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1983-03-18 第98回国会 衆議院 環境委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十八日(金曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 國場 幸昌君    理事 天野 公義君 理事 中村正三郎君    理事 畑 英次郎君 理事 牧野 隆守君    理事 阿部未喜男君 理事 有島 重武君    理事 中井  洽君       橋本龍太郎君    勝間田清一君       水田  稔君    山本 政弘君       大野  潔君    藤田 スミ君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁企画調整         局環境保健部長 大池 眞澄君         環境庁大気保全         局長      吉崎 正義君  委員外出席者         参  考  人         (三重大学医学         部教授)         (中央公害対策         審議会委員)  吉田 克己君         参  考  人         (川崎公害病友         の会会長)   大村 森作君         参  考  人         (経済団体連合         会環境安全委員         会委員)    柴崎 芳三君         参  考  人         (医学博士)         (国立公衆衛生         院長)     鈴木 武夫君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ───────────── 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   水田  稔君     川俣健二郎君 同日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     水田  稔君 同月八日  辞任         補欠選任   金子 満広君     藤田 スミ君 同月十五日  辞任         補欠選任   田村  元君     橋本龍太郎君     ───────────── 三月十日  環境保全推進等に関する請願(上原康助紹介)(第一三三五号)  同(土井たか子紹介)(第一三三六号)  同(松沢俊昭紹介)(第一三三七号)  同(吉原米治紹介)(第一三三八号)  同(河上民雄紹介)(第一三七四号)  同(山本幸一紹介)(第一三七五号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一四一七号)  同(串原義直紹介)(第一四一八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案内閣提出第一七号)      ────◇─────
  2. 國場幸昌

    國場委員長 これより会議を開きます。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日御出席いただきました参考人は、三重大学医学部教授吉田克己君、川崎公害病友の会会長大村森作君、経済団体連合会環境安全委員会委員柴崎芳三君、医学博士鈴木武夫君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人の各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人皆様には、それぞれのお立場からどうか忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、お願い申し上げます。  なお、御意見の開陳は、おのおの十分程度に要約してお述べいただきますよう、お願いいたします。その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、吉田参考人からお願いいたします。
  3. 吉田克己

    吉田参考人 ただいま御指名いただきました吉田克己でございます。  本日、課題になっております公害健康被害補償法は、その原形を求めてみますと、昭和四十年に発足いたしました三重四日市市条例に基づく公害関係等医療給付制度というのがあるかと思います。私は、ちょうどこの市条例制定時にこの問題に関与いたしまして、今日まで約二十年間その審査委員を務めてきましたので、本制度発足事情について若干触れてみたいと思います。  昭和三十年に、三重四日市市におきまして、旧海軍燃料廠を払い下げて、ここにわが国最初の大規模な石油コンビナートを建設するということが決まりました。このコンビナート昭和三十三年ごろから逐次操業が開始されたのですが、この海軍燃料廠跡地人家密集地の中でございまして、そのすぐ南側人口約三千人の磯津町がございまして、それから西側、北側に塩浜、三浜、曙町その他約二万ほどの人が住んでおられました。  当時の工場の煙突は非常に低いもので、そこから大量の排煙を出す、こういうことで、先ほど申しました既存の居住地に大量の排煙が流入するということになったわけでございます。特に南側にございました磯津町は、冬の期間、季節風の関係で風がまともに行く。それから当時は燃料重油硫黄分が三%から四%、今日では考えにくいような高硫黄分重油でございましたので、年間約七万トン以上の亜硫酸ガスが排出される、こういうことがあったわけでございます。したがいまして、磯津町の濃度はしばしば一ppm、今日環境基準日平均で〇・〇四でございますが、一ppmを再々超え、最高で二・五ppmというような非常に高い汚染がございました。これはいまから考えますと、環境アセスメント法があればこういうことは当然予測されたわけでして、こんな事態は起きなかったのじゃないかと思うのですが、その当時はそういう制度はもちろんございませんので、結果として非常に深刻な事態を引き起こした、こういうことがあるわけでございます。  この問題は、われわれの地元の問題でもございましたので、これの調査研究がわれわれの大学としても大きな問題となりまして、特にぜんそく患者が非常に多く出る、これは確かに異常な現象でございまして、これが御承知四日市ぜんそくという名前になって、当時日本じゅうを駆けめぐった、こういうことになったわけでございます。  一番事態が深刻でございましたのは、先ほど申しました磯津町でして、昭和三十八年にわれわれはこの地域住民の一斉検診をしたわけですが、異常に高率にぜんそく患者が出ておるということと、もう一つの大きな問題は、いずれも発病後三、四年のきわめて短い時期であるにかかわらず、心電図異常を来す患者が異常に多い。これは医学的に言えば、肺の障害循環器、つまり心臓の方へかなり早期に波及しておる、こういうことでございまして、一番心配いたしましたのは、できるだけ速やかに医療措置をとることが必要なのではないか、少なくとも入院加療を早急にやらないと深刻な問題になる、こういうことを感じたわけでございます。  ところが、当時は国民健康保険制度一般住民の人にとっては唯一の制度でして、これは御承知のように、当時は医療費の半分が自己負担でございます。したがいまして、入院ということになりますと、これは一般の方については長期の入院はとうてい不可能であるということで、実際には入院できる人は限られてくる、こういう問題がございました。しかし、これを放置しますと治療の時期を逸するということで、当時われわれは三重県当局に、制度的に何らかの措置がとれないのかということを再三相談いたしたわけでございます。その結果として、大学学用患者という措置なら可能だということで、重症者をわれわれの大学へ入れたわけでございますが、これが長期間継続できないということで、患者さんは退院せざるを得ないということがあったわけでございます。  それで、このことを心配しました当時の四日市市長さんからも、何らかの方法がないかということで相談を受けておったわけですが、この患者さんがじりじりふえる、したがって、便法的な措置ではもう対処できないという事情が生まれまして、当時は環境庁はございませんので、厚生省へも市長さんと一緒に再三事情説明に参ったことがございますが、いずれも解決の見通しがない、何らかの決断が必要である、こういうことになりまして、終局的には四日市市の責任において医療費を負担する、当然かなりな数になりますので、そのためには条例制定せざるを得ないということで、昭和四十年二月に医療給付条例を定めた、こういうことで、これが本制度のいわば出発点になっておるわけでございます。  この条例に基づきまして、どの方が給付に該当するのか、こういう認定を始めることになったわけですが、問題は、認定基準をどう考えるかということが大きな問題点として起こってまいるわけでございます。その結果、当時すでにわれわれの方で詳しい疫学調査が行われておりますので、そういう結果に基づきまして、まず多発しておる疾患指定する、具体的に言えば慢性気管支炎気管支ぜんそく、肺気腫、ぜんそく性気管支炎、こういうものになるわけでございますが、その該当疾患指定する、それからもう一つは、汚染が高く、かつ患者さんが多い地域汚染地域として指定をする、そして、その地域内に三年以上居住しておる人について、指定された検査機関検査を受けてもらう、その検査結果に基づいて、審査会が今度は個別の患者さん一人一人について審査をする、こういう枠組みをつくったわけでございます。  当時、すでにわれわれの方で、全市的に地域別ぜんそく患者発生状況は把握しておりましたのと、当時の厚生省の委託によります、わが国最初慢性気管支炎に関する疫学調査が終わったところでございまして、また、大気汚染、特に硫黄酸化物ばいじん等についてのデータ昭和三十五年以降ずっとはかられておりましたので、こういうものを基礎にして地域指定したわけでございます。  こういう対策は、確かにその時点では、それまで全くわが国にございません行政対策である、そういう意味ではいわば一種決断ということになるかと思いますが、現実問題としては、先ほど申しましたように、こういう異常な患者発生があって、そして、それが硫黄酸化物中心とした大気汚染と非常に密接な疫学的関係が確認されておるということ、それから、中に重症者が含まれておる、こういう点からして、このような制度を発足させるということを四日市市が行ったわけでございます。  これに対しまして、当時の市議会としては、客観的な状況から見てこれは当然であるということで一致した承認が得られたわけですが、この問題にかかわっております企業の方からは何にも意見表明はございませんでしたが、必要性はあるというように受け取っておったと判断しております。  この制度が四十年に出発しまして、一カ年で約二百五十名の患者が適用を受けたわけですが、すぐ問題になりますのは、この費用大気汚染と直接的に全く関係のない一般市費で賄われておる、こういうことがあるわけでございます。大気汚染疾病発生との因果関係については研究は進んでおったわけですが、企業側としてはもちろん承認しておりませんので、したがって、企業負担を求めることができなかったということがあるわけですが、ただ、制度必要性そのものは暗黙の了承があったわけでございまして、三年ほど後の四十三年に、その費用の半分を企業側は寄附の形で市へ出すという形に変わったわけでございます。四十五年には、御承知のように国会救済法が通過いたしまして、これとほぼ同じ制度全国的に施行された、こういうことでございます。  その後、四十七年に四日市公害訴訟判決がございまして、四日市における慢性閉塞性肺疾患の原因が、硫黄酸化物中心とした大気汚染であるということが確定したわけでございます。結果として、医療費だけではなく、全般的な補償制度が認められることになったわけですが、この判決契機にしまして、原告以外の人の間から二次訴訟という問題が急速に出てまいりまして、これが全国に波及する、こういうことがあったわけでございます。企業の方では、同じ磯津町域に住んでおる人については判決と同じ和解を行いまして、そして、それ以外の地域患者につきましては、約十億円の資金を拠出しまして、そして四日市公害協力財団というものをつくる、これでもって県が仲介に当たってほしい、こういう再三の申し出がございまして、これが幾つか曲折を経ながらもそういう形で落着をする、いわば財団制度というものが設けられたわけでして、これによって事態解決を見る、こういうことになったわけでございます。これが今日の補償法及びその中に置かれております協力財団の源になっておるわけでございます。  昭和四十九年に現行の補償法が実施されまして、中公審でこの地域指定をどういう形でやるかという問題が出たわけでございます。私、たまたまこの答申責任者としてこれをつくったわけでございますが、この法の趣旨に沿いまして、地域汚染と、その地域での健康障害の実態、この二つを踏まえて行う、こういうことを決めて答申いたしておるわけでございます。この二つといいますのは、四日市の疫学的事実関係からも見られますように、お互いに並行して相関したものでございます。ある意味では、一方がわかれば一方がある程度推定できる、こういう関係にあるわけでございます。しかし、地域指定においては、この両者を一緒に検討して決めるのだ、こういう趣旨のことを申しておるわけでございます。  ここでしばしば問題になりますのは、疾病多発ということがどういうことなのか、これが今日でもしばしば議論に上るわけでございますが、ここでこの問題を若干考えてみますと、疾病疾病として顕在化してくる、こういうことは実はいろんな複雑な要素があるわけでございまして、たとえば社会保険の条件であるとか、その地域社会経済的因子とか、医者そのほか医療者の側がどういう考えを持っておるかとか、そういういろんなことが入り込むわけで、必ずしも一定するわけではございません。そういう点から申しますと、疾病多発ということは、むしろそういう個々疾病をとらえるより、地域における症状程度というものを統一的に捕捉する方がよりベターではないか、こういうことが考えられます。これが現在地域指定に当たってとられておる考え方でもあるわけでして、たとえばBMRC問診票を使うというようなことも、そういう地域住民健康障害の把握という点では一番目的に適合しておる、あるいはほかにかわるべき手段が果たしてあるのか、こういう問題があるわけでございます。実際に、個々患者さんについてどう考えるかということは、個々患者審査という問題がこの制度の中に含まれておりますので、当然ここで何らかのチェックがあるはずである、こういうふうに考えられるわけでございます。  この制度は、いままで申しましたように、もともと四日市における危機的な状況に対応するためにできたものでして、その時点では、企業側でも非常に強い要望があったということも事実でございます。それから、大気汚染指定疾病との因果関係についても、当時の詳細な研究結果を踏まえたものであり、裁判を通じて確立されたものでもございます。こういうような事実関係の上に立脚してできたものであるわけでございます。  ただ、今日の時点でこういう問題を改めて考えるということになれば、私の考えとしましては、この制度発足時点においても、単なる救済というのではなく、その背景の科学的事実を踏まえて出発したものである、こういう点から考えますと、今後の討議においても科学的な事実に即して考える、こういうことが非常に重要ではないかと思います。  もちろん、大気汚染をめぐる客観的な状況が変われば、それに応じて科学的データに基づいて妥当な討議を加える、そして必要ならば対応措置をとる、こういうことになるのではないかと思います。この点は、この制度のもとである硫黄酸化物だけではなく、NOxやばいじん、そのほかについても同じことではないか、こういうように考えております。実際に中公審答申でも、御承知のように地域指定解除についても答申中で触れておるわけでございますが、これらもいずれもそういう客観的な事実関係に立脚して運用されてしかるべきものではないか、こういうように考えるわけでございます。  そういう点では、十分に科学的事実に立脚して、冷静な判断が与えられるということが一番望ましいことでして、関係者におかれても、ぜひとも冷静な対処をしていただくことが必要なのではないか、こう考えておる次第でございます。(拍手
  4. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、川崎公害病友の会会長大村参考人にお願いいたします。
  5. 大村森作

    大村参考人 御紹介をいただきました川崎公害病友の会会長の大村森作でございます。  私は、川崎会長をしておると同時に、現在全国で約八万を超す公害病認定患者がおりますが、そうした患者と家族とによって結成されております全国公害患者会連合会の代表もしておりますので、その立場をも踏まえまして意見を申し述べさせていただきたいと思います。  私は、いま一級の公害病認定患者でありますが、昭和三十六年に発病するまで病気らしい病気はしたことがありませんでした。現在でも、公害病認定である慢性気管支炎以外はどこも悪いところはありません。現在の症状発病当時とは少し変わっておりまして、せき、たんは余りありませんが、息切れがひどくて、日常生活の中でも大変苦労しております。坂道や階段を上ることは苦しくてつらい思いをしております。歩くのも普通の人と一緒には歩けません。  ときには、入院治療をせざるを得ないようになることもあります。昨年の十二月にも半月ほど入院治療をしました。いま全国大気汚染で苦しんでいる公害病認定患者は約八万五千もおります。これらの人の中には入退院を繰り返したり、家で寝たきりの人もたくさんおります。四六時中酸素吸入器を離せない人もおります。呼吸器疾患患者苦しみは、なった者でなければわからないと、よく仲間は言っております。  ここで、私は、川崎大気汚染による公害被害現状を簡単に報告させていただきたいと思います。  今年三月十七日現在の川崎市における認定患者総数は四千七百三十九名で、そのうち死亡者は六百三十八名になっております。ことしになって、すでに二十四名の者が亡くなられております。三日に一人の割合で死んでいます。新しい被害者、新しく認定された患者も、現在の厳しい審査の中で、一昨年の昭和五十六年には百七十三名でしたが、昨年は二百十名と三十七名もオーバーした。昭和五十六年に発表された、川崎医師会が五十五年に調査した報告によりますと、川崎市の気管支ぜんそく患者有病率は、全市平均人口千人に対し六・二人、これは全国平均の三・三倍という非常に高い有病率です。大気汚染の最もひどい南部の川崎区では、全国平均の四・四倍という高い率で患者が出ております。  このように、大気汚染による被害は現在もなお増大しております。それなのに、経団連財界、大企業人たちは、空気はきれいになった、だから補償法廃止してもいいのだ、指定地域解除してもいいのだと、ここ数年来言い続けております。経団連から各方面に対して、補償法改悪廃止に関する文書が再三にわたって出されております。こうした財界要望を受けて、臨調は今月十四日、補助金等整理合理化の名のもとに、一般補助金とは本質的に異なる公害健康被害補償法に基づく補償協会交付金を取り上げ、これを口実に指定地域解除要件明確化など、制度改悪につながる答申を出すに至りました。もしも指定地域解除されたなら、そこの住民はどうなるのでしょうか。  先ほど私は、川崎被害現状を簡単に述べましたが、全国四十一の指定地域においても同じような状態であります。いま現在、NO2や浮遊粉じん等大気が著しく汚染され、それによって被害患者が続出している中で、指定地域解除されたなら、そこの被害者はどうなるのでしょうか。認定されておる患者の数倍もおると言われる潜在患者は、病状が悪化したとき、だれが救うのでしょうか。川崎の子供の気管支ぜんそく患者の七三・五%は未認定、つまり認定を受けておらない患者だと医師会報告にありました。いまはまだ指定地域解除などを考える時期ではありません。  公害健康被害補償法は、四日市公害裁判判決契機として、全国的に起きた公害反対住民運動の高揚の中で制定された、民事的責任を踏まえた損害賠償保障制度として制定されたものであります。これは被害住民運動の闘いの成果でもあり、また当時、企業側も賛成してつくった制度であります。  大気汚染現状は、SO汚染からNO汚染へと大きく質的変化をしておるということは、もはや常識となっております。SO2が環境基準を達成したから、地域指定解除を行うのだということは、公害健康被害補償法制定趣旨に反するものだと私は思います。  去る三月八日、東京都議会においても、満場一致で、第一種指定地域要件物質として窒素酸化物浮遊粒子状物質を入れ、指定地域拡大を行うよう決議して、政府意見書を提出しております。  補償法は急いでつくった法律であるから、不備な点が多々あると言われております。でありますから、国会でも数度にわたってたくさんの法改善のための附帯決議がなされております。私たち被害者も、補償法をこのように改善していただきたいと願っていることが幾つかあります。そのうちの主なものを次に二、三挙げてみます。  その一つは、二酸化窒素浮遊粒子状物質指定要件に入れ、指定地域拡大を行ってください。二つは、補償費給付水準労働者平均賃金並みに引き上げ、等級による格差を是正するようにしてください。三つは、企業費用負担SO2の排出量のみで計算されていることは不合理であり、そこから問題が起きてくるものと思われるので、NO2の排出量費用負担基礎とするようにしてください。四つは、保健福祉事業の充実を図っていただきたい。一つは、地域によってまちまちであり、転地療養事業をやっておらない自治体もあります。そういうことのないようにしていただきたい。それから、いつでも行ける、そして等級や年齢にかかわりなく保養に行ける保養所をつくっていただきたい。  私たち公害患者のだれもが願っていることは、何とかもとの元気な体になりたい。呼吸が少しでも楽になるよう、きれいな空気が欲しい。日常生活が苦しくないようになりたい。多くの死んでいっている仲間のように、空気をくれ、空気をくれと言って、苦しみながら死にたくない、こんなささやかな切なる願いが私たち願いであります。  最後に、当委員会皆様方にお願いいたします。  補償法は、私たち公害患者にとっては命の綱であります。先ほど患者立場から、補償法改善についての幾つかの希望を述べさせていただきましたが、どうか私たち患者苦しみをお酌み取りいただき、御理解ある御援助を賜りたくお願いいたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  6. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、経済団体連合会環境安全委員会委員柴崎参考人にお願いいたします。
  7. 柴崎芳三

    柴崎参考人 経団連環境安全委員会委員をしております柴崎でございます。  本日は、この環境委員会におきまして、公害健康被害補償制度の問題につきまして、私ども見解を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  経団連では、かねてから公害健康被害補償制度の見直しを要望しておりまして、その要望の内容をよく御理解いただくために、本日資料として配付させていただいておりますパンフレット等を作成しておるわけでございますが、この機会に改めて公害健康被害補償制度の問題に対する私ども見解をお聞き取り願いたいと存ずる次第でございます。  まず最初に、私ども基本的立場として申し上げたい点があるわけでございますが、私ども公害健康被害補償制度廃止を主張しておるものではございません。私どもは、本制度が多数の健康被害者救済に貢献すると同時に、各地における公害紛争を鎮静化させまして、企業経営の安定化を図る上でもある程度の役割りを果たしてきたと考えております。そのような観点から、制度発足以来今日まで、制度の運営には全力を挙げて積極的に協力してまいりました。  しかしながら、もともと本制度は、大気汚染疾病との因果関係を科学的に十分に説明できないままに、行政的な割り切りによって発足したものでございまして、当初から抱えておりました矛盾が次第に顕在化してきておることは否定できない事実であろうかと思います。つまり、大気汚染改善されてきておるにもかかわらず、認定患者は増加の一途をたどるという非常に不合理な状態が続いておるわけでございます。  大気汚染は、SO2を中心にいたしまして、昭和四十年代の後半から改善されてまいっております。お手元のパンフレットの六ページの図一を御参照いただきたいと思いますが、この図一で明らかなように、昭和四十九年十一月の中公審答申で示されましたように、本制度では、著しい大気汚染のなくなったとされる指定地域解除レベルは、SO2年平均値〇・〇四ppm以下となっております。各指定地域SO2濃度レベルの推移を見ますと、すでに昭和四十八年ころからすべての地域指定解除レベルを下回っておるわけでございます。さらに、疾病多発しないレベルよりもはるかに低く設定されました環境基準をもほとんどの指定地域で達成しております。この図ではその線が入っておりませんが、年平均にいたしますと〇・〇一と〇・〇二の間の〇・〇一五の辺が環境基準のレベルというぐあいに考えております。  ところが、認定患者の方はどうかといいますと、制度発足当初は全国で約一万五千人程度でありましたものが、一貫してふえ続けまして、現在では八万五千人を超えておるわけでございますが、次のページの図二を御参照いただきたいと思います。これに伴いまして、制度に要する費用昭和四十九年度当初は、約半年間ですが、四十億円でございましたけれども昭和五十八年度には九百二十億円に達するものと見込まれております。この結果、各事業所の支払う賦課金の賦課料率、すなわちSOxの排出量当たりの単価でございますが、産業界の努力によってSO排出量が大いに減少したために、五十八年度は前年度と比較して実に三七%のアップが考えられておるわけでございます。  公害によりまして健康被害を受けた人たち救済することがこの制度趣旨であるならば、指定地域解除レベルを大きく下回るような大気汚染改善が見られてから十年近く経過しておるにもかかわらず、なお毎年一万人もの公害患者が新たに認定され続けておるというのは、いかにも不合理ではないかというのがわれわれの考え方でございます。  このような患者数の動向から考えますと、制度指定している呼吸器疾患の原因は、むしろ大気汚染とは別にあるとの考えが出てまいるわけでございまして、現に、これらの呼吸器疾患は昔からどこにでもある非特異的疾患ということでございまして、アレルギーとか喫煙とか年齢とか遺伝あるいは生活様式などにも非常に大きな原因があるということが、医学界のいまや通説となっておるというぐあいに感ぜられます。  また、一般的に都市部に多く見られることから、生活環境も原因の一つとして指摘されておるわけでございまして、特に認定患者の七割を占める気管支ぜんそくにつきましては、きわめて濃度の高い大気汚染がある場合にはそれによって増悪されることはあると思いますけれども、通常、その原因は主としてアレルギーあるいは自律神経の失調あるいはホルモンの異常などにあるというのが世界の医学界の主たる見解となっておると聞いておるわけでございます。病気の原因を大気汚染だけに結びつけることは、治療法を誤るおそれすらあるのではないかというぐあいに考えられます。  大気汚染改善につきましては、NO2や浮遊粉じんをも考慮に入れるべきであるとの意見もございますが、本制度は民事上の損害賠償責任を踏まえた制度でございまして、因果関係の不明確な段階で補償を行う性格のものではないわけでございまして、NO2、浮遊粉じんに関しましては、疾病との因果関係が明瞭になった時点でこれを参酌すれば十分ではないかというぐあいに考えられます。  なお、NO2の濃度レベルにつきましても、指定地域内の濃度は、安全性を十分見込んで設定されました米国、カナダ、西ドイツなどの欧米各国の環境基準を大きく下回っておるわけでございますし、また、わが国一般地域の都市に比べましても、むしろ低いところが多数見られるわけでございます。  浮遊粉じんにつきましても、各指定地域の濃度は一般地域の都市の濃度と比べましてほとんど差がないわけでございまして、最近、WHOの知見をもとにいたしまして設定されましたEC十カ国の環境基準と比較いたしましても、すべての地域で基準値を下回っておるというのが現実でございます。  先般、大気汚染に関する疫学調査の世界的権威でありますロンドン大学のホランド博士が来日されたわけでございますが、その際、同博士も、浮遊粉じんについてはSO2濃度が非常に高いときでも年平均値百四十マイクログラム・パー・立方メートル以上で健康影響の見られたケースがないというぐあいに講演されました。この点、九ページの図六の二をごらんいただきたいと存じますが、ホランド博士が、健康に非常に大きく影響するという粉じんSO2の組み合わせは一番外側の線の外でございます。それからECの基準はその中にある線でございまして、わが国の五十五年度の実際の状況は、すべてこの範囲内にとどまっておるというようなことがはっきりしておるわけでございます。  また、NO2や浮遊粉じんの健康影響を取り上げるならば、大気中で測定される濃度の数百倍のNO2や数万倍の浮遊粉じんを長期間にわたって吸入することになります喫煙習慣を無視することはできないわけでございまして、先ほどのホランド博士も日本での講演の際、一九六〇年ごろのロンドンのような著しい高濃度の大気汚染が存在したときでさえ、大気汚染地域居住者と非大気汚染地域居住者との間の呼吸器疾患の罹患率は一・二倍程度の差しか見られなかったのに対しまして、喫煙者と非喫煙者の間では呼吸器疾患の罹患率は実に六倍に達したということをはっきり申しておられました。本制度指定疾病でございます慢性気管支炎あるいは肺気腫といった病気は、喫煙者の病気であるとも言われておるほどでございます。こういった喫煙の影響を考慮せずに制度が運営されておりますのは大きな不合理と考えられます。喫煙者については、六十五歳以上の患者を年齢にかかわりなく一律に取り扱っている高齢者の場合等とともに、ぜひ補償給付のあり方を適正にすべきではないかと考えられます。  なお、認定患者は特に東京や大阪など大都市を中心にふえておりまして、現在この二地域だけで全体の患者の約四分の三を占めております。先ほども申し上げましたように、ぜんそくといった病気は生活環境とも密接に関連してくるわけでございまして、病気を治癒させるためには、大気汚染対策だけでなく、大都市の生活環境の整備等を考慮に入れた対策が肝要かと存じます。  以上のような観点から、経団連では現行制度の不合理を是正いたしまして、より適切かつ効果的な制度の運用を図っていくために、次の四点を要望いたしたいと存じます。  その第一は、中公審答申で示された地域指定解除レベルを下回るほど大気汚染改善されてすでに相当期間経過した地域につきましては、地域指定解除を実施していただきたいということでございます。なお、本制度のもとでは、現在認定されておる認定患者は、その病気が治癒しない限り認定更新が行われることになっておりますので、たとえ指定地域解除されても、既認定患者への補償給付を打ち切られることは絶対にないということを申し上げておきたいと思います。  第二の点でございますが、大気汚染改善された以降に新たに生まれた患者など、大気汚染の影響で発病したものでないということが明らかな患者に対しましては、認定対象から除外するよう、現行の患者認定の際の暴露要件をぜひ改正していただきたいということでございます。  それから第三点でございますが、大気中の濃度の数百あるいは数万倍という高濃度の汚染物質をみずから吸っている喫煙者を、非喫煙者と同等に扱っているのはきわめて不合理だと思われますので、この点をぜひ是正していただきたい。  第四点でございますが、本制度に関連いたしまして、環境庁が行ってこられました調査研究の成果をぜひ公表していただきたい。  以上の四点が要望事項でございます。  以上、いろいろ申し上げましたが、私どもの真意は、制度の運営については十分納得した上で協力していきたいという点にございます。そのためにこそ合理的な根拠に基づいた制度の見直しをお願いしておる次第でございます。  今回の自動車重量税引き当て方式の延長に伴う法改正につきましては、以上の私ども要望を十分勘案していただきまして、早急に制度の見直しに着手してくださることを前提といたしまして、賛成いたしたいと存じます。  どうもありがとうございました。(拍手
  8. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、医学博士国立公衆衛生院長鈴木参考人にお願いいたします。
  9. 鈴木武夫

    鈴木参考人 御指名いただきました鈴木武夫です。  私は、研究者として、大気汚染を通じて環境問題を勉強している者でございます。すでに御意見をお述べになりましたお三方とは違いまして、公害健康被害補償法の運営に直接関係したことはございません。しかし、この制度ができましたときに、関係委員会に参加する機会がありましたので、補償制度には当時も、また現在も関心を持っている者でございます。  補償法大気汚染による健康被害補償のみを扱っているわけではございませんけれども、きょうは、大気汚染を勉強している者として、大気汚染による健康被害立場から意見を述べさせていただくことをお許しください。また、前に述べましたような事情もございますので、一般論になることもお許し願いたいと思います。  この法律ができました事情の経過は、吉田先生がすでにお述べになりましたとおりでございますが、重複を顧みずもう一回申してみますと、四日市市条例による補償制度ができましたのが昭和四十年、国による旧救済特別措置法が昭和四十四年、現在の公害健康被害補償法昭和四十八年でございます。この時期は、二酸化硫黄が大気汚染物質のうちで日本ではもちろんのこと、どこの諸外国におきましても注目しておった時期に相当いたします。もっとわかりやすい言葉を使えば、当時はまだばい煙という言葉が残っておった時代でございます。  私は、きょうここに出てまいります前に、昭和四十八年四月の中央公害対策審議会の報告、四十九年八月の中央公害対策審議会の報告、そして、昭和四十八年九月十三日以降、国会におかれましてお出しになりました附帯決議延べ十一編をもう一回読んでまいりました。そして、この国会附帯決議がもし守られていたら、私は何もきょうここに来て申し上げることは何にもありません。国会附帯決議で触れておられることがなかなかできなかった理由、これはあると思います。いろいろ複雑な理由がありましょうけれども、私なりに簡単に申してしまうと二つあると思います。  一つは、現在までの大気汚染及び大気汚染の影響の研究が、一般の方々が直感的に感じておられることに対してすら、明快にその是非を説明するほどまでに発展していないということです。これは私たち責任でございます。  もう一つの理由は、地域社会における二酸化硫黄濃度の劇的な減少、また煙やすすや灰というような大きな粒子の消滅が最近十年間に起きました。これが人々をして目に見える、視覚的、すなわち肉眼で見ることのできる大気汚染がなくなったと思わせ、そのことが大気汚染が完全に改善されたという錯覚を与えたのではないであろうかと思われてなりません。この肉眼で見える大気汚染改善は、すなわち大気汚染全体の改善としてはならないと私は思うんです。このことが大気汚染の関心を、要するに肉眼で見える大気汚染改善されたことが、大気汚染への関心を低めるのに誘導されていく場合に、無意識的に、場合によっては意識的に行われた節が私には感ぜられます。それは一つは、人間のなれであり、飽きっぽさであるという一つのあらわれかもしれません。その他の複雑な理由がありましょうけれども、私の専門外になるおそれがありますから、この辺だけで述べさせていただきます。  時間の都合もございますので、私は二つのことに集中してお話し申し上げたいと思います。  一つは、いまでもできるではないかということが一つ。あと何年か遠い将来、といってもそう遠くない将来に補償法が対応せざるを得ないことがあることを念頭に置かれて検討をおやりになるならばおやりになってくださいということでございます。  その一つは、大気汚染は、すなわち二酸化硫黄汚染と言っていいかどうか。または、大気汚染で二酸化硫黄だけに注目していいかどうかの問題をもう一回考え直す必要があろうかと思います。  四日市市の補償制度から国の現在の補償法制定に至るまで、昭和四十年から昭和四十八年の間は、すでに申し述べましたように、日本はもちろんのこと、世界的にも二酸化硫黄による大気汚染研究対策、行政が集中した時代であったと思います。大気汚染対策の順位の第一位に二酸化硫黄対策が選ばれておったと言ってもよいでしょう。このように注目されることによりまして対策が進められ、わが国の国設の大気汚染測定局の測定値は、ただいま柴崎さんからお話のありましたように、この十年間に五分の一に低下いたしました。これは国設測定局でございますから、もちろん場所が違いますとこの値の絶対値の相違はありますけれども、減少の傾向は同じでございます。この辺につきましては、私は胸を張って日本が自慢していい結果であろうと思います。  一方、自動車排気ガスに原因の求められます一酸化炭素ガス汚染は、昭和四十三年の四・九ppmから昭和五十五年の一・〇ppmまでやはり五分の一に減少しました。そして昭和五十五年に至りますと、一酸化炭素ガス濃度は、沿道とその後背地とほとんど変わらない濃度になりました。これも自動車排気ガスの中の一酸化炭素規制の大成功の例でございます。  以上、二つ汚染物についての改善は、地域における汚染濃度に関しては著しいものであったことは、繰り返し申し上げてもいいと思います。  しかし、窒素酸化物はどうであったか。窒素酸化物は同じく国設測定局の測定に関する限り、二酸化窒素について昭和四十三年、年平均に直して〇・〇二、昭和五十五年、年平均に直して〇・〇二、四捨五入すれば〇・〇三というわけで横ばいでございます。見る人によってはわずかずつふえているんではないかと言う人もあろうかと思います。  窒素酸化物の発生源は幾つもあるわけでございますけれども、主なる発生源が二つあると思います。一つは工場の固定発生源であり、もう一つは自動車の排気ガスによるものでございましょう。最近というか最近十年間の測定を見ましても、道路沿道での二酸化窒素汚染は、やはり一般地域社会よりも高濃度でございます。これは自動車の増加に伴いまして、沿道住民を騒音、振動と一緒になって悩ませている汚染物質であることは、もう私が申し上げるまでもないと思います。主なる道路をお歩きになればすぐわかるはずでございます。  健康に及ぼすガスの影響の中で、特に注目しなければなりませんのは、非常に微細な、顕微鏡でわかる程度の大きさの粒子状物質でございます。それが昭和四十四年から五十五年までほとんど同じ、変化することなく推移しております。  昭和五十年前後に社会問題化いたしました光化学オキシダントは、最近被害届け出人口数は減少しております。及び異常に高濃度の光化学大気汚染の発生回数は減少しております。これは気象条件の地球的規模の変動との関連で考えなければなりませんので、この最近二、三年の状況をもって光化学オキシダントは解決したと言い切ることは私はできないと思います。  いまでもちょっと御注意いただければ、目で見える光化学反応の発生している状態は東京の空に見えるわけでございます、温度がちょっと高くなりますれば。ただ、皆さんがなれてしまいましたから、光化学反応、オキシダントが起きているなということについて、数年前ほど関心をお持ちにならなかったにすぎないと思います。四月終わりから五月以降、先生方がちょっと東京の空をこの国会から眺めてくださいまし、色が変わった空が見えることがありますから。そして一方、植物被害報告はいまでも出ております。すなわち光化学オキシダントはやはり何らかの影響を人間及び生体に対して与えていると思われます。  この短い御説明をしただけでございますけれども、これだけでも、二酸化硫黄だけで大気汚染を代表することは不適当であるとお思いになっていただけないでしょうか。  繰り返しになりますが、昭和四十年前後の期間、行政の立場で二酸化硫黄に注目したことは、当時としてはある程度やむを得ないと理解できます。補償法制度を触発いたしましたのは四日市市の被害救済であり、その被害が二酸化硫黄との関係で十分説明できましたこともありましたので、当時の補償法大気汚染の代表として二酸化硫黄を取り上げたことは納得はできませんけれども、理解はできます。このことは一種の緊急の行為ではなかったかと私は思います。  人間は二酸化硫黄の大気汚染だけに暴露しているのではございません。そして、健康被害がもしあるとするならば、二酸化硫黄だけではございません。性質の違った汚染物の混合したものに暴露していることによって影響を受けているはずでございます。  以上、改善されましたのは大気汚染物質中二酸化硫黄と一酸化炭素でございます。繰り返して申します。これは胸を張って自慢をしていいものでございます。二つのものは改善いたしました。しかし大気汚染全体を考えますと、決して改善したんだと言い得るかどうか、判断をする必要もないほど明らかなことではないでしょうか。  環境庁の試算によりますと、わが国の二酸化硫黄の排出量の減少の理由を大きい順から並べてみますと、昭和五十年と昭和五十五年との比較ですけれども、第一、省エネルギー効果、第二、除去率の増加、第三、燃料転換、そして第四が産業構造の変化でございます。行政が直接関係する対策である燃料転換と除去率の増加を合わせたよりも、産業内の努力の方である省エネルギー効果と産業構造の変化と合わしたものの方が効果が大きかったわけです、SO2の除去率につきましては。  私は、この産業活動に対してやはり注目をする必要があると思います。現在までのところは、産業、企業の方々が努力をされた、企業自助によって努力をされたのでございましょうが、これから起きる燃料の種類やその利用方法の状況の変化、経済の構造変化、そして産業努力の変化等々によりまして、二酸化硫黄の排出は努力次第によってどうにでもなるということを私たちは注目しておかなければならないものでございます。どうにでもなるということは、同時に窒素の酸化物、浮遊粒子状物質の排出も同様に変化するであろうということを思います。たとえば省エネルギーへの努力が少しでも緩められますならば、排出量は急速に増加いたします。また、LNGが大量に使われる大火力発電所ができましたら、これは世間の人が、発電所ができたのだから、これは補償法による費用を払ってくれるだろうとお思いになりましても、ゼロのはずでございます。一方、窒素の酸化物はそれなりに出てまいります。もし産業が活性化いたしましたとき、対策に少しでも緩みができましたならば、昭和四十年代初期の絶対量に近い各種汚染物が、総量として排出されることは予想できるところでございます。補償法についていろいろなことをお考えになるのならば、将来の問題として、汚染物の将来変化に対して、ある程度の注意深い観察または予測をしていただきたいと思います。  それから、次に申し上げたいことは、大気汚染の影響についてでございます。  いまの補償法で取り上げております疾病は、二酸化硫黄汚染で説明できることは、吉田先生がすでに御説明になりました。しかし、繰り返して申しましたように、大気汚染の影響はこれだけではないのです。国会ですでに何回となく附帯決議の中に指摘されておりますことを、やはり常に再留意していただきたい。その実行可能性云々ということは、また別の場で論ぜられるところでございましょうが、きょうはその指摘だけをさせていただきたいと思います。ことに窒素酸化物浮遊粒子状物質疾病との関係説、病気との関係説、きょうは国会の決議の中に触れていないことに触れることにいたします。それは一つは遅発性影響をどう考えるかでございます。  遅発性影響と申しますのは、大気汚染に暴露されてから発病されるまでの時間のずれのことを申します。現在指定されております病気であっても、汚染が出て数年で出る病気もあるでしょう。汚染に暴露されてから十年ないし二十年たって発病される病気もあるでしょう、きょう指定された病気でさえ。しかし、そのことをいまの科学は明らかにし得ていないのです。伝染病の潜伏期と同じような程度において、潜伏期を正しく見ているわけにはいかない。ということは、空気がたとえきれいになったとしても、なったことがすぐ直ちに効果を示すということは、残念ながらこの補償法に示されております病気のような病気におきましては、いま学問的に説明をすることはできないと思います。もちろんそれにつきましては、中公審の部会報告の中でも、暴露期間についてのみ割り切りをされておりまして、暴露から発病までの時間については余り触れていない理由がそこにあります。  次には、これはある程度失礼とは思いますけれども、この機会を利用させていただきまして申し上げることをお許しください。  私は、補償法のことについて論ずるこの会では、補償法において取り扱うものは、明らかに日本において実証された結果のみについて補償を行うものであるということはよくわかります。しかし、最近補償法の検討を、SO2の減少とともにあわせて検討せよという声が各方面から出てきておることも承知しております。しかし、この法律は、大村さんがおっしゃったように、患者さんにとっての最後の救いでございます。この法律がある以上、検討するのならば、補償法の強化のための検討であってほしいと思います。そして、強化のための内容の充実を図る検討であってほしいと思います。その内容の充実の一つに、不可逆的に破滅的な疾病の多数出現の前に、あらかじめ予見的に疾病を考察しておくことも必要ではないか。  これから申し上げますことは、絶対にあってはならないことを申します。しかしながら、もし出たときにどう考えているかということでございます。それをたった一言で申し上げます。それはがんのことでございます。  がんの研究が最近急速に進歩したことによって、環境性物質にがんという病気の原因が求められるということは少なくとも証明されるようになってまいりました。個人において、がんになってしまってから証明することは、ただいま補償法に載っております疾病と同じように、恐らく非特異的疾患の範疇時に入るでしょう。これは、職業病においてのみ特異的疾患として取り扱われるでございましょう。だけれども、今日論ぜられている補償法の中におきましては、恐らく非特異的でございます。そして、そのようなものの中で、いま私たち大気汚染として考えておるものの中で、がんとの関係について考慮しておかなければならないものは、学問としてはすでにわかっております。芳香族炭化水素、微量重金属、アスベスト等々、発がんと関係のある物質につきましての研究が進められております。場合によりましては、一部の物質につきましては、地域住民集団について、この中の物質とがんとの関係があるということが認められていることが、日本には報告がございませんけれども、外国にはあるものもあります。  がんを補償法の上でどう考慮するかは、きょうあしたの問題を私は言っておるのではございません。補償法というものを考えるときに、最も悪い例をとることによって、補償法の内容の充実を図るということでございます。  またもう一つ申し上げてみますと、かつて外国でエピソードとして問題になりましたロンドンスモッグ等において、それから日本におきましても、昭和四十年以前において見られました、急激に空気が悪くなってくるいわゆるスモッグという表現であらわされる状態が起こったときの過剰死亡者、老人その他の人たちが死亡した例は証明されているわけです。この過剰死亡者に対してこの補償法は何ら言及しておりません。これはどうお考えになるつもりでいらっしゃるでしょうかということでございます。  少し発言が長くなりましたから、結論的にまとめてみます。  大気汚染と二酸化硫黄だけで説明する時期は、補償法としてもすでに古過ぎないでしょうか。中公審報告書も言っておりますし、国会附帯決議もありますから、窒素酸化物等のあるいは浮遊粒子状物質等の考慮は、地域指定の見直しの際にぜひ考慮の中に入れていただきたい。もちろんそれが科学的資料に基づくことは、吉田先生のおっしゃったとおりでございます。直感でおやりになることはもうやめていただきたい。科学的資料に基づきまして、十分な検討を加えることによって、この問題を処理していただきたい。  二番目、国会附帯決議におきましてしばしば申されておりますように、これだけ自動車の普及があるということは、都市複合汚染に対処するためにも、補償法との関係で窒素の酸化物についての健康被害、ことに病気についての究明が必要であると思われます。大気汚染の問題が工場地帯の問題から都市の問題へと発展してきた大きな動機は、自動車の増加にあると思います。その状況は、自動車交通公害防止法といったものをつくることさえ必要になってきた時代ではないであろうかと私には思われてなりません。それを補償法との関係で言えば、窒素酸化物、芳香族炭化水素、重金属等々の汚染とその人体への影響のほか、国会決議にありますように、騒音、振動の影響を補償法の上でどう考えるかということに通ずると思います。  光化学オキシダント、酸性雨というものによりますところの財産被害あるいは生業被害というものに対して補償法はどのような発展をされていくのかということを私は見守りたいと思います。  大気汚染にありましては、二酸化硫黄以外の汚染物による潜在性のある被害者がまだあるような気持ちがしてなりません。また、暴露から発がんまでの潜伏期間の長い病気があるような気がいたします。その辺についての検討は、一番最初に申し上げましたとおり、あしたの問題ではありませんけれども、これに対処するぐらいの気持ちで、もし御検討願えるのならば、補償法の御検討をしてください。ですから、繰り返しになりますけれども、以上申し上げましたことは技術的に非常に困難であり、補償法の場でそんなことを言うより、まずおまえが研究をしっかりやってから来いというおしかりを受けることは覚悟の上であえて申し上げたつもりでございます。それは、補償法が果たしております予防的側面に私は大きな期待を持っているからでございます。  以上、繰り返し繰り返し申し上げましたように、本日直ちに云々ということと、将来の長期にわたる展望の中の今日の検討というものをやはりやっていただかないと、こういう問題につきましての早急な解決、早急な対策変更ができるような環境問題ではありません。対策研究も長期を目標にして、そして近いところを取り扱うというのが環境問題の本質ではないかと私は思います。  おしかりを受けることを覚悟で、最後に一言申し上げさせていただきます。先生方の前で申し上げるのは大変失礼ですけれども、こういう環境汚染救済よりも防止が一番大切なことなのです。もしも、そのことを十分自覚しないで補償法のみを取り扱っておりましたならば、これは免罪符になりかねません。この補償法を絶対に免罪符にしていただきたくないというのが私の気持ちでございます。  どうも失礼しました。ありがとうございました。(拍手
  10. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。     ─────────────
  11. 國場幸昌

    國場委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧野隆守君。
  12. 牧野隆守

    ○牧野委員 本日は、参考人といたしまして四人の関係皆様にお忙しいところおいでいただいた次第でございますが、まずもって心から厚く御礼を申し上げます。  吉田先生からは、最初から本件に関係をしておられまして、どういう現象に基づき、またどういうような御判断をなさってこの法律ができ上がったかるる御説明いただきましたし、また大村さんからは、本当に患者さんの立場から、日々大変御苦労になっていらっしゃる御様子を拝見いたしまして、私どもも、この法律の運用の適正化をぜひとも図りまして、患者さんが御心配なく療養に努められるように、私どもとしても最大の努力をしなければいけないな、このように感じた次第でございます。  また柴崎さんからは、産業界の立場から、いわゆる関係の資金を負担されるという観点から、現在の法律の運用につきまして幾多の疑問点、どうしても納得できないという点も御説明になりまして、産業界としては今日まで一生懸命努力されてきて、今後とも努力をする、しかしながら、どうしても納得できない部分があるということをお伺いいたしまして、私自身も、まさに御意見のところは十二分詰めなければいけないなというように痛感いたした次第でございます。  最後に、学者の立場から、鈴木先生からこれに対する基本的なお考えを述べられたわけでございますが、特に予防的見地から、あるべき姿というものにつきまして御意見をいただきまして、私どもには非常に貴重な、基本的な御意見でございまして、私どもぜひそういう考え方を十二分しんしゃくいたしまして、この制度の運用に当たらせていただきたい。たとえば喫煙等の問題が出ていましたけれども、いろいろな関係からこの病気というのは促進されるわけでございまして、がんについて御説明がございましたけれども、健康の保持のために、そういう観点からも十二分に努力をさせていただきたい。きょうの四方の御意見、陳述に心から感謝をいたす次第でございます。  余り時間がございませんので、非常に大きな問題につきまして、要点だけ特に御質問をさせていただきたいと思います。  最初に、吉田先生に御質問をさせていただきたいと思いますが、指定地域解除の問題でございます。この制度指定しております四疾病は非特異的疾病と言われまして、全国どこにでも存在する病気でございますが、この制度では、指定地域におきましては、公害患者として認定された者は大気汚染によって発病したものというようにみなされていると考えております。この場合に、指定地域の間で大気汚染レベルに違いがありますが、これらは公害患者さんの発生率にどのようにあらわれているのであろうか、また指定地域の内外ではどうでございましょうか。環境庁の提出しているいろいろな資料によりますと、たとえば大阪市の西淀川区と大淀区は隣接しているわけです。したがって、大気汚染レベルというのはそれほど差がない。近くでございますから、これはもう当然だろうと思いますが、ところが認定患者発生率を見ますと、片方では三・七%、片方では〇・四%というように非常に違う、こういう現象が出ているわけでございます。こういう点につきまして、一般的な有病率等々もベースに置いて、先生は当初から、どういう形で認定するか、その経過をよく御承知のお立場でございまして、現在になってみますと、関係者のそれぞれの努力によって汚染度は相当よくなってきたわけでございますが、現実にはこういう結果が出ている。この現象につきましての御所見をお伺いいたしたい、こう思います。
  13. 吉田克己

    吉田参考人 ただいま大阪の話をお聞かせいただいたのですが、実は私、大阪については事情を明らかに存じておりませんで、その点については直接お答えできないので、あるいは一般的な話になるかと思いますが、お答えいたしたいと思います。  先ほど御指摘いただきましたように、この疾病が非特異性疾病であることはもう間違いないところでございます。医学的に非特異性疾患と申しますのは、その病気の原因が単一ではない、つまりいろいろな理由で起こる、あるいはいろいろな理由の重なりによって起こる、こういうものを申しております。したがいまして、ぜんそくであるとか慢性気管支炎であるというようなものは当然いろいろな原因があるわけでございます。たとえば先ほど話が出ました喫煙も明らかにその原因の一つでございますし、それと同じように、大気汚染もその原因の一つをなすということは広く認められておる点でございます。そういう意味では、これは山の中でも発生しますし、四日市のようなところで多発する、こういう現象も起こるわけです。したがいまして、そういう意味で、これはいろいろな理由が特に集積しておるような場所では非常に高くなる、こういうことが起こります。  それからもう一つは、先ほどのお話にもございましたように、その理由あるいは原因の程度が多ければ、それに応じて患者さんも当然ふえてくる、こういうことが疫学的に期待されるわけでございます。  余り詳しいことは時間がございませんが、四日市であのような制度を市の制度として設けるに当たって、最も大きな問題になりますのもその点でございます。といいますのは、いやしくも公の制度として設ける以上、慎重でなければならぬことはこれまた当然ですし、しかも、市に財政負担を残す問題でもございます。それから、これに対して利害関係者が発生するであろうということも当然考えられるので、将来の裁判そのほかのことにも対応しなければいけない、こういうことは当然でございます。したがって、それに応じた調査研究はわれわれとしても当時日夜努力した、こういうことでございます。  そこで得られておりますことは、四日市市内でのぜんそく、特に高齢者のぜんそくは大気汚染、主として硫黄酸化物汚染、当時は四日市硫黄酸化物汚染が圧倒的に高かった、窒素酸化物硫黄酸化物濃度の十分の一にも達しない、こういう状況であったわけですが、その濃度と疫学的に非常に高い相関がある、こういうことが見つかっておるわけです。たとえば喫煙のようなものは、四日市市内のどの地域でもほぼ平均した喫煙率であるわけです。したがいまして、どちらが主たる原因であるかということは、大気汚染程度と喫煙とのいわば比と申しますか、一にそういうものによって決まってくるものである、こういうことになるわけでございます。  現実に、慢性気管支炎及び気管支ぜんそくの両者について、先ほど申しましたように、たとえば慢性気管支炎については四十歳以上、気管支ぜんそくについては主として五十歳以上の患者さんについて、非常に丹念な調査を当時やったわけでございますが、汚染と非常に高い相関がある、つまり汚染に非常に依存してふえるものであるということを見つけたわけでございます。  そういうことを背景にして、いま御質問の点について考えてみますと、私、大気汚染の差が少ないのに患者発生に非常に大きな差があるというのは、その状況をよく存じておりませんので、ちょっとお答えいたしかねるのですが、基本的にはそういう汚染程度とかなり比例する関係にあるはずである、われわれが経験している範囲では、もちろん数学で言うようにぴしゃっと比例するわけではございませんが、大綱的に比例する関係があるはずである。ただ問題は、これを市条例あるいは国の法律という制度へ移すときには、非常にむずかしい問題になるということは当然お気づきになると思います。その程度に応じて医療費を持つとか補償を行う、こうすれば一番忠実な制度になるのかもしれませんが、そのような制度を現実につくって運営することは事実上不可能である、こういうことがあるわけでございます。  したがって、大気汚染が原因の中で、トップバッターといいますか、一番大きなものであると疫学的に判断できるような地域を割り切って指定しよう、これが当初四日市市条例作成に当たって考えたことで、現在の補償法もそういう考えになっておると思います。この割り切りに伴っていろいろな問題が起きるということは、出発時点から最も難問と私も考え、ほかの人も考えておった点でして、現在でもそういう問題があるということをしばしば聞くわけでございますが、この点の改善は、率直に言って非常にむずかしい問題である、そう思っておるということでございます。
  14. 牧野隆守

    ○牧野委員 吉田先生に本件についてもう一回御質問いたしたいのですが、こういうように考えることはできるでしょうか。  たとえばいまのSOx、NOxも含めまして、汚染のレベルが同じようであれば疫学的に大体同じように患者が出る、こういうように了解させていただいてよろしいでしょうか。
  15. 吉田克己

    吉田参考人 御質問の趣旨、わかりました。  SOxあるいはNOxというような大気汚染物質としてわれわれが医学的に取り上げなければならないと考えておるものの大部分は、慢性気管支炎あるいは気管支ぜんそくのような閉塞性疾患を起こす力がございます。ただこの程度は、SOxとNOxは必ずしも同一だとはわれわれは思っておりません。この人に対する影響力というのは、疫学的にしか回答できないと思うのですが、疫学的ないままでのいろいろな調査から見ますと、必ずしも両者同一ではないと思います。
  16. 牧野隆守

    ○牧野委員 よくわからないわけですが、私が御質問しておりますのは、汚染のレベルが同じであれば、特定のところに住んでいる人が特定の住み方をしているわけじゃないですから、おおよそ疫学的に見て同じように患者さんは発生する、時間がありませんから簡単に。
  17. 吉田克己

    吉田参考人 レベルということの意味がわからないのであれなのですが、レベルというのが同じppmという意味でしたら、先ほど申しましたように、必ずしも同一ではないということなので、いま先生がおっしゃいました、同じレベルというのは同じ濃度という意味でございますか。
  18. 牧野隆守

    ○牧野委員 そうです。SO2がこれくらい、NOxがこれくらい、粉じんがこれくらいと、同じような地域であれば同じように出てくるのじゃないか、これは私たちの感覚としては常識的なのですね。そういうように考えてよろしいですか。
  19. 吉田克己

    吉田参考人 両者とも似た病気をふやします。ふやしますが、同じ濃度レベルの場合には、いままでの疫学研究からいいますと、どちらかと言えばSOxの方がある程度高い、そういうように理解しております。
  20. 牧野隆守

    ○牧野委員 大体同じように考えていいというように私自身は了解いたしたいと思いますが、そうなってまいりますと、各地区を調査いたしまして、同じようなところが、あるところは指定されており、あるところは指定されていない。これについては非常に不合理に思いますし、もう一つは、たとえば四日市等におきましても、資料によりますとSOx等が相当減ってきておる、こういうことで、現実に新規の患者の発生率というのは明らかに減少している、まだ減少するのだ、こういうように考えてよろしゅうございますか。
  21. 吉田克己

    吉田参考人 そのとおりでございます。  四日市では、御承知のように昭和四十六年に三重県公害防止条例を改正しまして、総量規制を導入しましてから急速に下がりまして、環境基準を達成してから今日ですでに約七年経過しております。公害認定患者の毎月の数は十分の一くらいまで下がっておりますので、いまおっしゃったような形になっておると思います。
  22. 牧野隆守

    ○牧野委員 吉田先生ばかりに時間がありませんので、ポイントだけを吉田先生にお願いいたすわけでございますが、そうしますと、いま、大体同じような汚染状況であれば、患者の発生率も大体同じ、こういうように基本的に考えていいということになりますと、現在のあり方、確かに何によって発生するかという点については、先ほど鈴木先生のお話にありましたように、いろいろな問題がございますし、また、これを防止するために予防的見地からいろいろな努力をしなければならない。これは当然にわかるわけでございますが、そういたしますと、現在の指定地域と非指定地域関係、これを法律運用としてどう対処するかという問題、また同じ指定地域の中で、同じレベルでありながら非常に患者さんが多発している、あるいは片方はそれほどでもない、こういう場合のあり方という点については、それぞれの立場からやはりこれは全国民的にみんな納得して、こういう形で公害で苦労していらっしゃる方は救済しなければいけない。そのためには、いろいろな資金も含めまして、制度その他の運用につきまして、もう一回そういう点は見直すと申しますか、中公審認定条件というものは一応の方向は出されているわけでございまして、これとの関係におきまして、全国民的なコンセンサスを得るという観点から、ぜひ再検討といいますか、もう一回検討していいんじゃないか、こういうように考えますが、先生の御意見は、特に中公審ではこういうのは積極的に論議される場でございますし、こういう点はどういうようにお考えでございましょうか。
  23. 吉田克己

    吉田参考人 先ほどの意見陳述ですか、意見を述べさしていただきました一番最後にも触れさしていただいたわけですが、この制度の出発に当たっては、あくまで科学的根拠といいますか、これには十分な配慮をしておるわけでございます。したがいまして、当時と現在と汚染状況が変わっておるということもこれまた事実でございますので、そういう事実に即して科学的に検討するというのは、これは何も今日に限らず、一般的にいつもそう考えなければいけないことではないか、そういうように思っております。
  24. 牧野隆守

    ○牧野委員 再度、吉田先生にお願いしたいのですが、先生は中公審委員として大活躍をお願いいたしておるわけですが、この問題は非常に大きい国民的な問題でございまして、中公審におきましては当然法律の運用等々についていろいろ御審議なさっておられると思います。こういう指定条件あるいは解除条件、暴露要件等について、いろいろ利害関係者の方々の御意見が相当大幅にそごしている面があるわけでございますが、科学的に検討する、十二分に検討した結果をもって科学的に結論を出す、こういうように各先生方、また各参考人の皆さんからの意見の陳述があったわけです。  中公審におかれましては、本当に積極的に環境庁に命じて調査をさせるなり、あるいは具体的な調査結果についてどうか、あるいはここをどう持っていくかというような御審議は積極的にやっていらっしゃるのでしょうが、あるいは、いまの中公審におけるそういう基本問題の審議につきまして、何か御意見があれば承りたいと思うのです。
  25. 吉田克己

    吉田参考人 私は中公審を代表して参ったわけではございませんので、的確な御返事はいたしかねるのですが、この問題は中公審でも再々意見が出ておりまして、意見の交流はいたしております。部会も開かれておりますので、もちろん結論というような、そういうレベルの問題ではございませんが、各委員の方の意見は、私も申しておりますし、出ております。
  26. 牧野隆守

    ○牧野委員 時間もありませんので、この点だけにとどめておきたいと思いますが、非常に大きい問題でございますので、中公審におきましてはいろいろな御意見が出てこようかと思いますが、その御意見が外部に出てこないものですから、それぞれのお立場の方が、たとえば大村さんのお立場から見ますと、どうもこれは悪くしてわれわれをいじめるのじゃないか、こういうように御心配になります。また産業界の立場から見ますと、本当にどこまで進んでいるのだろうか、毎年、毎年どんどん拠出金はふえてくるし、これはエンドレスにふえてくるのではなかろうか、そうなれば当然産業界だけの問題ではなくて、原因者負担という原則はありますけれども、不分明なところは国全体としてそこは措置する、こういう考え方も積極的に取り上げなければならないと思いますし、関係の皆さんの御意見を聞きますと、本当に本件についてどういう論議がなされ、具体的にどういう研究がなされ、それがどこまで進展しているか、関係の皆さんが安心して、この問題が一日、一日前進するように、ぜひオープンに私どもにもわかりやすく公表する、こういう形で関係者の認識をさらに深めて、国民的コンセンサスが得られるようにぜひ御努力をいただきたい、このようにお願いをいたす次第でございます。  質問いたしたいことは、もういっぱい、いろいろな運用につきましてございますが、今後適正な運用をやるということでわれわれは努力をいたしたい、私の気持ちを申し述べまして、質問を終わらしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  27. 國場幸昌

    國場委員長 参考人の先生方に申し上げます。質問者の質問の発言があって、御指名を受けまして、それから答弁席に向かってください。  阿部未喜男君。
  28. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 きょうは、参考人の先生方、お忙しい中を大変ありがとうございました。非常に貴重な意見を聞かしていただきまして勉強さしていただきましたことを、お礼を申し上げたいと思います。私の意見は述べませんが、いま御意見を伺いまして、一、二点質問さしてもらいたいと思います。  柴崎先生、かねてから経団連としては公健法の見直しをずっと主張してこられた、その理由、具体的な方途についても拝聴いたしましたが、実は今度臨調の答申が出まして、私どもその内容をどう理解すべきか、非常に困っておるのですが、たとえばこの臨調に対して経団連として、先ほどお述べになったような点について何か主張なさった経過がございますならば、お聞かせ願いたいと思います。
  29. 柴崎芳三

    柴崎参考人 お答え申し上げます。  その点につきましては、私は局外者でございますので正確な事実をつかんでおりませんが、ただいま経団連の担当の方から聞きますと、私が御説明したと同じようなことを、この制度全般についての意見として申し上げておるようでございます。
  30. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 わかりました。  次に、大村先生にお伺いいたしますが、第一点は、いまと同じ質問なんですけれども、いわゆる民事責任を踏まえた損害賠償制度であるから、本来行革の対象になじまないのではないか、そういう御意見を伺ったのですが、そういう皆さんの御意見について、臨調に何らかの意見をお述べになったことがございますか。
  31. 大村森作

    大村参考人 私ども公害被害者としましては、公害健康被害補償法そのものは、民事的責任を踏まえた損害補償制度として発足したものととらえておりますので、臨調で一般の補助金と同様に取り扱うということは不当であるという立場から、臨調に対して私どもは、そういう作業はやめてくれ、答申から一切削除してくれということを昨年の十二月二十日以降十七回にわたって交渉を進め、臨調の委員の先生方とも三回にわたって会談をしてまいりました。そういうようないきさつがございます。
  32. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう一点、大村先生にお伺いしたいのですが、いわゆるこの非特異性の疾患関係ですが、特にぜんそくなどというようなものは、患者さん、一緒にお話し合いになってわかると思うのですが、一回かかると非常に敏感になって、普通の人とは違う、ごく簡単な何らかの刺激があればすぐに発作を起こすとか、そういうような状態が起こるものですか。一般病気と同じように、特段の差異はないのですか。特に、私は、ぜんそくなどというのは神経的な何か作用があるような気がするのですが、患者さんの状態、どんなものですか。
  33. 大村森作

    大村参考人 それは、個人差が多少ありますが、大体空気汚染に対しては非常に鋭敏になります。たとえば、そばでたばこを吸われますと途端に発作を起こす、そういうようなことがあります。
  34. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 わかりました。  もう一つ吉田先生と鈴木先生、先生方の御主張は、硫黄酸化物だけが大気汚染の、特にこの公健法の対象という時代ではないのではないか、いわゆる窒素酸化物あるいは浮遊粉じん、ばいじん、私どもがよく言う複合的な要素が非常に強くなっておるのではないか、そういう御意見のように拝聴させていただいたのですが、そういう考え方でいいのかどうか。二点目に、そうであるとするならば、学会での、それらの複合的な大気汚染について、それが及ぼす作用等についての研究はどの程度進んでおるものか、お漏らし願えればありがたいと思います。どちらの先生からでも結構です。
  35. 鈴木武夫

    鈴木参考人 二種以上の物質が加わったときにどうなるか、これは非常に学問としては興味がございますので、非常に多くの報告が出されております。わが国におきましても、諸外国におきましても同じでございます。しかし、物質につきましては必ずしも多くはないのです。要するに、普通行政で注目している物質とお考えになっていいと思いますが、普通二つ以上の物質が加わりますと、影響が打ち消し合って、よくなってしまう。それからもう一つは、一足す一の影響が出てくる、それを相加と申させていただきますけれども。それから、倍になってくる、むしろ一足す一じゃなくて、一から四、五の影響が出てくる、相乗と申しますが。大ざっぱに申しますと、一プラス一、相加でございます。  それは、いま先生は、恐らく一般住民立場で御発言があったと思いますが、研究室の方は大部分動物実験でございます。それから、人間についての実験につきましては、非常に短い時間の暴露に終わらざるを得ないわけでございます。私も二十年くらい前には自分で吸いましたけれども、五分くらいしか吸いません、五分か十分くらいしか。ですから、一般の方々が吸われているように、二十四時間二つ以上の物質を吸うというような実験すらできません。それでよろしゅうございましょうか。研究は進んでおるということでございます。
  36. 吉田克己

    吉田参考人 ただいま鈴木先生の方からお話があったとおりでございますが、若干つけ加えさせていただきますと、非常に頭が痛い問題は、先ほど鈴木先生がお触れになりましたように、動物実験あるいは健康な人への暴露、こういうようなことについては所見が得られますが、一番大事なのといいますか、特に社会制度としてどう考えるかというところへ問題が波及し得るというようなことになりますと、やはり非常に重要なのは疫学的な問題である、こういうことになると思います。  こういう意味では、疫学的にこの問題をどう考えるかというのは、現在われわれ学会の中でも一生懸命研究をしておるといいますか、議論をしておるといいますか、そういう段階でして、クリアカットには非常に申しにくい。両者とも有害なものであるということについてはほぼ意見が一致しておりますが、これはあくまで程度の問題がございますので、程度との関係でお答えをしないとその答えは役に立たない、こういうことになるかと思うのですが、その点につきましては、現在そういう観点での研究がいろいろ行われておる、こういうことで、クリアカットなお答えがいまここではちょっとむずかしい、こういうふうに思います。
  37. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大変ありがとうございました。  終わります。
  38. 國場幸昌

    國場委員長 水田稔君。
  39. 水田稔

    水田委員 参考人の皆さん、御苦労さんでございます。時間が限られておりますから、率直にお伺いしますが、吉田先生と鈴木先生に、この法律ができてから八年であります。その前の制度からいいますと十年を超すわけですが、その間における、これはもちろん当時の指標としては、吉田先生からお話がありましたように、SO2ということを指標に使っていることは間違いないわけでありますが、それからの科学的な知見というのは、いわゆる複合と考えられるのか、そういうものによる健康被害についての科学的な知見がどのくらいいま、先ほど経団連の方から、SO2によって決めたものだ、科学的知見が明らかでないなら、明らかになってからそれなら補償する、こういう言われ方もされたわけですが、科学者としてそういう点をどういうぐあいに、われわれ素人ですから、判断すればいいのか、お聞かせいただきたいと思います。
  40. 吉田克己

    吉田参考人 お答えが非常にむずかしくなるわけでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、NO2、SO2いずれも原理的に有害な物質であるということははっきりいたしております。問題は、現実の濃度、現実にわれわれが吸っておるような濃度でこれをどう考えるか。これは先ほども申しましたように、かなり広範な疫学的な研究をしないといけない。非常にぐあいの悪いことに、かつての四日市のように、SOxが圧倒的に多くて、あとの汚染質は比較的少ない、こういう場合には、その間の関係をクリアカットにいたすことが可能なわけですが、現在は、御承知のように、日本の大気汚染は、平たく言うと、私、三つほど条件があると思うのです。一つSO2は過去に非常に高い汚染があった。これは四日市でもわかっておりますが、汚染改善されても、遺残効果とわれわれ言っておるのですが、高年齢者の場合には遺残効果というのがございます。  したがって、疫学調査の結果を解釈する上でこのことを忘れるわけにいかないということが一つございます。そして、当然それとは逆に、現在非常にSOxが低いということがございます。それから三番目に、御指摘のNOxの問題がある。したがって、いま行われたNOxの疫学調査結果を直ちに現在のNOxと結びつけて一義的に解釈するということは非常にむずかしいわけで、したがって、この点についてほかの条件を十分に考えながら、どう解釈するか、これがわれわれが現在期待されておる仕事だと思うのです。これは先ほど鈴木先生もお触れになりましたように、われわれ非常に微力で、十分な解決にまで至っていないというのが偽らぬところだと思うのですが、現在この点について、この研究関係者はかなり努力を払っておりますので、いずれ近いうちには、こういうものについて幾つかの研究評価というものが出てくると思うのですが、いまの時点でクリアカットというのは、率直に言って非常に苦しい、こういう感じがいたします。
  41. 鈴木武夫

    鈴木参考人 基本的には吉田先生と変わりないと思います。先ほど吉田先生が私を補助していただきましたので、今度は私は反対に吉田先生を支持する発言をいたします。  この十年間、大気汚染研究は確かに進んだと思います。しかし、その進んだのは、研究というものを御存じの方ならすぐ御理解いただけますけれども基礎的な面において研究が進みました。そして現在、四日市のときに非常に心配したときに行ったような、緊急時に対応するようにすぐ役立つような研究が蓄積されたかどうかはわかりません。ただし、得られました研究四日市時代に比べると、具体的かついろいろな条件を加えた解析ができるような研究が積まれております。  四日市研究がもしも不十分であったならば、この十年後の研究によって四日市研究は否定されたかもしれません。それが支持されているというのは、四日市研究よりももっといい研究の時代的背景がございますから、条件をいろいろと組み合わせた研究が進みましたので、吉田先生の最初のパイオニアとしてのお仕事を十分支持する資料をこの十年間は得ていると思います。  それからさらに、だんだん研究というものはむずかしくなりまして、現場におきます研究につきましては、次第に困難さを増してきております、市民の協力につきまして。したがいまして、これにつきましては、国を挙げて取り上げないと、一研究者の責任においてやる時代ではなくなってまいりました。そのぐらいでよろしいでしょうか。
  42. 水田稔

    水田委員 同じく吉田先生と鈴木先生にお伺いしたいのですが、実は、この制度が発足しまして、これはもともとが民事の損害賠償保険制度として発足したわけです。実際に賦課金を徴収する地域と、それから給付する地区では、物すごいアンバランスがありまして、二分の一ずつ訂正をしてきたということ。これは具体的に見ますと、先ほどもお話が出ましたが、たとえば四日市八百九十九人です。私は水島の近くなんですが、千九百七十一人、大きなコンビナートなんですね。実際の患者というのは東京が三万近く、大阪が二万近く、こういうことですね。そういう中でいわゆる指定地域が九、それ以外のところは一、自動車が二、いわゆる固定発生源八というようなことが、この運営の中から、指標にSO2を使ったことだけでは説明できない要素がこの八年間の運営の中であったと思うんですね。  それは、先ほど鈴木先生からお話があった、私どもは、やはり指標としてNOxなりあるいは浮遊粉じん、多様なものがあると思うのですが、そういうものを入れない限り、制度そのものが、全体に賦課金を徴収される側も給付を受ける側も納得できないことが続くのではないだろうか、ある程度定着した制度でありますから。そういう点について、私ども素人ですから、どう考えても、実際の世の中でそういうことをやるというのは、金を取る取り方なり給付の仕方なり、そういうところに問題があるのじゃないだろうかという気がするものですから、科学者の立場で御見解をお聞かせいただきたいと思うのです。
  43. 吉田克己

    吉田参考人 率直に申しまして、非常にむずかしい問題で、クリアカットなお答えができるかどうか、こういうことがあると思うのですが、実はこの制度は、先ほど申しましたように、一番古いところからいきますと、昭和四十年の四日市制度からは約二十年近くたっておるわけです。その間に客観情勢というのは非常に変わっておるわけでして、したがって、実はここに問題が非常にむずかしくなる理由があるのだと思うのです。出発点におきましては、端的に言いますと、こういう条件だったと思うのです。  過去に大きな汚染がなかった。それからいろいろな有害な大気汚染質はあるが、その主力はSOxであった、と。したがって、先ほど申しましたように、SOxと患者の発生との間にかなり強い疫学的な関係があった、こういう場合には、これは先生方もお気づきになられると思うのですが、制度的に非常に考えやすい、こういうことがあると思います。だれしも納得をする。強いて言えば、先ほどの牧野先生の御質問にちょっとありましたように、隣の地域との間というようなところは割り切りを多くせんならぬが、あとはそんなに大きな割り切りは要らない、こういうことがございます。ところが、現在になってみますと、前提条件が非常に複雑であるということがございます。  それは、一つは、先ほど申しましたように、たとえばある地域考えてみるとしますと、指定地域であれば、必ず過去に一度は高いSOxあるいはばいじん汚染があった地域でなければ指定されておらぬはずでございます。したがって、そこではかなり高い患者発生があって、しかも、それは高齢者の場合には、われわれ遺残効果という言い方をしておりますが、かなり長期間にわたって患者さんは残る。したがって、疫学的には患者の多い地域という状態は当然持続しておる、こういうことになると思います。しかし、もとのSOxはもうすでに低いのだ、こういうことになると思います。  それから、今度NOxの場合ですが、NOxはSOxに比べますと、過去の最高濃度というのは、たとえば非常に大きな国道周辺等を除きますと、SOxほど非常に高かったとは必ずしも言えないと思います。それにしても高い地域があったことも事実だと思うのですが、その場合に、それじゃ、いまそのNOx火だけが残っておるから、患者発生をすべてNOxに着せられるかというと、先ほど言ったように、そうとは言えない、こういう問題がございます。したがって、そういう条件をよく一遍考えないと、制度改善あるいは指定要件を決めるというところへ踏み込めるかどうか、こういう問題はございます。  率直に言いまして、私の勉強不足ということが非常にあると思いますが、中公審でもそういうことが若干話として出たことがございますが、返事をしろと言われて、私も、実はクリアカットな返事をようしなかったというのが偽らぬところでございます。この点については速急に考えなければいけない問題だとは思うのですが、いまの、たとえばNOxの濃度がどうということを、過去にSOxがこうだったから指定したということと同一に考えるということはむずかしい。したがって、その間、もう少し検討をしてみないといけない、そういう気がいたしております。
  44. 鈴木武夫

    鈴木参考人 お金の問題につきましては、正直に申しまして、私は専門家ではございません。ですから、損害に関して法律屋さんがどうお考えになるかの方が正しいのでございまして、私が答えるのはむしろ不適当でさえあると思います。  ただ、先生のお考えは、常識としてはよくわかります。しかし、いま吉田先生がおっしゃったように、法律的にどうあるかということにつきましては、非常にむずかしい問題が絡まっているであろう。責任を、過去のことも考えるのか、いまの状態で考えるのかでございます。ただ私は、中公審の一番初めの答申のところを読まさしていただきます。ですから、それは私も賛成したところでございますが、「制度全国一本のものであっても、その具体的なあり方としては、給付については後に述べるように地域指定制を導入すべきであり、また賦課徴収にあっては、給付指定地域大気汚染関係するものは必ずしも当該地域内に所在する事業者等に限らないこと、」これはちょっと大切だと思います。「大気汚染に対して事業者等は共同で責任を負うのが適当である等を考慮し、拠出は広く全国から求めるのが適当であるが、固定発生源分に係る賦課料率は、原因の程度に応ずる負担という考えをふまえ、」と書いてあります。これを全国から取るということにつきましては、いまも昔も変わりがないと思います。「原因の程度」という、原因を何にとるかによって、これはまた変わってくるであろうというように考えます。
  45. 水田稔

    水田委員 最後に、実は東京都二十三区の中で世田谷、杉並、中野、練馬という四区が地域指定されてないわけです。これは国の制度によって指定されておる、たとえば新宿区なり渋谷、その周辺と患者、これは東京都が独特の制度をもって、十八歳まではいわゆる医療給付だけやるという制度なんです。同じかどうか知りません。大体同じような疾患についてということですから、患者の数だけで大体比較できると思うのですね。それを見ますと、新宿は千四百六、渋谷が九百八十六、目黒が千百二、豊島が千百八ですね。これは国の指定地域です。それから都の指定で、世田谷が千四百十、杉並が千二百五十、中野が九百十五、これは人口なんかも違うだろうと思うのですね。これは、まさにSO2指標で決めたからこういう決め方になった。しかし逆に、これを人口比で、患者数を同じようなものとして比例されれば、そこに存在しておるSOxなりNOxなり浮遊粉じんの状態を調べていけば、逆にこういう患者が出るという、逆の意味での疫学的な指標としてはこういうものは使えないのか。逆に言えば研究、先ほど科学的知見ということを言ったのですが、相当なデータがここにはそれぞれ存在しておると思うのですね。  ですから、そういうことが学問的には一体できないのかどうか。そういう中で、一つは、指定あるいは指定解除するというような指標というものが変えられるということにはならぬだろうかどうか。これは東京都におられるので、鈴木先生、現地へ行ってみますと、そういうことが科学的な立場で、研究成果が制度の上で生かされるものかどうかということを痛切に感じたものですから、御見解をお伺いしたいと思います。
  46. 鈴木武夫

    鈴木参考人 いまお話のありました地区につきまして、除かれているということにつきましては、私は感覚的には理解できません。しかし、いま先生のおっしゃったような意味においての推測をすることができる理論はございません。したがいまして、もし新しく指定をするとするならば、この法律に基づいてちゃんとした手続を踏んでいただかなければならないであろうと私は思います。  こういうような病気につきましては、すでに吉田先生がちょっと触れておられますように、いろんな原因があるわけでございます。いろんな原因の中には、病気を直接引き起こす原因も多数あるわけです。同時に、市民の社会的態度というものが相当影響しております。それらを考慮すると、先ほど申しましたとおり、ある地区の数値が人口数と密度と、それからこちらの方へ引き写しにできるということはできないという意味でございます。  人間はそれほど物ではございませんから、その地区の持っております特性の中に相当な影響を受けておりますから、そう簡単に右から左に計算ができるというものではなくて、やはりその地区を指定するならば、その法律に基づいた仕組みをちゃんとお決めにならないとまずいだろうと思います。ただ、私は現地に行ったときには、ここがなぜそういうように指定されないのだろうかなという感想は持ちます。
  47. 水田稔

    水田委員 もう時間がありませんから、論争する気はありません。  私がお伺いしたのは、科学的に、たとえばいまはSOxを指標に使っておるから入らなかった。しかし、科学的なあれでやれば、その周辺排ガスの状態が何と何とが存在するということがそれぞれあるわけですね。そういう中でこういう患者が出てくるということは、一つの科学的な研究として、こういう制度を運用する上で大変大事な研究ではないか。そういう意味で申し上げましたので、きょうは論争するあれじゃありませんから、大変ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  48. 國場幸昌

    國場委員長 有島重武君。
  49. 有島重武

    ○有島委員 参考人の先生方、それぞれ貴重なお話を承りまして、大変感謝をいたしております。  早速質問をさせていただきますけれども、まず大村参考人から、体験に基づいての大変生々しいお話で、非常に感銘を深くいたしたわけでありますが、同じ環境の中におりながら、全く影響を受けなかった方々というのもいらっしゃるわけでございますね。いわば耐性が強いという方々がいらっしゃるものなのか、そういったことをどんなふうに感じていらっしゃるか。これは感覚的な問題であろうかと思います。  それから、公害患者認定に当たりまして、認定漏れと申しますか、すれすれの線の方々がいらっしゃることと思うのですね。そういった方々が、これも統計というわけにはまいらぬかもしれませんけれども、相当大ぜいの方がいらっしゃるようなお感じでいらっしゃるか、まあ比較的少ない、大体いまの認定患者の数%、数十%の程度であろうというふうに感じていらっしゃるか、その辺のことをまず大村参考人からお願いいたします。
  50. 大村森作

    大村参考人 まず、同じ環境に生活しておりながら、われわれのような呼吸器疾患のそういう病気にならない人もおります。それはどういうぐあいで出るのかということは、これは私ども公害患者にはちょっとわかりません。それは医学の先生方でないとわからないと思います。  それから、要するに認定はされないけれども認定される線すれすれのところの患者さんがたくさんいるんじゃないか。それは確かに、認定を申請すれば認定されるような病状にある患者さんもたくさんおりますが、いろいろな社会的な制約があって受けない。それから、先ほど私の報告の中にありましたように、川崎市の子供の気管支ぜんそく患者、それが医師会報告では患者の中の七三・五%が認定を受けておらない。それで大人の場合でも、認定の線すれすれというような患者さん、それをわれわれは潜在患者と呼んでおりますが、そういう患者さんがたくさんいるわけですね。これは、認定患者の数倍は必ずおると思います。そういう患者さんは、もし指定地域解除されたならば救済されないことになるわけです、病状が悪化してきても。これはだれの責任でだれが救済するのだ、これが指定地域解除されてしまえば、自分で苦しんで自分の費用で治していかなければならぬ。労働できなくなってもその補償は一銭もない。何らの救済もされないことになる。これは大変な問題だと思いますので、簡単に指定地域解除というのはやられては困る。  それで、川崎なんかでも、全国もそうですが、私は川崎ですから川崎の状態が一番よくわかるのですが、先ほどの報告の中にあったように、昨年は前の年より三十七名も多い認定患者が出ているわけです。二百十名。こういう状態は、川崎空気が大変いままだまだ汚れているということです。SO2は確かに濃度は低下しました。つまり二年前から〇・〇四をクリアしております。でもNO2、二酸化窒素は大変な高い濃度であります。川崎区なんかは全国平均の四倍以上の高濃度を示しているわけです。日平均値で〇・〇八ppmというのが川崎区の平均のNO2の汚染濃度なんです。そういうような状況の中で患者多発している。したがって、先生のおっしゃるような潜在患者はたくさんおるわけですね。そういうのが現状でございます。
  51. 有島重武

    ○有島委員 吉田先生に伺いますけれども、いまの潜在患者の問題でございますけれども、いまの認定の基準ということについて、今後それをどのくらい甘くしていくか、厳しくしていくかというようなことでございますが、そういうことについて御意見があれば、あるいは中公審としての御意見があれば承りたい。
  52. 吉田克己

    吉田参考人 ちょっとはなはだ、何といいますか答えにくい問題になるかと思うのですが、御質問になりました患者さんというのをよく見ると、私、幾つか種類があると思います。  たとえば四日市なんかですと、申請すれば十分認定されると思われる方で、そして比較的症状はまだ軽い、それで本人は会社へ勤めておる、こういうような方は、通常は定年まで認定を申請しないのが普通でございます。これは、医療費は全部健康保険で見てもらえるし、それから補償ということになりますと、こういう方はせいぜい三級もしくは等級外ですから、実質的利益が少ない。そういう意味で、現在患者さんがすべて認定されておるということにはならないと思います。本人さんが、そういう意味認定制度はなくなるというわけではないから、したがって、必要になったときに申請すればいいのだ、そう考えておる方は各地域でかなりおられるのではないかという気がします。実際にそんな調査はございませんので何とも言えませんが、最近の認定を申請する方によく聞いてみると、そういうケースが幾つかあるという点で、そういう意味では潜在的な患者さんというのはあると思います。  それから、すれすれという、これは病気というのは御承知のように、ここまでが病気でこっちから健康だ、こういうものではございません。したがって、ボーダーラインというのは当然あるわけで、ここらは各地域審査会のお医者さんの判断、こういうことにならざるを得ないし、また同時に、不服審査制度というのも御承知のようにあるわけで、この制度でもって対処をするということに法律上なっておるわけです。また実際にこれしか方法がないんじゃないか、そういう気がするわけです。したがって、そういう意味ではボーダーラインについては、ある意味で永久に残る問題かもしれませんが、そういうあれはあると思います。  ですから、ただこれを環境庁が統一的に基準を示すということは、率直に言ってかなりむずかしいのではないか。やはり審査委員である医者の判断というものはかなり比重を置かざるを得ないし、また比重を置くのが至当だろうと思いますので、その辺のところについては問題点があるんじゃないか、進んでその調整をすることが果たしていいのかどうかという問題はあるんじゃないかという気がします。
  53. 有島重武

    ○有島委員 鈴木参考人に伺いますが、先ほど、当該法律の検討は強化のためにというようなこと、それからまた、環境汚染の防止ということが一番の目的なんであって、これを免罪符にしてはならぬという御意見がありました。大変肝に銘じて承っておりました。  それで伺いたいのは、発病までの時間おくれでございますね、こういうことが実証できるのか。これは今後の研究課題だと言われました。それから今度また、治るまでの時間おくれというようなこと、これもあると思うのです。こういったことは今後の研究かもしれませんけれども、もう一つ、先ほど高齢者の問題も出ておりましたけれども汚染に非常に敏感な年齢というものが、人間の成長発達上あるものかどうか。植物なんかの場合にはこういったことを言われておりましたよ。二年生、三年生あたりのところが一番大気汚染に弱いとかいうようなことを聞いておりますけれども、人間においても、小さいときに非常に敏感なのかどうかですね。それからもう一つは、小さいときに汚染されておって、それがある年代になってあらわれるというようなことになりますと、一度減って、客観状況としてはSOxにしろNOxにしろよくなったというんだけれども、やはりここに一つの、二歳なり三歳なりの人たちが、今度は何歳かになったときにふえてくるというような状況が予測されるのか予想されぬのか、こういうようなことについてはいかがでございましょうか。
  54. 鈴木武夫

    鈴木参考人 まず、汚染に感受性の高い敏感な年齢層があるかといいますと、年齢層だけで言えば、大体四歳未満六十歳以上と考えておいていいと思います。ただし、それはもうあくまでも、数学ではございませんから、地域によりましては、若干のほかの条件も加わりますと上下はあるでしょうけれども、乳幼児及び老人というふうな表現をとらせていただけますならば、大体その年齢を言いますから、それは感受性が高い、これは明らかでございます。  それからもう一つ、先生御指摘ございませんでしたけれども、病人も感受性が高いのでございますから、この大気汚染によってなった病気以外の病気であって感受性が高い、また、この大気汚染によって起きた、指定されました病気は、それも感受性が高いというふうに条件はあるわけでございます。  それから、私が申し上げたことに対して御質問いただきましたが、本当にわからないです、正直申しまして。いつの暴露の影響が出たんだろうかということにつきましては、これは鮮明に言うことはできません。ことに、濃度との関係において言おうと思いますと、これは非常にむずかしいのでございます。四日市のような場合には、これは実に汚染の発現と症状の発現の経過が非常に短い間に階段的に起きたということのためにその影響が明らかにされた一つの条件ではないかと思います。四日市の条件が大体三年でしたね。三年暴露というふうに考えられておりますのは、四日市データからでございます。それがよその都市にそのまま当てはまるか、これはわかりません。  もう一つ、暴露されてから一回症状がよくなって、あるいは環境がよくなって、何年か、十年か十五年たったらまた出てくる病気がある。これがいま問題になっておるところでございます。そういうことがあるかもしれないというので、いまのケースも研究対象として取り上げられている。  私がやりました古い時代の資料なんですけれども、小学校の子供さんを検査したときに、いまのようないい検査用具がなくて、この人は影響を受けているかもしれないと言ったのが、十五年たってそのクラスから多数の気管支ぜんそくの死者が出ました。先生からそのときの表を見せてくれと言われたときに、実は私、部屋を移転しまして、みんな捨ててしまった後なものですから、個人的に追求できなかったのが残念でございますが、それは一例でございます。それが真実であるかどうかわかりません。ですから、それが真実であるかどうかということをきわめるための研究が必要であろうという意味でございます。一介の私の個人的経験をもって全部に推しはかろうとは思いません。
  55. 有島重武

    ○有島委員 そうしますと、柴崎参考人を前にしてでございますけれども企業の方では努力して空気がきれいになった、したがって、もうこういった規制はやめてしまえというのはやや速急であるといういまの御意見のように私は受けとめました。  そこで、柴崎参考人地域指定をもう解除するときだ、このように判断をしていらっしゃるということでございました。解除にも二通りございまして、解除して全部責任はもうなくてよろしいというのと、解除したんだからその責任は日本全国に及ぶ、こういう考え方もございますね、いままでは限定責任であったのが。  そうすると、こういうことはいかがでしょう。全国の主な公害企業と言われているようなところ、非常にいま神経を使いながら努力をしていらっしゃるところ、そこの総量規制といいますか、まあ大体どのぐらい、SOx、NOxを含んで日本全国にとにかく排出しておるのか。それを総量的に、企業全般としてこのレベルまで下げていこうじゃないかというようなことはいま検討されておるのか、あるいは検討する御用意があるのか、その辺はいかがでしょうか。
  56. 柴崎芳三

    柴崎参考人 汚染物質に関しましては、それぞれ排出基準というものがございまして、指定地域におきましては、そういった排出基準も特に厳しくなっておりまして、各企業は懸命にそれで排出量を抑えまして、したがって、大気汚染状況が非常に緩和されてきたということでございます。  解除を言っておりますのは、結局この公健法の制度自身が、ある広範囲で著しく汚染された地域における健康被害補償法でございまして、広範囲における著しい汚染と申しますのは、SO2に関して申し上げますと年平均〇・〇五ppm。これは環境基準からいいますと大体二倍ないし三倍の汚染度、こういった地域指定されておるわけでございます。したがって、NOxとかあるいは浮遊粉じんについて同じような考え方を採用いたしますと、環境基準に対して二倍ないし三倍の汚染が果たして現実に存在するかどうかといいますと、ほとんど日本全国どこを探しましても、そういう地域は存在しないわけでございます。先生御承知のように、日本における環境基準といいますものは、健康の保護と生活環境の保全のために維持することが望ましい基準ということでございまして、直ちにそれを超したら病気になるとかなんとかいう基準ではございませんで、行政上の目標値というぐあいに私たち解釈しておるわけでございます。  そういうところでございますので、この指定地域解除するということは、そういった著しい汚染状態がなくなったんだ、だからこの制度上の指定地域としてはもう存在理由はないだろうという考え方に基づいて言っておるわけでございます。  それから公害全般の、公害因子全般の削減につきましては、法律で決められた基準に従いまして、企業としては全面的にその線に沿いまして、最大の努力を払っておるという現状でございます。
  57. 有島重武

    ○有島委員 時間が来ましたので、最後に一言だけ、吉田参考人鈴木参考人から、一言。で結構なんでございますけれども、雪の降る地方におきまして、いわゆるスパイクタイヤというのがございまして、これによる粉じんが問題になっております。これについての御研究が進んでおるのかどうか、この点だけ一言ずつ承って、終わりといたします。
  58. 吉田克己

    吉田参考人 まことに残念でございますが、私自身その研究をやっておりませんし、まだ学界でも正直言って目ぼしい報告が出ておる段階ではないと思います。まだ将来の問題ということではないかと思いますが……。
  59. 鈴木武夫

    鈴木参考人 私も研究という立場報告をまだ承っておりません。
  60. 有島重武

    ○有島委員 ありがとうございました。
  61. 國場幸昌

    國場委員長 中井洽君。
  62. 中井洽

    ○中井委員 民社党の中井でございます。参考人の皆さん方、お忙しいのに貴重な御意見、ありがとうございました。  吉田先生に最初にお尋ねをいたします。実は御承知のように、私も三重県選出でございまして、先ほどから吉田先生の四日市公害問題に関する初めからのお話あるいはこの制度に至る経過等、簡潔に明確に御説明をいただきまして、私どもも当時のことをいろいろと思い出しながら感銘深く聞いておりました。この間の先生の御活動等に対し、心から深く敬意を表するものでございます。  いろんな形で質問が出ましたので、重複をしないようにお尋ねをしたいと思うのですが、吉田先生、簡単に素人っぽく聞きまして、先ほど先生、科学技術の進歩によってどんどん適応さしていく方がいい、こういうことを御発言いただいて、私自身もそういう考えは大賛成でございます。当委員会で他の法案等についてもすべてそういう形を考え、行動をしてきているわけでありますが、この制度ができてから八年間、お話をるる承っておりましても、他の物質による地域指定というのはなかなかむずかしい、こういうお話でございます。  そうしますと、こういう聞き方でお尋ねしていいのかわかりませんが、八年前あるいは十年前の現状から見て、NOxだけがいまのような形で大変顕著にある、そしてSOxはほとんど出されていない、こういうことであれば、しかも、いまのように患者さんが出ておれば、当然当時の科学知識からいけば、あるいは当時の緊急性からいけば、NOxによる指定というものは行われるであろう、しかし、いま科学知識がうんと進んで、いまの状態であるならNOxが地域指定としてやっていける原因である、こういう形できちっと言えないんだ、八年前なら当然NOxでいけるんだ、こういうふうに判断をしていいものかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  63. 吉田克己

    吉田参考人 的確なお答えになるかどうかあれですが、そういうことが起こり得ないかとは思いますが、もし、いまから十年以上さかのぼったところで、NOxを主体とする大気汚染が起きて、ほかの汚染質はそんなに大した濃度ではない、そして、疫学的にいろいろ調査をしたところが、疫学的に十分対応関係が証明できる、そういうことであれば、そういう状態がかつてのように危機的な状態であるとすれば、NOxによって地域指定をするということは十分に考えられるのじゃないのか、そう思います。
  64. 中井洽

    ○中井委員 もう一つは、地域指定解除の問題についても、先生から、科学的に考えていけばいいという御発言がございました。るる議論のあるところでございますが、現在の状況から考えて、SOxだけで指定がされてこの制度が運用されているところに割り切りがあり、いろいろな矛盾があるわけでございます。しかしNOx等も、きちっと因果関係はわからないけれども、まあまあ有害物質で、これから究明がされていくだろう、そういうことであるならば、NOxその他の地域指定というものが明確になってくるまでは地域指定解除要件、こういったものはなかなか明確にできない、つくれない、このように私どもは判断をしてよろしいでしょうか。
  65. 吉田克己

    吉田参考人 ちょっと聞き取りにくかったところがあるので、もしあれでございましたら再度お願いをしたいと思うのですが、かつてと違って現在の地域での患者さんの分布というものは幾つかの要素が入り込んできておる、こういうことがあるので非常にむずかしい条件がある、こういうふうに申し上げたわけですが、しかし、これは永久にむずかしいということではないと私は思います。これについては当然われわれの側に責任があるわけでございまして、それに向かっての努力も行われておりますし、それから、及ばずながら私自身もこういう研究をしておりますし、そういう研究班もございますので、これはいずれかの時点においてしかるべき解答といいますか、行政的にこの程度で割り切っていただくに必要な根拠、こういうものは出てくるのではないか、そういうように思っております。
  66. 中井洽

    ○中井委員 私がお尋ねいたしましたのは、そういうときまで現行法の中で地域指定解除の要件等は議論したり考えない方がいいだろうとお考えでしょうか、それとも、そういうことも考えていってもいいと先生はお考えでしょうかということです。
  67. 吉田克己

    吉田参考人 地域指定とか、あるいは解除ということは、私は先ほどから申しましたように、科学的事実に立脚して、ひとつ冷静に議論をお願いをしたい、こういうことを申し上げたのですが、同時に、これは御承知のように行政的な問題でもあり、政治的な問題でもあるわけですから、科学者以外が議論してはいけない問題でないことは明白ですので、これは御議論いただいて何ら差し支えないのではないか。ただ、われわれに解答を要求されるについては、いまここで答えを出せと言われるのは、いささか酷ではないか、こう申し上げたつもりでございます。
  68. 中井洽

    ○中井委員 鈴木先生にお尋ねをいたします。  素人でございますので簡単にはわからないのですが、たばこの健康に与える影響、こういったものがどこまで研究をされていると考えていいのでしょうか。あるいはまた、こういう公害患者さん、特に気管支系の疾病に遭われておる患者さんにたばこの与える影響、そういったものが十分研究されておると考えていいのでしょうか。
  69. 鈴木武夫

    鈴木参考人 御質問がちょっとむずかしかったので、私のお答えがまた失礼に当たることになるかもしれませんが、お許しください。  たばこの影響につきましては、これはもう大体合意に達していると思います。それはがんだけではございません、ほかの影響も。ですから、少なくとも補償法に関する限り、たばこの影響は地域指定において考慮されているはずです。喫煙者の補正をやっているはずです。全員が同じたばこをのんだものとして勘定をしているはずです。地域指定の場合たしかそうなっているはずです。それから今度は個人を、その中から患者さんの診断をし、さらに診査をする。医者でございます、医者がたばこの影響を無視して症状を、病気を診断するはずがないと私は信じます。
  70. 中井洽

    ○中井委員 私もそのとおりであると思うのです。かつて、何年か前に、環境庁患者さんの中でたばこを吸っている人の資料等をお出しいただきたいと言ったら、出せない、こういう話がございました。先生が患者さんの病気専門ということではないと思うのでありますが、ただいま、当然御調査があるものだ、お医者さんが調査をするものだ、こう考えておるとお答えをいただきましたので、また後刻環境庁と議論をしていきたい、こんなふうに考えます。  柴崎参考人にお尋ねを申し上げます。先ほどからぱらぱらとこれを見させていただきました。おっしゃりたいことはわからないわけでもないのですが、この資料の中で幾つか質問をさせていただきたいと思うのです。  この六ページの表に「指定解除レベル」と出ておるし、そういう言葉を〇・〇四PPm、こういう形で数字をお使いになっていらっしゃる。先ほどの御意見の中にも、指定解除レベル以下の地域、こういうお話がございましたが、中公審答申等でこういう数字が出ているようには私どもは記憶をしていないのであります。あるいは私の記憶間違いかと、さっきもちょっとここをぱらぱらと見たのでありますが、数字としてこういう形でお書きになるというのは、私少し、と思うのですが、間違いでしたら正していただきたい。  あるいはまた前のページに、四ページ上から三行目ぐらいから「改善されて、きれいになってから生まれた小児ぜん息患者でも、六カ月たてば、指定地域に住んでいるというだけで、他の地域の同じ病気の人とは違った特別な取扱いを受け、しかも一カ月一・五〜五万円もの手当を受けることができます。」こういう書き方をされておるわけであります。しかし、これも書き方が少しどうでしょうかという気がするのです。この場合には、一歳未満の方が六カ月と、こういうことではないかと私は思うのであります。何か七歳でも八歳でも、そこに六カ月住んでおったらあれだというような書き方であります。そういったところ、資料として少し偏った書き方ではないかという気がしたのですが、どうでしょうか。
  71. 柴崎芳三

    柴崎参考人 お答え申し上げます。  この六ページのレベルでございますが、四十九年の中公審答申にはっきり書いてございます。それは間違いございません。(中井委員「数字を」と呼ぶ)はい、数字がはっきり出ております。  それから、新生児の点でございますが、これも施行令の第二条に「一年(一歳に満たない者にあっては、六月)」というような形ではっきり明示されております。ですから、この表現は施行令あるいは答申の言葉をそのまま採用したものでございます。こちらの方の恣意は全然入っておりません。
  72. 中井洽

    ○中井委員 最後に大村参考人に承ります。  先ほどの、患者さんを代表しての御意見、私どもよく理解をいたしております。患者さん全体のくやしい、あるいは情けない、健康を取り戻したい、こういうお気持ちもよくわかるわけであります。私どもはそういったことを体して、これからも党派を超えて一生懸命この委員会全体でも努力を続けていきたい、こんなふうに考えております。  その中で、いろいろな法の科学知識に基づいた訂正、是正、あるいは進歩、改善、こういったことは常に柔軟にやっていかなければならないと思うのでございます。  その中で、中公審等の答申にも書いてある地域指定解除の要件、こういったものをつくり上げていくということ、このことが患者さんにとっては感情的にはどうしても許せない、こういう形になるのでしょうか。  たとえば、たばこの問題もやっていく、あるいは他の指定要件による地域指定というものをきちっとつくり上げていく、そして、その中で地域指定解除というのを打ち上げていく。地域指定解除ということは、患者さんを切り捨てるとか、そういうことではなしに、究極、公害というものを、あるいは大気汚染というものをその地域からなくしていく。なくなったらすばらしいことだと私は思うのです。おっしゃるように、なくなっても健康は戻らない、こういうこともそれはよくわかる。それはそれで救済をしていく。そういった立場から法を整備していく。そういったときでも、指定解除考える、議論をするということについては、患者さんの会としてはお怒りになるのでしょうか。そこのところをざっくばらんにお教えいただければありがたいと思います。
  73. 大村森作

    大村参考人 私ども指定地域解除に反対するのは、現在、四十一指定地域各地とも、なるほどSO2は一応大体環境基準をクリアしております。ですが、二酸化窒素、浮遊粉じん、こういう呼吸器にとって最も有害な、呼吸器の深部まで到達するこの汚染物質が環境基準をはるかにオーバーしておる。私どもは、緩和されたいまのNO2の環境基準は認めておりません。環境庁ともこのことでまだ交渉を続けております。私どもは、あくまでもNO2の環境基準は旧基準の日平均値〇・〇二ppm、この濃度以下に下がって、それで何年か相当期間たって患者が出ないようになる、もう潜在患者もなくなってしまう、空気がきれいになって患者が出ない、そういう状況に早くなってくれればいいと思っているわけです。  ですから、私どもはそういう立場から、現時点にあっては、たとえ物差しであっても、そういう物差しをつくってはいけないということなんです。物差しをつくれば、すぐそれではかって使うようなことになる可能性があるわけです。だから、私ども考え方は、そういう物差しはつくってもらっては困る、そういう時点ではないということなんです。全四十一指定地域のほとんどが二酸化窒素浮遊粒子状物質、こういうような、まだ大変有害であるというように科学者の先生方が言っておられます。SO2以上に有害である。そのSO2以上に有害であるNO2とか浮遊粉じん改善されない限り、指定地域解除要件を設定すべきでないというのが、私ども意見でございます。
  74. 中井洽

    ○中井委員 私の尋ね方が悪かったら、ごめんなさい。  お答えはそれで結構なんですが、私どももそういうことを申し上げている。地域指定のいろいろな要件をこれから、先ほど吉田先生にもお尋ねしましたけれども、まだまだでき上がっていない、おつくりください、こう言うておるわけです。そういうのをつくっていく、つくっていくと同時に、それからいろいろな対策もしていく。そのときに解除ということについても書いていく、法案の中につくっていく、あるいは議論をしていく、このことはいけないことなんでしょうか、患者さんにとっては不愉快なことでしょうかとお尋ねしている。  だから、いまそういうものがきれいになっているとか、何もそんなことは言っていない。悪ければそれで新しく地域にしていけばいい。そのかわり、そういうすべての複合汚染も含めて、地域大気がきれいになっていく、そして大気がきれいになるに従って、年数がたてば患者さんの発生も多くなくなる、そういったときに、解除の条件はこうこうこうですよと、そのときには残っておる患者さんにはどうどうするのですよというような、いろいろな議論をすることまでおしかりを受けなければならないことなんであろうか、こういうお尋ねを実はしたわけです。いまするとか、しないとか、そんなことは全然尋ねておりません。どうぞもう一度。
  75. 大村森作

    大村参考人 お話はよくわかりました。  患者立場から感情としては、私どもはやはりそういう物差しをつくってもらっては困る。先生のおっしゃるように、本当に日本の空気がきれいになって、そしてもう患者は出ない、そういう環境になることを私たちは望んでおるわけです。私たちの子供や孫の時代に、私たちと同じような被害者がどんどん出るような状態では困る。そういうことで、私どもは、先生のおっしゃるような状態が、一日も早く本当にこの日本の国にでき上がることを望んでおります。
  76. 中井洽

    ○中井委員 ありがとうございました。
  77. 國場幸昌

  78. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。お疲れでしょうが、私が最後になりますので、もうしばらく御協力をお願いいたします。  特に吉田先生、鈴木先生にはいろいろと教えていただきました。鈴木先生のお話では、人間はSO2だけに暴露されているのではなくて、いろいろな性質の物質、汚染物質の混合された中で被害を受けているのだというお立場からお話があったかと思いますし、吉田先生は、指定地域解除については、科学的な事実に立脚して、冷静な判断に基づいて運用されなければならないという御発言であったというふうに思います。  先ほどから重複しているとは思いますけれども、端的に言って、この地域指定解除要件を明確化していく、現時点においては、科学的な知見の集積と申しましょうか、研究の積み重ねと申しましょうか、そういう点では、現時点ではそれを明確化することは不可能というふうにお聞きしてよろしゅうございましょうか。お二人にお願いをいたします。
  79. 吉田克己

    吉田参考人 これは御承知かと思いますが、昭和四十九年に地域指定要件を中公審答申いたしましたときに、同時に解除要件についても答申をしておるわけでございます。そういう意味では、解除という問題はいつかは問題になるのは当然といいますか、当然そういう方向へ行くであろうと思うのですが、ただ、この解除要件を実際に具体的にどう適用していくかということは、いまの時点で、たとえばきょう、あすにこれが科学的に決められる、そういう状況にはない、そういうふうに私は思います。
  80. 鈴木武夫

    鈴木参考人 吉田先生と同じでございます。
  81. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ありがとうございます。  それでは、先ほど配られましたパンフレットの中に、これも先ほどのお話にも含まれていたと思いますが、吉田先生、鈴木先生、このパンフレットの中で、大気汚染によって病気多発していたかどうか疑問があるのだというふうに書かれております。これは十五ページの一番文章の最後のところで、「以上のことから、これまでの有症率調査の結果にもとづいて指定した地域で、果たして大気汚染により病気多発していたのかどうか、疑問が生じます。」こういうふうに書いておりますが、この点について、お話をお聞かせいただきたいわけです。
  82. 吉田克己

    吉田参考人 時間もございませんのと、私、詳しく、細かくこれを検討しておりませんので、これについて個別に一々議論といいますか、意見を申し上げるということは差し控えたいと思うのですが、基本的には、先ほども申しましたように、私が関係しておりました四日市の場合は特にそうでございますが、これらの制度の作成あるいは裁判、そのほかそれらに十分な研究が当時行われておったわけでございまして、これの疫学的起因性ということについては、今日日本では異論はない、通説と申しますか、一般的に、大気汚染研究者の間では広く承認された事実である、そういうように思います。  ただ、こういう問題はいろいろ前提とかそういうことがございますので、そういうことについてここで若干述べられておるのだ、そういうように理解しております。
  83. 鈴木武夫

    鈴木参考人 基本的には吉田先生と同じでございます。要するに、大気汚染で説明のできる病気がふえた、この病気大気汚染のみでふえた——前者でございます。
  84. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それでは大村さんにお尋ねをいたします。  等級の決定というのは、これはもちろん病状に即して行われなければなりませんし、同時に、患者の権利についても認められていかなければならないものだと私は考えておりますけれども、最近は、等級の決定についてはずいぶんいろんなことを私、耳にするわけでございますが、きょうはそういうことについては余りお話がございませんでしたので、会長さんの聞いていらっしゃる、等級の決定の問題について患者さんの御意見をこの場でお聞かせいただきたいと思います。
  85. 大村森作

    大村参考人 公害認定に当たって等級の決定、この問題は全国患者、大変大ぜいの人たちが不満を持っております。ということは、自分の主治医が主治医診断書、意見書というものを出してくれるのですが、主治医が大体病状をよく知っておりますので、この人は一級相当だというようなランクで申請してくれても二級になるというような例が、私の知る範囲では大体三分の二ぐらいがランクを下げられる。主治医の診断よりもランクが一級下がる。二級ならば三級、そういうぐあいで、三分の一ぐらいが主治医の診断どおり。患者意見もほとんど入る余地がないわけです。それで、主治医診断よりもむしろ医学的検査結果という、年に一回しか検査しない、その医学的検査結果が認定審査会で大変大きな役割りを果たしている。主治医は一年じゅう診て患者を扱っておるわけですから、私どもは、主治医の意見が尊重さるべきだということを主張しておりますけれども、もちろん、国会補償法附帯決議の中にも、認定に当たっては主治医の意見を尊重するように、そういうことが言われておるのですけれども、そういうものが実際の認定審査会の場では通用していないわけです。それが実態でありまして、私どもは、不服申請いろいろな形でやっておりますが、それもやはり、不服申し立てで患者側の意見が通るのは三分の一か五分の一というような状態で、患者にとってはその問題は大変不満であり、かつまた深刻な問題であります。
  86. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 もう一つお伺いしたいのですが、時間があれでしたらいけませんので、先に柴崎参考人の方にお伺いをしておきたいと思うのです。  今回の臨調答申との関係で、五十六年の五月七日に発行されました、おととしになりますからあれなんですが、経団連週報というのを私、見せていただいたのですが、そこに臨調の委員経団連との懇談がございました。その懇談の席上、民間の活力の阻害要因として、繁雑な許認可、それから行き過ぎた福祉、もう一つ、適正を欠く環境規制というのを挙げていらっしゃるわけですが、一体、適正を欠く環境規制というのはどういうものなんでしょうか。
  87. 柴崎芳三

    柴崎参考人 お答え申し上げます。  その内容につきましては、冒頭の御説明の中で申し上げたような内容でございまして、そのときも、改善点といたしましては、きょうお願いいたしました四つの点を頭に描きながら、臨調当局にも経団連としての考え方を御説明申し上げたということでございます。
  88. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 五十一年六月の経団連月報によりますと、そのころは経団連は、この制度による補償については公費負担を最大限に拡大するという表現を使って、拡大をしきりに主張しておられたわけです。それから三年たちまして、五十四年四月十六日の経団連の文書によりますと、今度は公費の導入というよりか、むしろ汚染関係のない認定患者は本制度から外していくんだという主張に大きく変わってきているわけですが、これはどういう理由からでしょうか。
  89. 柴崎芳三

    柴崎参考人 お答え申し上げます。  当初、この制度が発足いたしましたときに、経団連としての一つの非常に大きな条件が、公費負担をぜひこの制度の中に入れていただきたいということでございました。  それは、二つの観点からでございまして、一つは、自然有症率というものがこういった非特異性の疾患には当然ありまして、自然有症率を産業サイドの負担で賄うのは理に反するのではないかという考え方が一つございます。  それからもう一つは、固定発生源につきまして、いわゆる中小発生源のすそ切りということを行いまして、中小発生源からは賦課金を取っておりません。これを大企業、すそ切り以上の企業で負担するのは過重な負担ではないかという考え方がございまして、この二つの部分については国あるいは地方公共団体が、国民あるいは住民の福祉を確保するという意味でお金を負担していただいても決して無理ではないんじゃないか、理屈は通っていることじゃないかという考え方がございまして、そういうことを制度の発足当初から強く御要望申し上げたのですが、これは不幸にして取り上げられませんでした。したがいまして、制度が発足してから間もなく、五十一年六月当時はその主張を繰り返しておりまして、お願い申しておったわけでございますが、これはなかなか通る見込みがございませんでした。  したがって、その考え方を現在も全く捨てておるわけではございません。しかし、その後いろいろ検討いたしました結果、この制度にはそれ以外にもっと矛盾を持った点がいろいろある。そういった矛盾点を全部解決していただければ大変ありがたいけれども、しかし、その中で特に改善された後で発生しておる認定患者のそういったあり方について大変問題があるので、指定地域解除とか、あるいは暴露要件の改善とか、そういった新しくふえる患者さんについて、もう少し納得のいくような制度を導入していただいて、将来無限にふえるのではない、産業側が努力すれば、当然その努力の結果は認定患者の数の方に反映されるというような制度にぜひしていただきたいという考え方をとりまして、五十四年四月以降、そういった考え方でお願い申し上げておるというのが従来の経緯でございます。
  90. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 企業側の努力が反映されて、本当に公害患者が一人もなくなることを私も願っておりますが、きょうは議論の場ではありませんので差し控えます。  ただ、このパンフレットを見ておりますと、平均寿命を大きく上回った人の場合には遺族補償はするなという意味のことを書いておられるわけです。九十歳以上の天寿を全うした人に対してさえそういう補償が行われているということを書いておられますが、どうも理解ができなくて苦しんでしまいます。こういうことになりますと、たとえば車で事故を起こしたお年寄りの場合も、おまえの足はよたっていたからといったような議論になりかねないわけでありまして、平均寿命を超えた人の問題について一体どういうふうに考えておられるのか、もう一度はっきりお考えを聞かせていただきたいわけです。
  91. 柴崎芳三

    柴崎参考人 お答え申し上げます。  結局、その根底には、大気汚染とこの指定疾病との関連につきまして、その後の検討の結果、大気汚染によらざる点が非常に多いのではないかという科学的な知見が大分はっきりしてまいりまして、特に気管支ぜんそくにつきましては、これはアレルギー体質を持った方が特有なアレルゲンでぜんそくになるケースがほとんど大部分であって、現在の大気汚染濃度程度の低濃度の汚染でそういった病気が増悪されるケースはほとんどない、そういう知見が非常にたくさん出ております。  それから慢性気管支炎と肺気腫につきましては、これも現在程度の低濃度の汚染では発生しないので、むしろそれはNO2については数百倍、粉じんについては数万倍の汚染度を持っております喫煙に関係する病気であるという考え方が多分にあるわけでございまして、そういったところでいろいろ制度全体を考えてみますと、現在の指定地域の中で、むしろ全国平均よりも平均寿命の長い地域がいっぱいございます。果たして大気汚染とこの病気関係あるだろうかという基本的なところから考え方をだんだん推し進めていきますと、やはりそこに、平均寿命に関してそれをさらにクリアした場合、あるいは九十歳以上の場合ということになりますと、大気汚染とは一応関係のない形で考えてよろしいのではないかという考え方が出てまいるわけでございまして、他の制度との関連で申し上げますと、たとえば、ただいま先生がお取り上げになりました交通事故の場合には、六十七歳で、あとは平均余命の二分の一というようなことで一応の制限をとっておりまして、必ずしも、ある年齢以上につきましてある制限を設けるというのは、この経団連の主張だけではございませんで、ほかの制度にも十分生かされておる考え方である、そういうように考えておる次第でございます。
  92. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 公害患者の場合は、にもかかわらず公害によって苦しみながら、年老いても少しも安堵することなく暮らしていって、苦しみながら命を終わらなければならないということをぜひ考えてほしいなというふうに思います。  最後にもう一問だけ、大村さん、大阪市の西淀川、それから参考人の足元であります川崎市でも新たに裁判が起こっておりますが、これは当然公害被害補償法制度に大きな問題があるということを意味するのではなかろうかと思いますので、この点について最後に……。
  93. 大村森作

    大村参考人 お尋ねのように、私たちの公害裁判は、補償法の不備な点を補完するために、一つは損害賠償請求というものをやっております。  それから、公害の差しとめにつきましても、いま私たち裁判で要求していることは、二酸化窒素と粒子状浮遊物質の削減、こういう補償法にかかわる問題であります。現在、補償法ができまして、それにいろいろ国会附帯決議がついておりまして、そういう附帯決議補償法の中で生かされていっておれば、私ども裁判を起こす必要は一つもありません。七年も八年も十年も、下手をすると私も裁判中に倒れてしまうかもしれません。そういうような裁判をなぜ私たちが起こしたか、やはりそこには補償法の欠陥が、不備があるためであります。先生のおっしゃるとおり、補償法が不備であるから私ども裁判でそれを補完する、そういうことでございます。
  94. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 終わります。
  95. 國場幸昌

    國場委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る二十二日火曜日午前九時五十分理事会、十時より委員会を開会することといたし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十二分散会