦を実施することになるかというのは、いまここでもって先入観を持って、こういう場合はこういうふうにやるということを決めるようなまだ段階でない、これからそういったあり方について研究していくんだ、こういうことでございます。
  381. 東中光雄

    東中委員 どうもわかったようなわからぬような話ですね。  米艦護衛の問題についてお聞きしたいのですが、日本有事ということで言われておるわけですが、米艦艇の護衛を主目的として、もっぱらそれを目的として行動することはないということは防衛局長が答弁をされておるわけですが、それは間違いないでしょうね。
  382. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 もっぱら米艦艇を守ることを主目的として行動することはない、こういうふうに申し上げたわけであります。
  383. 東中光雄

    東中委員 日本防衛のために来援した米艦ということが前提になっておるわけですが、日本防衛のために来援したのではなくて、アメリカ独自の世界戦略上の要求で、日本周辺、日本近海で米艦が作戦行動をするということがあり得るわけですね、日本有事でない場合に。そういう場合は、米艦がどのような攻撃を受けておろうと、日本の自衛隊としては、総理大臣の言う救援なるものは一切できないということでしょうね。
  384. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 あくまでも米艦護衛ということを御議論いただく際の前提条件は、わが国に対して武力攻撃があった後のことでございまして、そういった事態になる以前のことについての話ではない。したがって、いま先生御指摘のような事態に、わが方が米艦を護衛することはあり得ないというふうに思っております。
  385. 東中光雄

    東中委員 中東有事がありまして、同時多発戦略で極東でも米ソ戦ということになる場合があり得るわけですね。同時多発戦略ということをレーガン政権も言っているわけですから、実際にいま現実に起こる可能性があるかどうかという意味じゃなくて、理論上そういうことがあり得る。そういう場合で、あるいは極東有事で、日本近海における米ソ戦ということがあり得るわけですね。極東有事で、日本有事じゃなくて、日本近海における米ソ戦ということが、これはあり得るわけでしょう。そういう事態で来ているときは、日本有事でない限りこれは一切救援しない、ここまでははっきりしているのです。  そういう事態から今度は日本有事に場面が展開した場合、発展した場合です。その場合に、前からそのアメリカの艦船は日本の近海で行動を起こしているわけですから、今度はある時点で日本有事になったということになると、その時点で日本の自衛隊は、前から行動しておった独自のアメリカ世界戦略に基づく戦闘行動で危殆に瀕しておる場合に救援できるのかどうかということですよ。それをお聞きしたいのです。
  386. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 なかなかむずかしい問題でございまして、いずれにせよ、わが国の自衛隊は個別的自衛権わが国に対して武力攻撃があった上での話でございますが、個別的自衛権の範囲内で行動をする、それから米艦を守る場合でも、当該米艦というものはわが国防衛するために行動しているということが必要であろうというふうに思っております。したがって、いま先生の御指摘のような場合がどういう場合かというのは必ずしもはっきりしませんので、わが国防衛のために行動している米艦が日本の周辺近海において攻撃を受けたということであれば、もうすでに日本に対する武力攻撃が始まっているという前提に立てば、それは共同対処行動の一環としてそういう米艦を守ることはあり得るということでございます。
  387. 東中光雄

    東中委員 そこが非常に、日本が攻撃を受けておる、日本有事になっておるときに米艦が来援する、こういう発想で物を言われているのですけれども、実際はそうじゃなくて、われわれの方から考えれば、起こり得る可能性の多い問題として言えば、日本が直接、単独で攻撃を受けるということはほとんど考えられないというのが米側の支配的意見であり、そして退職した自衛隊の幹部の諸君もそういうことを言っているわけです。だからむしろ、アメリカの中東有事における極東での同時多発戦略による戦闘行為ということに日本が巻き込まれていくということがあるのですよ。日本が巻き込まれたが最後、今度は日本は、いままで戦っておったアメリカ軍を日本防衛のためだと称して守るということになったら、いよいよ米軍に巻き込まれて米軍の補完部隊になってしまうのですよ。そこのところが非常に重要な問題なので、私は念を入れてお聞きしているのです。  日本が、ただ日本防衛のためだ、日本防衛のために行動しているのだと言いさえすれば米艦を護衛するというのであってはならないと思うから言うわけです。その点は結果防衛論というのがありましたね、結果防護論、丸山防衛局長が何回か言うておる。結果的に救出されることがある。そこへきっちり戻らないといかぬのじゃないかということをいま聞いているのですが、その点はどうでしょう。抽象的な議論じゃなしに、自衛隊は日本防衛のときしか動けないのだから、日本防衛のために動いておるのだというふうなことでは、そう言いさえすれば米艦の護衛をすることになってしまいかねないということを指摘しているのですが、いかがでしょう。
  388. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国の自衛隊は、わが国はあくまでも個別的自衛権の範囲内で行動しているということでございまして、わが国防衛するために必要な範囲内、すなわち個別的自衛権の範囲内で行動するということが大前提でございまして、かつての答弁において、結果としてというふうなことを言ったのはこういう点を強調するがためにこういうことを申し上げたのだろうというふうに思います。  それから第二の、一つの制約条件として、あくまでもわが国の自衛隊は米艦を守ることを主目的として、もっぱらそのために行動するものではない、あくまでもわが国防衛のために必要な範囲内で行動するということ。  それから第三に、米艦というのはいろいろな行動をするということが考えられますが、あくまでも当該米艦艇はわが国防衛するために行動しているということが大前提であろう。そういうときにはわが国が米艦を護衛することが個別的自衛権の範囲を逸脱することにはならないだろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  389. 東中光雄

    東中委員 米艦がわが国防衛のために来援をする、それが攻撃を受けておったら今度は救出に出かけていく、その救出に出かけていくというのは、米艦を救出することがその作戦の目的になっていますね。そういうのはあなたの言われる米艦の護衛を主目的として、もっぱらそれを目的として行動する行為になるということですか、ならないということなんですか。
  390. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 何回も同じようなお答えになりますが、あくまでもわが国防衛のために必要な範囲、すなわち個別的自衛権の範囲内であるかどうかというのが一番大きなポイントになろうかと思います。そういうものであれば、米艦を護衛する、守るということも可能であろうということでございます。
  391. 東中光雄

    東中委員 それは、憲法に違反しておらぬかったら憲法に違反しておらぬと言うことと同じことですよ。個別的自衛権の範囲内ならば個別的自衛権の範囲内でありますと言うているのと同じことですよ。そうではなくて、そういう米軍を守るという作戦命令を何々護衛群に、いまミッドウェーが大変なところにおるから救出に行きなさいという命令を防衛庁長官は出せるのか出せないのかということを言っているのですよ。
  392. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 仮定の話について一つ一つ御答弁申し上げるのは必ずしも適切でありませんが、いずれにしても、先ほど来申し上げているような原則の中で行動する、そういう枠内であれば米艦を守ることが可能であるということを申し上げておるわけでございまして、いま個々の場合にどういう状況のどういうときにできるかということを一々仮定の問題としてお答えするのは適切でないのではないかというふうに思っております。
  393. 東中光雄

    東中委員 日本有事という場合は私はこう思うているのですよ。防衛白書にも書いてあるように、着上陸攻撃があるかあるいは海空からの産業基盤その他に対する攻撃があるという状態でしょう。もっともシーレーンの問題はありますけれども。そういう日本有事の状態で、限定された小規模の侵略に対して独力で守るのだ、こう言っているわけでしょう。ところが、グアムからミッドウェーが来る、ミッドウェーが攻撃を受けそうだということで、どこかのF15の部隊あるいは護衛隊群が防衛庁長官の命令ではるか南の方へ、本来の日本防衛とは別に、日本防衛のために来ておる米第七艦隊を守るのだと言うて命令を受けてそっちへ向かっていくことができるのかできないのかということを聞いているのですよ。そういうものはできない、共同対処している中で守られるということはあり得る、それならそれなりにわかりますよ。そういう点は個々の例を言うているのじゃなくて、目的として、護衛隊なり航空団がその米艦護衛に向かって、そういう任務として飛び出していくというふうなことができるのかということを聞いているのですよ。
  394. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、共同対処しているときの個々の戦術場面での命令というものは、たとえば米艦を救出するという目的の命令をもらったとしても、その当該行為が先ほど申し上げたような原則の範囲に入っておればそれは構わないわけでございまして、そのいわゆる現場の指揮官の命令がある米艦の護衛に行けということになっても、そのことが日本防衛のために必要であるということであれば、そしてそれがわが国防衛のために働いている米艦艇であれば、それは構わないのじゃないのか。ただ、いまそういった具体的な個々の議論をすることは必ずしも適切でないということを申し上げたわけです。  また、一般的に、第七艦隊を護衛するなんということは海上自衛隊としてはおこがましい話であるし、全く考えておりません。
  395. 東中光雄

    東中委員 それでは、ミッドウェーをたとえば輪形陣で、その輪形陣の中へ海上自衛隊護衛艦が加わって、それで日本防衛のためにがんばってくれるミッドウェーを護衛するということはいいのですか。
  396. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 どうもだんだん私どもの想像で考えられないような想定での御議論なものですから……。ミッドウェーを自衛隊が守るなんということは余り考えられないと思いますので、そういう個々のケースについて一つ一つお答えするのは必ずしも適切でないので、ケース・バイ・ケースというか、そういう時点でわが国の個別的自衛権の範囲内であるかどうかということを判断すべき問題であろうというふうに思っております。
  397. 東中光雄

    東中委員 個別に判断をして……。そうすると輪形陣に加わることもあり得るということですね。  そういうふうにお聞きせざるを得ないのですが、そういうことはあり得るとかあり得ないというのではなくて、戦術上あるいは能力上そういう必要があるかどうかということじゃなくて、私の聞いているのは理論上そういうことができるのかできないのかということを聞いているのです。個別的自衛権の範囲内というのはどういうことを範囲内の行動だというのかということをただしたいから聞いているのであって、それは個別的自衛権の範囲内であればケース・バイ・ケースでそういうこともあり得るというふうに言われたのだったら、それはそれとして非常に重要な問題として私は聞いておきたいのですけれども、そこらはどうなのです。
  398. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 輪形陣というのはどういうことかわかりませんが、単純に船と船との関係位置のことを言ったものだとすれば、かつて、輪形陣であれ何であれわが国防衛のために必要なものであれば、その輪形陣をとることが最も効率的でありわが国防衛のために有効だというふうに判断されれば、それはとり得るということを答弁したことがございます。
  399. 東中光雄

    東中委員 それは原さんがえらい迷い迷い何か思いついたみたいなことで言うたので、わが国防衛のために必要ならばということが必ずついているのですよね。それは違うのですよ。機動部隊の中核のミッドウェーを輪形陣で防衛する、防衛するための陣形の、配船というか陣構えの中に入るか入らぬか、護衛について回るかどうかということを言うているのであって、そういう抽象的な防衛の範囲内であれば、個別的自衛権の範囲内であればいいということでは議論にならないということだけ申し上げておきます。  時間がなくなりましたが、あと一点だけ。  F16の三沢配備についての分担の問題ですが、この間の米下院の歳出委におけるマッコイ証言で、二月九日ですが、「二千九百九十万ドルは、日本の三沢空軍基地での二個飛行中隊を配備する計画の初度予算である。これは、三億七千三百万ドルの要求のうち、約二億七千五百万ドルを提供することを予定した日本との共同の日米資金計画である。」こういう証言をマッコイ空軍次官補が二月九日にやっています。それから三月三日にブレーカー国防次官補代理が、「我々は、注意深く日本に対し、F16の三沢配備が地域的な関係において見るべきで、日本自身防衛努力を減じるべきと解釈すべきではないことを説明している。日本政府は、八四―八八年度において三沢での施設予算のおおよそ四分の三を予算化することを要求した。」こういう証言を三月三日に下院の歳出委軍事建設小委員会でやっています。これによりますと、日本政府とちゃんと話し合いをしてやっているようになっている、資金計画になっている。その点はいまどういうふうになっていますか。
  400. 塩田章

    ○塩田政府委員 恐らく同じテキストだと思いますが、ちょっと訳が私たちの訳と違っているようでございます。  まず最初のマッコイ証言の方で、約二億七千五百万ドルを提供するよう予定していると言われましたが、私たちは「アメリカ政府日本に対して期待している。」というふうに訳しております。エクスペクトを使っています。  ブレーカーさんの証言の方は、いま先生は、政府は約四分の三を負担するよう要求した、こういうふうにおっしゃいましたが、私たちの訳では「日本政府は、FY八四―八八の間に三沢における施設費用の約四分の三を負担するよう要請されている。」つまりアメリカ側から日本にそういう期待をしているということだと私たちは解しておりますが、いずれにしましてもそういった証言があったことは事実です。  先ほどお答えいたしましたが、私どもの方で現在在日米軍とこの問題についての調整をしておりますが、米側からそういったような二億幾らだとかあるいは全体の四分の三を持ってくれとか、そういうような話は全然ございませんで、具体的にいまどういう建物を何戸建てるかというふうなことを詰めております。  いずれにしましても、これまた午前中にお答えいたしましたように、今後もしこういう要請が出れば、出た時点でよく検討いたしますけれども基本的には、われわれは毎年毎年の予算でできる範囲で対処していくということを考えておるわけでございます。
  401. 東中光雄

    東中委員 いわゆる思いやり分担で、そんなものは向こうから言うてくるのを待っておらぬで断ればいいのですよ。断らないんだったら、あらかじめ基本的に了解を伊藤防衛庁長官の段階でしてきたのか。だって、こういう具体的な数字が向こうで出ているのですから、期待されているとか要求したか要求しようと思っているかは別としまして、こういうのが向こうでは証言されておって、日本の方はまだ何にも聞いておりません、具体的な内容を詰めております、こういうのは私は問題だと思いますので、防衛庁長官基本的に協力するという約束を伊藤前長官はやられてきたようでありますけれども、これについての防衛庁としての考え、態度をひとつ示していただいて、質問を終わりたいと思います。
  402. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど施設長官から御答弁させていただきましたように、米側からまだ具体的な数字についてこちらに届いているものはございません。これから協議でいろいろ詰めていかなければならぬ問題だと思いますし、それから基本的には、わが方は申し入れがありましてから関係省庁との間で少しの時間でございましたがかけまして決定をいたした事柄でもございますので、原則は、これまたさっき施設長官が答弁をいたしましたように、これは別枠で立てていくというわけにはいきませんので、いままでの施設庁の中の同じような形で負担をしていかなければならぬことだと思っておりますが、アメリカ側から具体的な問題が出ましたとき、アメリカ側とも十分話をしながら進めていきたい、こう考えておる次第でございます。
  403. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  404. 東家嘉幸

    ○東家委員長代理 楢崎弥之助君。
  405. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 せんだって、二月二十一日の予算の総括で、五十四年度の国体改造論、内部改易という、いわゆる幻のクーデターと言われた問題について私は提起をした。それは、そのときにも私はくどく言っておるのですが、機密漏洩事件に切りかえたり、犯人捜しをしたり、関係者の弾圧をしたり、そういうことが私は目的ではない。問題は、制度はあっても空洞化しておるシビリアンコントロールをどう活性化するか、実効性のあるものにするか、これが私の質問の主意でありました。  私も国会に出て二十三年間になる。いろいろな問題をやってきた私の経験上、権力のすそ野に関することをいろいろ聞くときには政府はリップサービスをする、一たん権力の中枢に触れる問題のときは身構えて恥知らずな反撃をする、これが私の経験ですよ。なぜ恥知らずと言うか。いろいろな問題があるけれども、そのうちの一つが、赤新聞を使ったり週刊誌を使ったりブラックジャーナルを使ったりしてやってくる。そんなことはなれておりますから何とも思いません。しかしその中で、防衛庁の人事教育局長がこう言ったということがありますから、この点だけははっきり聞いておきたいと思います。  いま出ております週刊新潮、この中で「人事教育局長の上野隆史氏は”クーデター発言”に怒る。」と言って、ずっと言っている。その言っている中に、「いくら国会議員は院内の発言に責任はないといっても、バッジをつけているなら何をいってもいいということではないでしょう」。人事教育局長、本当にこう言ったのですか。
  406. 上野隆史

    ○上野政府委員 お答え申し上げます。  この週刊新潮の記者の方が私の家に参りまして、雨の日曜日でございましたが、二時間ぐらいいろいろお話をいたしました。主題は楢崎先生御提起の二月二十一日の件でございます。  いろいろなやりとりがあったわけでございますが、まず、いま先生の御指摘になった部分についてお答え申し上げますと、この私が「”クーデター発言”に怒る。」と書いて、かぎ入りでずっと二十行ぐらい言っております。これはこういう形で私は申したのではございません。これは幾つかの、いわば段落、問答の形でいろいろなことを申しました。     〔東家委員長代理退席、委員長着席〕  最後の部分でございますけれども、いま先生の御指摘のようなことにつきましては、私はこういう言い方をいたしました。記者の方がまず、国会議員が院内の発言について責任を問われないということを聞いたのだけれども、それはどういうことなんですかということを言われました。私は、一般論として、憲法五十一条に「兩議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を間はれない。」という条項がございます。三十年前の法律書生に戻りまして、その当時の講義のことなどいろいろ思い起こしまして、こういう条項がある。そして民主主義にとっては言論の自由は欠くべからざる要件であります。そして、一般国民の間でもそうですが、この場合には個人の名誉等の反対利益もまた尊重せられなければならない。しかしながら、直接国家意思の形成に当たる議員の議会における発言においては、その反対利益というのも譲歩を余儀なくされるだろう。往々にして国会では行政、司法等に対する徹底的な批判が行われる、行われなければならない。その極、往々にして個人の名誉、社会の治安を害するというようなこともあり得ようけれども、そのために言論を抑圧し、または萎縮させてはならない。また、これに乗ずるいろいろな権力からの防衛をする必要もあろう。議員の院内の言論について院外における責任を免除するという特権を認めたのはこういうような政策的な配慮からであって、議員の発言の自由を保障したものでございましょう。まず、こう言いました。  そうしましたならば、先方は、そうですか、そういうことでありますと、国会議員であれば、バッジをつけておれば何を言ってもいいんですかね、こういうことでございましたので、私は、それに対して、いや、それはそうではない、バッジをつけているからといって何を言ってもいいということでは、この文章では「ないでしょう」と言っておりますけれども、私は、「ないんですよね」、こう言ったのです。それで、それは院内におきましては責任を問われる場合が――これは一般論でございますよ、先生のその指摘についての云々ではなくて、あくまで法律論として申したのでありますが、院内においては責任を問われる場合がある。たとえば国会法等におきましては、「無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」というようなことも書いてございますけれども、いずれにしても政治的な責任を問われる、あるいは院内における各議院のいわば秩序維持の点からの責任ということは、これは問われることもありましょう、しかし、これは今回の問題とは余り関係はございませんね、こういうふうに私は申し上げたのでありますけれども、この記事を見ますると、そういういわば前段、後段が抜けまして、そこだけが取り上げられておる。しかも前からずっと続いた発言のように書かれておる。  まあ週刊新潮のいろいろな編集方針その他がございますのでしょうけれども、私としてはこういう言い方を、書き方をされたということはやや残念に思っております。その記者の方は若くても大変礼儀も正しくて、りっぱな記者だと思いますけれども、この記事につきましては私は残念に存じております。
  407. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ずいぶん違いますね。この記事によると、私が何を言ってもいいということじゃないということになっていますね。この記事を見る限りはね。そうすると、あなたのいまおっしゃっていることは一般論としてですが、こんなことは国会議員、バッジをつけている者はだれでも知っていますよ。行政府の一局長から言われぬでも、そういう問題が起こったときは、国会にちゃんと担当の委員会があって問題にする。  じゃ、あなたは訂正を申し込む気がありますか。
  408. 上野隆史

    ○上野政府委員 お答え申し上げます。  私はその記者の方の質問に答えて憲法の五十一条の解説をしたつもりでございます。それで、こういう発言をされたというふうにおとりになる向きも、それは出てまいると思います。  ただ私は、雑誌社でございましても言論出版の自由はございましょうし、編集方針ということもございましょうし、こういう国会の場でもって楢崎先生からこういう機会を与えていただきまして、私の真意をここでもって表明する機会を得ましたので、雑誌社の方に特段の抗議とかあるいは訂正要求とか、そういうようなことをするつもりはございません。  ただしかし、その記者の方は、この前会ったのが初めてでございますけれども、私存じております。その記者の方には、国会で楢崎先生からこういう御指摘があった、それで私も残念に思っておる、君の記事の書き方は、君が書いたかどうか知りませんけれども、こういう雑誌の書き方につきましては私も残念に思っておるということははっきりと申そうと存じます。
  409. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあいいでしょう、はっきりしましたからね。要するに、もしこのとおりであれば私は問題を発展させたいと思ったけれども、一般論としてあたりまえのことを言われたんで、この内容と違うことが明確になりましたから、これはこれでわきに置きます。  いずれにしても、三月末か四月末に、私がじっとしておっても、事実がだんだん明らかになるから、政府側がどういう意図を持っておるか知らないけれども、あるいは与党がどういう意図を持っておるか知らないけれども、その際は、私は徹底的に対決をし、明らかにする決意ですよ。国会議員として恥ずかしいことをしたら、元総理の刑事被告人はバッジを外さないけれども、私は、身に覚えのあるそういうことが指摘されたら、いつでもバッジを外しますよ。これは私は明確に言っておきます。それだけの覚悟と決意を持ってやっているのですから、そのつもりでおってください。  それで次に進みますが、黒柳議員が参議院でやりました年防計画に関してまずお伺いをしておきます。  一般的に、以下申し上げることがそのとおりであるかどうかだけ聞きますから、聞いておってください。  「自衛隊は、法律の定めるところによりわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛する任務を有する。この任務を達成するため防衛計画を策定し、万一の場合に備えている。防衛計画は、外部からの武力攻撃を受けた場合、間接侵略その他治安維持上の重大なる事態が発生した場合等に対処するため、自衛隊運用の全般的な準拠を定めたものであり、各自衛隊の現有勢力でいかなることができるか、有事の際どの程度の能力が期待できるかなどの見積もりを基礎として、自衛隊の作戦運用に関する内容を定めている。防衛計画には、統合幕僚会議で立案する年度統合防衛計画と、これを受けての陸海空各自衛隊のそれぞれの年度防衛及び警備計画とがあり、これらの計画は、その立案の過程において関係部局と十分な調整を行った後、長官の決裁を受けて決定される。」大体こういうことでいいですか。
  410. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 逐一細かな点までは、いまお聞きした段階でございますので正確にはあれですが、大筋において先生のおっしゃったことで正しいと思っております。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはかつて三矢計画問題のときにはっきりさせておる点であります。  次に、黒柳議員が提起しました年防計画、これはいま読んだうちのどれに当たるのですか。
  412. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 御承知のように、防衛計画というのは、まず統合幕僚会議で作成する統合年度防衛計画というのがございまして、これはいま御指摘のように長官の承認を得て各幕僚長に示されるわけでございます。その結果、それを受けまして各幕僚長は、陸海空自衛隊のいわゆる年度防衛及び警備計画というものを作成するわけでございます。これがいわゆる各自衛隊の年度防衛警備計画、こういうことになるわけですが、実際には、この幕僚監部で作成された防衛警備計画というものはそれぞれまたさらに下部の部隊に示され、そこの部隊、たとえば方面隊なり師団なりというものは逐次作成されているわけでございまして、いま先生の御指摘のあったようなものは、統合幕僚会議あるいは各幕僚長が作成するレベル年度防衛計画ということでございます。  黒柳先生の御指摘のものについては現在調査中でございますが、少なくも、いま挙げられた各幕僚長あるいは統幕議長が作成された段階のものには御指摘のようなことはなかったということを先般も御答弁申し上げている次第でございます。
  413. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 例の岡田春夫議員が提起されました三矢計画、これは三十八年度統合防衛計画、番号は統幕3第38―30号、これに基づく図上研究であったわけですね、統幕の。間違いないですね。
  414. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 三矢研究は三十八年当時に、いわゆるたしか統幕の幕僚が研究した研究草案みたいなものであったというふうに承知しておりますが、それが三十八年度の統合年度防衛計画に準拠した、あるいは基礎にしたものであるかということについては必ずしもはっきりしませんが、多分、私の記憶によれば、それは年度防衛計画関係なく幕僚が研究したものであるというふうに記憶しております。
  415. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 研究にも、こういう統幕第何号という番号がつくのですか、単なる図上研究でも。
  416. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま突然のお示しでございますので、この番号についての定かな認識は必ずしもございませんが、いずれにせよ、研究にせよ、その当該文書というのは秘密に指定されているものだろうと思います。そういうことになりますれば、秘密登録簿に記載し、そのときの決められた付与基準に従って符号なり番号がつけられる、多分その番号ではないかというふうに思います。
  417. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 黒柳議員が提起をしました、五十七年度防衛計画というふうに私は新聞で読みましたが、当然これは番号がついていますね。
  418. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 黒柳先生御指摘の点につきましては、私どもその文書なりコピーなりというものを見ておりませんし、果たしてそれが自衛隊の文書であるかどうかということをまだ確認する段階にいっておりません。現在調査中でございますので、どういう文書であるのかということをいまお答えする段階にございません。
  419. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あれは、私は本物だと思いますよ、あなたがまだ調査中と言っているけれども。これは黒柳さんが先に提起されましたから、私はその調査を待っておりますけれども、もし真実の計画であれば、当然番号がついておるはずですね。
  420. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 防衛庁の資料であり、それがもし年度防衛計画の一部であるとすれば、当然極秘なりそういう指定を受けておりますので、そういった文書番号を付せられている、これは一般的にでございますが、そういうものだと思います。
  421. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やがてそれも明らかになると思います。  年度防衛計画の中に、たとえば五十六年なり五十七年度防衛計画の中に三海峡封鎖問題が入っておりますか。
  422. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま一つ一つ防衛計画の中身にどういう内容が盛り込まれているかということを正確に知っておりませんが、わが国に対する武力攻撃があった場合に自衛隊はどう対処するかということの計画書でございますから、当然海峡封鎖についての必要な時期、こういうときにはやるというようなことが、どういう形で書いてあるか承知しておりませんが、そういうことが書いてあることは大いにあり得ると思います。
  423. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは大いにあり得ると思いますという現在の答弁ですが、それを明確にできますか、その点だけ。
  424. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これも先般の予算委員会でも申し上げたわけですが、年度防衛計画というのは、言ってみればわが方のいわゆる作戦計画そのものでございまして、この中身が、一々どういうものが盛り込まれ、どう書いてあるかということを申し上げるのは、いわば手のうちをお見せすることにもなりますし、国際的に世界各国でもこの種の書類というものはきわめて秘匿度の高い文書に指定されているということもございますので、内容の一々についてお答えするのは御容赦をいただきたいと思います。
  425. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、私は具体的などういうふうにしてやるんだということを聞いているんじゃない。海峡封鎖問題が入っているかどうかだけ聞いている。国会でもいろいろやりとりしているでしょう。総理の答弁もあるじゃありませんか。年度防衛計画の中に海峡封鎖問題が入っているかどうかだけの確認ができるかと言っているんです。
  426. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 予想される各種の作戦が入っていることがあり得るということを申し上げるにとどめさしていただきたいと思います。
  427. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おかしいですね。そういう計画がなくてああいう総理の答弁は出てこないでしょう。おかしいじゃないですか。  私がなぜ三矢計画から説き起こしているかというと、先ほど言ったとおり、三矢計画は、三十八年度統合防衛計画というものがあって、そしてその計画に基づく図上研究であったわけです。これも国会では明確になっているのです。これで時間をとるのはもったいない。明確になっている。その三十八年度の段階でも統合防衛計画の中で入っている。もう三十八年度の段階で。  そしてそれに基づく図上研究ではどうなっているか。いわゆる三矢計画の第三動、研究問題「状況下の研究№11及び№16」このくだりで米側とのやりとりがありますね。これは日本有事の際じゃないのです。まさに今国会で問題になった日本関係のない地域での紛争、特に三矢計画では朝鮮半島を問題にしておる。つまり、日本有事の際でないんですね。こう米側が言っていますね。「日本側の協力には感謝するが、この際日本および朝鮮に対する近海の海上交通保護作戦、対馬、津軽、宗谷の海峡封鎖作戦、米海軍基地の港湾警備等に対しても積極的に協力を要望した。」日本側、「これらの行動は、前項において説明したとおり、防衛出動を下命しない限り原則として武力行使が制限されるので、防衛出動以外のあらゆる権限を行使して積極的に協力する。」三海峡封鎖でもこうなっている。もうすでに三十八年度の図上演習の段階から、米側からそういう要請があったら積極的に協力する、こうなっている。これが本年度予算委員会で総理答弁になってあらわれたにすぎない。ユニホーム同士の研究では、すでに三十八年度段階からそうなっているのですよ、長官。だから、いま突如として出てきた問題ではないのである。先ほどの東中議員の質問に対しても、いまから研究するとか、そんなことじゃないのです。すでに研究は三十八年段階から十分行われている。余り国会をばかにしちゃいけませんよ。時間がないから、それだけ指摘しておきます。  次に行きます。  冒頭申し上げましたとおり、御答弁のとおり、間接侵略に対する計画を立てておりますね。その中に「治安出動計画」というものがありますか。
  428. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 防衛計画というのは、わが国に対する直接侵略と同時に間接侵略その他の重大な治安事態に対処することを目的として作成するものでございます。当然のことながら、自衛隊法の規定するところによる防衛出動、治安出動が下令された場合の対処の仕方が書いてあるわけでございますから、含まれておるということでございます。
  429. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは秘密区分はどうなっていますか。
  430. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 年度防衛計画、警備計画というのは、機密もしくは極秘に指定されております。
  431. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 「治安出動計画」の中に、まず「出動可能人員報告要領」というのがある。御存じですか。
  432. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま先生御指摘のお言葉がどういうものであるか承知しておりません。
  433. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この「治安出動計画」のうち、その「治安出動可能人員報告要領」というのが明らかにされている。御存じかと聞いているのです。
  434. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先ほど来申し上げておりますように、年度防衛警備計画というものの中身について一々御説明することは必ずしも適切でないと思います。ただ、いま先生御指摘のような用語がどういう文書の中にどういうふうに引用されているかについて、いまここでもってお答えする材料の持ち合わせがない、こういうことでございます。
  435. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここに材料の持ち合わせがないのはしようがないのですが、そこにずらっとおられますが、知った人はおりませんかね。人事教育局長、どうですか、こういうときに発言したらどうですか。  じゃ、その場合、甲号編成とはどういう編成か、説明のできる人はおりますか。それから乙号編成、丙号編成、説明できる人いますか。
  436. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 甲号編成、乙号編成というふうな言葉についての意味というのは私承知しておりませんが、防衛出動であれ治安出動であれ、自衛隊が出動を命ぜられた場合のいわゆる人間の差し出し区分、部隊の配分、いわゆる編成区分というものは、当然この年度防衛計画の中で決められるべき事柄でございますから、そういうものがそれを指すのかどうか知りませんが、いま私が申し上げたようなものであれば当然入ってくる。だんだん具体的に入りますので、この辺にさしていただきたいと思いますけれども、そういうことでございます。
  437. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 甲号編成というのは、通常の場合、一般的に報告された出動可能人員のことを言うのですね。乙号編成は「状況の緊迫度により同一駐屯地内における派遣勤務者(除く特派)の大部分(七五%から一〇〇%)を原隊に復帰させて可能人員の増勢を図る。」これが乙号編成。丙号は「状況によっては派遣勤務者の全員を原隊に復帰させ、さらに警備要員を加えて可能人員とする。」これが丙号。大体そういうところですね。どうですか。
  438. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まことに恐縮でございますが、年度防衛計画の中身がいま先生が御指摘のようなものであったかどうかということを確認を求めるのであれば、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  439. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことでは、私どもシビリアンコントロールの果たしようがないじゃありませんか、実態がわからないから。  いいですか、それじゃ治安出動に関しまして「服務規律強化対策」というのがある。番号は「T演東方一電第七号」、発信者は「東部方面総監」、秘密区分は秘。これは実在していますか。
  440. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 そういう文書を突然持ち出されましても、私、自衛隊の文書番号を一々知悉しておりませんので、御勘弁をいただきたいと思います。
  441. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは確認をしてください。後で結構ですから確認をしてください。いまの番号、控えてますか。いいですか。
  442. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 そういう文書があるかどうかは調べてみたいと思います。
  443. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あわせてその際、いまの「服務規律強化対策」の中の七番目に「各種事例の紹介」というのがある。「東方管内で現在までに規律に影響すると見られる次のような事例があったが、各部隊ごとに検討し、これら徴候を見て未然に防止し、規律の低下を来さないよう着意すること。(ア)、理由薄弱な集団休暇申請があった。(イ)、安全管理不徹低で隊員が負傷した。(ウ)、職務離脱が数件起こった。(エ)、便所内に批判的な落書きが発見された。(オ)、武器庫より拳銃が紛失した。(カ)、駐屯地弾薬庫付近に不審な男が侵入した。(キ)、面会と称してニ」これは日本共産党だと思うのですが、「ニ党員が潜入、思想工作をした駐屯地が数カ所ある。」こういう記載があるが、これが事実かどうか、同時に確認をしてもらいたい。よろしいか。
  444. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 それが果たして自衛隊の文書であるのかどうかわかりませんが、そういうことも含めまして検討したいと思います。
  445. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何でも自衛隊の文書かどうかわからぬ。私は番号まで言っているんですよ。突き合わせても結構だ。  「出動準備に際し与える方面総監訓示」というのがすでに用意されている。事実か。同時に、「出動時の方面総監訓示」これもあらかじめつくられておる。事実かどうか。
  446. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一般的、常識的に申し上げて、そういうものがあらかじめつくられているということは全く考えられません。(楢崎委員考えられますか、ちょっと最後が……」と呼ぶ)考えられません。
  447. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何にも御存じないんですね。あなた、防衛局長でしょう。  読んでみましょうか。時間がかかるからあれだけれども、短い方だけ読んでみますわ。これも確認してください。  「出動時の方面総監訓示」秘密区分は秘。「本訓示を受領したならば中隊長以上が確実に保管し、出動命令下令と同時に開封して全隊員に周知徹底させるものとする。」「東部方面総監部第一部」そうなっています。内容は、「出動時の方面総監訓示」「首都周辺の騒擾はますます激化してついに警察力の限界を超えるに至り、本日わが方面隊に対し治安出動が下令された。本職はここに精鋭なる麾下舞台を指揮し、断固暴との不法行為を制圧し、もって治安の回復、民心の安定を図らんとするものである。諸官はわが国の平和を念願して、本職とともにその任務を達成するため訓練に精進してきたが、いまこそ国民の負託にこたえ、自衛隊の真価を世に問うのときである。諸官よろしく使命の重大さを自覚し、部隊長を核心として厳正なる規律、旺盛な指揮のもとに一致団結よく平素の訓練の成果を発揮し、相ともにこの重大任務を完遂するよう要望する。諸官の健闘を祈り、訓示とする。」ちゃんとあらかじめできているじゃないですか。これも何もないからわからぬとおっしゃるのでしょう。それも調べていただけますか。
  448. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 念のため調べさせていただきます。
  449. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だんだん声が小さくなりますね。  時間がありませんから、じゃ委員長、いま幾つか後で調べるということでありますから、委員長に取り計らいをお任せいたします。  じゃ最後に、中央資料隊はどういうことをするところですか。
  450. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 中央資料隊というのは、陸上自衛隊の中の長官直轄部隊の一つだろうと思いますが、多分これは外国文献の翻訳であるとか分析、評価というふうなものが主任務であるというふうに認識しております。
  451. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この中央資料隊が使う「OB」これはどういう意味ですか。
  452. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まあ、OBという言葉を使う際のいろいろな使い方があると思いますが、たとえばわが国周辺あるいは米軍の展開配備がどうなっているかというようなこともOBという言い方で言いますし、いろいろな個人というか、個々の人間のプロフィルなんかもOBと言う。どういう意味で使っているか私存じませんが、一般的にそういうようなときに使われているのじゃないかというふうに思っています。
  453. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 中央資料隊が「OB整理項目」というものを明らかにしておる。秘密区分は秘、「特に複製を禁止する」と書いてある。これは局長がいま後段に言った個人のいろいろなことを調べる、そして資料としてそれを保管をしておく。この中に政治家等も入っておるのですね。
  454. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先ほども御答弁申し上げたように、中央資料隊というのは、公刊資料を中心にしていろいろな情報、資料の分析、整理をしている、あるいは外国文献の翻訳あるいは地誌の編さんなどを任務としておりますもので、個人的な問題についてどういうことをやっているかというのは、いま申し上げたような点から見て必ずしも当たらないのではないかというふうに思っています。
  455. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここにあるのですよ。局長、ここにあるのです。当たらないもヘチマもない。ずっとここにある。どういう記号でそれをあらわすか、個人を。  ずっといろいろな項目がある。「人物OB情報整理項目」こうなっておる中を見ますと、どういう団体歴があり、現在はどういう団体に所属しておるか、それからどういう派閥に属しておるか。これは政治家以外にないじゃありませんか。どういう派閥に属しておるか。皆さん方全部入っておるのです。こういうものがないとおっしゃるか。
  456. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 公刊資料を整理しているということでございまして、それ以上のものではないということを申し上げておるわけでございます。
  457. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、あなた、さっきはそういうものはないとおっしゃったじゃないの。今度はそれ以上のものとは何ですか。それ以上とは何ですか。
  458. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 あくまでも内外の雑誌、公刊資料を翻訳し、分析をし、整理をしている、こういうことでございます。
  459. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと、これ見てください。これも自衛隊のものかどうかわからぬとおっしゃるか。(楢崎委員、資料を示す)
  460. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 中央資料隊においては、個人の身元調査とか思想調査とか、そういったことは一切行っていないということでございます。
  461. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 項目がそれにあるじゃないの。あなた、ちょっと返しなさいよ。これは自衛隊のものじゃないですか。それだけ伺っておきましょう。
  462. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 表紙には「中央資料隊」と書いてあります。中央資料隊という部隊が自衛隊にありますから、その文書は中央資料隊でかつてつくったものであるという可能性はあると思います。ただ、私いま突然見せられまして、それがどういうものであるかということの認識がないものでございますから、確実なことは申し上げられません。
  463. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 きょうのところは時間がないからこれでやめますけれども、これからじっくりやりますからね。大体、余りにもマル秘が多過ぎますよ。  長官、私が二月こ十一日に提起したのもこの問題なんです。本当にシビリアンコントロールの最高機関である国会が、国民の負託を受けてシビリアンコントロールというものを果たすためには、ある程度実態を把握しなければコントロールのしようがないじゃありませんか。それは防衛秘密というのは非常に重大な秘密事項ですから、その辺はわきまえておるから、そこを何とか工夫して、特別委員会もあるし、秘密会にして、番号を打って、そして一遍見せたらまたすぐその場で回収するとか、何とかその種のことでできるだけその情報を、防衛情報をぎりぎりのところまで出してもらわないとシビリアンコントロールが果たせない、それを私は言っているのです。  だから、きょうの懸案事項も含めまして、決算委員会ではきょうが最後の機会かもしれませんが、まだ内閣委員会がありますから、そのときまとめて、今度は時間をたくさんいただいて、クーデター問題とも絡んで詰めていきたい、こう思います。  委員長に、懸案事項はお取り計らいをよろしくお願いいたします。
  464. 古屋亨

    古屋委員長 いまの点は、今度の理事会で相談いたしまして、御期待に沿うように努力いたしたいと思います。  次回は、来る二十五日金曜日午前十時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会