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1983-04-13 第98回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十三日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 北山 愛郎君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       北村 義和君    玉沢徳一郎君       中山 正暉君    河上 民雄君       土井たか子君    渡部 一郎君       林  保夫君    中路 雅弘君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         食糧庁次長   山田 岸雄君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部連絡調整官  大場  昭君         防衛施設庁施設         部施設取得第二         課長      久保 邑男君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         外務大臣官房外         務参事官    野村 忠清君         社会保険庁医療         保険部船員保険         課長      佐藤 隆三君         農林水産大臣官         房参事官    須田  洵君         農林水産省経済         局国際部長   塚田  実君         運輸省船員局労         政課長     佐藤 弘毅君         運輸省船員局船         舶職員課長   小和田 統君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ───────────── 三月二十九日  宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第一一号)  宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第一二号) 同日  非核三原則の堅持等に関する請願野間友一紹介)(第一八二一号)  同(中路雅弘紹介)(第一八二二号)  同(村山喜一紹介)(第一八九八号)  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願外一件(井上一成紹介)(第一八二三号)  同(小川省吾紹介)(第一八九六号)  同(岡田利春紹介)(第一八九七号)  同(伊賀定盛紹介)(第一九二四号)  同外一件(小林進紹介)(第一九二五号)  同(藤田高敏紹介)(第一九二六号)  同外二件(細谷治嘉紹介)(第一九二七号)  同(伊藤茂紹介)(第一九五八号)  同(山口鶴男紹介)(第一九五九号)  同(米田東吾紹介)(第一九六〇号) 四月六日  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願外一件(石橋政嗣君紹介)(第二〇〇三号)  同(小川省吾紹介)(第二〇〇四号)  同(山口鶴男紹介)(第二〇〇五号)  同(井上泉紹介)(第二〇三九号)  同(山口鶴男紹介)(第二〇四〇号)  同外一件(五十嵐広三紹介)(第二〇六〇号)  同(池端清一紹介)(第二〇六一号)  同(堀昌雄紹介)(第二〇六二号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第二〇八一号)  同(森中守義紹介)(第二一〇一号)  対韓援助停止に関する請願外一件(米田東吾紹介)(第二〇五九号) 同月十二日  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願枝村要作紹介)(第二二一〇号)  同(松沢俊昭紹介)(第二二一一号)  同(上原康助紹介)(第二二三八号)  同(山本政弘紹介)(第二三〇四号)  同(田邊誠紹介)(第二三二〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  竹島の領土権確立等に関する陳情書(第一一〇号)  ILO差別待遇条約第百十一号の早期批准に関する陳情書(第一一一号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件(条約第七号)  商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件(条約第八号)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 私はまず最初に、農林省食糧庁次長がおいでになっておるのですから、食糧関係のことで若干質問しておきたいと思います。  というのは、アメリカが八三年産穀物の大規模な生産調整をやる、そのねらいとしては、アメリカの余った農産物を処理するのと同時に価格引き上げをねらった、そういう措置だということが報道されておるわけですが、こういうアメリカ措置によって日本食糧関係についてはどういう影響が出てくるのか、またそれにどういうふうに対応するつもりなのか、その点まず承っておきたいと思います。
  4. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  アメリカ農務省が三月二十二日に発表いたしました八三年産穀物減反計画への参加申し込み状況でございますけれども、これによりますと、減反申し込み面積は三千六十万ヘクタールと作付面積の八千七百万ヘクタールの約三五%に達しております。作物別に見ますと多少変動がありまして、トウモロコシソルガムは三九%、小麦三五%等となっております。  そこで、この減反計画がどの程度アメリカ生産の減少に結びつくかということでございますけれども、これは今後の農家実施状況、どの程度実施していくのか、あるいは農産物のことでございますから、気象状況がどうなるかということに左右されます。したがいまして、ここで明確なことは申し上げられませんけれどもアメリカ農務省は、単収の増加等もあるので、生産量作付削減率ほどには減少しないのではないかと予測しております。  そこで次に、同計画わが国に対する影響でございますけれども、確かに減反率は、御指摘のようにかなり大きいわけでございますけれども米国農務省によりますと、減反計画を実施しても量的には十分な在庫を有するというふうに予測しておりまして、事実、現に相当な過剰在庫を持っておるわけでございます。  そこで、わが国が必要とする穀物輸入量穀物わが国は年間二千八百万トン程度輸入しておりますが、そういうものの確保には特段問題はないというふうに農林水産省としては考えております。  それからまた、価格にどのような影響を及ぼすかということでございますけれども、この計画は当面世界の穀物需給を引き締める程度の効果を持つと考えられます。そして、そのようなことで、私どもとしては今後の価格動向について、米国以外の穀物生産国米国以外にもオーストラリア、カナダ等いろいろ有力な生産国がございますので、そういう国の生産動向なり気象状況等をよく見て、今後の動きに十分注意を払ってまいりたい、このように考えております。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 このアメリカ農業政策等の、つまり減反生産削減をやることによる農民に対するいわば救済措置と、わが国減反による農民に対する救済措置と比較してみますと、これは非常な違いがある。アメリカは、たとえば一ヘクタール農家が持っておって、それを生産しないと、それの収量に見合うものを現物として給与する、これは農民にいわば実質的な損害のないようにして、さらに価格引き上げをねらった措置だ、こういうふうに私どもは考えざるを得ないわけですが、そのアメリカ農民に対する農務省措置というものとわが国とを対比して余りにも差異がありはしないか、そういうふうに感ずるわけですが、どうでしょう。
  6. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  アメリカ穀物価格支持制度の内容は、穀物種類によっても多少違いますけれども、一般的に申し上げますと、不足払い制度の上に、今回の減反計画による、先生指摘のような現物の支給があるわけでございます。ですから、この減反計画に参加した農家に対しましては、小麦トウモロコシ種類によって違いますけれども生産されるであろう収量の八〇なり九〇%程度現物で支給するということになっているわけでございます。他方、わが国は、転作に御協力いただいた農家に対しましては、これも転作計画種類によって違いますけれどもヘクタール当たり四万円なりあるいは五万円なり現金で支給する、こういうことになっておりまして、確かに制度仕組み基本的に違うということになっておるわけでございます。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 制度仕組みだけではなしに、制度仕組みがそういうふうに違って、それから実際的に農民が受けるいわゆる補償措置というものは、これは日本アメリカと大変な違いがある、こういうふうに私は考えるわけですけれども、そういうことはないですか。
  8. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  先生案内のように、わが国の場合は、米麦に限って申し上げますと、政府の直接的な補償生産者米価は御案内のように決定を毎年いたしますが、これは確実に政府がこれで買い入れを保証するということでございます。米国の場合は、政府補償はございません。そういう意味で、私ども米麦食糧管理制度に係るものについては、不足払いではございませんで、直接政府価格保証、また生産者価格の、受け取り価格の直接的な政府による保証ということになっているところが大きな違いかと思います。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、アメリカ農産物在庫量というのは、何か六カ月分とか、平年収量の六〇%ぐらいの在庫を抱えておる、こういうふうに聞くわけですが、在庫量としてはそんなものですか。
  10. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  アメリカ農務省の三月二十三日の発表によりますと、たとえば小麦につきましての在庫は四千三百万トン程度でございまして、生産が約一億トンでございますから、四割の水準にございます。それからトウモロコシ等につきましては、六割程度が御指摘のような状況になっております。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう数字であるということは、非常に不作であった場合にはアメリカ自身としては生産量のわずか四〇%、六〇%の在庫しか持ってない。それで日本も古米もなくなってきておる。そういう中でアメリカ食糧政策日本食糧が抑えられてしまっておる。つまりわれわれの食糧アメリカ食糧政策によって左右される。価格つり上げというのはいまはないか知らぬけれども価格つり上げとか、いろいろそういうことが予想されるわけなので、そういう点から考えると日本のような耕地の少ないところで、生産性の低いところでこれを六十万ヘクタールもまだ依然として作付制限をしておくというようなことは、これはやはり一億の国民食糧確保という面から見ても、将来にわたれば、二年、三年先が来れば必ず不安を来すではないか、私はそういうように見通しをするものですけれども、そういう御心配はないですか。
  12. 須田洵

    須田説明員 お答えいたします。  いま将来にわたりましてのわが国食糧自給力という問題についての懸念がないかどうかということにも関連いたします御質問でございます。確かに現在のいわゆるアメリカ生産調整というものによりまして国際的な需給につきまして多少の影響が出てまいるかと思いますけれども、非常に過剰基調にある中での調整ということでもございまして、そういう状況の中でわが国としてはやはりしっかりと自給力の強化ということを進めてまいる必要があろうかと思います。その際におきましては、やはり先生が御指摘のように生産性向上という問題も強く留意しながら、そういった食糧供給につきまして不安のないように対応してまいりたい、かように考えております。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 この問題で時間をとるのは——もっと議論を深めたいわけですけれども、残念ですが……。  アメリカのそういう政策によって日本食糧支配をされる。軍事的にも支配をされ、そうして食糧の面からも支配される、そういうふうな状態の中に日本がだんだん追い詰められていく、私はそういうふうなものを非常に感ずるわけです。たとえば綿花作付制限綿花となれば国民の衣料に直結するわけですけれども、この綿花でも非常に値上がりの状況が来ておるということを聞くわけなので、そういう点から見ると、私はいつも主張しているのですが、やはり日本日本としての食糧政策というものを、外国食糧に頼らない食糧政策というものをもっと鮮明に打ち出して国民にも安心を与え、農民にも生産者としての意欲を盛り立てるような、そういうことをしてないと、これは日本の一億一千万の国民が本当に食糧の面からもアメリカに締めつけられてしまう、こういうことを考えるわけなんです。その点について、外務大臣は前に農林大臣もやっておられたし、その点についても識見を持っておられると思うわけなので、私は外務大臣に、アメリカ食糧政策によるわが国への影響というものを考えて、これは外交上どういうふうな見解を持っておられるか、その点を承っておきたいと思います。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ作付制限政策でこれから日本に対してどういう影響が出てくるかというのは、今後の推移を見なければならぬと思いますが、しかし日本アメリカから膨大な食糧輸入をいたしておるわけでございます。そういう意味においてはわが国としても食糧政策立場からこれを十分注意をして見ていかなければならぬと思っておりますが、それじゃいま直ちに何か影響が出てくるとは私は思っておりませんし、やはりアメリカ食糧が非常に余ってきたというところに作付制限というものを進めざるを得ないということもあると思います。また価格問題等もあると思いますが、今後わが国としてもそうしたアメリカ食糧作付制限政策状況等を踏まえながら、わが国としての食糧自給体制というものを確立していくためにいろいろな角度から検討は進めてまいらなければならぬ、そういうことであろうというふうに判断をいたしております。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 さらに、牛肉、オレンジの自由化の要求というのが非常に強いわけですけれども、特に牛肉の場合なんかになりますと、牛は一年たたぬと生育しないわけですから、それで酪農家としては自由化問題に非常に神経をとがらして、いま子牛を飼って育てておいて、これが成牛になって売り渡しするときに自由化で国内の牛の値段が非常に安値になりはしないか。これは牛を飼うていいものだろうかどうだろうかという不安を非常に持っておるわけですが、私は、酪農農民に対する生産意欲というものを失望させないためにも、一定の展望を与えた農林省としての方針をこういう畜産農家に示すべきだと思うわけですが、それは出しておるんですか。
  16. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  私ども指摘の点はかねてから痛感しておりまして、昨年の夏に私どもの方で、総理の諮問機関でございます農政審議会というのがございますけれども農政審議会において種々御議論いただいた結果、農産物別に需要と生産に関する長期展望を明らかにしておりまして、農政審議会として公表し、政府にそれを答申してございます。また私どもは、それに基づいて自給力向上基本とした農政展開すべく基本方針を定めておるところでございます。農林水産省といたしましては、こうした農政審議会答申等に基づきまして農政展開していくということで決意を固めているところでございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、日本農民あるいは畜産農家果樹生産農民に対する政府展望というもの、安心感を与える展望というものが欠如しておるということを改めて指摘をして、農林省関係質問は何らかの機会に譲りたいと思います。どうも御苦労でした。  そこで、私は外務大臣にお尋ねしたいのですが、あなたも外務大臣になられたことについては、意欲を持って日本外交に取り組んでおられるということはよく承知をしておるわけですけれども安倍外交基本方針といいますか、それはこの間私がここで質問をした、いわゆる俗に言う西側一員としての日本位置づけの中に外交展開をしていこう、こういうことですか、要約をすれば。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん西側一員といいますか、自由国間の一員であるという基本認識の上に立って、日本外交はこれまでもそうでありましたように今後とも特に日米関係を重んずる、いわゆる日米外交というのが日本外交基軸でなければならぬと思うわけです。もう一つは、私は、特にこれからの外交を進めていく上において大事なのはアジア外交であろうと思います。やはりアジア一員であるという自覚に立った上での外交展開をしていく。日本アジアの一国でありますし、アジアの安定あるいは繁栄なくして日本存在というものもあり得ないわけですから、こうしたアジアというものを踏まえた外交展開を積極的にやっていきたいというのが私の考えであります。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、アジア外交というものを積極的にやっていきたい、こういう大臣方針というもの、これはいいことだと思うわけですが、具体的にどうするか、こういうことになりますと、なかなか、言葉では言っても、具体的にそれではアジア外交をどういうふうに展開していくかということになりますと、それが何か明示されなければならない。たとえば朝鮮民主主義人民共和国との関係においても、大臣はこの間積極的な文化経済政治も含めての交流を深めて築き上げていきたい、こういうふうに言われたわけですけれども、それではどういう手だてを、大臣に就任されてもう相当な月数も経過したわけですが、たとえば朝鮮民主主義人民共和国との関係は具体的にはどういうことをやっていくのか。いま行き詰まっていわば何にもなくなっている漁業協定なんかの問題にしても、これはもう大臣のその意思なら、やはりそれをもとへ戻すというような努力というものをしなければならぬと思うのですが、言うはやすし行うはかたしであっては困るわけなので、その点について、たとえば朝鮮民主主義人民共和国との関係ではどういうふうに具体的に進めようとされておるのか、まずそのことを。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 朝鮮半島におきましては、御承知のように南北で緊張関係があるわけであります。この緊張関係が続くということは、やはりアジアに不安定な要素をもたらすわけでありますから、この緊張関係緩和をしていくということが最も必要である。そのためには北朝鮮韓国との間の対話を進めるということが基軸でありますが、日本としてはやはり環境づくりをするということに対して何らかの外交的な努力といいますか、方向をわれわれは打ち出してまいりたい。その一環として、先ほどお話がございました北朝鮮との間の関係、これは国交がないわけでありますから、政府がみずから動くということは困難でありますが、しかし民間の間で、経済にしてもあるいは文化にしても漁業にいたしましても人的交流にしても、関係存在をいたしております。その関係をより発展をせしめる。これは民間が中心でありますが、政府としてもそういう面で、直接タッチはできないとしても何らかの形で慫慂をしていくということは、私は必要なことであろうと思うわけでございますし、同時にまた、韓国との密接な関連の上に立った朝鮮半島のいわゆる緊張緩和のための何らかの具体的な努力日本が行う道があればこれを求めてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。同時にまた、中国とはこれは国交正常化以来十一年にもなりまして、非常にいい関係であります。これは体制は違いますが、やはり日中関係をより発展をせしめるためのこれからの具体的な努力ということも必要であろうと思いますし、東南アジアにおける、特にカンボジア問題なんかも、いま東南アジア情勢を非常に不安にいたしております。そしてカンボジア問題の早期解決に向かって、友好国との間の関係を緊密に持ちながら、これまた日本ができるだけのことをしていくということもこれからの外交として必要じゃないだろうか、こういうふうに考えております。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 日本中国との友好条約ができて、それで中国とはきわめて良好なといいますか友好関係というものが築かれていっておる中で、きのう日中協会宋大使が、日本台湾との交流の増大に対して警告と思われるような発言をされたということが新聞で大きく取り上げられておるわけなんですが、私は、やはり一つ中国一つ台湾という考え方というものが日本政治家の中に、そうしてまた政府・与党の中に、そういうのを非常に持っていないか。外務大臣も、ややもすればそういうふうなことに傾いておるようななにがありはしないか。そういう懸念を私は持つものでありますが、こういう宋大使発言に見られるような御心配はないのかどうか、その点ひとつ大臣から……。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 台湾の問題につきましては、これはもう御承知のとおり日中の共同声明あるいはまた日中平和友好条約によりまして、その位置づけというものははっきりいたしておるわけでございます。したがって、われわれはそうした条約あるいは共同声明趣旨に従って日中関係を進め、また台湾問題に対処をいたしておるわけでありますが、台湾自体台湾として存在をいたしておることは、これは厳然たる事実でありまして、われわれはそういう意味において、もちろん共同声明あるいは日中平和友好条約趣旨があるわけでございますから、これを踏まえながら民間交流というものは事実上行われておるわけでございます。しかしこれに対して、あくまでも節度をもってこれに対処しておるというのが、わが国基本的な考え方であります。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 いま大臣発言の中で、私、非常に気になるわけですが、台湾現実存在をしておるということは、中国台湾と二つが存在しておるという認識大臣は持っておるのですか。台湾はあくまでも中国の一部であって、そこで台湾というものがいま大臣の言われるような独立した台湾として存在をしておる、こういうふうな解釈は成り立たぬと私は思うわけですけれども、その辺もう一回明確に聞かしていただきたい。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもうきわめてはっきりいたしております。日中共同声明あるいはまた日中平和友好条約によって、日本中国との間における台湾に対する枠組みといいますか位置づけというものは明快になっておると私は存じております。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 明快になっておるということは、つまり台湾中国の一部であって、いわゆる台湾というものが現実——この台湾という地域はありますよ。地域があるということはあっても、台湾というものは中国の一部であるということの認識は、これは日中友好条約とかなんとかということを言わぬでも、大臣としてはそれはきちっとお持ちになっておるのですか。
  26. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 ちょっと申しわけございませんが、日中共同声明の第三項にこれは明確でございまして、先ほど大臣が何度も引用いたしました日中共同声明でございますが、「日本国政府は、」「台湾中華人民共和国領土の不可分の一部である」という「この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重」する。さらに「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」ということで、台湾問題に関する中国立場を十分に理解し尊重するというのが、一貫した日本政府考え方でございます。以上のようなことを大臣意味されて発言された、こういうことだろうと存じます。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま局長が答弁されましたように、これは条約とか宣言において台湾位置づけというものは明快になっておる、こういうふうに存じております。  ただ、台湾という地域存在しておることは、これはもう御承知のとおりであります。また、日本台湾との間には民間経済交流あるいは人的交流、そういったものが現実存在しておることも、これはそのとおりであると私は存じております。
  28. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、そういうふうな台湾という地域存在をしておることは事実であるし、それについての民間交流というものが行われておるということも事実である、しかし、政府がこれに対して手をかすというようなことがある場合には、これは大変な問題になると思うわけなので、そういう点については、そういう事実関係は全くない、あくまでも民間ベースの台湾とのつき合いをしておるだろう、政府としてはそれくらいしか認識を持つべきでない、こう思うわけですけれども、その点どうでしょう。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、基本的にはそういう考え方ですね。先ほどから申し上げましたように、やはり条約共同声明存在している以上は、日本政府としても節度を持ってこれに対応していかなければならぬことは当然のことでありますし、またそうしておるということであります。
  30. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、中国朝鮮民主主義人民共和国との関係というものは非常に緊密な間柄にあることは御承知のとおりであります。そうすると、日本中国と非常に仲がいい。今度は中国の仲のいい朝鮮と日本とが仲よくせずに、反対に全然国交もない韓国に莫大な日本経済援助その他の関係を強めていくということは、やはりアジア外交を混乱に陥れている、こういうふうに私は言わざるを得ないわけです。そういう混乱の中に私は今度の日ソの事務協議というものが、いま行われている事務協議というものはそういう混乱の中から依然として出てきておるではないか、こういうふうに思うわけですが、やはり大臣アジア外交というものを重視するなら、アジア外交というのはそういう中国あるいは朝鮮あるいはソ連、東南アジア諸国、そういう関係というものを包括をしたことだと思うわけなので、そういう点で朝鮮民主主義人民共和国との間には一歩踏み込んだ外交政策というものを安倍外務大臣として展開をすることを私は希望するのですけれども、もう踏み込んでこういうことをやってみようというようなものはないのですか。
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本韓国との間は御承知のような友好的な関係にあるわけであります。われわれはこの友好関係というものはこれを進めていかなければならぬ。そうした上に立って、やはり問題は、朝鮮半島に緊張があるということでございます。これがやはり極東の平和に非常な不安をもたらしておるわけでございますので、この緊張関係を何とか緩和していくということが必要であろうと思うわけで、それにはやはり何としても根本は、同じ民族である韓国とそしてまた北朝鮮との間の対話、これはこれまでも行われたわけでございますが、この対話を何とか実現をして、これが進めていかれることを私どもは期待をしております。しかし、これは韓国北朝鮮の問題でございます。しかし同時に、日本としてはそうした対話を期待しながら、何らかの緊張緩和が行われるような方向というものがあるならば、やはりこれに対してお手伝いをする、環境をよくするための努力をするということも必要じゃないか、こういうふうに思っておりまして、いまいろいろ情勢等の判断もいたしております。分析等もいたしておりますが、私は、全体的には、やはり大きな流れというものは、緊張緩和の方向へ動く可能性というものは十分あるのではないだろうかというふうな認識を持っております。  それでは何を具体的にやるかということになりますと、いまそれじゃすぐ具体的に日本がどういうことで積極的な外交を進めるという、具体的な問題としてはいまここで申し上げる段階になっておらぬわけでございますが、しかし何かそういう方向で努力をしたいということで、いま模索しておるというのが今日の状況でございます。
  32. 井上泉

    井上(泉)委員 私はたとえば朝鮮との関係でも、外務大臣として行けなくとも、外務大臣民間人を委嘱して、そこで民間人に向こうの状況がどうであるか、向こうとの対話をするためにはどうかというようなことで、いわば私的なものを派遣、私的な形においてこの共和国の方へ派遣して、そして日朝漁業協定がいま全然だめになっておる状態の中でどうするのか、これを何とかもとに戻したい、こういうふうな話し合いをする道はあると思うわけです。そういう私的な特使という名目はどうか。私的なものを派遣する——派遣をするということはすでに私的ではなくなるかもしれぬけれども、いわゆる、安倍外務大臣の意を受けて、だれか民間人を共和国の方へ派遣をするとかいうような構想は考えられないことですか。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの日本北朝鮮との関係国交がないわけでありますから、外務大臣としての私が北朝鮮に対して直接的にも間接的にも働きかけるということは困難であります。しかし御承知のように、議員間の交流というのもあるわけでございますし、あるいはまた経済界の交流というのもあるわけでございますから、そうした面を通じまして、私どもは、北朝鮮考え方あるいはまた緊張緩和に対する意思といったようなものを把握するために努力はいたしておるわけであります。
  34. 井上泉

    井上(泉)委員 私は日本の歴代の外交方針というものが変わってきて、最近ほど、いわゆる自由陣営の一員というような形で固まってきておるということを非常に残念に思うわけです。少なくともあなたが所属する、いわゆる俗に世間で言う福田派の福田さんが全方位外交というのを強調されたわけですが、やはりもうそこらあたりで日本外交は全方位外交に戻ってやるべきだというものを私は国民に示してもらいたい、かように思うわけです。そういうことをするから日本に対してソ連が非常に、最近にぎわしておりますSS20の問題にしても、日本を核攻撃の対象にするというような考え方の上に立ってソ連と交渉すれば、やはりこれは話し合いはつくわけはないわけです。  そこで、私どもきのうも北山先輩とお話をしたが、かつて教え子を戦場に送るなというようなことを、亡くなった鈴木元委員長が言うた有名な言葉があるわけですけれども、ところがもうその戦場はこれから外国じゃないのです。日本の国へ爆弾をやる。鉄砲を提げて戦争をするような時代じゃないですから、核攻撃を受ける危険性を持つような要素というものはやはり外交関係で取り除いてやらなければいかぬと思うのです。取り除く努力をしてこそ初めて日本の自主独立、平和な日本という国の姿というものができて、そして日本の国はどこの国からも侵略を受けるとか、いわゆる攻撃を受けるとかいうようなことはなくなるわけであります。  いま日本アメリカの盾になって、日本列島をだれのために不沈空母にするのか。日本列島を不沈空母にして、今度は日本が核攻撃を受けたときにはどうなるか。土地は残っても人間は亡くなってしまうわけです。そういう点で、私はいまの日ソ協議というものが非常に重要性を持っておると思うわけですが、いわばこれによって何を日本が求めようとしておるのか。その辺について御説明を承りたいと思います。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本外交の根本は、やはりあくまでも平和外交でなければならぬと思いますし、日米関係基軸ではありますが、体制の違う国といえども、これはやはり積極的に友好関係を樹立していくというのが日本外交の平和外交基本である。そういう意味においては全方位外交と私は言えると思います。等距離外交とは言えないとしても、全方位外交という意味においては、私もこれは積極的に進めるべきである。  ですから、ソ連との間には領土問題その他大きな対立があるわけでありますが、しかしこれでもってソ連との関係を対決の状況に持っていってはならないと思うわけでありまして、そうした問題は問題点として論議は大いに尽くさなければなりませんが、同時に並行して、やはり対話をしながらお互いに互恵の立場に立ってこの交流を深めていくということが大事であろうと思います。  したがって、今回日ソ間の高級事務レベル会談が行われておりまして、おとといからいろいろとカピッツァ次官との間のやりとりが行われております。日本とソ連との間には、ほかの国以上に相当対立点が多いわけで、国際情勢認識あるいはアジア認識、二国間の問題につきましても平行線の議論が行われておりまして、きょうはいよいよ二国間の問題に入るわけでありますが、しかしそうした平行線はたどりながらも、やはりここでお互いの主張をとにかく率直に開陳をして議論を闘わす、そういう中で何か一つの実質的なこれからの対話の方向も開けてくるのではないか、私はそういうふうに思いますし、私は今回の事務レベル会談というのは、こうした日ソ関係の中において開かれたということは非常に有意義である、こういうふうに考えておるわけです。
  36. 井上泉

    井上(泉)委員 いまアジア地域、それから中東、イラン・イラクの紛争、戦争、これがもう二年も経過して激しく戦闘が繰り返されておる、あるいはカンボジアにおけるベトナム軍との戦い、そうした中で、日本外交が余りにもアメリカに依存、アメリカの言うことなら何でも聞くというような、そういうアメリカ支配されるような日本外交ではなしに、やはり日本外交日本の自主外交の姿勢というものを持って平和外交展開していく、そこに私はいわゆる核が配置をされておるとか核攻撃を受けるとかそういうふうな心配はいささかないと思うわけでありますので、ひとつその平和外交に徹した外交方針というものをこの安倍外相では展開してもらいたい、このことを強く要望するものでありますが、それについての御意見を聞いて私の質問を終わります。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、やはり平和外交に徹するというのがもう日本外交のプリンシプルであろうと思います。そのためにこれからも、日米はもとよりでございますが、世界の各国とも積極的な友好関係を樹立をしてまいりたい、こういうふうに思います。しかし、日米が基軸と言いながら、いまおっしゃるように、アメリカ支配される日本外交であってはならないことは当然であるわけで、同盟関係にはありますが、日本日本なりのやはり自主的な外交の取り組み方というのは当然あってしかるべきでありますし、私も、独立国家であり、主権を持っておる日本外交の責任者としてもそういうことは十分踏まえながら今後とも取り組んでまいる考えであります。
  38. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、土井たか子君。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 いまアメリカにおられる金大中氏に対し、日本側の政府がどういう対応をされておるかというのをまず最初にお伺いしたいと思うのですが、いま、現段階はどういう対応をされていらっしゃいますか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府としましては、金大中氏がアメリカに行かれた、そういう点を踏まえまして、いわゆる金大中氏の日本における事件について捜査がいま続行しておるわけでございますから、捜査当局としてもこれに関心を持ったわけでございます。  そこで、外務省を通じましてこの金大中氏から事情を聴取したいというふうな話がありまして、これは当然のことであるということで、外務省としてはアメリカの国務省とも話し合いをいたしまして、何としても、アメリカにおられるわけでありますから、アメリカの国務省の努力によって事情聴取ができるような措置を講じてほしいということを申し入れました。国務省もこれを了承いたしまして、国務省がアメリカ政府として金大中氏にその意向を確かめるということをいたしたわけでありますが、金大中氏から、そうした日本の申し出があるならば、これは文書にしてほしいということになっております。したがって、文書でもって正式にこの事情聴取を求めるということについての金大中氏の了解を得るということで、いまアメリカ政府が金大中氏に対してそういう努力をやっておるという段階までが今日の状況でございます。  それ以上の内容につきまして、もっと具体的なことについては政府委員からも答弁をさせたいと思います。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いま日本側としては文書を作成されていると言われましたが、それはアメリカ側の日本の依頼を受けた当局が金大中氏に接触をした結果、それがアメリカ側から日本に伝えられてきて、日本としてはそういう作業をいまやっていらっしゃる、こういう順序ですか。
  42. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 大臣が先ほど御答弁申し上げました内容を、もう一度私の言葉で僣越でございますが説明いたしますと、大臣のおっしゃいました意味は、日本外務省が警察の要望、つまり本件被害者である金大中さんから直接事情聴取をすることが捜査の常道であるということで、そこで警察庁の要請を受けまして、外務省がアメリカ国務省に日本警察庁の要請を取り次いだということでございまして、それを受けまして国務省がアメリカの司法当局に対しまして、日本政府の方で金大中さんから事情聴取をしたいと言っておるから、そこで金大中さんに直接接触して意向を聞いてほしいということを要請したわけでございます。  それに対しまして、先ほど大臣が御指摘のとおりに、金大中さんの側で、その日本政府の事情聴取をしたいという意向があるならば、それを文書で出してほしいというのが金大中さんの答えでございます。  そこで、アメリカ政府当局におきまして、日本政府は金大中さんから直接事情聴取を行いたいという希望を持っているが、これを金大中さん、あなたは日本政府の要請に応じて、要望に応じて事情聴取に応じますか、応じませんかということを文書でアメリカのしかるべき当局が金大中さんに直接照会中であるというのが現状でございます。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、事情聴取に応じられますか、応じられませんかという、イエス・オア・ノーの金大中氏からの返答を得るための文書ということに尽きるわけですね、いまおっしゃった文書の中身は。
  44. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 そのとおりでございます。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、これは手続の上からいいますと、アメリカ当局に言われて、そしていま、そういう金大中氏に対して、日本側がまだイエスと言っていただけるかノーと言っていただけるか、それをはっきり求めるための文書を作成中と言われて、ずいぶん時間かかっていますね。どんどん時間稼ぎをやっていらっしゃるようなかっこうに見えてならないのですが、それはどういうわけでございますか。
  46. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 この問題につきましては、先生、私どもよりもバックグラウンドをはるかによく御存じでございますから御理解をいただいていると思いますが、いわゆる金大中さんの事件に絡まるところのさまざまなインプリケーションと申しますか、あるいはこれは十年たっておるわけでございますが、いろいろなバックグラウンドその他を考えましてアメリカ政府といたしましても慎重に取り扱いたいということで、国務省のみならず、先ほど申し上げましたとおりにアメリカの司法当局も絡まっておりますし、そこで手続その他に時間を要しているために今日までに至ったというように理解をいたしております。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 少なくともこれは人権を無視することは許されないという基本姿勢というのがアメリカ側にはあるに違いないと私は思うんです。だから、そういうことからすれば、国交正常化と言いつつ、その国交に向けて非常に問われている一人の人の立場、人権を無視するというあり方は許されないということが配慮の中に非常にあるのじゃないかなと私は思うのですよ。したがいまして、いまの橋本局長の御答弁というのは非常に苦しいように私には聞こえてくるわけでありますけれども。これはこれからの推移というのが非常に大事な一つの段階になろうかと思いますが、それじゃいつごろ日本はその文書を向こうに提出なさる御予定でありますか。  そして、感触としては、いままでのところどういうふうに思っていらっしゃいますか。向こうは事情聴取受けましょうというように言われるに違いないと思っていらっしゃいますか、どうですか。
  48. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 私の先ほどの御答弁が、私の日本語が適切でないためにどうも先生に誤解を与えたようで恐縮でございますが、その文書というのは、つまり日本の捜査当局による事情聴取を受けますか、受けませんかと金大中さんに照会する文書というのは日本政府がつくるのではございませんで、これはアメリカの当局がつくって金大中さんに出すということでございます。そして、これは先のことで、しかも仮定の問題で、どういう返事が来るか必ずしも自信はございませんが、いまここであえて私が推測を加えますと、その文書に対する金大中さんの返事はイエスの場合、はっきりノー、応じないというのと、それからもう一つ、中間と申しますか、条件づきで事情聴取に応じてもよろしいというこの三とおりがあろうかと存じます。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 その三とおりのうちで、一番可能性の強いのは何だとお思いですか。
  50. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 大変申しわけないんですけれども、私、実は金大中さんと一面識もございませんし、どういう返事をされるか、私は正直申しまして全く自信がございません。ただ、せっかくのお尋ねでございますので、これは全くの仮定の問題としていまおまえがどう考えているかということでございますれば、やはり最後に申し上げましたこれこれの条件が満たされれば事情聴取に応じてもいいということではなかろうかと推測される情報がございます。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 いわく非常に大事なことですから、それ以上は承るとかえってこれからいろいろ事情聴取をなさることに対しても、肝心かなめの金大中氏に対しても、これは日本政府の配慮がいろいろ問われる問題になってこようかと思いますから……。  さてそれで、いまこの委員会で、金大中氏の例のアメリカに行かれるまでのいきさつで、死刑判決をされて国際世論、特に日本国民アメリカ国民の世論などが非常に大きな意味を持って減刑というかっこうになるまでのいきさつとしてあったのは、日本政府当局としてやはり政治決着を韓国との間で確認をして今日に至っているという、裁判の過程における政治決着に裁判自身が、判決自身が違反しているか違反していないかという問題だと思うんです。当委員会では何回かこれを取り上げているのです。そして、判決文そのものに対しての要求を具体的にしているだけでも五十五年八月十九日、十一月五日、五十六年二月二十日、四月十日、六月三日、こういう審議が繰り返し繰り返し行われているのです。  お伺いしますが、外務省とされては判決文をいただきたいと言ってずいぶん韓国側に要求をされたに違いないのです、伊東外務大臣の御答弁もずっとございますから。そのうち入手なすったかどうか、それはいかがでございますか。
  52. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 判決文の全文を入手したいという要請は確かに先生指摘のとおり韓国政府に対していたしました。それに対する韓国側のお答えは先生承知のとおりに、この種の裁判については判決文全文は公表しないというたてまえを崩すわけにはいかぬということでございまして、判決要旨はもらっておりますが、先生指摘の判決文全文については現在までのところ入手するに至っておりません。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 それではいままで私が質問をいたしてまいりました中で、四月十日にお互い判決文について要求をされて、向こうはそう言われる、外務省としては質問を受けてそういう答えをここでされる、これはらちが明かないのです。判決理由要旨なるものについても、中身は見れば見るほどあやふやであって、どうも理解に苦しむような部面もある。判決文そのものがはっきりなければ具体的に政治決着に違反しているか違反していないかを言うことができないということで、判決過程の上で日本での言動ということが問題にされてきた節は、外務大臣としてはどういう措置をおとりになりますかと私が質問したのに対して、「裁判の判決でそれが恐らくいろいろ出てくるわけでございます。判決をする場合には、こういう証拠、こういう証拠に基づいてこういう判決をしたということが出てくるわけなんでございまして、その段階で日本における言動というものがいろいろ問題になるということであれば、これは先生のおっしゃるようなことに振り返ってくるという問題が出てくることは確かでございます。」というふうに大臣もお答えになっていらっしゃいます。もう申し上げるまでもなく、判決理由要旨は勝手につくられるわけでありまして、判決文そのものは動かぬものなんです。裁判においては何が問題かといったら、判決主文とそれに至る理由なんです。判決理由要旨は裁判所がつくったのではないでしょう。金大中氏は裁判所において裁判を受けられている、したがいまして、そこでどういう判決があったかは判決文を見なければわからない、これはいま申し上げるとおりであって言うまでもない話なんです。  さて、私は五十六年の四月十日に市民グループの方が入手されました判決文を提示いたしました。そして質問をしたところが、韓国側にこういう判決文であるかどうかということを問いただすということが答弁として出ました。そして、その後は、さらに問いただしたところが、それに対して、結論から言うと、イエスでもなければノーでもない、ノーと言われないと、これは消極的でありますけれどもイエスというふうにも考えられるというふうな、疑惑に満ちた問題を今日まで引きずりながら持ってきたのです。先日、ここに私が持ってまいりましたのは、今度はとうとう被告人であり被害者でおありになる御当人ですよ、金大中氏自身が市民グループの方々が入手された判決文をアメリカで精査をされた結果、事実これは本物の判決文に間違いないというサインをここにされたのです。これをまず外務大臣にお見せしたいと思います。委員長、よろしゅうございますか。
  54. 竹内黎一

    竹内委員長 どうぞ。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 その表紙には、ハングル語でございますから日本語に訳しますと、「この判決文は、真本であることを確認します 一九八三年二月十六日 金大中」と書いてあってサインがしてあります。それから、あとお二方の名前がそこにあることを少々説明を申し上げなければなりません。お一人は韓完相、ハン・ウォンサン氏であります。それからまた、この方は、御承知だと思いますが、元ソウル大学校の教授であります。それからもう一人の方は、李信範、イ・シンボン、学生でございます。ともに「一九八三年三月三日ワシントンにて」こう書いてありますが、さてもう一つここで申し上げなければならないのは、この判決文を真本であるということを確認されて送ってこられた封筒がここにあるのですが、この送ってこられた先である牧師の方に手紙が入っておりまして、この中に「私と同じ事件に連累された韓完相元ソウル大学校教授と学生の李信範氏のサインを貰って今日お送りします。」と、こうありまして、被告人たちが自分に下された判決文の真実を証明しなければならないということは何としても情けないということが書いてあります。こんなことは本来常識では考えられないですね。  大臣、これをお聞きになって、またそれをごらんになって、まず御感想を承りたいと思います。どうお思いになりますか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま判決文なるものを土井委員から受け取ったわけでありますが、政府としましてはやはり韓国政府を相手にするわけでありまして、韓国政府からの話は、御承知のようにこの判決文を出す考えはない、そして民間団体が入手された判決文についてはノーコメントであるというふうな趣旨韓国政府の説明があったように承っております。したがって、わが政府としては韓国政府からは判決文を受け取ってないわけでございますから、したがっていまここでこれが本当であるとかうそであるとかそういうことを言える立場にありませんし、われわれとしては日韓の政府間の関係から見まして、この問題については韓国政府考え方といいますか、その説明というものに従ってこれに対処せざるを得ないというふうに考えています。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、そこで私は先ほどアメリカ側の人権に対する配慮があっていろいろと時間がかかってきているのではなかろうかということを言った意味がございます。確かに日韓間の正常化は大事です。そうして国交の上で摩擦なくやっていくということは大事です。しかし、その点はだれがどう考えても、両国間の国民の人権を尊重するということを無視されては困るのです。その上に立っての国交正常化であり、やはり国交のより緊密な相互間の交流というものができるというふうに私は思っております。  それで、韓国政府立場立場としておありになるでしょう。しかし、もう言うまでもなく、金大中氏は日本において拉致されて、それから事件が始まったのですよ。その瞬間に事件になったのだ。そういういきさつからすると、金大中氏自身の人権を無視しつつ日韓間の正常化や国交というものを考えられたのでは、これは困ると言わざるを得ない。  こういうことになりましたら、一度韓国側に判決文並びに判決について事情を改めて尋ねてみる、そうして向こうに照会する、こういうことをやっていただけませんか。これは大事だと思いますよ。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も人権問題は非常に大事だと思いますし、また金大中氏自身のこれまでの問題については、私の立場から言いましてもお気の毒だというふうに考えるわけであります。同時にまた、今日アメリカで自由な身になられているということは、大変結構なことであるというふうに考えております。同時にまた、日本としては、外交決着はつきましたけれども、捜査は続けておるわけでございますから、この捜査は引き続いて行わるべきものである、こういうふうに存ずるわけですが、しかし判決文については、これはこれまで日本政府韓国政府に照介をいたしたところ、韓国側は判決文を日本政府に手渡す考えはないということをはっきり言っておりますので、ここで改めて判決文を求めるということは困難であると思うし、私としてはこれ以上判決文の手渡しを再度求めるという考えは持っておらないわけであります。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 橋本局長、いま大臣はそういうことをおっしゃいますけれども、これはしかし、後々この問題は尾を引きますよ。いまのままで韓国側にそれは要求するという気持はさらさらないと大臣がおっしゃって、そのままでそれじゃおさまりがつくかというと、恐らくそうはいかないです。そしてアメリカで事情聴取をされる節も、恐らくは大変これはひっかかってくるでしょう。そういうことの前後左右をお考えになって、やはりこれに対してはいまの態度のままで押し通すということであってはならないなと私は思います。局長、どういうふうにお考えですか。
  60. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 外務大臣と同じ考えでございます。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 これはしかし、どうも釈然としませんね。非常にこれは問題が後に残ります。  こういうことを後また継続して私は質問を続けていきたいと思っておりますから、きょうは、韓国側に判決文そのものについて日本に出してもらいたいという照会はなさらないということでありますけれども、しかし金大中氏自身がこの判決文は本物であるということをみずから中身を精査されてそこへ出していらっしゃるわけですから、これについての対応はそれじゃどうなさいますか。こういうことを最後に聞いて終わります。局長、いかがです。
  62. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 金大中さんが、恐らく先生がただいま外務大臣に御提示されました署名、御自分で御署名をされているということの重みは私もよくわかりますし、金大中さんとの関係に関する限りは、あれは恐らく本物だろうと私も思います。ただ、そのことと、今度は日本政府韓国政府との関係というのは、これはまた別の次元の問題であろうかと存じますので、両方よく考えまして、何とか善処したいと考えております。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 非常に苦しい御答弁ですが、きょうは時間がこれで来ていますから、また継続して質問することにいたします。ありがとうございました。
  64. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、玉城栄一君。
  65. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初に大臣にお伺いしておきたいのですが、けさの毎日新聞に大きく「KGB工作レフチェンコ詳細発言」というように報道されておるわけでありますが、この内容は、日本の各界にわたっていわゆるソ連の諜報あるいは謀略活動に協力したというような内容の報道になっておるわけであります。もちろん事柄の性質上、そういう関係する方々について実名とかということについては、非常に慎重の上にも慎重な配慮が当然されるべきだと思うのですが、しかしやはり、これは国会にとっても非常に重要な問題でもあるわけですから、真相というものがどうなっているのかということは、当然明らかにされていかなくてはならないと思うわけですね。  それで、その記事の内容について大臣はどのように考えていらっしゃるのか。それとも外務省としても積極的に実態の調査をされるというようなことなのか、その辺はいかがでしょうか。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 レフチェンコ氏がかつて日本におけるいわゆるKGBの一員として政治工作をしておったということは、これは明らかであろうと思います。そしてアメリカに亡命をして、いろいろと証言が出ておる。その証言の内容が報道されておるわけでございますが、このレフチェンコ氏の証言というものが果たして事実であるかどうかということは、日本にとっても大変重要な問題であろうと私は思います。したがって、これらに関しましては、この内容についての調査を十分慎重に行って、真偽のほどを明らかにしていかなければならない、こういうふうに考えます。
  67. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この記事にもう一つ大きな問題の一つとして、外務省の職員の方が関係していた、在外公館から来る秘密公電が流れていたというような、ちょっと私たちに信じられないような報道もあるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このレフチェンコ氏が述べた内容について、外務省の職員が関与しているということがございます。これは実は警察当局がレフチェンコ氏から聞きました中に、そういう一端があったことを私も承知をいたしておるわけでございますが、しかし、具体的な内容について聞いてみますと、レフチェンコ自体が接触をした職員という形ではなくて、レフチェンコ氏が聞いた中身の一つである、いわば伝聞ですね。伝聞に基づいてレフチェンコが述べておるわけでございます。したがって、この伝聞がどういうものであるかどうか。これが事実なら、これは私は非常に重要な問題であるというふうに感じざるを得ません。したがって、私も警察当局から四月の初めだったと思いますが、そのことを聞きまして以来、外務省当局にその調査を命じまして、目下これについて調査を進めておるというのが今日の実情であります。
  69. 玉城栄一

    ○玉城委員 申し上げるまでもなく、国家の重要機密が他国に、しかも関係するところから流れていたということになりますと、これは非常に重要な問題でありますので、適切な措置を要望しておきます。  それから今度の質問は、この間のソ連のグロムイコ外相が、いわゆるSS20極東配備理由ですね、日本及び日本海域周辺に核兵器が散在している、そもそも沖縄には巨大な核基地があるんだということを内外記者会見の場でしょうか、発言しているわけですが、これは地元沖縄県民にとりましてはきわめて大きな重大問題になるわけですね。その辺、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、先般のグロムイコ外相の発言、いわゆる沖縄に巨大な核兵器がある、こういう発言は実に言語道断な発言じゃないかと思っております。まさに事実を歪曲したといいますか、事実無根の発言である。  沖縄につきましては、御承知のように、佐藤内閣のときアメリカからの返還が決まったわけでありますが、その際、いわゆる核抜きかあるいは核つきかということで議論が沸騰いたしたことは、御案内のとおりであります。その結果、核抜きということで沖縄は返還をされました。同時にまた三原則、いわゆる非核三原則というものを日本は国是といたしましてこれを実行をいたしておるわけでございます。また、日米間については、その点について何回か確認をいたしておるわけでございます。したがって、沖縄に核基地がないということはきわめて明確であります。その辺はソ連も十分知っておる、その事実というものはグロムイコさんも知っているんじゃないかと私は思うわけでございます。それがあえてああした発言になったのは、何か国内の世論の分裂といいますかあるいは日米関係の対立といいますか、そういうものをむしろねらった政略的な意図があるのではないかとすら思わざるを得ないわけで、きわめて遺憾であります。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、沖縄に核がないということはきわめて明確である、それは日米間でも確認済みである、そのことについてはソ連も知っているという大臣のお話でありますが、地元の人間にとっては、政府は非核三原則によってこれまでこういう意味のことは何回も繰り返して言明しておられたし、それを信頼しなさいというようなことなんですが、ソビエトは軍事衛星で世界の隅々まで調査しているわけですね。そういう国がわざわざ発言する。で、政府自身は沖縄に核があるかどうかということを直接調べたこともない。いわゆる日米間で事前協議云々で、あるいは非核三原則ということで、ないのだ。実際にはどういうふうに政府はないのだということを調べたのかどうかですね。  そこで、大臣にお伺いしておきたいのは、これは復帰前に沖縄で、たとえば知花弾薬庫とかあるいは辺野古弾薬庫とか、ここに核があったと言われていますし、復帰後それがどうなっておるのかということで、実は私たちもいわゆるアンケート調査をやると、大体七〇%くらいは沖縄に核はあるんじゃないかというような回答もあるわけですね。ですから、この際大臣とされて、沖縄に本当にそういうものがあるのかないのかということを、何らかの形で一回調査をされるというふうにしないと説得力がないわけですね。いかがでしょうか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もいまおっしゃるように、少なくともああした偵察衛星まで持っておるソ連の責任ある立場のグロムイコ外相が沖縄に巨大な核基地があると言った以上は、何らかの理由があるのだろう、あるいはそれはもう本当じゃないかという疑惑が出てくることは、これは当然だと思うわけであります。またそこをねらってのグロムイコ外相の発言ではないか。いわゆる日本の世論の混乱といいますか、そういうものをねらっての発言ではないかとすら思わざるを得ないわけであります。  沖縄に核基地がないということは、私は沖縄の方々もみんな知っておられるんじゃないかと思っておるわけでありまして、特に三原則という立場で私たちはアメリカ政府との間でも何回か、日本が三原則を遵守している、これに対してアメリカもそれを踏まえて安保条約の運営をしてほしいということは言ってあるわけでありますし、アメリカも安保条約あるいはその関連取り決め、事前協議条項、そういうものは十分誠実に遵守いたしますということを何回か確認をいたしておるわけでございますから、私はいまの日米同盟関係、信頼関係、そして、れっきとしたお互いに守らなければならない日米安保条約がある以上は、そういうことはあり得ないということは日本国民の皆さんにすべて信頼していただいて、私は当然のことであるというふうに考えておるわけであります。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 重ねて、私はソ連の言っていることを信頼しているわけじゃないのです。もちろん政府のおっしゃることを信頼したいわけです。信頼しているつもりですけれども大臣もおっしゃるように向こうの政治的な意図、それをはね返すには、いまおっしゃったような何らかのアクションを伴って、ないんだということをおっしゃっていただかないと非常に説得力がないということなんですね。いかがでしょうか、何らかのアクションを起こすということについて。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これははっきりした事実ですから、それ以上私は説明をする必要はないくらいだと思いますが、カピッツァ外務次官との会談の中でもその問題が出まして、日本政府、外務省の方から強くカピッツァ次官に対して訂正といいますか、間違っておるということを申したわけでありまして、これに対してカピッツァ次官も直接は触れなかったわけであります。しかし、少なくともソ連の核は日本に向けられたものではないというふうなことを言っているわけでございますし、きょうも二国間の問題を引き続いてやっておるわけでございますが、日本の高島大使からもチーホノフ首相に対して厳重に抗議もいたしておるわけでありますし、日本政府としてはあらゆる措置をとっておるわけでございますし、その点については国民の皆さんに信頼をしていただきたい、こういうふうに存じます。
  75. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、今度は別の問題ですが、これは外務省当局の方に伺いたいのですが、今月の四日に、沖縄の読谷村トリイ・ステーション基地内で米兵、いわゆるMPによるピストルの威嚇発射、フェンス外を住民が通っていたことに対する威嚇発射をしたという事件がありましたね。この問題で地元の方では大変抗議世論が大きくなってきているわけですが、この事実の概要について、それから外務省当局としてはどのような措置をとられたのか、お伺いいたします。
  76. 北村汎

    北村(汎)政府委員 お答え申し上げます。  御質問の事件は、四日の深夜、午前二時半ごろであると聞いておりますが、沖縄の在日米軍、これは陸軍でございますが、トリイ通信所のゲートにおいて、そのとき警備に当たっておりました米軍人が付近にいた日本人、これは比嘉義秀さんという方だと聞いております。この方を不審者と思って誰何をした、そうして携行していた拳銃を抜いて空に向けた際に、過って発砲したものであるということを私どもは警察当局から聞いておりまして、事実関係の詳細につきましては、まだ引き続き関係当局で調査をしておるというふうに承知をいたしております。  他方、四月六日に米側当局としましては、警備に当たっておった米軍人が過って拳銃を発射した、その結果、付近の住民に不安を与えたことはきわめて遺憾であるということを言いまして、そうして、関係した米軍人に対してしかるべき措置をとるというプレスリリースを発表いたしております。  事実関係につきましては、まだ捜査当局からその調査の完了ということを聞いておりません。まだ詳細な事実関係は私ども承知していないところがあるかと思いますけれども、しかし、こういう事件が起こりましたことは、私ども外務省としてもまことに遺憾であるというふうに思いまして、四月六日、外務省といたしましても、日米合同委員会のチャンネルを通じまして、遺憾の意を表明するとともに、今後こういう事件の再発防止をするように十分注意を喚起いたした次第でございます。
  77. 玉城栄一

    ○玉城委員 北村さんも同じパターンで、起こったら合同委員会で遺憾の意を表明し、二度とそういう事件が起きないように、そういう繰り返しなんですけれども、こういう事件が出てくるんですよ。それで、私はこれはもう明確に犯罪行為だと思うのです、日本人に対して威嚇ピストルを発射するということは。当然これはわが国の法律によって処罰されるべきものだと思いますが、いかがでしょうか。
  78. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、いま捜査当局が米軍当局と協力をして事実関係をいろいろ調査しておるというふうに聞いております。その事実関係調査を待ちまして、私どもいろいろな判断をしなければならないと考えております。
  79. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのいろいろな判断をされるということは、さっき私が御質問を申し上げたようなことも含めて判断されるということですね。
  80. 北村汎

    北村(汎)政府委員 実際の事実関係がどうであったかということを現在私ども承知いたしておりませんので、いろんな可能性があろうかと思います。もちろんそのいろんな場合によっては先ほど先生がおっしゃったようなことも考えられるかと思いますけれども、いまこの時点で、どういうような事実関係であったかということを承知いたさない時点でどういう判断をするかということは申し上げられない次第でございます。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの問題がどうあろうと、日本人に対してピストルを威嚇発射するということはやはり明確な犯罪行為だと思うのです。  それで大臣、実はこの間も沖縄のキャンプ・ハンセンというところでタクシーの運転手が基地内で殺害されるという事件が起きたわけです。そういうように、最近米軍の軍規というものが非常に緩み切っているといいますか、いまの事件もその一つなんです。ですから、合同委員会で遺憾の意を、二度とこういうことがないようにということをしょっちゅう言われているのですけれども、よくこういう事件が起きるわけです。大臣とされては、これは対症療法的なそういう措置だけでなくて、本当にこういうことが起きないように米軍の軍規の粛正といいますか、そういうことを厳重に申し入れる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまで起きた沖縄の事件、いまお話しのような事件を聞いて、アメリカ軍の手落ちであるということで反省あるいはまた遺憾の意を表されたわけでありますが、日米同盟関係、そういうものに基づいた、安保条約に基づいたいわゆるアメリカの駐留軍が沖縄には存在するわけでありますから、この駐留軍の手落ちによって仮にもいまお話があるような事件等が起こるというようなことになれば、やはり日米間の信頼関係また日米安保条約の信頼関係を損なうことになるわけでありますから、われわれは合同委員会等におきましても注意もしばしば喚起いたしておるわけでございますが、私も外交の責任者といたしまして、こうした問題が再び起こらないようにアメリカ政府に対しましてもひとつ十分な体制をつくっていただくように要請をしなければならぬ、こういうふうに思っております。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 こういう問題が頻発しますと、おっしゃるように安保条約の効果的運用とかいわゆる住民の協力体制そのものに大きく響いてくるとともに、これが大きく反米感情とかということになると、重大な取り返しのつかない、また、あるいはいまは非常に致命的な事故でありませんけれども、致命的な事故に発展しかねない様相があるわけです。その点は大臣に厳に重ねて要望しておきたいと思います。  次に、同じくそういう米軍の拳銃に関する問題について伺っておきたいわけですが、これは、ことしの二月十四日から沖縄の嘉手納米空軍基地内における日本人警備員にいわゆる短銃を所持させて米軍基地内を警備をさせるということが明らかになっておりますが、伺いたいのは、いま沖縄のその米軍基地がそういうふうに日本人警備員に武器を所持させて警備させなくてはならないという状況にあるのか、今回そういう措置がとられた理由について外務省当局はどのように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  84. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま玉城委員が御指摘なさいました嘉手納の飛行場において二月十四日から、過去昭和五十一年以来中断していた日本人の警備員による拳銃の所持というものを再開したという御指摘につきましては、私どもが米側から聞いておりますのは、それまでは、昭和五十一年以前はやはり拳銃を所持させておったようでございます。そして、それが五十一年以後中断していたのですが、昭和五十七年末の米軍の監査というのがあったようでございまして、いろいろな米軍基地を米軍の中央から人が来て監査をした、そのときに日本人の警備員が銃砲を携行していないのは適当でないというような判断をその監査がして、また従来のやり方に戻したということであると聞いております。  なお、日本人警備員が銃砲を携行しておりますのは何も嘉手納に限ったわけではございませんで、私ども承知しておる限りでも嘉手納を含んで十三施設、区域あると考えております。  この理由でございますけれども、これは先生よく御承知の地位協定第三条に基づいて、在日米軍が施設、区域内において施設、区域における警護のため必要な措置をとる、すなわち管理権の一つでございますけれども、その一つとして、対応としてやっておることでございまして、これは前からずっとやっておったことでございます。私どもとしましては、これは施設、区域を管理する米軍のいわゆるポリシーの一環としてやっておることであると承知しております。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 中断していて再開しただけだ、それは監査の結果というようなことですけれども、監査であろうが何であろうがいわゆる拳銃を所持させる、なぜそういう状況にあるのかという、これはちょっと時間がありませんのでなんですが、そこでいま後半おっしゃいました米軍基地内で日本人警備員が拳銃を所持できるというのは地位協定三条である、こういうお話がありましたね。これは、われわれ日本社会はアメリカと違って武器なき社会ですね。一般人は拳銃を持てないですね。持てる人は例外がありますね。銃刀法の三条によってこれは持てないのが原則ですが、例外として持てる。いわゆる日本人は本来は持てないわけですね。それが基地内においては三条によって持てる、いまおっしゃることは日本の銃刀法が米軍基地内に及ばないということですね。
  86. 北村汎

    北村(汎)政府委員 在日米軍施設、区域内におきましても、ただいま先生が御指摘になりました銃刀法を含めて日本の国内法の適用が属地的に排除されておるというわけではございません。ただ、本件の場合は先ほど申し上げましたように、合衆国は地位協定第三条に基づいて、施設、区域内において警備のために必要なすべての措置をとることができるということになっておって、米軍がその警備のために必要な措置一つとして、日本人の警備員を鉄砲携行の上で施設、区域内において警護に当たらしておるというのでございますけれども、これは地位協定上認められるところでございます。他方、そういうような日本人警備員による銃砲の所持というものが、それでは銃刀法上銃砲の所持が認められておる場合に入るのかどうかという問題であろうと思います。  そこで、その点につきましては、銃刀法第三条第一項第一号に言う「法令に基き職務のため所持する場合」というのがございまして、こういう場合には銃砲を所持していいということになっておりますが、その銃刀法第三条第一項第一号に言う所持していい場合に、この地位協定第三条に基づく警備のための必要な措置として日本の警備員が銃刀を所持するという場合が含まれるというふうに解釈されまして、銃刀法上の問題はないというふうにわれわれは考えております。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 いわゆるこういうことですか。銃刀法の例外規定の中に法令に云々ということがありますね。それは地位協定上のいまの問題が含まれるということですか。
  88. 北村汎

    北村(汎)政府委員 そういうことでございます。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 それで昭和二十七年にたしか合同委員会日本人警備員の拳銃所持について合意されていますね。その概要をちょっと御報告いただきたいのです。
  90. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま玉城委員指摘の昭和二十七年十二月三十日に開催されました第三十四回日米合同委員会におきまして行われました日本人警備員に関する取り決めがございます。  その内容は、「米軍による武装警備員の雇傭は米軍が使用中の施設・区域内で必要最小限度にとどめ、武器の使用は日本国刑法第三十六条第一項の正当防衛及び同法第三十七条第一項の緊急避難に該当する事態が発生した場合に限られ、かつ、武器の取扱に関しては米軍当局が責任をもって取り締まること」になっている、それが内容でございます。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、いまおっしゃいましたその刑法三十六条並びに三十七条、いわゆる正当防衛、緊急避難、そういう場合に限定していわゆる短銃の発砲はできるというようなことになるわけですね。そうすると、正当防衛とか緊急避難の判断は日本人警備員がするのですか、それとも米軍がやるのですか、どちらが判断するのですか、発砲の場合。
  92. 北村汎

    北村(汎)政府委員 もちろんそういう事態に直面した警備員、それが、これは正当防衛であるとか緊急避難であるとかというその第一義的な判断は本人がするのでしょうけれども、しかしそれが本当に正当防衛であったとか緊急避難であったとかということの判断は、これは裁判所がいたすことになるわけでこざいます。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、それはそうですが、これは正当防衛であると思って発砲しますね、日本人警備員が。それはもちろん当人もその判断でやるわけでしょう。米軍もこれは指示はするわけですね、発砲しなさいということは。日本人警備員についての指示はしないわけですか。いま報告したこの概要はあなた方によく読んでいただきたいと思うのですが……。
  94. 北村汎

    北村(汎)政府委員 さっきの取り決めの内容でございますか。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 米軍は指示しないんですか、その発砲について。
  96. 北村汎

    北村(汎)政府委員 取り決めの中には、その指示云々ということはございませんけれども、通常こういう場合に想定されますのは、やはり警備員が施設、区域内で警備しておるときに何らかの事件に遭遇する。その場合、その警備員が、それは正当防衛であるあるいは緊急避難である、いたし方なく銃砲を使用する、そういう場合に限られておるということでございまして、それは何も上司から、おまえここで撃てとかいうことでやるような場合は、それはあるかもしれませんけれども、そういうような場合じゃなくて、やはり本人がそこで判断をして行う場合であろうかと思います。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、あるかもしれませんね。その場合は、この日本人警備員というのは公務中になるんですか。
  98. 北村汎

    北村(汎)政府委員 お答え申し上げます。  これは、その警備員がその施設、区域内において、その施設の警備のために必要な措置をとっておる間、すなわち公務中でございます。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 公務中ということになりますと、地位協定によってその日本人の行為は、違法性は阻却されるということになるんですか。
  100. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 公務中でありましても、ただいま北米局長の方から御答弁申し上げましたように、正当防衛あるいは緊急避難に該当する場合でなければそういう銃器を使用してはいけないわけでございますから、その銃器の使用そのものがいきなり公務中であるからといって違法性が阻却するということではないんで、使用された場合に、それがあくまでも刑法上の正当防衛あるいは緊急避難という事態に該当すれば、その限りにおいて違法性が阻却される、こういうことでございます。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっと時間がございませんので……。  もう一つこの問題に関連して、もし仮にその日本人警備員がおっしゃったところの正当防衛とか緊急避難でなく過剰な正当防衛であったとかという不法な場合は、これはその日本人警備員は刑法に基づいて処罰されるんですか。
  102. 北村汎

    北村(汎)政府委員 地位協定第十七条四項に「前諸項の規定は、合衆国の軍当局が日本国民又は日本国に通常居住する者に対し裁判権を行使する権利を有することを意味するものではない。」という規定がございます。ですから、武器を所持した日本人警備員がその武器を使用することにより何らかの犯罪に関係する、そういうふうな場合の刑事裁判権の取り扱いは、これは日本人たる警備員については米側が裁判権を行使する権利はない。もっぱら日本の裁判権に服すると考えております。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、時間ございません。大臣、実はくどくどと申し上げておりますのは、本来的には一般日本人は武器は持てないわけですね。たまたま米軍基地の日本人、いわゆるガードマンについてはそういう禁止されているいわゆる短銃を所持させて警備をさせる、こういうことなんです。ずっといろいろお伺いして、これにはいろいろな問題点があります。もしこういう考え方が本当に堂々とまかり通るということになると、米軍基地内そのものを日本人が禁止されているそういう拳銃を持って警備させることができるというようなことにもなりますし、同時にもし万一事故が起きた場合、国内法とのいろいろな問題が出てくるわけですね。ですから大臣、この問題は従来そうなっているからということだけではなくて、もっと突っ込んで検討してみる必要があると思うのですね。大臣、いかがですか、いろいろな問題ありますよ。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは米軍の施設内の問題でありまして、米軍がいわば管理権を持っておるということでありますから、米軍の判断、ポリシーに基づいてやることでございますので、そしてまた、日本政府との間でももうすでに合意を見てやっておるわけでありますから、これについていま政府としてとやかく言うべきことではないんじゃないか、全体的にはそういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、本来的には国内法では禁止されているピストルを基地内において所持させて、これは地位協定で持たせることができる。しかしその行為は、ピストルを撃つという行為は刑法に基づく三十六条、三十七条の正当防衛、緊急避難だ、しかしこれは米軍の指示による場合あるいはこれは過剰防衛であった場合、それはどうなるのか。いろいろな補償の問題とかいろいろな国内法との絡みが出てくるわけですね。それで少しこれは検討してみる必要があると思うのです。もう一回お願いします。
  106. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的にはいま私が申し上げたようなことでありますが、私は、地位協定であるとかあるいは日本の法律という中においていろいろ問題ができてもこれは処理されるべきものであろう、こういうふうに考えます。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、実は私がこの委員会でずっと長い間訴えてきた問題は、いまの拳銃の問題とかいろいろな事故の問題も含めて外務省に伺いますと、もう限界がある、だからきょうの委員会でも警察を呼んでくれとか防衛施設庁も呼んでくれ、こういうふうに来るわけですね。それで、私がずっと長い間申し上げているのは、沖縄にこれだけの五三%という巨大な基地を抱えていろいろな対米関係の問題、事故が起きている。それを処理する場合に外務省は実態は全然わからぬわけです。ですから、そういう外交に責任を持てる方が常駐をして対応すべきではないかということをずっと言ってきたわけですが、安倍外務大臣、いかがでしょうか。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに沖縄には駐留軍が存在をしておるわけでありますし、安保条約上非常に重要な位置にあるわけであります。したがって、われわれとしては安保条約あるいは地位協定の円滑な安定した運用を図っていくためには地元の皆さんと駐留軍との間の調整もいろいろしなければならぬ。また施設、区域の存在あるいは米軍の活動に伴い住民の生活に及び得る影響を最小限に食いとめることが非常に重要であるというふうに考えております。こうした考え方に立って、外務省としては、従来から沖縄現地に数百人の職員を擁しておる防衛施設庁、関係機関と連絡を密にしていわゆる基地に係る諸問題の事実関係を迅速かつ的確に把握するとともに、米側の関係者とも不断の接触を通じ問題の解決を図っておるところであるわけでございますが、しかしこれは別としましても、いろいろと地元の立場からすれば、今後ももっと外務省が積極的に乗り出していま申し上げましたような問題について努力をすべきであるということはよくわかるわけでございまして、こうしたことも踏まえながらいま直ちに外務省、それでは沖縄に何か拠点を持つということは、いまの状況から言えばちょっとむずかしいわけでありますが、やはり何か緊密な連絡は今後とも進めていくような努力は今後とも重ねてまいりたいと思います。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、現職の外務大臣でいらっしゃらないときには沖縄には何回もおいでになっておられるわけですが、先ほど申し上げましたグロムイコの発言だとか、こういういろいろな米軍関係の基地問題でトラブルが発生しているということからして、いろいろな外国に行ってお忙しいことは十分承知の上で申し上げるわけですが、現職でいらっしゃるうちに早い機会に沖縄に行かれるというお考えはいかがでしょうか。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現職中にもぜひとも参りたいと考えております。
  111. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、林保夫君。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 国際情勢一般でございますので、いま非常に関心の高まっている問題につきましてお伺いいたしたいと思うのでございます。  言うまでもありません、最近きわめて国際情勢が緊迫している、一体どうなるのだという国民的な心配が大きいということは、大臣も御承知のとおりだろうと思います。私どもも、わが党だけというわけでもございませんが、懸命になって政府・与党のできない部面でもやらなかったらいかぬという政治に責任を持つ立場からそれなりにやっておることは、大臣承知のとおりだと思います。そういう視点で、いま焦点になっておりますのが、もちろんアメリカとの関係、欧州との関係東南アジアとかいろいろございますけれども、四月の十二日、十三日、きのうから始まりました日ソ事務レベル会議で、大臣はさっき、評価されるというお話もございました。ソ連との関係はなかなかむずかしい、こういうことではございますけれども国民として、できない問題をやはり当局の最高責任者といたしましてあらゆる局面、あらゆる手法、これらを使って何とかやっていただきたいという希望があるわけでございます。忘れもしません、鈴木総理が出られましたときに予算委員会で一時間余にわたりましていろいろ聞いた中で、ソ連との関係はどうですか、縮めて申し上げますと、私も日ソ関係漁業交渉をやってきた男でございます、北方領土問題を含めてどうぞお任せくださいと言ったのがそのままになってしまいましたね。また巷間、国民の期待では、私どもは先日中曽根さんの発言なり新聞報道なりにつきまして、一蓮托生では困るのだ、一緒にあの世をともにされたら困るのだ、こういう苦言も呈したわけですけれどもアメリカとの関係をきっちりされた後、中曽根内閣のソ連への対応を期待する。また、そういう発言を一部の人が、御本人じゃないですけれどもしておられますが、大臣は何らかの確信を持って御尽力されておるものだと思いますが、どんな展望を特にソ連についてお持ちになっておられるか、承りたいと思います。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、外務大臣になりまして各国との間の友好関係の推進には努力を重ねてきておるわけですが、そうした中にあってやはり一番むずかしいのが率直に言いまして日ソ関係でありまして、どうもなかなか思わしくいかない、こういう状況であります。しかし私たちは、日ソ関係もやはり対立すべき問題点は多々あるわけでありますが、これを対決というふうなところに持っていってはならないのであって、どうしても一方においては対立はやむを得ない、しかし同時にまた、これは隣国の大国でありますから、ソ連との間の対話といいますか、そういう道は常に開いていかなければならぬ。特にこういうふうに国際情勢が非常にむずかしくなっておる段階においては、対話の道を広げていく努力はやらなければいかぬ、こういうふうに思うわけでありまして、そういう中で今回日ソの高級事務レベル会談が開かれたというのは私は非常によかったと思っております。特に最近では、グロムイコ発言等が出ましたし、レフチェンコ証言問題とか、いろいろと世間を騒がす問題が日ソ問題であるだけに、そういう中で、やはりこれから将来の日ソの友好関係を構築していくには両国が一体どういうことをやったらいいのだということで話し合いをいま進めることは、大変有意義であると思っております。  また、おととい、きのう、きょうにかけて行われておる会談においても、両国が問題点を洗いざらい出し合いまして論議を重ねております。いまのところは、中ソの問題にしても、あるいはまた領土の問題にしても、国際問題、SS20の配備の問題、日米関係、みんなソ連と日本では考え方、見方、そういうものがやはり違っておるわけでございます。しかし、それはそれなりにやはりはっきりしておいていいと私は思いますが、そういう中でまた、今後の両国関係をどういうふうに構築していくかということについても何か一つの足がかりというか、そういうものが出れば、今回の高級事務レベル会談はさらに意味が深いものになるというふうに思って一生懸命にやっておるわけでございます。いずれにしても日本外交の中で一番むずかしい課題でありますが、これに対して対話の道を広げる努力はやはり今後とも続けてまいりたい、こういうふうに思っております。しかし同時に、ソ連に対しても日本は言うべきことはちゃんと言わなければならないというふうにも考えておるわけです。
  114. 林保夫

    ○林(保)委員 言葉じりをとらえるわけじゃございませんが、言うべきことは言うということは歴代言っておられるわけですけれども、何か具体的なアクションがなければならぬ、このように思うわけですが、今度の事務レベル協議の最終段階、きょうあたりか知りませんけれども、たとえば外相クラスの会談をやろうとか、大臣御自身が向こうへ行かれるとか、あるいはまた総理との会談を新政権のアンドロポフさんとの間に設定するとか、そういうことを提議なさる御用意はないのでしょうか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 きょう、この委員会が終わりました後で、私、カピッツァ次官に会うわけでございますが、その際に、グロムイコ外相の訪日を強く求めたい。やはりせっかく事務レベルの次官会議までやったわけですから、ここでさらに、外相会談というところまで何とかこぎつける、そういう提案をしたいと思っております。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう日本からの積極的な働きかけも、アメリカにあれだけやるのだから、こっちもぜひあってもいいのじゃないか、こういうふうに、私ばかりではなくて私が接触する大ぜいの方が言っておりますので、その点もひとつお耳にとめておいていただきたいと思います。  確かに大臣のおっしゃるように、ソ連関係は非常にむずかしいし、私の乏しい実際上の体験ですけれども、大変状況が変化する。これにどう対応していくかということが非常にむずかしいかと思うのでございます。これは事務レベルでお聞きしたいのでございますが、先般来の報道を見ておりますと、SS20が一つの焦点で、それが極東に百八あるのにさらに増強されるおそれがある。そしてまた、ウラジオを中心とした海軍力、さらには北方領土、オホーツク海、こういったところ全体を含めましてソ連が新しい体制を構築するような関係で、日本に対する脅威あるいは太平洋、日本海に対するあれも深まってきておる、こういう状況にあるように思いますが、昨日の会議でいろいろと御努力なさって日本なりの言うべきところは言っておられると思うのでございますけれども、その際、SS20を焦点といたしました場合に、これは日本向けではないのだ、アメリカ及びそのほかの核に対する核抑の対抗だ、こういうふうに言っておりますが、日本向けではないということを言っているやに新聞報道ではございますけれども、そういうふうに理解してよろしいのですか。これは事務当局からで結構です。
  117. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 先生の御指摘のとおり、昨日のカピッツァ次官の発言は、ソ連にあるSS20は日本に向けられたものではないという言葉を繰り返し述べておりました。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 それでは沖縄に核がある、そうすると、やはり沖縄が対象になるというところまで言っておるわけですか、それとも言ってないのでしょうか。
  119. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 ソ連側の説明では、アジア地域を含めて世界じゅうにアメリカの核兵器がたくさん存在している、そしてそれらの核兵器はソ連の領土に向けられている、ソ連のSS20の配備は、そうしたアジア地域をも含めて世界じゅうに散在するアメリカの核兵器に対抗して配備しているものであるというような説明の仕方をしておりました。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 そこが一つ問題があるのです。私どもこの点は機会あるごとに言っておるわけですが、なぜ日本が対象でないにもかかわらず日本のそばへ持ってくるのだというポイントです。向こうの言い分はあろうと思うのですが、日本のそばへ持ってこないでもよそへ持っていってもらえばいいのになぜ日本のそばへ持ってくるのだ、しかも日本向けではないと言っている。これについては外務省としてはどういう主張をされ、また向こうはどういうふうに答えておるのでしょうか。
  121. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 日本側からは、それはたとえカピッツァ次官がこのSS20は日本に向けられたものではないと幾ら説明しても、現にSS20の射程距離の中に日本が入っている、そのような核兵器を日本の近辺に配備するということはただ緊張を高めるだけのことなので、その撤廃を改めて要求したのが昨日の会談の要旨でございます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、私は乏しい経験ですけれども、日ソ円卓会議にいままで二回出て、向こうから来た人を党の代表として公式にお迎えした程度でしかございませんけれども、向こうが言っておりますのは、たとえば北方領土、あそこへの軍事基地の増強は決して日本向けではない、アメリカ中国に向けたということを言っておりました。そこで、今度の会議あるいは最近の外務省とソ連との折衝、たとえば尊敬する高島大使が向こうでやっておられますけれども、その中ではどことどこが出ておりますでしょうか、中国というのはもう消えたのでしょうか。外交上どう御判断なさっておられますか。
  123. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 中国との関係につきましては、ソ連側は、最近の中ソ関係は改善されている、国境地域でも非常に平穏で、国境兵士の間の交歓が行われるほどの平穏な状況になっている、それから経済関係文化関係も進んでいるというような説明をしておりました。したがって、特に中国に向けてどうこうという話はございませんでした。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 中国とソ連との関係が悪くなることを決して願うわけではありませんけれども、そういうふうに変わってまいりますわね。その辺の対応をどのようにやるかというのが大変大事な問題であろうと私は思うのです。私どもも、二度ともその会議アメリカの抑止力が対象でございますと申しますものですから、日本のこめかみへピストルを置いて、これはよそへ筒先が向いているというそんなばかなことがあるかということで強く反論した記憶も実はございます。  そういった中でもう一つ問題なのは、日本の防衛力が幾らふえようがわれわれは問題にしてないのだ、日本アメリカと組むことが問題だというようなことを私どもにははっきり言っておりますが、外務省とソ連との交渉ではそういうことを今度もはっきりと言っておりますか、どうですか。その辺をひとつきっちりと明らかにしていただきたいと思うのです。
  125. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 その点はソ連側はいろいろな形で言っておりますが、今回の協議の際にも、日本アメリカの戦略に巻き込まれない限りは安心していていいのだというような形で、日米関係について批判的な発言をしておりました。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 これはかかって非常に政治的な問題なので大臣にお聞きしたいのでございますが、ソ連がそういうことを言っている中でどういう打開の方法があるのでしょうか。私どもも、日米安保条約を認めながら日本をしっかり守らなければならぬという立場を堅持いたしておりますので、だとすれば、アメリカと仲よくしている限りにおいてはソ連との間は、大臣のいまおっしゃったようないろいろな問題がありながらも、基本的に、政治的に言ってもうだめだという判断を一応せざるを得ないのではないかということも考えられなくはございませんし、しかし、なおそれを乗り越えて、どういう手法で中曽根内閣あるいは外務大臣はソ連との間をきっちりさせようとお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりわが方もどうしても譲れない一線があるわけでありまして、日米のいわゆる基軸外交、特に安保条約、安保体制のもとにわが国の安全と平和を確立いたしておる、これを進めておる、この基本路線は譲れない。また、これはソビエトにも説明もして、ソビエト側の不当な批判に対してわれわれは反撃もいたしております。  しかし、安保体制といいましても、いわゆる日米が軍事協力をしてソ連に対して脅威を与えようというものではありませんで、これはあくまでも日本の防衛ということでありますから、外に出ていこうという日本外交あるいは日本の防衛政策でないわけですから、こういうところは、三原則あるいは専守防衛、日米安保条約の枠組み、そういうものをソ連に対してはきっちりと説明をいたして、ソ連に対して日本は何らの脅威でないということをいま理解を求めておるわけでございます。したがって、これに対して脅威であるというふうな考え方から軍事力を極東に増大するようなことは全く日本というものを知らない上に立った議論である、こういうことも説明いたしておるわけであります。そういうわれわれ日本の平和外交あるいは日本の防衛政策あるいは安保体制の枠組みというものを十分説明することによってソ連もだんだんわかってくるであろうし、またわかってこなければならない、私はそういうふうに思います。ですから今回の日米事務レベル会談でも、そうした点については十分な意見の交換をいま行っておるわけであります。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のおっしゃられるそういう限りない努力はそれはそれといたしましてやらなければならぬと思うのですが、こういう問題を整理いたしますと、対ソ外交が実は対米外交の本質に触れる問題だということもございまして、先日、総理も向こうへ行かれたばかりですが、なおこれから大変大事な防衛問題についてのアメリカとの事務レベル協議もございます。そういった中で、大臣はサミットにも行かれると思いますけれどもアメリカに対して、今回の体験あるいはその他極東情勢について、ソ連との関係を修復するための何らかの提案をなさったり、やられる用意はないのでございましょうか。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米関係は非常に密接でございますから、日本とソ連との問題あるいはアメリカとソ連との問題につきましても終始意見の交換をいたしておるわけでございます。そういう中で、今回の日ソ間での議論の内容等につきましてもアメリカとの間で情報の交換等もしたいと思っておりますし、いま日本が一番恐れておりますのは、INF交渉によって直接極東にSS20が増強される。いますでに存在しているSS20すら非常な潜在的な脅威を持っておるわけでありますから、これが増強されるということになれば何のために増強するかということになるわけでございますし、これがまたINF交渉の一つの大きな課題でございますので、日本としても、アメリカとは十分連絡をとりながら、米ソのいわゆるINF交渉を続けておる当面の責任者であるアメリカに、日本立場を踏まえたグローバルな形での交渉が実現されるようにこれからも訴えてまいりたい。  同時にまた、ソ連というのは隣接しておるわけでございますから、日本とソ連との間の対話は今後とも続行していく、あるいはまた経済交流であるとか人的交流文化交流、そういった面についても、今日も続いておるわけでありますし、今後とも日ソの友好を進める形の中でこれを拡大していくようにやっていくのが当然だろうと私は思うのです。その辺は、アメリカ日本立場は十分理解をしておる、また理解をしてもらわなければならない、こういうふうに思います。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 具体的な問題に二、三触れたいと思うのですが、核不使用協定の提案を向こうがしているようですね。非核三原則の実行公約ですか、それとの交換ということを言っておりますが、外交ベースではこれをどのようにお扱いになりますか。
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 カピッツァ次官から、いわば具体的ともいえる核不使用協定ということになりますが、そういう提案がなされたわけでございますが、その背景としては、日本が非核三原則をとるならばソ連としては核を使わない、こういうことであるわけです。しかし、この提案はちょっとそのままいただけないような感じも私はするわけであります。というのは、日本は核を持っていない、ソ連は核を持っているわけですし、核を持っている国が核を先制攻撃として使わない、あるいは軍事大国が軍事力を先制攻撃として使わないというのは、国連に入っている以上は国連憲章の中においてもそれは明確に出ておるわけでありまして、相手が非核三原則を守るとか守らないとかそんなことで、いや核を使うの使わないの、軍事力を使うとか使わないとかいうことはちょっと筋が違うのじゃないか。使わないのがあたりまえのことであって、それをわざわざ条件次第で協定というところにまで持っていくというふうなことはどうかなと思っております。内容等については詳しく聞いておりませんが、基本的には大体そういうふうに私は考えておるわけであります。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 事務当局に聞きたいのですが、核不使用協定の原案みたいなものは出てきておるのですか、ドラフトは。
  133. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 別に今回条約案のようなものを持ってきたということではなくて、昨年のブレジネフ発言以来繰り返されている、非核三原則を日本が堅持するのであればソ連は日本に対して核兵器を使用しないというような協定をつくってもいいという言い方にすぎません。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 私も大臣のお考えと同感なのです。人道上あるいは国連憲章そのほかからいいましても使うべきでないものをおとりにしてそういう一つの問題をやるというやり方はけしからぬ、私はこう思うのです。  もう一つの問題は、善隣条約は今度はどういう形で言ってきておりますでしょうか。
  135. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 昨日は国際情勢ということでアジア情勢その他の国際情勢について話が行われたので、善隣条約の話は出ておりません。きょう二国間の問題を討議しておりますので、その席上であるいはソ連側が何か言及するかもわかりませんが、いまのところまだその内容については承知しておりません。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、もし善隣条約が出たら慎重な対応をしていただきたいのです。私も大きな声で二度にわたりましてあの会議の席で、善隣条約はとても日本は受け入れられぬ、それより平和条約をやれ、こういう主張をしております。その理由は、善隣条約をあなたのところで二度三度とやれと言ってきたら日本国民一億一千万人がアフガニスタンと同じような状態になりはせぬかという心配をしておるのだ、名前かちしていかぬというところまで言い切っておりますので、私の立場がどうこうというのじゃなくて、もっとオーソドックスな、国際ルールに従った大きな形での、平和条約なりそのほかの、これは外務省の皆さんがお考えになることでございますけれども、ノーマル、レギュラーな解決方法に向かって御努力されるよう特にお願いしておきたい、このように考えます。  ほかに移りたいのですが、もう一つ、レフチェンコさんのあれがきょうの毎日新聞に大きく出ておりました。大臣も先ほど、四月初めに警察庁の情報を聞いてそのことは承知していたということでございますが、大体これと同じでございましょうか。
  137. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大体報道されているような中身で警察当局から情報として受けたわけであります。
  138. 林保夫

    ○林(保)委員 私もちょっとおかしいと思うのですが、警察の方には、外交ルートかどこかでやったのか知りませんが、ちゃんと情報が入って、外務省の方は入っていないのですか。何か外交ルートを通じてやったらこの方は不毛だったという情報を聞いておりますので、確認をしたいと思います。
  139. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは初めは、大事な問題であるから外務省でアメリカ国務省との間で話をして情報を入手すべきだ、こういうことで正式に外務省から国務省に情報入手を求めたわけでありますが、国務省としてはどうもこの問題は外交ルートではそぐわないというような返事がございまして、早速警察庁と連絡をいたしまして、警察庁が係官を派遣してレフチェンコとも会うということがありまして、その結果としてわれわれは報告を受けたわけでございまして、これは外務省のルートだあるいは警察のルートだということでなくて政府のルートとして入手した、こういうことでございます。もちろん、その間においては外務省は非常に密接な連絡を警察当局ともとっております。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 私も本当ですかといって聞きましたのは、最初報道されましたのが去年でございましたか、あれ以来いろいろな何だろうという疑惑の種が多うございまして、そして困ったことにというか、党の名前を言うのは悪いですけれども、自民党、社会党、ジャーナリスト、そのほかエージェントが約二百人ほどおるという。今度これを見ますとずいぶんしぼられてきたという感じでございます。そうすると、こういう情報がいろいろとありますと、大臣も同じジャーナリストの仲間としてやっておられた立場からいきますと、疑惑がまた非常に残るわけです。ある機関において作為されたのじゃないだろうか、こういうことです。つい先日の日曜日にも「時事放談」で細川隆元先生が、どこの党が幾らどこの党が幾らということで人数を挙げてまでやっておられました。それらとこれらが食い違うということで、私は、やはり外務省は外務省なりのきっちりしたものを欲しいなという感じでいま申し上げたのですが、どういう経緯になっておるのでしょうか。これは警察庁か外務省かでいつの時期か、あるいは政府として発表なさる御用意があるのでしょうか。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、発表というよりは、一面においては報道によって、レフチェンコが本を書いて、その結果明らかにされるという面もありますし、同時にまた、いま申し上げました警察庁がレフチェンコあるいはアメリカ当局から直接入手した資料もあるわけでありますが、何分にも真偽のほどが、ただレフチェンコの証言といいますか説明だけでははっきりしないわけでありますし、またこれは個人の名前が出れば名誉に関する、人権に関する問題も含めた非常に重要な問題にも発展するし、また事実とすれば、これは国の問題としてゆゆしき事態でございますので、この辺のところはやはり十分調査をして、そして政府として、やはり明らかにするには、調査をした結果、政府なりに自信を持った発表をしなければいけないわけでございますので、いま政府が警察当局を中心にいたしまして鋭意調査をいたしておる。これはやはり慎重に、また十分な調査をして、その結果について、もしこれが事実あるいはまた法に反するということになれば、それなりの措置をとらなければならないと私は考えております。
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 いま大臣のお話を聞いておりまして、これは国民の感じとずいぶん違うなと思うのです。調査するというのは、大臣、慎重にやられる、私も同じことを言うと思うのです。いまの国家公務員の守秘義務、法律でもございますし、刑法でもございますけれども大臣、それ、できるでしょうかという問題が一つあるのですね。しかもこれがジャーナリズムで取り上げられまして、関係のない人は全く関係なしに、私どもは本当におもしろいなというつもりで見ておりますけれども、何か新聞情報によりますと、週刊誌なんかはおどしの材料にこういうものが使われたりしているという。そうすると、やはり国の問題ですから、何らかのきっちりしたものを早く結論を出さなければならぬ、このようにすら私は客観的に思うわけでございます。  なお、この事件の以後、フランスとイギリスではいわゆる諜報活動あるいは国家に対する違反のあれであれだけ外交官を追放する、国外撤去を求めるという措置があったわけですが、日本ではそういうことができるのでしょうか。大臣、その点ひとつお伺いしたいのです。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはそれこそ調査をしないと明らかにならない、できないわけでありますが、調査をしまして、日本の法律に対して重大な違反をしたということになれば、それなりの措置はやはりとっていかなければならぬと思うわけでありますが、これは時期が少し前の話ですし、そしていまレフチェンコの一方的な発言ということでありますから、それなりにやはり裏づけというものを、警察当局としてもとらない限りは、政府としての判断のしようがないんじゃないかと私は思うわけです。しかし、これだけ大きくなってきている問題でありますし、日本の国としての立場から見ましてもこれはこのまま放置するわけにはまいらぬのじゃないか、私はこういうふうに考えます。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 私、大臣のおっしゃるのはそれでいいと思うのですが、日本はスパイ天国だと言われたり、また逆に言いますと日本人の中でアメリカとの関係ではずいぶんやられておる人もおりますし、しかし日本が何もできない、やれないということでは困ると思うのです。こうした機密保護に関する立法そのほかけじめをつける措置を何らかの形でやらなければならぬという意見も強うございますが、大臣はその辺どのように御判断されておられますか。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本がいわゆるスパイ天国だなんということはよく言われておりますし、日本での情報というのが一番漏れやすいということもよく聞いておるわけであります。今回は、外務省の職員が関与しておるなんということになりますと非常にゆゆしき事態だと思っておりまして、真相を早く明らかにしなければならぬと思うわけであります。こうした問題を踏まえて、これからどういうふうに日本の国としての一つの国家機密の防衛体制をつくっていくか、確立していくかということは、今後の問題として、政府全体として国民の世論あるいはまた各党とも相談しながらやはり検討してまいらなければならぬ問題であろう、こういうふうに思っております。
  146. 林保夫

    ○林(保)委員 やはり、すっきり体制をつくられるように、どういう方法があるのかはひとつ御検討もいただきたいと思います。そういうことで国際関係が複雑になればなるほど、一体どうなるんだという心配が大変高まっております。これを解決するのが政治でもございますので、わかり切ったことですけれども、せっかくの御尽力をお願いしたいと思うのですが、大臣の食事時間で質問時間をはしょらなければなりませんので、これだけ残っておりますがやめます。  一つだけお聞きしたいのですが、これは大臣、さしでお話ししたいのです。  米中関係が大変おかしくなってまいりまして、これはもろに日本に響くのじゃないだろうか。先ほど私も、SS20の筒先があっち向いている、こっち向いているというお話をいたしましたのもそういう問題でございますけれども日本としてどういう影響があるのか、そしてまた日本中国とも仲がいいわけでありますから、アメリカとの関係でどういう役割りを日本がこれから演ずるべきなのか、短時間で結構ですから具体的にひとつお答えいただきたいと思います。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米中関係がおかしくなっているといいますか、テニスの胡選手の亡命をめぐりましていろいろといさかいが出ておりまして、中国文化とかスポーツの交流をストップするというふうな措置になっておるわけでございます。しかし、アメリカアメリカのいわゆる亡命法に基づく人権の問題としてこれを取り扱っておるわけでございますし、アメリカ政府がこの基本的な方針を変えるとはとうてい思えません。しかし私は、米中とも、こうした対立の問題はありますけれども基本的には長い間築いてきた米中の枠組みというのをここで壊そうという考えはないのじゃないかと思っておりまして、今後米中が、いろいろと対立点もありますけれども、そういうことで全体を壊すことなしに、ここでやはり米中関係の回復を図っていくという努力をしていくであろうと思いますし、それを日本としては期待をいたしておるわけであります。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 終わります。ありがとうございました。
  149. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、中路雅弘君。
  150. 中路雅弘

    中路委員 きょうは非核三原則問題、関連した問題、それから母港化問題を御質問したいのですが、最初の十分だけ大臣が食事だというので、終わりに時間がありましたら御質問したいと思っていた問題ですが、二問ばかりその十分の間で、これはこれまでの委員会で取り上げてきた問題の続きですけれども、お尋ねしたいと思います。  施設庁はお見えになっていますか。——二点なんですが、一つは、これは二年前ですか、やはり衆議院の内閣委員会で取り上げた問題ですが、横須賀を母港にしています空母ミッドウェーですね。このミッドウェーが艦艇に屎尿の処理の施設を持っていない。他の艦船もそうですが、港内に屎尿のたれ流しをやっているという問題を取り上げました。この問題が明るみに出てから、地元の横須賀の商工会議所や市長あるいは神奈川県知事からも、改善が強く要望されてきた問題です。二年前ですか、この委員会で私が取り上げたときにも、その時点で、母港化以来それまでに五十五回ミッドウェーが入港しています。延べ滞在日数で当時までで一千日以上になっているわけで、半舷上陸としましても、当時私は取り上げたんですが、たれ流した屎尿の量がビールびんに換算すると約四百八十八万本になるということで、これは海洋汚染防止法や港則法ですね、これにも明確に違反している。日本の自衛隊でも艦船では屎尿処理施設を持っているということで、この問題の早急な解決を求めたわけですが、当時大来外務大臣アメリカ側に申し入れた結果、ミッドウェーを初めとした大型艦船内に屎尿の処理の貯留施設、ためておく施設をつくるという回答があったということが明らかにされていますが、最初に外務省にお尋ねしますが、この問題について米側から回答があって、その後そういう処置がすでにとられているのかどうか、外務省にお聞きしたいと思います。
  151. 北村汎

    北村(汎)政府委員 御指摘の屎尿の汚水の処理問題につきましては、米国国内法に基づきましてすべての米艦船は昭和五十六年四月一日以前に汚水処理の施設というものをその艦船内に設置するよう求められておりました。そこで、御指摘のミッドウェーなどの米艦船も同期日までに艦船内に汚水の貯留槽の設置を完了したという回答を米側から得ております。
  152. 中路雅弘

    中路委員 この問題と関連して当時の玉木施設庁長官が、米艦船内の貯留施設の建設の進行と見合って陸上施設、基地内の陸上に、この艦船の貯留施設から引っ張って屎尿を処理する陸上の汚水処理の施設をつくるということを約束されているわけですが、これはどうなっているのか。艦船内につくられた貯留施設とも関連して、この問題がどういう決着になったのか、施設庁の方からこれは答弁いただきたい。
  153. 久保邑男

    ○久保説明員 横須賀海軍施設内における艦船用汚水処理施設につきましては、一部の未完成の点がございますけれども、おおむね完成しております。一部の未完成と申しますのは、実は予定の工期で進んでいたわけでございますけれども、艦船の入港に伴いまして工事がどうしても中断しなければならないという部分、第五ドックでございますが、その関係でその部分だけは完成しておりません。ただ、第五ドックに入っている艦船につきましても、応急的な措置で支障がない、すなわち、いわゆる海面に流さないというような措置を講じておりますので、物理的にはまだ完全なる完成ではございませんけれども、機能的には完成したと言えるかと思っております。
  154. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、艦艇の中には処理施設ができて、陸上の施設もいまほぼ完成しているわけですから、この問題の処理を最初私が取り上げまして、一つは陸上に施設をつくる、それから船の方にも貯留施設をつくる、それを関連させて屎尿問題の処理については改善をするという約束はほぼ決着がついたということで、いまそれは作動しているのですか。確認していいですか。
  155. 久保邑男

    ○久保説明員 作動の問題でございますけれども、昨年の末に完成しておりまして、今月から作動すると称しております。
  156. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、四月から作動する、この問題については最初私が取り上げました方向でほぼ決着がついたということで確認していいですね。
  157. 久保邑男

    ○久保説明員 艦船の汚水につきましては解決したということでございます。
  158. 中路雅弘

    中路委員 もう一点別の問題ですが、これもやはり基地と関係があるのですが、横須賀の米軍基地から出るごみはいま無料で市が処理をしている。これは経過がありまして、昭和四十七年に米軍と横須賀市との間で協定を結んで、それまで米軍がごみ処理場としていた久里浜の倉庫跡地の返還と引きかえに、ごみについては市が無料で処理をするという協定書が結ばれていたわけです。しかし一方で、神奈川県下でも横須賀だけですが、ごみの処理については市民については手数料をとっているということで、一般市民から手数料をとりながら米軍が排出するごみは無料で処理をするということで、これは市民の中でも大きな問題にずっとなってきた問題です。これも五十五年三月の予算委員会分科会でこの基地のごみ処理問題を私が取り上げまして、当時の施設庁長官は、市民に負担させることは避けねばならないので、今後、市の納得する形で解決したいという答弁でありました。しかもその後、米軍の横浜の海浜住宅の移設などによってごみの量が急増をして、協定を結ばれた当時に比べますと、私が取り上げた三年前の時点でも、四十七年の協定が結ばれた時点の年間四千百二十三トンが五十四年度は一万三千トンと約三倍のごみになって、横須賀のごみ処理場自身がパンクするという事態になっていまして、私は、少なくとも米軍の基地内にごみ処理の施設をつくるか自己処理をすべきだ、当面それができない間は、米軍のごみ処理に対する費用を国が市に補助をしてやるとか、あるいは少なくとも協定以上にふえた分については米軍に負担させるというような解決をすべきだということを当時要求したのですが、この問題をその後検討されて、いまどういう状況になっていますか。
  159. 大場昭

    ○大場説明員 横浜海浜住宅の住宅が横須賀海軍施設に移設されたことに伴い増加したごみ処理の問題につきましては、横須賀市の要請もございまして、横浜防衛施設局が米軍との間に立ちまして、米側に負担させるというような方向で現在調整しているということでございます。
  160. 中路雅弘

    中路委員 いま米側に負担させるという方向で検討しているということですが、これは増量した分ですね。米側が負担するということでいつごろ決着がつきますか。
  161. 大場昭

    ○大場説明員 一応米側の方も支払いに応ずるという意向は示しておるわけでございますが、どの程度負担するかということについてまだ市との間で決着がついておりませんので、時期についてはちょっと何ともまだ申し上げかねる状態でございます。ただ、なるべく早く決着させたいというふうに考えております。
  162. 中路雅弘

    中路委員 米側が負担するということではほぼ合意しているということですね。  もう一つ、この施設の中にごみの処理施設を建設するという問題ですが、今度五十八年度の予算で調査費が計上されていると思いますが、もう予算も成立しましたので、この調査費の中身について御説明いただきたいと思います。
  163. 久保邑男

    ○久保説明員 横須賀海軍施設のごみ処理につきましては、施設内に専用のごみ処理施設を建設するよう、本年度におきまして所要の予算が成立しております。  なお、建設工事につきましては、まだ調査結果を待ってということで、今後のスケジュールははっきりしたものではございません。
  164. 中路雅弘

    中路委員 ごみの処理の施設をつくるという方向で調査費をつけられた、これから調査の結果で処理の問題について具体的に検討する、そういう確認でいいですか。
  165. 久保邑男

    ○久保説明員 調査は、建設する場所が、先生御存じのように、横須賀の市の中は建物等が非常に多くて、場所がなかなかないものですから、北の方の、何といいますか、ちょっと小高い地区につくろうかというところでございます。それで、その調査についての、いろいろな地質調査等行うということで進んでおるわけですけれども、私どもとしては横須賀市の強い要望もございますので、ぜひつくりたいということで考えております。
  166. 中路雅弘

    中路委員 大臣も来られましたので、きょうの本論に入りたいと思います。  ソ連のSS20の極東配備に関連して、最近沖縄を含めた日本の核持ち込み問題が一つの論議になってきているわけですが、政府、中曽根総理は頭から否定されているわけですけれども、この問題をめぐって、国際的には当然の不信があると思うのですね。日本に置いてない、核はないという明確な根拠に欠けるんじゃないかと私は思うのですが、先日、三月十七日に安倍外務大臣が、エンタープライズの佐世保寄港を前にして、マンスフィールド駐日大使と会談された際に、非核三原則について日本政府立場をお伝えになったということが報道されていますが、いま最大の問題の一つは、核兵器の積載艦ですね、これの寄港や通過も認めない、いわゆるトランジットが非核三原則のうちのイントロダクション、核持ち込みに含まれるんだということを明確にして、これも事前協議の対象にするということの確認が国会でも問題になったところなんですが、先日の報道されました点では、この点がやはり明確にされていない。それでは核積載艦が日本に自由に出入りしているというふうにとられても当然ではないかと思うのですが、この点、外務大臣のお考えはいかがですか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、エンタープライズが横須賀に入るとかあるいはF16が三沢の基地に駐留する、こういうような問題をめぐりましていろいろと国民の中に疑惑がある、そういうことでアメリカ政府日本立場を明らかにして、アメリカ政府のこれに対する明確な回答を求めるべきだ、こういうことで私がマンスフィールド大使に会って、国民の中にはやはりアメリカの核持ち込みに対する疑惑が存在をしている、しかし、日本はあくまでも非核三原則というものを厳守しておるわけで、今後とも厳守していく考えである、したがって、アメリカ政府としてもこうした日本政府立場を踏まえてこれらの問題に対応していただきたい、アメリカ考え方はどうか、こういうことでただしたわけですが、マンスフィールド大使が、アメリカとしては日米安保条約というもの、その関連規定というものはこれを守っていくのだ、そしてまた同時に、日本国民の中に疑惑があることも承知をしておる、それだけに、われわれはこの日米関係というものを考えて自分たちの立場をはっきりしたい、事前協議については自分たちは誠実にこれを遵守しておるのだ、こういうことをはっきりされたわけでございますので、私としては、いまの日本の非核三原則を守る立場と、またアメリカ日本に対して核持ち込み等についてはっきりこれは日本立場を踏まえて、いたさない、こういうことが明確にされたものである、私はこういうふうに考えるわけであります。
  168. 中路雅弘

    中路委員 先ほども私はお話ししましたけれども、たとえばNHKの昨年の十月の世論調査でも寄港、通過、この問題を含めて核が持ち込まれているんじゃないかという見方が国民の七九%に及んでいるわけですね。ここに一番疑惑が出ているわけですから、国会など、国内向けのいろいろ答弁の際はともかく、直接アメリカ政府に対して核の持ち込みの中に寄港、通過というものは含まれるのだということを明確にして確認を求めた、こういうことはいままで皆無なんですね。この点はやはりはっきりさせるということが国民の疑惑を解く点でもありますし、非核三原則を厳守するといった場合、いまの焦点になっていると私は思うのです。さっきの御答弁でもこの点がはっきりしないのですが、この点のアメリカ政府との確認をやはり明確にすべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  169. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いわゆる寄港とか領海通過が核持ち込みであるということは、これはもう国会でも政府が答弁をしておるわけであります。これは明確であります。  同時にまた、この問題については岸・ハーター交換公文であるとかあるいはまた藤山・マッカーサー口頭了解でも、日米間にも了解があるものと私どもは信じておるわけであります。したがって、私は、先般のマンスフィールド大使との会談におきまする日本政府立場を明らかにして、アメリカ政府が日米安保条約とその関連規定を守るのだ、こういうことをはっきり言っている以上は、私は、それが日米の基本的な取り決めであるし、日米の基本的な合意でありますし、いまさらこの問題をいろいろと言う必要はないんじゃないかというふうに存じております。きわめて明確である、こういうふうに考えるわけです。
  170. 中路雅弘

    中路委員 国内向けには明確であるというお話はたびたびされているのですけれども、さっき出ましたこれまでの当事者ですね、当事者自身もこの点が明確でないということはたびたび証言もされている問題ですし、私はこの点についてはやはりアメリカ政府との間で明確な確認をすべきだということを再度強く要求をしておきたいと思うのですが、この問題と関連をして、非核三原則、これも国会でもたびたび全会一致で決議されて、今度の国会でも非核三原則は国是だということも総理も一応認められたということですが、もう一度確認したいのですが、非核三原則は平時または緊急時も問わない、緊急時を含めて日本の不変のいわば国是ということで確認して間違いありませんか。政府がかわってもこれは変えることがない、そういう原則なのだ、いわば準憲法とも言うべき不変の国是だということで確認していいですか。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、政府はしばしば申し上げているように国是ということでありますから、今日までも変わりませんし、今後も変わらざる方針だ、こういうふうに私は存じております。同時にまた、いまお話のありましたようにいかなる事態においてもこれは貫かなければならないというのが政府の考えであります。
  172. 中路雅弘

    中路委員 これは昭和五十年二月十三日の予算委員会の議事録ですが、非核三原則というのは平時だけじゃなくて緊急時を含めて日本の不変の国是かという問いに対して、日本の不変の原則だということを当時三木総理も答弁されております。この点は改めて確認していいですね。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根内閣としてはこれを踏襲しておる、こういうことです。
  174. 中路雅弘

    中路委員 もう一点、この国会でも大きい問題になりました武器輸出三原則との関係ですが、武器輸出三原則については安保条約の効果的運用のためということでアメリカは別枠だと別扱いをされたわけですが、これと関連して、やはり国会の決議でもある非核三原則について、核兵器の持ち込みが日米安保体制の効果的運用ということから、将来、アメリカは別扱いというようなことをするということは、まさかないと思いますが、この点は明確に確認をしておきたいと思うのですが、いかがですか。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核の問題につきましては、先ほどから申し上げましたようにいわゆる非核三原則というのが日本の国是であるという立場政府は貫いておるわけであります。
  176. 中路雅弘

    中路委員 私がお尋ねしているのは、武器輸出三原則でとられたように日米安保体制の効果的運用ということでアメリカを別枠にする、そういうことはない、不変の原則だという点で確認をしていただけますか。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 武器輸出三原則についての国会の決議があります。さらにまた、政府として今回武器技術についての三原則の修正をいたしたわけでありますが、これは私は必ずしも国会決議に違反をしておるとは考えておりません。これは政府が統一見解として申し上げたとおりでありますが、同時にまた、非核三原則についてはわれわれとしても国会の決議を重んずる、尊重するということは当然であるし、先ほどから申し上げますように国是として守っていくということでありますから、私はこれで十分ではないかと考えます。
  178. 中路雅弘

    中路委員 私は質問の点で確認をしたいのですけれども、非核三原則について日米安保条約の効果的運用の確保ということから、将来非核三原則についてまたアメリカについては別枠だということは断じてない、そういう意味でも不変の国是なのだということで確認できますかというお話をしているわけです。一般的に非核三原則を厳守するというだけではなくてですね。私の言っているのは、非核三原則について、もともとこの非核三原則ができたのは、この前のエンタープライズの入港のときにこれと関連して論議の中でできてきた、アメリカの核の持ち込みの論議との関係でできた問題ですから、特にそのことについて確認を求めているのです。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核三原則は守る、国会決議は重んずる、私はこれで十分じゃないかと考えております。
  180. 中路雅弘

    中路委員 もう一度お聞きしますけれども、効果的運用ということで、将来この問題はアメリカは別枠だというようなことは、まさかそういうことは断じてないと思いますけれども、その点の確認を言っているわけです。私の質問について確認していただけますか。
  181. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、御質問に対しても忠実に答弁しておるわけですが、国会の決議というものはこれは尊重して重んじていかなければならぬ、当然のことでありますし、今後ともそれはそのとおりであります。また非核三原則についての政府考え方は、これは国是である、こういうことでこれを守り貫いていくというのが政府基本的な姿勢であることはしばしば申し上げているとおりであります。
  182. 中路雅弘

    中路委員 くどいようですけれども、もう一度、では私がいま言います非核三原則について、将来たとえばアメリカについては日米安保条約の効果的運用というようなことでアメリカを別枠にするということは断じてないということですね、そういうことで非核三原則は不変の国是なんだ、私が言いました点ですね、それは確認していただけますか。私のいま発言したことについて確認できるかどうかということだけです。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 でありますから、非核三原則は今後とも国是としてわれわれは守らなければならないと考えておるわけです。
  184. 中路雅弘

    中路委員 私がなぜこれを二、三繰り返すかといいますと、今度の予算委員会で、亡くなった社会党の平林さんが同じ質問をされています。そして確認を求められたについて、中曽根総理は明確に答えられていないですね。確認をしますということで平林委員がおっしゃっていますと、中曽根総理が、いや、私が申し上げたのは、守るということを申し上げたのだということで、平林氏も、私の質問に的確に答えていないということで、繰り返しやりとりがありました。中曽根総理はそのことについて、この議事録の中では確認をされていない。だから私は、改めてこの問題について直接もう一度確認を求めているわけなんで、そういう意味で、私が言いました非核三原則について、将来たとえばアメリカについては日米安保条約の効果的な運用という立場からアメリカは別枠にするというようなことでこれを外してしまうとか二原則にするとか、そういうことはない、これは不変の国是なんだ、原則なんだ、そういう意味で確認していただけますか、いかがですかということをもう一度お尋ねしたい。
  185. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府はしばしば国是ということを非核三原則では言っておりますから、私はこれで政府の考えていることは明確になっておるというふうに考えております。
  186. 中路雅弘

    中路委員 なかなか端的にいま私が質問した点について確認をされないわけですけれども、しかし否定はされていませんね。いいですか、私の確認を求めている点は。趣旨についてもう一度——いいんですか、私の言ったとおりの点での、不変の原則だということは確認していただけますか。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核三原則は政府としてこれは守っていく、国是であるということであります。
  188. 中路雅弘

    中路委員 もう一点、四月六日に中曽根総理に申し入れをいたしましたけれども、先ほどからお話ししています日本の港に入るアメリカの艦船、入る場合のことは別にしまして、第七艦隊の少なからぬ艦艇が核兵器を積載しているということは、これはもう世界の常識でありますし、外務大臣も、第七艦隊の艦艇が核を持っているだろうということは認めておられるわけですが、日本の港に入るとき、寄港、通過も認めないと、先ほどおっしゃったように核を持ち込ませないということを含めて言われているわけですから、疑わしきは入れないという態度、そういう日本立場を一層明らかにする意味で、非核日本宣言といったものを内外に明らかにしていく、そして非核三原則を厳守しようとするなら、これは当然実行可能なわけですから、その点で日本政府のこの非核三原則を厳守しようという立場を一層明らかにする必要があるんではないかという申し入れを先日いたしました、御存じだと思いますけれども。非核日本宣言といったようなものですね。その点についてお考えはいかがですか。
  189. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核三原則というのは日本の国是で、これは内外に日本立場は明確に表現をされておりますから、私はこれで十分である、こういうふうに思います。
  190. 中路雅弘

    中路委員 いま国際的にも日本の核問題は論議になっているときですから、先ほど挙げましたようにこの問題では国民の中からも大変大きな疑惑があるわけですから、私は、政府の厳守しようという意思ならば、そのことは明確にすべきだということを改めて強調しておきたいと思います。  限られた時間ですので、もう一点だけきょうここでお聞きしておきたいのですが、母港化の問題です。  先日、これは参議院の四月一日の予算委員会ですが、エンタープライズやカール・ビンソン、たしかカール・ビンソンは四月一日から第七艦隊に編入されていますが、それから戦艦ニュージャージーですね。こういう母港化の問題に関連して外務大臣が、先日、エンタープライズの母港であるカリフォルニア州のアラメダのように活動上の根拠地という意味での佐世保母港化は容易に認めることはできないというような趣旨発言もされていますけれども、いわゆる母港という問題についての要件といいますか、基準といいますか、母港であるアラメダと他の横須賀やそういうところと何が違いがあるのか、あるいは母港というものの要件、それについて最初に御説明願いたいと思います。
  191. 北村汎

    北村(汎)政府委員 いわゆる母港という言葉、これは法律用語ではございませんので、いろんな場合に使われておることは委員も御承知のとおりでございます。たとえば乗組員の家族の居住地という意味で使われる場合あるいは活動の根拠地というような場合、種々の意味合いに用いられるわけでございまして、法律用語ではございませんので、そうはっきりした概念とか基準とかいうようなものが存在するわけではないと思います。
  192. 中路雅弘

    中路委員 ミッドウェーの横須賀母港化という問題があったときに、長い国会で私が論議しました。その際に、一貫して横須賀は母港じゃないんだという答弁ですね。要件を満たしていないということで外務省が答弁をされたわけです。それは乗組員の休養、補給のためだということですね。横須賀は母港じゃないんだということをお話しになったから、私は、改めてじゃあ母港というのはどういう要件を満たしているのが母港だということでお聞きしているのです。
  193. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ただいま委員指摘のとおり、昭和四十八年にミッドウェーの乗組員の家族の居住地として横須賀をいわゆる母港化いたしましたときに、政府は国会で何度も御答弁しております。これはミッドウェーの場合にはただ家族の居住地であるがためにそこに寄港する。その寄港する回数が増加する、あるいは寄港する期間が長くなる、そうなっても、ミッドウェーが母港化する前の横須賀施設、区域の使用の形態と母港化した後の施設、区域の使用の形態とには違いはないんで、要するに私どもとしては、これは従来どおり通常の寄港として考えているというふうに御答弁しておるわけでございます。先生がいま御指摘のいわゆる要件とおっしゃるのは、そういう意味の母港でない場合のいわゆる要件でございますか。
  194. 中路雅弘

    中路委員 もっと端的に別な角度で聞きましょう。じゃあ、母港であるアラメダと横須賀とどこが違うんですか。
  195. 北村汎

    北村(汎)政府委員 米軍の説明によりますと、アラメダはエンタープライズの活動の根拠地であるというふうに説明し、そういう意味での母港でございます。それから、ミッドウェーが横須賀を母港としておるという意味は、これはミッドウェーの乗組員の家族の居住地がそこにあるという意味でございます。
  196. 中路雅弘

    中路委員 ミッドウェーの活動の根拠地ということになれば、これは西太平洋を担当して常時横須賀に出入りをしておるわけですし、活動の根拠地になっておるということは間違いないじゃないですか。ほかにどこにミッドウェーの根拠地がありますか。
  197. 北村汎

    北村(汎)政府委員 この点につきましては、ミッドウェーは現在第七艦隊で前方展開をしておるわけでございますけれども、ミッドウェーの活動の根拠地というのはアメリカ本国の西海岸にあるということにつきましては、政府は前にも答弁をしたことがございます。また最近アメリカ側にも聞きましたところ、そういうことでございます。
  198. 中路雅弘

    中路委員 ミッドウェーの指揮はいま直接はどこがやるのですか。西海岸じゃないでしょう。
  199. 北村汎

    北村(汎)政府委員 ミッドウェーは第七艦隊に所属しておる艦船でございますので、旗艦であるブルーリッジの指揮を受ける、こういうことでございます。
  200. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったようにミッドウェーは第七艦隊に所属しているわけですね。そして第七艦隊の旗艦はいまおっしゃったようにブルーリッジ、横須賀に常時常駐する旗艦ブルーリッジが指揮艦であることは間違いない。そして修理、補給、休養も横須賀で、家族も横須賀に居住している。常時出入りして活動の根拠地になっておる。どうしてこれが母港じゃないのですか。アラメダとどこが違うのですか。
  201. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、そもそもアメリカ政府が昭和四十八年にミッドウェーのいわゆる母港化を——母港化というのは、家族の居住地として横須賀を求めてまいりましたのは、艦船の展開地域に近い外国に乗組員の家族を居住させることによりまして、そしてその艦船が本国に帰る回数をできるだけ少なくする、それによって効率的な運用を図ると同時に、国防費の節減にもなりますし、また乗組員の家族との別居の期間をできるだけ短くしてやる、そういうことによって士気を高める、こういうことであったわけでございます。  それはさっきも申し上げましたように、そういうふうに乗組員の家族をわが国に居住させるということになった結果、わが国への寄港回数は増加するし、あるいは寄港の期間も長くなりますけれども、その家族の居住地を横須賀につくる以前の横須賀の施設、区域の利用の態様というものの実態は以前と何ら変わっておりませんので、私どもといたしましては、これはあくまでも家族の居住地としてのいわゆる母港であるというふうに考えておるわけでございます。
  202. 中路雅弘

    中路委員 アメリカの八〇年度の国防報告で、あるいは昨年の二月のヘイワード海軍作戦部長の議会証言、こういうアメリカ関係の文書を見ますと、時間が限られていますからずっと紹介しませんけれども、すべて国防報告においても、空母ミッドウェーが常駐する横須賀について母港ということを明記しているわけですね。どうして日本政府だけが、アメリカは母港だと言っているのに母港でない、母港でないと言い張っているのですか。
  203. 北村汎

    北村(汎)政府委員 国防報告にホームポーティングあるいはホームポートという言葉で出ていることは確かでございますが、これはまさに最初に私が御答弁申し上げましたように、母港という言葉にはいろいろな意味がある。要するに横須賀がミッドウェーのホームポートであるということは、横須賀にミッドウェーの乗組員の家族を住まわしておる、そういう意味で前方展開しておる艦船に便宜を与えておる、こういうことでございますから、ホームポートという英語が出てまいりましても、それはどういう意味でのホームポートであるかということによりますので、あくまでもこれは家族の居住地としてのホームポーティングであるというふうに解釈しております。
  204. 中路雅弘

    中路委員 時間が来ているという紙がたびたび来ていますので改めてこの問題は論議しますが、私は母港ということはあくまで認められないという中には重要な問題があると思うのですね。これは対ソ戦略の中で前進の基地として拠点化していく。日本が直接使われていく。またそうなれば相手側の攻撃の対象にもなるわけですが、こうした問題とともにやはり核の持ち込みともつながってくる、核の母港との関係では。そうした点であくまで母港じゃないと言い張っている。アラメダと横須賀と全く違いはないわけなんですね、使用の形態を見ても。いまお話を聞いてもどこに違いがあるのかちっとも説明されていない、こういう点でも非常に重要な問題があると思います。  時間が来ていますので、改めてこの問題は論議をしたいというふうに思います。  終わります。      ────◇─────
  205. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件及び商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 いま議題となっております商船における最低基準に関する条約と千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書、この二つをきょうは同時に質問させていただきたいと思いますが、まず最初にILO百四十七号条約、商船における最低基準に関する条約の方から質問を進めたいと思います。  まず外務省の方にお伺いしたいと思うのですが、最近いよいよ国際依存関係を強化しているこの国際社会で、国際海運の活動分野においてもその影響する面が非常に強くなってきていると思うのですが、各国間でこの利害関係が錯綜いたしまして、これに伴って摩擦も非常に厳しさを加えていることも現実の問題でございます。このような情勢の中で、海運活動に不可欠な船舶の安全や労働条件の改善を確保していくために、多国間条約で国際的に統一規制を図っていくということでなければその実現がむずかしいと思われているかどうか、ほかにどういうことが努力として問われていると思われるか、そういうことがあれば、それも含めてまず御答弁をいただきたいと思います。
  207. 野村忠清

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  大変広い範囲の御質問をいただいたわけでございますけれども、特にきょう御審議いただいておりますILO百四十七号条約関係の深い点につきましてお答え申し上げれば、先生よく御承知のように便宜置籍船という問題をめぐりまして、国際的に協力をしながらその問題を解決していかなければいかぬという考え方が大分前から出てきております。この問題につきましては、一つの側面としては便宜置籍船と言われております船舶が安全あるいは労働条件の面で不十分なものが多いという指摘がございまして、これについてIMOでございますとかILOなどの場において統一的な基準をつくっていこうということの国際的な協力が行われております。今回御承認を求めておりますこの条約もそういう努力の一環であろうかと思います。またこの問題について言えば、UNCTADの場におきまして南北問題の中の問題として取り上げられているところでございます。  とりあえず国際的な面で、とりわけこの条約関係のあるいわゆる便宜置籍船問題というところでお答えすれば、そういう場所での検討が行われておるということでございます。
  208. 土井たか子

    ○土井委員 国際的な点での努力というものが、便宜置籍船等々について是正していくために日本としても期待を込めて努力されているであろうと思いますが、何といっても国内的な措置としてそれに対する努力が肝心だろうと思います。  そういうことも全部含めまして、国際海運秩序というのが従来から先進海運国主導のもとで行われて、できるだけ政府の介入を排除する、いわゆる海運自由の原則の中で自律的につくられてきたといういきさつがあると言われています。しかし、最近になって各海運国が、個別的に独自の対応で十分対処してきた分野までも含めて多国間条約で国際的に統一の規制を図る傾向を強めているのは何か理由があるのではないかと思われてならないのです。従来それぞれの国でも対処してきた分野までも含めて、多国間で条約をつくって国際的に統一的な規制を図る必要がどうしてもあるということが非常に強く問われてきているのは何か理由がある、それはどういう理由であると考えられますか。
  209. 野村忠清

    ○野村説明員 ただいま御質問の点につきまして、先ほど申し上げましたところと若干繰り返しになる点があるかと思いますけれども、便宜置籍船の問題について申し上げれば、便宜置籍船と言われる船舶の中には、これは全部というわけではございませんけれども、安全面あるいは海洋汚染の防止でございますとか労働条件などの面で不十分なものが多いのではないかという点が国際的に意識されてまいっておりまして、こういう点を直していくためにはやはり各国が協力をして、たとえば統一的な基準を設けてそれを各国の協力によって実施していくというような国際協力によってこれを解決しなければならぬという認識一つ大きくあったと考えております。
  210. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃったいわゆる便宜置籍船問題というのは、どこまでいってもこれが大きな問題なんです。したがって、国際的に討議されている課題であると言わなければならないと思うのですけれども、特にいまおっしゃっているUNCTADにおいて開発途上国から、便宜置籍船の存在は海運の発展にとって大きな障害になっているということを指摘をして、その排除が強く主張され、要求されてきていることは周知の事実なんですね。ILOの百四十七号条約が発効いたしますと、外務省とされては便宜置籍船問題はこれで解消されるものと考えていらっしゃるのですか。そう考えてよろしいのですか。その点はどうですか。
  211. 野村忠清

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  便宜置籍船の問題につきましては、国際的な場で議論されている側面としては大きく分けて二つあろうかと思います。先ほど御説明いたしましたような各国協力して統一的な基準を設けていこうという分野、まさに今回御審議いただいております条約もその一つでございますけれども、その分野での努力、これはもちろんわが国としてもさらに続けていくべき分野でございますが、他方、また先生指摘のようにUNCTADにおいて別の側面からの議論が行われておりまして、これは経済的な側面からの議論ということでございまして、ただいま先生も御指摘になりましたように開発途上国の側は便宜置籍船がふえていくと開発途上国の海運の振興が妨げられる、そこで、船舶と船舶の旗国との間の資本、労働の面等でその関係を強化していくことによって、便宜置籍船そのものを排除していくべきであるという主張をしておるわけでございますけれども、これに対しましては、わが国を含めました西側の先進諸国では、資本、労働の移動の自由を確保すると同時に、開発途上国の海運業を育成していくという方向をとることが結局開発途上国の利益になるのであるという考え方をとっておりまして、開発途上国側の言っておりますような船舶の登録要件を強化することによってこの問題を解決するといいますか、本来のねらいはあくまで開発途上国の海運業の育成ということでございますけれども、その目的を実現するためには船舶の登録要件の強化という手段ではうまくいかないのではないかということで、依然議論が対立したままになっておるというのが実情でございます。  若干細かくなりますけれども、この問題につきましては、UNCTADの枠の中で船舶登録要件に関する政府間の準備会合が昨年の四月及び十一月にそれぞれ開かれておりますが、わが国は先ほど申し上げましたような基本的な考え方でございますけれども、同時に開発途上国との間で現実的な討議を行って協調的な精神でできるだけ現実的な、双方に受け入れられる解決法を見出していこうという考え方で、これらの会合に積極的に参加いたしております。  UNCTADでの便宜置籍船問題の討議の状況は以上のようなところでございます。
  212. 土井たか子

    ○土井委員 いまるる御説明されているのですが、それは端的な回答という意味ではもう一つ感触が鈍く響いてくるのですね。開発途上国との間の協調に力を入れていらっしゃる、これはわかりますよ。今回のILO百四十七号条約が発効すると便宜置籍船問題は解消されると外務省として読んでいらっしゃるのかどうか、その点はいかがなのでしょうか。これは感触としてはどうも響きが鈍い。どういう御見解ですか。
  213. 野村忠清

    ○野村説明員 その点に関しましては、私どもといたしましても、もちろん、この条約ができればそれですべてのことが終わりであると考えているわけではございませんで、いま御説明いたしましたUNCTADにおける問題というのは側面は異にいたしますけれども現実にあるわけでございまして、この点についての議論には積極的に参加していきたいと考えております。また、側面は若干異なりますけれども、先ほど御説明しました中で、UNCTADで議論されておる経済的側面の解決のためには、基本的には開発途上国自身の海運振興ということに加えて、さらに先進国としてもこれらの努力をたとえば技術協力というような形で助けていくべきであるという考え方を私どもとしても持っておるわけでありまして、この分野におきましても日本としては努力をしておるというのが実情でございます。したがいまして、便宜置籍船ないしそれに絡んだ問題がこの条約をもってすべて片づくというわけではなくて、別途の話し合いなり努力は今後も続いていくと考えております。
  214. 土井たか子

    ○土井委員 それがこの条約ですべて片づくというのはなかなかむずかしかろうと思いますから、その辺はそうであろうと思われます。しかし、この条約を批准する以前ということではまた違うわけでありまして、その条件が批准していないときと同じであっては締結する意味がないわけです。したがって、いまからその中身についても少し——条約を国会で審議をして承認する途次これだけははっきりしておいてもらわなければ困るということも具体的に出して、私はここで確答を求めておきたいと思います。  それで、きょうは運輸省の方も御出席なすっていただいているわけでありますから、外務省と運輸省と両方に聞きたいと思いますが、船舶職員法等が改正される。その改正に伴っていわゆるマルシップにも適用するということに相なります。そうすると、ILO百四十七号条約の批准とともにマルシップは追放していくということになるわけですね。どうですか。
  215. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 お答えいたします。  従来、船舶職員法によりますれば、マルシップにつきましては配乗権主義という立場から職員法の適用はなかったわけでございますけれども、この四月三十日から適用されます新改正法によりますれば、マルシップにつきましても職員法を適用するということにしてございます。
  216. 土井たか子

    ○土井委員 そういう事実関係は結構です。私の質問に答えていただきたい。質問を聞いていてくだすったでしょうね。いまどういう質問をしたか、答えてください。
  217. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 ただいまの御質問につきましては、職員法の改正によりましてマルシップについてどのような法適用になっていくかという趣旨に私は理解させていただいたわけでございますが……。
  218. 土井たか子

    ○土井委員 私の言ったことが、言い方が悪いのでしょうか、どうでしょうか。もう一度、言ったことをそのまま言いますから。  今度船舶職員法が改正されてマルシップにも適用になる、これは言われたとおりなのです。いま、そこまでの答弁なのですよ。そのILO百四十七号条約で、そういうことの結果、もしこの条約が批准されるということになってくると、その批准とともにマルシップは追放していくということになりますかどうですかと言っているのです。
  219. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 失礼しました。  追放ということの意味合いにもよりますけれども、新しく日本の職員法が適用されていくという意味合いでございます。したがいまして、追放ということにはならないかと思います。言葉の端的な意味における追放ということにはならないと思います。
  220. 土井たか子

    ○土井委員 従来のようなマルシップというのはなくしていくという基本方針がおありになったのじゃないですか、どうなのですか。
  221. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 なくしていくということよりも、新しい法体制によりまして規制を加えていくという趣旨でございます。
  222. 土井たか子

    ○土井委員 規制を加えていくというのは、つまり本来あるマルシップという存在、これは問題点が多過ぎるほどあったのです。それについて規制を加えるということは、マルシップの欠陥というものを是正していくということでしょう。どうなのですか。
  223. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 ILO百四十七号条約によりますれば、旗国主義という原則をとっておるわけでございます。したがいまして、この条約を批准することによりまして旗国主義という立場から日本の法令の職員法を適用することにしておるわけでございます。従来の立場は配乗権主義ということでございまして、その船舶に船員を雇い入れる権限を有する者が属する国がその監督を行うのだという主義に立脚した立法をしておったところでございます。それを今回ILO百四十七号条約を批准することによりまして転換をしていくというふうに御理解いただきたいと思う次第でございます。
  224. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、先ほど来お話を承っておりますと、本来のマルシップに対してはこれを解消していくという方向で今回の条約意味もあると受けとめられますが、間違っていますか。
  225. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 STCW条約という条約がございます。これは船舶の職員の資格要件でございますとか訓練でございますとか船員の当直の基準、そういったものを国際的に統一しようではないかという条約でございまして、これはやはり旗国主義に立っておるところでございます。ILO百四十七号条約も同じような立場をとっておるわけでございますけれども、まずSTCW条約を批准いたしました関係上そのような措置をとることになったと御理解いただきたいと思います。  私の説明がちょっと前後いたしまして、申しわけございません。
  226. 土井たか子

    ○土井委員 あなたは運輸省のどなたですか。
  227. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 労政課長佐藤と申します。
  228. 土井たか子

    ○土井委員 STCW条約は本外務委員会が審議をして、そうして承認して締結をしたのです。その節、いまのこのILO条約について早く批准をと言ったのは私なのです。どういう関係からかといったら、便宜置籍船並びにマルシップについて目に余る、しかもこれは海運業界に対して日本立場から言っても一日も早く是正されなければならない問題だ、したがって本ILO百四十七号条約を早く国会に提案してくださいと言ったのは私なのですよ。いまさらそんな説明を承る必要はないのです。こっちとしてはそういうことに対してずっと審議をしてきた途次いまこれが問題になっているのです。だから、そういうことからすればいままでの沿革についての御説明は無用です。私の質問の仕方が悪いのかどうかわかりませんけれども、何を聞いているのか質問の中身についてもっと聞いていただきたいですね、答弁の前に。  それで、これはちょっと外務省に聞きますが、ILO百四十七号条約の第四条、外国船舶に対する措置を規定しておりますね。自国船舶だけではなくて外国船舶についても入港国の監督を及ぼすということをここで明確に規定していますね。欧州諸国はこの条約を基準とする統一的な検査指針で、ポート・ステート・コントロールというのを五十七年の七月から実施しているということを聞き及んでおりますけれどもわが国は外国船舶に対してどのような検査基準を用意をし、監督を行うということになっているのですか。また、監督実施体制というのは整備されていると考えていいかどうか、まず外務省に言ってもらいます。後で運輸省には篤とこういうことを言いますから。
  229. 野村忠清

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては条約の第四条の1に規定してございます必要な是正措置というものにつきましては、船員法あるいは船舶職員法、船舶安全法の規定に基づきまして実施し得るというふうに考えております。私ども考え方としてはそういうことでございます。
  230. 土井たか子

    ○土井委員 こういう答弁で、委員長、それは答弁になっているとお思いですか。そういう法律がそれを実施するときのわが国としての法律だ、そういう説明なんですよ。私は、どういう法がこういう問題に対して日本では関係法としてございますかという質問はただの一言もしていないのです。監督実施体制は整備されているとお考えかということを聞いているのですよ。もうやめたいですね、委員長。こういうことを言って質問したって、答弁は先ほどからいいかげんなものばっかりですよ。  これは委員長に申し上げます。こういう調子では質問は続けられません。
  231. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長から申し上げます。  答弁者は質問趣旨をよく理解して答弁されたい。外務省、答弁ありますか。
  232. 野村忠清

    ○野村説明員 私どもといたしましては、これで十分監督はできると考えております。
  233. 土井たか子

    ○土井委員 十分できるとおっしゃいましたね。後でそれも運輸省に聞いてみますが、そういうことは運輸省と緊密な連絡をとって認識をされてのいまの御答弁なんですか。
  234. 野村忠清

    ○野村説明員 運輸省とは外務省との間で十分に協議はいたしております。
  235. 土井たか子

    ○土井委員 これもまた外務省にまず聞いておきたいと思うのですが、非常に長い間、それは十カ年くらいの間討議を積み重ねてUNCTADで採択された定期船同盟行動憲章条約というのがあります。ことしの十月六日から発効するということがUNCTAD事務局から発表されたということでございますが、これは事実でございますか、いかがでございますか。
  236. 野村忠清

    ○野村説明員 先生指摘のとおり、定期船同盟行動規範条約はことしの十月六日発効することになっています。
  237. 土井たか子

    ○土井委員 従来は航路ごとに結成をする定期船同盟というのは自律的な秩序のもとで運営をされてきたわけですが、UNCTADで定期船同盟条約が採択されてこれが発効することになりますと、貿易当事国船が優先的に貨物を確保するというまことに新しい定期船海運秩序というのがここに形成されることになるのでしょうね。そこで、そうなってくると、海運先進国のいままで掲げてまいりました海運自由の原則が揺れ動くことに相なるのではないかと思われますけれども、この点どうお考えですか。
  238. 野村忠清

    ○野村説明員 いま御指摘の点につきましては、そういうような点を含めましてまだ幾つかの問題がございます。ただし、これはまたこの場で何度かすでに御説明申し上げたところと思いますけれどもわが国といたしましては、この条約にできる限り速やかに加入することが望ましいという考え方は変わっておりませんので、現在、早期加入に向けて努力を継続している状況でございます。
  239. 土井たか子

    ○土井委員 UNCTADでは望ましいということもおっしゃったし、この条約を採決することに賛成の立場をとってこられたということも私たちは承って知っておりますけれども、まだ批准手続がとられてはいないわけですね。まだでしょう。その理由は何ですか。
  240. 野村忠清

    ○野村説明員 この条約につきましては幾つかのまだ解決しなければならない、わが国として批准に先立って解決すべきであると思われる問題がございます。とりわけ、先生もすでに御指摘のように、この条約の対象になります定期船同盟海運というものは国際的な貿易に深くかかわっていることもございまして、この条約は統一的に実施されることが重要だと思いますけれども、この条約の中には意味のややあいまいな条項も含まれておりますために、その辺を詰めるということはなかなか容易なことではない点がございます。このために、私どもといたしましては、早期加入のための努力の一環として、わが国と同じように加入の意図を表明しておりましたドイツ、フランス等の先進海運諸国に調査団を派遣してお互いにその意見交換を行ってくる、向こうの考え方調査してくるというようなこともいたしましたし、そのような調査の結果等も踏まえまして、また先進海運諸国の動向も見きわめながら、わが国の加入方法等について、現在、鋭意検討中の段階にございます。基本的な考え方として、初めにも申し上げましたように、できるだけ早く加入することが望ましいという立場は変わっていないわけでございまして、今後そのための努力を払っていきたいというのが現在のわれわれの考え方でございます。
  241. 土井たか子

    ○土井委員 今後そのための努力を払っていきたいとおっしゃっているその努力の中身について少し聞いておきたいのです。  アメリカが定期船の同盟活動に対して非常に広範な政府の介入を行うことなども含めて、日本もその中にもちろん含まれるわけですが、海運先進国とはちょっと違った独自の政策をとってきておられるはずなんですね。このために、アメリカと海運先進国との間で話し合いをつけなければどうにもならないという問題もあったりするということはお聞きして私も知っております。そのアメリカが定期船同盟条約に対して反対しているということでありますが、これはどういうわけですか。
  242. 野村忠清

    ○野村説明員 私ども承知しておりますところを申し上げれば、アメリカは御指摘のとおり従来からこの条約には入らないという意向を明らかにしておりますが、この点につきまして、もちろん日本側としてはアメリカ側とも話し合いも行っているわけでございますけれども、そのような話し合いを通じまして、アメリカ側はこの条約の発効によって、日本、欧州、開発途上国の間の同盟の航路においてアメリカの同盟外の船会社のアクセスが制限されるようなことがあると困るという危惧を表明した経緯がございます。そういうようなところをアメリカ側としては心配しておるということを聞き及んでおります。
  243. 土井たか子

    ○土井委員 そのアメリカ側の危惧という中身を、日本に対して保障してほしいという保障を求めてきて、そうして申し入れがあったということも私は聞いているわけでありますけれども、それは事実あったのですかどうですか。そうして、それに対して協議をなすっているとするならば、その協議内容は進展していると考えていいのでしょうかどうでしょうか。その点どうですか。
  244. 野村忠清

    ○野村説明員 先ほどちょっと触れましたように、アメリカのこういう危惧は、アメリカ日本も含めましたこの問題についての協議の場、昨年の暮れだったというふうに承知しておりますけれども、そういう場でアメリカ側の危惧が表明されたというふうに承知しております。また、この問題についてはまだアメリカ側との話し合いが結論が出ていない状況でございますけれども、さらにまたことしの夏ごろ、再び協議が行われるという予定になっておるように承知しております。
  245. 土井たか子

    ○土井委員 ことしの夏ごろとおっしゃるのは、六月のベオグラードのUNCTADの第六回総会を指しておっしゃっているのですか、どうですか。
  246. 野村忠清

    ○野村説明員 ただいまの御質問の中にございましたUNCTADの総会、六月のベオグラードでの総会におきましては、これは一般的な形で恐らくすでに仮議題の中に海運問題は含まれておりますから、一般的な海運についての議論は行われるかと思いますけれども、この問題を特に取り上げてどういう形で議論が行われるか、あるいはそもそも議論が行われることになるかどうかということにつきましては、まだ見通しがついておりません。私がさっき夏ごろと申し上げましたのは、七月の二十日ごろということで日本アメリカ、欧州などの協議が行われる予定であるということでございます。UNCTADと直接関係はございません。
  247. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いまおっしゃった七月ということになると、六月のUNCTADの総会後というかっこうになりますね。しかし、いますでに予想されることは、その六月のUNCTADの総会で、すでにコレアUNCTAD事務局長が定期船同盟条約の発効見通しが確実になったということを受けて、日本早期批准に踏み切るような希望というものを表明されているという事実がございます。それはもう当然のことでございますね、御承知だと思います。そうすると、このアメリカとの協議をやるに先立つUNCTADの総会で、開発途上国側からまた対日不信という声が表明されてこないとは限らない。恐らく出てくるであろうと予想されますけれども、こういう問題に対してどういう読みをなすっていらっしゃるか、どういう対応をなさるおつもりがおありになるか。その辺はどうなんですか。
  248. 野村忠清

    ○野村説明員 UNCTADVIにつきましては、現在各国、各グループでそれぞれの問題、たくさんの問題が討議される見通しになっておりまして、海運もその一つになろうかということでございますけれども、それぞれの問題について、現在これからどういう形でどういう討議を行っていくかという最終的な詰めが行われていく段階でございます。したがいまして、特にこの問題、定期船同盟行動の問題がUNCTADの場におきまして具体的にどういう形で議論されてくるかというのは、まだ見通しが立てにくい、現在の段階ではまだ確たる見通しが立っていない状況でございます。
  249. 土井たか子

    ○土井委員 確たる見通しが立たないから、日本としてはそれに対して何にも考えもなければ手も打たない、こういうふうに理解しておいてよろしゅうございますね、いまの御答弁からすれば。いいかげんな御答弁ですよ。——もういいです。それは私いま答弁を求めているわけではないんだから。そういうふうにしかいまの御答弁からしたら受けとめられないのです。しかし、すでに八日にコレアUNCTAD事務局長が、定期船同盟条約の発効見通しがついているから早期に批准に向かうようにと日本に対して希望が表明されたという具体的事実があるのですよ。しかし、先の見通しはさっぱりUNCTADについてどうなるかわからないからという御答弁しかいまないのです。日本としてはどういうふうに対応なさるかということは一向聞こえてこない。それはもう何にも考えていないというふうにお答えになったと私理解しておいてよろしゅうございますか。
  250. 野村忠清

    ○野村説明員 UNCTADにおきましての具体的な討議の態様なり、そこでの具体的な議論の進め方についてはまだ見通しが十分に立っていないという趣旨でお答え申し上げましたけれども、この定期船同盟行動規範条約そのものにつきましてわが国ができるだけ速やかに加入することが望ましいという考え方、そのために早期加入に向けてできるだけの努力を続けていきたいということについては変わりはございません。
  251. 土井たか子

    ○土井委員 その努力とか、できる限り進展に対して日本としては協力することが望ましいという趣旨をおっしゃっているのは、要するに定期船の同盟活動に関してアメリカ側とこの協議が進展しない限りは、どうにもこれ批准ということに踏み切ることができかねるということなのですか、どうなんですか。いまの御答弁では、その辺がよくわからないのです。  さっきから遠藤さん、しきりに首を振っていらっしゃるから、どうなんです、遠藤さんの方から御意見があったら言ってください。
  252. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 それでは私からお答え申し上げます。  先ほども野村参事官から御答弁しましたように、なるべく早く入りたいという気持ちはあるわけでございますけれども、他方この行動条約の中に幾つかのあいまいな点が、まだ日本として解釈上はっきりしない点があるものでございますから、先ほど申しましたように、各国にミッションを送り、その結果をいま検討しておるところでございまして、なるべく早い時期に入りたいということを考えております。
  253. 土井たか子

    ○土井委員 遠藤さん、そうすると、幾つかのあいまいな点とおっしゃったのは、あらましたとえばということで、ここでちょっとその点を明らかにしておいてください。
  254. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 では、たとえばでございますけれども、この条約には積み取り比率がございます。たとえば、両端国は運賃収入及び輸送費において対等に参加する権利を有するとございます。通称四・四・二と言われている点でございますけれども、しかしながら、この四・四・二というのはこのコード自身にはっきり書かれていないわけでございます。それから対等な権利と申しましても、やはりこのコードに運賃収入及び輸送量ということを書いてございまして、この両者をどういうふうなウエートで判断するのかというような問題がございます。そういう点をいま検討しているところでございます。
  255. 土井たか子

    ○土井委員 それ以外にもあるんでしょうけれども、恐らく力を込めておっしゃったから、それが主なる問題点であろうというふうに私どもは理解します。それはそのとおりでいいでしょうね。  さて、運輸省は先ほどからずっとそこに御出席をいただいておりますから、具体的に、今回のILOの百四十七号条約で便宜置籍船、日本ではさしずめマルシップの問題が非常に頭の痛い中身で、今度の条約からするとどうなるかということが種々問われている論点がございます。  そこでまずお伺いしたいのは、この条約批准の中で今後マルシップについて運輸省としては条約締結してからどういうふうに対応していきたいと思っていらっしゃるかということをあらましまずお伺いした上で、具体的な質問に入りたいと思うのです。つまり、どういうことかというと、昨年のSTCW条約批准で船員法それから船舶職員法改正を考える場合に、旗国主義というのが明らかにされたということはもうはっきりいたしております。  その際、船員局長は、マルシップは相当数現在あるので一時にマルシップをなくすということはなかなかむずかしい。そこで当分の間は暫定措置としてこれを認めて、その後経過措置を置いて廃止の方向で対処するという答弁を国会でもされたようであります。だから、そういう関係からすると、いまこの条約を審議している中でもその問題が当然関係してくるわけでありまして、どのようにこの問題を受けとめられているかということをもう一度ここではっきりお答えいただいておいて、そして具体的なことを聞きたい、こういう意味なんです。どうでしょう。
  256. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 お答えいたします。  マルシップにつきましては、船員法それから船舶安全法、そういう法律につきましては、これは従前から旗国主義ということで適用になっておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたSTCW条約の批准の関連で船舶職員法が今度新しく適用になるということになったところでございます。ところが、現実問題といたしましては、まだいままでは船舶職員法の適用が全然なかったという分野でございます。これに新しく船舶職員法を適用するということでございますので、一定の期間につきましては何らかの形の経過措置というものは認めざるを得ないのではないだろうかということで、現在も検討を続けておるということでございますけれども、そういうような段階にございます。  それで、先ほどの御質問にも関連するのでございますけれども、マルシップという形態でございますけれども日本の船主が保有しております船舶を外国人あるいは外国法人に裸貸し、ベアチャーターいたしまして、それをまたチャーターバックするというような形態、これが一般的にマルシップと言われておるわけでございますけれども、そのもの自体をなくしていくということには必ずしもならないと思います。そういったものにつきまして日本国の法令の適用を図り、また適切に図っていくという形になろうかと思うわけでございます。したがいまして、用船契約そのものあるいは用船形態そのものを今後なくしていくんだということには必ずしもならないというふうに御理解いただきたいと思います。
  257. 土井たか子

    ○土井委員 用船形態そのものをなくしていくということにはならないという御答弁だったんですが、そうすると船員法、船舶職員法上、マルシップはどういう扱いになるんですか。
  258. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 お答えいたします。  船員法も船舶職員法も普通の日本の船舶と同様に適用があるということになるわけでございます。ただし、先ほど申し上げましたように、船舶職員法につきましては全く新しく適用されるという分野でございますので、一定の合理的な経過措置というものは考えなければならないだろうというふうに考えておるということでございます。
  259. 土井たか子

    ○土井委員 経過的措置は結構なんですが、従来は船員法だけの適用を受けていたんですね。今回、四月三十日から船舶職員法も適用されることになるでしょう。そうじゃありませんか。
  260. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 船員法につきましては従前から適用がマルシップにございました。船舶職員法には従来ございませんでした。これにつきましては四月三十日から適用になるというわけでございます。
  261. 土井たか子

    ○土井委員 STCW条約というのは旗国主義なんですね。先ほどからの御答弁のとおりなんですが。そうなるとこういう船員法、船舶職員法をマルシップについて今度は適用対象にするというのはちょっとおかしいんじゃないですかね。おかしいとお思いになりませんか、どうですか。
  262. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 お答えいたします。  マルシップと申しますのはあくまでも船籍が日本にあるわけでございます。それが外国人にベアチャーターされるということになるわけでございます。したがいまして、旗国主義という主義をとりますと、当然これは日本国の法令が適用ある分野として取り込まれていくことになるところでございますので、特に不合理な点はなかろうというぐあいに考えておるわけでございます。
  263. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ、あくまで、日本船籍であるならばどういうやり方をやったっていいということを運輸省としては考えていらっしゃるわけですね。
  264. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 これは一つには立法政策の問題であろうかと思うのでございますけれども、旗国主義という立場をとりますと、当然日本の法令が日本の国籍を有する船舶に適用されるということを規定いたしましてもおかしくはないという形で、この前のSTCW条約の批准に伴います船舶職員法の——船員法も改正されたわけでございますけれども、改正を見たところでございます。
  265. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっとそれはお答えにならないんですがね。  これは言うまでもなく日本船籍であるんだけれども、外国人を乗せる目的で外国人に貸した船のことをおおよそマルシップと言っているわけでしょう。そうすると、実際は日本のペーパーカンパニー、つまり幽霊会社に属する船であるというふうに一般的に考えても、間違ってはいないと思うんです。なぜ外国人の船員を乗せるかというと、言うまでもありませんよ、これは人件費の問題です。船員費の問題なんです。だから、どこまでも安上がりということを考えてとられている、いわゆる法の盲点をくぐった船であると考えて間違いはなかろうと思うのです。いま法律上の問題だと御答弁になっておりますが、そうすると、何とか法の盲点をくぐり抜けて旗国主義でやってきた線からすると、これは旗国主義には反しないけれども好ましくないやり方であるということは言えるわけですから、何か是正を考えなければいけないとはだれしも思うところであろうと思いますけれども、そういう御認識は全く認識の外でございますか、何かの措置は必要だとはお考えになりませんか、どうですか。
  266. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 新しく船舶職員法をマルシップに適用していくわけでございますし、また従来どおり船員法その他の法律も適用されていくということでございます。したがいまして、要すれば、いかにこれらの法律を有効適切にマルシップに対しまして適用していくかあるいは実施していくかということになろうかと思うわけでございますけれども、私どもといたしましてはできる限り法の適正なる運用ということで適正なる法の執行を図ってまいりたいと考えております。
  267. 土井たか子

    ○土井委員 適正な運用と対策ということを御努力なさるという御答弁ですから、非常に気にかかるのは、前回STCW条約の審議のときに、マルシップの隻数は一体どのくらいあると把握なすっていらっしゃいますかという質問をしたら、まだよくわからないということもおっしゃっていたので、よくわからない相手を改善するためにいろいろ御努力なさるのも大変なことだなと思って実は聞いたのです。そんな程度でよくおやりになるものだ、これは手品同然の問題だなと思って私は承ったのですが、御苦労は察して余りあるのですが……。  その暫定措置を当分の間おとりになるというからには、幾ら何でもある一定の期間をお考えになっていらっしゃるはずだと思うのですが、どれくらいの期間を暫定措置として考えていらっしゃいますか。
  268. 小和田統

    ○小和田説明員 ただいま御質問の点につきましては、船舶職員法の重要な問題に関する取り扱いということになりますので、現在海上安全船員教育審議会の船舶部会、具体的には船舶職員部会の下に二十条小委員会をつくりましてそこで御検討いただいております。暫定措置の期間につきましては、実はきょう五時からまた会議がございまして、そこである結論が出るだろうという見込みでございますので、現在のところまだ確定的なことは申し上げられません。
  269. 土井たか子

    ○土井委員 暫定措置についても確定的な期間はまだ、きょうの五時にならないと言えないということなんですか。
  270. 小和田統

    ○小和田説明員 確定したわけではございませんので、いま私から明確なお返事がちょっとできかねるという意味で申し上げたわけでございますけれども、いままで議論されている内容からいたしますと、数年間程度のものになるだろうと思います。
  271. 土井たか子

    ○土井委員 日本では通常は四、五というあたりを指して数年間ということを言っているのですが、そんなことははっきり言えばいいじゃないですか、つまらぬことですよ、いろいろもったいつけられるのは。
  272. 小和田統

    ○小和田説明員 現在まで出ております数字は五年という数字でございます。
  273. 土井たか子

    ○土井委員 そうらしいですね。そういうことからすると、これは暫定措置というので一応つくったけれども、どうもそうもいかないのでまた暫定措置を延長するということがよく一般にあるのですけれども、この問題はやはり条約を審議する立場からいたしますと、一たん乗り気で非常に努力をするという決断をしてこの問題に取り組んでいただくわけですから、やはり暫定期間というものをお決めいただいて、それを実施するということになったら絶対に延長はないということをはっきりさせておいていただくことが必要だと思うのです、それはやはりこの条約をすっきりさせる基本の問題になると思いますので。どうでしょう。これははっきり言っておいてください。
  274. 小和田統

    ○小和田説明員 その五年間がそれで最終的に打ち切りになるのかどうかということにつきましていま私何とも申し上げかねますけれども基本的には、先ほどから先生指摘のとおり、従来船舶職員法の適用のなかったマルシップについて旗国主義を適用し、きちんとした船舶職員を乗せていくというのが法律を改正させていただいた趣旨でございますので、お考えは十分承知して処理してまいりたいと思います。
  275. 土井たか子

    ○土井委員 課長さん、それは、ここで審議をしていてわれわれも十分その意見を尊重して対処させていただきたいという答弁はしょっちゅうもらうのです。それで、私たちが言ったことをどの程度尊重されるかというのは非常に幅が出てくるのです。この問題は、この条約審議に当たって何だかその辺があいまいもことなったのでは、私たちにも責任がありますから、審議をして賛否を決めなければならない。賛成か反対かという態度決定にも、先の見通しがどうもふらついていて、そこのところがはっきりしない。言ったことは尊重してもらうということまでは言われたけれども、それはしっかりやりますとか、はい、わかりました、五年で再延長しませんとか、そういうことがきっぱりしないと非常に私たちとしてもこの条約に対して責任を持てないのですよ。どうですか。これは本当にはっきり言っておいてもらわないと困るのです。
  276. 小和田統

    ○小和田説明員 適用期間の取り扱いにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、現在五年間ということで今晩の会議で最終的に結論が出るというふうに考えられますけれども、二十条の取り扱いに関する小委員会は官公労使の関係の方々が参加していろいろと審議していただいておりますので、そこでどういう議論がなされるかということについて、私どもは事務局の立場でございますので、大変恐縮でございますけれども先生の御趣旨はわかりますけれども、ちょっと答弁を控えさせていただきたいと思います。
  277. 土井たか子

    ○土井委員 だけれども、これはいまのこの条約関係するのですよ。だから、官公労使の方でお話しになるというのは確かに大事でございます。そこでお決めになることというのが具体的にどうなるかということを左右することに相なるのでしょうね。しかし、お役所としてこの問題に対して責任を持っていらっしゃる立場でしょう。だから、そういうことからすれば、やはり暫定措置というものを期間を限って考えるということになれば、限られた期間の中で暫定措置というものを一〇〇%果たしていくということが基本になるのではないですか。だから、それからすると、ここでしっかりした答弁くらいは出しておいていただかないと審議が前に進まないのですね。どうですか。
  278. 小和田統

    ○小和田説明員 私どもといたしましては、一日も早く現在マルシップであるものについて完全に普通のほかの船と同じように船舶職員制度を適用していくということが目標でございますので、二十条小委員会の結論で認められた期間の間に極力完全な実施を図っていくように努力したいと思っております。
  279. 土井たか子

    ○土井委員 それは約束もらったと同様だと私は理解をして、この問題の今後の成り行きということも注目したいと思うのですが、私はこの前の質問でどれくらいマルシップの隻数があるかということの状況把握を聞かせていただいたら、どうもそれも心もとなかったので、最近のマルシップの状況というのはどういう状況になっているのですか。
  280. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 お答えいたします。  マルシップの定義にもよりますけれども、マルシップとは日本の船籍の船を外国へ裸貸ししまして、これに外国人の船員を配乗しました上でわが国の海運会社が定期用船するという意味であるというふうに見た場合には、それは何隻かということになりますとちょっと明らかではございませんけれども、外国に裸貸しをされました日本船舶のうち、船員法によりまして義務づけられております「雇入契約の公認」という制度がございまして、これを受けた船舶ということになりますれば、これはちょっと古いデータで恐縮でございますが、五十七年の三月末の段階で当たりましたものが三百三十六隻という数になってございます。
  281. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは五十六年の調査から比べてもふえている、五十五年調査から見てもふえている、五十四年から見てもふえている。これはだんだん年次を追って隻数はふえていく一方であるという実態が理解できると思いますが、そのように考えていいですね。  そうすると、これの対応というのは大変なことだと思うのですけれども、それは五年の間ということでひとつ期間を区切ってやっていただくということですから、それに対しては十二分にそごのないようにやっていただかなければなりませんが、それはそうでしょうね。隻数からいうと年々ふえていっているかっこうになります。
  282. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 前の年と比べますと若干ふえていると思われます。
  283. 土井たか子

    ○土井委員 それでふえていっているマルシップについてはこれをやめるということを目安に本当は持っていないと、マルシップについての是正というのは暫定措置にしろ経過措置にしろできないだろうと私は思うのです。それも含めてひとつちょっとここで言っておいていただきたいのは、その経過措置についてどういう機関で協議をしてお決めになるのか。協議はその関係者の合意というものを前提として取り組んでいらっしゃるのか、これをはっきりさせておいていただきたい。それと同時に、マルシップの廃絶をするということをお考えにならないと、実はそれは是正ということはできっこないであろう、数がふえていっていることを見ますとつくづく思うわけでありますが、これは一体どういうお考えで、そしてマルシップについても廃絶するということをお考えならば、できる限り早くということになるはずでありますけれども、それもあわせてひとつ聞かせておいていただかなければならぬと思います。五年でなくなりますか、そうはいかないですか。どうです。
  284. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 先ほどの五年という話につきましては、これはマルシップという用船形態を五年間でやめるという趣旨ではございませんで、船舶職員法の適用というものを五年の間暫定的に特別扱いをしよう、こういう意味でございます。したがいまして、マルシップという用船形態を今後断絶するというようなことには必ずしもならないということでございます。要すれば、法律の適用をいかに的確にこういう用船形態のものに図っていくかということになろうと思いますけれども、それにつきましては十分有効に監督をしていくということで対処してまいりたいと思うわけでございます。
  285. 土井たか子

    ○土井委員 そうであればあるほど、その前に私が質問をいたしましたどのような機関で協議をしてお決めになるのか。そしてしかもそのときには、取り組みの中で関係者の合意が前提となるということは常識であろうと思いますが、その協議の場所では関係者の合意を前提としてお取り決めになるであろうというふうに考えられることについては大丈夫ですね。そういう姿勢で臨まれますね。どうです。
  286. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 先ほど船舶職員課長が答弁しましたとおり、この職員法のマルシップへの適用の経過措置関係につきましては、二十条小委員会というものが現在ございます。そこで官公労使集まりましていろいろ相談をしながら妥当な方策を決めていくということになっております。そこで合意がされた形で進めていくというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  287. 土井たか子

    ○土井委員 今後ともそれはそのとおりだというふうに理解していいんですね。  さて、厚生省にも御出席をいただいているはずですから、そこで船員の保険の問題について少しお尋ねをしておいて、また運輸省の方にもお聞きをしたいと思います。  船員保険法の制度というのは五十五号条約、五十六号条約より上回っているわけですけれども、船員保険法の適用を受けていないマルシップについて船員法の適用を受けるということになっているけれども、五十五号条約と比較した場合の違いが出てくると思うのです。これはどういうふうに違いますか、ちょっとそこのところの御説明をいただきたいと思うのです。
  288. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 船員保険の関係でございますが、ただいま御質問にございましたとおり、マルシップにつきましても一部は船員保険が適用されているのもございます。適用されないということになりますと、現在、医療、年金につきまして一応国民皆保険制度ということになっておりますので、国民年金あるいは国民健康保険が適用される、こういうようなことになるわけでございます。
  289. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっといまの御答弁わかりにくいんですね。それではもう一度答えていただきたいのですが、船員法の適用を受けていても五十五号条約と比較したら、それは中身でずいぶん隔たりがあるということを言わざるを得ないのですが、どういう点で違いが出てきますかということを聞いているんですよ。
  290. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 五十五号あるいは五十六号条約でまいりますと、たとえば医療の現金給付というようなものもございます。これは船員保険の場合には確かにこの中身を上回るということになるわけでございますが、それが船員保険の適用がない船員につきましては、先ほど申し上げましたように、国民健康保険なりの適用ということになりますと、国民健康保険につきましては現金給付は任意給付ということで、出ない場合もある、あるいは出る場合もある、こういうような差が生ずるということでございます。
  291. 土井たか子

    ○土井委員 また御答弁が違うんですね、これは。これで三度目ですが、船員法の適用を受けている人に対して、船員保険法の適用がない人は五十五号条約と比較した場合にいろいろ違いが出てくるということが具体的にあるでしょう。船員法の適用を受けているけれども、五十五号条約からするとこれは違いが出てくるという点はどういう点にありますかということを言っているわけです。つまり五十五号条約と船員法というのを比較してみると、船員法というのが五十五号条約よりも取り扱いの上で不利と申しますか、まだそこにまで至っていないと申しますか、そういう点があるはずなのです。どういう点でございましょうということを聞いているのです。言っている意味がわかりますか。
  292. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 船員法の規定ぶりと条約の規定ぶりの関係でございますけれども、若干でこぼこがあるわけでございます。たとえば職務外の疾病の療養給付の問題がございますけれども、その期間が船員法の場合には条約に比べまして二十日ばかり短いというようなこともございます。それから職務外の疾病に起因いたします埋葬費の支払いというものにつきましては、条約上はこれを支払うという規定があるわけでございますけれども、船員法の中にはそれがないというようなことがあるわけでございますけれども、それは条約との対比におきまして船員法が若干欠けておる点だというふうに理解できるわけでございますが、逆に条約と比べまして船員法の体系の方がプラスになっているという部分もあるわけでございます。たとえて言いますと、疾病のために職務に従事しない期間も雇い入れ契約存続中は給料支払いの義務があるのだというような点でございますとか、あるいは雇い入れ契約終了後は送還終了まで給料相当の送還手当を支払う義務がある、これは船員法であるわけでございますけれども、これに対応するようなものは先ほどの条約にはないというふうに、プラスの部分とマイナスの部分が若干でこぼこがあるわけでございます。私ども考えますのに、この条約趣旨といたしましては、やはり職務執行中の疾病なり傷害に対する補償措置といいますものが中心的なねらいであろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、実質的に同等という観点から見てまいりますと、十分にこの条約に対応した措置が国内法でなされておるというふうに私どもは理解しておるところでございます。
  293. 土井たか子

    ○土井委員 それはちょっと後の方は駄弁ですね。駄弁というよりも、そういうことをおっしゃいますと問題になりますよ。これで十分に対応していると言い切れるかどうかと言ったら、それはそうはいかないというのが客観的に見た場合にはっきり出ているんじゃないですか。いまも御答弁の中でおっしゃらなかったけれども、被扶養者を有する場合は条約では傷病手当が支給されますけれども、船員法には適用がないのですね。その点も事実そうなっているんじゃないですか。そういうことなんか大きゅうございますよ、家族から考えてみても。
  294. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 ただいまの御質問につきましては、職務上と職務外と二つに分けて考える必要があろうかと思うのですが、職務中の問題につきましてはむしろ船員法の方が厚いわけでございます。これは被扶養者がいようといまいと、船員法上は出さなければならないということになっておりますけれども条約上はそうはなっていないということでございます。したがいまして、どちらかというと職務中ということにウエートを置きますれば十分に実質的に担保されておるというふうに考えられるということでございます。
  295. 土井たか子

    ○土井委員 職務中というのは当然ですね。それを特に力説されるところが、どうもやはりひっかかりになるような気がしてならないのです。それで十分に対処していると言えるかどうかですね、そういうところに力を込めておっしゃるような段階で。  さて、船員法の適用を受ける船員は原則としてすべて船員保険の適用を受けるということになっているわけですね。ところがマルシップの約半数、私どもがいろいろ関係者の方に聞いた限りでは約半数が、日本人雇用主がわからないということのために船員保険の適用を受けていないということが実態のようであります。現在船員保険法の適用というのを受けているマルシップというのは何隻ぐらいあるのですか。これはわかるでしょう。
  296. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 数字的なことにつきましては必ずしも明確に把握しておりませんけれども、マルシップの形態の中にもいろいろな形態がございまして、たとえば船舶を裸貸しいたします場合に、その船舶とともに日本の海運会社が雇っております船員を出向の形で派遣するという形態もございます。そういったものにつきましては船員保険法の適用があるということでございますけれども、そういう形態でない場合、たとえば裸貸しをいたしまして、その裸貸しを受けた外国船社がいわゆる船員を雇い入れるというケースの場合、これにつきましては雇い入れます船主が外国人ということでございますので、その関係におきます限りにおきましては船員保険法の適用がないというふうに理解しておるところでございます。
  297. 土井たか子

    ○土井委員 船員保険法の適用を受けていない日本人船員に対してどういうふうに措置を考えていらっしゃるかというのはどうですか。
  298. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 先ほども申し上げましたいろいろ形態があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、極力船員保険が適用されるような雇用形態となるような指導をやっていきたいというふうには考えてございます。しかしながら、先ほどのような船員保険が適用されないというケースもあり得るわけでございますので、そういったものにつきましては災害補償確保されますように、適切なる民間保険を付保するように指導してまいりたいということを考えておるわけでございます。したがいまして、船員保険が適用されるか、あるいは適用されない場合には民間保険を掛けるということを指導するという構えと申しましょうか、指導方針でまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  299. 土井たか子

    ○土井委員 それは実におかしいですね。日本人船員であって、いま問題になるマルシップに雇い入れられるというふうな場合、船員保険が適用されなければ本来おかしいのですから、船員保険が適用されるような雇用形態というのを運輸省としては指導されて当然だろうと思いますが、こういうことはどういうふうに考えていますか。
  300. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 マルシップの雇用形態につきましてはいろいろ形態があり得るわけでございまして、法的に見て違法にわたらない雇用形態というものでございますれば、それはそれで一つのやり方だろうというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、ある一定の雇用形態をとりました場合に、別の面でカバーされない点といいますか、補強を要する点が出てくるということでございますれば、その法律関係において指導を加えていくというふうにする必要があるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  301. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、五十六号条約の第一条というのを見ますと、本条約が強制疾病保険制度によるという趣旨をとっておるわけですね。だから、それからすると、これはどうなんでしょうかね。船員保険を適用しない日本人船員については船員法を適用して、職務外の船員法の適用のない場合は国民健康保険による診療報酬それから葬祭給付ということを受けるというかつこうになるわけでしょう。それは先ほども御答弁の中で出たと思うのですが、五十六号条約というのは強制疾病保険に関する条約ですから、船員保険が適用されないということになると、どうもこの五十六号条約の一条一項の強制疾病保険制度によるという趣旨から外れることになるのじゃないかという考えが出てくるのですが、これはどういうふうに考えていますか。
  302. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 百四十七号条約によります社会保障に関連します三本の条約関係でございますけれども、五十五号条約につきましては船舶所有者の責任の条約でございます。船舶所有者が傷病の船員につきまして一定の責任を有するという条約でございます。それから五十六号条約につきましては、それを今度強制保険でもって担保する、その保険は船員の傷病保険であるということでございます。それから百三十号条約につきましては、船員の保険というよりも、一般的な傷病保険でもって担保する。この三つの条約のうちいずれか一つを批准しておるかあるいはそれと実質的な同等の国内法措置がなされておるということが要件だろうかというふうに思うわけでございます。  そういう観点に立ちまして考えれば、この五十五号条約の船舶所有者のいわゆる傷病船員に対します責任関係につきましては、船員法でもってカバーされておるというふうに考えております。日本船籍の船舶に雇用されます船員につきましては、船員法の適用があるということでございますので、仮にと申しましょうか、船員保険の適用外の船員につきましては、船員法の規定が適用しておるわけでございます。
  303. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことからすると、船員保険が非適用の場合でも船員法の適用があるからいいじゃないかと、こういうお考えですか。
  304. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 船員保険の適用がないものにつきましては、いわゆる船主責任という形の船員法の規定によりまして補償がなされるということになるわけでございます。ただ、その場合の補償が船主の資力等によりましてなかなか遂行できないというケースもございますので、保険を掛けさせるというふうに指導してまいりたいというように申し上げておるところでございます。
  305. 土井たか子

    ○土井委員 その辺が非常にひっかかるのは、マルシップに雇い入れられる日本人船員の場合の立場なんですね。いま最後の方におっしゃったとおりに、船主の方がそれに対して十分なる責任をとらない、一体どこに持っていっていいのかということになると、宙に浮いちゃう。いまの御説明は理屈でございますから、実際問題に当てはめたときに、その宙ぶらりんになるという立場に立つ人たちが必ず出てくるわけですね。したがって、その辺の担保というのがはっきりないことには、どうにもいまのこの条約審議をやっているこの条約趣旨からしても、もう一つ不確かな中身しか考えられていないということにもなるので、運輸省とすれば、その辺大丈夫ですね。
  306. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 条約上の問題から申し上げますれば、この三つの条約のうちの一つを批准しておるかあるいはそれと実質的に同等な措置がなされておるということでもって足りるわけでございますので、その観点からいきますと、先ほどの船員法の規定といいますものがそれを担保しているということになろうかと思うわけでございます。ただし、プラスアルファ的な話になろうかとは思うのですけれども、保険に掛けるように指導してまいりたいということを付加して考えてまいりたいという点でございます。
  307. 竹内黎一

    竹内委員長 土井委員に申し上げますが、お約束の時間が過ぎております。結論をお急ぎください。
  308. 土井たか子

    ○土井委員 結論というのは、条約審議においては本来時間制限がないということで審議をするというのが本委員会の慣例であること、委員長はよく御承知であるはずであります。したがいまして、約束は一時間だから一時間以内で、もう一時間時間が来たから条約審議はそれでやめというわけにはいかないのです。まだ少しあります。質問を続行します。  六十八号第五条というのは、労働協約で十分確保されていない場合を考えて、法令や規則で要求するものを定めたものであるというふうに考えてよろしいですかどうですか、この点はどうですか。
  309. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 六十八号条約の第五条によりますれば、「食糧の供給及び賄施設に関する法令又は規則を実施しなければならない。」ということと理解しております。
  310. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁よくわからないのですが、つまり労働協約を結んでいない場合、労働協約で十分満足されていない場合をあらかじめ考えて定められたのが六十八号五条じゃないかというふうに理解をしているわけですが、この点はどうですか。そうでしょう。
  311. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 いろいろ国によりましてある一定の事項を労働協約で担保するという国もございましょうし、また立法で担保するという国もあると思われますので、それは国情によっていろいろ違ってくるとは思うのですけれども、この条約趣旨とするところは、いまの食糧の供給、それから賄い施設に関することにつきまして、強制と申しましょうか、一定のエンフォースと申しますしょうか、立法なり何なりで担保するということを要求しておるというふうに考えております。
  312. 土井たか子

    ○土井委員 それで、その六十八号の五条は具体的にはどういうふうな国内法令や規則で手当てをされているのですか。
  313. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 国内法的に申し上げれば船員法の第八十条という条文がございます。これで「食料の支給」というものにつきまして定めをしておるところでございます。それから、あと船舶設備規程、これは船舶安全法のサイドの規定でございますけれども、これの百十五条の十四という条文がございまして、これはいわゆる調理室の要件、そういったものを定めておるところでございます。
  314. 土井たか子

    ○土井委員 具体的な国内法令とか規則の中には船員法とか船員労働安全衛生規則とか船舶設備規程などというのは入るのですか、入らないのですか。どうですか。
  315. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 いま言いましたような規定によりましてその辺の担保はしておるというふうに考えております。
  316. 土井たか子

    ○土井委員 使用者、労働者間の労働協約というのは、マルシップであるとか組合を組織していない船員との間には存在していないというふうに一般的には思われていますが、それはそのとおり考えていいでしょうね。どうですか。回りくどい御答弁は要りませんから、端的に答えてください。
  317. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 労働協約といいますのはあくまでも労働組合と使用者サイドの協約と申しましょうか、そういった当事者間の取り決めというふうに理解しております。
  318. 土井たか子

    ○土井委員 御答弁になっていないのです。いまのは労働協約とは何ぞやということに対する御答弁じゃないですか。もう一度御答弁願います。
  319. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 マルシップにつきましては、組合というものが余り存在しないというふうに聞いております。したがいまして、労働協約というものも余り存在しないというふうに理解しておるところでございます。
  320. 土井たか子

    ○土井委員 マルシップ及び組合を組織していない船員についてはということを聞いているのです。ひとつ私がどういう質問をしているかということをよく聞いていただいた上で、御答弁も的確な御答弁をお願いします。そうでないといたずらに時間が必要なんですよ、本当に。  現在船員組合が各船主団体と協定している労働協約というのがあるわけですが、それは国内法令あるいは規則の六十八号五条についての不足部分を相当補完しているということが言えるのじゃないかと思うのですね。それで、労働協約なしに六十八号五条に実質的同等の適用をしていこうということはどうもむずかしいというふうに考えられるわけですけれども、この点はどう考えていらっしゃいますか。
  321. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 私どもといたしましては、先ほど申し上げました船員法の八十条、それから船舶設備規程の百十五条の十四というような条項によりましてそれは実質的に担保されているというふうに考えておるところでございます。
  322. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それは労働協約を結ばなくたって別にいいということになるのですか。
  323. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 いまの御質問につきましては、これは一般的な問題として申し上げますれば、ILO百四十七号条約に定められております最低基準といいますものは、わが国では船員法とか船舶職員法あるいは船舶安全法、こういったもので実施されておるわけでございまして、これらの法令は組織、未組織を問わずにすべての日本船舶に適用されるということでございます。したがいまして、労働協約が適用されない未組織船につきましても、これらの国内法令を遵守している限りにおきましては、この条約最低基準を満たしているというふうに考えておるわけでございます。  ただし、船員法等で定めます労働条件の基準といいますものは最低のものを定めるということでございますので、労働協約等によりましてこの基準を上回る取り決めを行うということは望ましいことだろうと考えておるところでございます。
  324. 土井たか子

    ○土井委員 その望ましい労働協約を、いま労働協約を持たない未組織船であるとかマルシップなどについても労働協約の締結を指導していくということまでお考えにならないといまの御答弁は生きないと思うのですが、その辺のお心づもりは大丈夫でしょうね。やっていただけますね。
  325. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 労働協約の締結あるいはその労働協約にどのような内容を盛り込むかということにつきましては、ひとえに労使間の問題だろうと思うわけでございます。したがいまして、その辺は労使間で十分に話し合いが行われまして、よりよい基準というものができてくるということが望ましいというふうに考えております。
  326. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、そうなってくると、これは監督の問題にも問題が及ぶのですがね。自国船に対して有効な監督を行うということは条約の二条で述べられているわけですけれども、マルシップであるとかいま問題にした未組織船に対する国内法令で行ってこられている監督が今日まで十分に実行されているとは言えないということが一般の認識なんですよ。そうですから、マルシップの今後のあり方というのが非常に注目を受けるわけでありまして、どのようにいままでにやってきたということに対しての反省とかあるいはこういうことをさらにやる必要があるという認識とかいうことをお持ちですか、監督について。
  327. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 マルシップに対します船員法等の適用につきましては、日本船を外国に貸し渡します日本船主を通じましてわが国の法令の適用があるという旨及びその法律の内容というものを周知指導するということをやっておりますとともに、地方海運局等におきます窓口指導あるいは船員労務官による監査、こういったことによりまして法令の遵守を図っているというところでございますし、今後も図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  328. 土井たか子

    ○土井委員 法令に基づく監査、監督というものをこれからも図っていきたいとおっしゃいますが、それ自身がいままで不十分だったのですから、やり方自身が。だからそれをそのままでやって、これから努力をなさると言ったら、一体どういう方法でそれをさらに努力されて是正をされ、改善されていくのかというのはよくわからないのですね。  それで最近、STCW条約の中身を国内的にも実施するということで国内二法案、船員二法というのが改正をされたわけです。この新船員二法でわが国としては外国船に対する監督も必要となってくるわけですね。現在の船員労務官と海上保安庁の保安官の人数はどれくらいあるのですか。それから、その中で特にお尋ねしたいのは、外国語、英語などの会話ができるという人が何人ぐらいあるのです。
  329. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 現在、船員労務官は全国で百二十八名おります。それから外国語等につきましては研修その他で研さんを積ませまして能力向上ということを図っておるところでございます。
  330. 土井たか子

    ○土井委員 外国語はどうなんですか。これは大体百二十八名で対応できるということでしょうか。年間六千隻程度の外国船についての立入検査が必要なんですよ。そうすると、どうしても増員を考えられなければならないのじゃないかと思われますが、その点はどうです。  そして、現実に外国語の会話ができる人というのは本当に少ないのじゃないですか。意思の疎通を欠いて何の検査であり監督なんです。そういうことからすると、外国語に対しての研修とか講習とかいうふうなものを徹底するということが非常に問題になってまいりますよ。その辺はどうなんですか。  先ほどからの御答弁は場当たりの御答弁ですね。私の質問について十分にお答えになっていらっしゃらないじゃないですか。一回に二つの質問をやっていると、一つだけはお答えになるけれどもあとの一つは答えられたためしがない。その一つも上っ面のいいかげんな御答弁です。そういうことでは、今後の改善についてどういうことをお考えになっていらっしゃるかを言っても、結構ですねとはとても言いかねる。時間稼ぎさえここの答弁でしておけばそれで済むというような問題じゃないのですよ。運輸委員会ではそういうことに対しては非常に緊張して答弁なさるかもしれない。ここは外務委員会だからいいかげんにしておけばいいという御気分ですか。この条約は外務委員会で審議をするということでありますけれども、運輸省所管の部分が大半なんです。これはそういう態度で答弁をして済む問題じゃないですよ。いかがです。
  331. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 先ほどの労務官の人数の話でございますけれども、百二十八名ということでありますけれども、五十八年度におきましては三名の増員が認められておるところでございます。  それから外国語の点でございますけれども、会話はなかなかむずかしいという点もございますので、会話にかわります書類チェックというようなことも併用してまいりたい。したがいまして、チェックリスト的なものをつくりましてチェックしていくというような方法をとるとか、その辺の改善策といいますものは現在いろいろ考えておるところでございます。
  332. 土井たか子

    ○土井委員 考えているところでありますとおっしゃるところをひとつ生かしていただいて、百四十七号条約の目的は基準以下の船、サブスタンダードシップを取り締まるということがその目的になっているわけですから、そのためにしっかりとした監督体制をつくり上げないと、基準以下であるかどうであるかということはわからないわけですよ。だからそういうことからすると、監督体制をつくり上げて中身を実施していくことが条約の必要条件であるということが問われているので、いまの御答弁からしても別途監督のためのいろいろな行政の充実というのがどうしても必要視されます。立法の上でさらにこれを具体化することが必要だとお考えになりませんか。また、監督行政の上で行政指針とでもいうふうなものをきちんとさせるような必要があるとお思いになりませんか。その点はどうです。
  333. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 いろいろ監査のやり方その他の面につきましても努力をいたしまして、十分に効果が上がるような方向で対処していきたいというふうに考えておるところでございます。
  334. 土井たか子

    ○土井委員 もう私は時間をはるかに超えて、さっきからしきりにやめてはどうかというふうないろいろなサインも出てまいっておりますから、この条約についての審議は終えますが、あと一つ条約については私はきょうは質問いたしません。これは千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書についての問題であります。その条約についての審議をしようとするとどうしてもあと三十分は要りますから、これは本日は審議をしないことにいたします。したがいまして、あと一問だけを聞いて私は終えたいと思うのですが、今回のILOの百四十七号条約を批准するのに、欧州十四カ国では昨年七月一日からポート・ステート・コントロールを実施しているのですね。日本が昨年批准をいたしましたSTCW条約、ただいまここで問題にしている百四十七号ILO条約、そして、まだこれは批准がされておりません千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書、これはきょうは審議をいたしません。そういういま申し上げた三つを含めて全部で七つの条約に関連する監督、手続、情報交換など、寄港国の監督の面で厳しく取り締まっているということを私どもは聞いております。わが国としても外国船、特に基準以下の船についてポート・ステート・コントロールを行う措置が必要なのではないかということがずっと言われ続けてきているのですが、行わないということになるのならなぜそれができないのか、行うということになればいつごろそれを行うことを目途にして考えていらっしゃるか、この点を最後に聞かせていただきたいと思うのですが、どうですか。
  335. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 ポート・ステート・コントロールの関連につきましてはこの条約の四条にあるわけでございます。その要件といたしましては、苦情あるいは証拠、そういったものが一つの手がかりになりましていろいろ調べまして、安全または健康に明らかに危険な船内における条件の是正を行うための必要な措置をとるというふうに書かれておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、この関係につきましては現在の法体系、具体的に申し上げますれば船員法の外国船舶の監督規定、この前改正されました船員法で入れられたわけでございますが、その条文、あるいは職員法の二十九条の三、これも新しく加わった条文でございます。あるいは船舶安全法の立入検査、是正命令、これは前からございます。こういった法令によりまして監督措置というものをとっていくようにしたいということでございます。それをとりまして、安全あるいは健康に明らかに危険な船舶内におきます条件というものを是正させるための必要な措置をやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
  336. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  337. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十八分散会