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1983-04-26 第98回国会 衆議院 議院運営委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十六日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 瓦   力君 理事 山崎  拓君    理事 北川 石松君 理事 鹿野 道彦君    理事 小里 貞利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 渡辺 三郎君 理事 山田 太郎君    理事 西田 八郎君       狩野 明男君    北口  博君       北村 義和君    古賀  誠君       近藤 元次君    桜井  新君       野上  徹君    保利 耕輔君       川本 敏美君    清水  勇君       渡部 行雄君    東中 光雄君       甘利  正君  委員外出席者         議     長 福田  一君         副  議  長 岡田 春夫君         議     員 広瀬 秀吉君         議     員 山田 太郎君         議     員 西田 八郎君         議     員 東中 光雄君         議     員 甘利  正君         事 務 総 長 弥富啓之助君     ───────────── 本日の会議に付した案件  議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案田邊誠君外九名提出決議第三号)  回付案の取扱いに関する件  本日の本会議議事等に関する件      ────◇─────
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  田邊誠君外九名提出議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎拓君。
  3. 山崎拓

    山崎(拓)委員 議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案に対しまして質疑を行いたいと存じます。  本件は、政治倫理に関する案件だと言われておりますが、もとより政治倫理は重要でございます。政治倫理につきましては厳粛に対処すべきものであり、かつまた政治倫理に対する国会としての自浄作用は、これを否定すべきものではないということに関しましては、過日わが党の鹿野理事から意見として申し述べたとおりでございます。  しかしながら、わが国はいやしくも法治国家である。本決議案法理論上あるいは法律的に問題があるということは幾たびか御指摘を申し上げてまいったところでございますが、そういう決議案取り扱いに関しましては慎重でなければならない。果たして決議案提出という手段をとりまして、この政治倫理の問題について究明を行っていくということはいかがなものかというふうに考えるわけでございます。  たとえば、提出者とわれわれとの間には、国会議員身分に関する憲法上の認識につきまして大きな隔たりがございます。  改めて申し上げるまでもなく、立憲政治の第一歩は、まず憲法精神を正しくとらえ、法律手続を遵守することから始まると考えるわけでございます。でございますから、政治情勢は常に流動的でございまして、かつ多岐にわたるものでございますが、その中でわれわれ議会人は常に冷静な議論をやっていかなければいかぬ。国民のいわば情緒的な世論の高まりということもございましょうが、そういう世論を誘導してはなりませんし、また、その世論に振り回されてもならない。いやしくも法治国家における政治におきましては、この法律を遵守する、そういう一貫した精神が尊重されなければならないし、擁護されなければならぬ。そういう観点から、私はこの決議案提出という手段につきまして大きな疑問を呈したいと考えておるわけでございます。  特に三月二十五日、私ども参考人意見聴取を行いました。その日、参考人意見を承りましてその感を特に深くいたした次第でございます。  お二人の参考人をお招きいたしましたが、お一人は松本参考人、この方は最高裁の判事までお務めになった多年にわたる豊富な経験を有する法曹界の、いわば非常に権威ある方でございます。この松本参考人冒頭にこのように述べておられます。「まず、結論から先に申し上げますと、私は、このような辞職勧告決議案提出せられることには反対であります。絶対に反対であります。」こういう陳述をなされたのでございます。そして、その反対される理由につきまして種々陳述がございました。  これは後ほど、この御指摘につきまして細部にわたって議論を進めてまいりたいと考えるわけでございますが、このように権威ある参考人から、絶対に反対である、こういう御意見が開陳せられたということにつきまして、私どもはこの御指摘を謙虚に受けとめるべきではないかと考えるわけでございます。  確かに、もう一人の参考人星野参考人の御意見の開陳も承ったところでございますが、これは後ほどまた議事を進めながら御指摘を申し上げますけれども、私どもに言わせますとかなり陳述に矛盾がございました。これは後ほど明確に御指摘申し上げたいと思うのでございますが、そういうことでございまして、そういう法理論上の観点から、この決議案取り扱いにつきましてはきわめて慎重を要するものである、法治国家として慎重を要するものであるということを申し上げます。  そのような観点から、きょうは、各党共同提出でございまして提出者がおそろいでございますが、ここはどなたに御回答いただくかということになりますと、やはり野党第一党の社会党を中心に私ども質問を申し上げ、御回答をいただければ幸いではないか、かように思っております。  まず、私の申し上げましたことにつきまして広瀬理事の御意見を承りたいと思います。
  4. 広瀬秀吉

    広瀬議員 いま山崎理事から、議員田中角榮君に対する辞職勧告決議について、提出者、これは野党こぞって提出をいたしておりますので、その代表として私に、こういうことでございますから、ただいま御質問のあった点についてお答えをいたしたいと思いますが、なお、私の答弁について、共同提出者皆さんの中で、私も補足的に答弁をしたいという方がある場合には、その答弁も当然あってしかるべきだろう、こういうことを前提にしながら、私からいま御質問のあった点についてお答えをいたしたいと思います。  さて、いま山崎理事が、この問題について日本法治国家であるということを言われまして、さらにまた、憲法における議員身分というのは厳しく保障されているという問題、したがって、それに反するようなこの種の決議を出すのはおかしいではないか、特に前回この委員会においでをいただきました松本参考人の御意見は明確にそういう趣旨ではなかったか、こういう質問であります。  私どもは、今日、日本国会は、憲法において明確にされておりますように国権最高機関である、しかもそれは憲法前文において「そもそも國政は、國民嚴肅信託によるものであつて、その權威は國民に由來し、その權力は國民代表者がこれを行使し、その福利は國民がこれを享受する。これは人類普遍原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」という規定があるわけでありますが、こういうものが今日の日本政治の根本といいますか、性格をきわめて明快に決定づけている主権在民国民主権主義、これはしかも人類普遍原理である、こういう立場が鮮明にされておると思うわけであります。  したがって、議員身分を失うということは、憲法法律で定められた一定の要件があるわけでありまして、それ以外は職を辞さなくてもよい、こういうことはなるほどそのとおり規定されておるわけでありますが、しかし、いま申し上げたように、この辞職勧告決議というものは、われわれ国権最高機関としての国会を構成するメンバーとしては、特に内閣総理大臣時代においての容疑ということでいまその疑惑が問われておるわけでありますから、一般公務員、こういう人たちと同じような取り扱いをさるべきものではないのではないか。特に最高機関メンバーであるということは、過ちを犯さない、特に犯罪などというものは犯さないということ、そして政治倫理道徳というようなものはびしっと身につけて行動しておるということが前提にあるだろうと思うわけであります。  だからこそ、そういう身分保障もある。これは法律的には不逮捕特権であるとか、あるいは免責特権であるとかいうような特権を確かに享受をしている。そしてまた、衆議院の解散であるとかあるいは資格争訟の問題であるとか、他の院の議員になったとか、皆さんもそういう八つくらいの事項を挙げておられますが、そういうもの以外は強制的にその職をやめるというようなことのないような身分保障もされておるということでありますけれども、みずから意を決してその政治的な責任なり道義的な責任なりというものを感じておやめになることは自由なのであって、それを田中角榮君はなさらなかったということだ。国会最高議決機関メンバーとしてそれだけの厳しい道義的責任を持つということを言われている、そういうものとして最後政治的道義的責任を、これは彼の内心の問題、良心の問題ではあるだろうけれども、この決議によってわれわれが同僚としてそれに一定インパクトを与えるということは、むしろ最高議決機関におけるわれわれの議員という立場において当然のことではないか、こういう立場を持っているわけであります。  したがって、そういう意味では、特権はそれなりの責任義務というものを持つはずでありまして、先ほど読み上げました憲法前文における精神内心から呼び起こしてやめていただく、そういうように持っていくということでありますから、これはまるきり強制を伴うものではない。まあ一種社会的強制であろうというようなことを皆さんも言われるわけでありますが、そういうことではなくて、田中議員内心政治的道義的責任を、心を揺るがして、そういう方向やめていただくようにしたい、こういうのがわれわれ同僚議員としての一種責任でもあろうか、こういう立場で私どもはこの決議案提出しているという次第でございます。
  5. 山崎拓

    山崎(拓)委員 ただいま広瀬理事から各党代表して提出理由説明がございましたが、私はいまのお話を承りまして、まさにこの決議案問題点はたくさんあるということを痛切に感じたわけなのです。本日質問通告をいたしまして、大体質問の要旨を七、八点先にお伝えをいたしましたが、それはすべてこの決議案憲法上、法律上の問題点でございます。しかるに広瀬理事お話は、そのうちの一部を御自身がお示しになった、そういうふうに私には感じられてならない。  まず第一に憲法前文をお取り上げになったわけでございますが、確かに日本国憲法前文冒頭に、「日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、」と記してございます。さらに、主権国民に存することを宣言して、「そもそも國政は、國民嚴肅信託によるものであつて、」と明記してある。この点を引用されたのでございます。そして第十五条では、公務員を選定することは「國民固有の權利である。」また、四十三条では、「兩議院は、全國民代表する選擧された議員でこれを組織する。」と規定してございます。つまり、わが国国民主権主義にのっとりまして議会制民主主義をとるものであるということを宣明しているわけでありますが、そのことは、国会議員身分選挙によってのみ取得できるものであることを明示しているというふうに考えるわけです。  こうした憲法規定から得られる結論は、主権在民わが国における民主的議会制度におきましては、国権最高機関を構成する国会議員は、国民固有権利である公務員の選定、罷免権に基づき、国民によってのみ選出され、罷免されるものであるということであって、国民の直接的な意思を離れて、すなわち国会議院といえどもこれを行うことはできないとするのが、ごく普通の法律解釈憲法解釈になるのではないかと考えるわけでございまして、まずその点をお伺いしたいと思います。
  6. 広瀬秀吉

    広瀬議員 どうも自民党さんの御質問ですが、われわれは罷免をするということを直接的に、ストレートに、端的に言うておるわけではありません。  先ほども私、少しくどいくらいに答弁をしたわけでありますが、辞職をさるべきであるという国民世論、これはやはり主権者たる国民であります。この憲法前文でも言われる国民主権主義の、その最高主権国民が持っておる。その国民から選ばれてきた議員が、非違にわたる事項がある、法に触れるような容疑をかけられているという場合に、これは昔の中国の古いことわざであり、われわれも子供時代から教えられていることでありますけれども、「李下に冠を正さず」と言う。まさに国士たる国会議員最高議決機関構成員としては、そのくらいの倫理観政治道徳政治責任というものを感じてしかるべきものであろうと思っている。それが、絶えずわれわれのよって立つ一番大きい根底にあるわけであります。  しかも、いま十五条を引用されました。公務員罷免権は、主権者たる国民が持っている。そのこと自体、余り論争するつもりはありませんけれども、その主権者から選ばれているわれわれは、国民を直接的に代表する議員なのであります。これは全国民代表する議員になっている。そういう立場から、その国会の中においていろいろ機能があります。唯一の立法機関であるということを初め、財政的機能もあるし、あるいは総理大臣を選出する使命も衆議院にあるし、そのほかいろいろなものがあります。  しかも、その権利はいろいろ決められておるけれども国会議員義務なり政治的責任のあり方というようなものについてはあえて書かない。もちろん、国会の自律的な権能として、規則の制定あるいは国会法制定などによって、無礼の言を用いてはいかぬとか、会議秩序を乱してはいかぬとか、院の秩序を乱してはいかぬとか、そういう制約をわれわれ自身で課しておることは事実であるわけです。  そういうもの以外に、われわれ国会は、先ほど申し上げたようにやはり国権最高機関であって、もう議員というものはだれからも非難を受けないような、国民からの厳粛な信託を受けてこの議場に来ておるわけであります。それだけに、国民に直接的に最高度政治的道義的責任を負っている。その人類普遍原理の上に立っている。こういうものをしっかり身をもって体現をしているのだという前提があるわけであります。  今度の場合のように、現職総理大臣時代事件で、破廉恥罪とも言うべきいわゆる受託収賄罪に問われるような事態が起きた場合には、国会みずからが——本来私は、国会で取り上げる前に、実は与党の皆さん同僚として、真に議員田中角榮君の立場を十分考え、そしてまた議員としてのあるべき姿というものをやられるならば、今日、政党政治でありますし、その政党政治中心にする議院内閣制をとっているわけでありますから、それは政党自体でむしろ自浄作用を、自律的な立場において自浄作用を発揮して、おやめなさったらどうですかというようなことをやられるのが当然なのであって、それすらもやられないというところに、われわれは国会みずからが国権最高機関として、自律的自浄作用というか、みずからを清める以外にないのです。  先ほどあなたがおっしゃったように、みずからを清くする、みずからを憲法前文立場においてやるという立場で、議員辞職されることをわれわれは期待しておった。そして多くの国民が期待しておった。世論調査によれば国民の七五%が、そして自民党を支持する人だけについて調査をしても、その六九%が田中さんはおやめになるべきであるという主権者の声であります。神の声、天の声と言うてもいいだろうと思います。  そういうようなことで、従わないというので、これはやはり個人の問題である、内心の問題である、こういうようなことを松本参考人ども言われました。これは個人が決するであろうと中曽根総理大臣も本会議場答弁もされております。あるいは委員会答弁をされております。その内心の問題を、彼自身がそういう形で天下に表明をし、政治的道義的責任を明らかにしていただけないので、われわれはその内心に若干の揺さぶりをかけ、インパクトを与えて、それでおやめいただいたらどうですか。そのことがロッキード事件によって、田中議員受託収賄というきわめて衝撃的な事件国会決議においても、国民に与えた衝撃は甚大である、そういう表現を使った国会決議などというのはまさに異例のことである。そういう状況でありますから、そういう立場から私ども田中議員に対して、内心の、良心といいますか、政治的道義的責任の深奥にある最後の決は御本人判断されるだろうというならば、その判断にいささかでも寄与する、そういうような立場でわれわれはこの決議案を出しておるわけでございます。  辞職勧告なのであります。これは法律強制力を少なくとも伴っておりません。罷免というようなことではないわけであります。それを十五条を引用されて言われるということについては問題であろう。私どもはそういう議論は受け入れることはできません。提出者としては、いま申し上げたような立場提出をしているということを、深い理解質問者もしていただきたい、こういうように思うわけであります。
  7. 山崎拓

    山崎(拓)委員 いま広瀬理事の御答弁を伺いまして、私はこの決議案に対する考え方が大変誤っておると申しますか、決議案に対する認識が浅いと申しますか、そういう印象を強く持つわけです。  まず第一点は、公務員罷免権国民固有権利である。われわれ国会議員国民代理者として、(広瀬議員代理者じゃない、代表者です」と呼ぶ)代表者として、国民固有権利を代行する権限を与えられている。だから公務員たる国会議員罷免する権限もまたわれわれに与えられている、そういうふうな論理飛躍があるのではないかということが一つ。(発言する者あり)それから、直接選挙によって選ばれた国会議員身分のことでございますから、その点は論理飛躍であるということを私は明確に申し上げておきます。  第二点は、これは冒頭におっしゃられたことでございますが、国会議員誤りを犯さないということを前提としておっしゃった。それは憲法で確かに国会議員身分を保障されている。確かに国会議員罷免する場合には、懲罰の場合あるいは資格争訟の場合、いずれも三分の二の多数を必要とするというような規定を引用されまして、身分は保障されている、しかしながら、この身分保障は、その前提誤りを犯さないということがあるのだというふうにおっしゃった。そうしますと、これは現在裁判が進行中でございますが、この裁判はすでに有罪であるということを予見してというか、前提として議論をお進めになっている。そういうふうにしか考えられない。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そういうようにとれるわけです。近代刑事訴訟法原理によれば、とにかく確定判決が出るまでは、被告人は無罪の立場にあると推定されるということは、釈迦に説法でございますが、よく御承知のとおりです。でありますのに、それを御承知でありながら、誤りを犯したという前提議論をお進めになっている。憲法身分保障誤りを犯さないということが前提だ、そういうふうにおっしゃるのでございますから、その点非常におかしいのではないか。  第三点は、これは政治家良心の問題であるということをしばしばおっしゃっている、そのとおりでございます。しかし、政治的道義的責任をおとりにならぬから、おとりになるように一定インパクトを与えるのだ、その決断にいささか寄与したい、こういうお話であったわけでございますが、その場合の政治的道義的責任というのは一体何なのか。誤りを犯したから政治的道義的責任をとれ、何ら根拠なしに政治的道義的責任というのはないわけですから、おっしゃるようにやはり誤りを犯したという前提にお立ちになっているのではないか。そうすれば、これは立法府が司法府の判断をすでにやろうとしている、そういうふうにしかとれない。それは重大な立法府の行動の誤りじゃないか、私はそういうふうに考えるのです。  第四点は、強制を伴うものではないとおっしゃいましたけれども、ただ一定インパクトを与えるだけであるならば、たとえば各党代表者の方が代表質問の中でその趣旨のことをいままでもおっしゃってきたし、今後もおっしゃればいいのではないか。法律上のあるいは憲法上の問題を伴うことになる決議案という形をなぜとらなければならないのか、私はそのことを言っているわけであります。  決議というのは強制ではないというふうにおっしゃるが、もしそうであるとするならば、決議が仮に成立したといたしまして、その場合にやめるかやめないかは本人の勝手だ、こういうことになるわけですね、その論理からいきますと。どうなんですか、それは、もし成立をすれば当然おやめになるべきだとお考えになるのか、あるいはやめるかやめないか、これは本人の自由だというふうにお考えになるのか。決議の意義について一体どうお考えになっているのか。  決議国是ともいうべきものであるということを、まさに本国会において、お亡くなりになりましたが平林前書記長質問なさったではありませんか。国是ともいうべきものであるというふうに御指摘をされながら、しかし、決議案が仮に成立したとしても、やめるかやめないかは本人の自由だという立場をおとりになるのですね。決議案取り扱いをそのように軽々にお考えになっていらっしゃる、(「違う、違う」と呼ぶ者あり)そういうふうに私は感じたわけでございまして、その点お答え願いたいと思います。
  8. 広瀬秀吉

    広瀬議員 どうも質問者は、われわれの本旨というもの、提出した真意というものを故意に、わざわざ曲解をしながら質問しているような気がして実はならないわけであります。これは大変非礼なことかもしれませんが、そのようにしか受け取れないわけでありまして、私どもは決して罷免を要求しているものではない。  また、そういうことであるならば決議ということでなぜ出したか。決議を出すこと、これは提出をし、そして全会一致になれば、国会意思としてまさに国是ともいうべき重みを持つことになる。これは大体、国会の常識として、決議というのは全会一致をもって行われるものであるということが慣例でもあるわけでありますから、皆さんに御賛成いただいてこの決議成立をいたしますならば、それだけの重みのある、将来に向かって政治家のあるべき姿、政治的道義的責任のあるべき姿を示す、国是ともいうべき決議としてすばらしいものになるであろうと、私ども確信を持っておるわけであります。  しかし、本人がそれに従わなかったということがあっても、それは政治における汚点として永久に残るであろうということになるだろう。それ以上われわれは、強制的に罷免だとか、強制的に首を切るんだとか、除名をするんだとかいうことを何にも求めているわけではない。少なくとも政治的道義的倫理というものは、政治家はかくあるべきであるというこの決議が、もし皆さんに御賛成いただいて通るならば、これはすばらしい、日本議会史上まさに名決議である。国是以上に、むしろ大変りっぱな決議であろう。これが憲法の新精神憲法がよって立つ土台である。私は、前文はやはり憲法土台を宣言している規定だというように思います。  国民主権主義、その国民が求める方向に従って決議皆さんはいまのところ反対をされているようでありますけれども、これに賛成をいただいたら、これは議会制民主政治のすばらしい発展として位置づけられるものであろうし、国民はそのことを大歓迎するであろう、そういうように私ども確信をいたしておるわけでありまして、特にそういう意味理解をしていただぎたい。  決議強制力を伴わないというけれども、それは社会的強制力というものを私どもも否定はいたしません。しかし、田中さんがその決議に従って辞職をされるという場合には、やはり田中さんの本意というものが七割、八割——これは数字で示すことはできないにしても、内心田中さん自身が決断をされることである。その手助けになる決議というものはあってしかるべきであろう。  この種の問題が発生して全国民政治的信頼を著しく害した。政治不信に非常に大きな火をつける結果になった。今日、国民はかなりこの問題については重大な関心も寄せているし、どうも政治家のやることは余り信用できないぞ、こういう政治不信というものがロッキード事件を契機にして非常に起きていることはもう確実であります。そういうことが先ほど申し上げたような新聞社の世論調査の結果になってもあらわれていると私は思っておるわけであります。  そういう点でいまの答弁にしたいと思いますが、特に山崎理事は、議員国民代理者と言う。代理者ということではなくて、これはあくまで代表なのであって、全国民代表である。選挙区という小さなところから選ばれてはくるけれども、選ばれた以上は全国民代表するものであって、代理というものはすなわち委任、命令の関係に立つ。人から委任されていることだけやればいいのだ、命令されたことを忠実にやらなければいかぬのだ、そういうことであってはいけないわけであって、あくまで全国民代表者であるというその点をお間違いのないように、これはひとつお互い注意をしたい、こういうふうに思うわけであります。
  9. 山崎拓

    山崎(拓)委員 私が御質問申し上げた数点の中で、一点だけしぼってお答えがあったと思いますが、この点から入っていきたいと思います。  最後におっしゃいました、小さい選挙区から選ばれたけれども国民代表するものである、全くそのとおりなんですね。でありますから、これは逮捕、拘禁、起訴がございました後、選挙が二回か三回かあったと思いますが、田中議員は全国民代表するお立場に立っているということも厳然たる事実であるということを、いまお話がございましたのでちょっと指摘をしておきたいと思います。  そこで、いま決議の話がございまして、決議全会一致前提とするという話で、国是と言うべき重みになるというふうにみずからおっしゃったわけですね。すばらしいものであるという文学的な表現でもおっしゃった。そういう国是とも言うべき重みになるということは、一体強制力を伴うものであるのかないのか。  たとえば、二年ほど前に行われました武器輸出に関する決議、これに対しまして、今回対米武器技術供与の問題が起こったときに、国会決議重みはどうかということについて本国会において議論があった。さっき私が御紹介申し上げましたように、亡くなられました平林先生が国是という言葉をお使いになった。決議重みについては、先生の党におかれましても、あるいは各党におかれましても、恐らくそのようにお考えになっている。そういう重い決議強制力を伴うのか伴わないのかということなんですね。一体武器輸出禁止の決議というものはそれほど重みがないものなのか重みがあるのか。これはどうしても政府に守ってもらわなければいかぬというような強い御発言であったはずでありますが、それはこの問題に引きかえて言うならば、いわば強制力という表現になろうかと思いますけれども、そういう本質を持っているものではないのかということについて、私は御質問を申し上げたいわけです。  昨年の八月十一日に林参考人、慶谷参考人から、この委員会におきまして意見を聞いておるわけでございますが、その中で、改めて御紹介申し上げるまでもないが、   院として意思決定をされる以上は、それが法的な拘束力は仮にないにいたしましても、実際にはその決議どおりの実行がなされることを強く期待されて行われるものだろう、そういう気がいたすわけでございます。   と同時に、これはやはり院議で決めた以上は、いま申しましたように法律的な拘束力は仮になくても、政治的にあるいは社会的にあるいは事実的な圧力というのは相当強いものだろうと思うわけでございます。この相手になられた議員も、そう簡単に無視することはできないような性質のものであろう、また、そういう意図で行われるものだろう そういうふうに意見が述べられている。さらに云々されまして、「相当重大な理由があるということでなければ軽々にこういう決議案議院で議決すべきものではないのじゃなかろうか、」そういうことで、この点に関する林参考人の一つの結論を言っておられるわけであります。慶谷参考人も同様でございまして、   法律的にはともかく、社会的には、もしハウスにおきましてそういう決議がなされた場合におきましては、法律的拘束力はなくても、事実上の拘束力は非常にあるし、その決議に従わざるを得ないということになるかもしれないと考えております。したがって、辞職決議案を決めるということは、法律的には問題ないという意見もあるかもしれませんけれども、しかし事実上の拘束力はある、そういう場合におきましては、やはり憲法とかあるいは法律趣旨から見まして、それが妥当であるかどうかは、そこに問題を生ずる余地がある ということを指摘されておる。  私は当時おりませんでしたが、広瀬理事はおられまして、あるいはその他の理事もおられたと思うのでありますが、林参考人、慶谷参考人の御意見をお聞きになりまして、この案件は佐藤議員辞職勧告決議案に関しまして述べられた意見でありますけれども、同じようなことになるわけでございまして、ですから、この決議案の持っているいわば実質的な強制力ということについてどうお考えになるのかをお伺いしたいと思います。
  10. 広瀬秀吉

    広瀬議員 実質的拘束力はあってほしいという期待を私どもは持っておりますが、法的にそれが拘束性を持つものではないということは割り切っているのであって、仮にこの決議皆さんの御賛成をいただいて出たとしても、田中角榮議員がこれに従わないということもあり得るということは、われわれの決議案提出する前提にあるわけであります。  しかし、現実にそういうようなことにした場合には、そういう態度でよかったのか悪かったのかということの判断をされるのは国民自身であろう。主権者である国民自身判断をされることであって、そのことについては、私どもは明確に法的拘束力を持って除名なり罷免なりをという気持ちで出しているのではない。あくまで同僚国会議員として、田中角榮議員が負うておるべき政治的責任道義的責任ということで、これは少なくともああいう事件が天下に公表され、しかも田中さん自身総理大臣ですから、検察庁も皆法務大臣を通じて抑えておる立場の人ですよ。最高権力者としてそういう人事権をちゃんと掌握されている人に対して、検察があれだけ確信を持って出されるということで、主権者である国民のほとんどは、やはりああいう受託収賄という事実はあったのではないか、そう思っているに違いないわけであります。そういう問題が基本にあって、したがって、この国会決議でも、先ほども引用しましたけれども国民に対して甚大なショックを与えた、そしてまた、国民の中からその処理をめぐっていろいろ政治不信を招く原因にもなっている。  そしてまた今回の論告求刑の段階。このことも、求刑の段階だからやったのだというようなことは、われわれは全くこだわっていないのであって、本来はもっと早くやられるべきであったろうと私自身も思っているわけであります。この時期にたまたま一つの節目のような形で国民世論がわき上がったところで出したということはあるけれども、起訴されたから出したのだというようなことでもありませんし、現実にその拘束力というものをわれわれは期待はしているけれども田中さんが従わないというのであれば、それはもうやむを得ないしというのが、この決議案のそもそもの趣旨である。  さっき何回も繰り返して申し上げているように、田中さん自身の最終的決断、彼自身政治的道義的感覚、そういうものを促す力にはなるであろう。あるいはまた、言うならば社会的拘束力あるいは道義的拘束力というようなものがあるであろうということは考えております。しかし、そのことが憲法違反であるとか、諸法制に反しているというような考えは全くありません。これはいまの憲法体制の中で国会がやっていい問題である、こういう確信を持っておるわけであります。
  11. 山崎拓

    山崎(拓)委員 私は、いまの御発言は非常に重大な問題をはらんでいると思います。私は議論をもっと先に進めたいのですが、どうもいまの御発言を聞いていまして非常にこだわるのです。  いまおっしゃいましたように、法的拘束力は伴わない。それから、強制力を持ってほしいと期待はしているが、持っていない、そういうふうにお認めになった。そうすると、決議重みというものについて、一つの定義をここにつくる。歴史的にここで、国会決議はいかなるものであるか、いかなる重みをなしているものであるかということについて一つの前例をつくることになるわけであって、それは法的拘束力を持たないのだ、強制力を持たないのだということであって、国権最高機関たる国会における決議はそういう重みであるということでいいのか、そういう前例をつくっていいのかということを一つは申し上げたい。  それから、本人がこれに従われなかった場合には、政治における汚点を残すことになるとおっしゃった。だからその汚点を残すことになる前例をつくるということであって、もし決議がなされてそれが受け入れられなかったとする場合、仮に辞職を導かなかったとするならば、これは先生がおっしゃったように、その汚点の意味はよくわからないけれども、私なりに解釈すれば、まさに政治上の汚点をつくることになるのじゃないか。決議重みはそんなものであったかということになるわけでございます。  われわれ国会議員といたしましては、この決議がいかに憲法上、法律上問題があり、また国会自身を傷つけるものになるおそれがあるかということで、もう少し情緒的な議論ではなくて、国会の置かれました立場の本質的な重要性というものに立脚してこの問題を取り扱っていかなければならぬのではないかと考えますが、いかがですか。
  12. 広瀬秀吉

    広瀬議員 それは何かどうも、みそもくそも一緒にするような発想であって、私どもまさにいただけない論理展開であろうと思うわけであります。  私どもは、この国会決議をやる場合だって、いろいろな決議があります。一定の政策課題に対して、どうも政府がぐらぐらしておって定まるところがない。そういう場合に、国権最高機関としての国会意思を確定して、国是として問題を固めて政府にも従ってもらう。こういう意味のものもありますし、政治の倫理あるいは政治道徳の問題、こういうものについて、国権最高機関を構成するメンバーが行った汚職という問題に対して、やはり国会は自浄機能というものを発揮しなければならない。その一つの手段としてそういうものを決議をする。そのこと自体に私はやはり深い意味があるということを先ほども申し上げた。  しかし、それは従わないかもしれぬと言う。それじゃ政治的道義的問題あるいは倫理の問題については、国会は何もできないのか。してはならないという明示の規定は別にあるわけではない。国会みずからがみんなで協議をして、審議をして、そして結論に達するならば、そういう決議があっても、いささかも憲法に反しない。あるいは決議趣旨が最初からそういうものとしてわれわれは出しているわけですから、そういう決議だってあってしかるべきである。決議というものは、すべて決議という名において国是なんだという形で割り切る必要は何もないのであって、決議案ができ上がれば、それはもう国是的な意味を倫理の問題において持つ。  これは、田中角榮という一人の代議士の良心を一〇〇%ねじ曲げて辞職をなさせる、辞表を出して辞任をさせるという強制力を法的に持たせようということは最初から考えていないのであって、あくまで内心の問題としてそういう期待は持ちながらも、そしてそうあるべきが国民主権主義原理からいって当然であろう、こういう立場で言っているのであって、故平林先生がおっしゃった決議国是だという問題と何もかも一緒に扱う必要は毫もないのであって、倫理の問題に対して、政治道徳の問題に対して国会決議がまとまったということ、国民主権主義原理を踏まえて、人類普遍原理を踏まえてそういうものができ上がったということは、議会制民主政治の正しい発展のために、成立することだけでも大いに貢献するところがあるであろう。そしてそれに従うか従わないかは当該議員良心の問題であり、その良心に、先ほどから何回も繰り返すけれども同僚として助言をし、期待をするというようなことになっておるわけでありますから、それを混同してこじつけの議論を展開されても、私どもはそれに対してこれ以上答える気持ちはありません。
  13. 山崎拓

    山崎(拓)委員 この問題についてこれ以上お答えになる気持ちはないとおっしゃいましたが、それであれば私の方も留保いたしますが、この問題は非常に重要な問題である。つまり、いまおっしゃいましたことは、決議はその決議の内容によって、事柄によってその重みが違うのだということをおっしゃっていますね。武器輸出の問題の決議は重いけれども、その他の案件に関しては決議が軽いということもあり得る、そういうふうに立論なさったとしかとれないわけです。(発言する者あり)そういうことでございまして、われわれはまさに先ほど来申し上げておりますように、国権最高機関としての国会決議というものが、事柄によって重かったり軽かったり、そういうようなことはあり得ないことだと思うのです。ですから、この点はこれ以上お答えにならないということでありますから、私の方も最大の疑問点として質問を留保させていただく。先に進めないと、限られた時間でありますから、次の質問に移ります。  先ほど来おっしゃっているように、受託収賄の事実があったのではないか、そういうふうに言われましたが、そういう予見のもとにこの決議案提出されたのか。そういうことを前提に、冒頭にもおっしゃいましたが、国会議員身分保障は、憲法にしろ法律にしろ誤りを犯さないという前提によってなされているものである、こういう御意見もございましたが、そういうさまざまな御意見からいたしますと、要するにそういう事実があったということを前提としてこの決議案が出されたものであるかどうか、そういうことについて、簡潔で結構ですからまずお答え願いたいと思います。
  14. 広瀬秀吉

    広瀬議員 そういう前提を置いておりません。これは裁判が確定するまでは、確定判決が出るまでは無罪の推定を受けるという国連の世界人権宣言であるとか、あるいは刑事訴訟法の学説としてそういうことが確立されておるわけでありますが、そういう問題について、われわれは有罪という判決が出るのだということを前提にしておるわけではない。またそういう事実があったんだということを前提にしたわけではない。しかしながら、現実の問題として国民がどう考えておるか、主権者たる国民立場に立ってわれわれは考えているということであります。これは憲法前文をしばしば引用しておりますけれども主権者である国民からわれわれは信託を受けている。その人が衆議院から選ばれて最高公務員、国政の頂点に立たれた権力者であった、その間における容疑が少なくともあるということは前提にしております。  そういうことですから、彼自身がどのようにでも——どのようにでもというのは少し言い過ぎかもしれぬけれども、政府が人事権を持っているわけです。これは検察も検察行政でありますから、その行政府の長が田中角榮さんだったのでありますから、その時代の人事権を握られている検事が、六年間かかって裁判の席上で本人のあらゆる防御、弁護士を通じての防御、そういうようなものもあって、これはまさに進行中の訴訟でありますから、有罪だとか、事実が確定しているのだというようなことではないにしても、そういう状況を考えれば、主権者である国民は、ほとんど大部分の者が、一〇〇%に近いといってもいいのではないでしょうか、私はそう思うのです、そういう人たちが、やはりあのようなことがあったであろうということを、主権者がそういう気持ちを持っている。そういうものをわれわれが代表してこういう決議案を出して、政治倫理をぴしっとして、そして政治不信を解消し、議会制民主政治の根幹を守っていこう。検事自身も、検察ファッショとかいろいろあるけれども、検察ファッショなどというのは、時の権力者がその相手に対してファッショ的なことをやるのが検察ファッショであって、検察自体がその時の権力者の罪状を云々するというのは非常に勇気のあることだし、民主政治土台の中で、三権分立の中で、司法権はやはり健在であるというようなことも思わせるわけでありまして、そういうような立場から、私どもはそういうものを前提にしているわけではないけれども主権者である国民は皆そう思っている、そういうものを代表してこういう決議に及んだのである、こういうように御理解をいただきたいと思うわけであります。
  15. 山崎拓

    山崎(拓)委員 いまの御答弁も、とうてい私どもからいたしますと納得できない。非常に論理に無理があるのではないかと私は思いますね。(発言する者あり)辞職勧告決議案は、要するにそういう犯罪が行われたという事実を前提にしていないということをいま言われましたね。それは裁判が進行しているから、被告人立場はいまは無罪と推定されるのだということをお認めになった。それであるなら、現在では無罪と推定される立場にあるそういう被告人たる田中議員に対しまして辞職勧告決議案を出された。政治的道義的責任だということでお出しになった。では、その政治的道義的責任の根拠は一体何なのですか。本人は無罪と推定される立場に現在はある。その者に対して、政治的道義的責任を問うのは何だということになる。そういうことがまず第一点。  その次に、これと相当違ったことをおっしゃったのでございますが、しかし、自分はそう思うけれども国民はみんな有罪だと思っている、そういうふうにおっしゃった。国民は思っている、これは一体法治国家においてどういうことなのか、司法の存在について一体どうお考えになっているのか。国民考えたら、それは相当イモーショナルなものもございましょう。そういうものについて人民裁判的に有罪だ無罪だと決めていくのか、こういうことになりかねないのですね。  これは司法の手にゆだねたものでありますから、司法の結論を待たなければならぬ。それはもう、大変失礼ながら広瀬先生よく御承知のとおりでございまして、たまたまそうおっしゃったから私は御指摘申し上げているのだけれども国民がそう考えているから、自分はそう考えないのだけれども決議案を出したのだ、政治的道義的責任というのは、国民がそう考えているからあるのだ、そういうふうな論理になる。(発言する者あり)だから、その辺が大変おかしい。  特に、国民考えているからということについて、私はこの際申し上げておきたいのですが、宮澤俊義博士が「日本憲法」という著書の中で次のように書いておられます。   民主主義憲法体制においては、すべての国家機関は、直接または間接に国民のコントロールの下にあるを原則とする。しかし、国家機関の職務の性質によつては、国民によるコントロールがある程度以上に直接に行われることが実際においてのぞましからぬ結果をもつこともある。そういう場合には、その職務に関するかぎり、国民による直接のコントロールを多かれ少なかれ排除することが要請される。裁判は、その重要な例である。   裁判については、国民の直接のコントロールがおよぶことは、過去の経験から見て、公正な結果をもたないおそれが多い。いわゆる「人民裁判」を考えれば、そのことは明らかである。そこで、裁判については、他の国家機関によるコントロールのみならず、国民による直接のコントロールをも排除することが要請される。 こういうふうに述べておられる。  つまり、ただいま先生が言われた国民による判断だということがいかに大きな疑問点を持っているかということを、この宮澤博士の論文は示しております。また「他の国家機関によるコントロール」ということも言っておる。ですから、もう一つの問題点がここに出てくるのですが、つまり、国会裁判の進行中に一つの判断を示すことは好ましくないという一つの立論がここにあるわけですね。そういうこと等を考えますと、この辞職勧告決議案というのは法律的に、憲法的に大変無理があるというふうに私は考えるのです。  われわれは、政治倫理の問題についていささかも否定するものではない。国会自浄作用についてもいささかも否定するものではない。しかし、これは国会決議という方法をとらなければならないのか。そういう手段をとったときに、憲政史上にもっと大きな汚点を残すのではないかということを私どもは憂えるためにこういうふうに申し上げておるのです。政治倫理の問題について、われわれ自民党各党に決してまさるとも劣らない危機感を持っておるので、自浄作用ということについても考えておるが、その方法、手段について、こういう憲法上、法律上の問題の大きい手段をとらなければならないのかということを御指摘申し上げておるので、その点についての御答弁をいただきたいと思います。
  16. 広瀬秀吉

    広瀬議員 先ほど若干答弁が不足した点は、田中角榮議員が第一回公判において被告人陳述の際に、「起訴事実の有無にかかわらず、いやしくも総理大臣在職中の汚職の容疑で逮捕拘禁され、しかも起訴に至ったということは、それだけで総理大臣の栄誉を汚し、日本国の名誉を損ったこととなり、万死に値する」、こういうことを言っているということをひとつよく考えておいていただきたい。それだけのことを言っておきながら——本来、これはもうその段階で辞職をされるべきであった、国会議員の、恐らく自民党の中にもそういう気持ちの方が相当あるのだろうと思うのです。単に国民がそう思っているというだけではなくて、少なくとも容疑というものは存在している、容疑事実がそのとおりであると断定をした立場ではないにしても、容疑があるということぐらい、これはもう野党側は全部、その点では、起訴されておるという事実からいってそういうものであるということははっきりしていると思うわけであります。  それと、いわゆる司法権の独立に対して、私どもは、干渉がましいことをしよう、あるいは現実進行中の裁判に対して何らかの影響を与えよう、こういうようなことは全く考えていないわけであります。  そこで、この司法権の独立に対しては、昭和二十三年、これは憲法ができて間もなくのころでありましたが、参議院の法務委員会で、一つの判決に対して、これは浦和地裁の判決であったのですけれども、中身は申し上げませんが、あの判決は不当であるということを決議して最高裁判所に申し入れた、こういうような事例があるわけであります。最高裁判所はさすがに、これは司法権の独立の名において拒否しますということで、当時憲法ができたばかりですから、まだ新憲法体制になじまなかった時代における事例としてそういうものがあるのですけれども、そんなことはいわゆる司法権の独立に対する国会のまさに不当干渉であって、われわれはそんなことではない。われわれがこの決議を出すことは、いま進行中の裁判に、いまの独立性を完全に保障されたと言ってもいい裁判官に対して不当なコントロールをするというか影響を与えるというか、そういうようなことには全くならないだろう、日本裁判所はそんなことで左右されるようなけちな裁判所ではない、私はそう確信をいたしておりますので、御心配御無用であろう、このように考える次第でございます。
  17. 山崎拓

    山崎(拓)委員 辞職勧告決議案提出されました根拠として、田中議員の第一回公判における被告人陳述を引用されたわけですね。確かに起訴に至ったということ、それだけで総理大臣の栄誉を汚し日本国の名誉を損なった、万死に値するものと考えたということを言っておられる。しかし、これは前提に起訴事実の有無にかかわらずということがあるわけですね。そこが非常に重要なところなんです。裁判が進行中である。もし裁判の結果、起訴事実が確定判決であれば、これは辞職勧告決議案という手段をとらずとも、被選資格を失うという法律上の規定によっておやめになるということになるかもわからないが、もし起訴事実が有無の無でありたときには一体だれが責任を負うか、こういうことになるわけですね。  それからまた、御本人はこういうことを言っておられる。それは「この事件が、自ら政界から身を引くことで済む問題ではなく、むしろ法の正当な手続によって真実を明らかにし、違法な行為がなかったことを裁判所の法廷を通じて証明することによって、新憲法における内閣総理大臣の名誉と権威を守り通さなければならない。」というふうに言っておられる。この点をなぜ引用されないのか。こういう辞職勧告決議案という、憲法上も法律上も大変問題の大きい決議案を出される以上は、ここは国民世論を誤った判断に立たせるような引用の仕方ではなくて、正確な引用の仕方をしなければならぬ。  もし仮に私の方からあえて解釈すれば、決議案提出されました根拠、それは法律的な根拠はないのだ。つまりそういう事実はなかったのだ、いまのところは推定されると言うけれども国民世論に従って自分は出したのだということであれば、その国民世論というのは、内閣総理大臣の地位にあられたということでしょう、だから、内閣総理大臣の地位にあられたゆえに、仮にそれは容疑の段階であっても政治的道義的に責任が重い、そういうことになるのですけれども、では、かつて憲政史上で同様な事件があったときには決議案は出さなかったではないか。また、現在決議案がもう一本出ておりますが、その方は内閣総理大臣という地位にあられた方ではない。普通の国会議員である。そういう場合にも決議案を出しておられるわけですね。  ですから、そういうこと等をいろいろ考えてみますと、この決議案は非常に問題が多い。私は繰り返し申し上げております。わが党は政治倫理の問題を否定しているわけでもなければ、大変重要な問題だと考えておりますし、われわれ国会議員は常に身を正して清潔、公正な政治行動を行っていかなければ、国民の支持を選挙という審判を通じて失うことになりかねないわけでございますから、その点は自重自戒していることは当然でございますけれども、しかし、この決議案の持っておる憲法上の、法律上の、あるいは法理論上の余りにも大きい問題がありますがゆえに、私はこの撤回を求めているわけでございます。  きょうは諸点から申し上げたかったわけでございますが、しかしながら、限られた時間でございまして、しかも本会議を予定されておりますし、理事会での約束の時間を大幅に経過してまいりましたので、本日の私の質問はこの程度で終わりまして、事前に通告申し上げました諸点の質問につきましては留保いたします。(「撤回を求めるのはおかしい」と呼び、その他発言する者あり)
  18. 広瀬秀吉

    広瀬議員 いま山崎理事がそういうことをおっしゃるならば、ロッキード事件の際における国会で、あの問題が発覚したときに国会決議が行われました。この中の、国民に与えた衝撃は甚大である、こういうようなことは、あなた方自身が、皆さん賛成したのですよ。そんなことをきれいに忘れてしまって、いまさら何をおっしゃるのかなと、私どもまさに疑問にたえないところであります。  もちろん私どもは、何の根拠もなしに、国民考えておるからだ——われわれ自身国民代表者ですから、そのような容疑があった場合に、その事実があろうとなかろうと、とにかく総理大臣時代の職務に関連して汚職容疑で逮捕されたということは、「罪」といった表現は田中さん御自身使わなかったけれども、「万死に値する」という非常にりっぱなおっしゃり方をなさっている。これは一つの大見識であろうと私ども思っておった。したがって、この延長線上においては当然辞職されるであろうという期待を国民は皆持っておった。にもかかわらず辞職をされない。  先ほど読み上げたほかに、私はやめたいのだけれども、後継者が出ないからやめられないのだということをいろいろなところで言われていることだってあるわけですよ。ですから、そういうことは抜きにして、われわれはやはり国会法の五十六条に従って、そういう問題について国会自浄作用、これはあなた方も認めておられる。それらのほかに、この種の問題について自浄作用を発揮する有効な方法というものは、皆さん自身、それは考えてはおると言うけれども、行動を起こされた話は何も聞かない。刑法改正なんかでも、たった受託収賄罪最高限度を引き上げたという程度のことであって、それ以外のことは、これからの汚職防止対策について、与党として、政府として、ほとんど何物も提案をしていない。こういう状況はまことに遺憾であります。  そういう点で、いま山崎拓さんが撤回を求められた。質疑の結びのところで撤回を求められるというのは、これはまさに質疑を終わった、討論の究極の発言だと私どもは思いますよ。そういう撤回を求めるというのは、一種の討論の賛否の態度、一番強い反対の態度である。そういう態度を表明されたということで、委員長、この際におきましてわれわれとしては動議を提出をしますけれども答弁としては以上で終わっておきます。
  19. 山村新治郎

    山村委員長 委員長から申し上げます。  山崎理事質疑はなお継続されるとのことでありますが、本日は、本会議及び本会議のための委員会の時間も追っておりますので、本日はこの程度でいかがでございますか。(「異議なし」「それはおかしい」と呼び、その他発言する者あり)  渡辺三郎君。
  20. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 この問題について……(発言する者あり)
  21. 山村新治郎

    山村委員長 御静粛に願います。いま発言中です。
  22. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 委員長に簡単に質問をさせていただきたいと思います。  本件の提出がされてからきのうまででもう七十六日経過をしております。二月九日に提出をいたしましたが、三月四日には趣旨説明。趣旨説明をしてからも、今日までは五十三日間。こういう非常に長期間の期日が経過しておるわけでありますけれども、この間昨日までは、わずかに三月の二十五日に参考人意見聴取が行われました。時間にして二時間足らずであります。  非常に重要な案件だと言われながら、ほとんど質疑らしい質疑も行われないままに本日に来ておる。こういう状況でありますし、これは審査方針にかかわる非常に重大な問題でありますから、質疑者が一体今後あるのかどうか。いま委員長お話ですと、山崎理事は保留をされたというふうに言われておりますけれども広瀬理事が言われたとおり、意見の最終段階で述べるべき、撤回を求める、こういうふうな発言もございますし、この問題についてはひとつ、委員長が今後の審査方針をどのように考えておられるのか、最初に明確にお答えをいただいて、その上でさらに必要があれば発言をさせていただきたいと思います。
  23. 山村新治郎

    山村委員長 本日、本会議終了後理事会を開催いたします。そしてその湯において皆様方で御協議をいただきたいと思います。(広瀬委員「ここで採決しなさいよ」と呼ぶ)  次に、瓦力君から発言を求められておりますので、これを許します。瓦力君。
  24. 瓦力

    ○瓦委員 議員辞職勧告決議案は、きわめて重要なる意味を持っております。議会政治の根幹にかかわる問題であり、議員身分に関する問題である、かように考えております。よって、さきに参考人意見を聴取するなど、本委員会は取り組んでまいりましたが、疑問は疑問として残すという形であっては、この問題について慎重なる対応を必要とするものと考えますので、委員長におかれまして各党意見を聴取されて、後刻理事会を開いていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  25. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、本日はこの程度にとどめ、本決議案の今後の取り扱い等につきましては、本日の本会議終了後の理事会において各党間で協議してまいりたいと存じます。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ────◇─────     午後零時二分開議
  26. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  まず、回付案の取扱いに関する件についてでありますが、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案が、参議院において修正され、本院に回付されてまいっております。  回付案の内容について、事務総長の説明を求めます。
  27. 弥富啓之助

    ○弥富事務総長 参議院の修正は、本法律案のうち、原案で、四月一日から施行することとなっている特別給付金を支給する旨の規定を、公布の日から施行し、四月一日から適用することとするものでございます。
  28. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、右回付案は、本日の本会議において議題とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  30. 山村新治郎

    山村委員長 次に、本日内閣委員会の審査を終了した恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について、委員長から緊急上程の申し出があります。  右案は、本日の本会議において緊急上程するに賛成の諸君の挙手を求めます。     〔賛成者挙手〕
  31. 山村新治郎

    山村委員長 挙手多数。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  32. 山村新治郎

    山村委員長 次に、法務委員会の審査を終了する予定の建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案、外務委員会の審査を終了する予定の北西太平洋における千九百八十三年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件、社会労働委員会から提出された浄化槽法案の各案件について、それぞれ委員長から緊急上程の申し出があります。  右各案件は、本日の本会議において緊急上程するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  34. 山村新治郎

    山村委員長 次に、本日の本会議議事の順序について、事務総長の説明を求めます。
  35. 弥富啓之助

    ○弥富事務総長 まず最初に、議長発議で、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の参議院回付案を緊急上程いたします。全会一致でございます。  次に、日程第一につきまして、山崎農林水産委員長の報告がございます。全会一致でございます。  次に、動議によりまして、恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案を緊急上程いたします。内閣委員会理事愛野興一郎さんの報告がございます。共産党が反対であります。  次に、動議によりまして、建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を緊急上程いたします。綿貫法務委員長の報告がございます。全会一致であります。  次に、動議によりまして、北西太平洋における千九百八十三年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件を緊急上程いたします。竹内外務委員長の報告がございます。全会一致でございます。  次に、動議によりまして、浄化槽法案を緊急上程いたします。稲村社会労働委員長趣旨弁明がございます。全会一致でございます。  以上でございます。     ─────────────  議事日程 第十三号   昭和五十八年四月二十六日     午後一時開議  第一 肥料取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)     ─────────────
  36. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。     ─────────────
  37. 山村新治郎

    山村委員長 次に、次回の本会議委員会につきましては、後刻理事会において協議いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時六分散会