○
鎌田会計検査院長 昭和五十五
年度決算検査報告につきまして、その
概要を
説明いたします。
会計検査院は、五十六年十月十三日、
内閣から
昭和五十五
年度歳入歳出決算の送付を受け、その
検査を終えて、
昭和五十五
年度決算検査報告とともに五十六年十二月十五日
内閣に回付いたしました。
昭和五十五
年度の
一般会計決算額は、
歳入四十四兆四百六億六千七百二十四万余円、
歳出四十三兆四千五十億二千五百五十九万余円でありまして、前
年度に比べますと、
歳入において四兆二千六百十四億三千九百五万余円、
歳出において四兆六千百五十一億九千四百四十一万余円の
増加になっており、各
特別会計の
決算額の
合計額は、
歳入九十六兆八千八百九十六億千六百九十六万余円、
歳出八十三兆九千四百六十四億五千九百四十万余円でありまして、前
年度に比べますと、
歳入において十三兆千八百十四億四百八十二万余円、
歳出において十一兆七千五百五億二千四百二十八万余円の
増加になっております。
また、
国税収納金整理資金は、
収納済み額二十七兆七千二百四億二千三十九万余円、
歳入組み入れ額二十六兆八千三百七十五億千九百四十九万余円であります。
政府関係機関の
昭和五十五
年度の
決算額の総計は、
収入二十兆九千五百八十一億八千六十六万余円、
支出二十兆七千五百三十五億四千三百七十九万余円でありまして、前
年度に比べますと、
収入において一兆四千七百六十億四千百四十三万余円、
支出において一兆四千八百二十六億八千八百二十二万余円の
増加になっております。
昭和五十五
年度の
歳入歳出等に関し、
会計検査院が、国、
政府関係機関、国の
出資団体等の
検査対象機関について
検査した実績を申し上げますと、
書面検査は、
計算書二十三万九千余冊及び
証拠書類六千九百二十六万余枚について行い、また、
実地検査は、
検査対象機関の官署、
事務所等四万二千余カ所のうち、その八・〇%に当たる三千三百余カ所について
実施いたしました。そして、
検査の進行に伴い
関係者に対して、約千三百
事項の
質問を発しております。
このようにして
検査いたしました結果、
検査報告に掲記した
不当事項等について、その
概要を
説明いたします。
まず、
不当事項について申し上げます。
不当事項として
検査報告に掲記いたしましたものは、
合計百八十件であります。
このうち、
収入に関するものは、十一件、二十六億二千四百八万余円でありまして、その
内訳は、
租税の
徴収額に
過不足があったものが一件、十七億八千百万余円、
保険料の
徴収額に
過不足があったものが三件、七億三百九十七万余円、
職員の
不正行為による
損害を生じたものが六件、一億四百四十七万余円、その他、
刑務作業製品展示会における
販売代金の一部を別途に
経理していたものが一件、三千四百六十三万余円。
また、
支出に関するものは、百四十二件、四十億六千四百二十三万余円でありまして、その
内訳は、
工事に関するものとして、
計画、
設計が適切でなかったため不
経済になったもの、
予定価格の
積算が適切でなかったため
契約額が
割り高になったもの、監督、
検査が適切でなかったため
設計と相違して施工したものが八件、六億九千三百九十九万余円、物件に関するものとして、
物品の
購入計画が適切でなかったため不
経済になったものが一件、千八百万円、役務に関するものとして、
予定価格の
積算が適切でなかったため不
経済になったもの、
契約処置が適切でなかったため不
経済になったものが三件、一億三千百二十万余円、
保険に関するものとして、
保険給付金の
支給が適正でなかったものが二件、一億九千四百十六万余円、
補助金に関するものとして、
補助事業の
実施及び
経理が適切でなかったものが百十四件、二十五億八千六十四万余円、
貸付金に関するものとして、
貸付対象事業の全部または一部が
実施されていなかったもの、
貸付対象事業費より低額で
事業が
実施されていたものなどが十一件、二億八千四百三十六万余円、
職員の
不正行為による
損害を生じたものが一件、三百八十七万余円、その他、
遂道工事の
異常出水事故に伴う
建設機械等の
損害額の
負担が過大であったもの、
部品代を水増しして支払うなど真実な取引に基づかない
処理を行っていたもの二件、一億五千八百万余円であります。
以上の
収入、
支出に関するもののほか、
郵便貯金の払戻金、
簡易生命保険の
保険料等について
職員の
不正行為による
損害を生じたものが二十七件、二億五千百十八万余円ありまして、これらの
合計は、百八十件、六十九億三千九百五十万余円となっております。これを前
年度の百五十七件、二百三十億千四百四十三万余円と比べますと、件数において二十三件の
増加、
金額において百六十億七千四百九十二万余円の
減少となっております。
次に、
意見を表示しまたは
処置を要求した
事項について
説明いたします。
五十六年中におきまして、
会計検査院法第三十四条の
規定により
是正改善の
処置を要求いたしましたものは六件、また、同法第三十六条の
規定により
改善の
処置を要求いたしましたものは一件であります。
このうち、
会計検査院法第三十四条の
規定により、
是正改善の
処置を要求いたしましたものは、
農林水産省の、
自然休養村
整備事業等に関するもの、
飼料用小麦の
売り渡し予定価格の
積算に関するもの、
林道事業の
実施に関するもの、
日本電信電話公社の、
市内交換機設備の
設置及び
利活用に関するもの、
ステップ・
バイ・
ステップ交換機の撤去スイッチ類売り払い
予定価格の
積算に関するもの、住宅金融公庫の、
貸付資金の調達に関するものであり、また、
会計検査院法第三十六条の
規定により
改善の
処置を要求いたしましたものは、
厚生省の、
保育所措置費補助金に関するものであります。
次に、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項について
説明いたします。
これは、
検査の過程で
会計検査院法第三十四条または第三十六条の
規定により
意見を表示しまたは
処置を要求すべく
質問を発遣するなど検討しておりましたところ、
当局において、本院の
指摘を契機として直ちに
改善の
処置をとったものでありまして、
検査報告に掲記しましたものは十六件であります。その
内訳は、文部省の、
下水道使用料等の
支払いに関するもの、
農林水産省の、
農業用構造物の
基礎工費等の
積算に関するもの、
土地区画整理事業施行地区内で造成盛り土された
水田等に係る
水田利用再編奨励補助金の交付に関するもの、外国産
小麦を
政府サイロから
売り渡しまたは移送する際の
搬出経費の
徴収に関するもの、
通商産業省の、
電気需給契約の
契約種別に関するもの、運輸省の、
自動車検査登録出力用紙の仕様に関するもの、
専用回線の
利活用に関するもの、郵政省の、
外務職員の募集に係る
定額郵便貯金の
契約に対する
貯蓄奨励手当の
支給に関するもの、建設省の、
防雪さく設置工事費の
積算に関するもの、
日本国有鉄道の、
駅舎等の
鉄骨現場建て方工事における
高力ボルト締めつけ費の
積算に関するもの、
車両基地等の構内における
電気関係工事費の
積算に関するもの、
特急寝台列車の
寝台用リネンの取り扱いに関するもの、
日本電信電話公社の、
ステップ・
バイ・
ステップ交換機の
撤去工事における不
用品の
搬出費の
積算に関するもの、
日本住宅公団の、
住宅建設工事の
前払い金の
支払いに関するもの、
宅地等の
造成工事における
地盤改良工費の
積算に関するもの、
日本道路公団の、
プレストレスト・コンクリート箱けたの架設における
PC鋼棒緊張工費の
積算に関するものであります。
最後に、特に掲記を要すると認めた
事項について
説明いたします。
この
事項は、
事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、
昭和五十五
年度決算検査報告には、次の五件を掲げてございます。
すなわち、
農林水産省の、国営干拓
事業の
実施に関するもの、水田利用再編対策
事業における管理転作奨励
補助金の交付に関するもの、
日本国有鉄道の、貨物営業に関するもの、
日本住宅公団の、用地の利用及び住宅の供用の状況に関するもの、雇用促進
事業団の、移転就職者用宿舎に関するものであります。
以上をもって
概要の
説明を終わります。
会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計
経理の
執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。
昭和五十五
年度国有財産検査報告につきまして、その
概要を
説明いたします。
会計検査院は、五十六年十月二十三日、
内閣から
昭和五十五
年度国有財産増減及び現在額総計三書及び
昭和五十五
年度国有財産無償貸付状況総
計算書の送付を受け、その
検査を終えて、
昭和五十五
年度国有財産検査報告とともに五十六年十二月十五日
内閣に回付いたしました。
五十四
年度末の
国有財産現在額は、二十八兆三千五十三億四千七百十七万余円でありましたが、五十五
年度中の増が七兆四千百七十五億八千五百十九万余円、同
年度中の減が二兆四百二億八千九百七十六万余円ありましたので、
差し引き五十五
年度末の現在額は三十三兆六千八百二十六億四千二百六十一万余円になり、前
年度に比べますと五兆三千七百七十二億九千五百四十三万余円の
増加になっております。
また、
国有財産の
無償貸付状況につきましては、五十四
年度末には、四千四十七億八千九百六十一万余円でありましたが、五十五
年度中の増が二千八百十四億九千三百二十六万余円、同
年度中の減が九百五億九千三百七十七万余円ありましたので、
差し引き千九百八億九千九百四十八万余円の
増加を見まして、五十五
年度末の
無償貸付財産の
総額は五千九百五十六億八千九百十万余円になっております。
検査の結果、
昭和五十五
年度国有財産増減及び現在額総
計算書及び
昭和五十五
年度国有財産無償貸付状況総
計算書に掲載されている
国有財産の管理及び処分に関しまして、
昭和五十五
年度決算検査報告で
不当事項等として掲記したものはありません。
以上をもって
概要の
説明を終わります。
引き続きまして、
昭和五十五
年度決算検査報告に掲記いたしました主な
指摘事例について
説明いたします。
まず、
不当事項のうち、
収入に関する
指摘は、十一件、二十六億二千四百万円で、前
年度に比べて件数で六件、
金額で八億四千四百万円それぞれ
増加しております。
指摘金額が
増加いたしましたのは、大蔵省の
租税徴収に関する
指摘が一
事項二億円近いものが二
事項あったことなどもありまして、前
年度に比べ五億三千万円
増加したことなどによるものであります。また、法務省の四十一刑務官署で、刑務作業製品展示即売会の
販売代金の一部三千四百万円を
歳入に組み入れないで別途に
経理していた事態につきまして、
経理紊乱として
指摘しております。
次いで、
支出に関する
指摘は、百四十二件、四十億六千四百万円となっており、これは前
年度に比べて件数で八件の増、
金額で百七十億一千万円の減となっておりますが、
指摘金額が大幅に
減少いたしましたのは、前
年度は
日本電信電話公社において超過勤務手当の
経理に関し、百八十四億四千五百万円の多額の不当
指摘があったことによるものであります。
ここで、主な
指摘事例について
説明いたします。
まず、
工事に関する
指摘が八件、六億九千三百万円に上りましたが、中でも近年著しく
減少しておりました直轄
工事における施工不良の事態が四件、三億二千三百万円と多額に上ったのが目立っております。
その主な事例について申し上げますと、
日本国有鉄道が施行いたしました在来線のトンネル
工事において、トンネルのコンクリートの厚さが
設計に比べて四分の一程度不足していたり、中には二分の一以下になっていたりして、トンネルの強度が
設計に比べて著しく不足していると認められたものが二件、二億二千五百万円見受けられました。これらは、いずれも業者の施工不良に基づくものでありますが、その瑕疵を監督、
検査に当たる
職員が見過ごしたことにより生じたものであります。
また、
工事費の
積算に関しても大型の
指摘がありましたが、一例を申し上げますと、首都高速道路公団が施行いたしております高架橋新設
工事でPC鋼より線を緊張する
工事の
積算におきまして、より線は全部で二百六十二本、一本当たりの工費は七万円弱でありますから、全体でも一千八百万円程度見込めば足りるのに、二百六十二本の総延長三千八百二十メートルという数値を、施工本数と誤認し、これに単価を乗じましたため、緊張工費が二億六千万円となり、
契約総額では二億八千四百万円も
割り高になったというものであります。
不当事項について、最後に日本鉄道建設公団の事例を申し上げます。
日本鉄道建設公団が上越新幹線
工事の一環として施行しておりました中山
遂道工事におきまして、
工事中の五十四年三月に
異常出水事故が発生し、請負人の
建設機械等が埋没したわけでありますが、その
損害額の算定に当たりまして、請負人が公団に提出した埋没機械等の取得価格等を立証する書類が原資料ではなくその写しで、しかも作為されたものが半数以上もあったのに、公団では原資料と対査することなく
損害額を算定したため、一億五千八百万円が過大に支払われていたものであります。
次に、
会計検査院法第三十四条または第三十六条の
規定により
意見を表示しまたは
処置を要求した
事項七件のうち、その主な事例について申し上げます。
まず、
農林水産省の国庫
補助事業について、補助の効果が上がっていないという事例を二件
指摘いたしました。
一つは、農山漁村の自然環境を活用し、観光農業を推進する目的で、国庫補助により
実施している
自然休養村
整備事業等におきまして、
事業の成否についての十分な見通しのないまま
事業を
実施したため、中途で観光施設に関する
事業計画を大幅に縮小し、
自然休養村としての実体がなくなっていたり、観光施設等は
計画どおり
設置したものの観光客が来なかったり、施設運営についての知識経験が乏しいため経営困難となり、施設等を無断で処分していたり、ほとんど利用されていなかったりしているものが多数見受けられました。
もう一件は、いわゆる行きどまり林道に関するものでありまして、林業の生産性の向上等を図る目的で国庫補助により
実施している林道のうち、終点が地方道等に接続していないため林道以外の機能を有していない行きどまり林道百九十三路線について調査いたしましたところ、開設後五年ないし十年経過しておりますのに、利用実績が
計画の五〇%以下の路線が過半数を占め、中には三〇%以下、一〇%以下といったように、林道開設の効果がほとんど発揮されていないと認められる不適切な事態も相当数ありました。
このような事態が発生している原因について検討してみましたところ、両事例とも主として
計画段階に問題があるわけでありまして、
事業主体では国庫
補助事業としての採択を願う余り、事前に的確な調査検討を行わないまま地域の実情から遊離した
計画を策定して
補助事業として申請し、また、これを審査し指導する都道府県や
農林水産省の側においてもその機能が十分発揮されていないことによると認められましたので、今後の
事業実施に当たっては、適切な
事業計画の策定等を確保するため抜本的な対策を講ずるなどして、補助の効果を上げるよう求めたものであります。
次に、
日本電信電話公社において、電話交換機設備の
設置及び
利活用が適切でなかったという事例について申し上げます。
公社では、電信電話施設の整備拡張を図るため多額の設備投資を行ってまいりましたが、本院で、二千二百二十七局に
設置されている交換機設備について
検査いたしましたところ、百五十四局に
設置された端子のうち、
設置費にして百二億円に上る四十万端子は、少なくとも十年以上は
使用されない過剰設備として遊休することが判明いたしました。しかも、加入者の回線が設備に分散して収容されているため、あいている端子を、端子が不足している他の局に転用しようとしてもそれができない状況にありました。これは、電話の普及率が高まり、加入電話の積滞が解消した五十二
年度以降も、
設置計画の見直しを行わず、従前の旺盛な需要予測に基づいて設備を
設置したこと及び長期間空き設備が生ずることが判明した際にこれを撤去転用して
利活用を図るべきところ、その配慮を欠いていたことなどによると認められましたので、早急に交換機設備の
設置の適正化及び過大設備の
利活用を図るための体制を整備し、建設投資の効率化を図るよう求めたものであります。
次に、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項十六件のうち、その主な事例について申し上げます。
まず、
農林水産省の
水田利用再編奨励補助金の交付に関するものでありますが、この
補助金の要綱、要領の
規定が適切でなかったため、建設省の
補助事業である
土地区画整理
事業によって盛り土
工事が施工され宅地化された旧
水田等造成についても、かつて水田であったということだけで奨励
補助金を交付しているものが三百七十九万平米分、一億九千五百万円ありましたので、適切でないと認め
指摘いたしましたところ、
農林水産省では、五十六
年度以降このような
水田等に対しては奨励
補助金を交付しないよう改めたものであります。
次に、郵政省の
定額郵便貯金契約に係る
貯蓄奨励手当の
支給に関する
指摘について申し上げます。
郵政省の
定額郵便貯金は、預金者ごとの貯金
総額が三百万円までに制限されており、この制限額の範囲内で郵便局の
外務職員が募集した貯金
契約に対しては、その
金額に応じて
貯蓄奨励手当が
支給されることになっております。ところが、本院で十七郵便局において
外務職員が募集した
定額郵便貯金のうちから九千件を抽出して、同一郵便局内での制限額超過の有無及びこれに対する手当
支給の状況を調査いたしましたところ、制限額を超えていたり、架空の名義による預入など不適正な
契約が五百四十件、七億九百万円あり、これに対して
貯蓄奨励手当が
支給されておりました。
このような事態が生じた原因について見ますと、制限額超過の有無等をチェックする態勢が不十分であったことなどによると認められましたので、その旨を
指摘いたしましたところ、郵政省では、
外務職員が募集したものについても郵便局の責任者が精細に監査し、
貯蓄奨励手当の
支給の適正化を図ることとしたものであります。なお、その後、郵政省においては自局監査を厳重に
実施しており、本院はその結果についての
報告を受けております。
以上
説明いたしました
事項のほか、
事業効果または
事業運営の効率化等の見地から問題を提起するため、特に掲記を要すると認めた
事項として五件を掲記いたしておりますが、その主な事例について概略を申し上げます。
一つは、
水田利用再編奨励補助金の一種類であります管理転作奨励
補助金に関するものであります。この
補助金は、労働力等の制約からみずから転作することができない農業者が、自己の水田を農協等に預託し、農協等はこれを第三者に転作させて、食糧自給力の向上と中核農家の規模拡大を図ることを主目的とした制度で、水田を預託した農業者に奨励
補助金を交付するものでありますが、本院で五十三
年度から五十五
年度までに交付された同
補助金のうち三万四千三百四十六ヘクタール分、百三十六億五千二百万円について調査いたしましたところ、九九・四%に当たる三万四千二百十六ヘクタール分、百三十五億八千七百万円については、第三者による転作に結びついておらず、単に農協等が保全管理しているにすぎない状況にあり、米の生産調整目的は達せられてはいるものの、この
補助金のもう一つの目的である食糧自給力の向上や中核農家の規模拡大にはほとんど寄与していないと認められました。
次は、
日本住宅公団の用地の利用及び住宅の供用に関するものであります。
日本住宅公団が購入した
土地が長期間利用されていなかったり、建設した住宅に多数の空き家があったりして、投下
資金が効果を発揮していない事態につきましては、それぞれ五十
年度、五十一
年度の
検査報告にも特記
事項として掲記いたしたところでありますが、その後も依然として事態の好転を見ていないと認められましたので、再度特記
事項として掲記いたしました。
その
内容をかいつまんで申し上げますと、五十五
年度末で取得後五年以上未利用のまま保有している
土地は二十一地区千三百二十八万平米、その取得価額は千三百九十五億円に上っており、また、新築住宅で、募集しても入居者がいないものや、応募者がいないだろうということで募集すらしていないものなど、空き家が全体で三万四千八百四十九戸、その建設費は四千二百二十八億円に上っておりまして、これらに係る管理経費として五十五
年度に十一億円を要しているほか、募集しても入居者がいない空き家による減収額は五十九億円、未募集の空き家の建設費に係る五十五
年度末までの金利は百九十八億円に達している状況でありました。
次に、雇用促進
事業団の移転就職者用宿舎について申し上げます。雇用促進
事業団が三十六
年度から五十五
年度までに建設した十一万四千二百九戸の移転就職者用宿舎の入居状況について調査いたしましたところ、移転就職者数が、多いときに比べて三分の一に
減少したこともあって、五十五
年度末における移転就職者の入居率は三二%と低く、さらにこれを五十
年度以降運営を開始した二万六千三百九十一戸について見ますと、わずか四・八%にすぎない状況であり、しかも、長くても二年間と定められている入居期間を超えて入居させているものが六七%を占めているだけでなく、十年以上の長期入居者あるいは入居資格のない入居者も多数見受けられ、宿舎
設置の本来的役割りが果たされていないと認められました。
最後に、
日本国有鉄道における貨物営業に関する
指摘についてごく簡単に申し上げます。国鉄の貨物営業に伴う赤字は五十五
年度で六千四百七十五億円に上り、国鉄全体の赤字の六四%を占めているという事実につきましては、すでに御案内のとおりでありますが、この数字のもととなった貨物営業
収入と、これに要した原価の
内容につきましては、それまで余り詳細な分析が行われておりませんでした。
そこで、私どもは
収入と原価の
内容を詳細に分析するとともに、
収入が伸び悩んでいる原因や原価を低減できない原因についても具体的事例に即して検討いたしてみたわけであります。その結果については
検査報告に詳細に記述いたしておりますが、結論的に申し上げれば、他の輸送機関との競争下においてこれ以上の
収入増を図ることはきわめて困難であり、貨物営業の収支を均衡させるためには経営規模を貨物輸送量に見合ったものにすることなどにより、原価の低減を図ることが緊要であるということであります。
以上申し上げました事例は、多額の国家
資金を投じて
実施された
事業の効果が発現していなかったり、公企業の経営が非効率で巨額の損失を生じている事態を、
検査結果に基づく計数をもってきわめて具体的に
指摘しているものでありまして、
事業を取り巻く諸般の情勢などから見て事態の打開は容易でないわけでありますが、この打開策について各方面においても十分御検討をいただきたいということで問題提起をいたした次第であります。
以上、概括的ではありますが、
昭和五十五
年度決算検査報告の主な事例について
説明いたしました。