運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-04-26 第98回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十六日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 北山 愛郎君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       奥田 敬和君    木村 俊夫君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    玉沢徳一郎君       中山 正暉君    平沼 赳夫君       松本 十郎君    岡田 利春君       河上 民雄君    高沢 寅男君       林  保夫君    中路 雅弘君       野間 友一君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      恩田  宗君         水産庁海洋漁業         部長      井上 喜一君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ───────────── 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   石原慎太郎君     平沼 赳夫君   八木  昇君     岡田 利春君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   平沼 赳夫君     石原慎太郎君   岡田 利春君     八木  昇君     ───────────── 四月二十日  千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付)  千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送付)  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送付)  千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付) 同月二十六日  北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件(条約第一三号) 同月二十二日  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願外三件(中西績介紹介)(第二四九六号)  同(馬場昇紹介)(第二四九七号) 同月二十五日  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願飛鳥田一雄紹介)(第二七七五号)  同(阿部助哉君紹介)(第二七七六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件(条約第一三号)      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  本日付託になりました北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を聴取いたします外務大臣安倍晋太郎君。     ─────────────  北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和五十三年四月二十一日にモスクワで署名された漁業の分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に基づき、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国さけます漁獲手続及び条件を定める議定書締結するため、本年四月十一日以来、モスクワにおいて、ソ連邦政府交渉を行ってまいりました。その結果、四月二十二日にモスクワで、わが方小和田臨時代理大使先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの議定書の署名が行われた次第であります。  この議定書は、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国サケマス漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まり手続等を定めております。なお、本年の北西太平洋ソ連邦距岸二百海里水域外側水域における年間総漁獲量は、昨年と同じく四万二千五百トンとなっております。  この議定書締結により、北洋漁業において重要な地位を占めるサケマス漁業操業を本年においても継続し得ることとなりました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします
  4. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ─────────────
  5. 竹内黎一

    竹内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します川田正則君。
  6. 川田正則

    川田委員 ただいま議題になりましたサケマス漁業交渉について、最初に御質問を申し上げたいと思います。  四月二十一日に正式に妥結をいたしまして、毎年のことでございますけれども水産庁長官初め外務省関係者方々には本当に御苦労さまでございました。  ただいま外務大臣からお話しございましたように、総漁獲量四万二千五百トンというのは変わらなかったわけでございまして、この面につきましては業界も胸をなでおろしていたと思うわけでございますけれども、二つほど、協力費が二億五千万アップされた、それから、これはいろいろ問題があったようでございますけれどもオブザーバー乗船が三隻から四隻になったということを承知いたしているわけであります。  そこで、協力費の問題でありますが、最初交渉の七八年のときは十七億程度であったと思いますけれども、それが次第に増額されてまいりまして、ここ二年ほどは四十億で定着をしていた。ことしになりまして二億五千万アップになったということになるわけでありますけれども、ちょっと素人考えになるのかもしれませんが、総漁獲量が変わらないで協力費がアップされるということについては、ちょっと筋が通らないような感じもするわけでございます。いずれにしましても、相当程度国費負担をするということになろうかと思いますが、国費ということになりますと、国民税金ということになりますし、そのほか北海道あたりは特にサケマスふ化事業をやっておりまして、これも相当程度国費やあるいは道費が支出されているわけでありまして、これもまた国民税金ということになるわけでありますから、そういう面からいきますと、この辺で、歯どめという意味ではもちろんございませんけれども、何かしっかりした協力費算定基準といいますか、そういうものも考えてしかるべきでなかろうか。あるいはもう考えていらっしゃるのかもしれませんが、その辺のことが、業界におきましてもまたわれわれにしましても、ちょっとはっきりわからない点でございます。そういう点につきまして水産庁考え方をお尋ねしたいと思います
  7. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の日ソサケマス交渉につきまして、漁業協力費につきましては、ソ連側は、サケマス資源の再生産のためにソ連側が支出いたしました経費が、昨年の四千七百万ルーブルから五千三百万ルーブルに上がったということを主張をいたしまして、日本側日ソ漁獲量比に応じましてこれを負担することがクォータを与えるための不可欠の条件である、こういうことで先方は言ってきたわけでございます。  もちろん、このソ連側サケマス資源の再生産のための経費というものにつきましては、私どもはチェックをいたしまして、事実これが増額される予定であるということもわかっておりますし、また、このような経費は、当然サケマス産卵場の保護あるいはサケマスが通る河川の改修といったようなものに使われるわけでございますから、その意味ではわが方の漁獲につきましてメリットがあるという事実は、これは認めざるを得ないわけでございます。しかしながら、このような計算のもとにソ側が言ってまいりました額は、五千三百万ルーブルに経費がふえ、かつ、日本ソ連とのシェアによってこれを分ける、しかも、その場合の使用する為替の換算のレートというものも前に使いましたレートよりも相当上がっているということから、実は四万二千五百トンという漁獲割り当て量を与える場合には、その日本側コンペ経費が約四十九億である、これを欲しいということを言い出したわけでございます。  このような計算基礎の上に乗ってしまいますと、私どもの方は交渉が非常にむずかしくなるものでございますから、私どもといたしましては、現実の問題としてわが方の負担能力がないということを主張いたしまして、るる説明をいたしました結果、先方も零細な漁民に多くのコンペを払わせるというのはむずかしいということはわかったということで、四十九億の要求を引き下げまして四十二億五千万ということにいたしたというのが経緯でございます。もちろん二億五千万の増になりましたことはその分が負担になるわけでございまして、この点につきましては業界の顧問の方々とも十分相談をいたしまして、負担能力のぎりぎりではあるけれども、この程度まではやむを得ないということでこれを認めたという次第でございます。  なお、今後どのように対応していくかということでございますが、一概にこれを何らかの計算基礎の上に乗せていくということになりますると、負担能力の問題というものがなかなか出てまいらないものでございますから、そのようなことが適当であるかどうかということは問題があろうかというふうに思うわけでございますが、当然今後の負担の増というものの要求がなされてくると思いますけれども、われわれとしては、今後ともサケマス漁業の存続という見地からこれに対応していかなければならぬということで、やはりできるだけこのコンペの額というものは抑制的に持っていくということで最大の努力を払ってまいりたいというふうに考えている次第であります
  8. 川田正則

    川田委員 ただいまの長官お話を伺って、いまのようなやり方でいった方がいいという御判断であればやはり水産庁としての考え方で進んだ方がいいのだろう、私ども素人考えでそういうふうに思うわけでありますが、ただ税金を使うということになると、消費者の立場からいきますと、何か漁業関係者だけのためにというような感じもないわけではもちろんございませんから、できるだけ流通関係ども考慮して、安く国民の口に入るようにひとつお願いをしたいというふうに考えます。  それから次でございますけれども、今回の交渉で、ソ連最初から日本漁船違反操業というものを相当強く取り上げて指摘をした。そのために取り締まり権限のある監督官乗船を強く要望したというふうに承っているわけでありますが、いろいろ御努力をしていただいた結果、権限のないオブザーバー一名増員に落ちついたということでございまして、違反操業というのは国際信義との関係ももちろんあるわけでございますけれども、話に聞きますと、相当いろいろあるようにも私どもは聞いております。相当悪質なものがあるのかどうか、私ども新聞承知をする程度で、つかまればまた外務省水産庁にこちらからお願いをするというふうな感じで、現在まで来ているわけでありますけれども、こういうふうに違反操業が非常に続くということになりますと、遠洋漁業の場合は、どうしても先細りになるような気もいたしますし、しかし、現実の問題からいくと、魚価がなかなか上がらないということから、水産業界も楽でないという現実の姿もありますから、だからといって違反操業をやったらいいということにもならないと思いますが、やはりそこで業界の自覚と自粛というのが必要になってくると思いますが、そういう考えで間違いございませんでしょうか。
  9. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の交渉におきまして、オブザーバーを乗せる監視船を一隻増加するということで話し合いをまとめたわけでございますけれども、先生おっしゃいますように、当初ソ側としては、この監督官をいわば共同取り締まりの形で監督官として乗船させてほしい、そしてまた、その人数も五隻に乗せてほしいということを言ってまいりました。その前には陸上の監督官による取り締まりということも言及してまいったといったような状況でございます。しかしながら、私どもといたしましては、わが国の排他的な管轄権のもとにある監視船というものの中において、ソ連監督官取り締まり行為を行うということは、日本側の公権力の制限となるということになりますので、これは絶対に譲れないということで先方に申しまして、先方もこの点は了解をしておりたという経緯でございます。  ただ、現在の違反の件数も依然として高い状態でございますし、また、その内容につきましても、たとえば操業区域違反といったような問題がございまして、やはり私どもといたしましては、わが方の取り締まりをしっかりやるということを示す意味からも一隻の増加を認めざるを得なかったというのが実態でございます。  川田委員のおっしゃいますように、このように違反状態が続きますると、ソ側といたしましても、どうしても日本操業に疑惑を持ちまして、特に沖取り操業というものについてこれを禁止してくるという可能性が多分にあるわけでございまして、北洋の安定ということを考えますると、違反をできるだけなくしていくということが絶対に必要な要件であり、北洋の将来がこれにかかっておるというふうに言っても過言ではないというふうに思うわけでございます。  さような意味で、私どもといたしましては業界に対しましてより一層違反防止に努めるように、またソ連との約束を守るようにということを十分指導いたしますと同時に、私ども監視体制も強化をいたしまして、これに対応していきたいというふうに考えておる次第でございます
  10. 川田正則

    川田委員 ただいまのお話で、北洋の安定のためにも違反操業をしないようにいろいろ指導をしていただけるということでございますが、そこで、これは国際信義ということで当てはまるのかどうか私はわかりませんけれども外務省水産庁にお伺いをしたいわけでございますが、例の韓国漁船の問題でございます。これはいままで何度も質問があり、御答弁をいただいている問題でありますけれども国際信義ということからいきますと、私どもはどうも腑に落ちない点は、特に北海道だからというわけではございませんけれども韓国漁船の問題については何か非常に不満があると私は考えております。特にことしの二月に、韓国漁船北海道の沖合いで相当いろいろ問題を起こしているということで、外務省北東アジア課長実態調査に行かれました。その前に水産庁も何回も行っておられる話も聞いております。特にスケトウの中から商品価値の高いスケコだけを取り出して、後魚体は海中投棄をする、ひどいときは一週間か八日の間に八十トンだとか九十トン近く捨てられてあったのを、実際問題として目で確かめた人がいるという話も実は聞かされているわけでありますが、これは外務省としましても、水産庁としましても、実態調査はもちろんやっていただいているわけでありますけれども、よりよい方向に持っていっていただかなければなりませんし、また長官御自身も先般韓国に行っていただいたわけでありますが、私ども非常に困りますのは、なかなからちが明かないということで、顔を見るたびにその話が出るということになっているものですから、再三の質問で大変恐縮なんですけれども、この時点でもう一度御答弁をいただきたいと思います
  11. 恩田宗

    恩田説明員 北海道沖における韓国漁船操業であるとか、その違反状況については、後ほど水産庁の方からお願いいたしたいと思いますが、外務省といたしましても担当の課長を派遣いたしまして現地状況をよくフォローしてまいりました。その結果、水産庁とも協議いたしまして、東京及びソウルにおいて最近前後六回にわたりまして韓国側に対して善処を申し入れた経緯がございます。特に三月は水産庁長官みずから韓国を訪問されまして、この問題を話し合ってこられております韓国側もこの状況については十分承知して、私ども協議をしていきたいということを申しておる次第でございます。  今後の対応につきましては、問題はやはり漁業資源をどのように有効に確保するかという問題点と、韓国側がとにかく自主規制を守ってもらう、そのための実効ある取り締まりの、または指導の方法を確保してもらう、この二点がございますが、北海道漁民方々にはまことに切実な問題でございますので、ぜひ外務省としてもこれらの方々の関心を十分踏まえて西日本水域における操業問題、あるいは韓国日本との間で漁業協定を結んだときの経緯、それから日韓関係の全般の関係、このような問題を総合的に勘案しながら、関係漁民方々が十分納得していただけるような結果が得られるように日韓の間で話し合いを進めていきたい、こういうふうに考えております
  12. 松浦昭

    松浦政府委員 韓国船の問題につきましては、北海道漁民方々が大変お困りになっておられるということにつきましては私も十分に承知をいたしておる次第でございます。特に昨年の暮れから本年の初めにかけまして操業期間操業区域その他重要な違反が起こりまして、これにつきましてはどうしても先方に厳重に抗議をしておかなければいかぬというふうに思いまして、私も三月十日から十二日まで訪韓いたしまして、金庁長、これは韓国水産庁長官に当たる方でありますが、この方と相当突っ込んだ話し合いをいたしてまいった次第でございます。  双方で合意をいたしましたことは、とにかく現在の日韓間の良好な関係、特に長年の日韓漁業関係を踏まえまして、話し合いによりまして日韓漁業問題を解決しようということで意見は一致したわけでございますが、私どもといたしましては、とにかく北海道周辺水域における韓国漁船違反操業については、これはわが方から厳重に抗議するということで抗議をいたしまして、特に北海道漁民方々、非常に緊迫した空気があるということも先方に伝えました。また、二百海里をしいてほしいということまで言っておられるということも十分に先方に伝えたわけでございます。そのようなことから、再発の防止ということをぜひやってほしいということを要求いたしましたことと、また直ちに監視船を派遣してほしいということも先方に言ったわけでございます。  これに対しまして韓国側は、違反操業につきましては遺憾の意を表しますと同時に、韓国指導船を早期に派遣するということで約束をしたわけでございますが、これにつきましては、先生も御承知のとおり、ムグンファ九十一号、千三百四十トンの指導船を三月二十四日から四月十一日まで北海道日本海周辺水域に派遣をしていただく、約束を守っていただくということでございます。  ただ問題は、今後これをどう扱っていくかということでございます。特にこの自主規制合意は本年十月末に期限切れになるわけでありまして、この際にやはり北海道及び済州島周辺水域における操業規制の取り扱いをいまのうちから十分に協議をして、納得ができる解決を見出さなければいかぬというふうに考えているわけでございます。このために、私どもといたしましては、先方合意をいたしまして実務者協議を持とうということで、若干時期的にはおくれておりますが、五月に入りましたら早々にでも実務者会議を設けまして、特に資源論の問題、これは武蔵堆周辺水域資源が非常に荒れておりますが、この問題と、それから同時にまた、効果的な取り締まりを行うにはどうしたらいいかということを十分に話し合いをいたしまして、この期限切れになります前に先方との間で実質的に効果のある合意をつくり上げたいというふうに考えている次第であります
  13. 川田正則

    川田委員 それぞれ関係機関では動いていただいているわけでございますけれども、どうしましても第一線の漁師人たちはなかなかそれが理解ができないようでありまして、政府は一体何をしているのかというふうな言葉ではね返ってまいりますし、それから外務大臣がいる前で大変恐縮なんですけれども外務大臣も西の方だし、農林水産大臣も九州の方だから、そんなことで北海道が弱過ぎるのではないかと私どもしかられているような実情にも実はございます。それで、西日本を助けるためにということがどうしても北海道漁師の人の間には定着しているようで、これは幾ら説明しましても、なかなかやはり理解ができない点がございます。特に予算委員会農林水産大臣が、この種の韓国漁船質問答弁の中に、いますぐ二百海里を適用することはむずかしいけれども、重要な問題なので慎重に検討したいという御答弁をいただいているようなんですけれども北海道漁師人たちは非常に強硬な態度で、何かいろいろ現地でも調べているようですけれども韓国漁船人たちの話をどこから聞いてくるのかわかりません、これは本当かどうかわかりませんが、韓国側の会社が非常に経営不振だ、で、ノルマを与えられているので、とことんまで魚をとらなければだめなんだ、これは韓国側お話ですが、それで、歩合制であるために、とればとっただけ収入があるというようなことを韓国漁船の船長が言っているのだ、それであれば、われわれはどうしてやってだめなんだと。  そこで国際信義の問題に戻るわけですけれども、私は、一方で日本漁船に対して違反操業をやったらだめだだめだというふうに指導していながら、韓国漁船の問題についてはどうもわが方はちょっと甘いんでないかということが、これは北海道だけだと思いますが、そういう空気が非常に強いものですから、いま関係者陳情団を編成していろいろ動いておりますけれども取り締まりということは二百海里の線引きをしなければできないということであれば、これは二百海里はなかなか引けないということも業界では知っているわけですが、できないのであれば、ことしの十月の暫定協定の終わりの段階でそれを自動延長するのでなくて、取り締まりということを中に織り込んだ二国間協定をどうしてもこの際やってもらわなければ困る、そういう非常に強い要望、これは長官のところにも業界から要望をされていると思いますけれども、この自動延長ではとても納得できない。ですから、何としてもその取り締まりというものを中に入れた二国間協定をやってもらいたいという要望なんですが、これに対してはいかがでしょうか。
  14. 松浦昭

    松浦政府委員 まず二百海里の適用を韓国に対しても行うかどうかという問題でございますが、これは先般金子農水大臣も御答弁申し上げましたように、基本的に申しまして、やはりわが国の漁船韓国水域においても操業しているという事態もございますけれども、それだけではなくて、やはり日韓関係というものにどのような影響を及ぼすかというような問題、また、とりわけ竹島の問題といったような問題がございまして、そう簡単に問題が片づくわけではないということから、業界の方も御承知であろうと思いますけれども、さような種々な問題もございまして、私どもとしても慎重にこれを検討しなければならぬということで申し上げているわけでございます。  しかしながら、現実の問題として北海道漁民方々がお持ちになっているお気持ちというものは十分にわかるわけでございまして、さような意味から、実効ある形での今後の合意というものをしていかなければならぬことは先ほども答弁申し上げたとおりでございます。  もちろん、私どもといたしましては、今後の実務者の間の話し合いを通じましてそのような方向に持っていきたいと考えておりますけれども現実協定の形で行うかどうかということにつきましては、これは長年の間いろいろと議論をいたしました結果、往復書簡ではございますけれども協定に見合うような形で実はこの自主規制措置というものをとっているわけでございまして、これはかつて外務省も御答弁なさいましたように、法律的な権利義務関係は別としましても、外交的には十分な重みを持ったそういう合意であり、各国の政府はおのおの自主規制を自国の漁民に対して十分遵守させなければならないといったような性格のものでございまして、政府間の合意の履行が実質的に確保されるということが一番のポイントじゃないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘の取り締まりの問題が、協定という形式の問題とは別に合意の中でもやはり十分に討議をされ、その実効ある状態というものが必要であるというふうに考えておりまして、今回韓国政府に対しまして、私ども取り締まり権を十分に実行してほしいということを申しましたところが、向こう側が直ちに現行の合意のもとにおきましても、向こうの監視船を増加してまいりましたので、このような韓国側取り締まり権が十分に実施されるような、それの担保があるような形で先方話し合いをつけるということが非常に重要な点ではないかというふうに考えている次第であります
  15. 川田正則

    川田委員 一層その点につきましては実効のある取り扱いをひとつお願いを申し上げますが、最後に、これも国際信義の問題に絡むわけでありますけれども長官御存じの北転船の問題でございます。  二百海里時代から、あれから六年たっているわけですが、当時百五十四隻ありました北転船が五十七隻減船をして、現在九十七隻。ソ連海域に二十七隻、アメリカ海域に七十隻、こういうことで、この過程の中で減船をして、相当共補償その他、水産庁にも非常に御迷惑をかけたわけですけれども、どうやら落ちついたと私ども考えておりましたら、最近になりまして、これはちょっと私どもの情報が古いのかもしれませんが、結局アメリカ海域でもソ連海域でもなかなかやっていけない、非常に苦しいんだということでございます。  たとえばアメリカ海域あたりですと、私の聞いている範囲で、長官のお考えと違うのかもしれませんが、たとえば七十隻で十五万トンのクォータしかないんだ。平均一隻当たり二千三百トンになる。そのうち六〇%はスケソウで、残りが魚価の高いものなんだけれども、魚種別に平均してみると、過去三年間で年間三億二千万ぐらいの水揚げになる。ところが、一年間の経費というのは六億ぐらいかかるから、結局三億ぐらいは赤字だというふうに私ども聞かされております。したがって、生きるためには、これは本当に国際信義との兼ね合いになりますけれども違反しなかったらやっていけないんだというような、正式ではありませんが、言葉の裏にはそのような中身を含んでいるような物の言い方なわけであります。一体どうしたらいいか。これは国際信義の問題とちょうど韓国とわが方との関係で、こちらもいろいろお話しをするとき非常につらいわけなんですけれども、先ほどのお話のように、わが方としては国際信義のためにできるだけ——できるだけというより絶対に違反操業をしないようにやっていかなければなりません。しかし、生きていかなければならぬので、何とかしてくれという話もございますので、その点について御答弁お願います
  16. 松浦昭

    松浦政府委員 最近の北転船の収支状況につきまして、非常にそれが苦しいというお話でございますけれども、私ども農林水産省の統計情報部の漁業経済調査報告によりますと、魚価の堅調な推移に支えられまして、おおむね黒字の状態になっているというふうに聞いております。もちろん先生おっしゃいますように、特定の船につきましては非常に経営の悪い船もあると承知しておりますので、私一般的な傾向として申し上げているだけでございますが、そのような統計の数字になっております。  また、ことしの漁期の前半につきましては、米ソ両海域とも漁模様はかなりよかったというふうに聞いておりますし、特に最近燃油の価格がかなり低下してきておりますので、収支は悪くはないというふうに承知をしております。特に省エネ漁船の形で新造船もかなりつくっておりますので、私はかなり厳しいクォータの中におきましても、経営の工夫をしていくことによって、今後とも採算のとれる操業を続けていけるんじゃないかというふうに考えているわけであります。  ことしは、初めての試みでありますが、米海域につきましては七、八の二カ月間、ソ連水域については一カ月間の漁業者による自主休漁もやっていただくということを決めておるわけでございます。これらの自主休漁につきましては、米国の水域ではオブザーバー乗船率が高まるといったようなことで操業条件が厳しくなっていることからこのようなことをお願いいたし、また業界もこれを受けていただいたということでございますし、また、これによりまして短期間に合理的な漁獲ができるということでコストの節減にもつながっていくと思います。  また、ソ連水域につきましては、本年一月から違反の指摘がかなり急増いたしておりますので、違反操業防止あるいは操業自粛ということを意図して、一カ月間の自主休漁ということが行われることになっておりますが、このような状況で自主休漁をいたしましても、最近の経営状況から見まして、北転船の経営はなお成り立っていくものだというふうに考えている次第であります
  17. 川田正則

    川田委員 これで終わります。ありがとうございました。
  18. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、岡田利春君。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 サケマス漁業協定質問に入る前に、二、三日ソ関係についてお伺いをいたしたいと思います。  先般、第三回の日ソ事務レベル協議が行われたわけであります。この双方の主張点を冷静に読んで判断をいたしますと、いわば日ソ相互不信感というものが非常に浮き彫りにされた、こういう点をまず第一に強く感ずるわけであります。  第二点としては、冷却化した関係の改善の糸口を見つけることが双方できないまま終わった。言うなれば、米ソ対決の構図の縮図版のようなやりとりに終始した、こういう感じが非常に強いのであります。このやりとりを見ておりますと、結局は、日ソ関係というのは、米ソの関係改善がない限り日ソ外交の進展はないのではないか、こういう印象を私は非常に強くするわけです。  外務大臣は十三日の当委員会において、日ソ関係は対立する問題は多々あるが、これを対決に持っていってはいけないと、こう述べられておるわけですが、きわめて当然だろうと思います。だがしかし、対話を継続していく場合に、ある程度の具体性を持たなければ日ソの外交の展望というものはないと私は思うわけであります。したがって、今回の日ソ事務レベル協議を通じて、今後の日ソ外交の展望について何か具体性があるのか。要するに、相手の出方待ち論であって、わが国としては対話はするけれども、積極的にあるいはまた消極的にであっても、何らか具体的な改善打開のために提案をしていく、こういう用意があるのか、この機会に承っておきたいと思います
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係につきましては、いま御指摘がございましたように、先般の次官レベルの協議におきましても、多くの面において対立をいたしたわけでございます。これは、米ソの関係は厳しいわけでありますが、ただ米ソの関係というだけでなくて、日ソ間には御承知のような領土問題が基本的に存在をいたしておりますし、同時にまた、ソ連のアフガニスタンに対する侵入であるとか、あるいはまたポーランドに対する介入であるとか、最近のソ連のとっておるところのいわゆる膨張政策あるいは極東における軍事力の増強、そういうものがやはり日ソ間においても基本的に意見の対立をもたらしておるというわけでございます。  私たちは、日ソ間には基本的な対立はございますし、真の日ソの友好親善というものを図っていくためには、領土問題を解決をして平和条約締結しなければならない、このように考えるわけでありますが、しかし、同時にまた、日ソ間では国交もあるわけでございますし、われわれとしても対立は対立として、この対立からさらに対決という方向に行くことは避けなければならぬ。これは日本だけではなくて、ソ連もそういう考えであるというふうに思っております。  そこで、日ソ間では大事なことは、やはり対話を続行していくということであろうと思いますソ連日本との間の高級事務レベルの政治対話も定期的に今後とも開かれることが確認をいたしておりますし、また私からも強く要請しておりますが、一度定期外相会議を開きたい。それは今回はソ連外務大臣日本にやってこられる番であるから、ぜひとも日本に来ていただいて、そうして十分話し合いをしたい、こういうふうに思います。  同時にまた、日ソ間では文化の面におきましてあるいはまた経済、特に民間経済の面等におきましても、その他の人的交流等におきましても、いまその道が開かれておるわけでございますから、これらの問題につきましては今後とも日ソ間で話し合いをしながらそれを拡大をしていこう、こういう点については両国間で意見の一致を見ておるわけでございます。われわれは、基本問題は基本問題としながら日ソの対話を継続をして、そしてでき得る範囲内の文化を初め経済面での協力関係といいますか、交流関係というものはこれを進めてまいりたいというふうに考えておるわけであります
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は現在の日ソ関係において、もちろん対ソ制裁の中で人事の交流等もとだえたことがありますけれども、人事、文化の交流を図るといま述べられた点はきわめて適切であろうと思うわけであります。ただしかし、今度の漁業協定にも見られますように、日ソ間の経済関係、貿易を含む経済協力、もちろんココムの制限もあるでしょう、あるいはまた対ソ経済制裁措置も今日行われておるでしょう、しかしその中でもなおかつ具体性を持った経済協力やあるいはまた貿易面を考えていく、それには大企業のみならず中小企業もあるでしょう、そういう点から糸口を開いていく、これ以外に方法がなかなかないのではないか、こういう感じを私は非常に強く持っておるわけであります。  特にこの機会に、経済制裁の解除をする場合にアフガンの問題、あるいはポーランドの問題言われておりますけれども、わが国として自主的に経済制裁措置を解除する前提条件というのは明確にこれこれだ、こういうものがきちんと決まっておるのかどうか承っておきたいと思います
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連に対する経済措置につきましては、わが国だけの問題でなくていわゆる西側諸国全体の判断として進められておるわけでございます。その基本は、何といいましてもソ連のアフガニスタンに対する侵攻が始まった、さらにまたポーランドに対する介入等が始まってきた、そうしたソ連の膨張政策というものに反省を求めてこれを阻止するということがねらいであったわけでございますので、これは日本だけの判断で経済措置に対して日本がみずから戦列から離れるということは私はできないと思うわけでございます。やはり問題は、ソ連がこうしたいわゆる一連の膨張政策というものを反省をして、そしてこれを慎むということが具体的に出てこないといけないのじゃないか。いまのソ連の方向というものは、どうもそうしたいわゆる一連の膨張政策が風化することを、時を稼いでいわば望んでおるといいますか、既成事実を世界的に認めさせるような方向にがんばっておる、こういうふうに思わざるを得ないわけでありまして、したがって、現在のところは西側全体もとにかくこの経済措置については今後とも続けていく、しかしあくまでもこの経済措置は西側が結束をした形で一体となった形でやるということで基本的に方向が一致しまして、この方針に基づきましていまこれらの措置を講じておるわけでございます
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の事務レベル協議の中で、わが国からソ連側に対して、南北朝鮮のクロス承認の問題について見解をただしておられるわけであります予算委員会でもこの問題を取り上げて政府の見解をお聞きいたしたわけですけれども、その当時は韓国側からこういう要請があったこともないし、またわが国としてもこれに対する方針は決めていない、まだ見込みは薄いであろう、こういう答弁が総理からなされておるわけであります。しかし、結局今度の事務レベル協議のやりとり等を考えてみますと、わが国として南北朝鮮のクロス承認の支持をする、そういう政策的な立場に立っておられるのではないか、こう思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の日ソ事務レベル協議におきましては、特にクロス承認問題を取り上げて議論をしたわけではありませんが、朝鮮半島情勢について一般的な意見の交換を行った際、日本側からは韓国との友好関係の維持を初め、わが国の朝鮮半島政策について説明したのに対し、ソ連側からは現在のソ連の見方及び政策について説明がありました。その中で、ソ連としてはクロス承認という考え方には応じがたい、こういう趣旨を述べた経緯があるわけであります。  なお、クロス承認問題につきましては日韓首脳会談におきましては正式には取り上げられなかったわけでありますが、私が韓国外務大臣から、韓国としては朝鮮半島の緊張を緩和するだめにこういう方向も一つの案ではないかというふうに思っておる、そしてまたそれに対して、場合によっては日本協力も得たい、こういうことでありました。正式な申し込みではなかったわけですが、私はその話の中で、韓国側がクロス提案を朝鮮半島緊張緩和の一つの方向として取り上げたい意向を持っておるなということを推察したわけであります。  私も、全体的に見ればこのクロス承認案というのは、朝鮮半島の緊張緩和にもしこれが実行できれば一つの案となるのではないか、前進的なものになるのではないかと思ったわけでございますし、日本としても十分検討に値する考え方である、そういうふうに判断をいたしました。したがって、その後このクロス承認という問題が実現できるかどうかについていろいろな角度から検討もいたしましたし、あるいはまたそれなりに日本なりに関係国との間の話もいたしてみたわけでございますが、しかし何といいましても現在の状況では北朝鮮もこれに真っ向から反対をしておる、あるいは中国もどうも賛成はしがたい意向のようでありますし、ソ連も今回の日ソ事務レベル会談で反対だということでございますので、これは私は検討に値する緊張緩和のための一つの手段であるとは思いますけれども現実的にこれが実行できるかどうかということになるとちょっと困難になってきたのではないか、こういうふうに考えております
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 確かに今日の環境から判断すると、クロス承認の成立の可能性はまずそういう環境はない、こう思います。だが、しかし、わが国として、韓国側の意図が明確に伝達されておるわけですから、そういう意味では、そういう環境が醸成されていない状況の中でわが国の政府としての明確な態度は決めていないのでしょうけれども、わが国政府としては韓国のそういう要請を心情的に十分理解できる、こういう立場にある、こう言い切ることができるだろうと思うのですが、いかがですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにおっしゃるようにわが国としては韓国のそうした考え方は心情的に理解できる、こういうふうに私は思いますし、このクロス承認案というのは、要するに日本が北朝鮮を承認する、また逆に中国が韓国承認する、こういう案でありまして、これまで言われておりましたのは、同時にまたアメリカが北朝鮮を承認する、ソ連が南朝鮮を承認する、こういうことを同時並行的にやろうということですが、これを切り離して、日本と中国だけが相互にクロスに承認しようということでございますので、それは、客観情勢が許すならば朝鮮半島の緊張の緩和あるいは日本の立場から見ましても一つの情勢を好転させる案ではないか、こういうふうに思うわけでございます
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、サケマス漁業協定に関してお伺いいたしたいと思います。  今回の交渉は、日本側がカメンツェフ・ソ連漁業相をわが国に招待して、いわば事前に意見の交換が行われた後行われた交渉であります。しかし、特にわが国として基本的に重要として考えていた日ソ漁業協力協定、これが自動延長下にあるわけですが、前回同様の五カ年の協定ができなかった。一応継続審議ということに終わっておるわけであります。しかし、一体なぜ今度の交渉でこの問題が解決できなかったのか。日ソ間は他の協定も皆単年度協定なわけですね。これはやはり私は今日の不安定な日ソ関係を反映している、こう理解せざるを得ないのではないかと思うのですが、長官、大変御苦労をされて今回の交渉に当たられたわけですが、長官としてどのような印象を持たれたか、この機会に承っておきたいと思います
  28. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の交渉の前提といたしまして特に申し上げておきたいことは、先般二月にカメンツェフ漁業大臣がわが国を訪れられまして金子農林水産大臣との間でいろいろなお話をなすったということは、今回の交渉を行います際の雰囲気をつくっていただくために非常によかったというふうに考えております。特に両大臣の間で今後とも漁業の面における協力関係は維持発展させるべきであるという考え方をお互いに披瀝されまして、これがやはり大きく今回の交渉にも影響を与えたというふうに私は考えている次第でございます。  この会談におきまして、岡田委員も御承知のとおり、日ソ漁業協力協定及び日ソ、ソ日の協定につきましてもこれを長期化しようではないかということにつきましてお話し合いが行われ、今後事務当局間でさらにこの問題を詰めようではないかということで合意がなされたことも事実でございます。そこで私どもも、代表団の方々、非常に苦労をされまして先方とこの問題について相当突っ込んだ話し合いをしたわけでございます。ただ、ソ側といたしましては、今回のいわゆるサケマスの毎年の漁業操業条件を決める、そういう話し合いの場においてこれを決めるということはなかなかむずかしい問題であるというのが先方の見解でございまして、そのために今回は長期化の問題についての結論が得られなかったという状況でございます。しかしながら、私、交渉の過程をずっと振り返ってみますると、決してソ側はこれについて拒否的な態度に出ているわけではございません。今後さらにこの問題につきましては、今後の検討方法等につきまして外交ルートを通じまして十分お話し合いをいたしまして、継続してさらに事務当局間で話し合いをしていくべきであるというふうに考えておりますし、またソ側もそのように了解しているものと考えております
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 交渉は冒頭わが国の漁船操業違反の問題が取り上げられて、ソ連側監督官乗船、しかも五隻にふやす、あるいはまた揚げ地、港における監視官を派遣するというような問題が向こうから提示をされておるわけです。     〔委員長退席、川田委員長代理着席〕 昨年のわが国のサケマス漁業における違反の件数実態は一体どういう状況にあるのかというのが第一点であります。  同時に、今回も結局わが国の主権に関する問題として、権限のある監督官というものの配置は拒否をするという態度を貫かれたわけであります。今回の場合相当議論されておりますから、わが国の側の違反がさらに増加をするということになるとまた強硬な態度に出るでしょうけれども、ある程度秩序が保たれればこの問題についてはもう決着がついた、こう理解していいかどうか承っておきたいと思います
  30. 松浦昭

    松浦政府委員 まずサケマス漁船違反の隻数でございますが、ソ連側摘発が二十八隻、日本側議定書違反として処分したものが三十五隻というのが実態でございます。  次に、ソ側は当初におきましてソ連人の監督官乗船させる、陸上での監督官の配置ということも一時言ったこともございますが、基本的には先方はいわゆる共同取り締まりということを日本監視船上で行いたいということで、その監視船の数も五隻ということを提案してきたことは事実でございます。これに対しまして私どもといたしましては、わが国の排他的な管轄権のもとにありますところの監視船内におきましてソ連監督官取り締まりを行うことは日本側の公権力の制限になるということで、絶対受け入れられないということでがんばりまして、この点についてはオブザーバーということに相なったわけでございます。しかしながら、サケマス違反実態、内容といったものを考えまして、やはりこの際監視体制を強化することはやむを得ない措置であるということで一名のオブザーバーの増員を認めて帰ってまいったわけでございます。  そこで今後の開題でございますが、私どもといたしましては、やはりこの違反の問題ということは、日ソ間のサケマスのみならず、全般的な北洋漁業につきましての大きな問題でございまして、先般カメンツェフ大臣が日本に参りました際にも、先方からの発言の中の一つの大きな項目としてやはり違反問題を取り上げておる次第でございます。先ほども答弁申し上げましたが、サケマス漁業を初め北洋漁業の安定にとりましてこの違反の問題がなくなることが非常に重要なことであるというふうに考えておるわけでございます。さような意味でこの問題についてはもう決着がついたのかというお尋ねでございますが、やはりこの問題は、わが方がどのように違反を少なくさせ、また根絶させていくかということについて努力が払われ、その結果が実績としてあらわれてくるということが非常に重要でございまして、そのような意味で、私としては今後とも政府として最大限の努力を払い、また業界にも自粛を求めていく、業界もこの実態を十分にわかっていただくことが必要ではないかと考えておる次第でございます
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま長官が言われました日本側は三十五隻、私の手元には三十六隻で、中型が二十二隻、小型が十四隻、こういう実績になっておるようであります。したがって、今年水産庁は東光丸を含めて九隻の監視船を出す、特に中型に対して、いままで四隻だったものを五隻にふやす、こういう方針で臨まれるようにわれわれは承っておるわけであります。いずれにしてもこの問題はオブザーバーという形で決着がついたということは非常に結構なことであると思うわけです。問題は、やはり違反船が出るかどうかということは今後のサケマス漁業にとって重要でありますので、今年の動向について特に水産庁の対応を強く要望いたしておきたいと思います。  次の問題は、協力費の問題でありますが、ソ連側協力費計算は大体過去二年間は四十億で推移したわけですね。その前の年もその前の年も漸次協力費は上がっておるという傾向をたどってきたわけであります。したがって、昨年の交渉の終わるときに、まず来年は協力費は引き上げざるを得ないという向こうの態度がすでに表明されておった。そういう意味では今年はこの問題は非常に大きな問題だという認識が初めからあっただろうと思うわけです。しかも、ソ連側計算した結果が新聞には四十三億八千万と報道されましたけれども、これはクォータが大体三万七千トンを前提にしているわけですね。これを四万二千五百トンで換算すると四十八億六千三百万になるはずであります。結果的にこれが四十二億五千万に決まったということでありますから、評価をすれば、そういう流れから言えばまあまあの形で協力費が決まった、こちらも許容できる限界という感じはするわけであります。しかし、今回提示をされている計算方式、特に年間五千三百万ルーブル、サケマス資源生産費用としてかかるんだ、この点をわが国として本当に具体的に理解ができておるのかどうか、また交渉で詰められたのかどうか、この点だけを承っておきたいと思います
  32. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の交渉におきましてソ連側が言ってまいりました金額でございますが、これは、一積算の根拠が、いわゆる産卵場の保護とかあるいは河川の改修といった日本サケマス漁獲につきましてもメリットのあるそういう経費の支出が、四千七百万ルーブルから五千三百万ルーブルにふえたということを根拠にいたしまして、これを日ソ漁獲の比率で分け合いまして、しかも、その際の為替のレートを三百四十二円と言ってまいりました。さっき先生がおっしゃいました四十八億六千万円というのは多分その前に申しました三百四十円のレートだろうと思います。最終的に向こう側が申しましたのは四十八億九千万円ぐらいでありまして、これは三百四十二円のレートで向こうが言っているものでございます。これを向こう側が言ってまいったわけでございます。  このようなことに対しましてわが方といたしましては、まず、この五千三百万ルーブルというものがどういう内訳になっているのか、どういう支出の内容になっているのかということを十分に問いただしております。ただ、ソ連関係でございますので、予算書その他を十分に見まして、その結果、それを特定するということはなかなかむずかしい事態でございますので、相当詰めて先方側に問いただしをしたということはやっております。その結果、先方はこれをもとにして四十九億という数字を出してきたわけでございますが、私どもが申しましたのは、やはり漁業協力費というものはそのようなことでソ連側がいろいろと経費を使うことはわかるし、また去年からそういうことも言ってきたということは知っているけれども漁業者の負担能力がないんだということをもっぱらわが方は主張したわけでございます。  そこで、先方も最後に申しましたのは、もっと大幅な引き上げをしてほしいけれども日本の零細なサケマス漁業者のことを考えれば、やはり四十二億五千万円程度でいたし方がないということで折り合いがついたということでございまして、さような意味で、私どもとしましては業界の意見等も聞きましてぎりぎりの負担できる範囲内だということでこれを了承しまして、妥結をしたというのが現実でございます
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年は政府予算措置として十七億、そして残りが業界負担。これを今回、数字ではじいてみますと、三対七の割合になるのではないか、こう思うのです。サケマスの全体の平均値を、たとえばキロ千円と計算ますと四百二十五億ということになるわけです。したがって、約一〇%に相当する。そのうちの七%が業界負担、三%補助をする、こういう内容になると思うのです。ただ、海域によって魚種が違うわけです。ベニもギンもシロも、あるいはマス、特に釣りもあるし網もある。そういう点で、平均魚価をとればそうなりますけれども、海域別の平均魚価をとれば差が出てくることは当然なわけです。そうしますと、協力費負担について、従来のままでいいのか、近海などの小型などのあるいは釣りなどの面については、政府もやはり補助をしているのでありますから、ある程度負担できる公正な協力費の支出、こういうことが検討されなければならない段階に今回きたのではないか、こう私は認識せざるを得ないのですが、長官考え、いかがでしょうか。
  34. 松浦昭

    松浦政府委員 この点につきましては、今後業界の中でよく話し合いをしてもらいまして、公平な負担関係をつくるということにしていただきたいと考えております。なお、政府負担でございますが、これは現在十七億負担をいたしておるわけでございますけれども、もちろん関係方面と十分協議をしてみるつもりでございますが、何分にもこのような財政事情のもとでございますので、これを引き上げることはなかなか困難であるというふうに考えておりまして、その点については業界の方とも十分に話し合っていくつもりでございます
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 クォータの問題でありますけれども、昨年同様決まった、こう言われておるわけですが、内容はちょっと変わっておるわけですね。公海分が一千八百八十万匹でプラス百九十万匹、そしてトータルして昨年同様、こうなっておるわけであります。そこで、クォータについてはいわば交渉の経過と最終的決着を見れば、公海の百九十万匹増がありますけれども、まあまあ前の豊漁年と同数のクォータで昨年同様のクォータが決まった。大体この線は日本側の主張の線でほぼまとめられた、こう言っていいのではないかと思うわけです。私はそういう評価をしているわけですが、いかがでしょう。
  36. 松浦昭

    松浦政府委員 四万二千五百トンのクォータ、これの内訳といたしましての公海のクォータ、それに公海における尾数、それから魚種別の尾数というものにつきましては、基本的に前の豊漁年である一九八一年と同じにしてほしいというのが日本側の主張でございまして、一点だけ、マスノスケについての新たな二十万尾の、ベーリング海以外の公海における規制が加わりましたが、そのほかは一九八一年と全く同様でございますので、わが方の主張を貫くことができたというふうに申し上げてよろしいと思います
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで私は、最近のサケマスの在庫の実態と価格の動向について承っておきたいと思うわけです。なかなかむずかしいのですけれども何回もこの委員会で問題にしたことがありますが、大体最近の在庫は三万程度、こう見ていいのではないか。価格についても非常に回復基調にある。したがって、沖取り漁業が始まれば沖トキの価格動向というものはほぼ昨年並みか昨年弱ぐらいで推移するのではなかろうか、こういう判断ができると思うのですが、この点水産庁としてはどう見ておられますか。
  38. 松浦昭

    松浦政府委員 サケマスの需給の関係でございますが、五十七年のサケマス類の供給量は国内生産が約十三万三千トン、これは五十六年に次ぐ水準でございます。国内生産と申しますのは、当然、この日ソ水域でとってまいりますものとそれから北海道その他の府県に帰ってまいりますサケ、両方を合わせたものでございます。ところが、このような高い水準に加えまして、輸入が十万七千トンということで前年を上回っておりまして、これは史上最高でございました。そこで全体の供給量は二十四万トンということで、前年よりやや増加しているということでございます。これは約一一〇%ぐらいになると思います。これに対しまして一方、需要につきましては、五十七年のサケマス類の家計調査、いわゆる家計の消費という面から見まして、ほぼ前年並みじゃなかったかというふうに考えられます。このように前年よりやや増加した供給に対しまして需要の停滞が見られましたために、五十七年の九月以降の在庫水準は前年同期の約一三〇%に当たる状態で、やや高い水準で推移をしております。それからまた、五十七年十二月末には前年同期一四二%というかなり高い水準でございました。  そこで、率直に申し上げますけれども、このような需給状態を反映いたしまして、消費地の卸売価格につきましては五十七年の十二月以降はやや前年を下回っている傾向にございます。今後の価格の見通し、これはなかなかむずかしいわけでございますが、これまで価格水準がかなり低くなってきていることもございまして、逆に消費が最近の時点では伸びてきております。したがって、前年に比べ在庫水準は高いものの、在庫は減少の傾向にあると見てよろしいと思います。このようなことを反映いたしまして、漁業情報サービスセンターの調査によります価格は、ことしに入りましてから下げてきた価格が四月には三月より若干上向きになっているということで、価格はすでに底を打ったのではないかと考えておりまして、この傾向は今後とも続いていくものと私ども考えております。  なお、この場合、非常にわれわれ考えておかなければならないのはサケマスの輸入でございます。これが、昨年約十万トンのオーダーということで非常に高かったのでございますが、これは米国産のサケマス缶詰につきまして、いわゆるボツリヌス菌という中毒の菌が入っておりまして、これが世界的に大きな問題になりました。このことから缶詰用のサケマスが冷凍に流れたということもございます。このために、これが日本に流れてまいりまして、大幅な輸入増になったということで、これは非常に異常な年ではなかったかという感じでございます。このように、五十七年の多量のサケマスの輸入が異常でありましたということを考えてみますると、このような輸入は、わが国のサケマス需給の状況から見て、長続きするものではないと考えているのが私どもの判断でございます
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんからあと二、三お聞きしたいと思いますが、先般の予算委員会でしたか長官から答弁いただいておるわけですが、サケマス定置漁業ですね、許可と経営実態について調査をする、こういう御答弁をいただいておるわけです。選挙もありましたからね、下部末端で聞いたらまだそういう調査が入っていないというお話を聞いているわけです。したがって、これから恐らく調査をされるのではないか。今年中にこの調整をしなければならぬわけです。また、漁場をさらに沖出ししてほしいという要望もそれぞれ単協ごとにはあるわけです。そうすると、逆に残された漁場が狭まる、こういう問題もあるわけです。したがって、この点についてすでに調査を進められておるのか、それともこれからやられるのか、この点ちょっと御説明願いたいと思います
  40. 松浦昭

    松浦政府委員 北海道の定置漁業の免許でございますが、これは先生も御案内のように、五十九年の一月一日に切りかえられるということになっておりまして、免許までの手続といたしましては、北海道の知事が、海区漁業調整委員会の意見を聞きまして漁場計画をつくって告示をした後に免許申請を受け付けまして免許が行われることになるということでございます。この漁場計画の告示は、北海道庁の説明によりますれば、本年十月上旬ごろということで承知をいたしております。  先般の予算委員会だったと思いますが、岡田委員から御指摘がございまして、この切りかえについては問題が生じないように的確にやるようにという御要望と御指摘があったわけでございますが、私どもこれを受けまして、さようなことがないようにということで道庁を指導いたしたところでございます。  そこで、基本的には、真に定置漁業で生計を立てようとするより多くの地元漁民が参画する方向で対処するようにということで、目下指導をいたしておるところでございます。  なお、実態の調査についてもお約束をいたしたわけでございますが、この北海道庁が行っている実態調査等につきましては、北海道庁としては五月末という予定でやっておったようでございますが、若干時期がおくれているようでございます。しかしながら、すでに調査を開始しておるわけでございまして、あるいは先生のお耳に到達しなかったところはまだこれが行っていなかったかと思いますが、すでに開始をいたしております。これによりまして、できるだけ早くこの調査を完了いたしまして、漁場計画原案をつくりまして、適切に免許が行われるようにさらに北海道庁を指導していくつもりでございます
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど川田委員質問された日韓関係の問題でありますけれども、確かに、自主規制合意されてから、五十四年が三百三十件が五十五年には百六十件、五十七年は十二件と、こういう形で効果を上げたことは率直に認められるわけです。     〔川田委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、今年早々は六十七件発生して、しかも二千万の被害が発生をしている。また一方、武蔵堆は、タラ刺し網はもう壊滅状態だという状況です。噴火湾の沿岸のスケトウの面を見ますと、三万八千トンで終わっているわけです。これは前年のマイナス五〇%、半分ですね。半減です。しかも、このスケトウ以外のイカ流し網、これが野放しになっている、国内規定のオッタートロール船と合わない、こういったことが依然としてやはり問題なんですね。  先ほど、南の方は、こう言っていますけれども、南の方も、長崎漁協や熊本漁協は、二百海里しきなさいと組合で決議しているわけですから、石川県の方は反対でありますけれども、大体その状況は出てきていると思うのです。  竹島問題、先ほど触れましたけれども日ソだって北方領土があって、二国間でちゃんとソ日、日ソ漁業協定を結んでいるのですから、漁業については、そういう経験から言えば、二百海里があっても、竹島問題があっても、結び得る、そういう先例があるではないか、こう言いたいし、あるいはまた一方の韓国水域は、規制水域内以外の二百海里もありますけれども、規制水域ラインで漁業協定を結んで、すべてが規制されているわけでありますから、そうすると北海道の場合も、もし二百海里がしけない場合には、二国間でこの海域を規制して、そして二国間で協定を結ぶ、こういう方向でとにかく解決してほしいという声は当然だと私は思うのです。  大臣の山口県の方だって、もうその点について問題があって、解決してくれという陳情が来ているし、長官北海道出身ですから一番実態はよくわかるわけであります農林水産大臣は長崎ですから、長崎漁組がもう二百海里しきなさい、こう言っているのですから、これが実態なんですから。  そうしますと、来月実務者協議をやるわけでありますけれども、いままでの話し合いから一歩でも二歩でも前進しなければ、これはおさまらないということだけは事実だ、こう私は認識をしておるし、恐らく長官もそういう決意で、まず実務者会議をやって、そして十月末の更新時期にまあまあ何とか両国が納得できる方向で安定化の方向を定めたい、こういう決意ではなかろうかと思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  42. 松浦昭

    松浦政府委員 北海道、済州島沖の操業問題につきましての今後の取り扱いでございますが、私どもも、北海道漁民方々のお気持ちというものは十分にわかる次第でございますし、またいままで二百海里の適用に反対いたしておりました西日本水域の沿岸の漁民方々のお声は私どもも聞いておるわけでございます。しかしながら、やはり韓国水域に出漁しておられる方々も非常に多くおられまして、これらの方々の御意見もまた私ども十分に耳にしておる。この方々はやはり非常に心配をしておられるという状況でございます。  さような状況のもとにありまして、昭和五十二年における非常にむずかしい交渉を経験いたした私といたしましては、自分の経験からかんがみましても、二百海里を韓国に適用するという問題につきましてはやはり慎重に検討しておかなければいかぬということでございまして、さような意味で、先ほどから申し上げておるような御答弁を申し上げておるわけでございますが、一方におきまして、現在の北海道漁民方々のお気持ちというものは、これはもう尊重しなければならぬと考えるわけでございます。  さような意味で、五月の初めから交渉を始めまして、その中において特に問題は、やはり武蔵堆の周辺の水域における資源が非常に悪くなっている、これをいまのままで協定を延長するということは、これはなかなかむずかしい問題じゃないかということと、それからやはり取り締まりにつきましては、韓国側に実効のある措置をきちんととってもらうということが今後の協定を結んでいく際の一番の決め手であり、問題点ではないかと考えておるわけでありまして、この点につきましてこれから十月末までの間十分先方話し合いをいたしまして、実効ある措置をとってまいりたいと私は考えておる次第であります
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 韓国は今日米ソに次ぐ第三位の遠洋漁業国家でありますから、いずれにしてもやはりこういう問題は起きてくると思うのです。そういう点で実務者協議、十月の改定をわれわれも重大関心を持って見守っていきたいと思いますので、十分ひとつこの解決お願いしておきたいと思います。  そこで、日ソ漁業関係において共同事業の問題についてはすでに大水から答申がなされ、水産庁は、交渉権についてはそれぞれ許可を与えている、承認をしている、こう承っておるわけです。ただ、残念ながら、そのうちオホーツク海側の申請が、これは業界調整ができなかったという面もあるのでしょうけれども、しかし私の判断では最も近い漁場の関係が、いわば交渉権が与えられないという点について非常に重大関心を持っておるわけですが、この点について、業界の調整だけなのか、何か問題があるのか、承っておきたいと思います
  44. 松浦昭

    松浦政府委員 日ソの共同事業につきましては、日ソ両国の政府間の協定の枠外で行われる事業でございますので、特に私どもとしては気を使いまして三点、これはどうしても業界の側としても守っていただきたいということがございます。その一つは、当該共同事業が日ソ両国の政府協定によるソ連二百海里水域内のわが国漁船漁業実績の維持に悪影響を及ぼさないということでございます。それから第二は、共同事業が各国二百海里水域の設定等によって影響を受けている漁業者の経営の改善に役立つような内容であるということ。それから第三点、これが非常に重要でございますが、関係漁業者間において十分な意見調整が行われているということでございます。このような考えのもとに共同事業を実施するということにつきましては、われわれとしてはその方針を変えないつもりでございます。  それで、御指摘のオホーツク水域の件でございますが、私もよく承知しております。ただ、この点につきましてはほかの要素は全くございません。関係入漁者間の調整がつかなかったということで、水産庁としてはこれを認めないということでございまして、もっぱらその点だけであるというふうに御了承いただきたいと思います
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 結局稚内側としては非常に希望があって、どうも紋別側の方がこれになかなかうんと言わないということが実態だろうと思うのですけれども、しかし全体の、いま行われている日ソ共同事業からいえば、この点はぜひ実現できるような方向で業界の調整が図られることを私は期待をいたしたい、こう申し上げておきたいと思います。  最後に、対米関係において四月のクォータが削減をされ、今度七月にさらにクォータが割り当てられるわけでありますけれども、どうもアメリカ側は、日本がIWCの決定に対する異議申し立てを撤回する動きを示さなければ七月以降の割り当ても削減する、こういう態度で、そのように実行される可能性が非常に強い、こう言われておるわけです。先般、予算委員会でしたか指摘しましたように、三月十日にはレーガン大統領が二百海里排他経済水域の宣言を行っておりますし、同時に、上院にはスチーブンス法案が出されている。この法案によると、八四年を八三年の八五%にし、八五年は七〇%、八六年が四五%、八七年が二〇%で、そして八八年以降はゼロとする、多少ただし書きがついていますけれども。一方、下院においてもブロー議員が同じような提案をしている、こういう状況にあるわけです。いずれも審議の日程は未決定でございますけれども、最近の対米関係はいろいろな要素が絡んでおるわけです。こういう情報について当然外務省水産庁も的確に受けておる問題だと思いますけれども、一体どう対処されようとしておるのか、承っておきたいと思います
  46. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに岡田委員御指摘のように、対米関係漁業につきましては非常に複雑になっておりまして、むずかしい事態を迎えていることは事実でございます。特に四月の米国による対日漁獲割り当て量は、わが国がIWCの決定に対して行った異議の申し立てを理由にいたしまして、年間割り当て予定量の約九%、約十万トンでございますが、これが留保されているという状況になっております。ただ、私どもといたしましては、このような捕鯨問題と絡めて割り当てを留保するということはいかにも納得ができない点でございまして、本来、捕鯨問題というのは漁獲割り当てと別個の問題であると考えますし、また今回日本政府が行いました異議の申し立てば、わが国の立場を留保したということでございまして、現実に何もIWCの条約違反したようなことはやっていないし、異議の申し立ては当然の権利でございます。それからまた、日米間でいろいろと将来の問題を打開すべく話し合いを続行している最中にこういうことをやっているということはまことに納得できないということで、実は速やかに留保分を割り当てるように、外務省にも大変な御協力をいただきまして、外交ルートを初めとしてあらゆる機会をとらえまして米側に申し入れているところでございます。私自身も四月八日に在日の米大使館のピース公使に来ていただきまして、日本の立場を説明して、ぜひこれは本国政府にも伝達してほしいということを話をいたしておるところでございます。私どもといたしましては、捕鯨問題についてぜひとも米国側の理解を求めていくということに最大限の努力を傾注して、留保分が速やかに放出されるように最大の努力をいたしたいと思っております。  それからなお、お触れになりましたいわゆるスチーブンス法案でございますが、これは本年の三月十日に米国大統領が排他的な経済水域設定に関する宣言を行いまして、これによって同日付でスチーブンス上院議員が排他的経済水域法案というものを上院に提出しまして、審議がされるということでございますが、まだ具体的な審議が行われたということは聞いておりません。  このスチーブンス法案の中で、先生も御指摘のように、いわゆる一定の期間をもってフェードアウトするということがあるわけでございますが、この点につきましては、やはりスチーブンス法案の背景として、入漁国からの水産加工を含む漁業面での一層の協力を得ることができるために、またそういうことをやって早く米国漁民が未利用の底魚資源の開発をしたいということで、これをある意味ではてこに使っているのじゃないかという感じがいたすわけでございます。  そこで、私どもとしましては外務省とも十分協議をいたしまして、米国の議会においての本法案の審議状況を十分に把握いたしますと同時に、米国の水産業界に対しましても、機械的に五年間でわが国の漁船が米国水域から締め出されるということになったら日米の協力関係は決してうまくいかない、アメリカにとっても決してプラスのことではないということを十分説明いたしまして、今後このようなことが実現されないように最大の努力を払ってまいりたいと思います
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります
  48. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、玉城栄一君。
  49. 玉城栄一

    ○玉城委員 今回の日ソサケマス漁業交渉について早期妥結されたことにつきまして、関係当局の御努力、その労を多とするものであります。ただ、ちょっと気になりますのは、先ほどから御説明がございますが、今回ソ連側からオブザーバー乗船をまた新たに認めていらっしゃるわけですが、この問題は昨年もこの委員会でも問題になったわけですが、その理由を御説明いただきたいのです。
  50. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の交渉におきまして、ソ側日本の特に中型の流し網漁船違反状態が非常にひどい、先方に言わせるとさらに違反がひどくなっているという言い方でございますが、さような理由によりましてオブザーバー乗船だけでは足らない、共同取り締まり、監視員を日本監視船に乗せてほしい、そしてまたその監視船の数も、いま三隻でございますが、これを五隻にふやしてくれということを言ってまいったわけでございます。  これに対して私どもといたしましては、中型の流し網の漁船違反は確かにあるけれども、別に実態としてひどくなっているという認識は持っていないということで、現状どおりでいいではないかということ。それからまた、オブザーバー乗船を監視員の乗船に切りかえるということは、これは日本管轄権と申しますか、日本取り締まり権というものが実施される監視船の中においてソ連の監視員が乗って取り締まり行為を行うということは日本の公権力の行使の制限になるということで、これは絶対にのめないということで先方に強く話をいたしました。その結果、先方オブザーバーという点についてはおりてまいりまして、従来どおりでいいということでありましたけれども、やはり実態といたしまして現在の違反状況、その水準が引き続き高い状態でございますし、またその内容等につきましても問題がございます。また、われわれとしても現在の違反状態考えてみますると、やはり取り締まりの拡充、強化ということが必要であるというふうに、またそうせざるを得ないというふうに考えまして、オブザーバーを乗せる監視船を一隻だけ増加させるということで先方話し合いをつけてきたというのが経緯でございます
  51. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの御説明で中型の流し網漁船ソ連側違反がひどい、日本側としてはそんなにひどくないということ、いまのお話はまた、違反の件数の水準は高い、内容にもいろいろ問題があるというようなことでのんだというようなことのようですけれども、それでは、さっきも御説明ありました数字、ソ連側違反件数というのと日本側の件数というのとどんなふうに違いがあるのか、それとあわせて北洋漁業関係についてのソ連側の拿捕、そういう点についてもあわせて御説明いただきたいのです。
  52. 松浦昭

    松浦政府委員 まず、わが国のサケマス漁船違反の件数は次のとおりであります。  一九七九年が五隻、日本側摘発件数四隻。一九八〇年十八隻、日本側摘発件数四隻。一九八一年二十六隻、日本側摘発件数八隻。一九八二年三十五隻、三十六件であります日本側摘発件数九隻ということでございます。  ただ、この三十五隻の中には小型のサケマス漁船違反も入っておりますので、その点は急激に中部の違反船がふえたというわけではございません。  それから、違反の内容は、操業区域違反が大半を占めておりまして、一九八二年が二十隻でございます。その他は操業日誌違反あるいは許可制限条件違反等でございます。  それから、ソ側日本との違反につき食い違いがあるのじゃないかというお尋ねでございますが、これは結論から申しまして、先方話し合いをした結果、食い違いはないということでございます。と申しますのは、サケマス漁船違反件数につきましては、ソ連側摘発二十八隻、日本側議定書違反として処分したもの三十五隻、先ほどの三十五隻でございます、という主張でございましたが、取り締まり会議を開きまして違反リストの突き合わせをいたしましたが、ソ連側の主張の二十八隻のうちで二十六隻が日本側ソ連からの通報に基づき処分したものでございます。他の二隻は国内法令の違反で処分をしたもの、これは始末書の処分でございまして、比較的軽微な案件でございます。それから、ソ連監督官の了承を得て処分しなかったもの、この二件がございます。したがって、二十八隻のうち二件はそのようなものでございますから、数に食い違いはないということでございます。残り九隻は何かということでございますが、これは日本監視船等が独自に摘発したものでございまして、これはソ側は当然知らなかったわけでございますから、食い違いが出るのはあたりまえでございまして、さような点全部突き合わせいたしまして、日ソの間では食い違いはないということがわかりました。  それから次に、ソ連の二百海里内における日本漁船に対する違反指摘の状況、つまりサケマス以外も含めました状況でございますが、一九八二年、昭和五十七年の総件数が三百四件であります。罰金額が十億二千六百万円でございます
  53. 玉城栄一

    ○玉城委員 サケマスにつきましてはこういう実態であるので、ソ連側要求したオブザーバー、これは当然認めなくちゃならぬという立場に立っていらっしゃるわけですね。
  54. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほど申し上げましたように、ソ側要求はこれは認められないということでございましたが、オブザーバーにいたしまして一隻程度の増加をすることは現在の違反状況から見てやむを得ないのじゃないかということで先方合意をしたというのが経緯でございます
  55. 玉城栄一

    ○玉城委員 昨年の長官のこの委員会での御答弁を見てみますと、いまのお話と全然違うのです。もし今後違反件数がこういう状態で行くならば、ソ連は当然そういう要求を強化してくるだろう、したがってそういうことのないようにいわゆる根絶したいということまでおっしゃっていらっしゃいますね。ですけれども、現在はもう全く逆になっているわけですが、その辺はいかがなものでしょうか。
  56. 松浦昭

    松浦政府委員 先年この同じ議定書をおかけいたしましたときに、私も答弁をいたしたのを覚えておりますけれども、将来どうなるかというお尋ねに対しまして、違反件数が増加をしてまいった場合には、オブザーバー乗船等もふやさざるを得ないというふうな事態もあります。しかしできるだけ違反がないように努力をしてまいりたいということを申し上げたわけでございます。  今回の交渉に当たりまして、やはり当方としては中部の流し網漁船については違反の件数はふえていないではないかということを申したわけでありますけれども、やはり違反の内容等につきましては相当ひどい内容もございまして、違反の件数の絶対水準が依然として高い水準で続いていること、それからまたその内容についても相当に問題があるものがある。これらを考えまして、やはり監視体制の強化ということはいたし方がないというふうに考えたわけでございます
  57. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、そこで長官も御懸念していらっしゃいますとおり、今回もソ連のそういう強硬な要求もあったわけですが、そういうソ連側の公権力を持った監督官ですか、オブザーバーというような事態も今後は予想されるわけですね。ですからそういうことがないように業界指導したいとか、監視体制を強化したいということは昨年もおっしゃっている、いまもおっしゃっているわけですが、どういうふうにすればそういうようなことがないようになるかということについて、ただ抽象的なお話だけでなくて、考えていらっしゃるのか、お伺いいたします
  58. 松浦昭

    松浦政府委員 違反をできるだけ減少させることがオブザーバー乗船をさらにふやしていくといったような要求を食いとめるための非常に重要なことでございますので、実は昨年におきましても私ども相当一生懸命やったつもりでございます。出漁前における取り締まり指導会議の開催、十一回開いておるわけでございます。また水産庁監視船はその前の年は八隻でございましたが、これを九隻に増派いたしまして、特に問題のある中型のサケマスの流し網については一隻の増派をしております。また、違反のあった漁船に対しましては、サケマス漁業の全漁期に相当する日数、九十二日でございますが、これの全漁期の停泊命令といったようなものをかけたものも含めまして、全漁船に対してきわめて厳しい処分もいたしました。こういったことによりまして、現実に私どもとしては実効ある措置としてわが国の漁船が今後かかる違反がないように相当厳しい制裁措置もみずからの手で科したつもりでございます。そしてまた、違反防止にも最大限の努力をいたしたつもりでございます。  このようなことで、中型のサケマスの流し網につきましては、実は八一年の二十五隻から八二年は二十二隻というぐあいに、絶対数としては高いわけでございますが、一応減少は見ているということでございますけれども、先ほど三十五隻ということを申し上げたわけでありますが、これは従来まで違反のなかった太平洋の小型のサケマスの流し網、一九八一年はわずか違反が一件でございましたけれども、これが北海道の海岸における水温の上昇が例年に比べて非常に早かったということから、魚群を追って北緯四十四度以北に入域してしまって、これがソ側に摘発されたということがございましたことと、それからサケマス漁業の許可を持っていない漁船、この三隻がサケマスの違法操業をしたといったようなことで、全体的に見れば違反の件数がふえてしまったということでございます。  本漁期についてでございますが、先ほど申しました新しく問題が生じました小型のサケマス流し網漁船につきましては、北海道がこれの取り締まりに当たるわけでございますから、これに対しまして北海道に対しまして指導取り締まりの強化をしてくれということを求めると同時に、中型のサケマスの流し網漁船につきましては、さらに取り締まり船を一隻ふやしまして、指導取り締まりを強化するということで最大の努力を払いまして、今後御懸念のソ連オブザーバーが増隻されることがないように努力をしていきたいというふうに考えておる次第でございます
  59. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことで取り締まりの強化をどんどんやっていく、ぴしぴしやっていく。業界も大変苦しいわけですから、それをそういうふうに逆に行くのではなくて、水産庁とされて、あるいは政府とされてちゃんとソ連側をガードするような形でやっていかないと、業界方々も苦しい中で操業しているわけですから、その点はやはり十分理解しておいていただきたいと思うのですね。  私、気になりますのは、ほかの拿捕件数にしましてもやはりふえています。これは私、一つの要因として、最近政府が不必要にソ連側に対する刺激的な発言の繰り返しがある、そういうこと等もことしは影響しているのではないかという感じがするわけです。これは私の感じですから。  そこで、そのオブザーバーをわが国の監視船に乗せる、何かその取り決めみたいなものがあったら御説明いただきたいのですが……。
  60. 松浦昭

    松浦政府委員 オブザーバー乗船についての取り決めは昨年と全く同様でございます。  その中身を申し上げますと、サケマス漁船を対象とする水産庁監視船、これは今回四隻ふえておりますが、これにソ連オブザーバー乗船を認める。一隻当たりのオブザーバーは一名、通訳一名、これが一つの条件です。  それからその次は、ソ連オブザーバー日本取り締まりに当たってその状況を視察するということでございます。臨検の視察もあり得るということになっております。しかし、あくまでもこれは取り締まりではありません。視察でございます。  それから、日本監視船上における取り締まり権及び管理の権利は日本側のみに属する。ソ連オブザーバー日本取り締まり権等の行使の支障となるような行為は行わないという約束になっております。  それから、オブザーバー乗船に必要な経費ソ連側負担する。  これが取り決めの内容であります
  61. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしても、要望しておきたいことは、もうこれ以上こういうオブザーバーというのは認めないようにしていただきたいということを強く要望しておきたい。  それから、例の二月に見えたソ連のカメンツェフ漁業相ですね、漁業合弁会社、これは報道ですが、農水大臣は積極的な見解を表明していらっしゃるのですが、長官は国内法上問題があるということで、ちょっと食い違いがあるような感じがするのですが、御説明をいただきたいと思います
  62. 松浦昭

    松浦政府委員 カメンツェフ大臣が二月に訪日をされました際に、日ソの合弁企業の可能性について言及されたことは事実でございます。  この問題につきましては、実は外国為替及び外国貿易管理法に基づきまして、わが国からの投資が自由に行えない国、これはソ連のみならず、こういう実態がある国は当然含まれるわけでございますが、このような国からの資本の投資はこの法律によりまして認められないということになっております。したがいまして、ソ連邦の国内法令から見まして、かかるわが国のソ連に対する投資が認められない以上、先方からの、合弁企業に対する先方の投資を認めるわけにいかないというのが、これが基本的な困難な問題であります。このような事情につきましては、金子、カメンツェフ大臣の会談の席上におきまして、金子大臣から十分説明をしていただきまして、せっかくのカメンツェフ大臣の御提案でもありますから、関係大臣にはお伝えいたします、そして検討いたしますという回答はいたしましたけれども、このような困難な条件というものはすべて先方に伝わっております。  ただいま金子大臣がこの問題について積極的な発言を行ったという御指摘でございますが、恐らく新聞等に発表されたものを指しておっしゃっておられると思うわけでございますが、大臣がおっしゃられましたのは、非常に厳しい条件はあるのだけれどもということを言っておられるわけでございまして、その厳しい条件はまさに先ほど申し上げたようなことで、かつ、これはソ側に対してもきちんと申しているわけでございます。したがいまして、私はその厳しい条件の内容についてただいま申し上げたわけでございまして、さような意味で大臣と私との間に全く食い違いはございません。
  63. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの問題で、ソ連側はアメリカとかスペインとかフランスとかイタリーと合弁会社をやっているわけですね。そういう例から考えまして、わが国の国益上そういうことが有益である、プラスになるというようなことに——向こうの提案ですから、向こうのいろいろな事情がある、そういうものを克服して合弁という方向に持っていく考えはあるのか、そういう考えはないというようなこと、その辺いかがでしょうか。
  64. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほども申し上げましたように、合弁ができるかできないかというところがまず問題でございまして、それには現行の外国為替及び外国貿易管理法に基づいて、ソ連側が自由にわが国の資本を受け入れてくれるという条件がない限り、わが方が先方の合弁企業に対する投資を認めるわけにいかない、これが大原則でございますから、この原則がそのままである限りにおいては、まず前提条件としてこれが非常にむずかしいということでございます。ですから、その方向のいかんということは別にしまして、この前提条件についての解決がない限り非常に困難だということを申し上げざるを得ないということを申し上げているわけでございます
  65. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  66. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、林保夫君。
  67. 林保夫

    ○林(保)委員 先般の日ソ事務レベル協議でいろいろ北方領土やSS20の問題、また最近では大変騒がしいレフチェンコ事件などいろいろございまして、国民的な感情からいたしますと、日ソ関係は厳しいな、こういう状況でございます。その中で、今般、漁期の問題もございますけれどもサケマス漁業交渉がまあまあという形で妥結いたしましたことは、関係者の御努力を多としたい、このように思います。  そこで大臣にお聞きしたいのでございますが、日ソ外交の視点から、今回の妥結をどのように評価なさるのかなさらないのか、私どもは何とかして向こうへの糸口をつかんでいい関係に持っていければということを願っておりますがゆえに、大臣どういうふうにお考えになっておられるか、承りたいと思います
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の日ソサケマス合意というのは、これまでやはり日ソ両国で積み上げてきた漁業の御努力というものの一つの実質的な成果ではなかったか、こういうふうに思います。  日ソ間ではいろいろと対立の問題もありますが、漁業面では比較的交渉も安定をして進められてきておる、こういうふうに思っておりますし、その結果も、日本としても確かに多少の積み上げはあったわけですけれども、やむを得なかったものではないか。こうした一つの積み上げたものを、実質的な一つの日ソ間の交渉としてこれを今後とも続けていくべきであろう、こういうふうに判断しております
  69. 林保夫

    ○林(保)委員 松浦長官に伺いたいのでございますが、この協定の審議に毎年私どもも参加させてもらっておりまして、大変厳しい状況もあったと思いますが、今回の空気はどのようにお感じになられましたでしょうか。
  70. 松浦昭

    松浦政府委員 日ソ関係につきましてはいろいろな問題があることは事実でございますけれども、そしてまた、わが国の国益からいって当然守らなければならないものは当然主張していくということが正しい方向であるというふうに考えておるわけでございますが、少なくとも、私ども交渉をいたしておりました相手方との間におきましては、漁業の面につきまして、漁業協力関係を拡大していこうという気持ちは確かにあったというふうに思いますし、さような雰囲気のもとで交渉が行われたというふうに考えております。特にその際に、先般カメンツェフ大臣に日本に来てもらいまして、金子大臣との間で十分な話し合いも行い、また漁業の事情等を視察してもらったわけでございますが、その中において、日ソ漁業関係は今後とも維持発展すべきだということが両大臣間の合意になっておりまして、この点は今回の交渉において非常に役立ち、有意義であったというふうに考えている次第でございます
  71. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一度重ねて長官にお伺いしたいのですが、そういうふうに漁業だけは拡大していこうという、これは向こう側からのはっきりした言い分なんでございましょうか、ほかが悪いから漁業だけということになるのだと思いますけれども長官、どのように御判断になられますでしょうか。
  72. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業につきましては、先ほど大臣からも御答弁ございましたように、日ソ間の非常に長い伝統等積み上げの実績がございます。そのもとにおきましていままでもいろいろなむずかしい関係がございました。しかしながら、たとえばアフガンの事件であるとかいろいろな事件がございましたが、その中におきましても漁業関係は依然として安定的に維持されてきたということでございます。また、そのような関係漁業の面について保つということにつきましてはカメンツェフ大臣と金子農水大臣との間でもお話し合いが行われ、そのようなことを確認しておりますので、ソ連側は当然そのような認識を持っているというふうに考える次第でございます
  73. 林保夫

    ○林(保)委員 本当に長い間の積み重ねだと思うのでございますが、日ソ外交史をひもときますと、河野さんが向こうへ行かれた。本など読みますと、北方領土等のきな臭い問題がいろいろ出ておったことも事実でございます。そしてまた、今回も、レフチェンコ事件のあの報道の中で漁業関係の政治絡みの取引の問題がいろいろとうわさになって出ております。これはうわさでございます、私も確認したわけではございません。そういう際立って悪い状況の中で漁業関係だけがこういうふうに出てくるという問題については、これからの日ソ関係の本当の意味での発展を願う火種になればいいのですけれども、それがそうではないのではないかといった国民的な心配もございます。ほかの問題が非常に厳しいのになぜ漁業だけがうまくいくのか、この点大臣、どのようにお考えになられますか、ひとつもう一度お伺いしたいと思うのです。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ間には基本的な領土問題等の対立もありますし、その他国際情勢等についての判断も違うわけで、特に最近では関係が厳しくなっておるということははっきり言えると思います。  そういう中で、漁業交渉も今日までの歴史の中で領土問題とも絡んでいろいろ紆余曲折があって今日に至っておるわけであります。しかし、いま水産庁長官も申しましたように、日ソ漁業問題というのは実務的に解決していこうということが日ソ間の積み上げの結果の一つの合意になっておるので、私は、そうした対立はありましたけれども、そういう面では漁業交渉は長い歴史と棲み上げの中で何とか両国の交渉合意を見た、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、今回の日ソ漁業交渉合意を見たということだけによって日ソ間全体を判断するわけにもいきませんで、現在の日ソ関係は、今日までの日ソの歴史の中においても最も厳しい状況に立っておるということははっきり言えるのではないかと思いますが、われわれは、対立はやむを得ないとしても、そうした関係を対決の方向にしてはならないと思いますし、漁業のみならず、経済の面におきましてもあるいは文化の面におきましても、今後とも日ソ間で改善すべき諸点は改善を進めていかなければならぬ、対話を進めていかなければならぬ、こういうふうに考えております
  75. 林保夫

    ○林(保)委員 こういう御質問を申し上げましたのも、一昨年の四月の予算委員会で鈴木総理が、むずかしい日ソ関係漁業のことで私も苦労いたしました、ついてはお任せくださいと言わんばかりの発言をしておられまして、私ども大いに期待しておったからこういう質問をしたわけでございますけれども、なお、これからもいい実績は事務的に積み重ねていきながらほかの問題も打開を図りませんと、いつも心配がつきまとう。私ども野党でございますので、もちろん努力はいたしますけれども、なかなかそういう打開ができかねる。そういった点をお含みおきいただいて、国益を踏まえていい関係が少しでも早くできますように心から望んでおきたい、こういうことでございます。  先ほど来事務的な問題がいろいろ出ておりまして、それなりに理解しておりますが、まず漁業協力費の問題につきましてお答えいただきたいのでございます。  最近はサケの沿岸魚獲量も非常にふえてきております。そして今度四万二千五百トンという協定の枠が決まりました。日本の手にする漁獲あるいは輸入、逆の面からいきますと消費の中でこれが全体の中でどのような位置を占めておりますか、その点を明らかにお願いしたいと思います
  76. 松浦昭

    松浦政府委員 非常に大局的に申し上げますと、四万二千五百トンと申しますのがソ連との関係において日本漁船によりまして漁獲をしている量でございます。このほかに、国内の北海道等の沿岸に回帰してまいります、わが国の人工ふ化放流事業によって最近非常に増大しております国内の漁獲量、これが約十万トンございます。そのほかに、外国からの輸入、これは主としてベニザケ等でございます、そしてまたアメリカが非常に多いわけでございますけれども、これが去年の数字で約十万トン、さような状況になっております
  77. 林保夫

    ○林(保)委員 そういった枠内で私ども心配いたしますのは、先ほど来御議論もありましたけれども漁業協力費四十二億五千万円を負担してなお出ていくということの採算あるいは効率を水産庁はどのように御判断されておりますか。
  78. 松浦昭

    松浦政府委員 今回二億五千万円のコンペの増額を決めて帰ってまいったわけでございますが、この点につきましては、先ほどから申しておりますように、先方計算によりますと四十九億という非常に大きな数字になるわけでございます。これに対しまして、この四十九億の数字の積算の根拠になりますところの五千三百万ルーブルというソ側の支出は、日本サケマス漁船漁獲しているサケ産卵場の保護あるいは河川の改修といったことに充てられるためでございまして、日本側にも確かにメリットがあることは事実でございますが、一方におきまして、われわれとしては、各漁民負担能力考えますとぎりぎりのところに来ておるわけでございまして、これをふやすことはできないということで交渉いたしました。先方負担能力の点につきましてはある程度までこれを認め、四十二億五千万円ということで妥結をいたしたわけでございます。  このようなことで二億五千万円のコンペの増加があるわけでございますが、現在のサケマス漁船の経営の状態につきましては業界等とも十分相談いたしまして、ぎりぎりの負担ではあるけれどもこの程度負担は何とか受諾できるのではないかということで決めたわけでございます。一番心配なのは小型のサケマス漁船でございます。特にマスをとっている漁船でございますが、これらについて従来の負担方法ないし従来の負担の方式によりまして計算いたしますと、一隻当たり五万円以下という負担でございます。したがいまして、一番心配しております小型漁船についての負担がその程度でございますれば何とかこれは乗り切れるのではないかということで判断をいたしまして、実は私どもこれを妥結させたという状況でございます
  79. 林保夫

    ○林(保)委員 もう少し詳しく伺いたいのでございますが、五十三年当初の漁業協力費は十七億六千万円だったと思います。約二・五倍ということでございます。四十二億五千万円をどのように使うのか、その辺のところの仕分けを少し、あるいはこの協定にはございませんけれども覚書がありましたら、棒読みでも結構ですからひとつお知らせいただきたい。
  80. 松浦昭

    松浦政府委員 まず負担の方から申しますと、私どもとしましては、従来の経緯を申しますと、四十億のうちで約十七億を政府が持っております。残りを業界負担をしていただくということでございますが、先ほどから御答弁申し上げておりますように、この財政事情のもとにおきましてはなかなか国庫負担をふやすことは困難であると言わざるを得ないと思います。そこで、業界の中でよく御相談いただきまして、この二億五千万円の負担をどのように配分するかを御審議いただきたいと思っているわけでございます。  そのコンペの使途の方を申し上げますと、これはお金で払うわけではございません。これに相当する金額の機械及び設備をソ連側に供与するということでございまして、これは毎年大日本水産会がソ連側、これはソ連漁業船舶公団というところと話し合いをいたしまして、具体的な品目を決めまして、協議の結果決定をするというかっこうになっております。ただ、日本側としては、本事業の趣旨からできる限り北洋サケマス資源の維持増大のために資するような、そういう形で機械類等をソ連側に供与するということでやってほしいということでございまして、実はこれにつきましては、大水会長の書簡を先方に出しております。これは漁業の分野における日ソ協力の一環としてソ連邦の河川で産卵する遡河性魚類の保護、再生産及び維持のためにソ連側が支出する経費の一部を補てんする趣旨で機械及び設備を提供するということでございます。ことしはこれはどうなるかということは、今後の大日本水産会のソ連側との折衝の結果でございますが、従来はサケマスの幼魚の飼育場の設備あるいは餌料工場の設備それから餌料生産用のパイロットプラント、これはいずれもサケマスの飼育のためでございますが、こういったものに使われているということでございます
  81. 林保夫

    ○林(保)委員 幼魚の飼育場あるいはパイロットプラントが日本から出した資材でどことどこにあるということを確認なさっておられますでしょうか。そしてまた実際に向こうへ行って関係者がごらんになったり、あるいは技術指導された事実があるのでございましょうか。たしかないと記憶しておりますので、お伺いしたいと思います
  82. 松浦昭

    松浦政府委員 各グループがプラントの輸出をいたしました地区につきましては、私ども全部つかんでおります。ただ……(林(保)委員「どこどこでしょうか」と呼ぶ)全部申し上げますと相当多数になりますが……(林(保)委員「二、三、ほかでひとつ」と呼ぶ)たとえばサハリン州の何々地区とかあるいはハバロフスク地区の何々地区とかということで確定をいたしております。それはわかっておりますが、その場所まで行って確認してきたという事実はいまのところございません。なかなか先方との間でそういう地区に行けるかどうかということもございますので、まだ確認はされておらない次第であります
  83. 林保夫

    ○林(保)委員 大変むずかしいというふうにも実は私も聞いておりましたのですけれども要求はされておるのですか、一遍見せてくれというようなことは。
  84. 井上喜一

    井上説明員 お答えいたします。  大きな施設につきましては、設計段階から先方と話をいたしまして、現地において協議をし、かつまた施設を向こうに渡しましてから落成式等に出席いたしておりますので、確認をいたしております
  85. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほどいろいろ質疑がございましたように、監視も強化されておりますので、こちらも知りたいこと、見たいところはひとつ要求されて、実現されたらいいんじゃないか、このように思います。  予算措置は国の方はどのようなお考えでなされますでしょうか。
  86. 松浦昭

    松浦政府委員 当然これは当初予算に組まれているものではございませんので、常に補正の段階で決定をするということが毎年の例になっております。ただ、十七億の従来の負担につきましては、これは極力維持できるというふうに思っておるわけでございますが、この増額という問題になりますると、やはり関係省庁とは十分協議するつもりではございますが、現在の財政事情のもとにおいては、これは非常に困難であるというふうに考えている次第であります
  87. 林保夫

    ○林(保)委員 そういたしますと、予算措置としては十七億を水産庁は予定しておられる、あとは民間に協力してもらう、こういうことと理解してよろしいでしょうか。
  88. 松浦昭

    松浦政府委員 まだ決まっているわけではございませんので、なお関係省庁と協議をしたいというふうに思っておりますが、現在のところ、これが十七億以上の増額はなかなか困難であるということでございまして、民間の方の負担お願いをするようになるのではないかというふうに考えておる次第であります
  89. 林保夫

    ○林(保)委員 監視船の増員そのほかを含めまして、どうも日本違反が多いということも聞いております。その辺は水産庁はこれからの指導をどのようになさるのか、その点最後に承っておきたいと思います
  90. 松浦昭

    松浦政府委員 今回、オブザーバー乗船する監視船を、ソ側要求は大分抑制をいたしましたけれども、やはり一隻増隻をしなければならなかったという事情もございまして、違反が相当多発しているということは、私どもにとっても非常に問題に感じている点でございます。  さような点から、今後の北洋の安定的な操業ということを考えますると、どうしても違反をできるだけ少なくしていくという最大の努力を払わなければならぬということでございまして、私どもとしましては、前年に引き続きまして業界に対しまして、現地で十分指導するということが一つございますし、それからまた、去年の結果にかんがみまして、特に太平洋の小型の流し網漁船、太平洋の小型の漁船につきましては問題がございますので、北海道庁の監視船を増派してもらう。それから今回も問題になりました中型の漁船につきましては、一隻の増派をするということで、違反をできるだけなくするということで努力をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、去年は非常に厳しい違反に対する制裁措置もとった次第でございまして、さような制裁措置がとられないで済むようにひとつ業界を十分指導してまいりたいと思っております
  91. 林保夫

    ○林(保)委員 終わります。ありがとうございました。
  92. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、野間友一君。
  93. 野間友一

    ○野間委員 日ソサケマス議定書に関してまず第一にお伺いしたいのは、漁業協力協定が五十七年末で切れていますね。これについては業界としても長期の安定という点から強く、この五年間の協定をさらにと求めておりますけれども、これの見通しについてお伺いしたいと思います
  94. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、現在の五十三年に締結されました日ソ漁業協力協定は、昨年の末で一応の効力を終了し、その後は毎年自動延長ということになっておりまして、六カ月の猶予期間を置いてこれを廃棄することができる情勢になっておることは、私どもも十分承知しております。  現在のところ、ソ連側にこれを廃棄する意図はないということは、私どもも伺っておりますので、今後の実態が確保されることを望むわけでございますけれども、そのような不安定な状態にあるということは、それなりにやはり問題でありますので、今回の交渉の場合におきましても、安定的な法的な枠組みをつくりたいということでソ連側話し合いをいたしまして、今回は、先ほども説明ございましたけれどもサケマス手続についての交渉ということで、時間もないということでございますので、今後の外交交渉でその問題はさらに話し合っていこうということで、ソ連側理解を示したという状況で終わっております。今後さらに外交ルートを通じましてこの問題については話し合いを続けていく必要がある、こういうふうに感じております
  95. 野間友一

    ○野間委員 外務大臣、五年間の協定努力してもらって、必ずできるように積極的にひとついま答弁もありましたけれどもお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは先般、カメンツェフ漁業大臣が来られましたときに、金子大臣との間でも話が行われまして、長期的な協定を結ぶようにお互いに努力しようということになっております。私もカメンツェフ漁業大臣とも会ってそうした点について話し合いをしたのですが、いますぐこれを決めるということについては、なかなかむずかしい情勢もあると思いますが、しかし、ソ連としても理解をしておりますし、わが国としても何とかこれは長期的なものに持っていきたいということで今後とも積極的にひとつ努力をしてまいりたい、こういうふうに思います
  97. 野間友一

    ○野間委員 協力費の件についてですが、四十億から四十二億五千万と二億五千万ふえたわけですね。先ほどの論議の経過にもありましたけれども、五十七年度は十七億ですね。しかし、今度は二億五千万ふえたわけですね。一方、サケの輸入量がふえておりまして、魚価が非常に下落しておる。だから、かなり漁獲のコストがふえるんじゃないか。せめてこの分、十七億に上積みをするということが関係団体あるいは漁民要求でもあります。これについて、先ほどの答弁では非常になまぬるいと申しますか、民間に負担してもらうというふうな答弁に聞こえたわけですけれども、やはり農水省あるいは水産庁は積極的にこの点について予算措置を講ずるように要求すべきだと思いますが、どうですか。
  98. 松浦昭

    松浦政府委員 本年の漁業協力費に対する政府の援助につきましてのお尋ねでございますが、今後、関係省庁との間で十分検討してまいりたいというふうに考えておりますけれども、何分にも国の財政がこのような状況でございますので、昨年の負担でございました十七億以上の拡充はなかなか困難ではないかというふうに考えております
  99. 野間友一

    ○野間委員 しかし、水産庁がそんなことではだめなんで、だからもっと業界と話し合って、やはり上積みをぜひしてもらうように努力してほしい。これは時間の関係で、要望しておきます。  それから、この協力費の効果の問題ですが、これは資源の保護とか拡大にかなり大きな効果を上げておるのじゃないかというふうに思いますが、その点についての確認と、もしそうだとするならば、この際、漁業区域の拡大、これは新たに交渉の際に話し合う必要があるのじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  100. 松浦昭

    松浦政府委員 まず協力費の使途でございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、この協力費の大部分はサス・マスの幼稚仔の保護のために使っておるわけでございまして、そのような施設あるいはそれに給餌するための、えさを供給する施設、こういうもののために使っておりまして、これは徐々ではありますが、明らかに効果は上がってきておるものというふうに考えております。  それから第二に、漁区の拡大の問題でございますが、昭和五十三年に中川元大臣が大変に努力をなさいまして、ようやく獲得した漁区でございますが、この漁区につきましては、私ども、よりとりやすい漁区にしたいという気持ちは持っておりますけれども、やはり資源の保護という観点から、ソ連側の立場というものは非常にきついものがございまして、いろいろと考えてみた経緯もございますが、今回は前年どおりの漁区ということで決まった次第でございます
  101. 野間友一

    ○野間委員 その点について十分検討してもらって、拡大できるようにひとつ努力お願いしたいと思います。  それから、二百海里時代が到来しまして、新しい海洋法の先取りですね。九十数カ国がすでにこういう時代に入っておるという状況ですけれども、この中では入漁料が非常に高い、あるいは操業条件が厳しい、各国によっていろいろ違いますけれども、そういう時代を迎えております。  そこで私は、いま答弁というよりも、後でまたどこにどういう問題があるのか、主だったところで結構ですから、各国の置かれたいろんな条件、これについての問題点、これらは資料としてぜひまた出していただきたいと思いますが、よろしいですか。
  102. 松浦昭

    松浦政府委員 できるだけの資料を整えて御提供申します
  103. 野間友一

    ○野間委員 二百海里時代ということになりまして、わが国のいわゆる栽培漁業あるいはつくる漁業ですね。一定の努力はされておることは私もよく承知をしておりますけれども、新しい時代に対応したそういう具体的な強力な施策、これを強力にぜひ進められたいということをこれも要望しておきます。  時間がありませんので、日米間の問題についてお伺いします。  四月の割り当てですね。これが二十八万六千トンの当初の予定が十八万三千トン、三六%減りました。これは四月四日付で通告があったやに聞いておりますけれども、この事実の確認、イエスかノーかだけで結構です。それからなぜ減らしたのか、この理由についてお答えいただきたい。
  104. 松浦昭

    松浦政府委員 まず御要望のございました二百海里内における栽培漁業等の振興につきましては、今後さらにこれを拡充してまいりたいという気持ちでございまして、御案内のように、今通常国会にわれわれとしては法案を御提出申し上げているという状況であることは御理解いただきたいと思います。  それから日米関係でございますが、米国は対外国の漁獲割り当て量に対しまして、年初五〇%割り当てる、それから残余は四月と七月に二五%ずつということで、それも入漁国の対米漁業協力度合いを勘案して割り当てるという政策をとっていることは御承知のとおりでございます。  当初の割り当ては前年並みの年間割り当て予定量を提示いたしてきたわけでございますが、四月の割り当てにおきましては、当初予定されておりました二五%の割り当てのうち九%分を留保いたしまして十八万三千トンの割り当てということで通報をしてきております。それはおっしゃられるとおりでございます。  その理由は、昨年の国際捕鯨委員会における一定期間後の捕鯨禁止決定、いわゆるモラトリアムに対しましてわが国が行った異議申し立てに関し、米国内で反捕鯨勢力の非常に強い不満が起こっているということで、捕鯨問題について何らかの進展を見ない限りはこれを留保するということで言ってきたというふうに承知しております
  105. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、異議の申し立てに対する報復をしたというふうに私は考えますけれども、それでよろしいですね。
  106. 松浦昭

    松浦政府委員 報復という言葉が当たっているかどうかはわかりませんけれども、異議の申し立てに関連してこの割り当てを行ってきたということは間違いない事実でございます
  107. 野間友一

    ○野間委員 報復ですよ。そうすると、問題は異議の申し立てですけれども、これは当然の権利であって、この権利行使そのものをやっただけの話だと私は思うのです。IWCの決定には何ら違反していないと思いますが、その点どうですか。
  108. 松浦昭

    松浦政府委員 私どもも全くそのとおりに考えておりまして、先方にもそのように言っております
  109. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、割り当て量を削減する理由、根拠は全くないと思いますけれども、どうお考えでしょうか。
  110. 松浦昭

    松浦政府委員 私どもといたしましては、捕鯨問題とこの割り当ての問題は別個の問題であるというふうに考えておりますし、また、わが国の異議申し立ては、ただいま申しましたように、現行の協定上認められているものであり、かつ、わが国の立場を留保したということにすぎないということははっきり先方に申してあります。また、現実に日米間の協議も行って、今後どうしたらいいかということをお互いに相談していこうという話をしているときに、このような割り当ての留保を行ってきたということについてはきわめて遺憾でございまして、これをもとに復するように先方に強く働きかけをしているところであります
  111. 野間友一

    ○野間委員 いまのアメリカの理由からすれば、異議の申し立てに対する態度を変えない限り七月の割り当てそのものも同じような報復措置として削減してくるということは当然予測されると思うのです。この点については水産庁の斉藤審議官が、そういう感触を得たというようなことをある新聞に載せておられますけれども、その点いかがですか。
  112. 松浦昭

    松浦政府委員 異議の申し立てを撤回しなければ七月に割り当てを回復しないと言っているわけではないわけであります。何らかの対応をしてほしいということを言ってきているわけであります。その間にありましてわが方としては、まだ五月、六月とございますから、一方において何らかの形でとにかく捕鯨は存続したいということがわれわれの念願でございますので、この立場を崩さず、かつ割り当ての問題も解決するということがわれわれの使命でございますので、さようなことでアメリカ側とこれからも十分話をしたいというふうに思っております
  113. 野間友一

    ○野間委員 では、撤回なしにどういうようなものが対応として考えられますか。
  114. 松浦昭

    松浦政府委員 それはアメリカ側との話し合いによって考えたいと思います
  115. 野間友一

    ○野間委員 いや、実際けしからぬですよ、こういうアメリカの態度というのは。七月の割り当てにおいても、いまの状況で推移すればやはり削減してくるんじゃないかと懸念していますけれども、そうお答えなかったので……。
  116. 松浦昭

    松浦政府委員 いまのままの態度をそのままとり続けていれば留保分を返してこないということがあり得るんじゃないかということでございますが、その点につきましては先方といろいろと話してみまして、基本的にはやはり日米の関係というものは友好的に維持されるべきであるということがございますし、また伝統的なわが国の北洋における割り当て量というものにつきましてはわが方も十分に主張する根拠がございますし、それからさらに対米関係につきましては、たとえばジョイントベンチャー、洋上買い付けといったようなことでいろいろな協力もやっており、またアメリカの魚の輸出の半分は日本に向けてきておるわけでございますから、さような事情を十分に説明しまして、このようなことで割り当ての留保が続くといったようなことは適当でないということを先方に十分に話し、その理解を求めて処理をしたいというふうに考えております
  117. 野間友一

    ○野間委員 だから、IWCの決定に何ら違反はしていない、当然の権利行使をやった、しかしそのことが理由にならない理由でもって削減される、これはまさに理不尽なことですね。だから、異議の申し立てそのものはもちろん撤回すべきでない、私もそういう立場からのお尋ねですけれども、しかし現実には被害が出てくるし、またこれからも相当、七月の割り当てについてもそういう可能性がある。大変な混乱を起こすのじゃないかと思うのですね。  そこで、日米間の例の漁業協定、これとの関係で言いましたら、五条のここでは国内法で定められた諸要素が割り当ての一つの要素というか、基礎になっていますね。一体この協定というか条約上の根拠はアメリカはどこに求めて言うわけでしょうか。
  118. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  米側からどの条項に基づいて条約上の主張をしているかということについて明示的な提示はなかったわけでございますので、私どもなりに解さなければならないわけでございますけれども、該当する条文といたしましては、先生御指摘の第五条であろうと思います。  五条におきましては、合衆国以外の漁獲量について決定の基礎として諸要素を次のように決めるということで、具体的に決めている点が従来と違っているわけでございますけれども、その五条に具体的に種々書いております最後に、「合衆国政府が適当とみなすその他の事項」というのが入っておりますので、「適当とみなす」ということはかなり解釈の余地のあるといいますか、裁量の余地のある表現であると思いますので、この条項を盾にアメリカ側が主張してきても、これはやはり条約に従って認められないということを言うのはなかなかむずかしいだろう、そのように考える次第でございます
  119. 野間友一

    ○野間委員 そうすると五条の八項、これでアメリカが削減できるというふうに日本政府は判断するのですか。
  120. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 私が申し上げましたのは、五条の八項に従ってアメリカが漁獲量の決定を行ってくるということがこの条約との関係でどのように判断されるかという問題になりますと、なかなかこの条約上認められないということを言うのはむずかしいのではないかという点を申し上げているので、この削減を認めるのかどうかという点につきましては、実態の問題になるだろうと思うのでございます
  121. 野間友一

    ○野間委員 いや、アメリカが、いま政府の見解としては五条の八項に基づいてやったんだろうということでしょう。だとすれば、それは正当なアメリカの措置かどうかということです。日本政府はどう判断するかということを聞いているわけです。できるというふうに考えるのですか、形式論理ですよ。
  122. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 御承知のようにこの五条というのは、非常に困難なブロー法案というものが成立したことを背景として交渉の結果成り立ったものでありまして、五条の中に具体的に書き込まれております条項も、ブロー提案によりまして改正されましたアメリカのマグナソン漁業管理法の条項をそのまま引用しているわけでございます。それを前提といたしまして五条についての交渉がまとまりました以上、この五条の八項によってアメリカ側が適当とみなすということで主張してきている主張そのものは、これを条約に反するということで拒否することはできないのではないか、いわばやむを得ないのではないかというふうに感じております
  123. 野間友一

    ○野間委員 五条の本文では、この前も私論議したのですけれども、「合衆国の法律で定められた諸要素をその決定の基礎とする。」そして一から七まで、非関税障壁とか協力の問題とかいろいろありますよね。しかし八項というのは異質の問題ですよ。だから八項は、合衆国の法律で定められた要素とは無関係に「適当とみなすその他の事項」は、アメリカが適当と認めれば全部割り当てをする場合にこれでできるのだということになったら、これは五条の七項まで制限というか列挙した意味が全くなくなるわけでしょう。こんな法律はないですよ、条約のたてまえは。まさに何をやっても異議の申し立てができないというようなことになってくると私は思うのです。だからこれでやられて黙っておるということはとんでもない話で、時間がありませんので、ここでさらに詰めて一遍政府の見解なり、論議をしてみたいと思いますけれども、とにもかくにも、外務大臣最後にお聞きしますが、こういう正当な権利の行使をやり、しかも片方ではIWCの決定には違反していない。しかしこれを理由にして削減して、そして国内の二百海里内で操業する漁民漁業団体に非常に被害を与えていく。外交交渉云々と言われますけれども、理由が理由なんですよ。だから、この際毅然とした対応をして外交上臨まなければ、鯨か魚かあるいは魚か鯨かという二者択一を迫られるような場合もあり得ると私は思うのです。たとえば国民にこういう不当なやり方をアピールするとかあるいは洋上買い付けもやらない、ほかから買うというようなことも含めてそういう強硬な手段で臨む必要があるのではないかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 鯨と漁獲量とは本質的に関係がないわけでありますし、それに絡めてアメリカの方が漁獲の削減を通告するということは筋違いだと思います。アメリカはアメリカなりに理屈はあるのでしょうけれども、しかし基本的には関係のない問題であろうと思いますから、わが国としては、日米関係は友好関係にあるわけでありますから今後交渉を粘り強く行ってわが国の国益を守らなければならぬ、こういうように考えておりますし、われわれの基本方針を通すために今後とも全力を尽くしてまいりたいと考えております
  125. 野間友一

    ○野間委員 水産庁長官に同じような問いなんですけれども、要するに漁業関係者、これに被害を与えないように従前の五十八年度予定された割り当て量、これはきちっと確保して安心させるということについてこの場でぜひ確約をしてほしいと思うのです。
  126. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども考えはただいま安倍外務大臣がおっしゃられたとおりでありまして、粘り強く全力を尽くして先方を説得し、交渉していい結果を得たいということで最善の努力を尽くすつもりでございます
  127. 野間友一

    ○野間委員 不満ですけれども、終わります
  128. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  129. 竹内黎一

    竹内委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  130. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  132. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十九分散会